1 :
名無しオンライン:
2 :
名無しオンライン:2010/08/04(水) 15:22:21 ID:ocw+mCbS
>>1乙。
保管庫からの誘導は修正済みです。
3 :
名無しオンライン:2010/08/04(水) 15:54:19 ID:G12P8p2s
1乙
60日ルールで確実に落ちる鯖になった模様
即死判定の状況は継続か?
4 :
名無しオンライン:2010/08/04(水) 20:54:50 ID:oCwPFzDI
>>1 超、乙。
しかし、60日ルールで確実に落ちるってのはのんびりやってるこのスレにとって痛いな・・・
>>3 >即死判定の状況は継続か?
どうだろうな。以前は30レスくらいだっけか?
少なくともそれまでは油断しない方がいいのは当然として、
しばらくの間は注意して保守しておいた方がいいやもしれん。
ところで、どなたか前スレ218以降、スレ死亡までのカキコ保管願えないか?
昨日の昼、携帯からスレ覗いたとき
「うひょ〜、戦乙女新作ktkr!だが、携帯だと読みにくい。帰ってからゆっくり楽しんでやるぜ!!!!」
って考え、帰った来た結果このザマだよ・・・orz
5 :
名無しオンライン:2010/08/04(水) 23:39:23 ID:G12P8p2s
219 名前: 継承 VI 未来へと続く空(中編) 1 [sage] 投稿日: 2010/08/03(火) 03:33:35 ID:/lfwkUuN
モタブの預言書という本がある。テクニック、そしてその礎となったマジックの秘密が書いてあるといわれる本だ。
噂と違い、そこにはマジックそのものの解説は書いていない。書いてあるのは歴史のみ。
しかし、その歴史は本が編纂された時期よりも未来のことまで書いてある、開くたびに違うことが書いてあるという奇妙な書物。
「預言書か…私も、これで練習したわね」
人は今という時間を過ごすときに、常に無限の選択肢からひとつを選び出す。ただ歩くだけでも、どこに足を踏み出すか、どのタイミング、
どんな力の入れ方をするか、場合によっては立ち止まって何もしないなど選択肢は無限にある。
ほとんどはその後すぐに収束するが、それぞれにほんのわずかに違う未来が作られる。
『歩く』に対して『何もしない』など、ある選び方をして未来の方向が決定的に変わったとき、そこが歴史の枝となる…
なんともなしに本を開けば、ランダムに選んだ事実から未来が決定され、毎回書かれていることが違うが、意志をもって開けばある程度決められる。人が道を選ぶ時代ゆえの預言書である。
これがすなわちマジックの本質。ある意味で、この預言書にその秘密が書いてあるというのも間違いではないだろう。
「あなたと同じように練習させればいいと思ったのですが、アルバムの写真ばかりに気をとられて手にも取りませんでしたからね、あの子は。そのために余計な苦労を背負わせてしまいました」
「さしのべられた手を払いのけて辛い道のりを選んだのだから、そうさせればいいわ。やり方は一つではないでしょう」
亜麻色の髪の女が本を開くと、そこには魚の息、猫の足音、鳥の唾が存在する歴史が書かれていた。それらはかつてある究極の封印術を創る代償に、この宇宙から消滅したものだった。
「本当に変わりましたね、あなたは。優しいだけの娘ではなくなった」
「優しさは時に残酷よ。子供はいつか大人にならなくてはいけないもの」
彼女はありとあらゆる動物の皮となる可能性のある革装丁の本を閉じた。すると本は最初からなかったかのように消え失せた。
「ルツ、あなたは自分の両親のことを覚えている?」
「もちろんですとも」
「私もよ」
6 :
名無しオンライン:2010/08/04(水) 23:40:15 ID:G12P8p2s
220 名前: 継承 VI 未来へと続く空(中編) 2 [sage] 投稿日: 2010/08/03(火) 03:37:38 ID:/lfwkUuN
「SEEDが人の裏の姿だというのは聞いたな?お前だけでなく人間というのは誰もが少なからず都合の悪い事実から目をそらす。これ自体は心を病まないための防衛本能といえるだろう」
「だから人がSEEDを生み出すと…人と闇とは切り離すことはできないと?」
「そうだ。だがその歪みは積もりに積もって、古代文明さえ滅ぼした!現実を受け入れて問題に対処する、たったそれだけのことができないばかりにな!
それだけではない、フォトン利用をあきらめたヒューマン、真実を隠蔽されたまま500年続いた戦争。やっと訪れた平和の中でさえ、キャスト至上主義、狂信的なグラール教団、無法そのものなビーストの社会…
何一つ反省していない。SEEDの出現は必然ではないか。あまつさえその対処方法が劣化した封印などとは」
「イルミナスという組織、掲げているにしては不自然なヒューマン原理主義…『光』はヒューマンに発現しやすいから、必要になる状況にまで追い込んで、できたものだけ生き残らせると?」
「いかにも!このハウザーがただの傷の嘗めあいの組織でしかなかったイルミナスを乗っ取り目指したのは、人が自ら現実を認め、自分の力で立ち向かうのが当然の社会を作ることよ!
言ったはずだな、SEEDは受け入れるべきなのだと!このハウザーのようにSEEDを御することはできるということだ!それさえできれば、旧文明も滅ばずにすんだのだ!」
「だからこそ私はハウザー様に身も心も捧げたのさ。もっとも、私には不完全にしかできなかったし、実験に使ったマガシは『支配を受けない』というだけの幼稚な自我になってしまったけれど」
「そのために何千人も犠牲を出して…過ちの歴史は繰り返される、ですか。正しいと信じて神を作ろうとした人たちがいましたが、それとそっくりですね」
「誰が正しいなどと言ったか。淘汰は必要だが、それは必要であって善ではない。それを悪と呼ぶのなら、イルミナスは喜んで悪であろう!そこに一片の悔いもありはしない!」
「そうとも、ガーディアンズが私たちを殺して人類の本当に求めるべき未来を壊したのはただの歴史の選択で、間違いじゃないのさ。私たちも何も間違っちゃいないけどね、ハハハ!」
カール・フリードリヒ・ハウザーとヘルガ・ノイマン。彼らの弁を最後に、グラールの歴史は見終わりました。
「いいか、逃げようなどと考えるなよ。お前はまさに、イーサン・ウェーバーやヒューガ・ライトが失敗し、このハウザーが求めた一つの理想を体現できる領域に踏み込もうとしているのだからな!」
「わかりましたから自己主張はここまでにしてください。あなたに言われるまでもないことです」
7 :
名無しオンライン:2010/08/04(水) 23:41:22 ID:G12P8p2s
221 名前: 継承 VI 未来へと続く空(中編) 3 [sage] 投稿日: 2010/08/03(火) 03:38:47 ID:/lfwkUuN
何もない空間の中で、わたくしは今まで得てきたことを刻みつけていました。
「何をしているのですかなァ…闇にとらわれた貴女がァ…ふほほほほ」
「…翼を描いています。わたくしの翼を」
「翼ですとォ。まだ数枚羽を描いただけですなァ」
「ええ、でも数枚描けました」
「無駄なことをなさるゥ」
「あなたもこれの一部になるんですよ」
目でとらえた瞬間に、その闇の存在は一つの情報に変換されて、わたくしに『食べられ』、わたくしの思い描くものの一部になりました。
パシリが何かを食べて能力を上げる際に何が起きているのか、今まで疑問に思わなかったそれを研究しての応用です。
今やわたくしは物質に限らず概念やその記録を摂取して自らのものにするということを覚えていました。
しかし、600年以上あるグラールの歴史でさえ、ほんの数枚にしかなりません。自分の『光』たる翼のことをまるで理解していなかったわたくしは、
ゆっくりとしかそれを描き出していくことはできませんでした。でも、それはとても充実してやりがいがあることでした。
次は、リュクロスから垣間見えた平行世界。ラグオルにまつわった歴史。
「モンタギュー博士、おひさしぶりです」
「やあ、無限エネルギー制御の補助プログラムは役に立ってるかい」
「…いいえ、残念ながら」
「即興だったからねえ。いいさ、不完全なのは僕自身が一番よくわかってるよ、ウフフ…で、どうして僕を呼んだんだい。まさかこいつを改良してほしいのかい」
「違います。改良するのはわたくしです」
「そうか。その様子だと、もうわかっているようだねえ。僕はもう新しいものを作ることはできない。歴史の中の僕は、そこまでの存在にすぎない。もう終わった人生なんだから」
「ええ、ですから…すみません。あなたをください」
「謝ることじゃないだろう。僕の生きた記録を君が取り込むことで、僕は君の中で生き続ける。なあ、人はなんで生きるんだと思う?
僕はね、何かを残すために生きるんだろうと思っているんだよ。遺伝子しかり、技術しかり…僕に子供はいないから、それで何かを残していけるのなら、喜んで君に僕をあげるよ」
「ありがとうございます」
「僕にとってはかけがえのないものだ。あせらずゆっくり味わってくれよ。ウフフ…オラキオの剣よりも情報量は多いからね。無理して一気に食べるとまた調子を崩すよ」
8 :
名無しオンライン:2010/08/04(水) 23:42:55 ID:G12P8p2s
222 名前: 継承 VI 未来へと続く空(中編) 4 [sage] 投稿日: 2010/08/03(火) 03:40:18 ID:/lfwkUuN
人に、ものごとに触れるたびに、得たものが自分の中のプログラムを書き換えて、可能になることがどんどん増えていくのがわかります。
もっと知りたい。もっとできるようになりたい。学ぶことがこんなに楽しいことだっただなんて。
気づけば、わたくしは自ら進んで記録に向かい、解析に没頭していました。
遠く遠く、さらに遠く遠くへ。
止まった時間の中で、もうどれだけ体感時間が経過したかなんて、わからなくなっていました。
無限の時間の中で悠久の時の彼方までを食べ尽くし、これが最後。立ち向かうべきものを乗り越え、この空間から出るためにひたすら学習に徹してきました。
目を服の袖でごしごしこすって、大きく息を吸い込んで自分を落ち着けてから、わたくしは意識を宙に解き放ちました。
どこにでもあるけれど普段は見えない、薄壁一枚を隔てただけのように、ちょっとしたことで堕ちてしまう深淵。この宇宙が生まれた頃からの、すべての人の、幾度も繰り返されてきた業の領域へ。
黒の巨人が力としていたもの、恐怖を固めてできたような、ダークファルスよりもさらに危険さを感じる名状しがたい絶対の真理に、かつて見た『深遠なる闇』に、もう一度わたくしは対峙しました。
頭の中でアラートが鳴り響きます。パシリをそのように造っているシステムによる警告は止めようがありませんが、わたくしにとっての本能といえるそれを押さえ込み、その禁断の世界に飛び込みました。
それはありとあらゆる偶発的事象、ありとあらゆる不条理を放り込んだ混沌そのものでした。
増殖することだけを目的とした不確定なままの重力やエネルギーがわたくしを痛めつけ、あっという間に巻き込まれた体が破壊されていきます。
とても処理し切れるものではありません。ですから、わたくしがそれを取り込むのではなく、わたくしもその一部であると考え、溶け込もうとしました。
(そうだ受け入れろ!それが生き物のサガだ!)
すると今度はそこにさらされた人たちの意識の濁流が襲ってきました。
痛い辛い苦しい悔しい憎い悲しい嫌だ嫌だ嫌だ…
エゴ、エゴ、エゴ、エゴ、エゴ。
なんと醜いのでしょう。一歩踏み外せばそれ自体を嫌い、鏡写しのように自分も飲み込まれそうです。これではラシーク王やリコさんがそうなるのも無理はないでしょう。
しかし、わたくしは一度そうなって、主に助かる方法を実践されています。流されず踏みとどまり、少しずつですが動き始めました。
狂った野獣のように暴れ回る『闇』の手綱を必死で握り、闇の淵の深く、深くへ。そこにある何かを求めて、深く…
今度はその意識はわたくしに向けられ、明確な悪意となってわたくしを責めさいなみました。苦しくて、思わず目を閉じて耳をふさいでしまいました。
(目の前のもの、今という時間だけにとらわれてはだめよ)
主を死なせたことの記憶が何度も何度もフラッシュバックし、そのたびに胸の中からわき上がるやり場のない憤りが身を焦がし、悪鬼のように顔が歪みます。
どこからか今まで出会った人たちの声が聞こえて、かろうじて理性を保ちました。
(お前の重ねた努力は無駄ではない。思い出せ、巨大な樹を)
わたくしは歴史の記録の中で数え切れない生と死を見てきました。そして避けえぬ運命としてそれに向き合った人たちの哲学も…
だから。
わたくしは。
「もう、逃げません!!」
つぶっていた目を見開いて、何かをつかもうとするように手を伸ばしたそのとき。
荒れ狂う嵐の中心に入ったかのように、負の感情が急に止まったかと思うと、肌触りの良い黄金の衣のようになり、
時空間の乱れと重力に打ちのめされてぼろぼろになったわたくしを抱きとめ、最深部へと下ろしてくれました。
そこにあったのは、砂漠の砂の一粒よりも小さく縮こまった、もうひとつの宇宙でした。
9 :
名無しオンライン:2010/08/04(水) 23:44:19 ID:G12P8p2s
223 名前: 継承 VI 未来へと続く空(中編) 5 [sage] 投稿日: 2010/08/03(火) 03:41:11 ID:/lfwkUuN
それはとてもちっぽけですが、畏怖すら感じるほどの存在感でその場にありました。
手に取ろうとすると、それはすっとわたくしの体におさまり、今まで感じたことのなかった、脈打つ感覚を放ち始めました。
見えました、可能性。見えました、確固たる自分。
絶望の中で輝く希望と、それを作り出してきた意志。暗くて、醜くて、歪んでいて、それでも美しく輝いている、人という存在。
広がり続ける無限大の力、『深遠なる闇』。それに向きを与え、形にする『大いなる光』。それぞれにつながりを持つものだけが、そうなることができるのです。
この宇宙を支配する気まぐれな法則の中を流されず踏みとどまり、何度失敗しても挑んで理解したものが得る、知恵と勇気の力。
それがわたくしの光の翼や、伝説のハンターズたちが使っていた黄金のフォトンの持つ意味。
だから、翼。わたくしの『光』は。飛翔する主を見て憧れた、わたくし自身の可能性。
「立ち直ったな。さあ、飛び立つがいい」
「この宇宙の創生の時から、空を飛びたいと願った者が何人いたと思う?飛行機が作られてからも、人は自らの力で翔ぶことを夢見たほどなのだ」
洞窟に鳥を描き、空に憧れた人。
空を飛ぶ道具を思い描いた芸術家。
短い時間の飛行を可能にする簡単な機械を開発した兄弟。
まだ見ぬ宇宙へと飛ぶために、ロケットエンジンでの宇宙船を作ったチーム。
そんな時代においても、自分の体力任せに簡単な道具で滑空を試みた人たち。
さまざまな人が飛ぶことを夢見ていました。
それはとてもささやかな願い。でも、小さな願いは幾万幾億となって絡み合い、『人は空を飛べない』という世界の摂理を覆す力となったのです。
224 名前: 継承 VI 未来へと続く空(中編) 6 [sage] 投稿日: 2010/08/03(火) 03:42:02 ID:/lfwkUuN
わたくしの翼は、わたくしだけのものではない希望でできている。
そう理解した瞬間、どこからか舞い落ちた、砕けたガラスのような光の欠片たちが集まり、一つ一つが翼となってわたくしのちっぽけな翼に結合しました。
大きな翼、小さな翼。夢を叶える力を持つ人の翼は、力強い風切り羽根として。力及ばない人の翼は柔らかな羽毛として。
見る間に翼は巨大でありながら重さを感じないものに変貌しました。巨人の剣を受け止めたときよりも、さらに大きく、力強く。
翼のひとつひとつが羽根となって構成され、先端がまったく見えない、長く巨大な、白銀の光でできた異形の翼。それは、周辺のエネルギーの方向を、混沌が支配する確率を操作し、自在に変える力。
黒の巨人と戦っていたときに光の翼を手にして、なんとなくこうすればこうなるという程度で使っていましたが、無限に時間を使った地道な分析からやっと見つけ出したこれが本来の使い方なのでした。
翼を動かそうと思う前から、すでに体は浮いていました。
「そうよ、あなたは飛べる」
羽ばたくまでもないと、そう言っているかのように。
「飛べ、無限の長さ持つ光の翼で。運命は君のものだ!」
重力の方向を逆にしてやるだけ。光の速度でさえ出ることのできない強大な重力の空間から抜け出すことなど、たやすいことでした。
動く、動きます!わたくしの思うがままに、軽やかに!
