1 :
既にその名前は使われています :
2006/05/23(火) 02:03:44.45 ID:qoaYuWFb
2 :
JG ◆p9ZXHwB.92 :2006/05/23(火) 02:05:18.79 ID:qzU97YPQ
2か4辺りget
埋めきってしまったので、次スレ立てちゃいました… ────────────────────────────────── (ex.19) ちょっと驚いたけど、私を頼りにしようとしてる彼というのもなんだか新鮮だ。 財布からお金を取り出して渡すと、彼は本当に申し訳なさそうに頭を下げた。 「すまない…もう二度とこんなことはないから」 「あら、お金くらいいくらでも貸してあげるわ」 「ふぇ?」 「そのかわり、浮気したらこれでチ○ポ切り落とすから、覚悟してね?」 背中のルーンチョッパーを指差して、私の今の気持ちをそのまま表した満面の笑顔で笑った。 分かってる。この人は浮気ははおろか、もう私を裏切るようなことはしないと思う。 ルーファスはなんだか青い顔をしている。冗談の通じない人ねぇ… 結局、私たちは今まで以上に一緒にいるようになった。 それからまた1年後に、「全て話させてくれ」という彼の言葉に誘われてサンドリアに向かい、ある事件に関わる事になるのだけれど、それはまた別のお話。
4 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/23(火) 02:06:57.51 ID:c6xhXAeh
スレ立て乙です!
5 :
Loufas ◆TTnPTs4wAM :2006/05/23(火) 02:08:42.50 ID:qoaYuWFb
せめて次スレ立ててから投下すればよかったと激しく反省中です… では皆様わっふるわっふるー
6 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/23(火) 02:08:45.92 ID:c6xhXAeh
朝、起きたら自キャラになっていたFFXIプレイヤーたち。 ステキに過酷なヴァナ・ディール、笑いと涙の右往左往。 俺たち“来訪者”を排除していく、謎の集団も現れた! この異世界に出口はあるのか? リアルに帰還できるのか? 熱血、友情、ラヴ、バトル! 陰謀、シリアス、ギャグ、微エロ! 俺たちの明日はどっちだ!?
新スレ乙です〜ヽ(´ー`)ノ そして深夜の投下(`・ω・´)ノ
「えぇと、誤解がないように言っておきますと……」 フルキフェルが、早口ながら途切れ途切れに言を紡ぎ始めた。 「私自身は、普通にリアルでネ実を見てきちゃった人です」 ネ実、か。もう随分昔に耳にした言葉のような気がする。 彼の話は、ルーファスのそれと概ね似通っていた。リアルでの人格とは別に、ヴァナ・ディールで生まれ育ち、冒険者となったもう一つの人格の存在。一つの肉体に二つの経歴。 ただ、ルーファスのそれは融合し一つの人格を形成した…というよりどちらかが他方を思い出す形で統合したのに対し、フルキフェルの人格は未だ二つあって共存しているのだという。 「ヒロさんにレイズをかけてくれたのは、私じゃなくて、その"僕"なんです」 なるほど、ね。少し羨ましくて、相槌がぶっきらぼうになる。おれにも相談できる相棒がいればな、と。 「私が寝てたり動けない時に勝手に色々やってるみたいなんで、もし、その、なんか気に障ったことがあったのなら、その…すみません」 "私"の方が、"僕"の方を庇っているのがなくとなく分かった。 「"僕"が何をやろうとしてるのかは…何となくわかるんですけど…聞いたらあぶないかも」 そして、おれの事も気遣っているのが分かった。 「あんたが持っていった、奴の剣と関係あるのか」 フルキフェルがきょとんとする。おれはいい加減湯当たりしてきて、少し気分が悪かった。 「奴の剣…ですか? あの紅い剣? 実はあれ……」 言いかけたところで、不意に魔法回路の作動を感じた。フルキフェルの表情が不意に消え、何事か呟く。 信じたのがバカだったのか、と思わず腰が浮く。しかし、実のところ、あまり危機感は感じていなかった。 魔法の対象はおれではなかった。
フルキフェルが、自分で自分に魔法をかけた。脱力して、湯船に顔から突っ伏す。 顔を起こし、手拭で拭ったフルキフェルの表情は、相変わらずの柔和さを湛えていたが、瞳に篭る意志はまったく別人のそれだった。 それまでのどこかおどついた物腰とは打って変わって、優雅ささえ感じられる仕草で手拭を戻す。 「端的に言いますと、あの剣は僕のやろうとしている事に役立つといいなー、程度のノリですね。それにかの…彼が少し触ったら、触りどころが悪かったのか剣のかたちを失ってしまいましたし」 "僕"のおでましという事か。 「…騎士団に届けたんじゃなかったのかよ」 「そんな事言って、どうせ届ける訳がないとかそっちも思ってたんでしょう」 悪戯な笑み。まったく、その通りだよ。疑われているのを知りながら涼しげにしているその様は、少しむかついて、一方で潔くすら感じた。 「まあな」 「でも、僕は奴らのように、キミ達来訪者をリストアップして殺して回る、なんて事はしませんよ」 サラリと剣呑な事を言う。そりゃ、話せば分かる相手だと思ったから、こうして一緒に風呂になんか入ってるわけだろ。 いちいちもっともな事を言って、ここのところ三白眼になりがちなおれの視線を真摯に受け止める。 フルキフェルの笑顔が、どこか皮肉めいた色を帯びた。僕のやりたい事は単純でしてね、と前置きしてから、 「仕返しがしたいだけなんですよ」 そんな物騒な言葉を吐いた。
来訪者になった友人の話。その友人と接する事で、昼間みたく世界が止まった時に思考だけはどうにか繋ぎ止める事が出来たのだという。 ハルヴァー……誰だか忘れたけど、城の偉い奴だったかな……やクリルラ、それにラディールもこちらの世界の住人でありながら、来訪者との関わりを持つ事で赤鎧どもの支配力から外れつつあるとか。 話を総合すると、こいつが赤鎧に会ったのは少なくとも今日で二回目という事か。更には、赤鎧の活動を好ましく思わない"お方"とやらの協力まで取り付けているらしい。 「この世界に、人に、もっと触れてみて欲しい。『物語の世界』にはないものも、こちらにはまだまだ沢山ありますから。 あとは、殺せなかったキミの事を、次には籠絡しようと奴らが動くかもしれませんが、その誘惑にも耳を貸さなきゃ言う事なしです」 秘密の主は不意に立ち上がり、悲劇を演じる舞台俳優のように天を仰ぐ。その仕草はさりげなく、それでいて、悲しさとか慈愛とか憤りとか、色んな感情が篭っていた。 「ともかく、死に急がないこと」 突然関心事がおれに戻って、面食らう。普通にやったら犬死だから、と少しおどけた仕草で言う。それはよく知ってるよ、と思わず左胸に手が伸びた。 「なあ、来訪者になったあんたのフレって、どうなったんだ?」 なんとなく口に出してから、答えが分かってしまった。 「…それは、秘密です」 だよな。と、答えを得られなかった事に胸を撫で下ろす。 「もう一つ。あんたにとって、"私"は何なんだ」 「それこそ、キミには関係ない」 その返答はどこか怒気を孕んでいた。怒りの矛先がおれではなく、別の方を向いているのが分かって、おれはこいつを信用する事に決めた。 フルキフェル、あんた、根は正直なんだな。そして多分、一人で色々頑張ってきたんだな。
フルキフェルが再び湯船につかり、目を閉じる。 "僕"がどこかに帰ったらしい。そのままぶくぶくとお湯の中に沈んでいく。 「腹を割って話す相手が欲しかったんだけどなぁ」 食えない奴だ。おれは苦笑して、彼が溺れないように身体を引き起こした。 軽く頬を張って呼びかけると、フルキフェルがはっと目を見開く。 "私"の方の顔だ。 「う…すいません、寝てましたか私。だめですね、お風呂が気持ちよかったとは言え、だらしない」 「大丈夫か? いきなり倒れたぞ」 「うーん、ちょっとのぼせたかも知れないですね〜」 だるそうに頭を押さえ、何かぶつぶつ言いながら湯船から上がり腰に手拭を巻く。本当にのぼせてるな、こいつ。"僕"が大事にする訳だ。 一応、先ほどおれに言いかけた事が何だったのか尋ねてみたが、覚えていないと返された。 少々釈然としないものはあったが、おれもフルキフェルの後に続いて風呂から上がる事にした。風呂にはもう昼間の内に入ったし、埃だの血だのを落とせればいい。 水気を切り、脱衣所で元の装束に身を包む。源義朝は風呂で討たれたという。おれも最悪切られる覚悟で臨んだ賭けだったが、勝ったのか負けたのかはよく分からなかった。 剣を吊り、濡れた髪に乗せずにシャポー小脇に抱えたところで、不意に後ろから、声をかけられた。 「信じすぎるのも、疑いすぎるのもよくない。勿論諦める必要はないですが、結論を急ぐ由もない。腹を割って話せる仲間は、ゆっくり時間をかけて見極めるものです」 振り向くと、フルキフェルがきょとんとした顔で突っ立っていた。本当に食えない奴だ。 「お前こそ、困ってる時は言えよ」 おれはもう一度苦笑して、そう切り返した。
風呂場から出ると、例のミスラのメイドが待ち構えていた。 「寝室をご用意させて頂きました。ご案内致します」 一礼すると、おれ達を先導して歩き出す。 「あぁ、ちょっと待って。その前にルーファスさん達に挨拶してもいいですか」 フルキフェルが提案し、おれも一応一夜軒を借りる身としてはその方がいいだろうと思ったので、同意した。マルトは特に嫌がる風でもなく、おれ達を元の応接間に案内してくれた。 応接間では、ルーファスとラディールのキスシーン上映中だった。 あー、やっぱりね。などとあっけにとられていると、フルキフェルが謝罪の言葉と共にドアを閉めてしまった。 「…ね、寝ましょうか」 「…そだね」 無粋なことをしたもんだ、とおれ達は顔を見合わせ、同時に溜息をついた。 マルトが案内してくれたのは、屋敷の西側にある客用の寝室で、どれもモグハウスのたっぷり二倍ほどの大きさがあった。 おれ達はそれぞれ一部屋ずつ宛がわれ、広すぎる寝床で一夜を過ごした。 おれは柔らかい寝床が苦手で床で剣を抱いたまま眠ったのだが、それでもこの家の絨毯は、モグハウスのブロンズベッドよりも、おれの部屋のパイプベッドよりもふかふかで、妙な夢ばかり見てあまり寝付けなかった。 それでも明け方過ぎには眠りに落ちて、おれは翌朝起こしに来たマルトに、床で眠った無作法をひどく咎められた。
以上です(*´ω`*)ノ ラディールタンにも激しく萌えましたw メイミィさんの中の人にイラストきぼんぬしてもいいですかww
14 :
既にその名前は使われています :2006/05/23(火) 07:26:50.50 ID:c6xhXAeh
ほぼ全SS共通設定? これは絶対ではありません。 投下する方が自由に想像し、表現してください。 LPは映像付きが多い (例:Yurifina氏のSSでは映るが、LeadのSSでは会話のみ)。 冒険者証明書は金属カードで、邪魔にならない所に魔法で入っている。競売は魔法紙で取引されている。 みつめる(/c)はとても嫌な視線扱い。時間感覚はリアルと同じ。tell等のSay・sh・echo以外は念話。 レイズは意識不明(戦闘不能)に有効だが、完全に死んだ者には効果が無い。 (ある程度共通してたほうが、読み手も分かりやすいでしょう)
15 :
既にその名前は使われています :2006/05/23(火) 07:27:33.42 ID:c6xhXAeh
キャラ紹介テンプレ 初出: 別スレ同番の人もいるようなので、スレも併せてお願いします PC(仮)名: / 中の人: 種族フェイス: ジョブ&Lv: 特記事項: 活動エリア: あらすじ: 他キャラとの接触: 独自レギュレーション: 共通設定(?)と目される設定とは敢えて変えてある部分を明記するのはどうでしょう
16 :
既にその名前は使われています :2006/05/23(火) 07:29:07.40 ID:c6xhXAeh
“赤い鎧”は、矛盾をはらんだ都市伝説のような存在です。 いわゆるGMとは違うようです。 自らを神の代行者と名乗ります。 世界にとって危険と思われるイレギュラーな存在を連行、または抹殺します。 目撃した者に、激しい恐怖を与えるようです。 どこにでも現れ、世界に干渉する能力を使用しますが、行動には何らかの制限があるようです。 NPCの記憶を操作できる能力があります(制限あり)。 中の人は戦闘のシロウトが多いですが、彼らにしか扱えない超強力装備を使用します。 最上級との戦闘はシャレになりません。逃げましょう。 最下級と最上級が、同じ姿をしています。 “黒マント”は、来訪者を狩る実行部隊です。 リアル世界から持ち込まれた物の押収・破壊、それに携わった者を抹殺します。 中の人のスキルによりますが、カンストレベルと互角? 主力は第二世代に移行しています。 第二世代は自決用の爆薬を身につけ、洗脳を受けています。 若干、質は落ちますが、それでも充分に脅威です。 各地で、多数確認されています。 皆様のSSで、徐々に明らかになっていくでしょう。
初出:1スレ98(本文は100より) PC(仮)名: Mio / 中の人:100(ID:wfMT4t1O) トリップなし 一人称:俺 種族フェイス: エルヴァーン♀F6B ジョブ&Lv:ALLジョブLV1サポ無し。現在は赤。 特記事項:自転車・模造刀・トイレットペーパーを持ち込み。 活動エリア:サンドリア→バルクルム砂丘→汽船経由→ウィンダス 他キャラとの接触:イッチ、マイウ、ゴイス、Rain
初出: 1スレ
>>1 PC(仮)名: イッチ / 中の人: 1スレ
>>1 /一人称:オレ
種族フェイス: ミスラF8A ジョブ&Lv: 白20、サポシ
特記事項:“朝起きたら自キャラになってた”第一報告者。リンクシェルオーナー。
他キャラとの接触:Mio、マイウ、ゴイス、Lead、Loufas
初出:1スレ
>>119 PC(仮)名: マイウ / 中の人:1スレ
>>119 /一人称:アタシ
種族フェイス: ミスラ7B
ジョブ&Lv: 黒20、サポ白
初出:1スレ
>>120 PC(仮)名: ゴイス / 中の人:1スレ
>>120 /一人称:おれ
種族フェイス: ガルカ6A
ジョブ&Lv: モ20、サポ戦
※上記3名はサンドに居る人のSS内に居ますが、ご本人はSSを書いていません。
19 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/23(火) 08:58:07.85 ID:YYcweWvy
スレ立て乙です! 初出: 1スレ19 PC(仮)名: Yurifina ユリフィナ / 中の人: ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ 種族フェイス: タル♀F5B 茶髪のポニーテール ジョブ&Lv: 臼魔道士LV70 特記事項: エロモーグリと同姓中 活動エリア: ウィンダス→タロンギ→ウィンダス→サンド→シャクラミ→ウィンダス→オルデール あらすじ: 朝起きたら自キャラになってた由梨。最初はちょっとヴァナ生活を楽しんでいたけれど、 色々あって自分は帰らなくちゃいけないと自覚。 戦ったり恋したりセクハラされたりビンタしたり、 そんなことをしているうちに、ついに帰るための手段 「あるべきものをあるべき場所へ帰す時空魔法ダテレポ」を見つけ、時空魔法を持ち込んだ来訪者テティス(今はカーディアン)にも会う。 謎の黒マントに『ユリフィナと同化しているあなたのあるべき場所はヴァナだ。ダテレポでは帰れない。』と宣言されるがそれでも『私は由梨だ!』あるべき場所は元の世界なんだ。 ついにダテレポも使用直前。エロモーグリモグタンとも別れ、ついに帰るために、 ダテレポの魔方陣があるオルデール鍾乳洞へと出発! 他キャラとの接触: ファルシファーさんに助けられたけれど、その事には気づかず。 独自レギュレーション: 魔法は手足を動かすように自由に使えている。居住区は普通の商店街みたいなものもあり、そこでクリスタル合成以外の生活必需品なども買える。 LVなんて関係なく着れる、デザインも多種多様の私服もある。
20 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/23(火) 09:17:37.17 ID:YYcweWvy
>>3 すごい素敵な話でした・・・。
ルーファスさんかっこいいし、ラディールさんの切なげな心情もぐっときました。
こういうお話好きだ・・・w
>>13 あなたのイラストも素敵ですよw
斜に構えた雰囲気と冷静な感じがかっこいいです。
ベッドよりもふかふかな絨毯、一度使ってみたいです・・・
妙な夢kwsk!w
噴水から吹き上がる水が太陽にきらめきまるで光の粒のようになっていた。 そして私が歩くたびに首の下で軽くモグタンがくれた銀の星のネックレスが軽く揺れてキラキラ輝く。 まるで本物の星みたいに綺麗で、私は思わず何度かそれを眺めて微笑んでしまう。 私が帰るからといって急に雨が降ったり、雪が降ったり、突然暑くなったり、寒くなったりする事もなく、 今日もウィンダスはポカポカ陽気だ。でも、もしかしたらシャントット先生のお宅に 巨大な雷が発生するくらいのことはあるかもしれない。けれどそれも多分ウィンダスの日常の風景だろう。 私が集合場所についた時には既にそわそわしているカーディアン、テティスさんと 意外なことに荷物をなにももっていないモンクAF姿で、右腕にはオレンジの宝石が埋め込まれた 時空魔法の魔力が込められている銀の腕輪を装備しているアリアちゃんが噴水の淵に座っていた。 「おはよーございまーす!」 私は二人にブンブンと大げさに手を振ってみせると二人も手を振り返してくれた。 「ユリフィナちゃんおはよ〜。今日もかわいいーーー!」 「おはようございます。」 二人の返事を聞いた後、今度は背中から声がかけられた。 底抜けに明るい子供っぽいこの声は多分リポケケだ。 「おはよ〜〜!」 振り返ると案の定トテトテとかわいらしく走ってくるリポケケがいた。 いつの間にか全身を戦士のAFで固めていて、背中には豪華な装飾がなされている 高そうな両手斧を背負っている。
「おはよ!アーティファクトおめでとう。言ってくれればお祝いのケーキ焼いたのに。」 彼女は顔いっぱいで笑ってちょっとだけ照れくさそうに「ありがと〜。」と言った。そして、 「みんなを驚かせたかったから黙ってたんだ〜。」 とニコニコしながらみんなの前で一回転してみせる。 「どう、似合う?」 アリアちゃんが「キャッワイーーーー!」と奇声をあげて彼女に飛びつく、悲鳴が上がる、ほお擦りされる、 テティスさんが両手棍でアリアちゃんのわき腹を思い切り突く、 アリアちゃんから落っこちて地面にボテッと落ちるリポケケ、うずくまるアリアちゃん。 「むぅ、見事な連携だ。」 その様子をいつから見ていたのか分からないが、日の光を精一杯浴びて、 まるで真珠のような光沢を持つ白サブリガ姿でオヤジさんが私たちの前に現れた。 「あははっ!みんな相変わらずだね〜。朝からなにやってるのよっ!」 そしてナイトAFに両手剣姿のユファファも猫を被ったまま現れる。 その姿を見るや否や、アリアちゃんは潤んだ瞳でユファファを見つめ、 突かれたわき腹を右手で押さえながらよろよろとユファファに近づく。 「ユファファちゃん・・・痛いよぉ・・・人工呼吸をしてくれないと死んじゃう・・・。」 ユファファはニコリと微笑んで彼女が押さえている細いウエストに無言で拳を叩き込む。 思わず濁音がメインとなっている汚いうめき声を上げるアリアちゃん。 うわ、今の攻撃はひどい・・・。いたそー・・・。
「オヤジさん、人工呼吸だってお願い。」 「はっはっは、任せろ。」 なぜか腰を突き出す格好でアリアちゃんにずんずん近づくオヤジさん。 うわ、普通にキモッ。普通に引く私。 「ねぇ、全員揃ったのだから出発しませんか?」 ちょっとだけ苛立たしげにテティスさんが私達に言った。本当にこの人は帰りたくて仕方が無いんだなぁ。 まぁ、私も仲間に置き去りにされて何百年も暗いシャクラミを亡霊としてさまよった挙句、 カーディアン姿にされたら一秒でも早く帰りたいと思うだろうな。 「・・・そ、そうね・・・あいたたた・・・。」 アリアちゃんが本当に辛そうによろよろと立ち上がった。 「それじゃあみんな、準備はいい?」 そういって私はそっと隣のリポケケとユファファの手を握った。すると、リポケケはアリアちゃんの、 アリアちゃんはテティスさんの、テティスさんは嫌そうにオヤジさんの、 オヤジさんはのユファファの手を握り、私達は綺麗な円を作る。 なんとなく二人の手を握っただけなのに、まるで最初から示し合わせていたかのように 見事な円陣が完成して私はちょっぴりびっくりしたけれど、すぐにテレポホラを詠唱するために集中をはじめた。 「みんな、ありがとう・・・。」 私は目をつぶりゆっくりと魔力を練り上げていった。そしてその作業は10秒ほどで完了する。 一瞬の浮遊感の後、私達は全員ラテーヌ高原のテレポストーンの前に立っていた。 ・・・何故だろう、ラテーヌに着いた途端、忘れたつもりのシャールカーンさんの事が急に心配になってきた。
やっぱりというかなんというか・・・。さすがにカーディアン用のチョコボは無いらしい。 それにそもそもテティスさんはチョコボの免許を持っていない。そんなわけで私達は徒歩でオルデール鍾乳洞へと向かっていた。 どうやら雨上がりらしくて、湿った土を一歩一歩踏みしめるたびに鼻を草と土の香りがなでる。 何となく空を見上げると見事な虹の橋が架かっていた。 初めてここの虹を見たときは、FFをはじめたての友人と一緒だったな。 綺麗だね、なんて話していたら背中をゴブリンブッチャーだかティンカラーにばっさりやられて 二人で地面に突っ伏したっけ・・・。 その後に鎧ゴブリンの股間の異常なふくらみは何なのかについて熱く語ったりもしたなぁ・・・。 たしか結局あの中には息子と、男の夢とほどばしる熱いパトスが詰まってるって結論になったんだっけな。 帰ったら、正確にはなんだったか聞いてみようかな? 「ユリフィナちゃん、ボーっとして転ばないでよ。」 アリアちゃんが私に注意をする。 「あ・・・わかった。」 私は慌てて前を向き、しっかりとオルデール鍾乳洞に向かって歩いていった。 どんどん大きくなる寂しさと必死に戦っているとあっという間に谷の間に ぽっかりと大きな口を開けたオルデール鍾乳洞の入り口についていた。 「それじゃあみんなを魔方陣がある部屋に案内するから。しっかりついてきてね。」 アリアちゃんがにこりとみんなに微笑んだ。 もう、私のヴァナディールでの生活も後わずかなんだ・・・。最後まで気を引き締めていかなくちゃ!
以上となります。前回の投下が好評なのが嬉しくて 昨日は一日中ニヤニヤしておりましたww それでは、皆さんの投下をわっふるわっふる!
26 :
既にその名前は使われています :2006/05/23(火) 09:53:42.73 ID:PaA1+QvQ
ルールに追加。 別の作者に勝手に自キャラやメインヒロインをぶっ殺されても笑って無視してかまわない。 一応リンクはしているが、時系列などを突き詰めると矛盾だらけである。 一人ひとり物語が違うため、差異が生じる。 一人ひとり物語が大きく異なってもおかしくもなんとも無い。
携帯から失礼します。 今更と思われるかも知れませんがさすがに今回は下ネタが過ぎたかもしれません…。 不快に思われたかたがいたら申し訳ありませんでした。 まとめサイトのほうではカットさせていただきます。 それではわっふるわっふる!
え、下ネタ?(´・ω・`) 自分的には頭から尻尾まで楽しませて頂いたので全然おっけ!
初出: 3スレ103
PC(仮)名: / 中の人: (不明)/103 ◆81bNqc9AjU
種族フェイス: GoblinThug(♂)
ジョブ&Lv: 不明
特記事項:
なぜか獣人ゴブリンの姿で存在している。
フェイトの一員のナナシと身体を共有していたが、現在分裂している、
分裂の際、右手をリード氏のモーグリに切断された。
活動エリア: クォン大陸全般、ブモはジュノ周辺
あらすじ:なぜか獣人ゴブリンの姿でヴァナに降り立ち、その後、ブモと出会い、一緒に旅に出る。
旅の途中で自分の意識化にフェイトの一員がいることに気付く。以後、それに支配される。
リード氏のモーグリとの一戦で、その意識と分裂する結果となり、元のゴブリンに戻る。
他キャラとの接触: ブモ、P氏、炎の壁兄弟、リード氏ほかご一行、フェイトに関わる人々
独自レギュレーション:
特殊アイテムの効果で自キャラがゴブリンになっている時がある。
ゴブリン特有の訛りは相当酷くなければ明文せずに書いているのであしからず。
>>3 スレ立て乙&埋め立て乙です!エロさも渋さもあってカッコイイ(・∀・)!!
>>13 いい連携が続いてますなぁ〜良いなぁ〜(*´Д`*)
>>27 物語の収束が見えてきてなんだかドキワク!…でも美エロな百合姫が見れなくなると思うと…(´・ω・`)
スレ立て乙&ありがとうございます。 昔のルーファスさんもいい男だ…そうか、ラディールさんとはとっくの昔にそういう仲に…w そしてヒロさんに書いてもらった方が「僕」がカッコいい不具合について。文才の差かッ ゆりひなさんの下ネタは私も気にならなかったというか…ネ実だし別にいんじゃね?と思ったり。 でも気にする人は気にするのかもですね。ほんとにどうなるんだ…リードさんはマジで邪魔しに来るのか。 朝になってしまう前に。 畳張りの部屋でのワンシーン。投下いきます。
目を覚ますと、そこは自分の部屋の、パイプベッドの上だった。 …まあ例によってリアルの部屋じゃなく、私の記憶やなんかを象徴した、精神世界らしいけれど。 うー、と小さく唸りながら体を起こす。私の手は相変わらず浅黒くて大きなエル♂の手で、 声も現実の私の声とは似ても似つかなかった。 かちかち、かたかた、と何かを打つような音がする。 何だろう? と思って首を捻った私は、そこで再びシュールな光景を目にすることとなった。 「…フルさん、なにしてるんですか。なんで居間にあるプレステ2がここにあるの。」 ついでにゲーム専用の小さめなテレビも。 「んー? ちょっとキミが困ってたようなんで、術式の翻訳をね。」 彼は学習机の椅子に腰掛け、部屋の真ん中にちんまりと置かれたテレビに向かい、 ロジクールのコントローラー一体型キーボードを膝に乗せ、何かを打ち込んでいた。 画面を覗き込むと、FF11のメニューとマクロの編集ウィンドウだけが開いていた。 背景は真っ黒で、半透明ウィンドウのはずなのだがフルさんの姿は画面の中にはない。 そりゃそうか…フルさんはここにいるんですもんね。 一番上の行は/echoの後が空欄になっており、あとはずらっとアクセサリ類を一括して 接近戦用のステータスを伸ばす装備に切り替える記述。 「起動用の言霊は考えときますから」 と言いながら>Nextを押してページをめくると、隣のマクロも似たような書式で、 こちらは剣・盾・軽鎧等、杖を持った状態からでも外側の装備を一瞬で整える記述だった。
かちかち、とボタン操作とキーボードの操作で、マクロメニューが閉じられ、 代わりにアイテム欄が開かれる。私のゲーム内での最後の記憶ではなく、 あの世界に入ってしまってからの、自分で整頓したかなり無茶詰めのヨバクリかばん。 どんな魔法がかかっているのやら、質量保存の法則を無視した四次元ポケットである。 「こういう風に自分が持てる技能や、所持品なんかをリスト化して参照できるって便利ですねぇ」 「私は実際にやってみて、大変さが身にしみました…」 と、見慣れないアイテムにカーソルが合う。リッターシルトの色違いみたいな赤い盾。 ええと…そうだ思い出した。GMもどきの剣から電波(?)が出てて、止めようとしてディスペルしたら、 なんか盾に変わっちゃったんでしたっけ。 「奴らの装備だから、何か僕には扱えない特殊効果があるものと踏んでるんですが…」 ゲーム内で見た事がある物のおおまかなデータは大体覚えてるけど、 見た事がなかったもののデータも、こういう風にゲーム内と同じ書式で参照できるってのは安心します。 「護界の…盾ねぇ。エンチャント:リターンとか書いてるんですけど」 「え?」 フルさんが怪訝な顔で私のほうを振り向く。 「…何も、書いてないように見えるんですが」 「えぇ? ちゃんと書いてますよーほら回数制限とか装備ディレイとかリキャストとか」 <1/1 0:30/[30:00,0:30]>
1/1ってことは回数無限か…それにしちゃやたらリキャスト短いなぁ。 リキャスト30分てことはヴァナだと半日か…さすがGM装備、性能が壊れてますねえ。 「キミの言い方だと、デジョンカジェルなんか月齢が三周しないと使えないことになっちゃいますよ」 「ちがうの?」 「そこは『物語の世界』の都合に合わせてデフォルメされた性能なんでしょうね。 実際はもう少し短いもんですよ。で、僕にはこの盾がエンチャント装備である、という情報が見えない」 「んじゃ、デジョンカジェルの表記はどういう風に見えてるんですか?」 おかしいなー、と首を傾げながらリストの中のデジョンカジェルにカーソルが合わせられる。 <17/30 0:30/[24:00:00,0:30]> 「…何の効果が込められているかとか、蓄積された魔力の残量なんかの情報ですけど」 「普通ですねぇ」 「つまり、剣の時は僕が振っても潜在効果が発動しなかったのと同様に、 この盾も僕にはエンチャント魔法を発動させる事すらできない、と」 「振ったんですかあれ!? 呪われたらどーするんですか!」 ずいぶん命知らずな…いや、「触るな危険」って書いてたものの包装を解いた私が 言えた義理ではとてもないけれど。私の心を読んだように、彼がにやり、と笑ってみせる。 「で、君が見た盾の情報には、本当に、『リターン』と?」 もう一度、護界の盾、と表記されたそれにカーソルが合う。間違いなく、エンチャント:リターン。 FF11には存在しない魔法。立ち上がって手近な段ボールに歩み寄り、迷う事なく開けると、 そこにはずいぶんボロボロになったSFC版FF5の攻略本が入っていた。
時空魔法リターン。時間を巻き戻して、戦闘開始時の状態に戻す、と解説されている。 しかし、ゲーム中もあの世界でも、明確に戦闘中とそうでない時の区切りはなく、 全ての魔法をいつでも行使することができる。いや、召喚魔法は町中だと×だけど。 じゃあ、この盾のエンチャントは、何をどこまで、どのくらい巻き戻すのか? 「世界を護る盾、その効果は巻き戻しねぇ…奴らなりの皮肉ですかねコレは」 そういってクスクスと笑うフルさん。怖いので黒い笑いはやめて欲しい。 「でも、こんな小さな盾で何もかも、というかワールド単位の巻き戻しはとても無理だと思う」 「…つまり、巻き戻す対象や規模を、ある程度は絞れる可能性がある、と」 あるいは、ほんとに小規模な巻き戻ししかできないとかね。 世界をあるべき姿に戻す盾。そう思えば、皮肉でも何でもないんじゃないだろうか? ふと、彼が思いついたように膝を叩いた。にこにこしながら、私のほうを振り返る。 「あるべき姿に戻す。僕の仮説が正しければ、こいつで面白い事ができそうです。 とりあえずは制御方法があればそれが分かるまで、実戦投入は待つ事にしましょうか」 もしかしたら元関係者だっていうあの爺さんが、何か詳細を知ってるかも知れないし。 そんな風に、彼の心が少しだけ伝わってきた。 「全ては明日って事ですか…」 「体だけじゃなく、心も休めておく事ですね。僕は何時でも休めるけど、キミはそうはいきませんから」 言いながら、私の額あたりに手をかざしてきた。意識が白く染まっていく。 次に目が覚めても、私は彼が望むまま、やっぱりエル♂のままなんだろうなぁ…。
初出:3スレ258 PC(仮)名/中の人:Furcifer(フルキフェル)/256_Furcifer◆MwNTY7GtwI 種族フェイス:Elv♂F7a いわゆるカッパ金 ジョブ&Lv:RDM75/WHM37 サポ他にも各種。白Lv73もあるがメインにする機会はなさそうだ。 特記事項:中の人は温厚な学生。肉体的、精神的に弱っていたり隙があったりすると、 体の本当の持ち主「僕」が主導権を取り戻して色々と暗躍するらしい。 「僕」は今の世界の管理者に対して疑いと恨みを抱いており、 色々な策謀を練って彼らに挑むつもりのようだ。 中の人「私」の精神世界もその一環として好き放題に整理整頓され、 心をこの世界の人間と融合させないままに、この世界に適応させられつつある。 あらすじ:ラテーヌで目を覚まし、途方に暮れていても仕方ないという事でサンドを目指す。 運がよければ先に来ていた人に会えるかも? と淡い期待を抱くが、 色々あって成り行きで、赤い鎧と交戦する羽目に。 どうにか無事撃退し、「僕」がこっそり赤い鎧の装備をぱちってきた。 シュヴィヤール邸にお泊まりして、赤い鎧や黒装束についての情報交換をこれからする予定。 他キャラとの接触:Yurifina(ただしお互いに気づかず)、Loufas、ヒロ(Pokotaso) 独自レギュレーション:ゲーム内で台詞に組み込んでいた台詞をトリガーにする事で、通常の魔法・アビのみならず着替えブースト等を絡めた魔法もゲーム内と同じように使用可能。辞書登録を使用した単独着替えや魔法発動も無意識に使えている様子。 魔法やエンチャント物についてのリキャストはゲーム内の感覚に近く、アビのリキャストはヴァナ時間に準拠。ただし「僕」と「私」ではサポジョブをバラバラに設定できるらしく、「僕」が起きているときに限り二人分のアビと両方のサポの能力を行使できるようだ。 以上です。最後にテンプレくっつけてみました。それではわっふるわっふるです。
36 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/23(火) 18:05:09.17 ID:YYcweWvy
うーん・・・私の気にしすぎでしょうか・・・。
とりあえず、気になったところはちょくちょくまとめではいじらせていただきました。
そして、何とか最後まで書ききることが出来ました。
今週中には手直しを終わらせて完結させる事ができそうです。
>>35 リターンキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!! 嫌な思い出がある魔法ですw
すべてをしるもので狩人、魔法剣士ではまったとか、
すべてをしるもので狩人、魔法剣士ではまったとか、
すべてをしるもので狩人、魔法剣士ではまったとか、
あと、すべてをしるもので狩人、魔法剣士ではまったとか・・・w
どう使われてゆくのだろうか・・・黒い笑い大好きですw
ではでは、わっふるーわっふるー!
37 :
既にその名前は使われています :2006/05/23(火) 19:41:34.74 ID:PaA1+QvQ
いや。不愉快ではなくて、あのエロさはこの感動のシーンにつながる複線だったのかという話でして・・・。
>>37 いえ、気になったのは今日の投下分です。
う、うーん・・・どちらにしろ私の気にし過ぎみたいですね・・・
お騒がせしましたm(_ _)m
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 「あ、長老。」 訪れた相手が高位の物と見て、守護戦士セミ・ラフィーナは一礼する。 「あの者は行ったか……?」 「は、親書を渡し出立させました。」 「……結構。」 長老と呼ばれた相手は、ウィンダス政府の最高機関である元老員議員の一人である。 そう返答する口ぶりは重々しいのだが、長老といえどタルタル族、 相手のミスラ族に比べれば慎重は腰ぐらいまでしかなく、まるで母と子の対話のようだ。 「しかし、長老。これでよかったのでしょうか。」 「……何も心配いらんよ。単に厄介払いをしただけのことだ。」 「厄介払い、ですか。では、あの親書には?」 「今度の和平騒動は、あの男が引き金になって発したことだ、ということが、 回りくどく書いてあるだけだよ。 まさか本気で、我々が獣人共と手を結ぶことを他国に勧める、と思っている訳じゃあるまいな。 ウィンダスもしかりだ。何故にあの横暴な連中と和平など?」 「……」
「今のところ、和平会談ではウィンダス側からは何も回答を出していないし、和平などする気はない。 そのようには見えなくとも、な。そうしたことも含めて親書には書いてある。」 「……では、何もあの男にさせずとも。」 「それは神子様がお勧めになられてな。あの男、つまり実物を見せる方が話が早い、と。 まあ、やることは親書を持って行くだけだからな。 それに、こうでもしなければウィンダスから離れようとしないだろう。 あの男が獣人とじゃれついていると、何か不都合が起こりかねん。 失敗すれば別の者に向かわせるだけだし、わしも構わんと思ったのだが。」 「……」 「いっとくがな。」 「はい……?」 「わしは獣人と戦いたい、などと考えている訳ではないのだぞ。」 「……いえ、それは仰られるまでもないことかと。」 「しかし国として、人としては、そうは行かない。」 「え?」 「これまでの歴史の中で、ウィンダス、バス、サンドリアとも互いに戦うことが多かった。 しかし、獣人達の存在があり、獣人達の驚異があるゆえに、互いに戦うことも出来なくなった。 歴史学者はいろいろなことを言い出すが、わしはそれが正しい物の見方と思うがね。」 「……」
「そなたは各国との密約があるのを知らぬのかな?『決して獣人を滅ぼしてはならない』という。」 「そ、それはどういうことなのですか?」 「ああ、やはり知らなかったのか。ここまで話せば判るだろう。 獣人という永遠の敵があってこそ、各国が戦う相手に困らない、と言うわけだ。 国が分かれれば互いの要求をぶつけ合い、最後には力ずく、という展開が想像されてしまう。 我々の悲しい性というところか。だからこそ、獣人という残虐な敵が必要となる訳だ。」 「しかし……神子様のご意志により、これまでもヤグードとの和平工作が続けられ……」 「ああ……あのお方も困ったものだ。まさしく夢見る少女の様に現実を知らない……」 その様なことをブツブツと言いながら、長老はその場を離れていった。 その長老の後ろ姿を見ながら、セミ・ラフィーナは考える。 (……やはり、元老院はそんなことを考えていたか。それほど私は現実を知らない訳でもない。 しかし、敵を味方に取り込む力こそウィンダスの力であり、 我らミスラ族がここにあるのも、それ故ともいえることだ。 それに、長老。あなたの考えは甘い。 神子様があの男を向かわせることを勧めたのは、必ず何かお考えがあってのこと。 意外と、神子様って食わせ者ですよ?) ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
しかし、引き受けてしまった物はしょうがない。 やると言ったからにはやる。 使いと言っても手紙を届けるだけの本当のお使いだ。 ずっとウィンダスで日銭を稼ぐのも飽きてきたところだ。 せっかくだから、いろんな所を見聞するのも悪くないだろう。 と言うわけで、なにがしかの旅費と手紙を受け取って旅の支度に走り出した。 例のセミが俺に護衛を付けると言ったが断った。 監督されては窮屈でしょうがないし、ミスラもタルタルもいけ好かない連中だ。 お前も今はタルタルだ?うるさい、それがどうした。 最前からの知り合い、紅色頭巾が名乗り出てきたがコイツも御免だ。 二言目には報酬は幾らだと聞いてくるからだ。 まったく、冒険者ってのはこれだから気にくわない。 そんなもの受け取るものかといって蹴り飛ばしてやった。 と言うわけで、気ままな一人旅で出発だ。 ロクな見送りも受けずに、と思ってたのだが、 どっから聞きつけたのか、ゴブリン達やら鳥の連中が門を出た俺を待ち受けていた。 情に厚い連中だ。こいつらのほうがよっぽど人間味があるというものだ。
まず、ゴブリン達が自分たちと同じリュックをくれた。 丁度良い。沢山の手弁当やらで、荷物が変に多くなってしまい困っていたのだ。 あ、その歯袋はいらん。外してくれよ。 既に誰かの奴が入ってるじゃないか、気持ちが悪い。死んだ仲間の物?縁起でもない。 こらこら、その腐茶の水筒なんか詰めるな。俺の口には合わないといってるだろうに。 そして鳥の連中なんだが、回り道して城に寄れ、と言ってきた。 ついでに港町まで送ってやるから、と。 気ままに一人旅するつもりだし、送り届けなんぞ大きなお世話なんだが…… まあ、いいだろう。 あの城にはちょくちょく遊びに行ったし、 久々に、あのおっさんにも会いたいと思っていたところだ。 そうと決まれば、こうしてはおれん。手土産も買い足してこなければ。 で、なんとかいう城にやってきた。 えらく話をはしょってるように聞こえるが、道のりが少々長いだけで、 この辺りの鳥の連中もゴブリン共も既に俺の顔が利くから、道中は危険なことは何もない。 面白いことと言えば、野生のキリン、じゃなくてダルメルだったか。 あいつらの股ぐらをくぐることぐらいだ。
到着すると、俺は正面玄関ではなく裏口へと案内される。いつもこうなのだ。 そこで待っていると、なにやら仰々しいお面を付けた鳥人間が登場だ。 部下というか側近らしい二人に付き添われて、ゆっくりと腰を下ろす。 そしてお面を脱ぎ、これまた仰々しい槍を壁に立てかけ、 部下にはこんな姿は見せられない、などと言いながら大きなため息をつく。 やれやれ……あいかわらず疲れているな、このおっさん。 俺は側近の連中に、お前らがちゃんと支えてやれよ、と言ってやると、 連中は苦笑いをして頭を掻いていた。 まあ、無理もない。組織を背負った親玉なんぞこんなものか。 ましてや、宗教家で自分は神だとか言ってるんだから。 そうして、連中は俺でも食える茹でたトカゲの卵やら焼いた魚や兎を並べ、 俺は持ってきた酒をふるまい、ささやかな宴会が開かれた。 しかし、こうして仮面を脱がれると誰が誰だか判らない。 こいつら鳥の連中との付き合いはだいぶなるが、今だに誰が誰だか区別が付かない。 まあ、このおっさんなら仮面以外にも飾り物を沢山ぶらさげているので、 判りやすいことは判りやすいのだが、それを言うとおっさんは笑って言う。 我々はやっと仮面を脱ぐことが出来るかも知れない、と。
宴もお開きとなり、最後には首にかけていた他の鳥達とは違う青い数珠を俺にくれた。 これをかけていれば安心だ、と。 何が? とりあえず、おっさんが付き添われて城の中に入っていくのを見送り、 俺も又、鳥の連中に案内を受けて、港町への旅に出立する。 なんというか……おっさんの後ろ姿は、まるで解散前の組長のようだった。
46 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/05/23(火) 21:15:07.28 ID:suaVLdyq
とりあえず、ここまでっす。 ゴブリンの設定やらを前スレで解説してくださっていた内容やら、 公式資料やらを参考にしてまっす。 ありがとっす。
47 :
既にその名前は使われています :2006/05/23(火) 21:20:16.54 ID:8X5EPB/I
ヤグードの神は女の人ですよ 知ってておっさんって書いていたのならば突っ込みすまんかったといわせてもらおう
>>47 そうなのですか。知りませぬでした。ありがとっす。
でも、正直いって性別はどうでもいいし、
おばちゃんよりもおっさんの方が主人公から見て丁度いいし、
これから先、一応は公式の設定資料は参考にするつもりだけれども、
思いついたままに適当に考えるつもりっす。
おかしなところが多々出てくると思うので、今からあやまるっす。ごみんなさい。
おれの作った設定の方がオフィシャルよりよく出来てる! くらいの心持でおk!ヽ(´ー`)ノ
50 :
既にその名前は使われています :2006/05/23(火) 21:36:01.32 ID:8X5EPB/I
ポン吉さんはポン吉さんの好きに書いていてほしのよね 俺の設定じゃないけど アルテパ砂漠には熱砂の戦士アンティ仮面が居る ヴァナ各地ではハイパーバトルサイボーグが危険物探知しまくってる こんなヴァナが良い
51 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/23(火) 21:53:27.61 ID:c6xhXAeh
皆様、投下乙でございます。
: 1スレ
>>161 PC(仮)名: Lead、リード / 中の人:161 ◆zmxSLEadCU
種族フェイス: エル♂F4A
ジョブ&Lv: 不明 (初期装備を着用)
特記事項:
ジョブチェンジ機能使用不能。はじめ記憶喪失だったが、記憶復活。
管理者側の実行部隊“フェイト”第一世代の元リーダー。
エクスカリバー・ゼロを所持→消失。
ウィンダスで左腕を修復の際に、何か埋め込まれているらしい。
リアルで半年(ヴァナで三年)前の世界にリアルの意識が飛ばされ、元キャラと統合。
活動エリア: エルディーム→ジュノ→(機船航路経由)→ウィンダス→サンドリア
他キャラとの接触:イッチ、マイウ、ゴイス、サン(?)、レップ、ロック、メイミィ、クルス
独自レギュレーション:「死にたくないなら戦場に出てくるな」
人間は心臓を貫かれたり首を刎ねられたり脳を潰されたり、出血多量やビルの屋上から突き落とされたりしたら死ぬ。
死んだ者は甦らない。瀕死はレイズで息を吹き返す。
戦闘やアビリティ、呪文や時間の描写はあいまい。ひとによってまちまち。
リードは詠唱不要、イメージするだけで効果が発現する。
うおお!!次スレが立ってる!! (;Д;)、<ツイテ イケナイヨ ノノZ乙 みなさんスゴイ速記です… 前スレまだ見てないのでうp希望!!
「これを見てくれないか」 ドラギーユ城内、王国騎士団の一室。 シャールカーンは、一枚の似顔絵をテーブルに広げた。 「つい先日、国家転覆を狙う賊が宰相を誘拐した。幸い宰相は騎士団で無事保護したが・・・」 「その犯人、か」 ふむ、と顎に手を当て、俺は記憶を攫った。 見覚えはない。 それにしても、随分と凶悪な面構えに描いてある。 背は高く、がっしりとした筋肉質の体つき、比類なきモンク等、簡単な特徴が書き添えられている。 「俺の見立てでは、確実に十五人は殺ってる顔だ。ジャンキーで腰痛持ち。 己の拳で命を奪うことで暗い欲望を満たすが、それを制御できる知性と用心深さを併せ持つ。 殺しのサイクルは一年弱、殺した相手の身体の一部をコレクションする癖がある」 「わかるのか!?」 シャールカーンが視線を似顔絵と俺の顔で、交互に往復させた。 「あぁ。街を何気なく歩いているのを見かけても、絶対に一人では近づくな。必ず応援を呼べ」 「・・・何を適当なことを言っている」 呆れたような声がした。 騎士団長そして我が異母兄弟、ラールだった。
56 :
既にその名前は使われています :2006/05/23(火) 23:01:23.87 ID:uxTN0BnA
>>54 thx!!です!!
見る間次スレ立ってなきゃいいが…
「その男の捜査は打ち切りだ。うちの騎士団はクリルラに振り回されたわけだ」 その声で、反射的に席を立った。 「ラール!」 「この馬鹿野郎。どのツラ下げて帰ってきた!」 ラールはそう言って、俺の身体をガッシと抱きしめた。 おもいきり俺の身体に鎖帷子が打ち付けられる。体中の傷に響き、俺は顔をしかめた。 怪我を? とラールは男臭い体を離した。あいかわらず一日中駆けずり回っていたのだろう。 「あれから三年。連絡もなしで、一体どこで何をしていたんだ?」 そうか。“来訪者”として人格を統合したのち、冒険者であることすら捨ててフェイトになった。 リアルの時間感覚では半年前のような気がしていたが、こちらの世界では三年・・・か。 どうにもまだ時間の流れに違和感がある。 「パブリック・エネミー」 俺は簡潔に答えた。「世界を敵に回して」 「・・・話せるか?」 もちろん、と俺は頷いた。 兄にも、友にも。聞いておいてもらいたい。そしてもう一人にも。 「ハル兄にも聞いてほしいんだが、まだ城に?」 「いや。ハルヴァーは今日一日、屋敷だ」 ラールが首を振った。「もう夜だが、構うものか。行くぞ」 号令直下、俺たちは慌しくハルヴァーの屋敷を訪れた。
俺はハルヴァーのことを“ハル兄”と呼んではいるが、実のところ兄弟ではない。 遠縁らしいのだが、詳しい事情を知る父はもういない。 俺たちを出迎えたのは、ハルヴァーの妹だった。 「あ・・・」 急によそよそしくなるラール。「夜分すみませぬ。ハルヴァー殿はいらっしゃるかな?」 明らかに挙動不審だ。 俺とデュエル、ラール、シャールカーンの四人は客間に通された。 質素で飾り気のない空間。 まるでハルヴァーの人柄のようだが、さりげなく季節の花が飾られていたりする。 俺たちは、それぞれ思い思いの場所に陣取った。 いま兄を呼んでまいりますので、と妹が退室する。 「う、うむ。恐れ入る」 あぁ、なるほどね。 「いまだ進展なしか。この甲斐性なし」 「む・・・」 「互いに憎からず思っているんだろう? 好きなら押し倒せ」 むむむむ・・・と押し黙ったラールが、急にフッ、と鼻で笑った。 「“ぼく、おおきくなったら兄さまのおよめさんになるー”と言っていたお前が、言うようになったな」 な、な、な、なんてことを覚えているんだこの男は。 「き・・・ッ・・・記憶を失えぇぇぇぇぇ!!!!」 俺は怪我だらけなのを忘れて、“やれやれ”と/huhポーズをとるラールに襲いかかった。
59 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/24(水) 00:38:49.56 ID:z79ixn1x
今夜の投下は以上です。 百合姫は無事に時空魔法?が成功するといいですね。 FFXI以外のFF関係知識がまったくないのでよくわかりませんが。
スレ立て乙様です&投下乙様です。 ROMる方が楽しくて(無投下による)同化フラグが立ちそうですw 初出:1スレ.>>464 PC(仮名:サン・ソコワラメェ 中の人:サン464 ◆PCl7Dh0dlY ジョブ&Lv シ75/ALL(正しくはシ/白だが、制限付きで色々使える) 種族&フェイスタイプ 碧眼オスラF6A(女装) ※女装癖では無い。 特記事項。シフなので手癖悪し。肉体人格(サン)の「躯(464命名)」が居た。 最初は普通の眼だったが、侵蝕で左赤・右金の眼色に。 窮地に陥ると?危険な別人格(?)が出る。 活動エリア:ジュノ下層→徒歩でウィン→ウィンダス国内 他キャラとの接触:初期に1スレ317 Lead氏(一度結果的に撃ち殺した) 独自レギュレーション:アビは行動なので基本リキャ無し(連続使用した事無いですが)。 魔法使用は脳内でリストがイメージされ、選んだ後出る文を読み上げる。 侵蝕時:右目周囲黒、左目周囲白に変色。サン人格強制終了(人格のっとり)。能力「代償」制限解除
最初の山串(作品名:決闘する2人の騎士)から、いくつ料理を教えてはことごとく芸術作品にされただろうか… ウィンダス風サラダを教えれば、シナモンクッキーと組み合わせて天の塔を創り。 ゆで卵を教えれば、なぜかメアのゲート風ゆで卵になり。 白パンの焼き方を教えれば、純白の飛空挺になって出てくる。 普通の料理は、私が作る事にした。それでも何か1品は、ちょっかいで作品にされるが仕方あるまい。慣れって怖い。 何日かアジルに振り回される日々を過ごした後、キィの…姉の様子を見に行く事にした。 オッドアイのままでは目立つので遮光眼鏡をかけたが、真ッ黒のバイソン+遮光眼鏡。どう見ても893です。 躯は、結局いつのまにか音沙汰無いままで、居るのか居ないのか判らない状態になってしまっている。 にくったらしい奴だけど、自分と似た性格だから、話してて退屈はしなかったんだけどなぁ……。 天の塔、特殊転移装置の先の医務室(兼研究室)、ココにキィという姉が居る。…今は患者として。 禍々しい気配を伴った何者かが、キィの精神を破壊して、廃人にしてしまった。 犯人を見ていないので、男か女かすらわからない。だが、見つけたら必ずやそれ相応の仕返しをしなければ。 修繕された比較的新しい石扉の前で小さく決意を固め、中へと入る。 入ると同時に、医務室特有の薬品の匂いが鼻腔を刺激する。敏感な鼻に少しキツイが、すぐ慣れるだろう。 部屋に入って奥から2番目の診察台…もとい机兼医療ベッドの上に、その者は居る。 濃い赤茶色で、クセが強いカールしていた毛は、いまでは私の白髪よりも病的な白さで姉の頭部に生えている。 ベッドに座る姉は、横顔を見る限りやつれてるだけだが、目は虚ろで、足と尻尾を子供のようにゆらゆら動かしている。
姉の所に行く前に医師のタルに軽く挨拶を……なぜ驚く。確かに不審な格好だが、いくらなんでも怯えすぎだろ。 尋常じゃなく怖がられているようだが無視し、軽く挨拶をして、姉の容態を聞く。 どうやら、涎垂れ流しとまではいかなかったが、退行に近い形で自我を喪失してしまっているらしい。 医師タルが話しかけても、助手ミスラが話しかけても無反応で、別の見えない何かをず〜っと見ているのだそうだ。 「すまないが、私はオバケとか苦手なんだ。その手の者ってのは、この天の塔には居ないよな?」 「私が知る限りではおらん。もし居ても、私は科学者だ。科学と魔法以外は信じないがな。…神子様は信じているが。」 …とりあえず、ゴーストが闊歩するという事は無いらしい。一安心だ。 だが、ならば姉は何を見ているのだろうか。 見たところ、文字通り佇んでいるだけのようだが…。 姉の真横に歩いて行き、視界を手で素早く遮ってみる。…眉一つ動かさない。視力無くなってる? 医師の方を向くと、机に向かったまま「目はちゃんと見えとるはずだよ。」と言った。察しの良いタルタルだ。 姉の前に移動し、意図的に姉と目が合うようにしゃがむ。 姉に反応は無い。…サングラス付けっぱなしだったな。とってみるか。 サングラスを外し、もう一度姉の顔を見る。…焦点が私に向いた。小さく何かを呟いているように見える。 「……ぁ…ぅ…ぁぁ…ぁ…ぁあああああああああああぁぁぁぁぁっ!」 何か言おうとしてるのかと思い、耳を澄ませた所に抑揚の無い叫び声をあげられ、耳鳴りがする。 医師が慌ててコチラに駆け寄り「何をした!?」などと怒鳴る。私は無実だ。何もしてない…ハズ。
医師タルが慌てて様子を見ている間にも、キィは無表情な顔のまま、身体を痙攣させながら叫び続けている。 出来る事があれば何か手伝いたいが、今の私では邪魔にしかならないだろう…その様子を見守る事しか出来ない。 キィには悪いのだが、声を聞いていると、頭痛がしてきた。それも段々と強くなってく頭痛。 鈍器で殴られるような痛みが鼓動の度に頭を襲うようになり、たまらず頭を押さえてしゃがみこむ。 ガンッガンッガンッガンッガンッ 痛い痛い痛い痛いイタイイタイ!!!なん…気が遠くなっ……… ―――誰だ。この無精髭を生やしたミスラは。ここは、どこだ。カザムか? 岩と植物しか見えない場所。木の板で出来た、床の上に、髭を半端に生やしたミスラがいる。 そのミスラの向こうに、何かゴテゴテした人影が立っている。…押し問答? ミスラの男が声を荒げた。対峙する影が一歩近付いた。聞き取れない声で小さく何かをミスラへと言う。 直後、髭ミスラの背中に、片手剣くらいの大きさの刃が、生えた。 刃が体の中へと消えた直後、髭のミスラが背後へと…コチラへとゆっくり倒れた。 大量の液体を浴びた、ゴテゴテした影は、逆光の中にもかかわらず、真っ赤に染まっていた。 髭のミスラが必死に、赤い影の足を掴み、コチラへ搾り出すような声で、繰り返し何か同じ単語を言っている。 赤い影が、手に持った剣を床のミスラへと突き立てると、ミスラは動かなくなった。 赤い影が、液体の滴る音と、金属が木に当たる音を立てながらゆっくりとコチラへと歩いて来る。 強烈な血の匂いを伴って歩み寄る影は、横一線のスリットから感情の無い瞳をコチラに向け、手を伸ばしてきた。 血の匂いにまみれた手が、視界の大半を覆い隠していく。 視界の端で、何かが赤い影に何かを向けた、乾いた大きな音が、聞こえた。そして、視界は、暗闇に閉ざされた。
暗闇に閉ざされた視界のまま、叫びに似た愚痴が聞こえる。 「あぁ!もう!なんなんだ君らはッ!!倒れるならせめて私にわかる原因で倒れてくれッ!!!」 君ら?私?…私だけじゃない? 身体は、動かない。まだ動かせないのか、動かそうとしていないのかは判らないが。 目を開けようとしてみる。視界がゆっくりと、光の白色で覆われていく。まだ光に目が慣れていなあいのか…。 白い視界から、浮かび上がるように石で出来た板が……天井が目に入る。仰向けに寝かされていたようだ。 身体を動かさず、首と目だけ動かし、五感を総動員して周囲を調べる。 背後の接している所が暖かい…長時間ここに寝ていたのか。 慌しくは無いが、物音がしている…音からして医師タルか何かの作業だろう。 横には、キィが台に寝かされている。ココより高いという事は、私は床あたりに寝かされているのだろう。 空気中を漂う気配に殺気などは感じられない。あるのは小さな苛立ちくらいか。 腕を、ゆっくり、小さく動かしてみる。……動く。動かした感じだと拘束はされていないようだ。 一気に起き上がって周囲を確認するか?それとも現状のまま周囲を警戒するか? ……なぜこんなに頭が回るのだろう。寝起きの時などは普通頭がボーっとすると思うのだが、今の思考は鮮明だ。 身体も、長時間動いていなかったのしては、全然動きが鈍っていないようだし。 何度か、周囲を警戒した後、何事も無かったかのように上半身を起こし、立ち上がり、周囲を見回す。 姉…キィが眠ってる以外はこれといって変化無いようだ。医師タルはイラついているようだが、気付かぬフリを決め込む。 とりあえず医師タルに、キィと私がどうなったか等を聞いてみたが、「コッチが聞きたいくらいだね!」と怒られた。 医師タルに聞いても駄目なようなので、少しさっきの事があって怖いが、キィの様子を近くで見ることにした。
投下以上です。 百合さんの初帰還者になるかもしれない展開と サンドリアの3人組の展開にwktkしながらマイペースで行きます。 今の所、まだウィン国内にいる予定ですが、何かのキッカケでどっか行くかもしれません。 >>ぽん吉さん 現代神さんの性別を間違えるとは何事か! と言おうと思いましたが、確かにおばさん呼ばわりされるよりはおっさんの方がしっくりきますね。 結果おーらいグッジョブ!って事で。 そのままの君でいて
66 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/24(水) 01:05:31.11 ID:z79ixn1x
設定等は好きに変えちゃって楽しいお話の続きをwktkしてます、ぽん吉さんage 私の投下ペースだと、百合姫にちょっかいかける前に儀式は終わってると思われ。 無事に帰還できるといいですね。 そして百合姫様のところのNPCを、更にお借りしたいのですが・・・。 敵対勢力の人員構成、戦力と行動指針、プロットと行動パターンを詳細に説明した上で、 三回くらい確認を繰り返さないとダメでしょうか? おやすみなさい。
67 :
既にその名前は使われています :2006/05/24(水) 04:37:19.48 ID:EPk5sUas
ハルヴァーの名無しの妹さん来た。これで勝てる! 美人なのにエロ生物鈴川に負ける人気。 性格いいのに兄貴の所為で目立たない。 気は強いが表に出さない。 教養も各種技術もあるが奥ゆかしさゆえにひけらかさない。 実は剣持ったりチョコボのっても強いらしい妹さんきた! 兄貴のことが心配でちょっと結婚適齢期ずれちゃったらしい。がそれがいい。 鈴川曰く。顔は清純そうな美女だが身体はすごくエロそうだ。
>>46 神子様の狙いがきになります。
最近、ヤグード見てもちょっかいをあまりださなくなりましたw
・・・練習相手にならない奴限定でw
>>47 しらなかった・・・
>>59 ダテレポは名前以外は完全にオリジナルですw
久しぶりにほのぼのとした展開ですね〜
『時間軸が違うからいいの!』って駄々をこねれば矛盾なんてどうとでもなりますw
ジャンジャン使っちゃってかまいませんよ
>>61 アジルを調理ギルドに修行にださせたらどうですか?w
きっと調理ギルドの歴史に名前残せますよ?w
今度はいったいどうなるんだサン!
オルデール鍾乳洞はシャクラミの地下迷宮よりもずっと空気が澄んでいるし、 壁は綺麗な青白い鍾乳石だからなんとなく神秘的な雰囲気がした。 ただ、靴が汚れるから地面に水溜りがたくさんあるのはちょっといただけない。 その鍾乳洞をアリアちゃんはシャクラミの時みたいにずんずんと小慣れた感じで進んでゆく。 もう方向音痴の私はどこをどう歩いているのかさっぱり分からない。 いまみんながいなくなったら確実に迷子だなぁ。 そんなことを考えていたら本当にアリアちゃんが目の前から消えた。 「へ?」 ポカーンとする私達。 「あ、あれ〜?アリアちゃんは〜?」 リポケケがきょろきょろとまわりを見渡す。私も彼女みたいにきょろきょろする。 そしてびっくりして「きゃあ!!」と悲鳴をあげて、私がみんなをおどろかす事になった。 だって・・・突然私の目の前の壁からニョキッとアリアちゃんの首が生えてきたから・・・。 「ユリフィナちゃん、驚きすぎ。」 アリアちゃんがニヤニヤ笑って壁の中から生えてくる。 「ここの壁が隠し通路になってるから。足元気をつけてね。」 「う、うん。わかった。」 オルデールに隠し通路があるだなんて知らなかった。ていうか聞いたことすらない。 でも実際に目の前にあるのだから深く考えても仕方ないや。あるものはあるんだ。
まるで何も無いかのように抵抗なく白い壁をすり抜けると、どこか人工的な印象を受ける広々とした部屋に着いた。 その人工的な印象は多分、なにか巨大な円形のものでくりぬかれたかのように、 不自然なまでに綺麗な円形の部屋だから受けるのだろう。 その部屋には二つのものがあった。一つ目は部屋の真ん中に寂しげに立つボロボロに朽ち果てた長剣。 いったいどれほど昔からそこに立っていたのだろう。ちょっと風が吹いただけでも折れてしまいそうなほど、 その刀身は錆び付いていて、見ていると寂しくなってくる。・・・なぜか、その長剣が泣いているような気がした。 そして二つ目は床一面にびっしりと描かれた幾何学的な複雑な模様と日本語でも英語でも、ヴァナディールの言葉でもない なんとなく角ばった文字の列で作り上げられた魔方陣だ。これがきっとダテレポを発動するために必要なものなのだろう。 少し剣に近づいてみると、剣を中心に直径1メートル強の二重の円が描いてある事に気づく。きっと、この円の中心に入ればいいのかな? 「あの剣は・・・。」 どこか気の抜けたような声をテティスさんがあげるので、私達はそちらを振り向いた。 「ええ、この前着たときはなかったわね。」 アリアちゃんがどこか警戒するように言ったが、何かに取り付かれたかのようにテティスさんは フラフラと剣へと近づいていった。私は何故だかそれを止めてはいけない気がして、 呆然とその様子を眺めていたが、アリアちゃんが彼女を慌てて制止した。 「テティス!正体が分からないものに無警戒に近づかないで!」 しかし、テティスさんは彼女の警告を無視してどんどん近づいてゆく。 あ!これってひょっとしなくても私も止めたほうがいいんじゃ。
「テティス!聞いてる!?」 アリアちゃんが珍しく怒鳴り声を上げて彼女に駆け寄った。 「アリア、大丈夫。あの剣は危なくありません。」 アリアちゃんが怒鳴った事など気にも留めず、彼女は振り返って静かにそういった。 その雰囲気があまりにも穏やかだったから、アリアちゃんも拍子抜けして脚を止めた。 「何故、そういいきれるの?」 アリアちゃんがそう言った瞬間、剣の後ろに灰色のマントを纏った一人の男が現れた。 さらりとした灰色の髪を軽く伸ばした、さわやかで上品そうな、でもたくましい男だった。 だけど彼は少し透けていた。まるで幽霊みたいに・・・。幽霊?もしかして彼は・・・。 「ジェイコブ・・・。」 テティスさんがいとおしげに彼にカーディーアンの太い手を差し出しすと、その男もニコリと微笑んで たくましい腕を差し出した。そして、お互いの手の先が触れた途端、男はすぅっと掻き消えてしまった。 テティスさんはしばらくの間、彼がいた場所を静かに見つめていたが、ゆっくりと振り返るとアリアちゃんに寂しげな顔を向けた。 いや、カーディアンに表情はないのだけれど、なんだか本当に寂しそうだった。 「この剣は、ジェイコブの剣なんです。ボロボロになってるけど私にはわかります。」 そういってすっと地面から剣を引き抜く。すると、剣の柄から鎖のようなものがこぼれ、乾いた音を立てて何かが地面に落ちた。 それは、綺麗な海のような少し緑がかった青い小さな宝石が埋め込まれた黒い指輪に銀の鎖を通したものだった。 いや、きっと元は銀だったのだろう。だけれども、 すっかり表面が錆び付いてしまっていて元から黒い指輪だったように見えてしまう。
テティスさんはそれを黙って拾うともう一度こちらを向き、震える声で呟いた。 「・・・これは、私が小さい頃から死んだときまでずっと身に着けていた母の形見の指輪です。 自分の死体がどこにあるかも分からないのに・・・指輪だけここにあるだなんて不思議ですね。」 きっと、彼女がカーディアンの体でなかったらボロボロ泣いていた事だろう。 彼女はやっぱり寂しげなままその指輪をカーディアンの手で器用に拾い上げる。 「私の想像ですけど、ジェイコブが持ってきてくれたような気がするんです・・・あくまで想像ですけど。」 なぜか分からないけれど、私もそんな気がした。 「・・・そうだったの。怒鳴っちゃってごめんなさい。」 アリアちゃんは申し訳無さそうにこう言った後、キッと表情を引き締めると私達全員を一度見回した。 「テティス、ユリフィナちゃん、そしてジェイコブさん達の物も・・・全部帰してあげるからね。」 彼女はそう言って時空魔法のアーティファクトである腕輪をつけた右手を、優雅に天に向かって差し出した。 オレンジの宝石が神秘的に輝く。 「テティスは真ん中の円へ。みんなは魔方陣の外に。まずはユリフィナちゃんもね。」 「はい。」 言われたとおりに皆がしたのを確認すると、彼女は目をつぶり静かに集中し始める。まわりの空気がピンと緊張感を持ち始めるが、 彼女の優雅な姿がまるで一つの芸術品のようなので、彼女の周りだけ不思議とやわらかな印象があった。 突然、腕輪からオレンジ色の光の帯が魔方陣へ向かって流れ込み始め、床が淡く光り、部屋全体を照らした。 その帯の数はどんどん増えていって、その全てが地面を駆け回ったかと思うと唐突に光りの帯は動きを止めた。 床を見るとオレンジの光りが完璧に魔方陣を作っていた。
はっとして、さびた剣と指輪をぶら下げた鎖を抱いたテティスさんの方を見ると彼女の周りからは真っ白な光りの柱が浮かび上がっていた。 その光りの柱はまるで中と外を完全に分断している壁のようで、その柱の中は既に異世界となっているような気がした。 突然、カーディアンがくたりと力なく地面にヘタレこむ。そしてそのカーディアンの上には緩やかなウェーブのかかった 長い髪をなびかせながら静かに消えていく女性が浮いていた。 彼女は愛しげにキラキラと輝く銀の剣と青い宝石の埋めこまれた銀の指輪をぶら下げた鎖を、 しっかりとその手に握り締めていた。 「本当にありがとうございます。」 彼女が目にいっぱいの涙を浮かべて幸せそうに微笑んだかと思うと、光りの柱と共に静かに消えていった。 音もなく、魔方陣を描いていたオレンジの光がキラキラと天へ向かって散らばってゆくと、 それも光の柱のように静かに消えていった。 後には、ぐったりとしたカーディアンしか残されてはいなかった。 「テティスさん、ちゃんと帰れたのかな〜?」 リポケケがぽつんと呟く。 「きっと、きっと帰れたわよ・・・。」 私は自分に言い聞かせるように彼女に答えた。次は、ついに私の番だ。
以上となります。 もうリードさんからちょっかいがでる前に帰る気満々ですねw あと数回の投下で完結させることが出来そうです。 それでは皆様わっふるわっふる!
