宮崎県で猛威を振るう家畜伝染病「口蹄(こうてい)疫(えき)」。
感染、または感染が疑われる施設は100カ所を超え、殺処分の対象は
牛と豚で計約8万2千頭に及ぶ。手塩にかけた家畜を目の前で処分し、忍び寄る
ウイルスの影におびえる‐。被害が集中する川南町は、豚だけで約7万4千頭が処分対象となり、
農家の間に絶望的な空気も広がっている。胸を裂く叫びを聞いた。
子豚が吸い付くと、周りの水泡がつぶれて乳房が黒く染まる。
痛いはずだが、それでも母豚は、つめがはがれた足で立とうとし、乳を飲ませようとする ‐。
「もう、こんなつらい光景は見たくない」。養豚場経営者(63)は、感染した
母豚の様子がまぶたに焼きついている。
最初は小さな異変だった。鼻と足から血を流している母豚2頭を見つけ、
家畜保健衛生所に連絡した。そこから爆発的な速さで広がった。抵抗力が弱い授乳中の子豚は、
前日の元気がうそのように翌朝はあちこちに転がっていた。
数日後に殺処分される豚たちに手渡しでえさをやり、腹いっぱい食べさせた。
処分が始まるまでの8日間をとても長く感じた。約700頭がいた豚舎は今、骨組みだけが残る。
「疲れた。今後のことも考えんといかんが、今は希望が持てない」
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