ただ飛んだだけなのに、今までとは比較にならないほどの開放感に高揚しながら、そのまま空間をねじ曲げて途中を飛ばし、第9の天をさらに越えたその場所、神の御座へ。
止まっていた時間が、動き始めました。
-続く-
以上が前スレ最後です
ホモ.・ウォラント という言葉を贈りたい
ふぉぉぉぉGJ!!!!!
良かった・・・楽しめそうだぜ・・・ふぅ
スレが落ちてたという事に昨日気付いたという。
何だか使い辛くなりますねぇ…
暇な内にぽいぽいっと投下。PMの出番が少ないのは仕様です…
≪火力支援要請! 座標、B3-AY-17!≫
≪37中隊からコマンダーへ、B4ブルーメ周辺に多数の大型SEEDフォーム≫
≪コマンダー了解。別命あるまで待機、監視せよ≫
≪砲兵中隊了解。火力支援範囲内の部隊はすみやかに退避せよ≫
≪こちらはガーディアンズです! ブロック5にて新たに多数のSEEDフォームを発見、応援頼みます!≫
≪座標、B3-AY-17、斉射開始! 斉射開始!≫
≪我がCSU B-02はSEEDフォームと交戦、これを浄化しつつあり≫
≪砲撃来るぞ、退避しろ! 退避! ≫ ≪民間人への被害は!?≫
≪まだ確認できておりません!≫
≪ヴォルフ3、故障しました! 回収班の派遣頼みます!≫
≪馬鹿、グリナ・ビートなんか持っていけるか! 爆破処分しろ!≫
≪コマンダー了解、12旅へ連絡。『ブロック5まで進出せよ』≫
≪12旅了解!≫ ≪前線司令部へ。試験開発団、到着しました≫
「スゲェなこりゃ」
ゴーグルで惨状を覗きながら、隊員の一人がつぶやく。
「ひどいとは聞いていたが、まさかこれ程とはな…」
「まるで戦争みたいだな」
「お、少佐が戻ってきた」
「各班整列!」
ラリーが試験開発団の面々の前に立つ。
「前線司令部より通達、『貴隊ハ本浄化作戦ニ参加、他ノ部隊ト密接ニ連携シテコレニ当タレ』だそうだ。
私は4班とコマンダーに搭乗、そこから指揮を執る」
「了解しました」
「星霊の導きがあらんことを願っている。各班は作戦通り行動せよ」
「フィオナ、大丈夫? 調子が悪そうだけど」
「いえ…問題ありませんわ」
「ハラルト、フィオナは初陣で緊張してるんだ。お前がしっかり守れよ」
「わ、わかりました」
「5班、聞け! 今までの原生生物の駆除とは違う。訓練通りやれ」
「了解!」
今までの状況報告を聞いたモニカが思わず顔をしかめる。
「凄まじい惨状ですね…」
「これでも昨日よりは治まった方だ」
「全ブロックの浄化完了時刻は、翌1450と予想されます」
「丸一日か…どの演習よりもキツいや」
「ぼやくなよ、オルベルト。連絡が無いかしっかり見張っていろ」
「申し訳ありません、少佐」
「…あ、1班より入電です。『ブルーメに到達。浄化作業を開始せり』」
「返信、『予定通り作業を開始せよ』」
「了解、予定通り作業を開始せよ」
「…所で少佐」
「どうした、中尉?」
モニカが小さい声で続ける。
「例の…PMの改造実験の予定日は…」
「明後日に決まったそうだ」
「やはり…止められませんでしたか」
「残念だが、上は考えを改める気は無いらしい…」
「私に大した権限が無くてすまない」
「いえ…自分にもどうしようも…」
「フィオナ…本当に大丈夫?」
「き、気にする事はなくてよ、ハラルト」
「でも…」
その時、すぐ側でひそひそ話をする声が聞こえる。
「おいおい本当かアイツは…」
いや…わざと聞こえる様に言ってるのかもしれない。
「マシナリー相手によろしくやってるとは、劣等種の考える事は理解できんな」
(これは明らかに罵倒してるんだ…こいつらっ!)
「お止めください、ハラルト」
直接言ってやろうとハラルトが立ち上がろうとしたが、フィオナが制止する。
「CSUの奴らか…エリートのお坊っちゃま育ちだ、気にするな」
「班長…すみません」
「謝る事は無い。キャストの中で育った奴は、生身の人間を理解できんのさ」
「班長、ラリー少佐から伝言です。『姉妹達は作戦終了後に出頭せよ』だそうです」
「分かった、伝えておく」
「5班! 浄化作業もあと少しだ。抜かるなよ」
今回はこれで終了。
冒頭の通信の表現は携帯からだと著しく見づらいかもしれませんね…
ついでに用語解説的なものもここに書いておきます。まとめのおまけtxtにでもコピってください。
─コマンダー
同盟軍の戦車、『ストライカー』の指揮車型で、指揮官が前線で指揮を執る際に搭乗します。
砲塔がなく、代わりにアンテナが付いてるのが主な外見上の差異です。
>>10(前スレ224)
戦乙女新作GJ!
ハウザーとヘルガのくだりが良かった。今までは極悪人だと思ってたが、
こういう解釈だと完全に憎めない。不思議。
完全復活した戦乙女、いよいよ最終局面ですな。
>>17 投稿乙です。
本編、過去編ともにキーとなるPM改造実験がそろそろ開始のようですね。
どんな実験なのか、楽しみなような見たくないような・・・
ところで、
>ヴォルフ3、故障しました!
ヴォルフって原生生物だよ。(Po2で確認済)
それとも、本物のヴォルフじゃなく、次の行のグリナ・ビートの愛称かね?
>>18 その通りここでは原生生物の事ではなく、グリナ・ビートの事を指しています。
コールサインと言うのですが、こういった事柄の解説が不足していましたね、すみません。
>>19 愛機に名前をつけるようなもんですね、わかります。
ゆくぞナタク!
ガンダムゴー!
戦場で果てた、志半ばの勇気に救いを与えるもの。
絶望の中でなおも輝き人を導く、希望の象徴。
本当の主につけられた、戦乙女の名前に込められた願い。
それは、ガーディアンズの理想とする姿でもありました。
わたくしは、荒ぶる戦乙女を自称していたGH432は、戦乙女たりえるのでしょうか。
その答えが今、ここで得られます。
使う武器は、もう決めてありました。
魔神手裏剣、竜殺剣ドリス、スカボロウ・フェア…今ならどのような武器でもこの手で再構築することができるでしょう。ですが。
(ラコニアは進化する金属、それは確かにありながらどこにもない魔金属。人の歴史の歩みにあわせて姿を変える、形を持つ『光』。
それはすなわち知恵と勇気をもって幾多の不可能を可能にしてきた人の誇りでもある)
(はい、これ。ぼくの宝物。勇者様からもらったものを、きみにもあげる)
示してくれたのは、ラシークと戦ってわたくしが折ってしまったなまくらな剣。
原子として存在しないラコニアは、たしかにそこにありました。ラコニアをラコニアたらしめる『勇気』が。
武器はもう、決めてあるのです。
理解をもって臨めば、さらにとても美しく心躍らされる人でした。わたくしの立ち向かう、『女主人』と呼ばれる戦乙女の女王は。
もはや語らうまでもありません。その口から、審判の言葉が紡がれました。
「では、答えなさい。あなたは何を望む?」
「未来を。わたくしと、ガーディアンズの求めたあるべき世界を」
「それをする権利があなたにはあるの?あなたがパルムを滅ぼしたグラールで生まれるはずだった命に対しての責任はどうなるの?」
巨人との戦いでリコさんを闇から引っぱったとき、わたくしは存在が薄れて消滅しそうになりました。主の死ななかった未来へと進ませるのは、それを知らない人たちに対して行おうとしているのと同じ。ですが。
「権利などはありません、これはわたくしの立場から天秤にかけての決断、極論でいえばただ生きたいというだけのエゴです。そこまで責任を背負うことを考えると、何もできなくなってしまいます」
いくつあっても、選べる未来はただ一つなのです。そしてそれぞれが望むことでそれを手にすることができます。そこに善悪は存在しないことをわたくしは学びました。
「…その気になれば死者蘇生もできる主がわたくしの本当の主を甦らせなかったのは、わざわざ平行世界へと切り離したのはこれが理由ですね?それを決めるのは神でなく人の手でなくてはならないと」
「答えを出したか…何かを決める責任、それを背負う覚悟はできたようね。続きを始めましょうか」
「その前に、主、最後の最後にひっかけを仕込んでいるとは意地悪ですよ…わたくしに手加減していたでしょう。
今なら一時的に主に勝つことはできるはずです。でもそれは解決にはならない、そうですよね?勝っては負けてを繰り返し、何度でも立ち上がるヴァナヘイム王女と永遠に戦い続けることになります」
何をやってもまるでかなわなかった、個人としての主にその言葉を出すのには、勇気がいりました。でも、手加減されたままでは超えたことになりませんでしたから。
「だから、主も本気を出してください。アリサ・ランディールや『女主人』といった個人としてではなく、『大いなる光』として相手をしていただきたいのです…
わたくしも、同じ自分の本質で、何にも頼らないわたくし自身の力で挑みます」
全ガーディアンズシステム、シャットダウン。シールドラインも解除。
右手のセイバーも放り捨て、左手の銃は…
今までお世話になりました。ありがとうジリオン、さようなら!
遠吠えのような音を残し、掲げられた紅い光銃は次元の彼方へと飛び去りました。
そして…受け入れた本当の運命に見合った体。右手と両足が破損した、醜く焼け焦げた姿。
「よろしい。あなたの翼を、真の無限力たるフォトンを、見せてもらいましょうか」
わたくしが光の翼を展開すると、主もまた、名前のない月光の剣をどこかわからない場所へとしまいこみ、黄金鷹の翼を見せました。
強力な集中のもと、複雑な詠唱が一瞬で行われ、周囲の確定事項がすべて不確定になった、下手をすると自分が最初からいなかったことになるゆらぎが生まれました。
光の翼が持つ、エネルギーの向きを制御する力。それを宇宙膨張と分子運動にあわせ、無限大のエネルギーを取り出します。人工的な再現ですが、ここまでは『深遠なる闇』と同じ。
あとは、それを確率変動で制御。これが理解に裏付けられたわたくしを凍りつかせることのない真の無限力。グラールでは当たり前のように簡単に利用できている、フォトンです。
これほどまでに難しい、しかしながら可能性を秘めたもの。それは求め彷徨った先ではなく、こんなにも近くにあったのです。
そしてその力を使う先は、今展開されているゆらぎ…虚の時空間。本来ならわずかでも質量があるものは決して到達することのできない場所です。
だから法則をゆがめるほどの質量を生み出せる無限エネルギーが必要になり、そこで自分を壊しながら、目的地たるもう一つの宇宙を見つけておいたのです。
黄金の翼と、わたくしの白い光の翼が互いにぶつかり、絡み合い、そしてあたりを埋め尽くします。それに乗って、わたくしの手にした砂粒よりも小さいもう一つの宇宙が爆発的に増大していきました。
いくつもの分岐が生まれ出てはその中の一つを選び、いくつもの法則が変容し、時代が流れては止まり逆行し、混沌の渦となって、わたくしには存在しなかった過去を埋めるように、
この宇宙が重ねてきた歴史が始まりの時から描き直されていきます。
その広がりゆく先のすべてで、わたくしと主が互いに加速しあっていました。
最高速に達すれば、すぐに主に追いつかれ、さらにその先。無限大のエネルギーを用いて、際限ない加速を続けました。
ほどなくして質量のあるものは耐えられない速度に到達し、わたくしの体は崩壊を始めました。
残された左手がちぎれ飛び、それにもかまわずさらに速度を上げます。
WARNING!!
上下肢駆動制御装置、破損!
原子変換システム、破損!
電子頭脳ユニット、破損!
『光』の力は肉体の強さにあらず。どのみちわたくしの体は意味をなしません。
体を構成するパーツが砕けていくたびにわたくしは身軽になり、さらに加速していきます。
言葉も、視覚も、触覚も、何もかもが意味をなさなくなる、光の速度を超えた領域。そこに身を置く主に追いつくには、わたくしの体も、そこに絡みついたしがらみも重すぎたのです。
わたくしの体が、グラールで過ごした日々が、その事実が消えていきます。
さようなら、みなさん…
名残惜しくはありましたが、すべてをふりきって加速を続けます。
恐怖を克服し、何を捨ててでも目標を追う勇気と信念が、自分が消滅していくのを感じることでわき出る恐れをかき消し、さらなる速度を生み出しました。
主とわたくしは互いを追い抜いては追い抜かされ、主との距離はほぼ不変のまま、ありとあらゆる時代の、全ての星の空で、時間と空間を創造し続けました。
それは空を駆ける流れ星のようであり。
狂える角笛の鳴り響く中で手をつないで輪舞曲を踊る二人のようでもあり。
見方によっては二重の螺旋のようでもありました。
このやりとりの中で、わたくしはある一点に絞って進みました。始まりの時、始まりの場所へ。
マクロからミクロへ。一万分の一秒から一億分の一秒へ。限りなく小さくなっていく時間の間で、無限の数の宇宙を創造し、そしてその一点へと、主とわたくしが完全に並ぶところへと到達しました。
そしてそのとき、かろうじてわたくしであることを保っていた駆体は完全に散華し、わたくしの存在は『光』そのものとなりました。
それはまぎれもなく、人が『魂』と呼ぶものでした。
この世界でわたくしに生きている意味があったというのなら。
その一点。その時間、その空間へ戻ってくるために、ここまできたのでしょう。
「時間が!ない…っ!」
無機質な建物を彩る燃えさかる炎の中を、少女が駆ける。
炎侵食に燃えさかる病院での、逃げ遅れた人の救出。
自分以外に請け負った人はおらず、失敗は許されないが、GH432もどこへ行ったのかわからなくなり、救助は思うようにいかない。
じっとりかいた汗は暑さによるものだけではないだろう。
―そこを右。その瓦礫の下に一人。
「え…何?」
突然の感覚にゴーグルで確認すると、生命反応が確かにある。急いで救出した。
―すぐに引き返して、左奥の通路でGH432と合流。その後ろに一人。
「わかる…なんで?」
はい?主、何か言いました?