75 :
既にその名前は使われています :2006/05/24(水) 11:15:06.98 ID:pWVxu+Pp
上昇
76 :
既にその名前は使われています :2006/05/24(水) 12:34:57.36 ID:JMtfY11z
uho
77 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:46:50.50 ID:xn5KEQF7
前スレは結局一度も投下しないで終ってしまったクルスです_(._.)_ とりあえず一度投下してから自己紹介らしきものを書くのです。
78 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:48:06.53 ID:xn5KEQF7
僕は、泣いていた。 誰もいないモグハウス。 僕は一人で泣いていた。 「うっ…。くっ…。……ひぐっ……。」 大切な者を失ったこと。そして、その仇すらとれなかったこと。更に、その仇の仲間に情けをかけられたこと。 これらの複雑に入り混じった感情を基に、僕は泣いていた。 「うぐっ…。ひぐっ…。クー…。」 "呼んだ…?" うぐ…ひっく…。 …うっ…。 ………。 うぐ? 僕はそっと顏を上げてみる。
79 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:49:09.49 ID:xn5KEQF7
"や。" …。 「ぅぉぅッ!!」 そこには半透明になったクーがいた。 「い、生きてたのか…?」 クーは首を横に振る。…まあ、愚問か…。 "三途の川を渡ってる途中で呼ばれた気がしたから戻ってきた…。" …僕の声に反応したってことか…? ってか…。 「…三途の川なんてあるんかい。」 クーは少し考え込んでから口を開いた。 "…アルタナたんに召されそうになったけどやめて戻ってきた、の方が良かった…?" 「…まあ、ヴァナ的にはそっちの方が自然かな、と。」 しばし、二人の周りを沈黙が包む。
80 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:50:00.34 ID:xn5KEQF7
と。 「…ご主人様酷いクポ〜。帰ってくるなりモグをコッファーに閉じ込めるなんて…。」 コッファーの蓋ががちゃりと開き、中からびしょぬれのモグプウが顏を出した。 …心なしか頬が紅潮してるのは何故だろう…? 「…クポ?ご主人様誰と話してるクポ…?」 ん?モグプウにはクーが見えないのか? …と。 バキャアッ!! 派手な音を立て、扉が弾け飛んだ。 扉の残骸は僕の頭上を越え、クーの体をすり抜け…。 「グポォオッ!!」 モグプウに直撃した。 そのまま気を失い地面に落下する。 …今日は災難だな、モグプウ。
81 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:50:50.13 ID:xn5KEQF7
「やっほー、クルス!」 …こいつか、扉壊したのは。 「…普通に入ってこんかい。」 「普通に扉開けようとしたんだけど、鍵がかかってたみたいで壊れちゃったんだよ〜。」 …壊しちゃった、だろ。 「…で、何の用だ。アルミティ。」 「あ、そうだ。これ見せに来たんだよ〜。」 そう言ってアルミティはその場でくるくる回る。 「どうみても普段着だな…。」 「むー!エアリーアーマーだよ〜。これが最後の一着だったんだよ〜?」 ああ、なんか見せに来るって言ってたっけ。
82 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:51:45.50 ID:xn5KEQF7
「ところで…。」 「ん?」 「…クーお姉さま。全裸なのはなんとなく分かるけど、何で半透明なの…?」 …どういう意味だ。 っていうか…。 「…クーが見えるのか…?」 「見えるよ〜?」 "実は、かくかくしかじか…。" クーが簡潔に説明する。どうやらクーは見えたり見えなかったりするらしい。 「ほえ!ってことは、クーお姉さま幽霊なの!?」 "幽霊っていうよりは守護霊かな…。" …どっちにしても憑かれてるんですね。
83 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:52:38.98 ID:xn5KEQF7
"とりあえず、昨日の一件でアルミティちゃんと私は正式に義姉妹になることになったから。よろしくね。" 「えっ、えっ!わ、わかった!よろしくね!」 …朝から何の話をしてるんだ、こいつらは。 「それより、クルスが来訪者だったってことが驚きだよ〜!」 僕の首がこきっ!と心地良い音を立てて倒れる。 「…何で知ってるんだ。」 "かくかくしかじかの時に…。" …ばらすなよ。せっかく隠してたんだから…。 「最近ジュノでシャウトとかあったけど、身近な人が来訪者なんて驚きだよ〜。」 「…シャウトがあるのか?」
84 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:53:33.08 ID:xn5KEQF7
「うん!うはwww今日から俺も来訪者デビューwwwwwとか、来訪者LS作りました〜とか…。」 "…不用心だね…。命を狙われてるとも知らずに…。" 「…そうなの…?」 「まあ、リアルからアイテム持ち込んじゃったり変なアイテム作っちゃった人とかはな…。」 しばし、三人の間を沈黙が包む。 「…さて、出かけるか。」 「どこ行くの〜?」 「居住区の日用品売り場に。いくら幽霊だからって、全裸はまずいだろ…。」 "守護霊…。" 「…でも、普通の服じゃ服だけ浮いて見えるんじゃない…?」 「…僕に考えがある。」
85 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:54:28.10 ID:xn5KEQF7
で、居住区の日用品売り場。 「買ってきたぞ、クー。」 「…何それ…。」 「虚ろな布で織った半透明なメイド服。…なんか買うときにすっごい変な目で見られたが。」 「…そりゃ、ねぇ…。」 僕はそっとクーに服を手渡す。 「…ほんとに着せる気…?」 「なんだ、アルミティ。着たいのか?買ってきてやるぞ?」 「な、なんでそうなるの!?」 「自分で着るか、クーに着せるか!選択肢は二つだ!」 「えー!じ、じゃあクーお姉さま、着て…?」 "いいよ。" そう言ってクーは服に袖を通す。
86 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:55:24.24 ID:xn5KEQF7
"…似合ってる…?" 「んー、似合ってるけど…。」 「似合ってる!可愛い!」 "ありがとう…。" クーは頬を赤らめて照れた。 さて、買い物も済んだことだし…。 「アルミティ。」 「なーに?」 「格闘武器を持ってるんだからメインジョブはモンクなんだろうが…。」 「うんうん。」 「サポは何だ?」 「黒だよ〜。」 …何。 「見せてあげようか?サンドリア秘伝のSTR黒魔法。」 というわけで、東サルタバルタ。 「じゃあ、まずストーンからいくよ〜。」 「…うむ。」 なんか嫌な予感がするが。
87 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:56:20.77 ID:xn5KEQF7
「ストーン!!」 アルミティは拳を地面に叩き付ける! 飛び散った土がマンドラゴラに襲いかかる! アルミティはマンドラゴラを倒した!! "……。" ……。 「次はエアロいくよー!」 「…ウォータは?」 「まだ使えないよ〜。」 …まだってなんだ、まだって。 「エアロッ!!」 ビュッ!!と鋭い音を立ててアルミティの拳が突き出される! その瞬間、近くを飛んでいた蜂がグシャリとつぶれた! アルミティは蜂を倒した! 「…何をした、何を。」 「拳圧で風を起こしたんだよ〜。」 …拳圧だけであの威力かい。
88 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:57:11.30 ID:xn5KEQF7
「次はファイアいくよー。」 …大体ネタは分かる気がする。 「ファイアッ!!」 アルミティは拳に炎をまとい、近くの芋虫に炎を叩き付ける! アルミティは芋虫を倒した! 「……空気と拳の摩擦熱で火を起こしたってところか…?」 「そうだよ!よくわかったね〜♪」 …無茶苦茶だ。 「次はサンダー行くよ〜。」 「…ブリザドじゃないのか?」 「STR黒魔法はブリザドが一番難しいんだよ〜。」 …そうなのか。 「サンダー!!」 アルミティは拳に雷を纏い、ゴブリンに叩き付ける! アルミティはゴブリンを倒した!
89 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:58:03.21 ID:xn5KEQF7
"…静電気…?" 「そう!大気との摩擦で発生する静電気をぶつけるんだよ〜♪」 アルミティは嬉しそうに解説する。…これでいいのか、サンドリア…。 「次は一番難しいブリザドいくよ〜。」 そう言ってアルミティは近くの魚に向き直る。 「ブリザドッ!!」 アルミティは魚に掌を突き出す! 同時に魚の周りに氷塊が現れ、魚を打ち砕く! アルミティは魚を倒した! 「……今のは何をしたんだ…?」 「掌圧で気圧を急激に変化させて、大気中の水蒸気を氷にしたんだよ〜。」 …もう何でもアリだな…。
90 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:58:51.70 ID:xn5KEQF7
「じゃ、次はスタンいくよー。」 そう言ってアルミティは近くのヤグに近付いていった。 「スタンッ!!」 アルミティはヤグの首筋にチョップを叩き込む! メギィ!!と嫌な音を立て、ヤグは倒れた! アルミティはヤグを倒した! 「こうやって怯ませるんだよ〜♪」 …どう見ても首の骨をへし折ったようにしか見えないんだが。 "首のない相手にはどうするの…?" 「頭とか胴に適当にチョップだよ〜。」 …そんなの魔法じゃないやい。 「それじゃ、仕上げにメテオいくよ〜♪」 そう言うとアルミティは近くの巨大な岩に近付いていった。
91 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 13:59:47.13 ID:xn5KEQF7
「んぎぎ…!」 …無理無理。物理的に無…。 「せいやぁあッ!!」 アルミティは岩を投げ飛ばした! 岩はマンドラゴラに直撃する! アルミティはマンドラゴラを倒した! 「…。」 "…。" 「ふー、良い汗かいた〜♪」 …そりゃ、あれだけ暴れればな…。 「じゃ、最後にウォータするよ〜。」 …そういえば飛ばしてたな。 「ウォータッ!!」 アルミティはマンドラゴラに向き直り、拳を突き出す! ほとばしる汗がマンドラゴラを貫く! アルミティはマンドラゴラを倒した!!
92 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 14:00:47.10 ID:xn5KEQF7
「…STRウォータがまともな技に見えるのは何故だろう…。」 "サンドリア七不思議の一つ…?" 「さて、準備運動も終わったし!どっかいこー♪」 「そうだな…。どこへ行く?」 "最近アトルガンって場所に行けるようになったみたいだし…。行ってみない…?" 「んだな。じゃあ、アトルガンに向けて出発!」 「おー!」 「あ、STR白魔法もあるんだよ〜?」 「もういいっ!」 僕たちの冒険は続く。
93 :
既にその名前は使われています :2006/05/24(水) 14:06:08.73 ID:EPk5sUas
クソワラタwww
94 :
よんスレ352 :2006/05/24(水) 14:17:53.39 ID:xn5KEQF7
と、いうわけで。 第一部「リアルに戻る手段を探してみるにゃー」完結です_(._.)_ アトルガン買ってネタを仕入れたら、第二部「僕たちはやっぱり冒険者にゃー」いきます。 で、自己紹介。 初出: よんスレ352 PC(仮)名:クルス・ルクスス / 中の人:よんスレ352 種族フェイス:タル♂F8A(アルミティはエル♀F4A、クーはミスラF6A) ジョブ&Lv:赤75/暗37(アルミティはモ/黒レベル不明、クーはナ75/忍37) 特記事項:クーというミスラの幽霊に取り付かれている。アルミティはフェロー。モグハのモーグリはドM。 活動エリア:大体ウィンダス。 あらすじ:ある朝気付いたらタルタルになっていた! 来訪者だとバレたら大変!いつも通りの生活を心がけるも、他来訪者のデジョン痕から変なところに落ちてしまう! そこで黒マントのクーと出会い、死闘の末友情が芽生える! 変なところから何とか脱出し、シャントット邸に向かうも、そこでりーどと赤鎧のバトルに巻き込まれクーを斬られてしまう! 悲しんでいたらクーは幽霊となって復活!更にフェローのアルミティと合流! ミスランメイド(幽霊)とSTR黒魔道士のアルミティと共に僕は新たな旅に出る! 他キャラとの接触:りーど、めいみぃ
95 :
既にその名前は使われています :2006/05/24(水) 18:24:11.50 ID:JMtfY11z
アルミティにはこれはがつかえるだろう STRトルネド 腹筋を高速で引っ込めて真空の塊を作りそれをまた腹筋の力で押し出し攻撃する魔法 左右の腹筋の力が均等でないと真っ直ぐ飛ばない
96 :
既にその名前は使われています :2006/05/24(水) 19:26:10.29 ID:JMtfY11z
ほとんど首なしクー
初代から見ていて長い間ロムってましたが、 最近なんだかムラムラしてきたので俺も投下してみますw
ウウウウ…… 机の上に置かれたノートパソコンのモーター音が静かな部屋に鳴り響いている。 先ほどまで雨が降っていたせいか、異様に部屋が蒸し暑い。 木造2階建てのボロアパートに住んでいるのでエアコンなどは一切設置されていないのだ。 壁に吊り下げられた時計に目をやる。もう12時だ。 さきほどから息苦しいという程ではないのだが、水中に潜っているかのような圧力を感じていた。 胸を押さえつけられているような感覚さえあった。 特に何をするというわけではなく、椅子に深く腰掛けたまま俺はぼーっとしている。 目を閉じて腕を組み、この不思議な感覚の原因は何かと考える。 もしかして体のどこかが悪いのだろうか? 冷蔵庫を開け、中に入っていたペットボトルの麦茶をコップに注ぎ、一気に飲み干した。 しかし心臓の動悸は治まらない。寧ろだんだんと激しさを増しているような気がする。 その時、背中に気配を感じた。 ただの人間では在り得ない、心を見透かされるような不思議な感覚。後ろに、ナニか…いる。 そして俺は振り向いてしまった──
パチパチパチ…… 火の弾ける音が聞こえる。俺は一瞬、何が起こったのか分からなかった。 振り返るとそこには見慣れたいつもの部屋はなく、まったく異質な空間が広がっていた。 ヨーロッパ風の高級感あふれる洋風の一室。正面にある暖炉からは炎が鳴り続けている。 もしかしてこれは…。正面に向きなおしてみても、その奇妙な光景から逃れられることはなかった。 心臓は依然激しく鼓動している。しかたなくその場に立ち上がり、辺りを見回してみる。 すると机の上に先ほどまで使っていたノートパソコンを見つけた。 ノートパソコンは部屋に並ぶ他の雑貨に比べてみるとかなり異質な存在に思えた。 「…ご主人たま、どうしたクポ?」 俺の目の前にパタパタと白い子豚の様な生き物、モーグリがフワフワと飛んできた。 ああ、ついに俺はFF11の世界、ヴァナ・ディールに入ってきてしまったようだ。 そう理解した途端、状況を飲み込むと同時に俺の心臓の鼓動ははさらに加速した。ゾクゾクする。 たしかこの世界での俺の名前はレグナス。金髪でイケメンの量産型、F4ヒュームだ。 「なんでもないよ。」 俺の生活は日常から非日常へ移り変わっていったのだ。 ただノートパソコンだけは普段と変わらず、規則正しくモーター音を鳴らしていた。
スレの内容によると、この世界の住人でないと知られた者は変な集団に命を狙われるらしい。 この俺が負けるとは思えないが、いや、まだこの世界での戦い方が分からない以上負けるかもしれない。 俺は黒魔道士様だ。まず魔法の撃ち方をまず知るべきだろう。話はそれからだな。 少なくとも今はたとえモーグリでも、俺がこの世界の住人でないことを知られるわけにはいかない。 「ちょっと出かけてくる。」 「クポ。」 とにかく一旦街の外にでも行って適当にモンスターを蹴散らしてくるか。 ここはヴァナの中心に位置し、多くの冒険者たちの拠点でもあるジュノだ。 モグハウスが並ぶ見慣れない居住区を抜ける。そしてしばらく歩いていると、 画面上でも見たことがある場所に出た。目の前にスペースにはガイドストーンが建てられている。 しかし、本当にこの世界がFF11の、ゲームの中なのだろうか。この街並みは臨場感を凌駕してる。 そこに存在しているというレンガの主張が肌に伝わってくる。 ただ、慌しくこの通りを走り抜けたり、眠りながらバザーしている冒険者と呼ばれる者たち、 一般のプレイヤーと思われる彼らからは生きているというを感触がなかった。 俺は他の冒険者同様、無表情で慌しく、ロランベリー耕地を目指してその場を走り抜けていった。
長く続くのかは分かりませんが、よろしくーw 初出:7スレ97 PC(仮)名:レグナス(Regunasu)/ 中の人:レグナス ◆/abMGvkWxE 種族フェイス:ヒュームF4 金髪 ジョブ&Lv:黒魔道士75 特記事項:ルックスもイケメンだ 活動エリア:ジュノ周辺 あらすじ:振り返ると、そこはヴァナ・ディールだった 他キャラとの接触:なし 独自レギュレーション:実は世界設定そのものが他の作者とは異なる、かもしれない
102 :
既にその名前は使われています :2006/05/24(水) 20:25:26.12 ID:JMtfY11z
新たな犠牲者乙!
103 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/24(水) 20:31:54.11 ID:6PQRFgVu
>>95 クーちゃん復活(?)キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
STR白魔法もきになりますw
ただ、STR魔法ってMPなくても使えそうな気が・・・wHPへりそうだけどw
STR白魔法ホーリー。
秘孔をつくことにより聖なる力で対象をあべしっ!と爆発させる。
STRホーリーの前ではジャイアントもただの肉の塊にすぎない。なんてねw
>>101 新しい犠牲者万歳!w
私もご主人たまなんて呼ばれたかった・・・w
いまさらですが新スレ立て乙です〜!
>>13 あんな拙い落書きでよろしければヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ
STR黒魔法わろすwさすがのーきん! 新犠牲者も増えて更にわっふるが加速!!
キャラテンプレ&続き投下しますー。
初出:4スレ185
PC(仮)名: メイミィ / 中の人: 185
種族フェイス: ミスラF2B
ジョブ&Lv: 忍者75/戦士37(サポは色々ある模様)
特記事項: リードに恋心など抱いている模様?
活動エリア: ウィンダス
あらすじ: 朝起きたら自キャラ→忍術の使い方がわからないので
ウィンダスの人に聞き込むもわからず→忍術練習中にリードと出会う→ 翌日リード、ロックと共に
シャントット博士の家に行くと赤鎧に襲われる→サンに力を与えられ赤鎧撃破(ほとんど何もしてませんが)
他キャラとの接触: リード、ロック
独自レギュレーション: 魔法・忍術はTab変換語を頭に思い描き念じて使います。
わたしは飛空挺乗り場までの道のりをただひたすらに走った。 神風のように駆け抜けるわたしを、道行く人々が興味津々の様子でじろじろ見つめてくる。 見たければ見ればいい、笑いたければ笑えばいい。 ただリードに会いたいという一心で、わたしの足は有り得ないほどのスピードで体を運んでいた。 ほとんどドリフトする勢いで曲がり角を曲がると、飛空挺乗り場が見えた。 飛空挺は……まだ船着き場に停船している。 まだ間に合う!と、よりいっそうのダッシュをしよう、としたところで―― 船が、ゆっくりと走り出した。 (うそでしょ…やだっ…!) なんとか止める方法はないかと考えるが、既に出発してしまった船はもう止めることは出来ない。 飛空挺は海上で十分に加速すると、離水して大空に飛び立っていった。 間に合わなかった…… わたしはその場にがっくりと膝をついて、子供のように泣きじゃくることしかできなかった。 何故石の区で別れるときに自分の気持ちを言わなかったのか、 何故もっと早くリードのモグハウスを訪ねなかったのか、何故もっと速く走れなかったのか… そう、自身の無能さを呪いながら。
涙が涸れるまで泣いたあと、わたしはとぼとぼとモグハウスに戻った。 「ただいま…」 「おかえりクポ〜、……ご主人様…どうしたクポ…?」 モグが心配そうに問い掛けてくるのも当然だろう。 目は泣きはらして真っ赤だし、せっかく洗ってきれいに畳み、持ち主に返すはずだったガンビスンも そのまま持ち帰ってきているのだから。 「わたし、当たって砕けることもできなかったの…バカみたい、だね」 無理やりに笑みを作ってモグに笑いかける。 すると、モグは羽をぱたぱたと一生懸命に動かして少し高く飛び、わたしの頭をかかえるように抱き締めて 、 小さな手で頭をよしよしと撫でてくれた。 涙はさっき涸れたはずなのに、それだけでわたしは再び大声を出して泣き出しはじめてしまった。 モグは、わたしが泣きやむまでずっと優しく頭を撫でていてくれた。 すっかり泣き疲れて眠くなってしまい、この日はそのままモグをぎゅっと抱き締めて眠った。 人肌の暖かさが安心させてくれたのか、わたしは朝までぐっすりと熟睡していた。
いつの間にかわたしの腕の中から抜け出して朝食の準備をしてくれたらしいモグが、わたしを優しく揺り動かして起こした。 「ご主人様、朝クポー。…朝ご飯、食べられるクポ?」 「…ん……食べる」 本当は食べたい気分ではなかったが、せっかくモグが作ってくれたのに食べなかったら失礼だろうと思い、 のそりとベッドから起き上がってテーブルについた。 「いただきます」 ぼそぼそと食事を始めるわたしを、モグが心配そうに見つめている。 しばらく黙っていたあと、あの…とモグが話を切り出したので、フォークを動かす手を止めて話に聞き入った。 「ご主人様…モグは深くは聞かないクポ。でも、ご主人様を泣かす男は、モグは嫌いクポ。 そんな男忘れちゃって、普段のご主人様に戻るクポ!モグはご主人様の笑顔が見たいクポ」 元気づけようとしてくれているのが全身から伝わってきて、嬉しかった。 「ありがとう。すぐには無理かもしれないけど、立ち直れるように頑張るよ」 その返答に満足したのか、モグは少し心配が和らいだ表情で朝食に手を付け始めた。
食事を終えると、わたしは早速旅の準備を始めた。 着替えや洗面用具、飲料水などを鞄に詰め込む。 「ご、ご主人様…?どこに行くクポ?まさか…」 「追いかけに行くんじゃないよ。今更行っても行き先もわかんないし…どうせ会えないよ」 会えたとしてもどんな顔をして会えばいいかわからない。 そもそも、黙って出発してしまったということは、彼はもうわたしに会う気はないのだろうし… そう考えると、また涙がじわりとにじむ。 「…気晴らしも兼ねて、旅することに体を慣らしたいと思っただけ」 必要な物はあらかた詰め終え、涙を飲み込んでモグに小さく笑む。 「そうクポか…行き先は決まってるクポ?」 「うん、ジュノまでチョコボで行ってみようかなって」 多数の冒険者が集まる街ジュノに行けば、色々な情報が聞けるかもしれない。そう考えての行き先決定だった。 「わかったクポ!荷物をまとめて、呼び出しがあればすぐジュノのレンタルハウスに向かえるようにしておくクポ」 「うん、よろしくね」
「そうだ、これを持って行くクポ」 モグは金庫の中をごそごそと探り、黒パン、干し肉、山串、スモークドサーモン、菱餅等の 日持ちのしそうな食事を取り出して手渡してきた。 わたしの意識が入り込む前の“メイミィ”が旅をするときのために、あらかじめ準備がされていたらしい。 「わ…ありがとう」 「いえいえ、モグお手製料理を旅先でも味わって欲しいからクポねっ♪」 モグが嬉しそうにその場でくるくると回る。 「大事に食べるね」 そう言うと、モグはクポクポと鼻歌を歌いながら更に回転速度を速めた。 見ていると目が回りそうだ。 モグがくれた食事を大事に鞄にしまい込み、鞄の口を閉じる。 たくさんの荷物を詰め込んでいても未だぱんぱんにはならず、しかも重さや大きさを感じさせない。 さすがゴブリン自慢の鞄というべきか。どういう仕組みなんだろうか?
「じゃ、行ってきます」 「行ってらっしゃいクポー!夜更かしはだめクポ、それから知らない人についていかないようにクポー!」 モグの見送りの言葉に、わたしは子供ですかと心の中で突っ込みながら、苦笑いでモグハウスを出た。 居住区を抜け、ダルメル牧場の横を通り、門前広場を通過して森の区のチョコボ屋へと入る。 チョコボ屋に代金を払うと、すぐにわたしの背丈に合った大きさのチョコボがあてがわれた。 「よろしくね」 チョコボの頭を一撫でして、わたしは一路ジュノに向けて走り出した。 チョコボはどんどん走る。 マンドラゴラがよちよちと歩き、兎が飛び跳ねるサルタバルタの平和な風景をどんどん走り抜けていく。 速い速い!体を撫でる風がとても気持ちいい。天気もいいし、まさにドライブ?日和という感じだ。 サルタバルタを3分の2ほど越えたあたりで、大きな岩が行く先を塞いでいたため 横を通り抜けようとすると、前方からチョコボに乗った人影が現れた。 わたしと同じように岩を避けようとしたらしい。 (危ない、ぶつかる――!) 避けようとするが、間に合わずに正面衝突した。そのまま落鳥して倒れこむ。 「いたた…」
とりあえず以上となります。
112 :
既にその名前は使われています :2006/05/24(水) 21:18:30.26 ID:JMtfY11z
かどでひとにぶつかるのは新キャラが登場する合図であるってばあちゃんが言ってた メイミィさんはF2なのか なんかしらんがかってにF5だと思ってたぜ
113 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/24(水) 21:31:18.23 ID:z79ixn1x
皆様、投下乙でございます。 もうすぐ帰れそうだったり復帰されたり新たに取り込まれてしまったり新しい恋の予感だったり。 わっふるでございます。
応接間の暖炉で薪がはぜる。 俺たちはハルヴァーを交えた四人でテーブルを囲んだ。 卓上にはミルクティーとお茶請けの菓子。 サンドリアの民は、機会があるたびに茶を喫する。そういうお国柄なのだ。嫌いじゃない。 デュエルとハルヴァーの妹は久しぶりに女性同士でなにやらとかで、そわそわと退室していった。 ・・・血がつながってるとはいえ、同じ部屋に似たような顔が三つも揃うと妙な気分だ。 そんなことを思いつつ、俺は来訪者になってからフェイトだった時期、そして今までの経緯を説明した。 説明が終わったのは、機械仕掛けの壁時計が鐘を十回鳴らし終わった頃だった。 ハルヴァーとラールの反応は冷静だった。 話の途中でいくつか応答を交わし、その度にふむ、わかった。と頷いた。 一方、シャールカーンは大ショックを受けていた。 記憶にあるリスト(焼却済)の名前を俺が列挙したら、見事にヒットしたらしい。 「・・・ユリフィナさん・・・来訪者だったなんて・・・」と、ブツブツつぶやいている。 キミをていよく袖にしたタルタルの事なんか忘れてしまえ。 「てっきり、宰相として逮捕するとか言うのかと思ったよ」 「リードをボストーニュ監獄なりギロチン台なりに連れて行くことで、 死んだ者が生き返り、神を名乗る者どもが滅び、世界があるべき姿で丸く治まるものなら、な。 重要なのは、これからどうするか、ということだ」
「リード、お前はこれからどうするつもりだ」 ラールが腕組みをしたまま、俺を見やる。 「他の来訪者同様、“リアル”とやらに帰る道を探すのか?」 いや、と俺は応え、ティーカップに視線を落とした。 「・・・俺は、帰れない」 フェイトは、正義と秩序を体現するひとつのカタチだ。 理屈ばかりこねまわして、何もしようとしない連中には吐き気がする。 例え短絡的な暴力だと蔑まれても、手を汚す人間が必要だと信じている。 とはいえ、リアルには決して帰れない事実を知り、どこか自棄でフェイトに参加したことも事実。 憎かった。この世界が。すべてが。自分自身が。 今はどうだ? いったん記憶を失い、あらためてヴァナを見てまわり、あらためて来訪者と触れ合った。 今は、言葉にならない別の想いが俺を突き動かす―――。 意を決して、顔を上げた。 「俺は“門”を破壊する。このヴァナ・ディールとリアルをつなぐ道を、断ち切る」
―――想像してほしい。 ヴァナ・ディールとリアル、二つの世界がトンネルのような道で繋がっている。 そして、その道に“門”を設け、管理することでヴァナに干渉する存在がいる。 “あの男”と、その組織だ。 だが、「完全な管理」というものは存在しない。 稀に、何かに呼び寄せられるように、一方通行の“抜け道”を通り抜けてきてしまう者がいる。 それがイレギュラー、“来訪者”だ。 門を管理することで距離を保っていたはずの、二つの世界が徐々に近づきつつある。 同時に、同じ場所に、複数の世界が存在することは不可能。 重なり合ってしまった世界には、混沌回帰あるいは対消滅の運命が待っている。 引力増大の原因が、リアルから持ち込んだ物品や知識の、ヴァナに対する影響によるものだとしたら。 “あの男”は門を閉じることを拒否した。手にしたオモチャを失いたくないから。 門を閉じてしまっては、ヴァナを支配できないではないか。 だから、対処療法的に不正な存在を次々潰して回る事を選んだ。 俺は、門を破壊し、二つの世界を分断することを目指した。 リアルはリアル、ヴァナはヴァナ。 だがそれは、すでに在る来訪者はヴァナに取り残されることを意味する―――。
117 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/25(木) 00:11:11.01 ID:QvA/NIqD
今夜の投下は以上です。
118 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/25(木) 06:07:21.76 ID:QvA/NIqD
おはようございますage
そんな訳で、俺の旅は始まった。 一日三本しかない船を待ち続けていると、他の船客もやってくる。 その船客というのが、これまた妙な連中ばかりだ。 ド派手な甲冑を着て、えげつない武器をぶら下げていたりして なんていうか百鬼夜行の地獄絵図だ。 なんだか鬼ヶ島から出航する気分になってきた。 で、客室代わりの貨物室に乗り込むと、連中はいそいそと青い服に着替え出す。 ああ、釣り着ってやつだな。 俺も欲しいと思ってたんだが、いけ好かない競売所じゃなければ手に入らない。 しかし……そのカブトは脱げよ。センスというものが無いのか、おまえら。 それに、どこの戦に行くのかという格好をしていながら、 船に乗って海釣りという訳か。なんだかよく判らん連中だ。 と、連中は俺に気がついてジロジロ見る。 ああ、そうか。このリュックはやっぱりまずいかな。 あのゴブリン共と同じリュックだし、ゴブリン共はこいつらの敵だし勘違いして…… ……ん?連中が何か尋ねてくる。なに?幾らで買えるのか?どうやって作るのか? やれやれ、珍しけりゃ何でも欲しがるのかよ。
そして、船が出航して連中は甲板へと飛び出していき、俺も又それに習う。 顔に当たる潮風が実に気持ちいい。 いけ好かない連中ではあるが、冒険者達が釣りをしている光景は実にのどかで…… と思ったら、ときおり連中は呪文を唱えて自分に魔法を掛けている。何やってんだ? 場所をわきまえろよ。風情が台無しだ。 しかし、こんなことなら釣り具を持ってくるべきだったか。 と思ったら、リュックの中に入ってた。 ははあ、ゴブリン共が気を利かせてくれたな。 と言うわけで、売店に行って釣り餌を買い俺も釣り糸を垂れてみた。 潮風を浴びつつ釣り糸を垂れ、時を忘れて長い船旅を楽しむ。 実に良い旅になりそうだ。旅に出て良かった。 おお、ウィンダスの馬鹿でかい木が見える。 こんな距離からでも見えるなんて、でかすぎるのも大概にすべきだ。 などと笑いながら……お、何か掛かったな。鰯かな? お、カニ。 あのウィンダスの草原で見る奴と同じだ。もしかして、これは当たりかな? どうしよう、解体して喰ってみようか。い、痛い。こいつピンピンしてやがる。
痛て、痛ててて。なんだコイツ、俺の敵じゃないはず…… 痛い痛い痛いっ!うわ、蟹のくせに、なんでこんなに強いんだ! あ、ああ…… もうだめだ……やばい……ここで倒れたら水の区送り……旅が振り出しに…… って、ここまで来るのか?例の奇特な人は…… ……。 はっ!! と、気が付くと俺は元の船の上で気が付いた……あれ、水の区じゃない? 慌てて飛び起きてキョロキョロすると、一人の妙な女が側にいる。 普通の人間と似たようなヒュムとかいう種族のはずだ。 しかし……その格好と言えばド派手な白と赤の衣装で、まるでピエロだ。 そして俺に言う。大丈夫?少し休んでなきゃダメだよ、と。 聞いてみれば、何とか言う魔法で俺の息を吹き返してくれたらしい。 魔法は正直いって好かないが、しかし水の区送りにならずにすんだのだ。 この場は礼を言うしかないだろうが…… やっぱり妙な格好だ。
で、あんたがいつもの水の区まで運ぶ奇特な人か、と訪ねると、 何それ?とか言ってクスクス笑ってやがる。 なんだコイツ、格好も妙なら中身まで妙な女だ。 聞いてみると、白魔導師とかいって冒険者の一人らしい。 傷や病気を治したりする専門家だそうだ。成る程、それで包帯の白と血液の赤か。 そうはいってもセンスが無いなぁその格好……と見てたら、 今度は例の紅色の頭巾を取り出して着替えだした。 これこれ、女がこんな所で服脱ぐな。やっぱり着替えても悪趣味だし。 まあ……中身はなかなかいい女なんだがなぁ。 腰にぶら下げたトゲトゲの凶悪な武器も気になるし、 ホントに治療が本領の白魔導師かよ。 で、船釣りは危険だから止めた方が良いよ、と俺に言う。 はいはい、と聞いていたが、それなら警備兵ぐらい乗せておけよ。 見ると乗組員は一人だけが舵を回しているだけだし、あとは売店の姉ちゃん二人。 船客の身の安全まで関知しません、か。やっぱりここは物騒な世界だ。 そんな事を考えていた矢先……げぇっタコ!タコだタコ!! おい姉ちゃん!後ろにタコだ!タコ!それもキングサイズのタコだっての!
しかし白の姉ちゃんは慌てない。 って落ち着いてる場合か!てめぇの体よりでっかいんだぞ! おい、そっちにいる剣を吊したにーちゃんを呼んできて…… だぁーーーーッ!!こっちに気づいたと思ったら、見て見ぬふりで釣り糸垂れてるし! もう俺はどっちに逃げていいか判らず、あたふたと周りを見渡していたら、 城の姉ちゃんが心配いらない、とかいって腰の武器を引き抜きタコ目掛けて殴りつけた! (バキンッ) うお……こんなでっかいのに喧嘩売る気かよ! おい!(バキンッ!) 無茶を(バキンッ!) するなと(バキバキッ!) 言ってるのが(バキバキバキッ!!) 聞こえねぇのかお前はっ!!殴るの止めろ!タコが死んじゃう!死んじまう! (バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキッ!!!) 猛烈に殴りつけながら、振り返って俺に言う。 この棍棒、殴り始めたら止められないの、て…… この女……笑ってやがる……怖えぇ……
124 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/05/25(木) 06:34:07.44 ID:0s68UbxL
とりあえず、ここまでっす。
125 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/25(木) 07:05:25.91 ID:QvA/NIqD
ピエロみたいな格好で、トゲトゲバットで撲殺してニヤリと笑う女・・・。 こ・・・こえぇ・・・ (゜△゜;)
126 :
既にその名前は使われています :2006/05/25(木) 08:28:59.58 ID:s+2O2/En
クラクラ臼魔テラオソロシスw
127 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/25(木) 08:48:18.05 ID:cUQ98/ew
>>111 新たな出会いキッ!( )キタ(. ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!( ゚∀゚ )キタ━━━!!
>>117 え?私が悪者?w
世界を丸ごと巻き込むすごい話になってますね〜
>>124 臼姫様憧れる・・・w
タコのミンチの完成ですねwwwこえぇ・・・w
「それじゃあ、ユリフィナちゃん。準備が出来たら魔法陣の真ん中に行ってね。」 「うん。」 私はこくりと頷いた。あぁ、もう・・・もうみんなと一緒にいられるのはこれが最後なんだ。 さっき、覚悟は決めたのに・・・やっぱりさびしい・・・。 あっという間に私の瞳は涙でいっぱいになった。私は、しゃくりあげないために唇をギュッとかみ締めた。 「みんな・・・今まで・・・今まで本当にありがとう・・・。」 すぐに後悔した、口を開かなくちゃ良かったって。嗚咽が一度漏れ、そしてそれは止まらなくなる・・・。 あーあ・・・もう止まらないんだろうな・・・。モグタン、私は本当に泣き虫だよ。 もう一度だけでいいから、ぎゅっと抱きしめさせて・・・。そして、私のことをやさしく抱きしめて。 いつものようにその場に座り込んでボロボロ泣き崩れる私に、つかつかとユファファが近寄ると、 私の頭をこぶしでコツンと軽く叩いた。 「もう、本当に泣き虫ね。ずっと年下のユファファも泣きたいのを我慢してるって言うのに。」 「・・・だって。」 口答えをしようとした私にもう一度こつんと頭にこぶしが落ちる。 反射的に頭を抱えた私を見つめている彼女のツリ目の目尻が少しだけ優しげに下がった。 「冒険者はね、出会いが異常に多いでしょ。たくさんの初めて会う人と同じ目的のために何時間も旅をして、 モンスターを狩るなんて事も日常茶飯事。」 コクリと私は小さく頷く。
「で、出逢った後には必ず何かしらの形で別れが来るの。今の私達みたいにさ。」 「・・・うん。」 「その時に私達はまず最初に『ありがとうございました。』ってあなた達のおかげで無事に目的を果たせましたって お礼をいうの。そのあと、偶然にでももう一度その最高の仲間達にまた会えるように女神様への祈りをこめてこう言うわけ。」 ユファファは一呼吸を置いてすっと右手を差し出した。 「『また会いましょう』ってさ。私達はまたどっかで会えるって。だからもう泣くなよ。」 彼女は猫を被らず、初めて出会ったときのように男らしくニッと笑う。 「・・・ユファファ、また会おうね。」 私はまだ少し涙目のままだけど、それでも彼女のように力強い笑顔を精一杯作った。 そして彼女の座り込んだ格好のまま、右手をギュッとにぎりしめる。すると彼女もその手を握り返してから楽しげに微笑んだ。 「空に浮いてる庭園に行ったり、タブナシア行ったり、訳分からない鬱な世界にもいけるんだもの。 ユリフィナのいる世界にだってそのうち行けるようになるかもね。」 「もし、そうなったら真っ先に私のところに来てね。」 「もちろん。」
リポケケもテクテクと私のほうに歩いてきて二人の手に自分の手を重ねた。 彼女の目には既に限界突破しそうなほど涙がたまっていた。 一緒に怪しいシチューを飲みに行った事は、ヴァナディールの思い出でも特に印象に残っているよ。 「あたしもまっさきにユリフィナに会いに行くよ〜。だから、また会おうね〜。」 アリアちゃんもその手の上にそっと右手を重ねる。 「私もそれまでに腕を磨いておくからね。色々と♪たのしみにしててね。まったね〜。」 なんとも不吉なことを言いながらニヤリと微笑む。最後までこんななのかこの人は・・・。 帰ったら前にもまして夜道には気をつけよう・・・。世の中にはいろんな人がいるんだ・・・。 一番影が薄いなんのためにいるか分からなかったオヤジさんもその上に毛深い手を差し出した。 「今度会うときはもっと話したいものだ。また会おう。」 私は全員の顔を見回し、そして元気よくこう言った。 「みんな、また会おうね!」 全員が深く頷いた。
みんなの手が一つずつ離れてゆき、ついに全ての手が私の手から離れた。 彼女は何かを思いついたらしく、子供みたいなイタズラっぽい笑顔になった。 「この調子じゃ仲のい〜いモグタン君と別れるときなんて相当泣いたんだろうね。」 思わずどきりとして耳の先まで熱くなるのが自覚できた。 「な・・・べ、・・・ちょ・・・おま・・・。」 色々と一気に言おうとしてもんのすごく舌がもつれた。はい・・・おっしゃる通りでございます・・・。 大声で思いっきり泣きました・・・。 彼女は真っ赤になって思わず口をつくんでしまった私を見てニィッと笑った。 みんなもそんな私を見て少しだけ頬を緩める。 「あはは、いいんじゃない?それだけ寂しがってくれればきっと彼も嬉しいよ。」 ちょっとだけ照れくさそうにモグタンがくれたネックレスがきらめいた。
「よーし、泣き虫さんも元気になったことだしアリア、ちゃちゃっとはじめちゃおう。」 スタスタとユファファが魔法陣の外へと向かって歩き出した。 「ちょっとまってね、カーディアン回収するから。」 アリアちゃんは逆に魔法陣の中心に歩いてゆくと、 ぐったりとしたカーディアンをズルズルと魔方陣の外へと引きずってゆく。 私はリポケケから静かに離れて、何もなくなった魔法陣の中心へとゆっくりと歩いていった。 そういえば、今更といった感じだけどダテレポが発動した後のユリフィナさんの体はどうなるんだろう。 あのカーディアンのように中身がなくなる・・・つまり死んでしまうのだろうか? ・・・いや、ユリフィナさんの体も、心も、思い出も・・・全部あるべき場所はヴァナディールなんだ。 そして私、由梨のあるべき場所はリアル、地球の日本だ。きっと私は帰れる。 そしてユリフィナさんはユリフィナさんとしてヴァナディールで生活できるんだ・・・。 きっとそうなんだ。黒マントが言った同化だなんて関係ない!私は、私だ・・・! みんなは魔法陣の外に、私は魔法陣の中心に立つ。 準備が整ったことを確認してアリアちゃんが再び優雅に右腕を天に掲げる。 「それじゃあ、はじめます。」
先ほどのように、腕輪からか伸びるオレンジの光が宝石から魔方陣に向かって流れ込み、 オレンジ色に輝く魔方陣が完成する。そして私の周りに光の柱が完成する。 地面のほうから魔力が天に向かって流れ出し、ヒーラーブリオーの裾と髪の毛をはためかせ、 モグタンがくれた銀のネックレスをふわりと少し浮かせた。 あぁ、ついに私は帰れるんだ・・・。順調に先ほどと同じように発動されてゆくダテレポを見ていて、 不安がどんどん消えてゆく。だから言ったじゃない黒マント、私は由梨だって。 役目を終えた時空魔法のアーティファクトが静かに砂へとなってゆくのが見えた。 あ・・・ごめんねアリアちゃん。貴重な研究材料が壊しちゃったみたいで。 リポケケもユファファも必死にブンブンと手を振っている。アリアちゃんも静かに微笑んでいる。 完璧に出オチだったオヤジさんは右手の親指をグッと立ててウインクをしている。ダサッ・・・。 私もみんなにもう一度お礼を言わないとな。 ブチィッ!と何かが千切れる音が私の体の中で響き、 全身を真っ二つに引きちぎられるような耐え難い激痛が私を襲った。 「あああああああああああああああぁああああ!!!!!!」 私の悲鳴を聞いてみんなの表情が一瞬凍りついたかと思うと、一気に真剣なものになった。
以上となります。 そう簡単には帰しませんよ?w それでは皆様わっふるわっふる!
135 :
メイミィ-185 ◆ajBPG2hnCs :2006/05/25(木) 12:03:38.71 ID:mhMmoMGg
クラクラ臼姫テラコワス(´;ω;`) リードさんは帰れないのですか…なんか切ないです。 ユリフィナさんはどうなるのかdkdk…裂けちゃった?(((( ;゚Д゚))) では投下します。
落ちるときに受身を取ることを体が覚えているらしい。 落ちたときの衝撃で痛いことは痛かったが、怪我はどこにもしていない。 辺りの様子を見回すと、ぶつかった相手もチョコボから落ちてうつ伏せに倒れている。 そしてわたしと相手が乗っていたチョコボ2羽は、思い切りぶつかってしまったことで パニックになったのか、どこかへ走り去ってしまったようだ。 「あ、あの…ごめんなさい、だいじょうぶ?」 ぶつかった相手に歩み寄る。どうやらミスラのようだ、ふさふさした尻尾が生えている。 白いチュニックを着てフードを被っているので、耳は見えないが。 「いったたた……もー、どこ見て走ってんのさ?」 ミスラはぶつぶつ言いながら起き上がり、こちらを軽く睨み付けた。 フードの中の燃えるように紅い髪が、さらさらとなびく。 「ご、ごめんなさい」 「んー…どうしよっかな。チョコボも逃げちゃったし……許さないこともないけど…」 「けど…?」 続きを促すと、ミスラはにぃーっと笑って言った。 「そうだな、これも何かの縁だし、僕の仕事を手伝ってくれない?そしたら許すかも」
「仕事…って?」 「僕ね、ジュノで服屋さんやってるんだ。今日は布や糸を仕入れにウィンダスまで来たの。 で、キミには僕の荷物運び役をやってもらおうかなーって」 なるほど、事情はわかった。 丁度ジュノに向かおうとしていたところだし、ついでに荷物運びをするぐらいはいいかな、とも思う。が。 なんだかぶつかったことにはわたしに全面的に責任があるような言い分の彼女に、むっときていた。 「考えさせていただけます?」 少し嫌味っぽくそう言うと、ミスラは泣き出しそうな表情を作る。 「えっ……ひどい…僕を傷物にしておいて、そんな無責任なこと言うの? いいよ…イヤなら断ったって。でも、そしたらキミを一生呪っちゃうからねっ!」 とうとうしくしく、と手で顔を覆って泣き出すミスラに根負けしてしまった。 「わかった、わかりましたっ。荷物運びでも何でもします、それでいいですか?」 「…言ったね?」 顔を覆っていた手をはずし、にやりと笑う彼女の表情を見て、わたしは嘘泣きにだまされたと気付いた。 「ありがとっ、僕はトトっていうんだ。よろしくね!キミは?」 「…メイミィです…」 かわいい名前だね、とほめられても、ちっとも嬉しくなかった。この食わせ者ーっ!
「じゃ、さっそくウィンダスの裁縫ギルドに向かおっか。チョコボには降ろされちゃったし、急がなきゃ」 トトは当然のようにわたしの手をとり、さっさと歩き出した。 ずんずんとわたしを引っ張って進む彼女をじっと見つめてみる。 背が高い。少なくともわたしよりは。見つめ合うなら軽く見上げないといけないくらい。 白地に金と薄紫の模様が入ったチュニックを着ていて、ゆったりめのズボンを穿いた脚はすらっと長い。 髪は真っ赤で、真ん中でざんばらに分けているようだ。 瞳の色は赤茶色、いたずらっぽいつり目をしている。 なんというか、中性的な印象を受ける。でも、睫毛は長くて目も大きくて、すごくかわいい顔だと思う。 いいなぁー…とじろじろ見ていたら、とうとう気付かれて、にやにやしながら 「何見てんの?メイミィのえっちー♪」 と、からかわれてしまった。 「えっちじゃないです…うらやましいだけですっ。脚は長いし、かわいいし」 小さく反論すると、トトは少し傷ついたような表情をした。 どうしてだろう、ほめているつもりなのに。
「…自分のほーがかわいい女の子〜って顔とカラダしてるよ」 不意にむぎゅっと抱きつかれる。 「え?ちょ、ちょっと…やめてくださいーッ」 いくら女同士といえど気恥ずかしくて、わたしは手足をじたばたさせてもがいた。 トトは意外と力が強く、いくらもがいても離してくれる様子はない。 「えー……、うーん、どうしよっかなぁ。 そうだな、敬語、他人行儀だからやめてよ。敬語やめるなら離してあげよう」 「わ、わかりま…じゃなくて、わかったから離してっ」 そう言うと、ようやく体を開放してくれた。 トトには調子を狂わされっぱなしだ。涙目で睨みつけるが、まったく効いていない。 「いーじゃん、せっかく知り合えたのに、敬語でしゃべってたらなんか他人のまんまみたいでさみしくない ?」 ひょうひょうとした態度でそう言われると、確かにそんな気もしてくる。 「…そうだね」 頷いて小さく笑うと、トトも「でしょー?」と言って嬉しそうににっこり笑った。
以上ですー。 またウィンダスに逆戻り… わっふるわっふる〜
メモ帳に書いてコピペしたら本文中に妙なスペースが発生してるなぁ… すみませんです(´・ω・`) まとめサイト様のほうに載せていけるようになったら直します。
142 :
既にその名前は使われています :2006/05/25(木) 14:48:42.01 ID:i8Ou0n9a
ユリフィナが裂けたら俺が土クリでくっつけてやる メィミィがトトにいいように使われたら俺が土クリで助けてやる
143 :
既にその名前は使われています :2006/05/25(木) 17:20:52.59 ID:iTNR/wOE
土クリの精霊キタワア
144 :
既にその名前は使われています :2006/05/25(木) 21:32:00.57 ID:iTNR/wOE
保守したほうがいい金?
145 :
609 ◆dWeYTO/GKY :2006/05/25(木) 21:47:51.66 ID:731W7yHX
百合姫の話を見て何故か、子供を二人で引っ張る大岡裁き(だっけ?)を思い出しましたw マダマダキタバッカリジャナイカo(*`ω´))oo=((´;ω;`))=oo((`ω´*)oイイカラカエッテコイヨ そして新たな出会いキタ(´∀`)コレ!! そしてageます(´・ω・`)ノ
146 :
既にその名前は使われています :2006/05/25(木) 22:12:13.62 ID:K6FaTB/J
痛い痛いと泣く子供を可哀相に思って、手を放した方がほんとのママンなわけですね
147 :
609 ◆dWeYTO/GKY :2006/05/25(木) 22:24:33.87 ID:731W7yHX
遅ればせながらテンプレのみ
初出: 1スレ609
PC(仮)名: ヒロ・カラミヤ(pokotaso)/ 中の人:ニート
種族フェイス:ミスラ♂4A(
ttp://www.h4.dion.ne.jp/~flatline/pics/zawa/hiro.jpg )
ジョブ&Lv:RDM75サポひととおり(現在サポ忍)
特記事項:反抗的で猜疑心に満ちた性格。
活動エリア:サンドリア→ジャグナー→サンドリア→あの世→この世
他キャラとの接触:ルーファス・フルキフェル。
大昔に降臨したらしい人の遺品をゲット。時計→ロスト 煙草→ルーたんに贈与 小銭→まだ所有
独自レギュレーション:というか、ストーリー背景?
ヴァナという世界があります。ヴァナ時間とリアル時間は概ねにおいてリンクしますが、詠唱/リキャスト時間に関しては全く無関係です。
GMと呼ばれる人達がリアルから来て、この世界に色々と干渉・支配しているようです。
リアルから来た人を来訪者、品物を漂流物と呼びます。それらはヴァナの法則から一部外れていて、GM達の理不尽な干渉を阻害します。
最後に。英雄は確かに存在し強力無比ですが、保護はされず理不尽な身体/特殊能力も持ちません。素人に刺されて死ぬ程度の"強力無比"です。
(ヴァナの住人に比して理不尽かどうかなので、リアルの人間から見たら充分理不尽ですが)
148 :
既にその名前は使われています :2006/05/25(木) 22:25:30.01 ID:iTNR/wOE
口にゴム咥えていいところまで引っ張って ごむを離すあれですか?
やっとのことで船は港に到着した。なんだか最初に味わったのどかな旅情はどこへやら、だ。 あの姉ちゃんのタコ虐殺を見てから、流石に怖くなって俺は船底にこもりきり、 じっと船が止まるのを待つしかなくなった。 そうしている間にも、上の甲板からバタバタと戦う音が聞こえてくる。 なんでも海賊とかいう連中が現れたとか。 この世界に海上保安という考えが……無いんだろうな、きっと。 そんな訳で、ここから歩きだ。 砂漠に出るから町で水筒に水をくんで貰ったが、 それほど迷い込んで暑さにやられるほどの砂漠ではないらしい。 そして、この砂漠がバストゥークとサンドリアとかいう国へ向かう別れ道だとか。 さて、どっちへ行くかな。 で、近くに例の白の姉ちゃんが居たので道順も教えて貰おうと近づいたが、 周りに誰もいないのに何やら中空に向かって会話している。 その変なそぶりを見ていたら、次の瞬間に魔法を唱えて消えてしまった。 うーむ、やっぱり妙な女だ。結構きれいな顔をしているのに勿体ないことだ。 とりあえず決めた。バストゥークの方に言ってみよう。 あの首男しか居ない国なんて後回しだ。岩男と人間の方がまだましだ。
砂漠に入っていくと、他にも武装した連中がウロウロしていて、 座って話をしていたり、あるいは砂漠の奥地へと向かおうとしている。 何でも、ここは冒険者とかいう連中の修行の場として有名だとか。 ……で、最終的にあの姉ちゃんみたいなのが量産される訳か。 怖い世界だ。 砂漠へ入っていくと道らしい道なんぞ無いのだが、 馬車の轍のような跡があるし、ときおり道案内みたいな看板も見かける。 迷ったりする心配はなさそうなんだが……まずいな。 例のゴブリン連中がウロウロしている。 この辺じゃ顔が利かないだろうから、絡まれると厄介だ。 しかし大陸へだてても同じ格好なんだな、こいつら。 部族の風習とか言ってたが、 乱暴なところがあるけど意外と生真面目な連中なのかもしれん。 幸い、前に武装した連中が走っていくので、その後をついていくことにする。 こいつらを頼るのもシャクな気もするが、安全のためだ。仕方がない。 そうしてヒヤヒヤしながら砂漠を通り抜け、 途中の洞窟でコウモリに突かれそうになった話は……まあ、無事だったから良いとしよう。
洞窟を抜けると、ゴブリン共の焚き火があったりしてますます連中の数が増えてくる。 近づいて自慢の手管を使って仲良くなるのも良いが、しかし今は旅の途中だ。 あいつらと酒を飲むためには結構な日数が必要なのだ。 この当たりは砂漠の続きなんだが、岩場が小さな谷道みたいになっていて、 その先にうっすらと見えてくる山々へと続いている。 どうやら、あの山を登らなければならないようだし、険しい旅路になりそうだ。 改めて、手持ちの食料やらを確認しつつ先へと急ぐ。 この辺りはまだまだ危険だ。 お、もう砂漠の切れ目が見えてきた。そろそろ一安心かな? そんなことを考えていたら、後ろから何やら怒鳴り声がするので振り返ってみると、 大勢の武装した連中が岩壁に鈴なりで張り付いていることに気が付いた。 そして、その中の一人が飛び出して、ゴブリンの一人に向かって大声を上げているのだ。 なんとも単純なやり口だ。罵って誘い込み、待ち伏せしている仲間が袋だたき、か。 もはや古風ともいえぬそんな手口に引っかかる訳が…… あーあ……引っかかってるよ、あいつら。 こんな折り、余計な手出しも出来ない。そんな力は俺にはない。 なんとも言えぬ気分を抱えつつ、俺はその場を去る他はなかった。
152 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/05/25(木) 22:46:22.31 ID:0s68UbxL
軽くつなぎを乗せました。何も大した展開はありませぬ。
153 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 00:04:30.77 ID:uGLsmJ4U
>>135 裂けっ・・・w
思わず裂けたタルッ子想像してふいたじゃないですか!w
ちょっとこの表現気に入ったのでパクらせていただきます(爆)www
トトさんもトトさんで食わせ者の予感w
>>142 裂けた時はお願いしますw
>>145 アレッ…?o(;`ω´))oo=((´゜ プチッ ゜`))=oo((`ω´;)oアッ…
>>152 どんなになってもその手口に引っかかりますね彼らw
バストゥークではどんなあんまりな目にあうのか楽しみですw
154 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/05/26(金) 00:11:20.51 ID:0adO/4Ot
ユリファナさんが裂けたら、俺が出て行って日本をやっつける
空気中の元素をかき集め、ある一定のバランスに再構築していく。 両手に熱を感じる。どんどんとエネルギーが集まってくるのが分かるのだ。 そして目に見えない、恐らく魔力と呼ばれる存在が手の甲に漲ってきた。 「もう充分かな?」 俺は両腕を広げ、近くの焚き火でたむろっているゴブリンにそのエネルギーをぶつけた。 「グギャァァァ…」 悲痛な叫びを上げたゴブリンの体はメラメラと炎に包まれ、あっという間に灰燼と化した。 精霊魔法は思っていたよりも簡単に放つことができた。大成功だ。 魔法の撃ち方は体が覚えていてくれたようだ。運良く今ので精霊魔法の原理も大体分かった。 おそらく今のでファイアIIIあたりか。流石レベル75の黒魔道士様だ。 彼は何が起こったのかも分からぬまま、逝ってしまったことだろう。 俺は今、現実世界では絶対に許されなかった"殺す"という行為をいとも簡単にやってのけたのだ。 …まぁ悪くない。 もし現実とヴァナディールを自由に行き来できたらいいストレスの発散になるな、 などと思いながらも、俺はロランベリー耕地をさらに奥へと進んでいった。
大きな剣を持ったクゥダフが草原を徘徊している姿が目に入ってきた。 近づいてじっくりと観察してみると思ったよりもグロテスクな風貌をしている。 「お、レグナスじゃねーか!」 クゥダフに向かって魔法を詠唱しようとした時、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。 振り返るとラプトルジャーキンを身に纏ったタルタルの青年が俺に向けて手を振っている。 ナチュラルにボサボサ無造作ヘヤーとして成り立っているその赤毛は、 毎朝30分かけて髪型をセットしている俺にとってはある意味羨ましいものであった。 まぁヴァナでは俺の方がカッコイイが。って言うかこいつ、俺のフェローじゃん。 「どうしたんだ?」 彼はボーっとしていた俺を不思議そうに見上げてきた。 「君から声をかけてくるなんて珍しいと思ってな、バルファル。」 「そういや、そうだな。」 へへっ、と笑いながらちょこちょこと歩み寄ってくる。 「なぁ、バルファル。ここらで素材集めもかねて狩りをしないか?」 いいね、と返事をして両手槍を構えるバルファル。 俺のフェローはレベル65まで育てた。こいつはきっと使える。
狩りに夢中になっていて気が付かなかったが、日が落ちかけていた。 「今日はここまでしようか。」 夕日がロランベリー耕地を赤く包み込む。 俺の着ているマハトマウプランドも今はその白さを失っていた。 小高い丘にて俺とバルファルは腰を降ろして、一緒にその幻想的な夕日を眺めていた。 しかしふと周りを見渡せば、無数の獣人やモンスターの死体がゴロゴロと転がっている。 そのアンバランスなロランベリー耕地の景観を見渡して、俺はバルファルに苦笑してみせた。 「それにしてもレグナス、今日はどうしたんだ? なんかいつもと雰囲気が違う…っていうか変だぜ?」 夕日を見つめたまま、バルファルが俺に尋ねてきた。 「そうか、隠していたつもりだけど分かるものなのか。」 つまり俺が他の世界から来た者だと早い段階でバレると言う事。ならば早めに対策を練るべきだ。 彼に俺の全てを話すことにしよう。バルファルなら多分信用できる。 「実は俺…」 俺も夕日を見つめたまま、紅い空に向かって語り始めた。
以上です( ^ω^))oo=((´゜,.. :;::.... ; .. ゜`))=oo((^ω^ )
「もしリアルに帰れる来訪者がいるのなら、ある程度の協力はするつもりだよ」 俺の説明は続いた。 「矛盾してるかもしれないけど、それも本心だ」 理想をいえば、来訪者が全員、リアル世界に帰れればいい。 俺が最後の一人になってから、ヴァナとリアルを切り離せばいい。 だが、現実はそう甘くはない。 「リアルの人間は誰だって自分が一番大事だ。取り残された連中全員から、俺は憎まれるだろう。 それでもいい。管理者も来訪者も敵に回してでも、俺は世界の崩壊を止める」 「何が、お前をそうさせる?」 怒り。哀しみ。 蜘蛛の糸。 「目的は破壊、動機は復讐―――。どうせ恨まれるなら、シンプルな方がいい」 お前は馬鹿野郎だ、というのが三人の一致した意見だった。
「当面は、この剣にエクスカリバーを凌駕する魔力を与える方法を探すのが先だけどね。 まずは、魔力のこもった砥石を取りにオルデール鍾乳洞に行ってみる」 「おう、それよ」 と、ラールが口を開いた。 「シャールカーン。例の任務が、正式に発令されたぞ」 例の任務? と俺はハルヴァーを見た。視線に気づいて、彼は任務ついて説明する。 「アリア女史を知っているか?」 当然、俺は首を振った。聞いた事のない名前だ。 「なんといったか・・・時魔道だか時空魔法だかに関する、マイナーな学説を唱えている研究者でな」 ―――時魔道? 時空魔法? そんなもの、ヴァナ・ディールに存在していたか? 「随分と昔、女史にはオルデール鍾乳洞の調査許可を出している。 ホラともおとぎ話ともつかぬ学説に、目くじらを立てるほど国もヒマではないからな」 だが・・・、とハルヴァーは眉根を寄せた。 「鍾乳洞内で実際に魔法陣が発見され、やにわにその研究が信憑性を帯びてきたのだ」 「そこで教会の連中が今さら騒ぎ始めたのだ」 俗物どもめ、とラールが忌々しげに言葉を吐き捨てた。 「他国にアリア女史の貴重な魔道技術を渡してはならぬ、とな。特にウィンダスには」
「アリア女史が、近々オルデール鍾乳洞で魔道実験を行うとの情報は得ている。 我ら王国騎士団は鍾乳洞周辺の警護にあたり、実験を全面支援する」 ラールはやれやれ、とひとつため息をついた。 「・・・と、いうのは名目でな。実験の成否を問わず、女史を本国へお連れする」 それは、事実上の身柄拘束だ。 「他国に人材を奪われるわけにはいかんのだ」 と、ハルヴァー。 「先日、新規採用した武具も何者かに―――いまはフェイトだったのだとわかるが―――、 素材も資料もすべてを破壊され、もう生産不能だ。これ以上の祖国弱体は防がねばならん」 ユリフィナという名の来訪者が、時魔道を研究するアリア女史に帰還方法を求めて接触した。 アリア女史は、オルデール鍾乳洞でユリフィナを帰す魔道実験を行おうとしている。 そう考れば、つじつまが合うではないか。 「シャールカーン、俺も一緒に行こう」 邪魔をするつもりはない。 だが、何か嫌な予感がする。 そして、悪い予感は外れたことがない。
162 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/26(金) 01:31:24.69 ID:UoEf5vc4
本日は以上です。
163 :
既にその名前は使われています :2006/05/26(金) 04:27:54.36 ID:/QamX6Mo
サンドリア王国騎士団長はラーアル。じゃなかったっけ? 無粋な突っ込みすまん。
164 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/26(金) 06:08:21.34 ID:UoEf5vc4
>>163 ラーアルですね。ご指摘ありがとうございますage
165 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 08:53:38.52 ID:uGLsmJ4U
>>154 頼もしいですwていうか千切れてるっwww
フェローの反応がたのしみです
>>163 こんなに自分のキャラが他の方の作品で活躍して嬉しい限りです。
私がのんびり裂けている間にも裏ではこんないろいろなことがあったのですね・・・
それでは、いつものように大量投下いきます。
166 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 08:53:58.39 ID:uGLsmJ4U
「ユリフィナ!!」 リポケケの悲鳴のような叫びが聞こえたけれど、私にはそちらを見る余裕など激痛の為に全く無かった。 私にできる事は荒い息遣いのまま、原因の分からない痛みにただただ困惑して、地面に這いつくばるだけだった。 全身から何かを強大な力が引き剥がそうとしている感覚と 見えない何かがあらゆる方向から私を力ずくで引っ張る痛み。 体の内側からベリベリと肉を引きちぎったらこんな痛みになるのかもしれない。 全身のあらゆる場所から血が滴るのが感じられた。 一瞬何かを迷っていたアリアちゃんが何か黒魔法の詠唱を始めた。 「ディスペル!」 アリアちゃんが私の方へと唱えた魔法の効果を除去する黒魔法は、私の周りの光の柱にぶつかったかと思うと パァッと効力を失い霧散した。ダテレポはディスペルに消される事無く依然効果を発揮したままだ。 ディスペルが弾かれてしばらく呆然としていた彼女がはっとして今度は白魔法の詠唱を始める。 「ケ・・・ケアル!!」 さっきと同じように、光の柱に魔力がぶつかると、乾いた音を立てて魔力が意味を失う。 私の全身の痛みは癒えるどころか増すばかりだった。魔法が光の壁に阻まれて私まで届かないらしい。 「な・・・何が起こったの・・・。」 アリアちゃんがその場にペタンと座り込む。それは私が聞きたいよ・・・痛いよ・・・。
167 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 08:54:44.18 ID:uGLsmJ4U
「はああぁぁああ!」 ユファファが両手剣を引き抜くと同時に盾と剣の幻が彼女の正面に現れた。 ナイトの奥義、あらゆるダメージを無効化するインビンシブルだ。 そして、彼女はすごい勢いでこちらに向かって飛び込んできた。 魔法陣の外側の光に彼女がぶつかったとたんバチバチバチッと派手な音を立てて光がスパークするが、 彼女はそれをものともせずに私の方へとかけて行き、突然その格好のまま固まった。ダテレポは止まっていない。 痛みに耐えながら何とか周りの状況を確認すると、ダテレポと私以外に動くものは何もなかった。 まるで、私とダテレポ以外の時間が止まったかのように。 こんなことが出来る人達を私は知っている。 案の定、凍りついた世界の中を私とダテレポのように当然の様に動いている黒マントが二人、どこからか現れた。 その黒マントの一人はミスラでもう一人は金髪を長く伸ばした男だった。 「来訪者テティスによってもたらされたオーバーテクノロージー。時空魔法ダテレポの発動を確認。」 無機質な声で黒マントを羽織ったミスラさん、多分アグ・リッピナさんが高らかに叫ぶ。 「アルタナの子、ユリフィナがダテレポにより理不尽にダメージを受け続けていることを確認。 ユリフィナをフェイトの権限により強制的に安全な場所へと移動をさせる。」
168 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 08:55:23.62 ID:uGLsmJ4U
彼女がこう叫ぶと同時にもう一人の黒マント、金髪ロンゲ男ケルートが何か黒魔法の詠唱を始めた。 痛いけど・・・死にそうなくらい痛いけど、この場所から移動なんてしたら帰れなくなる。 「だ・・・め・・・。」 何とか声を絞り出して抗議をするがあっさりとそれは却下された。 「バカを言うな!ヴァナディールの人間を守るのが我々の仕事だ。お前を見殺しにするのはルール違反だ!」 シッポをピンと立てて説明をする彼女に、私はどんどん痛みが激しくなってゆく体を なんとか動かしてもう一度文句を言おうとした。 「私は・・・由梨だから・・・。」 あえぎながら必死に声を絞り出すが中々大きい声にならない。 私は覚悟をきめて一気に痛む肺に空気を吸い込むと思いっきり叫んだ。 「私は来訪者の由梨だから!ヴァナディールのユリフィナじゃない!!」 そう叫んだ瞬間紫の光が私の周りに収束を始めた。デジョンIIだ。 だめだ・・・私は帰れなくなってしまうんだ。どうして・・・私は由梨なのに・・・。 どうしてテティスさんみたいに連れて行ってはくれないの? パーン!と火薬が弾けるような音を立てたかと思うと光の柱がデジョンIIを弾いた。
169 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 08:55:52.91 ID:uGLsmJ4U
「・・・ぅ・・・よか・・・った・・・。」 安心する私と裏腹に目を真ん丸くして驚くマント二人。 「な・・・オレ達のD2が・・・。」 呆然とするケルートさん。一見普通のデジョンIIにしか見えなかったけれど『オレ達の』と言うからには 何か特殊な効果でもあったのかもしれない。だけれども、それもどうやら無駄らしい・・・。 よかった・・・私はまだダテレポの中にいられている。 「・・・くそっ!そうか、ダテレポも『来訪者』か!ボク達のルールは受け付けない!」 はっとした表情でアグさんが立ち尽くす。昨日余裕たっぷりに私の前に現れた人たちにはとても見えない狼狽ぶりだった。 「くそ・・・どうすれば・・・どうすればいい・・・。」 頭をめちゃくちゃにかきむしりながらケルートさんが口の中でいろいろなことをブツブツとつぶやく。 アグさんも苛立たしげにシッポをブンブン振り回しながら必死に何かを考えているらしい。 体の中でもう一度大きい音を立ててブチリと何かがちぎれた。痛すぎるっ!!!! 何!?何が私の体で起きたの!?!?!? あまりの痛みに声を上げることすら出来なかった。 ・・・・・・ い、いけない・・・意識が・・・とん・・・でた・・・。
170 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 08:56:40.47 ID:uGLsmJ4U
「おい!ユリフィナちゃん!しっかりするんだ!!」 ケルートさんの声に気がついてはっと私は顔を何とかそちらに向けた。 「昨日君にあげたパールがあるだろ!アレにはエンチャントデジョンがこめられている!使え!使わないと死ぬぞ!」 「・・・かえるの・・・死なない・・・。」 私の言葉を聞いたアグさんがすごい形相で怒鳴った。 「大バカ者!子供のような意地を張るな!!忘れたのか来訪者!昨日ケルートが言っただろ!!お前はユリフィナと同化していると! ボクの予想ではこのままじゃお前は二つの世界に裂けた状態で・・・バラバラに引きちぎられた状態で転送されるぞ!」 裂けるって・・・私は一昔前にはやったチーズか何かですか? 表現はユニークだったけど、言っている事はかなりヘビーだった。カーディアンとテティスさんは同化していないから すっきり帰れただけだったんだ。同化している私はユリフィナと様々な部分でくっついてしまっているから 綺麗に分かれることが出来ない。だから今ダテレポは力ずくで私とユリフィナの部分に分けようとして、 私の体を引きちぎろうとしている。きっとこういうことなんだろう。 ・・・当然だけどバラバラになんてされたら、帰れても嬉しくも何とも無い。 それに私の部屋にバラバラ死体が転がってたりしたら、由佳がショック死してしまいそうだ。 この人たちはたしかに何か計り知れない不気味な恐ろしさがあったけれど、 昨日はダテレポが失敗しても私が幸せに暮らせるようにするために現れたし、 今日も私の身の危険を察知して助けに来てくれた。 実はとてもいい人達じゃない。なのに昨日あんなに怖がっちゃって本当に悪いことしちゃったな。 全部、実は私のためだったのに。
171 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 08:57:05.76 ID:uGLsmJ4U
微動だにしない私に向かっていらただしげにアグさんが声を張り上げた。 「聞いているのか来訪者!?早くパールを使え!!! 外部からは干渉できなくても、内側からならば何とかなるかもしれないんだ!」 使えといわれても・・・ね。 「・・・割っちゃった・・・。」 『は?』 二人揃って間抜けな声を上げる。その様子がなんだかちょっとだけおかしくて、思わずクスリと笑ってしまった。 「パール・・・いらないから・・・割っちゃった・・・。」 そういってペロリと舌を出して、エヘヘと力なく笑って見せた。 「んな!!」 ケルートさんが大げさに驚く。 「割ったって!?帰れなかったらどうするつもりだったんだ!」 「私は由梨だから・・・帰れるもん・・・。」 なんだか困ったような顔でケルートさんが私を見つめている。意地っ張りだって呆れられたのかな? 「だから・・・パールはいらないって思って・・・。」 「・・・そう・・・か。」 ケルートさんは間の抜けた声でそれだけ言うと黙り込んでしまった。 一体彼が今、何を思ってどんな表情をしているのか私にはわからないけれど、 昨日みたいな余裕いっぱいの笑顔では何だろうということは少なくともわかった。
172 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 08:57:45.10 ID:uGLsmJ4U
突然、頭の中身がぐらりと揺れたような感覚に襲われ、視界がグニャリと歪み、突然痛みがどこかへと吹き飛ぶ。 いや、違う・・・痛みを感じる力すら残されていないんだ。これはもう、私はだめかもね・・・。 ・・・帰りたかったな。モグタン・・・みんな・・・由佳・・・もう何があっても会えないかも。 「助けて・・・死にたくない・・・。」 そう言う私にアグさんが無言で首を横に振った。ワガママを言うなということなのか、 それとももう助かる見込みがないということなのか、その両方なのか・・・。きっと両方だな・・・。 もうダメなら、最後にこれだけは聞いておきたいことがる。答えは分かりきっているけれど。 「ねえ、黒マントさん。」 「・・・なんだい?」 ケルートさんの答える声はまだ聞こえる。よかった。これなら聞いておきたかった事を聞く事はできそうだ。 「ヴァナディールで死んだ来訪者は元の世界に帰れるのかな?」 「・・・それは・・・。」 ケルートさんが困った顔で口ごもっている様子がぼやけた視界でも何となく分かった。 「帰れる!だからボク達は来訪者を抹殺し、彼らを元の世界にかえしているのだ!」 アグさんが叫んだ。・・・私のことをなんだか嫌っているような気がしたけれどそれは先入観だったみたいだ。 本当に、アグさんって優しい人だ。でも、これってきっとウソだよね。 だってもしこれが本当なら、きっと彼女達は私に出会ったときにサクッと殺ってたはずだもの。
173 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 08:58:00.89 ID:uGLsmJ4U
「・・・良かった。帰れるんだ。」 意識がどんどん遠のいてゆく。私に残された時間はもう、ほとんどないらしい。 誰でもいい。最後に、これだけ言う力をください・・・。 「私のために色々とありがとうございます。また、会いましょう。」 さっきユファファに教えてもらった別れの挨拶を無事に口にすることが出来た。よかった・・・。 思い残す事は本当にたくさんあるけれど、もうどうしょうもないみたい。私は静かにまぶたを閉じた。 「それでは・・・良い旅を。」 感情が押し殺された無機質なのに、なんだか人間臭い声で二人のうちのどちらかが言ってくれたのが聞こえた。 みんな、また会おうね。 さようなら。
174 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/26(金) 09:06:44.04 ID:uGLsmJ4U
以上です。
>>171 笑顔では何だろう⇒笑顔ではないだろう です。失礼しました。
今まで読んでくださった皆様ありがとうございました。
長かったユリフィナのお話もついに完結させることができました。
思えば1スレ目に初代さんの作品を見・・・
嘘ですwまだですwwwもう少々お付き合いください。
それでは皆様わっふるわっふる!!
ワッフルヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノワッフル
俺は奴の姿を見て唖然とした。 俺がやってきたのは、いくつもの風車が風に吹かれるのどかな高原で、 ちらほらと徘徊している野生の羊がのどかさを更に演出し…… などと説明なんてしている場合か?俺は。 亀だよ、亀。 どっから見ても百パーセントの亀が二本足で立って歩いてやがる。 そんなの知ってる?悪かったな、知らなかったんだよ俺は。 しかもバカ長い剣を片手に辺りを見回してるし。 ……落ち着け、俺。 落ち着くんだ。こういう場合はあの手に限る。 あいつらの背中の後ろを走るんだ。そうやって死角をくぐり抜ければ…… ああッこいつ振り返りやがったッ! え?こいつらは耳が良い?だーから、知らないんだよ俺は! こうなったら百計逃げるにしかず、だ。 俺の足が亀に負けるわけがって……い、嫌な予感がする…… うわあああっ!こいつ足がめっちゃくちゃ早い!嘘だろ?ずるいぞ亀のくせに!
そんな訳で、俺はめちゃくちゃに走り回り逃げまどうしか無く、 もうバストゥークの道順なんて何が何だか判らない。 何だか雷が鳴ってて雲行きも怪しいし、 最初の奴をどうにか巻いたと思えば、あっちにもこっちにも亀がちらほら。 う……護衛の話、断るんじゃなかったかな…… シト……シト……シト………… ザーーーーーーーーーーーーーーーー あーあ、降ってきた…… もう道順も判らん。なんか地面がぬかるみばっかりの変な所にやってきたし。 ま、まずい。荷物ぬれてないかな。あいつら、防水も万全だとか言ってたが。 しかし、この雨の中じゃ荷物を広げようにも…… うわわわっ!! さ、さっきの奴か?振り返ると、武装した亀がじっと俺を見下ろしていた! もうダメか、殺される……あれ、殺されない? え、何か言ってる。その数珠は何だ、お前は何者だ、と。
あ、ああ……あの鳥のおっさんから貰った青い数珠か。 しかし、何者だと聞かれても答えようがない。本当に貰っただけなんだし。 口ごもっていたら、怪しい奴だ、来いといって、リュックサックごと俺を摘み上げた。 こらこらっ!来いとかいいながら、これじゃ誘拐だろうが!と、思わず怒鳴りつけてしまったが、 もう知らん顔で、この雨とぬかるみの中をどんどん歩いていく。 とりあえず助かったのだが、どこに連れて行くつもりだろう。 この数珠が無ければ既に死んでいたかも知れない。 しかし、どうなるか判らない。 まあ……とりあえず、あのおっさんに感謝した方がいいのか、な……? もう、どれぐらいぶら下げられているだろうか。 雨でずぶ濡れのせいか、時間も何も感覚が麻痺して判らない。 あたりはぶ厚い雨雲のせいで薄暗く、朝か昼か、そして夕方なのかも判らない。 そこまで暗闇でもないので夜では無いと思うのだが…… しかし、こんな所で闇夜になれば最悪だ。星も見えず方角なんて見当がつかない。 そんなことをつらつら考えながら…… あたりの様子が変わった。周囲に何やら建造物が建ち並んでいる……こいつらの集落?
どうやら、そのようだ。 そこらじゅうに様々な武器で武装した大勢の亀が徘徊している様子が見える。 俺をぶら下げている亀は、近くにいる他の亀に一言、二言、話したと思えば、 集落の奥地へと歩いていく。 何やらグルグルと歩き回ったかと思うと、今度は洞窟の中に入っていった。 やれやれ、乾いた場所が有るとは思わなかった。 おい、下ろしてくれよ、と言おうとしたら、これに触れと変な建造物を指さす。 う……これ、なんていうか怪しいぞ……逆らっても……ダメだろうな。 しょうがなく、ちょんと指で触れると……(あ、あれ?) (どうなってんだ……口がきけない……) などと、説明する時まで沈黙を表す必要はないが、 後で聞いたら、侵入者に備えるための罠があってそれをくぐるため、だとか。 そう説明されてもよく判らん。 おかげで下ろしてくれと言えずじまいになり、 ずっとそのまま荷物のようにぶら下げられて行く他はなかった。 が、ある時だった。
(バキンッ!!) という物音がしたかと思うと、俺をぶら下げていた亀はぬかるみに倒れ、 俺もまた投げ出されてしまった。まさか…… あの女だ。白と赤の恐ろしいピエロな姉ちゃんだ。 そして、何か言おうとして口を開いた、かと思ったら、 思い直して何やら小瓶を取り出して飲み干し、 改めて大丈夫?怪我はない?と聞いてきた。 ……罠、効いてねぇじゃん。罠をくぐる方法ばれてんじゃないか? が、そんなことを言ってる場合ではない。 俺達は今、亀の連中の雑踏の中にいるのだ。 連中は一斉に武器を抜いて取り囲む。どうする姉ちゃん!どうするんだよ! が、姉ちゃんは慌てない。しょうがないなぁ、などと言いながら何やら呪文を唱えつつ、 例の恐ろしい棍棒を右手に、盾を左手に構えて亀の一軍相手に大乱闘を開始した! す、すげぇ……こいつ、本当に治療が本領の魔導師なのかよ。 魔法の助け、とかいうのがあるのだろうか。 疲れる様子も見せずに猛烈な勢いで棍棒を振り回し、阿修羅のように亀共と戦い続ける。
そして、後ろから呼ぶ声がするので振り返ってみると、 俺と同じタルタルやら首男に岩男が数人、完全武装でやって来た。 女は左手の盾で亀の攻撃を受け止めつつ、棍棒を持った右手で相手に手を振り…… ……な、なんで笑顔なんだよ!てめぇ、死闘の最中だろうがっ! そして、やってきた数人も武器を引き抜き、乱闘はますます加熱する! ……加熱、などと言ってもいいのだろうか。 後から来た連中、白の姉ちゃんとは格が違う。戦いを知らない俺でも判る。 岩男の拳は一撃で亀の甲羅を砕き、首男の大鎌は次々と亀の首を跳ね飛ばす。 俺と同じサイズのタルタルもまた、短剣片手に巨大な亀と対等に渡り合う。 いや、対等ではない。桁違いだ。次々と亀の連中を他の奴に負けじと屠っていく それでも、亀達は逃げようとはしない。 後から後から押し寄せて連中を取り囲み、そして結局は倒されていく。 実力の違いは傍目にも判るだろうに……逃げるか隠れるか、どっちかしろよ…… やがて亀の増援も途絶え、 後に残されたのは亀の残骸と、それの懐を探る白の姉ちゃんの仲間達。 そしてタルタルの奴がつぶやく。 やっぱり雑魚ばかりだ。ろくな物をもってやしない、と。
それを呆然と眺めていた俺に、白の姉ちゃんは我に返ったように振り返り、 どこかに送っていってあげるといって、手を差し伸べてきた。 何時の間に俺は口がきけるようになっていたのだろう。 俺は訳の分からない衝動に駆られて手を払いのけ、 うるさい、俺に構うな、近寄るな、と言い返した。 すると白の姉ちゃんは怒りもせずに肩をすくめて、 言われたとおりに俺に構わず、さらに集落の奥地へと仲間を引き連れて去っていった。 しばらくして亀の生き残りがやってきた。 そして既に死んでいる仲間を運び出し、まだ生きている仲間を助け起こしている。 その時、何やら言葉を交わしているのが切れ切れに聞こえてきた。 「……王のために。」 「あ、ああ……王のために……」 降り止まぬ雨に打たれながら、俺はあることに気が付いた。 こいつらには、いつでも倒れた俺を水の区まで運んでくれた、 例の奇特な人の助けが無い、ということに。
182 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/05/26(金) 09:27:07.36 ID:i4pbIHHC
とりあえず、ここまでっす。
183 :
既にその名前は使われています :2006/05/26(金) 12:10:43.13 ID:x1/ImL1p
揚げ
184 :
既にその名前は使われています :2006/05/26(金) 12:44:21.51 ID:0QltR/cb
_,,.-‐-..,,_ / `''.v'ν i' / ̄""''--i 7 !ヘ /‐- 、u. |' 大変だ! |'' !゙ i.oニ'ー'〈ュニ! ユリフィナが死んじまったぞおい ,`| u ..ゝ! <:::::\ (二> / \::::\ '' / \ \. , ̄
185 :
既にその名前は使われています :2006/05/26(金) 12:45:57.51 ID:0QltR/cb
|l /lハ// V| ! ハ | l / イ ヽヽ/Vl ! | ハVヽト`ー- ' イ/ ,ィ/! \ ∧l | 、ト、 \ ヽー- ' _,..ィ/ // ハ ト、 l! \ ヽ_,.メ、<イ_/__,.._-=ニ-ヽ _,/ ヽi`、| 、‐rッヾ =|二|-=_rッァ `}',.} { ヽ!  ̄ シノ! ヽヽ  ̄ //リ 大丈夫だよナワヤ君 ヽヽ!`ー--‐'´/| ` ー--‐ ' /./ ユリフィナがさけても \! ヾ_,. /‐' 伝説の土クリ使いがなんとかしてくれるさ _ィニlヽ __ ,イiヽ、 _,. -‐'" l | \ `二´ ,r' l ! `ヽ、._ _,. -‐ '" l | \ / | l `` ー- 、._ ‐'" _,. -‐  ̄`ヽrァr--`‐──'‐‐-r ,! ! `` ー- _,.ィ´ ヽ、._ ヽ ./ /i l ァ‐/ / \_ノ! l / l ', / { `ヽ、 }!ヽ! /V ! ヽ
186 :
既にその名前は使われています :2006/05/26(金) 12:46:33.25 ID:0QltR/cb
ナ ゝ / 十_" cト  ̄ ̄ ̄ ̄ /^、_ノ | 、.__ ,. -─- 、._ ,. ‐'´ `‐、 / ヽ、_/)ノ / / ̄~`'''‐- 、.._ ノ i. /  ̄l 7 ,!ヘ. / ‐- 、._ |/ . |〃、!ミ: -─ゝ、 __ .l !_ヒ; L(.:)_ `ー'"〈:)_,` / /`゙i ´ ヽ ! _/:::::::! ,,..ゝ! _,,. -‐ヘ::::::::::::::ヽ、 r'´~`''‐、 / ! \::::::::::::::ヽ `ー─ ' / i、 \:::::::::::::::..、 ~" /
まだ死んでNEEEEE
188 :
既にその名前は使われています :2006/05/26(金) 13:00:26.39 ID:/QamX6Mo
この物語で一番の被害者はワケのわからん意識が進入してきて体をのっとられた上、 世界の秩序を護る神の組織に狙われ、 本来の実力をほとんど発揮できないまま変な意識ごとぶっ殺される来訪者の元々の体の持ち主達だな。 ヒロ氏のSS見た限りでは殺された場合中の人はどうなるかはともかく、 外の人は間違いなくぶっ殺されてるようだしねぇ。 しゃべれるサン氏の肉体や、自分から「私」を呼び込んだフルキュエルは別だが。 どうでもいいが。ハルヴァー、サンドリアの休日クエで株あげたよな・・・。昔は嫌味なだけのおっさんだった。 このスレでは主人公達の影となり日向となり助けてくれる好人物。 しかも鈴川の存在(今生きてるかは不明)については身内にすら絶対語らないあたりかなりな役者である。
遅くなりましたが、新スレ立て乙です! 皆様のお話読んでたら、ユリフィナさんがえらいことにΣ(;゚Д゚)心配ですっ ↓新スレなので、キャラ紹介テンプレ置いておきます。 初出: 6スレ PC(仮)名:Tiara ティアラ/ 中の人: Tiara_290 ◆YR20hEcBIQ 種族フェイス: タルタル♀F6A (銀髪おかっぱ) ジョブ&Lv: BLM75(BRD75も可能である) 特記事項: 思った事はすぐ行動!それで痛い目を見る事多し。元気だけが取り柄です。 活動エリア:モグハウス→バストゥーク鉱山区 あらすじ: 目が覚めたら、ヴァナの世界の自キャラになっていた! 黒魔法のプロであるはずだが使い方がよく解らないので修行に出るが… 他キャラとの接触: 無し 独自レギュレーション: 魔法や詩は集中し、それをイメージする事で発動する事ができる…ようになる予定です。
扉の向こうは、別世界でした―――そりゃそうだけどね。 「これが、バストゥークかぁ…」 石造作りの建物が多い、ほのかに煙の匂いがたちこめる街は、画面越しに見る世界よりずっとずっと美しかった。 工業都市だけあって、朝から職人たちが仕事に勤しむ姿がところどころで目に入る。 現実世界とは全く違う環境に、私はキョロキョロするばかり。 「おっと、お嬢ちゃん!前見て歩かないと危ないぜ」 「は、はい!ごめんなさいっ!」 忘れてた…今の私はタルタルなのだ。下手したら蹴られる!痛いのは嫌だしねぇ… と思いつつ歩いていくと、巨大な鉱石を運んで歩く巨人の姿を視界に捉える ―――ガルカだ。 バストゥークはヒューム族の他にガルカ族も暮らしている。 ゲームの中でもかなーり大きいが、実際に見るともう二階建てバスといったデカさ。 よく「タルタルなんて丸呑み」なんて言ってたけれど、これじゃ本当に丸呑みだよ! 蹴られないように道を開け、ガルカ通り過ぎていくのをじーっと見つめた。 街の造りからして、ここはどうも鉱山区のようである。 という事は、ツェールン鉱山への入り口が近くにあるはずだ。 そこでちょっと練習してみようかな。もし暴発しても…大丈夫だ…よね! うん、大丈夫!と自分にいい聞かせ、記憶の中にあるマップを思い浮かべながら、 真っ直ぐにツェールン鉱山へと向かった。
「く、暗い…」 入り口を見つけ、少し足を踏み入れたものの、2・3歩進んだだけで足が止まった。 風の通り抜ける音だけが聞こえる、薄暗い洞窟。何か出そうな雰囲気抜群である。 ―――大丈夫、私は強い。私は強い…! 変な自己暗示をかけつつ、一歩、一歩、歩みでる。そうしているうちに、次第に場慣れしていくもので。警戒心も薄れてくるのである…が。こういう時に限って、突然何かが起こるものである。 ふわっと黒い影が物凄い速さでこちらに向かって飛び出してきた。 「キキーッ!」 「きゃあああ亜ウェsdrftgyふじこlp;@:」 とっさの出来事に頭を抱えてしゃがみこむ。 しかし、黒い影はそのまま、頭上をかすめて飛び去っていった。 おそるおそる顔をあげ、周りを注意深く見渡してから、ばっと立ち上がる。 「ふ、ふんっ。あんたなんかぜんぜん怖くないんだからね!」 ちょっと強気に言ってみたものの、本当は心臓が口から出そうなほど驚いていた。 かなり警戒心を強めたまま通路を歩き続け、ちょっとした広い空間に到着した。 この空間なら十分練習にはなりそうである。 よーし、やるぞぉ!握り拳をつくって気合を入れて気合十分!まずはあの魔法からだっ! すぅーっと息を吸い、精神を整え。いざ、行かん! 「燃え上がれ!ファイガIIIーー!!!」
・・・・・・・シーーーーーン 静かな洞窟にこだます元気のいい声はそのまま風とともに消えていく。 「やっぱだめかぁ…orz」 適当に名前を言うだけで発動なんて、むしのいい話はないようだ。 しかし、今まで魔法なんて使った事がないので、どのようにしていいのかさっぱりである。 やっぱり、呪文がいるのかなぁ?あと、溜めとか…ゲーム内でも何かぶつぶつ言っていたし、きっとそうに違いない! 思った事は、取り合えず実行、実行! 片足をぐっと引き、腰を落とし、両手を腰の位置で併せ、構えばっちり! 「かぁ〜〜めぇ〜〜はぁ〜〜めぇ〜〜」 体内にある不思議な"力"を両手に集めるようにイメージし、一気に放つ! 「ファイガァーーッ!!!」 ボッ…シューッン… 「…な、何かでたーー!?」 火の塊が出現したが、それは勢いを無くしすぐに消え去った。 が、しかし、進歩は進歩であることに間違いは無かった。もう少しで何かつかめそうな気がする。 「よーし、次はもう少し、イメージを膨らませてみるかっ!」 全く解らない手探り状態であるけれど。少しずつ何かをつかんでいる事はあきらかであった。 その喜びからか、自然と笑みがこぼれていた。
本日は以上です。 皆様のお話に心わくわくさせております(*・ω・)
すらっしゅ えむえー ふぁいがすりー かっこ てぃー かっことじる とか期待してたw
195 :
既にその名前は使われています :2006/05/26(金) 19:19:41.53 ID:/QamX6Mo
それはロックだwwww
忘れ去られそうなので一応書いとく(食事のため一時帰宅中)
初出: 1スレ69
PC(仮)名:"P"自称ロック(69)/ 中の人:貸しチャリ屋のSさん
タル♂お下げ金髪。布を頭に巻いて黄ばんだマント。 マーシャル剣と短剣、アストラルアスピス。
ジョブ&Lv: 赤/戦75.一通りのサポもあるようだ。
特記事項: 現在、いかな方法を用いても来訪者と区別できない。本人の自覚もないようだ。
活動エリア:バストゥーク。
あらすじ:すべての元凶とおぼしき
>>1 を求めて旅立つが、
旅先で寄ったバストゥークで足止めをくらい、国を巻き込む陰謀に・・・。
他キャラとの接触:ユリフィナ(通過)リード、ナナシ。
独自レギュレーション:主に剣で戦う。魔法は儀式によってエンチャントして使う。
196 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/26(金) 22:14:29.66 ID:UoEf5vc4
皆様、投下乙でございます。 ユリフィナさんはバラバラ死体ですか。大変ですねぇ。 体が裂けても土クリ使いがいるし。死んでも内藤様がいるし。 リードが出て行ってダテレポぶった斬る必要はないですね。 わっふるわっふる。
「心強いよ」 シャールカーンは一も二もなく快諾した。 しかし、急に顔を曇らせる。 「だが、リード。フェイトの妨害があるかもしれないな」 「その可能性は低いと思う」 ナナシからの情報が正しければ。 中枢ではチャリオットが亡くなったのをいいことに、有象無象の小物どもが発現を強めている有様。 サンドリアでは立て続けに担当官を失い、このエリアの監視体制もメチャメチャのはずだ。 彼らにまともな思考が残っているならば、まずは体制を立て直すことに集中するはずだ。 「万が一の時は・・・」 会いたくはない、が斬るしかない。「きみに守ってもらうよ」 ところで、とハルヴァーに水を向けた。 「街の惨状。あれは来訪者を襲った“赤い鎧”によるものだ。 サンドリアにいる来訪者の情報を教えておいてくれないか?」 赤い鎧を倒すほどの力を持つ猛者の名前くらいは把握しておきかった。 「それが、例の手配の男だよ」 名をルーファスという。強い、の一言に尽きる。そして折れず、曲がらぬ真っ直ぐな心をもつ。 ハルヴァーは、その男をそう評した。
198 :
既にその名前は使われています :2006/05/27(土) 01:47:04.95 ID:qj9Ibkpv
保守します(*'-')ゞ
199 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/27(土) 07:12:12.05 ID:2GrQjCmh
おはようございますage 不覚にもPCの前で眠ってしまったが、あっちに引っ張られずに戻ってこれたようだw
200 :
既にその名前は使われています :2006/05/27(土) 07:32:03.63 ID:jvFnon/n
それはそれはお疲れ様でございます お話は一度メモ帳にまとめてコピペしたらどうですやろ Leadさんはなにやら登校の間隔がめちゃ長いのでメモ帳使ってねえだろ想ってます メモ帳いいっすよ
201 :
既にその名前は使われています :2006/05/27(土) 07:59:13.13 ID:jvFnon/n
ところでこのスレ読んでる影響なのか 俺はミスラ使いなのですが 自キャラになっている夢をみましたよ ダボイを探索していたら、エックスファイルに出てきたブラックオイルが俺に襲い掛かってくるの 川に逃げても追いかけてくるんですよ魚とか取り込みつつ 川から出るとこいこうとしたら道間違えてあわててたら 滝のある洞窟においこまれて 滝の上に逃げたけどそこから先道が無いのよこれが まあでも滝の上だしブラックオイルもここまでは来れないだろうと思っていたら ブラックオイルさん平気な顔して滝のぼってくるのいや顔とか付いて無いけど ヤベーこれもうおしまいだってとこでサポ黒でデジョン使えるの思い出してデジョンで逃げた あぶねーあぶねー
生還乙でございますw 白いチェインメイルを着て、屋敷?庭園?を歩き回る夢なら見たことあります。 耳が長かったかどうかまでは確認にしませんでしたがw おっしゃる通り、メモ帳は使っておりません。 ギコナビでエディタを開いて、勢いで泥縄方式に書いております。 ひとつ30分以上かかりますので、間に他の方の投下があってもキニシナイ!(・∀・)
互いの情報交換を終えた頃には、すでに壁時計は鐘を11回鳴らし終えていた。 ―――明日、城で会おう。 そう約束し、俺たちは解散した。 俺はデュエルと一緒にわき道に入った。 『タルタル屋』 『にゃー』 『宿屋 ローテの庭』 『綺麗なお姉さんは好きですか?』 『エロカワイイ』 などの看板が、道の両脇に所狭しと並ぶ通りだ。 俺はデュエルと昔よく使っていた宿に泊る事にした。 モグハウスは今頃“作業中”だろうから。 その宿はこの界隈ではありふれていて逆に目立ちにくく、入っても誰もあえて気にとめない。 なおかつ場所柄、自主的なセキュリティは強固ともいえる。 万が一の事態にも、迎撃は容易い。 『宿屋 愛情の律動』 名前はアレな感じだが、内部構造は把握しているし、主人にも顔がきく。 問題はない。
ウィンダスの時とは違い、サンドリアでは温かい湯をふんだんに使えた。 おかげで旅の埃と血の跡を綺麗に落とすことができた。 傷には染みるが、それでもありがたい。 風呂から上がると、先に済ませていたデュエルが天蓋付のベッドで長い髪を乾かしているところだった。 「モグハウスでの続き、済ませてしまいましょう?」 バスローブ姿の彼女が、ぽふぽふと自分の隣を叩く。 腰を下ろして苦笑した。 自分のモグハウスにあるブロンズベッドとは、次元が違うやわらかさだ。 いや、体力を回復させるのに横になるだけなら、ブロンズベッドで充分だが。 俺の素肌に彼女の手が触れ、そっと撫でていく。 低位の呪文が紡がれ、少しずつ、体中に刻まれた傷がゆっくりふさがれていく。 深い傷にも、彼女はそれを何度も繰り返して癒した。 高位の呪文ならば一回で事足りるのだが、反動で俺に痛みのまとめ払いを要してしまう。 彼女の気遣いが、素直に嬉しい。 肩こりをほぐす程度の痛気持ちよい感覚に、思わずため息がもれた。 「はい、おしまい」 そう言って彼女は微笑んだ。悪化一歩手前だった傷が、きれいサッパリ消えていた。
部屋の灯りを消した。 暖炉に残ったわずかな火だけが燃え、あたりをオレンジ色に染めた。 彼女がベッドから立ち上がり、バスローブを落とす。 美しい裸体を惜しげもなくあらわにして、ベッドにもぐりこむ。 俺はそれを観賞しつつ、装備を身につけた。 ドアの前に空の小瓶を置く。 鎧戸付の窓が視界に入るよう、壁際に椅子を置いた。 長剣を抱いて、腰を下ろす。 「おやすみなさい」 ベッドの中から彼女の声がして、あぁ、と応えた。 俺は薄暗い部屋で視点を定めず、外の音を聞いた。 猥雑な街は、朝まで眠ることはない。 物音。足音。嬌声。罵声。 それらの大半を聞き流しながら、近づいてくる気配がないか警戒を続けた。 ただ静かに、牙を研ぐように、朝を待った。
どのくらい時間が過ぎたのか。 時計を見れば済むことだが、わざわざ確認するのも面倒だった。 外の喧騒も、うって変わっておとなしくなっている。 ときどき寝返りをうつ彼女の穏やかな寝息が、鋭敏になった耳に聞こえてくる。 自分の心臓の音が、やけに耳障りだった。 時間を持て余した自分の脳裏に、朝からの出来事が反芻される。 ロック、メイミィ、赤い彗星。彼らの顔が浮かぶ。 三人に再会する機会はないだろう。まるきり別の世界の住人たちだ。 チャリオットとの闘いの記憶が甦り、時折ピクリ、ピクリと筋肉が反応した。 彼の妻は赤子を抱き、穏やかな笑顔をしていた。 生まれた子は女児だった。ユーリ、とこれから呼ばれ、美しく成長していくのだろう。 友よ、元気な子だぞ。俺の小指をぎゅぅと掴んで離さない小さな手が思い出され・・・。 俺は椅子から立ち上がった。限界は不意にやってきた。 トイレの便器にひざまずき、胃の中身をぶちまけた。夕飯も茶も。 それだけでは止まらず、逆流した胃液が喉を焼いた。視界が歪む。 かみさま、かみさま、かみさま―――。
207 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/27(土) 10:57:14.67 ID:2GrQjCmh
ここで一区切りです。 休日はスレが落ちていくの早いですね。
208 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/27(土) 11:39:48.12 ID:Pz2ZRUR+
>>182 あぁ・・・こんどはベドーのカメをなぐれなく・・・w
臼姫こわひ・・・
>>186 そこ納得するとこなの!?wwww
>>193 その構えは・・・wたしかに暗い洞窟でコウモリにあったらそうとう怖そうです・・・
>>201 食べられてたら戻ってこれなかったかもしれないですねw
>>207 わっふるから一転シリアスに・・・リードさんならまたかっこよく立ち上がってくれると信じてますw
では、投下参ります
一人の老人が岬にある墓に向かって歩いていた。彼は偉大な時魔道士として歴史に名前を残すほどの時空魔法の手誰で、 その実力は彼の功績がなければ現在のこの国は存在しないと言われるほどであった。 彼はその膨大な魔力で禁忌を使い、自分の時間の進行を遅らせることで300年以上も生きていた。 彼がそこまで生に執着する理由を人々は色々と想像し、噂していたが誰もその本当の理由を知らなかった。 ただ、誰かを待っているらしいという噂がいつの間にか一般的になっていた。 その老人の手には派手な花束が二つ抱えられていた。彼の友人の墓参りのためだ。 彼は290年以上雨の日も雪の日も休むことなく毎日その墓へと花を捧げに向かっていた。 老人は痛む膝を何度かさすりながらも海が望める美しい岬へとたどり着いた。 割と大きな二つの墓にはこう刻まれてあった。 『テティス、はるか遠くの地で眠る』『ジェイコブ、はるか遠くの地で眠る』 その墓の周りは小さな花畑のようになっていてとても綺麗なのだが、 なんとも形容しがたい物寂しさをこの近くを通る者に与えた。 四季折々に花畑がその姿を変える以外には大きな変化がないその墓に、その日は大きな変化があった。 二人の墓の間に、美しい銀の剣がまっすぐにつきたてられていた。 そして、その剣の柄には緑がかった青い宝石が埋め込まれた銀色に輝く指輪が鎖に通された状態で引っかかっていた。 「・・・ジェイコブ?テティス?」 その老人は一度そう呟いたかと思うと、突然その場にひざまづき、涙を流しながらこう呟いた。 「おかえり・・・やっと・・・やっとまた会えた。」 朝日を浴びてピカピカの剣と指輪が、老人、ジェミニが流した涙のようにきらりと輝いた。
ヒヤリと冷たい鍾乳石の床が心地よい。私ももうすぐこの鍾乳石のように冷たくなってしまうのだろうな・・・。 暗い暗いどこかにゆっくりと沈んでいく感覚は、まるで眠りに落ちるようでどこか安らいだ。 「おねえちゃん!!!!いつも言ってるでしょう!?」 耳をつんざくようなヒステリックな子供の叫び声に思わず私はバチンとまぶたを開いた。 それと同時に再び全身に感覚が戻り激痛が駆け巡った。 どうやらまだ私は生きてるらしい。視界がだんだんとはっきりとしてくると、 呆然と立ち尽くす黒マント二人組みの後ろに立っている、日本人風の黒い髪をしたおかっぱ頭の 赤魔道士のアーティファクトに身を包んだタルタルが目に入った。 不思議なことに、今の声に黒マントの二人は気がついていないらしい。 「・・・何を?」 私の声に気がついて黒マント二人が慌てて私のほうを向く。 「何だ!?何か言ったか!?」 あなた達にじゃない、と言うのも億劫で彼らには申し訳ないけれど無視をする。 かわりに、黒髪おかっぱ頭のタルタルを静かに見つめて答えを待っていた。 「だーかーらー、ピンチになったらもったいぶらずに2時間アビ使えって!今お姉ちゃんHP何?」 ・・・HP?そんなもの知るわけないじゃない。何をいっているんだろうこの子は。 なんだかよくわからないけれど黒髪のタルタルは両こぶしをブンブンふって怒りをあらわにして ギャーギャーわめいている。うるさいな・・・。
「ほら!だまってないでとっとと使っちゃってよ!私の言うことを繰り返して!」 もう喋るのもつらいのに・・・静かに逝かせて。もう痛いのいやだよ・・・。 また何かがちぎれる音が激しい痛みと一緒に耳の奥で響いた。 あと、何度この痛みに耐えれば私は楽になれるのかな? ふたたび視界が霞んだ。 そんな私を気にも留めずに黒髪おかっぱさんが耳の奥にキンキン響く声で続けた。 「聞いてる!?とにかく言うからね。『女神アルタナよ』」 もう体はどこも動かないと思っていたのに、不思議なことに私の口が自然に動いて言葉をつむぎだしていた。 「・・・女神アルタナよ」 黒マントが何かを言っている。それももう聞き取れないのに、彼女の声だけははっきりと聞こえた。 「『その慈悲の心を以って』」 「その慈悲の心を以って」 「『か弱き命達を祝福せよ』」 「か弱き命達を祝福せよ」 最後の一言が何なのか、なぜか私は知っていた。それは、私の勘が冴えていたからなのか、 ユリフィナさんの記憶のおかげなのか、それとも奇跡なのか、私にはわからない。 だけど、黒髪のタルタルの声と、いつの間にかしっかりとしていた私の声が和音のように綺麗に重なったということだけは確かだ。 『女神の祝福』、と。
瞬間、天から降り注ぐまばゆい光が私の体を包み、全身の痛みが嘘のように消し飛んだ。 そしてその光の中心からは、なんだか少し野暮ったくて、私よりもさらに泣き虫な女神様が私に向かって手を差し出していた。 私はタルタルの大きさではない手で、女神様の手をぐっとにぎりしめていた。 その瞬間、女神の祝福の白い光と、ダテレポのオレンジ色の光が弾け、 二つの光の粒が雪のように舞い散る。その様子は本当に神秘的で素敵だった。 その神秘的な光の海の中を、鎖につながれた大小二つの銀の星が特に際立って輝いていた。
黒マントの男とミスラは突然の閃光に思わず腕で目をかばった。 彼らが監視していた来訪者、Yurifinaがうわ言のように何かをつぶやいたのはわかったが、 彼女が何を言っていたのかはまったく聞き取れなかった。 「・・・何が起こったんだ?」 金髪を長く伸ばしたチャラチャラした印象を相手に与える男、 ケルートがゆっくりとまだチカチカする目を開きながら言った。 「ボクに聞かれても困る・・・なんだったんだ今の光は・・・。」 どこか冷たい印象を相手に与えるミスラ、アグ・リッピナもゆっくりと目の前の腕をどけて目を開いた。 そんな二人の目にまず飛び込んだのは、魔方陣の中心でぐったりとうつぶせに倒れているこげ茶の髪の毛をポニーテールにした、 白魔道士のアーティファクトに身を包んだタルタルの娘、ユリフィナだった。 ケルートがはっとして叫んだ。 「彼女は!?」 アグがものすごいスピードで彼女に駆け寄ると、彼女の背中にネコミミを近づける。 しばらくそのままの格好でいたが、しばらくすると静かに立ち上がり首を横にふった。 「・・・心臓は・・・動いていない。」 そう言って尻尾をしょんぼりとたれさせたままケルートの方へとゆっくりと歩いていった。 「・・・オレ達は・・・オレ達はまだまだ無力なんだな。」 うつむくケルートを冷たい表情の冷たい目でじっと見つめたまま、彼女は彼の胸にもたれかかった。 その冷たい瞳には涙の粒が浮かんでいた。
「・・・今度こそは、来訪者による被害者を助けたい。 だからこそ・・・ボク達はルール違反を少しでも潰さないと・・・。」 元来訪者とはいえ、彼女も今はヴァナディールの人間、フェイトが守るべき物だったのに。 結局私達は何もできはしなかった。 アグはそう思うと自分の無力さが悔しくて仕方がなかった。 「次は・・・助けような。アグ・・・。」 ケルートはそう言って彼女の意外と小さな背中に腕を回してぐっと引き寄せた。 しばらくの間二人はそうしていたが、ケルートはそっと彼女から離れた後、 マントの中から赤いリンクパールを取り出した。 「あー・・・オレには湿っぽいのにあわねーや。」 「たしかに、こんなケルートは・・・不気味だ。景気づけにいつもの調子でやってくれ。」 そうアグに言われたケルートはチャラチャラした笑顔を作るとリンクパールの回線を開いた。 「ケルート、アグリッピナ班、時空魔法ダテレポの発動および消滅を確認しといたから。 んで、悲しいことに来訪者ユリフィナの死亡も確認。 軽く鬱だけど本部へ帰還と同時に時間凍結を解除するからヨロシク!」 アグは、そんなふざけた調子で上司に報告をする彼をポカーンとしばらく眺めていたが、 珍しく笑顔になり、小さくため息をついた。
「・・・仕事をなめていないか?さすがにやりすぎだぞ今の報告は。」 「もう、硬いなあアグは。」 ケルートはそう言ってニヤリと笑うと、パールにこめられているエンチャントデジョンを発動させた。 それを見てアグも慌ててパールを使用する。 紫の光に吸い込まれながら、ケルートはもう一度真剣な表情になってピクリとも動かない彼女にこういい残した。 「キミにも、楽園への扉が開かれますように。」 時間が再び動き出すと、倒れている彼女に仲間達が駆け寄った。
以上です。
投下してから気がつく失敗・・・
>>213 の9行目 魔方陣の中心で⇒力を失った魔法陣の中心で ですorz
多分、次回の投下が最終回になると思います。
なので今まで以上に大量投下させていただきますねw
それでは皆様わっふるわっふる!!
217 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/27(土) 11:56:50.80 ID:2GrQjCmh
>>216 投下乙でございます。
300年も待ちつづけた時魔道士、いいですね。
で。Yurifinaさん死亡。百合様は神に召され、と。φ(._.)メモメモ
次回で最終回ですか・・・。さびしいですねぇ。
わっふるわっふる。
クライマックス寸前ktkr
「異世界から来たぁ?」 バルファルは俺の告白を聞いた途端に目を見開いて、俺の顔をじっと見つめた。 「正確に言うと意識だけがこっちの世界に来たんだ。そしてこの体に憑依した。 つまり俺はレグナスであってレグナスじゃないんだよ。」 意識だけが他人の体に入り込み、支配している…。 この事実を認める為には、この世に魂が存在しているということを認めなければならない。 そもそも意識のみをゲームの中に取り込むような所業が人間に可能なのか? ただ、逆に魂のような意識レベルでの記憶情報のみを有するDNAデータが存在するとするならば、 俺はこのリアルとヴァナ・ディールの繋がりについてある仮説を立てる事が出来る。 しかしその仮説は、子供じみた現実味のないものでもあった。 バルファルはふいと夕日を目を戻す。 「そんな事言われても、信じらんねぇぜ。」 俺も夕日に目を向ける。もうほとんど沈みかけているようだった。 「俺もだ。」 俺は夕日に向かって大きく頷いた。 俺の思考は問題解決の糸口を見つけることの出来ぬまま、袋小路へと迷い込んでいた。
しかし、今はぐだぐだと思考に浸っていても仕方がない。 そういえば何かの小説の主人公がこんなことを言っていた。 『信じる信じないの問題じゃない。とにかく、お前はこの現実に直面してるんだ。 いいかい、俺たちに見えるのは、連続して変化する現象の一部だけだ。』 バルファルには聞こえないように、小声で自分に言い聞かした。 「俺はやらなきゃならない事がある。でも俺一人の力では無理なんだ。 だからバルファル…。俺に協力して欲しい。」 すっかり日が落ちてしまったようだ。 もう辺りは薄暗く、遠方では焚き火を熾しているゴブリンの姿が見えた。 「あのさ、レグナス。」 バルファルは立ち上がり、俺に顔を近づけた。 どうやら俺と目線の高さを合わせようとしているようだった。 「つまりはさ、元の世界に戻りたいってことだろ? そんなに改めなくてもいいぜ。俺が断るとでも思ってんのか?」 あまりに暑苦しいことを言ってくるので、俺は思わず苦笑いしてしまった。
「違うよ。」 俺も立ち上がる。タルタルに比べれば遥かに高い視線で、世界を見渡す。 「俺はリアルとヴァナ・ディールを自由に行き来できるようになりたいんだ。」 するとバルファルは俺の顔を見て、納得したかのように笑い出した。失礼な。 しかし俺の仮説が正しいのなら、それは恐らく可能なはず。 たとえこの世界が本当に異世界であるとしても、1と0で創られた電子空間であるとしてもだ。 俺はこの時点で、ヴァナ・ディールで起きている事件の数々はある程度は把握してる。 後発組はこの世界に関する情報を持っているので、ある意味では有利なのだ。 その為にやるべきことは 「フェイトに邪魔されずに、"あの場所"へ辿り着くこと。」 なんて含みのある言い方をしてみる。 それが何処にあるのか、どのような場所なのかは皆目見当がつかないのだが。 「フェイトってなんだ?」 「俺のような異世界から来た者をよろしく思わない邪魔なテロ集団さ。」 いつの間にか暗い空には深い雲がかかり、ぽつぽつと雨が降り出していた。
毎回少ないですけど以上ですー
223 :
既にその名前は使われています :2006/05/27(土) 12:25:47.84 ID:jvFnon/n
自由に行き来するなんてとんでもない!
224 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/27(土) 15:42:11.69 ID:2GrQjCmh
保守とかage
ポットの湯が沸くころに、デュエルが目を覚ました。 鎧戸の隙間から、朝日が漏れ差している。 おはよう、と互いに挨拶を交わした。 「久しぶりに熟睡した気がする」 それはよかった。 シーツをたぐり寄せる彼女に、お茶の入ったカップを差し出した。 「俺はこのあと直接、城に行くが・・・。どうする?」 どうする、とは朝食のことでも鍾乳洞のことでもない。 今後のこと、だ。 「いったん本部に戻って、確かめようと思って」 ナナシの話では、有象無象の小物が騒いでデュエルに責任を押し付けたとのこと。 どうも腑に落ちない。真実なら、まるでチャリオットが敗れることを知っていたかのような結論の早さだ。 ナナシのハッタリと言われたほうが、まだ納得できる。 「お互い気をつけるとしよう」 そうねぇ・・・と思案顔になる彼女。 枕もとのテーブルにカップを置く。 「なにか足らないわ」 「?」 「ぎゅっ、てしてあげる。きて」
宿を出てからデュエルと別れ、俺は城に赴いた。 腹が減った。胃の中が空っぽだ。 朝と言うには、少し日が高くなってしまっている。 途中でバザーを開いていたので、適当にタコスとジュースを買い食いした。 騎士団詰め所では、シャールカーンの小隊が出立の準備に慌しく動いていた。 「リード、待ちかねたぞ! もう少しで置いていくところだった」 隊長のシャールカーンは、騎士団の鎖帷子で完全武装だった。 王国の紋章が入った、立派な盾が誇らしげに輝く。 「つい先程ウィンダスの駐留官から連絡があった。アリア女史とその一党がテレポで飛んだそうだ」 他の隊員たちも従騎士の装備を身につけ、一種ものものしい雰囲気だった。 そんな中、俺は長剣を佩いてはいるが、簡素な只のダブレットにズボン姿。 みすぼらしいというか冒険者らしいというか、周りからは浮いていた。 「訓練用のチェインメイルなら貸せるが・・・」 さすがに平服では、と困り顔のシャールカーンに肩をすくめた。 「その気持ちだけでいいよ、シャールカーン。着ている時間はないのだろう?」 実際、時間がない。 テレポホラの呪文ならば、アリア女史らはすでにラテーヌ高原についている。 軍用チョコボで、どれほど時間を縮められるか、微妙だ。 「よし、行こう」
シャールカーンを隊長とする小隊は六名。 さらに今回は教会から査問官が一名派遣され、俺を含めて全部で八名となった。 軍用チョコボで駆けた。 一般に貸し出されるチョコボと違い、気性は荒く、乗り手を選ぶ。 倒れた兵を蹴り殺したり、敵のチョコボの眼をいかつい嘴で突付くなど、平気でやってのける。 乗りこなすのも容易ではないが、そのタフさと速度は他国のそれとは比べ物にならない。 大戦の折、満身創痍にもひるまず絶命した騎士を乗せて死闘を続けた逸話もあるほどだ。 アリア女史とともにいる一党は、戦士、ナイト、白魔道士、吟遊詩人の四人だ。 そのうち一人、おそらく白魔道士がユリフィナという来訪者だろうと思われる。 ロンフォールを風のように走り抜け、ラテーヌ高原に出たところで手はず通り二手に分かれた。 オルデール鍾乳洞には二ヶ所の入口があるからだ。 シャールカーンと俺、教会の査問官、従騎士一人の四人と、副隊長が率いる分隊。 それぞれ、魔法実験が行われるであろう場所を目指すことになっている。 オルデール鍾乳洞の構造は、人体を模しているといわれる。それは、単なる偶然だろうか? ともあれ、魔法陣は洞窟全体に広がっていることが判明している。 アリア女史が実験を行おうとしているのは、その中心に位置する隠し部屋―――。 心臓にあたる場所に位置している。
228 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/27(土) 17:39:19.80 ID:2GrQjCmh
以上ですage
229 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/27(土) 20:33:25.27 ID:Pz2ZRUR+
>>222 その発想は無かったw自由に行き来できたらおもしろそう・・・w
>>227 なんだか素敵な設定が・・・( ;∀;)
そんな場所にあったんですねー魔方陣(ヲイ)w
保守わっふるします
ただなんとなく、仲間の遺体を運んでいく亀の列に加わった。 行き着いた先は巨大な沼地のような所で、亀達は黙々と遺体をそこに沈めていく。 連中に墓という概念があるかどうかなど知らないが、 恐らくそこが彼らの墓場なのだろう。 その光景をじっと見つめていたが、「葬儀」に専念する彼らは俺に構おうとはしない。 やがて「葬儀」にも似たを終えた彼らは元の場所へと引き返していく。 俺は、なんともいえぬ気分で持ってきていた小瓶の酒を沼地にたむけた。 その時、亀の一人が俺に振り返って言う。 何のつもりだ、お前は何者だ、と。 俺は答えた。 首に駆けていた数珠を外して相手に突きつけ、俺は使者だ、と。 このときの俺は何もたくらんではいない。深い考えなど無かった。 用向きは何だ、と聞いてくる。 俺は答えた。王に会わせろ、話はそれからだ、と。 まあ……これがいわゆる、何かに突き動かされる、というところか。
ついてこい、とその亀は俺に言い、俺はそいつについて歩く。 そして先程の乱闘騒ぎの場所から更に集落の奥へと案内されていった。 そういえば、あの白の姉ちゃん達はどうなったのだろう。 そして、なにか妙だ。まだ姉ちゃん達が潜入を開始したばかりのはずなのに、 その進んだ後をしずしずと後片付けしているかのようだ。 うまく言い表せないが、とても敵襲を受けているように見えない。 乱暴な家人が暴れて壊れた皿を片付けているかのような…… やがて集落の奥地らしい所にある洞窟へと通された。 そして予想通りに、例の建造物に俺を触れさせ、罠の横を通り抜ける。 だが有る地点まで来たときに、少し待て、と止められた。 なんだろう、と考えていたが、洞窟の先でかすかに物音が聞こえる。 金属音、雄叫び、悲鳴……もしや、あの姉ちゃん達が中で暴れている? やがて静まりかえる。 そして、改めて俺は案内される。もしや……
だが、俺の予想は半分まで的中し、のこり半分は外れたようだ。 案内された鉄の扉の向こう側には、亀共の遺体で死屍累々の状態だったが、 白の姉ちゃんを含む、その仲間らしい物は一人として倒れては居なかった。 つまり、白の姉ちゃん達は、恐らく亀共の心臓部であろうここで、 さんざん暴れるだけ暴れて、それに飽きて帰って行ったのだろう。 しかし、引き返してくる姉ちゃんの姿が見えないのだが、 まあ正直どうでもいい。 なにか帰る方法があることぐらい俺でも知っている。 やがて先程と同じく後片付けが始まる中で、なにやら仰々しい亀が現れた。 他の連中とは違う装備。そして手に握られている巨大なツルハシ。 そして周りの連中に怒鳴りつけている。 しかし、手下のふがいなさをなじっているのではない。 だから俺にも戦わせろと言ってるのだ、と。 恐らく、手下達が無理矢理おさえていたのだろう。 王が飛び出して、白の姉ちゃん達に殺されるのを防ぐために。 案の定だ。案内していた亀が指し示し、あの方が我が主君である、と言う。 そして俺は、どっかりと腰を下ろしている王の前に押し出された。
それから、その王さんとの対話になったのだが、だいたいこんな感じだ。 「なんだお前は……使者だと?タルタル族のお前がなんの用件だ。」 「知らん。」 「知らんとは何だ。使者が用件を知らなくてどうする。」 「知らんものは知らん。ウィンダス政府の要請で鳥共の数珠を預かった。 用件なんて聞いていないから、俺が見て考えて決める。」 「……鳥?ああ、ヤグードのことか。で、ぶら下げているのがその数珠か。 使者自身が考えて決めるなんぞ聞いたことがない。」 「ああ、俺も聞いたことがないが、しょうがないだろう。文句があるか。」 もう、俺はいつでもぶった切られそうな口の利き方をしているが、なぜか度胸が据わっていた。 今にして思えば恐ろしいことだったかもしれない。 「ふん。で、どうするのだ。」 「お前達は何者だ。」 「……はぁ??何を言ってるのだお前は。使者が相手のことも知らんのか。」 「ああ、知らない。だから見て考えると言っているだろう。 俺は『外』から来たのだ。見た目はタルタル族だが、前は違った姿だと思う。 ヒュムとかいう連中に似ていたと思うのだが、それも違うかも知れない。 前の記憶が無いから判らない。そして、この世界のことなんどロクに知らないのだ。」
「……で、お前は何がしたいのだ。」 「他にお前達のような連中が居るのか?」 「お前達のような?お前の言うことが判らん。 ようするに、ニンゲン共と戦う種族のことか?我らクゥダフやオークのような。 ヤグードは……まあ、あいつらはお前が来たウィンダスと和平を進めているようだがな。」 「そうか。お前達はクゥダフというのか。では、オークという連中に会わせろ。」 「貴様、儂に命令する気か。勝手に会ってくればいいだろう。」 「では頼みたい。今、俺はタルタルの格好だからお前達に見た目で敵と決めつけられる。 鳥やゴブリン共と意思疎通が出来るまで、ずいぶん時間がかかったのだ。 案内してくれれば話が早い。それに俺は連中の居場所を知らん。」 「……。」 会話はそれで終わった。 どうなるかと少々不安だったが、案内してやると言われて正直いってホッとした。 案内、といっても変な木箱に入れと言われて閉口したのだが。 これでは護送どこれではない。本当に荷物扱いだ。 で、俺は木箱ごと運ばれてどこかに運ばれていった。 オーク達の本拠地があるという、なんとかいう深い森の奥地まで。
俺が入っている箱の頭上で何やら会話が聞こえてくる。 ずいぶん長い会話だったが、箱の中であるせいか良く聞き取れない。 やがて箱が開けられた。 そしてギロリとした目つきで俺を睨み付ける顔。 なんだこのブタゴリラ。怖いというか……頭悪そう……
236 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/05/27(土) 21:17:45.17 ID:DCDfZQOw
とりあえず以上っす
237 :
既にその名前は使われています :2006/05/27(土) 21:28:24.52 ID:jvFnon/n
ポン吉さんの命知らずさは天井要らずやデー
238 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/05/27(土) 22:39:00.58 ID:aZ83e8mK
オークと聞いて反射的にエロ展開を思い浮かべた俺はもうだめぽ
239 :
>>69 :2006/05/27(土) 23:11:01.88 ID:uW3Ah0Mq
だから性欲に基づく行動ではないと2スレにわたって言ってるのにOrz 本文で解説したつもりだったけど私には文章力がないようですOrz
240 :
既にその名前は使われています :2006/05/27(土) 23:11:23.13 ID:TTUltZhe
241 :
既にその名前は使われています :2006/05/27(土) 23:31:57.20 ID:jvFnon/n
いやまて 人間すきなオークとか居るかもしれないじゃないか おれたちだって モンスター娘が好きだったりするじゃない すきじゃない? これは失礼 おれはすきなんだよ!!11
まあ、全ての作品でオークが同じ価値観であることもないよね(´・ω・) ブーンにはまるオークもいれば、幼馴染と交換日記しながら交際するオークだっているかもしれない!
243 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/05/28(日) 00:02:42.07 ID:w5kGphpU
69氏の展開以前からオークには他の獣人よりもエロいってイメージがあるのw >モンスター娘 シヴァとかガルーダなら好きだ!!
どぉぉぉん……どぉぉぉん……どぉぉぉん……どぉぉぉん…… う、う〜ん……なんだよ、騒々しい…… どぉぉぉん……どぉぉぉん……どぉぉぉん……どぉぉぉん…… 俺はまだ眠いんだって……あ、ああ……そうか、起きなきゃ…… 俺は、クゥダフとかいう亀の連中に案内されて、 オークとかいうブタゴリラ共の陣地にやってきた。 着いたのは夜で、特別に設えたテントに寝かせて貰ったのだが…… どでかい太鼓の音に起こされて、外に出るとまだ真っ暗。 日も登ってないじゃないかよう。 しょうがないからテントの外に出ようとしたが、 慌てて戻って、継ぎ接ぎだらけの皮の装具を身につける。 その姿を部下が見た瞬間、お前は八つ裂きにされるだろう。 そう脅されながら、連中から受け取った衣装と仮面だ。 ……なんか臭うぞ、これ。 トカゲの皮らしいんだが、乾かしたりなめしたり……してないんだろうな、やっぱり。
そうして、寝ぼけながら広間の方にやってくると、 いるわいるわ、ブタゴリラ共がざわめきながら行列つくって待っている。 そこへメガホンらしいものを片手に、一人の偉そうな奴が高台に登った。 「さっさと列を作れ!このバカ共ォッ!! だからオークはバカだと指刺す連中が後をたたんのだ! ごちゃごちゃ言ってると脳味噌ほじくって後方支援に廻すぞクズ共め!! コラァァッ!そこの前から3番目ェェッ! 朝礼ごときで、戦士たるもの貧血起こして倒れるとは言語道断ッ!! 手術室送りだ!行って仮面かぶって帰ってこいぃっ!!」 すると、指名されたブタゴリラが一斉に周りの奴らに羽交い締めにされる。 いやだぁそれだけは許してくれぇ、という断末魔を残しつつ奥へと担ぎこまれて…… ま、マジか?こいつらのやる手術っていったい…… 「小さく前になれっ!小さくだ!そんなに広がったら広間に入りきらんだろうがッ! よーし、総員駆け足ィィッ!!」 そうして、そこにいる全員が足踏みを開始し、順々に広間から走り出し…… お、面白ぇぇ……こいつら、面白すぎる……ちょっと怖いけど。
そんな光景を見物していた俺の方に、高台に登って演説していた奴が近づいてきた。 そして自慢げに言う。 「どうだ!これが我が帝国の栄えある遠征部隊の大朝礼だ! 貴様がウィンダスからの使者だか間者だか知らんが、 威風堂々たる我が軍の早朝訓練のとくと見るが良い! ワハハハハハッ!あまりの勇ましさに言葉もでんようだなっ!」 言葉が出ないというか……これじゃ小学校の朝礼と大して変わらん。 笑いをこらえるのに必死だっての。あー仮面をかぶってて本当に良かった。 「なんなら訓練に加わって見るが良い。ほれ、貴様なら年少の部隊がお似合いだぞ。 しかし年少とはいえオーク軍は老若男女みな戦士! 戦場で生まれて生き血の産湯を使い!遠征に生きて戦いの中で死ぬことが我らが誉れ! 貴様が何処まで着いていけるか試してみるが良い。 ああ、仮面は脱ぐなよ。 タルタルの脳味噌となれば極上品だからその場でくりぬかれるぞ。ワハハハハハッ」 お、恐ろしいことを言うが、面白そうだから訓練とやらに加わってみるか。 どれどれ……おー、あのチビッこい連中か。 チビとは言っても俺の数倍はあるんだが。
そして先頭の教官らしい奴に従って、年少組は陣地の中を走り続けた。 走っていくうち、教官が掛け声をかけ年少組はそれに併せて唱和する。 ♪我らが栄えある帝国の (われらがはえあるていこくのっ) ♪音に聞こえし遠征軍 (おとにっきこえしえんせいぐんっ) ♪我らが行く手に阻む者 (われらがゆくてにはばむものっ) ♪はらわた切り裂きぶち殺せ (はらわたきりさきぶちころせっ) ※ここから右手の拳を上げて絶叫。 ぶち殺せ!(ぶちころせ!) ぶちのめせ!(ぶちのめせ!) 蹴り飛ばせ!(けりとばせ!) 踏みつぶせ!(ふみつぶせ!) (知っている人はファミコンウォーズのCMのふしで) で、マラソンが終わると体操だ。 太鼓に合わせて腕をぶんぶん振り回すのだが、戦いの踊りなんだとか。 これを鍛え上げれば技として使えるらしいのだが……本当かよ。
お次は練習試合のようだ。これには流石の俺も遠慮した。 二人づつ思い思いの武器を持って、みんなの前に出て戦うのだが…… おおいっ!てめぇら本気じゃねぇか! 年少組だぞ?そんなに本気でやってどうする! こらこら!鼻血が出てるぞ!相手は半泣きだ!だれか止めて!止めてあげて! しかし、みんなには大うけだ。 勝負も何もあったもんじゃなくなったが、喝采して二人の戦い振りを讃える。 そうだ、その意気だ。これぞまさしくオーク魂だ、と。 やがて太鼓が打ち鳴らされて、大鍋が運び込まれて火にかけられる。 手に手に器が廻され、鍋の前に列を作る。 もう既に日は高くなり、遅めの朝飯というわけだ。 俺にも器が回ってきたが……流石にそれは遠慮した。 なんか、あの鍋あやしい。ちゃんとアク取りとかしてなさそうだし。 ……そういう問題じゃないか。後で調理前の材料貰って自炊でもしよう。 しかし、なんとまあ愉快な連中だ。 まあ……相当に血の気の多い連中のようなんだが……
が、そんなことを考えていた矢先。 急テンポで太鼓が打ち鳴らされ、あちらこちらから叫び声が聞こえてくる。 「敵襲だぁぁっ!!ニンゲン共がやってきたぁぁっ!!」
250 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/05/28(日) 00:14:43.52 ID:ywdIyv+7
とりあえず、以上っす。 わたすが公式資料を読んで考えたオーク観はこんな感じで。
251 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/28(日) 00:44:49.97 ID:cZ/1At2M
保守わっふるでございます。
>>229 実はオルデールに突入するタイミング等を決めかねていますので、
続きは百合姫のSSを待つことにします。
>>250 命知らずにもほどがあるッ!
だが、それがいいッ!w
252 :
レップ ◆35//hs0Y0Y :2006/05/28(日) 01:33:23.35 ID:wnEHzbA3
いやいや〜 ようやくここまで読みきった! したらユリフィナさんが逝ってたり、リードさんがユリフィナさん追い掛けてたり、ポン吉さんが獣人王に会ってたり、新たな犠牲者がでていたりメイミィさんがウィンダス帰ったり大変なことになってました まだかけてないので、後ほど投下します わっふるわっふる!
