文才なんていらねぇぜ! 俺と小説を書けぇ!

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1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
ここはお題をもらって小説を書き、筆力を向上させるスレです。


◆お題を貰い、作品を完成させてから「投下します」と宣言した後、投下する。

◆投下の際、名前欄 に『タイトル(お題:○○) 現在レス数/総レス数』を記入。メール欄は無記入。
 (例 :『BNSK(お題:文才) 1/5』) ※タイトルは無くても構いません。

◆お題とタイトルを間違えないために、タイトルの有無に関わらず「お題:〜〜」という形式でお題を表記して下さい。


※※※注意事項※※※
 容量は1レスは30行、1行は全角128文字まで(50字程度で改行してください)
 お題を貰っていない作品は、まとめサイトに掲載されない上に、基本スルーされます。

まとめサイト:各まとめ入口:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/
まとめwiki:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/
wiki内Q&A:http://www.bnsk.sakura.ne.jp/wiki/index.php?Q%A1%F5A
2以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 16:43:54.15 ID:6gPNmtx30
▽読み手の方へ
・感想は書き手側の意欲向上に繋がります。感想や批評はできれば書いてあげて下さい

▽保守について
・創作に役立つ雑談や、「お題:保守」の通常作投下は大歓迎です
・【!】お題:保守=ただ保守するのも何だから小説風に保守する=通常作扱いにはなりません

▽規制されている方へ
>>1から辿って行けるまとめ板に、規制者スレがあります。
そちらの方に投下していただければ、心ある人が転載してくれます。

▽その他
・作品投下時にトリップを付けておくと、wikiで「単語検索」を行えば自分の作品がすぐ抽出できます
・ただし、作品投下時以外のトリップは嫌われる傾向にありますのでご注意を
3以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 16:45:28.12 ID:6gPNmtx30
341 名前:お題発表  ◆Dr.Smn6n2hRe [] 投稿日:2010/09/29(水) 00:12:17.92 ID:BAcXUIF20



ウガンダ・トラ「カレーは飲み物」



第235回週末品評会  『飲み物』

規則事項:5レス以内
補足:飲み物が出てくればなんでもオッケー。飲み物だと言い張るならそれもまたオッケー。

投稿期間:2010/10/02(土) 00:00〜2010/10/03(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2010/10/04(月) 00:00〜2010/10/05(火) 24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
4以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 17:08:09.47 ID:6gPNmtx30
品評会前なので立てときました
5以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 18:06:35.68 ID:6gPNmtx30
保守
6以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 18:31:42.60 ID:6gPNmtx30
こう、独りでageていると
重複スレではないかと要らぬ不安が呼び起こされてくるのです
7以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 18:42:29.78 ID:Xr1a+MNG0
>>1
8以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 18:58:20.95 ID:vxGuI6aI0
>>1otu
9以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 19:27:29.52 ID:SzsgMGyD0
我に力を
10以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 19:56:12.49 ID:vxGuI6aI0
hohoho
11以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 19:57:45.22 ID:mMPGLQoDO
お題くれやァァァァァ
12以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 20:00:10.83 ID:vxGuI6aI0
目隠し
13以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 20:27:07.63 ID:6gPNmtx30
14以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 20:47:32.85 ID:Zwo6OHu+0
ほっし
15以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 21:03:27.25 ID:6gPNmtx30
ほししんいち
16以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 21:31:00.86 ID:6gPNmtx30
17以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 21:56:27.27 ID:6gPNmtx30
18以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 22:21:52.16 ID:6gPNmtx30
19以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 22:40:56.73 ID:6gPNmtx30
20以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 22:42:38.05 ID:JPzKi3CN0
あの……言い辛いんだけど
需要なければ落とせば?
21以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 22:43:57.88 ID:xYFKKTKwO
あるよ
22以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 23:01:07.44 ID:79ehWkLh0
ひさしぶりにやってきた俺に需要あったよ
飲み物か、とりあえず生き血を啜るよね
スエッソンステロ死んじゃった
23以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 23:15:09.06 ID:xYFKKTKwO
酒呑みたい
24以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 23:15:54.90 ID:85nMvA4T0
解除されてるかな
25以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 23:26:08.23 ID:6gPNmtx30
みんな品評会作品の推敲に入ってるんだな
そうなんだな
26以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 23:29:18.79 ID:Zwo6OHu+0
推敲どころか完成できるか微妙だ
しかも飲み物の要素が消えちまってるからどっかに無理やり飲み物を押し込める
27以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 23:32:44.95 ID:29QGGDIdO
書く気力が湧いてこない
28以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/01(金) 23:56:05.69 ID:Zwo6OHu+0
ho
29以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 00:14:58.97 ID:/r0qv1mv0
| ・ω・)
30以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 00:32:24.16 ID:8kARx7LY0
はい
31以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 00:33:00.47 ID:q21DttOb0
はいじゃないが
32以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 01:01:46.99 ID:8kARx7LY0
へえ
33以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 01:38:59.14 ID:XuOSK9c5O
あげ
34以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 02:11:28.15 ID:XuOSK9c5O
あらよ
35以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 02:34:22.40 ID:Y8iXXYac0
出前○丁
36以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 02:44:28.68 ID:lftanEsR0
ガマドロン((^ω^))を題材にすれば完璧ですね
37以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 04:16:41.33 ID:f/6e0H+x0
寝る前にほ
38以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 06:06:04.04 ID:XuOSK9c5O
39以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 07:38:48.30 ID:3Z+XGvKp0
おはようございます
40以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 08:48:59.55 ID:EHgG+J2Z0
おは
41以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 09:00:00.35 ID:XuOSK9c5O
グモニ
42以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 09:00:43.38 ID:5OZ6ldoeO
オチがおちて来ない
43以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 10:47:13.51 ID:XuOSK9c5O
44【転載】:2010/10/02(土) 11:34:59.33 ID:3Z+XGvKp0
193 名前:総理のいうことを聞きなさい0/5 ◆X78jHks0c. :10/10/02 09:22:12 ID:N4s+eK3p
品評会投下
転載お願いします。
45【転載】総理のいうことを聞きなさい1/5 ◇X78jHks0c:2010/10/02(土) 11:35:30.19 ID:3Z+XGvKp0
 次期代表選で小沢一郎自らが立候補する公算が大きいという雑誌記事を読んだ菅は思わず側近に当り散らした。
 検察審査会での議決内容によっては、小沢に民主党からの離党勧告を突きつけることで内閣支持率を上げるという菅の
計画が小沢サイドに漏れ、小沢を激怒させた。報復として、小沢は菅に本格的な権力闘争を仕掛けることになったのだ。
菅は参院選前に絶縁同然に冷遇した上、離党勧告を突きつけられかけた小沢とその仲間が菅の失態を利用して沈黙を守り
ながら裏で菅の寝首を掻こうと策を弄していることに寒気を覚えた。
 完全にダークなイメージが定着した小沢とその仲間が再び表舞台に突出することで、参院選に負けた民主党の更なるイ
メージダウンと支持率低下に繋がり党が崩壊してしまうことにならないか。そう考え己の保身よりも党の未来を考えた挙
句、菅は決死の行動に出た。
 その日の夜、菅直人は毒死した。

 官邸から極秘に菅の死を知らされた反小沢派の面子はその日のうちに、日本料理店「なだ万」で顔を合わせていた。
「菅さんの死は警察と一部の官邸スタッフ以外知らない」と仙石は言った。「今のところ、口止めは成功している」
「だが、ばれるのは時間の問題だろう」と枝野が答えた。その時点ではマスコミには菅の死を伏せていた。「だが、政府
としての責任を果たすためには遅くとも深夜までに仙石さんが緊急記者会見を行わなければならないな」
「跡継ぎは岡田君か前原君、ふたりのうちから党首選で決定し、幹事長は枝野君が続投する。そして小沢は党から追放。
仙石さんが菅さんから預かった遺言状にそう書かれていた」と渡部は言った。渡部や仙石は口には出さなかったものの、
その遺言状に「『とある人物』に殺される」といった不穏当なことも書かれていた。「無論、小沢本人を始めとした小沢
グループ関係者からの候補を選出する余地はないだろう」
 なぜならば、政治とカネの問題で検察審査会に睨まれたことを理由に亡き菅総理の最後の意志で離党勧告を受ける小沢
率いる小沢グループは最早発言力を失ったも同然、求心力を失った小沢グループは解体される運命で、党首選で独自候補
の擁立どころではないだろう、というのが反小沢グループの共通認識だったからだ。

 仙谷由人は、早朝に近い時間帯の総理官邸で緊急記者会見を開き、菅総理の死と、副総理を置いていない菅内閣の総理
代理に官房長官である自分が就任することを報告した。
 朝日新聞の記者が挙手し、質問した。「死因は何でしょうか?」
「警察の司法解剖の結果をまだ聞いておりませんので正確にはお答えできませんが、状況からして毒死だと思われると耳
にしております」
 政府民主党の存在が親の敵よりも憎い産経新聞の記者が威風堂々と手を上げ、容赦無い質問を浴びせた。「菅総理の死
亡は意図されたものであるというのは本当でしょうか?」
「今のところ、そのような話は聞いておりません」と仙石は滔々と述べた。が、嘘だった。殺害された菅の死体の第一発
46【転載】総理のいうことを聞きなさい2/5 ◇X78jHks0c:2010/10/02(土) 11:36:02.36 ID:3Z+XGvKp0
見者かつ重要参考人である「とある人物」が今警視庁公安部に拘束され事情聴取されている。民主党幹部はすべてを承知
のうえであえて嘘をついていた。
「内閣総理大臣が謎の死を遂げたにも関わらず、その死に関して何の情報も得られていないのは政府の怠慢なのではない
でしょうか?」と産経記者は食い下がった。
「確定できる情報がない以上、何も申し上げることはございません。真相が分かり次第、改めて国民の皆様にご説明させ
ていただきたい所存であります」と仙石は産経記者のしつこい質問をかわした。
 仙石のつれない対応に取り付く島もない産経の記者は諦めて手を引っ込めた。だが、民主党の幹部は何かを隠している
、という確信を抱いていた。証拠も根拠もない、ただのカンだった。だが、記者は事実を暴いて民主党の失態を世に知ら
しめてやろうと決意して会見場を後にした。
 そんなやりとりをバックから見ていたとある民主党幹部は、この勇猛果敢な記者に目をつけて、私設秘書に命じ、ハイ
ヤーに乗って帰社する記者の後を彼の第一公設秘書が運転するアルファードに乗って追わせた。
 
 アルファードは千代田区大手町の産経新聞東京支社前に停車したハイヤーを追い越してハイヤーの進路を塞ぐように停
車した。記者は訝しげにアルファードを見た。アルファードの助手席から降りたまだ二十代前半に見える容姿端麗な女性
の私設秘書が降りて、記者に近づいた。
「こんばんわ」と秘書は言い名刺を差し出した。「とある民主党幹部の私設秘書をやっています」
 この時、記者は天啓を受けたような気がして、思わず気分が高揚した。背中に羽が生えて、大空に飛び立つかのように
。「何か用でしょうか?」
「産経新聞さんに、民主党から重要なスクープを提供できる用意があります」
「どのような話でしょうか?」
「菅元総理の件です」と私設秘書は言った。「私どもは菅元総理の遺書の原本をお持ちです」
「それを見せていただけるのでしょうか?」と記者は訊いた。翼が羽ばたき、大空へと飛翔し始めた気分だった。
「そのとおりです」と私設秘書は慇懃に答え、遺書の原本を差し出した。「菅元総理直筆のサインが入っていますので間
違いなく本物です。是非御覧ください」