「後にして!今は救助よ!」
今のところ、頭に浮かぶ考えはすべて正しい。それがGH432の声で聞こえたような気がして信じてみる気になり、彼女はその導きに従った。
―その先にSEED・マガシ。
「遅い、遅いなァ…すでにプラント方面に侵食は拡大させた後だ!ガーディアンズは炎に沈むパルムを指をくわえて見ているしかできなくなるのだ!貴様はここで死ぬから見ずにすむだろうがな!」
「なんてことを…邪魔よ、どきなさい!あんたなんかにかまってる暇はないの!」
そうですよ!悪は許しませんが、あなたはスルーです!たいした敵ではなさそうですし!
「抜かせ小娘ェェェ!」
ちょこまかと妨害するGH432に気をとられているおかげで、マガシの背後をとりやすかったのはありがたいが、蹴りに大きく吹っ飛ばされ、立ち上がってはGH432ともどもレスタをかけて攻め直す時間が惜しい。
時間をとっている場合ではないというのに!
過ぎていく時間、焦りから思わず放った一閃。それに腹部を大きく切り裂かれたマガシの顔が青ざめた。
「ば、馬鹿な!貴様が、貴様が使えるはずがない!そんな、まさか…!」
強烈な薙ぎ払い。槍技ドゥース・マジャーラの最後の一撃である。もんどりうって倒れたマガシに、全体重を乗せた槍の一撃で頭を破壊してとどめを刺した。
「3段目が、出た…」
ウォーテクターという職は、制限のためフォトンアーツの3段目を出すことはできない、はずだった。いったいこれはどうしたことか。
だが、今は緊急時。SEED・マガシを倒し、間に合ったのだ。今すぐ脱出しなくては。
燃え上がるメディカルセンターの扉を蹴破り、救助した民間人を全員退避させたところで、轟音を立てて建物が崩れ去った。
「はぁ、はぁ、間に合った…」
その場にぺたんと座り込む。息を落ち着かせてから、少女は自分のパートナー、灰で汚れたGH432の頭を撫でた。青みがかった銀髪がすすけた色で汚れてしまっている。あとで洗ってやらなくてはと思った。
「ありがとうね、あなたのおかげよ」
はぁ?わたくし、何もしておりませんが。
「何言ってるの、あなたが教えてくれたから、まるで最初から知っていたみたいに全員の居場所がわかったのよ?」
なんですか、そのオカルト。『ドウギの本当に怖い話』に投稿してみましょうか?
「…それはやめて。声が似てただけなのかな」
奇妙な出来事だが、考えていても仕方がない。本部に報告をしよう。炎侵食は海底プラント方面に拡大、至急浄化を要する…と。
作戦名は…そうだ、『電光石火の浄化指令』とでもしてもらおう。
そのとき…いや、時と言って良いかは誰にもわからないであろう。
すべての時代、すべての宇宙、すべての星の上空に、同時に一筋の流れ星が疾った。
それはどの観測機器にも映ることはなかったが、確かにそれを見た者たちがいたのである。
「おじいちゃん!見て、お星様がきれい」
「さくらは流れ星を見るのは初めてか。………む?」
「…お義父さん?」
「すまん。少しな…己も陰陽師のままということか」
「どうかなさいましたか?まさか、帝都にあやかしでも」
「帝都は一馬があたっている、心配ご無用…これは違うのだ。なぜだろうな、軍属でなかった頃に会った子供を思い出した」
………
「あー、もう、やんなっちゃう!シップは故障するし、杖はなくすし、あいつとははぐれるし、そのうえこの星にはコンピュータもないんだもん!」
「嬢ちゃんの言葉は難しくてわからんぜ。ラグナイト鉱石とフォトンだかの類似性はいい着眼点だと思うんだがな…古代遺跡を調べられりゃ少しは進展しそうなもんだが」
「おじさんの知ってるヴァルキュリア人はもういないんでしょ。扉が開けないんじゃどうしようもないじゃん。これじゃいつまでたってもグラールに帰れないよ…こんなときミカがいてくれたらなあ…」
「レディは親切な紳士じゃあご不満かい。ま、俺が言うのもなんだがガリアは住みやすいところだ。俺も帝国軍とはもう関係ないんでな、なんならしばらく案内して…何だありゃ、流れ星か?」
「なんだろう、あいつと同じ感じがする。追いかけてみるよ!」
「お、おい嬢ちゃん!潜入はもっと慎重に…」
「ここで、消えた…はぁ、はぁ…手帳が落ちてる…アバン・ハーデンス?ここの生徒のかな」
………
「ソニック、見てよ!流れ星だよ!願い事したら叶うかな?」
「いいやテイルズ、それは違うぜ。流れ星に願い事を叶えてもらえるんじゃない。願いを叶えたものが流れ星になるのさ。輝きは違っても誰だっていつかはなるんだ、流れ星にな」
主は。
席のある部屋に身を置き勇者を導く『女主人』、そしてその末裔であり。
兄を殺され復讐の旅に出た一人の少女であり。
闇に堕ちた天の神々の侵略に立ち向かった少年であり。
2000年に及ぶ戦をした二つの民族に三代かけて和平をもたらした一族であり。
滅びの運命を破り、実体をもった『深遠なる闇』を討った護り人であり。
甦った闇の残り香に立ち向かった勇者たちであり。
そして、現在も名を知られるイーサン・ウェーバーでもあったもの。
誰もが持っていながら、ややもすると見えなくなってしまう願いを叶える力。
それが、『光』…真のグランツであり、主の正体。あるとも言えないしないとも言えない、一にして無でありながら、無限なるもの。
ルツ星霊首長が恐れたのもうなずけます。このことを広められれば、星霊信仰、ひいてはグラール教団の存在意義を根底から覆すことになるのですから。
「ついにここにきたのだね」
「ダルガン総裁、あなたもここにいらっしゃったのですね」
「君が私を最後に救ってくれたことに、恩を返したいと思っていたのだよ」
話しかけてきたダルガン総裁だけが見えていましたが、見ようと注意してみれば周りには人が何人もいました。4人のオラキオの王子などわたくしの知る人の姿も見えました。
『牡鹿の角』の根本の、大河のような流れ。連綿と続く、光と闇の歴史。
それを織りなす糸の一つ一つは、どれもが限られた中で精一杯輝いた、美しい命の結晶たち。わたくしはまさにそれに触れていたのです。
信仰ではなく理解をもってしてもなお神秘的な光景でした。
「さあ、この歴史に君という存在を織り込むんだ。君が過去と未来につながったひとつの魂であることの証として」
大きな織物に一本だけ糸を縫い込むように。
わたくしの『光』は、ふれた部分から後先にのびる一本の糸として織り込まれました。
それはほとんど何も変わらなかったようで、しかし確実にそれをそれまでとは違う色に変えました。
「よくやった、君は君自身の運命を変えたのだ。ほら、君の席ができているだろう」
勇者の殿堂に並んだ席、その末尾。たしかにわたくしの名前の刻まれた席がありました。
「こ、これは…わたくしは、わたくしはここにいていいのですね!」
「ああ。しかし、まだだ。まだ君はこの席に帰る前にすることがある。君の主人が待っている。君自身はこれから始まるのだよ」
ダルガン総裁に見送られ、どこが上でどこが下かもわからないその場所から、主の待つところへ、わたくしは光の翼で飛んでいきました。
惑星コーラル、『席のある部屋』の名前を戴く宮殿。
あのとき汚染で黒く汚れていた白い壁はツタに覆われていました。宮殿はもはや過去のものとなり、歴史に埋もれてしまっています。
夜明けの光とともに遠景が明らかになり、そこに見渡す限り広がる青々とした森と、澄み切った湖が見えました。目的も忘れて心奪われ、見とれるほどに素晴らしい景色でした。
「そう、これが惑星コーラル、ヴァナヘイム王女としての私の故郷。私が『大いなる光』としてコーラル人と戦って、そして敗れた後に、彼らはやり遂げた。
失敗もしたし、遠回りもした。でも彼らは私に頼ってではなく自分たちの力で、何百年もかけて、かつては捨てようとした星を甦らせた」
振り向けば、わたくしの背後で顔をのぞかせたばかりの太陽に照らされて主が立っていました。
「あのコーラル人が願ったことは、『自分たちの力で願いは叶える、だから願いを叶えないでくれ』だった。立派なものでしょう?
人間はね、どこまででも強くなれるの。大いなる光も、深遠なる闇も、彼らは乗り越えていったんだから。ただちょっと忘れっぽくて、目を覚ますのが遅いだけなのよ」
満足そうな微笑みを向けながら、主はわたくしの隣まで歩き、一緒に美しい景色を見渡しました。しばらく楽しんだあと、主はわたくしに告げました。
「あなたにはもう元の宇宙に居場所はないわ。でも、そんなこともう関係ないのはわかっているでしょう?これからもあなたは辛く長い道のりをたどることになるでしょうけど、その胸に光ある限り、どんな困難も必ず乗り越えていける。
さあ、エスコートはここまでよ。私はあなたを助けない…歩いていきなさい、あなたの世界、あなたの道を。輝きを終えたそのときに、私はもう一度迎えに行くから」
「はい!」
巣立ちの時。この宇宙から飛び去るため、光の翼を広げました。体は軽くなり、勇者の魂が見送る中、虹色の光を通って、自由な空へ。
そこで最後にわたくしが見たものは、陽光の中で風に揺れて光る亜麻色の髪と、今まで見た中で一番美しい主の満面の笑顔でした。
[Result]
ミッション失敗回数 ∞
ランク Miracle
「何度挫折しても立ち上がり、不可能を覆す不屈の精神。英雄と呼ぶにふさわしい」
大いなる光を手に入れた。
[No.057]
サーバからの切断を要求されました。
サーバとの接続を終了します。
……………
―この世界から出て行っても、私たちのこと、忘れないでね―
-エピローグへ続く-
スレ、復活してたw
エピローグはもう完成してます。明日には投下しますので。
おまけの解説を、前回分も含めて。
「ファージ」
DSで出たRPG(と呼んでいいか不明だがw)『無限航路』で終盤の敵になる、なんだかよくわからないもの。マザーファージを中心として、多数のファージが存在する。
惑星の破壊を目的としており、作中では宇宙の終焉を迎えさせる、ある種のアポトーシスの因子とも説明されている。某トッ○をねらえの宇宙怪獣っぽいといえばそうかもしれない。
無限航路はけっこう癖があるシステムで既存のゲームのジャンルにはあてはめにくい作品ですが、SF・スペースオペラ好きにはおすすめできる良作と筆者は思っております。
「魔神手裏剣、竜殺剣ドリス、スカボロウ・フェア」
魔神手裏剣は『グランディア』、竜殺剣ドリスは『セブンスドラゴン』、スカボロウ・フェアは『ベヨネッタ』に登場する武器。
スカボロウ・フェアは魔女ベヨネッタが足につけている二丁拳銃のアレ。
竜殺剣ドリスのみ武器としては実際に使われないが、これは人類の天敵であるドラゴンの情報解析を行って殺せるようにするため、持っているだけで効果がある、ある種本作ともっとも近いことをやっているアイテム。
ちなみにセブンスドラゴンのディレクターはファンタシースター1のメインデザイナーである小玉理恵子だったりする。
「アバン・ハーデンス」
『戦場のヴァルキュリア2』の主人公。ランシール王立士官学校G組のリーダー。
尊敬する兄の言葉を書き留めた手帳を常に持っている熱血バカ。
少々強引な姿勢はクラスメイトを引っ張っていく原動力となり、彼が編入したことでG組は一気にその能力を開花させていく。
ちなみに戦場のヴァルキュリア2は、PSPo2のセーブデータがあるとエミリアとクラーリタ・ヴィサス、GRM製ソードが使える。
関係ないけど大塚明夫ボイスの親切な紳士のことも忘れないであげてください…(そういえばこの人が乗る戦車の名前がヴォルフでしたな)。
「抜けられない空間に関して」
ブラックホールは光ですら抜けられないほどの巨大な重力を持った天体で、そのため時間や空間もねじ曲げられてしまうということがわかっている。
ブラックホールの中では時間が止まっているというのは本当に言われていることだったり(時間がなぜ過去から未来に流れるかということはこれに密接に関連しており、空間を曲げるほどの力があると時間にも干渉してしまう)。
最近の宇宙研究では、ブラックホールの中から別の宇宙へと抜け出していく、いわゆるホワイトホールというものがあるという説が有力。
抽象的な表現ばかりになりましたが、人の理解の及ばないスケールの出来事を人の視点で描いてみようとした結果、このような形になりました。
このへんに興味を持たれた方は「ホーキング、宇宙を語る」を読んでみると面白いんじゃないかと思います。
試験開発団所属パートナーマシナリー5体の改造計画案
目的:
パートナーマシナリーに単体での戦闘力の付加、マシナリーの改造限界の調査
改造案:
リアクターの出力強化、排熱機構の改良
個別の強化案は以下に示す
GSMY-17A
MSS126-A1 PMAA951F41-A1 「レイチェル」
GSMY-18A
MSS128-A1 PMAA951FB9-A1 「エマ」
両機共にリアクター出力の強化分をに転用
MSS126-A1はGRMより貸与された試作型の長剣を専用に調整した物を装備
MSS127-A1はS.U.V.W.を携帯用に改造した物を専用装備とする
マシナリーへの機甲戦力相当の打撃力の付加を目的とする
GSMY-17A
MSS126-A1 PMAA951FA9-A1 「シャーリー」
リアクター出力を駆動系に転用
問題とされる戦闘用マシナリーの機動性の改善案を検証する
GSMY-18A
MSS129-A1 PMAA951F55-A1 「マリー」
リアクター出力を防御系に転用
個人用S.S.S.の防御限界を検証する
GSMY-19A
MSS130-A1 PMAA9520B1-A1 「フィオナ」
リアクター出力をテクニック系に転用
テクニックの出力向上の為、CPUをより高性能な物に換装
キャストのテクニックに対する適性の低さを補う代替案を検証する
総合技術研究室より通達:
出力異常による自壊などの現象が見られる場合は、直ちに凍結処理すること
異常加熱によるAIの暴走が見られる事が予想される
暴走行為により敵性行動を取った場合は、被害拡大を抑える為速やかに破壊処分とする
同盟陸軍 総合技術研究室
10 Jul 0100
32 :
改造計画提案書:2010/08/07(土) 21:22:34 ID:IO88IK9u
誤字修正:
両機共にリアクター出力の強化分をに転用
両機共にリアクター出力の強化分を攻撃系に転用
>>30 ちょw同盟軍やばすw
SUV、あまってたのかw
さて、宣言通りエピローグです。
ここまで来るのに長かった…遅筆で、気がついたら2年半過ぎてんだもんw
ファンタシースター20周年をただ祝いたい一心で、シリーズ全てを肯定しようと、
またセガゲーネタをできるだけ盛り込もうと頭をフル稼働してがんばってきましたが、これで最後。
すっきりまとめられるのは何よりも嬉しいです。
それではどうぞー
「勇者は試練を越えたり」
「女王の宮殿より降りいたり」
「光あれ」「祝福あれ」
「光よ」「光よ」
「偉大なる恵み」
「幸福なる命の誕生」
「誕生の日に祝福あれ」
「勇者の魂」
「生くるものの力」
「人の力」「光よ」
「死すべき存在」「人の魂」
「命の流転」「受け継がれるもの」
「生、そして死」
「なんと美しい」
「なんと美しきものか」
………………
ハーイ!グラールチャンネル5、ニュースキャスターのハルでーす。
今日のヘッドラインニュースを、ピック・アップ!
