伝説または逸話

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806Zanoni
牛がものを言えば


太安年間(302-3年)に、江夏郡(湖北省)の書記をしていた張騁(へい)の車を曳いていた牛が、突然しゃべり
だした。
「天下は今にも乱れようとしておりますぞ。私には大事な仕事があるのに、私に乗ってどこへ行くのです?」
807Zanoni:03/02/13 22:54
騁も数人の供の者も度肝を抜かれた。
そこで、
「お前を帰してやるから、二度としゃべるでないぞ」
と牛を騙し、途中から引き返した。

だが家に帰り着いて、まだ牛を車からはずさぬうちに、牛はまた口をきいた。
「なんだってこんなに早く帰ったのです?」
騁はいよいよ気味が悪くなったが、このことは固く秘して誰にも漏らさなかった。
808Zanoni:03/02/13 22:56
そのころ安陸県(湖北省)に、占いの上手な者がいた。
そこで騁は占ってもらいに出かけたが、その易者が言うには、
「これは大凶ですぞ。一家の禍どころか、今に天下に戦乱が起こってこの郡はすっかり破滅してしまいます。」

騁が家に帰ってみると、牛が今度は人間のように立って歩き、人々が見物に集まっていた。
809あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/13 23:24
つづきまだ〜?
810Zanoni:03/02/13 23:32
その秋、張昌*1が乱を起こし、まず江夏郡を攻略し、漢朝が再興した。
鳳凰の瑞祥が現れて聖人が世を統べるのだ、と言って民衆をたぶらかした。
賊軍に加わった者は皆赤い頭巾をかぶり、火徳*2にあやかることを示したので、民心は大いに動揺し、
少しのためらいもなく賊軍に加わっていった。


*1 もとは義陽県(河南省)にいた蛮族であるが、のち李辰と改名し、丘沈を擁して漢朝を再興すると偽り、
  自らは家老役となった。後に陶侃(かん)に討たれた。
*2 「五行相生」の火。五行相生とは五行説の考え方の一つで、水は木を生じ、木は火を生じ、火は土を
  生じ、土は金を生じ、金は水を生じるもので、この循環が万物の推移を規定し、各王朝もこの順番に
  交代すると考えられた。
  殷は「水」、周は「木」、漢は「火」、魏は「土」、晉は「金」に相当する。
811Zanoni:03/02/13 23:38
そのとき騁兄弟は、ともに将軍都尉(郡の武官。部隊の将に当たる。)であったが、ほどなく打ち破られて
しまった。
かくして一郡すべて破滅に陥り、住民の過半数が死傷し、騁の一族は皆殺しにされたのである。

『京房易妖』に言う。
「牛がものを言えば、その言葉の内容通りに吉凶を占うことができる。」
812Zanoni:03/02/13 23:39
この話も捜神記からです。
813おれのすすきの:03/02/14 00:09
おおっZanoniさんだ、
それではアイヌの伝承いきます。

「桂の木の女神」

結構長いです!
この話は解説はいらないと思いますので、書きません。
アイヌの平和的な考え方がかいまみえて、面白いなあと感じたので、これにしました。
814Zanoni:03/02/14 00:10
この話は、くだん伝説の原型のようなものかと思って興味を持ったのですが、
このあたりの事情をご存じの方、いませんでしょうか?
815おれのすすきの:03/02/14 00:14
ええー、うpしようとしたら本文長すぎ、開業大杉で書き込めませんでした。。
しょうしょうおまちを・・
816おれのすすきの:03/02/14 00:15
あっ、わりこんじゃいましたか?
くだんって牛の首ですか?
817おれのすすきの:03/02/14 00:19
私は一人の娘で、父がいて母がいて、大きい兄がいて小さい兄
もいますが、二人の兄は父達や私と別に暮らしています。
兄たちは熊を捕り、鹿を捕っても、肉のいいと所をわたしたち
にはくれようともしないで、肉の切れ端や魚の切れ端を少しず
つくれるだけです。
その肉の切れ端や魚の切れ端を煮て父たちに食べさせると、父
は、「あの者たちは、子供の時にあれほど可愛がって育てて大
きくしたのに」と少しだけ愚痴をいいながら暮らしていました

