【西日本新聞】教科書検定基準、政府見解の尊重を求める方針「政権のための史書」にならないか…水戸の黄門様に一喝されよう

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全国を巡って世直しをした水戸の黄門様。テレビドラマが終了しても人気は衰えない。実は、モデルの水戸徳川家2代藩主、
徳川光圀(みつくに)は、諸国漫遊どころか関東から外にはほとんど出なかったそうだ

▼幕府のご意見番で、藩政改革にも取り組んだ光圀は、名君と慕われた。とりわけその名を高めたのが
歴史書「大日本史」の編纂(へんさん)事業だ

▼当時、幕府は儒学者の林羅山らに正式な国史「本朝通鑑(ほんちょうつがん)」を編纂させた。それに満足できなかった光圀は、
独自の歴史観や編修方針に基づいた史書づくりに乗り出した

▼幕閣の渋い顔が目に浮かぶようだが、光圀はへっちゃら。家臣を全国に派遣して史料収集までさせた。そこから
黄門漫遊譚(たん)が生まれたのかもしれない

▼卓越した文化人として光圀を描いた小説「光圀伝」(角川書店)で、著者の冲方丁(うぶかたとう)さんは、本朝通鑑を
〈現政権の権威のための史書〉、大日本史を〈史料に基づく比較検討を主眼とし、政権に都合が悪かろうが後世の人々に
役立つことを目指した〉と評した。チェコの作家カフカの「歴史はたいてい役所仕事で創作される」という箴言(しんげん)にも通じる

▼文部科学省は、社会科などの教科書検定基準を改め、近現代史に関する政府見解の尊重を求める方針だ。「政権のための史書」にならないか。
統制が過ぎれば、表現や思想の自由を保障した憲法という「印籠の紋所」が「目に入らぬか」と黄門様に一喝されよう。

=2013/11/29付 西日本新聞朝刊=
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syunzyu/article/55244
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