[シンガポール 24日 ロイター] - サイバー犯罪が世界的に広がる中、海運業界が標的と
なる危険性が増している。海運やエネルギーといった産業でも、船やコンテナ、掘削装置のコ
ンピューターネットワークへの接続が増えており、ハッカーの攻撃にさらされやすくなってい
ることが背景だ。
最近の例では、ハッカー攻撃により掘削装置が閉鎖されたり、マルウェア(悪意のあるソフト
ウエア)によって19日間航海ができなくなるケースがある。ソマリアの海賊がオンラインで
航行情報を確認して標的の船を選び、ハッカーがベルギーのアントワープに接続しているコン
ピューターに不正侵入して薬物の密輸に関する情報を操作したという。
海運業界におけるサイバー犯罪の実態は把握が難しい。保険ブローカー大手のウィリスの試算
によると、石油やガスのインフラに対するサイバー攻撃が2018年までにエネルギー会社に
及ぼす被害額は19億ドル近いとみられている。英政府も、サイバー攻撃による英国の石油・
ガス会社の被害額は年間4億ポンド(6億7299万ドル)近いと認識している。
ロイターが取材した海運会社は総じてハッカーによる脅威を否定しているが、危機感が希薄
で、専門家が少ないのが現状だ。
米ブルッキングス研究所が昨年6カ所の港湾を調査したところ、サイバー攻撃による影響の評
価を行っているのは1カ所のみで、対策を計画しているところはなかった。港湾安全対策の連
邦予算約26億ドルのうち、サイバー犯罪対策にあてられたのは1%未満だった。
石油・エネルギー業界のセキュリティコンサルタント、Michael Van Gemert氏は、掘削装置
や船舶を調査したところ、ウイルスだらけのコンピューターやコントロールシステムを目の当
たりにしたことがあるという。同氏は「この業界には多大な支援が必要だ。リスクがどんなも
のかの認識がない」と警告した。
ロイター:
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0DA03Y20140424