先日、リュクロス観測衛星で、大破したGH432型のパートナーマシナリー駆体が回収されたニュースの続報です。
宇宙へ放棄されたパートナーマシナリーの記録はなく、ガーディアンズでは事件性があるとみており、
GRM社で残存パーツを起動させて内部データを回収しようとしたとのことですが、強い経年劣化に似た変性があり、ついに起動させることはできなかったようです。
同時に回収された銃は、引き続き解析を行う模様です。謎の多いニュースだけに、結果が気になりますね!
ニュースキャスターはハルでした!バイバーイ!
…はっ、ちょっと寝過ごしてしまいました。
日課にしている訓練をしないわけにはいきません。こういうことは毎日続けなくてはいけないのです!
ベッドから飛び起きて、パルムの中央広場へダッシュ。雨がちょうどあがったところで、まだ人はあまりいないはずなので、今日はここに決めました。
くじけるな、落ち込むな、ぷよぷよするな〜!
「こんにちは、おちびさん」
はい?わたくしのことですか?
いつもの剣技の練習中、突然一人の女性が声をかけてきました。
今まで見たことのない珍しい格好をしていましたが、主によく似た亜麻色の長い髪を後ろで緩い三つ編みにしてまとめた方でした。
えーと、主の妹さんだったりしませんか…と聞くのも失礼ですね。
間を持たせるために他愛ない会話をしていると、人がだんだん広場に集まりはじめて、雨上がりの美しく大きな虹が空にかかったのを喜んでいました。
知ってますか?虹の根本には宝物が埋まっているんですよ。主が言ってましたから間違いないです!
「ああ、そうか…そういうことだったんだ」
何を感心しているのかよくわかりませんが、妙に納得されてしまいました。なんだか複雑な気持ちです。次にどう言えばいいのか悩みましたが、どうやら女性はもう行くようです。
「主とこれからも仲良くね」
主のお知り合いの方ですか?伝言でしたら申し上げておきましょうか?
「いいえ、必要ありません。言わなくてもわかっているでしょうから」
…?どういうことですか。あなたはいったい?
答えずにその女性は雑踏へと消えていきました。虹の見える方向へ背をのばして歩いていく姿はとても凛々しいものでした。
そして、印象深い姿であったにもかかわらず、二度とその人を見ることはありませんでした。
一人町を歩きます。
歩みにあわせて揺れる亜麻色の髪。主の髪と同じです。とても気に入っています。
人に賑わう町。容姿も性格も違ういろいろな方がいらっしゃいます。
木製の水車が回り、それを動力源とする石臼でひいた小麦粉でパンを焼く人たち。
通信ケーブルで町と町のつながりを保つ配線を行う人たち。
違いはあれど、一人一人が『光』を宿しているのがわかります。大きい光、小さい光。もちろん、わたくしの中にも。
決して楽ではない暮らし。生活水準は高くないものの、誰もが活気にあふれて充実した生活を送る町。ここが、わたくしの新たな世界。
さようなら、『女主人』…我が主よ。生きている限り、もう会うこともないのでしょう。
しかし主はいつでも、いつまでもわたくしたちと共にある…少し寂しくて悲しいですが、とても嬉しくもあります。
「よう、時間ぴったりだな!」
溌剌とした声に顔を上げると、日焼けして褐色の肌に眉間の大きな傷が特徴的な黒髪の男性がこちらに気づいたようで、遠くで手を振っています。
金属製の武器に、ノーマルフレーム。手の感触を確かに、背筋を伸ばして男性に向かって歩を進めます。
惑うことなど何一つありません。ジリオンも光の翼も失いましたが、Sランク武器さえ軽く凌駕する最強の武器は、最初からこの手の中にあるのですから。
「それじゃお前のマグを渡すぜ。これでハンターズの仲間入りだ。ほらよ」
赤い球体がわたくしの元へ飛んできました。何か懐かしい姿です。
飛行してきたことから落ちる心配はないことはわかりますが、両手で抱きとめました。思わず笑みがこぼれます。
「お前もつくづく真面目なやつだよな。もっと気楽に構えたほうがいいぞ?」
苦笑する男性。でも、わたくしにはこの子が他人のように思えませんでしたから。
もの言わぬ人工生命がじっと見つめてきます。安心させるようにぎゅっと抱きしめてあげました。
「はじめまして。わたくしの名は…」
踏み出しましょう。
光あふれる明日へ。
-END-
これであの子の話はおしまいよ。今まで読んでくれたあなた、お疲れ様。
さて…ここからは別の話が始まるわ。
もうわかってるわよね。あなたは私、私はあなた…これはイーサン・ウェーバーじゃなく、他ならぬあなたの物語なんだから。
最後まであなたの輝きを見るのが私のなによりの目的よ。
それじゃ、あらためてよろしく。これからも頑張りましょうね!
”ファンタシースターの世界へようこそ!”
Phantasy star 20th anniversary
"The succession"
fin.
終わったー!
またあとで全部一度見直して加筆修正してからまとめてうpしますので、
可能な限り詰め込んだセガゲーネタを探してみると面白いかもしれません。
各話の副題も全部そこからとってますよー。
乙でしたー
古いのは知らないのも多かったけど面白かったですよー
>>39 2年半の間、本当に疲れ様でした。
最初の頃は
主 =ちょっと特殊な力のあるちょっと変わった人
GH-432=戦乙女を名のる、ちょっと変わったパシリ
程度の感覚だったけど、その時からは想像も出来ない最後になってとても楽しめました。
悔やまれるのは俺がそんなにセガに詳しくないことだなw
もし知ってたらもっと楽しめたんだろうにorz
>くじけるな、落ち込むな、ぷよぷよするな〜!
何事にもくじけない心こそが最強の武器なのだから!!!
って、ぷよぷよって言いたいだけちゃうんかとwww
>加筆修正してからまとめてうp
こちらも楽しみにしてます。特に加筆修正部分。
Upされたら頑張ってセガゲーネタ探してみるよ!
41 :
39:2010/08/08(日) 10:22:03 ID:QTloIV7s
朝起きて
レス番違うと
気づき鬱なり
当然、
>>40は
>>38宛てです。
ちょっとパシリに罵られてくる ノシ
::::::;;;;;;;;;
l:::::ヘ:l :::::;;;;;;;;::
(.#ノヽハ〉;;;;;;:::::: :;..:. :::;<ア゙ー ←俺
@リ ゚匚:::;;;::
<:::l=l:)〉:::;;;;;;::::
Cl:l___l_ヽ :::::;;;;;;;;::
レi_'ォノ ::::::;;;;;;;;;;
さてさて、快速で話を進めて行きますか。
連投とか気にしないでいいですよね…?
GRM製の試作型長剣『ソードオブインフィニティ』が異常な発光をしたかと思うと、
目の前に立ちはだかっていたゴル・ドルバは真っ二つになっていた。
異常な発熱によって周囲には陽炎が立ち、レイチェルの髪は赤く燃え上がっている様に見える。
ゆっくりと振り向き、班長に声を掛ける。
「終わったわ、デトレフ」
「了解した、直ちに回収地点に移動を…」
…その途端、レイチェルはばったりと倒れてしまった。
「…!? おい、レイチェル!?」
「熱っ! 素手じゃ触れません!」
「発熱が凄い…こりゃ熱暴走か?」
「班長、危険です。お手を触れない方が…」
「熱覚センサーは切ってある。」
デトレフがレイチェルを抱え込む。
「レイチェル、しっかりしろ」
声を聞いて、デトレフの顔を見る。そしてか細い声で訴え始めた。
「頭が…」
「頭?」
「頭が…熱い…痛い…」
「どうした、いつも元気なお前らしくない…」
レイチェルは返答もなく、ゆっくりと目を閉じる。自分からスリープモードに入ったようだ。
「異常加熱によるAIへの負担か…如何ともし難いな。一応、少佐に連絡だ」
「了解」
「担架は?」
「ありません」
「…分かった」
そう言うと、デトレフはレイチェルを抱きかかえたまま立ちあがった。
────
「少佐、ご意見宜しいでしょうか」
「モニカか。何だ?」
「PMの改造実験の中止を提唱します」
「それは出来ない」
「…何故ですか」
「既にもう何度も要求している。が、全て却下された」
「少佐、失礼します」
「入れ」
「今回の出撃で、レイチェルが異常加熱によりダウンしました。詳細は報告した通りです」
「予想された事態だ」
「ですが兵器としての信頼性に欠けています」
「少佐、入ります!」
「デミトリにフランツ…今度は何だ」
「エマがブルーメの浄化どころかでっかいクレーターを作って…暴走しました。
ベルティとマディアスが負傷、エマは強制的にスリープモードに入ったので、事無きを得ましたが…」
「報告します、少佐」
「ドミニクもか」
「フィオナが作戦行動中にダウン、ハラルトがつきっきりで診ていますが…芳しくありません」
「少佐、シャーリーが…」
「ヘルガーか。話せ」
「躯体の過負荷で行動不能です。現在修理中ですが…時間がかかるそうです」
「問題が山積みだな…マリーは?」
「目立った異常が確認されていないのは彼女だけです。今のところは」
「少佐、私はもう我慢なりません。エマは…泣きながら撃ってるんですよ。自身の異常を隠して…」
「私としてもこの計画は不本意だが、軍としても人が足りん。姉妹達に頼るしかないという事だ」
「ですが…」
「少佐…マシナリーは泣きません」
「そうだ、彼女等、『姉妹達』はキャストだ。マシナリーなんかじゃない」
「キャストの改造は違法だ! こんな蛮行、許せるものか!」
「少佐、姉妹達を解放しましょう! 姉妹達が居なければ、この実験も…」
「方法が無い訳ではない」
「…! 少佐!」
「だが、軍の所有物を私的占有することは重罪だ。分かっているんだろうな」
「軍の所有物じゃない! 部隊の一員です!」
「覚悟の上です。こんな事を続ける軍には愛想が尽きました」
「非常に非人道的で、道徳に欠けた行為です」
「分かった…だがこの道を執る以上、貴様らに未来は無いと思え」
皆は黙って敬礼する。
「この件については後日、詳しく伝える。
気取られるなよ」
今回分はこれにて終了。
頭文字が大文字になっているのは、ここからが本編だからとでも言いましょうか。
何て言うか雰囲気がPSUやパシリスレからかけ離れ初めましたね…
>>47 投稿お疲れ様です。
>何て言うか雰囲気がPSUやパシリスレからかけ離れ初めましたね…
君が新たな道の先駆者となるんだ!
まあ、今までパシリスレの雰囲気からは離れたとしても、
パシリその者から離れ過ぎなければ(パシリがほとんど出てこない等)いいんじゃないか?
>そうだ、彼女等、『姉妹達』はキャストだ。マシナリーなんかじゃない
俺の中では、同盟軍の人間が一番パシリをヒトと認めたくないというイメージだったので、
この言葉には、ちょっと心にグッと来た。
即死回避なんて必要ないくらい賑わってますねぇ。
>47
姉妹達はどうなってしまうのか・・・続き楽しみにしてます。
ほのぼのお馬鹿成分は自分が補給しますので是非そのままの路線で!
では、前回の続き投下します。
50 :
1/3:2010/08/10(火) 19:59:20 ID:JNxwWN7/
それは、いつもと同じ朝だった。
少女はいつも通りメガネの作った朝食を摂り、歯を磨き、武具の確認していた。
それは、いつもと同じ朝のはずだった。
少女の通信機が無機質な音をたてる。まだ「ていじほうこく」の時間ではない。
少女はメガネが別室に居るのを確認して───「えらいひと」に人やPMがいる場所で通信はするなと言われていた───通信機を取った。
「はーい」
「本日でデータ収集を終了する。本部に帰還しろ」
「・・・?」
「戻ってこい、という事だ。ガーディアンごっこは終わりだ」
「戻る」。少女はここに来る前に居た施設を思い出していた。
真っ白な部屋。わけのわからない機械。白い服とマスクをした大人。手足を寝台に拘束され、色んな「じっけん」をされる。
いたい。いたい。いたい。いたい。いたい。
あんな所に戻りたくなんてなかった。しかし逆らえばもっと酷い目にあわされる事は知っている。
それに・・・自分には、他に居場所なんてなかった。
でも───前は一人だったけど、今はメガネがいる。メガネがいれば、どんな事だって我慢できる。
少女はそう思い直し、通信機に向かって「わかった」とだけ呟いた。
51 :
2/3:2010/08/10(火) 20:00:01 ID:JNxwWN7/
「ああ、一応言っておくがPMは置いて来いよ」
「え?」
「そのPMはガーディアンズの備品だ。こっちで破棄するにも場所がバレては適わん」
「はき」?「はき」ってなに───?
「お前が帰還した後、こちらから要員を送って処分する手はずになっている。
心配するな、PMが欲しいなら同型機を用意してやる」
処分?メガネちゃんをどうするの?同型機?同じ形のモノ───それはメガネちゃんじゃない。
色々な思いが頭を駆け巡ったが、少女はそれを言葉には出来なかった。
少女はただ一言、「いや」と呟くように言った。
「・・・なんだと?」
今まで反抗などしたことのなかった少女の言葉に、相手は思わず聞き返した。
「いや。メガネちゃんと一緒じゃなきゃ、いや」
「だから同型機を用意すると言ってるだろ」
「そんなのメガネちゃんじゃない!」
「何をわけの分からないことを───」
「いやあぁぁぁぁーーーーーッ!!」
少女は叫びながら、通信機を床に叩きつけ、踏み潰し、何度も何度も踏み躙った。
52 :
3/3:2010/08/10(火) 20:00:41 ID:JNxwWN7/
朝食の後片付けをしていると、隣室から突然主人の叫び声が聞こえ、次いで何か硬い物が割れる音がした。
メガネが慌てて主人である少女の部屋へ走ると、少女はぼろぼろと涙をこぼしながら
床に散らばった金属───もう元が何だったのか分からないくらい破壊されている───を踏みつけていた。
「ご主人様!?どうしたんですか!?」
メガネは少女に駆け寄りながら声を上げるが、少女は聞こえていないかの様に何度も床を踏みつけていた。
「ご主人様、やめてください!ご主人様!!」
メガネは少女の足に抱きつく様にして止めようとする。靴を履いているとはいえ、こんな金属片を踏みつけていては怪我をしかねない。
少女はやっとメガネに気付いたように動きを止め、へたり込み、メガネに抱きついた。
「ご主人様、大丈夫ですか?何か、あったんですか?」
メガネは少女の背中を優しく撫でながら、ゆっくりと聞く。
少女は泣いたり怒ったり笑ったり表情がコロコロとよく変わる、いわゆる喜怒哀楽の激しいタイプだったが、こんな荒れ様は初めてだった。
少女はメガネの問いには答えず、泣きじゃくりながら言った。
「メガネちゃん・・・逃げよう・・・」
つづく
今回は以上です。
長くなりそうなのでタイトル考えなきゃと思ったんですが
思いつかない・・・orz
ほの…ぼの…?
