【PSU】新ジャンル「パシリ」十五体目

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1名無しオンライン
合言葉は

  ( ゚д゚ )<倫理的におk      
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /
     ̄ ̄ ̄
[ ´・ω・`]<創作能力がしょぼいんだけど投下していいの?
( ゚д゚)<倫理的におk 尋ねる暇があったら投下マジオヌヌメ

[ ´・ω・`]<凄く長くなったんだけどどうすればいい? あとパシリ関係ないのは?
( ゚д゚)<空気嫁ば倫理的におk 分割するなりうpろだに上げるなりするんだ

[*´・ω・`]<エロネタなんだけど…
( ゚д゚)<ライトエロなら倫理的におk あまりにエロエロならエロパロスレもあるよ
ファンタシースターユニバースのエロパロ 2周目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1173107109/l50

[ ´;ω;`]<叩かれちゃった…
( ゚д゚)<叩きも批評の一つ。それを受け止めるかどうかはおまいの自由だ
m9(゚д゚)<でもお門違いの叩き・批評はスルーマジオヌヌメ するほうもそこを考えよう

[ ´・ω・`]<投稿する際に気をつけることは?
( ゚д゚)<複数レスに渡る量を書きながら投稿するのはオヌヌメできない。まずはメモ帳などで書こう。
m9(゚д゚)<あとは誤字脱字のチェックはできればしておいたほうがいいぞ

[ ´・ω・`]<過去の住人の作品を読みたいんだけど
( ゚д゚)<まとめサイトあるよ ttp://www.geocities.co.jp/nejitu3pachiri/
保管庫Wiki ttp://www21.atwiki.jp/nejitu3pachiri/

( ゚д゚)<前スレ
【PSU】新ジャンル「パシリ」十四体目
http://live27.2ch.net/test/read.cgi/ogame3/1191001795/
( ゚д゚)<次スレは容量が470kを超えるか、>>800を超えた辺りから警戒しつつ立てよう。
2名無しオンライン:2007/12/06(木) 20:30:55.01 ID:3PaINYvv
糞スレ立てんな
3名無しオンライン:2007/12/06(木) 20:47:09.92 ID:w7WWr9Aq
なんとなく立ててSS投下した後は忘れてたのに、パート15まで育ってるのか、、、
4名無しオンライン:2007/12/06(木) 20:52:22.36 ID:z50bztUI
>>1、乙!
5名無しオンライン:2007/12/06(木) 23:42:37.23 ID:Hy0g3x2w
オレ・・・この戦いが終わったらパシリスレにいっぱい書き込むんだ・・・
6名無しオンライン:2007/12/07(金) 01:15:03.00 ID:BeGiDbWY
ていうかぱしり形態でSUV撃つやつとそうでないやつがいるの?
7名無しオンライン:2007/12/07(金) 01:34:56.21 ID:lh2f1X1x
>>6
 4x2と4x4はSUV使うけど、4x1と4x3は使わない。
 Wikiで調べてみるといいぜ。
8名無しオンライン:2007/12/07(金) 02:06:59.39 ID:BeGiDbWY
>>7
サンクス;;
9名無しオンライン:2007/12/07(金) 07:43:27.59 ID:n8vSIw/A
>>8
470と480以外の4x0も使わない、当然だがな


ともあれ>>1
10名無しオンライン:2007/12/09(日) 00:23:34.27 ID:9nd+M5Qg
ほしゅ。

週末だというのに、書き込み少ねぇな…
11あぼーん:あぼーん
あぼーん
12名無しオンライン:2007/12/10(月) 01:17:45.39 ID:0IzdsSrZ
スレも十五体目になってやっと(7ヶ月ぶり・・・orz)深緑の舞踏が書きあがったので投下
と思ったけど間が空きまくり+量があるのでまとめて圧縮して上げました

ttp://www.mithra.to/~psu/uploader/src/psu10278.zip
パス:gh420

まあ今更過ぎて覚えてる人もほとんど居ないと思うけど・・・
13名無しオンライン:2007/12/10(月) 01:40:57.36 ID:IComxSH1
>>12
ところがどっこい。しっかり覚えている俺が華麗に参上〜

寝る前に来て見たら、ずっと楽しみにしていた続きキテタ〜(・∀・)
音速で、ダウンロード&解凍完了。
ただ、スマン。睡魔が襲ってきてるので、明日にでもゆっくり読ませてもらうぜ〜。
14名無しオンライン:2007/12/10(月) 07:27:33.63 ID:o68bIH5m
2008年1月-3月配信予定
新パートナーマシナリー追加

これって爺と少年の派生かな?完全に新しい子でるのかな?
15名無しオンライン:2007/12/10(月) 09:17:09.07 ID:twUIyjN+
スレ投下じゃないのは少し残念だけど、乙ー!
散歩中、仕事中とかはネタ浮かぶのに
家帰って座った途端に霧散する今日この頃
16名無しオンライン:2007/12/10(月) 10:47:29.90 ID:az/VN38e
>>12
 420話氏、乙!俺もしっかり覚えてるぞ〜
 420(妹)がどうなるかと思ったが、落ち着く先が決まってよかったよかった。
 主人がいてこそのパシリだもんなぁ。


>>14
 多分、ヌイグルミ型じゃないのか?あれだけはまだ話が出てないから。
 もしかしたら、水着型かもしれんが…
17名無しオンライン:2007/12/10(月) 20:32:24.86 ID:ViQTf8Uf
流れを読まずに投下!


男「ふ〜、ここらの敵はあらかた片付いたかな? 430ー、そっちはどうだ?」
430「はーいっ! 綺麗なちょうちょさんが飛んでますーっ♪」
男「そうかー、そいつはよかったな。っと、アイテム回収アイテム回収っと」
 ベー 『これ以上アイテムを持つことは出来ません』
男「ん? もうアイテム一杯か。430ー、そろそろ帰るぞー」
430「いやですーっ、もっとちょうちょさんと遊びますーっ」
 ピロンッ 『男がミッションを放棄しました』
430「アッー!」

 ──マイルーム

男「じゃ、アイテムを倉庫にいれるぞ」
430「はいっ!」
男「えーっと、ケレセリン3つに、ヴェスタリン5つ、バルカリンが5つと─」
男「ん? ヴァーラネイル? こんなもの拾ったかな…。それから…、
 綺麗な石ころに、440の帽子にセミの抜け殻…」
男(これは…、また430の拾い癖がでたか…。どうりですぐにアイテムが一杯になるはずだ…。今日こそはガツンと言ってやらないと)

男「……なあ、430」
430「はい!(^▽^)ニコニコ」
男「いや、あのな…?」
430「(^▽^)ニコニコニコニコ」
男「…えーと、そのぉ」
430「(^▽^)ニコニコニコニコニコニコ」
男「…いやまあ、なんだ、ありがとな…」
430「 .+。(*´▽`).+゜パァァァ」

男(俺は間違ってない! 間違ってない…、間違って…ない…、よな?)
18名無しオンライン:2007/12/10(月) 21:00:28.14 ID:2vmCFjSU
新パシリか…GH441がいれば満足な俺だけど、世界観が広がると思うとwktkは止まらない。
でもその前に4x1と4x2を上級職にしてあげて欲しいんだけどな…ダメかな…

>>12
どうしたかと思ってたけど完結して良かった。今はただひたすらに乙!
そのうちまたドタバタな短編も頼むぜ。

>>17
大丈夫、間違ってない。さぁ、次の思い出を作る作業に戻るんだ…。
ヴァーラネイル(役に立つ物)が微妙に混ざってるあたり、ポケモンの「ものひろい」を思い出したw
19名無しオンライン:2007/12/10(月) 22:24:48.68 ID:IComxSH1
>>12
今読み終わったぜ。
wktkしながら待っていた甲斐あって、非常に楽しめました。
420妹の回想から始まったから、420姉の安否が心配だったけど、
逃亡生活ながらも、無事生活しているようで一安心。

また気が向いたらで良いんで、420話、書いてくださいな。

俺、このカキコが終わったら打撃特化420作るんだ・・・

>>17
はやく440に帽子を返すんだ!!!
帽子が無いと、ご主人が440と認識出来n・・・

おや、誰か来たみたいだ。ちょっと見てくるノシ
20名無しオンライン:2007/12/11(火) 10:55:45.43 ID:V0s1Hvty
うちの440が帽子をなくしてしまってな。
半日部屋に閉じこもってたと思ったら急にブツブツ独り言言い始めてさぁ。
晩飯にも来ないと思ったら部屋にいないんだ。
しかも武器とか全部持ち出したらしい。

誰か見掛けたら保護してくれないか。
21名無しオンライン:2007/12/11(火) 13:54:12.58 ID:8HJqFRqr
>>15
そんな貴方に携帯電話、唐突に思いついたネタを控えておくと後で書くときにかなり役に立つぜ
ちなみに俺の携帯ではメモだと改行出来ないので宛先未記入の保存メールを用意してそこに書いてるぜ

>>16
元々420(妹)の回想シーンだったから落ち着き先は最初から決まってたんだけどな
しかし覚えていてもらえたり設定を使ってもらえたのが励みになったぜ、ありがとう

>>19
楽しんでもらえて幸い
やっぱり楽しみにしてたとか面白かったとか言って貰えると凄く書いた甲斐があるなぁ、書き手の最大の楽しみだぜ


読んでもらった人達にお願いしたいんだけど「この辺がよく解らない」とかあったら書いてもらえるとありがたいです
書いて読んでみて一応手直しとかはしたつもりだけど正直自分じゃわからない部分もあったので


>>17
拾い癖があってもその笑顔を見れば許せてしまう、それがパシリバカの性って奴かw
420でも似たようなことしそうだななんて思ってしまったぜw
だが440の帽子は駄目だ、早く返さないと取り返しの付かないことに・・・!
22名無しオンライン:2007/12/11(火) 16:18:29.93 ID:sUL3/pzz
帽子の無いタイプに変化させる事で回避した。
「あれ?手ぶら?」
「質量保存の法則です」
23(1):2007/12/13(木) 00:57:08.11 ID:2e41jt86
>>20

男「おーい430、ミッション行くぞー」
430「はいっ、ご主人様!」
   __
  | ヽ ノ||
  |__Y_||     
  ァ!ノリノノ )))〉    
  | @i ゚ ヮ゚ノリ   
  |⊂)i卯!(つ     
 ..!ノく/_| 」      
 .ζ し'l_ノ

男「……、その帽子、気に入ってるのか…?」
430「はいっ! 見てください、この、ねこさんのアップリケ! 可愛いですよねっ!」
男「いや、まあたしかに可愛いけど、でも破けた箇所にそんな物縫い付けるくらいなんだから、よほど大事にしてたもんなんだろ。
 持ち主も困ってるだろうし、持ち主が現れたらちゃんと返すんだぞ?」
430「…わかってます。でも、それまでは一緒でも、いいですよね…?」
男「まあ、帽子のない440なんてすぐ見つかるだろうけど、それまでは…、な」
 .+。(*´▽`).+゜パァァァ
430「はいっ! えへへー、もうちょっと一緒にいられますね!」
男(やれやれ、結局この笑顔に負けちまうぜ…。でも、一緒に寝てくれなくなって、あんちゃんちょっとサミシイっ)

 ──惑星パルム ミッション中

男「430ー、そっちはどうだー?」
430「はいっ! ちょうちょさんがセクロスしてますっ!!」
男「おまっwwww 女の子がそんなこと言っちゃいけませんっ/// せめて交尾と言え!」
430「ご主人様、お顔が真っ赤ですよー?」
男「ほ、ほっといてくださいっ///」

 ──数時間後

男「ふいー、ここらの敵は、あらかた片付いたかな」
430「片付きましたーっ」
男「そんじゃ、今日は帰るか。帽子の持ち主も探さないといけないしな」
430「あ…、はい、そうですね…」
男(やっぱりちょっと愛着がわきすぎたかな…? 持ち主が見つかったら、似た帽子を買ってやるか…)
430「……」
男「……」
430「あ、あのっ」
男「ん?」
430「や、やっぱりこの帽── 「ミ ツ ケ タ」 ──!?」
男「な、なんだ…?」

 ガッチャガッチャ

 二人が声のした方向へ視線を向けると、そこには、左手にはグレネードを持ち、右手にはライフルを掲げ、
 背中にはレーザーを背負い、腰にはセイバー、ダガーを複数ぶら下げている完全武装した『帽子をかぶっていない』440の姿があった。
24(2):2007/12/13(木) 00:59:12.03 ID:2e41jt86
440「ミツケタ…、ワタシノ…ボウシ…」
男「……」('ロ')
430「……」('ロ')
440「私の帽子ーーーー!!!!」

 440の手にするライフルが火を噴く!

男「うおー!? 」
440「返して、私の帽子ーーーーー!!!!!」

 続けざまに440はグレネードを乱射する!

430「きゃー! きゃー!?」

 ドゴーン ドガーン

440「はぁ、はぁ」
男「お、落ち着け、返す、返すから、その物騒なモンを仕舞え、な?」
440「…その帽子がないと、仕舞う場所がありません…」
男「あ、そ、そうなのか…。ほ、ほら、430、持ち主が現れたぞ、早く返して差し上げるんだ!!」
430「あ…」
男「よ、430…?」
430「……」
440「はやく…、その帽子を返しなさい…!」

 ジャキッ
 ライフルを片手で持ち上げ、430に銃口を向ける。

430「う、うぅ…」
男「430…?」
430「うあぁぁっ! 嫌です! これは私が拾ったんですっ! 私の物なんですーー!!」
男「あ、おいっ、430!?」

 ダッと、その場を駆け出す430。

440「ま、待って! あっ!? はぶっ!」

 明らかに重量オーバーだ。逃げる430を追いかけようとした440は、足をもつれさせ、前のめりに倒れた。

430「っ!?」

 倒れた拍子に持っていた武器ががしゃがしゃと周りに転がる。
 その音を聞いた430はハッと足を止め、おそるおそる振り返った。
25(3):2007/12/13(木) 01:00:10.51 ID:2e41jt86
440「う、うぅ、お願いします…、お願い…します…。ひっく…、その帽子を…ぐしゅっ…返してください…。
 ぐす…、ひっく…、それは、ご主人様との大事な思い出が詰まった帽子なんです…。
 だから…うっく…、だからっ…! おねがいじまずから、かえじでくだざいぃ……! うぁぁ…っ!」

 よほど大切なものなのだろう、転んだ拍子に鼻を打ったのか、鼻血をだし、転んだままの格好で懇願する。

430「ぁ…、ぁ…」
男「ほら、430…?」
430「……」

 430は、ぎゅっと帽子を胸に抱き、今まで帽子と過ごした日々を思い返していた。
 帽子と一緒にご飯を食べた。 帽子と一緒にお風呂にも入った。 帽子と一緒のお布団で眠ったりもした。
 そして、帽子と一緒にミッションへと出かけた…。
 短い間だったけど、本当に楽しかった…。幸せだった…!
 だから…、だからこそ解る…。この440にとってもこの帽子に宿る思い出は、かけがいのないものなのだろう。
 だから、430は…

430「あ、あの。本当に…、ごめんなさい…でした…。わた、私…、私…!」

 スッと440の目の前に、ねこさんのアップリケが縫い付けられた帽子が差し出される。
 ミッション中に帽子が破けて泣いていたら、ご主人様がたどたどしい手付きで縫ってくれた。
 縫い跡が目立つからと、可愛いねこさんのアップリケをつけてくれた。
 針で手を刺したのか、傷だらけの手で、そっと頭にかぶせられる帽子。
 それからは、大事に、それはもう宝物の様に大事にしてきた。
 だが、あるミッションで、ディ・ラガンに吹き飛ばされた時に失くしてしまった。
 ご主人様は「気にしなくていいよ」と言ってくれたけど、自分にとっては世界が終わってしまったかのようだった。

 この広いパルムの大地。もう二度と戻ってこないと思っていた。
 …それが今、目の前に差し出されている!

440「ぁ、あ、あぁ…」

 恐る恐る帽子へと手を伸ばす。そして、しっかりと、思い出と共に、その帽子を胸へと抱いた!

440「うあぁぁぁぁぁああ!!! うわぁぁぁぁあああ!!!!」
430「ふ、ふぇぇぇええん!!! ふえぇぇぇぇええん!!!!」

 パルムの大地に、二つの泣き声が木霊した。

 延々と… 延々と…
26(4):2007/12/13(木) 01:02:15.29 ID:2e41jt86
 ──翌日 男のマイルーム

430「ぼー…」
男「……」
430「ぼー…」
男「ゴホン、あー、430? きょ、今日もいい天気だなぁ!」
430「そうですねー…」
男「あ、そうだ! こないだ食べたいって言ってたファントム食うかっ!? 3/3だけど…」
430「そうですねー… モギ… モギ…」
男「で、デザートもあるぞ? ほら、星霊の涙!」
430「そうですねー…」
男「…鼻の長い動物は?」
430「キリンですねー…」
男「いや、ちがうんじゃね?」
430「ゾウですねー」
男「…はぁ、だめだなこりゃ…」

 ウィーン

男「ん? 客か? すんません、今、閉店中でして…って、あれ?」
440「あ、あのぉ…、すみません…」
男「君は、昨日の…」
440「その節は、どうも失礼しました…。それで、430さんはいらっしゃいますか?」
男「あ、ああ、そこに…ってうわ!?」
430「あははー、あ、遊びに来てくれたんですか!? 感激ですーっ!(^▽^)」
440「え? あ、あの、実は」
430「あー! やっぱり440ちゃんにはその帽子が似合いますねっ! とっても可愛いですー!」
男(ったく、無理してるのバレバレだっつの…)
440「430さん、聞いてください!」
430「はうっ!? あ、ご、ごめんなさい…」シュン
440「あ、いえ…。ただ…」
430「……」
440「ただ、一言、謝りたくて…」
430「…え?」
440「ごめんなさいっ!」
430「え…? えっ!?」
440「貴女はただ、帽子を拾ってくれただけなのに、こんなにも綺麗に持っていてくれたのに…。
 私は、自分のことしか考えずにあなた方に攻撃を仕掛けてしまった…。本当にごめんなさい…」
430「ふえっ、そ、そんなに謝らないでくださいっ!」
440「ですがっ!」
430「それにっ!」
440「っ!?」
430「それに、謝るのは私のほうです…。私は、帽子の持ち主は現れない方がいいと思ってました。
 ずっと、一緒にいたかったから、それこそ、自分勝手な想いで…。
 だから、ごめんなさい。本当に…、ごめん…なさい…。うぅ…ふぐぅ」

 帽子に対する想いを思い出し、感極まって涙があふれ出す。

440「そんな…、それは貴女のせいじゃ…」
男「はいっ、そこまでー」

 キリのない謝罪合戦が始まろうとしたその時、今まで成り行きを見守っていた男が間に割り込む。
27(5):2007/12/13(木) 01:08:39.33 ID:2e41jt86
男「つまり、二人とも帽子に対する想いが強かったってことだろ? なら謝ることじゃない。むしろ誇れ。
 そんなことで謝ってばかりだと、お前らの大好きな帽子が泣くぜ? 自分のせいで女の子を泣かしたーってな」
430「……」
440「……」
男「…な、なんだよ」
430「…ぷっ」
440「…くすくすっ」
男「…ぉぃ」
430「ご主人様、帽子は泣いたりしませんよー」
男「帽子と一緒に風呂入ったりするヤツに言われたくねぇ!?」
440「でも…、その通りかもしれませんね。私は、この帽子が大切です。
 この帽子には、色々な思い出が詰まっているから。大切なあの人のやさしさが詰まってるから…。
 この想いは、誰にも負けません…!」
430「440ちゃん…、私…」
440「ふふ、430さんにはお礼も兼ねて、プレゼントがあります」
430「え?」
440「この帽子はあげる訳にはいきませんが、これを…」

 そう言って帽子の中から大きな物を取り出す440。

430「これは…、GH-440の帽子…?」
男(あの帽子、どうなってんだ…?)
440「予備として貰ったんですけど、これを430さんに差し上げます。お気に…召しませんか?」
430「…ううん、ううん! とっても嬉しいですっ! 大切にしますっ!!」
440「…よかった、それでは、…はい♪」

 440が430の頭に大きな帽子をかぶせる。
          
   __ __
   | ヽ ノ||    | ヽ ノ||
   |__Y_||    |__Y_|| 
  ,´ノノノヽ)))  ァ!ノリノノ )))〉  
  W@リ゚ ヮ゚ノ   | @i ゚ ヮ゚ノリ  
   k_〉`イ_!〉   |⊂)i卯!(つ
  く_ノ/`i´lj   ..!ノく/_| 」  
   ゙'ーi_'ォ_ァ"   .ζ し'l_ノ         

430「えへへーっ、ご主人様、似合いますか? 可愛いですかっ!?」
男「おお、似合ってるし可愛いぞ。よかったな、430」
430「はいっ! .+。(*´▽`).+゜パァァァァァ」

 泣き顔なんて似合わない、悲しい顔なんて見たくない。
 辛い時もあるだろうけど、それを乗り越えれば笑顔が戻ってくると信じている。
 だから見守ろう、その笑顔が見たいから。その笑顔が大好きだから──

         お し ま い

簡潔に終わらそうと思ったけど、めちゃくちゃ長くなっちゃった…
途中で何書いてんだろ、と思ったけど、仕上がったので勢いにまかせて投下!
>>20さん うちの子がほんとすみませんでした!!
よーく言い聞かせときますんで!
28名無しオンライン:2007/12/13(木) 01:32:50.24 ID:AzHlQxKi
なんて、いい話だー!
29我輩はPMである。=6=:2007/12/13(木) 15:37:30.40 ID:00rf0y6Y
いやぁ、もう15スレですか。久しぶりに超短編をUP。
相変わらず事件も何もなく、普通のPM生活です。
=======

我輩はPMである。名前はタロウ。

腕組みをしたこのやろうが満足げに頷いていた。
呆れ顔で見上げる我輩の衣装は、すでに初期のそれではない。
正式名、PMデバイスGH4xx、我輩の命名、コスプレデバイス。
安くないデバイスの筈だが、我輩ひんぱんに着替えさせられていた。
そろそろ元の衣装に戻して欲しかったのだがな。
だめですか、このやろう。

性格や能力が変わるわけではない。衣装と装備が変わるだけだ。
そのコスプレがこれほど気疲れするものだとは、正直なめていた。
そのまま店番をやらされ、あげくミッションにまで駆り出されるとは。
この状況はまったく、恥辱プレイにもほどがある。
トラバサミ考えたやつ死刑。ニヤついてないで助けろこのやろう。

こんな性格の我輩だが、声色を変えて完全成りきりプレイをしている。
元のキャラクターを感じさせない、それが我輩の密やかなる抵抗だ。
恥ずかしがる我輩の普段とのギャップ萌えとか言われたら立ち直れない。
正直言えば我輩も、目新しい武器をぶっ放せるのは爽快であった。
思わず歓声とかあげたり、口にするはずのないセリフも言っているが、
すべてコスプレだから勘違いするなよこのやろう。

とうとうExなる姉妹機デバイスまでもが発売されたらしい。
強引に機種の壁を越えるとは、とんでもないエロ開発者がいたものだ。
衝動買いを予測した我輩は、事前にカタログを用意してやった。
いいかこのやろう、それ見ながらよく聞け。
デバイスを買う前にまず我輩に相談しろ。武器とかチェックするから。
それから我輩をあまり仲間に見せびらかすな。その、恥ずかしいだろ。

我輩はPMである。名前はタロウ。
そろそろ普段着に戻したいのですが、だめですかこのやろう。
30名無しオンライン:2007/12/14(金) 04:10:43.39 ID:W+sBBQwn
>>27
四次元ポケットならぬ四次元帽子、まるで某おじゃるのようだw
440の帽子には他に何が詰まってるんだか・・・w

>>29
なんというツンデレ、嫌々やってるようで地味に楽しんでいる辺りがとても良い
>強引に機種の壁を越えるとは、とんでもないエロ開発者がいたものだ
非常に同意、これで世話焼きな420やちょうちょ追いかける420なんかも自由自在だぜふぅははー
まあノーマルが一番ベストだけどな!
31名無しオンライン:2007/12/14(金) 23:13:53.88 ID:u4PjiVR8
MAGにパシリを連れて行くと、最初の説明の度に悶えるのは俺だけだろうか。
こう、大人しく話を聞いてるみたいな感じが可愛すぎる…
(そもそもNPC連れ込みを試していない諸兄は是非一度やるべし)

>>29
>ニヤついてないで助けろこのやろう。
あ、ごめん。って俺のPMの話じゃなかったか。
32名無しオンライン:2007/12/15(土) 12:09:07.84 ID:GAklakFs
 ご主人様が、パルムのムーブチケットを貰ってきたので、パルムへ移住しました。

パシリ「わっわっ、見てくださいご主人様、外の景色が違いますよっ!」
キャス子「ええ、そうねー」
パシリ「ほらほらっ、空が青いですよっ! 木が生えてますよっ!」
キャス子「ええ、そうねー」
パシリ「コロニーから見える星空も綺麗でよかったですが、パルムの町並みも、都会って感じでいいですよねっ!」
キャス子「ええ、そうねー」
パシリ「でも…」

外の声「わー! 同盟軍の暴走キャストがでたぞー!!」
同盟軍キャスト「ギギー!」

パシリ「…なんでこの時期にムーブチケットの開放するんでしょうね…」
キャス子「ええ、そうね」
パシリ「あ、もしかして、いち早く暴走キャストを鎮める為に、かもしれませんね!」
キャス子「ええ、そうネ」
パシリ「それはそうとご主人様、どうして部屋の壁紙をバイオプラントにしたんですか? ちょっと不気味ですよぉ」
キャス子「エエ、そうネ…」
パシリ「まるでSEEDウイルスに侵食されたみたいです! なーんt」

SEEDキャス子「エエ、ソウ…ネ…、ギギ…」

パシリ「……え?」
33名無しオンライン:2007/12/17(月) 01:45:45.52 ID:OpA42Nkr
    __
   | ヽ ノ||
   |  _Y_|| 
  ,´ノノノヽ)))   
  W@#゚ ヮ゚ノ < ニヤついてないで助けろこのやろう。
   k_〉`イ_!〉
  く_ノ/`i´lj
   ゙'ーi_'ォ_ァ
34名無しオンライン:2007/12/18(火) 00:52:10.26 ID:Aw12cYHS
 コロニーのとある広場。待ち合わせの目印として大きな噴水があり、多くの人でにぎわう。
 そんな中、これから出かけるのであろうか、そわそわと辺りを見渡し時間を気にするパシリがいた。
 暫くすると大あわてでキャストがやってくる。
「遅れて、ごめんなさい」
 ずいぶんと低姿勢な主人だろう。
「――ずいぶんと、遅かったですね。どちらに行かれていたんですか?」
「いや、どこかに行っていた訳じゃなくて、支度に手間取っちゃって……」
「はぁ……、前から言っているように、事前にちゃんと準備をしておいてください。
 でないと、ご主人様と一緒に居られる時間が少なくなってしまいます……」
「え? 今、なんか言った?」
「いっいえ! 何も言ってないですよ。それより、早く行きましょう、時間が無くなってしまいます」
「あ、そうだね。じゃ、行こうか」
 キャストの後ろを軽くスキップしながらついて行くパシリ。
 そんな微笑ましい二人の後ろ姿を見送る。

 ――ご主人様。私はいつまで待てばいいのですか?
 そう独りごち、一人、噴水の前にたたずむパシリ。


 主人を見送った『あの日』からすでに一月が過ぎた。
 コロニーはあの時の『事件』が嘘のように、何事もなく時が過ぎている。
 主人が救ったコロニーの今を見たくて一人、当てもなく彷徨う。

 ――ご主人様、ご主人様が救ったコロニーは、人々があふれ、いつもと変わらない日々です。
 まるであの時の事が無かったかの様に過ぎています。これはご主人様が願った平和なんですね?
 コロニーに住む人々が笑顔で暮らせる様な、この日常を守ったんですよね?