それにしても、あんなにたくさん捕れるしかの肉をもう少し多
くくれてもよさそうなものを、どうしてあのように食い根性が
悪いのだろうと父や母は嘆いています。
ある日のこと、父がいうのには、
「私たちが住んでいる所のこの川を上流へいくと、右の方へ別
の小さい沢が入っているので、その沢を登りつめると別の川が
見える。
その川を少し降りると大勢の人が住んでいるコタンがあるので
、そのコタンヘいって干し肉や干し魚をもらってきてくれない
かい。」
と私にいいました。
「いってきてもいいですよ」
と私が返事をすると、もっと丁寧に道順を教えてくれながら食
べ物と取り替える宝物を出してくれました。
それはイコロ(宝刀ですが、何本かまとめて縛って背負いやす
くしていると、それを見た母が、「兄たちもお前が行こうとし
ているコタンヘいく準備をしていた。
と聞かせてくれました。
兄たちは兄たちで、私は別に行くのだと思いながら、荷物をま
とめて、それを背負い、父が教えてくれた道順通りに歩きはじ
めました。
818おれのすすきの:03/02/14 00:21

しばらく行って、山越えのために少し斜面を登りはじめると、
一本の桂の木が立っていて、その立ち姿の美しいこと。枝は四
方に広がり、見るからに神々しい感じです。
その桂の木の周りには、いかにも私たちはこの木の子供ですよ
というように、背丈の低い桂の木がたくさん生えていました。
それを見た私は、背負っていた荷物を下ろし、腰に掛けていた
タシロ(山刀)を抜き、辺りに生えていた芝を切って片屋根の小
屋を作りました。
作った小屋のそばで焚火を炊きたくさん生えている桂の木のう
ち、姿のいい木を一本、私と同じ背丈に切りました。そして顔
の面になる部分をさっと削って白くしてから、自分のマタンプ
シ(鉢巻き)の半分を裂き削った木にマタンプシをさせました

マタンプシをさせた棒を小屋の前へ立て、私は
「これから山のむこうのコタンへ、食料を分けてもらいに行っ
てきたいと思います。それについては、はじめていくコタンで
あり、大変心細く思うので、桂の木の女神の娘であるあなたに
、マタンプシの半分を差し上げてお願いをします。私が行く道
筋を守って下さることや、神の力でたくさんの食料が手に入る
ことができる用にしてほしいのです。
思うように食料が手に入ったら、家に帰り父に話をしてイナウ
(木を削って作った御弊)とお酒でお礼をしたいと思います。
桂の木の女神の娘よ、どうぞ私を守ってください。」
そのようにお願いをしてから荷物を背負って山を登り、別の方
の沢を下っていきました。
そうすると、遠くの方で犬の吠える声が聞こえ、その声がだん
だん近くなりました。
目の前がパッと明るくなると大きなコタンが見え、そのコタン
の中ほどに、島ほどもある大きな家がありました。
819おれのすすきの:03/02/14 00:23
私がその家の前へ行って荷物を下ろし、「エヘン、エヘン」と
せきばらいをすると、家の中から美しい娘が出てきて、私の顔
をチラっと見てから家へ入りました。
そしてその娘がいうのには、
「祖とへきれいな娘が一人来ているけれど、なにを思いわずら
ってか顔の面に憂いの色が出ている娘です。」
と家の者に言ったのが聞こえました。すると、
「いらんことを言わなくてもよい、家の前へ来た方は、男でも
女でもさっさと入ってもらいなさい。」
と老人の声で言うのが聞こえました。
すると娘はもう一度出て来て、
「どうぞお入りください」
と言いながら、片方の手で私の荷物を持ち、もう片方の手で私
の手を引いて家の中にはいりました。
家の中へ入ってみると、上品な老夫婦、それに若者が二人くら
い居るらしく、私を迎え入れてくれた人は一人娘のように見え
ました。家の外側でもそうでしたが、家の屋根裏まで、鹿や熊
の肉がたくさん掛けて干してあります。
その私の顔を見た老人は丁寧に挨拶をしてから、
「どちらから、何の用で来られたのですか」
と聞いてくれました。そう聞かれた私は、

このコタンの西側の山の向こうの沢尻に、コタンを持っている
私の父の使いで来た者です。私のは年老いた父と母、、兄が二
人居ますが、兄たちは別々に家を持っていて、私たちには鹿の
肉なども余り持ってきてくれないのです。
それで父はこのようなものを私に持たせて、山の向こうのコタ
ンへ行き、食べ物と取り替えてくるようにと言ったので、ここ
へ来たのです。」
820おれのすすきの:03/02/14 00:25
と私は言いながら父が持たせてよこしたイコロを出しました。
私の話を聞いた老人は、
「それはそれはご苦労なことだ
親不孝というものは世の中で一番良くないことなのに、どうし
てそうなのだろうか。。」
と大変同情してくれました。
老人は自分の娘に、
「急いで夕食の支度をして、この娘に食べさせてあげなさい」
と言いつけると、娘はさっそく夕食の準備にとりかかりました

