詩人の血

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165名前はいらない:2007/08/22(水) 20:56:29 ID:hJvbLUWm
166名前はいらない:2007/09/06(木) 19:18:36 ID:5kJDmAZH
ブログ発見
ゴミの日々
167 ◆soft/e/9Do :2007/09/30(日) 18:23:54 ID:ryYZBO/0
『みっちゃんのうた』
みっちゃんが うんこもらした
みっちゃんが しょーべんもらした
みっちゃん べんじょだ
べんじょだ みっちゃん

ほれほれ おいらのうんこをおたべ
ないたってだめだい
みっちゃんがいけないんだぞ
ほれほれ おいらのしょーべんおのみ
にらんだってだめだい
おいらはけっしてわるくないんだぞ

みっちゃんのおっかさんが
ばかみたいにないているよ
みっちゃんのおとっつあんは
はくちのようにだまっているよ

みっちゃん あつかろうに
やぶいてやろう
へらへらわらうな
やぶいてやろう
みんなあつまってきた

みっちゃんは ぼろぞうきん
みっちゃんは ぼろぞうきん
くろくなったね なかもそとも


みっちゃん いなくなった
みっちゃん もやされた
みっちゃん はいになった

ゆうやけがじごくのようにあかくて
みっちゃんのけむりが
おちゆくひをみちづれにする

さよなら みっちゃん
またあした
168 ◆soft/e/9Do :2007/10/06(土) 21:30:11 ID:1WYR93yD
『ある日の不安』
強い光線が背中を焼く

誰だ 覗いているのは
誰だ 誰が俺を見ている
誰だ 俺を非難したのは誰だ

目をつぶる
地球が爆発するイメージが思い浮かぶ

目をつぶる
まぶたを見ている
暗闇の中のチカチカはやがて一転に集中し
破裂する
俺が破裂する

動悸がする
呼吸が荒い

やめろ やめろ やめろ

光線は360度、俺を照らす
焼く 焼き尽くす
溶ける 俺が溶ける

俺が溶ける
169 ◆soft/e/9Do :2007/10/06(土) 22:20:28 ID:1WYR93yD
『羽虫』
羽虫が飛ぶ
ニコチンとタールの霧の中を
羽虫が飛ぶ
窒息する

羽虫の死に際のヴィジョン

地雷が火を噴いてクロンボが足をふっ飛ばし
安モテルで女子高生が油まみれのハゲに処女膜を破られ
パブの地下一階で七歳の男の子が筋肉弛緩剤を打たれてアナルを犯され
ニューヨークの34階で時代遅れのLSD愛好者が鳥になり
東京湾の魚は目を失くし色素を失くし僕はソレを生物と認めない
北半球でありとあらゆるスイッチが押され
干上がった僕らは石油を飲み
太陽は遠ざかる
しあさっての方向からさざ波の心地よい音が聞こえ
内臓が飛び出てピロピロしている妖怪人間は
歓喜の声を上げすぎて喉が裂け血が噴出し
混血児たちは血をおいしそうに飲み
余るほどの血は体に塗りたくって
いつかの祖先の踊りだ、神にささげる踊りだ
高層ビルの屍骸で僕は吼える
君にむかって昨日にむかって吼える吼える吼える吼える

わおーん

羽虫は壁に張り付いて死んだ
170 ◆soft/e/9Do :2007/10/12(金) 02:39:03 ID:V8Jq8/xF
『相談:46歳主婦 要介護の義父について』

お義父さんは味噌汁をよくこぼします
ご飯やおかずはちゃんと食べてくれるのですが
汁物は苦手なようなのです
お義母さんは口に締まりがないと言って笑っています
私はお義母さんを殺したいです
お義父さんは味噌汁を半開きの口からだらだらこぼします
拭くのは私です

お義父さんは散歩に行きたいと私にせがみます
あーとかうーとかしか言いませんが
外を見ながら涙を流して私にせがみます
お義父さんの足は長い事動かしていないせいで
グロテスクなほど細いのです