 ……けど、私にとってこれは違います。私の日常は『あの日』から大きく変わってしまいました。
 部屋のお掃除をしたり、ご主人様のために情報収集したりとやっている事は、いつもと変わらない日々。
 でも、今、私が過ごす日々の中に、ご主人様がいません。

 ご主人様が疲れて帰ってきてもいいように、ベットメイクは済んでいますよ。
 おなかをすかせて帰ってきてもいいように、食事の準備も出来ていますよ。

 だから……、だから、早く帰ってきてください。
 お願いです、私を一人にしないでください……。


 シャトルに乗った所までは覚えていた。だが、パルムへ着いてから何処をどう歩いてきたか覚えていなかった。
 辺りの人影は疎らな街。もう辺りは誰そ彼れ、夜の帷が降りつつあった。

 ――いけない、早く帰らなくちゃ。

 日は暮れ、闇が辺りを支配して行く。身にあたる夜気がしみる。
 身を小さくかがめ歩を早めて家路へと急ぐ。

 部屋の前まで辿り着き、ある異変に気付く。

 ――あれ、ロックをかけていたのに開いている?
 ロックキーは私とご主人様しか知らないはずなのに、どうして?

 その問いの答えに瞬時に辿り着く。

 ――ご主人様が帰ってきたんだ!
  
「ご主人様!! 今まで何処にいたんですか! 何で早く帰ってきてくれなかったんですか!」
 うれしくなり、いてもたってもいられなくなり、部屋へ飛び込む。
35名無しオンライン:2007/12/18(火) 00:52:36.54 ID:Aw12cYHS
前スレで「まぁ、たぶんこの物語は日の目を見ることは無いでしょう」と言った手前、
恥ずかしいのですが、このまま続けてみようかと思いました。

面白そうと言ってくれた方がいた。
自分に対してではないと思いますが、参考となるページを見つけて教えてくれた方がいた。

そんな方々に、あと少しでもいいから自分の書いた『物語』を読んでもらいたくて
続けてみようと思い、筆を執った次第です。

この『物語』はあと少し続くと思います。
書くスピードは大変遅く、まとめ上げる文章力も拙い者です。
「こんなつまんねぇ物、書き込んでじゃねぇよ」と、思われる方も、
「先の展開が読めてつまんねぇよ」と、思われる方もいると思います。
しかし、申し訳ありません。今暫く私の独りよがりにお付き合いください。

P.S.
この『物語』を完結させようと努力しますが、先に書いたとおり自分は大変な遅筆です。
おまけに文章力もありません。完結までどれほどの時間がかかるかも判りませんが、
気長にお待ちいただければ幸いです。
36名無しオンライン:2007/12/18(火) 02:09:32.08 ID:WXE6JSHL
>>35
 続きが読めるとは、夢にも思っていなかった…
 ありがたやありがたや(−人−)
 遅筆?んなの気にしない!気長に続きを待ってますよ〜
37名無しオンライン:2007/12/18(火) 21:53:32.59 ID:hl4husb8
書き続けることが、つたなくても完成させることが創作の極意。
一読者として期待しております。むろん自分も書いていきますので、お互いがんばりましょう。
38名無しオンライン:2007/12/20(木) 23:55:49.41 ID:cIsAOoif
パシリ連れてくかPSOキャラ連れてくか…
いっそ両方つれていけたら何と楽なことか!
39名無しオンライン:2007/12/21(金) 04:23:20.47 ID:GWEKVR4L
なにを迷うことがある!
目をつむって思い出してごらん、パシリと共にミッションを駆け巡った日々を…
敵を追いかけて行ったあげく、○○様どこ〜?とか言い出したり
お得意のサイドステップで敵を翻弄してると見せかけて殴られてたり
敵を全部倒したのにいきなりSUVを明後日の方向に乱射したり…

…あれ?
40名無しオンライン:2007/12/21(金) 07:47:56.01 ID:DiSSs+fq
パシリや他のNPCが二人いてもPSOキャラは出るらしいぜ
41荒野の家族とサンタクロース 1/9:2007/12/21(金) 10:07:42.90 ID:alFa/O2/
「ねー先生、今年はサンタさん来るの〜?」

惑星モトゥブ。劣悪な環境の中、人々が細々と移住して生活するグラール太陽系第三惑星。
その首都、ダグオラシティ郊外。広がる荒野と首都への間、寂れた住宅地の片隅。
多少ガタがきて、薄汚れながらも…庭一面を色とりどりの草木で囲まれた、教会。
錆びてボロボロになりながらも、しっかりと教会の屋根には鉄の十字架が立っていた。

遥か昔の移民が立てたこの教会も、今ではその役目を終えたが…

「さぁてな。いい子にしていれば来るんじゃないかねぇ…?」

褐色の肌、引き締まった体躯、女優ばりなスタイル、そして…獰猛な印象の笑顔と、咥えタバコ。
女性はガーディアンズであり、その収入でこの教会を買い取った。
そして、彼女は戦災やワケありの孤児ばかりを引き取って、この場所を孤児院とした。
通称「先生」。この教会唯一の大人であり、唯一の保護者である。

耕していた畑。鍬を片手にタオルで汗を拭う女性。
このモトゥブは冬でも雪害に悩まされると言う事はまず、ありえない。
その代わり、今日もまた乾いた風と照りつける日差しが、この庭を包んでいる。

「リタね、いい子にする!サンタさん来てくれるかな?かなぁ?」

先生の足元へ、手伝っていたのだろう…麦藁帽子を被った少女が、駆け寄る。
その頭を…土の付いた所を汗で透けるタンクトップシャツで拭ってから、グシグシと撫でる女性。

「来るさ。こなかったら…私がぶっとばして引きずって来てやるさ」

女性が力こぶを作り、もう一方の手でパンと叩いてみせる。

「わー!先生、力もち〜!」
「ったりめーだ。誰がおまんま食わせてやってるんだっての」
「せんせ〜♪」

そういって、女性の胸へと飛び込む少女。少女を抱きかかえてやる女性。
じゃれ付く少女。女性はふと、頭上の空を見上げてみる。

(サンタ…か、もうそんな季節なんだねぇ…)

見上げた空は何処までも青く、雲ひとつ無い空からは眩しいほどの日差しが降り注いでいた。
42荒野の家族とサンタクロース 2/9:2007/12/21(金) 10:08:08.87 ID:alFa/O2/
一方その頃の、Gコロニー。
メインストリートから少しだけ外れた路地にある、一軒のマイルーム。
営業用に改良されたその店は、普段はニューディズの文字で「飯店」と書かれた暖簾を下げる。
しかし、その日は3ヶ国語で「本日休業」と書かれた札が、下がっている。
その中では…

「あーもう!こっちを先に詰めるんだったば!」
「…、…コレが先じゃないと、入らない」

いつも勝気な422と、今日も無愛想な43X。そして…

「んもぅ!二人とも喧嘩しないで手を進めなさい」
「ま、まぁまぁ…。どっちも入れてしまえばいいと思うよ?」

今日もお小言お袋様、442。一家の大黒柱、ヒュマ助。飯店一家が荷造りしている。
傍にはラッピングされた袋と、それ以上に大きな真っ白な袋。
その奥には、赤や茶色の見慣れないデザインの衣服が、何着か置いてある。

「でも、ヒュマ助って毎年こんな事してたの?」
「そうだよ?…家を離れても、家族は家族。家族の待つ家に、たまには顔を出さないと、ね」

作業の手を休めながら、422が訪ねる。ヒュマ助も微笑みながら、ソレに応える。

「…、家族」
「去年はヒュマ助様お一人で行かれてしまったので、今年こそは、ですよ?」
「ごめんってばー…w」

剥れ面の43Xと、意地悪な笑顔の442。3人の顔を見渡しながら、苦笑するヒュマ助。

「さて、と。準備おっけー?」
「勿論!ボクはとっくに終わっていたよ?」
「出来ましたよ。ヒュマ助様」
「…、出発?」

その言葉に、優しく微笑むヒュマ助。

「それじゃ、行こうか!」

大量の小包を白い袋へ詰めると、ソレを担いで店を後にする一家。
その数分後、飯店一家はモトゥブ行きのPPTポートへと姿を消した。
43荒野の家族とサンタクロース 3/9:2007/12/21(金) 10:08:40.73 ID:alFa/O2/
夜。モトゥブの夜は砂漠の夜に近い。
日中、熱砂で砂塵の舞う荒野も、夜になると命を凍らせるほど冷たく、静かになる。
空には銀色の星が瞬き、吐き出す息が白くなるほど、世界は温度を奪われる。
そんな外を、孤児院から見上げている子供が、一人。

「リタ、こんな所に居たのか」

少女の名前を呼びながら、しなやかな体躯の女性が声をかける。

「もう晩御飯の時間だ。皆も待っているぞ?」

女性がタバコを燻らせながら少女へ言う。少女が、窓辺から振り返る。

「先生、サンタさん…こないよ?」
「あぁ、サンタはもう少し夜にならないとこないモンだからな」

少女の問いに、女性が呟く。少女が不思議そうに小首を傾げる。

「そうなの?」
「あぁ、そうだ。サンタは割と時間に拘る野郎なんだ」

そういいながら、少女の背中を大きな手の平で優しく押してやる。

「安心しな。馬鹿息子…じゃなくて、サンタは約束は守る野郎だからね。きっとくるさ」
「本当?サンタさん、絶対来てくれるの?」

少女が眼を輝かせる。その顔に、女性は頬を緩める。

「本当さ。私が下らない嘘が嫌いなの、知っているだろう?」
「知ってるよ!マークが嘘ついたとき、先生のキックでマークがカニさんになったもんね!」

マークというのは、孤児院の悪戯大好きな男の子である。ガキ大将とでも言うか…
そして、先生のキックは踵落とし。綺麗に脳天に決まり、少年は泡を吹いて倒れた。
流石にやりすぎではあるが、子供達からは歓声があがった。少年は数分気絶したままだったが…

「じゃぁ、晩御飯だ。さっきからチビたちが下で騒いでいるの聞こえるだろう?」
「うん!早くお夕飯食べよう!リタ、お腹ぺこぺこー」
「はぃはぃ。じゃ、下へ降りますか」

少女に今度は背中を押されながら、女性は窓辺を離れて下のかいへ降りていく。
その女性の瞳の隅に、キラリと光ったライトが一瞬、うつる。
それが意味する事を、女性はやれやれ…と、微笑む事で応えるのだった。
44荒野の家族とサンタクロース 4/9:2007/12/21(金) 10:09:10.21 ID:alFa/O2/
「さて、そろそろだね」

孤児院の食事時間。その時間は対外決まった時間で行われる。
今はきっと夕食時。子供達が一日の最後を締めくくる食事をお互いで配膳しているところか?
先生へ頂きますをして、もう食べ始めたかもしれない。

「頃合ですね、422、43X、準備はいいでしょうか?」

茶色い衣装に身を包み、頭には普段のカチューシャではなくツノをつけた442が、振り返る。

「ねー、ボクもサンタがいーい…」

同じく、茶色い衣装にツノの飾りをつけた422が、ブツブツとごねる。

「…文句、言うな」

二人と一緒の衣装だが、何故か大きな真っ赤なまんまるの鼻をつけた43Xが、呟く。

「似合っているよ?三人とも。可愛いと思う」
「それは嬉しいけどさー…でもぉ…」
「ヒュマ助様も、ご立派ですよ?」

真っ赤な衣装に白いヒゲ。少々小太りな体型がまさに童話の中のあの老人そっくりで…

「我ながら、なんというか…はまり役だねぇ…」
「そのようですね、ふふw」

422も43Xも、クスリと微笑む。ポリポリと頭をかくヒュマ助。

「じゃ、皆。行こうか」
「はい、畏まりました」 「おっけー!任せてよ!」 「…、…(こくり」

三人が、フローダーに部品をつけて作った「なんちゃってソリ」の前を走り出す。
その速度にあわせ、ゆっくりとフローダーを前進させるヒュマ助。
43Xが、恥ずかしそうに袖に隠したスイッチを押すと、鼻飾りがぴかぴかと輝きだす。
それにあわせて、422と442が手に持った鈴をしゃんしゃんと鳴らし始める。
最後に、ヒュマ助が二〜三度咳払いをして声を確認すると、高らかに声をあげた。

「ホ〜ホ〜ホゥ!」
45荒野の家族とサンタクロース 5/9:2007/12/21(金) 10:09:58.79 ID:alFa/O2/
孤児院の中では、クリスマスパーティが始まっていた。
大きなナゲット。暖かいクリームシチュー。焼きたてのパン。今日だけ特別な子供用シャンメリー。
子供達のささやかな贅沢だった。普段、あまり食べれないからこそ…
この寒い夜を、この聖夜を、せめて幸せに…。
先生も、この日の為に仕事を増やしていた。この日の為に、色々と買い揃えていた。
後は…、そう思ったとき、だった。

―シャンシャン…シャンシャン………

澄んだ鈴の音が、子供達がワイワイとはしゃぐこの場所へと、鳴り出す。

―……ホゥ!…ホーホーホゥ!…

遠くから、近づいてくる…優しいしゃがれた掛け声。チカチカと照らす赤い光。

「サンタさんだ!!」
「サンタさんが来てくれたんだ!!」

我先にと、子供達がソレに気づくと、一目散に戸口へと走り出す。
先ほどまで食事に夢中だった子も、サンタと聞くや否や、食器を放り出していく。

「こーら、スプーン持ったまま戸口へ走るんじゃない…あーもう、こーら!」

どこか、にこやかにその無作法を怒りつつ、女性もニヤニヤとしながら戸口へと歩き出す。
鈴の音は大きくなり、掛け声は近づく。ちかちかと照らす明かりが戸口へとやってくる。

「メリィクリスマース。ホーホーホゥ!」
「『ホ〜ホ〜ホ〜ゥ!!』」

子供達が、ヒュマ助の変装したサンタへと大声で返す。フローダーソリの傍には、3匹のトナカイ。

「めりーくりすます、だよ!」
「メリークリマスです、皆様、いい子にしていましたか?」
「していたよ!」 「ぼくもぼくも!」 「わたしもー!」

キャッキャッと、トナカイやサンタの傍へと歩み寄る子供達。そして…

「ルドルフだぁー!!」 「真っ赤なお鼻のトナカイさんだー!!」

付け鼻ですが、赤くぴかぴか光る鼻飾りをつけた43Xに、我先にと群がる子供達。

「……、ひっぱるな…。こら…だめだ…あんまり触るな…く、くすぐったい…」

案の定、赤鼻のルドルフちゃんこと43Xは、子供達にモミクチャにされてしまったのでした。
46荒野の家族とサンタクロース 6/9:2007/12/21(金) 10:10:30.59 ID:alFa/O2/
沢山のプレゼント。沢山の追加の料理。楽しいクリスマスパーティ。
子供達はここぞとばかりに大はしゃぎです。サンタさんにあれやこれやと御願いをします。
サンタさんはとっても優しかったのです。何せ…

「サンタさん…あのね、ぼくのおもちゃが壊れちゃったの…」
「どれどれ、見せてごらん…?」

サンタさんは手にしたおもちゃを少し眺めると、そっと背中の蓋をあけました。
そして、カチャカチャと数秒いじった後、新しい電池を取り出し付け替えました。すると…

「わぁ!うごいた!!直っちゃった!」
「ホーホゥ。そのおもちゃは病気だっただけじゃて。今、治してやったでのぉ」
「ありがとうサンタさん!すごいや!すごいやっ!」

ソレを見ていた子供達が、わーっと集まると次々に御願いをします。

「サンタさん…ぼくのも病気になっちゃったみたいなの…なおせる…?」
「わたしのお人形さんも…腕が取れちゃったの…なおしてあげて…?」
「ホーホーホゥ。どれどれ、順番じゃよ…?」

子供達の御願いを聞いてあげるサンタさん…こと、ヒュマ助。
ソレを見て、子供達から離れたところにある食卓に座る女性が、呟く。

「アイツが此処にまだいた頃も、あーやってチビ共の面倒を見てやってくれてたねぇ…」
「ヒュマ助様がの孤児院時代、ですか?」

食卓には、料理にがっつく422と、子供達の相手につかれた43X、そして、442の姿があった。

「あぁ…。まだアイツがこいつらの『お兄ちゃん』だった頃だ…」

ヒュマ助は、調理師として店を持つため、ガーディアンズへ入隊し、お金を稼いだ。
そのお金と努力があって、今の飯店が経営出来るようになった。
そしてそれは、彼を育て…学ばせた、目の前の女性が居たからこその、今なのだ。
ぐいーっと、子供用のシャンメリーを飲み干す女性。短くなったタバコを消すと、新しい一本を取り出す。
そっと、ライターの火を442が向けると、悪いね…と女性が加えたまま顔を近づけた。

「今のちび達は覚えてないだろうケドさ。アイツが此処にいた頃はアイツは皆のお兄ちゃんだった…。
仲間はずれを許さず、遠慮を許さず、誰に対しても分け隔てなく微笑み、優しく接した。
私が仕事で居ない間も、大雨が降った時も、たった一人で家族だからと、アイツ等を支えていたさ」

女性が、懐かしそうに呟き続ける。いつの間にか、へばっていた43Xも、がっついていた422も、聞き入っていた。
47荒野の家族とサンタクロース 7/9:2007/12/21(金) 10:11:11.13 ID:alFa/O2/
「先生、ヒュマ助お兄ちゃんの事?」

見れば、食卓の片隅。まだ一人だけ、小さな女の子がソコへ残っていた。

「あぁ、リタはまぁ…覚えているのか。まだあんな小さかったのにな」

そういいながら、少女の頭をグシグしと撫でる女性。

「リタがもっとちびだった頃、私が仕事で居ない間に高熱をだしてね…」

そういって、まだ子供達のおもちゃのお医者さんとなっている、サンタことヒュマ助を見つめる女性。

「昔はこの孤児院まで街からフローダーで行き交いしていたんだが…ガキばかりだろう?
危ないってんで預けなかったんだが、それが不幸か…リタが熱出したのに医者に連れて行けなくなってね。
都市圏内といえど街まで十数キロある道のりを、まだ15のアイツがこの子背負って走りやがったんだよ」

そう呟いて少女を見つめる女性。少女も、ボンヤリトした記憶を辿りながら、応える。

「ずっとね、お兄ちゃんが『大丈夫だ』っていってくれたの」

3人のPMは、その光景が容易に想像できた。
自身の家族の為、血相変えて走り続ける幼い頃の主人の姿。
背中の子が心配しないように、切らした息で何度も大丈夫だと囁き続ける、優しさ。
紛れも無い、敬愛する主人の過去であり、信じる主人らしい過去であった。

「目が覚めたらね、病院だったの。お薬をうって貰ったんだって。すっごく楽になったの」

身振り手振りで応える小さな少女に、女性とPM達は微笑む。

「わたしが眠っている間もね、ずーっとお兄ちゃんが手を握っていてくれたんだって!」

当直の看護婦にでも聞いたんだろう。その光景も、女性やPM達には容易に想像が出来た。

「だからね、ヒュマ助お兄ちゃんはリタのだーい好きなお兄ちゃんなの!」

その言葉に、女性が微笑む。PM達も、顔を見合わせながら微笑を返した。
48荒野の家族とサンタクロース 7/9:2007/12/21(金) 10:11:35.91 ID:alFa/O2/
そして、夜も更けていくと、一人、また一人と子供達は眠りに落ちていった。
はしゃぎつかれたのだろう。眠る子供達の笑顔は、あどけなく…幸せに満ちていた。

「悪いねぇ、ちび共運ぶのまで手伝って貰っちゃって…」
「いえいえ、ヒュマ助様のご家族なれば、私達の家族でもありますから」

そういって、嬉しそうに小さな子へ布団をかけてあげる442。
422はといえば、ちょっと重くなり始めた男の子をよいしょと、ベッドへと乗せてあげている。
43Xはといえば、食卓の後片付けやら天井のモールなどを、補助腕で器用にかたしている。
そして…

大きなぬいぐるみを抱えて、幸せそうに眠る少女…リタの枕元に、ヒュマ助はいた。
優しくも、どこか寂しそうな笑顔で、眠る少女の手を、そっと握り締めていた。

「今年も大変だったろう?サンタさんや」

火のついてないタバコを咥えながら、女性が背中に声をかける。

「思えばあの日も、こんな寒い冬空だったねぇ…」
「えぇ…。あの時は無我夢中でしたけど…ね」

そういって、そっと手を離すヒュマ助。振り返るその顔は、何時も通りの笑顔だった。

「お前が孤児院を出て行くといったときも、最後までその子が泣きついていたねぇ」

調理師の免許を取り、自分の店を開くと決めた時。そして、ガーディアンズ入隊の為、孤児院を後にする日。
ヒュマ助が居なくなる事を、子供達は大いに悲しんだ。ずっと泣き続けた。
ソレと同じくらい、ヒュマ助を応援してくれた。それ以上に、ヒュマ助を笑顔で見送ってくれた。
たった一人、最後の瞬間まで、ずっと、ヒュマ助の名を呼び、泣き続けた少女…

「リタももう直ぐ14だ。お前と同じで、そろそろお姉ちゃんになって欲しいんだがねぇ…」
「無理強いはよくありませんよ。お姉ちゃんになるかは、リタが決めることです」

そういって、眠る少女を見つめる二人。

「お兄ちゃんが今更でも戻ってくれば、その必要は無いんだがね?」

女性が真っ直ぐにヒュマ助を見つめる。それに、ヒュマ助はゆるく顔を横へ振って返した。
49荒野の家族とサンタクロース 9/9:2007/12/21(金) 10:12:03.32 ID:alFa/O2/
「僕には、この孤児院も家族です。ですけど…」

呟くヒュマ助の顔には、真っ直ぐな決意が見て取れる。

「あのコロニーでであった沢山の大切な人が…、そして、僕の新しい家族が、待っているんです」
「そうかい…」

改めて、咥えていただけのタバコに火をつけると、煙を深く吸い込み、吐き出す女性。

「気が向いたら顔を出しに戻ってきな。いつだって、帰ってきて良い。ここは、お前の家でもあるんだからねぇ」

そういって、背中を向ける女性。どこか、肩が震えるような、そんな印象を受ける…

「貴方の背中を見て、僕は育ちました。貴方がいる此処は、紛れも無い僕の家、です」

その声に、女性がそっと、あの大きな手の平で自身の顔を隠した。

「酔いが回ってきたねぇ…。ちと風に当たってくるよ」
「はい。僕達ももう少ししたら、お暇します」

その声に、無言で手をヒラヒラと振り替えすと、女性はそそくさと奥の自室へと入っていった。



―少し後。

「それじゃ、最終便に間に合うように戻りましょうか」
「えー、日帰りなのぉー?」
「泊まりたいなら、…一人で泊まればいい」

呟く422へ、43Xがやれやれと愚痴を挟む。

「こらこら、意地悪言わないの、43X」

ヒュマ助に窘められ、ふん…とソッポを向く43X。フローダーの上はぎゅうぎゅうである。

「戻ったら、飯店でのクリスマスパーティの準備ですね、ヒュマ助様」
「そうだねぇ…。なんやかんやでのんべな人ばかりだからね…集まる人」

思い立つ仮面の青キャス子やニューマンのプロトランザー、ちょいとワルなキャストを思い、苦笑する一同。

「新しい常連様との親睦会も兼ねていますから、大忙しですね」
「……、五月蝿くなりそう」
「いーじゃないの、忘年会だってあるんだし。ボクはお手伝いするもんね!」

背中の二人がキャイキャイと喧嘩を始める。肩越しに、膝の上の442がお小言を飛ばす。
そんな、暖かくも大切な温もりをかみ締めながら、運転を続けるヒュマ助が、呟く。

「メリー、クリスマス」

きっと、今目の前に広がる荒野を照らす星空を、あの女性も見上げているだろう。
呑み足りないとスコッチでも片手に、大好きなタバコを燻らせながら…。
そんな事を考えながら、お説教を音楽代わりに、飯店一家はシャトルポートへと向かっていくのだった。
50某飯店作者:2007/12/21(金) 10:18:32.00 ID:alFa/O2/
おひさしぶりなのです。浦島太郎、只今パシリスレに帰郷…。
気が付けばはや15スレ目突入。もう一年ですかぁ…(しみじみ

クリスマスがてら時期モノを投下。ちょっと内容はお茶にごしかも
偉い久しぶりに先生登場。本名は内緒。そのほうが格好いいから!(マテ

パシリスレなのにどーしてもヒュマ助に視点がいきがちな本作…
そろそろ、ヒュマ助よりPMがメインな新主役を出すべきか…
地味キャス子二期目とか、書いてあるといえばあるんですけどね(事実

では、お目汚し失礼致しました
51名無しオンライン:2007/12/21(金) 20:20:20.96 ID:xyJ8sX1f
>>50
 うちの412達とちがったほのぼのさがあっていいなぁ、と思う今日この頃。

 ・・・こんないい作品を先にあげられちゃうと、なんか自分の書いた奴があげにくい。

ども、パパと412作者です。
GH−470の『ソル』の続編がやっと書きあがりました。
本当はもうちょっと文章量を煮詰められれば良かったのですが、今はこれがせいいっぱい。
某飯店作者様の作品に続いての投下になってしまいますが、ご容赦いただきたく思います。

それでは「僕と彼女」、投下開始です。
ご拝読下さいませ。
52僕と彼女(1):2007/12/21(金) 20:21:16.31 ID:xyJ8sX1f
 470デイバス開放まであと二週間となったある日、僕のパートナーとなるガーディアンズ隊員との初顔合わせの日となりました。
 僕は大分なじんだGH−101の姿で、コロニーのガーディアンズ専用区画内を、教官に連れられて移動しています。
 きょろきょろしながら移動していた僕が、
「この前の場所と、造りが少し違うんですね…Gコロニー居住区内部も場所によって差があるのかぁ」
 そう言った瞬間、

 ガスッ!

