【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その4

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PART1:【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】
http://curry.2ch.net/test/read.cgi/occult/1030468085/
PART2:【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その2
http://curry.2ch.net/test/read.cgi/occult/1034309472/
PART3:【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その3
http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1036704369/
 このスレは、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』三部作に
オマージュを捧げる小説スレです。
もしくは、『ゾンビ』好きの人が小説をうpするスレです。

小説のお約束
・基本的にsage進行。
・スレタイに「ホームセンター」と入っているが、とりあえずこだわらない。
 (PART1スレの1氏への感謝と検索し易さを考えてつけました)
・ゾンビの設定は、一応、映画『Dawn Of The Dead:ゾンビ』を使用。
・舞台は日本。できるだけ身近な場所をモチーフにするとよいかと思われます。
・主人公は、できるだけ普通の人にとどめておいたほうが無難の模様です。
その他
・496KBで警告メッセージが出力され。512KBでスレッドが終了します。
 なので、450KBを過ぎた時点で新スレッドへの移行の話し合いを開始すると良さそうです。
今のところは、こんな感じです。
お気づきの点がございましたら、付け加えのほどをお願いいたします。
2あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/17 19:18
2げと
3あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/17 19:42
3ゲッツ
4PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/17 20:11
新スレ乙です。

今仕事中なので帰ったらいくつか貼ります。
5さんげりあ ◆w2rO5q7aSo :03/03/17 20:57
新スレ設立おめれとうございます&ありがとうございます

明日、続きの分を投稿します。
6さんげりあ ◆w2rO5q7aSo :03/03/17 20:58
スマソ。間違ってあげてしまいますた。
許すて。。。
7PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/17 22:51
では3つほど投下します。
新スレ初貼りを認めてくださった住人の皆さん、ありがとうね。
8PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/17 22:52
 外見や周囲の荒れた様子からしばらく人の出入りが無いだろうと思われたが、日向は気を抜かなかった。
 まず設置してある水道やガスボンベのメーターを見る。蜘蛛の巣の張った指針はじっとしたままだ。
(しばらくガスと水道が使われていないことを確認)
 次に正面と裏手のドア周辺を観察する。足跡、ドアノブと蝶番の埃、鍵の有無。
 全て使われなくなって久しいことを示していた。
 日向は右手にグロックを握ったまま、左手に持った聴診器で中の音を探る。 
『……』
 何の音も聞こえない。
 周囲の状況、ライフラインの稼動、出入り口の使用状況、物音。
 内部を間接的に調べられるものは、これぐらいだろう。
 後は直接確かめなくてはいけない。
 聴診器をしまい、ありふれた鍵穴に薄くつぶした金属片を挿入する。
 作業音が途絶えるのに一分とかからず、あっさりと鍵は役目を終えていた。
 ピックをしまうと、スカーフで口元を覆う。
 ゴーグルで眼もカバーしたほうが良いような気がしたが、急速に光を失いつつある今は視覚を優先しようと思い直す。
 軽く息を吸い込むが、体内の鼓動は徐々に高まっていく。
 
 初めての実戦。
 脈動の響きがあまりに大きく感じられ、つい周囲をもう一度見渡してしまう。
 地底深く埋もれつつある落日の光に荒れた空き地が照らし出される。
 丈高い雑草。朽ちたフェンス。足元から伸びる影。薄汚れたプレハブ。そして車。
 全てが赤く染まる時間。
 平等に与えられた朱色の化粧。
『尚也さん、起きるかな』
 なぜか、そんなことはありえない話だが、何とはなしにそんな気がして、建物に背を向けて車へと一歩踏み出す。
 ぱき。
 足の裏に小枝の折れる感触が伝わり、日向は正気を取り戻した。
9PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/17 22:53
 あまりに都合のいい想像を振り払い、右手の銃を握りなおす。
 影と闇が入り混じるこの時間の魔力が、幻を生ませていたのだろうか。
 宵闇迫る世界は全てが儚げだった。
 不安になって車に駆け寄り、尚也の眠り続ける姿を確認する。
 黄昏時。
 全てが曖昧に霞んでいく時間。
 黄昏は「誰そ、彼は」。
 夕闇に道行く人の区別が出来なくなる時間。
 全てが儚く、曖昧で、朧に霞む。
 なぜこの青年が起きてくるような気がしたのか。
 疑問の答えは容易く心の中から浮かび上がってきた。
 
 尚也さんも同じ。
 冷たいのに優しい。とても強くて、とても脆くて。悲しそうに微笑む人。
 儚くて、曖昧で、霞んでしまいそう。
 思い出すことも思いをはせることも無く、ただ今日だけを見ている。
 だから一緒にいこうと思った。
 いつか思い出を笑って話せる日が来るように。
10PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/17 22:53
 あの日、尚也に出会うまでは正気を失って逃げているばかりだった。
 出会ってからは常に密やかな翼に包まれていた。
 気がついた時には彼女を守り続けた翼は折れ、その庇護は失われている。
 今が巣立ちの時だった。
 もしここで飛ぶことを選ばなければ、この先同じ道を歩むことは出来ないだろう。
 
 覚悟を決めると、自然に鼓動はおさまっていた。

 扉を開けると、ぬるくよどんだ空気が漏れ出してきた。
 かび臭さはあったが腐臭は感じられない。
 差し込んだ西日が室内に舞い上がる埃を輝かせる。床に足跡は無い。
 すぐに室内には踏み込まず、天井の方へと視線を向ける。
 特に細工をされた様子も、物騒な生物の痕跡も無い。
 日向は扉の蝶番に落ちていた石を挟んでから、ゆっくりと探索を開始した。

 建物は(おかしな言い方になるが)幸いなことに見かけに違わず放棄されていたままだった。
 間取りを確かめてから一階の開いたスペースに車を乗り入れた。
 周囲の側溝のふたは全て外してゾンビ除けとし、念を入れて鳴子を張り侵入者を察知できるようにもする。
 周りの工作を終えたときには闇が世界を蹂躙していおり、食事を暖めるためのガスの火がぼんやりと部屋を照らす。
 尚也の口に食事を運ぶとわずかながら嚥下するが、固形物は体が受け付けなかった。
 日向は咳と共に吐き出されたお粥を拭うと、今度はイオン飲料を口移しで飲み下させた。
 ペットボトルの半分しか受け付けなかったが、それでも水分の補給ができることが日向を安心させる。
11PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/17 22:54
 成人の場合、一日に排出される水の量は尿で1〜1.5L、呼吸で0.8L、汗で1Lと合計で3L程になる。
 尚也の場合、摂取できる水の量は口移し分と体内で生成される分しかない。
 日暮れとともに発汗は収まったが、栄養補給のためにわずかに電解質飲料を摂取するだけでは、体力の低下は眼に見えている。
 尚也の容態から見ても、自分の体力から考えても早急に拠点に到着する必要がある。
 拠点に急ぐ理由はもう一つあった。
 尚也の汗に濡れた服を脱がせて清拭をしているとき、布越しに感じる感触で日向は欲情してしまったのだ。
 右手を動かしているうちに、尚也の体も反応を示してきた。
 添える手を変えて、先ほどまでの感触を思い出しながら自分の体を探る。
 想像してもいなかったシチュエーションのもたらす昂りに絶頂はすぐに訪れた。
 
 その後、一回のシャワールームで冷たい水を浴びながら、日向は泣いた。
12PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/17 23:00
以上です。

「改行が多いんだトンチキが〜!今度は長すぎるぜこのダボがッ!」
と表示されたので4つにシマスタ。

微妙にエロが混ざってるような気がしますが、おそらく気のせいです。

しちゃった後の罪悪感よりも、それ以上に「寂しくなるから」あんまりしないと知り合いの女の子は言ってオリマスタ。
まあ気持ち良いんだけどねとも言ってマスタガ。

さて後は皆さん気になさらずにどんどんいきましょう!
13数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/17 23:20
こんばんわ〜。
ああ、出張から帰ってくると新スレに…。
スレ立てた人乙です。 
14数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/17 23:20
  1/5

 清水が最後の一匹の頭に斧を叩き込む。
 いくらタフでも、頭に斧を食らえば無事では済まない。
 抵抗はすぐに止んだ。
「ようやく終わりましたよ、隊長」
 俺の最も信頼する参謀格、井之川が一見して解ることを口頭で報告しなおす。無駄ではない。これが規律と言うものだ。
「よし。第二部隊と合流して帰還する。岡本、向こうの様子は?」
 無線機を腰に付けた岡本が頷く。
「定時連絡に異常はありません。予定通りならあと30分もしない内に合流できると思います」
「警戒を緩めるな」
「終わり際が一番油断するって奴ですね、隊長」
 茶化すように言う仁村。しかし、仁村が真剣にこの任務に取り組んでいることを俺は知っている。現に、今もライフルを手にしたままの彼は辺りを警戒し続けている。
 岡本の無線機が鳴った。第二部隊からの連絡だろう。
「隊長。第二部隊からの連絡です。食料調達は成功。予定通りに合流するとのことです」
「よし、全員トラックに乗り込め、帰還準備だ」
15数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/17 23:20
 2/5
 
 要塞化したホームセンターに戻ると、女達が出迎えていた。
 男は全員、俺の指示で外へ出かける。女達はいつもここで籠城し、俺たちの帰りを待っている。
「隊長、お帰り」
 女達のリーダー格、陽子さんが俺を出迎えていた。
「ああ。ただいま」
「今日はどうだったの?」
「怪我人無し、収穫有りです」
「収穫って…」
 俺は慌てて言い換える。
「あ、いや、救助じゃありません。食料ですよ。ほとんど手つかずの倉庫を見つけました。これで食料もかなり保ちます」
「そう…」
 一瞬表情を曇らせる陽子さんだが、すぐに笑顔を取り戻した。
「贅沢は駄目ね。頑張って美味しいもの作るわ」
「ありがとう。貴方達のおかげですよ。我々がこうして戦っていられるのも」
「逆よ。私たちが生きているのが貴方達のおかげだもの」
「持ちつ持たれつですね」
「そうそう」
 俺は頭を下げると陽子さんと別れ、部下達に指示を出す。
 第二部隊は、女達の指示で食料品を運びはじめていた。
「樋口」
 井之川が囁きかけてくる。
「例の件で話が」
「…今晩の夜警シフトは?」
「俺と岡本が第4シフトだ」
「俺と岡本が交代する。その時に話をしよう」
「わかった」
16数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/17 23:21
  3/5

 俺と井之川、そして陽子さんは昔からのつき合いだった。岡本や清水、仁村、他の連中もそれぞれゾンビ騒動か始まる前からのつき合いではあるが、井之川だけはもっと古い、いわゆる幼なじみという奴だ。
 近所づきあいの悪い俺だったが、二人だけは例外だった。今では多分、俺のただ一人の幼なじみだろう。
 一番馬が合うし、今では何も言わなくてもお互いの考えは大体解っている。
 その井ノ川が俺を「隊長」と呼ばずに折り入って話したいと言えば一つしかない。
 深夜、俺と井ノ川は歩哨に立っていた。ゾンビが入れそうな入り口は一カ所だけ。そこを見張り、数が増えるようなら掃討する。それが歩哨の役割だ。
「そろそろ潮時じゃないか?」
「女達を見捨てて俺たちだけで逃げる?」
 クックックッと笑う井ノ川。
「また、出来もしないことを」
「まーな」
「女にだけは優しい隊長さんで」
「茶化すなよ」
「いやいや。今日の闘いなんて、まさに冷酷でしたよ」
「至近距離で頭吹っ飛ばしたお前に言われたくない」
 肩をすくめ、唐突に井ノ川は話題を変える。
「陽子さん、美人だよな」
 俺は黙って井ノ川の顔を見た。
「ま、俺は美紀さんの方が好みだけどね。ほら、騒動前は看護婦やってたって人。で、陽子さんは、樋口の好みにピッタリだと思うが?」
「何が言いたいんだよ」
17数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/17 23:21
 4/5

「さっさと口説けよ。こんな状況で命賭けて守ってくれる男に惚れない女はいないよ。断られる心配はないと思うがね」
「卑怯だよ」
「何が」
「俺を受け入れなきゃ殺すってか?」
「そうは言っていない」
「そう聞こえるよ。向こうには」
「向こうがお前のこと好きって言うまで待つ気か?」
「言わないよ」
「なんで?」
「あの人、婚約者がいるんだ」
「死んでるさ、今ごろ」
「死体を確認したわけじゃない」
「まだ生きてるって信じてるのか」
「多分。あの人はそういう人だと思う」
「生きてたらどうすんだよ。命賭けて惚れた女守って指一本触れずに、別の男にはいどうぞって渡すのかよ!」 
「そうだよ」
 井之川は絶句し、そして笑う。
「ま、そんなお前さんだから、俺はここまで着いてきたわけだがね」

18数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/17 23:23
 5/5

 私の名前は相模陽子。
 ゾンビ騒動以来、このホームセンターに籠城してる。
 本当なら今すぐにでも逃げ出して秀彦さんの所に行きたいんだけど、そうもいかない。今の世界で一人旅は自殺行為。うん。死んじゃう。
 幼なじみの二人がそれぞれ隊長、副隊長をやっている自警団がいるので辛うじてここは安全なんだけど、隊長は最悪。
 あいつは、気持ち悪いオタク野郎。だけど、こんなどーでもいい知識だけは持っている。人間、何か取り柄はあるものね。
 他の連中も自警団なんて言ってるけど、要はあいつのオタク仲間だ。ゾンビ並みに臭いんだけど、とりあえずは守ってくれてるみたい。
 普段がロクデナシなんだったんだから、こんな時くらいは働いて当然だけどね。
 他の女の人達もみんな嫌がってる。嫌だけど、ゾンビを撃退してるのは事実だから仕方ない。
本音を言えば、早く自衛隊でも来て、ゾンビとオタク達を一緒に退治して欲しい。うん。早く早く、超早く。
 唯一の救いは、本物の女を知らないから、私たちに手を出すことも出来ないオタク連中だってこと。きっとビデオでも見てしこしこやってんだ、ああ気持ち悪い。
 でも最近、樋口の物欲しげな視線が気持ち悪くて仕方がない。オタクの癖に現実の女に興味もつな、キショイ。
ただ近所に住んでいただけで、私を特別な存在だと思いこんでるみたく。ああいうのがストーカーになるんだ。早くゾンビに食い殺されてくれないかな。まあ、井之川なら、まだぎりぎり許せるレベルなのに。
 あーあ。早く何とかなんないかなぁ
19むにむ:03/03/17 23:44
>>PIPさん
孤独二人だけの世界、てな感じでなにか悲しいです
何故か最終兵器彼女(wを思い出しました

>>数学屋さん
キビシイ過ぎるゲンヂツ・゚・(ノД`)・゚・
20PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/17 23:45
ヤバイ。ゾンビヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。
ゾンビヤバイ。
まず無限。その上臭い。もう臭いなんてもんじゃない。超臭い。
臭いとかっても
「満員電車で発生するとサリン並?」
とか、もう、そういうレベルじゃない。
何しろ腐敗。スゲェ!なんか単位とか無いの。何ppmとか何s/m3Nとかを超越してる。無次元だし超臭い。
しかも増殖してるらしい。ヤバイよ、増殖だよ。
だって普通は人間とかすぐには増殖しないじゃん。だって十月十日とか言うじゃん。予定日からずれると心配だし困るっしょ。
生まれるまでの時間が縮んで、昔は合体してから次の生理まで待ってたのに、今はイレタラもうご出産おめでとうございますとか言われたら泣くっしょ。
だから人間とかすぐには増殖しない。話のわかるヤツだ。
けどゾンビはヤバイ。そんなの気にしない。増殖しまくり。野鳥の会全員で観測してもよくわかんないくらい増える。ヤバすぎ。
無限っていたけど、もしかしたら有限かもしんない。でも有限って事にすると
「じゃあ、餌が無くなったらどうするの?」
って事になるし、それは誰もわからない。ヤバイ。誰にも分からないなんて凄すぎる。
あと超悪食。約1売れない芸能人。名前で言うと出川。ヤバイ。寒すぎ。画面に出てくるだけで気分が悪くなる。ッて今はゾンビの話だ。
それに超何も言わない。超無口。それに超のんびり。口を空けたらモグモグするか呻き声をあげるだけ。小学生でも喰う寝る遊ぶなんて許されていない、最近。
なんつってもゾンビは馬力が凄い。増殖とか平気だし。
うちらなんて赤ちゃんとかたかだか予定日に出てきただけで上手く扱えないから育児休暇とったり、休日はパパが見てるからママは休んでようねとか、託児所使ったりするのに、ゾンビは全然平気。増殖を本能のまま扱ってる。凄い。ヤバイ。
とにかく貴様ら、ゾンビのヤバさをもっと知るべきだと思います。
そんなヤバイゾンビの溢れる中ホームセンターでがんばる人や現場で一生懸命の警官とか超偉い。もっとがんばれ。超がんばれ。
21620:03/03/18 00:00
>>数学屋様
陽子タン(・∀・)イイ!!
とりあえず漏れならボコります。

>>PIP様
ハゲシクワロタ

たまにはネタ風にするのも一興ですな。
漏れも何か考えよう・・・
今日、外行ったんです、外。
そしたらなんかゾンビわんさかいるんです。なんか親子連れのゾンビがいてさ、「よーしパパ仲間増やしちゃうぞー」とかうめいてるんです。もう見てらんない。アホかと。
お前、「あーうー」とか言いたいだけじゃないんかと。問い詰めたい。小一時間問い詰めたい。
最近の通は、ホームセンター。去年まで平凡な人間だったけど、ホームセンターに行けば最初からかなりの食料と設備が貰える。
そのまま篭城して生き延びれるし、
ナイフでゾンビに馬乗りになって戦えば、2分の1の確率でGと戦える。マジでおすすめ。
23むにむ(626:03/03/18 01:01
ゾンビ騒動が始まって早1週間。
都心部では自衛隊や米軍の救助活動が進んでいる。
近いうちにこの県にも救助が来るであろう。
フリーのカメラマンとしては、この機を逃すのは惜し過ぎる。
相棒のカメラを下げ、ゾンビを写す、写す。
救助隊に助けられる前に、迫力のゾンビ劇をカメラに収めよう。
24むにむ(626:03/03/18 01:02
男が襲われている。
いいぞ、その顔だ。
絶望と恐怖に溢れたその表情、売れるぞ。
今までで最高の興奮だ、これで俺の名も有名になるな。
25むにむ(626:03/03/18 01:04
ゾンビがこちらを向いた。腐った元は人間とは思えないその顔。
いいぞ、どんどん撮ってやる。
だんだん顔が近づく、細部に渡って鮮明にフィルムに焼きつける。撮れた。
カメラマン人生の中で一番の傑作だ、タイトルに困るぞ、楽しみだ。


「…この写真が、ゾンビに向かっていった勇敢なカメラマンの最後の一枚です。
修正をかけていますが、それでもかなりの迫力です。
貴重な写真の数々がこのカメラに…」
むにむ殿のこの話はもしホントにゾンビが発生したら
たぶん実際に起こりそうですね。
あと、功を焦った自衛官とか警察官とか。
『65』

結局その後はほとんど皆なにも喋らないままその日は過ぎていった。

センター内の空気は一気に暗く重苦しいものになってしまった。
みな陰鬱な表情をしている。
無理もないことだった。

子供達なりになにかを察したのだろう、まるで笑顔がない。
懸命にそんな子供達の相手をする美貴と亜弥の姿が見ていて痛々しかった。

夕方、俺は亜弥との約束を果たすべく屋上の『火』の周囲を見えないように囲った。
祭事かなにかでの仕切り板にでも使うのだろうか、2階の方の倉庫の奥にボードが
何枚かあったのでそれを使った。

子供達にはなんの罪もない。
せめて子供達だけでもこの重苦しい空気から解放してやりたい。。。

夜、亜弥と美貴に準備が出来たので明日にでも子供達を屋上で遊ばせてあげるよ
うに言っておいた。

ふたりには礼を言われたが、正直、礼を言いたいのはこっちの方だった。

ここには自分のことだけで周りの人間のことなどおかまいなしの奴も大勢いる。
今回の黒田の一件はそれを如実に物語っている。
そんな連中と比べて、こんな状況でも明るく振舞い子供達の世話をする彼女たちは
俺には救いの女神に見えた。

彼女たちがいなければ、ここの空気は間違いなくもっとギスギスしたものになっていただろう。
『66』

翌朝、食事の時間になったが36人全員がいた。

ひょっとすると今回の一件で絶望しまた自殺者が出ないかと、特に黒田の母が自殺でも
していないかと心配していたが取り越し苦労だったようでよかった。。。
もっとも、黒田の母はひとりでずっとぶつぶつとなにかを呟いていてまともな様子ではなか
ったが。。。。
だが、それでも生きているのなら、それだけでもせめてもの救いだ。

「あなた、今日はこのあとどうするの?」
「ああ、このあとは美貴ちゃん、亜弥ちゃんが子供達を屋上で遊ばせるから、その付き添
いだ。
まぁ、屋上までゾンビが非常階段を上がってくることはないし、万が一上がってきても格子
戸があるから絶対に入っては来れないから、ホントは必要ないとは思うけど、念のためな。
それと、屋上には間違っても子供達に見せたくないモノがあるからさ・・・」
「わたしはこのあと当番だから他の人と一緒に地階でお昼の準備をするわ。
ついでにあなたと知沙の誕生日ケーキをつくろうと思うの」
え? ケーキ?

「そんなものつくれるのか?」
「たいしてのは作れないけど、ホットケーキの元とかがあったから、それでちょっとしたもの
ならなんとかなると思う。
他の人も手伝ってくれるって言ってくれてるのよ。
もちろん、みんな自分の子供とか家族に食べさせたいからなんだけどね。
ここにいる全員分作るとなると結構大変そうだわ」
そう言って妻は笑った。

「そうか・・・」
これで多少はみんなの気も晴れるかもしれない。。。よかった。。。
『67』

俺は娘を抱きあげた。
「知沙、よかったな〜、ケーキだぞ?」
「けーき、けーき!」
はしゃぐ娘の笑顔がたまらなくいとおしい。

それにしても、まさかこんなところで、こんな状況で誕生日を迎えることになるなんてな。。。

だが、いいさ。
どんなにひどいと思えても、俺には妻と娘がいる。

たしかに俺は家も仕事も安全な生活も失ってしまった。
でも、肝心なものはなにも失っていない。

ここには妻がいる。
娘がいる。
そして、友もいる。

今までのただただ働いてばかりで家族と一緒にすごす時間さえロクにとれない生活よりも、
たとえ死と背中あわせでも、この生活の方がある意味では人間らしいのかもしれない。。。

娘を抱きかかえる俺を見つめる妻の優しい眼差し。

妻のやわらかな微笑みが俺の心を満たしていた。

ここの生活もそんなに捨てたもんじゃないのかもしれない。。。
『68』

まさに快晴だった。

子供達はおおはしゃぎだった。
知沙も大喜びで湘太くんのあとを追いかけて走り回っていた。

なにも問題はなかった。。。。そう、そのときまでは。。。。

カタカタカタ。。。音が聞こえた。
かすかな音だった。

最初なんの音なのか俺にはわからなかった。
音の源を探して辺りを見回したが何もない。

音は少し離れたところから聞こえている。

なんの音だ?

屋上じゃない。。。
建物の中からでもなさそうだ。。。

・・・地上から?

何の気なしに屋上のフェンスから見下ろしたそのとき、俺はそれがなんの音なのかを知った。

顔面から血の気が引いていくのが自分でもよくわかった。

あろうことか、シャッターが。。。。1階の正面入り口のシャッターが開き始めていた。。。。
31PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/18 19:05
さんげりあさん新作乙です。

最悪の状況へと事態が転がり始めてしまいましたね。
実際、閉塞した状況に閉じ込められるとストレスは弱いものへと向けられがちです。

どこかに立て篭もる場合は悪い意味での個人主義者を、速めに選別しておく必要がありますな。
いや差別とかじゃないですよ。
実際にハイジャックされた場合は往々にして、個人主義者とストックホルムシンドローム患者が悲劇を引き起こしてますから。

んでは次会の展開を楽しみに待っております。
32620:03/03/18 20:59
・・・あ〜、疲れた疲れた。ったく、係長の奴俺に当り散らしやがって。
おーい、飯〜!って、女房はもういないんだっけな。
暇だからテレビでも見るかなっと。


HNK教育テレビ第3032回、『正しいゾンビの飼い方』

「テレビの前のよい子の皆、元気かな〜?」
「あうあうあう・・・」

「さて、今日はゾンビの正しい飼育方法について学ぼうね」
「う、う〜あ〜」
「はいはい、ゾンちゃん、邪魔しないの」
「う〜」


・・・何だこれは。新人の売れないタレントとゾンビを模した指人形が
ゾンビについて必死に講義している。下らん。誰かHNKの放送免許とりあげてくれ。

おもむろにリモコンに手を伸ばし、チャンネルを変えようとしたが次の瞬間
俺のテレビにとんでもない代物が映った。

・・・本物の・・・ゾンビ・・・?
画面には寝台に括り付けられもがいているゾンビがいた。

なんと・・・HNKめ、視聴率の為にゾンビを地上波に流すとは狂ったか!?
各方面からの反発は免れんぞ。今の日本はゾンビ事件を体験した世代が主流だからな。
そんな俺の意見を無視して番組は進んでいく。

「はい、ゾンビが運び込まれましたね〜。おっと、噛まない噛まない」
「ウゥゥゥァアガアア!!」
33620:03/03/18 21:00
司会進行のお姉さんがゾンビの顔に触れるとゾンビは噛み付こうと暴れる。

「え〜、このようにゾンビさんは人に噛み付こうとします。
 悲しいけど人間は食べ物なんですよ〜怖いですね〜〜ホント」

何てことさせるんだHNK!これであの事件が再発したらどう責任をとるつもりだ!?
俺の憂慮も虚しく番組は続く。

「ゾンビは人に噛み付く時に手でつかみますから
 まずは安全を確保する為にお手てをちょん切っちゃいます」

お姉さんは番組スタッフが持ち出したノコギリでゾンビの腕を切り落とす。
肘から切ったので腕は意外と早く落ちた。

「ウアオオオォォ!!」
「うあお〜」

ゾンビの絶叫がブラウン管にこだまする。ゾンちゃんも申し訳程度に唸る。

「うわあ・・・痛そうですね〜、ゾンちゃんも目を背けてます」
「う〜う〜」

お前がやったんだろうが、と思わずテレビにつっこみそうになったがやめた。
独身男が寂しく独り言を言ってるようにしか見えないし、大家が後で五月蝿い。
次はどんな展開になるんだ?俺はHNKに対する批判も忘れて見入った。

「これで噛まれる危険は大幅に減りました。でも、油断は禁物!
 口がある限りはまだまだ安全とはいえないからね〜、歯を抜いちゃおう!」

そう言うや否や、お姉さんは舞台裏から持ち出されたヤットコを手にするとゾンビの口に捻り込んだ。
ゾンビが必死に抵抗するがメキメキと鈍い音が聞こえ、しばらくすると大きな音と共に歯が数本とれた。
34620:03/03/18 21:00
「ウアオオオァガゲガァァ!!」
「うあおあがえがが〜」

口から血を流し、ピクピクと痙攣するゾンビを見て俺は同情した。
さすがにやりすぎだろ。遺族から許可とったのか?

「う〜ん、歯を全部抜いて総入れ歯にしたけどまだ不安だよね。
 ・・・よしっ、こうなったら口をとってみよう!」

・・・口をとるとは何ぞなもし?聞き慣れない日本語に戸惑いながらも
俺は画面から目をはずすことはしない。これが最後か?

番組では先程のノコギリを使ってゾンビの顎を切り取っている。
すぐにゾンビの下顎は床に落ちた。
仕上げとばかりに首に首輪をはめ込むとお姉さんは得意満面の笑みを浮かべる。
彼女のタレント生命は大丈夫なのだろうか?

「それじゃ、また来週〜バイバイ〜」
「あいあい〜」

番組は終了し、どうでもいいニュースが流れ始める。
俺はテレビを消し、すぐにHNK視聴者センターに電話を掛けた。
抗議ではない。感謝の旨を伝えたのだ。
何故なら俺の抱えてる悩みを一気に吹っ飛ばしてくれる内容だったからだ。

その後、俺は押入れに向かうと縛っておいた女房の肘に包丁を付きたてた。
…なるほど。カミさんがゾンビだったのね。
オチの先にもう一つオチがあってワロタ。

つか、売れないタレント怖いよ(w
36あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/19 12:19
長ったらしいのより、短い方が読みやすい。
PIPさん、長すぎ。
>>36
あれコピペだし…
短いほうがいいでつか?

でわ、わらくしが代わりにショートを。




ぞんびに噛まれた。。。もうだめぽ。。。。

 完





どう ?













ヾ( ゚д゚)ノ゛ ゴメン オコナナイデヨ シナチク〜
『69』

「亜弥ちゃん、美貴ちゃん! 子供達を頼む!
ここから絶対に動かないでくれ!!」
明らかにふたりはなんの事か理解していなかったが説明する時間がない。
「絶対にだ!」

俺はふたりの返事も待たずに近くに置いておいたバットを掴むと階段を駆け下りた。

なぜだ!?
なぜシャッターが!?
どうして!?

脚がもつれて何度も転びそうになりながら、俺は一気に1階まで駆け下りた。

シャッターはすでに半分近く上がっており、ゾンビどもの顔がいままさに露わになろうと
していた。
シャッターのすぐ横、操作パネルの前で人がふたり、もみあいになっている。

「みんな死ねばいい!」
「やめるんだ、黒田さん!」
「みんな死んじまえばいいんだ!!」
それは黒田の母とそれを止めようとする阿部の姿だった。

「どいつもこいつも食い殺されちまえばいいんだ! アタシの息子のように!!」

ゾンビどもの顔がついに露わになった。
そして、ついにゾンビがセンター内に入り始めた。。

最悪だ。。。
『70』

シャッターは決して破られないし、開けることなどない。
だからこそその前にバリケードを造るなどとは考えもしなかった。

せめてもの救いはそれこそ最初からずっと閉ざされていたため普段からゾンビはシャッター前
には少なく、南側などの窓の下に多く集まっていたことだろう。

既にシャッター近辺にいたゾンビが何体も入ってきてしまっている。
だが、それだけではない。
シャッターの開く音に反応したのだろうか、他のゾンビも今、続々と入り口を目ざしやってくる。

。。。5体。。6体。。。8体。。。。。。10体。。。次々と侵入してくるゾンビ。

その向こうからどんどん近づいてくる群れ。
もし、これ以上ゾンビが入ってきたら。。。。。

俺は黒田の母が自殺しなかっただけで安心してしまっていた。
どうしてこういうことを考えなかったんだ。
黒田の母は息子を殺した連中に殺意を抱いていたというのに。。。。
自分の甘さに嫌気がさす。
だが、今更悔んでも始まらない。
考えるのは後だ。

俺は突進した。

「うおぉぉぉぉっ!」
一番先頭にいたゾンビの脳天目掛けてバットを振り下ろす。
バットがめり込み、そいつの目玉が飛び出した。

絶対に。。。。絶対にこれ以上中には入れさせない!!
『71』

最初の奴が倒れるのを確認する前に俺は次のゾンビの側頭部にバットを叩き込んだ。

「阿部!シャッターを! はやく!」

だが、俺の目に写ったのは三体のゾンビに喰いつかれている阿部の姿だった。

・・・阿部!

「ぐあぁ・・・ぁぁ・・・」
阿部は押し倒され、あっという間に床に血溜まりが広がる。

「そうさ、みんな死ね! 死ぬがいい! 食い殺されちまえ!
 あははははは・・・ははは・・・・あはは・・・」
黒田の母は自らもゾンビに首筋を噛まれながらも叫び、笑い続けていた。
その顔は既に正気じゃない。

その間にもゾンビがまた一体、また一体と侵入して来ていた。

なんてことだ。。。。はやく、はやくシャッターを閉めないと!!

だが、俺の前には既に侵入しているゾンビが次々と群がってくる。
こいつらが邪魔でシャッターのコントロールパネルに近づけない。
近づくどころか俺はパネルとは正反対の方向に押されていた。


ふいに俺の視界の隅をなにかが通り過ぎた。

「くそどもがぁっ!!」
それは荒井だった。
『72』

荒井は手にしたバットでパネルの前にいたゾンビをぶちのめし、ボタンを押した。
ゆっくりと、だが、確実にシャッターが閉まっていく。

しかし、その間もゾンビの侵入は続く。

それまで阿部と黒田の母にむしゃぶりついていたゾンビどもが今度は目の前に現れた新
たな獲物、荒井に襲い掛かった。

俺は死に物狂いでゾンビどもにバットを叩き込み続けた。

バットの直撃を喰らい、顎がひしゃげ、頭蓋が砕け、つぎつぎ床に崩れ落ちていくゾンビ。
だが、きりがない。

俺も荒井もそれぞれ目の前のゾンビの相手で精一杯だった。
一瞬の気の緩みが死に直結する。

手が。。。手が足りない。。。

誰か、手を貸してくれ。。。。


皮肉なことに、悪いことほど重なるものだ。

悲鳴がした。

地階からの階段に、その姿があった。
それは食事の準備のために地階に降りていた女性達だった。
その中には。。。。その中には。。。。妻の姿があった。。。。。。
43数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/19 21:51
 超短いのを一つ

 「ゾンビが人を噛んでもニュースにならないが、人がゾンビを噛むとニュースになる」

 …お粗末。ていうかこんな世界は嫌だ。
44あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/20 12:28
俺は長いのも好きだな。
いまみたく長めとショーとと両方あるのは嬉しいね。
欲をいえば中間くらいの長さのものがないことかな。
短編がSSばかりだと思う。
数日の投稿で完結くらいのも欲しいとこだな。
てことで、さらに新作者の参入を期待して
AGE
『73』

数体のゾンビが地階への階段へと、新しい獲物へと向かっていく。

「ひぃっ・・・!?」
悲鳴をあげながら女性達はすぐさま下へと引き返していった。
だが、地階にはそれより先の逃げ道が無い。
そして、彼女たちにはなんの武器も無い。

はやく助けに行かなければどうなるか、結果は火を見るより明らかだ。

しかし、俺も荒井も眼前のゾンビを倒すことで手いっぱい。。。
とてもじゃないが助けに行けない。

たとえもしどちらか一方が助けに行けたとしても、今度は残ったひとりが全てのゾンビを相手
しなければならなくなる。
それは確実な死を意味する。
そして、そうなればゾンビどもはセンター内部深くまで侵入することになるだろう。

上には子供たちもいる。。。。
どうしてもここで、1階入り口で倒す必要がある。

なぜ誰も加勢してくれない!?

みんな。。。加勢してくれ。。。

このままじゃ香澄たちが。。。。。

「うおおぉぉぉっ!!」
俺は焦りと苛立ちを込めたバットをゾンビたちに叩きつけていった。
『74』

「・・・!?」

・・・しまった!
焦った俺は必要以上に大振りに、隙が大きくなっていた。
倒した一体の陰から突然現れたゾンビの指が俺のシャツの袖にひっかかっていた。

信じられないほどの力で一瞬にしてゾンビに引き寄せられる。

ゾンビの顎が大きく開かれ。。。。

くそっ!!
近すぎてバットが振れない!!

俺はバットの柄の部分をそいつの胸に叩き込んだ。
だが、そいつはまるで怯まない。
さらに強い力で俺の身体を引き寄せる。

ゾンビの顔が。。。俺の首筋に近づき。。。

妻と娘を残して死ぬわけにはいかない!!

俺は渾身の力でゾンビを振りほどこうともがいた。

。。。だが。。。まるでびくともしなかった。。。。

・・・・死ぬ!?

・・・・・・俺は死ぬのか!? 
『75』

・・・???

突然ゾンビの口の中から何かが生えていた。

なんだ!?

つぎの瞬間、ゾンビの手が緩み、そいつは後ろに勢いよく倒れた。
空中には一本の棒が残っていた。

振り向くと、そこには物干し竿を持った吉沢さんが立っていた。

助かった。。。。

「吉沢さん・・・・」
「遅くなっちまったね」
 
吉沢さんの後ろには手に手にハンマーやバールなどの得物を手にしたみんながいた。

「みんな、度胸出しな。
 さあ、やるよ!!」
吉沢さんの掛け声とともにみんながそれぞれ手近のゾンビに向かっていった。


そして、生き残りをかけた乱戦が始まった。
48あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/20 18:35
>>さんげりあタソ
(・∀・)ハラハラドキドキ
4948:03/03/20 18:37
スマソ
50名無し@ニラ:03/03/20 18:43
スゴイ(・∀・)イイ!!小説でつね!
続きキボンヌ!
51むにむ:03/03/20 22:02
>>さんげりあさん
盛り上がりキタ━━━━!!!!

こういう盛り上がり方好きです

俺もがんばろー、中編作ってみます
皆さん、前スレがまだ残ってまつ。
ゾンビ談義にでも使いましょう。
あと37KB分残ってますので、
使い切ってhtml化してもらいましょう。
お話は当然、本スレで継続ということで。
53620:03/03/20 22:53
>>さんげりあ様
バールのようなもの(;´Д`)ハァハァ
どうなるか楽しみです。見せ場をつくった吉沢さんマンセー!

>>52
了解、乙です。
54620:03/03/21 01:02
なあ、そこのあんた、あたしの話を聞いてかないかい?
別に金とろうってわけじゃござんせんよ。暇だからちょっと誰かと喋りたいだけさ。
まま、酔っ払いの戯言だと思って聞いておくんなせえ。
あれはあたくしが○×組に厄介になってたころのこと・・・え、ヤクザだったのかって?
うちの社長が世話になってただけですよ。現役でこんなこと話しとったらいわさますから。

あのころね、あたしは組傘下の缶詰め工場で働いてたんですよ。
この工場が○×組の重要な収入限だったんですわな。
それがトラブルがあって働き手がいなくなっちゃたんですよ、困ったことに。
従業員の若衆が全員抗争に狩りだされてね、皆逮捕られたんですわ。
しょうがないから民間から募集したんだけど全然来ない。
うちが○×組系列だってこと誰もが知ってたんだよね。

で、社長が困ったな〜困ったな〜と弱り果ててる時にね、○×組の幹部だったかな?
黒服連れた偉そうなのがやってきて「こいつら使ってくれ」ってことで人集めてきたんだ。
黒服に後ろからぞろぞろ人が連れられてきたんだよ。
何かその連れてこられたのがさ、どいつもこいつも生気のない面しててねえ。
「こんな連中でホントに大丈夫なのか」って感じでしたよ。

ところがいざ働かせてみたら意外にテキパキ動くんですわ、驚きました。
どんなきつい重労働も文句一つ言わずにやってくれるしさ、労働者の鏡ってやつかね。
しかも飯も喰わずに働くもんだから大したもんだ。
業績不振だったうちはたちまち黒字になりましたよ。

でね、経営が右肩あがりで順調にいってたんだけど、大変な事件が起きちゃったんです。
ある若い従業員がね、誤ってプレス機に巻き込まれて腕とられちゃったんだ。
現場は凄いことになっててね、腕がプレス機についたままになってたから
腕の肉が缶にこびりついちゃってとれないんだわ。白い粉まで宙に舞ってて
なんだこりゃと思ったら骨が砕けたものだって分かってあわててマスクをし直したよ。
55620:03/03/21 01:02
で、巻き込まれたあんちゃんはどうなったか心配になって見に行ったわけ。
周囲が血だらけだし、死んでるかもな〜と思ったらピンピンしてやがんの。
他の連中も何事もなかったかの如く仕事してるしさ、わけ分かんなかったね。
すぐに救急車呼ぼうとしたんだけど、組の人間に止められてさ、その日は皆撤収したよ。
数日後には平気な顔して出勤してきたしね、両腕で。

そんでもって、またべつの日のことなんですけど
その日は社長が競馬で大儲けして従業員一同、食事に連れて行ってくれたんですよ。
ところが○×組の組員が駄目だ駄目だの一点張りで許可してくれない。
社長が日頃世話になってるからと説明しても上の人間から命令されてるのか
聞く耳もたないんだな。
そこで社長がその若衆も連れていってやるからって言うと、渋々許可してくれましたね。
日頃からあんまりいいもん食わせてもらってなかったようで。

外にでたのはいいんだけど今度は店選びでまたもめちゃって
社長が洋食屋にいこうとすると若衆が油使ってるからいかんという。
居酒屋でもつまみが塩辛いから駄目、中華も脂っこくてよくないと駄々こねる。
そのうち社長が頭に来て、じゃあ何処ならいいんだと怒鳴ったら
麺類にしろと言う。
もう皆疲れてたからタダ飯ならなんでもいいやってことで近くの麺屋にきめましたよ。

なんとか店に入ったはいいんだけど、注文選ぶ時には組員が仕切っちゃってて
社長とあたしが好きなもん注文してんのに従業員には何故か全員蕎麦食わせてんです。
あたくしが好きなもん食わせてやりなさいよっつても蕎麦で充分だと言って引かない
もんだから結局好きにさせてやりましたよ。

気まずい雰囲気の中、しばらく皆で飯食ってると社長のおにぎりが転がって従業員のほうに
いっちゃたんです。そいつがおにぎり拾って社長のほうへ持ってくるんですけど
社長は根が優しいから若衆が見てない隙に食っちまいなとばかりにくれてやったんですわ。
そいつがおにぎり口につけた瞬間、とんでもないことが起きたんです。
56620:03/03/21 01:02
いきなりおにぎり放り出してゲーゲー吐いちゃって周りは大混乱。
店中がこっち見て様子見に来る奴もいて、収拾つかなくなちゃっいました。
組員が血相変えて飛び出して、何やったんだと社長につめよったんです。
社長も状況が飲み込めてないせいかオロオロするばっかりでして。
「おにぎり食わせただけだ」って言ったら「何がはいってた!!」
と怒鳴るから「塩の入ったおにぎりを・・・」と社長が言ったら
急に青冷めてポケットから胡椒ビンみたいなもん取り出してそいつに振り掛けてた。
当のそいつは喉掻き毟ったり白目剥いたり七転八倒するばかりで
正気じゃないってことはその場にいた者全員が分かってましたね。

その内、そいつの身体から煙が吹き出してきて何かな、って思ったら
湯気がたってたんだね。そいつは溶けてた・・・いや、腐りはじめてましたよ。
若衆が店内から人追い出すと再び例のよく分からない粉みたいなもん振り掛けてたけど
とにかく、そいつは助かりませんでした。
皆が呆然とする中、若衆が店にいた人間全員に何か渡してるんですよ。
ああ、口止め料だなということはすぐに分かりました。

その日以来、○×組からは何の連絡もなかったんです。
で、よくよく思い出したらうちにきた大量の従業員達はどっかで見た
顔だったんですよ。あの腕の千切れたのは逮捕されたはずの○×の若いのだったし
溶けたやつはニュースで見た◇△会の鉄砲玉で死刑になった奴によく似てたしね。

今はもう○×組もつぶれちゃったけど
あの時のことはいつまで経っても忘れられないんですよね。
ハイチのブゥードゥー教とかに啓蒙してたらしいんですわな、あそこの親分さん。
もしかしたらゾンビってやつだったのかねえ、あの人らは。

あんたも仕事選ぶ時は気ぃつけたほうがいいと思いますよ、あたしゃ。
ほんじゃ、そういうことで。
>620殿
おつかれさまです。
本物のゾンビモノ、いいですね。
キョンシーモノとかもおもしろそう。
こういう風にロメロゾンビにこだわらず色々なパターンで好きにやった方がスレとしては
活性化しそうですね。
全員が常にロメロにこだわるとネタが尽きるか、どうしても似たり寄ったりのストーリーや
設定になりがちでしょうから。

そして、みなさん、感想ありがとうごぜいます。
続きもがんがりますです。

あと、>48殿、別に謝るようなことないですよ。
とちらかというと私のノリはそっち系ですし。

このあとの部分はちょっとそのひとの好み、戦闘シーンが好きなのかとか、グロイ描写が
好きなのかとか、ハッピーストーリーが好きなのかとか、ダークなストーリーが好きなのか
とか、泣ける話が好きなのかとか、ハラハラドキドキするのが好きなのかとか。。。。
とにかく、そういう個人的な好みによっては物足りなさや不満を感じるかもしれません。
この後の展開、期待に添えなかった方はごめんなさい。
先にあやまっておきます。
一応ここが一番書きたかったところのなので気合い入れて一気に書き上げました。
かなり連続投下します。

でわ、つづき ヾ( ゚д゚)ノ゛ 逝ク チク〜
『76』

加勢してくれたのは、ざっと見て10人ほどだろうか。
男性はもちろん、何人か女性の姿もあった。
子供を除いたここの大人の住人全員にはほど遠い。
だが、それでも吉沢さん達の加勢で形勢は大きく変った。

すでにシャッターは完全に閉まり、これ以上のゾンビの侵入はもうない。
あとは残った連中を倒すだけだ。

よし、これでなんとかなる!!
地下だ、地下の女性たちを助けに行かなければ!

俺はゾンビをなぎ倒しながら地階の階段を目指した。
だが、俺のいる場所から階段は遠い。
間にはまだまだ何体ものゾンビがいる。

地階への階段のすぐ近くで荒井がバットを振っているのが見えた。

「荒井! 地下を!」
「おう!!」
眼前のゾンビの頭頂にバットを叩き込みながら荒井が答えた。
荒井も地階のことに気づいていたのだろう、近くで戦っていた男性ふたりを連れて一気に
階段を駆け下り、その姿を消した。

荒井。。。頼むぞ。。。

「おらぁッ!」
俺は迷いを振り切るかのように目の前のゾンビたちにバットを叩き込んでいった。

。。。。無事でいてくれ。。。香澄。。。。
『77』

どのくらいの時間が過ぎたのだろう。。。。
ひどく長く感じる。。。。が、おそらく実際はわずか十分かそこら、といった程度なのだろう。。。
ひょっとするともっと短いのだろうか?

なんにせよ、俺たちは侵入したすべてのゾンビをなんとか掃討し終えたようだった。
見たところ、立っているのはもう人間だけだ。
みな荒い息、ぎらついた目で本当に動くモノがもういないかを確認している。

傷を負ってしまった者も何人かいるようだったが、俺にはそれを確認する時間さえ惜しかった。
それよりも今は地下の方が気にかかる。

「吉沢さん、あとをお願いします!」
俺は地階への階段へと走った。

地下は?
地下はどうなった!?
香澄は? 荒井は? 

階段を駆け下りると、かつてはゾンビだったらしき死体がいくつか転がっていた。

すべて片付け終えたのか?

すこし奥で荒井が倒れたゾンビにバットを叩き込んでいるのが見えた。
だが、少しばかり様子がおかしかった。

「くそが! くそが! くそがっ!」
荒井は既に動かなくなったゾンビに狂ったように何度も何度もバットを打ち込んでいた。

「荒井・・・?」
『78』

荒井がゆっくりと振り向いた。

「藤田・・・・」
荒井は泣いていた。

荒井の手からバットが滑り落ち、カラカラと音をたてて床を転がった。

「・・・すまん・・・・・・許してくれ・・・・俺が駆けつけたときには・・・・もう・・・・」

まさか。。。まさか。。。。まさか。。。。。。

俺は走った。

荒井の立つすこし先に加奈さんがいた。
加奈さんは、血の広がる床に倒れた女性のわきに座り、その手を握りながら涙していた。

人手が足りないため中学生くらいなら食事当番の一員などには含まれることが多い。
そんなひとりだろう、すぐ近くには中学生くらいの少女が呆然と立ち尽くしていた。

「・・・勇人さん・・・」
加奈さんが顔をあげた。
「・・・ころんだ女の子をかばったの・・・・それで・・・・」
そこまで言って加奈さんは泣き崩れた。

泣きながら加奈さんが手を握る女性。。。その顔は。。。。。その顔は。。。。。。

「・・・かす・・・み・・・・」

『79』

嘘だ。。。嘘だ!。。。。嘘だ!!

お願いだ。。。。だれか。。。だれか嘘だと言ってくれ。。。。お願いだ。。。。

ああ、神よ! なぜ! なぜ! なぜなんだ!!

香澄の左首筋にはぽっかりと大きな穴が開き、血がどくどくと流れ続けている。

香澄の顔は信じられないほど真っ白になっていた。

俺は妻の手を握った。

「香澄!」
「・・・・・」

「香澄っ!」
「・・・・・・」

「香澄っ!!」
「・・・・・・・・・・・あ・・・なた・・・・・」
弱々しく妻が呟いた。
それは聞き取れないほど小さな小さな声だった。

「香澄っ! 香澄っ! 香澄っ!」
言いたいことは山ほどあるのに言葉が出てこない。

俺にはただ妻の名前を呼ぶことしか出来なかった。


『80』

俺は必死に妻の傷口を押さえた。
だが、あとからあとから血が流れ出てくる。

ああ。。。血が。。。血が止まらない。。。。

だれか。。。だれでもいい。。。妻を助けてくれ。。。。お願いだ。。。。

神よ。。。お願いだ。。。俺から妻を奪わないでくれ。。。。。。

「香澄・・・!」

「・・・あな・・・た・・・・・・ち・・・さ・・・・・・・・ちさ・・・・を・・・・・・お願・・ぃ・・・・・・・」

「香澄!?」
「・・・・・・・・・・」

「香澄っ!??」
「・・・・・・・・・・・・・」

妻が口をひらくことは二度となかった。

「・・・・・かすみぃぃぃぃぃぃ・・・・・・」



  オ レ ハ    ツ マ ヲ    マ モ レ ナ カ ッ タ 。 。 。 。  

『81』

俺は泣いた。

ただただ泣いた。

涙が止まらなかった。


「・・・藤田・・・」
気がつくと荒井が立っていた。

「・・・・他はもう・・・・済ませてきた・・・・」
荒井の手にはハンマーと大型のドライバーが握られていた。

「・・・俺が・・・・・俺がやるか・・・・?」

そう、それは俺たちがセンターに立て篭もって数日後、センター内部で死亡した負傷者がその
遺体を運ぶ最中などにゾンビ化し、犠牲になる者が多く出たために考えられた案だった。

死亡が確認されたらすぐに、ゾンビ化する前に、遺体の頭にハンマーでドライバーを打ち込み
脳を破壊する。

。。。。それは他でもない、俺の出した案だった。。。。

『82』

香澄に。。。香澄にドライバーを打ち込む。。。?

できない・・・!

できるわけがない・・・!

だが。。。やらなければならない。。。。

そして、それは他の誰でもない、俺の手で行われなければならない。。。

妻をあんなモノにすることはできない。。。。

俺は荒井に手を差し出した。

荒井は無言で俺の手にハンマーとドライバーをのせた。

。。。。香澄。。。。。

。。。ああ。。。香澄。。。。

妻の顔を傷つけたくなかった。

俺は額を避け、震える手でドライバーを香澄の頭にあてがった。

そして。。。。。

。。。。。。。。。。。

『83』

。。。。俺はこの感触を一生忘れることはできないだろう。。。。



俺は妻の亡骸を抱きかかえ屋上へと運んだ。

そして最後に一度だけキスをした。


俺は火が消えるまでずっとその場を離れることができなかった。


「・・・・藤田さん・・・・」
気づくと娘を胸に抱いた亜弥が立っていた。

「・・・知沙」
俺は娘を抱きしめ、また泣いた。



「まぁま・・・まぁま・・・どこ・・・・・・・まぁま・・・どこ・・・まぁま・・ぁ・・・まぁまぁ・・・・・」

その夜、娘はずっと泣き続けた。

いつまでもいつまでも泣き続けていた。


。。。かすみ。。。。。。。。

66むにむ:03/03/21 15:19
>>620さん
ゾンビ従業員いたら、逆に職無し生身が世にはびこるかも…(w

>>さんげりあさん
お、お、おくさぁあぁああん・゚・(ノД`)・゚・

さて、俺も連続投下しまつ。
67むにむ:03/03/21 15:21
【無二夢】零夜目

…死者に怯える小さな町での夜、私はふと散歩に出た。
そこにいたのは、あの人によく似た男だった。
想いは断ち切ったはずなのに…
人の心を捨てた私の中に、なにか熱いモノを感じた。

どれ、少し遊んでみようかな…
68むにむ:03/03/21 15:24
【無二夢】一夜目

「ケンジお兄ちゃん、気を付けてね、無理しないでね」
涙目になった妹が、最後の別れと言わんばかりに見つめる。
「マキ、心配するなよ。タカヤも一緒だし、もう見回りは慣れたものさ。

マキも、もう17になったんだ。
いつまでもお兄ちゃんっ子だと、父さんに笑われるぞ」

空の上の父の顔が浮かぶ。
69むにむ:03/03/21 15:26
「うん…わかった。皆でおいしいゴハン作って待ってる」
3才下の妹に別れを告げると、少し離れた所にいる、茶髪の青年、タカヤの方へ向かう。
「感動の別れは済ましたか?ん?」
にやけたタカヤが軽く茶化す。
「ばか、感動がつくのは再会だよ」
そして俺も軽く流す。
「そうだっけ?まぁいいや、さっさと行こうぜ」
タカヤが、鉄板や木材で補強された扉のドアノブに手をかける。
低く鈍い、耳にさわる音を立て、扉は開く。
扉の向こうには、腐臭と殺伐が満ちた、暗い夜が待っている。
70むにむ:03/03/21 15:28
日本が突然ゾンビに襲われたのは、いつの日だったろうか。
無限に湧くゾンビに、都市機能は麻痺し、
TVを代表にメディアも停止。
自衛隊の救助もいつになるか分からない。

ゾンビは健康な血肉を求め、町をさまよう。
噛まれたら最後、自分が腐りゆくのみ。
この恐怖に、町は死んだ。
71むにむ:03/03/21 15:31
生き残った人達はデパート等に篭もり、いつ来るかすら分からない救助を待つばかり。

俺達10数人も、ホームセンターに居座っている。
そのうち男達はセンター周辺を回り、ゾンビが中へ進入しないか、救助は来ないか、を見るのが仕事だ。
今夜は、俺とタカヤが当番である。
72むにむ:03/03/21 15:32
お互い金属バットを担ぎながら、慎重に歩く。
普通は闇夜のゾンビの恐怖に沈黙になりがちだが、タカヤがいるとそうもいかない。
「あ〜、だるいだるい。眠いしさぁ」
タカヤがダルそうに、いや実際ダルいらしく、愚痴る。
「もう少し真面目にやれよ」
横目に見ながら注意する。
「へいへい。ま、どうせシャッターをガシガシ叩くアホをツブすだけだしな。
いい暇ツブし。いやゾンビツブしかな」
よく分からない事を呟くタカヤを無視し、
早々にセンターを一周する。
73むにむ:03/03/21 15:33
「なあ、ケンジ」
タカヤが急に真面目に話しかける。
「なんだよ」
「いやさ、マキちゃんの事だよ。」
「マキがどうかしたか?」
「マキちゃんかわいいよな、こう、うりゅりゅってしててさ、なんつうの、萌…」
「言いたい事あるならさっさとしてくれよ」
一人盛り上がってるタカヤに水を差す。
74むにむ:03/03/21 15:36
「…ゾンビ騒動が収まったら、結婚したいんだ」
「…」
タカヤの発言に、一瞬思考という思考が停止した。
そんな俺を見てタカヤが言う。
「いや、なにもいきなりじゃないさ、ちゃんと告白して、
マキちゃんが20になるまで待って、それからだよ」
「いや、問題はそこじゃなくて…
また…なんでマキなんだ」
タカヤがじっと俺を見る。
「ぶっちゃけ、好き。ラブ。愛してる。」
タカヤが言うと、どうしても冗談にしか聞こえない。そんな男である。
75むにむ:03/03/21 15:37
「冗談はよせよ」俺は苦笑しながら軽く流す。
「冗談じゃないよ、かれこれ互いに5年以上の付き合いだけど、実はずっと好きだったんだよ」
タカヤが珍しく真面目に語る。
「そうか…まあ、勝手にしろ。俺がああだこうだ言う事でもない」別に突き放すわけではないが、俺はこういう話が苦手なのでこんな返事になる。
76むにむ:03/03/21 15:39
「や、ありがとうよ」
タカヤが妙に嬉しそうに言う。
「ケンジの勝手にしろ、はOKの意味だからなあ」
「うるせえ」
タカヤに軽く小突くと、先ほど出てきた扉をくぐり、センターへ入る。
すると、タカヤが叫ぶ。
「ケンジ!人がいた!ゾンビに追われてる!」
「なんだって!?」
急いで、タカヤが人を見たという方へ走る。
こうして、俺達の運命は鈍い音を立て、狂っていった。
77むにむ(疲:03/03/21 15:42
今日はここまでです。
かなりの連続スイマセン

2、3日をメドに終わらせる予定です
気が向いた人だけ読んでください(w

今までの皆さんの作品からちょっと浮くかもしれない。
むにむさんのこの続きに期待。

それにしてもさんげりあさん、おもしろいよ。
感動したよ。
でもひどいよ。
主人公かわいそすぎ。泣きそうになたよ。
ていうかちょっと泣いた。
続きをォ・・・
続きをはやく・・・
おながい・・・

ここ見んのが漏れの三連休のたのしみなんだよォ。
80むにむ:03/03/22 14:19
【無二無】一夜目・2

「こっちだ!ケンジ!」
走るタカヤを追いかけ、角を曲がる。
ひんやりとした道は、邪魔をするものはいない。
運良く、ゾンビも見あたらない。

少し開けた場所に出た。
「タカヤ、どこにも人なんていないじゃないか」
「…」
タカヤは黙る。
「おい」
タカヤは黙っている。…いや、黙る、しかできない?

タカヤは、冷や汗をかき、何か、得体の知れないモノを見たような表情をしている。
81むにむ:03/03/22 14:22
「おい、タカヤ!?」
肩を掴み、油汗をかいたタカヤをゆする。
すると、我に返った様な顔をするタカヤ。
「あ?…ああ、悪ぃ、なんか見間違えたみたいだ」
「まったく…ゾンビが出たら…」
自分で言って、気が付いた。
「タカヤ!ゾンビは!?」
「え?ゾンビは確かに見…」
遅かった、タカヤが言った人こそいないが、ゾンビはきちんといやがった。
82むにむ:03/03/22 14:26
待ち伏せ。
四方の闇から、薄鈍い動きのゾンビが寄ってくる。
その数は凄まじい。軽く見回しただけで30はいた。
「畜生!」
焦りの言葉が出る。

すると、タカヤが意を決した様な叫びをあげた。
「ケンジッ!道を作る!お前は逃げろ!」
「なにをバカな!タカヤはどうすんだよっ!」
俺の叫びにタカヤが軽く笑い、
「へへ…俺が死ぬよりケンジが死ぬ方がマキちゃん悲しむ…ぞォッ!!」

そういうと、タカヤが元来た方向に、突撃した。
83むにむ:03/03/22 14:30
無数に群がるゾンビ。
「元はと言えば、人を見たなんて俺が言ったのが悪いんだ、
そのせいでケンジを殺すのは目覚めがわりぃよ!」
タカヤがそう言いながらバットを振り回す。
グシャという音を立てながら、頭の飛んだゾンビが倒れる。

ゾンビの包囲網に、穴があいた。

「ケンジー!今だぁああ!」
「タカヤ…!」
「早くしろケンジー!もたねえぞー!!」
「ち、ちくしょおぉお!!」
84むにむ:03/03/22 14:34
タカヤの脇を抜ける。
走る。走る。走る。
後方のタカヤのゾンビを砕くバットの音が小さくなる。
「マ…ちゃんに…ろしくな…」
遠くで、タカヤの声が聞こえた気がした。

俺は、親友を見捨てたのか?
後ろを向くのが恐いから、走った。
無数のゾンビにただ一人立ち向かい、俺を逃がしたタカヤ。
タカヤ、タカヤ…!