お義父さんがまだ何とか言葉を喋れたころ
私によく言いました
「幸せが街に逃げてしまったんだ」

お義父さんは目が見えなくなってしまいました
私はお義母さんを細かくして庭に埋めました
お義父さんは光の刺激を頼りに
明るい窓の外へいつも顔を向けています
私達の住んでいる家は丘の斜面に建っていて
窓からは街が眺めわたせるのです

私はお義父さんを街に連れて行ってあげたいのです
どうしたらいいでしょうか
ノコギリやオノはありますし使い慣れています
171 ◆soft/e/9Do :2007/10/12(金) 03:00:13 ID:V8Jq8/xF
『耳をすますな』

目を凝らしてはいけない
すぐに目を閉じなさい
見てはいけない
決して見てはいけない

耳をすましてはならない
すぐに耳を塞ぎなさい
聞いてはいけない
決して聞いてはいけない

虚構です
私も貴方も虚構です
喜びも悲しみも哀しみも怒りも
虚構です

真実に接触してはいけません
私達はめくらでつんぼなのが
一番幸せなんです
172名前はいらない:2007/10/22(月) 06:18:30 ID:6gA8KX0m
173soft ◆soft/e/9Do :2007/10/22(月) 08:34:16 ID:ygrCz6Oq
『ピーピーピーシャラッラッラ』
ピーヒョロロ ピーヒョロロ
山の方の観光施設
林を切り開いた砂利道が通っていて
ぼくらは1時間300円で錆びた黄色い自転車に乗り
小鳥達の声を聴いた

ピーヒョロロローピギャーピギャーピギャー
ぼくが初めてパーソナルコンピューターで
世界全国60億人と繋がった時に
目の前の箱が発した悲鳴だ
何が悲しんだい いったい何が
人に使われることがかい
ぼくに使われることがかい

ピーヒョロロ ピーヒョロロ
大人になってから聞いたんだけど
あのサイクリングロードの小鳥達の
鳴き声は
スピーカーから出ていたらしんだ

ピピピピピッ ピピピピピッ
砂漠の真ん中で
ぼくの携帯電話は着信音を鳴らす
雨はずいぶん降っていない
174soft ◆soft/e/9Do :2007/11/04(日) 18:02:48 ID:uHrFOxJK
んー
175soft ◆soft/e/9Do :2007/11/29(木) 00:45:02 ID:CIgdYuNK
髪切ってセットして紙切って折り紙折って舌噛み切って

お・だ・ぶ・つ・さ・ん
176soft ◆soft/e/9Do :2007/11/29(木) 13:45:14 ID:CIgdYuNK
保存

『その瞬間』
例えばツルのように

口の中にコルト社の銃身の長いリボルバーを突っ込まれて
突起したフロントサイトがのどチンコを揺さぶり
何か喋ってみろと言われて白っぽいゲボが溢れて
引き金をひかれる
その瞬間

例えばアゲハ蝶のように

とてつもない多幸感のもとに
天使は平均的な光と笑顔を捧げ
神であるキリストは相変わらずノーパンで
彼の睾丸の皺を数えながら
白い部屋から旅立つ
その瞬間

例えば青リンゴのように

ジュース工場の量産されたおばさんおじさんと
量産された作業服と量産された帽子と量産されたマスクと
量産された賃金と量産された不満と量産された慣習と
量産されたバックボーンにこびりつく妻と夫と娘と息子と
量産されたジュースの、その蓋が閉められるコンマ1秒間に
瓶の中に虫が飛び込み、蓋は予定通り閉められる
その瞬間

例える事はもうやめよう

圧迫する、脳を圧迫する、人々の声と目と
地球の下らない悪あがきの引力を
ジェット噴射でズタズタにして
イノセンスのかけらも感じない青空を制圧する
その瞬間
177名前はいらない:2007/12/31(月) 22:07:46 ID:QYFHLgQS
あは あひ ひ
178soft ◆soft/e/9Do :2008/01/01(火) 23:18:53 ID:OLSDZzGG
『弟よ』
弟よ
君は僕より四年後に生まれた