「いたたた…」
 あちこちに気をとられて余所見をしていたせいで、左右に分かれるT字路をまっすぐ進んでしまい、通路の壁に激突してしまいました。
「おいおい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です」
 ちょっとふらつきながらも、先を歩く教官の後を追いかけます。
「物珍しい所があるかもしれんが、もうちょっと気をつけて移動しろよ?
 これからは、ここがおまえの暮らす場所になるんだから」
「は、はい」
「ま、内心不安なのは仕方ないさ。
 ――今度こそ、ちゃんとしたパートナーだといいな」
 教官はわざわざ足を止め、僕を優しく撫でながらそう言ってくれました。
 不安を押し殺すためにきょろきょろしていたのですが、それを教官に気づかれていだようです。
「はい…」
「行くぞ」
 再び歩き出す教官を追いかける様について行きながら、僕は小さくため息をつきました。

 実は、今までに僕のモニターとして当選した方は既に数名いましたが、その誰からもちゃんとした扱いをされることなく、僕はGRMに出戻っています。 
 今回で五度目の『初顔合わせ』ですが、上手くいかなければ、また出戻ることになります。
 そうなれば、再び調整を受け、新たに選ばれた主人候補に引き合わされるでしょう。
 出戻る度に思い知らされます。
 僕達パートナー・マシナリーがただの『物』でしかないという事実に。

 ………憂鬱になってきましたが、嫌なことを思い返して、自分から落ち込む必要は無いですね。
「そういえば、今度の僕のパートナーって、どんな方ですか?」
 気分を変えたかったという意味もありますが、気になっていた事でもあるので、教官に質問してみました。
 盛大な間が空いて、教官は大きくため息をつきました。
「女性ニューマンなんだが、素行不良の問題隊員でね。
 正直言って、お前のモニターに応募している事そのものが、俺には不思議なんだが…」
 足を止め、少し考え込む教官。
 素行不良の女性ニューマンって、一体どんなヒトなんだろう?
 というか、モニター募集に応募したこと自体が不思議って…
 ま、とにかく、当人に聞いてみれば済むことですね。
「それで、その方の部屋は…」
「ん?ああ、この部屋だ」
 すぐ側にあるドアを親指で指し、教官はドアに向き直ります。
「ソル」
「はい?なんでしょうか」
「とりあえず、俺の後ろにいろ。俺が合図するまでは、前に出るな。いいな?」
「は、はぁ…了解です」
 一体、どういう事なんでしょうか?
53僕と彼女(2):2007/12/21(金) 20:21:44.25 ID:xyJ8sX1f
 教官は僕を後ろに下げ、つやを抑えたグレーのドアの脇に立ち、ドアの手動開閉のスイッチを押します。

 ぷしゅ〜

「はぁっ!」
 部屋のドアが開いた瞬間、気合のこもった女性の声と共に、小柄な人影が教官に襲い掛かりました。
 教官は軽く半身を捌いて人影を避け、同時に、殴りかかってきた右腕の手首を掴むと、脚払いをかけさせます。
 すると、まるで手品のように人影は宙を舞い、軽い音を立てて床に背中から落とされました。
 人影は舌打ちしつつ手を振り解いて起き上がろうとしますが、教官はその額に向けて、何時抜いたのか分からないナイトウォーカーを突きつけ、動きを封じます。
「くそっ、殺せ!殺人者ども!殺せってんだ!」
 僕は教官の背中側にいるのでその姿がよく見えませんが、通路にひっくり返ったまま叫び声をあげているのは、ちょっと小柄な女性です。
「これで通算38回目の『死亡』だな」
 あきれきった様子でため息をつく教官。
 まばらな通行人も、またか、といった様子で肩をすくめ、通り過ぎていきます。
「お前もいい加減にするんだな。
 今のお前じゃ、誰にも勝てやしないし、誰も守れやしない。
 何度、俺に言わせれば気が済むんだ。
 それから、今現在もガーディアンズの素行問題隊員トップ10に入りっぱなしなんだから、外での言動くらい取り繕え」
 教官は淡々と言いながら、ナイトウォーカーをナノトランサーに収め、両手で彼女を起こします。
「ふん、教官面して…」
「そりゃ、俺はお前の指導教官なんだ、仕方ないだろ?
 ぶつくさ言ってないで、部屋に入れ。
 ―――お前も入って来い」
 教官は女性を部屋に押し込みながら、僕を部屋に入るように促します。
 僕は促されるままベッドのある部屋まで移動して、やっと彼女をちゃんと見ることが出来ました。
 標準よりもやや小柄な女性ニューマンで、赤みの強い茶色の髪、深い青色の大きな瞳が印象的ですが、何よりも、身長に見合わない大きな胸が、真っ先に視界に入ります。
「今日、俺が来た理由はこいつをお前に預ける為だ」
 教官が僕を、彼女の前に連れ出します。
「470のモニターに応募しているとは知らなかったが…
 今日から、こいつが新しいお前の―――」

 ばしっ!

 突然聞こえた、肉体同士がぶつかり合う鈍い音。
「――何故、止める。
 こいつはもう、あたしの物だろ?どう扱おうが、あたしの勝手じゃない」
 浮いてる僕の真横には、彼女のすらりとした脚が伸ばされ、それを手でつかんでいる教官。
 一体、何をしてるんでしょうか?
「駄目だ。
 モニターに応募した以上、お前はこのPMを470まで育て、レポートを提出する義務があるんだ。
 こいつを破壊してみろ、今度は謹慎ぐらいじゃすまないぞ」
 そこまで話を聞いて、やっと事態が飲み込めました。
 どうやら僕は、彼女にいきなり蹴り飛ばされそうになっていたようです。
 それも、僕を壊すことを前提として。
 ヒトならば冷や汗をかくところですが、僕の場合はリアクターが不安定になって、へなへなと床に着地してしまいました。
54僕と彼女(3):2007/12/21(金) 20:22:07.70 ID:xyJ8sX1f
「知らないわ、そんな事。
 あたしは、パシリが壊せるなら死んだってかまやしない」
 自虐的な笑みを浮かべ、僕をにらみつける彼女。
 どこか虚ろでありながらその狂気にも似た眼差しに、僕は及び腰になって、転がって逃げようとしましたが、教官はそんな僕を片手一本で軽々と捕まえます。
 そしてボールを扱うように、僕を指先の上でくるくると回して、最後に両手で回転を止めると彼女の正面へ突き出します。
 ひぇ〜、目が回るぅ…僕はボールじゃないよぉ…
「いいだろう、そこまで言うなら、こいつと戦ってみな。
 お前が勝てば、俺はこいつを壊したことに関しては見ない振りをしてやるし、お前の行動をとやかく言わない。
 その代わり、こいつが勝てば、お前はこいつをちゃんと育ててレポートを書かなければならないし、今後はこいつを含め、PMを破壊することもしてはいけない」
 親指の爪を噛みつつ考え込んでいましたが、
「…わかった。その条件、忘れないで」
 と、承諾する彼女。
「一つだけ、ハンデはつけるぞ?こいつはまだ101だからな」
「どんなハンデ?」
「俺の入れ知恵だ」
「いいわ、それなら」
 どういう訳か、僕がほったらかしで話がついてしまいました。
「と、言う訳だ。あいつをぶちのめせ」
 教官がやっと僕から手を離して、そう言いました。
 最初、彼のその台詞は聞き間違ったものだと思い、聴覚センサーを自己診断しましたが、センサーは正常です。
「ええ〜っ!今の僕でなんとかなる訳無いじゃないですか!
 470の姿だったとしても、勝てるかどうか怪しいのに!
 大体、僕の意見なんて何処にも無いじゃないですか!」
 嫌がって大声を出した僕に、教官の冷静なつっこみが入ります。
「そうは言っても、不測の事態でも起こらない限り、何らかの評価が出るまでは、お前は帰るに帰れないだろうが」
 う、それを言われちゃうと…
 僕は諦めがたっぷり詰った溜め息を吐き出しました。
「分かりましたよ、やりますよ、やればいいんでしょ、やれば。
 ………どう考えても、勝てそうに無いですけど」
 僕は不機嫌さを声にして、教官にぶつけます。
「大丈夫だ、心配するな。いいか…ゴニョゴニョ」
 教官は僕に顔を近づけると、やっと聞き取れるくらいの声でアドバイスをしてくれます。
「…、分かったか?タイミングが大事だぞ?」
「はい、何とかやってみます……」
 勝負するには手狭なので、僕と彼女は、何も無い展示スペースで立ち会うことになりました。
「勝敗は、膝を突くか、倒れるか、床に落ちた場合だ。
 ありえないとは思うが、死んだり破壊された場合もこれに含まれる。
 ―――始め」
 教官が説明の終わりと同時に出した合図に合わせ、彼女は僕に蹴りを放とうとします。
 同時に僕は、彼女の間合いへ飛び込んで、そのまま彼女の頭に思いっきり体当たり!

 ガン!「ふぎゃ!」

 金属が硬い物にぶつかった音と、彼女の奇妙な悲鳴が部屋に響きます。
「〜っ、いたたた…今日はこんな事ばっかり」
 おでこの硬い所に思いっきりぶつかったせいで、ちょっぴりボディが変形しましたけど、とりあえず後回し。
「く〜っ、よくもやっ」

 どさっ

 膝が砕けたかのように、蹴りのポーズをとったまま背中から倒れる彼女。
「あ、あれ?どうして、あたし、倒れた?」
 はぁ〜、なんとか上手くいった。
55僕と彼女(4):2007/12/21(金) 20:22:36.18 ID:xyJ8sX1f
「は〜い、そこまでぇ」
 気の抜けた教官の合図で、この勝負は終わりました。
「それじゃ、俺は帰る。手続きとか、ちゃんとやっとけよ、二人とも」
 僕達にそういうと、振り返りもせずに、教官は部屋を出て行ってしまいました。
「……」
「……」
 なんか、妙にしらけた間が空きました。
 最初は教官の出て行った入り口を見ていた僕達ですが、自然と互いに目が行き、目が合ってしまいました。
 そして、再び妙な間が空きます。
 色々話がしたいのに、彼女にどう声をかけたものか…
 教官がいなくなったら、こんなに話しづらいなんて思いませんでした。
 不意に彼女が立ち上がろうとして、よろめきながらしゃがみこみました。
「急に立っちゃダメですよ、脳震盪起こしてるんですから!」
 僕はあわてて彼女を支える位置に移動します。
「脳震盪…そっか、私の蹴るタイミングに合わせてバランスを崩し、脳震盪も利用した訳か。
 でも、あたしにそんな隙、」
 彼女の独り言なんでしょうが、僕はそれに答えます。
「十分ありましたよ」
「…素手格闘技で有段者のあたしに、隙?」
 不満とも取れる困惑の表情で聞き返す彼女に、僕ははっきりと言いました。
「十分、あったんです。
 教官が教えてくれたのですが、あなたの動きは非常に鋭く、素早いのですが、何処か心ここにあらずといった感じです。
 僕の場合、戦闘はデータでしか知りませんが、今のあなたでは、仲間はおろか自分も死ぬ可能性が高いでしょう」 
 僕という支えからゆっくりと身体を離し、両目を片手で覆い隠して、くつくつと笑い出す彼女。
「やっぱり、あたしはあの時、死ぬべくして死んだんだ…」
 そのまま笑いながら、彼女の頬には涙が流れ落ちて行きます。
「メム…」
 今の僕は彼女を主人と呼ぶ事が出来ず、そうに呼びかけました。
「…ゴメン、少しほっといて」
 よろめきながら部屋を出て行く彼女を、僕はあせって引き止めようとしましたが、そっと片手で部屋の中に押し込まれてしまいました。
「メム!ちょっ…」

 ぷしゅ〜、ピピピピ、がちん。

 む〜、ご丁寧にも鍵までかけていきました。
 仕方ない、教官に連絡するしかないですね…
 僕はビジフォンで連絡を入れて事の詳細を伝えると、画面の向こうで教官が盛大なため息をつきました。
『しょうがない奴だ…
 分かった、ロックは解除してやるから、お前はあいつを追いかけろ。
 多分、オロール展望台にいるはずだ』
「え?でも、第3形態までのパシリは、市街地を単独で…」
『そいつは建前だ。いいから、さっさと追いかけろ。
 お前、あいつのパートナーになるんだろ?どんな奴なのか、自分で話を聞いて来い』
 そこで唐突に通信が切れ、ドアのロックが解除されました。

 まったく!自分勝手な彼女もなんですが、教官ってば、彼女のことは僕に丸投げですか!もう!

 二人の態度に内心怒りながらも、僕は彼女を探しに出かけます。
 教官の態度は腹立たしいですが、後から考えれば至極当然のことでした。
 だって、これは僕と彼女の問題だったんですから。
56僕と彼女(5):2007/12/21(金) 20:23:13.10 ID:xyJ8sX1f
 ―――Gコロニー、オロール展望台―――

 あたしは展望台の壁に寄りかかりながら座って、強化ガラス越しに見えるニューデイズを眺めていた。
「やっぱりパシリのモニターになんて応募するんじゃなかったかな…」
 思考が呟きとして漏れ、同時に溜め息がこぼれる。
 陰鬱な気分に浸りながら、あたしは展望ドームをただ見上げていた。
 不意に気配を感じて、あたしは座ったままながらも身構える。
 僅かに間が空いて、

 ぷしゅ〜

「まったく、ひどい目にあいました〜」
 愚痴をこぼしつつ、ふわふわと飛んで展望室に入ってきたのは、なんの変哲も無いGH−101。
 すぐに周囲を見回し始めると、あたしに気づいたようだ。
「ここにいたのですか、メム」
 そう言いつつ、私の方へ向かってくる。
 この声、この言い回し…こいつは、教官があたしの所に連れてきた奴か。
 周囲に教官の姿や気配を探してみるが…無い。
 しかし、道中にSEED達がいる連絡通路をどうやって突破してきたんだ、こいつは?
「メム?具合でも悪いのですか?」
 気づくと、101はあたしのすぐ側まで来て、ぷかぷかと浮かんでいた。
「…別に平気。痛っ…」
 さっき、こいつが体当たりしたおでこに突然痛みが走り、反射的に手で押さえた。
「あの、その…ごめんなさい!体当たり、加減できなくて…」
 どこかおどおどした様子で謝る101。
「いいよ、謝らなくて。勝負に怪我はつきものだから」
 そう言いつつ、しゅんとしたこいつを、あたしは反射的に撫でてやっていた。
 それにはっと気づいて、あわてて手を引っ込める。

 あたし、パシリは嫌いなはずなのに、どうして…
 ――ううん、違う。そうじゃない。
 本当は、そうに思い込もうとしてただけだって、ちゃんと分かってる。
 パシリなんて『嫌い』、『憎むべき対象』、そうに思い込みたかった。
 『こいつらに復讐する為にあたしは生きてる』
 あたしは『あの時』からずっと、自分にそう言い聞かせ続けてきた。
 そうしなければ、自分が自分でいられなかったから。
 この手でパシリ達を壊し続ける事でしか、自分を保てなかったから。
 こいつを、この101を撫でてやったこの手で…

 あたしはそんな事を考えながら、101を撫でた自分の手に視線を落とし、そして、ぎょっとした。
 手にべっとりと油か何かがついている。
「あんた、どっか壊れてるんじゃない?!」
 あわてて101をつかんで全体を見てみると、いくつもの小さな、けれどそこそこ深い傷跡がボディに残っていて、そこからじんわりとオイルみたいなものが滲んでいる。
「え?あははは、大した傷じゃありませんよ。
 外装に傷が入って、衝撃緩和用のジェルが滲んでいるだけです。
 連絡通路を通り抜けようとして、デルセバンの攻撃が避け切れなくて、少しかすっただけですから。
 自己修復機能もありますし、暫くすれば勝手に直ります」
57僕と彼女(6):2007/12/21(金) 20:23:44.51 ID:xyJ8sX1f
 お気楽な調子で説明されて「はいそーですか」で済ませられなかったので、あたしはこいつにモノメイトを使って、傷を治してやった。
「なんでこんな怪我してまで、ここに来たの!」
 あたしが思わず大声で怒鳴ると、下を向く101。
「だって、僕はあなたに用があったのに、話も聞かないで部屋からいなくなってしまったから…」
 またしゅんとなってしまったこいつに、あたしはそのまま怒鳴りつける。
「あたしは、少しほっといて、って言ったわ!
 それなのに、どうしてついてきた訳?!」
「…」
 つかんだままの私の手からするりと抜け出し、後ずさる101。
「…そうですよね、待ってれば良かったんですよね。
 僕、部屋に帰ります」
 しょんぼりとした雰囲気を漂わせながら、連絡通路に向かって移動し始める101に、あたしはなんだか無性に腹が立ってきた。
「待ちなさい!あんたはあたしに話があってここまで来てるのに、あんたが肝心な話を何も言わないで部屋に帰るなら、あたしはあんたをGRMに熨し付けて返すからね!」
「メム…」
「それ位の我は通しなさい!」
 ビシッ!と指を突きつけ、あたしは言い切る。
 すると、躊躇いながらも、101は戻ってきた。
「――それで、あたしに話って?」
 ずばりと切り出すと、101はちょっと躊躇ってから、
「僕に、名前をつけてください」
と、言い出した。
「名前?」
 思わず聞き返してしまったが、普通は最初に型番以外の名前なんてついていないのを思い出した。
「慣例的にそうなっていますし、それをしないと僕があなたのパートナーとして登録されないんです。
 少なからず、今日中にしておかないと、僕、『また』GRMに戻ることになるんです」
「…『また』?またって、どういう事?」
 一瞬、聞き間違えたかと思ったが、そうではないみたい。
 俯き加減に視線を落とし、ぽつぽつと話し出した101。
「…実は、メムは五人目の当選者なんです。
 今までの四人は、いろいろな事情から、当選していたにもかかわらず僕のパートナーになれなかったんです。
 不正行為や不正二重登録、当選者の義務の不履行、そしてある一人は僕を売りさばこうとしました。
 そして、その誰もが、僕に名前をつけてくれませんでした」
 表情アイコンで顔に影が落ちた101の声は、何処か不安と悲しみに彩られていた。
 それは、ちいさな玉っころの、大きな苦悩。
「そうだったの…」
 自然と胸に熱いものがこみ上げてきたあたしは、そっと101の丸いボディをつかみ、ゆっくりと抱きしめた。
「あんたも辛い思いをして来たんだ」
「…え?あ、あ、あ、あ、あの、ちょっと、メム!」
 突然、101がわたわたと動くので、あたしはちょっといぶかしんだ。
「何?苦しい?抱きしめるの、ちょっと強かった?」
「いえ、そ、その、胸が…」
 101の頬に当たる部分に、ピンクの楕円形のアイコンが出ている所を見ると、どうやら照れてるのか、恥ずかしがってる様子。
「ぼ、僕、元々男性格の性格設定で固定されてるから、その、ちょっと、あなたの胸に押し付けられるの、恥ずかしいんです!」
「…ぷ、あはははははははは」
 あたしは思わず笑い出した。
58僕と彼女(7):2007/12/21(金) 20:24:14.03 ID:xyJ8sX1f
 パシリがこんな事言うなんて、思っても見なかったから。
 今時、小学生でも言わないような台詞に、あたしは笑いが止まらなくなった。
 そして、この101を、自分の胸にぎゅっと押し付ける。
「や、止めてください!」
「止めない!あんたはあたしのパートナーなんでしょ?これから先、こんな事なら何度もやられるのに、今から恥ずかしがってどうするの?!」
 あたしは笑いながら、ふと、もぞもぞ動く101に目を向けると、赤みがかった金髪の少年のイメージがダブって見えた。
 まるで、太陽のようなその髪の色に、名前がひらめいた。
「決めた、あんたの名前はソル!古い言葉で『太陽』って意味がある言葉よ」
「え?!」
「あんたを見てたら、不意にそんなイメージがダブったの」
 急に動くのを止め、何かにあっけにとらえた様子の101。
「何?不満なの?」
 あたしが意地悪くそう言うと、101は慌てふためいた。
「ち、ちがいます、そうじゃないんです!
 それ、僕の開発時の識別名称と全く同じなんです!
 開発コードGH−XY1、型式GH−470−X1、製造ロットPMLA01S.O.L.-X1、識別名称ソル!
 僕は、そうに呼ばれていたんです!」
 101が叫ぶように言い放った。
 今度はあたしがあっけにとられ、101を開放した。
「偶然にしては出来すぎです!僕の識別名称をご存知だったんじゃないんですか?!」
「そ、そんなこと、ない、よ…
 だって、ほんとに、ぱっと、思いついたんだから…
 ほ、本当だからね!」
 あたしはあまりの偶然にびっくりして、言葉が途切れ途切れになりながらも必死に弁明すると、本当に偶然なんだと、101も納得した様子。
「…僕は、僕は来るべくしてあなたの所に来たのかも知れない。
 ―――名称登録完了、僕の名前はソルです。
 ご主人様、初めまして。そして、これからよろしくお願いします」
「――よろしく、ソル。
 あたしの名前は、カエデ。カエデ・タチバナ。
 あたしを呼ぶ時はマスターか、カエデ、って呼んでくれると嬉しいな」
「はい、マスター」
 ソルの返事は、何故かとてもうれしそうに感じられた。
 それを聞いたあたしは、心の中に凝り固まった重苦しい何かが溶け、消え去っていくのを感じた。
「マスター、どうかしたのですか?」
 突然、不思議そうな声色で私に問いかけるソル。
「ん?どうして?」
「さっきまでは暗い表情だったのに、今はとてもうれしそうな顔をしているから…」
 あたしは知らず知らずのうちに、微笑んでいたらしい。
「そうね、嬉しいんだと思う。
 今まで悩んでいた事が嘘みたいに消えちゃったから。
 ―――あんたのお陰だよ?」
「え?、僕の、ですか?」
「そう、あんたのおかげ」
59僕と彼女(8):2007/12/21(金) 20:25:03.41 ID:xyJ8sX1f
「…どんな事を悩んでいたんですか?」
 一瞬、『あの日の出来事』が脳裏をよぎる。
 でも、もう大丈夫。自分を誤魔化さずに受けとめられる。
 あたしはソルを優しく撫で、微笑んでみせる。
「後で話してあげる。
 ――さ、部屋に帰ってお祝いしよう!今日はあたしに家族が増えた記念日なんだから!」
 あたしはソルをひっ捕まえて、連絡通路へ駆け込んでいった。
「あたし、明日から頑張るからねー!あんたも頑張るのよー!」
「ちょ、離して下さい、マスター!僕は一人でも…」

 ぷしゅ〜

 通路と展望室を遮る扉が閉まるのと同時に、誰もいないはずの展望室に小さないため息が響く。
「やれやれ…(ピポッ)父様、ソルくんは無事に登録されました」
 父様に連絡を入れると、ほっとした感じの声が返ってきました。
『そうか、ご苦労さん。
 二人とも、早く帰ってこい。今日はもう店じまいだ』
「はい、分かりました(ビュゥン)」
 私は父様との通信を切り、押し殺した気配を開放して、フォトンミラージュの迷彩を解除しました。
「やっと、ちゃんとした主人にめぐり合えたようね、ソルくん」
「そうね」
 私の隣ではガーネッタが、肩の荷が下りてせいせいしたという感じで、帰り支度を始めていました。
「ねぇ、ガーネッタ」
「何?」
「カエデの村の事、憶えてる?」
「…うん」
 ガーネッタの手が止まり、苦悶の表情を抑えているのか、眉間に小さくしわがよっていた。
「あたし達がもう少し早ければ、あんな事には…」
「でも、間に合わなかった」
 私達はあの時の事を思い返し、押し黙ってしまいました。
「――――もう、過ぎた事よ。過去は変えられない…」
 沈黙を破って吐き出すように言い、言葉尻を濁すガーネッタ。
「そうね…
 ―――私達、彼女に話せる時が来るのかしら。私達が、彼女の故郷を殺処分したという事実を。その真相を…」
 私はふと、ナノトランサーから汚れた一組のイヤリングを取り出し、それをじっと見つめます。
 本当は眩い銀色の光を放つはずのそれは、赤黒いもので染め上げられていました。
「すべての運命は星霊のお導き。
 語る必要があるなら、いずれその機会はやってくる。それが必然なら。
 ―――帰りましょう、今日の私達の役目は終わったのだから」
 私達は、ドームの強化ガラス越しに輝くニューデイズをじっと見つめ、それから立ち去りました。
 あの惑星で同じ過ちが繰り返されない事を願いながら。

 ―――終わり―――
60名無しオンライン:2007/12/21(金) 20:31:28.46 ID:xyJ8sX1f
投下完了です。

作中での時間経過が現実よりも遅くなって、だいぶ難儀してしまいました。
作中ではまだ470デバイス解放前ですからねぇ。
ほんとはもっと早く投下する予定だったのですが…

毎度の如く、投下作品にお付き合い下さりありがとうございます。
お目汚し、失礼いたしました。
61名無しオンライン:2007/12/23(日) 02:02:25.46 ID:616ioIe2
新作ktkr!!!
>>50
なんだかんだで恥ずかしがってはいるけど、
43Xが赤鼻トナカイ役とか、案外一番楽しんでいるような気が・・・
いつでもいいので、地味キャス子の方も投下してくださいな。

>>60
訳ありご主人の所に婿入り(?)したソル君。
いったいこれからどうなることやら・・・続きが楽しみですな〜

>自然と胸に熱いものがこみ上げてきたあたしは、そっと101の丸いボディをつかみ、ゆっくりと抱きしめた。
ソル君、いいからちょっと場所を交代しなさs(ry

ところで、メムってどんな意味?ググっても出てこなかった・・・
62名無しオンライン:2007/12/23(日) 11:05:54.59 ID:iF14zc36
>>61
 「代わってもいいですけど、喜びのあまり力いっぱい抱きしめられると、躯体がミシミシいうんですが…それでもよろしいですか?
 僕はもう、いい加減慣れましたけど」/by ソル

 ご拝読感謝です。
 睡眠時間削りつつ続編書いてますんで、気長にお待ち…Zzz

 >ところで、メムってどんな意味?ググっても出てこなかった・・・

 これは男性の敬称である『サー』の女性版です。
 正確には、

 ma'am
  丁寧な呼びかけ; madamの短縮形
  [1]主に米話奥様, お嬢様,(女の)先生など,(※しばしばYes'm, No'mと更に短縮される).
   ・ No, 〜, I won't ever talk in class again.
    先生, もう授業中には決しておしゃべりしません.
  [2]英女王様; 昔, 身分の高い婦人に対して奥方様.