体が勝手にセンターに向かって走っている気がした。


「…お兄ちゃん?タカヤさんは?」
妹の問いに、出るのは涙とうめき声だけだった。
85むにむ:03/03/22 14:35
今日はここまで。

なんだか昨日よりだいぶ短い罠(w
>むにむ殿
乙枯れさまです。
待ち伏せゾンビ。。。これはちょっとコワイですね。
タカヤくんの見たものが気になりまつ。。。


>>78殿
感想サンクスでつ。
泣いていただければ香澄さまもきっと成仏されることでしょう。。。。
なんちて。

藤田親子全員無事りハッピーエンドとか、ばりばりの戦闘シーンを
期待していた方を裏切ってしまいますた。
すみませぬ。

>>79殿
そういうときは三部作、サンゲリア1・2、デモンズ1・2などの作品を不眠不休で
一気に見るのです。
それこそ連休の正しい過ごし方です。
『84』

夜が明けた。
俺たちがこのホームセンターに立て篭もって10日目の朝。
俺の隣に妻はもういない。。。。

妻の他に死亡したのは、阿部、黒田の母、そして戦闘に参加した女性がひとりの計4人。
ここの生存者は32人になった。
もっとも、死者の他に、戦闘に参加した人達のうちの3人が傷を負い、すでに意識不明とな
っている。
彼らは今日か、明日にも命を失うだろう。
そのことを考えれば、事実上の生き残りは29人、犠牲者は7名にものぼる。
大量のゾンビがセンター内に侵入したことを思えば、この犠牲者の数は少ないと言えるのか
もしれない。

だが、俺にとっては。。。。。


沈痛な空気の中、朝食の時間になった。
「知沙・・・ほら・・・」
「・・・やぁ・・・」
娘はぐずって全く食べようとしない。

見かねたのだろう、亜弥がやってきて娘を抱っこして食べさせてくれた。
それでようやく知沙は少しだけ朝食を食べた。

男親というのはこんなにも無力なものなのか。。。。
『85』

昼食の時間だった。
トラブルが発生した。

「ちょっと! どういうつもりよ!?」
「あんたらに渡す分はないってことよ!」
「なんですって!!」
「逃げこんで震えてただけのやつらなんかに偉そうにして欲しくないわね」

それは食事の配給当番の女性と食事を受け取ろうとする女性だった。

最初はどういうことか俺にはわからなかった。
仲裁に入ってようやくどういうことか理解した。
ふたりは昨日の戦闘に参加した人間とそうでない人間だった。

昨日のゾンビの侵入時、そのことに気づいた者が取った行動はふたつにひとつだった。
一方は武器になるものを探し、それを手に俺と荒井に加勢したが、もう一方は事務室や休憩室、
倉庫などに逃げ込み、中から鍵をかけてずっと外に出てこなかった。

戦闘に参加せず避難しただけの人間には食事を得る資格がないというのが食事当番の方の女
性の言い分だった。
そして、その女性の意見に周りに居た戦闘に参加した者とその家族の多くが賛成するという事
態になってしまった。
なまじ戦闘で犠牲者が出ているだけに戦闘参加派の威勢は強く、避難した人間たちをを糾弾し
はじめた。

これは大きな問題だった。。。。
『86』

「藤田さんがそう言うなら・・・・」

俺と荒井とでかろうじてその場はなんとか収めることが出来た。
俺たちが真っ先に戦闘に参加していたこと、そして俺の妻が犠牲になっていたことから戦闘参加派
の人間は俺と荒井の言葉には耳を傾けてくれるようだった。

しかし、夕方にはまた口論が始まった。
昨日の戦闘で負傷して意識不明に陥っていた3人のうちのひとりが死亡したことがきっかけだった。

「あんたらも戦っていれば犠牲は出なかったかもしれないのに!!」
「勝手に出て行って戦ったんだろ。自業自得じゃないか! 俺たちを責めるなんておかど違いだ!」
「なにぃぃ!」
「なんだ!」

ついに取っ組み合いの喧嘩にまでなってしまった。
俺や荒井、吉沢さん、神崎先生が仲裁したが今度はなかなか場が収まらなかった。

いままで以上に厳しくなった状況の中、センター内の生き残りは協力しあうどころか、完全に戦闘参加
派と避難派とに二分してしまった。

なぜ。。。。なぜいがみ合わなくてはならないんだ。。。。

90620:03/03/22 16:46
>>むにむ様
乙です。
タカヤ、お前漢や・・・(ノД;)ウウ・・・

>>さんげりあ様
修羅場ですな。第二の黒田家がでてきそうな予感・・・。
91巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/22 19:59
担当医が変わったお陰で、痛い注射に血涙流しましたが
やっと視界が回復しました。

纏めて絨毯爆撃致します。
92巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/22 19:59
「46」
救出部隊は、大通り沿いに進むより他ならず到着は通報より3時間余りかかった。
この頃になると親愛小学校よりの連絡は途絶えて、内部ではどうなっているか
解からない状態ではあったが、何はともあれ数千人規模の避難民と同僚を見捨てる訳には
行かず、ゾンビの包囲を排除しつつ目的地に迫って行った。
「路面中央、密集状態の中央付近に対し火災に注意、、放射!」
指揮官の声と共に、貴重で有力な武器である火炎放射器が投入され
密集したゾンビに、地獄の業火とも言える灼熱の炎が注がれる。
熱さこそ感じていない様だが、視界と筋力にダメージを受けたゾンビの動きは止まり
行動が支離滅裂となるのを見計らい次々と打ち倒してゆく。
93巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/22 20:00
「47」
大通りの戦闘とは裏腹に、目的地付近では大して広くも無い道路と付近から群った
ゾンビが障害となって前進は遅れた、救出部隊はゾンビに半包囲されつつも正門に迫り
車両突入の為バリケードの排除作業に移った段階で、漸く内部との連絡に成功した。
「須藤巡査長、親愛小学校と連絡が取れました」
私的とも言える行動に付いて来てくれた、篠崎巡査の声がPCから聞える。
側面防御の激しい銃撃音の中で、実包弾を装填しつつ周囲を見回す。
実質的指揮官である、安藤三尉の姿が見えない・・・。
止む無くPCに乗り込んでマイクを握った。
「こちら須藤巡査長、救出部隊は現在 正門前に接近バリケードの爆破準備をしています
 そちらの状況をお知らせ下さい。」
PCのラジオから、携帯無線機と思われる聞き取り難い声が聞えた
「・・おう、須藤か?大貫だ、此方からはお前等が見えているぞ、随分ご苦労のようだな。」
小学校警備の大貫警部補の声だ、、。
「ご無事でしたか?大貫警部補!現在、自衛隊さんがバリケード爆破を行います、もう少しの
 辛抱です」
小学校でも可也の戦闘が行われているらしく、銃声がラジオから響いていた。
「残念だが、もう間に合わん1時間ほど遅かったな・・」
激しい爆破音がした、どうやらバリケードの爆破を行ったようだ。
94巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/22 20:00
「48」
「学校中ゾンビだらけだ、一部では未だ抵抗しているが大半は制圧された、我々は5階西側で
 抵抗しているが、、もう、大して持たん、折角来て貰って申し訳ないが、、指揮官に撤収
 するように伝えてくれ、我々は覚悟を決めた・・・」
激しい衝撃が身体を走った、、バカな・・・此処まで来たのに、それに純子は・・・。
何か空虚な虚無感とも言える空しさの中、諦めない様に説得を試みようとした、、その時・・
「須藤君?須藤君なの?助けて、、早く来て、ここ3階・・みんな、みんな死んじゃう・・」
西宮純子巡査・・・の声だ・・・。背後で悲鳴に交差して発砲音がする。
「何をしている早く撤収しろ!校庭付近には数千のゾンビがひしめいている、救出どころか全滅するぞ!」
大貫警部補の言葉を裏付けるように一層、激しい銃撃音が付近で聞えた。
指揮官の安藤三尉が血相を変えて駆けつけて来た。
「親愛小学校は、もう駄目だ包囲を突破して撤退する」
前方に火炎放射器らしきものによる、オレンジ色の光が見えた。
マイクを通話に・・・・切り替え様とした・・・。
「嫌だ、嫌だ、、須藤君、、助けて、みんな、、みんな・・・」
安藤三尉が胸倉を掴んで言った。
「ラジオを切れ!須藤巡査長、もう如何にもならん士気に響く。」
95巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/22 20:01
「49」
「・・・純子・・・」マイクを握り締めたまま、スイッチを入れることも無く、力なく呟いた。
ラジオから発砲音が連続して響き、空虚な雑音が流れ出した。
篠崎巡査が申し訳なさそうに、ラジオを切った。
純子、純子・・職場でさり気なく接触するだけで、ロクに・・まともに付き合ってやれなかった。
親父の言葉が頭を貫く、、「・・母さんは心配しているぞ・・。」
純子・・・、求婚どころか、告白も出来なかった・・・・。
急に平手打ちで我に返る、鬼の様な形相で安藤三尉が怒鳴った。
「早く部下を掌握しろ! 貴様ぁ!見ろ、あれが現実だ。」
空ろな目で指を刺した方向を見る、大勢のゾンビと学校が見える・・。
「!!!!」
人が・・人が学校の窓からぽろぽろとこぼれ落ちていた・・。
自殺するというよりも、目前の惨劇を逃れる為に階下で待ち受ける
ゾンビの群れの中に落ちていった。
女や子供、、微かに聞える絶望的な叫び声、悲鳴、、、。
死が全てを制し、絶望の中で生存者が空しく消えてゆく
遂に耐え切れなくなった、巡査が1人叫び声をあげながらゾンビの群れに突入して行った。
我々は撤退した。
96巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/22 20:01
「50」
目的を達しえず、この日一番の損害を出しつつ疲れ切って戻った頃には傾いた太陽がオレンジ色の
光を放っていた。
紙コップのコーヒーを啜りつつ、署の窓からそれを眺めた、無情な美しさが胸を締め付ける。
あれから、それとなく事情を聞かされた安藤三尉がお詫びと見舞いの言葉を残していったが
心は空虚なままだった。
ふと、人の気配を感じた・・傍らに紙コップが置かれる、中には琥珀色の液体が入っていた。
アルコールの匂いが鼻を付いた・・、(コラコラ勤務中だぞ)心で呟いてから苦笑する。
振り返ると心を読み取ったのか、矢張り苦笑した吉田巡査と複雑な表情の篠崎巡査が居た
表情を引き締めて吉田巡査が、ポケットから血に汚れた警察手帳を取り出して渡した。
「平泉巡査長の物です」
受け取って広げかけると、、ヒラヒラと写真が1枚落ちた・・・。
巡査長昇進で宴会をやった時のものだ、平泉と純子の間に挟まれて3人仲良く肩を組んでいた。
97巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/22 20:02
「51」
写真を裏返したら、たった一行だけの殴り書きがあった。
”オレは諦めてやるから、サッサと告白しろバカ!”
「・・・・。」複雑で静かな悲しみが、深く心に広がっていった。
自決された堤巡査部長が巡査長時代に、酔えば歌った歌が口からこぼれ出た。

 沖のカモメと巡査の巡りはヨォ、何処で死ぬやらね果てるやら ダンチョネ
 警察官には娘はやれぬ 独り身の辛さ寂しさよ ダンチョネ

太陽が地平線に沈み、紺色の空が更に暗さを増す中で男たちの静かな歌声が低く長く流れていた。
98むにむ:03/03/22 23:45
[キスだけはイヤ!]
S:えー、キミら、交際暦何年?
ゾン子:えと、5年です。
ゾン吉:ちょうどゾンビ騒動が始まってから付き合ったんです。
S:どっちから告白したん?
ゾン子:えとえと、彼からなんです。
夜の公園で、「君と一緒に、腐っていきたい」って。
S:こらまた、くっさいなあ〜。現に腐ってるけどなぁ(一同爆笑)

*この後、彼が秘密を大告白!*
99むにむ:03/03/22 23:46
ゾン吉:あのな、実は秘密にしてた事があります
ゾン子:え…?
S:え〜、彼氏な、実はミイラやねん。
ゾン子:え…?!
ゾン吉:だますつもりは無かったんだけど…なかなか、言い出せなくて…
ミイラとは、いや?
ゾン子:…ううん、関係ない!愛は国境も関係ないわ!
ゾン吉:ありがとう…結婚しよう。
一緒の墓にはいりたい
ゾン子:うれしい…!毎日お味噌汁作るわ!
ゾン吉:塩分は控え目でたのむよ、あはは

*南米旅行ゲット!仲良く腐ってね!*
100620:03/03/23 00:34
ゾンビ事件が発生してから私はセンターの食料庫へ立てこもってる。
ここの食料庫は厨房も兼ねているので水も確保できる。
排便はおまるを持参してきたし、堪ってきたら中世ヨーロッパ時代に習って
窓の外から放り投げればいい。臭いはその内慣れるから良し。
救助隊が来た時の為、拡声器もガメてきた。
外から誰かが来ない限り、私の安全は確保されたも同然である。

以下、私が生還するまでの生活を記録する。
状況によっては数日で終るかもしれんな・・・(・∀・)ニヤニヤ

1日目・・・初日から何かやることもないだろう、寝る。
    途中、不届き者がシャッターを叩きまくるが無視する。
    しばらくして悲鳴が聞こえたが今の私にはちょうどいいBGMだ。
    食事はあまり取らないことにする。後で後悔するわけにはいかん。
    終寝前に部屋の点検をして熟睡する。

2日目・・・多少、暇になってきた洒落で料理をするもできあがりは消し炭、鬱。
    本日も救助を求める者が来たが例によって無視。
    私のサクセスストーリーを邪魔する者は許さん、食われてしまえ。
    午後はあまりにやることがないのでゴロゴロする。
    終寝前に部屋の点検、寝る。

3日目・・・寝過ごして昼すぎに起きる。食事はインスタントで適当にとる。
    昼、ふと考えてみたがこの生活には欠点がある。
    ・・・娯楽がなさ過ぎるのだ。外でゾンビどもと格闘してみようか?
    さすがに死ぬことが明白なのでやめる。暇々。

4日目・・・本日は素晴らしいアイディアを思いついた。この退屈さを紛らわす
    スペシャルな内容だ。ここに近付く連中を片っ端から仕留めるのだ。
    早速センター内からボーガンをもってこよう。
    これからエキサイティングな日々になるぞ・・・。
101620:03/03/23 00:35
5日目・・・今朝は快便、これから行なう行為に興奮している。
    ・・・のだが中々人が来ない。周りにゾンビが多すぎるせいか?
    やむを得ずゾンビどもを数体始末することに。
    しかし、ゾンビは反応が少なくつまらないことに気付く。
    早く人が来ないものか・・・。

6日目・・・ゾンビを大分、掃討したおかげで人が寄ってきた。
    倒れて動かないゾンビを見て安心したのか何人か歩いてくる。
    その内一人を狙って矢を放つ。命中した、爽快だ。
    仲間がたちまち淡くって逃げ出す。そいつらにも矢を射る。
    ほとんどは頭に命中したが一人だけ足に当たった。
    血の臭いを嗅ぎつけたゾンビ達がやってきて食われる。いい気分だ。
    今日はいい夢が見れそうだ。

7日目・・・昨日と同じようにゾンビを掃討し、人をおびき寄せる。
    生意気にも私に交渉をもち掛けてきた輩がいたのでおまるの汚物をぶっ掛けて射殺す。
    途中で思いついたのだが、ただ射殺すのも面白くない。
    今度から射殺した人間の種類によって点数をつけることにするか。
    ♂100点、♀300点、ガキ500点、爺婆は1000点だ。
    ゾンビは10点といったところだな。

8日目・・・本日の戦火
    ♂5匹、♀1匹、ゾンビ3匹で計830点
    ・・・もっと人を集めないと面白くないな。

9日目・・・私は天才かもしれない。ほんの数日でこんなことを思いつくのだから。
    効率よく人狩りをするには拡声器で人を呼ぶことが一番だと考えたのだ。
    救助隊を装ってな。愚民どもはすぐに寄ってくるだろう・・・。
    明日への準備を完全なものにする為、最近怠っていたシャッターや
    扉の無事を確認をする。ああ・・・明日が待ち遠しい。
102620:03/03/23 00:35
10日目・・・センター内から油とライターを用意する。準備万端だ。
     拡声器で力の限り叫ぶ。避難地はここだと。
     続々とひとが集まった。私が外に食料をばら撒くと群がる群がる。
     豚ども制裁を加える為、油を撒き散らし、火をつける。
     たちまち周りは火の海に包まれ、愚民の悲鳴が聞こえる。愉快痛快。
     矢も面白いようにヒットしていく。すると蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
     いや、恵まれないものは救われんなぁ。

11日目・・・妙な騒音で目を醒ます。何があったのか。
     外にあった死体が何処にもない・・・どういうことだ?
     ・・・何が原因かは知らないがゾンビにシャッターを突破されたらしい。
     ふざけた連中だ、この私に逆らうとは。
     だが奴等はここまでは来れない。鍵もないのにどうやって開ける気だ。
     今晩はゾンビが羨むほどの料理を食って余裕を見せてやる。

12日目・・・何故だかいつものBGMが聞こえなくなった。
     ついでに話し声まで聞こえる。外を見ると自衛隊がいた。
     予定通り助かったようだ。私は助けを求めようとした。
     だが、思いとどまった。

     
     この記録を見られていいのだろうか?
     これをみられるわけにはいかない・・・さすがにやばすぎる。
     

その時、扉がこじ開けられた。隊員が私に近付く。まずい、見られる。
私は彼等にボウガンを向ける。隊員が何事か叫ぶが耳に入らない。
矢を放つ。隊員の頭に当たる。よしっ、100点ゲット。
だが、私が次の標的に狙いを定める間もなく私は撃たれ、倒れていた。

・・・しまった、私のサクセスストーリーが・・・
103あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/23 12:22
たくさんうPされててイイ!
もっともっと おながいしまつ
104FD‐R ◆6N371.108E :03/03/23 18:10
うわぁサボってたら大量投下の嵐!
もはやおれの話など覚えてる方はいない!
ということで第1部完
別のを創作します。。。
みなさん、乙枯れさまです。
スレが一気に超活性化しましたね。
特に巡査物語殿、復活おめでとうございましゅ。

>FD−R殿
そうおっしゃらずに続きをいきましょう。
もしあれなら今までの分をまとめて投稿してから続きを書かれては?
ちょうど新スレに移行したので問題ないと思われまつ。
『87』

翌朝、事態はもっとひどくなった。
意識不明の負傷者ふたりが死亡してしまったのだ。
このことが引き金になり、参加派は避難派を徹底的に非難し、ひとりが避難派に向けて食べ終えた食器
を投げつけた。
これが避難派の子供の顔に直撃してしまい、今度は乱闘にまでなってしまった。

事態の収拾はたいへんなものだった。

ようやく喧嘩が治まったとき、さらに追い討ちをかけるようにそれは起こった。

喧嘩の傷口を洗いにトイレにいった女性が自殺者を発見したのだ。
それは阿部の家族だった。
だが、普通の自殺ではなかった。
阿部の妻は子供達を刺し殺し、自らの喉を掻き切り、無理心中していたのだ。
トイレの床一面にはおびただしい量の血が流れ、まさに血の海と化していた。

このことをきっかけにまた糾弾が始まった。

「黒田の母親がイカレてシャッターを開けさえしなければ、あの親子は死なずに済んだのに・・・!
 もとはと言えば、これはアンタのせいでしょ!」
「そうだ、アンタが黒田を殺したからだ!」
「どう責任を取るんだ!」

避難派の中にいた男性のひとり、中谷は黒田に娘をレイプされた父親だった。
『88』

中谷に対する非難は凄まじいものになった。

「俺は・・・俺は娘を死に追いやられたんだぞ! 
 黒田が・・・アイツがあんなことさえしなければ・・・」
「だからと言って殺していいってことにはならないでしょ!!」

だが、中谷のひと言が混乱にさらに拍車をかけることになる。

「俺を責めるが、お前らだってヤツを殴っただろう!
 そこのお前! お前だって一緒に窓からヤツを突き落としたくせに!
 それにお前も! お前もだ!」
中谷が次々と指さしていく。

まさに大混乱となった。

「うるさい!」
「ふざけるな、自分の罪を棚にあげるつもりか!」
「お前にそんなことを言う資格はない!」
「なにぃ! 貴様、なに様のつもりだ!」
「なんだ、やるのか!」

そして、また乱闘になった。
『89』

その乱闘の最中、最悪のことが起こってしまった。
戦闘参加派のひとり、芳賀という男が、持っていたナイフで避難派の椎名という男を刺してしまっ
たのだ。

神崎先生と吉沢さんが手当てを試みたが、ここにはただの応急箱しかない。
しかも既にその中身は包帯も消毒液さえもとうの昔になくなっていた。

椎名は出血多量で意識を失い、じきに死亡した。

「ちがう・・・わざとじゃない。脅しのつもりだったんだ!
信じてくれ・・・」
芳賀がいくら言っても椎名の家族は絶対に納得などしない。
そして死んだ人間は生き返りなどしない。

「人殺し!! よくも・・・よくも! 
 お前も死んで償え!」
遺された椎名の妻の怒りは収まることはなかった。

とりあえず芳賀は2階の倉庫のひとつに閉じ込めることになった。
だが、この後どう処分していいのかは誰にもわからなかった。

前回の黒田の例があるため、俺と荒井他数人で交代で倉庫を見張ることにした。
芳賀が逃げないよう、そしてそれ以上に芳賀をリンチから守る為に。。。。

もう、センター内でさえ安心できなくなっていた。
『90』

深夜のことだった。

椎名の妻が凶行に及んだ。
彼女は芳賀への復讐を行ったのだ。
だが、それは最低のやり方だった。

芳賀が監禁状態で本人に復讐できなかった彼女は、あろうことか芳賀の家族にその怒
りの矛先を向けた。
彼女は眠っていた芳賀の子供を包丁でめった刺しにして殺したのだ。
異変に気づき目を覚ました芳賀の妻は半狂乱となり、椎名の妻の首を締め、ふたりは
取っ組み合いになった。

「よくも娘を・・・! 殺してやる!」
「お前も死ね! 死ね!」
「お前なんか突き落としてやる! 落ちろ!」
「お前こそ落ちてゾンビに食われちまえ・・・!」
ふたりは窓ぎわで首を締めあい、互いを突き落とそうとした。
そしてふたりはもつれあい。。。。。窓から転落した。

すごい悲鳴だった。
ひさびさの『餌』に外の住人達は歓喜の呻きをあげていた。

たった。。。たった1日。。。それだけでセンターの生き残りは22人にまで減ってしまった。
それもゾンビのせいでなく。。。。

これからどうなってしまうのだろう。。。。
ドス黒い展開だ…
かつてないほどダークなストーリー展開。
なんか人間の業を考えさせられるな。
ゾンビ達の方が明るくみえてしまうよ。
113むにむ:03/03/23 21:27
【無二夢】二夜目

タカヤが消えて、4日。
ムードメイカーであった彼が消えたセンター内は、暗い。
しかし、落ち込んでいても始まらない。
貴重な男手が減った今、尚更俺達が頑張らなければならない。
タカヤの分も。
「ケンジお兄ちゃん、高橋さんが呼んでるよ」
「マキ…わかった。ありがとう」
マキの存在は、暗闇を照らす光の様だった。
そうだ、まだ守らなければならないモノがある。
救助がくるその日まで、俺がマキを守らなければならない。
114むにむ:03/03/23 21:31
「高橋さん、なんです?」
中年の男性、高橋さんに話しかける。彼はアマチュア無線で、電波を拾い、数少ない情報を入手してくれるありがたい存在だ。
「ケンジ君。周辺のホームセンターや大規模な施設が、
ゾンビの襲撃にあって壊滅しているらしい。
近くのデパートからの連絡なんだが、この連絡のあと無線が途絶えている」
「なんだって…ここも気を付けないと。バリケードを強化しましょう」
高橋さんがヘッドホンをかぶる。
「ケンジ君、私は続けて情報を集める。そっちは頼んだ」
高橋さんは俺の肩を軽く叩き、雑音に集中した。
115むにむ:03/03/23 21:34
夜。
ガラスやシャッター前の補強をすませ、見回りも終わった。
俺は精神的な疲れを払おうと、センターの屋上へ出た。
積んである角材に腰をおろし、夜空を見上げる。

星がキレイだ。
交通機関やビルの明かりがないと、町中でも星空が視界いっぱいに広がる。
月を見る。
白い、小さくて、そして大きな月。
その美しい天体を見るのに、何も考えることは必要ない。
死者がうごめく嘘のような現実から、少し解放された気がした。

…風がふいた。その風にのって、下の階から、悲鳴が聞こえた。
116むにむ:03/03/23 21:37
「な…!?」
心臓が高鳴った。
夢から急に起こされた気分だった。
慌てた手でとっさに転がっていた鉄パイプを拾い、急いで階段を下りる。
2階のフロアへと行く。
窓が破られ、備蓄品や売り物が荒らされ、
そこに転がる、死体。
その場は、悲惨だった。
高橋さんはきっとメガネかけた七三だ!
そしてアキバによく出没する!
さらに2ちゃんねらー!
・・・あたり?
118むにむ:03/03/24 00:20
うむぅ 大体書き終えたけど、文章力の無さが身に染みます(w
まぁ、小説なんて書いたコトなんてほとんどないけどね…(w

>>高橋さん(34)会社員
おしい、メガネは掛けてません。
住み着く板は軍事、無線、半(以下自粛
>>110>>111>>112殿

やはりダークすぎますか?
最初このストーリーで考えてて、書いてる途中で黒すぎる話なので

 黒田発狂→シャッター開け→なんとか乗り切る→今度は地震発生・犠牲
 多数→残った無事な狭い空間で暮らす途中で今日投下の『93』以降の
 展開に。。。

というのも考えたのですが、結局いまのこのストーリーを本採用しますた。
三部作でもゾンビ物ってけっこう人間同士の諍い、殺し合いが必ず出てく
るので。。。。
でも、やりすぎたかなぁ・・・・。


>>むにむ殿
私も小説みたいなものは書いたこと無かったので書いてて途中で鬱に
なります、自分の駄文っぷりに。。。
でも楽しけりゃいいじゃないですか。。。。と自分を慰めてみる 罠
『91』

翌日の朝、追い討ちをかけるようにそれは起きた。

また自殺者だった。
だが、ただの自殺とは違った。
集団での自殺だった。
しかも、それはすべて子供だった。

小学校高学年から中学生の少年少女たち5人が集団で屋上から飛び降りたのだ。

屋上には拙い字で遺書が残されていた。

 『 もう疲れました。 ごめんなさい 』

なまじ幼い子供よりも自分の置かれている状況がわかるため、そして多感な思春期の彼らの感性には
この現実は耐えられなかったのだろう。
昨日の惨劇を目の当たりにしてはなおのこと仕方がないのかもしれない。

だが。。。だが。。。俺には許せなかった。

自殺者のひとり。。。。。それは。。。妻が身を挺して救った少女だった。。。。。

なんのために。。。。妻はいったいなんのために死んだんだ。。。。

ちくしょう。。。。ちくしょう。。。。ちくしょう。。。。

。。。。。香澄。。。。。
『92』

俺たちがここホームセンターに立て篭もってまだ二週間にもならない。
しかし、今朝の集団自殺から、もうここの生存者は17人しかいなくなってしまった。
子供が6人、大人が11人だ。

だが、それもつかの間、昼過ぎには朝自殺した少年の母親だった女性が息子のあとを追うよう
にして屋上から飛び降りた。
夕方には倉庫内で芳賀が自殺しているのが発見された。
これで生存者はわずか15名になってしまった。

いがみあいはなくなった。
だが、それは決して子供達の死を大人の愚かさに対する抗議として受け取りそれに打たれた
とか、自分たちの醜い行動を反省したためとかではない。
少しはそれもあるのかもしれない。
でも、一番の理由は、最大の理由は、いがみあっていた連中の大半が死んでいなくなってしま
ったという単純な理由からだ。
そして、みながあらゆることに対する気力そのものを失いつつあったからだ。

絶望と死。。。それがここにいるみなの心を支配しはじめ、その結果おとなしくなっているだけの
ことだった。

もはや、いがみあう気力さえ失っていたのだ。

その夜はひさしぶりに争いのない静かな食事だった。

次は誰が自殺してもおかしくない。。。そんな空気が流れていた。

みなもう限界などとうに越えていた。
『93』

翌日も諍いはなく、悲壮感の漂う中、その日は静かに過ぎていった。

しかし、静けさは長くは続かなかった。

その次の日、14日目の朝のことだった。
食事の最中、突然、湘太くんが嘔吐した。

「湘太ッ!?」
「どうしたの、湘太!?」
荒井と加奈さんの悲鳴にも近い声が響き渡った。

ひどい熱だった。
湘太くんは一昨日あたりからときおり咳き込んでいた。
まさかこんなになるとは。。。。

「神崎先生、湘太は・・・湘太はどうなんですか?」
「なんとか助けてください、先生! お願いです!」
荒井と加奈さんは必死に神崎先生と吉沢さんに救いを求めた。

応急箱にあった数少ない解熱剤と風邪薬を飲ませたが、夜になっても湘太くんの熱は
まったく下がらなかった。
それどころか、高熱、咳、嘔吐、下痢。。。。症状はどんどん悪化していった。

それだけではなかった。
午後には他にも発症する子供が現れた。
『94』

その日のうちに残っていた薬はすべて使い果たしてしまった。
だが、子供達の症状はよくならない。

「先生・・・これはいったい・・・・」
「なんとか、なんとかならないんですか!?」
「子供たちを助けてください、先生!」
亜弥や美貴、荒井がみなで神崎先生を質問攻めにしていた。

「先生、なんとかしてください!」
だが、神崎先生にも手の打ちようがなかった。
ここにはまともな薬も診療器具もなにもない。
それはここでの今までのことでみんな嫌というほどわかっている。
それでも神崎先生にすがることしかできない。
そしてそれは先生を責めるだけでしかない。
一番つらいのは神崎先生だろう。。。

「断言はできんが、おそらく・・・インフルエンザじゃろう・・・・」
「・・・・インフルエンザ・・・・」
「おまけに風邪と併発しとるようじゃ。
 だから市販の風邪薬程度だけでは効かんじゃろう。
 このまま放っておけば肺炎を引き起こすことも十分考えられる」
「肺炎・・・!?」
「しかし、まともな診察器具がないとこれが正しい診断かどうかもわからん・・・・
 今の状況でワシにできることは・・・・残念ながら・・・・なにも・・・
 ・・・すまん・・・」
「・・・・そんな・・・」

なんとか。。。なんとかできないのか。。。。

『95』

ここの食事は肉も野菜もなく、ひどく栄養が偏っていた。
そして過度のストレス。
これらは当然のことながら抵抗力、体力の低下を招く。
さらに、センター内で死人が多く発生し、そのとき飛び散った血や脂はウィルスの温床となりや
すいものだ。
これらの要因が絡まりあった結果の発症というのが神崎先生の推論だった。

なんとしても薬が、診察器具が必要だった。
だが、ない。
ここにあるのは服や家電品ばかり。。。。

どうすればいい。。。どうすれば。。。。


翌朝、やはり子供達の熱は下がらない。
それだけではなかった。
さらに発病者が現れた。
子供はもちろん、今度は大人までもだ。
発病した子供の世話をしていたためだろうか、加奈さん、美貴、そして瀬川という年配の女性の
3人が倒れてしまった。

そして。。。。

「藤田さん、大変です!」
亜弥が血相を変えて俺のもとにやって来た。
「知沙ちゃんが・・・!」

。。。。娘までが発病した。。。。。

さらに絶望的な状況・・・
閉鎖空間で伝染病なんてコワイにもほどがある。
1263-620:03/03/24 23:59
>>さんげりあ様
ゾンビによって簡単に治療できる風邪すら死に直結してるとは・・・
(・∀・)ヤッテクレル!
1273-620:03/03/25 13:32
さる大学教授がテレビに出演した時の発言(一部抜粋)

「・・・ようするに、あの人型は何なのかということであります。
 皆さんはあれをゾンビなどと呼称しておりますがそれは間違いです。
 彼等は日本の次代を担う新人類なのです。何故に新人類であるかといいますのは
 彼等の生態を見れば一目瞭然です。はた目には死んでいるように見えますが
 実際には仮死状態から蘇っただけです。恐らくはDNAに描かれた情報が
 あるきっかけで露わになったのでしょう。ですが、それがあの姿とは限りません。
 いまだ進化の途中形態である可能性も捨て切れません。
 
 また、彼等は噛み付くことで仲間を増やします。この行為で捕食と繁殖を同時に
 行なっているのです。実に合理的ではありませんか。
 他にも、我々人間と違う証拠に自分達と同じ存在になった者には攻撃を仕掛けません。
 老若男女、全く差別もなしにです。それどころか一致団結して外敵に立ち向かいます。
 彼等は食欲以外に関心をもちませんから近年問題になっていた
 環境問題やエネルギー問題、はたまたオゾン層も一切解決してしまうのです。
 
 ・・・そう、彼等は革命を起こそうとしているのです。
 あのスターリンや毛沢東ですら成しえなかった人類永遠の夢を。
 帝国主義者が無辜の市民から搾取して私腹を肥やしてるその現状に反抗しているのです。
 その彼等を日本は再び力で押さえつけようとしている。これは誠に許しがたい。
 我々はこの新たな革命を成功させる為に寧ろ率先して彼等と合流しなければならないのです。
 それを死んだからブツであるなど日本国民でないから殺していいだのと
 下らない議論をして問題の本質から逃れようとしているのは情けないと思いますね。」


後日、この教授の大学がゾンビによる襲撃を受け、彼の死体が発見されたが
その表情からは新人類の境地に立てたかどうかは不明である。
>>3−620殿
お名前がびみょーに変りましたね。
しかし実際ゾンビみたいなものが出現したらこういうバカな
・・・もとい、お偉い学者さまが間違いなく出てきそう。
風邪は各風邪ごと細菌タイプが違って市販の薬では基本的にあまり効果がない、市販薬は
症状を散らすだけのもの、インフルエンザや性質の悪い風邪は感染力が高く簡単に空気感染
する、というのを聞いたことがあったのでこの展開を考えますた。
実はいとこのひとりがこんな感じで肺炎になったことがあるのです。
みなさん、風邪かなと思ったらなるべく医者に行って気をつけてください。

でわ、今日も ツヅキ ヾ( ゚д゚)ノ゛ 逝ク チク〜
『96』

発病していないのはもう俺、荒井、亜弥、吉沢さん、神崎先生、そして中谷の6人しかいなくなっ
てしまった。

「くそがっ! 俺たちにはどうすることもできないのか!?」
荒井が腹立ちまぎれにからっぽになった救急箱を床に叩きつけた。
「このままじゃ湘太たちが・・・・くそっ! くそっ! くそっ!」

そう、一番最初に発病した湘太くんは特にひどい。

娘は発病したばかりだが、既にかなり悪化している。
わずか二歳の体力ではこの病気にまるで抵抗できない。
このままだと娘は。。。。

妻を失った今、娘にもしものことがあったら。。。俺は。。。。俺は。。。。

。。。ダメだ!

娘は絶対に死なせるわけにはいかない!
妻は娘を俺に託して死んだ。。。。
俺は妻との約束を守らなければならない。

どんなことをしてでも娘の命を救うんだ!

娘だけは絶対に護る。。。。そう、それが俺の生きる目的。。。。

そのためならなんだってできる。

たとえこの命と引き換えでもいい。。。知沙だけは。。。知沙だけは。。。。

だが、どうすればいいのか。。。。どうすれば。。。。
『97』

「くそがッ!」
荒井がまた何かを床に叩きつける。
「湘太はすぐにでも病院に担ぎ込まなきゃならないぐらいヒドイ状態だってのに!
 どうすりゃいいんだよ、ちくしょう!」

そう、平時なら病院に連れて行って診てもらえるのに。。。。

。。。。。。そうすれれば。。。。。。。。

。。。。。。待てよ。。。。

。。。。。なにか。。。。なにか見落としている。。。。なにか。。。。。

。。。。。薬。。。。病院。。。。

。。。。。!?

そうだ!!

「・・・ある・・・」
「・・・あ? なにか言ったか、藤田?」

「あるぞ、荒井! たったひとつだけ方法が!」
「・・・え!? 
 ほ、ほんとうか、藤田!?」

そう、たったひとつだけ。。。たったひとつだけある。。。。

なぜ気づかなかったんだ。。。。
『98』

「いくらなんでも無茶じゃ・・・・」
「・・・正気かい? 
 いくらなんでもそりゃぁ無理だよ、馬鹿はおやめ!」
「そうです、そんなことしたら死んでしまいます!
 お願いです、やめてください!」
神崎先生も吉沢さんも亜弥も俺の案に強く反対した。

「でも、これしか方法がないんだ」
「俺は藤田に賛成だ。湘太と加奈を救うためにもやるぜ」
無謀なのは承知している。
でも、これしなかい。

「たしかに成功すれば発病した皆を助けられる可能性が高い。
じゃが、それは自殺行為というものじゃ。成功の見込みなど無いにも等しいじゃろう・・・」

「お願いします、やめてください!」
亜弥の目から大粒の涙が流れ落ちた。
「めちゃくちゃですよ・・・外に・・・外に出るなんて!」

そう、俺の案はいたってシンプル、『病院に行って薬を取って来る』 だった。

なにせ、このホームセンターのすぐ近くには病院があるのだから。。。。
直線ならたぶん往復でも200メートルもない距離だろう。

もっとも、それは死の行程と言えた。。。。

外には数百体のゾンビ。
ただ脱出するだけならまだしも、薬を手に入れた後はその中に飛び込む形でこのセンター
に戻って来なけれならないのだから。。。。
133むにむ:03/03/26 00:11
>>さんげりあさん
今謎の肺炎はやってますし、結構タイムりぃ
では 続き 逝く チry
134むにむ:03/03/26 00:15
【無二夢】続き
まず男達。
心臓を貫かれた者、首を折られた者、腹を裂かれた者。

次に、女性達。
彼女らは、顔を潰され、服が破かれている。そこから見えるのは、喰いちぎられた肉。

そんな死体が、血を撒き散らし転がっていた。
信じられない凄惨な猟奇現場に、頭が白くなる。
135むにむ:03/03/26 00:17
「ケ…ンジ君」
足元を見ると、高橋さんが転がっていた。
右腕が無い。顔が右半分砕かれている。腹部から内臓がこぼれている。
俺は、コレが高橋さんだとは理解できなかった。
「高橋さん…?」
混乱しながらも、名前を呼んでみる。

高橋さんが、声にならない声で何かを伝えようとする。
「襲わ……ゾン…が…マキちゃ…」
「マキ!?」
高橋さんは、血と息と、何か肉片をヒュッと吐くと、二度と口を動かさなかった。
136むにむ:03/03/26 00:19
「こんな…こんな…なぜ!」
ただ、高橋さんだったモノに叫ぶしか出来ない。

すると、背後から、
「…ケンジお兄ちゃん!」
マキの声が聞こえた。「マキ!?」
振り向く。
月が見える窓際に、妹がいた。
ただ、妹は何者かに担がれている。
何者かはわからない。後ろを向いているためだ。
しかし、その後ろ姿には見覚えがある。ありすぎる。
「マ…キ…

……タカヤ!!」
一瞬目を疑った。
タカヤだ。タカヤがいる。
なぜ?タカヤはゾンビに…
タカヤが、ゆっくりとこっちを向く。その手と顔は、赤い血で染まっている。
137むにむ:03/03/26 00:22
月を背後に、マキを担いだタカヤが俺を見る。
まるで生気が感じられない。亡霊の様な雰囲気。

「タカヤ!お前、一体!?」
すると後ろを向いたマキが叫ぶ。
「お兄ちゃん!タカヤさんが、タカヤさんが突然現れて、ゾンビを連れてみんなを…!」
妹の言っている事がよくわからない。
タカヤが何をしたって?何なんだ一体!
「ケンジ…」
タカヤが、呟いた。
「タカヤ!なんなんだよ!マキを降ろせ!」
「ヒ…ヒヒ」
タカヤが、邪悪な微笑みを投げかける。
その人間離れした表情に思わず背筋が凍った。
138むにむ:03/03/26 00:25
「タカヤ…」
俺が茫然としていると、タカヤが突然窓の方を向き、ガラスに体当りした。
空中にタカヤとマキの体が吸いこまれていった。
「マキーー!!タカヤあああ!!」
窓から、薄暗い地上を見下ろす。
マキの姿はない。
視界には、無数のゾンビだけがはいる。
「ちくしょう…!」
一階を階段の上から見る。
破れたシャッターからゾンビが進入し、フロア全体にほぼ隙間無く溢れていた。
2階を目指そうと階段を上がろうとするゾンビ。しかし、彼等には階段を上がる能力はない。
この死者の集団に、単独で突入するのは自殺行為である。
139むにむ:03/03/26 00:28
「く…そお…」
逃げるように、マキが消えた窓へ向かう。
「マキ…マキ」
妹を救いにいけない。なにより、どこへ救いにいけばいいかわからない。
2階には、高橋さん達の死体。その死体は、ゾンビがやったとは思えない朽ち果て方だ。そもそもゾンビは2階にはこれない。
やはり、タカヤが?

みんな、10数分前には、あんなに元気だったのに。共に生きようと手を取り合っていたのに。
今は、ただの肉。
「タカヤが…やったのか?」
理解しがたい光景・状況と、なにも出来ない己の無力さに、愕然と膝をついた。
ゾンビって階段のぼれないんだ
ゾ    ン    ビ    必    死    だ    なw
>>むにむ殿
タカヤくん、打つ手なし状態ですな。。。
どうしようもないほど絶望的な状況でも活路を見出そうとする
ような主人公が個人的にはたまらなく好きです。
あがけ!もがけ!苦しめ!そしてそれでも乗り越えて見せろ!
などと思ってしまいます。
>>140殿
各作者ごと各ストーリーごとに全ての設定は違うので
それも含めて楽しんでくだされ。
『99』

「それでも行くしかないんだ・・・子供たちを助けるために・・・」
「・・・そんな・・・・」
「だから、俺と荒井がうまく抜け出せるようサポートをお願いしたい」

俺と荒井が数百体のゾンビを振り切って病院に向かうにはどうしても陽動が必要だった。
できるだけ一体でも多くのゾンビを各窓の下に集め、もっとも手薄になるだろう非常階段側から
外に出て病院に向かう。
センター周囲に乗り捨ててある車を手に入れることが出来れば少なくとも病院まではなんとか
なるだろう。
ただし、どの車にキーがついているかは外に出なければわからない。
おまけに病院内にどれだけゾンビがいるのかも、どこに薬が置いてあるかもわからない。

まさに命がけのぶっつけ本番だ。

うまくいくかどうかなんてわからないが、これしか手がない。
なによりもう時間がなかった。
子供達の衰弱は目に明らかだ。
一刻もはやく薬を手に入れる必要があった。
俺たちには迷っている時間も考えている時間ももう残されてはいない。

「中谷さん、あんたにもサポートを頼みたいんだ」
俺はずっと壁際に座り込んでいた中谷にも声をかけた。
いくら中谷でも安全な中からのサポートぐらいならやってくれるはずだろう。
「・・・・・」
「中谷さん」
「・・・・いやだ・・・・」

「なんだと!? もう一度言ってみろ!」
中谷の言葉に荒井の表情が一気に変わった。
『100』

「いやだ・・・・・・・俺も・・・・
・・・・・俺も一緒に連れて行ってくれ」
「・・・!?」
「ここを混乱させた責任は俺にあるはずだ・・・・。何人も死んでしまった・・・・。
 こんなことで・・・・こんなことで俺の罪は償うことはできないかもしれない。
 でも、俺も・・・・俺だってみんなを助けたいんだ。
 このままじゃ死んだ娘と女房に会わせる顔がない。
 お願いだ・・・・俺も一緒に連れて行ってくれ!」
「中谷さん・・・」
まさかこの男がこんなことを言い出すなんて正直意外だった。

「見直したぜ!」
荒井が叫ぶ。
「よっしゃ、3人で行こうぜ! なぁ、藤田!
 3人いればなんとかなるさ。
 ほら、3人寄れば文殊の知恵っていうしな!」

。。。。。それはちょっと違うような気がする。。。。。

まぁ、なにはともあれ、よかった。。。
人手が増えれば成功の確率も上がる。作戦もいろいろと立てられる。

「よし、3人で力をあわせよう」
「おう!」
「ああ」

「待ちな・・・・・・」
吉沢さんだった。
「あたしも行くよ」
『101』

「でも、吉沢さんは・・・」
「でももへったくれもないよ。あたしも行く」
「しかし・・・」
「あんたらだけで行ったってだめだろうが。
 だいたい、あんたたち、薬のことがわかるのかい?」
「・・・・・あ・・・・」
「ほらね。
薬だ器具だっていったって、なんだっていいってわけじゃないんだからね。
誰か薬剤や器具の知識を持った人間が行かないでどうすんのさ。
素人にゃ見分けもつかないだろうが。
ホント、男って馬鹿だよねぇ・・・。
もうね、アホかバカかと小一時間問い詰めたいったりゃありゃしないよ!」
「・・・すいません・・・」
そこまで気が回っていなかった。。。。。

「よし、じゃあ、4人で行くよ!」
「はい!」
「おう!」
「ええ!」

「神崎先生、我々のサポートと、ここのみんなを頼みます」
「わかった」
「亜弥ちゃん、キミは先生を手伝ってくれ」
「・・・・はい・・・・。
・・・・・藤田さん・・・死なないでください・・・・絶対・・・絶対に生きて戻ってください!」
「ああ・・・わかった。・・・・知沙を・・・・娘を頼む!」

かくして、俺たち4人の決死行が始まった。
146むにむ:03/03/26 21:04
>>さんげりあさん
なんか、ちゃねらーが混ざって…(w
いい場面なのに思わずフいちまいました(w
いよいよ病院。
ホスピタルゾンビ…ガクブル
147むにむ:03/03/26 21:08
【無二夢】つづき
俺は、ただただ座っていた。
何も考える事なく。
最初はマキとタカヤを捜しに行こうかと思ったが、
外はゾンビで溢れている事、そしてフロア一面に広がる無残な死体を見ると、何かとてつもない恐怖、無気力感、喪失感を感じ、体が動かなかった。
高橋さん…みんな…。…マキ。
うつむいていると、次第に思考が停止していった。
148むにむ:03/03/26 21:11
何度か、日が昇ったような気がする。
何も飲まず、食わず、考えず。

そうして、意識が薄くなりかけていると、誰かが目の前にいる感じがした。
すでに視界はぼやけていて、誰かはわからない。
わかろうとする気もない。
消えかけた意識の中で。ただ、全身黒い服を着て、小柄だな、という事だけは認識できた。

その人物が、頭をよせると、かすかに呟く。低く薄い、風のような少女の声で。
「坂下ビル タカヤ」
149むにむ:03/03/26 21:13
その名前に、視界、意識がすっと戻る。
同時に、心臓が鼓動を早める。

立ち上がる。
目まいがする。
吐き気がする。
ずっと座り込んでいたためか。

タカヤ。タカヤ。タカヤ。皆を惨殺し、マキを連れさった、タカヤ。
あの血塗れの笑みが、浮かぶ。

先ほどの黒い人影は、気付くと居なくなっていた。
150あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/27 13:40
つづき期待あげ
151数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/27 23:38
 投下しまする。
152数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/27 23:39
  1/6
 だって俺は守りたかっただけなのに。
 教師だからってわけじゃない。
 俺、お前達のこと大好きだったんだ。
 大好きなお前達を、俺は守りたかったんだ。
 ただ、それだけだったのに…。
 ゴメンな、裕次、武史、弘樹、守。
153数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/27 23:39
  2/6
 俺たちは修学旅行の最中だったんだよな。バスの中で、凄い渋滞で。
 ようやく抜けたと思ったら、地獄が待ってたんだ。
 俺はバスの運転が出来たから、必死で逃げたんだ。
 ガイドさんも、運転手さんも、みんな見捨てて。
 でもお前達は解ってくれたんだよな。俺がお前達を守るために必死になってること。
 ゴメンな、美紀、裕子、智佐、智江。
154数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/27 23:40
  3/6
 こんなことになるなんて。
 ようやくたどり着いたサービスエリア。俺たちは他の大人達に追い出されたんだ。
 お前達の身体を貸せば、おいてくれるって言われたんだよ。
 でも。そんなことできるわけないじゃないか。
 また逃げたんだよな。
 うん。危なかったよな。あのガソリンスタンド。必死で給油したな。
 それがいけなかったんだな。
 俺、あそこで囓られてたんだな。
 ゴメンな、清一、慎介、浩太郎、雅人。
155数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/27 23:40
  4/6
 知らなかったんだ。こんなことになるなんて。 
 チクショー、俺は噛まれた傷が疼いて、どんどん意識が薄れていったんだ。
 でも、ダメになる前に少しでもお前達を遠くに逃がそうと思って、必死でハンドル握ったんだ。
 チクショー、それがこんなことに。
 知らなかったんだよ。
 ゴメンな、陽子、律子、里美、光。
156数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/27 23:41
  5/6
 チクショー、チクショー。
 もう駄目なんだ。俺の意志じゃないんだよ。
 動かないんだ。身体が。思うように。
 ああ。ダメだ。ダメなんだ。
 やめてくれ、俺。やめろよ。
 ゴメン、ゴメン、ゴメン。みんな……
157数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/03/27 23:41
  6/6
 チクショー。
 美味しいよ。なんでこんなに美味しいんだよ。
 美味しい。美味しいよぉ。
 裕次、武史、弘樹、守、美紀、裕子、智佐、智江、清一、慎介、浩太郎、雅人、陽子、律子、里美、光。
 なんでお前ら、こんなに美味しいんだよぉ……。
 ああああ、美味しい、美味しいよぉ。
 もっと、もっと食べたいよぉ……
158むにむ:03/03/28 00:01
【無二夢】三夜目
外を見ると、暗い。
だが、そんな事は気にしない。
早く、早く坂下ビルへ。
タカヤがいる。
俺はあの幻のような声に、思考を奪われている。
脳裏にはタカヤとマキだけが。

「マキ…今いくからな…!」
159むにむ:03/03/28 00:04
死体を越え、一階へ。
もう、死体が誰であったことを考える事はない。ただの、肉塊。
ゾンビの集団が視界を埋め尽くす。
俺に向かって死者が寄ってくる。
「こんの…邪魔するなぁあー!!」
鉄パイプを手に取り、ゾンビの頭にブチ込む。
腐った脳と血を撒き散らし、俺は1階突き進む。
そうして、暗い町に飛び出す。
進行を邪魔するゾンビのみを倒し、坂下ビルを目指して走った。
160むにむ:03/03/28 00:06
坂下ビル。
倒産したとある企業のなれの果てである。
闇にそびえるその荒れ果てた姿は、ビルのゾンビと言えるだろう。
その周りに、ゾンビが集まっている。
不思議に、俺を襲う気配がない。
不意に声が聞こえた。
「安心しな、そいつらはお前を食わない」
…タカヤの声。
「ケンジ、早く来いよ。そのまま中に入ればいい。…ヒヒ」
タカヤの声のままに、ビルの中へ入る。
ゾンビは動かなかった。
161むにむ:03/03/28 00:08
月明かりだけの、薄暗いビルのロビー。
そこに、タカヤが居た。
俺は問う。まず、全てを知りたい。
「タカヤ…お前、一体なぜ生きているんだ?お前はゾンビの群れに…」

「そんなに不思議かい?
…シンユウのケンジにだけ、トクベツに教えてやるよ…ヒヒッ」
首のすわらないタカヤが、笑う。
その顔は、ゾンビと変わりない邪悪さがあった。
162むにむ:03/03/28 00:10
「ケンジを逃がした後、ゾンビ共に噛まれ、意識が薄くなりかけた時。
声が聞こえたんだよ。
『人を捨てるのは嫌か』ってな。ヒヒ」
タカヤの言っている事がよくわからない。
タカヤは続ける。
「俺は答えたね、死にたくない、まだ死にたくない!って。
すると、なんか力が湧いてきた。
それも、いつもとは比にならない力がな。」
タカヤは、そう言ってコンクリートの破片を掴み、握り砕いた。
163むにむ:03/03/28 00:13
「…」
俺はただ黙るだけ。
タカヤの言っている事は、トンデモにしか聞こえない。
タカヤは気にせず、語り続ける。
「力が湧き、俺は再び地に立った。
だがな、困った事に、腐るんだよ、体が。
嫌だろう?体が腐るのは。
おまけに腹も減る。
だから、取り合えず、ヒト、食った」
164むにむ:03/03/28 00:15
キリ悪いですが今日はこのへんで。
明日ラストスパートでいっきにアップします。
迷惑ですか?そうですか。気にしません。(何
1653-620:03/03/28 13:23
>>数学屋様
先生、生徒を食うのは本末転倒であります。
せっかく必死に逃げてきたのに・・・

>>むにむ様
む、タカヤよ・・・そんなキャラだったのか。
いや、あまりの豹変振りにビクーリした。
1663-620:03/03/28 13:23
ある病院の一室、白衣の男が拘束衣を着た女に質問をしている。

「・・・私達は餓えていたんです。だからあんなことを・・・」
「あんなこと、とはどんなことですか?」
「はい・・・あれは・・・」


・・・あれは思い出すのも忌まわしいゾンビ事件のこと
私達家族は家を追われてあるホームセンターに駆け込んだんです。
ですがそこは既に食料が尽きていて食べるものが何もなかったんです。
そこのセンターでは内部分裂を起こして外に出て行った人達に食料を盗られて
残った人は皆餓死していったらしいんです。
私にそのことを教えてくれた人もすぐに飢え死にしてしまいました。

当然ながら私達も同じ状況に立たされていたので
何時餓え死にするか気が気ではありませんでした。

下の子がほとんど骨と皮になっていくのを見て、自分の無力感を思い知らされました。
そんな時に主人がどこからか食べ物をもってきたんです。赤い赤いお肉を。
私は軽く火を通していためると下の子に食べさせました。
すると子供は翌日には元気を取り戻したんです。本当にびっくりしました。

それからも主人は外に出掛けては肉を持ってきたんです。
私はどこから取ってきているのかと疑いましたがあえて問いただすことはしませんでした。


・・・それが間違いだったんでしょうね。
ある日、主人が持ってきた肉に信じられないものが入っていたんです。

白くてうねうねしたものが・・・
1673-620:03/03/28 13:23
・・・主人が何の肉をもってきたかは大体見当がつきました。
けれど、ここで食べることを止めたらまた餓えが襲ってくるのは必然だったので
私は臭いをこらえながらこしらえました。

でも、やっぱり身体が受け付けなかったんですね。
上の娘がもどしてしまって、それを見て下の子も食べるのを嫌がって・・・。
結局、私と主人の二人でたいらげてしまいました。

それ以来、子供達は食事をとらなくなってしまって二人とも餓死したんです。
私達は三日三晩、泣きとおしました。

だからといって、餓えが遠ざかるわけでもなく、何日かしたら
またいつもの生活に戻っていました。

その生活も長くは続かず、主人はとうとう戻ってこなくなったんです。


だから、食事を得る糧を失った私は・・・
飢餓に耐える為に子供達の遺体を・・・


「そこで救助隊に助けられたと」
「・・・はい」
「ご苦労様です。本日はこのくらいにしておきましょう」

「あの・・・先生、私はどうなるんでしょうか」
「はい?」
「最近、身体が痒いんです。それに、フッと意識を失ってしまうこともあって」
「ゆっくり休みましょう、まずは休養をとることです」
「・・・もう、主人や子供達の顔も思い出せないくらいで・・・」
1683-620:03/03/28 13:25
「分かりましたから、とにかく落ち着いて下さい」
「でも・・・でも」
白衣の男は注射を持ち出すと女の腕に突き刺した。
途端にどさっと女が倒れこみ、看護士が隔離病棟へ運び込む。


「・・・もう駄目かも知れんな、あいつ」

白衣の男はそうつぶやくと、棚から何かの薬品を取り出す。
ラベルには劇薬、取り扱い注意の表示が見える。

「俺の顔すら憶えておらんとは・・・」

女の夫だった男は新たに注射針を取り替えると薬ビンを持って
女の病室へ向かった。




安心しろ、俺もすぐに逝くから。子供達と一緒に待っててくれ。




169FD‐R ◆6N371.108E :03/03/28 15:59
第一部は続行として
追跡者ネタをやりたいんですが難しいです。
>>3−620殿
白くてうねうねしたもの・・・・そ、それは・・・
((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブルガタブル

茶碗にそれを山盛りにして大盛ライス!
そして芳醇な香りのステーキ!

>>FD−R殿
産みの苦しみですね。
がんがってください。
とりあえず第一部を書きつつ、すこし日を置くといい案が
ひらめくかもしれませんね。
『102』

俺たち4人は準備を済ませ屋上にあがった。
すでに日が傾き、あたりは薄暗くなり始めている。
下では亜弥と神崎先生が窓から身をのり出してゾンビどもをおびき寄せてくれている
はずだ。
車を手に入れるまでの距離のリスクを考えれば本当なら1階かせいぜい2階の非常口
から外に出る方が俺たち4人にとっては安全だ。

だが、それではいったんバリケードを取り除かねばならない。
残る亜弥と神崎先生のふたりだけで再びバリケードを造るのは時間的にも人数的にも
そして窓から非常口までの距離的にもまず無理だ。
それではゾンビの侵入を許すことになるだろう。

だから俺たちはセンター内にいる人間に危険がないよう屋上からのルートを選んだ。
中の人間の安全を優先したその分、俺たち4人にとっては車まではもっとも遠くなる、
もっともリスクの高いルートだった。

「・・・行こう」
俺たちは屋上のフェンスの鍵を開け、非常階段に立った。
格子の間から手を入れて外から鍵をかける。これでセンター内は安全だ。

俺たちはゾンビに気づかれないようできるだけ音を立てずに階段を下りていった。

こちら側にはまったく窓が無いため普段からゾンビの数はかなり少ない。
おまけに窓側でのおとり作戦が効いているためだろうか、階段を降りながら見下ろすと下に
はゾンビは数えるほどしかいなかった。
いまのところゾンビどもが階段の俺たちに気づく様子はない。

よし。。。思った以上にうまくいきそうだ。。。

待ってろ。。。。知沙。。。。
『103』

「・・・・」
。。。せいっ!

1階降り、俺と荒井、中谷とで階段の前にいたゾンビ3体を声を出さずに仕留める。

階段のすぐ近くにも何台かの車が乱雑に停められているが、これは使えない。
他の車が邪魔で出るに出られないからだ。

数体のゾンビが俺たちに気づき、前方からも後方からも近づいてくる。
俺たちは後方から迫るゾンビに追いつかれないよう警戒しつつ、立ち塞がるゾンビのみ
をできるだけ静かに仕留めながら、車の間を静かに小走りで移動していった。

目指すは一番外れの辺りに停められている車だ。
黒いRVと白のワゴン、黒の軽の3台がある。
他のは無理そうだが、あの位置にある3台なら他の車が邪魔で発車できないなどとい
うことはない。

手前にあった黒いRVの中を荒井が覗き込む。

荒井は首を横に振った。
どうやらキーが付いていないようだ。

白いワゴンカーを荒井が指差す。

俺はすばやく近寄り車内を観察した。

。。。あった。。。。キーが付いてる!
『104』

俺たち4人はそのワゴンに乗り込んだ。

中谷が運転席につき、キーを回す。

俺たちを後を追っていたゾンビがどんどん車に近づいてくる。
エンジン音に気づいたのだろう、離れた位置にいたゾンビどもも車を目掛けてやってきはじ
めた。

だが、もう遅い。
「よし、行くぞ!」

俺たちは車を出し、一気に病院を目指した。
バックミラーのゾンビ達の姿がみるみる小さくなっていく。

センターから病院への道にはゾンビの姿はほんの数えるほどしかなかった。
どうやらこの周辺のほとんどのゾンビがホームセンターに集まっていたようだ。
ヤツらの欲する『餌』のあるところに集まるのは当然といえば当然だ。

車はあっという間に病院前に到着した。
ここまでは想像よりも、予定よりも驚くほどずっと簡単だった。
往きが一番簡単とは思っていたが、それでも予想を遥かに上回っている。

この分だと、意外と無事成功できる可能性は高いのかもしれない。。。

「じゃあ、中谷さん、手はず通りにお願いします」
俺、荒井、吉沢さんの3人は車を降り、病院内へと向かった。

中谷は車に残り、おとり役を務める。
174PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/28 20:01
 秋も半ばを過ぎ、街には冬の気配が漂いつつあった。
 褐色にくすんだ葉が街路樹の根元に積もり、風が吹くたびに灰色の空へと舞い上がる。
 ふと視線を向けた先には割れたショーウィンドウと壁の黒い染み。
 路上に目をそらしたが、そこにも水墨画のように淡く黒が滲んでいる。
 悲劇により捨てられた街。
 放置された車を避けながら進む日向の心も重く沈んでいく。
 昨日はまだ良かった。
 助手席に眠る青年の顔を見れば気力が湧いてきた。
 昨日の夜からまともに顔を見ていない。
「……ごめんなさい」
 冷たい水を浴びながら何度も呟いた。
 
 疲労が澱のようにわだかまっている。
 路上に車を止めて、軽く座席を倒す。
 肩が重い。頭が痛い。何より心が寒い。
 フェンダーミラーで後ろを探るが、何もいない。
 周囲を探りながら左手をそろそろと動かし、尚也の右手にそっと被せる。
 温かかった。
 一度だけかるく握り、そっと手を離す。
「!」
 引いた手をつかまれた。
 驚き首をめぐらすと、尚也が微かに微笑んでいた。
「なお――」
 名前を呼ぼうとする日向を、尚也は強引に抱き寄せた。
 驚きに硬直する日向の背と腰に、両腕を廻してきついぐらいに抱擁する。
「日向」
 耳元に口を寄せて名を囁く。
 その声にはまぎれも無く情欲の響きがこもっていた。
175PIP ◆dve/1Ebaqs :03/03/28 20:04
最近まったく筆の進まぬピップ。
ようやく書いてたったの一つ。
176FD‐R ◆6N371.108E :03/03/29 13:12
みなさんそんな感じの人が多いのではないでしょうか。
まぁでも春休みって事で。
『105』

おそらく車に気づいた分のゾンビは俺たちを追って病院に来るだろう。
そのまま全員で院内に入れば今度は脱出時にゾンビと鉢合わせになる可能性が高い。
そうなると再び車に乗り込むのは難しい。
車なしでセンターに戻るのは自殺行為だ。
なにせ帰りはセンターに群がるゾンビの大群の中に突っ込む必要があるのだから。。。

そこで俺の考えた策はひとりが車に残り、おとりとなってゾンビが集まり出したらそいつらを
引き付けてゆっくりと車を移動させる。
そしてある程度病院から離れた位置までゾンビどもを誘導してから一気に病院前に移動、ク
ラクションを鳴らして合図して知らせる。
あとは院内に侵入した3人を回収してセンターに戻るというものだった。

これは人数がいるからできることだった。
もし最初の通り俺と荒井のふたりだけだったらこうはいかなかった。

中谷は大丈夫だろうか?
うまくやってくれるだろうか?

いくら車でもあまり引き寄せすぎて大量のゾンビに囲まれると危険だ。
かといって移動のタイミングがはやいとおとりにならない。
それではゾンビはそのまま病院に侵入してしまう。
それだけじゃない、移動後の中谷が病院前に戻るのが早過ぎればじきにまたゾンビ達は追いつ
いてしまい、俺たち3人の脱出は難しくなる。
逆にもし中谷の車が戻るのが遅すぎた場合、車が来るまで俺たち3人はその場から身動きでき
なくなる。
そこにゾンビが来たら。。。それが大群だったら。。。。
『106』

せめて中谷と連絡が取れるトランシーバーかなにかあればいいのだが。。。。

だが、そんなものはない。
ケータイもすでに不通になっている。
車のクラクションによる合図だけがたよりだ。
中谷の移動がどういうタイミングになるかも、俺たちが薬を手に入れるのにどのくらいの
時間がかかるかもわからない。
まさにいきあたりばったりの勝負だ。
勘と運だけをたよりにしなければならない。

失敗すれば命にかかわる。。。。。
しかも俺たちが失敗すればセンターに残る子供たちの命が。。。。

俺は軽く首を振った。
いまさら考えても始まらない。。。すでにサイは投げられたのだから。。。。

やるしかない。。。。
たとえこの先どんなことが起ころうと、やれるだけのことをやるだけだ。

ここまでは随分とうまくいった。。。ここからもうまくいくさ。。。きっと。。。

。。。。香澄。。。。俺を見守ってくれ。。。。

ゆっくりと自動ドアが開いていく。

「行くぞ!」

そして俺たちは病院の入り口をくぐった。

『107』

院内はひどい惨状だった。
壁にも床にもそこかしこに凝固した血液が錆び色のまだら模様を描いている。
ここでどんなことがあったかは一目瞭然だった。

だが、不思議とゾンビの姿はない。
おそらくここにいたゾンビは外に、そう、『餌』のあるホームセンターに向かったのだろう。
油断はできないが、これは嬉しい誤算だった。
てっきり院内には多数のゾンビが徘徊していると思っていたからだ。

「・・・たぶん・・・・あっちだね」
さっきからフロントにある案内図を見ていた吉沢さんが口を開いた。
「アタシが勤めてたとこと造りがよく似てるよ」
「よし、いきましょう」

俺たち3人は院内奥深くへと進んでいった。

通路で一体のゾンビと遭遇した。
そいつは下半身が動かないらしく、上体だけでゆっくりと這って移動していた。

荒井がバットを振り下ろす。
鈍い音とともにそいつは二度目の死を迎えた。
今度こそ本当の死を。

そのすぐ近くの部屋で俺たちは注射器などの必要な器具を手に入れた。

。。。これであとは薬だけだ。
『108』

その後もゾンビとはほとんど遭遇しなかった。
出くわしても一度に1体か2体だけで大群でないため、あっさりと片付けることができた。

気になるのはかなりの箇所のドアが封鎖され、中から何かがドアを叩いていることくらいだった。
そのほとんどは侵入を防ぐためのバリケードではなく、その反対、中に何かを閉じ込めるためのも
のだ。
中に封じ込められているモノがなんなのかは言うまでもない。

押戸の扉で鍵のないタイプなのだろう、取っ手に紐が巻かれているドアも何箇所かあり、ときおり
ドアとドアの隙間から中の住人の顔が見えた。
そいつらは廊下の俺たちに気づき、激しくドアを叩き、掻きむしっていた。
奴等の低い呻き声とドアを叩く音だけが院内にこだましていた。

「ここだね」
吉沢さんがドアの前で立ち止まる。
ドアの上部には小さく薬剤室と書かれていた。

中に入り、吉沢さんが棚にある小ビンや錠剤を次々と持ってきた三つのリュックに入れていく。

これで。。。これでみんな助かる。。。。

吉沢さんがいなければこうはうまくいかなかった。
俺と荒井ではこのどこも変わり映えしない似たようなドアだらけの院内でここを見つけ、見分け
も付かない中から正しい薬を手に入れるのはまず不可能だっただろう。

「ちょっと多めだけど、これで完了さね」
吉沢さんが俺たちにそれぞれの分のリュックを手渡した。
「さあ、みんなのとこへ戻るよ!」
「ええ!」
『109』

待ってろ。。。もうすぐ薬を持ってかえってやるからな。。。。

俺たちは廊下に出ると、もと来た道を入り口を目指した。
すると遠くで鳴るクラクションの音が聞こえた。
すこしばかり早いが、悪くはないタイミングだ。

はやく出口に行かないと。。。

廊下を走っている途中、先ほど見た俺たちの姿、そして今度はクラクションの音でさらに刺激され
たのだろう、ゾンビどもがさっきよりも激しくドアを叩いていた。

・・・バツン!