弟よ
兄を見ろ
兄の辿った道を見よ
弟よ
僕は全く誰の指図も聞かずに森の中を歩いた
弟よ
僕が作ったその道を
その道を歩くか歩かないかは君の自由である

弟よ
僕は沢山の罠にひっかかった
弟よ
僕と同じ罠にひっかかってはいけない

弟よ
よく肝に銘じてほしいのは、頼れる存在とは何かである
男友達もガールフレンドも、君を置いてどこかへ去るかもしれない
しかし家族は動かない、いつでもここら君を見守っている

だから、弟よ
様々な誘惑があるだろう
様々な苦難があるだろう
もしどうしようもなくなったら
一時的にでも戻ってくるがいい
僕たちは拒まない

179soft ◆soft/e/9Do :2008/01/01(火) 23:19:24 ID:OLSDZzGG
弟よ
血の繋がりは時に悲しくもあるだろう
だが、弟よ
それはどうやっても断ち切れない

しかし、弟よ
僕たちが君を愛すから
君は受け取ればいい
黙って受け取るがいい
代金などいらない
君の輝ける未来を見たいのだ

弟よ
僕よりうまく生きるのだ
僕の生き様をようく見るのだ
兄はそのためにある

弟よ
僕の背中を見よ
背中の傷を見よ
弟よ
君は僕よりも美しい

弟よ
前を見よ
進め
遥か前方を見よ
進め

弟よ
今度は僕たちが君の背中を見る番なのだ

弟よ、行け
弟よ
180soft ◆soft/e/9Do :2008/01/02(水) 02:13:43 ID:FooPYcIu
指図は受けるものだった。間違い間違い
181名前はいらない:2008/02/27(水) 09:18:40 ID:zljmOspA
age
182名前はいらない:2008/02/27(水) 17:14:52 ID:TkNjeN0M

桜貝に似た電子手帳
君の詩
春雨滲み
困惑と憧憬の狭間
その指先の調べ果て
青く芳醇す思想

弾かれ
往き処無くした世界で
手にした
切符
期限など印されず
183名前はいらない:2008/03/06(木) 17:30:16 ID:5rjYYbWn
5月7日



「貴方は写真が無いから結婚式の時に困るね」って君が言ったから
「結婚式を挙げるつもりは無いから問題ないよ」って僕が笑った

写真嫌いの振りして、本当は自分を認めたくなかっただけ
この一瞬に映し出される醜い自分を残したくなっただけ

自分嫌いの振りして一番自分が好きで、
でも理想ばかり追いかけるから今の自分を受け入れられず
現実におかれた自分に気付いて、また嫌になる

今度の君の誕生日に籍を入れようって話したけど、調べてみたらあいにくその日は
日が悪いみたいで、それを君に伝えたら君はは静かに頷いた

「貴方は写真が無いから結婚式の時に困るね」って君が言ったから
「結婚式を挙げるつもりは無いから問題ないよ」って僕が笑った

もし今写真を撮るとして君のそばにいる僕は幸せそうに写るだろうか?
未来の僕に問いかけるのはまだ少し怖いけど、写真に写る勇気は少し湧いてきた、湧いてきたんだ

長々とくだらない事考えていたらさっき入れたコーヒーもぬるくなってしまっていて
でも君の肌の温度と似ていたからなんか安心して、これなら受け入れられると思った、思ったんだ
184しんしん:2008/03/06(木) 17:32:09 ID:5rjYYbWn
久しぶりにし書いた、、、、、しかも推古無しでw
なんか懐かしいなこの感じ。
もやもやが吐き出されたようで、まだ残っているような感じ。
185名前はいらない:2008/03/19(水) 21:56:13 ID:mvOEnpzy
異句
186名前はいらない:2008/04/14(月) 10:35:35 ID:9QkudABM
>>183素敵
187名前はいらない:2008/04/16(水) 20:14:24 ID:T38jQiDw
あげあげ
188名前はいらない:2008/04/18(金) 18:52:24 ID:2HnAQTbk
あがってないし
189名前はいらない:2008/05/29(木) 07:42:42 ID:JSQrFblR
age
190soft ◆soft/e/9Do :2008/06/24(火) 18:23:15 ID:889tKSoi
ぼくがきちがいになったとき
僕のお家の前の畦道を車は通りました
水田からは蛙の鳴き声がやかましく響きました