  Yahoo!辞書 『新グローバル英和辞典』より抜粋
    ttp://dic.yahoo.co.jp/dsearch?enc=UTF-8&p=MA&dtype=1&stype=0&dname=1ss&pagenum=1&index=246870

 なので、『マム』と表記すべきなのですが、
 とある小説の中で使われていた『メム』という表記のほうが個人的に馴染み深かったので、そちらを使いました。
 (とある小説が気になる方は『敵は海賊』でググって下さい。)

 ちなみに外国映画の海軍物などで、上官の命令などに対して「アイ、アイ、サー」とよく言いますが、
 これは、上官の命令指示に対して、理解し、その通りに行動するという意味の肯定表現だそうで、
 「はい、おおせのとおりに」という意味になるそうです。
 また海軍の場合、「イエス・サー」は、上官の言葉を単に理解したという場合に使い、行動は伴わないそうです。

 それから、スペルとしては
 アイアイサー:aye, aye, sir.
 アイアイマム:aye, aye, ma'am
 となります。

今回参照させていただいたページ
 『素朴な疑問集 No.226』ttp://homepage1.nifty.com/tadahiko/GIMON/QA/QA226.HTML
63名無しオンライン:2007/12/23(日) 13:08:52.92 ID:IS5KN1yf
さて、20周年記念にひとつ長編を書いてみようかと思い立ちました。
本当はPS1発売日である12月20日に投稿しようと思ったんですが、なぜか書き込めなくて断念…

それでは、小出しオンラインでいきます!(執筆スピードが遅いから)
64継承 I 甦る光の戦士(前編)1:2007/12/23(日) 13:10:56.09 ID:IS5KN1yf
これは、わたくしがわたくしであるための物語。
そして、光を継ぐ者であるあなたたちに贈る物語。

―プロローグ PSO Final Episode―

黒い雨の降りしきる中、飛沫を跳ね上げながら少年は階段を駆け上がった。
汚染物質を防ぐため羽織ったマントは漆黒に染まり、望むところではなくとも闇に姿をとけ込ませる。今は真昼だが、太陽は煤煙と雷雲にこもり、その姿を見せようとはしない。
雷鳴が轟き、空気を切り裂く。禁断の塔を登り、神に逆らう愚かな人間を嘲笑うかのように。
ここは神殿。『大いなる光』が現世に降り立った場所。そして人類が滅亡を宣告された場所。

最上階。扉の向こうにそれはいる。殺気でも悪意でもない、圧倒的だが名状しがたい気配。それに気圧され、深呼吸をしながら今にも逃げ出したくなる自分を落ち着かせようと所持品に目をやった。武器に防具、その他に…
先に挑んだ剣士が使っていた、折られた刀。祖父の形見、かつては星すらも砕いたといわれる、自分には使いこなせない精神銃。そして…戦う力もないのに抵抗したジャーナリストの残したバンダナ。
多くの人の思いを背負い、彼はここにいる。
勝てるはずのない戦い、怖くないわけがない。だが、立ち向かわなければ待つのは破滅だけだから。
気づかぬうちに止めていた息を大きく吐き出し、扉を押し開ける。重い音を立てて、しかし誘い入れるかのように自ら動き、ほとんど力を入れずに扉は開いた。
古の香りを今に伝える、大理石でできた玉座の間。明かりもつけられていない中、女王だけがそこにいた。待っていたのだ。この時がくることを知っていて。
「来たか…一度は敗れ、逃げ出したものと思っていたが」
耳にはこの上なく心地よく響くが、何の感情も込められていない、ある種の恐怖を感じさせる声が彼を出迎えた。
65継承 I 甦る光の戦士(前編)2:2007/12/23(日) 13:11:11.73 ID:IS5KN1yf
息をのんだ。
光に淡く照らされる髪。少女のようで、それでいて熟れきった女の色香を纏う顔立ち。肉感的だが無駄の一切ない肢体。薄衣に隠された、形の整った豊かな乳房。
いかな芸術家でも表現しきることは不可能であろう、見るものを狂わせる美貌、その姿を、幻想的な青白い光が妖しく映しだす。以前に見た黒い刃の剣が放っている光だ。
あの黒は闇ではなく、周囲に影響されずに月光の明るさを保っているのだと、少年はこのときようやく気づいた。
「かわいそうなやつだ…人間に絶望したあげくに、光の存在に取り込まれたなんて」
「あるべき姿に戻っただけだ。我を保つ必要のない種族、光の眷属たるヴァンの民に。理解できぬものが間違いだというのは浅はかな考えだな」
女王は玉座から立ち上がった。その身にまとう鷹の翼を思わせる黄金の羽衣と、実体のない炎の首飾りがそれに従い、ゆらめく。
「千年紀が絶えてより幾星霜…その間おまえたちは何をしていた?物質文明の利便性におぼれて虚栄心に身をゆだね、際限ない欲望を満たすために暴走を繰り返していただけではないか。
そうやって星を食いつぶし、他の星にまで手を出し、あげく『深遠なる闇』の下僕まで目覚めさせた。本当に、進歩しないものだな…」
「………」
反論はできない。事実だからだ。破壊し汚染した母なる惑星・コーラルを「星の寿命がきている」などと理由を付けて捨て、人類は惑星ラグオルへと移住した。
しかし、本当は逃げ出しただけなのだ。ラグオルという名の誘惑に。そして今は、どんな願いも叶えてくれると伝承にある『大いなる光』への懇願に。
「私はもともと願いを叶えるために存在している…そしておまえたちは、この星を再生させたいという願いをもって私を呼び出したのだ。叶えてやろう、その願いを。代償は大きいが、おまえたちが望んだことだ」
「それが俺たちコーラル人全員の命と、社会を破壊することだっていうのか!そんなこと誰も望んじゃいない!」
「自らの手で星を甦らせることを放棄したおまえたち、私を呼び出すために同胞の一人を壊したおまえたちが、保身などと…
相矛盾したこの星のすべての人間の願いを叶えるには、そのような思考は超えねばならない。人である必要などない。今ある命を捨て、私と同じ光の眷属に戻ればよい」
「狂ってやがる…!」
口の中が乾いた。狂っているのはどちらだ?人類の価値観が、幾度もの過ちに彩られた歴史が正しいなどと誰が言えるだろう。
「迷いがあったな、今の言葉には。おまえは賢い。薄々わかっているのだろう?」
彼女の思考は、すでに人のそれを逸脱した異質なもの。無制限に願いを叶えていくこととならび、『大いなる光』が神とされる所以だ。
だが、人の社会は理解できない概念を狂気と呼ぶ。人であるために、社会を営む生物であるために、異物は排除するしかないのだ。たとえそれが後の世において過ちとされようとも。
『大いなる光』は、人に都合のいい善なる存在などではない。ひとたび敵対すれば、それはダークファルス以上の脅威に他ならない。
だから、立ち向かう。迷いは捨てきれないが、根底にある信念は揺るがない。『大いなる光』を前にしてなお、人の素晴らしさを信じたジャーナリスト…あのニューマンの女性が彼の心にいる限り。
「俺たちにはわからない…もしかしたらあんたは正しいのかもしれない。でも、それを認めるわけにはいかないんだ!」
「ならば滅ぼしてみるか、この私を。おまえたちが待ち望み、希った光の存在を」
覚悟はもう決めている。何も言わずに、少年は手にした違法改造チェーンソードのフットスイッチを踏み込んだ。血に飢えた野獣のうなり声のようにけたたましく、フォトンではない金属の刃が激しい回転を始めた。
それを見ると女王は魔剣を掲げ、初めてその顔に笑みを浮かべた。
「来るがいい、アースの末裔」


―その戦いの記憶が、人々の心から失われて久しい…―
66継承 I 甦る光の戦士(前編)3:2007/12/23(日) 13:12:03.89 ID:IS5KN1yf
…はっ!ちょっと居眠りしてしまいました。
見れば、日付が4月23日に変わるところ。
きょうも一日が終わりました。ここからはわたくし荒ぶる戦乙女のGH432(劇場版)が、主と過ごす時間です。
いつもなら主はまだ外に出ていたりすでにベッドに入っておられるのですが、今夜はわたくしをお呼びになりました。何でしょうか、我が主よ。
「さて…いろいろ作った武器や残ったお金は全部配ってきたし、やるべきことは全部終わらせたわ」
唐突に何をなさるのかと思いましたがお疲れさまです。無償の愛に皆感謝していることと存じます。
「でもね、一人だけまだ感謝できてない人がいるの」
主はにっこりとわたくしを見つめ…え?わたくし、ですか?
「本当によくがんばったね、得意分野でもないのに低い確率の打撃武器合成を全部高属性で成功させるなんて。今日はわがままきいてあげるよ、何でも言ってちょうだい」
勿体なきお言葉、恐悦至極です…
そ、それでは今日は思いっきり甘えさせてください!

それからの数時間は至福の時間でした。
美味しい高級素材を好きなだけ食べさせてもらったり、特別に小さいサイズの服を作っていただいて主とおそろいにしてみたり、一緒に寝てみたり。ああ、もうわたくしここで死んでもいい…
そして、夜が明けました。

「このまま何も知らずにいればそれも幸せなことだったのかもしれないけど…やっぱり、全部教えておくわ」
朝起きて主は何か考え込んでおられたようですが、わたくしと向き合って口を開きました。
「あなたは今日、今ここで消滅する」
…は?意味がわかりません。わたくしはきょとんとするという言葉の意味を身をもって体験していました。
それから主のおっしゃったことを要約すると。
ここはβテストとかいうかりそめの世界でしかなく、わたくしも主ももともと別の平行世界に存在しているということ。
βテスト終了の時が来ればこの世界は消滅してしまい、主は元の世界に戻ってあちらのわたくしと元の生活をしますが、この世界のわたくしは存在しなくなってしまうということ。
そしてそれが今日であり、消滅まであと5分であるということ…
ええええええ!?そんな!さ、さっき今死んでもいいって言ったのなし!撤回です!
「あなたのせいじゃないし誰が悪いわけでもないわ、他のみんなも消えるんだから。これは定められたことなのよ。神々の黄昏と同じように」
全部消える、ですって…?今までに出会った人たちも、見慣れたグラールの光景も、全部…?
なぜそんなことを今になってわたくしにおっしゃったのですか…辛いです、主。胸が締め付けられるような感覚なんて、はじめてです…
「最初は知らせない方がいいと思ったよ。でも、あなたはいくつも無理難題をこなしてきたし、見た目の合成確率も越えた働きを見せてくれた。迷ったんだけどね、その可能性に賭けてみたくなったの」
ど、どういうことですか?
「あがいて、抗ってみせなさい。あなたの運命に」
突如、わたくしの足下の床が二つに割れました。マイルームにこんな仕掛けがあるなんて聞いてませんよ!?
重力にはさからえず、翼なきわたくしは足下に広がる暗黒に吸い込まれていったのでした。
67継承 I 甦る光の戦士(前編)4:2007/12/23(日) 13:13:30.75 ID:IS5KN1yf
長い長い長い落下。落ちる恐怖にも飽きてしまうくらいに長い落下でした。
そして、次に地面の感触を思い出したとき、わたくしは石造りの迷宮の中にいました。着地の衝撃がなかったのは不思議ですが、とりあえず無傷ですんだのは幸いでした。
どうしたものかと考えていると、薄暗い迷宮の奥から何か声が聞こえてきました。確かめにいってみますと…
「忙しい、忙しいの。お一人様ご案内なの」
一匹の猫(データにある絶滅した生物、ニヤオンに似ています)が、しきりに首からぶら下げている時計を見ながらつぶやいています。ニヤオンがしゃべるものだとは知りませんでしたが…しかし…これは…
かっ、可愛い!これではわたくしも自分のほうが可愛いとは断言できないくらいです…ああん、もふもふさせてくださいーっ!
「ギニャーっ!なでまわすんじゃないのー!」
猫さんは暴れてわたくしの腕から脱出し、迷宮の奥へと逃げ出しました。
す、すいませんやりすぎました、待ってくださいよ!

「the original works SEGA」

道中なにやら壁に文字が書かれているようですが、見ている暇などありません。猫さんは先へ先へと進んでいきます。
今のところ向かうべき場所もわからないので猫さんについていく他はなく、わたくしは見失わないよう追いかけて迷宮を走っていきました。
一本道からの右折路を右に曲がり。

「Phantasy Star」
「Phantasy Star2」
「Phantasy Star3」
「Phantasy Star -End of millenium-」
「Phantasy Star Online」

T字路を左に曲がり、行き止まりにつきあたって引き返し。

「from nameless storyteller,」

そこで穴に飛び込む猫さんを追いかけて飛び降り。

「to all champions.」

落下点から分岐の多い通路で行き止まりを何度か引き返しながら進む猫さんを追いかけて、突き当たりの階段を上り。

「for Phantasy Star 20th anniversary...」

トの字形の分岐を右に曲がって進んでいるうちに落とし穴に落ち。

「"The succession"」

そして、十字路を越えて階段を上ったその先には…

急に明るくなった周囲に目が慣れてくると、そこは記録でしか見たことのない旧世代の建造物の中でした。
「ハンターズギルドへようこそ!登録されたハンターズの方は、ここからクエストを受けられます」
は?あなた誰ですか?それにわたくしはハンターではないです、パシリです。
「あなたが現在受けられるクエストはこちらになります」
人の話を聞いてませんね…チャレンジモード?じゃ、じゃあそれで…それはそうと、猫さんを見かけませんでしたか?見失ったのですがこちらには…
「はい、では武器防具を預からせていただきます」
い、いきなり何をするんですか!武器がないと戦えないじゃないですか!
「つべこべ言わずにさっさと脱げコノヤロー、うりゃあ〜」
ら、らめぇぇぇ。
68継承 I 甦る光の戦士(前編)5:2007/12/23(日) 13:15:00.33 ID:IS5KN1yf
STAGE 1 -惑星パルマ エアロキャッスル-

うう、装備一式全部ひんむかれてしまいました…かわりに渡されたのは見るからになまくらな、金属を加工して形を整えただけの剣。よく見ると「テルミみやげ・アリサの剣」と書いてあります。
フォトンセイバーと違ってむやみに重いうえに使い物にならない武器でどうしろというのでしょうか?パルマでなくパルムじゃないんですかとつっこむ気すら起こりません。
それにしても、ここはどこでしょう?なにやら転送されたようですが、グラールにはこれほどスムーズな転送技術はなかったはずです…

なんだか懐かしさを感じる柱。どの記録にもない組成の材質でできています。
古い形の建造物ですね…でも作られてそんなに時間が経っている様子はありません。カーボン同位元素半減期から考えても、500年はすぎていないはずです。こんな建物、パルムにありましたっけ?
「チャレンジモードでは武器や防具の強さに頼らないで戦うのよ」
どこからともなく、サイコウォンドを振り回しながら後ろ向きに歩いて主がいらっしゃいました。意味がわからないのはいつものことですが、何やってんですか…
「知恵と勇気、そして仲間との絆がすべて。今まで何人もの勇者がこれをやり遂げて本当の強さを手にしてきたわ」
はあ。それはそうと、あれから明らかに5分以上すぎているはずなのですが、いっこうに世界の消滅は始まりません。わたくしの内蔵時計が止まってしまったのも気にかかります…チェックしても故障は見つからないのですが。
「一応困ったら使えるようにアイテムパックにはいろいろあるからね。がんばってねー、バッハハーイ」
え?一緒に行ってくれるんじゃないんですか?主〜!
取り残されてしまったわたくし。一人でいろとおっしゃるのですか…
肩を落とすわたくし。しかしそこで急にナノトランスに似た空間の歪みを感じたと思うと、誰もいなかった玉座に足組みをして頬杖をついた髭面のおじさんが現れました。
わたくしに熱い視線を送っているのは気のせいでしょうか…ちょこちょこと移動してみますが、やっぱり目はわたくしを追っています。何なんですかいったい…

-ミッション開始 ラシークを倒せ!-

はい?いきなり何ですか、ラシーク?このおじさんですか?
たしかに異様な殺気は放っていますが、見ているだけの相手に剣を向けるなど騎士道に反し…
「タンドレぇぇぇぇィィ!!」
電光が目を焼きました。考えるより早く体が動いたのは我ながらよくやったと思います。
これはラゾンデ!なんとかよけましたが危ないところでした。わたくしに限らず全般的にパシリは法撃に弱いのです。
「はっはっはっ、私に刃向かうのがどんな輩かと思えば…こんな子供とはな!このラシークもなめられたものだ!」
や、やりましたね!?こうなったら全力でいきますっ(なまくらな剣しかないですけど)!そんなに倒されたいなら望み通りにしてさしあげますよ!


-続く-
69名無しオンライン:2007/12/23(日) 13:18:55.99 ID:IS5KN1yf
20周年ということでシリーズ総決算なネタをやりたかったんです、すいません…
解説なしではわからない部分が確実にあると思うので、また交えていきます。

「ジャコウネコ」
現実にもジャコウネコという生物は存在するが、それとは別物の、アルゴル太陽系に少数のみ生息するしゃべる猫。
アリサの最初の仲間、ミャウがこれである。猫でありながら回復系、防御系のマジックを得意とし、さらにはラエルマベリーを食べることで翼をはやして空を飛ぶこともできるという優秀な仲間であった。
余談だがファンタシースター4でもジャコウネコは再登場しており、その族長(やたらでかい)からファルの最高の武器の一つ「シルバータスク」を託されることとなる。


「サイコウォンド」
後の世では究極の杖と呼ばれる、デゾリスで普通に売っている杖。1200メセタ。
何がすごいのかというと、使うと確実に敵から逃げられるのである。敵が逃げ足の速さに驚くくらいの勢いで逃げるのだから、たしかに究極かもしれない。
当時はルツの装備用とは別にもう一つ買っておき、ボスまでの道のりは(バックアタックを防ぐために)後ろ向きに歩いて敵が出現するたびにサイコウォンドをいっせいに使うという方法で消耗を防ぐのが常套手段であった。
サイコウォンドはファンタシースター4でも登場しており、邪教の教祖ジオが放つ「ナイトメア」を破り、倒すことができるようにする重要アイテムとなっている。
ラシークの能力強化を破ることもできるため、どこかでダモアクリスタルの力を取り込んだのだとも考えられる。


「アリサの剣」
ファンタシースター1の主人公、アリサ・ランディールが使っていた剣…ではなく、これはアリサの伝説を伝える昔語りの町・テルミのみやげ物屋で売っている模造刀のことをさす。
ちなみに攻撃力は全武器中ダントツの最下位。
役に立たないのかというと実はそうでもなく、病気の少年を勇気づけるために使われた、ある意味伝説の武器でもある。
ちなみに、アリサの最高の武器は「ラコニアンソード」。後の世で普通に売っている武器なあたり、時代の流れとアリサ自身が強かったのだということを感じられる。


「パルマ王ラシーク」
ファンタシースター1の終盤ボスの一人。ラ・シークとも。
水の豊富な緑の惑星・パルマにある天空の城エアロキャッスルに居を構え、アルゴル太陽系を恐怖政治で支配する不死の王。
ダモアクリスタルで闇の力を祓うことでようやく倒すことができるようになるが、それでも凶悪に強い。
もとは王族不在のパルマにおいて実権を任され善政をしいた良き王であったが、封印されていた闇の力に手を出してしまったことにより、数千年に及ぶ深遠なる闇と人類との戦いが幕を開けることとなった。
ちなみにファンタシースター1でアリサに倒された後も闇からは逃れられず、2000年後のファンタシースター4で不死者としてエアロキャッスルとともに再登場する。
70名無しオンライン:2007/12/23(日) 14:32:37.33 ID:C4gFMUw+
>>69
よもやここでファンタシースターのネタを読もうとは思わなかった
しかしファンタシースターなのにやけにキャラが軽いw

だがそれがいい、それがパシリクオリティ
71名無しオンライン:2007/12/23(日) 18:41:38.07 ID:vJUf7/Ly
オンライン以前のネタはわからないので読み飛ばしてたが…

普通に面白いじゃないか!
ネタ補足のほうが更にわからなかったりするけれどw

続き楽しみにしていますー
72名無しオンライン:2007/12/23(日) 19:19:21.76 ID:616ioIe2
>>62
日本語では無いことしか分からず、カタカナでしかググってない。
そりゃ出てくるはず無いわorz補足ありがとう!

>躯体がミシミシ
・・・命がけって事ですか

>>69
俺もPSOからやり始めたので、ネタ元が分からない状態。
とはいいつつ、出だしの部分もよく分からん俺はモグリだな。
ともかく、ネタ元は分からないけど、純粋に話を楽しませてもらうぜ〜
73名無しオンライン:2007/12/23(日) 21:31:57.56 ID:IS5KN1yf
>>70-72
PSUにチャレンジモードがあったら?というのを想像したのがきっかけです。楽しめる作品になるよう努力します。
現行PSUにはそんなの当然ないんですが、問題あるようでしたらよそでやりますので。
ネタ元を知らなくても読めるように工夫はしていこうと思います…難しいなあw

PSOファイナルエピソードは完全なでっちあげですw
PSO本編ではラグオルだけがクローズアップされているわけですが、全然問題の解決していない本星コーラルのその後についても書いていきますので。
74名無しオンライン:2007/12/25(火) 14:21:38.74 ID:6QULv+eg
久々にPSOのデータブック引っ張りだしたけど
PSUにもクエスト欲しいネ、各惑星のG支部から受注みたいな感じで

依頼主: ┐
内容:ご機嫌ナナメな腹グロ様の為に極上の餌を探す手伝いを

みたいな奴を
75名無しオンライン:2007/12/25(火) 19:49:05.03 ID:E1llZXnR
しばらくぶりにチャレがやりたくなってしまったよ。
仲間たちと死闘(VRだけど)に明け暮れた日々を思い出すぜ…

旧PSシリーズのネタはわからんけど、
こういうチャレモードがマジであるといいのにな。
続き楽しみにしてます。ガンガってくだされ。

>>74
使い回しばっかりの「新ステージ」や
DQN女に引きずり回されるストミなんかより、
各星ごとの魅力的なミッションがあるほうがよほど楽しめると思う。
息抜きネタ系(「サイフの紐」「消えた花嫁」等)や
胸が締めつけられるような切ない話(「心のかたち」系)とか、
あるいは旧文明の謎に迫るようなミッションがやりたいよ。
76名無しオンライン:2007/12/25(火) 23:41:45.53 ID:wF/zExX8
保管庫の更新はまだですか
77名無しオンライン:2007/12/26(水) 19:39:01.42 ID:dIv4/8kV
>73
懐かしいなぁタンドレ。
戦乙女(劇場版)がこの後どんな活躍をするか楽しみです。
黒幕は地球人なボスとも戦うのかな?
78名無しオンライン:2007/12/27(木) 16:39:47.77 ID:ayEfL2of
ども、パパと412作者です。

業務連絡〜

wiki保管庫に過去ログ十三と十四を追加しました。
改行処理しかしてないので、読みにくいかもしれませんが、勘弁して下さい。

またとばっちり規制に引っかかっているので、当面はROMります。

ケータイからの書き込みは大変だなぁ…
79名無しオンライン:2007/12/27(木) 16:43:52.89 ID:ayEfL2of
ども、パパと412作者です。

業務連絡〜

wiki保管庫に過去ログ十三と十四を追加しました。
改行処理しかしてないので、読みにくいかもしれませんが、勘弁して下さい。

またとばっちり規制に引っかかっているので、当面はROMります。

ケータイからの書き込みは大変だなぁ…
80名無しオンライン:2007/12/27(木) 19:50:15.14 ID:ayEfL2of
うはっ、操作ミスって二重投下してる…orz
81名無しオンライン:2007/12/29(土) 20:51:03.46 ID:lXoQ7SPH
>>69
 ちゃんとプレイした旧シリーズは4しかないですが、時折ニヤっとしてしまうネタがあって、面白いです。
 そしてふと、こっちが公式設定でいいような気分になってしまう俺がいる…

しかし、書き込みが無くて静かだ…
みんな、冬コミにでも行ってるんだろうか?

ども、パパと412作者です。
とばっちり規制も解除され、妙に早く書きあがったので、ソルくんの続編を投下します。

それでは「故郷へ」、こっそり投下開始です。
ご拝読くださいませ。
82故郷へ(1):2007/12/29(土) 20:51:44.99 ID:lXoQ7SPH
「これが完全燃焼です!」

 ズドォン!!

 ボクのラ・フォイエが決まると、最後のデルセバンが黒い粒子になって消え去りました。
「はぁ…こっち、倒しました」
「あたしの方もっ、これで、最後!」

 ズドン!