嫌な音だった。

それは走る俺たちのちょうど目と鼻の先にあったドアから聞こえた。
それは。。。両開きの押戸の取っ手を縛っていた紐が切れる音だった。

そして。。。。中から一気に大量のゾンビが溢れ出した。。。。

俺と荒井はかろうじて駆け抜けることができた。
だが。。。。

「ひぃっ・・・!」
何本もの腐った腕が吉沢さんを掴んでいた。

「・・・吉沢さん!」

吉沢さん…
これはおもしろい
184むにむ:03/03/29 22:48
【無二夢】続き
「だから、取り合えず、ヒト、食った」
「…!?」
「するとな、不思議だよな。体の腐敗が止まるんだ。
しかも、うまいのなんの。だからデパートとか手当り次第に襲って、ヒトを食った。
いつの間にかゾンビは俺の言うことを聞くようになってるしよ。
ゾンビを使って、ヒトを捕まえて、食う。血をすする。
女が、肉が柔らかくてうまいんだ」
185むにむ:03/03/29 22:50
信じられない。タカヤが高橋さんの言っていた近隣の非難所を襲撃したのか?人間離れしたその力で。
タカヤはまだ喋り続けている。
「でよ、この前センターに食いに行った時、マキちゃんが居たんだよな。
ああ、そういえばココに居たこともあったな、って思わず懐かしんじゃったぜ。」
186むにむ:03/03/29 22:53
「…!マキ!マキはどうした!」
思わず叫びをあげ、タカヤに問う。
「また、ケンジはあいかわらずセッカチだな。
で、取り合えず男はツブして、女で腹をこしらえてたんだよ。
すると、マキちゃんを見つけたんだ。
相変わらず、かわいかった。だから、ココに連れ込んで、犯した。
いい声で鳴いてたぜぇ…ヒヒ」
「…!! タカヤぁぁあ!!」
タカヤのその一言で、俺は殺意に支配された。
187むにむ:03/03/29 22:55
タカヤに駆け寄る。
鉄パイプを振り降ろそうとしたが、動かない。
タカヤが俺の腕を掴んでいる。
…信じられない強さで、まったく動かない。
「すげぇ力だろ?あの声が聞こえて以来、俺は生まれ変わった。
すごい筋力、ゾンビを支配するチカラ。
最高じゃないか」
タカヤは顔色ひとつ変えずに囁く。
「ごたくはいい!マキは!マキはどうした!」
「ああ、何十回かヤった後、舌噛んで死んだ。
ひひひ、『オニイチャン』が、最後の言葉かな。
死体なら、ソコにころがってるぜ?」
暗がりに、口から血を流し、半裸の妹の体が、[あった]。
188むにむ:03/03/29 22:57
「タカヤぁぁあああ−−!!」
殺したい。今すぐ殺したい。
腕さえ振り降ろせれば。
「畜生!畜生!!」
仕方無しに、蹴る。
しかし、タカヤはビクともしない。

怒りに頭が白くなり始めた時、タカヤが言った。
「ひひひ、殺したいか?殺してみろよ。殺せ。…殺してくれ、ケンジ」
「…?」
タカヤの口調が変わった。
189むにむ:03/03/29 22:59
「殺してくれよォ、ケンジ…!俺、バケモノになっちまったよ…!」
タカヤの顔が、涙で汚れていた。
「人食っちまうしよお、大好きな、大好きなマキちゃんまで殺しちまった…!
あの夜以来、人間らしい考え方できなくなっちまったよ…!
悪魔だよ、俺はあ…!!」
「タカヤ…!」
「ケンジ、殺してくれ、殺せ!じゃねえと次はお前を殺しちまう!
もうこの殺人衝動を押さえられないんだ!」
190むにむ:03/03/29 23:01
タカヤが、俺の腕から手を離す。
「タカヤ…!」
「ケンジ、ケンジ、ケンジィィイ!!」
そうタカヤが叫んだ刹那、タカヤの目が、鋭くなった。
空気を裂く殺気。
体が命の危険を感じた。
とっさに、鉄パイプの先を、タカヤの顔に叩き込む。
顔にパイプがめり込む寸前、タカヤの顔が、笑った。
「ああ、ありがとう…」そう聞こえた気がした。
191むにむ:03/03/29 23:05
暗い、暗いフロア。
そこには、骸となったマキと、
今頭を潰したタカヤ、
そして俺だけが居た。
マキが死んだ。友を殺した。皆、死んだ。

心が、無になっていく。
大事なモノを、全て失ったような。

意識が薄くなる。
沸き上がる悲しみと絶望とどうしようもなさがゴチャマゼになる。
そして白くなる。

まるで、夢の中にいるような、不思議な感覚。

涙はでない。
涙を運ぶ感情でさえ、消えつつある。

最後に窓から夜空を見た。

白い月が俺を照らす。
ああ、キレイな月だ…
そうして、ココロが壊れた俺の記憶は、途絶えた。
192むにむ:03/03/29 23:07
【無二夢】最終夜

結局、力を与えたあの人に似た男は、友に頭を潰され死んでしまった。
不死とキャパシティを超えた力による人格崩壊が原因である。
やはり、不死の力は、人間には余り過ぎるのかも知れない。

私は、やはり一人で生きる事にした。
少々退屈になるが、死者に怯える町を眺めるのも悪くない。

さあ、次はどの町に死者を送り出そう…

【無二夢・終】
193むにむ:03/03/29 23:11
終わりでつ|||´Д`)
長々とよぅわからないモノ書いてた気がします。

絶対浮いてるし…
次からマトモに戻りたいと思います。
お付き合いありがとうございマス
>>むにむさん
乙です。
一風変わった設定でヨカったです。
次作も期待してますです。
195巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/30 15:24
「52」
日中の激務と心労が配慮されて、4時間の仮眠を命じられた。
仮眠室の簡易寝台に、ノロノロと歩み寄り体を横たえる。
何だろう、この感覚は?
今迄も激務で、全身鉛のような疲れを感じた事は幾度も有った。
もうそれ以上は動けない、そんな慣れ切ったような感覚ではない
幾度も悲惨な場面を見た、何ともやりきれない心情に襲われた事があった。
そんな感じとも違う。
何かこう、うつろな感じかする、、、考え事が出来ない・・いゃそうでもない
一つ一つの事に付いては、考えられる、、バリケードの補強案
部下への指示、装具の・・只何となく、血の通った考えが浮かばない。
196巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/30 15:25
「53」
寝返りをうつ、頭が冴えて上手く眠れない、でも頭の中は濃霧の様に感覚が無い
軽い吐き気がするような、、いゃ違う、兎に角胸が苦しい、病気とは違うようだ。
何と気なしに、起き上がり制服の上着のポケットから警察手帳を2つ取り出した。
再び寝転がり、見ると言うよりも眺める、自分のと・・血に染まった平泉の・・
自分のは傍らに置いて、平泉の手帳を空ける、、勤務シフトやメモ等の平時に
書かれた書込みが続いて、後ろの方に状況判断時の心構えが記されていた。
平泉の手帳を閉じて自分の手帳を取り出す、末尾のページに例の写真が入っている。
心が警告発する、”見るな!見てはイケナイ”、しかし手は止まらず正確に動く。
3人のふざけた格好の姿が目に留まる・・・。
左端、、女の子、・・「純子・・。」声に、ならない声が心で響く。
普段勤務時はきちんと纏められて居たが、この時はふわっと自由を喜ぶかのように
肩を覆っていた。
197巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/30 15:25
「54」
目を開けてなお、心は別の風景を見ている。
血走った必死の形相の人々、爆破で舞い上がった埃、銃撃音、、
まるで戦争映画の様にシーンが流れてゆく、、、
そして、ラジオから響く声、「助けて、、」何度も頭を駆け巡る声、タスケテ
深く静かに、感情が込み上げ来る・・・助けてやれなかった。
休日を利用して、デートした事もあった、、楽しいひと時に友人の線を
越え掛けた時もあった、しかし根拠も無く躊躇った、迷ってしまった
「お前が好きだ!」そんな一言を遂に言えなかった、最後の瞬間でも・・・。
救い様もない懺悔の念が胸を駆け巡る、純子・・お前を抱き止めてやれなかった。
お前を選び切れなかった、俺の全人生を賭けて、お前を認めてやり切れなかった。
精神的にも、、現実的にも、何もしてやれなかった。
すまない、本当にすまない、、本当に取り返しの付かない事をしてしまった。
198巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/30 15:25
「55」
嗚呼、本当に神様という存在があるのならば、失った時間を取り戻して下さい。
嗚呼、もしも優秀な科学者がタイムマシンを製作したならば未来ではなく過去に行きたい。

あの時、彼女の元へ行って何が出来るか?、、そんな事はどうでもいい
結局は一緒に死ぬだけだろう、そんな事もどうでも良い。
ただ一緒に居てやりたかった、抱き締めてやりたかった、傍に付いててやれなかった。
たった一人で逝かせてしまった、今でも寂しくゾンビの充満する部屋に横たわるであろう
純子の姿を思うと、、身体が小刻みに震える・・。
仮眠室に入る時、それと無く吉田巡査に取り上げられた拳銃が今は無性に欲しい。

嗚呼、神様 私が死ぬのを許しては暮れませんか? 私は純子の元へ逝っても良いですか?

一度も信じた事はありません、存在すら認めた事もありません。
しかし、人の死後というものが、本当に有るのならば、、魂というものが有るのならば、
彼女と、もう一度会う事は出来ませんか、その為ならば何でもします、どんな事でも
喜んでするでしょう、私は彼女に遣り残した事が一杯あるのです。
199巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/30 15:26
「56」
人は取り返しの付かない事を積み重ねて生きてゆく。
それでも、、どうしても、やり遂げたいのです。
神様、嗚呼、、神様、、普段信じもせず、都合の良い事は百も承知です。
生贄が必要ならば、代償が必要ならば、私を捧げます、私の全人生を捧げます。
時間を取り戻す事をお許し下さい。
彼女に会わせて下さい、会って、、、会ってしなければならない事が有るのです。
それが適わないならば、たった一つ応えて下さい。

神様、私が死ぬのを許して下さいますか?
200巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/03/30 15:38
追加デス

「54+1」
心の何処かで、声がする、、。
嗚呼、前にカラオケで歌ったときだ・・。
純子の好きな歌、百万本のバラ

バラを、バラを、バラを下さい。
ありったけのバラを下さい。
あなたの好きなバラの花で、
あなたを、あなたを、あなたを包みたい。

バラを、バラを、バラをください。
百万本のバラをください。
僕の、僕の、僕の この命
あなたに、あなたに、あなたに捧げたい。
2013-620:03/03/30 16:01
皆凄いな。漏れもそろそろ長編やらねばいかんか?

短編だけど、少し長いやつ投下しまつ。
2023-620:03/03/30 16:03
『Battle of WWU地獄の戦場』というゲームがある。
最近、いきつけのゲームセンターに置かれたシューティングゲームだ。
銃声がリアルなことで有名で、一説には本物を使ってるという噂もあるくらいだ。
なおかつ衝撃がプレイヤーの身体に走るという
体感式のシステムが好評で連日連夜台が埋まるほどの人気を誇っている。

ちなみに俺がプレイしたのは一週間前だがその難易度には驚かされた。
このゲームは主人公を米露独日の4カ国から選べるのだが
一番難易度の低い米軍使用でもスタート開始の僅か5分で死ぬぐらいだ。
それでもクレジットがある為に初心者でもそこそこステージクリアできるので
結果的にベテランやマニアだけでなくライトユーザーまで呼び込むことに成功した。
アーケード市場としては近年稀にみる大作だろう。

しかし、このゲームの魅力はそれだけではない。
製作会社のホームページにクリア後のパスワードを送信すると
会社側からあるコマンドを表記したメールを受けとることになる。
そのコマンドを選択画面でいれることで隠しモードがでてくるのだ。
それはゾンビモードと呼ばれ、敵味方ともに死ににくくなっており
グラフィックも通常版と異なり、撃たれた部位が欠けたりするのだ。
その表現がまた非常にリアルで製作者のこだわりを感じさせる。

とはいえ、俺もその手に入れたコマンドを使ってゾンビモードをプレイするのは
今日が初めてなわけだが・・・まあ、やってみてからのお楽しみだ。
早速100円を入れてスタートを押すとプレイヤー選択画面がでてくる。
例のコマンドを入力するとモニターになにやら奇妙な文字が羅列される。
どうやらゾンビモードに切り替わったようだ。
選択画面が妙に暗くなり、キャラクターの顔色が緑色だったり青色だったりしてる。
とりあえず、持ちキャラである米兵ジョーンズを選び、ステージを選択する。
この間はノルマンディーをクリアしたから今回はガダルカナルを攻略しよう。

ステージ選択が終了すると画面がフェードアウトしてゲームステージへ移行した。
2033-620:03/03/30 16:03
『ヘイ、ジョーンズ!ジャップどもを血の海に沈めてやろうぜ!』
揚陸艇の中で妙に血色の悪い同僚が声をかける。
『ヤー、当然だ。イエローモンキーなんざ皆殺しにしてやるぜ。ハッハー!』
俺も役になりきって答える。これもこのゲームの楽しみ方の一つだ。

俺達の乗った揚陸艇は浜辺に到着し、全員がガダルカナル島へ上陸する。
しばらく進むと肌まで緑色の日本兵の一団が現れ、俺達と交戦状態に入った。
「敵発見、援護してくれ!」
「おのれアメ公!」
日本兵が怒号をあげる中、俺は的確に奴等の頭や心臓を狙い、撃ち殺す。
何だ、あまり大したことないじゃないか。
確かに多少、難易度は高いが慣れた俺には難しく感じられない。
戦闘が終了した後、俺達は再び進軍したが周りをよく見ると
海兵隊の仲間の中に腕が欠けたり足のないやつがいた。なるほど、これは凄い。

密林へ突入し、野営地をつくってると再び日本軍に襲われた。
今度は将校までおり、刀を構えて同僚に突っ込んでくる。
俺が狙撃してもそいつは突撃を止めずに仲間を斬りつけた。
同僚の身体から内臓がドバドバでる。リアル過ぎて酸っぱいものがこみあげてきた。
身体の半壊した将校は続いて俺に向かって来た。頭を狙って撃つとその場に倒れる。

ここまで進めて思ったが、少々やりすぎな気がしてくる。
内臓の出ている仲間が喚きながら俺に助けを求めてくるが追い払う。
なんだか知らないが気分が悪くなってきた。

しばらく進めていくとステージの最終目標である要塞に辿り着いた。
ここには何故か現地人が徘徊しており、間違って撃つとライフが減る仕様だ。
俺は火炎放射機を使い、日本兵がでてくる拠点を焼き払う。
焼かれる兵士の皮膚がじわじわと焼け落ちる・・・気持ち悪い。
手榴弾で敵陣地を攻撃すると爆発した地点から兵士の上半身が吹っ飛んできた。
そいつはしばらく痙攣していたが俺の姿を確認すると身体を起こし、俺に狙いを定めた。
2043-620:03/03/30 16:03
バンッ!!

身体に大きな衝撃が走る。身体が痺れて動かない。
・・・しばらくして想像を絶する痛みが身体中を駆け巡った。
『あいっ・・・ギャアアアア!!』
俺はのたうちまわる。ゲーム内のジョーンズではない、プレイヤーである俺自身が。
何だ、何々だ?一体何が起こったんだ!?
俺が身体を見ると肩の部分が大きくえぐれて赤い肉が見えていた。
もちろん、ゲーム内のジョーンズもそうだが俺自身の肩もだ。
「な、な、なんなんだよ!?なんで俺の肩まで・・・」
訳も分からず、火炎放射機を半身男に向ける。そいつはたちまちバーベキューになる。
衛生兵が俺の側にくると、モルヒネを射ってくれた。痛みが和らぐ。

・・・どうやらゾンビモードの体感式は本物を使用してるらしい。
俺は一刻もはやくゲームをクリアする必要に迫られた。

それから俺のプレイスタイルは一変した。
なるべく前線に立たないように味方を盾にしながら進軍していったのだ。
すると、ツギハギだらけの味方から突然殴られた。
『このチキン野郎!!てめえ、ジャップの味方か!』

A:『イヤー、その通りさベイビー!ヤンキーゴーホーム!!』

B:『ノーノー、軽いジョークだよ。今度から真面目に闘うぜ』

C:『・・・・・・・・・』

ああ、これは時折でてくる選択肢・・・ここでどれを選ぶかでストーリーの展開が
変わるんだが・・・Bが一番楽なルートだったからBを選ばねば・・・。

A:『イヤー、その通りさベイビー!ヤンキーゴーホーム!!』
2053-620:03/03/30 16:14
しまった、間違ってAを押してしまった。
『ああ、そうかいそうかい。ならさっさとジャップと合流しろ』
俺は置いていかれてしまった。俺はこのまま死んでしまうのか?

・・・?いや、まだ生き残る可能性はある!
戦線から離脱すれば除隊処分になるが死ぬことはないとルールにあった。

俺は今まで進軍した道のりを戻る。必死で辿る。
必死で走るあまり、何かにひっかかってこけてしまった。
起き上がろうとしても引っ張られて起き上がれない。
ふと足もとを見ると・・・半身の日本兵の手が俺の足を掴んでいた。

そしてどこからか現れた日本兵が俺に近付くと当身をくらわせた。
そこで意識が途切れた。



・・・身体に妙な衝撃が走った。目をあけると将校らしき男がいた。
どうやら寝台に縛り付けられているらしい。

『貴様、あんなところで何をしていた。何が目的だ?』

A:『さあて、何のことだか分からないね』

B:『ゲイシャガールを呼んでくれないか?たまってたまって仕方ない』

C:『もういやだ、はやくゲームを止めさせてくれ!!』
2063-620:03/03/30 16:14
おお、これはCを選ばねば!
C:『もういやだ、はやくゲームを止めさせてくれ!!』

『そうはいかん、貴様には永久にゲームをプレイし続けてもらわねばな』
なんだと!冗談だろ!?こんなゲームやってたら本当に死んじまう!

『貴様には地獄の責め苦を味わってもらおうか、おい!』
将校が兵士に呼びかけると奥の扉から様々な屍体が流れ込んできた。
俺が殺した日本兵をはじめ味方の海兵隊、はたまたソ連兵やSSまでいた。
どいつもこいつもどこかに致命傷を負ったものばかりだ。
そいつらは一斉に俺に群がった。

『ぐえ・・あ、あがががいぎぁぁああ・・・あぐ、ううぐげあぁ・・・』
俺の腹が引き裂かれ、中から大量の臓物が流れ落ちる。叫ぶこともままならない。
奴等は俺の身体をむさぼり食う。肉が、肉がなくなっていく。
ゲーム内のジョーンズだけでなく、俺の身体からも内臓がボトボトおちていく。
わけの分からない何かに俺自身が喰われているのだ。
周りの客は全然気付かない。この惨状があたかもないかの如く。

あらかた喰われ、俺の胴体はほぼ骨だけになっていた。
顔や手足はあまりおいしくないようでほんの少し齧られただけであった。
『・・・頼む、殺しくれ・・・いや、殺してください。お願いします・・・』
泣きながら俺は懇願した。ほとんど声になってなかった。
『そうだな・・・武士の情けだ、介錯してやろう』
ああ、やっと死ねる・・・

ドカッ!!

『ぎいいいぃぃ!!』
首筋に噛まれるのとは違う、別の痛みが走った。
2073-620:03/03/30 16:15
『おっと、いかんいかん、ついやりそこねてしまったわ。フハハハ』
将校はさもおかしく笑う。周りのゾンビ兵も笑いまくる。
よくみると将校の腕は左腕しかなかった。
『貴様が俺の腕を吹き飛ばしてくれたおかげでうまく斬れないではないか』
笑いながら将校は再び刀を振り上げる。ザスッと音がするとまた痛みが走る。

何回目かで俺の首はようやく斬りおとされた。
死ねた、やっと死ねた。ゲームオーバーの文字が逆さに見えるが気にしない。

俺は安堵の眠りに着いた。



『おい、起きろ、起きやがれ新兵ども!!』
突然たたき起こされた。青白い顔の軍曹が大声でがなりたてる。
そうだ、寝てる場合じゃない、ジャップからガダルカナルを解放せねば。
・・・・・・?あれ、おかしいぞ?何でゲームが続いてるんだ?

『ヘイ、ジョーンズ!ジャップどもを血の海に沈めてやろうぜ!』
揚陸艇の中で血色の悪い同僚が声をかける。
『馬鹿言うな、ゲームオーバーになったじゃねえか。はやく俺を解放しろ』
俺はこのうすら馬鹿に怒鳴る。
『馬鹿はお前のほうだジョーンズ、まだクレジットが3つも残ってるじゃないか』
何!!そんなまさか!俺は画面を確認した。奴の言うとおり後3つ残っている。
『それにお前はゲームのキャラなんだから解放なんてできるわけないだろ』
へ?俺がゲームのキャラ?何を言ってるんだこいつは。さっぱり訳が分からん。
『まだ分かんねえのかよ。お前はゲームのプログラムの一つに過ぎないんだ。
 だからクレジットを使い果たすまでは死ねないんだよ。分かったか』

馬鹿な、これは嘘だ!何故俺がゲームのキャラになっているんだ!?
誰か、誰かここから出してくれ!!
みなさん、乙です。

>>むにむ殿
オツカレさまですた。
精神を乗っ取られるのはいやですね。。。
渇肉だけとは違う衝動にまで囚われるというのはおもしろい発想
だと思いましたです。

>>巡査物語殿
お互い主人公は女運悪いというか、女性キャラには受難のストーリー
ですね。
こちらの主人公は任務とかがない分、娘を登場させて主人公を死の
誘惑から踏みとどまらせたのですが、今後主人公がどうやって死の
願望から立ち直るか期待しています。

>>3−620殿
自分が物語の主人公だった場合、一番いや〜んな展開ですね、エンド
レスな悪夢は。
でも、バーチャルモードは死なずに済むならやってみたひかも。。。


私事なんですが、来月から異動で仕事がいそがしくなるため、今のよう
にほぼ毎日投下というのはとても無理っぽいので、みなさんの活躍&
新作者さまの参入を期待しています。

でわ、つづき逝きまする。
『110』

ほんの一瞬。。。一瞬にして吉沢さんはゾンビどもに引き寄せられてしまっていた。
俺は手を差し伸べることさえできなかった。

ゾンビどもが一斉に獲物に噛り付く。

悲鳴。。。。そして絶叫。。。。

「吉沢さんッ!!」
「い・・・行きな・・・・アタシにかまわず・・・・
・・・・はやく・・・!」

「吉沢さんっ!!!」
俺はバットを振りかぶって突進しようとした。
「・・・もう無理だ!」
荒井が俺の肩を掴んでいた。

すでに吉沢さんの姿はゾンビの群れの中に消えていた。

「藤田、行くぞ!!」
餌にあぶれた数体のゾンビが今度は俺たちの方へと向かってきていた。

「急げ、藤田!」

俺は背を向け、そして走った。

。。。。吉沢さん。。。。

。。。。ちくしょう。。。。。。ちくしょう。。。。。。。ちくしょう。。。。。。。。。
『111』

吉沢さんの絶叫、そして血の匂いに興奮したのだろうか、そこかしこのドアがさっきまでとは比べ
ものにならないほど激しく叩かれ始めた。
ドアノブが、蝶つがいが、ネジが、紐が、それぞれのドアの封印が中からの恐ろしい圧力に悲鳴を
あげている。
ドアというドアからミシミシと不吉な音が聞こえてくる。

そして。。。。

・・・バン!

あともうすこし。。。もうすこしでフロントというところで、走る俺たちの前方のドアが弾けとんだ。
中から何体ものゾンビが雪崩出てくる。

ちくしょう。。。あと少しだってのに。。。。


・・・バキャッ!

今度は背後で耳障りな音がした。

神はそうとう底意地が悪いらしい。。。。


後方にあったドアの金具が吹き飛び、こちらからもゾンビが溢れ出していた。

俺と荒井は廊下の中央で前後を多数のゾンビに挟まれる形となってしまった。
『112』

「くそがっ! どうする藤田!?」

どうするもこうするもない。
俺たちは前に進むしかなかった。
前方のゾンビの方が数がかなり多いが、後方は数は少ない代わりにその奥からはさっき吉沢さんを
襲った連中がこっちに向かってきている。
だいいち車はこのすこし先、フロントを越えた入り口に停まっているはずなのだ。
前へ行くしか、正面を突破するしかない。

「突っ切る!」
「・・・だよな!」

「うぉぉぉぉっ!」
「くそったれどもがぁっ!」
俺たちはバットを振りかざし、ゾンビの群れに突っ込んでいった。

全部を倒す必要はないし、そんなことは到底無理だ。
とにかく突破できるだけの空間をつくれさえすればいい。

俺は渾身の力を込めたバットを横なぎに振り払った。
直撃を受けたゾンビが近くのヤツらを巻き込んで横に吹っ飛ぶ。
さらにもう一発。

後ろのゾンビどもがどんどん近づいてきていた。

こんなところで。。。。こんなところで死んでたまるか!
2123-620:03/03/31 00:21
>>さんげりあ様
なんと・・・吉沢タンが氏んでしまうとは(つД`)
後16人しかおらんではないですか。

お仕事頑張ってください、ゾンビにならぬように。
漏れも仕事の合間をぬってがんがります。
>>3−620殿
ありがとございます。
お互いがんがりましょう。

作品の細かいとこも読んでいただいているようで恐縮です。
でも、ちょっとおしいです。
実は残り16人ではなく14人です。
詳しくは>>121の四行目から七行目です。
自分で言うのもなんですが、センター内はもう破滅状態ですね。


でわ、本日も ホスピタルセンター攻防編 つづき ヾ( ゚д゚)ノ゛ 逝ク チク〜
『113』

俺は死に物狂いでバットを振った。
打ち殺すことよりも将棋倒しが狙いだった。

外ではクラクションが何度も何度も鳴らされている。
だんだんそのペースが速くなっている。
おそらく車にゾンビが近づきつつあるのだろう。
もう時間がない。
一秒でも早くここを突破しないと。。。

「おらぁっ!」
バットを横なぎでゾンビの肩に叩き込み、そのまま吹っ飛ばす。

見えた!!

わずかだがゾンビの群れが左右ふたつに割れた。

「荒井!」
「おう!」

間違いなく、これが最初で最後のチャンスだ。

俺たちはゾンビの群れの間を一気に走った。

ゾンビの指先が頬を、腕を、肩を掠める。

。。。知沙。。。

『114』

抜けた!!

。。。。。そう思った瞬間、隣を走っていた荒井がバランスを崩し、失速した。

「荒井!?」
「ちぃッ!」

荒井はかろうじて体勢を整えたが。。。。

ブツン!

「しまった!」
叫びつつ振り向く荒井。

荒井の背から荷物が消えていた。

後ろのゾンビの手に荒井のリュックが掴まれている。
千切れた肩ひもが無情にもぶらぶらと揺れていた。

「くそっ・・・・薬が!」
荒井はとっさにリュックに手を伸ばした。

だが。。。。

「荒井っ!!」

伸ばした荒井の腕に横から一体のゾンビが噛み付いた。

「ぐあぁ・・・」
『115』

まるでそれが合図でてもあったかのように何体ものゾンビが一斉に荒井の腕に噛り付いた。

「ぐおぉ・・・ぁぁあぁ・・・」

ミチミチと肉の裂ける音を聞いたように感じた。

「く・・・そ・・・・があぁぁぁぁぁ!」
荒井は腕を一気に引き抜いた。

血にまみれたその手にはリュックが握られていた。
あれだけゾンビに齧られてなお荒井はリュックを離さなかったのだった。

「伏せろ!」
さらに血肉を求めて荒井に群がるゾンビどもに向けて俺はバットを薙ぎ払った。
上体をかがめた荒井の頭上で俺のバットがうなりをあげた。

ゾンビどもが後方に吹っ飛ぶ。

「荒井ッ!」
俺は荒井の腕を掴み、フロントを目指して駆けた。

俺の掴む荒井の左腕は無事だ。
だが、右腕は。。。。

荒井の右腕はところどころピンクがかった骨らしきものが覗き、傷口からは血がとめどなく溢れ
出ていた。

。。。。荒井。。。。
age
あ、荒井さんまで… (;´Д⊂)
荒井さんまで αβοοη
220FD‐R ◆6N371.108E :03/04/01 21:20
戦闘できる人が絶滅の危機!!
221FD‐R ◆6N371.108E :03/04/02 12:20
さてさて
ぼくも投下させていただきます。

第2部

篭城を開始してから、既に一週間が経過していた。
「よぉにいちゃん。なんか新しい事はわかったかい?」
「いやぁ全然ですよ。」
「そうかい。まぁがんばんな。」
あのおじさんは藤沢さん。このホームセンターに比較的早くから避難してきていた
古株で、いまやここの避難民約60名を束ねている。
ぼくはここに来てから、メールを使った周辺の避難所との情報のやり取りや、
インターネットを使用した情報収集を担当している。
しかしこの騒動が起きてからやけに404が多いなぁ。
222FD‐R ◆6N371.108E :03/04/02 12:22

さて今日も情報収集。インターネットでゾンビに関する情報が集まっているのは、
なんと言っても『2ちゃんねる@ゾンビ対策板』だ。
スレを一からチェックし始めると、一番上にこんなスレがあった。
223FD‐R ◆6N371.108E :03/04/02 12:23

【速報】ゾンビがパワーアップしてます【速報】

1 名前:名無しさん@ゾンビいっぱい: 03/4/2 11:57 ID:LWWNjhRS
この前の原発の爆発の影響でゾンビが強くなっとります!
走ったり殴ったりしてきます。気をつけて下さい!

2 名前:名無しさん@ゾンビいっぱい: 03/4/2 11:57 ID:???
2ゲト

3 名前:名無しさん@ゾンビいっぱい: 03/4/2 11:58 ID:IGyx0ZWo
>>1
詳細キボン

4 名前:名無しさん@ゾンビいっぱい: 03/4/2 11:58 ID:???
>>1
ソースは?

5 名前:名無しさん@ゾンビいっぱい: 03/4/2 11:58 ID:???
俺それ見たぞ!
5体くらいで人を追ってた

6 名前:あぼーん :あぼーん
あぼーん

7 名前:1: 03/4/2 11:58 ID:LWWNjhRS
ソースはこれです↓
http://********

8 名前:FD‐R ◆6N371.108E : 03/4/2 11:59 ID:u90zyBf4
祭だ!!ワショーイ!!
224FD‐R ◆6N371.108E :03/04/02 12:25
4
よくわからないが情報もとによると、
この前爆破した原発の放射能の影響で周辺にいたゾンビの死んでいた細胞が活性化されて
体が丈夫になり走ったり殴ったりできるようになったようだ。
「た・・・大変だ!!」

/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
続きます。
225FD‐R ◆6N371.108E :03/04/02 12:28
誤字訂正
この前爆破した→この前爆発した
でした
失礼しました。
>>FD-R殿
ハイパー?ゾンビに期待です。
すばやい動きのゾンビはこわいですね。
トロいゾンビ10体と速いゾンビ2体なら、私はトロい10体と戦う方を
たぶん選びます。
『116』

フロントを抜けると入り口に車が見えた。

「しっかりしろよ、荒井!」
「うる・・・せぇ・・」

荒井の顔はすでに蒼白だ。

「中谷っ!」

運転席の中谷が俺たちに気づく。

車のすぐ後方にはかなりの数のゾンビが迫りつつあるのが見えた。

「開けてくれ!」
「わ、わかった」
中谷がドアを開ける。
俺は荒井を奥に押し込み、車に乗り込んだ。

ドアを閉めるとほぼ同時に群れの先頭にいたゾンビが車の後部ガラスにへばりつき、恨めしそうな
目を俺たちに向けながら呻いていた。

「よ、吉沢さんは・・・? それに、荒井さんのその腕・・・」
中谷は明らかに狼狽していた。
「いいから車を出してくれ!」
「あ、ああ・・・わかった」
『117』

俺はシャツを脱いで荒井の腕に巻きつけた。
みるみるうちにシャツが血に染まっていく。

「荒井・・・大丈夫か?」
大丈夫なわけなどない。
それなのに俺にはそんな言葉しか出てこなかった。

「俺のことはいい・・・。
それより・・・無事にセンターに辿り着くことを考えろ・・・」

車はセンターに向けて走る。
だが、ゾンビの姿がほとんどなかった往きとはまるで違う。
病院前で幾度となく鳴らしたクラクションのせいだろう、センターの方からおびただしい数の
ゾンビがこちらに向かってきていた。

「あ、あの中に突っ込むのか・・・!?」
中谷が震える声で訊いてきた。
「・・・ああ・・・」
もう後戻りはできない。
ここを突っ切るしか道がない。
ものの十秒足らずで俺たちの乗る車はゾンビの群れに突っ込むだろう。

「行けぇっ!」
「わ、わかった・・・。
つかまってくれよ、揺れるぞ・・・」

そして、俺たちの車は死者の群れの中に飛び込んでいった。

さんげりあたんの小説
コエー
正直読んでてドキドキしたよ。
これからどうなるんだろ。
マジで楽しみでつ
2303-620:03/04/03 00:09
>>FD-R様
2ちゃんも巻き込まれるのでつか。
こういう活発なゾンビにならなってもいいかも知れません。
というか運動オンチは生き延びれないのう。

>>さんげりあ様
荒井さんまで死亡確定してしまうとは
ゾンビの群れにまともにつっこんで大丈夫なのか
藤田、中谷の両名は無事に辿りつけるのでしょうか?
2313-620:03/04/03 00:10
今の時刻は午前0時、場所は都内の山奥の外人墓地。
真っ暗な暗闇の中、警備員の喜田川は懐中電灯を照らしながら歩いていた。

「・・・ったく、外人墓地の見回りなんて勘弁して欲しかったなぁ・・・」

この男、昔から常人には見えないものがよく見えてしまうことが多々あっった。
つい数日前に神社の警備をした時も無数の人魂を見て失神してしまったくらい、霊感が強い。
その上、非常に臆病で頼りなくこの業界に入って10年も経つのに未だにヒラのままである。

「どうして社長はこういう仕事だけ俺に押し付けるんだろうね。
 しかも交代まで後30分か・・・何も起きなきゃいいけどなぁ・・・」

しかし、そんな喜田川の期待を裏切るかのように怪しい物音がした。


ザクッ、ザクッ、・・・ザッザッ・・・


(いぃ・・・こ、これって・・・)

彼が常人には見えないものが見えてしまう時によく聞こえるラップ音であった。

(か――、うわ、いやだよぉ!何で俺ん時だけこんな・・・)

咄嗟に逃げ出そうとしたがそこは雇われ者の悲しさ、見に行かざるを得ない。
もしかしたら見てはいけないものではなく、墓荒らしや変質者かもしれないのだ。
・・・それでも充分、怖いのだが。

「どうか気のせいでありますように・・・南無南無・・・」

外人墓地の中で喜田川は恐る恐る音のするほうへ近付いていった。
2323-620:03/04/03 00:10
ところがその淡い期待を裏切るかのように音ははっきりと聞こえてくる。

(冗談じゃないよ、またいやなもん見ることになるのかよ?)

しばらく進むと墓の前に影が見えた。よく目を凝らして見ると人の形をしている。
恐らくは音の正体である。この人物が自分を怖がらせているのだ。
だが、喜田川は声をかけに行くべきかどうか迷っていた。

(確かにさっきから妙な音をたてているのはこいつに違いない。
 しかし今、声をかけていいものだろうか・・・例の強盗団だったりしたら・・・)

喜田川の脳裏には都内で続発してる外国人強盗団の存在がよぎった。
神出鬼没で知られるこの強盗団は外人墓地を拠点に活動しているとも聞く。

(・・・逃げるか?いや、応援を呼ぶべきか・・・)

喜田川が判断を決めかねているその時、人影はスックと立ち上がり、彼の方へ向かって来た。

(うおっ、こっちに向かってくる!?)

喜田川は咄嗟に墓の影に隠れた。人影は彼に気付くことなく、横切った。
喜田川は安心し、墓から身を乗り出そうとしたが再度隠れた。
人影が音をたてていた墓からぞろぞろと人が出て来たのだ。
その数はみるみる内に増えていく。ものの五分で長蛇の列が並ぶ。

(な、何々だこいつらは?ホントのホントに強盗団か!?)

喜田川は強盗団と言っても多くて20人くらいだろうと想像していたが
今の時点では少なくとも100人以上は墓穴から出ている。

彼は息を殺してじっとするだけで精一杯だった。
2333-620:03/04/03 00:11
辺りが真っ暗だったので幸いなことに集団は彼に気付くことなく、通り過ぎ去った。

「・・・あいつら、どこに行く気なんだ?」

喜田川は一時、呆然としていたが、目前の危機が去ったことを確認すると
すぐに通信機で同僚に連絡をとった。
夜中に人間が百人以上も墓の中から出てきたのだ。尋常でないことは確かだ。

「もしもし、聞こえるか!?こちら喜田川、聞こえていたら返事をしてくれ!」

しかし通信機からはなんの応答もない。微かにうめき声が聞こえるだけであった。
何が起こっているか分からないが、何かとんでもないことが起きている。
それだけは分かった。自身の直感が正しいのを確認しただけに過ぎなかった。

やむを得ず携帯で110番通報する。
事の旨を伝えると近場を警邏中のパトカーが現場へ急行することになった。
喜田川はひとまず安心した。同僚がどうなったかは知らないが警察なら何とかしてくれる。

しかし、いつまで待ってもパトカーはやってこなかった。
午前3時を回っても何の音沙汰もない。まさか強盗団にやられたのだろうか?
彼は再び110番通報しようとしたが、電池が切れてしまい連絡はとれなかった。

(よりによってこんな時に・・・!)

なんとかして外の様子を探りたかったが、生来の臆病さがそれを許さなかった。

(いきなり外にでるのも何だ・・・せめて同僚がどうなったか確認しないと)

しばしの葛藤の末、詰め所のところまでは足を運ぶことにした。
2343-620:03/04/03 00:12
詰め所は凄惨を極めていた。
あたり一面に血の海が広がり、扉の前には変わり果てた同僚の姿があった。

「うぷ・・・う・・・・ぅおげええぇぇぇ・・・・」

その光景と死体の発する悪臭に耐え切れず、吐いてしまった。
いくらなんでも人間の行なえる所業ではない。
相手が外国人だからといってもここまで残虐にできるものだろうか?
この様子では警察も無事ではないだろう。

喜田川は同僚の遺体から携帯をとりだすと詰め所の中に入り、鍵をかけた。
布団に横になり、携帯をかけるがやはりつながらない。

「な・・・何でこいつのもつながらないんだ・・・」

携帯をあきらめ、テレビの電源をつけようとするがいっこうにテレビはつかない。
まるで全てが喜田川にとって悪い方へ向かっているようである。
こういう時の彼の勘はよく当たる。彼が不幸を被る時は特に。

しばらく詰め所に篭っていると急に彼の身体に悪寒が走った。

(うぅっ・・・こ、この感覚は・・・まさか・・・)


ドンッ、ドンッ・・・・ベタン・・・


喜田川が窓の外を見ると、信じられないものが見えた。

そこには・・・血まみれの同僚がいた。
235あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/03 17:52
イイ感じの作品キターーー!
漏れ こういう重奏ていうか重厚な雰囲気の小説が台好きでつ。

つづき期待あげ!
>>229
ありがとございまつ。
続きがんばって書くでつ。

>>3−620殿
ついに中編(長編?)に挑戦ですね。
のっけから凄惨な展開で続きが楽しみです。
やっぱり嘔吐したりショックで茫然自失とかが普通なんでしょうね。
『118』

ゴスッ!

鈍い音とともにゾンビが激突し、どす黒い血がフロントガラス一面に飛び散る。

あっという間に窓から見えるのは、前も後ろも、右も左もゾンビだけになった。

「非常階段側だ! 
できるだけ近づいてから、車を捨てて階段に辿り着く!」
「あ、ああ・・・わかってる・・・」
中谷が青ざめた顔でハンドルを切る。

往きと同じルートでとにかく車を少しでも非常階段に寄せて、あとは走って階段に辿り着く
しか方法がない。
最初から決めていたことだが、いざ実際にこれだけの数のゾンビを目の当たりにすると、さ
すがに凄まじいまでの恐怖感が心を覆い尽くす。

恐怖心もそうだが、それ以上に、ときおりゾンビの陰から障害物が現れるのが一番やっか
いだった。
最初の夜にここに逃げ込もうとした人達のバイクや自転車がところどころに倒れているのだ。
往きはゾンビの姿がほとんどなかったため視界が良く避けるのは簡単だったが、今回はそ
うはいかない。
ゾンビのせいで見えにくくなった倒れたバイクやらが突然目の前に現れる形になる。
ヘタにぶつかるとどうなることか。。。。
だが、あまり車のスピードを落とすわけにはいかない。
スピードを落としすぎれば大量のゾンビに囲まれ動けなくなりかねない。
俺たちの乗る車はゾンビを跳ね飛ばし、障害物をかろうじて避けつつ進んでいった。

『119』

それは、突然のことだった。
あともうすこしで最初にこの車が停まっていた位置に辿り付けるところだった。

「・・・静香!?」
中谷が突如叫んだ。
目の前には一体の女のゾンビの姿があったように見えた。

俺にはそれをよく確認することはできなかった。
次の瞬間、車が大きく揺れたからだ。
中谷が急ハンドルを切ったのだ。

車の真正面に倒れた大型バイクがあることに気づいたときにはもう遅かった。
俺たちの車はそのバイクに乗り上げ。。。。

視界が反転した。

そして、衝撃。

「・・・くっ・・・」
身体が痛む。
相当強くぶつけたらしく、肩と背中に鈍い痛みがあった。

割れたガラスの破片が車内にちらばっている。

俺は天井とシートが身体の横にあることに気づいた。。。。

そう。。。俺たちの車は横転していた。。。。

2393-620:03/04/03 20:50
(え・・・何でこいつがドアを叩いてるんだ?死んでたはずじゃ・・・)

あれだけ出血している人間が生きているわけがない、それなのに何故?
混乱する喜田川をよそに扉を叩く音はどんどん大きくなる。


ドンッ、ドンッ・・・ダン、ダン、ダンダンバタン!バタン!!


(やめろぉ、やめてくれぇ・・・お前はもう死んでるんだよ)

喜田川は頭を抱えてうずくまった。死んだはずの人間が自分の部屋に入り込もうとしている。
頼みの警察も一向にくる気配がない。この非常事態からなんとか遠ざかりたかった。

(やめてよしてたすけてやめてよし・・・・・・あれっ?)

不意に音が止んだ。あきらめたのだろうか、と喜田川が思った瞬間・・・



キ――・・・カチャ・・・


聞き慣れないラップ音が聞こえた。
いや、彼自身は日頃からよく聞く音ではあったが
少なくともラップ音として聞いたのは今回が初めてであった。

(これってまさか・・・鍵が開いたのか!?)


ガチャ・・・キィィ・・・
2403-620:03/04/03 20:50
ほんの一時の間、喜田川を危険から守ってきたアルミの扉はとうとう侵入者を許してしまった。

「ウ・・・ウゥゥウウゥ・・・」

血まみれの同僚は一歩ずつ、しかし確実に喜田川のほうへ向かってくる。

「うわ、いや待て待て待ってくれ!一体何があったんだ?
 事情は後で聞く、手当てもしてやるからそこから動くな。お願いだ頼むよ!」

喜田川は必死に語りかけた。
万に一つではあるが実は瀕死の重傷を負って自分に助けを求めているとも限らない。
しかし、そんな彼の願いもむなしく同僚は歩みを止めようとはしない。
両手を前につきだし、喜田川との距離を縮めていく。

「く、来るな、来るんじゃない!これ以上来ると実力行使にでるぞ!!」

彼は一度警告を発すると警棒を構えた。言ってることとは裏腹に既に逃げ腰であった。
そんな喜田川におかまいなしに同僚は襲い掛かってきた。

「ひ・・・うわぁぁあ!!」

同僚は彼の懐に潜りこむと腕を掴んだ。信じられない怪力で喜田川の腕を締め上げていく。
そして口を大きく開けると首筋目掛けて噛み付いてきた。


ガッ!!


間一髪、喜田川は警棒を同僚の口内につき立て、難を逃れた。
そして口内から警棒を抜き取り、再度振り上げると相手の頭に渾身の力をこめて叩きつける。
ボキッ、という鈍い感触が伝わると同時に同僚の首がだらんとぶら下がる。
2413-620:03/04/03 20:50
(しまった、殺っちまったか!?)

ぶら下がった首から血を流す同僚を見て彼は思った。
もしかしたら錯乱してて自分を強盗か何かと見間違えただけなのかも知れないのに
自分はこいつを殺してしまった・・・どうしよう・・・。

彼は目の前の危機が去った途端、妙に冷静になった。
同僚と格闘したおかげで自分の制服には血のりが付いている。
手に持っている警棒にはこれでもかといわんほどにべったりと指紋がついている。
しかも同僚は直接の死因である首の骨折だけでなく、身体中に傷があることから
これでは過剰防衛でもすまないかも知れない。

喜田川どうすべきか悩んでいると窓の外からパトカーのサイレン音が聞こえてきた。
俄然、彼は焦った。このままでは捕まってしまう、一体どうすれば?


ギギギ・・・ペキッ・・・


何かが聞こえた。例のラップ音が部屋中にこだまする。
喜田川はすぐに死体のほうを見やった。第六感が危機を告げる。
俺よ、こいつはやばい、どうにかしろと。

彼は詰め所の台所から包丁を持ってきた。首に刃を当てる。
こいつの首さえ落とせば何とかなる。根拠はないが何故かそう思った。
喜田川はそのまま作業に没頭していった。

首の骨を折っていたのがよかったのか作業はスムーズに進んだ。
あと少しで首を落とせる、危険から解放されるのだ。
自然と包丁に力が入った。
2423-620:03/04/03 20:51
遂に首の皮一枚になり、最後の一太刀を入れようとした彼に金縛りが襲った。
あまりに突然のことで息もできない。段々苦しくなっていく。

見ると下のほうから同僚の首が伸びて自分の首を締め上げているではないか。

「グ・・・グゲゲ・・・」

同僚の首なし死体は喜田川を持ち上げると扉に何度も叩きつける。
尋常でない怪力で叩きつけられた喜田川は気を失いかける。

(く・・・苦しい・・・何でこいつは動いてるんだよぉ・・・)

喜田川はもはや為す術もなく、この首なしに嬲られるばかりであった。
その刹那、突然扉が開いた。

「抵抗をやめろ、貴様は完全に包囲されて・・・おわぁ!!」

警官隊が強行突入したのだ。だが、警官は状況を見るなりぶったまげたようだ。
何しろ首のなし死体がだいの男の首を絞めているのだから。

首なしは警官隊の姿を認める(目で見たわけではないが)と、その中に突撃していった。
永遠に続くと思われたネックハンキングツリーから解放された喜田川は咄嗟に逃げ出した。
もうたくさんだった。これ以上あの場所にはいたくない。
後ろから銃声や悲鳴が聞こえたがもう知ったことではない。
ただ、暗闇の中をかけて家に帰ることだけを考えた。


当然ながら、前方から接近する車にも注意を払うことはなかった。
その車の運転手の顔面が半分崩壊しているのもおかまいなしであった。

そして何かにはねられたことにも気付くことなく、走り続けた。
2433-620:03/04/03 20:54
・・・最初は短編だったんですが昨日は最後まで書き込めませんでした。
そのおかげで終り方がおかしくなったもんでなし崩し的に続けることに・・・。

長編になるか中編になるかかは分かりませんがとりあえず書いてみます。
マジでこのスレの小説おもしろい
2ちゃんでうもれた状態はもったいないと思う
パート1か2で誰か言ってたほむぺ計画実現してもっとたくさんのひとに読んで欲すぃ・・・
それでゾンビとかが好きなひとの交流の場になればいいのに
>>244
言い出しっぺではないが、そう思ってやろうとはしている。
やっと、PART1は終わりかける所。まだ2と3があるよ。
4は現在進行中なので・・・
246むにむ:03/04/04 02:14
【拘束】
やっと、あなたに会える。
あなたは、ある日突然死んでしまったね。

何故(なぜ)?
わたしは、あんなにもあなたを愛していたのに。

わたしはあなたのために、ごはんを作ってあげたね。
健康のために新鮮な、肉。赤い、赤い肉。血のしたたる、美味しそうな肉。
ヤワラカイ、子供のニク。
なのにあなたは、食べなかった。
247むにむ:03/04/04 02:17
【拘束】2
わたしはあなたのために、部屋を用意したね。
いつまでも白い肌で居れるように、窓は付けなかった。
悪い空気に晒さないように、扉もしめた。
なのにあなたは、外に出たくて扉を壊そうとした…。
あなたに外はいらないよ。何が起こるかワカラナイから。
だから、扉も開かないようにした。

それでもあなたは暴れちゃう。何故?
だからあなたに鎖を繋いだ。動かなくてもいいように。
あなたはなにもしなくていいの。
ただ、居てくれるだけで。
248むにむ:03/04/04 02:21
【拘束】3
ある日あなたは、口から血を流して動かなくなってしまった。
何故?

わたしは寂しい。あなたが居なくて。あなたが。あなた。わたしのアナタ。
かわいいアナタ。わたしだけのお人形。

ある日、ある薬を買った。
それは、ウゴカナクなったヒトをウゴカス薬。
例え身体が腐っていようとも、関係ないよ。
あなたを愛しているから。

…また、あなたと過ごせる日々がやってくる。
249FD‐R ◆6N371.108E :03/04/04 13:42
>>264->>248
主観の人コエー
250こっこ:03/04/04 13:43
おいおい、なんだよあれ。
死体が動いてんじゃん。
しかも人食ってるし。
バイオハザードじゃん、まるで。
やべぇよ、シャレんなってねぇって。
おい、こっち見てるよ、勘弁してくれよ。
くんなって。やめろよ。
たべられちまうよ。
やめろって!噛むなよ!
やめてください、しんじまいます。
いてぇ!いたいって!ああ、いてぇよぉ!
お母さん、いたいよぉ・・・
ごめんなさい、ごめんなさい・・・・
もう許してください・・・
251こっこ:03/04/04 13:44
・・・あれ?痛くねえぞ。
なんだよ、ビビらすんじゃねぇよ。
ふざけやがって。何がゾンビだよ、バカじゃねーの?
あ〜、安心したら腹減ってきたな。
ちょうどすぐそこにホームセンターあったな。
そこでなんか食うか。
・・・なんだよ、シャッター閉まってんじゃん。
まだ昼だぜ?年中無休じゃねぇのかよ。
開けろよー!腹へってんだよー!
あ?人いるし。おーい!なんか食いモンもってねえかー?
なんだよ、なに人見てビビってんだよ。
あー気分わりい、ふざけんじゃねぇぞてめぇ、ぶっ殺すぞ?
あはは、ビビって動けねぇでやんの、情けないねー。
そいで?あんたなんか食いモン持ってる?
ないの?あ、そう。どうしようかな・・・
よく見るとなんかあんた、うまそうだね。
唐揚げにでもしたら最高じゃん?
あー、もうダメだ。食いたい。俺、今からあんた食べるから。
いいっしょ?どうせあんたみたいなヘタレ、生きてても意味ないし。
俺に食われなよ。んじゃ、いただきまーす。
252こっこ:03/04/04 13:44
あーうまかった。あのおっさん、うまかったなー。
でも、まだ腹減ってんだよね、俺ってこんな大食いだったっけ?
あ、なにアレ?陸上自衛隊?
ごくろーさんです。なに?なんか用?
・・・なんだよ、銃なんかむけんなよ。
やめろって、国民を撃つのがお前らの仕事なの?
おねがいです、やめてください。撃たないで。
ごめんなさい、ごめんなさい・・・
もうゆるしてください・・・


以上
新人さん またキターーー!
がんがってください。
期待してるでつ。
《約束》

「食糧もうすぐ底突きそうだからちょっと調達してくるよ」
「えっ!一人じゃ危ないよ私も行くよ」
「駄目だ。足怪我してるだろ。心配するなってコイツもあるし」
そう言って彼は手に持っていた釘バットを軽く素振りして見せた。
「でも・・・」
「大丈夫だって逃げ足には結構自信あるし。あ、そうだこれ一応持っとけよ」
彼はナップザックからボウガンを取り出した。
「ゾンビどもが来たら容赦なく撃てよ。じゃ行って来る。死んでも帰るから留守番よろしくな」
 
そう言って彼が出て行ってから1週間が過ぎた。
怒号や悲鳴、サイレンの音ももう聞こえなくなった。
聞こえてくるのは死者の集団が行進する音と彼らの発する耳障りな呻き声だけになった。
そしてついさっき階下のバリケードが破られる音を聞いた。

今階段を何者かが上ってきている。
階段の軋む音が徐々に私のいる部屋へと近づいてくる。
やがてその音は私のいる部屋の扉の前で止まった。

私は僅かな希望を込めて彼の名前を呼んだ。

しかし返事は「う・・うぅ・・・」という呻き声だけだった。

すすり泣くような悲しい呻き声だった。

私は彼が残していったボウガンを、扉の方に向けてゆっくりと構えた。

(終)      
うひょーっ! 新作者さまがさらに増えているぅ。

これでここしばらくの作者人数は10人くらいになってるのかな?
いぎやかになりましたね。

ヾ( ゚д゚)ノ゛ 嬉スィ チク〜
『120』

「荒井!?」
「・・・う・・ぐぅ・・」
荒井が苦しげに呻いた。

「大丈夫か!?」
「・・・ああ・・・
・・・痛っ・・!!」
「どうした!?」
「あ・・・脚が・・・」

荒井の右足はシートと壁に挟まれていた。
いや、そんなことよりも。。。。膝がおかしな方向に曲がっている。。。。

「くそ・・・は、挟まれちまった・・・
おまけに折れてるようだ・・・
藤田・・・俺はいい・・・中谷と一緒にとっとと車から逃げろ!」

「なに言ってるんだ!?」
「はやくしろ! 
急がないとゾンビに囲まれちまう!
中谷、お前も聞こえたな・・・・藤田と一緒にはやく行け!」

「・・・・・・・」
「中谷・・・?」
呼びかけても中谷からの返事はなかった。

『121』

「中谷さん!?」
異変を感じた俺は中谷の肩に手をかけた。

中谷が顔をこちらに向けた。
いや、頭が向いたといった方がいいだろう。
中谷の額はバックリと裂け、血が溢れ出していた。
そしてなにより。。。首がだらんと折れ曲がっていた。。。。

「・・・中谷さん・・・・」

中谷は既に息絶えていた。

中谷はあの瞬間なにを見たのだろう?
やはりあれは女のゾンビだったのだろうか?
それは中谷の死んだ妻のゾンビかなにかなのだろうか?
いまとなっては確かめようもなかった。

「藤田、お前だけでもはやく逃げろ・・・」
「ばかを言うな! 
お前を置いていけるわけないだろう!」

「バカはお前の方だ!
俺のこの脚じゃ無理だ・・・
・・・はやく行ってくれ・・・!
お前まで死んだら、だれが薬を届けるんだ!!」

車の外から聞こえるゾンビの呻き声がどんどん近づき始めていた。
『122』

「はやく行け!
どうせ俺は奴らに噛まれた・・・・もう助からん!
・・・お前は生きろ!!
お前は生きて・・・薬を届けてくれ!!」
「・・・荒井・・・・」

「頼む・・・行ってくれ、藤田・・・
加奈と・・・湘太を救ってくれ!!」
「・・・・・・・」
「・・・頼む・・・藤田・・・」
荒井は血にまみれた自分のリュックを俺の胸に押し付けた。

。。。荒井。。。。

「・・・・わかった・・・・」

俺は頭上のドアを開け、外に出た。
すでにかなりの数のゾンビが車の周囲に集まり始めていた。

俺はドアを閉めた。
それが気休めなことぐらいわかっている。
ドアを閉めたところでこれだけの数のゾンビ、そして割れたガラスだ、なんの役にも立たない。
こんなことで荒井は絶対に助からない。
だが、それでも閉めずにはいられなかった。

「うおぉぉぉぉぉ!」
俺は車を飛び降り、一番ゾンビが手薄に見えるところに突っ込んでいった。

。。。。さらば。。。。友よ。。。。。
2593-620:03/04/06 00:55
新しい作者様が増えました。
賑やかになっていい感じです。


では242からの続きを投下します。
・・・ちょっとゾンビものから離れてる気がするが・・・。
2603-620:03/04/06 00:56
すっかり夜が開け、日が登る頃になってやっとの思いで家に着いた。
家といっても会社の社員寮であるが。
部屋の鍵は管理人の老婆に預けてあるので真っ先に管理人室に駆け込む。

「おばちゃん、鍵〜!!」


喜田川はあらん限りの声で呼びかけた。普段では考えられないくらいの大声で。
ところが老婆からの返事はない。いやな予感がする・・・。


ペキ・・・パリパリ・・・


(ああ、また聞こえる・・・この様子じゃおばちゃんも・・・)

喜田川は半ば諦めかけていた。今までの展開からいって老婆が無事でいる可能性はゼロに等しい。
そう考え、その場を立ち去ろうとした。

が、突如背後から声をかけられた。

「・・・何ですか、こんな朝はようから・・・」

老婆は寝起きだったらしく、パジャマ姿で寝ぼけ眼をこすりながら姿をあらわした。

「おばちゃん、無事だったか!?」
「無事だったか、て何が」
「え・・・?いや、昨日の騒ぎ、ニュースになってないの?」
「昨日の騒ぎって何のことですか。そんなことよりも勝手に職場を離れんで下さい。
 社長から電話かかってきましたよ、喜田川さんはどこにいるって」
2613-620:03/04/06 00:56
喜田川はまたもや混乱した。午前中に起きたあの騒ぎは一切報道されてないのだ。
あれぐらい大騒ぎがあればマスコミがよってたかって取り上げるだろうに。

彼は老婆から部屋の鍵を貰うと自室へと向かうことにした。
とにもかくにも、まずは休まねば身が持たぬ。考えるのはそれからだ。

「後で社長に電話しといてくださいよ。あたしは厄介ごとは御免ですからね」

老婆は去り際にそう告げると管理人室へ入っていった。


扉を開けると異臭が喜田川を襲った。
それもそのはず、ここ一週間詰め所に寝泊りしていたので寮にはいなかったのだ。
部屋を閉め切っていたので食事の食べかすなどがひどい臭いを発している。
疲れて寝る前に掃除をするハメになってしまった。

「・・・何でこんな時に掃除なんかせにゃならんのよ。
 おまけに何故か足が滅茶苦茶痛いし・・・・・・・・・?」

足が痛い?走りすぎて筋肉が突っ張ったのか。
否、これはそういう類の痛みではない。明らかに打撲だと分かる、そういう痛みだ。
今まで帰ることに夢中で気付かなかったのか、あるいはその感覚がなかったのか。

「あ・・・そういえば・・・」

確か詰め所から逃げる途中に視界が一回転していたが、今思えばあれは車にはねられたのではないか。
いくらあることに集中していたとはいえ、車に正面からはねられても平気なわけがない。

「まさか俺も・・・あいつらと同じように・・・」
2623-620:03/04/06 01:07
そんなはずがない、そう否定したかったが自らの無事を保証するものはどこにもなかった。

「とにかく寝よう・・・もう何も考えたくない」

これはただの悪夢に過ぎない、そう言い聞かせると布団に潜り込んだ。
そしてそのまま深い眠りについた。




ペキペキパキポキ・・・

バキメキミシバリ・・・

ボリボリゴリガリ・・・

白い物体が何かを貪っている。それが動く度に頭痛が起きる。
喜田川はそれの後ろにいた。

「・・・何を・・・してるんだ・・・」

白いそれは答えない。ただ一心不乱に貪り続ける。
頭痛が段々と激しくなる。

「お前か・・・いつもいつも俺の頭の中で変な音を鳴らしているのは
 なあ、やめてくれないか・・・頭が痛いんだ・・・お願いだ、やめてくれ」

白いそれはゆっくりと喜田川のほうへ振り向いた。
それと同時に喜田川は足をとられる。ずるずると引きずられ、それの前に宙吊りにされる。

それの眼に喜田川の姿が映った。
2633-620:03/04/06 01:08

鋭いチューブのような口、何本もの触手、赤い眼に巨大な白い脳みその身体をもつそれは
喜田川をマジマジと見続けると、やがてクチバシを彼の身体につきたて、何かを送り込む。

「わ・・・わわわ・・・」

クチバシをつきつけられた箇所から何かが血管を伝って這いずりまわる。
あまりの気持ち悪さに喜田川は自分の身体を叩きまくる。
それでも侵入者は進行をやめない。たちまち身体が支配されていく。

(か、か、身体が・・・俺の身体が・・・!)




「!!」

突然、目が覚めた。扉を誰かがノックしている。

「ちょっと、喜田川さん!はやく電話して下さいよ!社長、もうカンカンですよ!!」

ああ、そうだ。社長に電話しなきゃならんかったのだ。
すっかり忘れていた。携帯を捜すが見つからない。

「あ・・・思い出した。詰め所の中だ・・・」

よりによってあの中に残したままにしていたのだ。
もう一度あそこに戻らねばいけないのか、勘弁して欲しい。

それは無謀との結論に達すると老婆に事情を話し、管理人室の電話を借りることにした。
作者さまが増えて連載モノと読み切りモノの数のバランスもイイ感じになってますね
こんなに作者さまが増えたのは他の作者さまがいなくなってもひとり書き続けたPIPさま
そしてさびれたスレに突然現れてスレの活気を蘇らせたさんげりあさま
この両氏のおかげだと思います
おふたりに本当に感謝です
265あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/06 16:43
だいぶ下がってるから上げ
(・∀・)オーティズ!!
267PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/07 12:20
取り急ぎ連絡のみ。
ピップはネット環境移行のため、最長で一週間ぐらい書き込めないかもしれません。
いくつか書いてあるので後でまとめて投下したいと思います。

んでですね、希望があれば今まで書いた分をどこかのアプロダにでもあげようと思うんですが、どうでしょうか。
結構な量なので、まとめて読んでもらった方が分かりやすいかなと思ってます。

では会社からなのでこの辺で。

最近新規参入の方が増えましたね。
とてもうれしいです。
こっこさん、今後ともよろしく。
>>264殿
いや、わらくしの場合はあれですよ、
「こんな程度でいいのか。なら、漏れも書くか」
ってみなさんが思って参加を始めたわけで、それが結果的にスレの活性化に多少貢献できたの
かなという程度のもんです、はい。
こんなヘタでいいのかちと恥ずかしいです。
でも、小説とか書いたの初めてなので許すて。

>>PIP殿
それいいですね。
ひとまとめにしたの読みたいでつ。
なにせスレを三つもまたいでの長編なので、少し前の展開気になって読み返そうにも探すの大変
なくらいですし。

でわ、つづき逝くのれす

『123』

俺は走る勢いを上乗せした渾身の打撃をゾンビどもに叩き込んだ。

男のゾンビの顔面がひしゃげ、後方のゾンビを巻き込みながら吹っ飛ぶ。

「ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!!」
俺は叫びながらバットを振った。

俺は自分が許せなかった。
吉沢さんも、中谷も死んだ。。。。そして。。。荒井も。。。。
俺のせいだ。
作戦を考えた、指示を出した俺のせいだ。。。

俺が死なせた。。。

俺が殺した。。。。

それなのに俺は生きている。
情けない。。。死ぬべきは他でもない俺のはずなのに。。。。

だが、俺は死ぬわけにはいかない。

俺は薬を持って帰らなければならない。

娘のためにも、湘太くんと加奈さんのためにも、みんなのためにも。。。。

そしてそれは死んだ妻との約束であり、友との約束。。。。

俺はこの約束だけは。。。絶対に守らなければならない。。。。
『124』

気持ちだけでは現実の厳しさというものはどうにもならないものだ。。。。

車からまださほど進めていないというのに、俺はすでに囲まれつつあった。
あまりにも。。。あまりにも敵の数が多すぎた。

正面の連中の相手をしているうちに、左右から、後ろからどんどんゾンビが迫ってくる。
追いつかれ、やむなく今度はそいつらの相手をするうちに、せっかく減らした正面の敵がまた増える。
いたちごっこだ。。。文字通りキリがない。
キリがあるのはただひとつ。。。そう、俺の体力だ。。。

。。。くそっ。。。どうする。。。。どうすればいい。。。。このままじゃ。。。。。

だが、予想外のことが起こった。
突然、背後に迫っていた奴らを中心に、かなりの数のゾンビが俺から離れた。

振り向いた俺が見たものは。。。。開いた車のドアだった。。。。

ドアから荒井が半身を見せ、車に群がるゾンビにバットを叩き込んでいる。
「おら! こっちだ!
かかって来い! このくそどもがぁっ!!」

。。。荒井。。。!?

「藤田、今のうちだ! 
 行けえぇぇ!
お前、絶対に・・・・絶対に死ぬなよ!!」
荒井はあの身体で、あの状態で、俺を逃がすために、あろうことか自分の命を捨石にしていた。。。。

「頼むぞ・・・・藤田ぁ・・ぁ・・・・」
荒井の声も姿も、すぐにゾンビの陰に隠れて消えてしまった。
『125』

「荒井ぃぃぃぃ・・・!」

お前ってヤツは。。。お前ってヤツは。。。。。


サイドから後方にかけてのゾンビが少なくなったため、俺は正面の奴らだけに集中して戦える
ようになった。

だが、これもあまり長くは続かないだろう。
今は車に群がっている奴らも、荒井を襲い終えたらすぐまた俺に向かってくる。

今ここで突破できなければ、俺は確実に死ぬ。。。。

そうなれば、俺を行かせるために自分の命を捨てた荒井の行為も、吉沢さんの死も、中谷の死も
すべてが無駄に終わってしまう。

それはできない。

絶対にできない。。。。

俺は絶対にここを切り抜けなければ、突破しなくてはならない!

俺は。。。俺は生きる!

生き延びて見せる!!

見ててくれ、荒井!!
272FD‐R ◆6N371.108E :03/04/07 22:03
荒井いぃぃぃぃぃぃぃ!!
273こっこ:03/04/08 18:07
もうだめだ。
気付いたときには俺の家の周りは死者で埋め尽くされていた。
俺の家だけじゃない、隣の山田さんの家も、向かいにすんでる幼馴染みのよっちゃんの家のまわりも、死者で埋め尽くされていた。
奴らは、生きている人間を食う。
一昨日の夜、テレビで実況中継していたから間違いない。
無惨に四肢を引きちぎられ、絶叫を挙げて食われていったレポーターの悲鳴が、今も耳に残っている。
あんな風に死ぬのは嫌だ。絶対に嫌だ。
しかし、もう逃げ場はない。
早く逃げればよかったのだ。
親父とおふくろはちょうど北海道に旅行中だ。現在連絡手段がないので、安否を確かめるすべはない。
しかし、親父やおふくろも心配だが、俺の方が絶体絶命だ。
1階の窓という窓にはバリケードを築いてあるからたぶん平気だろう。
しかしそれもいつまで持つかわからない。
現に、板を打ち付けた窓を叩く音が激しくなっている。
ホントに、絶体絶命だ。
「どうする、どうすればいい!?」
俺は2階の自室の中であわただしく歩き回る。
よい考えなど浮かぶはずもない。
そうしている間にも、階下から聞こえる音は激しさを増す。
がしゃん、ばり、ばりばりばり・・・・
ガラスの割れる音が聞こえた。
バリケードが破られたのだ。
死者どものうめき声が聞こえる。
もう、だめだ。俺は死ぬんだ。
274こっこ:03/04/08 18:08
そう、思ったとき。
ふと、向かいのよっちゃんの家が見えた。
俺の部屋から見える正面の部屋に、よっちゃんがいた。
よっちゃんも、慌てふためいた様子で、俺の方を見る。
よっちゃんは、何かをジェスチャーで訴えていた。
タ・ス・ケ・テ・・・
涙目でよっちゃんは俺に助けをこう。
その瞬間、俺の中で何かがはじけた。
小さいころは、屋根を伝ってよっちゃんの部屋に行ったのだ。
大きくなってデブになってしまった俺は屋根を伝う勇気もなくなり、さらに美人で明るいよっちゃんには相手にされることも無くなった。
しかし、あのよっちゃんが俺に助けを求めている。
ずっと大好きだった、よっちゃんが。
おれは、バットを手に窓を開けた。屋根の下には死者が手を差しのばして俺を待っている。
下に落ちれば死ぬ。それは間違いないが、今の俺には死ねないわけがある。
よっちゃんを守るんだ。情けない俺だが、やれるところまでやってやろう。
夢中だった。
「よっちゃん、今助けに行くぞ!」
窓に足をかけ、屋根の上におりようとした。
その時。俺の肩をつかむ奴がいた。

薄れゆく意識の中で、よっちゃんの悲鳴を聞いたような気がした。

275こっこ:03/04/08 18:08
駄作でごめんね。
2763-620:03/04/08 21:25
>>さんげりあ様
荒井さん、根性ありすぎまつ。
このままでは大人が皆殺しになる二打。

>>こっこ様
人生最後の見せ場が・・・
2階に上がれるゾンビのおかげで全部あぼーん。

263の続きいきます。
2773-620:03/04/08 21:25
電話にでた喜田川は開口一番に怒鳴られた。

「何をやっとるんだ馬鹿もんが!!職務放棄して何しに行ってた!?」

「えっと・・・その・・・実はですね・・・」

「は!?もう少し大きな声で喋らんか、何を言っとるか全然聞こえん!」

事実をはっきり言えない自分が悔しいが、今の社長には言っても信じてくれまい。
適当な理由を使って何とか誤魔化すしかない。 

「あの・・・気分が悪くて早退を・・・」

「なにが気分が悪いだ!年がら年中不健康な面しおって!!
 全く・・・いいからはやく出勤したまえ!伊東君も怒っとるよ!」

伊東という名前を聞いて喜田川は首を捻った。
聞き覚えはあるもののどんな人物だったか記憶にない。新人だろうか?

