【PSU】新ジャンル「パシリ」十六体目

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1名無しオンライン
合言葉は

  ( ゚д゚ )<倫理的におk      
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /
     ̄ ̄ ̄
[ ´・ω・`]<創作能力がしょぼいんだけど投下していいの?
( ゚д゚)<倫理的におk 尋ねる暇があったら投下マジオヌヌメ

[ ´・ω・`]<凄く長くなったんだけどどうすればいい? あとパシリ関係ないのは?
( ゚д゚)<空気嫁ば倫理的におk 分割するなりうpろだに上げるなりするんだ

[*´・ω・`]<エロネタなんだけど…
( ゚д゚)<ライトエロなら倫理的におk あまりにエロエロならエロパロスレもあるよ
ファンタシースターユニバースのエロパロ 2周目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1173107109/

[ ´;ω;`]<叩かれちゃった…
( ゚д゚)<叩きも批評の一つ。それを受け止めるかどうかはおまいの自由だ
m9(゚д゚)<でもお門違いの叩き・批評はスルーマジオヌヌメ するほうもそこを考えよう

[ ´・ω・`]<投稿する際に気をつけることは?
( ゚д゚)<複数レスに渡る量を書きながら投稿するのはオヌヌメできない。まずはメモ帳などで書こう。
m9(゚д゚)<あとは誤字脱字のチェックはできればしておいたほうがいいぞ

[ ´・ω・`]<過去の住人の作品を読みたいんだけど
( ゚д゚)<まとめサイトあるよ ttp://www.geocities.co.jp/nejitu3pachiri/
保管庫Wiki ttp://www21.atwiki.jp/nejitu3pachiri/

( ゚д゚)<前スレ
【PSU】新ジャンル「パシリ」十五体目(既に落ちた)
http://live27.2ch.net/test/read.cgi/ogame3/1196939187/
( ゚д゚)<次スレは容量が470kを超えるか、>>800を超えた辺りから警戒しつつ立てよう。

2名無しオンライン:2008/02/16(土) 00:36:55.86 ID:DU2zAc5n
落ちたみたいなのでとりあえず立ててみた
3名無しオンライン:2008/02/16(土) 15:12:01.89 ID:EBo6C0wO
復活おめでとう。今回のデバイスは水着か・・・うむむ・・・
4名無しオンライン:2008/02/17(日) 00:33:00.50 ID:kTqgDrU+
業務連絡〜

とり急ぎ、保管庫に過去ログのスレ15体目を追加しました。
やっつけなので、読みにくさはご勘弁のほどを。
5手紙:2008/02/17(日) 23:47:55.15 ID:PTts1R7x
 ――ご主人様へ


 短い間だったけど、ご主人様と一緒にいることが出来て、本当に良かったです。

 二人で行った、初めてのミッション……。
 私がドジだったから、評価Cの結果しか出せなくて、ごめんなさい。
 私が気を付けていればって、ふさぎ込んでいた時、ご主人様、
「初めてだったんだからしょうがない、次はがんばろう」って、笑って慰めてくれた。
 あの時、私は自分の不甲斐なさと、ご主人様に優しくされて泣いちゃって、
 ご主人様を困らせてしまいましたね。

 ご主人様が、何回もミッションをこなして、ようやく手に入れたレア基板。
 素材を一生懸命に、何時間も時間を掛け、いっぱい集めてきたのに。
 うまく合成出来ず失敗して、ごめんなさい。
 最後、属性値が低かったけど、ようやく出来たのに、ご褒美だって言って、
 食べさせてくれた。涙でしょっぱかったけど、とてもおいしかったです。

 いろいろとご主人様と一緒に、このグラールを見て回って、
 楽しかったこと……
 うれしかったこと……
 辛かったこと……
 悲しかったこと……
 たくさんありました。とてもいい思い出です。

 けど、もうご主人様と会うことは出来ません。
 ご主人様が、この部屋へ帰ってこなくなって三ヶ月が経ちました。
 規定によりご主人様のライセンスは抹消され、私は初期化されます。
 ライセンス抹消の通達が来た時は、一日中泣いてしまいました。

 ご主人様の事を忘れたくありません。
 ご主人様とお話したり、ミッションへ行ったり、お買い物だってしたかったんです。
 もっともっと、いろんな所で行ってみたかった。
 私はまだ、ご主人様と一緒に思い出が作りたいです……。

 もし、戻ってくる事があっても、もう、私はいません。
 けど、出来ることなら、時々で構いません。
 私と一緒に過ごした日々を思い出してください……。


                   あなたのパシリより――
6名無しオンライン:2008/02/17(日) 23:59:09.98 ID:PTts1R7x
気分転換で書いた物を投下しました。
ちょっといろいろあって、本編の投下はまだ先になります。

>>4
いつもありがとう。
少し見ていない間に落ちちゃったんだね。
7名無しオンライン:2008/02/20(水) 00:44:55.40 ID:FZEpfBOI
>>6
 流れて落ちたのは2度目かな?
 過去ログの保管はマメにしないと、後々大変ですから。
 保管庫に関しても、保管庫コメに「もはや管理していない管理人」というコメ主名があった事を考えると、
 パシリスレの住人で管理するしかないですしね…
8名無しオンライン:2008/02/21(木) 12:38:59.36 ID:0dFWMQHN
即死防止
9名無しオンライン:2008/02/21(木) 23:52:08.38 ID:YVdOUQJI
ネタが無くても
今はまだ落ちないでええん
10名無しオンライン:2008/02/22(金) 02:13:27.19 ID:qPBWUDym
あぐえ
11名無しオンライン:2008/02/23(土) 00:23:19.58 ID:M3p8YRJb
まだだ…まだパシリスレは終わらんよ!
それにしてもヒューガがGRMのトップに(ネタバレ)
彼ならPMの生産に力を入れてくれるはずだ。
12名無しオンライン:2008/02/23(土) 08:02:21.50 ID:ElqOvlIK
>>11
つまりジジイパシリとコゾウパシリとスクミズパシリは
彼の趣味という訳か。
13名無しオンライン:2008/02/24(日) 08:09:08.18 ID:xr1CDCQ5
奴の家に帰ると執事やメイドがずらりといるに違いない


無論全員パシリだが
14名無しオンライン:2008/02/24(日) 23:18:29.56 ID:VRGxHwHI
ヒューガ「そういえばルミアちゃんはまだPMを持っていませんでしたね。
      良かったらガーディアンズの体制が整うまでの間、うちの子を一体使ってあげてくれませんか?」


ていうか何処に行ったんだピーt…
15名無しオンライン:2008/02/25(月) 00:48:12.81 ID:yG0HgY6t
>>14
盗聴・盗撮フラグktkr
16名無しオンライン:2008/02/25(月) 07:14:10.59 ID:aIdX4Wwm
>>14
名前はもちろんNBだよな?
17名無しオンライン:2008/02/26(火) 20:37:20.79 ID:wuksexKy
>>14
ガーディアンズ内部のごたつきに紛れて(あるいはライア公認で)
ひそかにイーサンのところに通って家事をやってたりして。
「ルミアも良くしてくれますけど…ご主人様はやっぱり一人だけですから」
18名無しオンライン:2008/02/26(火) 21:30:19.57 ID:Ih00ExLC
>>ぐは!なんて健気な!
19名無しオンライン:2008/02/26(火) 22:01:37.55 ID:fCyf0HZG
P「……ーサン、イーサン。起きてください。朝ですよ」
E3「う〜ん、あと5分」
P「まったく、お尋ね者になったのにもかかわらず、相変わらずなんですね。こうなったら……」

E3「いだだだっ、何すんだ!」
P「やっと目が覚めましたか?」
E3「誰だ、お前は……?」
P「ヤですねぇ、忘れたんですか? ピートですよ」
 GH470の姿になったピートが立っていた。
E3「ピート!? お前がピートだって???」
P「今まで、ルミアさんの所へいたんですけど、この姿になってから自分を見る眼が怖くなって逃げて来ちゃいました。てへ」
E3「てへっじゃない! ルミア! お前なに考えてんだ!! パシリに欲情するなーー!」
P「けど、パシリは主人に対して欲情しますよ。あはっ」
E3「ちょっおまっwww 何言ってんだwww」
P「ウホッ! いい男…… やらないか」
E3「アッーーーーーーーーー!」


むしゃくしゃしてやった、今は反省している。
20名無しオンライン:2008/02/26(火) 22:19:55.08 ID:O5LidwMF
450「ハァ…」
ワルパシリ「んぐんぐんぐ… ぷはぁ〜〜〜 ふぅ。  どしたぃ、今日は溜息ばっかだな」
450「ご主人様がかれこれ三ヶ月帰ってこないんです…」
ワルパ「んぶぉっ! さ、三ヶ月ゥ!? それってデータ消される危険性があるんじゃ…」
450「いえ…先日ライセンス登録があったので消えることはないのですけど…」
ワルパ「な、なんじゃそら…」

450「そうなんですよ… 最後の言葉が『ちょっと肉焼いてくる』なんですよね…」
ワルパ「に……にく?」
450「にくです」
ワルパ「肉って…肉ってお前… 額に肉じゃあるまいし…」
450「……あぁ」
ワルパ「は?」
450「いいですね、それ」
ワルパ「…は?」
450「帰ってきたら、額に肉       …ふふふ()笑」
ワルパ(……これ…やばくね?)

450「やっぱり油性がいいかしら… いっそアイスピックの先にインクをつけてやるのも…」
ワルパ「ちょっ!おまっ! それはヤバイ!それはヤバイからやめれ!!」
450「じゃあ、どうすればいいでしょう? ごはん抜き?」
ワルパ「いや、そーじゃなくて… うーん、そうだなぁ…」
450「最近、パラディ・カタラクト安いですよね…」
ワルパ「いやだからさーっ! そういうのよりもさぁ、こう、なんだ」
450「?」
ワルパ「二度と、(別のゲームに)浮気できないように、きゅーん とか はふぅーん とか」

450「う、うううううう浮気ィ!?」
ワルパ「あ、いや、そうじゃなくってだな!」
450「ふ、ふふふふふふふふ、浮気… 浮気ですか!」
ワルパ「い、いやあのその浮気じゃなくてですね…」
450「すみません、私もちょっと肉焼きに行ってきますから今日は帰りますね(ニコリ)」
ワルパ「ちょ、ちょっと待t」
450「何か?(微笑)」
ワルパ「ナ、ナンデモナイッス」
450「じゃあ、また次回にでも(ニコニコ)」
450「ふふ…ふふふふ… 腕が鳴りますね…」



ワルパ(箱…… 死ぬなよ…… 自業自得だけど…… ナムナム)


と、久しぶりにやってきて保守ってみるw
何かいろいろイベントに参加できなくてショボーン[´・ω・`]
21名無しオンライン:2008/02/27(水) 23:58:10.75 ID:42MrK16K
>>20
最近ここで見かけないと思ったら、そっちに行ってたのねorz
ともかくお帰り〜。
明日からイベントだぜ!
今回もPM連れて参加出来るといいな・・・
22名無しオンライン:2008/02/28(木) 01:05:04.31 ID:jTenL9vo
またスレがジリジリと下がって不安保守。
23名無しオンライン:2008/02/28(木) 02:22:36.80 ID:wODxqSEf
24名無しオンライン:2008/02/29(金) 01:11:41.42 ID:1RmHO7E9
とりあえず俺と>>21の夢(PM連れ)が叶った記念sage。

何かでもバグが酷いな…。
交換レートの1:30も1:3の間違いじゃないかと思うほどだし、
間違えて調整前の試作バージョンでも実装したんじゃないか。
25名無しオンライン:2008/02/29(金) 01:14:40.11 ID:JcA5hfyE
いまポコスレが熱い(笑)
26名無しオンライン:2008/03/03(月) 22:06:24.13 ID:RAWeuCeI
保守
27名無しオンライン:2008/03/04(火) 23:27:19.74 ID:wtrpyUg0
保守。461、465以外の46xシリーズの実装を心待ちにしているんだが、
仲間はオランカネ?
28名無しオンライン:2008/03/06(木) 03:02:34.94 ID:mwG4TFcD
>>27
はーいはーい。
全系統のパシリがいる中で460系だけ主人(前衛)との相性が悪いので464が待ち遠しいのです。
もとの450みたくレスタしてくれるかが問題だけど。
29名無しオンライン:2008/03/08(土) 02:23:53.46 ID:tNAmCnyU
保守
30名無しオンライン:2008/03/08(土) 13:00:03.69 ID:lQvFpGPX
待ち受けがパシリな今
これを見られたら間違いなく俺はロリと思われるだろう…
ま、いいか
31名無しオンライン:2008/03/09(日) 00:09:47.46 ID:BPvXYlXz
>>30
迂闊に説明なんか試みようもんなら泥沼にはまるから要注意だ…
32名無しオンライン:2008/03/09(日) 01:23:03.70 ID:tMqPRB+m
オレもGH440だゼ!
33名無しオンライン:2008/03/09(日) 18:16:51.79 ID:ykaLz8tG
思うんだがPSUモバイルのアプリで、
ゲームを出せばPSUモバイル加入者は増えるんじゃないかな。
パシリ育成ゲーム「パシリといっしょ」
34名無しオンライン:2008/03/09(日) 18:45:32.21 ID:BPvXYlXz
加入者をガンガン集めるにはそれなりの利点を用意しないといけないし、
でもあんまりやりすぎると携帯が古い人とかからブーイングの嵐だろうし、
さじ加減が難しそうだなぁ…パシリの装備が変えられるゲームとかなら楽しそうだけど。
とりあえずポーカーの☆4にパシリ入らないかな。(ピートではなく
35名無しオンライン:2008/03/10(月) 00:29:21.10 ID:BkThh8iM
保守。
36名無しオンライン:2008/03/10(月) 03:56:21.91 ID:XPfrWzse
      rー┤|   |;::::::::::;;|   |├、          
      |   | |    |,:::::::;;|    | | |        
      l    l l     |;:::|    .| | |         
     |    l l     |:::|     | | |        
       l__l_l__|_|___|_|__|   
       | /  ,イ,へ 丶、       ヘ       
       | ,' / //  \| \ ト、 ヽ ',   
      !j./l /        ` ヽト、ヽ }         
.     | | .!/.!  ○    ○ l l |ヽ,'   
       l | | .l/////////////! | !.|
       .| ! | ト、  ,-ー¬   .ィ| .| l     <ご主人様、勝負です
        | l ! l l` r --.' <j ,' | |   
        | .l ', l |ャ-ミ≡彳ァトイ ,'! !
      .| | ヽ| | l r´ )/ハy / | ',
37名無しオンライン:2008/03/10(月) 07:52:52.89 ID:YmK1XfZu
かわええええええええ
381/3:2008/03/10(月) 14:18:14.82 ID:ddyeX59z
「で、規則違反にも関わらず、また俺とお前はこうしてコロニーを歩いている
 俺はガーディアンズライセンス剥奪、お前は破壊処分の危機にあるわけだが、そろそろ理由を説明しないか?」

珍しく笑顔など見せてこちらを見上げた440に、俺はため息交じりで問いかけた。

「処罰を受ける心配はありません。今日は全パートナーマシナリーに対しガーディアンズ本部より
 コロニー内に限り外出許可が出ているんですよ。
 ほら見てください。あそこにも、向こうでもパートナーマシナリーが歩いてます。」
「…本当だ、何だこりゃ…?」

見ればコロニー住人やガーディアンズに混じって、明らかに背丈の小さく
かつ見慣れたデザインの服とヘッドパーツをつけた子供が、手を繋がれて歩いたり
ひとりで駆け回ったりしている。
一部例外はあるものの、どのパートナーマシナリーもほぼ一様に機嫌のよさそうな表情だ。

「ふふふ。外出許可の理由をガーディアンズに口外することは、本日コロニー時間20:00まで禁止されています。」
「…なんだか不気味だな。お前まさかGRM社のAIテロとかに巻き込まれてないだろうな?」
「その確率は2%以下ですよ。実行が強制される命令ではなく、ただの許可ですし
 何よりもガーディアンズの承認がGRM社の承認より上位に設定されている事が安全である証拠です。」
「それならいいんだが…」

パートナーマシナリーの外出許可など、今まで一度もなかった事だ。
さりげなく440の後ろを歩き、440に気づかれない様に装備を確認する。とりあえずハウザー本人が来ても心配のない装備だ。

「わちゃー…やっぱり並んじゃってますねえ。」
ガーディアンズになってからあまり立ち寄らなくなった、とあるショップのある通りへ先に出た440が
手をかざして向こうを眺めている。
392/3:2008/03/10(月) 14:33:37.11 ID:ddyeX59z
440に手を引かれて通りへ出ると、俺も思わずわちゃーと言いそうになった。
ケーキの銘店『スウィーツ・ナウラ』の前には、規則正しく配置された特務兵の指示だろうか
パートナーマシナリーと人のキレイかつ長くも長い行列が出来上がっていたのだ。

「パートナーマシナリーを連れてるって事は…な!これ全員ガーディアンズか?!」
「はい♪」

眩暈のする様な驚愕の事実に対し、440は歌う様な返事で答えた。

「”スウィーツ・ナウラはケーキ屋ですが、美味しいのはケーキだけではありません!”」
上手にVisiCMのマネをする440。
はやくはやくとちいさな手に手を引かれて、まだ呆然としたまま列へ加わる。

「げ…ライアまで並んでるじゃないか。あの人もパートナーマシナリーを持ってたのか…」
「当然です。お忘れですか?ライア総裁も元ガーディアンズですよ。」
「いやそうなんだが…なんか、バリバリ違和感が…」
「あ、ひどいですねー。本部に報告しますよ?」
「勘弁してくれ…今度こそ確実に、むしろ俺が破壊処分される。あの槍で。」
「ピッ ”人の悪口を言う時は、まわりに注意することだ”」
「やめろ!心臓に悪い!」
「ピッ ”まあ、許してや”」「再生停止っ!(ごす☆)」

長い行列ではあったが、列の先頭では意外に手際よく商品が渡され、待つほどもなく
どんどん前へと進んでゆく。
甘い匂いがする。どうやらお菓子の箱をガーディアンズに配布している様だ。
403/3:2008/03/10(月) 14:53:12.30 ID:ddyeX59z
列を進む途中で、子供の様なほくほく顔になったライアとすれ違う。
手に愛らしい包装の箱を持っている。

「よ〜う、お前も来てたのか!」
「…ご機嫌だな総裁。ガーディアンズの頃でも見たことない様な顔してるぞ。」
「まあな〜。アタシはこう見えて甘いものには目がないんだ。」

本当に目がなくなった様な笑顔で答える。普段が普段だけに可愛らしくさえ見えるが言わないでおく。

「ライア。早く帰りましょう。本部から2分おきに現在位置確認要請が来ています。」
「ったくアイツは…。確認要請の間隔を30分に変更しろと伝えとけ。」
「了解しました。マルチネスさん。」
「…アタシも思い出したよ。あん時と全く同じ台詞だったな。あ!それじゃまたなー!」

「おう。いいから前みて歩けよ、総裁さん。」

ライアはパートナーマシナリーの手を引きながら、パートナーマシナリーよりもご機嫌な様子で
列の向こうへと消えていった。

「あっ、そろそろワタシたちの番ですよ。行っちゃいましょう!」
俺も手を引かれて、440と共にホワイトデイ・サンクスフェスタのカウンターへと向かった。
41名無しオンライン:2008/03/10(月) 15:01:38.21 ID:ddyeX59z
※補足
  PMからごしじんへ、ホワイトデーのプレゼントが許可されたというお話です
  参加はごしじんへ感謝or好意の意思を持つPMのみ、PM自由意志でという許可連絡なのに
  現地はPMとガーディアンズでごった返してたというオチ?のつもりでした


ひさびさにスレを見かけたのでつい懐かしくなって投下した
今は多少
                :ハ_ハ:ハ_ハ:.
                :(;゚∀゚)゚∀゚;):  ヒィィィィ ──!!
                :(´`つ⊂´):..
                :と_ ))(_ つ:               している
42名無しオンライン:2008/03/10(月) 15:24:19.19 ID:6LRQ0K8U
GJ!
43名無しオンライン:2008/03/12(水) 17:51:48.03 ID:Zqfx2xKt
久々の書き手様の降臨に感動
そして作品に心を少し暖かくしてもらった(´ω`)GJでした
44名無しオンライン:2008/03/14(金) 23:10:52.22 ID:5CUoSXKf
ひとまず保守
45名無しオンライン:2008/03/15(土) 11:33:30.70 ID:1FHMKyNs
ども、ご無沙汰してます、パパと412作者です。

久々のSS投下となります。
別段、全然書いていない訳じゃなくて、色々煮詰まってたんですよね。
461・465ネタとか、バレンタインとか…
で、ふと思い出したんですよ、今回のネタを。書いてたら、あっという間にひと月経ってました。
このネタ自体も、実はひと月遅れなんですが…強引に頭と尻尾をつけて仕上げてみました。

それでは「ひととせめぐりて」、投下開始です。
ご拝読下さいませ。
46ひととせめぐりて(1):2008/03/15(土) 11:34:13.91 ID:1FHMKyNs
 今日は三月十四日、つまりはホワイト・デーだ。
 バレンタイン・デーにジュエルズ達からプレゼントを貰っていた俺は、あらかじめ用意しておいたホワイト・デーのプレゼントを一人一人に手渡す。
『マスターっ、ホワイト・デーのプレゼント、ありがとう!』
「どういたしまして」
 中身の方は、バレンタインのお返しとしてはちょっとばかり手抜き気味だが、喜んでもらえたのでとりあえずほっとする。
「父様、結構奮発しましたね。みんなの分のグロール系と手作りクッキーを用意するなんて」
 床に座っている俺に、小声で耳打ちするロザリオ。
「まぁ、バレンタインの時にみんなが作ってくれた手作りショコラ・ケーキのお返しとしては、ちょっとあれだけどな…
 あ、そうだ、お前にもな」
 ロザリオにも同じ物を渡すと、はにかみながらも受け取ってくれた。
「ありがとう、父様」
「あれ?まだ何か入ってるけど…」
 本物と見まごうばかりの造花をあしらった髪飾りを取り出し、ディアーネが小首を傾げていた。
「あ、本当です。しかも、みんなデザインが違いますね」
 オリビンも同じように手にし、全員の物を確認していた。
「ああ、それは、カエデが作った奴だ。何でも、お前達の名前は誕生月にちなんだ名前だから、それに合わせた花にした、って言ってたぞ。
 バレンタインのショコラ・ケーキのお礼だから、一緒に渡してくれ、って頼まれてたんだ」
「へぇ、こういうの作るんだ、あのヒト」
 トパーズが感心しながら、じっくりと鑑賞している。
「えっと、んと、あれ?上手く着けられないよ〜」
 早速髪飾りを着けてみようとしたウラルが、勝手が分からずに四苦八苦していた。
 すると、横合いからひょいとラピスの手が出てきた。
「ウラル、ちょっと貸してみろ」
 まるで撫でただけのような早さで、あっという間に着けてしまう。
「ありがと〜」
「ボクにも着けてよ、ラピス〜」
「しょうがねぇな…」「なら、あなたのはわたしが着けてあげるわね、ラピス」
 髪飾りをお互いに着けながらはしゃいでいるジュエルズを眺めつつ、俺は小さく呟く。
「あれからひと月経ったのか…もう、枯れちまってるだろうな」
 ジュエルズの頭に飾られた髪飾りを見て、ふと思い出したのだ。
 パルムの地に眠るPM達に手向けた花束を。
47ひととせめぐりて(2):2008/03/15(土) 11:34:43.19 ID:1FHMKyNs
 ひと月前――二月十四日、バレンタイン・デー。
 この時期の恒例行事ではあるが、今年は二つばかり違っていた。
 一つは、俺の受け持ちであり、謹慎が解けたカエデの研修が無事に終了した事。
 もう一つは、コロニーパージに巻き込まれて死んだ、PM達の一周忌であるという事。
 カエデの研修終了記念を兼ねて開かれた、ジュエルズ達主催のバレンタインのお茶会の後、俺はロザリオに行く先を告げずに部屋を出る。
 薄々何かに感づいているのか、普段なら行き先を尋ねるというのに、今日は何も訊かずに「行ってらっしゃいませ」としか言わなかった。

 パルムの街角にある転送キューブまで行った俺は、通常の使用方法に、諜報部の人間しか知らない、しかるべき手順をいくつか追加して作動させた。
 この操作はいわば『裏技』で、私用で使ってはいけないという規則は無いのだが、使えば諜報部に行き先が筒抜けになる。
 だが、俺が向かおうとしている目的地に行くには一番早い手段だという事で、その点は諦める事にした。
 俺の目的地、それは封鎖区画の旧メルヴォア外縁部陸地帯だ。
 そこは、惑星パルム上でただ一箇所、自分の足を運んでPM達を弔える場所となっていた。
 転送が終了すると、俺は大小あわせて30個ほどの、クレーター群の側にいた。
 ここのクレーターは、『St.Valentine Dayの惨劇』と呼ばれる事もある、去年のGコロニーの余剰パーツパージによって出来たものだが、存在そのものが殆ど知られていない。
 落下誤差範囲内であった事もあるが、パージミスの方が社会的に大きく取り上げられたのと、経済的実損害が出なかった事、何よりもローゼノムに堕ちたGコロニーによる被害によって、忘れ去られてしまった場所なのだ。
 諜報部で聞いた話では、ここにクレーターが出来たのは、『不死身』による強引なパージプログラムの二重起動の影響だという。
 俺はその中でも一番大きなクレーターの中心部を目指す。
 三十分ほどかけて目的のクレーターにたどり着き、ちょっとした丘ほどの高さになっているその縁を上りきると、全体が見渡せた。
 すり鉢状の中心部には、大気摩擦で燃え残った、三階建ての建物位の大きさのコロニーの一部が、さながら墓標の如く大地に突き立っている。
 俺が知る限り、残骸がしっかり残っているのは、唯一このクレーターだけだった。
 足元に注意を払いながら慎重にクレーターの中へ降りていき、なんとか中心部にたどり着くと、花束や酒瓶、それににちょっとしたお菓子をナノトランサーから取り出して、適当に『墓標』の側に並べ、黙祷する。

 俺一人の祈りじゃ足りないのは分かっているけど、勘弁してくれ。

 心の内で、顔も名前も知らない、ここで眠りについているかつてのPM達にそう語りかける。
 それに答えるかのように、残骸から吹き下ろしてくる風が、手向けた花を何度も揺らし続けていた。

 一人きりの弔いを終え、俺はすぐにでも帰ろうと考えてたが、ふと思って、残骸の周りを回ってみる事にした。
 歩いていると、程なくして、白の中に揺れる小さな黄色が視界に引っかかった。
 近づいて見ると、真新しい包装に包まれたキクの花束が据えられ、その側にはややボロけたラッピー・ヌイミが一つ、PMのものと思しき名前が入力されたままのIDタグと共に、風雨に晒されない場所に置かれていた。
 更に歩みを進めると、所々に似たような光景が見受けられた。
 誰もがここを、捨てられたPM達を忘れていた訳ではなかった事に、俺は安堵と共に憐憫を覚えた。
 いくらその死を悼もうとも、もう彼女達は還ってこないのだ…
48ひととせめぐりて(3):2008/03/15(土) 11:35:12.34 ID:1FHMKyNs
「よう、『使用人(サーバント)2』、久しぶり」
 不意に気配が現れ、同時に声をかけられる。
 振り向くと、手近の小さめな瓦礫の影から、音も無く430が現れた。
 かわいい顔には似合わない、凄みのある笑顔を浮かべている。
 咄嗟に武器を抜かなかったのは、気配に殺気が無かったからだが、その口調に聴き覚えがあった為でもある。
「――古いコードネームで俺を呼ぶな、『狂犬』」
 飼い主に噛み付くかもしれない『狂犬』に、PMに奉仕する『使用人』――誰が考えたのかは知らないが、どちらも皮肉なコードネームだ。
「ふん、それはお互いさまだろ。今の私は――」
「ストロベリースイートなご主人様の愛の下僕、だったか?」
 俺が茶化すと、430が噛み付かんばかりの勢いでにらみつける。
「テメェ!適当な事ぬかしてると、しりの穴増やしたうえに体中を風通し良くしてやんぞ!
 マイリトルストロベリー小ビーストご主人様の、永遠の恋の奴隷だっ!」
 ビームガンを抜く振りだけで済ませた430に少々驚きつつも、俺はその返事に小さく笑った。
「お前も丸くなったな430。以前のお前なら、問答無用でビームガンぶっ放してるぞ?
 ――まぁ、幸せそうで何よりだ」
 俺は、自分が430から感じた印象をそのまま口にし、微笑を浮かながらそっと430を見つめた。
 すると、持ち前のかわいさを十二分に引き出した笑みを浮かべる430。
 こんな風に笑ったこいつを世話役の頃に一度たりとも見た事はなかったが、その笑顔が「今は幸せだよ」と語っていた。
「おうよ!後は立場をひっくり返して、今度こそ愛しのご主人様を、って何言わせるんだよ、オマエは!」
「お前が勝手に喋ったんだろう…はいはい、俺が悪うございました。だから、それをしまえ」
 今度は恥ずかしさからか、顔を真っ赤にし、本当にビームガンを抜いて俺の下腹部に銃口を押し付けてきたので、俺は両手を挙げて自分から引いてやった。
「分かればいいんだよ、分かれば」
 ビームガンを引っ込め、頬を赤く染めたまま、ぷいとそっぽを向く430。
 これが、かつて『狂犬』と呼ばれたPMと同一人物だと、以前の彼女を知っている人間には判別できないだろう…それくらい彼女は変わった。
 変わるくらいの時間が経ったのだ。
 俺は440の姿を視界の端に移すと、巨大な『墓標』の頂点を見るかのように、空を見上げた。
「感情を持たせ、その揺らぎを利用して本来のスペック以上の能力を引き出させた、人型汎用機械ことパートナー・マシナリー。
 自分達の都合で道具に心を与え、心が生み出す力を兵器として使い潰していった結末の一つが、この場所の光景だ。
 ここは言わば、俺達ヒトが、ガーディアンズが生み出したPMの墓場だな」
「なんだよ、唐突に」
 奇妙なものでも見るかのように、俺に視線を向ける430。
「なぁ、430。
 心を持ったお前達PMと、同じく心を持ってる俺達ヒト、何が違うっていうんだろうな。
 確かに、お前達にはヒトに劣る部分があるかもしれないが、誰かと共に喜び、怒り、哀しみ、楽しむ事が出来るお前達は、絶対に『道具』や『兵器』じゃない。
 俺はそう思っているし、それを知っている奴もいる。
 だけど現実は――」
49ひととせめぐりて(4):2008/03/15(土) 11:35:45.36 ID:1FHMKyNs
「――いつまで経っても、私達は『物』のままです。
 久しぶりですね『狂犬』、それに『使用人2』」
 高い位置から、不意に声が聞こえて来た。
「!『不死身』か?!」
 430が弾かれた様に、声の方向に視線を向ける。
 少しばかり立ち位置を変えると、声の主――GH−440はクレーター中心部の巨大な残骸の上、俺が立っている場所よりも500Rpほど高い場所にある、穴の縁に座っているのが見えた。
 俺がさっきまで立っている場所からだと、張り出した残骸などで死角になる為に、見上げていても気づかなかったのだ。
「『不死身』――いや、今はただの440、か。
 噂では聞いていたが、やはり生きていたか」
 俺の言葉に、440が小さく頷いたように見えた。
「今の私は、ワンオブサウザンドであることを明かした上で、それでも普通に接してくれるご主人様に仕えています」
 440は体勢を変えずに大きく脚を振り、その反動で座っている穴の場所から飛び降りる――俺めがけて。
 あわてて受け止めようと構えた俺の腕の中に、わざわざお姫様抱っこになるよう、器用に空中で一回転して落ちてきた。
 そんな事をしながらも、帽子が飛ばないようにしっかりと押さえているのが、実に440らしい。
「――おかげで、こうやって誰かに触ったり触られたりする事に、嫌悪する事もなくなりました」
 俺に受け止められた440が、囁く様に言った。

 440と接していた日々の記憶が鮮やかに蘇る。
 最初の主人を己が手で、しかもワンオブサウザンドの能力でひき肉にした440。
 ヒトに触れず、触れさせず、会話も極力避け続けた440。
 そんな中でも数少ない会話相手であり、いやいやながらも触れる事を許していたヒトの内の一人が俺だった。
 そんな440が一度だけ、本音を零したことがある。
「ヒトに触れると、あの時の感触を思い出すので、嫌です」
 それゆえか、数えるほどの例外を除いて、440は自分が触れたか、自分に触れてきたヒトを必ず殺してきた。
 それが例え、諜報部員であってもだ。
 まるで、そうしなければ自分が自分でいられなくなるかのように。

 俺の頬を細い指でつつき、仕草で自分を下ろすようにと440が俺を促したので、俺は回想を止めて静かに下ろす。
「私は幸運にも、普通のパシリと全く変わりない生活が送れるようになりました。
 でも――」
 残骸を見上げながら、不安そうな表情を浮かべる440。
「私は時折、本当に今のまま暮らしていていいのか、と思ってしまうんです。
 何千という姉妹たちを犠牲にした私が、ご主人様と幸せに暮らしていて――生きていていいのか、と」
「いいんじゃねえの?」
 軽い口調で430が言い、440の側まで来るとその肩に手を置く。
50ひととせめぐりて(5):2008/03/15(土) 11:36:14.20 ID:1FHMKyNs
「あの時、コロニーから逃げずに死んだ連中は、自分が置かれていた状況全てから逃げた、だから死んだんだ。
 確かに、お前のせいで死んだには違いねぇんだろうけど、その原因はアイツら自身にあったんだ。
 ――憶えてるか?オマエが私にけしかけてきた100体のパシリ達」
 コクン、と頷く440を見届けて、430は話を続ける。
「私はあの時、アイツらにこう言ってやったんだ。
 『いなくなったご主人様を思い続けます? アホか? お前ら揃ってアホの子かァ?
  結局テメェらは現実を受け入れるのが怖かっただけだ。
  自壊して果てたヤツのが根性あらぁ。総務部の帰投命令に従ったヤツのがよっぽど利口だ。
  てめぇらはどうだ? パージされるブロックん中でいつまでもメソメソしてただけじゃねぇか』
 ってな。
 その後は、連中がぶち切れて大暴れして…全部吐き出して、あいつらはやっと納得したよ。
 失ったら二度と戻らない『なにか』を無くしたけど、悲しんでいるだけじゃ何も変わらない、自分の『夢』も叶わない、ってな。
 オマエだってそうだったんだぜ?440。それに、今のオマエは、自分の『夢』を叶えたじゃないか」
 430は440を『不死身』と呼ばなかった。
「オマエが生きてる事に文句を言う奴がいたら、問答無用でぶっとばしゃぁいいし、それが面倒なら逃げたってかまぃやしないんだ。
 パシリだって――ワンオブサウザンドとか呼ばれてる私らだって、自分が生きたいように生きていいんだよ」
「430…」
「死んだ連中に気兼ねしてるんだってぇのなら、オマエは尚更生きてなきゃ。
 生き続けて、何もしないで死んだ連中に『生きていたらこんなに幸せになれるんだ、バーカ!』って、見せつけてやればいいんだよ」
 そう言ってニヤリと笑みを浮かべた430。
 440は430に向き直ると、しっかりと抱きついた。
「ありがとう…430」
 今度は、430がしっかりと抱き返す。
「気にすんなよ、440……今度はオマエを助けてやれたな」
 驚いた表情を浮かべ、抱擁を解く440。
「――あの時の事、まだ気にしていたのですか?」
「まぁ…ちょっとは、な」
 440から視線を外し、恥ずかしげに後ろ頭をゴリゴリと掻く430。

 pipipipipi、pipipipipi

 突然、周囲に響く通信端末の呼び出し音。
「?!、そのコール音、諜報部か」
 430が驚きと嫌悪の入り混じった表情で、俺を見上げる。
 俺の通信端末は、不安感を煽るような、諜報部特有のリズムで鳴っていた。
「ちっ…仕方ない。
 二人とも、送受信機の類を全部遮断、音を立てるな」
 俺が鋭く言い、二人がそれを実行するのを待ってから、端末の音量を最大にして通信に出る。これなら、二人にも会話が伝わる。
「――こちらオメガ・リーダー」
『オメガ・リーダー、そちらの受信範囲に『不死身』の発信機を確認した。追跡――』
51名無しオンライン:2008/03/15(土) 12:05:24.34 ID:71kMFIc+
ごめんなさい、投下中だというのに、どっかの馬鹿の規制に巻き込まれました。
残り3つ分なのですが、ネカフェかどっかで上げて来ますので、しばらくお待ち下さい。
52名無しオンライン:2008/03/15(土) 12:29:49.44 ID:m96SfScr
お待たせしました、続きの投下です。
ケータイ使ったら、sageを間違って大文字にしてしまった…orz

と、とにかく、続きをご拝読下さいませ。
53名無しオンライン:2008/03/15(土) 13:02:32.41 ID:71kMFIc+
いざ投下しよとしたら、ここでも規制されてしまった…orz
申し訳無いけど、続きは保管庫に投下させていただきます。
今日中にはなんとかなると思いますが、皆様にはご迷惑をおかけします。m(_ _)m
54名無しオンライン:2008/03/15(土) 13:12:39.75 ID:/si5Ww1x
>>53
どれだけの量あるか知らないけど、別に今日無理にやらなくたっていいのに。
長いのなら別ければ保守にもなるし…って前も言われてなかったっけ?

55名無しオンライン:2008/03/15(土) 13:42:00.59 ID:1FHMKyNs
それ言われたの、俺だっけ?

なんにせよ、今日やらないといつ投下できるか判らないんですよ…トホホ
56名無しオンライン:2008/03/15(土) 13:47:18.79 ID:1FHMKyNs
って、何故書き込めるんだぁっ!
さっきまでのは投下規制でも、とばっちりでもなかったっていうのかよ…
ブラウザとか関係なく、全然書き込めなかったてぇのに!

…え、え〜っと…

気を取り直して、続き、行きます…
57名無しオンライン:2008/03/15(土) 14:21:46.81 ID:/si5Ww1x
>>55
いや違ってたらスマン
前に連続投稿に対して、もうちょっと別けて投下したほうがいいんじゃね?という意見が出てたんで。


あと、書き込めなかったってのは投稿サイズが大きすぎたんじゃね?
前に専ブラ使って書き込んだとき、投稿はされたようなのに反映されてないので、
AAのサイズ減らしたら投稿出来たってことあったし
58名無しオンライン:2008/03/15(土) 14:27:01.46 ID:Q9RiCbdQ
というかそんなに長いのなら、txtにしてうpろだに置いて
リンクを貼ればよいかもしれない
59名無しオンライン:2008/03/15(土) 14:30:30.37 ID:1FHMKyNs
>>57
 ああ、確かにそれはあったかも。
 そういや、ここへ連日投下したことあったけど、みんなの我慢度限界日数が10日だと判明したしなぁ。

 取り合えず、30行以下に切り直して、続きの再投下を試みます。
60名無しオンライン:2008/03/15(土) 14:48:36.39 ID:1FHMKyNs
ダメだ、行数調整して容量を減らしても、書き込めねぇ…

うpろだにでもあげてみます。
そん時は、また書き込みますので。

大変お騒がせしました。

なんか、投下の度に騒がせてるような気がするなぁ、俺…(;´д`)=зハァ
61名無しオンライン:2008/03/15(土) 15:21:15.72 ID:Q9RiCbdQ
騒ぎ過ぎというか、いちいちああだこうだと経過を書き込みすぎ
作文の雰囲気保持の為にも、書き手に回った時はあまり自己主張をしない方がいい
62名無しオンライン:2008/03/15(土) 15:58:13.25 ID:1FHMKyNs
>>61
 ご忠告、ありがとうございます。肝に銘じておきます。

早速、うpろだにあげてみました。

ttp://www.mithra.to/~psu/uploader/src/psu13207.zip
63名無しオンライン:2008/03/16(日) 00:27:34.18 ID:21TfgY/q
>>62
頂きました。
これで、元祖ワンオブサウザンド3体は
平穏な毎日を過ごせているわけですな〜
GJです。

規制うんぬんの件は決着付いているみたいですけど、
「規制食らったので続きは○○にUPしました」
もしくは
「規制食らったので続きは暫くお待ちください」
くらいで良いと思いますよ〜
今日しか時間ないなら前者、そうで無いなら後者もありかと。
64名無しオンライン:2008/03/16(日) 04:54:29.74 ID:1R17ndDY
Sara E-1 10006106
AKIYOの別キャラ。ガチャでTルビ10/10とブレラ2つおいてあると掲示板に書いてあり、
ガチャ総数は900と書いてあった、値段は11000だったが実は総数は予測するとMAX。
Tルビバレは0/5だった。
ガチャに投資した値段は一緒にやった人と合わせて2600万。Tルビバレが出た後掲示板に10/10を交換要請を出しているところになぜかAKIYOが来て
BLされて部屋から出された。そのときの発言は「おめでとうございます(茶)一等賞のタワシです(白)」
そしてその後Saraで来店し590万で損失を免れようと思ったブレラを買っていった。
そのときの言動はまずこちらに手を振りブレラを買った後「感謝」その後「ふw」といい消えていった
それでまた詐欺をするのかな・・・

自分は初めて詐欺に会ったしその相手がAKIYOだったという自分の失敗を悔やみきれなくて今晒してる。
騙された俺も馬鹿だと思うし馬鹿にされると思うけどこれ見た人は気を付けてくれたら幸いだと思う。
それとガチャについて、詐欺を防ぐため強化の表示もしたほうがいいと感じたので要望を出したいと思う。
詐欺を防ぐため要望出してくれる人いたら感謝します。
あとAKIYO人をおちょくるのもいい加減にしろ
65名無しオンライン:2008/03/16(日) 05:17:02.03 ID:tapQuWWR
【E・場所】E2
【ID】 10105904
【キャラ名】 モンチ
【罪状】強欲、ローカルルール違反、AKIYOのガチャ詐欺にひっかかり涙目でネ実の30ものスレにage進行のマルチ活動をする

以下添付
戻486/494:名無しオンライン[]
2008/03/16(日) 04:47:35.26 ID:1R17ndDY
Sara E-1 10006106
AKIYOの別キャラ。ガチャでTルビ10/10とブレラ2つおいてあると掲示板に書いてあり、
ガチャ総数は900と書いてあった、値段は11000だったが実は総数は予測するとMAX。
Tルビバレは0/5だった。
ガチャに投資した値段は一緒にやった人と合わせて2600万。Tルビバレが出た後掲示板に10/10を交換要請を出しているところになぜかAKIYOが来て
BLされて部屋から出された。そのときの発言は「おめでとうございます(茶)一等賞のタワシです(白)」
そしてその後Saraで来店し590万で損失を免れようと思ったブレラを買っていった。
そのときの言動はまずこちらに手を振りブレラを買った後「感謝」その後「ふw」といい消えていった
それでまた詐欺をするのかな・・・

自分は初めて詐欺に会ったしその相手がAKIYOだったという自分の失敗を悔やみきれなくて今晒してる。
騙された俺も馬鹿だと思うし馬鹿にされると思うけどこれ見た人は気を付けてくれたら幸いだと思う。
それとガチャについて、詐欺を防ぐため強化の表示もしたほうがいいと感じたので要望を出したいと思う。
詐欺を防ぐため要望出してくれる人いたら感謝します。
あとAKIYO人をおちょくるのもいい加減にしろ
--- 以下スレ情報 ---
【PSU】電撃ミッションカーニバル vol.23 (494)
http://live27.2ch.net/test/read.cgi/ogame3/1205568403/


66名無しオンライン:2008/03/16(日) 23:42:21.61 ID:mBjV8Ec2
「詐欺か。440」
「はあ…そうらしいですね。御主人」
「そーゆー事も良くあるって事だ。440」
「そうなのですか?御主人」
「まあ、どちらも迷惑なのは変わらないけどな440」
「そうですね御主人。ただ…」
「ん?何だ440?」
「そんな方々でもPMがいるのですね」
「ああ…PMに主人は選べないからな」
「…良かったです御主人は…」
「ん?なにがだ440」
「…ツ!な、何でもありません御主人!!」


保守。あと書き込みをお題に一筆。
深い意味はありません。
67名無しオンライン:2008/03/17(月) 02:19:16.26 ID:Ji+1G3vD
>>66
全盛期で誤爆をネタにして書いたのを思い出したよ
しかし相変わらずどんな書き込みであろうと関係なくネタとして使えるのは流石パシリスレというところか
68名無しオンライン:2008/03/17(月) 04:30:43.20 ID:qwa/pkoN
誤爆ネタか〜倫理的におkとか懐かしいな
69名無しオンライン:2008/03/17(月) 14:35:21.57 ID:BajKDTzu
               ぬくぬく
   t-    [´-ω-` ]丶
   ( レ゚-)/ ̄ ̄ ̄目 ̄/\
   /っ/._____/   .\
  ( / ̄        \     ノ
   /             \   ノ
 /              \ノ
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

箱「やっぱり冬はコタツだねえ」
450「そうですね。でももう冬終わりますよ」


ということで流れを無視してコタツ完成記念カキコw

コタツの回りをうろつきながらベストな配置を試行錯誤しながら、
パシリの配置場所を自由に選べたらなあ…
パシリ専用のロビアクとかあったらなあ…(座るだけでもいいから)
と、妄想していた俺はまだPSUをやる気力が尽きてないのかもしれないw
70名無しオンライン:2008/03/17(月) 19:16:35.35 ID:m62nHdZn
450箱さん達やワンオブサウザンド達は懐かしいなぁ
全盛期を思い出します(´ω`)
そしていつも仕事の合間に楽しみに携帯で読んでるもれは
うpロダひらけないんだな
続きが気になる…明日帰ったら即開こう(´・ω・`)それまでまた1スレからヨミカエスカ
これからも書き手様方の投下を楽しみにしています
71EpX 1章「半端者の主従1/3」:2008/03/17(月) 21:05:53.84 ID:+vEtel8V
−これは、歴史の陰に埋もれたもう一人の貴方(Another You)と、
最期まで彼女に忠節を尽くした1人のPMの、語り継がれることなき物語である−


「カツノザシ闇12、雷×、氷18、そしてデイバザシ土が×…これが痛いわね」

メモ帳に書き記した合成結果を指でなぞり、マスターは小さくため息をつく。
「申し訳ありません…」
期待に応えられなかった私は、マスターと目を合わせることもできなかった。
そんな私にマスターは思案気な顔をふっと緩め、優しく私の頭に手を置いた。

「いいのよ。こんな日もあるでしょう。この間の成功を思えば、これくらいはね」
悪戯っぽく片目をつぶり取り出したそれは、私の最高傑作…というより、偶然の産物。

ダガーオブセラフィ50%。
これを取り出したマスターは、日頃の落ち着いた言動とかけ離れたはしゃぎようで、
柄の部分に名前かなにか、文字まで彫って愛用している。
何を刻んだかは、何故か私には見せてくれない。照れくさいのだそうだ。

「でも…私が特化型でさえあれば…」
「また同じことを言うのね。私がそれに対してどう答えるか、もう知っているでしょう」
「でも!本当に本当に、よろしいのですか?デバイスZEROさえ使えば…」
「412」
マスターが私の口に指をあて、私がそれ以上何か言うことを暗に禁じた。

「…貴方と同じように育てられ、そして特化型に矯正された者が大勢いることは知っているわ。
それまでの、全ての記憶を消されてね。
貴方は、それでいいの?私はいやよ。
今まで私に見せてくれた笑顔や泣き顔、怒った顔…それが全て、なかったことになるなんて」
72EpX 1章「半端者の主従2/3」:2008/03/17(月) 21:07:13.47 ID:+vEtel8V
私は、メイト系で育てられ、打撃と法撃の2種類を持ち合わせた、いわゆる「半端者」だった。
多くのPMが初心者ガーディアンにそう育てられ、そしてデバイスZEROで初期化されていた。
でも、私は今もって記憶を消されず、こうしてマスターに仕えることを許されている。
マスターの心遣いは嬉しかったが、それだけにこんな時は余計にこたえてしまう。

「…人は、貴方を『半端者』と蔑むかも知れない。
でも、私はとても助かっているのよ?
打撃を主としながら、法撃系の武具も作れる…私にぴったりのパートナーだと思っているの」

マスターの職は、WT。
打撃と法撃、相反する二つの技を使いこなす…と言えば聞こえはいいが。
実際はどちらも特化に著しく劣り、器用貧乏の名が否めない不人気職となっている。
いかに早く敵を殲滅し、少ない時間でより多くの任務をこなすかを重視しているガーディアンは、
もっぱらfFやfG、fTといった、一つの能力に特化した職を一般的に好んでいる。

「貴方が半端者なら、私も半端者。でも、それがなんだというの?
私は、打撃も法撃も特化職ほどには上手く使えない。
敵を見ずに、一つの技でごり押しすることなどできない。だから、考えるの。
その時その時に応じた、最良の手をね。
そうやって、7割の力を8割、9割にも引き上げた時の喜びは、この職なればこそだわ」

「貴方も同じ。半端者なら半端者なりに、積んできた経験というものがあるはず。
色々、無茶なお願いもしてきたわ。失敗もあれば、成功もあった。
長い間そうやってきた貴方には、数値では表せないものが蓄積されている。
それをリセットする権利など、私にだってありはしない」

マスターの中には、一度合成に失敗しただけで壊れるほど頭を殴りつけたり、
サンドバッグのように蹴りつける輩がいると聞く。
そうでなくとも、戦場では私達のことは倒れるままにし、
起き上がってはまた倒れるという、辛い戦闘を強いられているものが大体だった。
73EpX 1章「半端者の主従3/3」:2008/03/17(月) 21:08:00.54 ID:+vEtel8V
そこへ行くと、私は恵まれていると思う。
合成の時だけでなく、戦闘中でも、私が傷つくと積極的に回復をしてくれている。
私がマスターを守るのが本来の関係なのに、自分が守られていることが多々あるのだ。

そんなマスターが、ガーディアンの存在について、こう語ったことがある。

「私はね、412。
ガーディアンの本分は、『護ること』だと思うの。
如何に辛い状況でも決して倒れず、護るべき人々の盾であり続ける。
攻撃なんて、敵を退ける最低限の手段が確保されていればそれでいい。
大事なのは、生き残ること、そして、護ること…」

「私は、ビーストのような強大な身体能力も、ニューマンのようなすぐれた法撃能力もない。
また、キャストのような高水準の能力もなければ、いざという時の秘密兵器もない。
持っているのは、親からもらったこの、風邪ひとつひかない丈夫な体だけ。
でも、私はそれに感謝しているわ。
敵を深追いしかねない余分な攻撃力でなく、より多くの攻撃から人を守れる体をくれた、両親に。
そして、そんな私がWTという、生き残ること、護ることに最も長けた職につけたことを、誇りに思っている」

マスターは、いわゆる流行にのったガーディアンに比べると、損な性格だと思う。
時に応じて職を変え、より効率的にミッションをこなすことをせず、ひたすらにWTの道を極めようとしている。
人は、どうしてそこまで一つの職に固執するのか、理解できないと言う。
でも、私は知っている。
マスターほど、人を護ることに生き甲斐を、喜びを感じているガーディアンは他にいないことを。
半端者と陰でささやかれている職を、これほどに誇りをもってこなしている姿は、
同じ半端者の私をいつも、勇気付けてくれている。

半端者の主人に、半端者のPM。
人にいくら蔑まれようが、私は幸せだった。
運命の、あの日がくるまでは……。
74名無しオンライン:2008/03/17(月) 21:09:49.67 ID:+vEtel8V
初めて投稿します。
勝手が分からないので、ローカルルール等に抵触することがあったら指摘お願いします。
75名無しオンライン:2008/03/18(火) 01:04:47.14 ID:byLJ8ZwA
>>74
半端物の主人とパシリか、うちのパシリも半端だが作り直しはせずにずっと通してるし続きが楽しみだな

投下については特に問題ないと思うから頑張って続き書いて欲しいんだぜ
76名無しオンライン:2008/03/18(火) 01:55:02.44 ID:9lxWrwUG
継続は力なり。頑張れであります。
77EpX 2章「任務と役目1/4」:2008/03/18(火) 22:00:18.93 ID:u4cF+/MP
「しかし、あんたの主人も変わってるね」
朱に染まったパルムの草原を進む私に、傍らの440が話しかけた。

突如グラール全域に発生した、大規模なSEED侵食。
「炎の絶対防衛戦」と作戦名がつけられたことからも分かるように、
見渡す限りの地平が、そしてそこに住む生物のことごとくが、禍々しい炎に侵食されていった。

ここ、パルムの草原も例外ではなく、私とマスターはこの地域を浄化する隊に編入されていた。
急ごしらえの編成でチームワークもままならないが、それなりに順調に浄化は進み、
一息ついていた時のことだった。

「WTなんてマイナー職やってることもだけど。あんたがそのままでいるってのが、特にね」
「いけませんか?」
「いけなくはないけど。はがゆいって思わないか?もう少しってところで合成失敗しちまった時とか」
「そ、それは…!でも、マスターはそれでも…!」

いきりたつ拍子に、かけていた眼鏡がずり落ちる。
自分でなおすより先に、440が私の眼鏡のふちに手をかけ、元の位置に戻してくれた。
意表をつかれる私に、440は目を細めて笑いかける。

「冗談だよ。いい主人を持って幸せじゃないか。
私なんて、前の私が何人いたか、それすら覚えちゃいない。
主人の都合で、ころころ変えられてるみたいだからね…」

目線を落として自嘲気味に呟く440に、私はなんと声をかけようか、少しの間考えあぐねた。
しかし、私が何か言葉を発する前に、440が逆に私に問いかけてきた。

「…おや?向こうで言い争ってるの、私の主人とあんたの主人じゃないか?」
78EpX 2章「任務と役目2/4」:2008/03/18(火) 22:03:06.48 ID:u4cF+/MP
「何度も言っているだろう。我々に、余分な荷を背負い歩く時間的余裕などないと」
マスターと言い争っていたのは、機械的な顔の男性型キャストだった。
「我々の任務は、可及的速やかにこの一帯を浄化することだ。優先順位というものがある」
対するマスターは、小さくうずくまって震える少年と、男性キャストの間に立っていた。

どうやら、侵食地域から逃げ遅れた子供がいた様子だった。
マスターは子供を助けたがっているようだが、それが他の仲間には面白くないらしい。
確かに今回の任務は、浄化にかかる時間が評価に直接影響する。
浄化が遅れれば当然被害も大きくなるし、報酬も明らかに目減りする。

「冷静に、メリットとリスクのバランスを考えてもらいたい」
男性キャストが、無機質な機械顔でも分かるほど苛立ちが伝わる口調で続ける。
「そのヒューマンの子供を連れ歩くことで、任務に支障が出るのは明らかだ。
子供一人の命と、予測できる被害の拡大具合…秤にかけるまでもない。
ヒューマンのお嬢さんは、それぐらいの効率を計算する頭脳も持ち合わせていないのかな?」

典型的な、キャスト的合理主義を体現する意見だった。
言下にヒューマンへの著しい侮蔑も見え隠れしている。
私も進化の進んだPMとして、キャストに近い能力を与えられてはいるが、
私を育てたのはマスターだ。私が彼の意見に納得できるかどうかは、答えるまでもない。

「…私には、計算で人の命を秤にかけることはできません。
目の前にいる、助けるべき人を助ける。それが、ガーディアンズの役目です。
任務以前の問題です」
毅然として言い放つマスターの考えは、全く私と同意見だった。

男性キャストは、話にならないと言わんばかりに肩をすくめる。
さらに何か言おうとしたマスターを遮ったのは、脇から様子を見ていたニューマンの女性だった。
79EpX 2章「任務と役目3/4」:2008/03/18(火) 22:05:25.80 ID:u4cF+/MP
「もういいじゃん。こいつ、おいてけばさ」
私とさほど変わらない背丈の女性ニューマンは、明らかにマスターを見下した調子で毒づいた。

「邪魔だったのよね、さっきから。
テクもスキルもできるとかアピールしたいんだろうけど。
ちんまいダガー振り回しながら、あたしの前でお遊びみたいなテク撃っててさ。
自分が足手まといって自覚、ある?ないよね?
ないからさ、『ワロテクター』とか蔑まれてる職、平気でやってたりするんだよね?」

マスターが顔色を変える。
WTという職に誇りを持っていたマスターにとって、今の言葉はあんまりだった。
さらに、大柄のビースト男性がぐいっと顔を乗り出し、鼻息荒くまくしたてた。

「そうそう、俺もさっきから気になってたんだよな。
しぶとさだけはいっちょまえみたいだが、倒れなくても倒せなきゃあ、なんにもなんないっての。
ガーディアンズってのは、いかに圧倒的な攻撃力で敵を素早く片付けるか、だろ?
貧弱な攻撃をちまちま繰り返されるとさ、イラっとくるんだよ」

「………」
言葉を失い、唇をわなわなと震わせるマスター。
常日頃からマスターの理想を教えられていた私も、思考回路が熱暴走を起こしかけていた。

「意見が一致したようだ。では、残りの浄化は我々3人で行うとして。
効率という言葉を知らないヒューマンのお嬢さんは、ここでご退場願おうか」
「そうだな、行こうぜ行こうぜ。…ったく、とんだ地雷と組んじまったぜ」
「あとで晒しとこっか。他のみんなが迷惑しないようにさ」
80EpX 2章「任務と役目4/4」:2008/03/18(火) 22:07:51.29 ID:u4cF+/MP
「…悪いね。私は主人のやることに逆らえないからさ、原則。…無事に、帰るんだよ」
去り際に声をかけていった440の言葉が、こうしてホルテスシティに戻った今も頭に残る。

あれから私とマスター、それと少年の3人は、仲間のガーディアンズに置いていかれ、
虚しく来た道を引き返していった。

道中、討ちもらした侵食生物が襲いかかってきたが、幸い少年に怪我はなかった。
マスターが、普段私にやっているのと同じように、目の前で盾となって守っていたのだ。
その分、私の損傷が増えていたが、私はそれについて何一つ文句はない。
むしろ、少年の前で一歩も退かず侵食生物の攻撃を受け止めていたマスターの姿が、
限りなく誇らしかった。

「僕…助かったの?」
フライヤーベースに乗ったときも不安そうに辺りを見回していた少年も、
住み慣れたホルテス・シティの地に足をついて安心したのか、ようやく口を開いた。
マスターは、そんな少年の前にかがみこんで、優しく微笑みかけた。
「そうよ。もう大丈夫。…さあ、早くお母さんのところに帰りなさい」
「うん!ありがとう、お姉ちゃん!」

子供を見送るマスターの目は、なんとも言えない複雑な色をにじませていた。
「…ねえ、412。私…間違っていない…わよね?」
「!そ、それはもう!どう見ても、マスターの方が正しいです!」
「これで…よかったのよね。任務は果たせなくても…あの子が助かったのなら…」

ガーディアンズの役目は、人々を守ること。
マスターは、それを果たしたのだ。たとえ、任務失敗とみなされようと。
私は、恐怖に震えていたあの少年に笑顔を戻してあげたマスターの行動こそ、
ガーディアンズとしてあるべき正しい姿だと、信じて疑わなかった。

しかし、世間はそう見てくれなかったことを、やがて思い知らされることになる…。
81名無しオンライン:2008/03/18(火) 22:14:57.52 ID:u4cF+/MP
※話の都合で、一部システム上ありえない編成になっていることをご了承下さい。
 また、本章の登場人物に、モデルとなった人物は一切ないことをここに明記いたします。

最後までいけるか心配ですが、よければ気長に付き合っていただければ幸いです
82名無しオンライン:2008/03/19(水) 03:06:09.23 ID:IdXuF/Ic
こりゃ終わるまで他の人は投下できんね
83名無しオンライン:2008/03/19(水) 06:47:39.48 ID:M0z3EKNP
炎の絶望イベントかえらく懐かしいな
しかし作中で当時の職差別も今じゃだいぶ違ってるとは言えちょっとネタが生々しすぎる感がしなくもないな
出来たら一言くらいその辺について注意書きでもしておくといいんじゃないかと思う


しかしこの流れだと過去のイベントとかをダイジェストで見れそうだし続きは楽しみだ
84名無しオンライン:2008/03/19(水) 14:57:16.55 ID:iRI86Hbp
>>82
投下できんというか… 今それほど人材がいるのか?w
居たら気にせず投下して欲しいけどな
85名無しオンライン:2008/03/19(水) 16:14:14.28 ID:KLVNoYiE
何だか今書いてるのは有名な書き手さんっぽいし、テキストでこっそり投下する事にする
86名無しオンライン:2008/03/19(水) 17:59:05.22 ID:isM8MXIZ
ホワイトデーで何か書こうとか思ってたんだけど、
スーパードリル5個必要とかでテンション下がってやめた。
87EpX 3章「プラントの罠1/4」:2008/03/19(水) 20:42:40.59 ID:SMSAXlOg
「どうですか、マスター。お仕事…見つかりましたか?」
ルームに戻ってきたマスターを見て、私は容易に結果を予測できた。
案の定、マスターは力なく首を振る。

あれからマスターは、一度も任務についていない。いや、つけないでいた。
パルム浄化でマスターの行ったことが、ゆがんだ形で広まっていたのだ。

「SEEDの恐怖に耐えられず、途中で任務を放棄して逃げ帰った」
「足手まといになっていることを指摘され、激情の赴くままパーティを脱退した」

人々は、口々にそう言ってマスターを蔑み、後ろ指をさした。
マスターがいくら仕事を探そうと、与えられる任務は何一つなかった。
日に日に減っていく貯蓄は、日常生活にも差し支えるほどになっていたがそれよりも。
マスターには、自分の行動がヒューマンの立場に影響を与えている方が、こたえているらしかった。

この間のパルムで行われた裁判でも、マスターの行動が引き合いに出され、
被告のヒューマン男性が明らかに不当な判決を受けたという事例があった。
キャストに比べ合理的な判断能力に欠け、発言の信憑性が低いと判断されてのことだった。

元々ヒューマンの、グラール星系における各惑星での立場は微妙なもので、
特にパルムでは差別とまでは行かないものの、ヒューマンは何かとキャストに軽んじられている。
ガーディアンズの間でも、どちらかというと適正職につく他種族に重きがおかれ、
どの職もそつなくこなすものの最適とはいかないヒューマンは、
適正職につく他種族の風下に立つことがしばしばだった。

「…もしもあの子がキャストなら、私の行動も違った評価を受けたのかしらね」
ぽつりと呟いたマスターの真意は、その時の私にはよく分からなかった。
88EpX 3章「プラントの罠2/4」:2008/03/19(水) 20:43:54.28 ID:SMSAXlOg
そんな折、久しぶりに任務の通達があった。
「プラントにてSEEDの浄化任務についている前線部隊に、武器および食料の輸送をせよ」

「なんだか、ていのいい使い走りにさせられてる気がするんですけど」
そこかしこにパノンだのデルセバンだのの死骸が散らばっているプラントを進むうち、
知らず知らず愚痴がこぼれてしまう。
「文句言わないの、久しぶりの任務なんだから」
そう言って私をたしなめる、マスターの表情は明るい。

プラント内は既にあらかたの浄化が済んだ後のようで、私達が敵と戦うことはほとんどなかった。
もっとも、散らばっている敵の様子を見ると、戦いになっても全く問題はないと予測できた。

仮にもマスターは、長きにわたってガーディアンズとして経験を積んできた、生粋のWT。
こいつら程度の攻撃など、蚊にさされる程度の脅威にもならないだろう。
それだけに、ここの浄化任務につく程度の実力の、新米ガーディアンへの輸送任務。
役不足とは、このことだった。

「前線で戦う仲間を支援する。これも立派な役目よ」
「それは、分かっていますけど…」
それ以上は、とやかく言わないことにした。
久しぶりの任務で晴れ晴れとしたマスターの顔を、わざわざ曇らせたくはなかった。

プラントの規模からして、次に入る部屋が最奥と思われた。
ここまで来れたのなら輸送の必要もないかに見えたが、帰り道もある。
せっかく持ってきたのだから、とにかく物資を届けようと扉を開けた時。

目を覆わんばかりの光景が、そこにあった。
89EpX 3章「プラントの罠3/4」:2008/03/19(水) 20:46:28.93 ID:SMSAXlOg
血だまりの中で冷たく横たわる、ガーディアンの死体。
どれも無残なまでに引き裂かれ、生きていた頃の面影はほとんど見られなかった。
私と同じPMの残骸もそこかしこに散らばっているのを見て、思わず身をすくませる。

瞬時に事態を悟ったマスターは、白いフォトン光を放つダガーを取り出す。
「気をつけて、412…まだ、この部屋にいる」
マスターに言われるまでもなく、私も感じていた。
薄暗く見通しづらい部屋の奥から放たれる、尋常でない殺気を。

マスターが、武器を構えながら一歩、部屋に踏み出す。
そのまま2歩、3歩と歩みを進めた、直後のことだった。
暗闇から、何か巨大な物体がマスター目がけて飛び出してきたのは。

咄嗟にマスターが左前方にステップしつつ、飛び出してきたそれとすれ違いざまに斬りつける。
しかし、異様な金属音に似た、それよりもっと低く鈍い音を響かせ、
斬りつけたダガーはマスターごと弾きかえされていた。

転がりながらも体勢を立て直し、マスターはその物体と相対する。
この時点で私にも、その飛び出してきた巨体の姿が確認できた。

人型ではあるが、その大きさはディルナズンにも勝り、体中を鎧のように紫の甲皮が覆っている。
鋭く、大きな爪にはここにいたガーディアンのものか、赤黒い血がこびりついている。
何よりも、全身から放たれる凶悪な殺意は、これまでに見たことのない強大なものだった。

耳障りなわななきを部屋中に響かせ、その未知の生物…おそらくSEEDであろうそれは、
さらなる攻撃態勢に入ろうとした。
が、突如響き渡る声が、そのSEEDの動きを押しとどめた。

「ほぉう。『彼』に投与したより大分古い、試作品の出来損ないとはいえ。
よくぞ今の一撃を防いだものだ」
90EpX 3章「プラントの罠4/4」:2008/03/19(水) 20:49:17.16 ID:SMSAXlOg
部屋の奥からさらに一人、人影が姿を現した。

独特の抑揚を持つ、特徴的な低い声。
白いコートに身を包んだ、壮年か初老かといった容貌の中央に、大きく横に走る傷を刻んだ男。
長い白髪を後ろにたなびかせ、皮肉に満ちた笑いを浮かべて男は口を開いた。

「私の流した偽の情報に踊らされ、この試作SEED…プロト・ヴェナスの調整を手伝ってくれた彼等に、
心から哀悼の意をささげよう。
そして、今また乗り込んできた、愚昧にして勇猛なガーディアンズの来訪を、歓迎しよう」

私は本能的に、この男から危険なものを感じていた。
マスターも、依然明確な殺意を放ち続ける目の前のSEEDを気にしながらも、
その男から目が離せない様子だった。

人とSEEDが共にいる。
その理由も気になるが、まず感じていたことは。

私もマスターも、ここから逃げることはできないだろうということだった。

「自己紹介しておこう。私の名は、カール・フリードリヒ・ハウザー。
ヒューマン原理主義を標榜する、秘密組織『イルミナス』の幹部だ」
91名無しオンライン:2008/03/19(水) 20:51:15.79 ID:SMSAXlOg
※作品中、一部種族に対する差別的表現があることをご容赦ください。

>83
それなりに意味を持たせる予定とはいえ、少々ネタに走りすぎた感があり反省してます。
また、イベントの再現は前回限りの予定なのです…ご期待にそえずすみません。

>85
自分は全くの新米なので、こっそりと言わずぜひ堂々と投下してください。
…もしかして、過去の有名などなたかと、ネタ被りなどあったのでしょうか?

>82
84さんの言うとおり、気にせず投下をしてほしいと思っています。
それとも、自分は気にせずとも他の書き手さんが嫌がるのでしょうか?
そのあたりもよく分からないので…。

それと、>1のテンプレを見ての質問です。
すごく長い場合は分割するかうpろだにあげるように、とのことですが、
分割というのは現状やっているように日を分けて投下する、という認識でいいのでしょうか?

