米同時多発テロが11日に6周年を迎えるのを前に、ニューヨークの世界貿易
センター(WTC)跡地から掘り出された人骨のDNA鑑定を行っている研究所
に入った。
今も、新たな技術を駆使しながら、小さなものでは数センチしかない遺骨のデータ
を採取、その主を捜し当てる作業が続いている。
鑑定を行っているのは、バージニア州ロートンにある「ボード・テクノロジー」社。
ニューヨーク市の依頼を受け、WTCでの犠牲者のDNA鑑定を行っている。
研究所は約20メートル四方の部屋が二つ。大型冷凍庫や医療機器が並ぶ研究所に
入る前、係員から体をすっぽりと覆う白い服を手渡された。異物の混入を避ける
ためだという。
骨は、試験管に入れられセ氏マイナス20度の冷凍庫内で保存されており、多くは
こげ茶色をしている。試験管にはすべて、バーコードが付けられている。同社の
マイク・カリオラ副社長(36)によると、DNA採取には最低約2グラムの骨
が必要。まず、ドリルを使って骨を粉状に砕き、化学処理してDNAを採取し、
機械でデータを読み取る。
WTC跡地から掘り出された人骨は、テロ翌月に最初の約1万が届いて以来、今も
ほぼ毎月、新しく出た骨が届く。これまで鑑定した骨は約2万。1回目のDNA
採取作業は05年までに、ほぼ終了したが正確なデータが採れたのは半分程度だ。
「骨は高熱で焼かれていたため、データが採取できなかったケースが多い」と
同副社長は説明する。そのため、同社は新たな技術を開発した。特殊な化学薬品
を使ってカルシウムを除去した骨片をDNA鑑定する。カルシウムがデータ採取
の支障になることがあったためだ。
05年12月以降、この技術を使い2回目の鑑定を続けており、1回目では失敗
した骨のうちほぼ50%でデータ採取に成功しているという。
同市は同社に対し、すべての鑑定に成功するまで作業を続けるよう指示している
といい、同副社長は「一人でも多くの人に、遺骨を届けたい」と話す。
時折、DNA鑑定で判明した遺族からお礼の手紙が届くという。
同社が採取したDNAデータを基に、市保健局が遺族や生前の本人のDNAデータ
と照合し最終的に誰の骨かを確定する。同市によると、WTCでの全犠牲者
2750人のうち、遺体が確認されたのは1614体。
ニュースソース:毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/news/20070911k0000m030056000c.html