「えーと・・・伊東って誰です?」

「・・・君ね、辞めたいんだったらいつでも辞めてくれて結構だから」

「そんな!滅相もない、でも本当に知らないんですよ」

「そんなわけあるか!昨日、君と一緒に外人墓地の見回りにやっただろうが!!
 ふざけるのもいい加減にしたまえ!!」

昨日の首なし死体が伊東だったのか?それにしてはあまりにも印象が薄いので全然憶えていない。
伊東ってあんなやつだったっけ?
2783-620:03/04/08 21:26
社長はその後も散々叱責すると会社にでるように言って電話を切った。

(・・・やばいな〜こりゃ、かなり怒ってるわ・・・
 しかし、あの首なしが伊東だったとは・・・やはり夢だったのか?)

よくよく考えれば昨日の出来事は全て常識はずれなことばかりだった。
例の外国人強盗団のニュースを見て勝手に妄想でもしてたのかもしれない。

(・・・だな、そう考えるのが自然だわ・・・)

連日連夜の勤務で疲れていたのだ、そう言い聞かせると昨日着てきた制服に着替えようとした。
だが、どこをどう走ってきたが知らないが相当汚れている。
おまけに血がべっとりとついている、これはクリーニングに出さなければならない。

「これはちょっと着ていけないな・・・私服でもいいか」

彼は勝手に判断するとタンスの奥から着替えをだした。
あの血のおかげで制服を着ていくわけにはいかない、困ったもの・・・

(・・・血?何で血が・・・)

・・・やはり昨日の出来事は夢ではない。
もし夢ならばこんな大量の血液が付着しているわけがない。
そう言えば管理人の老婆もこの血に対しては言及していなかった。

(もしかして社長は何か知ってるのか?)

だとすれば手ぶらで行くのは危険だ。知ってて呼んでいるのなら何かの罠に違いない。

喜田川はまず老婆を捜したが管理人室はおろか、寮内のどこを捜してもいなかった。
2793-620:03/04/08 21:26
(何てこった、婆さんまで仲間なのか?)

まだ推測の域を脱していないが社長や老婆が奴等の仲間だとすると命の保証はできない。
下手すれば殺される。

(いや、待てよ・・・)

もし殺すつもりなら自分が鍵をとりにきた時点で殺しておけばいい。
そうでなくてもマスターキーを持ってるんだからいつでも殺れたはずだ。

(何か別の目的があるのか?俺を殺せない何かがあるとか・・・)

彼はしばらく自問自答していたが結局答えはでなかった。
老婆は無関係かもしれないのだ。とにかく出勤しなければ何も分からない。
一応護身用にペーパーナイフをポケットに入れると外にでた。


交通費をケチった結果、会社に着いた時には午後8時を回っていた。
墓地の警備にでる時間はとっくに過ぎている。
携帯だけでなく財布まで忘れていたことに、タクシーに乗ってから気付いたのだ。
おかげで手持ちの金がなくなり、歩いてくるしかなかった。

喜田川が恐る恐る中に入ると社長が憤怒の表情で待ち構えていた。

「・・・君ね、遅い。伊東君はもうとっくの昔に仕事に行ってるよ」

・・・いつも通りの社長だ。別に何かを隠してるという感じではない。
制服について何も言ってこないのが気がかりではあるが、単に忘れているだけだろう。
言われたとしたら非常に困るわけだが・・・。

その後、珍しいことに日頃ものぐさな社長が急ぐからと喜田川を職場まで乗せていった。
2803-620:03/04/08 21:26
例の墓地までくると車は静かに停止した。
喜田川が降りると何故か社長もついて来た。

「あ、あの〜社長?何で私の後をついて来るんですか?」

「君が途中で逃げ出さないように見張ってるんだ」

・・・珍しいと思ったら監視のようである。喜田川は正直、いやになった。

詰め所は昨日の(喜田川の夢の?)とは打って変わって綺麗になっていた。
ここであんな恐ろしいことがあったとはとても思えない。
詰め所に入ると警備員が一人、何やら作業をしていた。
制帽を目深に被っているが、胸のネームプレートから伊東だということが分かる。

「・・・ええと、遅れて申し訳ない・・・」

「いえ、いいですよ。じゃあ、早速見回りに行ってきますんで」

伊東はコーヒーをいれてくれると詰め所から出て行った。
喜田川も社長に急かされると予備の着替えをもって更衣室に入った。

(・・・なんだ、唯の思い過ごしだったのか。心配して損した
 この様子だとあの血もじつはケチャップか何かだったりして)

そんなことを考えていると急に眠気が襲ってきた。
今日、あれだけ寝たのにおかしいな・・・などと考える間もなく喜田川は眠りにおちた。


目が覚めた時には妙に薄暗い、コンクリートの壁が目前にあった。
2813-620:03/04/08 23:12
よく見たらゾンビでてきてないな・・・鬱
>>こっこ殿
いや、人生甘くないというか、現実はシビアですよね、やはり。
ここまで引っ張っておいて漏れの主人公も同じような死に方さちゃおうかな。
ある意味リアルに。
なんてね。

>>3−620殿
漏れなんてゾンビタンが出てこないシーンがしばらく続いたりってことも何度も
やってますから、気にしない、気にしない。と、自分を納得させる罠。
しかし、そこはかとなくサスペンスっぽいかほりがする展開ですね。
『126』

「うあぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は全速力で走った。
ゾンビの群れの直前で急激な方向転換を行い、走るスピードと遠心力との相乗効果で最大と
なった打撃をゾンビに叩き込んだ。

びりびりと凄まじい反動が俺の手に返ってくる。
あやうくバットを取り落としそうになった。

あまり何度もやれそうにはない。
だが、これは使える。

俺の一撃を受けたゾンビが派手に吹っ飛び、これまでになく何体もの他のゾンビが巻き込まれ
て倒れていく。

俺はこの隙に倒れたゾンビの間を全力で走り抜けた。
ゾンビの爪が俺の靴とズボンの裾をかすめ、引っ掻く。

「うぉらあぁぁぁぁぁぁ!!」
俺はそのままの勢いで突っ込んでいき、再び目の前の群れにさっきの最大の打撃を食らわせ
てやった。
骨に深く深く染みこむほどの強い衝撃が俺の手に返ってくる。

直撃を受けたゾンビが頭蓋を陥没させながらキリキリと回転して倒れこんだ。
巻き添えを喰らった数体も倒れ、さらにその連中に脚を取られたゾンビどももすっころんだ。

今だ・・・!!

俺は地に蠢くゾンビどもの隙間を、腕の痺れを振り払うかのように猛然と走り抜けた。
『127』

すぐ先に黒のRVが停まっていた。
俺たちが病院に向かうときに手に入れた車の隣にあった、鍵のついてないやつだ。

「おぉぉっ!」
俺は目前にいたゾンビの側頭部にバットを打ち込み、RVのボンネットに飛び乗った。

そのまま車の屋根の上を走り、次の車に飛び移る。

俺の動きを追って近くのゾンビ達が俺の方へと手を伸ばしていた。
だが、奴らの動きでは後追いで俺を捉えることはできない。

ここでは乗り捨てられた多数の車が障壁代わりになってくれる。
止まりさえ、スピードを落としさえしなければ、ほぼ前面の敵だけに集中できる。

俺はさらに次の車に飛び乗った。
飛び移りざまバットを横なぎに振ってゾンビを打ち倒す。

あともう少し。。。もう少しで非常階段だ。。。。

行ける。。。

斜め前から迫るゾンビの頭頂にバットを叩き込む。

そのとき、横から現れたゾンビの指が俺のズボンに引っかかった。

「・・・うおっ!?」

しまった!? 
285あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/10 01:12
いよいよゾンビーの食料になっちまうのか!?!?
286こっこ:03/04/10 02:23
酷い話ですなぁ、私のは。
さんげりあさんなどとは比べものになりませぬ・・・ハズカシイ・・・
でも、気にしないでもう一本。今度は長くなりそうな悪寒・・・


「くそっ、何してんだよ・・・」
吉田巡査長は毒づいた。
彼は、旭警察署から10キロほど離れた住宅街にある旭台交番での当直勤務を終え、交代員が来るのを待っていた。
通常、交代員は朝の十時にはやってくる。
しかし、その交代員である田町巡査部長と、警察学校を出たばかりの新人、結城巡査は一向にやってこない。
「こんなに待たされたら、仕事がきちまうだろうが・・・。」
吉田巡査長は警察官になって30年目のいわゆるベテランだ。
警察官になった当初は社会正義のためと燃えていたが、年月を重ねるごとにそんな気概は消え失せてしまった。
今ではただ勤務時間が過ぎるのを待つだけの退屈な日々を送っている。
そんな時、旭署と直通の電話が鳴り響いた。
「はぁ・・・で、これかよ・・・」
吉田巡査長は舌打ちをし、電話を取った。
「はい、旭台交番吉田です。」
「あ、吉田さん?ちょっとね、住侵があったから行ってくれる?」
「住侵?現場はどこです?」
「えっと・・・ちょっと待ってね・・・旭台4丁目5の3。斉藤さんって家。」
「状況はどうなんです?」
「なんか血まみれの男が2名、庭に入ってきて家に入ろうとしてるんだって。マルセイかもしれないから、気をつけていってね。」
「応援は?」
「刑事と生安が行ってる。あと、田島部長と結城くんには先行してもらってるから。」
「了解・・・」
指示を受けた後、吉田巡査長は椅子に腰掛け、ため息をついた。
「何だって非番の俺まで行かなきゃならねぇんだよ・・・まぁ、刑事なんかも行ってるみたいだし、のんびり行くか。」
そしてゆっくりと出発の準備をし、ミニパトに乗り込んだ。
287こっこ:03/04/10 02:24
田島と結城が現場に到着したのだろう。無線機からは現場の様子を確認するよう指示が出ている。
「ふぁ〜あ。ねむてえなぁっと。」
相も変わらずやる気のない吉田巡査長。
しかし、当直明けで眠たい彼の目を覚ます、けたたましい音が無線機から鳴り響いた。
びー!びー!びー!
『し・・・至急至急!!旭台の住侵現場、現在マルヒが抵抗中!結城がやられた!』
「・・・はぁ?」
『至急報、了解!マルヒの人数は!?結城巡査の怪我の程度は!?』
なにやら予想だにしない事態になっているようだ。
長い警官人生だが、こんな修羅場は初めてだ。
そんな現場には行きたくもないが、帰るわけにも行かない。
『人数は・・・10名、程度!くそっ!はなせっ!凶器はもっていない!結城は・・・食われてる!なんだこいつら・・・ぐあああっ!!』
『田島部長!?状況を報告しろ、どうぞ!』
『う・・・腕を噛まれ・・・やめろ・・・やめ・・・ぎゃあああああっ!!』
無線からは、生々しい悲鳴と、訓練以外では聞いたことのない発砲音が2回聞こえた。
本署が必死に田島巡査部長を呼ぶ。しかし無線は何の応答もない。
『至急至急、旭から各局、旭から各局。旭台管内にて受傷事案発生!向かえる局は至急向かえ!』
大変だ・・・こうしちゃいられない。早く行かないと後で何言われるかわかったモンじゃない。
吉田は急いでミニパトを走らせた。現場はたいした距離じゃない。
急げば5分もかからないだろう。
『旭台吉田から、旭!』
『旭です、どうぞ。』
『住侵現場、まもなく着。指示を請う。どうぞ』
『了解。至急現場の状況を確認し、報告せよ。なお、受傷事故には注意するように。」
『旭台、了解。以上!』
そして、ミニパトからおりた。住侵被害者宅である斉藤家は、結構広い家だ。
家の前には、田島部長の車が停まっている。
288こっこ:03/04/10 02:28
今日はこんくらいしか書けませんでした。
ごめんなさい。

巡査物語さんと同じく警官ものですが・・・
こいつはやる気無しのダメ警官です。
しかも年寄りだし。
駄目人間のほうが個人的に書きやすいモンで・・・
【無間地獄】

「今日はゾンビ研究の第一人者である生島博士にお越しいただきました。
それでは早速ですが博士、今回の警官隊の民間人射殺疑惑についてですが、
警察の発表では間違いなくゾンビあり民間人では決して無いということでしたが、
放送された映像をを見る限りでは射殺されたAさんはとてもゾンビとは思えない
のですが。その辺りはどう思われますか?」

「警察の判断は正しかったと思いますよ。あれは間違いなくゾンビです。検死には私も立ち会いました
し。恐らく射殺されたAさんは『ブレイン』と呼ばれる特殊なタイプのゾンビだったと思われます」

「『ブレイン』ですか。それはどういったゾンビなのでしょうか?」

「この『ブレイン』の特徴はですね。腐食の進行と知能の低下が他のゾンビに比べ極端に遅いのです。

このことが人間との区別を難しくしています。海外ではブレインが言葉を話し人間を騙したという事例

が報告されていますし、ある程度の知能を維持していると思われます。それともうひとつ、これが他の

ゾンビと最も異なる、そして最も恐ろしい特徴なのですが、『ブレイン』はその名前が示す通りゾンビ

達の主体となり周りにいるゾンビを手足のように操ることが出来るのです。Aさんがゾンビの集団に囲

まれた際危害を加えられることが無かったこともこれで説明がつきます」
「もしこの『ブレイン』が人間の中に紛れ込んでしまった場合見分ける方法はあるのでしょうか?」

「判別しにくいですが方法が無いわけでありません。さきほど『ブレイン』は腐食の進行が遅いといい

ましたが、粘膜部分の腐食に関しては比較的早く進行するのでその部分で見分けることが出来ます」

「『ブレイン』が今後増えていく可能性についてはどう思われますか?」

「それはまだ分かりませんね。しかし各国の事例を調べるうちに実に興味深いことに気づいたのです。
このブレインは各々の世代に1体しか存在していないのです。つまり同時に2体以上は存在していない

のです。1体死ねばまた何処かで1体生まれる、これを繰り返しているのです」

「その法則に従えばまたどこかでブレインが生まれている可能性がありますね?」

「ええそうです。ですから我々は早急に・・・あ、これは失礼しましたずっとサングラスをしたままで」

「いえ、・・・!?」

「ああこれですか?いやなに最近急に白内障が進行してしまいましてね・・・」
                   

>>こっこ殿
ダメ警官、いいです。
個人的にはあと、就職先が見つからなくてとりあえず自衛隊に行っただけの
やる気なしのダメ自衛官なんかが主役のストーリーもいいなぁなどと思ってし
まいます。

>>名無し殿
一体死ぬとどこかで別のヤツが誕生する無限ループ。。。コワイですね。
しかもゾンビなのに普通の生きた人間並みの思考ができている点が怖い。
フセ○ンとかブッ○ュとか金○○とかがブレインになったら。。。。こ、こわすぎる。
あと、できればでいいのですが、トリップ付けるか、コテハンにして他の名無し
さんとの区別ができるようにして欲すぃです。。。。
『128』

脚を掴まれこそしなかったが、俺はバランスを崩し、車の屋根から転げ落ちた。

とっさに左手をつく。

・・・ピキッ!

「ぐぁっ・・・」
嫌な音と共に鋭い痛みが走る。

折れた!? いや・・・ヒビでも入ったか!?

倒れこんで一瞬動きを止めてしまったその隙をつかれた。
ゾンビがのしかかってくる。

「・・・くそっ!」
悪いことにゾンビは俺の肩とバットを持つ右手を掴んできた。
バットが振れない。。。!

死ねない! 

ここまで来て死ぬわけにはいかない!

ここで死んだら。。。。みんなはなんのために死んだんだ!!

俺は。。。死ぬわけにはいかないんだ!!

「うおぉっ!」

俺は痛めた左の拳を渾身の力を込めてゾンビのこめかみに叩き込んだ。
『129』

・・・ゴッ!!

「・・・!」
骨と骨のぶつかる感触、そして骨の軋む不快な音と激痛が俺の拳に走った。

その引き換えにゾンビの動きが一瞬止まる。

「おぁぁぁぁっ!」
さらにもう一発お見舞いする。

ゾンビの手が緩んだ。
俺はすかさず右手のバットでそいつの顔面を打ちすえた。
頬が陥没し崩れ落ちるゾンビ。

左拳がズキズキと痛む。
脈打つたびに痛みが響く。
まるで熱湯でもかけられたかのように熱い。

これで左手は使えなさそうだ。。。。

だが、そんなことを気にする暇もない。
今のロスのせいで、既に何体かのゾンビが間近に迫っていた。

俺は素早く立ち上がり、近づきつつあった他のゾンビどもに身体全体の回転を使ってバットを
叩き込んだ。

倒れ、よろめくゾンビ達の間を俺はすり抜け走った。

階段まであと一歩。。。。
294むにむ:03/04/10 22:49
夢を見た。
ゾンビが世に溢れ出す夢。

そいつらは人を喰い、仲間を増やす。
驚異的な増殖。
日本中に厳戒令がしかれる。
近所にゾンビが溢れる。
そんな、夢。
295むにむ:03/04/10 22:49
夢を見た。
父さんと母さんと妹とで、公園にピクニックに行く夢。

弁当が美味しかった。隣の湖で釣りをした。
家族全員で写真を撮った。
皆満面の笑み。
とても幸せだった。

そんな、夢。
296むにむ:03/04/10 22:50
夢を見た。
家にゾンビがやってくる夢。

窓が割れ。扉が破られ。
家族の悲鳴が聞こえ。
そんな、夢。
297むにむ:03/04/10 22:53
夢を見た。
みんな、とても幸せな夢。

なにが幸せだかわからない。
だけど、幸せ。
願望が叶ったような、幸せ。

そんな、夢。
298むにむ:03/04/10 22:54
夢を見た。
家族が喰われ。
亡者と化し。
にじりよってくる夢。
恐い。悲しい。
こんな夢、早く醒めてくれ。

写真が落ちた。
家族の、幸せな顔が写っている。

父が被いかぶさってきた。
なにか首に痛みを感じた。
視界が暗くなる。

ああ、夢が醒める…

次の夢は、無かった。

【夢幻】終わり
299むにむ:03/04/10 22:55
っと 最初にタイトル入れ忘れターヨ 鬱。

つか、正直最近ネタ切れでつ・゚・(ノД`)・゚・
300あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/11 00:29
300ゲト
3013-620:03/04/11 01:22
>>289
ブレイン化してるのか単にホントの白内障なのかどっちなんでしょう。
白内障で誤殺されたくないのう。

>>さんげりあ様
呼んでいて左手が痛くなりました。いや、突き指しただけですが。
折れた手でも必死に殴りつける藤田氏に(;´Д`)ハァハァ

>>むにむ様
スランプの時は無理して書かずにリラックスするとよいかと。
音楽でもかけてマターリしませう。

>>300
300ゲトおめ

段々、充実していっとりますな。
280の続き、いきます。
3023-620:03/04/11 01:22
(ここは・・・どこなんだ・・・?)


喜田川は自分の置かれた状況に戸惑いながらも考える。
たしかコーヒーを飲んで更衣室に来たところまでは覚えている。

(・・・ああ、あのコーヒーか)

普通、コーヒーってのは眠気覚ましに飲むものだが・・・
睡眠薬でも入っていたのだろうか。
だとしても誰が自分をこんな場所まで運んできたのか?


そんな疑問と格闘していると背後から二人分の足音が聞こえてきた。


カツカツカツ・・・


「・・・だ、誰だぁ・・・?」

「おはよう、喜田川君」

喜田川が振り向くと社長と伊東が厳めしい顔をして立っていた。
今までの経緯から察するにこの二人が自分をここに連れてきたに違いない。
やはりこいつらは何か知っている。
思い切って今までの疑問を投げかけてみる。

「ここは一体どこだ?あんたら・・・何者なんだ?
 一体、何を隠してるんだ!?」
3033-620:03/04/11 01:23
社長はそれまでのムスッとした顔から一転、嘲笑するかのようにせせら笑った。

「喜田川君、一気に質問するのはやめたまえ。私は聖徳太子じゃないんだから。
 何も知らないのもかわいそうだから一つ、教えておこう・・・ここは墓地の中だ」

「墓地・・・墓の中だと?」

何故こいつらは自分を墓の中に運びこんだのか。
地下室特有の重圧なのか、頭が痛くなってくる。


・・・ペキ・・・パキ・・・


突如、お馴染みのラップ音が聞こえてきた。
この音が聞こえているということは・・・


ガタガタガタ・・・バタン!!


奥の扉が破られると昨日の夜に見た輩が部屋に雪崩れ込んできた。

「な・・・な・・・」

山のような死者が向かってくるのを見て、喜田川はあまりの恐怖に叫び声すらあげられない。
なのに社長も伊東もまるで客をもてなすかの如く招き入れる。
驚愕する喜田川と死者を招く二人の眼があった。
その内、伊東のほうには首に縫い目のようなものが見えた。

再び頭痛が走った。
3043-620:03/04/11 01:35
「い・・・伊東・・・その首は」

喜田川が指さすと伊東は申し訳なさそうに言う。

「すいません、喜田川さん。昨日はご迷惑をおかけしました」

「伊東君、もう済んだことだ。ヤトノ様が無事だったからよしとしよう」

ヤトノ様?聞きなれない単語のはずなのに
それが耳に入った瞬間、頭痛が加速度的にひどくなった。


ペキバリボキメキパキバリゴキグキ・・・


「うが・・・ぐわああぁぁあ!!・・・あ、頭が・・・!」

割れるような痛みにのた打ち回ると後ろの死者達がうなり声をあげる。
不気味なコーラスが地下に響き渡った。

「・・・これはちょっとまずいんじゃないんですか」

伊東が社長に言うと社長は奥から誰かを連れてきた。
その人物は社員寮の管理人だったあの老婆であった。

「婆さん・・・グァ・・・あんたもグルだったのか!?」

老婆は喜田川の言うことには耳を貸さずに接近すると、一喝した。
するとあれほど激しかった頭痛が嘘のように引いていったのだ。
同時に死者達のコーラスもピタリと収まった。
3053-620:03/04/11 01:36
(た、助かった・・・)

地獄のような責め苦から解放され、喜田川はガクリとうなだれた。

「あんた達、限度っちゅうもんを考えなさいや。
 この人が死んでしもうたらどうしようにもないでしょ」

「は、申し訳ありません」

日頃、あれだけ威張り散らしてる社長があの老婆の前で猫のようにおとなしくなっていた。
喜田川は老婆に問い掛けた。

「婆さん、ヤトノ様ってのは何なんだ?後ろにいるあいつらは?
 この二人は教えてくれないんだ。頼む、全部話してくれ!!」

「・・・そうさね、あんたも心に迷いがあるようじゃあ、立派なヤトノ様には
 なれないだろうし・・・いいだろう。話してあげるよ」

ダメモトで話し掛けたのに意外とあっさり承諾したので喜田川は拍子抜けした。

「あんたいつもおかしなものが見える時に変な音を聞いたり頭痛が起きたりしてないかい?
 それはあんたの頭の中に巣くっているヤトノ様が受信している信号だよ」

「信号・・・何の信号なんだ?」

「命のだよ。詳しく言うと死者の生き返りたいという念みたいなものかね。
 そういうものが集団になって念を発しているとヤトノ様が受信してしまうのさ」

「・・・つまりあたり構わず電波を振り回している奴がいて
 それを無差別に受け取ってしまうおかげでこんな頭痛が起きるのか?」
3063-620:03/04/11 01:37
老婆はヤレヤレといった調子で話を続ける。

「・・・まあ、だいたいそういう感じかねぇ。
 そこで受信した際に魂のない肉体があるとヤトノ様が御力を使って
 その身体に乗り移らせて下さるんだよ。それが今後ろにいる連中だよ」

老婆が指差す先にはあの無数の死者達がいた。
外国人風のもいれば昨日見た警官にそっくりな者もいる
そいつらは、喜田川と老婆の会話に口をはさむことなく、ただ佇んでいた。

「こいつらはそれで満足しているのか?
 どう見ても出来損ないにしか見えないが・・・」

「それはあんたの言う通りあんな不完全な身体じゃどうにもならないよ。
 でも、稀に成功することもある・・・社長と伊東がいい例さね」

喜田川は二人の方へ目をやった。伊東ことは昨日の件で充分分かっていたが
まさか社長まで死者だとは夢にも思わなかった。それぐらい、人と同じであった。

「ヤトノ様本来の御力ならば死者の蘇生などどうということはない。
 もともとはこの世の支配者だった御方だからねぇ」

(この世の支配者・・・そんな凄いやつだったのか。ヤトノ様ってのは)

それがどの程度のものかは知らないが、死体を復活させるくらいなのだから尋常ではなかろう。
しかし、何故それほどの存在が自分の身体の中にいるのかが甚だ疑問であった。

「一つ、聞いていいか?何でそんなものが俺の身体の中に・・・?」

「別にあんたの身体の中にだけいるわけじゃないよ。
 言ってみれば生きてる人間全員にヤトノ様はひそんでおられる」
保守
>>むにむ殿
ネタ切れのときは映画ですぞ。
「13ゴースト」とか観るとよいかも。
それか古いヤツ。ゾンビ物だけでなく「クリ―プショー」みたいなホラー系。

>>3−620殿
なんだか怪談物というか怪奇物みたくなってきましたね。
実はバァさんが偉くて黒幕とかイイ感じでつ。
『130』

「どけぇッ!」
俺は非常階段の前にいたゾンビの頭に向けてバットを一閃させた。

ゾンビの頭頂部がばっくりと割れ、どす黒い血がたれ流れる。

俺はそいつの胸に蹴りを入れてそのまま後ろに蹴り倒し、死体を踏み台にして階段に身を躍ら
せた。
そのまま一気に駆け上がる。

カンカンカンカンカン。。。。

金属製の階段の乾いた音が響き渡る。

「はぁはぁはぁはぁ・・・」
俺は荒い息で屋上への入り口に辿りついた。

慌ててポケットをまさぐる。

。。。。。。。。!?

。。。ない。。。。

。。。鍵がない。。。!

「くそっ・・・!」

どうやら鍵を落としたらしかった。
『131』

。。。カン。。。カン。。カン。。カン。。。カン。。。

下から徐々に階段を上る足音が聞こえてくる。

ゾンビどもが上ってきている。

「・・・くっ・・・」
俺はフェンスに脚をかけた。
左手が使えない状態のため、よじ登るのも一苦労だ。
おまけにバットと荷物も邪魔だった。

なんとかフェンスを乗り越えたところで、数体のゾンビが階段から姿を見せた。
まさに紙一重だったが、それでももう安全になったことには違いない。

俺はセンター内への入り口に向かった。
振り向くと、ゾンビどもがフェンスをガチャガチャと揺すっていた。

奴らの力ではあの鉄製のフェンスを破ることはできない。

どうやら俺はかろうじて無事に薬を持ってセンターに辿り付けたようだった。

その代償は。。。犠牲はあまりにも大きかったが。。。。。

。。。荒井。。。吉沢さん。。。中谷。。。。。
『132』

俺は神崎先生に薬を渡すべく階下へと急いだ。

みんなは3階の休憩室にいるはずだ。
一秒でもはやく薬をみんなに与えてやりたい。

はやく。。。はやく薬を。。。。知沙。。。。

3階倉庫前の廊下に亜弥がいた。

「亜弥ちゃん・・・!」
「・・・ふ、藤田さん! 無事だったんですね!
よかった・・・本当によかった・・・・」
亜弥は涙を流し俺の無事を喜んでくれた。

だが、なにかおかしかった。。。。
亜弥は俺の顔を見る前に既に泣いていたように見えた。
それに、なぜここにいる?
休憩室でみんなの看病をしているはずなのに。。。。

いや、そんなことを気にしている時間はない。
それより、はやく薬を知沙たちに与えなければ。

「はやく神崎先生のところに! 薬が手に入ったんだ」
「本当ですか!?」
「ああ!」

俺たちは休憩室へと急いだ。
312こっこ:03/04/12 21:40
>>287の続き。誰も覚えてないだろうけど・・・

結構高い塀があり中の様子はうかがうことはできないが、今まで見たことのない修羅場となっているだろう。
「何で俺がこんな目に遭わなきゃならねぇんだよ・・・」
吉田は膝をふるわせながら大きな門をくぐった。
そこに広がっていたのは、今まで見たことのない、いや、想像したこともない地獄だった。
数人の男が、倒れた田島部長と結城巡査に齧り付いている。
二人の四肢は引きちぎられ、結城巡査は今まさに首を外されるところだった。
少し離れたところで、警棒をにぎったままの腕を囓っている男もいる。
「な・・・・何をしている・・・」
唖然としてその様子を見ていた吉田は、絞り出すように呟いた。
・・・ここにいたら、殺される。早く逃げなければ。
生物としての本能が、そう告げていた。
腰を抜かしそうになりながら、一歩一歩後ずさる。
幸い、まだあの連中に気付かれてはいないようだ。
今なら、逃げられる、そう思ったとき。
『旭から、旭台吉田!現場の状況を報告せよ!』
無線機から、ヒステリックに叫ぶ声が響いた。
慌ててマイクを押さえるが、もう遅い。
二人の警察官の血で顔を赤く染めた男達が、吉田の方を向いた。
「あ・・・あ、ああ・・・」
感じたことのない恐怖が、彼の体を支配する。
もはや、後ずさりすることも敵わなかった。
血染めの男達が、ゆっくりと近づいてくる。
「う・・・ひゃあああああああっ!うわあああああああっ!!」
恐怖に耐えきれなくなり、吉田は構わず叫んだ。
313こっこ:03/04/12 21:41
「うわああああっ!!ぎゃああああああっ!!!」
それでも構わず男達は近づいてくる。
「くっ!くるなぁっ!!くるなぁぁっ!!」
恐怖に駆られ、彼は訓練以外ではさわりもしない拳銃を抜いた。
「うっ!撃つぞ!それ以上近づいたら、うつぞぉっ!」
必死になって叫ぶが、止まりはしない。
むしろ、嬉しそうにうめき声を上げて、迫ってくる。
そして、はじけるような発砲音が、異常なくらいに静まりかえった住宅街に響いた。
吉田の放った弾丸は、先頭の男の胸に命中した。訓練ならば、10点だ。まさに申し分ない射撃だったといえる。
しかし。
胸から血を吹き出しながらも、男は構わず歩いてくる。
「どうなってんだ・・・どうなってんだよ!なんなんだよぉ!」
続けて発砲するが、命中しても男が倒れることはなかった。
かちっかちっ・・・
全て弾を発射したのか、それ以上吉田の拳銃が火を噴くことはなかった。
「う・・・うわぁぁぁぁ!」
涙を流しながら、吉田はもつれる足で反転し、ミニパトへと走った。
運転席に乗り込み、車を発進させる。
門の外に出ていた先頭の男を跳ねとばし、ミニパトは走り出す。
「ちきしょう、ちきしょう、ちきしょう!何で俺がこんな目に!なんで、何で俺が!!」
涙と鼻水を垂れ流し、泣きながら車を走らせる。
どこへ行く当てもない。しかしこの恐怖から逃れたいがために、ミニパトを走らせた。
途中で他のパトカーとすれ違ったが、構わず走った。
無線機からは、吉田を呼ぶ声がひっきりなしに続いていた。
しばらくして、さっきの現場に向かっていた刑事達の断末魔の悲鳴が聞こえたが、もう知ったことではない。
そのまま、国道に出て、旭市を出た。
314こっこ:03/04/12 21:42


1週間後。ゾンビの発生により、日本中が大パニックに陥った。
もはや、警察も機能していない。
生き延びた人々は、おのおのの自宅か、大規模なホームセンターに立てこもり、来る宛のない救助を待つ日々を過ごす。
そんな避難所となったホームセンターの一つに、吉田巡査長の姿があった。
「あははひゃひゃひゃひゃっ!死ぬんだ、みんな死ぬんだ!」
涙と鼻水と埃でぼろぼろになった制服を着て、もはや弾の尽きた拳銃を握り、彼は笑い続けている。




ふぇ〜。糞な話で撃つ山車脳。
>>314
こっこ様、お疲れさまです。
ゾンビ物にハッピーエンドは無いのだということが認識できました。
でも、齧られてアボーンするよりか、狂ってしまった方が
ある意味楽ですね。

>>こっこ殿
やはりダメ人間は死んだり発狂でバッドエンドですか。
となると。。。。いかん、ゾンビが出たら漏れも。。。。鬱だ。
『133』

走る途中、亜弥が当然の質問を俺に投げかけた。

「あの・・・他のみなさんは・・・・」
「・・・・・・・・」

俺は言葉に詰まった。
だが、どうせすぐにわかることだ。
そして、言わないわけにはいかない。

「・・・俺ひとりだけだ・・・・生きて帰ったのは・・・」
「・・・そんな・・・・」
「・・・すまない・・・・俺のせいで3人は・・・・本当にすまない・・・・」
「藤田さんが謝ることじゃないです。
藤田さんが無事だっただけでもせめてもの救いです。
それに、お薬も手に入ったんですから・・・
だから・・・だから自分を責めたりしないで下さい・・・」
「・・・・でも・・・な・・・」
「今はそのお薬で知沙ちゃんやみんながよくなることを考えましょう」
「・・・・・」

そうなのかもしれない。
だが、俺にはどうしても納得仕切れない。
俺のせいでみんなは死んだ。
俺のこの罪は決して消えることも、忘れることもできないだろう。。。。。

『134』

「神崎先生、薬です!」
「おお、藤田くん、手に入れおったのか!」

神崎先生は慣れた手つきで準備を始めた。
作業を続けながら先生はひと言だけ俺に問うた。

「・・・君だけかの?」
「・・・はい・・・・」
「・・・・そうか・・・・」

神崎先生はそれ以上なにも訊かなかった。。。なにも言わなかった。。。。
先生のその心遣いがわかるだけに、よけい俺はつらかった。

いっそ責められた方が、口汚く罵られた方が気が楽だった。
少なくとも今の俺にはそうとしか思えない。

俺は荒井のことを加奈さんになんと言って詫びればいいのだろう。。。

湘太くんになんと説明すればいいのだろう。。。。

。。。わからない。。。。

319FD‐R ◆6N371.108E :03/04/13 22:18
@執筆中です
さんげりあさんの小説は波乱万丈な物語でとてもいい感じですなぁ。。。

原発のすぐ近く(5`以内)に住んでいる身としては。
何か起きたらすぐアボンなわけで。。。
想像するだけでもガクガクブルブルブル
320PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/14 13:02
皆さん久方ぶりです。
回線がつながるのが一週間後と言うことで近場のネットカフェから書き込みしてます。
新規の方々の勢いに完全に圧倒されてます。
ただちと気になるのが感想の数が作品に比べて少ないことですね。
名無しの方々の感想があると更にスレが盛り上がるので、気軽にカキコして欲しいですね。
ちなみにピップは中辛〜並ぐらいで感想を求めています。
感想プリィーズ!
んでは6つほど逝きます。
3211/6PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/14 13:03
 背と腰にまわされた手が圧倒的な力の差を告げる。
 呼吸が困難なほどの抱擁は強い不安と不審を生じさせるのに十分だった。
 もがくことで抵抗の意思を伝えたというのに、込められた力はなおもきつく身を縛る。
 それでも何とか渾身の力を振り絞り、尚也との間に手を入れてわずかに距離を置く。
 だが日向の抵抗もむなしく、尚也は彼女が言葉を発する前に次の行動に出ていた。
「ひゃぅっ!」
 首筋を舐める舌の感触に、思わず声が出る。
 濡れた柔らかい感触が、鎖骨から頤を通り耳の下まで何度も往復する。
 背筋に粟の立つほどの快感が少しずつ抵抗する気力を削ぐ。
 すでに背中の腕は力による束縛ではなく、愛撫による抗いがたい拘束へと変わっている。
 シートベルトがはずされ、さらに抱き寄せられたときには覚悟を決めていた。
 軽く耳朶を噛まれ、再度耳元で名を囁かれる。
 日向は言葉ではなく瞳で許諾の返事を与えようと、上体をかすかに起こして自分を求める男の顔を覗き込んだ。
 にごる赤光。
 そこにいたのは日向の知る尚也ではなかった。
 まがまがしい光をたたえた双眸の一匹の獣だった。
 常に静けさを漂わせていた瞳は欲望に荒れ、時に優しい微笑を浮かべた口元は諧謔に満ちた嘲りを浮かべている。
 知らない男だった。
 日向の知る尚也は、こんな獣ではなかった。
『逃げないと!』
 目が合った瞬間、本能があらん限りの警報を発して逃亡を命じる。
 日向の反応は素早かった。
 助手席のドアを開けてその勢いのまま文字通り車外に転がり出す。
3222/6PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/14 13:04
 わずかな落下感と眩暈を意識しながら転がり、車から数メートル離れた場所で起き上がった。
 残った勢いで一歩下がった拍子に、何かが背中にぶつかる。鼻腔をさす強い悪臭。腐臭と気がつく前に体は振り向いていた。
 いつの間に近寄られたのか、そこには一体の屍者が立っていた。
 つかみ掛かる腕をかいくぐり、ボンネットを壁にして何とか距離をとる。
 思考が硬直していて、脳裏には逃げることしか浮かばない。
 運転席のほうへと戻ろうして、日向は何者かが近づきつつあることに気づいた。
 いつの間にか街路に屍者の姿があちこちで見え隠れしている。
 ゾンビの群れは車の前方だけでなく、反対側の車線からも近づいてくるようだ。
 察知できただけでも絶望的な量だった。
 日向の携行するグロックでは火力が圧倒的に足りない。その前に弾薬自体が足りない。
 尚也の持つパイソンは反動がきつすぎる。後は後部座席に置いたショットガンぐらいだ。
 ほとんどの装備は高機動車と共にドライブインに隠しておいたままだ。いや、よしんば持ってきたとしても日向では使いこなせないだろ

う。
 道のあちこちには乗り捨てられた自家用車が転がっている。車での逃亡はできないだろう。
 呻き声をあげることなくただ静かに、ゾンビたちは物陰を伝ってゆっくりと包囲網を狭めていく。
 今までのゾンビには見られない行動だった。
 左右から音をたてることなく忍び寄り包囲網を作る。
 さらには一体だけ進み出て様子までうかがっている。
 ほとんどの人間は一体目のゾンビに気を取られているうちに包囲されてしまうだろう。
 日向が忍びつつあるゾンビたちに気づいたのは尚也から受けた訓練の成果だった。
 ――そうだ、尚也さんは!
 ドアを開けたまま飛び出したことを思い出し、あわてて振り返り車の中を覗き込む。
 そこにあるのは助手席の尚也に喰らいつく屍者の姿だった。
 微かな異音とともにフロントガラスは内部から朱に染まっていた。
3233/6PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/14 13:06
 絶望が心臓を握りつぶす。
 全身の血の気が引く音を日向は聞いた。
 音にならない叫びを上げて、助手席に駆け寄る。
「……!」
 あまりに凄惨な風景にのどの奥で声が固まる。
 ゾンビが開いたドアに上半身を突っ込み、横たわったままの尚也の上に覆いかぶさっている。
 咀嚼を繰り返しているのか、その背中が激しく痙攣しているのが見えた。
 右手から銃が滑り落ち、地面の上で軽い音をたてた。
 絶対零度の冷気が背筋から全身に伝わり、身も心も凍りつく。
 断末魔の足掻きで尚也の足が跳ねる。
 それに押されでもしたのかゾンビはたたらを踏むと尻餅をつき、勢いのまま仰向けに転がった。
 びちゃ。
 日向の足元で濡れた雑巾を落としたような音がする。
 日向は放心したまま、視線を足元のゾンビに落とした。
 水音の発生源はそこだった。激しく痙攣する屍者の肩から上は存在していなかった。頭部は圧倒的な力で千切られていた。
「く、くは」
 聞きなれた声の聞いたことの無い響き。
 ゾンビを蹴り退けて、車より降りる男の声。
 その全身は朱に染まり、左手は何かを握りつぶしている。
「っく」
 訳がわからぬまま退く日向の目の前に、全身を朱に染めた尚也が立つ。
「くはっ」
 呼吸が困難なのか、尚也は端正な顔を歪ませて喉を鳴らし続ける。
 日向はその顔を見ていなかった。
 視線の先にあるのは握られた左手。その指の間からはところどころ細い糸のようなものが垂れ下がっている。
 日向の視線に答えるように尚也は手を開き、握っていたものを落とす。
 地に落ちた肉片には髪だけでなく丸いピンポン玉のようなものまでついていた。
3244/6PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/14 13:07
 無造作に左手を振る。
 それだけで手にこびりついていた血や脳漿は、一滴残らず地面にぶちまかれていた。
 全身に赤をまとったまま、青年は右手で口元を押さえる。
 その肩がビクン、ビクンと震えていることにようやく日向は気がついた。
「……く、くは。くく、くくく。くは」
 口元を押さえた手から体の震えに合わせて、喘鳴の様な音が途切れ途切れ漏れ出す。
 呼吸障害かと慌てて駆け寄る日向の足がその音の正体を悟ると同時に止まった。
「くははははははははははははははははっっっ!」
 嘲笑。
 それは紛れも無く、侮蔑と悪意に満ちた哄笑だった。
 尚也は天を振り仰ぎ全身を震わせながら哂い続ける。
 果てなく続くと思われた狂人の笑いを止めたのは、日向の小さな悲鳴だった。
 おそらく筋肉が収縮したのだろう。尚也に頭部をねじ切られたゾンビが偶然に日向の足首を掴んでいた。
 尚也は突然哂うことを止めて、全ての表情を消したまま日向に近づく。
 恐怖に身を竦ませる日向のそばまで近寄ると、尚也は無造作に足を振り下ろした。
 まるで砂糖細工の人形であったかのようにゾンビの腕が踏み砕かれて、日向の脚を放す。
 明らかに常人に可能なことではなかった。
 数分前まで横たわっていたのに突如起き上がり、あまつさえ人の頭部を千切り捨てる。
 まるでホラー映画だ。
 それも極めつけに悪趣味なスプラッターだろう。
 現実感を喪失して恐慌状態に陥ってしまった日向の横を、尚也が通り過ぎる。
「車に乗っていろ」
 すれ違いざまに低く良く通る声が耳朶を震わせた。
 我に返って尚也のほうを振り向いた日向の眼に映ったのは、地獄絵図としか言いようの無い凄惨な殺戮の風景だった。
3255/6PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/14 13:09
 現在までにゾンビ化の発症は人のみに確認されている。
 発症した罹患者はおおよそ一定の変化をたどり、人喰いへと変貌を遂げる。
 ゾンビになると強く学習した内容以外は残らないらしく、大抵微かな記憶の残滓に従う以外の個体差は見受けられない。
 個人から見れば進化の過程で得てきた個の消失だが、感染源から見れば各個人の差など誤差範囲内なのだろう。
 ウィルスにとって人は単なる増殖のための苗床でしかないのかもしれない。
 優先すべきは苗床の確保と有効利用。
 その対象が人であったのは免疫機構での取捨選択の結果だったのか。
 一般にゾンビと呼称される発症者にはいくつかの共通した特徴がある。
 その最たるものは人喰いだが、その他には痛覚の遮断、筋力の増強、生命維持機能の高効率化がある。
 それは効率的な退化と言ってもいい。
 より原始的に、より単純に。ただ生きるために、ただ増えるために。
 野生動物に比べれば切り裂く爪も噛み砕く牙もない。走る速度は猫化の狩猟生物に及ばず、匂いの嗅ぎ分けもできない。
 猛禽の視力も無ければ蛇のように赤外線を知覚することも不可能だ。
 だがそんなことは問題ではなかった。
 彼らのもっとも恐るべき能力はその増殖力だからだ。
 彼らの餌は彼ら以上に弱いのに地球最多の生物だからだ。
 人が一人死ぬたびに彼らは一体仲間を増やす。
 成人男性の体重は約60kg。蛋白質だけに限れば人一人を3ヶ月ほどは養える量だ。人一体でゾンビ100体弱がその日の糧を得ることになる。
 そして今人間は一人で行動をしていない。必ずそばに誰かがいる。それは頼りある相棒かもしれないが、身を守る術を持たぬ女性や子供かもしれない。
 そして身を守る術を持っていなかった女子供も発症すれば恐るべき捕食者へと変貌を遂げる。
 人の力は集団で行動出来ることだ。知力と団結力が人を地球最強の生物種にした。
 その団結が人という種をここまで追い込むことになるとは誰も予想していなかった。
 野生動物は食料の心配が無い限りは人を恐れて敵対しない。
 ゾンビに恐れは無い。彼らは死人だ。死人は恐れない。
 
 ならば、圧倒的なゾンビの集団に挑む、彼は、ある意味、死人では、ないのだろうか。
3266/6PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/14 13:12
 青年は少女が瞬きする間に、屍人たちの集団に肉薄していた。地を駆ける様子を見せない奇怪な移動法。映画で移動しているコマを切り取って前後のフィルムを張り合わせたら同じように見えるだろう。
 無造作に片手を振る。その軌跡は見えなかったが結果はよく分かった。立ち尽くすゾンビの身長が文字通り頭一つ分縮み、朱色の噴水が出来上がったからだ。
 現実味の無い風景だったが、隣の座席から立ち上る濃厚な血臭が日向に事実を突きつける。
 中年女性の心臓を突き破り背中から突き出した腕が、背後の少女の喉を握りつぶす。
 大柄な男がつかみかかるが、両腕を瞬時にナイフで切り落とされ叫ぶまもなく喉を割かれた。
 背後から迫った幼い男の子は回し蹴りにより頸椎を粉々に砕かれ、曲がった首のままショーウィンドウに飛び込んだ。
 離れた場所に立つ老婦の両足を切断したのはおそらく袖に仕込んである鋼線だろう。
 なおも迫る患者たちのわずかな隙間を黒影が流水のごとくすり抜け、彼らの無防備な急所を切り裂いていく。OLらしい女性が胸元から吹き出す血を押さえるが全く無意味だった。
 彼らの前に立っているのは死神だった。
 死は万物の義務だ。
 一度死を迎えた彼らにとってもそれは例外ではない。
 吹きすさぶ死に陵辱され、死の眠りを求めることの出来なかった患者たち。
 救いというにはあまりに禍々しい破壊が彼らを蹂躙していく。
 日向は涙を流しながらそれを見ていた。
 彼女の命を救い、そして彼女が命をかけて守った青年は、絶えぬ哄笑を放ちながら無残な殺戮を続ける。
 あらかた片付け終わったのだろう、黒衣の魔人は車を振り返り、そこでいきなり勢いよく手を振り下ろした。
 何かが風を切る音と、肉の爆ぜる音はほぼ同時に車内に届いた。
 音の発生源は反対車線から車に忍び寄ってきた患者たちだった。
 尚也が何かを投擲したのだろう。ある者はこめかみを抉られ、ある者は片腕を吹き飛ばされる。
 同年代の少女がちぎれた片足を必死で千切れた太ももに押し当てている。その横では子供が必死にはみ出た腸を体内に押し込んでいた。
3277/6PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/14 13:18
 限界だった。
 もう耐え切れなかった。
 人の出来ることではなかった。
 だから思わず車外に出てしまった。
 こんなことは何かの間違いだと、この人は本当はこんなことが出来る人ではないと言いたくて、車外に出て呻く死者たちに駆け寄ってしまった。
 そんな日向に救いを求めるかのように、幼女が這いずり彼女の方へ手を伸ばす。幼女の腹部から下は無く、ホースのようなものが離れた場所に落ちている腰へと伸びていた。
 痛みに泣き叫ぶ少女の手を日向の手が握ろうとした刹那、さし伸ばされた幼女の手が激しく震えて地に落ちた。
 見る間でもなかった。少女の頸部に黒衣の青年が踵を落としていた。
 
 また少しオーバーしてしまいました。
 殺戮の宴vsゾンビバージョンでございます。
 しかし結構難しいですね。ゾンビ相手に残虐性を表現するのは。
 これが人間相手なら幾らでも書き方があるのですが、痛覚の鈍ったゾンビ相手だとどう書いていいのやら。
 ではまた書きためてから投下します。
 
 次回は殺戮の宴の終焉とようやく人間の拠点内部のあたりを書きます。
 興がのれば拠点の崩壊まではかけるかも。
 では皆さんの感想待ってます。
恐怖の存在のゾンビを一気に殲滅する様はスカっとするものがありますが、
少し、尚也、強過ぎでは…?
この辺りのフォローは果たして?
どちらにしろ、次回も次々回も楽しみにして待ってます。
3293-620:03/04/14 20:36
なんということだ、そんな化け物が人間の体内に巣くっているとは・・・。

「でもね、その中でもヤトノ様が育ちきるのはほんの一握り。
 万分の一どころか億単位ですら中々見つからないんだよ。
 だからあんたは光栄に思うべきだね、ヤトノ様をその身に宿していることを」

老婆の冷たい笑みを見て改めて思う。何でそんなものに選ばれてしまったのか。
前々から思っていたが、自分の運の悪さは底なしだと。
しかし、色々と情報を聞き出したおかげでこの窮地でも光が指した事は事実だ。
ならばそれを逆手にとればあるいは・・・

「・・・そうか、じゃあ最後に一つだけ聞きたいことがある。
 俺の中にいるヤトノ様が育っているのならばどうするつもりだ?」

「決まっているじゃないかい。あんたに新たなヤトノ様を務めてもらうまでよ」

「なるほど、よく分かった。それじゃあ・・・」

そうと決まれば行動に移すのは早かった。喜田川はポケットに忍ばせておいた
ペーパーナイフを取り出すと老婆に組み付いた。
この突然の行動に周りが呆然する最中、喜田川は老婆の後ろ手を捻りあげると
ナイフをその首筋に持っていく。

「ひっ!」

「な・・・き、き、喜田川!ど、どういうつもりだ!!」

社長が第一声をあげる。いつもよりも反応が遅い。

(なるほど、やはり婆に操られているんだな)
3303-620:03/04/14 20:37
腕の中の老婆は顔面蒼白で今にも倒れそうな勢いだ。
今まで人質にとられるようなことはなかったのだろう。
おかげでここから楽に逃げることができそうだが。

「喜田川さん・・・な、な、何をしてるのか分かってるんですか!?
 早く解放しないと・・・し、し、し、死ぬことになりますよ!」

「ゾンビ風情が気安く呼ぶな!!・・・それに死ぬだと?
 ヤトノ様をこの身に宿している俺を殺せるのか、伊東?」

イニシアチブは完全に喜田川の手に渡った。
喜田川はそのまま老婆を外へ連れ出すと近くにあった社長の車に乗った。
だがキーがないので車が動かない。

「社長、鍵を渡せ!」

社長は言われるままに鍵を手渡す。最高にいい気分だ。
このまま婆を連れて逃げてもいいのだが運転中に邪魔をされては堪らない。
喜田川は社長に運転を命じると老婆とともに後部座席に乗り込んだ。

(これでいい、このまま遠くへ行ってしまえば・・・)

社長が運転している間、喜田川は自分の衣服を破ると切れ端で老婆を縛った。
後は適当な所で社長を降ろして老婆を始末すればいい。

「き、き、きた、喜田川君・・・いつ、になった、らかいかい・・・
 解放してくれるれるれるのか、ね?」

社長の言動は明らかにおかしくなっている。まるで壊れたラジオだ。
この状態ではいつ事故が起きるか分かったものではない。
3313-620:03/04/14 20:38
喜田川は車を停止するように命じ、社長を降ろした。
どこをどう走ってきたのか、ちょうど崖がみえる。

「よし、あそこに飛び込め」

「・・・そ、そしたたた、ら解放して・・・く、くれる・・・な?」

「ああ、あんたが飛び込んだら放してやるよ」

とんでもない命令だが社長はすぐに実行した。
崖まで駆けて行くと勢いよく崖下へダイブしていった。
グシャッと何かが潰れる音が聞こえると喜田川は安心して車へ戻った。
残る懸念は老婆ただ一人。

「さてと、婆さん。あんたはどうやって死んでもらおうかな」

そう言うと喜田川は車に乗り込み、エンジンをかける。
そして山のほうへと車を走らせた。

(とりあえず、山にでも埋めるか)


・・・ピシ・・・


「え?」


・・・メキバギボキ・・・

(何・・・まさか!)
3323-620:03/04/14 20:38
いきなりの頭痛に喜田川は驚愕した。
バックミラーを見ると背後から縛っておいたはずの老婆の姿が消えている。

「ば、馬鹿な・・・何処に逃げた・・・」

瞬間、何かが首に巻きついた。
線の薄さからどうやら髪の毛のようだ。喜田川の首を締め付ける。

「・・・ぐ・・・おぅ・・・かはっ・・・」

白髪は力を緩めることなく、首を絞める。それだけではなく、頭にも白髪が迫る。
頭皮に針で刺されたような鋭いを感じた。

(このままでは殺られる・・・婆は何処に・・・!?)


バンッ!!


「!!」

老婆はいた。ボンネットの前にへばりついていた。
血みどろになった顔と赤く光る目でこちらを見据えている。
頭部からは何本もの髪の毛が運転席へ入り込んでいた。

『ふざけおってこの餓鬼めが!!
 よくもワシをこんな目に合わせおって・・・許さぬ!!』

「う・・・ぐ・・・うおおおぉぉお!!」
3333-620:03/04/14 20:39
(こうなったら一か八かだ!)

喜田川はナイフで髪の毛を切りながらハンドルをきると森のほうへ突っ込んだ。
もの凄い衝撃が車内に走る。

『グギャアアアア!!』

老婆の身体が森の木に叩きつけられる。身体中が木の枝に切り刻まれ老婆の身は
ボロボロになる。それでもまだしがみついていた。

「ば、化け物めっ!!」

喜田川は木の方に向けて必死にハンドルをきった。
一際大きな木にぶつかると老婆の身体は後ろへ飛ばされていった。

「どうだ!ざまあみろ!!」

しかし髪の毛は一向に車内に残っている。
寧ろ先程よりも量が増えているようだ。
ボンネットには老婆の姿は既になかった。かわりに別のものがいた。


白い脳みその胴体に赤い眼、クチバシの如き器官をもったそれは
身体から白髪のような触手をだして車を襲っていた。

(こいつは・・・夢にでてきた・・・!!)

触手が喜田川の頭に突き刺さった。何かが送り込まれるような感触がある。
意識が朦朧としてくる。身体から力が抜けた。

最後に大きな岩にぶつかる瞬間、意識を失った。
3343-620:03/04/14 20:40
・・・


どれくらい気を失っていたのだろう。誰かに揺さぶられて目が覚めた。

「大丈夫ですか?お怪我は・・・」

「ん・・・いや、心配ない」

そう、俺は大丈夫。問題はあの脳みそのような化け物だが・・・。

「それについては問題ありません。こちらで処理しておきました」

「ご苦労。ところでこれからどうするか?」

全く、これからどうすればいいのやら。このご時世に就職口はあるのか?

「社長を回収せねばなるまい。崖下だ、急げよ」

そうそう、社長は崖下で轢きガエルのようになってるからな。
・・・?

「全く、このまぬけのせいでエライ目にあったわ」

「しかし若い身体を手に入れられたのですからよろしいのでは?」

「確かに。この身体ならばヤトノ様を育むには充分よ」


まさか・・・俺の身体は・・・奴に?
3353-620:03/04/14 20:40
喜田川の意識とは無関係に身体は勝手に動いていく。
彼の身体の隣には伊東がいた。

(お・・・俺の身体・・・俺の身体!!
 ・・・返せ・・・返せよ、返せ返せ返せぇ!!)


ペキペキパキ・・・


「ぬおお・・・くく、あやつが未練たらしく漂っておるわ」

「だったら復活させてやればいいかと。ちょうどここに野良猫の遺骸が・・・」


(身体、身体、俺の身体ぁあ!!)

「黙れ!そこまで言うなら復活させてくれるわ、こいつでな!」


喜田川の身体が野良猫の遺骸を掲げると喜田川の意識はそれに吸い込まれていった。


(カラダカラダカラ・・・・・・・・・・・・ニャア)



それから数日後、喜田川は警備会社から失踪し、消息不明となった。
そして野良猫に人が襲われる事件が発生するが
それによってどうなったかはもはや周知の事実である。
3363-620:03/04/14 20:46
・・・一応はこれで終わりです。
漏れに長いやつはダメポ。ほとんどゾンビものになってなかったし。

やはり分布相応に短編でいくべきでした。スレ汚しスマソ。
3-620様お疲れ様です。
白い脳みその胴体に赤い眼、クチバシの如き器官をもったそれは
身体から白髪のような触手をだして車を襲っていた。
ってクトゥールものかと思ってしまいましたが・・・面白かったです。
次回作もガンガッて下さいませ。


3-620様、乙です。

巡査物語様、ギボーンでつ。
>>FD−R殿
じゃあ原発でなにかあったときは毒々モンスター化できるじゃないですか!
悪魔の毒々〜
なんちて。

>>PIP殿
仮復活ですね。
わらくしも尚也がちと強すぎのような気がしないでも。。。
ただでさえ装備等が桁違いに恵まれているので、他との釣り合いが気になります。
個人的にはアマチュアの尚也VSプロ(在日米軍からの脱走兵、自衛官など)を見てみたい
気がします。
経験に優るプロ対装備に優る尚也、それなら釣り合いがとれていい勝負になりそう。

>>3−620殿
おちゅかれさまです。
身体盗られるのは嫌です〜。
なんか昔観たホラー映画を思い出してしまいますたよ。

そうおっしゃらずに次回も中編をォ〜。
いやさ、長編をォォ〜。
『135』

苦悩からの、苦しみからのただの逃避なのだろうか、俺は娘の姿を求め室内を見回した。

娘は売り場から持ってきたソファの上にいた。
娘は多少息が荒いものの、ぐっすりと眠っていた。

「・・・知沙」
少しほっとした。
病院に向かう前に様子を見たときにはひどく荒い息でかなり苦しそうだったが、だいぶマシになっ
ているようだ。
これで薬を与えれば娘も助かるだろう。

ふと俺はあることに気づいた。

そういえば湘太くんは・・・?

室内のどこを見ても湘太くんの姿はない。

どういうことだ?

「亜弥ちゃん、湘太くんの姿がないけど・・・どこに?」

亜弥の肩が一瞬びくっと揺れた。
「・・・それは・・・・」

なぜか亜弥はそのまま押し黙ってしまった。
『136』

「亜弥ちゃん?」
「・・・・・」

亜弥の瞳から突然ぼろぼろと涙が零れ落ちた。

「・・・・ま・・まさか・・・・」
「・・・・・・
・・・・ちょうど藤田さん達が出てすぐでした・・・・
そのちょっと前までは容態も少し落ち着いてたんです。
でも・・・急にすごい痙攣を起こして・・・・そのまま・・・・」
「・・・そ・・そんな・・・・やっと薬が手に入ったってのに・・・・」

「湘太くん、がんばったんです・・・・でも・・・でも・・・・
わたし、なにもしてあげられなかった!
・・・わたし・・・わたし・・・・」

亜弥はそのまま泣き崩れた。

。。。荒井。。。。許してくれ。。。。俺は。。。俺は間に合わなかった。。。。

。。。すまない。。。荒井。。。。

俺はお前との約束を守ることが出来なかった。。。。すまない。。。。許してくれ。。。。。

。。。ちくしょう。。。。。。
『137』

「湘太くんは・・・いまどこに?」
「・・・・倉庫です・・・・さっき運んだんです・・・・」

そうか。。。それで亜弥はあそこにいたのか。。。。

「藤田くん、ワシが頼んで湘太くんを運んでもらったんじゃ」
神崎先生が治療をしながら口を開いた。
「かわいそうじゃが、遺体を他の患者のそばに置いておくわけにはいかないんじゃよ」
「・・・・・」

「・・・湘太くんに会ってくる・・・・」
俺は休憩室を後にした。

倉庫前に着いた。
ドアノブを掴む手が震える。
心臓が大きく脈打つのを感じた。

ゆっくりとドアを開けると。。。そこに。。。。湘太くんはいた。。。。

その顔には白いハンカチがかけられていた。

俺は震える手でハンカチを取り上げた。

まるで人形のように冷たくなった青白い顔。。。。

「・・・・湘太くん・・・・」

。。。どうして。。。。どうして。。。。
343PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/15 21:11
本日よりネット環境復帰シマスタ

>>328
>>339
尚也が人間以上の戦闘能力を発揮しているのには裏があります。
(薬物による強化あたりが副作用があるあたりイメージに近いですかね)
それがこの話の主点の一つですのでもうしばらくお付き合いを。
まあこの状態が続くわけも無いので、その後の落差を楽しんでいただければなぁと思ってます。

ンでもって装備ですけど、三ヶ月の間滞在していた研究所が在日米軍の警護下にあった為に豊富だったという設定です。
(海兵隊の新兵訓練が三ヶ月なのでこのあたりにあわせたのですが安直だったかも)
とはいってもそれほど予備弾薬も無いですし、ここから向かう拠点での話の中でそのあたりは片付ける予定です。


明後日ぐらいは拠点の話に入れそうです。
ようやっとライバル登場させられる。
長々書くのも考えもんですなぁ……
344巡査物語(自宅):03/04/15 22:16
>>338
もちっと、待ってやって下さい。
最後の投稿のチコッと前に、鬱病の彼女が自殺に成功してしまって
残った気力を仕事に振り向けるので精一杯です。
ストーリィ構成の骨格は出来ていますので
成るべく早く復帰します。
物語の主人公以上に、・・・・・まぁ 何ですかねぇ・・・。
345むにむ:03/04/16 23:52
>>巡査物語さん

な、 なんだか大変ですね・・・;
保守さげ
347 ◆6N371.108E :03/04/17 21:21
同じく保守さげ
348 ◆6N371.108E :03/04/17 21:26
落ちそうなのでやっぱり上げますw
ぼくも明日か明後日にはお話を上げようと思います。

間が持たない場合は過去の名作を転載という形で上げさせてもらったら如何でしょう?


