【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ13【友人・知人】

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1本当にあった怖い名無し
シリーズ物、霊感の強い人にまつわる話を集めるスレです。
考察や、好きな話について語り合いましょう。(荒れる原因なのでなるべく「乙」だけですましましょう)

・投下歓迎。実話、創作不問。新作も歓迎
・作品投稿者はトリップ(名前欄に#任意の文字列)推奨。
・話を投下する際はなるべくまとめてから投下しましょう
・sage進行、荒らし煽りはスルーでお願いします。
・他スレへの迷惑が掛かるような過度の勧誘やはご遠慮下さい。
・このスレでは作品への批判は荒らしと認定していますので、批判はご遠慮ください
・このスレには『このスレと住人を許さない』という荒らしがしつこく荒らしています
 どうかこいつには徹底無視をお願いします。
・「荒らしに反応する奴も荒らし」というネットのルールを忘れずに。
 反応するとその人を荒らしと 認 定 いたします

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【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ12【友人・知人】
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2本当にあった怖い名無し:2010/06/06(日) 11:22:00 ID:MPpcpDPk0
1乙
3 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/06(日) 21:26:19 ID:9Oh+BHxc0
おいすー。誤字脱字あったりとか、つまんなかったらすいません。
もしかしたら無意識のパクリかもしれません。
元ネタあったら教えてください。読みたいです。

自己責任で呼んでください。一応警告したので始めます。

"与太話"

「なーA」
「なんすかMさん」
「自分のこと人間だって思い込んでる、人形の話って知ってるか」
「あー有名なやつですね」
「ネットとかでもあるわな。夫を失った奥さんが、夫の代わりに人形を大事にしてたらってやつ」
いつものことながら大の大人二人が、午後も早くからファミレスで
チョコパフェを食いながら駄弁っていた。外では蝉が五月蝿い。
「まーよくある話よ。人の形をしたものには魂が宿りやすい」
「でもMさん、あの話って"常識"のちょっと隣にあるから面白いんですよね」
「まあな。仮にその人形がバリバリ動いていたとしても、奥さんの前とかだけだからな」
「話では、寺社で焼かれる前に頑張ってこっそり逃げようと動いてたのを、見つけてビックリみたいな。
 で、焼かれてるときに怖くて叫んでいるのを聞いて、さらにビックリみたいな」
「そうそう。あ、ちょっとトイレ行ってくるわ」
俺も飲み物がなくなったので、ドリンクバーにお茶を入れに行く。
五分くらいボーッとしていると師匠が戻ってきた。
4 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/06(日) 21:28:34 ID:9Oh+BHxc0
「んで、話の続きなんだけど…大きな街とか行くと割と良く見かけるだろ。
 人間のふりした人形が歩いてるやつ。とても精巧に似せたやつが」
「俺も何度か見かけたことありますけど、あいつら別に隠れてないですからね」
「そうそう、太陽の下、人間の中を堂々と歩いてんの。むかつくよなぁ」
「まぁそれはいいですよ。彼らにも色々と事情があるんでしょうから。
 で、他にもあるんでしょ。面白い話が」
フーッと師匠は一息ついてから話を始めた。
「逆もあるって、知ってるか」
「どういう意味ですか」
「前置き、超長くなるけどいいか」
「まぁ、今日は暇だしいいすよ」
「椅子は人間が椅子と認知するから、椅子になるという話しがある」
「ありますね」
「あとこんな言葉もある。"我思うゆえに我有り"
 太陽の下、人ごみの中歩いてる人形どもはさ、自分は"人"だということを一片も疑わないし
 常に他の人間たちからも"人"として認知されているわけだ。
 だって溶け込みすぎてて誰も簡単には"人形"とは思わねーもん」
「まーそうすね」
「術者というか、中には無意識で術をかけるやつもいるだろうが、
 まずそいつらは時間をかけて、人形に"自分は以前から人間である"という意識と、
 とりあえず最低限人前で"人"として動ける力を与えるわけだ」
「ほいほい」
「それが上手くいったら、今度は大都会の雑踏の中にでも放り込む。
 その人形は"人"として、多数の人間の視線を浴びながら、雑踏の中を歩く。
 まあ奴らはパッと見は分からないから、周りは"人"として認知する。
 多人数から"人"として認知されて人形はさらに人らしくなる。その繰り返しだ」
「そんな感じでしょうね」
5 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/06(日) 21:30:54 ID:9Oh+BHxc0
「術者がうまいこと"人形"だとばれない様にサポートしてやれば、どんどん奴らは人らしくなる、
 腹が減ったりとか、買い物したりとかな。最終的には自主的に人間社会に溶け込んでいくわけよ。
 その積み重ねで長年"人"としての認知を得てきたクラスになると
 例えばMRI撮られても"人形"だとわかんねーやつもいるのさ」
「はいはい。何となく知ってますよー。前置きまだ終わらないんですか」
俺はチョコパフェに刺さっていたポッキーをカリカリと齧る。
「せっかくだし、もうちょい付き合えよ。
 話が変わるが、今の日本ってさ。正確かしらんけど、ニートが100万人も居るんだよな」
「らしいですよねー」
「まあ、こいつら毎年3万人の自殺者というか戦死者が出る、戦場日本のある意味予備役みたいなもんだ。
 大部分はいつか戦いに駆り出される。中には立場を利用して力を貯めてる奴も居るだろうし、
 何もして無い奴も多いだろう。閑古鳥鳴く零細自営の俺も似たようなもんさ。
 でな、そのニートなんだが、その内の何割かは家からまったく出られない引き篭もりなわけだ。
 引き篭もりまでいくと少し事情が異なってくる。
 余談になるが、軽いところでは神経症や、酷い場合は分かり辛い重度障害があることも多い」
「うんうん。まあ最近知られてきてますよね。ってか話しなげぇ。本題マダー」
6 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/06(日) 21:32:13 ID:9Oh+BHxc0
師匠がお茶に口をつける。
「すまんすまん。ここからが本題だ」
「レアなケースだが、極端にへヴィな引き篭もりってさ、誰からも"人"として認知されていない場合が時にあるわけだ。
 親も悩み疲れて意識の外に出してる。機械的に食事を運ぶだけとか。
 本人も食事や排泄以外は動かない植物みたいな生活が長くて、精神活動が殆ど途切れてるって奴がガチでいるのよ」
「うわっ、それは可哀想ですね」
「彼らはテレビも見ない、ネットもしない。というか思考すらしない。
 最低限の生理現象以外は部屋の隅でうずくまって過ごす」
「でな、そんな生活をしているとそのまま"器"になることがある」
「へえっ、修行無しで一般人でも可能なんですね。無我の境地www」
「その"器"に偶然のキッカケで高次元な何かが入り込んでインスタントな神様になることもある。
 "悟った"とか言って新興宗教の生き神やったりしてな。
 勿論強烈な悪霊が入り込んで祟り神にも成りえるので、家族が呪詛向けられて全滅みたいな話もある」
「凄いですね」
「ただ、こっちの例のほうが多いんだがな、"器"になったまま長期間何も入らないと、どうなると思う」
「……消滅する」
「そう、本人の存在そのものが消えちまうのさ。自我も外からの認知も無い、あとは消えるだけだ。
 この世の全てから、そいつは消え忘れ去られる。写真なんかの記録も残らない。
 面白いだろ。今の世の中、人形は胸張って歩いてて、人間は少しずつ消えていってる」
「…怖いですね」
7 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/06(日) 21:33:22 ID:9Oh+BHxc0
「でもな」
師匠の顔が真剣になる。
「さっき話した人形たちだが、MRIで撮られても分からないぐらいなら、生殖能力も当然あるだろう。
 この業界に関しては今あることは、過去にも繰り返されてきたはずなんだ。
 俺たちが人形じゃないって、人形の子孫じゃないって誰が言い切れるんだ。
 人形が人間になり、人間が消え、元人形が子供を生む、
 俺が考えるに多分、これらは何らかの事象の裏表だ。
 この世界は見えない何かによって少しずつ入れ替えられ、補完されているんだ」
「……」

十秒くらい真顔で真剣に考えて、二人とも吹き出す。
「ぶはっ!MMRとか思い出しましたよ。キバヤシwwww
 もうそこまで人間なら別にもう人間でいいじゃないですか」
「ぶははは、まあそりゃそうだ。ぶはははは」
「ぎゃはははは!今日は奢りますよ」
なんとなく表情が人形っぽいウエイトレスさん(人間)に会計をして貰って
いつものファミレスから出て行く。
帰り道で松子デラックスに似ているおばさんから、何故か今日も睨まれた。
8 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/06(日) 21:39:00 ID:9Oh+BHxc0
我思うゆえに我有り→我思う故に我あり でした。やってしまった…。
ではまた消えます。
9本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 03:10:50 ID:88jurmHV0
面白かった〜お疲れさま!
次回も楽しみです。
10本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 11:54:02 ID:rYHdR8vB0
「お前は人間じゃないよ」
11本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 12:04:22 ID:MNzxs0tV0
君のような人形は人形ゆえに自らを人形と認識していない
12本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 15:30:30 ID:LojLnPAf0
寺生まれのTさん
13本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 15:47:10 ID:29/obnd60
おれはおまえのパパじゃない
14本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 21:11:09 ID:z9ndRrvr0
また師匠シリーズの劣化パクリモンかよ
15本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 23:06:40 ID:lQeL+akNO
パクリいらない
ウニまだ〜?
16本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 23:09:27 ID:86LZPOjs0
ウニ
17本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 23:42:25 ID:55HgMY5tO
てゆーか、赤緑と忍の人以外はみんなどこ行っちゃったんだ?
18 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/07(月) 23:50:40 ID:5wEx2dIH0
すいません。前回は師匠シリーズに出てくる「人間もどき」を連想された方が居たようですね。
力不足ながら、続きを読みたいというレスがあったので続行します。誤字脱字乱文失礼です。
part1洒落怖238(2010/03/14 331レス目) part2洒落シリーズスレ12(2010/06/03 973レス目) 
part3このスレの3レス目

登場人物
A→俺。一応主役。
Mさん→俺の師匠。"アレ"に憑かれている。俺の心の声では師匠。会話では(恥ずぃので)Mさんと呼んでいる
おかん→俺のおかん。つよい。便所スリッパで悪霊を祓う。
"アレ"→師匠に憑いてる怖い何か

自己責任で読んでください。一応警告したので始めます。
"球体"

わが町内の西端にある踏切には、俗に言う化け物が居る。
直径1メートル半くらいの人間の手足を纏めてできている濃い紫の球体状のもので、
踏切から2メートルほど上をフワフワと浮いている。
人を引き込んだりと害は無いと思うのだが、時々その球体が大きくなることがある。
おかんも「あの球は何か分からん」と言って、いつも不思議がっている。

師匠は基本的にこの踏切を通りたがらない。
近づくと否応無しに例の"アレ"が出てくるからだ。
一度見たことがあるが、準備動作なしでいきなり黒い腕を長く伸ばし、
球体の左半分をもぎ取ると、それをモシャモシャと食べていた。
「これ以上こいつに成長されてもたまらんからなぁ」とは師匠の言葉である。
半月のようにもがれたそれは、すぐに球状に再構成されて
一回り小さくなったが、またフワフワと浮んでいた。

話は変わるが、轢死体は時々身体のパーツがどんなに捜しても足りないことがあるらしい。
それは大体、手や足などのもげやすく飛びやすい、細く軽い部分だが
時々、首から上が無いものがある。
どんなに周囲を捜しても頭が丸ごと無いのである。
19本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 23:52:30 ID:hnbuA4ypP
坂さんと藤原君と枯野と喪中とガンジスと…そのへん?
20 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/07(月) 23:52:44 ID:5wEx2dIH0
その日はやることもないので、ダラダラと夕方のニュースを見ていたら、
午後六時頃にわが町の駅で、OLが列車に飛び込んだというニュースが流れた。
名前を見てビックリした、古くからの知り合いだったからである。
彼女はIちゃんと言って、俺の2〜3才上、
首都圏の有名大学をストレートで卒業してから
家の事情で地元に帰ってきて、この町の近隣都市の商社に勤めていた。
うちの家とは遠縁であり、お姉さんということて、俺は子供の頃遊んでもらった思い出も多い。
霊的な素質も高かったらしく、生前はおかんとも良く気があっていた。
かなりの長身美人で有能で、性格は爽やかで気風が良いパーフェクトリア充。
どう考えても自殺するような人ではない。

葬式では、遺体を見せてもらえなかった。
何でも「損傷が激しいから」ということだったが、
Iちゃんの親戚の一人がおかんに語ったところによると
「首から上が丸ごと無かった」から見せられなかったらしいのだ。
それにおかんによると、Iちゃんの魂がどこにも見つからないらしい。
通常死者の魂は実家や葬式場の周辺を漂っているのだが、どちらにもまったく気配すらないらしい。

心配したおかんが、葬式が終わった後に友達の"捜し屋"さんに占ってもらったところ、
Iちゃんの魂はどうやら件の"球体"の中に居るようなのだ。
これには捜し屋さんも首を傾げていた。
うちの親族は、基本的にとても強い守護霊に守られている。
俺が、怨念の塊のような霊気の師匠と普通に付き合えるのもそのおかげだ。
もちろん遠縁のIちゃんにも、仏や神とまではいかないがそれに近いくらいの守護がついている。
肉体を失ったとは言え、魂がああいうものに取り込まれることはまず無い。
とにかくこれはいかん、ということで俺が様子見をしにいくことになった。
仕事の都合で、しばらく家から離れられないおかんから
「いいかい。決して無理をしちゃだめだよ。もし面倒なことだったら、私がやるからね」
と、いつもより強い口調で言われた。
どっから聞きつけたのかは知らないが、師匠も「面白そうだ」と言ってついてきた。
師匠によると10メートル以内に近づかなければ、"アレ"が自動発動することはないらしい。
なにぶんいい加減な人なので、できるだけ遠ざけておこうと思った。
21 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/07(月) 23:54:46 ID:5wEx2dIH0
踏切に到着した。
時間は一般人に迷惑をかけないように、午前2時にしたのだが
人も電車すら滅多に通らないこの時間でも、"球体"は相も変わらずフワフワと浮んでいた。
以前ほどではないが、"アレ"に食べられたときより大きさは回復していた。
師匠は近づいたらやっぱり"アレ"の自動発動が怖くなったのか
俺が言うまでも無く15メートル以上は離れたうえに、電信柱の影から見守っていた。
俺は"球体"と同時に師匠の様子も見られるように、線路を渡って師匠の対角線上に立ってから、
遮断機の上に浮んでいるそれに話しかけた。

「Iちゃん居るんだろ。出てこいよ」

不意に周囲の宵闇が一段と落ちていき、
人の手足の肉で出来た球体からズブズブと人間の頭が出てくる。Iちゃんだ。
遠くで見ている師匠の首が、いきなりガクッと下に落ちた。
"しまった。まだ距離が足りなかったか"と思ったのもつかの間
そのまま吸い寄せられるよう、踏み切りの近くまで足早に歩いてきた。
当然のように師匠の肩から黒い腕が出現する、さらに空中に上下唇のセットも出てきた。
腕は獲物を下見するようにウネウネと気持ち悪く動き
唇の方はブツブツと何かを呟いている。
「マ…マエヨリモ…ウ…ウ…マソウデスネ…」
球体に頭がくっ付いた形になったIちゃんが口を開く。
「A君久しぶり、私は葬式には居なかったから…最後のお礼を言えなくてごめんね」
その口調は以前と同じ穏やかなものだった。俺は精一杯平然を取り繕って会話する。
「いやいや、いいよーIちゃん。それよりどうしたのよ。取り込まれた?除霊しようか(おかんが)」
「カ…オ…カオガ…タ…ベタイ」
「ダメよー、私はここに呼ばれたんだから、今はまだダメ」
長い髪を振り乱し、両目が別々の方向に向いたまま、生前と同じ爽やかな笑顔を向けられた。
「ふ…ふーん。ならいいけど、この町に害を為すことがあったら、(おかんが)除霊するからね」
「それは怖いなー、気をつけるわー」
なんだこの爽やかな悪霊(?)と、思った時だった。
22 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/07(月) 23:57:09 ID:5wEx2dIH0
"アレ"がとうとうキレた。
「ガ…マンデ…キマセン…カオタベ…マス…カカカカカカオオオオタタタタタタタタベ…マススススス」
よっぽど旨そうだったのだろう。今までに無い物凄い勢いで黒い腕が球体に迫る。
その瞬間だった。
「駄目だって言ってるやろぉぉぉぅぅぅぅうううがぁあぁああぁあああああああ!!!!」
Iちゃんがいきなり般若のような形相になり、首が伸び、黒い手に噛み付いた。
「まじぃいぃいぃいいぃいんじゃぐらぁあぁあああ!!!うううぅううううげぇぇぇぇぇ!!!!!」
薬指と小指を噛み千切り、線路の近くの林に吐き捨てる。
それに当たった何本かの常葉樹がジュジュジュと嫌な音を立てて黒くなり、溶けていく。
Iちゃんも青筋を立て口から酸が溶けたような泡を吹き、黄色い液体を垂らしている。
十秒ほど睨みあった二体の化け物だったが
どうやら"アレ"の方が気迫負けしたらしく、伸ばしていた手を
シュルシュルと師匠の肩付近まで戻してから、沈黙した。
それを受けて、Iちゃんも首の長さを元に戻した。
俺は呆気に取られて、何がなんだか分からなかった。
「………」
元の表情に戻ったIちゃんが俺に向けて静かに口を開く。
「というわけだから、そいつをここに近づけないでね。困るから」
「……分かった。でも一般人に変なことしたら祓うからね(おかんが……いや、おかんでも…)」
Iちゃんはフッと少しだけ、寂しそうに笑うと、ズブズブと"球体"の中に引っ込んでいった。
俺はなんとか精一杯の強がりをしつつ、"アレ"が出っ放しの師匠を肩に背負って立ち去った。
帰り道、相当機嫌が悪かったらしいアレは
自販機の裏に潜む弱弱しい自爆霊やら何やらを、
俺に担がれたまま、長い腕を伸ばして手当たり次第喰いまくっていた。
23本当にあった怖い名無し:2010/06/07(月) 23:59:35 ID:55HgMY5tO
>>19
坂さん懐かしいな。
24 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/08(火) 00:03:26 ID:5wEx2dIH0
なんとか我が家にたどり着いて、おかんに簡単に事情を説明すると
すぐに履いていた便所スリッパを脱いで師匠を叩きまくってくれた。
100発ほど叩かれたところで師匠はやっと目を覚ました。
「Mさん大丈夫でしたか」
「全身が痛ぇ畜生…おぉ…Aか…あ、お母さんもお世話様です…アレの中で一部始終を見させられていたよ。
 あの球体が何を意味しているのかは知らんけど、
 首がついたということは、知能をつけるということでもあるから
 今日のうちのアレみたいな、他の捕食者から身を守る必要性が出てきたんだろうな…」
「"球体"も進化してるってことですか」
「そう…とも言うな…すまんが…少し寝かしてくれないか、なんかいきなりきつくな…った…」
そのまま師匠は気絶したように眠り込んでしまった。
おかんが家では寝かしたがらなかったので、
二人でおかんのでかい黒塗りの仕事用RV車の中に、結界や寝床を作り、師匠を寝かした。
おかんは霊水で清められた布巾で師匠の汗を拭きながら
「"アレ"が千切れた指の分だけ、M君の生命力を吸い取ってるんだろうねぇ」と言っていた。
自爆霊数体では全然足りなかったらしい。
師匠はその後も、おかんの車の中で3日ほど、時々目を覚ましての食事以外は寝続けていた。
おかんは師匠の心配をしつつも「仕事で車が使えない」と言って、少しご立腹だったが。

治った後の師匠は体重が7キロほど減っていた。
「最近少し太ってきてたから逆に良かったぜ!」とか余裕かましていたが
見た目は以前とまったく変わっていないから恐ろしい。
俺たちはあれから、例の踏切に近づくことは無くなったが、
おかんによると、相変わらず"球体"はフワフワと浮いているらしい。
Iちゃんの頭は師匠の"アレ"以来強烈な捕食者に出会っていないせいか、
ずっと引っ込んだままでてこないそうだ。
おかんからも親族の魂を取り込んだのは腹立つが
とりあえず害はないようだから、今はほっとくように言われている。
了。

あまり望まれて無いようですし、ストックも尽きたのでとりあえずこの辺で止めときます。
続行希望のレスがあれば洒落怖まとめの掲示板辺りで書こうと思います。
25本当にあった怖い名無し:2010/06/08(火) 00:15:08 ID:7Ax2bQgQ0
◆7QPLwJZR/Ypf 乙
ここで続けなよ
26本当にあった怖い名無し:2010/06/08(火) 00:46:00 ID:/6/FOCYI0


以前、part1を見た時は「なんだぁ?」程度の反応だったが、読んでる内に普通に面白くなった
ここんとこ、このスレも寂しいし、出来たらこっちで続けて欲しいな
どこでやるにせよ、続けてくれるんなら俺は歓迎だけどね
27本当にあった怖い名無し:2010/06/08(火) 02:14:28 ID:n8cQ19q3O
面白かった。
続き読みたいです。
28本当にあった怖い名無し:2010/06/08(火) 04:10:49 ID:RH0Vt95N0
面白い。ネタがあったら書いてくれ。
29 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/08(火) 21:48:23 ID:F0vG9HUB0
いや良かった。かなりホッとしました。
次回も面白いものが書けるかは分かりませんが
また続きが出来たらこのスレに投稿してみたいと思います。ではまた。
30本当にあった怖い名無し:2010/06/08(火) 23:46:02 ID:zgGuhBSl0
ファンタジーはいらないよ
31本当にあった怖い名無し:2010/06/09(水) 00:14:46 ID:AZhui6sG0
幽霊って存在がもうファンタジーだろ
今更何言ってんだよ
32赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 13:50:06 ID:ziLdYiaN0
[スーツの男]

はじめに…

「さて、問題です」という話をご存知ですか?
ちょっと不可思議な話で、あちらこちらで様々な考察がされている話です。

今回のこれは、それについての話になります(本編はお休みして、番外の話になります)。
なので、元ネタを知っていたほうが分かりやすいかも知れません…。
あしからず。


1/16
以前、姉貴にこんな質問をしたことがある。
「この問題の話、分かる?」と。

滅多に入らない姉貴の部屋で、そんな意味不明な質問を投げかけた俺。
何やら難しそうな本を読んでいた姉貴は、「大学の課題?」と、当たり前と言えば当たり前の答えを返してくる。
中学、高校の頃は、よく勉強を見てもらっていたからだろう。

俺「あぁ…いや、そうじゃなくて、これなんだけど」

俺はそう言って、PCでプリントアウトしてきた紙を見てもらう。
そこに書かれているのは、「さて、問題です」という話。

古乃羽と神尾さんに、「舞さんに聞いてみてほしい」とお願いされていたものだ。
33赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 13:51:18 ID:ziLdYiaN0
2/16
舞「…何?これ」
短い話なので、すぐに読み終わった姉貴が聞いてくる。

俺「なぞなぞ…かな?これといった答えが出ていない話なんだ」
舞「…ちゃんと答えのあるなぞなぞ?」
俺「いやぁ…どうだろう」

答えが無い話だ、という説もあるので、どう言っていいやら。

俺「その道じゃ有名な話なんだけどさ…ネットとかでは」
舞「へぇ…」
俺「俺も答えが分からなくて、古乃羽たちもお手上げ。でも、姉貴なら分かるかな〜なんて」
舞「…」
小首を傾げながら、2度3度と読み返す姉貴。
どうやら、何か考えてくれているようだ。
お世辞が効いたかな?なんて思っていると――

舞「…誰が書いたのかは、分からないの?」
姉貴が聞いてくる。
俺「分からないねぇ」
書いた人に聞け、ってことか?
まぁ、確かにそれなら答えは得られるだろうけど…誰が書いたかなんて、それこそ、もう絶対に分からないだろう。
34赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 13:52:38 ID:ziLdYiaN0
3/16
舞「有名な話なら…幾つかの説は出ている?」
俺「あぁ、色々とあるよ」

ネット上では様々な考察がされており、これが正解っぽいな、という説もある。
俺は姉貴に、そのうちの幾つかを説明する。

スーツの男とは夢の中で会っており、自分はもう逃げられない、ということを悟っているという説。
「お前さん、この前の」という台詞に意味があり、解読すると「逝け」という言葉になるという説。
それと、既に言ったが「答えが無い」という説や、話が永遠にループする説、などなど。

それを聞いた姉貴の反応は、というと…

舞「それだけ出ているなら、それで良いでしょ」
という、意外なものだった。

俺「そっかぁ…」
先ほどまでの反応といい、何だか…どうやら、姉貴は乗り気じゃないようだ。
さては、分からないからだな?なんて、思わず邪推をしてしまう。
…と。

舞「…何よ、その顔」
すぐに突っ込まれてしまう。
35赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 13:54:01 ID:ziLdYiaN0
4/16
俺「いやいや。何か変な顔してた?」
舞「悪そうな顔していたわよ。どうせ分からないのだろ?って」
俺「ハハ…」
こんなときは笑ってごまかすに限る。

舞「別にそれでも良いけど…聞いて後悔しないなら、1つ、答えがあるわよ」
俺「…へ?」
後悔?何で?

舞「情報が少なすぎるのよ。想像で補うとすると、いくらでも話が広がってしまいそうで」
俺「うーん…まぁ、そうだろうね」
ほんの数行の文章だ。
ここから完璧な答えを出せと言われれば、想像力で…又は推理力で、それを補わなければならないだろう。
それは、当然のことだ。
でも、何でそれが後悔するなんて話に…?

ちょっと意味が分からなかったが、俺は姉貴に話を聞くことにする。
そして…後で少し嫌な気分になり、ちょっとだけ後悔をした。
36赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 13:55:21 ID:ziLdYiaN0
5/16
舞「まず…これって、おかしな話よね」
俺「そう?…って、まぁ、変な話か」
舞「だって、話の中の”俺”――仮にAさんとして、Aさんは死んでいるのよ」
俺「そうだな」
舞「なのに、どうやってこれを書いたの?」
俺「あぁ…それか」
それは確かにおかしな点だ。でも――

俺「オカルト系の話じゃ、よくある事だよ。自分が殺された、ってのは」
舞「幽霊が書いた話、ってこと?」
俺「いや、それは無いと思うけど…。そうじゃなくて…ほら、なぞなぞだし、こういうのもアリでしょ」
舞「それを許すと、答えが出せないわ」
俺「…ん?」

舞「あり得ない事が書かれているのなら、答えは出せない、ってこと」
俺「…」
空想を元に作られた、創作的な謎掛けには答えは出せない…ってことか?
死んでいても文章が書けるような人が出した謎なんて、解けない、と。
でも、そこは柔軟に考えて…と思うが、何となく言い方が気になる。

俺「じゃあ、あり得るなら答えは出る?これが、実際にあり得る話なら」
舞「そうね」
37赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 13:56:42 ID:ziLdYiaN0
6/16
これはまた奇怪なことを言う。
…が、そう言えば前に聞いた「一人多いわけ」についても、それを実際に起きた事件と考えて話をしていたか。

じゃあ、今回のこれも?
でも、そう考えると――

俺「じゃあこれ、最後に自分…Aさんが殺された、ってのは嘘ってこと?」
ってことになる。
幽霊が書いた話だなんて認めるのは、それこそ非現実的だ。
…が。

舞「Aさんが死んだ、ということが嘘だとすると…答えを出す意味なんて、何もなくなるわね」
俺「まぁ…そうか」
なぞなぞの問題に嘘が含まれていたら、どうしようもない。
「問題のこの部分は嘘なんです」なんて言われたら、やってられない。

しかしこれが本当の話だとすると、このAさんは既に死んでいる訳で…でも話が成り立っている…ということは?
俺「分かった。これ、Aさんが死ぬ前に書いたものだな?」

それしかない。それ以外には考えられない――

舞「そんな訳ないでしょ」
俺「う…」
一言で切って捨てられる。
まぁ当然か。どうみても遺書には見えないし、それだと話の意味が通らなくなる。
38赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 13:58:08 ID:ziLdYiaN0
7/16
俺「うーん…」

俺は頭を悩ませる。
昔、散々考えたことのあるこの問題を、今またこうして考えてみて答えが出るとも思えないが。

舞「Aさんが亡くなっていても、これを書ける人がいるでしょ?」
そんな俺を見かねてか、姉貴が言う。
これは…ヒントか?
Aさん以外にこれを書ける人?えーっと、他に誰が…
……

…え?

1人思い当たり、ドキリとする。
いや、しかしそれだと、この話は――

舞「そもそもこれって、Aさんがどこに居るときの話だと思う?」
突然話題を変えて、姉貴が聞いてくる。

俺「あぁ…っと、えーっと…駅のホームじゃない?」
舞「なんで?」
俺「なんで?って…終電が過ぎたから、ってあるし」
舞「終電が過ぎた後のホームで、何をしているの?」
39赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 13:59:44 ID:ziLdYiaN0
8/16
俺「何って…どうしよう、どうしようって…」
舞「ホームまで行かないと終電が無いことが分からなくて…そこまで行って無いことに気付いて、立ち尽くしているってこと?」
俺「…」

そう言われると、変か。
終電が無くなるような時間だ。そんな時間なら、ホームまで行かなくても終電の有無くらい分かるだろう。
それに、無くて困ったなら他に帰る手段を探すはずであって、ホームに立ち尽くしているのは何だかおかしい。

俺「じゃあ…どこか、その辺…駅の周辺とか?でも、分からないよな」
舞「そうね」
俺「そうね、って…」

それを聞いてきたんじゃないのか?
舞「私が言いたいのは、具体的な場所じゃなくて…どんな場所か、ってこと」
俺「??」
むう…何のことかサッパリだ。

舞「Aさんは、電車に乗って帰りたいのよ。つまり、家からは遠い場所」
俺「あぁ…そういうことか」
舞「もっと言うと、近くに知人も居ない。タクシーも捕まえられない」
俺「…そんなとこで、何していたんだろ?」
舞「さぁ。書いてないから、分からないわね」
俺「そっか…」

舞「正確に言うと、分からないから書いてないのよ」
俺「ほぇ…?」
40赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 14:01:00 ID:ziLdYiaN0
9/16
何を言っているんだ?

…と思ったが、そうか。
さっき思い付いた人物なら、そういうことになる。

舞「そういった場所で、Aさんがどうしよう、どうしようと言っていると、目の前にスーツの男が現れる」
俺「うん」
舞「このとき…スーツの男の方が、先にAさんに気が付いているわね」
俺「そうだな」
舞「で、目が合って…男は驚きの表情をする」
渡した紙を見ながら、話の順を追っていく姉貴。

舞「目の前に立っていたのに、目が合っていなかったってことは…Aさんは俯いていたのでしょうね」
俺「そう…だろうな」
どうしよう、どうしようと言って、頭を抱えていたのかも知れない。

舞「スーツの男が驚いたのは、目が合ってからだから…それまでは、彼はAさんのことをハッキリと”Aさん”だとは認識していなかった」
俺「うん」
舞「つまりスーツの男は、悩んでいる男を見掛けて、もしや?と思い、近付いて…そこでAさんだと分かった、ということね」
俺「そうなるな」
41赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 14:02:32 ID:ziLdYiaN0
10/16
舞「そこで、スーツの男が「お前さん、この前の…」と言う」
俺「そう。これの意味が謎で…」
舞「謎でも何でもないでしょ。そのままの意味よ」
俺「あ…そう?」

舞「台詞からして、スーツの男はAさんのことを知っていた。…名前は知らない程度で」
繰り返し「お前さん」って言っているということは、Aさんの名前は知らない…
ということだろう。まぁ、納得できる。

舞「Aさんは一体何の事だか、そもそもスーツの男が誰なのか、すぐには分からない」
俺「ここで10秒間も考えているからな」
舞「でも、何故かただならぬ危機感を感じていた…これは、何故かしら」
俺「何故って…」
…何でだろ。

俺「スーツの男に、何となく見覚えがあったから、とか…?」
舞「それもあるでしょうね」
それも、か。他には…?

舞「Aさんにとってスーツの男は、正体が分かったら逃げたくなるような相手よ」
俺「だな」
舞「じゃあ逆に、スーツの男にとってAさんは?」
俺「…あ」
42赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 14:12:40 ID:ziLdYiaN0
11/16
スーツの男は、Aさんを殺している。
つまり…スーツの男にとってAさんは、殺してしまいたいと思っている相手だ。

俺「穏やかに、ニコニコしながら向き合っていた訳じゃない、ってことか」
舞「でしょうね」
スーツの男はAさんを、殺意を持った目で見つめていた…睨んでいたはずだ。

俺「…そりゃ、危機感も感じるだろうなぁ」
深夜遅く困り果てているところで、真正面から謎の男に、殺意を持った目で睨まれる…
そんな状況で、何も感じない人間なんて居ないだろう。
例え相手に殺意がなくても、不気味に思うだろうな。

舞「そして再びスーツの男が口を開いたとき、Aさんはやっと気付く」
俺「うん」
舞「Aさんは、すぐにその場を逃げ出す…そして、もう大丈夫だと思って振り向くと、そこにスーツの男は居ない」
俺「あぁ」
舞「でも…ここが重要かもね。Aさんはもう一度呟く。あぁ、どうしよう、と」
俺「重要?…あ、そうか――」

呟いたんだ。
振り向いて誰も居ない…つまり、逃げ切ったと思ったAさんは、そこで呟いた。
そう書いてあるんだ。

これが、その後の「殺されたのは”言うまでもない”」という文に繋がる。

なぜなら…Aさんは、逃げ切れていなかったからだ。
43赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 14:14:22 ID:ziLdYiaN0
12/16
舞「分かったみたいね」
俺「あぁ。まだ、ちょっと整理付いてないけど…」

これを書いたのは誰か?

…あくまでも、1つの可能性としてだが、姉貴が最初に言ってくれたヒントっぽい言葉から考えた人物。
それは――

俺「スーツの男だろ?これは、彼がAさんの事を書いたものだ」

まだ全て理解できていないが、それで辻褄が合う。
物語の”俺”が、書き手でなければならないなんて決まりは無い。
実際に起きた話でも、それを文章にする際、書き手が当事者に成り代わることは、よくあることだ。

舞「そう。そう考えると…面白いわよね」

面白い、か。
確かに面白いし…これで説明が付く。

スーツの男は、Aさんが終電過ぎまで何をしていたかなんて、知らない。
だから書けないし、書いていない。
スーツの男が会ったのは、Aさんが呟いているところからだ。
どうしよう、どうしよう、と。

その時、スーツの男はAさんが誰だか分かっていなかったけれど…
これを書いている時点では、既に分かっている。
殺してしまいたいと思っている相手に、偶然再会して驚くスーツの男。
Aさんはすぐには気付かなかったが、やがてスーツの男が誰であるかに気付く。
44赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 14:16:04 ID:ziLdYiaN0
13/16
スーツの男が何者であるかに気付き、Aさんは逃げ出す。

…が、逃げ切れない。
何故逃げ切れなかったことが分かるのか?というと…Aさんの呟きだ。

逃げ切ったと思ったAさんが呟いたことを、スーツの男は聞いているのだ。
聞いたから、その台詞を書けたのだ。
そして逃げ切れていないからこそ、”言うまでもなく”Aさんは殺されてしまう。
数日後に。

…あれ?数日後?

俺「…何で数日後なんだ?」

そうだ。
何だか、最後の文章がおかしい。
この文章で、突然時間が飛んでいる。

俺「これは…何で?」
姉貴に質問をする。
…すると姉貴は、少し逡巡してから答えてくれた。
45赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 14:18:03 ID:ziLdYiaN0
14/16
舞「最後の「殺されたのは言うまでもない」って、Aさんからすると”殺されて当然”という意味よね」
俺「そう…だな」
舞「じゃあ、スーツの男からすると?」
俺「ん…?スーツの男からすると、その逆だから…”殺して当然”、か」
舞「そうね」
おぉ、正解した。
殺して当然なんて、最低な言葉だが。

舞「彼はAさんを、当たり前のように殺した。許すなんてことは絶対にせず、そんなことは考えもしない」
俺「…」
酷いことを、サラッと言う。

舞「深い憎しみと、強烈な殺意ね」
俺「だな…」
嫌な感情だ。
そう思った俺に、姉貴は更に言う。

舞「そんな憎い相手を捕まえた、スーツの男。彼は、Aさんをすぐには殺さないで、一体何をしていたのかしらね」
46赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 14:20:16 ID:ziLdYiaN0
15/16
ズン、と心の中に、何か重いものが落ちてきた感じがする。
頭の中に、残酷な描写が浮かぶ…

俺「…そこまでする理由って、何だろうな」
スーツの男は、何でAさんを殺したのか?それについてはどこにも書いてないが…

舞「Aさんは、逃げたときに…何で交番に行かなかったのかしらね」
俺「…近くになかった、とかじゃ?」
舞「捕まったら、確実に殺される相手から逃げているのよ?普通なら、何としてでも保護を求めない?」
俺「ふむ…」
まぁ、そうか。
殺されそうなんです、と、誰かに…警察に助けを求めるのが普通か。
それでスーツの男が警察に捕まれば、自分の身の安全は保てる。
逆にそうしないと、これから先も、永遠に追われることになるのだ。

…でも、それをしなかった理由。
考えられるのは――

俺「Aさんにも、後ろめたい気持ちがあった…とか?」
舞「そんなとこでしょうね」
47赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/09(水) 14:22:23 ID:ziLdYiaN0
16/16
舞「Aさんは、過去に何かしていて…それが原因で、スーツの男に恨まれている。それは、誰にも言えないような秘密」
淡々と言う姉貴。
舞「それはきっと、内容を書くと、スーツの男にとって不都合な話…彼が特定されてしまうような話かもね」

確かに、それなら書けない…か。
でもそうすると、矛盾が生じないか?

俺「じゃあ、何でわざわざこんな事を書いたのかな」
渡る必要の無い危ない橋を、わざわざ渡っている。
その理由が分からない。

舞「それは、書いてないから想像するしかないわね。ただの自己顕示欲かも知れないし、何か深い理由、目的があるのかも知れない」
俺「そうか…」
舞「ただ、あまり良い趣味では無いわね」
俺「…何で?」

舞「スーツの男は、自分がしたことを世界に発信したのよ。人を殺した事を、全ての人に向けて…「さて、問題です」と、面白半分にね」


48本当にあった怖い名無し:2010/06/09(水) 18:33:26 ID:uFuSNoFn0
赤緑乙

夏になってきたなー
49本当にあった怖い名無し:2010/06/09(水) 20:47:05 ID:oqj2ooECO
赤緑乙
コピペ思い出すのに時間かかった
50本当にあった怖い名無し:2010/06/09(水) 22:39:24 ID:1eEz7SHuO
元のコピペを貼らない理由が分からん
51本当にあった怖い名無し:2010/06/10(木) 00:38:43 ID:9TQYdAZi0
諸説の一つを会話方式にしただけじゃねえかw
でも、いつものより面白かった
というわけで、乙
52本当にあった怖い名無し:2010/06/10(木) 02:02:28 ID:FtKq0Ea10
もとネタぷりーず><
53本当にあった怖い名無し:2010/06/10(木) 13:33:15 ID:8KInphrk0
ストックが無いのに続けるってどういう意味だよ?
つーか、ラノベ丸出しで劣化師匠シリーズはいらんから。
こんな過疎スレを持続させる意味ないので、投下控えてください
アンタ以外には 赤緑という無能作家気取り一人がほそぼそと投下しているだけのスレだから速やかに落とすべし。
次スレいらんだろ。

つーか赤緑、てめえのブログでやれや
54本当にあった怖い名無し:2010/06/10(木) 13:35:44 ID:8KInphrk0
↑は◆7QPLwJZR/Ypf宛ね

もし投下したらしつこく叩きまくるからよろしく
55本当にあった怖い名無し:2010/06/10(木) 20:12:48 ID:TThT+5sL0
これがキチガイだ。 (『このスレと住人を許さない』という荒らし)
粘着して延々と叩いてるのがこんなのと分かれば、気が楽になるのではないだろうか。
構ってしまってスマソ。
56 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/11(金) 01:08:31 ID:Ap9PKuGQ0
part1がそもそも洒落ですから、あまり本気にならず読んで頂きたいです。ジツワモマザッテイルカモシレマセンガ…
以降は、赤緑氏の姿勢を見習いたいと思います。一レスでも楽しんでくださる反応があったら
無言で続けます。無くなったら掲示板にでも行こうと思います。
本筋の方は今別に書いているので、ついでの小話です。小話なのでレスなしでも次回投下致します。

"寺生まれのOさん"
わが町の中心街外れに建つお寺の、二代目住職Oさんには、霊力が完全に"無い"
というか人は誰しも、子供の頃に少なからず不思議な体験をするものだが
寺生まれで秀才だったOさんは、子供の頃から、自分で「不思議だ」と思った現象は
必ず完璧に理解するまで調べ尽くしたそうだ。
中学生の頃に木造のお堂にラップ音がして、檀家さんが怖がれば、
昼夜の温度差や材質などを徹底的に調べ上げ、「これはこういう科学的な反応で音がするのです」
と、皆に分かり易く語った有名な逸話すらある。
子供の頃からそういう理詰めでものを考えることを続けていると、霊力というのは無くなっていくらしく
元々霊的なものへの親和性が薄かったOさんは、どんどんその手の世界から遠ざかり
今では、霊力が完全に消えてしまっている。

ところでOさん寺では町寺には不釣合いな、全国でも有数の国宝級仏像を所蔵している。
この仏像がまた曲者で、二メートルほどの大剣を持った厳つい仁王像なのだが
深夜にお堂で勝手に木魚を連打したり、床を軋ませながら室町時代風な踊り(念仏)を踊ったりと
実にファンキーだが、非常に近所迷惑で困りものな呪物だったのだ。
それで以前に収蔵していた有名なお寺さんが根を上げて、
縁のあるOさんの所に半ば無理やり寄贈してきたわけだ。
当時、Oさんは必要な保存処理を施して友達や檀家さんたちに見せるために、惜しげもなくお堂に飾っていた。

小学生の頃、おかんたちが飲み仲間のOさん寺で、夜明けまで宅飲みをするので、
連れてこられて、別の部屋で飲み会しているおかんたちを尻目に
一人でそのお堂に泊まったのだが、布団で寝ていたら件の仁王様に顔を軽く叩かれ、思いきり覗き込まれた。
57 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/11(金) 01:13:43 ID:Ap9PKuGQ0
涙目で枕を持ったまま、おかんたちの飲んでいる居間に向かい、
おかんに泣きついたら「仏像が動くくらいで五月蝿い」と何故か怒られたので
Oさんに告げてみたら「それはいかんなぁ、行ってみようか」とお堂に付いて来てくれた。
恐る恐るお堂の引き戸をガラガラ開けると、俺の目には仁王様が踊っているのが見えたのだが、
どうやらOさんには何も見えなかったらしく
「うん、何も聞こえねえし、何も見えねぇからわかんねぇな!破っ!」と叫んだ。
Oさんがそう言い放った次の瞬間には、お堂は静まり返り、仏像は元の位置に戻っていた。
個人的には、ただの仏像に戻った仁王様の顔が何かシュン…と寂しそうなのが笑えた。
余裕の後姿で、居間に飲み直しに行くOさんを見て、寺生まれって凄い。と俺は素直に思った。
それから何年も経ち、どうしても気付いてくれないOさんにすっかりやる気を削がれたのか
仁王様もただの仏像になってしまったようだ。最近見にいったら本当に木像にしか見えなかった。

その後、どうやらその件が評判になったらしくOさんのお寺には、
戦国武将の愛刀として血を吸いまくった業物やら、謎の成分でできた有名彫氏の仏様やら、
江戸時代に近松門左衛門の新作演目に使われたことのある、髪が伸びる歌舞伎人形やら、
夜中に絵が動き出す有名浮世絵師の掛け軸やらが集められて、最近は、大層拝観料で儲けているそうだ。
拝観料は500円。展示品の充実の割りには、まあ良心的な価格だと思う。
営業時間は、朝のお勤めが終わってから、夕のお勤めが始まるまでの9:00〜17:00。
儲けたお金は集まった美術品の維持管理と、お寺で定期的に開かれる飲み会の費用で綺麗に消えるそうだが。
58 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/11(金) 01:15:41 ID:Ap9PKuGQ0
飲み仲間のおかんは
「あの人は、全ての霊現象が透過してるわ。
 霊的な世界では"存在しない"ってことよ。逆の意味で聖人様並のレアケースだわね。
 極端に言えば彼には魂すら感じないわよ。ほんとに何で生きてるの?凄い。さすが寺生まれ。
 あと年取っても老けないねぇ…ダンディだし」
と、いつも謎の感心をしている。
興味を持った師匠も一回お寺に行こうとしたのだが、どうしてもたどり着けなかったらしい。
おかん曰く「M君は霊現象の塊のようなもんだから、そこにお寺が"在る"ってことすら分かんないだろうねぇ」
どうやらOさんは、長年住んでいるお寺ごと霊世界から隔絶されてしまったらしい。
今日も全国津々浦々から新たに強力な呪物が持ち込まれるたびに、Oさんはこう言い放つらしい。
「うん、俺には何も聞こえねえし、何も見えねぇから大丈夫だぜ!破っ!」
寺生まれって凄い。改めてそう思った。
了。
59本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 05:54:38 ID:NkN6EXHA0
謎の成分でできた有名彫氏の仏様が気になる…
60本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 14:58:08 ID:oTo6OCkZ0
警告したのにノコノコと投稿しやがってこの基地外が
師匠シリーズの後は寺生まれシリーズのパクリかよ
酷いなコイツ。
つーか、ストック無くなったって言ってたくせに、もう話投下してんじゃん。なんでわざわざ嘘つくの?ルーピーのまねか?
お前も自分でブログ作ってそこでやれや
赤緑の姿勢に習うんだろ?とっとと消えろクズ
61本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 15:00:42 ID:oTo6OCkZ0
>>55
はあ?おれは「このスレと住人を許さない」なんて一言も言ってないが?何処で言ってるんだよ?
此処の住人は平気でで捏造してまで人を貶める輩ばかりなのか?
自分で吐いた言葉だからソース持って来いや
持ってくるまでいつまでも要求するからな
62本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 15:11:45 ID:Wsu8hqgZ0
意識しなければいないものと同じってことか
見えないってこともまた存在していないってことだからまたしかり 
投下されないよりどんなものでも投下してくれるほうがスレ的にはいいのかも
とりあえず乙
63本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 16:04:47 ID:oTo6OCkZ0
ほう、どんなものでも投下してくれればいいのか。なるほど
そこまで言うんならしょうがないなあ、前にあった3行怪談シリーズでもやりますか
64本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 16:05:51 ID:oTo6OCkZ0
雨が降ってる
昨日はカエルが降ってきた
幽霊がいました
65本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 16:06:29 ID:oTo6OCkZ0
デジカメ買いました
撮りまくりました
幽霊がいました
66本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 16:07:22 ID:oTo6OCkZ0
いやあ、楽だわ。ただ思いついた事を羅列するだけで喜ばれるならいくらでも投下出来るぞ
期待していてくれ>>62
67本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 16:08:24 ID:oTo6OCkZ0
山に登る
川を泳ぐ
幽霊がいました
68本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 16:09:10 ID:oTo6OCkZ0
夕日を眺める
星空を眺める
幽霊がいました
69本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 16:10:08 ID:oTo6OCkZ0
とりあえずここまで。
明日からもいっぱい3行怪談投下するから楽しみね>>62含めてここの住人様
70本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 16:12:44 ID:yZi2jLXKO
文章が巧いからスラスラ読める。面白い!
これからも時々小話も書いてほしい。
今回出てきた他の忌まわしい品についてとか。
71 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/11(金) 18:25:48 ID:Ap9PKuGQ0
小話その2、気楽に書いたものなので気軽にお読みください。本編は近日中に投下します。
自己責任で読んでください。一応警告はしたので始めます。

 "闇"

こいつはH。年齢は32歳。殺しをはじめ幾つもの重犯罪の容疑で、この取調室に居る。
罪を認めるでも否定するでも無く、脅しも宥めすかしも通じない。
何時間もかけた取調べにも、ヘラヘラして一つも動じた様子はない。
「私は社会経験殆どないですけど、刑事さんたちは職業柄色々と社会の怖いものを見て来たわけですよね」
前髪で眼が隠れたそいつは唐突に、うつむいたまま机に語るように喋りだした。
「いや、私のような道を外れた奴でもよく思いますよ。本当に怖いのはその辺に転がっている"平凡"です。
 でも私みたいな何も無い人間でもね、少しは面白い話を持っているんですよ」

小5の時にコックリさんもどきに嵌りましてね。"天子様"って言うんですけど、
なんのことはないやつです、呪文の"コックリさん"の所を"天子様"に置き換えただけってやつです。
あれって最後に十円玉から手を離しちゃいけないんですけど
私、その日は一瞬だけ指を離してしまいましてねぇ。
勿論他の子たちには黙って十円玉に指が付いたふりをしてたんですが
帰らなかったんですよ。その"天子様"。しかも私に憑いちゃいました。
いやいや、からかってなんかいませんよぉ。ホントの事です。
その後は、常に"天子様"は私の頭上に漂っていました。
お姿は、聖母マリア様に良く似ていたかなぁ。そうそう有名な宗教画で描かれているような。
で、その天子様に憑かれたわけなんですが、"天子様"はなんと願いを叶えてくれるんです。
頭の中で願えばいいんですよ。"こうしてくれ"って。もし今居たら、
そうだなぁ。残念ですが既に起こった事は変えられないので
"目の前に居る刑事二人を殺して、それから安全に逃走できるようにしてくれ"って頼みますかねぇ。
ちょっとぉ、襟を掴まないでくださいよ。ゴホンゴホン。
大丈夫ですよ。その"天子様"も今はもう居ないんですから
72 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/11(金) 18:26:34 ID:Ap9PKuGQ0
天子様を使った、最初の願い事なんですが
当時恥ずかしい事に、いじめられてたんですけど、そのいじめっ子の一人を自殺させました。
放課後、いつものごとく数人に囲まれて雑巾を投げられて、箒でぶん殴られてたんですけど、
頭の中で"だれでもいいからこいつらを殺してください"と願ったんですよ。
そしたらそいつが…そいつらのボスというか、まぁクラスのジャイアン的な奴だったんですけど
いきなり虚ろな目になって、そのまま3階の教室から飛び降りました。
その時は重症を負っただけで死ななかったんですが、入院先で自ら酸素吸入装置を引き抜いて死にました。

その後はトントン拍子ですね。
いつだって"天子様"にお願いすれば私の人生は上手くいきました。
高校や大学受験も楽勝でした。彼女だって作り放題。私は中高合わせて約三十人の女と付き合いました。
ずっと二股でしたが、ばれる事は無いですよ。"天子様"のおかげで。
好奇心から言えないような事も沢山しました。外で裸にして鎖に繋いで犬の格好させたりとかね。
女の子が拒否したら"天子様"で操ってでもやらせました。
でもそれほど楽しくはなかったんですよ。たぶん私はノーマルだったんでしょうね。
大学に入ってからはもっとです。常時三股くらいはかけてましたかねぇ。
何しろ刑事さんもよく知っているような名門です。政治家も多数排出してる所です。
今はこんなですけど、昔は顔も上の中くらいはあったもんで、あ、それは元々です。すいませんねぇ。
合コンでは、大学名を言えばホイホイ女が食いついてきました。
刑事さん、そんな顔をしないでくださいよ。
私も昔は、自分で言うのも何ですが、付き合いも良くて友達も多かったんですよ。
最近の言葉で言えばイケメンでリア充ってやつです。知ってます?
あんまり女にもてるんで、男もどうかな。とか思って試したこともありました。
まぁ、確かにあまり良くは無かったですね。言うほど悪くも無かったですけど。
ハイハイ、自慢話はいいので天子様に関してもっと聴きたいですか。そうですねぇ。
こういう話にはペナルティもありがちなんですけど、そういうものは無かったですねぇ。
強いて言えば、私の小学校時代に"天子様"をやった同級生が私が高校生の時に次々自殺したんですけど
まぁ関係はないでしょ。たぶん。
73 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/11(金) 18:27:46 ID:Ap9PKuGQ0
そんなわけで随分楽しくやっていたんですが、
だけど、あの日でした。あの日を境に私の人生は変わってしまったんです。
今から11年前の11月9日でしたか、友達と楽しく飲みに行って別れた帰りでした。
ほろ酔い気分で、明日の講義のうざったさに辟易しながら、
当時三年で就活中だったんですが、どこの会社に入るか、どこが一番見栄えがいいかとか考えてたんですよ。
…何しろ天子様が居るんです。選り取り見取りですよ。
入ってからのことも"天子様"に頼めば、全て上手くいくので心配はしていませんでした。
まぁ、そんなわけで、タラタラと自宅に帰ろうとしてたんですが、
忘れもしない、前から細身で長身の若い男が歩いてきたんです。
何の変哲も無い野郎だったんで、普通に横を通り過ぎて行ったんですが
驚きましたよ。すれ違いざまにその男の肩から、私の頭上へと黒い影が伸びると、何かを掴みました。
そこまでは「気のせいだろ、飲みすぎたな」って思って、そのまま通り過ぎようとしたんですが
背後でゴギャボリボリって骨が砕けるような嫌な音がしたので、私は振り返りました。
そこで私は見たんですよ。私の上に漂っていたはずの"天子様"を
そいつの肩口から出ている、何かが喰うのを。

…それからは私の人生、転落真っ逆さまでね。
父がいきなりリストラされ、母も長年のギャンブル癖で借金があることが分かったんで
大学は授業料が払えずに休学し、そのまま何年か経ってから退学しました。
まぁ、今まで上手く行き過ぎてた分、軋みが着たんでしょうね。
木造の家からいきなり大黒柱が引き抜かれたようなもんです。
で、その後、まともな努力もしないで、行き着いた先が今の私です。
その間の家族の不幸とかもありますが、皆さんも連日のワイドショーや捜査で良くご存知だろうから、割愛しますね。
私自身は"貧すれば鈍す"というかその後の人生と、やったこと自体は、つまんない割と良くある話ですよ。
言われるまでも無く自業自得ですよね。"天子様"に頼り切って努力の仕方なんて知らなかったんですから。
74 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/11(金) 18:29:58 ID:Ap9PKuGQ0
ところで刑事さん、私はね。
長い時間後悔をして悟ったんですよ。この世は無機質で無常だって。ははは、まぁ有りがちですかね。
大学であれほど居た友達彼女は、辞めてからは蜘蛛の子を散らすように居なくなり、今は一人も残っていません。
"天子様"によって普通の青春の数倍の、奇跡のような濃い経験をしたはずなのに
なんてことない"平凡"な不幸が私の全てを奪い去ってしまったんですよ。
いやいや違います、得体の知れないものに天子様を奪われたことだけじゃありません。
その後の私の人生の過ごし方もですよ。
虹色の奇跡で溢れていたそれまでの私の人生を、
少しずつ、冷たいコンクリートで塗り固めるようにやってきた"平凡"のことです。
でも、私にも言い分があるんです。何をやっても自信がつかなかったんですよ。
ええ、そこに書いてある一通りの犯罪をしてもです。あ、これゲロッちゃったことになるんですよね。
しまったなぁ。話もあと少しなのに。まぁとにかく、その暗澹たる経歴も
人には出来ないような面白いことやろうとしたんだけど、やっぱり上手くいかなかった結果ですかねぇ。
以前の人生があまりに眩し過ぎたが故に、何を見たって薄暗くて虚しかったんです。
ふぅ…喋りたいことも喋ったし、もういいかな…刑事さん、では、改めまして…ゴホン。
その調書に書いていることは全部真実です。
私は、罪を認めます。反省もしています。これで良いでしょうか?
"平凡"に抗ってきましたが、もう独りで生きるのに疲れました。私も平凡の一部になりたいと思います。
誰かの真似事ができるなら、囚人だって別にいいじゃないですか。

その後Hは、医療刑務所に送られてしばらく後に回復したとみなされ、今は模範囚として服役中だ。

"後日談"
「なーA、今さあ、昔"アレ"が喰ったやつのこと今思い出した。
 今まで沢山いるんだけど、あいつのは特にやばかったなあ…」
「へー」
「浅黒いマッチョでスキン親父の天使モドキが頭上に浮んでいるわけよ、なんか怖かったわ」
「それは少し見たいwwwww」
75 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/11(金) 18:34:16 ID:Ap9PKuGQ0
なーA、今さあ、昔"アレ"が喰ったやつのこと「今」思い出した
の"今"は無しということで、訂正お願いします。
76RADEONHD5770:2010/06/11(金) 19:14:21 ID:XkRizkHp0
◆7QPLwJZR/Ypf ←文才無いのは仕方ないが言い回しが爺臭いのが気になる
77本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 22:03:58 ID:Wsu8hqgZ0
>>63  どーもすいませんっしたっ!!わたしがまちがってました ごめーんね?www
78本当にあった怖い名無し:2010/06/11(金) 23:39:40 ID:cScPHm0c0
誰かトンガラシの作品をまとめてるサイト知らないだろうか?
たまにあのブッタ切り感を味わいたくなるんだが、全くみつからない・・・
79本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 18:10:04 ID:2w2tpZ5NO
赤緑ってblogから見ると最低でも30代後半だよな…
なのにあの程度の文章力かよ。職場で報告書とか書いたことないなか
80本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 19:48:01 ID:QdvngAx60
ひとを貶す文章で噛んじゃうってそうとう恥ずかしいよな・・・
お前の作る書類もひどそうだなw
81本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 20:45:30 ID:NUuyFKED0
なのにあの程度の文章力かよ。職場で報告書とか書いたことないなか
程度の文章力かよ。職場で報告書とか書いたことないなか
職場で報告書とか書いたことないなか
書いたことないなか
ないなか
ないなか ないなか
ないなか
ないなか ないなか ないなか ないなか
82本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 20:48:03 ID:NUuyFKED0
>>80
ひと、そうとう、ひどそう

なんで平仮名?変換ぐらいしろよ
お前の作る書類も酷そうだな。人に読んでもらおうという気持ちこれっぽっちもないだろ
83本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 21:25:33 ID:c1p1NBr+O
賑わってるね
84本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 21:41:14 ID:oH5wkXt20
湧いてるの間違いだろ
85本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 22:51:33 ID:CrRQGXmy0
>>33
「何?これ」短い話なので、すぐに読み終わった姉貴が聞いてくる。
「なぞなぞ、かな?これといった答えが出ていない話なんだ」
「…答えの出てない、なぞなぞ?」と、いかがわしい物でも見る目で俺に問いかける。
「いやぁ、どうだろう。」なにしろ、答えなど存在するのかも疑わしい話だ。

「その道、ネットとかじゃそこそこ有名な話なんだけどさ…」
姉貴はへぇ、とだけ答えて視線を文章に戻す。
「俺も古乃羽たちもお手上げ状態。でも、舞姉さんなら何か分かるかな〜なんて」
うーん、と小首を傾げながら2度3度と読み返す姉貴。どうやら真剣にこの問題にあたってくれているようだ。
お世辞が効いたかな?なんて思っていると――

「…誰が書いたのかは、分からないの?」
暫らく続いた沈黙の後、唐突に顔をあげヒントを求める。
確かに誰が書いたか分かれば、直接聞けはせずとも何かの判断材料くらいにはなるかも知れない。
「話の出所すらわからないし、ね。」

赤緑の文って○○「     」がうざいので改編してみた。話自体もつまらなそうだし読んでない。
86本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 22:57:07 ID:2b0z0GSB0
オリジナルの方がマシだね
87本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:11:57 ID:NUuyFKED0
ワールドカップ
ピッチ上に
幽霊がいました
88本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:12:29 ID:NUuyFKED0
ビルの上
走ってみた
幽霊がいました
89本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:13:02 ID:NUuyFKED0
汗かいた
洗濯物干した
幽霊がいました
90本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:13:39 ID:NUuyFKED0
神と悪魔
ちんことまんこ
幽霊がいました
91本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:15:11 ID:NUuyFKED0
>>85
おいおいせっかく投稿してくれたんだから荒らすなよ
テンプレ読めないのか
>・このスレでは作品への批判は荒らしと認定していますので、批判はご遠慮ください

とあるだろ
ギャハ
92本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:16:58 ID:NUuyFKED0
アルゼンチン良い動きしてるなあ
メッシも苦手の代表戦だけどいい感じでシュートに絡んでるし
93本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:19:18 ID:NUuyFKED0
>赤緑の文って○○「     」がうざいので改編してみた。話自体もつまらなそうだし読んでない。

せめて読んでから叩けよw
ま、本当につまらないんだけどな
奴がなんでこのスレに執着してるのか理解できんわ
実質こいつしか投稿してないじゃん。前スレ後半は思い切り過疎ってたのに
最近湧いてきたパクリ野郎も長く続くとは思えんし
94本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:20:44 ID:NUuyFKED0
韓国勝ったんだな・・・・
また奴らが調子に乗るのかと思うと腹立つわ
95本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:25:03 ID:NUuyFKED0
>以降は、赤緑氏の姿勢を見習いたいと思います。一レスでも楽しんでくださる反応があったら
無言で続けます。無くなったら掲示板にでも行こうと思います。

ここに投下するやつってみんなこんな事言うよな
こんな過疎スレで何投下されても思考停止で「乙」と繰り返すだけの基地外しかいないこんなスレにそこまで執着する意味が分からん
というか、同じ奴が名前変えてるだけなんだろうな
昨日今日に投下し始めた奴が叩かれながら留まるのは不自然だわ
96本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:26:50 ID:NUuyFKED0
前スレで「もう来ません」の後に「ここで続けてよ」

というやりとりも自演丸出しだしなあ
第三者に「ちゃんと評価してくれてる読者いますよ」とアピールしてるつもりなんだろ?
こすいんだよやり方が。
97本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:28:19 ID:NUuyFKED0
そういえば前にwiki作ってたやついたけど、ちゃんと更新してるのか?
アフィで金儲けさせてくれ、とかなんとか言って総スカン食らってた馬鹿がいたけどw
98本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:29:42 ID:NUuyFKED0
しっかし、WCの試合、応援の「ブーブー」がうるせえな!蠅がたかってる音にしか聞こえん
南米ではやってるのかあれ・・・
99本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:42:11 ID:XeRoBS8TO
>>85
学芸会の台本を全部書き直してくれないかw
100本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:49:43 ID:FXmeUF8F0
元が元だけに書き直してもたかが知れてるわけだが
101本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:55:08 ID:NUuyFKED0
綾瀬はるかっておっぱい大きいな
あれを利用して映画なんかできないものか?
102本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:57:08 ID:NUuyFKED0
学芸会w
そう言えば赤緑ってそう言われてたよな
しかもこいつ、洒落怖でそこそこ評価高い作品は自分が書いたって吹聴してるんだよな
チョンとやってること同じ
103本当にあった怖い名無し:2010/06/12(土) 23:59:26 ID:NUuyFKED0
クラスに一人はスポーツまったくできないのに野球オタ、サッカーオタはいる
104 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/13(日) 01:08:17 ID:1IsEdQPc0
【登場人物】
A→俺。一応主役
M→俺の師匠。恥ずかしいので、会話ではMさんと呼んでいる。
おかん→俺のおかん。つよい。
"アレ"→師匠についている怖い何か。霊体を食べる。名前はまだない。
"球体"→町内の踏み切りの上にずっと浮いている怖い何か。
【今回関係の無い方々】
Iちゃん→遠縁の親戚。"球体"に取り込まれ、頭脳として利用されている。
Oさん→寺生まれの二代目住職。物質世界の住人。心霊現象の塊の師匠とは縁が無い。
H→可哀想な人。現在服役中。

自己責任で読んでください。一応警告はしたので始めます。

 "河童神"

俺の長年の心霊体験によると、霊的に本当に強い奴は殆ど動かないし、
(Mさんの"アレ"は珍しい例外だとしても)
以前話した"球体"のように、自分からは滅多に手を出さない。

わが町にある小学校の、旧館西校舎3階の東端階段の4段目には、
河童のような化け物が座っている。
目の部分には真っ黒な穴が二つ開いていて、背丈は推定170cm前後、
硬そうな緑色の皮膚でできた体躯は、今で言う細マッチョだ。
黒のライダースジャケットっぽいものを着て、未開住民が使うような飾り槍を腕に抱え
何をするでもなく、頬杖をついたまま、でかい口でニヤニヤしている。
霊感のある子は低学年の頃に1回は、3階で泣くのが儀式のようになっていて、
俺も2年生のときに、図書館に行くために、ワクワクしながら初めての3階に上がり、
異様な風体の河童神を見つけ、驚いて泣きまくって大変なことになったようだ。
現役高校生の(心霊系)バイト仲間に聞いてみたことがあるが、
彼のときも居たようで、彼の小学生の弟くんによると、未だにまったく同じ姿で居るらしい。
105 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/13(日) 01:10:18 ID:1IsEdQPc0
5年生の頃、授業参観に来たおかんに、この河童もどきについて訊くと
「多分、この一帯の土地神が変化した御仁だろう。"祟り神"と"神"の中間のような存在だわね。
 戦争での爆弾投下や、その後の宅地造成で川を汚したり、お墓を平らにして小学校を作ったりもしたから
 住処を追われなすったんだろうねぇ。
 自分の神域を人間に掻き乱され破壊され、相当の憎しみもあるんだろう、
 だけど、それまで何百年も敬ってもらった愛おしさも、同時にお持ちだろうから、
 どちらに為るかずっと、態度を決めかねていらっしゃるんだろうね」
ということを長々と話した後、
「私が生まれる前から悩んでいるんだよ。悲しいお方さ」とボソッと呟いた。
小学生には難しい内容だったので殆ど脳内スルーしつつ、一番の疑問を尋ねてみた。
「なんでこの学校に居るの?」
「元々子供が好きな御仁だったらしいから、今は守るべきものも住む場所もないし、
 悩むついでにここに来て、あんた達を見守っているんだろうねぇ」
「感謝しなよ。だからこの学校では創立以来、人死も大怪我もないのよ」
そう言えば、この学校に救急車が来たことも無いし、
勤めている教職員の事件や、不審者が入り込んだという話すら、俺が大人になった未だに聞かない。
土地神でなくなってまで人間を気にかけるとは、元々はとても慕われた穏やかな神様だったようだ。
河童もどきでは何か失礼なので、"河童神"とでも呼ぼうか。
そういう事情で、今では師匠及び"アレ"には、
絶対に近寄られたくない&知られたくない心霊スポットナンバーワンだ。

と俺が考えていると、大抵の場合どっかから聞きつけてくるのが、うちの師匠である。
106 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/13(日) 01:16:25 ID:1IsEdQPc0
おかんは仕事で明日の朝まで居ないし、俺が悠々と自室のベットに寝転がって漫画を読んでいると、
師匠が入ってきた。
「チャイムぐらい押してくださいよ…ゲッ、ってかまた清めてねぇよ…
 高い霊水をいつも玄関に用意してあるんだから、せめて2、3滴かけるぐらいはしてください」
師匠が持ち前の暗黒霊気で家を穢したことによる、おかんの連帯責任制裁に怯える俺とは対称的に
なぜか凄く幸せそうな師匠が、気色悪く擦り寄ってくる。
「なぁなぁ、Aくぅ〜ん」
「何すか、その聞いたことのない猫なで声。キモイすよ」
「ぼくぅ〜"河童の神様"見たいなぁ〜みぃ〜たぁ〜いぃ〜な〜」
この時ばかりは流石に、この人の凶行癖に呆れてつい口が滑る。
「…お前はアホか」
「ちょwwwww年上に向かってアホとはなんじゃい」
「うっさ……(挑発に乗るな。落ち着け)…こないだの"球体"で懲りてくださいよ。そんなに妖怪大戦争がしたいんですか」
「いいもんねー。ガイドしてくれないなら一人で行くもんねー。場所はもう分かってんだ。西○小だろ」
「げっ…」心霊関係の場所を知って一度"行く"といったら、間違いなくこの人はそこに行く。
しかも少しでも興味を持ったら自重しない。とことん対象を調べつくすのだ。
だが今回は本当にヤバイ。一人で行かせた場合、いくら気をつけていても
まず間違いなく"アレ"が発動して、河童神か師匠のどちらかが酷いことになりそうだ。
この際師匠はどうでもいいが、河童神に何事かあったら大変だ。
俺の町で育っていく子供たちの未来を、如いてはこの町の平和を守らねば。
しかし何よりも今重要なのはあれだ。何とか被害を軽減しないと…
「分かりました。でも代わりにおかんの説教は俺と一緒に受けるように。師匠が居れば半分以下で済みますから」
おかんは基本的に師匠の境遇に同情しているので、この人が居れば説教はいつも温いのだ。
107 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/13(日) 01:17:47 ID:1IsEdQPc0
「よっしゃ計算どおり!了解した。じゃあ明日の午前1時半に西○小の正門前に集合な!」
「嵌められた…」愕然とする俺を尻目に師匠はドタドタと階段を駆け下りて出て行く。
わざと清めてなかったのかよ…。いつも天然で忘れているのに、それって何か意味が有るのだろうか…。
今更とんでもない黒い邪気を感知した、玄関インテリア兼警備用のトーテムポールが
ヴォヴォヴォと揺れ唸る音だけが我が家に響き渡っていた。