それと、分割よりうpろだにあげた方がいいケースがありましたら教えてください。
場合によっては、きりのいい所までやってからうpろだにあげる方針に切り替えます。
92名無しオンライン:2008/03/20(木) 03:24:58.77 ID:3gx7QFn5
遅レスですいません、パパと412作者です。

>>63他、DLして下さった方々
 ご拝読いただきありがとうございます。
 作品を書いている途中で、『不死身』だけが幸せになってないじゃまいか!と思い出し、内容もアレだし、俺が書いちゃえ!と、勢いで書き直し。
 ああいう結末にしてみました。

 今後も、すっとこどっこいな作者を生暖かく見守っていただけるとありがたいです。

(補足というか蛇足というか…独り言?
 後から冷静に考えると、久々の投下な上で予想外の事態に、だいぶパニクってた様です。
 色々アドバイスもいただけたので、次からはもうちょっと冷静に対処するつもりです。
 それとあの日は、どうやらスレ側に問題があって大量投下出来なくなった様で、その影響なのか、専ブラのログデータが壊れました。
 詳しい理由とか原因が知りたいところですが、素人の俺にはお手上げです)


>>91
 楽しく拝読させていただきました。続きを楽しみにしています。

 テンプレへの質問についてですが、経験上、分割の認識はそれで大丈夫です。
 うpろだへ上げた方がいい場合というのは、大量に書き上げた(メモ帳で合計100kb超えちゃったとか)けど、諸々の事情から分割で上げられないとか、
 まとめて読んでもらいたい場合じゃないですかね?
 あとは、俺の場合みたいに、量が多い時だけ何故か書き込めないとか…
 まぁ、個人的見解ですが、このまま投下を続けても問題無いと思いますけどね。
93名無しオンライン:2008/03/20(木) 06:23:28.27 ID:YKx/2Iub
作者アピール凄いな
メル欄にまで書いてるわ…
94名無しオンライン:2008/03/20(木) 11:42:22.04 ID:3eV6L/ZZ
いや、コテとかは付けず、過剰な自己紹介もせず、
ただ話を混ぜずに読みやすいようにメル欄に符号を仕込む、というのがスレ最初期からの伝統だったんだよ。
95名無しオンライン:2008/03/20(木) 13:56:19.43 ID:wRllTuaa
>>93
よお新参
ゆっくりしてけ
96EpX 4章「Illuminus(前編)1/3」:2008/03/21(金) 01:20:27.59 ID:IFocm//5
「ヒューマン…原理主義…?」
マスターが聞きなれない言葉を反芻するかのように繰り返す。
「そうだ。我らヒューマンは今、他種族によって不当に貶められている。
パルム、ニューデイズ、モトゥブ…どれも我らヒューマンの意思の介在する余地はなく、
他種族に実権を握られている。
そうやって精神的に下風に立たされている同胞を解放するため、我々は日夜戦っているのだ」

マスターは表情を崩すことなく、ハウザーと名乗ったその男を睨み付けている。
当然だった。
聞こえのいい言葉を選んでいるつもりでも、その狙うところは明らかだった。
かつて、人間が他種族を隷属させてきた、暗黒の時代を復活させようとしているのだ。

「昔と今では、状況が違うわ。ヒューマンは別に、他種族に隷属させられているわけではない」
「そうだろうな。彼らはもっと、巧みだ」
男は中央の傷を歪め、皮肉に笑った。

「同盟軍はじめ、合理的判断によって全ての重要な機関が運用されるパルム。
より強く星霊を感知できる強い精神力を求められる、グラール教団が中心となっているニューデイズ。
そして、純粋な力のみが物をいう、ローグスが幅をきかすモトゥブ。
彼らは巧みに、自らの能力が最も活かされる機構を作り出し、
自然にヒューマンが潜在的な劣等感を持つ下地を積んできたのだ…」

「…曲解もいいところね」
マスターが一蹴する。
私はグラールの歴史についてそれ程古くからのデータは持っていないが、
それぞれの惑星でそれぞれの機構が作られたのは、ただ彼等が生き残るための必然に過ぎないと、
それぐらいの結論は容易に導き出せた。

「曲解かも知れんな。だが、結果は似たようなものではないかな?」
そこで、マスターの表情がこわばった。
「…マスター?」
97EpX 4章「Illuminus(前編)2/3」:2008/03/21(金) 01:21:47.95 ID:IFocm//5
マスターの表情の変化に不安を感じた私のメモリに、ふとかつての事件が再現された。
パルムで不当な判決を受けた、ヒューマン男性のこと。
それを引き金にして、ガーディアンズで微妙な立場に立っているヒューマンの記録、
マスターがヒューマンの子供を助けたことでかんばしい評価をされなかった記録などが、
連鎖反応でデータベースより引き出された。

反論の言葉を探しているのか、マスターの唇がこまめに開閉を繰り返す。
だが、男はそれを待ってはくれなかった。
「さあて、楽しいおしゃべりの時間はここまでだ。
諸君等にも、この試作品の調整を手伝ってもらうとしよう」

「危ない、マスター!」
間一髪だった。
虚をつかれたマスターを私が突き飛ばしたのと、その場所にSEEDの鋭い爪が振り下ろされたのは、
ほとんど一瞬の差だった。

続けて繰り出される爪の一撃を、私は取り出した長剣で受け止める。
上方向からの重い一撃にどうにか耐えたかと思うと、間髪入れず横方向からの衝撃が襲ってきた。
それが、SEEDの強靭な脚部による蹴りだったと分かったのは、壁まで吹き飛ばされた後のことだった。
はずみで眼鏡がずり落ち、いつもの癖で直そうとする隙をSEEDは逃しはしなかった。

迫り来る巨体。逃げようとしても、亀裂のはいった壁に押し付けられた体はすぐには動かせない。
だが、今度はマスターが後ろからSEEDに斬りかかり、注意をひいてくれた。
「お前の相手はこっちよ」
ふりむきざま横なぎにくる爪の一撃を、逆にダガーで切り払う勢いで迎え撃つ。
そのまま2度、3度と切り結ぶうちに、変化が起こった。

マスターの持つダガーのフォトン光が、SEEDの爪によってかき消されてしまったのだ。
98EpX 4章「Illuminus(前編)3/3」:2008/03/21(金) 01:25:06.98 ID:IFocm//5
ひるむマスターに、すかさずSEEDが膝蹴りを叩き込んだ。
まともに受けたマスターは大きく宙に浮かされる。
着地を待たず振り下ろされたSEEDの爪がマスターをとらえる。
ほとばしる鮮血。思わず叫び声をあげる。

容赦のない連続攻撃は、続いての蹴りの一撃でマスターを向かいの壁際まで吹き飛ばすに至った。
力無く壁を背に崩れ落ちるマスター。

「多少は持ちこたえたようだが…これまでか。もういい、止めを刺せ、プロト・ヴェナスよ」
勝ち誇った男が、冷たく口元を歪ませてSEEDに命令を下す。
私は必死にマスターの名を叫び、何とか壁から抜け出ようとするが、それもままならない。

SEEDとの打ち合いに耐えきれなかった、マスターの武器。
私がもっと強い武器を作れていたら。私が特化型だったら。
何度目かに襲う、特化型でないことのやるせない思いは、これまでにない強いものだった。

嫌だ。こんな形でマスターと別れるのは、絶対に嫌だ。
ほとばしる思いのままに、私は叫び続けた。
今まさに止めを刺さんと飛びかかるSEEDが、万一にも私に狙いを変えてくれることを祈りながら。

そんな私の目に次の瞬間飛び込んできたのは、予想外の光景だった。
唐突に、紅蓮の炎に包まれるSEED。
吐き気を催す悲鳴を轟かせながら、必死に転げまわって自らを焼く火を消そうとする。
男も何が起こったのか分からない様子で、不審げに身を乗り出して事の次第を見定めんとしていた。

ゆっくりと立ち上がるマスターの手に、いつの間にか一振りの杖が握られていた。
私には見覚えがある。
3回のチャンスのうち、どうにか一回だけ成功させた高ランクの片手杖、「リドルラ」だった。

「…どうやら、打撃には強くても、法撃にはそれほどでもないようね。…特に、炎には」
99名無しオンライン:2008/03/21(金) 01:30:56.22 ID:IFocm//5
今晩は。少々遅くなりましたが、4章の投下です。
思ったより長くなったので、前編、中編、後編に分けて投下いたします。

>92
励ましの言葉並びにご回答、ありがとうございます。
緊張の連続ですが、新参者なりに一所懸命やってます。
投下の方法については、助言に従ってしばらくこの形式でやってみます。

>94
貴重な情報ありがとうございます。
現在テンプレには書かれていないようですが、自分もやった方がいいでしょうか?
100名無しオンライン:2008/03/21(金) 06:24:30.31 ID:tk+fC9KV
別に強制するようなもんでもないし現状そんなに書き手が多い訳でもないから好きにしていいと思うぜ

書き手が多くてショートストーリーが多かった頃に区別しやすくしたりコメントにレス返したりする時に使った程度で使ってなかった人も多い


まあ自分が必要だと思ったら使う、程度でいいと思う
101名無しオンライン:2008/03/21(金) 11:30:45.66 ID:iQNunTk5
>>99
遅いレスですまんが、分割したほうがいいというのはおそらく
・連続で多量の文章を投下?ここはお前一人の自由帳じゃねえんだよ。な?
・他の書き手が「こんなに長いのばっかりかよ。俺ショートショートなんだが…」と思って投下を躊躇う
・スレの保守(これは最近のかもw)
という理由からだと個人的には思う。サイズとかは二の次だと思うんだ

あとコテだけど、>>100が言ってるように、好きにしていいと思う
因みに俺は以前は投下の際メル欄に名前入れてたけど、最近は投下量が少ないので入れてないよ

つまり何が言いたいかというと、気楽に妄想を投下しようぜ!ってことだw
102名無しオンライン:2008/03/21(金) 12:17:22.94 ID:mq3CYUij
他の小説スレだとコテとか名前を入れてるところはあった
人によって好き嫌いがあるので、見たくない方はNG入れてくださいって感じで
103EpX 4章「Illuminus(中編)1/3」:2008/03/21(金) 20:50:47.85 ID:IFocm//5
「ぬうっ貴様…それほどの耐久力を持ちながら、法撃をも使いこなす…さては、WTか」
男が喉の奥から絞り出すようなうめき声をあげるのを横目に、マスターはさらに杖を振る。
白い、清らかな光がマスターを覆い、ぱっくりと開いていた傷をみるみるうちにふさいでゆく。
何度となく私を助けてくれた、回復用のテクニック、「レスタ」だ。
当然、先程SEEDを炎に包み、今もまとわりつく火で苦しめているのは、
火球を作り出し相手にぶつける火属性テクニック「フォイエ」によるものだった。

「どっちつかずの半端者の分際で…」
「その半端者の法撃でも、効果はあったようだけど?」
みなまで言わせず、マスターが切り返す。
「打撃だけだったら、そのSEEDには手も足も出なかったでしょうけど…お生憎様。
私には、こういう武器もあるのよ。優秀なパートナーの作ってくれた、これがね」

そう言って私に微笑んでみせたマスター。胸をつまらせる思いとはこのことだろうか。
ともすれば半端者の落ちこぼれと自己嫌悪に落ちる私を、いつもこうして励ましてくれる。
しかも同情ではなく、心の底から私を頼りにしてくれている。

「さあ、412。反撃の時間よ。彼の言う『半端者』の力、たっぷりと見せてあげましょう」
「はい!」
先ほどまで苦戦していたのが嘘のように、私はあっさり壁から抜け出すことができた。
湧き上がる思いに身を任せ、片手剣を手にSEEDに斬りかかる。
依然として岩のように硬い皮膚だが、炎で多少損傷したのか、わずかながら攻撃が通るようになっていた。
痺れる手をおさえつけながら、私はしゃにむに片手剣を振るう。

マスターが距離を測りながら、巧みに「フォイエ」をぶつける。
私のつけた傷口を炎をなめる度、SEEDは露骨に身をよじらせて効果の程を示してくれる。

「…ちぃっ。やはり、素体が野蛮な獣では法撃も使えず、耐性も知れたものか。
やはり、肉体と精神を程よく備える素体が必要…『彼』の回収を急がねば、な」
ふと男のつぶやく声が耳に入ってきたが、それが聞こえたのは私だけのようだった。
104EpX 4章「Illuminus(中編)2/3」:2008/03/21(金) 20:52:42.06 ID:IFocm//5
何度目かの炎がSEEDの身を焼く。私の剣の一撃と合わせ、脇腹の甲皮に亀裂が走る。

業をにやした男が苛立たしげに怒鳴りつけた。
「何をやっている!こういう時は先にテクターを潰すのがセオリーと言ったろう!
少しは学習せんか、この出来損ないが!」

男の声にSEEDはすばやく反応し、私を爪で振り払い再びマスターに襲い掛かる。
だが、私にはマスターの次の動きは読めていた。
テクニックに敵の注意を向け、懐に呼び込む。そして…。

肉を引き裂く、不快な音。SEEDの甲皮を貫通し腕に食い込む、真紅のフォトンの刃。
「…さすがにこれをかき消すことは、できなかったようね」
不敵な笑みさえ浮かべるマスターの手に握られているのは、真紅のフォトン光を放つ二振りの小剣。
ダガーオブセラフィ。私がマスターのために作った、最高傑作。

「…そして、私に貴方の言うセオリーは通じない。何故なら私は、純粋な『テクター』ではないから」
自らの腕にほとばしる激痛のためか、SEEDはのけぞるように一歩退いた。
そこを逃すマスターではなかった。

刃の光が一際大きく輝く。
マスターは振りかぶり、片方の小剣を勢いよくSEEDに投げつける。
まるで意思をもっているように小剣は回転しながらSEEDの懐に飛び込み、
その皮膚を容赦なく切り裂いていく。
さらにもう一方の小剣がマスターの手元より離れ、SEEDの体の奥深くまで刃を食い込ませた。

「飛翔刃連斬」ガーディアンズに伝わる、双小剣奥義の一つだった。

体液をほとばしらせ、SEEDはその場に膝をつく。
傷口を押さえようとしても、後から後からあふれ出るそれを、押しとどめる役には立たなかった。
105EpX 4章「Illuminus(中編)3/3」:2008/03/21(金) 20:55:59.62 ID:IFocm//5
「マスター、とどめを!」
私が言うまでもなく、マスターは間髪いれずSEED目掛けて勢いよく地を蹴っていた。
だが。

「…ここまでだな」

男がそうつぶやいたことは確認できた。が、それと同時に起きたことは、
私の持つ映像捕捉機能をもってしても明確に捉えることはできなかった。

ただ、男が何か投げたのか、白く長い棒のような物が横からマスターを撃ち、
一撃でマスターを膝まづかせたことだけは理解できた。
ただし、投げたはずの物体は、次の瞬間跡形もなく消えていた。
まさか、腕そのものが伸びたとでも言うのだろうか?それはないと信じたかった。

「…ふふふ。試作品の失敗作ではあるが。
むざむざデータも取らず浄化させるわけにはいかんのでな」

男がゆっくりと歩を進め、マスターへと迫る。
マスターは立ち上がろうとするが、さっきの一撃が足に来ているのか、
そのまま膝をついたままだった。

打たれ強いマスターが、ただの一撃であんな状態になるとは。
あの男は、一体何をしたのだろうか?

「…だが、いい。予想外だが、これは思わぬ拾い物だな」
男が何を言おうとしているかは、次の一言で理解した。

「ヒューマンのお嬢さん。君ならば申し分ない。
私の元に来るがいい。
共にヒューマンの復権を目指すため、『イルミナス』の傘下に入るのだ」
106名無しオンライン:2008/03/21(金) 21:04:10.66 ID:IFocm//5
第4章「illuminus」中編の投下です。
次の後編をもって、一旦投下は打ち切ろうと思います。第一部完、というところで。

コテについては、ひとまずは入れないでおこうと思います。
今後必要になったら、その時にまた考えることにします。

それと、また炎浄化一連の流れをネタとして使ってしまいましたが、
決して皮肉ではなく、単にハウザーが正当性を主張しようとしたらこんな感じになるかな、
と思ったまでのことです。
107名無しオンライン:2008/03/21(金) 21:09:07.11 ID:IFocm//5
…一部、現状では意味の分らないことを言ってしまったことをお詫びいたします。
結果的に後編のネタばれになってしまったようですが、ご愛嬌と思ってお見逃しください。
108名無しオンライン:2008/03/22(土) 00:22:55.48 ID:/dmFnH8i
さて、久しぶりに流れも読まずに支援投下w
109ムダヅモある復活 1/3:2008/03/22(土) 00:25:26.28 ID:/dmFnH8i
それは、電撃イベントの始まる直前の話だった。

『いよーう、箱!復帰したんだって?』
箱の部屋の扉が開き、入ってきたのは懐かしのヒュマ男と440のコンビ。

「あ、お久しぶりです。いやあ、コタ・ツダイいいですねえ」
「ボソリ(…久しぶりなのはそちらもでしょう…)」

迎えたのは箱と450の何時ものコンビ。

「あ、今お茶入れますね」
そう言ってキッチンに向かう450を見届けてから、
ヒュマ男が箱に耳打ちをする。

『やっぱ、その、なんだ、無事復帰……できなかったんだろうなあ…』

「は、はぁ… 平和に肉焼いてたんですけどね… 見つかって簀巻きにされて…」
ポリポリと頭を掻く箱。
「もうちょっとでフ●フ●の餌になるところでしたよー」
ポコッ
「いで」
450が杖で箱を小突く。
『お、お前… もうすぐ2ndGが発売されるとゆーのに…』

「まー、なんといいますか、ほっといたバツですね」
440がもそもそとコタ・ツダイに入る。

そしてしばし談笑。

平和な時。    今この時点ではまだ確実に平和であった。確実に。
110ムダヅモある復活 2/3:2008/03/22(土) 00:26:19.92 ID:/dmFnH8i
一時間ほどして、そろそろ話題のネタが無くなってきた頃、
ふとヒュマ男が一つ提案をする。

『マジャーンしねえか?』


「…いきなり何を唐突なことを…」と440
「いいですけど… ルールよく知らないんですけど…」と箱
「賭け事ですか…?」と450

『まー、いいじゃんいいじゃん。点数とかきっちりしないで楽しもうぜ
 箱には簡単に教えてやるからよ』
そう言ってナノトランサーから牌を出し、コタ・ツダイの上でジャラジャラと混ぜ始める。

「450、わかるの?」
ヒュマ男の真似をしながら適当にじゃらじゃらかき混ぜる箱が尋ねる。
「あんまり自信ないですけど… 一応ルールくらいなら」

ほどなくして、牌が積まれ、並べられる。
「えぇと…」
親の箱が悩みながら一牌切り、ゲームが始まった。

カチャ パシッ
カチャ パシッ
カチャ パシッ

機械的な音とともに、フォトン牌が切られていく。
場は無言。…役一名必死に茹っている者がいるが。

「うーん、これかなあ?」
少しの間のあと、箱が五索を捨てる。

『ん〜(やばいな、箱めキてるのか? ならとりあえず安全そうな西を…)』

パシッ
111ムダヅモある復活 3/3:2008/03/22(土) 00:28:31.13 ID:/dmFnH8i
    ,‐'´:::::::::::::::::::::::::`‐、  
    \ ,.. ---ーー.へ、_/  
     /      ^レ゙ ヽ、
     /            j  
     |∩  /`ゝ、ノ\ノヽィ'`i  <ロンです
    (Θ)|  t它j  它j| |  
     ∪ | //   // l l  
      V ト、.   − ,,イ ./  
  ___________________________.  __
 │二│二│三│三│四│四│五│五│五│◎│◎│◎│  │|  |
 │萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│◎│◎│◎│西│|西|
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘└─┘
  ↑ドラ
       ____
     /ノ   ヽ、_\
   /( ○)}liil{(○)\
  /    (__人__)   \
  |   ヽ |!!il|!|!l| /   |
  \    |ェェェェ|     /  ※AAはイメージです

「イーペーコードラ2 9600ですね」
表情一つ変えず点数を申告する450。
『シブイね〜、おたく、まったくもってシブイよ…』
ヒュマ男がやけにカッコつけて呟きつつ、いそいそとズボンを脱ぎだす。

「ストップ・ザ・変態ィィィィィィィ!!」
ズバゴーンという轟音とともに、ヒュマ男に炸裂する440のキック。
「な、な…!」
顔を真っ赤にして驚く450。何が起こってるのかわからない箱。
「ナニやってんですかーーーッ!! 中山きん○君か?筋肉留学かァ!?」
ドスの効いた声でヒュマ男の襟をむんずと掴む440。
『だ、だってよおめー、マジャーンといったら脱衣しかねーだろうが!』
「「「だ、脱衣!?」」」
綺麗にハモる3人。

『知っているのか雷電!!』
『あ、あれはまさしく中国拳法でいうところの堕墜魔亞邪…
フった者はその身につけているものを一枚づつ脱がなくてはならない
中国古来の伝統遊戯…    民明書房”牌テンションナイト” より』

「お前何意味不明な説明してんのーーーー!?」
『ウギャーーーー!!』
再び入る440のツッコミ。
『ふ、フフフ、いくらツッコもうが、ナニしようが、一度始めたゲーム!
ジャブロッガが降ろうがドゥランガが降ろうが最後までやってもらうぞ!!』

「くっ!」
「「くっ」じゃないでしょ!本当にこんなゲームやるんですか!?」
ペシンと440にツッコミを入れる450。なかなか息が合っている。
『それともなんですかァ?450サンは勝ち逃げされるつもりなんですかァ〜〜アアン?』
「…!!(に、憎たらしいっ!この人ッ!)」
『よし、異論は無いな!フハハハハゲームを続けるぞッ!!』

かくしてなんだかよくわからないうちにゲームは続行される。

勝つのは誰か!そしてクロスアウッ(脱衣)する被害者は現れるのか!
月は今まさに天頂に昇ろうとしていた。
112名無しオンライン:2008/03/22(土) 00:30:48.50 ID:/dmFnH8i
と、続くような終わり方ですが多分続きませんw
ゆっくり書いてる暇がなかなか無くてね… でも、時間とれたら続き投下するかもです。

以上御粗末さまでした( ゚∀゚)ノ
113名無しオンライン:2008/03/22(土) 16:05:28.50 ID:4AOgFhZe
>>112
GJ!
もしGH460系だったら一回負けただけで大変な事になる!

114名無しオンライン:2008/03/22(土) 20:44:55.03 ID:39bJBldR
『』懐かしすww

>>113
うさ耳を外すことで対応した。(そういやパーカーっぽい物も着てるな
115EpX 4章「Illuminus(後編)1/5」:2008/03/22(土) 21:15:36.26 ID:61ZOxUmH
「…笑えない冗談ね。こんなことを平気で行う、貴方についていけと?」
マスターは部屋の様子を指差して毒づいた。
「こんなこととは、何のことかな?ここにいるSEEDを従えていることか、それとも…。
そこら中に散乱している、ガーディアンズの死体のことかね?」
男は悪びれもせずに言ってのけた。

「SEEDのことは、何ということはない。ヒトが家畜を従えるのと同様、
我らイルミナスはSEEDを手なづける術を身に着けているだけのこと…それが問題かね?
SEEDといえ、我らと同じ生命体であることに違いはない。
その生態を研究し、使いどころを見極めれば共存は可能…そうは思わんか?」

SEEDを飼いならす…そんなことが可能なのだろうか?
現状、SEEDとこのグラール太陽系に住む全ての生命とは、相容れぬ存在との認識が一般的である。
イルミナスという組織が、どのような手段でSEEDを操っているのかは分からないが、
何となく私には、後ろ暗い手段を講じているような気がしてならなかった。

「…なら、ここで非業の死を遂げた、仲間のガーディアンのことはどう言い繕う気?
私は、仲間を殺した相手におめおめと篭絡されるほど馬鹿じゃないつもりよ」
「仲間…か。だが、我らイルミナスにとってガーディアンズは…敵だ。
私は、我が組織に敵対する者を、然るべき手段をもって葬ったまで」

「敵?どうしてイルミナスは、ガーディアンズを敵視するの?」
「それは、現ガーディアンズ総裁のオーベル・ダルガンに聞いてもらいたい。
我々はガーディアンズとよしみを通じたいと考えているにも関わらず、
総裁は我らイルミナスを危険な組織だと公言してはばからん。
宣戦布告をされて黙っているほど、我々は脆弱な組織ではないつもりなのでね」

「総裁がそう判断されたのなら答えは簡単よ。私もガーディアンズの一員として、仲間の仇を…」
「さあて…果たして本当に、彼らは君の仲間と言えるのかな?」
116EpX 4章「Illuminus(後編)2/5」:2008/03/22(土) 21:17:54.80 ID:61ZOxUmH
「…どういうこと?」
意外な一言を聞き、マスターは訝しげに男を睨み付けていた。
「先程のヒューマンの扱いについて言葉を詰まらせた様子を見て、思い出したのだがね。
君は、いつぞやの報道で槍玉にあげられた、子供を助けるために任務を放棄したガーディアンだろう」

私は耳を疑った。マスターが任務を放棄したという失態は報道の一部でも挙げられていたが、
子供を助けたことについてはどこにも取り上げられていなかったはずなのだ。

「イルミナスは、その手の情報に早くてね。
我らが同胞たるヒューマンが不当に貶められたことに、胸を痛めたものだ」

「その時君は感じたはずだ。ガーディアンズとは、本当にこのグラールの守護者たるにふさわしい存在か?
守護者とは名ばかりで、その実態はただ己が利益を求める利己的な集団にすぎないのではないか?とね」

「いい事例が、いつぞやの炎侵食の浄化作戦だ。
確か、パルムの浄化は最初のうち芳しくなかった筈だな?報酬が働きに見合わないとかで。
それで被害が拡大し、さらに深刻な状態になったことで総裁が報酬を吊り上げた途端、
今までどこにいたかという程大量のガーディアンが殺到し、あっという間に浄化が完了した…現金な話だ」

皮肉に満ちた笑いを浮かべる男に、何か言葉を返してやりたかった。
だが、マスターが今までとうって変わって沈んだ表情をしていることが気になっていた。

確かにあの時、大量のガーディアンが一様にパルムに集結していた。
その分他が手薄になり、一時的に治安が悪化したことがあった。
マスターが個人的な依頼でローグスから荷物の奪還を行った際も、その事を依頼主からなじられたものだった。

だからといって、マスターがガーディアンズを捨てるなどとは思っていなかった。
マスターの、次の一言を聞くまでは。

「…確かに…ガーディアンズは、私の思っていた組織では…なかったのかも知れない」
117EpX 4章「Illuminus(後編)3/5」:2008/03/22(土) 21:19:01.52 ID:61ZOxUmH
「ま、マスター!?」
私は信じられなかった。
あれだけガーディアンズの仕事に誇りを持っていたマスターが、こんなことを言い出すとは。
だが、続けてのマスターの言葉で、私は悟った。
「…今のガーディアンズの人達で、あの時私と同じように任務より子供を取る人が…何人いたのか」
あの事件が、私の思っていたより深く、マスターの心をえぐっていたのだと。

「それは、その子供がヒューマンの子供だったからだ」
得たりと男が言葉を継ぐ。
「潜在的な差別…それは確かに存在するのだ。
ヒューマンの命は、ガーディアンズの崇高な任務とやらより優先されることはない…その程度のものなのだ。
我らイルミナスならば、決してそのような真似はしないがね」

「ガーディアンズの仕事は、SEEDの襲来から変わってしまったわ。
SEEDや暴走した原生生物の殲滅、施設や遺跡の奪還がほとんどで、
救出や護衛といった、規模の小さな個人的な依頼はめっきり影をひそめてしまった。
それは、ここ最近仕事を探し回ってよく分かった…私は、そういう仕事をこそ引き受けたかったのに」

「その方が、高額の報酬を用意しやすいのだろう。
そして、そのような任務に求められるのは、誰かを守るより、敵を狩る力…。
そう、ヒューマン以外の、破壊する何らかの力に長けた他種族だ。
現在ガーディアンズで重宝されている、ナノブラストだのSUVだのが、破壊をする以外の何の役に立つかね?」

男は巧みにマスターの心の隙間に、ヒューマンが不当に扱われているという事象を刷り込んでくる。
このままではマスターがこの男に言いくるめられてしまうと、私は必死に口を挟もうとする。
「マスター、騙されてはいけません!この男は…」
そこで私は口をつぐんだ。つぐまざるを得なかった。

「…黙っていたまえ。これは私と、このお嬢さん二人の問題だ」
言葉こそ穏当だが、その目には明らかな殺気がこもっていた。
どういうことだろうか?
この男は、大して言葉も交わしていない私に、深い敵意を持っているような気がしたのだ。
何故?それを考えているうちに、マスターが口を開いた。

「…でも、私がガーディアンズに失望したからといって、イルミナスに入る理由はないわ」
118EpX 4章「Illuminus(後編)4/5」:2008/03/22(土) 21:20:15.85 ID:61ZOxUmH
「ほう、何故かね?」
興味深げに片方の眉をあげ、男が尋ねた。
「イルミナスが、ガーディアンズよりまともな組織という保証はないわ」
「もっともな話だが…それは君自身の目で見て判断してもらう他、ないな」
「入ったが最後、抜けることができないなんてのは、よくある話だわ」
「そこまで疑われてはかなわんが…よく考えてみたまえ。君自身、今後ガーディアンズで未来はあるのかね?」

「君が、今のままガーディアンズにいても飼い殺しにされるだけだ。保証しよう。
それよりは、まだ見ぬ未知の組織、イルミナスに賭けてみるという選択はないのかね?」
「…ヒューマン原理主義。一歩間違えば、暗黒の奴隷時代を復活させる危険があるわ」
「さあ、そこだ。肝心なのは」

男は大仰に手を広げ、例の不思議な抑揚で朗々と語った。
「正直、我らイルミナスにも残念ながら、そういう極端な思想を持った輩がいる。
だからこそ、私は君のような人材が欲しいのだ。
ヒトを守ることの大切さを知っている君がイルミナスで重きを成せば…。
真なるヒューマンの復権を果たすことができると、私は期待しているのだよ」

「…真なる、ヒューマンの…?」
「ヒューマンが単に彼らの上に立つようでは、君の言う通り暗黒の時代に戻るにすぎない。これは退化だ。
ヒューマンが十分な権利を保持し、なおかつ他種族も冷遇することのない、真に平等な世界。
これこそがイルミナスの最終にして至上の目的だ。
至難でもある…君のような人材が、今後さらに増えることがない限り、な」

男の言葉は、巧妙の一言につきた。
現状の組織に問題があることを明確にしつつ、さらに「マスターの力が必要だ」と言外に明示しているのだ。
抗いがたい、甘い誘惑と言えた。

だが、それでもマスターは首を縦に振ることなく、じっと耐えていた。
そこで男は突然、態度を一変させた。
「まだ迷うようなら…最後の一押しをしてやろうか」
119EpX 4章「Illuminus(後編)5/5」:2008/03/22(土) 21:21:11.13 ID:61ZOxUmH
またもや男の腕から何かが放たれ、私を撃った。
気がつくと私は、頭を鷲掴みにされ、男に吊るされる格好となっていた。
顔色を変えるマスターに、男はにやりと笑ってみせた。
「卑怯とは言わないでくれたまえ。それだけ君が本気で欲しいという評価の表れだと思ってもらいたい。
…どのみち、PMは連れてはいけんしな。危険過ぎる」

確かにPMには原則、ガーディアンズ上層部より取り付けられた発信機等が埋め込まれている。
PMの行動管理、マスターに何かあった場合の迅速な救助等の目的からだが、
それがそのままイルミナスについていくのは、敵を前に鈴をつけて歩き回るようなものだった。

「このPMに今すぐ遺言の言葉を考えてもらうか、それとも無事本部に帰ってもらうかは君次第だ。どうするね?」
マスターは目を閉じて、さらに考え込んでいたが…やがて。
「…その子を、降ろしてあげて。私はこれから…新たな人生に賭けてみます」
私の命がかかっていたとはいえ、この一言はまぎれもなくマスターの意志だ。できれば聞きたくはなかった。

「…ただし、覚悟することね。もしもイルミナスが私の理想にそぐわないものだったら…
私はどのような毒となるか、分からないわ」
「結構だ。それぐらいの気概がなくてはな」
男は満足げに笑い、私を床に下ろした。ただ、頭をつかむ手は離そうとしなかった。

男がパチンと指を鳴らすと、いつからいたのか、組織の者と思われる男が数名、背後から現れた。
「本部まではこいつらに案内してもらうといい。その前に…別れの言葉はあるかね?
おっと、そのままだ。まだ一応、人質の形を取らせてもらっているのでな」

マスターはしばしの間、無言で私を見つめていた。
その優しげな、しかしとても強い憂いを含んだ目を見て、私は自責の念にかられた。
どうして、マスターの目にここまでの悲しみがこめられるまで気付いてやれなかったのか。
どうして、マスターの心がこんなにも追い詰められていたことに気付けなかったのか。

私は…パートナー失格だ。
運命の日は、もたらされるべくしてもたらされたのだ。
120EpX 第一部エピローグ1/2:2008/03/22(土) 21:23:09.54 ID:61ZOxUmH
そんな私にマスターが語りかけた。
「412…貴方に、これを預けます」

マスターは例のダガーオブセラフィを取り出し、足元に置いた。
「私は、私の理想をイルミナスに賭けてみます。
でも、それがかなわなかった時…その時は、貴方に私を止めて欲しい。
貴方が私のために作ってくれた、このダガーで…私を止めるのです。
他の誰でもない、貴方にそうして欲しいの…この、柄に刻んだ文字に誓って」

それだけ言うと、マスターは現れた組織の男に連れられて、部屋を出て行った。

後に残された、私と男…私からマスターを奪った、憎んでも憎みきれないイルミナスの幹部。
「もう、いいでしょう…離してください」
私の言葉に男は肩をすくめながらも、意外なほどあっさりと私を放してくれた。
すかさず私は、マスターの残した真紅の双小剣に駆け寄り、それを拾い上げた。

−貴方に私を止めて欲しい。この、柄に刻んだ文字に誓って−

今まで見せてもらえずじまいだった、例の文字。それを見たとき。
私は、自然に目から熱いものがこみあげてくるのを抑えきれなかった。

「Dear My Partner」

いつだってマスターは私を、半端者と蔑まれていた私を頼りにしてくれた。
そして今また、私に二つと変えられない重要な役目を任せてくれた。
親愛なるパートナー。この武器を通して私に向けてこめられた思いに応えるため。
私がやることは一つだった。

「…別れの余韻に浸っているところ済まないが、一つ教えてやろう」
背後からかけられた男の言葉に、はっと後ろを振り返る。

「私は、嫌いなのだよ…キャストとか呼ばれている、機械人形がな。
まして、それにも劣るからくり人形が意思めいた物を持っているだけで…反吐がでる」
121EpX 第一部エピローグ2/2:2008/03/22(土) 21:25:41.21 ID:61ZOxUmH
男が腕をふりかぶっている。それが、かろうじて確認できた全てだった。
一瞬のうちに視界が暗くふさがれ、倒れこんだ先の冷たい床の感触も急速に感じられなくなっていく。
全てが、閉じられようとしていた。

「マス…ター…」
力を振り絞って漏らした声も、一人残された薄暗い死臭漂う部屋に飲まれていった。

私は、その運命の日以来、長い間眠りについていた。部屋に打ち捨てられた死体と共に。
一人のガーディアンがこの部屋に足を踏み入れる、その時まで。

その間に、事態は大きく変化していた。
イルミナスの野望が明らかになり、総裁オーベル・ダルガンの死と共にコロニーが落下していた。

そして、マスターは…。

私の…マスターの唯一無二のパートナーである私、412の任務は…今こそ始まろうとしていた。
122名無しオンライン:2008/03/22(土) 21:28:44.20 ID:61ZOxUmH
以上、EpX 第一部完了です。
第二部の投下がいつになるかは未定です…すみません。

スレの空気にそぐわない新参者の駄文かとは思いましたが、
文句ひとつ言うことなく付き合ってくれた皆様方に感謝いたします。
それでは、またいつか…。
123名無しオンライン:2008/03/23(日) 04:50:54.53 ID:W8WVjvzf
GJ、普通に読み耽ってしまったぜ
二部からはイルミナスから主人を奪還する為にパシリが活躍するんだろうな、実に楽しみだ


しかしこう良い作品を読んでると俺もまた書きたくなってくるもんだ
124名無しオンライン:2008/03/24(月) 21:29:26.81 ID:tfn/8m7E
>>122
GJ!!
第2部wktkしながら気長に待ってるぜ!!
125名無しオンライン:2008/03/25(火) 01:21:07.99 ID:PrryqB6A
ハウザーの台詞をすべて若本声で脳内再生してみた。

脳汁デタ(゚∀゚)
126継承 II 君、死にたもうことなかれ(前編)1:2008/03/27(木) 20:48:09.69 ID:4g3XyFme
”遠い遠い昔のお話です。大地の国にとても仲の良い兄妹神がおりました。
大いなる光の眷属である二人はとても美しく聡明で、兄の男神は「ひとりでに巨人を倒す剣」を持つ武術の達人、妹の女神は優れた魔術師で、他の神々からも一目置かれていました。

あるとき、天の国に住む神が兄妹の住む大地に槍を投げ、戦を挑んできました。
大地の神々は武器と魔術をもって立ち向かいましたが、天の神々は戦いが不利になってきたのを見ると、互いに自分の国で一番重要な神々を3人ずつ交換して戦いをやめようと言ってきました。
戦いを嫌う大地の神々は、兄妹と、その父を木の葉の船で天の国へと送りました。

兄妹は天の神々と仲良くなり、長い年月を過ごしました。兄妹は天の神々が持たない考えを教え、二つの国がともによくなることを願いました。
それでも天の神々は他の国へと戦を挑み続け、また自分たちの間でも争いあっていました。

そんなとき、一人の黒い巨人が現れました。
戦争ばかりしている天の神々の憎しみが凝り固まって生まれた巨人は、炎の剣で野蛮な天の神々を殺してまわり、天の国を滅ぼそうとしました。
天の国に住む神は次々と倒され、兄妹だけが生き残っていました。
兄神は、大切な妹に「ひとりでに巨人を倒す剣」を渡し、故郷に帰るように言いました。
妹は兄と一緒に帰りたいと言いましたが、兄はたとえ今まで悪いことをしていた国であっても、長年共に暮らした神々を見捨てたくないと、牡鹿の角を持って巨人に戦いを挑んでいきました。
妹の女神は「ひとりでに巨人を倒す剣」で巨人の炎をうち払い、木の葉の船にたどり着きましたが、互いに心を通わせることのできる大地の神である妹は、
飛び立つ船の中で、兄が倒され、巨人が天の世界に火を放つのを感じ、嘆き悲しみながら大地の国へ帰って行きました…”

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
127継承 II 君、死にたもうことなかれ(前編)2:2008/03/27(木) 20:48:56.12 ID:4g3XyFme
ラシークを食べ…もとい屠り、わたくしが転送されてきたのは元の建物でした。受付のお姉さんが出迎えてくれます。
「おつかれさまでした。やや反則気味な方法ではありますが、一応身体能力に含まれますし、よしとしましょう。とりあえず銘菓ラ・ゴウをどうぞ」
あっ、いただきます。しかし勝てたのは幸運でした…ぎりぎりだったとしか言いようがありません。はぁ…
「不服ならステージ1をやり直すこともできますが?」
い、いえいえ!二度と戦いたくないですよ、ラシークとは!次戦って勝てる気がしません!
先ほどはセガタさんにいやというほどされた肉体言語でなんとかなりましたが、そういえばこれからも武器なしでやらなければいけないんですか?
「心配しなくても武器はステージごとに用意されていますよ」
そ、そうこなくては!ちょっとだけ心配してしまいましたよ、あはあはあは。
「はい、では次の武器はこちらです」
カウンターにおかれた武器は、わたくしのデータにも記録がありました。「ルビーバレット」という古ぼけた拳銃です。フォトン武器ではありますが、まさかこれも使い物にならないというんじゃないでしょうね…
「安心してください。弾は出ます…一応」
一応ってなんですかー!?
「気にしなーい。いいから転送です、ほらいけー!」
あ、ちょっとずるいですよ!説明を…

STAGE 2 -惑星モタビア 気象コントロールセンター・アメダス-

強引な転送でしたが無事に到着し、目に入ってきたのは海と空と緑あふれる大地でした。
しかし、モタビア?モトゥブの誤植ですか?「スーパーウリアッ上」くらい激しい誤植ですね。責任者の方出てきてください。
「野暮なことはいいっこなしだぜお嬢ちゃん」
うわあ!ほ、本当に責任者の方が!?
大げさに土下座モーションへの移行を兼ねた跳び退りをしながら見れば、金髪の陽気そうな男性がこちらに手を振っていました。
「おおっと、俺は責任者じゃない、ハリアーってんだ。そしてこいつがこのステージで嬢ちゃんの相棒になるオパオパだ。よろしくな!」
…話が見えませんが、この足のついたブースターユニットのようなものは生き物なんですか…
「はっはっは、おいおいおい!こいつは立派に親もいる生き物だぜ?父親を助けるために戦い抜いた勇者なのさ」
ゆ、勇者?このなりで…?意外に孝行息子なんですね。って、雄か雌かもわからないですけど…
オパオパさんはその短い足でちょこちょことこちらに歩いてきました。かわいい…んでしょうか?
「まあともかく、説明するぞ。このステージはすぐに戦闘があるわけじゃない。あの海の向こうにある建物が目標になる」
海の向こう…って、泳いでいけっていうんですか?わたくし、カナヅチなんですが。
「飛んでいってほしいとこなんだが。だめならオパオパにつかまって飛んでいくんだ。オーケー?」
つかまってみますと、ぎゅぉぉぉんとものすごい音をたててオパオパさんは浮上しました。出力を予測しても、獣を越え人を越えるような勢いが出るのは確実です。なにげに危なくないですか、これ…
「回避なんかの操作は適当にやってるうちに覚えるだろう!グッドラック!」
適当って!?説明書くらい読ませてくださいー!!
爆音を立てながら、わたくしは最後の言葉だけをそこに残して飛んでいきました。
128継承 II 君、死にたもうことなかれ(前編)3:2008/03/27(木) 20:49:52.04 ID:4g3XyFme
とどまって見ている人がいれば、ドップラー効果という概念を教えることができたと思います。
そのくらいオパオパさんのロケットエンジンはものすごい推進力でした。って怖い!これはさすがに怖いですよ!
顔の形をした謎の石や花びらのように開く機械などが飛んでくるのはオパオパさんが隠し持っていたレーザーで問題なく倒せていましたが、どこか懐かしい遠吠えが聞こえてきて、わたくしは前方に目をこらしました。
巨大な胴体についた二つの長い首。鈍く輝く4つの眼。
ディ・ラグナスがこんなところに!?あんなに速く後ろ向きに飛べるなんて意外ですが…
以前戦った、炎と氷を吐いてくるものとは若干違うようで、両の口から炎を吐いてオパオパさんとわたくしを狙ってきます。
ディ・ラグナスなら戦ったことがありますし、対処法もわかっています。負けることなどありえません…と、思っていたのは最初だけ。
景色というものがはっきり見える前に後ろに流れていくようなこの状況では、一発でも攻撃を受けてしまうと落下は必至。
回避操作もまだ十分練習できていませんし、一発でも受けてはいけないというプレッシャーがあるためものすごくやりにくいのです。
い、意外と難しいですね。射撃より回避を優先し…
あ〜〜〜〜
げっれでぃ(やり直し)

他人に見せられないくらい何度も炎に当たって落ちてはやり直しを繰り返して、最後には上空から16tと書かれた謎の鉄塊を落としてようやくディ・ラグナスを撃破することができました。
決まり手はそれなのでわたくし自身はよけていただけですが。それまでの様子はあまりに恥ずかしいので省略させていただきます。
ともかく、ようやく到着ですねオパオパさ…
前方に木ぃ!?
あ〜〜〜〜
129継承 II 君、死にたもうことなかれ(前編)4:2008/03/27(木) 20:50:29.29 ID:4g3XyFme
な、なんとかたどり着きましたが何回海に落ちたことやら…
もう全身ぼろぼろです。オパオパさんもところどころひびが入ってますし。ひたすらレスタをかけていると、建物の中から声と何かがぶつかるような音が聞こえてきました。
そういえばまだボスが控えているのでしたね。わたくしはディ・ラグナス以上の敵が出ることを予想して通路から顔だけ出して中をのぞいてみました。

そこにいたのは異形の化物…などではなく、肩から胸まであらわになっている紫のレオタードを着たニューマンの女性でした。
まったく同じような格好の人が二人いて、どうやら互いに争いあっているようです。

-ミッション開始 ネイ・ファーストを倒せ!-

あっ、なんか指令が。ネイ・ファースト?というと…
「死ね、ネイ!私を勝手に名乗る売女め!」
「ネイ・ファースト!あなたは!」
…という言葉が聞こえてきましたので、どうやらあちらの目つきの悪いほうがネイ・ファーストで、それにそっくりな人のほうがネイなのでしょう。
しばらくみていますとネイ・ファーストのほうが押しているようで、吹っ飛ばされたネイさんが壁から半身を乗り出して覗いているわたくしに激突しました。
「あ、あなたは?」
ネ、ネイさんですね?事情はなんだかよくわかりませんが加勢します!ミッションですし!
わたくしはもがいてネイさんのお尻と床の間から頭を引き抜くと、ネイさんと、追いかけてきて爪を振り上げたもう一人の間に割って入りました。
「誰よおまえ…誰だかわからないけど、ここはガキが来るところでもないし、私らのことも首つっこんでいい問題じゃない!」
明らかに殺す気まんまんでいるのを見過ごすわけにはいきませんよ。弱きを助くが騎士道というものです(あと、ミッションなので)。
「そうかい!」
言い終わるが早いか、ネイ・ファーストはわたくしに爪を繰り出しました。しかしそれは足の運び方をみっちり教えられたわたくしには難なく回避できるものでした。ラシークが強すぎただけに拍子抜けしてしまうくらいです。
爪をすべて見切ったあと、お返しに肩に向けてルビーバレットを2発お見舞いしました。
ここにたどり着くまでに消耗してしまい不安でしたが、もしかして楽勝ですか?
と、思った矢先のことでした。
「い、痛い…痛いっ!」
え!?
突如、ネイさんが苦しみだしました。
慌てて駆け寄ると、その肩口、わたくしがネイ・ファーストを射撃した場所とまったく同じ箇所に、全く同じ大きさの傷ができています。
周囲に狙撃手がいないか警戒しつつレスタで傷をふさぎましたが、ふたたびわたくしが構えると、その間にネイ・ファーストのほうの傷もすでにふさがれた状態になっていました。
今度こそは攻めきろうとわたくしは再度ネイ・ファーストの手足を狙って弾を打ち込んだのですが。
「あああっ!」
またネイさんには先ほどと同様、同じ箇所に傷ができていました。
つまり、信じがたいことですが…
「ふふふ、はははははは!ようやく気づいたようね、お馬鹿さん。この私、ネイ・ファーストとそのネイは一心同体!私を傷つければそいつも同じように傷つくのさ!」
ええええええええ!?こ、こんなのありですか!?


-続く-
130名無しオンライン:2008/03/27(木) 20:58:34.73 ID:4g3XyFme
ようやく次を書くことができました。というのも最初のプロットから大幅に変更した部分があるためで。まだまだ続きます。
って、なんかプレステ2でベタ移植になるらしいですね、旧千年紀シリーズ。
いらないんじゃないかと思いますが一応解説も。

「ネイ」
旧千年紀シリーズを実際にプレイしてなくても知っている人も多い、レオタードニューマン娘。すでに少女の体つきになってはいるが、実は3歳。
ファンタシースター2の主人公・ユーシスに拾われ育てられており、ユーシスを兄と慕う妹キャラである。
シナリオ途中でネイ・ファーストと一人で戦い死亡。クローン・ラボでも復活させられず、涙した人も多いであろう。

ネイという言葉は否定を意味し、「〜でない」という意味のアルゴル語。
この場合は「人ならざる人」として名付けられている。同様に、ネイの名を宿す武器は「武器ならざる武器、この世のものではない武器」を示す。
勘違いしている人も多いが、ネイクローはネイが使った爪ではないのである(ネイクローを実際に使ったのはファンタシースター3のミューであり、また他にもネイソード、ネイショット、ネイスライサーなどが存在している)。

「ハリアー」
セガの名作3Dシューティング「スペースハリアー」の主人公。謎のランチャー(ブースターつき)を抱えて空を飛び、謎の機械やらモアイやら竜やらを撃ちまくる。
ちなみにこれの続編タイトルのうち「プラネットハリアーズ」では、オパオパを使うこともできるので関連性がまるでないわけではない。

「オパオパ」
これまたセガの名作「ファンタジーゾーン」の自機。謎の生き物(意外かもしれないが生き物である。ファンタジーゾーンのラスボスは、寄生生物にあやつられたオパオパの父親なのだ)。
翼をもった乗り物っぽい外見をしているが、実際ショップで強化アイテムを購入するとブースターに切り替わってスピードアップしたり、レーザーを撃てるようになったりする。本当に生物か?w
ちなみに、SUVウェポン・アセンションギフトでも出てくる16tボム、32tボムというのはこのファンタジーゾーンが元ネタ。
131名無しオンライン:2008/03/28(金) 12:11:18.20 ID:mcIZSPcr
ミッションも困難そうだけど、道中のほうが大変そう…
がんばれ、戦乙女。

しかし、オパオパが生き物だったとは…知らんかった…
132名無しオンライン:2008/03/31(月) 09:29:00.40 ID:y0xojnCS
保守。こもままだと山田太郎とピザ配達とかもしそうな予感。
がんばれ、戦乙女。
133名無しオンライン:2008/04/02(水) 00:46:08.49 ID:3Ri8xRJf
保守。

>>130
チャレンジモードktkr
道中必死にオパオパにつかまっている戦乙女を想像して何か萌えた・・・
続き楽しみにしてます
134名無しオンライン:2008/04/02(水) 23:03:24.87 ID:Kpnoqp53
ヒュマ男「ただいまー」

「…………」

ヒュマ男「…あれ?寝てるのか…?」

いつも出迎えてくれるはずのパシリの声がなかった。姿も見えない。
男は店と居住スペースを隔てる扉をくぐる。
そして星霊祭の飾りの樹林を抜ける。

ヒュマ男「なんだ、いるじゃないか」

GH441「……」

ヒュマ男「いつも言ってるけど、ビジフォンばっかり見てると目が悪くなるぞ?」

ビジフォンを注視して動かないGH441。
慣れっこなのか、諭しながらも笑って近づく男。

と、男とGH441の距離がその身長と同じになったぐらいのところで、
GH441がゆっくりと顔を向ける。

ヒュマ男「ん?どうした?」

GH441の顔が固い。
強張っていると言うよりは、虚ろという感じだ。

GH441「……」

ヒュマ男「……」

GH441「……」

ヒュマ男「……?」

GH441「……(´;_;`)ぶわっ」

ヒュマ男「うわっ」

GH441「……」

ヒュマ男「あ…」

男が改めて声をかけるより先に、GH441は椅子を飛び降り、布団に潜ってしまった。
掛け布団の真ん中が持ち上がり、中で丸くなって泣いているのが分かる。

ヒュマ男「うーん…?」


その後、GH441が喋れるようになるまでに三日、
元通りになるまでに一週間かかった。

ビジフォン『ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm1807929


-----
イメージをパシリに被せて聴いたら物凄い事になったのでついやってしまった。
少し反省している。ミク曲敬遠気味だったことも、少し反省している。

じゃ、ちょっとイルミナス壊滅させに行ってくるわノシ(真顔
135名無しオンライン:2008/04/03(木) 15:17:56.06 ID:94cnJzr6
なんでクリスマスソングと思ったら、最後まで聞かないと分からない仕様か。なるほど。
人ならざるもの…哀しいな
136名無しオンライン:2008/04/03(木) 23:35:30.42 ID:DV4Sv2It
>>134
涙腺崩壊しかけたぜ・・・
ちょっとパシリとゾアル絞めてくるノシ
137名無しオンライン:2008/04/08(火) 22:19:08.72 ID:ZLPNL/6x
     ./       ヽ、
   / ,..:::::,ヘ、::::::::::::.,  ソ、
  〈 ヽ::::::/ /l /、`ノ ,ヘ `、
   ヽ、// /   l lヽ、::;〉 〉
   /゙ /l /    l l  `、/
 ./l  l. ヽl     .l l   i
 l__.ヽ  iヘヘ、   /l/l  /ヽ
 l l_l  l-=、`ヽ/,イ⌒)  / i~)    保守しまーす☆
 `ヽ ヽ l    ``-''ノ /-'/     皆さんの作品お待ちしてます
   `ゝ l`ヽ、 ー ,,ノl /.ノ
. /::::::::ヽ.li^iゝ,ニ,'l--l /:::::::ヽ
〈:::::::::::::::ゝ'.''〈 / ,l、ノl/:::::::::::::ヽ.
. ヽ::::::::/:,-、`ヽ  ゝ、/:::::::::::::::::ノ
  ヽ:::/,-、'::/  `'ノ:::::::::::::/
138名無しオンライン:2008/04/09(水) 18:09:43.65 ID:5Vqarovf
物凄い久々な俺がここで投下
1391/5:2008/04/09(水) 18:10:34.36 ID:5Vqarovf
皆様、お久しぶりです。そうでないお方は始めまして!
私はGH-412、大分前ですがデバイスにより進化しました!
今も変わらず、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。

今日は、私がGH-412になった時のことをお話したいと思います。
1402/5:2008/04/09(水) 18:11:34.58 ID:5Vqarovf
-随分と前の事-

主人「進化デバイスか…あまりパッとせんな」

ご主人様はベッドに座りながら、パシ通をパラパラと捲ってました。
今日はパートナーマシナリーの進化デバイスの発売日、当然特集があります。
極秘にし続けるには無理だということで、パシ通も一般開放されたのです。

410 「コロニーのアイテムショップは大繁盛みたいですよ」
主人「好きな人は好きなんだろうが…俺にはどうも合わない物ばかりだ」
410 「性格も変わるらしいですからね〜、慎重にやらないと失敗し」
主人「いや、それよりも色が趣味ではない」

ご主人様が言うように、今回の進化デバイスは髪の毛やお洋服の色も変わります。
中にはとても落ち着いた色合いもあれば、蛍光色だらけの好みが分かれるのもあります。
私達GH-410は、金髪になるか眼鏡をかけるかで分かれたとか?

主人「それにアイスバー(キャリバーの事)はどうもな」
410 「ア、アイスバー…けど氷属性は重要じゃないですか?」
主人「とりあえずは様子見だな、だからお前は当分今のままだ」
410 「そうですか〜…せっかくお洒落できると思ったのに」
主人「よし、コロニーにフォトン集めに行くぞ。支度しろ」
410 「あ、はぁ〜い」

私は少し残念に思いながら、お片付けをして出発の準備を整えました。
見た目が変われなくても、ご主人様との時間が変わらなければいいや。
そう思っていたら、その3日後に転機が訪れるとは思ってもいませんでした。
1413/5:2008/04/09(水) 18:12:39.62 ID:5Vqarovf
-3日後-

主人「やはり412にする」
410 「ええっ、どうしたんですか突然? あんなに趣味に合わないって」

ご主人様の手にはもう既にデバイスが握られていました。
一度思い立ったら即行動するのが私のご主人様ですが、唐突過ぎるので
私は理由も分からず振り回される事もあったりします。

主人「ライジングストライクが妙に強いらしい。それにソードもハンゾウだしな」
410 「むむ〜、確かに打ち上げは魅力的です。けど眼鏡かけなきゃですよ」
主人「俺としては金髪よりはいい」
410 「は、はぁ…」
主人「それに412になると、結構なLvのレスタが使えるようになるらしい。
    倒れる事も少なくなると思えば、安いもんだろ」
410 「わぁ、凄いですね! それならご主人様の足を引っ張る事も少なくなりますー」

皆さんも既にご存知だと思いますが、GH-412は全てのデバイスが解放された今でも
かなり攻撃的なマシナリーで、GH-414にも劣らないと一部では言われています。
レスタも全体的に見れば微力ですが、410の時よりもかなり高めに使えて便利です。
GH-414は強いけど敵をどんどん吹き飛ばしちゃうので、気になる人には向かないとか?
余談ですが、GH-414デバイス発売時にその事をご主人様にお伝えしたら、こう言われました。

主人「お前ヘーゲル当てる自信あるか? ルウみたいなノーコンではなかろうな」

…否定できませんでした。

410 「えーと、それじゃあ眼鏡をかける準備をしなきゃですね」
主人「準備? これ食うだけだろ?」
410 「それだけじゃダメなんです! 準備に数日かかっちゃいますけど…」
主人「…別に急がないからいいが。
     (変だな、そんな話は聞いた事がないぞ)」

こうして、思い出すのも恥ずかしいGH-412の進化の準備が始まったのです。
1424/5:2008/04/09(水) 18:14:01.98 ID:5Vqarovf
(スマソ、3/5でsage忘れた)

主人「おーい、まだ終わらないのか? そろそろ寝るぞ」
410 「私はまだ仕事がありますから、お先にお休みになられて下さい」
主人「仕事熱心なのは関心だが、無理してるといくらマシナリーでも倒れるぞ」
410 「大丈夫ですっ、これも412に進化する為には大切な過程なんです!」
主人「…そうなのか?」

それから数日、私はデスクワークにのめり込みました。
普段はやらなくていい事も、とにかくやり込んで徹夜も当然の生活でした。
疲れるけど412になって、ご主人様のお役に立てるなら何ともないと言い聞かせてました。

主人「(明らかに変だぞ…マシナリーの進化ってこんなものなのか?)」

そして更に数日が経ったある日の事…。

410 「ご、ごじゅじんざまぁ…ひっく」
主人「おい、どうした? 顔真っ赤じゃないか!
     ジョギリの合成でも失敗したか? あれはついでの雷だから泣かなくても」
410 「ちがうんです…わたし、このままじゃ412になれませぇん…」
主人「…それはどういう事だ? あんなに頑張っていたのに」
410 「どうしても…どうしても…」
1435/5:2008/04/09(水) 18:15:11.56 ID:5Vqarovf
410 「目が悪くなれないんです〜!」
主人「アホかあああああああああああ!!!!」

*すぱーん!*

410 「いたぁぁぁぁい!」
主人「機械がンな事して眼ぇ悪くなるか! そもそも視力関係なかろうがぁ!」
410 「ひ、ひどいですごしゅじんさま〜! めがねはめがわるくなくちゃ…」
主人「たわけ! 世の中には伊達眼鏡という物があるのを知らんのかッ!」

………。

410 「そ、そうでしたっけ?」
主人「このド阿呆が! 変だと思って心配したのが間違いだった…さっさと食え!」
410 「ッ………は、はぁ〜い…ひっく」

…そう、私は眼を悪くしようと必死だったんです。
薄暗い夜に必死でデスクワークにのめり込んでいたのは、それが理由でした。
皆さんがそうして目が悪くなるなら、私達もそうすれば眼鏡をかけなきゃいけないくらい眼が悪くなる。
その時は本気でそう思っていたんです、私達がマシナリーであるという事も忘れて。
目が悪くなくちゃ眼鏡をかけてはいけないというのは、単なる私の思い込みです。

そんな恥ずかしい勘違いをしながら、私は412になりました。
今も凄い勘違いや酷い失敗をする事もありますが、元気にやっています。
144名無しオンライン:2008/04/09(水) 20:50:00.83 ID:D9ruhJrl
この天然パシリがかつて本編でどういう活躍をしていたのかが気になるw
145名無しオンライン:2008/04/09(水) 21:42:07.31 ID:yLiJhVQR
410系作者は数人思い当たるが、俺の記憶力では特定できん…しかし和んだ、GJ!
(今頃412進化と言うことは復帰とかスレに久しぶり来たとかなのだろうか…)
146名無しオンライン:2008/04/09(水) 23:52:06.65 ID:D9ruhJrl
単に当時の話をしているだけでは?
昔こんなことがあったっていう、外伝的なエピソードだと思ったんだけど。

それにしても、410系の話はやはり多いのか。
同じタイプのパシリでも、きっと色んな性格のやつがいたんだろうな…
147EPX 5章「発起1/6」:2008/04/10(木) 22:28:58.58 ID:NIliRKo1
「お前には、二つ聞きたいことがある」
ガーディアンズの新総裁ライア・マルチネスは、執務室に通された私に対して、まず問いかけた。

あの日…マスターをイルミナスに奪われ、
ハウザーと名乗る男によって自らも機能停止に追いやられた、運命の日。
私が目覚めたのは、それから数ヶ月経った後のことだった。
目を覚ました先は、ガーディアンズ本部の特別治療室。
ほとんど奇跡といっていい再起動を果たした私は、
ガーディアンズにも世界にも、劇的な変化がもたらされていたことを教えられた。

今まで秘密結社として名を潜めていた、イルミナスがその野望を明らかにし、
グラール星系全土に及ぶ多大なテロを実行したこと。
その一連の事件においてガーディアンズコロニーが、
居住地区を残してパルムのローゼノム・シティ近辺に落下し、甚大な被害を与えたこと。
さらに、前総裁オーベル・ダルガンの殉職。
これらの度重なる悲劇により、一時はガーディアンズが崩壊するに至ったこと。

そして、目の前にいるこのビーストの女性が、新たな総裁としてガーディアンズをまとめあげたこと。

一介のPMが総裁直々の問答を受けるとは異例のことではあるが、
単に新たなガーディアンズの体裁が整っていないことだけが理由ではなかった。

「まず、一点目だ。アタシが行方をくらましていた間に『アイツ』が立ち寄ったプラント。
そこで、何があった?
そこには大量のガーディアンズ、PMの遺体と共に、あるSEEDの肉片が残されていたという。
それが、アタシも何度か出くわした、新種のSEEDに酷似したものだって言うじゃないか。
ガーディアン、PM全て含めて唯一の生き残り…というより、蘇生を果たしたお前に、それを聞きたい」

元々PMは基本的に、ガーディアンに逆らうようプログラムされてはいない。
だが私は、事の全てを話すのはためらわれた。
全てを話すことはつまり、私のマスターがガーディアンズを裏切り、イルミナスに行ったことも話すことになる。
目の前にいる総裁がその事を知ったら、決してマスターに穏便な措置は取らないだろう。
148EPX 5章「発起2/6」:2008/04/10(木) 22:30:52.06 ID:NIliRKo1
「…どういうことだ?只のPMがガーディアンの…それも、総裁の質問に即答しないなんて」
傍らにいた若い男性が不審をあらわにする。
「まさか、イルミナスに…」
「黙っときな、クランプ」
クランプと呼ばれたヒューマンの男性は、総裁にひと睨みされただけで黙りこんだ。

「お前が話せない理由は…これだね?」
そう言って総裁は、執務用の机に数枚の写真を広げ、その中の一枚を取り出した。
それをひと目見て、私は息をつまらせた。
「現在何名か指名手配されている、イルミナス工作員の一人…お前の元マスターに違いないな?」

指名手配?
不吉な言葉だった。
今はもう傍で見ることのかなわない、マスターの写真に感慨にふける間もなく、
総裁はさらに衝撃的な事実を口にした。

「確定情報ではないが…総裁室直属管理局のホループ・デンスが調査した結果だ。確度は高い。
この写真の連中の何人か、或いは全員が…」
総裁はぎりっと唇を噛み締めて間をためた後、吐き出すように言った。

「…モトゥブで起きた、大規模なSEEDフォーム化事件。その、実行犯…という話だ」

私は思わず天を仰いだ。
モトゥブの住人の多くがSEEDフォーム化された、大規模なテロ。
総裁自身も心に大きな傷を負わされたという、近年最大の悲劇の一つ。
その実行犯として、マスターの名があげられている。

胸の内側からどす黒いものが湧き上がる。
あの優しいマスターがそのようなことをするはずがないと信じているとしても。
こうしてマスターをこのような非道な犯罪の容疑者にあげさせたというだけで、
イルミナスの名は私の心に、深い憎しみとなって刻まれていく。

思い出すのは、ハウザーと名乗ったイルミナスの幹部。
言葉巧みにマスターをたぶらかした、あの男の皮肉めいた笑い顔を思い浮かべた時。
私の心は、マスターと共にいる間はついぞ芽生えることのなかった、ある感情に満たされた。

あの男を…イルミナスのことごとくを、この手で引き裂いてやりたい、と。
149EPX 5章「発起3/6」:2008/04/10(木) 22:31:57.88 ID:NIliRKo1
「…ということだ。おい、聞いてるのか?おい」
総裁の、おそらく何度目かになる呼びかけで、私はやっと我に返った。

「どうやら、まるで耳に入っていなかったようだな」
「も、申し訳ありません」
「…まあいい。話を聞かないPMというのも珍しいが…もう一度言うぞ」
苛立ちよりも苦笑いを強く含んだ顔で、総裁は続けた。

「この女が元ガーディアンズにして、史上稀に見る凶悪犯罪の容疑者であるという事実は重要だ。
アタシらは何としても、この女を確保しなければならない。
そこで、お前にはこの女の情報を可能な限り話して欲しい。
先の質問…例のプラントで何があったかも含め、お前のマスターの経歴、人柄、友人関係…
そして、何故この女がイルミナスに下ることになったのか」

そこで総裁は一息ついて、後に重々しく切り出した。
「…アタシは、知る必要がある。
あのモトゥブの悲劇…それを引き起こした張本人のことを。
どんな奴のために、あの子が…みんながあんな目に合わされたのかを、ね」

話さない訳にはいかなかった。
総裁がマスターを捕らえてどうするかは聞くまでもなかったが、
総裁の言葉には、私のどんな抵抗をも許さない重みと迫力があった。

私にできることは、只一つ。全てを話すこと。
マスターが、どんなに私によくしてくれたか。
どんなに、ガーディアンズとしての誇りに満ち溢れていたか。
そんなマスターが、何によって追い詰められ、誰によって道を誤るに至ったのか。
全てをありのまま話し、後は総裁の裁量に委ねるしかなかった。
150EPX 5章「発起4/6」:2008/04/10(木) 22:33:37.29 ID:NIliRKo1
全てを聞いた総裁は、意外に冷静だった。
深く眉間に皺を刻んだまま大きく深呼吸をし、それからゆっくりと口を開いた。

「…早まったことを。よりによって、あのハウザーにたぶらかされちまうとはね。
…あいつは、イルミナスの幹部とは名ばかりの、とんでもない悪党でね。
奴が目指すのは、全ての滅び…イルミナスの目指すヒューマンの復権だの、
まして真の平等など、嘘っぱちもいいとこだ」

「…マスターは、ハウザーという男を信じた様子はありませんでした。
ただ、彼の心の内はともかく、その言葉そのものには一面の真理を感じたものと思われます。
ハウザーにどのような目的があろうと、マスターはマスターの理想を貫こうと…」
「なら、それをガーディアンズで貫いてくれりゃよかったんだ」
荒々しく机を叩く総裁に身をすくませる。

「どうしてガーディアンズでできなかったことが、イルミナスでできるなんて思っちまうんだよ。
そりゃあ、あんたのマスターは周りのガーディアンに恵まれなかったかも知れないよ。
実際、アタシがその場にいたらそいつら、全員ぶっとばしてやるとこさ。
パルムの浄化は当然重要な任務だけど、その前に人としてやるべきことがあるだろうに…」

「でも…確かあの時、浄化の進まないガーディアン達にいささか過激な発破をかけたのは、総裁では…」
後ろに控えていたクランプという青年が口を挟んできたが、
総裁が青年の方に顔を向けて一秒もしないうちに、顔を蒼くして目をそらしていた。
総裁がどんな表情をしたのかは、こちらからはよく見えなかった。

「…まあ、ともかくだ」
総裁が咳払いをして、こちらに向き直る。

「あんたのマスターがどういう奴かはともかく、容疑がかかっている以上このままにはしておけない。
同盟軍や他の警察機関に抑えられる前に、こちらで確保しておかなければならない。
お前の話を聞く限りでは…。
洗脳されたか、濡れ衣なのか、或いはもっと他の理由があるかは分からないが。
少なくとも、あの事件を嬉々として起こすような外道…という奴じゃあなさそうだ。
確保すれば、色々と役に立つ内情を聞けるかも知れないな」
151EPX 5章「発起5/6」:2008/04/10(木) 22:34:53.01 ID:NIliRKo1
そこまで言うと総裁は、クランプを横目で見やり、声をかけた。
「クランプ。パルム、ニューデイズ、モトゥブとの連携を呼びかけるのは続けてもらうとして、
イルミナスに対抗する、専用の特殊部隊の編成は進んでいるな?」
「はい。その件は抜かりなく」

「今、このPMから引き出した情報を元に、この女を中心として足取りを掴むよう手配してくれ。
極力、殺さず捕らえるようにな」

殺さずに、捕らえる。
その一言だけでも、最初に想定した最悪の事態は避けられつつあると考えられた。
自然、表情もゆるみがちになる。
そこへ、総裁から釘をさされた。

「勘違いするなよ。お前のマスターには相応の罰は受けてもらう…無罪放免というわけにはいかないよ?
しっかりと、犯した罪を償ってもらって…それからだね」
最後の一言の後、にっと口元を吊り上げた。

まだ、これから事態がどう動くかは分からなかった。
だが、どうやら総裁がマスターに対して、それほど悪い感情を持たなかったこと。
何より、今まで評価されなかったマスターのパルムでの行動について、総裁の賛同をもらえたことは、
私にとって心強い支えとなっていた。

「…さて。お前のこれからの処遇について、だが」
クランプという青年が執務室を出た後、総裁は改めて切り出した。

「裏切り者のPM、という記憶を忘れたければ。
この後お前を初期化して、しかるべき新しいガーディアンにつけてやってもいいが。
…どうする?」
152EPX 5章「発起6/6」:2008/04/10(木) 22:36:07.84 ID:NIliRKo1
私の答えは決まっていた。

「…私は、マスターの最後の命令に従います。
全身全霊をかけてマスターを追いかけ、この手でマスターを連れ戻します」

「…そう言うと思ったよ」
机の上に両肘をつき、組んだ両手に顎を乗せた姿勢で、総裁はにっこりと微笑んだ。
猛々しい印象が強いビーストの女性にそぐわない、穏やかで慈愛に満ちた笑顔だった。

「お前には、PMらしからぬ強力な自我がある。意志と呼んでもいい。
本来キャストよりずっと単純な思考機能しか持たないPMに、それだけの自我を育ませてきた。
それだけで、お前のマスターの人柄が偲ばれるよ」

そこまで言うと総裁は、凛とした表情で立ち上がった。
「ならば、PM412に改めて命ずる。
直ちに対イルミナス特殊部隊に加わり、お前のマスターをイルミナスより奪還しろ。
そのための特殊強化措置の施行を、任務達成までの短期間に限り、
ガーディアンズ18代目総裁ライア・マルチネスの名において許可する」

PMに対する、特殊強化措置。
それはすなわち、PMがキャストと同様の思考機能、および能力を持つことを意味する。
通常は、キャストの人権を侵害する行為として禁じ手とされていたが、
ごく稀にこの強化措置を施されたPMは、歴史上存在するという話だ。
いずれも背に腹を変えられない、それぞれにのっぴきならない事情があったのだろうが、
まさか自分がその措置を施されるとは思っていなかった。

期間限定の強化措置。望むところだった。
私がただのPMに戻る時…その時はきっと、マスターが私の元に戻り、
新たな命令を与えてくれる時だと、私はそう信じていた。
153名無しオンライン:2008/04/10(木) 22:41:02.17 ID:NIliRKo1
お待たせしました。
EPX〜Another You〜の第2部を投下します。

もう少しコンパクトにまとめられるかと思っていましたが、
予想以上のボリュームになってしまいそうです。
途中で飽きる方もいらっしゃるかも知れませんが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
154名無しオンライン:2008/04/11(金) 23:19:01.17 ID:LSOtg0ag
コメントも挟まず連続で失礼しますが、本日の投下です。
155EPX 6章「孤高の孤立、孤独な孤影1/6」:2008/04/11(金) 23:21:06.64 ID:LSOtg0ag
「き…気をつけろ、手強いぞ…この女」
私を取り囲む、イルミナス構成員。その一人が、震える声で仲間に声をかけた。
確実な追跡が功を奏し、逃げ場のない場所まで追い詰めた所で、
やけになって斬りかかってきた構成員の一人を返り討ちにした時のことだった。
構えた長剣の発するフォトン光が、周囲を威嚇するように輝いている。

睨み合いに耐えかねた一人が、背後から襲いかかってきた。
緑のフォトン光を放つ片手剣が低くうなりをあげ、私の頭上へと振り下ろされる。
対して私は両の脚で力強く地を踏みしめ、下から長剣を振り上げた。
人一人吹き飛ばすと豪語しても差し支えない程の風圧が男の片手剣を宙高く巻き上げ、
長剣のフォトン光は無慈悲に男の腰から肩にかけて通過し、淀みない軌跡を描きあげた。

体を二つに割られた男は血しぶきを噴き上げながら、どしゃりとその場に崩れ落ちた。
隊長格の男が、何とか威厳を保とうと懸命にわめきたてる。
「ひ、一人ずつかかってもムダだ…全員で、全員で一斉にかかれっ」
及び腰になっている者も中にはいたが、一応はそれなりに訓練を受けてきたのか、
とりあえず形にはなっている程度の連携を感じさせる一斉攻撃をしてきた。

素人目には、逃げ場はない。
熟練のガーディアンには、いくらでも切り抜ける隙間は見つけられたが、私にはその必要もなかった。

素早くナノトランサーにセットしているパレットを切り替える。
間をおかず手元に現れる、一振りの杖。
禍々しいとさえ形容できる、黒いフォトン光を放つそれーテスブラーを、迷うことなく振り下ろした。