そのうち外で人の気配がして、鹿を背負った若者たちが狩から
帰ってきた様子です。母親が肉を家の中にいれるために外へ出
ながら、私が来ていることを言ったらしく、二人の若者は狩り
用の装束を外で解いて入ってきました。
見ると、一人はようやくひげが生えたくらいで、もう一人はま
だ顎ひげもない若者でした。座り直した若者のうち兄の方が、
「どこから来た娘なのですか、何か聞かれたのですか」
と父に尋ねました。
「話を聞いて驚いたところだが、この人は前々からお前たちに
も話を聞かせたことのある方で、山の向こう側の村おさで私も
知っている方の娘だそうだ。兄が二人いるが、鹿を捕っても父
や母、そしてこの娘に肉をほとんどくれないので、食べ物に困って、食べ物を分けてもらいに来たのだ」
それを聞いた二人の若者はあきれながら、
「それはそれは、気の毒なことだ」
と言って、「さあ食べなさい」とおいしい肉をたくさん出して
私に食べさせてくれました。父や母が腹を空かせている事を思
うと、一人でおなかいっぱい食べるのがもったいないような気
がして、お椀の中の肉を父たちに残そうと、こっそり別にしま
した。それを見た家の人々は「そのようなことをしなくても、たくさん持たせるので食べなさい」と、いってくれるなどして次の朝になりました。
821おれのすすきの:03/02/14 00:28
朝になると、若者たちは山の向こうの下り坂になるところまで送ってあげようといいながら、干し肉や干し魚を束にして縛ってくれています。そうしながら言うことには、
「昨日山から帰る途中であなたの兄らしい二人連れがこのコタンの下隣のコタンに行ったのが見えました。」と私に聞かせてくれました。
二人の若者は肉の束を重ねては縛って、男が二人背負う荷物を作り、私には軽く背負える分を作ってくれました。また、二人の若者は私を送ってくれることになり、私は老夫婦や家の娘に丁寧にお礼を言ってから、三人でその家を出ました。
昨日来た沢の中を三人で歩き、私のコタンの方へ流れている沢まで来ました。
822おれのすすきの:03/02/14 00:31
そこで私は、昨日くる途中の、桂の木で神を作ったあの場所を見られるのが嫌で、若者たちに、
「ここまで来たらコタンは近いので、あとは一人で帰ることができます。」
といいました。すると、二人の若者は「そうだ、そうだ」と言いながら荷物を下ろし、二人で背負ってきた干し肉の荷物と、私の背負った分を合わせて、きっちりと縛ってくれました。
若者たちがこのように簡単に戻る気になったのは、たぶん神様がそのようにおもわせたのでしょう。
若者たちにお礼を言った私は、荷物を背負って坂を下り、二人は斜面を登って帰っていきました。
ゆっくりゆっくりと下っていくと、昨日小屋を作った辺りに家が一件見え、その家からは煙が出ています。近づいてみると、
私と同じくらいの美しい娘が黒いマタンプシをして笑顔で私を迎えてくれました。
そして言うことには、
「昨日は本当にありがとうございました。神の国で、娘たちが一番欲しがっているものは、人間の娘が頭に巻いている黒いマタンプシなのです。
それをあなたは知っていたかのように、自分が大事にしている黒いマタンプシを惜しげもなく半分に裂いて、私にくれました。
それを見ていた父神や母神から私は、「大変にありがたいことだ。さあ早く、ありったけの呪術を使ってあの娘を守りなさい」と言われました。それで私は人間の姿になって、あなたの行く手を見守り、老人や若者たちが特別あなたを大事にするよう仕向けたのです。
ここまで来て、二人が一緒にいるのを見られるのが嫌だったので、近くから戻るように思わせたのです。」
と聞かせてくれました。
それを聞いた私は荷物をほどいて、干し肉や干し魚をたくさん出して、神様にお世話になったお礼と言いながら桂の木の根元に置きました。
823おれのすすきの:03/02/14 00:32
その様子を見ながら女神の娘は、
「これから一生あなたの守り神になってあげます」
と言ってくれました。そして、
「神である私が、精神のいい若者をあなたの夫にさせるためにあなたの元へいかせるので、ためらうことなく結婚しなさい。
それから、二人の兄は生まれながらに悪いつき神がついていて、親不孝をしているので仕方がありません。兄たちを恨むことなくあなた一人で親孝行をするように」
と聞かされました。
女神に何度もお礼をいった私は、
「家へ帰って父に一部始終を聞かせてイナウだけでもお礼をさせます。」
と言いました。すると女神は、
「さあさあお帰りなさい。私があとを見守っているので、荷物も重くはないでしょう。」
と言いました。私は女神にお礼をいってその場を立ち去り、しばらく歩いて振り返ってみると家も煙もまったく見えません。
そこで改めて、その女が神であったことを知りオンカミ(礼拝)しながら家へ帰ってきました。
824おれのすすきの:03/02/14 00:36
父や母へは、行きながらのことや、行った先の家族が親切にしてくれたこと、桂の木の女神がいろいろと私のためになるように、人間の若者たちへ仕向けてくれたことを事細かに聞かせました。