目覚ましがうまく鳴らなかったので、約束の時間に10分遅れでたどり着いた。
師匠は校門前で、霊除けの煙草を吹かし、周辺にちょっとした結界を作って待っていた。
この人なりに"アレ"が"河童神"に見つからないように気を使っているのかな、と思ったのもつかの間、
俺を見かけると眼をキラキラさせて、走りながら近寄ってくる。
「これなーんだ」
どう見てもこの学校の鍵束です。本当にありがとうございました。
「A待つついでに、グラウンド内をブラブラしてたら、
 用務員のおっちゃんが窓開けっ放しで爆睡してたから、ちょっと借りてみた」
どう見ても立派な窃盗と不法侵入です。本当にありがとうございました。
「少しだけ学校の敷地内に入っちゃったけど、煙草も吹かしてたし、大丈夫だよな!
 今のところ強力なものは感じないし!」
"神霊"というのは、霊除けの煙草ごときでは、気休めにしかならない相手なのは知っているはずだが…。
どう見ても迂闊です。本当に(ry
しかしなんで、今回はそんなにテンション高いのかこの人は?と訊くまでも無く、師匠が喋りだした。
「俺さ、記憶に無い3歳のとき以来なんだ。神とか仏が居る所に行くの。
 ほら神域には"アレ"が居るから、近寄れなかったり、自重したりするだろ。
 どんなものなのか他人から聞かされたり、書物で見たり読んだことがあるだけ。
 だから憧れなんだよ。神様仏様ってどんな御姿をしてるんだろうな。
 ああきっと神々しくて、御姿を見られたら天にも昇るに違いないはずだ…」
神と言っても"元"神で、しかも半分近く祟り神なのだが、
今のこの人の幸せな脳みそはその辺のことを上手くスルーしたのだろう。
とりあえず遅れたことの侘びを入れてから、気になったことを訊いてみる。
108 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/13(日) 01:18:39 ID:1IsEdQPc0
「ところで、その右肩から出ている邪悪な霊気は何ですか?既に漏れてませんか?」
師匠の肩から10cmほど、"アレ"の黒くてデカイ指先らしきものが見える。
幸いにして河童神は"アレ"を見つけなかったようだが、"アレ"の方は早くも獲物を見つけたらしい。
「しまった、もう出ていたのか…気付かなかった。見もせずに、Aの母さんの所に行くのだけは嫌だな…」
「…それだけ強力な"神霊"なんですよ。ハイ、こういう事態も想定して、おかんの仕事道具借りてきましたよ」
俺は、ナップサックから、霊を封じ込めるための呪文が描かれた、正方形の"お札シール"の束と、
透明な水溶液が入った青白いガラスボトルを取り出す。もちろん全て無断借用だ。
「まずは、この霊水を頭から身体にぶっ掛けてください。大丈夫、数秒で揮発するので乾きます。
 それからこのシールを右肩に5枚。残りの28枚は体中に均等に貼ってください」
ぶーぶー言っている師匠の頭に水溶液をぶっ掛け、それから二人で手早く体中にシールを貼っていく。
全て終わったら師匠の身体がわずかに光沢を浴び、肩付近からギュウウウウウウウという、
小さな嫌な音がして、少しだけ出ていた"アレ"の指先が消えた。
「これで"アレ"が完全封印されると同時に、師匠の霊質は一時的に一般人並になります。
 これなら河童神に近づいても大丈夫なはずです」
「おっ、確かに強力な封呪だな。もしかして毎回これ使えば、便所スリッパから逃れられるんじゃないか?」
「あくまで応急処置なので…多分1時間弱で効果は切れます。便所スリッパはどちらにしても避けられないですよ。
 それに、今の一式で大体仕入れ値5万ほどです…今回だけでもやばいのに、
 毎回やっていたら俺がおかんから殺されます。早めに行って、見たらすぐに帰りましょう」

足早に西校舎の正面玄関に向かい、鍵を使って忍び込む。これで俺も立派な軽犯罪者だ。
薄暗くてかなり怖いが、校舎内に怪しい気配はまったく無い。多分河童神が他の霊を寄せ付けないためだろう。
俺のガキの頃のおぼろげな記憶を頼りに2人で素早く、目の前にある中央階段を上がっていく。
3階に着いたので、河童神が居る東端の階段に急ぐ。
109 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/13(日) 01:19:33 ID:1IsEdQPc0
居た。一応用心のために2メートルほど手前で立ち止まる。
俺の小学校時代6年間不動だった河童神は、
人の居ないこの時間帯も、階段の4段目に腰掛けたまま、正面を向いてニヤニヤしていた。
正直俺はかなり感動していた。そこに居た神霊は俺が子供の頃に見ていた姿形そのままだった。
霊体とは言え、こんなにも変わらないものがあっていいのだろうか、とさえ思った。
「すげぇ…」と、思わず漏らしてしまった俺の隣で、師匠はガックリと肩を落としていた。
「えっ、なんだ、ただの河童じゃん。河童の化け物だろこんなの。
 この程度なら山ほど見たことあるぞ。えっ、あれ神様は?俺の仏様はどこなのA君」
錯乱気味の師匠はほっとくことにしよう。自業自得だ。
俺は一通り感動した後に、気持ちが落ち着くと、何かいきなり帰りたくなった。
やはりこの歳になっても、夜中の校舎というものは不気味なものだ。
今夜の満月に照らされた微妙な明るさに、コンクリートのひんやりとした無機質さも相待って、
ご加護で心霊現象が一切ないとしても、あまりいい感じはしない。
さらに雰囲気がどこか妙なのだ、ごく僅かだが、周囲の空気にピリピリとした緊張感が含まれている気がする。
「Mさんもう帰りますよー。封呪のタイムリミットもあるし、俺明日早いんすから。
 さっさと、見つからないように鍵を返して出ましょう」
「…分かった…帰ろう」
かなりむくれてしまった師匠を連れて、立ち去ろうとしたその時だった。
周囲の空気が殺気立ったものにガラッと変わる。二人で同時に河童神の方向を振り返る。

河童神の顔の二つの空洞に、目玉がグリグリと競りあがってきて「ブチャッ」と嵌り、
その血走った眼球で俺たちを睨みつける。
そして何十年もニヤニヤしていた口が、瞬時に固く結び直されるや否や
ドンッ!と槍をコンクリの廊下に突き立てて、ゆっくりと立ち上がっていく。
明らかに憤怒の様相である。
これが元土地神の怒りなのか。立っているだけでヒリヒリして痛い。
「おいA、あれ、なんかヤバクないか…。こっち来るぞ。逃げよう!」
河童神は眼を合わせただけで殺されるような怒気を放ち、静かにこちらに近づいてくる
「やばいっすね…、Mさん走りましょう!」
110 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/13(日) 01:20:41 ID:1IsEdQPc0
俺の長年の心霊体験によると、霊的に本当に強い奴は殆ど動かないし、
(Mさんの"アレ"は珍しい例外だとしても)
以前話した"球体"のように、自分からは滅多に手を出さない。
攻撃されてもいないのに自分から動く場合は、
相手がとにかく生理的に気に入らないので、跡形もなく捻り潰したい時だけだ。
不意の天災と同じように、そこに理知的な意志は無い。

とりあえず中央階段まで、二人で全力疾走する。
半ば飛ぶように、階段を滑り降りていく。
1階の正面玄関が見えたときだった。河童神の大きく伸びたシルエットが靴箱の前に浮かぶ。
「ここは駄目だ!!2階に上がり直して、別の階段から降りるぞ!!」師匠が叫ぶ。

封呪があるので、調子に乗って師匠を近づけすぎたのかもしれない。相手は"元"とは言え聖なる神様。
師匠の中に眠る、どう考えても良いものではない"アレ"に気付き、やはりとても癇に障ったのだろう。
今回はお札シールと霊水ぶっかけによって、かなり奥深くに"アレ"が封じ込められているとは言え、
この状態の河童神に、あまり近づかれると本格的に発現する可能性がある。
今日初めて神霊の怒りを眼にしたが、ここにさらに"アレ"が加わるとなると
火に油が注がれるのは間違いなく、師匠がヤバイ、というか俺もヤバイ。
ついでに敷地内に居る用務員さんもヤバイかもしれない。

2階に上がると、廊下に河童神のシルエットがまた見える。
ユラユラとしたその影が次々に分身分裂して、2階の廊下を埋め尽くしていく。
「ここも駄目だ、上がりましょう!!」
3階の廊下を大の大人が二人して、必死こいて、走る走る。
俺はおかんを手伝えるように日頃から身体を鍛えているが、
運動不足の師匠は息が切れてもうヒーヒー言っている。
たまたま鍵の開いていた西端の図書室に滑り込む。
師匠と共に、窓際の机の下に滑り込むのと同時に、河童神が入ってくる足音が聞こえた。
111 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/13(日) 01:21:26 ID:1IsEdQPc0
近づいてくる河童神をどうするか、俺は考えを巡らせていた。
"こうなったら残った霊水をぶっ掛けるか…いや…殆ど効かない可能性が高い…どうする…"
師匠から「おい、A」と声をかけられ、振り向こうとすると、
不意に机の外に蹴り出される。
何がなんだか分からず、絶句して顔を上げると
目ざとく俺を発見したらしい河童神が、もう目の前に立っていた。
"師匠が裏切ったのか?いや、そんなはずはない…でもなんで?"混乱した考えが次々とよぎる。
そんな思考を遮るかのように、河童神が"ドンッ"と槍を床に当て
ヌッと、俺の顔の前に憤怒の表情を突き出してきた。
「もう駄目だ…」と思った、まさにそのときだった。
「A!!!!!」俺を囮にして、自分は窓を開けていたらしい師匠が、
俺の手を掴んで引っ張り、そのままベランダから飛び降りる。
グラウンドに真っ逆さまに落ちる二人、「死んだ…」と思ったのもつかの間
師匠が俺の下にうまく身体を入れ、フワッと地面に着地した。
「こいつが少しでも出現しているときは、俺の身体は完全に守られているみたいなんだ」
怒りの河童神に接近されすぎた影響で、どうやらまた"アレ"が少し漏れていたらしい。
仰向けになっている師匠の肩から、15cmほどのデカイ指先が3本見えた。
「理科室に河童もどきが入ってきていた時には既に漏れていたし、今回はそいつを利用したわけよ(キリッ」
「ナイス判断です!!助かりましたよ。」
いつもならムカつく師匠のドヤ顔も、今だけは無茶苦茶頼もしく見える。

立ち上がってグラウンドの砂を払った師匠が
「じゃあ、さっさとこんなやばい所は立ち去ろうぜ」と提案し、
俺も「そうしま………」と言いかけた時だった。
砂埃を上げながら、前方の小学校正門前に河童神が降り立った。
どうやら逃がしてはくれないらしい。
「畜生!まだ追って来てんのか!!あの変態河童野郎!!!こうなりゃヤケだ!やってやんよ!!!!」
自暴自棄になった師匠が、お札シールをまとめて身体から剥がしかけた時だった。
112本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 04:33:35 ID:Z5Dk5N4K0
連投規制にでも引っかかったか?
113本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 07:58:36 ID:f1HGLAI+0
     )、._人_人__,.イ.、._人_人_人
   <´ 河童じゃ、河童の仕業じゃ! >
    ⌒ v'⌒ヽr -、_  ,r v'⌒ヽr ' ⌒
// // ///:: <   _,ノ`' 、ヽ、_ ノ  ;;;ヽ  //
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114本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 13:23:04 ID:/oy2jvA6O
破天荒すぎてワロエない
115本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 17:12:34 ID:x5LD3seuO
証拠うぷとかはしないが、忍の例の貼り紙を見た@板橋区某交番
116本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 18:53:28 ID:VZy9j9jA0
>>115
行方不明者の貼り紙って交番の外に貼られてるものだっけ?
それとも交番内?
117 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/13(日) 19:31:15 ID:1IsEdQPc0
河童神は数センチ宙に浮きながら、グラウンド端の苔むした一角に、
その長いひとさし指を、静かに指した。
そして驚くことに、とても楽しそうに「ケタケタケタ」と笑い、
そのまま消えた。
「………」
「…あそこに何か作れって言ってるみたいですね」
「…わかりやしーなー…どうせ神社とかが欲しいんだろう…。
 …クソッ…無駄に脅かしやがって、あのストーカーハゲ河童は全部分かった上で、
 俺たちで遊んでいたんだろうな!!」
憤懣やるかたない師匠が蹴り上げたグラウンドの砂が、満月の夜空に舞った。

鍵は俺が帰り際にこっそり用務員室に返してきた。用務員のおっちゃんはまだ深く眠り込んでいたが
もしかしたら、最初から河童神に寝かされていたのかもしれない。
家に帰って、連絡を聞き仕事を早めに切り上げてきたおかんに平謝りしつつ、今回の事情を詳しく話したら、
なぜか一切説教は無かった。逆に気持ち悪いほどニコニコして、師匠の"アレ"をすぐに封じてくれた。
師匠は便所スリッパで叩かれまくられ、結局涙目だったが。

その後、おかん率いる町内会と、おかんの魔の手によって洗脳された西○小PTAが
「○○地区の土地神様の復権と地域振興を願って」とか謎の理由で
グラウンドの隅に鳥居と小さな神社を作った。というか市議会に無理矢理作らせた。

河童神は、神社と校舎三階を気まぐれに行ったり来たりしているようだ。
前述の弟くんによると、相変わらず頬杖をついたままニヤニヤしているが
最近何か、とても幸せそうらしい。
それと神社を作ることによってご加護が広がったらしく、
ここ数ヶ月小学校とグラウンド周辺の町内では交通事故が一軒も無い。
「あんた、あの神様に気に入られたみたいだよ、良かったわねぇ」
とおかんにこないだ言われた。気に入ってくれるのは嬉しいが、
たまにニヤニヤしながら、人の夢に出てくるのはやめて欲しい。
っていうかこっち見んな。時にはなんか喋れ。いいから早く帰れ。了。
118 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/06/13(日) 19:33:18 ID:1IsEdQPc0
書けた。本編part5、以上です。では
119本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 21:09:02 ID:8chbd2LH0
書く気満々の癖に何が「ネタがつきたのでもう書かない」だよ?
やっぱりそういう発言して気を引く気だったんだろ?気持ち悪い
このスレの作家きどりってこういう工作ばかりする輩ばかりなのはなんでだよ
120本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 21:11:35 ID:8chbd2LH0
そもそも師匠ってなんだよ?馬鹿じゃねーの?
いい歳してくだらんスレにくだらんパクリ創作なんか投下して大して読んでる馬鹿もいないのに虚しくならんのか?
121本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 21:15:46 ID:8chbd2LH0
A→俺。一応主役
 はい、創作ケテーイ。創作板でやれよクズ

"アレ"→師匠についている怖い何か。霊体を食べる。名前はまだない。
 霊体を食べるってwwwもっとましな設定考えろよ。創作嫌いじゃない奴でもこんな消防が考えるような設定じゃどうしようないな

"球体"→町内の踏み切りの上にずっと浮いている怖い何か。
 ダメだこりゃ・・・・・ファンタジーじゃんもう・・・・

自己責任で読んでください。一応警告はしたので始めます。
 創作に自己責任も糞もないだろばーか。警告?ここの住人数人だぞw
122本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 21:17:08 ID:8chbd2LH0
このスレどうせ誰もまとめてないんだから速攻で埋めて二度と誰も読めないようにしてやるかw
123本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 21:18:38 ID:8chbd2LH0
民主党が

原敕晁(はら・ただあき)さん拉致事件の実行犯、

北朝鮮工作員・辛光洙(シンガンス)の釈放を要求した

菅直人を首相に。
124本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 21:20:05 ID:8chbd2LH0
すでにWC飽きたわ・・・
125本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 21:41:44 ID:8chbd2LH0
671 :非岡田JAPAN :2010/06/13(日) 00:44:01 ID:1Dv9uh4s0
12日の朝日新聞にとてもショッキングなニュースが書かれてました。
先日日本代表がベースキャンプ地のジョージに到着した時の事です。
地元ジョージの子供達は日本代表を歓迎する為に、日の丸の旗を用意し、
しかも有難い事に歌を歌う準備までして日本代表を歓迎しようとしていました。
しかし岡田監督を始め代表メンバーのほとんどが子供達を無視し、
闘莉王に至ってはイヤホンを耳につけたまま子供達を無視しました。
これは日本代表うんぬんではなく日本人として恥じる行為だと思います。
またこれまで日本代表の礎になってくれた、古くから言えばクラマーさんに釜本、
カズさんやヒデなどに対しての冒とくだと思います。
これまで、「ドーハの悲劇」「マイアミの奇跡」「ジョホールバルの歓喜」などの言葉がありましたが、
今回私は新たな言葉を日本代表に捧げたい。
「ジョージの恥」と。
126本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 21:42:28 ID:8chbd2LH0
ジダンがアルジェリア出身なんてはじめて知ったわw
127本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 21:59:06 ID:8chbd2LH0
【高校無償化】「日本人になりすまして文科省に無償化要求の電話をかけろ!」 朝鮮総連、朝鮮学校生徒の父母らに指示★4

1 :少佐ρ ★:2010/06/13(日) 16:01:16.69 ID:???0
 朝鮮学校への高校授業料無償化適用をめぐり、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が生徒の父母らに
文部科学省に適用を要請する電話攻勢をかけるようノルマを課していたことが12日、内部文書から分かった。
同時に、複数の日本人になりすまして電話回数を稼ぐよう指示。総連の無償化運動がモラルを著しく逸脱し、
北朝鮮同様に統制された組織動員のもとで展開していた実態が明らかになった。

 朝鮮総連関係者から入手した内部文書によると、指示は朝鮮学校への無償化適用が先送りされた後の
5月7日に朝鮮学校生徒の母親らが所属する総連傘下の女性団体などに出された。

 文書では「『高校無償化』がわれわれの学校に適用されるまで全組織、全同胞を立ち上がらせ闘争し続ける」
とげきを飛ばし、無償化適用を求める署名を「1人当たり100人」集めるよう指示。文科省が開設した無償化の
相談窓口「高校就学支援ホットライン」を通じて無償化即時実施を求める要請活動を展開するようにも命じた。

 文書にはホットラインの電話番号が目立つように書き込まれているが、関係者によると、この文書が出された際、
総連幹部は「在日としてだけでなく、一般の日本人になりすまして複数回電話するように」命じたという。
関係者は「日本人も適用に賛成していると見せた方が効果がある」と、意図を説明する。

 文書では「高校無償化闘争」についてのDVDなどを積極活用して民主党の地方組織や地方議会へも強く働き
かけるよう求めている。さらに、活動結果について「5月29日」「6月26日」「7月10日」「7月31日」と期限を指定
して報告ノルマを課し、集めた署名数のほかホットラインへの電話回数も報告を指示している。

>>2以降に続く
msn産経
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100613/kor1006130120000-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/korea/100613/kor1006130120000-n2.htm

こんな怖いことないだろ。ホラーだわ
128本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 22:32:23 ID:x5LD3seuO
>>116

外の掲示板に張り出されていた
129本当にあった怖い名無し:2010/06/13(日) 23:14:51 ID:mfo5gXRf0
>>118
乙でした。
楽しみにしてるので次もよろしく。
130本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 00:03:05 ID:3J7l22uE0
ギャハ
131本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 00:06:02 ID:3J7l22uE0
>>116
>>128
糞どもが!人が一人いなくなってるのに、それをネタにして創作作って嬉々として2chに投下したマジモンの笑えない基地外の話題なんてしてんじゃねーぞ

あいつに比べたら荒らしなんて赤ん坊のようなもんだろ
想像してみろよ。お前らは身内が行方不明になったらチャンスとばかりにそれをネタにして2chに話投下出来るのか?
人の心持ってないだろ
132本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 00:09:38 ID:3J7l22uE0
それこそてめえのブログでやってろっツーンだよ
胸糞悪いわ
2chに書き込ん出る人間は人格障害者が多いってどこぞの馬鹿が言ってたが本当だな
身内の不幸をネタにするような人間にだけはなりたくないわ
133本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 00:10:18 ID:3J7l22uE0
もし見つかったらあのシリーズ物を読ませられるのか?クソ作者
134本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 00:11:13 ID:3J7l22uE0
>>129
乙しか言えないなら黙っておけよ
それしかもの言えないのか?言語障害でも起こしてるのかよ
135本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 00:12:04 ID:3J7l22uE0
おら!早く次の話し書けや愚民ども
136本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 00:15:59 ID:cwJMrbYW0
>>118
ちょっと前に読み始めた者ですけど、面白いですね。冒険譚大好きなんで(笑)。
応援してますので頑張ってください。
137本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 08:42:30 ID:dpX/SCBc0
1515
138本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 11:49:46 ID:U51HWk+X0
>>118
乙です。こういう砕けた感じの話好きです。
またお願いします。
139本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 16:14:32 ID:yxNI+8t5O
面白かったよー
また書いて
140本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 20:40:41 ID:3J7l22uE0
ume
141本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 20:42:54 ID:3J7l22uE0
俺がニートだった時の話
すんでたのは実家で割と庭も広かった
その頃の俺は昼夜逆転してて夜に大音量で音楽きいたり、深夜が主な行動時間だった。
でトイレいくのめんどいから外でションベンするために居間の外への窓のカギはいつもかけなかった
である日深夜テレビ面白いのもやってなくて携帯を一人で居間でいじってた
そしたら足音がしたとおもったら窓がからからからって開いたんだよ、でもカーテンしめてあるから外はみれない
すげーゾクゾクしてなんか上がってくるんじゃないかとおもってつい誰?って声にだしてきいちゃったけど返事なし。
でこわくて携帯で親に電話して(家のなかにいるけどその場からうごきたくなかったw)
親が起きてきて家の周囲父親とみたけど誰もいなかった
142本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 20:43:07 ID:3J7l22uE0
もうひとつ、これも同じ時期。
うちの父親の部屋は俺の部屋の隣りにあるんだけどその日も
起きてるのは俺だけでそこそこ大音量で音楽きいてた。
そしたら寝てるはずの父親がドアノックしてきてなんか小さい声で「おい少し音量少くしろ」っていってくる
で続けて「今俺の部屋の外の壁なんかで叩かれたかすごい音がした」とかいってくる
俺は音楽きいてたからわかんなかったけど棒かなんかで叩いたか石投げられたのかもしれない
でその日も外を懐中電灯で探したが誰もいなかった

そもそもうちには倉庫や植木やら車庫や庭が広いから誰かが潜んでてもわからないというのもある
そんなこわくなくてすまそ
143本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 20:49:05 ID:3J7l22uE0
先輩のお姉さんの話

先輩のお姉さんは看護婦をしているのだが、その実習生?時代の話。

当時は病院の寮に住んでいて、その日は具合が悪かったので授業にでず
部屋で休んでいたそうだ。
詳しい間取りは聞いていないが、こんな感じだと思う。

       ↓入り口(ドアの上部が磨りガラス)
∵━━━----━━━


┃□←机

┃      □←ベッド
∵━━━━━━━━

で、ベッドで入り口の方に向いて横になっていたのだが、ガラス越しに(右方向に)部屋の前を人が通ったのがわかった。
部屋は一番右端の部屋で、右は行き止まりなのだ。だから行っても戻るしかない。
でもいつまでたっても戻ってこないので、部屋を出て廊下を見渡すも人はいない。
不審に思いつつベッドにもどり、ふと机のほうに目をやると・・・

机の下に女の子が体育座りしていたそうです。
(その後気を失ったとのこと)

関係あるかどうか不明だが、部屋は2階なのだが行き止まりの箇所は封鎖されたドアがあり
昔はそこから外に出れたらしい。でも飛び降りが多発したので、封鎖したそうだ。

北の地にある、○赤病院でのことでした。
144本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 20:52:01 ID:3J7l22uE0
三月半ばまで事故物件に住んでました。
身の危険を感じ引越しをして、今はごく普通の生活をしてます。この間友人が某心霊ビデオを持ってやってきました。
(何も言わずに見て )と言うので見ると、投稿ビデオに以前私の住んでいた部屋が映っており、全身鳥肌立ち硬直しました。
あのまま住み続けていたらと思うと、今でも足元からおぞけが襲ってきます。

145本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 20:54:45 ID:3J7l22uE0
リアル話なので、ほんのり怖いレベル
〜〜 ちら裏ここから 〜〜
入社二年目の事だ。製造関係の会社の工場で、生産管理の仕事をしていた。
当時の社長の方針で、新入社員は全員工場で数ヶ月研修してから、研究所なり
パイロットプラントなり、営業なりに行く事になっていた。また、人事が昨年
よりテストとして、理系の院卒(研究所志望者)を営業に使う試みを始めていた。
俺の課に4名が研修で配属され、その内一人が院卒営業だった。
この新入社員をA、他の新入社員をB、C、Dとする。
Aは非常に優秀で、人当たりもよく、スポーツ万能、頭の回転も速く、その上
美男子という凄いやつで、他のBCDも一流大学の院卒だったが、一線を画し
ていた。
たまたま一年先輩の俺が、AとBの指導に当たったせいか、Aは結構俺と気が
合って、色々な話をするようになった。

半年の研修期間が済み、Aは関西の営業所に、BCDは中央研究所に転勤とな
った。ところが、Aが配属された先は、扱っている商品が社内でも最も泥臭く、
代理店も論理が全然通じない所だった。どれだけゴマをすれるか・・・それだ
けの職場だったらしい。Aは、関東の人間だったので、標準語を話すのが災い
して、成績は良いほうではなかったらしい。また、営業所の所長も、元エリア
採用の叩き上げで、他を蹴落として上がってきた人間なので、何も契約とれず
に戻ったりすると、その場で土下座させたりするやつだった。
ブラック企業なら普通にある光景なんだろうが、一応業界トップの大企業での
事。育ちも良いAには想像も付かなかった毎日だったろう。
146本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 20:55:01 ID:3J7l22uE0
それから、俺に愚痴の電話が時々掛かってくるようになった。
研修中最も忍耐力が有って最も社交的だったAが耐えられないような日々の仕
打ちを聞くと、可哀想で仕方ない。だが、入社二年目の俺には何もしてやる事
が出来なくって、ひたすら聞いてやるぐらいしか出来なかった。
俺の同期にも、一人だけ理系院卒で営業に回されている友人Eがいた。彼も俺
と同じ場所で研修していたので、仲が良かった。Eも時折Aから相談を受けて
いたらしく、お互い聞いてやるしか出来ない無力さを感じていた。

数ヶ月も経ち、徐々にAの愚痴が危険水域に達してくるのが分かった。感情の
起伏が大きくなり、話しながら号泣したり、異常にハイテンションだったりで、
逆に俺が不安を感じるぐらいだった。
そして、忘れもしない11月のある日、延々と愚痴を続けるAにこう云ってし
まった。
「このままだと、お前は潰れてしまうよ。性格も人柄も頭も良いお前がそこま
で追い込まれる職場って尋常じゃない。人生は長いんだし、転職の踏まえたら
どうだ?このままだとお前が首を吊りそうで怖い。最悪の選択の前に、両親と
相談したらどうだ?なんなら、俺も休暇取って一緒にいってやるよ。Eも事情
しっているし、誘ってもいいぞ。」
それに対して、急にAが黙ってしまった。一分か二分か・・・もしかしたら、
ほんの数十秒だったのかもしれない空白の時間の後、吐き出すようにAが云っ
た。
「済みません、俺、会社辞める訳にいかないのです。辞めたいけど、だめなん
です。ごめんなさい。ごめんなさい。・・・」
147本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 20:55:13 ID:3J7l22uE0
それから数日後の夜、Eから電話が有った。
「なあ、A、やばいよな。数日前に電話が有ったんだが、もういっぱいいっぱ
いで。・・・お、キャッチホンだ、後で連絡するよ。」
数分後、Eから再度連絡があり、Aから電話だと聞いた。
「今週末、お前と一緒に会いにいってやるって云ったら、ひたすら、すみませ
ん、すみませんって、まるでお経みたいに繰り返して・・・金曜日夜の大垣行
き使って、会いにいってやろうぜ。東京駅からの切符は任せてくれ。」
Eが鉄ちゃんなのは良く知っているので、準備は任せることにした。

翌日、社内総合職用掲示板にAの訃報が載った。業務中、交通事故死となって
いた。遺族の意向で、同期の極一部以外は、通夜葬儀ともご遠慮下さいとの事
だった。EはAの実家から電車で数十分の距離にあるので、その掲示を無視し
て葬儀に行った。そこで知ったのが、実は交通事故じゃなくって、Aの実家の
庭の木で首を吊ったって事、そして、EがAと最後の会話していたはずの時間
には既にこの世を去っていた事。Aの実家は関東なんだが、最後の電話は関西
から掛かってきた事。
Aの家は非常にお金持ちで、色々なところに顔が利く一家で、うちの会社にも
鳴り物入りで入ったので、どうしても辞められなかった事なんかも分かったそ
うだ。そして、葬式の翌週の月曜俺の社内メアドにAからのメールが入った。
「すみませんでした。」
一行だけの文章だった。社内のネットワーク管理者に問い合わせたが、社内I
D抹消作業のほんの直前に送られたそうで、送付者は不明だ。
Aを虐めていた営業所長は、孫会社に課長待遇で左遷された。(実質三階級降
格扱い)
未だに、「このままだとお前、首を吊ってしまう」なんて事を云ってしまった
のか、後悔している。EもAを救えなかった事に非常に後悔していた。
メールは、誰かにID教えて依頼しておけば出来るが、Eが聞いたという最後
の電話はなんだったんだろうか。霊感の無い俺には掛かってきても分からなか
ったのだろうか。未だに不思議だ。

148本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 21:59:02 ID:3J7l22uE0
あれを見たら家族の誰かが死ぬと俺は今でも思っている

これは小学生のころの話だ
近所の寺でかくれんぼをしてたんだが、A君が鬼でB君,C君,オレが逃げる役だ
オレは寺の軒下に隠れた!そこへC君が便乗してきたんだ
まずいな見つかりやすくなるなと思った俺は軒下の奥へと進んだ
すると視界に細長い木の箱があるなが見えたんだ、そのときC君が「棺おけだ!」
と叫んだ!
その声で鬼のA君がすっ飛んできて「C君見っけ!」というも、C君が「あれを見ろ」
A君「うわあああ!逃げろー」
その声でみないっせいに逃げ帰った
翌日、意識してかみんなそのことには触れなかった
そして、そんなことがあったのを忘れかけようとしていたとき(一週間くらい)
C君が学校を休んだ、なんでも突然お父さんが亡くなったとのこと
それからまた数日後にA君のお父さんが階段から落ちて首の骨を折って亡くなった
このときは不幸が続くなあくらいにしか思ってなかったが
それから3日くらいたってからオレのじいちゃんが心臓麻痺で亡くなった
亡くなった期間が短かったためにすぐに気づいた
あれを見た家族だなと
偶然にしてもおかしいとオレは思っている
149本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 21:59:21 ID:3J7l22uE0
移転前の会社での話。

私の勤めている会社は数年前に新しいビルに引っ越したのだが
その移転前の会社のビルで上司が体験した話。
(聞いた話ばかりですみません)

その日、上司は休日出勤で、同僚と一緒に仕事。
当時(バブル期)の上司は、連日連夜飲み歩いていたそうで
その日も徹夜で出勤し、その日の夜もまた飲みに行く予定だった。

昼すぎごろ、前日の疲れからかさすがに眠くなり、同僚に時間になったら起こしてと
伝え、応接室で仮眠をとることにしたそうだ。
応接室はソファーとその前にテーブルがある。ソファーに横になりすぐに寝た。

しばらくして、ふと目が覚めた(本人曰く眠ってからそんなにたっていない)
でも眠っていたかったから目はつぶったまま。

すると、ズル・・・ズル・・・と何かか近づいてくる音がする。

同僚が起こしにきた?でもまだ早いよなあと思っていたら金縛りに。
音はどんどん近づいてきて、ついに部屋に入ってきた。
金縛りは続いている(目は開けれそうだったけど恐かったらしい)
部屋に入ってきてからはテーブルの周りをズルズル回っている。
150本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 21:59:34 ID:3J7l22uE0
・・・と何周かした後、回るのをやめ上司の頭のほうに来た。
感覚で、のぞき込まれているのが分かったそうだ。

とたん首を両手でガッと捕まれた。と思ったら、自分が下にいる・・・
上からソファーで眠っている自分を見ているのだ。
なんかヤバイ!戻りたい戻りたい!!と思っていたら目が覚め
金縛りもなく、周りには何もいなかった。

すぐに同僚の所に行くと、仕事をしていた。

さっき、起こしにきた?と聞いても案の定行ってないとの回答。
特に奇妙なこともなかったそうだ。

結構出るって言われたビルだったようだ。
151本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 22:00:24 ID:3J7l22uE0
昨日、オカ板内の他スレにもちょろっと書いたんだけどここに投下。

昨日、昼過ぎに“ひとりかくれんぼ”の過去ログ見てたんだ(一番最初のヤツ)。読み始めたら、ピシッて家鳴りがした。

家鳴りならよくあるから、特に気にせず読み続けてたら今度はガチャンッて解錠音と共に玄関の鍵が空いた。びっくりして、確認しに行くと鍵は開いてるけど、誰もいない。

勿論、旦那が帰って来るには早すぎる。気味悪いなぁと思いながら、鍵を内側からかけなおす自分。

それから、何も無かったから続きを読んで家事。夜、旦那が帰って来た時に「玄関、鍵あいてたぞー」と、怒られる。施錠め直したはずなのにOTL

で、今朝は自分と旦那の布団の間(15〜20cmくらいしかない)をズサーッて何かが何かを探してるような、這ってるような音で起きた。

ひとりかくれんぼ読んだ事があればわかると思うんだけど、その中に出てくるオバケ(霊?)みたいなヤツだった。

オチは無し。現在進行形です。
152本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 22:01:28 ID:3J7l22uE0
俺の彼女が両親の留守中に自室で殺された。
数日間は頭の中が真っ白だった
葬式も終わり、悲劇から1ヶ月ほど経った頃、ようやく落ち着いた。

そして今日、彼女との思い出に浸りたくて彼女の家にやってきた。
あたたかく出迎えてくれる彼女の両親。
生前使っていたのとまったく変わらない部屋へと通された。
そこで、母親から一冊の日記帳を手渡された。
不可解な箇所があると言う。

6月3日 今日はあたしの誕生日。たかしから指輪をプレゼントされた。
      婚約指輪(?)なんちゃって(>_<)

6月4日 来月はたかしの誕生日だ〜。何をプレゼントしよう?

6月5日 あいかわらずの講義。つまらない

6月6日 まわりは誰もわかってくれない。たかしならわかってくれるだろうか?
      たかしに会いたい 

6月7日 9時 おねがい きづいて!!!!

俺は気づいてしまった。 

だが、もう遅かった・・・・・
153本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 22:02:16 ID:3J7l22uE0
俺の彼女が両親の留守中に自室で殺された。
他殺と断定できる証拠はなかった。しかし、自殺とも思えない死に方だったらしい。
彼女が自殺するような心当たりも、俺にはまったくなかった。
自宅で幽霊を見ることがある、と騒いでいたことはあったが、
先月彼女の誕生日に会ったときには「幽霊なんて気のせいだった」と落ち着いた口調で言っていた。
事件から数日間は頭の中が真っ白だった。
葬式も終わり、悲劇から1ヶ月ほど経った頃、ようやく落ち着いた。

そして今日、彼女との思い出に浸りたくて彼女の家にやってきた。
あたたかく出迎えてくれる彼女の両親。
生前使っていたのとまったく変わらない部屋へと通された。
そこで、母親から一冊の日記帳を手渡された。
不可解な箇所があると言う。
たしかに、何かを伝えようとしたみたいだ。
それにその月の日記だけ、震えた字で書かれている…?
154本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 22:02:34 ID:3J7l22uE0
6月1日 のんびりした一日だった〜

6月2日 無理しすぎたかな。疲れた〜明日にそなえて早く寝ようzzz

6月3日 今日はあたしの誕生日。たかしから指輪をプレゼントされた。
    婚約指輪(?)なんちゃって(>_<)

6月4日 来月はたかしの誕生日だ〜。何をプレゼントしよう?

6月5日 あいかわらずの講義。つまらない

6月6日 まわりは誰もわかってくれない。たかしならわかってくれるだろうか?
     
6月7日 たかしに会いたい 

9時→ お願い気付いて!


俺は気づいてしまった。 

だが、もう遅かった・・・・
俺も近いうちに死ぬだろう。おそらく1週間後。気付かれないようこっそり警告を残そうか…?
いや、そうすると誰かがまた死ぬようになっているみたいだ。
頭がボーッとして、考えがうまくまとまらない…

「僕にはよく分かりませんね。きっと悩みでもあったんでしょう。
今日はもう失礼しますが、一週間ほどしたら、また伺っていいでしょうか?」
俺は落ち着いた口調で、母親に言った。

155本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 22:06:51 ID:3J7l22uE0
ある女子高の寮に、連日、
不審な男が出るということがあった。
寮長は門限を厳守させ、
時間外に寮から出ることをしばらく禁止させた。
4階の角部屋では、2人の女学生(仮に一枝と双葉とする)が
ルームシェアリングしていた。
その寮はどの部屋も学生2人でシェアリングさせ、
それぞれに個室をあてがわれ、リビングを含めた3室が与えられていた。
一枝と双葉は不審者のせいで寝ることもままならず、
日を追うごとに疲弊していった。


2人の部屋にある日、手紙が届いた。

「双葉の部屋にバイブがあるのは知っている。
一枝の部屋の同じ場所に冷たいものがあることも」

寮長は双葉の部屋を調べ、
ベッドの下にバイブがあるのを見つけて激しく双葉を叱咤した。
一枝は購入していた小型の冷蔵庫を見せて、
「冷たいものとは、たぶんこれのことでしょう」と納得させた。
双葉は自宅謹慎を命じられ、一枝の冷蔵庫は不問とされた。
しかし一枝は進んで連帯責任を訴え、
双葉とともに自宅謹慎に処された。
156本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 22:07:08 ID:3J7l22uE0
寮長が不審な男の騒ぎを警察に届けようかと
考え始めたある雨の日、
寮に侵入しようとしていたらしき不審な男が、
意識不明の重態で発見された。

男は、一枝の昔の彼氏だった。

深夜に一枝は男と鉢合わせ、
とっさに男を4階から突き飛ばしてしまい、
男は庭の花壇に頭から落ちた。
復縁を迫ったストーカーがヘマをしたのだと警察は判断した。

小型のカメラとマイクが、一枝と双葉の二人の部屋から発見された。
また男は手紙を握って花壇の上に倒れていた。

「……で君を殺す。君ならどこにかくしてあるかわかるだろう。
僕は警戒されている。僕は君を辱めるためにあんなことをしたわけじゃない……」

手紙は雨に濡れて字が滲み、読み取れるのは一部だけだった。

事情聴取の合間に、一枝は双葉と抱き合いながら、
「私のせいで怖い目に遭わせてゴメンね」と謝った。
警察は男が意識を取り戻し次第、事情を聞くとして捜査を打ち切ったが、
目を覚ます様子は依然としてないという。
157本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 22:07:43 ID:3J7l22uE0
今回は本当に自分が体験した話。
なのであまり怖く無いし、オチも弱いのは勘弁。
私は自営で内装店を経営している。
去年の秋、得意先から仕事の電話があった。
その人は幾つかの賃貸物件を所有している地主で、そのうちの一軒家の襖(ふすま)とクロスを張り替えて欲しいという依頼だった。
しかしその家には問題があった。
そこにはお爺さんが一人で暮らしていたのだが三ヶ月前に布団の中で老衰で死んでしまったのだという。
発見されたのはほんの一週間。
当然死体は腐敗が進み布団は勿論の事、下に敷いてある畳までもがドロドロに溶けて腐っていたらしい。
大家さんは業者に頼み、死体や畳は既に処理してもらってあると言った。
私は正直気は進まなかったが了承しましたと答えた。
こういう事は建築の世界では決して珍しい話では無いし、不景気が続く昨今贅沢も言っていられない。

私は次の日に大家さんを伴って件の家を訪れた。
玄関に入ると同時に嫌な匂いが鼻をつく。
消臭剤が部屋のあちこちに置いてあるがこびりついた臭気は簡単に落ちないようだ。
それに足元を夥しい数のチャバネゴキブリが這い回っている。
張替えする襖に至っては一面にびっしりと百匹以上のゴキブリが張り付いていた。
潔癖症の人なら卒倒してもおかしくないシチュエーションだ。
大家によれば発見当時、家の中には数千匹ものゴキブリが沸いていてバルサンを二度炊いたのが未だに追い出し切れていないのだという。

仕事を受けてしまった事を私は後悔し始めていたがここまで来て断るのも気が引ける。
覚悟を決めると私はマスクと手袋をはめ、箒を使ってゴキブリを襖から追い払うと軽トラの後部に乗せた。
壁を採寸してクロスの見積もりをしている最中、大家が私に話しかけてきた。
「嫌な仕事頼んじゃって悪いね。」
「いいえ、気にしないでください。」
「しかし何だってまたこんなにゴキブリが大量に集まってきたんだろうね?」

私はその理由におおよその見当はついていたが分からぬフリをして
「ええ、何故でしょう?」と答えておいた。
158本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 22:16:16 ID:IM2euzRd0
魅せられてるよ、心配なし 君は死なんよ。
お宅の守護霊 背後霊はお宅の守りは堅いとさー

彼女はたぶん病気でもあったんだー それとカルマと前世霊の憑依。
たぶん前世でも自殺してる人だよ、今回ではそれから逃れられなかった
でもお宅は違う 彼女以外のいい女捜しなよ。
明日のみを見ろよ。 昨日は忘れろ。 
今の彼女はなんにでも縋りたい悪霊となってる、彼女に憑依されてるよ
気をしっかり持て。
159本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:07:55 ID:3J7l22uE0
とあるホテルのスイートルームに、私達は集まっていた。

散らかった小部屋。倒れた机。床に散乱したトランプカード。
その中央で、絶命しているゴージャスな金色の衣装を着た男。
その頭部の傷口から血が溢れている。恐らく殴り殺されたのだろう。

発見当時、スイートルームのドアは大きく開き、ドアストッパーが掛かっていた。
被害者は、誰かを(或いは何人かの人間を)この部屋に呼んで話をしようとしていたのかも知れない。
いずれにしろ、この部屋は鍵の掛った密室ではなく、誰でも部屋に入って被害者を殺害し、去っていくことは可能だったということである。

「どうやら、被害者のダークネス猫田さんは、犯人と相当やりあったみたいだな。」
私は死体を見降ろして、呟いた。
「フッ……田中君、一人前の探偵気取りかい? そんなことは、この状況を見れば赤ん坊でもわかることさ。」
傍らで、友人が言う。友人は、そう言いながら死者の格好を隅々まで観察している。

「山田警部、被害者――トランプ占い師の『ダークネス猫田』さん、でしたっけ? 全く、センスの無い芸名だ。
 彼は中々興味深い格好をしていますね。」
160本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:08:36 ID:3J7l22uE0
ダークネス猫田は、右手を精一杯伸ばした格好で絶命していた。
腕を大きく伸ばしているので、その右腕に嵌められた高価な腕時計が、部屋の明かりを反射して輝いている。
その、伸ばした右手の人差指の先、コンクリートの床には被害者の血液で「タヌキ」と書かれている。
そして、左手は散乱したトランプの中の四枚を握っていた。それぞれスペードのエース、ハートの5、クラブのジャック、スペードの2のカードである。
私は、(このカードの図柄にも、何らかの意味があるのだろうか。)と考えても見たが、さっぱり何も浮かんでは来ない。

シャドウは、興味深そうに被害者の血文字を見つめていた。
山田警部はその視線に気付いたのか、説明をする。
「問題はこの血文字なんだ。被害者は、恐らくは鈍器のようなもので殴られてから、数秒間は生きていたと思われる。
 そこでダークネス猫田さんは最後の力を振り絞って、この謎のメッセージを残したんだろう。」
シャドウの瞳が怪しく輝き始めた。興味を魅かれ始めたのだ。
「これは、お決まりの『謎のダイイング・メッセージ』という奴ですね。」
山田警部は頷いた。
「そこで我々は、被害者の周囲で『タヌキ』に関係する人物や、あだ名が『タヌキ』とされている人物を徹底的に捜索した。
 その結果、見つかったには見つかったんだが――。」
「どうだったんですか?」
シャドウは話の先を促す。
「狸林ポン太郎(たぬきばやしぽんたろう)。証券会社の社長だな。彼には犯行時刻と看做された午後10時から10時10分の間、鉄壁なアリバイがあったんだ。
 犯行現場となったこのホテルの、丁度真向いの高層ビルで、取引先相手と商談をしながらディナーを楽しんでいたらしい。
 しかも、狸林と猫田は高校の同級生というだけで、親しい間柄でもなかった。彼が猫田を殺す動機も見付からない。」
161本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:09:13 ID:3J7l22uE0
「成程ね。たった一人、浮かび上がってきた容疑者に鉄壁なアリバイと見えない動機か。そうこなくては面白くない。」
シャドウは満足げにうなずく。彼はシルクハットを指先でクルクルと回しながら、微笑んでいる。
「容疑者はそれだけではないでしょう? 被害者の職業は占い師。職業柄、毎日大勢の人と会っているでしょうから。」
「そうだな。容疑者は全部で4人。私は彼等を事情聴取して、容疑者リストを作っておいたんだ。
 おーい、四条君!!」
いつもポマードの強い匂いを漂わせている、見るからにエリート風の刑事、四条警部補がやってきた。
彼は胡散臭そうにシャドウを見つめた。彼は、私の友人が毎回警察の捜査に携わることを内心良く思ってはいないらしい。
それもその筈、シャドウは警察官ではない。飽くまでも自称『天才犯罪心理学者』というだけの、只の民間人なのだから。

「ええと、シャドウさん、じゃあ読み上げますよ。
 まず、狸林ポン太郎。ふざけた名前の男ですが、大手証券会社の社長です。いかにもやり手の経営者といった風の男で、殺人のような、リスクのあることはしなさそうな男です。
 とてもこの男が、猫田をゴルフクラブで殴り殺したとは私には思えません。
 次に狐火美佳(きつねびみか)。ホステスで、被害者ダークネス猫田の愛人です。昨日は丁度風邪で店を休んでいたとのことで、アリバイはありません。
 狗米忠(くめただし)。被害者のマネージャーで死体の第一発見者。臆病そうな男で、事情聴取中、いつもビクビクしていました。この男、多分何か隠していますよ。
 被害者とは金の貸し借りで揉めていて、動機もあります。ただ、狗米は殺害時刻はこのホテルの一階ラウンジでボーっとしていたところを複数の従業員に見られており、アリバイは完璧です。
 最後に竜塚幾多郎(りゅうづかきたろう)。彼は猫田に脅迫されていたらしきフシがあるようです。建設会社の常務ですが、過去に殺人事件の容疑者になっていたことがあります。その時に、警察に金を握らせて証拠を隠蔽した、と噂されています。アリバイもありません。
 猫田はこの竜塚の過去の犯罪について、何かを嗅ぎ付けたのではないか。
 そして、竜塚を強請っていたのではないか、などと刑事達の中には考えている者もいるようです。」
162本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:09:43 ID:3J7l22uE0
私は考えてしまった。
殺人の動機がありそうなのは、竜塚。ダイイング・メッセージで示されていたのは狸林。何かを隠している様子でビクビクしている狗米に、愛人の狐火。
誰もが怪しいけれど、狸林と狗米にはアリバイがある。
私は、思いついたことを言ってみた。
「山田警部、血文字の『タヌキ』ですが、犯人が狸林さんに罪を着せようとして残した偽のダイイング・メッセージ、ということはありませんか?」
山田警部は首を振った。
「否、それは無いだろう。先程も言ったように、狸林とダークネス猫田は殆ど接点が無いんだよ。
 このメッセージが殺人犯の残したものだとしたら、犯人は殺人動機のありそうな狗米や竜塚に罪を着せようと思うんじゃないか?
 罪を着せる相手として、動機の無い狸林を選んだとしたら不自然過ぎる。」
そう言われると、私も頷くしか無い。しかし、だとしたらこの『タヌキ』の文字は、やはり被害者が書いたもの、ということなのだろうか。

シャドウは、屈んで死体に顔を近づけた。
「……死体からは、強い麝香の匂いがしますね。」
「はい、被害者がいつも、この香水を付けていたようですね。麝香の香りが好きだったようです。」
「成程、それは重要なポイントですね。」
「被害者の付けていた香水が、事件のポイントだっていうんですか?」
四条は呆れた目でシャドウを見ている。そんな視線など意に介さず、シャドウは山田警部に訪ねた。

「確か、このホテル。昨日は停電騒ぎが起きていましたよね?」
「え? ああ、そうだ。雷の影響で、確か夜の10時から30分位はホテル中が真っ暗になっていた筈だが……。」
163本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:10:16 ID:3J7l22uE0
「成程、ピッタリですね。」
シャドウは笑った。
「一体、どういうことなんだ?」と、私が尋ねる。
シャドウは澄ました顔で、「簡単なことさ。『偽装工作というのは、必ずしも殺人犯だけがやるものじゃない』ってこと。だからこの事件は無駄に複雑になってしまっただけなんだよ。」と言い、ニヤリと笑う。
私はただ、頷くしか無かった。経験上、これ以上はこの男に何を聞いても答えてくれないということはわかりきっている。少なくとも、事件関係者を一堂に呼び集めるまでの間は。

「どうやら事件は解決です。これで全てが分かりましたよ。殺人犯も、犯行の方法も、そして動機もね。
さあ、山田警部。早速4人の容疑者をこのホテルに集めて下さい。そこで私の推理ショーを始めましょう。」
164本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:17:21 ID:3J7l22uE0
十年ぐらい前の話。
俺はまだ五歳ぐらいで、東京に住んでいた。
その時の俺は人形に夢中だった。
おもちゃ屋に行けばぬいぐるみコーナーに走って行って目をキラキラ輝かせながらすべてのぬいぐるみに抱きついていた。
俺の当時のお気に入りは俺の親父が誕生日の時に買ってくれたフランス人形だった。
顔はものすごく整っていて、黒いフリル付きのドレスを着ていて。
十代前半の女の子みたいに華奢で。
すぐ壊れてしまいそうだった。
俺はその人形をメリーと呼んで可愛がっていた。
165本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:17:51 ID:3J7l22uE0
買ってもらってから一カ月ぐらい過ぎたころ、俺はメリーを連れてゴミ捨て場に行った。
ゴミ捨て場は当時の俺にとって秘密基地のようなところだった。
そこで見つけたプラスティックの板とかで実際に小さいシェルターを作ったこともあった。
その日も俺はその小さな小屋でメリーとままごとをして遊ぼうとした。
がしかし。俺はすぐに後悔した。
ゴミ捨て場には俺の幼稚園のいじめっ子共がいたのだ。
いじめっ子共は俺を見るなり笑い出した。
「見ろよ、人形なんか持ってるぞー!」だとか、「赤ちゃん!」みたいなことを言いながら。
怒った俺は泣きながらいじめっ子の一人に向かっていったが、返り討ちにあった。
顔面に一発くらって俺は人形を落として地面に寝転がって泣いた。
そして俺を殴ったいじめっ子はメリーを掴んで投げた。ガラクタの山に向かって。
俺はメリーが放物線を描いてゴミとゴミの間に落ちるのを泣きながら眺めていた。
いじめっ子共はそれを見るなり笑いながら自分の家に帰って行った。
俺はメリーが落ちたあたりを必死に探した。
皮が切れても、爪が剥がれそうになっても。
夕方になってもメリーは見つからなかった。
辺りが暗くなったころ、親が俺を探しに来て俺を連れて帰った。
次の日も俺はゴミ捨て場に行ってメリーを探した。
その日は前の日よりもう少し広い範囲を探したが見つからなかった。
その次の日も俺はメリーを探した。その日はもう少し深くを探した。
けど、見つからなかった。
166本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:17:59 ID:3J7l22uE0
その次の日も探したが、見つからなかった。
その次の日も探した。その次も探した。その次も、その次も。
けど、見つからなかった。
当時の俺は気付かなかった。毎日ゴミの山が変わっていることを。
そして毎日ゴミが、処理されていることを。
メリーを探し始めてから半年が経った頃、俺は鎌倉に引っ越すことになった。
結局メリーは見つからなかった。
そして今。
大学生になった俺は寮に住んで学校に通っている。
成績は中の上、運動神経は並。彼女はできたことはないが、別に顔は悪くはない。
友達も普通にいて、いじめにも遭っていない。将来の夢は特にない。
俺はそんな普通の人生を過ごしている。
167本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:18:15 ID:3J7l22uE0
「はぁ…何で今頃人形のことを思い出すかなぁ…」
窓から夕焼けを見ていた俺は深くため息をついた。
特に理由はないと思うが、なぜか冬になると無くした人形のことを思い出す。
毎年のことなので特に深く考えずに終わるのだが。
(しゃあねぇ、今日は早めに晩飯食って寝るとすっかな)
そして俺は夕暮れに染まる街に出た。

自転車を漕いで十分ぐらいのところに行きつけのラーメン屋があるので週一ぐらいのペースで俺はそこで食べることにしていた。
ガラッとガラス戸をあけてカウンターに座る。
「チャーシューメン大盛りお願いしまーす」
「あいよ!」
一時期毎日のように通っていたことがあるのでほとんどの店員は俺の顔を覚えていた。
「チャーシューメン大盛り、お待ち!」
「どーもっす」
俺は渡されたラーメンを両手で持ち上げて目の前に置いた。
そして同時に俺の携帯が鳴り始めた。
168本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:18:50 ID:3J7l22uE0
ちょうど割り箸を割ろうとしていた最中だったため、割りばしが妙な形に割れてしまった。
(誰だよ、こんな時に…)
ポケットから携帯を取り出して電話に出た。
「ぁいもしもし?」
向こう側は静かだった。
「もしもーし?誰ですか?」
『私…メリーさん…ひさ…ぶりだね………くん』
俺の名前を言っているようだが声が聞き取れない。
「メリーさん?そんな人俺知りませんが…」
『今日…会いに…くよ…』
そういうなり電話が切れた。
(なんだ、いた電か…)
俺は妙な形に折れた割り箸を捨ててもう一本折った。

自転車を漕いで俺は寮に戻った。
そして戻るなり俺の携帯が鳴った。
すぐポケットから出して電話に出た。
「はいもしもし?」
『私メ…ーさん。今坂道…上…てる…ころよ』
またあのいた電だった。
「またお前か。いたずら電話はやめてください」
しばらく誰も何も言わなかった。
『……も…かして…村く…私の…と忘れ…ゃっ…の?』
声が途切れ途切れに聞こえてくる。
「俺はあなたのことなんか知りませんが?」
正直に言ってやった。
また静かになる。
『…っ……っ』
向こうからすすり泣くような音が聞こえた後、電話が切れた。
(何なんだよ、たく…)
俺は携帯を顔の横に置いてベッドに寝転がって読みかけの本を読み始めた。
169本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:19:15 ID:3J7l22uE0
十一時を過ぎたころ、また電話が鳴り始めた。
携帯を取る前からわかる。これはまたあのメリーさんだ。
呆れながら電話を取る。
「またメリーさんですか?」
『…ん…植村君、まだ思…出し…くれな…?』
途切れ途切れだが何となく言いたいことは分かった。
「知りませんよメリーさんなんか。そういう名前の人形は持ってたけど」
しばしの沈黙。そして電話が切れた。
(意味がわからない。まったく、意味が分からない)
そして俺はまた本を読み始めた。

本を読み終えた俺は友達の清水と電話で話し始めた。
『だからさ、担任の前原がよ…』
「マジ!?そんなことしたんあいつ!?」
俺は部屋で腹を抱えながら笑い出した。
いつもこの友達は俺のことを笑わせてくれる。
落ち込んでるときも、怒っている時も。
『ハァー…あ、そうだ』
「ん?どうした?」
清水がいきなり声色を変えた。
『さっきな、俺んちに十五、六の女の子が来たんだよ』
「へぇー…で、どれがどうしたん?」
『いや、な?その女の子が俺に聞くんだよ。植村はどこですかー?って』
なんだか嫌な予感がする。
『俺は植村はこの道を真っすぐ行った寮にいますよ、って親切に教えてあげたんよ。そしたらありがとうってお辞儀して
その子そっち行ったんだわ』
「…で、それがどうしたん?」
『いや、な?俺、見ちまったんだよ。あの子の背中の帯のところに包丁が』
170本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:19:36 ID:3J7l22uE0
ブツっと言って電話が切れた。
「もしもし?おい清水?もしもし?もしもし!?」
『私…メ…ー…ん…植村君…』
メリーが、電話に、でた。
「う、ああ、あああ…」
『私、今君の寮の外にいるよ…今からそっちに行くよ…』
そして電話がまた切れた。

俺は必死に考えていた。
メリーは何者なのか。
彼女は俺のことを知っている。
(知り合いか?)
違う。俺の知り合いにメリーなんてふざけた名前のやつはいない。
だとしたら可能性は一つだけだった。
…だけど俺はそれが信じられなかった。
信じたら何かいろいろ終わっちゃいそうな気がしたから。
そしてまた電話が鳴った。またメリーだろう。
恐る恐る電話を取る。
「も、もしもし…」
声が震える。怖い。
『今、私寮の階段を上がってるんだ…聞こえる?この音…』
外でカン、カンと何かが昇ってくる音がする。
『もう少し…もう少しでまた会えるよ、植村君…』
そしてまた電話が切れた。
それから十秒ぐらいしたらまた電話が鳴った。
受話ボタンを押して電話を取る。
『もう、ついたよ…ドア、開けて…?』
「ひぃあ、ああぁぁあ!?」
ブツ、と電話を切った。
171本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:19:58 ID:3J7l22uE0
十分ぐらいずっと電話が鳴り続けている。
俺は部屋の隅で足を抱えながらそれを見ていた。
さらに十分が過ぎる。まだ電話が鳴りやまない。
…もしもの話。メリーが俺の好きだった人形だった場合。俺はどうすればいいのか。
俺は殺されるのか。それとも生きるのか。
あの時人形を無くしたのは今でも少し後悔している。
親父に悪いことしたな〜とか、値張ったんだろうな〜、とか。
けど一番後悔したことは、もう二度と見つからないだろう、ということだった。
(俺、本当にあの人形が好きだったんだな…)
覚悟を決めて俺は玄関に向かった。

俺はドアの前でとまった。
「…なぁ、メリーさん」
ドアのすぐ外に人の気配がある。
「…うん。なに?植村君」
「お前、俺の人形だったメリーか?それとも別の何かか?」
沈黙。
「……暗かった。あのゴミ捨て場」
「……」
この子は俺の人形だったメリーだ。
「夜は寒くて…苦しくて…狭くて…寂しかった」
胸が苦しい。
「やっと出れたと思ったらね?私、壊されちゃったんだ…他の物と一緒に」
涙が出そうになる。
「ずっと捨てられたんだ、て思ってたの。だからもし君に会えたら同じ目にあわせてやろうって誓ったの」
下唇を力一杯噛んだ。
「それで気づいたら、人間になってた。嬉しかった。やっと復讐できる。やっと同じ目にあわせてやれるって」
怖い。怖い。とても怖い。
だから必死に腹の奥から声を絞り出した。
「…俺を、殺すのか?」
172本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:20:55 ID:3J7l22uE0
また沈黙。
「…わかんない。殺したいのかどうかもわからない」
「……」
「変でしょ?さっきまで殺したかったのに今じゃ会ったってだけですごいうれしいの…」
「……」
「なんか妙なの…なんだか言葉にできないの、今の感情…」
「なぁ、メリー」
「…なぁに?植村君…」
俺は部屋の扉を開けた。
そこにいたのは黒いフリルのついたドレスを着た金髪藍眼の十五、六の女の子だった。
思わず息をのむ。
「……とりあえず部屋に入ってきてくれ。話がしたい」
「…うん」
メリーは小さくうなずき部屋に入った。

メリーを床に座らせ、俺もメリーの前に座る。
ちょっと気恥ずかしい。
「…なぁメリー」
「ん…?」
「ゴミ捨て場のこと…本当にごめんな…」
メリーの顔が陰る。
「言い訳するわけじゃないけどさ…俺も必死に探してたんだ…お前のこと」
メリーはうつむいたまま何も言わない。
「半年ぐらい探したんだ…でも見つけられなかった。それにすぐ俺達引っ越しちゃったし…」
どう説明しても言い訳にしか聞こえない。
「だから、その、なんだ…」
言葉が詰まる。
173本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:21:23 ID:3J7l22uE0
メリーもうつむいたまま何も言わない。
どうする…?どうする、俺!?
「…好きだったよ、お前のこと」
メリーがこっちを向く。
驚いているように見えた。
俺の顔が燃えるように熱い。真っ赤なんだと思う。
「今もすごいかわいいと思うし…何を言ってんだ俺…」
声がかすれる。
「わ、私も!」
メリーの不意打ちに心臓が飛び出しそうになる。
「私も、別にゴミ捨て場のことは全部植村君のせいだとは思わないし…その…」
沈黙。静寂。誰も何も言わない。
「うん…やっとわかった。この気持ち」
メリーが立ち上がって俺のほうに近づいて抱きついた。
「これが「大好き」って、感情なんだね…」
意味が、わからない。
心臓が不整脈を打っているような気がしてならない。
けど俺の中でもやっと物事が落ち着いた。
そしてわかった。
俺もこのメリーが好きだってことに。
「俺も、好きだよ…メリー」
174本当にあった怖い名無し:2010/06/14(月) 23:22:31 ID:3J7l22uE0
「なぁメリー」
「?どうしたの植村君」
「陸久でいいよ。それよりさ。俺と一緒に暮さない?」
俺の中でももう整理できている。
そして何より、もしもここで彼女と別れたら…
もう二度と会えない気がした。
「…いいの?」
「うん。いいよ」
「陸久が困るだけなのに?」
「俺はメリーが居てくれるだけでいいんだ」
「本当に?」
「本当に」
メリーが俺に抱きついてくる。
「…大好き」
「俺も好きだよ…」
これからは忙しくなりそうだが、なんとかできると思う。
俺の愛しのメリーがいてくれるから…
175本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 12:45:37 ID:9hdIjzha0
私メリーさん。今戦場にいるの。

「メリーさんだ! メリーさんが出やがった! ちくしょう、ちくしょう!!」
「殺してやる! 殺してやる!! こ……うわああああ!?」

罵声が耳に心地よい。
悲鳴が耳に心地よい。
ここでは鋼鉄の玉が戦場を飛び交う。
臓腑を震わすような轟音が上がる度に、誰かが金切り声で叫ぶ。
土と血煙を巻き上げ、死の臭いが空を焦がす。
鉛色の空には慈悲の欠片も見えない。
もだえ苦しむ肉の塊を、私は容赦なく踏み砕き蹂躙する。
私は戦場の死神。
今日も泥の中を一人歩く。

私メリーさん。今──戦場にいるの。
176本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 12:46:03 ID:9hdIjzha0
「私メリーさん。前線航空統制官なの」

「私メリーさん。現在そちらに指向できる火力はないの」

「私メリーさん。交信終了なの。神のご加護をなの」

177本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 12:46:49 ID:9hdIjzha0
この惑星の住人は、都市伝説と言う俄かには信じがたい噂を実しやかに囁いている。


メリーさん「私メリーさん。今あなたのうしろにいるの」

「!?」
「………………」

ただ―――――

メリーさん「私メリーさん。最近は全然驚かれないから自信がないの……」

この惑星の都市伝説にも……色々ある
178本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 12:47:14 ID:9hdIjzha0
「もしもしぃですぅ、私メリーさんですよぉ、
あぁ、あのう、まきますか? まきませんか?
今ならとぉってもかわいい妹が後ろについてくるかもしれませんですよぉ? 
あっ・・・切られたでーすぅ・・・。」

はぁぁぁ、やっぱり、なかなかマスターなんて見つけられっこねぇですぅ。

「オーッホッホッホ! お久しぶりかしらぁ、翠メリー!!」
「あっ、何しにきやがったですか!! ・・・って神奈川!?」
「か! な! め! り! かしらっ!!」
「その金メリがなにしてやがるです!?」
「ン〜フッフー! マスターも見つけられないあなたのメリーミステカ(mrmstk)をいただきにきたのかしらっ!」
「はぁん? お前みたいなおバカにやられる翠メリーじゃないですぅ! おとといきやがれですぅ!!」
「いったわねぇ〜、これを食らうのかしらぁ!! 第一楽章・・・攻撃のワルツっ!!」
    ぎょろろろろろぉん!!
「攻撃の♪ わるつっ! わるつ! わるつ! わるつ!! 攻撃の わるつ! わるつ! Orz!!」
「きゃあああああああっ! やめるですぅ!!」
「まだまだよぉ♪ つづいてぇ〜、追撃のカノンっ!!」
「お・の・れ・金メリィッ!!もう怒ったですっ!!下でにでてりゃあつけあがりやがってぇ!! 焼き鳥にしてやるです!!」

・・・ンッフッフッフッフ・・・  イァーアッハッハハッハッハッハッハッハッハーっ!!
「もう許さんです・・・
  スィ・・・!  スィ・・・!  スィ・・・・ド! ッリィィィィィィムゥゥッ!!!!!!!」

「かーじゅーきーぃぃぃぃっ!!」


・・・核融合に匹敵するエネルギーを持つ、
翠メリーのスィスィスィドリームの直撃を受けておじじは死亡した・・・。
179本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 13:14:55 ID:9hdIjzha0
最近、巷ではメリーさんの怪談が流行ってるらしい。
もちろん、オレもメリーさんくらいは知っている。都市伝説級の口裂け女にゃちと及ばないものの、かなり有名な怪談だ。
説明するまでもないと思うが、大ざっぱに言うとメリーさんは以下の特徴を持つ。
知らない番号、あるいは非通知で携帯に電話がかかってくる。出ると幼い少女の声で、
『私メリーさん。今○○にいるの』
という言葉が聞こえるそうだ。その○○は最初、近所のどこかから始まるらしい。例えば学校であったり公園であったり。
そう、そこからが恐怖の幕開けである。電話は毎日鳴るようになり、出ると少女のいる場所はどんどん家に近くなっていく。
家の前、玄関、二階、部屋の前……。
とうとう逃げ場のなくなったターゲットは恐怖に怯えながら部屋の中にこもる。そして着信が鳴り…最後の電話に出るのだ。
『私メリーさん。今──あなたの後ろにいるの』
ぎゃー!
……というのがオレの知ってる感じのメリーさんである。
まあそもそも嫌なら着信拒否するか出なきゃいいんだし、わざわざ律儀に出て襲われるってとこが作り話くさいんだけどな。
しかし……メリーさんが流行ったのは携帯もなかったような一昔前のことだ。
180本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 13:15:02 ID:9hdIjzha0
それが何故今になって再び流行っているのかは分からない。が、オレの学校やネット掲示板等では今ホットなブームらしい。
もしかすると、最初のうちは引っかかっていた犠牲者たちも段々賢くなり、一時期は獲物がいなくなってしまったが、
昨今のオレオレ詐欺とかのグループみたいに、メリーさん業界も知恵を振り絞って新たな手口を開発したのかもしれない。
なーんて、あるわけないか!
オレは携帯に打ち込んだバカバカしい長文を消して、連れとのメリーさん話から話題を変えるべく、Y談的な文章を打っていく。
とそのとき、丁度今メールを返そうと思ってた連れの番号が画面に表示され、お気に入りの着うたが流れ始めた。
「おう、びっくりした……。ったくなんだよ、電話すんならハナからメール送るなっつうの」
メリーさんのことを考えていたのもあって、急な着信に驚いたオレは文句を言いながらも通話ボタンを押して電話に出た。
「もっす。んだよ、電話してくんなら『私メリーさん』んなよ」
…………。
ひやりと背筋が寒くなった気がした。オレの言葉にかぶせて少女の声が聞こえたからだ。もちろん連れは間違えようのない男声。
沈黙。向こうは何も言わない。それが余計に不安を煽り、動悸を激しくさせる。
必死に頭を回転させ、そしてオレは一つの答えにたどり着いた。そうだ。連れが女友達か妹を使ってイタズラをしたに違いない。
丁度メリーさんの話をしてたとこだったし、野郎、オレを一杯食わせようとしてるらしい。そうと分かりゃ怖くなんてない。
オレは逆にうまいことからかってやろうとニヤリと笑い、お得意のドエロトークのスペシャルエヂションをかましてやるため口を開く。
「そっ『今あなたの後ろにいるのぉおおぉおおおぉぉぉ』」
息がかかった。耳に。
よくテレビでやってるような機会音声のようなスロー再生した男声のようなモノが、電話の向こうと耳元のステレオで聞こえてきた。
そうか。やっぱメリーさん業界も不況で新たな手口を考えついたらしい。でも振り向かなきゃいいんだよな?
なんて思っていると(恐怖で体が硬直しているだけだが)突如として頭がグワシとつかまれ、そのままオレの首は凄い力で振り向かさ
181本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 13:22:31 ID:YPxLxMxZ0
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・不覚にも楽しく読んでしまった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スレを選べば喜ばれるだろうにねぇ
182本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 14:01:17 ID:9hdIjzha0
「よぉ。」
 十数年ぶりに会った友人は、すっかりくたびれていたが、昔と変わらないどこかやんちゃな様子で挨拶した。
 しわだらけのロングコートに片手を突っ込み、ボサボサの髪をさらに苛めるように頭を掻いている。
 目の下にはクマが出来ていた。
 私は簡単な挨拶を返し、テーブルを挟んだ向かいの席を勧めた。
 駅前の平日の喫茶店には、打ち合わせに来ている会社員や、ノートパソコンをいじくる学生がそこかしこに見える。
 その中で学生にはとても見えず、またスーツも着ていない私たち2人は少し異質なものに端からは見えただろう。
 私の心に妙な不安がよぎった。
「うーさみさみ。もうすっかり冬だな。」
「ああ。これでますます帰りにタクシー代がかさむ。」
 疲れた笑いを浮かべながら友人は座る。
 それから彼はメニューも見ずにカプチーノを頼んだ。
「今は何を?」
 私が訊くと、友人は首をふる。

183本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 14:02:01 ID:9hdIjzha0
「普通に会社員やってたけど、昨日辞めたよ。ありゃあ駄目だ。」
「何かあったのか?」
「全然家に帰れないんだ。」
 ノルマが厳しいのだろうか。
 そんなことを思いながら残り少ないコーヒーをすする。
 彼と最後に会ったの小学校の頃だったか。
 当時はかなり仲が良かったはずだが、それから多くの出来事を経験する内に、それらの記憶は押し潰されて、断片的な思い出しか残っていなかった。
 だがこうして向き合ってみると、たしかにこの男と過ごした記憶がこの体に染み付いているのが、実感として感じられる。
 しばらくの間私たちは、それらの思い出について、また、他の友人の消息について語り合った。
 語り合いながら、お互いにタイミングをはかっていた。
 私は彼が、なぜ今さら私に会いに来たのかを聞きたかった。
 そして彼もまた、本題へと入りたがっているのが見てとれる。
 が、なぜか二人には躊躇いがあった。
 友人の方は自分が何に対して躊躇しているのかがわかっているようだが、私にはつかめない。
 漠然とした、廃墟の扉を開く時のような、罪悪感にも似た恐怖があった。
「それで――」
 私はハッとした。
 いつの間にかカップは空になっている。
 友人がいぶかしがる風に私の顔を見た。
「おい、大丈夫か?」
「ああすまない。少し疲れているのかな。」
184本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 14:03:06 ID:9hdIjzha0
>>181
は?ちゃんとした「メリーさん」シリーズだろ
185本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 14:32:19 ID:9hdIjzha0
「で、話聞いてたか?」
「いや……すまん。何の話だったっけ。」
 眉間を押さえる私に対して、友人は呆れたようにため息をついた。
「だから、小学校の時よく読んだ怪談だよ。」
「怪談……?」
「ほら、“私、メリーさん。今あなたの後ろに居るの”ってやつ。」
「ああ。あったな、そんなの。」
 懐かしい怪談だ。
 何かの本で見つけて、よく彼が私の後ろで彼女の真似をしてふざけたっけ。
「話は覚えてるか?」
「大体はな。」
「よし、じゃあコレだ。」
 そう言って友人はポケットから携帯電話を取り出し、私に寄越した。電源は入っていない。
 意図がわからないので友人に問うと、彼は悪戯っぽい笑みを浮かべながら「電源入れてみな。」と言った。
 不審に思いながらも私はその携帯電話を開き、電源ボタンに親指を伸ばす。
 てっきり金を貸してくれとでも言うのかと思っていたのに。
 電源が入る。
 途端に、けたたましい着信音が店内に鳴り響いた。
 他の客が不快そうな眼差しを向けてくる。
 私は驚き、思わず通話ボタンを押してしまった。
 友人に電話を返そうとするが、彼はどこか悪意のこもった笑顔を浮かべたまま、私にそのまま電話に出るよう促す。
 その彼の態度を恐ろしく感じた私は唾を飲み込み、恐る恐る電話を耳にやる。
 震える声で言った。
186本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 14:32:34 ID:9hdIjzha0
「も、もしもし……?」
「……私……」
 スピーカーからは、妙にかすれた、少女のような声が聞こえてきた。
「あ、すいません、私は……」
「……メリーさん。」
「……は?」
「私、メリーさん。今、あなたの家の前に居るの……」
「えっとあの、失礼ですが――」
 ブツッ!!
 電話は唐突に切れた。
 わけがわからないまま黒い画面を眺めていると、突然延びてきた友人の手に、携帯電話を奪われた。
「ああ、ありがとう。本当にありがとう。これでようやく家に帰れるよ。」
 そそくさと携帯電話をしまい、席を立つ友人に私は説明を求める。
 彼はテーブルのそばで伝票と自分の財布の中身を見比べながら言った。
「いやあさ、一週間前にメリーさんから電話がかかってきてさ。
俺の家はマンションなんだけど、悪戯かと思って相手してたら、俺の住んでる下の階まで来ちまってさ。」
 何の話かわからない。
「家の電話は線を抜いても鳴りっぱなしだし、会社に寝泊まりしてたんだけど、これじゃあ気が狂いそうだったからさ。
悪いけど頼んだわ。お礼にここはおごるよ。」

187本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 14:32:51 ID:9hdIjzha0
「おい、なんだよコレは!」
 彼は横目で私を見た。
「なあに、別の人間に電話に出てもらえばいいだけさ。
その内お前の携帯にも彼女から電話がくるはずだ。見覚えの無い番号には気をつけろよ。」
「だからこれは何なんだ!説明しろ!!」
「わからない奴だな。」
 私たちは外へ出た。
「……メリーさんだよ。小学生の時、俺たちが好きだった怪談……」
「あんなもの、ただのフィクションだ。」
「本当にそう思うのか?」
「当然だろ!」
「そうかい。」
 その時、私の携帯電話が鳴った。
 戦慄した。
 震える手で液晶表示を見る。
 見覚えの無い番号だった。
 友人は笑う。
「出てみろよ。フィクションなら、お前は助かる。」
 携帯電話を片手に立ち尽くす私を尻目に、彼はゆったりとした仕草でこちらに背を向け、そして歩きだした。
 冬空の下で汗だくになりながら、私は鳴り続ける電話を握りしめていた。
188本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 14:33:15 ID:9hdIjzha0
深夜の道を歩く。
 人通りは少なく、街灯も無い道。
 そこで俺の携帯電話は鳴った。
 驚きつつ液晶を見ると、番号は昼間会ったあの友人のものだった。
 思わず込み上げる笑いをこらえつつ、通話ボタンを押す。
「よぉ。」
「私だ。」
 電話の向こうに居るのは、やはり彼のようだった。
「電話、どうにかなったか?」
「いいや。……これから、どうにかするつもりだ。」
 彼の声からは生気は感じられない。
 急に俺は彼に申し訳なく感じた。
「おい、お前今どこに居るんだ?」
「……」
「おい。」
「お前の後ろに居る。」
 その瞬間、軽い衝撃と共に、俺の背中に激痛が走った。
 くたびれたコートのポケットから、ボイスレコーダーと、それにテープで繋がったもうひとつの携帯電話がこぼれ落ち、血溜まりに転がった。
189本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 17:10:31 ID:cjf8vdDV0
他人の創作物を丸丸コピペしてるのはスレチだ
190 ◆DJINKbmZw2 :2010/06/15(火) 19:19:29 ID:FAtTZe2EO
身内の不幸話を嬉々として投下していたわけではありません。
忍という人間の人となりを知って貰い少しでも興味を持ってくれた人に姉を探す事に意識を向けて欲しかったのです。

興味を持って読んでくれる方が現れるまでは正直苦痛でしたが最後の投下のために何事もなく投下し続けました。
見つけるためならどんな事でもしたい気持ちに変わりはありません。
191 ◆DJINKbmZw2 :2010/06/15(火) 19:39:08 ID:FAtTZe2EO
>>131さんにお聞きします。
ネット上に捜索サイトを作るのは恥ずかしい。テレビでの失踪者を探す番組に応募するのも恥ずかしい、何をするにも母が外聞を気にして何も表立って行動出来なかった数年間は身内は姉を忘れて幸せな生活を送っていたと思いますか?
僕が施設から実家に戻ってから姉に異変が起こり、最終的に行方不明になったことを日々責められる気持ちは分かりますか?