253 :
レップ ◆35//hs0Y0Y :2006/05/28(日) 01:40:40.57 ID:wnEHzbA3
キャラ紹介テンプレ 初出: 2スレ目35 PC(仮)名: Rep-trip/ 中の人: レップ ◆35//hs0Y0Y 種族フェイス: 樽F2A ジョブ&Lv: 不明 特記事項: 頭に変なのあり。 活動エリア: ウィンダス&サルタのみ あらすじ: 変な夢を見たが、多分わすれてるw 他キャラとの接触: リードのみ 独自レギュレーション:ジョブチェンジ自分で可能。ただしミスが多く、D2すると下の地面まで消えたり。 実験で、頭に変なの埋められた。
254 :
既にその名前は使われています :2006/05/28(日) 06:23:30.33 ID:GGM1XVIa
>>243 あーwそういう意味かwwwww
ポン吉さん。異種族描写が素敵です。
255 :
既にその名前は使われています :2006/05/28(日) 07:07:56.83 ID:cZ/1At2M
保守age
256 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/28(日) 08:02:23.26 ID:cZ/1At2M
257 :
既にその名前は使われています :2006/05/28(日) 09:43:35.10 ID:mEZ3bSwW
>>243 ほう
君はラミアさんとメローさんは好きかね?
久々に見に来ましたら皆様それぞれ動きがあったようで… うは!百合姫が?!Σ(゚д゚;) 最終話がんばです(・ω・)ゞ それをリード氏が追っているし、ポン吉氏は豚さんたちとファミコンウォーズだし、 新犠牲者のレグナス氏は世界間自由往来宣言でフェイトへガチ宣戦布告だし(煽るな煽るなw 自分も久々投下で、そろっと重い腰を上げようかと思います(−−;
…ん…ぅう……。むにゃむにゃ…そんなに食えないっすよ〜… だからぁ〜…腹は十二分目までですってぇ〜…あ、デザートは別ですよぉ〜… …むにゃむにゃ……痛っ!だ、誰だ?!俺を箸でつつくやつは?… 俺は肉じゃないぞ!!…って、ん?…あれ?…ここは? 小川の端っこに寝ていた俺を無理やり起こした犯人は、巨大で空を泳ぐ魚だった。 起こすというよりも、なにやり捕食しようと思っているようで… って、こいつぅ〜!全力で啄ばもうとするなぁ〜ヽ(メ`д´)ノ まったく、拾い食いしようなんてどんな教育を受けているんだか… ん?あれ?あれあれ〜?お、おかしいなぁ〜… あのぉ〜…右手が無いんですけどぉ〜… ……。…………。 まてぇ〜!!糞魚野郎!!!俺の右手返しやがれぇ〜!!! 死ぬ気で吐き出しやがれぇぇぇえええええ!!!!
ぜぇぜぇぜぇ…糞っ!あの魚野郎め…消化しちまいやがったか… 持ってかれちまった…俺の右手… って待てよ…俺なんでこんなとこに居るんだ?それにここはどこなんだ? 辺りを見渡してみるとそこには、森林が生い茂り、近くには川が流れている。 その周りではウサギや巨大ミミズたちがその短い命を謳歌している。 物騒な得物を携えてその巨躯を乱暴に扱う怪物、オークが歩いている。 …あぁ〜そうか、ここはサンドリア王国のお膝元、ロンフォールだと気付いたのは、 覚醒してから充分な程に時間が過ぎてからだった。 …ぅ〜ん…場所はわかったけど…どうして俺はこんなところにいるんだ? ブモと一緒にジュノへ向かっている途中で、炎の壁とその弟に会ってぇ〜… 何か意識がぶっ飛んで…気付いたらジュノに居て…んでまた意識がぶっ飛んで… ぅう〜ん…意識飛びすぎでなにがなんだか… あれ?…そういえば…ブモは?
久々だったので名前にナナシが残ったままだった…orz 今回の投下は以上です。では皆の衆わっふるわっふるですぞ(・ω・)ノシ
本文と関係ないのでコテ抜きで発言 まとめ氏は今どうされているのだろうか?… あまりにも更新がなくて心配なのだが…(・ω・;)
>>249 なんだかオークって結構愉快な連中ですねw
そんなことやってるといつか本当にたべれれちゃいますよ?ww
>>261 ゴブ復活ヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノ右手ないけどw
大丈夫、きっと毎日肥料と水と愛情を与えていれば生えてきますw
>>262 たしかに、ちょっと心配です・・・。倒れたりしてなければいいのですが・・・
では、何スレ消費するか分かりませんが最終回いきます。
ヲイイイィィィイィィィヲイイイィイイイイィイイ! ダンダンダダダダダダダダダダダダダと、今は亡き、POLにログインする時の熱い曲が 私の携帯からけたたましく鳴り響いている。超うるさい。朝からこういう嫌がらせは勘弁して欲しい。 私が目覚まし代わりに設定したのだけれど。 「うぅ・・・ねむ・・・。」 私は布団の中から手だけを伸ばして携帯をベッドの中に引きずり込むと、それを電源ボタン連打で黙らせ、 そしてなんとなく重たい脚を少し縮めてベッドの中で一度ごろりと転がった。 やっぱり朝は苦手だ・・・。ていうか、布団の中が気持ちよすぎる。 とはいえ、眠いとか言ってる場合じゃないかもしれない。 昨日、お父さんにひどいこと言ったことをお父さんが仕事に出る前に謝らないと。 それに、朝は苦手だけど今日はなんだかものすごく良く寝た気がして、いつもよりはすっきりと起きる事ができそうだ。 それにものすごく楽しい夢も見た気がする。 泣きつかれてたっぷり寝たから?我ながら21歳とは思えない理由だな・・・。 私はよれよれのピンクのパジャマ姿のまま何とかベッドから這い出して、カーテンを全開にした。 シャアッ!と心地よい音と一緒に目を刺すほどに強い朝日が差し込んできたために、私は思わず目を細めた。 なんだかすがすがしい朝だ。今日は心も明るくなりそうな雲ひとつない見事な快晴だ。後で散歩を兼ねてゲーセンにでもいこうかな。 私はベッドの側の小さな台に転がしてあるヘアブラシをひっつかむと、 スリッパに足をつっこんで、全身が映る姿見の前に立った。
今の身長も特別高いわけじゃないけれど、もうちょっと背が低いほうがやっぱりかわいいよね。 そういえば留年確定で就職活動の必要なくなったから真っ黒に戻した髪の毛もまた染め直そうかな〜。 そうねぇ、この前はちょっと明るい茶色にしすぎたから、今度はちょっと落ち着いた感じの茶色にしようかな。 でも、そんなことしたら反省してないって思われちゃうかも・・・。やっぱりやめておこうかなぁ。 ふと、自分の首に見慣れないネックレスがかけられていることに気がついた。 それは細い銀の線で大小の二つの星が形作られている飾りがついた、きれいな小洒落たネックレスだった。 私はなぜかそのネックレスに一瞬で心をがっちりつかまれて目を離すことが出来なかった。 神秘的ですごく素敵・・・それに、見つめているとなぜかものすごく切なくなってきて泣きたくなってくる。 ・・・私の泣き虫もここまできたらさすがに重症かも。そんな私に微笑むかのようにネックレスが朝日をはじいて澄んだ光を放つ。 これ、今日から私の宝物にしよう。なんだか分からないけれどすごく大切に出来そう。 さて、どこから来たか分からないネックレスは私のものにするとして、当面の問題はお父さんとこれからのことだ。 とりあえず、ダブったからには資格とかを取ること考えたほうがいいのかな。それに、お父さんには早く謝らないと。 そんなことを考えながら髪の毛に丁寧にブラシを通していると、 いつの間にか手近にあった黒いゴムを使ってポニーテールを作っていることに気がつき慌てて手を止める。 ・・・何故ポニテ?それに、こんな髪型は小学生以来やっていないのにまるでつい最近までやっていたかのように 自然に、しかも綺麗に手早く出来たのがさらに不思議だ。 せっかく結んだものを解くのも面倒だしこのままでいいか。それに意外とポニーテールも似合うじゃない私。
私は顔を洗うための道具一式を漫画やら、小説やら、教科書やらが乱雑に詰まれた机の上から引っぱりだすために、 机の方へ向かった。そしてその時になって初めてパソコンがつきっぱなしなことに気がついた。しかもFFにインしっぱなしだ。 いっけない・・・ってあれ?私きのう2chで『朝起きたら自キャラになってた』ってスレとかを見た以外にパソコンは 使ってないはず。FFはやってなかったような・・・。 そんなこと気にしてもしかたないか。とりあえず電源を落とさないと。 モグハウスにいるから/shutdounで即落とせる。 私は/shuまで打ち込んだところであることに気がついて目を丸くした。 「イベントかな?」 モグタンが頭にリラコサージュを乗っけていた。しかも自キャラのYurifinaの頭からは 妹が作ったYukapipiの銘入りリラコサージュが消えている。 どうしたんだろう・・・GM呼ぶ?面倒だしいいか。由佳のキャラに後で素材送って作り直してもらおう。 「おねーちゃーん、寝てるよね?・・・って、あれ?」 少し野暮ったい感じがする私のかわいい妹ちゃん、由佳がノックもなしにドアを開けて何だか失礼な感じがすることを言う。 相変わらず憎たらしいくらいのサラサラで真っ黒な日本人的な髪の毛だ。 「起・き・て・ま・す。」 「・・・お姉ちゃんがこんな時間に起きてるなんて・・・どうしたの〜?」 私はちょっとだけうつむく。妹とはいえ、私にだってホラ・・・あんまり言いたくない事とかもあるから・・・。 でも、何も言わないのも・・・ね。
「・・・昨日さ、お父さんに・・・ほら・・・。私が悪いのに色々言っちゃったから・・・ お父さんが会社行く前にさ・・・謝ろうって。」 何だか妙に照れくさくて足の先で床をグリグリしながら私はボソボソとこう言うと、 由佳は少しだけ驚いた顔をしたかと思うと、ちょっとだけ嬉しそうに微笑んだ。 「あのね、それならお父さんも大丈夫だよ〜。あたし、お父さんに『由梨が起きてるか見てきてくれないか?』 って言われてきたの。昨日お姉ちゃんのことひっぱたいた事気にしてるみたい。」 でも、あれはギャーギャーわめいた私が悪いのに。お父さん、本当にごめんね。 私は予行練習みたいに一度心の中でお父さんに謝った。 「でね、あたしが自分で見に行ったらいいのにって言ったらお父さんったら『由梨は俺が部屋に入ると怒るから。』だって! お姉ちゃんかわいがられすぎ〜!」 耳までの温度が急にカーッと上昇した。そんな細かい事をこんな時も気にするくらい器の大きいお父さんに 色々言ってしまった昨日の私と、部屋に入るだけで怒っていた私が急に恥ずかしくなったからだ。 「ああもう!自分が恥ずかしい!!由佳、部屋でて。すぐに着替えてお父さんに謝りに行く!」 プチプチとパジャマのボタンを素早く外しながら私はクローゼットとタンスから適当な服や下着を引っ張り出す。 「わかった〜。そうそう、お姉ちゃん。あたし今日お姉ちゃんがどこか遠くに行っちゃう夢みちゃった・・・。」 そう言うと由佳はなんだか少しだけ真剣な表情になる。いや、由佳の夢の話なんてどうでもいいから、とっとと部屋出ろよ。 「でね、あたしはどこか行っちゃいそうなお姉ちゃんをどこからか引っ張りあげたの。 ・・・お姉ちゃん、どこにも行かないよね?」 私は引きずり出したスカートを抱えたまま、きょとんとした顔でしばらく妹を見つめていたが、 夢をそこまで気にする彼女がおかしくなって思わず大笑いを始めた。
「あははははは!由佳〜!私がそう簡単にどっかいくわけないでしょう。 それに引っ張りあげたって何よ?」 大笑いをされて顔を赤くした由佳は「だって引っ張りあげたんだもん・・・。」と呟く。 ちょっとだけ鼻声になっていた。あーもう、この子は私に輪をかけて泣き虫なんだから。 にしても夢か。私もたくさん見たんだよね。 「私も夢みたよ。」 「どんな?」 どんな・・・と言われると困る。何だかぼんやりと覚えているような覚えていないような・・・でもやっぱり覚えていない。 でも夢って大抵そんなものだよね。ただ、これだけは覚えている。 「私、夢の中で恋人と同棲するんだけどね、その男がすっごいスケベで、怒った私が毎日のように何発もその人にビンタをする夢。」 今度は由佳が笑う番だった。自分で言ったことがおかしくて私も笑う。 でも、思い出すことは不思議なことに色白でちょっと毛深い彼をひっぱたいていることばかりだ。 「おっかしいでしょ?しかもね、その人何発ぶたれても全然懲りないの。だけど・・・。」 「だけど?」 そこまで言って私は少しだけ頬を染め、口をつぐんだ。 「なんでもない。ほら、下着も変えるからとっとと出て行って。」 妹はちょっとだけ釈然としない顔のままだったけれど、こんどは素直に扉の外へと向かって歩いていった。
「それじゃ、お父さんが家出るまでに着替えてね。」 「はいは〜い。」 私は引きずり出した二着のスカートをベッドの上に適当に広げながら適当な返事をすると、 私の部屋のドアがパタンと音を立てて閉じられる。 言えないよ。夢の中の出来事なのに『だけど本当にずっと一緒にいたいって思える人だった』なんてなんだか恥ずかしくて。 それに、こういう気持ちは口にしちゃったらなんだか嘘っぽくなる気がして。私ったら変なの、夢なのにさ。 突然、夢の中の彼に逢いたくなって涙がこみ上げてきたので私は慌てて顔を伏せた。 あーもーー!どうしてこう涙って勝手に出るものなのかな・・・。 私はいつの間にか右手でギュッと例のネックレスを握り締めていた。 冷えた金属に私の右手の熱が映ってゆく感じがきもちいい。 ・・・って感傷に浸ってる場合じゃないや。早く着替えなくちゃ。 私はパパッと手早く着替えてもう一度軽く髪をとかした後、鏡の前で一回転してみる。 スカートのすそとポニーテールがふわりと遠心力で優雅に広がった。 よし、あとは階段を駆け下りて、多分まだ新聞を読みながらニュースを眺めているお父さんに謝りに行くだけだ。 お父さん、許して・・・くれるよね?
あ、その前に・・・。私はつけっぱなしのパソコンの方へとくるりとターンをする。 パソコンの電源を落としておかないとな。 「モグタン、また会おうね。」 自分でも気付かないうちにこう呟いて、私はファイナルファンタジーXIからシャットダウンをするための命令を打ち込んだ。 何故だか、モニターのむこうでモグタンが泣きそうな顔をしたような気がした。 /shutdoun Enter
モグハウスに主人が3ヶ月帰らなかった場合、自動的に冒険者の登録は抹消され行方不明者扱いになる。。 そうなるともちろん、モグハウスも当然ながら引き払われることになる。 では、そうなったときにモグハウスで働いていたモーグリはどうなるのか? 新しく来る新米冒険者のために新しいモグハウスで働く者もあれば、 お祭りの時にたくさんの冒険者に様々なアイテムを販売したり、 イベントを企画したりする仕事に転職する者もいる。 モグタンと言う名のモーグリが自分の仕事を選んだ理由には、タルっ娘とハァハァしたいなんて下心ももちろんあったが、 といよりも動機のほとんどだったのだが、もちろん優秀なモーグリとして冒険者をサポートすることにも誇りを持っていた。 だから、彼は主人が帰らなかった後、すぐに『獲物』とラヴラヴ同棲生活ができるように さまざまな下準備をすでに始めていた。 (でも、ユリが帰ってきたらこれも無駄になるクポ。) そう、彼は考えた後、あわててリラコサージュがちょこんとのっかった頭をブンブン振った。 モグハウスに帰ってくるということは、彼女が元の世界に帰れなかった時だ。 そんな時のことは考えちゃいけない。モグはユリが無事に帰れることを誰よりも信じてあげないと。 彼はこう必死に自分に言い聞かせて、一人ぼっちのモグハウスで三ヵ月後に冒険者として デビューする予定のタルタル娘をピックアップしていた。
だけど、できることならこの作業が無駄になってほしいと彼は願っていた。 「・・・モグは悪いモーグリクポ。ユリが、元の世界よりもモグのところに帰ってきてほしいって考えてしまうなんて ・・・ダメダメモーグリクポ。」 彼は頭のリラコサージュをそっと外してしばらくそれを見つめていた。リラコサージュにはまだ、 彼の主人の髪の香りが残っているような気がした。 突然、扉がバタンと開いた。 「ただいま。」 聞き覚えのある声がした。 「グググ・・・クポォッ!?」 モグハウスの入り口には白魔道士のアーティファクトに身を包んだこげ茶の髪の毛をポニーテールに結んだ タルタルの少女・・・と言っても既に21歳の彼の主人、ユリフィナがきょとんとした表情で立っていたからだ。 「・・・何?モーグリさんどうしたのそんなに驚いて。」 モーグリさん。この呼び方は、『ユリ』の前の主人『ユリフィナ』が彼にしていたものだった。 そして、彼女の胸からは彼がプレゼントしたネックレスがなくなっていた。 「・・・いや、なんでもないクポ。」 彼は一瞬で悟った。ユリは帰れて、今、彼女の体にはユリフィナの心だけが残っているのだと。 そしてネックレスはユリがちゃっかり持って行ってしまったのだと。 事実、その通りだった。黒マント達は来訪者ユリではなく、 完璧に『ユリフィナ』になった彼女が、来訪者以外の時間を止める時間停止に巻き込まれていたことに まったく気がつかないで彼女が死んでしまったものだと早とちりをしたのであった。
ぶっきらぼうに「なんでもない」という彼に、ユリフィナは露骨にいやそうな表情になり つかつかと彼の前まで歩いて腰に手を当てて頬を子供っぽく膨らませた。 「なーに?ユリさんじゃなかったのがそんなに不満なの?『モグタン君』!」 「グポケペペ!?!?」 モグタンは訳わからない叫び声をあげて、びっくりして飛び上がる。 その反応をうれしそうにユリフィナは眺めた後、ニコリと微笑んだ。 「覚えてるよ。ユリさんが私の中にいたときのことも。」 そう言ってちょっとだけ彼女はモグタンから視線を外し、つま先で地面をもてあそびながらポツリと付け加えた。 「・・・モグタン、優しいんだね。ただえっちなだけだと思ってたけど・・・見直したよ。」 モグタンは耳まで真っ赤になってそうつぶやく主人に、どう声をかけたらいいかわからず呆然と浮かび上がっていた。 モグタンはしばらく困り顔でいたけれど、とりあえず一番心配なことを彼女に尋ねることにした。 「ユリは・・・ユリはどうなったクポ?」 ユリフィナは赤い顔をあげて即答した。 「帰ったよ。」 「無事にクポ?」 「うん、多分。だから私に彼女の世界の記憶がないんだと思う。」 と、アリアが立てた仮説をさも自分で考えたかのように彼女はモグタンに説明をする。
「・・・よかった・・・クポ。本当に良かったクポ・・・。」 モグタンは手に持っていたリラコサージュを涙目で大切そうにギュッと抱きしめた。 もう、彼の主人は『寂しい』とか『帰りたい』とか『帰りたくない』とか考えて泣かないでいられるんだ。 「・・・ユリ。」 愛しそうにリラコサージュを抱くモグタンをユリフィナはちょっとだけ複雑な気持ちで眺めていた。 本当に人がいいんだからという尊敬と、 ユリさんのことばかり気にして相当久しぶりに帰ってきた私のことは全く触れてくれない事に対する嫉妬。 その嫉妬心が彼女にちょっとだけモグタンにイジワルをしてやれとささやく。 (私にユリさんの世界の記憶がないみたいに、 ユリさんもあっちの世界で、この世界のことを何も覚えていかもね。) ユリ、ユリ、ユリとばかり言う彼にこう言ってやろうとして、ユリフィナはなんとか思いとどまった。 嫉妬して嫌がらせなんでかっこ悪いし、そんなこと言ったらモグタンに嫌われそうだと思ったからだ。 それに、そんなことを知ったら彼はショックでどうにかなってしまって、イジワルでは済まない気もした。 ・・・しかし、モグタンがリラコサージュを抱いたまま5分程の時間が経過した頃になると、さすがに彼女もイライラしてきた。 「モグタン?ご主人様をほっておいていつまでそうしているつもりなの?」 ビクッとしてモグタンが彼女に顔を向けた。 「え、えーとその、・・・ユリごめんなさいクポ。」 リラコサージュを頭につけなおしておずおずとユリフィナに近づくモグタンを彼女は一睨みする。 まーたこのモーグリはユリって言った!!
「私はユリさんじゃない!ユ・リ・フ・ィ・ナ!」 彼女の迫力に、いつも堂々セクハラばかりをしている彼が珍しくオドオドとして縮こまった。 「そ、そのー、ご主人様。」 そのモグタンの態度にさらに彼女は不機嫌になる。 今度はよそよそしく他人行儀ですか!時間にしたら私の方がユリさんよりずーーーっと長い間一緒に生活していたのに、 他人行儀ですか!メラメラと嫉妬心に突き動かされるままに彼女は思いっきり声を張り上げた。 「ずるい!どうしてユリさんだけ名前で呼ぶの!?そんなにユリさんのほうがいい!?」 「・・・ク、クポー。」 困り果ててしょんぼりするモグタンがかわいくて、少しだけおかしかったので思わず彼女は怒っていたのを忘れて笑い出してしまった。 しばらく彼女はクスクス笑っていたが、たっぷり笑った後に困惑する彼に微笑んだ。 「だから私のことも名前で呼んでよ。ユリフィナって。いいでしょ?モグタン。」 そう言って彼女はパチリとかわいらしくウインクをしてみせた。 「わ、わかったクポ〜、『ユリフィナ』。」 ユリフィナはモグタンに名前で呼ばれて満足そうに微笑んだ。
「では、ユリフィナとユリの帰還を記念して・・・」 モグタンは一度軽く咳払いをする。 「記念して?」 ユリフィナ軽く首をかしげ、きょとんとした表情で彼を見つめた。 モグタンに瞳がギランと怪しく輝く。 「やらせろクポーーーーー!!!」 「きゃあああああ!!!なによそれ!?!?!?」 猛スピードでユリフィナに突っ込むモグタン。悲鳴を上げてその場に立ち止まるユリフィナ。 (前言撤回!こいつはただのエロ生物!見直しなんてしない!えぇ、するものか!この変態め!) 彼女にモグタンのいやらしい手つきの腕が触れる直前に、彼女はキッと眉を吊り上げて おしおきのために何か大規模大規模だけど瞬間的に発動できる魔法の詠唱を始めた。 「なに色々と台無しにしてるのよ!このスケベエエエェェェッ!!!」
彼女がそう叫ぶと同時に彼の周りに、無数の金色の光の輪が現れた。 そしてその光の輪は彼に向かって収束すると同時に激しい閃光と音を伴って白い爆発を起こす。ホーリーだ。 悲鳴を上げることもできずに真っ黒焦げになった彼は、ボテッと地面に墜落する。 ユリフィナが想像以上に大ダメージを負った彼を見てもう一度大きな悲鳴をあげて駆け寄り、ケアルの詠唱を始める気配を感じながら、 彼は大好きなユリが言ったある言葉を思い出していた。 『今度浮気したらホーリーで真っ黒こげにした後、海に沈めてやるんだからね。』 (う、海は勘弁してほしいクポ〜・・・。) なんだか彼女が怒りに満ちた表情で 『モグタンの浮気者おおおぉぉぉぉおお!』 と叫びながら平手を思いっきり振り上げたような気がした。 〜おしまい〜
以上でおしまいになります。ちょっと最後の方くどかったかなーwと少し反省・・・w 長い間呼んでくださった皆様、応援してくださった皆様、まとめサイトの管理人さま 素敵な絵を描いてくださったメィミィ様、本当にありがとうございます。 感想はとても励みになりました。 とても都合が良い事にオルデールから帰る描写が無いのでリードさんのお話と上手く絡む事が出来そうですw それでは、しばらくの間は名無しに戻りますが、リードさんのお話に登場したらユリフィナ視点で書かせていただくかもしれません。 それではしばらくの間はひたすらわっふるしていようと思いますw 読んでくださった皆様。本当にありがとうございました。 ,.、,、,..,、、.,、,、、..,_ /i ;'`;、、:、. .:、:, :,.: ::`゙:.:゙:`''':,'.´ -‐i <わっふるわっふる! '、;: ...: ,:. :.、.:',.: .:: _;.;;..; :..‐'゙  ̄  ̄
279 :
既にその名前は使われています :2006/05/28(日) 11:10:33.85 ID:xOKsFbhE
リアルタイムで大団円ミレタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!! 最後までモグタンはやってくれましたなw 百合姫どの、乙であります(・ω・)ゞ
おおお、素晴らしい大団円(*´Д`*) 本当にお疲れ様でした!ヽ(´ー`)ノ
281 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/05/28(日) 12:03:27.39 ID:XJgIFeGh
THE ENDォォオ!! きたーーーー!
百合姫さま、お疲れ様でしたー!!モグタンとの絡みが大好きでしたw
>>257 死んだらラミアに操られたいww
ところで、起きてからの話、書いてみても平気でしょうか(´・ω・`) 今執筆中とか、プロットが出来てるという事ならそれをわっふるしつつ待とうと思うんですが、忙しくて書くのマンドクセ('A`)とか話思イツカネ('A`)という事でしたら、ネタ取りくらいにはなれるかなぁ、と挑戦してみたいのですがw
ユリフィナさん、乙でしたー! ハッピーエンドでよかった…あのまま裂けちゃってたらどうしようかと((((゚д゚;)))) 絵、ささっと描いたものでしたが気に入っていただけたみたいで嬉しいです。 最後に名前を出していただいただけでもなんだか光栄です(*´д`*)
284 :
No.1>>69 ◆FC91vFcmb2 :2006/05/28(日) 15:38:01.66 ID:GGM1XVIa
お疲れユリフィナさん大団円ーーーーー!!! 俺もPの物語再開しようかな。 外伝も終わる見込みできてきたし。
285 :
Loufas ◆TTnPTs4wAM :2006/05/28(日) 18:05:21.82 ID:O4AniuPs
>>282 大体こうしよう、という程度のプロットしかないので、書いていただいた方が助かったりw
今回投下するところにはヒロさんは登場しませんので、その辺は大丈夫です。
というわけで、投下しますー
(203) 傷を癒したとはいえ結局のところ疲れていることには変わり無かったらしく、俺は夢も見ずに朝を迎えた。 横ではラディールが気持ちよさそうな寝息を立てて寝ている。時計を見るとまだ5時半だった。 彼女を起こさないように静かにベッドから降り、そのまま部屋を出る。 こんな時間なら2度寝してもよさそうな物だが… 俺は何かに引き付けられる様に応接間のドアを開け、壁際に置かれたチェストの中を見る。 そこには布に包まれた何かがあった。ほぼ無意識にその包みを解く。 出てきたのは、龍、というよりは西洋風のドラゴンを模った置物だった。 何故か、これが昨日の赤い金属の成れの果てであることは理解できた。俺はここにこれがあった事を知らなかったんだけど… 「ほぅ…これは…」 「…爺さん、気配を消して背後に近寄るのはよせ」 視界の端で扉を見ていたつもりだったが、どうもこの置物を注視しすぎていたらしい。 「ほっほ、これは失礼を… おはようございます、坊ちゃま」 「あぁ、おはよう。ところでこれ、どう見る?」 包まれていた布ごと爺さんに渡そうとすると、爺さんは手でそれを制した。 「坊ちゃまの願いに応じてこの形になったのでしょう。先ずは坊ちゃまが確かめて見るのがよろしいかと存じます」 なるほど、もっともだ。しかし、そもそも得体の知れない物を俺に預けたのは爺さんだろう、と心の中で毒突く。
(204) とりあえずコンコンと叩いてみる。音が内部で響いているようだ。とすると、中は空洞という事になる。 胴体部分を良く見てみると側面に一筋の線があり、それは首の辺りで折り返し、反対側も同様の線が走っている。 線に沿うようにして頭部分と尻尾部分を逆に引っ張ってみると、ガコッという音と共に二つに割れてしまった。 外した内部を確認すると、何かを固定するための丈夫そうな紫の紐がある。 とりあえず、篭手なのは間違いないようだ。 後ろからその様子を見ていた爺さんは、何故か満足そうにうんうんと頷いている。 「とりあえず、身に付けてみてはいかがでしょう?」 「…あぁ」 短く答えて、篭手を腕に当てて紐を結ぶ。付けてみると、右手の甲の辺りには龍の頭、左手の甲には龍の尻尾が当たるようにできている。 邪魔にならない事を確認しながら、色々と手を動かしてみる。 「なかなか立派なもののようでございますなぁ」 「そうかな…」 龍の頭と尻尾。西洋占星術で言うドラゴンヘッドとドラゴンテイルは、九曜占星術で言う計都と羅喉。いずれも凶星だ。 縁起でもない形になってくれた物だが、逆に悪運が付くかも知れない。 「差し詰め、凶星の篭手ってところかな…」 そう呟いて、左手で裏拳を打つ素振りをしてみた。 次の瞬間、何か叩きつけるような音と共に、背もたれが見る影も無く粉砕されたソファが俺の目の前にあった。
(205) 「爺さん…」 「なんでございましょう?」 「これ、ヤバくね?」 「危険な物であることは否定できませんな」 思わず眉間に手を当てて悩んでしまった。 確かに普通じゃなさそうだとは思ってた。俺の不注意もあるだろうけど…いや、とりあえずこれ外そう。物騒すぎる。 そう思って紐の結び目に手をかけようとすると、さっき結んだ結び目がない。 本当にない。篭手が元々俺の体に着いていたかのように、紫の紐で完全に固定されている。 腕を引き抜こうにも、紐が肌に吸い付いてビクともしない。 「爺さん…これ、外れないんだけど…」 「外れないと言うことは、今は外すときではないのでございましょう。それは恐らく意思を持っておりますゆえ…」 「…こんな物騒なもん付けて生活しろってか」 「そのときになれば、自然と外せるようになりましょう。いつになるかは私めには分かりかねます」 爺さんは淡々と受け答えしながら、どうにもほくそ笑んでいるようにしか見えない。 なんてこった…切り札どころか呪われた装備じゃねぇか…
(206) 「とりあえず、のこぎりとナイフ、それに針と糸持ってきてくれ」 背もたれが粉砕されたソファをどうにかしよう、と思ったのは、これから起きてくる連中に妙な気を使わせないためだ。 爺さんから道具を受け取り、二人でソファをベンチ状の長椅子に変える作業を始める。 作業を始めてしばらくして、応接間にマルトとラディールが入ってきた。 「おはようございます。お爺様もルーファス様も、朝から精が出ますね」 「あぁ、おはよう。好きでやってるわけじゃないんだけどな…」 「好きでもないのにやってるって事は、あなたが壊したって事なのね…」 「ほっほっほ…まぁ、たまには良いでしょう」 早朝からなんだか和やかな雰囲気だ。 2人にも手伝ってもらい、30分もすると見栄えする長椅子が出来上がっていた。 俺と爺さんは慣れない中腰での力仕事ですっかり疲れ切ってしまい、向かい側のソファにどっかりと腰を下ろす。 マルトとラディールはソファの生地を全部剥がして新しい布に張り替えているようだ。そこまでするのか… 「そういえば、あの2人は?」 ラディールが縫い糸を歯で切りながら、マルトに声をかける。 「まだぐっすり眠っておられるようでしたので… それに、まだこんな時間ですから」 マルトが時計を指差す。そうですか、まだ7時ですか…
(207) 「ま、食事の準備ができるまでは寝かせといてやった方がいいかもな」 俺が横から口を挟むと、マルトはにっこりと笑って立ち上がった。 「かしこまりました。では、私は朝食の用意をいたしますので失礼いたします」 仕上げと後片付けはラディールが全てやってしまったようだ。 「んじゃ爺さん、ちょっと風呂行こうぜ。汗でも流さないとやってられないだろ」 「ほぉ、名案ですなぁ、ではご一緒に…」 爺さんはただでさえ丸めていた腰をさらに丸めて、腰をさすりながら立ち上がった。 「ルーファス、それは?」 俺も立ち上がろうとすると、ラディールが俺の方を指差しながら声をかけてきた。 指刺してる先は、やっぱり篭手だ。 「あぁ〜…これは、まぁなんというか…」 「昨日お見せいたしました、あの赤い金属塊でございますよ」 「へぇ… 本当に篭手になったんだ…」 ラディールは興味津々と言ったように篭手を眺めた後、ちょっとかっこいいじゃない、なんて暢気な事を言う。 俺は一つため息を付いて笑顔を見せた後、爺さんに目配せをして風呂場に向かった。 応接間のドアを開けて風呂場に向かう途中、寝ぼけているのか挙動不審な様子のフルキフェルを見つけた。 朝風呂に誘ってみたが、何故か顔を真っ赤にして拒否されてしまった。確かになんか変だよなぁ…
(208) 篭手が外れない事に関しては目をつぶる事にしよう。元々錆びたような色だし、もうこのまま入ればいい。 脱衣所で拳法着を脱ぎ捨て、そのままドアを開け放って風呂に飛び込んだ。 少し熱めのお湯が朝の冷えた空気には心地良い。風呂ってのは本当にいいなぁ… 鳥の声に耳を傾けていると、爺さんがやや遅れてやってきて湯船に浸かった。 「なぁ、爺さん。ちょっと聞いておきたいんだけど、いいかな」 「えぇ、なんなりと」 「エルリッドが『フェイト』にさらわれたって話をしただろ。『フェイト』にさらわれた人間ってのはどうなるんだ?」 「大体の場合は記憶を操作して元の生活に戻されるはずですな。坊ちゃまの場合はその限りではございませんでしょうが、お嬢様は『来訪者』でない以上、殺される事はないかと」 「そっか…」 「ただ…気になることがございます」 それまでどこかのんびりしていた爺さんが、急に神妙な顔になって俺の目を見る。 「今までのお話を聞く限り、かの組織の在りようも随分と様変わりしたように思われます。仮に、連れ帰った人間の事を報告しなかったとしたら…」 「連れて行った奴のやりたい放題って事か」 黙って頷く爺さんの眼光が鋭いものに変わる。きっと、俺も爺さんのような目をしてるんだろう。 「何があっても、お嬢様はお救いしなければなりません」 「分かってる」
(209) 湯船に浸かったまま、合わせていた視線を2人同時に空に向ける。 「私めが表に立つことも厭いません。できる事を全てする、という意味で言えばそれが最も近道かもしれませぬ故」 「せっかく死んだ事にして行方をくらませたのに、か…」 「人並みに死ぬ、ということは思いの他難しいようでございますな。殊更、私めにとりましては」 「60年も放っておいたんだ。今更それを咎めようなんていうんなら、それよりも見つけられなかった失態の方を責めてやりゃぁいい」 「ほっほっほ、それは確かにそうでございますな。まぁいずれにいたしましても…」 爺さんが立ち上がり、脱衣所のほうへ向く。俺は視線で追いつつも続きの言葉を想像していた。 「…いなくなられると困るんだけどな」 「マルトめには、私の知る限りのこと全てを伝えております。ご不自由は、決して」 「状況次第だろうよ、決め付けるにはまだ早い」 「若さというのは、それ自体が可能性でございます。私めは少々年を取りすぎました」 「なら俺の可能性に賭けてみろよ」 爺さんはゆっくりと振り返って俺の顔を見た。さっきとは違ってやわらかい笑顔だ。 「そうでございますな。では、坊ちゃまに全てを委ねるといたしましょう」 そう言って、爺さんは脱衣所に消えて行った。 大きな口を叩いた事を若干後悔しつつ、脱衣所に気配がなくなったのを確認して俺も湯船から上がった。
今回の投下は以上です。 ユリフィナさん、お疲れ様でした。 大団円でよかったです。裂けて中身があんな事やこんな事にならないかと心配してましたw >>ヒロさん、フルキフェルさん 次の投下は水曜くらいになると思うので、可能であればお話を進めていただければと。。。 では、未だ彷徨う来訪者の皆様わっふるわっふるー
294 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/05/28(日) 19:53:53.60 ID:MoL2VMlb
相変わらず爺さんかっこよすぎw
295 :
レグナス4-1 ◆/abMGvkWxE :2006/05/28(日) 19:55:42.58 ID:MoL2VMlb
「ただいま。」 「おかえりクポー。」 モグハウスのドアを開けると、待ちくたびれたと言わんばかりに俺に飛びついて来た。 大学に入ってから1年弱、俺はその間ずっと一人暮らしをしていた。 だから誰かが家で俺を迎え入れてくれるという感覚が懐かしくて、つい顔が緩んでしまう。 マハトマウプランドを脱ぎ捨て、俺はベッドに倒れこんだ。 仰向けになり天井を見つめる。このまま目を閉じれば、そのまま眠ってしまいそうだ。 「ご主人たまー、もうモグお腹ぺこぺこクポよ。」 甘えた声を出しながらふらふらとモーグリが飛び回り、そのまま俺の隣に着地した。 もしかして俺のキャラは、モーグリに食事を作らせずに毎日自分で料理をしていたのか。 確かに調理スキルは師範と呼ばれるレベルまで上げていたが。 「色々あって疲れたんだ。今日は適当にフルーツでもかじっていてくれ。」 わざとらしく、大げさにぐったりと天を仰ぎながらモーグリに視線をやる。 「クポ…」 モーグリは肯定とも否定とも取れない、曖昧な返事をした。
「ご主人たま。」 「今度は何だ?」 モーグリは妖精のリンゴを口に頬張りながら、 机の上に置いてあるノートパソコンに目を向けあれは何だと尋ねてきた。FMV−BIBLO MG50Rだ。 購入したばかりの頃は指紋認証システムで楽しんでいたのだが、重くなるだけだと気づき今は外している。 あれ…いつのまにか電源が落ちてる。 「あれは俺がリアルから持ち込んだ機械だよ。」 ベッドから立ち上がり、ノートパソコンが置いてある机に腰掛ける。 ノートパソコンをよく見るとLANやマウス、充電器などは一切接続されていなかった。 とりあえず電源を入れてみようとスイッチを押したのだが一向に反応しない。 ヴァナに来てからずっとつけっぱなしだった為、バッテリーが切れてしまったのだろう。がっかりだ。 色々と試したい事はあったがこの状態では仕方がない。 「どうやら今は使えないようだ。」 「残念クポ。」 パソコンを閉じ、近くに置いてあったコッファーに仕舞った。 まだ必要な時期というわけではない。今は、じっくりとヴァナの世界を楽しもうと思う。
2日後─── パリンと炎のクリスタルが割れ、そこに現れたのは真っ黒に焦げたきのこのリゾット。 いや、きのこのリゾットかも判別できない。この世の食べ物かと疑うほどの出来栄えだ。 「ほら、モーグリ。今日の昼飯だ。」 黒い物体をテーブルに差し出すと、モーグリはみるみる青ざめていく。 「うわわーん、昔のご主人たまに戻ってほしいクポォォー!」 モーグリは泣きながらモグハウスを飛び出していった。堪え性のないやつだ。 というかそんなに嫌なら俺に料理を作らせるなよ。 調理スキルは師範レベルまで鍛えたはずなのになかなか成功しない。 どうやら俺の場合、戦闘のスキルに比べて合成の方は駄目駄目星人らしい。 もっと簡単な料理から始めて慣れるべきか、とも思ったがそれは俺のプライドが許さない。 黒い物体と睨めっこしていると突然、耳元からバルファルの声が聞こえた。 「おーい、レグナス。やっと奴さんのお出ましだぜ。1人だ。」 耳に装備していたシグナルパールによるものだ。やれやれ、もう来たのか…。 俺はお気に入りのマハトマウプランドを着込むと、そのままモグハウスの扉を開けた。
298 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/05/28(日) 20:02:01.30 ID:MoL2VMlb
以上です。
>293 おお、即レスありがとうございます!w 「さあ ちからをあわせ ともに たたかいましょう!」(ジングル) の手前で寸止めしようと思うんですがそれだと書きすぎでしょうか(´Д`;)ヾ そして烈火拳キターーーwwww
ちょっとスレから離れていたら超話が進んでいてびっくりしました。こんばんは。
ゆりひなさん完結&帰還おめでとでーす! 色々ヒヤヒヤしましたw
そしてまた新たな犠牲者さんが…リアルとヴァナの自由な行き来を目指す!
壮大で危険で、楽しげな物語を期待してますヽ(´ー`)ノ
各地で新たな出会いあり、別れあり、ですね。
皆様全員にレスできなくて申し訳ない、です。
>>609 さん
私自身は情報交換の所はどうしようか心底悩んでたんで、
ざっくり書いちゃって頂けるとエンジンがかかると思います。
ほんとすみませんすみません(;´Д`)
「僕」が腹を括った様子なので聞かれたことには大体答えてくれるはずですw
プライマルアーツ恐いな…w
ドラゴンの置物が防具に、という字面で聖闘士聖矢を思い出してしまったわけですg
ドラギーユ城からチョコボで出ていったリードさんの事もすごく気になるわけでして。
それでは、わっふるわっふる〜
301 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/28(日) 23:44:01.75 ID:cZ/1At2M
皆様、投下乙でございます。
>>261 記憶がない、のですね・・・。
右手を魚に食べられてしまわれて、これから大変ですね。お察しします(目線はあさっての方向)。
>>278 お疲れ様でした。百合様の成長物語をいつも楽しみにしておりました。
リード視点の続きは、今しばらくお待ちくださいませ。
プロットを大幅変更いたします。とても眩しすぎるハッピーエンドゆえ・・・。
302 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/28(日) 23:51:49.14 ID:cZ/1At2M
>>293 なんだか凄まじい篭手が出来上がりましたね。うらやましい限りです。
でも、それをつけたまま生活するとなると、アレとかナニとか不便そうですね。いえ、余計なコトですが。
>>298 誰が現れたのでしょう。とても楽しみです。
ノートパソコンが気になります。実際にFFはそれで遊ばれてるのかな、と想像をしてみたり。
ヴァナに“電気”が存在するかどうかは書き手様それぞれのようですので、きっと重要な鍵に・・・。
>>300 気にして頂いてありがとうございます。でも、ごめんなさい。
お三方とは、直接の接触がないままに出発となりました。
一応、ルーファス氏の情報は(いつもLSパールをつけない為)ハルヴァー経由で得ましたが・・・。
303 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 01:10:54.38 ID:C06+N/VZ
パールといえばヒロさんのフェローの奈那子さんはどうなったのだろうか。 そろそろキレて押しかけてくるのではないだろうか。修羅場わっふる。
304 :
外伝。その羽。天高く。 ◆FC91vFcmb2 :2006/05/29(月) 01:48:41.65 ID:C06+N/VZ
キョロキョロキョロ・・・粗末な青銅製のスケイルアーマーに身を包んだ 明らかに挙動不審な男が「にゃー」とか「タルタル屋」とか「可愛いエルメスは好きですか」とか 明らかに怪しい店が並ぶ通りを歩いている。どう見ても変態である。 ついでに言うとこういうとこに入るための「パートナー」がいない。 では今夜の「パートナー」を探す(野暮な言い方をすると「買う」)のかと言うとそうでもなく、 「夫ナ・妻忍GOODS」と看板に書かれた怪しい道具屋さんに入っていくと 大量の怪しい品々を購入し、「一人で」怪しい宿屋の戸を何軒か叩く。 こういう客は自慰しかしないように見せて実は神殿騎士の囮捜査員だったり、 自殺するつもりだったり、麻薬取引の手段にしたりとロクでもないので 彼が訪れる店はことごとく彼の入店を拒否した。
305 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 01:56:03.81 ID:C06+N/VZ
「(こんな所でいいか・・・)」彼は一人で心の中で呟くと、「いつもの」店に入っていく。 店主は勝手知ったる顔だ。彼の顔を見るとにこやかに笑って通してくれる。 場所柄セキュリティは完璧だし、店主の口は岩より堅い。 「宿屋・愛情の律動」 彼はその店の一階の部屋に入っていく。 普通、こういうところの一階は安全性などの面から敬遠されるので料金は安い。 安いのもあってこの店の一階の「この部屋」は彼の貸切専用となっている。 理由は。もうひとつ。自分の部屋に戻ると、ベッドの下を蹴飛ばす。 パカリ。扉が開く。彼は扉を開けるとはしごを下っていく。 「・・・ふう。帰ったぞ。ピエージュ。・・・しっつれいしましたwwwピエーシュ殿下wwww」 後半、おどけて言う彼に彼の弟は呆れた表情を見せた。 「もう"タワー"のマネはしなくていいのですよ?兄上?」 それに。と彼の弟はため息をついた。「兄上がふざけてしゃべられる姿は却って痛々しく見えます」
306 :
つづき。 :2006/05/29(月) 02:07:39.71 ID:C06+N/VZ
「うむ・・・すまんピエージュ」心配かける。と兄がかしこまる姿に彼の弟は苦笑した。 「最近の兄上は素直になられましたな・・・女性にもそうあればよいものを」 どういう意味だと憮然となる彼に弟はすました顔で応える。 「私は。自分の意思と相反して生まれながらに可愛い部下を沢山持つ羽目になった身でして」 憮然となる兄に苦笑しながら弟は続ける。「"彼女"の幸せを願って止みません」 「・・・ほうっておけ。まったく」 彼は粗末な鎧を脱ぐと動きやすい簡素な服に着替え、杯を取り水を飲む。 「どうですか?"母上"の様子は?」弟が問うと兄は沈痛な様子で・・・。 苦い・・・苦い水だ。・・・平静を取り戻して答える。「"健勝”だ」 そうですか・・・と呟く弟。彼は近くの椅子に座り込む。 「・・・俺が、・・・俺が"タワー"だと本気で思っているらしい・・・」 まだ無能とか、殺してやるとか言われるほうが辛くは無かった。 かつて王国に名を馳せた女騎士だった彼女の心は バタリアの紛争で散った息子の魂と共にはるか空に飛び立ってしまったのである。
307 :
つづき :2006/05/29(月) 02:20:59.16 ID:C06+N/VZ
「撃て!」 彼の号令と共に三国最強の技量と破壊力と射程を誇る サンドリアの大型火砲が一斉に唸りを上げた。 敵部隊は一瞬にして壊滅状態に陥る。 チョコボ騎士による迅速な制圧には事前の火砲支援が欠かせない。 サンドリアが古風な剣や槍を武器とする歩兵部隊・・・騎士を抱えつついまだ生き残る背景には、 彼ら砲兵の凄まじいまでの展開の速さにある。 (間違いなくその大型火砲の分解、移動、制圧能力、 射程距離及び命中率はこの世界で最高峰である) 砲兵は身分の低いものが大半を占める。 が。サンドリアでの彼らの待遇は二人の王子が実質の権限を持つに至ってから格段に上昇した。 砲兵作戦の研究、各部隊の親交を深める二人の王子の政策は確実に実を結んでいる。 現場の仲がよくなったのは良いことである。 が。彼らの二人の上司。作戦において仲がいいかと言うとさにあらず・・・。 指揮系統が二つあることが現場に相当な悪影響を与えているのもまた事実であった。
308 :
つづき。 :2006/05/29(月) 02:39:20.78 ID:C06+N/VZ
「ここで一気に騎士団による制圧を行う!」兄が叫ぶ。 「・・・兄上。伏兵がいるやも知れませぬ。火砲をもう少し撃たせてはいかがでしょう」 官僚が呟く。「王子。弾代が・・・」 弟が冷たい瞳を官僚に向ける「弾と命と。どちらが大事ですか?」 「命だ。言うまでも無い」兄が呟く。目で官僚に合図する。弟を怒らせるなと。 そして表情で威圧する。貴様の私腹を肥やすために民は血を流しているのではないと。 「・・・騎士団を出す。玉のこともあるが」彼は呟いた。 「・・・"彼ら"とて、アルタナの子だ」 「兄上・・・敵に情けは無用ですよ・・・」「・・・ああ・・・」 弟は呟いた「砲兵は下げましょう」そして歩み去る。 「兄上は・・・味方と敵・・・どちらが大事なのですか?」 「・・・どちらも。この世界の子だ」
309 :
つづき。 :2006/05/29(月) 02:47:33.29 ID:C06+N/VZ
・・・戦場では「敵の敵は味方」である。 伏兵は意外なところから現れた。 制圧寸前のバストゥーク傭兵(多くは冒険者だ)を、魔法で移動してきたウィンダス傭兵(彼らもまた冒険者だ)が支援。 それどころか、長くこの地域を支配していたサンドリアに牙をむくべく獣人の軍が三国の戦士たちに襲い掛かってきた。 三国の戦士たちの殿を勤めた騎士達はバタリアの野に散り、サンドリアは自国の誇る一個中隊を失ったのである。 「王子!お帰りなさいませ!」腰巾着共のにこやかな笑みが不愉快だ。 「王子。お怪我はありませんかな」・・・この爺は別の意味で苦手だ。 「・・・王子。犠牲者の遺族への手当と保障を滞りなく完了しました」 この宰相は・・・最近、コイツにも人間性があるとわかってきた。 一番苦手なのは妹(と、もう一人の"彼女")なのだが、これは内緒だ。 おそらく弟も妹には頭が上がらないはずである。
310 :
つづき。 :2006/05/29(月) 02:57:38.23 ID:C06+N/VZ
「・・・まさか。"俺"の顔を兜ごと蹴飛ばす男がいるとはな」彼は一人呟いた。 本来なら王族の、それも兜(ついでに中身ごと)に蹴りを入れる暴挙。 斬首刑になってもおかしくは無かったが、王国への貢献篤い男ゆえ赦しを与えることができた。 ・・・なら。俺に赦しを与えるものは誰だ?神か? センスのない冗談だと思うと苦笑したが。そうでもないと心がくじける。 「貴様ら兄弟の掌で殺されるために、俺達は戦っていない!」 そう叫んで彼に蹴りを入れたあの男は・・・何という名前だっただろうか。 地獄の使者といわれたあの英雄の副官であった男だ。 口は悪く、不敬で無器用だが・・・信頼できるタイプである。 その逆が一番の敵なのだ・・・その言葉は心地よく、魂を砕こうとする。 生まれながらに王族であるとは・・・なんとうっとおしいことだろうか。 生まれながらに尊敬されるように動くことも、 生まれながらに一国の人々の命や運命を左右する権力も。 時々投げ出してみたいと思う・・・が、それは彼の性格上、できないことだった。
311 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 02:58:15.81 ID:C06+N/VZ
とりあえず、今日はチョコボクエやって寝ます。・・・続きは次回。
312 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 03:02:30.71 ID:C06+N/VZ
追記。一介の官僚を三国に誇る大宰相にしたハルヴァーの妹と あの二人の兄の喧嘩ををフツーに収めるクレーディ殿下はサンドリア最強キャラではないかと思っておる次第であります。
>304 トリオン王子かっこええwww 自分の中のトリオン像もこんな感じでした(´∀`)b そしてお許し頂いたので投下させて頂きます。 あんまりにもあんまりな内容だったら、ヒロの夢だったという事で一つ(´・ω・`)
簡単に身支度をし、マルトの辛らつな視線を感じながら食堂に向かう。ルーファスや爺さんには笑うくせに、なんだってんだ。同族の恥晒しは許せんて事かよ。 食堂には真ん中に白いクロスのかかった長いテーブルがあって、サッカーチームがそのまま祝賀会を開けるくらいたくさんの椅子が並んでいた。 家主の席には当然のようにルーファスが着き、隣にラディール。フルキフェルはまだ来ていなかった。 ルーファスは右腕に見慣れない篭手をつけている。ガキの頃あった、振り回すと音がする奴みたいだ。まさかおもちゃではないだろうが、想像するとちょっと面白かった。 おれが促されるままにラディールの正面の席に着くと、フルキフェルが起き出して来た。顔を洗っただけのおれと違って、髪の手入れに身繕いまでしてきたらしい。 食卓にはご飯茶碗のようなものと、箸が置かれていた。 サンドリア式の朝食は随分と懐が深いと見える。それとも、ひょっとして日本食でも出てくるんだろうか? そんな莫迦な妄想をしていると、朝食の乗せたワゴンを押して、マルトと例の爺さんがやってきた。 「今朝はルーファス様の大事なお客人がご一緒に召し上がるとの事ですので、恥ずかしながらこの老骨めも包丁を執らせて頂きました」 マルトと二人で配膳を終えてから、爺さんが一礼する。 おれは隣のフルキフェルと顔を見合わせてしまった。 白い飯に、開いた魚の干物、海苔。さすがに香の物と味噌汁は手配できなかったらしく、すまし汁──薄く仕立てたコンソメスープだろうか──とサラダ。 「皆様のご郷里の味に、少しでも近づけようとはしてみたのですが、はてさてどうにも…」 苦笑して、御口に合えば幸いですと目を細める。嘘つけ、それは自信のある人間の顔だ。 面食らっていたらしいルーファスに勧められて、おれ達はこの場にそぐわない朝食を食べ始めた。 朝飯は実にうまかった。米はよく炊けていたし、魚は、おれは釣りをしないのでよく知らないのだが、鯵によく似た形と味だった。何より温かかった。 もっともラディールには、一風変わった食事、程度の印象だったらしい。おれ達がうまいうまいと舌鼓を打つのを少し不思議そうな顔で見ていた。
お互いの情報交換は、膝突き合わせてもっと真面目な空気の中で行われるものと想像していたが、食事中の雑談のついでみたいな感じで行われた。 苦労話半分で自分の自分の体験について話した。つまらない体験談だが、皆真面目に聞いてくれた。 やった事といえばモグハウスでごろごろして、弱いオークに負けそうになって、来訪者の遺品を拾って、変なミスラをからかって、そして…… おれはアマルダの部分だけ端折って話した。事実彼女は赤い鎧に利用されただけだ。あるいはあの赤い鎧の狂言だったとしたなら、それこそ今回の件には関係ない。 その分、おれが赤い鎧をどうしても倒したかったのは、どうもナナコのせいだと思われてしまったらしいのだが。 赤い鎧の話の部分だけ、空気が重くなった。あんな化け物がまた現れたら、おれ達はどうすればいい? 魔法理論の話は、みんな興味深げに聞いてくれた。おれみたいに原理を体得して術式を構築し、魔法を使う来訪者は少数派のようだ。 聞く限りでは、想像して魔法の名前を唱えるだけとか、それこそマクロで自動化されたみたいな使い方であるらしい。 正直、そっちの使い方の方がおれには不思議でならない。 時計を無くしてしまった話をしたら、ひどく残念がられた。 思い出したようにルーファスがおれに煙草を返してきたが、喫わないからと半ば押し付けるようにやってしまった。何故かその時ラディールにすごい怖い顔で睨まれた。 もちろん、おれが一方的に話していた訳じゃない。 ルーファスやフルキフェルの体験談からも、色々と得るところがあった。
「それで、皆様はこれからどうなさるおつもりなのでございましょう?」 食事を終えて、茶を皆に配りながら爺さんが尋ねた。 リアルに帰る。それは決まっている。しかしおれの思考はそこで止まってしまった。どうすれば帰れるんだ? まったく見当もつかない。 フルキフェルも似たような心境らしい。誰かが口火を切るのを待ちながらそわそわしている。ルーファスには何か考えがあるようだが、口をへの字に曲げて思案顔のまま沈黙している。 「エルリッド様を助け出すおつもりでしたら、今こそまさに好機ではございますが…」 「マティエール」 ルーファスが強い口調で不快感を顕わにして遮った。爺さんの名前らしい。爺さんは飄々とルーファスの非難の視線を受け流すと、 「おお、これは申し訳ございません。歴戦の勇者、しかも来訪者の方を二人も屋敷にお招きするという事は、てっきりご協力を仰ぐものとばかり…。大変失礼を致しました」 深々と頭を下げる。しかし恐縮した様子は微塵も無い。意図的な失言という訳か、この爺さんも相当に食えない人物だ。 「エルリッドさん?」 フルキフェルが不思議そうな顔で尋ねた。爺さんの思惑通りに動くのは癪だったが、おれも気になる。 「……エルリッドは、クリルラ様につけてもらった護衛で、俺の妹だ」 しばし言い澱み、ルーファスが答える。 そういえばそんな奴が彼の話の中に出てきた。 一人目の赤鎧との戦いの後出てこないから、てっきりそこで死んだものと思っていたのだが……助け出す事が出来るという事は、生きていて、拉致なりなんなりされたという事か。それにしても、妹だったとは。 黙っていたとのは、話したくなかったから。何故話したくないのか? 脅されているとか、不名誉だからとか、色々理由が浮かんだが、本当のところは本人にしか分かるまい。 「爺さん。どうして今が好機なんだ?」 空気を読まない不躾な質問はおれの専売特許だ。
マティエール爺さんはおれが餌に食いついた事に小さく満足げに頷いた。いや、おれの猜疑心がそう見せただけかもしれない。 「来訪者の持ち込んだ品物がこちらの世界で解析され、その技術を元に新素材の製品が生み出されたから、でございますよ。 彼らは今、その対策に追われているはず。検証用のサンプルを集め、少しでも頒布速度を遅らせて解析時間を稼ぐ事に必死になっているはずでございます」 「製品?」とラディール。 爺さんは神妙に頷く。 「エルリッド様がその試作の一部を実地でテストする名誉に選ばれたとか」 「エアリー装備のことか」 ルーファスが腰を浮かせる。空のカップが倒れて転げた。 左様で、と爺さんが静かに答えた。エアリー装備? 新装備と聞いて、テクスチャを難しい模様に張り替えて誤魔化しただけのいい加減なローポリが頭に浮かんだ。 試作品を着て実際に戦わされるのがどう名誉なのかはいまいちピンと来なかったが、それなりに強くてデータ持って生還するだけの能力があると信頼されてるって事なのかな。 「それって、彼らが躍起になって対策するほど強いものなんですか?」 今度はフルキフェルが口を開いた。 これじゃ情報交換ていうよりは、爺さんへの質問タイムだな。答えるのも大変だ。もっとも、それが狙いだったんだろうし、同情はしないぜ。 「結論から言うならば、見た限り大したものではないようです。兵器利用する上での特性は勿論、あれより軽くて丈夫なだけの素材なら、この世界にいくらでもございますから。 第一元の世界は存じませんが、簡単に燃えるような粗末な鎧が、炎の魔法が飛び交うこちらの戦場で使い物になるとは思えませぬ」 だったらなんで奴らが必死こいて対策する必要があるんだ。 「彼らの装備は、この世の法則の外にあるもの…いや、物質ですらないからでございます」 きょとんとしているおれ達に、爺さんが懇切丁寧に説明をしてくれた。
連中の使う素材は、鉄なら鉄、木なら木に特性を似せて"設定"されただけの、全く別のものであるという。連中はそれを"プログラム"と呼んでいるらしいが。 例えば鉄と木を打ち合わせれば、その結果は大体において類推出来る。だけど、どちらかが奴らの使う装備の素材だったなら、"設定"次第になると理屈だ。 「鉄より硬いと設定すれば、鉄斧でぶん殴っても傷一つ付かない鎧が出来上がるという訳か。無敵になるわけだ」 ルーファスが呆れ顔で感想を述べる。まったくもって同意見だ。厨設定にもほどがある。 「そこまで顕著な効果を持つのは、プライマルアーツだけでございます。 実際坊ちゃまがピアシュ…でしたか、彼の者の鎧を打った時には、既知の素材で作った武装を用いたにも関わらず、多少なりとも傷をつける事が出来たとの事でございましたね」 プライマルアーツ? ルーファスもラディールも初耳という風ではない。フルキフェルも黙っているところを見ると、既に話の中で出てきておれが聞き逃したのかもしれない。 鯵モドキのヒラキから身を穿り出そうと夢中になってた時だろうか。くそっ。 「彼らの使う装備はプライマルアーツを模して作られました。再現度はなかなかのものですが、所詮模造品。この世界の法則から完全に逸脱するほどの性能を備えてはおりませぬ」 爺さんが言うには、"設定"にない素材が触れた時どのような結果になるのか皆目見当がつかず、それがとても危険なのだという。大陸の形を変えてしまうほどの大破壊が起きたという事例も あるそうだ。
だからこそ、サンプルを集めて検証し、新しい設定を作る必要があり、検証と設定が終わるまでの間頒布を遅らせて時間を稼ぐ必要がある、という事か。 あいつらの剣がこの世界の物質を解かすよう設定されているように、この世界の外から来た素材が奴らの装備を解かしてしまう事だってある。 「そうか、それであの時計が当たった時、鎧が溶けるみたいにして消えたのか…」 ようやく合点が言った。勘だったが、的外れではなかったらしい。それにしても、大破壊の方が起こらなくてよかった。 「この世界で作られた新素材は結局、この世界の元素を用いて再現されているに過ぎませぬ。それ故、ヒロ様…ではなく、名も知らぬミスラでしたか──が持ち込まれた漂流物ほど顕著な効果はございませんが」 だからこそ、あの腕時計は連中に対する決め手となったかもしれない。それを失くしたのはとても残念なことだ、と爺さんが嘆息する。 「一時間針が進むのに一日かかるポンコツがねえ」 なんとなく気まずくなって、悪態をついた。阿呆かおれは。時計の話はしていない、その素材が問題なんだろ。
「それって、リアル時間なんじゃないですか?」 フルキフェルに言われて、はたと気がついた。そうか、あの時計はリアルでの時間を刻み続けていてくれたのか。そう思うと、途端に失くしたのが惜しくなってきた。 もし見つける事が出来たら今度は大事にしよう。それはそれとして、今はそれより大切な事がある。 「広まって困るなら、全部回収すればいいんじゃないのか」 まだ連中の組織の全容が見えてこない。重箱の端をつつくようだが、気になる事は全部確認しておきたかった。 爺さん少し驚いたような顔をしてから、合点がいったという風に首を振った。 「敵を過小に評価するのは愚でございますが、過大に評価するのもまた大きな愚でございますぞ」 爺さんの中では、おれもフルキフェルも、エルリッドとやらを取り戻す駒の一つになっているのだろう。気前よく情報をくれる。 思惑に乗るのは癪だが、どこか焦燥したルーファスの顔を見ていると、手伝える事があるなら手伝いたい、そんな気分にもなるから不思議だ。多分、これも爺さんの思惑なんだろうな。 「かの者達は、事情を知らぬ末端の構成員を除けば、百人にも満たぬ小さな組織でございます。 どこかの工房が試作品を作ったような段階ならばまだしも、競売に並ぶほど広く知られた品物を今更なかった事になど、とてもとても出来るものではございません」 にっこりと笑う。なんとなくバカにされているような気がして、おれは押し黙った。 「どうして今が好機かは分かったよ。だがここからは別の問題だ。まさかズヴァールくんだりまで関係ない奴らを…」 「エルリッド様は、ズヴァールにはおられないでしょうな」 いい加減カリカリきていたルーファスが代わりに口を開き、お返しとばかりに爺さんに遮られた。 殴り合いなら分からないが口喧嘩では、さしもの彼も爺さんの手玉に取られてしまうらしい。 「どういう事だ?」 ルーファスが何を言いたいのかは分かったのだが、というより、分かったからこそ、敢えて話題を逸らそうとする爺さんに協力する事にした。 フルキフェルもそうだけど、何でも自分一人で背負い込もうとするなよお前ら。おれが困った時頼みづらいだろが。
「ズヴァールは確かに、彼の者たちの本拠。未だ多数の資料や設備はございましょう。なれど、ズヴァールに行ったところで、いるのは研究員と傷病者がせいぜいでございます」 おれの助け舟を得て、爺さんが滔々と語る。連中の活動の中心は今や、かの北の果てにある要塞ではない、と。不満げに口をつぐむルーファスを横目で見て、少しだけ心が痛んだ。 「彼らもまた生身の人間、かような過酷な土地では凌ぎにくいでしょう。気晴らしに繰り出すような場所もございませんですし」 「じゃあ、どこなのですか?」 ラディールが敬語で尋ねる。この家では彼女も招かれる側の人間であるらしい。 「彼らは、自分たちの活動の便宜の為、表の顔というものを用意してございます」 謎掛けをするような口調で、爺さんが言う。 「お分かりになりませんかな? 人が大勢集まる場所に本拠を置き、冒険者ならば誰もが知っている組織にございますが」 「……まさか!?」 要領を得ないおれ達の後ろで、フルキフェルが立ち上がる。今のでよく分かるな、クイズとか得意だろ。 「世界中を繋ぐネットワークを持ち、貿易で作り上げた強大な発言力ゆえ、かのジュノ大公国ですらそれを掌握出来ない組織……」 青い顔をしたフルキフェルの口から、呪詛でも紡ぐみたいにぶつぶつと呟きが漏れた。 そこまで聞いておれはようやく、爺さんの言う「組織」に心当たりが出来た。 しかし、そんなばかな…… いや、そうか。確かにそうだ。全ての辻褄が合う。 「心当たりがあるようですな」 その問いはおれにかフルキフェルにか。爺さんの白い眉の向こうにある眼光が鋭さを増した。
いじょ、長くなりそうなのでひとまず投下させて頂きました(`・ω・´)ノ 情報交換については、後から後出しできるように「そういえばあの時こんな事を言っていた」作戦を取ってしまいましたw
>303 おおお、ナナコ覚えてる人がいたwww 再登場させる予定ではありますけど、相当先になる予感です(´∀`)ヾ
324 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 04:01:03.21 ID:C06+N/VZ
しまったwww先にいわれそうだwww 記憶操作,封印、人生やりなおし、物理法則を無視できる組織があるwwwww
325 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 04:44:09.40 ID:C06+N/VZ
なお、個人携帯火器技術、装備の配給度や軍政はバストゥーク、 魔法はウィンダス、一部魔法と大型兵器や火砲技術、 チョコボ配備度はサンドリアという設定は私の脳内設定ですので(またか!)、 設定スレ住人様にごめんなさいと先に謝っておきます(まだおきていた) この外伝に出てくるサンドリアの火砲は軽量且つ分解メンテナンスの容易な品です。 サンドリアは軍対軍。構造物破壊の機会がとても多そうなので、 個人携帯武器よりは火砲で一度にぶっ飛ばすという感じで発達。 バストゥークは人間対モンスターや人間が主なので銃主体。 ウィンダスはカーディアンと魔法という脳内妄想です・・。 ・・・脳内妄想はさておき。 公式な設定を見るにサンドリアの士官学校では火砲の実習がちゃんとあるようです。 (鍾乳洞の調査で有名なオルデール卿は少年時代火砲でイタズラして大目玉食らっている)
326 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 07:34:52.70 ID:Shi1fKr1
自キャラになったお話ってスレタイだけど FFのお話じゃなくてPSOとかMHとかいいの?