背負ってきた荷物を解くと、ぐっと増えて横座いっぱいに、干し肉や干し魚の山ができました。父や母はそれを見て涙を流して喜び、何回も何回も礼拝を繰り返しました。
そして持っていったイコロも向こうの老人は受け取らず荷物の中から再び出たのを見て、なおさら父は感謝している様子です。
さっそく父はイナウを削って桂の木の女神へそれを贈ってくれました。
私が背おっってきた干し肉を食べ終わらないうちに、どこからか立派な若者が来て、我が家に住みつき、毎日毎日、私たちのために狩りへ行き、たくさんの鹿や熊を捕ってきます。
桂の木の女神が聞かせてくれてあったことなので、私はその若者と結婚しました。
夫は狩りの名人なので何を欲しいとも何を食べたいとも思わないで暮らしているうちに、私も大勢の子供を生み父も母も年を取って世を去りました。
そのうちに兄たちは段々と狩りが下手になってきたのか、鹿も熊も捕ることができず、ひどく貧しい暮らしをしています。私もすっかり年をとってしまったので、子供たちへ桂の木の女神へお酒やイナウを贈ることを忘れないように頼みました。
だから今いるアイヌよ、親孝行をしなければいけませんよ、と一人の老女が語りながら世を去りました。
825おれのすすきの:03/02/14 00:37
おわり

826あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/14 00:47
乙。
でももちっと行をあけるかなんかしてくれー
いい話だ、まあ俺は親孝行する気無いけどね
おつかれです。
伝説・逸話でほのぼのもいいやね
つぎはオカルト編をキボンヌ!
829好爺:03/02/14 08:59
江戸時代に、血気盛んな若者達が「夜に、百物語をすると恐ろしい事が起こるそうだ。やってみよう」
と集まって、話だした。早くも九十九まで進んでしまった。
「よし、次の話をしよう。その前にまず、酒でも飲もう」「そう急ぐなよ」など言いながら
順番に杯に酒を注ぎ、次の話を待っている時に一人の男が重箱の肴を輪に座っている仲間の
間を回し始めた。その時に、「ここにも一つくれ」と大きな手が天井から差し出してきた。
手の早い者が居て、抜き打ちにその手を斬った。手ごたえが全く無く、糸を斬ったようであった。
落ちた後を見ると、蜘蛛の手が三寸ばかり切れていた。
「これが、百番目の話だろう」と言い合った。
830あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/14 18:53
ご存知かもしれないが、アイヌの伝説は神話板のこのスレが面白い

「北海道に昔話なんてあるの?」
http://academy.2ch.net/test/read.cgi/min/1027816866/l50
831あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/14 20:22
>816
くだんの話と、牛の首は全然別物だよー
832あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/14 21:10
>816
くだんは、人面牛だよ
833魔界一号:03/02/14 21:13
くだ〜ん
マジでくだんにあったら死ぬよ。
人間にはでてこないっていうけど。
834あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/14 21:45
>833
>人間にはでてこないっていうけど。

どういう意味?
835あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/14 21:54
>833
>マジでくだんにあったら死ぬよ。

それ、どういう話なの?
836魔界一号:03/02/14 21:55
>>834
くだんは動物から生まれる神の化身。
雌雄一対で、片方が災いを、もう片方がそれを防ぐ方法を予言するらしい。

ぬーべーで見たんだけどね。
動物がしゃべるなんてぞっとするよ。
838魔界一号:03/02/14 22:01
>>835
そんなもんみたらショック死するってこと。

なんか大仰な言い方で期待させてごめんちょ。

>>837
そいつかなぁ。
くだんは件って漢字で書くから牛から生まれるって言われるみたいだけど、
どんな動物からでも生まれるかも。
839あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/14 22:01
>836
thx
でも、「人間にはでてこない」という言葉の意味は、分からず仕舞いなんですが。
840魔界一号:03/02/14 22:06
>>839
動物からしか生まれないってこと。