ようやく実名も顔も出して動けるようになったのです。
それまでにどんな苦悩があったかを貴方は想像できますか?
192本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 19:48:45 ID:1wfUMrkKO
>>118
かなり面白かったです
どんどん書いてほしい

193本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 20:51:28 ID:HXTKp1Av0
お姉さんが早く見つかりますように
194本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 21:56:38 ID:wpMNXlYK0
忍は心底カスだと思いました。
シリーズ物読んでこれだけリアルにムカついたのは初めてです。
195本当にあった怖い名無し:2010/06/15(火) 23:58:36 ID:1CQrMPaIP
自分は◆DJINKbmZw2のこと嫌いじゃないよ
文章は読み易かったけど、内容は恐怖より生理的嫌悪感がある、それで少し距離を置いて読んでた
でも、何か訴えたいことがあって、それで書いてる感じだった
このスレには何人かそんな印象の人がいるね
時々そんな風に思う
196本当にあった怖い名無し:2010/06/16(水) 00:43:05 ID:ijUzhiUe0
2chなんて便所の落書きだ、てな言葉があったな・・・。
197本当にあった怖い名無し:2010/06/16(水) 09:57:37 ID:TbBg5Ssb0
自分は物凄く苦しんだんだ、この気持ちが分かるのか、って…何言ってんの?
自分の境遇や気持ちが、他人に簡単に想像できるわけなかろうに。

匿名掲示板で自分が書いたことに対して、何の批判や煽りも無いとでも思っていた?
誰もがそれを信じて、同情して、励ましてくれると思っていた?

嘘っぽい話だと思う人もいれば、それを不快に思う人もいるわけよ。
相手に自分の事を分かれと言う前に、世の中にはそういう人もいるってことを
理解した方が良いと思うがねぇ。

全部本当の話で、キチンと理解して欲しいなら、
こんなとこで話しても無駄。効果無いどころか、煽られて感情的になっている時点で逆効果。
見ていて痛々しい。
然るべき場所にどうぞ。
198本当にあった怖い名無し:2010/06/16(水) 16:01:52 ID:K4VsyT/80
>忍という人間の人となりを知って貰い少しでも興味を持ってくれた人に姉を探す事に意識を向けて欲しかったのです。

それを2chのこんな過疎ってるスレでやることか?しかもなぜ物語としてオカルト板という場所に。不謹慎とは思わなかったのか

>見つけるためならどんな事でもしたい気持ちに変わりはありません。
 と言いながら↓
>ネット上に捜索サイトを作るのは恥ずかしい。テレビでの失踪者を探す番組に応募するのも恥ずかしい、

どんなことでもして探したい、でもサイト作ったりテレビに応募するのは恥ずかしいからやだって・・・・君の人となりが分かった気がするわ。
199本当にあった怖い名無し:2010/06/16(水) 16:06:36 ID:K4VsyT/80
>何をするにも母が外聞を気にして何も表立って行動出来なかった数年間は身内は姉を忘れて幸せな生活を送っていたと思いますか?
>僕が施設から実家に戻ってから姉に異変が起こり、最終的に行方不明になったことを日々責められる気持ちは分かりますか?
>それまでにどんな苦悩があったかを貴方は想像できますか?

そんな思いしてるなら「恥ずかしい」なんて外聞気にしてんじゃねーよ
その言葉吐いた瞬間に上の言葉話白々しくなるって分からんか?他人の苦しみなんて理解できる訳ないだろ。ましてや親族や顔見知りでもないのに
本気で探すんなら「恥ずかしい」なんて言ってないで捜索サイトつくれ。捜索番組があったら応募しろ。VIPにスレ立てろ
200本当にあった怖い名無し:2010/06/17(木) 03:06:25 ID:blBBUNMa0
オイこそが 200へと〜
201本当にあった怖い名無し:2010/06/17(木) 12:21:35 ID:whk6U+bZO
――――――この話題はここまで――――――
202赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 09:48:14 ID:bWrRj67B0
[接触]

1/18
俺「つまり、これはもう…終わりってことか?」

雨月に収集され、神尾さんの家に集まったいつもの4人。
夕飯の鍋を囲みながら話を聞いた後、俺は率直に思った質問をする。

雨月「まぁ、そういうことだな。これ以上は危険。ダメ。ここまでだ」
俺「そっかぁ…」

往来会は危険なところである――
怪しいところだとは思っていたが、これに雨月のお姉さんの太鼓判が押された。
本部まで訪れた身としては少し寂しい気もするが、これ以上関わるのは避けた方が良さそうだ。
…俺と神尾さんは、特に危険らしいから。

神尾「うーん…」
クマのヌイグルミを抱きかかえた神尾さんが、何か言いたそうな顔をする。
彼女が簡単に引き下がれない性格であることは、ここに居る誰もが知っている。
意固地というか何と言うか…そんなとこも、俺は好きなんだがな。

神尾「でもさぁ…」
鮎川「ダメだからね、美加」
神尾さんが何か言おうとした所で、すかさず鮎川さんが止める。

神尾「…はぁーい」
ガッカリと肩を落として黙る神尾さん。
…俺としても、彼女に危ない事はさせたくない。ここはガッカリしてもらおう。
203赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 09:49:35 ID:bWrRj67B0
2/18
鮎川「それにしても…舞さん、平気かなぁ…」
鮎川さんがポツリと言う。
雨月「あぁ…」
それに応える、心配性の雨月。
確か、雨月のお袋さんも心配性だったな。
あのお姉さん、知らないところで気苦労が多そうだ…なんて思ってしまう。

神尾「あのさ、なんで私と北上が危ないのかな」
沈みそうな雰囲気を払拭するように、神尾さんが言う。
「私と北上が危ない」なんて聞くと、まるで2人の関係が怪しいとかなんとか…と思ってくれる人は、どこにも居ない。

雨月「やっぱり…アレじゃないか?」
神尾「霊感の有無?」
雨月「じゃ、ないかな…」
どことなく言い難そうな雨月。

神尾「むー…差別よね。差別」
膨れる神尾さん。

彼女は俺以上に、霊感ってものに拘りを持っている。
自分にそれが無いことが、悔しいのかもしれない。
204赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 09:51:00 ID:bWrRj67B0
3/18
――神尾さんの気持ちは分かる。
俺も一時期は、それを求めたから。

…でも一度死に掛けて、自分に素質がないことが痛いほどよく分かった。
あれ以来、そういったことに関する興味が無くなっていった。
そしてその代わりに、別の方向で強さを求める気持ちが高まっていったのだ。

鮎川「舞さんから連絡あったら、また教えてね」
雨月「あぁ。もちろん」

早くも話を締めに掛かる鮎川さん。
神尾さんが変な気を起こす前に、という考えかもしれない。
俺もそっちに乗るべきだろうけど、それじゃ可哀想かな…と思って神尾さんを見ると、やや不貞腐れ気味でヌイグルミと遊んでいる。

…あれは、ラット君とかいう名前だったっけな。
オスの癖に、あんな風に抱かれて…まさか一緒に寝たりしているのだろうか?
噂では、敵対する相手を、身体に仕込んである針で攻撃するとかしないとか…。
可愛らしい顔をして、なんと手強いライバルよ。
俺だって、いつか――

なんてくだらない妄想をしていると、クマがこちらを見て、ニヤリと笑った。

…まぁ、気のせいだ。うん。
205赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 09:52:37 ID:bWrRj67B0
4/18
――
翌日。

大学の講義が終わった後、私は1人で買い物に出掛けた。
古乃羽も誘おうかと思ったけど、今日は1人。

往来会のこと…霊感のことで腐ってしまった訳ではない。
そんな事は気にしない。
全然気にしない。
絶対気にしない。
ちょっとしか気にしないもん。
ほんの少ししか、気には…

…あ〜もう!!
ズルイわよ、あんなの!
霊感が無い?
えぇ、無いですよ。それが何か?
別に劣等感を感じているわけじゃないのよ。
ただ…欲しいの。手に入れられるものなら、欲しい。
私には、それでどうしてもやってみたいことがある。
そうしないと、私は先に進めない――
206赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 09:54:23 ID:bWrRj67B0
5/18
買い物をするつもりだったけれど、気持ちが滅入ってしまった。
適当にウィンドウショッピング(死語?)でもしてよう、と決めて、店を渡り歩く。

…と。
いつだったか、佳澄に誘われて来た靴屋を見つける。
佳澄に「また来ようね」と言ったけど、結局来られなかったお店。
今思えば、あの時、古乃羽と雨月君が罠に嵌められていたんだ。
一緒にここに来ていた、佳澄に…。

…彼女のことを思うと、複雑な気持ちになる。
仲の良い友達だった佳澄。私も古乃羽も、彼女のことを大好きだった。
もし普通に生まれて、普通に出会っていたら――きっと、親友になれたと思う。
彼女の服の趣味や仕草、言葉遣いは、今も覚えている…。

知らぬ間に現れて、何も話せないまま消えてしまった佳澄。
今、佳澄のことを覚えているのは私たちだけだろう。

彼女の事を聞いて回ったときの、その印象の薄さには驚かされた。
そんな風に存在を消して、誰とも関わらないようにして…唯一覚えている私たちにさえ、時間と共に忘れられていく。
それで、佳澄は幸せだったのかな、と思う。

話がしたい。もう一度、佳澄と話をしたい。仲良くなりたかった。
…そうよ。佳澄とも…。佳澄とだって――
207赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 09:56:15 ID:bWrRj67B0
6/18
――ふと、視線を感じて振り向く。
誰かにジッと見れらているような気がしたけど…気のせいかな?
…って。
何もせずに靴屋の前に突っ立っていたら、変な目で見られることもあるか。
私は物思いに耽るのを中断して、その場を離れる。
…今度、古乃羽とここに買い物に来ようかな。
古乃羽なら、私の気持ちを分かってくれる。
一緒に佳澄の話をして、彼女の事を忘れないように――

――視線。
立ち止まり、振り向く…けど、誰も居ない。
…いや、普通に歩いている人は何人も居るけど、視線の主らしき人は分からない。

ん、もう…。ナンパ?それとも何か、変な人?
姿を見せないってことは、ストーカーだったりして?
だとしたら…返り討ちにしてやる。
襲い掛かってくるようなら、人中めがけてグーパンチよ。容赦しないんだから。
急所を狙って攻撃して、爪立てて引っ掻いて、めちゃくちゃ大きな声出して…

声「あの…」
…なんて乙女らしからぬ事を考えていると、後ろから声を掛けられる。
私は振り向き、声の主をキッと睨みつける。
すると、そこに居たのは――

往来会で会った、広報部長さんだった。
208赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 09:57:33 ID:bWrRj67B0
7/18
――
勇気を出して声を掛けたはいいが、いきなり睨まれてしまった。

声の掛け方がマズかったか?
そもそも街中で女性に声を掛けるなんて、私にとってはまさに偉業。
プライベートでは初めての経験だった。

私「あ、あの…すみません。決して怪しいものでは…」
慌ててしまい、怪しさ満点の事を口走ってしまう。

神尾「あ、いえ…こちらこそ、すいません」
相手も何やらアタフタとしている。
突然声を掛けたから、驚かせてしまったのかもしれない。

私「えっと…私、往来会という――」
神尾「汐崎さん、ですよね」
私「あ…はい。よかった、覚えてくれていましたか」
神尾「はい」
そう言って彼女――神尾美加は、ニッコリと微笑む。

…うむ。真奈美に勝るとも劣らない、良い笑顔だ。
その笑顔のお陰で、私は何とか落ち着きを取り戻す。
209赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 09:59:09 ID:bWrRj67B0
8/18
――そして数十分後、私は神尾嬢と近くの喫茶店で向かい合っていた。
ナンパと間違えられないよう、必死に、慎重に会話をして、ここまで誘えたのだ。…その内容は自身の名誉のために割愛する。
最も、私が「お話したい事と、お聞きしたい事があって――」と言うと、
彼女が予想以上に乗り気になり、ほいほいとついて来てくれた訳だが。

…神尾美加。真奈美と同じように、名刺を受け取った女性。
私は、彼女の行っている大学や、家の住所までも知っている。
なぜなら、事務の三嶋さんが教えてくれたからだ。

三嶋課長と私は旧知の仲で、往来会では一番付き合いの長い間柄だ。
彼は私より10歳以上も年上だが、コツコツと仕事をこなす彼とはウマが合い、2人で飲みに行く事もしばしば。

そんな彼に、私は真奈美の事を相談した。
見知らぬ男から、桐谷達夫の名刺を受け取った、と。

すると彼は、私に3枚の資料を渡してくれた。
…一応、機密事項なので、渡してくれたのではなく、「手違いでコピーが渡ってしまった」という形で。
それは本部長から依頼されたという資料で、それで私は彼女の…神尾美加の事を知り、何とかここで捕まえることができたのだった。
210赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 10:00:26 ID:bWrRj67B0
9/18
神尾「仕事じゃなくても、やっぱりスーツなんですか?」
ミックスジュースとか言う代物を飲みながら、彼女が聞いてくる。
喫茶店と言えばコーヒーか紅茶の2択しかない私は、こんなところで年の差を感じてしまう。
私「えぇ。この格好が落ち着きますから」

今日は仕事ではない事は、既に伝えている。
私個人として話がある、と。
私「それに、傍から見れば仕事に見えますし」
神尾「…ナルホド」

私の考えは伝わったようで、うんうんと頷く。
今、私がこうして彼女とコンタクトを取っている事…プライベートで会っているということは、往来会に知られると良くない可能性がある。

神尾「それで、お話って何でしょうか?」
やや警戒しつつの質問。
…それもそうだろう。
彼女が往来会に、多少なりとも疑いの目を持っていることは知っている。
本部長の話では、私たちが初めて会ったとき、恐らく彼女の仲間であろう誰かが聞き耳を立てていたらしいから。

しかし、だからこそ私は、彼女と話をする気になったのだ。
211赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 10:03:34 ID:bWrRj67B0
10/18
私「例の名刺の件なのですが」
神尾「…はい」
彼女が往来会を疑う事は構わないが、私の事は信用して貰いたい。
私「実は――」

私は、娘の真奈美が名刺を受け取った話をする。
そうして、私自身の事ではないが、こちらも同じ境遇であることを伝える。

神尾「――お嬢さんも…」
私「はい」
信じてもらえただろうか?
分からないが、ここは隠し事をせずに話すのが良いだろう。

私「それで私も気になってしまって…色々と調べているのです」
神尾「…」
考え込む彼女。
その様子は何かを疑っているというより、少し迷っているように見える。

私「それで、お聞きしたいというか、確認して頂きたいことがありまして…」
私は更に続け、カバンから1枚の写真を取り出す。

私「神尾さんに名刺を渡したのは、この男ではありませんか?」

そう言って、それを見せる。
それは、三嶋さんから貰った、桐谷隆二の写真のコピーだった。
212赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 10:09:48 ID:bWrRj67B0
11/18
神尾「あ…」
私「…違いましたか?」
神尾「いえ、この人です」
私「やはり…」

彼女はテーブルに置いた写真をジッと見つめている。
何か、思うところがあるようにも見えるが…?

私「真奈美――うちの子にも確認したのですが、やはり同じ人物みたいですね」
神尾「…」
私「この男、桐谷隆二と言って…桐谷達夫の弟なのです。おそらく、兄の事件のことを調べているのじゃないかと思います」
神尾「…」
私「私としては、どうにかしてこの男を探し出して――」
神尾「あの、すみません」
私「――はい?」

不意に言葉を止められる。
神尾「少し考えさせてもらって良いですか?」
私「…えぇ、どうぞ」

そう答えると、彼女は腕を組んで本格的に考えるようなポーズをとる。
一度家に帰って…と言われるかと思ったが、どうやらそれは無いようだった。
213赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 10:15:19 ID:bWrRj67B0
12/18
悩める女子大生を前に、私も一緒に考える。

…といっても事件のことでは無く、この状況のことだ。
目の前には、若く可愛らしい女性。こちらはスーツを着た中年男性。
傍目から見ると…これはちょっとアブナイ。スーツを着ていて、本当に良かった。
真奈美と大差ない年頃の相手に、どうこうという感情も沸かないが、一般にそうとは思われないだろう。
そう考えると、彼女もよく誘いに乗ってくれたものだ。

好奇心が旺盛なのか、他に理由があるのか…真奈美はこういうところは平気かな、と変なところで心配してしまう。

神尾「…あの、何点か質問して良いですか?」
私「あ、どうぞ」

神尾「この話――お嬢さんが名刺を受け取ったという話を、他の誰かにしましたか?」

…想定内の質問だ。

私「はい。私の――上司に話しました」
素直に答えるのが良いだろう。私は、嘘は付きたくない。
この子を、騙したくはない。
214赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 10:18:50 ID:bWrRj67B0
13/18
神尾「上司の方は何て?…あ、どんな方です?」
私「私の直属の上司で、本会の本部長になります。信用できる相手だと思っていたのですが…」

高城本部長の事を思い出すと、なぜだか少し悲しい気分になる。
心にポッカリと穴が開いたような感じだ。
…きっと、信用を裏切られたからだろう。

神尾「何て仰っていました?」
私「この件については何も知らない、自分にも一切忘れるように、と。…桐谷の名刺も没収されてしまいました」
少しは相談に乗ってくれると期待していたが、門前払いをされた気分だった。

神尾「そうですか…」
私「はい。それで、独自に調べてみようかな、と」
神尾「…」
私「力になってくれるのでは、と思ったのですけどね…。事件について、何か知っていそうな雰囲気だったので」
神尾「信用できる人だと思っていた?」
私「はい」
神尾「…」
私「結果的には話さないほうが良かったみたいで…失敗でした」
神尾「忘れるように、と…」
私「はい…」

何だろう?気になるような事があるのかな?
215赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 10:22:12 ID:bWrRj67B0
14/18
神尾「どういう方なのですか?その…本部長さん」
私「えーっと…」

どう説明すべきかな。年恰好の事を率直に言うと、あらぬ誤解をされそうだ。

私「彼女は、ですね…若くして――」
神尾「彼女?」
私「…あ、えぇ。本部長は女性です。まだ若い…28の」
神尾「へぇ…28で本部長…」
同じ女性として、感心するところはあるようだ。

私「それで、ですね…仕事に関しては、それはもう――」
神尾「美人ですか?」
私「え…あ、はい。とても魅力的ですよ」
神尾「お茶汲みがお好きですか?」
私「えぇ、変わった人で――…は?」

突然の質問に驚かされる。一体なんで、どこからそんな質問が出てくる?

神尾「あ、やっぱり。あの時、お茶持って来てくれた女の人ですよね?」
私「え、えぇ…実は。凄いですねぇ。よく…」
神尾「アハハ…勘ですよ、勘。第6感ってやつです」
216赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 10:25:06 ID:bWrRj67B0
15/18
神尾「あの人かぁ…」
私「えぇ、あの人です」
神尾「色っぽい方ですよね」
私「はい…。お陰で、いつも目のやりどころに困ります」
神尾「アハハ…」
なぜだか、本部長の話で打ち解けることができたようだ。
…クシャミでもしていそうな本部長の姿が思い浮かぶ。

神尾「…信用していても、良いんじゃないですか?」
私「はい?」
また唐突に、何を…

私「本部長の事ですか?でも――」
神尾「何かを知っているからこそ、忘れろって言ったのかも知れませんよ」
私「…しかし、ですね」
神尾「汐崎さんが信用していた人ですよね?相手の本部長さんも、自分を信用してくれていることは、知っていたと思うんです」
私「…」
それはあるだろうと思う。
信頼関係は築けていたはずだ。…だからこそ、それが崩れたと思ったのだ。
217赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 10:29:17 ID:bWrRj67B0
16/18
神尾「だったらそんな風に考えないで、危ない事だから身を引くように言ってくれた、って思いましょうよ」
私「ふーむ…」
神尾「汐崎さんのこと、心配してくれたんですよ。きっと」

ポジティブだ。人を信じる事に躊躇をしない。
恐らくこの子の周りには、信じるに足る友人が居るからだろうと想像できる。

…でも確かに、良い方に考えるとそうなるのかも知れない。
私はなんで、そう思わなかったのだろうな…と思い、すぐに気付く。
――真奈美の事だったからだ。
自覚はしているつもりだが、娘が絡むと、どうしても周りが見えなくなってしまう。
ひょっとして私は…本部長に悪い事をしたかもしれない。
少し、酷な態度を取ってしまったかも…。

私「そうですね…」
神尾「そうですよ。だって、お互いに信頼があったのでしょう?」

もし本部長のあの態度が、何か理由のあることだとしたら…?
……
イカンな。もう1度会って、話をする必要がありそうだ。
一言謝って、今度はちゃんと…
218赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 10:32:38 ID:bWrRj67B0
17/18
私「いやぁ、何と言うか…諭されてしまいました」
気恥ずかしくて、ポリポリと頭をかきながら言う。
神尾「あ…いえ、すみません、生意気な事言って…」
申し訳なさそうに小さくなる神尾嬢。

私「いやいや、全然。ありがとうございます。もう一度、相談に行ってみますよ」
神尾「そうですか…良かったぁ」
笑顔で応えてくれる。本当に良い子だ。

そして話がひと段落つき、「それではこれで…」と言いそうになったところで思い出す。
話しかけた目的の1つを、忘れるところだった。

私「あの、それでですね…」
神尾「はい?」
私「その…ちょっと言い難いのですが、お願いがありまして」
神尾「何でしょう?」
私「連絡先を、ですね…」
神尾「あぁ、はい」

そう言って彼女は携帯を取り出す。
…先に悟ってくれて良かった。
若い女性相手に、「電話番号を教えて下さい」なんて、上手く言える自信はなかった。
219赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/06/18(金) 10:38:48 ID:bWrRj67B0
18/18
私「――これで…できました?」
このために必死で勉強した「赤外線通信」というものを使って、携帯番号の交換をする。
神尾「っと…はい、大丈夫です」
私「何かあったら、いつでも連絡してください。…私の方からも、何か分かったら連絡して良いですか?」
神尾「それはもう、是非」
何だか楽しそうな顔で言ってくる。
こういうことが好きな子なのだろう。好奇心も程々に…と思うが。

その後は聞かれるままに娘の話などをし、自分としては大分打ち解ける事ができた感じだった。
…まぁ、人当たりが良く話しやすい、彼女の人柄のお陰だろう。

そして日が暮れてきた頃に彼女と別れ、私は1人、家路についた。


――2人で会っている間、それをジッと見張っている者が居た事には、気付く由もなかった。


220本当にあった怖い名無し:2010/06/18(金) 12:42:12 ID:zdY4T7160
つーか、コイツの話いつになったら終わるんだろう・・・・
なんでコイツのためだけにスレを維持しないといけないのか
自分のブログ持ってるんでしょう?そこだけでいいじゃん。
221本当にあった怖い名無し:2010/06/18(金) 14:58:56 ID:+QFTYfekO





――――――赤緑先生の次回作にご期待下さい――――――





222本当にあった怖い名無し:2010/06/18(金) 17:04:36 ID:NG3Pe4dn0
>>220

その人は、ウニさんが来るのを待つ間の保守係さんですよ。
読んでないけど、ありがたいと思う事にしています。
223本当にあった怖い名無し:2010/06/18(金) 23:49:55 ID:z52Hh1/a0
>>219
今回も楽しく読ませて頂きました。
次作もお待ちしています。
224本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 14:22:23 ID:Fvicxzha0
読み辛さは相変わらずだな
225本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:38:07 ID:0yjVHMnx0
>>222
保守係?そんな事だけで維持させられても迷惑なだけなんだよ
負荷がかかって規制しまくりなのに自分かってな考えでスレ維持してんじゃねーよ
226本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:40:15 ID:0yjVHMnx0
>>223
何処がどいうふうに楽しめたんだ?
赤緑の話で内容について語られることって皆無だよな。皆無。
あまりない、じゃなくて一度たりともない。駄作の証明
227本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:52:56 ID:0yjVHMnx0
「私、メリーさん。 ちょっ待って! 切らないで! やっと公衆電話見つけて電話できたの。
 もう小銭もほとんどないしテレホンカードも度数切れ。ここで切られたらもう電話できないの!
 だからここで言うわ。
 私、メリーさん。十分後にあなたの後ろに出現するn」
電話は途中で切れてしまった。どうやら小銭が切れたようだ。
俺は十分後に背後に現れたメリーさんをつれて携帯ショップへ行った。
今では当たり前のようになってしまった携帯電話を前にはしゃぎまくるメリーさん。
買って上げるというと目を輝かせて喜んでくれた。

携帯代分働くと言ってうちに住み込み始めてから三年。今日は婚姻届をプレゼントする予定だ。

228本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:53:47 ID:0yjVHMnx0
「メリーさんの電話、ってのを知ってるか?」
 開口一番──というわけでもないが、しばらくぶりに会った奴は挨拶を交わすのもそこそこにそう切り出した。
 手に持ったビールのグラスを見つめ、割りと茶化した風もなく。
 となればそれなりに真面目な話なのだろう。しかしいかんせん場所が渋いおでんの屋台ときてる。
 思い出話や愚痴に花咲かせるものだと思い込んでいた俺はまったく予期していなかった台詞に面食らっていた。
「……えと、メリーさんって、あの電話がかかってくるメリーさん……だよな?」
「ああ」
 俺の認識が正しければ、それは都市伝説の一つである。特にオカルト好きな奴ではなかった気がするが。
「で、そのメリーさんがどーしたんだ? まさか……電話がかかってきたって言うんじゃねーだろーな……?」
 恐る恐るといった感じの口調を意識しながら言う。
 もしかすると、こういうノリから始めて驚かせ、その後の会話を盛り上げるネタを覚えたのかもしれない。
 となれば乗ってやらないわけにはいかないだろう。
 そんなことを考えていると、奴はふっと笑った。
 俺はその笑いに違和感を覚える。引っかかったという感じではなく、演技を見透かしたような含みがあったからだ。
「私のとこにはかかってきてないよ。ただ、気になってね」
「気になるって、なにが?」
 話が見えない上に酒の席で意味不明な話題をふられていることもあり、少しだけもどかしさを感じ始めていた。
「メリーさんの話にはいくつか説がある。一番基本なのが、女の子が捨てたメリーって人形が電話をかけてきて、最後には『あなたの後ろにいるの』で終わるってパターンだな」
「ほお」
229本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:54:31 ID:0yjVHMnx0
「そっから派生して、振り向いたら殺されるだとか、ひき逃げした運転手に被害者の少女から電話がかかってくるなんていくつかの話がある」
「ふぅん」
「あとは、メリーさんが相手にしてもらえずに泣いたり、少女が超高層マンションに住んでて、たどり着く前にメリーさんがギブアップしたり、なんていう話もあったな」
「ぶっ、それは初耳だな」
 想像したらメリーさんがちょっと可愛く思えてきた。まあ都市伝説というか誰かが考えたギャグなんだろうけど。
「まあそんな具合に色々派生があるが……お前の知ってるメリーさんの話は、どういう感じだった?」
「は? いや、どういう感じって言われても……お前が言ってるのと同じだけど。詳しいことなんて知らないし」
「いいから、詳しく知らないでもいいからお前がイメージしてたメリーさんの話を大ざっぱでいいから聞かせてくれ」
 一体なんだってんだろうか。最初は冷静だったのに話しているうちに興奮してきたのか、奴は少し強引に話を迫る。
「あー……だから、女の子から電話がかかってきて、今どこどこにいるから、ってのが続いて最後は後ろにいる……って感じだよ」
「女の子については? 元の話が人形だとか知ってたか?」
「いや、知らなかったけど」
「後ろにいる、ってなった後の展開は?」
「さあ……ただ、なんとなく殺されるイメージがあるけど」
「そっか……」
 奴は今度こそ神妙な顔をして黙り込んでしまった。そして俺は今度こそわけの分からん話にもどかしさが怒りに変わった。
「なあ、お前一体何が言いたいのさ? ……こっちは久しぶりに会って楽しく酒が飲めるって思ってたの」
「妹が蒸発した」
「…………は?」
「妹が行方不明になっちまったんだよ……。消える前に家族とか友達にメリーさんが来る、って言ってたんだ。だから……な」
 おでん屋の店主のグラスを磨く手が止まる。背中に当たる秋風が嫌に冷たくなってきた。まるでそこに冷気を帯びた何者かがいるかのように。
230本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:55:00 ID:0yjVHMnx0
口裂け女「私、綺麗?…いや、そんな事は置いといて。ちょっとメリーさん私見ちゃったのよ〜」

メリーさん「あら、何を?」

口裂け女「貴女の旦那がさぁ…。ほらIN(ピー)Xで働いててうちの隣に住んでるおかっぱ頭の〜」

メリーさん「ああ、花子ちゃんね。あの子と私の旦那がどうかしたの?」

口裂け女「実はね。二人がホテル入るとこ見ちゃったのよ…。」



メリーさん「………そう……教えてくれてありがと」
メリーさんは携帯を取り出し旦那へ電話をかけた

メリーさん「私、メリーさん。今、神奈川県横浜市中区××町×××にいるの」
電話を切り
旦那の所へと走り去って行った




口裂け女「今日は修羅場ね…」
231本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:55:59 ID:0yjVHMnx0
「お願い、娘と、娘と話をさせて!」
私は、その男に向かって電話越しに叫んだ。
私の可愛い娘は、誘拐されており、電話の相手は犯人なのだ。
「ああ……そうだな。その代わり、金はしっかりと出してもらうぜ」
下卑た笑いが止むと、聞こえてきたのは娘の声だ。
「ママ、怖い、助けて!」
娘を落ち着かせると、私は秘策を教える。
「ママの言う通りにするのよ?」

娘が、犯人の後ろに立つ。
「もしもし、私、メリー」
電話を通じ、娘の視界が私にも見える。
娘と、声を重ねる。
電話。呪文。足りない力は私が補って、呪いは完成する。
「今、あなたの後ろにいるの」
そうして、娘は、【血】に目覚めた。
「アハハ、アハハハハハ!」
「ば、化け物ッ!」
恐怖に歪んだ男の目に最期に映ったのは、
髪をふり乱して血走った目をした娘の姿だった。

私は、私達は、【メリーさん】
人の心の闇から生まれ、成長し、人の中に潜むもの。
もしもあなたが綺麗な【メリー】という女性と結婚して
可愛い娘が生まれたら気を付けなさい。
その子もまた【メリー】と言うのなら、特に、ね。
彼女達は、私達の眷族なのだから。
232本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:56:22 ID:0yjVHMnx0
メリーさんAがあらわれた!
メリーさんBがあらわれた!
メリーさんCがあらわれた!
メリーさんDがあらわれた!
メリーさんEがあらわれた!

俺は逃げだした!

「私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」

しかし回り込まれたしまった!
233本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:56:50 ID:0yjVHMnx0
 自宅への帰宅途中、俺の頭の中では奴に相談された話が混沌と渦巻いていた。
 帰り際にかっくらったビールは今まで生きてきた中で最もまずく、思わず吐き捨てたくなるほどだった。
 おまけにたった一口しか飲んでいないのに頭がくらくらして嫌な胸焼けまでする。
 頭を押さえて舌打ちをしながら緩慢な足取りで帰路を行く。

『…………』
 思わず口を開き──けれど言葉は出なかった。
 言われたことの意味が分からなくて……いや、もちろんどっちの単語も理解はできる。だがあまりに現実味がなくて。
 冗談にしてもマジにしてもすこぶる性質の悪い話だと思った。
『……ごめんな。信じらんないよな……』
「あ、いや……』
 特に失望したような様子もなく、きっと俺のリアクションが予想の範囲内だったのだろう、奴はすまなそうな顔をする。
 正直……まるで対応の仕方が分からなかった。
 現実的に考えて行方不明ならば事件か何かで完全に警察の仕事だ。
 本当にメリーさんという幽霊(人形?)に殺されたり消されたりしたのなら……それもそれで警察か霊能者の仕事だろう。
 何故近頃まったく会っていなかった俺にわざわざ連絡を取ってまでそんな話をしたのか、少しも奴の思考が読めなかった。
『え…っと……と、とりあえず話を簡単に整理してくれよ。悪い、俺も混乱しちまってさ……』
 奴は両手で持ったグラスに目を落としながら話し出す。
『妹…お前も知ってるだろ、あいつが一週間くらい前にいなくなった。部屋の状態から考えて、警察は事件の可能性が高いって言ってる』
『あ、一応警察には届けたんだな』
234本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:57:41 ID:0yjVHMnx0
 メリーさんとか言い出すから、てっきり警察にも届けずに騒いでいるのかと思ってた。
 というか警察が事件の可能性が高いっていうくらいだから、こいつが勝手に怪談話を信じ込んでいるだけなのかもしれない。
 奴は一度じとりとした目を俺に向ける。思わず怯むと、目を逸らして奴はまた話し始めた。
『部屋には争った跡みたいなのがあったからな。メリーさんなんてオカルト話より、現実的な線で捜査を進めるのは当然だとは思う』
『……もしかして、警察にもメリーさんの話……したのか?』
『そりゃあな。あいつもいなくなる前には異常に怖がってたし、それに……』
 そこで一旦言葉を切ると、目を閉じてしばらく考えるような表情をした後、奴はまた口を開いた。
『何が手がかりになるか分かんないから話さないわけにはいかないだろ』
『まあ……そういうもんか』
『私はな……ストーカーか何かなんじゃないかと思ってるんだ』
235本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:58:06 ID:0yjVHMnx0
ストーカー。オカルト話を信じ切っていると思っていた奴の口から漏れたその現実的で危険性の高い言葉に、俺は目を見開く。
『メリーさんってのが比喩か何かで、ストーカーのことを指してるんじゃないか……って、そう思って色々調べたんだよ』
『……だから俺が知ってるメリーさんのイメージみたいなのを聞いたのか』
『メリーさんの特徴的な印象が犯人に繋がってるかもしれないから……悪いとは思ったけど、お前なら真剣に聞いてくれると思って』
 そう言うと奴は突然立ち上がり、先ほどとは打って変わって声のトーンを上げ、
『悪かったなっ、久しぶりに会ったのに辛気臭い話しちまってさ。今度また飲み直そうぜ。ここは多めに払っとくから、せめて腹膨らませて帰ってくれな』
『あ、おい!』
 止める間もなく、奴は万札を置いて風のように消えて行ってしまった。放心した後、俺はグラスのビールを一気に煽り立ち上がった。

 今考えるとあいつ、かなり切羽詰ってる感じだったな……。
 そこまで特別に妹との仲が良かったわけじゃないと記憶してるが、やはり肉親がストーカー被害とかでいなくなれば落ち込むものか。
 メリーさん……。
 都市伝説とあいつの妹の蒸発……一体どういう関係があるのだろうか。中途半端に聞かされただけだとどうにも歯がゆい。
 人形…電話…あなたの後ろに……
「!!」
 背筋が急に薄ら寒くなり、慌てて後ろを振り返る。
236本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:58:46 ID:0yjVHMnx0
……もちろん何もいるわけはない。街灯で等間隔に照らされた暗い夜道が続くだけだ。
 やはり大人になっても作り話だと理解していても、何か得体の知れない存在がいるかもしれないと思ってしまうのは人間の性なのか。
 バカバカしい。明日も仕事だ。早く帰って寝、
 ──急に携帯の着信音が鳴り響く。
 タイミングがタイミングだけに心臓が口から飛び出しそうなほどに跳び上がり、激しい動悸に襲われながら犬のように息をする。
 震える手で携帯のディスプレイを見れば、なんてことはない、あいつからの電話だった。
 マジで死ぬかと思ったじゃねえか……。何か言い忘れたことでもあったのだろうか、とりあえず文句を言わなければと通話ボタンを押す。
「もしもし。どうし」
「私メリーさん」
 時間が一瞬止まった気がした。声が出ない。
「今、北江公園の前にいるの」
「……お……お、おお、おいおいおい……ははっ、げ、げ、幻滅だぞ。このタイミングでそんな冗談……」
「今、あなたの方に向かって全速力で走ってるの」
「言……い……、…………」
 もう、本当に言葉が出ない。さぁーっと体温が下がっていくのが分かる。手が汗でヌルヌルする。背中が冷や汗で気持ち悪い。
 そういえば……北江公園って……この近く。そう──さっき数分前に前を通ったばかりの……。
 待て、待て待て待て待て。さっきこいつなんて言った!?

 今、あなたの方に向かって全速力で走ってるの──。
237本当にあった怖い名無し:2010/06/19(土) 23:59:59 ID:0yjVHMnx0
ふと携帯を見ると着信が一見有った
確認をしてみると実に妙な事が書いてある。
『件名 私メリーさん』
『内容 このメールを見て振り向いたときアナタは―――』

『死ぬ』

振り向いたら、死ぬ。実に奇妙な話だ。
私は横目で周囲の様子を確認した。
(……紫鏡には何も写ってはいない)
人面犬も変わった様子はない。鼻には特に異常を感じてはないようだ。
(やはり、イタズラか……)
そう自嘲すると、私は連れのカシマさんに声をかけようと後ろを向いた。
振り向いた私の目に、とても奇妙な光景が見えた。
少女が笑っていた。それも、顔だけで。
金髪の、年端もいかない少女の顔が虚空に浮かび、こちらを見て笑っていた。
いや、顔だけではなかった。
首から、肩、手や胴体がうっすらと浮かび上がってくる。
(な、なんだコイツは? さっきは、確かに! 何もいなかった筈!)
私は反射的にカシマと人面犬を突き飛ばした。
「カシマ! 人面犬! あぶない!」

ガォン!!!

「な、なんだ!クチサケ! どうした!?」
「……クチサケは、粉みじんになって死んだ」
238本当にあった怖い名無し:2010/06/20(日) 00:00:27 ID:0yjVHMnx0
カシマと人面犬の前に一人の少女が立っていた。
青白い顔をした、酷薄な笑みを浮かべた、ワンピースの少女。
その手には携帯電話が握られている。
そしてその足元には、足が転がっていた。
太ももから上が綺麗に無くなっている、綺麗な両脚。
カシマにはそれが誰の脚なのか理解したが、それを受け入れる事は瞬時には出来なかった。
「お、おいクチサケ! どこにいるんだ! クチサケ!」
カシマの空しい叫びが辺りに響く。
人面犬が情けない声で鳴いた。
少女は彼らに納得させるように、あるいは覚悟を決めさせるかのように、
ゆっくりと、地面に転がっている脚を掴んで、持ち上げた。
そして、口の端を歪めて微笑み、彼らに告げた。
「もう一度言うわ。クチサケは粉みじんになって死んだ」
「な、なに!?」
少女が脚を携帯電話の液晶に近づけると、次の瞬間、脚が画面へと吸い込まれていった。
「私の携帯は、私自身も知らないけど亜空間に通じているの。クチサケはそこに放り込まれちゃった」
少女はそう言いながらもう片方の脚を掴むと、同じ様に液晶に押し付け、消し去る。
「思い上がりは消さなければいけない。私以上に知名度がある都市伝説の輩なんて―――だから消した」
一歩、また一歩と、少女はカシマと人面犬の元へゆっくりと歩を進めていく。
「一人一人、確実に確実に、このメリーさんの携帯亜空間にばら撒いてやる」
239本当にあった怖い名無し:2010/06/20(日) 05:59:08 ID:wuPL1shK0
もう夏休みが始まってるのか
240本当にあった怖い名無し:2010/06/20(日) 18:03:45 ID:OZIZrj5yO
毎日が夏休みなんじゃね?
241本当にあった怖い名無し:2010/06/20(日) 18:15:50 ID:5D0/q5GY0
終わらない夏休み
終わっている人生
242本当にあった怖い名無し:2010/06/21(月) 12:16:10 ID:eNCFl2RKO
いいなあ 毎日夏休みだなんて
243本当にあった怖い名無し:2010/06/21(月) 15:21:37 ID:pepvVDeWO
>>241
誰が上手いこと言えとw

>>赤緑 最近面白くなってきたよ〜
淡々と投稿してくれてありがとう。
楽しみにしてる、ガンガレ!

規制解除で久し振りのカキコ〜〜
244 ◆rxgDDSyDjk :2010/06/21(月) 15:34:01 ID:JNdpACzYO

パソコンの規制が解除されたら、久しぶりに投下したいと思います。
もうすぐ夏ですね。

245本当にあった怖い名無し:2010/06/21(月) 16:03:41 ID:2ZuqAipj0
恋をしてみませんか?
246本当にあった怖い名無し:2010/06/22(火) 00:07:55 ID:ZqNBGwYq0
もうこの流れが気持ち悪くてしょうがない
本気でシネよと思う
247本当にあった怖い名無し:2010/06/23(水) 13:27:48 ID:3KH9IlYK0
>>244
投下したら・・・・分かってるよね?ww
248本当にあった怖い名無し:2010/06/23(水) 23:51:13 ID:Ehc9Sn1zO
投下〜
249本当にあった怖い名無し:2010/06/25(金) 21:40:00 ID:wIuzQDd/0
喪中さんにもう1本くらい投下して貰いたいです。
250本当にあった怖い名無し:2010/06/26(土) 20:54:06 ID:8vSUpT7XO
>>219
今回も楽しく読ませてもらいました
しつこいヤジに負けて書かなくなりそうで心配…
書き込みしなくても楽しみしてる人は他にもいると思うから、ぜひ続けてください
251本当にあった怖い名無し:2010/06/27(日) 00:03:03 ID:4rSTnpF8O
どの辺りが楽しく読めたのかkwsk書いてあげればいいのにネ
252本当にあった怖い名無し:2010/06/27(日) 18:11:44 ID:swAxq5uEO

kwsk言ってるやつはテンプレ読めよと言いたい。

253本当にあった怖い名無し:2010/06/27(日) 18:40:20 ID:4rSTnpF8O
テンプレ三回音読したけど>>252はテンプレ違反です^^;
254本当にあった怖い名無し:2010/06/27(日) 21:24:40 ID:IEilGuJe0
>>251
本心では「つまらんな」と思いながらも「乙」と書き込まないとイケないんだよ信者は
255本当にあった怖い名無し:2010/06/28(月) 20:00:13 ID:dd1Pm6AC0
ウニさん待ち
256赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 09:42:59 ID:kRqtG4ug0
[暗転]

1/12
往来会ができたのは、1985年の事だ。

その年の5月、当時一介の易者であった私に、転機が訪れた。
あるところから偶然手に入れたモノにより、私の運命が大きく変わったのだ。

それを最大限に活かすため、私はこの往来会を立ち上げた。

…あぁ、私ではないか。私たち、だ。

会長ではなく、副会長という座に落ち着いたのは、何よりも自由に動きやすい立場だったからだ。
その甲斐もあり、立ち上げたときの見込みどおり、組織は着々と成長していった。

そのために、私がどれだけの苦労をしてきたことか。
往来会をここまで大きくしたのは、この私だ。
この会の全ては私のものであると言っても過言ではない。

…それゆえに、あの高城沙織という女の存在は、私には許せなかった。
257赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 09:46:21 ID:kRqtG4ug0
2/12
ある日、会長自らがスカウトしてきたのには、驚かされたものだ。
…が、その相手――高城を見て、なるほどと納得した。
そしてそれくらいの我侭は許してやろうと思い、私は彼女を入会させる事に同意したのだ。

しかし…それが今は、本部長だ。
会のナンバー3。私の1つ下。創立メンバーであり、副会長であるこの私の、1つ下。

…これは、許されることではない。

昇進の話が出たとき、私は猛反対したが、会長は頑として意見を変えなかった。
事実、高城沙織はとても優秀だ。十分なカリスマ性もあり、人を惹きつけるものを持っている。
その点は認めざるを得ないだろう。私も伊達に副会長と言う役職に就いている訳ではない。

ただ一番の問題は…彼女が、私の言う事を聞かないことだった。

私のものであるこの往来会において、それは許されることではない。
決して、あってはならない事だ。
例え、会長の息の掛かった者だとしても。
258赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 09:51:08 ID:kRqtG4ug0
3/12
…が、しかし。
いつか何か手を打とうと考えていたが、どうやらその必要も無くなった。

先日見えた、死相。

いつどこでと特定はできないが、少なくとも1週間以内には、彼女は死んでくれる筈。
その時が楽しみだ…。

――私はそんな事を思いながら、当の本部長室の扉をノックする。

時刻はとっくに定時を過ぎ、20時近くなっているが、急用ができた為に私はここにやってきた。
返事があり扉を開くと、中には既に藤木も来ている。

高城沙織と藤木徹。

彼らには、これから仕事をしてもらう。
拒否する事は許されない。
我が会にとって、とても大切な仕事だからだ。
259赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 09:55:57 ID:kRqtG4ug0
4/12
高城「こんばんは」
藤木「こんばんは、副会長」

2人の挨拶を受け、私は椅子に掛ける。
私「いや、すまんね。こんな遅くに呼び出して」
高城がすぐにお茶を出してくれる。

藤木「いえいえ、全然平気ですよ。ねぇ、本部長」
隣に座りながら藤木が言う。
誰もコイツの時間の心配などしていない。

高城「…何か、急な用件が?」
向かいに座った高城が尋ねてくる。
私の「すまない」に対して何も言わないのは、ちょっとした反発心かも知れない。

私「あぁ。私の部下からの報告でね…」
私は高城を見据えて言う。
…意図は伝わるだろう。

私「例の神尾という学生のことだが、今日の午後、彼女に汐崎祐一が接触してきたのだよ」
260赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 10:03:14 ID:kRqtG4ug0
5/12
一瞬。
ほんの一瞬、ほんの僅かだが、高城が息を呑んだのを確認できた。

…よし。満足できる反応だ。
私は内心ほくそ笑み、言葉を続ける。

私「…どう思うかね?高城君」
ジッと彼女を見つめる。
横に居る藤木も一緒になって彼女を見る。
すると彼女は一時考えた後、こう答えた。

高城「残念ですね」

私「…うむ」
流石、というところかな。
「仕事の話として、スカウトに行ったのでは?」と返してくる事も予想していたが、そんな下手な事は言ってこなかった。
この返事からは、もはや汐崎の事をフォローする気が無いようにも見えるが、果たして…?

私「私も残念に思うよ…。彼は、勝手なことをする人間とは思っていなかった」
ため息混じりに言う。
藤木「あの汐崎部長が、ねぇ…」
藤木も、私に合わせるように呟く。
261赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 10:06:12 ID:kRqtG4ug0
6/12
高城「全て忘れて、大人しくしていると思ったのですが…。申し訳ありません。私のミスです」
座ったまま、頭を下げる高城。
普段の格好なら、その胸元がかなり魅力的なことになっただろうが、今日は落ち着いた格好をしている。

…相手が、私と藤木だからだろう。
まぁ、私はこの歳だ。それでどうとも思わない。
隣の藤木は、残念がっているだろうが。

私「ミスという程のことでもないさ。問題は、これからどうするかだ」
高城「…はい」
――素直だ。
そう、いつもこうして素直にしていればいいものを…。

藤木「こうなった以上は、アレですかね?自分がやりますよ」
高城「…アレとは、何のことかしら?」
バカな事を口走り、高城に睨まれる藤木。
…コイツは本当に頭の悪い男だ。
262赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 10:07:33 ID:kRqtG4ug0
7/12
私「汐崎には…しばらく本部に居て貰おうと思う」
高城「本部に?」
私「宿直室があっただろう。何日間か、そこに…ね」
高城「…そうですか」
事実上の監禁…いや、軟禁だが、決して怪しまれることではないだろう。

高城「どれ程の期間のおつもりですか?」
私「そうだな…」
期間は決まっている。
私「1週間、というところだろうな」
それだけあれば良い。それだけあれば…この女は死ぬ。
汐崎を片付けるのは、その後だ。

今大事なのは、汐崎と桐谷隆二が接触する事を防ぐ事。
汐崎に全ての真実が伝わることは、防がなければならない。
往来会の秘密を、外に漏らす訳にはいかないのだ。

もし汐崎が秘密を知ってしまったら、彼の口も塞がれる…

私には既に彼を生かしておく気は無いが、高城はその点を危惧しているだろう。
それ故に、汐崎を軟禁することに反対はしないはずだ。
管理下に置くことで、彼の身の安全が約束されると信じているだろうからな…。
263赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 10:10:06 ID:kRqtG4ug0
8/12
藤木「それじゃ、明日ここに来たときに話をつけますか」
私「いや…」
それでは遅い。

私「今日、これから彼の家に行って、連れてきてくれるかね」

藤木「これから、ですか」
私「そう。早いほうが良い」
藤木「分かりました。それじゃ、今から行って、力尽くでも連れてきますよ」
自分の土俵に近い話とあって、この男はやる気を出しているようだ。

私「高城君も一緒に行ってくれるかね?その方か彼も来やすいだろう」
当然…というつもりで彼女に言う。
だが、その返事は意外なものだった。

高城「…お断りします」

藤木「は…?」
私「…ほう」
ここに来て、こうも挑戦的な態度を取るとは思わなかった。
何か、考えがあるのだろうか?
一抹の不安がよぎる。
264赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 10:11:58 ID:kRqtG4ug0
9/12
藤木「本部長、それはマズイですよ…」
私「…なぜかね?」
少々威圧的に質問をする。
余計な事を言うようなら、この女も一緒に――

高城「…力尽くと言う事なら、私は賛同できません」

――あぁ…そういう事か。

私「ハハハ…それは言葉のアヤというものだろう?」
そう言いながら藤木を見る。
藤木「勿論、平和的にいきますよ。当たり前じゃないですか」
ヤレヤレといった感じで応える藤木。

…やはり、コイツは分かっていないな。
高城は、我々が桐谷達夫に対して「力尽く」の行動をした事を承知の上で、言ったのだ。

これは、皮肉以外のなにものでもない。
265赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 10:13:42 ID:kRqtG4ug0
10/12
まったく、今この状況で、よくも言えたものだ。
信念を曲げない凛とした態度は、評価しよう。
会長が彼女を選んだ理由がよく分かる。

…しかし、だ。
長い物に巻かれることを知らないのでは、駄目だ。
やはり、私にとってこの女は邪魔以外の何者でもない。

私「暴力は一切無しだ。…藤木君、分かったかね?」
そもそもそのつもりなら、藤木だけで行かせる。
藤木「勿論ですよ。いやだなぁ、副会長まで…」
高城「…そういう事でしたら、直ちに向かいます」
私「あぁ、頼むよ」
私がそう言うと、2人が席を立つ。

私「うちの者に車を出させよう。それで行きたまえ」
高城「はい」
藤木「はい…っと、そうだ」
何か思い付いたように、藤木が言う。

私「ん?」
藤木「汐崎の娘は、どうします?」
266赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 10:16:33 ID:kRqtG4ug0
11/12
私「ふむ…」
藤木「一緒に連れてきましょうかねぇ?」
どことなく嬉しそうに言う藤木。
…何を考えているのやら。

高城「…」
高城が何か言うかと思ったが、彼女は何も言わずに机の上の片付けをしている。
私「必要であれば、連れてきても構わんよ」
藤木「やっぱり、そうですか。ですよねぇ。その方が、汐崎も素直に言うことを聞きそうだし…」

私「…君に任せるよ」
藤木「了解です。任されました」
ニヤケ顔で言う藤木。
高城が軽くため息を付く。
…彼女は、私の意図に気付いているかも知れない。

やがて準備を済ませ、2人が部屋を出て行く。
私も自宅に戻り、連絡を待つ事にした。

――何も問題は無い。
全て、予想の範囲内だ。
267赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/01(木) 10:19:25 ID:kRqtG4ug0
12/12
――
…残念だった。

汐崎の家に向かう車の中で、私は思う。
彼がこういった行動を起こすとは、予想外だった。
ああまでして、厳しく命令したのに。
了解して、全て忘れると言ったのに…。

もはや、私がフォローできる問題では無くなってしまったかもしれない。
副会長に目を付けられては、この先は無いだろう。
後はできるだけ穏便に事を進めて、左遷程度で済むようにするくらい…かな。

私「バカね…」
車窓から外を眺めながら、呟く。

私が描いていた夢。
それに対して、この現実。
車に乗せられて、言われるまま仕事に向かう私。
…もう、どうしようもないのかな。

何だか、少し疲れてしまった。
今の私には、組織と戦う理由も、意味も無い。…守るものがある彼とは違って。
ただ流されるままに…嵐が過ぎ去って、また元の落ち着きが戻ってくるのを待とう。
今は、意思を持たない兵隊になろう…。

私は目を瞑ってシートにもたれかかり、汐崎の家に着くのを待った。


268本当にあった怖い名無し:2010/07/01(木) 10:59:56 ID:lmNUn5ZI0
赤緑働け
269本当にあった怖い名無し:2010/07/01(木) 13:39:26 ID:srCPMbX70
せっきー乙
270本当にあった怖い名無し:2010/07/01(木) 15:45:40 ID:nZUD6+VhO
赤緑氏乙です
271本当にあった怖い名無し:2010/07/01(木) 23:15:07 ID:4NRKVwTsP
これはもはや怪談じゃないだろ?
272本当にあった怖い名無し:2010/07/01(木) 23:36:17 ID:TgMgeE/A0
これはwwwwwひどいwwwwwww
273 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 02:06:01 ID:lpNh7whZ0
思いついたので投稿。他意はありません。

"統合"

それは不思議な話だった。
とても平坦な文章で書かれていて
一見、大したことがなさそうなのだが
読めば筋が通っていて、引き込まれてしまう。
ネットのとある場所で不定期に連載されていて
そこでは、様々な人が創作や実話で怖い話を書いていく。
その話は、そんな中の一つだった。

おかんから呼び出された。
依頼が入ったがIT系はおかんの専門外なので、俺に担当して貰いたいとのことだ。
「まぁ大した話じゃないよ、ある書き込みの真意を探って欲しいらしいのよ。
 何なら、M君のところに行って手伝ってもらってもいいよ」
との御言葉を貰ったので、喜んでどうせ今日も暇であろう、師匠の古物屋に自転車を走らせる。
「こんちゃーす。良かったー、この不景気で店がもうないんじゃないかと心配しましたよ」
「うっせ叩き出すぞ。…まぁ上がれよ」
居間に座っていた師匠は、クアッドコアの糞高いパソコンで何やら怪しげな論文を書いていた。
台所で勝手にお茶を入れてから師匠に事情を話し、メモを渡して訊いてみる。
「こういう書き込みなんですけど、どうでしょうかね」
「前後の文脈次第だが、この書き込み自体は特に悪意も強くないし、
 "お憑かれさま"のような、呪術的な引っ掛けも感じないな」
早くも仕事が終わってしまったので、店先に雑多に並べられた陳列棚を見て回る。
ホルマリン漬けの犬の首やら、何やら怪しげなハードカバーの古書など
手に取るのを躊躇してしまうようなものが多い。
探索にも飽きて、居間のテレビに繋いであったwiiで、マリカーをはじめようとした時だった。
師匠が唐突に話し始める。
274 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 02:06:47 ID:lpNh7whZ0
「ネットって面白いよな」
「いきなりどうしたんですか」
「例えば、動画や字は細かい点の集まりで構成されていて、それらをそれっぽく見せているわけだ」
「そうですよね、でも、それを言うならテレビもですけどね」
「文章も大量に溢れているが、嘘も真もあるわけだ」
「嘘を見抜けない人は〜っていう、有名な格言もありますよね」
「ところで怖い話ってさ、たぶん9割9分は見間違いか、作り話だよな」
「そこまでかは分からないですけど、そんな感じですかね」
「しかしそこまで読み手に見透かされているのに、なんでネット上に怖い話が尽きないと思う?」
「ん〜、読み手に想像させ易いからですかね。怖い話って自然と想像力が働くから、読み易いんですよね」
「その通り。冴えてるじゃないか。ある程度ネタを揃えれば
 稚拙な文章力でも、それなりに読ませることができるんだよ」
「それを踏まえて、この話を呼んでみてくれないか?」
サブのノートパソコンを手渡されて
とあるまとめブログに転載された、シリーズものの怖い話を勧められた。
師匠は論文作成に戻り、暇な俺は約2時間かけて50編ほどある、それを読み進めた。
大体読み終わったころに師匠から尋ねられる。
「どうだった?」
「面白かったですね、初期のものから読んでいったんですが、
 新しくなるほど、どんどん語りが上手くなって、内容も濃くなり、
 怖さが倍々で増えていく感じでした。とは言え初期のものもネタは悪く無いです。
 まるで、どこかで実際にあったことのような」
「ああ、俺も同じ感想を持った。
 それにしても、ネットで書く文章系のシリーズものって大変だよな。
 普通の人間が書く場合は、どんなに面白い話を書いていても
 段々ネタが尽きていって文章は先細り、次第に沢山の賞賛より、僅かな批判が鼻につくようになり
 最終的には、十分な対価も貰ってないからやーめた。ってことになるわけだ」
確かに、何年も更新されていないプロ並みに面白い話がいくつも思い浮かぶ。
いや、まてよ、何でそんなに詳しいんだ?
275 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 02:07:41 ID:lpNh7whZ0
「もしかして、昔、書いてました?」
"しまった"という顔をして師匠が言う。
「…黙秘権を行使する。と、とにかく、短編の怖い話を書き捨てるより、
 シリーズものは特に大変なんだよ。新作書くためには、辻褄も合わせないといけないし。
 だがな、こいつは異常だ。よく見たら何年張り付いて書いてるんだ」
確認すると、コピペされた最初期の書き込みの日付は、もう十年も前だ
「さらに、さっきAが言っていたように、上手くなっているんだよ。
 とてもゆっくりだが、確かに文体が進化しているわけだ。
 十年前のものと現在のものを比べると、似ても似つかないほどに変わっている」
言われてみれば初期のころの独特な文章の癖が、跡形も無いような平坦なものになっている。
「でな、こいつも十年ほど連載していたら
 他の作者が作ったシリーズものも同じサイトに、何本も掲載されているわけだ。
 始まっては終わり〜始まっては終わりが年に数回、十年単位では数十回は繰り返されただろう」
「…さすがにもうバラすが、俺も暇つぶしで、こいつと同じサイトに書いてたことがあるんだよ。
 ファンもそれなりについたが、頭のオカシイ煽りにボコボコにされて、1年くらいで止めた」
バロスwwwwwと思ったが話の腰を折りたくは無かったので、笑いを噛み殺した。
「クソ…今笑ったら話し止めるぞ…マジで…。あと叩き出す…場合によっては"アレ"に喰わせる。
 …でな、その内容なんだが、殆どが作り話だったんだが"一割の真実"も混ぜておいた
 少しでもリアリティがあったほうが、話が引き立つと思ったからだ」
「かなり煽られてたのもあってそのサイトは、止めてからは見なくなったんだが
 数年経ってあるまとめサイトで…まさに今、ノーパソで開いているここなわけだが、
 自分の話が掲載されているのを知って、つい嬉しくなって色々と見てたら、
 こいつの話もあるのを見つけたわけだ」
「有名シリーズのようだし、載っていてもおかしくはないですよね」
276 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 02:13:21 ID:lpNh7whZ0
「ここからが大事なんだが、俺は目を疑ったんだよ。
 俺が居なくなってからの、奴が書いた話を読んでいたら、
 こいつ、俺の書いたいくつかの話の中の、"一割の真実"を正確に取り出して
 何回か自分の話に流用してたんだよ、大して面白いくだりじゃないし、
 他人には絶対分かんない様に混ぜ込んどいたのに」
「さらによく調べたら、俺と同時期に投稿されていた他のシリーズものも
 虫食い状にパクッてやがる」
「でも、それって読む人が読んだら、分かるんじゃないですか?」
「いや、俺にやったのと同じで、全体的な話の中では大して重要じゃないくだりばかりだから
 普通に読む分には、かなり気付きにくいんだよ」
「推測だが、こいつは同じサイトに書き込んだ他人の実体験と作文術を
 自らの文章を通じて、統合していってるんじゃないか?
 何が目的なのかは分からんが、十年近く書き続けられる異様な持続力といい、
 筆者は少なくとも普通の人間ではないんだろうな」
「あと余談なんだが…知ってるか、時々ネットであるんだよ、死者が書き込むって言うのが
 大抵のは"a"とか"あ"とか一文字も投稿すれば力尽きるんだが、
 時には、長文連投で何年も居座る体力がある奴も居る」
「まさか…」
277 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 02:14:08 ID:lpNh7whZ0
「管理者じゃないから分からないが、やつのIPを辿っていけば、
 十年以上前の、一文字だけの書き込みが見つかるかもしれないな」
「話を取り込み続けることで、成長してるってことですか…」
師匠が呟くような声で畳に向かって言う。
「…まだ、文章自体にそこまでの力は無いが、このまま何十年も続けることが出来たとしたら
 読者の無意識を手玉に取ったり、感情を左右できるほどの、
 ものを備えているのかもしれない」
「そこまで考えると、怖いですね」
「…ま、そんな大層な力が、たかがネット与太話の集合体に宿るのかは、分かんないけどな」
「…無いと信じたいです」
師匠がそのまま黙ってしまい、おもむろにコントローラーを握ってマリカーを始めたので
その話はそこで終わりになった。
というか壮絶なマリカー合戦になった。

それは不思議な話だった。
とても平坦な文章で書かれていて一見、大したことがなさそうなのだが
読めば筋が通っていて、引き込まれてしまう。
今もネットのとある場所で不定期に連載されている。
了。
278本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 07:45:07 ID:psJRDmY9O
◆7QPLwJZR/Ypfは投稿すんな。
文が気持ち悪いんだよ。
279本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:16:12 ID:ySfpdj+zO
面白かったー。
次も期待。
280本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:33:38 ID:D7YZdGqu0
「私メリーさん。いま貴方の後ろにいるの」
 しかし、男は振り向こうという素振りを見せない。
「ふっ、残像だ」
 男の背中が霧の様にかき消える。迂闊だった。まさか補足に失敗するなんて。
「けど、俺のバックを一瞬でもとるなんてやるじゃないか」
 今度は後ろから声がする。これではまるでさっきと立場が逆。ぎりと思わず唇を噛んだ。
「そう。でも……」
 私はメリーさん!! 例えこの男が私の死であっても最後まで諦めない。
「はっ」
「なかなかの速さだ。なかなかいいメリーさんだな」
 男は軽口を叩きながらも私の動きを捉えていた様だった。
「性懲りもなくまたバックかい?」
「くっ」
 男の腕がぐいと伸びた様に感じる。私の腕と胸倉を掴み、ひょいと身体を反転させて投げ飛ばす。――背負い投げだ。
「げほげほ」
「失礼。まぁ、ストーカーもどきはやめろよ。次、悪さしたら――」
「祓う気……?」
 男はぽりぽりと頭をかきながらぼやく。
「俺だって好きでやってる訳じゃないさ。なんていうかその家柄ってゆーか」
「そう流石ね。寺生まれのT……」

 バイクにまたがり、去って行く大きな背中。私はその背中に手をあてそっと寄り添いたい――。
 なんて、そんな願望が私の中でいっぱいになってゆくのを感じた。



281本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:33:58 ID:D7YZdGqu0
「…・・・を、つく……な」
「あらら、なに?」
可愛らしくメリーは微笑む。
その表情に反して、カシマは叫んだ。
「クチサケが死んだなどと……嘘をつくなーーーーーっ!!!!」
激昂してメリーに近づき、両脚をひきちぎろうと腕を伸ばす。
「無駄無駄無駄無駄」
メリーは携帯を開くと、そこに自分の指を近づける。
液晶に指が触れるとそこから画面へと吸い込まれ、身体が消えていく
メリーの身体が消えると携帯が折りたたみ、たたまれた瞬間携帯も消えうせる。
カシマの双腕は虚空を掴んだだけだった。
「ちっくしょーーーーっっっ!!!」
腹立ち紛れに地面へ一撃をあたえると、人面犬に目をむける。
「人面犬! アタシの背後に回れ!アタシは前方を見る!」

(メリー!お前がどこにいるかは知らないが、これだけは言える!)
荒い息を吐きながら、カシマは全神経を周りに集中させる。
(次にお前がその姿を現したとき、アタシは……プッツンするだろうという事だぜ!)