MHは別にスレあるお モンスターハンターで検索してみそ
328 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/29(月) 10:54:42.85 ID:nRzz+mu2
お礼が遅くなりましたが、皆様ありがとうございますm(_ _)m
>>293 そのうち篭手にドラゴンの紋章が現れたり、ドルオーラ撃てちゃったりしませんか?w
ふと、ドラゴンボールのスーパーサイヤ人状態で食事をして食器をぶっ壊しまくってる
ゴクウとゴハンを思い出した・・・w
>>298 なんだか甘えん坊のモーグリがものすごくかわいいです(*´д`*)
持って帰ってもいいですか?w
>>301 うあ・・・お手数かけます・・・orz
>>311 本当にこの二人は仲がいいんだか悪いんだかってかんじですねw
>>321 みんさんがおじいちゃんに食われかけてますよ!w
でもクールなヒロさんもかっこいい・・・
では、今度こそ名無しに戻りましてわっふるageいたしますw
329 :
Karei :2006/05/29(月) 10:56:45.97 ID:3zUZmku7
お金送って。
330 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 12:36:36.25 ID:Shi1fKr1
口座番号いえよ
331 :
609 ◆dWeYTO/GKY :2006/05/29(月) 15:09:10.39 ID:4K+lqL7+
332 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 15:24:14.68 ID:Shi1fKr1
絵うまいな
333 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 16:31:13.52 ID:6znYJDO4
334 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 19:12:24.82 ID:4K+lqL7+
おいィ!?下がるのは勝手だがこれは下がりすぎでしょう?
335 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 19:34:51.19 ID:C06+N/VZ
先程までの賑やかな朝食風景はどこへやら。 ブタゴリラ共は騒然となって右往左往し始めた。 「ニンゲン共だ!ニンゲン共がやってきた!」 「武器を取れ!さっさと配置に付けバカ共!」 「ガキ共を隠せ!急げ!早くしないか!」 そんな罵声が飛び交い、鍋をひっくり返すわ正面衝突するやらの大混乱…… ん?ガキ共を隠せ? おいこらっ!俺は違う!違うといってるだろうが!あ……っ 結局、体の小さな俺は他の子供と十把一絡げに薄暗いテントの中に押し込められた。 既に中はブタゴリラのガキ共でギュウギュウ詰めだ。 皆、モゾモゾと落ち着かず蠢き、狂犬のようなうなり声を上げている者や、 中には形ばかりの武器を振り上げて、ニンゲン殺す!と叫ぶ者、 それを腕を伸ばして殴りつけ、押し殺した声で叱責を飛ばす年長者。 それはともかく……暑苦しい。それに臭いぞ、こいつら。 いったい外はどうなってるんだ、と考えていると、 テントの壁、というか布に一部のガキ共がへばり付いている。外が覗けるのか?
俺は無理矢理にガキ共を掻き分けよじ登り、なんとか縫い合わされた布の隙間を確保した。 ……いる。もうそこまで来ている。 どうやら岩男やらヒュムやらの数人だけらしい。 あの白の姉ちゃんの仲間のような、ド派手な武装をした連中だ。 だが、まだ戦いは始まらない。 ブタゴリラ共は手に手に武器を構えているが、まだ襲いかかろうとはしない。 それを岩男達は、じっとりとした目つきで見回す。まるで値踏みをしているかのような。 ……どうした?お前ら。 ぶち殺すんだろ? ぶちのめすんだろ? 蹴り飛ばして踏みつぶすんじゃないのか? しかし、ブタゴリラ共は遠巻きにして手を出さない。あ、今の奴、視線をそらした。 まあ……答えは簡単だ。 普段は意気盛んであろうと、結局、こいつらでは敵わないのだ。あの亀の連中と同じだ。 こいつらの言う「ニンゲン共」、恐らく冒険者という連中には手も足も出ないのだ。 ……ん?こ、こら!ガキ共落ち着け!騒ぐんじゃないっ!あ、ああッ!!
数人のガキ共がしびれを切らして飛び出してしまったのだ。 恐らく小さい頃から、ニンゲンを憎め、倒せ、殺せと仕込まれてきたに違いない。 それが今やアダとなり、危険から隠そうとした親心も知らず、 憧れていた大人の戦いに参加したくて飛び出したのだ。 だめだ!大人の連中ですら手出し出来ないというのに! むろん、「ニンゲン共」が見逃す筈はない。 物音に気づいて、こちらに向けられた目がギラリと輝く。 ほう、これは珍しい。そんな表情を浮かべつつ矢が引き絞られて…… 後の説明は必要なかろう。したくもない。 その広間にいたブタゴリラ共は全て殺された、と言えばすむだろう。 後に残ったのは、テントの中でどうにか年長者に押し止められた俺とガキ共。 今もなお耳に残るのは、 ガキ共の悲鳴と絶叫、それを守ろうとする大人達の咆哮。 そして何より、懐を探り、期待はずれだったと愚痴る「ニンゲン共」のため息。 朝の威勢はどこへやらで、しずしずと後片付けをするブタゴリラ共。 俺はもう何も考える気力もなくして、置物のようにその光景を眺めていた。
そんなブタゴリラ共の広間の中を、案内を受けながら数人の誰かがやってくる。 一応、敵ではないようだ。 誰だろう……あれ、俺の方に近づいてくる。 その姿を見た瞬間、ぼんやりとした俺の意識は急速に息を吹き返し始めた。 ちょっと、予想外の登場だった。 「……鳥のおっさん!」 「ニンゲン共の国を巡るのではなかったのか?まあ、お前らしいと言えばお前らしい。」 「あ、あんたこそ何やってるんだ。親玉のあんたがそんなに身軽に動いていいのかよ。」 「クゥダフ共から聞いてな。何の使いだと、私の方に問い合わせが来たのだ。 こうなれば私自身が動く方が早い。 ……フハハ、以前の私にはこんなことはとても出来なかった。 こうして身軽に行動出来るのは実に良いものだな。」 そんなふうに鳥のおっさんは笑って言う。 正直言って鳥の顔の笑顔なんぞ俺には区別がつかないのだが。 なんというか……情けないことだが、まるで迷子の子供が親に見つけて貰ったような心境だ。 あるいは、新しい職場に卒業した学校の教師が尋ねてきた、というところか。
そのおっさんは俺に尋ねた。 「で、どうする。」 「……え?」 「見て考えて、そして決めるのだろう?お前の使いの内容を。」 「あ、ああ……」 はっきりとした考えは俺には無かったのだが、 しかし、こうするしかありえない、ということはハッキリとしていた。 「おっさん……あんたたちの首脳会談、なんてものは手配できるか?」 「何だと?」 「あんたがここに来たのなら、あとは亀の王さんを呼ぶだけだ。 俺は、いわゆるあんた達獣人の首脳会談を要請したい。」 鳥のおっさんは大して考える様子も見せずに、近くにいた側近に顎をしゃくって合図をする。 側近共は、その合図だけで聞き返しもせず、その場を離れて行動に移した。 そして、そのおっさんは再び笑って言う。 「ま、そんなとこだろうな。 そこで聞かせて貰おう。お前の我々獣人の血族に対する採点というものを。」
341 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/05/29(月) 20:37:11.16 ID:sln08GEf
とりあえず以上っす。
342 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/29(月) 21:54:43.09 ID:ZldV/xxH
皆様、投下乙でございます。 絵が描ける方はうらやましいです。素敵な物語には素敵な絵が似合いますね。 悪役顔のリードにはコロスケがいるから平気です・・・ orz
首脳会議きた!その時歴史が動いた!これで勝つる!
この世界に来てから2日余りが過ぎたのだがついに俺にも敵が、フェイトが訪れたようだ。 しかしあまりに気づくのが早すぎる。やはり奴らはこの世界のシステムを一部制御できるのか。 モグハウスやロランベリー耕地での会話のログを取ったのだろうか。あるいは…。 1つ言えることは、奴らの親玉はこの世界の"嘘"と"真実"を知っているということだ。 でなければヴァナ・ディールのシステムに介入する、などといった横暴は不可能な事だろう。 俺はこの世界をヴァナであってヴァナでないもの、と推測する。 ヴァナには数多のサーバーがあるのだが、その中の1つが他のサーバーとは異なるシステムで構成されていて、 プレイヤーの意識を中の世界へと取り込むような仕掛けが組み込まれていたのではないだろうか。 俺は当初、数々の来訪者が同じサーバーに送り込まれているという事実に対し違和感を感じていたのだが、 それは単なる偶然ではなく、その特定のサーバーを利用していた事が来訪できる条件だったと考えれば辻褄が合う。 しかし、だとしたら誰が何の為に、一体どんな魔法を使ってこんな世界を創ったと言うのだろうか。 ただ何者かの意思によって俺はこの世界に引きずり込まれた、それは確かだ。 この世界へ取り込まれてしまうトリガーの1つは「自キャラスレ」を見ること。 つまり犯人はそのスレッドを立てた者になる。…一瞬嫌な考えが頭を過ぎったが、すぐにその説は捨てた。 フェイト…か。まぁジュノでの調査もたいした進展を見せなかった今、これが転機になれば、と願う。 俺は閑散としたジュノ港から工房橋を経て、ソロムグ原野へと足を進めた。
ゴオオオオ… 殺風景なソロムグ原野には砂塵がひどく舞っていた。あー、マハトマウプランドに砂が付いてしまう。 どうやらバルファルの報告通り1名、俺を尾行している奴がいるようだ。 インビジやスニークでうまく姿を隠しているつもりなのだろうが、俺にとっては無意味なものだ。 尾行を含め、敵への対策はバッチリ進めてきた。自分の命が掛かっている以上、抜かりはない。 「俺はね、後発組なんだ。スレ自体はさ、随分と前から見ていたんだけど 実際この世界に来れたのは最近になってからなんだ。なんでだろうね、君には分かるかい?」 人気のないはずのソロムグ原野。辺りにいるクァールや海老は何をするわけでもなくのしのしと歩き回っている。 そんな中、俺は手を背に回し、宙に向かって語り続ける。 「スレを見る事、ある特定のサーバーである事、そして他にもう1つ、何か条件が必要なんじゃないかと思うんだ。 俺はようやくその条件を満たしてこの世界に入り込んだという事になるんだけど…。 やっぱり信じられないんだ、俺にはまだ。人間にそんな業が可能なのか。」 相手はまだ出て来ない。喋るとどうしても空を舞う砂が口に入ってしまうらしく、気持ち悪い。 「まぁ本題に入ろうか。お前を今から殺すことになるんだけど、生まれ変わったらヒュームF4になるがいい。 なんと言ってもイケメンだし。毎日、鏡を見るのが楽しみになるぜ。」
俺はこの世界に来てから新しい日課ができた。毎朝毎晩、鏡で自分鑑賞することだ。うふふ。 「さて、そんなこんなで詠唱完了だ。気づいてたかい?」 時間稼ぎを終え、密かに詠唱していた氷の魔力を宙に向かって思いっきり投げつける。 パキィィン! 空気が凍りつき、一帯の気温を一気に下げる。そして氷が砕けると同時に人影が現れた。 ブリザガだ。範囲魔法を撃つことによって不可視になる魔法や、攻撃を回避する忍術を剥がす事ができる。 そしてそこに姿を表した人物はやはり黒装束の男…いや、意外にも女が現れた。 黒装束の女は目を見開いて俺をぽかんと見つめている。よほど意外な出来事だったようだ。 ヒュームの彼女はみた事もないほど仄暗い色のマントを羽織り、手には鈍く光る曲刀が握られている。 黒いマントによるコントラストのせいか彼女の肌は透き通るほど白く、そして綺麗に見えた。 形が整なり丸みを帯びた顔、ソロムグ原野の厳しい乾燥を物ともしない潤った唇。 そして強い意志が込められた、真っ直ぐでつぶらな黒い瞳。か、かわいい…。 「どうして、分かったの?」 彼女がむっとしながら、俺を睨み付けてくる。これはこれでかわいい。 「君がかわいいから、かな。」 俺が茶化すと、彼女は明らかに不満げな顔をした。
以上です。いや、F4よくね?w
348 :
既にその名前は使われています :2006/05/29(月) 22:52:52.18 ID:Shi1fKr1
F4tyoukakkoiiuyone!!! 君はバニシュは好きかね?
オルデール鍾乳洞に突入した俺たちは、“心臓”の位置にある隠し部屋を目指して駆けた。 もうひとつの入口からも、別働隊が突入している頃だろう。 冷ややかに透き通る水溜りを踏み越え、しぶきを跳ね飛ばす。 鉄靴が真っ白な鍾乳洞の道を削っては、ガッガッガッと足音を響かせた。 余談ではあるが。 今回は洞窟内での活動を見越し、鉄靴にはスパイクが施された滑り止めの革布が装備されている。 誇り高きサンドリアの騎士がズッコケて転ぶような真似は許されない。 白鳥にも似た水面下の細かい努力と工夫が、彼ら騎士を支えているのだ。 「なっ・・・!?」 突如、鍾乳洞が地震を思わせる震動にみまわれた。 とっさのことで足をとられそうになり、手近に生えていた鍾乳石を掴んで身を支えた。 地面に、ほの白い壁に、びっしりと呪文が浮かび上がった。幾何学的な紋様や文字列が、脈動しながら光る。 若干ラテン語に似ている気もするが、およそリアルやヴァナのそれではない。 洞窟全体が鳴動し、共鳴し、震動していた。 ―――妄執。 洞窟全体をおおいつくす気配に、俺は身震いした。
地震はそれほど長い時間は続かなかった。 ほどなくして鳴動が収まると、薄ぼんやりと光る文字が脈動しながら消えていく。 「これは・・・!?」 シャールカーンがあたりを見回した。 体を支えた場所にも文字が浮かび上がっていたことに気づき、慌てて手を離す。 「ただの地震じゃない。時空を歪ませた時に起きる次元震だ。魔道実験が始まったのだろう」 俺は渦を巻く禍々しい雰囲気に飲まれまいと、腹に力をこめた。 “赤い鎧”が空間を閉じて時を止めた時に発する違和感の比ではない。 結界等なんらかの遮断方法がない限り、この瘴気は危険だ。 「我々教会の調査班によれば、魔法陣は洞窟全体に施術されています。 その発動キーとなるものがアリア女史の持つアーティファクト。 “心臓”の、魔法陣に突き立てられていた剣・・・おそらく、あれが封印だったのでしょう」 査問官がよく通る声で言い、つとめて冷静に分析した。 「アリア女史は時空を裂いてこじ開けた扉を、いかにして閉じるおつもりなのか・・・」 なんにせよ、急がなければならない。 俺たちは頷きあい、再び隠し部屋に向かって走り出した。
351 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/05/30(火) 00:01:42.95 ID:iz2Ya6mZ
>>331 うわぁぁぁ・・・素敵な絵をありがとうございます。
大げさではなくちょっとほろりときてしまいました・・・
あぁ、お礼を言いたい事がどんどんふえてなかなか名無しに戻れませんw
鉄靴の音が、冷え冷えとした洞窟内に反響する。 聞こえるのは自分たちの足音、査問官の息切れしそうな呼吸。天井から落ちる水滴・・・。 「待った。何か、おかしいぞ」 コウモリの羽ばたきも、化けキノコや洞窟兎が跳ね回る気配もない。 いつも徘徊しているゴブリンは、どこへ行った? その疑問は、すぐに解決した。 それも凄惨な光景によって。 洞窟のカーブを曲がり、少し広くなった空間に出たところで俺たちは足を止めた。 「なんてことだ・・・」 そこには屍の山が築かれていた。 そこかしこに、無数のコウモリや兎の死骸が転がっていた。 十数体のゴブリンたちは氷のように冷たくなっていた。 出口を求めるように這いつくばって、もがき苦しみ抜いた跡が見て取れた。 「疑問だったのです。いかなアーティファクトとはいえ、それ単独の力で異世界と繋げられるものなのか、と」 査問官が足元のゴブリンに跪き、そっと瞳を閉じてやった。 “あなたにも楽園の扉が開かれますように”と、ささやくように祈りながら。 「この洞窟内部にある生命を片端から喰らう事で、魔法陣は転移の魔力を得ていたとすれば」 「だが、先程の次元震がユリフィナの転移によるものだったとすれば、魔道実験は終わったはず・・・」 俺が言い終わる前に、再び脈動する呪文があたり一面に浮かび上がった。 一度目よりも更に大きな震動が、洞窟にいる俺たちを襲った。
今夜は以上です。 弱い命から魔法陣の糧になっていきます。 心臓部の結界内にいるアリア女史らには、何ら影響はありません。地震があったことすら気づかないくらいです。
354 :
レップ ◆35//hs0Y0Y :2006/05/30(火) 01:01:29.28 ID:vipioIc+
ユリフィナさん、本当にお疲れ様でした
前回のコメントにて「ユリフィナ逝ってたり」といいましたが、撤回しますwさせてくださいwww
>>293 うおっ
なんという危ないものをwww
じいちゃんは相変わらずカコイイですねw
>>311 トリオンもピエージェもよくわからん俺ガイルorz
アハハハ、倉庫でミッションでもやろうかなw
>>322 て、て、てんしょーd(ry
日本食いいですねーw
355 :
レップ ◆35//hs0Y0Y :2006/05/30(火) 01:02:45.20 ID:vipioIc+
>>331 ちょっwwwwwカワユスwwwwww
>>340 鳥のおっさんきた!これで勝つる!
>>346 F4ktkr
バニシュなら3000ギルで昨日バザってたよwww
白熱した言い争いが超絶黒魔法の個人戦争に発展する前に、俺はシャントット博士の家から逃げだし、無事に自分のモグハウスまでたどり着いた。 中ではモーグリが忙しそうに部屋を掃除していた。 「ただいま。」 ベッドの下に潜って床を掃除しているモーグリを突きながらいう。 「グポオォ!」ガンッという低い音と共にベッドに小さな振動が起こり、モーグリの叫び声が聞こえた。 「ど、どーしたモーグリw」予想はついているが。 「ご主人様、急に突かないで欲しいクポ! 驚いて飛び上がった拍子に頭ぶつけたクポ!」 フラフラとベッドの下から這い出してきたモーグリは、なんとなく頭のポンポンが曲がっているようにも見える。 「おkwww次から声かけてから突くな。『モーグリさん、突いてもよろしいですかな?』って。」 「そういう問題じゃ……全く、ご主人様は……」ブツクサ言いながら、掃除を続行している。 床を掃き、壁や家具を拭き、さらには天井まで浮遊してあちこち叩いている。
そのまま明かりを綺麗にし、下に降りて来て…… 《測定不能な魔場の乱れを感知。高魔力波異常発生。毎秒340mのスピードで接近中。》 突如、けたたましい警戒音と共に頭の中で叫び声が聞こえた。 《全魔法生物に伝染。ジュノ通過・・・アラゴーニュ通過中・・・》 早口でなにを言っているのかわからなかったが、危機的状況なのは間違いないだろう。というか、感知範囲広すぎないか? 《コルシュシュ通過中・・・通過。サルタバルタに接近。現在のエリア直撃まで予測15秒》 あたりを見渡すが、モーグリはなにも気付いていないらしい。くるくる回りながら天井付近を漂っている。 《直撃・・・通過!》 咄嗟に身構えたが、何も起こらない。装置の誤作動か? 《次の乱れを感知。直撃まで1分。》 さらに続けられても困るって!
《ジュノ通過・・・アラゴーニュ通過中・・・コルシュシュ通過中・・。サルタバルタに接近。ウィンダス通過!》 もう一回きても、やはり何も起こらない。やはり誤作動だろうか……? こういう時には、開発者に聞くのが一番だ。元来た道を辿り、シャントット博士宅に行くことにした。 今日は天気がいい。なにかいいことがあるのかも知れない。そんなことを考えていると、シャントット博士宅にたどり着いた。 ノックしてみるも、返事は……ない。 しばらくまってから再びノックするが、やはり音沙汰無しだ。 「君、シャントット博士を探してるのかい?」不意に声をかけられ、驚いて声のしたほうを見ると、いつも博士宅の横にいるタルタルが横にいた。名前は……ヒフォンだっけ? 頷いてみせると、また喋り出した。
「博士なら、ちょっと前にブツブツ言いながら歩いていったよ。なんでも、時間がどうしたとか、呼び出すとは失礼なとか……天の塔にでも行ったんじゃないかね?」 そういうとタルタルは、また家の横ををうろうろしだした。流石ストーカー。シャントット博士の情報は100%信用できそうだ。 ―――天の塔。前回見たときは崩れ去っていた塔は、今や何事もなかったかのように復活し、また神秘的な雰囲気に包まれていた。 噴水の脇を通り過ぎ、巨大な扉に歩み寄ると、扉の両端にいる二人のタルタルが何メートルもある扉を開けてくれた。 シャントット博士を捜すには、まずこのタルタルに聞いてみよう。 ……嫌味も込めて。
360 :
レップ ◆35//hs0Y0Y :2006/05/30(火) 01:22:15.02 ID:vipioIc+
以上です 前回からの投下期間が開きすぎたため、忘れてる人多いと予想w ―――――――――――――― バージョンアップが行われました。 今回のバージョンアップにて、以下の仕様が変更されました。 ・○○○に○○○○○○の○○が流れるようになりました ―――――――――――――― 前回の終わり方です わっふるわっふる!
百合さんが帰ってしまったのでユリフィナさんは私が戴いていきm(ホーリーにより黒コゲに ハッピーエンド!!ほのぼの!!ホーーーーリーーーーー(最後意味不明 サンドで過激な篭手が取れなくなったり爺様がくわせものだったり 現代神様が外出歩いたりリード氏がユリさん追ってたり 新しい犠牲者が黒服に不意打ちしたり色々ワッフル!! コチラは特に進展無いです…サンでない者が裏で色々手を回しては居るのですが、書くキッカケがまだ無いですw
「………。」 あの時、見に行かなければこうならなくて済んだのかなぁ……いや…あの時点で既に結果はこうなっていたか…。 「ふぅ……」 小さく、うんざりしたようにサンはため息をついた。その元凶達に気付かれないように。 ココはどこか。 私のモグハウスの中だ。モーグリは寝藁の中に避難中。 何をしているのか。 なにも。しいて言うなら見てる。それだけ。 何を見ているのか。 増えた、居候。…正しい表現では無いが。 居候は誰か。 アジルと、キィ…いや、キィだった奴。今はキィじゃない。 では誰なのか。 キィは…そうだな、一言で言うならサンになった。 なぜなったのか。 知らん。コッチが聴きたいくらいだ。 ・・・・・・。 …………。 「なんでこうなったのかサッパリ判らない……」 自問自答が行き詰ったサンが小さく愚痴る。 サンの前では、アジルとキィが台所で雑談しながら何か創っている。 アジルと話しているキィは、見た目こそキィのままなのだが、なぜか中身はサン…もとい躯なのだ。 男が女の身体に入った事になる筈なのだが、大して大騒ぎするでもなく既に順応している。 「ほら、これをこうすると…どう?」 「おぉ、良いじゃねぇか!ついでにコッチもこうしようぜ!w」 彼女らが渡してきた"薬品"は、おそらく料理だ。もしかしたら私はこの料理で死ぬかもしれない。女神よ、加護を…。
「…――…ぃ……ぉぃィ……おい!起きろ!」 「う゛ぅ……キモチワルィ……」 目の前に居るのはサン…じゃない…キィか。 何してたんだ私は…ひどく嫌な夢を見てた気がする……。 「何ボーっとしてんだ。少し見ねぇ間に貧血にでもなったか?俺の血でも吸うか?」 「…血は大丈夫…じゃない。………いや、首差し出さなくて良いから…違うから。吸わないから。」 体のアチコチが、痛い。心臓の辺りが特に痛いし。頭もガンガンするし、船酔いより酷くキモチワルイ。 痛む身体に鞭打って上体を無理矢理起こす。思考が鈍っているが、ここは…天の塔の内部のようだ。 「ここは…」 「医務室。俺を見た瞬間に、貴様の目がチカっと光って、気を失ったって訳。」 「目が…光った?」 …あれ?キィって廃人になってたんじゃ?なんで普通に受け答え?…元々こんなだっけ?…何か既視感が…。 「そう。その金と赤の眼が、ピカっと光った。俺はフラッシュ受けたような状態になって、治ったら貴様が倒れてた。」 「あれ?キィ?…何があったんだ…思い出せない……」 「知らねぇならそのままの方が良いぞ。つーか聴いても教えねぇw」 「はぁ…そう…ですか。」 「………まだ気付か無ぇのか。ほんっとに鈍いな。貴様。」 キィは、呆れたような顔で、私にそう言った。
何がなんだか、よくわからない。 ココは、天の塔の医務室…見舞いに来た所で、さっきのモグハウスの光景は夢で……目の前にキィが居て…… 「だーーーー!!面倒くせぇ!! いいか?俺はな、キィじゃ無ぇ!…サンだ!!」 「………。何を言い出すのやら…サンは私のはずだ。」 「だ〜〜〜か〜〜〜ら〜〜〜〜! 貴様は本来サンじゃ無ぇだろうが!俺はサンなんだよ!!」 「………! …躯か?」 思い当たる者の名を口に出すと、キィはニタリと笑い「ソレは、貴様が勝手に付けた名だろう?」と言った。 「えぇと……躯。…なんでキィになってるんだ?」 「さぁ?w」 「さぁ?w…って…暫くやけに静かだと思ったら……何がどうなってるんだ…。」 えぇと…私はリアルからコッチに来た私で、この身体にはサン(躯)が居て、二心同体になって…碧眼になって… 躯が突然何も言わなくなって…キィ見舞いに来て…キィが叫んで、頭痛で倒れて…起きたらキィがサン(躯)で…… 「えぇと…躯。とりあえず、いつどうなって今こうなのかお聞かせ願えますかな?」 そう言いつつ医師タルを探すと、医師タルはイスに座っていたが、何やら魂が抜けたように呆然としている。 「……躯「俺は何もして無ぇ!色々と理解出来なくて思考停まったんじゃね?」……そうか。」 ん?待てよ?本来の中身である躯が外にあるって事は、この身体には私だけ入ってるって事…だよな? 「なぁ、躯。お前がキィの身体に居るって事は、サンの…この身体にいるのは私だけになったのか?」 「よくわからんが、違うな。俺は追い出されたって形に近いが、貴様にじゃない。他の何かに追い出された。 で、暗闇に放り込まれて、金と赤の眼が映って、光って、気が付いたらこのザマよ。」
「とりあえず、その追い出された。って辺りを詳しく教えて下さい。」 「そうだな、一言で表すなら、神聖で邪悪な奴に、封印された。んで、気付いたらキィの身体の中だったw」 神聖で邪悪?思いっきり矛盾した表現だな…… 「なんで神聖なのに邪悪?」 「ん〜、神聖なのと、邪悪なのが、一緒くたになったような奴。姿は無いけど、そんな感じだった。」 ………………。 「自分から聞いておいて、こう言うのも悪いんだが、サッパリだ。」 「だろうな。貴様がこの曖昧なイメージを、想像出来るとは到底思えん。」 「…………。」 「・・・・・・・・・・。」 辺りを沈黙が支配する。2人から少し離れた席では医師タルが心ここにあらずという顔でボーっとしている。 「帰るか。」 「そだな。」 サンとキィ…もといサンとサン(躯)は、平然と階段を降り、天の塔を後にした。 部屋に1人放置された医師タルは、ボーっとした体勢のまま、淋しげに、ホロリと一筋の涙を流した。
………で、アレは正夢だったわけだ……。 今目の前では、昨日夢…なのかは判らないが、気絶してる時に見た光景が広がっている。 おそらくこの後、私は躯の所業によりカンタレラと化したコーンポタージュを飲まされるだろう。 逃げても無駄だ。 現に今、アジルの影縫いで地に射止められているのだからな……。 イレースを使えば抜けれるのだが、藁に潜ったモーグリが魔法禁止の結界を張ったせいで唱えれない。ヤバイ。 記憶が確かなら、もう出来る頃だ。そして躯が…あぁ、やっぱり不気味なくらいニッコリ笑ってる……。 やめろ…ソレをコッチに近づけるな……はい、ア〜ンw じゃねぇッヤメテwww誰かボスケbじゅfwr 次に気付いた時、私は何故か真っ暗な空間に居た。
367 :
既にその名前は使われています :2006/05/30(火) 01:36:57.77 ID:j+rQgZws
オーク切ない…(つд`;) そして冒険者非道い…w >342 完結っぷりにあまりに感動したのでつい…(´・ω・`) >347 F4萌えには全面的に同意せざるを得ませんw >351 実はつい最近までフェイスをWabi顔と間違えていました(ノ∀`) 途中で描かなくてよかった…w >354 簡単すぎましたか(´∀`)ヾ
うぁ…割り込みごめんなさい(つд`;) >367も自分です
以上です。 レップさんと階段辺りですれ違うかもしれないので、(現在の)装備情報を。 サン:真っ黒いバイソン装備にヤグ帽子+サングラス キィ:F1(白髪)バガボンド装備一式(頭は無し) 2人共剣とかは携えてません。ナイフとかは隠してるかもしれませんがw キィ(躯)は手癖悪いので、もし遭遇したら不用意に近付かないで下さい。何か盗られます。 では、翌日にカンタレラスープ飲まされて逝って来ます。おやすみなさい
カンタレラ…… 随分と業の深いスープですねw というわけで投下させて頂きます(´・ω・`)ノ
「……天晶堂」 誰ともなく漏れた呟きに、爺さんが頷く。 今まで怪しいと思わなかったのが不思議なくらいだ。冒険者がミッションを進めようと思ったら、奴らに頼るしかない。 魔晶石を取ってくるのにどうして天晶堂に入会する必要がある? ジラミのギルガメッシュだって天晶堂とグルみたいなもんだ。 プロミも天晶堂が鍵になってる。アトルガンに渡るのに、どうして国じゃなくてあいつらの許可を取る必要があるんだ? クエストだってそうだ。忍者やモンク、侍は勿論の事、あいつらの用意したクエストの世話にならない冒険者はいない。 冒険者は天晶堂に頼りきりだ。逆を言えば全ての冒険者はあいつらに管理されてるようなものだ。 「どこが小さな組織だよ、世界中が敵に回ったようなものじゃないか」 それが正直な感想だ。どこに行っても天晶堂の目は光ってる。どこに行っても天晶堂の息のかかった奴はいる。 それこそバルドニアまで行けば天晶堂の影響力から逃れられるかもしれないが、それじゃ元の木阿弥だ。 「サンドリアの天晶堂と言うと、ブルゲール商会ですか…」 フルキフェルが思案顔で言う。豪胆なのか、単に楽天的なのか。わかってんのか、あいつらに刃向かう事の意味が。 「左様で。しかしながら、あそこにエルリッド様が囚われている可能性は除外しても構わないでしょう。 幸か不幸か、サンドリア駐在の赤鎧は独自路線を貫いていて、彼らを重く用いてはおりません」 だからこそかような老骨が、今まで連中の目を逃れて生き永らえる事が出来た次第でございますが、と苦笑する。 あんたなら多分、ジュノ天晶堂の隣に住んでも平気だろうよ。 憎まれ口を叩こうとして思いとどまる。何故って、爺さんの目の中に、初めて怯えのようなものを見た気がしたんだ。
「彼らの転送魔法は柔軟で迅速でございますが、古来より技術を確立されてきたそれと違って不安定な部分も多いと聞きます。 個人所有の隠れ家に連れ帰るのがせいぜいでしょうが、片腕を失うほどの怪我を負っていてはそれも考えにくい事でございます。恐らく陸路。バストゥーク経由か、或いは直接ジュノに……」 「天晶堂だろうとブルゲール商会だろうと、相手に取って不足はないさ。でもな、そんな事に関係ない奴らを巻き込めるか」 いい加減痺れを切らしたルーファスが言い放った。 ああ、そう言うだろうと思ったよ、という風情で、爺さんが悲しげな顔をする。 「関係なくはないですよ…」 ルーファスがどうしておれ達を巻き込みたくないか分かるからこそ、遠慮がちにフルキフェルが反論する。 ほっとけよ、ルーファスは強い。奴らだけでやれるさ。たとえ無理でも、死にたい奴は死にたい奴だけで死ねばいいんだ。 昔のおれがそう囁く。そうだ、危ない事なんてまっぴらだ。ただでさえ危険にまみれたこの世界で、余計なトラブルを抱え込む必要なんてない。 「たまたま居合わせただけさ。ここに呼んだのも情報交換がしたかったからだ。第一、危険ばっかりで何のメリットもない事を手伝わせられるか」 「あんたがおれを助けた時、あんたは危険がないと判断したからあの赤鎧と戦ったのか。矢面に立ったのかよ」 だけど、今のおれがそれに強く反発する。勝算? 大事さ。メリット? もちろん、大事さ。それでも、もっと大事な事がある。 「あんたが人を手助けする時、メリットがあるからやるのかよ。ないならやらないのかよ」 違うだろ。他人にばっかり打算を要求するなよ。あんたこそ、そんな打算とは一番遠いとこにいる人間だろ。 爺さんはこういう流れになる事を期待して、口を滑らせたんだろうな。だけど爺の思惑なんかどうでもいい。あー、なんでおれ、こんなキレてんだろ。 二人で出来る事は限られてる。でも、四人になれば少しは選択肢は増える。バスとジュノにそれぞれ行って、妹を探す事だって出来る。
「ヒロさん、言い過ぎです」 勢いに任せて立ち上がったおれの服の裾を引いて、フルキフェルがたしなめる。 ああ、全くだ。全くどうかしてる。コンビニ店員の顔すら直視出来なかったおれが、なんだってこんな強面のエルヴァーン相手に啖呵切ってるんだ。 「でも、ルーファスさんも、そんな哀しい事を言わないで下さい。みんなルーファスさんの力になりたいんです」 人の事を咎めておいて、ちゃっかり便乗するフルキフェル。おれの言いたい事は、彼の言葉に全て包括されていた。 そうだよ。何でか知らないけど、危険だけど、何の得もないけど、おれは恩返しがしたいんだよ。 言葉も顔色も失って、ルーファスがテーブルの上の両拳をギュッと握り締める。 ラディールの手が、気遣うようにその上に重ねられた。 すげえな。NMが湧く瞬間なんて目じゃないくらい、空気が緊迫して張り詰める。 一瞬とも永遠ともつかない時間の後。 ルーファスが、その重たい口を開いた。
いじょです(`・ω・´)ゞ 雪深い魔王の城でダンジョンアタック〜は小説で盛り上げる自信がなかったので、シティアドベンチャー志向にしてしまいましたm(_ _)m
375 :
既にその名前は使われています :2006/05/30(火) 07:29:38.53 ID:w6RsYUmY
あげ
こうして、獣人同士の首脳会談が始まった。 鳥、亀、ブタゴリラの三首脳、という訳だが、ゴブリン共はまとまりのない種族なので除外。 数日間、亀の王さんが来るのを待ってから、ブタゴリラの洞窟の中で開催された。 流石に亀の王さんは気位が高い。 こんなタルタルに何故よびつけられなければならん、などと憤慨している。 ブタゴリラの方も同じだ。ここの遠征軍を取り仕切る大将らしいのだが、 あえて文句は言わないが、理由もなく部下をぶん殴ったりして、終始イライラしっぱなしだ。 一応、テーブルと椅子のようなものが用意され、三首脳と俺が座り、その側近達が背後に付く。 それぞれ好みが違うため、飲み物は単なる水が置かれたが…… 俺は一応においを嗅いで問題ないと思ったが、やっぱり飲むのを止めて酒の小瓶を取り出した。 酔っぱらうほどは飲まないが、とてもしらふでは居られそうもないからだ。 そして鳥のおっさんが開催の合図を告げ、さあ話せ、遠慮はいらん、と俺に促す。 流石の俺も緊張した。 最初は何を話して良いやら判らず、しどろもどろで自分の見てきたことを順に話した。 仕方がないので一言二言ごとに酒をあおり、そのお陰でだんだんと舌も回り始めた。 とても正気では居られない。 親玉達と、背後に立つ武装した部下共が俺をにらみ続けているのだから。
酔っぱらうほど飲まない、と言ったが、かなり酒が入って酔いの勢いに任せてしまった。 お前達ではもう人間共には勝てない、弱い、などという言い回しは極力控えていたが、 しかし無我夢中で、しかも調子に乗ってる俺の口は自分でもふさげなかった。 おかげで亀の王さんはしょっちゅうテーブルを叩いて怒鳴り散らす。 ブタゴリラの大将はテーブルを2回ひっくり返し、3回目には叩き割ってしまった。 最後には側近共が抜刀して俺を取り囲もうとして、そのときは流石に肝を冷やしたが、 鳥の側近が俺の周囲を固めて守ってくれたし、 最終的におっさんが立ち上がって、会議での抜刀は御法度だ、と連中を封じてくれた。 おっさんが動いたのはその時だけだ。 後は終始、目を閉じて腕を組み、俺の話に耳を傾けていた。 ……すまんな、おっさん。無茶な俺の肩を持ってくれて。 イザとなったら亀とブタ共の2対1、生きてここからは出られなくなると言うのに。 しかし、俺には勝算、というのは変だが、自分の話に絶対の自信があった。 話の大半は事実だからだ。 この連中が怒るのは、いわゆる嘘よりも本当のことを言われたほうがムカツク、っていう訳だ。 それに……亀と王さんとブタの大将もまた、どれほど威勢のいい態度を示しても、 鳥のおっさんが俺に見せたような、疲れ切った目と表情は隠し通すことが出来ないようだ。
俺は、話せることは全て話した、あとは知らん、勝手にニンゲン共にいたぶられ続けろ。 最後に俺はそう言い放ち、椅子に座って口を閉ざした。 会議室はどんよりとした沈黙におそわれ、重たい空気がねっとりと漂う。 亀の王さんはブツブツと何か言い続けて、納得したくても出来ない様子だし、 ブタの大将といえば、何か言うのか、と思うと意味もなく側近を殴り飛ばした。 そんな沈黙の中で俺は考えた。いったい俺は何をやっているのだろう、と。 こんな殺されそうな思いをして、呼び集めて会議まで開くなど、 俺にとっていったい何の得があるというのだろうか、と。 ……まあいい。俺に役目があるとすればここまでだろう。 そう考えて席を立とうかと思った矢先、鳥のおっさんが立ち上がって、こう言った。 「我々は、一度この地から去るべきだ。 新たな地に根を下ろし、そして新たな力を蓄えるのだ。 そして何時の日か我々の手でこの地を取り戻し、大いなる勝利を得ようではないか。」 その言葉に王さんも大将も大きく頷き、会議は幕を閉じることとなった。
そして、獣人の親玉達は今後の方針を宣言する。 まず、亀の王さんは今の王国を捨て、永住可能な沼地を求めて流浪の旅に出るという。 ずいぶん無謀な話だな、と思ったが現状を考えればマシなのかも知れない。 そこへブタの大将が何やら耳打ちしている。何か心当たりでもある、というところか。 そのブタの大将も、本国であるオーク帝国へ撤退するという。 撤退する羽目になったこの俺を、帝国が生かしておくはずもないがな、と俺にニヤリと笑う。 ……なんだかなぁ。自分の身の上が危ういというのに、なんで嬉しそうなんだよう。 まあしかし、目指すべき未来が出来たためだろうか、両者とも何故か目が輝いている。 ……これって良い結果なのだろうか。 そして、鳥のおっさんと言えば、私は一時隠れる、と言ったっきりだ。 どうするつもりなのだろう。 やがて、俺は鳥のおっさんと共にブタ共の陣地を後にした。 大した見送りは無かったが、改めて三首脳が顔を合わせて再会を約した。 我々が再び顔を合わせるとしたら、その時こそニンゲン共の最後の時だ、と。 う……やっぱり不味いな、この結果は。
380 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/05/30(火) 08:11:03.92 ID:lL8goJ0m
とりあえず、ここまでっす。
381 :
既にその名前は使われています :2006/05/30(火) 09:32:32.94 ID:iz2Ya6mZ
>>347 神聖魔法は白魔法が使える人のロマンですw両手剣はナイトの夢です!w
なぜだろう、黒装束の人の肌よりあなたの歯のほうが白い気がして仕方がありませんw
>>353 裏でそんな思い話が((((;゚Д゚)))
>>360 撤回して「裂けてたり」に修正してください(違っ)
クピピにロランベリーのパイが流れるようになりました(リーダー収集だから)ですね!w
えーと・・・高速移動している魔力ってシャントット先生が暴走して走り回ってる?(遠い目)
とりあえずはポン吉だんが食べられなくてよかったですw
382 :
既にその名前は使われています :2006/05/30(火) 09:40:41.72 ID:iz2Ya6mZ
>>361 ありがとうございます。
戴くとなるとモグタン、シャールカーン、サンさん、リードさん(?)で泥沼の恋愛模様ですか?w
冥福をお祈りしています・・・w
>>351 染めれば同じですw本当にありがとうございます。
熱いヒロさんも素敵・・・wでも、なんでだろう・・・お爺さんの掌の上で踊らされている気がして・・・w
>>380 なんだか嫌な感じがする会議の終わり方なんですけどww
ところで、最後までつっこまれなかったのが悲かったので自分でばらしますが、アリア以降の登場人物は全員ロマサガ2のキャラの名前から来てたりしますw・・・マイナーすぎたかな。
|
\ __ /
_ (m) _ピコーン
|ミ|
/ .`´ \
('A`) わっふるわっふる
ノヽノヽ
くく
383 :
既にその名前は使われています :2006/05/30(火) 11:32:13.35 ID:RXx//kwS
オルデールの悪夢age
384 :
既にその名前は使われています :2006/05/30(火) 12:38:10.14 ID:VnheFXqy
ニンゲン共の最期age
そして俺は鳥のおっさんに送ってもらうこととなった。 森の中を鳥の連中の護衛を受けながら、おっさんと語り、そして歩いていく。 「それじゃ、おっさんの城も……?」 「ああ。ニンゲン共、いわゆる冒険者などと名乗る連中がたびたび私の城に忍び込んでは、 殺戮をして金目のものや武具、貴重な呪文などが無いかと探っていた。 冒険者の意味が判らんが、私には物欲に目を狂わせた亡者のように思えてならない。」 「そうだったのか……。」 「しかし、ウィンダスとの新たな和平の会談の中で、城を徹底的に封鎖したからな。 お前が来ていたときには既にそのようなことが無くなった。というか、出来なくなった。 おかげで城の機能は失われたが、私だけではなく部下達も又、静かな時を送ることが出来た。 だが、執念深い連中が城の前をうろついていて油断ならなかったのだが。」 「しかしなあ、おっさん。これでよかったのかな。」 「会議の結果か。フハハ、良い訳がないだろう。お前達ニンゲン共からすれば、な。 今は良くとも数十年あるいは百年の後に、この地は大いなる恐怖に襲われることになるだろう。」 「う……縁起でもない話だ。 そういや、あんたはどうするのだ。一時隠れるってどういうことだよ。」 「ヤグード教団はもはや無い。すでにあの城はもぬけの空だ。」 「え?」
「教団は解散し、どうしても私から離れられぬ者を伴って、ミンダルシアの地から去る。 お前とも二度と会うことは無いだろう。」 「……。」 「この上は、ウィンダスとの交渉も終わりだ。 私から離れてミンダルシアの地に止まる者を受け入れてくれ、出来ないならそれでもいい、と。 元首、星の神子殿にその意向は伝えた。 部下達には私に従うか、ウィンダスに恭順せよ、と選ぶよう言ってある。しかし……」 「しかし?」 「私自身は折れるつもりはない。ことと次第によっては教団を再興し、ミンダルシアの地に蘇る。 その時こそウィンダスの最後の日となるだろう。お前も良く覚えておくがいい。」 「あ、あんたも恐ろしいことを言う。」 「フフ、要するにお前達次第だという訳だ。クゥダフやオーク共にはあの様に言ったが、 私はお前達の動向を見定めて考えるつもりだ。」 「だが、あんた達はそれで良いのか?先住民だろうに。」 「まあ、そうだが……家無き流浪の身となれど、日月が窓、天空が大いなる屋根となり、 木々、山々を柱に見立て、草むらこそ我がしとね、この世これ全て我が家也」 「……な、何?」 「つまり、国という意識を捨てれば、この世は全て我が祖国となる、という訳だ。 全てを捨てる者こそが全てを得る……判るか?」
「わ、判らん。流石に宗教家だな。小難しいことを言う。」 「部下の前ではとても言えない言葉だ。狂信的殉教団、などと銘打っていた教団の中ではな。」 何だかよく判らんが……これまで、部下の前では虚勢を張って生きてきたと言う訳か。 このおっさんも苦労人だ。 そして我々は、森を抜けて更に山々や高原を旅していく。 こんなところを歩いてたら、また例の「冒険者」共に狙われやしないかと気になったが、 我々しか知らぬ抜け道だから問題ない、とか言っていた。 これぞ文字通りの獣道って訳か。そう言って互いに笑い合った。 そして、ある森に来た時点で俺達は別れることとなった。 「それじゃ、おっさん。達者でな。」 「ああ、最後に一言いっておく。」 「なんだ?」 「私はお前達ニンゲン共のことは判らんが、しかしお前はもっとニンゲン共のことを良く知るべきだ。 お前は我々やゴブリン共とばかり付き合い、そしてニンゲン共の悪いところばかり見ている。」 「悪いところ……」 「ニンゲン共の残虐さを、あの会議でお前は訴えてばかりいた。 しかし我々とてニンゲン共を殺し、そして苛むことを長い歴史の中で繰り返して来たのだ。 そうしたことはニンゲン共に尋ねれば幾らでも話に聞くことが出来るだろう。」
「……。」 「お前のもともとの種族や、どこから来た者かは知らんが、 その格好で生きていくならば、ニンゲン共をもっとよく知るべきだろう。 嫌な思いをしたからと言って、背を向けて我々と付き合う前に、な。」 「ま、まあそうかも知れんが……」 「あと、もう一つ。」 「ん?」 「私をおっさん呼ばわりしていたが、実は私は女だ。ま、構わんが。」 「わ、判る訳無いだろう!最初に言えよ!」 「フフフ、では達者でな。」 「あ、ああ……また、会おうな。」 「ああ、また会おう。しかし、その時こそウィンダスの最後となるのだぞ?」 そう言って笑いながら、連中は姿を消した。 なんというか、やっぱり鳥の連中の表情というものの区別は付かないのだが、 鳥のおっさんの顔は晴れ晴れとしている気がした…… あ、おっさんじゃないのか。鳥の姉さんとでも言うべきか。 ……いや、やっぱりおっさんと呼ぼう。その方がしっくりする。 しかし、よく知れ、と言われてもなぁ……ん、あれ?この標識……
げげ!サンドリア王国だって! う……首男の連中は後回しにしたかったのに……
390 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/05/30(火) 13:22:54.40 ID:lL8goJ0m
立て続けですんまそん。 とりあえず、ここまでっす。
391 :
既にその名前は使われています :2006/05/30(火) 14:42:25.45 ID:RXx//kwS
獣人3國雲隠れage けんどちょーらいれすね!
ユリフィナさん、お疲れ様でした!
楽しみにしていた作品が終わっちゃう寂しさと、無事帰れて良かったという嬉しさが交差しております。
何はともあれ、裂けなくて良かった…!
>>347 F4カッコいいと思いますよ!自分も好きです。倉庫キャラにしっかりF4いますw
>>353 ユリフィナさん達の魔法の影響が激しすぎて怖いですね…凄い光景が思い描かれます(;・ω・)
>>388 鳥の姉さん、おっさん呼ばわりかわいそす…w
最初は小さな炎が出ただけであったが、その大きさは次第に膨らみ始めていた。 回数を重ねるごとに炎は巨大な塊となり、私の視線の先に降り注いでいく。 何度も炎を打ち付けられた乾いた砂は少し黒くこげていた。 「ふぅ…よーっし、今度はファイガIIIもいけそうだっ!ふぁぃ…うっ」 突然、グラッと視界が大きく揺れ、目の前が段々と真っ暗になる。 両足が力を失い始め、私は立って居られなくなり力無くベタッと尻餅をついた。 ふわっと乾いた砂埃が舞い上がり、軽く咳き込む。 ―――おっかしいなぁ、急にどうしたんだろう私。 頭もクラクラする…ずーっと叫びまわってて、貧血でも起こしたのかなぁ。 取り合えず、今立ち上がるのは無理だと考え、そのまま治まるのを待つ事にした。 ぼーっとする頭のまま、何となく周囲を見渡してみる。
相変わらず、どこからとも無く吹き付ける風の音だけが聞こえてくる。 あれからどれだけの時間、この鉱山の中に居たんだろうか。 いつまで経っても薄暗い空間は時間の経過を忘れさせる。 出発した頃は朝だったから今はもうお昼なのかな?まさかもう夜って事はないよね。 あぁ…でもそういえば、お腹減ってきたなぁ…。 そんな事を思うと、ぐぅ〜〜っとお腹の虫が鳴り始める。 こんな事なら、お弁当の一つくらい持って来るんだった…とちょっと後悔。 思えば、武器すら持たず手ぶらで飛び出してきたんだよな、私…ウカツだったorz 自分の浅はかな行動に思わずため息をついた。 もしここでモンスターに襲われたらどうするんだ私。持ってるのはこの拳だけだよ? といったものの、拳があっても現実世界でも格闘技とかやってた訳じゃない… 魔法もロクに使えない今、もし襲われたらどうしようもないじゃないか! ―――あ。でも、私のLvだと、こんなとこで襲われるわけないか。あはははは〜♪ 見掛け倒しでもLvは一応75だ!まぁ、戦闘Lvは1に近いけどね…! ――――そんな時に限って、嫌な事って起こるもので。
突然、私の周りがごごごごごっと小さな地響きを上げて揺れ出した。 そして次の瞬間、ポンッ!という音とともに私は空中を飛んでいた。 ううん、飛んでいたというか…お尻の下からぶっとばされたって感じで。 「うわぁぁああぁぁっ!?」 ―――ドサッ。 これ何て映画のスタントアクション? 受身なんてとれないのでそのまま地面に顔面直撃。鼻打ったよ…痛すぎる…orz 力が入らない腕で何とか起き上がり、元居た場所を振り返った。 途端、私の顔から血の気が引いていく。そこにいたのは――― くねくねとした身体をゆらしながら、地面から生えている巨大な巨大なミミズ。 そのカサカサした肌から乾いた土がぽろぽろと舞い落ちる。 「で、で、で、デタァァアアアアァ!!」 突然の巨大生物の登場に私は驚きを隠せずに、一目散に走り出していた。
本日は以上ですm(__)m ふと私はシリアス路線に行く事はあるのだろうかと思った…
397 :
既にその名前は使われています :2006/05/30(火) 17:27:21.76 ID:iz2Ya6mZ
>>396 巨大生物との死闘はシリアスだ。
食うか食われるか隙を見せた方が負k・・・って逃げてるっ!?w
398 :
既にその名前は使われています :2006/05/30(火) 19:15:46.84 ID:w6RsYUmY
何か書こう思って考えてみたけど、 文章構成能力無いから書けねえこれ。
399 :
既にその名前は使われています :2006/05/30(火) 21:00:06.26 ID:w6RsYUmY
まあでも保守は出来る
400 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/30(火) 21:37:04.03 ID:LncWpfjG
皆様、投下乙でございます。 そして保守あってこそのスレでございます。ありがとうございます。 自分の書いたものに反応があるのは素直に嬉しいもので、 今夜も無い知恵絞って続きを書こう、と思えたりいたします。
「うくっ・・・!」 突如、査問官が胸を抑えてうずくまった。 「!!」 「だ・・・大丈夫です。さっそく、私の仮説が、証明された・・・ようです・・・ね」 ぜぇ、ぜぇ、と呼吸を整えながら、青い顔で健気に笑ってみせる。 俺ですら、こうしているだけでも、徐々に生命力を奪われていくような感覚がある。 「先に進むしか、ないでしょう?」 査問官の言う通りだった。 今から鍾乳洞の出口まで戻るには、時間がかかりすぎる。 なにより、実験が続いているということは、アリア女史らはまだ心臓部にいることを意味する。 「・・・急ごう」 シャールカーンが言う。何か言いたいのを、ぐっとこらえた表情だった。 従騎士が査問官に肩を貸し、支えながら進んだ。 副隊長の別働隊は、無事だろうか・・・。 「シャールカーン」 先頭を歩く俺は、手元の地図を見ながら呼びかけた。 「隠し部屋は、地図によるとこの先をしばらく行った別フロアなんだが・・・」 揺れつづける地震とも異なる違和感を感じ、口をつぐんだ。 時が、止まっていた。
“赤い鎧”―――! 様々な制約がつくとはいえ、展開した結界内の時を止める権限を有するのは赤い鎧のみ。 目的はほぼ間違いなく、魔法実験の監視そしてアリア女史だろう。 派遣されたのは誰だ? 今の装備で対処できるのか? いや、逡巡している暇はない。 地図に“先に行く”と大きく書き込み、完全停止したシャールカーンの手に握らせる。 俺は腰の長剣を抜き、心臓部に向かって走り出した。 カーブを曲がり、階段を駆け下り、転がる遺骸を飛び越えた。 心臓部の入口にあたる場所も、やはりただの壁に見える。 俺は剣を握り締め、迷わず飛び込んだ。それと同時に、時間停止が解除された。 何の抵抗も無く通り抜けた壁の先は、広い空間だった。 床に描かれた魔法陣の中心に倒れるタルタルに、四人の冒険者たちが駆け寄っているのが目に入った。 赤い鎧の姿を目で探ったが、どこにも見当たらない。 もう任務を終えた、というのか・・・?
そのタルタルはエルヴァーンの女性に抱き起こされて、呪文で怪我を癒されていた。 白魔道士のアーティファクトを着た姿で、寝ぼけまなこのまま「うぅん・・・」と唸っている。 情報によれば、あれがユリフィナのはずだが。 ―――あれは来訪者ではない。 リアルへの帰還は成功したのか? 失敗して魂は消滅したのか? 不意に、ガシャンという音が響き渡った。 俺が足元に転がっていたカーディアンを蹴飛ばしてしまったのだ、と気づいた時にはもう遅かった。 四人の冒険者が、一斉に俺のほうを振り返った。 何故オルデール鍾乳洞にカーディアンが? という疑問はこの際どうでもいい。 ええい、仕方がない。俺は堂々と胸を張った。 「サンドリア王国騎士団だ! 全員、そこを動くな!」 「・・・・・・はぁ?」 「・・・・・・」 四人が四人とも、あからさまに不審そうな眼差しを俺に向けた。 抜き身の長剣、ダブレットにズボン姿。王国騎士の紋章が入った盾もない。 確かに、どう見ても王国騎士には見えない。 シャールカーンが到着するまで、時間を稼がなければならないようだ。
このタイミングで時間停止を解除したのは罠だったのか、と勘ぐりたくなる間の悪さだった。 「俺は先遣隊だ。すぐに隊長がここへ到着する」 まぁ、言ってることはおおむね嘘ではない。 「それまで、妙なマネは控えてもらう」 俺はヒゲサブリガの男に視線を向けて、警告を発した。 イカレた装備をしてはいるが、彼らの中で一番の実力者はこの男だ。 目が笑っていない。その眼には油断ならない光を湛えている。 視線が痛い。あからさまに信用されていない。 だが、怪しいのはお互い様だ。 皆一様に職業ごとのアーティファクトを身につけているのを見ると、それなりの実力はあるようだが・・・。 楽器を携えたヒゲサブリガは立派なヒゲを生やし、輝くように白いサブリガが股間にきわどいラインを描いている。 随分と値が張りそうな両手斧を担いだタルタルは、ふさふさした猫耳の帽子をすっぽりとかぶった格好。 おそろいの猫耳をかぶったナイトのタルタルは、自分の身の丈より長い両手剣を引きずっている。 モンク装束のエルヴァーン―――アリア女史は、先程からユリフィナを抱きかかえてハァハァと息を荒くしている。 ・・・頭が痛くなってきた。 シャールカーン、頼む。早く来てくれ。
405 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/05/30(火) 23:44:08.65 ID:LncWpfjG
今夜は以上です。 わっふるわっふるです。
406 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/05/31(水) 01:41:20.03 ID:gMt3Y+iR
みなさまお疲れ様です。
>天晶堂
な、なんだってー!
ジュノは危険すぐる街だったのかwこわいw
>>396 あのミミズはグロい…先端のうにょうにょが特に…
>>405 シャールカーンにアリア一行、ユリフィナキャラに囲まれてウラヤマシスw
彼女の位置は、例えインビジをしていようが手にとるように分かった。答えは俺のサポートジョブにある。 …狩人の広域スキャンだ。俺に必要な術は防御用の白魔法などではない、先手を取られない為の手段だ。 広域スキャンにより自分の周辺で誰が何処にいるのか、目で見ずとも直感で把握することができる。 俺を尾行する人間はすぐに気づく事ができる。常に俺と一定の距離を保って着いてくる為、分かりやすい。 ただ街中では人が多い為、見落としがちになってしまう。 だからバルファルには俺と離れて行動してもらい、俺を見張るような怪しい人物はいないかと監視させていた。 俺と彼女の差は約20mといったところか。うん、絶妙な距離だ。 奴さんの持っている曲刀の間合いに入る前に俺の魔法が先に決まるはず。 「そんなに慎重に動いていたのは、スリプルが怖いからだろ?」 俺はさらに精霊魔法を詠唱しようと両手を構えた。 「させない!」 刹那、彼女は姿勢を低くし、黒い髪を靡かせ、目にも止まらぬ速さで俺に迫ってきた。 なんて速さだ!これがフェイトかッ! 俺が戦闘に関して素人だからだろうか。襲い来る彼女に対して、まるで格上を相手にしているような威圧さえ感じた。 しかしその緊張はすぐに安堵へと移り変わる。時既に時間切れ。すでに魔法詠唱を終えようとしていた俺に隙はなかった。
「スタンの詠唱時間1秒ォォ!」 ここで気圧されるわけにはいかない。相手に飲み込まれるわけにはいかない。 だ、大丈夫だ…。初日に全ての魔法の詠唱時間を検証したんだ。それに勝つ為の準備も万端だ。 俺はすぐに溜まった雷の魔力を、まるで黒い閃光の様なスピードで迫る彼女にぶつけた。 「きゃ!」 バチッという音と共に楕円状に伸びた魔力の帯が彼女の体を縛りつけ、強力なスパークを起こす。 自由を失ったその体はそのまま豪快に地面に崩れ落ちた。 「スタンによる静止時間2秒ォ!」 俺は素早く次の詠唱に取り掛かった。なんとか策は上手くいきそうだ。いける、ノーダメージで俺は勝つる! 「スリプルの詠唱時間3秒ォォォオオ!」 間違えないように、慎重に空気中の元素を集め魔力を構築していく。 フェイトの彼女は地面に這いつくばり、砂で汚れた顔を俺に向け、睨み付けていた。 「おやすみなさい。」 「く…そ…」 スリプルの魔力が霧のように彼女を包み込み、レジストされることなく強制的に深い眠りへと誘っていった。 そしてすぐに彼女は目を閉じた。はは、意識を失ったようだ。
どうやら叫びすぎたようだ。のどの奥に砂が入ってしまって、少し咽てしまった。 髪の毛もぱしぱしする。ああ、帰ってシャワーを浴びたい。 ジュノにも給排水施設を備えた沐浴室はあったが"シャワー"というシステムがなかった為、俺が手作りした。 鉄の板に無数の細かい穴を開けただけのシンプルなものだが、出来としては満足している。 俺は地面で眠っている彼女を見つめる。 確かにこっちの世界での生活は楽しい。魔法も撃てるし、なにより俺はF4のイケメンになっている。 しかし彼女は…。胸の奥に不思議な違和感が残る。それがなんなのかよく分からない。 「とどめだ、そろそろ戦闘不能になってもらう。サンダーIVの詠唱時間、9秒…。」 ゴゴゴと激しい音をたて、空気中の元素が両手に集まってくる。…その時だ! 「毒薬よ。あたしを馬鹿なモンスターと一緒にしないでよね!」 彼女は軽やかに立ち上がり、そして素早く刀を構えると一直線に俺へと向かってきたのだ! 刃の先端は当然俺に向けられている。俺に隙ができる瞬間を狙っていたようだ。 詠唱を始めてからまだ2秒しか経っていない。戦闘に対して万全の準備をしてきたのは俺だけではなかったようだ。 このまま、まともに攻撃を受けたら只ではすまない。もし相手の攻撃によって俺の顔に傷がついてしまったら…。 と言うかそれ以前に殺されるじゃん! 俺は瞳を閉じて、やれやれと大きくため息をついた。
410 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/05/31(水) 02:19:11.65 ID:3Rm/Iblr
以上です。
411 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 06:52:05.75 ID:ochc1ep0
ミスラ保護協会のものですが、レグナスがやられそうになったら自分が出て行って保護しようかと思ったけど ミスラじゃないのでやめとくわ。
412 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 08:09:15.94 ID:HqcHmdOQ
タルタル保護協会のものですが、レグナスがやられそうになったら自分が出て行って保護しようかと思ったけど タルタルじゃないのでやめとくわ。
ちょwwwwおまえらヒドスwwwwww
おはようございます。皆様投下おつかれさまですー。 みるたびに話が進んでてびっくりします。 弱体魔法は丁寧に丁寧に、真綿でくるむように重ねるのがいいのですよ…ってサポ狩か! どうなるのでしょうか… 途中まで投下いきます。 続きはルーファスさんの出方を見てからに…(´Д`;)ヾ
なんとなくうっすらと目を開けると、部屋の中はまだ薄暗かった。 恐らくはまだ夜も明けきってないくらいの時間なのだろう。 こっちの世界にきてから、どうも目が覚めるのが早くなったような…。 しかし、ここから完全に目が覚めるまでの、けだるい時間が私は大好きだ。 春眠暁を覚えず。昔の人は良い事言うよね。枕もベッドも柔らかいし、あぁ、しゃーわせー…。 と、そんな風に惰眠を貪ろうとする私の身体を、ぞくり、と悪寒が駆け抜けた。 一拍遅れて、遠くの方で小さくパン、と何かが爆ぜたような音。 一気に眠気が吹っ飛び、私は慌ててベッドから飛び起きた。 口の中で言霊を紡ぎ、片っ端から強化魔法を纏いながら、ベッド脇に置いた鞄に意識を向け、 ダークスタッフを喚んだ。 「…なに、今の」 手の中に忠実に収まったそれを構え、扉に張り付く。 "静寂の帳を" 扉に向けてスニークを行使し、そーっと扉を開けて、廊下の様子を窺ってみた。 …何もいない? 扉を閉め、部屋の中に戻る。念のため窓にもスニークをかけてから、ゆっくりと開けてみる。 庭の梢を揺らす風が頬を撫で、夜明けの澄んだ空気が部屋へと流れ込んできた。 時間は滞りなく流れ、どこからか早起きな小鳥のさえずりも聞こえてくる。 「敵襲かと思ったよ…あのお爺さんがなんかしたのかなぁ」 もう少しごろごろしてようと思ったのに。 私はため息をついてゴブ鞄にダークスタッフを突っ込むと、もう一度ベッドに潜り直した。
寝直そうと思ったけれども、目はすっかり冴えてしまっていた。 どうでもいいけど、この朝の生理現象は本当になんとかならないものか。 …まあ、なんとかしたらしたでフルさんが悲しむだろうから我が侭は言うまい。 ふと気づくと扉の前をひた、ひた、と歩いていく足音がする。 すごく気配が薄くて、近くに来るまで全然気がつかなかった。 幽かな足音は扉の前で立ち止まったあと、また静かに去っていった。 お爺さん…という感じはしなかった。となるとマルトさんの方か。さすがミスラ。 ところでマルトさんとお爺さん以外の使用人の姿を見かけないのはなんなんだろう? …まさか家の雑事の一切合切を一人で仕切ってる、なんてことはないだろうし、 他のメイドさんは多分外から通いで働きに来てたりするのかな? それとも実は見えないところに大量に格納されてる…いやいや、 お客さんからは見えない所で沢山働いてるとか? もしそんなんだったらマルトさんは投げナイフが得意なメイド長だ。今決めた。 メイド秘技殺○ドールとかアレな名前の必殺技(FF的にはウェポンスキルですね)で、 屋敷とご主人様(ルーファスさんがご主人様か…)に害なす者を速やかに掃除するわけだ。 ――バカな妄想してないで、そろそろ起きませんか。 「……はい、ごめんなさい」 冷たい突っ込み。私はしぶしぶとベッドから抜け出すと、洗面用具を鞄から取り出した。
身だしなみを整え、私はお風呂場へと続く渡り廊下から庭に出た。 瑞々しい空気の中で深呼吸。やっぱ現代日本とは空気が違うわー。 しかし、これからどうなるんだろう。私自身の目的は、あくまで「元の世界に帰る」これに尽きる。 そしてフルさんの言う事には「一刻も早く帰りたいなら色々手伝え^^」と。 帰る方法知ってるくさいけど、普通の聞き方じゃ絶対に口を割りそうにないのがなんとも…。 他の二人やお爺さんがなんか手がかりを握っててくれると嬉しいけど、 二人ともどうも、リアルの事とは別のしがらみがあって何か色々大変な様子。 恐らくは黒装束とか赤鎧とか言われてる連中がらみだとは思うけれど。 フルさんが奴らに喧嘩を売る気まんまんだから、利害が一致したら手伝うことになるのかなぁ? でもそしたら、「これからやりたい事リスト」の大半は路線変更ってことで破棄だよな…。 まあ剣が盾になっちゃった時点で色々破棄になったみたいだけど…。 と、ぐるぐる考え事をしていると、突然背後から声をかけられた。 「おはようさん。そんな所で何してるんだ?」 「えっ? ああ、おはようございます、ちょっと朝の散歩がてら考え事を…」 声の主はルーファスさんだった。渡り廊下からお風呂場へ向かう途中で私を見つけたらしい。 ふと気がついて自分を省みると、考え事をしながらいつの間にか植え込みの脇に座り込んで、 葉っぱを一枚ちぎっては丸めたり折り曲げたり畳んでは地面にポイ、を繰り返していたようだ。 数枚とはいえ庭木を勝手にちぎってしまったことになる。 「えーと…ご、ごめんなさい。」
一体いつから見てたのやら。ルーファスさんは呆れたように苦笑した。 「まぁ、気にすんな。それよっかこれから朝風呂行ってくるんだけど、一緒にどうだ?」 …朝風呂、ですか。気持ちはありがたいけれど、無理。 ヒロさんですらいっぱいいっぱいだったのに、この上同種族の人と一緒なんて、 どんなボロを出すか分かったもんじゃない。想像しただけで顔が熱くなる。だめだ。 「…せっかくなのですけど…ご遠慮させてください」 「そっか、んじゃまた後でな」 「はい、ほんとにすみません…」 謝ってばっかりだ。お風呂場へと向かうルーファスさんの背中を見送って、私はため息をついた。 客間に戻り、鞄の中身を改めて引っ張りだしてみた。 属性杖7本と殴り装備を一緒につめるのは、けっこう大変…。 四次元ポケットなんだから指輪が一つ二つと盾が等価とかケチな事は止してほしかったが、 どう頑張っても入らない物は入らないので、礼服とかオイルパウダーなんかの 戦闘に関わらないものは結局ほぼ諦めた。ダンジョン行く予定ないし。 丁寧に畳み直して鞄にしまい込んでいき、最後に赤い盾を手に取った。 「ほんとにエンチャントが発動可能だとしたら、もしかしなくてもやばい装備だよねこれ…」 しかしフルさんの言う仮説が何なのかは、私にも何となく伝わっていた。 人間を巻き戻しの対象に取ることができたとしたら?