やっぱダメよなぁ。。。
>>348
大丈夫。書き込みがあり続ける限り落ちないから。
底辺でスレが維持されているのも、いいかもしれない。
  捕食者

殺し方なら知ってる。
親父もお袋も、とうに始末した俺だ。
逃げ方だって判ってる。
世間はそれほど他人のことなんか気にしちゃあいないもんさ。
そう、ようは事件になりさえしなけりゃあいい、そういうことだ。

俺は自信たっぷりだった。
自惚れていた。
だから猫を殺し犬を殺し近所のガキを殺し、それに気付いた両親も殺し、
以来各地を転々として、楽しみ続けてきた。
何処へいっても、呆れるくらいにバカでお人よしで日和見主義な連中
ばかりだった。
俺は世間と言う名の「俺以外の人間」を、なめきっていた。
だが最近になってようやく、違うんだ、と気付いた。
連中は、バカでもなんでもなかったんだ、と。
こうなることを知ってたから、法律を作り、警察だの自衛隊だのの組織を作り、
病人は病院に閉じ込めて、なんとかそれを保とうとしてたんだと。
ああ、俺はどうして奴らが普通にこだわるのか、理解できなかった。
何故なら、普通だの常識だのということが、「通用するのが当たり前」の
世の中に、一番依存して、一番安心しきっていたのは、この俺自身だった
からだ。
俺は自分を捕食者だと思っていた。他の奴らはみんなその獲物なんだと。
とんでもない思い違いだ。だけど、今更気付いても遅い。
俺以上にけだものになっちまった、何百と言う生きた死人に囲まれてから
悲鳴を上げても。
自衛隊も警察もこない。助けに来る「まともな」奴なんかいない。
正義感など糞くらえだ。(ああ、俺も昔そううそぶいたことがあったさ)
みんな自分が大事なんだ。
みんな生きていたいんだ。

そうさ、あれを見ろよ。
みんな、死んでも生きていたいんだ。
何十、何百と群れを成し、
腐臭を漂わせ、内臓をぼたぼたとこぼしながら、
ゆっくりと近づいてくる、かつての俺の獲物たち。
司法当局への挑戦も、
怯え逃げ惑う犠牲者を追い詰める快楽も、
禁忌を犯すことで感じる「自分は選ばれた者だ」という恍惚感も、
奴らにはかけらもない、
俺のしてきたことへの復讐でさえない。

ただ、この俺が、食いたいだけ。
俺は奴らの獲物でしかない。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!
あんなになっても、まだ生きたいのか。
そんなに生きたかったのか。
俺が殺したあいつらも、みんな。

「やめろ、許してくれ、頼む、いやだ、許してくれ、ゆるし……」
その肉の味を味わうことすら知らずに、
「やめろおおおおおおおお!!!」
微塵の哀れみも憎悪も後悔もなく、
「うわああああああ!!!!」
弾丸で倒れた同胞を踏み越えて、
捕食者の群れはただ、獲物を捕らえ、ひきむしり、噛み砕く。
そして…
人間には何故魂が必要なのか、
この世が地獄と化して初めて気付いた男は、

数分後、自らもあると気付いたばかりの己の魂を、
失っていた。
とゆーわけで・・・スレ汚し失礼しました。保守代わり、ということでご容赦を;

>>344 巡査物語さん
     どうかご無理はなさらずに・・・
     どうにかしたいと努力しても、どうにもできないこと、が、
     この世には本当に本当に、信じられないほどたくさん、あります・・・
     ですが、今は、くれぐれも「ご自分の体調第一」にお考え下さい。
     勿論、ファンのひとりとしては、貴方にしか書けない作品を心待ちに
     していますが、貴方ご自身が無事ならば、作品はいつか必ず拝見
     できるのですから。
357あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/18 04:20
全てはあの日から始まった。
全ての人類が同時に見た、10分間の夢が覚めた刻から・・・・・・
    朝の風景

 ことことことこと・・・
リズミカルな包丁の音。
手際よく菜を刻むお袋の、いつもと同じ割烹着のうしろ姿を眺めながら、
ダイニングテーブルの上の新聞を手にとって、トイレに直行する。
オヤジが痔主なんで、万が一先を越されると、学校で大をしなくちゃなら
ないからだ。
(元々そのためにあるのに使えない、と言うのも妙な話だが、まあ、往々に
してそういう不合理はありがちなもん、なんだろう。多分。)

ちょいときばってでかいのを出した後、とぐろの巻き具合を確認して流す。
親孝行な俺は、オヤジの手間を省いてやるため、畳んだままの新聞を
トイレに置き去りにして、ダイニングに戻って、テレビのスイッチをひねる。
(ちょっと不衛生だが、どうせ新聞なんか読むのはオヤジだけだ。実際、
 新聞読むよりテレビやパソコンのほうがずっと早いし、判りやすくないか?
 …などというとオヤジが怒るので、言いはしないが。)
「今日の占い♪はっぴーかむかむ」が始まるのとほぼ同時に、お袋が惣菜を
並べ終わる。
359358:03/04/18 06:58
ぁ、すみません、さえぎっちゃった、
>>357さん、どうぞお先に
360358:03/04/18 07:01
あ、357さん4時20分かきこみだから。。。いま推敲中かな?
では失礼してお先に。。。
>>358 の続き

「いただきまーす」

そう言って箸を片手に椀を掴んだ瞬間、
(あれ。おかしいな。
 いつもならこのタイミングでオヤジが階段下りてきて、トイレに飛び込む
 はずなんだが・・・)
と思ったが、腹が減っていたし、かまわず煮物をぱくつく。
オヤジが会社の定期健診でコレステロール値が高い、と、医者に注意されて
から、朝食のメインは殆ど焼き魚か野菜の煮付けで、肉が出ることは少なか
ったが、今日は朝からボリュームたっぷりの肉じゃがと煮豚とあって、箸が
進む。
(・・・ははあ、さてはお袋、まだご機嫌斜めなんだな。
 先週派手に夫婦喧嘩してたし、オヤジに「妻からのささやかな仕返し」って
 やつでもする気でいるんだろうか。
 けどなあ。このまま寝過ごして遅刻なんかしたら、オヤジ、逆上して事態が
 さらに悪化するのと違うか? でもまあ、オヤジも毎晩毎晩残業で遅い上に、
 週末もしょっちゅう接待でおでかけじゃあ、お袋も不満は溜まるわな…
 いくら夫婦だからって、安心し過ぎなんだよな、オヤジはさ。
 アカリなんか、あいつのメールに3分以内に返信しなかっただけで鬼みたく
 怒るもんな。ん?…そいや、あいつ昨日からメール寄越さないな。例の事
 まだ怒ってんのかな…あーあ。俺もオヤジのことどうこう言えないやな…)

 
お袋はいつものように淡々とした表情で納豆をかきまぜている。
テレビでは占いコーナーが終わり、ニュースキャスターの紀元ののっぺりした
顔がアップで映し出されていた。また芸能人の不倫ネタかよ、日本はつくづく
平和だよなあ、と思いつつ、もう一切れ煮豚を箸でつまむ。
と、
「ほんとに平和なひとたち…」
お袋がため息混じりにそう言って、箸を置いた。
「ん?何?」
「平和なひとたち、って言ったのよ」
「あー、まあね。(もぐもぐ)毎回毎回よくやるよな、(ごくり)芸能人も」
「…テレビのことじゃないわよ。お父さんとあんたのこと。」
こぽこぽこぽ。
いつもは俺とオヤジが家を出るまで、「緑茶で一服」はしない主義のお袋が、
珍しく茶碗(自慢じゃないが、俺が中学校の修学旅行で京都土産に買ってきた
夫婦茶碗の片割れだ)に茶を注いで、一口啜った。
 (…そう言えば、いつも盆に用意してあるオヤジ用のほうが今日は用意して
  ない?)
「あー、…お袋、相当機嫌悪いんだ…?でもさあー、オヤジだって、まあ、アレ?
 俺たちのために一生懸命働いてるわけだしさ?」
俺はちらっと階段のほうを見上げ、とりあえず、オヤジの援護に回った。
「別に悪気があって遅くまで帰ってこないわけじゃあないんだしさ?…何があっ
 たか知らないけど、もうそろそろ起こしてやったら?」
「ぷっ」
お袋は茶を噴出して、台布巾を掴んだ。
「言うことまでおんなじ、かあ。あーあ。」
テーブルを拭きながらそう呟いたお袋の肩が、小刻みに震え始める。
ごしごしごしごし。
「…バカみたい。くっくっく。ほんと、バカよねえ、あんたたち。」
ごし!ごし!ごし!ごし!ごし!、がちゃあん!!
夫婦茶碗の片割れと、惣菜の載った小鉢がいくつか、お袋の手にはねとばされて
床に落ち、派手な音を立てた。
「くくく。うふふふ、…あはは、…あーっはっはっは!!」
「どっ、どうしたんだよ、お袋?!」
慌てて破片に手を伸ばした俺を突き飛ばし、お袋は、壊れた夫婦茶碗の破片を
拾い上げ、両手で握り締めた。あっという間に手が血まみれになる。
「何してんだ、よせよ!!」
俺は慌ててお袋をはがいじめにして破片を取り上げようとしたが、お袋は、
ものすごい力で俺の腕を振り解こうとする。俺は必死でオヤジを呼んだ。
「オヤジ!! お袋が変なんだ、オヤジ!!」
「あははは、あは、あはははは、…う、うっ、あああ、うおぉ―ぉぉぉ!!…」
お袋は獣の断末魔みたいな声で泣き喚き出した。
それでもオヤジは起きて来ない。
俺は泣きたくなった。
「お袋、どうしちゃったんだよ!しっかりしてくれよ!なあ、お袋!!」
俺の眼を見たお袋は、ふいに大声を上げるのをやめて、破片を床に放り出した。
「だいじょうぶよ、隆弘。こんなの洗えばすぐに綺麗になるんだから」
そう言って俺の頬をそっと撫でたお袋の掌は、ざっくりと裂けている。
「と、と、とにかく手当てしないと…救急箱っ、救急…」
「洗えば綺麗になるってば。それに平気よ、こんなの。どうせ私たち」
居間に救急箱を取りに行く俺の背中に、お袋が投げやりに言った。
「みーんな、もうすぐ死ぬんだから」

「・・・・・・!!!!」
居間のソファーには、オヤジが、大の字になって、倒れていた。
(オヤジ? どうしたんだよ、そんな変な顔しちゃって。それに、胸から腹に
 かけて真っ赤、だよ? こないだデパートで新調したばっかの背広の胸に、
 なんか、さ、刺身包丁が、刺さっているよ。なあ。それに、それにさ、…)
凍り付いている俺の背後で、お袋はひどく楽しそうに、言った。

「隆弘、知ってた?このひと、浮気してたの。会社の部下と。」
(ねえ、隆弘、今度の日曜は、お父さんに内緒で、お寿司食べにいっちゃおうか? 
 そう囁いた時と同じ口調で。)
「それでね、この間の晩、とうとうその相手の女から電話があってね。お父さんは
 ずっとそのひとと付き合ってて、お母さんのことなんか愛してないって、」
ど、どうしたんだろう。動けない。振り向けない。金縛りにあったみたいだ。

「お前が成人したら、私と別れてそのひとと一緒になるって、約束してたんです
 って。でももうこれ以上無理です、5年も我慢したんです、って言ってきてね。」

あ…判ったぞ!! これは多分夢だ。
アカリのダチと浮気かけたのばれたから、そのせいでこんな夢を見てるんだ。
でももう俺、反省した。ほんと、心から反省した。ほんとだ。だから…

「そのひと今妊娠6ヶ月だって。かわいそうにね。どうせ無事生めっこないのに」

だから俺、今すぐ目覚ませ、目え覚ませっつーの!!

「それでお母さんね、聞いてみたの。どうして毎晩こんなに遅いのって。そしたらね、
 お父さん、お前たちのためだって。あはは。一生懸命働いてるから、だって。
 悪気はないんだって。浮気してるのにね。あの日もあの女のとこ寄ってきたくせ
 にね。おかしいわよねえ、隆弘。ねえ? 」
「ぉ、お袋、…」
「だけど、あんたも鈍過ぎるわね。そういうとこはお父さんそっくり。またヘッド
 ホンして、ビデオでも見てたんでしょう? ほんとに男ってしょうがないんだから」

ばさっ。振り向いた俺の顔に拡げた新聞をつきつけて、お袋が微笑む。

「これだって、昨日の新聞なのに。テレビだって、先週のビデオなのに。なあんにも
 気付かないんだもの。世の中があんな大変なことになってるのに。」

た、大変なこと…って…これ以上大変なことなんか、あるわけがないじゃないか!!
オヤジが浮気してたなんて、しかもそれ知ったお袋が、オヤジを、オヤジをこ、殺す
なんて!!

いや…いや、落ち着け、俺。悪夢だ、これは悪夢なんだ。ただの夢だ。
だからすぐに覚める、もうすぐ覚める、きっと…

ぱちん。お袋がビデオを切って、テレビをつけた。いつものチャンネルだ。
なのにそこでは何故か、ホラー映画が放映中だった。お袋はコントローラー
片手に次々とチャンネルを切り替えていく。でも、全部ホラーだ。
ひとがひとを襲って食っている。

なーんだ、やっぱり夢だったんだよ、これは。
こんなのを無修正で全チャンネルで放送しているなんてこと、あるわけないじゃん。
あーびっくりした。あはは。えへ。あははは。

 ぴんぽーん!
玄関のチャイムが鳴った。ものすごく日常的な音だ。これは眼が覚める兆候かな。
ありがたい、もう少しだ、きっともう少しで目を覚ませる…

「お邪魔しまぁす」
アカリの声がした。おいおいやめてくれよ、もういいだろう、ほんとに反省したんだって。
頼むからこれ以上…
「ぁ、アカリちゃんだわ。昨日のうちにお前の携帯見て連絡しといたの。もう来て
 くれるなんて、ほんとにいい子ねえ、あの子」
お袋はいそいそと玄関に出迎えにゆき、楽しそうに談笑しながら、アカリを連れて
戻ってきた。居間に通されたアカリは、俺ににっこりと笑いかけ、オヤジの死体を
見て、またにっこりと笑った。

ほらな、やっぱり夢だよ。こんなの見てアカリがにこにこするわけがないじゃないか。
夢って不条理だよなあ。
「わーすごい。手際がいいんですねえ。やっぱりプロの主婦は違うなあ」
「あらあら、そんなに言われると照れちゃうわ。」
「それにいい匂いー。あ、これが完成品ですか? わーおいしそう!」
ダイニングに行きテーブルの上に残っていた皿の中身を見て、アカリが嬌声を上げる。
「おばさまって本当お料理上手なんですねー。私、うまくできるかなあ、なんか自信
 ないなあ」
お袋もさっきまでの様子が嘘のように機嫌よく答える。
「あら、大丈夫よ。私だって初めての食材だからちょっと困ったけど、弱火でことこと
 煮ながらこまめにアクをすくえば、変な癖もなくなるし、おいしくいただけるみたい
 だから。この子だって喜んで食べたのよ。ね、隆弘?」
「へーそうなんだあ。おじさまもきっと本望ですね、隆弘とおばさまに食べて貰えて」

そうか、それでオヤジの死体には片足がないんだ。なるほど。
肉じゃがと煮豚の材料にされちまったわけだ。しかし俺、そんなにオヤジを嫌ってる
つもりはなかったのになあ、こんな夢見るなんてやっぱりどっかで煙たがってたって
ことだろうか。まあ、そういう年頃っちゃあ年頃かもだが。
あのオヤジにしてはうまかったな、あの肉。なんちゃって、ははは。はは。
「それに比べて、うちのパパとママなんか…」
アカリはちょっと悲しそうな顔になった。
「ここへ来る途中、全然知らない奴らに食べられちゃって。私、頭に来てバイク盗んで
 無免許運転で、いっぱいひとはねちゃった…」
「あらあら…大変だったのねえ…怪我はない?」
「はい、ちょっとかすり傷できただけですから。おばさまこそ、その手で、大丈夫
 ですか…?」
「そうね、こまかい作業はアカリちゃんにお願いしようかしら。でもその前に…」

 食材の下ごしらえにかからなくちゃね。
 あ、それ私にやらせてくださあい♪
 そうね、やっぱり、アカリちゃんがやらなくちゃね。
お袋は振り上げた肉きり包丁をアカリに手渡した。

うわ。最悪だよ。俺なんでしょんべん漏らしてんの?足なんかがくがくしちゃってさ。
ひっ、とかいって後ずさりしちゃって、でも腰抜けて立てないし。あは。あはは。
目が覚めてシーツ濡れてたら洒落んなんないよな。さっきトイレいったし、うんこまで
漏らしてたりして。あはは。あは。あはははは。
 じゃぁ、いーい? このへんを狙ってね。一気に…
 はーい、じゃ、いきまーす♪

アカリ。なんかお前、すげえ綺麗だな。目えきらきらしちゃってるし。
ごめんな、ほんと。二度と浮気なんかしないからな。
そうだ、目が覚めたら、お前が欲しがってたあの指輪、買ってやるからな。
もうすぐだから、待ってろよな。

「じゃあね、バイバイ、隆弘♪」


アカリが肉きり包丁を俺の首の付け根に当てて、ひゅっと引いた。
ああ、これでやっと
夢から覚め
ら れる、






371357:03/04/18 08:00
ごめん、ねた切れ(´・ω・`)
>>371
ヽ(*゚д゚*)ノ ゴルァ!
373358:03/04/18 08:23
ああっ、>>371さんっ、
も、もしや私が邪魔したせいで、意欲というか勢いというか、
そいじゃいましたか、だったらすみませえーん(><)
374358:03/04/18 08:34
ぐあ。しかも>>358、しょっぱなから、
テレビのスイッチ「 ひ ね る 」だって。。。
いつの時代のテレビだよ!>おれ

お邪魔しました。。。。
375357:03/04/18 09:52
>>358
いやいや、(・ε・)キニシナイ!!で
夜勤してて仕事中にふと思いついたんだけど
これから先が思い浮かばんのです(´・ω・`)ショボーン
376358:03/04/18 14:02
       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
Λ_Λ  |  >>357さん、どんまいー♪          |
( ´∀`)<  じくり練り上げてくらさーい        |
( ΛΛ つ >―――――――――――――――――――‐<
 ( ^Д^) < 夜勤は大変だよなーほんと。        |
 /つつ  |  体壊さずに、でも新作待ってるよん!   |
       \____________________/
>>巡査物語殿
なんと言ってよいのやら。。。
言えるのは、人間万事塞翁が馬です。
あまり過去を悔んだり自分を責めないようにするでつよ。
人が変えられるのは今の自分の気持ちと感じ方、現在だけで過去はどうにも変え
ようがないです。
どんなに悩んでも過去は変りません。
そして重要なのは、悲しむのと気に病んで自分を責めるのは別物ということです。

海とか川とかぼへ〜と眺めるとけっこうよいでつよ。

と、わけのわからぬことを偉そうに言ってみる罠。スマソよ。
ミナサンお疲れ様です。
ひとがどんどん増えてうれしいかぎりです。
他のやろうかどうかお悩み中のみなさんもどしどし投下してください。
『138』

しばらく俺は手を合わせ湘太くんの冥福を祈った。
そして、湘太くんの顔にハンカチをかけ直すと倉庫をあとにした。
足取りも重く、もと来た道を俺は引き返した。

休憩室へと戻る道のりがやけに長く感じる。

身体が。。。心が。。。重い。。。。

加奈さんはさっきは眠っていた。
彼女が目覚めたとき、俺はなんと言えばいいんだ。。。。
夫と息子を同時に亡くしたことをどう告げればいい。
俺はなんと言って詫びればいいのだろう。。。。

休憩室のドアをのろのろと開けると予想外の光景が広がっていた。

。。。な!?

ほんの少し前まで。。。さっきまではなんともなかったのに。。。。

室内では神崎先生と亜弥がひとりの子供について懸命に看病していた。

その子供は激しい痙攣を引き起こしていた。

その子供は。。。。。。。。娘の知沙だった。。。。。。。
『139』

さっきの亜弥の言葉が脳裏に蘇る。

『そのちょっと前までは容態も少し落ち着いてたんです。
でも・・・急にすごい痙攣を起こして・・・・そのまま・・・・』

まさか。。。そんな。。。。

「知沙っ!!」

俺は駆け寄り、娘の手を握った。
すごく熱い。

「知沙、しっかりしろ!」
娘の痙攣はさらに激しくなった。

「神崎先生、娘を! 娘を助けてください!!」

ああ。。。知沙。。。知沙。。。。

娘の目と鼻からは茶色い液体が流れ出し、口からは泡を吹き始めてしまった。

「いかん!」
神崎先生が叫ぶ。

「ああっ・・・湘太ちゃんのときと同じ・・・!
・・・神様っ・・・!」
亜弥が悲痛な声をあげた。
『140』

神よ。。。お願いだ。。。。娘を助けてくれ。。。

俺から娘まで奪わないでくれ。。。。

娘まで失ったら。。。。俺は。。。俺は。。。。

「知沙、がんばるんだ! 知沙!!」

娘が助かるならこの命と引き換えでもかまわない!

神よ。。。神よ。。。娘を助けてくれ!

「知沙!」

娘の目がかすかに開く。

「知沙ちゃん!?」
それを見た亜弥の顔もぱっと輝いた。

だが。。。。開いた娘の目は。。。。白目を剥いていた。。。。。

娘の背中が大きく反りかえった。
いままで最も大きく震え。。。。

そして。。。糸が切れたように突然身体から力が抜けた。。。

「知沙!?」

『141』

それっきり娘は二度と動かなくなった。

神崎先生が心臓マッサージをはじめ手を尽くしてくれたが。。。娘は。。。。。知沙は。。。。

「知沙あぁぁぁぁ・・・ぁぁ・・・・・」

ちくしょう!  ちくしょう!  ちくしょう!

知沙。。。知沙。。。知沙ぁ。。。

俺は。。。俺は妻だけでなく、娘まで。。。娘まで死なせてしまった。。。。

娘まで護れなかった!

ああ。。。香澄。。。。許してくれ。。。。

俺はお前との約束を守れなかった。。。。。。

ああ。。。知沙。。。。苦しかったろう。。。。。

ぱぱを。。。はぱを許してくれ。。。。

お前を救ってやれなかった ぱぱを許してくれ。。。。。。

。。。。知沙。。。。ああ。。。。知沙。。。。。
『142』

神は悲しみに浸ることさえ許さなかった。

突如、また別の子供が激しい痙攣を引き起こしたのだ。

「これはまずいぞ!」
神崎先生が慌ててその子に駆け寄る。
「二人とも手を貸してくれ」

だが、これだけではなかった。

さらにもうひとりの子供がひどく咳き込み。。。。突然嘔吐した。
そして、そのまま痙攣を引き起こしてしまった。

。。。せっかく薬を手に入れたのに。。。。そんな。。。そんな。。。。

間に合わなかったのか。。。。遅すぎたのか。。。。。!?


最初の子供もやはりそのまま死亡してしまった。

もっとはやく病院に向かっていれば。。。。もっとはやく薬を手に入れていれば。。。。

ちくしょう。。。。あんまりだ。。。。あんまりだ。。。。。
『143』

しばらくすると、もうひとりの子供も同じように死んでしまった。。。。


そんな。。。そんな。。。。

なんのために。。。なんのために薬を手に入れたんだ!

命がけで。。。いや。。。命と引き換えにして手に入れた薬なのに!!

荒井も、吉沢さんも、中谷も、みんななんのために死んだんだ!!

みんなの死はなんだったんだ!!

ちくしょう!!!

もう二度と神になど祈らない!

もう二度と神など信じない!

ちくしょう。。。!

娘を返してくれ!! 

子供達を返してくれ!! 

みんなを返してくれ!!

次々と死んでいってしまいます。・゚・(ノД`)・゚・。
救いようがないな・・・・(つд;)
どーなるのか…(つдT)
ああああ(TOT)
でも続き激しく激しく気になるー!!
すごいっです、さんげりあさん。。。
ああ、それに、
PIPさんの、尚也のライバル登場編も、もうすぐのはず。
むにむさんとこっこさんや、名無しさんで投稿された方の
次回作もきっと練りこみちゅー。。。
まちどおしいでつ。。。
3903-620:03/04/18 22:35
無理やり古語を使ってみたけど全然ダメですな。

慣れんことはするもんじゃない(;´Д`)
3913-620:03/04/18 22:35
小生屍鬼なり。名は思い出せず。
本日、散歩と食事を兼ねて外に出でにけり。
荒廃し都会のジャングルを闊歩すると思わぬものにでくわせり。
見事なほどの黒山の群れ、ようよう見れば同胞が外食の最中なり。
数日何も食しておらぬのか皆、かつれ子のごとくしゃぶりつくせり。
かくいう小生も空腹故、少量食せり。美味なり。
されど、人がいなくなると思うと寂しきことかなわず。


小生屍鬼なり。名は覚えておらず。
世の人、俗に我々のことをゾンビと呼称せり。甚だ遺憾なり。
ゾンビなる言葉は米国人の創りし造語、元はブードゥーの受刑者の意なり。
我等の行動から察すれば印度のグール、または仏教における餓鬼と呼称するが至極妥当。
故にゾンビなる呼称は即刻破棄するが真理なり。
かくの如き言を説いても俗世の人、皆ゾンビと呼べり。極めて遺憾。


小生屍鬼なり。名は既に忘れにけり。
我等、筆舌に尽くしがたい程餓えたり。夜もすがら喚くを聞くは耐えがたし。
世俗の人もまた同じ。生者も死者も表裏一体なり。
これも皆、人が自然の摂理に背きし罰なり。
かくなる上は死して大地の礎とならん。



小生屍鬼なり。名はもはや捨てにけり。
世の人、死を恐れるべからず。死もまた生なり。須らく輪廻転生すべし。
>>391 3-620さん

おおおお。こういう切り口も!
なんか、(食べられちゃわなければw)、ちょっと一緒に
酒でも酌み交わしつつ人生について語り明かしたい感じ?
の屍鬼サマでつ。。。(あ、お説教されておわりかも。。。w)
393山崎渉:03/04/19 23:16
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
  ( ・∀・)   | | ガッ
 と    )    | |
   Y /ノ    人
    / )    <  >__Λ∩
  _/し' //. V  ^^ )/
 (_フ彡        /  ←>>393
395山崎渉:03/04/20 01:34
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
396PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/20 01:35
>>巡査物語さん
ネット上でしか接点のない私が言うのは傲慢でしかないですが、気を落さずに。
そして悲しんでください。いま悲しむ事は気持ちを切替える上でも重要です。
私はそうやって親しい友人の死を乗り越えました。

ただ悔やみすぎてネガティブな気持ちにならないよう、気分転換もしてください。
私はそれができなかった為、今でも心にしこりが残っています。


>>389さん
いま書いとります。
明日(今日ですね)の夜にはまとめてあげたいです。
3973-620:03/04/20 01:55
>>巡査物語様
話が重すぎてレスするの避けてましたが気をしっかりもって下さい。
月並みですが俺が言えるのはこれくらいです。

>>392
感想ありがとうございまつ。たまにはこんなゾンビもいるかなと。
いたらいたでそれは嫌だが。

>>PIP様
続キボンヌ。
待ち遠しいです。
>>396
わくわく。。。楽しみにお待ちしていまっす!
3993-620:03/04/20 02:03
ここは〜場末のラーメン屋〜、味も不味いし人も来ないっと〜♪

まま、待てや親父。飯食いに来た客を無碍にするこたねえだろ?
とりあえずラーメン一丁な。だから怒りなさんなって・・・。
分かった、かわりに俺が面白い話をしてやろう。だから機嫌直してくれよ。


あれはだな、今から30年くらい前のことかな。
学生運動が盛んだった頃だよ。親父もそれ世代じゃないかい?
・・・え?実際に参加してたって?中々ワルだな、親父。
だったら知ってるよな、あの組織のこと。
いや、赤軍やよど号じゃなくてあれだよ、あの核派の一派のセクトS。
そーそーそー、そいつらのことだよ。何だ、知ってるじゃないの。
あの頃は全然目立ってなかったけどさ、実はもの凄い逸話があるのよ、あいつら。
これはそのセクトSに参加してたやつ・・・多嶋とでもしておこうか。
そいつから聞いたんだがな・・・

当時は例の山荘事件も解決して運動が撲滅しかけてた時のことなんだが
多嶋のいたセクトSってのが滅茶苦茶過激でな、革命を受け入れない者は
いくら殺しても罪にならない、寧ろ率先して粛清を敢行すべきだっていう思想だったんだ。
まあ、ようするに正真正銘の基地外集団だったわけだ。

そいつらは赤軍が捕まったんで今度は自分達に出番が回ってきたと思い込んだらしくて
赤軍関係者と積極的にコンタクトをとって日本転覆を画策してたんだってな。
そんで警察や首相官邸、皇居に攻撃をかける前段階として山で大規模な戦闘訓練を
行なうことにしたそうな。結果は・・・言わずもがなってとこだ。

あんな密閉された空間で自己批判だの総括だのとおかしなことばっかりやってたもんだから
組織内の内ゲバで壊滅状態になったらしい。
ただな、そいつらが赤軍とかと違うのは脱走者が俺にこのこと教えてくれたやつ以外
一人もいないってところだ。クスリかなんかやってたのかね?
4003-620:03/04/20 02:04
まあ、その頃のセクトSによると
「真に革命戦士たる者は肉体が死してなお、精神で抗い続ける不屈の戦士」
だそうで、リンチで殺しても革命が起きる時になれば必ず復活すると思ってたらしい。
さすがにおかしいとそいつは思ってたんだがある日、信じられないものを見たそうだ。

結構前に総括で殺しちゃった奴がいたんだがその死体が忽然と消えたんだと。
革命戦士云々言ってたリーダーまでおろおろして捜しまくったんだが結局でてこない。
誰かが隠したんだろうってことでまた総括が始まったんわけだ。
その総括に吊るされたのが第一発見者の多嶋で、そんなもん知るわけないから
どう答えればいいか分からずに殴られ続けたんだそうだ。
大体、そいつの経験から言って総括にかけられたらまず間違いなく殺されていたから
もう半泣きになっちゃったらしくて、半ば破れかぶれでこう言ったんだ。

『あいつは真の革命戦士になった。だからどこを捜してもいないいんだ』

当然のことながら誰もそんなこと思っちゃいない。
リーダーが頭にきて多嶋の処刑を執行することにしたらしい。
多嶋も覚悟を決めたんだがそこでその信じられないことが起きたんだ。


突然、地面から手が生えてきて執行役の足を掴んで握りつぶしたそうだ。
それを皮切りにどんどん総括で殺していった奴が姿を見せたんだって。
なんかとんでもない殺し方したのもいて顔面が陥没してたり両腕なかったり
挙句の果てには顔が2、3倍に膨れたのや内臓撒き散らしながら現れたのもいたんだと。

その場にいた全員、半狂乱になって必死に許しを乞う者もいたそうだが
結局は多嶋を残して皆殺しにされたらしい。
何で多嶋だけ助かったかっつーと他の連中盾にして逃げてきたんだ。

で、捜索中の警官に逮捕されて懲役10年程喰らって
娑婆に出てからはサ店のマスターやってるって話だ。
4013-620:03/04/20 02:05
ちなみにそのことをム所にいる間中、何遍も訴えていたが信じてもらえなかったそうだ。
そりゃ、宗教否定してる人間からそんな突拍子もない話聞かされたら
誰だっておかしくなったとしか思えんわな。

でもね、多嶋の話は俺信じてるのよ。いや、本気で。
なんでかって?・・・そうだな、あんたには見せてやってもいいか。
このことは他人に言うなよ・・・ほら。




どう、どう?驚いた?言っとくけどこれ、作り物や玩具じゃないよ。
多嶋が逃げる時に無我夢中で掴んでたものらしいんだが、どうみても
生きてるようにしか見えないよな、この指。動くんだもん。

セクトSが訓練してた山って標高の高い雪山だから今は冷凍されてるかも知れんが
もし暖かくなって雪が解けたりしたら・・・想像したくないねぇ。


ほんじゃま、そろそろ帰るわ。ラーメンうまかったよ、ごっそさん。
また何か面白いネタ仕入れたら飯がてら話にくるからよ。あばよ。
 憂鬱

そのワクチンが開発された時、全世界の人口の実に
9割が、いわゆるゾンビ化していた。
勿論、私もその例外ではない。

あれからもう20年も経つというのに、いまだに妻には
皮肉を言われるのだが、
有志で結成されたワクチン配布部隊がこの町を訪れた時、
私は妻と一緒に逃げ込んだホームセンターの屋上で、
飛び降り自殺をすることも出来ず悲鳴を上げて後ずさる
彼女を捕まえて、腕にかぶりついたところだった…。

おかげでその後さかんになった再生整形外科手術に大金
を支払わされることになったが、まあこれは仕方ない。
篭城後、あれやこれやで結局次々にゾンビ化していた
ホームセンター退避組の仲間とは、今も時々連絡を取って
飲みに行ったりするが、やはりどこの家でも、かみさん族
の外見への拘りはすごいらしいから。

整形外科医はまあ医者だからこうなる前から利に敏かった
わけだが、同じく商魂逞しい化粧品業界も、早速状況に
便乗して、かつて遺体の特殊メイクをやってた連中やハリ
ウッドでSFXを手がけてた連中のノウハウを丸ごとパクって
「アフター・ダイ・イリュージョン」とか何とか大々的に
宣伝し、大儲け。精巧な義眼・義手・義足・車椅子等の
各種人体補完機械を扱うメーカー、それのより高級品版を
扱うバイオロボテクス関連企業も、市場取引正常化後速攻
一部上場している。代わりにダイエット・健康関連業界は
軒並み不振だ。
ま、こういうのはみな時代の趨勢という奴で、状況の変化に
いち早く対応して「波に乗るか乗らないか」が、その業界の
浮沈を決めるのが、古来普遍の法則だが…
正直、私としては、関連会社の倒産が相次ぐ中で真っ先に
その波に乗り生き残りさらに株価は上昇する一方の(株)
ニチャン・フーズに勤めていたことを、幸運だった、と
思い切れないところがある。

なにしろ、例のワクチンで私たちゾンビ化していた人間の
知能はほぼ元通りで、その生前はゆうに及ばず、ワクチン
接種前のあの凶暴な肉食獣と化していた時分の記憶でさえ、
時間経過と共に蘇るのである。

ホームセンターの屋上にそのヘリが降下してきた時、少数の
生き残りたちは、歓声を上げていたように思う。
だが、ヘリから出てきた「待ち望んだ救世主」たちが、皆
(破れもほつれもない小奇麗な揃いの制服を着てはいるものの)
崩れかかった顔に腐肉の匂いを漂わせた、あきらかに「敵の同族」
と判る外見であることに気付くと、歓声はすぐ絶叫に変わり、
それまでぐずぐずしていた者たちも次々に屋上から飛び降りて
いった。

(妻がそう出来なかったのは、この私が腕の肉ではモノ足らずに、
柔らかい腹部にもかぶりつき、内臓を引きずり出したことによる
出血多量で、ぎりぎりセーフのタイミングで死亡していたからだ。
ゾンビ化直後の私ときたら、信じられないことに、空腹の余り
周囲の同胞の腐肉をさえ口にしており、そのためかなおのこと、
妻の肉は、天上の果実の如き美味、だった…)
あの時飛び降りた者で頭部に損傷がなかった者は、今でも高価な
人体補完機械類の出費で苦労している、というが…

だがそれでもまだ、「死んでいただけまし」である。
悲惨だったのは、あの時点で「まともな状態で生き残っていた」
人々だった。一端死んでゾンビ化してからでないとワクチンの効果
がないのだ、と説明されても、そもそも「それ」が嫌で逃げ惑って
いた人間に、納得させるのは難しい。説明半ばで自ら頭を撃ち抜い
て、「究極の死」を選ぶ者も多かったと聞く…。

…まあ、彼らのその心情も、理解できないではない。
時にはこの私だって(事変以降公に認可され完全死因の実に7割強
を占めるようになった、指定病院内での頭部破壊による)「安楽死」
を、望んでしまいそうになることがあるのだから。
特に今日のように、本社人事課からの特命で出張せねばならない
ような日には、そんな気分になって仕方がない。

…いやいや、弱気になってどうする。
家のローンも後10年残っているし、人口調整局に8年連続で申請
してようやく迎えた養子の孝志も、12歳になったとはいえ、人工
授精後新生児ゾンビ化技術が完全でないため著しく成長が遅く、
旧型人類で言えばまだ5,6歳の大きさでしかない。

大丈夫。そのために朝食も抜いてきたではないか。がんばらねば。

自分に活を入れ、直営牧場の門をくぐった。
ブロイラー方式で量産する他社とは一線を画す、『限りなく自然な
環境で育成された、本物の味』を売りにしてきたわが社自慢の育成
牧場は、まさに『楽園』だ。
旧時代の人間が、事情を知らずにタイム・スリップでもしてここを
見たら、エデンの園だとでも思い込みかねない、牧歌的な光景。
透明強化ガラス製の巨大な半球型ドームの中、緑と花に溢れ、美しい
泉や小川があり、つねに新鮮で厳選された果物や食料が供給される
その牧場内では、管理用の制御首輪以外一糸まとわぬ健康そのもの
の家畜たちが、そこここで寝そべったり歩いたりはしゃいだり交尾
したりしている。だが無論、彼らが知恵の木の実を食べることはない。
この楽園のアダムとイブが楽園を追放されるのは、我々の食料となる
時だけだ。
ゾンビ知性化のワクチンは、ゾンビ化ウイルス感染後死んだ者に
投与すれば素晴らしい効果をもたらす「薬」だが、あいにく、
未感染の「旧正常型人類」には、おおむね急速かつ回復不能の痴呆化
をもたらす「毒」でしかなかった。
必死で生き延びた者たちが獲得したのは、その子々孫々までいたる
家畜としての『命』だった。

その皮肉な運命には、私も、深い同情を禁じえない。
だが、私が憂鬱になる本当の原因、それは…
本社から増産の指示が出されたにも関わらず、当牧場では家畜間の
インフルエンザの流行を阻止できなかったという大失策で大幅減産、
責任追及を恐れた工場長は上層部にそれを報告せずに、『偽装人肉』
を出荷していた。世間に漏れでもしたら、わが社の存続にも関わる
大問題である。
工場長の本田とは15年来の付き合いだったが、致し方ない。

「本田君、残念だが、君は首だ」

きっぱりと言い渡し、即座に彼の首をひねる。ごきり。鈍い音がして
首の骨が折れるが、辛いのはこの後だ。私は責任持って彼を食わなけ
ればならないのだ。目玉をえぐり、その脳をかき出して啜りながら、
私は思う。

仲間の肉を食らうなど、実に恥ずべきことだ。
第一、腐肉は不味い。
本当にリストラはされるほうも辛いが、するほうはもっと辛いなあ、と。

407巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/04/20 22:01
ALL
まとめてのレスで、申し訳ございません。
最近は大分落ち着いています、ご心配感謝です。

彼女の写真をパソコンの前に飾って毎日「おはよう!」とか
ブツブツ怪しい、1人会話をしておりますが
まぁ いたって正常にやっています。
須藤巡査と勝るとも劣らない、成さねばならない
仕事があります、まだ私には仕事に対する誇りが残されています。
来月にモスクワに飛びますので、今週中にいくらか
投稿しますね。

408PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/20 23:52
巡査物語さん、お仕事お疲れ様です。
自分の仕事に誇りを持てるということはとても幸せなことですね。

このスレが何がしかの休息や楽しみであればと思っております。


さて、本編は書き進めたのですが、少し別の方向で書きたくなったのでここに上げるのは明日になりそうです。
その代わりというわけではありませんが、今まで書いた文をまとめたのをあげておきます。

http://xtp0001.s3.x-beat.com/cgi-bin/up/source/Sonata_2218zip.html

もしかするとトマトかも?
だったら見て見ぬ振りを願いますね。
409PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/21 21:42
 では三つほどいきます。
 一応本編の続きですが、こういう書き方だともう少し続かないと
訳がわかんないでしょうね。
 ご飯食べたらまた続きに取り掛かりますので。
410PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/21 21:42
 静かにゆっくりと、目蓋を開いた。
 はじめに眼に入ってきたのは白い天井と、痛みを感じるほどの光だった。
 目蓋を閉じても光は容赦なく眼球を刺し貫き、意識を覚醒させる。
 ――ここはどこだ?
 疑問が湧いたが、霞みがかった頭はその答えを出そうとしない。
 全身を覆う倦怠感と熱に吐きそうになる。
 ――そうだ、探さないと。
 探す。でも誰を。
 雪香を。大切な、何よりも大切な、彼女を。
 吐き気をこらえて寝台を降り、部屋の外へとよろけながら出る。
 左右に伸びた白い廊下。薄暗い照明。ときおり響く音。
 壁に手をついて体を支える。
 震える足で一歩、また一歩と歩く。
 どこをどう歩いたか。
 階段を登ったような気も、下りたような気もする。
 ドアをくぐったような気もする。角を曲がったような気もする。
 立ち止まるとすぐに視界に暗く靄がかかるため休憩も出来なかった。
 いつしか足は一つの方向へと向かっていた。
 鉄錆の臭いに惹かれて進んだ廊下に、紅く足跡が刻まれていた。
 小さな足跡。角を曲がりまだ先へと俺をいざなう。
 紅い道標をたどっていく俺の目に、壁に背を預けて座り込む研究者の姿が飛び込んだ。
 研究者のまわりに、赤い池が出来ていた。
 俯くその姿が記憶を刺激する。ただ一人の親友。それが血まみれで倒れている!
 何かが、精神の最奥に閉じ込めたはずの何かが動く。
「良人、大丈夫か!何があった!」
 血に足を滑らせながら、俺は親友の横に屈み声をかけた。
 うなだれた顔がわずかにあがり、俺を見る。
 ――助からない。
 それだけははっきりと分かった。
411PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/21 21:43
 血の気を失い、もとより白かった顔が青ざめている。
 腹部からの出血が特にひどいらしい。
 押さえた手もスボンも白衣も全て同じ色がしみこんでいる。
「良人!しっかりしろ!」
 ありきたりの言葉しか出ない。
 致命傷だ。それが分かる知識と判断力を持っていることが嫌だった。希望を持つことが赦されない。
「……な、おや?」
 焦点のあっていない瞳で俺を見て、つぶやく。ひどく小さい声だった。
「そうだ、おれだ。今すぐ病院にいくぞ!」
 気休めにならない声をかける。
 肩に置いた手から熱が伝わってこない。いったいどれほどこの状態で放っておかれたのか。
「……まにあった。よかっ、た」
 微かに笑みを浮かべて、言葉をつむぐ。もう痛みも無いのだろう。
「……もう、だめ。これ、パスコード」
 血にまみれた手を上げて、何かを渡そうとする。
 セキュリティカード。良人のパーソナルシステムの鍵だ。
 俺が受け取ったことに満足したのか、良人は力を抜いて俺に寄りかかる。
「そこで、まって、る。それ、で。あ、あけて」
 震える手で突き当たりのドアを示す。その手が激しく痙攣した。
「良人!」
 涙が溢れてきた。たった一人の親友。その命が尽きようとする時に俺は何もしてやれない。
「なかないで、なおや。さいご、ぐ、らい、い。……ごめんね」
 良人は俺にもたれかかって小さく最後の息を吐き、そのまま二度と動くことは無かった。
412PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/21 21:43
 訳が分からなかった。
 なぜ俺に謝るのか。なぜここでこんな酷い目にあってまで俺を待っていたのか。
 疑問を感じながら、俺は親友を床に横たえてできるだけ顔をきれいにしてやった。
 他にしてやれることは無かった。
 俺は奥のドアへと力無く視線を向ける。
 胸の奥で何かがざわめくのが感じられた。
 
 
 突き当たりのドア。そこから良人まで紅い道が出来ている。
 おそらくあの足跡の持ち主が良人を殺したのだろう。良人は最後の力でここをロックし、わずかに歩いて力尽きた。
 ここで待っている。
 そう親友は言い残した。
 小さな足跡。待っている。
 個人的な知り合いはこの研究所にあと一人だけしかいない。
 備え付けられたセキュリティシステムにカードを滑らせる前に、深く息を吸う。
 酷く怖かった。
 ここを開ければ、もう後戻りはできない。
 でも開けるしかなかった。
 カードを滑らせる。小さく鍵のはずされる音が、廊下に響いた。
 
 部屋の中央。
 赤い水たまりの中。
 緋の衣を身にまとって。
 彼女は。
 肉を。
 口にしていた。
413PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/21 21:52
以上、回想研究所編途中までです。
一応現在のあの惨劇部分へと話が繋がるように書くつもりですので、
もうちょっと待ってつかあさい。


新人さん(゚∀゚*)ウィホー
メチャクチャ盛り上がってきたこのスレ!
あとは感想があれば!
え?
私?
もちろん感想書きますよ。
読んでメチャクチャ楽しんでますから。
その前に自分の話書かせてね。
そしたら思う存分感想書かせてもらうから。
>>399>>401 3-620さん

んー、思わずフジの『世にも奇妙な物語』(でしたっけ)的な
映像で脳内再現してしまったです。
(最後に「動く指」を取り出してみせる主人公、タモリに切り替わったところで
「地球温暖化が進む昨今、雪山に上った山男が、蘇った『彼ら』に遭遇
 したら、やはりイエティだと思うんでしょうか?云々」
とか、わざと外したコメントでも入れるのかな。。。とか。)

とゆーか、。。。
主人公ってば、んなもん持って歩いちゃいやーーー!(><)

>>PIPさん
作品のまとめ、落とさせていただきましたー。
じくーり楽しませていただきます♪

ところで、研究所編もさすが、イイですねー!
(個人的に、出てくるなり死んでしまった良人(尚也の親友)がツボ
 だったりW 。。。しくしく。)
それに雪香さん。。。美女がゾンビ化すると迫力ありそうですが、
尚也にとっては「何よりも大切な、彼女」なのに。。。ああああ。
言わせて下さい、「PIPさんってば、この焦らし上手!」、と。

。。。あう;なんか、お茶らけた感想になってしまった;すみません。
続き楽しみにしています。皆様がんばってくださいねー。
415むにむ:03/04/22 01:06
すっかりみなさんに負け気味なむにむです。
なんかバイトとかで忙しくて構想すらままならず。

最近落ち着いてきたんで、次回作の構想にはいります。

構想→妄想→現実逃避
416あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/22 08:22
面白い。みんな上手いです。
感想くださったみなさん、ありがとござます。
ちょっと仕事忙しくて前のように頻繁に投稿できませんが、がんばります。

でわ、つづき逝く ヾ( ゚д゚)ノ゛ チク〜
『144』

夜が明けた。。。長い長い夜が。。。。。

ついさっき、さらにまたひとり子供が死んでしまった。

6人いた子供もあとたったひとりを残すだけになってしまった。
発症が早かった分、そして幼く体力がなかった分、子供たちには乗り越えるだけの生命力が
足りなかったらしい。。。。
残るひとりの子供、浜崎 真由美も予断を許さない状態だ。

大人はというと、加奈さんと美貴はだいぶ容態が安定したが、瀬川という女性はかなりの年配
のためか、こちらも死線を彷徨っている。

だが。。。。俺は正直もうすべてがどうでもよくなっていた。
はっきり言って、神崎先生の手伝いで看病をする間も死ぬことばかり考えていた。

妻を失い、俺にとって最後の生きる希望だった娘までが死んだ今、もう生きる理由など。。。希望
などない。

どうやって死のう。。。いつ死のう。。。。そんなことばかり考えていた。

いや、本当はいますぐ死にたいと思っていた。

だが、できなかった。
この状況で即座に死を選ぶことはできなかった。

けじめの問題。。。

それだけが発作的に死ぬ衝動を押し止めていた。
『145』

そう。。。けじめだ。。。

本当は今すぐにでも死んで妻と娘のもとに行きたい。。。。

でも、俺には義務があった。

俺は、やっとのことで手に入れたあの薬で誰が助かるかを見届けなければならなかった。
それが荒井たち3人を結果的に死に追いやった俺の義務。。。。

そして、もうひとつ。。。それは、加奈さんだ。。。。

俺は加奈さんが回復するかを見届けなければならない。
これは友との最後の約束だ。
あいつは俺に加奈さんを頼むと言ったのだから。。。。

そして、もし加奈さんが意識を取り戻したならば。。。俺は荒井と湘太くんの死を彼女に告げる
義務がある。。。。

このけじめだけはつける必要があった。

それが済んだら。。。死のう。。。。

。。。香澄。。。。知沙。。。。もうじき。。。。もうじき俺も行くから。。。。。
『146』

日が暮れた。

瀬川さんも助からなかった。
午後に容態が急変し、死亡してしまったのだ。

加奈さん、美貴の2人はかなり熱も下がり、あとは目覚めを待つだけとなった。
真由美もなんとか峠を越えたようだった。

結局、苦労して手に入れた薬は。。。3人の命を犠牲にして手に入れた薬は、たった3人の
命を救っただけだった。
文字通り命を引き換えたわけだった。

翌朝には加奈さんも目を覚ますだろう。
そうしたら、荒井と湘太くんのことを告げよう。

それで、あとは。。。。。

なんだかひどく疲れた。

もう。。。休みたい。。。。

。。。香澄。。。知沙。。。。明日、俺もそっちに。。。。。。

少しだけ。。。。少しだけ眠ろう。。。。。。
421はずかしいけれど  ◆QF0ypwgJ42 :03/04/22 20:14
「1」

喉の渇きのせいで目が覚めた、起きようとするが脇腹に酷い鈍痛が走る。
「あたたたたっ」声が出てしまう。
昨日しこたま打ちつけたんだっけ・・・・緊張でその時は痛みをそれほど感じなかった
けれど、一晩たつとやっぱりイタいな・・・

軽く呼吸を整え、息を止めながら起きあがる、久しぶりの痛みだ。
まだ生きていることを実感してしまう。

立ち上がって鏡の前に行く、湿布を剥がすとそこは紫色に腫れていた。
完治するまで時間がかかりそうだなと思いながら、コーヒーを湧かす。
テーブルに載せたカセットコンロのお湯が沸くまでに、インスタントコーヒーの
顆粒をコップに入れてしばらくぼーっとしていた。

程なくお湯も沸き、部屋の中にコーヒーの香りが漂った 一口すすり、カップを手に
ベランダに出て行く。
暖かな日差しが降り注ぐ中、町内を一望できる場所から見える景色は代わり映えがない
静かなままだ・・・・電車の音も、車の音も、行き交う人の喧噪もない・・・
ときおり目に入るのは 生ける屍たち・・・それと、彼らによってしゃぶり尽くされた
白骨だけだった。
「当分戻れないな・・・」一言呟いた。
422はずかしいけれど  ◆QF0ypwgJ42 :03/04/22 20:15
「2」

彼にとっては、この騒ぎはありがたいモノであった。
就職先からリストラを言い渡され、再雇用先を探すもなかなか見つからず
残された貯金を食いつぶしながら生活していたが、いよいよ終わりかと
覚悟を決めていたときにそれは始まった。
最初は、マスメディアも暴動だとか騒いでいたが、数日で各放送局は沈黙していった。
あちこちで断末魔の叫び声が聞こえ、車同士のぶつかる音、火災などが多発し
酷い有様だった。
集合住宅に住む彼にとって、自宅に留まることにこだわる気は無かった、火災でも
起きれば大変なことになる・・・
身の回りの衣服や、小物をザックに詰めて非難することにした。

何処に非難するか?最初は学校や、公民館も考えたが 道すがら襲われている人たちを
目の当たりにすると、現実的では無いような気がした。
何度もゾンビ(後でそう呼ばれていると知ったのだが)たちに遭遇したが、無視されているような・・・
何故か彼らも、叫び声や走り去る人の後を追いかけている気がした。
理由など気にしなかった、とにかく何処かにゆかないと・・・
それだけが彼の思考を支配していた。
423はずかしいけれど  ◆QF0ypwgJ42 :03/04/22 20:15
「3」

結局の所、彼は普段通い慣れたホームセンターに歩を進めていた。
車ならすぐでも歩くとなると結構距離があるものだなと、普段の運動不足を呪う、
最近流行の100円ショップも併設されている関係上、食料にも困らないだろうと
判断したからだった。
たぶんかなりの人数が非難しているだろうが、とにかく様子も知りたかった。

ホームセンター付近では入り口付近で、バットやバールを手にゾンビと戦う数人が
視野に入った、数は多くないせいか人間側がかなり優位に見えた。
その中の一人が、こちらを見つけ「無事なのか? 早く中に入れ!」そう叫んだのが
聞こえた!
嬉しくなり、「ああ」と叫び小走りになる・・・
ふと、今まで無視していたゾンビがこちらを向いた様な気がした・・・

中に入ると、怪我をしていないか入念なチェックをされた、後で解った事だが
噛みつかれたりしていると、手遅れで数日中には死亡、新たなるゾンビになるらしい。

食事の配給の後、一息ついて今日ここに来た人たちの自己紹介が始まった。
何処からきて、何処かに向かう用事があるのか?又は此処で頑張るかの決断もさることながら、当ホームセンターでのお約束が語られた。

当初此処で残された人たちは、ある程度うまく行っていたようだが、ものの数日で全滅に近い状態になった経緯があり、その事から学び、厳格な法律があった。
決められたことに従う、イヤなら出て行く・・・単純明快である。
此処に待避してきた人は2日間のお客様期間後、選択を要求されるのだった。
424はずかしいけれど  ◆QF0ypwgJ42 :03/04/22 20:16
「4」

安田は此処にきて、注意深く観察していた。
自分自身は独り身であったため、何処にいても良いのである、しがらみも何もない
孤独感にさいなまれることもない、しいて言うなら感情が欠落しているとよく同僚からは嫌みを言われた、リストラになった理由もその辺だろうと自分では感じていたが・・

取り決めはとても簡単だった、皆に名札が付いており必ず敬称を付けて呼ぶこと。
色の違いで役割が決まっており、頼み事に無駄や不平がでない様になっていた。

赤は戦闘班、最前戦でゾンビと戦う人たち、此処にきたときも玄関先にいた人たちだ。
屋外での作業時の護衛も含まれる。
緑は工作班、フェンスの補修やその他工作物を任される、もちろん戦闘班の支援にも
立つが、二人一組で一体のゾンビに当たるのが特徴だ。
黄色は雑務班、比較的若い子や、年配者がこれに当たる。工作の際道具を手渡したり
整理整頓など本当の雑務である。
ピンクは生活班、食事の段取りや洗濯等の日常の業務だった。
最後に 青、これは補給班である、ホームセンター内に無い物資の補給や付近の探索などに従事するのであった。

基本的には志願制であったが、最前線に従事したり、危険地域に飛び込む赤班や青班への志願を増やすためにもこの二班は、他班の手伝いを免除されていた。

安田は青班を志願した、皆一応に驚いたがここに来るまでに一度も襲われなかったので
なにかあるのだろうと言うことで認められた。
基本的には、青班は3名程で物資の補給にゆくのだが安田はいつも一人でふらりと出かけ、薬局などから薬を調達してきた、ホームセンターでもっとも欠乏するのが薬品であったため、皆からは一目おかれるようになるのも時間がかからなかった。
と言うのも、近辺の薬局関係は既にほとんどモノが無く遠方まで出かけるか、個人店舗を荒らすしか無かったのである。
当然リスクも増え、無事に帰ることが出来ないことも多々あったからである。


425はずかしいけれど  ◆QF0ypwgJ42 :03/04/22 20:16
「5」

安田がホームセンターにきてから既に数週間が過ぎていた、と言ってもこの数字は主観的なもので実際はもっと短いのか長いのか解らなかったが・・・
最近はホームセンターに非難してくる人の割合が増えている、籠城に限界を感じ
一か八かでやってくる家族、それでも大半は傷を受け、命からがらか力尽きるモノも少なくない、若い連中など、やけくそで車ごと突っ込んで来る奴までいた。
二重にこしらえててあるフェンスのおかげで、ゾンビの突入は防げたモノのそれからの数日は赤班と緑班が必死で対応した。むろんこのような非常事態は色分けなど関係なく
皆が協力する共同体が形成されていた。
結束力が強くなるほど、乱暴な方法でやってくる連中との対立が懸念された。
事実この時期に屋外を放浪しながらも生きながらえてる連中は、強盗団に近いモノがありそのうち人対人の戦いが始まるかもしれないと感じていたのだ。

皆から認められ、食事や衣服の心配のない生活は安田にとって天国のような生活だった、口数も少なく控えめな姿勢も皆から受け入れられた。
今までの実生活とまるで正反対の状況である。
腕力も、技術もない、ただゾンビから襲われない・・・・
誰もが謎に感じていたが、本人だけは理由をうすうす感じ始めていた。
それは、一人でいるときだけ・・・集団だと無意味なことも。

次の日、安田は物資の補給にゆくと行ってホームセンターを後にした、ドアを破ったりするための道具や数日分の食料品を携えての出発である。
見送りに出てくれる人たちに軽く挨拶し繁華街に出て行く。
最近はかなり遠方まで出かけることもあるので数日帰らないことも多かった、つまりは
付近の物資に限界がきている証拠でもあったのだ。

426はずかしいけれど  ◆QF0ypwgJ42 :03/04/22 20:17
「6」

そろそろ限界なんだろうか?
呟きながらぶつぶつ歩く、ゾンビどもは捕食時以外は影にいることが多かった、日光による乾燥を嫌がるのだろうか?
色々出歩くたびに発見があった、目の無い奴が的確に人を追いつめることや聞こえそうもないやつが車やバイクの後を追う・・・・
一度落ちていた単車のエンジンをかけて様子を見たこともあるが、ゾンビどもは無視していた、しかし人が乗っていれば反応する。
興奮している脳波に反応するのかもしれない・・・・
普段は無視するくせに、この前の突入騒ぎの時はこちらに向かってきた、確かにその時は
興奮していた気がする。
ふと通りの先にゾンビがいた、最近変化したらしい乾燥も気にせずうろついている
安田は仮説が正しいのかなと何かわくわくした、その瞬間回りの気配が変わった。
あちこちの影からざわめきを感じる、通りの先の奴もこっちを見る
「ヤバイ」冷静にならなくちゃと思うがうまく行かない。
そばに落ちていた自転車に跨り走り出した・・・

それからのことは夢中で覚えていない、記憶にあるのは転倒したことや、なんとか
隠れ家にたどり着いたことだけだった。
ふはははは・・・ゾンビなんぞ私の敵ではない!!
私の敵はアムロだ!!
「7」

安田はコーヒーを飲み終えると、軽くのびをしながら体の痛みを確認する。
動かすたびに鈍痛が走るものの、ヒビや骨折の心配は無いようだ。

一度部屋に戻り、薬箱を取ってくる。あざのある箇所に新しい湿布を貼り
関節にはヒルドイドを塗り込む、ひんやりとした刺激が気持ちいい。
うまい具合に此処には備蓄品が結構あるし、当面の心配はいらない。

今居るこのマンションは、竣工直前の高級高層マンションである、自分が居る
最高階に近いこの場所は、20畳近いベランダまで付いている最高価格帯だった
自分の年収じゃ一生住むことが出来ない事を考えると自然と笑みが湧く。
誰も住んで居ないからゾンビと鉢合わせする心配もないし、空き巣の心配もない
部屋には何もナイのだから(笑

今までに、回数を分け必要な物資をため込んで居たおかげで助かったなと思う。
おかげで一人なら数ヶ月は十分生活できる上に、震災対応型のため最上階には緊急用の
ヘリポートまであるのだから・・・
もっとも電気やガスは無いがそれほど困らなかった、電池やろうそくは十分ある上
夜になれば眠ればいいだけなのだから。
通常の夜間照明には太陽充電式のライトが有ったし、加熱にはカセットコンロや七輪を
利用した、眠る以外することが無いので、痛みが引いてきた五日目頃から体の調子整えるため縄跳びや腕立てなどの、基礎運動を始めた。
完全に痛みが引くまで、その後3日を必要とした。
「8」

ホームセンターの事も気にはなったが、此処に逃げ込むまでの経緯を良く思い出して
考察していた。

今まで自分は感情がない奴だといわれ続けてきた・・・
初めて逃げるときも、別にあわてることもなく冷めて居た気がする・・
物資の補給の時も・・・・
やはりゾンビは脳の興奮状態を感知するのかもしれない、普通はアレが人を捕食するのだから恐怖を感じる、これは間違いない。
じゃぁ車の運転は? 確かに神経を集中して気を配ってるよな・・ましてやそこら中に
乗り捨てられて居る上に何処からゾンビが出てくるか解らない・・・
そう言う意味では、自転車も、単車も同じだ・・・徒歩だけが無意識に歩き安い状況を
作れるわけか・・・
だけど、普通の人ならやはり恐怖が先に立つ、それで位置がばれちゃうんだな・・
そう言えば、ホームセンターでもゾンビの集まるフェンスとそうでない箇所が有った
普段人が近づかない所には奴らもいなかった気がする。

間違いない、人の恐れがゾンビを呼ぶんだ!

望遠鏡を取り出し、あたりを見渡す・・・・
今までにもホームセンター以外にも籠城している場所は知っていた、ピントを合わせて
確認して行く、今日は薄曇りでゾンビもふらふらしてやがるな。
だんだん望遠鏡を持つ手が震える、仮説が正しいのだ、明らかに人のいる場所にゾンビの個体数が多いのである。
その証拠にこのマンションの付近には一体もいない・・・・
久しぶりに大声で笑った。
非難→避難
おお!サンクスですというか はずかし〜
一太郎のばかぁ〜・゚・(ノД`)・゚・
ぜんぜんはずかしくないよ。
続きお願い。
「9」

興奮している自分の思考を、いつもの冷めた状態に持って行くまで又数日必要とした。
今までは、ゾンビにも無視されるんだ・・という曖昧な思考からうって変わり、
あわてれば襲われることを知ってしまったのである。
知らぬが仏とは よく言ったものだと思う。

まだ当分の間籠城していても良かったのだが、総ての物資が無くなってから移動することは避けたかった、それと新しく思いついたことを実践するにあたり、あるモノを手に入れたかったのである。
安田は意識をわざと拡散させるために、童話を朗読しながら目的地に向かった。
頭の中にはその事以外考えず、淡々と道を歩く・・・
いつものように奴らは見向きもしなかった。

一通りのモノを集め終え、自宅(隠れ家)に戻る頃には日が暮れかけていた。
夜間の歩行は危ない、無意識に歩くことが出来ないのだから・・
荷物を降ろし、お湯を沸かす、インスタントラーメンと缶詰の夕食、ホームセンターでの食事が懐かしい・・・皆は心配してるだろうか?
そんな事を考えていたが、疲れは彼を深い眠りに誘った。
「10」

次の日の午後、安田は足取りも軽くホームセンターに向かっていた。
以前と違うところは、頭にフルフェイスのヘルメットを被っている事である。
内部はカーオーディオに使う鉛のシートが貼ってあり、幾分重いのが難点だが
予想通り、興奮してもゾンビは知らん顔だった。

右手には予備のヘルメットを携え、フェンスに近づく・・・
そばには数体のゾンビが、ふらふらしているが気にならない。
二重フェンスの向こうでは二人の女の子が洗濯をしていた、一人は由岐ちゃんといい
安田が気にかけていた子である、脅かしてやろうと更に近づいたとき、耳を疑う言葉が
聞こえてきた。

「ほら、見てごらんよ〜ヘルメット被ったゾンビがいるよ」
「ホントだ、馬鹿だよね アレじゃ食べられないじゃない」
「なんか安田に似てない?」
「ホント、なんか雰囲気あるね〜」「でしょ〜」
「でもさぁ あいつも今頃は白骨かなぁ」
「由岐ちゃん 酷い言い方するね〜 いつも色々貰って喜んでたじゃない」
「あれは演技よ、おだてたらアイツ馬鹿だし なんでもとってきてくれたじゃん
 あんな根暗、好きなわけないじゃん」
「そうだよね、みんなもそう思ってたかもね、青班には必需品以外は頼めないから」
「あの根暗はおだてりゃなんでも持ってきてくれたもんね」
「でもさすがにこれだけ日にちが経ってることは食われたんじゃない、きゃははは」

安田は振り返り、来た道をとぼとぼ歩いていた、涙が頬を伝う・・・
やっぱり誰からも好かれないんだ、このヘルメットを渡せば用無しになる
このことは誰にも知らすまいと心に誓った。
これさえあれば、一人でも生きて行ける・・・・

夕闇が安田を包み込んでいった 。
安田悲惨だな・・・
>>はずかしいけれど殿
乙かれさまでつ。
子供って残酷ですよね。。。。
大人なんていわずもがな。
人間不信になりそう。。。もうだめぽ。。。
『147』

夜が明けた。

俺にとって最後の朝。

しばらくすると亜弥と神崎先生も目を覚まし、美貴が意識を取り戻した。
美貴の回復を喜ぶ亜弥の姿を俺は冷めた目で眺めていた。

昼近くになって加奈さんが、すぐ続いて真由美が目を覚ました。
これで生存者はすべて揃った。
神崎先生、亜弥、美貴、加奈さん、そして真由美。。。俺の他には生き残りはもうこれだけだ。。。

俺はゆっくりと加奈さんに近づいた。

わかってる。。。まだ早い。。。早すぎる。。。。
加奈さんは目を覚ましたばかりじゃないか。
もう少し後にすべきだ。
そんなことはわかりきっている。

でも。。。俺はもう耐えられない。。。。

はやくすべて終わりにしたかった。

「・・・加奈さん・・・・」
「・・・あ・・・勇人さん・・・」
「・・・・・話が・・・・言わなきゃならないことがある・・・・」
「・・・?」
「・・・湘太くんだが・・・・」

俺は。。。全てを告げた。。。。
『148』

加奈さんは呆然とした表情で俺の言葉を聞いていた。

そして突然、崩れ落ちた。
卒倒してしまったのだ。

異変に気づいた神崎先生が、続いて亜弥が駆け寄ってきた。
「いったい、なにがあったんじゃ!?」
「ど、どうしたんですか!?」

俺はなにも答えず、ただ気絶した加奈さんの姿を見ていた。
なにもする気が、なにも言う気がしなかった。

。。。俺は。。。俺は。。。最低だ。。。。。

嫌悪感と脱力感が俺を覆い尽くす。
それと同時に俺は安堵を感じていた。
解放感とでも言った方がいいのかもしれない。

これでもうやるべきことはすべて終わった。。。。

そう。。。終わった。。。。

。。。香澄。。。知沙。。。。。
『149』

俺はそっとその場をあとにした。

階段をゆっくりと上がっていく。

扉を開ける。

屋上だ。

俺は片隅にある黒い小さな山の前に立った。
黒い山。。。。炭の山だ。。。。そう、燃やした遺体の焼け残りの山。。。。
俺はじっとそれを見詰めた。

「・・・香澄、知沙・・・・・・」

どのくらい見ていたのだろう。。。しばらくしてから俺はフェンスに近づいていった。

地上の光景がよく見えた。
あいかわらず大量のゾンビが周辺を徘徊している。
右手の方には横転したワゴンが見えた。
「・・・荒井・・・」

俺はフェンスに手をかけた。

「・・・香澄・・・知沙・・・俺・・・・・俺・・・・・・・」
440むにむ:03/04/24 01:23
【キミと。】

首都郊外のとあるマンションの一室。
ここに俺と奈美子は、立て篭もっていた。
そう、外界に這う死者の群れから。

俺と美奈子は2年目の同棲生活を迎えていた。
大学のサークルで出会った2人は、
卒業後激安アパートの一室
(何やら奇妙な心霊現象が起こるとの噂、しかし2人共霊感が無に等しい)
を借り、けして満足とは言えないがそれなりに幸せな生活を送っていた。
俺には、美奈子がいる。それだけで幸せだった。
共に泣き、共に苦しみ、そして共に、笑う。
当たり前のような生活。それが幸せだった。

しかしそんな生活も長くは続かなかった。

桜の散り始めた頃。突如日本中が恐怖に満ちた。
死者。無数の死者。それが人達を襲い始めた。

もちろんボロアパートには死者から身を守るような設備は無く、
数日で玄関は破られた。
絶望に震え固まっていると、俺たちを救うために
よく世話になっていた隣人の加藤夫婦が駆け寄った。
「キミたちはまだ若いんだ、生き延びてくれ」
そういって加藤夫妻は十数の死者に飛び込んでいった。
俺たちを生かすために。命を投げた。

俺たちは逃げた。アテも無いまま、とにかく安全な場所を探して。
441むにむ:03/04/24 01:24
走っている最中に移る光景は、逃げ惑う人々、そしてそれを「喰う」ゾンビ。
それは凄惨だった。
血と悲鳴とが不協和音を奏で。
それに呼応するがの如く呻く死者。
そんな嘘の様な現実から目をつむり、俺は走った。
美奈子を、美奈子を安全な場所へ。

一帯は住宅街のため大きな施設は無く、
仕方なしに目に留まったマンションに駆け込んだ。

すでに住民は逃げたのか、人の気配は無かった。
しかし人目が無いのが不幸中の幸いとなり、
鍵をかけずに逃げた住民たちの部屋から食料・備品を遠慮なしに頂けた。

「美奈子、ここなら当分大丈夫だ・・・美奈子?」
美奈子は、部屋の角でうつむいたまま。
「美奈子・・・?」
その顔からは、感情が消えていた。

美奈子は、加藤夫妻の無残な死、非現実な光景、街に漂う死臭、悲鳴、血・・・
それらから、ココロを閉ざしてしまった。

彼女は、バイクが好きだった。
といっても、俺の後ろに乗るだけであったが。
「風が気持ちい〜」
バックミラーに映る彼女の笑顔が、俺は好きだった。

その笑顔は、もう無い。
442むにむ:03/04/24 01:24
美奈子がココロを閉ざして、数日。
まともに食事もせず、肉気のあるものを口にすると戻す。
彼女の体は、目に見えて衰弱していた。
このままでは、危険だ。

俺は意を決し、この閉鎖した空間から彼女を連れ出すことにした。
どのみち、食料も長くは持たない。

ポケットを探り、バイクのキーを手に握り締める。
ごく、と生唾を飲み、俺はアパートへ駆けた。

わざわざ逃げ出した我が家に戻るのも馬鹿馬鹿しいが、
唯一の交通手段であるバイクがどうしても欲しかった。

全力で走る。すると、俺の気配を察した死者が、こちらに向かってきた。
「にぐ、にぐ、にぐうぅぅうぅぁああ!!」
狂気の顔を連れ、比較的腐敗していないゾンビ
(恐らく最近死んだ者であろう)が俺を目指して走ってきた。
「っちっきしょ・・・!!」

息をすることも忘れ、無我夢中に走った。
気付くと、フルフェイスのメットをかぶり、愛車にまたがり、火を入れていた。
443むにむ:03/04/24 01:26
前を見る。死者が群れを成し、にじり寄ってきた。
一瞬その光景に圧倒されそうになったが、彼女の顔が浮かび、
死者共に立ち向かうことができた。

立ち向かうといっても、バイクごと突進するだけであったが、
腐敗した体をもつゾンビには絶大な効果が発揮された。
腐った体は衝撃に耐えられず、文字通り吹っ飛ぶ。
フルフェイスのヘルメットはすぐに血を浴び、その血で視界が閉ざされた。
「!!!」
転倒。左腕に鈍く鋭い痛み。
服が裂け、赤い肉が見えていた。
その血臭に、死者は興奮する。
「に にぐぅ・・・!!ぁああぁああ!!」
腐りかけた脚で駆け寄ってくる。思いのほか、速い。

焦る体で車体を起こし、痛む腕でハンドルを握る。
さすがにやつらは、バイクの速度には着いてはこれなかった。
444むにむ:03/04/24 01:27
マンション。美奈子のいる部屋に駆け込む。
「さあ・・・美奈子。行こうか」
そっと微笑む。
「・・・」
依然、無反応。
美奈子の手をとり、バイクに乗せる。
「よし、ちょっと運転、乱暴だけど我慢してくれよ」

ドスン、と低い音を立て、バイクを走らせた。
この付近で大規模な施設といえば、大手ホームセンターか。
あそこなら人も集まっているであろう。
少なくともあのマンションよりは、美奈子も安心できるはずだ。
美奈子、待ってろよ。今、安全な場所に連れてってあげるよ。

誰もいない国道を、ド真ん中路線を走る。
血で汚れたヘルメットを捨て、ノーヘルで走る。
感じる風は、あの頃を思い出させる。
(風が気持ちい〜)
美奈子の声と笑顔が、バックミラーに幻となって映る。
久しぶりに外に出て気分が優れたのか、美奈子の顔も気持ち穏やかに・・・
「・・・い」
美奈子の唇が、少し動いた。
「美奈子?!」
「かぜ・・・きもち、い」
「ああ!気持ちいいなぁ!なあ、もっと元気だせ!
すぐにまたいつも通りの生活に戻れるさ!」
「・・・うん・・・」
美奈子が、また笑顔を見せてくれた。
心の支えの、その笑顔。
嬉しさのあまり思わず薄く涙した。
445むにむ:03/04/24 01:27
「見ろ、ホームセンターだ!もう大丈・・・」

突如、視界が反転した。
一瞬、何がなんだかわからなかった。
軽く頭を振って、見回す。
虚しくタイヤを回している横転したバイク。
気を失い倒れこんだ美奈子。
砕け散ったゾンビのものと思われる肉片。
格好からして、警官であろう。腰のホルスターには拳銃がささっている。
そうか・・・ゾンビが飛び出してきたのか。
「・・・なに?!」
後ろを振り返る。
その視線の先には、ゾンビの、壁。
なんという数だ。
恐らく久しぶりにヒトの臭いを嗅いだのであろう。
周囲のゾンビというゾンビが集まってきている。
「く・・・!」
起き上がろうとする、しかし腕に力が入らない。
左腕を見る。
ありえない方向に曲がっていた。
「折れたか・・・!」
とりあえず体をひねり、美奈子のもとへ。
畜生、センターは目の前だと言うのに。
死者は秒が刻まれるごとに、距離を縮める。
「くそぉ・・・!」
先ほどのゾンビ警官のホルスターから拳銃を抜き取る。
「くそ!くそ!死ねよ!!」
乾いた音が響く。
しかし、やつらにそんなものは効かない。
そうこうしている間に、やつらは目前まで迫っていた。
446むにむ:03/04/24 01:29
拳銃をポケットにしまう。
痛みが残る体に鞭を打ち、美奈子を右腕で抱え、センターへ向かう。
先ほどコンクリートに打ち付けられた体は、とぼとぼと歩くだけしか出来ない。
息が苦しい。アバラが逝ったか。

ダメだ、足が言うことを聞かない。
走れよ!俺の足!センターはもうすぐだろ!
美奈子を死なせる気か!