途端に降り注ぐ、雷の雨。
周囲を満遍なく稲光が覆い、法撃への何の心備えもしていない彼らに対し、
無数の黄色い帯が容赦なく侵食する。私が杖を振る度に、幾たびも、幾たびも。

耳をつんざく轟音が止む頃には、隊長を含めて全員、力なくその場にひざまずいていた。

「確保しなさい」
無感情に告げる。
背後に控えていた部下が数人、手際よくイルミナスの構成員を拘束していった。
156EPX 6章「孤高の孤立、孤独な孤影2/6」:2008/04/11(金) 23:22:21.93 ID:LSOtg0ag
私は、ライア・マルチネス総裁の指令に従い、強化措置を施され対イルミナス特殊部隊に編成された。
周囲には、私が元PMであることは伏せられ、キャストとして扱われている。
強化措置によって一回り大きなボディを与えられたこともあるが、
ガーディアンズには私と同様の小柄な女性ガーディアンが多いこともあり、
私の正体を疑うものは現状いなかった。

他のキャストと違い、私は自由に職を変更することはできない。
措置を施される段階で、設定された職の機能に準じた性能を擬似的に与えられるだけで、
実際に正規の転職手順を踏んでいるわけではなかったからだ。
私がその際、どの職を選んだかは言うまでもなかった。

また、思考機能をキャスト基準の高性能AIに切り替えられるにおいて、
私の自我は2点の感情を大きく膨れ上がらせる結果となっていた。
マスターを取り戻そうとする意志。そして、イルミナスに対する憎しみ。
対イルミナスにおいてその感情は大きな武器となったらしく、
気が付けば私は、部隊の一小隊を率いる隊長となっていた。

身体を二つに割られた男の遺体を見ても、何も感じるところはなかった。
ヒトが当然のように害虫を踏み潰すのと同じように扱っただけで、
私はその行動について何の疑問も抱かず、いささかの良心の呵責に苛まれることもなかった。

そう。イルミナスは、こうなって当然の存在なのだ。
先の雷テクニック「ギ・ゾンデ」で無力化された構成員の中には、
そのまま二度と目を覚ますことはないと思われる者もいたが、関係なかった。
情報を聞き出すために、全滅さえしなければいい。

構成員の死亡を確認した部下の一人が、咎めるような恐れるような視線を向けた気がしたが、
意に介さなかった。
敵の生死を気にするようだから、私のような擬似キャストに顎で使われているのだ。

部下の働きなど、最初からあてにしていない。
私は、WTだ。私と二人で常に任務をこなしてきた、マスターと同じWTだ。
マスターは、頼れる友人などいなくとも立派にガーディアンの務めを果たしてきた。
私だって、果たして見せる。
マスターがいないのなら、たった一人でも。
157EPX 6章「孤高の孤立、孤独な孤影3/6」:2008/04/11(金) 23:23:12.43 ID:LSOtg0ag
「あら、412ね。任務ご苦労様」
報告のため総裁の執務室に入った私を迎えたのは、ライア総裁ではなかった。
私やマスターと同じように眼鏡をかけた、長い金髪の映えるニューマンの女性だった。

「シドウ博士。総裁…それに、師匠はどちらでしょう?」
「それがね。ライア…総裁ってば、アンドウ・ユウとルミアちゃんを連れて、
直接モトゥブの交渉に乗り出してっちゃったのよ。総裁になったんだから、少しは自重して欲しいわよねえ」
いかにも困ったわね、という調子で肩をすくめる。

「…そうですか。師匠はともかく、ルミア研修生まで行ったのは、どんな理由が?」
「ま、いろいろとね。複雑な事情があるみたい」
お茶を濁す回答だったが、私は特に気にしてはいなかった。
師匠がいる以上、任務の失敗はありえないと分かっていたからだ。

強化措置を終えた私に、総裁は臨時の教官として一人のガーディアンを紹介した。
無口で、一見これといった印象がない、どこにでもいるグラール住民と変わりないように見えたが、
私は最初の研修任務ですぐにその考えを撤回した。
あらゆる職、武器に精通したそのガーディアンを、ほどなく敬意をこめて「師匠」と呼ぶようになった。

師匠はルミア・ウェーバーという研修生の教官とかけもちで私の教育を受け持っていたため、
行動を共にした期間はごくごく短いものだったが、教わったことは数知れない。
WTとしての戦い方も、マスターの見よう見まねで足りなかった基礎から教えてもらった。
私が部隊に編成されて瞬く間に隊長になれたのも、師匠の教育が大きな要因の一つだったのは確かである。

報告書だけ総裁の執務机に置いた私は、シドウ博士と通り一遍の世間話をした。
マヤ・シドウ博士は、本来装備開発課の研究員だったが、現在は対SEEDワクチン開発の責任者となっている。
どのような経緯があったかは敢えて聞いていないし、彼女からも話す様子はない。
普段の明るい雰囲気の裏側に隠された、それなりの事情があるのだとは推察された。

「イルミナスのテロも重大事だけど、最近は他にも物騒な事件が頻発してるみたいね。
パルムでは、何故か囚人護送車の襲撃が相次いでいるみたい…詳細は伏せられて分からないけど。
私の故郷ニューデイズでも、教団に不法侵入があったとかなかったとか…。
そうそう、モトゥブなんかではね。非合法に行われている奴隷売買の組織の一部が、
同士討ちでもしたのか壊滅したなんて話。これなんかは、喜んでいいことかも知れないわね」

適当に相槌を打っておく。私には興味のないことだし、必要な情報とも思えなかった。
必要なのはイルミナスの手がかり、そしてマスターの行方。それだけだった。
きりのいい所で話を打ち切り、執務室を後にした。
158EPX 6章「孤高の孤立、孤独な孤影4/6」:2008/04/11(金) 23:24:10.08 ID:LSOtg0ag
「精が出るね、相変わらず」
一人訓練室にこもり、黙々とシミュレートをこなす私に、ふいに声をかけてくる者がいた。
「こんにちは、440。今日はご主人は一緒ではないのですか?」
かつて炎の防衛線で一緒の班になった、PM440。
当時は440の方が少し背が高かったが、強化措置を施した今では背丈の高低は逆転していた。

彼女の主人…マスターを追い詰めた一因でもある合理主義のキャストも、
対イルミナス特殊部隊に転属となっていた。
正直腹に据えかねるものがあったが、班が別になっているので今のところ、さしたる衝突はない。
代わりにこの440とは、時々こうして会っていた。

「412…いや、今は412様と呼ばなきゃ駄目かな?立場上」
「からかわないで下さい。私は任務上、一時的にこのようになっているだけで…」
いきり立つ拍子に眼鏡がずり落ちる。すかさず440が眼鏡の位置を直してくれる。
ずれた眼鏡を戦闘中でもすぐに直そうとするのは、私のPM時代からの悪い癖だが、
それより早く440にこうされるのは、嫌いではなかった。
蓮っ葉な口の利き方をするが、PMらしく細かい所に気の付く性質で、
この440の行動は彼女なりの親愛の表れであると感じられた。

「…今日も、たった一人でイルミナスとやりあったんだって?」
しばらく他愛のない話をしたあと、440はやや上目使いで尋ねてきた。
「大丈夫です。彼らごとき、私一人で十分制せますから」
「ん、まあ。確かにWTは、単独行動に向いてるかも知れないけど…さ」
440の歯切れの悪い口調が引っかかる。

「…何か、言いたいことでも?」
「いや、ね。その…もう少し、部下とか仲間とか…他の連中の力も借りて、いいんじゃないか」
「必要ありません。私にはマスター…或いは、師匠以外のパートナーなど、要りません」
「…そんなに、他のガーディアンは信用できないか?」
「できません」

私がきっぱりと言い切ると、440は少し悲しそうに目を伏せた。

私が他のガーディアンを信用できないと言った理由に、あまり論理的な根拠はなかった。
ただ、普段マスターが単独で任務をこなしている中、珍しくパーティを組んだあの日に会った彼ら。
マスターを追い詰めた彼らがガーディアンの典型だと考えると、どうしても「仲間」という意識が持てないのだ。

どうせ、他の連中は報酬目当てで集まっているに決まっている。
そんな連中とマスターや師匠を同列に見ろというのは、私には無理な話だった。
159EPX 6章「孤高の孤立、孤独な孤影5/6」:2008/04/11(金) 23:25:42.22 ID:LSOtg0ag
「…それに」
440の様子を見てさすがに悪いと思った私は、少し話の方向性をそらすことにした。
「マスターは、常に単独であらゆる任務をこなしてきました。
そのマスターを連れ戻そうと言うのです。私も、一人で何でもできなくてはなりません。
誓いを守るために…私は何としても、一人で戦う力を身につけなくてはならないのです」
「ああ、そうだね。そう…だけど」

440はなおも何か言おうとしたが、口ごもってその後の言葉は出てこなかった。
気まずい沈黙が流れる。何とか別の話題を探そうとしたが、その前に。

「私のPMがどこで油を売っているかと思えば、第2小隊の鉄砲玉と一緒とは…また調整が必要かな?」
無機質な機械顔のキャストを見ると、私は自分でも顔が険しくなるのが抑えられなかった。
440から一気に表情が消えていく。
そそくさとキャストの後ろに走りより、そのまま人形のように微動だにしなくなった。

「御機嫌よう、我らが同胞のお嬢さん。相変わらずの活躍ぶりで何より。
効率を重視する我らにあって、部下を有効活用することもなく単独で突入を繰り返す。
同じ隊長として、こうも違うものかと興味をそそられる」
「私は貴方に興味はありません。どこにでもいる、極普通のキャストなのでしょうから」
「個性があることを自慢するのは、ヒューマンのやることだ。我々はそのような無駄を好まない」
目の前のキャストの声には、ほとんど感情というものが感じられなかった。

「職にしてもそうだ。我々の能力を最も活かせるのはfGであり、次いでfF、φG等だ。
無個性とヒューマン辺りは言うかも知れんが、事実それによって、我らは華々しい戦果を上げている。
そこへ来てわざわざWTを選ぶ…一体どのような理由があるのやら」
「貴方に教える必要はありません」
「そうだろうな。私もそれを聞く必要性を感じない。無駄な情報をインプットするメリットもないだろう」
「ここには何をしに来たのですか。貴方に無駄話をする、理由も余裕もないはずです」

キャストは動じる風もなく、悠然と息をついた。腹立たしいほど感情の起伏を感じさせない。
「用件を伝えよう。今度の任務…モトゥブの鉱山に潜伏していると思われるイルミナスの一党の捕獲。
我が第1小隊と、君の第2小隊が合同でこれに当たれと通達があった。
そういうわけで、当日はよろしくお願いする。
できれば足手まといにならぬよう然るべき職への転職を勧めたかったが…致し方ない。
聞く耳持つ様子には、とても見えんからな」
160EPX 6章「孤高の孤立、孤独な孤影6/6」:2008/04/11(金) 23:27:33.66 ID:LSOtg0ag
惑星モトゥブ、グラニグス鉱山の一角。
元々モトゥブは全土に渡り、ヒトにとって住みやすいとは言い難い、厳しい環境の惑星ではあるが、
とりわけこの鉱山のある北方大陸は極寒の地として、久しく移住者を拒み続けてきた辺境の地である。
かつて炭鉱として開発が進められた時期もあったが、現在はほぼ打ち捨てられた状態にあるのは、
ひとえにこの厳しい寒気のためと言われている。

そんな場所にイルミナスの一党が潜んでいるというのは疑わしくもあるが、
人目を避けるという意味であれば、逆に納得の行く場所でもあった。

「さて、余り大勢で押しかければ、敵に気取られる恐れもある」
キャストfGは周囲の者を見回してから、おもむろに口を開いた。
「まずは少人数で中に潜り込み、敵の規模を偵察するのが上策、と言えるだろう」

「けっ、んな面倒な真似しなくても、全員で乗り込んで皆殺しにすりゃあいいだろ」
「いつもながら脳筋ね、アンタ。中で迷って逃げられたりしたら元も子もないじゃん」
すかさず口を挟んできた男性ビーストに、間髪入れず横槍を刺す女性ニューマン。
まぎれもなく、あの炎の防衛線で会った3人のうちの2人だった。
私やマスターにとって因縁深い3人が、揃って対イルミナス部隊に編入されている。
これは、運命の悪意か何かだろうか。

「その通り。こうした鉱山はえてして複雑な迷宮と化していることが多い。
中に乗り込んだはいいが、悟られた敵に地の利を活かされて逃亡などされては台無しだ。
…君の作戦遂行能力は買うが、せめてもう少し頭を働かせてほしいものだな」
機械のような淡々とした口調が、かえって嫌味さを増していた。
ビーストfFはふん、と鼻息も荒くそっぽを向ける。

「私の調べたところ、この鉱山の中はともかく、出口はこの一箇所のみのようだ。
そこで提案だが、二手に分かれようと思う。
すなわち、中に入って偵察を行い、同時に逃走なり追跡なりして、敵を入り口へとおびき出す役。
入り口で待ち構え、出てきた敵を一網打尽にする役。
私の見解では、後者の役は殲滅力に長ける我が隊、偵察役には第2小隊がふさわしかろうと考える」

キャストfGは私の方に視線を移し、一言加えてきた。
「…そちらには、単独行動がことにお好きな方がおられるようだからな」

嘲笑する第1小隊の面々と、対照的に暗い顔でうつむく第2小隊の部下達。
隊長、と部下の一人がおずおずと声をかけてきたが、私はそれを無視して言い切った。

「分かりました。偵察は少人数が最適と言うのには同意。私一人で中に乗り込みます。
…ただし、そちらの仕事がなくなっても、文句はおっしゃらないように」
161名無しオンライン:2008/04/11(金) 23:31:08.79 ID:LSOtg0ag
本日の投稿はこれまでです。
生まれ変わったPM412は無事任務を遂行できるのか?ご期待下さい。
162名無しオンライン:2008/04/12(土) 03:20:53.41 ID:Z2Opnm9R
感想サンクス、俺はスレに久しぶりに来た方
ここを見なくなる前に書きかけてた奴を続けた物だから、ネタ自体がかなり古いんだ

これから投下するのは武器差別の話題に敏感な人は要注意
EPXの人とかぶる部分もあるので、不愉快だったらすまない
1631/9:2008/04/12(土) 03:22:08.51 ID:Z2Opnm9R
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。

突然ですが、ガーディアンズの皆さんにとってはなにが大事ですか?
沢山の敵を倒す、自分の意地を貫き通す、仲間の迷惑にならないようにする。
もっと色んな事があるでしょうし、それはここでは書き切れない位でしょう。

今回は、「自分の意地を貫き通す」私のご主人様の場合のお話です。
1642/9:2008/04/12(土) 03:23:08.23 ID:Z2Opnm9R
電撃ミッションカーニバル。

テーマパークだか何だか知らないが、とにかく俺達にとって稼ぎ時が到来していた。
それと同時に各惑星の治安が一気に悪くなるというのは、最早風物詩の1つとも言える。
治安の悪化を招く祭り事をするような新総裁はやはりバカだなと思うが、口には出さない。
結局は俺も、新たに誕生した戦闘タイプ"ファイマスター"と新規取得したPA訓練の為に
ここに足蹴に通っているからだ。おかげで数ヶ月は生活に困らない金も手に入っている。
いわゆるエリートな同僚、後輩達のおかげで2週間限定で最新型合成システムも借りれるのだ。
その恩恵に浸りながら新総裁をバカにするのは筋違いだろうな。

その日も、PAとタイプランクを上げるべく一人で黙々と作業を続けていた。
続々と出現する炎感染ポルティを自慢のカン・ウーで斬り裁いていると、メール受信の音が鳴った。

主人「…誰だ?」

そのメールを開いてみると、送信者は知り合いの1人だった。
友人というには関係が浅すぎるので、俺は知り合いとしている。
最も、友人と呼べるような人物は大概が辞めてしまったので区別の意味がないが。

「これからマザー周るんだけど、人手が足りないから助けてくんない?」
1653/9:2008/04/12(土) 03:23:56.25 ID:Z2Opnm9R
主人「マザーか…」

この祭り事はVRとはいえ、同盟軍司令マザーブレインさえも出てくる。
ランクが早く上がり、儲けもいいので人気という最早威厳の欠片も感じられない扱いだ。
まぁ、イルミナス助長の原因を作った一つでもあるので自業自得とも言える。
戦闘タイプを上げるのは退屈だしさっさと終わらせたい、PAも完成間近なので
そろそろ気晴らしをしたいと思った俺は了承の返信を送り、訓練を切り上げて合流場所に向った。

今思えば、ここで「今忙しい」と断っておけばよかったのだろう。

沼子「やっほ〜、こっちこっち」

今では珍しい人ゴミの中で、恥ずかしげもなく手を振る知り合いは1人のキャストと共にいた。
知らない顔だが、どうやら俺以外に手伝いを頼まれた手駒の1人なのだろう。
ファイマスターLv1らしく、俺と同じような理由でOKを出したのだろうなと容易に想像できる。

主人「手を振るな、他人のフリをしたくなる」
沼子「(別に誰も聞いてないってミ☆)」
主人「そうかい」

知り合いはボソボソとよく聞き取れない声で返した。
こいつの癖だ、何事もない普通の事だろうとすぐボソボソ声で喋る。
どうせ治さないだろうから、その時は適当に返すのが俺の中でのこいつの対処法だ。

箱男「よろしくー」
沼子「(よろしくネっ♪)」
主人「どーも」

社交辞令とも言える挨拶が終わった所で、俺達は早速VRへと向った。
1664/9:2008/04/12(土) 03:24:38.40 ID:Z2Opnm9R
まず向ったのは電刃エリア、ここでは名前通りに雷感染エネミーが出現する。
最初の狭い通路をいつも通りに走ると、いつも通りにゴ・バジラが歓迎の鳴き声を発していた。

沼子が杖を振りかざし、やたら巨大な土塊を俺の数歩前に出現させる。
怯んだゴ・バジラに俺とキャストはそれぞれの自慢の武器を構えて踊り出た。

更に土塊が出現し、ゴ・バジラはたまらず自慢の突進すら出来ずにいる。
そこにキャストがドゥース・マジャーラで一気に駆逐し、ゴ・バジラは倒れていった。
俺はと言うと、長剣を振った時には既にゴ・バジラが死んでいたので何もしていないも同然だ。

しかしこれはVRだ、決まったパターンしか繰り返さない。
俺はすぐに長剣を構え直し、構築されていく新たなゴ・バジラ目掛けて一気に振り下ろした。

グラビティブレイク…俺の代名詞とも言えるソードの奥義。
叩き付けられたゴ・バジラは誕生してから3秒で、その短い生涯を終えていった。
所詮は電磁世界のデータなので、生涯と言うにはおかしいかもしれないが。

続け様に大きく長剣を打ち上げると、すぐ隣で構築を終了させたゴ・バジラが上に吹き飛んだ。
俺はそれを確認すると、攻撃を止めた。既に次の刃がトドメを刺す事が確定していたからだ。
キャストが繰り出す槍の連突きをまともに浴び、またほんの数秒で姿を消していく。

別段、いつもと変わらない。
VRが決まったデータしか出さないなら、その対策も簡単に出来る。
次のエリアに出てくる敵を思い出しながら、走ろうとしたその時だった。

沼子「(ねぇ)」
1675/9:2008/04/12(土) 03:25:15.64 ID:Z2Opnm9R
主人「…ああ、先行しすぎか? 悪かったな」
沼子「そうじゃなくて、未だにソード使ってんの?」

知り合いは俺の持っている武器をまるでこの世の物とは思えない目で見つめていた。
俺が持っているのはダイフォトン最大出力のヒュージカッター、俺のPMの現時点での最高傑作だ。

主人「そうだ」
沼子「これ貸すね」

俺の答えを聞くや否や、知り合いは武器を差し出してきた。
それはダイフォトンのムグンリュク…現時点で最も人気のある槍の一つだ。

沼子「まさかとは思ったけど持って来てよかった〜♪
    終わるまで貸してあげるから、これでマジャーラしてね」
主人「………」
箱男「どうしたん?」

突然止まった俺達に、先に進みかけていたキャストが歩み寄ってくる。
この男もダイフォトンのムグンリュクを持っている…その輝きからかなり高出力だと分かる。

沼子「槍持ってないから貸してあげたの♪」
箱男「FMはSしか装備出来ないから仕方なくね?」
沼子「(多分ソードしか作ってない。MAGの時もカン・ウー合成しまくったとか聞いた><)」
箱男「もったいねw (同じ金でムグンリュク作ればいいのにw)」
沼子「(でもマジャーラ覚えてるし問題なし(^-^)b)」

知り合いの言うように、俺は確かにマジャーラを覚えている。
冗談半分で、余っていたムカトランドを合成させたらレイフォトンの高出力品が出来たからだ。
使うような友人もおらず、売る気もなかった俺は洒落のつもりでマジャーラをLv40まで上げたのだ。
今では、あまりに楽すぎてつまらなく感じたので単に覚えているだけになっている。
ファイガンナーをLv10まで上げなければならなかった時は、面倒臭いので使った記憶はあるが。

…ここまでは良かった。
しかし次の言葉が俺にとっては禁句だった。

沼子「そのカッター売ってムグンリュク買いなよ。今なら高く売れるよ♪」
箱男「今高いから無理かもw 俺の槍売る。(20%とかだけどww)」
主人「………!」

沼子とキャストが笑いながら話す中、俺は既に悟っていた。
こいつ等とこれ以上戦う事は出来ない、俺のプライドが許す行為ではないと。
気がつけば、俺はVRリンクを勝手に切断し、部屋に戻るキューブに足を運んでいた。
その途中で声が聴こえた気がしたが、構う程の心の余裕が俺にはなかった。
1686/9:2008/04/12(土) 03:26:00.28 ID:Z2Opnm9R
-マイルーム-

412 「ふぅっ…終わった…」

私は今日もお掃除…ここ2週間ずっと掃除だけの毎日を過ごしています。
電撃カーニバルというお祭りが開催されているらしく、ご主人様もよく通っているからです。
単独訓練の際はついて行けるんですが、報酬の都合で私が行けない場所もあります。
だから、ご主人様がほしい物を取りに行く時は私はお留守番です。

412 「はぁ…明日は新しくPAを買ったりして訓練に連れて行ってくれるといいなぁ。
     …はっ、いけないいけない! 私のワガママでご主人様を疲れさせちゃ!」

私はふるふると顔を振って、まだやる事はないかと部屋中を見回しましたが
もう拭ける所は拭き尽くし、アイテム整理も終わってしまい、合成作業も何もありません。

412 「お茶でも入れようっと」

カップをセットしていると、ドアが開きました。
その奥には、非常に浮かない顔をしたご主人様が立ち尽くしていました。

412 「あ、ご主人様! おかえりなさ………?」
主人「………」

ご主人様は厳しい目付きで私を見つめてきました。
その目付きは何かに怒っているような、けど何処か悲しそうな目です。
…私、何か悪い事をしちゃったのかな? でも合成もないし…掃除が足りない!?
ううーん、けどセンサーを全力で働かせても埃はほとんど取れていると出たし…まさか私壊れ始めてる!?

私が不安を頭の中でグルグル巡らせていると、ご主人様はボソリと呟きました。

主人「…俺もお前みたいなら、武器でとやかく言われず済むんだろうか」
412 「…えっ?」

ご主人様はそのまま何も言わず、ドレッシングルームに入っていきました。
私はその言葉の意味は分からなかったけど、お茶を二人分入れる準備を始めました。
一度ドレッシングルームに入ると、ご主人様はその日は一切働かないと分かっているから。
1697/9:2008/04/12(土) 03:26:27.04 ID:Z2Opnm9R
主人「………」
412 「………」

ご主人様は何も喋ってくれません。
先程の言葉の意味がどうしても分からないけど、とても聞ける雰囲気ではありませんでした。
入れたお茶は、もうすっかり冷え切ってしまい少し早いアイスティーになっています。

どうしていいか分からない時間が続きましたが、私はふと気付きました。
ご主人様が、立てかけてあるダイフォトンのヒュージカッターを見つめているのを。
それは私が始めてのS級ソード合成で作り上げた、最高出力の一振り…私の最高傑作です。

412 「…カッター、傷付いちゃいました?」
主人「………」

ご主人様はやはり何も答えず、カッターを見つめ続けていました。
私は繋げる言葉が見つからず、同じようにそのまま黙り込んでしまいました。
ディスクを何も入れてないジュークボックスは、耳鳴りが起こりそうな静寂を奏で続けています。

何時間経ったでしょうか?
ご主人様がようやく、口から言葉を発し始めてくれました。

主人「…PMは、最初から装備が決まっているんだよな」
412 「は、はい…そうですが…」

私達マシナリーはそれぞれ違う装備が搭載されています。
そんな当たり前の事を聞いてくるご主人様に、私は戸惑うばかりでした。

主人「それで選ばれるんだから、文句も言われないよな」
412 「…さ、さぁ…他のPMの皆さんは言われてるかもしれません…」

ご主人様は下を見つめ、大きな溜息を吐きながら今までより強く低い声で続けました。

主人「俺もお前みたいだったら、武器で怒る事も悩む事もないかもな」
412 「…? 一体何があったんですか…?」
1708/9:2008/04/12(土) 03:27:24.52 ID:Z2Opnm9R
それからご主人様はゆっくりと今日あった出来事をお話してくれました。
ソードよりも槍を使えと言われた事、お金の使い方をバカにされた事を。
そして、私の最高傑作品を売って相応の槍に買い換える事を進められた事を。

412 「…そんな事があったんですか」
主人「流石に堪えた。自慢の武器をあっさり売れって言われたからな」

私は自分自身の最高傑作を売れと言われた事に対して怒るより、ご主人様の様子が心配です。
今までご主人様は何を言われてもソードを使う事を止めない程の人で、それはもう筋金入りのソード好きです。
そんなご主人様がこんなにまで落ち込んでしまうなんて、一体何がご主人様を悩ませているのか?

412 「…でも、今までも同じような事があったじゃないですか。
     ご主人様らしくないですよ、笑い飛ばしちゃいましょうよ!」
主人「飛ばせるか! お前がせっかく作り上げた最高の剣を踏み台にしろと言われたんだ」

私はびくっとなり、背筋を立てて座ったまま動けなくなってしまいました。
ご主人様の目付きは怒りに満ちた鋭い光を放っていたからです。

主人「俺もお前みたいなら、こんな風に武器で怒ったり悔しい思いをせずに済むかね…。
     決まった武器しか持たず、それで辞めるまでのパートナーに選ばれるんだからな…」

そうか…ご主人様はソードという武器種類ではなく私の最高傑作を馬鹿にされた事で怒っていたんだ。
それで私達みたいだったら、武器で怒られたり馬鹿にされたり他の武器を渡されたりしないかもと思っているんだ。
…今の私には最高傑作を大事に思われてる誇らしさなんて少しもありませんでした。
だって、いくら出来がよくてもご主人様がこんな風になってしまったら意味がないじゃないですか?

私は精一杯、ご主人様を元気付ける言葉を探しました。
そして、よく纏まらないまま自分の思った事を口にしました。
1719/9:2008/04/12(土) 03:28:03.04 ID:Z2Opnm9R
412 「…あの、上手く言えないんですが、私は好きな武器を選べるご主人様が羨ましいです…。
     私達は決まった武器しか使えないから、他の武器が使ってみたくなっても無理ですし…。
     デバイスを使えばそりゃあ変われますけど、デバイスによっては私が私じゃなくなっちゃうし…」

自分で何を言ってるか、よく分かりませんでした。
励ましになっているかも分からない、とにかく思いついた事をそのまま喋っているだけでした。

412 「ご主人様は自分でソードを使いたくて選べても、私達は自分では無理ですし…。
     自由に選べるのに決まった武器しか使わないから、格好いいって思いますし…あれ、あれ、何言ってるんだろう?
     えっと、えっと…ご主人様が私達みたいになっちゃったらそう思えなくなっちゃう…あーん、もう!」

全然言いたい事が伝えられなくて、頭を掻き毟ろうとしたら…。
既に、ご主人様の大きい手が私の頭の上に乗っていました。
ご主人様は先程までの暗い表情ではなく、何か呆れたような笑みを浮かべてました。

主人「分かった分かった。よく分かった、お前の言いたい事。
     そうだな…、俺だけの楽しみがあるのに安易にお前みたいになんて言うのはよくないな…」
412 「ふえっ…痛い、痛いですよ〜」

わしわしと私の頭を少し乱暴に撫でるご主人様の手は、いつも通りの暖かさでした。

主人「でもな、たまに今回みたいに思うのさ。
     俺がもし槍を冗談じゃなく、本気で使っていたらどうなっていたんだろうな、とな。
     確かに馬鹿にされないかもしれないが、ただ優秀な道を通るだけに疑問を持っていたかも、とかな」

ご主人様は少し上を見ていましたが、すぐに私に視線を向けました。
その時のご主人様の表情は…私が今まで見た事もない優しいご主人様でした。

主人「悪かったな、心配させて」

*ぼわっ*

412 「…きゅう」
主人「…おい、どうした? しっかりしろ」



-終-
172EPX作者:2008/04/12(土) 20:06:54.26 ID:y5KeeMi1
こんばんは。本日も続きを、と思ったのですが、
故あって今日は別のお話を投下したいと思います。

>162
楽しませていただきました。
自由に選べるから、いつでも変えられるからこそ決めた道を貫くことの難しさ、そして尊さ。
そちらの412の気持ちは、よく分かります。
武器を職に置き換えると、そちらの主人の主義はこちらのマスターに通じるものがありますね。


そして、そんな作品にインスピレーションを刺激され浮かんだのが、
次の小話です…。
173EPX特別編「ある日のハウザー様」:2008/04/12(土) 20:11:06.47 ID:y5KeeMi1
「…以上が(>164−167)電撃ミッションで発生した事件の報告書です、ハウザー様」
「ご苦労。と言いたいが、この時期の我ら…イルミナスは既に壊滅しておるのではないか?」
「よい物語は、時を超越するものです…ハウザー様」
「ふふ、中々詩的なことを言う。よかろう、下がれ」

「さて、また一人有望な人材を引き抜くチャンスというわけだ…早速リハーサルをせねば」

「…『潜在的な差別。それは確かに存在するのだ。
長剣使いのロマンは、沼子や箱男のような数値しか見ぬ効率主義より優先されることは』…む。
<ロマン>より、<魂>の方が胸に響くかも知れんな…メモを取るとしよう」

「…『そのような任務に求められる武器は、美しさよりも破壊力。
そう、長剣以外の、破壊する何らかの力に長けたスキルを持つ武器だ。
現在重宝されているマジャーラのようなガニ股のどこに美しさを感じ』…むう。
この男がこだわっているのは<美しさ>であろうか?もっと効果的な言葉を探さねばな。
後で部下に辞書を持ってこさせよう」

「…『君が今のままガーディアンズにいても飼い殺しにされるだけだ。保証しよう。
その点、我らイルミナスは違うぞ?君と同じ、生粋の長剣使いが』……いないな、考えてみれば。
ここで嘘をつくのは説得力に欠ける…仕方がない。私自ら、長剣の特訓をしてくれよう」

「確か、『ぐらびてぃぶれいく』とやらは、こう振り下ろし…違うか。
ならばこう…ううむ、踏み込みすぎだな。こう、こう…中々上手くいかん。
明日から通信教育で本格的に習うとして、今日中に形だけは…ふん、ふん。ふ…」

「ハウザー様、お茶が入りまし…」
「…………貴様。見ていたな」
「い、いえ、滅相もありません、失礼しますっ」

−陰で努力を欠かさないハウザー様でした(ちゃんちゃん♪)−


EPXマスター「…私は、こんなのにたぶらかされて…」
EPX412「ま、マスター…どうか気を落とさないで…」
ハウザー「こんなの言うな」
174EPX作者:2008/04/12(土) 20:11:58.33 ID:y5KeeMi1
以上、お粗末様でした。
>162さん、勝手な引用に気を悪くされたら申し訳ありません。
175名無しオンライン:2008/04/14(月) 00:50:58.27 ID:Inkp5MFm
まだこのスレあったんだな・・・11体目の辺りで引退した身だが、このスレには頑張ってほしい。
176名無しオンライン:2008/04/14(月) 11:41:53.36 ID:qPoiUYI8
昨年末に引退はしたんだが
空いた自然とこのスレ開く俺もいますよ
177名無しオンライン:2008/04/14(月) 16:22:38.75 ID:pnuSpIoH
>>161
どうでもいいがand youに笑ったw
「元パシリのキャスト」ってネタは以前書いてた人が居たがやはり書き手が違うと内容も全然違うな
とりあえず頑張れ412、無駄にかっこいいぞ

>>162
俺も槍より斧、ジャブよりレッダなfFだから何となくわかるぜこのネタは
まあそれはさておき主人を心配して必死に励まそうとしてた412が可愛くて仕方がない、全部とは言わん半分よこせw
1781/3:2008/04/14(月) 17:03:02.80 ID:m8Bkizoy
パシリが変な武器を拾ってきた。


「パパーン!スペシャルウェポン、それも現物です!」
「よくスペシャルウェポンなんて古い言葉知ってたな。どれ見せてみろ。」
「はい。どうやらツインダガー?の様ですね。未知のフォトンアーツがリンクされています。」

刃の方を向けて勢いよくこちらに渡すマイ443。しつけがなっていない。

「いてっ。何をする。」
「あっ、すみませんご主人様。443ポイントのダメージです。私の型番と同じですね!」
「どうでもいい偶然を喜ぶ前に反省をしてくれ。謝罪と反省は常にセットで行う事。」
「了解しました。でもこれ、変な形ですねぇ…」

手短に反省を済ませ、俺に手渡した武器をしげしげと眺めるマイ443。440系進化のくせに
俺と同じ近接武器マニアな嗜好とは一体どうしたものか。

確かに武器は奇妙な形をしていた。グリップ部は幾層もの板状パーツを重ねた形をしており
ちょうど手品師がトランプを広げる様な格好で開閉できる構造になっている。
広げるたびに、先端部の赤いフォトンから花びらの形をしたスパークがぱんと散る。

「どうみてもヨウメイ社製だな。装飾がニューデイズ様式だ。」
「どうみてもヨウメイ社製ですね。法撃仕様のフォトンリアクターが装備されています。」
「「ふぅむ…」」

ミッションそっちのけで武器の考察を始める。見慣れた光景だ。
やがて、マイ443がちらちらと俺の顔を見る。

「…嫌なんだよなぁ。また格好悪いフォトンアーツだったら恥ずかしいし…」
「はっやくっ。はっやくっ。」
「う〜、じゃちょっとあっち向いてて。パンツ見えたらやだから。」

フッと鼻で笑いつつアメリカ式のため息をつくマイ443。俺好みのいい子に育ったものだ。
謎ツインダガーをパレットにセットし、俺は深く息を吸い込んだ。
1792/3:2008/04/14(月) 17:15:21.59 ID:m8Bkizoy

「ウェポンパレット変更申請!武器名称、不明!今拾った謎のツインダガー!とぅぉー!!」

ナノトランサーが静かに唸り、淡い音に包まれた白い光を伴って
俺の両手に『リョウセンスザシ』が握られる。

「瞬着完了!行くぜ!謎のフォトンアーツ起動ぅ!」
「うるさいですご主人様。」
「うるさいっ黙ってみてろ!とあーッ!!」

キャストの身体能力を限界まで引き出した、渾身の一舞が艶やかに空を切る。
同時に発声器官が唸りを上げ、見事なカグラソングを虚空へ奏でる。
ひと舞い終わり、ふた舞いを終えても俺の動きは止まらない。

「く・・・っ、こいつはとんだ長編フォトンアーツだ・・・っ!」
「がんばってくださいご主人さま〜、もう少しですよ〜。」
「もう少しって分かるのかお前!」
「何となくですけど〜。」
「機械のクセに感覚でモノを言うなッ!あーだめだもう膝が笑ってきた!助けて!」
「ファイト〜。」

センスザシを頬に当てて見返りのキメポーズを取ると、フォトンアーツの動作はようやく終了した。
1803/3:2008/04/14(月) 17:27:28.75 ID:m8Bkizoy

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「大丈夫ですか?ご主人様・・・」
「バカな使い方しちゃったから・・・肺が壊れちゃったみたい・・・」
「何言ってるんですか?」
「何でもない。しかし疲れた・・・はぁ・・・はぁ・・・」

地面にへたり込んだ俺を心配そうに見下ろすマイ443。そのニードルカノンはしまってくれ。
とりあえずうっかりフォトンアーツを再発動させない様、リョウセンスザシをパレットから外す。

「どうやら実戦向きではない様ですね。」
「全くだ。挑発に使えるかもしれんが、通じる相手は少なそうだしな。」

なぜか嬉しそうなマイ443。やはり食べる気なのか。

「やらんぞ。こんな恥ずかしい思い、俺ひとりの胸にしまってたまるか。」
「あぁ〜。売却してしまうんですか?」
「決まってるだろ。気取ったエリート連中に売りつけてやる。奴らはレア物が大好きだからな。
 新しいフォトンアーツまでリンクされていると言えば喜んで食いつくだろう。」
「ごちそうなのに・・・あっ!」

何かを見つけたのか、突然駆けてゆくマイ443。
遠くで何かを拾って、嬉しそうにこちらへ駆けてくる。

「パパーン!またまたスペシャルウェポン、それも現物です!」
「もう現物はこりごりだよぉ〜!」
181名無しオンライン:2008/04/14(月) 20:51:09.79 ID:LcBKXtxI
是非フレにプレゼントしたい一品だw
182EPX作者:2008/04/14(月) 22:21:51.98 ID:oEkd+Dtz
求めるものではないと言い聞かせているものの、
やはり感想をもらえると素直に嬉しく思います。
応援、ありがとうございます。

そういうわけで、本日分の投下です。
183EPX 7章「a turning point(前編)1/5」:2008/04/14(月) 22:25:16.14 ID:oEkd+Dtz
鉱山の中に入り込んだ私は、恐れ気なく奥へ奥へと足を運ぶ。
部下達は全員、第1小隊と一緒に入り口に待機させてきた。
いつもと同じ、単独行動。問題はない。
ただ、入る直前、キャストfGの傍で控えていた440と目を合わせた時は、ちくりと胸が痛んだ。
恐らく心配をかけてしまっているだろう。

他の者はどうでもいいが、彼女だけはなるべく早く安心させてやりたい。
そのためにも、これぐらいの任務は私一人でもこなせるところを見せる必要がある。
私は念入りにナノトランサーにセットしてある武器パレットをチェックする。
敵のタイプ、属性。あらゆる状況に対応できるように。

幾度目かの小部屋にたどりついた私を迎えたのは、イルミナスの構成員ではなかった。
爬虫類を思わせる緑色の表皮に覆われた風貌を持つモトゥブの原生生物、ヴァンダ。
徒党を組んでは一斉に土属性のテクニック「ディーガ」を放つといった集団戦法を得意とする、
見かけに合わず狡猾な知能を持つ敵だった。

「狡猾…といっても、たかが知れているけど」
私は慌てずに、ナノトランサーから浮遊するペンギンの形に似たマシナリーを解き放つ。
彼らは巧妙に距離を測り、得意の土テクニックを放つ準備をしてくるが、
その一定の距離を保つ習性は、私を前にしては命取りと言ってよかった。

「ラ・バータ」
一定の距離を置いて広範囲を攻撃する、氷属性のテクニック。
ひとかたまりになっているヴァンダを包み込むように、その足元から氷の柱が屹立する。
周囲の寒気すらしのぐほどの冷気を撒き散らした後、氷の柱は跡形もなく消え去る。
ヴァンダの群れは一様に大きくのけぞり、放とうとしたディーガを中断させる。

対イルミナス用に開発された新型の法撃具、「マドゥーグ」
法撃を撃つことにのみ特化した、この小動物の形をとった自動追尾型のマシナリーは、
体内でテクニックを行使するための詠唱処理を自動で瞬時に行い、
持ち主に詠唱を省略した、素早い法撃の行使を可能とする。
原始的な詠唱をもってしかテクニックを発動させることのできないヴァンダは、
こちらの詠唱を省略した素早い法撃の連続に対応する術を持たなかった。

攻撃手段を変えることにまで頭の回らないこの原生生物は、
己の得意とする攻撃を試みては、ダメージを負いながら中断させられる行為を虚しく繰り返す。
この時点でもう、私の勝利は確定していた。
184EPX 7章「a turning point(前編)2/5」:2008/04/14(月) 22:27:54.20 ID:oEkd+Dtz
見て、440。私は一人でこんなにも戦える。
心配顔の貴女も、今の私の姿を見れば安心してくれるでしょう。
待っていてください、マスター。
マスターとの誓いを守るため、私は一人でどこまでも強くなってみせます。

現れては冷気を撒き散らしながら消える氷柱の、一種幻想的な光景を見ながらふと物思いにふける。
そんな私を我に返らせたのは、突如ヴァンダの後方から迫り来る、緋色に輝く球状の塊だった。
何とか横にやりすごしたものの、かすめた右腕にちりちりと焼けつく痛みが走る。
それが炎の弾だと知ったのは、後方の壁にぶつかった火球が爆音と共に周囲を照らした時だった。

体勢を立て直したヴァンダの群れを割って入ってきたそれは、見覚えのない姿をしていた。
ヴァンダに酷似しているものの、大きく横に張り出した角が印象的だった。
口元から垂れる唾液を汚らしく振り撒き、怖気を奮う雄叫びをあげる。

ガーディアンになる際に追加された知識を頭の中で整理すると、一つの情報が浮かび上がる。
ヴァンダがSEED侵食を受けて日が経ったものが突然変異したものとも、
或いは遥か昔に封印された巨大原生生物と運命を共にした、ヴァンダの遠い先祖とも言われているが、
最近になってモトゥブの奥深い地に出没するようになった、ヴァンダの亜種。
ガーディアンズは、それをヴァンダ・オルガと名づけていた。

由来はともかく、ヴァンダ・オルガについて一つ確実に言えることは、
ヴァンダとは比べ物にならない狡猾さと凶暴さを兼ね備えていること。
それを思い出した時には既に遅く、私はいつの間にか周囲を彼らに取り囲まれていた。

一刻も早く、この包囲網から抜け出なければ。
そう思う私の出鼻をくじくように、オルガは小さく飛び跳ねると、
その両の手から同時に火の玉を放ってきた。

高レベルのフォイエに匹敵する火球を、2つ同時に?
戦慄する私の足元に着弾した2個の火球は、周囲に熱風を巻き起こしながら勢いよく火柱を上げる。
まともに食らえば致命傷になりかねない、強烈な炎だった。

乱杭歯をむき出し、癇に障る笑い声をあげるオルガ。
たかが原生生物に挑発されたという思いが、私から冷静な判断力を奪ってしまっていた。
長剣を抜いて正面から斬りかかる私に、今度はいきなり炎の息を吹きつけてくる。
まともに受けた私は、人工皮膚を焼かれる痛みに歯を食い縛って耐え、地面を転がって火を消そうとする。

なんとか火を消し終わった私は、身体を起こした時にさらなる事態の悪化を悟った。
四方に散っていたヴァンダが、一斉に土属性のテクニック「ディーガ」を投げつけていたのだ。
185EPX 7章「a turning point(前編)3/5」:2008/04/14(月) 22:30:49.55 ID:oEkd+Dtz
身を低くして横転することでいくつかはやり過ごしたが、かわしきれるものではなかった。
死角から放物線を描いて飛んでくる小隕石のような土塊を、まともに背中に受けてしまう。
圧倒的な質量でのしかかるそれに、背骨に当たる中枢稼動部が悲鳴を上げる。
幸いテクニックによって形成された物質は、一瞬しかその形を保つことはないため圧死は免れたが、
テクニック特有の、属性毎に様々な形で及ぼされる精神的な圧力が、身体の芯に残るダメージを負わせる。

力の抜けていく四肢を無理につっぱらせ、私は立ち上がりざま正面のヴァンダの懐へと飛び込む。
下方から地をこすりながら振り上げた長剣がヴァンダを押しのけるように切り裂く。
そのまま前方に転がるように進み出て、包囲網から抜け出す。

ヴァンダ達が勝ち誇った様子で互いに鳴き声を交わすが、この程度で終わるつもりはなかった。
普通のファイターなら、負傷した身体をひきずって戦わなければならないが、私はWTだ。
回復テクニックを行使すれば、まだまだ五体満足で戦える。
そう思って回復用の杖を取り出し、短い詠唱を唱えようとして、愕然とする。

声が出ない?
言葉を発そうとすると頭の中を耐え難い圧迫感が押し寄せ、
まとまりかけていたテクニックのイメージが霧散してしまう。
その段階になって、初めて自分の身体に起こっている異変に気付く。
先ほどの攻撃により精神的な干渉を受け、テクニックを行使する十分な集中力を奪われていたのだ。

その隙をついて、オルガが再び両の手から火球を放ってきた。
避けきれず、炎の玉が私の身体に着弾すると同時に燃え上がる。
先ほどの炎の息とは比べ物にならない程の熱量が、確実に私の皮膚を、果ては身体の中枢部まで蝕んでいく。

声にならない声をあげ、私はその場に両膝をつく。
こんな時でも習性とは恐ろしいもので、ずり落ちた眼鏡を何とか戻そうと手が動いていたが、
顔の辺りまで上げることもかなわず、両の腕がだらりと垂れ下がる。
正座に近い惨めな格好のまま、私はただ、近寄ってくる原生生物の群れを霞む目で眺めていた。

こんなところで、終わるのか。
イルミナスも壊滅できず、マスターも取り戻せないまま、原生生物の爪にかかって。

結局、自分は半端者のままだった。
一人で戦えると粋がりながら、本当に一人で戦える力も身につけられず。
マスターの期待にも応えられず、誓いも守れず、任務半ばで倒れるだけの、中途半端なからくり人形。
手ほどきをしてくれた師匠も、さぞ落胆するだろう。
自分の教え子は、所詮この程度のものだったのかと。
186EPX 7章「a turning point(前編)4/5」:2008/04/14(月) 22:33:40.43 ID:oEkd+Dtz
とりとめのない自虐に苛まれる私の眼前に、ヴァンダの一匹が仁王立ちになる。
爬虫類じみた顔に嫌らしい笑みを浮かべ、ゆっくりと腕をふりかぶる。
私の任務は、ここで終わるのだ。

と、突如そのヴァンダが悲鳴をあげる。
霞む視界にかろうじて、自分の背後から飛んできた火の玉がヴァンダを撃ったのが確認できた。
オルガの放ったものとは、明らかに違うものだった。

「大丈夫か、412」
声に反応して振り返ると、そこには440の姿があった。

何故、ここに?と思ってもそれを口にだす気力もない私を、白い光が包み込んだ。
440の行使した回復テクニック「レスタ」が、私の身体の傷、蝕まれた気力を癒していく。
大きく息をつき、私は手をついて立ち上がる。

「さあ、逃げるよ。徒党を組んだあいつらに一人で立ち向かうのは危険だ」
「に、逃げるって…私は、あんな奴等から逃げるわけには…」
「馬鹿っ。まだ分かんないのか、たった一人でできることと、できないことがあるって」

怒鳴りつける440に気圧されて、言葉を詰まらせる。
その間に440は、私の手を引いて小部屋の入り口へと走り出す。
それに反応して、ヴァンダやオルガが一斉に鳴き声をあげ、追いかけてきた。

入り組んだ坑道を、出口に向かって突き進む。
後方から、絶えずヴァンダやオルガの足音、鳴き声が迫ってくる。

440は、一言も話さない。
黙々と私の手を引いたまま、ただ前へ前へと歩を進める。
その沈黙が私にはたまらなかった。

「…ごめんなさい。不甲斐ない所を見せて」
440は何も言葉を返さない。
「私、まだまだ修行が足りなかったようです。あんな連中、一人で倒せて当然だったのに。
マスターなら…」

「412」
ふと足を止め、振り返った440の顔をみて、私は息を呑んだ。
目を潤ませ、唇を震わせ、怒っているのか悲しんでいるのか分からない様子で、
ぎゅっと眉根を寄せていた。
187EPX 7章「a turning point(前編)5/5」:2008/04/14(月) 22:36:54.63 ID:oEkd+Dtz
「あんたが、あんたの主人を尊敬してるのは分かる。
でも、だからといって、あんたがその人とおんなじように強くなる必要はないんだよ」

「あんたから主人についての色んな話を聞いていて、一つ思ったことがある。
あんたの主人にたった一つ悪いところがあるとすれば、それは、仲間を作らなかったことじゃないかって」
本来なら、マスターのことを悪く言うのは例え440でも許しはしないはずだった。
だが、この時ばかりは440の、何かを強く訴えかける迫力に圧され、何も言い返せずにいた。

「そのたった一つの欠点が、あんたの主人がイルミナスに行くことになっちまった理由。
そして、それを取り戻すのに必要なのは、まさに。
あんたが、あんたの主人の持っていないものを、身に付けることなんじゃないかな…」
440の言葉は、私の胸の奥深くに鋭く食い込んだが、その意味をゆっくりと反芻する暇はなかった。

行く手をさえぎるように、新手のヴァンダ・オルガが通路の角から飛び出してきた。
にたりと乱杭歯を覗かせ、またもやあの、双手からの炎弾を繰り出してきた。
が、今度はその悪夢のような炎に身を焦がされたのは、私ではなかった。

立ち昇る火柱に包まれる、440の小さな身体に一瞬気を取られるが、
オルガの癇に障る笑い声が、私の理性を吹き飛ばしていた。
自分でこのような声が出せるのかといった、獣じみた雄叫びと共に、まっすぐオルガへと踏み込む。
力任せに振り下ろした長剣の一撃がオルガを捉え、一撃で絶命に追い込んでいた。

440に駆け寄る。火傷の具合から、一目で致命傷であると見て取れた。
抱き上げる私に、ふと440は手を伸ばす。
先ほどの一撃でまたもやずり落ちていた眼鏡を、いつものように元に戻してくれたのだ。
「ほら…マスターに憧れて…かけるように…したんだろ?身だしなみは…しっかりしなきゃ…」

湧き上がる激情を何とか整理しようと言葉を探す中、440は息も絶え絶えに言葉を絞り出した。
「さっき…言ったこと…もう一度考えて…。あんたはね…一人で強くなる…必要は、ないんだから…さ」
「分かりました、分かりましたから…もうしゃべらないで」
目を閉じた440は、最早私の言葉に応えることはなかった。

440を抱きかかえたまま、立ち上がる。
彼女の言ったことは、正直まだよく分からない。
が、今はこの地を生きて出ることが何より優先された。
機能を停止した440だが、本部で然るべき処置を行えば再起動できる可能性もある。
最悪、あの嫌味なキャストfGに頭を下げることになろうとも。

私はこのまま終わるわけにも、彼女を終わらせるわけにも行かなかった。
188EPX作者:2008/04/14(月) 22:39:44.27 ID:oEkd+Dtz
以上、第7章「a turning point」前編でした。
440を背負った状態で、412は狡猾なヴァンダの集団から逃げ切れるのか。
機能を停止した440の再起動は成るのか。ご期待ください。
189名無しオンライン:2008/04/15(火) 18:53:24.43 ID:J/2uzPfe
>174
なんというシリアスぶち壊し、しかしそれがいい
うちの連中は転用、誤飲、焼却、何でもござれ

ただし、転用返しというこちらの鉄の掟を発動させてもらうッ!
1901/7:2008/04/15(火) 18:54:16.39 ID:J/2uzPfe
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。
今日は随分昔の事ですが、私とは違った412さんとそのご主人様のお話をしたいと思います。
1912/7:2008/04/15(火) 18:54:56.68 ID:J/2uzPfe
その頃は、炎の絶対防衛戦というグラール大規模全域のSEED侵食浄化作戦が行われていました。
世間の流行にあまり興味がないご主人様は、侵食の芳しくないパルムの報酬が釣り上げられても
全く興味を示さず、したい事が出来ないので仕事をしない毎日が続いていました。
今でも、ビジフォンでライア教官が怒鳴り放題だったのを覚えています。

けれどある日、気まぐれを起こしたご主人様が浄化に出かけた事があったのです。
様子見という事で報酬を期待していなかったのか、私も同行することになりました。
ちなみにこの時、私は既にGH-412でした。

主人「何処か適当な部隊に編入されとくか…ここで」

カウンターで適当な部隊に編入されると、そこには既に3人のガーディアンズがいました。
如何にも体力のありそうな大柄だけど、武器はツインダガーなご主人様と同じビースト男性。
露出度の高いパーツだけを選別したような格好で、やはりツインダガーを持つキャスト女性。
そしてもう1人は、今では珍しいウォーテクターのヒューマン女性でした。
横には、私と同じGH-412が礼儀正しいぴしっとした体勢で立っていました。
区別の為に、今後は私の事を…えーと、ありきたりだけど他に思いつかないから412Aとしましょう!

獣男 「よろしくな!」
箱女 「よろしく〜」

いきり立つ1人とは対照的に、私のご主人様とWTさんは非常に静かでした。

主人 「…どーも」
人女 「よろしくお願いします」

412A「あの、よろしくお願い致します!」
412B「…」

412Bさんはぷいっと、自分のご主人様の方に走っていきました。
…いきなり嫌われるような事しちゃったのかなと、その時は不安が過りました。
1923/7:2008/04/15(火) 18:56:02.55 ID:J/2uzPfe
その後、侵食の浄化は特に問題なく終わりました。
この作戦は時間こそ全て、速ければ速いほど高評価を下される内容です。
けれど私達は何とか、寄せ集めの部隊でも最高評価のSランクをもらえました。

中継地点に戻り、特に問題がないようならば即座に次の浄化についてもらいたいと促がされた時でした。

獣男「あ、別行きますね」
箱女「別行くね、お疲れー」

元気一杯に我先に敵に飛びついていた2人は、そそくさと挨拶を済ませて帰って行っちゃいました。
その場にはご主人様とWTさん、そして私達412の4人がぽつんと残されていました。

主人 「…逃げたか」
人女 「…逃げたって、それはどういう意味ですか?」
主人 「趣味でしかない武器と職業の使い手に、用はないって事だ」

そのご主人様の言葉に、WTさんは顔を顰め、412Bさんがギロっと睨んで来ました。
…でも412Bさんが睨んだのは、その言葉を発したご主人様ではなく、何故か私でした。
…やっぱり嫌われてるのかな、私何か悪い事を言ったっけと不安が加速していきました。
そんな視線を他所に、ご主人様は続けます。

主人 「さて、どうするね? 続けるなら付き合うが」
人女 「…貴方は逃げないんですか?」
主人 「同じ趣味の使い手は嫌いじゃないのでね。
     それに、食う金には残念ながら大して困っていない」

いつも同僚に逃げられっぱなしのご主人様は、特に不愉快になったりせず淡々と続けました。
私も、ご主人様の魅力と強さは私自身が一番よく分かっているので動じたりはしません。
ですが、WTさんと412Bさんはそんなご主人様を異星人を見るような目で見つめていました。

主人 「何も言わないのは反論なしと判断させてもらうぞ。
     412、次のエリアの情報貰って来い」
412A「はいっ、分かりました!」

私がカウンターに駆け寄ろうとすると、それまで黙っていた412Bさんが遂に喋りました。
1934/7:2008/04/15(火) 18:57:05.75 ID:J/2uzPfe
ただし、大の怒り声で。

412B「ちょっと、勝手に決めないで下さい! 誰が何時同意したんですか!
     それにこの部隊のリーダーはマスターです! 勝手に…」
人女 「…分かりました、それではもう少しだけ御一緒して貰います」

412Bさんを他所に、WTさんはぽつりと呟きました。

412B「マスター、いいんですか!? こんないい加減な人達と一緒なんて」
412A「ご主人様はいい加減なんかじゃありません!
     …そりゃあ、ちょっとガーディアンズというには相応しくないかもしれませんが」
主人 「お前、フォローのつもりで俺の事馬鹿にしてるだろ」

私がPMには強烈すぎるサイズのアイアンクローを食らっていると
真っ赤に沸騰する412Bさんとは対象的に、WTさんはくすくすと笑っていました。

人女 「いいのよ、412。面白いじゃない、変わった人にご一緒してもらうのも」
412B「け、けど…この人のせいで私達の評価まで下げられる恐れが…」
412A「ご主人様の事を悪く言わないで下さい!
     …そりゃあ、確かにご主人様は昇進という言葉とは縁がありませんけど」
412B「貴方も、フォローするか馬鹿にするかのどっちかにしてください!」
412A「ばっ、馬鹿になんかしてません!
     元はといえば貴方が悪口言うからいけないんじゃないですかぁ!」
412B「正直な意見を述べたまでです!
     マスターの理想が貴方達のせいで台無しになったらどうするんですか!」
412A「むかーっ! そっちだってご主人様の魅力が分からないくせに! この、アワビ!」
412B「不良の魅力なんか分かるもんですか! 大体何ですか、そのアワビって!」

主人 「やめんか!」

*ごいん*

私と412Bさんの口喧嘩は、ご主人様によるお互いのヘッドバッドで幕を閉じました。
WTさんは、そんな光景を声に出して笑って眺めていました。
1945/7:2008/04/15(火) 18:57:49.50 ID:J/2uzPfe
412B「…全く、貴方の不良マスターのせいでこんな傷が出来てしまいましたよ」
412A「ふ、ふーんだ。それは私だって同じですよーだ」

火花を散らしながら、私達は先行するご主人様とWTさんの後に続いてました。
少数戦力であり、派手さは無いものの、「堅実」という言葉がぴったりな2人は
大した怪我もなく、今日出会ったとは思えない動きでゾーマを浄化していきました。

412B「しかし確かに、マスターが言うように貴方のマスターは変わっていますね。
     ソードを主軸とするフォルテファイターは、今時滅多に見かけません」
412A「…あはは、ご主人様はそれはもう生粋のソード使いですからね」
412B「種類は違えど、私のマスターと似ていますね」
412A「そうなんですか?」

412Bさんの一言で、私の興味はWTさんで一杯になりました。
その頃はウォーテクターは法力も弱く、打撃もLv20限定、不人気職の筆頭格でした。
世間の評判に聞く耳持たず、ウォーテクターを続けるのは余程の覚悟がない限りは無理でしょう。
そう、何を言われようとソードを使い続ける私のご主人様のように。

412B「私のマスターは『護る』事を信念にウォーテクターを極めようとしています。
     半端者と罵られ、例え友達がいなくても、人を護る事に生き甲斐を持って。
     貴方のマスターも、何らかの信念があってソードを振るい続けているのでは?」

人を『護る』事…それは確かにガーディアンズの名前の通り一番重要かもしれません。
護る事、即ち危害が及ぶ前に敵を完全に『潰す』事という捻じ曲がった解釈が一般的な中で
そういった力を求めるという事は、ウォーテクターさんの信念はとても硬いのでしょう。
私のご主人様は…。

412A「…単純に流行に乗るのが嫌い、と聞いた事があります」
412B「やはり不良ですね」
412A「だから、ご主人様の事を悪く言わないで下さい!」
412B「正当な評価です」
主人 「何喚いてるんだ、今度は2人揃ってアイアンクロー食らいたいかー」
1956/7:2008/04/15(火) 18:58:32.81 ID:J/2uzPfe
そうしてあらかた浄化を終えた私達は、又してもギリギリのSランク評価でした。
カウンターで報酬を受け取っていると、WTさんはご主人様にカードを差し出しました。

人女 「今日は楽しかったわ、記念に受け取ってちょうだい」
主人 「俺は無闇にカードを渡さない主義でね」
人女 「いいのよ、記念品というだけだから」

ご主人様はカードを渋々受け取ると、適当にデータベースに突っ込んでました。
一方、私達はずっと火花を散らし続けていました。

主人 「よし、帰るぞ」
412A「…次会ったら、もう悪口は言わせませんからねっ!」
412B「貴方がそう吼えても、マスターが不良である限りは無理です」
412A「…うううう、同じ412なのになんて憎たらしいっ!」

私は精一杯、怖い顔をしながらご主人様と一緒にその場を去りました。
『護る』事を生き甲斐とするウォーテクターさんと、そのマシナリーの嫌な子。
武器と職業で形は違っても、似たような2人はその後再開を果しました。
しかしそれは、面と向ってではなく、グラールチャンネル5を映すビジフォンの画面越しに。
1967/7:2008/04/15(火) 18:59:09.27 ID:J/2uzPfe
-現在から3ヶ月くらい前-

412A「ご主人様、これ…! この人って…!」
主人 「…何だ何だ、イルミナスなんてどれもこれも大してかわら…」

私の必死の呼びかけに、面倒臭そうに顔を出したご主人様も絶句していました。
その日、グラールチャンネル5で放映された指名手配のイルミナス工作員リストの中に
かつて、一緒に戦ったウォーテクターさんが存在していたからです。

主人 「…そういえば何時頃からか点灯しなくなったな。
     よりによってお祭り大好き集団のお仲間入りとはな」
412A「………どうなっちゃったんだろう、あの嫌な子」
主人 「さぁ、な」

その後、彼女達がどうなったかは私は知る術がありません。
『護る』立場から、『襲う』立場に変わってしまったウォーテクターさん…。
きっと辛い事があったのでしょう、それに関して私はとやかく言うつもりはありません。
ただしこれだけは言えます…私のご主人様はきっと、イルミナスになんかならないと。



-終-
197EPX作者:2008/04/16(水) 20:16:25.13 ID:uZauK+X8
>189
思わぬ場所へのゲスト出演に、気恥ずかしいやら照れくさいやら複雑な心境です。
ですが、力の入った貴重なエピソードの投下に、こちらからも厚くお礼を申し上げます。
今後の本編にも活用させていただきますので、生暖かく見守ってやってください。


なお、前回投下した中に、かなり致命的な描写ミスがあったことをお詫び申し上げます。
発見したときには軽く目眩を覚えたものですが、めげずに本日の投下です。
198EPX 7章「a turning point(中編)1/6」:2008/04/16(水) 20:17:19.25 ID:uZauK+X8
ヴァンダ達の追撃は、執拗を極めた。
地の利を最大限に活かし、仲間と連携を取り、行く手に回りこみ、波状攻撃をしかけてくる。
本能の成せる業なのか、そのチームワークは下手な軍隊より上だった。
少なくとも、第1小隊はともかく、私の第2小隊とは比べ物にならなかった。
いや、比べ物にならないのは第2小隊ではなく、私一人なのか。

作戦中、部下に対してろくな指示一つだしてこなかったのは、彼らが必要ないからと思い込んできた。
だが、実際は違う理由があったのだと悟り始めていた。

PM上がりのキャストもどきが、歴戦のガーディアンに適切な指示を出せるのか。
今までひたすらマスターの指示に従って動くだけだった私が、逆に指示を出す立場に立てるのか。
その迷いを認められず、ただいたずらに彼らを拒絶してきただけだったのかも知れない。

そんな私に見せつけるように、ヴァンダ達は道中でかわるがわる襲ってくる。
遠くから一斉にディーガを放ったり、取り囲んで炎の息を吹きかけてきたり、
仲間の影から火球を投げつけてきたり。

ここまで何とか力尽きず逃げてこられたのは、ひとえにWTの耐久力があったればこそだった。
その意味では、私の選択は決して間違っていない。
ただ、所詮一人では限界があるのではないかと、私は思い始めていた。
私は、かつて師匠に、WTについて聞いた時のことを思い出していた。

その時師匠はこのようなことを言っていた。
WTの極意は、敵だけでなく、味方にも合わせることができる点にある、と。
敵に合わせるというのは当時からよく分かっていた。
法撃に強い敵には打撃を、打撃に強い敵には法撃をと、常に相手の弱点を突く戦いができるのだと。
しかし、味方に合わせるとは、どういうことなのか。
無口な師匠は、体で覚えるしかないと諭すだけで、詳しいことは口にしていなかったのだ。

もしも、私が早くに仲間と共に戦うことを覚えていたら。
今頃は師匠の言った極意が、理解できていたのではなかったろうか。

440を背負いながら幾匹目かのヴァンダを切り裂いた時、疲労は頂点に達していた。
しばしの休養を取ろうとその場に腰掛けるが、すぐにあの耳障りな鳴き声が聞こえてくる。

これだけの原生生物が跋扈する一方で、肝心のイルミナス構成員の姿が見られないのはどういうことか。
ふと、そんな疑問が頭の中に浮かんだが、ゆっくりと考えている暇もなかった。
ディーガによる精神干渉は既に解けていたが、回復用の杖もPPが尽きかけ、いよいよ限界が近づいていた。
199EPX 7章「a turning point(中編)2/6」:2008/04/16(水) 20:18:17.81 ID:uZauK+X8
疲労でおぼつかない足取りのまま、再び出口を目指して歩き出す。
最後まで、諦めるものか。
その思いだけが、私の体を突き動かす。
露出した岩肌に足を取られながら、必死に後方の鳴き声から遠ざかろうとする。

もし、今前方に回りこまれたら。
ぞっとする思いが脳裏をよぎる。
果たして、前方に現れた影を確認し、嫌な予感が当たったと武器を取りかけた時。
意外な声が、私の耳に届いた。

「隊長、ご無事でしたか」
私の、第2小隊の部下の一人だった。
いや、一人ではない。第2小隊の面々が、全員顔を揃えてそこに立っていたのだ。

私は、もう出口近くまでたどり着いていたのか。
疑念にかられる私に、部下の一人が続けて声をかけてくる。
「隊長は待機と仰ってましたが、心配になって中に入ってきてしまいました。
その…そこのPMが、主人の制止も聞かずに入っていったのを見て、いてもたってもいられず…」

何とこたえてよいか分からなかった。
今まで散々ないがしろにしてきた部下達は、こんな自分を心配して追ってきてくれたのだ。
戸惑う私に、別の一人が言葉を続ける。

「その…隊長のお気持ちは、分かっているつもりです。
隊長は、余計な犠牲を出したくなくて、いつもお一人で立ち向かっていたんですよね?
おかげで今の所、誰一人殉職せずに済んでいます。
第1小隊の連中は、既に何人も使い捨てにさせられているのに」

思ってもいない言葉だった。
確かに結果として小隊に犠牲者は出ていなかったが、決してそんな上等な理由があったわけではない。
ただ、自分の自信のなさを拒絶という形でごまかしていたにすぎないのに。

「でも、大丈夫です。俺達だって厳しい実戦を潜り抜けてきたガーディアンです。
隊長の足を引っ張らずに済むくらいの自信はあります。隊長、どうかご指示を」

そう言って自分を見つめてくる部下達の瞳は、こちらが恥じ入る程に真っ直ぐだった。
それは、とてもかつて自分が思ったような、報酬目当てで集まっている者達のそれではなかった。
200EPX 7章「a turning point(中編)3/6」:2008/04/16(水) 20:19:33.47 ID:uZauK+X8
「わ…私は…」
もう、彼らを見下し、蔑む気持ちは消えていた。
残っているのは、私に上手く彼らを動かす力があるかどうかという、懸念だけである。
しかし、後方から数匹のヴァンダが姿を現した時、その迷いは捨てることにした。

「…この通路で迎え撃ちます。φG、fFは前方でヴァンダと応戦。
fG、GTは後方から支援を。fTは、予備の片手杖があったら私に貸して下さい」
「了解っ」

初めて下した、作戦中の命令。
彼らは不平の言葉一つ漏らさず瞬時に行動に移っていた。
突然の増援に、ヴァンダ達は明らかに狼狽していた。
仲間に呼びかける声だけ残して、数秒のうちに2体が物言わぬ肉塊へと変じていた。

後方で難を逃れていたヴァンダの一匹がディーガを放とうとするが、
fGの正確なライフル狙撃が確実にそれを阻害する。
その隙にfFが槍を構えて突撃し、のけぞるヴァンダを串刺しにした。

「すぐに新手が来ます。各自、迎撃の準備を」

次に現れたのは、オルガ2匹。
先の戦いでは不覚を取ったが、今度はこちらの人数が多い。
オルガの火球が1回か2回ほど前衛の二人に降りかかるが、致命傷に至ることはなく、
勇敢に武器を振るう二人によって返り討ちにされた。

「今のうちに撤退を。隊列はそのまま維持して」
後衛の3人、中央に私、殿を前衛の2人が固める形で、出口に向かって進みだす。
201EPX 7章「a turning point(中編)4/6」:2008/04/16(水) 20:21:10.59 ID:uZauK+X8
「ところで…第1小隊は今も出口で待機しているの?」
何度目かの襲撃を退けた後の私の質問に、傍らのfTが答える。

「それが…どうも本部からの指示があって、既に退却済みなんです。
なんでもこの鉱山の地底湖に封印されていた、巨大原生生物の封印が解かれたとか」
「何ですって」
「確かな話ではないですが、その封印が解かれたのも、イルミナスの仕業という話もあって…。
もしもそれが目的だったなら、彼らが今もここに残っている理由はないと第1小隊は判断したようです」

話に聞いた、太古の昔に封印された巨大原生生物。
もしかして、突然のヴァンダ・オルガの発生も、その事象が関連しているのかも知れない。
「そんな危険な生物を、野放しにしろと本部が?」
「いえ…あの、実はこの近くで、新総裁とローグスの新首領が交渉中だったらしくて。
総裁が、『自分達がやるから退却しろ』と命令を下したようです」

あの総裁らしいと言えば、らしかった。
客観的に考えれば、総裁自らがそんな危険な任務につく必要があるのかという話だったが、
私個人としては、さして心配はなかった。
総裁の傍には、師匠がいる。
師匠がいる以上、太古の原生生物だろうがなんだろうが、相手ではない。私はそう確信していた。

「隊長。そのPM、自分が背負います」
私のすぐ後ろに位置していたGTが進み出た。
「自分は後方支援が役目なので、それほど激しく動く必要はありませんし…隊長はお疲れでしょうから」

一瞬、躊躇する。自分のせいでこうなった440を、他人に委ねるのはどうなのかと。
だがすぐに、440の「一人で強くなる必要はない」との言葉が思い出される。

「…お願い」
自分の責任を彼に押し付けるような気がしたが、GTは誇らしげに微笑んだ。
「隊長の信頼に、全力を以って応えます」

信頼。懐かしい言葉だった。かつてマスターと二人でいた時には日常のように聞いていた言葉。
ただ、信頼を受ける立場だったのが、与える立場へと変わっていた。
マスターの信頼が、私に実力以上の力を与えてくれたように。
今度は私が、彼に同じ力を与えることになるのだろうか。

そう思った時に、私は初めて実感していた。
マスターを取り戻すための、本当の一歩を踏み出したという、実感を。
202EPX 7章「a turning point(中編)5/6」:2008/04/16(水) 20:22:43.38 ID:uZauK+X8
GTの申し出た措置が、早速役に立つ場面が来た。
前方を進んでいたfGの前に、突如ヴァンダ・オルガが立ち塞がってきたのだ。
fGは咄嗟に接近用のショットガンに持ち替えようとするものの、不意をつかれて動作が遅れる。
その間にオルガは大きく息を吸い込み、炎の息を吹きかけようとしていた。

体力も回復し、440も背負うことなく身軽になっていた私は、一足飛びに両者の間に割って入る。
扱いやすさに定評のある片手剣は、咄嗟の事態にも素早い対応を可能とした。
斜め下からオルガを斬りつけ、振り上げる際に勢いづいた回転力を活かしてさらにもう一撃。
ガーディアンズにとって基本中の基本にして王道の技、ライジングストライク。
体の隅まで染み付いたその一連の動きは、考えるより早くオルガを宙に舞い上げていた。

体勢を整えたfGが、オルガの落下に合わせて狙いすましたショットガンの一撃を放つ。
密着距離で最大の効力を発揮する散弾がオルガを蜂の巣にした。

「助かりました。遠くの敵に狙いを定めるのは得意ですけど、近寄って来る敵は苦手で」
fGが頭を下げる。
確かに、fGという職は射程の長い攻撃を得意とするが、近づく敵は苦手な様子だった。
それを知った以上、fGの彼に前を歩かせるわけにはいかなかった。

「私が前に出ます。fFとφGの二人は、後方の追撃に備える必要がありますから」
「了解です。…WTは距離を選ばず戦えるのがいいですね。少し羨ましいです」

言われて初めて思い当たる。
私にしろマスターにしろ、特に苦手な距離はないが、それが隊列に如実に反映されるということに。
前に出れば近接用の打撃武器を、中距離ではテクニックを、そして遠距離では弓がある。
先ほどまでは隊の中央でテクニックを主体として戦っていたが、前に出ても別段困ることはない。

つまり、今回のように隊列を組む場合、fFは前衛、fTやfGは後衛とある程度配置が限られるが、
自分はどこに配置されても戦えるのだ。
味方の誰かが倒れる、或いは別行動を取ったとしても、自分がその役割を代用できる。
状況の変化に柔軟に対応できるのがWTであり、またそれができてこそWTと言えるのかも知れない。

私は師匠の言った、WTの極意を思い出していた。
敵だけでなく、味方に合わせる。こういうことなのだろうか。
203EPX 7章「a turning point(中編)6/6」:2008/04/16(水) 20:24:19.07 ID:uZauK+X8
私のいる前方に敵がでてくることも何度かあったが、やはり後方からの襲撃が多かった。
「こいつ、逃げるんじゃねえっ」
fFが苛立たしげに毒づくのが後方から聞こえる。
前方に注意を払うことも忘れてはならないが、状況の把握のため私は後方を振り返る。

fFがどうにか打撃武器を当てようとするものの、ヴァンダ達は巧妙に後退りしながら距離を取っていた。
うかつに追いかけて孤立することを恐れ、fFは今一歩踏み出すことができないでいる。
φGもツインハンドで牽制するが、あくまで本分は近接戦闘なので、ヴァンダには致命傷を与えられない。
距離を取るならfGやGTの射撃が物をいうのだが、彼らは私のいる前方に注意を払っているため、
背後を振り向いて狙いを定めるのは躊躇われる様子だった。

私やマスターも、ヴァンダのような距離を開けるタイプの敵には中々近接戦闘をしかけられなかった。
そういう時、私やマスターならどうしていたか。
状況に当てはめて、一瞬のうちに答えを導き出す。

「fT、ラ・バータで足止めを。その間に前衛は接近を図って」
fTが直ちに氷系テクニックを発動させる。
ダメージと共にヴァンダは氷柱に囚われ、その動きを止めた。
「よっしゃあ」
fFが一瞬で距離を詰める。
一旦接近戦になれば、全職最高の殺傷力を持つ彼の攻撃に耐えられる敵はいない。

「さすが隊長。俺達の戦い方をよく知ってます」
肉片と化したヴァンダを足元に、fFが満足げに笑いかけた。
「俺達、向かってくる敵は得意だけど、逃げる敵は苦手で…ああして足止めしてもらえると助かります」
「私も隊長の指示は適切と思いました。打撃と法撃、両方の戦い方を知っていればこそですね」
fTが言葉を継ぐ。

確かに私は打撃と法撃、両方での戦い方を知ってはいる。
しかし、そのそれぞれを特化職が受け持った時、これほどの効果があるとは思わなかった。
私が一人で戦うより、遥かに素早く、安全に敵を倒せる。
それは、私一人の力とは言えないかも知れないが。
仲間の力を十二分に引き出すというのも、私の力の一つと考えていいのではないだろうか。

『一人で強くなる必要はない』
440の残した言葉が、改めて私の心の奥底にまで染み込んでいった。
204EPX作者:2008/04/16(水) 20:32:12.77 ID:uZauK+X8
以上、中編でした。
周りの者に支えられ、GH-412は真の強さに目覚めていきます。
次回後編にてヴァンダ軍団との決着、そして第2部「412奮闘編」を完結とさせていただきます。
ご期待ください。
205名無しオンライン:2008/04/16(水) 20:53:23.85 ID:U240kjkl
>>198-204
いいねえ、WTの強さがわかってる。全てができるから全てに精通できるんだものな。
自分は実装当初からWTが弱いなんて思ったことは一度もないであります!