 夜が明けた翌朝、産経新聞の一面に日本を揺るがすスクープが掲載された。
『菅総理死亡事件で警視庁が重要参考人として小沢一郎元幹事長の身柄を拘束 小沢氏に殺されると記された菅元総理の
遺書を入手 菅総理は小沢氏に意図的に殺害された模様』
 弱小新聞社に過ぎない産経新聞のスクープが、日本中に大きな衝撃をもたらした。いつもはキオスクの隅で寝ているだ
けだった産経新聞の部数が、その日だけ十倍に伸びた。
47【転載】総理のいうことを聞きなさい3/5 ◇X78jHks0c:2010/10/02(土) 11:36:33.19 ID:3Z+XGvKp0
「民主党の未来のために、小沢を抹殺したい」と菅総理から相談を持ちかけられた枝野は、参院選の敗北と臨時国会で野
党にボコられたショックで気が違ったのではないかと内心で訝しんだ。だが総理は消費税発言によって民主党を敗北させ
た上、小沢離党勧告計画を漏洩させ、存在するだけで党を破滅させかねない小沢グループに付け入る隙を与えたことを衷
心から後悔しているように枝野に話すのを見て、菅総理の意志の固さを確認した。
 財務省に騙され勝手に消費税増税発言をして参院選を敗北に導き、ねじれ状態を引き起こして党の存亡の危機を招いた
教訓を得ず、また勝手に行動しようとしている愚か者。所詮市民運動家上がりか、と枝野は呆れ果てた。
 しかし、参院選敗北の責任を負わされているのは幹事長である枝野も同じだったので、あまり菅総理のことを悪し様に
言える立場ではなかった。刹那、思いついたのが今回の企みだった。
「密会の場を設けるので、その席で小沢を殺人犯にしましょう」と枝野は菅総理に言った。「小沢は大の酒好きです。酒
を酌んだ総理愛用のコップにシアン化合物の毒を仕込んで小沢が総理に飲ませるように仕向けるのです。黒いグラスに毒
を仕込んでおきますので、総理はあらかじめ解毒剤を摂取し、白いグラスを小沢に薦めてください」
「そこで私が毒の入ったグラスをごく少量飲み、その後毒で苦しむ演技をして警護を集め、小沢を私に毒を盛った殺人未
遂犯として逮捕させる、ということか?」
「ご察しのとおりです」と枝野は言い頭を下げた。
「小沢が私を殺す動機はどうなるんだろう? 若干設定に無理があるのではないか?」と菅総理は首を傾げた。「そう簡
単に小沢を殺人未遂犯に仕立てあげられるだろうか?」
「菅内閣から小沢グループが排撃された復讐として、総理を暗殺して小沢派の復活を企んだ、という筋書きです。そのよ
うな理由で、小沢から命を狙われている、と書いた遺書を用意するのはどうでしょう?」と枝野は言った。「遺書に前原
さんか岡田さんを後継者として任命し、小沢に改めて離党勧告を突きつける、と書き加えるのです。改めて離党勧告を喰
らう上、前原さん、岡田さんに後継指名することで再び小沢グループを政権から排除しようとしたことを知った小沢が正
気を失うほど激怒して衝動的に事件に及んだ、ということにするのです。政治とカネの問題で国民の大半は小沢を疑って
います。小沢が殺人未遂事件を起こしたとマスコミが報じても、国民の大半は納得するでしょう。イメージ的に奴は日本
を代表する極悪人ですから」
「そうかもしれないな」と菅総理は首肯した。
「便箋二枚に直筆で書いて最後にサインして頂きたく存じます」と枝野は言った。
「二枚?」と総理は首を傾げた。
「仙石長官宛と、私宛でニ枚です」と枝野は答えた。「官房長官にも送ったほうが内容の信憑性が増すでしょう」
「そうだな、枝野君にまかせよう」と菅総理は言うと、ニ枚の便箋にサインし、枝野に渡した。
「今日の小沢は鳩山グループの会合に出席しています」と枝野は言った。「私も出席して小沢に接触後、今晩までに極秘
48【転載】総理のいうことを聞きなさい4/5 ◇X78jHks0c:2010/10/02(土) 11:37:12.74 ID:3Z+XGvKp0
のうちに小沢を官邸に向かわせますので」
「よろしく、枝野君」と菅総理は言った。

 菅総理の依頼を受けた枝野幹事長が、鳩山元総理に頭を下げ、鳩山グループの会合に自分を出席させてもらうよう要請
、枝野は顔を出した小沢元幹事長と密会し過去の非礼に対し頭を下げた。「菅総理は小沢さんに何か重要な話をしたいと
おっしゃっていました。菅総理と会談して頂けないでしょうか」
 当初小沢は内閣支持率のために党から自分を追放しようとした菅と話をするつもりはまったくなかった。しかし、小沢
は頭を垂れる枝野に配慮して急遽官邸まで小沢と枝野を乗せたミニバンを走らせ、極秘のうちに総理官邸での菅総理との
面会を受諾した。自身に反抗的な菅とは接触しない方針だった小沢の気分を変えたのは枝野の一言だった。「菅総理は小
沢グループ排除から方針転換して、次の党首選では小沢さん自身を党首に選出したい、とおっしゃっていました。そのこ
とで直々かつ内密に小沢さんと会談したいのではないかと思われます」
 酒好きの小沢のために密談の場に供される黒霧島を取り寄せたのも枝野だ。高級ワインを天皇陛下に振舞うソムリエの
ように桐の箱から手袋をはめて慎重に取り出した。菅が小沢に白いグラスを勧め、菅が愛用する黒と白の有田焼の焼酎グ
ラスで黒霧島を酌み交わすシーンを想像した。

 枝野は菅総理用の焼酎グラスに有機リンの毒を塗った。総理に渡したシアン化合物の解毒剤では解毒効果がなく、少量
でも服用すれば死に至るだろう。小沢と菅が酌み交わす焼酎の入ったグラスに口をつけた瞬間に菅は死に、それを見た小
沢は茫然自失となる算段だった。
 菅が死ねば、真っ先に小沢が疑われ、政治生命を絶たれることになろう。幹事長就任のパーティーで小沢グループの議
員から白い目で見られた彼にとってはまさに好都合であった。枝野の仇敵と言っても良い小沢が完全に失脚すれば幹事長
としての枝野の地位は安泰だ。枝野に過剰に反発する小沢グループの議員も何も言えなくなるだろう。小沢は枝野の名前
を出して無実を証明しようとするだろうが、枝野は焼酎の瓶やグラスから自分の指紋が検出されないよう注意したので、
警察は枝野をシロと判断するに違いない。実際、小沢は枝野の名前を出して、無実を主張したが、警察は仇敵である枝野
に罪を押し付けて嫌がらせしようとしているとしかとらえなかった。
 なだ万での会合の帰りに、枝野を待ち伏せしていた、エスティマに乗った背広を着た刑事に連れられて警視庁で事情徴
収を受けた。枝野は菅総理の命令を受け小沢元幹事長をアルファードで官邸に送迎しただけだという事実と、菅総理が小
沢から生命を狙われ恐怖を感じていると相談を枝野が受けて、菅が小沢に真意を問いただすべく菅総理の指示で今回のふ
たりの密談をセッティングしたというつくり話を述べた。警察は枝野の言に何の疑いを抱くことなく納得すると枝野をす
ぐに開放し、警視庁に迎えに来た美人秘書が乗ったアルファードで自宅に帰った。
49【転載】総理のいうことを聞きなさい5/5 ◇X78jHks0c:2010/10/02(土) 11:37:43.52 ID:3Z+XGvKp0
「菅の遺言と枝野の証言と状況証拠に基づくと、小沢が菅が愛用している焼酎グラスに密かに有機リンの毒を盛り、殺害
したと判断せざるを得ません」と警視総監室に呼び出された公安部長は警視総監に言った。「もっとも、小沢は、知らぬ
存ぜぬ、菅や枝野の陰謀だ、と言い逃れして無実を主張していましたが」
 だが、実際、小沢には直接的な証拠がなかったことも事実だと部長は思った。しかし、状況証拠は小沢を味方しなかっ
た。「小沢は離党勧告の件で菅に恨みをいだいていたこと。仙石に送られた菅直筆の遺言状にはっきりと、『小沢に殺さ
れる』と書かれていたことと、菅が身の安全を案じていたという枝野の証言。司法解剖で菅がシアン化合物の解毒剤を摂
取していたことが判明したこと。そして、菅と小沢の会談が極秘裏に夜の総理官邸の執務室という密室で行われていたこ
とで、容疑者候補が菅と二人きりで同室していた小沢と、他には官邸を警護する警察官以外存在し得ないことをすべて総
合して考えると、菅直人毒殺事件の犯人が小沢であるとしか思えません」
 公安が官邸内の犯行可能な複数の容疑者を消去法的に選別した結果、小沢の名前が最後に残り、菅直人殺人犯の最有力
候補として小沢を逮捕させたのだった。
「菅が小沢を巻き込む形で自殺したという可能性も考えましたが……」と部長は続けた。「可能性は低いでしょう」
「自殺しようと思う人間が、シアン化合物の解毒剤を摂取して、有機リンの毒を飲んで死ぬのも変な話だしな」と総監は
言った。「自殺する人間が解毒剤を摂取するとは思えないし、それ以前に実際に飲んだ毒とは関係ない解毒剤を摂取する
のも腑に落ちない。意味が無いじゃないか」
「そのとおりです」と部長は答えた。「小沢に毒殺されることを恐れた菅が自ら摂取したと考えるのが自然でしょう」
「検察審査会から執拗に起訴相当の議決を受け、党内での影響力が低下する一方で八方塞がりの小沢がやけになりこのよ
うな珍事に至ったのだろうな」と総監は呟くと深く座った椅子から起き上がり、高層ビルが林立する夜景が見える窓の向
こうを眺めながら右手を上げて一振りした。部長は黙ってお辞儀をして警視総監室から去っていった。

 前原と岡田で争った党首選は順当に岡田が勝ち、前原は僅差で敗北した。小沢に反抗的だった前原は、独自の候補者を
出さずに自主投票することに決定した小沢グループの残党に恨まれていたせいで、一歩及ばなかったのだ。しかし、枝野
は先の参院選の敗北の責任を問われずに、岡田新総理の一存で幹事長の地位を死守することとなった。もっとも、前原が
総理になったとしても、前原グループに所属する枝野は優遇され、幹事長かそれ以上の地位は確実に取れただろう。
 リーダーが逮捕された小沢グループが崩壊するのは時間の問題だった。パーティーで、以前のように枝野を睨みつける
議員は誰一人いなかった。枝野を敵視していた、旧小沢グループの議員は居場所がなさそうに隅でじっとしていた。
 岡田内閣の支持率は五十パーセント、不支持率は三十パーセント。支持率が二割を切ったら今度こそ前原総理が誕生す
るだろう。そして前原内閣が倒閣されたらその次は誰が総理になるのだろう? 自分が民主党の代表に選ばれる頃には、
民主党は与党でいられるのか、枝野はふと不安がよぎった。
50以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 11:38:15.95 ID:3Z+XGvKp0
以上、転載終わり
51以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 12:02:43.88 ID:XuOSK9c5O
52以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 12:59:16.73 ID:XuOSK9c5O
53以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 14:03:05.63 ID:XuOSK9c5O
ほす
54以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 15:12:21.62 ID:v7sskEXrO
保守
55以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 16:02:38.35 ID:v7sskEXrO
56以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 16:12:16.75 ID:q21DttOb0
ああ、説明臭くなりすぎてつまんねーな俺の小説
57以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 16:18:01.72 ID:3Z+XGvKp0
>>56
自覚するのはいいことだよ。何度言っても直らない(直さない)人もいるこのご時勢
58以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 17:00:37.98 ID:q21DttOb0
>>57
サンクス
なんとか品評会に出して第三者の目で評価してもらえるよう頑張る

59以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 18:05:41.89 ID:XuOSK9c5O
60以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 18:48:41.47 ID:XuOSK9c5O
61以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 19:18:14.50 ID:J8qAlEKx0
☆ゅ
62以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 19:54:41.76 ID:lHTRUq8W0
63以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 20:17:55.72 ID:q21DttOb0
64以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 20:45:22.24 ID:XuOSK9c5O
へい
65以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 21:17:17.06 ID:v7sskEXrO
ほっ
66以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 21:46:13.78 ID:XuOSK9c5O
67以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 22:16:41.89 ID:br9mwj230
BNSK書かなくなって二年以上経つけど、なんとか頑張ってみるわ。
68以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 22:22:39.12 ID:47VIxETv0
二時間以上かかってやっと書けた。