 ボッカ・ズッパとは思えないほどの重い音が響き、倒されたガオゾランが床に落ちる事なく消え去りました。
 マスターの格闘能力はかなりのもので、ガーディアンズシステムが能力認定レベルをどんどん上げていきます。
 さっきの周回でLV40のプロテクトが開放されたばかりだというのに、この周回だけでも2LVは上がったでしょうか。
「よし、終わった!」
 うっすらとかいた汗を腕で拭い、マスターはボクに微笑みかけます。
「それじゃ、戻ろうか」
「はい、マスター」

 いらないものを売ったりとかの雑多な事を手早く済ませ、ボク達はマイルームに戻りました。
 MAGとかいうシミュレータが、期間限定ですが、開放されているおかけで、遠出しなくても戦闘訓練が出来るので助かっています。
「…やっと戦闘値が30になったね、ソル」
 帰って早々、ボクのパラメータチェックをしたマスターは、嬉しそうに言いました。
「450になってから、長かったですよ〜」
 色々と恥ずかしい思い出がフラッシュバックしてきます。
 あれとかこれとか…
「その姿がすっかりなじんじゃったけど、よくがんばったね、エライ!」
 ボクを抱きしめて、撫でてくれるマスター。
 何かというとボクを抱きしめるせいで、顔をマスターの胸に押し付けられるのにも、もうすっかり慣れてしまいました。
 ただ時折、興奮しすぎると手加減を忘れられ、ボクは何度怪我をしたことか…
 見た目じゃ判らないのですが、かなりの馬鹿――じゃない、怪――と、とにかく力強い抱擁をしてくれることがあって、ボクの悲鳴と破損警報がしょっちゅう鳴り響きました。
 マスターが精神コマンド『てかげん』を手に入れたのは、ほんの二、三日前です。
「さて、やっとあんたがあんたの姿に成る時が来たね、ソル。
 デバイス、出して」
「はい!」
 倉庫から470デバイスを取り出してマスターに手渡します。
「どうぞ、マスター」
「じゃ、行くわよ」
 ボクが口を開くと、そっとデバイスを入れてくれました。

 モギモギ・・・

 ボクは光に包まれ、次の瞬間には馴染み深い470へとメタモルフォーゼが完了していました。
「やっと『はじめまして』だね、ソル」
「はい、『はじめまして、マスター』」
 わざと芝居がかったお辞儀をして、僕はマスターとちょっとだけ笑いました。
83故郷へ(2):2007/12/29(土) 20:52:15.04 ID:lXoQ7SPH
「さてと。それじゃ、出かけようか」
 突然、そんなこと言い出すマスター。
「出かける、って、今帰ってきたばかりですよ?」
「ソルが470に成ったお祝いしようかと思うんだけど、嫌?」
 僕はあわてて首を横に振りました。
「そ、そんな事ないです!」
「じゃ、決定!ヒュマ助さんの飯店でお腹一杯食べよう!」
 ニコニコしながら、僕の手をとって部屋から引っ張り出すマスター。

 …?、何だろう?
 何か、妙に引っかかります。
 僕が470に進化したことを喜んでいるのは確かなんだけど…
 明るく振舞っているのは分かりますが、何かの決意を隠しているように思えてなりません。

 この所通いつめている飯店に着くと、マスターは料理をいくつも注文し、デザートのケーキにデコレーションまで頼んでいます。
「なんて書きますか?」
「え〜と…『進化オメデトウ!』、でよろしく。あ、最後に『!』を忘れずに入れて」
 看板娘の一人である422さんが注文伝票の片隅にさらさらと文章を書き、注文を確認して下がっていきました。
 今までのマスターは外食ばかりな上に偏食が過ぎるので、僕が450になってからは偏らないように毎食作っていたのですが、三人前位を平らげた上で「物足りない」と言って改めて食べに行っちゃうので、最近は僕も作らなくなってきました。
 流石にマスターを見かねた教官が、安くて、美味しくて、ボリュームがあって、なにより栄養バランスがいいから、って、ここを教えてくれましたけど、二週間ほどで全メニューを制覇してますからねぇ…
「マスター、せめて料理の一つも作れるようにしませんか?自分で作れば、好きな物がいっぱい食べられますよ?」
 毎度の外食でかさむ食費の事もあったので、僕がそれとなく言ったのですが、マスターは苦笑いしながら手をぱたぱた振ります。
「いいの、いいの。作っても、どうせ生ゴミと化しちゃうんだから」
「ですけど…」
 ついつい、諦めにも似たため息を吐いてしまいます。
 意外な事に、マスターは料理が破壊的に下手くそです。
 手先は人並みよりは器用なヒトなんですが…どうしてこう極度の料理音痴なんでしょう?
 普通の食材が、怪しい色合いの産廃になったり、こないだなんて…
 止めよう、これ以上考えると、ブレインコアが異常な演算結果にフリーズしてしまいます。
 それに…
「まぁ、また教官を毒殺しかけるよりはいいか…」
「なんですってぇ?!」
 僕の呟きがしっかりと聞こえてしまったようで、凄い形相でにらまれてしまいました。
「マスターがお出ししたお茶を一口含んだ途端に顔面蒼白になって、駆け込んだトイレで嘔吐する、っていう状況は、普通は毒殺しかけたって言いませんか?」
 今度ははっきり言うと、言葉に詰まったマスター。
「そ、それは、だって…」
「あ、それで思い出しました。
 あの後に教官が、『後で料理教室に放り込むから、その時はあいつを逃がすな』って、僕に言ってましたよ」
 僕がすまし顔でさらっと言うと、今度はげんなりとした表情になるマスター。
「やだなぁ。でもそれって…」
「―――お待たせ…」
 話の途中で、モノトーンカラーの430さんが最初の料理を運んで来ました。
「と、とりあえず、その話は後でね、ね?
 ――ほら、あったかいうちに食べよう?」
「は、はぁ、いただきます」
 う〜ん…モギモギ…なんか誤魔化されそうな気がしますが、ま、いいか。
84故郷へ(3):2007/12/29(土) 20:52:43.90 ID:lXoQ7SPH
 お祝いのケーキまで綺麗に食べ終わった僕達は、支払いを済ませるとセントラルテーブルまで散歩に出かけました。
「…来てないか」
 中心部にある大型オブジェの前できょろきょろしたかと思うと、ポツリと呟いたマスター。
「どうかしましたか?マスター」
「え?ああ、ちょっとね」
「ご主人様との待ち合わせが『ちょっと』の一言で片付くんですか?」
 背後から突然声をかけられ、あわてて振り返ると、そこには412さんが一人、ひっそりと立っていました。
 ID確認すると、この412さんはロザリオさんです。
 その彼女がご主人様と呼ぶからには、教官と待ち合わせなんでしょうが、そんな話はマスターから聞いていません。
 でも、こんな場所にわざわざ呼び出してるのですから、それなりの理由があるはずです。
 彼女は僕に視線を合わせると、柔らかく微笑みます。
「久しぶりね、ソルくん。やっと470に戻れたんだ」
「お久しぶりです、ロザリオ姉さん」
 挨拶の中で、つい反射的に『姉さん』と呼んでしまいました。
「…『姉さん』って呼ばないで、なんか恥ずかしいから」
 頬を薄く染め、ちょっぴりもじもじする彼女。
「あ、ご、ごめんなさい」
「…ま、呼び易いなら『姉さん』でもいいわよ」
 それなら仕方ない、といった様子で小さく笑うと、マスターを見上げる姉さん。
「カエデさん、お久しぶりです。
 早速ですが、結論から言うと、ご主人様は来ません」
 その一言に、愕然とした表情を浮かべるマスター。
「どうして?!」
「指導教官以外にも仕事があって、そっちが忙しいんです。
 ニューデイズへの渡航許可を直接出すことは出来ませんが、私がご主人様の代わりとして付いて行く事で許可が下りてます。
 謹慎中のあなたに、誰もつけずに惑星への渡航を許可できないので、本部側から提示された妥協案です」
 それを聞いたマスターは、深いため息をついて両手をあげました。
 なるほど、どおりで他の皆みたいに他の惑星で実戦訓練しないわけだ。
「いいわ、行けるならどんな条件でもかまわないわよ」
「では、早速行きましょう」
 くるりと向きを換え、スペースポートへと足早に歩き出す姉さん。
 僕達は黙ってその後を追いかけました。

 結局、ニューデイズのフライヤーベースに着くまで、僕達三人は一言も喋りませんでした。
 その後も二言、三言のちょっとしたやり取り以外は口を噤んだままです。
 マスターがフリーミッションの手続きを終え、僕達が向かった先は『緑林突破』でした。
 ですが、それすらも最低限の排除しかしないで通り抜け、タンゼ巡礼路の中継地点へ。
「今度はこのミッションだけど、途中で放棄するから」
 硬い表情でそれだけ言うと、今度は『胞子の丘陵』を受諾しました。
「故郷の村に向かうのね?」
 ロザリオ姉さんが静かに言うと、一瞬間が空いてから、マスターは頷くことで肯定しました。
「あたしの事、ソルにもちゃんと話したいし、村の様子も見ておきたいから」
「なら、急ぎましょう。日暮れは早いわよ?」
「分かってる。ここはあたしの生まれ故郷なのよ?」
 表情が和らぎ、クスッ、と小さく笑うマスター。
85故郷へ(4):2007/12/29(土) 20:53:12.33 ID:lXoQ7SPH
 一通りの装備を確認すると、僕達は巨大なキノコの森の奥を目指して走り始めました。
 そして、途中でミッションを放棄し、生い茂った草を掻き分けつつ、かつての踏み分け道を歩くこと約一時間。
「着いた、ここよ」
 妙に小奇麗な村の入り口に着きましたが、マスターに案内されて中に入ると、手入れがされていないのが一目で分かるほど荒れていました。
「――ウィルス濃度は自然レベル、問題ないわ」
 姉さんが歩きながら、SEEDウィルス検知器で確認していました。
 不意に一軒の家の前で立ち止まったマスター。
「―――あの時のままか。
 ソル、ここがあたしの家よ」
 ゆっくりとした足取りで、その中に入っていってしまうマスター。
 僕と姉さんが間をおいてその後に続くと、居間らしき場所で、マスターは目を閉じてたたずんでいました。
「思い出以外、ここには誰も、何も残っていない。
 父さん、母さん、兄さん…ただいま」
 膝からくず折れるように座り込むと、マスターはぽろぽろと涙を流します。
「やっぱり、死体も残ってない…
 せめてお墓くらい、作りたかったのに…」
「マスター…」
 なんて声をかけたらいいのか分からないままマスターの前に膝立ちになると、彼女は僕を強く抱きしめ、声を押し殺して泣き始めました。
「―――ソル。
 この村はね、イルミナスがSEEDウィルスを兵器利用する為に、実験場として選んだ場所の一つなの」
 突然、ロザリオ姉さんが話し出しました。
「連中が必要とした条件をたまたま満たしていたせいで、この村は実験という名のテロに遭った。
 勿論、そんな事実は世間に公表されていないし、ここに村があったことすら、今となっては誰も知らない。
 でもね、そんな事態になる前に、教団もガーディアンズもほんとは連中の動きをつかんでいた。
 だけどあの時、SEEDウィルスを防御する術を持っていたのはガーディアンズだけ、しかも、ちょっと多めの人数を必要としたの。
 …流石にガーディアンズ隊員を呼び出して行かせてたんじゃ間に合わなくて、ガーディアンズは仕方なく、対SEEDウィルスの切り札のうち、世間に公表出来ないけど時間が唯一間に合う、ある一つを投入したのよ」
 そこで話を一旦止めた姉さん。
 その顔を見ると、辛いことを隠すために能面のような無表情になっていました。
「それが、私と、私の12+1人の姉妹達。
 そして、その私達を指揮していたのが、私のご主人様。
 制圧ミッションは間に合うかと思われたけど、早い段階で連中に気取られてしまって、失敗してしまった。
 この時点でワクチンがあればよかったんだけど、量産品の完成がタッチの差で間に合わなくて、後から搬送される事になってた。
 結果としてウィルスが村に撒かれるという最悪の事態になってしまったけど、それでも、早い段階でワクチンが届けば何とかなるはずだったの。
 でも、ワクチンが届く前に、村人達は変異を始めてしまった…」
「…研修でたまたま村から出かけていたあたしがここに帰って来た時には、殆どの人達が殺処分された後だった」
 いつの間にか泣くのを止めたマスターが、姉さんの話を継いで喋りだしました。
「みんな、姿が変わり始めながら、『助けて!』って叫んでた。
 あたしの家族も、お隣のおじさんたちも、あたしの教え子達も、みんな、SEED変異してしまった。
 …あたしね、これでも学校の先生だったの。
 なのに、あの子達に何も出来なかった。
 声一つかけてやる事すら出来ずに、ただ立ち尽くしていた。
 ―――気がついた時には、パシリ達がみんなを、SEEDを処分した後だった。
 そして、目の前にパシリがやってきて…」
「その時、私はカエデに言ったの。『今は死になさい。そして、みんなの分も生きて』って。
 末期症状は出てなかったけど、村に撒布されたウィルス濃度がとても濃くて、ワクチン接種していたとしても有効かどうか怪しかった。
 だから、この村で唯一人SEED化してなかったカエデをここから問題なく連れ出すには、一度は死体にするしかなかったの。
 …SEEDウィルスも、流石に死体にまでは影響がないから。
 その後の検査で、カエデは運良くウィルス感染していない事が判明したわ」
86故郷へ(5):2007/12/29(土) 20:53:54.65 ID:lXoQ7SPH
 僕はただ黙って、二人の話を聞いているしかありませんでした。
「…ねぇ、ソル。
 初めて一緒にお風呂に入った時の事、憶えてる?」
 マスターが呟くように僕に尋ねました。
「はい」
 僕が450に進化した最初の日、僕はマスターに無理やりお風呂に連れこまれました。
 そして、真っ先に見せられた『もの』があります。
 それは、裸になったマスターのみぞおち、腹、両太もも、そして左の首すじに残っていた、フォトン武器特有の傷跡。
 脱衣場でそれを初めて見た時に、僕はあまりの精神的ショックにフリーズしてしまいました。
 傷跡のどれもが致命傷で、こうして生きている事自体が不思議だったのです。
「あれはここでつけられた傷。あたしが生かされるために殺されたときの。
 安全な場所で蘇生されたけど、この傷だけは消えずに残った。
 その時から、あたしの心は歪んじゃったの。
 SEED化したとはいえ、村人を殺したパシリが憎い!嫌い!
 なら、死んだ村人の数だけパシリ達を壊す!
 あの時何も出来なかったあたしが、死んでしまったみんなの代わりに出来る事!
 そう思い込んだあたしは、それを希望にして、今まで生きてきた。
 あんたに出逢うまでは」
 そこまで喋って、マスターはやっと僕から離れました。
「マスターは僕達パシリが…」
 不安に揺らぐ声色で、嫌いなの?と、続けようとした僕の唇を、マスターは人差し指で押さえて首を横に振りました。
「ほんとにそんな事、本心から思った訳じゃない。
 あの時のあたしは、そうに思い込まなければ、立ち上がることすら出来なかったの。
 でも今は違う。
 あたしが本当に憎むべき相手が分かったから。
 それに…」
 ロザリオ姉さんの方に視線を向け、寂しそうに微笑みました。
「愛すべき隣人であるヒトを殺さなければならなかった、パシリの苦悩を知ったんだもの」
「!」
「…前から知ってたんだ。
 ロザリオが、あたしの前に立つ度に、辛そうな表情を一瞬だけど浮かべてた。
 今日、話を聞いて、その理由がやっと分かった。
 一生懸命やったのに、助けられなかったばかりじゃなく、殺処分までしなければならなかった。
 それが辛くて、苦しくて、後悔してるのに、でもあたしに話す事も出来ない。
 自分が殺すことでしかSEED化から救えなかった相手になんて、こんな話、普通は絶対に話せないよ…」
 それを聞いて、一瞬、泣き出しそうな表情を浮かべた姉さんでしたが、それを無理やり押し殺すと、ナノトランサーから何かを取り出して、マスターに手渡しました。
「―――これ、死ぬ間際の、あなたのお兄さんから。
 それから、『お誕生日おめでとう。俺と、お前の生徒達からのプレゼントだ』って。それをあなたに伝えてくれって」
 マスターの掌に置かれたそれは、凝り固まった血にまみれてはいたけど、花をデザイン化した、一組の小さなシルバニア製イヤリングです。
「もしかしたら、この機会は一生来ないんじゃないかと思ってた。
 あなたに手渡せて、良かった…」
 無表情な姉さんの頬を伝う、一筋の涙。
「ありがとう、ロザリオ。
 ありがとう、兄さん、みんな…」
 イヤリングが置かれた掌をそっと握り、胸に押し頂くと目を伏せるマスター。
 その表情は、だんだん穏やかになっていきました。
87故郷へ(6):2007/12/29(土) 20:54:26.80 ID:lXoQ7SPH
 日も傾きかけた頃、村に隣接する墓地の中に、瓦礫で出来た大き目の墓標が一つ増えました。
 その中には、遺体どころか髪の毛一本入っていませんが、代わりに血まみれのイヤリングが一つ、丁寧に収められています。
「…イヤリング、片方になっちゃうけど、いいの?」
 ロザリオ姉さんが墓標を見据えながら、小さく言います。
「うん。
 ここにみんなが居た証になるんだから、いいの」
 マスターは、静かにですがきっぱりと言いました。
「―――兄さん、ね、元同盟軍の軍人だったんだ」
 何を思ってか、そんな話をおもむろに始めたマスター。
「でも、色々あって、軍を辞めてガーディアンズになった。
 結局は、ガーディアンズも折り合い悪くなって、辞めちゃったんだけどね。
 その時、こう言ってた。
『ガーディアンズも、同盟軍も、俺の求めていたモノじゃなかった。
 何が『守護者(ガーディアンズ)』だ!
 モトゥブの連中すら、守れなかったじゃないか!
 俺は結局、あいつらを殺すことでしか苦しみから救ってやれなかった!
 俺は、殺したり破壊するためじゃなく、みんなを守れる力が欲しかった』
 …あたし、兄さんが何を求めていたのか、最近になってなんとなく分かるようになった。
 でもね、兄さんみたいに、ガーディアンズに失望したりしない。
 あたしは、あたしが出来る事を、ガーディアンズとして精一杯やるつもり。
 道を間違ったり、躓いて転んだり、いろいろあるかもしれないけど、それでもあがいてあがいて、少しずつ前に進もうと思う。
 兄さんが目指していたところへ」
 それは、マスターがその決意を宣誓した瞬間でした。
 そして、それは僕にとっても決意の瞬間でした。
「…僕も一緒ですよ、マスター」
「ソル?」
 驚いた表情で僕を見下ろすマスター。
「僕はマスターのお兄さんの代わりにはなれないし、ヒトでもありません。
 でも、相棒としていつまでも付いていきますから。
 だって僕は―――」
 マスターの顔を見上げながら、
「――あなたの『パートナーマシナリー』ですから」
 そう言って、微笑みました。
 ちょっと間が空いてから、マスターはぽろぽろと涙を流しながら微笑みました。
 涙にまみれたその優しい微笑を、僕は最重要データとして記憶領域に刻み付けました。
 今のこの決意を、気持ちを、何時までも忘れないために。
「ありがと、ソル。
 頼りにしてるからね」
「はい、マスター」

 黙祷を墓標にささげ、僕達は村跡を立ち去りました。
 この地を再び訪れるかどうかすら定かではありませんが、その時は、マスターの努力が少しでも実った時である事を僕は心から願っています。
 そう、グラール太陽系に少しでも平和が訪れている時である事を…

 ―――終わり―――
88名無しオンライン:2007/12/29(土) 21:05:12.45 ID:lXoQ7SPH
投下完了です。

この作品が今年最後の投下となります。
色々とご迷惑をかけた点もありましたが、いい勉強になりました。
また、皆様から感想がいただけた事を深く感謝いたします。

来年も気まぐれに投下させていただきます。
ご拝読の機会がありましたら、容赦ないご感想のほどをw

それでは、スレ住人の皆様にとって、来年度も良い年でありますように。
お目汚し、失礼いたしました。
89名無しオンライン:2007/12/29(土) 22:54:15.77 ID:xQhmB/eP
>>88
_b < GJ!
90名無しオンライン:2007/12/30(日) 18:28:06.36 ID:IcN9XbQP
>>88
マスターの過去に俺が泣いた
91名無しオンライン:2007/12/31(月) 10:09:18.64 ID:yNzczpKy
>>89-90
 ご拝読ありがとうございます。
 お目汚しになるかもしれませんが、
 今後も作品を投下すると思いますので、
 生暖かい目で見守っていただければ幸いです。
92名無しオンライン:2008/01/01(火) 10:40:14.12 ID:r3v83+sE
420「あけましてー」
420姉「おめでとうございます!」
ビス男「何だかんだでもう2008年か、早いもんだな」

420「よーしおねーちゃん、お餅かけて羽子板で勝負!」
420姉「よろしい、負けたら墨も忘れないからね、手加減しないよ〜」
ビス男「やるのはいいが外で、ってもう始めてるし・・・まったくこいつらは・・・」


というわけで去年もお世話になりましたが今年もよろしくお願いします
93新年の挨拶(番組風):2008/01/01(火) 15:44:10.52 ID:TqluDtCf
(CMが終わり、飾り付けられた舞台と艶やかな着物姿のパシリ達が音楽と共に現れ、段上に全員が並ぶ)

ロザリオ&ルテナ 『明けまして』
ジュエルズ  『おめでとうございます』

(全員が、深々と頭を下げる)

ロザリオ  「って、あれ?父様?一緒に挨拶するって言ってたのに、いないよ?」(きょろきょろ)
ルテナ   「その事なのですが、ロザリオさん。
       申し訳ありませんが暫くのあいだ、あの方をうちのご主人様に貸しておいて下さい。
       ご主人様ったら、あの方が出してくれたお酒を飲み始めたら、止まらなくなってしまって…」

(遠くのほうから、笑い、怒り、泣き、拗ねるヒュマ姉の大声が、音声に時折まぎれる)

ロザリオ  「(カメラの向こうを眺めつつ)うわぁ…父様が、ヒュマ姉さんに絡まれてる…」
ルテナ   「(同様に眺めながら)ご主人様が酒乱だったなんて、初めて知りました」
ロザリオ  「―――とりあえず、ヒュマ姉さんが落ち着くまでほっとこ。
       ああ、そだそだ。
       『魔女』さんと『狂戦士』さんは、都合がつかなかったので出演できませんでした。
       『今年もよろしく』と、短いながらも挨拶をいただいています。
       それと、一緒に挨拶を予定していたソル君ですが、『喪中なので、出演できません』
       って、メールを貰ってます」
一同    (ちっ、振袖用意しておいたのに…)
ロザリオ  「作者からも新年の挨拶メールが届いていますが、時間の都合で割愛させていただきます。(オイコラマテ!
       それでは、パシリスレの皆様」
ロ&ル&ジュ『今年もよろしくお願いします!』

(ガシャーンという音と、スタッフがバタバタ走り回る音、ヒュマ姉の「あたしの青春をかえせ〜!」という怒鳴り声が聞こえてきて、CM)
94正月という日:2008/01/03(木) 19:35:50.28 ID:C/KyFSQq

450d 「姉さんいったいその服は?????」
450c 「ん? 山にゴミを捨てに行ったんよ そうしたら空から落ちて来たんよ」
450d 「それって不法投棄って言うんじゃ・・・・・」

450c 「かーさんの分も持って来たんよ」

ボケ主人「まあまあ、ありがとうございます。」 ぬぎぬぎ

450d 「かーさん、いきなり着替えをしないで下さい!!」

ボケ主人「せっかくこの子が持ってきてくれた服ですから。」 更にぬぎぬぎ

               ・
               ・
               ・
              ででーん
               ・
               ・
               ・

450d 「あの・・・この服は胸が大きく見えませんか?」
450c 「ウチも気になっとんたんよ・・・・やっぱり大きく見えるよね??」

ちらちらと450dは自分の胸を気にしつつ・・・・

450d 「そ、そ、それはそうと姉さん髪の色も変えたんですか?」
450c 「どぉ? 昔(パシリ時代)の色に戻してみたんよ」

450d 「どぉ?って・・・・」

ボケ主人「はいはい、みなさんにご挨拶しませんといけませんよ。」

450c,d 「えっと今年もよろしくお願いいたします。」「んよ。」

ttp://www.udonmatic.net/cgi/upl/src/up0067.jpg

多分落ち無し
450d 「ネバーエンディングストーリーを”落ちの無い物語”と訳したのはとーさんです。」

95とあるキャス子とGH440の風景。(1/4):2008/01/03(木) 20:06:26.86 ID:AyOsbWBC
とあるキャス子とGH440の風景。二人は仲良し。





「ねぇねぇご主人」
「・・・ん?なに?どったの?」
「私も外出て戦ってみたいですよぅ。ミッションとか一緒したいです。合成ばっかりもう飽きました。。。」
「あー、、、うん。そだね、最近全然一緒してないね。ごめんね。
 ・・・でもちょっと待ってね、これ、ストームライン出来たらね・・・連れてくからね。」
「セラフィセンバのときもそう言ってたじゃないですか〜。ちゃんと完成させたのに〜・・・。・・・12%だけど」
「・・・・・・12%着てミッション行けるわけないっしょ(ボソッ」
「ん?なんか言いました?」
「いや何も。だから今回も頑張ってよ〜、パラディ・カタラクト使いたいんだよね。んっふ。」
「ああ、あの執事さんが使うSUVウェポンですか。『天からふりそそぐものが世界をほろぼす!』って感じですよね」
「ドリームプロジェクトっすか。古いなー、古いよ。お前の感性時々分からないよ。」
「古くないですよ。あとPMの感性とかあれやこれやはご主人に似るんですよ。」
「そっすか。主人に似るんすか。じゃぁあれだね。もう、色々と完璧だね。バリバリに仕事・・・アンタの場合は合成ね、
 合成バリバリにこなして、店番もかっちり、釣り銭間違えたりしないし、あたしの肩とか一生懸命
 揉んでくれたりするんだわ。」
「ないわぁ」
「なんでよ(笑)」
「ご主人そんなキャラじゃないし、似ないし(笑)」
「ははは、こやつめ」
「痛い痛い(笑)」

96とあるキャス子とGH440の風景。(2/4):2008/01/03(木) 20:07:20.40 ID:AyOsbWBC


「できたー?」
「あ、もうすぐ・・・完成します。」
「いつもいつもこの瞬間は緊張するねぃ」
「ですね・・・あの・・・」
「うんうん、失敗してもキニスンナ。もう慣れっこだしさ。」
「・・・・・・いつも、出来が悪くてすみません。。」
「ちょ、なに、どうしたの」
「・・・75%とか5連続で失敗しちゃったりするし、せっかく完成しても12%とかだし・・・」
「ちょ、いや、別に気にしてないって」
「お隣さんのPMは・・・私と同じ440シリーズなのに高属性ばんばん成功してて・・・」
「う、うーん」
「材料代で現物買えるくらい、失敗しちゃってて、、今回のも失敗してたら私・・・・・・
 ・・・私なんか、・・・いてもいなくても、グスッ、ううん、いないほうがご主人きっと」
「ストーップ!!ストーーーップ!!」
「うぐ・・・、ひぐ・・・」
「ちょ、ちょっと何でそんなにいきなりネガるのよ〜」
「だって・・・うぐっ、私、役に、ひぐ、立って、無いから、ふぐっ、ふ
 ミッションにも、連れ、て、へぐ、行って、もらえない・・・」
「ち、違うってー!!、今ね、全ガーディアンズを挙げてマキシマムアタックGってミッションを展開中なの。
 限られた期間でミッションを完遂してトムレイン教授の要請に応えないといけないの。」
「知ってまふ」
「人数制限もあるし、効率的に進めていくには他のガーディアンズと協力しないといけないの・・・。
 だからPMは極力外してるの。今回は特別なの。」
「・・・そうなの?」
「そうなの。終わったらいつも通りなの。」
「・・・・・・ぐす」
97とあるキャス子とGH440の風景。(3/4):2008/01/03(木) 20:08:22.88 ID:AyOsbWBC

「あ、そうだ!このストームライン成功してたら一緒にミッション回りに行こうか。
 いい加減MAGも飽きてきたしね。ほんで、たまにはちょっと古くない物とか、なんか微妙な味じゃない物も
 食べさせてあげるよ」
「・・・テルセリンがいい」
「はいはい(笑)」
「あと・・・もし失敗してたら?」
「もーーーーーー、・・・まぁ、そしたら一緒に基板探しに行こ(笑)」
「・・・・・・うん、絶対ですよ」
「うんうん」
「色々連れてって下さいよ、合成と店番ばっかりでもうすっごい飽き飽きしてたんだから!」
「う?うんうん」
「あと、テルセリンとやっぱりゴルダニアも欲しいです」
「え、ちょ、ゴルダニア今高い」」
「あと、私もいい加減この妙に長い帽子飽きてるんですよ!441に衣替えして下さい!
 毒吐きキャラじゃなくて私も爽やか元気娘になりたいんですよ♪
 あ、でも今のキャラ引き継いで小悪魔系の444もいいかな」
「・・・・・」
「あと、倉庫も拡張して欲しいし、パパガイも欲しいし、フォトガチャンとかも」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・ゴホン、あ、ゴホンゴホン、も、勿論合成が成功してたらの話ですけどね・・・ゴホッ」
「・・・おめぇー・・・・・・、ちょっと、合成、こら、見せてみろ」
「あ、ちょ、やだ、待ってもう30分いや15分」

98とあるキャス子とGH440の風景。(4/4):2008/01/03(木) 20:09:17.83 ID:AyOsbWBC

パパーン!