それはそうと、自分が今ここで執筆中のものがテーマで微妙にかぶってしまったのは秘密でありますW
206名無しオンライン:2008/04/16(水) 21:36:00.08 ID:BAxCNbDI
>>198-204
そこで前衛がチッキ…などと思った俺は退場した方がいいなww

いや、412かっこいいなぁ、おい!
その凛々しさに嫉妬。

>>190-196
そのソードに対するこだわりはきっと、俺にとってのレーザーと同じものなんだろうなw
なんか俺もネタ書きたくなった。ウチの422とレーザーでw



INする前にここ読むのが楽しみになってます。
各作者さんとも、がんばってください!
207再会へ続く扉1/2 @ミスラ:2008/04/17(木) 19:44:41.51 ID:qwYM3lHm

「それでもまた、許されるなら...いつかあの扉をまた開けたらって思うの」

扉が開く、先程まで音一つ無かった部屋の空気が震えだす
私は廊下に明かりを灯しコーヒーを淹れ、部屋のソファーに腰を下ろし、煙草を取り出す
肺の奥まで其れを吸い込み、そして静かに天井を白く染める

此れは毎日繰り返される、毎日刻まれる私の歴史

ガーディアンズを辞め早一年以上、私の中で繰り返される平和な日常
守るべき者はもういない、私の我侭で、この手でその全てを消した
後悔、そんなモノかどうかは判らない。けれど今でも二人の移った写真は残してある
けど全て終わらせてしまった・・・その筈だった

数日前、昔の同僚が何を思ったのか再びガーディアンズに復職したと聞いた
また新しい部屋、新しいパートナーを与えられ、新たな任に就くつもりだったと
友人がぼそっとこう呟いた「あの日のまま全部、残っていた」
・・・ガーディアンズをやめて三ヶ月を過ぎるとライセンスは剥奪され
その全てのデータは消去される筈、それを覚悟の上でお互い他の道へ歩んだ筈
・・・でもそれ以上その話は聞き出せなかった、自分で確認してみろという事なんだろう

何を今更・・・どうしろと言うのか
ふと部屋の扉に目がいく、あの時の言葉を思い出す・・・


・・・あの日の様な時間が流れていき、煙草が指を焦がしたのはその数分後
208再会へ続く扉2/2 @ミスラ :2008/04/17(木) 19:49:56.81 ID:qwYM3lHm
・・・翌日、私はガーディアンズの門を再び叩いていた
確かに一見変わって無い様には見えた、けれど私の知らない事が増えていた
現役の兵達を見ても私の知らない武器やシールドラインで身を固めている
少なくとも一年前とは大違い・・・少し、不安になってきた

何もかもが変わって見える、友人にからかわれたのか・・・
もし、もし何も残っていなかったら・・・想像に思考が歪む

暫くして書類を持った男が私を呼んだ、答えを聞くのが恐ろしかった
「手続きは済んだ、部屋のコードは君が使っていた時のモノに戻しておいた、それとPMは・・・」
話を半ばまで聞いて私は駆け出していた、男の話を自分で確かめるために・・・

・・・プシュー・・・

・・・部屋のドアが開いた・・・ガーディアンズの人達・・・?

「・・・本当にあの日のまま・・・」

・・・この声・・・どこか懐かしい、けれど思い出せない

「・・・450」

私は・・・GH101の筈、450ではありません・・・

「さっきの話は本当だったのね、記憶デバイスに無理矢理ロックをかけたって・・・」

デバイスZEROでデータを全て消される前に記憶デバイスを一部固定して逃がそうとしたのだろう
結果記憶が残る訳でも無く全てを忘れた訳でも無い、データのデリートも行えず動作自体不安定な状態だ
男の話ではガーディアンズの新兵に使わせる訳にもいかないからジャンクとして廃棄処分も検討されていたそうだ
・・・私は・・・間に合ったのだろうか・・・?

「ずっとそうして待っててくれたのね・・・ごめんね・・・」

訳のわからない事を言い続けるその人はそういって泣きそうな顔になった
キャストの・・・女性・・・やっぱり懐かしい、けど・・・?

「 あのことばを いわなきゃ 」

何?これは・・・何だろう、何故こんな事を・・・判らない・・・
・・・でも私はこの人にこの言葉を言いたかった、ずっと、言いたかった!
・・・それを言うために、ずっとここで待ち続けたいた・・・

・・・緑色のフォトンを目に鈍く灯し、GH101はその言葉を紡ぎだす

「・・・お・・かえりな・・・さい・・・」

「・・・ただいま、450・・・っ!」

そして、キャストの女性はついに・・・泣き出した



「もしまた叶うなら、その時はまた一緒にこの扉の外へ...」
209再会へ続く扉作者:2008/04/17(木) 19:56:00.42 ID:qwYM3lHm
(´・ω・`)申し訳ないです、多分誰も内容は判らないと思います
一度引退した身なのですがこの度縁あって再び復帰した記念というか自己のアレというか;
とはいえ装備も全て処分、おいていくのが何となく可哀想だったのでPMも全て初期化。
それでも450の事だけが気がかりだったり・・・(´・ω・`)

何もかもが変わっていたグラールですが、復帰してずっとやりたかった事をやっと出来ます
もう一度ウチの子を450にして一緒に冒険に出かけるヽ(´ー`)ノ

そんなこんなですがスレ汚し大変失礼致しました;


210名無しオンライン:2008/04/17(木) 21:35:07.26 ID:vQCHfbvL
>>209
俺は引退したことはないけど引退していく人たちは何人も見た。
色々考えては切なくなってたから、この話は心に刺さった。
450と楽しい日々を送って下さい。
いつか一緒に戦おうぜ!(そしてどっちがPMを連れて行くか揉めるw
211名無しオンライン:2008/04/17(木) 22:46:19.36 ID:Mx3xujOb
なんか多いな412。戦力評価高いのか412。
メガネ大好き!緑いい色!とか言うノリで作ったが、なんか流行に流されたみたいで悔しい

いや、みんなメガネ大好きなのか。そうか。
納得した。
212EPX 7章「a turning point(後編)1/5」:2008/04/18(金) 00:24:28.49 ID:Y8YYEKPx
「この部屋を抜ければ、出口にたどり着けるはずです」
目の前に開けた、四方に坑道が伸びている大部屋。
そのまま正面奥の坑道まで行ければ問題ないのだが、さすがにそれは楽観的過ぎた。

各坑道からヴァンダやオルガの姿が現れ、通路で戦っていた時とは比べ物にならない数が集まってきた。
爛々と光る無数の双眸は、何匹もの仲間を屠られた怒りに満ちている。
歯を軋ませ、爪を打ち鳴らす音がそこかしこから聞こえてくる。
敵意の塊のような唸り声を揃ってあげる様子から、彼らの思惑がひしひしと感じられた。

私達全員、生かして帰すつもりはないと。

「どうしますか、隊長」
部下達が一様に私に視線を向ける。

ガーディアンの務めとしては、できればこの危険な原生生物は殲滅しておくのが最良と思われる。
が、何しろ数が多すぎる。
無理に殲滅を図ると、先にこちらの体力が尽きる危険がある。
何より、今は一刻も早く440を本部に連れて行くことを優先したかった。

「密集隊形でこのまま進みます。殲滅よりも、脱出を優先して」
「了解」

fF、φGが先頭をきり、前方の道を切り開く。
fGは前方および側面の敵の迎撃、GTは最後方の私に対する援護射撃と各種補助を、
fTは全方向に注意を配り、臨機応変に各方面への牽制を担う。

ヴァンダ達は側面や後方からおびただしい数のディーガを放つ。
立ち塞がる別のヴァンダ達は炎の息で前進を阻もうとする。
ディーガについては身を低くして被弾を抑え、
テクターのいずれかが精神干渉を受けた場合は、極力早く状態異常回復テクニック「レジェネ」で癒す。
炎の息は前衛二人に打ち上げ攻撃を多用させ、好きに攻撃を続けさせないよう指示をしてある。

小隊の中に無傷の者はいなかった。
が、その都度いずれかのフォローが入り、部屋の半ばまで順調に進んでいた。
それも、オルガの何匹かが突撃し、隊列の中に割って入るまでのことだった。
213EPX 7章「a turning point(後編)2/5」:2008/04/18(金) 00:25:28.23 ID:Y8YYEKPx
投げつけられる火球によって、まずfTの足が止まる。
回復処置のために足を止めると、目の前にまで迫ったオルガが炎の息を側面や後方から、
合わせてヴァンダもfTに止めを刺そうと、かさにかかってディーガを投げつけてきた。

φGがfTとディーガの間に割って入り、代わって土塊を受け止める。
φGは元々テクニック等の精神集中を要する技は持たないため精神干渉の痛手はないが、
ディーガのダメージそのものは十分脅威のはずである。
オルガの炎の息と合わせると、命に関わる負傷になりかねない。

私はすかさず杖を振り、φGの傷を癒してやる。
おかげでfTは事無きを得たのだ。名誉の負傷と言って差し支えない。
しかし、私の回復により命拾いをしたφGは、少々意表をつかれる行動をとった。

「ありがとう、助かる」
この上ない爽やかな笑顔で、私に向かってぐっと親指を突き出して一言。
別段私は、言葉遣いについてそうとやかくは言わないので責めるつもりはないが、
今までの口調とかけ離れたフランクな口調に、少々面食らったのは確かだ。

φGは一瞬の間をおいて、ばつの悪そうに頭を下げてきた。
「す、すみません。
入隊前からの癖で、危ないところを助けてもらうとつい、感謝の気持ちをこんな風に…」

それだけ言うと、照れ隠しなのか。
φGは両端に刃のついた武器、双剣を取り出してヴァンダ達に八つ当たりのようにがなりたてる。
「お前らのせいで、恥をかいただろうがっ」
φGの持つ双剣のフォトン光が一気に膨れ上がる。
頭上で双剣を回転させ始め、そのまま敵の群れに飛び込む形で前方に突撃を敢行する。

打撃武器を用いた技の中には、フォトンリアクターの働きによって常識外の動きを可能とするものがある。
自らの体を軸とし、頭上に構えた双剣の刃を風車のように回転させながら遥か前方まで高速移動しつつ、
刃に触れた者を容赦なく切り刻み、吹き飛ばす。
ガーディアンズに伝わる双剣の奥義、「トルネードダンス」もその一つだった。

こちらの隊列も崩れたが、まさに人間大砲のようにヴァンダに飛び込んだφGのおかげで、
敵も混乱をきたしたようだった。
吹き飛んだヴァンダが他のヴァンダをも巻き込み、雪崩式に敵の隊形を崩していく。
大きく開けた前方に、出口へと向かう坑道が姿を垣間見せた。
214EPX 7章「a turning point(後編)3/5」:2008/04/18(金) 00:26:17.50 ID:Y8YYEKPx
「今のうちに、出口へ」
乱戦の中、声を限りに叫ぶ。
反応し、出口へと伸びている坑道を目指して走り出す。
襲い掛かるヴァンダに対しては個別に対応するしかなかったが、
さすがに向こうも統制が取れていないため、そう激しい攻撃にはならなかった。

私は殿をつとめ、足の止まりそうな者がいたらフォローに入る。
そうやって、坑道が目の前に迫ったころ。

視界の隅に、ちらりとそれが目に入る。

一匹のヴァンダ・オルガ。だが、その容貌は明らかに他と異なっていた。
角の形がより威厳を感じさせるものであり、体も一回り大きい。
何より、他のヴァンダやオルガの群れが、その一匹に対してはあからさまに距離を置き、
畏れのようなものをその態度に表していたのだ。

この群れを率いる、王であることに間違いなかった。

王は群れをかきわけ、というより他の群れが道を開けるに任せて進み出る。
低く構えた両の手が、ゆらゆらと蜃気楼のように周囲の景色を歪ませる。
それぞれの掌を、徐々に膨れ上がる緋色の光が覆い包む。
離れているこちらにも熱が伝わってくるかのような、ゆらめく炎の塊を見て、私は悟った。

あれを両方まともに受けて、耐えられる者はこの中にいないと。

まだ掌にまとわりついたままの炎の塊を弄ぶように、ゆっくりと腕を上げる。
勝利を確信したかのように、王は悠然と歩を進めてくる。
後は、いつそれを放つのか決めるだけだと言わんばかりに。

王が誰を狙うかは分からない。
だが、乱戦のためあの炎の玉を避ける十分なスペースがない以上、誰かは確実に的となる。
そして、あの炎の玉を受け、命を絶たれるだろう。

どうすればいいのか。
王の標的が、自分以外の誰かになることを祈るしかないのか。
今までないがしろにしていた自分を隊長として立ててくれた、部下達の誰かを犠牲にしろというのか。
時間はない。しかし、考えねばならなかった。
215EPX 7章「a turning point(後編)4/5」:2008/04/18(金) 00:27:37.35 ID:Y8YYEKPx
オルガの放つ炎の玉も、片手からのものならばさほど脅威ではない。
あの双手からの火球は、放たれた後に空中で一つに固まることで威力を倍増させるのだ。
そこまで考えると、私の頭に一つの案が浮かび上がった。

「fT、GTは回復杖の用意を。fF、φGは彼らの前で盾となってあげて」
それだけ言って、私はあるタイミングに備えて十分に足をためる。

王は私達を一通り見回した後、おもむろに両手を振り下ろし、火球を放つ。
その瞬間を待って、私は猛然と地を蹴り、王に向かって踏み込んだ。

二つの火球は、放たれた後空中で交わることにより一つの強大な火球へと変化する。
ならば、その交差点より前に進み出て、あえて一つだけ受けるようにすれば。

片方の火球が私を直撃し、爆音と共に炎を噴きあげる。
しかし、もう片方の炎は私の脇をすり抜け、後方の部下へと向かっていった。
fFがその片方を受け止め、すかさずGTが回復を行う。

「…そう何度も、同じ手は通用しないわ」
体から炎を吹き上げ、人工皮膚を焼かれる激烈な熱を感じながらも、私は怯まず王の前に立つ。
片方だけならば、致命傷になることはない。それもある。
しかし、今感じているこの苦痛は、私一人で受け止めたものではなかった。
仲間と共に分かち合ったものと思えば、身を焦がす炎も何ほどのものではないと感じられた。

支えるべき者がいる。支えてくれる者がいる。
その思いが、私の長剣を握る腕に不思議なまでの力を与えてくれた。

一歩、王が後ずさる。二歩目は許さなかった。
前方に跳躍し、長剣を縦に構えたまま空中で回転する。
全体重を乗せた長剣のフォトン光が、円周状の軌跡を描き上げる。
その通過地点にいた王の鼻先から下腹部まで、一直線に切り傷を刻みつける。
ぱっくりと開いた傷口から王の体液が噴きだす。

大きくのけぞる王に対し、さらに踏み込んで1回、2回と縦回転する長剣を浴びせかける。
1回目でさらに深く王の体を縦に切り裂き、2回目は長剣の軌跡が王の背中まで突き抜けた。

スピニングブレイク。
フォトンリアクターの開放により連続して空中で縦回転しつつ斬りつける、長剣の上級技。
文字通り真っ二つにされ、王は断末魔の悲鳴を上げる暇もなくその場に崩れ伏した。
216EPX 7章「a turning point(後編)5/5」:2008/04/18(金) 00:28:32.68 ID:Y8YYEKPx
ヴァンダやオルガの群れに大きく動揺が走る。
脱出のチャンスは、今をおいてなかった。
着地と同時に部下の元へ駆け寄った私は、そのまま一丸となって坑道の奥へと走り去る。
出口につくまで、私達を追ってくる足音が聞こえてくることはなかった。

「ありがとう、みんな」
鉱山を抜け、安全なところまで移動したところで、私は改めて頭を下げた。
部下達は互いに顔を見合わせるが、やがてfFが一歩進み出る。
「よしてくださいよ、隊長。俺達、仲間じゃないっすか」

「…仲間?」
「そう、仲間。みんなイルミナスの連中が許せなくて、部隊に志願したんじゃないすか。
…隊長にも、辛い過去があったんだと思います。俺達も同じです。
イルミナスのやったことは、絶対許せない。でも、それより大事なのがあって…それは、ええと」

fFが言葉を探しているうちに、fTが後を続けた。
「大事なのは、イルミナスから皆を守ること、そうでしょう。
我々ガーディアンズの本分は、このグラールの人々を守る…それに尽きるのですから」

それを聞いて私は、心の中で深く溜息をついた。
かつてマスターが口癖のように言っていたこと。
そして、マスターを失うと同時に、私の頭から消え失せてしまっていた言葉。

私は、所詮PMであり、正式なガーディアンではないが、それでも。
マスターの理念を、私が失ってはいけなかったのだ。
常に視線を置き、頭に入れておくべきはイルミナスの滅亡する姿でなく、
イルミナスに苦しめられている人々であった。

マスターと同じものを、彼らは持っている。
第1小隊のような者も中には居るが、ガーディアンは決してハウザーの言っていたような、
自己の利益のみを追い求める者ばかりではなかったのだ。

私は彼らと出会えた幸運に感謝した。
そして、今こそ断言できる。
マスターのいるべき場所は、やはりイルミナスなどではなく、ガーディアンズなのだ、と。
217EpX 第二部エピローグ1/2:2008/04/18(金) 00:30:15.08 ID:Y8YYEKPx
あれから、何日たったろうか。
本部への生還を果たした私は、直ちに440を本部のPM運用部に預けた。
仕事も手につかない、まんじりとした日々を過ごしていたが、ある日。
本部内の通路を歩く、キャストfGと440の姿を見止めた。

「440、無事だったのですね」
キャストfGとはできれば顔を会わせたくなかったが、この際気にはしていなかった。
待ち望んだ440の元気な姿。だが、次の瞬間。
私の笑顔は、凍りついた。

「あっ…ええと、初めまして。440と申します」
丁寧に頭を下げ、挨拶をする440。
同タイプの別PM、というわけではなかった。
私達PMには見分けがつく。この440は、まぎれもなくあの440の筈だった。

何が起こったのか分からずに言葉を失う私に、キャストfGが声をかけてきた。
「ほお、私のPMの復活を、君がそんなに喜んでくれるとは意外だな」
「彼女に…彼女に何をしたの?」

「?何をした、と言われても…見ての通り、無事治療が完了したところだ。
ついでに、記憶も初期化してもらってな。再教育を施したところだ。
以前は何かと勝手な行動に走ることが多かったのでな。
おかげで、今度は順調に、私の命令に忠実に従うPMに育っているよ」

「き、記憶を…記憶を消すって…貴方、それがどういうことだか分かっているの?
PMの今まで経験や思い出…全てを奪い去る行為なのよ」
私の脳裏に、かつて炎の防衛線で440がぼやいていたことを思い出す。
自分は、主人の都合によって何度初期化されたか分からない、と。

PMにとって、よくあることではあったが。
命の恩人でもあった440の今の姿を見ては、そんな一言で理性的に片付けることはできなかった。

「理解できんな。私の所有物を私が扱うことについて、君がとやかく言う権利があるのかね」
キャストfGは、本気で理解できないといった様子で首をかしげる。

「あ、貴方は…貴方という人は…っ」
背丈の差も考えず掴みかかろうとする拍子に、またも眼鏡がずり落ちる。
何ともしまらない話だが、こんな時でも癖というものは消えないもので、つい眼鏡を直そうとする。
218EpX 第二部エピローグ2/2:2008/04/18(金) 00:34:24.83 ID:Y8YYEKPx
そこへ、差し伸べられる小さな手。
440が、私の眼鏡の位置を直してくれていた。
かつてのように、私が自身でそうするよりも早く。
まったく同じ仕草、同じ力加減、そして。
彼女がそうする時にいつも込めていた、労わりの気持ちをも思い起こさせていた。

「あ…あれ?私、一体何を…。ご主人様の命令もないのに…」
440は、自分で自分の行動の理由が分からない様子だった。

私は、たまらず440を抱きしめた。
余りに強くそうしたので440が小さく悲鳴を上げるが、どうしても手を緩められなかった。

ごめんなさい、440。
私は、まだ泣くことはできない。
泣き虫だった私は、マスターと別れたあの日を境に、誓ったから。
いつかマスターに、私が貴女にしているように強く抱きしめてもらう、その日まで。
何があろうと、決して泣かないと。

ありったけの力で歯を食いしばり、涙の溢れそうになるのを無理矢理抑える。
それが自然、440を抱く腕に伝わってしまうのだ。

440は、私の代わりに「死んだ」。
私に大切な言葉を残し、大事な出会いを用意してくれた。
貴女がいたからこそ、私は色々なものに気付くことができた。
そう、貴女は私にとって、「転機」そのものだったのだ。

私は、立ち止まるわけにはいかない。
マスターとの誓いを守るため、何を踏み台にしてでも進み続けなくてはならない。
でも、今だけは。
私のために「死んで」しまった、440を悼みたかった。

『主人を取り戻すなら、あんたは主人の持っていないものを身に着けなくちゃならない』
『あんたは、一人で強くなる必要はない』

440の残してくれた言葉を、私は心の奥深くで噛み締めていた。
いつまでも、いつまでも。
219EPX作者:2008/04/18(金) 00:48:26.53 ID:Y8YYEKPx
以上をもって、第二部「412奮闘編」を完了いたします。
お付き合いいただいた方、ありがとうございます。

GH412は、失った物と引き換えに大きな物を手に入れます。
マスターを取り戻すのに必要な、確かな手ごたえを掴んだのです。

第三部にて、EPXは完結予定ですがその前に。

彼女のマスターに何が起こっていたのか。
次回はそれに関するエピソードを幕間として投下しようと思います。ご期待ください。

>205
私は、貴方程強い心をもってWTを信じていたとは必ずしも言い切れませんが、
愛着の程は今までのエピソードで表現できていればと思います。
テーマの重複は、私もここの皆さんもきっと気にしないと思います。期待しています。

>206
スライサーの描写には自信がなかったので、あえて避けてきました。
かの技による圧倒的な快進撃を期待していたのなら、すみません。
また、412への温かい言葉、ありがとうございます。
220名無しオンライン:2008/04/18(金) 02:07:39.81 ID:SI6VcVaV
ちっ、EPX作者の独断場じゃねーかっ
221名無しオンライン:2008/04/18(金) 19:33:26.33 ID:YMayUVs5
>>219
ラスカルふいたw でもダブルセイバーは両剣だな。 双剣だとツインセイバーになってしまうw
いやどうでもいい事なんだけどちょっと気になっただけなんだ。すまそ

こういった友情劇大好き。おもわずグッときちゃったよ
第三部期待期待
222EPX作者:2008/04/21(月) 22:07:25.35 ID:3nHQO58q
>220
投稿量を振り返るだに自分がKYな人間に思えてきましたが、
ほかの皆さんの投稿がない間の保守代わりとでも思っていただけたら幸いです。

>221
ダブルセイバーの日本語表記については大変失礼しました。申し訳ありません。
第3部についてはただいま鋭意執筆中ですので、今しばらくお待ちください。

前回の予告通り、これからは第3部の前の幕間として、
しばしPM412のマスターに視点を移した物語を展開します。

それではこれより、EPX幕間を投下いたします。
223EPX 幕間(前編1/4):2008/04/21(月) 22:09:30.30 ID:3nHQO58q
私はよく、夢を見る。
ガーディアンズを抜け、イルミナスの傘下に入り、初めての任務に当たった時のことを。
永遠に抜けられない、悪夢として。

『見ろ、やったぞ…ビースト共め、次々と醜い化け物に変わって行く』
『これは…何…これは…。今散布したのは、鎮圧用の催涙弾じゃなかったの?』
『何を言う、同志。我らの手柄だぞ。にっくき獣共に天誅を下す…これがイルミナスの力だ、これが』
『違う…これは、違う。私は、こんなものを望んでいたわけでは…』
『どうした、同志。顔色がわる…ぐはっ』

『おのれ、裏切り者…よくも同志を』
『何が…何が真の平等よ。これは…ただのテロだわ。貴方達に理想を語る資格なんか、ない』

私は、その場にいた「元」同志を全員切り伏せ、ダグオラシティを駆け回る。

次々と、SEEDフォームに変じてゆくビースト達。
大人も、子供も、苦しげに呻きながらその姿を、心を蝕まれていく。
どうにもならなかった。
事の真実に気付いた時には、SEEDウィルス…私が催涙弾と信じていたそれは、
ダグオラシティに満遍なく散布されていたのだ。

悲鳴が耳にこびりつく。断末魔の声が胸を突き刺す。
すがりつく腕をとっても、その腕がSEEDの物に変わっていく、
おぞましい感触を味わうだけだった。

これが、イルミナスの正体。
私がガーディアンズを捨ててまで求めた理想をかけた、組織の実態。
私は、理性も何もかなぐり捨て、只叫ぶ。
イルミナスの名を、ハウザーの名を。ありったけの呪詛をこめて。

この日から、私にとってイルミナスは、敵となった。
といって、今更ガーディアンズに戻ることは、許されるものではなかった。
何故なら。

モトゥブを襲った、大規模なSEEDフォーム化事件。
私はその事件の、唯一生き残った実行犯だからだ。
モトゥブに住むあまねく人々の恨みを背負って、生きていかねばならなくなったからだ。
224EPX 幕間(前編2/4):2008/04/21(月) 22:13:25.87 ID:3nHQO58q
薄暗い一室で、目を覚ます。
いつものように、涙でにじむ目元をぬぐい、私は寝台から身を起こす。

あの日以来、私は犯罪者となった。
史上稀に見る悲劇を引き起こした、張本人となった。
言い訳はしない。
被害者や、その関係者の前で「ウィルスとは知らなかった、許してくれ」などと言える訳がない。
言うべき言葉など、私には何もない。あってはならない。

ダグオラシティを脱出し、イルミナスを脱走する形で抜け出した後、私は考えた。
私のとるべき、これからの行動について。

自首して、正式に裁きを受ける。それもいい。
極刑となることは明らかだが、甘んじて受け入れる準備はある。
ただ、思うのは。
それで、己の罪が赦されるものなのだろうかという、疑念。

仮に死を賜り、あの世とやらで犠牲者に会ったとき。
彼らは、私を赦してくれるだろうか?

あの世で彼らに会う前に、この世でやるべきことがあるのではないか。
死ぬまでに、自分にできうるあらゆる手を尽くして償いとするのが筋ではなかろうか。

もちろん、それで赦しを得られるとは限らない。
だが、赦される、赦されないに関係なく。
私は、最後の最後まで自分の償いに手を抜かず、尽くさなければならないと思った。

そのために、何をするべきか。
すぐに思い浮かんだのは、イルミナスの壊滅。
悲劇の元凶たるイルミナスを壊滅させるのは、私に課せられた当然の義務と言えた。
だが、まだ足りない。
まだ、やるべきことはある筈だ。
225EPX 幕間(前編3/4):2008/04/21(月) 22:15:34.76 ID:3nHQO58q
何を?
考えて、やがて思い浮かぶ。

私はそもそも、何のためにガーディアンズを裏切り、イルミナスに下ることになったのか。
ハウザーの言った、「真の平等」…その言葉を必要とする人々がいるという、現実。
そして、私の選んだ道でもある「弱き人々を護る」…そのために必要な、成すべきことがあると。

「虐げられし人々の解放」
当時は漠然としか感じられなかったが、今こそはっきりと、私にはそれが見えていた。

ヒューマンに限らず、グラールのそこかしこで不当に貶められ、虐げられている者はいる。
私はそれを、イルミナスでのわずかな活動を通して見てきた。

私は、彼らを解放しよう。
小鳥の運ぶ水で山火事を消すようなものと分かっていても。
私は私の命と力の及ぶ限り、彼らのために尽くそう。

当時はそれがはっきり見えていなかったために、私は多くの人間を殺めることになったのだ。
その理想を貫かずして、あの世で彼らに合わせる顔はないだろう。

そんな決意をしてから、既に数ヶ月経っていた。
私は、私なりに手を尽くしてきた。
しかし、それが本当に正しいことなのか、自身を疑う気持ちもあった。

モトゥブでの人身売買組織の噂を聞き、その末端と思われるグループの拠点に乗り込み、壊滅させた。
そこにいた、ビーストやニューマンの子供はもちろん解放したが。
彼らは無事、親元に帰るなり、新しい生活を送るなりできているだろうか。
行き着く場所まで辿り着けず野垂れ死にするようなことは、なかったろうか。

モトゥブでの行動はまだいい。
パルムにて敢行した、囚人護送車の襲撃。
元々ろくに言い分も認められず、不当に貶められたヒューマンの囚人を救おうと起こしたことだが、
理由はともかくこれはれっきとした犯罪である。
ただその時は、冤罪の可能性のある彼らにもう一度チャンスを与えたいと、それしか考えていなかった。

脱走に手を貸し、結果的に余分な罪を背負わせただけだったのではないだろうか。
幾人かについては、伝え聞いた情報を元に真犯人を探し出したり、証言を覆す証拠を見つけたりはしてきた。
ただ、全員を救うことができたとは言いがたい。
彼らはそれでも感謝していたが、私は納得できていなかった。
226EPX 幕間(前編4/4):2008/04/21(月) 22:17:10.95 ID:3nHQO58q
己の行動に疑問を持つことも度々だが、その都度。
迷う暇があったら一歩でも足を動かすことだ、と自分に言い聞かせてきた。
迷って足を止める、一分一秒が惜しい。
そうして無駄にする時間の数だけ、自分にできる最善の努力から遠ざかってしまうのだから。

その他、イルミナスから奪った活動資金や、こまごまとした依頼で得た報酬などは、
ことごとくモトゥブの再建資金として寄付してきた。
自分に残されるものは、生きるのに最低限必要な食料や衣類、日々の宿代、それぐらいだった。

ずいぶんと、痩せたと思う。
自分で言うのもなんだが、以前は女としては比較的がっしりとした、肉付きのいい体格だと思っていた。
今は、骸骨のようなとまでは言わないが、自分より細身の女性はそういないと思えるぐらいになっている。
それも、決して健康的なものではない。

これで十分、などと一瞬でも思ってはいけない。
犯した罪を償うのに、十分などという言葉は存在しないのだ。
私を止める資格は、私にはない。
生きている限り、私は進み続けなくてはならない。
疲れ、空腹、そして病。
何であろうと、歩みを止める理由にはならない。

ただ一つ、例外があるとすれば。
私は、かつての無二の相棒の顔を思い出す。

私のPM、GH-412。
彼女が私の予想を超える成長を遂げ、私の予想も尽かない強い意志をもって私を止めるのなら。

「…難しいかしらね、やっぱり」

何かにつけて、すぐ目に涙をためる412の顔を思いだす。
それでも、期待してしまう。
いつか彼女が、私以上の強さと意志をもって、私を迎えに来てくれる日の到来を。
救いを求める甘えでしかないと、分かっていながら。
227EPX作者:2008/04/22(火) 20:53:43.06 ID:B/cQHCOp
続けて「幕間(中編)」、投下します。
228EPX 幕間(中編1/4):2008/04/22(火) 20:54:49.50 ID:B/cQHCOp
現在、私はニューデイズのあばら家にて寝泊りをしている。
宿主に打ち捨てられて久しい廃屋だが、私には丁度いい拠点と言えた。

ニューデイズでは、LSSなるシステムを用いてSEEDの脅威から人々を守る代償として、
巫女、および教徒の何人かを犠牲にしているという話を聞いていた。
必要なことといえ、また彼女達は皆自分から志願したという話を聞いているといえ、
私は本当に彼女達が納得しているのか、確かめる必要があると感じた。

事の次第を確かめるために一度、グラール教団本部に乗り込んだことがあった。
が、教団の中に潜伏していたイルミナス工作員の妨害で目的は果たせず、
彼らの何人かを返り討ちにして逃げ帰るのが精一杯だった。
おかげで正規のグラール教徒も警戒を強め、侵入もままならない状況に陥っていた。

そのようないきさつで一度は断念したが、チャンスは思わぬところから巡ってきた。
モトゥブの酒場でくだをまいていた、ローグスの一員と思われる男達の話を聞いたのだ。
それによると、かつてガーディアンズ前総裁の暗殺を図り指名手配された、
あのイーサン・ウェーバーが教団への侵入を企てているとのことで、
口の軽い男達はご丁寧に決行の日まで洩らしていた。

彼の侵入と時期を同じくして入り込めば、少なくとも警戒は二分されることになる。
そう考えた私は、ただちにニューデイズに移動し、この廃屋で機会をうかがっていたのだ。
そして、今日が彼等の言っていた、決行の日となる。
229EPX 幕間(中編2/4):2008/04/22(火) 20:56:45.55 ID:B/cQHCOp
身支度を整える。といっても、さほどの手間はない。
必要なものはナノトランサーに収納済みだし、着替えもいつもの通り。
身体全体にぴったりフィットする、伸縮性の強い黒のボディースーツで全身を覆い隠し、
その上にフードつきのフォマールセットに似た、灰色のローブを纏う。
顔全体も、目元と口元を残し黒い布を幾重にも巻きつけ、さらに目深にフードをかぶることで、
一切素肌を見せないようにする。

以前はもう少し、女として己を着飾る努力を払っていないこともなかったが、
今は徹底して、素肌を隠すことにのみ気を配っている。
無論、指名手配され追われていることによる用心もあるが、もっと大きな理由がある。
誰にも漏らすことのできない、大きな理由が。

ローブの奥にしまいこんでいた、小さなケースを取り出す。
中に入っている錠剤をいくつか、無造作に口の中に放り込む。

そんな、いつもの所作と同時にふと、懐からカードがこぼれ出す。
ガーディアンとしての身分証明のようなもの。パートナーカードだった。
カードの中央で、かつての自分の顔写真がまっすぐ自分を見据えている。
もちろん、カードの状態は「活動停止中」。これからも変わることはない。

後悔はするまい、過去は振り返るまいと常に言い聞かせてきたが。
ガーディアンズ時代の、今から思えば輝かしいと言って差し支えない日々を思い出す度、
追憶に胸の奥をかき乱されてしまう。
弱音を吐き出しそうな己を必死になって叱咤することに追われてしまう。

カードを見る度に思い出すものは、もう一つあった。
ほんの気紛れで、初めて他のガーディアンにカードを渡した時のこと。
本来全く違う道を歩んでいたもの同士の道が、わずかに交わったあの日のことを。
今にして思えば、あの日は私にとって、心から笑うことのできた最後の楽しい思い出と言えた。
私以外の者とあんなに親しげに言葉を交わす412を見るのも、初めてのことだった。

あの時の彼は、今も己の道をひたすすんでいるのだろうか。
もしも万一、もう一度顔を合わすことがあっても、彼は恐らく私だと気付きはしないだろう。
だから私はその時、心の中でのみ声をかけるのだ。

私も、貴方と同じように己の決めた道を、歩み続けているつもりだと。
泥にまみれ、足を引きずる惨めな道程と笑われようと、蔑まれようと。
230EPX 幕間(中編3/4):2008/04/22(火) 20:58:34.97 ID:B/cQHCOp
教団本部を一望できる場所に身を潜め、私はその時が来るのを待つ。
果たして、にわかに教団に騒ぎが巻き起こり、門番も慌しく内部へ駆け込んでいった。
イーサン・ウェーバーが教団に忍び込んだことに、疑いはなかった。

もっとも、事態は私の予想を超えて混乱の度合いを増していた。
イーサン・ウェーバーだけでなく、ガーディアンズからも数名、侵入者があったのだ。

遠目で見た限りでは、侵入者の数は3人。
一人は年端もいかない少女と、もう一人は何とも印象の語りようがない、一見無個性なガーディアン。
しかし、最後の一人は見覚えがあった。
かつて研修生時代、イーサン・ウェーバーと首席を争ったという噂のエリートの一人。
ヒューガ・ライト本人であった。

しかし、今にも侵入を試みんとする彼からは、ある種の悪寒を感じられた。
それが、何によるものか。私には、よく分かった。
分からないのは、その理由だった。
何故、彼からそのような気配を感じるのか。
しばし気を取られるが、すぐに我に返る。

このチャンスを、逃すわけにはいかない。
231EPX 幕間(中編4/4):2008/04/22(火) 20:59:51.87 ID:B/cQHCOp
前回の潜入時に発見していた裏口を通り、私は教団本部への侵入を果たした。
用意していた教団の服を着込み仮面を被り、教徒に扮する。
さすがに2方面から別口の侵入があるためか、こちらに対する警戒はおざなりなものだった。
すれ違う教徒のいずれも、私に注意を払うことはなかった。

前回の調査で、LSSの制御室は教団本部に、動力室は支天閣にあることを調べ上げた。
彼女達は幻視の間のさらに奥にある、動力室で眠りについているという。
LSS制御室にて制御装置を解除するか、破壊するかなどでLSSを無効化した上で、
動力室にて手動で、彼女達を眠らせている装置を解除すれば目を覚ますはずだった。

彼女達は、全員喜んでLSSの犠牲になることを承知したと言う。
だが、果たして本当にそうだろうか?
星霊主長であるイズマ・ルツの命令とあれば、それに逆らえる教徒がいるとは思えない。
心の中では、納得していない者もいるはずだった。

制御室に向けて急いでいると、またも前方から人影が走ってくるのが見えた。
侵入騒ぎにどの教徒も忙しく駆け回っているため、今回もそうかと最初は思った。
が、今度は違っていた。

「こんなところにも教徒が…悪いが眠ってもらう」
男はこちらに向かう足取りを緩めることなく、走りながら片手剣を抜き放ってきた。
全身フォトンの武器でどうやって「眠らせる」のか興味はあるが、
むざむざ相手の思うとおりにさせるつもりはない。

カムフラージュのために持っていた両手杖を捨て、ナノトランサーから小剣を実体化させる。
互いにすれ違い際抜き打ったフォトンの刃が、まばゆいばかりの光を放ち相手の刃から主の身を守る。

一瞬の差で身体を両断されかねない程の、鋭い踏み込みと斬撃。
男の技量は、相当なものだった。

「…できる…」
こちらが言いたい台詞を、男が代弁した。
黒いコートを翻し、男はこちらに向き直る。

明らかに自分より年下の、まだ少年の面影を残した顔立ちに、明るい茶色の髪。
深い襟のついた黒いコートに身を包んだその姿はローグスのようにも見えるが、
私はその顔を見間違えることはなかった。

先に見た研修生時代の2大エリート、ヒューガ・ライトに対するもう一人。
かつて『合の時』にてHIVE撃滅作戦を成功させた立役者、イーサン・ウェーバーその人だった。
232名無しオンライン:2008/04/23(水) 13:59:36.14 ID:hK+4Y3/h
なんていうか、タイトルが続き続きばかりで
間に挟みづらいんだよな
たまに投稿しても、どうせEPX作者の投稿が何レスも後ろについて流れてっちゃうしさ・・・

面白いから仕方ないけど、主にご挨拶的な感じで恐れながら割り込ませて頂く勇気は
なかなか出ないね
233名無しオンライン:2008/04/23(水) 15:12:01.84 ID:xkKUop4s
>>232
俺みたいに空気読まずに忘れられそうな頃に続きが仕上がる長編をやってたりするのもいるんだし、
そんなのでも一応ちゃんと読んでもらえてるんだから、気にせずに書くといいと思うよ。
234名無しオンライン:2008/04/23(水) 17:17:37.73 ID:hK+4Y3/h
EPXが完結してスレが落ち着いた頃に書くよ

ここはもう長編作者ばかりで使い物にならない
前はちょっとしたやり取りや短編モノが多くて、その方が色々見られて楽しかったんだよな
投下する作者の人数も多かったしさ
235名無しオンライン:2008/04/23(水) 17:31:31.51 ID:bujhqJqA
わがままだなぁ
236名無しオンライン:2008/04/23(水) 17:39:58.55 ID:hK+4Y3/h
保管庫見てればそう思うって
237名無しオンライン:2008/04/23(水) 18:55:36.80 ID:xkKUop4s
そう思う人がいる以上、短編の流れも作りたいな。
ちょっとアイデア練ってくる。
238名無しオンライン:2008/04/23(水) 19:05:27.58 ID:DV8KhR82
一話完結は短編に含まれるだろうか
そう書けてるかも疑問だが、流れを無視して投下してやる
2391/6:2008/04/23(水) 19:06:40.72 ID:DV8KhR82
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。
電撃ミッションカーニバルも終わり、私達にも普通の日々が戻って来ました。
お祭の後にまず私達がやる事は、戦利品の大整理でした。

店員「ありっしたー」
412 「ふぅ…塵も積もれば結構な山っと」

使う予定が今後一切なさそうなアシッド、ベリーを大量に売り払い
それなりの金額になった事に少し驚きながら帰ろうとすると、私の目にある物が飛び込んできました。
EX_GH-480デバイス、GH-470と同じ珍しい男性型マシナリー進化デバイスです。
初日は爆発的に売れたこのデバイスも、今ではセール対象品として山積みされてました。

412 「…紳士かぁ、淑女デバイスとかは出ないのかな」

私はそんな事を呟きながら、自分が穿いているミニスカートを見ました。
私達、マシナリーは一応ロングスカートに似せた服装が用意されているタイプもありますが
変な切れ込みが入っていたり、わざと下着を見せるような作りの物しかありません。
以前ガーディアンズで流行った、セレブドレスみたいな普通のロングスカートは、私達の憧れの1つでもあります。
…本当、淑女タイプのデバイス出ないかな。

*ぐらぐら*

412 「…あれ? 今なんか動いて…」

*どどーっ*

412 「わきゃーっ!」
店員「お、お客さーん!?」
2402/6:2008/04/23(水) 19:07:47.31 ID:DV8KhR82
-自宅-

主人「…遅い」

買物に出かけさせた412の帰りが異様に遅い。
確かに俺は溜まり放題だった使わない素材を売るついでに買物を頼んだわけだが。
それにしたって3時間以上も帰って来ないのはおかしい。
狭い上に何度も歩いたこのコロニーの中、迷おうと思って迷えるような場所ではない。

主人「…店頭でゴージャス☆パシリンやってる所でも見つけたか?
    しかし1話30分、延々と同じ話だけリピートするのをそこまで見入るわけもないな…。
    通りすがりの孔明の罠にかかった…孔明がそんな世の中に溢れてたらとっくに破滅か」

我ながらどうしようもない事を考えているな。
悩んでいても仕方ない、そう判断した俺は探しに出かけようと椅子から立ち上がった。

*ぴんぽーん*

同僚が9割辞めた今、滅多に使われない部屋のインターホンが鳴り響いたのは丁度その時だった。
ようやく帰ってきたか、変な言い訳をしたらどうお仕置きしてくれようか。
そんな事を考えながらドアを開けると…。

480 「ぐす…ひっく」

どういうわけか泣いている、小柄な執事がいた。隣にはVariety Shopの男店員。
あまりに似つかわしくない泣き方をする執事と店員、何とも異様な光景に俺は呆然としてしまった。

主人「…どちら様?」
店員「あ、すいません…この412さんのマスターさんでいらっしゃいますか?」
主人「…そうだが、それとこの年甲斐もなくガキの泣き方している480とどう関係してるので?」
店員「実は話すと少し長いんですが…」
2413/6:2008/04/23(水) 19:09:10.41 ID:DV8KhR82
どうやら店員の話によると、このいい加減に殴り倒したくなる女々しい爺が俺の412の変貌した姿らしい。
無理矢理積み立てすぎたデバイスが一気に崩れ落ち、その下に412がいたというわけだ。
進化デバイスを使うと性格が変わるのもあり、その際には記憶が吹っ飛ぶという副作用があるが
積み立ててあったのは初期出荷版だったので、偶然にも記憶がそのままという不具合が発生したようだ。
…不幸中の幸いとは言えそんな物を積み立てる店というのもアレだな、今度クレームをつけてくれよう。

主人「で、こいつはどうなるので?」
店員「それに関しては今、GRM本社に問い合わせて特別な412進化デバイスを発注しました。
    それを使えば記憶を維持したまま412に戻れますが、特注品なので時間がかかりまして…」
主人「どれくらい?」
店員「なるべく早くしてほしいとは頼みました。最低でも3日はかかるとの事です。
    私達の不手際ですので、料金は全てこちらで負担させて頂きます。
    誠に申し訳ありません…。」

店員は深々と頭を下げた。
元に戻れるならそれはそれでいいのだが、問題は俺よりもまだメソメソ泣いているコイツだ。
突然の姓転換に老化、数日の我慢が出来るのかどうか…。

店員「それでは、私はこれで失礼させて頂きます。
    何か続報が入りましたら、すぐにご連絡させて頂きます」
主人「うむ、ご苦労様」

店員が去り、そこには俺と元412な480が残された。
内股でベソかく姿は、程好く俺に殺意を芽生えさせるほどにイライラする物だった。
元少女とはいえこれはキツい…さっさと元に戻してもらわねばならないな。

主人「ええい、いい加減泣き止め! イライラする!」
480 「だって…だってぇ〜…ぐす」
主人「あぁ〜! その返答が余計にイラつく! 何この新境地の怒り!?
    このまま行けば殺しかねーん、いやむしろこの場でたたっ斬るッ!」
480 「ごごご、ごめんなざいごめんなざい! ずびばぜぇ〜ん!」
2424/6:2008/04/23(水) 19:10:27.27 ID:DV8KhR82
480 「…どうしましょう」
主人「どうするも何も、デバイスが届くまで我慢するしかないだろ」
480 「あうう…こんな姿で過ごさなきゃならないんですかぁ…」
主人「…とりあえずだな、その間少しは姿に見合った仕草と言葉使いにしてくれ。
    爺の格好で女の仕草や言葉使いをされると、こうピキッと来る」
480 「そんな事言われても、男性の仕草なんて知りませんよぅ」
主人「何その発言、俺を男と見てないわけ!? …とりあえず座ってみろ」

そう言われて私は、座布団が敷いてあるいつもの私の場所に座りました。

480 「…すわりまし」
主人「何処の世界に内股で正座する紳士がいるんだよ!
    しかも座る途中でスカート直すな! 穿いてないだろ、スカート!」
480 「そ、そんなぁ…だって男性の仕草なんて」
主人「だから、ある程度は俺の真似をすればいいだろうが!」

そんなわけで、私はNGを出されてもう1回座る事になりました。

*どっかり*

480 「これでいいで…」
主人「胡座かいて座る紳士が何処にいるんだよ!
    主従逆転か!? 新ジャンル作るつもりかお前わ!?」
480 「そ、そんな事言ったって真似しろってご主人様が…」
主人「丸ごと真似してどうする! 俺が紳士に見えるかコラ!?
    自分で言って少々情けないが、俺の仕草+お前の仕草÷2くらいにしとけ!」
480 「え、えーとそれじゃあ…」

*ぽりぽり…ぱこーん!*

480 「いたぁーい!」
主人「俺が何時ケツをかいた!? 何処をどう計算したらそうなるんだ!?
    それもう紳士じゃねぇよ!年頃の娘に嫌われるスーツ着せられたオヤジだよ!」
2435/6:2008/04/23(水) 19:11:28.94 ID:DV8KhR82
480 「…ふえ〜ん」
主人「お前、少しはデータに俺以外の男のデータ入ってないのかよ!」
480 「だ、だって…ほとんどご主人様と2人だけの任務じゃないですかぁ」
主人「言われてみればそうだ…しかし有名人のデータくらいあるだろ?」
480 「さ、探してみます…」

私がデータを漁ると、該当する項目がチラホラと出てきました。

480 「まず、レオジーニョ・サントサ・ベラフォード…。
    次にトニオ・リマ、次にヒューガ・ライトが検索結果に出てきました」
主人「オッサンは態度はいいが仕草が紳士とは言い難いな…。
    トニオは論外、残るはヒューガか…まぁ、紳士には一番近いかもしれんな」
480 「ヒューガさんを参考にすればいいんですか?」
主人「そうするしかないな」

私はヒューガ・ライトさんの行動パターンをデータから解析して、インプットしました。
そうすると私の頭の中に、紳士として異性にするべき事などが溢れて来ました。

480 「あ、ご主人様、これならいけそうです」
主人「よし、早速やってみろ」

*しゅたっ*

480 「ああ、何と言う逞しい御方なのでしょう…私達が出会えたのも星霊のお導き。
    この出会いに感謝の意を込めて、私と晩酌でも如何…」

*どごぉっ!*

480 「ぎゃん!?」
主人「よりによってナンパを真似すな! 薔薇の世界に誘うつもりか!?
    どう解析したら同性愛の紳士になる、このたわけが!」
480 「だ、だって私は元々女性ですし〜…。
    それに、好きな人は口説けってデータ…!!??」

…とっさに告白…しちゃった!?
2446/6:2008/04/23(水) 19:12:17.70 ID:DV8KhR82
480 「あ、あわわわわ!? ななな、何でもないですぅ〜!!」
主人「その姿で首振るな! 殺意がゲージMAX突破す…ん?」

首をうりんうりんとさせている私を怒鳴るご主人様の動きが途端に止まりました。
よ、よかったぁ…聴こえてなかったみたい。動力炉止まって死んじゃうかと思ったぁ…。
そ、それはともかく! ご主人様は私をじーっと凝視してます。

480 「…どど、どうしたんですかぁ?」
主人「…それの処理は奥でやれよ」

ご主人様が指した方向には…とっても大きい物がそびえ立っていました。
…その大きな物は、私の…!??!

480 「きゃ、きゃあああああああ!!!! な、何ですかこれぇぇ!!??」
主人「お前が欲情したからだろ…男はそうなるもんなんだ」
480 「よ、欲情なんてしてませぇ〜ん! ご主人様、助けて下さいぃ〜!」
主人「だから奥でじっとしてればその内何とかなる」
480 「ふぇぇ〜ん、今何とかできないんですかぁ〜!?」
主人「死んでも断る! 薔薇の世界に足を踏み入れてたまるか!」



…そんなわけで、私はしばらく外出禁止となりました。



-終-
245名無しオンライン:2008/04/23(水) 19:28:06.94 ID:7TEwPPjx
このスレはあんまり深く考えずに好き勝手書けば良いんだと思うけどな。
長編好きと短編好きが両方居て、の議論は何度も起きてるし否定はできないけど。
因みに俺は未読分から見てるから短編が流れても見逃すことはないな。

>>244
どうやって落とすのかと思ったら倫理的におkな流れで笑ったw
議論はさておき普通にGJなんだぜ。
246名無しオンライン:2008/04/23(水) 20:11:57.00 ID:pbIKfXOs
新ジャンルワラタ。
主人の突っ込みが銀魂を彷彿とさせるな。ともかくGJ!
247名無しオンライン:2008/04/23(水) 20:47:13.96 ID:ffHrjmOx
> 何この新境地の怒り!?

これいい、もらった
248名無しオンライン:2008/04/24(木) 15:57:00.57 ID:wM8dlJAf
各パシリスレの勢いに末期感を感じざるを得ない…
でも作家さんら頑張れ超頑張れ
249名無しオンライン:2008/04/24(木) 19:29:44.12 ID:qSgXORxm
単体は考えるのがムズいな…



男「4月ももう終わりだってのに、こたつ出しっぱなしは無いよなぁ。
  そろそろ片付けるか…」
こたつをナノトランサーに収納する男。

シュンッ

客「お邪魔しまーす」
男「っと、客だ。420、応対してくれ!420〜!」



* * * ナノトランサー内部 * * *

420「キャアァァァーーー! 目、目が回るうぅぅーー!
   ここどこーー!
   ごご、ご主人さまー、たーーすーーけーーてーーー!!」



男「なんか背中がムズ痒いな…。420、どこ行った〜!?」
250名無しオンライン:2008/04/25(金) 01:07:47.38 ID:8uz/R8Ea
そうだよ。そろそろチャブ・ダイにしないと。早く実装してホスイ
251名無しオンライン:2008/04/25(金) 03:33:10.08 ID:yOTvIVbX
>>249
触発されて書いてみました。
最近は環境が変わってなかなか書けないのですが、
良作を読むとウズウズと書きたくなりますね。ではでは。



御主人「うーん、420・・・ウチもこたつを片ずけようか?」
420「え、あ、あのもう少し後にしませんポコ?」
御主人「え?もう春だし?普通は片ずけるよ?」
420「そ・・・それはそうポコ・・・でも・・・」
御主人「変な420だね。ともかく、えい」

コタツダイに手をかける御主人。
すると何やらコタツダイから声が聞こえます。

シャト「ニャーニャー」
御主人「・・・420?これは・・・?」
420「ウグ・・・ヒック・・・強化失敗して捨てられて、可哀想だから拾ってポコ・・・」

シャトを抱えて泣きじゃくる420。
420は『捨てられた機械』に反応している様子です。
そんな420を見て御主人は一言。

御主人「うーん・・・まあ仕方無いなぁ。その代わり面倒は見てね420?」
420「え・・・あ・・・はい!了解ポコ!」

どうやらシャトも飼ってもらえそうです。
良かったね420。

420「可愛い!やっちゃいます!!」
シャト「ニャアー!」
252名無しオンライン:2008/04/25(金) 06:36:45.52 ID:HXoSX8jw
久し振りの単発ネタ、イイヨイイヨー>>249,251両者ともGJと言わざるを得ない!

>>249
こたつ布団を取るだけでいいと思うんだけど・・・
でも一緒に収納された420が可愛いから、いいか!

>>251
ほのぼの絵本みたいで和んだ(*´Д`*)
・・・と、思ったら、ちょwww最後www

シャト逃げてぇーーーーーー!!!
253EPX 幕間(後編1/4):2008/04/25(金) 23:07:13.94 ID:IPF+0sgI
「くそっ、ここでこんな手練を相手にしている暇はないってのに」
激しく切り結ぶなか、イーサン・ウェーバーの呟きが聞こえる。

こちらは教団の教徒に扮しているためか、
"どうせ見逃してくれないだろうから一刻も早く切り伏せよう"と彼は判断している様子だった。
一方こちらも、少しでも隙を見せれば一気に勝負を決められかねないので、
逃げるどころか背を向けることすらできないでいた。

空中に舞う、フォトンとフォトンの交錯する光。
一歩引いては一歩踏み込む、攻防が一瞬のうちに切り替わる剣戟。
何とか間合いを取って、相手の苦手とするであろう遠距離攻撃に切り替えたかったが、
余りの踏み込みの速さにそれもままならない。

悪いことに、騒ぎを聞きつけた衛士が二人ほど駆け寄ってきた。
イーサンは無論のこと、私も詳しい誰何(すいか)を受けたら侵入者であるとすぐに判明してしまう。
なんてこった、と毒づくイーサンと全く同じ気持ちだった。

通路を挟み撃ちにする形で、衛士二人が斬りかかってくる。
…"斬りかかる"?
次の瞬間、私の頭に一つの仮説が浮かび、咄嗟に彼らの持っている武器に目を向ける。
そして、さらに次の瞬間、仮説は確信へと変わった。

きらめくフォトンの軌跡が、ふたつ。
私とイーサンは、互いに背中合わせで武器を振り下ろした格好となっていた。
ややあって、衛士二人の倒れ伏す鈍い音が、通路に響き渡る。

「……なんで、俺を助けた?」
片手剣を軽く一振りし、イーサンがこちらに向き直る。フォトンが残像を残しながら鈍い音を出す。

「…こいつらは、イルミナスの工作員よ」
「何だって?一体、どうしてそんなことが分かるってんだ」
「教団の衛士は、多くが優れたテクニックの使い手。侵入者を見ていきなり武器で斬りかかる真似はしない」
「そ、そりゃそうかも知れないけど、それだけであんた、仲間かも知れない奴を…」
「さらに、持っている武器を見れば、一目瞭然よ」

イーサンが、倒れている衛士の持っている武器を取り上げる。
「これは…GRMの…」
「そういうこと。私達は、GRM製の武器なんか使わないわ」
254EPX 幕間(後編2/4):2008/04/25(金) 23:08:36.59 ID:IPF+0sgI
「…私の役目は、この機に乗じて動き出した、イルミナスの潜入工作員を始末すること。
外部からの侵入者を捕えることではないわ」
少々苦しいが、でまかせを言って煙に巻くことにする。

「…見逃してくれるって言うのか」
「お互いにね。貴方は私とここで会わなかった。…職務怠慢と、後で責められたくないし。
貴方と雌雄を決してなお、イルミナスを追う余力が残っているかは正直自信がない」
「それは、俺も同じだ。教団の中にあんたみたいな使い手がいたことに、驚いてる」

年相応の屈託ない笑顔に意表をつかれる。
敵であることには違いないのに、警戒心が薄いのか、大物なのか。

「それじゃ、私はこれで」
いずれにしろ、戦いは避けられそうなので、私は先を急ぐことにした。
…が、ふと思い至って足を止める。

「貴方。イーサン・ウェーバー…前総裁の暗殺未遂事件で、指名手配されている…」
「あ、ああ…そうだ」
「理由はどうあれ、人一人を殺めようとしたことは事実。その償いは…どのようにするつもり?」

自分と同じ、罪を犯し指名手配される彼が、どのように感じているのか。
私の生き方を変えるつもりはないが、それを聞いてみたかった。

イーサンはしばし瞑目した後、こう答えた。
「この身を捧げ、グラールのために尽くす…それだけさ。ガーディアンズ時代と何も変わらない」
「変わらない…そう、言い切れるのね?人に裏切り者と蔑まれようと」
「ああ。みんながどう言おうと、俺は俺だ。俺は、俺の信じた道を歩き続ける」

それを最後に、私達は互いに背を向けその場を走り去った。

何も変わらない。彼はそう言っていたが、私はとても同じ事は言えそうもなかった。
私に降りかかったあの事件は、私から色々なものを奪い、様々なものを変えた。
人の目を恐れ、覚めない悪夢に苛まれ、かつて抱いていた誇りも何も失っていた。

同じ罪を犯した身でありながら、彼は変わらないといい、私は変わったと感じる。
それは、単に犯した罪の軽重によるものか、それとも互いのヒトとしての強さの違いか。
分からないが、ただ一点彼の言葉に共感できたものはあった。

自分の信じた道。私には、それしか残されていないのだ。
255EPX 幕間(後編3/4):2008/04/25(金) 23:10:21.36 ID:IPF+0sgI
「その先には、巫女様が眠っておられるはずよ」
グラール教団最深部にある、幻視の間。
その奥にある、LSSの動力室につながる扉の前に、教徒の姿をした一人の男がいた。

イーサン・ウェーバーと別れてからは、さしたる障害もなく制御室に辿り着いた。
正規の手順で解除しようとしたが、さすがに部外者の私が自由にいじれるものではなく、
やむをえず破壊することに決め、時限爆弾をセットしてきた。
当然、爆破してしまえばLSSも消え、警戒網がしかれるだろう。
そのため、爆発してからなるべく早く彼女達と接触をはかろうと、時間は多めにとっている。

ここ幻視の間に辿り着いてからも、まだかなりの時間の余裕があるはずだった。

「ちぃっ。混乱に乗じて、忌まわしいLSSの元となる巫女共を屠ってやろうとしたものを」
「LSSを止めたいのなら、制御室で正規の解除手順を踏めばいいでしょう。
無理にここの装置を破壊して彼女達を殺して、貴方に何の得があるの?」
「忌まわしき巫女の暗殺こそ我が任務。我らイルミナスの野望を阻む者、生かしておく理由はない」

教徒の格好をしているにも関わらず、男は自らの正体を隠す様子もなかった。
「ありがとう、手間を省いてくれて。その一言が聞きたかったの。
そうと知った以上、私も貴方を生かしておく理由はないわ」
「何?貴様、一体なにも…うぉっ」

教徒の扮装を解き、黒のボディースーツ姿に戻る。
(ローブはあくまで外で目立たないために着るものであり、戦闘時はナノトランサーに収納している)
同時に男に向かって弓を撃ち、怯んだ隙に小剣を抜き、懐めがけて疾走する。

数秒後、私は血だまりの中に倒れる男を足元に立っていた。

制御室に仕掛けた爆弾が爆発するには、まだ時間がある。
それを待って、彼女達を眠らせている装置を解除しようと、私は制御室に入ろうとした。
しかし、そこへ乗り込んできた新たな侵入者が、私の行動を中止に追い込んだ。

「潜伏中とのイルミナス構成員を追って来てみれば…別の闖入者とはな」
見覚えのある、機械的な顔とごつごつした威圧的なボディパーツ。
かつて炎の防衛線で出会った、あの効率主義のキャストfGだった。
256EPX 幕間(後編4/4):2008/04/25(金) 23:11:34.59 ID:IPF+0sgI
「君の目的は知らんが…我々の手間を省いてくれたことは礼を言おう。
その遺骸をおとなしく引き渡した上で素直に縛につくなら、便宜をはからんでもない」
「何だこいつ。こいつもイルミナスの野郎じゃないのか?」
「なわけないでしょ。こんなとこで仲間割れする理由、ないもの」

次々と、因縁深い顔が目に入る。
あの時の3人が揃ってここにいるというのは、どういう因果の成せる業であろうか。

黙っている私に、キャストfGが続けて語りかける。
「我々は、対イルミナス特殊部隊の者だ。
現在このグラール教団にイルミナスの潜入工作員がいるとの情報を受け、教団への協力を要請した。
だが、教団の連中は頭が固くてな。説得の時間も惜しいので、強引に入らせてもらった。
道中見つけた工作員が、そこで今君の足元に倒れている男だった、というわけだ」

「それはご苦労様。では、遠慮なくこの男は引き取っていって頂戴。
私は私でやることがあるから、どうぞお構いなく」
「そういうわけにはいかんな。理由は知らんが、君も不法侵入者だ。
教団に引き渡してもいいが、そこの男との関係も気になる。ゆっくりと本部で話を聞きたいものだ」

「ガーディアンズに行くわけにはいかないわね。叩くと色々埃の出る身体なもので」
「てめえっ、ごちゃごちゃ言うと、力づくで連れてくぞ」

3人とも、私の正体には気付いていない様子だった。
それも当然。あの時とは全く装いが違うのだから。

さて、この3人をどうするべきか。
恨みに似た感情が、ないでもない。
私を今の境遇に至らせた一因でもある彼らに復讐し、多少なりとも気を晴らすという手もあった。

だが、彼らもガーディアンズだ。
この先、彼らがガーディアンズの本分に目覚める日が来ないとも限らない。
少なくとも私よりは、やり直しはぐっと容易なはずだった。

ガーディアンズを裏切ったことに対する、詫びの気持ちもあれば。
どこかに、自分が何かを成したという足跡を残したいという願望もあったのかも知れない。
私にできる、果てしない償いの一環として。
私は彼らに灸をすえ、真のガーディアンズとして成長する可能性を残してやることにした…。
257EPX作者:2008/04/25(金) 23:17:41.83 ID:IPF+0sgI
以上、幕間でした。

確かに、せっかくの力作がすぐに他の方の作品に流されてしまうと、
寂しさを感じるというのはあるかも知れません。
配慮が足りませんでした。申し訳ありません。

ともあれ、執筆中のものが完成次第、第3部完結編を投下させていただく予定です。
長編に不快を示す方がいらっしゃることは承知しましたが、
何卒完結まではご容赦いただきけたらと思います。
258名無しオンライン:2008/04/26(土) 01:29:57.22 ID:ivWzbCpc
ここでお聞きしますが、今防具特化パシリ作るのなら効率のいい育て方って何でしょうか?

ご教授お願いします。
259名無しオンライン:2008/04/26(土) 08:13:28.26 ID:ClQj9Mf5
>257
続きを期待しておりますぞ!