ぼのぼの
ですね 「いぢめる?」
>>53 これをどうやってほのぼのに持っていくのかが見物…って事ですな。
私は無駄にシリアスに持って行ってますが。
さて、今から投下します。
久々にちょっと長めのを書いたので前後編に分けますよー。
「ルフト…マナ…駄目か。シャルもマクスも外出中…セーラは…ミッション中か。リオールも同じ…と」
「どうしたの、ご主人」
「ああ、アッシュか」
「いや、今度のミッションの人数が足りないんだ」
「今は何人?」
「俺と…ケイの二人だけ」
そう言うと、アッシュは少しだけ考えた様な素振りを見せた。
「…ボクが行くよ」
「んっ? 久々だな、お前が言うのは」
「ずっとミッションに行ってないから…」
どことなく歯切れが悪いが・・・まぁこいつがミッションについてくるのも久しぶりだし、
そっとしておいてやるか。
「…ケイか? アッシュが一緒に来てくれるそうだ。そっちは?」
≪私もPMを連れてくるわ≫
「うーい、分かった」
「…だそうだ、アッシュ。準備しとけよ、出発は明日10時だ」
「うん、わかった」
「貴方がジョニー様ですね」
「どうも」
「そして貴方がジョニー様のPM…アッシュ様」
「よろしく」
「お嬢様がお世話になっております」
深々と頭を下げる彼女に、思わず俺ももアッシュもお辞儀をする。
「いいのよ、エリ。そういう堅苦しいの、私は嫌い」
ケイはむすっとした顔でエリの方を見ている。
「早く行きましょう。ここは暑くて嫌だわ」
「そうだな、長く居ると熱中症になるかもしれん」
「アッシュ、お前は久々のミッションだから、あまり無理はするなよ」
「ボクはそうは思わない」
「そうか? ならいいけどな」
「さて…洞窟の入り口だ、入るぞ」
「エリ…って言ったよね」
「アッシュ様ですか。何か御用でも?」
「ご主人のこと…どう思う?」
「どう、と?」
「どんな人だと思うかってこと」
「どんな人…ですか」
「私はそれほど存じあげた訳ではございませんが…
お嬢様がお想いになる方ですから、さぞお優しい方なのでしょうね。
アッシュ様を羨ましく思います」
やっぱり・・・本人に訊かないとだめかな・・・
「エリには好きな人はいるの?」
「パートナーマシナリーとして、マスターをお慕いする事は当然の行いです」
「やっぱり…そうなのかな」
「例えそれがどんな形であれ」
「どんな形?」
「そう…どんな形であれ。ふふっ、貴方はまたよく御存じないのですね」
「パートナーマシナリーは成長します。この私も」
「それは知ってる」
「アッシュ様が御存じなのは、機械的な事です」
「機械的?」
「私達PMのAIは、日常生活、戦闘行動による経験を積むことで成長します。
ですがこれはあくまで機械的なものです。
私が申しているのは、PMとしてではなく…人として。
以前、マスターはこう教えて下さいました。
『パートナーマシナリーはマシナリーとは違う。キャストと何ら遜色のない、第5の種族だ』と。
PMにも…人間性があり、個性があり、心があります。
私達は、マスターや他の方々との触れ合いを通じて成長するのです」
「よく…わかんない」
「貴女はまだPMとしては若いのですから、当然ですよ」
彼女は笑いながらそう言う。
ボクも『成長』したらわかる様になるんだろうか。
この想いも・・・
61 :
別れ 前編:2010/08/11(水) 22:05:28 ID:mFg1Rzjw
今回分はこれで終了。
後編は適当に様子を見て投下します。
>>54-56 いやいやwカッコ内は俺の推測だけど、下のような感じじゃね?
「ほのぼのお馬鹿成分は自分が補給しますので是非そのままの路線で!
(だけど、今回はまだ前回続きなのでシリアス路線です。ほのぼのお馬鹿成分はまたの機会に。)」
>>57 あまり結果がよくなさそうなタイトルだが・・・後編楽しみにしてますよ〜
書こうかな、と思っていたネタがちょい前の作品にかぶった… orz
書こうと思ったら書かないとダメですねぇ…
SSマンセーな流れをぶった切ってちょっと泣き言・・・・
PSPo2でどんなにSランクミッションをS評価でクリアーしても440たんが派生タイプへの進化アイテムをくれません
他のタイプはすぐにくれたのに・・・・・
これはあれか!「ご主人、アナタはボク(440)だけを愛してくれないのか?」「ボクだけでは満足してくれないのだろうか?」ということか!
さて、虹色の法獣、マラソンに戻るか・・・・ムサシ(闇50%ゲット後一向に以降出ず)の闇以外の高属性値物と高属性値ライソベラ(ぽんぽん出るが無属性の為泣く泣く売却)もでねえ・・・・
まぁ、ヴィヴィアンさんもご自身のお気に入り武器をくれませんがね!!・・・・愛が足らないぜ・・・
>>63 咄嗟に思いついたアイデアを書き留める為だけにノートPCが欲しい今日このごろ。
>>64 440からデバイス貰ってもスルー余裕でした。
さて、今から後編投下しますよー。
「指定区域の駆除は終わったが…メインのターゲットが見つからんな」
ふと横を見ると、ケイは何やら浮かない表情をしている。
「どうした? ケイ」
「また上手く出来なかった…貴方の手を煩わせて…」
「気にすんな、お前はまだ日が浅い。俺は今までの経験があるから出来るだけさ」
「でもお前がそんな事で悩むなんてな」
「私が貴方に迷惑を掛ける様じゃ…」
「ん? 何だ?」
「いいえ…何でもないわ」
つくづくよく分かんない奴だよな・・・
ケイのPM・・・エリは戦闘時も常に落ち着き払った様子だった。
まるでかなりの戦闘経験があるような・・・本当にケイのPMなのか?
いや・・・まさかな。
「お嬢様、メイト類は切らしておりませんか? 私が補充致します」
「大丈夫よ、ありがとう」
「ご主人、ここは静かだけど」
「そうだな、別の場所を探して…」
"ドゴォォォォッ!!"
「何!?」
「ビル・デゴラスだ! 壁を突き破って来たか!」
「避けろ! ケイ!」
「ジ、ジョニー…!」
マズい、まっすぐケイに向かって・・・!
俺じゃ間に合わな─
「お嬢様、お逃げ下さい!」
「貴女何を…!?」
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
「エリ…エリ!? エリ!」
エリの悲鳴が洞窟に木霊する。
シールドラインは最大出力で作動したが、ビル・デゴラスの突進に耐え切れず、
壁まで叩きつけられてしまった。そのままピクリとも動かない・・・
「ご主人!」
「く…アッシュ、牽制頼む!」
「わかった!」
「ケイ! お前はエリを…おい!?」
ケイは離れるどころか、ビル・デゴラスの前に立ち塞がっている。
ビル・デゴラスは激しく威嚇しているが、怖気づく様子はない。
「何やってる、離れろ! ヘタに近づいたら危な…」
「邪魔しないで!」
「なっ!?」
彼女が手を前に差し出すと、そこから魔方陣の様なものが広がる・・・
「あれは…ミラージュブラスト…?」
最近実用化されたばかりだと聞いたが、見るのは初めてだ。
モトゥブの部族からもたらされた技術らしいが・・・
雷の幻獣『カンナ』が召喚され、飛び上がる。
するとたちまちビル・デゴラスは雷に包まれ、雄叫びを上げながら動かなくなった。
どうやら絶命したようだ。
「はぁ…はぁ…」
ケイは肩で息をする程疲れている様だが、すぐに向き直ってエリに駆け寄る。
「アッシュ、来い!」
「う、うん!」
「エリ!? エリ! 大丈夫!?」
「お…お嬢様…」
「待ってて、今エンジニアに連絡を…」
「いえ…お気遣い、なく…」
「でも、でも…貴女、腕が」
「私の小さな、身体では…あの、衝撃に、耐えられま…せんでし、た」
発声器官も衝撃で壊れてしまった様だ。
声にも雑音が混じり始めている・・・間に合わなかったか。
「お嬢、様の、ミラージュ、ブラスト…お美しゅ、うございました…」
「もういいのよ…喋らないで。すぐにベースに戻りましょう」
「いえ…私、は、もう、修理…でも、直、り…ません…」
「エリ…」
突然、エリがぎこちなく微笑み始めた。
「お嬢様、の…真っ直、ぐな、瞳…お兄、様に…よく…似ています」
「貴女、お兄様の事を…!?」
「わた…しは、お父様、に頼ま、れて…お嬢、様の元に…参、りまし…た」
「…」
「です、が…これ、だけ、は…お聞き、いただ、き、たい…の、です…」
「お父…様、は、お嬢様…の事…を、思って、辛く、当たった、ので…す」
「私の事を…」
「わざ、と…辛く…当た、る、事…で、お嬢様、が、家…出を、なさる様、に、仕向け…ま、した。
そして、お父様、は、私に、こ…う、仰…い、まし、た。
ケイ、の助けに…なって、くれ、と…」
「お父様が…?」
「私、が…毎日、連絡を、して、いたのは…お嬢…様の、ご活躍、を、伝え…るため、です」
「お父…様は、とて、も、心配、なさって…いまし、たが、同時…に、喜、んで、おられ…ました」
「わた、しも…お嬢様の、成長、を…見守、る事が、出来…て、光え、い、です」
「マスター、いえ、お兄、様、は…とて…も、正、義感の強…い、立派、な、おか、たで…した…
お嬢…さ、まも、強くなら、れて…わ、た……たしも…うれ……し…」
「…エリ?」
「…」
「エリ? エリ…? 目を開けなさいよ…主人の私が呼んでるのよ…?」
ケイは涙をこぼしながらエリに話しかけるが、そのPMが返事をする事は無かった。
71 :
別れ 後編:2010/08/12(木) 22:28:08 ID:pC82hIcl
今回分はこれで終了。
非常に読みづらい文章ですが、雰囲気が伝われば幸いです。
>>54-56 今回の投下がほのぼのだとは言っていない!
嘘ですごめんなさい。
>>62さんの仰る通りこの少女関連の話が終わるまでは
このままです。言葉足らずですみませんでした。
終わったらいつものノリに戻るのでご勘弁を・・・!
では、続き投下します。
「民間人の保護?」
主人が怪訝そうに声をあげた。
朝、突然ビジフォンに連絡が入ったと思ったら、事務所への出頭命令だった。何故か、私も同伴で。
なんかやらかしたのかなぁ、と思いつつも準備をして事務所へ向かうと、呼び出した張本人であるクラウチと共に、セシルとマイが居た。
聞けばこの四人───主人二人にPM二人だ───でとある依頼をやってほしいとのこと。
で、その依頼というのが民間人の保護らしい。
「そういうのってガーディアンズの仕事とちゃうの?」
主人がクラウチに訊く。まぁ、普通は民間人の保護なんて民間軍事会社に依頼したりはしないだろう。
・・・その「民間人」が特殊な人でもない限りは。
「最後まで話聞けって。・・・そのガーディアンズからの依頼なんだよ」
面倒そうにクラウチが言った。
「まぁ依頼っつーか協力要請だな、正確には。なんでもパルムの草原地帯でフリーミッションを受けてたガーディアンが
民間人を見つけたんだと。原生生物がうじゃうじゃいるようなとこだ、とりあえず保護しようとしたら───」
もったいぶるようにクラウチは言葉を切った。早く言えこのひげもじゃ。
「襲い掛かってきたんだとよ・・・そのガーディアンに」
「で・・・どないなったん?」
「あっさりやられちまったらしい。ガーディアンの方がな」
ガーディアンを倒す民間人。・・・それは民間人じゃないんじゃないか?
そんな疑問はお見通しだ、と言わんばかりにクラウチが続ける。
「その時そのエリアにいたガーディアンや同盟軍、うちみたいな軍事会社に問い合わせたが該当者ナシ。
んで仕方なく名目上は「民間人」ってことになってる」
「でも、ガーディアンを倒したということは武器を所持していたのでしょう?やはりどこかの組織の人間としか───」
民間人にはガーディアンや主人達傭兵が扱うような武器の携帯は禁止されている。例外があったとしても厳重な監視の下だ。
「ああ、確かに武器は持ってたそうだ。・・・民間人にも所持が認められてる護身用程度のチャチな代物を、な」
「それって・・・」
「護身用程度の武器でもガーディアンを打ち負かす強さ、ということか」
それまで沈黙を守っていたセシルが口を開いた。
「そういうこった。幸い命は無事らしいが、手酷くやられたそうだ。んで、そいつよりもっとランクの高いガーディアン・・・
具体的にはSランク以上の連中を差し向けたらしいんだが」
「返り討ちにあった、と」
ああ、とクラウチが頷く。・・・本当だとしたらとんでもないバケモノだ。
セシルとマイは分かるがそんなの相手になんで主人と私が呼ばれたんだろう・・・。
「んで、これ以上ガーディアンに被害出すと色々とまずい。かといってそんな得体の知れない危険人物をほっとくわけにもいかねぇからな。
うちに協力要請がきたってわけだ」
確かに、よくわからないモノとは言えガーディアンが何人も返り討ちにあっては不安が広がるだろう。
その点主人達はただの仕事の失敗で片付く。・・・命の保障はないが。
「あの〜・・・正直、そんなん相手にうちとらぶじゃ歯が立たへんと思うんやけど・・・」
主人が申し訳なさそうに言う。正直、私達二人はそんなに強くない。少なくともSランクのガーディアンを返り討ちにするような相手に
太刀打ち出来る自信などどこにもない。
「だからコイツと二人でって言ってんだろ。それに最近お前ら二人でよく組んでるらしいじゃねぇか。
コイツの報告書にサポートが適切で助かる、って書いてあったぜ」
コイツ、とはセシルのことだ。確かに最近一緒にミッションへ出かけていたが、主人がそう評価されていたとは知らなかった。
少し驚いた顔で見つめる主人に、セシルは「事実だ」とだけ言った。
「ま、まぁ・・・セシルがそない言うんやったら、行ってもええけど・・・」
主人が少しもじもじしながら言う。
いやいや冗談じゃないですよこっちの身にもなりやがれ、なんて言えないのがPMのツライところ。
「まぁ、お前ら以外に動かせるヤツがいないってのもあるんだがな・・・」
ボソリと言ったクラウチの言葉を私は聞き逃さなかった。覚えてろこのひげもじゃ。
「うぅ・・・怖ぁ〜・・・」
まるでお化け屋敷にでも来たかのようにへっぴり腰でパルムの草原を歩く主人。
最初に「民間人」を見つけ、ガーディアンが撃退されてからそのエリアは封鎖されているため、居場所の捜索自体はそれほど
難しくなかった。
ただ、遭遇すれはあっという間に倒されるだけだ。
先頭にセシル、次に私、後ろに主人、最後にマイ、という順番でゲームのように一列になって該当エリアを徒歩で捜索していく。
ふと、セシルの足が止まった。
「どうかしまし───」
私は言いかけた言葉を飲み込んだ。いつの間にか、前方にヒトが立っている。
「う、ううううわわわわ、でた・・・」
主人が小声で悲鳴を上げるが、励ます余裕は私にもない。ロッドを構えるので精一杯だ。ぶっちゃけ怖い。
セシルがナノトランサーからツインダガーを取り出し、いつの間にか隣に並んだマイがソードを構える。
前方のヒトがどんどん近づいてくる。と、そこで気がついた。
「あれ・・・二人いる?」
聞いてないよ!と叫びだしそうになったがなんとか堪える。
「ちょ、二人って!聞いてへんし!」
主人は堪えられなかったようだ。
そうこうする間にもその二人はどんどん近づき・・・顔まで分かる距離になった。
ヒューマンの女性・・・いや、まだ少女と言っていいくらいの年齢だろう。
そしてもう一人は更に小さい・・・
「「パートナーマシナリー・・・」」
私と主人の呟きが重なった。PMならばどこの所属か調べればすぐに分かる。
どこにも属していない違法PM等の例外はあるが・・・。
しかし、なぜ「PMを連れている」などといった簡単な情報が伝わっていないのか?