中途半端に長いからたぶん4スレくらいになるけど今からあげるわ


注:このものがりはフィクションです。
69以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 22:25:17.07 ID:47VIxETv0
 ガイウス・ユリウス・カエサルは表情を変えない男だった。
仮面のように無表情であったとうわけではない。常時やせた頬に笑みを浮かべ、
誰にでも変わらぬ朗らかな顔を向けたのであった。年長者をいたわり、若者を励まし、
時には自分の敵さえも惹きつける。いわば後世に伝えられるカエサル(皇帝)としての申し分のない能力だった。
「それを……、それを貴様…、貴様ら…」
 トーガの長いすそを乙女のようにたくし上げながら後じさりをするカエサルの表情は、
闘技場の飢えた獅子を思わせた。眉間といわず額全体に縦にしわが刻まれ、歯をむき出しにしていた。
わけても腰を曲げ前屈の姿勢でいるその姿はライオンそのものではないか。
「が、ごおお。ふ、不届き者め」
 喉に手を回し、低くうなる声は元老院の良く響く壁と相まって、まさに咆哮である。議員たちは剣を身構えたまま踏み止まった。
カエサルは片手で喉を押さえながら、もう一方を振り回した。何をするか。どけ。どけ。どくのだ。どけ。
 カエサルは挿されていた。喉を含め何箇所も肉を裂かれ、真っ白な絹のトーガには花のような染みが出来ていた。暗殺である。
ローマの権力がカエサルに集中したため、権力を失った元老院の議員達が皇帝の暗殺に乗り出したのだ。
 「貴様ら、どけ」
元老院のつくりは響きやすいように出来ている。カエサルの声に迫力があったのか、それとも元来のカリスマの凄みが出たのか、
議員たちは半歩距離をとってカエサルを囲んだ。議員の暗殺団といっても十を超える程度である。そしてここは天下のローマ劇場である、
外にさえ出てしまえば大量の衆目がある。暗殺は失敗する。
答えを導き出したカエサルが自分を取り戻す瞬間、さっと編み上げサンダルの足が一歩カエサルに近づいた。
「ああ、わが息子よ」
ブルータスよ。カエサルはいつもの半笑いを取り戻していた。ゆっくりと背筋を伸ばし相手を迎えるように両手を広げた。喉から血がにじみ出た。
「私は困惑している。私がお前に何かしたかい。私はもう老人だ。ローマはお前のような若者のものだ」
 お前が勝った。俺の負けだ。だから機嫌を直してくれ、と年長者の余裕を見せて議論を有利に持っていこうとカエサルは考えた。
役人になる前は一流の弁護士だったのだ。連戦連勝の将軍として演説し、兵を鼓舞したのだと、彼はもう勝利を疑わなかった。
「ユリウス・カエサル」
 ブルータスは短剣を両手でわき腹に構えた。ローマの共和政は崩させない。
 カエサルの頭脳は死を覚悟した。人が死ぬ間際に見る、馬の走る影絵のように人生を振り返ったとき、彼が思い出すのは同じく疾走する騎馬であった。
 お前もか。お前もなのか。
70以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 22:29:31.50 ID:47VIxETv0
カエサルはガリア(現フランス)の大陸的な青空の中、他の兵よりも一段高い台で大きな椅子に座っていた。
上機嫌ですわり心地の悪い、戦地での特設椅子にもたれかかって周りを見回す。
彼の兵はただ一点を見ていた。軍に近づく一頭の馬である。
いや、馬とそれに乗る騎手であった。カエサルは音を立てぬように鼻から息を抜いた。ガリア王の投降であった。
カエサルは蛮族に勝利した。ローマの連中もこのカエサルを認めざるを得ない。
古臭いローマのやり方ではこのローマ帝国を治めることはできない。この勝利はカエサルにとって手土産に過ぎなかった。
ローマ改革のおまけである。近づく馬の音に兵たちはざわめいたが、カエサルは興味のないように焦点を合わせなかった。
兵たちは声にならないように唸った。王の降伏とは一種の儀式である。無駄な声は許されない。
それでも空気の圧迫感がカエサルの注意をひきつけた。
ガリア王は馬にまたがりながら槍を構えていた。投げるふうではなく突くかたちだったのだが、
一騎で駆け抜け反抗するというふうでもなかった。堂に入った騎馬突撃は、軍の中に入ると脚を高く跳ねるようにして速度を緩めた。
「若いな」
 武器を備えたままであるという嫌みではなく、カエサルは真実そう思った。
71以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 22:33:32.40 ID:47VIxETv0
 カエサルのガリア制圧は紀元前52年のことだったので、それからたった8年でカエサルは暗殺されたことになる。
逆に言ってしまえば彼がガリア属州を平定させたのは、彼が初老にさしかかった時代であった。
 対してガリア王はまだ20台を少し超えた年齢だった。馬の背にゆられる巨体は輝く赤銅色の鎧で固められ、
槍を構えるその姿は美しささえ感じられた。ガリアの長い二本の口ひげとふさふさとした金色の長髪はカエサルにはないものだった。
 カエサルの目の前まで進みでたとき、馬の動きを緩めガリア王は槍の穂先を上にささげた。
攻撃の意思がないものとカエサルは受け取ったが、ガリア王は馬を止めない。馬の脚を地上から離さないようにゆっくりとカエサルの周りを回った。
カエサルはもはや笑みを捨てていた。自分の背後から脇へ巡る馬にまたがる男をにらみつけていた。
 カエサルを一周し終わり正面に向かうと、ガリア王は槍を一旦肩の高さまで上げ、地面に落とした。
腰の剣も抜き、同じように落とすと、鉄同士がぶつかり硬い音がでる。兵たちはやっと安堵の声を漏らした。
「いいや、違う」
カエサルは腹の中でつぶやいた。この男は降伏するのではない。証拠にガリア王は馬上で憮然とカエサルを見ていた。
カエサルの聞き取れない蛮族の言葉でガリア王は何事かつぶやく。
ひげをそり、髪を切りそろえたガリア人の通訳曰く、我われガリアは閣下に帰順します。私は死ぬことも厭わないのでどうか民の助命を、とのことである。
「いいや、いいや、違う」
 今度はカエサルは声をだした。この男は降伏などしない。これは敗軍の将ではない。
生まれも育ちもローマっ子のカエサルは、ガリアの言葉などわからない。わからないが、わかる。
理由はあわてる通訳のガリア人を見なくても、この男を見ればいい。
  馬上であごを上げる巨漢の若者ははっきりと言っていた。ローマの勝利ではない。これはガリアの勝利だと。
これは俺の勝利だと。お前のようなじじいは勝っていない。闘ってさえいない。お前は間違っている。お前はずるをして勝利を奪ったのだと。
カエサルは血の逆流する思いだった。怒りではない。怒りはごまかしにすぎず、いうなれば若者に真実を突きつけられたのだ。
真実という不動の証拠を突きつけられ、カエサルは全自身を否定されたのだ。
違う。違う。私は間違っていない。得意の弁舌に持ち込もうとも、舌がからまり声にならなかった。
カエサルは肘掛の上で両手を振るわせやっとのこと叫んだ。
「こいつを殺せ」
72以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 22:35:18.34 ID:47VIxETv0
ブルータスの刃がカエサルの胸元に深く挿さった。ブルータス。ブルータス。
カエサルは足元がおぼつかなくなっていった。ブルータスは肩で息をしながらいった。
「共和制は守らねばならない」
 これがカエサルの義子が犯行に及んだ理由だった。ブルータス。わが子よ。カエサルはゆっくりと寝転がるように倒れた。
「ブルータス、お前もか」
 つまり、カエサルは真実を知っていた。暗殺を知っていたのでもなく、ローマの共和政の復活を知っていたわけでもなかった。
つまり、カエサルはローマのために自身が死ななければならないのを知っていた。
 ローマが、領土の拡大という理由で村社会の共和政から皇帝の独裁政に移り変わらねばならないのは明白であった。
しかし、権力を皇帝に集めるほどに古いローマは崩れてゆく。ローマという国家は崩れるだけで新しく生まれ変わることは出来なかった。
生まれ変わるには死ななければならない。ローマが死ぬのでなければ皇帝が……。
 カエサルはかろうじて立ちながら悲痛な表情を顔に刻み付けていた。ブルータス、やめてくれ、お前まで。
カエサルは一気に十年も年をとったような顔でブルータスを見上げた。しかしブルータスはなおも憐憫の表情浮かべなかった。
ユリウス・カエサル、お前は間違っていると。カエサルはゆっくりと寝転がるように倒れた。
カエサルは否定されながら人生の幕を閉じた。征服したガリアの青年王がそうしたように、義理の息子にまでも……。
 

 ガイウス・ユリウス・カエサルは表情を変えない男だった。英雄たる彼の数多くの功績からもわかることである。
ただ、事実として彼を題材にした絵画において『カエサルの軍門に下るガリア王』と『カエサル暗殺』だけはその限りではないのが、動かしがたい真実である。
73以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 22:38:21.73 ID:47VIxETv0
-終わり-

入れてなくてすまなかったが
>>69(1/4)現在1
>>70(2/4)回想1
>>71(3/4)回想2
>>72(4/4)現在2

な、最後のほうやっつけになったんだがどうだろうか?
74以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 22:49:29.34 ID:XuOSK9c5O
これお題は?
75以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 22:53:13.22 ID:47VIxETv0
>>74
お題必要だったんだな
すまんかった
76以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 23:04:23.75 ID:XuOSK9c5O
まあ初めてなら
とりあえず感想
文章上手いと思います。自分の百倍くらい
世界史駄目な人なんでどれくらい史実に則ってるのかさっぱりだが、まあ楽しめた
面白いはずだ、たぶん
77以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 23:17:33.27 ID:q21DttOb0
>>75
ちなみにお題は、他の人のを借りてもおk
次回も気軽に参加してくれ
78以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/02(土) 23:47:20.77 ID:XuOSK9c5O
ヨイショ
79以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 00:06:26.89 ID:o/2Zg1rh0
どっこいしょ
80以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 00:33:27.41 ID:aWwGl4uR0
ワナビスレでお題もらって書いたやつ投下してもいい?
81以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 00:37:41.69 ID:o/2Zg1rh0
>>80
いいよどうせ過疎だし
82お題:戦車 0/2:2010/10/03(日) 00:40:54.58 ID:aWwGl4uR0
ではでは、いきまーす
83お題:戦車 1/2:2010/10/03(日) 00:41:35.27 ID:aWwGl4uR0
 いや、先輩、マジですって、信じてくださいよ、ホントなんですって。昨日の深夜コンビニからの帰りがけに
戦車に襲われたんスよ。で、たまたま携行していたパンツァー・ファウストで応戦したら、木っ端微塵になって
え、なかから半分肌を焦がした美少女が現れたんス。いやいや、なんスかその目は。ちょっと止めてくださいよ、
警察は流石にマズイですって。……え? ああ、病院でしたか。って、それもおかしいっしょ。ああ、タメ口き
いてすんません。痛いっス、それマジで痛いっス、勘弁してください。
 でも、ホントなんですって。証拠もありますよ、ホラ。ケータイで写真撮ったんです。その美少女がなんか途
方に暮れて泣きそうだったんでぇ、俺、家に連れかえったんス。んで、甲斐甲斐しくも世話をさせてもらったと
いう次第っスよ。
 へへっ、可愛いっしょ。やっぱ、先輩もそう思いますよね? え、悪さしなかったって? 
 先輩、そりゃ愚問中の愚問、いや、もうただの愚ですよ。美少女を家に連れ帰ってすることといったら、一つ
しかないじゃないですか。……へへ、聞きたいです? いいっスよ、全部お話しましょう。
 まず俺は、風呂を貸してあげました。んで、彼女がシャワーを浴びてる間に、軽い夜食をちょちょっと作って、
テレビはろくなもんやってなかったんですぐに消して、適当に音楽流しながら待ってたんです。
 するとお呼びがありまして、着替えがないらしいとのこと。寝巻きを貸すのもなんだか変な感じだったんで、
シャツと短パンで我慢してもらいました。え、下着? ああ、俺、すっかり忘れてました。あのとき彼女、ノー
ブラノーパンだったんだなあ。へへっ。んで、彼女スゲー腹が減ってたみたいで、用意した夜食をもりもり食っ
ちまったんすよ。俺の分まで。まあ別にそこまで腹も減ってなかったし、喜んで食べてくれたんで、そういうと
こがなんか微笑ましかったっていうか、見てるだけでちょっぴり幸せな気分になりましたよ。
 メシを片付けた後、彼女は安心したのか随分と饒舌になって、故郷のこととか、戦場でひっくり返って的にさ
れた親友の話とかをしてくれました。でも別に悲しそうな様子とかじゃなくて、多分、感情的にならないことが
戦友に対しての誇りというか、まあそんな感じでしたよ。兵器って随分と辛い生き方なんだな〜って、俺、しみ
じみしちゃいました。
 んでまあ、いい時間だったんで、寝ることに。ベッドは彼女に貸して、俺はソファーで寝ることにしたんス。
 明かりを消して三十分くらいだったかな、やけに目が冴えて、俺、全然寝れなかったんスよ。つーか、こんな
ことがあった後、普通に寝ちまえるわけないスよね。で、ベッドのほうからごそごそ物音が聞こえてきて、なん
か彼女が立ち上がってこっちに来るんス。どうしたのかな、とか思いつつじっとしていたら、ソファの前まで来
てなんかモジモジしてました。暗闇だったんで表情とか良くわかんなかったんスけど、寝れないの? って声を
掛けたらスゲー勢いで首を振って、ベッドまで逃げて行っちゃった。全く、彼女は何がしたかったんでしょうね。
84お題:戦車 2/2:2010/10/03(日) 00:42:16.16 ID:aWwGl4uR0
 俺、寝転がったままちょっと考え事しました。え、考え事とか似合わないって? ちょっと傷ついちゃうなあ、
ハハ。まあ、なんつーか、昔から美少女をもてなすのが夢だったんす。その夢が叶ってよかったなあ、なんて。
本当はね、ぐっすり眠っているところに忍び寄って、ほっぺたをふにふにってするのが夢のまた夢だったんスけ
ど、もてなせたからまあいっか、なんて。はっきりいって、そこまでの勇気が俺には無かったんス。先輩ならそ
れくらいの悪さ、余裕でやっちゃいますよね? ああ、やっぱり。先輩はスゲーっす、尊敬です。
 そんなことをつらつら考えてたら、俺、眠くなっちゃっいまして。んで、目が覚めたらもう朝でした。二時間
くらいの浅い眠りでしたね。ベッドをみるともう彼女はいなくて、俺は急いでカーテンを開けました。すると彼
女は戦車の姿に戻っていて、家の前の通りに佇んでいたんです。
 窓から身を乗り出すと、砲塔をこっちに向けて、なんか嬉しそうにしてましたよ。いやあ、元気になってよかっ
たです。パンツァー・ファウストのせいで彼女がスクラップになっていたらと思うと、ゾッとしますね。
 んで、彼女は地面にキャタピラの跡をしっかりと刻みつけながら行っちまいました。俺は窓際で、へんちくり
んな敬礼とかしてみて、それっぽい気分に浸ってたって話です。ええ。
 ん、どうしたんすか先輩? え、ちょ、何泣いてんスか、え、なんだって、聞こえませんよ、ゆっくり話して
ください。
 ええと……俺の、とこには、なんで、美少女が、現れ、ないんだ。ふむ……なるほど。まあ、あれじゃないス
か。俺は単に運が良かっただけだと思いますよ。先輩のとこにもきっと現れますって! ね、先輩、元気出して
くださいよ、今日俺暇なんで、よかったらウチで飲んでってください。パーっとやりましょう、ね、パーっと!
85以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 00:45:14.18 ID:aWwGl4uR0
おわり
86以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 00:52:44.37 ID:o/2Zg1rh0
>>83-84
面白かったと思う。口語で言葉隙間を感じさせなかったのはいいと思うよ。
だけどオチがよくわからんかった、というかオチを気にして書かなかったような気がするけど。
87以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 01:05:22.73 ID:Z+Pykp6Y0
| ・ω・)
88以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 01:07:49.20 ID:aWwGl4uR0
>>86
作中の「悪さ」という語に対して、「先輩」(我々の象徴でもある)の認識は「美少女とセックスしたい」ということがまずあり、
それに対して「俺」の場合は、「セックスは女であれば誰でも可能だが、ほっぺたをふにふにする喜びは美少女でしか味わえない」
事が前面に出ていて、美少女をどうこうする気は毛頭無いのがミソです。
いわばとなりのトトロみたいなもので、邪心が無いからこそ「俺」の前に美少女が現れた、と。
しかし邪心の無さは、それを意識することで脆くも消え去るものなので、「俺」には「単に運が良かった」と語らせています。
彼は運が良かったのだと本心から信じていて、邪心がどうだとかは、想像だにしていない。
まあ、最後の数行は「俺」の陽気さを補足するのが主目的で、家で飲むくだりには深い意味は無いです。
89以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 01:18:45.61 ID:o/2Zg1rh0
>>88
なるほどね俺にはそこまで考えられなかったわ
90以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 01:26:41.12 ID:aWwGl4uR0
>>89
いえいえ、小説は自由な捉え方が出来る媒体ですし、自分の力量不足で分かりにくかったということもあります
一見して軽佻浮薄な口語体に、リズム感をつけるよう意識したので、その点に気づいてもらえたのもありがたいです
91以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 01:35:08.24 ID:asyzraBB0
先輩(読者)からしたらなんだセックスしなかったのかよ、
って突っ込むのが自然なのに、
いきなり泣き出すってのはラノベっぽいかな。