ストームライン 闇 28% が(1時間くらい前に)完成してました。





「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・エヘ♪」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・んふ。んふふふふふふふふ。ぃぃぃよくやったあああああああああああ!!」
「あは♪あっははー♪あはははっはあはぐっ」
「てんめぇーーーー、完成してんじゃねぇぇかぁああ!!しおらしく演技しやがってえええええ!(笑)」
「ちょwwww痛い痛い痛い痛いwwwキマッてるwギブギブwwタップ、タップだってww」
「てんめぇー、この野郎!くらえ!!高速撫で撫で!!(なでなでなで・・・」
「はふ、はふはふはふ」
「ははは、こやつめw」
「うひw」







「ねね」
「あい」
「ごめんね、一緒に色々ミッション行こうね、久しぶりにさ」
「ごめんはこっちです。アホなことしてごめんです。」
「ふふ・・・、PMはご主人に似るからしゃーないよ」
「ですよねー^^」
「ははは、こやつめ」
「うぷ」





とあるキャス子とGH440の風景。色々あるけれど二人はやっぱり仲良し。
99名無しオンライン:2008/01/03(木) 20:13:11.12 ID:AyOsbWBC
このスレ読んでたら触発されてつい書き込んでしまいました。
お目汚し失礼致しました。
100名無しオンライン:2008/01/05(土) 01:42:51.87 ID:lYuWp+B7
GJ。これからも期待。
101名無しオンライン:2008/01/05(土) 11:47:48.59 ID:keSQdEe9
はははこやつめ
102名無しオンライン:2008/01/08(火) 19:12:41.77 ID:ZC/cf4AT
「やあ実家に帰っていて久しぶりのマイルームだ。元気だったか440?」
「あ…あう…あうう…御主人」
「む?なぜそんな部屋の端にいるのだ440?」
「…別に意味はありません。御主人」
「そうか440。これはお土産のネリマ・赤の大根だ。名産だぞ。」
「ありがとうございます。もぎゅもぎゅ…ちょっと辛いです御主人」
「大根だからな。ん?泣くほど辛かったか440。それはすまなかった」
「あ、あう…その、大丈夫です。御主人」
「ははは。変な奴だな、まあ今年も宜しくな440」
「はい(…引退したのかと思いました。心配させて御主人の馬鹿)」
「ん?何か言ったか?440?」
「…いえ何でもありません。御主人」
103名無しオンライン:2008/01/09(水) 05:34:18.35 ID:QLwSCAqY
急に主人が居なくなるとそりゃパシリも寂しいよな

たまにはパシリつれて遊園地とかで労をねぎらってやりたいぜ


そんなミッション出ないかなぁ
104名無しオンライン:2008/01/09(水) 12:25:53.64 ID:KVt3/xIO
>>102
赤いネリマダイコン…おぬし、アフロヒュマ男だな?
懐かしすぎるネタで吹いた。
105名無しオンライン:2008/01/12(土) 18:54:18.86 ID:SPfteB/x
保守
106名無しオンライン:2008/01/13(日) 00:01:26.89 ID:IuQPpvkn
>34からの続き


 しかし、部屋にいた人物は、想像していた人物とは全くの別の者であった。

「――貴男は誰ですか?」
 警戒しつつその人物へ問いを投げる。
「ああ、勝手に上がらせてもらってるよ」
 問いに対して、全く別の答えが返ってくる。
「所属と氏名を名乗りなさい! どうやって部屋に入ったのかを答えなさい!」
 武器を取り出し目の前の者へと構え、語気を強めさらに問う。
「ちっ、うるせぇな。パシリってのは、どうしてこんなにもやかましいもんかね。
 ――ったく、俺は査問委員会の者だ。それだけ言えばお前らは判るだろ?」
 その者は頭を掻きながら気だるそうにつぶやく。

 確かに、査問委員会の人間であればロックされた部屋への入室は、委員会の権限で解除出来てしまうだろう。
 その者の、もの言いは確かといっていい。だが、そもそも何故、委員会の人間がやってくるのかが判らない。

「正体を証したんだ、その物騒なもんしまってくれねぇか。
 ――でだ、お前さんの主人は何処にいるんだ?」
「帰ってきていません」武器をしまいつつ無機質に答える。
「帰ってきてないだぁ? ちっ、全く何処行ってやがるんだ」
「しかし、貴男のような査問委員会所属の方が何故、ここへ?」先程の疑念をその者へぶつける。
「なぁに、簡単な事だよ。一月前に起こった『あの件』に関してだ」
 肩をすくめ、事もなしに口にする。それも意外な回答を。
「……、改めてお尋ねします、一月前の『あの件』に関して、なぜご主人様が疑われる様なことがあるのですか?
 『あの件』はご主人様が解決したじゃないですか?」
「ああ、確かにお前さんの主人が解決をした。だが、事が起こった原因もお前の主人では無いかと言い出した奴がいた。
 なまじ、並の科学者以上の知識を持ち合わせた奴だ、もしかしたらって声も多いらしい。そんなわけで俺らが動いている訳だ」
「……」
「それにな、“アレ”を止めたって連絡があって、無事が確認されていたんだがな、事後処理の為に向かった隊員の前に姿を
現さなかった。いったい何処に行っちまったんだ? んん?
 もしかしたら自分の悪行が露見することを恐れて、秘密裏にあの場所から離脱してどっかに雲隠れしてるんじゃないか?
って、思われているんだよ、お前さんの主人は」
 その者が言ったことに、一つの疑問が生まれる。
「え――? 今なんと言いました……?」
「あぁ? お前の主人が『あの件』の犯人じゃないかって言ってんだよ!」
「違う! そうじゃなくて、ご主人様は生きているんですか? 無事なんですか?」
 何処かで最悪の事態を想像していたパシリは、主人が亡き者になっているのではないかと想像していた。
「ん? 主人が生きているって事、知らなぇのか? 何でパシリのお前が主人の無事を知らねぇんだ」
「……。ガーディアンズへ何度も問い合わせました。
 だけど、返ってきたのは『行方不明、ロストの可能性アリ』との回答だけです」
 ロストとは、ガーディアンズの中では殉職を意味する。
「おいおい、いったいどうなってんだ? 何でお前さんの情報とこっちの情報に食い違いがあるんだ?」
107名無しオンライン:2008/01/13(日) 00:01:37.99 ID:IuQPpvkn
 ――なぜ、このような食い違いが発生するの? なんで……?

「……再度、お尋ねします。今回の査問の調査はどなたからですか?」
「あぁ? 提督から直接の通達だ。こんな事、異例中の異例だぞ。通例なら委員会の上層部からの通達になる。
 提督から直接くるって事は、お前さんの主人はどえらいことをやっちまったって事だな」

 その一言で疑問が氷解して行く。

 ――どうして、提督から直接?
 ご主人様は、『あの件』が解決した時、無事が確認されている。にも関わらず、今は行方不明になっている。
 そして、その情報は、なぜ公にされないの?
 でも、もしかしたら……、うん、それなら辻褄が合うかも。

「あぁ? 何言ってんだー? さっぱり聞こえんぞ」
「いえ、お気になさらずに、独り言です。
 ――それで、ご主人様もいませんし、用件がお済みなら、早々にここから出て行ってください。
 自分なりに調べたいことがありますので」
 そう言って、その者を戸外へと押し出そうとする。
「ちょ、待て、待てって!」
 その者は押し出されない様に扉のへりに手をかけ、叫ぶ。
「何ですか? まだご用でも御座いますか?」
 押し出すための力は緩めず、素っ気ない口調で答える。
「最後に教えろ、お前さんの主人、科学者達から調査のミッションを請け負った事はあるか?」
「請け負った事はありますけど。ガーディアンズなら誰でもあると思いますが、それが何か?」
「いや、もしかすんとその中でフォトンに関して研究している奴はいたか?」
「質問の意図がわかりませんが、フォトンを研究されている方がいますが」
「そうか。なら、そいつとはプライベートでも交流があるか?」
「ええ、フォトンに関してご教授していただいた方がいますが」
「……。とりあえず今日の所はこれで帰るわ。また、何かあればよらせてもらうぞ」
 そう言ってその者は部屋を出て行く。
「……?」
108名無しオンライン:2008/01/13(日) 00:01:47.37 ID:IuQPpvkn
 パシリは査問委員会の者が出て行ってから、ルームロックをかけ直し、あれこれと考え始める。

 『あの件』のミッションは提督から直接受けた形になる。
 だから報告も直接、提督へと行われたと思っていい。事実、提督は最後の最後まで避難をしなかったらしい。
 あの者の話であればご主人様は無事にミッションをクリアし、提督へ報告を入れている。
 そして、事後処理で隊員が向かった時には、ご主人様の姿はなかったという……。
 その事実をあの者は、直接提督から聞いている。

 そこで、疑問が生まれる。

 私がガーディアンズへ問い合わせ、帰ってきた答えは『ご主人様のロスト』。
 殉職という意味の『ロスト』ではなく、本当の意味で行方不明の『ロスト』なのかも知れない。
 だが、何故、ガーディアンズはその全容を伝えようとしないのか? 何故か意図的に情報を隠匿しようとする節が見受けられる。
 もしかしたら、ご主人様は、事を公に出来ない何かに巻き込まれてしまった可能性が、高いのではないだろうか。

 提督はその調査を行うために、あの者を動かしたのでは無いか?
 調査部が動けばどうしても大事になり、情報はどうしても流れてしまう。だから、秘密裏に動くことが出来る査問委員会を。
 ガーディアンズの人間であれば、誰だって『査問委員会の人間が、自分の所へ来た』なんて、言いたくはない。無意識のうちに
その事を隠匿しようとするはずだ。
 先程の者を調べてみれば、数多くのミッションをこなし、ガーディアンズのランクはご主人様と同等かそれ以上のようで、
なかなかの切れ者みたいだ。しかし、経歴でおかしな点がある。ある一定期間の情報が参照出来ない事と、ガーディアンズなら
必ずいるはずのパシリの登録が無かったのだ。

 だが、今はそんなことはどうでも良かった、ご主人様の安否を確かめることが先決。

 しかし、去り際のあの質問の意図がわからない。
 ――フォトンに関して研究している奴はいたか?
 ――そいつとはプライベートでも交流があるか?
 フォトンを研究している科学者や研究者は大勢いる。科学者達はガーディアンズへ、調査を幾度となく依頼している。
 そして、調査を通じてプライベートで関わりを持ってくる者は、必ず出てくる。
 それは至極当然の事。他の隊員に関して言えば、そのまま結婚しガーディアンズを引退した者までいる。
 ご主人様の場合は、フォトンのさらなる知識を得る為に、教授してくださった方がいた。
 ただ、それだけのこと。だからこそ、あの質問の意図がわからない。
 『あの件』に関して、関わりがあるのか、まずはこの事をはっきりさせましょう。

 行動を起こそうとしたところで、気がつく。窓から見えるパルムのビルにはすでに明かりは消え、もう遅い時間であることを告げる。
 こんな時間では調べるにしても、効率が悪い。
 そう思い、はやる気持ちを抑えながら、一人寂しく眠りにつく。
109名無しオンライン:2008/01/13(日) 00:02:41.49 ID:IuQPpvkn
ご無沙汰しております。約一ヶ月ぶりの投下です。
書いた物を少しだけでも投下させていただきました。

現在、いろいろありまして遅々として筆が進まない状況に陥っております。
元から遅筆なのにも関わらず、拍車をかけて遅くなっております。
お待ちいただいている方々には申し訳ありません。今暫く、お待ちください。
110名無しオンライン:2008/01/15(火) 21:02:15.47 ID:Wwzqo09A
>>109
 wktkしながらのんびり待ってます。続きが気になる…

 …あ、気になる、で思い出したんだけど、

 提督って、誰ですか?

 自分的には、
 提督=ガーディアンズ総裁(ダルガン氏やライア姐さん)
 として、脳内変換して読んでたんですけど、
 それでOK? 
111食の隣人 1:2008/01/15(火) 21:37:51.65 ID:pB1na3mx
激動の一年が終わり、グラール太陽系にも新たな年が訪れる。
人がいる限り年は明ける。それが人の定めたものであるから。
たとえそれが昨日となんら変わらない日であろうとも、人はその節目にそれまでの年の心の整理を行い、次なる一年に希望を見出すのだ。
年が明けて数日。その昼下がり、残されたガーディアンズコロニー居住区の裏路地を歩く、くたびれた様子の男が一人。
大規模なテロによるコロニーの損害より数ヶ月。被害の爪痕は大きく、ガーディアンズの慢性的な人員不足も続いたままだ。
男は寝ていない。新年を迎えるその瞬間も、彼は本部に泊り、監視と本部に来訪した人のチェックという業務をこなしていた。それも例年にない人手不足ゆえに3人分、すなわち3日連続である。
誰にでも出来る仕事だが、誰かがやらなければならなかった。
顔の吹き出物を気にしながら希望しない業務を押し付けられた身の不運を嘆いたところで、誰もが同じ立場に立てばそうなるであろう不真面目な心構えに苦笑いされこそすれど、業務を終えたことを褒め称えられはしない。
だから、業務から開放された彼にとって今一番の関心事は、この抑えがたい空腹から開放されること、その一点であった。
3日間何も食べていなかったわけではない。業務の間は、新年に食べるものだからと受付嬢ミーナの残していってくれた「オセチ」とかいうニューデイズ伝統の料理を食べていた。
しかしそれも3日間食べつづけるといい加減に飽きてくる。彼が求めるのは、質素すぎる味の野菜の酢漬けや冷え切った煮物ではなく、五臓六腑に染み渡る力強い味の料理だったのである。
112食の隣人 2:2008/01/15(火) 21:38:21.79 ID:pB1na3mx
その料理屋は、特に有名な店というわけでもなかった。疲れ切ったときくらいいいものを食べようと、ヒューマン男性の切り盛りしている評判の店に足を運んだのだが、長蛇の列を見て早々に諦めたのだ。
その飯店だけではない。目に付くところはどこも満員だった。昼食の時間ということもあるのだろうが、年始だというのに暇なことだ…
男は体を引きずって数軒回り、少し路地を入ったところで行列のできていない店をようやく見つけたのである。
「いらっしゃい」
今時珍しい、手動の両開きの扉をくぐると、無愛想なキャストの親父さんが抑揚のない声で男を出迎えた。
「席はひとつだけ空いている。相席になってしまうが、それでいいなら」
「ああ、お願いするよ」
飯は一人で食うに限る。しゃべりながらでは本当に味わうことなどできないというのが彼の信条だった。
いつもなら相席などまっぴらごめんなのだが、空腹を通り越して鈍い苦痛になってきたこの感覚から逃れられるなら仕方がない。
やっと見つけた席なのだ。これを逃すと次はいつになるかわからない。それに誰もがすぐ隣の住民とも交流をほとんどしないような世の中だ、どうせ静かにしていてくれるだろう。
男は案内された木製のテーブルと椅子の簡素な席に座って、頬杖をついた。
「しょーゆ〜しょーゆしおみそにとんこつ〜♪チャーシュ〜チャーシュぎょうざライスおおもり〜♪」
欲した安楽はそこにはなかった。意味不明なうえに無駄に食欲を刺激する歌詞の歌が目の前から聞こえてきたのである。
相席にいるのは二人。どこかぼーっとした様子の、年の頃二十代半ばといったところのヒューマンの女性と、人型のパートナーマシナリーだ。これはGH432の型番か。
そのパシリが迷惑にも食欲まるだしの歌を、しかも声を大にして歌っているのだ。
「お〜なかが〜すいた〜♪ごはんマダー?」(チン♪チン♪)
(皿を食器で叩くな!)
「注文は」
思わずパシリと、躾を怠っているらしいその主人らしき女性をにらみつけたくなったところで、親父さんが注文をとりにやってきた。
「あ、ああ…これとこのセットと、これを…」
注文することでクールダウンし、男はため息をついた。
(いかん、パシリなんかを相手に…俺は腹が減っているだけなんだ…)
113食の隣人 3:2008/01/15(火) 21:39:12.20 ID:pB1na3mx
すぐにできるものだったのだろう、男の注文したセットの前菜、オルアカ肉の煮付けが5分と間を空けずにマシナリーによって運ばれてきた。
テーブルには、待ちわびた前菜が…二つ。注文されたぶんはたとえ二つであってもためらいなく出す。最低限の時間で客の前に出すことといい、キャストらしい合理的な考え方だが。
(しまった…セットにも前菜がついていたのか。かぶってしまった)
疲れていたこともあるが、歌に気を取られてセットメニューを名前だけで注文したことを軽く後悔しながら、男は人肌のぬくもりを保った前菜に手をつけた。
(うん、うん。しっかり味がしみている)
(じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)
見れば、パシリが物欲しそうな目でこちらを…二つ頼んでしまった前菜を見ている。
(やらんぞ!)
「主〜、料理がくるまでにおやつはだめですか…」
「料理を食べにきているのにそこで他のものを食べるのは、作り手にとても失礼よ」
パシリはがくっと肩を落とした。どうやら女性のほうもまったくしつけていないわけではないようだ。皿を叩いていたナイフとフォークもさっき注文している隙に取り上げてテーブルに並べ直していた。
前菜を二つ平らげて少し落ち着くと、猛烈に眠気が襲ってきた。
次の料理までにはまだ時間がある。何しろまるで寝ない日をすごしてきたのだ、少しくらい休むとしよう…テーブルにつっぷして、10分程度の仮眠のつもりで男は眠り始めた。
114食の隣人 4:2008/01/15(火) 21:39:40.11 ID:pB1na3mx
…これ、食べていいんですか?…
…彼が目を覚ましたら…
…物好きだな。理解できんよ…

10分のつもりが、長く寝入ってしまったようだ。
目を覚ますと、男の他に店内に人はいなかった。外はまだ明るいが、昼食の時間を過ぎて客足は途絶えたようだ。
「お目覚めか。仕込みは終わっている、すぐに準備する。金はもらっているからな」
「金…俺の注文は?」
「そのままならとっくに冷え切っていただろう。パシリが全部平らげて、新しい注文をあんたが起きたときに作るよう受けている」
「パシリ?あの相席の?何を考えてるんだ?パシリが勝手に食べて主人がそのぶんを払ったのか?」
「聞いてどうするんだ。あんたは飯を食いにきたんだろう」
「…そうだな」
注文は男のしたものとは違っていたが、あのときは慌てて注文したので男はこうしておけばよかったと後悔していた。その理想の注文が頼まれていたのである。なんという偶然だろうか。
「できたてだ。お待ちどう」
誰にも邪魔されずに、一人で味に集中する。こんなに嬉しいことはない。
男は腹の底から力がわきあがってくるような熱いスープを一気に飲み干した。
「ああ、うまい!」


-END-
115名無しオンライン:2008/01/15(火) 21:42:11.79 ID:pB1na3mx
ちょっと遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
新年にあわせて、おせちに飽きた気分を投下しますねw
…今年は本当におせち食べてられなかったんですが。

さて、次からはまだ未完成のものを優先して書いていきますので。
今年も宜しくお願いします。
116名無しオンライン:2008/01/15(火) 22:18:17.15 ID:PZm08zsu
ヒュマ子と親父さんの労わりに泣いた。
117名無しオンライン:2008/01/17(木) 00:09:21.27 ID:L5nKvsw9
>提督=ガーディアンズ総裁(ダルガン氏やライア姐さん

やっちゃったよ、ははは……。
初歩的な所で間違えちまった。orz
すいません、変換して読んでください。

お詫びと言っては何ですが、少し投下します。
118幕間1/3:2008/01/17(木) 00:14:21.84 ID:L5nKvsw9
 眠りについたパシリは夢を視る。
 その夢はパシリが今の姿に変わって間もない、パルムへ移り住む前の事――。

「さぁ、ご飯も食べたし出かけるわよ。準備して。一緒に出かけるわよ」
 朝食を済ませ、後片付けをしているパシリに向かって、言う主人。
「えっ、私も一緒にですか?」
「何言ってんのよ、当たり前でしょ」
「は〜、判りました。で、ご主人様、どちらに行かれるんですか?」
「う〜ん、そうねぇ……。あ、そうだ、パルムへ行きましょうか」
「パルムのミッションですか? うーん? 何かいい報酬のミッションってありましたっけ?」
「違うわよ、ショッピングに行くのよ。」
「え? ショッピングですか? 何か必要なアイテムはありましたっけ?
 武器や防具は、いまご使用になっている装備で十分ですし、回復系のアイテムは私が居ますので大丈夫ですよ。
 やはり、あまりお金もありませんから、ミッションに行ったほうがいいと思いますけど?」
 主人の預金は自分のエサ代へと化け、家計は火の車状態になっていた。なるべく下手な出費は避け、ミッションをこなした方がいいと思う。
「もう、そうじゃないわよ。確かにあまり余裕がないからミッションに行った方がいいけどね。でも、私は貴女と一緒に出かけたいの。
一緒にショッピングしたり、いろんな所を観てまわりたいのよ!」
 まるでだだっ子のように両腕を可愛らしく上下にさせる主人。
「はぁ……、わかりました。けど、無駄遣いはダメですよ」
「いいのよ、私は貴女と一緒に出かけられればそれでいいんだから」満面の笑みを浮かべ返事を返す主人。
 いままでの主人は物事に対して分別を弁え、しっかりとした性格だったはず、とても考えられない言動であった。
「……ご主人様って、こんな性格でしったけ?」
「え? なんか言ったー?」
「あっ! い、いえ、何も」
 どうやら思っていた事が思わず口に出ていたようで、あわてて取り繕う。
「なぁに? 私の悪口でも言ってたの〜? そんな娘にはお仕置きしちゃうわよ〜」
 手をわきわきさせながら、パシリに近づいていく主人。身の危険を感じたパシリはあわてて否定をする。
「やっ、ち、違いますよ、そんなこと言ってませーん!」
「本当〜? ――まぁいいわ。さぁ、急ぎましょう、シャトルの時間に間に合わなくなっちゃうわ」
「え、あ、はい。でも、もう少し待ってください。もうちょっとで片付け終わるので」
「ねぇ、早く早くぅ」
「そう急かさないでくださいよ」
「だって〜、貴女と出かけると思ったら、いてもたってもいられないわー」
「そ、そうですか? そんなことないと思いますけど……」
「こ〜んなに可愛い娘と一緒に出かけられるんだから」
「もう、ご主人様、おだてても何も出ませんよ。――よっと、これで最後です」
「もう待ちくたびれたわ。さぁ、行きましょう」
 そう言って手を差し出す主人。その手を見つめ言葉を返すパシリ。
119幕間2/3:2008/01/17(木) 00:17:43.36 ID:L5nKvsw9
「えっとー? ご主人様、この手は何でしょう?」
「何言ってんの、これから一緒に出かけるんだから、手をつながないとね」
「えー! 手をつなぐんですかー!? 別につながなくてもいいと思いますけど……」
「本当は腕を組んで行きたいけど、さすがに身長差があるからね」
「えっ、えー? ……う〜ん、どうしても手、つながないとだめダメですか?」
 恥ずかしさもあり、少しばかり抵抗を感じるパシリ。
「ダメよ、今後ミッション以外で一緒に出かけるときは、手をつなぐこと! これは決まりなの!」
「えー、いつ決まったんですか? 私の意見はー?」
「たった今決まったの! 貴女の意見は聞きません。この場合は私の意見が優先されます」
「そ、そんなー」
「本当に急がないとシャトルの時間に間に合わないわ。さぁ」
「いじわるですぅ……。ご主人様のこと嫌いになっちゃうですぅ……」
「えっ、やっ、もう。嘘よ嘘。ちょっとした茶目っ気よ、本気にしないで、ねっ、ねっ」
 あわてて取り繕う主人を尻目に、そっぽを向いてしまうパシリ。
「わ、ご、ごめんなさい。謝るから許して、私が悪かったから。ねぇ、許して。嫌いにならないで……。
 わっ、私、貴女に嫌われたくないの、ねぇ、ねえったら……」 涙目で懇願する主人。
「――ふふ、冗談ですよ。けど、やっぱり手をつなぐのは恥ずかしいです」
「え……、びっくりさせないでよ、もう。――仕様がないわね、今回は許してあげるけど、今度は手をつないで行くわよ。
 ――あら、本当に時間がやばいわね、急ぎましょう」
「はーい」
 こうして部屋を後にする主人とパシリ。どうにかぎりぎりでシャトルの時間に間に合い、パルムへと向かう。


 パルム西地区でショッピングに興じる二人。お店を回るごとに荷物はあれよあれよと増えていき、主人は満面の笑みを浮かる。
反面、パシリはどんどん減っていく預金の額を見て顔を青くしていく。
 そんなパシリを見て主人は、「少し休憩しましょう?」と言い、オープンカフェの一席を指さす。これ以上の出費は避けたい所で
あった。かといって、これ以上他の店を回るといったら目も当てられない。そう思い、主人の提案にパシリは二つ返事で承諾する。

「やー、いろいろと買ったわねー」
「ご主人様、買いすぎですよ! 無駄遣いしないって約束したじゃないですか」
「だって、貴女に似合いそうな洋服がたくさんあって、目移りしちゃったわ」
「別に、私の服はなんかいいんです。今のままで十分なんですから。
 それよりも、もっと実用的な物を買いましょうよ。基盤とか合成用アイテムとか」
「洋服に実用性がないわけないじゃない、貴女が今よりもっと可愛くなるんだから。基盤なんかは二の次よ。
 それより貴女、た・し・か、合成あまり得意じゃないとおもったけど?」
「うぅ、た、確かに失敗ばかりですけど……、って、もー、ご主人様ー」
「貴女だって満更でもなかったじゃない? 楽しいそうに試着してたじゃない」
「そ、それはご主人様がどうしてもって言って、無理に着せたんじゃないですか」
「そう? 結構喜んでた様にみえたわよ? 最後には自分から『この洋服着てみたい』って言ったじゃない」
 先程購入したフリルの付いた純白の可愛らしいワンピースを広げる主人。