282本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:34:41 ID:D7YZdGqu0
メリーが姿を消してから、三秒、五秒と、カシマにとって長い時間が過ぎてゆき
十秒に達した時、カシマの肩先に何かが触れた。
(……埃?)
見上げると、空中高くにメリーが出現していた。
その姿を視界に入れたとき、カシマは「プッツン」した。
「メリーーーーーーー!!!」
カシマの叫びを受け流し、メリーは薄ら笑いを浮かべ携帯を開いた。
車体が写っている待ち受け画像。
いや、待ち受け画像ではなかった。
携帯の画像から、車の一部分が外へと現われ始める。
「入る事が出来るのならば出す事も可能! それは私以外にも例外無し!」
カシマの頭上に、質量を持った巨大な物体が出現する。
「ロードローラーだっ!」
「オラオラオラオラ!!!」
カシマは両腕を振り回し、機械の部品を引きちぎっては投げ捨てる。
「もう遅い!脱出不可能よ!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
MERYYYYYY! ブッ潰れよーーーーっっ!!!」
ロードローラーがカシマの姿を覆い隠し、そして―――地面に着地した。
埃が巻き上がった後、静寂が辺りを支配した。
その静寂を打ち消すかのようにメリーは哄笑した。
そしてロードローラーから地面へと降り、死体を確認しようとする。
「都市伝説の輩は妖怪だから……死んだ振りをしてるかもしれないわ」
ロードローラーの真下へと顔をむけると、そこには確かに
血まみれのカシマの顔があった。
「アハハ、これで都市伝説ヒロインは私一人……以前、変わりなく!」
283本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:36:13 ID:D7YZdGqu0
ロードローラの前で笑うメリーの肩を誰かが叩いた。
「え?」
振り向くメリーの片足に、灼熱の痛みが走る。
「あぐぁっ!」
その痛みに、たまらずメリーは倒れた。
「あたしカシマさん。いま、あなたの後ろにいるの」
メリーの後ろには、カシマが立っていた。
そして、その手にはメリーの片足が握られている。
メリーが振り向いた瞬間に、カシマが脚を引きちぎったのだった。
「う、嘘だ!」
メリーはロードローラの方へと目をむける。
そこには確かに、下敷きになったカシマの顔があった。
「人面犬の顔をアタシに変えて身代わりにした……潰される寸前でな。
そしてやれやれ……間に合ったぜ」
興味なさそうに脚を投げ捨て、カシマはメリーを見下ろす。
「その携帯から今度はどうする気だ? また携帯を開いて逃げる気か?
……やってみな、アンタが携帯を開いた時が合図だ。どっちが早いか―――
勝負といこうじゃないか」
284本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:36:30 ID:D7YZdGqu0
悠然と両腕をのばし、カシマは構えた。
メリーはうずくまりながら舌打ちする。
(コ、コケにしやがって……ビッチ!)
メリーは怒りと痛みで顔を歪ませたが、やがてその顔は笑みへと変わった。
(だが、ここにきて……やはり貴女は甘ちゃんだわ。
『あと味のよくないものを残す』とか『人生に悔いを残さない』だとか…
便所ネズミのクソにも匹敵する、そのくだらない物の考え方が命とりよ!
このメリーにはそれはない…あるのはシンプルなたったひとつの思想だけ…
たったひとつ!『私メリーさん』!それだけよ…それだけが満足感よ!)
両手と片足でバランスを取り、メリーさんはフラフラと起き上がる。
(過程や……!方法なぞ………!)
呼吸を整え、カシマを見つめ返す。
「どうでもよいのだァーーーーーーっ!」
メリーが叫び、次の瞬間、引きちぎられた脚から血が迸った。
迸る血が、カシマの視界を遮る。
「どうだこの血の目潰しは! 勝った、死になさい!」
勝利を確信し。メリーは携帯を開こうとした。
285本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:37:42 ID:D7YZdGqu0
だが開こうとした手を、カシマに掴まれる。
そしてそのまま携帯ごと手首から引き千切られる。
「おせろっとーーーっっっ!!!」
訳のわからない悲鳴を上げてメリーはのけ反った。
片足でバランスを支えきれずに、そのまま地面へとまた倒れる。
「ひるむ……!と、思うのか……これしきの……これしきの事でよォォォオオオ
あたしはよォ……この都市を……何事もなく…一人で脱出するぜ。
それじゃあな……」
ゆっくりと近づくカシマに、メリーは哀願した。
私のそばに近寄らないでええーーーーーーーーーッ!」
「自分を知れ…そんなオイシイ話が……あると思うのか? おまえの様な人間に。」
冷たくカシマは言い放った。
「なんてひどい野…」
「亜空間にはばら撒けないけど、消してやるよ。この世からな、
アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ―――」
カシマの手が触れる度に、メリーの身体が消え去っていく。
286本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:37:51 ID:D7YZdGqu0
腕をつかい、次々と引き千切っているのだ。
細切れになっていくメリー。
すでに、悲鳴を上げる事さえ出来なかった。
「アリーヴェデルチ! 《さよならだ!》」
カシマが腕を動かすのを止めると、そこにはもう誰もいなかった。
血だまりの中にひとつ、携帯電話があるだけだった。
深呼吸をしカシマは呟いく。
「てめーの敗因は…たったひとつだぜ…メリー…
たったひとつの単純な答えだ…『カシマのマは悪魔の魔』」
カシマは目を瞑った。
死んだ友人の為の黙祷なのか、それとも緊張の糸が解けて疲れたのか
それはわからなかったが、カシマはそのまま、ずっと立ちつくしていた。



KASIMA WIN!      −第三部 完−
287本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:38:54 ID:D7YZdGqu0
通学途中のテケテケに、一人の女性が声をかけてきた。
女性の割には大きく190以上はある。
自分とは違う長身に、テケテケは少し圧倒された。
「ひとつ尋ねたいんだけど、この町に『渡目』という姓の家を知らない?
この家をたずねてこの町にきたんだけど…」
「『渡目』? さあ〜、ちょっと知りません。町の人口が5万3千人もいますから」
女性の質問にテケテケは首を傾げた。
名前を言われただけではピンとこない。
「なるほど……それもそうね」
女性は懐から手帳を取り出し、ふたたび尋ねる。
「なら住所ではどうかしら? 『元興寺1の6』」
「ああ、その住所なら」
テケテケは向かいにあるバス停を指差した。
「元興寺ならあそこから3番のバスに乗れば行けます。
288本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:39:00 ID:D7YZdGqu0
この時間タクシーはあまり来ませんよ」
「ありがとう」
そのままテケテケはバス停まで女性と一緒についていく。
バス停の噴水広場にさしかかると、数人の女性が目に入った。
一人の少女の周りを女学生が取り囲み、何やら口論をしているようだった。
「何しとんじゃッ!」
「何のつもりだきさまっ!」
怒鳴られる状況を理解しているのか、少女は茫洋とした顔で答えた。
右手で携帯を触っている。
「何ってその……この池のカメが冬眠からさめたみたいなんで写メでもとろうかな〜って
思ってたんです。カメってちょっと苦手なもんで、触るのもおそろしいもんで、その、
怖さ克服しようかなぁ〜と思って」
「……なこたぁ聞いてんじゃねーっ! 立てっ! ボケっ!」
間延びした声に、女学生達はさらにイラついたようだった。
少女が立ち上がるとウェーブがかかった銀髪が、腰まで垂れ下がる。
よく手入れしてあるらしくさらさらと風になびく。
まるで人形がそのまま大きくなったかのような可愛らしさをみせる。
少女は女学生の胸までしか高さが無く、自然と見上げる格好になった。
289本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:39:24 ID:D7YZdGqu0
「ほほ〜、ちんちくりんなやっちゃ」
「おいスッタコ、誰の許可もらってそんな格好をしてるの?
中坊のときはツッパってたんのかもしんねーが」
「うちに来たらわしらにアイサツがいるんじゃあっ!」
眼前に突き出されたカメをみて少女はたじろぐ。
「ちょ……、ちょっと、爬虫類ってやつは苦手で、こ、こわいです〜〜」
「うだら何ニヤついてんがぁーっ!」
女学生が少女の頬を張る。バス停に乾いた音がした。
「ゴメンナサイ、知りませんでした先輩!」
「知りませんでしたといって、最後にみかけたのが病院だったて奴ぁ
何人もいるぜ……てめーもこのカメのように…してやろうか、コラーッ!」
深々と頭をさげる少女に対して、女学生は持っていたカメを地面に叩きつける。
叩きつけられたカメは甲羅が割れ、苦しそうにもがいていた。
女学生は少女を睨みつけ、冷たく言い放つ。
「ケッ! 心がけよくせーよー、今日のところはカンベンしてやる。
そのスク水とブルマも脱いで、置いておきな」
「それと銭もだな。献上してってもらおうか」
無茶な要求に少女は逆らわず、また頭をさげる。
「はい、すみませんでした!」
事の成り行きを見守っていたテケテケの肩が叩かれる。
横をむくと女性が、先に行こうと促している。
興味なさそうに首を横に振り、言った。
290本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:39:52 ID:D7YZdGqu0
「自業自得って奴だ。目をつけられるのがいやなら、あんな格好するなって事。
逆にムカツクのは、カメをあんな風にされて怒らないあいつの方」
肩を押され、バス停のほうへと促されるテケテケの後ろから、会話が聞こえる。
「おい腰抜け!きさまの名前をきいとくか!」
「はい、一年B組 渡目……理沙です」
その言葉を聞いて、女性の足が止まった。
訝しげに後ろを振り向く。
「なにぃ……渡目 理沙……!」
名乗った理沙に、女学生は口々好き勝手な事をいう。
「渡目? 三途の渡しに目付けで、渡目?」
「理沙?」
「ケッ!これからテメーを理沙!メリーさんって呼んでやるぜ!」
「はあ…どうもありがとうございます」
間延びした声で、少女はけだるそうに返事をした。
その声に女学生はイラついた声をあげる。
「コラ!さっさと脱がんかい!バスが来ちょったろが!チンタラしてっと
291本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:40:21 ID:D7YZdGqu0
その型遅れの携帯も取り上げっど!」
その言葉を聞いて少女の手がピタリ、と止まった。
「おい……先輩、あんた今…アタシの携帯の事何て言った!」
先ほどとは違う、地獄の底から響くようなドスのある声。
その迫力に、女学生達はたじろいだ。
「……え?」
あんぐりと口をあげていた女学生の一人が、次の瞬間空を待った。
周りの人間も何が起こったのか理解出来なかった。
苦しそうに女学生がのた打ち回る。
(今…こいつ「携帯」を見せた…今たしかに…携帯に何らかの画像がみえた!)
テケテケの横で見ていた女性だけが、事の成り行きを理解していた。
肩をいからせて、少女は倒れている女学生に近づいていく。
「アタシの携帯にケチつけてムカつかせたヤツぁ何モンだろうーと許さねぇ!
この携帯がPCエンジンGTみてぇーだとォ?」
「え!そ…そんなことだれも言って…」
弁解しようとした女学生だったが、顔を少女に踏み潰され二の句を言う事が出来なかった。
「確かに聞いたぞコラーーーーッ!」

メメタァッ!

「やれやれ……こいつが…こいつが探していた…じじいの身内だとは!」
292本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:41:05 ID:D7YZdGqu0
「私メリーさん。今、バス停の前にいるの…」
「私メリーさん。今、玄関の前にいるの…」
「私メリーさん。今、部屋の前にいるの…」
「私メリーさん。今、モンゴルにいるの…」

293本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:41:25 ID:D7YZdGqu0
「私、メリーさん。今あなたの家の……え、身に覚えがない?
  ちょ、ちょっと待ってください…………。あの、お名前は○○さん、ですよね?
    ち、違う!? すみません。間違えでした。どうもすみません……」ガチャリ

携帯に残る電話番号。それ以来毎日かけている。
294本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:41:45 ID:D7YZdGqu0
「わたし、メリーさん。今、駅前にいるの」

「わたし、メリーさん。今、ラーメン屋の角にいるの」

「わたし、メリーさん。今、交番の前にいるの」

「わたし、メリーさん。今、交番にいるの」

「……わたし、メリーさん。今、交番にいるの」

「…………わたし、メリーさん。今、交番に、いるの……」

「…………わ、わたし、メリーさん。今、交番に、いるのぉ……」

「わ、わたし、メリーさん。今、こうば……ダメ、電話取っちゃダメぇ」
「夜中にすみません、○○交番です。お宅の娘さんを補導しておりますので、引き取りに来てもらいたいのですが……」
295本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:42:39 ID:D7YZdGqu0
「私メリーさん、今あなたの家の前に居るの」
「……おふくろ、いい加減にしてくれよ」
携帯にかけてきた母親に向けて、俺は嘆息する。
ったく、こちとら容疑者の確保に忙しいってのにたまったもんじゃねえ。
俺は、『自称メリーさん殺人事件』と揶揄される事件を追う刑事だ。
「今はまだ職場だよ。悪いが今日は帰ってくれ」
「目里さん! ホシの奴の携帯が割れました!」
部下の一人が慌てた様子で声をかける。
「ああ、分かったすぐいく! じゃ、そういうことだから」
ぽちっと電源を切ると、俺はホシの番号を打ち、発信ボタンを押す。
数回の呼び出し音の後、がちゃり、と音がした。
「……もしもし?」
見知らぬ番号からかかってきた電話に、ホシと思しき男は怪訝そうな声を出す。
俺はにやり、とほくそえんだ。
急に家を訪ねてくるような迷惑なおふくろだが、一つありがたいもんを俺にくれている。
「……私、メリー。今、あなたの後ろに居るの」
そう呟いた瞬間。俺は一人の男の後ろに立っていた。
唖然とした顔でこちらを振り向いた男の手に、手錠をかける。


俺の名は『目理 伊三(めり いぞう)』
元祖『メリーさん』の【血】を受け継ぎ、彼女の最大の能力である瞬間移動を、
『相手の携帯電話に私メリーと名乗る』という条件下で発動することのできる妖怪刑事である。
296本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:43:22 ID:D7YZdGqu0
メリーさん刑事ってwww
297本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:43:36 ID:D7YZdGqu0
そうとう便利な能力だなそれwww
298本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:43:49 ID:D7YZdGqu0
その発想はなかったww
299本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 14:44:02 ID:D7YZdGqu0
電話番号がわかって相手が電話に出てくれれば無敵だな
300 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 18:31:51 ID:lpNh7whZ0
自己責任で読んでください。一応警告はしたので始めます。

"筆記者"

「なぁA」

「なんすか」

「人間の意識が根本的なところで繋がっているとしたら
 知らない誰かの状況を書き写す
 筆記者ってのもいると思うんだよ。
 例えば、
 俺らのアホな行動もどっかの誰かに詳細に書かれて
 ネットにアップされたりしててなぁ」

「んなわけないでしょ。第一メリットが無い」

「自動書記とかもあるわけじゃん。
 こういうのって、意味があるとは限らないのが困ったところなんだよ。
 あと、そいつが超暇だったら分からんぜ」

「はははー」

「いや、俺さ、さっき屁ぇこいたんだけど
 そいつ気付いたけどわざと書いてなかったりしてな。
 でも言っちゃったから、書かざるえんよな。
 ばーかばーか」

「発想が下品すぐるwww」

了。
301本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 19:09:25 ID:JIRqxMwm0
???

つまりどういうことです?
302 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 19:41:35 ID:lpNh7whZ0
【登場人物】
A→俺。一応主役
Mさん→師匠。会話中では恥ずかしいのでMさんと呼んでいる
おかん→俺のおかん。つよい。
【登場化物】
"アレ"→師匠に憑いている怖い何か。
"河童神"→土地神のようなもの。俺の夢に時々出てくる。やめてほしい。

誤字脱字乱文乱構成失礼します。
いつもよりごちゃごちゃしているが、反省はしていない。

自己責任で読んでください。一応警告はしたので始めます。

"運命"

Sちゃんは、小学生のときに病気でお父さんが亡くなっていた。
そんなに美人ではなかったが元気が良く目立つタイプで
お父さんが亡くなってからは、何事にも努力を惜しまないようになり
元々の人懐っこく、裏表のない性格にもさらに磨きがかかり
とても周りから好かれるようになっていた。
俺らは中二まではクラスも同じで、仲も結構良かった。
恋心に気付いたのはそのころ。マセた最近のガキにしては遅れた初恋だった。
中三のときにクラスは分かれて、高校は別々に進学した。
勉強を頑張っていた彼女は市内トップの進学校、
適当な俺は偏差値そこそこの公立普通科高校。
高校生活にも慣れ、バイトなんかにも手を染めて
たぶん、このまま忘れて行くんだろうと思っていた矢先
彼女から呼び出され、突然の告白を受けた。

「ねぇ、付き合おっか」
303 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 19:42:36 ID:lpNh7whZ0
もちろん二つ返事でオーケーした、ありえない奇跡にテンションあがりすぎて、
何かに憑かれたと勘違いしたおかんに、便所スリッパで数発殴られたのは良い思い出だ。
何でいきなり告られたのかは謎だったが、とにかく嬉しかった。
俺らは放課後や休日に沢山二人で遊びに行った。
お互い青春を使い尽くすように、いっぱい笑って泣いて歌って
まぁ、やることもそれなりにやった。リア充でサーセンwwwww
心霊関係のことは、彼女は関わりが無い方だったのでできるだけ黙っておいた。
おかんのことも"福祉系の自営"とだけ言っておいた。おかんも合わせてくれた。
実は当時から師匠とも交友があったのだが、その時期はあまり縁が無かった。
たまに会ったときは「盛りのついたガキは臭くてたまらんね」と、全力で嫌味を言われたが。
とにかく、俺は高校三年間とても幸せだった、彼女も幸せそうだった。

ただ高校生のガキなりに勘付いてもいた。
彼女が父親の死以上の、何か大きなものを抱えていたことに。
長く付き合えば合うほど彼女に、僅かだが、確かな齟齬があるのに気付く。
それは発達障害や、人間としての一般的な個体差というより、
決定的に元々"住む世界が違う"といった感じだった。
お互い無事に高校を卒業して、それぞれの進路についたあとは、
もう会うことも無かった。
今思い返してみても、あれだけ燃え上がっていたわりに、
不思議と未練もなく縁が切れたと思う。
304 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 19:43:39 ID:lpNh7whZ0
ある日の夕方、繁華街を師匠と歩いていたら、
何年かぶりにSちゃんとすれ違った。
随分と変わっていたが、一目で彼女だと分かった。
髪型は濃い茶髪のロングで、当時よりだいぶ痩せていて
全身黒で固め、小さな子供を二人連れて歩いていた。
両方とも三〜四歳で、一人はかわいらしい生身の女の子、
もう一人はかわいらしい、生身じゃない男の子。
「今の見たか?すげぇな」
「お札シール貼ってなかったら、危なかったな。("アレ"が)確実に出てたぞ」
師匠はそう言っていたが、俺は悪い感じをまったく受けなかった。
そんなことより、Sちゃん自身の不幸そうな様子が気にかかった。

その暫らく後に、中学の同級生と飲む機会があり
それとなく彼女のことを尋ねてみたら、知らない間にだいぶ苦労していたらしい。
高校卒業後、家計を助けるために大学には進まず、
地方銀行員として就職して(という所までは知っていたが)
職場で良い人に巡り会って妊娠、寿退社するものの、すぐに夫は交通事故死、
今は再就職し、シングルマザーとして仕事と子育てに奮闘する日々だという。
「とは、言うんだけどね、あの子何でだか、
 だんなさんが亡くなってからは、友達付き合いも殆ど断ってしまっていて、
 今はどうしているのか、正確なところは誰も知らないのよ」
という同級生の言葉が、少し気にかかった。 
305 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 19:45:49 ID:lpNh7whZ0
特に進展も無いまま、数ヶ月が経ち、
梅雨に入って蒸し暑くなったころだろうか、その夜は夢を見ていた。
内容は"町で旨いラーメン屋を見つけて喜ぶ俺"みたいな平和なものだった。
ハッピーな気分で、黄金色に輝く超旨いラーメンを啜っていたら
"グニュウウウウ"と空間を歪めて河童神が店に、というか夢に入り込んできた。
乱入はいつものことなので「またおまえか」とか
「ニヤニヤすんな、カエレ!!」とか文句を垂れていたら
ラーメンが茶色い、言いたく無い何かに変わった挙句、
河童神が入ってくるために空けた空間に、手を引っ張られて連れ込まれた。
そのまま夢の場面が変わったようで、河童神は消え失せ
いつのまにか俺は、Sちゃんと、どこかで見たことのある男の子とで食卓を囲んでいた。

ナイフとフォークを持ったまま固まった彼女が、口だけを動かして俺に訴えかけてくる。
「ねぇ助けてよ。この子は私の子じゃない、でも私とあなたとの子なの。
 夫が死んでから夢に出てくるのよ。あなたと私がこの子を囲んで食事するの」
いやそんなこと言われても、避妊は間違いなくしていたし、まったく身に覚えがございません。
そう反論しようとしたら、さらに畳み掛けられる。
「ずれてしまったの、何もかもが取り返しがつかないほどに離れてしまった…」
わけが分からなくて絶句していると、
また場面が変わる。

どしゃぶりの雨の中、道の真ん中で女性が倒れていて、その側で女の子が泣いている。
俺は倒れている女性の少し上に浮いていて、
何もできずに、見つめ続けることしかできない。
そこで唐突に夢が途切れ、目が覚めた。
何かただ事ではない感じがしたので、師匠に電話をかけると、
眠れなくて起きていたらしく、車ですぐにかけつけてくれた。
夢で見たのは、市内の見覚えのある場所だったので
車の中で師匠に、これまでのSちゃんとの経緯を話し終えたころには、
たどり着くことが出来た。
306 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 19:47:10 ID:lpNh7whZ0
そこには夢そのままの光景で、
深夜の人気の無いアスファルトの上、ずぶ濡れになったSちゃんが倒れていた。
夢と違うのは、さっき食卓に居た男の子が、
Sちゃんの少し上を浮いているということぐらいだった。

横殴りの雨が降り続け「おかぁぁぁぁあさぁぁぁぁぁんんん」女の子は泣き続ける、
男の子は悲しそうな、無念そうな表情をして母親を見つめ続けている。
たまらずに二人とも車から飛び出して駆け寄り
俺が「救急車を呼びまし…」と師匠に声をかけようとした時だった
師匠が念のため付けてきたらしい
何枚かのお札シールを突き破り"アレ"が発現する。
「イタダキマァァァァアアァアアァァアアスススススス!!!!!!!」
黒い唇が叫び、前見た時よりより明らかに大きくなった黒い腕が
いったん上に吹き上がってから、浮いている男の子のほうへと猛烈に迫る。
あり得ない、河童神の時でさえ近距離でわずかに漏れる程度だったのに、
驚いていると、男の子が俺のほうを向き小さく呟くのが見える
「おとうさん…」そう言われた気がした。

次の瞬間、なぜだか俺は全力で駆け出し、
無謀にも"アレ"とその子の間に滑り込んでいた。
「喰うな!!ダメだ!!!絶対にダメだ!!」
"アレ"の黒い手が俺の身体に食い込み、
溶け出した暗黒物質が全身に染み込んでくる。
視界の隙間から、唖然とする師匠が見える、
それにしても何で…まぁ、別にいいか…
意識が途切れる寸前、"ありがとう"と誰かが耳元で囁いた。
307 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 19:49:07 ID:lpNh7whZ0
師匠が携帯で連絡して、おかんと友達が駆けつけたのだが
おかんは全身真っ黒な俺を見て、一瞬気を失いかけたらしい。
(ただし、すぐに持ち直したようだ。馬鹿息子でサーセンwww)
直ちにおかんに祓われないといけない師匠と、意識の無い俺に代わり、
病院に付き添いで行ってくれたおかんの友達が、医師や娘から聞いた話によると、
Sちゃんはたぶん、近くの深夜託児所から娘を連れ帰る途中で、脳梗塞を起こしたらしい。
俺やSちゃんの若さでは滅多にならないのだが、彼女は身体を酷使しすぎていて、
皺寄せがたまたま脳の血管に行ったようだ。ただ発見がとても早かったので、
後遺症は残らないだろうし、リハビリも殆ど必要ないとのことだった。
その後、霊体の男の子はどこかに消えたまま、誰も見ていないらしい。

Sちゃんが搬送された病院に到着して、手術されている頃だ。
仕事用RV車の中に張られた結界に横たわり、
身体中の穴と言う穴から暗黒物質を吐き出している俺と、
その隣で涙目で正座している師匠を、二刀流便所スリッパで同時に叩きまくりながら
「M君から一通りは聞いたよ」と、完全防備したおかんは、マスク越しに言った。
「たぶんSちゃんは、元々あんたの運命の一部だったんだろうねえ、
勿論あんたも彼女の一部だった。
 だけども、何かの強いキッカケで二人は離れてしまった」
「その、生身じゃないほうの子は、もしかしたら本来生まれるべき
 あんた達の子だったのかもよ。間違いで身体が手に入らず、魂だけになってしまったんだろう。
 だとしたら霊体でも、立派なうちの一族だねぇ。
 そりゃ"アレ"も機会があるのなら、喰いたいだろうさ」
「あんたは、一族の守護や人間の繋がりもあるから、
 孤独なSちゃんのほうを護っているのかもしれないねぇ」
さすがに韓流ドラマの見すぎなんじゃ…ってか韓流ドラマですらそんな超展開ねぇよww
とは暗黒物質に塞がれて、口が聞けないので言わなかった。
決して怒られるのが怖かったわけではない。
308 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 19:49:53 ID:lpNh7whZ0
師匠にも後日、いつものファミレスで同じようなことを言われた。
「もしかしたらSちゃん自身が、Aの思っている彼女とは少し違ったのかもしれないな。
 何かのきっかけで彼女自身が"似たようなもの"と入れ替わったとしたら、
 必然的にその後のAと彼女の運命というか、在りようが変わってしまうことになる。
 Aの話を聞く限り、たぶん彼女は"人形"ではないとは思うんだが…」
ここにも韓流ドラマの被害者がwwwwと思ったが、
錯乱して"アレ"に突っ込んで迷惑かけた件もあるし、色々と助けてもらったので、
あえて黙っておいて、勘定も大した額ではなかったが全て支払った。

最近風の便りで、Sちゃんは良い仕事の引き合いがあったので、
娘と遠くの街へ引っ越したと聞いた。
回復したころに、病院に見舞いに行きたかったのだが、
色々あって引き伸ばしにしている内に、彼女は退院してしまっていた。
繁華街ですれ違ってから、結局一度も現実のSちゃんとは話すことは無かったわけだ。
幸せでやっているのかは分からないが、、
おかんの語った"男の子"が彼女を守っているという、
部分が当たっていたらいいな、と思っている。
309 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/04(日) 19:51:31 ID:lpNh7whZ0
そう言えば付き合っていた当時、一度だけ彼女が不思議なことを話したことがある。
やることやった後、添い寝していた時だ。
「ねぇ、昔話しよっか」

「まだ、お父さんが生きていたころ、友達と神社で影踏みをしたの、
 夕日が沈むころに、私が鬼の番になって、
 友達を探していたんだけど、そのまま誰も見つからなかった。
 神社からも出られなくなった。
 私は半日ぐらい泣きながら暗闇を彷徨って、気が付いたら境内で倒れていたの」

「外に出てみたら、夕日はまだ沈んでなくて、
 わけが分からないまま独りで家に帰ったんだけど、
 次の日に学校で訊いたら、友達は誰もその日は影踏みなんかしていないって言うのよ」

「それから、私と外の世界が何だか噛み合わなくなったの。
 どこに居たって、何をしたって虚しくて
 取り繕うためにどれだけ必死で頑張っても、どうしても何か足りないの」

「お父さんが死んだときも涙が出なかった。何度思い返してもどうしても涙が出なくって。
 何でだろうって、ずっと考えてる」

「貴方に出会ったことは運命だって思ってる。
 でもね、何であの時告白したのかを、未だに思い出せなくて。
 その時、そう在るべきことをしただけで…どこか私の気持ちじゃないような。
 もしかして…これは私の人生じゃなくて、
 別の誰かのものなのかも…意味わかんないよね。ごめん、もうやめる…」

賢者モードだった俺は、「ふぅん…」とだけ返して
ろくに意味も考えずに眠り込んでしまった。
了。
310本当にあった怖い名無し:2010/07/04(日) 19:55:34 ID:2VQRe+HMO


なんか不思議な雰囲気のストーリーだった
311本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:08:08 ID:p3pAYd5X0
「私、リカちゃん。今あなたの後ろにいるの・・・」

テリーマン「俺もいるぜ」
キン肉マン「テリーマン」
ブロッケンJr「お前だけに、いいカッコさせるかよ」
キン肉マン「ブロッケンJr・・・」
ロビンマスク「正義超人は、おまえだけじゃないんだぜ 」
ウォーズマン「コーホー」
キン肉マン「みんな・・・」

悪魔超人「こ、これが友情パワーか」
312本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:08:40 ID:p3pAYd5X0
「私メリーさん、今あなたのうしろにいるの」

「(クルリ)メリーさんが好きだ!」
「・・・はっ? い、いきなり何言いだすの?」
思わずメリーさんににじり寄る・・・。
「メリーさん・・・」
「ちょっ! ち、近すぎ・・・!」
恐る恐る両手をあげると・・・メリーさんも怖いのか同じように両手をあげる・・・。
ガッシ! その細い手首を捕まえて・・・
「なっ! は、放して!!」
「メリーさん!! お願いっ! 君を抱きたいんだ!!」
「何言ってるのよ! なんであんたなんかに抱かれなきゃいけないのよっ!!」
「でも抱いちゃう!!」
313本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:08:48 ID:p3pAYd5X0
今度は腕をメリーさんの背中にまわして・・・
あっ、胸のふくらみが直に感じるよっ・・・。
身をよじれば余計に・・・。
「や! やめて! 警察を呼ぶわよ!これ、完全に痴漢じゃない!!・・・あっ そこヤダ!!
放してっ! 手を・・・いれないでよっ!」
「じゃ、じゃあさ、何もしないからこのまま抱きつかさせていて・・・。
キミの肌の柔らかさを・・・心臓がトックントックンいってるのを聞いていたい・・・。
キミの唇から洩れる息遣いも・・・。」
・・・
「・・・ねぇ?」
「何?」
「あなた、・・・いつまであたしに抱きついているの?」
「あ、ごめんね? なんかこのままキミの中に入りたくなっちゃった。
・・・入れていい?」

======中略==============

・・・こうしてメリーさんの復讐の旅が始まったのである。
                        
完。
314本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:09:13 ID:p3pAYd5X0
「もしもし。私、メリーさん。今テレビの前に居るの」

『はい、こちらフジテレビの笑っていいともテレフォンショッキングです。貞子さんに替わります』

『……もしもし?メリー?』

「こんにちわ貞子ちゃん。今アルタの前に居るの」

『早いよ。今タモさんに替わるね』

『こんにちわ、メリーさん。明日、大丈夫ですか?』

「私メリーさん。今スタジオの前に……」

『ええ?もしかしてダメなんですか?』

「え、いや、あの……い、いいとも!」

『はぁい、じゃあ明日お願いしま〜す』

私、メリーさん。

今、テレビ界へと羽ばたこうとしているの。
315本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:09:27 ID:p3pAYd5X0
「私、メリーさん、今ホテルの建物の前に居るの……」

「私、メリーさん、今、あなたの部屋の前に居るの……」

「私、メリーさん、今あなたの後ろにうわなにするやめくぁwせdrftgyふじこlp



勝者:ゴルゴ13
316本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:09:59 ID:p3pAYd5X0
「なあ、あんた? 口裂け女って知ってるか?」
俺が今電話をしているのは、通称『カシマ事件』と呼ばれる事件の犯人だ。
「そう、マスクをして私綺麗? って尋ねてくるあの都市伝説だ。
 お前が騙ってるカシマさんと同じ類の化け物だな。
 で、だ。その口裂け女ってのは、一説には狐憑きの一族の娘だった説があるんだ」
部下を誘拐した、と向こうから脅迫電話がかかってきたため、俺の能力は使えない。
だが、何の問題もない。
「……お前、覚えてるか? さっきそいつと交わした会話を」
『そのキレイな顔を、ズタズタにしてやるぜ、ひゃはははははは!』
「キレイ? わ、私、キレイ?』
『ああキレイだな、ズタズタにしてやりてえ!』
まさか、と電話口で呟く声がした。
「これでも……キレイかああああああああああ!!」
電話の向こうで、獣のような声が響いたのを確認して、俺は電話を切った。

数分後。部下の携帯にかけなおし、監禁場所へ向かう。廃工場のようだ。
「あ、目里さん! とりあえず、半殺しにしておきましたよ!」
「弧月……だから、3割り殺しにしろって言ってるだろ?」
狐耳をぴょこぴょこと動かしながらえへへーと笑う部下の女刑事の頭を軽く叩く。
ホシを確保しようとした瞬間。がらり、と音がする。
「なっ……!」
ガラガラと音を立てて、倒れ伏す犯人の上にガレキが崩れ落ちる。
「……困るんだよ。私の名を騙る奴が、性犯罪に手を出すと」
いつの間にか、そこには一人の老人が立っていた。
317本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:10:13 ID:p3pAYd5X0
掘りの深い顔立ちは、おそらく奴がハーフであることを示している。
「……てめえ、カシマ!」
老人は、ガレキの下から男の腕を拾い上げる。
「リカ。これをいつものところに」
「はいお父様」
パチンと指を鳴らすと、奴の隣に金髪の女が現れた。その腹には異形の足が蠢いている。
「では、さらばだ。警視庁第零科の諸君」
男が手品のように消えてしまうのを、俺は唇を噛んで見送った。


俺の名は目理 伊三。妖怪刑事である。
そして俺の部下の弧月 咲(こつき さき)。弧月とはすなわち『狐憑』。
彼女は、初代口裂け女の娘の、俺と同じ妖怪刑事だ。
先程の奴らは『カシマ』と『リカ』の親子。
米兵に犯され、両手足を奪われたカシマの母の復讐と称して殺人を犯す妖怪である。
俺はタバコをくゆらせながら、やっぱ妖怪の血なんて厄介事しかよばねえと思う限りである。
ああ、おふくろの作った肉じゃがが食いたい。
318本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:10:40 ID:p3pAYd5X0
メリーが来た次の日、俺は学校を休んだ。
サボったわけじゃない。体力的に無理だったからだ。
昨日の夜はメリーが家に来て、近くのコンビニで夕飯買ってあげたりしたら十二時を回っていたり、
そのあと寝ようとしてメリー用に布団を出してあげたら俺に抱きついて「一緒の布団がいい…」って言ってきて、
そのあと一緒に寝るのはいいとして執拗に俺に抱きついてきて結局ものすごい勢いで俺の心臓が脈を打って、
結局一睡もできなかった。しかもかなり寿命が縮まった気がする。
「陸久、大丈夫?」
昨日すやすや眠っていたメリーが俺の顔を見て言った。
「ごめん…今日は休む…」
「うん…昨日はごめんね?」
「大丈夫…気にしてないから」
そういうなり俺はベッドに突っ伏した。
ああ、布団が気持ちいい…。
五分も経たずに俺は眠った。

「ふぁぁぁあ…ゲッ!?」
起きたらもう五時を回っていた。
(早く夕飯の支度とかしなきゃ…)
ガバっと起き上がってベッドに両手を置く。
……やわらかい感触があった。
(…まさか…)
恐る恐る手を置いたところを見る。
そこにはやはりメリーが寝ていた。ネグリジェで。
しかも俺の手はメリーの胸の上に、ちょうどわしづかみしているような形で置いてあった。
「ん〜…あ、陸久起きたんだ。おはよ〜」
などとのんきに言うメリー。俺の額からは汗がダラダラ流れてくる。
319本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:11:07 ID:p3pAYd5X0
「うわあ!?」
バッとメリーの胸から手を取る。
俺の顔がまた熱い。
「ん?どうしたの?陸久、顔赤いよ?」
「どうしたって…胸、触られたんだよ?」
「うん。それがどうしたの〜?」
「その…恥ずかしいとか、ないの?」
「ないよ〜?」
どうやら気にしてないらしい。元人形だったからか?
「いや、気にしてないならいいんだ。それよりお腹すいてない?」
「うん。朝から食べてないからすごいお腹すいた」
やっぱり。
「なんか食べたいもの、ある?」
メリーは「んー」と言いながら少し考えた後、
「陸久の手料理が食べたい」
と言った。
320本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:11:26 ID:p3pAYd5X0
……は?」
「だから陸久が作ったものなら何でもいいよ?」
(俺何も作れないんだけど…)
などとは言わない。言ってはいけない。言ったら男が廃る。
「簡単なものでいいの?」
「うん、いいよ」
早速俺はカセットコンロを取り出して料理を始めた。
材料はさっきコンビニで買ってきたベーコンと卵とバター(総額およそ千円)。
「メリー、たくさん食べたい?」
「ん〜、少なめでいいよ」
(じゃメリーは卵三つで俺四つかな…)
取り出したボウルに卵を三つ割って溶く。
卵を溶き終わった後はベーコンを四列ほど切ってフライパンに放り込む。
ジュゥゥといい音を立てながらベーコンが焼けていく。
その中にバターを放り込んで一気に揚げる。
ベーコンがカリカリに焼けたところでさっき解いた卵を一気にフライパンに流し込む。
卵の焼けるいい香りが部屋を満たす。
俺のそばからメリーがひょこっと顔を出してフライパンを覗く。
321本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:11:56 ID:p3pAYd5X0
「うわあ、すごくおいしそう!」
「うちの母さんがよく作ってくれたんだよ。中学の間習ったんだ」
焼けてきた卵を箸で端に寄せ、一気にひっくり返す。
またジュゥゥと卵の焼ける音が少しした後、俺は卵焼きを皿に置いた。
「よし、あとはご飯をっと」
先週買い溜めたパパッとライス(こしひかり100%)をレンジに突っ込みチンしてスペアの茶碗に突っ込んでメリーに渡した。
「さ、召し上がれ」
出来上がった卵焼きからホクホクと湯気が立ち上る。
メリーは少し驚いたような顔で俺を見る。
「料理できると思わなかった…」
「余計な御世話だ」
メリーがクスクス笑い出す。
俺もつられて微笑む。
なんだかんだで今晩も楽しくなりそうだ。

時間が七時を過ぎた。
俺とメリーは夕飯を食べ終えてこのあと何をするか考えていた。
とりあえず風呂に入ったので何もすることがない。
(しゃぁない。明日の予定でも考えるか…)
幸い明日は土曜日。藤沢あたりにでも買い物に行ける。
「メリー、明日さ…」
話を始めようとした時、俺の電話がいきなり鳴り始めた。
「あ、ちょっとごめん」
俺はメリーにそう言って電話に出た。
『よぅサボりクン』
清水だった。
「高校生活の五割以上が遅刻のやつに言われたかねーよ」
『別にさぼってねーからいーじゃん』
清水がヘラヘラ笑い出す。
322本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:12:12 ID:p3pAYd5X0
「で、用件は?」
『あー、いや簡単な話。昨日女の子そっちに行った?』
メリーのことだろう。
「ああ、来たけど…」
『で?どうだった?』
「どうだったって何のことだよ」
『いや、だからヤッたのかヤッてないのか聞いてんだよ』
「初めて会う人とヤるわけねぇーだろうがこのアホッ!!」
衝動的に電話を床に叩きつけそうになったがなんとか堪える。
「…で?本当の要件は何だ」
『さすが植村。よく俺の言おうとしたことを察してくれた』
「だからなんだって聞いてんだよ」
『昨日の子、もしかしてお前匿ってる?』
少し考えてから答える。
「ああ…それが?」
『気をつけろよ…昨日、俺確かに彼女の背中に光るものが見えたんだ』
「で、お前はそれが包丁だと思ったのか?」
『うん』
「早とちりしすぎだバカ。他にも光るものがあるだろうが」
写真立てとか鉄とか。
『だから少し考えてから電話したんだけどな。思い違いならいいんだ』
「ああそうかい。じゃ切るぞ」
『あ、そうだ。今度そっち行くから紹介してお』
「却下」
そして電話を切った。
「メリー、明日何かやりたいことある?」
俺達が寝る直前に聞いてみた。
「私?ん〜…」
少し長めに考えてからメリーが口を開いた。
「ちょっと外の世界が見てみたいな…お昼ぐらいのが」
ビンゴ。
323本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:12:32 ID:p3pAYd5X0
「んじゃ明日買い物にでも行こうか。土曜日だし」
「本当に!?」
子供のようにはしゃぎながら抱きついてくるメリー。
「ホントホント。俺はあまり嘘つかないよ」
メリーの頭をなでながら言う。
「お金は大丈夫なの?」
「大丈夫、四十万ぐらいはある」
高校の時からバイトで貯めた金だった。
とりあえず使う予定もなかったし、彼女のために使うなら本望だ。
「とりあえず今日はもう寝よう、な?たぶん明日走り回ることになるし…」
「うん!じゃお休み!」
メリーが俺をベッドの上に押し倒しながら寝転がった。
どかそうと一瞬思ったが、メリーの幸せそうな顔が目に入った。
(やれやれ…かわいいやつだな、もう…)
とりあえず俺はメリーに抱きつかないように仰向けになって寝た。
324本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:19:18 ID:p3pAYd5X0
全世界、全人民に告ぐ。私はメリーさんだ」

 社員食堂のテレビが突如として変な映像を映す。
 おかしい、さっきまではお昼の定番長寿番組を見ていたはずなのだが。

「あれ、なんですかね」

 テレビを指さして先輩に訪ねる。

「春だからね」

 回答になってない。が感覚の領域では納得している自分を感じる。
 日本人に共通して「春」のイメージがあることの証明になるかもしれない。
 季節を理由にするのは季節のある国にしかできないな、と思った。

「繰り返す、私はメリーさんだ」

 テレビは相も変わらず意味不明な映像を映し続けている。
 青一色の背景。少女が自分の名前を連呼している。
 他の社員達は全員奇妙なものを映すテレビにくぎ付けになっている。

「あっ、ちょっと待ってくださいよ」

 先輩が席を立ったので呼び止める。
 後輩の食事が終わるのくらい待ってくれてもいいじゃないか。

 いや、そこで待たないのが先輩らしい、とも思える。
 我ながら矛盾してる。でも矛盾は嫌いじゃない。
325本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:19:58 ID:p3pAYd5X0
「メリーさん、知らないの」

 知らないから聞くんだろうが、とは口が裂けても言えない。
 コクッ、と頷いて次の発言を促す。

 先輩から話し始めること自体、珍しいケースだ。
 変なことを口走って機嫌を損ねてはいけない。

 先輩が説明してくれたメリーさんとはよくある怪談だった。
 デモンズウォールみたい、と思ったけど口にはしない。口は災いのもとだ。

「で、そのメリーさんがなんでテレビに」

「春だからね」

 興味がない、という意味だと判断。
 先輩は私が食べ終わったのを見て返却口まで早足で歩いていく。
326本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:20:03 ID:p3pAYd5X0
その後ろを慌てて追いかけてい行く。
 先輩の後ろには私がいる。

 ふと、先輩がテレビに映るメリーさんに大して何にも思わなかったのは、
 後ろに常に私がいるからじゃないか、という考えが浮かぶ。

「俺の背後には君がいるから」

 そんな台詞が先輩の口から出るのを想像する。
 気持ちが悪い。先輩の柄ではない。

 それに私がいたいのは先輩の後ろではなく隣なのだ。

 さっきのメリーさんの怪談にはオチがない。
 語り手が後ろにいるメリーさんにどうされたのか分からない。

 そこに想像の余地があるから広まった話なのかもしれない。
 後ろの次はどうなったのか、その疑問への回答は人の数だけあるに違いない。 

 今はまだ先輩の後ろでも、いつか先輩の隣にいれるように。
327本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:20:21 ID:p3pAYd5X0
メリー「もしもし、私メリー。今あなたの後ろをいただいてるの」

男「アッー!!」

メリー「初めてか?力抜けよ」

というわけで、くそみそ読んで何かに目覚めたメリーさんを描いてみたわけだが。
誰か携帯厨の俺に画像の貼付け方教えてくだされ。
って思ったけど需要ないやねorL
↓携帯からなら見えるんだけど…。
http://up2.jp/8vdguz94ra
328本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:20:39 ID:p3pAYd5X0
事件の翌日。

「先輩、今朝の新聞見ました?」

 仕事中の先輩は無口だ。
 いや、仕事以外の場面でも無口ではあるのだが。

 仕事の時は仕事に関係のない話題には一切答えてくれない。
 真面目なのではなくて不器用なのだ、と分析している。

 先輩は残業をするので帰りながら話すという手も使えない。
 そもそも家の方向が一緒なのかすら知らない。

 消去法的にこの昼の時間が先輩と話をできる唯一のチャンスとなる。
 カツ丼の大盛りを食べながら先輩にそう尋ねる。

「見てないよ」

 先輩に新聞を読む習慣がないのは知っていた。
 ただあれだけの事があったのだから、という淡い期待があったのは否めない。

 何はともあれあの事件について、先輩に説明する必要があるだろう。
 説明しなければ意見を聞くことすらできない。

 メリーさん。
 それは間違いなく今の日本で最も注目度の高い名前だろう。

 メリーさん。
 それは日本の人口の約1%、130万人近くの人を殺害した、
 歴史上最大クラスの虐殺者の名前となっている。
329本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:20:56 ID:p3pAYd5X0
 具体的になにが起きたかは専門家によって調査されているところだが、
 今朝の新聞を読む限りではこんな感じらしい。

 昨日の昼。テレビに割り込んで映し出される映像。
 青い背景。小柄な少女。

 その少女が繰り返し自分の名前をメリーであると宣言する。
 そして自分が怪談のメリーさんである事を説明する。

 彼女はそこで言う。

「私メリーさん。あなたの後ろにいるの」

 たったそれだけ。
 それだけでその番組を見ていた130万人近くの人が死んだ。

 信じがたい話ではある。
 しかし実際に起きてしまった事に対して、
 信じる信じないという話をするのはナンセンスだ、と思う。

 それに伴い再びこの様な事が起きないように、
 政府からテレビ禁止令が出ている。

 よって現在この社員食堂のテレビも電源が切られている。
 といった状況説明を先輩に行う。

「で、先輩はどう思います?」

 新聞、インターネット等のメディアでは既に色々な説が出ている。
 北の細菌兵器だの、米の音波兵器だの、中国の毒入り食物だの。
330本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 00:21:34 ID:p3pAYd5X0
しかしどれもしっくりこない。
 明らかに現実的な理由ではない。

 死因についてもはっきりとした情報がない。
 唯一はっきりしているのは130万人近くの人が死んだ、という事実だけ。

 救いは子供への被害が少なかったことだ。
 平日の昼どきテレビを見ている層に子供は多くない。

「考えておくよ」

 先輩はそう言うと食べ終えた皿を持って返却口へ向かっていく。
 こっちは説明するのに必死で半分も食べ終えてない。
 流石にこれだけの差があると引き留めておくのも悪い気がする。

 考えておく、と言ったからには興味はあるのだろう。
 興味がなければ無視されるか、どうでもいい言葉を返される。

 先輩は変な人ではあるが嘘はつかない。
 考えておく、と言ったからには考えてくるだろう。

 明日の昼のことを考え、高鳴る胸の鼓動を感じつつ、
 目の前にある冷めたカツ丼を片づける作業に戻るのだった。
331本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 02:13:35 ID:Tp9q95hr0
誰も読んでないぞ
332本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:40:09 ID:p3pAYd5X0
 インターネットで収集した情報を持って昼食に挑む。
 本日のメニューはカロリーメイト。同じ過ちは繰り返さない主義だ。

 先輩はいつも通りの日替わりメニュー。
 同じものを注文しても飽きにくい、という合理的な理由だと推測する。

 まずは自分で集めた情報を披露する。

 死因は全員心停止であるらしいこと。
 なぜ心臓が止まってしまったかについては調査中。

 2次災害も含めて死者は200万人を超えるであろうという事。
 下手な県の人口よりも多い。被害の甚大さを思い知らされる。

 録画された映像を見て死んだ人もいるということ。
 ネット上にそれを公開した人がいるらしく問題になっている。

 ただ、番組の流れているテレビのあった部屋にいても、
 死んでいない人もいるらしい。

 どうやらちゃんとメリーさんの映像を見ていた事が死の条件にあるようだ。
 その辺の調査に関しては実験してみる訳にもいかず困っているらしい。

 これだけの事をざっくばらんに説明する。
 先輩の表情を見る限り、興味がない訳ではなさそうだ。
333本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:40:43 ID:p3pAYd5X0
「それでなにか分かりましたか?」

 先輩に意見を促してみる。

「人間は牛を殺して肉を食べて、森を壊して紙を作るよね?」

 何の関係があるんだろう、と思っても口にしない。
 災いのもとは厳重に封印しておくべきだ。

「それはメリーさんも同じなんじゃないかな?」

 満足げに白身魚のフライを食べる先輩。
 どうやらこれ以上説明するつもりはないらしい。
334本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:40:50 ID:p3pAYd5X0

 人間を食べたという事だろうか。
 これまでの、どの説よりも非科学的で非現実的であるように思われる。

 先輩がそんな事をいうタイプに見えなかったので多少驚く。
 言ってる内容はギリギリ理解可能、といったところだろうか。

 それでもどこか腑に落ちない顔をしていたのだろう。
 目は口ほどに何とやらだ。

 先輩がそんな表情を見て補足説明をしてくれる。
「多分ね、電話に飽きたんだよ」
 そう言うと先輩は返却口の方へ歩いていく。
 補足説明なんて柄にもない事をする先輩への驚きと、
 その内容の意味不明さにその場を動けなくなる。
 電話に飽きた?
 だからテレビに?
 先輩の隣への道のりの長さを感じながらも、
 さっきの言葉の意味は明日までの宿題にしようと決めるのだった。
335本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:43:44 ID:p3pAYd5X0
メリー「も、もしもし、私メ、メリー…。今…、あなたに、んあっ!…う、後ろをはぅぅっ!お、犯していただいてるの!んくぅっ!」

男「へへ、ガキのくせにいい顔するようになったじゃねーか。ケツマンコ犯されんのたまんねーか?この淫乱メスぶたが!!」

メリー「ひ、ひどい!あなたがこんな身体に…うあぁぁぁっ!!」

男「あ?なんか言ったか?」

メリー「ひぎぃぃっ!ゆ、許して!許して下さいご主人さまぁっ!痛いのいやぁぁっ!!」

男「へへ、そのうちこれも自分から求めるように調教してやるからな!」

メリー「…うぇっ…。…ヒック。…ヒック。…助けて…、ママ…。」
336本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:44:05 ID:p3pAYd5X0
 大型家畜用の特大浣腸器でお腹パンパンになるまでグリセリン原液を流し込んでから、おもちゃでそのアナルをさんざんなぶり、
さらに失神寸前の苦痛に耐えるメリーさんの可憐なオシッコ穴に、太いカテーテルを膀胱まで差し込んで膀胱浣腸を施す。
 強烈な排泄感でブルブルと痙攣するメリーさんのガキ肛門に大人ペニスを根元まで挿入して直腸の最奥、
S状結腸を無理矢理直線にされて身もだえるメリーさん。
 しかし口答えしたお仕置きに、オモラシを必死に堪えて強張った尿道に太い綿棒をぐりぐり突き立てられ
、さらに包皮をめくりあげられ、剥き出しになった可愛らしいクリトリスを男の太い指が情け容赦なくゴリゴリとしごきたて、
激痛に失禁&失神しそうなのを必死に堪えるメリーさん。
 失禁したらさらに苛酷なお仕置きが待っている上、
失神したら記憶が無い間にどんな肉体改造をされるかと思うと、
気絶してその地獄のような拷問から逃れることも出来ず、
精神崩壊まっしぐらのメリーさん(長い…。)を描いてみました♪

あああ!可愛いいよメリーたん!
337本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:44:30 ID:p3pAYd5X0
メリー「もしもし、私メリーさん。今あなたの後ろを、あれ?か、硬い!?」

T「ふっ、残念だったな。後ろのバージンは墓場まで持っていくつもりだ」

メリー「くっ!さすが寺生まれ!他の男とひと味違うようね!」

T「今度はこっちの番だ、破ーっ!!」

バキィッ

メリー「きゃあっ!私のペニパンが!?入れたままオシッコ注ぎ込める特注品が
!な、なんてケツ圧!」

T「さてと、悪い子にはお仕置きしないと」

その手にはピンクのアレ

メリー「ひっ!?な、なにそれ?なにする気なの?」

T「なに?って、イチジクっていったら浣腸するに決まってるだろ。もしかして
直腸洗浄もせずにアナルレイプを繰り返してたのか?」

メリー「え?私便秘なんて、やあっ!?やめて、許して!」

T「大丈夫、ちゃんと目覚めるまでたっぷり注ぎ込んでやるよ」

そういうと怯えるメリーさんのスカートに手をかけ、

 児ポ法に抵触する記述があったため削除されました。続きを読む場合はその場
で三回転したのち、1を英語で発音して下さい。
338本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:45:39 ID:p3pAYd5X0
「私、メリーさん。今、公園の前にいるの」
「……は? えっと誰だか知らないけどゴメン、これから新潟に出張だからそれどころじゃないんだ」

「私、メリーさん。今、大通りにいるの」
「メリーさんって、あの怪談の? ……こっちはもう東京駅だぞ? いいから今回は諦めろって」

「……そんなこと言って、逃げる気でしょう……?」
「そんなことしないよ。久々にオレも逢いたいしさ。お土産何がいい?」

「嘘……暗い箱の中に閉じこめてそのまま捨てたくせに……」
「母親が勝手にしたこととはいえ、ゴメンな。辛かったよな……」

「貴方の母親のせいなの……」
「でも恨むなら俺にしてくれよ。母親なりに俺のことを考えてのことだし」

「私メリーさん。いま東京駅にいるの」
「まだ追ってたのか? バカ、もうこっちは時速200km以上出てるんだぞ?」

「どうして私を捨てた母親を庇うの……?」
「……さあね、俺も大人になったってことかなぁ? それにさ、母親のためだけじゃないよ」

「どういうこと……?」
「メリーに逢いたいから。……俺、お前が捨てられて、必死になって探したんだぜ?」

「本当……?」
「母親に掴みかかって親父にぶん殴られてさ。『男のくせに――』って言葉は卑怯だよなぁ……」

「痛かった……?」
「覚えてないな。それより、もうお前と一緒にいられないってことの方が、ずっと辛かったよ……」
339本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:46:05 ID:p3pAYd5X0
「私、メリーさん。……あの……どの電車に乗っていいのか……わかんなくて……」
「……なあ、絶対帰ってくるしさ、仕事頑張って、少しでも早く帰ってくるからさ……」
「ダメなの……追いかけられるのは一度だけなの。諦めたら、もう……消えちゃうの……」
「そんな……嘘だろ、せっかく逢えるのに、初めて声聞けて、可愛くて嬉しかったのに……」

「私も逢いたいっ……ずっと、ずっと願ってた……それがいつしか呪いになってしまったけど……」
「……追いかけて、くれるか? 新潟まで……それで……たくさん話をして、たくさん遊ぼう……」
「……お膝に乗せてくれる?」
「うん」
「頭をなでてくれる?」
「うん」
「ぎゅって、抱きしめてくれる?」
「うん」
「好きだよって、言ってくれる?」
「うん」
「……キス……してくれる……?」
「……うん。何度だって、ずっとだってするよ」
「うう……ぐすっ……逢いたい……逢いたいよ……」
「待ってる。……新幹線のホームを探して。他の電車とは少し違う場所だよ」
「……私、メリーさん。いま、新幹線に乗ってるの……」
「……そっか。……なあ、せっかくだから昔の話しようか……」
その日、新潟のとある会社に、古びた人形を大切に抱えて出張してきた会社員がいたらしい。
また、後日同じ地域で、夜な夜な美しい少女に変身する人形と青年との愛の逢瀬の寓話が生まれるのだが、
それが人形を抱えた会社員の噂と関係しているのかは、今なお明らかになっていない。おしまい。
340本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:48:55 ID:p3pAYd5X0
「私メリーさん。今家にいるの。プリン買ってきてくれない?」
「……イタズラ電話か?」
「イタズラじゃないの。メリーさんなの」
「……アレか? 怪談の」
「そうそれ」
「なんで俺にかかってくるんだよ。しかも微妙に聞いてたのと違うし」
「うっかりして、電話する前にさっさとついちゃったの」
「なんでやねん」
「そしたら誰もいないし、歩いてきたから疲れたし、丁度いいかな、って」
「なんでやねん。っつうか、家ってどこだよ」
「あなたのうち」
「なんでやねん!?」
「だって、メリーさんだから」
「そうか、メリーさんじゃあ仕方……なくねえよっ! なんで俺の家に
 上がりこんで、しかも家主パシらせようとしてんだ!?」
「だって、メリーさんだから」
「……もういい。買ってきてやるから、大人しく待っとけ」
「駅前の有名パティシエがやってる店のでよろしくなの」
「贅沢言うなっ! っていうか、仕事終わってからだから店しまっとるわっ!」
「仕事と私……どっちが大事なの?」
「仕事だよ! ってかここでお前のが大事だよって言う奴いたら怖いわ!
 怪談とか以前の怖さだよっ!」
341本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:49:10 ID:p3pAYd5X0
「ぶー、なの」
「……気づけば、何か普通にプリン買って帰るつもりになってるんだが、俺」
「ラブなの?」
「なんでやねん!? 電話一本会話数分で愛が芽生えるかっ!
 っていうか冷静に考えたら色々怖くなってきたぞおいっ!?」
「怖がらなくていいの。初めては誰にだってあるの……うふ」
「……ツッコミ疲れたし、仕事もあるし、切っていいか?」
「うん」
「とりあえず、プリンは買って帰ってやるから、大人しく待っとけよ、ホントに」
「うん。家捜ししながら待ってるの」
「ちょ、おまえそれはま」
「バイビー」
「……切れた。ってか、バイビーって……古いぞ、おい」

 仕事を終え、家に帰った俺は、何故かベッドの上で身体を丸めたような
形で転がっている、綺麗な人形を見つけた。ついでに、部屋中が何か
家捜ししたように荒れていて……ってか、これ実際に家捜ししたんだよな。
何故か念の為隠しておいたエロ本が、机の上に並べておいてあるし。

「……どうしろってんだよ、この二人分のプリン」

 俺は、ベッドの上の人形に毛布をかけてやると、自分は床に毛布に
くるまって横になった。疲れからか、すぐに眠気が押し寄せてくる――

「プリン、ありがとうなの。また、そのうち会えるといいな」

 夢の中で、そんな声を聞いたような気がした。
 ちなみに、仕方が無くおいておいたプリンは、翌朝綺麗になくなっていたとさ。
 もちろん、二人分。

「……俺の分は置いとけよ」
342本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:50:58 ID:p3pAYd5X0
「私メリーさん。今家にいるの」
「またお前かっ!?」
「そうなの。メリーさんなの」
「仕事中は電話してこないでくれよ頼むから」
「お化けにゃ仕事も何にもないの」
「俺にはあるんだよっ! ……で、今日は何の用だよ。
 プリンならもう買ってやらんぞ。俺の分まで食べやがって」
「別にいいの。もう貰ってるの」
「どこの誰にだよ! 俺の家に俺以外の住人はいないだろうが!」
「ここはあなたの住んでる家じゃないの。けどある意味あなたの家なの」
「え? なんだその謎かけ……。一体どこからかけてんだ?」
「ここはあなたの実家なの」
「なんでやねん!?」
「今お母さんと代わるの」
「もしもしー。隆之かー。お母さんえらいびっくりしたわー。
 隆之にこんなべっぴんさんな彼女がおったなんてなー」
「ホントにお袋かよ……って、彼女?」
「ちゃんとお母さんに紹介してくれんと。ほんま水臭いわー」
「ちょっと待て。どういう話になってるんだ、そっちでは!?」
「え? この娘あんたの彼女や言ってるけど、違うん? 金髪の人形
 みたいな外人さんやけど、あの内気やった隆之がよーもまーなー……」
「……とりあえず、そいつと代わってくれ」
「ん、わかったわー」
「代わったの」
「何言ってんだお前はっ!? っていうか何故そこにいるっ!?
 そして何故そんな話になっているっ!?」
「なりゆきなの」
「なりゆきでン百キロ離れた俺の実家に行くんかい!?」
343本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:51:16 ID:p3pAYd5X0
「それ何の説明にもなってないから!」
「徒然なるがままなの」
「言い換えても意味変わってねえ!?」
「……言わなきゃわからないの?」
「わかるかっ!」
「一夜を共にしたのにわからないの?」
「誤解を招くような言い方をするなっ! お袋も後ろでキャッとか言ってるな!」
「愛、なの。英語で言うとラブ。ラブフィフティー」
「なんでやねんっっっ!?」
「プリンから始まる愛もあるの」
「始まってない! 一切始まってないからっ! お袋も後ろで以下略!」
「……私もそう思ったの」
「そうか。わかってくれればそれで」
「だから外堀から埋めようかと」
「埋めるなっ!? というかお前の方は芽生えまくりなのかよっ!?」
「そうなの♪」
「……なんでだ?」
「え?」
「なんで、そんな……だって、お前お化けだろ、いわゆる一つの」
「そうなの。でも愛に種族の差は無いって偉い先生も言ってたの」
「その先生を俺の前に連れて来いっ! 現実と空想の違いを俺が
 説いてやるからっ!」
「けど、私はここにいるの」
「ぐっ……」
「……駄目、なの?」
「だって、俺……まだ、お前と面と向かって話もした事無いんだぜ?」
「それは……また、今度、なの。じゃあ、バイビー」
「バイビーって、おま……ちょ……切りやがった」

 数時間後、あいつが実家からいなくなった後、お袋が俺に電話をかけてきて、
色々と質問責めにしてくれたのは、また別の話である――どう答えろとっ!?
344本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:51:55 ID:p3pAYd5X0
昨日の先輩からの宿題が解けた。
 いや、少なくとも自分なりの回答は用意できたつもりだ。

 自分は先輩ほどの思考力も想像力もない。
 ただ情報収集とそれを活用する力には自信がある。
 足りない能力があるならば、別の能力で補えばいい。
 そう言った意味でインターネットは最高の相棒であるといえる。
 会社から家に帰る道中ずっと宿題について考えていたが見当もつかない。
 とにかく情報を集めよう。家にいる間はメリーさんに関する情報を集めることに専念した。
 そうやって情報を集めていくと、幾つか引っかかる点が出てくる。
 メリーさんの怪談には幾つかのパターンがあるのだ。
 基本は電話で連絡を取りながら場所が近づいていくお馴染みのものなのだが、
 連絡を取る手段がメールになっていたりチャットになっていたりしている。
 これと先輩の発言をつなぎ合わせて考えてみると、
「メリーさんはこれまでも手口を変更していたんですね?」
 昼休み、いつもの社員食堂で昨日考えた仮説を発表する。
 メリーさんはこれまでも色々な手口で出没していた。
 それはチャットであったりメールであったり。
 それが今回たまたまテレビであっただけなのだと。
 メリーさんとしては新規の場所でさぞ緊張したに違いない。
345本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:52:06 ID:p3pAYd5X0
その説を聞いた先輩は満足げな表情をしている。
 しかしそれは知りたかった事とはベクトルの方向が違っている。