リズム感が素晴らしかった。
92非常識な正解(0/4) ◆iI30KISp/. :2010/10/03(日) 01:39:11.95 ID:IeFECKquP
品評会投下します。
6ヵ月ぶりでトリップ忘れました。
93非常識な正解(1/4) ◆iI30KISp/. :2010/10/03(日) 01:40:11.95 ID:IeFECKquP
 隣に座っている佐野は、真剣な面持ちでうどんをすすっていた。場所は麺にこだわりありと雑誌で評されていた讃岐
うどん屋、時間は昼1時を少し回った頃である。
 店に入った時はきつねうどんを頼もうと思っていたが、佐野がざるうどんを頼んだので、結局自分もざるうどんを食
べることにした。
 うどんは雑誌の評判通り麺にこしがあり、来て正解だったと思わせる麺づくりで、僕らの舌と胃を満足させた。
 食べるのが遅い佐野がようやく食事を終え、そろそろ店を出ようかと僕は声をかけた。
 しかしその矢先、事件は起こった。
 佐野がおもむろに麺つゆの入った容器を持ち上げたと思えば、さながら水であるかのように飲み始めたのだ。
 私にはとても信じがたい行為であり、同時に動揺してしまった為、まだ客がまばらに残る店内で
「おい! 何してんだ!」
 と大声をあげてしまった。
「うるさいぞお前。どうしたんだよ、急に」
「いや、つい大声出しちゃったけどさ。それは謝るけど、そんな事じゃないよ。何で麺つゆ飲んでるんだよ」
 佐野は呆れ顔になり、また一口麺つゆを飲んでから私に告げた。
「うどん屋は麺だけこだわってると思ったら大間違いだぞ。麺つゆやトッピング、全てを考慮して評価しなければ、うど
ん屋に失礼だろ」
「いや、俺はおかしいと思うぞ。普通じゃない。だってそれは浸ける物であって、飲み物じゃないだろ。うどん屋だって
まさか飲まれるとは思っていまい」
「あのな」
 佐野は急に真剣な顔になり、こっちに向き直った。
「いつもお前は、それは普通じゃない、おかしいとばかり言ってるよな。あのな、正直な話お前が何を正しいと思ってい
るなんてこと別に聞きたくないんだよ。そうだろ? 他人の価値観なんか知っても面白くないし、むしろ知ると一緒に居
ることが楽しくなくなるよ。確かに俺も誰かに意見したりすることはあってもさ、それはおかしいとかそれは間違ってるっ
て言い方はしないぞ。そういう考え方もあるけど、こっちのほうがより正しいんじゃないかって言い方をするんだ。お前
みたいに、柔軟に物事を対処できないで他人を否定して傷つけてばかりいるような人間は、いつかお前自身が人に否定さ
れるようになってしまうぞ」
 急に視界がぼやっとなった。二十年ほどかけて培ってきた自分という芸術品に、墨を吹きかけられた気分になったから
だ。
 しかし、ここ最近こんな風に人からお叱りを受けることが数多くあった。
 私はうどんをずっしり含んだ胃の中で、この前あったことを反芻していった。
94非常識な正解(2/4) ◆iI30KISp/. :2010/10/03(日) 01:41:14.32 ID:IeFECKquP
   ◆

 街でウィンドウショッピングを楽しんだ私と沙夜は、夕食をハンバーグショップで済ますことにした。西部劇のバーを
模した店内で居心地が良いが、少し空調が強く寒いと思った。
 沙夜がハンバーグカレーを頼んだので、私も同じものにした。沙夜には少し嫌な顔をされたが、何でそんな顔するのと
訊くと、別にとお茶を濁すだけであった。
 さて、問題は店員が二人分のハンバーグカレーを持ってきて立ち去り、さて食べるかと思った瞬間である。
 何と沙夜はお箸を取り出しハンバーグを食べ始めたのだ。
 私には二つ許したがいことがあった。1つは、そもそもハンバーグはナイフとフォークで食べる物であり、お箸で食べ
るような物ではないということ。もう1つは、そもそもハンバーグカレーを頼んだのに、ハンバーグだけ先に食べるとい
うことだ。
 その二点について、私が沙夜に問い詰めたところ、
「別にいいじゃない。好きに食べさせてよ」
 といった言葉が返ってきた。
 私は沙夜がしている、あまりにもひどい蛮行に腹を立て、食事が喉に通る気がしなかった。
 すると沙夜はハンバーグを食べ終わってから、
「あなたって意外と子供なのね」
 と言い、お箸をスプーンに持ち替えた。
「子供っていったいどういうことだよ」
「そのまんまよ、人を受け入れられない子供。自分だけが正義だと思い込みすぎて、殻の中で雁字がらめになって動けな
くなっている子供」
「心外だな。俺は自分だけが正義だと思っていない。でも一般常識を語ることは正しいことだろ?」
「それが子供だって言ってるのよ。確かに一般常識を振りかざし相手を注意することは表面上正しいわ、でもそうじゃな
いでしょ。一般はこうだけど、違うことをしてる人も居る……、それが楽しいんじゃない。全員が全員正しいことをして
る世界なんて楽しくないじゃん」
「そんなこと言っても、おかしいことはおかしいんだから……」
 私がそう言いかけると、沙夜は大げさにため息をつき財布を取り出した。そして千円札を机の上に置いた。
「食卓にお金を置くなんて汚い真似はやめろ」
「気分がそがれたわ、私もう帰る。これで私の分の会計払っといてね、お釣りはいらないから」
 そう言うと、沙夜は足早にさっていった。そして彼女と私の仲は、それまでだった。
95非常識な正解(3/4) ◆iI30KISp/. :2010/10/03(日) 01:42:11.92 ID:IeFECKquP
   ◆

 平日の昼11時頃、大学が休みである私がリビングでレポートを書いていると、高校生である妹が起きてきた。
「おい、今何時だと思ってんだ」
「うっさいなー、兄ちゃんだって学校サボってんでしょ」
「いや、俺は休みだ」
「……あっそ」
 妹は少しむくれた顔をしながらキッチンに入っていき、メロンパンを持ってリビングに戻ってきた。私にはそれが信じ
られなかった。なぜならば、母の作った朝食がキッチンに置いてあったはずだし、何より朝から洋食を食べるというのが
解せなかったからだ。
「母さんの飯はどうした」
「まだ置いているよ、兄ちゃんが食べたら?」
 妹はそうとぼけながら袋を破き、クッキー生地をひと齧りした。そしてテレビの電源をつける。
「そうじゃないだろ。そもそも朝からパンだなんて信じられないな、日本人の朝食はご飯であるべきだろ。それとながら
食事も行儀が悪いからやめろ」
「ちょっと黙ってて」
 妹はテレビのボリュームを大きくする。
「おい! いい加減に……」
 そう言いかけてテレビのリモコンを取り上げようとすると、妹はその手をかわしてそのままリモコンで私を殴った。
「いい加減にしてよ! 私の勝手でしょ!?」
 私はリモコンでぶたれた頬を触った。少しの熱量をそこに感じた。
「私もう子供じゃないから、兄ちゃんがあれこれ言うことないじゃん。第一さ、前から思ってたけど文句言い過ぎ。私が
不出来な妹なのは分かってるけど、兄ちゃんの常識に当てはまってないからって、そこまで言う事ないじゃん。それは普
通じゃない、もっと普通にしろって誰が私の普通を決めるの? 私でしょ、私が決めることでしょ? だから放っておい
てくれたらいいじゃん。兄ちゃんと私を一緒にしないで」
 妹が一気にそう捲し立てると、手に持っていたメロンパンとリモコンを置き、制服を羽織り始めた。私が朝食はいいの
か、と訊くと
「もういい、食欲ない」
 と一蹴された。着替え終わった妹が玄関に向かう直前、妹は私にこう悪口した。
「兄ちゃんは堅物過ぎ、だから皆に嫌われるんだよ」
96非常識な正解(4/4) ◆iI30KISp/. :2010/10/03(日) 01:43:11.27 ID:IeFECKquP
 ◆

 私は麺つゆをじっと見つめていた。こげ茶色とも黒色ともつかぬ微妙な色合いの水面に、私の顔が反射している。
 常識に則っている私が正しいのだろうか、それとも彼ら彼女らが正しいのだろうか。それは永遠に片付けることのでき
ぬ課題であるかのように思われる。
 しかし、私は意見を持たずマジョリティの絶対的支配により考えを押し付けられるだけの存在であったことは否めない
し、彼らは常識から逸しながらも自分自身の意見を持っていた。この点に関しては完全に自分の敗北であることは分かる。
 ただ社会にはルールや道徳、マナーというものが存在し、その視点から考えたとき彼らは明らかに間違っている。
 私が正しいのか、彼らが正しいのか……。
 再びその疑問に辿り着いた時、私はふと思いつき、一口だけ麺つゆを飲んでみた。
 醤油をベースとしているが、その中に昆布ダシが絶妙なバランスで混ぜられていて、非常に美味であった。
 この味こそが、私の正解なのかもしれない。 <終>
97非常識な正解(5/4) ◆iI30KISp/. :2010/10/03(日) 01:44:14.30 ID:IeFECKquP
以上です。
98以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 01:58:07.31 ID:HhXVHmLTO
おつおつ
99 ◆Ego1E1r00Y :2010/10/03(日) 02:14:37.20 ID:gElu7v/Q0
品評会作品投下。
100内容は無いよう(お題:飲み物)1/2 ◆Ego1E1r00Y :2010/10/03(日) 02:15:20.18 ID:gElu7v/Q0
 給食の牛乳が一本余っていた。欠席者の分だ。
 今日は授業で体育があって喉が渇いていたから、僕はその牛乳を貰おうとした。
 すると同級生達が集まってきて「ずるいぞ。俺達だって飲みたいんだ」と言った。
 僕達が牛乳を取り合っていると先生が止めに入ってきて牛乳を奪い「これが喧嘩の原因か」とか言って飲み干してしまった。
「あ、ずるい」
「黙れ。先生だって喉は渇くんだ」
 なんて先生は当然のように言う。
「それよりお前達、喧嘩は良くないぞ。罰として作文を書いてこい。明日までにな」
「作文? 何を書けばいいの?」
 僕が訊くと先生は少し考えて、
「飲み物についてだ。お前達は、この牛乳、飲み物を取り合って喧嘩したんだから、何か飲み物についての作文を書いてくるんだ」
 先生は空になった牛乳瓶を勝ち誇ったように振りながら嬉しそうに言った。

 それから僕はずっと飲み物について考えていたけど何も思いつかなかったから、同級生に何を書くか訊いてみた。
「俺はジュースについて書くよ」
「なんでジュース?」
「ジュース美味いから」
 彼は飲み物の美味しさを伝えたいらしい。
 僕は別の同級生に何を書くか訊いてみた。
「俺は水について書くよ」
「なんで水?」
「飲み物と言ったらやっぱり水だろ。水は重要だぜ。水が無かったら他の飲み物だって作れないし」
 彼は飲み物の重要さを伝えたいらしい。
 僕はまた別の同級生に何を書くか訊いてみた。
「俺はカレーは飲み物かどうかについて書くよ」
「カレーは飲み物?」
「カレーって液体だし、飲み物扱いしてもいいんじゃねえかなって。面白い発想だろ」
 彼は飲み物の面白さを伝えたいらしい。
 みんな伝えたい事があってそれぞれ形にしていっているようだった。
 僕はその後も結局書きたい事が思い浮かばず、作文用紙に一文字すら書けないままに翌日を迎えてしまった。
101内容は無いよう(お題:飲み物)2/2 ◆Ego1E1r00Y :2010/10/03(日) 02:17:04.64 ID:gElu7v/Q0
 同級生達が次々と作文を提出している中、僕は気まずく席に座っていた。
 先生が「反省してないのか?」と訊いてきたから僕は「反省してます」と答える。
「それじゃあなんで作文を提出しないんだ?」
「僕には伝えたい事が何も無いからです」