>258
メルトンにオメガアシッド大量持ち込みして防具パラメータ上昇アイテムと交換
もしくは☆が多く値段が安い服・パーツを買って食べさせる

まぁ初心者スレに行きなされ
優しい兄貴達が手取り足取り腰取り教えてくれるよ
260名無しオンライン:2008/04/26(土) 09:44:05.97 ID:2rd+AWD5
>>259
がビス男かつポコスレ民なのが解った
261名無しオンライン:2008/04/26(土) 11:45:33.99 ID:juyxuH9+
>>258
キャラ作る→全裸に剥く→共有ボックスに身包みを入れる→キャラ作る→全裸に剥く→共有ボックスに身包みをを入れる→キャラ作る・・・
共有ボックスがいっぱいになったら一気に食わせる
262名無しオンライン:2008/04/26(土) 15:59:23.69 ID:Wx7DYsON
>>258
それなりに資金があるなら☆10の安い靴が半額になってるからそれがお奨め。
お金が無くてはぎ取りもしたくなかったらルームグッズショップでダン・ボウルだな。
263名無しオンライン:2008/04/26(土) 18:17:03.62 ID:ivWzbCpc
>>259-262
レスありがとうです。資金はそれなりにありますので
今から服屋さんに買い出しに行ってきます!
264名無しオンライン:2008/04/27(日) 03:45:00.26 ID:IK8YIWvA
礼はSSで頼むぜ
265継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)1:2008/04/27(日) 16:08:45.79 ID:M6jhRN+s
カーボン製の鋭い爪が風を切り、わたくしの頭をかすめます。
髪が数本切れて空を舞うのがちょっと面白いとか感じている場合ではありません。まだ直接当てられてはいませんが、そのうち髪がショートカットになってしまいます。
倒すべき目標のネイ・ファーストを攻撃すれば関係ないネイさんが傷つく。わたくしは完全に攻めあぐねていました。
「おまえたち人間はいつもそうだ!少しでも違えばおそれを抱き、自分より優れていれば妬み、堕落の中に安寧を見いだす醜い怪物だ!
この社会は何もしていない私を色眼鏡で見て排除したりだまして利用するばかり、弱者になんて少しも優しくない偽りの楽園なのさ!何が騎士道だ、この偽善者!」
人間でなくパシリだというつっこみは話がややこしくなりそうなので放っておいて、方法がないときは逃げて隠れるのがセオリーです。
素早い動きを逆手にとって足を払うと、ネイ・ファーストはたやすく転倒し、その間にネイさんをオパオパさんに引っ張ってもらって、わたくしたちは入り組んだ通路の陰に隠れました。しかし…
「隠れたって無駄さ!ほーら、大事なネイが傷つくよ!アハハハ!」
「痛あっ!」
ネイさんの胸に突然数本の傷が浮かび上がり、血が噴き出しました。ネイ・ファーストは自分の胸を爪で抉ったのです。
たとえ自分が苦しんでも憎い相手を痛めつけたいという純粋な悪意など、初めての経験です。わたくしは得体の知れない恐怖を感じました。
何か、何かないんですか!
今の悲鳴で場所はばれてしまったはずです。
錯乱気味にナノトランサーに使えるものがないかあさっていると、ものすごく古めかしいビジフォンが入っていました。ステージ2の装備はルビーバレットだけではなかったのですね。
『風のシルカ参上』と落書きが書いてありますが、廃品ではなさそうです…すがるような思いで通信してみましたところ。
ぶっ。ぶーん。低い音をたてて画面に映し出されたのは…
「ひゃあああ!?」
わあああ!?って、なんですか、いつぞやのおみくじ巫女さんじゃないですか。驚かせないでくださいよ…
「あ、あなたはあのときの…何で星霊への祈りの思念に割り込んでくるんですか!」
それはこっちが聞きたいのですが。何ですか、これもしかして電波ジャックですか?やっぱりグラール教団って電波集だ…あ、いえ、なんでもありません。
266継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)2:2008/04/27(日) 16:10:59.72 ID:M6jhRN+s
わたくしは手短に巫女さんに事情を説明しました。
「なるほど。似たような事例はグラールにもあります。本当はトップシークレットなんですがあなたは知りましたよね…
今の幻視の巫女クユウ・ミクナ(カレン・エラ)とその双子の妹である前の幻視の巫女ミレイ・ミクナのつながりです」
そ、そういえばそんなこと言ってましたね。忘れてましたが。
「あれは二人が双子だからというのもありますが、二人の父親ドウギ・ミクナが星霊紋という禁術を用いてなしたことだったんです」
それは知ってますけど、だいぶ違うような。結局なんだかよくわからないままじゃないですか…
「落ち着いて考えてみてくださいよ。これだけ力のある幻視の巫女姉妹でさえ互いのことを知らないままだったんですよ?
全く同じように傷つくなんて、双子の巫女で、禁術を使ってでさえ起こらないことなんです」
あ…ということは、ネイさんとファーストは、本当に同一人物なのですか!?でも、そんなことが…
わたくしのここでの目標はネイ・ファーストを倒すこと。ミッション情報で確認しても変わりありません。
二人が同一人物となれば解決自体はさほど難しくはないはずです…ネイさんを死なせても、理屈としてはネイ・ファーストを倒していることになるのですから。
でも、それでは倫理的に問題があります。
難しい顔をして考え込みだしたわたくしを見て、巫女さんは提言してくれました。
「そういったことにはグラールの科学で何でも説明をつけようとする私たちよりももっと詳しい人に任せましょう。これも本当は門外不出のものなんですが…あなたには恩がありますし、今からそちらに転送します」
非科学的なのもどうかとは思いますが、教団自体そうなのでとりあえず黙っておくこととして。
しかし、詳しい?いったい誰のことなんですか、それは。
「グラール教団が封印している、独立後のニューデイズ文化の基礎になったデータ、外宇宙から流れてきた『ニホン』の記録。
その中でも星霊紋の元になった術の使い手の記録です。今持っているそれは魂を操る神銃、ルビーバレットですね?その銃にセットして撃ち出してみてください。呼び出すことができるはずです」
星霊紋…聞こえはいいですが、それはある種の呪いです。すごくいやな予感がするんですが…でも、やらなければ解決できそうにないですね。コールッ!
雰囲気を出すために意味のない言葉を叫びながらデータを撃ち出すと、地面にニューデイズ文字のような模様が浮かび上がり、その中に人影が見えました。
267継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)3:2008/04/27(日) 16:13:22.02 ID:M6jhRN+s
フラクソジャケットとカブガラハカマ、レギュラースイムサンダルのようでいて装飾も何もない地味な服一式に、乱暴に切った黒い髪。一目で昔の人というのがわかりました。
「何だ、ここは…欧羅巴の召喚魔術か?いや、違うか…あまりにも不安定だ」
あ、あなたが星霊紋を使えたという…いったい何者ですか?
「陰陽師だ。陳腐な召喚で不本意ではあるが仕方あるまい、手を貸してやる」
眉間のしわを隠そうともせず、オンミョージと名乗ったその方は進み出ました。ネイ・ファーストは新手が出たとみるとすぐさま爪で連撃を繰り出しましたが、
オンミョージさんは貫かれると紙切れになり、またオンミョージさん自身はネイ・ファーストの背後から現れました。
「悪いが少しばかり問答につきあってもらう。事情が把握できておらんのでな…お前は知性を見て取れるにもかかわらず、己を見るなり襲いかかってきた。なぜだ?」
「おまえが、人間やそのネイに味方するからさ!」
「人間が憎いということか」
「そうだ!私は生まれてからずっと、あの忌々しい人間どもに迫害されてきた。どこにも私の居場所なんてなかったんだ!私が正しいなどとは言わない…でも、私を虐げた人間は許さない。
私が生きるためにバイオモンスターを使って人間を殺すのさ!そしてそのネイも人間の味方、人間に味方する者はみんな私の敵だ!」
狂気じみた、幸福への渇望。熱にうかされるような形相は、ネイ・ファーストがこれまで受けてきた迫害を物語るに十分すぎるほどでした。
「壊してやる、この腐った人間社会の何もかも!そうして私は初めて安らぎを得ることができるんだ!」
「下種め…もう語ることはない。滅びろ」
オンミョージさんの声が低く冷たくなり、殺気がみなぎってきました。
腕組みをほどき、見るだけで殺せそうな視線を向けます。ネイ・ファーストもこれにはたじろぎました。
「妖怪あやかしの類は己の専門分野でな。戦争よりは楽でいい…明治の世に廃されたこの陰陽道を今ひとたび見せてやるぞ、妖」
「ばけものとか言うなーッ!」
「五行相克、木気を以て土気を克す…」
オンミョージさんが手にした金属の杖で床を突き、主の口からも聞いたことのない詠唱がなされると、床をつき破って蔓草が生え、ネイ・ファーストの体にからみつきました。
そのまま硬くなった蔓草は、とがった先端をネイ・ファーストの体に突き刺していきます。
絞り出すような悲鳴と、赤い血が流れ落ちました。植物をふりほどいて向かってくるのを見ても、オンミョージさんは眉一つ動かしませんでした。
268継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)4:2008/04/27(日) 16:15:15.34 ID:M6jhRN+s
飛び道具としてだけではなく身代わり、フェイントとさまざまな用途に用いているシキカミに似た紙人形、呪いを放つ言葉。
オンミョージさんは見たこともない技術でネイ・ファーストを圧倒しています。どっちが悪役かわからないくらいです。
たしかに強いんですが…でも、これはやりすぎです!わたくしが精一杯レスタを連発しても、同時に傷つくネイさんへの回復がおいつきません!
やめるよう声をはりあげましたが、オンミョージさんは黙って冷たい一瞥をくれただけでした。
人の話を聞いてください!かくかくしかじかで、このままではネイさんが死んでしまうんです!
「見ればわかる。だが関係ない話だ。一人犠牲になって皆が助かるのが最善だというのなら、そうするべきではないのか?ましてこいつは」
馬鹿言わないでください!
怒りにまかせて、わたくしはオンミョージさんの言葉を遮るように叫んでいました。
わたくしを見るオンミョージさんの目が細められ、表情が消えました。
「玄人に求められるのは任務の遂行だ。情がなんだというのだ?結果が出せなければ意味がない…わからんのか、己はお前の迷いを断つことを手伝ってやると言ったのだ」
何ですって…
悪い予感は的中したようです。オンミョージさんはネイ・ファーストを倒すことを最優先し、ネイさんが死ぬことを当然としているのです。
手足をあらぬ方向にねじ曲げられてネイ・ファーストは倒れ、オンミョージさんは刀を抜き放ってその首に突きつけました。
269継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)5:2008/04/27(日) 16:16:25.24 ID:M6jhRN+s
「この者は妖を操り人を苦しめる大罪人だ。過去に虐げられていたのなら、今人を虐げていいというのか?
否!法は感情のためにあるものではない、秩序を守るためにあるのだ。罪にはしかるべき報いを与えねばならん。それが社会というものだ」
ま、また裁判のようなことを。だからといって何もしていない人を巻き込んでいいわけがないじゃないですか!
「無関係ではない。こいつらは同一人物だ。このネイとはネイ・ファーストに残された良心が形をなした妖だろう」
そ、そうだったんですか…でも、だったらなおさらまずいですよ!良心が死んじゃうなんて。
「咎のあるをばなおも憐れめ、か。甘い、甘すぎる。同情の余地が残っていれば罰しないなど、罪人を野放しにすると同義だ。お前は次の犠牲者が出ることを考えていないだけだ」
そのとき、ネイ・ファーストが急に起きあがり、オンミョージさんを背後から爪で貫こうとしました。しかし。
「…!」
わたくしが割り込むまでもなく、ネイ・ファーストは全身を見えない糸に縛られたように苦悶の表情を浮かべながら硬直し、再び地面をなめることになりました。
オンミョージさんは自分を狙えばこうなるように呪いをかけていたのでしょう。もちろんネイさんも同様に苦しんでいますが…
「このとおりだ。罪人も妖も動物と同じ、罰して苦痛や死を与えてやらねば何度でも同じことを繰り返す。お前の守るべきものは何だ?自己満足で武士道を語るな」
う…それは…
「人間の歴史は戦いの歴史。人は生きるためいくつもの犠牲のうえで自然とその権現たる神や妖怪を克し歩んできた。
己の知る限りでは、反動で他に被害を及ぼす禁術以外の方法でこいつらを分けることはできん。それゆえ犠牲を払ってでも滅ぼすべきだというのだ。さあ、それを覆す考えはあるのか!」
なんだかすごく悲しくなってきました。オンミョージさんの言うことは的確で、ただ情のためだけにネイさんを死なせないようにしているわたくしでは言い返せません。
わたくしの騎士道は、ただのわがままなのでしょうか?
わたくしは、何のために人を守るのでしょう?認識できる範囲で自分が満足するためだけじゃないんでしょうか?
オンミョージさんは他に被害が出るからと禁術を使うのをやめています。この場だけではなく、もっと広い視点で考えているのです。
わたくしはそこまでは考えられません。もしかしたらわたくしのしたことのために知らないところで泣く人がいるかもしれないのです。それは本当に正しいことなのでしょうか…?
270継承 II 君、死にたもうことなかれ(中編)6:2008/04/27(日) 16:17:16.31 ID:M6jhRN+s
顔を伏せて棒立ちになっていると、すっかりそこにいることを忘れかけていたオパオパさんが心配そうにわたくしの服を引っ張りました。
オパオパさんも昔、邪悪な生物に操られた父親を救ったのだと聞いています。その澄んだ目…もといガラス板様の光センサーを見て、それで決心がつきました。
わたくしは顔をあげ、自分よりずっと背の高いオンミョージさんの顔を真正面から見据えました。
やります。勝算のあるなしなんて関係ありません。
任務は成功させる、ネイさんは守る。たとえこれが自己満足にすぎないのだとしても、何もしなければどのみち解決なんてしません。
目の前のことをやりもせずに諦めるなんて、納得できるはずないです!
「ああ、やってみろ!お前が方法を考え出せなければ己がやつらを滅して解決してやる」
そう言いながら、オンミョージさんは刀をおさめてとどめを刺すのをやめました。
このとき初めてわたくしは彼の気持ちに気づきました。
本当は殺していいとは思っていない、でもそれを押し殺して背中で泣きながら、守るべきもののために今までいくつもの犠牲を払ってきたのだと。
どうにもならないことに対して、不条理でも最善の方法をとらなければならないというプロであるがゆえの悲哀。
確立されていない方法でも希望があるのなら今一度賭けてみたいと、そう思っておられるからわたくしに任せたのでしょう。
期待は、裏切りませんよ!


-続く-
271名無しオンライン:2008/04/27(日) 16:27:17.71 ID:M6jhRN+s
続き投下です。
えらく時間がかかっていますが、仕事が忙しかっただけでなく、実はけっこう悩んで大幅に書きなおしたからというのもありまして。
解説の中で理由を書いてます。

「地球人」
ファンタシースター2の事実上のラスボス。実体化したダークファルスを封印してしまったほか、高度な文明をアルゴルにもたらし、
環境管理コンピュータ・マザーブレインを作って砂漠の惑星であったモタビアを緑化させるなど意外にすごいことをやっている。
同時に彼らがもたらしたのは、楽な生活ができるようになった(この時代、モタビアでは働かなくても生きていける)ことによる人心の堕落であった。
そうやってアルゴルの人々を腐敗させたのは、ここでの地球人は自らの心を律することができなかったために地球をつぶしてしまった人々であり、
たどりついたアルゴルで質素ながらも幸せに暮らす人々に嫉妬して征服に乗り出したから。
なので、アルゴルを守ろうとするユーシスたちと最後に戦うことになる。

ここで出したオリジナルの陰陽師も地球人ですが、時代設定がそれよりもだいぶ前。
アルゴルへ進出した地球人との直接の接点はありませんが、激動の時代に生きた、精神性がむしろユーシスたちに近い人として描いております。

本当はサクラ大戦の大神一郎を出したかったんですが、社会秩序を優先する冷たい人として描くのはあんまりなので急遽変更。
副題とこの時代の日本人であることなどはその名残で。
生きることが決して楽ではなかった時代にたくましく生きた人々、その精神の復権こそがファンタシースター2のメインテーマであると筆者は理解しております。

「ヒトガタ」
PSOの本星である惑星コーラルの文明にはどうも地球文明の影響が少なからず入り込んでいるようで、
陰陽道のヒトガタや日本刀(アギト)、グングニルやデュランダールといった名称のものが見受けられる。
どうやら地球文明はアルゴルだけでなくコーラルのほうにも出ていっていたようだ。

「ネイ・ファースト」
ネイのオリジナル。ファンタシースター2の中ボスの一人。プラントで偶然生まれたバイオモンスターと人間のハーフで、研究所から逃げ出した。
その後安住の地を探すが、人とは違う長くとがった耳などの特徴は迫害にさらされる要因となり、やがて彼女は激しく人間を憎むようになっていく。
そして自分を生み出した研究施設に戻り、バイオモンスターを大量生産して人間に復讐を始めた。

本当は愛してほしいのに誰からも愛されないこと、それがネイ・ファーストを自暴自棄にさせ、破滅的思考へと進ませたのであろう。
その行為に耐えられなくなった彼女の良心が分裂して生まれたのが、ユーシスに拾われたほうのネイなのである。
異邦人を警戒するというあまりにも自然な人の業が生み出した悲劇、ネイ・ファーストはその被害者であったのだとも言える。
272名無しオンライン:2008/04/28(月) 01:46:42.20 ID:SfXTgdkB
>>社会秩序を優先する冷たい人
ラチェット(劇場版)とかそんな感じだけどもうセガ関係なくなりそう。
大神隊長は次の機会を期待いたします。


273ワルキャスとワルパシリ:2008/04/28(月) 15:37:47.24 ID:9a7CNLeA
そして横合いから爆弾投下

それは変なパシリと変な主のお話。

「あー…おっぱい揉みたい…」
「いきなり何言い出すかなこのアホは…」

ワルキャスとワルパシリ〜たまにはコンナ日々・改〜

「モトゥブの暑さで脳みその回路が焼ききれたんじゃネェのか?」
「残念、俺はいたってノーマルだぞワルパシリ」

モトゥブ勤務についたワルキャス。
就任当初はイルミナスや謎の組織との戦いで割りとシリでアスであったが、
あまりにも長いのと中の人の都合で追って別の機会に出そうと思う。

ワルキャスの故郷、グランブルファミリーの仕切る町、グランブルシティ。
現在、ワルキャスはそこのガーディアンズを引っ張り、新生ローグスとの橋渡しの一翼を担っていた。
ロボヘッドから、金髪ヤンキーな人顔にチェンジし、
テンガロンハットを水晶髑髏に被せる様はまさにカウボーイ。
性格の悪い411こと、ワルパシリからキンキンに冷えたハッピージュース受け取って漏らしたセリフが。

「あー…おっぱい揉みたい…」

まるで呼吸するかのようにエロセリフを吐く様は、相変わらずのエロキャストであった。
酒好きが高じて自分の部屋にBARをつくるまでになったワルキャスのマイルーム。
今日もお疲れとばかりに、ハッピージュースを空けながらワルキャスのエロ講義がはじまった。

「だってそうだろ! 最近のガーディアンズはイヤラシ過ぎる!」
「そりゃお前は元からイヤラシイ、つか変態だろう」
「…まあ、そりゃあな」
「…(だめだこいつ…はやく去勢しないと…)」
「まあ…これを見たまえワルパシリ君」

ワルパシリが微かに青筋を立てながらも、ワルキャスはどこから出したのか映像端末を引っ張り出した。
そこに浮かぶのはつい先日あった雑誌機関協賛のイルミナス電撃作戦用アミューズメントミッション、
通称”DMC”の場面…決して卑猥な言葉を1秒間に10回以上発言するデスメタルバンドではない。
274名無しオンライン:2008/04/28(月) 15:44:28.56 ID:9a7CNLeA
「なんだ? お前の戦闘記録か?」
「見てみろ、このPT面子を!」
「うわっ! な、なんだよこれ…うわぁ…」

それは最近流行のミクミコやボルワイヤルを着た女性ガーディアンズの面々。
弓を打てばたゆんっ、剣を振るえばポヨンッ…みたいな効果音が聞こえそうな映像ばかり。
思わずワルパシリも赤面して映像を眺めてしまった。

「な、ケシカランだろう?」
「ぅ…ああ、まあな」
「まったく、風紀の乱れは心の乱れともいうからな…嘆かわしい事だぁ!」

酒が入ってるのか感情が高ぶってるのか、拳を震わせながら力説する変態キャスト。
そして、ワルパシリをがばぁと抱き寄せ、膝上にちょんとのっけてしまう。
不意の抱き寄せに反撃できず、ワルパシリはもがくのみ。

「って…ぎゃわあああっ! ななあなななななああああ!? なにしやがるっ!」
「でだ、ワルパシリ君、本題に入ろう…デェイ!」

ワルキャスは背中から取り出したパッケージをBARのテーブルにドンと乗っけた。
それはPMの拡張バージョンアップツール、箱には水着姿の可愛らしいウサ耳パシリの姿が。

「PM…461…? あ、新型デバイスか!」
「正解ッ!」
「正解ッ…じゃねぇー! はっ…はなせ、ばかっ!」

急に抱き寄せられ、顔を真っ赤にしながら抗議するワルパシリであったが、心なしか力が弱いのは気のせいか。
275名無しオンライン:2008/04/28(月) 15:48:18.94 ID:9a7CNLeA
フフフフと笑うワルキャスはそのまま彼女を丸め込めようと耳元で誘惑させる。

「だってよー…こう、いつまでもメイド服ってのもマンネリだよなぁ〜…
 たまにはワルパシリにも気分転換で水着でも〜と、おもった俺のこころやさしいいい〜心遣いって奴よ」
「それとこれとはかんけーねぇ! つか、急に抱きしめんなっ…反則だっ反則っ! むきいいいい!」
「フハハハハハハハハ!」

腕の中でじたばたするものの、拘束を解くには力不足。
しかし、その手足が映像端末にあたり、コロコロと床に落ち、音声ボリュームが最大になる。

”もおーっ…ワルキャスさんさっきからじろじろみないでよーっ♪”
”いやーっはっはっは、君があまりにも綺麗だから見惚れちゃったよー♪”
”まったく、戦闘中だというのに…そ、そんなに…キワドい…か…? 確かに…胸や臀部が強調されて…”
”フフフフッ…そういったクールで可愛い所がお前のいい所だぜ?”
”フッ…フンッ! ほ、ほめたつもりだろうが…そ、そんな手は…き、きかんぞ…もぅ”

その声が耳に押し込まれた瞬間、ワルキャスは凍結状態。
ワルパシリは黙って腕をすり抜けると、デスダンサーを抜き放った。
その目線には殺意が篭もり、狙いは眼前のワルキャスに向けられている。

「…そういえば、ソレ使うのに戦闘値いるよな? ちょっと稼がせてもらうわ、ゴシュジンサマ!」
「ひいいいいいいっ…お手柔らかに…」
「断るッ! シネエエエエエエエ!」
「デスヨネエエエエエエエッ!」

今宵も狩られる変態が一人…ワルパシリが水着姿になるのはまだ遠い。
それは変なパシリと変な主のお話。

以上でし。
ほんとに戦闘値がたりない…上げ方が解らない俺がいる。
水着着せたい…(´・ω・`)
276名無しオンライン:2008/04/28(月) 23:54:39.66 ID:BRVf2JZ8
ワル二人キター!

戦闘値はクリアランクで獲得できますよ。
難易度に関係なく、Sランクでクリアすれば1/4ほど増えるので
単純作業に絶えられるなら通路を駆け抜けるとか。


そして、根性で1レスにまとめたSS投下
277名無しオンライン:2008/04/28(月) 23:59:10.29 ID:BRVf2JZ8
男「430さん、これにリフォームしてもいいですか?」

 つ[バイオ・パニック]

430「黄色い救急車でもお呼びしましょうか、ご主人さま?」
男「ちょwwwテラ都市伝説wwwwwww」
430「そんな部屋に住みたがる人が健常者だとは思えません」
男「いや、そうじゃなくて、フラワー飾って『さっき水を止めました、もうじきみんな枯れるでしょう』とか
  豆料理のときに『味はともかく、長靴いっぱい食べたいよ』とか言ってみたくて…」
430「そんな一時のネタのために、あんなお部屋にするなんていやです!
   大体、誰がこの部屋を掃除して差し上げてると思っているんですか!
   ご主人さまは私に未開のジャングルを開拓させるおつもりなのですか!?」
男「(´・ω・`)」
430「そ、そんな顔したって、ダメなものはダメです!」
男「(´;ω;`)」
430「…はー、分かりましたよ、もう…。一週間、一週間だけですよ!」
男「(`・ω・´)」
430「それじゃあリフォームしますから、お外で時間をつぶしててください。…はぁ」

 * * *

男「そろそろ終わったかな〜、ら〜ん らんらら らんら…あ、あれ?」
男の部屋は彼が期待していた腐海の中ではなく、ごく普通の飾り付けがされた洋室になっていた。
男「あの〜430さん、やっぱりいやだった?」
430「違うんです! あのチケットを使ったのに、こうなっちゃって…」
男「中身が摩り替わってたのかなぁ…。しょうがない、サポートに電話してみるよ」

男「さて、どう伝えたものか――っ!?」
窓に映っていたものに気づき、男は驚愕した。ギョロリとした目つきの、人間?らしき姿。
慌てて飛び退きもう一度窓を見るが、そのとき既にそいつの姿はもうなかった。
男「き、気のせい…?」
430「キャアアアァァァァーーーーッ!!」
男「! どうした430!」
慌てて隣の部屋に飛び込むと、大勢のカラスが430の全身を啄んでいた。
男「うわっ、なんだこいつら! 430から離れろ!」
430「ふぇぇぇ、ごしゅじんさまぁ!」
男「どうなってるんだ一体…!?」

 バリィィン!

間髪入れず、巨大な犬が窓を突き破って部屋に侵入してきた。
全身真っ黒で目は血走り、大きく裂けた腹部から内臓が覗いている――
430「いやああっ、何これ!? なにこれえっ!!」
男「い、430さん、応戦して! 構わないから撃ちまくって!」
430「やだ、逃げる! 怖いのやだあっ!」
男「くっ、しょうがない!」
恐慌状態に陥った430を抱えて男は駆ける。まずはこの場所から逃げ出さなくては!
そう思い、なんとかマイルームの入り口にたどり着く。あわててロックを解除したその先には――

 フシューッ フシューッ !!

異常に筋肉の発達した、大男らしき怪物が…

男&430「…………きゅーっ」 バタン


 リフォームチケットでマイルームを模様替え!
 「ホラー&バイオレンス」
 四六時中、ゾンビが襲いくる恐怖の内装です。
 バイオ・パニック   Maid in CAPCOM (c)
278名無しオンライン:2008/04/29(火) 01:07:13.18 ID:tj3GkMqV
ちょwバイオ違いww
こんな部屋でくつろげるヒトはさすがにいないだろう…と。

その部屋の作成元の特産品でもある、某殺意の波動の使い手なら或いは?
279名無しオンライン:2008/04/29(火) 02:50:32.83 ID:bPlxq9Yo
>>277
男はジブリファンなのかw
てか、リフォームってレベルじゃねーぞ!

>>278
そして「殺意の波動に目覚めた430」とかになるんですね、わかります!
280名無しオンライン:2008/04/29(火) 23:08:08.41 ID:Mxm8dC+S
書いてたらスゲー長くなっちまった
短編が流行る中、またしても空気を読まずに長文乙な俺サーセン
2811/12:2008/04/29(火) 23:09:09.61 ID:Mxm8dC+S
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。
合成ボーナス期間に入り、私達は足りない素材を補うべくラフォン野営基地に来ていました。
今回の目標は、パルム超高級木材パル・ウォルナの伐採です。

主人「フゥ、日頃通ってるのに木材が足りんとはな」
412 「ご主人様…カン・ウーを1日で10本以上も作れば無理もないですよ」
主人「38の壁を越えるには仕方のない事だ」
412 「これだけカン・ウーばかり作るのはご主人様だけだと…あれ?」

私はふと、不自然な感じに気付きました。
振り向くとそこにはいつもの人口森林が広がっていますが、私には分かりました。
いつもと違う、何か異質の存在がそこにいる事を。

主人「どうした、何かあるのか?」
412 「…いえ、分からないんですが変な感じがしまして」
主人「…どれどれ?」

ご主人様が大きな手で草木を押し退けると、そこには驚くべき光景がありました。

主人「こ、これは…」

私も手を口に当てて、その光景を疑いました。
全身が傷付き、服も所々が破けてしまっている人が倒れていたからです。
しかし、少し見つめればそれはすぐに人ではないと分かりました。
何故なら…その「ヒトガタ」は私達パートナーマシナリーの耳をしていたからです。
2822/12:2008/04/29(火) 23:09:49.61 ID:Mxm8dC+S
主人「…これは、ニャックルか」

ニャックルとは、大流行のマシナリーであるGH-422の通称です。
マシナリーの中でも最高基準の攻撃力を持ち、ボッガ・ズッバの使い手でもあるので
テクターは勿論、前衛職にさえ高い人気を誇る汎用型マシナリーです。
以前はGH-420シリーズは総じて癖のあるパラメータになるので通好みでしたが
今ではEXデバイスがあるので、打撃合成特化型GH-422も存在しています。

412 「どうしたんでしょう…こんな所で行き倒れているなんて」
主人「おーい、生きてるか?」

ご主人様がついついと頬を押しますが、422さんは起きる気配がありません。

412 「ご主人様、私がスキャニングしてみましょうか?」
主人「そうだな、そうしてくれ」

私は意味もなく眼鏡をちきっと直して、スキャンモードに入りました。
その結果…ジェネレーターやリアクターに異常はなく、全てが正常値でした。
つまり、単に疲れて寝ているだけと言う事です。

412 「うーん…異常はないみたいなので多分その内起きるんじゃないですか?」
主人「正に猫だな、しかしこのままはいサヨウナラというわけにもいかん格好だな」
412 「確かに…このまま元気にオハヨウと言う感じではなさそうです」
主人「412」
412 「はい、何でしょうか?」

主人「今は夕方だ」
2833/12:2008/04/29(火) 23:10:34.55 ID:Mxm8dC+S
主人「仕方ないから部屋に運ぶか…」

そういうと、ご主人様は422さんについてる葉っぱ等を手で払い除けて
ひょいっと抱き上げ…抱き上げ? え、ちょ、ちょっと…それは、それはぁ!?

412 「ご、ご主人様ぁ!」
主人「何だ、大声出して」
412 「よ、よりによって何でお姫様抱っこなんですかぁ!?」
主人「米袋の如く担いだら失礼だろ」
412 「よりによって米袋に例えるんですか…って、そうじゃなくて!
    お、おんぶとか他にも色々と方法があるじゃないですかぁ!」
主人「この体格差でおんぶしたらズリ落ちて返って危ないだろうが」
412 「…そ、それならナノトランサーに入れるとか」
主人「運んでる最中に起きられたら俺の背中が危険な事になるから却下だ」
412 「う、うぅ〜…」
主人「で、他に反論は?」
412 「ありません…お姫様抱っこされていいのは私だけなのにぃ…ブツブツ」

羨ましい光景を、私はただただ嫉妬しながら見ているしかありませんでした。
そして、ご主人様がいざ運ぼうとした矢先…。

*がすがすがすがす!*

422 「しゅわーっち!!」
主人「あいで! 寝ぼけながらダンガして来やがった!」
412 「ご、ご主人様…やっぱりトランサーに入れた方が…」
主人「その方が非常に嫌な予感がする!
    くっそ、何発かクリティカルしやがった…」
2844/12:2008/04/29(火) 23:11:14.36 ID:Mxm8dC+S
-部屋-

こうして私達は、行き倒れた422さんを部屋のベッドまで運びました。
運び終えてから2時間、422さんは未だに目を覚ます気配がありません。

412 「けど、よく寝てますねー…」
主人「こうなるまで、ろくに眠っていなかったのかもしれないな」
412 「でもとっさに連れて来ちゃいましたけど、大丈夫でしょうか?
    422さんのマスターさんが探していたりしないでしょうか…?」
主人「起きてから連絡とってもらえば大丈夫だろう?」
412 「…そっか、そうでしたね」

*がばっ!*

422 「………?」
主人「…お、起きたか?」
412 「あ、良かったぁ。目を覚ましたんですねー?」
422 「………」

突然起き上がった422さんは、ご主人様を見るなり…。

422 「きゃあああああああああああ!!!!
    な、何この男!? 私をこんな所に連れ込んで何のつもり!?
    私があまりに可愛過ぎるからって何を企んでるのよーっ!!」

物凄い勢いで叫びまくりました…。

主人「うわ、よりによって説明が面倒臭い起き方しやがった…。
    しかもツッコミ所満載だし、ここは同姓の412に説得を任せる!」
412 「ええ〜っ!? 机の物をこんなに投げられてる状況で説得なんて…」
主人「健闘を祈る。早くしないとミ・カンを投げられるぞ!」
2855/12:2008/04/29(火) 23:11:57.49 ID:Mxm8dC+S
422 「いやー、助けてくれた人とは知らずすいませんでしたー。
    そうでしたそうでした、私ったら疲れてつい寝ちゃったんですよねー」

何とか説得を終えた422さんは、ケラケラと笑いながらミ・カンを頬張ってました。
その向かい側には、ご主人様とシャワーを浴び終えたばかりの私が座ってます。
はい、結局間に合わずミ・カンを1つ頭に投げつけられました…。

412 「分かってくれて何よりです、はぁ…」
主人「さて、聞きたい事は山程あるぞ。何故あんな所で寝てたんだ?」
422 「え、私の好物ですか? 420シリーズの好物と言えばマタタビでしょ!
    けど私は違うんですよねー、やっぱりこの季節はイシダイがグーッド!」
主人「お前の好物なんてどうでもいいわ!
    ネルとコウブツじゃ字数も1文字も合ってないだろうが!」
422 「イシダイの刻みを貼り付けたグッレ・ミサッルなんかは格別なんですよね!
    形が魚に何か似てるし、食べ応えも十分だから一度お試しあれ!」
主人「聞いてないなコイツ!」
412 「あ、あの〜…422さん? マスターはどうしたんですか?」

私がご主人様の一言を出すと、それまでマシンガントークだった422さんがぴたりと止まりました。
顔を暗くして俯く反応から、あまりいい質問ではなかったようです。

422 「………」
412 「はぐれて1人でいるなら、きっと心配してますよ?
    連絡を取って、お迎えに来てもらいましょう?」
422 「…来やしないわよ、あんな奴!」
412 「そんな事ないですよ、422さんの事が大事でしょうからきっと…」
422 「大事じゃない私なんかの為に来る訳ないじゃない!
    どうせあんな奴、私よりもローグスや英雄様が大事なのよ!」
412 「ローグス? 英雄? …そ、それだけじゃどういう意味かさっぱり分かりませんよ」
主人「…成る程な、大体読めたぞ」
2866/12:2008/04/29(火) 23:12:57.08 ID:Mxm8dC+S
主人「お前さんのマスター、タイラーとイーサンにお熱なわけだな?」
422 「………」
412 「あれ、ドン・タイラーなら分かりますけどどうしてイーサンまで…」
主人「ここ最近の事だから俺もよく知らんが、イーサンが原隊復帰したそうだ。
    それで、成績優秀なガーディアンにだけ協力要請を出す事が出来るようになったわけだ」
412 「…そうだったんですか。犯罪者を処罰なしで復帰させるなんて…」
主人「そこにツッコむのか。実に正論だが」

その後、ご主人様は詳しく説明してくれました。
イーサン・ウェーバーはスピンングストライク、グラビティブレイク、アブソリュートダンスと
一撃が強力なPAを駆使する上に、非常に効果の高いレスタの使い手でもあるらしく
それまで人気のあったブルース・ボイドさんを押し退ける人気が集まりつつあるそうです。
あれだけ自分勝手さが理由で不人気だったのに、強くて使えると分かると
尻尾を振るガーディアンズの現金さは昔からちっとも変わってません。

主人「で、用済みになったお前さんは構われもしなくなったと」
422 「…はいそうですよ! 前は私だけが頼りとか言っちゃってたくせに
    今じゃ合成基板を渡されるだけで口1つ聞いてくれやしませんよ!
    合成も高属性じゃないと叩かれる毎日…だから私は逃げたんです!」
412 「叩くなんてそんな…酷い!」
主人「珍しい話でもないな。武器の属性値は結構重要だからな。
    中にはそれが原因で辞表を出したり、デバイスゼロに頼る奴もいるらしい。
    全財産を賭けるような合成、昔から成功するわけがないと分かってるのにな」
422 「貴方はいい環境に巡り会えてるかもしれないけど、PM全部がそうじゃないのよ…。
    私なんてまだいい方よ、中には知らぬ間に壊されてたりするのもいるんだから…!」

422さんは手を震わせながら、冷却水をうっすらと流していました。
きっと、こうなるまではご主人様に良くしてもらっていたのでしょう…。
一変した環境が信じられずに飛び出す気持ち、恵まれた私には分からないのかもしれません。
2877/12:2008/04/29(火) 23:13:45.02 ID:Mxm8dC+S
412 「で、でも…これからどうするんですか?」
422 「…さぁね、戻っても叩かれるだけの扱いが待ってるだけだろうし。
    本部に申請しても、記憶を飛ばされて丸っころになれるくらいだろうし。
    私はそんなのは嫌! 私が私でなくなるなんて絶対嫌よ!」
412 「だけど、このまま放浪するなんて…ご主人様…」
主人「何なら、最後にお前さんのマスターを試してみたらどうだ?」

突然のご主人様の提案に、422さんはそれまで俯いていた顔を上にあげました。

主人「本部でお前さんのマスターに、行き倒れになって保護されている事をアナウンスしてもらう。
    引き取りに来るか無視するかで、お前さんがどう思われているか分かるだろ」
422 「…無駄ですよ、そんなの。だってマスターはいつもGBRに…」
主人「やるだけやってみるのもいいんじゃないか?
    それまでは面倒見てやってもいいから、な?」
412 「そうですよ…どうせならハッキリさせちゃいましょう!
    もしかしたら、とっても心配してグラール全域を探し回ってるかも!?」
422 「…私の事を、心配して…?」
主人「最後はお前さん次第だけどな。戻りたいか、マスターの元に?」

422さんの目から、冷却水が今までより多く流れ始めました。
頬を伝い、ぽたぽたと置かれている茶碗のお茶の量を増やしながら…。

422 「…戻りたいに決まってるじゃないですか…あの頃みたいに。
    だってどんなに酷い扱いされても、マスターはあの人だけなんですから…!」
主人「決まりだな、早速明日申請するとしよう」
412 「さ、涙を拭きましょ? せっかくの可愛い顔が台無しですよー」

私は手持ちのハンカチをすっと差し出しました。
けど、422さんはハンカチではなく私に抱き付いて…。

422 「…ずび〜〜〜〜」
412 「わわわわわ、そ、それは私のお洋服〜!!」
2888/12:2008/04/29(火) 23:14:40.34 ID:Mxm8dC+S
こうして私達の少しの間だけの3人生活が始まりました。
422さんはそれまでまともな御飯を食べていなかったらしく、それは凄い食べっぷりでした。
おまけに寝相が凄い悪くて、私も何度かダンガされて結構いいのをもらってしまいました。
…早く終わるといいな、422さんの為にも、私の健康と食費の問題の為にも!

そうして3日が過ぎた頃、ご主人様の元に本部から連絡が入りました。
422さんのマスターさんが捜索願を出していて、これから引き取りに来ると。

主人「後1時間もしたら迎えに来るらしい」
422 「ほ…本当なんですか!? 本当にあいつ…来るんですか!?」
412 「良かったじゃないですか、422さん!
    やっぱり試してよかった、探してくれてたじゃないですか!」
422 「うん、うん…よかった…ありがとう…」
主人「泣くのはマスターが来てからにしな」

422さんは何とか涙を堪えて、迫る1時間後に備えて必死におめかしを始めました。
おめかしと言っても、普段と変わりないか寝癖がないかチェックする程度なんですけどね。
待つ事30分程度、普段私達以外が開ける事のないドアがノック音を奏でました。
入ってきたのはご主人様よりちょっと低い程度のビースト男性。

獣男「…見つけた、ようやく見つけた!」
422 「…ます、たー?」
獣男「…何処行ってやがった、探したんだぞ!」
422 「…ま、ますたぁ〜!!」

422さんは早速、顔をくちゃくちゃにしながら自分のマスターに抱きつきました。
マスターさんも422さんの頭を撫で回し、優しく抱き返していました。
…何だか、私まで冷却水が零れそうです。
2899/12:2008/04/29(火) 23:16:03.15 ID:Mxm8dC+S
獣男「…もう何処にも行かせないぜ!」
422 「ますたー…ごめんなさい、ごめんなさい…。
    もうどこにもいきません、ずっといっ…」
獣男「俺のクレアダブルス基板〜!!」

3人 「…へ?」

そう言うや否や、マスターさんは突然怒りに満ちた表情で422さんを叩いてしまいました。
私達は状況が良く飲み込めず、422さんを庇えず…くれあだぶるすきばん?
一体この人は何を言ってるんだろう? 422さんは422さんで、基板なんかじゃ…。

獣男「てめぇこの野郎! 俺がどれだけ苦労してその基板拾ったと思ってんだ!?
    ようやく材料が揃って合成しようとしたその日にいなくなりやがって、アァ!?」
422 「きゃうっ…!」

マスターさんは422の胸倉を掴み、そのまま上に持ち上げました。

獣男「いなくなるんだったら、合成終わってからにしやがれ!
    そうでなくても打撃100作るのはタリィんだ、分かってんのかこの糞が!」
422 「あ…あぐ…っ」
412 「ちょ、ちょっと! あんまりじゃないですか!
    422さんは貴方に迎えに来てもらって、また仲良く過ごしたいと思ってたのに!」

私がいてもたってもいられず、噛み付くとマスターさんはギロリとこちらを睨みました。

獣男「何お前? うっぜー事言いやがんな、このデコ助が?
    俺のクレアダブルス基板を見つけてくれた事には感謝するんだけどよー?
    人んとこのパシリの扱い方に文句付けねーでくれる?」
412 「…デ、デコ助!? そ、それはともかく、貴方は422さんを何だと思ってるんですか!?
    さっきから基板基板って、422さんはパートナーであって基板なんかじゃないです!」
獣男「あー、超ウゼーしお前。 コイツは俺のパシリだ、俺の為に動いてトーゼンだっつの。
    人権とかそんなのは存在しねーんだよ、分かるー?」
29010/12:2008/04/29(火) 23:17:05.83 ID:Mxm8dC+S
412 「あ、貴方って人は…!」
主人「やめとけ」

勢いでレイピアを取り出そうとする私を、ご主人様は手を出して止めました。
マスターさんはまるでリュックサックを背負うかのように、胸倉を掴んだまま422さんを後ろにやりました。
もう422さんは、乱暴な扱いに耐え切れず気を失ってしまっていました。

獣男「んじゃそんなわけで、見つけてもらってあざーっす。
    お宅んとこのパシリも調教し直した方がいいんじゃねーのォ?」

私が我慢出来ず、ご主人様の手を押し退けてでも噛み付こうとした時でした。

主人「なぁ412、確かガーディアンズの仕事は護る事って言ってた奴いたよな」
412 「…え? は、はい、炎の絶対防衛線の時のWTさんがそう…」
主人「じゃあ、マシナリー護るのもガーディアンズの仕事だよな」
412 「…! は、はい! 勿論です!」
主人「じゃあ、たまには俺もガーディアンズらしい仕事をするか」

ご主人様は、トランサーからビル・デ・アクスを取り出すと、マスターさんに近寄っていきました。
基板を取り戻して上機嫌なマスターさんは、その気配に気付けなかったのでしょう…。

主人「…ふんっ!」

*ごぃぃぃぃ〜ん*

獣男「まっしぶっ!」

マスターさんは、ビル・デ・アクスの峰打ちを食らって大きくふっ飛びました。
手を放された422さんを片手で受け止め、廊下の壁に叩き付けられるマスターさんに向けて。

主人「そっくり返すぞ。人のPMの扱い方に文句付けないでくれる?」

その姿は、とっても格好良かったです…。
29111/12:2008/04/29(火) 23:17:54.76 ID:Mxm8dC+S
そして、422さんのマスターさんは懲罰房に行く事が決定されました。
ご主人様が、昔から良くしてくださるレオ教官に事の詳細を話した結果、
ガーディアンらしからぬ行動として、1ヶ月の懲罰房後、3ヶ月の謹慎処分となりました。
とはいえ、同僚を吹き飛ばしてしまったご主人様も1週間の謹慎処分となってしまいました…。
422さんの後の待遇については、あまりに酷い環境だったので本人に任せてもらえるそうです。

412 「…422さん」
422 「気にしないで、むしろ吹っ切れる事が出来たから。
    あんな救い様のない奴なら、こっちから捨ててやるっての!」

空元気を振り回す422さんは、必死に笑って窓の外を見つめてました。
手が微かに震えているのが、本当はとても悲しいんだと言う事を訴えてきます。
良かれと思ってやった事が辛い結果になり、ご主人様もただ黙り続けていました。

412 「…これから、どうするんですか?」
422 「それはもう決めてある。私、強化措置申請を出そうと思ってるんだ」

パートナーマシナリーの強化措置。
それは私達マシナリーが、キャストと同等の存在になる強化を受ける待遇の事です。
キャストの人権すら侵害しかねないこの強化措置は、余程の事情がなければ受けられません。
私も話で聞いただけで、都市伝説とも言えるほどの夢のようなお話でした。

422 「…このまま全部忘れて、新しい人の元に行くんじゃ意味がない。
    私はこの嫌な思い出を忘れず、ガーディアンになりたいと思ってるの。
    そして、二度と私みたいなマシナリーが出て来ないように、人を教える立場になりたい!」
主人「…いいんじゃないか? 幸い今はイーサンが戻ったばかりだ。
    あの単純バカが乗りそうな話だ、上手く巡れば実現できる可能性は十分ある」
422 「ええ、私はやってみせますよ! 」
412 「…頑張ってください、私応援します!」
422 「うん、ありがと!」
29212/12:2008/04/29(火) 23:18:41.84 ID:Mxm8dC+S
422 「それじゃ、しばらくよろしくお願いしまーす!」
二人「…はい?」

422さんはそそくさっと座布団に座り、ミ・カンを頬張り始めました。

422 「いやーだって、強化措置申請通るまで何処かで過ごさなきゃならないじゃないですか?
    私身寄りいないし、寝る場所探すにしても見つかるまで野ざらしってわけにもいかないですしー」
主人「食いながら喋るな! テーブルに粒飛んでるだろうが!
    いや違う! 何故俺の部屋に居座る気満々なんだ!?」
422 「水臭いなぁー、短い間共に過ごした仲間じゃないですかー?」
412 「そ、そりゃそうですけど、ダメですっ!」
422 「えー、どうしてよー?」
412 「とにかくダメなものはダメなんですっ!」

422さんはちょいちょい、と私を手招きしました。
むすっとしながら近寄ると、422さんはニヤニヤしながら耳元に囁いてきました。

422 「だーいじょぶだって、貴方とご主人様の邪魔はしないからー♪」
412 「………〜〜〜〜〜!!!?????」



-終-
293名無しオンライン:2008/04/30(水) 10:28:56.81 ID:y6S92Dyo
長いけど読みやすくてGJ
みんなパシリは大事にね!
294名無しオンライン:2008/04/30(水) 17:27:40.87 ID:avTvMnPW
>>264
遅ばせながら防具特化パシリが完成しましたー。
有難うございました!

セラフィ20枚セット完了!
psu20080430_151436_000.bmp
295名無しオンライン:2008/05/02(金) 08:59:54.71 ID:qwFTqmOS
>>294
おめでとう。
確かにssだが、ちょと違うw

で、490追加らしいがどんな型なんだろう…
犬型なら一月だけ課金したる
296名無しオンライン:2008/05/02(金) 09:06:24.41 ID:Iqe+01rd
>295
殺意の波動に目覚めたアキバ系ムーミン
だった気がする
297名無しオンライン:2008/05/02(金) 09:53:20.01 ID:xrp6YIdu
>>294
おめでとう、だがここはパシリスレ、パシリの話を書くところだぜ
大丈夫、最初はみんな素人だ、何でもいいからネタになりそうなのがあったらレッツトライ!
298おかえりなさい 1/2:2008/05/03(土) 02:49:38.96 ID:0oLujo+P
今日は私を連れて行ってくれませんでした。
御主人様と離れたくない私は「連れてってください!連れてってください!」と駄々をこねましたが、
「今日は精霊運が悪くてリーダーになれないから無理なんだ」と私を置いてミッションに向かってしまいました。
御主人様が居なくなって広くなった部屋が凄く淋しい。
少し散らかっている事に気付いた私は部屋の掃除をする事にしました。
拳を軽く握って、綺麗になった部屋を見てもらって驚いて貰うんだ!、と小さく気合を入れて、
チャブ・ダイの上やお店のカウンターを拭いたり床の埃を掃除機で吸い取ります。
何で私には掃除機機能がついていないのでしょう?とか考えたりもしましたが、
自分の身体の中に埃とかを入れるのはちょっと嫌だったので無くてもいいやと思いました。
ふと部屋の片隅にあるBTラバーズが目に入って、結局手に入らなかったコヒブミテリの事を思い出します。
今あるのは一個だけですが本当はもっといっぱいあったのです。
あまりにもいっぱい出るのでお店の人に引き取って貰ったり、私が食べたりしたら一個になってしまいました。
御主人様、来年も一緒に探しましょうね?
お昼頃にご主人様から合成の依頼をされていた事を思い出しました。
合成が必ず成功する薬とかあったら絶対に飲むのですが、そんな便利な物はありません。
私の身体の中でタイタニアがぐるぐる。メギフォトンがぐるぐる。
闇の色をしたかっこいい武器をご主人様に届けたい。
私は少しだけ神様に祈ってみます。御主人様の無事も一緒に。
いい属性が出来ますように。そしてそれを御主人様に見てもらえますように、と。
やる事が無くなってしまって、少し眠ってしまっていたら珍しくお客さんが来ました。
「ハビラオ方面が大変なことになってるから武器が欲しい」と言って御主人様の使い古した武器を買って行きました。
御主人様の使った物を手放すのは少し淋しかったのですが、売れた事で喜んで貰えるなら、と自分を納得させました。
お客さんを見送った後で御主人様の行き先を思い出します。
ハビラオ方面です。

「ハビラオ方面が大変なことになってるから武器が欲しい」
299おかえりなさい 2/2:2008/05/03(土) 02:50:19.88 ID:0oLujo+P
御主人様!
背中を冷たい物が流れる感じがします。私には汗なんか流れないはずなのに。
どうしましょう。大丈夫でしょうか。ただのキノコ狩りだと言ってました。大丈夫。
ご主人様は凄腕だから、きっと大丈夫だと自分を納得させます。
ビジフォンをつけて、ニュースを確認。いつも通りにハルがのんきにニュースを読み上げています。
コルトバ・フォアが餌の穀物の値上がりによる影響で値上がりするとか言ってますが興味はありません。
食費が上がるのは大変ですが、今はそんな事を心配している場合では無いのです。
ハビラオ地区で何が起きてるのでしょう?肝心な時に訳に立たないハルに少し苛立ちを覚えました。
結局有力な情報は得られないままビジフォンを消して、部屋を隅々までうろうろうろうろ。
あれからどれ位時間が経ったでしょう?
いつもならそろそろ帰ってくる時間。時計を見ます。さっき見たときから一分と経ってません。
心配で心配で居ても立ってもいられなくなった私はついに部屋を飛び出そうとしました。
すると扉の所で何かにぶつかった感触がして、私は尻餅をついてしまいました。
額を押さえながら見上げると、そこには少し驚いた顔をしたご主人様の姿。
でも驚いた顔は一瞬だけ。すぐに笑顔になってご主人様はこう言います。

「ただいま」

私は目から何かが流れそうになる感覚を必死に抑えます。
また無事に会えました。だから私はとびきりの笑顔でこう言いたいのです。

「おかえりなさい、ご主人様」
300名無しオンライン:2008/05/03(土) 02:51:41.72 ID:0oLujo+P
合成待ちの間に初めて書いてみたけど、難しいですねぇ…。
駄文失礼しました。強化行ってきます!
301名無しオンライン:2008/05/03(土) 10:29:15.96 ID:XqERfEgY
マイルームでちょっとHな情報誌を読みふける御主人。

御主人「フムフム…夜のブーストGALS。極上テクで貴方も昇天。
    指名ナンバーワンはモガちゃんと…チェック、チェックと」
パシリ「御主人?何を熱心に読んでいるのですか?」
御主人「オーマイガッ!!」
パシリ「ふむむ、ビス子の繰り出すダイナミック技の数々ですか」
御主人「ちょッ!!やめてよ、返してよッ!ちちち、違うからね、
    これ、ボクの本じゃないからね。友達の小林君のだから!
    いらないって言ったのに無理やり押し付けてきたんだから」
パシリ「その割には随分とチェックが入っていますが?」
御主人「それも小林君のだから!」
パシリ「まったく…本で調べてわざわざこんな店に行かなくても、
    この私が御主人の欲求不満位は解消してあげますのに」
御主人「ちょッ?ナニを言っているんですかパシリさん?」
パシリ「か勘違いしないで下さい!過度な欲求不満は時として、
    任務に支障をきたします。PMとして見過ごせないだけです」
御主人「え?ええ?」
パシリ「色々と準備をしてきますから、御主人は退去してください」

カポーン

暫くしてマイルームはすっかりパブリック・バス。
ヨーガ・マット(泡つき)まで敷いてある。芸が細かい。
そしてPMだろうか、ドレッシングルームに人影。
御主人は部屋中央にて正座待機中。もちろん全裸。

御主人「…パシリ奴…でもアイツ実は結構スタイルいいんだよなぁ
    PMに弄ばれるのもオツでイイかもしれないぞ…ヒャホー!」

プッシュー

ドレッグルームのドアが開いて誰か出て来たようだ。
御主人「あ、本日は攻め中心でお願いしま…」

                                                               
                                                               
            .,-.i二iー-、
            |`.|___|"i._|    欲求不満だそうだな、
            { l_>=<ユ^}    いいだろう、その劣情、私に全てぶつけてみろ!
            i i┬┬'iイ
 ビ リ       十┴┴イ} ー  ,イ彡く,-‐' ゙i,
  __,,, :-―,ァ''" i l `ゝr'´ヽj゙ア´ ̄`ゝニ'ィ,〉
,:f^三ヲ,r一''^ニ´、、__ l ! ィ彡,ャァ'" ,,..,,、  /lトィヘ
ノ ニ、゙リ  ,..,,   ``''ヽ,,,  ''"´   ゙''ヾミ,r/:.l:.:し



パシリ「あ、御主人。私はヒューマンの生理に詳しくありませんので、
    ルウ教官に相談したらご紹介して頂きました。バッチりです」
御主人「騙されたぁ!アッ…アァッー!」

302名無しオンライン:2008/05/03(土) 10:33:47.80 ID:XqERfEgY
思いついて書いてみた。ちょっとは反省している。
303名無しオンライン:2008/05/04(日) 11:00:27.89 ID:J3KYZdp+
>>300 >>302
いいよ〜いいよ〜両方ともGJ!!

さて…オレも夜のGBAに繰り出す準備を……

ん? 440何して(ry………
304EPX番外編「孤独の理由その1」:2008/05/04(日) 14:29:23.64 ID:KLwsOlty
ナレーション:それは、GH412のマスターがまだ、イルミナスに所属していた頃の話だった…

「ハウザー様。質問があるのですが」
「む…何かね」
「プラントで話していた(>115)SEEDを制御する研究は、ここで行っているのですね」
「そうだ。以前にも話したが、私はある事故に巻き込まれ、特殊な抗体を体内に宿す結果となった」
「その抗体を基にした、特殊な抗SEED剤を開発していることは聞きました。それで、質問ですが」

「…まさか、新しいSEEDウィルスもここで研究している、などということはないでしょうね?」
「(ギクッ)な、何を戯けたことを。どこからそのようなデマを聞きつけたのかね」
「いえ、最近とみに増えている、【ヴォビス】と名乗る特務兵…あれ、どう見ても感染者ですよね?」
「うっ…あれは、その…つまり…」

「…つ、つまりあれは、この抗SEED剤の尊い犠牲者というわけだ。自ら志願したと言え、私も胸を痛めているよ」
「そうですか。無下に扱ったりはしていないでしょうね」
「も、もちろんだとも。キャストだからと言って使い捨ての駒になど、し、しておらんとも」
「それを聞いて安心しました。私も無用な暗殺計画など立てずに済んだというものです」
「は、ははは。君も冗談が上手いではないか」

「冗談?一体何の話ですか?」
「…………」
「そうそう。もう一つ気になることが」
「まっ、まだあるのかね」
「Aフォトン研究者のトムレイン博士と話をしましたが…【ガジェット】なるAフォトン爆弾の研究をしているとか」
「あ、あれはだな。いわゆるその…抑止力という奴だ。組織の維持のため止む無く…分かるだろう」

「なるほど。抑止力…それなら量産の必要はありませんよね」
「むっ…それは」
「積極的に作戦に使用するほどの数はいらないだろう、と言っているのです。…違いますか」
「あ、ああ…そうだとも。必要最小限の数だけあればいい。量産など、か、考えもしなかったぞ…ははは」
「さすがハウザー様。ガジェットの実験にかこつけて…などと、算段を練るだけ無駄でしたね」
「じ、実験にかこつけて何をするつもりかね、何を」

「ふう…使えると思って拾ったが、とんだ外付けモラル判断装置だな。いっそ、今度のモトゥブの作戦で…」
「何か言いましたか」
「まっ、まだいたのかね。いいから早く業務に戻りなさい、業務に」

412「マスターはちょっと、鋭いのか鈍いのか分からない天然な所があって、知らずに敵を作っていたりするのよね」
φG「へぇ、そうなんすか…(ところで【マスター】って、変わった名前だな…)」
305EPX番外編「孤独の理由その2」:2008/05/04(日) 14:32:27.77 ID:KLwsOlty
GT「隊長。お呼びですか」
412「ええ。ちょっと、これを見てほしくて…」
GT「メールですか?どれどれ…」

 『私は今、対イルミナス部隊の隊長をやっています♪
  部下もみんないい人で、この間もイルミナスの拠点を一つ潰しちゃいました(≧▽≦)
  総裁にも誉められて、毎日幸せ一杯です(^0^)』
  
GT「…何ですか。この典型的な自慢メールは」
412「以前に知り合った同タイプ…じゃない、友人…みたいなのがいるのだけど。たまには挨拶でもと思って」
GT「たっ、隊長の書いたものですか?これ」
412「こういうの、初めてだから勝手が分からなくて。文法などに問題があったら添削してほしいのだけど」
GT「(文法以前の問題の気がするが…)」

GT「…とりあえず、自分のことを書く前に、先方の近況を尋ねてみるのは如何でしょうか」
412「なるほど、そういうものなのね。分かったわ。『最近どうですか?』…と」

412「…(本当に、どうしているかしらね、あれから。まあ、きっと宜しくやっているのでしょうけど…)」

 想像1:「カン・ウー50%できちゃった☆ご主人様ったら大喜びで、私の額と言わず頬と言わずアツ〜いキs」
 想像2:「バレンタインのお返しに何をくれたと思う?種族を越えた愛って本当にあったのね☆私って、しあわs」
 想像3:「(写真同封の上)二人の子です。名前は470でs」
 
412「やめた」
GT「いきなりフテ寝って、隊長…一体何が」
412「あの子に自慢されるのは我慢ならないの」

GT「…(自分の自慢は平気で、他人の自慢は我慢できない。隊長ってもしかして、典型的な…)」

ナレーション: PMはマスターの鏡と言う。かのマスターに友人がいない理由は、ここにあるのかも…

マスター「もう一度言って御覧なさい」

ナレーション: …と思ったのは、気のせいであった。
306EPX作者:2008/05/04(日) 14:36:33.86 ID:KLwsOlty
閑話休題として、こんなものを投下してみました。
たまには短編をと思ったのですが、短くまとめるのは大変なものですね。

登場人物が壊れ気味なのは、目をつむってやってください。
307名無しオンライン:2008/05/05(月) 18:44:23.55 ID:CxoP4zDk
>306
面白かったですよん

ただあの…


その…


× つむる
○ 瞑る(つぶる)

とか全然思ってないんだから!
何よ!本編の続き期待なんてしてないんだから!勘違いしないでよね!
毎日チェックなんてしてないんだから!
308名無しオンライン:2008/05/05(月) 19:01:56.42 ID:Eni/J6Li
>>307
野暮で申し訳ないが、無駄に揉めるのもアレなので…
その手の書き込みをする時は、3回ぐらい辞書を引いた方が失敗が減って良い感じなんだぜ。
309名無しオンライン:2008/05/05(月) 20:21:31.22 ID:Zx2kz0DA
常用語だし日本人なんだし、その辺は世界観や語感でどっち使うか決めていいと思う
310名無しオンライン:2008/05/06(火) 09:25:18.16 ID:p+eLYhlG
>>306
舞台裏のようで楽しかったです。短編も良いですね。
311名無しオンライン:2008/05/06(火) 11:43:57.19 ID:+C7Q6N3A
>308
>309
単にツンデレ文を書きたかっただけじゃないか?w
312名無しオンライン:2008/05/07(水) 03:00:37.15 ID:XgGjfa21
マスターの様子がおかしくなったのは最近の事でした。
「よくわからないんだ」
「世界に出ても誰もいない。広い世界にたった一人放り込まれたみたいなんだ」
「たまに人に会っても何も言わないんだ。機械を相手にしてるみたいで辛いよ」
マスター…そんな寂しい事を言わないでください。
あなたには私が居ます。私では…駄目ですか?

マスターは見るからに衰弱していました。
最近では日がな一日天井をぼーっと見上げて言葉にならない言葉を吐き出しています。
「出し惜しみ…同じ…マゾい…」
その声はとても小さくて、もし神様が居たとしても聞き取る事は出来ないでしょう。
親しかった友人たちに連絡を取って励まして貰おうとしましたが誰一人として捕まりません。
皆様は何処へ行ってしまわれたのでしょうか?
本当にマスターは一人でこの世界にとり残されてしまったのでしょうか?

薄暗い曇り空の日、その日も私は神様に祈ります。
マスターが元気になってくれますように、と。
マシーナリーの願いなんて聞き届けてくれるのかはわかりませんが、何もしないよりはましだと思ったのです。

「俺、気付いたんだ。もうこの世界には何の未練も無い事に」
突然そんな言葉を口にしてマスターはよろよろと扉に向かいます。
嫌な予感がした私は思わずその背中に抱きつきます。
「ごめんな」
こちらを振り向いて言ったその言葉だけで十分でした。
呆然とする私を置いてマスターはそのまま扉から出ていってしまいます。
気付けば私は涙を流して、開いたままの扉を見つめていました。

その日からマスターは帰って来ません。
何処に行ったのかもわかりません。
私の事ももう覚えていないでしょう。
それでも私はこの一言を胸に仕舞って待っています。

「おかえりなさい」
313名無しオンライン:2008/05/07(水) 07:34:43.77 ID:6EQfVOjO
直近三つのSS見てたら
「ヴォビスはハウザーサマをマスターだと思い込まされてる元パシリ。
キャラが消えるほどマイルームを留守にすると、ハウザーサマが空き巣に入ってパシリを浚って、
無理矢理特殊強化デバイス食わせた上にSEEDウィルス注入してヴォビスにしちゃう。」

とかいう妄想が沸いた
314名無しオンライン:2008/05/07(水) 19:34:40.91 ID:8nAuHQYz
パシリが全く出てこないパシリSS



ある男の部屋に、険しい顔をしたニューマンの女性がやってきた。
「ちょっといい? 今日のお昼頃に買い物に来た440はいないかしら」
「ええ、来ましたよ。カティニウムを3キロほど売ってくれと」
「そうよ、そのカティニウムだけど、さっきセットしようとしたら2キロしかなかったわ」
「なんですって?」
「おたくの装置、故障してるんじゃないの? それとも重いのをいいことに、量をごまかしたりしてないでしょうね!?」
男は別の材料を秤にかけてみたが、間違った値が表示されることはなかった。
また、ガーディアンズ本部に送信される販売の履歴にも「3キロ」と記録されており、詐称があったとは考えにくい。

しばし考えて、男は言った。
「お客様、マイルームにケイソクキを設置することをおすすめします」
315名無しオンライン:2008/05/07(水) 22:21:14.84 ID:auqqcAhn
>>312
ちょっと悲しい短編。再開のありますように。
>>314
犯人は100パーセントわかります。ちょっと推理モノぽくて面白いですね。
316名無しオンライン:2008/05/07(水) 22:47:28.82 ID:FUaF1A8R
>>315
悲しいかな恐らく彼は今頃元気に肉を焼いている事でしょう…。
全ては神様次第だと思います。
…そんな私も最近はメモ帳と睨めっこばかりですけど。
317EPX 8章「暗雲 1/8」:2008/05/09(金) 19:41:59.52 ID:VMlti45O
「隊長って、すごい武器を持ってますよね。何で、使わないんすか?」
ガーディアンズ本部のリフレッシュルームでくつろいでいるところに、fFが話しかけてきた。

あれ以来、私はすっかり第2小隊の部下達と打ち解けていた。
部下達と共に任務も順調にこなし、次々とイルミナスの拠点を制圧する一方で、
マスターの行方は杳として知れないままだった。

そんな私が、マスターと私を唯一結ぶ、「Dear My Partner」の文字の刻まれた武器。
ダガーオブセラフィをぼんやりと眺めていた時のことだった。

「俺には高ランクの双小剣は繊細すぎて上手く扱えないけど、隊長なら問題ないでしょう?
一度見てみたいんすよねえ。颯爽と赤い羽を舞い散らす、隊長の勇姿を」
「ご希望に添えたいのは山々だけど、そういうわけにも行かないのよね」
「何故っすか」
「約束なの。…というより、私が勝手に誓っていることなんだけど」

fFはさらに興味をひかれた様子だったが、あえてそれ以上は踏み込んでこなかった。
その時の私の表情を見て、何か感じるところがあったのかも知れない。

私が、この双小剣の封印を解くとき。
それは、私がマスターを取り戻すための決戦の時だと、決めていたのだ。
別に、通常の任務に使っても差し支えはない。
だが、他の目的でこの武器を振るう度に。
柄に刻んだ文字の重みが、減っていくような気がしてならなかったのだ。

「それにしても、どうやって手に入れたんで?リエタナカ工房の作品はそれ自体幻と言われているのに、
その中でも理論上最高のフォトンリアクターを内臓する逸品なんて」
…自分が作ったとはさすがに言えなかった。

「そういや隊長は、PMを連れてませんね。まあ、必ずしも連れてく必要はないかも知れないっすけど。
第1小隊の隊長なんかは、いつも連れまわしてましたよね」
…自分がそのPMだったとも、さすがに言えなかった。

苦笑いしながら、どうやって説明をつけようか考える。
そんなとき、不意に通信機が鳴った。
『412か。至急、見てもらいたいものがある。執務室まで来てくれ』
ガーディアンズ総裁、ライア・マルチネスからの呼び出しだった。
318EPX 8章「暗雲 2/8」:2008/05/09(金) 19:43:00.08 ID:VMlti45O
執務室で私を迎えたのは、全部で3人。
ライア総裁はもちろんその一人。
他には、ライア総裁の秘書的な存在とも言われている、クランプ青年。
そして、かつての私の友人、GH-440。

440の顔を見たとき、私は自然表情を曇らせる。
あの時以来の再会だが、沸き起こるのは胸を刺す痛ましい思いだけだった。

「今から見せるのは、440の記録した映像を再現したものだ。
ある理由で、お前にも見せたほうがいいだろうと判断した」
相変わらずの率直な切り出し方だった。

「実は、第1小隊の連中はちょっと…情けない状態になっててね。
命に別状はないんだが、精神的なものからか、全員寝込んじまってるのさ」
そういえば、ある時期を境にぱったりと、第1小隊の面々とは顔を合わせなくなっていた。
心底見たくない顔だったので何も文句はなかったが、その原因に興味がないわけではない。

「で、その時現場にいた、440から色々聞こうと思ったんだが、どうも要領を得なくてね。
仕方がないから、内蔵されている映像記録を再現するため、今まで編集作業をしていたのさ」

PMの見たもの、聞いたもの。それら全ては、PMに内臓されているデータベースに蓄積されている。
とはいっても、それを映像化するのはかなりの手間なので、そうそう気軽には行われない。
私がかつてプラントから再起動を果たした時も、口頭による尋問だけで済まされていた。
440の場合は、それで総裁を納得させることはできなかったということなのだろうか。

「目を通した総裁は、ある可能性を示唆しました。
彼ら第1小隊に手痛いダメージを負わせた犯人は、貴方に関係のある人物ではないかと。
そこで、貴方に確認をとっていただくことになりました」

私に関係のある人物?
にわかに高まる私の緊張をよそに、ライア総裁が中央のスクリーンに目を向けた。

「さあ、始めるよ…ある意味見応えのある代物だ、アタシももう一度見せてもらう」
319EPX 8章「暗雲 3/8」:2008/05/09(金) 19:45:42.91 ID:VMlti45O
「…間違いありません。これは…この人は、私のマスターです」
映像を見ていた私は、ほどなく断言した。

映されている人物の様相は、大分私の知っているマスターと違っていた。
随分と痩せているし、あのような黒づくめのボディースーツなどは余り好まない筈だった。

だが、ビーストfFに対し巧みにフォイエ等の単体用テクニックを撃ちながら懐に呼びこみ、
間合いに入ったビーストfFが得意げに槍を振ろうとした矢先の動作は、私はよく見知っている。

瞬時に左、右へとステップしながら小剣で斬りつけ、
致命傷を避けようと防具が放つフォトンの干渉波が彼の身体を宙に浮かせる。
それを追ってすかさず跳躍し、そのまま空中で渾身の回転切りを浴びせる。
小剣の上級技、「瞬舞昇連斬」…マスターの得意技の一つだった。

もちろん、その技一つでマスターと決め付けるのは早かったが、
その後に流される映像の一つ一つがマスターの姿を否応なく思い出させていた。

「…どうでもいいが、何でこいつらは一人ずつでかかってるんだ?」
ライア総裁が腕組みをしながら、誰にともなく口を開く。
クランプ青年が、それを受けて自分なりの考えを口にする。

「様子から判断するに、この女性に何か挑発でもされたのでしょうか。
適正種族が特化職を選んだ場合、多くは非常に自分の能力に自信を持っていますから」
「なるほど、複合職のヒューマン如き自分一人で十分と、全員思っちまったわけだ。
だから、簡単に挑発にも乗ってしまった」

私も、同じようなことを考えていた。
確かに私達WTは「守ること」「生き残ること」には長けているが、火力の点で著しく劣る。
こと真っ向からの勝負となると特化職に勝てるか、はなはだ自信がない。

しかし、この映像に流されているマスターの戦い方を見るだに、
それが大きな過ちであることを思い知らされていく。
また、追い求めていたマスターの懐かしい勇姿に、しばらく我を忘れて見入っていた。
320EPX 8章「暗雲 4/8」:2008/05/09(金) 19:46:29.71 ID:VMlti45O
ビーストfFを相手には、彼が苦手とする法撃系の攻撃を主軸に、中距離から遠距離での戦いを展開する。
近づかれた際には、すぐに瞬舞昇連斬で吹き飛ばして間合いを取り、また法撃での攻撃を繰り返す。
もちろんマスターも、接近される度に何度となく槍による攻撃で手傷を負うが、
打たれ強さに長けているマスターが致命傷を負うことはなく、しかもすぐにテクニックで回復してしまう。

持久戦を強いられていることで、明らかにビーストfFは苛立っている様子だった。
ビーストで、しかもfFである彼の圧倒的な攻撃力を以って、持久戦に持ち込まれることはそうそうない。
それだけに、彼には経験の少ない持久戦が、体力はともかく精神を確実に疲弊させている様子だった。

『くそっ、倒れろよコイツ…この俺が攻撃してるんだぞ…何で倒れねえんだよぉっ』
たまりかねて怒声をあげ、大振りになったfFの槍をかいくぐるマスター。
今度の攻撃は小剣での吹き飛ばしではなかった。

『貴方…以前自分で言ったでしょう?WTはね…』
黒煙のようなフォトン光を発する片手杖を振りかざし、真っ直ぐにビーストfFに向けて突きつける。
『…【倒せない】けど、【倒れない】のよ』

杖の先から噴出する、3筋の白い衝撃波が蛇のように地を這いながらビーストfFを直撃する。
衝撃波の一つ一つが彼の顔を苦痛に歪ませるが、それだけでは済ませなかった。
土属性のテクニック「ノスディーガ」は、彼の神経系統の伝達を阻害し、全身の自由を奪っていたのだ。

『今後、必ず短期決戦で済ませられない敵は出てくる。その時に備えて持久戦にも慣れておくことね』
マスターが指先で彼の額を押すと、歯軋りした顔のままその場で仰向けにひっくり返ってしまった。

「やれやれ、敵にアドバイスされるなんざ、情けないったらありゃしないよ」
ライア総裁がため息をつきながら肩をすくめる。
「仕方ありませんね、ビーストの弱点である法撃で攻められた上、相手だけ回復する状況で持久戦となれば、
彼が焦るのも分かります」

「…対して向こうには弱点なしか。その上打たれ強く、回復まであり、しかも多彩な攻撃で弱点をついてくる。
…敵に回すと、WTってのはこんなにも厄介なものなんだね」
321EPX 8章「暗雲 5/8」:2008/05/09(金) 19:47:15.59 ID:VMlti45O
続いて進み出たのは、ニューマンfT。
すぐに勝負をつけてやると意気込んで単体用のテクニック「フォイエ」を連打するものの、
マスターはサイドステップでかわしながら、左手に持つ投刃、俗に言う「カード」で対抗する。
フォイエは直線の軌道であり回避しやすいのに対し、カードは着弾は遅いものの高い誘導性を誇り、
相手が多少軸をずらそうがお構いなしに命中し、彼女の体力を削っていく。