ぼくがきちがいになったとき
曇天を雲雀が突き抜けて
ぽっかり開いた雲の穴ができて
触れてみたかったけど手が届きませんでした

ぼくがきちがいになったとき
お母さんは泣きました
お父さんは部屋を出て行きました
ぼくは包丁をぶんっと壁になげて
コンチクショウと叫びました

ぼくがきちがいになったとき
土は呻き、電柱は軋み、空は涙を落としました
人々はぼくを取り囲みます

キジルシ キジルシ キジルシ キジルシ

ぼくがきちがいになったとき
それは夕焼けの終わり
白が黒に見えて、仕方なかった
だから打ったんです、あの娘を

ああ、ああ、いやだ、いやだ

ぼくがきちがいになったとき
あなたは抱きしめてくれますか?
191soft ◆soft/e/9Do :2008/07/23(水) 22:12:12 ID:MhDquqIV
「国家心中」

僕は危険
僕は希望
僕は破滅
僕は防衛

ねえ、饗応婦人はやめてほしいな
お茶を出されても
ケーキを出されても
僕は何にもいらないよ

僕は爆発したい
だってそのための僕だもの
僕は人を殺したい
だってその宿命を負ったのが僕だもの

一緒に死のう
一緒に死のう

使わなきゃいけないよ
持ってるだけで意味あるの?
とてもそうには思えないよ

一緒に殺そう
自分を殺そう

僕は核ミサイル
友達は幾人もいる
僕は核ミサイル

さあ、放て!
国家心中
天皇陛下万歳
192ローカルルール変更議論中@自治スレ:2008/08/19(火) 18:51:03 ID:RV9zTwXx
age
193ローカルルール変更議論中@自治スレ:2008/08/19(火) 18:54:30 ID:QXzu/dSS
これからは俺の口座に金振り込むようにしろ
稼いでやるから
194soft ◆soft/e/9Do :2008/08/28(木) 22:06:18 ID:IBwVN8aI
「人生」

絶望という陳腐な言葉じゃ表せない感情に
何度も何度も何度も何度も何度も
包まれ、思考は途切れ、また繋がり
その瞬間、堪えきれない痛みを
肉体的より、そう強大な精神的な痛みを
持て余してどうしようもできないなら
どうすればいいのか
誰か教えてくれるわけもなく
途方に暮れるわけにもいかず

魂よ 我が魂よ

貴様は何を俺に求めるか
貴様は何を俺に求めるか

逃げ場を失った鼠は猫を本当に噛めるか
試してみるがいい
自己をその場に置いてみるが良い
置けるものなら

他人に甘えたくて仕様がなく
自分に甘えたくて仕様がなく
放蕩する勇気もなく
ただ沈鬱する
ただ沈没する

嗚呼 嗚呼

魂よ 我が魂よ

貴様は何を俺に求めるか
貴様は何を俺に求めるか

定まったレールを実は踏み外したくなんかなかった
走っていることができなくなった
そうして俺は堕落した

言い訳を一人考えてみる
出来うる限りの沢山の言い訳を
それで繋ぐ命 それで繋いでいる命

人に平気で頭を下げた
舌を出す余裕など俺にはない

絶望という陳腐な言葉じゃ言い表せない感情に
どうにかこうにか蓋をする
それが人生なのか
195soft ◆soft/e/9Do :2008/12/26(金) 16:22:41 ID:ReHAZUGI
『青紫』
青紫は夕焼けの終わり 悲しい朝焼けの始まり

