米同時多発テロから6年がたった今年、このテロや災害などで親を亡くした子たち
が、ニューヨークに集った。イラクの少年も参加する予定だったが、米国の許可が
下りずに断念した。「家族を失った悲しみに、国の壁はないはず」。
まだ実現していない平和な世界に向け、希望を持ち続けることを誓った。
9月11日の同時多発テロの追悼式を目前にして、テロで倒壊したニューヨークの
世界貿易センタービル跡地を、ここで父親を亡くしたヤリッザ・メレンデズさん
(14)や阪神大震災で父親を亡くした神戸市の伊藤侑子さん(20)らが訪れた。
交流は、親を亡くした子どもを支援する日本の「あしなが育英会」の企画で実現。
この夏、テロ、イラク戦争、津波などで親と死別した遺児100人を日本に招待
し、キャンプをした。遺児らが描いた平和を願う絵、作文、千羽鶴を携え、
9・11の追悼式にむけて代表者らが米国を訪問する計画だった。
だが、国の壁が立ちはだかった。米大使館はイラクの少年、モハメッド・ラジャブさん
(17)のビザを発給しようとしなかった。
「モハメッドとは本当にいい友人になれたのに」。同時多発テロで父親を亡くした
ヒラリー・ストラッチさん(17)は話した。「すべての米国人が彼らを傷つけ
ようとしているわけではない、と彼はわかってくれた。そして私も、イラクには
普通の家族が住んでいると知ったんです」
南棟の上層階で、父親を亡くした。電話で「全員を避難させようとしている」と
伝え、消息を絶った。いまだに世界貿易センター跡地、「グラウンド・ゼロ」
へは足を運ぶことができない。
その心の傷を乗り越え、ヒラリーさんはイラクの少年と友情を結んだ。「これ以上、
孤児を生むのはもういや。平和の実現には、戦争は決して選択肢ではない」
遺児らが書いた作文の題は「もし自分が大統領だったら」。
イラクのモハメッドさんはこう書いた。「世界中の戦争をやめさせ、イラクに平和
と安定を実現したい。僕の声が世界の人の耳に届くよう願う」
ニューヨークに行けば、イラクに帰国した際に親米派とみられ、テロの標的になる
恐れもある。それでも、自分の声を伝えるため、渡米を決心していた。
9月11日午前8時40分(日本時間同日午後9時40分)に始まる同時多発テロ
の追悼式には、孤児たちも参加する。
日本から参加した神戸市の安達瞳さん(21)は言う。「差別も偏見もない平和な
世界が実現するには、私の一生では足りないかもしれない。でも、国が違っても
分かり合えることを知った今、希望を持ち続けられる」
ニュースソース:朝日新聞
http://www.asahi.com/international/update/0911/TKY200709110053.html