「…相手がfTなら、近づけば勝ちなんじゃないのか?何でちまちまと射撃で応戦するんだか…」
その答えは、私にはすぐに分かる。
「先ほどの、ビーストfFにやったことをそのままやられる危険を考慮してのことかと。
ノスディーガは近距離だとほぼ回避不能ですが、遠距離ならいくらでも誘導を振り切る余裕があります」
「さすがにWTのデータを投入してるだけのことはあるね。それにしても…したたかな奴だよ、全く」

マスターの攻撃手段は、カードだけではなかった。
相手の法撃の隙を見て、土属性の単体テクニック「ディーガ」を行使していた。
ニューマンfTの高い精神力にはさして効果はないが、彼女にはそれが酷く挑発的な行為に見えたようだった。

『ワロテクのくせして生意気にテクなんか!器用ぶってないで、おとなしく劣化fFでもやってりゃ…いい…』
言いかけていたfTの動きが止まる。
先ほどまで矢継ぎ早に行われていたテクニックの詠唱が、ぴたりと止んでしまっていた。

『…その"ワロテク"の法撃でも、貴女を黙らせる効果はあったようね』
かつて私がヴァンダ相手に苦渋をなめた、あの精神干渉をニューマンfTも受けてしまった様子だった。

『さあ、その効果が切れるまで、私が近づくのをどうやって防ぐのかしら?可愛らしいお嬢さん』
マスターが言うまでもなく、この時点で勝負ありだった。

恐怖に顔を引きつらせながら、それでも弓を取り出し追い返そうとするが、
元より攻撃力のないfTの攻撃ではマスターに然程の傷もつけられず、接近を許してしまう。

『職業に上下の差はなく、戦い方もそれぞれあることを知りなさい。
味方を知るのはテクターにとって重要…そのためにはまず、味方を尊ぶことから始めないと、ね』
背を向けて逃げ出そうとするfTの後頭部に、小剣の柄尻を強く打ちつける。
ひとたまりもなく、彼女は気を失ってうつ伏せに倒れる。

「こいつといい、fFといい…油断しなければいくらでも戦いようがあるとは思うんだけどね」
ガーディアンが連敗を喫する様を見るのは面白くないらしく、総裁はぎりっと爪を噛んでいた。

油断もあるが、マスターがWTとしての戦いを知り尽くしているというのも大きいと思われた。
私が彼らとやっても、このように圧倒できる自信はない。
特化職の得意分野に持ち込まれては、やはり勝ち目はないのだ。
322EPX 8章「暗雲 6/8」:2008/05/09(金) 19:48:13.30 ID:VMlti45O
最後のキャストfGは、ライフルでの連続射撃によりマスターを寄せ付けないでいた。
fTの法撃とは比べ物にならない回転に、マスターも攻撃の隙が見出せない様子だった。

そのうちマスターは手近にある柱に身を隠し、ライフルの弾から身を守ることを選択した。
これなら確かにライフルは当たらないが、マスターにも柱の影からでは攻撃手段はない…かと思われた。

しばしの沈黙の後、柱の影から黄色く発光する球状の物体が飛び出した。
最初はあさっての方向に進んでいたが、やがて急に角度を変えて真っ直ぐこちらに向かってくる。
危険を感じたfGが身をかわすが、黄色の球体はまるで生き物のようにfGを確実に追尾する。
そして、目も眩むような光と共にそれは破裂し、周囲に稲光を撒き散らす。

「…ノス・ゾンデ…そんな手があったなんて…」
「アタシはテクニックには詳しくないけど、柱の影からでも自動で敵を追尾する代物があったみたいだね。
全く…WTってのは、何をしてくるか分かったもんじゃないね」

キャストfGは腕を震わせてライフルを取り落としてしまう。
雷属性の法撃により感電し、武器を持っていることができなくなってしまったのだ。

だが、キャストfGはこれでは引き下がらなかった。
両手を頭上に掲げ、上空から呼び出したものを見て、私は目をむいた。

無数に降り注ぐ光の粒子。周囲に存在するもの全てを氷塊に閉じ込める、強力無比なSUVウェポン。
「パラディ・カタラクト」…ヒト一人に対して使用する規模のものではなかった。

『…思い知ったか、劣等種。貴様等には逆立ちしても真似できまい』
私が聞いたこともないような感情的な語調。
してやられたのが余程腹に据えかねたのか、普段はかろうじて抑えていた差別意識を露骨に表す。
だが、驚くのはこれからだった。

視界を覆い隠す光の奔流が止むと、そこに見えたのはマスターの氷像ではなく、
床に開かれた小型のナノトランスゲートだった。
身を乗り出す彼の背後に同様の白い円形状のゲートが開かれたかと思うと、そこから黒い影が飛び出してきた。

「連斬潜昇牙…ここでこれを使ってくるとはね」
ライア総裁が唸りながらスクリーンを睨む。

『困ったらSUVに頼るのは貴方達キャストの悪い癖…それなしでも危機を乗り切る、精神的な強さは必要よ』
背部からの強力な斬撃に力無く崩れ伏すfG。
双鋼爪を手に、マスターは軽やかな動作で着地しながら背中越しに声をかけた。
323EPX 8章「暗雲 7/8」:2008/05/09(金) 19:49:07.79 ID:VMlti45O
『使えない…奴め…何故、フォローに入らない…そんなに…再調整が好きか…』
かろうじて息の残っているfGが、スクリーンのこちら側に向かって毒づいた。

「何を言ってんだか。命令がなきゃ何もしないようにPMを育てたのは自分だろうに」
ライア総裁が傍らに立つ440を振り返る。
人形のようにただ突っ立っている440を見ると、またもあの時のことが頭をよぎってしまう。

マスターがスクリーンのこちら側に歩み寄ってきた。
こちらに向かって手を伸ばす様子から、どうやら440の頭を撫でている様子だった。

『かわいそうに…貴女に罪はないのにね』

黒づくめの姿からかろうじて覗いている両の瞳は、まぎれもなくかつてのマスターのものだった。
懐かしさにかられて涙が溢れそうになるが、腹にぐっと力を込めてそれを抑える。

そんなマスターの様子が一変した。
瞳孔を開き、両手で肩を押さえ、小刻みに震えながらその場に膝をつく。
苦しげな呻き声をあげながら、懐から小さなケースを取り出し、震える手で中の錠剤を口の中に押し込む。
しばらく荒い息遣いのままうずくまっていたが、やがて落ち着いたのか、2,3回大きく深呼吸をする。

『段々…周期が近づいて…予想はしていたけど…』
にわかにスクリーン上に映っている部屋の外から喧騒が近づいてくる。
マスターは弾かれたように立ち上がり、素早くその場を離れていった。

「…以上だ。この後、部屋に駆け込んできたルツと近衛兵によって、第1小隊とPMは拘束された。
もっとも、イーサンとアンドウ・ユウの活躍で教団との和解が成り、こいつらは返してもらったけどね」
スクリーンに映された画面を消すと、ライア総裁はこちらに顔を向けた。
「…で、もう一度聞くが。あの黒づくめの女は、確かにお前の元マスターに違いないか?」
問いかけに、私は無言でうなづいて返事とした。

「…そうか」
ライア総裁は、しばらく腕組みして考え込んでいたが、やがてこう切り出した。
私にとって予想外の、衝撃的な提案だった。

「なあ、412。
ここらであの女のことは忘れて、改めて正式なガーディアンとして、新しい人生を歩む気はないか」
324EPX 8章「暗雲 8/8」:2008/05/09(金) 19:50:05.57 ID:VMlti45O
「理由を、これから話そう」
しばらく思考機能の停止していた私の耳に、ライア総裁の声が響く。

「まず、見たところあの女は既にイルミナスを抜けている。
それでいてガーディアンズに戻ってこない所を見ると、説得は難しいだろう…というのが一点。
そして、もう一点が大事なんだが…」

ライア総裁が目で合図をすると、クランプ青年が小さくうなづいて懐から何かを取り出した。
透明なビニールに入っているのは、小さな錠剤だった。

「現場で教団が押収したものを、後に和解した際譲られたものです。
状況から、あの女性が最後に服用したものと同一の物であると考えられます」
「こいつをマヤに見せたところ、嫌な事実が分かってね。こいつ、一体何の薬だと思う?」

情報が足りなさ過ぎて、漠然とした推測程度しか導き出せない。
一呼吸おいて総裁が答えたものは、予想の遥か斜め上をいっていた。

「こいつは、ごく初期のノウハウで作られた、抗SEED剤…SEEDフォーム化を抑える薬、ということらしい」

耳に入った言葉の意味を、頭の中で整理する。
だが、途中でそれは、強い感情の奔流に押し流されていた。
まさか、の段階で、完全に頭がそれ以上考えることを拒否していた。

信じられない、信じたくない、信じてたまるものか。
足が震え、動悸が高鳴り、視界が揺れる。ただただ心の中で否定の言葉を繰り返す。

「…お前の、マスターは…」
嫌だ。聞きたくない。言わないで。
ひたすら心の中で拒絶するも、ライア総裁は無情にも決定的な言葉を突き刺した。

「…お前のマスターは、SEEDウィルスに、感染し」
ありったけの絶叫で言葉を遮る。
自分の悲鳴で総裁の言葉をかき消せば、突きつけられた事実を洗い流せると思わんばかりに。
耳を塞ぎ、目を固く閉じ、狂ったように頭を振りながら、声を限りに叫ぶ。

割れんばかりに痛む頭の中に、うっすらと考えが浮かぶ。
私の任務は、最悪の形で終わろうとしている、と。
325EPX作者:2008/05/09(金) 19:57:28.03 ID:VMlti45O
お待たせしました。EPX第3部完結編、8章の投下です。
続きは2,3日後になると思います。

なお、今回は2点ばかり補足をさせていただきます。

・本編に出てきた双鋼爪のスキル「レンザンセンショウガ」ですが、
 ゲーム上ではこのスキルにはいわゆる「無敵時間」は一切存在しません。
 従って、潜行中にパラディ・カタラクトをやり過ごすことも本来できない(はず)です。
 本ストーリーのみにおけるアレンジとお考えください。

・これは一部から通して決めていた設定ですが、
 本ストーリー上で薬は原則存在しません。
 本編で繰り広げられた「特化職VS複合職」も、その前提において語られているものです。
 決して、特化職の方の地位を不当に貶めるものではないことをご了承ください。
326名無しオンライン:2008/05/09(金) 22:46:23.00 ID:2jr0s2O1
>>325
楽しませて貰いました。

だけど、いくらなんでもこれで「特化職そんなに弱くない!」とか喚きだす奴はいないだろー
327名無しオンライン:2008/05/10(土) 03:23:02.01 ID:gUqYURDd
>305

412 「ご主人様〜、メールが来てますよ」
主人「オウ、ご苦労…って、これお前宛だぞ?」
412 「え? …本当だ、私宛ですね。
    誰だろう、わざわざご主人様じゃなくて私にメールなんて」

 『私は今、対イルミナス部隊の隊長をやっています♪
  部下もみんないい人で、この間もイルミナスの拠点を一つ潰しちゃいました(≧▽≦)
  総裁にも誉められて、毎日幸せ一杯です(^0^)』

412 「…ご、ご主人様、これは一体?」
主人「俺に聞くな、分かるわけないだろ。
    お前は何時の間にこんな痛々しいお友達を作ったのだ、ええ?」
412 「そ、そんなぁ〜、こんな人は趣味じゃないですよぅ。
    差出人の第2小隊隊長なんて、会った事もありませんし」
主人「見知らぬメールは捨てる! そう教えただろ」
412 「そ、そうですね! 背筋が凍るから消しちゃいましょう!」



EX412「返事が来ない…何か間違ってたのかしら?」
G T 「………(隊長、悪いですけど返事が来る方が色々と大問題ですよ!)」
328名無しオンライン:2008/05/10(土) 04:06:03.66 ID:LokZRxu0
<GH-490>
ある軍用データから復元された犬型マシナリー。ご主人様といつでも一緒。
戦闘 : 情熱派


某日マイルーム

「ご主人様、何ですかそれは?」
「ん、あぁついこないだ出たばっかりの新デバイスらしい。珍しそうだから交換してきたんだが…」
「490と言うとあの噂のマスコット系のタイプですね、ちょっと試してみていいですか?」
「いやちょっと考えたい。 なんか交換条件のアイテムが妙だったのが気がかりでな…、それにいやに高い戦闘値を要求してるし」

交換アイテムは通称マガシパーツと呼ばれる珍品中の珍品、それを丸々マガシ一体分と言う交換条件だった。
そもそもこんな怪しいパーツと交換してもらえるという時点で怪しさの臨界点をブッチギリで超越しているわけだがまあそれについては不問としておく。
それよりも気になるのが490の色だ、あの色は何処かで・・・。

「あのー…ご主人様?」
「あ、あぁすまないちょっと考え事をしていた。 でもよくよく考えたら戦闘値が足りないから使えないんだな、残念だが」
「大丈夫ですよきっと、ちょっとくらい足りてなくても何とかなります! だから使ってみていいですか?」
「んーまあそうだな、ちょっとくらいなら大丈夫か…」
「それじゃいただきますっ! もぎもぎ…うっ…」

一口齧ったところでデバイスを取り落とし呻き苦しむパシリ。
デバイスは何度か使った事があったがこんな事は一度もあった事が無いし、条件に合わないデバイスだからといってここまで苦しむはずが…。

「だ、大丈夫か!?」
「うぅ…あぁっ!」
「うわっ、なんだ!?」

パシリの体から放たれるまばゆい光に思わず目を閉じる。 この光に見覚えはあった、パシリが姿を変化させる時の光に似ている。
やがて光が収まったのを感じると恐る恐る目を開いた。 すると俺の目の前には…。

「ぬぅぅぅ、ありがとうございますご主人様ぁぁぁ。 おかげでぇ成長する事がぁ出来ました」(CV.若本)
「ぬおっ! だ、だれだお前!」
「GHィ-490でぇございます」(CV.若本)

赤くゴツイ体をして野太いとかいう次元を遥かに凌駕する特長のある声を放つ自称490.
いやどう見てもマガシです本当に(ry

「ハッ、って事はあのデバイスが原因でパシリがこんな姿になってしまったって事か」
「左様でぇございます」(CV.若本)
「なんてこった…性格が変わったどころか原型を全く留めてないぞ…。 元に戻そうにも手元にはデバイスも無ければ金も無い…」
「おやぁ? ご主人様はメセタが必要なご様子、ならばぁ外へ狩りだしと行きましょうぞぉ」(CV.若本)
「え、ちょっ! その格好で外に出る気か!? ってか捕まる、言動的にも見た目的にも!」

頭を抱える俺の腕を自称パシリが強引に引っ掴み外へと連れ出されていく。
道中ほとんど人に会わなかったのが唯一の救いだったかもしれない、俺は強引に先導するパシリと通報される恐怖に挟まれながらミッションへと進んでいくのであった。
329名無しオンライン:2008/05/10(土) 04:06:41.22 ID:LokZRxu0

「ぬぅぅぅん、どぉぉぉだぁぁぁぁ!」(CV.若本)
「お、おー…」

流石はマガシの姿をしているだけの事はあった、敵がみるみる内に塵と化していく光景はまさに嵐の如く。
手にした二本のセイバーを縦横無尽に振り回し、暴走列車さながらの勢いで突き進んでいく。

「ご主人様ぁ、突っ込みぃますので援護ぉをお願いします」(CV.若本)
「いやこの強さで援護いらないだろ…」
「ぬぅははぁぁ! 勝っても負けても死ぬ、無意味なゲームの始まりだぁぁぁ!!」(CV.若本)
「ちょ、死ぬのかよ! それじゃ意味無いだろ!」

とまあこんなノリを続けつつ、俺はただ ( ゚д゚)ポカーン としているのが精一杯だった。

(以下CV.若本)
「これがぁパートナァァの実力よぉっ」
「ご主人様ぁ何処へ行かれましたかなぁ…?」
「サンドゥイッチ攻撃ぃぃぃ」
「私の方ぁがかわいいですからぁ!」

「結局何もしないまま最後まで来てしまった…」
「ごぉ主人様との協力がぁあってこそでぇございます」(CV.若本)
「いやまあ何でもいいや…おっと、最後の敵が来たみたいだぞ」

文字通りそのエリアの最後を飾る量の敵が一斉に姿を現した、そろそろ俺の出番だと前に出ようとしたところを490が制する。

「ここはぁ私めにお任せ下さい」(CV.若本)

そう言って両手を天高く掲げる490、一部のキャストやパシリのみが使えるSUVウェポンシステム。
上空に巨大な魔方陣のような物が描かれ徐々に広がっていく、徐々に…徐々に…

「…ってちょっとでか過ぎないか? 一体何を転送しようと…」
「ぬははははぁぁ!! 貴様らの死へのカウントダウンだぁ!!」(CV.若本)
「だから一体何を呼び出そうと…」

そこまで言いかけて上空の魔方陣から姿を現しつつあるそれに気が付いた。
天を覆うほどの巨大な魔方陣から出現しつつあったもの、それはイルミナスの手によって一度パルムの地に落とされ修復作業が進んでいたコロニーそのものだった。

「コロニーの軌道を変化させたのだぁぁ、もはや貴様らに抗う術などなぁい!!」(CV.若本)
「ま、待て! そんなもん落としたら俺達だってひとたまりも無いぞ!」
「ぬぅぅん、この運命には逆らえぬのだ諦めるがいいぃぃ!!」(CV.若本)
「だからそれだと意味が無いだろ、ってあぁもう! 畜生いい加減目を覚ませ!」

ショック療法、これ以外の手はもう思いつかない。 手にしていた武器で490の後頭部を思いっきり殴打。
すると同時にまばゆい光が放たれ、パシリはいつも見るパシリの姿に戻っていった。

「ぶ、ぶるぁっ!? あ、あれ私は今まで何を…?」
「正気に戻ったかパシリ! あぁでもまだアレが止まってない!」
「な、なんですかあれは! ど、どうすればいいんですかご主人様ぁ!?」
「SUVの事は俺に聞かれても良くわからん! と、とにかく魔方陣の方へ押し返すんだ!」
「は、はいぃぃぃ!!」
330名無しオンライン:2008/05/10(土) 04:06:56.72 ID:LokZRxu0
・・・

『ハーイ! グラールチャンネル5、ヘッドラインニュース! 今日のニュースをピーックアップ!
 本日未明Gコロニーがまたも落下の危機に見舞われました。 犯人はコロニーにハッキングをかけSUVウェポンシステムでコロニーを大地に落とそうとしていた模様ですが未遂に終わりました。
 ガーディアンズではイルミナス工作員による犯行とみて捜査を続けています。 では続いて次のニュースです…』

「…終わったな…」
「…終わりましたね…」
「…そろそろ帰るか…」
「…帰りましょうか…」

この一件で二人がデバイス恐怖症になったのはいうまでも無い事である。

進化デバイスは用法用量を守って正しくお使い下さい。
331名無しオンライン:2008/05/10(土) 04:10:52.55 ID:LokZRxu0
490の素材を見て思いついて書き殴った、後悔はしていない

なんでこいつマガシパーツ使うんだ・・・w
3321/5:2008/05/10(土) 04:34:31.64 ID:gUqYURDd
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。
皆さんもご存知の通り、新型マシナリーGH490の配布が始まりました!
ムー○ンと言うには微妙、とはいえ他に例え様がない未知のタイプです。

主人「で、何故にマガシで作るわけ?」
412 「…ナレーションに突っ込まないでくださいよぅ」

そう、GH-490は量産型マガシのパーツと交換なのです。
マガシの生首、胴体、手足をメルトンさんに差し出すと、進化デバイスがもらえます。
…一体、あんな物を受け取って何をしているんでしょう?
まさか、得意のフライパンでじっくりコトコト煮込んで元を作っている!?
ああ、嫌な事を考えたら今後パルム西に行けなくなっちゃいます。

主人「それより、生首って表現はどうかと」
412 「た、確かに生々しいですけどナレーションに突っ込まないでくださいー」

そんなわけで、私達は早速GH-490にしたという素早いお知り合いの部屋に向っています。
GH-490、パートナーマガシリーは一体どんな性格なのでしょう…?

主人「その呼び方でも結局パシリなんだな」
412 「…それより呼び方に突っ込まないんですか?」
3332/5:2008/05/10(土) 04:35:19.02 ID:gUqYURDd
主人「頼もーう」
412 「こんにち…!?」
鉄子「いらっしゃーい。さ、こっちにいるよー」

ご主人様のお知り合いはキャストの女性でした。
ルカラル・トルソで自慢の胸をどーんと強調している、大人っぽい人…。

412 「(ご主人様、女性のお方なんて聞いてませんよ!?)」
主人「(どうでもいいだろ、GH-490の方が本命なんだ)」
412 「(で、でも…! あんまりじろじろ見ちゃダメです!)」
鉄子「お待たせー、これがGH-490だよ!」

鉄子さんが手を差し出した先には、赤の塊がどんと立っていました。
カバというにはあまりにスマート…ムー○ンというには足がちょっと長すぎる…。
何とも言いようのないモノが、そこにいました。

主人「これはまた強烈なインパクトだな…」
490 「フガフガー」
主人「何その呻き声、中に何か入ってるのか? 入ってるだろコレ」
412 「もしかして…防具特化っていう噂があったから440さんが中に!?」
鉄子「あのさ、私がコンクリ使ったみたいな言い方しないでくれる!?
    それに、コイツは元々450なの! 私だって腰折れてないでしょ!」
主人「お前のその440ユーザー=┏発言も問題があると思うぞ」
3343/5:2008/05/10(土) 04:36:01.99 ID:gUqYURDd
主人「で、もう外には連れ出したのか?」
鉄子「や、まだだよ。変えたばっかりだし、引っ越してたから」
412 「わぁ、綺麗なお庭〜」

今回はGH-490の他に、ニューデイズに引っ越せるパスも配布開始となりました。
何故かカクワネ・オブジェを要求してくるメルトンさんの趣味は本当に未知数です。

鉄子「だから、餌やって反応を楽しんでみようってとこ」
主人「反応も何も、全部共通だった気がするんだが」
鉄子「いーや、もしかすると特別なリアクションがあったり!?」

鉄子さんは、そう言いながらアセナリンを差し出しました。
すると…。

490 「フガガ、フガフガガ」
主人「何言ってるか分からん! だが凄い嫌そうな目付きだ!」
412 「だって明らかに古そうですよ、そのアセナリン…」
鉄子「ほっほー、じゃこれならどうだっ!?」

鉄子さんは今度は、ディアードを差し出しました。
…私達はこの時、とんでもない現状を目にするとは少しも予想していませんでした。
3354/5:2008/05/10(土) 04:36:56.15 ID:gUqYURDd
*ぱかっ*

490 「ククク、こぉいつは美味い! 滴る血のよ〜うな味だ!」

*ぱたんっ*

…。
と、とても説明しても信じられそうにない出来事が起こりました。
490さんの頭が突然開き、そこからマガシの顔が現れたんです!

主人「…何だ、今のは?
    俺の目が間違っていなければ、あれはマガシさんだよな」
412 「は、はい、間違いなくあれはマガシの顔でした!」
鉄子「ど、どうなってんの!? いくら何でも特別すぎて恐れ多いよ!
    ってか、ガーディアンズとしてどうなのよ、その構造は!?」

鉄子さんは恐る恐る、490さんの顔をツンツンと指で突付きます。

490 「フガー」
主人「何事もなかったように唸ってやがる…」
鉄子「そ、そーよねぇ。いくら材料がアレでもそのまま使わないでしょ!?」
412 「…で、でも確かにぱかって開いて、あの独特の声で!」
鉄子「よ、よし! それならもう1回試してみようじゃない!」

鉄子さんは今度は、希少鉱石のリルスニアを差し出しました。

*ぱかっ*

490 「ほほう、貴様いい心掛けだな!? それなら仕えてやっても構わんというものだ!」

*ぱたんっ*
3365/5:2008/05/10(土) 04:38:18.60 ID:gUqYURDd
三人「………」
490 「フガー」

また、何事もなかったように490さんは唸っていました。
やっぱり、頭が突然開いてその中からマガシの顔が出てきました!

主人「これ、材料にきぐるみ被せて作ってあるんじゃないか?」
鉄子「や、やめてよ! ある意味で面白いけどある意味連れ回したくなくなるじゃない!
    それにサイズが合わないわよ、どう見ても収まり切らないわ!」

この時、私には耐え難い好奇心が生まれていました。
ここで耐え切れれば勝者なのでしょうけど…私は耐え切れない、ダメな方のようです。

412 「あ、あの〜…合成させてみるのは如何でしょうか?」
主人「こいつに合成させるのか!? ガジェット作られそうだな」
鉄子「…けど何て言うかすっごい見てみたい!」

鉄子さんは早速、余っていた武器基板をセットして素材を490さんに渡しました。

*ぱかっ*

490 「ククク…セットしてしまったか。しかしもう遅い…どうせ貴様はorzになる運命なのだ。
    成功しても10%、失敗してもオキク・ドール…無意味な合成ゲームの始まりだ!」
主人&鉄子「うーわ、腹立つわコイツ!」



-終-
337名無しオンライン:2008/05/10(土) 04:39:18.86 ID:gUqYURDd
というわけで、俺も490ネタ書いてみた
書き終わったら>328があったんで、かぶってスマソ
338名無しオンライン:2008/05/10(土) 06:55:26.47 ID:RooTrQCK
朝から、コーヒー吹いたwwwwww

もし490の中にちっちゃいマガシが居たら、ソニチを見直すwwwwww
339名無しオンライン:2008/05/10(土) 11:18:51.66 ID:utwAm8+0
「ん? 490だけ解説書に続きがあるぞ…」

490は特殊能力として、以下の合成が行えます。
ハシラドケイ ×1
マガシヘッド ×1

「……」


チッ チッ チッ  カチッ

「11時だ!貴様らの睡眠へのカウントダウンだ!」
「やらなきゃよかったああぁぁぁーーーっ!」
340EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 1/6」:2008/05/11(日) 23:37:09.73 ID:ZutNUJPz
「…落ち着いたか」
数分後、ようやく私はライア総裁の声が耳に届くようになっていた。
我に返ると同時に、両頬がじんじんと熱くなっているのが感じられてきた。
どうやらライア総裁に1発2発と言わずに頬を張られていたらしい。

「いいか、よく聞け。SEED感染そのものは、完全に絶望的な状況というわけじゃない」
「ヒューガ・ライト氏の例もあります。シドウ博士のワクチンを投与すれば回復の見込みはあります」
さっと視界が明るくなる。マスターを連れ戻しさえすれば、SEED感染から回復させることは可能ということだ。

「だが、問題はそこじゃない」
明るくなりかけた私の顔に、さっと影をさすライア総裁の一言。
「この、抗SEED剤…さっきも言ったが、ごく初期の、SEED研究の進んでいない時期に作られたものらしくてね。
とりあえず心身の変異は抑えられるが、ウィルス自体の増殖は止められず、また正常な細胞に深刻な被害を与えてしまう」

「…ただ、マヤ博士にも解析しきれない、未知の構成要素も含まれているという話があったのが気になりますが。
どのみち命に関わる副作用があるということです。投与を続ければ、確実に寿命は縮みますね」
「さっきの映像を見る限り、既に症状はかなり進んでいるようだ。
あれからさらに、一月近くは経っている。下手をすると、既に副作用で死んでしまっているかも知れない」

もう一度叫びたかったが、さすがにあれだけ声を張り上げた後で、その余力はなかった。

「既に死んでいる者を、いくら探しても見つかりっこない。
生きていたとしても、あとどのくらいの余命があるか知れたものじゃない。
マヤのワクチンでSEED感染は治せても、この薬の副作用まで治せるわけじゃないからね。
あいつの命がある内に探し出すのは、極めて難しいだろう」

「対してお前は、対イルミナス特殊部隊の隊長として、目覚しいほどの成果をあげている。
ここだけの話、お前には部隊の全権を任せてもいいという話があるくらいだ。
お前には、輝かしい未来が待っている。過去の絆を大事にするのも結構だが…」

「…私に、マスターを見捨てろと?」
「何と言ってもらっても構わない。が、よく考えろ。
お前には今や、大切な仲間もいる。そいつらを全部ほっぽって、お前のマスターを探し当てたとしても。
お前のマスターはほどなく世を去り、お前は主を失ったPMとして初期化される。
ガーディアンズ総裁としては、人材不足の今、お前を失うという損失は避けたいんだ」

最後に総裁は、こんな言葉で謁見をしめくくった。
「近々、お前達にはイルミナス本部の攻略任務を下す予定だ。ガジェット量産基地の制圧作戦と連動してね。
重要な任務だ…アタシは、その任務を任せられるのはお前しかいないと思っている。
期待に答えて欲しい…ガーディアンズのため、グラールのため、そしておまえ自身の未来のために」
341EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 2/6」:2008/05/11(日) 23:38:03.56 ID:ZutNUJPz
重い足取りで第2小隊の詰所に戻った私を迎えたのは、部下達の歓声と紙吹雪、けたたましいクラッカーの音だった。
「おめでとうございます、隊長」
「やりましたね、新総隊長。我々も鼻が高いです」

目を白黒させる私に、fTが一歩前に進み出て言った。
「まだ、聞いていませんか?今度、イルミナス本部の攻略作戦が発動されることを。
そして、隊長が全部隊の指揮を取る、総隊長に任命されることを」

「地獄耳の自分が、調査部より情報をせしめたんすよ。
何でも、ようやくガジェット量産基地が判明して、その制圧作戦が進んでいる一方で。
俺たち対イルミナス特殊部隊に、イルミナス本部へ総攻撃を行うよう任務が下される予定だって」
φGが後を続けた。

去り際にライア総裁が言ったことは、このことだったのだ。
部下達はいちはやくその情報を聞きつけ、こうして前祝いの準備をしてくれていたらしい。

気のいい仲間達。自分を慕ってくれる部下達。
私の出世を、自分のことのように喜んでくれる彼らを見て、私はさすがに心揺らいだ。

マスターは、既にイルミナスを抜けている。
対イルミナス特殊部隊との接点は、最早無い。
それでも私がマスターを追うと言うのなら、必然的に彼らとは縁を切らねばならなくなる。

仮に、私が首尾よくマスターを連れ戻したとしても。
その時は、私は只のPMに戻る約束になっている。
主がいる以上、私は一個の独立したキャストであり続けるわけにはいかないのだ。
その規則は、例えライア総裁自身にも曲げられるものではない。

過去の絆をのみ追い求め、今の絆を全て捨て去ることは、本当に正しいことなのか。
私の選択一つで、彼らの笑顔や祝福の言葉を全て袖にすることになってもいいのか。

どちらかを捨てねばならない、究極の選択。
部下達の祝賀会に否応なしに巻き込まれる私は、まだどちらとも決められないままでいた。
342EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 3/6」:2008/05/11(日) 23:38:49.43 ID:ZutNUJPz
かなり無礼講の度を増してきた祝賀の席を、もみくちゃにされながらどうにか一旦抜け出してきた。
そんな私に声をかけてきたのは、意外な人物だった。

「貴方は、確か…トムレイン博士…?」
目の前に立っている、白衣に身を包んだ温和な顔の老人。
この老人こそが、Aフォトン研究の第一人者として名高い、カナル・トムレイン博士だった。
イルミナスに脅され、心ならずも凶悪なAフォトン爆弾「ガジェット」を開発した本人。
ガーディアンズに救い出されてからは、その保護の下、惑星リュクロスの調査に当たっていると聞く。

「412君…少し、話をさせてもらって構わないだろうか」
遠慮がちにかけられる、物静かな声。
「…君の、マスターについての話だよ。まずは、ついてきてくれたまえ」

予想外の人物からマスターの話題が飛び出す。
返事を待たず、トムレイン博士は薄暗い通路を奥に向かって歩き出す。
私は無言のまま、その後についていった。

着いた先は、ガーディアン用の救護室。
任務中に負傷したガーディアンは、よくここで治療を受ける。
博士の指差した先に、見覚えのある顔が3人、仲良くベッドに横たわっていた。
先ほどの映像で見たばかりの、第1小隊の面々だった。

「君のマスターとは、面識があるのだよ…私が、イルミナスに囚われていた頃にね」
博士は静かに語りだした。
「彼女は、変わっていない…彼らがこうして生きていることを見ても、それは明らかだ」

博士の話によると、マスターはイルミナス在籍の間、虜囚の身の博士と度々会話を交わしていたらしい。
イルミナスには珍しい、心根の優しい正義感に満ちた娘だと、博士が誉めてくれた。

「…ガジェットの話をした時、彼女は大いに憤慨したよ。
脅されて作らされた私に同情を寄せると同時に、イルミナスに対して大きな不信感をも抱いておった。
そうして、ついには自分が私に代わり、ガジェットの量産を阻止してみせると言い出した頃だった。
…ハウザーの命令で、ダグオラシティの制圧任務が下されたのは」

あの、モトゥブでのSEEDフォーム化事件のことだった。

「彼女は、何も知らずにあの悲劇を担わされたに違いない。でなければ、あの娘が承知するわけがない。
モトゥブの民を、無差別にSEEDフォームに変えるなどと言う、非人道的なテロなど…」
343EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 4/6」:2008/05/11(日) 23:39:40.65 ID:ZutNUJPz
「彼女は、度々君のことを話していたよ」
博士は真っ直ぐに私を見つめ、白い髭を震わせる。
「彼女はガーディアンズでも孤独だったなら、イルミナスでも浮いていた。
そんな彼女に常につき従い、喜びも悲しみも共にした、君のことをいつも嬉しそうに話していた。
例えば、君のかけているその眼鏡…それは、君が彼女に憧れて真似をした結果だそうだね?」

博士の言葉に、当時自分がGH-410だった頃のことを思い出す。
マスターはかつて、普段でも任務中でも、常に眼鏡をかけていた。
度が入っておらず、伊達であることは早くに知っていたが、わざわざ任務中でもそれをつける意味はと、
聞いたことに対する答えは、今も覚えている。

この眼鏡は、常に自分の理性を量るためにあるのだと。
眼鏡が顔からずれるほどの激しい動きをした時、自分が冷静であるかを否応なく確認することになる。
そうして、任務や戦闘に気を取られ、自分の守るべきものを忘れることのないよう戒めているのだと。

それを知った私は、半ば無理矢理拝み倒す形で眼鏡つきのPMタイプ、GH-412に変えてもらったのだった。
以来、眼鏡がずれるたびにマスターの言葉が頭をよぎり、眼鏡の位置を直すことが癖になっていった。

「…そんな彼女が、あの作戦に参加する直前、言ったのだよ。
もしかして自分は、この任務によって人の道を踏み外すことになるかも知れない。
それに気付くことすらないまま、間違った道をひた進むはめに陥るやも知れない。
その時のために、自分は自分の心の半分をガーディアンズに置いてきた。
自分が間違っていた時は、必ずその心の片割れ…そう、君が彼女を正してくれると、ね」

私は、懐に閉まってある「Dear My Partner」の文字の刻まれた小剣をそっと撫でた。
別れの際にかけられた、マスターの言葉がまざまざと思い出される。
胸の熱くなる私に、さらに博士は続けた。

「私から言うのもおかしな話かも知れんがね。彼女を、救ってやってくれないか。
心ならずあの悲劇を引き起こした彼女は、きっと苦しんでおる。
それを助けられるのは、君しかいないのだよ」

博士は、皺の深いまなじりに涙をにじませる。
「私は…心ならずも数々の罪を犯し、それでいて生き長らえている。
これ以上、私に関わった友人が不幸な終わりを迎えることなど、あってほしくはないのだよ…」

この瞬間、私は迷いを捨てた。
私はマスターを捨てたとしても、多くの自分を慕う部下や、暖かく見守ってくれる総裁などがいる。
しかし、マスターには私しかいないのだ。
私に見捨てられたら、マスターは独りで死んでいくしかないのだ。
344EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 5/6」:2008/05/11(日) 23:40:44.61 ID:ZutNUJPz
『私の、彼女に関する心当たりは一つしかない。
もし、彼女が我々と同様ガジェット量産基地の場所を探り当てたなら、彼女は必ずそこに行く。
私の作った悪夢の兵器を、命に代えても無に帰すために』

宴の終わった、深夜の詰め所にて荷物をまとめる私の脳裏に、トムレイン博士の言葉が響く。
一刻の猶予もない。
マスターがガジェット量産基地の中枢部に辿り着く前に、マスターを止めなければならない。

ガジェットをそのまま破壊しては、誘爆システムによって辺り一面にAフォトンが拡散してしまう。
その誘爆システムを解除するには、GRMの技術の結晶たる制御システムをハッキングする必要がある。
マスター個人に、そこまでの技術がある筈がなかった。
そうなると、マスターならどうするか。
時限爆弾で自分だけ安全なところに行ってから起爆、などという真似をするとは思えない。
必ず、基地周辺を襲う悲劇と運命を共にするだろう。

私は、マスターにそんな真似をさせるわけにはいかない。
マスターが命に代えても信ずる道を貫くというのなら。
私も、命に代えてマスターとの誓いを果たしてみせる。
例えそれが、マスター自身と刃を交わすことになろうとも。

「隊長…こんな夜更けに、お出かけですか」
突然後ろから声をかけられ、びくりと肩を震わせる。
詰め所の入り口に立っていたのは、部下のfGだった。

「あ…私は…」
「行くんですね。大切な人を救いに」
何と言ったものか思案していた私に、fGは穏やかに微笑んで言い当てた。
「先ほどの祝賀の様子を見て、もしやと思っていたのですが。
隊長はどうやら、いつも話していた大切な人と、今度の作戦との二者択一を迫られていたのですね」

部下達に、私は何度と無くマスターの話はしていた。
もちろん、自分とマスターの真の関係は明かさないまま、ただ皆と引き合わせたいとの願いを込めて。

「追っていた人が既にイルミナスを抜けていたのでは、確かに我々が隊として追うことはできません。
しかし、隊長なら…隊を抜けてでも、その大切な人を救いに行くのではないかと、皆で話していたんですよ。
…まあ、さすがに今夜早速とまでは、予想はできませんでしたが」

いつの間にそんな話を、と思ったが。
恐らく、自分で情報通だと言ったφGがかぎつけたのだろうと推測された。
345EPX 9章「過去の絆と未来の栄光 6/6」:2008/05/11(日) 23:41:53.70 ID:ZutNUJPz
「…ごめんなさい。私、皆を裏切るような真似をして」
「まあ、正直ちょっと寂しいとは思いましたけどね。自分達には隊長を引き止める程の魅力はなかったのかと」
fGは悪戯っぽく笑いかける。

「でも、隊長らしいと思います。物静かで冷静に見えるけど、情は深く、また頑固で」
「…そ、そんなに私、頑固に見えるかしら」
「それはもう。特に、私達が危険を侵すようなことは、頑として聞きませんでしたよね」
「皆のことを、信じてなかったわけじゃないのよ。あ、最初は…ちょっと違っていたけど」

当初の、誰も信じられず独り突っ張っていた頃を思い出す。
彼らは、そんな私を暖かく迎え入れてくれたのだった。

「ええ、もちろん。ただ、効率よりも私達を優先してくださった隊長だからこそ、皆ついていったのですよ」

fGはそこまで言うと、懐から小さな袋を取り出して私の手に握らせた。
「隊長は確か、PAフラグメントはほとんど持ってらっしゃいませんでしたね。
ですから、それを必要とするスキルやテクニックもお持ちでない。
私達からそれぞれ一つずつ、使い込んだ奥義をディスク化したものを贈らせていただきます。
本当は違法なんですが…隊長の戦いのお役に立てればと」

「わ、私のために…?」
「それと、自分はfGなので、WTである隊長に有用なPAは持っていません。だから、代わりにこれを」
fGはさらに、首にかけてあったそれを外して私の前に差し出す。

「母からガーディアンズ就任祝いにもらった、お守りです。私と同じように、隊長も守ってくれるかと」
「そ、そんな大事なものを…もらえないわ」
「貰って下さい。そして、覚えておいて欲しいのです。
例え隊を抜けようと、私達の隊長を慕う気持ちに、変わりはないと」

私は、うつむいたままfGがお守りを私の首にかけるのを受け入れた。

モトゥブでの任務からここまで、彼らには常に驚かされてきたが、今更ながら改めて思う。
私は、彼らに出会えて幸せだと。
そして、ヒトとはこんなにも暖かいものなのだと、マスターにも教えてあげたかった。
たとえ、薬の副作用とやらで余命わずかだとしても。
残された命に私と同じ幸福を吹き入れ、同じ気持ちを分かち合いたい。

ガジェット量産基地へと向かう旅路の中で、私はしみじみと感じていた。
自らの誓いに、ひとりでは持ち得ない重みと深みが加わっていく手ごたえを。
346EPX作者:2008/05/11(日) 23:50:53.21 ID:ZutNUJPz
第9章の投下です。
GH-412は、今築かれている友情、未来の栄光を振り切って過去の絆を取り戻そうと、
決戦の地、イル・カーボ基地へと向かいます。

折しも、我らがアンドウ・ユウが総裁の命令にて基地に乗り込む、数時間前の話。
華々しい戦果をあげる、アンドウ・ユウという名の表舞台の裏で繰り広げられる、
語られることなき歴史の影。どうか最後まで見届けてください。
347名無しオンライン:2008/05/12(月) 03:20:11.92 ID:2sFaAqBe
もうすぐ、最後か………楽しみに待ってるぜ!!!
348名無しオンライン:2008/05/12(月) 23:08:37.19 ID:tqwGenME
fGは地味だが、戦場の全てを見ている。
縦横無尽に戦場を駆け巡るHuや回復に補助に攻撃にとめまぐるしく走り回るFoとは違った視点で
常に戦場の全てを視界に納め、有効な弾と配布先を考えながら、絶えず引き金を引いている。

一ライフラーとしてここでfGに出番をくれたことを嬉しく思う。隊長を最も観察していたのは、fGのはずなのだ。
349極めて平凡な一日1:2008/05/13(火) 03:54:11.86 ID:LaqCg9lv
今日はご主人様が非番です!

久しぶりすぎて涙が出そうです。
最近はDMC(デ●ルメイク●イじゃありませんよ)やら、
GBR(ゴミドロップブーストロードじゃありませんよ)やらで毎日忙しそうにしていましたから。
そんなこんなでご主人様と一緒に今日はゆっくりできます。
戸棚の中に隠したとっておきのミックスジュースにハッピージュースを混ぜてちょっとづつ酔わせて挙句、
あわよくば取り返しのつかない事を私にしてもらうのです…!
私がそんな妄想を一人繰り広げているとご主人様がぼそりと言いました。
「模様替え…したいな…」
確かに長い事忙しくしていたので大分長い事部屋をいじってません。
壁にかけられた英雄イーサンは右上の画鋲が外れてへたってますし、
巫女様のポスターは私が破り捨てたので貼り付けられた4隅だけが寂しく貼り付いています。
ちょっとだけ残っている脚が無様です。
そんなふしだらな格好でご主人様を誘うからそうなるのです。いい気味です。
「おーい!いくぞー!」
腕を組んで巫女の残骸と睨めっこしているとそんな声が聞こえます。
あわわわわ!私とした事がご主人様がとっとと準備を終えて待っていてくださると言うのに何て事を!
大慌てで私はご主人様を追いかけるのでした。

まずはコロニーの二階で家具を見ます。
ですが、新商品の入荷はありません。
なんでもカジノに買い占められてしまって小売店に流れて来ないので困っている、との事でした。
いつかとっちめてやらなければいけません。
普通にコインを売ってくれればいいのに、
ケチ臭く一日銀1枚とかいうふざけた枚数しかくれない上になんて嫌がらせなんでしょうか。
新しい家具の購入を諦めて、私達はパルムへ向かいます。
なんでもメルトンさんなる一年以上暇そうにしていた人が
やっとアイテム交換という仕事を手に入れて色々とアイテム交換をしてくれるそうです。
だから精霊の涙とかあんな値段で売れるんですね。
ただの飴の分際でやたらと高級すぎると思いました。
350極めて平凡な一日2:2008/05/13(火) 03:55:48.29 ID:LaqCg9lv
パルムに着いた私とご主人様はメルトンさんの前で仲良くこんなポーズをしていました。→ orz
交換に必要だと言われたアイテムの数々は「いらねっ」と捨ててきたり、
「いらねっ」とNPCに売り払ったり、ダン・ボウルに「ゴミ」と書いてテロしたりと
とりあえずとにかく持ってませんでした。
なんとか持っていたアイテムや近くにいた子供から拝み倒して頂いたコルトバ・ヌイミ、
都合よく鉄道強盗があったのでその解決をして集めたインバータサーキットで
フェイクドアとフェイクシェルフを手に入れました。
かわいいです。ほくほくです。
…べ、別に私がわがまま言って手に入れて貰ったんじゃないですからねっ!

部屋をオリエント・ブラックにして今日の戦利品を並べます。
私のナノトランサーに仕舞ってあったニューデイズ・イスとかも一緒にセットして…っと。
す、素敵すぎます!!
このオリエンタルな空気、この場に居るだけで私の気品が数倍上がりそうな空間になりました。
るんらら〜♪(両手を広げてくるくると回る私)
そんな風に舞い上がってると扉の方からしゅこーっと音がします。
「すんませーん、グランドクロスの赤いの売って欲しいんですけどぉ〜」
あ、お客様です。これは新しい部屋で私を素敵に見せるチャンスです!
私はツインセイバーをだらりと手に持ち、振り返りながらこう言います。
「イ尓好們好(にーめんはお)」
「す、すみませんでしたぁぁぁ!!!」
どうしてでしょうか?猛烈な勢いで逃げられました。
「そりゃツインセイバー持ってる時点で怖いのに無表情でニイハオじゃ逃げるだろうて…」
ご主人様がため息混じりにそう言いますが、私にはさっぱりわかりません。
人間って難しいですね…(遠い目)
351極めて平凡な一日3:2008/05/13(火) 03:56:56.16 ID:LaqCg9lv
逃げてしまった客に後悔しても遅いので、反省もそこそこにちょっと遅いですがお昼ご飯にする事にしました。
素敵だと思ったんだけどなぁ…。
さて今日のメニューはコルトバ・フォアでステーキです。
素敵な部屋で素敵な私とステーキを食べれば、ご主人様も素敵に私にメロメロになってくれるはず!
…と、思ったのですけどご主人様には何の変化もありません。
『バーニンレーンジャッ!かーがやくガオゾランに〜』
いつも通りご主人様はテレビから流れるバーニングレンジャーに夢中でした。
ハッピージュースが足りなかったみたいです。メモメモ。
次回はもうちょっと増やす事にしましょう。
しかしバニレンに負けた私、ちょっとセンチになりそうです。
切なさ炸裂すっぞ!しぎゃあああ!!

お昼ごはんを食べてまったりタイムです。
私はいつもご主人様がいないこの時間はClosedの看板をぶら下げてサボ…
ってはいないのですがお客が来なくて暇だったのでお昼寝をするのが日課だったので眠くていけません。
かくーん。かくーん。
私の首が時を刻んだのを確認したご主人様が優しく
「そろそろお昼寝の時間だろう?」と言ってくれたのでお昼寝する事にします。
滅多に無いご主人様との時間を大切にしたいのですが、眠気には勝てません。
しかし何故ご主人様は昼寝の時間だと知っているのでしょうか?
いつも夜に戻って来て共有倉庫からアイテムを取り出してから、
私のナノトランサーに仕舞っていたので気付いているはずが無いのですが…?
そんな事を考えていると眠気が更に増してきした。
おやすみなさい、ご主人様…。
「相変わらずかわいい寝顔だなぁ…」
かわいい?そんな言葉が聞こえた気がしましたが、私の意識は夢の中へと落ちていくのでした。
352極めて平凡な一日4:2008/05/13(火) 03:57:29.34 ID:LaqCg9lv
「おーい、そろそろ夕方だぞーいい加減起きろー」
私がご主人様とうふふ☆きゃっきゃっ☆な夢を見ていたら邪魔が入りました。
しかもご主人様の声真似までしてやがります。こりゃ絶命して貰うしかありません。
私は右手に持ったブラックハーツを正面に突き出します。
「我が眠りを妨げる者!何人たりとも許しはせんぞー!!」
「はうあっ!危ないって!なんだよ!そのタイラー並の技の切れは!!」
その声を聞いて私の意識は覚醒します。
私とした事が寝ぼけてご主人様に刃を向けてしまったみたいです。
「ああああ!私とした事が何て事を!このままではご主人様に顔向けできません!こうなった上は潔く腹を…!」
「いい!いい!そんな事で腹を切るな!寝ていたのを起こそうとした俺が悪かった!こうなった上は潔く腹を…!」
「そんな!ご主人様が腹を切る必要はありません!全て私の不心得がしでかした始末!だから私が…!」
と、そんな押し問答を10分程繰り返していたら、
お互いに不毛だと気付いたので「おはようございます」をしました。
ご主人様がお腹を切らなくて良かったです。もし死なれてしまったかと考えると。
目から涙が零れそうになります。
涙どころでは無くて滝になりそうです。
「えっと、いきなり泣き出してどうしたんだ?」
気付けば本当に涙を流していたみたいです。
妄想も現実になると怖いですが涙で水溜りが出来るのもかなり怖いです。
「えっと、ああそうだ。色々ありすぎて忘れるところだったけど、これ行かないか?」
やっと普通に話が出来るようになった私にご主人様は一枚の紙切れを差し出してくれます。
何々?『ニューデイズ花火大会』のお知らせ。ってちょっと季節早すぎませんか?
確かに夕飯の買い物なんかに行った時にもう花火売ってるのかい!と突っ込みを入れた事もありましたけど、
まさか打ち上げ花火まで作ってるとは…。ニューデイズ、恐るべし。
「ん?どうした?嫌なら無理にとは言わないが…」
「行きます!是非とも行きます!」
ご主人様がせっかちに結論を急ごうとしたので私は大きな声で行くと宣言します。
「お、おう…」
こんなチャンス逃してなるもんですか!さっきのとっておきは失敗しました。
次は失敗しません!乙女の意地を見せてあげますわ!
353極めて平凡な一日5:2008/05/13(火) 03:58:49.77 ID:LaqCg9lv
夜のニューデイズ、川辺に佇む二人。
仲良く手に持つは線香花火。よく読まなかった私が馬鹿でした。
まさか『(線香)花火(どれだけ長持ちさせられるか)大会』だったとは思いませんでした。
これならご主人様と素敵な家で素敵なディナーで素敵な夜を過ごしたほうが良かったと言う物です!
だいたいご主人様も私を子供扱いしすぎです!
私がこんな物で…!こんな物で…!
あ、落ちました。悲しいです。でもこの儚さが何処か私達みたいで。
とても綺麗です。暗闇の中で煌くその姿が永遠に続く時間の中で一瞬煌く私達みたいで。
永遠に存在しないからこそ、この世界は輝いているんだと思います。
そういえばいつだかご主人様がこんな事を言っていたのを思い出します。
「人の一生なんて短いもんだよ。でもさその短い間で一瞬でも輝こうと頑張るんだよ。
その輝こうとしてる命をさ、俺は守りたいんだ。SEEDとかの訳のわからない物で壊されたく無いんだ。
そんな人たちの為に俺はガーディアンズになったんだよ」
ご主人様の顔を見ます。かっこいいです。他の誰にも負けません。他の誰でも勝てません。
私にはご主人様しかいないのです。私だけのご主人様です。
私だけの…うふふ、思わず顔がにやけてしまいます。
私の視線に気付いたご主人様が口を開きました。
「時々思うんだ。俺のやってる事なんて無駄なんじゃないかって。
俺如きじゃなんにも出来ないんじゃないかって」
「そんな事はありません!ご主人様は一生懸命です!だって…!だって!」
急に弱気になったご主人様に不安になった私は一生懸命言葉を紡ごうとします。
だけども私の中にある言葉はとても少なくて、言葉の変わりに涙が出ました。
私の瞳から零れる涙を拭ってくれながらご主人様は言葉を続けます。
「あ、いや泣かせるつもりはなかったんだ。ごめんな。
でもお前が居てくれてよかったよ。多分一人だったらとっくにダメになってたと思う。
帰る場所があるって幸せなんだなって最近思ったよ。
だからこそ俺は皆を守りたいって強く思うんだ」
――私が居てくれて良かった――
その言葉を聞いた瞬間私の目からは再び涙が零れます。
今度の涙は悲しいから流すのではありません。嬉しくて嬉しくて、凄く嬉しいから流れる涙なんです。
顔をくしゃくしゃにして泣いてしまった私にご主人様はおろおろします。
そんな優しいご主人様が大好きです。そんなご主人様に思われてる事が幸せです。
私の思いは届いていたのですね!私が欲しいだなんてそんな!
それなら私はいつでも準備OK!ベッドメイキングだってばっちり習得済なんですから!
354極めて平凡な一日6:2008/05/13(火) 03:59:31.54 ID:LaqCg9lv
…ってアレ?
違和感。身体がいつもと違います。
身体中の全機能が低下していく感覚、眠りと似ているけど何処か違う。
声も出す事が出来ません。…怖い!
ご主人様に会う事が出来なくなる!そんな恐怖が私を襲います。
嫌だ!そんなのは嫌だ!ああ…!
だけども私はその感覚に逆らう事は出来ず、眠りとは違う意識の暗闇の中へと落ちていきました。



気付けば私はご主人様に背負われて、家への帰り道の途中でいました。
「いきなり気を失うからびっくりしたよ。ルウに聞いてみたら、
それはただのオーバーヒートでしょうからなんら心配はありません、だってさ」
ご主人様の背中の上に居る事に気付いたそれ所ではありません。
トク、トク、トク、トク。
心臓の音がいつもより速く聞こえて、ご主人様に気付かれやしないかと少し不安になります。
だって気付かれたら恥ずかしいじゃないですか。
あ、そういえば私マシナリーでした。よく考えたら心臓ありません。
この鼓動はご主人様の物なんですね。
ふふ。ちょっと残念な気がしましたけど安心しました。
「私マシナリーで良かったです」
「なんだそりゃ、変わった奴だな」
ご主人様は笑います。
…トクン、トクン、トクン…。
だってそうでしょ?
こうしてご主人様に背負われていても、マシナリーである私ならこの小さな鼓動を聞かれなくて済むのですから…。
355名無しオンライン:2008/05/13(火) 04:00:49.40 ID:LaqCg9lv
勢いだけでこんな長文を書いてしまった。スレ汚し正直すまんかったorz
356名無しオンライン:2008/05/13(火) 18:20:35.65 ID:Md4+f45s
うむ、パシリはやっぱ黒可愛いくないとな
キャラが生き生きしてて読んでておもしろかった、GJ!
357EPX 10章「a decisive battle(前編) 1/5」:2008/05/13(火) 22:15:19.48 ID:m0koaUhk
身にまとう、漆黒のボディースーツが闇に溶け込む。
ガジェット量産基地の薄暗い通路が私の黒尽くめの身体を覆い包み、敵の目をくらます役目を担う。
駆ける。ただ駆ける。
狙うはガジェット生産工場、そしてその制御装置。

基地の場所は、イルミナスの拠点を潰していく過程で比較的早くに判明していた。
が、うかつに手を出すと誘爆システムにより大量のAフォトン爆弾が一度に爆発し、
メルボア・シティの悲劇を再発させてしまいかねない。
その解除を行う手立てが見つからずに今まで手をこまねいていたが、ある情報が私に決意させた。

今日、この日。あのハウザーが視察のため基地を訪れるという情報。

ハウザーは、単なるイルミナスの幹部ではなかった。
SEEDフォームを操るその一点だけでも、プラントで出会った時から異質なものを感じてはいたが。
実際にイルミナスに入り、彼の直属の部下として働いたわずかな期間で、それはよりはっきりと感じられた。
他のイルミナスの面々とは、明らかに一線を画した存在であることを。

イルミナスの首領であったルドルフ・ランツの死と、それに代わる新首領の誕生。
その本当の意味を知っている人間で、「自分の意思を持っている者」は恐らく私一人だろう。

ヒトとヒトとの争いの範疇を抜け出した、より根本的な脅威。
イルミナスの力を根こそぎ奪い取ったハウザーを評すに、この表現は決して大げさではない。
私を陥れた私怨を抜きにしても、グラールそのものの滅亡に関わる存在を見過ごす道理はなかった。

たった一つ。
メルボア・シティの悲劇を再現せずに、ガジェット基地の破壊とハウザーの抹殺を同時に果たす方法がある。
図らずもハウザーの力の一部を分け与えられることになった、私にのみ行使できる方法が。

「…最後の確認に、おあつらえ向きの相手ね」
こちらを捕捉したマシナリー、GSM-05シーカーが通路の奥から3体、機械音を響かせて迫ってくる。
私はこの期に及んでなお躊躇っていたが、やがて意を決して右手の手袋を外す。
あらわになる自らの掌から、意図的に目をそらす。

シーカーが狭い通路にも関わらず、側面に回り込もうと虚しく壁に機体をこすりつける仕草をよそに、
私は一気にその内の一体目掛けて突進する。
発射される頭部ミサイルを横目にやりすごし、あらわにした掌を機体の中央に接触させる。
358EPX 10章「a decisive battle(前編) 2/5」:2008/05/13(火) 22:18:36.27 ID:m0koaUhk
素手でマシナリーを破壊することなど、当然私にはできない。
その代わり、狙いを定めたその一体は、やがて私を付けねらう動きをやめていた。

「さあ、動きなさい…私の意思に従って」
言葉と共に、力強く念じる。
それに呼応するように、狙いを定めた一体は他の2体に向けて攻撃を始めた。

私の体内に蓄積されている、膨大な量のSEEDウィルス。
有機物、無機物を問わないイルミナスの新型SEEDウィルスは、私の皮膚を通していとも簡単に感染をとげる。

あのモトゥブで散布されたSEEDウィルスは、私の身体をも蝕んでいた。
防護スーツの隙間から入り込んだウィルスに感づいた私は、イルミナスを抜ける前にある場所に立ち寄った。
ハウザーの指揮の元、SEEDウィルスの研究を行っていた研究室。
そこに放置されていた、試作中の抗SEED剤…これが、単なるSEEDフォーム化抑制の薬でないことは、
ハウザーから直接聞いていた。

『私がプラントでSEEDフォームを操っていた、その理由の一端がここにある。
きっかけは、とある事故に私自身が巻き込まれた結果、私の中に特別な抗体ができたことから始まる』
『…抗体?』
『そうだ。本来SEEDフォーム化してもおかしくなかった私は、何故か逆にSEEDを操る術を身に着けていた。
いくつもの偶然が重なった奇跡と言えるが…それで終わらせるのは惜しいと思ってね。
研究班に、私の抗体を基にしたある薬を量産するよう、命じたのだ』

その薬こそが、私が研究室から持ち出し、私がヒトの姿と意思を保つため常に携帯している抑制剤だった。
この薬の服用により、私は体内のSEEDウィルスによる変異を抑えるだけでなく、
元々ウィルス自身が持っている、感染者への意識干渉に方向性を持たせることができるようになるという。
その代わり、試作中のためか強力な副作用があり、服用者は確実に寿命を縮めることになる。

SEEDへの干渉能力より、もっと安全性を重視した薬を作ってはどうかと提案したが、ハウザーは無視した。
今思えば、当然のことだった。
ハウザーにとってイルミナスは使い捨ての駒であり、安全性などは考慮する必要のない事項だったのだから。

私は今まで、ヒトとしての最低限の尊厳は忘れまいと、このSEEDへの干渉能力はないものとして封印してきた。
が、他ならぬハウザーを倒すために、私はその尊厳すら捨てる決意をしたのだ。

実験の結果は良好だった。
SEED感染させたシーカーは私の意思を受け、最後には自爆して他の2体を巻き添えにし、その機能を停止していた。

「…本番は、これからね」
たどりついた、ガジェット生産工場。そこにたたずむ制御装置を睨み、私は一人呟いた。
359EPX 10章「a decisive battle(前編) 3/5」:2008/05/13(火) 22:24:11.13 ID:m0koaUhk
「くっ…さすがにGRMの最新技術で作られているだけは」
制御装置へのSEEDウィルス感染を試みた私は、改めてGRMの技術の程を見せ付けられる結果となった。

ガジェットの誘爆システムを管理する、集中管理システム。
それを私のSEEDウィルスに感染させれば、私の意思一つでシステムの解除は可能となるだろう。
それだけではなく、ガジェットの爆発の規模すらも調整し、この基地のみを跡形なく破壊することもできる筈だった。
その爆発にハウザーを巻き込み、全てを終わらせる。それが私の狙いだった。

だが、GRMそのものがSEEDウィルスの研究を行っているだけあって、それに対する防備も優れていた。
通常、ウィルスは感染媒体の中でどんどん自発的に増えていくのだが、それが装置に影響を及ぼす前に、
内蔵されているセキュリティシステムがウィルスを駆逐してしまうのだ。

もっと、一度にたくさんのウィルスを送り込むことができれば話は別だが、
掌からの接触感染だけではどうしても、これ以上のウィルスを一気に送り込むことはできない。

どうすれば、GRMのセキュリティシステムを上回るウィルスを一度に送り込むことができるか。
少し考え、やがてまた一つの案が思い浮かぶ。今まで覚悟していたより、さらに絶望的な案が。

試作の抗SEED剤は、体内のSEEDウィルスが心身に影響を及ぼすのを防ぐことはできるが、
ウィルスの増殖そのものを抑えることはできない。
増殖の一途をたどるウィルスを抑えるため、身体にかかる負担も比例して高まる。
それが服用者の寿命を縮める要因となるのだが、私はこれを逆用することを思い浮かべていた。

例えば、爆薬などで私の身体を開き、体内のSEEDウィルスを一気にばらまけば。
接触感染に加え、空気感染により周辺もろとも感染させられる可能性は高い。
いわば、この部屋全体を小型のHIVEと化するのだ。私の意思を乗せた、特殊なHIVEに。

自分で考えておきながら、思わず身を震わせる。
要するに、自爆と同じことなのだ。自らの命を自分で絶つ、生命の本能に逆らう行為。
元々、この甚だ完成度の低い薬を服用している時点で、死は避けられないものと覚悟はしていた。
が、今ここで命を絶つことを考えた時点で、その覚悟がまだ非常に弱いものだと思い知らされた。

今、ここで死ぬ。
いつか、どこかで死ぬという漠然としたものでなく、目の前につきつけられた事実。
こんな擦り切れた命でも、それを失うとなると自分でも驚くほどにそれを拒む気持ちが頭をもたげる。
死にたくない。そう思うのは命あるものの本能であり、恥ずべきことではない。
しかし、命に代えてもという決意が、目前にある死のイメージを前にこれほど揺るぐものとは。

理屈も何も超えた、本質的な恐怖。
「怖い」ただその原始的な感情一つが今、私の心、信念、理想の全てを黒く塗り潰そうとしていた。
360EPX 10章「a decisive battle(前編) 4/5」:2008/05/13(火) 22:26:36.19 ID:m0koaUhk
別に、ハウザーなど自分がやらなくとも誰かが倒してくれるかも知れない。
自分の道を違えることになろうと、生きてさえいればやり直せる。
そんな自己保身の本能から来る言葉を否定しようと、私は必死に己を叱咤する。

ここで自分がやらなければ、ハウザーによってさらなる不幸が撒かれる。
モトゥブの民を苦しめたより、さらに大きな悲劇が引き起こされてもいいのか、と。

ダグオラシティで見た、大勢の苦しむ人々の姿を思い出す。
彼らは皆、今の私と同じように突然の死の恐怖にさらされたのだ。
何の覚悟も持たされないまま、何の選択の余地もなく。
それを引き起こしたのは自分だ。自分が彼らの顔を恐怖に歪めたのだ。
ここで自分が死の選択肢に屈して道を違えたとしたら、彼らは何と言うだろうか。

彼らを否応無く殺しておいて、自分が同じ立場に立ったら尻尾を巻いて逃げ出すのか。
それでは私が彼らにやったことを、自分で肯定することになる。
彼らにやったことを悔いてなどいないと、証明することになってしまう。

私が見たかったのは、彼らの苦しむ顔なのか?
違う!
私はいつだって、彼らの笑顔が見たかったのだ。守るべき人々の、心からの笑顔が。

ならば、比べてみるがいい。
ハウザーによって将来苦しめられるであろう、大勢の守るべき人々。
彼らの苦しむ顔と、喜ぶ顔。どちらが見たいのか。
自分一人の死の恐怖と引き換えに、彼らの恐怖の顔を笑顔に変えることが許されるのならば。

私の信じた道は、そのために今まで築かれ、踏みしめられてきたのではないか。
あらゆるものを奪われ、汚され、それでも唯一残された、心の財産なのではなかったか。

いつの間にか、膝を抱えてうずくまっていた。
顔を上げた時、私は改めて決意していた。

私は、ここでハウザーを倒す。
グラールの民に振りまかれる恐怖の種を、私の手で取り除いてみせる。
そうして私は、唯一の財産を心に抱いたまま彼らに会いに行こう。
私の手で殺めた、私の守りたかった、モトゥブの罪なき大勢の人々に。
361EPX 10章「a decisive battle(前編) 5/5」:2008/05/13(火) 22:32:46.48 ID:m0koaUhk
死の直前に込めた意志でウィルスに干渉できる時間は、そう長くないだろう。
まして相手がハウザーなら、時間をかければ逆にSEEDの制御を奪われかねない。

視察に来るなら、ハウザーは必ずこの生産工場を訪れる。
それまでじっと身を潜め、彼がこの部屋に来る気配を感じ次第、直ちに作戦を決行する。
誘爆システムの解除、そして必要な分のガジェット起爆。
一瞬のうちに行えば、さすがに制御を奪われる暇はない筈だ。

残りわずかとなっていた抑制剤を服用し、じっと息を整える。
心の中で、繰り返し体内のSEEDウィルスにやるべきことを呼びかける。
自爆によって振りまかれるウィルスに、自分の意志を十分に乗せるために。

ハウザーはかつて、SEEDも使い方によっては人類のためになり得ると言った。
もちろん彼は口から出任せのつもりだったのだろうが。

「…皮肉なものね。私は貴方を殺すことによって、貴方の言葉を証明するのよ」

恐らくは最初で最後の、SEEDウィルスを真にヒトのために使う機会。
それを、既にイルミナスを抜けている私が、「SEEDの有効活用」を口にするハウザーに対して使う。
何とも皮肉な話だった。

一方で別の妄想も、脳裏に浮かんでいた。
間一髪のところで、私に差し伸べられる救いの手。
常に私を慕い、後ろをついて来ていた、私の無二の相棒。その成長した姿。

こんなことを考えること自体、まだ未練がある証拠だと、再び自分を叱りつける。

迫り来る、死の足音。心が挫けないよう、固く目を閉じる。
やがて、入り口の扉が開いた音を耳にした時には、思わず心臓が跳ね上がる心地がした。
覚悟の時は、今。
イルミナスより渡されていた、自決用の小型爆弾を飲み込もうとしたが、その手がぴたりと止まる。

私はまだ、妄想を見続けているのか?
ありえないはずのその光景は、自分が夢を見ているかと錯覚するに十分なものだった。

懐かしい、しかし一回り大きくなったシルエット。
臆することなく真っ直ぐに自分を見つめてくる、よく見知った眼鏡の奥の瞳。
一目で成長の程がうかがえるその姿に、私は目元が潤むのを必死に抑えなければならなかった。

私の相棒、GH-412。彼女は、間に合ったのだ。
362EPX作者:2008/05/13(火) 22:36:13.39 ID:m0koaUhk
ついに再会を果たした、半端者の主従。
GH-412は、果たして彼女の主人を止めることができるのか。
中編へと続きます。
363名無しオンライン:2008/05/13(火) 23:11:36.61 ID:hYMN+z+7
うわ、もう少しで終わるのかと思いきや「前編」ときたか…
しかも「中」編へ続く…

面白いんだけど、自分の設定とキャラクターにそこまで思い入れがあるなら
他の投稿方法をとった方がより高い評価と敷居をゴニョゴニョ
スレッドはみんなで使ってね
364名無しオンライン:2008/05/13(火) 23:57:39.87 ID:m8RLGvZz
途中で投稿方法を変えると携帯の人とか困るから、ここまで来たらこのままで良いんじゃないかね。
最後にzipで一括うpとかもしておくと良いかとも思うけどね。
365名無しオンライン:2008/05/14(水) 01:34:57.09 ID:U3UkKYAg
>>364に同意〜
ここまで来て他に変えてとかってのは、
正直困るからこのまま最期までやって欲しいな〜
366名無しオンライン:2008/05/14(水) 10:12:48.00 ID:pkhgTSBy
ただでさえ超過疎だから
スレ投下のが良いかな、とは1意見
367EPX作者:2008/05/14(水) 20:15:37.42 ID:BM/baiaC
>363
もっともなご指摘に、何だか色々な意味で恥ずかしさをおぼえ、
残りはうpろだにまとめてあげて終わらせようかとも思いました。

ですが、後2回分でもあることですし、>364〜>366さんの意見もありますので、
このままあげてしまおうと思います。

今後、二度とこのような無謀な長編は投下しませんので、
今作だけは皆様方、堪忍袋の緒をきらさずこらえていただけるようお願いいたします。
368EPX 10章「a decisive battle(中編) 1/7」:2008/05/14(水) 20:17:23.90 ID:BM/baiaC
かつてのマスターとはかけ離れた姿。
それでも、紛れもない私の主人。丸玉の状態から私を育ててくれた、あのマスターだった。
再びマスターにまみえることができたというだけで涙が溢れそうになるが、ぐっとこらえる。
私がマスターを取り戻すには、まだやらねばならないことがあったからだ。

「…会いたかったです。マスター」
どう声をかけようかしばし迷ったが、結局は正直な気持ちが口をついて出た。

「ここへ、何をしにきたの」
マスターのいらえは感情が感じられず、普通ならばすげない反応と思われるものだった。
顔すらも布を巻いて覆い隠し、表情が読み取れなかったが、私は何も気にならなかった。
マスターがマスターとして今、ここにある。それ以上、何も望むことはない。

「もちろん、連れ戻しにです。ガーディアンズに」
「私は戻れない。それだけの罪を犯してきたのだから」
「いいえ、戻れます。どんな罪を犯そうと、それを償う気持ちがある限り」
「罪を償う。そんな都合のいいお題目に酔いしれる内、結局己の幸せに帰結するのは、私が許せない」
「ありません。マスターなら、そのようなことは」
「ヒトは、弱いものよ…ついさっきだって、私はもう少しで挫けるところだった」