102以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 03:07:48.44 ID:qBGucYwr0

俺も品評会作品書くか
103以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 03:46:42.72 ID:o/2Zg1rh0

完成するか微妙
104以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 05:22:48.65 ID:qBGucYwr0
ほししんいちろう
105以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 06:48:15.44 ID:qBGucYwr0
保守
106以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 07:57:21.06 ID:qBGucYwr0
ageるが
107以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 09:23:36.93 ID:qBGucYwr0
108以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 10:10:40.94 ID:uA8slMtm0
☆ゅ
109以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 10:51:14.39 ID:HhXVHmLTO
起きた
110以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 10:52:27.58 ID:qBGucYwr0
寝た
111以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 12:11:16.92 ID:sNGnw+eTO
ああ
112以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 13:14:14.44 ID:XFAAuX0f0
お題下さい
113以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 13:14:28.77 ID:o/2Zg1rh0
小説とは人生なり
114以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 13:14:57.58 ID:VviWO1TX0
>>112
権利
115以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 13:17:19.18 ID:XFAAuX0f0
>>114
了解
>>113
使わせてもらうかも知れません
116以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 14:11:48.67 ID:VviWO1TX0
117以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 14:16:48.32 ID:SQ0S+L36O
お題を下さい
118以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 14:37:49.09 ID:HhXVHmLTO
規格
119以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 15:38:53.68 ID:SQ0S+L36O
>>118
把握した
120以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 16:00:05.08 ID:KdMe38xv0
題くれ
121以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 16:38:59.01 ID:HhXVHmLTO
風化
122以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 16:48:01.99 ID:KdMe38xv0
>>121
thx.
123以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 17:14:34.86 ID:gnJ4UA4B0
お題くださいな
124以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 17:28:01.52 ID:du9kO4NR0
>>123
妄想
125以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 18:08:38.71 ID:q/fY9RxZ0
atok入れてみたけど使いこなせない……
お題ください
126以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 18:27:10.37 ID:gnJ4UA4B0
>>124
ありがと

>>125
条件
127以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 18:48:21.68 ID:q/fY9RxZ0
>>126
ありがとうございます
128以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 19:24:02.47 ID:lzIV9OGD0
ho
129以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 19:30:02.81 ID:Ly55dwQn0
a
130以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 20:08:41.07 ID:HhXVHmLTO
131 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/03(日) 20:23:19.64 ID:Ly55dwQn0
品評会作品投下
132NOPQRに揺れる 1/5 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/03(日) 20:24:26.60 ID:Ly55dwQn0
「ちょっと口が悪いだけでドS、いじられ易い人に対してはドM。一体いつからSやMってのはそんな軽い言葉
になったんだろうな。本来は性癖を現す言葉だとわかっているのか? 自称ドSの里美ちゃんよ、それはつまり、
『私は他者の肉体や精神を甚振ることで性的な快感を得るの。人の苦悶の表情を見るとあそこがビクビクして子
宮が疼いちゃう変態なのよ』って言っているようなもんだ。お前は変態を自称してるんだ。この変態サド女め」
 俺は里美にそう言った。もちろん自らSを自称する里美はこれに食って掛かる。
「はぁ? ちょっと変態発言もいい加減にしてよ。マジキモいんだけど」
 とは言っても、今日の里美はこの程度の反論しかできなかった。
「だから変態はお前だろ? なんなら俺を殴ってくれよ。俺は別にマゾじゃないけど、サドの里美の為に人肌脱
いでやるよ。ほら、早く俺を人前で女に殴られる惨めな男にしてくれよ。さあ。ほら」
「馬ッ鹿じゃないの? 信じれられない。ドン引きなんだけど。キモいからそれ以上話しかけないで。てか場所
変わってくれる? 私の視界から消えて。てかもうなんで今日こいつ来たの? 誰よ呼んだの」
 里美の眼には軽蔑が宿っていた。だが俺はさらに煽る。ここは酒の席だ、男達の中には俺に便乗する者もいる。
しかし女の中には、「やめなよ」と俺を止める子もいた。
「なんで? 俺は里美の為にぶたれてやるって言っているだけだよ。だってこいつはドSなんだぜ? ただのS
じゃない。ドがつくほどのSだ。とてつもないほどの加虐趣味者なんだ。本当は今すぐにでも俺を殴りつけ縛り
吊るし傷をつけ苦しめたいはずなんだ。今でもそのことを想像して濡らしているに違いないさ」
 そう言うと女は黙った。単純に引いたようだ。そして里美も俺を睨んだまま押し黙っている。
「おいおい怖い顔して睨んでるだけじゃ気持ちよくないだろ? ほら、みんなお前が俺を殴るところを見たがっ
ているぜ。なあみんな、見たいよな?」
 俺が煽ると男達は盛り上がり、次第に『殴れ』コールが起きた。もちろん女の中にだってそれに乗る者もいる。
みんな酔っているのだ。
「なんだできないのか。男も殴れないで何がドSだ。お前はただ口が悪いだけの女だ。それを誤魔化すなよ」
 厭味ったらしくそう言うと、ついに里美が顔をあげ、「死ねッ!」という言葉と共に俺の頬を勢いよく叩いた。
しかし叩くポイントが悪くて鈍い衝撃しかなく、平手打ち特有の鋭い音は響かなかった。
 平手を受けて少し逸れた視線をまた元に戻すと、里美は顔を赤くしてキッと俺を睨んでいた。
「さあ決まりました! 里美さんのビンタがついに決まりました! でもまさかドSがこれぐらいで終わるはず
がない! さあもっと、もっと下さい! この卑しい犬にもっとお仕置きを! キャインキャイン!」
 そう言ってさらに煽ると、堰が切れたかのように里美の平手が何度も俺の頬を打った。明らかに立腹した態度
だったので、さすがに観客達は息を飲み、馬鹿笑いは苦笑いへと変わり始めていた。しかし俺はそんな気まずい
空気を許さない。里美を徹底的にやり込めるには、あくまで楽しい見世物でなくてはならないのだ。
133NOPQRに揺れる 2/5 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/03(日) 20:25:07.68 ID:Ly55dwQn0
「ああ、いいですご主人様! 里美様、とても気持ちがいいですワン! ワンワン!」
 握った両の拳を肩の前で、里美の向けて直角に曲げる。さらに舌を出し、白目を剥くか剥かないかの位置に眼
球を移動させてそう言った。その卑しい犬の真似に席は大いに盛り上がり、「よっ、ドS里美」だとか「葉山は
Mだったのか」などと野次が飛び交った。さっきまで俺を止め、場の空気を厭うていた女までもが笑い始め、こ
の瞬間、完全に里美は孤立した。そろそろとどめを刺す時だ。
「さてみんな、これで変態サディストの里美は大いに性的興奮を得たことだろう。ほら、顔も赤く上気している。
だけどやっぱり視覚的にそれを確認しなけりゃあ本当かどうかわからない。そこでどうするか、だ」
 俺がそこで一拍置くと、期待通りの煽りが帰ってきた。
「脱げーっ! パンツの濡れ具合確認させろーっ!」
 そして程なくして、またもコールが始まった。場にいたのは男女合わせて九名。そこから里美を覗いた全員が
声を合わせ手拍子を打ち、『脱ーげっ』と囃したてた。まるで座興であるかのように、里美の心中など関係なく。
 そしてついに里美は荷物を持ってその場を立った。だけどこれで白けさせるわけにはいかない。
「ご主人様、食い逃げはダメですワン! そういうプレイはなしですワン!」
 駆け足で居酒屋を出て行こうとする里美の背中にそう言って、四足歩行で追いかける振りをした。すると場は
さらに盛り上がった。「やりすぎ」、「さすがに可愛そう」などと陽気に語る観客達。出て行った里美を案ずる
者もいたが、それも二人程度。いくら酒が入っているとはいえ、あまりに冷たい。それはつまり、やはりみんな
常日頃から里美に対して、少なからず煩わしさを感じていたということの証明なのだろう。
 里美はゼミ内で腫れ物のような存在だった。誰かがプレゼンをすれば、どんな些細な矛盾点も見逃さず食って
掛かるし、出来の悪い発表者に容赦ない罵倒を浴びせる。また教授にも口うるさく抗議し、勝手な自分の意見を
押し通す。好意的に解釈すれば学業に熱心だと取れるが、みんな本当のところは目障りに感じていたのだ。だが
諍いを恐れ、今まで誰も里美に刃向かうことをしなかった。
 正直なところ、俺はこの手の女が大好きだ。
 気が強く我侭で高慢ちきな女。自らを"ドS"と称することで自分を正当化するような女。そんな女の、無駄に
高いプライドをへし折ってやることに堪らない快感を覚えるのだ。
 そして里美には秘密があった。その秘密が、俺の嗜虐心をさらに焚き付けるのだ。
「しゃあねえ、里美の飲み代は俺が出しとくわ。てかもうそろそろいい時間だし、ここで一旦お開きにしようか」
 里美は大学の近く、つまりはこの居酒屋からも程近い場所で一人暮らしをしている。つまりあの場で外に出て
向かった先は、ほぼ間違いなく自分の部屋だ。
 みんな二次会の話で盛り上がり始めた。怒り心頭で帰った里美のことなどもう忘れている。
 俺は二次会の参加を断った。そして里美の家に行く旨を告げた。
134NOPQRに揺れる 3/5 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/03(日) 20:25:57.71 ID:Ly55dwQn0
「飲み代を取立てに行くんだよ」
 そう答えると、「ドSは葉山の方だ」と言われた。俺を評するなら"S"ではなく"サディスト"として欲しいと
ころだが。
 俺はすぐに一団から別れ、里美の家へと向かった。もちろん金を請求する為ではない。ここからは俺だけのショー
タイムだ。少し歩くとすぐに古びた学生マンションの一室に着いた。マンションにはオートロックなどなく、来
客の出入りは自由になっている。そして呼び鈴を押すと、程なくして扉が開いた。
「どちら様ですか? え、葉山? って、ちょっと!」
 僅かな隙間にまず足を入れ、次は肩を押し込み強引に玄関へと侵入した。
「おじゃまします。勝手にあがるぜ」
 慌てる里美を無視して部屋へとなだれ込み、俺はソファに腰掛けた。渋面の里美も隣に座らせた。
「何しに来たのよ、この変態野郎!」
 里美は困惑し、そして迷惑そうな顔でそう言った。飲み代をもらいに来たというのが一応の名目だが。
「でもそんなことは二の次だ。くくく、里美。今日のお前の態度、ちょっとらしくなかったよなあ」
 俺はいつかこの女を屈服させたい思っていた。もちろんそれは里美が気に入らないという理由ではなく、俺の
性癖による部分が動機だ。
「いつもならもっと食って掛かってくるよなあ。どうしてそんなに大人しかったんだ? 何かあったのかい?」
 ねちっこく、厭らしい口調で責め立てた。
「この野郎……やっぱり気付いてたのね」
 すると里美は苦々しく答えた。
「くっく、あの日は楽しませてもらったよ。女王様」
 今日の飲み会の数日前、俺は偶然にも里美の弱みを握った。それは俺にとって天啓だった。
 先輩に連れられ、その日初めてSMバーに行った。SMバーはSMクラブとは違ってプレイを楽しむ場所では
なく、酒を飲みながらSMショーを観覧するといった趣きの店だ。ショーステージの上で行われる、第三者達に
よる被加虐の様子を見るのもなかなかに愉しかった。しかし俺は気付いた。鎖のカーテンに仕切られた先のステー
ジで、白い下着姿の男達を甚振っている女が里美であることに。奴隷共の皮膚に紅い蝋を垂らし、複雑な縛術で
肉を締め上げ、人をもはや物であるかのごとく足蹴にする里美の姿を見たのだ。普段とは違う、いかにもS嬢然
とした化粧を施してあったが、しかし元々派手な作りのその顔を隠すことはできていなかった。そしてしばしば
観客の顔を見渡し煽る里美が、俺の姿に気付いていないわけはない。
「あの女王様はこの店の看板か何か? かなりいい責め方してますね」
「俺がここに来るときはほぼあの子が女王役をやっている」
135NOPQRに揺れる 4/5 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/03(日) 20:26:38.13 ID:Ly55dwQn0
 確認を込めて先輩に問うと、そう返ってきた。つまり頻繁に出勤しているというわけだ。
 以前里美は、夜間にネットカフェでバイトをしていると言っていた。SMバーで働いているとは言っていない。
ということはネットカフェは嘘か、或いは掛け持ちをしていたとしても、この店のことは黙っておきたいのだろ
う。つまり、この事実は里美にとっての弱みとなるのだ。そしてこの事を上手く使えば、俺は里美を。
 店で終始飲んでいたXYZは、俺に愉悦の笑みと、来るべき勝利の予感を齎した。
「知ったうえでの今日のあの茶番? あんた本当に最低ね」
「おいおいS嬢がそんなことを言うか」
 里美の眼には敵意が満ちていた。しかし今や里美は俺に逆らえない。
 最高だった。
「最高だ」 
 俺は里美との距離を詰める。嗜虐的な笑みを浮かべ、里美の顎に手をやり上を向かせる。
「最高のシチュエーションだ。なあ、さっきはあんなこと言ったけど、俺はもう認めてるよ。お前がただの毒舌
女ではなく、本当のサディストだってな。俺と同類さ。だけどお前はまだサディストとして未熟だ。お前は与え
られた奴隷、マゾヒストを虐げることで満足をしているにすぎない。マゾヒストとは、つまりは虐げられること
を求めている奴等さ。それでいいのか? 相手の望むことをするだけで満足なのか? 俺はそんなの御免だ。マ
ゾでもなんでもない奴を苦しめる、さらにはサドの気がある人間をも屈服させる。それこそが至上の悦びなのさ」
 気の強い女の、そう、里美のような女を征服することが他の何にも代えがたいのだ。
 ここまで言えば里美も感づいているだろう。俺が何をしにここに来たのかということを。
「家に拘束具はあるか?」
「……多少ならあるけど。あんた、まさか私を」
「当たり前だろうが。よし、じゃあ…………あぁ?」
 その時、里美の表情が急激に変化した。そして俺はつい戸惑ってしまった。
 先程までの屈辱の表情は消え失せ、その顔には笑みが宿っていた。しかしそれは人を見下したような笑いでも
なければ、S嬢が見せる嗜虐的で歪んだ笑みでもない。
「……おぃッ、その顔はなんだッ!」
 媚びていた。媚びた笑みをしていた。それは虐待を待つ卑しい雌豚の笑みだった。
「葉山くん、私、スイッチが入っちゃったみたい」
 顔も口調もトロンとしており、あの気の強い里美の面影は最早ない。
「ねぇ、別にみんなに言ってもいいのよ、私のお仕事のこと。それで蔑みの眼で見られるのも悪くないわぁ。ウ
フフフフ、私ね、実はSMクラブでも働いているのよ。そこではM嬢やってるの」
136NOPQRに揺れる 5/5 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/03(日) 20:27:41.86 ID:Ly55dwQn0
 こいつ、こいつ、こいつ、こいつ。
「今日の飲み会でのやり取り、すごく良かったわぁ。あなた役者ね。本当はすごく感じてたの。でもホラ、学校
じゃあのキャラだから、素直に濡れましただなんて自分から言えないわ。でも明日、葉山くんの口から言っても
全然いいからね。ウフフ、ねえ、今はMになっちゃってて退屈かもしれないけど、私のこと苛めてくれる?」
 この女…………マゾヒストでもあるのか!
 ということは、俺が里美を虐待したところで、こいつはただ悦に浸って喘ぐに過ぎないのか。それは……俺の
求める行為ではない!
「ねえ、葉山くん。早く苛めてよぉ」
 いつしか俺はソファの上で押し倒されていた。そして暴言を吐いて抵抗した。何故俺がマゾの相手なんかを。
「普通にSMを愉しむだけじゃ駄目なの?」
「駄目に決まってるだろうが! マゾを苛めて何が愉しい!」
 怒りを露にした自分の顔が、ソファの向かいにある鏡に映っていた。いや、怒っては駄目だ。冷静になれ。
「……どいてくれ。帰る」
 怒鳴り散らせば里美の思う壺、この女は口汚い言葉に身を悶えさせるのだ。そんなことなどしてやるものか。
 俺が心を落ち着けると、里美も要求してこなくなった。しかし俺が静かに立ち上がろうとしたその時、
「…………そう、つまんない男」
 またも里美の口調が変わった。元の語り口、いや、それ以上に嗜虐的な、ゾクリとするような冷たい響き。
 すぐ近くで何か金属質な音がした。さらに、俺は手首に冷たい質感を覚えた。
「な……手錠?」
「いちいち驚くな。ここには拘束具あるかって聞いてきたのはお前だろ、この屑が」
 ソファの下にでも隠していたのか、気が付けば俺は里美に捕らえられていた。
「これもさっき自分で言ったわよね。マゾよりも、同類のサドを屈服させる方が、よりサディスティックな快感
を得れるって。まあそんなことはどうでもいいけど、とりあえずお前、無事に帰れると思うなよ」
 なんだこの状況は。俺はこの女を甚振ってやるつもりだったのに、反対にしてやられたのか? 里美の悔しが
る顔を見るはずだったのに、これから屈辱に顔を歪めることになるのは……俺だ。
 だけど、何故だろう。鏡に俺が映っている。その中の俺は。俺は。
 俺は何故嬉しそうに笑っているんだ?