120幕間3/3:2008/01/17(木) 00:18:05.84 ID:L5nKvsw9
「ご主人様〜、こ、こんな所で出さないでください」
「別にいいじゃないの。この洋服、最初見たときはちょっと地味に感じたけど、試着室から出てきた貴女。まるで天使のように可愛くって
綺麗だったわよ。思わずその場で押し倒しちゃいそうになっちゃったわ。うふふ」
「――ご主人様、あの時、そんなこと思ってたんですか……? 挙動がおかしかったので、ま・さ・か、とは思いましたけど」
 あの時、試着室から出てきたパシリを見た主人は、両手を広げ今にも抱きつこうとした。が、店員が見ていたことと、
ほかの客たちがいたので寸前で思いとどまったのである。
「だってー、可愛い娘を押し倒すのは常識よ」
「そんな常識捨ててください! もぉ!」
「そんな怒らないでよ。これは私の貴女への愛なんだから、ね?」
「やっぱりご主人様、性格が変わってますよ。今まではちゃんとしていたのに……」
「そんなことないわよ、これが地よ。可愛い子には目がないの」
「どこぞの、変態おやじですか? はぁ、今まで警察のご厄介になってないのは奇跡ですね」
「そ、そこまで言う? ぐすん、もう貴女にそんなこと言われて立ち直れないわ」
 涙を浮かべ立ち上がり、ふらふらと近くの街路樹へ歩み出す主人。
 街路樹のそばまで来た主人はどこから出したのかロープと取り出し、輪っかを作って街路樹の枝へかける。
「わー、わー、わー。ご主人様、何してるんですか! やめてください!」
「だって、貴女にそんな風に思われてたなんて。私、もう立ち直れないわ。いっその事、このまま首をくくるわ」
「ちょっ、まっ待ってください。嘘、嘘です! 冗談ですから!」
 あわてふためくパシリを見て、いきなり笑い出す主人。
「あははは、冗談よ」
「――もう、びっくりさせないでくださいよ、ご主人様」
「うふふ、さぁて、結構、荷物も多くなっちゃったし、とりあえず今日はもう帰りましょう」
「そうですね」

 部屋へ戻った瞬間、一気に疲労感がやってきた。
 身体がふらふらして足下が覚束ない。
「あらあら、疲れちゃったの? 先に休んでていいわよ」
「でも、買った物の整理や、食事の準備が出来てないです」
「いいわよ、私がやっておくから、大丈夫よ」
「でも……」
「いいから休んでなさい」
「ご主人様が起きているのに、私が休んでたら申し訳ありません」
「もう、そこまで言うんだったら少し休んだら、手伝ってちょうだいね」
「……はい、判りました。すみません、少し休ませてもらいます」
 そう言ってベットまで行き、身体を休めるために横になる。
 眠るつもりは無かったが、ベットの心地よい感触に負けいつの間にか眠りについてしまう。
 
「よほど疲れてたのね。ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかな。
 また一緒に出かけましょうね……」
 規則正しい寝息が聞こえるパシリの頭を優しくなでる。


 そこでふと目を覚ます。
 窓からパルムの夜空に満天の星空が見える。
 辺りを慌てて見渡すが、部屋は薄暗く、もちろん主人の姿はない。
「夢だったの……」
 たとえ夢であっても、主人が近くに居たように感じられた。
 頭をなでる感触が今でも残っている様な気がした。
 瞳から一滴の涙が零れる。
「ご主人様……。うっ……、うっ……」
 零れる嗚咽を抑えようと、自分で両肩を強く抱き、小さく小さく身体を丸める。
121名無しオンライン:2008/01/18(金) 23:46:11.50 ID:LRPP+O0z
>>118-120
 夢でまでご主人様の事を考えているとは、健気なパシリだ…

そうそう、投下終わったら「続く」とか「終わり」とか、
文章の最後に区切りを入れたほうがいいよ〜
投下が終わってるかどうかが分からないと、みんな困るしね。

俺も時折やっちゃうけどさ^^;
122名無しオンライン:2008/01/20(日) 01:23:44.58 ID:PRURfo9u
>>121
すまない、今度から気を付ける


あまり関係ないけど悪い話がありまして



PCのディスクが物理的にお亡くなりになりました
続きのデータ飛んじゃった……
バックアップ? 何それ食えんの?
ディスク、認識しねえよ
あはははははははh

データのサルベージは試みる、うまくいけばいいなぁ……

123名無しオンライン:2008/01/20(日) 20:28:49.25 ID:M9OSHHLJ
>>122
 …うん、まあ、そういうこともあるさ…
 データのサルベージが上手くいくことを祈ってるよ。
124名無しオンライン:2008/01/22(火) 20:07:29.86 ID:C0QFgvtY
ほしゅ
125名無しオンライン:2008/01/23(水) 00:18:15.28 ID:uNWjg3Ju
>>123
ダメだ、データは消えてしまいました
サルベージは失敗に終わりましたorz
ディスクの基板取り替えたと、いろいろやったけど徒労に終わりました

とりあえず、今まで書いてた分は、再度書き直しております


まぁ、それはさておき、あまり関係無いのですが、
MAGでPSO DISK2を入手してマイルームで聞いております

PSOは一番最初にやったネットゲームでした
その為、思い入れもあり、曲を聴いていてその時の楽しかったことを思い出しました

「心の座」と「ハンターの右腕」のクエストでは泣かされました
知らない人には申し訳ないが、いま思うと、カル・スやシノといったキャラクタは、
今のパシリに通じるものがあるような気がします

PSUでも「心の座」「ハンターの右腕」の様なミッション又はイベントができるといいなぁ
がんばれSEGA 期待してるぞ

長々とスレに関係無いこと書いてすいません
126名無しオンライン:2008/01/23(水) 20:55:50.57 ID:EqA95kbk
テスト期間中の妄想の促進具合は異常
妄想をぶちまけたい、でもできない、くやしい、ビクビク
127名無しオンライン:2008/01/23(水) 22:26:48.33 ID:gG1omi3+
部分的に発散→その後余裕が出来たら全解放

貯めすぎはよくないぜ、何事も適度が一番だ!
128名無しオンライン:2008/01/24(木) 20:32:35.11 ID:t0juKZCJ
保守
久しぶりにPCできたら13体目の末路二歩手前で焦った。
ついでに投下。uplbbsから一日遅れでゴメンなさい。

http://www.psu-wiki.info/upbbs/lib/printimage.php?id=00003688.jpeg
129128:2008/01/24(木) 21:01:26.66 ID:t0juKZCJ
うわああぁぁぁああああh抜き忘れたし13体目じゃなくて12体目だったぁああああorz
それにup[l]bbsってなんだあああぁあ。
すいませんでした(′;ω;)
130名無しオンライン:2008/01/25(金) 01:37:59.94 ID:f5ip7hax
サンクス。気が付いたら落ちそうだった。
131名無しオンライン:2008/01/25(金) 02:24:31.58 ID:f5ip7hax
主人「…すまない」
PM「… … …」
主人「てっきり新武器や新防具だと思ったんだ」
PM「… … …」
主人「インフォも成長を促進させる武器防具とあったしな」
PM「… … …」
主人「それを装備してPMと一緒に戦闘するものだと」
PM「… … …」
主人「まさか武器や防具の形をした食べ物とは…やれやれ」
PM「… … …」
主人「それにオマエもレベル100で生産上がらないしなぁ」
PM「… … …」
主人「特訓を楽しみにしてたみたいで本当にすまない」
PM「…それで御主人?」
主人「…ああ。一応貰って来たのが有るには有るが…」

ぱく。もぎゅもぎゅもぎゅ。ごくん。

PM「むむ…まさに至高にして究極の味です。ベリーグッドです!」
主人「…食われた。まあ仕方無いかな」
PM「ごちそうさまです。では約束を果たしましょうか御主人?」
主人「ん?約束??」
PM「一緒に特訓することです。早く戦闘値を上げましょうです!」
主人「新武器無いけどいいのか?」
PM「一緒に特訓するのが約束です。そっちの方が大事です!」
主人「やれやれ。じゃあ気長に頑張るかね」
PM「よろしくです!!」


ついでに久しぶりに投稿。半分実話。
てっきり装備するとペナルティ受ける代わりに、
PMの戦闘値が上昇する武器や防具だと思ってました。
何て勘違い。ごめんよPM。


132名無しオンライン:2008/01/25(金) 03:56:04.38 ID:2oMPH59/
て食べ物だったのかよ。しかも合成値?
名前からしてExユニットだと思ったのに、なんてこったい。
防具なんて1000メセタで22上がるらしいぞ。意味あったのか?この配信
133名無しオンライン:2008/01/25(金) 20:04:32.59 ID:49Ohs1jU
オメガアシッド溜め込んでてW2側のPM育ててなかった俺みたいなのには神配信。
8体とも450系列にするんだze[゚Д゚]
134名無しオンライン:2008/01/26(土) 15:48:28.79 ID:4ddkCYOf
>>133
オメガ・アシッド5個と交換するということを考えたら・・・・あまりよくないかもよ
135名無しオンライン:2008/01/26(土) 22:42:38.65 ID:+7qVzjXK
打撃はドロップアップの時に冗談みたいに拾える、射撃はトラップがある、防具は>>132とダン・ボウル。
法撃型をどんどん育てたいなら朗報なのかもしれないが…でもせめて100単位で入らないと使いにくいな。
136名無しオンライン:2008/01/27(日) 20:30:01.66 ID:CCT0W3Kb
法撃も弱体テクニックディスクのほうが お得でした
137名無しオンライン:2008/02/01(金) 22:35:24.01 ID:2FCK7FN2
保守
138ジョーが来た(1/10):2008/02/01(金) 23:26:39.56 ID:2FCK7FN2
 「えーっと、ここはモトゥブのクバラシティです。
  比較的穏やかな気候のこの辺りはモトゥブの数少ない農業地帯になっています。」
 「そこの広大な施設はカンダック青果市場で周辺農家の集積場として賑わっています。
  ですが、昨今この施設でも手狭になったそうで、オオタックへ移設される事になりました。」
 「ここは青果市場の関係者で賑わっているカンダック食堂です。
  安くて、量が多くて、美味しいと評判のお店なのですが青果市場の場内ライセンスを
  持っていないという事で、青果市場がオオタックに移設後もクバラシティに残るそうです。」
 「ここは“ここに置いてない部品は無い”と評判のヒロセックパーツです。
  今日はジャンク屋さんのおつかいで来ました。」

 「ごめんくださーい」 ・・・・・・小休止・・・・・・・・

 「ヒロセックパーツは商品は豊富なのですが値段が高いので
  他の店でも扱っているものはヒロセックパーツ以外で買います。
  あとはラヂヲデパートで揃う部品をいくつか集めておつかいは終わりです。」

          「私はGH400 そしてここが私の街です。」

 「そのラヂヲデパートの裏口(通用口)の脇にあるお店がジャンク屋さんのお店です。
  お店の脇にある赤い箱がポストと呼ばれる物で・・・・・・・。」
 「古いニューデイズの伝承によりますとその昔経営不振に陥ったユーセーショと言う
  アナログプロバイダが時の発明家に“なんとかならないか?”と相談したところ
  店先に“本日元旦”の張り紙をして新年の挨拶をハガキ(アナログプロトコルの一種)で
  行うことを広めるべし と提案したそうです。」

 「ポストはハガキの受信側アクセスポイントで毎年1月1日になると新年の挨拶メールが
  配信されます。」
 「えーっとですね、クバラシティは元々ニューデイズにあったジャンク屋街
  (正確には電気街のジャンク品を扱う店舗だけ)が
  “ジャンク屋はグラール教団に相応しく無い条例”で廃止される所だったのを
  モトゥブに移設したのが始まりだそうです。
  ジャンク品とは言え精密機械を扱うので気候が穏やかなこの辺りが移設先に選ばれました。」

 「当初は元々のニューデイズの電気街から一文字とってバラックと呼ばれていましたが
  それが長い間にクバラと呼ばれるようになりました。
  クバラシティにはグラール教団以前の古いニューデイズの文化が今でも生きています。
  その文化がニューデイズで廃れてしまった様な物でも・・・・・。」
  
 「そうそう、1月1日のハガキは発明家の名前から“ジョー・ネンガ”と呼ばれています。」
139ジョーが来た(2/10):2008/02/01(金) 23:27:36.04 ID:2FCK7FN2
あれ???? ポストにハガキが??? ジョーの季節はもう終わったのに。

 「ただいまー、お父さんポストにハガキが来てたよ。」

彼がこのジャンク屋の主人で そして私の父です。

 「今頃にハガキだぁ? いったい何処の物好きだ??」
 私は差出人アドレスが不明なアナログメール(ハガキ)を父に手渡しました。

そしてそのメールにはただ一言「ガーディアンズになりました。」と綴られていました。

そのハガキを読んだ父は慌てて店に設置されているネットワーク端末を操作し始めました。
この端末は商品の在庫管理、発注等の事務処理に使っています。

父は一応キャストなのですが、大戦中に生まれた(180年前ぐらいに)ので
通信フォーマットが古くて現在のネットワークへ直接接続することが出来ず
ニューマンやビーストやヒューマンの方々と同じ様にネットワーク端末を使用しています。

 「やっぱりそうか・・・あのバカいったい何を考えてんだ??」

父は端末から何処かの施設の廃棄物リストを参照している様です。
そんなこんなでお店がゴタゴタしている時に私のご主人さまが尋ねてきました。

私のご主人さまはGRMのマシナリ開発部門に勤めています。
モニタテスト中に先行量産型PMが暴走してクバラシティを半壊させた事件の後
事件の責任をとらされてパソナルーム送りになった課長に代わって
PM開発の責任者に抜擢されました。

 「こんにちわー、GH400は元気にしています?」
 「おっニューマン君か、いい所に来た コイツを何とか横流ししてくれないか?」

ご主人さま方に向けられた端末のモニタ画面をみて、ご主人さまの顔色が変わりました。

 「これは・・・GRM本社のデータベース。
  何重にもセキュリティがかかっている筈なのに。」

 「不正アクセスはしてないさ、俺自身がGRMの重要機密の生き残りだからな
  (大戦末期ヒューマン殲滅の為に秘密裏に製造されパルム内戦に投入されたキャスト)
  いろいろと優遇処置はある。GRMに俺が暴露すると困る事があるって事さ。」
140ジョーが来た(3/10):2008/02/01(金) 23:28:28.31 ID:2FCK7FN2
 「・・・まぁ、奇麗事ばかり言うつもりはありませんけど。
  いったいどんな優遇されれば、本社の顧客情報データベースにアクセス出来るんですか?
  えっと・・・これは転職で機体交換したキャストのリストですね・・・・。」

今から180年前(父が生まれた少し後)にキャストに人権が認められました。
その人権の中に職業選択の自由もあります。
ですが、未だにキャストは用途別に製造されていてキャストが転職を望む場合に
転職先に応じた機体に交換する事が出来るようになりました。

 「ああ、ガーディアンズ転職で廃棄処分になったコイツの元の機体を横流しして欲しい。」
 「そんな事出来ると思っているんですか? それに私はマシナリ開発で部署が全く違います。」

 「だろうな・・・ならやっぱりGRMを襲撃するしかないか。
  大体あのバカがもう少し早く連絡してくれれば、製造不良キャストと書類差し替えて
  廃棄先を業者渡しに出来たのに転職廃棄だと人権だ個人情報だで社内処分になって厄介だ。」

         ・・・・・え?  GRM襲撃って????
               「はい?? 襲撃???」

ご主人さまがキョトンとしています。 私だって・・・いきなりGRM襲撃って言われても

 「横流しは無理でもニューマン君には協力してもらいたいからな 事情を説明するよ。」

そう言って父はご主人さまと私を奥の倉庫へ連れて行きました。
商品倉庫の一角に高さ2m程のジャンク屋の商品にしては巨大なコンテナがいくつかあります。
父はその一つのコンテナの端末を操作してコンテナを開けました。
そしてそこには女性型の軍用キャストが収められていました。

 「これは退役時に民生用に機体交換して廃棄処分になったのを横流ししたアイツの機体さ
  キャストは原型を留めてる程度の破損ならどうって事はない修理すればいいだけだ。
  たとえ原型を留めない程に破壊されたとしても代えの機体があるのなら問題ない。
  アイツにはアイツの行く道には1体でも多くの機体が必要なんだ。」

修理・・・破損・・・破壊・・・交換・・・私は父の言葉に何か違和感を感じました。

 「機体の交換にはパーソナルデータを移植する為に機体のフォーマット書換えが必要だが
  それには専用の設備が必要で国か軍の施設かGRMにしかない。
  でも、フォーマット書換え済の機体、つまりかつてアイツの物だった機体なら・・・」
141ジョーが来た(4/10):2008/02/01(金) 23:29:25.87 ID:2FCK7FN2
“物だった” そう私が父の言葉に違和感を感じたはこの言葉。

 「かつてアイツの物だった機体ならパーソナルデータを移植するだけですむ
  それだけならこのジャンク屋の設備でも出来る。」

 「・・・・あの、その人はお父さんの大切な人ですか?」

私はその違和感を確かめるために“人”という言葉を使って父に尋ねてみました。

 「まぁ、そんなところだ、アイツの事は放って置けなくてな
  アイツは俺より2〜300年は長く動いてる。
  元々は家付きの家事用マシナリだったそうだ。」

家付き、つまり代々その家で使用され続けていたマシナリと言う事。

 「そのマシナリがキャストの機体を手に入れて、確かレイキャシールとか言ってたな
  射撃用女性型キャストと言う意味らしいが古い話なんで詳しくはわからん。
  で、ある時ボンクラ息子がその家を飛び出してアイツはその息子に付いて行ったんだそうだ
  家から遠く離れた所で暮らし始めたのはいいが、息子って奴はほんとにボンクラでな
  まともに仕事がこなせなかったそうだ。」

 「唯一つまともにこなせたのが“人殺し”息子の家は代々続いた軍人家系で
  人の殺し方だけは子供の頃から仕込まれてたそうだ。
  ただ、実家から離れすぎてたせいで軍にも入れず。結局傭兵になったんだそうだ。」

 「そのボンクラ息子も歳食って結婚してボンクラ孫が生まれて
  アイツは今までもそうし続けて来た様にボンクラ孫の子育てに追われたんだ」

そこで父は言葉を一旦止めました。私にはその人の人生が幸せに思われました。
家事用マシナリとしてご主人さまに仕える日常。私達にそれ以上望むものがあるのでしょうか?

 「傭兵家業のボンクラ息子の所へパルムからの派兵要請が来たんだ。
  パルムはキャストの人権運動を弾圧する為に正規軍を使わずに傭兵を雇った。
  既に引退していたボンクラ息子はボンクラ孫をパルムに向かわせた。
  そう・・・ボンクラ孫はキャストの人権確立の為に戦っていた俺達の敵だったんだ。」

 「そして、あいつはボンクラ孫の世話をする為に付いてきた。」
142ジョーが来た(5/10):2008/02/01(金) 23:30:17.51 ID:2FCK7FN2
父はまた言葉を一旦止めました。

 「キャストの人権が宣言されて、俺達キャストは物から人になった。
  ヒューマンがそれに反発して俺達とのパルム内戦が激化した。
  その戦火の中でボンクラ孫は倒されキャストのアイツは人権運動家に保護された。」

          「・・・・アイツは自由を望んだのか?・・・・」

それは、吐き捨てるような、搾り出すような父の言葉でした。

 「ボンクラ孫がアイツに残した最後の言葉が“生きろ”だったんだ。
  確かにアイツは自由を手に入れた“寒空に凍える自由”“飢える自由”そして“死ぬ自由”
  アイツが失った物は“自由を望まない自由”じゃなかったのか?
  俺にはそう思えてならない。」

 「アイツは主人の最後の言葉を全うする為に軍に志願した。
  何のコネも持たないアイツが戦時下で生き残るには他に方法は無かったんだろう。」

父がはじめて“主人”という言葉を使いました それは私達にとって一番大切な人を表す言葉。

 「だからアイツには1つでも多くの機体が必要なんだ。」

 「?????はあ??????あの・・・えぇっと。」

ご主人さまには父の話は理解できていない様でした。
ご主人さまの最後の願いが“生きろ”なら例えご主人さまを殺した敵の中に身を置いてでも
私ならそうします。そして生き続けます。

 「???それで私に何をしろと????」
 「そうだな、取り合えずGRMに侵入する手引きをしてもらおうか。」
 「それぐらいあなたの優遇処置とやらでどうにもなるんじゃないの?」

 「・・・・それでセキュリティは通過できても人の目は誤魔化せん。」
 「そこまで判ってて私に不審者の手引きをしろと言うのですか?
  丁重にお断りします。」

 「その辺をちょっこちょこっとなんとか・・・・。」
 「できません!」
143ジョーが来た(6/10):2008/02/01(金) 23:31:05.84 ID:2FCK7FN2
 「あの・・・私じゃダメですか? 
  ご主人さま 不審者でなければ手引きしていただけるんですよね?」
 「できません!」
 「では、私は勝手にGRMへ戻ります。構いませんね?」
 「・・・・オマエなぁ、自分の主人を脅迫してどうするよ?」

先行量産型PMによるクバラ半壊事件の後、
モニタテスト中のPMは全てGRMに回収されました。
先行量産型ではない技術試作品の私(GH400)だけがモニタテスト継続の名目で残りました。
その私がテストスケジュールを無視して勝手にGRMへ戻ればご主人さまの責任問題になります。

 「む〜〜〜〜。  はぁ、仕方ありませんね。でも・・・GH400 どうしてですか?」

どうして・・・・つまり、なぜ私がご主人さまに逆らうのか・・・・それは・・・

 「それは、その人がお父さんの大切な人だからです。」

私は半年ぶりにGRMに戻って来た私を妹(クバラ半壊事件の張本人)達が迎えてくれました。
 「Ve〜〜〜♪」
 「PuPuPu♪♪♪」
 「Lq!」
 「440と450はどうしました?」
 「PyuPyuPyu」
 「実験室でメンテナンスの準備を手伝っているのですか」

私は臨時整備を受ける名目でGRMに戻ってきましたからその準備のようです。
クバラ半壊事件の原因は暴走して制御不能になったPMによるものと公表されました。
妹達はその暴走原因の解明の為開発室預かりになっています。
さすがに開発課長の人的暴走が原因でPMはどんなに理不尽でも
主人の命令に逆らえない事でクバラ半壊に至ったということを公表できなかった様です。

 「さて、集積場は地下にあります。処分される前に回収しないと・・・・え?????」

いきなり私は妹達に上りエレベータに押し込まれてしまいました。
その頃父は丘の上からリニアカノンのスコープ越しにGRM本社の様子を伺っていました。
父のスコープにはオレンジマーカーが2つ映っていました。
1つは地下集積場を示し、もう1つは1階付近から急速に上昇を始めました。

 「なにやってんだアイツは? 目標は地下だ地下!」
144ジョーが来た(7/10):2008/02/01(金) 23:31:56.26 ID:2FCK7FN2
そしてGRMのパソナルームでは・・・・・
えーっと、GRMでは、解雇と自主退職では退職金に差が有ります。(解雇の方が補償分高額)
その為、解雇したい社員をパソナルームと呼ばれる部屋に自主退職に応じるまで軟禁する
風習があります。
クバラ半壊事件を起こした開発課長はパソナルームに軟禁されています。
(対外的にはPMの暴走がクバラ半壊事件の原因なので懲戒解雇には出来なかった。)

 「課長、GH400がモトゥブから戻って来たようです。いかがなさいますか?」
 「今更どうでもいいが、確かに気に食わない奴ではあるな お前の好きにしろ」
 「ではその様に取り計らいます。」

パソナルームを後にした面会人は・・・・。
 「あんた何時まで課長気取りなんだ?あんたが辞めないから何時までもポストが空かないんだよ
  まあいい、あんたの指示で騒ぎが起きたとなれば今度こそあんたはクビだ」

そして不審者侵入の通達が開発課長名義でGRM警備部に送られました。
開発課長にはその権限は無いはずなのですが・・・・・。
この面会人こそ後にガーディアンズとGRMを牛耳る若き日の3Gさんでした。

私が妹達にエレベータに押し込まれた後、
ドヤドヤドヤとGRM入り口エントランスに集まる警備員達。
その警備員の中に上っていくエレベータの私を見て舌打ちする者が約1名居ました。

PM開発室のあるフロアに到達した私の乗ったエレベータが開くと
警備員姿の男が銃を構えていました。

 「悪いな、ちょっと騒ぎを起こさなくちゃいけなくなってな。」
 「Veeeee!!!!!」

GH410が銃口と私の間に割って入りました。
銃の咆哮がGH410を弾き飛ばしました。

警備員扱いの殺傷力の無いショックガンとは言え、
体の小さな私達PMへのダメージは無視できません

業務用の高速エレベータで1階から私達を追ってきた警備員の中に上りエレベータの私を見て
舌打ちした男が銃を構えました。
そして・・・その銃はショックガンではありませんでした。
145ジョーが来た(8/10):2008/02/01(金) 23:32:46.49 ID:2FCK7FN2
私はナノトランサーから白刃を抜きました。
この剣はGRMに向かう私に父が渡してくれたものです。

 「アイツの故郷にはフォトンの剣に対抗できる実剣があるって話でな
  俺なりにその剣を再現してみたのがこれさ。
  こいつは、鋼と軟鉄とフォトンの拡散剤を3層に並べてから
  何重にも折り込んで鍛え上げたダマスカス製法の剣だ
  鋼が切れ味を軟鉄が靭性を拡散剤が対フォトン性能を剣に与える。
  そうだなアイツの故郷の剣から名前を貰って、カムイ・レプカとでもしておくか。」

 「白いオマエには白刃が良く似合うな。」

銃口から伸びるフォトンを剣で弾いて、男の懐に飛び込みます。 そして・・・・・
                  ボコッ!
 「ぼこ?」      ・・・・なにか妙な音が・・・・
             ボコッ! ボコッ! ボコッ!