GMもどきの干渉を受けないはずの来訪者さんが、攫われて洗脳されるという矛盾。 ただ心がこちら側へ来てしまっただけの人には、干渉を受けてしまう余地があるということ? もう少し彼と自由に話ができれば、整理しやすいのになぁ…。 コンコン、と扉がノックされる。 「おはようございます、フルキフェル様。朝食の準備が整いました」 「はぁい、ありがとうございます、今行きますね〜」 慌てて盾を鞄に突っ込み、私は部屋を出た。 すごく驚いたことに、用意された朝食はお箸でお茶碗でお米で魚の開きで、純和風だった。 「皆様のご郷里の味に、少しでも近づけようとはしてみたのですが、はてさてどうにも…」 お爺さんは口ではそう言いながらも、目を細めて笑ってみせる。 確かにタルタルライスでおにぎりは作れるけど、お茶碗でごはんが食べられようとは。 なんでお爺さんがこんな風に日本料理を再現できるのかは気になったが、 赤鎧に罪はあってもごはんに罪はない。ありがたく頂くことにした。 あ、ちょっと涙が出そうかも…。
情報交換はなんだか食事中の雑談みたいなゆるい雰囲気の中で行われた。 「仕方ないから、そいつにソコワラメェってウソの氏族名教えて逃げてきた」 「そ…それは違う意味でGM召喚ものなのではw」 等々、多分三人の中では一番こちらに来てから長いヒロさんの体験談に始まり、 「魔法の式を自分で組み立てるって感覚が、わかる気がするけど再現できないというか… 魔法使おう、って思うと勝手に式? が組み上がって発動するっていうか」 「オートマとマニュアルの違い、みたいなもんか」 魔法の仕組みについてみんなで考えてみたり。他にも色々。 途中でヒロさんが投げた時計の話が出た。あの後時計は行方不明になってしまったらしい。 GMもどきと一緒に落ちて、現場検証に来た騎士団の人に持って行かれたか、 はたまたデジョンをうち消したときのショックでどこかへ行ってしまったか。 ――この後ドラギーユ城に行く用事があるんで、そのとき神殿騎士団の詰め所にあたってみますか。 もし騎士団で保管してたら、返して貰えるか試しにお願いしてみましょう。 近くもなく遠くもない所からコメントが。 なんか頼もしい事を言ってくれてますけど、それってやっぱり私は寝てろってことですね? ――身も蓋もない言い方をするとそうなりますねw あぁ、やっぱり…我知らず溜め息がこぼれた。
「それで、皆様はこれからどうなさるおつもりなのでございましょう?」 出された食後のお茶に口をつけたあたりで、お爺さんがそう切り出した。 それは勿論、円満にリアルへ帰るための行動を起こすのさー…と言いたい所ですが、 私の場合はさらにそこへ、黒装束と赤鎧に喧嘩を売ります^^ などという オプションが付いてくるわけで…勢いでそんな事言ったらドン引きされること請け合いである。 結果として、他の二人の言葉を待つことになった。 「エルリッド様を助け出すおつもりでしたら、今こそまさに好機ではございますが…」 「マティエール」 お爺さんの言葉をルーファスさんが強い口調で咎めた。 しかしお爺さんはどこ吹く風といった様子でそれを受け流し、形だけ謝って、彼に頭を下げた。 どうでもいいけどマティエールって名前だったんですね。 何か頼み事があるなら一宿一飯の恩って言葉もあるし手伝わないわけにはいかないけど、 こういう風に断ることができないようにじわじわと外堀を埋めていくやり方ってどうなんだろう。 しかし、エルリッドさんを助け出すって、いなくなってたのは攫われていたから? 最初に会ったとき、直前に読んでたスレのお話では両手に花状態だったから、 二人きりになってて、おかしいなとは思っていたけれど…。 そこから話は二転三転して、来訪者が持ち込んだ物品をヒントに作られた装備品が 奴らに混乱をもたらし活動を鈍らせている、という話や、GM装備の反則ぶり、 そしてついには奴らの本拠地の話にまで及んだ。
随分大盤振る舞いするもんだ。 そしてここまで聞かされたからには、5人でズヴァールに乗り込んで、 なるべく敵に見つからないようにエルリッドさんを助け出すべく工作をするのか…と思いきや。 「エルリッド様は、ズヴァールにはおられないでしょうな」 分かっているみんなの情報を頭に浮かべながら、編成と作戦を考えていた私は肩コケした。 「どういう事だ?」 代わってヒロさんが続きを促す。 「ズヴァールは確かに、彼の者たちの本拠。未だ多数の資料や設備はございましょう。 なれど、ズヴァールに行ったところで、いるのは研究員と傷病者が精々でございます。 彼らもまた生身の人間、かように過酷な土地では凌ぎにくいでしょう。 気晴らしに繰り出す場所もございませんですし…」 「じゃあ、どこなのですか?」 まわりくどい言い方にラディールさんが痺れを切らす。お爺さんはそれに頷き、さらに話を続けた。 「彼らは、自分たちの活動の便宜の為、表の顔というものを用意してございます。 お分かりになりませんかな? 人が大勢集まる場所に本拠を置き、冒険者なら誰もが知っている組織にございますが」 ジュノに本部があって、地下組織ながらも冒険者なら知らないものはない組織、ねぇ。 …って、ちょっとまった。まずいでしょソレは! 「…まさか…」 できれば外れていて欲しい、そう思いながらお爺さんの謎かけに、私は答えを提示してみた。
続きは文の推敲中につきここまでで一旦カットです。 私たちが知る世界の真実と、この世界の真実は、必ずしも同一ではない。 …って、ばっちゃが言ってた。 ところで「私」は一体メイドさんを何だと思ってるんでしょうね? A.愉快型都市制圧兵器 B.時空を操って巨大な屋敷をさらに巨大にする人 C.その他 …全然FF11と関係ないし。orz ぽん吉さんはなんというか、壮大な大河ドラマにでもそのうちなりそうな予感です。 そしてオルデールは阿鼻叫喚の巷になってしまうのか?;; みみずもタルタルから見るとでっかくて怖いですよね… では、わっふるわっふるします。
424 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 12:40:52.15 ID:O4m5b19r
保守age 通常員すら居ないズウ゛ァに居る傷病者カワイソスw
425 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 12:44:41.92 ID:ochc1ep0
オッスオラズヴァにいる負傷者。 何度来訪者に挑んでも毎回返り討ち! 最近職変えようかと思っているのさ!
426 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 12:48:42.97 ID:uMdSg6Lp
冥土(誤字にあらず)ミスラと鎌遺(誤字にあらず)タルタルが面倒を見てくれるんですよ。 どうせ来訪者出身。使い捨て使い捨て。
427 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 12:51:44.94 ID:pQvzvHHa
GM(´ー`)。o (エルリッドタンにはズヴァに来てもらって、ピンクのナース服で看病してもらおう。妹で強気で敬語でナースって最強じゃね?wwww
428 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 14:25:09.97 ID:uMdSg6Lp
丁度腕飛んでるしな。
429 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 15:06:36.01 ID:gpT2PDXp
鎌タルはフォモルの視線がたまってたら襲ってきそうだ
430 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 16:16:18.18 ID:HqcHmdOQ
>>425 ケガが治ればサンタ服きて怖がるタルタルで遊べるようになるよ
431 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 16:33:56.68 ID:N8nB4ACT
ここは随分フェイト関係者が多いスレですねwwwww ちょっと冒険者から転職考えてるんだが、ズヴァ城の居心地と居住性ドウヨ
432 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 16:50:44.16 ID:pQvzvHHa
やめとけやめとけ、寒いし研究員はキ○ガイだしマジキツイ バスがお勧め! 平和だしちゃんと5時には帰れるし、今日も錬金ギルドのあの子とデートだおv(^-^)v
433 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 16:53:44.59 ID:HqcHmdOQ
ウィンダスマジオススメ! 監視室で気になる来訪者を24時間覗き放題!
434 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 16:59:23.97 ID:N8nB4ACT
おまいら真面目に仕事しろよwwwww ちょっと採用試験受けてくる
おいおいおまえら・・ そんなことよりだ。 対来訪者用に最強のバイオモンスターを作ったぞ! ↓こいつが俺の代わりに来訪者を退治してくれるんだ。 頭脳はエルモ!体はタルモ!!そのなも名探nうわ何をする貴様らはなせはなせー・・・
436 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 18:47:04.41 ID:N8nB4ACT
オーケイブラザーおまいらとの楽しいひと時は過ごせそうに無い・・・ 採用試験受かって採用された。だがな・・・ 勤務地はズヴァール城だそうだ・・・。しかも街へ出るのは原則禁止の研究所勤務。 無駄に高い錬金術スキルが仇になった・・・逝って来るよ・・・おまいらの事は忘れない・・・!
437 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 18:48:44.26 ID:pQvzvHHa
こういう保守の仕方は新しい、と思ったw
そして、俺はサンドリアの街へとやってきた。 その街の家々は石造りで、道路もまた石畳で舗装され、 緑あふれるウィンダスで過ごしていたせいか、 久々に文明のにおいを嗅いだような心地だ。 さて……もう鳥のおっさん達を含む獣人連中がああなったこの上は、 俺が預かった手紙なんぞ届けても意味はないのだが…… まあ、一通りは物見遊山と洒落込むもいいかもしれない。 ささやかな露店や野菜売りが上げる売り手の掛け声、 「配達です!」という元気な子供らしい使い走りの声も上がり、 混雑している訳でもなく、そして寂れている訳でもない、柔らかな都会の空気。 首男の街だから、と気が進まなかった割には、意外と楽しんでいる俺が居る。 しかし、ある所に集まっている連中を見て、 思わずしかめっ面になるのが自分でも判った。 これ見よがしに武装して、恐々強い武具を腰に下げた冒険者達だ。 そして、ここはサンドリアだ。当然ながら首男の割合が高い。 連中の得意げな顔を見ていられず人混みから遠ざかろうとした、その時。
その時、誰かに蹴っ飛ばされた。 蹴られた、というか俺の体でけつまずいたらしい。相手は長身の首男だ。 ウィンダスでもそうだったが、やはりサンドリアでも同じような目に遭うのか。 あんまりだ、と悪態をつこうとしたが…… 相手はひざまづいて俺を助け起こし、 大丈夫か、悪いことをした、と小さなこの俺に丁寧に謝罪する。 まいった。これではケチを付ける隙がないではないか、と、 よく判らないことを考えながら、黙ってその場を立ち去った。 誇り高き騎士の国って訳なのだろう。 気位は高いが、大抵の奴のお行儀の良さが鼻につく。 ……なんだろう。なんだかモヤモヤした気分だ。 ようするに俺は、この国で何かケチを付けて悪態を付きたいのだ。 なんともいえぬ腹立たしいような、それでいて情けないような妙な気分…… 夕暮れ時になり俺は空腹を覚え、晩飯代わりにと手近な酒場に訪れた。 そこで焼いた兎や塩茹での豆を注文し、酒を飲みつつ周りを見渡す。 手近に数人の首男達が同じように酒を飲んでいるので、軽く声をかけてみた。
まあ、鳥のおっさんの勧め、ということもあるのだが、 見識を広めておくのも悪くないだろう、という考えだ。 この国のことや獣人についてよく知らない、と持ちかけると、 首男達は喜んで話を聞かせてくれた。 あの時代の何年前にはこんなことが、そしてあの時にはあんなことが、 あのオーク共の暴虐ぶりは等々、こぞって知識を披露してくれた。 いちいち、どんな話かは覚えていないが、共通して言えることがある。 こいつらの話は、自分の目で見て体験したことは何一つない、 誰が書いたのか判らない、語り継がれた歴史の書物でしかないのだ。 しかし俺の耳には、獣人達の悲鳴や絶叫が今もなお離れない。 と、そこへ見覚えのある連中が入ってきた。 そして嫌な予感が的中した。 あのブタゴリラ共の陣地にやってきた冒険者の連中だ。 しかも開口一番、よりにもよって、あのことを自慢げに話し始めたのだ。 ダボイに潜入して、珍しく小さなオークが居て、どうこう、と。
すると、周りの連中、俺に話をしてくれていた奴らまで、 興味津々で相手の話を聞こうと群がる。 どんな奴だ、強いのか、それとも弱いのか。 そして、何か珍しい物を持っていなかったのか、などと…… 俺は食いかけの兎の肉を置き去りにして、慌てて金を払って外に出た。 しかし酒の瓶だけはしっかりと店から持ち出して。 いっそのこと喧嘩でもふっかければ良かったか。 以前の俺ならそうしていたかもしれない。 こんな小さな体だと言うことも構わずに。 なんだか臆病になったのかな、と悶々と考えながら、空になるまで酒を煽った。 やっぱりこの国の連中も最悪だ、どいつもこいつも悪党ばかりだ、 などと変な悪態を付きながら。 そして翌朝。 「朝の配達はこれだけだ……ちょっと多いか。」 「う、うん……大丈夫。僕、頑張るよ!」
なんとなく酒の残った体でふらつきながら街を歩いていると、 そんなやりとりが聞こえてきた……ああ、あの使い走りの少年か。 こんな朝早くから働いているのか。 昨日は日が暮れるまで走り回っていたというのに。 少年に仕事を言いつけた男に話を聞いてみた。 病気の母親が居るからとか、一人息子が生計を立てるために、とか説明して、 仕舞いには目頭押さえて泣き出す始末だ。 なんだか古典的な苦労話で、しばし呆れて聞いていた。 ふと、思い立って少年を追いかけた。 そして先回りして建物の間から、手を貸してくれ、と声をかける。 やはり素直な少年だ。忙しいはずなのに、どうしたの、と覗き込んでくる。 すかさず俺は当て身一発喰らわせて、念のために猿ぐつわまでして、 縛り上げた挙げ句に建物の陰に隠してしまった。 そして配達の品を取り上げて、宛名書きを見ながら走り出した。 むむ、しまった。宛名を見ても何処が何処やら判らない。
しょうがないから、早朝でもやっている店に声をかけて、 この住所はどのへんなんだと尋ね回った。 一件目に届け終えれば、その届けた相手に次の住所を聞き出す要領で、 どうにかこうにか、配達の仕事をこなしていく。 何もあの少年を助けようとしてやっている訳じゃない。 ちょっと確かめたかったのだ。 大嫌いになってしまったニンゲン共のことを、 鳥のおっさんの言う通りに、もっとよく知りたくなったのだ。 配達物を届けると案の定だ。大半の相手は無言で荷物を受け取るだけだが、 固定客らしい連中からは、あの子はどうした、とさんざん尋ねられた。 病気なのかな、どうしたのだろう、今までずっと休まず働いていたのに、等々…… 一緒に酒を飲んだわけでもないし、大して話をした訳でもないのに、 受取人の反応を見て、その少年の人なりが見えてくるような気がした。 しかし、朝の分だったらしい配達に、昼頃までかかってしまった。 ま、慣れてないんだから仕方が無かろう。 とかいって、頼まれてやった訳でもないが。
あの子がニンゲン共の良いところ、などとは言うのは難しいが、 あの子と、あの子を気にかける人々も含め、 意外と悪くないんじゃないか、などと考えてみる。 正直言って、俺がニンゲン共に付けた最悪の評価は取り消しがたいが、 ま、これでいいんじゃないか、と思う。よく判らないがそう思った。 さて、そろそろ帰るか。 しかし、あの少年には悪いことをした。 目を覚ましたら、俺がした配達を一から確認し直さなければならないだろう。 さあ、そろそろ縄を解いてやろう……あ、やばい。目を覚ましてモゾモゾしている。 仕方がないので、当て身をもう一発喰らわせてから縄をほどいた。 こりゃあもう、二度とこの街には来れないな。ま、良いか。 そして、いよいよ俺は旅の初めに貰った妙な札を破いた。 良かった。ちゃんと機能するらしい。 だんだんと黒い闇の渦が俺の体を取り巻いて、どこへやら引き込まれそうな感覚を覚える。 こうして俺は一足飛びに、あのウィンダスの水の区へと帰って行った。
445 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/05/31(水) 19:07:14.71 ID:lHhpYbq0
だらだらと連投すみませぬ。 続きがあるのですが、とりあえずここまでっす。
ちょ ポン吉さん外道w。
447 :
Loufas ◆TTnPTs4wAM :2006/05/31(水) 20:08:57.37 ID:qDaCKQra
ポン吉さんのアウトローぶりにwktkしつつ投下しますー
448 :
Loufas ◆TTnPTs4wAM :2006/05/31(水) 20:09:25.35 ID:qDaCKQra
(210) 身支度をして脱衣所から出ると、ラディールがこちらに歩いてきている姿が見えた。 「食事の準備できたってー」 少し大きめの声を出して俺に声をかける。わかった、と言う代わりに手を上げて答えると、彼女は食堂の方へ消えていった。 朝から大工仕事をしたせいでさっきから腹が鳴りっ放しだ。 食堂に入ると既にラディールが席についていた。俺は昨日と同じ様に一番上座の席に付く。 「それ、外したら?」 「外れないんだよ…」 篭手を撫でながら俺は苦笑いをする。しかし、さっきのはなんだったんだろう。 左の篭手についてる龍の尻尾を模した飾りが急に生き物のように動き出して、ソファの背もたれを打った。 ソファは倒れる素振りも無く背もたれだけを木っ端微塵にしたってのは、考えようによっては恐ろしいことだ。 それだけの勢いと質量を備えた一撃だったことになる。軽く素振りしただけなのに。 「そんなに気に入ったの?子供じゃないんだから…」 ラディールは何か誤解をしているらしい。俺はため息を付いて視線を逸らした。 そういえば気になっていたが、この食卓に並んだうつ伏せの茶碗と箸はなんだろう? 程なくしてヒロ、それとフルキフェルが食堂に入ってくると、それを見計らって爺さんとマルトが配膳を始めた。 「今朝はルーファス様の大事なお客人がご一緒に召し上がるとの事ですので、恥ずかしながらこの老骨めも包丁を執らせて頂きました」 そう言って爺さんは丁寧にお辞儀をした。
(211) 和食、ね… これがここに並ぶ意味ってのをヒロとフルキフェルは気が付くだろうか。 爺さんが元『フェイト』とは言え、現実世界の生活や食事にまで細やかに知ってるというのは明らかにおかしい。 俺が知る限りで『来訪者』が頻繁に来るようになったのはこの半年間のはずだ。爺さんが『フェイト』にいたというのは60年前だという。 だとすれば60年以上前に『来訪者』が存在したか、もしくは今でも『フェイト』の情報を握っている、もしくは裏で通じているという事になる。 60年以上前に存在した事になるのならば、それを献体として爺さんは相当の情報を引き出したのだろう。 しかし、もしそうなら昨日の段階でもう少し突っ込んだ話が出てもいいはずだ。爺さんは「存じております」とだけ言った。つまり直接は知らないという事になる。 そもそも、爺さんの言った「異世界」というのは範囲が広すぎる。それが現実とも限らないだろう、と今初めて思い当たった。 なら、爺さんは今の『フェイト』と何らかのコネクションを持っている事になるのではないだろうか。 この和食を出すことで、それを気取られてもおかしくはない。それをあえてやるって事は… 「皆様のご郷里の味に、少しでも近づけようとはしてみたのですが、はてさてどうにも…」 白々しい謙遜をしながら、爺さんは苦笑している。 どうも爺さんの意図としては、一刻も早く情報交換をして動き出す気でいるらしい。爺さんの情報も全て曝け出して ─── 朝からヘヴィだな、おい…
(212) 雑談が続いて、いつの間にかお互いの身の上話がてらの情報交換になっていた。 ヒロはどうも、ナナコって女の為に赤い鎧を倒そうとしたらしい。若いねぇ… 彼は魔法に関しても理論を理解し、体内で退路を巡らせることで発現できるようになっているそうだ。 俺よりも随分長い間こっちにいることも話を聞いて初めて知った。 エルジンの時計は失くしたそうだ。あれは『来訪者』の遺品だったらしい。 だとすれば、彼は何故時計を投げつけたのだろう。本能的なものか、あるいは隠しているのか。 ただ、概ね協力的な彼の態度を見ると疑うのも馬鹿馬鹿しい。 「そういや、煙草持って帰ってきてたな。返すよ」 俺は懐からKOOLを取り出してヒロに渡そうとすると、彼は片手をヒラヒラとさせて拒否した。 「俺は煙草吸わないから、やるよ」 そうか、と言ってKOOLを再び懐に放り込む。ラディールがなんだか不機嫌なオーラを出しているが、矛先は俺じゃないみたいだ。よかった… 俺はこれまでの起こった事のみを簡潔に伝えた。ドラギーユ城でみた資料の話についてはあえて伏せておいた。 帰れなかった者の情報なんて彼らに聞かせても仕方がない。少なくとも帰る気でいる人間にとっては水を差す事になる。
(213) 食事もひと段落着いてお茶を飲み始めたところで、爺さんが急に切り出した。 「それで、皆様はこれからどうなさるおつもりなのでございましょう?」 どうするも何も、元の世界に帰る方法を一緒に探すということだけ告げて、彼らにはお帰り願うしかない。 身内ならともかく、エルリッドを助けようなんて話は彼らにする必要はない。 「エルリッド様を助け出すおつもりでしたら、今こそまさに好機ではございますが…」 「マティエール」 俺は即座に大きな声で彼の名前を呼んだ。 「おお、これは申し訳ございません。歴戦の勇者、しかも来訪者の方を二人も屋敷にお招きするという事は、てっきりご協力を仰ぐものとばかり…。大変失礼を致しました」 くっそ…風呂で俺に委ねるなんて言っておきながら、結局この2人は巻き込むつもりだったのか… 「エルリッドさん?」 フルキフェルが食いついてしまった。ただならぬ気配を出してしまった俺にも責任があるのだが… 協力者が増えることは吝かではない。だが、彼らの目的には沿わない。つまり利害が一致しない。 いくらこんな状況でも、手を付けて理のあることとないことくらい彼らにも判断できるだろう。 手伝わせようなんてすれば無用の反発を招く。『来訪者』同士、そういうのは一番避けたい所だ。 少し黙っていると爺さんが早くしろ、と言うような視線を投げかけてくる。 確かに俺にとっては有利な状況になる可能性はあるが、使用人としてこの傍若無人ぶりはどうなのだろう?
(214) 「……エルリッドは、クリルラ様につけてもらった護衛で、俺の妹だ」 渋々言った後、俺は爺さんを睨みつける。 爺さんは俺のためだけではなく、エルリッドのためにも最善の手を尽くすという考えなのかも知れない。 確かにいち早い奪還が急務だが、それとこれとは話は別だ。本当に、相変らず手段を選ばないやり方をしてくれる。 「爺さん。どうして今が好機なんだ?」 あぁ、空気の読めない子がもう1人いたよ… ヒロ、頼むよ… 爺さんの言うところによると、『フェイト』は新素材で開発された装備の解析に手間取っているらしい。 ヒロとフルキフェルは特に疑問を持っていないようだが、これは明らかに内部情報だ。 だが、その新装備も『フェイト』にとってはそれほどの脅威ではないだろう、と爺さんは言う。 「彼らの装備は、この世の法則の外にあるもの…いや、物質ですらないからでございます」 彼ら、とは『フェイト』だろう。 『フェイト』の装備はプログラムで構築されているそうだ。俺にはむしろ馴染み深い。 プログラムを「この世の法則の外にある」という言い方をすると言うことは、そもそもプログラムで構築されている俺の知っているヴァナディールとは別の世界と言う事になる。 ようやく確信が得られた。ここはゲームの中って訳じゃないらしい。
(215) 「鉄より硬いと設定すれば、鉄斧でぶん殴っても傷一つ付かない鎧が出来上がるという訳か。無敵になるわけだ」 『フェイト』の強さは、つまるところそこに集約されると言うことだろう。 「そこまで顕著な効果を持つのは、プライマルアーツだけでございます。 実際坊ちゃまがピアシュ…でしたか、彼の者の鎧を打った時には、 既知の素材で作った武装を用いたにも関わらず、多少なりとも傷をつける事が出来たとの事でございましたね」 既知の素材どころか素手だったけどな… 「彼らの使う装備はプライマルアーツを模して作られました。再現度はなかなかのものですが、所詮模造品。この世界の法則から完全に逸脱するほどの性能を備えてはおりませぬ」 確かに、殴ればへこむし斧でたたっ切れる。それは知っている。しかし、と爺さんはその先をつなげた。 「そのプログラムで解析もしくは設定できない物に関しましては、どのようにこの世界に作用するか見当も付かないのでございます」 「というと?」 俺が先を促す。この両手にある篭手がどのようなものなのか、それはどうしても確認しておかなければならない。 「そうですな、最悪で大陸の形が変化するほどの大崩壊、とでも申し上げればお分かりいただけますでしょうか」 「…もういい、聞きたくない」 なんてものを俺に預けやがったんだ、このジジイ…
(216) つまり『フェイト』は、その新素材について解析・設定を行うのに手一杯だろう、というのが爺さんの結論らしい。 そうすると、エルリッドがさらわれたのは俺と一緒にいたから、という理由だけではないのだろう。 「そうか、それであの時計が当たった時、鎧が溶けるみたいにして消えたのか…」 ヒロがボソッと呟く。確信もないのに時計投げたのか… あれ、結構高いんだぞ? ようやくあの顛末の事情が飲み込めてきた。時計を投げつけ、鎧自体が消失あるいは崩壊したと言うことなのだろう。 だが、落ちた先にはそれほどの崩壊は無かった。つまり、プログラムで構築されたもの以外にはそれほどの脅威はないらしい。 爺さんは時計をなくした事を少し大げさに嘆いていた。まぁ、確かに『フェイト』への切り札になるし、最悪交渉材料にもなる。 「一時間針が進むのに一日かかるポンコツがねえ」 少し呆れたような口調でヒロが言う。 「それって、リアル時間なんじゃないですか?」 急にフルキフェルが声を上げた。時間軸の違いがパラドックスになって法則を捻じ曲げる、って事か… そんな事あるのかねぇ? なら装備を回収すれば良いのではないか、というヒロの疑問も爺さんはあっさりと否定する。 『フェイト』は、実はそれほど大きな組織ではないらしい。100名程度、と言った。装備の回収は事実上不可能だそうだ。 現状の数字まで言ったら、現状の『フェイト』と何処かでつながっているってのはモロバレじゃねぇか… いい加減2人にも気付かれそうなものだが、ヒロは思った事をスパスパと質問していくし、フルキフェルは聞き手に回っている。 気が付いているのかいないのか、もしくは瑣末なことと踏んでるのか。どうなんだろう…
(217) 「どうして今が好機かは分かったよ。だがここからは別の問題だ。まさかズヴァールくんだりまで関係ない奴らを…」 「エルリッド様は、ズヴァールにはおられないでしょうな」 爺さんは俺の言葉を遮る様に言った。 「どういう事だ?」 ヒロが続いて相槌を打つ。こいつらグルか…? ズヴァール城は本拠ではあっても、拠点としての機能は持たないらしい。 「彼らは、自分たちの活動の便宜の為、表の顔というものを用意してございます」 あんな連中が何食わぬ顔で街を歩いてるって事か、面倒だな… 「お分かりになりませんかな? 人が大勢集まる場所に本拠を置き、冒険者ならば誰もが知っている組織にございますが。 世界中を繋ぐネットワークを持ち、貿易で作り上げた強大な発言力ゆえ、かのジュノ大公国ですらそれを掌握出来ない組織……」 「……天晶堂」 フルキフェルが口を開いた。俺の思いつく限りでは最悪の答えだったが、爺さんは満足そうに頷く。 世界中が敵に回ったようなものだ、とヒロが言った。 俺にとっては世界中が相手でも為すべき事に変わりはない。だが、彼らは別なのだ。 サンドリアのブルーゲル商会は天晶堂とは一線を画しているそうで、そこにいる可能性はきわめて低いらしい。 と言うより、おそらく既にいないと言う情報を得て話しているのだろう。
(218) 「恐らく陸路。バストゥーク経由か、或いは直接ジュノに……」 「天晶堂だろうとブルゲール商会だろうと、相手に取って不足はないさ。でもな、そんな事に関係ない奴らを巻き込めるか」 いい加減、話を逸らされるのにも飽きた。俺が語気を強めて全員に言う。 「関係なくはないですよ…」 フルキフェルが弱々しい反論をするが、俺はそれを無視した。 「たまたま居合わせただけさ。ここに呼んだのも情報交換がしたかったからだ。第一、危険ばっかりで何のメリットもない事を手伝わせられるか」 「あんたがおれを助けた時、あんたは危険がないと判断したからあの赤鎧と戦ったのか。矢面に立ったのかよ」 ヒロが強烈に噛み付いてきた。ありゃそういう問題じゃない。死にそうな奴がいて見捨てる方がどうかしてるんだ。 「あんたが人を手助けする時、メリットがあるからやるのかよ。ないならやらないのかよ」 それも違う。俺にだって、赤い鎧を捕まえて情報を聞き出そうという打算くらいはあった。助ける事になったのは結果論だ。 俺は、そんなに清廉な人間じゃない。 「ヒロさん、言い過ぎです」 フルキフェルがたしなめる様にヒロの裾を引く。 「でも、ルーファスさんも、そんな哀しい事を言わないで下さい。みんなルーファスさんの力になりたいんです」 くっそ、とんだお人好し共だ。俺がしたことなんて大した事じゃないだろう…
(219) いつの間にか力いっぱい握っていた拳に、ふと何かが覆うような感触を覚える。 ラディールの手が重ねられていた。 彼女にはこんな台詞はもう言えない。『ルーファス』が冒険者として立ち直ったのも、『俺』が今日まで生き残れたのも彼女がいたおかげだ。 けど、この2人には… もしかしたら同じ事なのかもしれない。 俺は彼女の為に、と思って彼女を傷つけた。 それは俺の勝手な自己満足のためだった。 今はどうだろう。 2人の申し出を断ることで、彼らに利はあるだろうか。 危ない橋を渡らせないという意味では確かに意味はある。 だが、それはこの2人のためと本当に言えるのだろうか。 それは俺の決めることじゃない。 今の俺にできることは、結局のところ一つしかないという事にようやく気が付かされた。 横目でラディールに少しだけ、笑って見せた。上手く笑えてるだろうか。
(220) 「元の世界に帰るのがお前らの目的だろう?帰る方法を見つけることは、天晶堂に喧嘩売りながらこなせるほど簡単なことじゃないはずだ」 できるだけ静かに、俺は全員に向かって話すように言った。 「だがもし、それでも俺を手伝ってくれる気があるのなら…」 握っていた手を開き、テーブルの上に両手を置く。そのままテーブルに付けるように頭を垂れた。 「…頼む。妹を、エルリッドを取り返したい。在るべきものを、在るべき場所に戻したい」 「素直にそう言えばいいんだよ」 「最初からそのつもりでしたから、どうか頭を上げてください」 2人の返事は明るい声だった。 返事が聞こえた後も、俺はテーブルから頭を上げられずにいた。 泣いているわけじゃない。これでよかったのか、と自問を繰り返していた。 彼らは死ぬかもしれない。勿論俺も、ラディールも。爺さんは既にその覚悟を決めているようだ。 俺の一言が彼らに死のきっかけを与えてしまったかもしれない。 そうならないためにも、俺はこの先の判断を一つたりとも誤ることはできない。 ようやく顔を上げると、微笑んでいるような表情のヒロとフルキフェルとマルト、それと冷や冷やした、というような顔の爺さんが目に映った。 視線をずらすと、相変らず俺の手を握って満面の笑顔になっているラディールがいた。とりあえず、最初の判断は誤らずに済んだのだろうか。
(221) 「それじゃ早速頼みたいことがあるんだが… マルト、城まで言付けを頼む」 「あ、私この後お城に行きますから、ついでに言ってきますよ」 フルキフェルが明るい声で口を挟んだ。 「誰に、何と伝えれば良いですか?」 「宰相に、ルーファスはセルビナには行っていない、ってのと、ファーロス・S・シュヴィヤールが戻った、と伝えてくれ」 多分、これだけで宰相は理解するだろう。今から考えてみると最初から宰相は気が付いていたのかもしれない。あとは宰相の出方を待とう。 「俺は?」 ヒロが、俺にも何かさせろ、というような目で俺を見ている。 「あー、ヒロは…」 とりあえず火急の用事はないし、しかし何も頼まないと言うのもちょっとこの状況だと気が引ける。 「…俺と一緒に風呂掃除、かな」 「えー!?なんだよそれ!」 「人が増えて使用人2人じゃ回らないんだよ。客扱いはもうこれっきりだ」 不満そうに声を上げるヒロとは対照的に、食堂は明るい笑顔に包まれていた。 「では、私めは再びかの組織に探りを入れてくるといたしましょう」 そう言い残して爺さんは食堂を後にする。とりあえず居場所の情報くらい確実なものが欲しいところだ。 「じゃ、私はマルトと洗物でもしようかしら」 ラディールも席を立つ。俺は不満顔のヒロを促して風呂場へ向かった。
460 :
Loufas ◆TTnPTs4wAM :2006/05/31(水) 20:17:10.66 ID:qDaCKQra
以上ですー 気が付くと容量がもう344KB ネ実で稀に見る容量オーバーするスレですよね… ではわっふるわっふるー
461 :
レップ ◆35//hs0Y0Y :2006/05/31(水) 20:41:34.25 ID:0//w2k9P
>>369 カンタレラktkrw
死亡確認………っと(マテ
天の塔では、遠目に見る感じで通り過ぎる感じかとw
>>374 予想当たったじゃないか♪
ルーファスさんはなんと言ったのかwktk
>>380 なんかすごい方向に話が進んじゃってますねw
ヤグさんやっぱ頭えぇわぁ
>>396 グリードきた!これで喰われる!
>>404 オヤジさんの恰好を思い出したら、ヒゲ顔がF4に思えてきた件についてwww
462 :
レップ ◆35//hs0Y0Y :2006/05/31(水) 20:42:11.67 ID:0//w2k9P
巨大な扉の向こう側に広がる空間。そして、その真ん中でごそごそやり、こちらに気付くと慌てて口をモゴモゴさせるポニタル。 どうみても何か食べてます。本当にありがとうございました。 「先日は入院中にセミ・ラフィーナ様を呼んでいただき、本当にありがとうございました。」色々刺を含ませながら食事中のタルタルに話し掛ける。 部屋中に甘酸っぱい香がする。誰が入って来ても香の発生元はわかるだろう。 「えーっと……(モグモグ)……あー!(ゴックン)。こないだのプリプリ君なの!」うまくごまかそうと飲み込んだらしいが、すでに時間切れ。 「思い出していただき、ありがとうございます。本日の用件ですが、シャントット博士はいらっしゃいますか?」口の隅が一部赤くなってることは教えてやるべきか?w 「いらっしゃらないなの。」何も気付いていないクピピ。またその手か。 「本当?」「本当なの。」「本当に本当?」「しつこいなの。」「あ、シャントット博士!」 あさっての方向を見ながら手を振る。 「え?博士、会議は終わったなの?」釣られて明後日の方向を見ながらクピピが驚いたように言う。当然、誰もいないわけで。
「#£@¥☆※〒%なの!」訳のわからないことを言いながら真っ赤になり、机の下で地団駄踏むクピピにニッコリわらいかける。引っ掛かった引っ掛かった! 「博士に用があるので。どこにいらっしゃっいますか?」 「教えないなの!」 ご機嫌斜めなクピピだ。 「後でロランベリーを(ry」「第一会議室で会議中なの。」 さっさと場所を聞き出すと(後ろから、「スルメ山のロランベリーとかいうのが食べてみたいなの」と聞こえた気がした。)、病院に繋がるワープ網と同じようなゲートがあった。 『ブリーフィングルーム 1』と書かれたワープゲートが、第一会議室らしい。らしい。 暫く探していると、『BrifingRoom 1』と書かれた標識がぶら下がったワープゲートを見つけた。多分ここだろうが、この標識を書いた人は、もうちょっと勉強したほうがいいと思う。二つほど間違っている。 その標識の横には、『使用中』と書かれた札が下がっている。トイレか何かか? とりあえず、使用中が空室とでもなるまで、ここで待っていよう。
465 :
レップ ◆35//hs0Y0Y :2006/05/31(水) 20:45:28.85 ID:0//w2k9P
以上です なんか段々書き方が乱雑になってきたように感じるのは俺だけでしょうかorz わっほぉわっほぉ!
466 :
既にその名前は使われています :2006/05/31(水) 22:05:02.08 ID:ochc1ep0
保守
467 :
レップ ◆35//hs0Y0Y :2006/05/31(水) 22:11:44.66 ID:0//w2k9P
今更ながら訂正
>>464 らしい。らしい。
→らしい。
皆様、投下乙でございます。 周りではどんどん話が進んでいく中、 オルデール鍾乳洞パートは進行が遅く申し訳ない。 さて、また書き進めることにいたしましょう・・・。
床一面に描かれた魔法陣の呪文は、ゆっくりとその色を失っていく。 天井まで届く光の帯も、薄らぎ、収束して消えつつある。 俺は円筒状にくりぬかれただだっ広い空間で、赤い鎧の気配を探り続けた。 確かに気配を感じる。 だが、姿が見えない。 第一、猫耳のタルタルたちがギャァギャァわめき散らして集中できない。 いっそ殺そうか。理由をつけて斬り捨てればいい。 苛立つ俺の頭の中に、そんな物騒な考えがよぎった。 「・・・黙れ」 自分で口に出した言葉は、驚くほど冷え冷えと響いた。 ビクッ、とタルタルたちは体を震わせ、おとなしくなった。初めからそうしていればいいものを。 ガシャガシャ、と背後で鎖鎧の音がして、従騎士たちが隠し壁をすり抜けてきた。 「リード殿! ご無事でしたか」 シャールカーンが着いたのかと思ったが、副隊長の率いる分隊だった。 互いに肩を貸し合っている。魔法陣の起動によって、生命力を奪われたのだろう。 「シャールカーンも、まもなくここへ来る。それまで待機だ」 本来は俺に指揮権はないが、高齢の副隊長は頷き、それに従った。
「・・・シャールカーンさん? どうして」 アリア女史に抱かれてぼんやりとしていたユリフィナが、その名前に反応して覚醒した。 まてよ。 これは、来訪者の意識が消えたとしても、それまでの記憶は残っているということか? 「ああ、シャールカーンが隊長だ。彼のことを覚えているのかな?」 「・・・はい」 こくっと頷くユリフィナ。 「だが、ユリフィナという来訪者はシャールカーンよりもリアルへの帰還を選んだ。 彼の想いを切り捨てたのだ。ならば今更、どうこうするものでもないだろう?」 彼女がシャールカーンを袖にした理由はあてずっぽうだが、どうせ当たらずとも遠からずだろう。 その証拠に、気まずいという表情が見て取れる。 「なにより、シャールカーンはここに職務で来ている。彼の邪魔はしないでもらいたい」 俺は、随分と冷たい目をしていたに違いない。 ユリフィナは何か言おうとして、下唇を噛んだ。うなだれて、表情は見えない。 「ちょっと・・・!」 事情を察したタルタルたちが、またわめき散らそうとし―――。 ガッシャーン! 隠し部屋に飛び込んできたシャールカーンが、勢い余ってカーディアンを蹴飛ばし、コケた。 本日二人目の犠牲者。あのガラクタ人形は呪われているのではないか・・・?
471 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/06/01(木) 01:01:41.56 ID:AwZZ90j8
宣言を忘れておりました。今夜の投下は以上です。 わっふる。
472 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/06/01(木) 02:43:12.93 ID:8dTzVYb7
デリカシーないなw
473 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/06/01(木) 07:26:33.33 ID:AwZZ90j8
おはようございますage
>>462 今夜は続きを書けるかどうか微妙ですが、
死にたくない来訪者はオルデール鍾乳洞に近づかれませんように・・・。
皆様オハヨウゴザイマス 風呂場掃除とか職務怠慢なクピピたんとかコケる神殿騎士とか色々楽しい人が多くて嬉しい。 では投下します
暗闇の中で気付いた私は、釈然としない違和感を覚えた。 立っている感覚はあるのだが、浮いている感覚もある。凄く落ち着かない。 視界は…真っ暗。私は目を開けているのか? 閉じる…開ける…変わらない。光源が一切無いとこうなのだろうか。 音は、何も聞こえない。自分の心臓の鼓動の音すら聞こえない。いよいよ死んだかもしれない。 身体を動かしてみる。感覚はあるが、実体が無い。触れるべき場所が素通りすると、腹の底が浮くような感覚だ。 いつからココに居るんだろう…いつまでココに居るんだろう… 既に現状把握にも飽きたし、魔法は発動しないようだし。 躯が言ってた飛ばされたとか、封印とかはコレなのだろうか。……私の身体…もといサンの身体は今どうなってる? 得体の知れない精神体が乗っ取ってる?それとも死んでる?死んだ?確かめる術が無いな…… ん?なんで景色があるんだ?さっきまで暗闇だったのに。 ふと気付けば、雪が黒く、空が真っ白で、真っ赤な光をクレバスから溢れさせるズヴァール城と思しき城の前だった。 ―――ザギュ…ザギュ…ザギュ… 歩くたび、雪特有の音をたて、靴の形を黒い雪原へと残していく。 本来は何か黒い金属で出来ているハズなのだが、目の前の城は黒ベタのように、ただ黒い平面で構成されている。 フラットな城の、本来ならば獣人軍の紋章がある場所には、金色の眼があしらわれている。…悪趣味だ。 門の前に立つ。真っ黒な城壁が目の前にある。手を触れたら、そのまますり抜けたり引きずり込まれる様な気がする。 「『ふふふ…御機嫌、いかがですか?碧眼のミスラさん。』」
突然2箇所から、声がした。暗い声は上から、明るめの声は後ろから。 どちらを向くにしても、どちらかに隙を見せる事になる…かといって、このままでは同時に来られる。…ならば 「突然よくわからない場所に放り出されて、機嫌良い奴がいるのか?」 背後に振り向くと、クリスタルの戦士のミスラ…に、よく似た白いミスラへと言い放つ。 「そうですか。それは失礼致しました。」 事務的に白いのがそう答える。私でもわかる。絶対、微塵もコイツはすまないとなんか思っていない。 『それは結構。』 背後の頭上から声がする。ソチラを向くと、昔彼の地で見たFomor Red Mageの、服だけ変わったようなのが居る。 頭上に立っていた黒いのは、背後の壁へと寄りかかる。すると中に沈み込むように消え、目の前の雪からヌッと現れた。 「そのように驚かせてはいけません」 背後から白いのが、目の前の黒いのを批難する。 『わかったわかった。今はジャンクの言う事聞いておいてやるよ。』 黒いのが、 やれやれ というジェスチャーをしながら、白いのへと答える。 「口を慎め。お前如き、我が力をもってすれば一瞬で浄化出来るのだぞ?」 『ほぅ…やるか?我は貴様を一瞬で侵蝕出来るのを忘れるなよ?』 …………何この人達。ココに来させたのはこの2人なのだろうが、私を挟んでいがみ合いは勘弁して欲しい。
「殺り合うなら、私は邪魔にならないように下がっていましょうか?」 2人が私を挟んだまま殺し合いしそうだったので、巻き添えになる前に聞いてみる。 睨み合っていた2人の視線がコチラに向く。興を削がれた そんな眼をしている。八つ当たりはされずに済みそうだ。 「失礼……大変見苦しい所をお見せしました。」 白い奴が言う 『クク…クックック……。』 黒い奴がそれを笑う 「えぇと…ソレは別に良いのですが、ココはどこで、私は…なんでココに?」 一瞬「私は誰?」と言いかけたが、どうにか本来の疑問を言えた。 「『ココは、精神世界。貴方が此処に居るのは、我々が呼んだから。』」 さっきまでいがみ合っていたのに、寸分違わぬタイミングで発音し、同じ内容を2人のミスラが言う。 「じゃ…じゃぁ、何のために呼んだんですか?いがみ合いを見せる為?」 予想外のステレオに狼狽しつつだが、呼ばれた理由とやらを聞く。 「『貴方は、力が欲しいですか?』」 「…は?」 いきなり、何を言い出すんだこの人達は。力が欲しいか?要らない訳じゃ無いが、漠然としすぎて意図が読めない。 「『我は、力を与えよう。さぁ、どんな力が欲しい?』」 「あぁ…そーいう意味か…」 要は力が欲しければさっさと欲しい種類を言えって所か。私が望む力……どんな力を望むんだろう……。
「何かを護る為の力を欲するか?」 『敵を殺す為の力を欲するか?』 左右から同時に言われる。ドッチも同じ力で使い方が違うだけじゃないのか?それとも命を与えたりするような力か? 「『力が、欲しいですか?』」 「力は、欲しい。ですが、その力は、何を代償とし、何と交換で私が得るのですか?与える意味はなんですか?」 問いかけへの返答と、疑問を同時に言ってみる。……質問は無視されるかもしれないが。 「我は人に、味方となり得る者に力を与える」 『我は、力の行使で覚醒する』 同時に二箇所から別々の事を言われると、よく聞き取れない。私は聖徳太子じゃないですよ、と。 「我は、力と共に、使う者の魂を学ぶ」 『我は、力を使う者が殺めた魂を喰らう』 そう言いながら、2人が私の方へと歩み寄って来る。 ……――ッ!動けない!ちょっ恐い恐い恐い誰かボスケテwwww【助けて!!】<call1>【助けて!!】<call1> ――――ザギュ…ザギュ…ザギュ… ――――ザギュ…ザギュ…ザギュ… ゆっくり、一歩づつ、左右から白いミスラと黒いミスラが、鏡写しのようにコチラへと歩いて来る。 左に居る白いミスラが左手を、右に居る黒いミスラが右手を伸ばしながら、さらに歩み寄って来る。 「ちょっ…何!?何!?何!?」 白と黒のミスラの手が触れる直前、ギュッと強く眼を瞑る。 ………あれ?何も来ない?……眼を開けたら眼前にドアップとかじゃ無い…よね…? 眼を開けると、さっきまでの城前ではなく、最上階にある、屋上のような開けた場所に立っていた。
以上です。
またしても精神世界に逃避(毒死?)してます。頭の中がお花畑な気がしてきましたw
思いっきりビビリな感がしますが、きっと気のせいです。
オルデールの惨劇がなんか起こりそうですが、実はコッチ側も意外なモノが仕掛けてありますw
>>436 氏 ご愁傷様です…色々な意味で。良い職場である事を祈るばかりですw
さて、あの元首の女にご報告だ。 などと意気込んで居たのだが、大抵の結果は既に知っていたようだ。 理由は簡単、あの鳥のおっさんがご丁寧にも置き手紙をしていたらしい。 まあ、手間が省けて良かったのだが。 「なあ……結局、あんたは何を企んでいたんだ?」 「いえ、何か企みがあった訳ではないのです。 なんといえばいいのか、あなたが赴くことで面白いことになるのでは、 という淡い期待があっただけですわ。」 「面白いことってなぁ……結構、俺は危険な目にあったんだが……」 「それも考えてヤグードの……鳥さん達の協力を仰いだのです。 私の手の者を護衛に付けるといっても聞かないあなただし。 それにあなたが自由に動いたお陰で、実に良い結果となったのですから。」 「良い結果なのかよ……お、おい、引いてるぞ。」 「あらあら大変、どうしましょう。」 「落ち着け。えーとな、こう竿を立ててだな……ああ、いいや。俺がやる。」 「あら、ごめんなさい……何が釣れたのかしら。」 「鰯だよ。これの身を叩いて薬味を混ぜて団子にして、鍋で煮て喰うと旨いのだ。 今度、喰わせてやろうか……え、何? 神子様はそのようなものをお召し上がりになりません?
おいこら、侍女共は下がってろよ。それに人の喰う物を勝手に決めるな。」 「ウフフ、ごめんなさい。さあ、いいから下がってて。」 「あんたが謝ること無いだろ。だーから、髪切って身軽になれって言ってるだろ。 ちょっとは鳥のおっさんを見習ったらどうだ?」 「そうですわね……彼ら獣人からも学ぶべきことはあるかもしれませんね。」 「また、そんな悟りきった言い回しでごまかそうとする。」 「まあ、とにかく今回の結果は良かったことだと思うのです。 冒険者の時代と呼ばれしこの時代、すでに彼ら冒険者の力は肥え太り、 彼らに立ち向かえる獣人など既に居なくなってしまった。これは実に危険な状態です。」 「……ああ、実に危険な状態だったよ。俺まで殺されるかと思った。」 「我々が獣人と呼ぶ彼らといえど生きる意志を示し、自らを主張するため拳を上げる。 如何に強大な力でねじ伏せられていたとしても、人は必ず生きる道を見いだすものです。 ……そう、どんな手を使ってでも。」 「ふむ……」 「そのことを彼女は良く私に話してくれた。敵味方の枠を超えて、いろいろな話をしたのです。 ああ、彼女というのは、あなたがおっさん呼ばわりしている、あの方です。」 「なんだ。それじゃ、個人的なつき合いがけっこう長いというわけだ。」 「フフ……実はそうなのです。彼女自身がそのことをよく知っている。 このままニンゲン共に虐げられ続けると、いずれは恐ろしい反撃をせざるを得ない、と……。」
「だが、いずれはそうなるだろう。鳥のおっさんは言っていた。 数十年後か、あるいは百年後には、恐ろしい恐怖がこの地を襲うと。」 「私は、あの会議の結果が無くとも、近いうちに必ずその危機が訪れると思っていたのです。」 「なんだと。じゃあ、何かそういう動きを知っていた、と?」 「いえ、勘です。というより、人というのは案外そういうものなのです。 今回のことは、彼らから猶予を貰ったと考えているのです。 あのオークや……ブタさんや亀さん達が如何に高らかに復讐を誓おうと、ね。 実は我々人間種族の方こそ、すでに大いなる危機にさらされていた、と私は考えているのです。 そして何より。」 「何より?」 「あなたが今回の結果をもたらした、ということが大きな布石となるはずです。 タルタル族であるあなたが、獣人達に決断をさせたのだ、という。」 「ま、まあ……俺は見て喋って帰ってきただけなんだが、な……。」 「しかし、これからどうなると思う。」 「私の手の者からいろいろと報告が入ってます。 すでにブタさん、亀さん、鳥さん達の陣地は廃墟と化し、 あらゆる地に徘徊する者どもも姿を消した、ということです。」 「あいつら、行動が早いな。流石だ。」
「確かに見事な早さです。 この素早い撤退こそ、彼らの血族の結束が如何に堅いかを示している。 いずれは冒険者達の知るところとなり、大きな騒ぎが起きるでしょう。」 「ふむ……。」 「ですが、当面は何も変わらない。 既にその獣人三種族を相手にしていない冒険者の方が大半だし、 獣人とは異なる危険な野獣が各地に住まい、ゴブリン族や南方のサギハン族にトンベリ族、 闇の王が再び倒されたとはいえど、北の恐るべき闇の血族は健在です。 東方諸国の戦いに赴く者も出始めているし、まだまだ冒険者達が戦う場面は残されている。」 「……。」 「これで各国のコンクェスト政策がご和算になるわけですが……それも影響は無いでしょう。 冒険者と呼ばれる方々の意識は、国の思惑とは別の所にある。」 「ま、強くなりたい。金や珍しい物、強力な武器が欲しい。そんなとこだろ。」 「ずいぶんと、彼ら冒険者を蔑んでいるようですね。」 「ああ、あんなことを目にしたからにはな。しかし。」 「しかし?」 「強くなりたい、何かが欲しい。それはやっぱり当然のことだ。俺自身もそうだと認める。 しかし……それだけじゃ寂しいんじゃないか、と。俺はそう思う訳だ。」 「そうですね……あなたの仰る通りです。」
「ところで、鳥の残留組はどうなった。」 「ああ、もちろんウィンダス連邦は、彼らの受け入れ態勢を整えつつあります。 彼らはギデアス入植地で静かに暮らしていてウィンダスのみならず、 バストゥークやサンドリアから来た派遣部隊の調査や監視を、 実に素直に受け入れているようです。」 「なんで、バスやサンドの連中が?」 「さあ……?多分、ウィンダスがどれほど鳥さん部隊で増強されるのか、と。 彼らは、それが怖くて仕方がないのでしょう。 彼らは既に三国間の戦争勃発まで計算しなければならないようですね。」 「……あーあ、もうそんなことを考えてるのか。やっぱり国って奴は面倒なものだな。」 「ウフフ、そうですね……。」 「それでは、私はこの辺で。」 「ん?ああ、そうか。しかし、この程度の時間じゃ釣りの楽しさは判らんぞ。」 「いえ、十分たのしませて頂きました。それに国の面倒ごとが沢山ある、と言うわけで。 ……ところで。」 「ん?」 「あなたはこれから先、どうなさるのです。」 「ああ、俺か。えーと……」 俺は答える代わりに、妙な紙切れを一枚とりだした。
俺がここに来た時に、ウィンダスの水の区に立っていた時に持っていた物だ。 「あのさ。これってどうするのだ。」 「それは……ただ、開いて読めば良いのです。」 「ん、そうか……おお?おおおお?」 俺はディアを覚えた。 「まさか、あなたが魔導師だとは想像もできませんでしたわ。 大の魔法嫌いであるあなたが、どういう心境の変化なのです?」 「ああ、俺が一番疑問に思ってる。なんでだろうな。」 「それでは……もしや、あなたが冒険者として生きていく、と?」 「ま、俺自身が強く賢い優れた冒険者になれるとは思っちゃ居ない。 思っちゃ居ないが……俺自身が自分であいつらの来襲に備えなければ、と思ったのだ。 あいつらと戦う気なんてまったく無いのだが、しかし俺も何かを学ばねばならん。 あんまり深く考えていないが、まあそういうことだ。」 「フフ……やっぱり、あなたは面白い方ですね。」 「なんだよう。俺なりに真剣に考えた結論だっていうのに。」 「ごめんなさい。あれほど冒険者というものを蔑んでいたのに、と思って。 でも、あなたに忘れかけていた光が見える。古き良き、そして頑固で勇敢な冒険者の目の輝きが。」
「おだてようったってそうは……」 「もしかしたら、あなたこそが救国の英雄となれる方かも知れませんね。 ちょっぴり期待しすぎだけど、すでにそうなりつつあるような気がしてなりません。 では、ごきげんよう……時々、会いに来てくださいね。 これから先、どう変化するのか楽しみなのです。この世界が、そしてあなたのことが。」 そんなふうに、たたみ掛けるような別れの挨拶をして、彼女は崖の釣り場を後にした。 まったく……やっぱり髪を切れ、髪を。 変装して忍んでこい。 大勢の侍女を連れて、テントまで立てて釣り場を占領するなんて、 どれほど他の釣り客の迷惑になったと思ってるんだ。 あーあ、これでまた変な称号を付けられると厄介だな。 絶対、誰かが変な噂を振りまくはずだし。 しかし、当面の俺の称号はこれで行かせてくれ。頼む。 称号 「冒険者見習い」 ※その後、風の噂で誰かが訂正 「神子様に求愛する者」
とりあえずここまでで、次を最終回と致しまする。
皆様お久しぶり。。。ってほどでもありませんね。 呪い人形にずっこけまくったり、サンドリア組は三人で行動ほぼ決定だったり、 F4さんはピンチだったり、クピピちゃんはロランベリー食べてたり、 ポン吉さんはついに最終回だったり、サンさんはカンタレラ飲んでやばげな夢をみていたり・・・ 続きが楽しみで毎日F5キーばかり押していますw 一本短編が出来たので投下します。
(1/22) 小さなタルタルの女の小さな両手は何故かボロボロだった。 その小さな両手がいとおしそうにエルヴァーンの男の手を握り締めていた。 幸せな夢を見て眠っているかのように安らかな表情で寄り添っていた二人は、 何者かに殺害され、サンドリア大聖堂の前の冷たい石畳の上に横たわっている所を発見された。 この二人には冷たい石畳よりも、柔らかな日差しが差す花畑のほうが似合いそうだと、二人の左手の薬指にはめられた、 今は血にぬれているおそろいの銀の指輪を見つめながら、野次馬の一人の若いエルヴァーンの主婦は思った。 周りの人の話によると茶色い髪をツインテールのようにリボンで分けて結んでいるタルタルの娘がピチチ、 長い銀髪が美しいたくましいエルヴァーンの男がハルモニアという名前で、冒険者の恋人同士らしい。 「手をほどかず、一緒に埋めてやれ。」 「はい、わかりました。」 ふと主婦の耳にこんな騎士のやり取りが入ったかと思うと、騎士達が通れる道を作るために野次馬たちが動き始めたため、 彼女は人の波にぐいぐい押されて思わず転びそうになったが、何とか彼女は踏みとどまり、 長い首をさらに伸ばして巨大なガルカ用の担架に乗せられた二人の亡骸を眺めた。 担架の上でもやはり娘は男に幸せそうに寄り添っているのだが、それが彼女には何故かひどく悲しい事に思えた。 きっと彼女は墓の中でも、女神アルタナの許でも永遠に彼に寄り添っているのだろう・・・。 「彼女達にも、楽園への扉が開かれますように。」 彼女の祈りが聞こえたのか、娘の亡骸がうれしそうに微笑んだような気がした。
(2/22) 「ただいまピチチ。」 「おかえり、ハルちゃん。」 私達の家に帰ってきた長い銀髪のエルヴァーンの男ハルモニアに私、タルタルのピチチはニコリと微笑み、 そして目をつぶり軽く唇ををつき出してただいまのキスをせがんだ。 きっと彼は『またピチチの甘えが始まった・・・。』と呆れて笑いながらも私の前にしゃがみこみ、 私の頬に手を当ててそっとキスをしてくれることだろう。 ほら、やっぱり。私の左頬に大きくて熱い手が触れたかと思うと、柔らかくて温かな唇がそっと私の唇に触れた。 この瞬間が永遠に続けばいいのにと思えるような甘くて幸せな時間。 私はうっとりとしながら彼の真似をして彼の左頬に小さな小さな手で触れた。 この後彼は、私をそっとお姫様抱っこしてベッドに運んで・・・とは今日はいかないみたいだった。 うーん、残念・・・。彼は立ち上がったあとまだ夢見心地の私を放置して壁にマントを引っ掛けている 大きな背中をちょっとだけ恨めしげに私はみつめていた。
(3/22) 私達は朝起きたら自キャラになっていた。私はピチチという名前の、茶色い髪をリボンで左右に結んだ 小さくてかわいらしいタルタルの娘になっていたのだ。 ぬいぐるみのようなモーグリに事情を話したものの、モーグリのほうが私以上にびっくりして冷静さを失い、 まるで役に立たなかったし、まずは周りの情報を集めようとモグハウスをでたものの、 居住区は同じような建物ばかりあって、道も似たり寄ったりなのでどこを歩いているかわからなくなるし、 南サンドにも北サンドにもサンド港にも一向に着かないし・・・。 そんなこんなですっかり迷子になってしまい途方に暮れている時、ふと喫茶店が目に止まった。 私はこんな時だからこそ一息つこうと思い喫茶店の扉をくぐった。 その時に合い席することになったエルヴァーンの男がハルちゃんだった。
(4/22) 二人用の机に向かい合っていた私達はなんとなく気まずい空気のままお互い無言で注文したものを口にしていたが、 先に口を開いたのはハルちゃんだった。彼の一言目は今もはっきりと覚えている。 「突然だけど変なことを伺ってもよろしいでしょうか?」 最初は新手のナンパか宗教の勧誘かと思ったけれど、無視するのも気が引けたので、私は「どうぞ。」と答えて そっと温かいサンドリアティーに口をつけた。 「この世界以外にも世界があって、さらに朝起きたら違う世界の人間になってるなんてこと、あると思いますか?」 本当にびっくりした。こんな偶然もあるものなのかと思った。どうやら自分と同じ境遇の人間が今、目の前にいるらしい。 私は、目をぱちくりさせたまま彼にこう言った。 「・・・ネトゲ実況板、朝起きたら自キャラになってたスレ。」 こんどは、彼が驚く番だった。
(5/22) 喫茶店で何時間もの間お互いの情報交換を始めた。住んでいる場所も、本名も、性別も、プレイしていたサーバーも、 FFの開始時期も、ジョブも、年齢も、どこにも共通点がなかった私達だったけれども、一つだけ共通点があった。 『朝起きたら自キャラになってた。』という2chのスレッドを読んでいたという事だ。 お互いの持っている情報には、ヴァナディールから帰るために役に立ちそうなものはなかったけれど、 自分と同じ境遇の相手に仲間意識がどんどん芽生えていった。 そんなわけで私達はその仲間意識から一緒に行動することが増えた。 最初は帰るための情報収集のために二人でチョコボで各国を巡ったりしていたが、 ひな祭りイベントで菱餅で遊んだり、お花見をしたりし始めたあたりから二人の旅は少しずつデートじみてきた。 二人でロンフォールに魚釣りに行ったり、ラテーヌへ虹を見に行ったり、水着を着て潮干狩りに行ってみたり どんどん情報収集から離れた目的で遊びに行くことが増えてきた。 二人はあっという間に恋に落ちていった。彼が二人の名前が刻まれたおそろいのシルバーリングと一緒に 愛の言葉を送ってくれたことがきっかけで、二人の仲はいっきに深まった。
今、私達はモグハウスを引き払ってサンドリア居住区にある安アパートで二人暮らしをしている。 モグハウスではないのでモーグリがいないから、身の回りの世話も自分たちでやらなければならない。 だけれども、毎日彼のために食事を作ったり、洗濯をしたり、お掃除をしたりする事はとても楽しく感じられた。 自分の作った料理をおいしいと言ってくれる人がいることがこんなに嬉しいことだなんて知らなかった。 生計は二人で合成品を製作してそれを販売することで立てていたが、 これは毎日合成ばかりしているようなものなので、お金はすごい勢いで溜まっていった。 もう、一軒家を買えるくらいの貯金だって出来ている。 私は最近、帰りたくはなくなっていた。ただ、ひたすらにこの幸せな生活が永遠に続く事だけを願っていた。 大好きな人に毎日甘えていられる生活って、素敵だと思いませんか?