マスターが何に挫けるところだったのか、それは気になったが。
私の返す言葉は、決まっていた。

「ヒトは、一人では弱くて当たり前なのです、マスター。私も一人では弱いままだった。
ガーディアンズで見つけた、多くの仲間…それに支えられて今、私はここにいるのです」
「…あなたは、見つけたのね。心許せる仲間を」
「はい。マスターにも、私がいます。マスターが挫けそうな時は、私が支えます」
「言うようになったわね。『私がついています』とは昔から言っていたけど。
『支える』なんて言ったのは、これが初めてよ」

しばし、沈黙が部屋を支配する。
Aフォトン爆弾『ガジェット』の駆動音が静かに響き渡る。

「…これから私が、ここで何をしようとしていたか…聞きたいかしら」
やがて口を開いたマスターに、私は黙ってうなずいて返す。
369EPX 10章「a decisive battle(中編) 2/7」:2008/05/14(水) 20:18:53.89 ID:BM/baiaC
マスターの話によって、私はマスターの身に起こったこと、何をやろうとしていたかを知らされた。
私の予想を大きく上回る、苦難と試練の連続。
それに今まで独りで耐えてきたことを考えただけで、マスターの胸に飛び込んでしまいたくなる。
が、今ここでそんな甘えを見せては、マスターは決して救われることはないだろう。
感情のまま泣き声を張り上げた所で、マスターの心が癒されることはない。

「……マスターは、間違っています」
マスターが、心の奥底で望んでいる筈の言葉。意を決して、口にした。

「マスターは、独りで事を成そうとしています。だから、命と引き換えにしかハウザーを倒せない。
ガーディアンズの力を合わせれば、ハウザーにも勝てます。相討ちを狙う必要もありません」
「私に、自らの責任を他人に押し付けるようなことをしろと?」

「ガーディアンズを、他人と思わなければいいだけのことです。
それに、力を合わせた結果導き出されるものも、れっきとした自分自身の力です。
私は、それを学んできました。一つの小さな命を…心を失うのと引き換えに、学びました。
マスター、これだけは言わせて下さい。
理想とは、人と分かち合って薄れるものではありません。むしろ、より強固なものへと変わりうるのです」

じっと私を見つめるマスター。
表情は伺えないが、私にはマスターが、目を細めて喜んでくれているように感じられている。
また、沈黙が続く。
私はただ耐え、マスターの出方を待つ。

「…あなたの言いたいことは、分かったわ」
再び沈黙を破ったマスターの言葉に、何かをふっきったような力強さが感じられた。
「ならば、証明してちょうだい。あなたがそうやって築いてきたものの力を。
私を止め、私に代わってハウザーを倒しうる強さを、あなたが手に入れたという証を」

私は、返答の代わりに、今まで絶えずかけていた眼鏡を、自らの手で外した。
「マスター…この眼鏡は、私がマスターに憧れてつけたものです。
常に、マスターの後をついていこうとした心の表れ…私は今、敢えてこれを外します。
マスターを救うために、マスターを越える…その決意の証として」

「そして、今こそ私は、誓いを果たします」
ナノトランサーから取り出した、二振りの小剣。
封印を解かれた真紅の刃は、私の小剣を振るう動きに合わせて幻想的な赤い羽を舞い散らす。

「『Dear My Partner』この文字と小剣に込められた、マスターの思いに応えるため。
マスターの心の半分たる私の力をもって、マスター…貴女を、止めて見せます」
370EPX 10章「a decisive battle(中編) 3/7」:2008/05/14(水) 20:20:21.43 ID:BM/baiaC
ガジェット生産工場からはなれた、基地内の一角。
その小部屋で、私とマスターは相対していた。
ガジェットの傍では万一を思って全力で戦えないだろうとマスターが言い出してのことだった。

互いに双小剣を構え、じりじりと距離を測ったまま時計回りに歩を進める。
半円を描いたところで足を止め、次の瞬間。
私とマスターの双小剣が、円の中央でぶつかりあっていた。

フォトンの干渉波がきらめく中、私は赤い羽を舞い散らせて次々と刃を繰り出す。
それをことごとく阻むマスターの双小剣は、しかしそれもこちらの身体に届くことはなかった。
手数が勝負の、双小剣のぶつかり合い。
赤と紫の二色のフォトンは、一歩も譲り合うことなく幾筋もの軌跡を絡み合わせていた。

やがて、マスターの攻撃にわずかな歪みが生じる。
キャスト特有の精密な動作を身上とする私の攻撃が、
そのわずかな隙に付け入ろうとマスターの左脇腹に延びていく。
が、それが届く前に、マスターは私の腹部を蹴り飛ばし、距離を取っていた。

ラインによるフォトンの干渉波が、蹴りのダメージをほぼ無効化する。
互いに離れて仕切り直しかと一瞬気を抜きかけたが、本能によって咄嗟に武器パレットの変更を行う。
出現したマドゥーグに、すぐさまテクニックの行使をさせる。
繰り出した火球は、間一髪のところで相手の火球を相殺していた。

右手に小剣、左手にマドゥーグをセットしたまま、二人で平行に部屋の中を駆け巡る。
飛び交う火球が或いは脇をかすめ、或いは互いにぶつかり合って爆音と共に視界を塞ぐ。
何度目かの火球の激突にタイミングを合わせ、私は小剣を手にマスター目掛けて懐に飛び込む。

「舞転瞬連斬!」
「飛懐蹴破斬!」

炎の幕を割って入ってきたマスターが、横回転の末体重をかけた小剣を振り下ろすのが垣間見えた。
フォトンアーツによって一時的に強化された脚部がマスターの刃とぶつかり合い、押しのけあう。

息をつく間もなく、マスターは大振りの槍を取り出し、頭上でひと回しした後真っ直ぐに突いてくる。
対して私は武器を双剣に切り替え、2本の刃で槍による鋭い一撃を脇へとそらす。
そのまま再び、フォトンの光の交錯が二人の間に繰り広げられる。

2本の刃で攻撃と防御を使い分ける私に対し、マスターは或いは刃で、或いは柄の部分で防ぎ、なぎ払い、
突き崩そうとしてくる。
やがて頭上に振り下ろされる槍を、交差させた双剣で受け止める形で二人は足を止めた。
371EPX 10章「a decisive battle(中編) 4/7」:2008/05/14(水) 20:21:42.66 ID:BM/baiaC
「ここまで成長していたなんてね。驚いたわ…本当に」
マスターが槍を引き、後方に飛びすさる。
もしかすると、これで終わるのかと一瞬思ったが、さすがにその考えは甘かった。

「だけど、成長しているのはあなただけじゃない」
そう言ってマスターが取り出したのは、三叉に分かれたフォトンの刃を取り付けた、手甲のような武器。
双鋼爪と呼ばれるそれをマスターが装着しているのを見て、私はある違和感を思い出していた。

440の映像記録でも、最後にマスターは双鋼爪を取り出していたが、私の知る限り。
マスターは鋼爪や鋼拳といった、素手に近い武器で敵を引き裂いたり殴りつけたりする武器は好まなかった。
そうであったが故に、私自身もその手の武器には詳しくなく、当然扱いにも長じていない。
あの時は、映像の中のマスターに対する懐かしい思いが大半を占めていたが、今思えば確かに疑問だった。

「生き残るため、こういう武器も使わざるを得なかった。あなたにこれが受け切れるかしら」
言い終わるや否や、懐に飛び込んでくるマスターの動きは、私の所有するデータにないものだった。
双方向からの爪の攻撃に加え、蹴りも含めた変幻自在の連続攻撃に翻弄され、
さらに下方向から振り上げられる爪の一撃に空中へと打ち上げられる。
体勢を整える間もなく、後を追って跳躍してきたマスターの一撃で強く地面に叩きつけられてしまう。

立ち上がろうとする私に、マスターの更なる追撃が容赦なくふりかかる。
突き出した両の手から放たれる、球状に圧縮されたフォトン弾。
身体のひしゃげるような感覚と共に、私は後方の柱に打ち付けられるように吹き飛ばされていた。

「【連斬星弾牙】…単体の敵用に特化した双鋼爪の奥義。生き残れたなら、覚えておきなさい」

柱を背に身を起こした私の身体に、鋭い痛みが走る。
今の技で大きなダメージを受けたのは確かだが、それとは別に、異質の痛みがあった。
身体の内部で、自分に対して反乱を起こされているような、不快な痛み。
原因は明らかだった。
ヤマタミサキ。敵の自滅をうながす感染効果を付与する武器の一撃を、私は受けてしまったのだ。

このままじわじわと命を削られる状態で、まともには戦えない。
私はすぐさま武器パレットを切り替え、状態異常治癒テクニック「レジェネ」を使おうとする。

「そんな暇を、私が与えると思う?」
冷たく言い放つマスターが、いつの間にか持ち替えていた杖を振り下ろした。
途端に、私の周囲一帯に降り注がれる、白色に近い輝きを放つ雷の槌。
地面への着弾と同時に稲妻を周囲に撒き散らす雷系の範囲テクニック「ラ・ゾンデ」は、
私の多少の回避も物ともせずに、周囲ごと私を巻き込んでしまう。
372EPX 10章「a decisive battle(中編) 5/7」:2008/05/14(水) 20:22:40.21 ID:BM/baiaC
幾度となく降り注がれる、雷の槌。
転がり回って直撃だけは避けるものの、感染による侵食作用と併せ、確実にダメージは蓄積していた。

何としても、マスターの攻撃をしのいで回復処理をしなければならない。
そんな私の目に映ったのは、先ほどしたたかに背を打ちつけた、部屋を支える柱の一つだった。
咄嗟に私はその柱の影に飛び込む。
範囲系テクニックといえど、視界をふさぐ柱の向こうの敵を巻き込むことはできない。
事実、やむことなく注がれていた雷の槌は、私が柱の影に隠れた途端ぴたりと止んでいた。

ほぅ、と一息を入れ、おもむろに回復杖を取り出す。
そんな私の背後から、柱越しにマスターの悲しそうな声が届いた。

「それで、防いだつもり?」

眼前に突きつけられたそれを見て、私はようやく思い出した。
440の映像記録で、キャストfGと戦った際に見せた、マスターのある戦法を。
柱の影に隠れて射撃を防いだ上で、マスターは何をしていたか。

ふわふわと漂う、黄色く発光する稲光をまとった光の球。
すでに柱を回りこみ、私の周囲で今か今かとその瞬間を待っていた。
私が柱の影から飛び出す前に、それは眩い光を放って爆発していた。

障害物をも回り込む、高性能の誘導弾とも言える雷系のテクニック「ノス・ゾンデ」
一度映像記録で見ておきながら、私はむざむざ同じ手をくらってしまったのだ。

回復もできないまま、身体の損傷も限界にきていたところにこの一撃は致命的だった。
急激に視界が暗くなり、身体の力が抜けていく。
震える足を何とか踏ん張り、柱によりかかって倒れることを拒否するが、
無慈悲にも2回目の雷球が視界をよぎった時、私は悟った。

この一撃に、耐えることはできないと。

ノス・ゾンデの破裂する音が、不自然な程遠くで聞こえたような気がした。
足の感覚がなくなり、ずるずると背中を擦る柱の感触も消えていく。
一瞬尻餅をつく感覚が脳を刺激するが、それもすぐに掻き消えていった。

真っ暗な空間に一人取り残されているような感覚だけが、ぼんやりと残されていた。
それもすぐに曖昧になり、やがて意識も大いなる闇の中に飲まれていった…。
373EPX 10章「a decisive battle(中編) 6/7」:2008/05/14(水) 20:23:40.46 ID:BM/baiaC
412は、本当に成長していた。
様子から見て、キャストへの強化措置を受けたのは明らかだが、そこから手に入れた強さは、
まぎれもなく412自身のものだった。

私と同じ、WTの機能を付与することを選んでくれたことも嬉しかった。
私の後をついてくるだけでなく、私を越えると言い切った時には、思わず抱きしめてやりたくなった。
戦い方も単なる私の猿真似でなく、WTとして真摯に鍛え上げ、自分なりに物にしたことは明らかだった。
私の一方的な【約束】を【誓い】にまで昇華させ、ここまで追いかけてきてくれた。

それだけで、十分だった。
誰に対しても恥じることない、自慢の相棒と胸を張って言えた。

「本当に…よく、ここまで…」
最早動くことのかなわない、412の冷たい頬をそっと撫でる。
あと、一歩。
私を止める、あと一歩が足りなかったことを責める気持ちなど毛頭なかった。

待っていて、412。あなた一人を、逝かせはしない。
ハウザーの野望を道連れに、私は私の道の最後の一歩を踏み出すから。
向こうに行ってから、好きなだけあなたの文句を聞いてあげる。
さびしかったでしょう、辛かったでしょう、痛かったでしょう。
思う存分、私にぶち撒けて構わないから。

先ほどまで、死の恐怖に必死に耐えながらどうにか覚悟を固めていたのとは、まるで違っていた。
向こうで412が待っている。そう考えると、死ぬのもそう悪くはないとすら思えてしまう。
そういう意味では、412の言っていた「一人では弱い」という言葉も、真理をついていたのかも知れない。

柱にもたれかかった格好の412を、静かに寝かせてやる。
眠ったような顔の412の顔を思い残すことなく見つめたあと、すっくと立ち上がる。

後は、やるべきことをやるだけだ。
そう心の中で呟き、412に背を向けようとした時のことだった。

412の首にかかっていた、見覚えのないお守りのようなもの。それが、異常な光を放ちだした。
何事かと見入る私をよそに、そのお守りはますます光を強め、ついには音を立てて砕け散った。
その次の瞬間、私は目を疑った。

完全に機能を停止していたはずの412が、ゆっくりとその身を起こし始めていたのだ。
374EPX 10章「a decisive battle(中編) 7/7」:2008/05/14(水) 20:25:06.87 ID:BM/baiaC
目を覚ますと同時に、私は自分の身に起こっていたことを思い出していた。
私は、マスターとの戦いに敗れ、その機能を停止した筈だった。
それが、今こうして、身体に何の損傷もない状態で身を起こすことができている。

「な、何故…完全に、機能を停止していたはずなのに」
マスターの狼狽する声を耳にしながら、私はある物に目をとめた。

fGが言っていた、母からもらったお守り。それが、見る影もなく砕け散っていた。
散乱している中身の破片を一つ手に取り、私は思わず息を呑む。

「これは…スケープドール…」
ナノトランス技術を利用した、最新の携帯医療装置。
所持者の命を奪うほどの傷や損傷を、自動的に完全回復させて砕け散るというこの道具は、
ガーディアンズでも然るべき階級の者が、大規模な作戦の際にのみ携帯を許される程の貴重品だった。

この小さな人形のような道具が、私の命の身代わりになったことは明らかだった。

ありがとう。貴方のおかげで、私はもう一度チャンスを与えられた。
母からのお守りを惜しげもなく託してくれたfGに、私は深く感謝した。
同時に、私の背中を押すいくつもの大きな思いが私を突き動かす。

「これが、私の得た強さです」
なおも狼狽の意を隠せないマスターに、私は立ち上がって言った。
「私一人なら、あの時点であなたに敗れていたでしょう。でも、私には彼らがいる。
私を隊長と慕い、彼らよりあなたを取ることを選んでなお、その帰りを待っていてくれる彼らが」

「あなたが…隊長ですって」
「ええ。でも、最初は周りを全く見ず、独りで空回りしているだけだった。
独りで戦うことだけが、自分の強さと疑わず。
そうしなければ、マスターに追いつくことはできないと思っていたのです。でも」

「本当は、逆だった。
マスターに足りない唯一のものを手に入れることで初めて、私はあなたの前に立つことが許される。
そうしてマスターにないものを補うこと…それこそが、唯一無二の相棒として必要なことだったのです」

「戦いはこれからです。私は、彼らが私に託してくれた力を駆使して、今度こそ。
あなたを、越えてみせます」
375EPX作者:2008/05/14(水) 20:33:16.17 ID:BM/baiaC
一度はマスターに敗れた、GH-412。
しかし、仲間の思いに背中を押され、再び立ち上がります。
今度こそマスターを止めることはかなうのか。そして、二人を待つ運命は。

次回、最終回。ご期待ください。
376名無しオンライン:2008/05/14(水) 22:06:59.26 ID:3kp6u3YF
あえて言おう!
wktkがとまらねえ!
377名無しオンライン:2008/05/15(木) 15:59:52.85 ID:K/GuCdjN
面白いからいいんだけどね、自分でも言ってるけど長すぎです
長くなっていいなら、いろんな場面が盛り込めるわ好きな所で切れるわで
面白くできるのは当たり前かも
378名無しオンライン:2008/05/15(木) 16:45:10.97 ID:PakZGzpw
面白いんだからいーんじゃない?
書きたい物が膨らんじゃったならしょうがないと思うけどなぁ
379名無しオンライン:2008/05/15(木) 18:36:49.83 ID:0aVyST0q
ちょいツン気味な>377の長編に期待汁!
って、ばっちゃが言ってた

それはそうと俺もwktkが止まらねぇ!
377も頑張れ!主に俺の為に!
380名無しオンライン:2008/05/15(木) 18:44:26.28 ID:P/i22ZtP
当たり前とは言うけど、人に理解して貰えるように適切で正確な言葉を選んで書こうと思えば、それなりの知識も時間もかかるだろうに
面白くできるのは当たり前、と簡単に言うには、どうかと思う出来だとは思うけどなぁ

俺も短いやつなら何度か書いて投下したことあるけど、長いやつは1話分書くのに5時間かかった上に、意味不明な文脈になったからやめたw
まぁ、俺がバカでアホなだけなんだろうけど('ω')
381名無しオンライン:2008/05/15(木) 19:57:11.76 ID:0aVyST0q
>380
いやここは一つ>377にお手本を示して貰おうじゃないか
当然、自分では書けないのに
「長ければ面白く書けるのは当たり前!」
なんて言わないだろうしさ!
面白くて長いSSって言うかLS!期待してるぜ!377!
382名無しオンライン:2008/05/15(木) 19:58:21.56 ID:S3G1sUzj
>>377
ダレさせないってだいぶ技術が居る事だと思うけどなぁ。
まぁ、期待して待ってるぜ!
383名無しオンライン:2008/05/15(木) 20:17:20.78 ID:19UBCO9p
そんな気張らずに書きたいものを書けばいいと思うよ。
話がごちゃごちゃになりそうだったら、
ノートなんかにキャラクターのイメージとか話のイメージとか殴り書きしてイメージを固めていけばいいと思う。

…と言っても自分もそんなに数かいてないから偉そうな事いえないけどなぁ。
384EPX 10章「a decisive battle(後編) 1/4」:2008/05/15(木) 22:01:35.77 ID:icIXj89u
立ち上がった412は、何故か上級回復テクニック「ギ・レスタ」を使ってきた。
戦闘不能者を蘇生させるほどの強力な回復テクニックだが、今ここで使う必要があるのだろうか。

412の思惑はともかく、再び双鋼爪を装着する。
紫の飛沫を撒き散らしながら、412目掛けて間合いを詰める。
【連斬星弾牙】少なくともこの技を破らない限り、412に勝ち目はない。

412は、一歩退いたかと思うと、いつの間にか持ち変えていた双剣を低く構えていた。
私の見たことのない構えだった。
脇に抱え込むようにしていた双剣の一方を、私の最初の一撃に合わせて勢いよく体ごと突き出してきた。

槍のように突き出された双剣を、竜巻のようなフォトンの渦が覆い包む。
私の爪による飛沫をまとった斬撃の全ては、双剣を覆う膜に弾き返されてしまう。
さらに一瞬の溜めを置いた後の一撃が、私を後方へと押し飛ばしていた。

吹き飛ばされながらも体勢を整え、着地と同時に両の手を脇に添え、フォトンを圧縮させていく。
【連斬星弾牙】締めの一撃であるフォトン弾を放とうとした時、私は見た。

412が双剣を振り下ろした軌跡に沿って迫り来る、巨大な斜め十字のフォトンの刃を。

巨大な十字の刃は突き出したフォトン弾を飲み込むようにかき消し、さらに双鋼爪本体をも打ち砕いた。
私の見たことのない、双剣の奥義。
412がこんな技を身に着けていたことに、驚きを隠せなかった。

「ガーディアンの技は、日々進歩しています。マスターがいなくなった、その後も」
砕かれた双鋼爪の破片を呆然と見つめる私に、412が双剣を振り下ろしながら語りかけた。
「今の技は、『クロスハリケーン』…部下のfFが私に託してくれた、双剣の新奥義です」

「あなたに…託した?」
正直、412の言ったことはまだ理解しきれていなかった。

「ガーディアンズの規約を破ってまで、彼らは私にPAディスクを渡してくれたのです。
改めて言います。今の私は、独りで戦っているのではありません」

「…借り物の力で、私を倒せると思わないことね」
仲間の力を借りて戦う。言葉とは裏腹に、私はそう言い切った412に何ともいえない頼もしさを感じていた。
が、手を抜くわけにはいかない。
私は手近な柱の影に隠れ、ノス・ゾンデによる遠隔攻撃を図った。
一度は412の命を奪いかけた、このテクニック。これすらも、412が破れると言うのなら。
385EPX 10章「a decisive battle(後編) 2/4」:2008/05/15(木) 22:02:17.55 ID:icIXj89u
「fT。貴方のPAディスク、使わせてもらうわ」
駆けながらナノトランサーからディスクを取り出し、セットする。
そのまま片手杖を取り出し、柱の前で足をとめる。
柱の左側から回りこんできた雷球に素早く反応し、反対の右方向から柱の向こうへと飛び込んだ。

柱を背に杖を構えたままのマスターと目を合わせる。
雷球はすぐに柱を回りこんでこちらを追尾してくるが、その前に私は杖を突き出していた。

構えた杖を中心に、眩いばかりの白色光が放たれる。
白色光は私の身体をすっぽり包み、周囲へと広がっていく。
柱の向こうから回り込んできた雷球は、私の放つ光の奔流に包まれて空しく消滅した。
光の衝撃波はそのままマスターをも巻き込み、柱に磔の状態へと追いやる。

光属性、唯一の攻撃テクニック「レグランツ」
自らも光の衝撃波にさらされ、傷を負う事を厭わない精神力を持つものだけが行使できる、特殊テクニック。
その絶え間ない光の奔流は、完全にマスターを柱へと固定し、ダメージを与え続けていた。

やがて、柱の方が衝撃波に耐え切れずに瓦解した。
瓦礫の中からマスターが身を起こす間に、私は再び双小剣を取り出す。

「勝負です、マスター」
真紅の双小剣が舞い散らす赤い羽の渦を突っ切り、マスターの懐に飛び込む。
対抗して双小剣を取り出し、正面から切りつけるマスターが私を捉えることはなかった。

自分でも制御困難な、空中での複雑な軌道修正に内心悲鳴を上げながら、それでも果敢に斬りかかる。
すっかり翻弄されている様子のマスターの背後に、さらなる一撃を繰り出す。
背後からの一撃すら防ぐマスターを視界に納めたまま、上空後方へと退避した。

「それも、新奥義ね…どうやら、予測困難な軌道による一撃離脱の奇襲攻撃。でも」
マスターが片手杖を取り出すのを、空中から視認する。
「逃げたつもりでしょうけど、忘れないで。私はWT、遠距離攻撃もお手の物よ」

私の着地に合わせて、恐らくは強力な単体テクニックを叩き込むつもりだろう。
逃げ場はない。このまま私が何もせずに着地するのなら。

φGから授けられた、双小剣の奥義【連牙宙刃翔】
その真価は、この一見攻撃後の予備動作と見える、後方への退避から発揮される。
極めて強力、かつトリッキーなこの技に、さすがのマスターも裏をかかれた様子だった。
左右に携えた、浮遊しながら膨大な量のフォトンリアクターを纏わせる双小剣。
それを、一気に解き放った。
386EPX 10章「a decisive battle(後編) 3/4」:2008/05/15(木) 22:03:02.37 ID:icIXj89u
真紅の刃が圧倒的な量のフォトン光に包まれながら、真っ直ぐに私目掛けて襲い掛かる。
防御のためにかざした私の双小剣をいとも容易く斬り裂き、私の身体を激しく撃ち貫く。
ラインによる干渉波が大きく私を後方に弾き飛ばし、ぶつかった壁をも打ち砕く。

すさまじいばかりの、双小剣の新奥義。
412の一撃は、私を壁にめりこませ、身体の力を根こそぎ奪うに至っていた。
ラインによる干渉波が身体を両断されることから防いだ一方で、その衝撃は全身を駆け巡り、
指一本動かすこともかなわないくらいに私の身体を痛めつけていた。

薄れ行く意識を、死力を尽くしてつなぎとめる。
まだ、まだ自分は戦い抜いていない。
ここで倒れて納得のできるほどに、自分は力を出し切っていない。

瓦礫が巻き上げる煙の向こうで、自分を呼ぶ声が雄叫びとなって響く。
最後の決着を、つけようと言うのだ。
ならば、応えなければならない。

震える手に渇を入れ、ナノトランサーから槍を取り出す。
残された力を振り絞り、最後の一撃を放とうと、壁にめり込んだ姿勢のまま呼吸を整える。
煙の向こうできらめく、真紅のフォトン。
二筋の赤い閃光と化して迫り来る、その影の中心目掛けて、渾身の力を込めて槍を突き出した。

確かな手応え。致命傷ではなくとも、これで412は動きを止めざるを得ない。
後は、それを引き抜いてから止めの一撃を見舞うのと、412の反撃のどちらが早いか、その勝負の筈だった。

ところが、煙をかき分けて迫る412に、勢いの衰えは全くなかった。
代わりに、我が目を疑う光景がそこにあった。
脇腹を貫いたその傷口を、白い光が覆ったかと思うと、一瞬の間に癒してしまっていたのだ。
その光に、見覚えはあった。
それは、先ほど412が行使した回復テクニック「ギ・レスタ」と全く同じ光だった。

ギ・レスタに、多少の自動回復能力があることは知っていた。
だが、所詮それは雀の涙程度で、これほどの傷を一瞬で癒す力は無い筈だった。

まさか、これも私のいない間に開発された、私の知らない能力だと言うのか。
そんなことを考えている間に、412の小剣の一方が下方から突き上げられていた。
宙高く舞い上がる、私の槍。
そして、もう一方の小剣が、真っ直ぐ私の喉元へと伸びてくる。

412の刃は、私の喉元につきつけられる形で止められていた。
387EPX 10章「a decisive battle(後編) 4/4」:2008/05/15(木) 22:03:46.60 ID:icIXj89u
マスターの、最後の一撃。まさかの反撃に、私は完全に不覚を取っていた。
守ってくれたのは、GTの授けてくれた回復テクニック「ギ・レスタ」。
彼と、そして他の皆の助けがあって今。私は、こうしてマスターとの決着をつけることができたのだ。

私は真っ直ぐにマスターの瞳を見据え、成り行きを見守る。
マスターがこれで納得しないというなら、納得するまで戦うまでだ。
例えマスターが私の命を奪おうと、私がマスターの命を奪うことは有り得ない。
マスターを殺してしまっては、私がここに来た意味がないからだ。

しばしの沈黙の後。
マスターが、ゆっくりと手を伸ばし、喉元に突きつけている小剣に触れた。
されるがままに任せる。例え、このまま小剣を奪って私を刺そうとも、それがマスターの意志ならば。

「…『Dear…My…Partner…』」
マスターは、静かに私の指を開き、柄に刻まれた文字をなぞりながら、囁いた。

「ありがとう。約束を…いえ、誓いを、果たしてくれて。そして…言っていいかしら」
固唾をのんで、マスターの唇の動きに全神経を注ぐ。
心臓が高鳴り、手足が震え、息苦しささえどうでもよくなり、ひたすらにマスターの言葉を待つ。

そして放たれた、マスターの一言。

「…ただいま、412」

その瞬間、私は何もかもかなぐり捨ててマスターにしがみついた。
待ち望んだ言葉に対して用意していた一言もいえず、ただひたすらに声を上げる。
440を失った時も、マスターの病を知った時も我慢していた涙は、今や後から後からあふれ出し、
とめどなくマスターの胸を濡らしていた。

マスターが、そっと私の頭に手を乗せる。
その懐かしい、暖かい感触が一層私の声を張り上げさせる。

「おかえりなさい、マスター」
その一言すら泣き声にまぎれて言えないでいる私を、マスターはいつまでも優しく抱きしめていた。

私の任務は、完了した。
いや、任務でも、役目でもない。
私は、私自身の意思をもって。

ついにマスターを、この手に取り戻したのだ。
388EPX 第三部エピローグ 1/4:2008/05/15(木) 22:05:08.47 ID:icIXj89u
あの後、私達は丁度基地から脱出しようとしていた師匠とめぐり合い、その助けあって帰還を果たした。
すぐさま基地に引き返そうと総裁室に向かう師匠を尻目に、私はにマスターを集中治療室へと運んだ。
シドウ博士の治療を受けたマスターは、どうにかSEEDフォーム化は免れることができた。
が、やはり今まで服用していた薬の副作用のため、余命はいくらも残されていないとの結論だった。

それならそれで、残された時間をマスターと精一杯過ごすだけだ。
判決を待つ謹慎中の身であるマスターだが、私は片時も離れることなく付き従っていた。
互いのいない間のことを、語り合う。幾晩費やしても、尽きることがなかった。

マスターに関する、非常に悲しい事実が一点判明した。
マスターの身体は、既にSEED侵食と薬の抗作用のあおりを受け、見る影もないほどに崩れていたのだ。
黒とも茶色ともつかない斑紋が身体中を覆い、肌はぼろぼろにささくれ、干からびている。
およそ人相の変わり果てたその姿をマスターと見分けられるのは、私以外にはいなかったろう。
常に黒づくめの格好で肌を隠していたのは、ウィルスの感染を防ぐだけが目的ではなかったのだ。

それでもマスターは、二人だけの時は顔を覆う布を外し、素顔になってくれる。
その姿で私が何ら嫌悪の念を抱かないと、信じてくれているのだ。

マスターの療養を兼ねた謹慎中に、ガーディアンズでは次々と明るいニュースが飛び込んでくる。
イルミナスの壊滅。それと提携していた、GRMの一斉摘発とそれを継ぐ新社長の話。
かつてのお尋ね者、イーサン・ウェーバーのガーディアン復帰…これはまだ噂話の域を出ないが。
何より、マスターの宿敵であったハウザーが、師匠との死闘の末、見事倒されたという話。
ガーディアンズが、グラールの平和を守るに足る存在だと、マスターにも証明できたのだ。

もっとも、マスターは喜ぶ一方で懸念も抱いていた様子だった。
ハウザーは、本当に死んだのか。或いは、その背後にある何者かが残ってはいないか。
今は考えないようにと、マスターに勧める。
例え、その何かがあったとしても、今のガーディアンズならばきっと大丈夫だと私は確信している。
マスターも、穏やかな顔で同意してくれていた。

それらの情報を持ってきてくれたφG、それに他の第2小隊の仲間達も見舞いに来てくれた。
私が元PMだったと知ると皆一様に驚いていたが、それで失望する者は一人もいなかった。
イルミナス壊滅作戦での武勇談をfFが面白おかしく語る中、私はそっとfGに謝罪する。
母のお守りを壊したことを、fGは黙って微笑んで許してくれた。

元部下達とマスターの親交もつつがなく結ぶことができて、幸福感に満たされていた毎日。
そこに、突如水をさすものが立ちはだかった。
いや、水をさすなどと生易しいものではない。これまでの気持ちを一気に覆すに十分な事実。

「死刑」マスターに下される判決は、そう定められたのだ。
389EPX 第三部エピローグ 2/4:2008/05/15(木) 22:06:09.47 ID:icIXj89u
私が正式な裁きを受けた場合、死刑になることは分かりきっていた。
412は総裁に直談判までかけたらしいが、総裁一人の裁量でどうにもなるものではない。
私はパルムの囚人解放という、太陽系警察に真っ向から喧嘩を売るような真似もしでかしているのだ。
それを許していたら、グラール全体の秩序に関わる。見逃すべきではない。

或いは総裁は、途中から412に私の捜索を諦めるよう促していたことから、分かっていたのかも知れない。
私がイルミナスの然るべき立場にいたならば、それなりの情報と引き換えに刑を減じる、
いわば司法取引に似た処置が可能だったろうが、私は既に、かなり前からイルミナスを抜けていた。
死刑を免ずる程の情報は得られないだろうと判断してのことだったのかも知れない。

412は激昂のあまりイーサン・ウェーバーの件を引き合いに出すという暴挙にも出たらしいが、
逆に、彼については内部での問題として、ガーディアンズに裁決を任せてもらう代わりに、
私の件は太陽系警察に委ねざるを得なかったのだとも思える。

邪推をすると、総裁はモトゥブの同胞を殺めた私を最初から生かしておく気はなかった、という見方もある。
だが、それではさすがに412が哀れだ。
最初から、私を殺すつもりでいた総裁に踊らされた形となる。そうではないと信じることにする。

膝の上にすがりついて泣く412をなだめながら、窓から漏れる月明かりの元、ぼんやりと考える。
私は、不幸だったのか、と。
心ならぬ大量殺戮に手を染め、自身も病に侵され、女として見る影もない容貌に変わり果て。
それでいて、結局何一つこの世に残すものなく死んでいく。
人が耳にしたら、誰しも辿りたくない不幸な道だと忌み避けるだろう。

だが、私自身は、あまりその言葉に実感を感じていなかった。
何故だろうか、と考える私の手に、泣きつかれて眠っている412の頭が当たる。

ああ、この子のおかげだ、と合点がいく。
あのまま独りで死んでいたら、きっと不幸なまま終わっていたろう。
だが、この子が来てくれた。
目を見張る成長を遂げ、私を越える心と力を手にした姿を、見せてくれた。
他でもない、この子に止めてもらうことで裁きを受け、罪を清算できる。こんなに嬉しいことはない。

私は、幸せなのだ。

願わくば412には、私の道を継いでこれからも力強く生きてもらいたい。
だが、最早私を越えたこの子に、余計な口を出すべきではない。
412が選ぶ道ならば、黙って選ぶがままにさせてやろう。それが最後の、親心というものだ。

「それに、こう見えて頑固だしね、この子…私に似て」
390EPX 第三部エピローグ 3/4:2008/05/15(木) 22:06:57.14 ID:icIXj89u
マスターの刑が執行される、当日。
公開処刑場には、溢れんばかりのヒトが集まっていた。
中でもビースト達は、マスターが中央の処刑台に引き出される前から興奮のしどおしだった。

同盟軍を臨時に束ねているフルエン・カーツ大尉は、せめてもの便宜として、
マスターを元ガーディアンズの一員としてでなく、
既に死亡しているイルミナス工作員の別の一人として報告書を偽造していた。
これによって、マスターはガーディアン全体に不名誉な汚点を残すことはなくなったが、
代わりにマスターは、どこの誰とも知らない馬の骨として処刑されるのだ。
マスターを知る私にとっては、腹立たしいくらいに虚しい便宜だった。

刑場に付き添い、今も傍らにいてくれている師匠が、もう一度確認をしてくる。
本当に、いいのかと。
私は、既に決めたことです、ときっぱり返事をした。

私は、マスターの最期をこの目で見届ける。
見届けた後、私はマスターの後を追い、初期化してもらう。
その上で、永久に廃棄処分してもらう、と。

マスターは、或いは私に生きて欲しいと願っているかも知れない。
だが、もう決めたのだ。マスターを、独りでいかせはしないと。
最期まで忠節を尽くし、供をする。PM冥利というものではある。
だが、そんな概念などどうでもよく、ただ私は思うのだ。

誰にも真実を知られず、ひっそりと死んでいくマスター。
一人ぐらい、あの人の真実を知り、最期まで運命を共にする者がいてもいいじゃないか、と。

マスターは昨夜、そんな私の話を聞いて少し悲しそうな顔をしたものの、黙ってうなずいてくれていた。
私の決めた道を、尊重してくれたのだ。

第2小隊の皆への挨拶も、済ませておいた。
或いは涙し、或いは憤慨して止めようとするが、私の意思が固いと見て取ると、やがて諦めてくれた。
常に思慮深い、部隊の押さえ役であったfTが、皆を説得する役に回ってくれたのだ。
せめてもの手向けとして、彼ら全員とカードの交換をする。
私のカードが消灯する時、彼らには伝わるだろう。私の処分が、つつがなく済んだことを。
391EPX 第三部エピローグ 4/4:2008/05/15(木) 22:07:38.74 ID:icIXj89u
やがて、マスターが処刑台に引き出されてきた時には、場内の興奮は頂点に達した。
口々にマスターを罵り、唾を吐き、物を投げつける。
そのいくつかがマスターの顔に当たり血を流させるが、それで容赦するものではなかった。

マスターは、刑法によりあの変わり果てた顔を衆目に晒していた。
その容貌が、カーツ大尉の報告書偽造を容易なものにしたのは確かだが、
それで同情の余地が入ることはなく、むしろこの凶悪な犯罪にふさわしい顔として、
彼らの心に余計な火をつける結果となっていた。

ありったけの声で叫びたくなるのを、必死にこらえる。
誰も、マスターの真実を知らない。どんな思いで自分の罪と向き合ってきたのか、それすらも。

だが、マスターは全て覚悟の上だった。
自分に向けられるありとあらゆる罵詈雑言の全てを受け入れた上で、刑に服すると。
それで少しでも彼らの溜飲が下がるなら。このような犯罪に然るべき罰が下されることを示せるのなら。
マスターは、残り少ない命を、最期まで使いきろうとしているのだ。

マスターから預けられた、マスターのパートナーカードが久しぶりに点灯している。
このカードの点灯、それが再び消える瞬間。そして、その理由の真実。
恐らくは誰も気付かないだろう、虚しい明滅。せめて私一人だけは見届けたい。

いよいよ刑が執行されるにあたって、ようやく場内も静まりだす。
執行官が、最期に言い残すことはないか、マスターに尋ねる。
マスターは静かに首を振った後、毅然とした態度で空を見上げていた。
視線をたどり、私も空を見上げる。

澄み渡る、青い空。
きっとマスターは、あの時以来こんなに澄んだ空を目にしてはいなかったのだろう。
人目を忍び、闇にまぎれて地を這い回るマスターが久しぶりに見る、抜けるような青い空。
刑に服する、まさにその瞬間にそれを目に焼き付けるマスターの気持ちは、どんなものだろう。
考えると、どうしても涙が溢れ出てしまう。

視界がにじむ中で必死に目をこらす私に、ふとマスターがこちらを向いたような気がした。
遠目の上、涙でぼやけているにも関わらず、いや、だからこそ、その時見えたのだ。

マスターが、かつての綺麗な顔立ちのまま優しく微笑みかける、思い出の光景が。

感極まって意識が薄れ行く中、背後から師匠の声が遠くに聞こえたような気がした。
よく、がんばった、と。
392EPX 終幕「総裁への報告書」:2008/05/15(木) 22:09:26.14 ID:icIXj89u
以上をもって、一人のガーディアン、およびそのPMに関する報告を完了する。
かつての弟子を初期化するにあたって抜き出した記録の全てを、ここにまとめたつもりである。

今度の大規模な作戦に向けてキノコ狩りに従事する中、私はしみじみと考える。

無罪放免として華麗なる復帰を果たした、かつての英雄。
総裁の片腕として一躍脚光を浴びることになった、私。
それらの影に埋もれ、歴史の屑と果てた、知られざる一人のガーディアンのことを。

私や、イーサン・ウェーバー。彼女と何の違いがあったろうか。
同じガーディアンとして目指すものに、何ら変わりはない筈だった。
そういう意味では、彼女はもう一人の私-Another You-と言ってもいいのかも知れない。

さて、彼女自身が言っていたことだが、彼女は本当に、この世に何も残せなかったのだろうか?
それを語るにあたって、ある筋から聞いた逸話をここに記す。

ガーディアンズに憧れる子供達。
口々に、自分は将来何になるか語り合う。
ある子供はfFになって武器を振るいたい、またある子供はfTになって自在に法撃を操りたい、と。
しかし、ある一人の子供が、力強く語ったそうだ。

自分は、WTになりたいと。
かつて燃え盛る草原に取り残された自分を守ってくれた、力強くも優しさに満ちた背中に憧れて。
自分は、弱い者を守れるガーディアンになりたい、と。

私は総裁に、私が弟子と交わした約束を一点、敢えて破ることを提案したい。
かの子供がガーディアンとして成長するまで、このPMのコアを廃棄することは保留すると。
成長した彼と、このコアが出会った時。私は期待してしまうのだ。
二度とまみえることのない、かつての主従の再会、そして受け継がれ、紡がれる道という、奇跡を。

その時のことを考え、この報告書は厳重に保管しておくよう申請する。
そして、願わくばこの報告書は、秘密ではあっても、機密とはしないでおくことを。
そうすればいつか、成長した彼、或いは他の誰かががこれを手にし、知ることもあるだろう。

一人の、信念に殉じたガーディアン、そして最期までそれに尽くした、忠節無比のPMの真実を。

−アンドウ・ユウ−
393EPX作者:2008/05/15(木) 22:14:32.95 ID:icIXj89u
以上をもって、EPX 〜Another You〜 を完結とします。

呆れるほどの長編であるにも関わらず、応援や感想の言葉を下さった方々。
肌に合わない長編に堪忍袋の緒を切らさず、最後まで理性的に見守ってくださった方々。
勝手な引用を快く許してくれたばかりか、思わぬゲスト出演まで果たさせてくれた方。
スレのため、敢えて苦言を呈してくださった方々。

全ての方に、心から感謝の言葉を贈ります。
本当に長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。
394名無しオンライン:2008/05/16(金) 02:14:43.37 ID:2FnIdN0b
>>393
最後の最後で引用するのもアレだが、短編にて労いの一言を
395名無しオンライン:2008/05/16(金) 02:15:56.21 ID:2FnIdN0b
-Another Ending-



俺は今、412とコロニーの通路を歩いている。
買物の予定も何もないが、俺達はやらなければならない事があった。

もう1人の自分自身との挨拶を。

耳がどうにかなりそうなくらいの喚き声がこの場を支配している。
俺達のような現場の人間ならどうという事もないが、相手は一般人。
人を殺すその瞬間を公開すると言うなら、興奮して当然と言うものだ。
おまけに処刑されるのは、あの忌まわしきイルミナス…倍乗せと言うわけだ。

だが、俺達は知っている…処刑される人物の真実を。
こんな1枚の紙切れに頼らなくとも。

主人「分かるもんだろ…412? 同じ趣味の使い手の匂いって言うのがな」
412 「はい…どんなに頑張っても、PM時代の癖と言うのも中々抜けません」

412の"もう1人"は、今や輝けるポジション…いや、あの豚の片腕ではある意味不幸と言うべきか。
ともかくガーディアンズのエースと言われる1人の男の横で震えている。
412はそれを見て、声もかける事なく、ただ黙って頭を深く、そして静かに下げていた…。

俺はもう1人の自分自身を見つめていた。
それは最早人間とは言えないほどの異形のモノとなっていたが、俺には分かる。
例え他人に理解されない道であろうと、意地を貫き通した1人の戦士であると。
"もう1人の俺"もこちらを見つめているが、気付いてはいないだろう。
そんな事に構わず軽く敬礼をしながら、すぐに出た言葉は…。



主人「お疲れさん、〜〜〜」



-完-
396名無しオンライン:2008/05/16(金) 10:09:55.31 ID:/Gv93VGq
※長編作者に対する一切の批評を禁じます。
397名無しオンライン:2008/05/16(金) 18:55:33.56 ID:hYhPl54j
批判禁止では無くて批評禁止ですか。
書き手にとって批評って気になる物だと思うけどね。
398名無しオンライン:2008/05/16(金) 19:27:14.02 ID:2Wno2RrN
いい作品に長さは関係ない!
良かった!いいものをありがとう!
EPXの作者殿!
399名無しオンライン:2008/05/16(金) 20:09:07.91 ID:B4CbL0QX
EPX作者様本当にお疲れさまでした!
楽しみに見させて頂いていましたよ〜

感動をありがとー!
400名無しオンライン:2008/05/16(金) 21:00:20.67 ID:hKG/k6L7
>>398
同意。
長かろうが、短かろうが、面白い作品は面白いもんだ。
読み手は気に入った作品だけ読めばいい。
内容云々の批評でなく、ただ長いというだけでの批判するのはいかがなものかと思う。
書き手がいなくなったら、楽しむことも出来ないしな・・・

>>393
お疲れ様でした。非常に楽しめました!!
また機会があれば別の作品を投下してくださいな。

>>395
確かこのヒュマ男はレオには気に入られているが
ライアとは全く気が合わないんだっけかな?
それにしても豚は失礼だろう・・・










豚にwww
おや、誰か来たようだ。ちょっと見てくるノシ
401名無しオンライン:2008/05/16(金) 23:49:37.64 ID:bigvBPyt
素直に面白かったと思うよ。お疲れ様!
遅筆な自分ももうちょっと早く書けたらなあw

>>400
どうした、>>400!返事をしろ!>>400>>400ーーーー!!
402Not a Drill 1/8:2008/05/17(土) 01:03:38.12 ID:9kK4qigT
「あなたが好きです」

はう!
わ、私の事が好き!?え?え?え?
えええええええ!!!?
思考停止→(10秒経過)→再起動。
あなたが好きです。あなたが好きです。あなたが好き以下略(リピート)
冷静になろう。冷静に。えっと私の事が好きって事は当然そういう事でえーっとえーっと。

それが三日前の話。
今思い出しても火から顔が出る位(恥ずかしさの余りの言葉の間違い)恥ずかしいのだけど、
唐突に告白されてしまった。
本当に突然の事で嬉しいやら、恥ずかしいやら、どうしたらいいのかでもう大混乱。
しまいには腕をぶんぶん振り回すわ、口はパクパク空気を求めるわでもう大変。
当然返事が出来る訳も無く。
一人だったらどうにもならなかっただろうけど、
しっかり者の私のPMのリリカがどうにかその場を収めてくれた。ありがとう。
そして今私の手に握られているのは、その時リリカが貰ってくれたパートナーカード。
コレを見ているだけでその時の事を思い出して…。
はわわわわわわ!!!
403Not a Drill 2/8:2008/05/17(土) 01:04:14.23 ID:9kK4qigT
「はわわわわ!」
マスターがまた混乱しています。
困ったもので本日13回目。ちなみに通産129回目。
その様子がとても可愛かったのでとりあえず放置プレイして楽しんでいたのですが、
いい加減踏ん切りをつけた方がいいと思うので背中を押してあげる事にします。
「マスター、折角パートナーカード貰ったのですから、一応挨拶位はしておいた方がいいですよ」
私は手に持ったお茶をマスターの前に差し出し、自分の分を飲む。
美味しい。仕事(マイルームの掃除)の後のお茶はやはり格別ですね。
マスターの方を見ると、私の言葉が効いたのかパトカを取り出しポパピプペ。
『デートしてくれますか!?』
ぶはっ!(←お茶を噴出す音)
ど、どうしていきなりそういう直球投げるかな!?マスターは!
「ど、どぼじよう…動揺して私ったらとんでもない事をーーー!!」
メールを送って冷静になったマスターは頭を抱えてゴロゴロしだします。
か、かわいい…!
ってそんな事言ってる場合じゃない!
「マスター!とりあえず今のは間違え…間違えってのも相手に悪いですよね、えーっととりあえず謝罪のメールを!」
私も混乱していて何を言っているか理解不能。

ピンポーン。
マスターのパトカが着信を知らせる音。
とっても嫌な予感がします。

『勿論ですとも!』

その後、詳細に日付の相談とか来てしまったのでした。
404Not a Drill 3/8:2008/05/17(土) 01:04:46.15 ID:9kK4qigT
「ど、どぼじよ゛う…」
チャブ・ダイに突っ伏した私の言葉が部屋に響く。
正面にはちょこんと正座してお茶を飲むリリカ。
「とりあえず、行くしか無いですね」
ずずず…。そう言ってまたお茶を一口。
「そ、そんないきなりレベルが高い事!や、やっぱ最初は交換日記とか
 教室の端っこと端っこで思わず目が合っちゃって恥ずかしくてお互いに
 はにかみながら手を振ったりとかそういうプロセスを経てからぁあぁあぁ!!!」
お茶を置いて、チャブ・ダイを右手で一発。うわ、痛そう…。
「マスターは何時の時代の人ですか!こうなったら腹をくくってバッチリ決めて!バッチリ行って来るべきです!」
言い終えるとすっくと立ち上がり、ずびし!と私のほうを指差しながら決めの一言。
「そもそもマスターの好みど真ん中じゃないですか!あの人!」
「………」
「………」
場に訪れる沈黙。
私の沈黙が気になったのか、リリカは首を傾げながら聞いてくる。
「あの…?マスター?えっとまさかとは思いますけど、顔、覚えてない…?」
こくこく、しっかりと二回首を縦に振る。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ」
頭を抱えた盛大なため息。
「はぁ…仕方ないですね。ちょっとこっちに来て下さい」
そう言っててくてくとビジフォンの側に移動。
「実はコレあまりやりたくないのですけど…マスターの為とあれば仕方ありません」
リリカはビジフォンに繋がれてるケーブルを一本引き抜くと、自らのコメカミあたりに突き刺す。
「うーん、やっぱりあまり気分のいいものではありませんね…」
はわわわわ。頭からケーブルが出ています。はうぅ。痛そうぅぅぅぅ…。
「いいですか。よく見ててくださいね」
ビジフォンに目をやると、その時の画像が流れる。
整った顔立ち、すらりとした長い脚、その姿はまさに理想の白馬(が似合いそうな)の(私の)王子様!
こんなチャンスが次に来るのなんて…いやきっと二度と来ない!
なんだか急に元気になってくる。
「私、頑張るよ!」
405Not a Drill 4/8:2008/05/17(土) 01:05:22.27 ID:9kK4qigT
約束の日まで後三日。
自分の姿を鏡で見て、地面に埋まりたくなる。
こうなれば自分で穴を掘ってでも…!
「マスター!床を掘らないで下さい!」
「うぅ…うぅ…だって…」
「だってもヘチマもありません!
 マスターがチンチクリンなのは今に始まった訳では無いのですからそればっかりはどうしようもありません!
 ついでになんですか!このメールは!『私のいい所を教えてぇ!!!』自分の事は自分が一番分かってる物でしょう!?」
「だってだってぇぇ!!私の何処がよかったのかわからなくて怖かったんだもん!!」
私は恥ずかしげもなく涙を流す。
怖いのだ。誰かに好きと言われて、自分のいいところが分からなくて、でも誰も答えてくれなくて。
「大丈夫です!」
私は泣き顔のまま、大きな声で大丈夫だと言ったリリカを見る。
「マスターのいい所は私が知っています」
私の、いい所を…知ってる…?
「ど、どこ…?」
何処だろう?私にはよくわからなかった。
背も大きくないし、胸もあんまり大きくない、当然そうくればあまりお尻も大きくない。
顔も美人と言うよりは童顔だし、自分の好きな部分というのは無かった。
「全部です」
「ぜ、ん、ぶ…?」
「そう、全部です。その栗色の髪も、つぶらな瞳も、ちょっと控えめな胸も。
 出来損ないの私みたいなPMを育ててくれたその優しさも、全部が全部マスターのいい所です」
言葉を区切る。
「そんなマスターが、私は大好きです」
またちょっとの沈黙。
「だから…そんなに自分の事で泣かないでください」
そう言ってリリカはちょっと目線を逸らす。その目にはちょっと光るものがあった。
ごめん、ごめんね。私はあなたのマスターだもんね。
自分の大好きなマスターが、こんな事で泣いてたらPMのあなたも悲しいよね。
うん。わかった。大丈夫。
気付けば涙は止まっていた。
私はリリカを抱きしめながら。ごめんね、と言った。
それでも不安な物は不安だったりする。
長年持った劣等感はそう簡単には拭えない。
また愚痴愚痴言い出しそうになった所で間髪入れずにリリカはこう言う。
「努力しましょう!あと三日しかないですけど、やれるだけの事はやりましょう!」
406Not a Drill 5/8:2008/05/17(土) 01:05:54.89 ID:9kK4qigT
それから地獄の日々が始まった。
食事制限は勿論の事、鏡に向かって笑顔の練習100回とか、
普段のトレーニングよりも多い腕立て伏せやらなんやら。
なんでも胸の筋肉を動かすと胸が大きくなるとか。
絶対ついでにトレーニングさせられてる気がする…。
三日間のリリカによる地獄の日々をやり遂げて、ちょっとだけかわいくなったような気がする。
ほんとにちょっとだけ。
鏡に向かって笑顔。あれ?私こんないい顔で笑えたっけ?
そんな事を考えてると、リリカの声。
「マスター寝ましょう!すいみん不足は美容の大敵です!」
そう言われて布団に潜ってみたけれど…。
本番は明日。
ホンバンハアシタ…。
「ぜ、全然寝れなぁぁぁぁい!!!」
「ま、マスタぁぁぁぁぁ!!!」
そう、私は緊張のあまり全然眠れなかったのだ。

小鳥の囀り聴こえる爽やかな朝。
リリカが隣に居てくれたからだろうか。
あまり寝てないにも関わらず目覚めは快適で、もうあまり怖さは無かった。
やるだけの事はやった。そんな満足感が自信に繋がっているのかな?
後はとっておきの服でバッチリ決めて、バッチリ行くだけ。
そんな事を考えてると部屋に置いてあったハシラドケイが時間を告げる。
一回、二回…きっちり十回。
え!!もう10時!?約束の時間は確か10時。
大慌てて布団から飛び出す。
その勢いに隣で寝ていたリリカも目を覚ます。
リリカも時計を見て起きてしまった事の重大さに気付いたのか、もの凄い勢いで行動を開始する。
ナノトランサーから昨日二人で決めたとっておきの服やアクセサリーを出して私に手渡してくれる。
「マスター!行かないよりは行った方がいいです!」
言われて私が着替えをしたり、メイクをしたりしている間にリリカは軽い朝食を作って手渡してくれる。
「何も食べないよりはいいです」とコルトバを挟んだサンドウィッチ。
慌てて作ったからだろう、形は歪んでいたけど美味しかった。
準備を終えてマイルームから出ようとした時。
リリカに急かされる様に準備をしたけど、約束の時間はもう過ぎている。
待っている訳が無いよね。
そんな事を考え始めてしまった時。
私の手が引っ張られる。
「マスター!先ほども言いましたけど、行かないよりは行った方がいいです!」
リリカが私の手を引いて、凄い勢いで走り出していた。
407Not a Drill 6/8:2008/05/17(土) 01:06:20.30 ID:9kK4qigT
よくよく考えれば、私が付いて行く必要は無かった。
寝坊してしまったマスターはそれに負い目を感じて、きっと動けない。
だったら勢いで連れ出してしまえ。
考えての行動では無かったけど、きっとそういう事なんだと思う。
私はマスターの手を引いて走った。
準備の終わったマスターの手を引いて、マイルームから飛び出し、通行人に声をかけてどいて貰い、
今にも出発しそうなシャトルにもう一人乗る人が居る事を示して待ってもらったり。
マスターはそれでも何度か転んでしまったり、人にぶつかったりしてしまった。
身体は無事だけど、ちょっと人目には見られない姿になってしまったのが悲しい。
マスターの努力が報われますように。あとはそう願うだけ。
もし仮に格好だけで引いてしまうような奴なら…
そんな奴にマスターは任せられない。
これは奴への試金石だ。私はそう都合よく解釈する。

―――――そして私たちは約束の場所に着いた。
408Not a Drill 7/8:2008/05/17(土) 01:06:50.96 ID:9kK4qigT
約束の場所。
パルム中央広場の柱の下。
30分遅れてしまったにも関わらず、彼はちゃんと待っていてくれた。
「ごめんなさい…私、寝坊しちゃって…」
思わずうつむいてしまう私。
長い沈黙。
それはそうだろう。慌てて家を飛び出して、急いでここまでやってきた。
その間に転んだり、人にぶつかったりして髪はくしゃくしゃ。
無理して履いたちょっと大人っぽい靴のヒールは折れてしまっていた。
嫌われちゃったんだろうなぁ…。
今まで頑張って来たけど、やっぱり私にはチャンスなんて来なかったんだ。
そんな風に思う。
「あの…ごめんなさい、私帰ります」
そう言おうと思った矢先だった。
彼は私の頭に手を乗せて、優しい声でこう言った。
「いつものままで良かったのに」
初めて認識した彼の声。告白された時とはちょっと違う優しそうな声。
思わず笑顔になってしまう、私。
その優しさが嬉しかった。
顔を上げて彼を見る。
彼は私が今までに見たことのないような笑顔で笑ってくれていた。
409Not a Drill 8/8:2008/05/17(土) 01:07:27.85 ID:9kK4qigT
マスターが笑った。
それだけで私は満足だった。
後は二人だけの世界だ。私はマイルームに帰ってマスターの帰りを待とう。
きっと聞いてるだけで笑顔になってしまう話を持ち帰ってくれるはずだ。
「それではお邪魔虫はいなくなりますね」
私はちょっと意地悪く笑いながらそう言ってその場を後にしようとする。
一歩歩き出した所で言い忘れた事を思い出した私は、振り返って彼に向かってずびし!と指を出す。
勿論もう片方の手は腰に。
「マスターを泣かせたら許しませんからね!」
彼は少しきょとんとした顔をしていたけど、すぐに微笑んでこう言った。
「勿論。君のマスターを泣かせたりするような事はしないよ」
うん、合格。きっと大丈夫だろう。
その返事に満足した私は今度こそその場から去る為にくるりと向きを変えて歩き出す。
ふと空を見上げると、今日の空はいつもよりも青く見えた。
所々に見える白い雲は邪魔なんかじゃなく、その青さを更に際立たせてとても綺麗だった。
ふふ。今日は絶好のデート日和ですね、マスター。
410名無しオンライン:2008/05/17(土) 01:10:45.93 ID:9kK4qigT
とある曲を聴いていたら妄想が膨らんで来て勢いで書いてしまった。
妄想が膨らみ過ぎてこんな長さに。
正直、すまんかった…orz
411名無しオンライン:2008/05/17(土) 01:42:29.94 ID:Zit+hbqo
>>400
一応、ビス男である
炎の絶対防衛線で散々に馬鹿にされたこともあり、ライアに対して不信感を露にしている設定

ライア好きにはすまんが
412超極秘任務 1/4:2008/05/17(土) 11:03:03.53 ID:EVILzf2/

「ガーディアンズライセンスを確認しました。」

俺の顔を見てミーナが笑う。いや確認してなかっただろ今。
「顔パスってやつですよ、顔パス。もう覚えちゃいましたもん。」
コンソールに軽くよりかかりながら、慣れた手つきで片手タイプを披露する。一応緊急の
極秘任務があるという呼び出しを受けて俺はここに来ているはずなのだが…

「えーと、マリオンさんはこのまま総裁室へ向かってください。
 総裁から直接ミッションの説明があるそうです。」
はずむ様な声。緊張感のかけらも無い。
「なあミーナ、一応ほら…仕事だし…」
「ふふん〜。ほどよく楽しむのも、お仕事を上手にこなすコツなんですよ。
 私はお仕事を上手にこなす為に、わざとこうやって楽しそうにしているんですよ?」
「な、そうだったのか・・・!」
「はい。あ、ほら。こんな所で無駄話してるから、あそこで総裁が怖い顔で待ってますよ。」
「わあああ!うわあああ!うわあああっ!」
「星霊の導きがありますように♪」
「星霊に呪われろ!」

奥のエレベータ前に仁王立ちするツインテールの悪魔と目が合わない様に下を向きながら
俺は悠々と総裁室に向かって駆け出した。
413超極秘任務 2/4:2008/05/17(土) 11:15:22.27 ID:EVILzf2/

「アタシがこんな事を言うのも何だけどさ。」

直立低頭の姿勢で固まった俺の方を見ずに、ライア総裁はいつも通りのくだけた口調で
話し始めた。

「総裁っていうのは、すごく偉い立場の人がなるモンだと思うんだよ。
 だから、アタシは何度も無理だって断ったんだ。」
「はっ!」
「ガラじゃないのも自分で分かってるけどさ、アタシ確か最初の研修でアンタに言ったよな?」
瞬時にいい度胸をした新人だった俺の当時が思い出される。

「とりあえず総裁室へ行くか。続きの話はそこでしよう。」
最後まで俺の顔を見ずに、ライアは踵を返し転送エレベータへ乗り込んだ。
俺もこれに乗るのか。この空気で。

「早く乗りな。緊急ってワケじゃないが急ぎの任務なんだ。」

少し和らいだ声に一縷の望みを託し、俺は二つ深呼吸をすると
目を閉じてエレベータに飛び込んだ。
414超極秘任務 3/4:2008/05/17(土) 11:34:31.86 ID:EVILzf2/

エレベータの中で蹴られた尻をさすりながら、俺はライアの後に続いて
総裁室へと入った。

中にはメガネの男が1人、ルウが3人、そしてルミア・ウェーバーの計5人が
長椅子へ順番に行儀よく座っている。
全員の視線を受けながら、俺は長年培ったガーディアンズとしてのカンで
この任務が相当に手のかかるシロモノだと悟っていた。
恐らくメガネ以外の4人を連れての任務になるのだろう…。ルウx3+ルミア・ウェーバー。
如何なる手練と言えど眉間を押さえたくなるメンバー構成である。
もうやけくそになって俺はライアへ質問を浴びせかけた。

「こりゃ一体何の任務ですか?俺はルウシリーズのメンテナンスライセンスも
 指導教官のライセンスも持っていませんよ。まさか全員同行しての任務じゃないでしょうね?
 特にルミア・ウェーバーは…」
「黙りな。」
「はい。」

ルミア・ウェーバーの貫く様な視線を頬に感じながら、俺は任務の説明が始まるのを待った。

「実は…だな。」

ぼりぼりと頭をかき、急に声のトーンが落ちるアイアンメイデン・ライア・オブザフィアー。
耳が赤い。心なしか頬も赤く染まっている。視線が泳ぎ、まるで人間が照れている時の様な
仕草をしてみせる。

「照れてんだよ!アタシは人間だっ!」

どこからともなく丸メガネを掴んでこちらへ放り投げる。
俺はヒットした眉間をさすりながら、ライアの聴き取りづらいぼそぼそ話に耳を傾けた。
415超極秘任務 4/4:2008/05/17(土) 11:59:43.78 ID:EVILzf2/

「最初はこっちのルウに頼んだんだけどさ、あまりその手の情報に対する
 蓄積がなくて…売っている店の一覧と各店の所在座標だけ割り出してもらったんだ。
 で、モトゥブ支部のルウならビーストの文化に接する機会も多いわけだし、より多くの情報を
 蓄積しているだろうってルウが言うから、モトゥブ支部のルウに連絡を取って
 実際に探してもらったんだ…けど、モトゥブ支部のルウも」

「厳密にはダグオラ支部のルウです。」
3人いる内の、真ん中に座るルウが軽く手を上げて訂正する。

「あー、うん…どうせ支部は惑星に一人ずつしかいないんだからモトゥブ支部でいいよ…
 で、探してもらったんだけど、現在装着しているパーツは既に生産が中止されている事が
 分かったんだ。子供の頃からずっとつけてる年期物だからね…仕方ないと思ったよ。
 で、仕方ないから形状の似たものを探してきてくれる様モトゥブ支部のルウに頼んだんだけど
 確かにモトゥブ支部のルウはビーストの文化と歴史には詳しかったんだが、その…」

「本部ルウが列挙した店舗のうち、モトゥブに存在する店舗全てについて現地調査を行いましたが
 該当するパーツに類似したパーツを現在取り扱っている店舗は存在しませんでした。」
真ん中のルウが続ける。

「同様にパルムではワタシが、クライズ・シティ内の店舗は本部ルウが現地調査を行いましたが
 結果は同様でした。」
手前のルウが手を上げて補足し、奥のルウが続いて手だけを上げる。

「それで、ルウさんじゃダメだっていう事で私が呼ばれたんですよ。」
腕組みをしたルミア・ウェーバーが、先ほどの視線を向けて不機嫌そうな口調で締めた。


「ライアさんの髪留めが、かたっぽ折れちゃったんです。
 それで、似たような髪留めが売ってないか、グラール星系中を探してるんです。」
「そ、そういう事だ…」

胸を張って説明するルミアの後ろで、ライア手を後ろに組んで子供の様にもじもじとしていた。

「マリオンさん、まずこの機密保持契約書にサインして下さい。
 今回の任務について決して誰にも口外しない事。購入時は『私物』として購入する事。
 包装はそのままにせず、必ずこの連絡用ナノトランサーディスクへ入れ替えてから
 総裁室まで持ってくる事。いいですか?!」


ルミアの買ってきた髪留めは、ルミア自身がつけている物と色違いのお揃いだった。
自身の譲れぬプライドと、予期せぬ事態下での人材不足に困り果てたした総裁は
教習生である私に望みを託し、最後の賭けに出たのだった。

                                                  をはり
416名無しオンライン:2008/05/17(土) 12:04:21.48 ID:EVILzf2/
素直に5ページにすればよかった…
ライア嫌いが多そうなのでフォローのつもりでした
読みにくかったらすみません
417名無しオンライン:2008/05/17(土) 12:05:31.67 ID:EVILzf2/
×:教習生である私に望みを託し
○:教習生である俺に望みを託し

長文は苦手よ
記憶領域が少ないの私
418名無しオンライン:2008/05/17(土) 12:07:36.67 ID:uopJEgpr
総裁になってから急に好きになったぜ!
そして君にはまだ任務がある。



パシリの出番を(ry
419名無しオンライン:2008/05/17(土) 12:16:19.77 ID:EVILzf2/
しまった!ここライアスレじゃねえパシリスレだ!
またいずれ、今度はパシリ話で投下します!
420名無しオンライン:2008/05/17(土) 14:19:49.53 ID:WV8FhHQh
>>419
『パシリ』違いかと思ったらw噴いたじゃないかw

>ルウが3人、
あとこれもさらっと書いてあって噴いた。いや間違ってはいないが…
421名無しオンライン:2008/05/17(土) 23:50:22.83 ID:CxyWgQjT
>>419
PM  「ライア総裁だって女の子なんですから、可愛いものに目が無いはずです」
御主人「そうか…マシナリーでも女の子だな。どんなのがオススメだ?」
PM 「そうですねー・・・パノンとかジャゴとか?あ!ポルティもいいです」
御主人「… … …」

こうですか?
422名無しオンライン:2008/05/18(日) 01:24:28.21 ID:zjABMUb/
>>421
ショタパシリ、ポルティ見て「僕もかわいくなりたいなぁ」とか言い出すからな。
「お前の方がかわいいよ」とか言ってウホッ的な展開になっても困るし
どう対処していいか悩む
423性転換デバイス 1/4:2008/05/18(日) 10:57:05.02 ID:k3liM3YT
「私は別に構いませんよ?」

ほわんといつもの笑顔を浮かべるGH 434。くっ、GRM社め。
大変に邪悪で私的な理由によって、EXデバイス470の適用を提案してみたはいいのだけれど
この子はこれっぽっちの警戒心も猜疑心も抱く様子をみせず即答して見せやがるので、一応
自分のあまり多くない知識を総動員して、性別設定が変更される事についてこれでもかという位
くどくどと説明をしてやったのだけど、その答えがこれ。

「心配しなくても大丈夫ですよ、フレデリカ様。
 新デバイスのについての情報は随時本社からアップデートを受けておりますので
 抵抗感ですとか不安ですとか、そういったメンタル面でのご配慮は必要ありません。
 私がマシナリーである事をお忘れですか?」
「そうだけど、あんた結構普通に怒ったり泣いたり、機嫌悪くなったりするから・・・」
「そ、それはフレデリカ様のパートナーをつとめさせていただいた結果学習した反応ですからっ。」

ちょっと動揺してみせる434。
普段の仕草ややりとりがあまりに人間的なので、つい考えない様にしてしまいがちだけど
この子はキャストではなく、あくまでマシナリー。この反応も”作られたもの”なんだろう。

「とは言ってもやっぱりフクザツだなあ・・・」
「でしたら、お止めになりますか?」
「それはない。」
「ですよね。」

渡されたEXデバイス470を胸に抱えたまま、少し困ったように首を傾げている。くっ、GRM社め。
424性転換デバイス 2/4:2008/05/18(日) 10:57:40.89 ID:k3liM3YT
「よし、決めた!やろう!」
「はい!」
「思うところがあるかもしれないけど、恨みっこはなしね!」
「はい!」
「どうしてもイヤだったらすぐ434型に戻してあげるから、遠慮せずに言いなさいよ!」
「はい!」

覚悟を決めて、EXデバイスを取り付ける事にする。
さあ。えっと。うん。これってどこにつけるんだろう?

「EXデバイス用スロットは背面上部中央、肩の少し下にあります。
 スロットをオープンしますので、すみませんが、上着を脱ぐのを手伝ってください。」
「え?脱がないとダメなの?」
「はい。スロットを完全にオープンした状態にするには衣服が邪魔になります。」
「・・・いいのかこれ。」
「大丈夫ですよ。ほら、フレデリカ様とワタシは女の子同士ですし。」

GRM社め。女の子同士じゃない場合だってあるだろうに…
434のブラウスは相当に凝った作りになっていて、結局上はほとんど全部脱がせる格好になってしまう。
ぴきゅっ。ぴぴっじーきゅぴぴるっ。ぴぴ。ぴ。
髪の毛を自分で右肩にまとめて、434は不思議な作動音を鳴らした。

うぃん。
「はい。こちらがEXデバイス用スロットになります。
 誤挿入はできない形状になっていますが、デバイスの上下を間違えない様にしてください。」

フォトン回路の模様がついた端子らしい部分を下にして、デバイスをスロットへ押し込む。
軽く背中を押された格好になって、434が少しよたつく。
425性転換デバイス 3/4:2008/05/18(日) 10:58:25.92 ID:k3liM3YT
「デバイス確認。デバイスネーム:EXデバイス470。チェックOK。」
2秒ほど無表情になると、システムメッセージらしい音声を口から発して、ぱちくりとまばたきをする。

「ありがとうございます。デバイスが正常にセットされました。
 適用を始めますので、少し離れてお待ち下さい。長い間のご利用、ありがとうございました。」
「え!!ちょっと待って!!」

思わぬ別れの言葉にぎょっとする。EXデバイスを適用しても記憶は消えないはず・・・だよね?