「目標らしき人物と遭遇。ヒューマンの少女。P───」
セシルが冷静にリトルウィング本部へ通信を送る。そして恐らくは「PMを連れている」と言おうとしたのだろう、言葉の途中で。
バチィッ!
フォトン同士が弾け合う独特の音がした。
私にも、そして恐らく主人にも見えなかった。しかしセシルは違ったようだ。
相手が恐ろしいほどの速さで投擲用の武器か何かを投げ、それを手にしていたダガーで弾き飛ばした。
恐らく、今までの相手は今の様な一撃を受け、あるいは倒され、あるいはひるんだ隙に打ち負かされたのだろう。
「PMを連れている」との情報を漏らさないように。
思えば種族や性別、外見などの情報が一切なかった。なるほど、これのせいか。
少女は最初の一撃が失敗したのがショックだったのか、遠目にも分かる程目を見開いてセシルを見つめていた。
「・・・PMを連れている。攻撃を受けた」
セシルはそれだけ言うと通信を切り、油断なく武器を構えた。
「私達は民間軍事会社リトルウィングの社員だ。このエリアは凶暴化した原生生物が出現するため一般人の立ち入りは禁止されている。
・・・君が一般人ならば保護する。それでなければ所属を明らかにしてもらいたい」
こんな長いセリフが喋れたのかと思うほど、セシルは淀みなく少女に言った。
しかし、相手は何の反応も示さない。PM───GH-412のようだ───が心配そうに主人であろう少女を見上げた。
「・・・して」
少女が何かを呟いたが、聞き取れない。
「どうして・・・みんないじわるするの・・・」
ようやく聞き取れた声は、外見には釣り合わない幼い口調だった。
「あたしは、メガネちゃんと一緒にいたいだけなのに・・・」
「ご主人様・・・」
PMが少女の手を握る。少女の顔から何かがこぼれ落ちた。
「あの子、泣いとる・・・?」
主人が呟いた瞬間。
「どうしてえええぇぇぇぇーーーーーーーーーーーッ!!」
少女が絶叫し、消えた。
つづく
今回は以上です。
>>71 タイトルからなんだか悲しい事になりそうな予感はしてましたが
こんな形でとは・・・ケイさん大丈夫でしょうか。
ここにいる人らはコミケで本とか出してないの?
デザコンも終わって戻ってきました。賑わってるなー。
>>64 いろいろ変えてみて、結局元が一番良かったというのはよくある話でw
うちはGH450が451デバイスばっかりくれて、
「ね、ご主人様、451にしましょう、ね、ね、451、451がいいですそうに決まってますウフフフフフ…」
とか脅迫されてるみたいで怖いです。
>>71 取り返しのつかないことへの遭遇で、ケイはどう変わるのか…
続き、楽しみにしてます。
>>80 ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
(.___,,,... -ァァフ| あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
|i i| }! }} //| 『おれはほのぼのと思っていた話を読んだら
|l、{ j} /,,ィ//| いつのまにかホラーものになっていた』
i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
|リ u' } ,ノ _,!V,ハ | おれも何をされたのかわからなかった…
/´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人 イチローだとかロックマンだとか
/' ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
,゙ / )ヽ iLレ u' | | ヾlトハ〉 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
|/_/ ハ !ニ⊇ '/:} V:::::ヽ
// 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
>>64 この際、パシリと2人だけでミッション周回してみてはどうか?
2人じゃ無理というなら、あえてミッションランク下げてみるとかね。
440「・・・計画通り(ニヤリ)」
>>71 ケイの所にパシリが来た経緯から何となく感じていたが、
やっぱり死んだ兄のパシリっぽいな。
父とエリ、2人の本当の考えが分かったが、エリが死んでしまうなんて・・・
ケイはどうなってしまうのか・・・続きがとても気になります。
>>81 何か大きな事件に発展しそうな予感。
ほのぼのな展開はもちろんの事、こういう展開も好きですよ。頑張って!
>>82 >イチローだとかロックマンだとか
(\ (\
/ ⌒ ヽ
/ヽ| ● _● | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ | 〇 〜 〇) < 俺の出番か!!!!
.>| ヽつ \_________
ヽ| |_/ │
分かる人にしか分からんネタでスマンw
84 :
83:2010/08/15(日) 00:56:24 ID:iMCAdYNm
OK、またアンカミスったw
×
>>81 ○
>>80です。はい。
ちょっと行ってくるorz
↓氷防具
|←炎オルゴーモン| λ.....
>>82 言われてみると少女がちょっとホラーですね。
まぁいつもの面々が出てきた以上これ以上怖くなったりはしないと思いますので
ご心配なくw
>>83 ありがとうございます。風呂敷広げすぎて内心焦り気味でしたが頑張ります。
では、続き投下します。
「消えた・・・!?」
どういうことだ。周りは一面の草原で隠れられるような物はないし、特殊な迷彩を使った様子もなかった。
本当に消えた・・・?
一人残ったPMは覚悟を決めた表情でツインセイバーを手に取り、構えた。
「ひゃああぁぁぁぁぁーーーーーーーッ!!」
突然の叫び声と共に、またフォトン同士がぶつかり合う音。
今の声はPMじゃない。とすると───
「くっ・・・」
セシルが上空から落下した様な格好の少女を受け止めていた。少女の手にはツインクローが握られている。
これは護身用って代物じゃない・・・本気になったってことか。
少女は自分の攻撃を受け止められたことが信じられないというような表情をした後、また消えるようにいなくなった。
「マイ、PMは任せる!ミコト、サポートを頼む!」
「はっ!」
「わ、わかった!」
いつになく切迫したセシルの声に二人は返事を返す。
「らぶさん、サポートお願いします!」
「お・・・オッケー、任せて!」
マイの声に精一杯の虚勢を張って返事をする。PM相手は気が引けるが・・・あんな少女を相手にする主人達よりマシだろう。
距離があるうちに補助テクニックをかける。弱体テクニックは・・・危険だ。相手は接近戦タイプだ。
それに、マイ───GH-410はバランス型、対するGH-412は攻撃特化型だ。押し負ける可能性もある。
そしてソードとツインセイバー。リーチはソードが上だが懐に入られれば・・・。
相手のPMがこちらへ向かって駆け出す。同時にマイも走り出した。覚悟を決めるしかない。
遠距離からフォイエを飛ばす。あっさり避けられた。こりゃ回復に徹した方がいいかな・・・。
「うあああぁぁぁぁーーーーーーッ!!」
叫び声の後に、またフォトンが弾ける音。これが何かを切り裂く音に変わった時、主人達は敗北するだろう。
その前にこちらだけでも決着を着けなければ!
マイがソードの切っ先を突き出す。余裕を持ってかわした相手が距離を詰めてくる。
「はぁっ!」
突きを放ったマイがソードを横なぎに薙ぎ払った。フェイントか。相手はギリギリで受け止める。
マイはガードされたまま強引に振り切り、相手を弾き飛ばした。凄い・・・。
そのままマイは攻勢に出た。あの巨大なソードを驚く程の速さで突き、払い、斬る。相手は防戦一方だ。
私もコンビネーションとまではいかないものの、遠距離からテクニックを飛ばして牽制する。
距離を詰められないように、そして取られすぎないように。
あまりにも一方的な戦闘に、相手を観察する余裕が出来る。そして、気付いた。
単にマイが強いだけかと思っていたが───勿論そのせいもあるだろうけど───このPM、あの少女を気にしている。
マイの攻撃をかわし、受け流した一瞬、主人であろう少女をちらりと見る。
そんな隙をマイが見逃すとも思えないが、何故か致命傷を与えることなく攻めを続けている。
同じPMを殺したくないって事・・・?そういえばセシルは「PMは任せる」と言っただけで「殺せ」とは言っていなかった。
だったら・・・!
「フォイエ系以外は苦手なんだけどな・・・」
ぼやきながら愛用のロッドにいつもとは違うテクニックをセットする。
そしてマイの攻撃を受け流した隙に───412が少女に注意を逸らした。
今だ!
消えるように移動したかと思うと、叫び声を上げながら突撃してくる。
少女の攻めはただそれだけだ。スピードは脅威だが対処法が分かれば問題ない、とセシルは判断した。
要は声が聞こえた瞬間にその方向に向かってシールドラインを展開するだけだ。
せっかくの奇襲も自分で声を上げて居場所をばらしては意味がない。
ワンパターンな攻め方、直線的過ぎる動き、デタラメな武器の振り回し方。
訓練された人物ならもっと違う動きをするだろう。確かにガーディアンや軍人、傭兵の類ではなさそうだ。
かといってローグスの様な喧嘩殺法というわけでもない・・・。
武器を持った子供が遊んでいるようだ、と思った。ただし、異常なスピードで。
「だ、大丈夫なん?これ・・・」
傍らにいるミコトが心配そうに聞いてくる。確かにこのままでは防戦一方だ。
しかし攻勢に出るにも相手の動きが止まらないとどうにもならない。
「うぁぁぁぁぁーーーーーーーーッ!!」
何度目かの叫び声。聞こえた方向にシールドラインを展開する。衝撃。
しかし少女は今までと違い移動することなくその場に留まり、攻撃を続けてきた。
「っ・・・!」
とんでもないスピードで武器を振り回してくる。デタラメな攻撃がかえって受けづらい。
ミコトのサポートは・・・無理だろう。この娘がこんな子供にテクニックを叩き込むところなど想像できない。
その時、相棒───マイが戦っているはずのPMの悲鳴が聞こえた。
「きゃあぁっ!」
相手のPMが氷に閉じ込められる。よかった・・・成功だ。
一瞬出来た隙に、私はラ・バータを打ち込んだ。ダメージはほとんどないはずだけど、お目当ては追加効果の凍結だ。
案の定、相手は自分の周囲に突然出現した氷塊を避けることが出来なかった。
「・・・お見事であります」
さすがに乱れた息を整えながら、マイが武器を収めた。
あとはあの少女だ。見るとセシルに目にも留まらぬ速さで攻撃を繰り出していた。
しかし、少女の方もPMと同じく相棒を気にしていたのか、こちらを見て一瞬固まった後。
「メガネちゃん───!」
悲鳴のような甲高い声をあげ、こちらに駆け寄ろうとした、が。
セシルがそんなことをさせるはずがなかった。
隙だらけの少女の腹に一瞬で拳を叩き込む。あっさりと少女は倒れた。
どうやら規格外なのはあの消える様な移動速度だけらしい。
「ご主人様!!」
しまった、もう氷結が解けたか。やっぱりフォイエじゃないと使いづらいな。
氷から開放された412は地面に落ちた武器を拾おうともせず、少女に向かって走り出した。
マイと私も主人達の方に向かう。
ふと見るとマイの手にはあのPMのツインセイバーが握られていた。拾ってあげたのか、律儀だな。
「ご主人様!しっかりしてください、ご主人様!」
泣きそうな声になりながら、412は倒れた少女に呼びかけた。
412にきっちりと少女の武器を取り上げたセシルが言う。
「気を失っているだけだ」
「一応レスタもかけたし、すぐ目ぇ覚ますと思うけど・・・」
今回私と同じくほとんど出番のなかった主人がまだ少し不安そうに言った。
「う・・・」
「ご主人様!?」
少女が呻くように目を覚ました。念のため身構える。
「メガネちゃ・・・つっ!?」
少女が殴られた腹部を押さえた。レスタは傷は癒しても痛みまではすぐには取り除いてくれない。
どうやら攻撃してくることはなさそうだ。しかしほっとした次の瞬間、ある意味もっと厄介なことが起こった。
「うあぁぁぁーーーーーーーーん!痛いよぉぉーーーーーーーーっ!!」
少女が大声で泣き出したのだ。思わず耳を押さえるほどの大音量で。
これにはさすがのセシルも呆気にとられた顔をしていた。両耳を塞ぎながら。
「(ちょっ・・・なんとかしてよ!)」
少女のPMに目と口パクで伝えるが、困惑した顔で首を横に振られた。泣き止むまで待てってか!?