 知りたかったのは、メリーさんの正体だ。
 メリーさんが何者なのか。

 新聞、ネット上でずっと議論されているこの問題。
 これを先輩に答えて欲しかったのだ。

 少女の風貌。
 電話やテレビやメール越しに殺人をする能力。

 これらに対する回答を先輩は持っているように見えた。

 昨日は自分の聞き方が悪かったのだと思う。
 どう思うか、なんて抽象的な質問をするべきではなかった

 ズバリ聞く。

「先輩はメリーさんを何だと思っていますか?」

 ネット上ではテロだという見方が一般的になっている。
 しかし何も要求をしてこないテロなんてあるのだろうか。

 しっくりこない。その感覚。
 それを埋めてくれる事を先輩に期待する。

「妖怪だね」
346本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 15:52:42 ID:p3pAYd5X0
妖怪。
 そんな非現実的な単語が先輩の口から発せられたとは。
 先輩のイメージを改めなくてはならない時期なのかもしれない。
「非科学的です」
 そうキッパリと答えておく。
 先輩の言ったことなら何でも無条件に信じるほど盲目ではない。
「今の科学の範囲を超えている、と考える方が科学的だと思うな」
 メリーさんは妖怪?
 それは常識で当然のことで。
 でも妖怪なんていないというのも常識。
 妖怪と考えるのが常識で、妖怪がいないのが常識?
 でもメリーさんはいた。
 実際に二百万人もの人を殺したのだ。
 妖怪がいる、と考えるのが自然、と考えるのは不自然?
 妖怪は、いる?
 思考がグルグル回る。
 自然と不自然。常識と非常識。
 どれも相対的で流動的で。
 グルグル回ってそれに合わせて形を変える。
 いや、形が変わっているのは自分なのかもしれない。
 そのときどんな顔をしていたんだろう。
 どれくらいの時間が経過していたのだろう。
 先輩の声に現実に引き戻される。
「あ、それと昨日の訂正」
 何を?
「飽きたじゃなくて、焦っていたのかも」
 先輩の皿は空になっていた。
 自分の脳みそも空になってしまえばいい。
 考えるのは後に回そう。
 自分の皿が空になれば、脳みそも空になるかもしれない。
 そう考え黙々と食事をするのだった。
347本当にあった怖い名無し:2010/07/05(月) 22:31:33 ID:d0P4p7go0
ここって、メリーさんの専スレなの?
348本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 01:26:24 ID:/ZgHRnUR0
349 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/06(火) 02:15:06 ID:kGGuzqam0
毎度のことですが、文章力無くて申し訳無い。誤字脱字その他失礼します。
自己責任で読んで下さい。警告したので始めます。

"師匠"

俺が17の時"アレ"のせいで、とうとう家にいられなくなって
ある街で、ホームレスのような暮らしをしていた時だ。
その日も破れたジーンズに、万引きしたシャツを羽織って、
繁華街の路地裏で夕飯のためのゴミ漁りをしていた。
あんまいいのねぇなあ…マ○クの裏でも見てみるかぁ。
でも、あそこは別グループの縄張りだしなぁ。なんて考えてると
ダブルスーツにグラサンやスキンの怖いオジサンたちに、因縁つけられいきなり囲まれる。
「うち等のシマ荒らされると困るんだよ、兄ちゃん。
 あんたでかいから目立つしな。とりあえず懐のもんを全部寄越しな」
「その上等なシャツは万引きだろ?分かってんだよコソ泥!!」
「なぁ、代金払いな。お か ね は ら っ て?きこえてる?ぼくぅ?」
「ははは、見りゃ分かるでしょ、金なんて無えっすよ」
「ざけんな!!ゴラァ!!」
そんな風にボコボコにされて、
唾を吐き捨てられ「また来るぞ」なんて有態な捨て台詞を聞きながら
充血して濁った目で、スーツの後姿を見ていたら
俺の右肩からおもむろに出た黒い腕が、スルスルスルと伸びていって
一番後ろを歩いていた男の心臓あたりから、何かを抜き取った。
宿主である俺の生命の危機を感じ取った"アレ"が、今さら発動して
運の悪い奴の魂を喰ったようだ。
いきなり前のめりに倒れた男に、慌てふためく仲間たち
いい気味だバーカ。
…いや……いいわけないよな。
このパターンで、学校でも糞教師や気に食わない同級生を7、8人意識不明にしている。
中にはたまたま居合わせた友達も居た。彼らは二度と目覚めることは無いだろう。
どう考えてもこんなモノが、人間の世界に居ていいわけがない。
俺自身これのせいで、怖くて日雇いすらまともにできない状態だ。
350 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/06(火) 02:20:11 ID:kGGuzqam0
誰も居なくなったのを見計らって、
ヨロヨロっと立ち上がって、歩き出す
ホームレスルックの上に血塗れで、シャツも破れているので
通行人が顔を顰めながら、露骨に避けていく。
「パンクとかやってる人には見えないかな、見えないよな、へへへ」
きつ過ぎて、独り言がブツブツと口をついて出る。

気がついたら、夜の埠頭に立っていた。
1メートル下では波が寄せては返し、吹き付ける海風が傷だらけの全身にしみる。
この高さなら、飛び込んでも死ねないな。
傷の痛みで、すぐに陸に上がっているのがオチだろう。
数年前に死のうと思って、原付で峠のカーブに突っ込んでも、
ガードレールが少し曲がっただけで、
原付ごと傷一つ無く無事だった"アレ"の防御機能も問題だ。
生半可なやり方では死ねないな。
いや、待てよ。向こうに見えるなんちゃらブリッジから飛べば、
意外とスンナリ逝けるんじゃないか?
あの高さならさすがに、落下スピードと重力で半端無い力がかかるから
"アレ"も俺をかばいきれないだろう。
しかも万一"アレ"に守られて、水面に叩きつけられても死ねなかった場合、
そのまま沈んでいっての溺死もできる二段構えだ。
とか考えていたら、後ろから車のヘッドライトに照らされる。
またさっきのヤクザか。人が死ぬ算段してる時にまでめんどくせぇな。
もういっそ、ここから飛び込んで泳いでたら勝手に沈んで死ねるんじゃね。
と思いながら、振り返ると
351 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/06(火) 02:21:24 ID:kGGuzqam0
7〜8メートルほど向こうに、
どこにでも居るような、エプロンをしたおばさんが
ライトに照らされて仁王立ちしていた。
エプロンの上に黄色い蛍光タスキも掛かっていて
逆光だが" まちかど 青 少 年 家 出 たんさく隊 "というマヌケな太字がなんとなく見える。
「あらあら、やっと見つけたわ、ゴリョウシンが心配していたよ」
一瞬何を言われているのか分からなかったが、何とか理解した。
ああ、やたら人のいいうちの親のことか、
少なくともあの人たちには、これ以上迷惑を掛けられない。
無視して立ち去ろうとすると
「あんた、ちょっと待ちなよ!!」
鼓膜が破れそうな大声で引き止められる。
うぜぇババアだな、ほっといてくれよ。と小さく呟きながら
腰から崩れ落ちる。さっきしこたま殴られたのと、
夕飯を食えなかったツケが今頃回ってきたようだ。
「あんた、大丈夫かい!!」
再度のやたらよく響く呼びかけに、今度は気が遠くなる。
いいから少し黙ってくれ。もうホントにきつくてしょうがないんだ…。
それと同時に、精神的にも体力的にも憔悴しきった俺に、
宿主の危険を感じたらしい"アレ"が、またも発動し
手近に居たおばさんを、標的と認識して突っ込んで行った。
動けない俺は、"おばさんごめん。無理だと思うけど逃げてくれ"と
心の中で願う他無かった。
352 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/06(火) 02:23:24 ID:kGGuzqam0
見えていないのか、おばさんはたじろぐ素振りすら見せず
慣れた手付きで脇から抜き出した、鋭利な突起物…
…便所スリッパにも見えるが気のせいだろう。を素早く払った。
「えいやぁーーー!!」
掛け声とともに、鋭利な突起物が"アレ"を斜めに一閃する。
二つに切り分けられた根元の方は、繋がっていた俺の肩まで
力無くシュルシュルと戻っていき、消えた。
切り取られた腕先の方は暗黒物質を撒き散らし、
ビチャビチャと壮絶にのたうち回りながらも
悪あがきなのか、凄まじい迫力で再度おばさんの方へと突っ込んでいく。
危ない!!と思ったのも束の間
間一髪、バグチャ!!と物凄い音をさせて、おばさんが右足で踏みつける。
涼しい顔をしたおばさんが
「私も鈍ったねぇ。まぁ、こんなもんだろう」と言い
踏みつけられた"アレ"は、その足元で焦げる様に溶けていった。

おばさんは、そのまま何事も無かったかのように、
スタスタと俺に歩み寄り、右手を差し出して
「あんた大変だね。その様子じゃ色々あるんだろうけど、
 とりあえずは、うちに来ないかい」
と言った。その姿が、
菩薩様がこの世に現れたようにマジで見えたことは、
一生の秘密だ。

おばさんに肩を貸してもらいながら、黒塗りのRV車に乗り込む。
貰ったスポーツ飲料を口に流し込んでからは
後部座席のシートを倒して、
半分意識を失いながら、窓に流れる夜景を見ていた。
353 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/06(火) 02:26:05 ID:kGGuzqam0
1時間ほど走ると、町外れの雑木林に囲まれた、
平屋の日本家屋に着いた。
「ここなら大丈夫、あんたもゆっくり傷を癒すといい」
また肩を貸してもらって、
家の門を潜ると、スウッと何かが身体の中を
通り抜けたような感覚に陥った。
肩越しに見ると、おばさんは別に気にしていないようだ。
そのまま歩いて行き、開いている玄関に入る。

待機していた、助手らしき白装束と白頭巾の女性に誘導され、
風呂場に入り、簡単に身体を拭いてもらってから、寝巻きに着替えさせられ
奥の座敷で敷いてあった布団に寝かされる。
寝ると、天井に結界が描かれているのが分かり、
目で見回すと、四方の柱にも呪符が貼ってある様だ。

おばさんが急須に水を入れながら話しかけてくる。
「これから話すことは、寝ながら聞き流してもらって構わない。
 実際、忘れてしまった方がいい話だからねぇ」
まどろみながら、肯定の意を伝えようと、首を少し縦に動かす
「私があんたを見つけた時、
 すぐには近づかなかったろ、何でだと思う?」
不明の意を伝えようと、首を少し横に動かす。
「警戒してたんだよ。探索願いも確かに出されていたんだけど
 同時にね、ある筋からの依頼があったんだよ。
 危険だから、あんたを確保して引き渡せ、生死は問わないっていうね」
ドラマみたいな話だが、おばさんの目は本気だ。
「ただ、血塗れのあんたを見て思ったんだけど、引き渡すのは止めにするよ。
 あんたはまだ子供だし、私も子供が居る身だ。一人くらい増えたって同じさ。
 責任を持ってこれから私が、あんたを見守ることにする。
 先方にもそういうことで、話をつける」
何か言おうとしたのだが、そのまま深い眠りに引きずり込まれた。
354 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/06(火) 02:28:19 ID:kGGuzqam0
あの日から一週間が過ぎた。真面目に養生している成果か、体力も回復してきて
右肩から右手付近には若干痺れが出ているものの、
足は普通に動くし、そろそろ外に出られそうだ。
「身体がまだ十分に動かないのは、あんたの右肩の"アレ"のせいだよ。
 私が切り取った分をあんたの体力で補っているんだろう。
 他にやりようが無かったとは言え、すまないことしたねぇ」
「いえ、自分の不肖ですから、ここに居させてくれるだけでありがたいです。
 それより、この部分の設定が間違っているから繋がらないんですよ。
 パスワード貰えますか、ほら、分かれば簡単です」
おばさんが持ってきたノートパソコンの、無線LANのメールとネットの設定をしてあげる。
「さすがだねぇ、マイコン関係のことは昔からとんと疎くてねぇ
 今度うちの家のも、やってもらおうかしらね」
「お兄ちゃん、でっかくて、しかも物知りだねぇ。師匠って呼んでいい?」
おばさんが連れてきたらしい、小学校高学年くらいのガキが無邪気にそう言う。
基本的にガキは、ホームレスの時に集団で石を投げつけられたり
寝床に爆竹を投げ入れられたりと、色々あったので
地球上から絶滅して欲しいぐらい嫌いだが
命の恩人の息子なので、とりあえず殴るのは止めておいた。

全快した後は、おばさんから定期的に封印を受けて"アレ"を抑えつつ
バイトして生活費を稼ぎながら、大検を取って、
次の年には、某大学の史学科に何とか滑り込むことが出来た。
これでも元々は勉強家だったのだ。
学費は、顔を一切見せない馬鹿息子の久しぶりの電話一本で
どこまでも人のいい親が全額+α振り込んでくれたので、
心配はいらないのがありがたい。

これからは、俺の人生でも、珍しく波風が立たない今のうちに、
興味のある考古学や民俗学でも勉強しながら、
ついでに古物商の資格なんかを取ろうかと計画している。
了。
355本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 02:31:18 ID:/ZgHRnUR0

リアルタイムで初めてみた
356本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 02:32:54 ID:GpwYJ4T60

この時間って珍しいな
357本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 08:02:04 ID:yeSnTHI+0

◆7QPLwJZR/Ypfのおかげでシリーズ物スレが生き返った気がする
358本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 09:25:28 ID:zEXsRDQsO
これだけ過疎ってるスレで投下後3分以内にレスがつくとか凄いですね^^;
359本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:20:32 ID:pTDlpO3C0
突然だが俺は寒いのが苦手だ。
冷えたアパートに帰った時などうんざりしてしまう。
そんな俺に電話がかかってきた。
「もしもし、私メリーさん。今、あなたの後ろに居るの」
嘆息。すぐ後ろに人の気配がする。
「はーい伊三。今日は寒いからおでん持ってきたのよー」
金髪の美女が鍋を持ってニコニコしながら立っていた。
彼女の名は目理 メリー。俺のお袋である初代メリーさんだ。
「おふくろ……。だから来るなら前もって連絡しろって言ってあるだろ」
「連絡ならしたわよ。咲ちゃんに」
お袋がそういうと同時に、玄関からブザーの音が鳴る。
「せんぱーい! お邪魔しますねー」
360本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:20:37 ID:pTDlpO3C0
ドアを開いて入ってきた咲は、口元に大きなマスクをはめている。
「外寒いし風邪も流行ってるからマスクつけてきちゃいました」
えへへ、と笑いながら真赤なコートを脱いでいく。
「……お前の部屋は俺の家の隣だろ! 何だその厚着!」
「いいじゃないですかー。それよりよかったー。私メリーさんのおでん好物なんですよ。
 あ、コタツつけますねー」
勝手知ったる何とやらだ。ったく、ここは俺の部屋だっつーのに。
何だ。プライバシーもないのかちくしょう。
そう心の中で毒づいた俺は、再度なったブザーに腹を立てる。
「今度は誰だ!」
ずかずかと玄関に向かうと、赤と白の服に身を包んだ北欧人のジイサンが立っていた。
「えー、ここにメリーさんって女の子がいると聞いたんだが……」
「宛先間違いだ! 大体、あと18日程早い! 帰れ! でないとテメエのトナカイ道路交通法違反でしょっぴくぞ!」
俺の叫びに、いかんこりゃうっかりだった、いやはや失敬、と告げると、
男はアパートの階段をかんかんと降りていった。
「んもー、先輩ったら、サンタさんには優しくしなきゃだめですよ?」
「そうよー、プレゼントもらえないわよー」
「都市伝説がプレゼントを期待するな!」
俺は部屋の中の二人へ向かって叫んだ。

俺の名は目理伊三。今日は非番の妖怪刑事である。
なんにせよ、おふくろのおでんは美味かった。
361本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:22:09 ID:pTDlpO3C0
>>347
メリーさんシリーズだから何の問題もないだろ
赤緑ばかり投下してるから赤緑専用スレと文句つけないくせに
362本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:22:13 ID:pTDlpO3C0
 着信があったのは夜の11時過ぎだった。
 由美は既に寝床に入っていた。枕元の携帯電話を手に取って開く。知らない固定電話の番号だ。
怪しく思いながらも、一つの予感が胸をかすめ、通話のボタンを押した。
「はい」
 沈黙。細かな息遣いが伝わってくる。ややあってから声が聞こえた。
「わたしメリーさん。今ごみ捨て場にいるの」
 それは女の子の声だった。呟くように小さく、尻すぼみだ。由美はその声を知っていた。
微かな予感が当たり、じわりと胸が締まるのを感じた。メリーさん――そしてそれはいきなりだったが、女の子がそんなことを言う理由には思い当たりがあった。
「宮田さんね」
 由美は緊張を悟らせないように柔らかく呼び掛ける。続けて何かを言おうとしたが何を言えばいいのか分からなかった。
向こうの答えも返ってこない。由美は通話が切れてしまうことを恐れた。
「もしもし」
 やはり返事はない。そして更に数秒待った後、突如として通話は切れた。
由美は一人取り残され、通話時間を表示するディスプレイを見つめた。
確かに彼女だった。由美はすぐに履歴からかけ直す。女の子がごみ捨て場と言ったことが怖かった。
不気味なのではなく、相手の身が心配なのだ。五回、六回、鳴っても出ない。
やがて、出られない状況だという旨の電子音が流れ、電話は切れた。それから二度かけたが結果は同じだった。
 由美は着替え、外に出て車に乗り込む。満月の寒い夜だ。胸がざわついていた。
由美は「メリーさん」と呼ばれる都市伝説について知っている。彼女はどんな意味を込めて言ったのだろうか。エンジンの音が妙に落ち着いて聞こえ、歯がゆかった。
363本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:22:28 ID:pTDlpO3C0
 春に大学を卒業した時、由美の胸にあったのは熱い理想だった。努力の甲斐あって4月から中学校の教員として働けることになっていた。
子どもたちの幸せに少しでも貢献できればいい。
もちろん伴に不安を持ち合わせてはいたが、それが由美の長年温め続けてきた希望の内容だった。
 だが結局のところそれは幻想だったのだろうか。
 勤め始めてから半年が過ぎ、由美は自身の甘さを痛感していた。初めの内は問題なく見えた。
専門は数学である。受け持った授業の中で騒ぐ生徒はいたが、それでも注意すればすぐに収まった。
ちょっかいを出してくる子はいたが、それも愛嬌のある可愛いものだった。変化は徐々に起きていった。
 まず、注意してもすぐには騒ぎが収まらなくなった。
それから始業の時間が遅れるようになり、予定通りに単元を終わらせるのも難しくなった。
単元ごとに行うテストの結果は顕著に悪化した。それらは学年やクラスによって差はあったが、どこにも同じ傾向が見られたのだ。
これはやはり自分のやり方に問題があるのだ。由美は苦しかった。
 梅雨の始まる時期に相談をした。
「それはあなたが若いからさ、きっと一緒に遊びたいのよ」
 由美には恋人がいる。しかし彼には教師としての悩みは打ち明けるまいと決めていた。意地である。相談をしたのは職場の先輩だった。
364本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:22:43 ID:pTDlpO3C0
最も年齢の近い女の先輩は静江という名で、7つ違いである。専門は保健体育だ。
細身だが眉が力強い。授業中の声がとても大きく、男子生徒からメガホンというあだ名で呼ばれていた。
細かい勘定を嫌う豪快な性格で、由美が職場で頼りにしている人である。その先輩が日直の日に由美も一緒に残ったのだった。
「理想が高過ぎたんですかね。嘘に聞こえるかも知れないけど、わたしは子どもたちが幸せになってくれればいいと思っていました。
いえ、今だってそう思っています。だけど――」
 由美はコーヒーカップを持つ手に力を入れた。静江のノートパソコンが低い唸り声を発している。
「わたし、中学の2年生までは数学って嫌いだったんです。
元々算数も苦手だったし、数学になってからはもっと難しくなったから。
でも3年生の時に素晴らしい先生に出会えて、その先生はもう五十を過ぎた男の先生だったんですけど、
すごく授業が分かりやすくて面白くて、それから好きになれたんです。わたしは彼らに何も教えてあげられない」
 ふむ、と言って静江はコーヒーをすすった。
「まあ、何とも言えないわね。
第一あなたはまだ生まれたばっかりのオタマジャクシみたいなものだし、これからどうにだってできるじゃない」
「頭ではそう思うのですが」
「あなたね、笑ってくれちゃうかも知れないけど、わたしだって教師になりたての頃は悩んだのよ。
サボるやつはいるし、告白されたりはするしで」
 由美は驚き、先輩の顔を見た。静江は笑っている。
「悪戯だったけどね。男の子の罰ゲームよ。しょうもない」
「何だか静江さんが話すと冗談みたいに聞こえます」由美は少し笑った。
「本当に悩んだのよ。下手すれば傷付けちゃうかもしれないから。
悪戯でよかったと思ったけど、まあ今だったら悩みもせず突っぱねちゃうだろうね。誰だって初めはそんなものよ。
むしろ人は理想について悩まなくなるに連れておばさんに近付いていくのよ。全く悩ましい」
 由美は快活な静江の話を聞いていると、次第に元気が湧いてくるのを感じた。
365本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:23:00 ID:pTDlpO3C0
それ以来、幾らか取り戻した熱意と新たに生まれた執念によって、由美は授業の遅れを取り戻していった。
そして定期テストまでには予定に追い付き、その結果もまずまずのものとなった。
生徒からは「分かりやすくなった」と言われることもあった。静江は「わたしのおかげね」と言って笑った。
由美は静江に感謝し、教師という立場が段々と身に着いてきているのを感じていた。
 そして夏休みは無事に過ぎ、二学期になった。胸には一抹の不安があったが、由美は努めて明るく振る舞うことにした。
問題ない。授業は驚くほど楽に進み、軽い冗談だって言えるようになっていた。由美の胸は再び理想を温め始めた。
 だが、問題は羽虫のように、思いがけない方向から突然にやってくることがある。
そしてその虫は時には長引く毒を持つ。先に言ってしまえば、それは生徒からの告白であった。
しかし静江の話していたものとは場合がまるで違ったのだった。
366本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:27:03 ID:pTDlpO3C0
>>357
どこがだよww
数日に一回しか投下されないような過疎スレが生き返っただあ?
とっとと専用ブログなりwikiなり作ってそこで信者ともども仲良く引きこもってろよ

数日に一度投下されるかされないかの過疎スレで雑談するわけでも考察するわけでもなく
ただ乙とレスするだけのスレなんて要らない
367本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:27:31 ID:pTDlpO3C0
だから俺がメリーさんシリーズ投下してやってんだ
ありがたく思えや
368本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:28:19 ID:pTDlpO3C0
>>358
そこまであからさまにやっちゃったらまずいだろうにな
作家様の自演がないと悲惨だなこのスレ
369本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:28:33 ID:pTDlpO3C0
 十月に入り空気は乾いた。
その日はいつにも増して素晴らしい晴天で、冷たい空気は清潔に匂い、青い空には洒落たアクセサリーのように弓形の月が浮かんでいた。
由美は駅から学校までの道を自転車で行くことにしている。
顔を上げその月を見ると、何だか妙に清々しい気持ちになり、ペダルを踏む足が軽くなった。
 由美が行く道は途中に商店街を通る。
その規模は小さく、洋服店や書店や八百屋などが例の如く並んでいる。道は細いので自動車は入らない。
空を覆うアーケードの位置は低めで、よく晴れた日にもやや暗さがある。生徒の姿は少ない。
 広い道を曲がり、陰に入った時である。その子はいた。
「おはようございます」
 呟くように小さな声で挨拶をしたのは、声に似つかわしい小さな女の子であった。
シャッターの閉じている店の前に一人で立ち、由美の目をじっと見る。
着ている紺のブラウスは由美が勤める中学校の制服だ。手にはやはり準指定の黒い学生鞄を提げている。肩までの髪の毛は細く、幾分荒れが見られる。
頬がやせ、まだ他人を見る際の気遣い――遠慮や恥ずかしさなど――を覚えていないその顔は、中学生にしては随分と幼い。
由美は彼女のことをよく知っていた。
「おはよう」
 由美は自転車を停めて明るい挨拶を返した。
「今日は早いのね。待ち合わせ?」
 女の子はやはり小さな声で「ちがう」と言った。そして下を向き、靴で地面を軽く擦ると、再び顔を上げた。
「わたし好きです。先生のこと。付き合ってください」
 唐突だった。由美は一瞬言葉の意味が掴めず「え?」と聞き返した。女の子は見つめ、返事を待っている。
由美は混乱し、冷たい膜のようなものが胸に被さるのを感じた。
頭には静江の話がちらりと思い浮かんだが、由美はその生徒がそんな冗談を言わないことはよく分かっていた。
今しなければならないのは、その子を傷付けないような返事だった。由美はゆっくりと丁寧に言う。
370本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:28:44 ID:pTDlpO3C0
「先生もあなたのこと好きよ。だけどね、あなたの言うようなことはできないの。
つまり付き合うのはっていう意味だけど。だって――」
 しかし由美はその先を続けることができなかった。女の子の瞳に、明らかな落胆と悲しみの色が浮かんだからだ。
通り過ぎる他の生徒が挨拶をかけてきた。由美はそちらに元気な声で返事をするのも憚られた。逃げ出してしまいたかった。
そしておざなりな言葉で女の子の気持ちと、それから自分の気持ちをごまかすのは絶対に嫌だった。
「付き合うということについて、あなたがどんな風に考えているのかは分からないわ。
だけど、何にせよ、それは先生にとって負担になってしまうの。つまり、わたしの問題よ。
別に少しの負担だったらいいわ。大歓迎よ。でも、難しい障害はそこら中に転がっていて、だから、いけないのよ」
 恐らく女の子は由美が何を言っているのか理解できなかっただろう。それは話している本人にもきちんと分かっていないのだ。
言葉は、確かな気持ちを伝えようとすればするほど糸屑のようにもつれ、結果としてひどく言い訳じみて耳に届くのであった。
由美も話している内に、ただ自分が面倒を抱え込みたくないだけなのではないかと思い始めた。
その理由だってあるにはあった。しかしそれが全部ではないのだ。
事情とは、それが単純に見えるか複雑に見えるかに関わらず、いつだって茨のように絡み合う無数の道を経て成り立っているものなのである。
現実は「カニが復讐の為にサルを懲らしめてめでたし」のようには楽にいかない。
だって、カニは原則的に雑食または肉食だ。修羅場である。
371本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:28:58 ID:pTDlpO3C0
 由美は更に言葉を選ぼうとした。しかし何を言っても弁解になってしまうように思われた。
女の子の瞳には既に涙が浮かび、知らずに由美を追い詰めた。次に、わっと泣き出した。
「ごめん。ごめんなさい」
 由美は強く抱き締めた。女の子はいよいよ声をあげて泣いた。由美も一緒に泣きたいような気がした。だが、できない。
 結局その朝、二人は並んで学校まで歩いたのだった。女の子は話をしなかった。
由美が何か言っても返事はない。そのくせ一人で行こうとはしないのだった。由美は参った。
そして、授業の時には女の子は早退していた。由美は彼女のことが頭にちらつき、一日中集中できなかった。
教室の窓から空を見て、どうしてこんなに良い日にと思い、次にはそう思ったことを後悔した。
 だが、不思議なことである。由美は辛い一方で、このことを秘密にしておきたいと感じていたのだった。
それは一つには女の子の気持ちを裏切りたくなかったからで、一つには由美自身にまだ幼さが残っていたからだった。
つまり、秘密の共有の楽しみである。由美は告白されたことが嬉しかったのだった。
そんな理由から、静江に心配の声をかけられた際にも、ひとまずは打ち明けないでおくことにした。
372本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:29:11 ID:pTDlpO3C0
さて、女の子は由美が数学を教える一年生の生徒である。
 由美は授業中、よく生徒に声をかけることにしている。解らない部分があるかどうかを聞くのだ。
学校が始まってすぐの頃、女の子はいつも首を横に振るだけだった。由美は特に気にしていなかった。
 由美が初めてその子と話をしたのは、静江に相談するよりも前、一学期の中間テストが終わってからだった。
点数がひどく悪かったのだ。彼女は補習のために居残りをした。
「どうしてかしらね」
 隣りの席に座り由美は言った。女の子はプリントに書き込む手を休めて由美を見た。
表情が掴みづらい。大きくて透き通った瞳が人形のようだ。
「宮田さん、いつもの小テストはけっこういいじゃない。どうして今度のはあんなに悪かったのかな。数学は嫌い?」由美は尋ねた。
「嫌いじゃない」と僅かに首を振って女の子は答えた。
「それじゃあ先生のことは?」
 少し見つめてから、再び首を横に振った。由美は軽く頬を膨らませた。
 補習の後、担任の教師に彼女のことを聞いてみた。担任は国語を教える四十代半ばの男で、眼鏡をかけ、脂気が多く人のいい顔をしている。
彼はバスケットボール部の顧問で体育館にいた。
コートでは十人ほどの男子部員が掛け声をかけながらドリブルとシュートの繰り返しをしている。
ボールは床を叩き、床は靴を鳴らす。体育館には他にバレーボール部とバドミントン部がいたが、彼らの作る音が一番響くようだった。

373本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:29:36 ID:pTDlpO3C0
「あの子は、気の毒なことです。母親が出て行ってしまったのですよ。つまり蒸発です。
小学校の担任からの報告ですが、今年の2月に、突然だと言っていました。今は父親と二人で暮らしていますよ」
 国語教師は咳払いをすると大声で指示を出した。先程の練習にディフェンスがつけられた。
 彼の話によると、女の子の両親は以前から仲が悪かったのだそうだ。
夫が妻に暴力を振っていたのが原因らしいが、それは噂だ。
事実なのは二つ――彼らは年の離れた夫婦だった(夫が年上だ)、そして夫は仕事が忙しく家にあまりいなかったということだ。
「だからもしも奥さんに逃げられたとしても、それは父親の方に非があるのは決まっています」というのは国語教師の意見だった。
更に女の子を苦しませたと思われるのは、弟のことである。
弟は母親が去る半年ほど前に生まれた。女の子はそれまで一人っ子で、母親を独占していたのだった。
弟と過ごした半年間を彼女がどう思っているのかは分らない。
だが、母親が連れて行ったのは弟で、恐らく彼女はそのことでも傷付いただろう。
「彼女はあまりしゃべらないでしょう。それは確かに口数は幾らか減ったそうですが、しかし以前からもそんな向きはあったのだそうです。
まあ、一概には言えませんな。本当にどれだけ悲しいかなんて、本人でなければ分からないものです」
 話を聞いて、由美の胸は痛んだ。慈しみの欲望とでもいうものが生まれた。
374本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:29:53 ID:pTDlpO3C0
由美は恐らく自分が頼られているのだと思った。
テストで悪い点を取ったのは、補習に出たかったからではないだろうか。
この、一見突飛で、ややもすれば早計な自惚れになり兼ねない推察には、由美自身の「頼ってほしい」という願望が幾分干渉していた。
彼女も辛い時期だったのである。由美はどのようにその生徒と接するべきかを考えた。
それは他の問題――他の生徒たちの態度や授業の遅れなど――について悩むよりも、ずっと楽なことだった。
自分のやるべきことが分かるような気がしたし、それは由美にとって、マイナスをゼロに戻すことではなく、ゼロをプラスに変えることなのだ。
しかし、女の子が本当はどう思っているのかは分からない。
 由美は授業中に声をかけ、難しい箇所についてきちんと聞こうと考えた。
中間テストのこともあったのでそれはやりやすく思われた。
しかし由美が作戦を行うまでもなく、既に隔ては融け始めていたのであった。つまり、次の授業の時に女の子の方から質問をしてきたのだ。
由美が声をかけると、彼女は首を振らずに問題を指差した。それはほんの些細な出来事だが由美はとてもうれしく感じたのだった。
 それから2人は次第に慣れていった。
女の子は由美に対して幾らか口数が増え、やがては彼女の方から挨拶をしてくれるようになった。
笑顔は随分と増えた。そして同じ様に友人も増えたようだった。
もちろん由美もその生徒ばかりに構っていたわけではない。しかしそれらの変化は単純に喜ばしいことだった。
手助けができたのかは分らないが、由美は仄かな充実感を覚えた。学期末のテストは中々だった。
375本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:30:20 ID:pTDlpO3C0
夏休みが終わるとすぐに遠足があり、由美は引率した。主な内容は山登りだ。
生徒は班ごとだったが、教師は大体において各々自由なペースで登れた。由美はやはり引率していた静江と並んで歩いた。
「遠足って最高ね」と静江は言った。
「何て言うか、蘇るわ」
「静江さんは普段から元気じゃないですか」
「あらそう見える?そりゃうれしいわ。あなたは夏休みが明けてからはどう?」
「順調です。びっくりするくらい。宿題をやってこない子はいたけど居残りでやらせました」
「あなたも板についてきたものね。わたしよりずっと早いわ」
 礫の多い山道は緩やかな傾斜で続いている。
右手は斜面に天然の広葉樹が生い茂り、左手は樹々の隙間から渓谷が覗く。谷底には川が流れる。
良質な緑柱石のように澄んだ色の水は、大岩を削り水飛沫を散らせながら、いつ終わることなく来ては行く。
その景色は美しく頼もしいが、少しずるいと由美は感じた。慣れない自然の前では細かい悩みなどつまらなく思えてしまうのだ。
「彼女も元気そうじゃない。あなたが心配してた子。さっき友だちと歩いていたわ」
「はい、安心しました。多分わたしはあんまり関係ないですけどね」由美はうふふと笑った。
 昼食は中腹の開けた場所でとった。所々に起伏はあるが、手入れがされていて、大勢がまとまって座れる広さだ。
季節はまだ夏だと主張するように、枝葉は幻燈に似た陰を描き、虫は騒ぐ。
しかし陽の色には確かに黄味が増し、もう真夏の眩むような明るさは見られない。虫の声は減り、その調子には微かな焦りが混じって聞こえる。
今日は昨日を模倣しながらも、一月前とは大きく違った様相を纏うのだ。
子どもたちは日陰を選んで陣取った。焦げ茶の地面に色とりどりのビニルシートが敷かれる。樹々を縫い、虫に負けない笑い声が響く。
376本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:34:20 ID:pTDlpO3C0
女の子が話をしに来たのは由美が弁当を食べている最中だった。
近くに来て、何か言いたそうに由美を見た。そこには他の教師も数人いた。
「わたし?」と由美が聞くと、彼女は頷き、2人で話したいという旨を伝えた。
 2人は太いケヤキの陰を選んだ。
「聞いてほしいことがあるんです」と、あまりはっきりとしない声で女の子は言った。
「うん」と由美は返事をしたが、女の子はその先が出てこないようだった。
下を向き、靴で土を撫でた。恐らく事前に言うことを考えてはいたのだろう。しかしその場になると、頭は言葉を巡らせるものの初めの一つを忘れてしまったようである。
 由美は彼女が何とか話そうとしているのを感じ取っていた。そういったことは前からよくあったのだ。
だが多くの場合に話しかけるのは由美の方で、わざわざ彼女から話をしにやって来るというのはこれまでにないことだった。
由美は生徒からもらった信頼をうれしく思いながら、彼女の緊張がよく分かるような気がした。
片一方で厳しさの必要を感じつつも、ついその子に助けの手を伸ばしてしまうのだった。由美は誘導してやることにした。
「ひょっとするとお母さんか、それともお父さんのことかしら」と、了解しているという風に由美は聞いた。
女の子は下を見たまま同じ動作を繰り返していたが、やがて「お母さん」と呟いた。「そう」と由美は言った。「聞かせてほしいな」
 女の子はぽつりぽつりと話し出した。
「お母さんは、わたしが小学校に行っている時に家を出ていきました。突然。帰ってきたらいなかったんです。
前の夜にお父さんとすごい喧嘩をしていて、きっとそのせいです。お母さんたちはよく喧嘩をしました。
お母さんに、どうして喧嘩をするのか聞いたことがあるけど、教えてくれませんでした。それで、先生――」
 まことにたどたどしく、事が前後したり後から付け足されたりする部分はあったが、時間をかけて大体このような話をした。
そしてその終わりに呼び掛けてから言葉が続かなくなった。由美は待ったが、女の子は口の中でためらっていた。大事なことらしい。
377本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 12:34:35 ID:pTDlpO3C0
「何かしら?」と由美は柔らかく問い掛けた。しかし言葉は出て来ない。
由美は今聞いておいた方がいいと考え、待ったが、女の子は口をつぐみ地面を擦るのみである。
そしてやがて「やっぱりいいです」と言った。由美は「そう」と言った。
「話しちゃった方が楽になるかも知れないわよ」。女の子は考えているようだった。
それが、言おうか言うまいかを考えているのか、話さなければ良かったと思っているのか、由美には分からなかった。
 そして次の女の子の振る舞いに由美は少々びっくりした。
彼女は手を伸ばし、由美の手を握ったのだった。とても小さく、冷えた手だった。その行動にどんな意味があるのか分からなかった。
しかし由美はその小さな手から、彼女の不安や寂しさなどが伝わってくるような気がした。
由美は母親のような気持ちが湧いた。彼女を守ってやらなければならないと思い、手を握り返した。
 結局、女の子はその先を言えなかった。
由美も強いて聞くことはしなかった。気がかりではあったが、聞くと何かが崩れてしまいそうな気もした。
ほとんど無意識だがそんな自己防衛の理由があったのも否めない。
「悩みがあったらいつでも話してね」と由美は言った。二人は手をつないだまま、皆が集まる方へと歩いた。
378本当にあった怖い名無し:2010/07/06(火) 18:25:36 ID:TpGT4Yf50
最近マウスホイールを高速で回す事が多くなったな、このスレ
379本当にあった怖い名無し:2010/07/07(水) 03:27:20 ID:Uxw48GZ50
つうか師匠って最低じゃね?自殺考えるほど人に迷惑かけてきてそれを悔いてるんだったら
面白がって色んなことに首突っ込むなよ。河童の話とか結果オーライだけどミスったらクズ野郎じゃないか。
380本当にあった怖い名無し:2010/07/07(水) 03:38:50 ID:ILL17Bzf0
そんなに熱くなるなよ
381本当にあった怖い名無し:2010/07/07(水) 04:21:42 ID:7fcfRiAaO
スーパー自演タイムとか恥ずかしすぎて見てらんないw
382本当にあった怖い名無し:2010/07/07(水) 21:04:40 ID:ptZmG+PV0
話が投下されると荒らすようだな
383本当にあった怖い名無し:2010/07/07(水) 21:52:29 ID:MxTWEgAs0
ここは敢えてコテ付き乙と言わせてもらうお

>>379
霊感持ちにはDQNが多いみたいですよ
384本当にあった怖い名無し:2010/07/07(水) 21:54:45 ID:EWkuHeVO0
>>378
自分はIDを右クリックしてNG入りすることが増えたわ
一体何の恨みがあるのか、あおりではなく純粋に聞きたいw
385本当にあった怖い名無し:2010/07/07(水) 22:09:11 ID:MxTWEgAs0

 『洒落コワから話を奪うこのスレとお前らを絶対に許さない!!』

っていうキチガイがいましたが、まだ元気に粘着しているのでしょうか
386本当にあった怖い名無し:2010/07/08(木) 08:27:12 ID:KJO5vs40O
ageて聞いてみれば
387本当にあった怖い名無し:2010/07/08(木) 13:33:23 ID:MHXqW+Al0
こうやって煽る馬鹿がいるから喜ぶんだよ
388本当にあった怖い名無し:2010/07/09(金) 01:36:08 ID:dvZNXj6V0
       / \  /\ キリッ
.     / (ー)  (ー)\
    /   ⌒(__人__)⌒ \   < 自己責任で読んで下さい。
    |      |r┬-|    |         警告したのではじめます。
     \     `ー'´   /

         ____
        /_ノ  ヽ、_\
 ミ ミ ミ  o゚((●)) ((●))゚o      ミ ミ          <だっておwww
/⌒)⌒)⌒. ::::::⌒(__人__)⌒:::\    /⌒)⌒)⌒) 
| / / /     |r┬-|    | (⌒)/ / / //   バ             
| :::::::::::(⌒)     | |  |   /   ゝ  :::::::::::/      ン   
|     ノ     | |  |   \  /  )  /    バ      
ヽ    /     `ー'´      ヽ /    /     ン
 |    |   l||l 从人 l||l      l||l 从人 l||l
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))

ん?

◆7QPLwJZR/Ypfのおかげでシリーズ物スレが生き返った気がする・・・・?
             ____
           /      \
          / ─    ─ \
        /   (●)  (●)  \
        |      (__人__)     |   ないない
         \     ` ⌒´    ,/
 r、     r、/          ヘ
 ヽヾ 三 |:l1             ヽ
  \>ヽ/ |` }            | |
   ヘ lノ `'ソ             | |
    /´  /             |. |
389本当にあった怖い名無し:2010/07/09(金) 11:17:24 ID:Y8+hkunjO
ここを粘着さんの隔離スレにして新スレを別に立てるとかは無理なん?
390本当にあった怖い名無し:2010/07/09(金) 12:37:27 ID:LhzObqJ50
ばかじゃないの?荒らしも新スレに移行するに決まってるじゃん
おとなしく隔離スレに居座るとでも思ってるの?
391本当にあった怖い名無し:2010/07/09(金) 14:32:54 ID:1Qebe1pj0
AAとか面白くないしなー
そもそもこいつ等は、アンチスレも知らないような中学生だと思うよ
392本当にあった怖い名無し:2010/07/09(金) 20:15:11 ID:yYXS/80hO
ここ自体がもともと洒落怖の隔離スレだって事を理解してない奴が多いのな。

>>1のテンプレも作者には乙だけで済ませろとか意味不明な事書いてあるし読み物を投下するスレとはとても思えない。
書き手への対応も甘すぎる。書き手は批判的な意見や感想も受け入れるべきだし、書き手自体が勘違いを起こして現状に至ってる。
仲良く馴れ合う必要なんか全くないし、駄文を誉めてやる必要もない。批判されて悔しければ次は良いもの書けばいい。
アンチ的なレスが多いのは書き手の作品が本当につまらないからだと思うし、実際糞つまらない。面白いと思ってるのは作者だけ。
それを擁護するとかニートに飯奢ってやるくらい無意味。自作自演にしか見えないわ。
最近は特に酷いから書いたけどROMに戻るわ。
393本当にあった怖い名無し:2010/07/09(金) 21:40:34 ID:yqGLkpQNO
ゥワーイ
394 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/10(土) 02:25:34 ID:+pwz44Hv0
とりあえず一言、自演は一切しておりません。今後もする気はありません。
そういうのって2chの管理者側から見たら、IP丸出しでとても面白い状態になっていると思われます。
「こいつ、自分の話にレスつけてるよwwww」
「何年荒らしで貼り付いてるんだwwwすげぇ粘着力」
「うわwww不自然にプロクシ変えてまで自演乙」等思われるの自分は嫌ですよ。

批判も賞賛もありがとうございます。…やる夫…てめーはあとで便所に来い。
では、また無言に戻ります。
395本当にあった怖い名無し:2010/07/10(土) 02:29:45 ID:o4hDEFNf0
でもさ、それって管理者クラス以外は判らない話だよね、とかって思う・・・
396名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 12:38:18 ID:fxMjP3kl0
>>394
必死だなw
作者が自演するのは珍しくないから俺は責めないよ
ツーか俺がそうだからなw
お前がやってるかどうかは知らないが、擁護自演は確実にある

397名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 15:24:27 ID:M5uTOTNFP
作者になりすまし乙
398本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 08:41:02 ID:VwFBppch0
作者は作者でも洒落コワの作者サマなんだろう
399赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 09:24:33 ID:5+OlwoQX0
[扉(前)]

1/18
「おとうさーん、お茶入ったよぉー」

階下から真奈美の声がする。

私「あー。すぐ行くー」
書斎で作業をしていた私は、典型的な生返事をする。
今は最後のメモ書きをしているところだった。

…万が一のための、メモ。
私はそれを書斎机の一番上の引き出しに入れておく。
できるなら迷惑は掛けたくないが…仕方ない。他に手が無いのだ。

真奈美「おとうさんってば〜」
私「終わった終わったー。今行くよー」

再び真奈美に呼ばれ、私は書斎を出る。
そして1階に続く階段を降りながら…一度、振り向く。

書斎の扉。決して頑丈では無い、カギの付いてない、その扉。

…大丈夫。きっと、大丈夫だ。
400赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 09:31:13 ID:5+OlwoQX0
2/18
真奈美「――でね、ハナったら、痩せるんだって言いながら、なーんにもしないのよ」
私「あぁ、あの子はいつも、元気だねぇ」

真奈美の昔からの親友である、ハナ――立花さん。
最近は会ってないが、相変わらず…恰幅が良いそうだ。

真奈美「元気一杯。それでね、私との体重差を減らすためにね、自分が痩せないで、私にもっと太れ、って言うんだから」
私「ハハハ…賢いな」

居間でお茶を飲みながら、台所で夕食の片付けをしている娘と会話をする。
会話の内容に、深い意味なんて無い。
ただ何でもないことでも、こうして話をしていられれば良い。
ずっとこうして、一緒に…

…でも、やはり言っておかなければならない。
この子の幸せだけが、私の望みだから。

私「――真奈美、ちょっといいか?」
真奈美「んー…?」
401赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 09:35:23 ID:5+OlwoQX0
3/18
真奈美「なぁにー?」
洗い物をしながら応える真奈美。
私「ちょっと、こっちに」
真奈美「…はぁい」
そう言って、洗い物を中断し、エプロンで手を拭きながらやってくる。

真奈美「なぁに…?イヤな話でしょ」
探るような、警戒するような目でこちらを見ながら、椅子に座る真奈美。
私「真面目な話だよ」
真奈美「…はい」
背筋をピンと伸ばして、話を聞く体勢になる。

私「父さんの書斎机は分かるな?」
真奈美「うん。いつも掃除してるもの」
私「その一番上の引き出しに、メモ書きを入れておいた」
真奈美「…メモ?」
私「そこに、父さんの古い友人の電話番号が書いてある。何かあったらそこに電話するんだ」
真奈美「何かって…なに言ってるの?」
当然の疑問。だが、私は続ける。
402赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 09:38:27 ID:5+OlwoQX0
4/18
私「携帯は持っているな?今も」
真奈美「持ってるけど…何で?」
私「あと、電話するときに…これは念のためだが、書斎の扉はしっかりと閉めること」
真奈美「ちょっと…何?」
私「カギは付いてないけど、ちゃんと閉めれば――」
真奈美「…ちょっと待ってってば!」

そう叫んで、立ち上がる真奈美。
初めて見た娘の剣幕に、ややたじろいでしまう。
…が、話を止める訳にもいかない。

私「座って、まずは話を聞くんだ」
真奈美「…イヤ。何言ってんのか分かんないもん」
私「座りなさい」
真奈美「…」
私「真奈美」
ムスッとした顔をして、大人しく座る真奈美。
私「いいか、もし――」
真奈美「…明日じゃだめ?」
私「…」
真奈美「明日なら、ちゃんと聞く…」

…あぁ、私は――

私「…ダメだ。今日、今、話をするよ」
そう言うと、真奈美が途端に泣きそうな顔になる。
403赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 09:43:41 ID:5+OlwoQX0
5/18
真奈美「…最近、おかしかった話なの?」
私「ん…」
真奈美「アレでしょ?名刺…」
…流石に気付いていたか。
ここ最近、この子の前でも考え事をする事が多くなっていた。

私「あぁ、そうだよ」
真奈美「アレ…何なの?」
私「今、その事を調べて――」

ピンポーン

私「――っと…」
家のチャイムが鳴り、私は言葉を止める。話の腰を折られてしまった。
時計を見ると、時刻は21時過ぎだ。こんな時間に誰が?
真奈美「出てくるね」
私「あぁ…うん」

真奈美がパタパタとスリッパを鳴らして、玄関に掛けていく。
良い音だ。可愛らしい、幸せな音。
私はこれを守りたい。なんとしても…。

真奈美「おとうさーん」
玄関から私を呼ぶ声がする。
そして呼ばれるまま玄関に向かった私が見たのは、2人の訪問者――本部長と藤木の姿だった。
404赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 09:47:11 ID:5+OlwoQX0
6/18
――
高城「こんばんは汐崎さん。お嬢さんも、はじめまして…夜分遅くにごめんなさいね」
藤木「こんばんは、部長」

訪問してきた2人に、居間に通ってもらう。
お父さんの紹介によると、2人は高城さんと藤木さん、というらしい。
そう紹介されて何より驚いたのは、高城さんが、お父さんの上司――本部長さんだということだった。

お父さんの上司ってことは、結構なお偉いさんの筈なのに…こんなに若いなんて。
それに凄く綺麗で…女の私から見ても、色気を感じてしまう。
顔は、ちょっと切れ長の目をした美人顔。
鼻の形がかっこよくて、羨ましいな。
ハナは可愛いって言ってくれるけど、私のちょっと丸い鼻とは大違いだ。

でも、一番羨ましいのは――そのスタイル。
足が長くて…出る所はすごく良く出ている。
スーツ姿でもあれだけの膨らみって事は、きっとサイズは…あわわ。
私じゃ足元にも及ばないや。
大きさだけなら、ハナは良い勝負かも…なんて言ったら、怒られそうだ。

お父さんたら、こんな人の下で働いていたんだ…と思い、父親を見てみると、何だか緊張した顔をしている。
それが綺麗な人を相手にしているからなのか、他の理由なのかは、その時は分からなかった。
405赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 09:50:44 ID:5+OlwoQX0
7/18
藤木「良いお住まいですねぇ…」

お茶を飲みながら藤木という人が言う。
こっちは、無いかな。…いろんな意味で、無いや。
高城さんとの2ショットも、余りに似合わない。バランスが悪いよ。
お父さんの方が、絶対良い。2人でちょっと並んでみて欲しい――なんて思い、ふと考える。

…高城さんって何歳くらいなんだろ。
お父さんより一回りくらい下かな?
それくらいだったら、お父さん、ちょっと頑張って――

父「真奈美」
…と。ふと気付くと、台所に居た私のところに、お父さんが来ていた。
私「ん?今、お茶菓子持っていくよ」
父「いや…。アレはどこだっけな…っと」
お父さんは、何やら背後を…居間の2人を気にしながら喋る。
何だろ…?

父「…真奈美」
鋭く小さな声で囁く父。
私「なぁに…?」
その今までに無い雰囲気に、私はお茶菓子の容器を持ったまま、固まってしまう。
406赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 09:54:01 ID:5+OlwoQX0
8/18
父「さっきの話、間に合って良かった。こんなに早くとは…」
私「…」
何だか、嫌な感じ。
凄く、何か…イヤ。

父「私の部屋で…分かったな?」
ボソボソと話す父。
明らかに、あの2人を警戒して喋っている。
私「…今なの?」
父「あぁ、今だ」
私「何で――」

高城「汐崎さん、どうぞお構いなく」
高城さんの声が聞こえる。
あの人たちが、何か…なの?
藤木って人はともかく、あの高城さんが変な事…悪い事?何か分からないけど、間違った事をするとは思えない。
…さっき会ったばかりの、私の勝手な印象だけど。

父「あぁ、いえ…はい」
お父さんはそう言いながら、私の手から容器を取り、運んでいく。
私「何でなの…?」
その背中にもう一度問い掛けるが、お父さんはそれを無視して、そのまま行ってしまった。
407赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 09:58:33 ID:5+OlwoQX0
9/18
急に疎外感のようなものを感じてしまい、悲しくなってくる。
あんな態度、ひどいよ。ちょっと泣きそう…。

気持ちを紛らわすために洗い物の続きでもしてようかな…、と思ったけど、
それをすると、お父さんが困るだろうな。

そんな風に、困らせちゃいけない。
ちゃんと言う事、聞かないと。
お母さんに約束したもの。お父さんの言う事聞く、って…。

…よーし。
明日、ハナに思いっきり愚痴ってやるんだ。
お題は、「仕事にかまけて家庭を省みない父親」。これだ。
上司の、綺麗な女の人に誘惑されて…みたいなこと、言ってやる。
フンだ。しばらく、夕食をニガテな献立にしてやるんだから。

そんな事を思いながら、私はエプロンを外すと、
テーブルを囲んで話をしている3人を尻目に、ソソクサと居間を出て――

藤木「あぁ、真奈美ちゃん。ちょっといいかな」

という所で、呼び止められてしまった。
408赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 10:04:18 ID:5+OlwoQX0
10/18
私「…はい?」

まさか呼ばれると思わなかったので、キョトンとしてしまう。
藤木「ちょっと来てくれる?」
私に背を向けて座っていた藤木さんが、振り向いて言ってくる。

私「えーっと…」
お父さんは丁度こちらを向いている角度に座っているので、その顔色を窺う。
…と、うわ。何だか少し青い顔してる。

私「あの、私ちょっと――」
藤木「大事な話があるんだよ」
有無を言わせないような口調に、少しカチンとくる。
女の子を誘うなら、もっと優しく言いなさいよね。
お父さん、ちょっとどうにかして…と思い、再び父親を見ると、首を横に振っている。
無視して行け、ってことだ。
でも、そんなのって何だか失礼で…
藤木「ね、ほら…」
…とか思って躊躇していると、藤木さんが椅子から立ち上がる。
藤木「良い子だから、こっちに…」

気持ち悪い口調。ギラギラした目。
ヤダ、この人。生理的に受け付けない――
409赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 10:11:35 ID:5+OlwoQX0
11/18
父「真奈美は関係ないだろう!?」
不意にそう叫んで、お父さんが立ち上がる。
その様子に、私はすぐに逃げればいいのに、その場で固まってしまう。

藤木「関係あるかないかは、こちらが決めることなんですよ」
私の方に来ようとした藤木さんが立ち止まり、振り返ってお父さんに言う。

何でこんな険悪なのよぉ、もう。…あ、高城さん、高城さんは?
と思って見てみるが、彼女はこちらに背を向けたまま座っている。
顔が見えないので、どんな表情をしているのかは分からない。

父「そちらにそんな権利はない」
いつもは見せない怖い顔をして、お父さんが言う。
何があったのか知らないけど、もう修復不可能な関係みたいだ。
お父さん、上司と喧嘩して、クビになっちゃうのかな…

藤木「私はねぇ、穏便に済ませたいんですよ…。分かります?」
父「これ以上、何一つ従うつもりは無い」
睨み合う2人。
…でも、どう贔屓目に見ても、あっちの方が強そうだ。
若いし、ガタイも良いし…顔が乱暴そうだし。

う〜…止めないと、お父さんが怪我しそう。
でもでも、私、ここに居ちゃいけないような…でも何とかしないと…
と、心の中でジタバタしていると…

高城「2人とも、座ってくださる?」
ここでやっと、高城さんが口を開いた。
410赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 10:16:22 ID:5+OlwoQX0
12/18
父「…本部長」
お父さんが高城さんを見る。

高城「汐崎さん、前に言ったと思いますけど…私、見下ろされるのが嫌いなの」
父「…今は座りません」
高城「…そう」
ため息混じりに言う高城さん。
私としても、座って落ち着いて欲しいのにな。

高城「では、そのままでどうぞ…。藤木は?」
藤木「自分は、まぁ…座りますよ。もちろんね」
そう言って座る藤木さん。
うー…なんか、イヤーな感じ。

父「本部長、あなたは――」
高城「汐崎部長」
藤木さんが――ううん、もう藤木でいいや。
藤木が座ってから喋り始めたお父さんを、高城さんが制する。

父「…はい」
高城「今日、神尾という学生と会っていましたね?」

…?神尾?って誰だろう。今日会っていたって…?
411赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 10:20:02 ID:5+OlwoQX0
13/18
父「…えぇ、会いました」
高城「私は、この件については忘れろと言いましたよね」
澄ました声で言う高城さん。

父「…はい」
高城「それに対して、あなたは忘れますと返事をしましたよね」
父「…」
そんな高城さんを、ジッと見つめるお父さん。
どんな事を考えているのか、私でも分からなかった。

高城「残念ですけど…、私達と一緒に来てもらうしかありません」

――え?来てもらう、って…?
父「…今すぐ、ですか」
高城「えぇ。今すぐ」

ヤダ、何言ってるの?ダメ。ダメよ。絶対ダメ。だって――
名刺の名前。
私は名刺を受け取った翌日、ネットで調べたんだ。それで、普通じゃないことが分かった。
あれが殺人事件の被害者の物だ、ってすぐに分かった。
誰かに殺された人の名詞。…人が死んでるんだ。私は、それに巻き込まれたんだ。

そんな大変な事態の中、こんな風に有無を言わさず連れて行かれるなんて…。
どう考えたって、絶対危ない事になる。
最悪、お父さんも――
412赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 10:24:12 ID:5+OlwoQX0
14/18
父「分かりました」

え?
お父さんが簡単に了承するので、私は驚いてしまう。
危ないってば!ちょっと、何考えて…

藤木「それじゃ、ほら…。真奈美ちゃんも、ね」

えええ?何で私も?
名刺を受け取ったから?…それだけのことで?

父「だから、真奈美は関係ないだろう!」
凄い剣幕でお父さんが怒鳴りつける。
それを受けて、藤木が再びゆっくりと立ち上がる。

藤木「もう、この問答はしたくないですね」
父「何を――」
と言った瞬間、藤木がお父さんの顔面を殴りつける。

私「あっ…!」
鈍い音がして、崩れ落ちるお父さん。
高城「…藤木!」
高城さんが咎めるように言い放つ。

藤木「どうです?慣れたものでしょう。急所を狙えば、一発で気絶ですよ」
偉そうに言う藤木。
バカじゃないの!?この人…!
413赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 10:27:36 ID:5+OlwoQX0
15/18
藤木「さ、ほら…真奈美ちゃんは大人しく、ね?」
そう言いながら、こっちに近付いてくる藤木。
そんなことで大人しく従うわけないのに…!

私はキッと藤木を睨みつける。
…戦う?
冗談じゃない。17の乙女が勝てる訳がない。
すぐに、逃げるべきだ。
どこに?
勿論、言われた通り、お父さんの部屋に。
でも、お父さんが…
逃げる体勢を取りながら、私は倒れたお父さんを見る。

…と、その傍らに高城さんがしゃがみ込んでいた。
そして、その綺麗な手で、お父さんの顔を――殴られた辺りを触っている。
その仕草に、私は何か不思議な感じを受ける。
何だろう、これ…変な気持ち。
高城さんの横顔は、とても優しそうで…まるで――

…っと、いけない!
目の前に迫ってくる悪漢を忘れちゃいけない。
私は背中を向け、一目散に2階へと駆け上がって行った。
414赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 10:30:42 ID:5+OlwoQX0
16/18
2階のお父さんの部屋に逃げ込み、急いで扉を閉める。
…でも、この部屋にはカギが無いんだ。
これじゃ、閉めても…と思ったけど、閉まった扉を見て驚く。

お札。
その扉には、ビッシリとお札が貼られていた。

何のお札かサッパリだけど、20枚くらいある。
私、霊感とか無いけど…これはこれで、何か効果があるのかな?

そう思っていると、トントンと、階段を登る音がする。
1人…2人だ。2人とも来た。
大丈夫よね?お父さん…
私は祈るような気持ちで、扉に貼られたお札を見つめる。

やがて、足音が扉の前で止まる。
…逃げ込んだ場所は、丸分かりだったみたいだ。

藤木「真奈美ちゃーん。入るよー?」
そう言って、藤木が扉を…

藤木「あら?ノブが回らない…?」

――やった!効果ありだ!
415赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 10:34:12 ID:5+OlwoQX0
17/18
藤木「あぁ、これ、もしかして…本部長」
高城「…触るまで気付かないの?」

2人の会話が聞こえる。
高城「こんなにハッキリ、封がされているのに」
藤木「いや、どうもこういうのは苦手で…参ったなぁ」

参って参って。
意味は分からないけど、こんなに沢山お札が貼ってあるんだから、そう間単には――

高城「…退いていて」
高城さんの声が聞こえる。
何だか嫌な予感…。
藤木「こういうのは、お任せしますよ」

お任せします、って…高城さん?
私は不安な気持ちで、扉を見つめる。
すると…

私の目の前で、一枚ずつ、お札が剥がれ始めていった。
416赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/12(月) 10:39:20 ID:5+OlwoQX0
18/18
剥がれたお札を拾って、もう一度貼ろうか…なんて思ったけど、私じゃきっと意味が無い。

これじゃ…このままじゃダメ…
私は部屋の中を振り返り、何か…っと、そうだ!机の引き出し――電話!

私は慌てて書斎机の所に行き、一番上の引き出しを開ける。
そこには、お父さんが言ったとおり、一枚のメモが置かれていた。
私は持っていた携帯を取り出し、番号を…

…あ、それより警察に電話した方が良い?
何て言って?
お父さんの上司の人が、お父さんを無理やり連れて行こうとしているんです?
…違う。無理やりじゃないんだ。お父さんは了承していた。
それに、私は子供。相手は…高城さんみたいな大人の人。
絶対に、私の言うことなんて通らない。
せめてあの名刺でもあれば良いのに、私の手元には今は無い…。

悩みながら扉を見ると、次々にお札が剥がれていく。
時間は余り無いのかも知れない。今は、お父さんの言う通りにするんだ――

私はそう思い、そこに書かれた番号に電話をする。
メモには相手の名前も書いてあり、そこには、「牧村陸」と書かれていた。


417本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:38:36 ID:nO9xyx230
つまんね
418本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:41:15 ID:a76ApL7x0
赤緑のストイックさは嫌いじゃない
419本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:42:06 ID:nO9xyx230
由美は彼女について考え、自分について考え、彼女の告白について考えた。
まとまらない思考に苛立つ。まるで深い沼の底にでもいるようだ。そして、周りを漂う沈殿物は彼女の記憶だけではなかった。
何か、眼では捕らえ切れない、細かな粒子が自分を覆っていた。
 満月は景色を青白く染めている。由美は何かの時のために担任から女の子の住所を聞いていた。
それは街を見下ろす高台の団地の一軒で、番地の載る委細地図によれば後もう少しで着くはずだ。
坂は急で、道はあみだくじのようで、よく似た形の家々がよく似た並びで座っている。
角度が付いているのと月光の青白さのせいで、その建物たちは由美を圧倒した。一旦は静かになった胸が再び強く打ち初めていた。
 告白の日から一週間が過ぎていた。増したのは罪悪感である。女の子は学校を休むことはなかった。しかし辛そうに見えた。
由美は話しかけなければならないと思ったが、できなかった。何を言っても空々しい言葉になってしまう気がした。
静江や他の教師には相談していない。恋人によほどすがりつきたかったが、そうしなかった。
 由美はさっきの電話について再び考えた。
恐らく、彼女はテレビか何かで「メリーさん」について知り、捨てられた人形と自分の境遇を重ね合わせたのだろう。
それならば、彼女は復讐をするつもりなのだろうか。それは一体誰に対してだろう。母親?それとも自分?どんな方法で?
しかし由美は彼女がそんなことをするとはとても思えなかった。だが単なる悪戯とも思えない。
思考はそれより先を導けなかった。速く、速く。ハンドルを握っているということがもどかしく感じられた。
足で駈け登る方が、自分の気持ちには適っていた。近付くに連れてこめかみに血が巡り、動悸が激しくなっていった。
420本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:42:32 ID:nO9xyx230
そしてようやく家に着いた。由美は車を降りる。エンジンの音が止むと、物足りないような静けさに包まれ、ぞっとした。
見下ろす街はネオンが美しく、走る車の音がまるで別世界のもののように遠く聞こえる。
家は団地の最も高い方にあった。やはり他の家と似ていて、アルミサッシの門と、芝の生えた小さな庭と、壁がクリーム色の建物で構成されている。
一階の大きな窓は雨戸が閉じられていて、二階の窓からは白いカーテンが覗いていた。
彼女はこの十分に広い家に、父親と二人切りで暮らしているのだ。あのカーテンの部屋だろうか。ここからの景色は寂しすぎる。頭が熱い。
父親のことがちらりと浮かんだが、由美はためらわずインターフォンを鳴らした。誰も出ない。再び押すが、やはり出なかった。
由美は携帯電話を取り出し先ほどの番号にかけた。よく耳を澄していると、家の中で電子音が鳴り出した。だが、出ない。
どうして断ってしまったのだろう。本当にしょうがなかったのだろうか。脈の音が耳の奥で疼いている。
421本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:42:38 ID:nO9xyx230
由美はインターフォンを再び鳴らしてから、門を開け、白い石段を上り、庭を横切って玄関の前に立った。
頭に告白をする女の子の姿がフラッシュバックし、心臓が締め付けられていた。いつからだったのだろう。
深呼吸をしようとしたが空気は喉でつかえてうまく入ってこない。由美は中に聞こえるように強く扉を叩く。
彼女はわたしを頼ってくれたのだ。確かに、他の誰よりも。握った手の冷たさ。わたしが彼女を守るはずだったのだ。
どうして断ってしまったのだろう。手が痛い。
呼吸のリズムを取ろうと大きく息を継いだ時、ふいに胸の奥の方から何かが込み上げてきた。涙だ!いけない、泣いたって自分が馬鹿なのだ。
彼女に見られたらどうするのだろう。しかし涙は溢れ、後は止めどなくこぼれた。
どうしてだろうと由美は思った。わたしが泣く理由は何なのだろう。わたしには悲しいことなんてないはずだ。
彼女がかわいそうだから?わたしが泣くべきではないのだ。泣くべきなのは子どもたちだ。
由美の頭を駆けているのは女の子のことだけではなかった。
教師になろうと思った中学生の頃のこと、教師になってから感じた想像とのギャップ、それからどうにかその状況に慣れていった日々、義務、理想、それらのことだった。
助けてと叫びたかった。わたしには荷が重すぎる。子どもたちの幸せなんて。ごめんなさい。
いつしかうずくまり、嗚咽していた。
422本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:43:15 ID:nO9xyx230
「私メリーさん、いま、あなたの後ろにいるの。」
その少女の前には、長いコートを着た一人の女性が立っている・・・。
背後から呼び止められ、そのコートの女性は、ゆっくり・・・あまりにもゆっくり振り返った。

その時、メリーさんと名乗った少女の心に、何か驚異的な・・・身の危険を感じるかのような本能が危機を告げた!
・・・この女性は・・・!?