お前は遠くの方で、とても遠くの方で
豆粒のように小さく、黒のPコートとコーデュロイの茶色のズボンは
何だか見分けつかなくて
背景の雪を被った山々はお前を飲み込もうとしているよう

地蔵が群をなして、赤い布切れ、首に下げ
二、三の地蔵は頭をなくし、四、五の地蔵はカタワで
頭のある奴らはみな、血の涙を流す

俺は鉄柵に引っかかり、身動きすれば切り傷できる
兵隊さんがやってきて、重機関銃をセッティングして
おいおい、ラッパでも吹いてくれよと俺は懇願する

お前はいまだ、遠くの方で、とても遠くの方で
何かを叫んで、必死に叫んで
だけど俺の耳には重機関銃の凄まじい音しか届かない
春はあの山々の向こうにあるのに、俺は行く事ができない

青紫はボロアパートのガスコンロの火 踏み潰されたスミレの花の色
196soft ◆soft/e/9Do :2008/12/26(金) 17:09:34 ID:ReHAZUGI
『ハロー・イエロー・ブリック・ロード』
いいかい? 僕はこんな田舎を出てやるんだ
痩せた田畑をコンクリートで押し潰して
都会ごっこなんてやったって無駄さ
今のこの国を考えてみろよ
ミサイルでも飛んできて一度更地に直した方がマシさ

ハロー・イエロー・ブリック・ロード
どこまで行っても何も見つからないって?
そんな事誰も知りやしない
見つかるまで進むべきさ
人間の足は何のためにあるんだい
だってそうだろ、見知らぬ何かはこの黄色い舗道の向こうにある

君かい? 僕をあんな田舎に留めようとするのは
銀色の戦闘機が小鳥の声を押し潰して
林、川、山、あってないようなものさ
君の住む周りを見渡してみろよ
僕は旅立つんだ、そしたらこの田舎も愛せるかもね