時間が欲しい。
やつらから少しでも気をそらせれば。
肉だけを欲する、やつらの気を。

ふと左腕を見る。
ぷらぷらと垂れているだけの、腕。

美奈子を降ろし、ポケットの中から拳銃を取り出す。
銃口を、左の肘にあてた。

「っぐああぁああぁああ!!」
足元には俺の左腕が転がっている。
気の遠くなる痛みをこらえられるのは、美奈子。美奈子のため。

「てめぇら、これでも喰ってろおぉおお!」
死者の集団に向かって、腕を投げた。

「にぐ!にぐうぅうう」
やつらは、小さな肉に群がる。
こちらへの注意が浅くなる。

残りの腕で美奈子を抱える。
彼女だけは、守らなければ。
447むにむ:03/04/24 01:29
センター入り口まで後5メートル。
気の遠くなるような、5メートル。

無限とも思える距離を、薄くなりつつある意識で進んだ。

ガシャン!ガシャン!
閉ざされたシャッターを殴る。
「美奈子!美奈子を!!」

脇のドアが開き、中から人が出てくるのを感じた。
すでに視界は無くなっていた。
腕を失った痛み、流れ続ける血。極度の疲労。

もう、あれだな。
そんな風に思った。

大丈夫か!?と男の声が聞こえる。
「あとは、頼みました」
かすれた声でそう呟く。

美奈子・・・よかった、もう安心だ。また、バイクに乗ろう。

最後の瞬間、美奈子の笑顔が見えた。

【キミと。】おわり
448あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/24 14:02
>>はずかしいけれど さん
ちーーともはずかしくないです!いい!!
フルフェイスのメット、こ、購入しよっかな?と一瞬本気で考えちゃった;w
でも、安田さん。。。そこであえてホームセンターに戻ってみれば、全然別の
道も開けたかも、なのになあ。おしいなあ。。。


>>さんげりあ さん
ああああー。まさか、まさかあぁ。。。(;;)
それにしても、さんげりあさんの作るキャラクターは、本当に共感し易くて
引き込まれますねエー。
やっぱ日本人だよなぁ、私たちって・・・としみじみさせてくれるです。
(同じホームセンターモノでも、あめりかんが作るとこういうこまやかな
心情描写より、アクション場面?が主になりそう)

>>むにむ さん

>もう、あれだな。
>そんな風に思った。
この2行にすごくいろんな主人公の気持ちが凝縮されてるようで・・・
恋人を必死で(最後ほんとに命賭けて)守る主人公。。。泣けます(;;)
もっとずっと守りたかったのにね・・・
なべて婦女子は、こういう恋人があらまほしきものかな・・・です。
むにむさんの短編にはいつもそういう、「ちょっとこころに残るフレーズ」?
があって、いいなあ・・・
(あと、「に、にぐう・・・」というゾンビの呟き、妙にリアルでしたー;)

んー、ほんとこのスレ、それぞれの個性が百花繚乱に咲き乱れる感じ、
しかもどの花も魅力的で目が離せませんねーーー♪
とゆーことであげときまっす。
449あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/24 14:21
あのー、それとですね、
図々しいお願いですが、  >>391の 3-620さんに、
あの古風な屍鬼サマと、群れをはぐれた屍犬の、奇妙な友情?物語風の
短編など、書いていただけないかなあっ・・・?と・・・・・
(あっ、もう新作取り掛かってるから無理、なら忘れてくださいーーー;)
犬が群れで行動してリーダー求めるのは、そのほうが捕食に有利だから
だし、もしやゾンビ化してても、そういう本能に近い部分は残ってて、
「老人と犬、屍編」みたいなの、可能じゃないかなっと・・・

そういえば、PIPさんの作品中でも、尚也がガソリンスタンドのおじいさんたち
に助けられた時、神社にいた?犬と心の交流?めいたシーンがありましたね。
あれで、「世の中ゾンビだらけになったら、犬たちはどうなるんだろう・・・」
と考えさせられたわけですが、・・・漫画の「流れ星銀」みたいに犬同士で
群れるのかな。でも飼い主がゾンビ化しちゃったら、やっぱり悲しむんだろうか。

人間ドラマもいいですが、その辺、皆様がどう解釈しているのか、ちょっと
気になるところです。。。
>>448-449
…感想は職人様方の活力の源だけど、
出来ればメール欄に"sage"と入れて頂きたい。
過去色々荒れた経緯があるので、それだけはお願いしたい。

>さんげりあさん
絶妙な所で引きですね… この場合、藤田さんが死を選んだ方が
ハッピーエンドな感じの展開だったこの物語、どう終息するか楽しみです。

>むにむさん
「愛する者を守る為、傷つくこともあるだろう
荒野に血が流れても、明日の平和があればいいのさ」
って歌が好きなんですが、それを地で行く展開。
主人公の「俺」は普通の人間だけどカッコ良いです。

>はずかしいけれどさん
このまま安田がどうするか気になります。
このままだと、いいヤツなのに可哀想すぎるので…
>>450 さん
おお、これは失礼しました、m(__)m
さげ進行推奨、了解です
452あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/24 19:05
>>450
>過去色々荒れた経緯があるので、それだけはお願いしたい。
荒れたね。しつこい荒らしがいたね。

マテリアルとか名無し@錆取り中とか山好きとかだな。

コテハン自体からしてあやしいし、かつ投稿文自体も駄作。
本当にしつこい荒らしだったね。
そうでしたか、ここはとてもいい感じのスレですが、
昔そんなことがあったのですか、なるほど・・・
今後は気をつけますです。
454 ◆6N371.108E :03/04/24 21:50
まぁ気楽に行きましょうw
沢山の方から乾燥が!
本当に有り難うございます。

ご存じの方もおられるかと思いますが私以前のスレでも
書き込みしておりました。
PIP様のご厚意により物語を交錯させても頂きました。

なにぶん素人なので、文法や表現において不備があることは
重々承知での書き込みでしたが、やはり煽りには耐えきれず
離れておりました。
他の掲示板ではちょこちょこ書き込みもしておりましたが
ひょんな事から此処に戻って参りました
皆さんの了解を頂けるなら、続編も・・
などと 厚かましいことを考えておりますが・・・
ああ! またやっても〜た 
乾燥→感想 ですね・゚・(ノД`)・゚・
457PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/24 23:17
はずかしいけれど◆QF0ypwgJ42さん、久方ぶりですね。
また書き込みをしていただけるとのこと、新作含めとてもうれしいです。

誤字に関しては私の場合、なるべく気をつけて、気がつかなかったらまあご愛嬌ですね。
人の脳の構造上、誤りがあっても自動的に訂正して読むことが出来るので、
特に話を作った作者の場合は誤字が見つけにくいものです。

さんげりあさん、なんかクライマックスというか破局の匂いがぁ!
責任感の強い人は自分で全て背負っちゃいます。
そういう時、ふとしたことで道を外れてしまうことがあるんですよね。
なんというか「野良猫」のような強かさというかいいかげんさがある人がまわりにいると、
そう落ち込まなくてもすむんでしょうが、責任感が強い人の周りには頼ってくる人しか集まらないんですよねー。

むにむさん。
アルバイトご苦労様です。
お金があっても出来ないことはありますが、お金があればできることが多いのも事実です。
人間関係やその他いろいろみてネタに出来ることも多いと思いますので、バイトも楽しんでください。

こっこさん。
気がつかないうちにゾンビ化。
これで肉を食べる途中や食べたあとの残り(眼の無い顔とか)で正気に戻ったりするとかなりきついでしょうね。

3-620さん。
短編がすごくお上手ですね。山椒と胡椒はってやつですね。
もしかしてショートショートを書かれてますでしょうか。
話の運びや会話のセンテンスがとても気持ちいい流れですね。
なんといってもアイデアがすごいですね。
こういった隠し味の使い方はもうなるほど!ッてモニタの前で唸らされます。
458PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/24 23:18
「本文が長すぎます」
んなことわかってるわいっ。
畜生!こうなったら二回に分けてやる!

>>402さん。
ゾンビで作られる社会。
落語の三つ目人のようなものでしょうか。
少数と多数の入れ替えものはいろいろと読後感に考えさせられます。
しかし腐っていくとなると整形外科医も大変でしょうね。
化粧品なんかも春の新作で「生前の輝きを」なんていうんでしょうか?

むにむさん。「俺」がとてもすがすがしいですね。
バイクや車は、エンジンというすさまじい力を持つものを自分で操るというとこや
通常では感じられない速度を体感出来るというところが魅力ですね。
彼女が風を感じるたびに、彼の魂は駆動して彼女を見守ってくれるでしょう。

他多数の作者様、いつも楽しんでみてます。
>>350さん、>>358さん、感想は次回書き込ませていただきます。
しかし本当にうれしいなぁ。
続いている方、新しく書いてくれる方、復帰してくれた方。
そして読んでくれている皆さん。
ゾンビって本当に面白いですねぇ。
それでは、さよなら、さよなら、さよなら。
4593-620:03/04/25 01:32
最近、新規参入の方々の勢いに飲まれてスレ進行に着いていけなくなって鬱。
でも活気があって(・∀・)イイ!!

>>402
工場長を喰うのかYO!これならリストラされたほうがマシでつ。
このまま進むと新人類対旧人類の話にもっていけそうな予感。

>>さんげりあ様
この展開だと藤田さん死んでしまうのか?
ああ、漏れが地震ネタを朴ったばかりに酷い目に合わせてしまった。
謝罪はするが賠償はしないニダ。

>>むにむ様
バイトが忙しい中の投下、ご苦労様でつ。
身体を壊さぬよう、肉でも食いながら体力つけましょう。

>>449
感想ありがとうございまつ。
今、仕掛中の作品があるゆえ、しばし待たれよ。
完成したらすぐにそれを題材に創ってみます。

>>はずかしいけれど様
(・∀・)キニシナイ!それよりも続編キボンヌ。
ふられてしまった安田君はどうでるのだろう。
ヘルメットとっちゃうのかな?

>>PIP様
確かに誤字脱字は書いてる最中は中々見つけにくいですな。
漏れは最近になってやっと技を覚えたんでそのおかげでうpが遅れまくってます。
果たして美人ゾンビは尚也にどうされてしまうのか!
「11」

街灯のない暗い国道を、宛てもなくふらふら歩いていた。
以前なら夜間の外出など考えもつかなかったが、今の安田にはどうでも良かった
フェンスにこっそり穴でも開けてやろうかとも思ったが、皆の気持ちを確認した訳じゃない、少なくとも数日前までは仲間だったんだから・・・・

どちらにしても、もう戻る気にはならなかった、救助が来ない限りいずれは物資不足で
自滅か、移動を余儀なくされるだろう、残された時間を奪う権利は無いと思った。

公民館に併設された公園のベンチに腰を掛ける、感情はもう収まっていた。
ゾンビの数が多い、此処にもまだ人が残っているのだろう 深呼吸してからヘルメットを脱ぐ、汗ばんでいた髪の毛が夜風で乾いて行く・・・意味もなく公民館の様子を見ていたが、以前より車の数が減っている、ホームセンターほどモノがあるわけがない。
人間関係や力関係で追い出される人も多いのだろう・・

その点、自分がいた場所は恵まれていたのかもしれない、独裁者などはおらず民主的でもあった、発言力のあるモノは自ずと最前線に赴くのだから当然世代交代も早い、命をかけているからこそ皆も意見を聞くのだから。
しかしながら余所ではどうなのだろうか、力無い者、老人、子供などは足手まとい以外の何者でもない、身寄りを亡くした者たちを追い出したり、脱出のためのおとりに使うことも珍しくないことを、以前迎えた家族連れから聞いたことを思い出していた。

「状況が変わっても役立たずは必要なしか・・・」
呟きながら夜空を見上げる、これからどうするか考えた、どちらにしてもこの近辺の
備蓄品というか残存物資には限りが有りそうだが、小さな商店などにはまだまだ見捨てられたモノがたくさん残っていることは解っている。
こまめに確認、回収すれば、自分一人ぐらいなら後一年ぐらいは十分やっていけそうだ
住み慣れた街から出て行くのも気が進まなかった。

「12」

「帰ろう・・・」
そう呟いて安田は立ち上がった、ヘルメットを被りお尻についた砂を祓う
いつもなら十分すぎるぐらい埃を祓ってから腰掛けるのに・・・
それだけ落胆していたんだな・・・・
マンションに向け夜道の散歩だ、少しでも前向きに考えるようにした。

公民館を通り過ぎようとしたときの事だった、急に回りがざわめきだした
ゾンビたちの向きが一様に変わる、明らかに公民館を向いていた。
何も聞こえない・・・そうか、脳波に反応してるんだ・・・・
月明かりの中、人影が窓から押し出されるのが見えた、何かを哀願してるようにも聞こえる、ものすごい恐怖に違いない! しばらく扉を叩いていたが、屍たちが近づいて行くのに耐えきれずその場から逃げ去る。
小さい体は、うまくゾンビの間をすり抜けてゆくが時間の問題だろう、声を出さぬよう
こらえていても奴らのセンサーは着実に追いつめるのだから。

哀れな生け贄がこちらに向かって走って来る、まだ年端も行かぬ女の子だった。
安田の姿を見て怯んだようだが後ろには集団が着実に迫ってくる、彼女は姿勢を低くして静かにすり抜けようとした。

いつもの安田なら、素知らぬ顔をしただろう、いや、逆に無視しないと自分が危ないのだ興奮している人がそばにいることは即ち自分も危険に晒されるのだから。
だが、彼の目の前にいる少女は、先ほどの自分の様に思えるのだった。
そんな事を考えているうちにも少女は息を殺しそばを通り抜けようとしていた。
「待て!」
少女の体が固まる、「生きたいか?」安田は続けて話しかける、あえて助かりたいか?とは尋ねなかった。
少女は驚いて頭を上げる、涙でくしゃくしゃになった顔をこちらに見せ「うん」と、
鼻をすすりながら答えた。
「13」

安田は、「声を立てずに静かにしているんだぞ」と言いながら予備のヘルメットを
少女に被せた。
その瞬間、ゾンビの群れの歩みが止まった、追跡装置のレーダーから目標がかき消えたのと同じ事なのだ、このレーダーは 痛みや恐怖にもっとも反応するらしい。
その場でゆらゆら立っていたのもつかの間、皆一様に方向を変える、公民館の駐車場に
反応しているようだった。
やはり、この子をおとりにして逃げ出す算段だったのだろう、目をこらすといくつかのグループが車に分乗し出て行こうとしていた。
本来ならば、犠牲者がもう少し時間稼ぎをする所なのだろうが、再度集まりつつあるゾンビの群れに焦っているようだ、焦りの感情も奴らのセンサーは明確に捉える、
久しぶりに回されるセルの音がむなしく響く、やっと一台のエンジンが始動したかと思ったら仲間を見捨てて走り出す、2台目も始動に成功しスキール音を立てて走り出す。
3台目は、むなしくセルの音だけが響いていたがそのうち沈黙した。
あわてて、他の車に乗り換えようとするが、既にゾンビ包囲網は着実に獲物を射程圏内に捕らえていた。
一人の足がもつれ転んだ、待ってくれと叫んでいるようだが誰も振り返らない。
立ち上がろうとしたところにゾンビが覆い被さる。
別の一人は車の中にかろうじて逃げ込むが、そのままの状態であった、見る間に取り囲まれ揺すられている。
後の二人はなんとか公民館に逃げ込めたようだ、仲間を一人わざと転ばせての上だが・・・
安田と少女は一部始終を無言で見つめていたが、向きを変え歩き始めた。
しっかりと手を繋ぎながら・・・・・
「14」

程なく二人は高級マンションのホールに着いた、直接部屋に行こうかと思ったが
少女の風体がかなり汚れている事もあり、風呂に入ることにした。
安田が、このマンションを隠れ家に選んだ理由の一つがこの風呂にあった。
最近はスーパー銭湯なるモノがブームで、あちこちに大型公衆浴場が出来ていた
このマンションはその系列会社が協賛していたため、住民専用の温泉設備があったのである、湧出量はそれほどでもないのだがそこそこの温度と成分のため、余剰分は温泉スタンドによる販売も予定になっていた。

浴場は男女別々であったが、一人で入るのは怖いらしく一緒にはいると言って聞かなかった。
電気が不通なので小型防水ライトの光が唯一の照明であったが、
大人でも子供でもない微妙な肢体は、彼女いない歴=年齢の安田を赤面させるのには
十分であった。
少女は久しぶりのお風呂だったらしく、本当に嬉しそうだった。
そう言えばホームセンターでは、雨水を貯めたドラム缶の五右衛門風呂だったっけ
カラスの行水みたいだったなと笑みが浮かぶ。

久しぶりの長湯の後、二人は脱衣場で新しい服に着替えていた、もっともサイズは
安田のモノしか無いのだが、少女は清潔な匂いの服が嬉しいらしく袖口をひらひらさせて楽しんでいる。
安田は新品衣類を此処にストックしてあった、部屋まで持って上がるより合理的だと考えての結果である。
二人はホールのソファーに腰掛け涼んでいた、お互い手には缶ジュースが握られている。脱衣場に用意しておいたものだ、牛乳が無いのが悲しいなと思うが仕方がない。
安田はそれを飲み干すと「さぁ行こうか」と立ち上がった。
「15」

地獄の登山のあと(階段登り)二人は自宅に着いていた。
室内よりベランダの方が明るいので、そちらで食事の用意をする、胃に負担を掛けるのは良くないだろうと判断し、レトルトの白がゆと、みそ汁、海苔の佃煮という少し寂しい
物だったが、予想に反し少女は大喜びであった。

食後のコーヒーを飲む段階になって、初めて安田は少女に質問を始めた。
断片的な答えだったが、つなぎ合わせると状況は酷いものである。

非難時期は安田と同じようなものであったが、集まった連中が良くなかった。
地元のPTAや町内会の役員が多いせいか、能力でなく権力による管理だったようだ
家族単位の避難者が多く、何かをすると言うのでもなく単に救助を待つだけと言う
状況の中、不足した物資はくじ引きによる抽選での補給部隊にゆだねられた。
結果人員はジリ貧になり、女子供ばかりが残されて行く、更に悪いことに後から
癖のある連中がやって来て、やりたい放題を始めたのである。
年寄り、少年、見た目の悪い娘は暴行後、物資補給時のおとり。
それにも飽きてきて、今度はこの少女に悪さを働こうとしたのだが逆襲され、腹をたてた連中が窓から放り出し、余所に移る為のおとりとしたらしい。

誰も助けてくれなかったのかと尋ねても、残されたのはもう女性ばかりで、自分の身だけを護ることしか考えなくなっていたらしい。

本当にあのホームセンターは、この世の中で唯一法のある場所だったのだと再認識した
願わくば、今日の暴漢が辿り着くことが無いことを祈るのみであった。
>> はずかしいけれど さん
おお! 続編だ! 待ってました!
安田さん、がんばれー!
466402:03/04/25 15:02
 ご感想ありがとうございます。

いい作品を読むと、自分も「何か書きたいな」となるもので・・・
このスレに感動した余り、暴走状態で書いて、練りこみも何もない駄文を
興奮状態のままあっぷ、(ゾンビのセンサーに引っかかりまくりかもw)
後でどっと汗をかいたのですが・・・
皆様には大目に見ていただき感謝しています。

これからも楽しみに拝見させていただきますので、どうぞよろしくお願い
申し上げます。
はずかしいけれどさん最高です。
淡々とした中にもぐいぐい引き込まれて
いく文章力が素晴らしいです。
文章から情景が浮かびます。
これからも楽しみに待ってます。
>>はずかしいけれど殿
完全復帰ですね。
続編はできればそのうちでいいので前作のもキボンヌでつ。
ルリルリ〜 

みなさん、感想ありがとです。
でも実は・・・
やっぱり書く前にネタばらしはあれなので、とりあえず、つづきいきます
『150』

もういいよな。。。。

もう疲れた。。。。

香澄と知沙のいるところに。。。俺も。。。。

もう一度。。。もう一度、香澄と知沙に会いたい。。。

ふたりをもう一度抱きしめたい。。。。

もう。。。やるべきことはない。。。俺はすべてを失った。。。。。

。。。。だから。。。。だから、いいよな。。。。

フェンスを握る手に力が入る。

俺はフェンスに片足をかけた。


。。。痛っ。。。!?

突然、なぜか左肩に鋭い痛みを感じた。

振り向くと、そこには神崎先生がいた。

視界が大きく歪んだ。

俺の意識は闇に包まれた。
『151』

『・・・はじめまして。藤田勇人です』
『あ・・・はじめまして・・・あの・・・斎藤香澄・・です』


『あの・・・香澄ちゃん、よかったら・・・映画観に行かない?
ほら、このあいだ話してたあの映画のチケットが手に入ったんだ
いや、その、嫌ならいいんだけど・・・ど、どうかな・・・』
『い、行きます!』


『・・・香澄ちゃん・・・』
『・・・・』


『香澄、来月の連休に旅行に行こうか』
『ホント?』


『あのさ、香澄』
『ん?』
『・・・・その、なんだ・・・』
『どうしたの?』
『俺と・・・結婚してくれ』
『・・・うん・・・』
『152』

『おめでとうございます、女の子ですよ』

『香澄、がんばったね』
『うん・・・あたし達の子供よ』
『ああ。かわいいなぁ・・・。ママに似たんだな』
『もう・・・あなたったら』
『お前の名前は知沙だ。 知沙・・・俺たちの子供・・・』


『知沙がしゃべった!』
『ね、知沙ちゃん、もう一回言ってみて』
『・・・まぁ・・ま・・・』
『おおっ・・・』
『やった!』
『よし、知沙、今度はぱぱだ。ほら、言ってごらん、パパ だ。さぁ、ほら』
『・・・・・まぁ・・・』
『マじゃなくてパだ、パ。知沙、ほら、パ パ、言ってごらん』
『・・ま・・・ま・・・』
『・・・く゜むぅ・・・・なんでパパって言ってくれないんだ・・・』
『もう、あなた、まだ無理よ』
『・・ちぇ・・・』

。。。。知沙。。。香澄。。。。。逢いたい。。。。逢いたいよ。。。。
というわけで、実は終わりではありません。
藤田勇人の物語「 LOST ホームセンター攻防編 」はまだ続きます。
自殺でエンドと思ってた方、スマソです。
>>472
いや、それでいい!それがBEST!
全ては書き手の貴方の思うままに。
ただ、ここから書くのが難しくなるかもしれないので
ファイトッ!です。
>>さんげりあ様

>ルリルリ〜 
これは、『はずいにゃあ』様の方でつ。
意外な伏兵ですね
神崎先生!
476こっこ:03/04/26 04:00
>>さんげりあ様

うーむ。絶望のズンドコでなお生かそうとする人というのは
良い人なのでしょうか。それともある意味残酷なのでしょうか。
・・・何か考えさせられました。

現在短編制作中です。今度はそれなりに強い人間を主人公にしてみようかと思ってます。
明日の夜にはあげられるかと〜



まあ、誰も待ってはいないだろうけどね。
>>さんげりあさん
おおっとーー?!
 でも続き読める、嬉しいです。。。

>>こっこさん
待ってますとも、勿論!
わぁぁぁ 皆様の励ましの書き込み!
有難う御座います。
作品づくりへの まさに原動力!

私自身、他の作者の皆さんの作品により
触発されています。
感想を述べるということがへたくそなので
あえて、書き込んでいませんが、楽しみに待っています

最初は、前作の続きを書こうかと思ったのですが
思うところがあり、留まっています。

残酷な描写は苦手なので、ゾンビらしく無いかもしれませんが
その辺はご容赦を・・・
しかし、私はロリコンかなぁ(w
479あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/26 05:00
安田イカス。
やっぱり知恵だね。知恵。
頭を使わないと生き延びられない。これ常識。
スマソ。あげちまった。
481あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/26 12:00

  _、_
( , ノ` )    メアド欄は見ない
  \,;  シュボッ
    (),
    |E|

  _、_
( ,_ノ` )y━・~~~ それが俺のスタイル
>>481
2ちゃんねる見るのにカッコつけてどうするのさ(w
「16」

翌朝、いつもより遅く目が覚めた。
夕べはすぐに寝付けなかった、それもそのはず、生まれて初めて母親以外の女性と
同じ布団で眠ったのだから。
いつもはフロアに丸めている寝袋で眠るのだが、風呂に入った日だけはベッドで眠る事に決めていた。
折角綺麗に洗った体や服装なのに、薄汚れた寝袋は悲しい、そう感じた彼は組み立て式の
ベッドとふかふかマットレスを持ち込んでいたのであった。
と言っても、一つ上の階のオープンハウス用のベッドをなんとかこの部屋まで運び込んだのだが・・・
どうせなら、その部屋を利用すれば楽なのだがベランダからの情報収集においては少々
問題があったのである。
彼にとっては、景色よりも町並みの方が大事だったのだから。

当初はベッドを少女に譲り、自分はソファーで眠るつもりだったのだが、これまた
風呂と同じく押し切られる形で一緒に眠る羽目になったのだ。
少しばかり幼いとは言え、洗い上がりの甘いリンスの香りは鼻孔をくすぐった。

一度小さい声で「何もしないの?」と聞こえた気がしたのだが。
意味が分からず、黙っていると、「ううん、いいの・・」そう言って寄り添って来た。
焦る安田を尻目に、少女は可愛い吐息を立てていた・・・

安田は、少女を起こさぬようにそっとベッドから抜け出ると、ベランダで体操を始めた。
朝食は何が良いかな・・・のびをしながら考えていたが、何か思いついたように部屋を出て行った。

三十分ほどして玄関のドアを開けるのと同時に、少女が抱きついてきた。
見れば涙で顔はくしゃくしゃ、「ただいま」と言うと、拗ねた顔で「お帰り」と答えた。「何処に行っていたの?、朝起きたら一人なんだから・・・」
ご機嫌は直りそうもない・・・
「いや、朝食の段取りでね」そう言いながら、フライパンとホットケーキの素を見せた
「わぁ!」声が弾む、ちょっとは機嫌が直ったかな?

「17」

程なく部屋中に、甘い香りが充満していった。
安田自体も久しぶりに嗅ぐ香りは楽しかった、水を入れかき混ぜて焼くだけ。
とても簡単な事だが、後の洗い物を考えると今までは敬遠していた料理?だ。

たっぷりメープルシロップを掛け、オレンジジュースで流し込む、甘さと酸っぱさの
微妙なバランスに舌鼓を打つ。
やはり女の子にはケーキ類が一番か・・・ホームセンターでもそうだったなと思い出す。やはり自分の中では、あそこはとても想い出深い場所なのだ。

「おにいちゃんはずっと此処に住んでるの?」
ホットケーキにフォークを突き刺しながら聞いてくる、これで3枚目だ・・・
少し苦笑いを見せながら「いや、タマにだよ」と返す。
「じゃ、普段は何処にいるの?」
「じつは、ホームセンターで共同生活していたよ」
「!!」
有希は手を止めると「そこに行くの?」と小さく呟いた・・・

そう、少女も「有希」・・漢字こそ違うが、同じ名前である、奇妙な偶然に
安田は何か因縁めいたものを感じていたのだった。

「私、そこには行きたくない・・・おにいちゃんと一緒に此処に住んじゃ駄目?」

最初は有希の意図が分からなかった、だが急に昨夜のベッドでの会話が頭をよぎる
『何もしないの?』 そうか・・・そう言うことか・・・・
「いや、当分此処にいるつもりだ・・」 安田はそう答えることしか出来なかった。

「18」

それから数日が過ぎた、奇妙な同居生活も多少慣れては来たものの、一緒に風呂に入るのだけは慣れそうにない。
有希も安田の照れを知ってか知らずか、甘えた声ですり寄って来るのには参る。
男として認識されてないか・・・少し悲しくもあるというか複雑である。

生活リズムは合わせるようにして貰った、朝日が昇れば目覚め、日が落ちれば眠る
単調なようだが、これが一番健康に良いようなのだ。
それと歯磨きには気を遣った、虫歯になれば直しようが無いのだ。
怪我や打ち身などは、時間が解決してくれる場合がほとんどでも、こればかりは
悪くなる一報なのだから。

ホームセンターに有希をお願いするという当初の計画は挫折した。
自分が戻る為の理由にもと思ってはいたのだが・・・
集団生活の恐怖が体に染みついてしまったのだろう、どの様なところかなど聞こうとは
しなかった。
有希用の衣類の調達にも出かけたかったが、先日の逃げ出した連中の事も気にかかる
出くわすことは無いとは思うが、ある程度の日にちは置きたかった。
逃げ出す様子から、身の回り品は見受けられなかったものの、油断は出来ない。
夜間の脱出だ、そう遠くまでは逃げ切れまい、いまだ付近に潜伏している可能性は大きい。
こちらの備蓄品も再チェックしたが、贅沢さえしなければあと3ヶ月は持ちそうだ。
我ながら良く溜め込んだものだと感心する。
総てを居住区に持ち込んだのではなく、低い階層にとにかく放り込んでいたのが良かったおかげで、正確な在庫は解らなかったのだが、この数日二人がかりで調べ、居住区に
運び上げたのだった。

「19」

安田はいつものように、望遠鏡で辺りの様子をチェックしていた。
物資補給地域の選択のため、ゾンビの密度を確認する行為から、生存者が居そうな場所の探査に切り替えたのである。
当初は個人住宅や比較的小さな建物にも人は居たのだろうが、今は居ないだろうと踏んでいた、食料などではなく『水』の為である。
都会で人が生きて行くためには、飲料水としての水と、排泄物を処理するための水が必要だった。
つまり水洗便所が主流となる現在は二重の要求なのだ。
大きな建物が便利なのは、その屋根が受け持つ面積の雨水である、もっともある程度
屋外で行動でき無ければ、その雨水さえ確保は出来ないが・・・
問題なのは、ここ最近一滴の雨も降っていないことである、現に安田の居住区でさえ
備蓄雨水はそこを付き、今では温泉を運び上げている始末である。
おかげでかなり足腰は鍛えられた、一時は下層に住居を移そうかとも思ったが
低い位置は、居住していることを悟られやすい。
安全の確保のためにはやむ終えまい選択だった。
「人間こそが本当の敵かもな・・・」
やるせないが、これが現実であった。

「水・・・・」動くか・・・
そう呟き、有希に声を掛けた。


「20」

しばらく後、、温泉配達用の給水コンテナ車を安田は運転していた。
マンションの駐車場に止めて在ったものである。
ホームセンターも深刻な水不足に違いないと思った事と、有希の衣類を入手するためだった。
屋上から、車の走りやすいルートは確認していたので、遠回りにはなったものの問題は起きなかった。
ゲート前に来てクラクションを鳴らす。
見張りの黄色班が気づく、見慣れた顔だ、彼は一瞬驚いた顔をしたがすぐに奥に入って行った。
程なくして、赤班、緑班が駆けつけてきた、配置完了後ゲートが開くと同時に安田は
車を滑り込ませた。
当然数体のゾンビも入り込むが、総出で対処しているのであっという間に片が付いた。
車から降りると皆から質問攻めにあった、皆の笑顔が嬉しかった。
体を怪我したので、戻れず隠れていたこと、放浪の末コンテナ車を見つけ温泉を運んできたことを話すと皆は歓声をあげた。
安田の読み通り、水がそこを付き掛けていたのであったらしい。
由岐が笑顔で駆け寄って来る、その顔を見て愕然とした。
隠れ家で待つ有希の笑顔とは、根本的に違っていた。
造り笑顔と心からの笑顔はこうも違うのか・・・・

4トンもの温泉水は当分皆を助けるだろう、と言っても4000リットル 家庭用の
大型浴槽で300リットルは入るのだから、微々たるものである。
備蓄用のドラム缶に移し替えると、再度安田は車を出した。
途中、ユニクロに寄り衣類を調達した、もちろん食料もだが・・・・
有希には自宅で待機するよう指示してある、本人もその方が良いと言って言っていた。

再度、ホームセンターに着いたのは日暮れ前だった。
距離があると思わせるためである、それでも皆は大喜びで迎えてくれた。
その晩の食事はなつかしい物だった、皆はどうしていたのかと口々に尋ねてきたが
適当な冒険談でごまかした。
それよりも気になったのが、駐車場に止まる2台の車だった、それと新しい青班・・・
安田はハタと気づき、顔なじみのリーダーと屋上に出て行った。

「21」

安田の話を聞いた班長は、にわかには信じられないような顔をしていたが、
「そう言えば思い当たるフシがある」そう言ってタバコの煙を吐いた。

本来3人編成の青班であるが彼らの補給の際は、一人減って戻る事が多かったらしい。
確かに遠方までの補給でもあるし、彼らは腕っ節も強そうなので生き残れたのだろうと判断していたらしいのだが ・・・

「実は、女の子たちからも苦情が在ってね」そう言いながら、辺りの気配に注意する。
嫌らしい視線や、行動が良くあるらしい。
「若さ故の行動だと思っていたが自体は深刻だな」
どうすればいい?と聞いてきたので、少なくとも女の子一人になるような行動は避けさせるか、青班に置いては彼らを二人混ぜるのではなく一人にする。
その程度の防衛策しか無いんじゃないかと付け加えた。

奴らもコンテナ車や温泉のことを聞きたがったが、安田は引きこもりを演じた。
回りの人たちも安田の性格を知っていたので「いいから、いいから」と言いながら
彼らを遠ざけてくれた。

翌朝、安田は出かけると言ってホームセンターを後にした。
例の連中は、一緒に行くと言い張ったが、一人で出かけるのが通例で、しかも徒歩だと聞くと黙り込んで付いてこようとはしなかった。

気分は落ち着いていたので、ヘルメットは被らず手に持ち、普通に徒歩で出て行く。
ゾンビは相変わらず無視している、あくまでもこれは荷物だと思わせなければ・・
奴らは口を開けて見送っていた。
489PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/26 19:48
えーとひとまず二つほど書きます。

ただ、今回は非常に内容がきつく、一部の方には特に刺激が強いのでお勧めしません。
お子さんのいらっしゃる方、また妊娠中の方が身内にいる場合ははっきり言って読まないほうがいいです。

読みたくない方用のアンカー>>492

偶然読むのを防ぐためにある程度空欄改行を入れてます。











490PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/26 19:48
 ……どうしよう。どうしたらいいんだ。おれはどうすればいいんだ。
 思考の糸がもつれ、途切れ、ほどけていく。
「……雪香」
 結局出来たのは彼女の名前を呼ぶことだけだった。
 彼女はちらりと俺のほうを向き、なぜか慌てたように手に持った血まみれの肉塊をさらに咀嚼した。
 それはどこか、失敗を見つけられた子供のような、そんな慌て方だった。
 俺はゆっくりと雪香の方へと近寄る。一歩踏み出すごとに彼女はさらに食べる速度を上げていく。
 いったい何を食べているのか。
 口から出そうになった疑問を奥歯で噛み砕いた。
 俺は彼女の様子を窺いながら一歩近づく
「雪香」
 彼女は答えない。
 彼女の足元の血は増えていない。
「雪香」
 彼女はこちらを見ない。
 彼女の体に傷は見当たらない。
「雪香」
 彼女は手元の肉しか気にしていない。
 彼女の瞳は、見えない。
「雪香」
 ようやく彼女は目の前に立った俺の顔を見上げる。
 きれいな、大きな、切れ長の、瞳。
 そこに俺は映っていない。焦点のぼやけた虚ろな穴が俺のほうを向いているだけだ。
「……雪香」
 彼女の姿がぼやける。
 俺は、泣いていた。
491PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/26 19:48
 それ以上呼びかけが無いことで飽きたのか、雪香は小さな唇を開けて、赤く染まった歯を手に持った肉に打ち込む。
 肉。血まみれで小さい。
 その形を認識した瞬間、俺は雪香からそれを取り上げていた。
 手の平に肉と骨の感触。
 雪香の反応は予想通りで、反応以外は予想できなかった。
「――!」
 衝撃。浮遊。激突。落下。
 その全てが同時に起きた。
 胸と背中に走る凄まじい痛み。だが、そんなものは何でもなかった。右手に残っている感触に比べれば、本当に何でもなかった。
 アレは、あの感触は。
 手の平に残るそれが背筋を凍らせる。
 痛みに意識を残し、手の平の記憶を打ち消そうとした。
 激痛が覚醒を促す。呼吸がうまく出来ない。小さく笛を吹くような音が喉から漏れる。
 顔をあげると、紅い道が彼女まで続いているのが見えた。
 良人の作った道。彼の命で描かれた道。
 雪香は奪い返したそれを撫でさすり、言葉をかけていた。
 再度彼女の元へと、紅く粘つく道の上をもがき、這いよる。立ち上がるだけの気力は残っていない。
 半ばまで近づくと、彼女の声が聞き取れた。
「大丈夫?もう痛くない?ごめんね。ごめんね」
 顔を上げて、彼女を仰ぎ見る。
 鍛えた足、何度も愛撫した場所を覆う翳り、引き締まった腰、柔らかい胸、微笑を浮かべた顔。
 あいつは俺など見ていない。何度も噛み、咀嚼し、飲み込んでいったそれしか見ていない。
 悲しみが心を凍てつかせ、絶望が砕く。割れ砕けた心の隙間から空虚な洞が顔をのぞかせ始める。
「ごめんね、パパはママが叱ってあげたからね」
 彼女はさらに手元のそれに謝り、微笑み、抱き寄せる。
 手の平に残った感触。
 それは小さな嬰児のものだった。
492PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/26 19:50
以上です。
気分を害した方がいたら申し訳ないです。
この物語はフィクションであり、現実のいかなる人物、団体、その他とも一切の関係はございません。


では、また続きでお会いしましょう。
493PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/26 20:32
といいながら先が書けたのでまた二つほど。

読みたくない方用アンカー>>496










494PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/26 20:33
 傍らの机に手をかけ、何とか立ち上がる。
 足は震え、一歩ごとに上体が泳ぐ。まっすぐに歩くことなんて到底出来ない。
 それでも俺は、雪香に、ただ一人愛した女性に、近づいていく。
 再度奪われることを恐れたのだろう、雪香は手に持った小さな胎児を一気に飲み込もうとした。
 全身を伸ばし、彼女へと、いや、胎児――俺たちの子供へと手を伸ばす。
 無駄だった。
 届かなかった。
 伸ばした腕は空を掴み、彼女の横に無様に転が――ることは無かった。
 雪香が俺の体を抱きとめ、その勢いのまま床に倒れこむ。
 柔らかい彼女の体。彼女の胸が俺の頭を甘く跳ね返す。
 かつて何度となく繰り返した体勢。
 起き上がろうとした俺の首に彼女は腕を巻いて、俺の動きを封じる。
 赤いベッドの上で、俺たちは互いの瞳を覗き込む。
 雪香は俺の顔をじっと見つめている。
 その瞳はぼやけたままだ。
 俺の瞳には彼女の整った顔が映っている。
 ――くっきりと。
 涙は止まっていた。
 
 どの程度の時間が流れたのか。
「……なおや、どうして、じゃまする、の?」
 たどたどしく途切れがちの言葉。
 俺は思わず視線をそらした。
「おこら、ない、から。い、って」
 違う、違うんだ。俺が君から目をそらしたのはそんなことじゃない。
 君の赤く染まった口を見たくないんだ。
 君の、優しく微笑んでくれた唇が、血で染まっているところなんて見たくない。
495PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/26 20:33
「あ、わかった。あ、ちゃん、たべた、か、のね。でも、だめ。うむの、わたし」
 赤ちゃん、食べたかった。
 産むのは私だから。
「な、おや?」
 俺は、なんて答えたらいい?
「……おこ、ってる。あかちゃ、ん、まもれな、かった、から?」
 俺が怒っている?そんなわけないよ。いつだって君は俺のわがままを微笑んで受け入れてくれた。
 俺だよ、怒られるのは。
「いた、かった、んだよ。おなか、かきま、わされる、の。ごめん、ね」
 痛かった。オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 オナカ、カキマワサレルノ。
 
 赤ちゃん、守れなかった。
 痛かったんだよ。お腹かきまわされるの。
496PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/26 20:36
つー訳で、本日はここまで。

今日と明日が夜勤なので、その間で研究所変は終わらせる予定です。
引いた方、気分が悪くなった方ごめんなさい。

尚也が女性や子供に弱い部分があること、ゾンビを認めないこと、そして何より自分を赦せないことの理由。
それが研究所の出来事です。

さて、また近いうちに。
4973-620:03/04/26 21:16
>>はずかしいけれど様
まさか幼女を出してくるとは!
これは(;´Д`)ハァハァすべきなのか。

>>PIP様
読んでいたら昔、子猫の首を食いちぎった飼い猫のことを
思い出しまつた。(つД`)コワイヨーママン


久々に投下します。書いてる内に何が言いたかったのか
わけ分からんようになってしまったけど。
4983-620:03/04/26 21:17
小生屍鬼なり。名は意味を成さず。
あくる日、散策に出り。しばし歩むと見るも華やかな館を通る。
その刹那、何処からか声ぞ聞こえり。

『人ノ子ヨ、待タレイ』

その声、視界の外より発せられり。小生注視するも見当たらず。
先に進まんとすると、足元にて妙な違和感ぞ感じる。

『待テト言ッテイルノダ、人ノ子ヨ。我ガ意思、理解デキヌカ』

見れば一匹の老犬、小生の足に爪立てり。世に不思議なことありと
苦笑せば、老犬問いかけり。

『何ガ可笑シイカ。ココヨリ先ハ生者ノ領域ニアラズ。
 命惜シクバ即刻タチサルベシ』

「否、小生生者にあらず。既に自然の理に歯向かいし屍鬼なり。
 そこな犬、我が糧になりたくなくばその方こそ去ぬべし」

老犬、我が言説聞くも鼻で笑いし、その様、まるで人のごとし。
その口、止まることを知らず。

『笑止。汝、己ガ身ノ程ヲ知ラザルナリ。我モ黄泉ノ者ナリ。
 汝ノ如キ愚者、ミスミス逃ガスワケニハイカヌ』

「なれば何とする。力ずくで通ろうとも小生、一向に構わぬ」

『不埒ナ、力デ我ヲ捩ジ伏セルト申スカ。無意味ナリ。
 汝ノ動キデ我ヲ捕ラウルハ天地ガ返ロウトモアリエヌ』
4993-620:03/04/26 21:17
老犬、中々に口が達者、さりとて小生、引く言われもなし。
小生、老犬に問う。

「なれば如何すれば道を開けるか。小生、今更戻る道なし。
 事態収拾を求むならば代案だすべし。是、真理なり」

『勝手ヲ抜カスナ。元ハ汝ガ我ガ領地ニ踏ミ入ッタガ故
 起キタコト。汝ガ立去ルガ道理ナリ。我ガ言説ニ異論アリヤナシヤ?』

老犬説き伏せること難し。近年稀に見る曲者なり。
小生、起死回生を狙い、再び問う。

「然り、その方の言い分、至極妥当。さりとて小生、引く気もあらず。
 力ずくで通るも大人気なし。ここは一つ、智慧で勝負すべし」

『ヨカロウ。サスレバ汝、我ガ問イニ答エヨ。
 ソレニ一ツデモ答エタナラバコノ通リノ通行ヲ許ス。ヨイナ?』

「委細承知」

『ソモサン!』

「説破!」

『生キトシ生ケル者ニハ、皆等シク死ガ待テリ。
 サレド我等ハ身体朽チテ尚、死ヲ迎エルコトナシ。
 ナレバ我等ハ生誕以前カラ死者トナル運命デアッタノカ?
 元ヨリ生者ニアラズカ?答エヨ』

小生、面喰らいし。老犬訪ねしは謎解きにあらず。
己が智慧を振り絞り、答えし。
5003-620:03/04/26 21:17
「否、皆生まれしは生者なり。そして死も含めて全てが生なり。
 我等未だその過程を下る最中なり。いずれ安息の時ぞ来る」

『フム・・・然ラバ次ノ問イハドウカ。
 亡者、皆肉ヲ求メ彷徨ウガ何故カ?欲カ?
 モシ欲望デ動クナラバ何故食欲ノミガ取リ沙汰サレル?答エヨ』

「亡者の行動、既に欲の範疇を超越せり。本能に立ち返りしものなり。
 故に食を求むるは自然の摂理なり」

小生、最もらしき言説を語れり。さしもの老犬、言い返す言もなく
押し黙るばかりなり。もはや勝利を確信せり。

「返す言葉もなし、至極当然なり。犬畜生こそ身の程わきまえるべし。
 小生、先の約束通り道を渡れり。異議ありや」

『無論、異議有リ。先ノ答エニテ致命傷ヲ負イタリ。
 先ノ答エニテ汝、亡者ガ肉ヲ求ムルハ自然ノ摂理ト云イケリ。
 サレド我ノ生者カ否カノ問イカケニオイテ
 汝曰ク、「自然の理に歯向いし屍鬼なり」ト答エリ。
 看過デキヌ矛盾ナリ。反論アリヤ?』

小生、窮地に立たされり。老犬、侮蔑の眼差しを向けたり。

『ヨイ。今一度機会ヲ与エル。コレニ答エネバ汝、地獄ノ責メ苦ヲ
 味ワウコト相違ナシ。ヨクヨク考エ、心シテ答エルベシ。
 生者、死者、供ニ己ガ存亡ヲ賭ケ相争エリ。
 我ガ考エニオイテハ生者、遠カラズイズレ死滅セリ。
 生者ヲ滅ボシ、死者ガ世界ヲ支配シタトシテドウナル。
 我等屍鬼ハ一体、何処ヘイクトイウノダ?』
5013-620:03/04/26 21:18
ここに到って小生、答えるべき言葉微塵も思いつかず。
かくの如き問いに正答あらず。老犬、一枚上手なり。
故に小生覚悟を決めたり。

「解らず。小生の負けなり。この身、どうしようと構わぬ」

『汝、諦メゾ早シ。我トテ解ラヌ。問ウテミタダケゾ。
 久々ニ楽シマセテモラッタ。コノ通リ、汝ノ好キニ通ルベシ』

「何故か?その方の勝ちなり。小生、如何様にされても文句は云わぬ」

老犬、再び笑う。その表情、先ほどまでの殺気に満ちた面と違え
見るものを和ませるほど、優しげなり。

『我、先ニ一ツデモ答エタナラバ通行ヲ許スト云ッタ。
 唯ノ戯レナリ。気ニ止メル事ナシ。我、去リヌ』

老犬、道を譲ると館に入りにけり。
中々に人を喰いし犬なれど、今しばらく語りあえぬは残念なり。
小生、道を急ぐに別れを告げるとその場から去りにけり。
老犬もまた再会を約束せり。



小生屍鬼なり、何処へ行くか。本日も当てもなく彷徨えり。

PIP 様 
きっつ〜 というのが素直な感想です。
研究所とか出てくると、アンドロメダとか復活の日なんて想像しちゃうんですよね
SARSの関係で、再度 復活の日を読み直しましたが(w

3−620 様
新境地ですね、この手の言い回しは難しいです。
考えるゾンビですか、哲学的ですね(w
                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:
       `;.       ●  ,; '   
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、          
      ;'            ;:          
       ;:            ';;  

>503
!?
「22」

帰り道のルートは慎重に選んだ、奴らが車で後を付けてきたら厄介である。
わざと車の通れない路地裏を抜け家路に向かう。
奴らが補給部隊なら厄介なのだ、鉢合わせるとも限らない、今後の行動はよりいっそうの注意が必要となった。

自宅に帰って一番最初に行ったことは、温泉スタンドの偽装である。
幸い大きな看板などはなかったので遠目には気づかないが、スタンドは別だった
ボロシートなどで傍目には解らないように覆ってゆく。
有希も重いヘルメットを被りながら奮戦中だ。
奴らのことを聞いたのだから尚更であろう、しかしながらホームセンターに有希を
連れて行かなくて正解だったと思う。
顔をあわせたなら間違いなく騒ぎになっただろう、もっとも有希が声高に訴えてもどれだけの人が信用するか?
恐れていたことが現実になってゆく怖さを実感していた。

それからというものは、物資の調達は精力的に行った、個人商店も順に漁り、食料となりそうな物は確実に回収した。
家で待つ有希には、とにかく勉強をさせた、それも薬草関係。
尽きてしまえばそれで終わるのが医薬品である、安田は本屋で漢方関係や薬草、食用になる植物に関する本を集め、専門知識を重点的に勉強させた。
さすがに育ち盛り、物覚えも良くまるでスポンジが水を吸うように記憶してゆく、
今の段階では、まだこの辺りに住んではいるが、予測し得ない事情で去ることも考えねばならない。
時間が許せばお互い同じ知識を持つのが良いのは解るが、とりあえず専門知識を得る方が有効だろう、万が一自分が死ぬことになっても 知識があれば誰かにすがって生きて行ける。
体力や、腕っ節など使い捨ての消耗品と同じなのだから。

「23」

そう言えば公民館はどうなっただろう?
安田はふと考える、もし公民館の女性たちをホームセンターに連れて行けばどうなるだろうと。
奴らの悪事が明らかにされ、自浄作用になるのでは無いだろうか?
そんな事を考えながら公民館に向かった。
気がかりなのは、以前逃げ込んだ二人組がまだ残っているかどうかだった。
外からでは何人生存しているかは解らない、そこで安田は一計を案じた。
以前、有希が放り出された窓に石つぶてを投げつける、ゾンビが侵入出来る高さではない。
ガラスの割れる音が響き渡ると、誰かが様子をうかがうのが見える。
安田は姿を隠しながら、「何人生き残っているのか」 と拡声器で尋ねると、女性3人、男性2人と答えた。
案の定この前の2人はまだ生きているようだ、そこで安田は「女性より先に救出する、
食料を残すので男は待て」 と、再度回答する。
食料がほとんど無いことは有希に聞いていた、安田は先に食料を窓越しに放り込み安心させる。
玄関付近に現れた避難者は、みな一様にやせこけていたがなんとか歩けそうだった。

ゾンビの隙をかいくぐり、女性を乗せることには成功した。
食料を独占できると、男どもは嫌らしい顔でにやけている、安田は「では、次の便で迎えに来ます」と声を掛け 車を走らせた。
「有難う御座います、ですが実は・・・」女たちが遠慮がちに声を掛けてきたが、安田は小さく遮った。
「有希ちゃんから総て聞いてる・・・あいつらはあそこが墓場だよ」
「・・・・・・有希ちゃん・・生きていたのね」
そう言って彼女たちは涙をこぼした。
程なく、ホームセンターにたどり着く。
安田は素知らぬ顔をして、三人と物資を降ろすとすぐに立ち去った。
これがどのような結果に出るかは解らないが、少なくとも奴らを追放すべき理由にはなるだろう。
いや、そうなって貰わないと困るのである。
これで奴らが古巣の公民館に戻れば最高なのであるが・・・・

二日後、案の定 例の車は公民館にあった。
すぐに逃げ出せるように出入り口に直付けであったが、安田はこれ幸いにと
総てのタイヤを切り裂いた。
507あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/27 03:07
9mmパラ云々とか5.54mmはゾンビには・・・とかウザイくらいの銃器
・兵器が出てくるゾンビ小説があれば・・・昇天( ;´Д`)
508bloom:03/04/27 03:10
>>PIPさん
んーーー。多分性別の差による解釈の相違でしょうが、その善悪は抜きに
して、私にはむしろ、雪香の行動は納得できてしまいますね。。。
(勿論、個人的な感想を一般化してはいけないのですが)
狂気に陥った場合、女性は主に愛憎などの感情表現の激化でそれを
体現化しそうだし、男性は暴力や破壊行為などの身体行動に出そうかな
。。。と思ったりします。
研究所編、ますます目が離せません。

>>3-620さん
あなうれし! リクエストの屍鬼サマと犬編ではありませんか!! 
んんん、すばらしい。スフィンクスとオイディプスの対話のようです。
馥郁と漂う哲学のかほり。。。
この屍鬼サマキャラ、この2作のみじゃ惜しいです。
3-620さんのお気が向かれたら、是非シリーズ物として、また続編を
お願いいたしとうござういます。
>>はずかしいけれどさん
安田さん、自分の魅力に気付いていないけど、こつこつ地道に努力するし、
表現がうまくないだけで、実は結構情も深いし、かめばかむほど味が出る
タイプとでもいうか、。。。こういうひとってリアルで身近にいそうです。
ああ、やっぱり続きが気になるーーー!

どのお話もそれぞれが個性的で魅力有るキャラクター&続きを読まず
にはいられないストーリーテリングの才能に満ち満ちてます。
作者の皆様、ありがとう!
春から初夏にかけては、あったかくなり油断して風邪など引きがち、
お体に気をつけて無理のないように心がけつつ、これからもどんどん
作品発表なさって、楽しませて下さいねー!
511むにむ:03/04/27 07:49
不死/生命矛盾】#1
ここは、ある田舎の山奥に存在するムラサメ研究所。
この施設は、5年ほど前に発生したゾンビ騒動にて採取した、
死者を活動させるウィルスの研究を行う施設である。

もちろん国を挙げてその存在は隠蔽されている。
こんな物騒なウィルスの研究をしているとなれば、
核保有並み、いやそれ以上の騒ぎになる。
兵に使えば、不死の兵隊が完成することになる。
そんな事態になる前に、研究を終了させること・・・
これがムラサメ研究所の課題である。

512むにむ:03/04/27 07:50
そして、この研究によって3つの試薬が完成した。
ひとつは、遺伝子とES細胞、テロメアの研究のノウハウを生かした、
欠損した部位を驚異的な速度で再生させることの出来る体になる薬。
しかし、心臓などが停止した場合は死をむかえる。

ふたつめは、上記の逆、心臓が停止しても活動が可能になる薬。
ただし上記の薬のような体の再生効果はない。
一番ゾンビに近い薬である。

最後は、上の二つを融合させたもの・・・
心臓が停止しても活動可能、かつ再生機能も備えた体にする薬。
更にまだ副作用が見つかっていない。
しかし見つかっていないことと無いということは別である、いまだ危険な薬。

その3つの薬のテストベッドになるため、
研究員が3人、小さな個室に呼ばれていた。

窓際に立つ中年の男性が、3人を見る。
赤茶の少し髪の長い青年、女子研究員、背の高い黒髪の青年。
「阿桐(あぎり)カツヤ、藤田アキ、朝倉リョウタ」
白い短髪と髭を生やした男性・・・このプロジェクトの主任である。
彼が、厚い口を開く。
「君たち3人に、この3つの試薬の実験台になってもらう」
513むにむ:03/04/27 07:51
#2:阿桐1
僕は阿桐カツヤ。
「君たち3人に、この3つの試薬の実験台になってもらう」
この主任の台詞に、僕は愕然とした。
なぜ、僕が?
研究に加わっていて言うのも何だが、こんな薬は無いほうがいい。

18の頃ゾンビ騒動を身をもって味わったが、
死者はこの世にいてはならない存在だ。
彼らは人格を無くし、体が朽ち果てるまで肉を求めて彷徨う。
人間以下、いや下等動物の存在だ。
下等動物はいろいろなものを生む、作る。
しかしゾンビは何も作らない。
生むのは、恐怖と絶望だけ。
そんなゾンビと同類の力を身につけるなど、とても嫌だ。

僕は、人としていたい。
514むにむ:03/04/27 07:52
#2:藤田1
私は、藤田アキ。
「君たち3人に、この3つの試薬の実験台になってもらう」
主任のその言葉に、私は戸惑った。
以前から臨床実験を行うとして、全研究員の血液サンプルを採取していたけど、
まさか私が選ばれるなんて。

正直、私は怖い。
こんな薬を飲んだら、私はどうなるんだろう。
それは、人間を捨てること。
生き物って、生まれ、育ち、子を産み、そして死んでいくモノ。
そのレールから外れたモノは、一体どうなるの?
まったく先が見えない。真っ暗すぎて、想像もつかない。

私は、ゾンビになっちゃうの?
515むにむ:03/04/27 07:54
#2:朝倉1
俺は、朝倉リョウタ。
「君たち3人に、この3つの試薬の実験台になってもらう」
耳に入ったこの言葉に、俺は心の躍動を隠せなかった。
俺は不死になる。死なない。死ななくていい。
なんということだ。夢に見た不死の体に、俺がなれる。

5年前はゾンビが憎くて仕方がなかった。
なぜ貴様らの様な出来損ないが、俺を超えているのだ。
貴様らは死んでいるんだ。死者は土の中で眠っているのが道理だろう。
腐った人形以下のモノが、俺を恐怖させるとは。

騒動が落ち着いた後、俺はすぐさまこのプロジェクトに参加した。
俺は必死になって研究した。
あの不死の力を、すぐにでも解明して、この手にしてやる。

サンプルを盗むまでもなく、サンプルを手に入れられる。
俺は、このつまらない、くだらない人生を初めて嬉しく思った。
516むにむ:03/04/27 07:55
#3
部屋を出る。白い廊下。
手には心臓が停止していても活動する薬が入ったケース。
主任の言葉が脳裏を巡る。
「この薬を、一日一回、注射しろ。
そして、毎日を過ごす。しばらくの間は研究に参加せず、
身体状態のデータを測定するだけだ。期間は、1ヶ月」

僕は、一ヶ月後にはゾンビと化しているのか?
そして一ヵ月後には効能を試すために心臓を抜かれるのか?
あの、心臓を潰されてもなお動き続けた実験体のサルのように。
怖い、気持ち悪い、逃げ出したい。
なぜこんなプロジェクトに参加してしまったのだろう。
ちょっと頭が良かっただけで、大学から選抜され、承諾した。
気分が優れない研究だけど、給料が良かったから、研究員になって。
今、あの時の判断を悔いている。
517むにむ:03/04/27 07:57

「阿桐」
朝倉が、声をかけてきた。
その声は歓喜のものか。
彼はあまり好きではない。
短い黒髪と鋭い目つきに、どこか闇の様な部分を持っている。
その空気が。僕には怖かった。

そんな僕をよそに、彼は話を続ける。
「ああ、楽しみだな。俺は不死になれるんだ。
お前も、楽しみだろう?死という恐怖から開放されるんだ」

「そうかな・・・僕は、怖い。」

彼は軽く肩をすくめると、苦笑した。
「何を怖がるんだ。栄光なことだぜ?
さあ、早くクスリを打たないとな。
今日から俺は、永遠の命を手に入れるんだ!」
彼は、笑いながら曲がり角へ消えていった。
518むにむ:03/04/27 07:58
ふと、藤田さんを見た。
彼女は、僕と同期で研究員となった人だ。
ショートの栗色の髪に、大きな目。
けして飛び切りかわいいわけでもないが、気になっている。

彼女は下を向いたまま、黙っている。
「大丈夫?」
そんなありきたりの言葉をかけた。
藤田さんが透き通った声でぽつりと呟く。
「私、怖い・・・副作用も解明されていないような
、恐ろしい効能の薬を使わなきゃいけないなんて」
そうだ。こんな危険な薬を使う。
ましてや、女の子。心理的な不安は男とは比べ物にならないだろう。

自分も同じ不安を抱いているが、ここは元気付けなければ。
「大丈夫だよ、慎重な血液検査で相性を調べたし、
散々マウスやチンパンジーでテストしたんだ。恐れることは何も無いよ。
僕たちだって、この手で参加したんだ」
「阿桐さんは、わかってない。
副作用より、死ななくなるのが怖いの。
人間を捨てるんだよ?
みんないつか死んでゆく。それが普通なの。
でも、私はその普通から外れちゃうんだよ?
取り残される、それが一番怖いの」
そういうと彼女は、廊下を進んでいった。

彼女の厳しい言葉と、「取り残される恐怖」に、眩暈を覚えた。
519むにむ:03/04/27 07:59
追記。
#3からは、阿桐視点で進んでいきます。
かなりdデル設定かもしんないかもしれない。
>>むにむ殿
おおっ!? 長編でつか!?
おもしろそうな設定、つづき楽しみにしてますです。
不死に憧れる者、不死を怖れる者。。。イイでつ。

それにしてもアッという間に500を越えて、もう520。
この分だとGW後はもう次スレ建立が必要ですね。
もしかするとGW中かな?