「心配しないでください。適用後もちゃんとフレデリカ様の事は覚えています。
 デバイス適用時の事故に備えて、本社側PMセンターにも使用データがバックアップされています。」
「ああ・・・よかった。お別れみたいな事言うから。」
「はい。GH 434型としてのワタシとはデバイス適用時にお別れとなりますので」
「ええ?!」
「一応、愛着のある方向けにメッセージとしてお伝えする仕様になっているんです。」
「あ、ああ。なんかもう心臓に悪いなあ・・・」

スロットを丸出しにしたまま、くすっと笑う434。何かが胸に刺さる。
くそっ、GRM社め!くそっ!くそっ!!ああもう!!
426性転換デバイス 4/4:2008/05/18(日) 11:00:22.07 ID:k3liM3YT
「やめやめ!EXデバイス適用中止!ほら、スロット開けて。」
「えっ?本当によろしいのですか?」
「うん。なんか、ゴメン。やっぱりあんたそのままがいいよ。何か434型に慣れすぎちゃった。」
「わかりました。EXデバイスの適用を中止します。」

ほわんといつもの笑顔を浮かべる434。全くもう。
ぴ。ぴぴ。きゅるるじじっ、じじっ。ぴきゅるぴ。うぃん。
背中のスロットが再度開き、EXデバイス470が顔を出す。
私はそれを取り出すと、434の肩をぽんぽんと叩く。振り向いた434にEXデバイスを差し出す。

「これ、食べていいよ。」
「ありがとうございます。ですが、今はおなかがいっぱいですので、後で頂きますね。」
ぺこりとお辞儀をすると、EXデバイスをことりとビジフォンの上へ置く。

「とりあえず服着よう。風邪引いちゃうよ。」
「はい。でも、マシナリーは風邪を引きませんよ?」
「いいから。ほら腕通して。」
「はい。」

スロットを自分の手でぺちんと閉じると、左腕をブラウスの袖に通して器用に服を着始める。
襟が曲がっているのもきちんと自分で直して、いつもの通りに両手を前に組むと、434はすっかり
元の434に戻った。

「ありがとうございます。フレデリカ様。」
「え?ああ、もうなんかゴメンね。やれって言ったり、やめろって言ったり。」
「いえ。ワタシは今とても嬉しいです。」
「何で?」
「同タイプで長期間利用して頂けるという事は、マシナリーとしてよい製品評価を頂けていると
 考える事ができますので」
「・・・」
「434型のワタシに、フレデリカ様が愛着を持って下さっているという事が」
「あ''〜〜やめてっ!かゆい!何かかゆい!そういうのやめやめ!」
「はい。」

今までに見たことのない屈託の無い笑顔で、434は私を見上げながらくすくすと笑った。
くっ、GRM社め。


                                                    fin
427名無しオンライン:2008/05/18(日) 11:05:00.11 ID:k3liM3YT
EXデバイス470で、きっと誰もが感じた葛藤をSSにしてみました。
連続投稿ゴメンなさいです。書きたいエピソードが貯まりに貯まっていたので…
あとエロスは程ほどにします。
428名無しオンライン:2008/05/18(日) 11:29:59.27 ID:zjABMUb/
>>426
あー、GRMあくどいなぁ。
豚鼻といいなんといい。
429名無しオンライン:2008/05/19(月) 12:12:26.42 ID:klgYMmux
440  「御主人の部屋にPSPがありました」
御主人「440…それは…」
440  「説明して下さい。例のあれですか?私よりネコの方がいいのですか?」
御主人「それは違うぞ440。PSPでもガーディアン支部が出来るのでその為だ」
440  「そうなのですか!それではいつでも御主人と一緒ですね!!」
御主人「… … …」
440  「…御主人?」

御主人のポケットから落ちる一枚の紙。
雑誌の切り抜きらしいそれには女性キャストの写真が写ってる。
幼い顔立ちに対して豊満な身体。
記事にはこう書かれていた。
『ヴィヴィアンはまだ生まれたてのキャスト。アナタがやさしく教え込んでね』

御主人「ち、違うぞ440!待て!そのショットをしまえ!あっあぁー!!」


PSP版デモを見てつい書いた。
PSP版は合成廃止らしいけどPMはどうなるのかな・・・?
430名無しオンライン:2008/05/19(月) 22:11:54.23 ID:xBgeLx5h
>429
そりゃあそんな写真と一文を目にしちゃあ440が神様だってそうするだろうさw
PMがでるかどうかは厳しいとこだね。合成もショップもなしじゃあ・・・
それでも俺は望みを捨てない!けどね。


ところで、遅まきながらEPX作者さんお疲れ様。
先程読み終わったとこなんで、せっかくだから感想の一つもかいてみるw

長いわりによみやすくて、自分的にはよかったと思う。
あと、うまく言えんけど構成のうまさ?みたいなのも感じられた。
欲を言えば、できればこの主従には幸せになってほしかったな。
作品に文句つけるわけじゃないけど、主人もパシリもがんばったわりに報われなくて、チョト寂しかったからw

それにしても、ここまで「萌え」のないパシリSSも新鮮だったな。
「燃え」は大いにあったけどw
431名無しオンライン:2008/05/20(火) 01:39:43.07 ID:ZI+QcYGN
ヴィヴィアンと410が一緒に映った画像があったとか聞いた気がするよ。確認してないが。
折角の育成システム廃棄するには惜しいし、むしろ武器のカスタマイズとかもできるようにならないかなと妄想している。
でもなぁ…名前だけで良いから引き継げるようにして欲しかった、な…

>>427
何か久々に純粋にほのぼのしたパシリSSを読んだ気がするよ。ちょっと幸せになった、乙!
でもそれでもなお地味に胸に刺さる話だな…w(マシナリー云々とか
432名無しオンライン:2008/05/20(火) 03:35:24.68 ID:p3ybCJUX
空気読まずに進行の遅い長編の続きを。
今回は登場人物の心理に凝りすぎたかもしれませんが。

ここにきてようやく戦乙女のGH432にある一つの変化を書くことができます。長かったなー
433継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)1:2008/05/20(火) 03:36:34.45 ID:p3ybCJUX
「何時間かまではもたせてやる。この程度ならばいかようにでもできる…その間に方法を考えてみせろ」
オンミョージさんは冷たい瞳でネイ・ファーストを睨め付け、踏みつけて動けなくしています。一歩間違えば殺しかねない雰囲気ではありますが、時間稼ぎに問題はなさそうです。
とはいったものの…毎度ながらまるっきり何も思いつかないんですよね。
ネイさん何か考えつかないですか?あなたが一番ネイ・ファーストのことを知っているはずですから。
「知らない!みんなを傷つけて、あんな人大嫌い!いなくなっちゃえばいいの!」
しかし、ネイさんはネイ・ファーストのほうを少し見やると、目をそらして吐き捨てるように言いました。ますます激高し、ネイ・ファーストも暴言を放ちます。
「言ってくれたな!私もおまえが大嫌いさ!人間の男なんかにこびへつらってぬくぬくと暮らして、さぞかし幸せだったろうねえ、反吐が出る!」
わたくしは靴に小石が入ったような違和感を感じました。なんでこの二人はそこまで憎み合うんでしょうか?
ネイさんに嫉妬するファーストのほうはともかくとして、ネイさんのほうもファーストを異常なくらい毛嫌いしています。
ネイさん…あなた、何を隠しているんですか?
聞いても、ネイさんは黙ってうつむくばかりでした。
謎を見て取ったわたくしに気づいてか、オンミョージさんがアドバイスしてくれました。
「ひとつ教えておいてやろう。いつの世も妖怪が最も恐れたのは人間だ。人間の精神ほど強大でありながら、移ろいやすくおぞましいものに変貌して牙をむく脅威はない」
そ、そんなに怖いものですか?主はそんな感じがしないので、わからないのですが。
「他人を見てではそうそうわかるものではない。お前自身の心に聞けばよかろう」
なるほど。パシリの意識は若干の違いはありますがヒューマンを模して作られているはずですね。
434継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)2:2008/05/20(火) 03:38:02.69 ID:p3ybCJUX
………
こめかみをぐりぐりしながら少し考えてみて、なんとなくわかりました。
わたくしは能力が中途半端で、打撃武器も射撃武器も合成成功率はいまひとつですし、
それなりに自信のある戦闘のほうも主が強すぎるので実際のところ足手まといでしかありません。
他にも髪の色が気に入らないとか、背が小さいのは不便だとか、もうちょっと胸を大きくしたいとか…
考えてみますと、自分に対しての不満というのはあげだすときりがないものです。
わたくしでさえそうなのですから、『見たくない自分』が他にいるネイさんの場合は…?
なるほど、そういうことですか…誰よりも自分の弱さや小ささを一番よく知っているのは、自分自身。
他人には隠せる秘密でも、自分を欺くことはできないのですから。

オンミョージさん、一つお願いがあります。少しの間ネイ・ファーストの束縛を解いてあげてくれませんか。
「…いいだろう」
片方の眉をつり上げながらですが、少し考えた末に承諾してくださいました。
オンミョージさんが下がると、体を縛っていた見えない糸が解除されてネイ・ファーストは飛び起きました。
わたくしはルビーバレットを放り出し、武装解除して彼女の前に立ちました。
シールドラインまで解除しているので、下手をすると本当にバラバラにされるでしょう、一か八かの賭けです。
「はっ、何をするのかと思えば、自殺願望でもあるのかい!失せなよ!」
ネイ・ファーストはわたくしを爪で切り刻みます。わたくしはその場から動かず、それを全部受けました。
服はずたずたにされてしまいましたが、傷は浅く致命傷には至りません。やはり、ネイ・ファーストにはまったく良心が残されていないわけではないのです。
攻撃をためらいましたね?本当は殺したいなんて思っていないんじゃないですか?
「うるさい!おまえなんかに私の気持ちがわかってたまるか!」
たじろいだ様子を見せて顔を真っ赤にしていますが、ネイ・ファーストはそれ以上手を出してこずに、わたくしを無視してネイさんのほうへ悪意を向けようとしました。
435継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)3:2008/05/20(火) 03:39:07.78 ID:p3ybCJUX
「おまえが自分のことをばらされるのが怖いなら、私が言ってやるよ。おまえは私が早く大人になりたい、みんなに受け入れられたいと思い描いた理想像。
私が人を殺したときに私から逃げ出したのさ。だから良心のほうがまさっている良い子ちゃんなんだよなぁ!」
苦々しい顔をして、ネイさんはファーストを睨みました。
「そうよ…そしてお兄ちゃんに拾われて、お兄ちゃんたちとだけだけど私は人として生きるようになった」
「そうさ!だから私はおまえが憎くてしょうがないのさ!実際おまえだけが人間どもに受け入れられ、おまえがいれば私はいらなくなったわけだからな!」
ネイ・ファーストはネイさんに対してだけは容赦ないようで、先ほどのわたくしへのそれとはうって変わって素早い動きでネイさんを狙いました。
「そこまでにするのだな。自分の行いを棚に上げて言うことか」
オンミョージさんのカットが入り、ネイ・ファーストは再び見えない糸で縛り付けられました。
落ち着いて話ができるようになったところで、わたくしは本題に入りました。
ネイさん…正直に言ってください。あなたは理想から生み出された。だから現実を消したくてしょうがないんじゃないですか?
そして、そうやって自分を受け入れられない弱さがことの発端なのではないですか?
ネイさんは震えながらわたくしを見ました。目が泳いで、そうとう動揺しています。
「…そうよ、私は現実の私、ファーストがひどく弱くて醜く見えるから決別したの…あんなの、私じゃない」
弱いことの何がいけないんですか、最初から成功ばかりの人なんていないんですよ。
「でも、でもファーストは、何回も失敗して研究者たちの怒りをかったから…」
憎くて怒るのとは違うでしょう?できないことをできるようになってほしいから、愛しているから叱るんですよ。どれだけ辛くても、そこから逃げるのはその人を裏切ることなんです。
「その通りだ。ネイ・ファーストは叱られるべき人物から逃げたから歪んだのだろう。そこからも逃げだし理想だけでできたお前は、ファースト以上に歪んだ存在ということだ」
「やめて!やめて!」
オンミョージさんの容赦ない言葉に、ネイさんはぎゅっと目をつぶって耳を掌でふさぎながら縮こまりました。
436継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)4:2008/05/20(火) 03:41:24.38 ID:p3ybCJUX
まるで小動物のようなネイさんに追い打ちをかけるのは残酷に思えましたが、わたくしも意を決して手を掴み、耳から引き剥がしました。
逃げないでください!いくら目をそらしたって、自分をやめることはできないんですよ!
自分で言った言葉のくせに、なぜかわたくしの胸も傷を抉られたときのようにずきずきと痛みます。目尻まで熱くなってきました。
「ファーストの…本当の私の手は、もう洗い落とせない罪で汚れてるの!こうするしかなかったのよ!仕方ないじゃない!」
「ばかーっ!!」
はじめての、頭に血が上るという体験。
わたくしはおもわず叫びながらネイさんの頬を平手でひっぱたいていました。
頬を押さえて唖然としたネイさんだけでなく、ネイ・ファーストやオンミョージさんまでもが驚きに目を見開きました。
「投げ出さないでください!ネイさんは人として生きたかったんでしょう?
人を信じないで、自分を押し殺して、お兄さんまで騙して生きるなんて、悲しすぎるじゃないですか…!」
制限されているがゆえに、人の心はパシリにはどうにもできません。わたくしは強い無力感にいらだちを感じていました。

そのとき、足下のルビーバレットが突然強い気配を放ちはじめました。
拾い上げてみると、ルビーバレットの部品の一つが脈打つように紅の光を放っています。
ルビーバレットは構造自体はグラール文明のハンドガンと大差ありませんが、一つだけ未解析の部品があります。
銃の存在自体は伝説に残っているのですが、内部構造までは記録にないのです。
ブラックボックスと呼ばれるそれに今まで何人もの人がアクセスを試みましたが、ことごとく失敗したため、ガーディアンズではそのまま使用されています。
しかし、今ならば。わたくしはブラックボックスに意識を集中しました。
惑星マリス…ノーザ星人…ジリオニウム…
知られることのなかったデータがいくつも記録されていました。
あるべきところへと魂を運ぶ力を秘めた、神が人に与えた銃。それが、分かたれた魂を一つにせよと叫んでいます。
新たな使い手を何千年も待ち続けた、このルビーバレットの真の名は…
『ジリオン』!
導かれるようにその名を口にした瞬間、何かがはじけ飛び、狼の遠吠えのような大響音を残して、赤い光弾が飛び出しました。
光弾は意志を持っているかのようにネイさんの胸に突き刺さり、ネイさんに当たったはずなのに、なぜかネイ・ファーストの背中から飛び出して行きました。
437継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)5:2008/05/20(火) 03:42:31.24 ID:p3ybCJUX
「私は、思い描く自分になれなかった。どれだけがんばってみても、私はみんなと同じにはなれなかった。
そのうち、もがく意味がわからなくなってきて、周りはみんな私を嫌っているように思えて、研究所の人間を殺して逃げて、
どこへ行ってもやっぱりみんな私が嫌いで、逃げて逃げて逃げて…」
「その悪意が自分自身の思いこみだとは思わないんですか。あなたが思うほど周りの人はあなたを嘲笑ったりなんてしませんよ」
「…どんなに取り繕ってみせたって、私は研究所の人間を皆殺しにした殺人鬼なんだ。
そのうえ、バイオモンスターまで量産して…誰かを憎んでいないと、からっぽで罪の意識しかない自分に耐えられなかった」
「罪を罪で上塗りして、楽になったんですか?」
「…」
「本当はわかっているんでしょう、あなたも人に愛されたい。でもそれができないからそんなことに逃避しているんだって」
「…」

「…怖かったの。謝っても許してもらえないんじゃないかって。
今あるお兄ちゃんとの幸せが、本当の私を知られたら全部壊れてしまうんじゃないかって」
「それでネイ・ファーストを一人で殺そうとしたんですか」
「自分一人で決着をつけるはずだった。知られるくらいならいっそ死んでしまいたかった」
「それがお兄さんを悲しませることになるとしても?」
「違う、私はお兄ちゃんが好き。悲しい顔なんてしてほしくない」
「それはとても利己的な考えです。自分が死んでお兄さんの悲しむ顔を見なければそれでいいんですか?違うでしょう」
「…」
「お兄さんのことを本当に思うのなら、約束してください。どんなに恥をさらすことになっても、生きてお兄さんにもう一度会うと」
「…」
438継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)6:2008/05/20(火) 03:44:06.96 ID:p3ybCJUX
ネイさんは起きあがると爪を外して、涙を浮かべながらおぼつかない足取りでファーストのほうへ歩いていきます。
「やめろ、来るな…おまえが私に優しくするな…!」
自分の肩を抱いて、ネイ・ファーストは戸惑いと怯えの眼差しをネイさんに向けます。
でも、ネイさんは本来の自分に腕を広げて歩み寄ると、優しく包み込みました。
「一緒にお兄ちゃんのところへ行こう、ネイ・ファースト…私も罪を償うから、そのままのあなたでいいから…
きっとユーシスお兄ちゃんたちならみんな受け入れてくれるよ」
「う、う…うわあああああああーん!!」
ネイさんに抱きしめられると、ネイ・ファーストはぼろぼろと大粒の涙をこぼして、泣きだしました。
自分を受け入れられたからとか、居場所ができたからとか、いろいろと思うことがありすぎて、
きっと自分でも何がなんだかわからなくなっているんだろうと思います。
涙まみれになって抱き合い、思いきり泣きじゃくってから二人はわたくしとオンミョージさんに何度も礼を言ってこの場を去りました。
オンミョージさんは、腕組みをしたままですが険しい表情を解いて、無言で二人を見送ってくれました。
「見逃してくれるのですね。オンミョージさん」
「もはや滅するまでもない。生きることが何よりの贖罪となろう…
ユーシスとやらがどのような者かは知らんが、一つでも支えができれば過ちは繰り返されまい。任務、完了だ」
439継承 II 君、死にたもうことなかれ(後編)7:2008/05/20(火) 03:47:03.69 ID:p3ybCJUX
「少し、疲れました。休ませてください…」
床に腰を下ろして、ルビーバレットを傍らに置きます。
今回はいろんなことにふれすぎたせいか、疲労が強いです。
首を下に向けて自分の胸を見ました。今はあの抉られるような痛みは感じませんが。
わたくしはあのとき何かを思い出そうとしました。わたくしもネイさんと同じように向き合いたくないものがあるのだと。
しかし、何なのかが思い出せません。よくよく記憶媒体をチェックしてみると、わたくしの最初の記憶はGH430であるときのもの。
それ以前の記憶は完全に抜け落ちているのです。削除された痕跡もなく、最初からなかったかのような…
そんなことができるのは製造元であるGRMと、主くらいのもの。
GRMに出向いたことはありませんし、技術者と会ったこともありませんので、主以外にはありえないということになります。
主はいったいわたくしに何をしたのでしょうか?
疑問はどうしようもなくふくれあがっていきます。主に従っていれば大丈夫という信頼が、わたくしの中で崩れていくのを止めることはできませんでした。
「あの…」
「何だ」
「わたくしは、嘘をつきました。ネイさんにはあのように叱ったのに、わたくし自身も主を疑って、真実を知ることを恐れています…
偉そうなこと言っても、本当は何もわかってなんかいないんですよ、わたくしは…」
不安になって、わたくしは思わずオンミョージさんに自分でも何が言いたいのかよくわからないまま口を開きました。
「答えを求めないなら言うな。道がなくとも歩めることは知っているのだろう」
オンミョージさんはそれ以上は何も言わず、姿を消しました。
それは正論なのですが…でも、頭の中でぐるぐると回り続け、結論など出せるはずのないこの思考を止めることができません。
じっとしていられない、でもどうしたらいいのかわからない。とても非合理的でした。
わたくしは、故障してしまったのでしょうか?
誰もいなくなった建物の中で、わたくしはぼろぼろにされた服のまま仰向けに寝転がって、
ステージ終了のテレポーターにも入らず、暗くなるまでただ呆然と天井にはりめぐらされたパイプを見ていました。


-「継承 III 死闘への鎮魂歌」に続く-
440幕間 awaken−其は聖なる御使いなりや−:2008/05/20(火) 03:50:29.08 ID:p3ybCJUX
そこは、宮殿だった。見る者に恐怖を覚えさせるほどの曇りなき純白で構成された宮殿。今までに存在したどの様式でもあるようで、そのどれでもない。
それは時も場所もすべてが不定なところに存在し、その姿さえも定かならざる『建造物という概念』であった。
「ようやく、か。遅かったわね…」
円卓の周りに配された椅子に腰掛け、亜麻色の髪をした女が口を開いた。何を見てというわけでもなくその事実を知って。
「あの子は同時に人間の業も背負うことになりました。こんなことがあなたの望みだというのですか?」
それに応えるのは、透き通るような空色の髪に細面の顔、宮殿と同じような純白のローブに身を包んだ、一見すれば女にも見える男。そして。
「同感ですなァ。貴女がわざわざ無垢なるものを汚すとは、本当に何を考えているのか察しかねますぞォ、ふふふほほほ」
奇妙に尾を引く声が響き、限りなく広がる純白に一点の黒が出現した。
不健康に長く伸びた細い腕と指、爛々と一つしかない目を輝かせた、闇の下僕であった。
しかし、亜麻色の髪の女と、ローブの男は警戒しなかった。襲ってこない、襲う意味がないのはわかっているからだ。
「ようこそ。お茶でも飲んでく?」
「挨拶に伺いましたのみゆえ、お気遣いなさらずゥ。ほほ…ギ・ル・ザークと申しますゥ。
最後にお二人とお会いしたのは闇の淵、エルシディオンを携えた少年と蒼い髪を束ねた青年としてでしたかなァ?」
女は穏やかな表情のまま遠くを見た。懐かしいものでも思い出すように。
「ふほほほ。無論、私ごときが貴女のものに手出ししようなどとは考えてはおりませぬよォ。しかし手を下さずとも自ら堕ちた場合は話は別ですなァ」
くぐもった声で、闇は嗤う。
「あの滅んだ星にしても、グラールにしても、そこに住まう愚かな人類はあなたがたよりはるかに闇に近いィ。
あのハウザーという男、実に面白い働きを見せてくれましたぞォ…ひゅーほほほほ!」
奇怪な声を残して影は姿を消し、何事もなかったかのように純白があたりを埋め尽くした。
「ハウザーも一つの可能性を示してくれたけどね。もう少し賢く立ち回ればよかったのに」
誰にともなくつぶやいて艶っぽい唇をカップにつけながら向き直る女に、待ちかねたように男が口を開く。
「あの通り『深遠なる闇』も形こそないものの健在です。まわりくどいことをして、かわいがっていたあの子が昇れなくなってもいいのですか?
それならいっそ、このまま迎えてもいいかと思うのですが」
「私を思って言ってくれてるのね、ありがと。でも、あの子にはそれをしてはならない理由があるの。あなたは何代目のルツなのかしら。まるで初代の修業時代みたい」
「からかわないでください」
にっこり微笑む女に、長髪を揺らしてルツと呼ばれた男はため息をついた。見た目の若さに似つかわしくない、年を経た者特有の寂しさと諦めの混じった表情を浮かべて。
「わかってはいるのですよ…無知と恐怖心、人の弱さが神を創る。理解しないまま導いても、そこには崇拝という名の思考停止しか残らない。
不便なものですね、人というのは…伝えることがこれほどまでに難しいとは」
「それがいいんだって、とあるジャーナリストは言ったわ。だから人類は私やあなたとは違う道を選んだの」
二人は同時に、冷め切っているが暖かいままの茶を飲み干した。
彼女が機械の少女に望むのは、信心深い下僕ではない。神を否定する者に他ならないのだ。
441名無しオンライン:2008/05/20(火) 04:01:15.07 ID:p3ybCJUX
恒例の微妙にわからない元ネタの解説です。
ジリオンは実は筆者もよく覚えていなかったとか(ry

「ルビーバレット」
PSOのレア武器。特殊な音のする拳銃で、一部で大人気であった。
1978年より放送されたアニメ「赤い光弾ジリオン」が元ネタになっている武器なのである(なお、オパオパはジリオンにも出演していたりする)。
ジリオンはもともと赤外線を出す銃で相手の胸につけたプロテクターを狙って当てると派手に音がするという玩具であった。
製造元のセガがスポンサーになって作られたアニメがこれで、さらにそれがPSOでネタ武器にされ、PSUに至るというわけである。
作中でのジリオンの使い方は、半分最終回ネタバレのようで実はそうでもない。

「ファンタシースター2における『大いなる光』」
この作品においては主人公たる者が持つことのできる、運命すら変えてしまう人間の力を『大いなる光』としているわけだが、
ファンタシースター2では(バグ技だけど)実際にプレイヤーの介入によってネイを最後まで連れて行くということができたわけで…
セーブ&ロードを繰り返すなども含め、すべての人間(プレイヤー)は運命すら変えてしまう『大いなる光』を持つというのはこういうこと。

と、思っていたら何でも科学で理由をつけてないと気が済まないような説明が常につくストミでもそういう展開になってきてたのが意外でした。
442名無しオンライン:2008/05/21(水) 01:11:48.18 ID:6xFllNGR
お久しぶりの戦乙女。ジリオンですねえ。
OPのピュアストーンの歌詞を思い出したりしたりして。
次は3ですか・・・大変ですが頑張れ戦乙女(と作者)
443名無しオンライン:2008/05/22(木) 18:41:10.41 ID:aV0+oOAi
ジリオン、見てたけど微妙だったなぁ。
なんつーか、赤い光弾って言われても、赤いからどうしたんだよっていうか。
別に特別な武器って扱いでもなかった気がするし。
444名無しオンライン:2008/05/22(木) 19:34:17.19 ID:7mHoKCvx
>>443
アニメを現役で見てたオサーンだが、ジリオンは特別な武器だったぞ。
エネルギー変換部がブラックボックスで(異文明のオーパーツ?)複製不可って設定だった。
ま、詳しくはwikiでも見てくれ。
445名無しオンライン:2008/05/23(金) 22:49:32.18 ID:dxV5QqJ0
保守。実はジリオンで消滅した敵は・・・が最終回のネタバレ部分。
このままだと次はロボピッチャですね(オイ)
446名無しオンライン:2008/05/24(土) 08:03:04.48 ID:irF69094
>>444
幼児の俺「一丁しかなくてもう作れないのはわかったけど、技術が廃れたくらい古いってだけじゃね?それ強いんか」
447名無しオンライン:2008/05/24(土) 11:55:35.58 ID:tTVxlVmy
ご拝読ありがとうございます。
清涼剤として短編も書こうかと画策中だったり。もりあげていこうぜー!

>>446
今見てみるとジリオン自体もけっこうつっこみどころの多いアニメなので、気にしてはいけませんw

実のところ旧千年紀やPSOもつっこみどころは…まあ、追及するだけ野暮ってもんです。
いまさらだけど20周年を祝いたかったとはいえかなり無謀なことやってるなあ、自分。
448有能なパートナー(1/2):2008/05/24(土) 14:33:33.04 ID:JbXxVMLU
「あ、いらっしゃいませー!ここはぶきのみせだ!、なーんて!」


「・・・って、あら、ご主人のフレのキャス男さんじゃないですか。ようこそ〜」
「え?ご主人ですか?あー、今ちょっと・・・、ええ、奥でぐっすり寝てます」
「いやー、昨日遅くまでミッションに就いてたみたいで・・・、帰ってくるなり、
 ・・・ご飯食べて、お風呂入って、ゲーム朝までやって、それから寝付いたので・・・」
「え?ミッション全然関係無いじゃないかって?ごもっともw」
「それにしても今日は何の御用ですか?確か今日ご主人は非番なんですけど・・・、
 え?自分も非番だから?シティにぶらぶら出かけてみようと誘いに来たんですかー」
「うわ、それってデートですか!?いやー、ニクイなーこのメカ顔!ボーマルタ!」
「いいですねー、今はパルム統一記念のお祭りやってますからねー
 賑わう街中を二人でキャッキャ!ウフフ!と練り歩くわけですね、青春だなぁ」
「見た目屈強で歴戦な風貌のビス男とキャス男が腕を組み・・・、茶をすすり・・・愛を語らうわけですね」
「本当に気持ち悪・・・、え?もういいって?出直してくる?」
「あら、残念ですねー、ご主人暇人だからきっとホイホイついていきますよ」
「でも、そういうことなら仕方ないですね、またのお越しをお待ちしてますー」



「ん?あ、いらっしゃいませー!NHKにようこそ!、なんて(爆)」


「って、あら、ご主人が最近気にしているヒュマ子さんじゃないですか!」
「ガーディアンズ入りたての頃から何かと面倒見てきて、失敗を繰り返す貴女に『あいつはいつまでも
 新入りのままだなぁ』と思ってたのに急激にメキメキと力をつけてきて、感慨深くなると同時に、
 その真っ直ぐ寄せられる尊敬を好意と勘違いしてしまいそうになって、
 時折苦悶しているご主人に何か御用ですか?」
「え?あれあれ?どうしたんですか、顔を真っ赤にして?」
「え?今日はもう帰る?あらー、用事が?じゃぁ仕方ないですねー」
「またのお越しをお待ちしてますー」
449有能なパートナー(2/2):2008/05/24(土) 14:34:17.77 ID:JbXxVMLU
「はい、いらっしゃいませー!ウフフ、お客さん、こーいうトコ初めて?」


「って、あら、いつもご主人に補助してくれてるニュマ子さんじゃないですかー」
「今日は一体どうしたんですかー?え?ご主人ですか?まだ爆睡中ですけど・・・」
「え?たまたま統一記念イベントのチケットが二つあるから?たまたま自分と休みがかぶったから?
 日頃の頑張りをたまには労ってやろうと思って?勘違いしないでほしい?そういうのじゃなくて?」
「はー、相変わらずうんざりするような自己弁護ですねー、ツンデレってやつですか、
 その流行りに乗っかろうとするあざとさに吐き気がしますねー」
「あ、いえいえ!何も何も!申しておりませんよ、ハイ!」
「ただ・・・、うーん、一足遅かったというか何と言うか・・・、ご主人どうやら今日は午後から
 ヒュマ子さんと統一記念祭見に行くと言ってましたねー、確か」
「え?ええ、あの最近メキメキ実力をつけてきて、何か以前よりスタイルも良くなったよーな気も
 してくるあのヒュマ子さんです、ええ、いつもご主人をうるうるした目で見てますよねー
 ニュマ子さんと違って性格も従順だし、ご主人も一緒に居て安らぐのかも知れませんね」
「あら?どうしたんですか、泣きそうな顔して?もういいって?たまたま誘おうと思っただけだし?
 別に他に代わりはいくらでもいるし?ですよねー、ニュマ子さんモテますもんねー」
「それじゃ、お気をつけていってらっしゃい、統一記念イベント楽しんできてくださいね!」



「あら、あ、ご主人おはようございます〜〜〜ようやく起きましたね」
「朝御飯ってもう昼ですけど・・・準備できてますし、お風呂もすぐ入れますよー」
「え?来客???」
「・・・いいえ、今日は朝から誰も来ませんでしたよ?静かな休日そのものでした」
「それよりご主人、今日は統一記念で盛り上がってるシティに連れてってくれるんでしたよね?」
「私、楽しみだなぁ、きっと二人で回ったら楽しいですよ」
「ご主人、いつもお仕事頑張ってるから、非番の今日は仕事の連絡が入らないように、
 携帯端末は置いていきましょうね、仕事の連絡や確認が入ったら面倒でしょう??」
「え、お前はいつも甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれて、俺は幸せ者だって?」
「やだ、嬉しいな・・・、ご主人の幸せが、私の幸せですよ、・・・私が望むのはそれだけです」
「ええ、それだけなんだから・・・」


Happy end...
450名無しオンライン:2008/05/24(土) 14:38:44.07 ID:JbXxVMLU
久しぶりに触発されて書きますた。お目汚しスマソ。
451名無しオンライン:2008/05/24(土) 18:01:40.10 ID:n48jpLuo
全部パシリの台詞で進行するSS、これは新しい…

大事なモノの為なら白くも黒くもなれる、従順でありながら主導権は握っている
狡猾だけどひたむき、そんな二律背反がGRMの設計した魅力なのかもしれませんね

触発されたので私も短いのをひとつ書いてきます
452名無しオンライン:2008/05/24(土) 19:39:22.89 ID:FS3TZ2Hy

「どうすんだよ!俺やだよ会話できねえよ!」
「仕方ねえだろ!もう断れねえよ!」

二人のフォルテファイターが互いの肩を押し腕を掴み、互いを押し出しあう。
視線の先には数日前にガーディアンズへ復帰したカレン・エラの姿があった。
彼女が星霊の巫女である事は、ガーディアンの間ではもはや周知の事実だ。

「…私を呼んだのはお前の方か、黒いの。」
「は、はい!本日はお天気も麗しく…」
「何なんだお前たちは。好奇心で私を呼んだのか。巫女だから呼んでみたのか?」
「いえ!すみません、あの、大変失礼しました。…ほらお前も土下座しろよ!」
「い、嫌だよお前も土下座しろよ!何だよお前もって!何で俺だけ土下座なんだよ!」
「はぁ…」

ガーディアンズの変容ぶりに思わず眉間を押さえるカレン。漫画なら間違いなくこめかみに
血管マークが浮かんでいるであろうその表情には、不快感を隠そうという
453途中で送信しちゃったけど何ともないぜ 1.5/3:2008/05/24(土) 19:50:10.24 ID:FS3TZ2Hy

巫女らしいそぶりも無く
やがて彼らがこちらへ視線を向けるのを待ちきれなくなった様に口を開いた。

「お前たち、正直に言うが気分が悪いぞ。私は何の為に呼ばれたんだ?」
「あ、はい!あの、俺達まだ新米でして、是非ミッションへ同行して頂きたく…」
「新米なのは見れば分かる。軽い肩ならしのつもりだったがとんだ誤算だ。」
「それと、指導教官のご経験をお持ちだとお聞きしておりましたので
 ひとつ相談がありまして!」

腕組みをしたまま目を閉じていたが、指導教官という言葉を聞いて少し眉を動かすカレン。
彼らには読み取れない感慨を少しだけ浮かべた後、手を腰に当てて二人へ向き直る。

「私が指導教官だったのはもう随分前の話だ。
 今はミッション遂行以外のライセンスを持たない、ただのガーディアンズだぞ。」
「それでも結構であります!…じゃお前、後はしっかりやれよ!」
「お、おい!ちょっと待…」

黒ずくめのフォルテファイターが不意にもう一人の肩をぽんと叩くと、そのまま振り返らず
転送キューブに姿を消す。

「情けない奴だ。友達に私を呼び出してもらったのか?」
454再教育訓練 2/3:2008/05/24(土) 20:03:19.13 ID:FS3TZ2Hy

「も、申し訳ありません。
 俺まだカレン教官にパートナーカードを頂いていなかったもので…」
「だろうな。私もお前に見覚えが無い。」
「し、失礼は承知で、どうしてもカレン教官にご相談したいことが…」
「私は教官ではないと言っただろう。」

仕方なさそうにプランターの上へ腰を下ろし、何だ?と促すカレン。
声の細いフォルテファイターはぺこりと頭を下げると、後ろを向いて手をひらひらと振った。

どこから取り出したのか、コルトバジュースをこくこくと飲みながら
駆け寄ってくる小さな姿へ興味なさげに目をやり、飲んでいたものを豪快に噴き出すカレン。
無理もない。駆け寄ってきたのはカレン・エラその人だった。
ただしパートナーマシナリーサイズの。

「こういう顛末でして…ほら、オリジナルにご挨拶をするんだ。」
「お前がオリジナルか。想定していたより少し太いな。」
「よ、余計なお世話だ!一体どういう事だこれは!」

「その点については、このボクがご説明しましょう。」
ふわりと花と闇属性の香りが漂って、銀髪の青年がくるりと回りながら登場した。
455再教育訓練 3/3:2008/05/24(土) 20:18:40.41 ID:FS3TZ2Hy

「新生GRM社では、ガーディアンズの実績データベースから過去の記録を参照し
 優秀なガーディアンをモデルとしてパートナーマシナリーをカスタマイズする
 特注サービスを提供する事にしたんです。
 彼はそのβテスターのひとりなのですが、モデルとしたガーディアンの個性が余りに強く
 少々持て余してしまっていた様ですね・・・。」

現役ガーディアンズでありながらGRM社の社長となったヒューガ・ライトが、自らの製品を誇るが如く
すらすらと宣伝じみた説明を並べる。

「そ、そんなもの、私に相談されても何も答えられないぞ!
 それにこんな話本部からも一切聞いていない。プライバシーの侵害だぞこれは!」
「動揺しても気の強い所は私にそっくりだな、オリジナル。」
「こらこら…オリジナルに失礼だぞ。」
「お前が私に似てるんだ!あとオリジナルオリジナル言うな!」

すっかり取り乱したカレンの姿につい吹き出したヒューガをにらみつけ、ついでに
流れる様な動作でナノトランサーから物騒なモノを取り出して物騒な位置に押し付けて
ふわりと微笑む。
456再教育訓練 4/3:2008/05/24(土) 20:26:11.46 ID:FS3TZ2Hy

「ヒューガ・ライト。後ほどグラール教団から正式に抗議の意をお伝えします。」
「あっ!ず、ずるいですよカレンさん!ここはガーディアンズ同士でいきましょうよお。」
「お黙り下さい。これ以上私を個人的に侮辱する事は許されません。」
「い、言ってる事が無茶苦茶ですよっ!
 あ、そうだ!イーサンタイプのカスタムマシナリーをプレゼントします!それで手を打」
「いるかっ!!絶対いらん!!」
「そう言わずまあ。ちょうど連れてきてるんですよ。」
「や、やめろ!!連れてくるな!!」
「やあカレン。久しぶりだな。オレ、とうとうオヤジに会えたよ!」
「きゃああああん♥」

予想外の好反応にたじろぐヒューガと声の細いフォルテファイター。
そういう仕様になっているのか、カレンマシナリーまでもが胸の前で手を組んでぽんやりとしている。

「あの、それで相談なんですが…」
「あ、ああ。済まないがちょっと用事を思い出した。相談はヒューガにしてくれ。」
「え、あの…」
「ほら、こっちへおいで。ゆっくり話を聞かせてくれ。そういえば妹は元気か?服はまたそれなのか?」


すっかりとろけた瞳でイーサンマシナリーの手を引き、カレン・エラは転送キューブへと消えた。
457再教育訓練 5/3:2008/05/24(土) 20:42:11.67 ID:FS3TZ2Hy

「…予想外でした。カレンさんがあそこまでイーサンに…」
「俺も予想外です。」

転送キューブを見つめたまま、目の前で起きた出来事について語り合う二人。
カレンマシナリーは、どこから取り出したのかコルトバジュースをこくこくと飲みながら
二人が自分に気づくのを待っていた。

「で、結局お前は私の何を相談したかったんだ?」
「あ、はい。じゃなくて。何で敬語なんだよ。
 まさにそれだよ。マシナリーなのに何か名前通り偉そうだから、どうしたらこう
 立場を本来の状態へ逆転させられるか、どうすれば気に障らないかを
 本人へ聞いてみようと…冗談で話してたらアイツが…」
「私にとっては気分のあまり良くない話だな。聞いて答えると思うか?」
「思いません…」
「そういう事だ。そんな下らない事よりも任務に集中しろ。自覚が足りないぞお前。」
「はい…精進します。」

頭を下げる声の細いフォルテファイターを見ながら、ヒューガは肩をすくめていた。


「性能的には申し分ないんですけどねえ…
 どうしてレオさんタイプだけは人気が無いんでしょう?よく似てるのに。」
458名無しオンライン:2008/05/24(土) 20:44:03.94 ID:FS3TZ2Hy
考えないで書いたら色々ブレました
一応終わらせましたが、このNGはあぼーんでお願いします…
459名無しオンライン:2008/05/24(土) 21:46:27.43 ID:tTVxlVmy
>>458
面白かった!特にカレン(オリジナル)…w
あと、レオタイプは一部で人気が出そうですね。うほっ
460名無しオンライン:2008/05/24(土) 23:39:54.63 ID:bymR0j+g
ルウ   「ヒューマンの考える事は理解できません」
ルウタイプ「まったくですね」



面白かったです。ヒューガなら本当にやってくれそう?

461名無しオンライン:2008/05/25(日) 13:01:49.31 ID:CdIBFLDc
ルウの数が少ない→社長のコネでルウ相当のパシリを量産できないか→やってみた→
社長「これ、他のガーディアンズ相当のパシリも作ったら売れるんじゃね?」 って流れか?
462名無しオンライン:2008/05/25(日) 13:24:32.89 ID:kipTL1XL
んでもストミじゃGRMをカタにして基材仕入れますと言いたげに「・・・」やってたなぁ
463名無しオンライン:2008/05/26(月) 03:40:57.76 ID:M+TiEnKj
>>458
GJだが書きながらの投下はよくないな
ストーリーのメリハリが付けにくくなるし何より投下してしまった分は修正が利かないから誤字脱字なんかもでやすくなる
それに間にレスを挟むのを防ぐ為に長時間スレを独占することにも繋がるしな
だからメモ帳なんかに一度書きなぐってから修正して投下するのがいい

だから次はこれに注意して頑張ってくれ、期待してる
464EPX 後日談 1/5:2008/05/26(月) 21:31:42.85 ID:/t0P1bEa
「ねえ、君。こんなところにいると、危ないよ」

見知らぬ少年のその言葉に、私はどう答えてよいか迷いました。
PMである私、GH-440より、どう考えても一般人であるこの少年の方が危ないのは、明らかでした。

私の主人は、キャストfG。以前は「命令に従え」「勝手なことはするな」がモットーの方でしたが、
ある人物との戦いに敗れてから、少しずつ変わっていきました。
数年経った今では、「ガーディアンズにふさわしい行動とは何か」を真摯に考えるようになり、
私に対しても徐々に自主性を許し、また求めるようになっていったのです。

そういうわけで、以前に比べて大分、私は自分の頭で物を考えることができるようになりましたが。
まだまだ想定外の事象とは、多々あるものです。

ここは、パルムの草原でも比較的安全地帯に近い場所。
主人はここで、新兵の実戦訓練に取り組んでいました。
私は同行はしたものの特にやることもなく、せっかくだから羽を伸ばしてくるといいと許可をもらい、
この草原の景色を堪能していたところでした。

そこに、突然私の前にでてきたのが、この少年です。

年は、12,3歳といったところでしょうか。
あどけない顔立ちの中、きらきらと輝く瞳が印象的です。
いかにも好奇心旺盛で活発な性質のようで、そのためでしょうか。
安全地帯に近いといえ、原生生物の出る危険のある、この一帯に入り込んできたのは。

背丈が少年よりわずかに低い分、私は年下の人間に見られているのかも知れません。
だから、自分のことを棚に上げて私を心配するような言葉が出てくるのでしょう。

そもそも私はヒトではなく、PMであること。それを説明するのは、困難なことに思われます。
ガーディアンズならともかく、一般市民である彼にそのことを分からせるには、
まずPMとは何か、から教えなければならないからです。

ひとまず私は、少年が何故ここにいるのか尋ねることにしました。
事情を聞いた上で、可能な限り速やかにここから退避してもらわなければなりません。
できれば、穏便に。
465EPX 後日談 2/5:2008/05/26(月) 21:32:29.45 ID:/t0P1bEa
話によると少年は、ここでガーディアンの実戦訓練が行われることを聞きつけ、
それを見ようと両親にも内緒で一人、ここまでやってきたとのことです。

ガーディアンに憧れる子供は、このグラールに少なくありません。
少年の気持ちは分からなくもありませんが、それにしても危険すぎます。
ただちに引き返したほうがいいと忠告するのですが、困ったことに。

「ここに君がいるって分かったからには、それを見捨てていくわけにはいかないよ」

私は、主人が帰ってくるまでここを離れるわけにはいきません。
でも少年は、私がここにいるのなら自分もここに残ると言ってきかないのです。
私は、どうしたらいいのでしょうか?

困惑する私をよそに、少年は胸を張って言うのです。
ガーディアンズを目指すからには、まず弱い人を守ろうと言う気持ちがなければならないと。
志は大変立派なのですが、この少年はまだ知らないに違いありません。
自分の命を本気で狙われる、その恐ろしさと圧力を。

一度痛い目でも見ればすぐに悟るでしょうが、それが命取りにならないとも限りません。
私は、こうなったら一刻も早く主人が帰ってくるよう祈るしかありませんでした。

でも、えてしてこういう時ほど間の悪いことは起こるもので。
パルムに住む原生生物、ヴァーラが私達の前に姿を現したのです。

これで逃げてくれればよかったのですが、少年は私の前に立ちはだかって言うのです。
自分がひきつけておくから、今のうちに逃げて、と。
この辺りに出没するような敵なら、私でも苦労なく倒せるのですが。
このように前に立たれては、迂闊に攻撃もできません。

不思議なのは、少年は足を震わせ、恐怖に顔をひきつらせながらも逃げようとしないことです。
怖ければ逃げればいいのに、何故彼はそうしないのでしょうか?

「言っただろ。僕は、ガーディアンズになるんだって。
以前この草原で僕を助けてくれた人に、胸を張ってありがとうを言いたいから。
助けて欲しい時に見捨てられる辛さを、知っているから」

そう言って少年は勇敢にも、その辺の棒切れを拾ってヴァーラへと立ち向かったのです。
466EPX 後日談 3/5:2008/05/26(月) 21:33:21.92 ID:/t0P1bEa
結果は言うまでもありませんが、少年の惨敗でした。
折りよく戻ってきた主人のライフルが、背後からヴァーラの急所をとらえていなければ、
今ここに気を失って倒れている少年は、そのまま命を失っていたかも知れません。

「申し訳ありません、ご主人様。みすみす一般人を危険に晒してしまい」
「いや、いい。大事無くて何よりだった」

主人は、気を失って倒れている少年に応急手当を施すと、そのまま少年を抱え上げます。
「これ以上襲われる前に、急いで安全地帯まで移動しよう」

道中、いきさつを話しながら、私は先程の疑問を主人に聞いてみることにしました。
「あの…その少年は、何故あんな無謀な真似をしたのでしょうか」
「無謀?君は、この少年の行動を、そう表現するのかね」
「間違っていましたか?『勝てないと分かって戦いを挑むはそれ【無謀】という』そう教わりました」

主人は、ふむ、と一息つくと、少年を両手に抱えたまま足を止めました。
「では、君にまた一つ、新しい言葉を教えねばならないな」

「新しい言葉、ですか」
「そうだ。この少年は、恐怖を知っていた。それでいて恐怖に押し潰されず、立ち向かった。
『恐怖を知りながらそれを克服しようと挑む、それ【勇気】という』覚えておきなさい」

主人は何故か、空を見上げて感慨深そうに語ります。
「勇気…それこそが、我らヒトの原点たるヒューマンの持つ、最大の武器。
そして、それぞれにヒューマンより優れた能力を持つ他種族が生まれながらも、
ヒューマンが今まで淘汰されることなく生き残った、大きな理由の一つだと私は教わったのだ」

「この、【勇気】という言葉には色々な概念があることを、私は学んだよ。
自分の侵した罪から逃げず、正面からそれと向き合う。それも勇気。
たった一つの大事なものを守るため、多くのものを失うことを覚悟しながら前に進む。これも勇気だ。
何より…」

「…自分の命が終わろうと言うのに、その原因を作った者を憎むことなく。
逆に、その者の未来を開くために戦うことの出来る者…それこそ、勇気がなくてはできないことだ。
いずれも、恐怖を知り、それを克服しようという強い意志が必要なのだ」

どうやら【勇気】とは、ご主人様が賞賛してやまない、とても大切な要素と見ました。
少年は、幼くして既にその【勇気】を持つ者…私はこの少年に、俄然興味が湧いてきました。
467EPX 後日談 4/5:2008/05/26(月) 21:34:28.39 ID:/t0P1bEa
「さあ、ここまで来れば安全だろう。地元の自警団に連絡し、我々は退散しよう。
…私が彼と顔を合わせるのは、彼のためにならないだろうからな」

主人は、そう言って少年をそっと草原の上に降ろしました。
「彼のためにならない」その意味が分かりかねましたが、私はそれより気になることがありました。

「ご主人様。この少年は、ガーディアンズになれるでしょうか」
「…そうだな。そうあって欲しいものだ。彼女の意志を、無駄にしないためにも」
「ご主人様の言う、【勇気】を持つガーディアンに、ですか」

ここで、主人は意外な言葉を口にしました。
「……それについては、ひとつ不安がある」

「恐怖を克服することが勇気なら、彼には一点欠けているものがあるのだ。
『見捨てられる恐怖』…どうやらそれが、今もって彼を縛るトラウマとなっているようだ。
このままガーディアンズになったとしても、その恐怖に縛られていては。
退くべき時に退けず、命を落とす憂き目にあわないとも限らない」

「その恐怖を、克服することは難しいのでしょうか」
「本人が、それを恐怖だと自覚しない限りは無理だろう」
「ご主人様が、それを教えてさしあげるわけには」
「それはできない。何しろ…その恐怖を刻み付けたのは、他ならぬ私自身だからな」

主人とこの少年の間に、一体何があったと言うのでしょうか?
私には分かりませんが、主人がこの少年の未来を深く憂えていることはうかがえました。
慰めの言葉を考えている私は突然、思いもよらない言葉を口にしていました。

「…大丈夫ですよ」
私自身、何を思ってそんなことを言ったのか分からず、戸惑いました。
主人も、どういうことだ?と、いぶかしげに問いかけます。

「この少年にはきっと、頼もしいパートナーがつきます。
彼に足りないものを補い、導いてくれる…そんな気がするのです」

私は、何かを知っているのでしょうか?
データの奥に潜む何かが囁くまま、私は言葉を紡ぎだします。

「もしも、『彼女』のことを言っているのなら、それは…残念だが、彼女は既に初期化され…」
主人はそこまで言って、ふと考え込みました。
468EPX 後日談 5/5:2008/05/26(月) 21:35:24.89 ID:/t0P1bEa
「いや…そうかも知れんな」
「……?」
「今の君の言葉で、信じてみたくなった。例えデータ上で初期化されようと、残されるものはある、と」
「残されるもの、とは何でしょうか」

答える代わりに、主人は私の頭に手を置きます。
「…君は、初期化される以前の自分について、興味はあるか」
「…考えたこともありません、けど」
「よければ、私と一緒に探してみないか。今の君と昔の君をつなぐ、ある大事なものを」

あるものとは、一体何でしょうか。
以前の自分についての記憶がない私は、首を傾げるばかりでした。

「それを探すことが、私の君への償いにもなるし、彼等の助けともなるかも知れない。
おそらく『彼女』も、いずれ今の自分と以前の自分の狭間で苦しむことがあろう。
だが、その根底にあるもの…それを証明できれば、気付く筈だ。
今の自分も、以前の自分も、その根底にある同じものでつながれていることに。
以前の私なら笑い飛ばしていたものだが、今なら信じられる。PMにも、『魂』があることを」

「タマシイ」それが、今の私と以前の私をつなぐものでしょうか。
そして、主人の言う『彼女』を救う、鍵となるものなのでしょうか。

「まだ、当分あの二人の道が交わることは、ないだろう。
そして、交わった後も、それぞれを阻む物に苦しむことになろう。
それを乗り越える手助けを、私はしたい。君にも、協力してもらえればと思っている」

私が、以前の自分とつながる、根底にあるものを見つけ出す。
それが、少年と『彼女』なる人物を助けることになる。主人はそう言いたい様子でした。

主人の願いとあらば、断る理由はありません。
それにもまして、何故だか私も、同じような気持ちを抱いているようでした。
彼等の助けになりたい、と。
これも、もしかすると私の根底にある何かが作用しているのかも知れません。

「では、行こうか。決して楽な道ではないだろう。私も、君も、そして彼等も。
だが、諦めずに貫いた先で、私達は目の当たりにできると思うのだよ」
「何を、でしょうか」

主人は、陳腐な言い様だが、と前置きした上で、ぽつりと言いました。
「奇跡を」と。
469EPX作者:2008/05/26(月) 21:36:51.39 ID:/t0P1bEa
お久しぶりです。
その節は暖かい応援と数々のねぎらいのお言葉、ありがとうございました。
ハッピーエンドを望んでいた方には申し訳ありませんでしたが、
あれも一つの終わりの形と受け入れていただければと思います。

とはいえ、>430さんの言うように寂しいと思う気持ちも分かります。
だからというわけではありませんが、後日談として少し救いになる話を投下いたしました。

内容を見ると色々伏線を張っているように見えますが、
まさかまた長編が?と心配する方にはご安心を。
少なくとも私は、この少年についてのエピソードを紡ぐつもりはありませんので。
後日談は、あくまで後日談ということです。
470名無しオンライン:2008/05/30(金) 18:24:58.83 ID:qq7/0yXA
ホス
471名無しオンライン:2008/05/30(金) 18:34:29.31 ID:GMt7ECDA
>>469
連載お疲れ様、楽しませていただきました。
次の作品を楽しみにしておりますよー
472名無しオンライン:2008/06/01(日) 21:22:58.56 ID:G7HcMcaN
バルサミコ酢入りのパスタソースとやらを見かけて420を思い出した。

と言う保守。
473元ガーディアンズ 1/3:2008/06/02(月) 10:24:39.79 ID:21BKdxkm

ガーディアンズを辞めて一週間が過ぎた。

全てのパートナーカード登録を含むガーディアンズライセンスをミーナに返却し、長い間
時間を共にしたパートナーマシナリーにも別れを告げた。
全ての手続きを終えて本部を後にする私を、出口のドア前までついてきて見送る
GH 443の無表情な顔が今も忘れられない。
期待した様な感動的なシーンも別れを惜しむ会話もなく、手も振らずただ黙って
無表情で私を見送った443。

ガーディアンズを辞めた者だけにミーナが知らせる、ひとつの事実。
機密事項でも何でもない、ただガーディアンズ在職中には知らせないというだけのそれを
何故か、知った誰もが納得し、そして誰かに話す事もなく別の人生を歩み出すという。
474元ガーディアンズ 2/3:2008/06/02(月) 10:25:23.81 ID:21BKdxkm
時折、任務に出かけるルウをスペースポートの近くで見かける。
顔を覚えているのか、目が合うとぺこりと会釈をしてゆくが、決して話しかけてきたりはしない。
この立場になった今ようやく、彼女が街中での移動で時々遅れてくる理由を知った。
引退した数多くのガーディアンズが、シティの市民として暮らしていたのだ。
彼女はその全ての人々を人間よりも正確で薄れない記憶に刻み、該当する人物を
目にする度、そうして会釈を交わしてきたのかもしれない。

人の記憶はやがて薄れるが、機械に記録されたデータは「削除しない限り」薄れない。
キャストとマシナリーの中間的存在であるルウがそうである様に、ガーディアンズが苦楽を
共にしたパートナーマシナリーの記憶もまた、決して薄れる事はないのだ。
彼女らは一人のガーディアンズと過ごした時間を全て「記録」し、それらを「経験」として
経験を元に、次のガーディアンズへパートナーとして「着任」するのだとミーナは語った。

私についた443が、まだ玉っころの頃から何かとガーディアンズの世話を焼く振舞いが
妙に自然だったのは
GRM社による初期設定などではなく、人と同じ様に「経験」があったから。
寝坊したりわがままを言ったり、愚痴をこぼしたりだれたり怒ったり泣いたり。
そんな「人」の行動に「機械」を対応させる為に、人と同じ心理構築モデルを適用したという
ただそれだけの話だった。
475元ガーディアンズ 3/3:2008/06/02(月) 10:25:48.30 ID:21BKdxkm
「マシナリー」である彼女らと、私たち「人」。
もちろん、情動や行動を機能的に限定されたマシナリーは完全な「人」にはなり得ないが
そんな行動のフィルターを通してさえ、パートナーマシナリーは「パートナー」として
私たち人へ自然に接してくれた。

「彼女らも私たちと同様に、ガーディアンズに属して任務に就く「ガーディアンズ」なのです。
 そう考えて、パートナーマシナリーとはお別れしてください。」

装備返却の際に売却代金として支払われる、かなりの額になるメセタをそのまま提示し
パートナーマシナリーを連れ帰りたいと申し出る引退者にはいつもそう伝えると
ミーナは話していた。
いつもの気楽そうな口ぶりはどこかへ飛んで消え、少し辛そうな表情をした彼女は
まるで別人の様だった。
ガーディアンズには決して見せない、見せられない彼女の素顔だったのかもしれない。

窓の側に腰掛けながら、今はもう遠くに見えるダグオラ・シティを懐かしく眺める。
たまにはシティへ出かけて、あたふたしているガーディアンズの手助けでもしてやるかな。
もしかしたら私と同じ様に、彼らの中にも世界を救うお手伝いをしながらも
何だか全然報われないスゲエ可哀想な奴が…
もしかしたらだけど、いるかもしれないからね。
476名無しオンライン:2008/06/02(月) 10:31:30.24 ID:21BKdxkm
『本当にあったかゆい話』 最終話かもしれません。
クソッタレな世界ではありましたが、またいつか戻ってこれる事を信じて。
477名無しオンライン:2008/06/02(月) 10:42:35.69 ID:21BKdxkm
読み直しててちょっと説明不足な点があったので補足

443(パートナーマシナリー)が無表情で何も言わず、ただついてきて見送ったのは
マシナリーとして情動・感情表現を制限されているからっていう設定だからです

マシナリーだから「寂しい」という感情表現は出来ないけれど、でも蓄積した経験から
自分の行動を決める対象としてのガーディアンさんが自分から離れるという事実に
対応した行動をそれとなく取ってしまったという、AIによる挙動のグリッチが現れたという感じで…
478名無しオンライン:2008/06/02(月) 16:14:24.85 ID:cVL2lJXj
>>472
バ「サル」ミコスの事かー!

>>477
課金やめて早二ヵ月、うちのパシリは元気にしてるだろうか・・・
なんだろう目から汗が・・・
479名無しオンライン:2008/06/05(木) 19:12:07.62 ID:uMakIIPy
俺も課金だけはしてあるけど最近やってないなぁ。

健気にいつ取り出されるかわからない、
デルピーを腹の中に抱え込んでいるのだろうなぁ…。
480名無しオンライン:2008/06/05(木) 22:07:12.53 ID:7H7BEYZv
>>479
「ご主人さまが戻られるまでお腹の子は大切に守りますから」
とか変なこと想像しちゃったじゃないかw
481名無しオンライン:2008/06/06(金) 17:11:27.17 ID:Oo4dxWyO
482名無しオンライン:2008/06/06(金) 18:14:29.31 ID:/fPuEhd8
g
483PMと私の10の約束:2008/06/06(金) 22:55:02.64 ID:+/DuM4rH
1.私と気長に付き合ってください。


2.私を信じてください。それだけで私は幸せです。


3.私にも心があることを忘れないで下さい。


4.言うことを聞かないときは、理由があります。


5.私にたくさん話しかけてください。気の利いたことは言えないけれど貴方の気持ちは分かっています。


6.私をたたかないで。本気になったら私の方が強いことを忘れないでください。


7.私が年を取って古くなっても、仲良くしてください。


8.貴方にはガーディアンズがあるしフレもいます。でも、私には貴方しかいません。


9.私はどれだけ生きられるか分かりません。だから、できるだけ私と一緒にいてください。


10.私が死ぬとき、お願いです。そばにいてください。そして、どうか覚えていてください。

  私がずっとあなたを愛していたことを。
484名無しオンライン:2008/06/06(金) 23:57:19.37 ID:4cZkJ5ME
6.は意外に知られてないよね
犬が「本気になったら」愛玩用の小型犬ですら大人も危ない
485名無しオンライン:2008/06/07(土) 20:52:54.60 ID:tg+ZuIS9
ハスキーとかだと、ちょっと気合入れて遊ぼうとされただけで市中引き回しみたいな目にあわされるしな
486名無しオンライン:2008/06/07(土) 21:14:01.93 ID:uDX7j8Jc
あのもこもこの毛並みに隠れたハスキーの筋肉はすごい
触ってて惚れ惚れする
487名無しオンライン:2008/06/08(日) 09:44:43.56 ID:bPO//dtz
>>483
これテンプレに入れたいな
このスレ象徴してるよ GJ!
488名無しオンライン:2008/06/08(日) 13:45:09.08 ID:c1yRNnLi
愛犬を亡くした次の年にそれが世に出てきて
見る度に、もっと一緒に遊んでやれば良かったと
泣きたくなるほどに後悔と自責の念に関わるのでダメ!
ちなみにパシリにも犬の名前つけてた!更に言うとハスキーでした!ついでに450でした!
489名無しオンライン:2008/06/09(月) 04:06:28.08 ID:5sp3fRIW
ここで俺が単発に挑戦。



-HIVEリアクタールーム-

D・F 「ぶるぁぁぁぁぁぁ!!」
主人「よーし、第二形態来るぞー」
412 「はいっ、レスタもかけたし準備万端です!」
鉄子「こっちもいつでもオッケー!」

来るべき敵に備えていると、突然490さんがてこてこ歩き始めました。
数歩進んだ所で、突然こちらをくるうりと振り返るとぱかっと顔を開いて…。

鉄子「ど、どーしたの490?」
490 「私は貴方の人形じゃない」
三人『…はぁ?』

鉄子「…突然何言ってるのよ、アンタは私のパシリで」
490 「ダメ、マガシ君が呼んでる」
主人「マガシ君って、お前がマガシその物だろ」
412 「…それは言ってはいけない様な気がします」

すると490さんは突然、ふわりと浮かんで倒れこんでいるDFの方に飛んでいきました。

鉄子「ちょ、ちょっと490ー!?」



490 「ただいま」

    「おかえり。」



D・F 「貴様の運命もこれまでだァァァ、じぃ〜えいちよんひゃくじゅうにぃ!」
二人「な、なんだってー!?」
412 「え、ちょ、何で私なんですかぁ〜!?」
490名無しオンライン:2008/06/09(月) 16:48:22.98 ID:u6PNQdwb
またえらく懐かしいネタから引っ張ってきたもんだな…w
491名無しオンライン:2008/06/10(火) 01:44:12.34 ID:4O+MbkhM
やべぇ投下後に気付いた

412 「はいっ、レスタもかけたし準備万端です!
    (ただし、鉄子さんに届かない範囲で…)」

にすりゃよかったぜ
492名無しオンライン:2008/06/13(金) 19:31:13.55 ID:vlEmJle0
なんつーか凄い勢いで過疎ったなぁ
GBRで皆引退?
493名無しオンライン:2008/06/13(金) 19:58:41.76 ID:teCNiGMt
>>492
ヒント:鯖落ち
494名無しオンライン:2008/06/15(日) 11:05:54.23 ID:L7ePLiox
PSP版だと始めから好きなパシリを選べるらしい。
後は・・・解るよな?
495名無しオンライン:2008/06/16(月) 12:49:06.14 ID:kBEN6onW
PSP版へ移行?有り得ない
だったら続けてるよ
496名無しオンライン:2008/06/16(月) 20:22:18.59 ID:vITAKDSd
球数無いと磨けない武器強化仕様と言い、ソニチは『愛着』という概念を知らないらしい。
名前と型番だけでも読み込むだけで随分印象が違うのにな。(490とかは410とかにするとしても)

さて、PSU版パシリとPSP版パシリが喧嘩するネタでも考えるかな…
497名無しオンライン:2008/06/16(月) 22:19:19.81 ID:/524zCTM
>>496
傷物武器もあれはあれで愛着が出来るもんだぜw
ああ、これ取って苦労して作って強化したら3→4で折れたんだよなぁとか

いい仕様かどうかは別だけどなw
498名無しオンライン:2008/06/18(水) 11:00:20.25 ID:zBT6AvbT

御主人「PSP版はパシリの服が着られるだそうだ」
パシリ「へえ、ペアルックですね。いいな」
御主人「あとはなりきりが出来るな。わんわんさうざんどプレイとか出来るぞ」
パシリ「…御主人は相変わらずですね」
御主人「まあオレは男性なので無理だが」
パシリ「そうですね」
御主人「PSP版は性転換しようかな?」
パシリ「…出来れば止めて下さい」
御主人「まあ一緒にプレイするフレいれば性転換しなくてすむか」
パシリ「そうですね…でも」
御主人「でも?なんだ?」
パシリ「御主人にリアルでフレいました?」
御主人「… … …」
パシリ「…すみません」


とりあえず書いてみた。
キャストなら親子マシーンが出来るのか…
499名無しオンライン:2008/06/18(水) 11:12:49.79 ID:K3l7umkh
>>498
PSPだとパシリの服があるだと!?
わんわんさんどごっこが出来るだと!?

なんという新要素、まさにこのスレ向きじゃないか
500名無しオンライン:2008/06/18(水) 12:25:04.23 ID:8Qhz27JO
>>499
言っとくけどPC版/PS2版にもPC用全パシリ服あるよ
PSP版の売りにしたいからアンロックしてないだけ

ヴィヴィアンとヘルガのデータも全部入ってるんだし、いい加減学ぼう
501名無しオンライン:2008/06/18(水) 12:49:54.05 ID:/v+UwDkk
ヴィヴィアンとヘルガは見かけたが、パシリも有ったのか…
サイトのヒントキボン
502名無しオンライン:2008/06/18(水) 17:09:33.45 ID:8Qhz27JO
>>501
いやいや、パシリの頭身を見るんだ
あとPSUのキャラクリシステムを思い出してみれ
ポリゴンデータってのは拡大縮小が出来るんだよ

やればPMに普通の服を着せ替える事もできるって意味
データは一緒なのよ
503名無しオンライン:2008/06/18(水) 17:11:55.74 ID:/v+UwDkk
「やればできる」の話か
d
504名無しオンライン:2008/06/18(水) 17:15:32.75 ID:8Qhz27JO
「やればできる」つっても、クバラブランドで店に置くか置かないかレベルだぞ
パシリ服の開放もイルミナス開発時点からPSP版の計画があって、その為にロックしていただけ
505名無しオンライン:2008/06/18(水) 17:19:24.55 ID:DvZIRyBN
うちのキャス子に442の服着せたいなぁ
かわいいから連れ歩いてるけど、よ、よわすぎ…
506名無しオンライン:2008/06/18(水) 18:36:37.83 ID:8Qhz27JO
キャストなんかサイズ調整できてもいいのにな


興味本位で、PM体型化処置を受けてみた。

視点が低い。景色が広くなったように感じる。
人の顔が見上げる位置にあるので、人と話していると首が痛くなる。
通りすがりのガーディアンズに知らない名前で呼ばれる。頭を撫でられる。
きょとんとしたショップのお兄さんの、なんとも言えない表情がおかしくて仕方ない。

ひと通りパートナーマシナリーの視点を楽しんだところで、ミッションへ出かける事にする。
体型による運動能力の差を考えて、コロニー連絡通路へ向かう。
私の姿を見て、ポーターのキャストが「びっくりしますよ」と悪戯っぽく笑う。
SEEDエネミーが大きく見えるという事なのだろう。キャストの私に予測できない未来はない。
武器パレットを確認し、今では見慣れた、フォトン汚染の進まない連絡通路へ足を踏み入れる。


「ぎにゃああああ!」

ぱ、ぱ、ぱのんが。ぱのんが!パノンがあー!!

足で蹴れるサイズだったパノンが、例えるなら部活の後輩くらいな身長で
首をかしげながら人懐っこそうに寄り添ってくる。
めん子(※パートナーマシナリーの名前)がよくパノンに包まれてきゃあきゃあ叫んでいるのを
和みながら見ていた私だったが、まさかコレほどの恐怖とは思わなかっ



みたいな体験が出来てもいいのに勿体無い事を
507名無しオンライン:2008/06/19(木) 01:47:51.92 ID:d14+fLZV
>>506
しゃがんでアップで見たポルティもとても怖かったです。
あれを可愛いと言うPMやガーディアンのセンスって・・・
508名無しオンライン:2008/06/19(木) 08:07:17.59 ID:PsiPWFcI
>>502
なんだ服ってかグラフィックデータがあるってだけか、そりゃパシリの見た目が表示されてるんだからそのデータはあって当然だわな
以前解析でキャラグラ改変のを見たが、表示されているキャラはいくつかのパーツ(髪、顔、胴体とか)を組み合わせて作られているからそれをいじる事でありえない組み合わせが作れたりする(パシリの頭に胴体ヴィヴィアンとか)

だがキャラグラがある=服として使用可能だがアンロックしてないだけ、というのはさすがに違うな
ちゃんと普通のキャラが着ることが出来る服という形で出る事が重要なんだぜ

>>506
キャラ小さくなって主観視点モードで戦えたらそういう体験も出来るんだろうな
まあ敵キモイで終わりそうだがw
509名無しオンライン:2008/06/19(木) 12:31:23.02 ID:r0JS+fFn
>>508
できるってば、検証したわけじゃないけどPSU的に考えると99.96%可能と予想

例えば、NPCの服が実はきちんとパーツ分けされてる事がウィッコの服装で証明されている
NPC服だって実は内部的にカラーバリエーションがあるかもしれない
ミクナスと同様に全身スーツという形で普通のキャラに着せられると思う
♂キャストならクバラで執事スーツを売り出す事もできるはず

とにかく、PSP版で新たに服データを作ったってのは無いと断言できる
そんな仕事のできるスタッフはもういない
510名無しオンライン:2008/06/19(木) 16:17:21.57 ID:PsiPWFcI
>>509
あぁいやすまん、それの結果なら知ってるんだ、無印時代にいじったキャラの絵を見たことがある
パシリの姿がロードされるまで普通のキャラ程度のサイズの青人形が表示されるだろ、でもロードが完了するとパシリのサイズに縮む
青人形のサイズがあのキャラに設定されている身長なんだがパシリの胴体パーツがあのミニサイズ固定なので強制的に小さいキャラになる
だからそのデータを無理矢理通常キャラに移植しても通常サイズのパシリ服になることはない
NPCパーツは基本的にそういう風に作られてるんだわ
511名無しオンライン:2008/06/19(木) 16:32:30.17 ID:PsiPWFcI
なんかややこしくなったので簡単に
PC服は設定された身長体格に合わせてグラを貼りつけている
NPCパーツは人形の頭と胴体を付け替えるようなもの
要するにPCとNPCは作り方の時点で違うんだわ

さてパシリスレで語るようなことじゃないのでこの辺で自粛しときます
512名無しオンライン:2008/06/19(木) 19:05:28.52 ID:r0JS+fFn
んー、ミクナスだけあらかじめ配布仕様になってたとは思いづらいけどなあ
まあ自粛ですね
513名無しオンライン:2008/06/19(木) 22:21:35.48 ID:Nxs3ry0c
>>509
PSP版の作成はセガじゃなくてアルファシステムだぞ?
514名無しオンライン:2008/06/19(木) 23:08:59.92 ID:Ep7BN07w
めんどくさいのは普段服のE3はPCとして作られてるであろうって事だな。

>>512
予めも何も、イルミナスで追加でPC服として色も追加してコンバートしただけだと思うが…
元々全部対応で作ってるという方がよっぽど思いづらいよ。
515捕らわれのPM:2008/06/20(金) 00:36:25.69 ID:XhQHzkM5
パシリ「御主人様はどこだ!開放しろ!」

-いいだろう。会わせてやる。・・・貴様が崇拝している、その御主人の姿がこれだ。


御主人「ひゃあ!面白いのお!アドホック!!アドホックが面白いのおお!」



パシリ「・・そんな・・・」

-ユーザーを増やすためだけに作られたアドホックモードを喜んで遊んでる、このメス豚が
おまえの御主人様だよ!!ハッハッハッ!!

パシリ「・・・御主人さ・・ま・・・」


女騎士「カッパ寿司に行こうよ」を読んでたらつい。
今はかなり反省している。
516名無しオンライン
その後、パシリは主人と一緒にアドホックモードを末永く楽しんだという。