【2006年6月27日 SwRI News】
太陽系の巨大ガス惑星に対して、衛星の質量の比率はひじょうに小さい。
地球に対する月のように、もっと大きな衛星は誕生しえなかったのだろうか?
どうやら、衛星は大きくなりすぎると惑星に飲み込まれてしまう運命にあったようだ。
太陽系のガス惑星を回る衛星について考えると、いくつか不思議な点がある。まず、衛星の大きさが
惑星に対して小さいことだ。岩石惑星である地球の衛星、月の質量は、地球の1%であり、氷と岩石の
惑星である冥王星の場合は、本体の10分の1もある巨大な衛星カロンを従えている。これに対して、
ガス惑星の場合は、すべての衛星をあわせても0.01%程度しかない。さらに、この「0.01%程度」という
惑星と衛星の質量の割合は、どのガス惑星でも同じだ。木星の衛星は4つのガリレオ衛星だけが大きく、
他はひじょうに小さい。一方、土星の衛星はタイタン1つだけがずば抜けて大きく、小さめの衛星が
いくつか存在する。このように惑星によって構成が異なるのだが、衛星の質量を合計すると、惑星に
対してほぼ一定の割合になるのだ。
それぞれのガス惑星の周りには、異なる過程で衛星ができあがっていったはずだ。しかし、誕生した
ばかりの原始惑星の周りにガスとちりが集まり、やがて円盤を形成して集積することで衛星になった、
という点は共通しているだろう。アメリカ・サウスウェスト研究所の研究グループはこの点に注目し、
数値シミュレーションなどから衛星がどのような運命をたどるか分析した。
どうやら、現在各ガス惑星の周りを回っている衛星は、惑星の周りに誕生しては消滅してしまった
何世代もの衛星の、最後の世代にあたるようだ。初期のうちに誕生した衛星の周りには、まだ円盤の
ガスが残っていて、衛星とガスとの間に作用する重力が衛星の公転軌道を縮める方向に働いてしまう。
この効果は衛星が大きくなるほど強くなるので、成長しすぎた衛星は惑星へと落下して脱落してしまう
というわけだ。
様々な条件でシミュレーションした結果、複数個の衛星が誕生する様子も再現できた。その上、
どんな場合でも、衛星の質量の合計は惑星の0.01%からあまりずれない割合であった。研究グループに
よれば、少なくとも木星と土星の衛星に関しては、惑星形成の最後の過程で円盤から集積するという
誕生プロセスが当てはめられるという。ただし天王星に適用できるかどうかは、自転軸が公転面に対して
98度も傾いている原因が何であるかによる。
この結果を系外惑星にも当てはめると、木星程度の惑星では、その衛星は月から火星程度の
大きさにしかならない。少なくとも木星並の惑星には地球サイズの衛星は存在しないことになり、
系外惑星の衛星に生命が存在し得るかどうかを論じる上で重要なことだ。
ソース:AstroArts
http://www.astroarts.co.jp/news/2006/06/27gasplanet_moon/index-j.shtml