見ればそのコートの女性・・・、花粉症のシーズンでもないのに、分厚いマスクをつけ、目は爛々と血走っている・・・。
そう、その瞳に狂気の色がにじみ出るほどに・・・。
そしてさらに・・・振り返った女性は自らのマスクに手をかけたのだ・・・。
「ねぇ、・・・私・・・」
「その先を言う必要はないわ! 
あなた・・・口酒ね・・・!!」
ピタリ・・・コートの女性がその時点で動きを止める。
再びゆっくりとした動作で、マスクに手をかけた右腕をおろした・・・。
「そう、あなたが、メリーね・・・、噂は聞いてるわぁ、
リカの命を奪い取ってのしあがってきたんですってぇ?」
「・・・そのことについては、否定も肯定もしないわ・・・、
でも、あなたなんかにリカの気高い心を理解することはできない・・・、ジャンキーのあなたにはね・・・!」
「ウッフッフ、言ったわねぇ、メリー、
でも、あなたってとってもおバカさぁん、
423本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:43:22 ID:nO9xyx230
全ての都市伝説を制するのは、この私・・・、あなたこそ、バラバラにしてあげるわぁ。」

メリーさんと口裂け女・・・。
この伝説の二人の邂逅を、
遠く・・・遥か彼方から覗き見る一つの少女がそこにいた・・・。
その性質上、一つのエリア・・・学校と言う狭領域にのみ存在できる白薔薇の少女・・・。
そのあまりにも白い指を自らの頬に寄せて、
鏡の中からメリーと口酒を覗き込んでいたのだ・・・、
狂気なる笑みを浮かべながら・・・。

「めぐる・・・輪廻がめぐる・・・グルグルと・・・。」

その少女の名は・・・「花子」・・・!
424本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:43:43 ID:nO9xyx230
ふいに、中で鍵の開く音があった。由美は反射的に感情を殺そうと努めた。
しかしできることではなく、膝に強く顔を埋め、泣き声を押さえるだけだった。扉がゆっくりと開く。そして、
「先生?」
 出て来たのは女の子だった。玄関の前で、由美は顔を上げずに泣いていた。肩が震えている。まるで子どものように泣いていた。
 女の子は立ち尽くしていたが、やがて由美の元にしゃがみ込み、その小さな腕で頭を抱いた。
由美は一度大きくしゃくり上げると、それから押さえ切れずに声を上げて泣いた。これじゃあまるで逆だと思った。
わたしが彼女を心配していたのに。しかし、彼女の腕の中はすごく安心だった。
 それから三十分後、由美は女の子の家の居間で、不機嫌そうに紅茶を飲んでいる。涙は止んでいた。
向かいのソファに座る女の子は、心配そうに由美を見る。まあいいかと、カップの中で鼻をすすりながら由美は思った。心配させてやれ。
 父親はいなかった。仕事が大変なのだと女の子は言っていた。
家の中はひどく広々としているように感じられた。家具は揃っているけれど、何か、抜け殻のように空っぽだった。
不必要なものが少な過ぎるのだ。
「ごめんなさい」
 ポツリと女の子が言った。
「こんなに心配するとは思わなくて」
 由美は紅茶の入ったカップを見つめていた。すねて母親を困らせる子どものようである。
「どうして電話であんなことを言ったの?」
 と由美は尋ねた。
「それは」と言って女の子は少し考えていた。
「心配すると思ったから」
「それだけなの?」
425本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:44:17 ID:nO9xyx230
 由美はむくれてそう答えた。が、女の子が悪そうにうつむき、何だかおかしくなってきて、くすりと笑った。
「ごめんなさい。もう怒ってないわよ。だけど本当に心配だったの」
 今度は女の子がすねる番だった。
 由美は落ち着いてきていた。聞きたいことはたくさんあった。
「お父さんのことは好き?」
「うん」
「お母さんのことは?」
「好き(答える時に足がカーペットを擦っていて由美はおかしかった)」
 女の子は学校にいる時よりもずっと緊張がないように見えた。
自分が泣いたからかも知れないと由美は思った。それから、彼女がそんな風に母親と話す様子を思い浮かべていた。
「どんな人?」
「先生みたい」
「わたし?」
「うん」
「どんなところが?」
「優しいところ」
 由美は黙った。そうなのかと思った。
426本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:44:31 ID:nO9xyx230
「それじゃあ、好きって言ってくれたけど、あれは――」
「ああ」女の子はスプーンでゆっくりと紅茶をかき混ぜている。
「笑うと思うから」
「笑わないわ」
「笑ってもいいけど。先生がお母さんになってくれたらと思って」
 そう、と由美は答えた。カップがカチカチと鳴っている。
「でも、もういいです。一昨日の夜、テレビで『メリーさん』の話をやってたんです。
すごく怖かったけど、自分みたいだなって思って、後で考えたんです。
持ち主が後ろを振り向いてから、どうなったのか。メリーさんは、きっと許してあげたと思います。
だって、もしかしたら本当にどうしようもない理由で捨てたのかも知れないから。ちょっと驚かして、それでお終い。
だから、わたしもお母さんのこと、もう怒らないようにします」
 そうかと由美は思った。わたしは母親の代わりに心配させられたのだ。
理不尽な気がしたが、嬉しい気持ちもあった。
「わたし、いい先生になれるかな?」と由美は尋ねた。
「わたしは好き。優しいから」
「ありがとう。わたし好きよ、あなたのこと」
 二人は紅茶をすすった。メリーさんは仲直りしたのかなと由美は思った。きっとしたのだろう。夜が一つ過ぎて行く。


打ち切りになりました。記憶からの消去をお願いします。読んでくれて乙。
427本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:44:58 ID:nO9xyx230
メリーさん「私メリーさん。リカちゃんとM-1に出たけど予選落ちしちゃったの」
428本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:45:29 ID:nO9xyx230
メリー「はいどーも、こんにちわー」

リカ「私がリカで」

メリー「私がメリーで」

リカ&メリー「2人合わせてメリー&マリー」

リカ「ゆーことで、やらせてもらってますけど」

メリー「突然ですけどね。私、あなたのキャラが薄いと思うんですよ」
429本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:45:34 ID:nO9xyx230
リカ「どーゆーことやねん」

メリー「自分で言うのもなんですけどね、私ってキャラが立ってるじゃないですか?」

リカ「ホンマに自分で言うのはなんやな」

メリー「ほら、決め台詞の、『私、メリーさん。あなたの後ろにいるの』ってのもありますし」

リカ「あれ、決め台詞やったんかいな」

メリー「だから、今日は私があなたにとっておきのキャラを差し上げようと思うんです」
リカ「くれるんですか。ホンマにありがたいですわ」
メリー「じゃあ私がリカちゃんやるから」
リカ「それもおかしな表現ですけどね」
メリー「あなたは名もなき一般人をやってください」
リカ「んじゃ、ちょっとやってみましょーか」
430本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:45:54 ID:nO9xyx230
リカ「あー、夜の学校怖いなー」

メリー「う〜ら〜め〜し〜や〜」

リカ「うわっ! いかにもテンプレートなお化けでてきよった!」

メリー「う〜ら〜め〜し〜や〜、で表はソバ屋〜」

リカ「ボケまでテンプレートになってる!?」

メリー「どうした、何か用か?」

リカ「うわっ、めっさ気軽に話しかけてきよった、めんどくさいなー」

メリー「お化け稼業も楽ちゃうねんで?」

リカ「そういう話をしにきたんじゃないです……って真面目にやって下さいよ」

メリー「悪かった悪かった」

リカ「もう、今度は真面目にやってくださいよ?」
431本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:46:18 ID:nO9xyx230
リカ「あー、またまた夜の学校怖いなー
   なんで私こんなに夜の学校におるんやろなー」

メリー「……しくしく、しくしく」

リカ「うわー、いかにもな感じの女の子の鳴き声が聞こえてきよる」

メリー「……しくしく、しくしく」

リカ「メンドクサイわー、帰ろ」

メリー「ちょちょちょちょちょ、帰らんといてくださいよー」

リカ「お願いするお化けってのも、どないやねん」

432本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:46:25 ID:nO9xyx230
メリー「お化けちゃいますよー、妖怪ですよー」

リカ「違いがようわからんなー」

メリー「何か用かい? なんちゃって」

リカ「……」

メリー「……」

リカ「ごめんなさい、しとこか?」

メリー「スベったのをフォローするのが突っ込みの役割だと思うんです」

リカ「あー流石にフォローの限度超えてたわー」

メリー「ごめんなさい」

リカ「素直でよろしい……ってこんな話をしてる場合じゃないですよ。
   もー次が最後のチャンスですからね、しっかりしてくださいよ?」
433本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:46:40 ID:nO9xyx230
リカ「あーもう私また夜の学校におるでー。
   これもう絶対何かでるわー。経験則でわかるわー」

ポトッ

リカ「ん、何か紙が落ちてきよった、なになに?
   トイレに行け? 敵もなりふり構わなくなってきよったなー」

テクテクテク

リカ「トイレまで来たけど……、ん? また紙が置いてある。
   なになに? 三番目のドアをノックしろ?」

テクテクテク……トントントン

メリー「はぁい」

リカ「順調ですかー?」

メリー「……」

434本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:46:58 ID:nO9xyx230
リカ「そろそろ校門閉まるんで続きは家でした方が……」

メリー「私、リカちゃん」

リカ「うわっ、とうとう無視しやがった」

メリー「私……便秘なの!!」

リカ「勝手なキャラ付けるなっ!!」



メリー「こんな感じのキャラでいったらどうですかね?」

リカ「もろ花子さんやないかい! やめさせてもらうわ!」

メリー&リカ「どうもありがとうございましたー」



これがM-1予選敗退の実力
スレの空気を凍りつかせるとは本当に恐ろしい話ですよね
435本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 11:47:33 ID:nO9xyx230
メリーさん「私、メリーさん。昨日笑笑で忘年会だったの。その後、二次会はすっとこどっこいで飲み直ししたの」
436本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 15:11:41 ID:qwIfbj5B0
つまんね
437本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 18:31:41 ID:JIrhkb0N0
赤緑乙
438本当にあった怖い名無し:2010/07/12(月) 21:58:02 ID:Z+ouLCJ10
439本当にあった怖い名無し:2010/07/13(火) 14:05:17 ID:adVmkm8P0
作者が投下した直後に嫌がらせのように連投するってのはマジなんだな
440本当にあった怖い名無し:2010/07/13(火) 18:40:22 ID:8Z2fE/tL0
ねえNGってどうやるの?
441本当にあった怖い名無し:2010/07/13(火) 20:31:34 ID:0/h6LHMO0
夏だなwwwwwwwwwwwwwwwwww
442本当にあった怖い名無し:2010/07/14(水) 12:22:58 ID:sYI+/TKI0


811 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 15:25:04 ID:B/0Lsbkn0
>>810
こっちでやってくれ

【霊感持ちの】シリーズ物総合スレ13【友人・知人】
http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1275740092/l50



813 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 15:41:45 ID:dm47YRVU0
>>812
それでも明らかにこのスレよりは向いてると思うが


823 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 17:13:30 ID:Wu1WKuY50
>>812
お前ここのスレタイ見た上でいってんの?
手持ちのネタ全部書きたいならシリーズ物行けって事だよ
このスレは手持ちの中で一番怖い話一つで十分なんだよ
尤もお前の話と各種法則に照らし合わせれば、お前はもう終わってる感じなんだけどな
でもまあ読みたい人沢山いるようだし、シリーズ物スレで頑張ればいいと思うよ



一人必死にこのスレに作家を呼びこもうとしてる基地外がいるようだな
あっさり断られて洒落怖住人にも袋叩きにあって涙目ww
お前らこのスレから出てくるなよ
443本当にあった怖い名無し:2010/07/14(水) 12:26:24 ID:sYI+/TKI0

827 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 17:26:21 ID:p7xEr2s60
みんなに聞きたいんだけど、
(1) あんまり怖くない話
(2) ID:dm47YRVU0とかID:Wu1WKuY50の書き込み

どっちが読んでて不愉快?

828 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 17:33:11 ID:rHOfwBdf0
とうぜん2

829 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 17:33:38 ID:0kvnfa0v0
そりゃあ後者の方が不愉快ですね

832 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 17:40:20 ID:XW65pkQP0
>>827
聞くまでもなく2
というか当然の話なんだよ。
そもそも不愉快にさせるのが書き込む目的なんだから。

833 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 17:42:53 ID:jhRRq/SwO
>>827
誰がどう見ても当然2だわな

誘導は不愉快のようです。テンプレにもあるようだしな。分かったかバカども
444本当にあった怖い名無し:2010/07/14(水) 12:30:07 ID:sYI+/TKI0
それが悔しかったようで・・

838 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 18:13:43 ID:Wu1WKuY50
話と感想を等価で並べてる時点でマジキチなんだが・・・
マジキチ多いなw
マジキチはどうにもならんから置いとくとして、ID:KJhLmW+UOに良識がある事を祈るばかりだ(←まだ言ってるしww)

839 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 18:19:50 ID:Wu1WKuY50
〜と思ったら作者様でしたか
ご自分が気持ちよ〜く投下できる環境作りに必死ですか?
テンプレそのままの駄作投下しておきながら、批判が怖いとかw
↑とうとう作家の自演扱い(根拠なし

841 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 18:35:09 ID:J4dlshQH0
>>827
なあ、作者さん。
「怖くない話」と「話ですらないもの」を比較して何がしたいんだ?
↑ID変えたようですw

842 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 18:40:45 ID:jhRRq/SwO
>>840
とにかくオマエが顔面真っ赤てファビョーンなのは、よくわかった。乙

843 本当にあった怖い名無し sage 2010/07/13(火) 19:08:08 ID:XW65pkQP0
>>839
俺様が認めた怖い話しか許さないスレでも立てて吠えてろよ。
>>841
荒らして何がしたいんだ?
445本当にあった怖い名無し:2010/07/15(木) 23:30:27 ID:5YV7CfoC0
赤緑もなぜかこんな過疎スレに不自然な新規投稿してる馬鹿も二度と投下するな
とっとと落とせよこんなスレ
特定の人間がたまにしか話しを投下しないなんてありえないだろ
てめえのブログでやってろ。何のためにブログ作ったんだよ
446本当にあった怖い名無し:2010/07/16(金) 00:29:17 ID:YgieegF/0
>>445
何か嫌なことでもあったのかい?おにいさんに話してごらん
447本当にあった怖い名無し:2010/07/16(金) 01:43:10 ID:YsRNxn0l0
お前が思うほど過疎スレじゃないってこった
448本当にあった怖い名無し:2010/07/16(金) 14:41:06 ID:Iko1Sp330
作家様ご登場w
過疎、という言葉に異常に反応するよなお前w
なんでこのスレに拘ってるのか理解できねーよ
449本当にあった怖い名無し:2010/07/16(金) 22:10:25 ID:X3osfkzc0
なんでこのスレをそんなに潰したいのか理解できねーよ

いやマジで…
こんな過疎スレと思うならほっとけばよくね?
450本当にあった怖い名無し:2010/07/16(金) 23:43:30 ID:hWco8xgl0
だよな〜w
451本当にあった怖い名無し:2010/07/17(土) 01:00:40 ID:pYafq8ge0
夏だな
452本当にあった怖い名無し:2010/07/17(土) 12:50:45 ID:blGFv+RC0
>なんでこのスレをそんなに潰したいのか理解できねーよ

赤緑が一人で必死に持続させてるだけで存在意味ないんだよ
奴はてめえのブログ持ってるんだからそこでやればいいのに、なんでわざわざこっちにまで投下するのか

453本当にあった怖い名無し:2010/07/17(土) 12:53:57 ID:blGFv+RC0
>こんな過疎スレと思うならほっとけばよくね?

普通過疎スレは落ちて然るべきなんだよ。2chの負荷にもなるし
ラノベもどきが投下されずに入れば誰にも邪魔されず落ちていくだろう
454本当にあった怖い名無し:2010/07/17(土) 14:26:57 ID:pYafq8ge0
>>452-453
赤緑の投稿回数が多いからって、何故「一人で必死に持続させてるだけ」になるんだ?
普通に楽しんでる奴も居るし、まだこのスレを持続させたいと思ってる奴も居るはず

>普通過疎スレは落ちて然るべきなんだよ。2chの負荷にもなるし
2chの負荷とか名言残すなwwwwwwwwwwwwwwwwww


ってか、毎度毎度お前みたいなのがこのスレの寿命を長くしてんだよ
夏休みなら外で遊んで来いよ糞ガキ
455本当にあった怖い名無し:2010/07/17(土) 15:29:10 ID:NEe7Wdu50
いい天気ですね
456本当にあった怖い名無し:2010/07/17(土) 23:25:49 ID:+Py/8zha0
持続させる為のクオリティ度外視投稿と言ったら、先ず自称メリーさんシリーズのボケナスが来なきゃおかしいんだが
457本当にあった怖い名無し:2010/07/18(日) 13:53:32 ID:6CXI6yDU0
>赤緑の投稿回数が多いからって、何故「一人で必死に持続させてるだけ」になるんだ?

そのままの意味だろ。
ずっとコイツひとりだけしか投下してないし、コイツは自分のブログ持ってるのにわざわざこっちに投下する必要ないだろ
コイツが投稿しなきゃどんな状況なのか想像すらできない低能なのか?
458本当にあった怖い名無し:2010/07/18(日) 13:55:02 ID:6CXI6yDU0
>普通に楽しんでる奴も居るし、まだこのスレを持続させたいと思ってる奴も居るはず

だから赤緑しか投下してないんだからブログ行けや
荒らしもいない快適な場所だろw
459本当にあった怖い名無し:2010/07/18(日) 13:59:38 ID:6CXI6yDU0
>夏休みなら外で遊んで来いよ糞ガキ

え?お前いい年した大人なのか?
そんな大人が赤緑みたいな底辺のラノベ作家の足元にも及ばない糞な話を楽しみにしてるのか?
今までどんだけまともな読み物読んできてなかったんだよw
マジで恥ずかしくないの?周りの奴に勧めてみろよ
俺だけが知ってる最高の読み物あるけど教えてやるから読んでみろよ、って言ってみろ
460本当にあった怖い名無し:2010/07/18(日) 15:09:32 ID:aGbhl/H/0
>>457-459
メリーさんの続きマダー?
461本当にあった怖い名無し:2010/07/18(日) 15:27:15 ID:6CXI6yDU0
>>456
どう考えてもメリーさんシリーズ>>>>>>>>赤緑
だろ。読んでないくせに適当なこと言うなよ
462本当にあった怖い名無し:2010/07/18(日) 16:56:51 ID:mVPN2Hds0
メリーさんシリーズwww
過去スレからコピってきただけのものを偉そうにwww
見飽きてんだよテメーのコピペはよ
463本当にあった怖い名無し:2010/07/18(日) 22:59:57 ID:6CXI6yDU0
知るかハゲ
コピペだろうがなんだろうが赤緑より遥かに面白いのは事実だろうが
お前はなーんも投下してないだろ。
ただ待つだけの身のくせに文句だけは一人前だな
まあ、荒らしてる自覚はあるんだろうからそんな煽りばかりしてるんだろうがw
464本当にあった怖い名無し:2010/07/18(日) 23:05:09 ID:j7iLqGFH0
>>458-459
必死すぎワロタwwwwwwwwっうぇwwwwwwwwwwwwwっうぇwwwwwwwwwwww

それと◆7QPLwJZR/Ypfさんを忘れてやるなw
465本当にあった怖い名無し:2010/07/18(日) 23:27:59 ID:6CXI6yDU0
何回もID変えて自演しまくってる奴に言われたくねーよ

>wwwwwwwwっうぇwwwwwwwwwwwwwっうぇwwwwwwwwwwww

うわああ、まだこんなレスしてる奴いるんだ・・・もういい加減荒らすのやめろよ
466本当にあった怖い名無し:2010/07/18(日) 23:34:04 ID:I6ytEJVQ0
誰か、忍の例のサイト?のURLを貼ってもらえませんか?
確かめたい事があるので、ログを持っている方は是非お願いします。
467本当にあった怖い名無し:2010/07/19(月) 04:00:24 ID:bhl/zCTA0
沸点低すぎだろ
468本当にあった怖い名無し:2010/07/19(月) 13:17:43 ID:MFGNVZnt0
ID:6CXI6yDU0みたいなのが居るから投下したくないんだろうな
469 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 14:39:47 ID:dIgiHSiJ0
11話目でございます。本編と小話の区別も止めようと思います。
時々登場人物紹介がついたら、区切りの話かもしれません。

自己責任で読んで下さい。一応警告したので始めます。


"守護"

私はYという。
この部屋に引きこもって4年になる。きっかけはいじめ。
とは言っても、世間一般に言われているような酷いものではなく。
小学校のときから長年「ウザイ」とか「キモイ」とか、
ちょくちょく言われ続けているうちに
なんとなく中3で心が折れてしまった感じだ。
今となっては、いじめっ子達にもとくに恨みはない。
まぁ、私は友達もまともに作れなかったし、
冷静に考えたら言われてもしょうがないかな、と思う。

「Yちゃーん、お食事ここに置いておくわよー」
お母さんが今日も、お夕飯を部屋の前に置きに来る。
いつも私は無言を貫くが、両親には本当に悪いと思っている。
懺悔をしながら、そおっと部屋の扉を開く。
やった、今日はトンカツだ。でも太るからなーどうしよう。
外との接点を持たなくなって長いのに、
こんなことを気にする自分が少し、可笑しい。
消化を良くする為に、少しずつ食べながら、
つけっ放しのPCのマウスを動かす
470 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 14:40:43 ID:dIgiHSiJ0
今日はニコニコも2chも面白い話題が無い。pixivで贔屓の絵師さんはどうだろうか。
やはり更新が無くて少し落胆する…。
マイリストに入れた初音ミクの曲で癒されそうなのを選んで
音が漏れないようにヘッドフォンで聞く。
時々テレビもつけるのだが、ネットと違って自分のペースで見られないので、
すぐに煩わしくなって消す。
あー私の人生どうしよっかなー。
今すぐ死んだほうがいいんだろうけど、手首切る気すら起きないし、
明日はニコニコで、好きな生主さんの放送もあるし
まだ終わっていないシリーズもの動画もあるから、とりあえず明日までは生きてみよう。
そう思いながら、一日が終わる。

たまに、夢におばあちゃんが出てくる。
おばあちゃんが生きていた頃は、私のことを良く見ていてくれたし
学校から帰ったら、二人でお菓子を食べながら、色んな悩みも聞いてくれた。
私が小学校を卒業まで頑張れたのは、おばあちゃんのおかげだ。
でも、そのおばあちゃんは今はもう居ない。
私が、中学校に入ってすぐに死んでしまったのだ。
無理なのは分かっているけど、もう一回会いたいなぁ。
死んだら会えるのかなぁ。なんてことをたまに考える。

そんな私の何も無いけど、平穏な毎日が乱されたのはあの午後のことだった。
471 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 14:41:55 ID:dIgiHSiJ0
めずらしく、お母さんが昼間に声をかけてきた。
「Yちゃーん入るわよー」
すぐにドアに駆け寄り、身体で押して抵抗するが、こちらは体力の無い引きこもり、
すぐに力尽きて抑えられなくなり、ベットにもぐりこんだ。
布団の外で足音が二つ聞こえる、お母さんと一緒に誰か入ってきたようだ。
いきなり物凄い勢いで、布団を引き剥がされる。
知らないおばさんが、謎の満面の笑みで顔を覗き込んできた。
「あら、この子かい。なかなかかわいいねぇ」
抵抗する間もなく腕を掴まれて起き上がらされて、ベットの横に立たされる。
「じゃあ、行こうかねぇ」
えっ?どういうことなの…
「…そうだ、そのままじゃきついだろうから、はい、これ」
ベースボールキャップを渡され、被る。
さらに、不思議な呪文のような柄のスタジアムジャンパーを
慣れた手つきでジャージの上から羽織らされると、
手を握られたまま、部屋の外へと連れ出される。
なんだろう凄く嫌なんだけど、このおばさんの手に握られていると抵抗できない。
玄関でお母さんが「娘を頼みます」と、頭を深々下げて見送っていた。

家の前につけられていた大きな黒塗りの、RV車とか言うのだろうか、
とにかくそういう厳つい車の後部座席に座らされる。
運転はおばさん自身がするらしい。「すぐつくからねぇ」とか暢気に言われる。
…いわゆる引き篭もり矯正施設に送られるのだろうか。
それとも、私も一応は女だ、風俗にでも売られたのだろうか。
と、色々考えようとしたがすぐに疲れて止める。
まぁ、どうにでもなればいい。
472 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 14:43:52 ID:dIgiHSiJ0
30分ほど車が走ると、町外れに着いた。
良く見ると雑木林の中に平屋の日本家屋が建っていて、
林が切り開かれた門の前に車が止まり、降ろされる。
おばさんとその門を潜ると、スウッと不思議な感覚が身体を通り抜けた。
驚いたが、立ち止まる間もなくおばさんから手を引かれて
開いていた玄関に連れ込まれた。

玄関に入ると、白装束と白い顔を隠した頭巾を被った女性が
私を一瞥してからおばさんに礼をして、二人を奥の間に案内してくれた。

襖を開けると、甚平っぽいものを着込んだ背の高い男の人が
あぐらをかいて座っていた。
私を見て眼を丸くし、慌てて立ち上がり、おばさんと会話している。
引き篭もりを見るのが初めてなのだろうか…。
「こいつは凄いな。これだけのものを抱えんでいてよく…
 …"器"にもならず…この子はとても強いよ」
「あんたも似たようなもんだよ…。とにかく、宜しく頼むわよ」
ブツブツと二人で話し込んだ後に、
おばさんから男の人の反対側に座るように手招きで薦められる。
「じゃあ、終わったら来るからね」
と私に声をかけて、おばさんは部屋から出て行った。
座布団に座っていると、男の人が真面目な顔で話しかけてきた。
「えーと、これから起こることはちょっと面倒なんで
 できればこのアイマスクをつけた上で、
 目をつぶっていて欲しいんだけど、できるかぎり強くね。いいかな?」
何だか怖かったので不信な眼を向けると、すぐに笑顔を作って
「あ、大丈夫。触ったりとかはしないから。それとこの耳栓も着けといて」
と言った。ほんとは優しい人なのだろうか。良く分からない。
アイマスクと耳栓を渡され、とりあえずは素直に着ける。
耳栓は良くできているものらしく、体内の音しか聞こえなくなった。
言われた通りに、思い切り強く目を瞑る。
473 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 14:44:50 ID:dIgiHSiJ0
…大枚に釣られてきてみれば、とんでもないものの相手をさせられる破目になったな。
こいつは、かなり異常だ。
この子の頭上に、所々ひび割れた小学校高学年の背丈ほどもある、オカッパの日本人形が鎮座している。
その人形の後ろ頭からは、腐ったブリキの兵隊が顔を覗かせ、足先には白い大蛇が巻きついている。
ひび割れた穴からは、時々何かが無邪気な目を覗かせたり、腐った手足が出入りしている。
心霊現象の見本市みたいなもんだ。
家神程度の、か弱い神霊も巻き添えで数体取り込まれているようだが…しょうがない。

おばさんから凡そは知らされていたが、この子は所謂"憑き護"ってやつに近い。
その体質ゆえに、今までの人生で関わってきたあらゆる他人の憑依霊や、
近くで起こった数々の心霊現象を吸ってきたのだろう。
おそらく、それが一つにまとまって、わけが分からないことになっている。
本来"憑き護"の能力キャパシティ内に収まるものなら
彼女の中で消化され消え失せるはずだが、何かが"蓋"をして塞き止めているようだ。
これでは吸い取った霊が消えずに、"憑き護"本人に被害が降りかかってしまう。
この子の声はまだ聞けていないが、眼を見る限り正気の澄んだ色をしていた、
これだけものを引き連れていて、よく心が壊れていないものだ。
「…じゃあ、いこう」
自分に号令をかけてから、右肩のお札シールを5枚まとめて剥がす。
"アレ"が発現する。いつもながらの黒い腕と上唇下唇のセットだ。
「ウア…ウ…マソウデ…ス…ネ…チイサナ…カミサマモ…タクサンイル…」
「まだ待て、少し様子を見よう」
「ウエヘヘ…オ…オヤサ…ンノオッシ…ャルトオリニ…」
大家さんとは言ったもんだ。珍しく言うことに従う"アレ"に少し気味の悪さを感じつつ
日本人形その他の複合霊と対峙する。
474 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 14:45:36 ID:dIgiHSiJ0
「コノ子は私ノモのだ」
日本人形が気色悪いアクセントで話しかけてくる。
「口が聞けるとはね。知能があるのは宿主様に侵食し始めている証拠だ」
知能があるということは、どうやら日本人形がベース、というか塞き止める"蓋"の役割をしていて
その"蓋"に様々なものが吸着している形が正体のようだ。
「お前ノソれは何ダ。コの子ヲ脅かスものではナいのカ」
どうやら"アレ"のことを言っているらしい、よく喋る野郎だ。
「ならば問うが、お前もこの子を脅かしているのではないか。
 お前は守護しているつもりかもしれないが、逆だ。
 お前を中心に様々なものが、塞き止められ寄り集められ、
 本来この子の中で咀嚼され、消化されるべきものが単なる重みになっている」
「ワれを祓ウ気か。ソれがコの子のたメにナルと思ウテか。
 憑き護でアる限り、イツかは大きナモのに突き当たルのはサけラレぬ。
 ソの時こノ子の生は終わル。我はソれを防グタめに在ル」
「それはある意味正しいが、だからと言って
 この子の意欲や運まで奪うことは無い。
 無責任な言い方かもしれないが、人間なら誰しもどこかで壁に突き当たる」
「それでも、解決できることの方が多いんだぜ。どちらにしてもお前はこの子の邪魔だろう」
これ以上、押し問答を続けていても時間の無駄だ。
「喰っていいぞ」
475 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 14:46:43 ID:dIgiHSiJ0
「イタダキマァァァァァァァァァァァァススススススススススス!!!!!」
"アレ"は嬉しそうに、襲いかかる。
まず、日本人形に貼り付いていた霊を引き剥がしにかかった
バリバリバリと気味の悪い音をさせながら、ブリキの人形や白蛇を口の中に放り込む。
ほぼ無抵抗のまま、貼り付いていた者を喰い終わると
今度は人形にいくつか空いている穴に手を突っ込み、
亡者や亡霊を何体も引っ張り出しては食べている。
食べられる霊達の
「ヒィィィィィィィイィィイイ」「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
という悲鳴が響き続け、またそれを喰う"アレ"の
グッチャグッチャと良く響く、咀嚼音も気持ちが悪く
思わず耳を塞ぐ。耳栓、俺の分ももらっときゃ良かった。

日本人形は罵ったり、短い手足を振り回して抵抗するが
元々こういう事態に対応するための手段は無いのだろう、"アレ"は気にも留めずに食べ続ける。
唯一の抵抗手段である心霊現象の吸引は、相手が見たこともないほど強力なので通じていないようだ。
なんだ予想に反して楽勝だな。…しつこいけど耳栓さえあれば。
「オのれエぇぇぇぇぇえエぇぇええエエええええ!!!!!!!!!」
全ての霊を取られ尽くして、さらに下半身も無残に喰われた人形が
苦し紛れに俺に突進してくる。
ほいっ、と数十センチ横に避けてかわした、と思ったら
少しだけ避け損ねて、甚平の裾に僅かに人形の腕が触れた、
そこが焦げたように萎れて変色する。
"アレ"が逃さんとばかりに腕と指を伸ばし、上半身ごと鷲掴みにして、
そのまま両唇の間に放り込む。バキッバキャッと強く噛み砕く音が響き、
「ぎゃあああああああああああああ」
という断末魔とともに、日本人形は"アレ"の中に消えていった。
476 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 14:47:44 ID:dIgiHSiJ0
「ゲプッ…ゴチデシ…タ」 
汚らしいゲップをかまして、謝意を伸べられる。
「オオ…ヒサシブリニ…」
ブルッ、と唇全体が震えたかと思うと
突然、周囲の雰囲気が変わり、部屋全体が大きく揺れだす
唇の上の空間に、直径1メートルほどの七色の渦が出現して、
そこから、唇に釣り合うでかい"鼻"が出現した。
満足そうに鼻腔を膨らませて"アレ"は
「コレガニ…オイカ…ナゼダカ…ナ…ツカシイデスネ」とかのたまう。
クソッ、また成長しやがった。
ショックだが…こればかりはどうしようもない…
…今回は、さすがに相手がでかすぎたんだろう。
女の子はさっきから妙に静かだと思ったら
座ったまま気絶していたようだ。
さすがに身体に侵食している霊を引き剥がされたので
心身ともに大きな負担がかかったのだろう。
"アレ"はまだ食べたりない、とばかりに黒い腕を伸ばして、
下見するように、軽く指先で女の子の身体の線をなぞる。
加護のない常人なら、触れられると服ごと焦げるのだが、そこは憑き護、
無傷のまま、指先から僅かに漏れた暗黒物質を吸収している。
ただ、意識はなくともさすがに不快感があるのか「ううっ」と小さく唸る。
「コノコノタマシイモ…タベテイイデスカ…ヨゴレテイナクテ…トテモ…ウマソウダ」
大事なクライアントを殺すわけにはいかない。
「ダメだ。無闇に魂を食うと、お前が困ることになるぞ」
「ザンネンデスガ…リョウショウシマシタ…マタノゴリヨウヲ…オマチシテオリマス…」
"アレ"はそう言って3点まとめて、右肩辺りまで引っ込んでいき沈黙した。
おかしい、なんでこんなに聞き分けがいいんだ。
微妙に滑舌も良くなっている気がする。
ドサッという音がして驚き、思考を止めると女の子が畳に突っ伏していた。
「おばあちゃん…」
小さく呟きながら、涙を流している。
思わず、居た堪れなくなり、ハンカチで拭ってやろうした。
477 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 14:48:26 ID:dIgiHSiJ0
私は夢を見ていた。
人が居ないのを見計らって、
昼食を取るために一階に降りていくと、ふと気付く。
そういえば、おばあちゃんがずっと大切にしていて
居間の棚の上で、ガラスケースに飾られていたオカッパの日本人形、
ここ何年も見ていないなあ。
あれはいつのまに、どこへ行ってしまったんだろう。
気になってしょうがないので、お父さんの部屋
お母さんの部屋、バスルームと廊下の物置、居間の棚の奥にキッチン、終いには自分の部屋、
色んなところを探すけどどこにもない。
疲れ果てて座り込み、床に映った自分の影を見ると
見覚えのある形をしていた。あれ、私の影、何だか人形みたいだ。
後ろを振り返ると、あの日本人形が私を睨んでいた。
いきなり獣のような口を開け、私を食べ、成り代わろうとする。
腰が抜けて何も出来ない私を、気付いたら、おばあちゃんが抱きしめて守ってくれていた。
人形は、そのまま私に手を出せずに「忌み子が…」と恨み言を吐きながら消えていった。
おばあちゃんは、私をもう一度、ぎゅっと抱きしめると
にこやかにどこかへと去っていった。
「おばあちゃん!!!」
飛び起きると、さっきの男の人が、ハンカチを持ったまま固まっている。
寝ている間に何かされた!!と思って全身を探ってみると、
頬が濡れていて、涙を流した跡がある。
どうやら拭ってくれようとしていたみたいだ
478本当にあった怖い名無し:2010/07/19(月) 15:22:54 ID:OwLSFAv10
>>469
乙&支援。
479本当にあった怖い名無し:2010/07/19(月) 15:24:53 ID:OwLSFAv10
>>469
乙&支援。
480 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 16:04:23 ID:dIgiHSiJ0
ホッ、とすると同時に、一気に色んな感触が湧き上がってきた。
なんだろう、とても胸が痛い。
ぽっかり穴が開いてしまったようだ。
だけど何だか身体が軽い気がする。羽が生えたっていう例えはこういうことかも。
そういえばネットで、引き篭もりの治療について調べている時に見たことがある。
患者が寝ている間に、催眠術をかけて無意識のトラウマを取り除くという療法だ。
私も、それをされていたんだろうか。
「終わったみたいだね」
おばさんが障子を開けて入ってきて、冷たい麦茶をくれた。
そのあと、隣の居間に移動させられ、
「少しやることがあるからね」というおばさんを待っている間、
「ちょwwwwwまwwww痛wwwwwタンマタンマwww」
という悲鳴と
「強力になったんだから、今日は二刀流よー!!はいやー!!!」
ベチベチベチ!!という強烈な何かの音がさっき居た部屋から聞こえてきた。
481 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 16:05:39 ID:dIgiHSiJ0
無事に家に帰った私を、お母さんは泣きながら出迎えてくれた。
おばさんは私を玄関に置いて、そのまま立ち去ろうとしたのだが
お母さんから何かを押し付けられ、渋々と貰って帰っていった。
帰り際に「時々、様子を見に来ます」と言っていた。
その後、お仕事から帰ったお父さんも交えて
四年ぶりに、お夕飯を三人で食べた。
食卓ではお母さんは号泣しっ放しで
お父さんも堪えてはいたが、涙眼を隠せていなかった。
そうか、色んな人に支えられて生きていたんだ。
守ってくれていたのは、おばあちゃんだけじゃなかったんだ。
そう思ったら何だか私も、涙が止まらなくなった。

おばさんは、女の子を送迎してから帰ってきて
ボコボコになって、ダウンしていた俺を起こし、
座らせて、上半身に湿布を貼りながら言う。
「あの子のことだけど」
「定期的にわたしが様子を見にいくから、何かあったらまた頼むわね」
またあんなのを相手するのは嫌だな、と思い黙っていると
「はい、約束のもの」
ずっしりと重い、茶封筒を渡される。
思わず首を何度も縦に振ってしまって、あとで猛烈に後悔した。
金の力には逆らえないのが、汚れた大人の悲しいところである。
次の日、古物屋に様子を見に来たAに笑われた。
「Mさんどうしたんすかその顔www饅頭wwww」
「うるへー…」
今はあの子は生きる意欲を取り戻し
バイトをしたり、自動車学校に通いながら、
大検取得を目指して頑張っているらしい。
了。
482 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 16:07:33 ID:dIgiHSiJ0
↓の警告は止めようか迷ってたんですが、なんとなく続けることにします。その内消えるかも。

自己責任で読んで下さい。一応警告したので始めます。

"飼い犬"

ぼくはとても幸せだった。
おねえちゃんが一緒に居てくれた。
あんまり散歩には連れて行ってはくれなかったけど
帰ったらすぐにケージを開けて、いつも大好物のジャーキーをくれた。
ぎゅって、抱きしめてくれた。

ある時
おねえちゃんは久しぶりに散歩に連れて行ってくれた。
ぼくはおねえちゃんの緑色の車に乗るのが好きだ。
ドアに足をひっかけて外を見るのが好きだ。
お姉ちゃんはずいぶん遠くまで行ったところで
ぼくに首輪をして降ろした。
ここは神社というらしい。始めて来た。
たっぷり散歩してから、大好物のジャーキーを僕にくれた。
ぼくはとても幸せだった。

必死にジャーキーに噛り付いている僕に
おねえちゃんはすこし寂しい笑顔で言った。
「いい人に拾われるんだよ」

ぼくは不思議な顔をしてすこし見上げて、またジャーキーに夢中になった。
ぼくがぜんぶ食べ終わるころ、おねえちゃんはどこにも居なかった。
もう夕方だったので、誰も居なかった。
ぼくはとても寂しかった。
483 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 16:08:42 ID:dIgiHSiJ0
ぼくは建物の影で一晩過ごした。
神社の夜はとても寒くて怖かった。
でもね。
おねえちゃんが帰ってきて、一緒に居てくれたから
寂しくはなかった。
ぼくが心配そうに顔を見上げるたびに、ニッコリと笑ってくれた。

夜が開けたらおねえちゃんは居なくなっていた。
代わりに、知らないおばさん数人が僕を取り囲んでいた。
大きくて怖い犬も数匹見える。
ほっといてください。ぼくは家に帰るんです。
おねえちゃんを待っているんです。
だからぼくに関わらないで下さい。
そう小さく唸るぼくを、おばさんたちは困ったように見ていた。

ぼくは2、3日神社で、おばさんたちから餌を貰って生きていた。
本当はおねえちゃんから貰いたいけど
腹は減るんだからしょうがない。
そのうち、おばさんたちから無理やり抱き上げられて
それぞれの家に一週間交代で預けられては、次の家に
というふうにたらい回しにされだした。
それぞれの家に別に飼い犬が居たから
ぼくより大きい犬からは餌を取られたりもした。
ぼくは自分の分を守るために、頑張らないといけないことを知った。
484 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 16:11:34 ID:dIgiHSiJ0
時々、首輪で玄関に繋がれているぼくが
小さな声を出して寂しがると
おねえちゃんが来てくれた。
頭を撫でてくれたり、抱きしめてくれたりした。
ぼくはとても幸せだった。

ぼくはある時、その時預けられている飼い主の人から
散歩に連れて行ってもらった。
もう何軒目だろうか、そのころには2頭で散歩するときは、
できるだけ他の犬と並んで歩くんだ、ということを学んでいた。
あの神社に着いて、飼い主さんは知らないおばさんと話をしていた。
おばさんは僕の方を見ると、驚いてこっちに寄ってきた。
「あんた、大変だったねえ」かがんで、ぼくに話しかけたあとに
ぼくの頭の上を見て「貴女ももういいんだよ」と優しい顔で言った。
いきなりおねえちゃんから頭を撫でられて、驚いて見上げると
おねえちゃんが立ち上がったおばさんに頭を下げていた。

そのままおねえちゃんは消えてしまった。
ぼくはその時、おねえちゃんが帰ってこれないほど
遠くに行ったような、気がした。

ぼくはその後、新しい飼い主さんの家に貰われ、
その家でずっと過ごしている。
いまは、ぼくはとても幸せだ。
飼い主さん一家もよくしてくれる。
でもね
ときどき緑色の車を見かけると、
散歩の途中に、つい立ち止まって
おねえちゃんが乗っているんじゃないかと、期待してしまう。
きっと待っていれば、いつかまた出会えると思う。
そのときを、ずっと楽しみにしている。了。
485 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 18:08:47 ID:dIgiHSiJ0
これで今日は終わりです。誤字脱字乱文失礼します。
まだ書きかけの話がいくつかあるので、また半月ぐらいしたら投稿します。

自己責任で読んで下さい。一応警告したので始めます。

 "痛車男"

今日は、師匠が仕事で居ないので
いつものファミレスで一人、チョコパフェを食いながらダラダラしていると
後ろからでかい声がする。
「萌えー!!」
なんじゃあ、と思いつつ振り返ると、
全身にお客さんと店員さんの注目を浴びながら
G先輩が立っていた。
G先輩は、俺の高校の時の部活の先輩である。

テニス部だったときは、マッチョ坊主に眼鏡の面白キャラだったのに、
今日は色眼鏡にオールバック、180前後の体格に寒色系の派手な半そでシャツを着て、
スリムな黒の皮パンに、チェーンをぶら下げて履いていた。
半そでから出た二の腕はタトゥーさえ入っていないが、筋骨隆々としていて逞しい。
今の若い子に分かるだろうか、ミッシェルやブランキーの
メンバーとして並んでいても、殆ど違和感の無い出で立ちだ。
そして、服装からはどう見てもロックというかアメリカンヤンキーに憧れる危ない人種なのに
本来の趣味は、
ネトゲ含むゲームとアニメとフィギュアと漫画とエロゲとエロ同人と言うさらに困った人だ。
(ロックも一応は好きらしい)
しかもそれを隠す素振りすら見せない。
486 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 18:09:54 ID:dIgiHSiJ0
肩を縮めて背もたれに隠れ、
できれば、こっちに気付いていませんように、と願っていたのだが、
そのまま堂々と俺の席まで歩いてきて、反対側にドスンッと座る。怖えぇww
「う、うーっす、お久しぶりです」
「おっすオラ、萌え萌え〜きゅーん☆」
胸に二の腕を寄せるポーズ付きで、野太い声を搾り出すように言われる。
なんだ、その色んなものを曲解した挨拶は。と脱力してつい口が滑る。
「先輩、さいきん友達居ないでしょ?」
少なくともヲタクの友達は一人も居ないはずだ。こんな奴現実で見たこと無い。
「…ぐっ、そんなことはない…ってかいきなり失礼だな。いるし!!めっちゃ居るぞ!!」
なんか深く傷つけたみたいで、悪かったなぁと思って謝る。
「いや、要らんこと言ってすいません。ところで、社会人が真昼間に何で?」
これでも先輩は仕事ができるらしく、
会社ではこの若さで係長とのことだ。…本当かどうかは分からない。
「ははは…休みだから、久しぶりにお前とチョコパフェ食べたくてな。
 決して寂しいわけではないぞ。そこんとこ勘違いするな!」
その後、先輩のヲタ話に飽きた俺が、帰ろうとしては引き止められ、
帰ろうとしては引き止められての押し引きが繰り返され
ドリンクバーで十回ほど飲み物を入れ替え、トイレに二回ほど行き、
時計の針が夕方の時刻を指した頃
先輩がとうとう本題を述べる。
「実は、オクで落としたフィギュアが、たぶん呪われててな。
 …いや絶対に呪われてて、助けて欲しいんだよ」
なんだそんなことか。現地に行けば5分で終わらせられるのに。
「早く言ってくださいよ、先輩の家ってどこでしたっけ」
「ここから、車で15分くらいのアパートだ」
「分かりました。俺歩きなんで、先輩の車に乗せて貰ってもいいですか」
「望むところよ!!おっと…あ、あんたが乗、乗りたいんだったら乗ってもいいんだからね!」
野太い声でデレられて憤死しそうになる。
ツンデレは女の子だけに、というか二次元の中でだけにしてほしい。
487 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 18:11:13 ID:dIgiHSiJ0
支払いは先輩がしてくれたので、先に駐車場に出ると
珍しいものが停めてあり目が釘付けになった。
その車は超高そうな黒のGTRで、フロントに手を広げた初音ミクのカラーイラストが描かれていた。
しかもフロント、両サイド、バックの四箇所に丁寧にも、ポーズ違いで4体である。
えーと……これは何ていうんだっけ…そうだ痛車だ。痛いクルマと書いて痛車だ。
先輩のほかに、地元にこんなハードコアヲタクが居たのか。知らなかったなぁ、と珍しがっていると
支払いを済まし、颯爽と俺の横を通り過ぎた先輩が痛車に近づき、
カチッ、と音がしてオートロックが開いた。
先輩はそのまま運転席に乗り込もうとして、こっちを振り向く
「何してんだ、早く乗れよ」
だからヲタクが金もつと、ろくなことに使わないんだよ畜生!!ふぁっきん!!
サノバビッチ!!思いつく限りの罵倒を心の中でしてから
(まじめなヲタクの皆様すいません)渋々、助手席に乗り込んだ。

内装はもっと酷かった、フィギュアこそ置いて無いが
シートは全てアニメ調になっていて、何か良く分からん美少女ステッカーが所々に貼ってあり
フロントガラスにもくっつけられた美少女キーホルダーが、数本ブラブラと揺れていた。
速度計の裏には、また別の女性アニメキャラが数体描かれていた。
この車に乗っていると、俺の霊的な何かが死んでいくような錯覚すら覚える。
これは間違いなく人間どころか、悪霊も避けていくだろう。
マフラーを切っているらしい物凄いエンジン音と、
世間体を切ったかららしい物凄い視線を浴びながら、
車は永遠とも思える15分間を、先輩の家へと走った。
フルスモークなので、外から乗員は見えないのだけが救いだ。
488 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 18:12:28 ID:dIgiHSiJ0
先輩は、築四十年くらいのボロアパートの
舗装されていない駐車場に痛車を停めた。
やっと着いた〜少なくとも俺は、もう二度とこの車に乗りたくないな、と思いながら
所々手すりが錆びているアパートの外階段を登っていく。
二階、並び奥のきしむドアを先輩が開けて、部屋へと入る。

そこは、四方の棚にぎっしり、しかし整然と並べられた、
CD、DVDとフィギュアやプラモによる魔城だった。
フィギュア、プラモは主にロボット物と美少女、
CDは良く分からんマニアックな洋楽と、アニソンが4対6くらい割合で並んでいた。
DVDはオールアニメである。よく見てみてもガンダムやジブリくらいしか俺には分からなかった。
広いデスクの上には、パソコンのモニターとキーボードが、三台ほど並んでいて、
先輩がリモコンを押すと、そのうち一台からテレビ番組が流れてきた。
うわーすげぇ、先輩金持ってんなぁ…と思いながら
しばらく見回していると、意を決したらしい先輩が、俺に話しかける。
「毎晩家帰ってきて寝ようとすると、この子から視線を感じるんだよ…」
そこには、ベットの脇に大事そうに飾られた一体のフィギュアがあった。
詳しく話を聞くと、ネットオークションで落札したものなのだが、それが2週間前に届いてかららしい。
「やっぱり、ほら悪霊が宿ってたら、寺とかで燃やしたりするんだろ?
 4万もかけた俺のラ○カちゃんを燃やすなんて耐えられなくてよー」
「今は置いとくだけで、悪霊を祓ってくれる便利なお寺が市内にあるんですよ。
 時間はかかるかもしれませんが、大丈夫ですよ」
まずはOさん寺の説明をして、先輩を安心させつつ調査を開始する。

おかしい、このフィギュアには特に怨念らしきものは無い。
先輩のヲタクオーラが若干乗り移っている気はするが
動き出すほどの強さではないし、少なくとも憑依霊の類ではない。
分からないので首を捻っていると、ふと気付く。
あれっ、ベットとフィギュアの直線状にあるカーテンの脇に何か居るぞ。
近づいて、サッとカーテンをめくると、何かが動いて逃げた。
489 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 18:13:48 ID:dIgiHSiJ0
鍵を開けて、ベランダに出てみるとエアコンの室外機と手すりの間に何か居る。
良く見ると、黒髪で前髪パッツンの、地味な感じの女の子がうずくまっていた。
驚いたがとりあえず「あの〜」と声をかけてみる。
ビクッと女の子はゆっくり立ち上がる。
足先が少し薄れている。さらにパジャマ姿だ。
やっと気付いたが、どうやら生霊らしい。と言うことはこの子が視線の元かもしれない。
これだけ現実的なものを出すには、相当な生命力を消耗するはずだが。
先輩あの言動で、よっぽどウザ…恨まれているんだろうか。
見た感じそう攻撃性もなさそうだし、とにかく挨拶でもしてみるか。
「こんにちわ」
生霊がペコリとお辞儀を返す。何だか友好的なので尋ねてみる。
「知人が困ってるみたいなんで、本体にお帰り願えないですかね」
口をパクパクと動かすが、喋れないようで
身振り手振りで俺に説明してくる。
「はいはい、つまりはなぜか来てしまったけど帰れないと、ちょっと待ってて下さいね」
先輩に生霊が居たことと、その特徴を説明すると会社で思い当たる若い子が居たらしい。
それに先輩は生霊自体には、まったく気付いていなかったらしい。
どうやら先輩は零感に近いようで、
これほど強力なものが身近に居ても、視線しか感じられなかったみたいだ。
じゃあ明日、先輩が会社でその子に話を聞いてみてからにしましょう。
と言う事にしてさっさと帰ろうとしたら
「まだなら、夕飯ここで食べていかんか」という命令が下されたので
先輩自炊の無駄に豪華な夕食を、腹一杯食べさせられた。
さらに「夜道の一人歩きは危ないので。家まで送迎する」とか言い出して、
また痛車に乗せられそうになったので
全力で断って、逃げるように帰った。
490 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 18:16:03 ID:dIgiHSiJ0
次の日出勤した先輩が、物知りの同僚に、彼女の特徴をそれとなく話したら
総務課にいることが分かったので、出向いて訊いて回ったところ、
彼女は2〜3日前から出社していないのだそうだ。
なんでもここ2週間ほど、体調が優れない感じだったようだ。
彼女自身のことは今年入ったばかりで、普段から自分のことは話さない子なので、
総務課の人もどういう性格なのかよく分からないらしい。
家を聞こうにも、友達らしい友達も居ないので誰も知らなかったそうだ。
会社に問い合わせても「個人情報の保護」を理由に
軽々しくは教えてくれそうにもないとのことだった。

生霊の女の子は、月夜のベランダから半分だけ顔を出してじーっ、とこっちを見ている。
「手詰まりですね。どうします、強制的に祓うこともできますが」
「いいわ。俺、もういっそこの子と生活する」
眼が飛び出そうになる。元々少しおかしいとは思っていたが、
先輩はガチで狂ってしまっていたんだろうか。
「いや、ちょwwそれはダメでしょ。ってか先輩視線しか感じられないから無理ですよ。
 ホント、そういうのは二次元だけにして下さいよ」
「いーや、一緒に生活する。もう決めたことだ」
上背のある先輩に睨まれると、元後輩の俺は逆らえない。
本当は、生霊と長期間一緒に生活すると生命力を吸い取られかねないので
意地でも止めるのが、業界のセオリーなのだが
今回は、逆らえないのもあるが何だかんだ言って先輩も寂しいんだろう、ということで渋々了承する。
ベランダを開けて、先輩の"一緒に生活したい"という望みを生霊に告げると
コクコクとうなずいていた。っていうか、なんだこの霊能者。
ま、何かあったらすぐに祓えばいいし、おかんには知られてないからいいか。
491 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 18:44:24 ID:dIgiHSiJ0
それから何事もなく2週間が経った。
先輩は視線だけの女の子と、まあ上手くやっているようだ。
ご飯を2人分作ってみたり、痛車の助手席にハート柄の座布団を敷いてみたりして
「いやぁ、帰ってきて独りじゃないっていいなぁ。
 彼女に作った分を、あとで少し食べてみると、なんと味が抜けてるんだよ!
 これって食べてくれたってことだろ、すげー嬉しいぜ!」
とか、事情を知らない人からしたら、
狂っているとしか思えないことを平気で電話で言ってくる。
生霊の本体の女の子は、無断欠勤が続いたので会社から解雇されたようだ。
先輩は"生霊が消えたら困るから、そろそろ本体探すために探偵でも雇うかぁ"
なんて本末転倒で、のん気なことを言っていた。

その夜は暇だったので、仕事後におかんに"アレ"を祓われて、
ボコボコになって療養中だった師匠の古物屋に乱入して
2人でwiiのマリカーをやっていると
先輩からメールが届く、「生霊の様子がおかしい。すぐに来い」とのことだったので
真剣勝負を途中放棄した俺にブーブー言っている師匠を放置して
原付をすっ飛ばし、先輩の寮へと向かう。
492 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 18:47:46 ID:dIgiHSiJ0
階段を急いで登り、先輩の部屋のドアを開けると
女の子が先輩を引っ張っているのが見える。
先輩は見えていないので、背中を引っ張られて浮き上がった
"SWANS"といかめしいロゴが入った黒のTシャツを不思議そうに見ている。
「おう、待ってた。これどういうことなんだ?」
「ちょっと訊いてみますね」
生霊にどういうことなのか、と訊くと"ついてこい"というジェスチャーを返される。
「ついて来て欲しいそうです」
「よし、わかった。行こう」
高校時代から、こういう時の先輩は決断が早い。
そのまま回れ右をしてドアを開け、
生霊の先導で、先輩と階段を下りて駐車場に向かうと
痛車を指差して、"開けて欲しい"というジェスチャーをする。
「これに乗り込めって言ってます」
「望むところよ!!違った…の、乗りたかったら乗ってもいいんだからね!」
もうそのネタはいいよ…心を挫かれそうになりながら、なんとか助手席に乗り込む。
後ろから顔を出した生霊がここを開けてくれ、とジェスチャーをするので
助手席の前のサイドポケットを開ける。
口を"ち"と"ず"の形にしたので、その中から市内の地図を出して
目次を開いて見せると、開けて欲しいページを指差した。
さらにそこを開き見せると、生霊が指し示したのは、なんと先輩の会社のビルだった。
先輩に会社に向かうように告げて、確認のために生霊の方を振り向くと
本体が弱っているのか、それとも痛車にやられているのか
少しずつ薄くなりだしている。
「ちょwww消えてる、女の子微妙に消えだしてる!!先輩急いで行ってあげて下さい」
「何!!それは困るな!シートベルトしたか!!掴まっとけ!!!!」
痛車が、GTRの性能をフルに使い、凄まじい勢いで走り出す。
街灯が灯った、夕方のラッシュ明けの三車線の国道を、車線変更しまくりながら、
ギリギリの間隔で他の車を抜きまくり、ギャリリリリリ!!!と摩擦音をさせながら道を曲がる。
たぶんスピードメーターは140キロ以上は指していた思う。
俺は警察に見つからないことと、事故が起こらないことだけを願って
助手席にしがみ付いていた。
493 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 18:49:44 ID:dIgiHSiJ0
何とか、何事もなくビルの前にたどり着く。
車道に横付けにした車から出た先輩が叫んだ。
「正面はロックされていて夜は開かないぞ!!どうすんだ!!」
生霊が裏に回れというジェスチャーをするので、
先輩とそっちに走る。
裏口も鍵が閉まっていたので、ノブをガチャガチャ回していると
生霊が壁抜けをして、中から裏口の鍵を回した。
カチッとした音ともに鍵が開く。
うぇwwwwそんなんありかww物体に干渉できる霊ってかなり強力なんですけどwww
ほら、無理したからまた薄くなってる、とか思っている間もなく
生霊が階段の上を指差す
「先輩!!上がりましょう!!」「おう!!」
一気に階段を駆け上がっていく、10階くらいまで上がっただろうか
体力のある俺らも、さすがに息が切れてきたころに、
屋上に繋がるドアが見えた。
鍵を開けて、2人+1体で一斉に外に飛び出る。
494 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 18:52:31 ID:dIgiHSiJ0
見渡すと、屋上の端で
スーツの女の子が脱いだ靴を揃えている所が見えた。
明らかに飛び降り自殺しようとしている。
今までの経緯的にたぶん、あの子が本体なのだろう。
眼を凝らすと、本体の子は全身蒼白で生霊よりもかなり痩せていた。
生命力を吸われるどころか楽しく生活して、少しも弱らない図太い先輩よりも
どうやら本体が、生霊を出し続けていたことで一番ダメージを受けていたようだ。
「おい!!」
先輩が大きく呼びかけると、彼女はフラフラと揺れながら振り向いた。
「あれ、Gさん…が見える、なんだ、また幻か…」
「私なんか、生きていてもしょうがないんです」
「ずっと真面目に生きてきました。だけど、今まで何もいいことが無かった。
 これからだってきっと無いんです。もう死にます…最後にあなたに会えてよかった」
何かブツブツと呟いて、
そのまま、安全フェンスに手をかけてよじ登っていく、
その時、俺の隣から先輩がいきなり消えた。いや、前方を見ると、
とんでもない速さで、彼女の方に爆走していっている。
テニス部なのに陸上部にスカウトされて掛け持ちしていた
テニス部歴代最速の100メートル10秒4台の、高2の時より、
もしかしたら速いかもしれない。
そのまま助走をつけてフェンスに飛び移り、
最上部に手をかけようとしていた彼女の細い身体に抱きついて、
無理やりフェンスから引き剥がし、その身体を抱えたまま飛び降りた。
着地に少し失敗してバランスを崩したが、彼女を守りつつ、軽く尻餅をついて座り込む。
すぐに体勢を立て直した先輩は、彼女を抱き寄せて叫んだ。
「俺が守る、守るから!!」
「だから死ぬだなんて言わないで!!」
うはww先輩wwwwwドラマみてえwwwすげー場面を見たww
とまさかの先輩の"守る"宣言に顔を真っ赤にして噴出しそうな俺の横で、
生霊は、ニコッとして本体に帰っていった。
495 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 19:37:03 ID:dIgiHSiJ0
生霊を統合して、頬に赤みがさしだした彼女を
自宅まで送って行く際に、少しずつ事情を聞くと、
G先輩は彼女から怨まれていたのではなく、慕われていたようだ。
何故か痛車を運転させられている俺の後ろで
先輩は「ごめんなさい」と繰り返す彼女を抱き寄せて
「大丈夫、大丈夫」とずっとさすっていた。

好きになったきっかけは、
早朝出勤ラッシュの駅で貧血気味で倒れそうだった彼女を
先輩がとっさに支えてあげたこと。
先輩はさすがに社会人なので、普段は痛車で出勤はしないみたいだ。
「気をつけなよ!!」
白い歯を見せて爽やかに言い放ち、
足早に去っていった皺一つない背広に、黒縁眼鏡のオールバックイケメンが
同じ会社に居ると知って、気になってしょうがなくなったようだ。
先輩はさすがに社会人なので、普段は見た目はまともみたいだ。
彼女はこの年で初恋だったらしく。どうすればいいのか分からないうちに
「私なんか…」と思いつめて生霊を放ち、
体調を崩し、自宅でずっと寝ていたそうだ。
最後のほうは、心身ともに弱り果てていて、正常な思考が出来なかったらしく、
解雇された腹いせに、会社の屋上で自殺しようと思い立ち、
社員にまぎれて会社に入り込み、社内に潜んで夜になるのを待ち
夜になったので屋上で飛び降りる準備をしていた時、
ちょうど、俺らが駆けつけたということらしい。
496 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/07/19(月) 19:38:38 ID:dIgiHSiJ0
その後、独りで自宅療養していた彼女を心配した先輩が
自作の夕飯を届けに行くという
自然流れwwwで付き合いだした2人はとても上手く行き
彼女は、先輩の痛車にもまったく臆することなく一緒に乗って、ドライブに出かけ、
本人も腐女子的なところが多分にあるので、ヲタク趣味にも一定の理解を示してくれるらしい。
そして先輩も理解者ができたためか、徐々にオフの時も行動が普通に変わりつつあるということを
元テニス部の同級生から、最近聞いた。

というか、話が上手く行き過ぎて、
人助けしたはずなのに何だか釈然としないなぁ、なんて考えていると
今回の報酬7万円が入った封筒が届いた。その中に
"私たち結婚します"という、幸せそうな二人の写真がついた葉書が入っていて
写真の後ろには、例の痛車もしっかりと写りこんでいる。
御結婚おめでとうございます。先輩、どうぞおモゲになさって下さい。
と思った。
了。
497本当にあった怖い名無し:2010/07/19(月) 22:16:26 ID:iFAPztx/0
流石に長すぎて目が滑るな。一日おきぐらいにすればいいと思うのだが
498本当にあった怖い名無し:2010/07/19(月) 23:33:39 ID:bhl/zCTA0
499本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 05:31:13 ID:aRDyOIk8P
◆7QPLwJZR/Ypf
べ、別に全然乙じゃないし
あんたが書きたいんなら、また書いてもいいんだからねっ///
500本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:17:56 ID:Z41vVy/j0
「はいもしもしこちらメリーだ。神戸、今何処にいる?
 え、横の喫茶店……ああ、分かった分かった」

「すいません、目理先輩。わざわざ呼び出しちゃって」
「お久しぶりです、目理先輩」
「ああ、久しぶりだな」
喫茶店に入った俺は、大学の後輩二人に軽く挨拶をした。
今日は、彼らに相談があるといわれたのだ。
「んで、神戸。どうした?」
「実は……ちぎりのお腹に、僕らの子供がいるんです」
照れた顔をして後輩――神戸明(あける)――は頬を緩ませた。
「あーあー、そりゃあめでてえこって」
独り身な俺への嫌がらせか、と言外にこめる。
ったく、こいつらときたらいくら事情があるからって首に揃いのスカーフなんか巻きやがって。
目の毒以外の何者でもねえっつうんだ。
「相談というのは、その……よいお産婆さんか、病院を知りませんか、ってことなんです」
「私達、『こう』だから、多分、子供も『こう』生まれてくるだろうし……。母は、亡くなってしまって……」
501本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:18:03 ID:Z41vVy/j0
落ち込んだ顔をする女をほっておいちゃあ、男が廃る。
「分かった。親父をあたってみる。決まったら、また連絡するからな」
コーヒーを飲み干すと、俺は席を立った。
「今日は風が強いからな。スカーフやら頭やらが飛んでいかねえようにしろよ」
そう告げてやると、二人は困ったように笑うのだった。
俺にジョークのセンスはあまりない。

「へえ……君の学校の後輩ですか。明くんとちぎりちゃん……なるほど、
 『黒いスカーフの少女』の登場人物は、AくんとCちゃんでしたね」
五十過ぎの男は、電話口で実に楽しげに笑っていた。
「分かりました。知り合いを二つ三つ当たってみますよ」
「ああ、頼むぜ親父」
「頼むといえば、僕もそろそろ孫の顔がみたいんですけどねえ」
「うるせえ、呪われてくたばれ」
たたきつけるようにして、俺は電話を切った。
電話の相手は、俺が知る限り世界で一番の変わり者のおっさんだ。
ガキの頃から見えないもんが見えていたせいで、都市伝説にのめりこみ、
自分を殺そうと襲ってきた『メリーさん』にプロポーズした真性のキ○ガイだ。
奴の名は目理 八雲。都市伝説の研究家として名高い……俺の実の父親である。
502本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:18:27 ID:Z41vVy/j0
「私メリーさん」
「またお前か! ……って言う程“また”じゃないな」
「そうなの。久しぶりなの」
「まあ、幸い今は休み時間だし……何してたんだ?」
「知りたいの?」
「……べ、別に、興味は無い」
「ふふふ、ツンデレなの」
「誰がやねん!?」
「むきになる所が怪しいの」
「ツンデレ疑惑ですか!? 俺疑われてますかっ!?」
「それはともかく……お義母さんが言ってたの」
「おかあさん? ああ、お袋の事か。ってお義母さん言うなっ!?
 既成事実を作るなっ!?」
「着々進行中なの」
「……何、この外堀からの埋まり具合……で、お袋が何だって?」
「愛は放置で燃え上がる、って」
「何言ってくれやがってますかマイマザーっ!?」
「実際盛り上がったみたいなの。寂しかった?」
「寂しくねえよっ!」
「……私は」
503本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:18:37 ID:Z41vVy/j0
それまで、淡々としながらも、どこか楽しげだった奴の声に、その時
初めて陰が宿ったような気がした。
 どこか楽しげで、どこか嘘くささの残った声が消え、初めて――本気で、
言葉を口にしているような――

「私は、寂しかったの」
「……」
「ずっと、電話するの、我慢してたの。我慢してたら……凄く、あなたに
 逢いたくなって……逢って、話がしたくなって……」

 どこか、受話器の向こうから聞こえてきているはずの奴の声が、遠くに
感じられる。まるで、同じ部屋の向こう側から聞こえてきているような――

「だから……」

 ――ような?

「来ちゃったの」
「…………なっ!」

 振り向けば奴がいた。……いや、まあ、別に殴りに行くつもりは無いが。
 金色に輝き流れ落ちる髪に、同じくらい輝く碧い瞳。確かに、あの時見た
人形が、人間に化けたらこんな顔なんだろうな、という、まさしく“人形のような”
美人が立っていた。満面の笑みをその顔に湛え、慈しむ様に俺の顔を見つめ。
最新型の携帯電話を手にして、黒い服に身を包んで――
 メリーさんは、そこにいた。

「私メリーさん。今――貴方の前にいるの」
504本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:19:30 ID:Z41vVy/j0
「私メリーさん。いま、地k
ゴギャギャギャメリボキゴキチュイーーーーンカランカランカラーーン
タタンタターーン……タタンタターーン……ブツッ、ツーッツーッ
505本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:19:51 ID:Z41vVy/j0
うふふ、

私メリーさん、

いま・・・、あなたの・・・、

えーっと・・・ここ、押し入れよね?

そうそう、押し入れの中にいるの・・・。

なんでそんなとこにいるのかって?

・・・そうね、なんでかしら?

ちょっと道に迷って、それから・・・。

私もよく覚えてないの・・・。

恐怖板や半角板やVIP板を転々と・・・、

あら、やだ、私ったら何を口走ってるのかしら?

ごめんなさい? いきなり現れた女の子にこんな事、つぶやかれてもあなたも迷惑でしょう?

とりあえず、私の記憶がはっきりするまで、しばらく置かせてもらえないかしら?

まずは、あの・・・お風呂、貸してくださるととても嬉しいのだけど・・・。
506本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:20:19 ID:Z41vVy/j0
もしもし?

私メリーさん、いま、あなたの部屋の前にいるの。

扉を開けてちょうだいな、

・・・ありがとう、入れてもらえなかったらどうしようかと思ったわ。

またあの狭い押し入れから・・・ううん、何でもない。

どこ行ってたのかって?

替えの下着を買いに行ってたの、

だって、せっかくお風呂に入っても・・・ねぇ?

ちょっと、 ・・・いやね、どこ見てるのよ!

そうよ、これからはくのよ・・・!

ちょっとあっち向いてて・・・!

まぁ、下はちょっと足を上げるだけで済むから、実際見られてもどうってことはないんだけど・・・。

あら? お部屋掃除したの?

気を使わせちゃったかしら、 ごめんなさいね?

まだ途中? なら私がするわよ? お世話になるんだからそれぐらい・・・あら?

これ何? DVD「淫縛の人妻〜よがり狂うセレブな若妻をよってたかって・・・(以下略 」
507本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:20:46 ID:Z41vVy/j0
もしもし?

私メリーさん、・・・あなた後ろ向いちゃったのね?

そんなに恥ずかしい? ・・・べつにあなたぐらいの独身男性ならエロの一つや二つ、当然だと思うけど・・・?

あっ、もしかして、ジャンルが恥ずかしいの?

人妻だから? それともSMジャンルだから?

「みんなでよってたかって抵抗できない新妻を」・・・

まぁ確かに、これはちょっと引く・・・あっ、ごめんなさい、そんなつもりじゃないのよっ!?

べ、別に私は気にしないってばっ、

ねっ、ねっ? じゃ、じゃあ私、お掃除引き継ぐね?
 
ゴミ箱は・・・あそこね、レシートの残りは捨てていい?

雑誌は一か所にまとめておくわね、

これでもお掃除、好きなのよ、自分の部屋は人には見せられないけどね、

そう、みんな似たようなものよ、誰だって他人に見せたくないものは・・・

あら? これ何かしら・・・、

「電動オナホール、ナナのあそこ・・・究極の感触を再現・・・ローションつき・・・」
508本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:21:41 ID:Z41vVy/j0
もしもし?

私メリーさん・・・、

ね、ねぇ、元気を出して!

落ち込む必要はないってばっ!

えっ、なにっ? 出てけって!?

まぁ、ひどい・・・、女の子をこんな真夜中にほっぽり出そうって言うの?

ねぇ、私を見て! 私があなたをバカにしたり、蔑んでるようにみえるの?

ゆっくり考えて・・・おちついて・・・。

・・・この部屋にいるのはあなたと私・・・。

この状況って・・・、これからどうなるか考えてみた?

あなたって恋人とか彼女とかは・・・。

ああ、そう、・・・ごめんなさい・・・。

いいえ、聞いたのは、これから何が起こっても怒る人はいないのかなっ、て確かめたかっただけよ・・・。

ね、もう、・・・想像できるでしょ?
   (ガバッ!!)
・・・て、きゃあああああっ!!

焦りすぎ焦りすぎ! ちょっと落ち着いてぇぇぇぇぇっ!!
509本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:22:10 ID:Z41vVy/j0
はぁ、はぁ、・・・まさかこんなに早く、展開が進行するとは思わなかったわ。

あ、そうそう、私メリーさん、

いま、あなたのカラダに抑えつけられているの。

で、ね?

じらせるようで申し訳ないんだけど、やっぱり順序とか、形式のようなものは必要だと思うの。

だってまだお互いの事、何にも知らないでしょう?

もう少し二人が共有する時間と言うものが必要だと思うの。

わかってくれる?