でわ、つづき。
『153』

「・・ぅ・・・・」

ここは?
ここはどこだ?
俺はどうなった?

たしか屋上に行って。。。そこで。。。

白い天井が視界に入った。
見覚えがある。
視線を動かす。

やはりそうだ。。。ここは休憩室だ。
片隅で加奈さんが横になっている。

俺は身体を起こした。
すこしクラクラする。

俺のすぐ側には神崎先生が座っていた。
「そろそろ目を覚ます頃だと思っとったよ」
「先生・・・」
「すまんな、君に睡眠薬を射ってしまったんじゃよ」

。。。睡眠薬。。。。
『154』

「あまりに君の様子がおかしかったんでな。
おまけに突然部屋から姿を消した。
もしやと思い、慌てて探したよ。
案の定、屋上で君の姿を見つけたときには・・・・な・・・。
言わんでも君自身が一番よくわかっているじゃろう?
わしの腕力では止められん。
だから、悪いが睡眠薬を使わせてもらったんじゃ」
「・・・・・」

「どうしても君に言っておきたいことがあってな・・・」

。。。俺は死に損ねたのか。。。。止めてなど欲しくなかったのに。。。。。

神崎先生はまっすぐ俺の目を見据えながら話を続けた。

「君の気持ちはよくわかる。 
無理もないことじゃと思う。
だがの、キミが全てを諦め死を選ぶ・・・そんなことを望む者はひとりもおらんはずじゃ。
・・・吉沢くんも、荒井くんも・・・そして、キミの奥さんも・・・」
「・・・・・・」

「諦めることならいつでもできる。
そんなことは死んでからでいいじゃないか。
とにかく生きてるうちはたとえどんなことがあっても、どんなに辛くとも、諦めず、絶望せず、
足掻いて足掻いて最後まで足掻きまくって、それでも駄目で死んじまったら、そこではじめ
て諦めればいいじゃないか。
キミの親友も、キミの奥さんも、娘さんもそうじゃったろう・・・
みんな最後まで必死に生きた・・・」
『155』

わかってる。。。わかってる。。。ただの逃避だってことなんて。。。。でも。。。。

。。。。でも。。。俺は。。。俺は。。。もう。。。。。


「キミにしかできないことがあるというのに・・・キミを必要とする者が今まだここにいるという
のに・・・それでも死を選ぶことなど間違っている・・・ワシはそう思う・・・。
・・・・すくなくともワシはこれまでの人生そう思い、生きてきた・・・」

「どうしても、これだけは言っておきたかったんじゃ・・・。
あとはキミの意思を尊重するよ・・・たとえ君の選ぶ道がなんであれ・・・な・・・
無茶なことをしてすまんかった・・・」

そして神崎先生は俺に頭を下げた。

。。。先生。。。。。


ガチャ。。。

ふいにドアが開き、休憩室に3人の人間、亜弥と美貴、そして真由美が入ってきた。
『156』

「藤田さん!」
亜弥が側にやって来た。
「心配したんですよ、大丈夫ですか?」

続いて美貴が。
「おかげでワタシ、だいぶよくなりました。ありがとうございました。
藤田さんは本当に命の恩人です。
ここに逃げ込んだときといい、今回といい、なんとお礼を言ったらいいか・・・」
美貴は深々と頭をさげた。

真由美が亜弥の後ろからひょこっと顔を出した。

「おぢさん、おくすりありがとう。
まゆもね、よくなったよ」
そう言って真由美はちょこんとお辞儀した。

「おねーちゃんたちとね、ごはんのよういをしてたんだよ」
そう言って真由美は手にしていた袋から食料を出した。

「はい、これ、おぢさんのぶんだよ。
これたべて、げんきだして」
真由美はにこりと笑った。

不意に視界が歪んだ。

「おぢさん、だいじょうぶ? どうしてないてるの?」

泣いてる? 俺が??

頬に手をやると。。。涙で濡れていた。。。。
『157』

俺は知らぬ間に泣いていた。

涙などとうに枯れ果てたと思っていたのに。。。。

もう二度と泣くことなどないと思っていたのに。。。。

ごめんよ。。。知沙。。。。。。

すまない。。。。香澄。。。。。。

俺はまだそっちに行けないようだ。。。。。

まだやらなきゃならないことがあるんだ。。。。。。

まだ護るべき者たちがここにいるんだ。。。。。。。

だから。。。。。もうしばらく待っていてくれ。。。。。。

。。。香澄。。。知沙。。。。。。。






そして、ひと月が過ぎた。


てことで、次回から新章でつ。
作者の皆様方、お疲れ様でございます。

過去の投稿作品集を作ってしまいました。
http://www.geocities.co.jp/Bookend/4265/
こちらに集積いたしました。ご覧いただければ幸いです。

対象は、PART3までです。PART4は進行中の為、割愛しました。

尚、作者様方にお願い。
 間違い、区切りが違う等あればご指摘願います。
 本件に関しては、前スレがまだ残ってますので、前スレ
http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1036704369/l50
にてお願い致します。前スレを使い切りましょう。
528あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/27 22:08
PIPさん、さんげりあさん、3ー620さん、FDーRさん、こっこさん、むにむさん、その他の名無しさん…あんた等の頭の中身はどうなってんだ!?
最高に面白過ぎる!!2ちゃんにここまでの良スレがあるとは思わなかった…
皆頑張れ!!
529むにむ:03/04/27 22:53
>>さんげりあさん
主人公は守れなかったかけがえの無いものばかりだけど、
守ることの出来たかけがえの無いものもある・・・

神崎さぁあぁぁん・゜・(ノД`)・゜・

>>527
お疲れ様です!待ちわびてましたw
改めてHPでみなさんの作品を読み、自分のものを読み返すと
とてつもなくしにたくにります

>>528
どうもです。励ましの言葉はほんとにうれしいなあ。
俺の頭の中は実は・・・       なんです。
530むにむ:03/04/27 22:54
>>さんげりあさん
主人公は守れなかったかけがえの無いものばかりだけど、
守ることの出来たかけがえの無いものもある・・・

神崎さぁあぁぁん・゜・(ノД`)・゜・

>>527
お疲れ様です!待ちわびてましたw
改めてHPでみなさんの作品を読み、自分のものを読み返すと
とてつもなくしにたくにります

>>528
どうもです。励ましの言葉はほんとにうれしいなあ。
俺の頭の中は実は・・・       なんです。
531むにむ:03/04/27 22:55
2重スマソ
こっこさん

励ましなんつーものじゃなく。
とにかく、欲しいんですよ。続きが!!!!!!
お願いします。
だめだよ。
こっこさん、むにむさん。。。
どちらの名作者でも、とにかく、私は、「間違えた」。
なんつーか。
周囲の言うとおり役立たずのくず、稼げないくせに、思いやってくれ、とかいう
ろくでなし、で。肉,食うくらいならどんなことしても永久死するよなーと思っても
信じてもらえない人生ですが。
同じ泣くなら、ここの,血肉削った作品読んで泣きたいです。

皆様、ごめんなさい。
ありがとう。
自分を誇りにおもってください。
だいじょうぶ。
ごめんなさいありがとう
ありがとうありがとありがと
535sage:03/04/28 07:12
みなさんの小説、楽しんで読ませていただいています。
読んでいると自分でも書きたくなってしまいますね
いつか書きたいと思います。

私的に「さんげりあ」さんのお話が
一区切りつきましたし、
「はずかしいけれど」さんの続きが気になっていますねー
これからも楽しみにしております
安田イカス。
根暗の主人公は感情移入しやすいなw
537あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/04/28 09:01
>>527
お疲れ様です。
ところで、向こうには掲示板とか設置しないのですか?
ほしゅ
539FD-R ◆6N371.108E :03/04/28 22:50
>>527
うひゃーオツカレー!
懐かしい作品もあって本当に良かったです!

>>533
元気だしましょう。。。

⊃。Д。)⊃
面白い!
ところで皆さん、どうやって書いてます?
ワードかなんかでまとめて書いてからコピペですか?
541むにむ:03/04/29 07:55
メモ帳に適当なところまで書いてアップしてます。
>>名無し@錆取り中殿
激しくおつかれさまです。
それにしても、さすがに大量にありますね。

前にも書いた記憶があるのですが、ちなみに漏れは無題メールを作成して
そこにその日の投下分を書いて、あとはコピペというやり方です。

でわ、つづきです。
『158』

・・・ズガッ!

俺の手を離れたそれは空を切り裂き、標的のマネキンの眉間に深々と突き刺さった。

。。。よし!

これで命中率は軽く8割以上、たぶん約9割といったところになった。

俺はマネキンに近づき、それ、ハンマーを引き抜いた。

あれから4週間、俺は鍛錬と、このハンマー=金槌を的に命中させる練習をひたすら続けていた。

もうここには6人の生存者しかいない。
そのうちまともに戦闘ができるのは俺ひとりしかいない。
そのため俺はとにかくひたすらトレーニングをし、それと同時にバット以外に武器となる物を探していた。
できれば飛び道具がよかった。
俺ひとりで戦うには敵の数があまりに多すぎるからだ。

最初、俺は売り場にあったナイフと包丁に目をつけ、投擲練習をした。
いわゆる投げナイフだ。
だが、それ専用の物でないためうまくいかなかった。
バランスが悪く、なかなか的に当たらないのだ。
そして破壊力の面でも問題だった。
試しに2階の窓からゾンビの頭部目掛けて投げつけたてみたが深く刺さらないため、一体も殺すことが
できなかった。
刃先の近くに重しをつけてバランスを取ってみたりもしたが、やはりイマイチだった。
『159』

そんなときふと目に付いたのがハンマー、いわゆる金槌だった。
これはなかなかに投げやすく、また威力も申し分なかった。
こちらも試しに2階の窓からゾンビの頭部に投げつけてみた。

結果は上々、当たる場所が顔面の場合はいまひとつだったが、眉間やこめかみなどの部位の
場合はゾンビは崩れ落ち、活動を停止した。
うまく当てればゾンビを殺せるのだ。

俺はこの結果に満足し、投げハンマーの練習を開始した。
これに習熟したならば、相当な戦力アップになる。
遠距離でハンマー、近距離でバット、これなら俺ひとりでもかなりの数のゾンビと戦えるはずだ。

俺は朝から晩まで毎日毎日トレーニングと練習を積み重ねた。
体力と筋力のアップ、そしてバットとハンマーを自在に操れるようになること、これが今の俺にできる
精一杯のことだった。
そして、俺がこれでどれだけ強くなれるかが直接ここにいる皆の生存率にかかわることは明らかだっ
た。
俺の強さがそのまま皆の生命線となる。
だから俺は睡眠と食事の時間以外はすべて鍛錬に費やした。

俺は焦っていた。
まともに戦えるのが俺ひとりだからというだけではない。
おまけに左手がまだ回復しきっていない。
それもある。
だが、それ以上に、もう時間がないからだ。

なぜなら。。。もう。。。食料が残り少ないのだ。。。。。
しばらく説明調のかったるい展開になりそう。。。鬱。。。
「24」

今日も朝から良い天気だ、空気も澄んでいてかなり遠くまで見渡せる。
地面の至る所からは、緑の草木が精力的に繁殖している。
人の手が入らなくなった公園、グラウンド、アスファルトの亀裂からも・・・・

ヘルメットのおかげで、屋外作業時における生存率は、かなりの確率で保証されている、
だからといって気を抜いているわけではないのだが、なぜか充足感が足りない気がした。
現実の社会で言うなら、株で大もうけした平凡なサラリーマンだろうか。
偶然手持ちの株が大化けし、生活に困らなくなったとか・・・・そんな感じだ。

以前は、死と隣り合わせという緊張感があったが今はそれも薄れている。
自分の状況を護るため危険を承知で、ひたすら歩き、担ぎ、まさにアリのごとく物資の
補給をしていたのに、今では外を眺め、温泉に入り、眠る・・・
この繰り返しである。
脳波とゾンビの反応についても、広く知らせることにより生き残れる人が増え、
街に残るゾンビたちを駆逐も出来るだろう事は想像に難くないが、誰しもが善人ではない。
ほんの些細な欲望から、持つものと虐げられる者に別れることは容易に予測できた。
だからといって自分がその頂点に立とうとは思わなかったし、興味もなかった。

時間が総てを解決してくれるかもしれない・・・最近はそんな風に考え始めていた。
ただ、人間という者はやはり娯楽というか、気を紛らわせることも必要である。
食事の不安や、命の危険な状況であればそのようなことは考えつきもしないのだろうが
今の生活はどちらも満たされているのだから。
攻撃的な性格なら、ゾンビを処理してゆくなどの破壊行為によるストレス発散もありかもしれない、
しかしながら安田はどちらかというと引きこもり派なのだ。
イザという事を想定して、かなりの数を始末したが、感想は『疲れた』この一言であった。


「25」

安田の興味は、破壊よりもむしろ生産にあった。
実際はマンションの緑地部分に野菜などを植えたかったのだが、そのようなことをすれば居住してることがばれてしまう。
入浴でさえ、必ず夜間をえらんでいたのだから・・・

安田本人は、まだまだこの状況でも精神的にも耐えることは出来そうだったが、問題は
有希の方だった。
12歳という年齢は、まだまだ遊びたい盛りのはずだ。
図鑑と首っ引きの生活にも飽きて来ていることは傍目にも見て解る、しかし共同生活は
かたくなに拒否反応を示した。
新しい刺激が必要だと思い、計画を練ることにした。

今住んでいるこの町からは、海も山もほぼ同じような距離にあった、と言っても当然
車を使用しなければならない距離ではあるがどちらでも選択可能である。
薬草の勉強もしていることだし最初は山にしようかと思ったが、よくよく考えればそれは不適切だと気づく、見渡す範囲の荒れ地でさえ草木が身の丈ほども生い茂っているのである。
ましてや山間部に至っては、想像に難くないであろう、さらには毒虫や蛇の心配も考慮せねばなるまい。
となれば残された選択は海と言うことになる。
魚の一つでも釣れば食糧にもなるし、干物も魅力的だ。
随分長い間生魚も食べていなと考えながら、地図をめくり候補地をさがしはじめた。

「26」

「何調べてるの?」そういいながら有希が背後からやってきた。
ちょうどオンブするような格好でのぞき込んでくる、柔らかい二つのふくらみが背中を刺激しサラサラの髪が頬をくすぐる。
出会った時は、栄養失調のせいで体も痩せこけ髪もがさがさであったが、今はもうその影もない。
綺麗な黒髪、均整のとれた顔つき、そして12歳とは思えないような肢体に変身していた。最後までおとりにされなかっただけのことは在るなと改めて納得する。
安田はあえて聞こうともしなかったし、有希も話さなかったが、公民館でなにがしかの事はされたであろう事は推測できた。
だからこそ初めて一緒に眠ったとき、意味深な発言をしたのだろうが安田は何もしなかった、と言うより意味が分からなかったのだが・・・
結果として、彼女にとって彼は信頼できる人となり今では恋人を見るような視線に変わりつつあった。
呼び方こそ「おにいちゃん」ではあるが、態度が違う。
最近では隣の部屋で寝ていたはずなのに、朝目を覚ますと抱きついて眠っていることも度々あり、自分の理性がいつまで持つか心配だった。

「いや、海岸沿いを調べていたんだ、手に入れたい物があってね。」
「長い間出かけるの?」
「ちょっと日にちがかかるかもしれないから、今回は有希も連れて行くよ」
「ホント!うれしい、おにいちゃん大好き」
そう言って頬にキスしてきた・・・

ああ、もうだめぽ・・・・・
>>548
見た目を書いてるだけなのに、炉よりも年上マンセーなのに
エロパロ板ではエロ少な目の長編が好きだったのに
(;´Д`)ハァハァした… 

とりあえず、クールダウン用に(・∀・)ノドーゾ
ttp://red.sakura.ne.jp/~nankyoku/inople.html
ttp://red.sakura.ne.jp/~nankyoku/judople.html
ttp://www.petit-anges.com/lolisakuhin/el_peo_ple1.html
ああ、もうだめぽ…



ハゲシクワラタ
552527:03/04/29 23:10
作品集ですが、本スレ(PART4)の>>501 まで纏め終わっています。
作者様へ、ご確認頂き間違い等ありましたら専用BBSを作りましたので、
ご指摘願います。

過去の投稿作品集を作ってしまいました。
http://www.geocities.co.jp/Bookend/4265/
5533-620:03/04/30 00:18
>>527
乙カレー。
改めて己の作品を見ると恥ずかしくて仕方ない。

というか最近時間がなくて何も書けませぬ、鬱。
554むにむ:03/04/30 01:23
>>527
お疲れ様です。ほんとに感謝。

BBSとかはページの上に配置してくれるとありがたひ。
555532-534:03/04/30 03:03
みょーなこと書いてすみませんでした。
ここ読ませていただくと元気でるのです。
(FD-Rさん、励ましの言葉ありがとうございました)

掲示板も楽しみです・・・
皆様がんばってください。m(__)m
バタリアンの設定だと
ゴジラもゾンビになるのかな。

オキシジェンデストロイヤーで海中深くに沈んだはずのゴジラが
いま新たなる姿で蘇る、

みたいな。

イメージは復活したての巨神兵



                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:    <BBSは今の位置が良いとおもうのねん。
       `;.       ●  ,; '       厨房の標的にされるといやなのねん。
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、          
      ;'            ;:          
       ;:            ';;  



                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:    < >>549は、くーるだうんどころか。
       `;.       ●  ,; '        はぁはぁ 状態になるのねん。
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、        煩悩が落ち着くまで書けないのねん。  
      ;'            ;:          
       ;:            ';;  
BBSまでできたんですね。
ありがたや、ありがたや。
『160』

皮肉なことに大量に出た犠牲者のおかげでここの食料消費は激減したが、それでももともとあり
あまるほど食料があったわけではない。

どんどん減っていく食料。。。。

残りはせいぜい3週間分あるかないかといったところだ。

食料が尽きるまでに救助が来ればそれでいい。

だが。。。はっきり言ってその望みは薄い。

食料がなくなったならば、外に出るしか。。。ここを脱出するしかない。
さもなければ飢え死にだ。

だから、俺は食料が尽きる前に限界まで戦闘能力を高めなげればならなかった。。。。

そしてもうひとつ。。。その日が来るまでにゾンビを一体でも多く減らす必要があった。
すこしでも脱出しやすいようしなければならない。

俺ひとりでは他の5人を護るにも限界がある。
すこし前から亜弥たちも戦闘の練習を始めてくれたが、正直、戦力としてはほとんど期待できない。
みんな一生懸命やってくれてはいる。

だがどう見ても。。。あれでは、俺が手いっぱいの状態で襲われたときに、せいぜいほんのすこし
時間を稼げるかどうか、それすらあやしいといったところだ。
だからこそ、いまのうちにゾンビを少しでも減らし、脱出を楽にしなければならなかった。
『161』

俺はトレーニングを兼ねて、売り場に余っているテレビや冷蔵庫など重い物をすべて階段で屋上に
運び上げた。
そして、それを地上のゾンビの頭目掛けて叩き落す。
うまく頭部に当てることができるとゾンビを殺すことができた。
1日にほんの数体でも、地味だがこれだけでも確実に脱出のその日までに100体以上は殺せる計
算だ。

それ以外にも、俺は毎日2階の窓から攻撃し、ゾンビの数を少しずつ、だが、確実に減らし続けた。
これには物干し竿を使った。

物干し竿の先にドライバーなどを固定し、ちょっとした槍代わりの物を造った。
それをありったけの力でゾンビの頭部に突き刺すのだ。
一撃で仕留めないとよろめくか倒れるだけで、他のゾンビの陰に入ってしまって殺すことが出来ないの
だが、うまく急所を突き刺すとゾンビを始末することができた。
これは肉体の鍛錬はもちろん、ゾンビの急所を的確に攻撃する練習にもなって一石二鳥と言えた。

ゾンビの急所は眉やこめかみから頭頂にかけての部分、まさに脳の部位だ。
ここに強い衝撃を当てるか、なにかを深く突き刺せば殺すことができる。
だが、逆を言えばそこをわずかでもズレると、転んだり倒れたりはするが、死には至らない。
ヘタをするとただよろめくだけだ。
ゾンビどもは脳への攻撃には脆いが、それ以外への攻撃に対してはまさに不死身と言える。
ああ、今日も説明だけ。
しかも短いうえに説明の途中で終了でつ。
明日こそもちっと書くだよ。
どっかの出版社に持ち込んでみてくれよう、作者の方々。
手に残る形でもっておきたい。
564PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/30 21:26
ではいっきまーす。
5つぐらいの予定で。
565PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/30 21:26
 良人の惨状、先ほどの打撃、何より喰人が彼女の変貌を示していた。
 おそらく、彼女はもう人ではなくなってしまったのだろう。
 完璧に近い防疫設備を持つこの研究所での感染。その意味。
 だが、そんなことはどうでも良かった。
 俺は彼女を抱きしめて泣き続けた。
 涙が止まらなかった。
 ただ、ただ、温めたくて、抱きしめて、すすり泣いた
 背中をさすり、頭を抱き寄せる雪香の腕の感触に、嗚咽が止まらなかった。

 どれだけ涙を流しただろうか。
 感情の波が去り、奇妙な静けさが心と部屋を支配していた。
 俺は軽く身を起こして、彼女の顔を再度見つめた。
 口元の血を除けば、いつもの、いつもと変わらない、彼女がいる。
 雪香は軽く微笑みながら、紅く染まった口を開く。
「尚也は泣き虫だね。初めてのときみたいだよ」
 そうだった。
 初めて彼女と体を重ねたあと、俺は微笑む彼女を見て泣き出した。
 自分を受け入れてくれる人がいたことに、愛しいという感情が自分にあったことに、何より彼女の愛に、涙が止まらなかった。
 あの時の涙と今の涙はどう違うのだろう。
 愛する人を得た喜び。それは裏を返せば、愛する人を失う悲しみでもあるのか。
 
 ――失う?
 心が凍りついた。
 俺は、彼女を、失うことを、認めて、いる?
 
 自分の考えに呪縛された俺の耳に、彼女の言葉が届く。
「尚也。大じょうぶ。ちゃんと、うんであげ、る。だか、たべて、い、よね」
 大丈夫、ちゃんと産んであげる。だから。
 喰べていいよね。
566PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/30 21:27
 俺の心は滑らかに、鏡面のように凪いでいた。
 先ほどまでの激情は涙と共に流れ落ち、ただ、静寂しか残っていない。
 目の前に、紅牙を剥いた屍者がいるというのに。
 最愛の、何よりも大切に思う人が、自分の命を奪おうとしているのに。
 その息が喉を這っているというのに。
 俺の心には、何もなかった。
 空ろ、空虚、虚無、空白、空白、空白――
 あるのは不思議な浮遊感と耳元を通り過ぎる風の音。
 ぼやけ、全てが滲み、境界の失われた視界に、白い何かが疾る。
 再度の浮遊と、風の鳴動。
 耳に響く、雑音。ガラスの割れる音、機器の砕ける軋み、そして呟き。
「……どう……喰べ…くれな……あかちゃ……」
 机や床、天井に分析機器といったものの輪郭が急速に浮かび上がり、最後に手を振り下ろした雪香の姿を認識する。
 
 ――何が起きた?
 彼女と重なり合っていたはずなのに、いつの間にか数メートルの距離をとり対峙している。
 混乱する思考に、またも空白が割り込む。微かに視界の端に飛び込んでくる彼女の姿が見えた。
 半身を朱に染め、緋の衣以外は何も身につけていない彼女の姿。
 なぜか彼女を見ていると思考に靄がかかり、いつの間にか距離をとる。
 全てが曖昧に溶け、残るのは意識の空断。
 空白。空白。空白。殺す。空白。空白。殺す。空白。殺す――!
「くっ!」
 振り下ろしかけた右腕を無理やり止める。骨と筋の歪む激痛が意識を醒ます。
 右腕に握られたガラスの破片。その切っ先。先端の先にあるのは、雪のように白い、喉。
 ドクン!
 心臓に感じる死神の手。
 飛びのくのにわずかに遅れて突き出された拳が、左胸に撃ちつけられる。
 骨がきしみ、肉が穿たれる感触。そして背からの衝撃。
 俺は再度壁に叩きつけられていた。
567PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/30 21:27
 痛みはありがたかった。途切れがちになる意識を繋ぎとめてくれる。
 俺は雪香をしっかりと見つめ、意識に割り込もうとする空白を振り払う。
「……ぐるぅ……に、にぐ……なお…に……」
 絶望。
 すでに彼女はまともな言葉を失っている。
 姿形は思い出のままに、ただ心が壊れている。
 言葉を失ったせいか、彼女の動きはますます獣じみて、そして振りぬく爪はあっさりとテーブルをへこませる。
「ゾンビとは種の個体維持本能の暴走。喜怒哀楽、愛情、性欲、それら全てが歪んだ食欲として噴出するようだね。骨まで愛してといったところかな」
 廊下で死を迎えた友人の言葉が思い出された。
 彼女が俺の肉を求めるのは、それがゾンビにとっての愛情だからだ。
 俺たちの産まれることのなかった子供を体内に収めたように、俺が失われる前に自らの血肉にしたいのだろう。
 何でだ。
 何で彼女じゃなくちゃいけないんだ!
 外にいてはいつ感染するか分からない。だから無理な取引をして彼女を保護させた。
 感染理由とその危険性が分かっているこの場所なら、格段に安全のはずだった。
 なのに、今。
 彼女は屍鬼と化して、俺の血肉を求めている。
 雪香。
 大切な人。愛している人。ただ一人の人。
 俺は脳裏に、彼女との思い出を浮かばせる。
 初めて会ったときは、なんとも思わなかった。親の都合で決められた相手でしかなかった。
 だから、はっきりとそう言った。雪香は微笑んで、「それなら話して下さい、貴方のことを」と返してきた。
 友人からはじまり、いつしかそばにいるのが苦にならなくなっていた。
 意外に頑固で、言い合うことも良くあった。彼女は逃げるということをしなかった。
 彼女の笑顔、声、しぐさ、その全てが心に溶けていった。そう言ったら、「私もそうです。だからもっと笑ってくださいね」そう言われて、ぎこちなく微笑んでみた。
568PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/30 21:33
 彼女といるうちに、他人を許せるようになっていた。
いまだ自分への嫌悪は残っていたが、それもあの日。初めて彼女と体を重ねた時に、消えていった。
「本当はもっと早くこういうことしたかったんですよ。尚也のことが好きだって、教えてあげたかったから」
 抱き合いながら、彼女は俺の心の壊れた場所を、癒していってくれた。
 人を愛するということ。親からも愛を拒まれた俺を、彼女は満たし、そして愛させてくれた。
 心に自分以外の誰かがいることの、苦しみや痛み、そして喜びを教えてくれた。
 彼女と付き合って、初めて自分の誕生日をうれしいと思うようになれた。
 そして彼女の誕生日が待ち遠しくて、自分ではさりげないつもりで何が欲しいか聞いてみたりもした。
 二人で暮らすことを話し合った。仕事のこと、家のこと、そして子供のこと。
 その全てが心を震わせた。
 二人で歩んでいける。そう思った。
 
 今まで積み重ねてきた日々の記憶を、思い起こし脳裏に浮かべる。
 その思い出の全てが、心を切り裂き、胸を冷たく凍てつかせる。
 それでも追憶を止めなかった。
 彼女の生きた日々を、人としての日々を思い起こす。
 そうしないと、雪香の記憶を想起していないと、心が無くなりそうだった。
 あの虚ろ。その奥底に潜む純粋な狂気。
 本能そのものだからこそ、色がなく、混じるものなく、ひたすらに強い。
 心を傷つけても、彼女との日々を次々に呼び起こし対抗しなければ、それは精神を掌握してしまう。
 人を愛することが怖かったのも、愛されることに怯えたのも、全てはそれの顕現を抑えるために。
 理により感情を切り捨ててようやく封じ込め、身体を鍛え闘争に慣れることにより飼いならしてきたもの。
 人が人であることを選択した時に捨てた性。
「修羅」
 純粋な殺戮衝動。本能を超えた狂気の塊。他者への殺戮欲求。理にも論にもよらないもの。
 心の奥底に抱えた狂気。それがあるからこそ、俺はどんな状況においても精神が揺らがされることがなかった。
569PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/30 21:37
 
 なぜ、俺は軍人の訓練にも、外でのゾンビとの遭遇でも動じることがなかったのか。
 あまりに強力な歪みが、他の小さな歪みを寄せ付けなかったからだ。
 だが、今。
 彼女を失いかけた今、彼女によって開かれた精神では修羅の暴発を抑えきれない。
 心を閉ざし、全てに背を向けた昔なら耐えられた。
 愛を知り、他者を知ってしまった今、心を抑えるものが失われつつある今。
 抑えるものは彼女との思い出しかなかった。
 
 雪香の爪牙をかいくぐり、勝手に踏み込む体を抑え、絶望に叫び、思い出に涙する。
 終わりはすぐに訪れた。
 体力の落ちた今の状態で、いつまでも避け続けられるわけもなかった。
 もつれた足が砕けた機器につまづき、その場に尻餅をつく。
 目の前には雪香の腹部。
 振り下ろされる死の爪を見た瞬間。
 俺は完全な空白に包まれていた。
570PIP ◆dve/1Ebaqs :03/04/30 21:43
連続投稿のどこが悪いんじゃあ!
荒らしが増えたおかげで規制が厳しくなる一方!
まとめて小説をあげると

長すぎます
連続投稿ですか
落ち着いてください

うがー。ID持ってるのに何の意味もねー。

というわけで研究所編山場です。
尚也の狂気の一端お楽しみいただければ幸いです。

実ははじめはもっとやばいシーンだったんですよね、ここ。
尚也が雪香を組み伏せてそのままえっちシーン突入という。
他には雪香を見つけたときに、足元の血溜まりに胎児やらそういった組織が見えるとか。
あんまりにもあんまりなんで書いたあとで早速消しました。

しかし、私のが一番黒いというかスプラッタというか。
作者の性根と腹黒さのたまもんですなぁ。
「27」

数日後、2人は海辺に向けてドライブとしゃれ込んでいた。
これまた新車に乗ってである、現在動いてる車と言えば略奪の横取りか、ゾンビに襲われうち捨てられた物ぐらいだろうが、安田は展示場の車に着目していた。
いつか使うだろうと、エンジンキーとバッテリーを外して残して置いたのである。
誰しもそのようなことは考えつくのであるが、キーのない車は無視する、直結という方法も在るのだがそれは一時しのぎのことであり恒久的に使用するには不適切でもある。
ましてやバッテリーが無ければ論外、迫り来るゾンビ相手に装着の時間などは無いのだから・・

車を取りに来たとき安田の読みは当たっていた、あらかたの車は無くなっていたが、お目当ての車は手つかずできれいな侭だった。
隠しておいたバッテリーを装着しキーをひねる、息を吹き込まれた車は咆吼をあげた。

低速走行でトロトロ走る、どうせなら目的地に向かいつつ荷室に物資を満載する腹である。
車高の高い四輪駆動車は、乗り降りこそコツがいるモノのパワーや視界に問題は無かった。
燃料もガソリンではなくディーゼルである、そこらに頓挫している長距離トラックの燃料タンクがスタンド代わりにもなった。
海に近づくに連れ荷室も満載になっていった、通りすがらの住宅などから顔を出し
「助けてくれ」などと叫んでくる者もいたが、安田は無視を決め込んだ。
有希はかなり気になっていたようなので説明する・・・

こんな状態になるまで、自宅に籠城・・・それはいいだろう。
しかしながら脱出手段さえ確保できない者に、これから生き抜くことができるだろうか?仮に助けたとして、それが善人で在る保証はない。
車を奪われ、殺され、有希はどうなるか・・それぐらいのことを考えておいた方が良い。

話を聞き終わる前に有希はしがみついてきた・・・・

そう、この子を護らなくてはいけない。
自分だけなら問題はない、しかしなにか武器となるモノが欲しかった。

「28」

武器・・・
すぐ頭に浮かぶのが猟銃である、発砲事件のほとんどが猟銃によるものがほとんどなのだが、実際つかえるのだろうか?
答えはノーである、国内の猟銃は規制されていて単発式となっており、あくまでも狩猟
目的でしか意味をなさない、クレー射撃に使われるモノは2連であるのだが・・・
どちらにしても気休め程度のものでしか無いと感じていた。
もっとも今更銃砲店に赴いたところで何かしら残っているはずもないだろうと・・・

では、警察官のニューナンブはどうだろうか?
モノはたくさんあるが、実弾は無いだろう・・・混乱当初に撃ち尽くされているだろう
実際、今までに見つけたものは総て弾薬がなかったのだから。
自衛隊基地は? 一番モノが在りそうだが現実問題として手にはいるかどうか疑問だった当然管理は厳重だろうし、仮に死亡した隊員の傍らに落ちていたとしても確実に作動する保証はない、風雨にさらされているのだから暴発の危険もある。
何処かの三流小説のようにうまくは行かないと思っていた。

それでもチャンスは転がっているかもしれないので完全に望みを捨ててはいなかった。
『希望』この文字を忘れない者だけが生き残っているのだから・・・


「29」

そうこうするうちに目的地に近づいてきた、潮の香りが強くなってくる。
助手席の有希の顔もほころんでいる、やはり来て良かったなと思った。
目的地は『海釣り公園』だった、ここには以前来たことがあったので多少は安心である。
安田は此処にも退避してきている人たちがいるだろうと判断していた。
思惑通り人がいるようだ、進入路にバリケードが作られている。
この手の施設に向かうには一本道しかないケースが多く、そこさえ確保すれば回りからの侵入にそれほど気を遣う必要が無いのが利点であった。
読みが当たったなと内心ほくそ笑む、入り口付近に数体のゾンビがいたが協力して打ち倒す。
このことが大事であることを安田は経験から知っていた、ゾンビを倒す勇気のあるものは
迎え入れてくれるが、そうでない者は足手まとい以外の何者でもない。
ゲート前という場所はそう言う意味での試験場でもあった。
程なくリーダーらしき人物がやって来た、自分とは対照的で日に焼けた海の男と言った感じだろうか・・・挨拶をして、目的と滞在予定などを申し入れる。
手みやげだと言って天井のキャリーに満載の釣り用具を指さす、ここに来るまでに釣具屋で調達したものだったが、彼は満面の笑みを浮かべ握手してきた。
有希を連れていることも大きい、子供を連れていると言うことは在る意味相手を安心させる良い材料である、しかもおびえていなければ、その人となりを表す指標なのだから。

早速荷物を降ろす、高級竿にリール、針、糸、仕掛け、その他消耗品のオンパレードである。
特に懐中電灯と電池は喜ばれた、夜間の方が魚も釣れやすいので照明は重要なのだから。有希はといえば、此処の子供たちに囲まれていた、比率的に男の子の方が多いのだろうがこの時期に、コロンの香りを漂わすとても綺麗な女の子の登場に、どきまぎしてるのが傍目にも解った。
有希がこちらをちらりと見たので 「遊んでおいで」と声を掛ける。
「おにいちゃんも 後で来てね♪」そう言い残し波止場に無かってゆく・・
目を細めて見送っていると、「かわいらしい妹さんですね」とリーダーも見とれていた。

「30」

基本的に此処での食生活は、予想通りというか魚がメインであった。
工場という工場が操業を停止してほぼ半年、海は急速な勢いで浄化されているらしい、
河川からの汚れも少なくなったと聞かされた。
米や野菜の不足が気にはなるらしいのだが、いかんせん僻地でもあり頻繁に補給にでることが出来ないのが難点らしい。
土地そのものは、海で隔離された埋め立て地があちこちに在るので、盗難や襲われる心配のない畑を確保することは可能らしいのだが・・・
安田はその話を聞いて車に戻り段ボールを一つ取ってきた、いぶかしがる人たちの中で開封する・・・そこには野菜類の種の小袋がぎっしり詰まっていた。
「おお・・・」皆 溜息に似た声を漏らす・・・
安田は、これを提供するので利用して欲しいと申し出た。

その晩はちょっとした歓迎会だった、避難民ではなく補給部隊として扱われたのだ。
着の身着のままで逃げ込む者が多い中、安田のような訪問者は初めてらしかった。
久しぶりの魚料理はとても美味だった、もちろん醤油やワサビなどの調味料も沢山提供したので、料理人も腕をふるってくれた事もあるが・・・
楽しいムードの中でも安田は注意を怠らなかったし、気前の良いところをアピールした
車載してある物資を出し惜しみする者は、ここには2度と来ないのという現れだが、
安田は、又物資を運び込むことを期待させるそぶりを取ったのである。
ここに恩を売ることは後々有効になると踏んでいた、後は勢力図を把握するだけだった。

その晩は久しぶりに、堅い床の上に寝袋で寝た。
有希は遊び疲れたのだろう、楽しげな顔をして熟睡していた。


「31」

それから2日ほどそこに滞在した、彼らは安田のいろいろな質問にも気軽に答えてくれた。
安田が不足がちな物資のリストを作っていたことも、効果が在ったのだろう。
おもしろい事と言えば、海岸線や防波堤沿いにはゾンビがいないことである、正確にはいないのではなく居られなくなるのであるが・・・
理由は海の掃除人のフナムシである、生きている者には目もくれないのだがゾンビには
襲いかかるらしい、食あたりを起こすとか変質して生きてる人間を襲わないかと心配したらしいがそのようなこともなく、綺麗に平らげてくれるらしい(w)
問題は、海岸線間際でないと彼らが繁殖しないことだったが、逆に言えば四方を海に囲まれた埋め立て地なら、仮にゾンビが流れ着いても安全ということだった。

有希の方もそろそろ飽きてきたようだったので、一度帰る事にした。
当然隠れ家のことは誰にも打ち明けていない、ホームセンターの事は話してあったが・・・・
帰りの車には彼らお手製の干物が満載されていた、これは取引用の物資である。
食糧と引き替えだと手に入るモノは多い、特に医薬品や生鮮品は喜ばれる。
現金などが意味をなさない今、頼れるのは知識と物資であった、あとは身を守る武器
安田の頭からその考えが消えることは無かった。



                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:    <有希は誰にも渡さないのねん。
       `;.       ●  ,; '       
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、          
      ;'            ;:          
       ;:            ';;  
作者の方々お疲れ様です。

そして作品集を作ってくれた 名無し@錆取り中様、非常にお疲れ様です。
今まで、作者様方の投稿が無い時は、スレ保守する過去ログを読む位しか
ありませんでしたが、バラバラに投稿された、作品をまとめて読めるよう
になって非常にいいです。

このスレがPART5移行する時は、過去スレと一緒に作品集のURLも一緒
に併記されるのでしょうね。
SPECIAL THANKS 『名無し@錆取り中様』  とか。
578むにむ:03/04/30 23:56
いいなあ。みんな面白いなあ。
文も上手で読みやすいし。


・・・・゜・(ノД`)・゜・
「32」

久しぶりの我が家に到着、2人そろって風呂場に突撃した。
4日間もの間風呂無しの生活、普通の場所ならイザ知らず、潮風の中では体がかなりべたついた。
もちろんお湯を浸したタオルで体は拭いたモノの、風呂には叶わない。
此処でも水不足は深刻であった、しかしながらそれも飲料水にのみ気を配ればよいので
ホームセンターよりは遙かにマシではあったが・・・
帰る間中有希はぶつぶつ言っていた、体がべたつくのは我慢できなかったらしい。
安田は苦笑いしながら相づちを打ったものの自分もおなじ気持ちだったことに気が付く、一度贅沢を覚えると言うことはこの時代には危険だと言うことを改めて再認識した。

「きゃ〜ん、極楽 極楽ぅ♪」
可愛らしい声が浴室内にこだまする、相変わらず2人での入浴だ。
気恥ずかしさを隠すために話しかける。
「釣り公園で、仲良くなった子はいるかい?」
「う〜ん、そうね 同年代の男子も多かったし、まぁまぁかな〜」
質問しながらも、少し嫉妬する自分が居ることに驚いていた。
「自分をよく見せようと必死なのは解るんだけどね〜なんて言うか子供なのよねぇ」
こ、小奴は悪女に違いない・・・きっとそうなる、将来は男を手玉に取るんだ
「あ、おにいちゃん妬いてるの〜?」
そう言いながら泳いでくる・・
そうして、安田の前にもたれかかるように座り込むと、頭を肩にもたせかけるようにして囁いた・・
「有希を自由にしていいのはおにいちゃんだけぇ〜ふふっ♪」
安田の体が硬直しているのを良いことに、今度は向き直ると体を密着させてきた・・・

安田は念仏のように呟いていた・・
 『青少年保護条例・・・青少年保護条例・・・青少年保護条例』と・・ 
>青少年保護条例
はずかしいけれど さんの葛藤も垣間見れるこの一文
「33」

安田は久しぶりの自宅に満足していた、有希も「やっぱり家が一番ね〜」などと言う。
本当にそんな気分だ、旅行後の決まり文句だろうか・・・
さっさと布団に入り目を閉じる、素肌に触れるシーツが気持ちいい
あっという間に眠りについた。

ふと息苦しい感じがして目が覚める、またもや有希が布団に潜り込んできているようだ、しかしいつもと違う感触にふと我に返る。
裸なのだ、今までも潜り込んできてはいたがパジャマは着ていた、しかし今日は全裸で、のし掛かるように抱きついて眠っているのだ。
だんだんエスカレートする有希の行動が怖かったが、悪い気分ではない
「有希じゃ魅力ないかなぁ・・・」そんな寝言を呟く。

「十分すぎるよ」そう答えて、安田は有希を抱くように手を回すと目を閉じた。


                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:    <有希に手を出せないのは辛いのねん。
       `;.       ●  ,; '        さんげりあ様の舞台を少し表現しても
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、        良いですかぁ?と聞いてみるのねん。  
      ;'            ;:          
       ;:            ';;  

「34」

翌朝目覚めた時ベッドに有希の姿は無かった、思い切りのびをして服を着る。
部屋を出ると、ベランダで有希が鼻歌を歌いながら上機嫌で朝ご飯の支度をしていた。
「あっ おにいちゃんおはよぅ」
「ああ、おはよう、えらく機嫌がいいんだな」
夕べのことには触れずに、返事をする。
「だってぇ〜 おにいちゃんたら思い切り抱きしめて来るんだもん、朝抜け出すの大変だったんだよぉ、でもぉ裸で潜り込んだのは正解かな?うん、きまりだね」
そう言ってくすくす笑う。
「俺だって男なんだから、いつまで理性がもつか解んないんだぞ」
少し凄んで言い放ってみる
「だから、自由にしていいんだって言ってるでしょぉ〜♪ あっ、お魚焼けちゃうよ
 早く顔洗ってきてね!」
駄目だ、もうこの子を止める術はない・・・・
安田は溜息をつくと洗面所に向かった。

食事が終わると有希は、本を読み始めた、「原色大図鑑」釣具屋で手に入れたものだが 普通の図鑑と違い釣り上げた魚をその状態で写真に納めたものである。
微妙な色合いや触る際に注意すべき点も書かれている優れものだ。
そう、海と山の食べ物を記憶してくれるのはこれから先絶対役に立つだろう。

安田はソファーに深く腰掛け、今後の身の振り方を考え始めていた・・・・。

「35」

まず、現在の籠城ポイントにおける利点、欠点を考察してみた。
今居るこのマンションは、生活水準は最高である。
問題点と言えば食料の自給が出来ないことである、しかし近くの空き地やうち捨てられた畑を利用すればいくらかの供給は可能と思われるが、在る程度の物資を残しておいて
緊急避難場所に残しておくのが最善かもしれない。

ホームセンターはどうか?
規律が行き届いており、防御も現段階では問題がないが 物資不足からは逃れられそうもない事は明白だった。
最近では班の比率がゆがみを生じて居るのが解る、需要と供給のバランスが取れないのだ。青班への志願が極端に少ないのが理由である、やはり無秩序に避難者を受け入れしたのがマズかったのだろう、戦うことを怖がるくせに口は出したがるタイプが増えているのだ。
逃げ込めば助かる、助けて貰うのが当然とばかりと言わんばかりの連中だ。
こういう連中が増えれば必ずシステムにほころびを呼び全滅は免れないだろう。

海釣り公園は、その点 試験会場が在るので良いのかもしれないが、広大な敷地に対し
居住区の小ささが致命傷である。
海岸のそばと言うこともあり、中途半端な建物では台風を乗り越える事は出来ないだろうしかし隣接する工場などを上手く改装すれば可能かもしれないのだ。
ホームセンタに残る人たちには、試行錯誤で培った技術と道具がある。
何か希望の光が見えたような気がした、善は急げだ! 安田は干物を満載した車で
ホームセンターに向かった。

「36」

2週間ぶりにやって来た感想は酷いモノだった、規律は名ばかりの感じさえ受ける。
ゾンビを倒すときは知らん顔で、食料品が在ると解ると我先に奪わんばかりで押しかけてくる。
顔なじみの連中は苦々しい顔をしながら状況を語ってくれた。

安田は古参の幹部連中だけを集め(もっとも数は既に全体の三分の一であるが)自分のプランを申し出た。
「俺は大賛成だ、安田君の言う通りここは新天地にゆこうじゃないか、確かに此処には
思い入れもあるが実際付近には物資が無いんだ、口ばかりの連中のためにこれ以上危険を冒して補給するのは沢山だ!」
青班の班長は声を振り絞るように続ける。
「帰らぬ仲間のことより、何が見つかった?とか聞いてくる奴らのために命が張れるか!」
「俺もこの計画に乗るぜ、赤班はどうする?」緑班の班長が尋ねる。
「我々が居なけりゃ護衛はどうするんだ?」そう言って笑っていた。

次の日、安田はコンテナ車で海岸を目指していた、もちろん温泉を満載してだ。
ゲート前に見慣れない車が現れたので緊張が走ったようだが、窓から顔を出して手を振るすぐに扉は開かれ中に滑り込んだ。
ホームセンターと同じく大歓迎である、その日は久しぶりの入浴デーとなっていた。

頼まれていたタバコのカートンボックスを皆に手渡す、礼もそこそこに封を破り吸い始める、安田はその様子を可笑しそうに眺めていた。
一息ついた頃、安田は今日来た目的を皆に話し始めた。
リーダーはタバコの煙を見つめ、考えていたようだがおもむろに口を開いた。
「もう少しすれば台風シーズンになる、居住区などの補強もしたい・・・自給率はまぁ
やっていけると思うが、役立たずは受け入れることは出来ない、これが本音だ」

もっとも望んでいた回答を得られて安田は微笑んだのだった。


「37」

久しぶりの充足感に包まれながら自宅に帰ると、『お帰りなさい、さみしかったよ〜』と言いながら有希が抱きついてきた。
たった2日なのにとても長い間離れていた気がして安田は思いきり彼女を抱きしめていた。
その夜、安田は有希に今後の計画を話し、移り住むことになるかもしれないことを告げた。隣に座って黙って聞いていたが、抱きついてきて耳元で囁いた。
「おにいちゃんさえ一緒なら何処にでも行く・・・でも、私を離さないでね」
理性の糸が音をたてて切れた感じがした。
安田は有希に優しくキスをすると、抱きかかえベッドに連れて行く。

朝が来ても安田は有希を離そうとはしなかった、まさに猿へと変貌していたのだった(笑「お、おにいちゃん もうだめぇ〜」
「今までおちょくった罰だ、まだまだこれからぁ〜!」
「うわ〜ん、ごめんなさぁ〜ぃ」
ほほえましい会話がとぎれたのはその日の午後であった。
>>586
阻止限界点突破したのかよ!
コロニーが落着して、大きな穴を開けたんだねぇっ!

さて、どうなることやら(w
オレはとりあえず、9行目と11行目の間の一行の空白を
>>549で脳内補完だ!! 
>>PIP殿
巣プラッ太な描写に萌え〜。
やっぱりゾンビ物にはつきものですよね、こういうのは。


>>はずかしいけれど殿
どうぞ結構ですよ〜。
でも、真由美は渡さないのねん。

なんちて。

それにしても。。。安田さん。。。ついにやっちまったか。。。
『162』

奴らには恐怖も痛みもなにもない。

ダメージを与えるなり、転ばすなりしない限り、全くひるむことなくただただひたすらに向かってくる。
そして脳に強い衝撃を与えられるか、破壊されるかして活動を停止するまでは何度でも立ち上がって
くるのだ。
飢えを満たすためだけに。。。

まさに呪われた存在。。。

これでは警察も自衛隊もどうなっているか。。。。

おそらく、威力のある弾丸で頭部、威力がなければ脳の部位に当てなければ、おそらくゾンビどもは死
なないだろう。
たとえ銃器があってもゾンビの集団は間違いなく脅威だ。

さんざんゾンビと対峙してきた今の俺ならそれがよくわかる。
それだけに救助はほとんど期待できないだろう。

俺が自力脱出を覚悟したのはそのためだった。

食料が尽きたらここを脱出する案については2週間ほど前、皆に既に話した。
みんなもこの案に納得してくれた。

だからこそ、案を言い出した俺は皆が無事脱出できる可能性を1%でも高めるためにできることは
すべてやらなければならない。

『163』

理想は脱出の日までにゾンビを今の3分の1以下にしたかった。
それが無理なら、せめて最低でも半分に減らしたい。

そのうえで脱出ルートの反対側にゾンビを誘導すれば、なんとかここを抜け出せる。。。。
前回と同じく非常階段からのルートで脱出すれば戦闘も少なく済むだろう。
ハンマーを使いこなせるようになりさえすれば、おそらく俺ひとりでも相手できる数のはずだ。
階段から、とにかく車にさえたどり着ければいいのだから。。。

そう、あの日。。。病院に向かったあの時に俺は一台の紅いマーチにキーがついているのを見た。
たまたま目に入っただけだが、はっきり覚えている。
間違いなくキーがついていた。
あのときは病院に向かうときに使ったワゴンが邪魔で外に出せない状態だったから見送った。
でも、今なら大丈夫だ。
あの車が外に出るのに十分なスペースが空いている。
あれにたどり着ければ、みんなで脱出できる。

ほんのわずかでも全員で生き延びる確率をあげるため、俺は努力を続けた。

なにより、俺はもう誰も死なせたくなかった。

だから、文字通り死に物狂いで鍛錬とゾンビの数減らしに打ち込んだ。

もう二度と。。。二度と失いたくない。。。。
『164』

それに加奈さんだ。。。

俺には負い目があった。。。。

あれ以来、加奈さんは日に日におかしくなってしまい、ついに壊れてしまった。

毎日、人形を抱えて窓から外を眺めながらこういうのだ。。。

「湘ちゃん、パパ遅いわね。
でも、大丈夫よ。
パパはきっと帰ってくるから。
だから、泣かないでおりこうさんにして待ってるのよ。
湘ちゃんはいい子ね」

。。。と。。。


俺は見てられなかった。

彼女がああなったのは俺の責任だ。
せめて。。。せめて彼女の身の安全だけは俺の手で守りたい。

それが俺にできる、些細だが唯一の罪の償い。。。
ああ、もっとたくさん進める予定だったのに、今日もあんまり書けなかった。。。鬱
>>さんげりあ様 
乙カレーです。

しかし、さんげりあ様の作品の量って、凄く大きいのですね。
向こうの作品集見たら、ホームページビルダーの制限値を超えたとか。
これからも頑張って下さい。
とりあえず、>>549で脳内補完完了ッ!

>>PIP殿
悲しい話ですね… 
あまり生身の女性は好きじゃあないんですが、
彼女の一人でも作りたいと思ったりしました。
頑張らないと…

>>さんげりあ殿
藤田さんが前向きになってるからこそ、
死にそうな予感が…
せめて「救い」がありますように。
595 ◆6N371.108E :03/05/01 22:18
>>577
ソレダ!!
596巡査物語 ◆B6gHTT4PmE :03/05/01 22:35
休止中の巡査です。
本格的に休止になりました
モスクワ出張が決まりました、明日出発です(笑い
モスクワを基点にして、シベリア各地を周ります。

今月末には帰国予定ですが
まぁ、生きていたら月末にでも
再開いたします。
597数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/05/01 23:55
 こんにちは。
 錆取り様、お疲れ様でした。
 作品集を読んでいたら、またむくむくと書きたくなってしまいました。
 一応、以前に書いたもの後日談です(作品集03/03/17)。
 というか、じつは今まで自分の書いたものは、同一世界上の様々な出来事ということになっています。
 それらを少しずつ繋げていきたいと思ってます。
 短編も時々続けたいです。
 
598数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/05/01 23:56
   1/5
 この街に残っているのは辛うじて十数人といったところだろう。残っている者たちも、断固残るという意志を持っているわけではない。ただ、逃げていく先が見つからないため、比較的安全なこの街に残っているというだけのことだった。

 子供が一人、取り残されていた。
 丈夫なバリケードに囲まれた屋内はしばらくの間子供を一人にしておくだろうが、それも時間の問題だ。侵入者はやがて現れ、バリケードを突破する。
 だが、子供にはそれがわからない。それどころか、何故自分がここにいるかもわからない。
 子供は、自分が両親に置き去りにされたことに気付くだけの知能を持っていなかった。
 独りぼっちで寂しい。ただそれだけ。

 今、この場所に二つの群が近づいていた。
 自警団。
 ゾンビ。
599数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/05/01 23:56
   2/5
 戦闘は、突然始まった。
 目の前に現れた新鮮な肉に噛みついたゾンビが先か、焦点の定まらない目に向けて発砲したのが先か。
 数だけを見れば、ゾンビが圧倒的に有利だった。だが、自警団側には豊富な弾薬があった。
 リーダーは子供の家に目を付けた。一旦立て籠もって体勢を立て直すことの出来る場所があれば、ゾンビを中央突破することも出来る。自警団の面々はそう言えるだけの経験を積んでいた。
 力ずくでバリケードを破壊し、数人が中へ先行する。雪崩れ込むように入るゾンビの群。後続の数人が遅れ、ゾンビの手に掴まれそうになる。
 それでも、先行した数人の援護射撃で彼らも家屋の奥へ入ることが出来た。
 ゾンビには、壁を破ることもドアを開けることも出来ない。
 つまり、屋内にさえ入れば、あとは断続的な一斉射撃を続けるだけで片が付く。豊富な弾薬があってこその作戦だった。
 樋口と井之川の指示で銃手が横一列に並ぶ。
 合図と共に一斉射撃。倒れる、というよりも吹き飛ぶように崩れていくゾンビたち。
 家の奥へ向かった清水の悲鳴に、井之川が拳銃を構える。
 放棄されていた数台の自衛隊トラックを見つけて以来、武装には不自由していない。拳銃も小銃も余るほど確保している。
 それでも、咄嗟に拳銃を構えたのは井之川だけだ。他の者は咄嗟に腰にしばりつけた斧や大振りなナイフに手をやっている。
 井之川の、そしてナイフを構えた一同の前に子供に噛みつかれた清水の姿が。
 ためらわず、井之川は引き金を絞った。
600数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/05/01 23:56
  3/5
 久しぶりに畳の上で眠れる。
 喜ぶ連中に手を振って、樋口は臨時の隊長室とした奥の部屋に入った。
 包帯を巻いた清水と、げっそりとした顔の井之川がいる。
「清水にゾンビ化の徴候はありません」
 診察器具を片づけながら岡本が言う。騒動前は医学生だった男だ。
「樋口。俺、やったのか?」
 自分が撃ったのはただの子供。ただ、パニックになって知らない人の腕に噛みついただけの子供。
 井之川は震えていた。
「俺は…」
「やめろ。井之川。お前が撃ったのはゾンビだ」
「じゃあ何で清水がゾンビにならないんだよ!」
 樋口は答えられない。
「俺は、捨てられた可哀想な子を…さらに撃ったんだ」
「違うよ、井之川さん。アンタはそんな間違いをする人じゃない」
 清水が包帯を自分で解き始めている。
「俺みたいなバカがここまで生き残って来れたのは、全部アンタと樋口のおかげだ。アンタのその頭のおかげでここまでやってこれたんだ」
 噛まれた傷を見せる清水。
「あのバカ女が裏切ったときだって、最初に気付いて警告してくれたのはアンタだった」
 少し前まで、樋口たちは相模陽子という女をリーダーとした集団と行動を共にしていた。だが、相模とその取り巻きの一部が樋口を裏切り、その装備を奪って別のグループに合流しようとしたのだ。
 井之川は相模たちの奪おうとした装備をただのがらくたと密かに取り替えておいた。
 その翌日、相模とその取り巻きは消え、さらにその三日後、彼女らはゾンビと化した姿で樋口たちの前に現れたのだった。
601数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/05/01 23:57
   4/5
「だから、俺はアンタを信じるし、アンタはここに必要な人間だ」
 じりじりと窓に近づく清水の行動に、最初は誰も気付かなかった。
 井之川が気付き、呼びかけた瞬間、清水は身を躍らせた。
 窓の外へ。
 そして、ゾンビの待つ路上へと走る。その手には愛用の斧。
 窓ごしに銃を構える樋口。その銃を抑える岡本。
「隊長、清水の気持ちを無駄にしないでください。どのみち、今から助けるのは無理です」
 岡本が静かに言った。
 彼は、参謀である井之川以上に冷静さを見せるときがある。今がその時だった。
「清水は自分のゾンビ化が避けられないことを知って、一体でも多くのゾンビを生きている間に倒したいと願い、その群に飛び込んだ」
 樋口と井之川を交互に見る岡本。
「それが、清水の望んだシナリオです」
「死ぬことは…」
「彼が生きていては、井之川さんの殺した子供がゾンビでなかったことになる。今この集団で隊長や井之川さんが人望を失えばどうなると思います?」
 樋口は、無言で窓の外を見た。
 奮戦する清水。多勢に無勢。時間の問題だろう。
 しかし、清水は笑っていた。その笑いが誰に向けられたものか、樋口には痛いほどわかっている。
 その横で、井之川は歯を食いしばっていた。
 清水の最期を見届けなければならない。それがせめて清水と子供への詫び、そして清水への礼。
602数学屋 ◆Z62ETnTQww :03/05/01 23:57
   5/5
 簡単な式を済ませると、隊員達は出発の準備に取りかかる。
 ホームセンターを起点とした調査はかなりの成果を上げている。今では樋口の部隊は装備実力ともにかなりのものとなっている。本物の軍隊とやり合わない限りは、負け知らずでいられるだろう。
 井之川は何とか自分を取り戻していた。無理をしているとも見えるが、自分を取り戻すことが清水への最大の感謝だと言うことはわかっているはずだった。
「井之川、次の目的地だが、例の噂どう思う?」
「ゾンビと意思疎通出来る超能力者ですか?」
「ああ」
「ただの詐欺師かも知れませんよ。まあ、この近辺だと他に面白そうな話はありませんね。その男、捜してみますか」
「よし、決まりだ」
 樋口は隊員達に声をかける。
「そろそろ出発するぞ!」

終(続?)
「38」

3日後・・・・・
ホームセンターの駐車場は、にわかに活気づいていた。
そう、今日は新天地への旅立ちの日。
青班が調達してきたトラック4台には工具、溶接機、発電機etcバリケード作成用の資材が満載である 。
表向きは新しい居住場所の確保であるが、作戦の実態を知りうるのは極一部のモノだけだ。しかし参加しているのは皆、古参連中とその家族である、
真実を知っても動揺はないだろうとの判断だった。
此処にこぎ着けるまでに、一悶着は在ったようだが、食糧を持ち出さないことが条件になった、もっともこれは目的地が確定しているからこそ出来ることだが。
食い扶持が減って喜んでいるのが傍目にもよく分かる、しかも規律にウルサい古参連中が居なくなるのだ、天下を取ったつもりなのだろう。

安田の四駆を先頭に、一大キャラバンが出発する。
護衛の赤班が前後を挟みつつ、緩やかに走ってゆく、目的地までの道がクリアなのは既に数回の安田の移動で分かり切っているのだ。
誰も不安はない、おかげでゾンビの妨害も無いに等しい状態であった。

目的地に着くなり、赤班が速やかに降車し付近のゾンビを打ち倒してゆく、その隙に
トラック、家族を乗せたワゴン車が続いてゲート内に滑り込む。
赤班は速やかに徒歩であとに続いた。

一糸乱れぬフォーメーションに、皆驚きの顔を隠せないようだった。
その日は皆の親睦をかねて釣り大会が催された、釣果=夕食である、
皆童心に返り釣り糸を垂れる・・・子供のような歓声が途絶えることはなかった。

「39」

夜になり、今後の方向性を皆で検討した。
現地の情報としては、少し改修すれば十分住むことが出来る建物がそばに在るのだが
バリケードを作る資材と工具が不足していたので手が出せなかったらしいのである。
今回此処に持ち込んだモノはほとんどが工具や作業機械がほとんどで在ったため、さらなる資材を調達する必要があった。
なぜなら以前いたホームセンターの補強に、かなりの資材を使用していたせいだった。
木材については、湾岸部であることが幸いした。
輸入木材を扱う工場が付近にあるのでそこから調達すれば良い、只し固定用の番線や釘
金物についてはなんとかする必要があった。

安田は一週間前に見かけたホームセンターを思い出していた。
異常なほどゾンビが取り巻いていたので気になり、すこし観察していたのだった。
かなり大型店舗なので避難者も多いのかと思っていたがどうやら違うようであった。
入り口や、付近に頓挫している車の状態が酷いうえに、かなりの惨劇が起きていたような血糊のあと、人骨が散乱していた。
すこし改修補強すれば、駐車場も利用できそうなのにその形跡がない上
入り口と言えばモノを積み上げただけのお粗末なものでしか無かった。

最後の足掻きだろうか、テレビや小型冷蔵庫などを屋上からゾンビに向けて落としたのだろう、下敷きになり動きを止めたモノも多い。
ふと見ると、男が金槌?らしきモノを投げつけて居るのが確認できた。
脱出のために少しでも個体数を減らして居るのだろう、たぶん食糧も底を着きつつあるうえ戦力となる人員も皆無に思えた。
ただ、かなりの資材は手つかずであると予測できた。

「40」

このような常識的というか、一般的な概念が通用しなくなったとき人は大きく二つに分かれる。
戦うものと、戦わないものだ。
手にしている条件を最大限に生かし、生き抜こうと頑張る者
ただ単に消費し、誰かにすがろうとする者
生きるための戦いを放棄した者にやって来るのは死だけなのだ。

今懸命に金槌を振り下ろして居る男は最後の戦いに挑んでいる。
援護する者もいない孤独な戦いだ、中には護りたい人が残されているのだろう。
仲間を連れてきて助け出すことは可能だ、しかしこちらも被害が出ないとは言い切れない。

あのような状況になるまでに沢山のターニングポイントがあったに違いない、
幾つもの選択肢を重ねた結果現在があるのだ。
彼が悪い訳では無いだろうが、原因の一因であることには変わりないのだから。
ただ、我々も物資が必要だ、彼らが放棄するなら頂くことにためらいはない、時間も残されていないのだ。
我々が突入することにより彼ら?が脱出出来るならそれはそれで良いと思った。
ただ、我々が何処から来て何処にゆくかは知らせる必要が無いだけのことなのだから。
「41」

協議の結果、物資回収計画は発動された。
とにかく生存者とコンタクトを取り付け、こちらの意志を伝える。

1.脱出の意志があるか。
2.我々の侵入を認め物資の搬出に異議がないか。

3.見返りとして、移動のための車を提供する。

返答は3分以内、回答無き場合は我々は去り、自滅後改めて物資を回収する。

きわめて単純な問いかけである、生命の危機状態で判断に時間を掛ける様な人間はろくでもない事は経験で解っていたのだ。

拡声器による呼びかけの回答は早かった、我々は残る人員の人数を確認するとゾンビ掃討作戦を開始した。
波状攻撃による個体の撃破、及び噴霧器のノズルを加工した噴射機で灯油をゾンビに吹き付け放火する。
赤班と青班の精鋭部隊である、7度目の攻撃時にはほとんどゾンビは駆逐されていた。
荷物搬入シャッターが開く、出迎えたのは男性一人と女性や子供たちであった。

トラックを進入させ、安全を確認した後手分けして資材を積み込み始める。
のんびりは出来ない、まだまだこの地域にはゾンビの個体数が多そうなのだから。

彼らには小型観光バスによく使用されるタイプの車を与えた、工作班により窓には総て
金網を溶接してある。
ある程度の食糧も搭載しておいた。
安田は、質問にはなにも答えず、同時に逃げ出せるように準備を怠らぬよう伝えると、
皆と共に積み込み作業に精をだした。

翌朝出発の時は来た、彼らを先行させる・・・
少し事務的過ぎたかなと気持ちが滅入るが仕方がない、彼らを連れて行くわけにはいかないのだ。
自らの手で道を切り開きたどり生き残れることを祈った、安田にはそれしか出来ないのだから。
「42」

マンションに帰り、自室に籠もった。
有希は心配そうにしていたがそっとしておいてくれた。

年端もいかぬ子供も居た、有希と変わらぬ年齢の子もいた・・・
恐怖と不幸のために気持ちがおかしくなった女性も・・・・
その人たちを、ただ移動手段と、わずかな食糧で見放したのだ。

自分が情けなかった・・・・
涙が止まらなかった・・・・

                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:    <勝手に助け?てしまったのねん。
       `;.       ●  ,; '        さんげりあ様ご免なさい。
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、        良ければバス使ってくださいのねん。  
      ;'            ;:          
       ;:            ';;  