<了>
137 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/03(日) 20:29:42.08 ID:Ly55dwQn0
以上。

今回の品評会まとめまだ立ってないな。
糞めんどくせえけど今までのを俺がまとめよう。
138以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 20:42:11.98 ID:Ly55dwQn0
と思ったらそんな量多くないから糞めんどくせえこともなかった。
139以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 21:10:07.72 ID:HhXVHmLTO
すばらしき乙を
140以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 21:18:31.97 ID:rNAWV/KW0
ここのルールわからないけど、一生懸命描いたので見てもらえませんか?
141以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 21:33:43.69 ID:HhXVHmLTO
お題をもらってるならいいよ
142以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 21:36:47.08 ID:rNAWV/KW0
お題ないとダメですか・・・

お題ください
143以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 21:36:47.84 ID:o/2Zg1rh0
>>140
じゃあお題は自由で
144自由:2010/10/03(日) 21:37:43.38 ID:rNAWV/KW0
まぶしさで目覚めたのは、もう太陽が上がりきったころだった。
全てをきれいに見せようと照らしてくる、おせっかいなアイツは物心ついたときから嫌いだ。


昨日は仕事の失敗で飲まずにはいられなかった。
酔ってカーテンを閉め忘れた自分にいらつきながら、タバコに手を伸ばす
「ちっ」
空のタバコを握りつぶし、昨晩の残りのバーボンを流し込んだ。
こんな時間に外にでることになるとは今日はとことんついてない
いつものスーツをはおり、サングラスとハットを身につけ部屋を後にする。


エレベータを降り、外に出ると雲ひとつない空が俺を迎える。
「ちっ」
サングラスをなおし、歩きだす。誰もいない道路を抜け、寂れた公園に向かう。
車通りの激しいこの先の道をいくより、ここを抜けた方が近道だ。



公園に入ると、ジャングルジムの近くで小学生くらいの子供と大人が言い争いをしている。どうやら親子のようだ
「今日は休日か。最近はくだらない仕事で忙しかったから日付も気にしなかったな」
などと最近の仕事を思い返すうちに販売機についた。
いつものタバコは売り切れのようだ。
「ちっ」

仕方なく買ったタバコを開け、火をつける。
145自由:2010/10/03(日) 21:39:07.56 ID:rNAWV/KW0
タバコを覚えたのは17の時だった。


施設育ちの俺を拾ってくれたのは50代の夫婦で、他人の俺に何不自由な生活をさせてくれた。
おそらく愛情をもって接してくれたのだろうが、俺はそれを受け入れなかったし、それでいいと思っていた。
それを後悔したのは、学校から帰ってきた俺が、血まみれで倒れている2人を見た後のことだった。
犯人はすぐに捕まったが精神障害で無罪となった。


俺は、遺産で犯人の暗殺を殺し屋組織に依頼し、依頼が達成されると頼みこんで組織に入れてもらった。
「親に線香でもあげたらどうだ?」とわたされたタバコを吸うと、はじめて涙がでた。
146自由:2010/10/03(日) 21:42:04.80 ID:rNAWV/KW0
煙を吐き出し、公園を抜けようとすると親子のけんかはまだ続いていた。
父親がゲーム機を息子からとり上げようとしている。取り上げるならはじめから与えなければいいのに・・・
「もう、おとうさんなんか死んじゃえ」
子供が叫んだ。


「ちっ」


俺は子供に近づくと、上着から銃を取り出し、子供に手渡した。
「その銃は子供のお前でも十分扱える。引き金を引くだけで、目の前にいる男は死ぬ」
そう言って銃口を父親の頭に銃を向けさせた。
「だが、弾丸は一発しか入ってない。しっかり持ってよく狙えよ」
飛びかかってきた父親を蹴り倒し、ジャングルジムに放る
「一生に一度のチャンスだ。打つなら打て」
子供は少し息を吸った


パンッ


小さな銃声から少し遅れて、父親は倒れこんだ。

「残念だったな。お前は一生に一度のチャンスをモノにできなかった。あきらめてソイツの言うことを聞くことだな」

子供から銃を取り上げると、公園を後にした。
弾丸は父親のコメカミをかすめて飛び去ったようだった。
147自由:2010/10/03(日) 21:42:58.57 ID:rNAWV/KW0
部屋に戻ると、男が1人訪ねてきていた。
「こんな時間に外出か。鍵もかけてないし、不用心だな」

昨日の標的の顔が頭をよぎった。
「不用心か・・・・俺、今から死ぬんだろ?」


男は銃を構えて銃口をこちらにつきつけた
「昨日・・・なぜ撃たなかった?しかも顔みられてたんだろ?」



「撃っても当たらなかったさ」
そういって俺は目を閉じた。
148自由:2010/10/03(日) 21:43:39.89 ID:rNAWV/KW0
おわりです。かっこいいやつを書こうとしました
149以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 21:48:01.21 ID:o/2Zg1rh0
>>148
次からは>>45-49
みたいに書いてくれると有り難い。次回も気軽に参加してください。
作品は今から見る
150以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 21:49:30.59 ID:rNAWV/KW0
はい
151以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 21:49:33.17 ID:o/2Zg1rh0
>>149
補足
名前欄にタイトルを付けるという意味で
後、ここのスレでは極端なスペースはそんなに歓迎されないかもしれない。

152以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 22:16:31.52 ID:o/2Zg1rh0
>>144-147
話の筋としては面白かったと思う。

以下、気になった点をあげると


・「ちっ」というのがしつこく感じる。
「舌打ちをする」「舌を鳴らす」とか他にも表現の方法がある。
語彙を増やすためには小説を読んだり新聞を読んで、気になったらメモして意味調べとかがいいかも。

・ハードボイルドものは文体の雰囲気を味わう小説とも呼ばれている。
これは、そのままなんだけどこういう小説を描きたかったら
ハードボイルド小説を読んで文体を学んだほうがいいかもしれない。
http://www3.ocn.ne.jp/~sitemm/besthardboiledj.html
これを参考にしてハードボイルド小説を読めばいいと思うよ。
俺はあんま読まないんだけどね。
153以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 22:22:08.62 ID:o/2Zg1rh0
154以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 22:25:01.41 ID:rNAWV/KW0
ありがとうございました!
155以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 22:35:49.32 ID:HhXVHmLTO
三点リーダや数字なんかの文章作法は>>1にあるwikiで学んでもらうとして率直な感想
主人公「ちっ」言い過ぎだな
これの連発で話がシリアスなギャグになってしまってる
暗殺者というより背伸びしてる中学生みたいだった
カッコイイってのはもろ刃の剣で、読者の心臓が高鳴るだけの迫力やリアルさが無いと、こっぱずかしい中二病物語で終わる
兵器の描写に力を入れるだけでかなり違うはずだ
もし今後もこのジャンルにこだわるんなら小説に限らず血尿出るだけ本を読み込む必要があると思う
156以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 23:12:27.70 ID:Ly55dwQn0
 | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  23時を回りました。
 |   CAUTION   .|  これ以降品評会作品を投下する方は、予約の上指示に従って投下して下さい。
 |________|  予約条件は「レス区切りまで終わり、後は投下するだけ」の状態であること。
   ∧,,∧ ||        締切は23:30となっております。規制中の方は救済スレッドまでどうぞ。
  (´・ω・)||        その際は、30行を超えていないか確認してくださいね。あちらは30行を超えても書き込めてしまいますので。
   /  づΦ
157以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 23:12:31.00 ID:HhXVHmLTO
つか危ねえ
158以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 23:29:46.46 ID:u63E4Ayj0
はい?
159以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 23:32:04.21 ID:Ly55dwQn0
規制スレの◆IOXYmSMPl6さんどうぞ。
160以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/03(日) 23:50:57.19 ID:Ly55dwQn0
よく見りゃ先にID:y+QPSl+Bさんが予約してたのね。
すいません。でもわかりやすくお願いしたいところです。
161完全犯罪1/5 ◇FcModpyaRc:2010/10/03(日) 23:52:58.18 ID:Ly55dwQn0
 いじめとは思考停止によって引き起こされるものだと僕は推測する。今時の言い方で表せば、想像力の欠如。
 自分が嫌がることは他人も嫌がることだ。こんな単純なことすら考えない、想像しない。
 だから――そんなことが出来るんだ。