すると主人が少女に近づき、地面に転がりながら泣き喚く少女を抱え起こした。
そのまま頭を抱き、優しく少女の腹を撫でる。
「よしよし。ぽんぽん痛いんか、可哀想になぁ。お姉ちゃんが撫でたろな」
「痛いの痛いの飛んでいけー」と謎の呪文を唱えながら主人が腹を撫で続けると、しばらくして少女の泣き声は段々と小さくなっていった。
元々レスタで傷自体は治っていたとはいえ・・・凄いな。
「済まない、助かった。・・・子供は苦手だ」
恐る恐る耳から手を離したセシルが、言い訳をする様に言った。
つづく
今回は以上です。
戦闘の描写が難しい・・・そしてミコトが役に立ってない。
最近は作品投下やレスも多くて嬉しい限りです。
さてさて、自分のPMを失ったケイですが…実はちょっとだけ続きがあります。
では、今から投下。
「同情しちゃうな、あたし」
PPTシャトル乗り場に向かう通路で、シュネーがぼそりと呟く。
「同情?」
「なーんか他人事と思えなくて…さ。ごめん、ただの独り言だから。気にしなくていいよ」
「ほぅ…気にして欲しそうだな?」
「誰にでも事情はあるってことよ。ジョニーさんだってそうでしょ?」
「俺はそんな大した事じゃないよ」
「だってもう結構な歳なのに、女のおの字もないんだから。結婚しないの?」
「むしろこんな稼ぎ方しか知らんから結婚できないんだろうな」
「また誰か紹介してあげよっか?」
「ロリコン呼ばわりは懲り懲りだよ」
「またまた〜。そんな事言うんだったら、お前も標的に入れるぞ?」
「そ、それは勘弁してよっ」
「まったく、自分の事は棚に上げて…まぁお前らしいっちゃお前らしいがな」
「私はこれで売ってるんだから! この魅力を理解できる男はまだ見つからないけどね〜」
「俺はご免だな」
「何をぅ!?」
「二人とも? 私の見送りに来たんじゃなかったの?」
「荷物運びの間違いだろ?」
実際、彼女の荷物はナノトランサーに入りきらない程の量で、
俺とシュネーで手分けしてどうにか運べているが…マイルームってそんな広かったっけ。
「本当によかったのか?」
「ええ。本当に分かってなかったのはこの私だから」
「あーん! 寂しいよ、ケイ〜!」
「ごめんなさい、シュネー。あっちに着いたら連絡するね」
「えぅぅぅ…」
「せっかく太刀筋がマシになってきたのに、惜しいよ」
「私みたいないい女を逃がすのが惜しいんじゃなくて?」
「言うな、お前も。…ちょっと寂しいよ」
(…私も、ね)
「ん…、何か言ったか?」
「いいえ、何でも─」
≪ニューデイズ・オウトクシティ行き、255便の搭乗締め切りは後10分です。
モトゥブ方面は3番プラットホーム、ガーディアンズ・コロニー方面は…≫
「いけない、乗り遅れちゃう。もう行くわね」
「ああ、気を付けてな」
「ケイちゃーん! また遊びに来てねー!」
「わかってるわよー!」
そして搭乗口に歩いて行く…途中で振り返り、大声で叫んだ。
「ケイは家を継ぎます! さようならー!」
97 :
別れ そのあと:2010/08/15(日) 20:00:40 ID:4yYiyMI0
本当に短いですけど今回はこれで終了。
彼女が出した答えが正しいのか…は時間が明らかにしてくれる事でしょうね。
ながいの乙
ファックを書こうとする→規制の流れ飽きたんだが書き込めますか
ファックを待ってる
今でもずっとだ
保守
>>98 私が長ったらしいのを垂れ流している中での貴重な短編です。
投下されるのを待ってますよー。
さて、今から投下します。
書き終わってから気付いた。PMもPSUも関係無くなってきたよー(^q^)
『PMの管理コードは戦技部が握っている』
─思えば私達は
『"姉妹達"を解放するには、このコードを改変』
─狂わされてしまったのだろうな
『凍結する以外に方法は無い』
─だが自ら望んだ道なら
『もう一度言おう、私達に未来は無いものと思え』
─自ら進んで狂おうではないか
『作戦を説明する』
≪"シュヴァルツェ"、展開完了≫
≪こちら"インディゴ"、手筈通りです≫
≪"ロト"、"グリューン"共に問題なし≫
「"ゲルプ"了解。そのまま待機せよ」
「我ながらおかしな事をしているな、とは思うよ」
「ですが皆、少佐に付いてきました。皆の望んだ事です」
「揃いも揃って人形馬鹿、か。はっは」
「馬鹿は馬鹿なりの筋を通すものですから」
「分かってる。私も指揮官として、最後まで務めさせてもらう」
「付いていきます、少佐」
「久々の前線配置で腕が鳴りますよ」
「…宜しく頼む」
「シャーリー、お前は無理をするな。壊れてしまっては元も子もない」
「計算上は問題ありません」
「あくまで理論値だ。私の後ろについていろ」
「了解しました」
「時刻は間もなく0300。作戦開始時刻に近づきます」
「ここは呑気なもんだな。すっかり寝静まってら」
「作戦開始時刻まで、3…2…作戦開始」
「よし、"ゲルプ"前進。静かにな。精霊の御加護があらん事を願っている」
「了解」
『戦技部本部を掌握するにはいささか人数不足だが、文句の一つも言えん。
要所に少数で当たることになる』
『今回は部隊を5つに分割する。大きく編成が変わる訳ではないが、一応説明しておく』
『デトレフ、ユルゲン、ヘルムート、カールハインツ、そしてレイチェル。
貴様ら第1班のコールサインを"ロト"とする』
『ベルンハルト、ファビアン、ウルフ、フリッツ。マリーを加え第2班を形成。
コールサインは"グリューン"だ』
『第3班はデミトリ、ベルティ、マディアス、フランツ、エマの5名。"インディゴ"と呼称する』
『第4班、ライナー、オルベルト、そして私とモニカ、シャーリー。コールサインは"ゲルプ"』
『第5班は本来の第6班と統合する。ドミニク、セルゲイ、ハラルト、ゼップ、ヘルガー、
ラファエル、アレクサンダー、マクシミリアン、そしてフィオナ。
コールサインは"シュヴァルツェ"とする』
『少佐、コールサインを設けた根拠は?』
『一応防諜目的だが、まぁ人員が明らかにされた所で知れてるだろう。只の気分転換だ』
『相変わらず非合理的ですね、少佐』
『この作戦に合理もクソもないさ。ヤケだよ』
『…了解です』
『引き続き詳細を説明する』
『戦技部本部には、少数と言えども若干の兵力が配置されている。
起きて来られると厄介だ。兵舎の制圧にはロト、グリューンを当てる』
『ロトは北側1F入口から、グリューンは2F非常階段から突入。
兵舎に待機中の兵士全員を武装解除させる』
『また、兵器庫の兵器を使われない様に破壊する必要もある。これはインディゴが担当する』
『指令室のデータバンクにPMの管理コードがある。これは確定事項だ。
ゲルプは指令室を制圧、そして管理コードを改変、凍結する』
『シュヴァルツェは正面入口付近にて待機。兵舎の制圧が失敗した場合は速やかに突入、
外部より攻撃を加える』
『作戦目的の達成後は?』
『管理コード改変後はすみやかに撤退、"協力者"が用意したシャトルでモトゥブに潜伏。
まぁ…今後我々がお天道様の元に出られるようになる事はあるまい』
『困難な作戦だ。何せ同盟軍を敵に回すんだからな。だが私は、貴様らがこれを達成できんとは思っていない』
『何せ"硝煙女帝"でさえ感嘆させる精鋭ですから』
『自分で言うなよ』
『尚、支援車両及び自立機動兵器の類は一切用意出来ない。貴様ら単体での純粋な戦闘力が問われる。
これまでに培った技術を全て投入する様に。各員の奮闘を祈る』
今回はこれで終了。
各班のコールサインの元ネタは分かる方も多いのではないでしょうか。
>>98 >規制云々
逆に考えるんだ!ネタをより濃厚にできるって考えるんだ!!!(AA略
俺も待ってる人間の一人だ。
ネタができたらめげずにまたカキコんでくれ!
>>103 投稿乙です。いよいよ作戦決行ですな。wktkです。
>コールサイン
元ネタが分からんかったのでググッたのは置いておいて、
ロト=ドラ○エって安直に考えたのは俺だけでいいorz
後、
×精霊
○星霊
な。間違えるとルツ様に後ろからアルテラツゴゴオオォォォゥウグされるから気をつけるんだ!
108 :
107:2010/08/18(水) 22:33:12 ID:SAZyUVyT
ゴメ、結果的に間違っちゃいないんだが
×103
○106
ですわ。
最近間違いすぎだ・・・ちょっとレス自重するorz
んで、後ろからアルテラツゴゴオオォォォゥウグされてくる ノシ
/ )
(∀゚ )=( ̄ ̄>., ':; .,/ ):;; )
|←巫女様ファンクラブ| λ..... <\ へヘへ/ )、:' ; )
>>98 ここにも待ってる人間が一人いますよー。
短いのに凄く笑えるあなたの文が大好きです。
>>106 熱い展開になってきましたね。
コールサインの元ネタはわかりませんでしたがなんかカッコイイって事だけはわかります。
>>108 ドンマイです。
書き手の端くれとしてレスいただくと物凄い嬉しいので自重しないでっ!
では、本日も続き投下します。
「この子・・・どうするん?」
少女の頭を撫でながら、主人がセシルに聴く。
私達に課せられた依頼は「保護」だ。このままリトルウィングへと連れて帰り、ガーディアンズに引き渡して依頼完了だ。
しかし、子供とはいえ多数のガーディアンを負傷させたのは事実だ。ただでは済まないだろう。
主人はそれをわかった上でどうするのか、と訊いている。このままガーディアンズに突き出すのか、と。
訊かれたセシルは苦い顔をした。さすがにこんな少女を突き出すのは気が引けるらしい。
「あの・・・」
少女のPM───412が口を開いた。その場の視線が集中する。
「無理を承知でお願いします。・・・見逃していただけませんか」
懇願するように言った。心情的にはそうしたいのは山々だ。
「よければ事情を聞かせてほしい。何故こんな所にいるのか、何故ガーディアンを襲ったのか」
少しためらった後、セシルは訊いた。
「・・・この少女は何者なのかを」
最低限の武器でSランクガーディアンを倒し、消えたと見紛う程の瞬発力を持つ少女。
ただの女の子、であるはずがない。
412は俯いた後、つぶやくように言った。
「話したら・・・見逃してくれますか」
「約束はできない。だが何か力になれるかもしれない」
412が顔を上げ、意外そうな目でセシルを見つめる。
セシルの言葉は私にも意外だった。今まで一緒にこなした依頼では失敗もなく、依頼主の意にそぐわないことはしなかったのに。
あるいは、さっきからずっと訴えるような目で見つめている主人の影響だろうか。
主人は情に流されやすい。今だってこの少女をガーディアンズに引き渡す、なんてセシルが言っていたら食って掛かっていただろう。
後先や損得を考えず、その場の感情で行動する。PMの私からすれば理解できないことも多かったが、嫌いじゃなかった。
今回だって、このまま話を聞けば確実に面倒なことになる。さっさと引き渡すのが正解だろう。
でも、私が止めた所で無駄だろう。
頑固で、情に流されやすくて、後先考えずに行動して厄介事に首を突っ込んでオロオロする。
それが私の主人だ。
「わかりました・・・お話します。私のわかる範囲で」
412が語り始める。自分がガーディアンズのPMだということ。少女も書類上はガーディアンだが恐らく偽造されたものであること。
少女と出会ったのはガーディアンズで、それ以前の経歴については知らないこと。
定期的にどこかの組織と連絡を取り、ミッション時に記録した戦闘データを転送していること。
その「組織」からガーディアンズから戻るように命令が下り、それに少女が反抗し、自分を連れて逃げ出したこと。
逃げている内に危険区域内に迷い込んでしまい、少女が近づいてきたガーディアンを「組織」の者と勘違いして攻撃してしまったこと。
その後もガーディアンズに居場所がばれれば「組織」にも知られると思い、すべてのガーディアンを退けたこと。
少女はミッションは常に一人で行っていたらしく、その戦闘能力を見たのは今日が初めてだったこと。
眼鏡のPMが語る間、少女は何も喋らなかった。黙って俯いているだけだ。
「連絡を取っている組織・・・とは?」
「わかりません・・・」
「その話が本当だという証拠は?」
「ありません・・・」
412が力なくうな垂れる。
セシルはため息をついた。無理もない。
こんな話、信じろという方が無理な話だ。あるいは逃げるために嘘を吐いている可能性もある。
大体ガーディアンズみたいな巨大組織に書類偽造で入れたりするのだろうか。
まぁ・・・人事は結構いい加減みたいだけど。
でも・・・。
「嘘は言っていないと思います」
今度は私に視線が集まる。特に412は驚いているようだ。眼鏡、ずれてるよ。
私達PMは主人を第一に考える。それこそ、主人のためなら命を投げ出す者だっているだろう。
私もその一人だ。
このPMは・・・412は、ただこの少女を助けたい、その一心で行動しているように思えた。
理由も根拠もない。ただ同じPMだから分かる。この子は、嘘は言っていない。
「自分も・・・そう思います」
マイが躊躇いがちに同意する。
セシルはしばらく考え込み、やがて口を開いた。
「私は初対面の者を信用することは出来ない。だが、私は私のパートナーを、仲間を信頼している。
二人が信じると言うなら、私も信じよう」
そう言って主人に顔を向ける。主人も笑顔で頷いた。
「あ・・・ありがとうございます・・・!」
412が深々と頭を下げる。ずれていた眼鏡がとうとう地面に落ちた。
「それで・・・これからどうします?」
「ああ。仮に今私達が見逃したとしても、すぐまた別のガーディアンや傭兵が差し向けられるだけだろう。
・・・包囲も解けていないしな」
力になるとは言っても、この場からの脱出すら容易ではない。
それにあまり時間もないはずだ。私達の他にも傭兵が投入されているかもしれない。
「・・・仕方がない。クラウチに働いてもらおう」
そう言うとセシルは通信機を取り出した。
クラウチ・・・なんでここであのおっさんが出てくるんだ?確かに直属の上司ではあるけれど。
『おお、無事だったか!攻撃されたって言ったっきり連絡取れないから心配したぞ』
「ああ、すまない。4人とも無事だ」
『そうか。で、目標はどうなった?』
「それなんだが」
一呼吸置いて、セシルは言った。
「任務は失敗した」
つづく
今回は以上です。
真面目な話ばかり書いてるとお馬鹿話書きたくなるのは何故でしょう。
>>115 つかまっちゃったwもうちょっと暴れるかなと思ってたんだけどw
続き待ってます。
久しぶりに過去スレ見てみようと思ったら、
以前のPC不調でゾヌ2のログが吹っ飛んでたorz
ならばミラー変換でと思ったら、まさかの閉鎖?で使えNEEEE!
まとめサイト行けば見られるんだけど、
元々のスレの流れを追いながら読みたいんだよね…
保管庫のほうにでもログうpしてくれる人おらんかなあ。
>>115 セシルが少女を匿ったのは、何か思う所があるからなのでしょうねぇ。
さて、スレも静かなので今から投下します。
「レイ? レイ? ったく、あいつ何所行ったんだか…」
ルームメイトのレイが、トイレに行ったきり帰ってこない。
トイレで寝ちまったんじゃないかと行ってみたが・・・トイレはもぬけの空だった。
しかし・・・夜の兵舎は薄気味悪いな。
使われていない部屋も幾つかあるし、明かりもまったく点いていない。
こういう時、生身の人間は『ゴースト』というものが出てくると怖がる奴も居るが、
そんな非科学的なものがこの世に存在する訳が・・・
下の階に行ったのかと、俺は階段がある角に近づこうとした・・・が、
いきなり腕を捻り上げられ、途端に組み伏せられてしまった。
「この兵舎に待機中の兵力は?」
誰だ・・・?