GRM本社を望む丘の上の父は
 「危ないからあの剣には刃は付けてないけどな
  それでも鉄パイプで殴るようなもんだがアイツの腕力じゃ致命傷にはならんだろ。」

私の斬撃をものともせずに男は体勢を立て直し、間合いを取り直してから再び銃を構えます。
その時、私の背後から別の銃声がして男の銃を弾き飛ばしました。
驚いて振り返った私とGH430との視線が合いました。

                「Lq・・・。」

短銃を構えていたGH430はつぃと私から視線を反らしました。
ショックガンではなく、相手を傷つけてしまうかもしれない実銃で
相手の銃のみを弾き飛ばす正確な射撃・・・・・そんな筈は・・・・・
だってあの時は1発も当たらなかったのに・・・・。   あっ。

         PMはどんなに理不尽でも主人の命令に逆らえない。
      視線を反らしたGH430の頬が少し赤らんでいる様に見えました。

          「Pu♪Pu♪Pu♪ !!!!! Pu!」
GH420が暴れだしてフロアは乱戦状態になっていました。
うっすらと扉を開けてこちらの様子を伺っている視線があり、私を手招きしていました。
146ジョーが来た(9/10):2008/02/01(金) 23:33:37.84 ID:2FCK7FN2
私がその部屋に入るとGH440とGH450がいて・・・・・。
                  トンっ!
                 「えっ!!」
               「Bi♪」「Myu♪」
                「えええええっ!!」

 私の後を追って警備員が部屋に入ってきました。
 「不審者は何処へ行った!?」
 「Biiiiii!!」
 「Myu! Myu! Myu!」

警備員の問いにGH440とGH450はそれぞれ在らぬ方向を指差して
ショットガンとテクニックの乱射をはじめてしまいました。
私は部屋に入った瞬間に440と450の2人にダストシュートへ突き落とされていました。

 「ほぅ。上層階に敵の注意を引き付けてから、一気に地下集積場を目指すとは中々やるね。」
いいえ違います。お父さん私は落ちているんですぅぅぅぅ。

 「それじゃ、こっちも援護を始めますかね。 まずは集積場に脱出口を作って
  後はアイツが脱出するまでこっちが囮になって連中の注意を引きつければヨシっと。」

丘の上から放たれたリニアカノンの一撃は大地をえぐりその弾道は集積場に到達しました。
そしてGRM本社に本当の警告が鳴り響きました。

         「GRMの皆さんよ俺も帰って来たんだぜ・・・・・。」
500年戦争が終わって、GRMが対ヒューマン殲滅用キャスト製造した事が問題になっていた。
その特殊キャストの存在が責任問題になった時にGRMの対応は・・・俺の仲間達は殺された。
戦争で死んだじゃない仲間はみんなGRMに処分された。俺か?俺は・・・。
そうキャストは工業製品だ出来の悪いものもたまには出る。スペック落ちという奴さ・・・。
俺がそのスペック落ちだったんだが、それでも並みの軍用キャストの性能で処分はされなかった。

GRMは俺だけを生きたサンプルとして残した対ヒューマン殲滅用キャストを製造はしたが
その性能は普通の軍用キャストと同程度。パルム内戦向けのキャストを製造しただけだ
例えば通常の軍用キャストをパルム内戦に投入したとして何の問題がある? そう言ったんだ

  ・・・・・だから、GRMにとって俺は生きたサンプルであり続けなければならないんだ。
               そうだろ?GRMのみなさんよ。
          いったい何時まで俺を生かし続けおくつもりなんだい?
           俺は帰って来たんだぜ。  俺はここに居るんだぜ。
147ジョーが来た(10/10):2008/02/01(金) 23:34:29.05 ID:2FCK7FN2
えーっと。事件は開発課長が不正アクセスして警備部に不審者侵入の誤報を流し開発部に駆けつけた
警備員の剣幕に暴走原因調査中のPM達が驚いて再び暴走状態になったという事になりました。
先行量産型の妹達は暴走原因の解明に更なる調査が必要という事でお咎めなし。
私がGRMに戻った事は・・・・そんな事実は無いという事になっていました。
GH440がダストシュートに放り込んだグレネードのカートリッジが地下集積場で爆発して
地上に届く大穴を開けたとか、開発課長は懲戒解雇になったとかありますが、私達は概ね元気です。

お父さんが妙な事を言っていました。
 「俺はキャストが物だった頃に作られた。今日からお前は人間だと言われてもピンと来ない
  だから俺は尊厳の有る死は望まない。物として稼動し続ける事を選ぶ。オマエはどうだ?」

 「“どうだ?”って言われても・・・・お父さんいったい何を言ってるの????」

 「判らんならそれでもいいさ、ただオマエが死んだらちゃんと墓を立ててやる。
  墓参りに行ってやる。 おれの娘はいい子だったとみんなに自慢してやる。」

お父さんはたまに良く判らない事を口走ります。多分そんな人なんです。
そうそう、お父さんの大切な人は結構重たかったんですよ 倉庫のコンテナも1つ増えました。
それから・・・・・。  あ、お客さんの様です。

 「ごめんくださぁい。機体のカスタマイズをお願いしたいのですが。」
 「え?」            この人って・・・・。
 「お嬢さん、お名前は?」    唐突な人ですね。

 「えっと・・・イ・・エリスです。」
 「エリスちゃんですか、あの人にしては可愛らしい名前をつけましたね。」

唐突な上に失礼な人です。

 「こいつGRMに捨てられた奴で、しつこく名前を付けろと煩いんで抹消って意味で
  イレースって名前をつけてやったんだが、それが気に入らなかったらしくてな。」
 「お父さん!! いきなり湧かないで下さい。それにイレースなんて酷すぎます。」
 「イレースを文字ってエリスですか、可愛くていい名前ですね。」

 「オマエいったい何しに来たんだ。それにいったいなんだったっだあのハガキは???」

 「新しい体が重いので、カスタマイズをお願いしに・・・・・。」

 黒いスカートとオレンジ色のワンポイントが入ったスラスターを纏ったその人は・・・・。
148ジョーが来た:2008/02/02(土) 00:00:54.40 ID:Bmmx3rr3

450c「・・・・・ついにうちらの出番がのうなってしもた」
450d「ほんとに・・・私たちはこのまま忘れられてしまうのでしょうか?」

450c「でも、とーさんとしてはイルミナス編(第3部)のプロローグのつもりみたいなんよ」
450d「第3部って・・・・前にアップしてからどれだけ間が空いてると思っているのでしょうか?」

450c「えーっとそろそろ半年になるよ」
450d「はぁ・・・・ほんとに私たちって忘れられるだけなのかも・・・・・・」

450c「あのーいつの間にか60行で投稿できなくなったんやね。」
450d「とーさんが再構成するのにすこし時間がかかってしまいました。」

450c「それではみなさんごきげんよう。」

450d「あ・・・あとがきが連続投稿規制にひっかかってしまいました。」

149128:2008/02/05(火) 03:42:51.61 ID:C3Wvb3WU
ttp://www.psu-wiki.info/upbbs/lib/printimage.php?id=00003717.jpeg

起爆剤にもならないだろうけど合成結果が出たので張り逃げ。
勿論この後450の主人は413の主人にボッコボコにされましたよ。
そろそろ前回の続き書かないとなぁ…。
150名無しオンライン:2008/02/05(火) 08:22:31.25 ID:jHc0Bcn0
みなみけ ってアニメがあるんだが、
420と440に見えるのは私だけだろうか・・・
151名無しオンライン:2008/02/05(火) 22:42:39.27 ID:aZfx5CS7
>>148
何というビープ音軍団。和むじゃないか。
152継承 I 甦る光の戦士(中編)1:2008/02/05(火) 22:44:55.41 ID:u9vFTlXf
……………
あ、あれ?なんでわたくし、こんな冷たい床につっぷして寝てるんでしょう?
起き上がって見回してみると、転送される前にいた、迷宮を抜けて出てきた部屋でした。カウンターのお姉さんがわたくしを見てため息をついています。
「ミッション失敗ですね。こんてぃにゅー?なーいん、えーいと…」
はい?失敗?何言ってるんですか、冗談でしょう?
「せぶーん、しっくふぁいふぉすりつぅわん」
わー!わー!続けます、続けますよ!なんだかわかりませんがコンティニューです!
「グッド」
なんでカウントダウンが急に早くなるんですか…それより、失敗って、わたくしが敗れたということですか?
「記憶の混乱があるようですね…疑うのなら記録をどうぞ」

-Replay−

「子供とて容赦はせん。死ぬがよい!」
次々と放たれるラゾンデ。稲妻が荒れ狂い、石造りの床にいくつもの焦げ跡を作っていきます。なんとか逃げ回っていますが、いつまでもよけ続けてはいられないでしょう。わりとピンチです。
ですが、わたくしも百戦錬磨のパシリです。このくらいの戦法、対処はすぐに把握できます。
ラシークは距離を保ちつつ術を放っています。
わたくしが間合いを詰めようとすると退がり、また常にわたくしの持っているなまくらな剣から目を離さないようにしているということは、打撃に弱いということ。
なら、接近戦に持ち込めばわたくしの勝ちです!…弩がないのでどっちみちそうせざるをえないのですが。
「あわててはだめなの、逃げながらチャンスを待つの」
そうはいっても、このままだといつラゾンデに当たってしまうかわかりませんよ!攻めます!
「違うの、ダモアクリスタルはもうないの。今のままでは闇の波動が…」
ちょっと意味がわからないところですが、猫さんは慎重さを求めてきています。しかし、攻められるときに攻めなければどうにもならないのも事実です。
わたくしは柱の陰に身を隠しておやつに食べようと思っていたクリームたっぷりの巨大パイを取り出すと、投げつけてそれに隠れるように走って追いかけました。
もったいないですが。もったいないですが。も・っ・た・い・な・い・ですが。まあ、まだおやつはいっぱい隠し持っておりますけどね…
ラシークはパイを大きく動いてよけたのに注意をそらされたのか、術を中断しました。顔に当たらなかったのは少し期待外れでしたが、接近戦に持ち込んだだけでも十分です。
重くて扱いにくい金属の剣が、ラシークの衣にひっかかり、引き裂きました。これだけの勢いでも切れないということは、鈍器として使わなくてはなりません。頭部および胸部を数度打ち据えたのですが…
「お遊びはここまでだ。絶望に身を捩れ!」
狂王が手を広げると、そこからまるで古くなった塗料が剥がれ落ちていくように周囲の景色が消え、悪意に満ちた闇が辺りを覆い尽くしました。
そしてラシークは先ほどの間合いを取った戦法から一転して、逃げようとせずに向かってきました。
「匂う、匂うぞ!貴様からはあの女と同じ匂いがする!実に…不愉快だ!」
持っているのはフォトンも用いていないただの杖ですが、それが繰り出してくるのはすさまじい速度と威力の突きの連打。
まさか杖で突きを繰り出してくるなんて。受けようとはしましたが、わたくしは予想外の攻撃に対応しきれませんでした。
原始的な物理打撃だとはいえ、ここまで一点に集中した運動エネルギーの連打を受ければパシリといえどもひとたまりもありません。わたくしは絡みつくような暗黒の中、地に伏したのでした。
153継承 I 甦る光の戦士(中編)2:2008/02/05(火) 22:46:23.33 ID:u9vFTlXf
……………
負けたんですか、わたくし。
「なお、鍵括弧付きでしゃべっていないので直前の発言が記録される墓碑には『ハプスビーノ アタマハ カタイ』と書いておきました」
言ってません!言ってませんよ!?
カウンターのお姉さんに異議申し立てをしている間にふと気配に気づくと、わたくしの背後に中年のおじさんが立っていました。くたびれた格好、古代の「サラ・リーマン」という人々のものに似た服が妙に似合っている方でした。
「いや実に惜しいですなあ。素質はあるのに、基礎がまるでなっていない」
頭越しにわたくしの負けた記録を見ていたようです…み、見ないでくださいよ恥ずかしい!武器や防具さえ取り上げられなければこんな不覚は…
「武器防具?ならお返ししましょう。試しに私にそれを使って攻撃を当ててみてください」
ちょいちょいと指を動かし、まるでネーヴ校長のようにわたくしを挑発するおじさん。
さすがにこれは少しばかりムッときました。
軽く当ててわたくしを見くびらないようにしていただきましょう。なんてことはありません、こんなくらい、すぐに…あ、あれ?
むきになって手加減なしでやっても、わたくしの攻撃はまるで当たりません。おじさんは無意味に体を横に向けたりしているように見えますが、その実全部よけられてしまっています。
「力みすぎですな。高い出力に頼りすぎて、動きにも無駄が多すぎる。足の運びは円運動が基本、あなたのやり方では1つの動きですむところが2つ必要になってしまいます」
おじさんは左足を軸にして回るような動作で攻撃を回避すると、その動きを利用して、踏み込んだわたくしの足を払いました。
「最小の動きでかわし、反撃を行う。これがカウンターです。おわかりいただけましたか?装備の問題などではないと。私は嘘は申しません、あなたは未熟です。今まで試練に挑んできた方の誰よりも劣ると言わざるをえません」
足をすくわれて床に顔からつっこんだわたくしには、反論のしようがありませんでした。
「あなたの太陽系では長い星間戦争の間に敵を殲滅する兵器や派手な技ばかりが台頭して、基本的なフットワークなどの技術は失われてしまったようですな。今のあなたでは何度挑んでも成功しませんよ。私を信じてください」
わかりました、受けます…うう、今まで主とともに何度も経験を積み重ねてきたというのに。今になって戦闘技術のチュートリアルを受けることになるなんて、恥ずかしいです…
「では、先生にきていただくことにしましょうか。セガタ・サンシロー!」
「トォリャァァ!!」
轟音を響かせながら金属に見える壁を蹴破り、ニューデイズ古式に似た白い服の男性が飛び込んできました。
「この試練は茨の道だぞ。若者…というか子供よ。真剣に取り組む気があるか?命がけで打ち込むつもりがあるか!」
は、はい…今のはさすがにちょっとひきましたけど。蹴りで壁粉砕とか。
「よし、みっちり体に叩き込んでやるぞ!基礎訓練、シロ!指が折れるまで!指が折れるまでェッ!」
ひい…や、優しくしてくださいね…
154継承 I 甦る光の戦士(中編)3:2008/02/05(火) 22:48:25.50 ID:u9vFTlXf
何度もセガタさんにしぼられ、わたくしはようやく足の運び方を覚えられたようです。途中曲がらない方向に関節を曲げられたりとかいろいろされたのは秘密です…
そして何百回目か、セガタさんの連続攻撃を全部よけることができるようになったときのわたくしの喜びは、今までに成功した何よりも素晴らしいものでした。
「はい、今あなたが触ってみたのが『光』です。訓練校では教えてくれないフューチャーです!これさえ忘れなければもう安心。さあ、行ってあげなさい。猫さんが待っていますよ」
『光』?そういえば、主も何かそんなことを口にしていたことがあったような気がします…何のことを言っているのでしょうか。
「それはじきにわかるだろう。今はとことん極めてくるがいい!チャレンジモード、シロ!」

誰かが遠くから呼びかけてきたような気がして、わたくしは目を覚ましました。この不快感はちょうどラシークに倒されたときの感覚でしょう。ちょうどわけのわからないことを書かれた墓碑も横にありました。
体が鉛でできているように重いです。指一本動かすのですら苦痛なのは、このあたりを覆い尽くす闇のためなのでしょうか。
「あとは貴様だけだ、猫!マッドドクターからは逃げおおせたようだが、このラシークからはそうはいかん」
「ニャーっ!苦しいのー!助けて、助けて!タイロンーっ!」
「皮を剥がれて弦楽器にでもされるのがいいか?それとも剥製か?他のジャコウネコどもが二度と刃向かえぬよう趣向を凝らしておいてやるぞ!ハッハッハッ!」
わたくしが顔だけをあげたとき、猫さんは闇の中ラシークに首を掴まれてつり上げられていました。真っ赤な瞳孔のない目が怪しく輝き、邪悪な笑みを浮かべています。
それを見た瞬間に、わたくしの中に猛烈な怒りがこみ上げてきました。自分より弱いものを、小さな動物を縊り殺すことを喜ぶですって?
体が熱くなるのを感じ、人工筋繊維に力がみなぎってきました。熱さはやがて背中に移動していき、その背中の熱さに引き起こされるようにしてわたくしは立ち上がりました。
もはや体は重くありません。今なら風よりも素早く動くことができるはずです。
「なんだと…これは、この光は…」
ラシークはわたくしの背中にあるリボンをかたどったパーツのフォトンの発光で気づいたのでしょうが、反応するより一瞬早く、振り向いた刹那にわたくしは渾身の兜割りをお見舞いしました。
バキィィン。
…はい?
棒状の鉄塊が、回転しながら石造りの床に落ちました。からんからんと高い音が響く中、手元の剣にふと目をやってみると…
お…折れちゃったー!?

-続く-
155名無しオンライン:2008/02/05(火) 22:51:18.11 ID:u9vFTlXf
MAGとか報酬期間ですっかり時間をとられてしまっていましたが、とりあえず続きです。
このペースだと長くかかりそうだなあ…w

後編はもうあらかた仕上がっているので、あまり時間をおかずに完成できそうですが。しばしお待ちを…
156名無しオンライン:2008/02/05(火) 23:55:20.29 ID:hK929+vv
>>155
 >お…折れちゃったー!?

 思わず吹いた。
 ここまで盛り上がった所でパルマ土産が折れるとはw
 続きはwktkしながらのんびり待ってます。

 そういや、最近は何も書いてないなぁ、俺…
157名無しオンライン:2008/02/06(水) 02:59:52.53 ID:4VjvS9Gy
待ってました。それにしても意外なゲスト登場。
アソビン教授やユ・カワ氏も登場するのでしょうか?
同じくのんびりお待ちしています。
158名無しオンライン:2008/02/06(水) 03:34:09.00 ID:4VjvS9Gy
パシえもん(ニセ)

ヒュマ太 「パシえも〜ん!チョコがまったく貰えないんだよ!」
パシえもん「いきなり時事ネタですか。やれやれ」
ヒュマ太 「いやまあ、この季節だと定番だし。ともかく何とかして」
パシえもん「まったく仕方ないですね」
ゴソゴソ(いつもの如くナノトランサーを探っている)
パシえもん「パパーン!フォトンクックゥ〜〜〜!」

ヒュマ太 「ナニこれ?」
パシえもん「伝説のニューマン”ノル”が使った伝説のクッキングマシーンです」
ヒュマ太 「へえ?これを使うとチョコが出来るの?」
パシえもん「チョコも貰えないダメご主人に特別に作ってあげます」
ヒュマ太 「 え?そうなの?」
パシえもん「(真っ赤)べ、別に特別な意味はありません」

暫くして。

ヒュマ太 「#$%%$#&!!」
パシえもん「あー…やっぱり伝説通りでしたね。ご主人」
ヒュマ太 「#$&%$&&?」
パシえもん「運悪くこれで作ったモノを食べると状態異常になるのです」
ヒュマ太 「&%%$###"!」
パシえもん「まあ、ご主人の目的も果たせましたしOKですね」
ヒュマ太 「&&%$$$$!!」
パシえもん「そんな怒らないで下さい。まあ、チョコだけに苦い思い出です」
ヒュマ太 「ぎゃふん」


ついでにパシえもん(ニセ)投下。パシえもんはかわいいので書いてみました。
フォトンクックはPSOネタです。知らない方はごめんなさい。
159名無しオンライン:2008/02/10(日) 10:52:52.39 ID:Uw7eCygo
ほしゅ
160継承 I 甦る光の戦士(後編)1:2008/02/10(日) 21:32:02.52 ID:7KSvyrYT
「貴様のその光…倒しても向かってくるその意志。もはや決定的だな、匂いどころではない、貴様はあの女と同じだ…しかし…」
困りました…武器がなくては攻撃ができません。それでなくても射撃やレスタもできないというのに、これでは倒す方法がなくなってしまいます。
「く、くく…ははははは!これは愉快だ、これほど警戒していたその剣が、まがい物だったとはな!驚かせおって、引導を渡してくれる!死ねィ!」
ラシークはいつでもとどめを刺せるとばかりに猫さんを床にたたきつけるとわたくしの首をつかんで片手で持ち上げ、締め上げてきました。こういうのが趣味なのですか…
「………?なんだ、この違和感は?なぜ平気な顔をしている」
言うまでもなくパシリであるわたくしは酸素を血液で脳に運ぶという通常の生物の身体構造をしておりません。首をしめられたところで機能停止は起こらないのです。さすがに握りつぶされれば危ないですが。
油断していたラシークの手に噛みついて脱出し、猫さんを拾い上げて再び柱の陰に身を隠しました。
「逃がしはせんぞ…体を傷つけず見せしめに晒してやろうと思っていたが、絞め殺せないのなら砕いてやるのみだ。フッフッフッ」
ラシークはわたくしを探して歩き回っています。幸いなことにいくつもある柱のどれに隠れたかは確認されなかったのでしょう。
急いでナノトランサーを確認します。何か武器になりそうなものは…と思いましたが、隠し持っていたおやつや食材しかありませんでした。あとはわたくし自身にささったままになっているいくつかの基盤くらいです。
「げほっ…どうするの…剣は折れてしまったの」
あるものでがんばるしかないでしょう。チャンスはそう何度もないはずです、猫さんも協力お願いします。
わたくしと猫さんは息を潜めながら頭を巡らせました。
161継承 I 甦る光の戦士(後編)2:2008/02/10(日) 21:33:08.77 ID:7KSvyrYT
こつん、と音がラシークの側方から聞こえました。
「そこか!」
ラシークは即座に反応してそちらに向かっていきます。
しかし、これこそがわたくしの策。金具を一つ外し、影で予測したラシークの位置から横になるよう投げてそこから音を出させたのです。
今ラシークの注意はそれています。今しかありません!わたくしは近くに立てかけてあったモップをもって不意打ちを仕掛けました。
「などと言うとでも思ったか!小賢しい!」
わざとかかったふりをしていたようで、すぐに反応されてモップはたやすく受け止められてしまいました。
しかし通用しなかったときのことももちろん考えてあります。わたくしはすぐに懐から胡椒の瓶を取り出し、叩きつけました。
いかな達人でも、散らばる粉をよけることなどできません。王がたまらず顔を覆ったところで、わたくしは近くの柱時計を抱え上げてそのまま突撃しました。
それをよけようとしたラシークですが、踏み出した足を滑らせて腰から転倒しました。
猫さんにお願いしたのは、モトゥブ原産の果実「バナッナ」の食べかけの皮をラシークの足下においてくることでした。
このバナッナ、なぜか皮の内側に圧力を加えるとすべりやすくなり、へたに踏んづけると転んでしまうものなのです(ちなみに、果実を全部食べずにちょっと残すのが滑りやすくするコツです)。
転倒させただけではどうにもならなかったでしょう。しかし先ほどわたくしが思い出したのは、セガタさんが見せてくれた、動く死体「ゾンビ」にかけたという四の字固め。
セガタさんは素手でゾンビの集団をも蹴散らしていたと言っていました。武器がないなら、少ない力で相手を倒す技を用いてみようと思ったのです。
幸いにしてわたくしにはその知識があります。一か八かですが、試してみる価値はあるでしょう。
162継承 I 甦る光の戦士(後編)3:2008/02/10(日) 21:34:29.03 ID:7KSvyrYT
せっかくだからと無意味に赤い柱時計を投げつけ、すかさずラシークの足をねじりあげて固めます。どうですか、見よう見まねのスピニングトゥホールドーっ!
「じ、地味なのー…」
「たしかに地味だ…地味だが…これはたまらん!うぐおおぉぉぉ!!」
反撃はもう片方の足での蹴りで反撃がきましたがそれもなんとか足で押さえこみ、完全に技は極まりました。意外となんとかなるものです。
「は、離せ!小娘ーッ!」
ここで攻めきれなければ活路はありません。死んでも離しませんよ!
骨と関節がきしむ音から砕ける音に変わりました。
「うおおおおぁぁぁ!!」
もう立てないくらいまで関節が破壊されたと思われたところで、わたくしは技を解きました。折れた以上はこれ以上やっても意味がないのと、もうひとつ…
「なんというやつだ…!このラシークの足が…はっ」
誰が終わりだと言いました?これからが本番ですよ!パシリ式・立ちキャメルクラッチ!
足を支点として全体重をかける、背が小さいパシリならではの技です。体格がないなら、それを逆手に取ればよいというわけです…今考えついたんですけどね。
「がはぁっ…!」
ごぎっとラシークの頸椎と背骨の折れる音が響きます。
食べるわけでもなく動物を苦しめて殺すような悪人に容赦はしませんので、そのまま二つ折りにしてさしあげました。よいこのみなさんは真似しないでくださいね。
163継承 I 甦る光の戦士(後編)4:2008/02/10(日) 21:35:13.28 ID:7KSvyrYT
ふぅ、大丈夫ですか猫さん。
「どこでそんな技覚えたのー…」
にゃんにゃんキャットファイトという深夜番組ですよ。女性ハンターがローションまみれの不利な状況で戦うにはどうするかという奥深い内容なので、一度見てみることをおすすめします。
と・こ・ろ・で…かわいいーっ!もふもふもふもふ…
「ギニャーっ!こ、懲りない人なのー!」
ところが、そこで恨みのこもった恐ろしい声が猫さんに夢中のわたくしの後ろから響いてきました。
「どう聞いても俗悪番組ではないか、非常識なやつめ…ぐぐ」
なっ!ま、まだ生きてる!?こんなのあきらかに人ではありません!
「闇に魂を売っただけはあるようだな、動けはしないがじきに復活できるということだ…そのときまでの命、せいぜいもふもふしているがよいわ」
これで倒せないというのなら、倒せるまでやるだけです!四つ折り!八つ折り!十六!三十二!
「ぬるいわ!どれだけやろうが貴様のような丸腰の子供がこのラシークを倒すことなどできん!」
減らず口を!こねてのばして巻いて形を整えて、そこでくるっと一回転!
「…何だ、何をしている」
最後に基盤にセットして、外はぱりっと中はふわっと焼き上げて!
できました、クロワ・サン!何層もの生地が独特の食感を出す一品です!
いただきまーす、あむっ。
うん、元気が出る味です。ドグマドロップの倍くらいおいしいですね。
「な、なにをする きさまー!」
それがラシークの最後の言葉になりました。
「た、食べちゃったの…ラシークを」
比較的美味しくいただきました。
やりましたよ主!武器を取り上げられてどうなるかと思いましたが、大勝利…
あ…?そういえば、主がいません。どこですか、主〜!
そこらの箱の中をはじめ、絨毯の裏まで調べましたが、どこにも主の姿はありませんでした。猫さんだけがそんなわたくしを複雑な表情で見つめていました。
『もう会えない』
βテスト世界で言われた言葉が、言いしれぬ不安になって広がります。今まで突然姿を消すことは何度もありましたが、わたくしにそんなことを言ったのははじめてのことです。
そして、もうひとつの世界にもわたくしが存在しているということがひっかかります…まさか、主はこちらのわたくしを捨てようとしている…?そんな馬鹿な!嘘ですよね、そんなこと!
たとえわたくしが消滅しなかったとしても、主がいない世界なんて何の価値もありません。どこにいらっしゃるのですか、主。真意をお聞かせください…


-「継承 II 君、死にたもうことなかれ」に続く-
164名無しオンライン:2008/02/10(日) 21:42:26.56 ID:7KSvyrYT
完成しました。続きドゾー
セガネタ満載でお送りしております。
ちなみに、中編のくたびれたサラリーマンが湯川専務のつもりだったのは秘密です…w
165名無しオンライン:2008/02/11(月) 00:41:29.11 ID:lBrZg1bn
>>164
ダイナマイト刑事ネタで盛大に吹きました(笑)
しかし、パシリとはいえ、あまり変なものばかり食べると、体壊しまっせ〜
次回も楽しみにしておりますb
166名無しオンライン
キャメルクラッチからクロワ・サンですか。
どこかの残虐超人を思い出しますね。
ともかく頑張れ戦乙女(劇場版)