                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:    <バスの中には色々あるのねん。
       `;.       ●  ,; '        適当に使ってほしいのねん。
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、        バイザーの中にゾンビとフナムシの関係を  
      ;'            ;:         書き込んだ紙も入れといたのねん。 
       ;:            ';;          でも、銃は無いのねん。
6103-620:03/05/02 03:05
前の作品から100レス以上も経過してしまった・・・。

一本、少々ガラの悪いのを投下します。
6113-620:03/05/02 03:06
寂れた繁華街の一角に一つの事務所がある。指定広域暴力団山海組の詰め所だ。
そんな山海組傘下のビルでつい先日、大爆発が起き、幹部数名が死亡する事件があった。
その手口から目下敵対中の道祖会会長、益子の仕業であると断定した執行部は
報復を決定する。そこで一人の男が鉄砲玉を志願してきた・・・。


「脇坂の兄貴・・・ほんまに行くんでっか?」

舎弟の一人、飯田が心配そうに訪ねる。
脇坂と呼ばれた男は拳銃を手入れするだけで何も答えない。

「別に兄貴がいかんでも、若い衆がゴロゴロいますけぇ
 そん中から出せば済む話だと思うんですが・・・」

「ドアホ!組長が殺られたんやぞ。わしを一から育ててくれた組長が!
 わしがいかんで誰が行くんや!大体、今の若い奴が鉄砲玉なんぞでけんやろ。
 せやから口はさまんと、黙って見とれや。のう」

「へ、へぇ、分かりました。そんならこいつをお納め下さい。本家からの餞別です」

飯田は机に置いてあった箱から酒をとりだした。中身は清酒のようだ。
脇坂は自分の杯になみなみと酌むと一気に飲み干した。

「ほんならの、行ってくるわ。後は頼むで」

男は事務所から出るとタクシーを呼び止めた。行き先は当然のことながら道祖会だ。
執行部の情報によると会長である益子は今日はずっと事務所にいるはずだ。
運転手に目的地を告げると露骨に嫌な顔をしたが、大枚と脅しを駆使して黙らせた。

脇坂は目的地まで着くと財布の中にあった札束を全て運転手に手渡した。
これから死にに行くのに銭はいらぬという、脇坂なりの覚悟の表れであった。
6123-620:03/05/02 03:06
戦後の混乱期に山海組と供に治安維持に務め、裏社会の顔役であった
道祖会も今や覚醒剤に売春、武器の密輸等に手を染めかつての面影は微塵も残していない。
脇坂は事務所の前に誰もいないのを確認すると銃を片手に単身乗り込んでいった。

「コラァ、益子!!往生せいやっ!!」

しかし、その呼びかけに答えたのは無数の銃声であった。
思いがけない展開に脇坂は驚きを隠せなかった。

「な、何じゃとぉ!?何でこないに数がおるんじゃ!?」

予想に反し、事務所内には相当数の組員が残っていた。
道祖会は山海組の報復を予期して万全の態勢を敷いていたのだ。

「飛んで火に入る夏の虫ちゅうのはまさにこのことやのぉ」

事務所の奥のほうから野太い声が聞こえてきた。
無様な侵入者をあざ笑う声の持ち主こそ益子本人であった。

「このご時世にわざわざ一人で来るとはご苦労様やの。オノレは天然記念物か?」

「ええい、やかましわ!!あの世で組長に詫びいれんかい!」

脇坂は再び拳銃を構えた。益子に狙いを定め、引き金を引く。
しかし、聞こえたのは銃声ではなく、肉を切り裂く音であった。
背中に彫られた般若の口から鋭利な牙が生え、その歯茎から多量の血が滴りおちる。

「な、何でや・・・こんなアホな・・・」

道祖の組員がドスを引き抜くと脇坂はその場に倒れこんだ。
その身体からは血が滲み、瞬く間に床へと広がって行く。既に事切れていた。
6133-620:03/05/02 03:07
「・・・ったく、山海のボケが。今時鉄砲玉なんぞ流行るかっちゅうねん。
 おい、そこのお前とお前、こいつを適当に処分しとけや」

益子の指示で二人の組員が死体に近付く。
心臓を一突きされた体からは体温が奪われたらしく、触れると異様に冷たい。
一人が脇から抱き抱え、もう一人が足を持つ。力の抜けた体には重量がある。
四苦八苦しながら二人が奥へ運びこもうとすると、脇坂の身体が跳ねた。

「ひ、ひいぃ!!」

二人が手を離した。死体が床に落ちる。見ると脇坂の身体は痙攣していた。

「何やっとんじゃ!ただの死後硬直やないかい、この程度でビビってどないすんのや!!」

益子がヘマをした組員に怒鳴りつける。しかし、脇坂の死体は痙攣をやめるどころか
益々ひどくなっていた。あたりに血を撒き散らしながらのた打ち回っている。

「おやっさん・・・こいつ、まだ生きとんのとちゃいまっか?」

「なわけあるかい!死んどらんのならトドメを刺すだけじゃ!」

そう言って拳銃を取り出すと頭に鉛り玉を撃ちこんだ。
銃声とともに死体の頭部に大きな穴が開く。痙攣は止まった。

「今度こそしっかりやれや。あんまりわしを怒らすなよ」

益子は一階へ降りていった。本日は福建マフィアと麻薬の取引があるのだ。
いつまでもこんなところでグズグズしてはいられない。
黒服の乗るベンツに乗り込もうとすると、またもや上から悲鳴が聞こえてきた。
6143-620:03/05/02 03:11
その頃、二階では死闘が展開されていた。複数の組員が男を囲む。

「こんのポン中がぁ!あの世に去ねや!!」

一人がドスで襲い掛かり、胸から腹を袈裟懸けに斬りつける。
腹部から腸がこぼれ落ちる。だが、男はそれを気に止めるでもなくに接近すると
今しがた斬りつけた相手の首に手を掛け、力を入れる。
ゴキッと鈍い音があたりにこだまし、組員の首があらぬ方向へ向く。

「くそ、殺せ!ぶっ殺すんや!!」

部屋の中にいた組員全員が銃を手にすると一斉に発砲した。
男の身体はたちまち蜂の巣になる。それでも歩みを止めることはない。
先ほど絞殺した相手からドスを奪い取ると次々に斬りかかった。

「あわわ・・・た、頼む、堪忍してくれ!かんに・・・ぎゃああああ!!」
「し、死にとうない、死にとう・・・!」
「何で死なんのじゃ、こいつは!!化け物やあ!!」

組員達は断末魔の叫びをあげつつ絶命していった。


「何やっとんじゃおのれら!!死体の一つも処理できんとはホンマにヤクザか!?」

益子はドアを開けると開口一番、怒鳴りつけたが、それに答える者はいなかった。
視界に入ったのは部下達の死体の山と血の池であった。
部屋中に充満する、血の臭いに思わず吐きそうになる。
脇坂の死体はどこかへ消えていた。
6153-620:03/05/02 03:12
「こ・・・これは一体・・・?」

「お・・・おやっ・・・さ・・・ん」

どこからかかすれ声が聞こえてきた。まだ息のある者がいるらしい。
益子は死体の山をよけながらそばまで駆け寄る。

「どないしたんや!一体、何があったんや!!」

「脇・・・さ・・か・・・まだ・・・死んで・・・な・・・・・」

それだけ言うと、組員はうなだれて動かなくなった。
どうやら脇坂はまだ死んでいないらしい。それどころか事務所にいる人間を
皆殺しにしてどこかに逃亡しているようだ。

「おやっさん、ここは危険です。後は私どもに任せて、先に降りてて下さい」

様子を見に来た黒服にうながされ、益子は下に止めてあるベンツへと乗り込む。
殺したはずの男が組員を全滅させ、さらに自分の命を狙っている。
益子は途端に恐怖に執り憑かれた。

「おい、早う出せや!あいつが来たらわしらまで殺られるで!」

運転手は無言でベンツを発進させた。法定速度をはるかに超えたスピードで走る。
信号が赤になってもお構いなしに走り続ける。

「こ、こら!スピードの出し過ぎや!サツに捕まったらどないする気や!?」

運転手は何も答えない。メーターは180キロを超えていた。
いつ事故が起きてもおかしくない状態だ。
6163-620:03/05/02 03:13
「止めい!!今すぐ止めんかいっ!!」
「そら無理じゃ益子」

運転手の口から信じられない言葉が発せられた。声まで変わっている。
ゆっくりと振り向いたその顔は額に風穴の開いた脇坂の顔そのものであった。

「おんどれ、何で生きとんのじゃ!!死んだんやないんかい!?」

「残念やが、ワレを地獄へ落とさんことには死ねんのや。諦めぃ」

脇坂はケタケタ笑うと車は港へ突っ込んだ。福建マフィアの指定した取引場所だ。
突然の招かれざる客にマフィア達は慌てふためく。
ベンツはマフィア達を数人跳ねとばすとそのまま海へダイブしていった。

「ひいいいぃぃっ!!いやじゃ、死にたない!助けて・・・」

必死の懇願も最後まで言い終わることなく、ベンツは海へと沈んでいった。



『・・・また、例の抗争事件と関連する車両を警察が引き上げたところ
中の後部座席から指定広域暴力団道祖会会長、益子隆一会長(47)の遺体が発見され
警察では山海組による報復によるものと見て、捜査をすすめています。
では、続いてのニュースです・・・』

「兄貴の死体はでてきてないか・・・どこかで生きとるんかの・・・」

飯田はそう言呟くと階段を降りて行った。あの日以来、脇坂が帰ってくることはないが
死体が発見されていない以上、どこかで生きてるのではないか。
そう思いながらドアノブに手を掛けた。
外に尊敬する兄貴がいることも知らずに・・・。
617まとめた人:03/05/02 10:32
おっ、お話が一杯だ。
多分GW期間中に新スレだな。
また、まとめないと。
でも、六日まで泊まり勤務だから、
できるのは、その後です。
スレが代替えした後に、本スレが落ちてなければいいが。
>>608
世界観がザッピングしているのは非常に面白いのですが、
事前に何の了承もなく、藤田さんの命運を決めるのはどうかと…
さんげりあさんが良ければそれで良いのですが、出来れば
無かった事にできないものでしょうか?
と失礼。
「事前に何の了承もなく」ってのは藤田さんの事について。
なんていうか、軒先を貸したら母屋を取られたって感じでどうも、ね…
>>619



                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:    < >>582 及び >>588 において
       `;.       ●  ,; '        一応許可は頂いているのねん。
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、        状況は被って居るものの固有名詞は  
      ;'            ;:         いっさい表記していないのねん。 
       ;:            ';;          パラレルストーリーと思ってほしいのねん。


                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:    < 従いまして、さんげりあ様が
       `;.       ●  ,; '         独自に脱出するストーリーを執筆
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、          されることに問題なきように留意
      ;'            ;:           したつもりなのねん。
       ;:            ';;          


                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:    < 私の前作品では主人公とPIP様の尚也が
       `;.       ●  ,; '         出会っていますのねん。
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、          そのおかげで破綻無き設定で武器が
      ;'            ;:           入手できたのねん。
       ;:            ';;           まもなく安田たちも旅に出るのねん
                            松本零士の作品のようにリンクさせるのねん
                           微妙な設定誤差はゆるしてほしいのねん。
普通に話してくれ・・・(涙
「43」

夜が明けた、夕べは一人で自問自答していたが正解となるべき答えは見いだせなかった。
浴室にむかい、くみ置きの温泉水で顔を洗うと少しさっぱりしてきた。
「辛いことがあったの・・・」有希が優しく話しかけてくる。
「昨日は心配させたね、ゴメン」そう言って、無理に笑った。

そう、この子を守り抜く責任がある、だが自分が死んではなんにもならない、
お互いに生きてこそ意味があるのだ。
安田は頭を切り換えた。

昼過ぎ、有希を伴いホームセンターに向かった、表向きは現在の状況の報告である。
駐車場に滑り込むと、補給物資は無いのかと聞いてくる。
安田はあきれてモノが言えなかった、良い場所が見つかって奮戦しながらバリケードを構築中だと話す、それは本当だ。
だが場所は嘘の報告だが・・・・
人手が不足しているので人を呼びに来たと言うと、一様にイヤな顔をする。
こいつら、自分たちはのほほんとしていて、迎えが来るまで安全なところで暮らしたいだけなんだな・・・
安田はそれでも腹を立てる様子も見せず、以前公民館で助けた3人の女性を指名した。
彼女たちも最初は不安げだったが、助手席に座る有希の姿を見つけるとためらわず乗り込んできた。
またもや戦力外で食い扶持が減ることに気をよくした人たちを背に、ホームセンターを後にした、
二度と此処に来ることは無いだろう、もう此処には要救助者はいないのだ。

「44」

「何処にゆくんですか?」心配そうに後部座席から聞いてくる。
「既に安全が確保され、食糧の心配がいらない所さ・・」
安田はそう答え安心させる。
「え! じゃ、さっきの報告は? 先に出かけた人たちは?」
「ああ、アレは全部ウソだよ、確かにバリケードうんぬんは本当だけどね、それよりも
皆が出ていってからの事を教えてくれないか?」
彼女たちは代わる代わる、その後の経過を話してくれた。
以前のように柵に集まるゾンビを随時安全な位置から攻撃することもなくなり、青班も
出かけるのを何かと理由を付けて嫌がる始末、しまいには次の場所にゆくのだから此処にモノを残しても仕方が無いじゃないかなどと言い出す者まで・・・
そうなると食糧の配給も、彼女たちのような生活班には少なくて良いんじゃないとか
差別化の風潮が現れはじめていたらしい。

「やっぱり有希、おにいちゃんと一緒にいて正解〜♪」
助手席の有希が茶化す(w)
それを聞いた3人も、くすくす笑った。
安田は、思い切って温泉に3人を連れてきた。
新しい場所に行くにあたり身だしなみを整えて貰おうと思ったのである。
既に何度か温泉を搬入していた経緯もあって、彼女たちは不審がることも無かった。

女風呂が初めて使われた、有希がトコトコ安田のあとについて行くので、「ゆきちゃん、こっちでしょ!」そう呼び止められても
「おにーちゃんと一緒にはいるのぉ♪」と笑い返した。
うう・・有希のバカやろう・・・これでロリコンのレッテル貼られたじゃねーかよぉぉ
更に恐ろしい事に、浴槽内では、
「あぁ〜ん、おにいちゃん そんなところ洗っちゃやだぁ〜 ひゃん!」
「だめだよぉ〜 きこえちゃうよぉ〜」などと大声で叫ぶのである。
ああ、クールで寡黙な印象が・・・・・
風呂上がり、3人の視線はとても冷たかった。
「だって〜おにいちゃんに、ちょっかい出されたらイヤだもん」
後ろで有希がそう言って舌をだした。
車内は若い女性のフェロモンで充満していた、風呂上がりのなまめかしさも手伝うのだろうが、公民館生き残り組である、有希と同じくかなりの美人なのである。
ルームミラー越しに後ろを見ていたら、有希が脇腹にパンチを入れてきた・゚・(ノД`)・゚・)

程なく公園に到着した、今までと違いゲート前にはゾンビは一体もいない。
赤班が定期的に排除しているおかげである。
フリーパスで中に入ってゆく、車を止めると警備の人間がにこやかに近づいてきたが、
降りてきた3人に見とれ思わずバールを足の上に落としてしまい悶絶する。
「だいじょうぶですか?」駆け寄る3人
彼はコロンの香りを漂わす女神に囲まれ、幸福と不幸の同時攻撃に遭っているのだ。
「男ってばっかみたい」有希が冷たく言い放った。
漏れにも12歳の恋人キボンヌ
628むにむ:03/05/02 22:35
漏れにも12人のry
629PIP ◆dve/1Ebaqs :03/05/02 22:49
>>628
十二人の怒れるゾンビたち?
あの捕まえた人間たちの処遇をめぐって12人のゾンビたちが議論をする法廷ドラマでツカ?
630630:03/05/03 00:44
すいません。俺も小説書き込んでいいですか?
むしろおながいします。


                    ,,.-'ヽ 
   ヽ "゙ー-、、         / : :!
    i 、 :. ヽヽ_,,.....、,,,....._;/ ,;'   ;,.!
     i.,  ..;;;ヽ       ヾ ,,;_ , /
     ヾ_:::,:'           -,ノ
     ヾ;.              、;, 
       ;; -=・=- ... 、-=・=-;:    < とにかく投下されたし!
       `;.       ●  ,; '        
       ,;'     '.、 -‐-ノ ,;'、          
      ;'            ;:          
       ;:            ';;          

633むにむ:03/05/03 01:29
12人の怒れるゾンビ達

ハゲシク小説化キボン

ここは、2ちゃんのなかでも屈指のくつろぎ場ですね。

作家のみなさん、ごくろうさまです。
             ...        ,、
            ミ ヽ       ;"゛ミ
  ______ ミU ヽ,,,,,,,..,.,,彡   ミ
  | ____ 彡   U    :::::::::::U:ミ
  | |       ミ=・=-  -=・=-   ::::::::::::ミ~
  | |.     .≡. ┌―┐     U :::::::::::::ミ~
  | |. >>633 三U |   |      ::::::U::::≡
  | |      彡 ├―-┤ U.....:::::::::::::::::ミ"
  | |____ 彡     .....:::::::::::::::::::::::彡
  └___彡''"゙゙゙      :::::::::::::::::::::::::ミ~
  |\    :;       :    :::::::::::::::::::::::≡
  \ \   ミ,,..,...,;;   ::::::

「45」

「今日は何処に泊まるの?」
助手席の有希が、さりげなく尋ねる、日暮れまで時間もあまり無い。
「そろそろ決めなきゃな、注意しておいてくれないか」
「うん、分かった」
安田たちは、古巣を離れ沿岸地域を探索していた。
表向きは情報収集であるが、安田には別の思惑があったのだ。
まもなく台風シーズンに突入する、当然土砂崩れ等で山間部は通行不可能になることも
多い、そうなれば復旧作業が見込めない今では二度と通行出来なくなる公算が高いのである。
残された時間で、出来うる限りのチャンスに賭けるつもりであった。

「あ、あそこどうかな?」
「モーターイン ホテルか・・よし入ってみるか」
注意深く車を入れる、一棟毎に別れているタイプだ・・さすがに止まっている車はない。
入り口から見えにくい場所の小屋に止めた。
外側から建物をチェックする、総ての窓に格子が付いているので安心できそうだ。
管理小屋らしきモノが見えたのだが無人のようだ、ゾンビが一体もいないのが良い証拠だった。
人のいないところ程ゾンビの個体数が少ない、分布が本当に極端なのだった、
ここなら一夜を過ごせそうだ。
車のそばの小屋に戻り、手斧を構えつつ入り口のノブに手を掛けた、鍵はかかっていないらしく抵抗無く開いた。
部屋の中は使用された様子もなく綺麗だ、注意深く調べてゆく・・・
元々小さな小屋であるため、ベットルームとバスルームしか無いのだけれど。
きちんと鍵がかかることを確認の上有希に合図する、彼女は鞄を手に駆け込んできた。
「あっ、お湯が出る!」
有希が驚きの声を上げた、そう言えば給水タンクとプロパンボンベが在ったことを思い出す。
「水の残量が分からないから風呂桶に貯めるだけにするんだぞ」
そう声を掛けながら服を脱ぐ、久しぶりに体を洗えそうだ、有希も傍らで楽しそうに服を脱ぎ始めた。
予想に反してお湯が止まることは無かった、さすがにラブホテルだけのことはある、
給水タンクも大型なのだろう。

「46」

久しぶりのベッドの感触が気持ちいい、有希が甘えた声で誘ってくる。
安田は、優しく抱き寄せ唇を吸うと、順に舌を這わせていった。
この前有希に触れたのはいつだっただろうか、ふとそんな事を考える。
しかし、可愛らしい嬌声はそんな考えなど吹き飛ばしてしまう、その気にさせてしまう
魔力があった。
安田の唇が触れていない場所はもう無くなっていた、指で谷間を開き中のつぼみを舌を使って優しく丁寧に愛撫する、
首を振りイヤイヤをするが、更に刺激を与えてゆく・・・。
有希の反応を楽しみながら、更に密壺に人差し指を射し込み掻き回す。
体をのけぞらしながら悲鳴をあげ力尽きる、股間の筋肉が小さく痙攣しているが
安田の責めは終わらない、有希の呼吸が整うのを待ち今度は自分自身をゆっくりと
挿入していった。
変な話であるが、体を重ねる毎に有希との意思の疎通が確実になって来ている気がする。
阿吽の呼吸とでも言うのだろうか、命の危険と隣り合わせの行動を行うとき、これが有るか無いかでは全然違うのだ。
只、此処は住み慣れた自宅ではない、急に脱出しなくてはいけなくなるやもしれないのだ。2人は行為の後再度風呂で汗を流し、服に着替えて眠った。

翌朝、日が昇ると同時にホテルを出た。
夕べの行為に反応してゾンビが集まって来ていないか心配したが杞憂に終わった。
海岸線沿いの道を選択しているのが正しいことを裏付けている。
後はお目当てのモノさえ見つかれば最高なのであるが・・・・

「47」

安田たちの目的地は、原子力発電所周辺である。
無能な政府であったが、さすがに此処が暴走すると手が付けられないとのことで警護を固めると言うことはニュースで聞いていた。
現在では既に自衛隊による管理になっているだろうが、問題は其処ではない、狙いは別にあるのだ。
発電所というモノはだいたい奥まった所にある、位置的なものでなく道の終わりと言った感じだろうか?
安田は最寄りの所轄から発電所にいたる道をトレースすることによりソレを得られるのではないかと踏んでいたのである。
今走っているのは2つ目の発電所にいたるルートだった。
「あっ、おにいちゃん あそこ!」有希が指さす。
安田は頷くと慎重に車を近づけてゆく・・パトカーが電柱に刺さっている、後ろの車両も縁石に乗り上げたままだ。
傍によるとそれが覆面で有ることが見て取れた。
安田は素早く降車し様子を探る、何かをさけようとして電柱に激突したようすだ。
傍には警察官の服装をした白骨が見えた、銃も見えたので確認したが弾はなかった。
覆面車両のトランクを開けると、其処にはジュラルミン製のアタッシュケースが4個並んでいた。どれもダイヤルロックと鍵つきだ。
安田はヘルメットの中で笑うとそれを大急ぎで車に積み込み、車を走らせた。
「何を取って来たの?」
有希が不思議そうに尋ねるが、「開けてみてのお楽しみ」とだけ答えると、先ほど見つけていた建物に車を滑り込ませた。

再度の安全を確認し、トランク持参で中に入る、ずっしりとした重さが期待をかき立てる。
あらかじめ用意してきた充電式サンダーで蝶板をはぎ取る、二度と使えなくなるのはもったいない気がするが仕方がない、
ささやかな抵抗の後それは開いた。

「48」

「これって・・・・」有希が目を見開いている。
安田も興奮を抑えきれない・・・・
其処には強化プラスチックと金属のボディーを持つ銃が収まっていた。
『H&K MP5KA4 クルツ』 これがこの銃の正式名称だ。
ケースには15連倉の予備マガジンが3本が収められている。
手に取りたいのを辛抱し、残りのケースも解体してゆく・・全部で3丁、少し小振りだったケースには実弾がぎっしり詰まっていた。
気持ちを落ち着かせ、手に取るが思ったより軽い・・雑誌のデーター通りだ。
「おにいちゃんが探していたモノってこれだったの」
「そう、これだよ・・暴徒から有希を護るモノだ・・・・」そう言ってウインクした。

以前、銃について考えて居たことがあったが現実面からあきらめかけていた。
一時自衛隊駐屯地付近にゆくことも考えたこともある、このことを釣り公園にいたマニアに相談したところ一笑された。
「自衛隊装備って言っても歩兵は64式か運が良くて89式、ピストルは佐官クラスのみ所有してる上に 1m近い全長で4kg以上もあるんだぜ、素人が構えて撃つ前に食われちまうさ」
「さらに言うとだな、そんなデカブツが狭い屋内で役に立つもんか、まぁ人を狙うんなら何処に当たっても良いわけだから良いかもしれないけどね」
持ってきたタバコに気を良くしてさらに話続ける。
「それよりも原子力関連施設警戒隊って知ってるか? たぶん初めて聞く言葉だと思うけれどな
 つまりはアレだ、例の怪しい国のテロを考慮して作られた部隊だ。ところがこいつが
良い装備持ってるんだな、海外でも要人警護や突入部隊が使う軽機関銃、SMGってやつだ。これがすごい、小型軽量な上に少ない反動で命中精度抜群ときてる。
この騒ぎで当然各部隊に補給されてるだろうがどれだけたどり着けたか疑問だけどね。」

この話を聞いて以来、書店でそれらしい書籍を集め、構造などを頭にたたき込んで居たのであった。
え〜と、
>>618殿や他にももし気になった方がいらしたらなんかあれなので一応念のため発言というか、
フォローというか説明しときます。
ご心配は無用です。
無理にストーリーを合わせたりはしません。
というか、まったくストーリーは合いません。
ラストはもちろん今後の展開は既に決まっていて、これまでのストーリーと基本設定から言っ
ても合わせるのは不可能なので。
それに微妙に描写も違いますし。
藤田たちのホームセンターは入り口は閉じたシャッターとドアで、外観はバリケードなしな
ので、物を乱雑に積み上げた障壁は非常階段の内側のみで外からは全く見えないです。
また、藤田は金槌が勿体無い(脱出時用にとっておいている)ので、ゾンビ減らしには金槌は
ほとんど使うことはなく、物干し竿から造った槍のみを使ってます。
あと、上の話では男ひとりと女子供ということで、脱出者の中には神崎先生いないですし。
おまけに藤田たちのいるセンターには物資がほとんどなんにもない(笑)。
取引条件が合わないのです。
それだけでなく、さらに海から遠いし、電気は既に不通でシャッターは開けられません。
(この辺りの話は後で出てきます)
ゾンビ発生の原因は細菌兵器だったり、日にち的に計算が合わなかったりします。
なにより、根本の設定がちょっと違い、他の作品の設定を取り入れられないのです。

いい機会なので漏れのゾンビ設定を解説しときます。
漏れの作品でのゾンビはロメロ系とも違い火を恐れません。
燃やされても脳に火が回ってしまうまでは平気で動きます。
だからヘタに燃やすとかえって危ないです。
あくまで脳のみが弱点なので接近戦で脳に大きなダメージ、あるいは銃等で脳を吹っ飛ばす以外
では死にません。
生前の記憶や習慣も関係なく、ただただ餌を求めて昼夜なしに徘徊します。
視覚、聴覚、嗅覚、本能(ゾンビセンサー?)をフル動員して餌に突き進むので、目潰しされようが
なにされようが他の感覚を頼りにして襲ってきます。
当然、意識を逸らすとかも通用せず、誤魔化しは効きません。
階段も上れるし、梯子も個体の生前の運動能力によってはゆっくりですが少し上れます。

ただし、できる個体でもあまり高くまでは上れず、ある程度でバランスを失って落ちてしまいます。
ウィルス感染が元なので、汚染された腐肉のため、野犬がゾンビを食べたりはないです。
犬やカラスなどの動物はもちろん、昆虫も手を出さない汚染腐肉です。
当然、フナムシに喰われたりもありません。
らしくないと思われるかもしれませんが、蛆などもわきません。
蛆とかに喰われて死ぬこともなし。
ようするに、誰か人間の攻撃によって二度目の死を迎えるまではゾンビの数は減りません。

噛まれたら確実に感染。
引っ掻かれる分は基本的には大丈夫。
でも、傷口にゾンビの血液や唾液がかかったりすると高確率で感染。
ゾンビを燃やした煙を一度に大量に吸い込むとこれまた感染の可能性あり。
リミッタ―が外れた状態なのでかなりの怪力。
スピードも個体差があり、のろいのもいる反面、けっこう速いのもいます。
早歩き並のスピードで向かってくる奴もいます。
実はグルメ(?)で、襲った人間が息を引き取って冷たい肉になると食べません。
つまり襲われた人間が跡形なく食われることはないため、ゾンビの数は襲われた人間の分だけ
どんどん増えていきます。

とりあえず、こんなとこです。
てなわけで、はずかしいけれど殿のおっしゃるように、よく似た状況の別のホームセンターか
やはり設定からしてパラレルワールドとでも考えてお読みください。

楽しければOKってことで、気楽に気軽にいきまっしょう。
個人的には、今後も各作者ごとに互いのキャラらしき登場人物を出してみて絡めたりするのも
おもしろいと思ってます。
あくまで本編のストーリーが本筋で、友情出演してどうなろうともあくまでパラレルってことで。

なんか説明長くなってしまいますた。

でわ、つづき逝くのです。
『165』

「おぢさ〜ん!」

屋上のセンター内への入り口ドアに真由美があらわれた。
俺の姿を見つけ、ぶんぶんと手を振る。

ほんのすこし遅れて亜弥もやってきた。
「もう、真由ちゃん、階段で走っちゃダメよ。
ころんじゃうわよ」
「は〜い」

「藤田さん、食事の時間ですよ」
「あ〜、あやおねーちゃん、ずる〜い。
まゆがいいたかったのにぃ」
真由美がぷくっと頬をふくらませる。

「ごめんね、まゆちゃん」
「おぢさん、いこ!」
そう言って真由美は俺の袖をつかんで引っ張った。

「はやく、はやく〜」
「さ、いきましょう、藤田さん」
亜弥が優しく微笑む。

「ああ」
俺はふたりとともに屋上を後にした。
『166』

そうさ、俺にはこの娘たちを護る義務がある。

今度こそ。。。今度こそ護ってみせる。。。。

この娘たちのためにも、俺はもっともっと強くならなければ。。。。

もっともっとゾンビを減らし、この娘たちを安全なところに連れて行くんだ。。。。

絶対に。。。。

絶対にだ。。。

たとえ。。。この命に代えても。。。。

それが今の俺の生きる目的。。。。

俺の使命。。。。

そのためならなんだってやってやるさ。。。






さらに数週間が過ぎた。

そして、ついにその日が。。。食料の尽きる日がやって来た。。。。
なんかフォローの方が投下分より長い罠。
またまた鬱。。。
646630:03/05/03 19:31
 住宅街の一角。痴呆の老人が歩いていた。
 黄ばんだ浴衣をつけただけの身体は、ひどく痩せ、木切れのように頼りない脚を一歩一歩進める。
 ふらふら ふらふらと危なっかしい程に身体を揺らして歩く老人を、周りの人間は遠巻きに見つめていた。
 老人が口をもごもごさせれば、近所の主婦達は首をすくめ。一歩踏み出せば、子供は慌てて逃げ出す。立ち止まって、周りを見回せば、その場にいる全員が緊張した。
 そして、時間と共にそんな人々は増えていった。
 ざわざわ ざわざわ…。集まった人間は黙らない。
 「ねえ。あれって村井さんトコのあばあちゃんじゃないの?」
 「すげえ。俺はじめて見たよ」
 「そろそろじゃないかと思ってたけど…。やっぱりね」
 「お前触ってこいよ」「やだよ」
 ふらふら ぞろぞろと、痴呆の老人と人々は一緒に歩き続けた。誰も、手をさしのべようとしない。
 すっかり厚くなってしまった人垣の間から、突然一人の男性が飛び出して老人に殴りかかった。
 彼の一撃は、小さな頭を叩き割った。
 
 
どーでもいいがMP5は普及率の割にあまり性能よくないぞ。
今は金ないとこが使う程度もの。
命中精度も特にすぐれてるわけでもないし第一弾詰まりとかの故障も多い。
整備大変なくせしてやらないとすぐイカレる。
ショックもけっこうある。
訓練なしの素人にはとてもじゃないが扱えないとオモワレ。


それよりショート作品が最近すくなすぎ。
むにむさんとかもっとがんがって!
             ...        ,、
            ミ ヽ       ;"゛ミ
  ______ ミU ヽ,,,,,,,..,.,,彡   ミ
  | ____ 彡   U    :::::::::::U:ミ
  | |       ミ=・=-  -=・=-   ::::::::::::ミ~
  | |.     .≡. ┌―┐     U :::::::::::::ミ~
  | |. >>647 三U |   |      ::::::U::::≡
  | |      彡 ├―-┤ U.....:::::::::::::::::ミ"
  | |____ 彡     .....:::::::::::::::::::::::彡
  └___彡''"゙゙゙      :::::::::::::::::::::::::ミ~
  |\    :;       :    :::::::::::::::::::::::≡
  \ \   ミ,,..,...,;;   ::::::

現状の国内情勢から、入手出来そうなブツを選択したのに
 えらい言われようやな・・・
 腹立ったので 今後の書き込みは停止する。
余談では有りますが、>647の書き込みにより
暖めていた作品が総てお釈迦になりました。
今だ射撃の表現もなく、何故3丁なのか・・・・
何故補給されていたのか・・・・

再度ストーリーを考え直す必要が出ましたので。

一言言わせていただくなら、性能を承知の上登場させているのです。
作品を考える苦労がおわかりでしょうか?
そんなこと言わないで下され。
非常に楽しみにしてます。

ゾンビ相手に銃は欲しいけど実際どうやって手に入れるかが問題だな。
日本は半端に治安が良いからなぁ。
海保とか良いもの持ってそうだけど、保管は厳重なんだろうな。
作品を考える苦労がわかるかとか自分が言うなよ。
つい少し前に自分でさんげりあさんの作品荒らすような真似しといて。
いくら事前に許可得ても先の展開を勝手に決めて書くようなまねするのはそれこそ作品を考える苦労がわかってないだろ。
おまけに書く気がうせたなんて発言するとはね。
>>648-649のような反応の仕方は如何なものかと…
作品を書けない奴ほど能書きたれますね。
はずかしいけれどさんが書き込みを止めたら>>651は後を埋めれるのか。
さんげりあさんは了承してるし、内容も違うだろうに。
またスレが荒れるんでしょうね。
そして過疎化する。
>>652
作品投下直前に、ネタバレに近い書き込みされたので動揺したのでは?
だけどひとの意見で今後の展開を考え直ししないといけなくなったとか言うなよ。
自分のやったことよく考えれ。
もしさんげりあさんが今の自分みたく発言してたらどうよ?
脱出ストーリー書かれたからこれにあわせて書かないととか
勝手に先の展開書かれてムカついたからもう書かないとか
そうは思わんの?
自分のことだけなん?
自分が読む限り、パラレルワールド的な扱いでしか表現していないし。
>>647の様な直接的否定はされてないと思う。
事前に了承を取る辺りむしろ紳士的では?

物書きに変わり者が多いのは事実(ry
だからこそ面白いんだけれどね。
正論ぶちかます奴が書く作品は例外なく駄作が多いのも事実。
>>647の書き込みって否定してるのか?
MP5とかいう銃のことについて教えてくれただけじゃない?
>>654さんの書いてることが正解なのかな?
>>655
よく考えれ。
作者同士が苦情を言いあってるのなら分かるが
読んでるだけの名無しがえらそうにするのは如何なものかと?
漏れモナー(ry
>>657
銃の固有型番まで指定してる辺り、知識は>>647以上と思われ。
実際調べたが、原子力関連施設警戒隊なる機関は存在してました。
思いつきで書いているわけでは無いことが、自衛隊の武器名や重さからもわかるよ。
つまるところ今回の騒ぎは>>647の知ったかぶりが原因と言うことでよろしいですな。
>>659
はずかしいけれどさんがそういうことに詳しい、
もしくはそういうことについて色々と調べて作品を書いているってことは分かるよ。
ただ>>647はそのことに気付かずに余計なお世話を…ってことね。
「教えてくれた」ってのがまずかったかね?「教えようとしてくれた」が正解か?
今までの例からみて、はずかしいけれどさんは大量投下組だし
使う予定のストーリーが全滅したんじゃないかな。
どういう事が起こるか分からないからこそ面白いのであって
弾つまりでピンチとか、作動不良とかの表現があっても「やっぱりな」なんて
思われるのがイヤだったんじゃないかな。
5本ぐらい投下予定だったとしたら切れるのも分かる気がする。
>>647は見なかった事に…
664あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/03 21:55
>647
君はマルイの電動ガンでも磨いてなさいw

>はずかしいけれどさん
やっと鉄砲出てきた〜続きが気になるよヽ(`Д´)ノ ウワァァァン
その世界ではそういうことになっている、
ってことでいいじゃん。
細かいこと気にしなくたって。
666 ◆6N371.108E :03/05/03 22:12
もちつきませう!!
667こっこ:03/05/03 22:14
○月10日
テレビで面白いニュースがやっていた。
国内で暴動が起きているらしい。
実況中継でちょっと見た感じでは、血まみれで顔の青白い連中だった。
病気みたいだな。全くアホな奴らがいるもんだ。

○月11日
今日は会社を休んだ。暴動が会社の近くで起きているらしいからだ。
あの連中はどうやら新種の伝染病患者らしい。
患者は皆暴徒となり、殺人鬼になってしまうそうだ。
まだ家の周りに暴徒はいないので、病気にかからないようにマスクを買ってきた。

○月12日
どうやら伝染病が全国規模で猛威をふるっているらしい。
テレビをつけてもその関連のニュースばかりだ。
つまらないのでツタヤで映画を借りてきてみる。
668こっこ:03/05/03 22:14
○月13日
伝染病は沈静化した、とニュースでやっていた。
本当だろうか。テレビで見たような患者が表を歩いていたのだが・・・
私は病気にかかりたくないので表に出ずにいよう。

○月14日
おかしな事に朝からテレビ朝日だけ映らなくなった。
ほかの局は映るんだが・・・
テレビが故障したのだろうか?

○月15日
今日はNHK以外の全部の局が映らなくなっていた。
NHKの報道ではほかの局は暴徒の襲撃をうけて放送ができない状態らしい。
あと、暴徒に襲われた人間は病気に感染して暴徒になってしまうらしい。
伝染病の患者は殺人鬼になるんじゃないのか?
殺された人間が暴徒になれるもんか。あほらしい。
報道に全く責任感がないな。NHKともあろうモノが。
669こっこ:03/05/03 22:15
○月16日
NHKによると、自衛隊が出動して暴徒の掃討作戦が開始されたようだ。
おいおい、全く穏やかじゃないな。
暴徒だからって射殺してよいもんかね?
まあ、家の近所にもずいぶんと患者が増えてきたからさっさとしてもらいたいもんだ。

○月17日
テレビが全く映らなくなってしまった。
おまけに電話も通じない。
なんだなんだ、一体どうなっちまったんだ?
ちょっと不安になってきた。

○月18日
久しぶりに買い物に出てみたが、街にはだれもいない。
いるのは暴徒だけだ。みんなして俺を追いかけてくるもんだから、必死になって逃げた。
恐ろしい。命からがら家にたどり着いてみたら、どうやらほかの家が暴徒の襲撃をうけたらしい。
慌てて逃げ込み、今この日記を書いている。
なんなんだ。殺されたくない。暴動に巻き込まれて死ぬなんてゴメンだ。
670こっこ:03/05/03 22:15
○月19日
ラジオが聞こえた。
どうやらあれは伝染病患者などではなく、動く死体なんだそうだ。
それが、生きている人間を喰う。吐き気がしそうだった。
恐ろしい事に、もう警察も自衛隊も機能してないそうだ。
ラジオのパーソナリティはラジオ局に籠城し、死体どもの襲撃を防いでいるらしい。
どうしよう。死にたくない。生きたまま喰われるなんてゴメンだ。

○月20日
ラジオから聞こえた絶叫で目が覚めた。
奇妙なうめき声と、助けをこう女性の泣き声。何かを引きちぎるような音・・・
最期に、女性の叫び声がして、それっきりラジオからは奇妙なうめき声しか聞こえなくなった。
怖い。もう限界だ。家の周りには既に死者がひしめき合っている。もう死ぬしかないんだ。
いやだ。死にたくない。死にたくない。喰われたくない。喰われたくない。
喰われたくない。喰われたくない。喰われたくないクワレタクナイクワレタクナイクワレタクナイ
671こっこ:03/05/03 22:17
まあ皆さん落ち着きましょう。

久々の駄作失礼しますた。
それと雑談はできればこちらで。(前スレ)
http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1036704369/l50
>>671
今まで散々投下されてきたストーリー
オリジナリティを模索してください。
674あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/03 22:36
バタリアンが大好きだ。
オバンバが大好きだ。
ハーゲンタフが大好きだ。
タールマンが大好きだ。
675こっこ:03/05/03 22:43
>>673
わかりました。勉強し直してきます・・・
失礼しました。
676PIP ◆dve/1Ebaqs :03/05/03 23:01
一人でいることは勇気が必要だ。すなわち一人で考え、一人で怯え、 一人で疑う勇気である。
この勇気は、アドレナリンの流れによって刺激されるような表面的なものではない。他人に臆病と思われるかもしれないという恐怖からくるものではない。
――伝説のスナイパー、各語りき。

 と、いうわけでボクは今一人で暮らしている。
 一人で生きるのは気が楽だ。
 食べ物も保つ。
 たまに誰かが激しくノックする音が聞こえるが、気にしない。
 だって、今までボクは無視されてきたんだよ?
 話しかけても誰も答えてくれないし、同窓会に呼ばれたこともない。立てたスレは自分で2getしたよ。
 そんなわけで僕は引きこもることにしたんだ。
 食べ物はもともとたくさん用意しておいた。
 本当のところは良く分からない訪問販売に買わされた災害用のパックとか、街で話し掛けてくれた女の人に買わされた健康食品とかなんだけど。
 ま、いいや。今役に立ってるんだし。
 ゾンビなんてどうでもいい。
 僕だって似たようなものだ。
 親の残してくれたお金で生活しているだけで、世の中に何も返していない。
 水や安全は国がくれたもの。だから税金は払うし、自衛隊も応援する。
 ボクは今何も返していない。でも、でも国も今は麻痺しているから、多めに見てくれるよね。
 さて、今日こそは外の様子を見てみよう。いいかげん社会復帰してもいいころだ。
 外に出たボクの目にしたのは、街道を埋め尽くす死人たちの群れだった。ああ、これじゃまた引きこもるしかないのかな。
 久しぶりに空を見上げながらボクはどうしようか少し考えた。
 あれ?あれはいったいなんだろ――

「国民の皆様、危険地域におけるゾンビの滅却は完了いたしました。反対をしていた民主党のカイワレ党首は切れたライオン首相によりマットに沈み、
これにより気化爆弾の投下が決定したものです。なお一部マスコミの朝鮮日報、いや朝日新聞のみがこれに反対を表明し問題を捏造する模様です。
では次のニュース。多摩川を埋め尽くしたたまちゃんMark17についての警報です……」  
677PIP ◆dve/1Ebaqs :03/05/03 23:16
あのね、丸い卵も切りようで四角なの。
>>647さんはMP5の問題を書くのではなく、「MP5はいろいろあると思いますがどう使っていくのか楽しみです」と書けば問題なかったの。

んで、はずかしいけれどさんは流すのが一番どす。
漏れのなんかどこから出て来るのその装備の数々。尚也ってシリアルキラー?どうして日向は微妙にえっちくさいの?
といろいろ突っ込みどころいっぱい。
それでいいんです。
だって本筋じゃないから。ゾンビが出たことによるいろいろな物語を書いて、読んでもらって、楽しむのがこのスレ。
軍事知識は味付けであって素材じゃないし、料理を楽しむと言う主目的に比べてどちらが重要なのか。
>>651さんは正直蛇足。
作者同士で同意が出来ているのにそういう書き方はする必要ないでしょう?まさか読者代表ですか?

>>673さん。そう思ったなら、例えば「ここはこういう展開も面白いのでは?」と言う風に書きましょう。
そうすれば新しい作品が生まれます。モノは言いよう。

皆さん、ここが今まで荒れてなかったので、荒らしへの対応についても不慣れなのかもしれませんが、とにかく荒らしは無視。
作品に対する意見は、正直書き方次第。批判と非難は小さいように見えて大きい違いがあります。
あのアイザックアジモフでさえ、自分への書評は読みたくないといってたくらいなので、もう少し書き方を柔らかくしてね。

というわけで有希タンのあそこのような毛のない不毛な話はここまで。
僕の名前は名無しさん、コテハンなんてない。
人の揚げ足を取るのが生き甲斐だから名無しでいいんだ。
理論武装をしているつもりだけれどすぐに論破されちゃう、だから名無し
自分の言葉に責任持てない、だから名無し
最近は651って言うのが僕の名前。
だけど誰の記憶にも残らない。
ゾンビが好きだから、此処にいるけれど作品なんて作れない。
だって引きこもりだし、女の子とエッチしたこともない。
車だって運転できない。
えらそうに言ってるけれどそれは、読んだことをただ書いてるだけ。
だから名無し。
もしゾンビが現れても泣きながら食われるだけ。
どうすればいいか分からないんだもの。
所詮は空想だと思ってた、だから人の作品を貶すだけ。

でも、ドアを隔てて奴らがいる。
どうしよう、どうしよう。
ねぇどうしたらいいの?作者の皆さんおしえてよう。
679PIP ◆dve/1Ebaqs :03/05/04 00:06
>>678
はーい、子供の心を持った大人相談局、相談員どん・がばちょです。
難しい質問ですなー、ぶふぶは。
そういう時はですなー、一つお腹を割って話し合ってみてはどうでしょうか。
案外話せばどうにかなるかもしれませんぞー。
ちなみにこのアイデアは朝鮮日報新聞の天声人語「話せば分かる、分からなかったときはしらねぇよ」からいただきましたー。

では、来週またお会いしましょぉ。
PIP様 おっしゃられるとおりですね。
受け流せば良かったんですが、しいて言うなら初めて出された料理に
安田がかける調味料を『それめっちゃ辛いんやで〜』と言われたのと同じでして
安田の反応が予測されてしまうのがイヤだったんです。

折角手に入れた武器ですから有効利用したいので、故障知らずの究極兵器として
扱っちゃいましょうかな(w
あくまでも安田は素人なので、銃の善し悪しは分かりません。
もし手にはいるなら・・・、それが彼のその後の行動を変えてゆくのは事実です。
構想3時間が吹っ飛んだのでちょっと切れちゃいました スミマセン。
681むにむ:03/05/04 01:26
【始末屋本舗】
世間が静寂に沈んだ時間。
小さな一軒家の玄関に、小さなトラックが止まった。
そのトラックから、数人の黒服が出る。
黒服の人間たちは大き目のトランクを下げ、一軒家に入っていった。

その家は、明かりという明かりがすべて消され、闇と同化している。
その闇の中、その家の住人であろう、中年の男性と女性、そして少女がいた。

・・・その闇の家に、明かりが灯される時間が来た。
「お待たせしました。始末屋本舗です」
黒服の人間。その数、5人。

黒服の一言に、中年の男性は居間の明かりをつけた。
リーダーなのだろうか、30代と思われる男性が一歩進む。
「タカヤさんはどこですか?」
その問いに女性が答える。
「その部屋です・・・」
彼女が指差した部屋に通じる扉は、ベニヤの板で固く閉ざされていた。

「わかりました、30分ほどで終わらせます。
カナコ、お茶をお出ししろ」
リーダーの脇から、黒で統一した格好の女性が現れる。
カナコと呼ばれた女性が、一家にお茶を出す。
「少しの間、暇もなんですからお話しましょうか」
作業の間、家族は暇である。
カナコは、暇つぶしトーク担当であった。
682むにむ:03/05/04 01:27
リーダーが、件の部屋の扉を開ける。
暗闇の部屋に、一人の青年がベッドに縛り付けられていた。
彼は、すでに死んでいる。
しかし、それを拘束するのには意味があった。
急性死後活動症候群・・・通称ゾンビ病。
ゾンビ病にかかった者は、死後数時間後、死んでいるにも関わらず
野獣のように振舞う。その始末は実に面倒である。
どこにダメージを与えても怯まない、脳の制御が途切れた怪力、
どう猛なその振る舞い。
おまけに世間の冷たい視線。
特に空気感染するわけではないが、そんな物騒な人間がいると知られては
どんな嫌がらせがあったものではない。

そんなゾンビ病患者を、夜中のうちに始末する、始末屋のプロ。
それが、始末屋本舗であった。

【始末屋本舗】終わり?
683むにむ:03/05/04 01:29
あれー?なんか荒れてるなー?
うーん、なんなんだろう。まあ、いっか♪(マイペース

始末屋本舗、ええ、パクリです。ごめんなさい。
感想で続き作るか決めます。

この物語を作るのは、君だ!
 ただ銃を撃つのは簡単。でも的に当てるのは難しい。
 ただ批判するのは簡単。でも、書くのはとっても難しい。

でも、
「あっ!今日も続きと新作があっぷされてるー!わーい!!」
などと、はしゃぎつつ感想を書いてしまったりする、私程度の読解力では、
多分作者さんたちの狙った「落としどころ」を外しちゃってて、お間抜けな
感想で作者さんたちに苦笑を浮かべさせちゃってるんじゃ? 
ただもう読んで楽しんでるだけの「困ったちゃん」じゃないか。。。?
などと、不安になったりもする今日この頃。

たまに辛口過ぎる批判があったりするとびくーーりしますが、あれはもしか
すると「好きなコをいじめてしまう」男の子、みたいな心理作用、かな。。。?
それとも、銃に詳しいけどそっち系のスレではマニアックそのものなご同輩
さんsにびしびしされちゃって、ここでなら、ちらっと知識を披露してもいいかな?
みたいに思った方、とか?

何にせよ、皆様の作品楽しみにしてますので、続き&新作よろしくお願い
しますです。
そうそう、短編はまだか、のコールがあったですが、ここには、むにむさん
やこっこさん、3-620さんなどなど、短編の名手が目白押しですしね。

むにむさん、始末屋さんsの続編も、期待してますよー♪
 はずかしいけれどさんも、どんまいですよー。
たとえ反応が予測されていても、ちゃんと引き込まれてしまうだけの
ストーリーテラーなご自分を、もっとどーんと評価しちゃいましょう。
あっ。そうか、きっと主人公の「安田さんになったつもり」でいろいろ先を
予想して書いてるから、お話初期の憂鬱癖のある彼とシンクロしちゃったかな?
そういうことってあるみたいですものねー。
なにか、映画の「恋に落ちたシェイクスピア」思い出しちゃうな。
がんばです。

ロシアに出張した巡査物語さんが帰っておいでになるまで、このスレッド
を支えてゆくのは皆様がたのお力です、ふぁいっとーー!
「始末屋本舗」が「妹屋本舗」に見えたアホの数→(1)
687あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/05/04 09:07
なんだよ、結局》654が図星かよ。
それで逆上かぁ…
ちょっとPIPさん見習って大人になれば?
はずかしいけれどくん、マジではずかしいよ?
>>687
Sage進行するように。
オマイのような書き込みが、彼?の投下を妨げることを自覚しろ
厨房は黙ってROMしてなさいってこった。
689さんげりあ:03/05/04 12:30
スレが荒れて続き書く気が失せますた
みなさん、さようなら
>>689
そ、そんな〜
待って下さいよ〜
書く書かないは個人の自由ですがさんげりあさんの作品が読みたい方はたくさんいると思います。
思いとどまってくれませんか・・・?
>>689
トリップが無いようですが?

もし本物のさんげりあ様でしたらどうか続けて下さい!
692PIP ◆dve/1Ebaqs :03/05/04 13:26
>>690FD/Rさん、大丈夫。
トリップつけてない上に上げてるので嵐です。

こういうカキコも反応になるので、本来は控えるべきですが皆さんにお願いします。
荒らしは放置。
ここは荒らしに反応して腐っていくためのスレではなく、ゾンビに喰われて腐っていくスレです。
相手にすると削除依頼も通らなくなりますし、過去スレを見ていた方は削除依頼が拒否された経緯も知っているでしょう。


荒らしに反応した方は漏れの脳内で、ゾンビに「レッツ凌辱、フレッツ凌辱」させますよ?
俺は誰のどんな作品だろうと読みたい。
694FD/R ◆6N371.108E :03/05/04 13:51
うひゃぁすいません完全に腐っとリますた!
まだ読者代表派の人間が残っているのかなぁ。。。

では気を取りなおして誰もおぼえてない作品の続編でも。。。

695FD/R ◆6N371.108E :03/05/04 13:55
http://www.geocities.co.jp/Bookend/4265/FD_R_02.htm
の続編です。


「よくわかんねぇがそれはつまり、奴等が強くなっているって事だな?」
「はい。」
「いまいち信じられねぇなぁ。。。」

それもその筈だ。
ゾンビは簡単には死なないが、その動作の遅さと単純な行動はとても人間にかなうものではなかった。
この周辺の民家や商店などは一度はゾンビが群がっていたものの
今やホームセンターを拠点とした自警団の活躍によりある程度は平和が保たれていた。
しかし町全体としては、まだ多くのゾンビが徘徊しておりいたる所で人間との小競り合いが続いていた。

「・・・斥候を出すか。」

結局数人の武装した偵察要員をバリケードの外に放つことになった。

「杉山さん。それに藤沢総長。一体どういう事ですか?」
バリケードの警備に当たっていた池本と黒田が不安げに尋ねてきた。他の警備の連中も集まってくる。

「あぁこれはお前等にとっても大事な事だよく聴いてくれ。 杉山、説明は頼む。」

「な、なんだってー!?」
警備要員たちは説明を聞いて一様に青ざめていた。

「この中央バリケードはとくに重要な場所だ。補充のやつらを何人かよこすから東や西の奴等とも相談しておいてくれ。」
「は、はい。。。」
「よろしく頼むぞ!」
思いつきのつまらん書き込みするな
有る程度まとめろ
いきなりゾンビが強くなるより、何故電気や電話線〔ファイバー〕が生きてるのか等の
背景描写した方がイイ!
インターネット使えるなら他の地区とはリアルタイム連絡取れるはず。
原発が爆破?
設定としてはお粗末、冷却水から漏れ出た放射能が影響を与えたとかの方が真実味が出るし
   作者の皆様へのお問い合わせ

 いつも楽しませていただいております。
早速ですが、」ちょっとご質問させていただきたいのですが、
こちらに触発されていくつかイラストを描いたのですが、
たわむれにもそのようなものをあっぷするようなことは厳禁!!
でしょうか?
(イメージを損なう恐れがあるし、第一へたくそなのであれですが;;)
駄目なら駄目で「それはそうですね、すみませんです」と速攻、没に
しますので、一応お返事いただけると嬉しいです。
699PIP ◆dve/1Ebaqs :03/05/04 19:09
>>698
わたしはかまいませんよー。
(といいながらPIPの登場人物はだれもいない罠)
それが決定と言うわけでもないですし、「こういうイメージで見てもらってるんだ」というのが一目で分かりますし。
うぉ!? なんか昨日の書き込みの後からこんなことになってるとは。。。
かなりビク―リしたですよ。
ま、とりあえず大丈夫そうなのでひとまずは安心していいのかな。

>>はずかしいけれど殿
あまり気にせず気楽にいきましょう。
こういうのいちいち気にしてたら身がもたんです。

それと、当然ですが、>>689は偽者です。
ちゃんと続きは書いていきますよ〜。
勝手に打ち切りにしないでくれろ。
>>698殿
わらくしもかまいませんよ〜。
やっていただけるなら逆にありがたいしおもしろいでつ。




でわ、つづき逝くだよ。
『167』

丸1日分の食料だけは残してある。
ただし、これは非常用、脱出時に持っていく分だ。

脱出してもすぐに食料が手に入るとは限らないからだ。
本当は3日分ほどは残しておきたいところだったが、脱出のリスクを考えて最低の1日分だけを
残し、あとの食料で食いつないで救助を待ち続けた。

だが、いくら待ってもやはり救助はこなかった。
いや、救助どころか、車も飛行機もなにひとつ目にすることは無かった。

他に生きている人間はいるのか?


今、俺の目の前には今夜の食事がある。

この目の前にあるこの食料と、あとは明日の朝の分で最後だ。
それで食料は脱出用の非常食以外のすべてがなくなる。

つまり明日、ついにここを脱出しなくてはならない。。。

明日の朝食が済んだら。。。いよいよ脱出だ。。。

うまくいくだろうか?

みんなを護り切れるだろうか?

本当に俺にできるのか?

大丈夫なのか???
『168』

いや。。。できる。。。

やってみせる。。。。

この二ヶ月近い間、そのためだけに死に物狂いで鍛えてきた。

ゾンビが現れる前、平和だったあの頃はもちろん、その後このホームセンターに逃げ込んでから鍛えた
頃と比べても比較にならない肉体に自分を鍛え上げた。

傷めていた左手も完全に回復した。

練習に練習を重ねた投げハンマーも、自分で言うのもなんだが、右はほぼ百発百中で威力も文句のつ
けようがない。
当たれば確実に一撃でゾンビを仕留めることができる。
さすがに右ほどではないが、左も7から8割の命中率にまで引き上げることに成功した。
こちらの威力も十分だ。

外のゾンビに関しても、そのほとんどを窓側に集め、非常階段はゾンビは極々わずかしかいない状態に
してある。

毎日屋上から物を叩きつけ、それこそ何十体ものゾンビの活動を停止させてきた。
なにせ、もう家電製品売り場コーナーには物がまったくない。
『169』

いや、それどころじゃない。

今やこのホームセンターの売り場には衣料品くらいしか残っていない。

売り場以外の場所も、倉庫も事務所もどこもかしこもガラガラだ。

棚や机など、とにかく重い物は全部屋上からゾンビに叩きつけた。
硬いが軽い物は日用品コーナーのガムテープを使ってひとまとめにして重さと大きさを稼いで
投げつけた。

もう、非常階段を内側から押さえるためのバリケードに使っている必要最低限の分の他には、
このホームセンターには物なんて本当になにもない。

衣料品コーナーの辺りに服だけが床に散らばっているだけだ。
それがすべてを物語っている。


それに窓からの攻撃でも百体以上ものゾンビを殺してきた。

毎日窓から身を乗り出し、ゾンビどもの頭部に槍代わりの物干し竿を突き立てた。
何度も、何度も。。。
何体も、何体も。。。。

まさに気の遠くなるような作業だった。

だが、ゾンビの数は目に見えて激減している。
数百体いたゾンビも残りはもう百数十体ほどにまで減っている。
『170』

「おぢさん、たべないの?
 おなかいたいの?」
ふいに真由美に声をかけられ、俺は我に帰った。

「いや、大丈夫だよ。
 ちゃんと食べるよ、真由ちゃん」
俺は真由美に笑顔を向けた。
が、自分でも顔がひどくこわばっているのがわかる。
俺はそれを誤魔化すために食事を一気にかきこんだ。

やれることはすべてやった。

そうさ、今更心配してもしょうがない。

すでに刻は来た。

あとは全力を尽くすだけだ。

勝算は十分にある。

大丈夫だ。。。きっと大丈夫。。。。

必ず護ってみせるさ。。。。
え〜と、しばらくさらにペースダウンすることになりそうです。
またかよ!とか言わないで〜。
ちょっと火曜から仕事がさらに忙しくなるもので。
でも最低でも週一か週ニくらいは書くようにします。
ここから出たい。
何回そう思ったかねぇ……。
こんな閉鎖的な空間に長い間いれば、そりゃあ出たくもなるんだが、出るのは無理なんだよなぁ。
たとえ外に出られたとしても、どんな目に遭うかわかったもんじゃねぇ。飯を確保するのも命がけだ。
それに比べてここは飯の心配はしなくていい。不味い飯だが、食えないわけじゃない。
退屈だが、安全に過ごしていられる。
ここに住んでりゃ大丈夫、大丈夫……。

「うっわー気持ちわるー」
「くっさいなぁ。なんでこんな奴等がこの世にいるんだろうな」
「っていうかマジ動いてるよ!マジで動いてるよ!すっげー!!」

ガキの声が聞こえる……うるせぇなぁ。
そんなにゾンビが珍しいか?ガキども。
ま、今はゾンビもほとんど全滅したみたいだから、やっぱ珍しいか……。
近づいてまで見る気はねぇみたいだけど。ケッ、ヘタレなガキだ。

まだガキどもが騒いでやがる。
俺はここでゆっくりしたいんだ、てめえら邪魔すんじゃねえ!
「うっせぇんだよ!てめえら死にてぇんかゴルァァァァァ!!」
「う、うっわーーーーーーーーーーー!!」
「ひゃぁー!」
「うえぇーん!!」
俺が一喝したのによっぽど驚いたか、ガキどもは別の場所へ逃げていった。やっぱりヘタレだ。
……。
うん、静かになったな。
寝るか……おやすみ、っと。
「今日はおもしろかったねー」
「っていうか臭かったよ。臭いがついてなきゃいいんだけど……」
「でもあのゾンビにはびっくりしたよね」
「うん。寝てたのに、いきなり起きて「うぅーーーーーーーーあぁーーーーーーーーゴルァーー!!」だもんね」
「私、食べられるかと思っちゃった」
「それはないよ。あの中から絶対出られないようになってるんだから」
「でもお前逃げてたじゃん」
「う、うるさいなぁ」
「また見たいよねー」
「そうだねー」

「また行こうね、ゾンビ博物館」
709FD/R ◆6N371.108E :03/05/04 21:44
>>696
つまらんものを読ませてしまってすいませんでした。
今度からもっと練ってから投稿します。

>>697
アドバイス有難うございます!
とても参考になりました。
確かに言われてみれば爆発というのは少しアレだったかなと。

余談ですが何故ぼくが原発にこだわるかと言うと
隣町に原発がありまして
この前ちょっと資料をあさってみたら
過去に事故が何回もあったり、海に気持ち悪い色の温排水を排出しまくったり。
現在は原子炉の三号機を造るか否かで揉めてるのですよ。

で、更に調べるとチェルノブイリでは原発爆発の影響で飛蝗が一m以上の大きさになったとか。
そんなこんなで「放射能無敵だな。w」のようなノリで書いたんですが。
やはり付け焼刃の知識と少ない文章力ではあんな感じになってしまいました。
今度はもう少しじっくりやってみます。
新スレ立てたほうがいいんでない?もう立ってる?
711FD/R ◆6N371.108E :03/05/04 22:15
前スレより転載

710 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/03/17 20:04
>>708
新スレたてちゃったのね。
出来ればPIP様に立てて欲しかった。
PART1は別として、PART2からは作者さんが立ててたから。
PART2は、マテリアルさん
PART3は、名無し@錆取り中さん

新しいスレは、PART3を維持発展させたPIPさんにこそ1になって
欲しかったです。

ということでPIP様、PART4が終わったらPART5のスレ立て
お願い致しまつる。

PART4

と言う意見もあるのでお手数ですができればPIPさんが立ててくれないでしょうか?
他の作者様方もすごく活躍なさっていましたがここはやはり。。。
712こっこ:03/05/04 22:17
駄作投下します。幅広いご意見お待ちしてます。


みなさんこんばんわ!
オールナイトジャポン、パーソナリティーのぞむびー木村です。
最近ゾンビやら何やらで世間がきな臭い雰囲気ですけど、楽しんでますか?
僕はね、結構楽しんでますよー。
ゾンビって臭いじゃないですか?潔癖性な僕としては許せないんですよー
だから、見かけたら即ぶっころ。いつもハンマー持ち歩いてマース。

さて、今夜もいつものあれ、行きますか?
「悲惨な籠城せいか〜つ」のこーなー。
みんなはどっかのホームセンターとかに逃げ込んでると思うけど、そこであった嫌な思い出とかを存分に話してもらおう、ってコーナーです。
今日もリスナーからお電話が入ってマース。
もしもしー?
「こんばんわ〜」
ラジオネームをどうぞー。
「埼玉県の、死霊のひじきでおねがいしま〜す。」
早速だけど、どんなことがあったのかな?
「あのですね〜、うちのホームセンター、なんか自衛隊の人がいるんすよ。」
へ〜。頼りになりそうだね。
「全然っすよ〜。あいつら、なんか威張りくさって。すっげえ気分悪いっすよ(笑)」
あ〜、それは最悪だね。
「その自衛隊の話なんですよ。こないだですね、近所を捜索したんすよ。」
ふんふん。
713こっこ:03/05/04 22:18
「そしたらね、ものすっげぇかわいい女の子を救出したんです」
お〜。うらやましいな〜
「そうなんですけど、自衛隊の連中、その女の子をレイプ三昧なんすよ〜。」
ありゃ〜なんて連中だ!
「そうでしょ〜?あんまりむかつくんで、今から女の子と逃げますよ(笑)」
駆け落ちかよ!気をつけてな〜?
「はい。がんばりますよ。ついでにバリケードも壊して、ゾンビに食わせちゃいます(笑)」
そっかそっか。君が食われないように気をつけろよ!
「は〜い。ありがとうございました〜」
はい、どうも〜。
埼玉県の死霊のひじき君でした。自衛隊ってのも、案外役に立たないね〜。
税金納めるのやめようかな(笑)
さて次は、どんなお話かな〜?
こんばんわ〜
「・・・・・・うぅ〜・・・・ああ〜・・・」
あれ?もしも〜し?
「あ”〜・・・・ぎゃぁぁっ・・・・たすけ・・・たす・・・け・・・」
あ〜。どうやらゾンビに襲撃されてるみたいですね。かわいそうに(笑)
リスナーのみんなは、寝る前に必ずバリケードを確認してから寝ましょうね〜(笑)

さぁて今日の一曲目です。
香川県のゾンビタン(;´Д`)ハァハァさんのリクエスト。
サザンオールスターズで、「死体置き場でロマンスを」どうぞ・・・


お〜い、バリケード大丈夫〜?
あ、そう。いやあ、世の中馬鹿ばっかだなぁ(笑)
食われてんじゃねぇよ。まったく・・・進行困っちゃったよ〜(笑)
あ、そろそろ曲終わる?あ〜い、わかりました〜


714PIP ◆dve/1Ebaqs :03/05/04 23:59
【ゾンビ】ホームセンター攻防扁【ゾンビ】 その5
http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1052060297/
新スレたてました。
忘れ物がある。
作品集のurl