「さ…三個小隊程」
何とか顔を上げると、角の方から手が投げ出したようになっているのが見える。
「御苦労だったな」
突然首筋に刺激を感じたかと思うと、そこで俺の意識は途切れた。
「き…貴様らは何者だ。イルミナスの手先か…?」
「只の人形馬鹿だ」
そう言うと、ベルンハルトは躊躇なくビームガンの引き金を引いた。
消音機が付いているので発砲音はせず、ただ体が崩れ落ちる音のみが響く。
「…はんちょ」
「マリーか? 話なら後にしろ。気取られる」
「マリーは後ろにいていい?」
「あぁ」
「みんながマリーのためにしてくれる事だってわかってる。でも…あんまり見たくないな」
「そうだな…お前が見るもんじゃない」
「だが、姿を見られたからには俺は容赦しない。通報なぞされたら、俺達の戦力じゃ一巻の終わりだからな」
「うん…」
そう言うとブラックバルズ─これもまた消音機の付いた─を構え、部屋の扉を静かに押し開けた。
≪こちらロト、1階は制圧完了≫
「グリューン了解。こっちはもう少しだ」
≪ゲルプよりインディゴ、首尾はどうだ≫
≪格納庫はトランスポーター程度のものしかありません。破壊の必要は無いかと≫
≪ゲルプ了解。派手になるかと思ったが…静かに事を済ませられるな≫
指令室のドアを開けると同時に、シャーリーの姿が消える。
ラリー達が部屋に入った時には、最後の一人の脳天にランミサキを突き立てた所だった。
「シャーリー、無駄に殺すな」
「気絶させておくと後が厄介です。私達の人数では管理しきれません」
「お前は効率を優先し過ぎる。殺すのは止むを得ない時だけにしろ。
それにお前の駆動系に支障をきたしても困る」
「了解しました」
「でもこれで制圧完了ですね。データバンクへアクセスできる端末は…」
「多分これです」
「いけるか?」
「ごっつい防壁がありますけど、何とかします。それまでに通報されたりしなきゃいいんですが」
「少佐、兵舎の制圧は完了したそうです」
「…だそうだ、ライナー」
「そりゃ幸いですよ」
≪こちらシュヴァルツェ。もう基地内に進入しても大丈夫か?≫
「問題ありません、どうぞ」
≪シュヴァルツェ了解≫
「もうすぐ夜明けだな…」
「少佐、少し宜しいでしょうか」
「モニカか。どうした?」
「制圧が簡単過ぎます。抵抗も殆んどありませんし、兵力も微弱…
SEED対策に追われてるとしても、あまりにも基地の警備が軽すぎます」
「それは私も思っていた」
「ではやはり、本来駐留している部隊が出払っていると?」
「そうなるだろう。罠という事は考えられんしな」
「ふむ、あまり時間も無いかもしれん。ライナー、急げよ」
「了解です」
指令室からは一帯を眺める事ができる。
ラフォン草原の東は既に赤く、太陽が昇り始めていた。
「時刻、間もなく0450」
「ここから見られていたかもしれんな…モニカ、オルベルト、通信ログを確認しろ」
「了解」
「ライナー、後どれ位だ?」
「3分下さい」
「2分でやれ。シャーリー、ライナーの手伝いは出来るか?」
「僅かばかりですがお手伝いできます」
「任せる」
「ロト・グリューン各班へ。いつでも撤収出来る様にしておけ」
≪ロト了解です≫
≪グリューン了解≫
今回はこれで終了。
どうしても切りのいい終わり方が出来なかった。反省している。
そしていまいち影の薄いマリーをまともに喋らせてみましたが…まぁこれでいいか。
そしておまけの用語解説的な何か。
─トランスポーター
同盟軍の戦車、『ストライカー』の輸送車型で、兵員・物資等を運搬できます。
ストライカーと違い砲塔がありませんが、場合によっては機関銃等の火器を搭載します。
一般的な体格の兵士なら12名程度を輸送する事ができます。
124 :
名無しオンライン:2010/08/31(火) 20:58:05 ID:pCHSrsP2
昔の仲間に会いたくて、ひさしぶりにロックワークスに行ったのですが、
行ってビックリ! 閉鎖してました。
残念がる自分をコンビニで買ったビールでなだめ、帰ることに・・
後でわかった事なのですが、資金難により閉鎖したようです。
立て直すにも、解散登記するにもお金がかかるらしいのです。
給料が安かったけど、良い仲間がいて楽しかった職場ですが、
無くなると寂しいですね。
みなさんこんばんは。わたくしは、荒ぶる戦乙女のGH432。
主、主〜!なんだかよくわかりませんがPSPo2インフィニティだそうですよ!無限とか転生とかわたくしのことですか!?
「はい、眼帯」
…なんですかこれ。ゴスロリってやつですか?もしくはジャキガンですか?持たぬものがどうたらとか言えばいいんですか?
「ふはははははァ−!このハウザーの狙い通り、SEEDを受け入れた者がぶはァっ」
く、静まれ…!わたくしの腕よ、怒りを静めろ…!(思いっきり殴ったから)
「死人は静かにねー。とりあえず冬に発売みたいよ…ね?言ったでしょ、未来はあるって。フフフ」
ということで、1作目からまとめなおしてうpしました。
あとがきと裏話も入れてありますが、いらなかったら削除しちゃってください。
ttp://www.psuxxx.info/uploader/src/up6507.zip 一応順番に読めるよう、ファイル名には番号をつけてあります。
改行に関しては一度全部一定行数で改行しようとしたんですが、なんか不自然になってしまうので元に戻しました。
読みにくいときはメモ帳の「端で折り返す」にチェックを入れてくださると幸いです。
>>123 さあ、先が読めなくなってきましたw
出払う必要があったとするなら、いったいそれは何だったのか。
潜入部隊はその事柄にどう対応するのか…ス○ーク!気をつけるんだ!
>>125 まとめキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!! 保存保存ー
いやうっかり保存してないのがあったとか(ry
待ってくださってる方がいらっしゃるようで嬉しいやら申し訳ないやら・・・
お待たせしました、続き投下します。
事も無げに言うセシルに、通信機越しのクラウチは呆気にとられたようだ。
『・・・なんだと?』
「任務は失敗した」
『おい!失敗ってお前』
「奇襲を受けた後、何とか手傷は負わせたが取り逃がした。手強い奴だった」
淡々と白々しい台詞を吐くセシルに、誰も何も言えなかった。
「目標の情報を訂正する。目標はビーストの男性。身長2メートル前後の巨体でクバラ製のソードを振り回していた。
緑色の髪で頬に十字の傷があった」
普段の寡黙っぷりからは想像できないくらいにぺらぺらと嘘八百を並べ立てる。
少女の特徴と何一つ合っていない。
「それと、報告した「PMを連れている」というのは私の見間違いだった。報告は以上だ」
『・・・・』
不自然にも程がある。PMを連れているかどうかを見間違えるなんてあり得ない。
しかしクラウチは何も言わなかった。・・・呆れて物も言えなかったのかもしれないけど。
「それと、別件だが「民間人」の少女とそのPMを保護した」
『・・・なに?』
「道に迷ったらしく危険区域内まで入り込んでいたので保護した。それだけだ。
・・・帰ったらいくつか個別に報告する事がある」
『・・・ああ。俺もおめぇに訊きたい事が山ほどできた』
「了解した。これより帰還する」
通信を切ったセシルが呆れた顔をしている私達を見て首を傾げた。
「どうした?」
「どうしたって・・・ええんかいなあんなんで!?報告は嘘ばっかりやし、おっさん絶対気づいとるで!?」
主人が堪らず声を荒げる。そりゃそうだ。あんなので騙される奴はいないだろう。
しかしセシルは涼しい顔で返す。
「いいんだ。クラウチにも事情を話して協力してもらう」
「で、でも・・・もしおっさんがガーディアンズに通報したら」
「奴はそんな男じゃない。それに幸いその子の外見もPMの情報も私達以外に知られていないからな。
誤魔化しはきくだろう」
あっさりと言ったセシルは、412に向き直った。
「一つ確認しておきたい」
「・・・はい」
「この子は私達が責任を持って保護する。ガーディアンズからも、その「組織」とやらからも。・・・君はどうする」
この412はガーディアンズ所属だと言っていた。
その主人である少女がいなくなれば、初期化されて新しい主人の下へ行くか、主のいないルームで孤独に過ごすかだ。
「ガーディアンズに戻るのか」
「私は・・・私の居場所は、ご主人様の隣です。この方が居ないガーディアンズには、居たく・・・ありません」
当然の答えかもしれない。
例外はあるかもしれないけれど、私達PMは、主人がいないと生きていけないのだから。
「そうか。しかし君がガーディアンズ所属である限り、この子と一緒に居ると危険だ」
「・・・・」
書類を偽造してガーディアンに出来る程の組織だ。ガーディアンズのPMの位置情報くらい簡単に掴んでしまうだろう。
「・・・手がないわけじゃないんだ」
言いにくそうにセシルが言うと、俯いていた412が顔を跳ね上げた。
「ただ、多分二度とガーディアンズに戻れなくなるのと・・・」
言おうかどうしようか迷ったような表情を見せた後、続けた。
「その代償をこの子に払ってもらうことになる・・・と思う」
「代償・・・ですか?」
「ああ。代金、と言ってもいいかもしれない」
代金・・・話が見えない。
「あたし・・・メガネちゃんと一緒にいられるなら、なんでもするよ」
黙りこくっていた少女が初めて口を開いた。その言葉に、412が目を潤ませる。
「・・・わかった。ちょっと待っててくれ」
そう言うと、セシルはまたどこかと通信を始めた。
『はいはーい』
通信機から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
確か・・・黒いパーツに身を包んだ変人キャスト、アイリス。
「私だ」
『あら、今時オレオレ詐欺は流行りませんよ?』
「・・・・」
『うふふ、冗談ですって。珍しいですね、セシルさんから通信なんて』
「一つ、頼みたいことがある」
『うわー、嫌なよかーん』
「ガーディアンズのデータベースから、所属PMのデータを一体、消去してほしい」
その場にいた全員がぎょっとした。
・・・少女だけは、きょとんとしていたけど。
『・・・えー、それはつまりガーディアンズのデータベースにハッキングして情報操作しろと?』
「そういうことになるな」
言葉でいうほど簡単なことではない。
あんな大企業のデータベースにハッキングなんて、よほどのハッカーやクラッカーでない限り到底無理だろう。
『あのー、セシルさん。さすがにそれはちょぉーっとリスクが大きすぎると言いますか』
アイリスが申し訳なさそうに言う。そりゃそうだ、バレれば即牢屋行きレベルの話なのだから。
「そのPMの主人なんだが。・・・お前好みのヒューマンの少女だ」
『詳しく聞かせてもらいましょうか』
アイリスは態度をコロリと変えて食いついてきた。
「詳しいことは後で話すが、そのPMをガーディアンズから少女へ登録し直したいんだ。正規の手続きが踏めない理由があってな」
『ふむ・・・』
「タダでとは言わない。主人の方を好きにしていい。・・・倫理的にOKな範囲でな」
代金ってそういうことか!大丈夫なのかこれ・・・。
『わかりました、やらせて頂きましょう。うふふ・・・楽しみですねぇ』
「もう一度言うが、倫理的にOKな範囲で、だぞ」
『分かってますよぉ。あんまりやりすぎるとリムが焼き餅妬いちゃいますかr』『ゴスッ』『げふっ!』
またリムに殴られたらしい。
「・・・とにかく、頼んだぞ」
セシルは通信を切った。その顔は少しげんなりしているように見えた。
つづく
今回分は以上です。
だいぶ長引いてますが、もうしばらくお付き合いください・・・
>>125 うぉぉ、ありがとうございます!
まさかパパ412の作者様にいただけるとは…
ロザリオたんはこのスレでも屈指の印象を残していただいてます。
DATファイルはぞぬ2ってことでよろしいでしょうか?
135 :
125:2010/09/03(金) 00:02:03 ID:6C2aD/6w
>>134 DatファイルはJane styleの物です
ざっと調べた所、ぞぬに使用するには何らかの方法でコンバートするしかなさそうです
あれ?解除?
規制解除ktkr!
>>123 投稿乙です!
>「き…貴様らは何者だ。イルミナスの手先か…?」
>「只の人形馬鹿だ」
台詞の雰囲気がアメリカ映画っぽくて好きだぜ!
いよいよミッションも終盤。このまま無事に終了してくれればいいんだが・・・
>>125,126
まとめ乙です。保存保存っと。
>寝苦しい夜の暇つぶしにでもどうぞ。
両作品とも読みだすと止まらないから、暇つぶしではなく徹夜コースになる悪寒w
>>133 投稿乙です!
>普段の寡黙っぷりからは想像できないくらいにぺらぺらと嘘八百を並べ立てる。
性格的に超がつくほど生真面目だと思ってたから、こうくるとは意外でした。
しかし、
>「そのPMの主人なんだが。・・・お前好みのヒューマンの少女だ」
>『詳しく聞かせてもらいましょうか』
食いつきすぎだろw
こっちも面白そうな展開になってきたな。
リトルウィング部隊では何やら様々な噂やらジンクスやらがまことしやかに語られる。
どんな情報の真偽も須く自分でやらなければならない、それは情報化社会の嗜みだ。
そして社会は情報とその共有で出来ているからつまりは情報の取捨選択こそが社会活動の一歩である。
その社会活動からは、クールなパートナーである私も逃れる事は出来ない。
更にご主人様は
「クレアダブルスを落とすのは峠のtaisai」
とか言うパートナーチャンネルで流行ったコピペを見てまず峠を探しに行こうとする方である。
つまらない嘘を流行らせるんじゃなかった。ファック。
しかし今回の情報は私が流したデマではないどころか信憑性の高さは最高ランクだ。
新しい大規模作戦やら今まで交流の無かった惑星との交流が始まるという情報はリトルウィング社内を駆け巡った。
本気にしていないのはご主人様くらいじゃないだろうか。
大丈夫ですよご主人様。
ええ?
いいえ、ソウルフェニックスの時みたいな事にはなりません。
社内に大規模な改装も入り、ロビーなどで他の社員の方ともお話出来るみたいですよ?
…いえ、ロビーにはPMは同伴出来ないと思われます。
意外にもご主人様が私の事を考えてくれていた。
予想外のコメントにいろいろすっ飛ばして妊娠するかと思ったがどうやらその機能は無かった様だ。ファッキン。
なんか書いてもいないのにレスくれた方ありがとう
書く書く詐欺にならない為に短いの置いてく
ちょっと意味不明なネタを入れたのはちょっと反省している
だってどの程度ネタバレしていいかわかんなかったんだよう
>>99 ありがとうおかげでネタが浮かんだ!
が
しばらく書いてないせいでやたら長いからもちょっとたんま
>>138 > どんな情報の真偽も須く自分でやらなければならない
真偽の確認も
に脳内訂正お願いします
ああもうごめんなさい
>>125 時間が取れたので一気読みしました。
500年以上孤独に生きてきたパパ氏、
こういう暖かい場所を得られるなんて思ってもいなかっただろうな…
シリーズ最初から読ませていただいてたので感無量です。
そして自分が出産間近という夢を見ましたw
(一応リアル女性ですが、出産経験はありません)
疑似体験してしまうほどしっかりした描写、お見事でした。
>>141 ご拝読いただき、ありがとうございます
>こういう暖かい場所を得られるなんて思ってもいなかっただろうな…
パパ:「無数のヒトの血にまみれた自分がそれを渇望しても手に入らないし、得る資格なんて無い、と、昔から思っていたな。
今になって得られた事は素直に嬉しいが、過去の事を思うと、心中複雑だよ(苦笑」
>そして自分が(ry
夢に見るほどでしたか……
お褒めいただけて嬉しく思いますが、恐縮ものです(イヤホントニ……
いずれまた何らかの話をうpするとは思いますが、見かけた時には生温かい目で見守っていただければ幸いです
それではこの辺で( -_-)ノシ
>>143 感想ではないけど…。
「拝読」とは、読み手が筆者を敬って、
「拝読させていただきました」と使う言葉であって、
「拝読下さい」だと「有り難く読め!」になっちゃうので注意なー。
結構頻繁に使ってるみたいなので、老婆心ながら。
>>144 ご忠告、ありがとうございます
反射的に使ってる事もあるから、気をつけないとな……