ハロー・イエロー・ブリック・ロード
どこまで行っても何も見つからないって?
そんな事誰も知りやしない
見つかるまで進むべきさ
人間の足は何のためにあるんだい
だってそうだろ、見知らぬ何かはこの黄色い舗道の向こうにある
197soft ◆soft/e/9Do :2008/12/28(日) 20:20:46 ID:8r7Oggxf
『カラス』
 病院の個室に移された俺の爺さんは何かを、直截的に言うなら具体的な死をだが、それ
以上に他の様々な事を悟ったように見えるのである。季節は晩春で、爺さんは以前より陽
気になった。見舞いに来る人、来る人をくしゃくしゃに顔を歪めたした笑顔でもってして迎え
大騒ぎして笑い話をしたりする。客人は「気はしっかり持っておられる。立派なものだ」と私や
母にそっと小さく笑って言うのであった。そうではない、空元気を通り越して狂い始めた、と俺
は思う。意識的に狂い始めたのだ。それこそが悟りきった結論であったかのように思えてなら
なかった。
 爺さんは肝臓がんになり、胆のうがイカれたらしく、皮膚が黄土色に変わっていった。テレビ
では台湾のニュースがやっていた。「台湾はなあ、昔は日本の物だったんだぞ」と画面を見な
がらしみじみといった風に言う。爺さんは戦時中、徴兵され内地で訓練している間に終戦を
迎えた。「戦争に行きたかったさ。鉄砲撃ちたかったからなあ」と呟き、「今の若い者はたるん
どる。また戦争をやりゃいいんだ」と言った。時代錯誤も甚だしい、今もし日本国が戦争にな
ってもよく訓練された自衛隊がやる。赤紙で一般人をいきなり招集したってハイテク戦争では
役に立たないはずだ。しかし、戦争をやればいい、と言うこの老人に俺は少なからず驚きを感
じた。「なに、実際に戦地に行った事がないから、ああいう風に言えるのよ」と母は私に言った。
 爺さんはしぶとく生きながらえ、夏を目撃した。黄土色の肌に夏を、小窓から漏れる強い日
差しでもってして感じたはずだ。死に際の老人の病室は快適な温度にエアコンが設定され絶
えず涼しい風をそよそよと送っている。爺さんは相変わらず笑う。しかしそれはもう笑いとは言え
ない物になっていた。口元が微かに緩んで、ああ、笑っているんだなと見慣れた俺たちはわかる
のだが他所の人にはわからぬのではないか。
198soft ◆soft/e/9Do :2008/12/28(日) 20:21:29 ID:8r7Oggxf
 夏、早朝に激しい驟雨があり、風もあり、斜めに叩きつけられた、自宅の自室の窓を殴るよ
うな雨音に俺は目覚めた。驟雨は止んだ。無駄な早起きをしたものだ、と階下に降り、インス
タントコーヒーを入れ、明るくなっているカーテンをばっと広げた。俺の自宅の前には田圃が広が
っている。カラスが一羽、飛んでいた。田圃の稲はよく育ち、来る収穫の時のために縦横に等
間隔に網目のように糸が張り巡らされていた。カラスは何を思ったか、その田圃の中に急降下
して突っ込んだ。俺はそれを目撃した。田圃の中に何かめぼしい物でもあったのか何なのか、
とにかくカラスは強引に田圃の青々とした稲の波に沈んだ。さあ、出ようとするのが大変である。
飛び立とうとしても糸が絡まり羽ばたけない。うねうねと蛇行しながら田圃の中を進む。カラスの
進んだ跡は稲が踏み倒され、その道程がわかる。カラスはさかんに鳴いていた。すると周囲の
カラスがわらわらと集まってきた。十羽、二十羽、えい、もう何十羽いるかわからぬ。カアカアカ
アカアと物凄い騒ぎになった。助けを求めたのであろうか。何羽かが時折、田圃の稲をすれす
れに低空飛行して助けに行ったのかに見えたが、どうにもできようはずはない。やがて稲の波に
沈んだカラスは田圃の中央にまで進み、そこから動かなくなった。稲の波に沈んだままだ。他の
大勢のカラスたちはそれから三十分ほどあちこちを飛び回り、鳴き騒ぎしていたが、とうとう一羽、
また一羽と何処かへ飛び去っていくのだった。その顔つきは勝手な俺の見方だが悲しく見えた。
ついに脱出できなかったか、とその珍しいカラスたちの騒動を見物しおえたその瞬間、電話が鳴
った。病院に泊り込んでいる母からだった。俺の爺さんは今さっき死んだそうだ。
199soft ◆soft/e/9Do :2008/12/30(火) 02:42:54 ID:rNSGU8FJ
『お金は大事だ』
学生時代の話である
競馬に負け、電気炬燵の使いすぎで電気代がかさみ
NHKの集金人に「うちはNHK見ねえから」と思いっきりお昼のNHKニュースがバックに流れているのに言い放ち
そして二ヶ月に一回の水道代料金請求がその月に運悪く来て
アルバイトなんてめんどくさいから日雇いをたまにやるくらいで、その月は一度もやっておらず
ついに金が底を尽きかけた

日曜、競馬に賭けたのである
自信があった
外れた
無一文
ああ、無一文
競馬友達が哀れに思ったか、「千円貸してやるよ」と言って千円くれた
あと三日、日曜の夜、月曜、火曜、水曜の朝に仕送りが来る
しかしその千円でまず煙草を買い、残金七百円、さらにやっていられねえと発泡酒を二つほど買い
残金四百円
あっという間である
その日は軽い酔いに任せて寝てしまった

四百円であと二日、空腹を堪えるために煙草を馬鹿みたいに吸った
すぐなくなった
仕様がないと、ゴールデンバット一つ、百数十円
太宰め、よくこんな煙草吸えたものだと渋面作って将来を案じた

どうやら俺には浪費癖があるらしい
最後の一日、金は五十円と一円玉が六個、ゴールデンバット七本
何ということだ

みなみなさま、お金は大事である
いざという時のために貯金はするものである
ぜいたくは敵だ! その通りだ、恐れ入る
欲しがりません、競馬で勝つまでは
ん? ちょっとおかしいか? いやいや