・・・良かった、あなたって理解力のある人ね・・・。

まだ、夜は長いし、お掃除も途中だもの。

え? 掃除はもういい?
じゃあ、お食事はどうかしら?
お料理も得意よ、材料はあるのかしら・・・え、と、ずいぶん大きな冷蔵庫・・・。
どうしたの、慌てて?
今度は糸こんにゃくでも入っているのかしら?
ウフフ、そんな物ではもうびっくりしないわ、だってホラ、冷蔵庫の中には・・・あら?
これって・・・女の子 の カ ラ ダ ・・・?
510本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:22:27 ID:Z41vVy/j0
私メリーさん

来年から中継ぎなの

敗戦処理はもうこりごりなの

511本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:23:02 ID:Z41vVy/j0
もしもし? 私メリーさん。

・・・冷蔵庫の中に人形がと思ったのだけど・・・、

やっぱりこれは人間の女の子ね・・・。

そう言えばこの街で、一人の小学生の子が行方不明にって、聞いたけど・・・。

あら? どうしたの? いいわけもしないの? 震えてるじゃない・・・、

この子を殺したのね・・・。 どうして?

あなたの趣味って幅広いのかと思ってたけど・・・そう言うことじゃないのね・・・。

単に抵抗できない女性を力づくで思い通りにする、それがあなたの快楽・・・。

自分の欲望のはけ口には無力な存在ほど都合がいい・・・そんなところなのかしら?

見れば・・・この子を殺して何日たつの? こんな冷たい所に保存して何をしてきたの?

可哀そうに・・・親御さんは今も必死でこの子を探しているでしょうの・・・ キャアッ!!

ず、ずいぶん物騒なものを持ちだしてきたわね・・・、その包丁で私を料理するつもりなのかしら?
この子を切り刻んだように・・・!
え? 自分の頬を見ろですって? 物理的に無理よ・・・あ、触ってみろってこと?
これは・・・!
そ・・・そう、私、斬りつけられたのね・・・真赤な血が私の頬を伝って来る・・・
私の血が・・・ふふ・・・、ウフフフフ・・・ウッフフフフッフフッ・・・!!
512本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:23:45 ID:Z41vVy/j0
あら? どうしたの?

私を怯えさせて・・・恐怖で指一本動かせられなくするつもりだった?

ウフフ、そんな大声を出してもだめよ・・・。

キャァッ! ・・・い、痛いっ・・・ひどいわ、

これでも痛みは感じるのよ?

あ〜あ、また血が流れてきたわ・・・、私の大事な肌をこんなにも切り刻んで・・・。

ホントに趣味の悪い人ねぇ?

さて・・・、あら?

どうして後ろに下がるの? 勝手が違うから?

御覧なさい? こんなに私の血を床に垂らして・・・ねぇ! どう責任とってくれるのぉ?
ウフフ、・・・もっとも・・・、
傷なんか無くなっちゃうんだけどね!
ほぉら、あなたが斬りつけた場所はこことここ!
そうでしょお? でも・・・どこに傷跡があるのかしらぁ?
ウフフ、人を化け物みたいに言わないで・・・、
言ったでしょう? 私メリーさん、いま・・・あなたの目の前にいるの・・・。
513本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:24:29 ID:Z41vVy/j0
ウフフ

すっかり濡れちゃったわ・・・、今度はあなたを濡らしてあげる・・・。
 えぃ!
まぁ、凄い! 勢いがいいのね?

ずい分たまってたのかしら?

そんなに大騒ぎしないの、

まだ皮一枚よ、

ほら、そんな物騒なものはいらないでしょ?

どう?

これがお互いを知るということじゃなくて?

もう、手おくれよ・・・。

勘違いしないで・・・別にあなたがこの子を殺したからじゃないのよ?

お互いの本能に従った結果でしょ?

ただ、私にとってみれば、あなたを食べてしまうことに何の躊躇いもなくなったというだけよ。

あなたが消えても悲しむ人もそんなにいなさそうね・・・。

さぁ、おとなしく私の中に入りなさい?

ゆっくり・・・優しく噛んであげる・・・!
   ガブリ!!
514本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:24:43 ID:Z41vVy/j0
もしもし、私メリーさん
自殺防止相談室にいるの…

死んじゃあ駄目よ?
あなたが生きて、私からの電話を取ってくれるから、私はこの世界に存在することができるの
あなたが電話を取ってくれる度、少しずつだけど、あなたに近づく事ができるの
今すぐは無理だけど
あなたに必ず会いに行くわ

必ずあなたのそばに行くわ…
515本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:25:35 ID:Z41vVy/j0
「もしもし私メリーさん、今〇〇駅にいるわ。うふふ」

「もしもし私メリーさん、今あなたのアパートの前にいるわ。くすくす」

「もしもし私メリーさん、今…あなたの部屋の前にいるわ」





「もしもし…私メリーさん………いま、あなたの後ろよ」

う、うわぁぁぁぁ!!

『いや〜。ありがと。今朝からしゃっくりがとまらなくてね』
「(にこ)」
『オチが分かっててもやっぱ怖いよな〜。あ、はい。依頼料の500円』
「(にぱ〜)」
『じゃあまた何かあったらお願いね〜』
「(ペコリ)」

私メリーさん。
依頼があれば、どんなしゃっくりでも止めてみせるわ。
516本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:25:59 ID:Z41vVy/j0
アハハァッ! おいしい! おいしぃわぁ!

久しぶりの人間の肉!

そうよ、忘れてた・・・たまらないこの食感・・・!

口の中に粘りつく血みどろのお肉!

ウフフ、どうしたのぉ?

そんな怖い顔してぇ・・・。

女の子にはもっと優しい顔しなきゃぁ・・・。

さぁ、もう遠慮はいらないのよ?

あなたの肌を触ってあげる・・・。

ゆっくり撫でてあげる・・・。

その頬に私の指先を添わせ、
震えるあなたの唇に優しいキスをかぶせてあげましょうか?
あらあら?堅くなっちゃって・・・。
無駄よ・・・。
もう、私に抑えつけられたら、あなたに抵抗することはできないでしょ・・・?
大人しくこの状況を楽しんで御覧なさい?
だいじょうぶ・・・そう簡単に死なないように、ゆっくりあなたを食べてあげる・・・。
517本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:26:31 ID:Z41vVy/j0
ウフフ、まだ生きてるぅ?

血が少なくなるとね、

手足を動かす気力もなくなるでしょう?

ああ、もうその手足もほとんど残ってないのよね、ごめんなさい?

どうしよう? 怖い思いをずっとさせちゃたわね?

さすがに私も満腹だし、しばらく抱いていてあげましょうか?

そんな恨めしそうな顔をしないで?

あなたの今の状況は、あなたが殺した女の子より幸せだと思うわよ?

518本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:26:36 ID:Z41vVy/j0
最後に私としてみる?

少なくともあなたがイクまでは食べないでいてあげるけど?

あら? それより命乞い?

・・・そうね、確かに私も食欲は満たしたし・・・、

え? 救急車を呼んでくれ?

もう、本当に野暮なのねぇ・・・いいわ、じゃあ一緒に警察も呼んであげる・・・。

私と一つになるより、このまま達磨のようなその姿で世間に晒しものになることを選ぶのね・・・。

仕方ない、私、帰るから、またどこかでお会いしたら、残りのカラダ食べさせてね、

それじゃ、私は押入れから失礼させてもらうわね・・・さようなら、私の美味しい人・・・。
  トルルルル・・・!
「もしもし? 警察ですか? 私メリーさん、いま二丁目の・・・」
519本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:29:11 ID:Z41vVy/j0
もしもし?私メリーさん、
お皿が一枚足りなーいーのー。
520本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:29:22 ID:Z41vVy/j0
一枚
二枚
三枚
四枚
五枚
 今なんどきでいっ
  へい六つでぃ
七枚
八枚
九枚
十枚

あるじゃん…
521本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:29:33 ID:Z41vVy/j0
うん、ちゃんと10枚あるみたいなの
522本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:30:03 ID:Z41vVy/j0
もしもし、私メリーさん
メリークリスマス
523本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:31:55 ID:Z41vVy/j0
職も無い。金も無い。彼女もいない。夢がなければ希望もない。
クリスマス死ね。そう思いながら布団に丸まって過ごしていた夜。
携帯電話に光が灯り、通話ボタンをプッシュする。
そこから告げられたのは死の宣告だった。

「もしもし、私メリーさん。いま貴方の後ろにいるの……!」

直後、背後に気配。静寂をゆらりと乱し、現れる質量。
だがこんな落ちこんでる夜に、いちいち驚く元気などありはしなかった。
携帯の通話を切って、身体から力を抜いて眠りに落ちる。

「振り向けよ」

ガスッとその背中を蹴られ、眠りの縁から蹴り出される。
そのまま脚でぐりぐりされて、仕方無しにのそのそと振り返った。
暗くしていた部屋に明りが灯り、少しの間目が眩む。

「メリークリスマス」

そこにはメリーさんがいた。サンタのコスチュームを着ていた。
赤い服を着て、白い袋を担いで、ビシッと親指を立てていた。浮かれていた。
今日を象徴する呪わしい姿に心底嫌気が差し、ケッという顔を露骨にしてやる。

「死ね。クリスマス死ね」

ボソボソと文句を言ってやると、浮かれた笑顔が怒りに歪んだ。
ギラリと光った瞳が獲物を見つけた鷹のような獰猛さを宿す。
524本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:32:00 ID:Z41vVy/j0
あ……!?」

メリメリと音を立ててメリーさんのこめかみに青筋が浮かんでいく。
フン、と鼻を鳴らして背中を向けて丸まると、その首筋をガッと掴まれた。
猫のように持ち上げられ、ぐるりとメリーの方向を向かされる。
据わった瞳をこちらに向けるメリーは、拳をゆっくりと引くと――

「メリィッ!!」
「ほぐんっ!」

ドスゥっと腹に突きたてた。体が『く』の字に曲がり、ギシギシと揺れる。
人間サンドバッグにされた身体は手を離されると情けなくへたりこんだ。
パンパンと手を叩いたメリーは、腰に手を当てると偉そうに命令してきた。

「腐ってないで買い物行ってきなさい。ケーキとシャンパン。コンビ二でいいから」
「やだ」

拒否したが、財布と携帯を投げつけられ、ガスガスと玄関の外に蹴り出される。
バタンと扉が閉じられると、冬の寒さがトレーナー上下の身体に沁みてきた。
布団にくるまって温まっていた反動で、凍りつきそうな寒さが肌に刺さる。

『急いでね〜』

扉の向こうで、上機嫌に手をヒラヒラ振ってそうな声が聞こえてくる。
深く息を吐くと、仕方無しに重い腰を上げた。
安アパートの扉を背に、金属製の階段をカンカン下りていく。
空には穴が開いたような月。ボーっと空を見上げ、ぽつりと呟く。

「……漫喫で過ごすか……」

ポケットに手を突っこみ、浮かれた夜をとぼとぼと歩いていく。
飾られた家々の電飾を見て改めて呟いた。クリスマス死ね。おしまい。
525本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 20:32:29 ID:Z41vVy/j0
「メリーが楽しむクリスマス! これが本当のメリークリスマス!」
「きゃあもうやだメリーさんったら面白ーい」
小さい頃から何度も聞かされている親父ギャグでも
酒の力は面白く感じさせるらしい、と俺はため息一つ。
「ほらほら、サキったら耳が出てるわよ」
「あははー本当だー」
酔った自分の娘の耳を整える女性と目が合って互いに苦笑いする。
この優しげな女性が、世間を騒がせた口裂け女だと、誰が信じるだろうか。
「……サキは、きっと美しく育っているのでしょうね」
俺の隣で、一人の男が呟いた。
湖月 別光(べっこう)……後輩の父親である。
「まあ、十人並よりは上ですかね」
「そうか。君が言うならそうなんだろう」
世界に名を知られた作曲家である彼は、何処か浮世離れしている。
それは多分、生来盲目であることに由来するのかもしれない。
「ところで……いつサキをもらってくれるんだい伊三くん?」
そう問われて俺は盛大に口に含んでた酒を噴き出した。

俺の名は目理伊三。
世の中に苦手な人は三人。すなわち両親とこの人である。
都市伝説と結婚するヤツなんて、何処かクレイジーなヤツばっかだ。

526本当にあった怖い名無し:2010/07/20(火) 22:18:25 ID:ULedLJ5s0
全然過疎ってないですね分かりますw

◆7QPLwJZR/Ypf氏乙!
527本当にあった怖い名無し:2010/07/21(水) 19:51:32 ID:QosEWVWV0
は?
たった二人がたま〜にしか投下しない現状が過疎ってないだと?
528本当にあった怖い名無し:2010/07/22(木) 00:01:19 ID:SlVW7Ih5O
>>527
あんたみたいなのが頻繁に来てるじゃん
529本当にあった怖い名無し:2010/07/22(木) 14:02:40 ID:ISOt3R/m0
そういう賑わいは駄目だろ
このスレって年齢層絶対低いよな。言われないとそんな事も分からないの?っていらいらすること多いわ
530赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 09:27:22 ID:AN87iq1A0
[扉(後)]

1/19
牧村陸。
はじめて見る名前だけど、お父さんが「古い友人」って言っていた人だろう。
きっと、何とか…
そう思って急いで電話した私は、聞こえてきたアナウンスに唖然とする。

「お客様がおかけになった電話番号は、現在使われておりません――」

え…??

私は慌てて電話を切り、もう一度番号を確かめながら電話をする。
しかし…
「お客様がおかけになった電話番号は――」

うそ…

私は電話を切り、脱力してしまう。
何で…?お父さん…

扉を見ると、お札はほとんど剥がされていた。
そして見ているうちに、また一枚剥がれ、扉から落ちていく。

どうすれば良いの…?
531赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 09:29:49 ID:AN87iq1A0
2/19
やっぱり、警察に?
それとも、誰か…ハナ?
…ダメ。きっと信じてくれるだろうけど、彼女まで巻き込めない。
他に誰か?親戚?学校?
携帯のメモリを見ても、誰一人、この事態を何とかできそうな人は居ない。

そうして悩んでいる間にも、扉からはお札が剥がれていく。
あと…5枚しかないよ!?
私も連れて行かれちゃうの?
連れて行かれて…どうなるの?

悪い事しか考えられない。
…窓から逃げる?でもここは2階で、飛び移れそうなところも無い。

電話。
もう一度、電話だ。本当に番号が違っていたのかも――
と思ったとき、持っていた電話が着信を告げる。

こんなときに、誰?
番号は…知らない番号だ。メモの番号とも違う。
いつもなら知らない番号には出ないけど――今はもう、誰でもいい!
私「はい、もしもし?」
私はそう思って電話に出る。
声「…もしもし?」
するとそこから聞こえてきたのは、少ししわがれた声だった。
532赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 09:32:32 ID:AN87iq1A0
3/19
私「あの――」
声「今、陸に電話したね?」
私「え?」
陸…?…あ!
私「はい、しました!あの、私、今――」
声「…何だか、普通じゃない場所に居るね」
私「え?…あ、はい、でも、あの2人…あ!あと2枚!」

扉を見ると、残りのお札が残り2枚になっていた。

声「2枚?…あぁ、そういうこと…」
私「すみません、あの、もう、時間が…」
声「それじゃ、少し静かにしていてくれるかい?」
私「…静かに?」
声「そう。一言も喋らず、静かに。助かりたいなら、すぐに」
私「…はい」

なんだか知らないけど、私は言われるまま口を閉ざした。
今はもう、この電話の相手…声の感じからは、お婆さんだ。この人に頼るしかない――。
533赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 09:36:41 ID:AN87iq1A0
4/19
――
一枚ずつ札を剥がし、残り2枚…といったところで、私は異変を感じる。

気のせいとも思ったけど、この感じは間違いない。
なぜここで、あれが?
あの…あの時の学生たちから見えたものと同じ、「耳」が?

私「…藤木」
横で何もせずに見ている藤木に、声を掛ける。

藤木「はい?全部剥がれました?」
私「…剥がれなくなったわ」
藤木「へ?」

私は扉から手を離し、少し下がる。
私「あなたでも分かるでしょう?中に、何か…出てきたわ」
藤木「中に…?」

そう言って、藤木が扉に視線を向ける。
私「何か、あの子以外の…別のものを感じるでしょう?」
藤木「んー…。あぁ、何か…なんだ?これ」
私「分かった?」
藤木「どこから沸いて出たんだ?これ…」
534赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 09:39:27 ID:AN87iq1A0
5/19
私「さぁね…」
恐らく、電話だ。微かだったけど、それらしい着信音も聞こえた。

私「これじゃ、私には無理ね」
藤木「無理って…開けられないか?」
私「外ならまだしも、部屋の中に居られたら、無理よ」
藤木「うーん…そういうものか」
残念そうにする藤木。

藤木「ま、出直せば良いか…。ずっと閉じこもっている訳でもないだろ」
私「…」
出直す、か。
本当に、何も考えていない男…。

私「じゃあ…汐崎を車までお願い」
藤木「へいへい」
私「私は、少し調べてみるわ」
藤木「ん…?中の奴を?」
私「そう。気になるでしょ?」
藤木「確かになぁ…。それじゃ、開いたら頼むぜ?」
私「…分かったから、行きなさい」

了解、と言って階段を降りていく藤木。
私はそれを見送り、再び扉に近付いた。
535赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 09:42:14 ID:AN87iq1A0
6/19
――
声「これで、よっぽどのことが無い限りは平気だよ」
私が黙ってから数秒後、電話の人が言う。

私「え…何かしたんですか?」
声「ちょっとね。説明は面倒だから、しないよ」

本当に?と思い、扉を見ると、お札は2枚のままだ。
しばらく見守ってみても、剥がれる気配は無い。
私「あの…ありがとうございます!平気みたいです!」
私は携帯を持ったまま、ペコリと頭を下げる。
声「はいはい、どういたしまして」
何だか変わったお婆さんだけど、助かった――
…って、まだ名前言ってないや。

私「あの、すみません、まだお名前を…私、汐崎真奈美っていいます」
声「汐崎…」
私「はい。真奈美です」
声「なるほどねぇ…。私はシズエだよ。牧村シズエ。あんたが電話した、陸の祖母さ」
私「へぇ…」
536赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 09:45:43 ID:AN87iq1A0
7/19
牧村「陸が個人的に使っていた電話は、もう無くてね…」
私「はぁ…」
よく分からないけど、頷く。
何で使ってない番号に電話したのに、私に電話を返せたんだろ?
…ま、いっか。

牧村「陸はもう、2年前に亡くなっているけど…何か用があったのかい?」
私「え…そうなんですかぁ…」
お孫さんを先に亡くしちゃったんだ…可哀想なお婆ちゃん。
私「用事っていうか、父がここに――」

声「…真奈美ちゃん?」

牧村さんに父のことを話そうとしたとき、扉の向こうから、私を呼ぶ声が聞こえてくる。
…高城さんの声だ。

私「…何ですか?」
一瞬迷ったけど、もう平気だという安心感と、相手が高城さんだということで、私は返事をする。

高城「その…電話の相手は、誰?」

うわっ…バレてるの?
537赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 09:49:40 ID:AN87iq1A0
8/19
私「…知りません」
私は通話中の携帯を机の上に置き、扉の方に向かう。

高城「そう…」
信じたのか信じてないのか、黙る高城さん。
この人とは、言い争いとかしたくないな…。

私「あの、お父さんは…?」
私は扉越しに、恐る恐る聞いてみる。
高城「本部の方に連れて行くわ」
私「どうしても…?」
高城「どうしても」
私「…」

頑として、引いてくれそうに無い。
でも、お父さんが連れて行かれるのはイヤ。絶対に…イヤ。
私は、連れて行かれる=死、と考えている。

私「私…お父さんしか居ないんです」
高城「…」
私「私、小さい頃にお母さんが亡くなって…それ以来、お父さんが1人で、私を育ててくれたんです」
538赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 09:56:42 ID:AN87iq1A0
9/19
情に訴えるというのも何だか…だけど、なりふり構っていられない。
それに、高城さんなら分かってくれる…何となく、そんな気持ちもあった。

私は、お父さんのことを話す。
ずっと働き通しで、1人で苦労してきたお父さん。
そんなお父さんに、私がしてあげたいこと。
これからのこと。将来のこと。私の幸せを、一番喜んでくれるお父さんのために――

私「――分かってください…」
高城「…」
私「お願いします…!」
私は扉に向かって頭を下げる。

しかし…
高城「…無理よ」
返ってきた返事は、無情なものだった。

私「そんな…」
高城「もう無理なのよ、真奈美ちゃん。連れて行かれる事は、諦めなさい」
私「…イヤ」
高城「聞き分けなさい。もう――」
私「イヤです!」
私はそう叫ぶと、ドアノブを掴み、思いっきり扉を開け放った。
539赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 09:59:22 ID:AN87iq1A0
10/19
扉を開けると、目の前には驚いた顔をした高城さんが居た。
…あの藤木って男は居ない。

私はそのまま彼女に詰め寄る。
私「お願いします!本部長何でしょう?それくらいの事――」
高城「――バカ…!」

高城さんがそう言い放つと同時に、バシッ!と乾いた音がする。

それは、私の頬が叩かれた音だった。
そしてすぐさま、私は部屋の中に突き飛ばされ、再び扉が閉められる。

何?何で…?
部屋の床に尻餅を付いたまま、少し呆けてしまう。
…頬が痛い。叩かれた所がジンジンと痛くなってきて…少し涙が出てくる。

高城「何を考えているの!?」
閉められた扉の向こうから、高城さんの声が聞こえてくる。
高城「今、あなたがここから出てきてどうするの?少しは考えなさい!」

私「だっ…」
だって、考えろって言われたって、そんな急に無理だもん…!
そう言いたかったけど、言葉にならない。
540赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 10:04:59 ID:AN87iq1A0
11/19
高城「あなたのお父さんが、なぜ2人でここに逃げ込まなかったか、分からないの?」
私「そんなの…分からない…もん」
涙が溢れてきて、扉がぼやけて見える。
高城「何で私たちに素直に従ったのか、自分で考えてみなさい!」
私「そん、なの…」
この状況で、そんなに考えられない。叩かれて怒られて…涙が止まらない。

私「連れて…っちゃ、ヤダよぉ…」
扉越しに、泣きながら懇願する。
高城「…」
無言の高城さん。

私「もう…ダメ、なの…?」
高城「…こうなってしまったら、無理なの…遅いのよ」
私「でも、だって…連れて行かれたら、お父さんも――」
「殺されちゃう」と言おうとして、言葉に詰まる。
そんな言葉、口にしたくない。
言ってしまったら、現実になりそうで怖い。

高城「…大丈夫、そうはならないわ」
高城さんが言う。
私「ほんと…?」

高城「本当よ。…私が、お父さんを守るから」
541赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 10:07:56 ID:AN87iq1A0
12/19
私「高城さんが…?」
高城「えぇ。約束するわ」

私「…」
意外な――でも、どこか期待した言葉を聞き、私はまた、不思議な気持ちになる。
高城「お父さんを、無事に帰れるようにするわ。…絶対に」
言葉に力強さを感じる。
再び扉を開けて高城さんの顔を見たくなるけど、まだ少しヒリヒリする頬の痛みに、思いとどまる。

高城「だからもう、泣かないで…ね?」
私「…はい」
高城「よかった…良い子ね」

「良い子」と言われて、胸がカッと熱くなる。
何だか照れ臭くて、恥ずかしい気持ち。
顔も赤くなっているかもしれない。

高城「真奈美ちゃん、これ、受け取ってくれる?」
私「はい…?」
何だろうと思い扉の方を見ていると、扉の下の隙間から何かが差し出された。

高城「私の名刺…。裏に、携帯番号を書いておいたわ」
542赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 10:11:12 ID:AN87iq1A0
13/19
差し出された名刺を受け取り、裏を見てみると、確かに携帯番号らしきものが書いてある。

高城「落ち着いたら電話してくれる?…お父さんの状況とか、話したいから」
私「はい…!」
やった!ちょっと希望が…

…あ。

私「でも、落ち着くって…私、どうしたらいいのか…」
これから1人で、どうすれば良いのか分からない。
またあの藤木という男が、私のことを連れに来るかもしれない。

高城「…電話の人に、相談しなさい」

電話――あ、そうか。牧村さんだ。
私は振り向いて、机に置いたままの携帯を見る。

高城「きっと力になってくれるはずよ…。ダメでも、何とかお願いしなさい」
私「はい」
高城「藤木には手を出さないように、私から言っておくわ。安心して…」
私「はい!」
高城「ふふ…良い返事ね」
私「エヘヘ…」
少し笑みが漏れる。
543赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 10:13:46 ID:AN87iq1A0
14/19
高城「それじゃ…あんまり遅いと藤木が戻ってくるから、もう行くわね」
私「はい…あの――」
私は扉に近寄り、お礼を言う。
私「ありがとうございます。それと…お父さんのこと、お願いします」

高城「任せて。約束は…守るから」
私「…お願いします」
扉から数歩下がり、ペコリと頭を下げる。

高城「真奈美ちゃん」
私「はい…?」
少し真剣な口調になる高城さん。
高城「辛いでしょうけど、頑張って…。負けちゃダメよ。気持ちで負けたらダメ…」
私「…はい」

高城「私も、負けないから――」

最後にそう言い残し、高城さんは帰っていった。


544赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 10:19:05 ID:AN87iq1A0
15/19
――高城さんが帰った後、部屋の中で、私は牧村さんに相談をする。

まず今の状況を説明…と思ったけど、全て分かっているみたいで、私からは何も言う必要はなかった。
「ずっと聞いていた」ということらしい。
往来会についても何やら知っているようで、その説明も必要なかった。

とりあえず、一度会いたかったのでその旨伝えると、牧村さんはあまり遠出ができないそうなので、訪ねてきてほしいと言われる。

私は勿論そのつもりだったので了解すると、明日の夕方、迎えの人――雨月、鮎川という2人――を寄こしてくれると言ってくれた。

今後の事も決まり、私はお父さんの部屋から出る。

そして居間に降りて…そこを片付ける。
出していた湯飲みなんかは、高城さんが台所まで運んでおいてくれたみたいだった。

私はそこで、洗い物の続きをする。
今日の、夕飯の洗い物。お父さんと2人で食べていた、晩御飯の――

…もう泣かないと思ったけど、また少し、涙が溢れてきた。
545赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 10:22:11 ID:AN87iq1A0
16/19
――
帰りの車内。

行きとは、まったく心境が変わっていた。

大切に思えるものがあって、自分にできることだってあるのに…なんで諦めていたのだろう。
あの子のためにも――彼のためにも、頑張らないと。
それがきっと、自分のためになるのよ。それくらいのこと、分かっていなかったなんてね…。

頬を叩いて、突き飛ばして…説教までして。
自分に、まだそんな感情的な部分があるなんて、思いもしなかった。

藤木「汐崎を本部まで届けたら、また行こうかなぁ…」
隣で藤木が呟く。
…まずは、この男を止めないと。

私「藤木、もうあの子には関わらない方がいいわよ」
藤木「え?」
なぜ?という顔でこちらを見る藤木。
私「忠告よ。あなたにとって、良い事は1つもないわ」
546赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 10:27:15 ID:AN87iq1A0
17/19
藤木「いやぁ…口出し無用ですよ。真奈美ちゃんについては、自分に全て任されていますから」
偉そうに言う藤木。何を言わせても、相手を不快にさせる男だ。

私「それが問題なの。分からないの?」
藤木「…何がです?」

私「副会長は、あの子を連れてくることに関して、あなたに任せると言ったのよ」
藤木「そうですね」
私「あの子を連れ出したら、それはあなたの責任になるわね?」
藤木「まぁ…そうですが?」
私「実際に、あの子を連れ帰ったらどうなると思う?」
藤木「自分のお手柄ですかねぇ…」
ニヤニヤする藤木。
頭の悪さも、ここまでくると才能かもしれない。

私「バカね…。あの子、副会長のお気に入りよ?すぐに取り上げられるでしょうね」
藤木「…お気に入り?」
私「そう。そうなったら、あなたは指一本触れられないわ」
藤木「…」
私「でも、その後にあの子に何かあったら…それは、あの子を連れ出したあなたの責任になるの」
藤木「なっ…」

私「あなた、責任だけ負わされるのよ」
547赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 10:30:00 ID:AN87iq1A0
18/19
藤木「なんでそうなるんだよ?」
藤木の口調が変わる。
私「副会長は、連れて来いって言った?」
藤木「確かに言ってないが…」

私「会の人間である汐崎と違って、真奈美ちゃんは普通の高校生よ?失踪すれば、当然騒ぎになるわ」
藤木「…」
私「彼女を連れ出したのは誰かというと…あなたになるわね。実際には、何も得られないのに。
…あなた、副会長にいいように使われているのねぇ」
藤木「っざけやがって…!」
そう良いながら、彼の顔はみるみる赤くなっていく。

私「あなたも社会人なのだから、責任の所在には気を付けたほうが良いわよ?」
藤木「クソッ…」
悔しそうに、拳で自分の膝を叩く藤木。
私「…元上司からの忠告よ。上手くやりなさいね、支部長さん」
ニコリと微笑んで、優しく言っておく。

藤木「あ?あぁ…。ありがとよ…」
私「…いいのよ」
お礼を言われてもまったく嬉しくない。
548赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/07/23(金) 10:34:17 ID:AN87iq1A0
19/19
藤木「俺をハメる気だったのか…?あの爺さん」
私「それは無いわよ」
藤木「…そうか」
私「あわよくば、ってとこでしょうね」
藤木「畜生…そうはいくかよ。ジジイが…」

そうなりそうだったクセに、よく言う。
本当に、愚かな男…。

何が愚かって、ハメられそうになったことじゃない。
今、私にこうやって良いように言い包められていることでもない。

この場で暴言を吐いていることだ。

車の後部座席に乗っている私たち。
トランクには、気絶した後、運びやすいように眠らされている汐崎。
そして…運転席には、副会長の部下。
暗い目をしている、この部下――彼を通して、この会話も全て副会長に伝わるだろう。
そんなことも考えず、好き勝手に話す藤木。

…まぁ、彼がどうなろうと、私の知ったことじゃない。
私にはもっと、大切な――しなければならない事が、沢山できたから…。


549本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 10:36:28 ID:zP8FKUdc0
赤緑氏クオリティ高洲クリニック
いつも乙です
550本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:04:33 ID:9BFCS2nk0
メリーさん



大切にしていたあの人形
引っ越しするから捨てようかしら
新しい人生を一人で何とか生きるため
あなたにはもう頼らない 強くなりたいの
ごめんねメリー
あなたと過ごした10年間
寝るときもご飯を食べるときも一緒だった10年間
さようなら、さようなら
あたしはメリーをゴミ捨て場に捨てたのよ
引っ越し先で荷物を解き
疲れて寝ようとしたころに
ケータイ鳴って出てみると
あたしメリーさんという声が

もしもし、あたしメリーさん 今、ゴミ捨て場にいるの これからあなたの部屋へ行くわ 寂しいから

きゃぁ、人形が喋ってる あたしの部屋へ来るという
でも、自分でさん付けするやつたいてい阿呆
けれど阿呆といえども許さない
あたしの旅立ちを邪魔するというのなら
メリーといえども許さない
そしたらもいちど電話が鳴った
551本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:04:40 ID:9BFCS2nk0
もしもし、あたしメリーさん 今、長い階段をのぼっているの 人形にはこの段差がすごく疲れる ふうふう

もしもし、あたしメリーさん 今、歩道を歩いているの 右にある車道は夜中なのに本当に交通量が多くて、排気ガスが苦しいの ライトもまぶしい!

もしもし、あたしメリーさん 今、公園を歩いているの 平日の深夜なのにカップルが多くて一人で歩くのが恥ずかしいよ

もしもし、あたしメリーさん 今、裏のタバコ屋にいるの もうすぐ会えるね

もしもし、あたしメリーさん 今、ドアの前にいるの

もしもし、あたしメリーさん 今、お前の後ろにいるの

あたしは振り返った 
どうやって入ってきたのかはわからないけれど
そこには薄汚れて泣きべそをかいているメリーがいた
なんだかメリーが弱った子猫のように見え、かわいそうで
ここまで長い道のりを一人でやってきたことがいじらしくて
それを思うとなんだかちょっぴりあたしが泣きそうで
捨てたことを後悔しつつ、もう一度やり直そうかなんて考えてもみた
その時、安心して気が緩んだのか、メリーが倒れた
メリィィィーーーー!!
あたしは両腕でメリーを抱いた
でもメリーは目を覚ますこともなく、体は冷たくなっていった

なのでゴミ捨て場に捨てたらまたすぐ電話が鳴って本当にもう鬱陶しいです
552本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:04:59 ID:9BFCS2nk0
メリーさん「私、メリーさん。この七草粥…だっけ?なんか地味に美味いよ〜♪」
553本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:05:13 ID:9BFCS2nk0
メリーさん「私、メリーさん。実は私……35歳だったの」

554本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:05:28 ID:9BFCS2nk0
メリーさん「私、メリーさん。成人式で調子にのって暴れてた奴等を全員タタんじまったの」
555本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:05:57 ID:9BFCS2nk0
電話を取るたび、忍び寄ってくるその呪い。
忍び寄るメリーさんの恐怖に男は晒されていた。

「私、メリーさん。いま貴方の家の扉の前にいるの」

ガンガンと鉄製の扉を叩く音が響く。
まるで殺意が叩きつけられるような音が耳に障る。

今日ここで死ぬ。殺される。男は己の運命を悟り、歯軋りした。
そうか。それもいいだろう。昔人形を捨てた自分にも非はある。
だが――

扉を叩く音が止み、静寂の後、電話が鳴る。
最後の通話。最期の瞬間。

「私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」

556本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:06:04 ID:9BFCS2nk0
――ただでは死なん!!
男は素早く太刀を抜くと己の腹に突き刺した!!
研ぎ澄まされた刃は男の身体を貫通し、その背後の『何か』をも貫く!!
火によって鍛えられた優れた太刀には魔を滅する力が宿る。ひとたまりもあるまい。

呪われた人形を確かに貫いた感触に、男は口元から鮮血を垂らしながらも笑みを浮かべた。
我が事成れり。剣に捧げた生涯の果てが呪いとの対峙とは業が深いが、斬り伏せることができた。
悔いはない――。

太刀を刺した腹は熱を帯び、頭から血の気は失せ、口から落ちる鮮血は量を増していく。
男が失われていく己が命を冷静に看取っていると、その背後から声が聞こえた。

「ひどいよう……おにいちゃん……めりぃ、ただ、あそびたかっただけなのに……」

ぽろぽろと清らかな涙を流す少女の声に、男の瞳が見開かれる。
なんということだ。まさか。

「甘えんぼうタイプのメリーさんとは……無念……!」

失血と失意に男が床に倒れこむ。広がっていく血だまり。霞んでいく視界。
その先で、崩れ行く西洋人形が小さな手を伸ばしていた。手を掴み、瞼を閉じる。

ああ、どうして殺すことばかりを考えていたのか。これこそが剣に生きた己の業なのか。
お人形のような少女とキャッキャウフフするIFを思い浮かべながら、男の生涯は幕を閉じた。(完)
557本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:06:20 ID:9BFCS2nk0
メリーさん「私、メリーさん。今から教習所に行ってくるの」
558本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:06:36 ID:9BFCS2nk0
メ「私、メリーさん。いま教官の後ろにいるの」
教「ちょっとメリーちゃん、前、前!」
559本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:09:09 ID:9BFCS2nk0
「私、メリーさん。今、あなたの真後ろにいるの
 あ、振り返ってもダメだよう。ちゃんと視線が届かない死角に移動するから♪
 常に後ろにいるからよろしくね」
560本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:09:27 ID:9BFCS2nk0
私メリーさん、今日は天気がいいの

私メリーさん、今日が約束の日なの

私メリーさん、今から君に会いに行くの

私メリーさん、これから君に会いに行くの

私メリーさん、君に会うシュミレーションをしてるの

私メリーさん、苦笑いなんてさせないの

私メリーさん、今東京は渋滞なの

私メリーさん、今スクーターに乗っているの

私メリーさん、君のところまで一気にワープしちゃうの

私メリーさん、今ベランダに居るの

私メリーさん、トマトが可愛いの

私メリーさん、できる限りのおしゃれをしてるの

私メリーさん、お気に入りのマスカラをつけているの

私メリーさん、恋愛って素敵なものね
561本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:09:56 ID:9BFCS2nk0
「……ねえ」
 僕は背後に立つ彼女の方を振り返った。が――
「……久しぶりに聞くけど……なんで顔見せてくれないの?」
 ――既に、視線の先には彼女はいない。相変わらず背後に立ったまま
……いや、そう表現するのは正確じゃない。振り返った俺の背後へと、一瞬で移動
した、と言うべきかな。
「だって、私メリーさんなの」
「いや、それは何度も聞いたし、わかってるんだけどさ……」
「種族的本能なの?」
「……だから、俺に訊かれても」
 彼女と知り合ってから、もう随分経った。出会いは、彼女の名前を見れば
わかるように、不意にかかってきた彼女からの電話。幸い、殺った殺られた
の類のメリーさんではなかった事もあり、何度か話をしている内に意気投合。
今では、たまに一緒に連れ立って出かけるくらいに仲良くなった。
 一般的な価値観で言えば……まあ、その……付き合ってる、と言えるくらい
の関係には、恐らくなったと言えるのではないかと思う。
 ただ、僕たちの交際には、一つの大きな問題があった。
「……顔見た事無いのに、付き合ってるって言えるのかなぁ」
 そう。彼女の顔を、僕は見たことが無い。
 彼女は常に僕の背後に位置し続け、彼女の正面からは無論、横顔すらも
僕は見た事が無いのだ。
562本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:10:20 ID:9BFCS2nk0
 鏡などで覗き見ようとしても無駄に終わった。とにかく、視線が通る場所に、
彼女はいてくれない。先に彼女自身が述べたように、それは種族的本能と
でも言うべき、徹底された挙動だった。
「私メリーさん。貴方の事は好きなの。二人はラブラブ、なの。多分」
「……じゃあ、顔見せて?」
「それは……恥ずかしいの」
「……なんだかなぁ」
 幸い、僕の背後に立つ彼女の姿を見た友人によると、彼女はモデルのような
美人らしいので、その点での心配はあまりしていない。とはいえ……
「……なんだかなぁ」
「ごめんなさいなの……メリーさん、メリーさんだから……どうしようもないの」
「ああ、うん……君が悪いわけじゃないってのはわかってるよ」
 背後から、何やら落ち込んだような雰囲気が伝わってくる。どうやら、
彼女も彼女なりに、僕に顔を見せられない事を気に病んでるらしい。
「……ま、こんな風変わりな付き合い方も、面白いっちゃ面白いしね」
 彼女を元気付ける為に言ったその言葉も、全くの嘘ってわけじゃない。
実際、こんな関係でも、彼女といるとそれなりに……いや、かなり楽しい。
それに、何よりも――
「ほんとなの!? 私、嬉しいの!」
 
563本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:10:24 ID:9BFCS2nk0
背後から、柔らかい感触が僕の背中に押し付けられる。
 僕は、ちょっとだけ顔が赤くなるのを感じながら、手を伸ばし、彼女の頭を撫でた。
 ――そう、彼女はいる。僕の背後に、確かに。
「ん……」
 彼女が嬉しそうに瞳を閉じ、僕の掌を感じているような、そんな気配を背後に感じる。
「……まあ、これで十分なんだよな、僕は」
「ん? 何か言ったの?」
「ううん、なんでも」
 ちょっと風変わりで、ちょっと面倒だけど、とても楽しい彼女との日々。
 なんだかんだで、このままこんな毎日が続いていけば、それだけで僕は満足
できるんじゃないかと、そう思う。
「じゃあ、そろそろ行こうよ。映画始まっちゃう」
「わかったの!」
 そして、僕らは連れ立って……正確に言えば、彼女を背後に連れて、駆け出した。
 顔を正面から見るのは、いつの日かのお楽しみって事で、今はこのまま、
彼女と一緒に毎日を過ごしていこう。
 ……けど、来るのかなぁ、見れる日?
                                        終わ
564本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:10:52 ID:9BFCS2nk0
「もしもし、私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」
電話口からそう聞こえると同時に、とあるマンションの一室に彼は出た。
「久しぶりだな、じんめんけん」
「だーかーらー、俺は仁目 権(じんめ けん)だっつってんだろうが!」
30をやや越えたくらいに見える男が、汚れたソファから起き上がる。
「んで、今日は何の用だよ本職の刑事殿が。俺は風邪ひいてんだ……えっきし」
男はくしゃみをして、鼻をすする。
「成程な……てめえ、この様子じゃあニュースも見てねえし外にも出てねえか」
汚れきった室内を見ながら、ため息をこぼした。
「あ? そりゃあどういうこった」
パサリ、と新聞を投げ出した。
「今月に入ってから三件も猟奇殺人が起きてやがる。
 現場にはいつも、どの犬のものとも一致しない犬の毛が残されている。
 警察犬は、現場に入れた瞬間、気を失っちまう」
そこまで聞くと、男は薄汚れたコートをまとった。
「てめえの眷属のことはきっちりてめえが管理しやがれ!」
「うるせえ伊三! 八雲さんの子じゃなきゃあ食い殺してやる!」
がるると牙を剥きながら、男は部屋を出た。
「……やれやれ。戸締りはしてけよ、無用心だな」
そう呟きつつ、俺は今日中にもう一個死体があがって、それでこの事件は終わるだろうと思った。

あいつの名は『仁目 権(じんめ けん)』
人の町に下りてきたころ、変化に失敗して人間の顔をした犬になっていたところを、
俺の親父に助けられた犬神である。
……あいつがいるから、この辺りに野良犬は、いない。
565本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:11:22 ID:9BFCS2nk0


506 創る名無しに見る名無し sage 2009/01/30(金) 23:15:27 ID:q7NfeRoW
メリーさん「私、メリーさん。一番好きなテレビ番組はタモリ倶楽部なの」

566本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:11:34 ID:9BFCS2nk0
メリーさんは地図マニアだったり鉄オタだったり、トマソン物件鑑賞に
はまってた時期があったりするのか

567本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:11:47 ID:9BFCS2nk0
メリーさん「私メリーさん。空耳アワーがあればそれでいいの」
568本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:12:01 ID:9BFCS2nk0
メリーさん「そういうわけでリモコンは私が預かったの。深夜に不意にスイッチを入れたりするの」
569本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:12:13 ID:9BFCS2nk0
ばあちゃん「というわけで、テレビのリモコンがなくなったり、深夜不意に
テレビがついたりするのは、全部メリーさんの仕業なそうな」
570本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:13:16 ID:9BFCS2nk0
私は困惑しました。
いや、困惑したというよりは、まったく理解の域を超えていたのですが……。
ありのまま今、起こった事を話します。
先程、つまりは夜も更け切り、日付が変わった頃の話です。
長風呂によって本日分の仕事による汗と疲れを流し終えた私は、慣例に倣って冷たいお茶を一飲みしていました。
さて、これからどうしよう。
明日にもまた仕事があるけれど、今すぐに寝てしまうのは深夜という一日のうち最も落ち着ける時間を無駄にしてしまうんじゃないのか。
私はそのように考え、ストレッチを行いつつ室内を見渡してみたのです。
そうそう、私事ではありますが、就寝一時間前のストレッチは心地よい眠りを齎すエッセンスともなりえるんですよ。
知っていましたか?
……そうですか、フフ。失敬。
話を戻しましょう。
室内は、まるで静寂そのものでした。
当然ですよ。
深夜なので近隣住宅が騒音を立てないのは勿論のこととして、
この室内はというと、今しがた入浴を終えた私が立ち入ったばかりなのですから。
オーディオはもとより、テレビやラジオ。それらばかりか蛍光灯すらも。
つまり、室内には人の気そのものが無かったと言う方がより適確なのでしょうか。
部屋に踏み行った私がしたことといえば、せいぜい蛍光灯のスイッチを入れた程度のことです。
就寝前にテレビやオーディオなどで神経を高ぶらせてしまうと、せっかく築き上げてきたリラックスムードが台無しですからね。
571本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 15:13:28 ID:9BFCS2nk0
心地良い眠り。
やたらとゴミったらしい日々の中において、これほど安らげる瞬間はないものでして。
だからこそ気を遣っているのですよ、私は。
おっと、またも話が逸れてしまいましたね。フフ、失敬失敬。
ともかく、暫くの間、無音という室内の空気を愉しんでいた私でしたが……突然。
そう、突然!
カチリとスイッチの入るような音がしたかと思うと、独特のブゥーンという音が次ぎ、直後、テレビに光が灯りました。
何が起こったんだろう。
私が今一つ事態を飲み込めない間に、テレビからは下品を匂わせるBGMと、
それに見合うような深夜番組のオープニング――数人がケツを振るものですが――が流れ始めました。
なぜテレビが?
私はリモコンを手にしてはいない。
となると、電波の乱れか何か?
しかし私は、電化製品の類いを身に着けてはおりませんでした。
そもそも私は風呂上がりである為、身を覆うための衣服すらも身に着けてはいません。
まるで無防備。丸出し。
その事実が理解不能な現状と相まって、重みを増した空気が音を立てつつ私を襲ってくるような。
妙な錯覚すらも覚えてしまいました。
なんとかこの空気を跳ね返さなくては。
正体不明の何かに立ち向かうべくと私は……え、長い?
深夜に電話を掛けてくるな?
そんな冷たいこと言わないでくださいよ、おばあちゃん。
私は昔からオバケの類いが苦手なものでして。
ええと……はい……はい……。
全部、メリーさんのせい?
ちょっと待ってください。
そうなると私は、どのような対策を練ればいいのでしょうか?
ニンニク? 十字架? ポマード? ベッコウアメ?
あ、ちょっと! ちょっと待っ――。
ガチャン。
572本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 16:43:30 ID:Zq0YmROY0
赤緑乙!
573本当にあった怖い名無し:2010/07/23(金) 18:14:28 ID:3wbX0eXm0
高速スクロール発動
574本当にあった怖い名無し:2010/07/24(土) 01:38:40 ID:q9uSdNpEO
赤緑乙です
575本当にあった怖い名無し:2010/07/24(土) 09:23:46 ID:sDtfRIVr0
メリーさんスクロールしてたら赤緑に気づかなかったw
576本当にあった怖い名無し:2010/07/24(土) 19:47:29 ID:Lgb9FZiy0
正直メリーさん面白いわ
荒らしだろうがなんだろうが面白い話が読めれば良いんで、勝手に喧嘩しとけよw
577本当にあった怖い名無し:2010/07/25(日) 05:28:35 ID:nUulI0MP0
過疎ってるから落とせと言いつつ、コピペ投下で維持する
もしかして最高峰のツンデレなの?と思い始めた
書き込みがある限りはスレ継続されるじゃんね。
578本当にあった怖い名無し:2010/07/25(日) 14:24:21 ID:TjOQOPrF0
投下するタイミング見てくれ
作者が話を投下した直後に投下してる
どういう事か分かるよな?
579本当にあった怖い名無し:2010/07/26(月) 00:18:32 ID:QjLE81EO0
とりあえず赤緑よかメリーの方が面白いと感じるオレは異端?
580本当にあった怖い名無し:2010/07/26(月) 00:26:32 ID:GbeO2uDh0
どうでもいいこと質問すんな。
581本当にあった怖い名無し:2010/07/29(木) 11:40:54 ID:aOVF4+kp0


同一モチーフでまとめるのも十分アリと思うが、ネンチャックは荒らし目的でやってるから残念な感じだね





・・・と思ってたんだけど、よく考えるとここでいうシリーズ物って霊感持ちにまつわる幾つもの話を指してた件
保守的に百物語シリーズとか肝試しシリーズとか投下しようかとも思ったけどやめたw
582本当にあった怖い名無し:2010/07/29(木) 11:46:48 ID:aOVF4+kp0
テンプレに「ここでいうシリーズ物とは霊感持ちにまつわる幾つもの話です」って書いといたほうがいいんじゃないかな?

ネンチャックを防ぐ為とかじゃなくて、私みたいなカン違いを防ぐ為にね
583本当にあった怖い名無し:2010/07/29(木) 14:56:23 ID:s9XcVCTe0
いちいち煽りいれてまでぶり返す奴は信用できない
584本当にあった怖い名無し:2010/07/30(金) 23:21:00 ID:0e8perAD0
ぶり返すというか、繰り返すというか・・・^^;
誰かが投下したら発動される呪いみたいなものなんです><
585本当にあった怖い名無し:2010/07/30(金) 23:26:53 ID:lENIhXw40
私みたいなカン違いを防ぐ為にね(キリッ
586本当にあった怖い名無し:2010/07/31(土) 00:16:19 ID:oyxroOEu0
>>197
テメェが失せろクズ野郎。
そう思ってる人間もここにいるから。
>>197-199
想像力の無い奴程軽く言いたいこと言えるもんだ。
自分と他人の、それから言うとやるの違いも分からねぇらしいからな。
587本当にあった怖い名無し:2010/07/31(土) 14:08:32 ID:1pVwyx8Y0
藪から棒だな…
588本当にあった怖い名無し:2010/08/01(日) 12:26:30 ID:Zdn4Pz6i0
>>586
笑える
お前自分のレスに向かって怒ってみせて楽しいの?
ネタがないからといって自演までして荒れそうな話題をぶり返してきて乙ww
589本当にあった怖い名無し:2010/08/02(月) 20:41:15 ID:IIaSR4Cs0
メリーさんシリーズまだあ?
590本当にあった怖い名無し:2010/08/02(月) 21:17:34 ID:AtXlYrCA0
事実が元になってるとしてもウザいフィルター通して語られるとウザいって感想しかねえ
591 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 20:55:50 ID:y5/Bb8us0
予定の話はまだ書きあがらないので代わりです。
今回は2本立てです。内容薄めかもしれません。

自己責任で読んで下さい。一応警告はしたので始めます。

"投稿"

名前:本当にあった怖い名無し 20**/08/01(日) 22:52:22 ID:JV23aIKO0
初投稿です。
文章もうまくないけど、あまり叩かないでね。

俺、高3なんだけど
この間受験のストレス解消にキモ試ししようって
友達三人と俺で夜中に近くの山の中の廃病院に行った。
メンバーは、イケメンの親友とノッポの親友とチビの親友
紛らわしいから、イケメンとノッポとチビにするね。
そしたら、そこ3階建ての元病院なんだけど
2階まで上がったところでは何もなかったんだけど
3階の奥の病室に入ったところで
俺たちは固まった。
なんでかというと、
外の窓から、巨人?てか大きい鬼みたいな奴が覗き込んでいて
みんなビックリして逃げようとしたんだけど
その鬼みたいな奴が、すげぇ速さで窓から手を突っ込んできて
こけてしまったノッポの全身を掴んだのよ。
「ノッポ死んだ!」とその時俺は思ったんだけど
そのまま鬼の手は消えて
恐怖で気絶したノッポだけが残ったんだ。
592 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 20:57:49 ID:y5/Bb8us0
とりあえず残りの3人でノッポを起こそうと
頬を叩いてみたり
大声で呼びかけたりしたんだけど全然起きなくて
3人で190くらいあるでかくて重いノッポを担いで山を降りたんだけど
やっぱ、俺らの町にたどり着いてもノッポ起きなくて
しょうがないんで、ノッポの家まで運んでいって事情を説明したら
大事になって、心配したノッポの父ちゃんと母ちゃんが救急車呼ぶし
親を呼ばれた俺らは超怒られるしで、
自業自得なんだけど、大変だったんだ。

その後、すぐノッポは病院で検査受けたんだけど
医者から原因不明って言われて、一週間経った今も起きません。
誰かいい解決方法知りませんか?


名前:本当にあった怖い名無し 20**/08/01(日) 23:12:01 ID:JV23aIKO0
>474
さーせん。いちおう進学組なんですが、アホ校なんで文章とか書くの苦手なんですよ。
>476
いや、別にノッポは苦しんでる様子はないです
>481
鬼は超怒ってました。眉間にすげえ皺よっててマジ殺されるかと思いました。
紫色の肌で額には角が三本くらい生えてたと思います。
>483
他の友達は元気ですよ。

色々考えたんですが、やっぱしそれ系の人に頼るしかないんですかね。
俺の地元は○県の某○○が特産品のところの近くなんですが
誰か、いい神社とか寺とか知りませんか?
593 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 20:58:59 ID:y5/Bb8us0
名前:本当にあった怖い名無し 20**/08/01(土) 23:57:01 ID:JV23aIKO0
>511
ほんとに現在進行中ですって。
作ってないですって。
>515
○寺ですか。この板でも有名ですよね。
いわく付きのものを大量に収拾して展示しているって、最近うちの町でも話題になってます。
明日は夏季講習休みだし、皆と行ってみようかな。
>521
普通の、って言ったらおかしいかもしれないけど
ただのボロボロの病室でした。焦っててよく見てなかったけど
お札とか、変なものは無かったと思います。
>523
>>でアンカーつけるのなんか苦手で…気に障ったらすいません。

では寝ます。また進展あったら報告します。
594 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 21:01:35 ID:y5/Bb8us0
名前:本当にあった怖い名無し 20**/08/02(日) 22:27:31 ID:AEk9zTms0
昨日レスで薦められた○寺に行ってきました。
イケメンとチビと3人で朝早く訪ねたら、住職さんがいらしたんで話してみたところ
「自分では霊を祓ったりするのは難しい」ということだったので
また明後日にでも霊関係の専門家を紹介してくださるそうです。

>612
見てきましたよ。料金もパンフ付きで500円と安かったです。
中は噂どおり凄かったですね。
妖しい刀とか古い木像もいっぱい置いてあるんですが、
一番怖かったのは一体の人形でした。
怖くて説明読めなかったんで、たぶん歌舞伎とかに使われたやつだと思うんですけど、
明らかにこっち睨んでましたよ。チビとか「殺されるかと思った」っていってました。
あとでイケメンが住職さんに「あんなのと一緒に住んでて怖くないんですか」って聞いたら
「私は分からないので怖くはありませんねぇ」
って笑顔で返されてました。住職は寺生まれらしいんすけどやっぱ凄いすね。
>614
毎度さーせん。そろそろ決着つけたいです。
>619
他には特に変わりは無いです。みんな元気で、ノッポもすやすや寝てます。
595 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 21:02:47 ID:y5/Bb8us0
名前:本当にあった怖い名無し 20**/08/03(月) 15:07:22 ID:bvr6BYrh0
どうしよう。やばい。
たぶんイケメンがやられた。
さっきいきなり授業中に暴れだして、
「やめろ!!」って叫びながら
机とか椅子とか投げまくってガラス割ったり
まわりをめちゃくちゃにして
そのまま倒れ込んで意識不明です。
学校中大騒ぎになって、
救急車で病院に連れて行かれました。
俺もチビも超ビビッてます。
いま携帯からなんで、帰ったら詳しく書きます。
596 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 21:06:08 ID:y5/Bb8us0
名前:本当にあった怖い名無し 20**/08/05(水) 19:18:22 ID:gYJH8kS90
帰ってきました。
ほぼ2日も空けてしまって申し訳ないです。
色々あったんで長くなります。

4日に○寺紹介の
霊関係の専門家さんのところに行く予定だったのですが、
ちょっとやばそうだったので、
授業が終わって、すぐ携帯で○寺に電話をかけました。
そうしたら、住職さんがすぐに出てくれたので
事情を話したら「これはいかん」とのことで
そのまま俺とチビの2人で専門家さんのところに行くことになりました。

こっからは、口止めされてるので詳しくは書けないんですが、
書ける範囲で書くと、俺とチビは携帯を取り上げられて、ある所に匿われていました。

その場所と言うか、家の中で専門家さんから聞いた話によると
たぶんイケメンは廃病院から探しにきた鬼に
見つかったのではないか、とのことです。
ああいうバケモノは、人間とは違う眼をもっているので
俺より魂の輝いているイケメンを(なんか納得いきませんが…)
先に発見したのではないかとのことです。
話を聞いていると、その専門家さんは「大物」系の人らしく、
「うちに紹介されて運が良かったね」と言われました。
597 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 21:07:14 ID:y5/Bb8us0
そのあと「自分が帰ってくるまで、絶対出たらダメだ」と言われて、
専門家さんはどこかに出かけていって、
最初の何時間かは、そこで2人ともビビリながら待っていたのですが、
いつまで経っても帰ってくる気配が無いので
俺たちは次第にダレてきて
いいって言われてたんで、冷蔵庫の中から食い物とか適当に持ってきて
座敷でゴロゴロして、テレビ見ながら食ってたんですよ。
そしたら、そのまま俺は寝ちゃったみたいで、
チビに起こされた時は、真夜中でした。

名前:本当にあった怖い名無し 20**/08/05(水) 19:23:21 ID:gYJH8kS90
なんかチビが必死に起こすんで、
「うるせーな」とかいいながら起きたら
家全体が縦ゆれで揺れてるんですよ。
しかも外からドスーンドスーンという足音と
「どごだぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁああ゛あ゛あ゛」
って低くてでかい叫び声が聞こえてきてて、
チビを見たらビビリすぎてて顔が真っ白でした。

俺も完全に固まってしまって
つけっぱなしのテレビから砂嵐が流れるのを必死で見てました。
しばらくそうしていると、揺れも収まって声も聞こえなくなったので
ホッした、その時でした。
急にテレビにあの鬼の顔が映って
「そごかぁぁぁぁぁあぁあああああああああああああ゛あああ!!!!」
って…
俺らは2人ともそのまま朝まで気絶していたようで
専門家のおばさんから起こされるまでは、気がつきませんでした。
598 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 21:10:09 ID:y5/Bb8us0
名前:本当にあった怖い名無し 20**/08/05(水) 19:31:25 ID:gYJH8kS90
>768
あっ書いちゃってた。まあいいか、たぶんそれだけじゃ特定無理だと思います。
>774
いつもさーせん。もう終わるんで、ちょっとだけ待っててください。

気を取り直して続きなんですが、
俺らは、気絶していて色んな液をたれ流してたので、
風呂に入って着替えた後に
朝飯を作ってもらいながら専門家さんから説明受けたんですが
俺らをここに連れてきたのは、守るのと同時にオトリにするためだったそうです。
「怖い思いをさせてすまなかった」と謝られてから
「君たちが寝ているあいだに、鬼には元の場所に帰ってもらった」って言われました。
これも口止めされてるんであまり詳しくは書けないんですが。
専門家さんによるとあの廃病院は霊的には人間の世界と、
その他の世界のちょうど中間の位置にあたっていて
滅多にないらしいんですが、たまたまその日鬼がそこに迷い込んで、
俺らと会ってしまい、しかもノッポに触れてしまったことで
俺らに異常な興味を持ってしまったそうです。
これは、ほんとは秘密なんですが
専門家さんから鬼に帰ってもらうのに「うちの全戦力使った」って言われました。
専門家さんも含めて4人で行ったそうです。
そのあとも、念のためと言うことで、
今日までその家から出してもらえませんでした。
で、やっとさっき監禁が解けて、今家から書いてます。
599 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 21:11:51 ID:y5/Bb8us0
あとイケメンとノッポのことですが、
イケメンのほうはなんとか回復させられるけど
ノッポはもしかしたら駄目かもしれないと言われました。
最初に触られた時点で、魂を持っていかれている可能性があるそうです。
凄いくやしいし、ショックですが、
イケメンが回復したら、ノッポのところにチビと3人で毎日行って、
呼びかけを続けたりとかして、俺らで何とかあいつが帰って来るようにしたいです。

名前:本当にあった怖い名無し 20**/08/05(水) 19:52:17 ID:gYJH8kS90
>779
親へは専門家さんが上手いこと説明してくれました。
「受験ノイローゼで霊に憑かれています」みたいな理由です。
知らなかったけどこの地域では有名な人みたいですね。(これもやばいかな?)
うちもチビの親も「2、3日なら」ということですぐに了解してくれたらしいです。
>782
たしかに現実味ないですかよね。でも俺らは超怖かったですよ。
専門家さんによると、滅多にないケースなので料金は格安にしてくれるとのこと。
>787
ノッポが回復したらすぐに報告します。
それまでは自重したいと思います。
>792
ほんとキモ試しとかで夜の廃墟は止めたほうがいいです。
今回のことをネットで調べてたら、
幽霊よりも、ヤンキーがたまり場にしていたり、
浮浪者が住み着いていた方が危ないと
色んなところで書かれてました。
少なくとも俺らは二度と行きません。

では、みなさん長々とお付き合いありがとうございました。
また何かあったら書き込みます。では。
了。
600本当にあった怖い名無し:2010/08/04(水) 22:55:02 ID:E/a7JPKs0
???
なんじゃこりゃ。どういうリアクションしたらいいかワカンネ。よって流す
ジャー
601 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 23:05:54 ID:y5/Bb8us0
2本目です。次の投稿はしばらく空きます。
分かり辛かったですか、すまんかったです。だが反省はしていない。

自己責任で読んで下さい。一応警告はしたので始めます。

"商品"

今年の夏は暑すぎるので、怖いものを見て少し冷えようと
師匠の古物屋を見学することにした。
事情を話すと、テンションあがった師匠がお薦めを色々見せたいと言ってきたので
うぜぇ…と思いつつも、仕方なく了承する。
カウンターに座って待っていると、
「あった。これだ」
師匠が何やら、乱雑に並べられた商品の棚から小さなケースを取り出した。
「今日は怖いだけのものがみたいのであって、実害のあるのは止めてくださいよ〜」
最近仕事以外の火遊びが過ぎているので、危険なことはしばらく自重したいと思っているのだ。
「まあまあ、面白いから見ててごらんよ」
その小さなプラスティックケースからMDディスクを取り出して
「俺もここ5、6年はもっぱらipodなんでMDなんて使ってないが
 せっかくだから再生機も出してみた」
そう言いながら古いミニコンポを、机の上に置いた。
「音ってのは、空気の振動なわけだ」
「そうですね」
「で、コンポはソフトの信号を読み取って、その通りに振動して音を出すだけなんだよな」
「ええ」
「話は変わるが幻聴ってのは、テレビの砂嵐やシャワーの音でも発生するって知ってるか?」
「ああ、それらは音域が広いですからね。耳が間違った音を拾うこともあると思います」
「そうだな、そしてその拾う音は聞こえる環境が同じでも、たぶん人によってそれぞれ違うだろう?」
「でしょうね」
「その辺を踏まえて、これを聞いてくれ」
602 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 23:06:40 ID:y5/Bb8us0
カチャっと音がしてMDディスクが差し込まれると
サァァァァァというノイズの合間に、カリッ、カリッという音が聞こえてきた。
「壊れてません?これ」
「いいから、黙って耳澄ませてみ」
カリッ、カリッという音の間隔が短くなり、ヴォォォォォォォォオオという低音ノイズが聞こえてくる。
裏ではさっきのサァァァァァというノイズが流れている。
次第に、何か言葉が聞こえてくるような気がして、耳を澄ましてみる。
「こ……せ…ころ…………こ……ろ…せ………殺せ………ころせせせせせせせぇぇぇえぇえええ!!!!」
うおっ、とビックリして少し仰け反った。
そうして我に返ると、ただのノイズ音に戻る。
「な、聞こえるだろ?面白くねぇかこれ。もうちょい高くても売れるかな」
「なんなんすか。すげえビビりましたよ」
「いや、本当にただのノイズの塊なんだけど、みんな同じ声がはっきりと聞こえるんだよ。
 ちなみにまったく実害はない。霊的なものも無い。
 俺の友達がラジオを録音ミスして作っただけのものだ」
「偶然の産物なんですね」
「そういうことだ。
 もしかしたら人間の深層意識とかって案外単純なのかもしれんぜ。
 この1枚にそれを説くヒントが隠されてるのかもしれんね。なんてな」
「はい、次ぃ」
今度は、店の奥から長さ20cmほどの呪符の貼られたケースを取り出してきた。
「まあ、"人型"ってのはこういうのの定番アイテムだよな」
とか言いながら、師匠はケースから人形を取り出した。
全身磨れたブルーの八頭身で、
アリの顔を簡略化したような頭がついていて、小さな弦楽器を持っている。
何だろう、どこか呪術的でアジアン雑貨屋で売られていそうなものだ。
「これは何なんですか」
「うーんと、枕元に置いておくと、極まれに異国の怖そうな夢を見ますが、
 言葉と文化が違うのでいまいち何をしたいのか分かりません。という呪いの人形」
「なんすか、それは…」
「いい線いってるんだが、ちょっとセールスポイントが弱いんだよなぁ…頭の痛い不良在庫だよ。
 それはいいか…次行こう」
603 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 23:09:23 ID:y5/Bb8us0
師匠は埃をかぶった本棚から、少し黄ばんだ大学ノートを取り出した。
パラパラとめくってみている。
「お、あったあったこれだ。
 ところで、中二病って知ってるか」
「ネットとかで流行った言葉ですよね。
 中学2年生が考えそうな発想のことを言っているんだったかな」
「そうそう、まさにその位の歳に、
 この持ち主の子は漫画家を目指していて、思春期にありがちな
 痛い…というかかわいい絵を日々量産していたわけだ」
「で、ある時暇だったので、ノートに物凄い書き込みをしてたら
 宿っちゃったんだよな、絵に"何か"が。それ以来このノートからは
 "出してくれぇぇぇぇぇぇええ"といううめき声が聞こえてきたり
 絵が描かれているページを開けると、それに睨まれたりするわけだ」
「うぇwww超怖いじゃないですかwww何で売れ残ってるんです?」
「とにかく見てみろよ」
そう言いながら師匠は、そのページらしきものを見せてくる。
「……宿る絵を間違えましたね」
そこには、凄い書き込まれた陰影線が入ったムキムキマッチョなドラ○もんが白い歯を見せていた。
足元では凄い書き込まれた陰影線が入ったリアルなの○太が踏みつけられていて、
そして両人の背中には、凄い書き込まれた陰影線が入った悪魔の翼らしきものも見える。
「…それほどとんでもない念を込めて、この絵を描いたんだろうなぁ
 …中二病というか…子供って怖いよなあ」
余談だがその子は、今は普通に学生をしているそうだ。
「次は怖いかもしれないなぁ」
師匠は軽く脅しつつ、"禁持出"と汚く書かれたダンボールをごそごそやっている。
「ほい、これだ」
トンッと、机に額に入った肖像画が置かれる。
部屋の中心で、椅子に座った穏やかな女性が描かれた絵だ。
窓の外には黄金の小麦畑が見え、その上の青空を2本の飛行機雲が走っている。
604 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 23:10:34 ID:y5/Bb8us0
「これはどんなものなんですか、まったく怪しくないですが」
「精神病院に強制入院させられていた、ある老画家が最近描いたものだ」
「この画家はその筋には超有名でな。おばさんも良く知ってる人だぞ」
「俺はまったく知らなかったですね。サインも入ってないし、日本人ですか?」
「…秘密だ。その画家はある特殊な絵の具を使用していてな。
 月日が経つと、その絵の具が細かく順に溶けていったり剥がれたりして
 絵が真の姿を現すんだよ」
店内の蛍光灯を消し、どこからもって来たのか懐中電灯で顔を下から照らした師匠が言う。
「神に祈る聖女が次第に淫乱な魔女になっていったり、平和な町並みが火災に覆われて行ったり
 絵の中で楽しく遊んでいる子供たちが、何年もかけて一人ずつ無残に死んでいったりするんだよ。
 そして対策を講じていないと、とんでもない不幸を持ち主にも…って類のやつだ」
「おお、じゃあこの絵もそのうちに…」
「いやそれがこの爺さん、何年か前に病院から帰ってきたあと、すっかり毒気が抜けちまってなぁ。
 最近は余生を楽しみながら、普通の油絵とかいっぱい描いてるらしいよ」
「え…?」
「というわけで老画家の絵は、コレクターによってふたつに分けられている。
 "入院前"と"入院後"だ。そして前者はとんでもない価値がある。
 ただ、残念なことにこれは"入院後"の作品だな。
 この老画家は、技法が高く評価されていたわけであって、
 絵自体は一流と比べるとそんなでもないから、二束三文で譲り受けた」
「なんだ。じゃあダメじゃないですか」
「ところが、この話にはオチがある」
師匠が懐中電灯をカウンターに置き、真顔で俺に話しかける。
「この絵の中に飛行機雲があるじゃないか、
 俺が買った当初は小さくだが、確かにそこに"灰色の戦闘機"が飛んでいたんだ」
「まさか…」
「…ジジイ治ったふりしてるだけかもしれんぞ」
ジジイという言い方に違和感を感じたが、めんどいのでスルーする。
「ちなみに"入院中"の絵もあるという噂だが、それは俺も怖いので調べてない…」
605 ◆7QPLwJZR/Ypf :2010/08/04(水) 23:11:40 ID:y5/Bb8us0
暗い雰囲気を払うように師匠が明るく言う。
「はい、次はとっておき、最後の品でございます」
「ほら、夏と言えば花火なわけだ。線香花火から打ち上げ花火まで綺麗だよなぁ。
 季節は変わるが年末のライトアップとかも、
 最後は"光る""キレイなもの"で締めるのが、日本人は好きだよな」
かなりむりやりな気もするが、一応頷いて同意した。
「というわけで昨日入荷した、人造生物"ホムンクルス"でございます〜」
「口が悪いのが玉に瑕。しかし、その妖しく輝く美しさは一度見たら忘れないぜ!!
 残念ながらこれは分けあって売れないけど、特別に見せてやろう」
そう言って師匠は、得意気に空のフラスコを差し出した。
前からおかしいとは思っていたが、この暑さでとうとう本格的に狂ってしまったんだろうか。
「えっ?あれ、おかしいな、どこ行ったんだろ」
必死にフラスコを調べている師匠の後ろで
少し開いた古物屋の入り口から、緑の光が出て行くのが見えた…気がした。
「ま、いいや。あとで虫取り網もって探そう」
そして急に商人っぽい媚びた笑みになった師匠が言う。
「はい、全部ぽっきり1万円でございます。どれかひとつ、いかがかな」
「……いらないっす」
了。
606本当にあった怖い名無し:2010/08/05(木) 18:01:27 ID:7eYZUhbc0
お疲れ〜
607赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 09:31:20 ID:iZYoRHSq0
[繋がり]