 中学校に登校し教室に入ると、一番左端の机の上に一輪の黄色い花が差された花瓶が添えられていた。
 僕がそれらを無視して机に座り一時間目の授業用意を始めたことが、四人にとっては面白くなかったのだろう。
 四人は僕の机を囲い、ゴキブリを見るような目でげらげらと罵る。僕はそれを無視して支度をする。
「おい無視してんじゃねーぞ。何睨んどんねん? お前何様のつもりや? アア?」
 一人が嫌らしい笑みを浮かべながら、僕の机の上にある花瓶を掲げながら言う。
「これ飲めよ」 
 それも無視していると……一人が僕の鼻の穴に花瓶の花を突っ込んできた。棘のある茎だ。そいつは花を回す。
 感覚がおかしくなりそうだった。多分、僕の鼻の穴はズタズタだろう。
 四人は僕を嗤う。教室にいる人間もそれに釣られて、僕を嗤う。両耳に突き刺さる不協和音。
「おい血ぃ出てきた」「うっは、マジだ」「やべぇな消毒しねーと、ひゃひゃ」「あーやっちゃった」
 花瓶を鼻にぶち当てられた。花瓶の汚い水が鼻を通じて体内に急速に流れ込む。
 ゲホゲホと水と血を吐き出す。それが四人の制服に少し掛かる。
「きたねぇモンつけんなやクソが!」
 顔面に回し蹴りを入れられた。平衡感覚が少し狂う。僕はふらふらとしながら教室を出る。
「チクったら殺すぞ」
 最後にそう言われて、溢れ出る鼻血を抑えながら僕は一人トイレに向かった。
 教室を出るとき、僕は四人を睨みつけた。四人も僕を睨みつけた。

 鏡を覗く。自分でもはっきりと分かるほど、醜い顔が映る。
 どうしようもない。精子と卵子が受精した瞬間から顔の造形がどうなるかは決まっているからだ。
 どうしようもない先天性だ。顔が格好いいからどうだと言うのだ。顔が可愛いからどうだと言うのだ。それは
たまたま受精した瞬間に『良い顔』というクジを引いただけではないか。『良い顔』をもって生まれただけで、
大手を振って人生を謳歌出来る。これほど虚しいものはない。
 本当に、どうしようもない。どうしようもなく、顔が醜い。顔が醜いから、僕はいじめられている。
 最初は全てを学校に打ち明けようとした。証拠も携帯のムービーでこっそりと撮ってある。
 しかし、僕はそうしなかった。
162完全犯罪2/5 ◇FcModpyaRc:2010/10/03(日) 23:53:39.03 ID:Ly55dwQn0
 報復を恐れるわけではない。いじめに屈したことになってしまうからだ。
 どれほど衆人の面前で吊るし上げられ辱めを受け自尊心を著しく傷つけられても、それでも僕の自尊心は無く
ならない。無くしてたまるか。
 僕はいくらいじめを受けようとも、びくびくしておどおどして行為を恐れ続ける気弱な「典型的ないじめられ
っこ」にはなりたくなかった。
 それに、僕がそれを学校に告白したことで四人が受ける制裁は、社会的にとても軽いものだ。
 釣り合わない。僕が受ける辱めに、それはあまりにも釣り合わない。
 常に僕は行為を無視し反発し、四人から更なる行為を受ける。泥沼の無限連鎖。
 僕は四人に対して報復を考えている。致命的な報復を。
 対象はあの四人。それ以外の人間が僕を虐めることはあっても、すぐに自責に囚われて行為を止める人間や、
そもそも僕を虐める気はなくとも『仲間外れ』になることを恐れて(極めて自分勝手な考えだが)仕方なしに僕を
虐めたりする人間がほとんどだ。純粋に僕を嫌っていても、行為でない人は多い。いじめを見なかったかのよう
に振舞う人たちは――僕がそういう立場なら僕もそうするので――当然僕の怒りの範疇に入らない。あの四人。
 やろうと思えば、砂鉄とアルミニウム粉末で摂氏二千度オーバーの火炎を発生させるテルミット爆弾を精製出
来る。それを四人に投げつけたら、四人は溶けて死ぬ。
 しかし、それは投げつけた僕に殺人の罪が及ぶ。
 僕は自分の手を汚したくない。なぜ四人を殺すことで僕が罪を被らなければならないのだ。
 社会的制裁への見込みはゼロに等しい。
 四人は十四歳。まるで被害者を加害者の踏み台としか考えていないような少年法のお陰だ。
 ほんの少しの罪を与えて見込みのない更正の道を歩ませようとする、ゴミクズのような法律。
 社会的制裁を遂行出来なければ、残るは物理的制裁。肉体への損壊、もしくは死。
 そして僕に罪が及ばない物理的制裁。
 ――完全犯罪。
 これしかない。
 しかし、どうする?
 僕は方法推敲の日々を送っている。
 肉体への損壊はまず却下だ。それをしたところで、された相手は生きている。四人相手にこちらの存在を匂わ
せずにそれを遂行することは不可能。
 あからさまな他殺も却下だ。四人への怨恨となれば、必然、僕が絞られてくる。
 殺して死体を隠蔽する。……一人なら方法はなくもないが、四人となれば不可能。
163完全犯罪3/5 ◇FcModpyaRc:2010/10/03(日) 23:54:19.75 ID:Ly55dwQn0
 事故死を装う。……これも四人となれば不可能。いや、四人と僕の五人でどこかに行き、なにかしらの方法で
『僕だけが生き残った』ことにすれば……駄目だ、あからさますぎる。それに、事故死を装う殺人方法自体が極
めて限られている。
 ……どうすればいいのか。
 ……完全犯罪は、不可能なのか?
 僕はトイレットペーパーを巻き上げ鼻にそれをあてがい、鼻血が止まるまでそういった思考に耽っていた。
 するとチャイムが鳴った。
 ……ああ、今頃四人はせっせと僕の荷物に酷いことをしているんだなぁ、と。

 僕は帰宅した。自室に入り、ため息をつく。身体はボロボロ。鞄は靴の跡まみれ。教科書に連なる罵詈雑言。
 両親には知られたくない。僕の両親は、両親としての文句の付けようが無いほど優しかった。
 そんな両親を悲しませたくない。……もっとも、この『悲しませたくない』という感情の根底に在るものは、
『両親に迷惑をかけたくない』、『僕は理不尽にいじめられて、更にはその理不尽が両親に及ぶことを僕が良し
としない』、『僕は両親から哀れみを受けたくない』、要約すれば、『どうしようもない自尊心』だ。
 僕は鼻のティッシュを詰め替えて、パソコンを起動してからリビングに向かう。
 冷蔵庫からコカコーラを取り出す。冷蔵庫の横にある棚を開ける。いつもならこの場所にポテトチップスを買
い溜めているはずだが、どうやら買い溜めが切れていたらしい。いやしかし、何かつまみになるものが欲しい。
 そんな年寄り染みた思考を繰り広げながら、僕は上の棚下の棚を漁る。父の酒のつまみにあやかろうと。
 下の棚の食料品の奥深くにピーナッツのファミリーパックを見つけた。取り出したところで、僕は顔をしかめ
る。透明なパッケージ越しに見ると、カビが発生していた。僕はその中身が入った袋をゴミ箱に突っ込んだ。
 僕はそのまま自室に向かった。

 僕は2ちゃんねるの掲示板を行き来する。
 陳腐な物言いだが、ネットはそれぞれの容姿が分からないので、僕を容姿で差別しない。
 更に陳腐な言い方をすれば、ネットは僕が居ることを許してくれる場所。
 ネットで受ける罵詈雑言は、それ以外で受ける罵詈雑言と違って気持ちが良い。
 ネットでは誰もが平等だから、誰もが平等に罵詈雑言を受ける。一方、それ以外では、平等ではないから、受
ける罵詈雑言も全く平等ではない。
 ニュース速報のスレッドを漁っていると、【もっと井戸作れや!】というタイトルを目にする。……先進国が
アフリカに井戸を作っても、人々はその井戸を解体し金になるモノを売るらしい。後先考えない、自分のことし
164完全犯罪4/5 ◇FcModpyaRc:2010/10/03(日) 23:55:01.72 ID:Ly55dwQn0
か考えない、思考回路。いや、ここで『自分のことしか考えない』という言い方はかなり不適切だ。『自分のこ
としか考えれない』だ。そうしないと、生きれない。考えてみれば、この世界は本当に理不尽だ。顔の良し悪し
をどうしようもない先天的な『クジびき』とするなら、世界のどこで生まれるか、この『僕という意識』はどこ
で発生するかも、どうしようもない先天的な『クジびき』だ。僕は日本というクジを引き、彼らはアフリカとい
うクジを引いた。僕は日本を『当たりクジ』だと思う。そして、『外れクジ』を引いた彼らに哀れみを覚える。
 ……とんだ高慢だ。僕は彼らの境遇に哀れみを覚えることで、相対的に、『僕が受けるいじめは彼らほどでは
ない』と、自身の境遇を和らげようとしているに過ぎない。『下には下がいるんだよ』と、自身に言い聞かせる
為に、彼らの境遇を利用しているに過ぎない。僕は僕だ。そんなこと、関係ない。
 そうして掲示板を行き来しスレッドを漁っていると、一つのタイトルが目に付いた。
【ピーナッツ凄すぎワロタ】……先刻のカビピーナッツのこともあり思わずクリックする。本文を読む。
 ピーナッツに発生するカビ。そこから生まれるアフラトキシンと呼ばれるカビ毒。それは『自然界最強の毒』、
『自然界最強の発がん性物質』。僕はグーグルを駆使して調べ上げる。……実験用ラットにアフラトキシンを摂
取させると、その全てが肝臓ガンとなった。60kgの人間に対しては20mg〜1000mgで急性毒性となる。
 ――僕はニヤニヤとした笑みを隠せなかった。
 毎日数mgを摂取させ続ければ、慢性毒性で対象は数年後に肝臓ガン。アフラトキシンは細胞をがん細胞へと変
える。長期間体内に蓄積しない。ガン自体昨今の青少年によく見受けられる。不自然に衰弱して死ぬのならとも
かく、不自然にガンになったところで、周りは「運が悪かった」としか受け取らないのではないか。
 ――完全犯罪。

 僕は登校した。僕は真っ直ぐにあの四人の元に行った。そして弱弱しい声でこう言った。
「お願いだから、もう僕を虐めないで下さい」
「ぎゃはは」「いきなり何? マジ受ける」「なになに? チクっちゃうの? 殺すよ?」「どうするよコイツ」
「あの……僕の父さんが清涼飲料の会社に勤めてるから、ジュース毎日あげるから……もう虐めないで」
 そう言って僕は鞄からコカコーラを四本取り出して、四人に渡す。
「これ毒でも入ってるの?」「そこまで勇気ねーだろこいつ」「あ、キャップちゃんと閉まってる」「いいね」
「これからも……ずっとあげるから……もう、虐めないで」
「あーまぁ考えといてやるよ」「どーいう風の吹き回しよ?」「やっと屈したー」「賭けは俺の勝ちでいい?」
 
 父はただのサラリーマンだ。僕は貯めていたお金が沢山あり、それで500mlジュースを沢山買った。一晩中「一
番キャップが閉まっている」ように感じる接着剤の付け方を研究し、実践した。四本にはそれぞれゴミ箱から取
165完全犯罪5/5 ◇FcModpyaRc:2010/10/03(日) 23:55:43.69 ID:Ly55dwQn0
り出したピーナッツのカビを砕いて水に溶かし込んで売っていた注射器で数mgずつ混入した。
 四人は相変わらず僕をいじめるだろう。むしろいじめは激しくなるだろう。実際、いじめは激しくなった。
 僕は明くる日も明くる日も毎日四人にいじめられ続け、毎日ジュースを渡し続けた。

 僕は県内一位の私立進学校に入学した。
 家からかなり遠い場所なので、「一人暮らし」がしたいと両親に言えば快く快諾してくれた。
 ここでは少しでもいじめ行為があれば加害者は即退学という触れ込みなので、ある程度安心出来る。
 今はクラスの自己紹介。
 僕は俗に言う高校デビューをしようなどと全く思ってない。この顔だしね。
 空気な人間でいたい。
 誰にも相手にされず、誰も相手にしない。
 ふとあの四人のことを思う。
 心の中でニヤニヤと笑う。
 自己紹介が僕に回ってきた。手短にね。
「僕は……です。好きな食べ物はピーナッツです。嫌いな食べ物は……」