(7/22) 私が王国風オムレツにケチャップでハルちゃんの似顔絵を描くと、決まって彼は「俺はもっと男前だ!」 と文句を言う。私はそれに対していつも「次はもっと上手に書いてあげるね。」とわらって答えていた。 同棲生活が長かったから、次があることがすっかり前提になっていた。 二人の距離はゼロで、二度と離れることはないと信じていた。だけど、何事にも終わりがある。 そんな簡単なことすらも忘れてしまうほど、私はこの生活に酔いきっていた。
(8/22) ピンクと白のチェック柄の、乙女チックなカーテンが朝のさわやかな風に揺られて、 ピンクの波のようにはためいた。そしてその風になでられてハルちゃんの長い銀髪の毛も静かになびく。 机の上には落書きつき王国風オムレツに白パンにサンドリアティー。 そして私とハルちゃんがいるいつもの朝食風景だ。 だけど今日はなんとなくハルちゃんの元気がないような気がした。 「ハルちゃん、体調悪いの?」 「・・・え?」 三秒ほど遅れて返事が返ってくる。これは本当にちょっと変だ。 「いや、体調は悪くないよ。」 「ほんと?」 「ああ。」 そう言うと彼はカチャカチャ音を立てながらオムレツを食べ始めた。やっぱり何か変・・・。 オムレツを切り分ける彼の手が静かに止まった。 「・・・もう一度、帰るための方法を探さないか?」 私は彼の一言に思わず体を強張らせた。
(9/22) 「・・・え?今の生活・・・イヤ?」 そんなことは彼もないはずだとは分かっていた。この質問が彼を困らせるだけだという事も分かっていた。 だけど、思わず最初に口をついたのはこんな言葉だった。 案の定、彼は少し困った顔をして頭の後ろをボリボリとかきながら私の顔を見ずにこう答えた。 「・・・やっぱりさ、なんか間違ってるだろ?こんな生活。」 「何が間違っているの?」 私は思わずムッとして少し強い調子で言い返した。 『間違ってる。』そんなつもりで彼は言った訳ではないのだろうけど、 私はこの言葉に今の生活を全否定されたような気がした。 「俺たちはヴァナディールにいるべきじゃない。帰ってもとの生活をしないといけないと俺は思うんだ。」 ・・・分かってる。そんなことは分かってる。だけど、もとの世界にはこんな幸せはない。 あなたは元の世界にもいるけれど、ハルちゃんは、ハルモニアという人は存在しないし、 ピチチという人も存在しない。
私達のリアルでの個人情報はお互いに交換済みだから、リアルに帰れてももう一度会うことは出来る。 だけど、その時は今みたいにお互いに愛し合うことは出来るのだろうか?・・・私は、無理だと思う。 私は容姿にコンプレックスを持っていた。別に器量が悪いわけでも太っているわけでも、胸がまっ平らだとか そういう事はない。ただ、身長が185cmと異常に高かった。 服も自然と男物が増えてゆくし、今までに私よりも背の高い人を男女問わず見たことがない。 かわいいものは好きだし、自分自身もかわいくなりたいと思っていたけれど、人ごみの中でも頭一個飛び出ている 女は、どう頑張ってもかわいくなんてなれなかった。 兄の服を借りて出かければ必ず「かっこいい〜!」と友達からは言われるし、部屋に遊びに来た人がぬいぐるみ だらけの私の部屋を見ると驚く。それに恋人とキスをする時も、私ではなくて彼が背伸びをするほうだった。 こんなに小さくてかわいいタルタルの私が実際は巨人のように大きいなんて知ったら、きっと彼は幻滅する。
(11/22) 私の夢は、かわいくなって自分より背の高い彼に思い切り甘えること。これは絶対にかなわないからこそ夢だった。 だけど今、私の夢は現在進行形でかない続けている。自分よりずっと背の高い彼に一日中甘えられる。 キスをする時も私はかがむ必要もなかった。かわいらしく彼に向かって背伸びができる。 ただの自己満足なのは分かっている。だけど、この夢を彼と一緒に永遠に見続けていたかった。 それに、もしもリアルに帰れて実際に彼に会ったら、巨人のように大きな私を見てきっと彼は幻滅する。 彼に嫌われるのも、幻滅されるのも、彼を失うことも絶対にイヤだ。 「私は、帰らない。」 私から視線を外したままの彼の顔を私はジッと見つめた。なのに、彼は私の顔を見ようともしない。 「俺は・・・帰りたい。」 「でも私は帰るなんて絶対にイヤ!!!」 「ならお前だけ勝手に残ればいいだろ!」 彼がキッと私を睨み怒鳴りつけた。その勢いがあまりにすごかったから、思わず私はビクリとする。 だけど、驚いたのは一瞬だけだった。勝手に残ればいいだなんて平気で言う彼が悲しくて涙がこぼれそうになった。 けれどもそれ以上に腹が立ったので私も思わず怒鳴り返していた。
(12/22) 「なんで平気でそんなこというの!?私と帰ることどっちのほうが大切なの!?」 バカ!!私の大バカ者!!!どうして彼を困らせるの?私が言うべきことはそんなことじゃないでしょ? そんなこと言われたら彼は答えられるはずないし、万が一帰ることなんて答えられたらどうすればいいの? きっと・・・今彼を失ったら私は生きていけないのに・・・。 「あ・・・ぅ・・・。」 突然、涙と嗚咽が漏れた。なんだか二人の間に埋めることが出来ない溝が出来てしまったような気がした。 私には彼が必要だ。彼がいなくなったら本当にこの世界で一人ぼっちになる。 それに、彼がいない生活なんて今の私にはどうしても考えることが出来ない。 だけど・・・今の私の最低な発言で彼が私に愛想をつかしてしまったかもしれない。 彼を失うことだけは絶対にイヤだ。それだけは絶対に耐えることが出来ない。 「やだよ・・・一緒にいようよ・・・。」 机と、オムレツの乗せられた皿にポタポタと大粒の涙が落ちてゆく。・・・今度は泣き落としだなんて。 本格的に嫌われちゃうかも・・・。早く、早く泣くのをやめないと・・・。
(13/22) 「・・・ちょっと競売行ってくるわ。」 ハルちゃんはそれだけ言うと、オムレツを半分残したままろくに荷物も持たずに玄関へと向かっていった。 私はそんな彼を見ることなく、下唇を噛んで、小さな手をぎゅっと握り締めたままうつむいていた。 「いってきます。」 ガチャ・・・バタン。ドアが開けられて、そして閉じられる音が聞こえた。 私はしばらくの間うつむいたままでいたが、感情が一気に爆発して机につっぷして大声を上げて泣き始めた。 ・・・どうして・・・どうして私はここで行かないでって言えないの? でも、そう言っていたらさらに嫌われただけかな?彼のためにも、私は帰るべきなの? だけど、帰ったら帰ったで彼に嫌われる可能性が増えるだけじゃない。 185cmの女を見て驚かない人に今まであったことなんてないし、それにハルちゃんが好きなのは 小さくてかわいらしい私だ。きっと嫌われる・・・。 私は・・・私はどうしたらいいの?誰か教えてください・・・。
(14/22) 考えてみると、ハルちゃんは私の作った料理はどんなものでも残さず食べてくれた。 そのハルちゃんが初めて私の料理を残した。生ゴミ入れのなかでも目立つ鮮やかな黄色のオムレツは 私の目に止まって仕方がなかった。 私は少しぐずつきながら朝食の食器を洗っていた。彼が帰ってきたとき、私はどんな顔をすればいいのかな? どんな言葉をかければいいのかな?・・・もしかしたら帰ってこないかも。 「ふぇ・・・ぇぇえぇ・・・。」 また嗚咽と涙が漏れ始める・・・。私はどうしたらいいの?誰か助けて・・・。誰か私を慰めてよ・・・。 寂しいよ・・・苦しいよ・・・。誰かぎゅっと私を抱きしめて・・・。ハルちゃん・・・。 ふと、何か違和感を感じた。その違和感の正体は分からないが明らかに何かがおかしい。 なんだろう・・・妙に静かだ。別にさっきまで大声で泣き叫んでいたからそう錯覚するというわけではない。 物音一つしていない。街の喧騒も、鳥のさえずりも、風の音も。 ふと、持っていた皿から手を離すと、それらはその場所から地面に落下することなくその空間に静止していた。 はっとして窓の方を見るとカーテンが波打ったまま動いていない。胸の前の小さな水滴は私の涙だろうか? 時間が止まっている。ふと、そんな考えが頭をよぎった。
(15/22) いや、よーく考えるんだ私、そんなはずはないじゃない。冷静に考えてそれはありえない。 ・・・田中さんがサーバーのコンセントに足ひっかけてヴァナディールが停止した?ちょっとありえるかも。 でも、もしも時間が停止したならば何故私は動けるのだろう?元々この世界にいた人間でないから? 突然、寒気のようなものが私を襲った。何故かは分からないけれどものすごく嫌な予感がした。 「・・・っ!ハルちゃん!?」 空耳かもしれないし、空耳であって欲しい。耳の奥でハルちゃんの叫び声が響いたような気がした。 なんで世界が止まったかなんて関係ない!一秒でも早くハルちゃんの身の安全を確認したくて私は玄関に向かって走り出した。 乱暴にドアノブを引っつかみそれを回す・・・回らない!? ドアは叩いても押しても引っ張っても蹴っ飛ばしても微塵も動く気配がなかった。 「ええええぇぇい!!」 私はモンクだった経歴を生かして思いっきり扉に小さな体でタックルをする。しかしやっぱり扉はびくともしない。 ただ単に私の肩が痛くなるだけだった。 「どうしよう、どうしよう・・・ハルちゃんが・・・。」 不安がどんどん大きくなってゆき、気がつくと私はまたボロボロと涙を流していた。
(16/22) ダメ!今は泣いている場合じゃない。なんとか、何とか部屋から脱出しないと。 窓。そうだ!窓から飛び降りればいい!!だけど・・・だけどこの部屋は三階だ。 飛び降りて怪我をしないでいられる保証はない・・・ううん、悩んでいる場合じゃない! とにかく、ハルちゃんを追いかけないと!早く安全を確認しないと。 「神様・・・っ!」 私は目をつぶり小さくお祈りをした後、思い切って開けっ放しの窓に向かって駆け出し、 窓の外へと飛び降りた。スタンッと自分でも驚くほど軽い着地音がする。 私・・・ていうかこの体ってこんなに身軽なんだ・・・。 驚きのあまり思わず自分が飛び降りてきた窓を見上げると、5メートル以上はありそうだった。 って今は驚いている場合じゃない!ハルちゃんを追いかけないと! ハルちゃんは競売に行く時、いつも北サンドリアの居住区入り口を通って南サンドリアへと向かう。 だから私はまずは北サンドリアにある居住区の入り口を目指して必死に駆けていった。
(17/22) 北サンドリアとサンドリア居住の境界にある巨大な石門を潜り抜けて、小さな石橋を渡ると 北サンドリアの大きな広場に出る。その広場のサンドリア大聖堂前で私はハルちゃんを見つけた。 だけど、そのハルちゃんは少し変だった。どう変だったかと言うと、背中から一本の赤い刃をはやしていた。 「・・・ハル・・・ちゃん?」 彼は私に応えるかのようにズルリと力なくハルちゃんの正面にいる何者かにもたれかかった。 「え?・・・ハルちゃん?」 彼の背中から生えていた赤い刃がゆっくりとハルちゃんの体の中へと引っ込んでいく。 刃が引っ込みきったところでハルちゃんの傷口から噴水のように血が噴出した。 あまりに衝撃的な光景に私は動く事が出来なかった。雨のように降る血がビチャチャと音を立てて地面を汚していく。 まだ温かい血が私の頬にピッとへばりつく。 私は、ぐったりと地面に沈んでゆくハルちゃんから視線をそらすことが出来なかった。 赤い雨の向こうには、赤いオーラをまとったドス黒い塊が立っていた。 「それでは、よい旅を。」 その塊は、ゲームマスター・・・GMのような姿をしていた。いや、多分GMだ。 そのGMは何も言わなくなったハルちゃんに紳士的な声でこう言うと私のほうへ振り向いた。
(18/22) 「探し出す手間が省けました。」 全身に赤い甲冑を纏った男は表情の分からないフルフェイスの兜の奥から少しくぐもった声を出した。 その右手にはハルちゃんを殺した赤い刃の禍々しい片手剣がしっかりと握られているようだが、 そんなことはこの際どうでもいい。ハルちゃんは・・・ハルちゃんはどうなったの? 「そのまま立っていてください。すぐに終わりますから。」 何が終わると言うのだろうか?私の命?・・・ハルちゃんの命? 「!!!!・・・ハルちゃんっ!?!?!?」 私は思わず倒れているハルちゃんに駆け寄り、彼の側に座り込んだ。 「ハルちゃん!ハルちゃん!!ハルちゃん!!!」 握り締めた彼の手はまだ少し暖かい。だけど、少しずつ、でも確実にその温度は下がっていっている。 「ハルちゃん、冗談でしょう?ハルちゃん!ねぇ!!ハルちゃん!!!」 必死にユサユサと彼の体をゆするが彼は何も応えようとしない。 「ねぇ、一緒に帰るから!私ハルちゃんといっしょに帰るから!!だから私のこと許して。 ワガママだってもう言わないから!だから起きてよ!私のこと許してよ!!仲直りしてよ!!!」 ボタボタと彼の服に私の涙が落ちてゆく。だけどそれを彼は拭おうともしない。 当然だ。彼は・・・ハルちゃんは死んだのだから。
(19/22) 私は彼の冷たくなった唇に長い長いキスをした。まだ、まだ少しだけ残っている彼の体温を感じていたかった。 だけど・・・だけどこの行為は彼が死んでいっているということを深く私の心に刻み付けるだけであった。 ついにすっかりぬくもりが消え去った彼の唇から私は唇を静かに離した。 ハルちゃんはもういない。殺されたから。 私達を眺めていた赤い鎧を私は睨みつけた。 ハルちゃんは死んだ。この男が殺したから。 「・・・どうして・・・どうして殺したの?」 「彼が元の世界に帰りたがっていたからさ。」 少し気取って赤い鎧が答える。 「意味が分からない。」 彼を睨みつけたまま、私は怒りを隠さずにはっきりと言った。 「死ねば君たち『来訪者』は元の世界に帰れる。」 私ははっとした。じゃあ、じゃあハルちゃんは今は元の世界に帰っているわけ? ハルちゃんの望みどおりに。・・・私を置いて帰っていったの? 驚く私に愉快そうに男は続けた。
(20/22) 「この男も驚いていたな。」 そう言ってハルちゃんの死体をちらりと一瞥するとクククと嫌悪感を相手に与える笑い声をあげる。 「私に殺されるための隙を見事に作ってくれた。」 ・・・どういうことなの?この人は一体なんなの?私たちを元の世界に帰すために現れたの? ハルちゃんは元の世界に帰れたってことなの?時間を止めたのはこの人なの?そして・・・ 「・・・ハルちゃんは・・・ハルちゃんは帰れたの?」 フルフェイスの兜の奥で、男が残酷に笑ったような気がした。 「知るわけがない。私は死んだ事がないからな。」 え・・・?どういうこと・・・?一瞬頭が真っ白になった。何がなんだか分からなくなって、頭が全く動かなくなってしまった。 そんな私に、男が楽しげに言った。 「全部デタラメだ。」 「ああああああああぁぁああああああああああああああぁああああああ!!!!!!!!!!!!」 何かが私の中で音を立てて切れた。気がつくと私は素手のまま男の鎧を思い切り拳で殴りつけていた。 タルタルでもモンクとしてLV75まで鍛え上げた拳は重く強烈で、さらにスピードもものすごい。 ガインガインとまるで金属同士が衝突するような硬い音が何度も何度も私の耳に飛び込んでくる。 殺したい。ハルちゃんを殺したこの男が憎い。この手で殺してやりたい。 ハルちゃんを騙して殺した、私の心をもてあそんだ、私とハルちゃんの生活を壊した!!! この男をなんとしても自分の手で殺してやりたい!!! 何度殴っても鎧はへこみそうにない。赤い鎧のかわりに私の拳がどんどんズタズタになっていく。
(21/22) 「いい目だ。」 男がポツリと呟いた。何を言っているんだこいつは。余裕のつもりか? それなら永遠の余裕ぶっていればいい。その間に私が殺してやるから! 突然、私の腹にドンッと何かが衝突した。腕が、脚が動かなくなる。 「気は済みましたか?」 「ぇ・・・・・・あ・・・。」 恐る恐る自分の腹を見ると、真っ赤な刃が深々と突き刺さっていた。 「異物の削除完了。ヴァナディールの秩序は保たれた。」 体の体が刃と一緒に軽々と持ち上げられたかと思うと、男は私ごと赤い剣を真横に薙いだ。 遠心力で私は刃から解放され、真紅の軌跡を残しながらハルちゃんの側にドサリと重たい音を立てて落下する。 声が出ない。力が入らない。・・・目も見えない・・・。 耳は・・・耳は聞こえるみたいだ。サンドリア大聖堂の正午を知らせる鐘が聞こえてくる。 野次馬のざわめきも聞こえる。こんなに近くにいるのに・・・ハルちゃんの声は聞こえない・・・。 ハルちゃん・・・ハルちゃん・・・どこにいるの?ハルちゃん・・・。 必死に動かない手を動かすと、ハルちゃんの指に私の指先がちょこんと触れた。 「・・・いた・・・。」 自然と顔がほころぶ。私はハルちゃんの冷たい大きな手を、 感覚がほとんどなくなってしまったボロボロの小さな両手で包み込んだ。
(22/22) 私達、きっともう助からないね。でも、聞いてよ。不思議とちょっぴり嬉しいの。 だってヴァナディールで死んだらヴァナディールの天国に行けるじゃない。 私、この姿のまま、可愛いミピピちゃんのままずっとハルちゃんの側にいられるんだよ? えへへ・・・ちょっぴりじゃなくてすごく嬉しいや。 「私は白魔道士です!女性の方はまだ息があります!レイズIIIを施すので道を開けてください!」 凛とした声が聞こえる、レイズだって。・・・ハルちゃん、大丈夫だよ。 ちゃんと一緒についていくから。一人ぼっちになりたくないし、ハルちゃんを一人ぼっちにもしないから。 少しずつ全身を力強い生命力を持った魔力が包んでゆく。レイズIIIをかけられたみたいだ。 私は楽園へ行く時に離れ離れにならないように、ギュッと最期の力で冷たい彼の手をしっかりと握りしめた。 この手だけは、絶対に離さないんだから・・・。 大聖堂の鐘の音が少しずつ遠くなってゆく・・・。 ハルちゃん。元の世界に帰して上げられなくてごめんなさい。 もし、こんな私を許してくれるなら、これからはずっと・・・ずっと一緒にいようね・・・。 蘇生を受けますか? 『いいえ。』
以上となります。朝っぱらから鬱な話で申し訳ありません。 &初代赤いヨロイさんを貸していただきました。 それでは皆様の投下をF5キーを連打しながらお待ちしております わっふるーわっふーるー! PSリードさんへ。 まるで変人集団みたいな書き方しないでくださいwwwwwwwwwwww ・・・変人揃いだからしかたないのかなw
512 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 11:28:55.35 ID:xUgYI7/D
オルデール鍾乳洞ダイエットマジオススメ 俺はあれで体重が半分になった
513 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 11:35:50.44 ID:7QSwMgCF
ズヴァール城勤務マジオススメ 俺はこれで体重が1/3になった
ハルもミピピもテラカワイソス( つД`) …許すまじ赤鎧。
515 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 12:40:34.86 ID:FxLFLZcs
本部からある来訪者倒せたらボーナスとして10億ギルの報酬があるって話があったので乗ったぜ 標的の名前名前Raouってのらしいけど弱そうだよなww楽勝だぜ多分 んじゃ軽くやりにいってくる ノシ
516 :
609 ◆dWeYTO/GKY :2006/06/01(木) 13:11:32.54 ID:le/N/rEj
カワイソス...orz ルーファス様、稚拙なプロットに見事に合わせて頂いて感激です(つд`;) 風呂掃除を書こうと思ったんですが、マティエールタンがGMと繋がってる設定の方が美味しい気がしたのでそっちのインターローグなど…
517 :
インターローグ ◆dWeYTO/GKY :2006/06/01(木) 13:12:19.13 ID:le/N/rEj
謀略の古都サンドリアの、深い、深い闇の中。 小鳥の囀りも人々の喧騒も、太陽の恵みも風さえも届かない、そんな場所。 二つの話し声だけが、その空間に存在する「有」だった。 「そうか…。私の故郷の料理を」 片方の声が、もう一方の報告を聞き、優しいバリトンで答えた。 「は。坊ちゃまの良人には今ひとつのご様子でしたが、来訪者の方々には、とても喜んで頂けました」 かすれた老人の声。 「そうか、それはよかった。よく覚えていたな。お前が私の元を離れてから何年になる? それより以前に、一、二度披露しただけと覚えているが」 「もう、今年で六二年になります……。忘れようもございません、あの腐って糸引く豆を振舞われた時のショックは、とても口で申し上げられるものではございません」 老人が少しおどけた様子で答え、バリトンが容赦せよと苦笑する。二つの低い笑い声がしばし響いた。 「しかし……組織の規模は見誤っているようだな。GMの数はお前がいた頃よりずっと増強されているぞ。フェアリーやハデスといったお前の知らぬ新顔が、今は大きな顔をしているよ」 ひとしきり笑った後、真面目な声に戻ってバリトンが老人を咎める。 「こ、これは…私とした事が…」 飄々としていた老人の声が、とたんに狼狽の色を帯びた。 「よい。現在就任しているGMと従者合わせても、未だ百に満たぬのは事実だ。しかし、随分と一度に多くを話したものだな。怪しまれはしなかったか?」
518 :
インターローグ ◆dWeYTO/GKY :2006/06/01(木) 13:12:48.93 ID:le/N/rEj
「それこそ望むところにございます。これまで数多の来訪者をこの手に掛け、貴方の王の元に送り込んで参りましたこの老骨。 我侭とは存じますが、許されます事なら、坊ちゃまの手で断罪を受け、果てたい所存にございます故」 心配げに声のトーンを落とすバリトンに、老人が静かに応える。その声はどこか悲しく、それでいてどこか憧憬のような熱を帯びていた。 バリトンが、ぽつりと呟く。 「今の主人は、あのモンクという訳か」 「お許されませ。六十年も一つの家に仕えれば、愛着も湧きましょう、人の情も生まれましょう」 「責めているのではない。……よい家に仕えたな」 罪の意識に言を紡ぐ老人を、バリトンが優しく遮った。 「恐れ入ります……。ですが、お嬢様を救い出す為とはいえ、この手でまた坊ちゃまを死地に送り出さねばならぬのかと思うと…」 元の主人の労いにも、老人の声は晴れなかった。 「その娘御の所在は目下確認中だ。獣人どもの勢力圏を突っ切って陸路で直接ジュノに向かったか、あるいは避けてバストゥーク経由でジュノに向かっているのか…。 そのどちらかなのは間違いないのだが。どちらという確証が掴めん。待たせて済まぬな、許せ」 バリトンの声もまた、沈痛な響きを帯びる。滅相もございません、と、老人の声が主人を慰めた。 「我々は世界の完成を望んでいる」 ただ一人、王を除いてはな、と自嘲の色を帯びた苦笑を漏らし、 「お前には苦労をかける。だが今しばしの間だけ、私に協力してはくれまいか」 「いつまで、で……ございましょうか?」 老人の切なる問いに、他方の声が詰まる。 「ご容赦を。この老骨、寄る年波に気を強く保つのが難しくなり申した。もしお情けを頂けるのであれば、せめて……」
519 :
インターローグ ◆dWeYTO/GKY :2006/06/01(木) 13:13:09.87 ID:le/N/rEj
「……よい知らせはない。二つの希望を失った」 しばしの躊躇の後、バリトンが語り始めた。 「一つ、ウィンダスにて、アレクサンダーが死んだ。もう一つ、ゼロが折れた。つまりオーディンも恐らく死んだ」 左様で、ございますか。と、老人の、むしろ感情の篭らない声が答えた。 「分かりました。仁故赦せず忠故弓引けぬ貴方様とて難しいお立場、この老骨めばかり泣き言を申してよい道理もございませぬ」 衣擦れと靴音。誰かが立ち上がったらしい。 「それでは、私めはそろそろ暇を乞いたいと存じます。何か他に留意しておくべき事はございますでしょうか?」 そうだな、とくぐもった呻き声。しばしの思案の後、バリトンが口を開いた。 「リンクシェルを用意してやれ。天晶堂がシェアを握る前の旧式を。直接通信式の、同エリアにいる同士でしか使えぬ不便な品だが、中継点で全てのログを盗聴されるよりはましだ」 ジャリ、と鉄靴が石畳とこすれ、続けて無数の金属がぶつかり合う音。 「あと、GMに相対した時も、希望を失うな、と伝えてくれ。我らの鎧は強固で、その装甲素材を貫くのは不可能と思っていい。だが覚えておけ、鎧という素材は存在しない。 脇や股、喉など着用者が動く上でどうしても剥き出しになる部分はあるし、いくら兜を被っていても、横合いからハンマーで強打されれば痛いものさ」 バリトンの声がゆっくりと移動し、甲冑の擦れる音がそれに従う。 必ずやお伝え致します。老人の声が退出を告げ、気配が消えた。 さて……、とバリトンが溜息混じりに呟く。 「此度の勇者は供物となるか、それとも、今度こそ毒杯となるか……」 そして、もう一つの気配も闇に溶けた。
520 :
609 ◆dWeYTO/GKY :2006/06/01(木) 13:15:30.07 ID:le/N/rEj
いじょです(`・ω・´)ノ Raou討伐頑張って下さいね^^^^^ 次はEdajima討伐が待っていますよ^^^^^^^^^
521 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 13:16:02.82 ID:iJa7VzHE
あ。その前にチャリオット様のご遺族へのカンパ頼むわ。 しっかしチャリオット様も不憫だよなぁ。 親友の手にかかって死んだだけマシなのかもしれんが。 そりゃーそーとうちの上司はバハムート様なんだが、 あの方の悪ふざけはどーにかならんのか? 前はナナシ様とチャリオット様が結構抑えててくれたんだが、 今はムッチャ苦茶なんだ・・・。 そのくせ部下は(あの人なりに)可愛がるし・・・。 マジでうざい・・・給料も下がっていいし、仕事も増えていいから別の部署へ「左遷」してくれってみんないってるよ。 あの方のいいとこは、自分のトコが一番待遇いいと信じて疑ってないから、 左遷先選ばせてくれるんだよな。 しかし、俺元々来訪者らしいんだが、記憶はないわ、爆弾は積んでるわ、 当初は洗脳がおかしかったらしくて「不正データが云々」と叫びまくって女の子に嫌われるわ散々よ。 おマイラの上司どうよ? なんか噂ではアリサた・・・もといデュエル様のトコに配属されたら、 記憶弄るついでに男女問わず性のレッスンをデュエル様直々に受けれるとか、 無機質かつ残忍クールと評判の元第二世代からの成り上がり、 アフター5のアビスた・・・アビス様は実は萌え萌えなたるっこだとか聞くが、実際どうよ?
522 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 13:20:19.40 ID:iJa7VzHE
弱いっていってもなぁ。 来訪者かどうかわからん糞怪しい奴らを片っ端から調査してこいといわれて、 よーわからんから69って奴に喧嘩売ってみたんだよ。 齧ってたスルメ奪ってな。 ・・・滅茶苦茶泣かれたOrz 思いっきり蹴られて全治2ヶ月。気をつけろ。NPCでも強い奴いるぞ。
523 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 16:29:30.55 ID:xUgYI7/D
俺…フェイトになれたらクピピちゃんの記憶をいじって結婚するんだ。
524 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 16:34:56.77 ID:le/N/rEj
死亡フラグだかなんだか分からんセリフですねw
525 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 17:33:41.98 ID:FxLFLZcs
Raou狩に行った俺だが あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 『俺は奴に攻撃を仕掛けたと思っていたらいつの間にかHPに帰還してた』 催眠術だとか超スピードだとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
>>410 戦闘シーンわくわくします!このピンチなのにこの余裕…さすがイケメン!(ぇ
>>423 一人ぽけぽけしてるフルさん可愛いすぎます(*´д`*)
>>460 サンドリア組にお風呂ネタは欠かせないと思ってまいりましたw
>>465 クピピが相変わらずで素敵です(*´д`*)スルメ山のロランベリー…こ、怖そうですネ
>>471 常に蹴られてるカーディアンかわいそすw
>>479 精神世界の出来事が怪しすぎて気になります!聖徳太子は凄いですよね…
>>487 前回のあうとろーっぷりにうけましたw次回最終回という事でわくわくです。
>>511 悲しいお話だけど、こういうの好きです(ノд`)天国でもお幸せに…
>>520 お爺さんの怪しさにどんどん磨き掛かってますね!
そういえば、前回のバスでのインターローグを少々拝借させて頂いてもよろしいでしょうか?
軽く目撃だけみたいな感じになりますが…(´・ω・`)
あれからどのぐらい走っていたんだろう…同じような風景が続く中を滅茶苦茶に走ってきたもので。 気づいたら私は自分の居場所が全くわからないでいた。 水溜りがある…さっきこんなものなかったよね…ハァ。 忘れていた疲れが再び押し寄せてきたので、私は思わずその場に座り込んだ。 水溜りからカニが顔を出してこちらの様子をうかがっている。ちょっと可愛いな。 おいでおいでと手招きをしてみる―――あ、来た来た…ふふ、可愛いやつめ〜♪ それにしても…あぁ、私のあほぉ〜!こんなとこで迷ったら帰れないじゃないか…! いつもそうだ。終わってから後悔してばっかりorz やれやれ…と頭を振りながらカニの甲羅をなでてみる。 「ねぇ、かにさんは出口わかる?」 「・・・・・・?」 不思議そうな目で私をみつめている。う〜ん、言葉が通じるわけないかぁ。 精霊魔法は打てても、デジョンやエスケプはまだ使い方が解らない。 そもそも、デジョン使って変なところに行っちゃったら怖いしなぁ…。 あ〜、こんなとこに誰かいてくれたら… 「あ!」 何となく振り返った視線の先に人が居た!しかも目が合った。 少し距離があるが、その大きさや風貌から"人"であるとわかる―――ガルカ族だ。 私はすかさず立ち上がり、その人物に走り寄る。
「あのっ!!」 「…なんじゃい?」 つるはしを担ぎ上げ、大きな身体を揺らせながらそのガルカは振り返った。 途端、私はちょっとびくっとする。 ほりの深い顔…険しい表情…フサフサとした髭?…俗にいう"ハゲガルカ"だ。 じっ、実際にみると、凄く怖い顔してるなぁ…(←失礼) ガルカはじっと見つめる私に不審な表情を浮かべたまま、口を開く。 「ほれチビ、何のようじゃ?」 「あ、あの、ちょっと迷子になってしまったんですけど…出口教えて頂けませんか?」 「…ふむ」 相変わらず不審なものを見る目で私を見つめている。 そりゃそうだ、明らかに高Lvの冒険者がこんなところで迷うなんて…ね。 暫く私を見つめていたガルカは顎鬚をガシガシと揺すると、クルッと踵を返した。 「…リバーが世話になったみたいじゃけんのう。案内してやろう」 「リバー?」 ふと隣を見ると、先程のカニが私の隣にぴったりとくっつき、じっとこちらを見ていた。 たぶん、リバーとはこのカニの事なのであろう。二人は友達なのかな? 等と思いつつ、私はもう一度リバーの頭を撫でると、彼の後について走り出した。
>526 余裕でだいじょぶです(´∀`)ノ 話に取り込みやすい部分だけあった事にして、他はスルーとかもアリだと思うので、好きに使っちゃってくださいませ(´∀`)b
本日は以上です。 オルデール鍾乳洞ダイエットやズヴァール城勤務ダイエット(?) があるのですね…健康的じゃなさそうですが(゚Д゚;)
割り込み失礼しました(つд`;)
>>529 即レスありがとうございますヽ(´▽`)/
お言葉に甘えて、ちょこっと拝借させて頂きます!
533 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 19:31:14.69 ID:FxLFLZcs
ガルカの喋りが恐いDeath! カニさんがとっても可愛いDeath!!
534 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 19:43:20.97 ID:Z5ev0+gu
ていうかティアラさんのかわいさに嫉妬Death!!
535 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/06/01(木) 20:35:21.13 ID:khNOrVYn
こんばんは、F4のレグナスですww
>>411-412 うはwwwwおkkwwwwww
>ルーファス組
同じ場面をそれぞれ違う視点で展開されていく…
それぞれ考えている事が違ったりして、超おもしれぇ!
>>465 クピピかわいよクピピ
>>479 俺が精神世界へ入ったらF4がうじゃうじゃと…アレ!実際のヴァナと変わんないww
>>511 タルモ萌え…じゃなくて、テラセツナス;;
初めてフェイトの人が任務を全うした話だww
536 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 20:37:01.48 ID:FxLFLZcs
ところでここで俺の妄想ぶちまけてええの?
"毒薬を飲んでスリプルを回避する。" FF11をプレイしているユーザーにとってはディスプレイを通して当たり前に行われていた行為だが、 実際にその行為を目の当たりにすると、なんだか彼女が気の毒になった。なんていうか、必死だなと。 勝利への方程式、まさに肉を切らせて骨を断つと言ったところだろうけど。 俺に向かってくる黒い閃光は、勝利を確信し恍惚とした目でまっすぐ俺を見つめていた。 不自然に怯える俺の表情を見つめながら。 「さっきからさ、なんで俺が詠唱する魔法の名称と詠唱時間を叫んだと思う?」 流石にもう俺は顔が緩んでいくのを抑えることができなかった。ああ、ここはいい位置だ。 俺の表情と言葉によって、流石に策に気づいただろう彼女は焦ったようにハッとした。 詠唱が完了し、渾身の魔力をぶつける!しかし彼女に向けてではない。彼女の真横にある小高い岩山に向けて、だ。 するとその衝撃によってすぐに岩山は崩れ、彼女目掛けて大量の岩屑が雪崩れていった! ゴゴゴゴゥゥウウウンとものすごい爆音と共に彼女は岩の波に押し潰されていく。あれは痛そうだな。 「うぐあっ!」 突然天より転がり落ちてきた雪崩の下敷きになり、彼女は何が起こったのか理解できないと言った具合に頭を抱えている。 「今俺が唱えたのはサンダーIVじゃない。詠唱時間3秒のストンガだ。誤認しただろ?」 俺はにやにやしながら血と砂で汚れた彼女の顔を見つめ、嫌味たっぷりに言い放った。
この世界は目に見える形ではログはでない。相手が何を詠唱したかを判別するのは己の感覚のみだ。 同じ黒魔道士であるならすぐにこの嘘がバレただろう。だが彼女は黒魔道士ではない。 「ストンガはね。」 俺は足音を殺して移動を開始した。彼女は岩に押しつぶされて身動きが取れないでいる。 「大地の表面部分を切り離して、持ち上げる魔法なんだ。」 雪崩により、辺り一帯は視界を遮るほどの土埃が舞っていた。立ち位置を間違えていたら俺まで巻き込まれていただろう。 「その特性を利用してトラップを作ったんだよ。丁度ジェンガが崩れるかの如く、重心と重力を利用したトラップをね。 この場所に、この位置に誘い込んだのはこの罠を発動させる為だ。俺が初日に一晩で作った。」 お前の行動1つ1つが全て想定の範囲内だ。そしてこの雪崩による土埃でお前は俺の位置を正確には把握できまい。 だが俺は広域スキャンでお前の位置を把握する事ができる。 お前は身動きがとれず、視界も最悪。さぞかし自分の状況に絶望していることだろう。 突然彼女は悪あがきをやめ、急に大人しくなった。 「…あなたには驚かされるわ。この世界に来て2日とは思えない。 正直、これだけは使いたくなかった。自分の精神が獣に侵食させてしまう気がして…。」 彼女は冷静さを取り戻した…と言うよりは覚悟を決めたように呟いた。
ブワァァァァッ!! 刹那、強烈な風が舞い上がり、瞬く間に宙を漂っていた土埃と彼女を縛っていた岩屑をぶっ飛ばしていく! あまりに強い風だった為、俺は目を開けている事ができない。 風が止み、気が付くと彼女の姿はなかった。恐らく近くの岩場に身を潜めたのだろうが… なにが起こったんだ。強力なエアロ系の黒魔法か?それとも短剣ウェポンスキルのサイクロン? い、いや…これは… 「敵の技…ジェットストリーム、か。」 返事はないが、そういうことなのだろう。忍者とばかり思っていたが、まさか青魔道士だったとは。 しかもこれ程の威圧と威力、ただの青魔法とは思えない。アジュールローで強化されたものだと推測できる。 まずいな、この状況は。戦闘内容は青魔法と黒魔法の激しい応酬へと展開していく可能性がある。 俺が最も危惧していた展開の1つだ。そうなってしまえば、当然こちらも無傷では済まないだろう。 俺の、正確にはレグナスの綺麗な肌には傷ひとつ付けたくない。それ以上に痛いのは嫌だ。 本来ならば裏の裏をかいた時点で俺の勝ち…ノーダメージで勝てるはずだった。なのにこいつは…! ソロムグ原野を吹き荒れる砂塵は、いつの間にか止んでいた。
540 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/06/01(木) 20:47:21.05 ID:khNOrVYn
以上です。
>>536 カモーン!俺も妄想をぶちまけてるだけですw
541 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 20:50:01.41 ID:FxLFLZcs
>>540 緊迫した戦闘中にスマンセン
ブワァァァァッ!!
これ、
ミリアリアポースレ見てる影響でかザザーグ思い出してめっさ茶吹いた
恥ずかしいなぁおい
543 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 20:58:43.09 ID:FxLFLZcs
恥ずかしいのなら服を着ればいいじゃない
544 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/06/01(木) 21:00:13.65 ID:khNOrVYn
545 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 21:01:49.34 ID:FxLFLZcs
ビシージ中の一こま ラミア(うふ、かわいーお嬢ちゃんがいるわ) ミリ「ここは通さないよ!ボクの刀にかかって あの世にいきなよ!」 ラミア(ボ、ボクっ娘!?ますます萌える!うりゃー) ラミアは脱衣のダンスの構え! ミリ「にゃーっ!?」 873 :既にその名前は使われています :2006/05/10(水) 16:44:50.23 ID:Z+WcGteY ザザーグ「ぶわー!」 ビリビリビリィ! これ元ねた><
546 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 21:03:04.21 ID:FxLFLZcs
派生ネタ ラズファード「さぁ、すなのに陛下の前で服を脱ぐのですっ!」 ミリ 「なっ!?」 ミリ 「・・・・・・。」 教皇 「・・・・・・。」 ラズファード「あなたが脱がないというのなら、私が脱ぎますっ!」 教皇「キタ―――(゚∀゚)―――!!!」 ザザーグ「ぶわー!!!」 ビリビリビリィ! ゲッショー「…………ゴクリ。」
547 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 21:07:35.12 ID:FxLFLZcs
ザザーグ「くっ・・くやしいっ・・・!でも・・・!」 ザザーグ「脱衣するぶあああああああああああああああああああああ」 ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ ライファル「見事!」 こんなのもあった(XD)rz
テラバルスww そうすると敵が使ったのは実は脱衣のダンスで、レグナスの服は…ちょww
549 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 21:18:23.70 ID:FxLFLZcs
あーそのてんかいありだよ! 服が脱げてる感じなかったけど 自分の服が勝手に脱げてるのなんてそうそうわかんないもんね^^v
ぶわーーーーーー!!!(黒いバイソン{胴}を筋肉でビリビリに破きながら) ティアラたそが知らないおぢさんに付いて行ってさらわれる!たれかー! 死んだ語られない来訪者の物語キタ!悲しスグル! ナルシストヒュムに青魔の刺客キタ!しかも脱衣フラグが立ちかけてr…… ……というわけで、投下しますw
「………あれ?」 突然風景が変わり、思わず間抜けな声を出してしまった。場所は知っているが。何故ココになったのかが解らない。 真っ白だった空には真っ赤な満月が浮かび、足元には……やはり獣人軍の紋章の代わりに、巨大な金色の眼玉。 月が、真上に来た。私の立っている場所…金の眼の、真上に。 ―――キィィィイイイイイイイイィィィィィィィィィ……… 耳鳴りのような音と共に、紅月が紅い光を周囲へ放ち始め、足元からは外周に沿って金色の光が上へと伸びて行く。 「な…何?何?」 例の如く下半身は感覚が無い。上半身を動かしても動かないので、魔法か何かで固定されているのかもしれない。 ―――イィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ……… 月の紅い光が空を真っ赤に染め、金色の光が月へと届く。耳鳴りは常に鳴っていて、そろそろ気にならなくなってきた。 眼の外周から少しづつ、金の光が径を狭め始めた。心なしか月も大きくなっているような……… ……ん?ちょッ!まて!ぉまッ!月大きくなってるんじゃ無くコッチに近付いて来てるじゃん!!!押し潰されるッ!! 金の光が径を狭めていくにつれ、視界に映る月が飛躍的に大きくなって……ん?月?コレ本当に月か?
ふと沸いた疑問が、焦りや恐怖、不安を放置して私を思考させる。 目の前にある月。月にしては模様が無いし、隕石の類とも見えない。イメージで言うなら、猫の眼に似ている気が… …そう、猫の目。ルビーみたいな色してるけど、アレは眼だ。うぅん、知らないけどきっとそう。 足元の金の眼は右目と、迫り来る紅い眼は左目と同じだ。記憶が飛んだ時、きっと彼等が何かしたのだろう。 そう思った瞬間、現状に対する不安や恐怖がスッと消えたような、身体が軽くなったような気がした。 私の口元には、にやけた笑みが浮かんでいた。 眼前へと迫ってくる月、もとい紅き眼は、空を覆い隠して尚も近付いて来る。 既に、金の光は一筋の光の線となり、上に立つ私を貫通し、紅い月へと刺さっている。 不安は、無い。もし私がここで押し潰されて死んでも、私は何事も無く蘇る。そんな気がする。 押し潰されてスプラッタになった自身を想像し、自嘲気味にククと笑う。我ながら趣味が悪い…… 何も持っていないが、なにやら持てるような気がしてきた。 ――私は 剣を 持っている。 そう思考すると右手に手ごたえを感じた。見れば真っ黒な柄に、ルビーのような刀身を持つ日本刀が握られている。 …なんで剣なのに日本刀?ふと疑問に思ったが、まぁ良いだろう。一瞬イメージしたし。
普通よりも長い刀を紅い眼に向かってゆっくりと、真直ぐにかざす。 長物にも関わらず重さを感じず、軽く動かせるのが妙に心地いい。 音も無く迫る巨大な紅い眼は、もう視界の上を全て覆い隠した。そろそろ私と…この刀へと接触するだろう…。 ――――ズシュ…ズ…ズズズズズ……… 紅い眼がゆっくりと同色の刀身へと刺さり、その刃を黒目の部分へと呑み込んで行く。 刀身が刺さるにつれ、左目の周囲がだんだんと熱を感じていく。 何気なく左手をソコへと触れると、ぬたり と粘り気のある生暖かい液体に触れた。 …………! 眼前に持ってきた左手には、真っ赤な血が付着していた。 しかし、それより驚いたのは、左手が真っ白になっていた。白い腕に着く血の赤が映え、よく解らない高揚感を感じる。 意識せず私は、その血塗られた左手を口元へと運び、舐めた。 ……………苦…。 なんだこの苦味は。猛毒薬よりも苦い。しかし毒にはない甘味があるな。 私…はこの味を知っている…この味は…………
「う゛ぅ゛……」 頭が重い…。身体全体が重い…。瞼すら開けるのに手間取りそうだ……。 背中から感じる感触は柔らかい…どうやら寝ていたようだ……。 ゆっくり、瞼を開けると、見慣れた天井がそこにある。 音が遠いのだが、たまに煩わしいと感じる水のせせらぎも聞こえてくる。あぁ、自室か…。 しばらく朦朧とした頭のまま、水音を聞いていたが、ふと右手に違和感を覚え、ソレを視界へと運ぶ。 真っ黒い柄に、ルビーから削り出したような刀身の片手刀が右手に握られていた。 ……あれ?わたしは忍者じゃ無いのに片手刀なんて持ってたっけ? そんな疑問を抱きながら、しばらく美しい輝きを放つ刀身をじっくりと、ぼんやり眺めていた。 眺めていると…持っていると落ち着くが、何か小さな違和感を感じる。 …いや、何か聴こえる……声?……女の声……2種類……2人……何を言っているんだ…? 2人の女が放つ声を、その意味を理解した瞬間、一気に頭が覚醒した。 「おいィ!!!!キィお前ウチのアジルに何変な事教えてやがりますがゴルァ!!!!」 「きゃあっ!!」「うおぁッwwwバレタwwww」 突然の罵声と、その行為ゆえに、色々な意味で3人全員が驚きと言い表せない何かを胸に抱く羽目になってしまった。 キィ…もとい躯が、アジルを、めくるめく官能の世界へと引き込もうとしている所だった。
異常で…以上です。毎回変換おかしい… orz 前もって言っておきますね。一部武器表現は誤りではありません。 一部わっふる表現は明文化され(でき)ません。 カンタレラ(モドキ)で毒死しませんでした。サンには服毒自殺、無理そうです。
556 :
既にその名前は使われています :2006/06/01(木) 22:03:16.40 ID:FxLFLZcs
芽が出てきたり刀もって帰ったり18金な世界に移行しそうになったり実に良い展開
アリア女史の一党は、見たところ指揮系統のはっきりしない仲良しグループの集団だ。 誰か一人のやる気を削げばいい。全員それに引きずられて行動が鈍くなる。 素人に言うことを聞かせる手段として、フェイト時代にはよく使った手だ。 やれやれ。 これじゃ、俺が憎まれ役になった意味が半減だよ。 俺は苦笑しながら、シャールカーンに手を差し伸べ、ぐいっと引っ張り上げた。 「すまん」 彼は耳まで真っ赤にしながら、一応、堂々と胸を張った。 おほん、と仕切りなおす。 「王国騎士シャールカーンです。アリア女史をお迎えに参上いたしました」 「私は教会から派遣された査問官シーベルです。おひさしぶり、学会以来ですね」 はぁ・・・、と事情が飲み込めずに困惑するタルタルたち。 アリアだけは、シーベルにだけは会いたくなかったと言わんばかりに渋い顔だった。 元々可憐な顔立ちゆえ、その表情も愛らしい・・・のだが。 先程タルタルを抱きすくめて興奮していた彼女を見ている自分としては、どうにも・・・だが。 「サンドリアには、許可を取っていたと思ったけど?」 「はい、それは存じております」 シャールカーンが大仰に頷いた。 「ハルヴァー宰相のご命令です。貴女を、本国へお連れいたします」
「そんなのダメ!」 猫耳フードをかぶったタルタルがわめいた。 「アリアちゃんは星の神子様にご報告しに行くんだから!」 「そうよ! あたしたちはウィンダスに帰るの!」 すまない。猫耳フードのどちらが金切り声を出したのか、俺には判別不能だ。 しかし、今のはマズい。 事情を知らない(そしてあえて前置いて説明していない)とはいえ、マズすぎる。 ウィンダスに魔道技術で劣るサンドリアは、女史の持つ貴重な知識を渡したくないのだ。 タルタルは頭脳戦こそ得意な種族だったと記憶していたが・・・。 査問官が、静かにアリアを見つめ、タルタルたちの言葉の真意を確認した。 「今の発言は、サンドリアを捨てウィンダスへ出奔した、と受け取ってよろしいのですか?」 ガシャリ、と背後の従騎士たちが腰の剣に手をかける気配がした。 “アリア女史はサンドリアを裏切った” つまり、そういうことだ。 「アリア女史、お願いします。サンドリアへ、私たちと帰還していただけませんか?」 シャールカーンが従騎士たちを手で制し、再び尋ねた。 「星の神子様にお会いしてからでは、駄目ね・・・?」 アリアの問いに、シャールカーンが否定の意味で首を振った。
しばしの逡巡ののち、アリアは答えた。 「・・・わかりました。もとより、私はサンドリアを捨てた覚えはありません。 この子達は、私が雇った冒険者たちです。ウィンダスに帰るのは、この子たちだけです」 「アリアちゃん!?」 アリアはタルタルたちにペロッと小さく舌を出した。 「ごめんね。星の神子様にはユリフィナちゃんが、お願いね」 シャールカーンはホッとした表情を浮かべた。 アリア女史は逮捕されるわけではない。 知識の国外流出を止めるだけで、今後は国の予算をつけて研究を続けられる。 ここで抵抗されて実力行使という事態は避けたい、というのが彼の本音だった。 「ありがとうございます。ただの冒険者ならば、無論その自由は保障されて然るべきです」 「だったら、あたしたちもサンドリアに行く!」 誰かテレポメア等を唱えでもすれば、抜き打ちで声帯を斬り飛ばすつもりでいたが、杞憂で済んだようだ。 相変わらず嫌な気配は消えないが、ひとまず、これで帰ることになる。 俺はこのあと魔法の砥石を入手しなければならない。友は職務中ゆえ、一人で行くしかないが・・・。 魔方陣はその効力を失い、次元を歪ませたことで発生していた空間の亀裂も、かすかに輝きを残すだけ。 空中に漂う魔力の痕跡が、ゆっくりとゆらぎながら小さくなり消えていこうとしている。 ―――その時。光の収束が、ぐっ、と押しとどめられた。 黒々とした長い爪が、指が、亀裂の内部から現れ、それを押し広げようと力をこめた。
アリアやタルタルたちは、ユリフィナが倒れていた魔法陣の上に立ちっぱなしだった。 その頭上に発現していた空間の亀裂を力ずくで広げ、危険な存在が抜け出てこようとしている。 「そこから離れろ!」 俺は自分の怯えを払うように腹の底から叫び、長剣を抜いた。 恐怖を伴う記憶が脳裏に浮かぶ。“赤い鎧”がなぜ好き勝手に次元干渉をしない、できないのか、その理由を。 鼓動が恐怖で早鐘を打つ。まさか、まさか、まさか。ヤツの同族が、ここに現れたのか!? かつて俺とチャリオットが全力で挑み、倒すことも出来ず、この世界から叩き出す事しか出来なかった―――。 魔法陣の呪文列が光を取り戻し、再び脈動を始めた。 「腕輪の魔力は無くなったのに!?」 アリアがユリフィナを抱きかかえ、シャールカーンの背後に駆けた。 「総員、抜剣! 構え!」 シャールカーンの檄が飛ぶ。 「外部からの、強制発動!?」 査問官が驚きの声を漏らした。 暖炉の薪が無くなり火が消えかかっても、暖炉自体が消滅したわけではない。 新たに燃料をくべてやれば、再び火は灯る。 腕輪が薪、暖炉がオルデール鍾乳洞全体に施された魔方陣。新たな燃料は―――。 査問官が悲鳴交じりに声を上げた。 「魔方陣の発動を封じていた、この世ならざる呪物があったはずです! おそらく刺さっていた剣!」 「もう、ないのよ」 アリアが真っ青な顔で応えた。「テティスさんと一緒に、元の世界へ・・・」
561 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/06/02(金) 00:10:10.05 ID:F1U7i+zO
今夜の投下は以上です。
皆様投下おつかれさまです。 なんか出てきたー!? いよいよ次回から地獄の一丁目が…(((( ;゚Д゚))) 爺さんはやっぱり…そうなのか…白い御飯に流した涙を返せ・゚・(ノД`)・゚・ サンさんはいつもどうしてえろいんだぜ? 油断ならない躰ですねほんとにw 脱衣ダンスって青魔法でラーニングできるんでしょうか…できるなら是非、イケメンの裸をww 禿げガルさんとカニとのほのぼの出会い…これがあの修羅場インターローグとどう繋がるのか楽しみです。 キリの良いところまで投下しまーす。
「世界中を繋ぐネットワークを持ち、貿易で築き上げた強大な発言力ゆえ、 かのジュノ大公国ですらそれを掌握できない組織………」 「心当たりがあるようですな」 お爺さんの眼光が鋭くなる。 天晶堂。クォン・ミンダルシア両大陸とそこにまつわる辺境の地において、 アルタナ連合四国が陽の当たる表を纏めているとすれば、裏側、闇の世界を牛耳る組織。 となりのヒロさんの表情を伺うと、真っ青を通り越して真っ白になっていた。 「…どこが小さな組織だよ、世界中が敵に回ったようなものじゃないか」 確かに、天晶堂の関係者は世界中に数多く、支部も各地に存在する。 構成員の多くが既に奴らとすり替わって、世界中の冒険者…いや、来訪者の動向に目を光らせているのだろう。 「サンドリアの天晶堂と言うと、ブルゲール商会ですか…」 密輸クエは一回しかやらなかったけどね! 少なくとも、他所の天晶堂支部よりは本部との繋がりは薄いはず。 お爺さんもそれに頷いてみせた。片腕を失っているという最初の赤鎧は、 サンドの天晶堂に頼るよりも、陸路かバストゥーク経由でジュノに帰っているだろう、と。
「天晶堂だろうとブルゲール商会だろうと、相手に取って不足はないさ。 でもな、そんな事に関係ない奴らを巻き込めるか」 お爺さんとルーファスさんの思いは、全く持って別方向に乖離しているようだった。 私たちをできる限り危険から遠ざけたい、そんな意思がありありと見て取れる声色。 でもね、正直もう遅い。私はそう思う。 「関係なくはないですよ…」 「たまたま居合わせただけさ。ここに呼んだのも情報交換がしたかったからだ。 第一、危険ばっかりで何のメリットもない事を手伝わせられるか」 うう、取りつく島もない。そこへヒロさんが猛烈な反論をする。 「あんたがおれを助けたとき、あんたは危険がないと判断したからあの赤鎧と戦ったのか。 矢面に立ったのかよ。あんたが人を手助けする時、メリットがあるからやるのかよ? ないならやらないのかよ!?」 こういうキャラだったのか…いいたい事はごもっとも、私だって激しく同意。 しかしもっと柔らかい言い方があるでしょう。 「ヒロさん、言い過ぎです。…でも、ルーファスさんも、そんな哀しい事を言わないでください。 みんなルーファスさんの力になりたいんです」 あの時、考えなしにあの場へ出て行った私。ルーファスさんがいなかったら、多分やられてた。 いや、あの場で誰が欠けていても、こうして今、ここにまた3人で集まれる事はなかったんじゃないだろうか?
「僕」の思惑はこの場ではとりあえず置いといて、私はこの世界で幸運にも出会えた二人の同胞の、 力になれるようでありたい。それが赤魔道士ってもんでしょう? 拳を震わせながらうつむくルーファスさんにラディールさんが歩み寄り、 両手でその拳を、そっと包み込んだ。二人の視線が合う。 …結局最後に心を溶かすのは、愛しいパートナーさんのお役目ですか。 ルーファスさんは、そんなラディールさんに、微かに笑ってみせた。 そうしてから、私たち一人一人の顔を見た。 「元の世界に帰るのがお前らの目的だろう? 帰る方法を見つけることは、 天晶堂に喧嘩売りながらこなせるほど、簡単な事じゃないはずだ。 だがもし、それでも俺を手伝ってくれる気があるのなら…」 テーブルに手を着き、半ば土下座でもするように頭を垂れる。ああもう、皆まで言わない。 「…頼む。妹を、エルリッドを取り返したい。在るべきものを、在るべき場所に戻したい」 隣でヒロさんが口を開く。なんとなく、笑んでいる気配。 「素直にそう言えばいいんだよ」 「最初からそのつもりでしたから、どうか頭を上げてください」 ルーファスさんは頭を上げてくれなかった。うーん、言ったはいいけど後悔してるのか? どのみち赤鎧を一人やっちゃったんですから、今更悩んでる場合でもないだろうに…。
ようやく頭を上げたルーファスさんの顔は、決意を固めた男の顔だった。 皆の顔を見回してから、早速これからの事について指示を出す。 そういえばフルさんがドラギーユ城に用事があるとか言ってたな…と思いながら、 私はマルトさんに代わってハルヴァー宰相への伝言を預かり、ヒロさんはお風呂の掃除。 不満そうだったが、使用人二人じゃ回らない、というルーファスさんの言葉にしぶしぶ従っていた。 というか、この屋敷をマジで二人で取り仕切ってたことのほうが、私には驚きだった。 やっぱりマルトさんは大きいお友達の夢の結晶・猫耳型メイドロボだ。 ううん、知らないけど多分そう。 「では、私めは再びかの組織に探りを入れてくるといたしましょう」 「じゃ、私はマルトと洗物でもしようかしら」 私の下らない脳内妄想はさておき、みんなが各々の役目を果たしに席を立つ。 それじゃ、私も張り切っていこう。 そういえば盾の事聞きそびれたな…まあいいか。 ルーファスさんの両手にくっついているあれがGM武器の親ってことは、 武器ですらない盾になった今、あれよりも危険な現象を引き起こすことはできないだろう。 「では、いってきまーす」 玄関前でプロシェルIVにストンスキン、それからブリンクを纏い、 私は鞄を片手に、北サンドリアの居住区出口を目指して歩き出した。
水底のような世界にたゆたいながら、考えてみた。 もしかしなくても、あの爺さんの前で盾の話をしなかったのは正解かも知れませんね。 話を聞くに、あの爺さんが奴らの一員だったのはもう随分と昔のこと。 向こうとこの世界の時間の流れが必ずしも一致していないのは確かですが、 それにしたって…ちょっと向こうの事に対して造詣が深すぎる。僕も人の事は言えませんけど。 まあ、しばらく様子見ということで僕は僕の仕事をしますか。 水面へと意識を浮上させると、居住区のゲートを抜けて、ドラギーユ城が見えてきた所だった。 「というわけで、そろそろ交代してもらえますか」 ――どんなわけですか。…と、思ったんですけど、 フルさんが指示くれたらその通りに私がやる、じゃダメなんですか? 「ダメです」 「物語」が「現実」になったことにワクワクできる時間はもうとっくに終わっています。 戦略上キミの存在は、来訪者の人以外にはできる限り伏せながら活動したい。 あの爺さんに見られてしまったのが後々響かなきゃいいのですが…。 ――じゃあせめて、私にもフルさんがやってる事が分かるようにして下さいよ。 いつもいつも気が付いたら事が済んでて、何が何やら…。 「うーん…前向きに善処しますw」 ――…"暁光の聖いk" 慌てて肉体へと意識を接続し、バスリプルの詠唱を止めさせた。彼女も段々何されてるか分かってきてますね…。 近いうちに、落ち着いた時間を取って話し合わないと駄目かなこれは?
その辺の街路樹によりかかって、きっちりとスリプルIIで彼女の意識を眠らせる。 そんな感じで、再びドラギーユ城へ。何だか慌ただしい雰囲気…かも? 王立騎士団が軍用チョコボなんか引っ張り出して、一体どこに攻め込むのやら。 すれ違うついでに、その一団を横目でなんとなく観察してみる。 通常の6人編成に加え、教会から派遣されたと思しき査問官と…えー、冒険者? いや、ただのミッションを請けて騎士団に同行する冒険者とは思われない。 纏う装備には不釣り合いな程に隙のない物腰と、最近とみに覚えのある冷たい気配。 どこのどちら様が何の用事でおいでになりやがったのか…まったく、嫌になる。 何かのミッションならハルヴァー様がご存じですかね。ついでにそれとなく聞いてみますか。 背後に騎士団を見送り、重厚な門を抜ける。 今度こそ、定位置にハルヴァー様がいらっしゃった。 「近衛騎士フルキフェル、只今帰還致しました」 「上級近衛騎士、だろうが。クリルラから報告は受けた、が…あれで全てではあるまい?」 わかってらっしゃる。さすが宰相。 「恐れ入ります。宰相様のお耳に直接お入れしたい事も多かったもので。 まずは…ファーロス・S・シュヴィヤール様が王都に戻られました。 "ルーファスはセルビナへ向かわなかった"との伝言を承っております」 「…ほう」
そういえばルーファス殿は「目が覚めた」初日にハルヴァー様とやりあってるんでしたっけ。 もしかして、とっくに同一人物だってのにも気付いてたんですかねぇ…。 何しろ自国の公認冒険者の顔と名前は殆ど把握しておられる方だから、有り得るだろう。 いや、ここは「本人がそう告白しました」ってのが大事なのか。 「それと…例のテロ集団の幹部と遭遇、これを撃破した来訪者と接触を取りました。 ミスラの赤魔道士、ヒロ・カラミヤ。冒険者としての登録名はPokotasoとなっているはずです」 あとはまあ、色々と現状報告。本拠地が割れたので準備出来次第裏を取りにいきますとか。 爺さんの事は少し悩んだけれど、名前と今の立場は出さず、 「テロ集団の元関係者で、情報提供者」程度に表現を濁しておいた。 ルーファス殿には申し訳ないけれど、全てを信じることはまだできませんからね。 腹芸はそれほど得意な質じゃない…こんな時、裏表のない彼女の存在がある意味有り難い。 変なところで爆弾発言をしないように、僕がちゃんと見ておいてあげればいいですから。 僕からの一通りの報告を終えて、ハルヴァー様は得心したように頷いてみせた。 知る限りハルヴァー様は来訪者が現れ始めた当初から、城に駆け込み相談に来た彼らと接し続け、 今ではかなり奴らの世界干渉に耐性ができている。盗聴も完全な形ではままなるまい。 だからこそ、僕もこうして色々と報告する事ができるわけですが。 「――そうだな、ではこちらからも伝言を頼もう。都合が付き次第、息災振りを見せて欲しい、と。 それともう一つ、ルーファスに…"指名手配は取り消された、お前は自由だ。"とでも」 「確かに、承りました。…それとハルヴァー様、ひとつふたつ、お聞きしたい事が」
あぶないあぶない、忘れる所でした。 「先程王立騎士団と共に出立していった冒険者…一体、何者です?」 やたらラーアル団長に似てましたけど。 僕のそんな何気ない素振りで繰り出してみた質問に、ハルヴァー様はふむ、と逡巡した。 「…彼も、来訪者の一人だ。あるミッションのため、王立騎士団に同行させている」 全ては話せません、か。 そもそもフェイトの下っ端の大部分も頭をいじられた来訪者、嘘は言ってない。 「つまり、危険な人物ではない、と」 「うむ。彼の名はリード…詳しい話が聞きたいのなら、紹介しよう」 「…考えさせてください」 「そうか」 元フェイトか現役かは知りませんけど、ハルヴァー様が庇い立てなさるのなら、 何かちゃんとした理由があるのでしょう。 目を見て話し合えば、筋金入りの奴らじゃない限りその真意は分かるもの。 今この場にいない人物の事はひとまず置いておくことにして、 僕はハルヴァー様にこれまでの来訪者に関する報告書の閲覧許可を頂いてから、 ついでに時計を返して貰えるかどうか掛け合うため、神殿騎士団の詰め所に向かった。
ここまでです。
いつでもぽけぽけしてるわけじゃない…と言いたいのですが…うーんw
それでは、わっふるわっふるしながら続きをかくぞー。
といいつつ1時を回ったので力尽きて寝るかも。
>>536 お待ちしておりますw /welcome
ああああそうだヽ(;´Д`)ノ 敬語関係かなり怪しいので、まとめ様復活したら国語辞典引っ張り出して直します;; 他にも誤植とかプロシェルが6になってたりとかかなりアレな間違い多数なんですよね… 日本語が壊れてる所とかも…うう、ほんっとにすみません。
573 :
ユリフィナ_19 ◆/GKRtxSDWQ :2006/06/02(金) 01:45:52.95 ID:aSRrYe9W
皆様投下乙です。 一枚上手のイケメンに、かわいい黒タルさんに、怪しさがどんどん増えていくオスラさんに、 なんだかもはや不気味なおじいちゃんに、体にいいようにつかわれるファルシファーさんに、 そして、アリアちゃん達を使って素敵なお話をかいてくださってるリードさんにわっふるしてばかりです。 スレを読みふけっていたらもうすっかりこんな時間・・・寝ないとw >リードさんへ そのうち外伝で使おうと思ったネタなのですが、 アリアの母はサンドリアのエルヴァーン、父はウィンダスのタルタルです。(半分タルだからタル好き) もしもリードさんのお話で使えそうでしたらこの設定もどうぞ使ってください
575 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 07:19:28.76 ID:Du0WO03B
age
576 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 08:42:00.25 ID:Qvtr0lL6
ズヴァール勤務で体重1/4になったage フラスコや服より重い物が持てません・・・・ 研究の臨床実験もういやだ・・・悲鳴が幻聴になって俺を責めたてる・・・・
577 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 09:00:41.52 ID:WIWc5fY2
>>576 ナナシ様のカウンセリング受けてきたらどうだ?
見違えるようになるそうだぞ。
・・・再洗脳されるだけだという噂もあるがな。
>>576 ん〜?wwwどうしたのかなぁ〜?www
え?幻聴が聞こえるって?wwwおkwww任せてwwwwwwwwww
頭蓋骨にちょっと穴開けたり、脳味噌一部切り取るだけだから…。
そんなに怖がるなよ…ほら、こっち来て…。
579 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 10:23:01.75 ID:WIWc5fY2
まぁナナシ様も最近カウンセリング対象気味だがな。 なんせご相談相手のチャリオット様がいなくなったのが痛い。 バハムート様の悪ふざけ処理は皆ナナシ様が担当するようになったしな。 ナナシ様の性格は現場職向けで、ずっと現場におられたので初期は、 「ナナシ様が管理職????」と皆不思議がったものだが、 チャリオット様無き今は書類処理能力や事務能力は組織でももっとも優れているのではないかと言う噂だ。 すぐ再洗脳しようとしたりと性格はアレだが、現場長いだけに地味に能力に劣る奴らに面倒見いいしな。意外とナナシ様ってこの間チョコもらってたんだぞ? しかし・・・事務職なんてデュエル様やアビス様でもいいような気もするがなぁ。 特にデュエル様って普段なにしてるんだ?あの人も仕事してるよーに見えん。 アビス様は意思もなかった爆弾持ちから、 現場からのたたき上げでアポカリプス持ちまでに昇進されたが、 あの人もタルタルや女の子の団員から人気あるんだよな。 なんかアフター5のアビス様って可愛いよな。 詩人酒場のロランベリー在庫切れといったときの涙目といい、 代わりにプリンをもってきたらものすっごく嬉しそうな顔して、 一旦すねる表情がハァハァ。
580 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 10:36:04.44 ID:WIWc5fY2
・・・とりあえず求人広告にカウンセラー募集出しておきますね。ナナシ様。 カウンセラー募集。白/詩/か/竜 いずれか、あるいはすべて75の方優遇。 給与固定制。応相談。ボーナス、有給休暇有り。勤務時間9時から17時(休憩合計1時間30分)。 サマータイム有り。 通勤は魔法により30分固定。ズヴァール近郊の方歓迎。 生死種族を問わず。アンデッドやデーモン族の貴方でも可能です。 入社特典として普段手に入らない免罪装備やEXレア装備(指定可能。現金○)、 自爆、他爆用の外れない装備支給。デジョン機能つきパール支給。 仕事の出来と昇進次第で特殊能力の付与も。貴方も神の力を得れる! なお、裏切りは死刑です。っと・・・。え?最後のいらない?
581 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 12:25:26.18 ID:Qvtr0lL6
ふふ・・・ふへへへへ・・・・ 俺は天才だぁ・・・天才なんだぁ・・・・ ラミアだって俺は造れるんだぁ・・・! 捕らえた来訪者を連れてこい!!俺は近東なんかより優れてるんだ! ラミアを越えるキメラを造り出してやる!!あっはははははは!!
582 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 12:27:10.56 ID:Du0WO03B
でたー 自称天才ア●バ
583 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 12:29:05.31 ID:Du0WO03B
ミスラミアさんを作ってくれ 天才なら作れるよな!