人間にはでてこない。×
人間からは生まれない○

もののけ見ながら打ってるから、ちょっと日本語変だった。許してちょ。
841好爺:03/02/15 02:20
有馬左衛門佐殿の家来の一人である、高屋七之丞という人が語った話であるが、彼が日光御普請を
勤めて、江戸を目指して帰る途中に下野の内、名前もよく分からない村に泊まった。
亭主は二十四、五、女房も二十歳ばかりで、下人もいなければ、子供も居なかった。
随分ご馳走になり、夜になって眠る時に、彼は座敷側に、若党、中間七人は次の間に寝た。
夫婦は納戸に寝た。戸は離れて回り込んでいるが、壁一枚隔てた隣の部屋であった。
夜半頃に屋根を葺く板が大竹割るように鳴った。何事かと枕そばだてて聞くと、
亭主がうめき出した。不思議に思い、こちら側から声をかけて「何事だ」と言ったが返事は無かった。
そのうちに亭主の声が、消えるようになっていった。良くない事かなと思って、下人たちを起して
手燭をもって、納戸を押し開けて見ると、女房が亭主の腹の上に馬乗りに上がって、臍の下を
食い破り、はらわたを取り出して食べていた。まず、後難をさける為、「隣近所を起して来い」と
下人に言いつけてから、女房に向って「これは何事だ」言ったが、彼女は自分が何をしているかに
気づく様子もなく、ひたすらにはらわたを取っては食べていた。
842好爺:03/02/15 02:21
…続き
もはや、亭主は死んでいた。おそらく、鬼の仕業に見えた。
隣の人々が集まって「まず、鬼であれ、人であれ、逃がしてはいけない。あの者を捕まえろ」と言った。
そこで、たしなんでいた早縄で自ら捕まえて、下人に言いつけて戒めたが、逃げようという素振りも
悲しいという素振りも見せなかった。ただ、平然と何も無かったようで、昨日見た宿の女房で、
化け物にも見えずに合点がいかなかった。ともかく、一族の者も集まり、所の代官も来て、
捕えた彼女を渡した。夜半から朝まで鬼とも人とも分からなかったが、やがて旅起った。
再びその国にはいかなかったので、その後どうなったかは聞いてはいない。
843839:03/02/15 09:39
>840
了解
844あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/15 10:37
>814->838
こちらも牛関係の伝説で盛り上がって?ますよ

牡牛と竜
http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1038203047/448-488
845あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/15 10:40
>816, >831
小松左京つながりか?
846Zanoni:03/02/15 10:57
もう一つ捜神記にくだんに似た話があるので、これも紹介しておきます。
847もの言う死牛:03/02/15 10:58
太康九年、幽州(河北省)の塞(とりで)の北で、死んだ牛の頭がものを言った。

ちょうどそのころ、帝は病気がちで、自分が死んだあとのことを深く気にかけていたが、
後事の託し方が公平を欠いた。
つまり帝の思慮が乱れたために起こった異変である。
848件(くだん):03/02/15 11:05
顔が人、体が牛で、未来のことを予見し、よく当たる。
そこから、"前に言った通り" ということを、件の通りという。
849人面牛:03/02/15 11:14
850あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/15 12:45
件(くだん)というのは、人面牛身で未来を予見する謎生物のこと。
その起源はわりと新しく、明治時代の学者の冗談から誕生したのだと言われているのですが、
ある日けむしさんという読者の方から
「ほんとに明治より前に件 の伝説はないのでしょうか」
というメールをもらったのが話のはじまりなのです。

このとき珍獣は「すくなくとも『山海経』には 件 という名前の生き物は出てこないけれど、人面で
牛身の神様の像がメソポタミアの遺跡から出てくるような。
ところで、こういうお話は他に詳しい人もいるかもなので、掲示板へどうぞ」とお返事したような気が
いたすのです。
珍獣にそそのかされたけむしさんは、後日掲示板にて問題を提起。以下はそのログなのです。

ttp://members.tripod.co.jp/chinjuh/z_sengai/kudan.htm
851あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/15 13:00
最近スレの伸びが速いな。
もうすぐ昔話スレに並びそうだ。
852あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/15 13:38
神社姫は?ほぼ似たような話だと思ったが

人面で体が魚のやつ
853あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/15 14:05
>852
なにそれ?
その話教えて
854あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/15 14:50
>852
それって人魚じゃ?
855あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/02/15 15:09
人の頭で身体は牛の形のものが生まれ、数日すれば死ぬけれどもその言葉には絶対に間違いが
ないという言い伝えは古く、どこそこにクダンが生まれてこういったという話は戦争前までは県北では
しきりにあった。
そしてこのクダンの話の発生地は中国山地らしいというのであるが、今のところどうして件信仰が生
まれたかわからない。

とり・みき 「事件の地平線」