さてその最後の日は結局梅干を食って水道水を飲みゴールデンバットを吸い尽くして過した
みじめさ、ここに極まれり、貧乏金なし、暇はあるからなおいけない、腹が減っていけない
空腹で寝付けず朝九時を待った
実家に電話する、「今すぐ仕送りを入れてくれ」「どうしたねえ」「死にそうなんだ」「はあ?」「いいから早く入金してください」
その足で駅近くの銀行へ、食ってないから力が出ず、歩いていくのに骨が折れた
通帳記載して五万円也、ああ助かったとその足で松屋へGO! 牛丼大盛り、ビール中瓶アサヒスーパードライ
生き返った心地であった

繰り返す、お金は大事である
餓死しそこなった人間がここに、日本国にちゃんとおる
そんな悪徳詩もどきである
200名前はいらない:2009/02/05(木) 03:12:04 ID:9s8ruHQ2
200
201名前はいらない:2009/05/10(日) 21:08:00 ID:NgiRHNI4
ある意味、伝説の男のスレをあgる
202しん ◆s6nhzTeSbw :2009/05/10(日) 21:11:41 ID:qlw7vbNw
ある意味っとどんな意味よ?
203名前はいらない:2009/08/06(木) 09:27:03 ID:UJqmeW2/
定期あげ
204名前はいらない:2009/10/10(土) 19:14:43 ID:3KwSV5bs
天才は死ぬ
才能m死ぬ
205soft ◆soft/e/9Do :2009/10/21(水) 03:55:49 ID:psWqUYi/
『K.Nakagamiへ』
昼間なのに
お天道様はこんなに
まさしく平等に世界を照らしているのに
この界隈は
人影もなく

砂利道を進む
足元からジャリジャリと
ふと見た長屋めいた平屋建ての家の窓に
目玉があって
ギョッとしたのは向こうの方だったらしい

自由って何だろうって僕は思う
何をしても自由なら 何もしなくても自由なんだ
変わる事を望むのも 変わらぬ事を望むのも

この国はおかしいんだ
政治学の観点から見なくたって
絶対おかしいんだ
大都会を除いて 何処の地方都市も
駅前から離れて郊外になったら同じような景色が
延々と続く
一体ここは何県だろうという気になる

今もってして 土着的な神話を構築する事は可能なのか
路地に生まれ 路地を見続け 路地を書き続けた小説家は
もう死んで十五年になるか

均一でよくできた最も成功したシャカイ主義国ニッポンの
夜更けは殊に物寂しい
206名前はいらない:2009/11/22(日) 18:12:23 ID:pGfWdTLg
ようこそ 詩の墓場へ
207名前はいらない:2009/11/22(日) 18:25:59 ID:lltRnoLJ
桃色ゾンビで結構、
208 ◆YAPoo/LC/g :2009/11/24(火) 22:19:45 ID:2yhqKlBD
「抱擁」

あなたはグスタフ
あなたはとグスタフ

きおくのグスタフ
かんじない

よじりねじりからみつよく
ねばりはりつくとけてゆく
きざむきざしはじめもなく
きんばくはがれはがれがれ

かんじないよ
よじってはねじりはりつく
きんぱくはがれはがれがれ

きざむきざしうすらぐらい

グスタフグスタフかれたほうよう
209 ◆YAPoo/LC/g :2009/11/24(火) 22:52:37 ID:2yhqKlBD
天に突き刺せ

我がチンポ

お天道様が御見えになってる

オナニーは二回くらいが丁度よい
210soft ◆soft/e/9Do :2009/11/29(日) 01:03:20 ID:YphW5eNa
『ゾンビ』
――まだ黒かったマイケルジャクソン踊るスリラー
――特大のスクリーンにて上映、上映
――満員御礼、永久リピート

死という現象がある
しばしば宗教上、それは救いになる
キリスト教、仏教、とまあだいたいの宗教だ
メメントモリなんてのがまあ典型というか何というか
それを取り入れた西洋の墓に刻まれるあれは
驚嘆の限りである

