シリア:アサド政権と米国などで「情報戦」
【カイロ和田浩明】
民主化要求デモの拡大と当局による弾圧が続くシリア情勢で、アサド政権と米国などが対立する
「情報戦」の様相が強まっている。当局が「外国勢力の支援を受けた武装集団が混乱を起こしている」
と主張する一方、米国などが「治安当局による弾圧だ」と非難する構図。
反体制派の蜂起で内戦状態に陥っているリビアや、大統領退陣要求デモの弾圧で混乱が続く
イエメンと同様の状況に陥っているといえそうだ。
国営シリア・アラブ通信は19日、国内各地で発生しているデモを「保守的イスラム主義者による武装蜂起」
と断言する内務省声明を配信した。西部ホムスでのデモ参加者約20人が死亡した17〜19日の発砲事件でも、
地元人権団体は「治安部隊が発砲している」と主張するが、当局側は「外国に操られた武装集団の犯行だ」
と反論し、治安部隊側に死傷者が出ていることを強調している。
同通信は14日には、「テロリストグループの告白」を配信。各地でデモ隊と治安部隊の双方に発砲して
死傷させたという3人の男たちや「押収された武器」の写真も流した。
レバノンの国会議員の指示で行動し、資金や武器、車両の提供も受けたという3人の「告白」は英語でも配信された。
だが、名指しされた国会議員は関与を否定。この議員が所属するハリリ前レバノン首相の会派
「未来運動」も「我が派に対する組織的な情報工作が行われている」と反発した。
シリア側の主張には、イスラム教スンニ派であるハリリ氏の後ろ盾とされるサウジアラビアをけん制する意図もにじむ。
シリアでは国民の7割を占めるスンニ派を、少数派アラウィ派が支配している。アサド大統領もアラウィ派。
デモ参加者は政治的自由の制限や当局者の腐敗に不満を持つスンニ派国民が中心だ。
スンニ派国家のサウジがレバノンのスンニ派を使ってシリアに揺さぶりをかけているとの見方は、シリア当局内に根強いようだ。
一方、米国務省のトナー副報道官代行は19日、ホムスの事件は「兵士が平和的デモに発砲した」と指摘。
武力弾圧を止めるようシリア政府に求めた。
ただ、米ワシントン・ポスト紙によると、内部告発サイト「ウィキリークス」が入手した09年4月の米公電で、
米政府が在英シリア反体制派のテレビ局に資金援助をしていたことが判明。
米側もシリア民主化の情報戦をしかけていた疑いがある。
シリア政府は、外国報道機関による騒乱報道にも神経をとがらせている。ジャーナリストの国際団体
「国境なき記者団」によると、AP通信の記者2人が1日に国外退去を命じられた。
ロイター通信の記者やカメラマンも一時拘束された。
「ジャーナリスト保護委員会」(本部ニューヨーク)は14日、シリア当局による記者拘束について
「早期に改革を実施するとの大統領の主張に反する行為だ」と批判した。
ソース:シリア:アサド政権と米国などで「情報戦」 - 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/world/news/20110421k0000m030084000c.html