584 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 12:41:50.76 ID:CtVbuc5R
広島弁のガルカにwktk(´∀`) >537 青魔かっこいいなぁw ありもしない法則性を相手の認識に植えつけて裏をかく〜みたいな戦術はいいですね〜w >555 次は子供お断りのわっふるしーんでよろ(´∀`)ノ >561 展開が読めなくなってきた…(((゚д゚;))) >569 ちょwwwwwwwwwなに名前ばらしてwwwwwwwwwwwwwwwwww つか、なんで登録名まで知ってるのwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww >576 「何故ここに呼ばれたかお分かりですか? 貴方には種族グラ入替の嫌疑がかかっています。 貴方には黙秘したまま切られる未来と、全て歌った上で処罰を受ける未来を選択する権利があります」
ヒント1.力関係 「僕」>「私」 ヒント2.「私」は3スレ250までは読んでた ヒント3.仕事ですから
587 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 13:33:43.02 ID:Qvtr0lL6
くそっ!どいつもこいつも!! もういい!!俺自身を改造して奴らに俺が正しいって事をしてやる!!! ごごごごごごごごごごご…………… ぎゅわぎゅわぎゅわぱしゅーーん! ヒュム♂F2ラミア+2を合成しました。
588 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 15:55:23.97 ID:aSRrYe9W
皆様投下乙です(・ω・)ゞ そして、保守人さんたち乙です。 ナナシからの伝言として『後日また…手術台で逢おう…ウヒ…』とのこと。 よかったですね、ライダーになれる日も近いですね(*´ω`*) ではちらっと投下していきます。
なんとかして数日前の記憶を呼び起こそうと頑張ってみるが、 結果的に思い出せたのは断片的な記憶だけだった…。 それも不鮮明な映像とノイズ音混じりの雑音だらけでなにがなんだか… 本当に自分の記憶なのかどうかがわからないよ。まったく…。 もしかしたら、テレビを点けっ放しにしていて、 寝ぼけた状態で見ていた時の記憶なのかもしれないな。 急に強い光が輝いたと思ったら、目の前が真っ赤に染まって、気付いたら一面真っ白で…。 意味のわからない映像だらけだ。訳が判らない…。 というわけで結局、なぜサンド近辺に居るのかもわからないまま数日経っていた。 この辺のゴブリンは流石に紳士の国に近いこともあってか、 きさくに話しかけてくれる連中が多く、皆フレンドリーにしてくれた。 一緒に釣りや兎狩りなんかをしてくれて、お陰でなんとか自給自足出来る位までに回復した
最近、おかしな出来事があった。オークの姿は見当たらなくなったのだ。 彼らの前衛基地であるゲルスバ野営陣はすぐそこなのに、ここ2,3日一匹も見当たらない。 事情通のゴブ釣り師(38)さんの話によると、 「ある勇敢な少年が、三大獣人の首脳会議を開かせ、そして彼らを説得した。」とのこと。 そして、「彼らはいつの日か帰ってくる。『I'll Be Back!!』」 私はそんな彼に「You Can Fly!」と言葉をかけた。すると彼はそのまま、 「I Can Fly!!!!」と近くの橋の上から川に飛び込んでいってしまいました。 それはそれは、とても素晴しい飛び込みでした。 余談ですが、ロンフォールに流れる川はとても浅いことで有名ですね。 彼がどんな風になったかを考える方がいらっしゃたら、この言葉を授けます。 『下手の考え休むに【タルタル】』とはよく言ったものです。
と、よくわからない解説文になってしまったが、とりあえずそういうわけのようだ。 三大獣人が消えたことはゴブ仲間にとっては朗報だったらしく、 やっと旅が再開できる、高い土地代を払わなくて済むなど往々に喜んでいた。 …ヒトに狙われやすくなったとは考えないのであろうか。 そんなこんなで、ブモ、俺はここで強く生きています。 けど、毎晩寒い思いをしているのはここだけの内緒です。 ゴブリン同士で寄り添って寝るのは正直しょっぱいです。 俺の青春を返しやがれです。本当にしょっぱいです。ありがとうございました。
今回の投下は以上です。話…進んでませんね…(−−; ではまたしばらくROMに戻ります。 皆様わっふるわっふる(・ω・)ノシ
>>578 絶対にいやですwダイブしたゴブリンさんのご冥福をお祈りしていますww
>>587 恐ろしいNMが生まれてしまった・・・
では、もはや自キャラでなくなりましたが投下しますw
白い世界にいた。その世界で私の目の前に立っている女性の、 人工的な印象を受ける深い黒色をしたセミロングの髪の毛がものすごく目立っていた。 多分、薬品かなにかでムリヤリ黒くしたのだろう。 「ユリフィナさん。やっと体を返せました。色々と・・・ごめんなさい。ありがとう。」 見た目は二十歳前後のヒュームのようだが、声が妙に子供っぽいので私はちょっとだけ驚いた。 それにしてもこの人は何で私の名前を知っているのだろう?私はこんな人知らない。 「えーと・・・その、失礼なことを申し上げますと・・・。」 「私のことが分からない?」 図星・・・。私は思わず/shockedのポーズでのけぞってしまう。何この人!?エスパー!? 「・・・はい。」 私は申し訳なくてちょっとだけ俯いて答えた。 「ま、それも仕方ないのかな。」 「??」 仕方ない?どういうことなんだろう?もしかしてあの人は私のファンで、私のことを一方的に知っているとか? もしくは私のストーカーだとか?
ストーカーさん(仮称)はそんなことを私が考えていることも知らずに、笑顔のままつかつかと私の方へと歩いてきた。 「分からないなら分からないでいいのかな・・・多分。」 「多分?」 「うん・・・私もよくわかんないし。」 ????元々混乱している私を余計に混乱させないでほしい。なんなのこの人!? この人は私の何!?ていうかここドコ!?って私いままでなにやってたっけ!? 頭の中がグルグルしている私の目の前までその女性は歩いてくると、しゃがみ込み私の首に手を回した。 びっくりしたけれど、何故だか彼女のしていることを邪魔してはいけない気がした。 「ユリフィナさん。これだけは・・・お願い、これだけはもって行かせてください。」 そう言った彼女の手には細い銀の線で大小の二つの星が形作られている飾りがついた きれいなネックレスがあった。さっきまでどうやら私の首にかかっていたらしい。 このネックレス、何だっけ?・・・そうだ!モーグリさん・・・モグタンが私に、 いや、ユリさんにプレゼントしたものだ。・・・と言うことはこの人はもしかして。 「ユリさん?」 そうだ、なんだかよくわからないけれどこの人はたぶん私の体を乗っ取っていた人だ。 「正解だよ、ユリフィナさん。」 そう言って彼女はニコリと微笑んだ。そしてモグタンが彼女にプレゼントした銀のネックレスを首につけ始める。 「私はもう帰るね。私が帰ったらユリフィナさんがどうなってるかは分からないけれど、 女神の祝福使ったし、死んではいないと思うから。」
さらりととんでもないことを言われ、私は思わず青くなる。そしてなんだか直前まで裂けそうになってたこと、 ユリさんが私の体で死にかけてたこと、他にもおぞましい不気味なシチューをリポケケと飲んだこととか、 オークに犯されそうになったこととか、アリアちゃんには・・・うぅぅぅ・・・ アリアちゃんにはお嫁に行けなくされた事とか、シャールカーンさんの事とか、 モグタンがすごく私のことを考えていて、頼りがいがある事とか、たくさん、たくさん思い出した。 「ユ、ユリフィナさん?そ、そんなにボーッとしないでよ!大丈夫!多分五体満足だから!!」 どうやらボーっとしていたらしい私にユリさんが必死に大丈夫と訴える。でも説得力ゼロ。 なんかバラバラになるとかケルートさん達言ってたし。 「・・・だといいけど。」 はぁ・・・気がついたら全身バキボキで死ぬほど痛いなんてイヤだよ? 「おねえちゃん!なにやってんの!!早く来てよ〜〜!」 リポケケみたいに甲高い子供のような声がユリさんの背中の後ろから聞こえてきた。私達以外にも誰かいるらしい。 「あ、本当にもう行かないと。あの子がまってるから。」 彼女はクルリとターンをすると白い光の中へと駆けていった。
やっと、ユリさんは帰れるんだ。よかったね、ユリさん。 「ユリさーん!!」 私は小さくなっていく彼女の背中に大声呼びかけた。 「なーにー?」 ユリさんが足を止めて私のほうを振り向いた。その際、モグタンのネックレスがきらりと輝く。 「元気でね〜!泣くとモグタンが心配するから〜〜!」 ユリさんが目をまん丸にして耳まで真っ赤になる。そこまでうちのモグタンが気に入ったのかこの人は。 ユリさんの気持ちもよくわかるけどね。あんなに何度も励まし、支えてくれたらどんな人でもクラッときちゃうよ。 ・・・そんなことを考えていたら何故か私も赤くなってきた。 べ、別に私はモグタンがただのエロモーグリじゃなくてよかったと思っただけで・・・ああもう! ユリさんのせいで私もモグタンが妙に気になるじゃない! 「う、うん。ユリフィナさんもね〜!」 真っ赤な顔をしたユリさんがちょっと困りながら、ユリさんみたいに真っ赤になってしまった私に微笑みかけた。 「それじゃあ・・・」 私とユリさんは同時に手を大きく振った。 「また会おうね!」 白い光がどんどん強く強くなっていった。
ぎゃあぎゃあうるさい・・・。誰?騒いでるの。モーグリさん? ぎゃあぎゃあの次はガシャガシャ?今度は何?眠いの・・・私・・・。 そしてどさくさにまぎれて私の胸を服の上から触ってるのは誰? 「シャールカーンも、まもなくここへ来る。それまで待機だ。」 え?シャールカーンさん?聞き覚えがある名前だ。 たしか・・・確かユリさんが・・・ユリさんがベタぼれしてた笑顔が眩しいリザード装備の見習い騎士だったけ。 それがどうしてこんなところに。 「・・・シャールカーンさん? どうして。」 私はまだ重たいまぶたを何とか開いて、疑問を口にしてみた。目の前にはアリアちゃんの顔がある。 どうやら私はアリアちゃんに膝枕をしてもらっていたらしい。 ・・・で、何故その手は私の胸の上で休むことなく動いているのですか?私、すっごく気になるなっ! ちょっと気持ちいいし。 「ああ、シャールカーンが隊長だ。彼のことを覚えているのかな?」 なんだかものすごく冷たい感じのするエルヴァーンさんが私に尋ねる。覚えているといっていいのだろうか? うーん、なんていうか、覚えてると言うよりはユリさんの記憶を知っている、 言うなればユリさんのやってきたことをドラマみたいにどこかで見ていたような感じだ。 まぁ、覚えてるっていっていいのかな。
「・・・はい。」 私はコクッと頷いた。 「だが、ユリフィナという来訪者はシャールカーンよりもリアルへの帰還を選んだ。 彼の想いを切り捨てたのだ。ならば今更、どうこうするものでもないだろう?」 ・・・えーと、もしかして・・・シャールカーンさん来ちゃうの?っていうかさっき『まもなくここへ来る。』 って言ってたよね? えええええぇぇええええぇぇぇぇえええええぇ!!困る!困る!!どうして来るの!?なに!? 私なにもやってないのに、私が悪者にされちゃったりするの?私が彼をふったわけじゃないのに、 きっとシャールカーンさんは私を見てちょっと苦笑い。でもって『お久しぶりです。』とか言っちゃうんだろう。 そして超重い空気になったりして・・・。いやだ!いや過ぎる!私悪くないのに!気まずい空気はいやだ! 正直会いたくないよぉ・・・。こないでぇ・・・。 ていうか何でユリさんが帰るほうを選んでシャールカーンさんをふったことを知っているの? ユリさんが全部自分で考えて決めたことで誰にも言っていないのに。 冷たい感じのするエルヴァーンはそんな私をあまり気にせず淡々と続けた。 この人にとって大切なことは、個人の気持ちなどよりももっとどこか違うところにあるらしい。 目的のためならば平気で人とか斬ってしまいそうな感じがする。
「なにより、シャールカーンはここに職務で来ている。彼の邪魔はしないでもらいたい」 あぁ、この人はなにかを勘違いしてる。『シャールカーンさんと色々あったのは私じゃなくてユリさんです!』 って言葉が喉の奥まででかかったけれど、多分ここにいる人全員、そんなことを言ってもどういう意味か分からないだろう。 ユリさん・・・覚えてろ・・・。私はギュッと下唇をかんでうなだれた。 ていうかアリアちゃんはいつまで私の胸をいじっているつもりなのだろうか?そろそろ怒っていいのかな? 「ちょっと・・・!」 気の短いユファファも何か勘違いしてツリ目をグッとつりあげて冷たい感じのするエルヴァーンさん、 改めクールヴァーンさん(勝手に命名)につかみかかろうと大またでズカズカ歩いていこうとしたその時、 ガッシャーン! 隠し部屋に飛び込んできたシャールカーンさんが、勢い余ってカーディアンを蹴飛ばし、コケた。 ・・・笑っちゃダメだ私、なんだかよくわからないけどシリアスな雰囲気なんだから。 私は下唇をかみ締めているアゴにさらに力をこめた。
以上となります。 これからリードさん達が一体どうなってしまうのかワクワクしながら待っています ちょっとだけフェイト楽しそうだな・・・w
603 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 19:16:15.10 ID:WIWc5fY2
ユリフィナ(体)殿。厄介な来訪者を叩きだし自力生還おめでとうございます。 待遇は保証しますよ? (上司一同そろって体ごと破壊しようとしたことについてはあえて言わない私って最高) 白魔75にして裁縫までできる癒し系のあなたなら皆さんの人気者間違い無し! いまなら豪華空間爆裂機能つきベルトと各種免罪装備、 オートリフレシュその他あなたが望むジョブ特性どれか、 お望みなら種族や性別の変更、アリア女史や不届きな来訪者によって汚された体と記憶をすっかり綺麗にしてさしあげますよ?
【後日談】 「お、紅色頭巾。良い所にやってきた。」 「ああ、キミかw久しぶりに会ったと思えば…… 好い加減、ボクのことを怪傑なんとか丸みたいに呼ぶのは勘弁して欲しいなぁ^^;」 「ふん。別に良いではないか。物覚えの悪い俺が、あんたを覚えてやっているのだ。」 「ま、まあいいか^^;で、良い所ってなんなのさ?w」 「ああ、お前がしきりに俺を誘っていた、団体で修行するって奴な。 俺もやってみようと思うのだ。お前なら俺に指南できるかと思ってな。」 「おおおおーーーーwww遂にキミもその気になってくれたのかwwwww」 「……あのな。その妙な口調を止めてくれんか。なんか気持ちが悪い。」 「ぇーw冒険者はみんなこうだし、キミの口調こそ怒ってるみたいで愛想がないよw まあ、とにかくボクに任せておいてよ^−^ ジョブ構成やメンバー集め、狩り場選びまで、手取り足取り教えてあげるよwww」 「ああ、メンバーならもう集めてあるのだ。ところでお前は何が出来る?」 「何が出来るって……ああ、ジョブのことかな。 ボク、とんずらやトレハン2が欲しいからシフをもっと上げたいと思ってて……」 「シフ……ああ、盗賊をそう呼ぶんだったな。なら丁度良い。 メンバーは、忍者、侍、吟遊詩人に白魔導師。俺が赤魔導師で、そしてお前が盗賊だ。 どうだ?俺はこれでも、ずいぶん勉強したのだ。」
「おおおw種族構成が気になるけど、なかなかの良編成^^ 黒が居ないのが火力不足だけど、ボクがシフで連携を〆れば何とかなりそうだw」 「種族構成?ああ、見れば判るぞ。ほれ、そこにいる連中だ。」 「(゚Д゚lll)……や、ヤグ?」 「ほれ、お前も一緒に酒を飲んだから知ってるだろう。 ギデアスの地下でくすぶっていた忍者に侍だ。 こいつら、せっかく任務が無くなって、晴れて地上に出てこれたのだから、と言うわけで、 あの鳥の親玉について行かずに居残ったらしい。 くすぶっていたとはいえ、無音とか斬鉄とか格好いい異名が付いてるし、心強いぞ。」 「ま、まさかとは思うけど……あのさ、皆さんサポジョブって知ってるかな?^−^;」 「はあ?なんだそりゃ。ああ、あと詩人も鳥の兄さんだから。 もう各国の警戒が解けて、晴れて鳥達もウィンダスの仲間になったのだ。 よろしく頼むぞ。」 「そ、そりゃあもう、ヤグとPT組むなんて前代未聞だし自慢話になるけれど…… まさか、そのヤグってサポ無し忍者とかだったり……ああ、きっとそうだ。 ありえない……それこそ前代未聞……それじゃ忍盾できないじゃん……orz」 「何をごちゃごちゃ言っているのか。ほれ、一緒にやると決まればお前も手伝え。」 「え……これって……?あ、ありえない……まさか、手折りだなんて……」 「だから、何をごちゃごちゃ言っている。この紙を折って『紙兵』を作るのだ。さあ手伝え。」
「あ、あのさ。クリスタル合成で作れば一度に33枚……」 「馬鹿者ッ!!そんな安易な作り方が許されると思っているのか! 料理と同じだ。本当に旨い物を作りたいと思うならば、手間を惜しんではならんのだ。」 「そんな……忍具は料理じゃないんだし、効果は同じ……」 「だからな?これこそが物作りの秘訣なのだ。ほれ見ろ。鳥の兄さん方も頷いている。 いいか。彼らは暗い洞窟の中で、暇を見つけてはせっせと折り紙を続けていたと言うぞ。」 「あのね^^;……もしかして、キミはボクに教わるつもりなんて全然ないんじゃ……」 「ああ、それから白魔導師は丁度いいのが居なくてな。 あの港町の近くにいたゴブリンが参加してくれることになったから。」 「ヤグにゴブって……なんだか、頭がクラクラしてきた。 キミはとここん、この世界を縦歩きするつもりなんだね……」 「だーから、ごちゃごちゃ言わずにさっさと折れ。何枚あっても足りないんだろ?」 「はいはい……後でこっそり合成しちゃおう(ボソ……ん?綺麗な歌声が聞こえる。」 「おお、あれは詩人の兄さんの歌声だな。墓参りをするとか言っていたが。」 「墓?こんな所にヤグの墓?」 「いや、幼い頃にミスラ族に育てられたという珍しい奴でな。 だから、おっさんから離れてウィンダスに残ったのかな。よし、そろそろ呼んでくる。」 「ふーん……あれれ、ヤグ詩人って横笛が得意だったはず……」 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「よう兄さん、墓参りは済んだのか?」 「ああ……待たせて済まないな。」 「いいさ。暇さえあれば折り紙しなきゃならんのだし、俺たちは退屈している暇など無い。」 「フフ、ならば私も手伝おう……ところで。」 「ん?」 「最初に言っておく。私は女だ。覚えておいてくれ。」 「へ?ああ、判ったよ。すまんな、兄さんなどと呼んで。」 「まあ仕方あるまい。他種族の性別など判るはずもないだろう。 ……済まぬが、もうちょっと待っていてくれ。もう少しだけ話をしていきたい。」 「話って……相手は墓の下の人か?流石は詩人、言うことが違うな。 それじゃ姐さん、ごゆっくり。」 「ああ……。」 (……面白いものだ。運命というのは不思議なものだ。 かつて、あなたに育てられ、そしてあなたの元から離れて、様々な運命が私をめぐり…… 今は又、再びあなたの元にいる。本当に信じられないことだ。 この私が、この国の宿敵という宿命に祭り上げられたこの私が、 かつては、この国を滅せよと戦ったこの私が、 今は自由の空の下にあり、ふたたび……あなたを訪ねる日が来ようとは……)
(この先に何が待っているのか、もう私には何も判らない。 いや、明日の自分が何を考え、そして明日の自分が何をやろうとしているのか、 自分自身でも予測が付かない。 このようなことを考える今の私では、もはや教団に立つことなど出来ないな。 人の宿命や定めなどというものは、変転する運命の中では塵芥に等しく、 それを人に説くことなど、あまりにもおこがましい、というものだ。 そして、この私があの破天荒な男と行動を共にして世界を巡り、 冒険者を名乗ることなど、はたして誰が想像出来ただろう。 本当に……本当に、生きていくと言うことは面白いものだ。) (完)
609 :
ぽん吉 ◆6NLrYYfI2g :2006/06/02(金) 19:41:40.70 ID:bPXYodH6
以上です。長々と失礼しました。 一応、公式設定やら何やらを参考にしたつもりですが、 ぜんぜん辻褄が合ってなかったり、イメージが違ってたりしたらごめんなさい。 そして、様々な感想を書いてくださった皆様、本当にアリガトです。 特にご自身で作品を書かれつつ、私の投稿に感想を付けていただいた方、 私の方から感想かけなくて誠に申し訳ないっす。 既に何スレも続いてから、このスレの存在を知り、 以前に似たようなスレで遊んでいたので、つい参加してみたくなったのですが、 途中からだと読んでもなかなか内容が頭に入らず、 まとめスレに目を通す時間も取れず、 感想を付けるにつけれなかったというのが正直なところっす。 不規則な仕事の合間に作ったり投稿したりしている有様だったりするもので…… それでは、私の言い訳は以上っす。 皆様、ご健勝のほどを。
610 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 19:48:34.55 ID:CtVbuc5R
pン期つさんのおはなしはすきだったぜ また暇ができたらつくったりしてほしいだぜ
611 :
Loufas ◆TTnPTs4wAM :2006/06/02(金) 19:53:40.06 ID:j8H/1zjb
>ポン吉さん 楽しく読ませていただいておりましたので、ちょっと寂しい気もしますが… お疲れ様でした。 少しだけ投下を…
(222) ひとまず風呂のお湯を抜いて、湯船の底を柄の長いブラシでゴシゴシと擦ってみる。さすがに毎日掃除していたようで、あまり汚れらしい汚れもない。 ヒロは本当に不承不承と言った感じで掃除をしている。ブラシの使い方を見ても、こんな事はしたこともないのだろう。 「腰が入ってねぇなぁ、そんなんじゃ汚れは落ちねぇよ」 「うるせぇ!」 どうもご立腹のようだ。やれやれ、と大げさにポーズを取ってみるとキッと睨みつけてきた。 そもそもそんなに汚れてもいないので問題はないのだが… 「そういや、その手に付けてるのなんだ?おもちゃか?」 「おもちゃで遊ぶような歳じゃない」 掃除もひと段落して水を流しながら、ヒロが俺の手を取って篭手をしげしげと眺め始めた。 「…さっき話に上がってたプライマルアーツって奴だ」 「へー… これがねぇ…」 顔を近づけて眺めるヒロは、なんだか人形を眺める女の子のようだ。オスラってのはミスラとほとんど見分けが付かないな… ヒロが右手の龍の頭に手をかけたところで、急に右の篭手が振動を始めた。 「おぉい!驚かすなよ!」 驚いて尻餅をついたヒロが怒鳴り声を上げる。俺は篭手から視線を動かさずに首だけを横に振った。 「違う、俺がやったわけじゃない」
(223) 昨日のような微弱な振動ではない。強烈に俺の腕ごと震えている。 「なんなんだよ、これ…」 「知るかよ、俺にだってよく分からないんだ」 ヒロがもう一度龍の頭に手をかけようとする。なんでコイツはこうも考えなしなのだろう… 俺は右手を引っ込めようとするのと同時に左手でヒロの手を払おうとしたが、それよりも早くヒロが篭手に触れ、そこに俺の左手も重なった。 その瞬間、奇妙な映像が頭の中に広がった。 タルタルの少女が数人と、ヒュムの男とエルヴァーンの女… 鍾乳洞を潜り抜けた先の陶器でできた部屋のような場所で、床には奇妙な魔方陣のような模様が見える。 そして何よりその背後に見える、空間そのものがひずんだ様な空気のゆがみ。 「…おい!」 ヒロに声をかけられて、俺はハッと視線を上げた。 「今の何だよ!魔方陣みたいなの!」 「お前も今の、見えたのか…?」 勢い良くヒロが頷く。そうか、といって俺が考え出そうとすると、彼はデッキブラシを放り出して外に向かって走り出した。 「おい!場所もわからないのに動いてもしょうがないだろ!」 「ばっか!ありゃオルデール鍾乳洞だ!行くぞ!」
614 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 19:55:08.67 ID:CtVbuc5R
/ ./ /| フェイトだ _|  ̄ ̄ ̄ ̄.| |___ オルデールに潜入した。 / |_____.|/ / ナナシ、指示をくれ。  ̄ ̄~ |し |  ̄ ̄ し⌒ J
(224) 階段を駆け上って部屋に駆け込み、最小限の身支度だけをしてまた部屋を飛び出す。 丁度ヒロも赤魔道士のAFで身を包んだ姿で客間から出てきたところだった。 「何が起こってるかもわからねぇのに、駆けつける意味なんざあるのかねぇ…」 「何も起こって無きゃあんなもん見えるわけないだろ!」 ごもっとも。俺はヒロの後ろから彼を追うように階段を駆け下りた。 「ちょっと出かけてくる!」 誰かに聞こえればいい。そんな感じで大声で叫び、既に玄関から飛び出して言ったヒロの後を追いかける。 追いかけながら、カバンの中からパンサーマスクを取り出し頭に付ける。これでもう誰が誰だかわからないだろう。 一応、俺はお尋ね者だしな… 通りに出て、視界にギリギリ捉えられる位置にヒロの姿を見つける。南サンドリアの方に向かうつもりらしい。 だとすれば目指す先はまず南サンドリアのチョコボ厩舎だ。 俺は彼の走る方向とは別の方向に走り、南サンドリアへの最短経路を全力で走った。 丁度居住区の出口あたりでヒロに追いついた。だが、彼は俺に目もくれずに走り抜ける。 若さってのは勢いだね、と暢気に考えながら引き離されないように俺も走る。 だが、あの奇妙な光景は何だったのだろう。 強烈にイメージに残っているのは、そこにいた人物と言うよりは背後に見えた空間のゆがみだった。 その映像を見せたこの篭手は相変らず振動を続けている。確かにただ事ではなさそうだが…
(225) チョコボ厩舎に飛び込むと、ヒロが財布を取り出してモタモタとしていた。 俺はカバンから財布を取り出し、硬貨を一つ厩務員に渡す。 「2人分だ、釣りは取っておいてくれ」 チョコボの手綱に手をかけながら声をかける。困ります、という声が聞こえるがそれを無視してロンフォールの森へ飛び出した。 今度は俺が先に立って一路ラテーヌ高原を目指す。 ロンフォールの森を走っている途中、妙な事に気が付いた。 オークの姿を全く見かけない。 普段なら、この辺はオークが我が物顔で闊歩しているはずなのだが… 見かけるのはゴブリンと害のないモンスターだけ。 篭手が振動したことと何か関係があるのだろうか。 振り返ってみると、ヒロも周りを見回しているようだ。彼も異変に気が付いているらしい。 どうも、何かが起こっているのは間違いなさそうだ。
617 :
Loufas ◆TTnPTs4wAM :2006/06/02(金) 19:58:29.60 ID:j8H/1zjb
今日は以上です。 >リードさん オルデール乱入OKでしょうか…? 他の方面でも話を考えているので、どちらでも大丈夫ですw >ヒロさん 派手に動かしてしまいました… ちょっとルーファスと地獄の一丁目に言ってみませんか?^^^^^^^^ では、わっふるー
618 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 20:21:29.64 ID:RLncSrYB
みんな、死に向かって一直線だね。♪
619 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 20:51:39.98 ID:RLncSrYB
俺の妄想をぶちまけさせてほしいんだヨオオオおおおおおおおおおお
620 :
既にその名前は使われています :2006/06/02(金) 20:52:25.85 ID:RLncSrYB
大体の筋は考えたけど話の導入部分どうしたらいいのかわかかかかんね
>>614 【スニーク】落ち着いてよく聞くんだ。今お前はオルデールではなく、ボストーニュ監獄にいる。
もう一度言う、お前はボストーニュ監獄にいる。ただちに帰還し、私たちの手術を受けたまえ。
な〜に心配するな。ちょっと頭の中身をこねくり回すだけだ。
…おい、聞こえているか?【スニーク】応答しろ。【スニーク】これは命令だ【スニーク】
性欲を持て余す…(これを言ってみたかっただけとです。ナナシです…)
622 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/06/02(金) 23:40:21.57 ID:0m4KxltD
「釣りはいらねぇぜ!」とか言ってみたいなww
さてどうしたものか。単なる魔法系青魔法ならばレジストして、大した損害にはならない。 しかし今の彼女はアジュールロー状態だ。先ほどのジェットストリームの威力を見ても分かるが、多分レジストは難しい。 プリズムパウダーとサイレントオイルを使ったのだろう。 姿は見えないが、彼女がじりじりと近づいてくるのが分かる。相当のダメージを負った為、走れないのかもしれない。 …待てよ、何故彼女はわざわざ近づいてくるんだ。魔法は届く距離だ。その位置から青魔法を放てばいいだろ。 なのに何故。 近接系青魔法で攻める気か? この距離だぞ? 馬鹿馬鹿しい、そんなの非効率だ。 畜生、落ち着け俺。常勝の秘訣はこういう時こそ落ち着いて、冷静に状況を見定めることにある。冷静に…。 発想を変えよう。わざわざ近づく訳ではなく、近づかなければならない理由があるとしたら。 「…………!」 そうか、そういう事だったのか! 分かったぞ、近づかなければならない理由、そして青魔法の弱点が! やはりサポートジョブを狩人にしておいて正解だった。広域スキャンがなければ俺は今頃生きてはいないだろう。 ノーダメージを目指す俺の戦闘スタイルに於いて回復魔法などは必要ない。必要な要素は敵の情報と状況。 「ふふん、俺の勝ちだ。」 そう宣言し、俺は精霊魔法の詠唱に取り掛かる。詠唱時間2秒のバインドを。 バインドは遠距離攻撃を誘発するので出来るだけ使わないようにしていたが、今こそ使い時だ!
俺は組み上がった術式を即座に彼女へぶつけた。時計の回るような魔力が彼女を包み、本来の姿を露にしていく。 「な、なんで…」 流石にイラつきと焦りを抑えられない様子だった。それもそうだ、無理もない。 ことごとく自分の行動が俺の策により失敗してしまっては。 「なんであたしに…魔法を当てる事ができるの…? プリズムパウダーで隠したこの体は不可視のはず…。」 「はは、見えてないけどお前のいる位置は俺には分かるんだよ。広域スキャンでね。」 ハァハァと彼女は不規則に息を荒げる。傷は深く、立っているのもやっとの事だろう。 「黒魔法の射程距離は約21m。反面、青魔法の射程距離は長くて約13m程度。 そして俺たちを挟む距離は恐らく14〜20mの間にあるだろう。お前が近づいてきた事が何よりの証拠。」 一旦、距離をとっておいたのは正解だった。バインドで動きを封じた今、俺の勝利は確定したのだ。 俺の放つ黒魔法は彼女に届き、彼女の放つ青魔法は俺には届かないという圧倒的に有利な距離を保つことになる。 お前の敗因は"奥の手"の存在。そんなものが存在するせいで、お前は心の何処かに安心を置く。それは即ち慢心を意味する。 ──奥の手があるから大丈夫。不利な状況になっても逆転の余地はある。 その考えは実に愚かだ。命の遣り取りを行っている以上、常に全力で行動しなければすぐに死の影は忍び寄る。 できれば使いたくなかった、だと? 笑止。お前の"奥の手"は逆転の切り札などではない。単なる"弱点"に過ぎないのだ。
まぁ素人の俺があーだこーだ言っても、それはやっぱり戯言であって、若造の理想論だと罵られるだけかもしれないが。 「バ、バインドの静止時間内にあたしを仕留められる程強力な魔法を詠唱できるとでも!?」 語尾に無理よ、と付け加え彼女は狼狽した表情で俺を睨み付ける。 ギリギリと歯を立てたその姿は、一気に10歳以上も老け込んでしまったかのように感じた。 イケメンの俺に釣り合うほどの容姿を揃えていたのに、これでは勿体無い限りだ。 「俺の策は何通りも用意してある。しかしそれは奥の手という直列的な考えではない。 そう、手札。状況によって目の前にある引き出しを選ぶかのような並列的な考えによるものだ。それが俺とお前の差。」 初めての実戦だ。何が起きるか分かったものではない。実際、この流れは想定外の出来事ではあった。 だがどんな状況にも対応し、勝つる事ができる様に用心に用心を重ねた。 その様子は慎重、と言うよりは臆病と表現されるかもしれない。それでもいいさ、それが俺だ。 ブスッ! 「え、あっ…」 どこからともなく矢が飛んできて、彼女の心臓を貫いた。 そして彼女はそのまま力なくバタリとその場に倒れた。今度は狸寝入りなんかではないだろう。 「それと…俺には優秀な仲間がいてね。そこの物陰から機を伺っていたのさ。」 俺は遠くに見える廃墟を指差した。そこには弓を握り締めたバルファルの姿があった。
626 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/06/03(土) 01:01:18.04 ID:1lmqth/I
以上です。
627 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/06/03(土) 03:39:48.01 ID:ZOJZhxpk
皆様、投下乙でございます。 夜明け前の保守保守。
保守人の方のフェイト話はとても面白いですね。
こういう形で自分の出したキャラクターの名前が出ると、とても嬉しいです。
>>571 そちらにもリードの名前を知られてしまいましたね。生かしておくわけにはいか(ry
>>573 アリアさんにはご両親の設定もあったのですね。できれば使いたいところですが・・・。
そんな場面が書けるかどうかお約束は出来ませんが、かまいませんでしょうか。
>>617 申し訳ありません。
地獄の一丁目にいらっしゃるのは、今しばらく様子をご覧になった上でご再考くださいませ。
来訪者の方やそのパートナーを死亡させた事を後々まで言われるのは辛いものですから。
わっふるわっふる
629 :
既にその名前は使われています :2006/06/03(土) 06:42:58.31 ID:JfodQ3J4
ところで俺は来訪者なわけなんだが 俺のところによこす刺客はかわいいミスラにしてくれ 体にリボン巻いていてくれ武器は持たすなよ
630 :
既にその名前は使われています :2006/06/03(土) 06:45:58.33 ID:JfodQ3J4
自爆装置も付けさせなくていいぞ 語尾ににゃーは付けさせといてもいいぞ さあ待ってるからミスラの刺客送りつろ!
刺客: 「…最初に言った時キミに乱暴されて、出来ちゃったにゃ。責任取って結婚するにゃ。リアルに帰りたいとか言ったらブッ殺すにゃ。 あと、キミに言われたとおりリボンをつけてきたにゃ。…どうにゃ、似合うにゃ?」
刺客: 「あと、他の女といちゃいちゃしててもブッ殺すにゃ。フェローなんてもってのほかにゃ、あの女が一番危ないにゃ。絶対駄目駄目の駄目にゃ」
633 :
既にその名前は使われています :2006/06/03(土) 07:31:52.98 ID:JfodQ3J4
おいおいいきないり嫁スラさんかよ OK責任とってやる
>>603 免罪装備とかいらないので、豪華空間爆裂機能つきベルトを外してくださいw
>>609 お疲れ様です。ヤグ、ゴブの混合PTやってみたい・・・w
「シャウト失礼します。今からヤグミッション6-1をやりたいと思います」
とかなったりw
>>617 フルさんおいていっちゃったw本当になんなんですかねー、あの篭手はw
>>626 頭の回転はやいですね〜。かっこよくて知的・・・最強じゃないですか!w
>>628 ええ、もちろん無理に使わなくて全然OKです。
クールヴァーンさんがシャールカーンさんの手を取りぐいっと引っ張りあげた。 「すまん」 シャールカーンさんは耳まで真っ赤にしながら、一応、堂々と胸を張って、おほん、と仕切りなおす。 でもって、私のほうはチラリとも見ない。 ・・・別にこの人のことが好きだったのはユリさんだし、私は正直言ってこの人どーでもいいけど、 なんだか全く気にされないのもくやしい。私にはそんなに魅力ない? それともユリさんにしか興味ないってこと?あんなべた惚れっぽかったのに職務だからって こんなに冷静でいられるものなの?・・・なんだか腹たつなぁ。 「王国騎士シャールカーンです。アリア女史をお迎えに参上いたしました」 王国騎士・・・シャーるカーンさんは私、っていうかユリさんがお菓子作ったりしている間に随分と出世したんだな。 ひょっとしてすごくいい家柄の人なのかもしれない。・・・ユリさんがふっていなかったら私は玉の輿だったのかも・・・。 うわぁ、超もったいない・・・。
ところで、アリア女史のお迎えって何だろう?逮捕?度重なるセクハラでついに逮捕? 天の塔の女の子にまで手を出したから国際指名手配? 私なんてセクハラじゃ済まないことまでされたし逮捕状くらい出てもおかしくない・・・うぅ・・・ ユリさんどうしてもっと抵抗しなかったのよぉ・・・。 「私は教会から派遣された査問官シーベルです。おひさしぶり、学会以来ですね」 「はぁ・・・」 私達は曖昧に返事をする。今度は完璧に知らない人が現れた。 学会ってことはこの人も時空魔法の研究者だろうか?教会って事は神父様? ふと、私の胸を覆っていたいやらしい手の動きが止まったことに気がついた。アリアちゃんは なんだか渋い顔でシーベルさんとやらを見つめていた。美人は渋い顔も似合うからうらやましい・・・。
「サンドリアには、許可を取っていたと思ったけど?」 なんだか嫌そうに、イヤミたっぷりにアリアちゃんが言うと 「はい、それは存じております」 と、シャールカーンさんが大仰に頷いた。なんだかちょっとやな感じだ。 「ハルヴァー宰相のご命令です。貴女を、本国へお連れいたします」 ・・・別に神子様への報告が終わったら帰るんだし改めて言うことでもないような。 「そんなのダメ!」 リポケケがピョンピョン飛び跳ねながら叫んだ。跳ねるたびにネコミミフードの耳がピョコピョコ動いてかわいらしい。 ・・・ユリさん、アレがほしいからって私のお金を50万ギルも勝手に使ったんだっけ。 ノーブルチュニックのための貯金だったのに・・・。たしかにかわいいけどさぁ。 「アリアちゃんは星の神子様にご報告しに行くんだから!」 リポケケが続ける。それに便乗してさらにユファファも目力がすごいツリ目でシャールカーンさんをキッとにらみつける。 でも、 ネコミミフードのおかげで迫力は激減だ。 「そうよ! わたしたちはウィンダスに帰るの!」 ユファファのその台詞を聞いた瞬間、査問官のシーベルさんが静かに 私達を値踏みするかのような目でジトッと眺め回した。
「今の発言は、サンドリアを捨てウィンダスへ出奔した、と受け取ってよろしいのですか?」 違っ!!なんでそうなっちゃうの!?サンドリアの人たちは多分何かを勘違いしている。 アリアちゃんは私とテティスさんが無事に帰ったことを伝えるだけなのに、 何かサンドリアの大事な情報とかを神子様に言ってしまうとか思っているのかもしれない。 ガシャリ、と査問官の背後の従騎士たちが腰の剣に手をかける気配がした。 なんだか本格的にヤバイ雰囲気だ。 「アリア女史、お願いします。サンドリアへ、私たちと帰還していただけませんか?」 シャールカーンさんが従騎士たちを手で制し、再び尋ねた。帰還も何も報告だけなんだから! でも、そんなことは言い出せそうにない雰囲気だ。・・・なんだかみんな妙に殺気立っててちょっと怖い。 アリアちゃんは私の髪の毛を軽くなでながらシャールカーンさんを静かに見上げた。 「星の神子様にお会いしてからでは、駄目ね・・・?」 アリアちゃんの声には諦めの色が混じっていた。 案の定、シャールカーンさんが否定の意味で首を振った。
しばらくの間、アリアちゃんとサンドリアの皆様はあーでもないこーでもないと 小難しい話をしていた。その話は私には難しくて分からないことばかりだったけれど、 今も三国の間には様々なしがらみがあるんだなと考えさせられた。 アリアちゃんは小さく一度ため息をついた後、静かに口を開いた。 「・・・わかりました。もとより、私はサンドリアを捨てた覚えはありません。 この子達は、私が雇った冒険者たちです。ウィンダスに帰るのは、この子たちだけです。」 「アリアちゃん!?」 リポケケが涙目になってアリアちゃんに駆け寄ろうとする。その手をオヤジさんがグッと握って引き止めた。 今は我慢しろってことだろう。 「ごめんね。星の神子様にはユリフィナちゃんが、お願いね。」 そう言って私たちに小さく舌をペロリと出す。・・・それが舌なめずりに見えてしまったのは私の心が汚いから? いや、でもアリアちゃんならありえるような気がして怖い・・・。
以上です。そろそろ容量の方が怪しくなってまいりましたw それではわっふるわっふる!
641 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/06/03(土) 10:47:40.13 ID:ZOJZhxpk
おはようございますage 自分はスレ立てられないようなのです。 シャールカーンが酷い言われようでかわいそうな件について。
ばたり、ばたり、ばたり。 従騎士たちが転がる。彼らは剣を手にしたまま絶命していた。 シャールカーンが、がっくりと膝をつく。初老の副隊長が助け起こした。 「すみません、先任・・・」 「隊長、これは・・・!?」 魔法陣が一層の輝きを増し、空間の裂け目が、黒い爪で易々と押し広げられていく。 くそったれ。くそったれ。 出る。出てくる。奴が―――。 ずるり。 次元の狭間から、それは魔法陣の中心へと静かに降り立った。 手には長剣を携え、その体は人工的にも思える黒光りした外骨格に覆われていた。 身の丈はすらりと高く、俺がガルカを肩車したほどもあった。 背中には竜の翼。長く、鞭のようにしなる尻尾を揺らめかせている。 その身には、真っ白なサーコートをまとっていた。施された金と銀の装飾、複雑な紋章。 額から伸びる一本の角、いかつい面頬のような顔に知性をたたえた両の瞳。 吼えるでもなく、猛り狂って威嚇するでもない。 ただ静かに、そこに立つ。
ただそれだけなのに、誰も動けず、声も出せなかった。 奴はあたりを見回し、自らが侵入した場所を確認しようとしているかのようだった。 「―――“禍神”」 俺は唸るように、その名をつぶやいた。 正確な名前など知らない。そもそも、そんなものは無いのかもしれない。 常に世界の外側に徘徊し隙を窺う放浪者にして侵略者、破壊と殺戮をほしいままにする暴君。 「ぐっ・・・ァ!」 俺の左腕が爆ぜた。 あたりに真っ赤な血と、肉が飛び散った。生易しい出血量ではない。 床にぶちまけられた血を魔法陣の文字列が貪欲に吸い取り、歓びに脈動する。 奴が抜け出てきた頭上の裂け目が、一段と大きく広がった。 「攻撃を受けたのかリード!?」 よろりと立ち上がるシャールカーン。 「くそったれのウィンダスが・・・」 俺は左腕を押さえ、首を振った。 「俺の腕に何か仕込みやがった・・・。どうして今頃・・・」 幸いなことに、なんとか腕の骨と肉の残りはまだ肩にくっついていた。 血の海を作りながら査問官のところまで下がり、とにかく修復を、と目で頼む。
「“禍神”は次元の隙間を見つけ、侵略し、破壊する暴君だ」 爆発でちぎられた腕。それを癒そうとする高位の呪文。 二重の激痛に耐えながら、深呼吸で息を整えようと努力した。 「これが、君たちの引き起こした結果だよ。好き勝手に穴を開ければ報いがあるということ」 俺は顔面蒼白のアリアに、皮肉めいた声で言葉を投げた。 「ユリフィナをリアルに返す代償に、君たちは世界を生贄に差し出したんだよ」 顔面蒼白なのは、俺も同じか。 結論は明らかだ。 ここにいる俺たちの戦力では、絶対に倒せない。 対抗できる武器は、昨日の闘いで折れてなくなった。盾も鎧も、斬り刻まれて消失した。 空間の裂け目は、こうして見ているうちにどんどんと広がっている。 “赤い鎧”が異変に気づき、足並み揃えて駆けつける頃には、もう遅い。 ここを起点に世界は真っ二つに裂けて、次元の海とやらに漂っていることだろう。 「うるっさいなぁ、もう!」 タルタルが声を張り上げ、武器を抜いた。 「責任とればいいんでしょ、とれば! アイツやっつければいいんでしょ!」 だっ、と駆け出す。それにつられ、彼女たちの仲間も突撃した。
646 :
既にその名前は使われています :2006/06/03(土) 12:25:31.86 ID:JfodQ3J4
タルタル突撃しちゃらめぇ
しんじゃらめぇぇぇ・・・
タルタル二人が、それぞれ両手斧と両手剣を手に奴の正面に走った。 ヒゲサブリガが魔法陣の外周を移動し、奴の背後で楽器をかき鳴らし始めた。 アリアは自己強化の呪文を唱えたためにワンテンポ遅れたが、その拳は炎に包まれていった。 「やめろ、逃げるんだ!」 俺は壁に背をもたれながら、そう叫ぶだけで精一杯だった。 査問官が、俺の左腕を修復してくれている。血が止まり、神経が繋がり、激痛を走らせる。 腕に埋め込まれていた異物を排除しようと、肉が盛り上がっていく。 「口だけの人は黙っててよ」 俺のいる壁際まで下がったユリフィナが、じろりと睨んだ。 怒った口調でそれだけ言うと、次々と補助の呪文を唱えては仲間を強化していく。 頭の中でガンガンと警鐘が鳴り続けていた。 死に急ぐことは、責任をとることではない。断じて違う。 あの空間の裂け目を閉じる方法は、ある。 それと引き換えに、俺はまた一つ、大事なものを失うことになる。 この小憎らしいタルタルの尻拭いなど真っ平御免だが・・・。 「査問官。この世ならざる呪物、剣と言ったな」 俺の確認に査問官が、はいと応えた。魔力の大半を費やしてしまったのか、顔がさらに青い。 「魔法陣を停止させる方法はある。シャールカーン、手伝ってくれ」
「俺の剣を魔法陣に突き刺す。“道”を作ってくれ」 なぜだとか、どうやってなどと、この状況でシャールカーンは訊かない。 「戦術教本5の3、応用編だな」 「あぁ。訓練通りにやればうまくいくさ。そのあと全力でバカどもを逃がす」 俺はニッ、と笑ってみせた。シャールカーンもニッ、と笑う。 ユリフィナは何がなんだかわからない、と言った表情で憮然としていた。 「では、行こうぞ」 副隊長が温和な顔から一転、鋭い視線を禍神に向けた。 「―――突撃!」 シャールカーンが号令を発し、たった二人だけになった騎士小隊が飛び出した。 「たあっ! とぅ!」 アリアが先制して、ごうと燃える拳を突き出した。 右、左。狙い澄まして放たれたその拳は、奴の長剣を持つ右腕を確実に捉えていた。 戦士のタルタルが両手斧を振り回し、身長差を逆に利用して脛を薙いだ。 「りゃぁぁ!」 同時に、タルタルのナイトが両手剣を振り下ろす。 大きすぎる武器に振り回されているようで微妙だが、そのたびに猫耳がふさふさと揺れていた。 禍神は、まるで相手の実力を推し量ろうとするように、繰り出される攻撃を避けることもしなかった。
「な・・・っ、なんでよ!?」 誰かが声を上げた。 三人の攻撃を禍神は避けられず、棒立ちのまま打たれていたはずなのに。 禍神の体には、傷一つついていなかった。 もういいよとでも言いたげに、禍神が目の前のタルタル戦士の頭上へ無造作に長剣を振り下ろす。 一瞬、禍神の顔前に閃光がはじけ、その剣先は小さなタルタルを捉えそこね、空を切った。 「ユファファ、ナイスフラッシュ!」 タルタルの戦士は親指を立て、それにユファファと呼ばれたタルタルのナイトも同じポーズで応えた。 それが隙を生んだのは言うまでもない。 ナイトのアーティファクトに護られていたはずの、ユファファの体が軽々と宙を飛んだ。 禍神が蹴り飛ばしたのだ。 「―――グぇっ」 ユファファは天井近くの壁にめり込み、蛙が潰れたような声を漏らして床に落下した。 その上から砕けた鍾乳石がドスドスと降り注ぐ。 まだ息はある。 ユリフィナは駆け出したい衝動をぐっとこらえ、癒しの呪文を唱え始めた。 禍神は面倒くさそうに、右腕を狙っていたアリアに剣を薙いだ。 ギィィン! 金属の打ち合う音が響き、その剣が弾かれる。 「異界の化け物よ! 貴様の相手は、この私、王国騎士シャールカーンだ!」
出先なのでROMってたのですが、他の方の筆を止めてしまうと悪いので(というか自分が読めなくてムギャオーなのでw)携帯から失礼します(´・ω・)ノ >617 お任せします〜 ところでヒロも書いてもらった方がかっこいい不具合(w 割り込み失礼しました。 隊長さんの活躍にも期待しつつわっふる(・ω・)ノ
シャールカーンは禍神の注意を引きつつ、防御に専念しつづけた。 互いにカバーしあいながら、それと気づかないうちに禍神を魔法陣から移動させようとしている。 上手い。 素人には、華やかに彼が矢面に立っているように見えるだろう。 だがその実、老練の副隊長が場を引っ張っているのが俺にはわかる。 「・・・アナタは戦わないワケ?」 トゲトゲしくユリフィナが訊く。 お互い様だが、俺はこのタルタルに相当嫌われているようだ。 「魔法陣の中心にこの剣を差すのが、俺の役目だ」 俺はまばたきすら惜しいくらいに、そして冷静に、じっと戦局を見定めていた。 「この剣はリアルの鋼で出来ている。この世の物ではないという意味では同じだ。 魔法陣を停止させ、穴を閉じる。その後で撤退する」 ―――そして、俺は“赤い鎧”に対抗できる武器を失う。 「ワケわかんないんですけどー」 ユリフィナがぶぅっとした表情でむくれている。いろいろと気に食わないのだろう。 「・・・そういえば来訪者は、リアルの物を持ち込めるとかなんとか聞いた気も」 「違う。日本には銃刀法がある。・・・悪いが説明している暇はない」 そろそろ頃合だ。 禍神がシャールカーンに気をとられ、魔法陣の中心に背を向けていた。
今だ! そう判断した俺は駆け出そうとして―――。 カシャ・・・ン。 俺は激しい痛みに襲われて、その場に長剣を取り落とした。 思わず左腕を押さえた。あぶら汗がにじみ、一歩が、踏み出せない。 何かが、俺の腕で、うごめく。外に出ようとして、腕の中を手のひらへと移動している。 「ぐ・・・っ、何なんだコレは・・・」 「どうしたのよ。行かないの?」 ユリフィナがジト目で睨む。 こうしている間にも、シャールカーンたちの命は削がれていく。 タルタルやアリアたちの繰り出す攻撃は時間稼ぎにもならない。 一刻も早く空間断裂を塞ぎ、ここから彼らを逃がさなくては・・・。 「いいわ。私が行くから!」 ユリフィナが長剣を拾い上げると、胸に抱えて駆け出した。 バカ、よせ! と叫ぼうとして、腹の底に押し込めた。 ここで叫んでしまって禍神がこちらの意図に気づいたら、すべてが水泡に帰する。 クール&キュークだ。いつでもそうだろう? 「・・・査問官」 俺は、傍らで癒しの補助をしていた彼女に呼びかけた。 「テレポホラの準備だ」
ユリフィナは長剣を抱えているにもかかわらず、白兎のように軽やかに駆けた。 自身にも強化の呪文を施していたのだろう。 ブンブンと不規則に振り回される禍神の尻尾をかいくぐる。 あっというまに、魔法陣の中心へとたどり着いた。 「ここに差せばいいんだよね!?」 ユリフィナが叫ぶ。おい、ここまで来て何を考えて―――。 禍神がユリフィナに気づき、すっと背後に視線を向けた。 「えぇぇいぃ!」 ユリフィナが半ばジャンプして、魔法陣に剣を突き立てた。 ざくり。若干斜めに刺さってしまったが、それは石床とは思えない軽い手ごたえだった。 ふっ、とまるで配電盤のブレーカーが落ちるように、魔法陣の脈動する文字列が光を失った。 天井近くに発生していた空間の歪みが、煌きながら何もなかったかのようにかき消える。 それを見上げていたユリフィナに、禍神が殺意をこめて長剣を突き下ろした。 「ユリフィナさん!」 シャールカーンが反射的に動き、その間に割って入った。それはスローモーションの光景だった。 ゆっくりと時の流れる世界で、禍神の剣はシャールカーンを貫いた。 黒々とした切っ先は鎖帷子を砕きながら胴体を、彼の心臓を抜け、切っ先が背に見えた。 禍神の剣は勢い止まらず、ちょうど背後にかばっていたユリフィナの顔面を串刺しにした。 「―――!!!」 俺は我知らず叫んでいた。
655 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/06/03(土) 15:36:52.59 ID:ZOJZhxpk
投下は以上です。 新スレ立て乙でございます。
656 :
レグナス ◆/abMGvkWxE :2006/06/03(土) 15:51:22.32 ID:P1nPGD7j
百合姫…。 ってかリードさんが本当に口だけの人になってる(ノ∀`)
657 :
Lead_161 ◆zmxSLEadCU :2006/06/03(土) 15:58:00.18 ID:ZOJZhxpk
左腕がぶっ飛んでますからねぇ・・・。痛くて痛くて
659 :
既にその名前は使われています :2006/06/03(土) 18:02:59.47 ID:JfodQ3J4
左腕がぶっ飛ぶってロケットパンチ実装キター!?
ロケットパンチか波動砲かは判りませんが、シリアスな展開wktk こちらはまだ(?)平和な日々を投下しますね。
「どうしてここに呼ばれたか、おわかりですね?」 「わかりません><」「えっ…ぁの……」 「 お わ か り で す ね ? 」 「わかりまsゲハッ」 「――ッ!」 今、私はアジルとキィを連れて、手の院の二階にある倉庫に居る。いや、連れ込んだ。 あのままモグハウスにいたら、周囲から五月蝿いと怒鳴り込まれてしまいそうだったので、手近な防音室を借りたのだ。 アジルはオドオドしている。まぁ当然か。 キィは今、私に蹴りを喰らって床をゴロゴロとのた打ち回っている。 「キィ、お前なぁ…アジルは記憶喪失してて、善悪の区別とかまだハッキリ判断出来ないんだぞ?」 キィの頭を右手で押さえつけ、努めて威圧する声で喋る。 「その精神的に未熟な常態の時に、おまいはアジルに何しようとしましたか?んん?」 「この身体がどんな風に感じるのか確認ついでに、アジルに性のよろk…ガフッ」 「アジル、お前にあ〜いう事はしないから。大丈夫だからw 少し落ち着け?w」 部屋の隅でガタガタ震えて、今にも命乞いしそうなアジルに話しかける。 「お前は、私が責任持って マ ト モ な 人として生きていけるようにする。」 怯えさせないよう努めて穏やかに、マジメな顔をして言う。自己満足も良いトコだが、放置する訳にもいくまい。 「私のエゴでしょうけど、アジルがもう少し精神的に成熟してからでないと、あ〜いう事しちゃダメなのです。」 勢いよく、アジルが何度も首を縦に振る。 ぁ〜…絶対怯えてる…こ〜いう時どうすればいいんだ…… 「ケホッ…バッカお前そ〜いう時は抱きしめてそのまま押し倒s…ゴフッ!?」
アジルをモグハウスへと帰し、キィ…もとい躯と2人っきりになる。 「お前もよくこんだけ攻撃されて、こりずに言うね……」 私の右足に腹部を踏まれたままの、懲りないエロ猫に向かって、呆れながら言う。 「ぉ゛ぅ…ゲホッ…俺はただ、アジルに性の快感を教え…いだだだだだだ!!」 「だ〜〜か〜〜ら〜〜!ソレは要らないんだよッ少なくとも今はまだね!!」 右足に力を込めながらキィに言う。……この性格も私とソックリなのか?…いや、絶対違う。断じて違う! 「いでででででで!!踏みが強くなりすぎだ!!まだ何も言ってないッ!!」 「……あ。あぁ、すまん。……ん?…"まだ"って事はまだ何か言うってのかこの野郎!!」 「あッ!……ソンナコトナイヨー!・・・ぎゃーーーーーーーー!!」 防音 といっても、所詮は石。振動は多少伝わるし、大きい音なら少しは漏れる。 さすがに院長が止めに来て扉を開けると、サンにガッチリと卍固めをされ、涙目で謝っているキィが居た。 その後手の院屋上で、体罰はいけませんと怒られる碧眼のミスラと、破廉恥な事はいけませんと怒られるミスラ 小さなタルタルの前で正座をする2人ミスラが、院長を呼びに来た院職員に目撃されたという。 モグハウスに帰る途中、どこか見覚えのある、チュニックを着たミスラと歩く忍者と思しきミスラを見かけた。 コチラに気付いていないようだったし、何より誰か思い出させなかったので、 "違う意味で"同じミスラを見ていたキィの首を鷲掴みにして、私とキィはモグハウスへと入っていった。
今書きあがってる分は以上です。 @9KB ウィンダスは今日も平和ですね……。 他の方のをwktkしながらキィを粛正してますね^^^^^
フレと魚釣りに行って帰ってみると、なんだか私が死んでいる件についてwwww
665 :
既にその名前は使われています :2006/06/03(土) 19:02:25.35 ID:JfodQ3J4
世の中にはね ショットガンの弾顔面に食らっても治療によって一命とりとめた人もいるんだから 顔に剣が一本二本刺さってもしにはしないさ♪
666 :
既にその名前は使われています :2006/06/03(土) 19:11:54.00 ID:jyOIMDf2
そしてブラックジャックみたな傷跡が顔に残ったりw
667 :
既にその名前は使われています :2006/06/04(日) 00:43:54.30 ID:0jXhXMjH
668 :
既にその名前は使われています :2006/06/04(日) 00:59:21.41 ID:z529YVZH
トイレに行ったらみんな俺をジロジロ見やがる。なぜだ? 疑問を抱きながらいつも通り小用を済まそうとチャックを下ろしたら… ち ん こ が 無 い!! 平静を装い、小用を済ましたフリしてモグハに帰ってチェーン装備を脱ぐ。 やっぱり ち ん こ が 無 い ! 胸も膨らみがあり、驚愕の声を上げたらヤケに声が高い。 お、れ いたい どうなて
669 :
既にその名前は使われています :2006/06/04(日) 07:27:05.96 ID:YD2+2PfJ
オペの時間だといってケアルを使うユリフィナ
670 :
既にその名前は使われています :2006/06/04(日) 08:50:44.26 ID:0jXhXMjH
傷が背中ならかっこいい小学生先生が素敵なお兄さんになって 学園祭で一日デートしてくれたのに
671 :
既にその名前は使われています :2006/06/04(日) 10:26:46.25 ID:n+iOqMsq
>>666 を見てブラックジャック風傷のあるユリフィナ様を書こうとしたらスキャナが古くて対応しておらず深い悲しみに包まれた俺様がきた
672 :
既にその名前は使われています :2006/06/04(日) 10:58:50.95 ID:YD2+2PfJ
スキャナなら俺の家にあるからうちにきて描かないか!
673 :
既にその名前は使われています :2006/06/04(日) 10:59:43.39 ID:YD2+2PfJ
>>668 おまえそれTウィルスにい犯されてチンコ腐り落ちたんだよ!
674 :
既にその名前は使われています :2006/06/04(日) 14:01:18.26 ID:0jXhXMjH
生め!
< /´ ヽ、ヽ、ヽ /´ 、 ll ヽ ヽ ,/ lトリ|ヽ、 | | // lト 、 ヽヽヽ l // l | ヽ ヽ. \ \ l! _/ //〃l | l! l ! , 〉l \_,/ 二ノノ 埋めたほうが良い // ! ! | l l 〃 |、〃 /,イヒン ミ .〈〈 | |l l l l |! ヽ》 〃 `ー'´/、 // そう思うだろ?あんたも!! ヽ\ヽ lヽト ヽ l| l| |! l ソ // ー-‐'´ /' \ン〉 ヽ ヽヽ | リ ヽ-‐'" `ヾ、 / \二_ へゝ十‐- ! 〈 \ ヽ\_二ー- ノ /| ヽ、 ヽ ヽ、`ヽ、 ̄ 、_ _/ / \ヽ、_二ニ=-‐ -=二-‐ノ `ー=ニ二_ヽ、 ー- ̄ / 彡 ミ`ヽ、 / /// l |、\ `ー-‐'´ // / | l ヽ
よくよくかんがえたら うめなくて 自然に落としたほうが いいよ な 手間かからないし!
では敢えて中途半端に埋めで、本編と関係あるようで関係あるのを投下シマスネ 決して向こうのスレだと最初の投下が浮きまくりになるからとかではアリマセン
真っ白い、空。 白い空から、黒い雪が吹雪く。 黒い吹雪の中、隠れるようにある、ズヴァール城ソックリの城。 その最上階。外にある、最奥の部屋へと続く通路に、黒衣をまとった白髪碧眼のミスラが、刀を掲げて立っている。 ミスラが、左目から溢れていた血涙を舐めると、ボヤけて、周囲に同化するように、その姿を消した。 ミスラが姿を消して数泊後。空に浮かぶ紅月から白いミスラが、城の金色の眼の模様から黒いミスラが姿を現した。 「『さぁ』」 「貴方はその身に余る力をどう使いますか。」 白いミスラが言う。 『願わくば力に溺れ、力に呑まれんことを。』 黒いミスラが言う。 突然、2人のミスラがピクリ と反応した後、やれやれ…という顔をした。 「『…破滅の暴君』」 敬意を払いつつも、忌々しげに2人が言う。 「……また勝手に出歩いて、あろうことかアチラへ出てしまわれたようですね。」 白いミスラが困り顔で言う。 『2人がかりでも、力で奴には勝てん。血を求めるは種の業よ。好きにさせろ。』 黒いミスラが言い捨てる。 「『…しかし』」 「いくら、彼でも……」 『必要とあらば……』 「『偽りの秩序達よ。儚き秩序を求める子らよ。脆い世界で足掻き、彼を止めてみせよ。』」 嬉しそうに2人は言った。
――――ズダンッ!! 城の壁に、死装束に身を包むヤグードが1人降り立った。 垂直な壁に立つその姿は、重力の存在を疑わせる。 「主ヨ。全部隊。敵城内ニ進入。潜伏セリ。次ノ指示ヲ。」 無機質な声で、ヤグードの姿をした者が指示を仰ぐ。 「…研究施設のようですね。」 白いミスラが少し意外そうに呟く。 『チッ。不味い奴らだけか。』 黒いミスラが期待外れだと毒づく。 「我々には、なんの価値もありません。……しかし」 『ヤツには価値が、ありそうだ。クク…クックック……』 「仰セノ。ママニ。」 死装束のヤグードはそう言うと、来る時とは違い、黒い壁へと沈んで、音も無く姿を消した。 「さぁ。選択肢は、増えた。」 『使うは。破滅か、救済か。』 「『力持つ者達よ。力を使い、願うがいい。答えが出た時、』」 白いミスラは微笑み、黒いミスラはニタリと笑った。 直後、砂が風に吹かれるように。ミスラも、城も、雪さえ粒子となって消え去り、白い…ただ白いだけの空間が残った。 真っ白な、何も無い空間に、クスクスという笑い声と、クックックと喉を鳴らす笑い声だけが延々と響いていた。
いじょです。 全部お見通し的な事言ってますが、白黒2人とも基本的に見てるだけです。 あと、白黒が操れる来訪者はサンだけですので、某2名様は安心してください。
682 :
既にその名前は使われています :2006/06/05(月) 00:45:57.50 ID:rNueaj/c
またよりいっそう怪しくなってるーw
白だの黒だのw
684 :
既にその名前は使われています :2006/06/05(月) 02:52:23.12 ID:b3yaJxCW
バス担当フェイト:コードネームアインの日誌。 天象暦○○○年。○月○日。晴れ。 AM:6:00起床。今日もいい天気だ。召喚士フィーアことセトカイバの奴が奇声を発して召喚している。とりあえず殴っておく。 AM:7:00調理師範ドライことサイラスが料理を作る。今日のメニューは新鮮な卵をつかった目玉焼き。シンプルでよい。 AM:7:30猫隊長ヌル様ことクロエちゃんが朝のお祈りをしてご飯を皆で食べる。 ロストナンバーフェンフが遊びにきて卵焼きをひっくり返し、頭に落として泣く。・・・お前それでも本部からきた監査兼ねた暗殺担当か。 AM:8:00本日のお仕事開始。とりあえず今日は基本訓練を行う。隊長の組手に付き合わされる。 俺含め4名ともきんぐへびんもすを打ち殺した隊長の一撃でKOされる。隊長ツヨスwww AM:8:30死んでいては仕事にならないので皆リレイズゴルケットで復活。レベル74に落ちる。 AM:9:00とりあえず本日の仕事は急遽延期、戦力を整えなおすと本部に申請。皆で本部に近いウルガラン山メリポへ。 AM:9:30組み手相手のデーモンたちが全員戦闘不能になってしまった。仕方ない。 AM:10:00隊長が「あいつに挑むにゃ♪」という先は・・・真龍ミドガルズオルム様。 勘弁してください。俺達フェイトの戦闘能力は一部NPCよりずっと低いんです。最高神のバハムート様より、 トリオンとかザイドのほうが単純な戦闘能力ではずっと強いんですよ? AM:11:00撃退成功。ミドガルズオルム様を見事敗走に追い込む。セトカイバの火精霊無制限召喚はスノールには強かった。 水鉛鉱などの副収入は結構なものだが遠慮したい。 AM12:00昼食はドラゴンステーキで決まりだ。調理師範はこういうときに心強い。
685 :
既にその名前は使われています :2006/06/05(月) 02:54:10.35 ID:b3yaJxCW
PM13:00全員腹痛に倒れる。何故だ。 PM14:00ドラゴンの肉は猛毒で土に数年埋めて浄化しないと死ぬらしい。・・・おいマジですか。 PM15:00チャクラで隊長復活。・・仕事しろよ俺達。てかもう死ぬ。死んでしまう。 PM16:00今日の給料なしと宣告される。隊長が涙目。可愛いけどあなたのせいだ。 PM17:00とりあえず今日の勤務時間は終了。だが動けない。隊長が毒消しをもってきてくれた。カンタレラ。 本当に死にそうになるが最高の毒薬だけあって何とか解毒に成功。しかし死屍累々。動けん。 PM17:30アビス様が勤務を終えて遊びにこられる。開口一番目を輝かせ「プリンは?」 普段は冷酷な同僚だったが、最近はすっごく可愛い萌え樽だ。 隊長が涙目で答える「さんちゃんが死にそうになってつくってないにゃ;;」 ぶわっと涙目になるアビス様。しかしこの事態は隊長の責任だと思う。 仕方ないから俺がスノールジェラートを出してやる。大喜びでぱくつくアビス様。 これが裏切り者の首をすっぱり跳ねる味方にも恐れられる大幹部だなんて思わんよなー。
686 :
既にその名前は使われています :
2006/06/05(月) 03:01:37.08 ID:b3yaJxCW PM18:00晩飯の支度をツヴァイこと子三郎としているとデュエル様ことアリサ様がこられる。 開口一番「来訪者69の動向はどうなっているのかしら?アイン?」うるせえ淫買。黙れ。 PM19:00アビス様が小さな手を懸命に振られてデジョン。アリサ様もやっと帰る。・・・本部に飯代請求してやろうか。 PM20:00夜のお祈りをしてお休みなさい。明日はいいことあるさ。 追記。PM24:00フェンフの夜鳴きがうるさい。ツヴァイが隊長に夜這いをかけようとするので殴る。ドライが明日の食事に媚薬を混ぜようとしていたので蹴る。 フィーアがフェンリル様と月に吼えているので殴り倒す。速く寝ろ。 我らが隊長はぬいぐるみ片手にすやすや。本当に可愛いよな・・・。