死を救いとして捉える
それは宗教に疑問が向けられるようになった後も
恐らくは変わっていない
ゴール地点のないマラソンなんて嫌になる
いや、嫌になるなんて言葉では甘いだろう
恐らくは私だったら絶望する

だからゾンビは恐れられたのだ
リビングデッドという物言いもするか
生き返る、それは聖人がやってりゃいいわけで
我らが我ら、次々に生き返ってはいけないのだ
人間の遺伝子レベルに刷り込まれた恐怖が、在る

死に、肉は朽ち果て、腐臭を放ち、身体という物質は
母なる地球へと還らなければならない
そうあって欲しい
そうではなくては困る

人はいつも終わりを求めている
始まりに期待を寄せ、その向こうに花道という名の終わりを夢想する

全人類の脳内にプラグインされたコードは送り続ける
終わりなきゾンビの踊りを
リピート、リピート、無限リピート

――まだ黒かったマイケルジャクソン踊るスリラー
――特大のスクリーンにて上映、上映
――満員御礼、永久リピート
211soft ◆soft/e/9Do :2009/12/07(月) 00:03:52 ID:Sj/lE+UK
『美しきかな、場面、腕』
衝動、衝動を抑えたい
ナイフがすっと腕を通過して
繊維の向こうに僕の骨を見た

ジッポライターを胸ポケットから出して
血が源泉からあふれ出すような利き腕の方の拳で
握り締めると血がぴゅっと吹き上がって
ニグロの顔にひっかかって
僕が殴ると、殴ると、殴ると
腕の神経はまだ麻痺したまんまで
ぽきんと折れてしまって
僕は

腕なしのカタワになってしまったんだけど
先端の硬い革靴でニグロの口目掛けて
蹴り上げてやると、ニグロも負けじと
口から血をだらだら出して
だらだら、だらだら
気持ち悪い
革靴に歯が何本も突き刺さっていて
弁償してもらいたいんだが、その前に
もっと蹴りたくなって
もっと、もっと、もっと
ニグロの口元をずっと蹴っていたら
鼻が豚みたいになっちゃって
マッカッカでぶっ潰れて肉が削げ落ちていて
何だか段々美しくなってきたなって僕は思ってしまったんだよな

折れちゃって、白かったり赤かったり、何か肉の筋なのか神経組織なのか
よく知らん、そういうブラブラしている僕の折れちゃった利き腕が妙に哀しげな
唄を歌いだすもんだから、ジッポライターを拾いなおして火をつけてやったら
思いのほかよく燃えて、ああ暖かいな、肩までレッドオブジェと化して
僕は柱時計の真似でもしよう
チクタクチクタク

ああ、日付がそろそろ変わるよ
わかるんだ
212soft ◆soft/e/9Do :2010/03/01(月) 02:08:39 ID:ALM8WSJR
わたしは歳をとる
たいていの人々は私を慰める
まだ若いじゃないか
そんな言葉は耳が腐るほど聞いた

夢を見ていいのは中学生までだ
とわたしに言ったのは国立大の教育学部に進学して
高校の古文の先生になった醜男である
醜男曰く、夢は高校生にでもなったら具体的な目標に置き換えるべきだ、だそうだ

わたしは自ら勝手に思う賤業に従事しサラリーを受けながら
獏とした夢をまだ見ているのだろう
未だに私は白昼夢でもなく、少しでも暇ができれば自らの夢を見る

わたしは作家になりたかった

いつまでそんなことを言っていられるか
そこの君、賭けをしないか
あいにくわたしは賭けには自信がある
毎週行っている競馬では過去に380倍を当てた男だ

わたしは思うのだ
夢は見ることをやめなけれ永久に見続けることができるであろう、と
そうじゃないか?
臨終の床にいて、まだ夢を見つめ続けて死んだ老人に
わたしはきっとなるのだろう
213名前はいらない:2010/03/04(木) 17:26:43 ID:gXHqKYC4
あげ
214名前はいらない
間違えた