1/14
古乃羽「――私達が呼ばれたのって…」

助手席で古乃羽が呟く。

俺は今、古乃羽を乗せて汐崎さんの家に向かっていた。
「そこに行って、真奈美って子を連れてきてほしい」
牧村さんから、電話でお願いされたことだ。
古乃羽も一緒に、という事になったのは、相手が女の子で、さすがに男の俺が1人で行くと怪しまれるから、という理由だ。

俺「んー?」
古乃羽「こーくん、牧村さんにも舞さんのこと、話しておいたのね」
俺「あぁ、まぁね」

姉貴からの電話の内容は、牧村さんにも伝えてある。
そのためだろうな、俺たちが指名されたのは。

姉貴の意向により、往来会のことに、北上と神尾さんを関わらせる訳にはいかなくなったから…。
608赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 09:35:35 ID:iZYoRHSq0
2/14
教えてもらった住所に着き、車を降りる。
時刻は16時前。予定通りの時間だ。

[汐崎]と表札が出ている家を見つけ、チャイムを押すと、すぐにインターフォンから声が聞こえてくる。
声「…はい?」
警戒するような声だ。
…まぁ、無理もないか。事情は牧村さんから聞いている。

俺「えっと――」
古乃羽「牧村さんに言われて来ました、鮎川です」
俺より先に、古乃羽が答える。
声「あ、はーい」
少し明るい声。次いで、パタパタと玄関まで駆けてくる音がする。

古乃羽「私が返事した方が良いかな、って」
俺「…そうだな」

声「お待ちしてましたぁ」
やがて元気な声と共にドアが開き、俺たちは汐崎真奈美と対面した。
609赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 09:39:16 ID:iZYoRHSq0
3/14
可愛らしい、元気な子。
それが汐崎真奈美――真奈美ちゃんと呼ぶことにした――の第一印象だった。
女子高生だと聞いていたから、なぜか制服姿を想像していたけど、彼女は動き易そうなジーパン姿で…どこかしら、神尾さんに似ている感じがした。

車の後部座席に古乃羽と2人で乗ってもらい、俺は車を出す。

道中、古乃羽と真奈美ちゃんは、最近の女子高生事情について話をしていた。
俺は…もちろん、話に入れない。何しろ、こちらは男子校出身だ。
女子高生という生き物とは、何一つ接点を持つことは無かった。
俺じゃ上手く会話もできそうになく、その点でも、古乃羽が一緒で本当に助かった。

真奈美ちゃんは人見知りもせず、よく話す子だった。
特に俺たちが付き合っているという事を知ると、恥ずかしくなる様な質問をどんどんしてくる。
そういった事に興味を持つ年頃なのだろう…なんて、ちょっとジジ臭いようなことを思ってしまう。

牧村さんの家に着くころには、俺たちは…まぁ、少なくとも後ろの2人は、すっかり打ち解けていた。

――ただここまで来る間、往来会や真奈美ちゃんのお父さんに関しての話は、一切しなかった。
610赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 09:45:33 ID:iZYoRHSq0
4/14
牧村さんの家に着くと、挨拶もそこそこに座敷に通される俺たち。
そこで卓袱台を囲み、真奈美ちゃん本人からこれまでの経緯を教えてもらう。

俺「…なるほどなぁ」
牧村さんから簡単に話は聞いていたが、これはどうやら…由々しき事態のようだ。
古乃羽「お父さん、心配ね…」
気遣うように声を掛ける古乃羽。
真奈美「はい…。でも、高城さんが守ってくれる、って」

高城さん。往来会の本部長さん。
話を聞く限りでは、どうやら「味方」みたいだけど…?
古乃羽「その高城さんって、どんな人?」
古乃羽も気になったようで、真奈美ちゃんに問い掛ける。

真奈美「高城さんは――すっごく、綺麗な人です」
古乃羽「へぇ…」

真奈美「大人の女性って感じで、足が長くて、スタイルも良くて…」
俺「…」
真奈美「私でも、色気みたいなの感じちゃいました。フェロモンが出てるって言うのかなぁー…」

何やら、嬉々として話してくる真奈美ちゃん。
外見じゃなくて、中身というか…人柄を聞きたかったのだけどな…なんて思っていると、牧村さんが口を開く。

牧村「信用できる人だと思うよ」
611赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 09:51:50 ID:iZYoRHSq0
5/14
真奈美「そうですよね?私も信用できる、って思いました」
牧村さんの賛同を得て、更に笑顔になる真奈美ちゃん。

俺「声を聞いた感じでは、って事ですか?」
牧村「そうだね。特別な感情もあるみたいだし」
俺「…特別って?」
俺だけじゃなく、古乃羽も真奈美ちゃんも、何のこと?という顔になる。

牧村「…まぁ、何でもないよ。それより、真奈美さん?」
真奈美「はい?」
真奈美ちゃんを、“さん”付けで呼ぶ牧村さん。

牧村「あれから、電話はしたのかい?」
真奈美「電話…?あ、高城さんにですか?まだ、してないです」
牧村「それじゃ、してみなさいな」
真奈美「今、ここで?」
牧村「そう」
真奈美「じゃあ…」

そう言って、ポケットから携帯を取り出す真奈美ちゃん。
そういえば、やけにポケットが多い上着を着ている。
後で聞いたところ、身に着けておく物が多いから、そんな服を着ているとの事だった。
何をそんなに、と思ったが、こういうのが最近のお洒落なのだろうか?…昨今の高校生の考えることは分からん。
612赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 09:57:30 ID:iZYoRHSq0
6/14
――
…不思議な感じ。
こんな状況なのに、何事も無く1日が過ぎていく。

三島「それでは、お疲れ様でした」
私「はい、お疲れさま」
1日の事務報告を終え、部屋を出て行く三島課長。
私は椅子に座ったまま、それを見送る。
変わったことは、何も無かった。
汐崎部長も、普段通り…見た目は普段通りの仕事をしていた。

真奈美ちゃんの存在があるため、彼は誰かに助けを求めるようなことはしない。
自分が今監禁されていて、外に出ることや、外部の人――上の人間の許可が降りない人との接触が一切禁止されているということを、誰に話すようなこともしない。
全て、副会長の思惑通りになっている。

――私には、それが気に入らない。
613赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 10:00:53 ID:iZYoRHSq0
7/14
汐崎は宿直室に寝泊りしている。

この宿直室がおかしい。

私は女性ということもあり、使う機会がなかったので気にも留めていなかったけど、改めて考えてみると異常なものを感じる。

1階の一番奥まった場所にある、小部屋。
正面の出入り口からは勿論、裏口からも遠く、長い廊下の行き止まりにあるこの部屋に足を運ぶ人は、滅多にいない。
それゆえに、会員の中にはこういった部屋があること自体、知らない人も多いと思う。

それだけでもどうかと思うけど、それ以上に気になるのが、この部屋には…窓がない、ということだった。

本部長になった頃、私は一度だけ宿直室を見に行ったことがある。
その時は、正直何とも思わなかった。
ただ眠るだけの部屋。仕事が遅くなって帰りそびれた人が、一晩眠るだけの仮眠室。
寝るだけなら、静かでいい環境かもね…と、そう思っていた。

「人を閉じ込めておくには最適な部屋」

そんな風には、考えもしなった。
614赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 10:04:56 ID:iZYoRHSq0
8/14
プルルルル…

そんな事を思い悩んでいると、携帯が鳴る。
番号は…知らない番号。
でも、きっとこれは…?と思い、電話に出る。

私「はい――」
声「あのぉ…高城さん?真奈美です」
予想通り、真奈美ちゃんだ。
良かった…。

私「真奈美ちゃん、大丈夫だった?あれから変わったことは無い?」
真奈美「はい、お陰さまで…。あ、でも、えっとぉ…」

様子が少し…?と思い、軽く耳を澄ませると、彼女のそばに誰かいる気配がする。
これは、もしかしたら――

私「あの耳の…電話の人とは、会えたの?」
真奈美「はい。で、実は今ここにぃ…」
私「その人が居るのね?」
真奈美「そう、そうなんですー」
やっぱり。これは良い傾向だ。

私「力になってくれそう?お願いした?」
真奈美「あ、まだ…話を聞いてもらって、そしたら、高城さんに電話してみたら?って」

なるほど。じゃあ――
615赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 10:07:52 ID:iZYoRHSq0
9/14
私「あの…ごめんね、真奈美ちゃん。お父さんの話の前に、その方と代わってくれる?」
真奈美「はーい。ちょっと待って下さいね」

真奈美ちゃんの声が遠ざかる。
…きっと代わってくれるはず。向こうもそれが目的だろうから。

声「――はい、代わりましたよ」

やがて聞こえてきたのは、少ししわがれた老人の…お婆さんの声。
これだ。間違いなく、この人だ。あのときの耳の人だ。

私「はじめまして。私、往来会の高城沙織と申します」
声「これはどうもご丁寧に…。牧村シズエと申しますよ」

私「あの、事情は真奈美ちゃんからお聞きしていると思いますが――」
牧村「あー、あの、ちょっといいかい?」
私「…はい?」
牧村「その堅苦しいの、苦手でね…普通に話してくれるかい?」
私「はぁ…」

何だか、変わった人…。
でも、悪い感じはしない。

牧村「まぁ、あれだよ。話を聞いて、大体の事情は分かったから」
私「あ、では…」

牧村「相談には乗るよ。私のできる範囲でね」
616赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 10:09:43 ID:iZYoRHSq0
10/14
――話が早い。

私「ありがとうございます。私からも、そうお願いしようかと…」
牧村「…あんたも、大変な立場だねぇ」

どうやら、全て分かっているようだ。
まぁ、扉越しのあの会話を聞いていたのなら、それもそうかな。

私「真奈美ちゃんのこと、よろしくお願いします」
牧村「はいな。それじゃ、代わるよ」
そう言って、すぐに真奈美ちゃんに代わる。

真奈美「もしもし?」
私「真奈美ちゃん、牧村さん、相談に乗ってくれる、って」
真奈美「そうみたいです!高城さん、本当にありがとうございます」
私「困ったことがあったらすぐに相談して、ちゃんと言う事を聞くのよ?」
真奈美「はーい。…あのぉ、高城さん?」
私「なぁに?」
真奈美「んー…」

早速困ったこと…?

真奈美「ん、何でも無いですー」
私「…もう、本当に?」
真奈美「エヘヘ…今度、教えてあげます」

…?
617赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 10:19:09 ID:iZYoRHSq0
11/14
真奈美「で、あの…高城さん。お父さんの様子はどうですか…?」
少しトーンを落とし、真奈美ちゃんが真面目な声で聞いてくる。

私「大丈夫よ。今日一日、いつも通り普通に仕事をしていたわ」
真奈美「食事、大丈夫ですか?ちゃんと食べていました?」
私「食堂で食べていたみたいだけど…?」
真奈美「なら、平気かなぁ…」
食事が気になるなんて…奥さんみたいね、と思う。

私「じゃあ、ちゃんと食べるように伝えておくわね。これからちょっと様子を…会いに行ってみるから」
真奈美「はい。お願いしますー」
私「それじゃ、また――」
真奈美「あ、あの」
電話を切ろうとした所で、止められる。

私「なに?」
真奈美「あの…高城さんは、大丈夫ですか?」
私「…私?」
真奈美「お父さんも心配だけど、何だか高城さんも心配で…」

私が…?
618赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 10:22:44 ID:iZYoRHSq0
12/14
私「私は平気よ」
真奈美「…本当ですか?」
私「これでも本部長よ?私のことは、安心して」
真奈美「…はぁい」

私「ありがとうね、真奈美ちゃん」
真奈美「いえ、それはだって…心配ですよぉ」
私「ふふ…それだけじゃなくてね」
真奈美「?」
私「…それじゃ、またね」
真奈美「あ、はい。またー」

私はゆっくりと携帯を切り、椅子にもたれ掛かる。

…嬉しかった。

電話をしてくれたのが、嬉しかった。
真奈美ちゃんは私を信じてくれて、頼りにもしてくれた。
色々と大変な事態になっているけれど…これだけで十分よ。

私は椅子から立ち上がり、汐崎の所に向かった。
彼と同じものを守ろうとしている…そんな事を考えると、少し胸が熱くなった。
619赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 10:25:37 ID:iZYoRHSq0
13/14
――
仕事を終えて、部屋に戻る。
…本部の、最奥の部屋に。

廊下を歩く足取りは、当然重い。
真奈美の待つ家に帰るのとでは、大違いだ。

恐ろしく事務的な仕事内容。
誰との打ち合わせも必要とせず、ただ1人で黙々と行う単純作業。
誰にでもできる、部長の私がやるには、余りに――

…まぁ、もう、どうでも良い。
もはや何の興味も持てない。
この会がどうなろうと、私にはもう、関係ない…。

そんな事を考えながら、廊下の角に差し掛かる。
この角を曲がってすぐのところには会議室があるが、普段、人が来るのはここまでだ。
ここから更に奥に向かって、長い廊下が続く。
そこを歩いていった先、その行き止まりに、私が寝泊りを命じられた部屋があるのだ。
620赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/06(金) 10:30:18 ID:iZYoRHSq0
14/14
角を曲がり、私は少し驚く。
そこには、廊下に沿って長い机が5,6台、ズラリと並べられていた。
今朝は何も無かったが…どうやら、会議室の机を全て出したようだ。
清掃でもするのか?それとも…?
一度疑いの目を向けてしまうと、どんなことでも怪しく思えてしまう。

確かに、うちの仕事には意味の分からないものも多々あった。
今までは何とも思わずに従ってきたが…もう、そうはいかない。

私はポケットに手を入れ、そこにあるものを確認する。
ペーパーナイフ。
先の尖った、一本のペーパーナイフ。

私は暴力によって、ここに連れてこられた。
信じていた人間に裏切られ、脅され…。
しかも、私だけならまだしも、娘の真奈美にも被害が及ぼうとしている。

…この手で、守らなければ。
心の中に、黒いものが渦巻く。
私はもう、どうなっても構わない。
堕ちてしまってもいい。
私達に危害を加えようとする人間は、誰であろうと許さない…。

621本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 01:29:43 ID:eGgWIPAl0
誰かなんとか言ってやれよ
622本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 01:37:47 ID:nzokcjEC0
だって今回の話おもっきり次の展開の仕込みだし・・・
623本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 09:26:50 ID:fTuMeFwg0
霊感・・・
シリーズ物ってより、連載又は長編物になってきちゃったねぇ
私の認識では、一話完結又はそれに近い物が何話もあるのが、シリーズだと思うのだけど。

それでも毎回、赤緑氏乙
624本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:46:00 ID:TOVmKK+a0
三本足のリカちゃん「わたしリカちゃん。明日メリーちゃんと河豚を釣りに行くの」

625本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:46:18 ID:TOVmKK+a0
ヒゲの剃り跡も青々と、ハスキーな裏声で
「あたし、メリーちゃんよぉ!」


...出没エリアは新宿2丁目

626本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:46:50 ID:TOVmKK+a0
メリー「私、メリーさん。鬼と間違えられて沢山豆をぶつけられたの。逃げても…転んでも……しつこくぶつけてきたの。……でも、メリー……グスリ……泣かないもん」
627本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:47:03 ID:TOVmKK+a0
私、メリーさん
メリー一族たるもの豆を投げてる人の背後にまわって豆をさけるぐらいの技は使えるべきだと思うの
628本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:47:13 ID:TOVmKK+a0
私メリーさん。愛など要らぬの(野太い声で
629本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:47:42 ID:TOVmKK+a0
わたしメリーさん
今わたしがあなたの後ろにいる件についてwwwwwww
630本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:48:02 ID:TOVmKK+a0
おかしな夢を見た。子供の声で、電話がかかってくるのだ。
『もしもし、わたしメリーさん。いま、……にいるの』
はて、どこにいるんだったかな、と思いながら起き上がる。
時刻はまだ夜中だが、電話が鳴っているからだ。
「……はいもしもし?」
「あ、もしもし。私」
「んだよアネキ。今こっちは夜中だぜ?」
電話の相手は、結婚して、海外で暮らしている姉だった。
「あはは、ごめん。どうしても連絡したくなっちゃってね。
 ……子供が出来たの、ジョンも言ってるけど、きっと女の子よ」
俺は、あの声の主を思い出した。あれは、幼馴染だった少女の声だ。
アメリカからやってきていた、ジョンの妹マリア。
ジョンと一緒に、メリーと呼んでいた。
小学校に上がる前に亡くなってしまった、俺の初恋の少女。
「知ってる。本人から、電話があったよ」

『もしもし、わたしメリーさん。いま、ままのおなかにいるの。
 またあいにいくね、まーくん』

耳の奥。たどたどしい日本語が夜の静寂から響いて消えた。
631本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:48:21 ID:TOVmKK+a0
いま、メリーさんは活動を停止中だ、

いつ、目を覚ますのか、
時間が来ると動き出すのか、
なにかスィッチのようなものがあるのか、
特定の人間の行動で反応するのか定かでない。

分かっているのは、イタズラするのは今しかない、ということ。

  はぁ、はぁ、 
スカートの下って・・・ええっと。
あっ、け、結構露出の多いパンツなんだ・・。
指、入れても起きないかな・・・え、えっとぉ・・・。

えっ!?
こ、これ何!?
な、なんでこんな・・・あ
632本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:48:51 ID:TOVmKK+a0
あなたの前に道はない。
あなたの後ろに私がいる
メリーです
633本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:49:08 ID:TOVmKK+a0
おはようからおやすみまで
あなたの生活を真後ろからそっと見守りたい
メリーです
634本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:49:17 ID:TOVmKK+a0
後ろの正面わーたし
メリーです
635本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:49:31 ID:TOVmKK+a0
メリーさん「私、メリーさん。貴方達からバレンタインデー良いの期待してるの」


















メリーさん「あっ!! チョコじゃなくてプリンでもいいの」
636本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:49:47 ID:TOVmKK+a0
私メリーさん
今トレビの泉の前にいるの
ここにいると何故かみんなお小遣くれるのよね
あ、またもらっちゃった♪
637本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:50:09 ID:TOVmKK+a0
『もしもし、私メリーさん。今あなたの後ろにいるの』
「どなたですか?今俺風呂入ってんすけど」
防水ケータイって便利だなーとか思いながら、俺は頭を洗い始めた。
『あなた、大きな背中してるのね』
「え?うわ参ったなぁ、テレフォンエッチって奴ですか?多分番号間違えてますよ?」
『洗って……あげる』
電話口の向こうで水音が響く。何か塗ってるんだろうか。
「わ、効果音すげーすね。本当に石鹸塗ってるみたいな音しますよ」
俺はシャンプーが目に染みて、早く電話を切りたくなっていた。
そのときだった。

──ムニュ

背中に、暖かい何か。
『ん……私、メリーさん……今、貴方の背中を……洗っているの。胸を擦り付けて……』
「……!」
俺は動けなくなってしまった。
恐怖以前の問題だ。
背中にあたる暖かい双丘の先端が徐々に異物感を増してしこるように、俺の怒張が猛り狂ってしまったのだ。
前屈みに屈する以外に何が出来よう。
『ふふ……私メリーさん。今、あなたの熱いソレを…………』
無論、翌日俺は風邪を引いた。
638本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:50:33 ID:TOVmKK+a0
メ「私、メリーさん」
男「自分の名前にさんを付けるのはどうかと思うぞ?」
メ「ごめんなさい……」
男「素直でよろしい」
メ「私、メリー、い……」
男「なんか語呂悪いな」
メ「どうすればいいのっ!?」
男「やっぱりさん付けで」
メ「私メリーさん……」
男「なんか変だな」
メ「もう、どうすればいいのっ!?」
男「ちゃん、とか?」
メ「私、メリーちゃん、い……」
男「ちゃんには厳しい年齢だよな」
メ「年齢とか言わないのっ!? 最後まで言わせて欲しいのっ!?」
男「よっしゃ、任せとけ」
メ「不安なの……」
男「俺を信じるな。俺を信じるお前を信じろ」
メ「なにかおかしい気がするの……?」
男「気にするな」
メ「そうなの?」
男「そうなの」
メ「口調が伝染ってるの!?」
男「さっさとやれ」
メ「私メリーさん、い……」
男「大豆は畑のお肉って納得いかないよな」
メ「もう嫌なのぉぉぉぉ!!」
639本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:50:52 ID:TOVmKK+a0
い、今起こったことをありのまま話すぜ!
少女を見かけたと思ったら後ろに少女が立っていた……
超スピードとかトリックだとかそんなもんじゃねー
もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ……

640本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:51:14 ID:TOVmKK+a0
「わたしメリーさん。 いまゴミ捨て場にいるの」

STAGE1:ゴミ捨て場

「わたしメリーさん。 いま○○通りにいるの」

STAGE2:○○通り

「わたしメリーさん。 いま○○公園にいるの」

STAGE3:○○公園

「わたしメリーさん。 いまあなたの家の前にいるの」

STAGE4:住居前

「わたしメリーさん。 いまあなたの部屋の前にいるの」

STAGE5:住居内

「わたしメリーさん。 いまあなたの後ろにいるの」

「よくもここまで来たものだ。 貴様等は私の全てを奪ってしまった。
 これは許されざる反逆行為といえよう。
 この最終鬼畜兵器をもって貴様等の罪に私自らが処罰を与える。

 死ぬがよい」

FINAL STAGE:後ろ
641本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:52:11 ID:TOVmKK+a0
 メリーさんの朝は早い。
「私メリーさん。今駅前に来てるの」
 目標の選定から、メリーさんの一日は始まる。人通りの多い駅前が、主な
狙いの付け所だ。そこで食指にかかる獲物を探す。その為に、最も人通りの
多い早朝の通勤ラッシュ時には、スタンバイしておかなければならない。早朝
四時に起きる生活を続けて、何年になるか。メリーさん本人もそれは覚えて
いないらしい。
「言ったら歳がばれちゃうから、だから言わないの」
 恥ずかしげに俯く姿は可憐そのものだが、この可憐な少女が誰かの後ろに
立った瞬間、恐怖の殺人鬼に姿を変えるのだ。目の前の少女からは、そんな
事実は一切うかがい知れない。だが、先日初めてメリーさんと出会った時、
彼女の白い肌をした両手には、その白さを包み隠さんばかりの真っ赤な鮮血が
したたっていた。その時の事を思いだすだけで、震えがはしる。
「あ、いい人見つけたの」
 どうやら、今日の犠牲者が決まったらしい。犠牲者に相応しいと思える人間
が見当たらない場合は、そのまま帰る事もままあるらしいが、今日は幸い――
642本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:52:48 ID:TOVmKK+a0
不幸にも、と言った方がいいかもしれない――見つかったようだ。
 彼女が指差す先にいたのは、これと言って特徴の無いOLだった。少し疲れた
表情をしているが、それ以外は本当に平々凡々とした、まさにOLの典型と言った
感じの女性だ。
「じゃあ、これからしばらく時間を潰すの」
 家なり会社なり、固定電話のある所に彼が到着しない事には、メリーさんの
お約束である電話をかける事もできない。携帯電話では、持って移動されて
しまうので、上手く追い詰められないのだそうだ。ある程度の時間の滞在と、
その場所に電話がある事……これが電話をかけるにあたっての条件となる。
意外と面倒だな、と思ったのを察したのか、メリーさんはにっこりと微笑む。
「様式美、って奴なの」
 その笑顔は、思わず見惚れてしまいそうな程美しい。それは様式美とは
違うのではありませんか、とツッコミを入れる事も忘れてしまう程に。
「じゃあ、喫茶店にでも入るの」
 朝早いとは言え、この辺りは通勤に使われる為か、いくつも店が開いている。
その中から手近な喫茶店を選び、メリーさんは扉を開く。カランコロンとドアベル
が鳴り、いらっしゃいませという店主の声も響く。何やら古めかしい内装が、
643本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:52:55 ID:TOVmKK+a0
その喫茶店が結構な歴史を持っているという事を教えてくれる。
「おや、メリーちゃんじゃないか」
「おはようなの、マスター」
 どうやら、メリーさんはこの喫茶店のマスターと知り合いらしい。
「ん? そちらの方は?」
「取材の人なの。記者さん」
「へえ。珍しいね。オカルト雑誌の人かい?」
 どうやら、このマスターはメリーさんの正体を知っているようだ。
「彼女、こんな可愛い顔して、殺る時は殺るからね。記者さんも気をつけて
 おいた方がいいんじゃない?」
「もう、マスターったら冗談が好きなの」
 茶化した風な口調で笑みを浮かべながらそう言うマスターの目は、しかし
ながら笑っていない。笑みを返しはしたが、それが引きつっていたのはやむを
えないところだろう。
「それで、今日はどんな人なんだい?」
「OLさんなの。多分、彼氏さんに振られた人なの」
 マスターが入れたコーヒー――メリーさんはミルクと砂糖をザラザラと入れて
いた――を前に、二人は、世間話をするような調子で、普通の人が聞いたら
仰天するような話を始めた。隣で仰天しながらも、メモを取るのは忘れない。
「彼氏さんからプレゼントされた人形捨てたの。死にたいとも思ってるの。
 だから久しぶりに条件ばっちしなの」
644本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:53:10 ID:TOVmKK+a0
「へえ、珍しいね。最近は結構人形捨てちゃうような人少ないのに」
「人形持ってる人自体が少ないからなの。ぬいぐるみは多いのに……」
「まあ、持ってる人にはそれだけ大事にされてるって事でもあるんじゃないか?」
「それは嬉しいけど、条件あった人殺れないのは欲求不満なの」
「はっはっは、種族のサガってのも難しいもんだねぇ」
「チェーンソーじゃぶった切れないの」
 店にいるのは二人だけではない。普通の客も多数いるのだが、誰も二人の
会話に驚いた気配を見せる事は無い。つまりは、この店は“そういう店”なのだ。
そこに普通の人間が入ってもいいものなのだろうか。
「安心しなよ、記者さん。別に取って食いやしないさ」
 見透かしたかのようなマスターの発言に、何とか笑みを持って応えるが、
その笑みもまた引きつっていたのは言うまでもない。
「ごちそうさまなの」
 そんなこんなで、しばらく他愛の無い――二人にとっては――会話を交わし、
小一時間程経った頃、メリーさんが席を立った。
「じゃあ行くの」
 どこに行くのかと聞く間も無く、メリーさんは歩き始める。マスターの笑顔を
背中に受けながら、何とか追いつくと、メリーさんは困ったような顔をしていた。
「あのOLさん、ああ見えて営業職だったみたいなの」
 という事は、つまり、固定電話のある場所に長時間滞在するという状況は、
自宅へ帰るまで無さそうだ、という事だろうか。
「時間潰さないと駄目なの。だから……一緒に遊ぶの!」
 キラキラと輝くような笑顔で、メリーさんは走り始めた。その向かう先は、郊外
の遊園地へと向かうバスだ――
645本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:53:38 ID:TOVmKK+a0
「楽しかったの!」
 眩しいばかりの笑顔は、最後まで絶えることはなかった。色々と苦労はしたが、
そのかいはあった……ような気がする。こういうのも役得と言うのだろうか。
 すっかり陽は落ち、通りにはネオンや街灯の光が太陽に代わって輝いている。
「じゃあ、殺りにいくの」
 その言葉と共に、メリーさんの顔から笑みが消えた。いや、唇だけは歪んで
いる。笑みの形に。
 メリーさんは近くにあった公衆電話に入ると、受話器をあげた。やはりお約束
通り、電話をかけるのだな、と思っていると、何やら彼女が手招きをする。
「一緒に入るの」
 人目があるのにそれは不味いのでは、と思ったが、ふと周囲をうかがうと、
先ほどまであった人通りが何故か途絶えている。気配すらもしない。こんな
街中だと言うのに。
「早くするの」
 少し怒ったような口調に、慌てて電話ボックスに入ると、メリーさんはにっこり
笑った。そして、受話器を耳に当てたまま、電話機本体に手をかざす。
「…………」
 沈黙。当然だ。メリーさんは公衆電話に一枚の硬貨も入れていないのだから。
 だが、しばらくすると驚くべき現象が起こった。
「繋がったの」
 プルルルル、という聞き覚えのある音が、メリーさんの持つ受話器からかすか
に聞こえてきた。ありえないはずの音だ。だが、実際にその音は聞こえる。
 
646本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:53:43 ID:TOVmKK+a0
しばらくすると、どうやら相手が――目標であるOLの女性が出たようだ。
「もしもし、私メリーさん。今駅前の電話ボックスにいるの」
 何やら、受話器からわめくような声がもれ聞こえる。大方、変なイタズラは
やめろ、とでも言っているのだろう。これもまた、お約束通りと言った所か。
「切れちゃったの」
 そしてこれもまたお約束通り。となると、次は当然……
「じゃあ、行くの」
 そうメリーさんが言った瞬間、景色が変わった。
 瞬間移動。話には聞いていたが、まさか自らもそれを体験する事になろうとは。
 そこは、何台かの自動販売機と、カウンターでの販売をやっているタバコ屋の
ようだった。
「タバコ屋さんの前、なの」
 お婆ちゃんが何やら目を丸くして驚いているようだが、あえて気にしない
ことにした。メリーさんは端から気にした様子も無い。
「この近くに、あのOLさんの家があるの」
 そう言うと、メリーさんはタバコ屋の店先にあった公衆電話の受話器を
手に取り、再び電話機本体に手をかざす。
「もしもし、私メリーさん。今貴方の家の近くにいるの」
 再び漏れ聞こえるわめき声。そしてすぐに電話は切れたようだ。
「じゃあ、次行くの」
 再び、メリーさんの声と共に景色が変わる。
 次に目の前に現れた光景は、住宅街のただ中にある電話ボックス。恐らく、
ここは……
「あのOLさんの、家の前なの」
 メリーさんが見上げる先に、それなりの大きさのアパートがある。その一室
が、あの女性の部屋なのだろう。
 再びメリーさんは受話器を取り上げ、電話機本体に手をかざす仕種を繰り返す。
わめき声は、最早金切り声に近い、ヒステリックなものになっていた。
647本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:54:55 ID:TOVmKK+a0
 そして――
「行くの」
 ――次の瞬間、風景は室内の物へと変わり――
「……私、メリーさん」
 ――目の前に、あるのは――
「今、あなたの後ろにいるの」
 ――一人の女性の、背中。


「ふぅ……一仕事やり遂げた後の一杯は格別なの」
 覚悟はしていたし、それをどうにかしようとする程正義感や道徳心があるわけ
でもない。だが、どうしようもないやるせなさと、罪悪感と、そして実際にその
瞬間を目の前にしたことによって生じた、吐いてしまいそうな程の不快感のお陰
で、とてもではないが一杯楽しむ気にはなれない。もっとも、メリーさんが一杯
やっているのは、琥珀色の液体ではなく、白みがかった茶色の、アルコールが
全く入っていない液体……要するに、コーヒーだったが。入れたのは当然あの
マスターで、つまり今いる場所は、あの喫茶店だった。もう深夜と言って差し支え
ない時間だというのに、店内はそれなりに賑わっている。マスターも、今朝見た
姿と全くと言っていい程変わらない、パリっとした姿だ。
「大丈夫なの?」
 しかめつらを見かねたのか、メリーさんが顔を覗き込んでくる。
「あの娘は、死にたがってたの。メリーさんは、それを助けただけ」
 そして、そんな事を言った。言い訳、というわけではないのだろう。その言葉に
は、事実をただ述べているという淡々とした調子しかない。
648本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:55:15 ID:TOVmKK+a0
「なかなかに難しい話だよ……メリーちゃんみたいな存在の価値観と、人間の
 価値観ってのは、やっぱり一つになる事は無い。でも、それでも、なるべく
 すり合わせようとした結果、ルールができた」
 マスターが言う。そのルールが『死にたいと心から思っている人間しか殺さない』
という物なのだろう事は、容易に察せられた。
 ふと思い出す。今朝、駅前で見たあのOLの顔を。
「それが本当に“助ける”って表現してしまっていい行いなのかどうかは、まあ、
 殺された当人にしかわからない事だがね……」
 そして、死の瞬間の、背後に立ったメリーさんの方を振り返った瞬間の顔を、
同じように思い出す。
 ……答えは、出なかった。出せるはずが、なかった。
「マスター、喋りすぎ、なの」
「はっはっは、すまんすまん……まあ、記者さん、人間としては色々複雑な
 感情もあろうが、メリーちゃんは“悪い子”じゃない……それだけは、わかって
 やってもらえるだろうかな?」
 それは……頷くしか、できない。時間を潰すために遊園地で遊んでいた間、
一緒にいて心が安らぎ、弾んだという事実は、確かにあったのだから。
649本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 12:55:30 ID:TOVmKK+a0
 年甲斐も無く、ときめいてしまう程に。
「……難しい……本当に、難しい話だよ」
 どこか遠い目をしているマスターに、琥珀色の液体を一杯注文する。
 メリーさんは、相変わらずコーヒーを味わうようにちびちびと飲んでいる。
 さて、どうしたものだろうか。
 私は記者として、人間として、何を書けばいいのだろうか。
「あるがまま、書いて欲しいの」
 メリーさんは、迷いを打ち消さんとするかのごとく、そう言った。
「信じるか信じないかは……読む人次第、なの」
 ――その言葉に、腹は決まった。


 さて、皆さん。
 このお話を、信じますか? 信じませんか?
 そのどちらを選ぶも貴方次第……貴方は、どちらを選びますか?
 それとも――――――

                                 終わり
650本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 19:41:57 ID:4A6u+6Qf0
今日もホイールが高速で回りましたとさ
651本当にあった怖い名無し:2010/08/07(土) 21:21:07 ID:D6iuTw0d0
赤緑おつぅ!
652本当にあった怖い名無し:2010/08/08(日) 10:48:36 ID:oMlqkXuB0
いやいや面白いじゃん
「つまんないつまんない」って言う奴は自分でつまらなくしているって誰かが言ってたぞ
653本当にあった怖い名無し:2010/08/08(日) 21:01:45 ID:FwKs5eD00
NGIDが日々増えてゆく
654本当にあった怖い名無し:2010/08/09(月) 13:44:27 ID:oI9nheH1O
>>652
夏休みだから読書をしたら良いよ。
ラノベや漫画じゃなくて…そう、お薦めは白鯨だな。
オレは読んだことないけど。
655本当にあった怖い名無し:2010/08/09(月) 19:44:59 ID:s/Ud1X140
赤緑を崇めてる奴が言うセリフかよww
656本当にあった怖い名無し:2010/08/09(月) 20:51:35 ID:oI9nheH1O
>>655
???
657本当にあった怖い名無し:2010/08/10(火) 11:54:45 ID:HH642i5T0
赤緑は八宝斉を超えられませんな…読んでないけど
658本当にあった怖い名無し:2010/08/10(火) 14:29:45 ID:nOXg4/RNO
>>657
むしろ赤緑からのインスパイアを感じたけどな。

赤緑は展開が遅すぎる。
さっさとウニが師匠を幻魔研究会に連れてって身体のお札を剥がせば、
中の人が食い尽くして解決するんじゃね?
659本当にあった怖い名無し:2010/08/12(木) 11:18:15 ID:/faADAdu0
>>657
ギャグのレベルですね分かります
660本当にあった怖い名無し:2010/08/12(木) 22:50:05 ID:q/+ZCfO7P
>>656
悪いとは言ってないだろ
それ以上でもそれ以下でもない。日本語の意味分かるか?
社会って物はもっとドライであるべきだろう
ベタベタ、ジメジメの人間関係は身内同士でやるなら個人の勝手だが
それを分別無く他人にまで広げてしまったらサヨク主義の世の中になってしまう
国が腐ってしまったら、当然の結果として個人もその全員が不幸になってしまう
661本当にあった怖い名無し:2010/08/13(金) 08:35:35 ID:gvASdupNO
夏休み子供特別番組
『終戦から65年を迎えて、この国のかたち』をお送りしました。
続いて甲子園準決勝です。
662本当にあった怖い名無し:2010/08/13(金) 21:24:16 ID:nCNJ+QEP0
規制解除(´・ω・`)
663本当にあった怖い名無し:2010/08/14(土) 02:52:11 ID:zmjvY8720
ウニさん来ないかなぁ
664本当にあった怖い名無し:2010/08/14(土) 17:03:23 ID:MDZF3ClMO
カニさん…
665本当にあった怖い名無し:2010/08/14(土) 21:16:51 ID:+pWniLg2O
ウニは多分、お盆で帰省中なんじゃね?
で、実家周辺の調査をして…このスレに何が投下されるか、後は分かるな?
666本当にあった怖い名無し:2010/08/14(土) 22:31:45 ID:bC9qc0mH0
もうこのスレには来ないだろ
酷すぎるもん
667本当にあった怖い名無し:2010/08/14(土) 23:29:52 ID:MDZF3ClMO
ワニさん
668田中 ◆TvZpL/zR1S8r :2010/08/14(土) 23:46:05 ID:uD934UST0
テス
669本当にあった怖い名無し:2010/08/15(日) 00:40:52 ID:jCFSc+/90
このスレに来ないとしたら、どこに来る?
やっぱり洒落怖かなぁ
670本当にあった怖い名無し:2010/08/17(火) 19:24:57 ID:ouMFV6Yq0
知るかボケ
671赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 13:30:55 ID:sV7sjnii0
[渦]

1/11
“牢屋”に戻り、背広を脱いでネクタイを外し、布団に寝転がる。

和風に作られたこの部屋には、卓袱台や布団といった、寝泊りするのに必要最低限の物だけが備えられている。
それだけでも――窓が無いことを除けば、ここは案外快適な空間だ。
滅多に使われることは無いだろうが、掃除もキチンとしてあり、意外なほど清潔感に溢れている。

私は天井を見上げたまま、ズボンからペーパーナイフを取り出し、目の前に掲げる。
こんなものでも、人の命を奪うには十分なものだろう。

これが武器だ。私の武器。
これで、大切なものを守るのだ。
これで…これさえあれば――

「汐崎部長?」

突然声を掛けられ、私は布団から起き上がる。
私「…本部長」
いつの間にか、部屋の入口に高城本部長が立っている。
私は慌てて、ナイフをズボンのポケットに仕舞う。
672赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 13:33:38 ID:sV7sjnii0
2/11
高城「ノックしたのですけど…もう、お休みでした?」
私「いえ、ちょっと考え事を…」
高城「…そう」

本部長はそう言うと、靴を脱ぎ、部屋に上がってくる。
何気ない仕草。しかし私はそこに、いつもとは違う色気を感じてしまう。
しなやかに伸びた足――今日は網状ではなく、普通のストッキングを履いているその足も、やけに魅惑的に見える。

私はそこに見惚れそうになるのを抑えながら、彼女に座布団を勧め、お茶を淹れる。
高城「具合はどう?」
私「具合…?至って健康ですよ」
高城「そう。良かった」

ここにきて、まだ1日目が終わったところだ。
それだけで健康を崩すわけも無い。
…少なくとも、身体の面での健康は。

私「…どうぞ」
彼女の前にお茶を出す。
高城「ありがとう」
そう言って、素直にお茶に口をつける本部長。

…何とも無防備なものだ。
自分のしたことを、何とも思っていないのだろうか?
脅迫し、殴りつけ、気を失わせて連れてきた相手に対して、この警戒心の無さは…?
673赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 13:36:48 ID:sV7sjnii0
3/11
…おそらく、私のことを舐めているのだろう。
何もせず、ただ従うだけだと思っているのだろう。
どうせ、何もできやしないと…。

そもそも…この状況は何だ?
私はこれでも男だ。
そして彼女は1人の女性。
それもかなりの美人で、魅力的だ。
それに加え、挑発的な…誘っているかのような格好、仕草をしている。

奥まった場所にある部屋。窓の無い密室。
定時も過ぎ、他に人が来るとは思えない時間。
そして、私の後ろには布団があって…

こんな状況で、危険を感じないのだろうか?
敵対している相手を目の前にして、平然とお茶を飲んでいるが…何も考えていないのか?

…いや、考えているだろう。
ただ、私を男として”下”に見ているのだろう。
674赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 13:41:01 ID:sV7sjnii0
4/11
私は、女性に乱暴しようとは思わない。
娘がいる身としては、尚更だ。

…しかしそれにしたって、私は男なのだ。
彼女だって、自分の魅力は知っているはずで、普通の男がそれを見て何を考えるか何て――

高城「汐崎さんでも…」
私「…はい?」
不意に声を掛けられる。

高城「そういう目をするのね」
目…?今、私はどんな目をしていた?
高城「初めてじゃないかしら?私のこと…そういう目で見てくれるの」
私「…」
…あぁ、そういうことか。そんな目をしていたか、私は。
それはそうだ。当たり前だろう。よからぬ事も考えてしまうさ。

だが、はっきりと言っておこう。

私「すみません。…でも、ちょっと違いますよ」
高城「違う?」

私「えぇ。私は、あなたを憎んでいるだけです」
675赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 13:44:58 ID:sV7sjnii0
5/11
高城「…」

言った。私は、言った。
心の中に、黒いものが渦巻く。
彼女は敵だ。決して信用のできない、敵だ。

高城「そう…」
本部長の顔が曇る。一瞬だけの、悲しげな顔。
以前にもそんな表情を見た気がする…?いや、もうどうでもいい事だ。

私「私は、見張られていたのでしょうね」
高城「…そうね」

私があの学生…神尾美加と会ったことは、すぐに往来会に知れた。
その理由は、簡単なことだ。
私は見張られていたのだ。
要注意人物として。

私「上の人間に、私について報告したのでしょうね」
高城「えぇ…」

これは当然だ。本部長の立場上、当然しなければならないことで、そこは責めてはいけない。

…と、頭では分かっているつもりだが…!
676赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 13:50:00 ID:sV7sjnii0
6/11
私「相談なんてしなければ良かった…」
高城「…」

あれさえ…あんなことさえしなければ、こんな事態にはならなかったのだ。
あそこから狂ってしまったのだ。
どこにもぶつけようの無かった怒りが、フツフツと湧いてくる。

私「何故…」
私は立ち上がり、座ったままの彼女を見下ろす。
本部長が嫌う行為だとは知っているが、あえて、だ。
私「何故報告を?あなたに、何の得が!?」
私はポケットに手を入れ――ナイフを握り締める。

高城「…」
本部長は何も言わず、俯いている。
黒いものが…心が、染まっていく…

私「なぜですか!?」
言いながら、私は本部長の傍に歩み寄る。
そして俯いて座ったままの彼女の横に立ち、その首筋を見つめ、”狙い”を定める。
突如として高まってきた激情は、抑えられそうにもない…!
677赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 14:02:59 ID:sV7sjnii0
7/11
私「本部長…何か、言ってください…」

ジッと彼女を見下ろしながら、呟く。
そして返事を待つ。

…私は返事と同時に、彼女の首にナイフを突き立てるつもりだ。
どんな言い訳をしようと、本部長のしたことは…許せない…

私「本部…」
高城「食事はしたの?」

私「…は?」
何?食事?

高城「キチンと食べるように、って…真奈美ちゃんからの伝言よ」
私「真奈美…?」
なぜここで、真奈美の…

…と思っていると、本部長がスッと立ち上がる。
高城「報告したのは、義務だからよ」
私「義務って…」
義務?それくらい、分かっている。
分かっているが、私達はそれで…

高城「…後悔しているわ。ごめんなさい」
そう言って、本部長は深々と頭を下げる。
678赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 14:04:59 ID:sV7sjnii0
8/11
予想もしなかった事を言われ、真奈美の名前を出され、開き直られて、謝られて…私は少し混乱してしまう。

私「いや、そんな…」
高城「私の用事はそれだけよ…」
本部長はそう言うと踵を返し、部屋を出て行こうとする。

私「あ…謝られたって、この状況は…!」
高城「私を殺しても、変わらないわよ」
私「…」
高城「他の人でも、そう。それじゃ、悪いようにしかならないわ」
私「そんなこと…」

…そんなことは、分かっている。
分かっているのだ。
でも、私は他に何をすればいい?
こんなところに閉じ込められて、何ができる?
どうやって娘を守れる?
真奈美を、どうやって…

靴を履き、部屋を出て行こうとする本部長を見ながら、私は苦悶する。
…と、そんな私に、彼女が言った。
高城「真奈美ちゃんは、私が守るから…」
679赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 14:08:23 ID:sV7sjnii0
9/11
…何?

高城「約束するわ」
何を言っているのだ…?

私「…それを信じろと?」
連れ去ろうとしていた人間が、今更何を?
私の家で、お前たちが何をしたのか…しようとしたのか。
真奈美を連れ去ることは止めたらしいが、そんな簡単に言われて、はい、お願いしますと言うとでも思ったのか?

…それとも、これは脅迫か?
以前にも真奈美のことで脅されたが、そういうことなのか?
娘はこちらの手の内にあると、そう言いたいのか…?

高城「信じなくても良いわ」
そう言って扉を開ける本部長。
私「…」

高城「私が勝手に、そうするだけだから…」
最後にそう言い残し、彼女は部屋を出て行った。
680赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 14:11:39 ID:sV7sjnii0
10/11
…本部長が部屋を出て行ってからも、私はしばらくの間、その場に立ち尽くしていた。

意図が分からない。
本部長は、いったい何を考えているのだろう…。
なんだかまた、心にポッカリと穴が開いたような感じがする。
先ほどまでそこにあった、黒く渦巻いていたものは、すでに消えている。
まるで、そこから抜け落ちていったかのように…。

「汐崎さんのこと、心配してくれたんですよ。きっと」

神尾美加の言っていた言葉が思い出される。

私だって、そう思ったさ。

しかし、そう思って話をしようと思った矢先…私は殴られ、ここに連れてこられたのだ。
そりゃ、手を出したのは藤木だが…本部長も一緒だったのだ。
そこもまた、良いほうに考えるべきなのか?

あれは何か…事情があったと?
681赤緑 ◆kJAS6iN932 :2010/08/18(水) 14:14:40 ID:sV7sjnii0
11/11
神尾美加なら、きっとそうも考えるのだろう。

でも私は…私だ。
娘のいる身で、そこにも被害が及ぼうとしているのだ。
良いようにだけなんて、考えられない。
最悪のケースも考えていないといけない。

だが、もし――?

…か。

ハァ…と、ため息を付くと、私はポケットからナイフを取り出す。

何だろうな、これは。
武器?何のための?
何の役に立つ?これが何を生む?
私はナイフを持って、強くなったとでも思ったのか?

くだらない…!
私は部屋の隅にそれを投げ捨てる。

もっとちゃんと…感情的にならず、落ち着いて考えなければ。
ここからどうすれば、この事態に収拾をつけられるかを…。


682本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:18:42 ID:ITIWYzjb0
「私、メリーさん。今、デパートの前にいるの」
「私、メリーさん。今、地下1階のお菓子売り場にいるの」
「私、メリーさん。今、電車にのってあなたの家に向かってるの」
「私、メリーさん。今、駅前の交差点にいるの」
「私、メリーさん。今、4丁目の公園にいるの。歩き回ってお腹がすいたの」
「私、メリーさん。今、おうちでくつろいでるの」


「おい! チョコはどこに消えたんだよ!」
683本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:18:56 ID:ITIWYzjb0
メリーさん「口裂けでも花子でもマッハばばあでもリカちゃんでも赤マントでも人面犬でも、いっその事くねくねでも良いから逆チョコ、友チョコ欲しいの」
684本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:19:16 ID:ITIWYzjb0
「私メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」

いまどき、こんな深夜にこんな悪戯電話をかけてくる奴がいるとはな。
誰もいないじゃないか。
まったく、電話は五回。その電話でメリーという女の子が段々私の居場所に近づいてきた。
一回目は近くのコンビニ。
二回目は近所の公園。
三回目はウチの前。
四回目はドアの前にいると言った。
そして最後の電話を取ると同時に俺は振り向いた。
「いいかげんにしろ」
「私メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」
「俺はドアの方を見ている。おまえはいない」
「……」
「じゃあな。寂しいからって、イタズラするんじゃないぞ」
今日はバレンタインデー。
どうせ1人寂しく過ごした女の悪戯だろう。
電話を切って、受話器を置いた。
ふと、電話の横に何かが置かれているのに気づいた。
赤い包装紙で包まれた包みだ。
開けてみる。
チョコと、メモ用紙みたいだ。
メモ用紙には、『寂しいのはお前も同じだろう、バーカ』と書かれていた。
そういえば、俺は妻が死んでから初めて迎えるバレンタインデーだということに気づいた。




「私メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」

685本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:19:34 ID:ITIWYzjb0
メリーさん「私メリーさん。ここだけの話、R-1グランプリにも参加してたけど予選落ちだったの」

686本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:19:48 ID:ITIWYzjb0
「私メリーさん。今ゴミ捨て場にいるの」
「自分をさんづけすんな」
「私メリーちゃん。今タバコ屋さんの角にいるの」
「ガキに用はねえよ」
「私メリー。今あなたの家の前にいるの」
「何でファーストネームなわけ? 名乗るならちゃんとやれ」
「私はメアリー・ドナルド・山田。今あなたの後ろにいます」
687本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:20:31 ID:ITIWYzjb0
「私メリーさん」
「私もメリーさんです」
「今ゴミ捨て場にいるの」
「偶然ですね、私もです」
「今タバコ屋さんの角にいるの」
「私もタバコ屋さんの所です」
「今あなたの家の前にいるの」
「私は今あなたの後ろにいます」
688本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:21:01 ID:ITIWYzjb0
「私メリーさん。今あなたの後ろに……ハッ!?」
「甘いの。私もメリーさん。今あなたの後ろに……ハッ!?」
「私三人目のメリーさん。今……ハッ!?」

中略

「私四千五百八十七人目のハッ!?」
「私一人目のメリーさん。やっとうしろに立てたの……(涙
689本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:22:24 ID:ITIWYzjb0
私メリーさん、

これから中国へ行って支那祭りなの!


・・・ふふふ・・・。


血祭り・・・ね。
690本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:22:42 ID:ITIWYzjb0
「私メリーさん。今あなたの名前で蕎麦十人前頼んだの」

「いつの時代の嫌がらせだよ!」
691本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:23:17 ID:ITIWYzjb0


624 創る名無しに見る名無し sage 2009/03/05(木) 22:36:19 ID:qC5gnN3g
「私メリーさん。もちろん私が蕎麦食べるなのよ。ちゃんとお金払っておいてほしいの」

692本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:23:39 ID:ITIWYzjb0
「私メリーさんアル。今あなたの後ろにいるアル」
「……パチモンかよ」

693本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:33:11 ID:ITIWYzjb0
「ひどい……わたしメリーさんアル。帰るアル……せっかくチャイナドレス着て来たのに」

694本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:33:25 ID:ITIWYzjb0
「帰るな! ちょっと待て! 一目見せろっ!」
「でも後ろにいるアル」
「ガァァァッ!?」
695本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:33:46 ID:ITIWYzjb0
「私メリーさん。いま普段着に着替えてるから、後ろ向いちゃだめだよ?」
「ちゃ、チャイナからの生着替えだとぉおおお!」
696本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:33:48 ID:Xbhucs+LO
赤緑乙でした
697本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:34:05 ID:ITIWYzjb0
私メリーさん。美少女って言い切るには微妙なの。
私メリーさん。身長120センチ、けっこうあるの。
私メリーさん。体重120キロ、けっこうあるの。
私メリーさん。すね毛が濃いの。
私メリーさん。真っすぐな黒髪が自慢なの。
私メリーさん。思いっきり和風丸顔なの。
私メリーさん。各パーツが顔の中央寄りなの。
私メリーさん。目が一本線で口がオチョボなの。
698本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:34:23 ID:ITIWYzjb0
「うーむ、どう考えても口述の情報と現実の視覚情報との齟齬があり過ぎる……」

「ちょっ、手鏡自重してほしいのっ!やっ、まだ服着てなっ……!こっち見んな!」

「しかし見られたくないと言う感情から咄嗟に生まれた外観についての詐欺の可能性を検
証するには見るしか方法がないだろう」

「検証するとかよりもまず、女の子が恥ずかしがってるのをわざわざ見るなっ!あなただ
けは絶対呪い殺す!」

「うーむ、呪い殺されては堪らないな。呪いでは傷害にも過失致死にも問えない。ならば
こうしよう」

──カシャ

「!! ちょっとぉ、写メとか止めてよっ!馬鹿!変態!田代!」

「この画像を撒かれたくなければ呪い殺すのをやめろ」
699本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:34:40 ID:ITIWYzjb0
メリーさん「私、メリーさん。今から貴女の家に行くの」

メリーさん「私、メリーさん。今、ゴミ捨て場に…ちょっと待t! ブチ……ツーツーツー」

メリーさん「…ハァ…ハァ…私、メリーさん…ハァ…ハァ。今、…○×橋に……あっ!今助けに! ブチ… ツーツーツー」

メリーさん「ゼーハァー…ゼーハァー…はっ、はっ、はっくしゅん!!……私、ゼーハァー…メリー……さん。ゼーハァー…今、ゼーハァー……×××小学校に…ん?ちょ、ちょっと駄目なの! ブチ… ツーツーツー」

メリーさん「ゼーハァーゼーハァーゼーハァー…私、ゼーハァーゼーハァーゼーハァー……メリー ゼーハァーゼーハァーゼーハァー…さん。
ゼーハァーゼハァーゼーハァーゼーハァー…今、ゼハァーゼーハァゼーハァー……銀行…ゼーハァー…前に…。嗚呼、ゼーハァーゼーハァー 無視したいけど…ゼーハァーゼーハァー…メリーがやらなきゃ ゼーハァー 誰がやるの! ブチ…ツーツーツー」

メリーさん「ゼーハァーゼーハァーゼーハァーゼーハァー(省略)」

メリーさん「ゼーハァーゼーハァー…(省略)」

メリーさん「ゼーハァー(省略)」

メリーさん「私、メリーさん。遂に……遂に…辿り着いたの。貴女の家に…」

メリーさん「私、メリーさん。今………貴女の後ろにいるはずなのに………何で貴女がいないのよおおおおぉぉぉぉ!!!!!この女(アマ)何処に行きやがったああああぁぁぁぁぁ!!!!」

次の日

メリーさん「私、メリーさん。強姦殺人事件の指名手配者を捕まえて、銀行強盗退治して、橋の下の川で溺れてた子を泳いで助けて、飛び降り自殺を止めて、…etc(全部で計8個) したら沢山賞を貰ったの。あと、沢山マスコミが来て有名人になっちゃったの」
700本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:35:34 ID:ITIWYzjb0
「私メリーさん、今つのだ☆ひろと一緒にいるの」

701本当にあった怖い名無し:2010/08/18(水) 19:35:47 ID:ITIWYzjb0
「あっ……だめっ。つのだ☆さん、私まだ準備が……まだ、あなたのうしろにいたいの」
702本当にあった怖い名無し:2010/08/19(木) 00:03:16 ID:1HaTIa01O
メリーさんシリーズ結構好きだよ。
もっと書いてくれ。
703本当にあった怖い名無し:2010/08/19(木) 00:51:31 ID:IKKjD8CDO
>>702
本人乙

今までの中で一番つまんね
頭悪そうな文章だし
704本当にあった怖い名無し:2010/08/19(木) 09:06:28 ID:7Ql3SMu1O
>>703
ちゃんと読んでるんだ
705本当にあった怖い名無し:2010/08/19(木) 10:23:26 ID:OqfAV9awO
お前まだいたのかwwwよく飽きないねwww
706本当にあった怖い名無し:2010/08/19(木) 12:46:46 ID:XhksUrnT0
赤緑氏乙
707本当にあった怖い名無し:2010/08/19(木) 19:56:44 ID:ScCt5tDi0
>>703
お前みたいなのが一番つまらん
元スレは賑わってるってのに
書き手が次々と現れる
書き手が実質二人しかいないこのスレとは雲泥の差
708なぞなぞ  ◆oJUBn2VTGE :2010/08/20(金) 23:41:34 ID:kFozVi3d0
大学四回生の冬だった。俺は仲間三人と少し気の早い卒業旅行をした。
交代しながら車を運転し、北陸まわりで関東へと入った。宿の手配もない行き当たりばったりの旅で、ビジネスホテルに泊まれれば良い方。どこも満室で、しかたなく車の中で寒さに震えながら朝焼けを見たこともあった。
目的はない。ただ学生時代特有の怠惰で無為な時間の中に、もう少し全身を沈めていたかった。みんな多かれ少なかれそんな感傷に浸っていたのだと思う。
ある街に着いた時、俺はふと思いついた。知り合いがこのあたりに住んでいたはずだ。
携帯電話で連絡をしてみると、懐かしがってくれた。一時間くらいあとで落ち合うことにする。
並木道がきれいに伸びている新興住宅地の中を通り、路肩に下ろしてもらい「終わったら連絡くれ」と言って去っていく仲間の車を見送る。
都心から離れるとあの、人であふれた息の詰まるような町並みよりも、空間的にずいぶん余裕がでてくるようだった。
カラフルな煉瓦で舗装された道を自然と浮き足立つステップで進み、大きなマンションが群れるように立ち並ぶ方へ目をやる。
マンションというより、団地か。そこへ向かう道は軽く傾斜し、丘になっている。
その団地の入り口に公園があった。広い敷地には、わずかばかりの遊具とたくさんの緑、そして住民が憩うためのベンチがいくつかあった。
そこにその人は座っている。
小春日和の温かい日差しに目を細めながら、こちらに手を振る。
俺は照れ隠しに大げさな動作で手を振り返し、ことさらゆっくりと歩いていった。
「え〜と、元気でしたか。……多田さん」
なんだか面映い。ここ数日、砕けた仲間同士の掛け合いしかしてなかったので、口が滑らかに動かない。
元気だとその人は言った。
以前より少しふっくらしたようだ。髪の毛も伸ばしている。なにより、あの真摯で鋭かった眼差しが柔らかくなっている気がする。
ベンチの隣に座って近況を報告した。
709なぞなぞ  ◆oJUBn2VTGE :2010/08/20(金) 23:44:01 ID:kFozVi3d0
昼下がりの公園は自分たちのほか、時おり主婦らしき若い女性が通りがかっては去っていくだけだった。
「そうか、おまえも卒業か」
感慨深げな声に、うしろめたい気持ちで頷いた。卒業を待つ仲間たちと違い、俺だけは単位が足りずに留年することが決まっていたからだった。
旅行なんてしている場合ではない気がするが、捨て鉢になっていたというわけでもない。ただそのころの俺は、すべてなるようにしかならない、という達観めいた平静の境地にあったような気がする。
けれど格好悪いのであえてその事実を告げることはなかった。
風の凪いだ陽だまりの中、二人でいろいろな話をした。たかだか二、三年前の過去が遥か遠い昔の出来事のように色あせて、それでも仄かな輝きとともに蘇ってくる。
「智恵も結婚したんだってな」
「ええ。二次会に呼ばれましたけど、あの人も変わりませんねえ」
相手はどんなやつだと言うので、「やっぱり、ああいうタイプの人でした」と答えると「なるほど」と笑った。
チリ紙交換の車がどこか遠くを走っている音がする。
顔を上げ、ハッとした表情を見せて、なにか思い出そうという風情だったが、すぐに「まだいいか」とつぶやいた。その横で俺は胸に小さな針が刺さったような微かな痛みを覚える。顔を伏せ、その痛みの正体はなんだろうと自問する。
「そういえば、この団地にも七不思議があってな」
ふいにその人は切り出した。
「え。学校によくあるあれですか」
「ああ。まあ小中学生も多いし、同じノリで生まれたんだろう」
そう言って順番に教えてくれた。
団地への上り坂を時速百キロで駆け上るババア。
夜中C棟の前のケヤキの木の枝にぶらさがる首。
夕方E棟の壁に映った自分の影が勝手に動く。
団地内の公衆電話BOXにお化けからの電話が掛かってくる。
…………
710本当にあった怖い名無し:2010/08/20(金) 23:45:59 ID:Grhl+kuK0
キターーーーーーーーーwww
711なぞなぞ  ◆oJUBn2VTGE :2010/08/20(金) 23:48:55 ID:kFozVi3d0
「わりと、よく聞くような話ですね」
「そうだな。でもこの団地の七不思議は子どもだけじゃなくて、主婦連中にも信じている人たちが多いみたいだ。時どき噂が聞こえてくるよ。手のかかる小さい子どもを持ち、狭い空間に押し込められた大人たちにも心の病巣があるということかな」
あそこを見てみな。
指さす先に目をやると、ブランコのそばに小ぶりなジャングルジムがぽつんと建っている。
「あのジャングルジムに、いつの間にか小さい子どもが入って遊んでるっていう話もある。見通しがいいし、あんな細いパイプの骨組みのどこかに隠れられるはずもないのに、誰もいなかったはずのジャングルジムの中に気がつくと男の子がひとり入っているんだ。
パイプを上り下りしながら内側を這いまわってるらしい。見てしまっても気がつかないふりをしていると、またいつの間にかいなくなってるんだと」
「まるで妖怪みたいですね。怪異に出会ってしまった時の対処法とセットで存在する噂だなんて」
「確かにな」
二人ともジャングルジムを見ていた。男の子の姿はない。
あの遊具があんなに小さかっただろうかと思う。自分にもあんな狭いパイプの中を這い回って遊んだ時代があったということが、なんだか不思議だ。
「子どもと言えば、こんな話もある。ベビーカーを押して母親が団地の中を散歩していると、周りに誰もいないのに、声が聞こえるんだ。キョロキョロしているとまた聞こえる。
囁くような小さな声。ベビーカーの中からだ。まだ喋れなかったのに、とうとう赤ん坊が喋れるようになったんだと喜んで母親がベビーカーの中を覗き込む。なのに赤ん坊はぐっすり眠っている…… いったいなにが赤ん坊に囁いていたのか」
「それは」
「なんだ」
怖い話ですね、と素直に言えなかった。なにか合理的な解釈ができないかと考えたが、情報が少なすぎた。
仕方なく、「ノイローゼじゃないですか。育児ノイローゼ」と言うと、「かもな」と頷いた。
そしてそのまま少し、遠い目をした。
712本当にあった怖い名無し:2010/08/20(金) 23:52:58 ID:mMsLURDw0
バカ上げんな
祭りになるぞwww
713なぞなぞ  ◆oJUBn2VTGE :2010/08/20(金) 23:53:59 ID:kFozVi3d0
ふいにカチャリという音が聞こえる。
地面に鍵が落ちている。ジーンズのポケットから落ちたらしい。屈んで手を伸ばし、拾ってあげる。
「すまんな、こんな状態で」
その人は窮屈そうに手のひらを広げ、受け取った。渡すとき、指先が触れてなんだか照れたような気分になる。
照れ隠しにそのまま指を折ってみせる。
「むっつですね。ここまでで」
「うん? ああ、七不思議か。そうだな。最後のひとつは面白いぞ」
面白い? それはオチ的なものだということだろうか。
「面白いというか、怪談として珍しいというのかな。こんな話だ」
そうして丁寧に話してくれた。


この団地には「なぞなぞおじさん」という怪談がある。
A棟の702号室にいるおじさんらしい。
どうしてなぞなぞおじさんなのかというと、読んで字のごとくなぞなぞが大好きなおじさんだからだ。
噂を聞いた子どもが702号室のドアの前に立って、コンコンとノックしたあとドアについている郵便受けをカタリと内側に押してから、部屋の中に向かって話しかける。
「おじさん、おじさん、クジラよりも大きくて、メダカよりも小さい生き物な〜んだ?」
おじさんはなぞなぞが大好きだけど、なかなか答えがわからない。ずっとずっと考えている。ドアの前で待っていても返事はない。
仕方がないので引き返して自分の家に帰る。
答えはイルカ。そんなのイルカ! だからイルカ。こんなに簡単なのに、おじさんは分からないのだ。
子どもの住む団地の一室で、家族は寝静まり自分も部屋でもう寝ようとしているころ、玄関のドアをコンコンと叩く音が聞こえる。
家族が誰も起きないので、ベッドから這い出し、恐る恐る真っ暗な玄関に向かうと、コンコンとドアを叩く音が止まる。
714本当にあった怖い名無し:2010/08/20(金) 23:59:05 ID:dHqURfAoO
支援
715なぞなぞ  ◆oJUBn2VTGE :2010/08/21(土) 00:00:05 ID:kFozVi3d0
カタリとドアの郵便受けが開く音がする。
「クジラよりも大きくて、メダカよりも小さい生き物な〜んだ?」
郵便受けから低い大人の声。その声は続ける。
「答えはね、泥。泥だよ」
子どもはどうしようもなく怖くなる。なぞなぞおじさんがやって来たのだ。こんな時間になって。
でもイルカなのに。答えはそんなのイルカ! なのに自分の声が出せない。
「泥だよ」
もう一度小さくつぶやいて、カタリと郵便受けが戻る。
ドアの向こうから気配が消える。おじさんが帰ったのだ。『泥』という意味のわからない答えを残して。
そんな噂。
団地の子どもたちはその噂を聞いて、面白半分に次々と702号室の郵便受けになぞなぞを放り込む。
「お父さんが嫌いなくだものはな〜んだ?」
「公園で静かにそうっと乗るものな〜んだ?」
「世界の真ん中にいる虫はな〜んだ?」
……
答えはパパイヤ。パパが嫌だから。
答えはシーソー。シーッとソーッと乗るから。
答えは蚊。せ・か・いの真ん中は「か」だから。
けれどなぞなぞおじさんはそんな簡単ななぞなぞが分からない。
夜中まで考えて、家族の寝静まる子どもの家にやってくるのだ。郵便受けから低い声で。
「お父さんが嫌いなくだものはね。歯の生えた梨」
「公園で静かにそうっと乗るものはね。刳り貫かれた楡の木」
「世界の真ん中にいる虫はね。鼻歩き」
……
716なぞなぞ  ◆oJUBn2VTGE
その気持ちの悪い答えを聞いても、絶対に「違う」と言ってはいけない。
「違う」と言っても別のもっと気持ち悪い答えを低い声で囁いてくる。それを繰り返していると、自分でも本当の答えが分からなくなってくるのだ。
答えが分かるまでなぞなぞおじさんは帰らない。なのに答えが消えてしまう……


「という話だ」
どうだ? というように見つめられる。
「それは」
確かに怖いが、まるで変質者だ。
「その702号室は無人なんですか」
「いや、おじさんが住んでるよ」
「え、じゃあ実在の人なんですか」
「そう。普通のおじさん。もちろんお化けなんかじゃない。団地の集会にも顔を出すし、近所づきあいも普通にしてる。むしろどうしてそんな噂が生まれたのか本人が一番首をかしげている」
「本人にも心あたりがないんですか」
「らしいよ。ただ、子ども好きでな。よく近所の子どもになぞなぞを出していたんだ。答えを当てられたら飴とかガムをあげていた。逆に子どもが出すなぞなぞに答えられなかったりしても、そういうお菓子を巻き上げられたりね」
それを聞きながら、俺はやっぱりそのおじさんがやってることなんじゃないかと感じた。ただ誇張されているだけで。
「奥さんがいるんだけど、ちょっと前まで共働きでな。昼間はたいていその家は留守なんだ。七不思議の噂ではその昼間に702号室に行くことになっている。それで郵便受けから部屋の中になぞなぞを一方的に話す。
肝心なことはそのなぞなぞおじさんは答えが分からなくて返事がない、ということがパターンになっていることだ。当たり前だな、誰も部屋の中にはいないんだから。でも夜にそのなぞなぞの答えを話しにやってくる、というところが変だろう。
なぜその誰も聞いていないはずのなぞなぞを知っているのか」