END
166ココア 1/3 ◇IOXYmSMPl6:2010/10/03(日) 23:56:35.68 ID:Ly55dwQn0
 クリスマスが終わって大晦日にはもう少しだけ猶予がある。そんな二十数年前の今日、
十二月二十七日に先輩は生まれたらしい。
「クリスマス。誕生日。お年玉。全部一緒にされるの」
 そう言ってくやしそうに笑う姿を見たときが、いま目の前でコタツに入っている人をか
わいいと思った最初だ。
「やー。おはよう」
「もう夕方ですけど」
「ちょっと風邪ひいちゃって。さっきまで寝てた」
 塩化ビニルのタイル床にじゅうたんを敷いて、その上にコタツを置き、コンクリート打
ちっぱなしの壁には何もしないでおくとわれらがサークルの部室が完成する。
 断熱性以外の取り柄がないこの部屋にいくら暖房や冷房を入れてみても、室温がムラだ
らけになるだけで冬も夏も快適とは程遠かった。この時期は特にひどく、コタツに入って
いても顔ばかりが火照るだけで体はあまり温まらない。
 それでもぼくはここに毎日顔を出している。
 毎日見慣れているからこそ分かるが、確かに今日の先輩の顔はいつもより赤かった。
「ココア。いれてほしい」
 言われるままにココアの袋を開けたが、電気ポットのお湯が切れていた。
「お水入れてきます」
「あとでいいよ。自販機で今ちゃちゃっと買ってきて」
 お金渡すね、と言って先輩はどこかに置いたかばんを探す。
 先輩から少し離れた場所にあったのを先に見つけた。
「これですか」
「それそれ。お財布持っていっていいよ。あとはまかせた」
 コタツに入ったまま先輩はごろんと寝転がってしまった。
 ちょっとどきどきしながらかばんを開けて堂々とお財布を手にしたぼくは、髪の毛で顔
が隠れている先輩を横目で見ながら外へ向かった。
 ドアを開けた瞬間、頬が冷たくなる。
「さむい早く閉めてばか」
 後ろ手にドアを閉めてぼくは先輩の声をさえぎった。
167ココア 2/3 ◇IOXYmSMPl6:2010/10/03(日) 23:57:36.19 ID:Ly55dwQn0
 正門からまっすぐ進み学生食堂へと至る並木道は大学のメインストリートとして重要な
位置づけにあると数年前に読んだ入学案内には書いてあった。
 その食堂の裏にひっそりと建つ陰気な建物がサークル棟だ。
 病床に伏せる先輩を部室に置いておつかいへ向かうぼくはそのメインストリートを逆走し
ていた。目指すは正門横の自動販売機だ。サークル棟にあるものはココアがない。
 曇り一面の空の下に、乾いた風に吹かれている落ち葉に、枯れ木の並木道という灰色と
茶色の景色は見ているだけで体の芯から冷えそうになる。部室の空気で温められていた先
輩の財布だけがやけにぬるく感じた。

「ありがとう。へっぷし」
 くしゃみをひとつしてから先輩は缶を開けた。
 ぼくは足と手をコタツに突っ込んで強制的に暖を取る。
 冷えた体はなかなかあたたまらず、先輩の顔は相変わらず赤くて体温が高そうで、許さ
れるなら今すぐ先輩に抱きつきたいと思ってしまった。
「うつさないでくださいね。今年は実家帰るんで」
「ちゅーしたらうつっちゃうかもねしないけど。えへえへへ」
 風邪をひいていても先輩はいつもどおりだった。
「え。実家帰るの」
「そろそろ親が顔見せろってうるさくて。ここ2年ぐらいまるまる戻ってないんです」
「初詣は」
「向こうで一人で」
「わたし振袖着るよ。いや着ないかも」
「毎年ジャージで来てますよね。今着てるやつ」
「今年こそは」
 道路を挟んで大学の真向かいには神社があった。
 まがりなりにも学問の神様を祭っているらしいのだが境内の面積が隣のコンビニの駐車
場にすら負けてる弱小お社で、ごくごく近所に住んでる人もしくは同じく敷地面積が平均
よりとても狭いわれらが弱小大学の生徒ぐらいしかお賽銭を放らない。
 そんな神社へ、新年、都合が合った人が集まって気まぐれに初詣をするのがこのサーク
ルの伝統だった。
168ココア 3/3 ◇IOXYmSMPl6:2010/10/04(月) 00:02:16.12 ID:uosJFiTq0
「じゃあ今からいこうよ」
「どこにですか」
「初詣。今から。あそこの神社に」
「まだ2010年ですけど。100時間くらい早いんじゃないですかね」
「だーいじょうぶだって」
 ココアの缶を傾けながら先輩は言った。
「これあんまり美味しくない」
「そりゃあれに比べちゃうと」
 部室に置いてある粉ココアは去年までサークルにいた先輩が置いていったものだ。その
先輩いわく「プロのココア」らしい。ほかにもプロ仕様のコーヒーと紅茶とウーロン茶を
置いていってくれたおかげでここの部員は飲み物にだけはうるさい。
「とにかく。善は急げということで。むしろちょうどよかったよ。
どっちにしろ今回は君と行こうと思って、っくしょん」
 缶を持ったままくしゃみをしたせいで中身がコタツの上にはねる。
 きたないきたないとお互い苦笑しながらティッシュで拭いた。
「風邪引いてるならやめといた方がいいんじゃないですか」
「だーいじょうぶだって」
「外見てください。雪降ってきましたよ」
 振り向いて結露しまくった窓を見る先輩のうなじがやはり赤い。
「たぶん熱も出ちゃってますよ先輩」
「分かった。じゃあ行かない。代わりにちゅーしよう」
 ぼくと目を合わせて一息に先輩が言う
「好きなんだ。君のこと。これでもいろいろアピールしてみたんだけど。年明けたらもう
あっという間に卒業しちゃうし。ついでにこれを口移しで飲ませてくれたらもうあっとい
うまに風邪も治るかも。お願い。さあ口移しで」
 ああもう風邪うつされてもいいや。
 手渡されたぬるいココアを口に含んでぼくは先輩と唇を重ねた。

終わり
169以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 00:04:29.82 ID:o/2Zg1rh0
転載おわり
170以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 00:07:13.20 ID:iPV2G1G40
現在、週末品評会235thの投票受付中です。今回の品評会お題は『短い』でした。
投稿された作品は■まとめ http://yy46.60.kg/test/read.cgi/bnsk/1286105481/ -週末品評会235th『飲み物』投稿作品まとめ- にてご覧頂けます。
投票期間は2010/10/05(火)24:00:00までとなっております。

感想や批評があると書き手は喜びますが、単純に『面白かった』と言うだけの理由での投票でも構いません。
また、週末品評会では投票する作品のほかに気になった作品を挙げて頂き、同得票の際の判定基準とする方法をとっております。
投票には以下のテンプレートを使用していただくと集計の手助けとなります。
(投票、気になった作品は一作品でも複数でも構いません)

******************【投票用紙】******************
【投票】:<タイトル>◆XXXXXXXXXX氏
【関心】:<気になった作品のタイトル>◆YYYYYYYYYY氏
     <気になった作品のタイトル>◆ZZZZZZZZZZ氏
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― 感 想 ―

携帯から投票される方は、今まで通り名前欄に【投票】と入力してください。
たくさんの方の投票をお待ちしています。 
時間外の方も、月曜中なら感想、関心票のチャンスがあります。書いている途中の方は是非。
171以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 00:15:08.12 ID:iPV2G1G40
品評会作品一覧

No.01 総理のいうことを聞きなさい ◆X78jHks0c氏
No.02 非常識な正解 ◆iI30KISp/.氏
No.03 内容は無いよう ◆Ego1E1r00Y氏
No.04 NOPQRに揺れる ◆Lq1ieHiNSw氏
No.05 完全犯罪 ◆FcModpyaRc氏
No.06 ココア ◆IOXYmSMPl6氏
172以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 00:40:11.33 ID:Bqc+347Y0
| ・ω・)
173以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 01:16:27.39 ID:iQPcmolRO
174以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 01:50:55.16 ID:RjvPvPh/0
そろそろ寝ます
175以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 02:29:10.69 ID:uosJFiTq0
176以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 02:53:17.44 ID:iQPcmolRO
寝る前に
177全感 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/04(月) 03:12:21.80 ID:iPV2G1G40
No.01 総理のいうことを聞きなさい ◆X78jHks0c氏
なんてラノベっぽいタイトルなんだ。美少女総理大臣でも出てきそうである。
しかし反して内容はガチガチですなあ。ここ数年政治への興味がどんどん失せていく。
政治に明るければこの作品をもう少し愉しむことができたのだろうか。
毎度思うが、締めくくり方が下手だ。まだ話が続きそうな感じがしてならない。

No.02 非常識な正解 ◆iI30KISp/.氏
価値観を押し付けられることほど腹立たしいことはないね。
しかし人間は知らず知らず価値観を押し付け合いながら他人と折り合いをつけている部分もある。
普通という定義にも、自分と他者との間にはいくらか齟齬がある。難しいものだ。

No.03 内容は無いよう ◆Ego1E1r00Y氏
真面目で聡明な子だ。文章とは何かを伝える為のもの、そう思っているのか。
伝えたいことが無いから何も書かない、と書くことで読者に伝わるものがあった。
なんとも小粋だ。

No.04 NOPQRに揺れる ◆Lq1ieHiNSw
ちょっと里美が中途半端だったか。喋り方に一貫性なさすぎだし。
一度行ってみたいな、SMバーに。

No.05 完全犯罪 ◆FcModpyaRc氏
いじめとは激しくなるに連れて、学校側に知れる可能性が高くなるのでは。
まあこの主人公なら、自ら進んで学校に知られないようにしているのかな。
いじめる側は、如何にしていじめが露呈しないようにするかを工夫するのも楽しいかもしれない。
さて、完全中二思考な主人公だが、冒頭の主張だけには反論さしてもらう。
自分が嫌なことを他人にするから面白いんだよ。他人が嫌がる姿を見たいからやってるんだよ。

No.06 ココア ◆IOXYmSMPl6氏
口移しでココアを与える描写をねちっこく官能的に描写してそれまでの雰囲気をぶち壊してくれていたら、
俺はこの作品に投票していたことだろう。いや、しねえか。
178投票 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/04(月) 03:19:06.37 ID:iPV2G1G40
******************【投票用紙】******************
【投票】:No.03 内容は無いよう ◆Ego1E1r00Y氏
【関心】:
**********************************************

意外や意外。精子を飲ませたり経血を飲んだりそういう話がなかった。
179以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 03:52:55.86 ID:iPV2G1G40
さて、保守して寝よう
180以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 04:22:54.48 ID:uosJFiTq0
181以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 06:37:57.63 ID:c2raJbmj0
182以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 07:55:27.69 ID:iQPcmolRO
アサディシオ
183以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 08:54:56.83 ID:c2raJbmj0
はい
184以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 11:04:59.34 ID:iQPcmolRO
あい
185以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 12:48:25.70 ID:c2raJbmj0
まい
186以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 14:07:49.84 ID:c2raJbmj0
まいん
187以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 15:17:40.56 ID:iQPcmolRO
188以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 15:41:41.92 ID:cP7QRmXU0
218 名前:文才無しさん :10/10/04 15:35:16 ID:ND9XRsHn
転載頼んだ!


******************【投票用紙】******************
【投票】:なし
【関心】:なし
**********************************************
― 感 想 ―
これはもう迷わず一票入れるわさすがbnsk、と思った作品に投票することにしてる

長文読むのが苦手な上に文体の好き嫌いが激しい身としては
そもそも最後まで読むことができる作品に出会えることが珍しいんだけど
それでも過去に見てきた品評会ではひとつふたつ読めるものがあった。今回はなかった。残念
たぶんbnsker達の成長の谷間なんだと思う。次回か次々回あたり大爆発するに違いない
189以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 15:47:17.44 ID:cP7QRmXU0
さて、転載し終えたところでちょっとお出掛け
190以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 16:32:43.80 ID:iQPcmolRO
オツカレー
191以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 17:18:59.44 ID:c2raJbmj0
全感書きながら保守
192以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 17:30:51.43 ID:c2raJbmj0
******************【投票用紙】******************
【投票】:なし
【関心】:No.06 ココア ◆IOXYmSMPl6氏
**********************************************

総評
飲み物、というありふれたテーマでここまで暗い作品だらけになるとは予想外

No.01 総理のいうことを聞きなさい ◆X78jHks0c氏
文章が読みにくい 一文を簡潔にした方がよいかと 話としても盛り上がりに欠けた

No.02 非常識な正解 ◆iI30KISp/.氏
見ていて腹立たしくなるほど頭の固い主人公 こんな親父いるよね 一人称が不統一

No.03 内容は無いよう ◆Ego1E1r00Y氏
自虐ネタ、と受け取って良いのだろうか アメリカンジョークのような雰囲気もあるが、題名の通り

No.04 NOPQRに揺れる ◆Lq1ieHiNSw氏
前半だけ読むとイジメにしか見えないが、SMという性的嗜好が出ることで全ては濡れ場に変わる

No.05 完全犯罪 ◆FcModpyaRc氏
「抵抗せずに復讐を考える」というのもいじめられっ子の典型だよなぁ 実際にやってしまえるのは小説の特権だが

No.06 ココア ◆IOXYmSMPl6氏
甘いよこのココア
193以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 18:04:51.68 ID:meIr9lUw0
 
194以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 18:28:43.05 ID:abVfEiaa0
?
195以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 18:51:05.92 ID:uosJFiTq0
ho
196以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 19:22:26.09 ID:cP7QRmXU0
あぶぶ
197以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 19:56:30.94 ID:uosJFiTq0
ほう
198以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 20:26:37.97 ID:c2raJbmj0
ああ
199以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 20:58:03.49 ID:c2raJbmj0
200以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 21:03:53.26 ID:u6iebGwq0
お題ください
201以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 21:05:45.95 ID:c2raJbmj0
先取り
202以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 21:39:00.72 ID:c2raJbmj0
保守
203以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 22:01:05.56 ID:c4zYrGUR0
ああ
204以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 22:40:42.98 ID:iQPcmolRO
ほっ
205以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 23:12:46.81 ID:uosJFiTq0
206以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 23:36:48.33 ID:c4zYrGUR0
もうアレか
207以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 23:55:20.94 ID:c2raJbmj0
アレだな
208以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/04(月) 23:58:11.99 ID:qmHxKPMj0
あれだな
209以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 00:02:24.58 ID:pA8FcsM50
あれです
210以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 00:12:02.09 ID:4ujE0uKi0
しかし、結局はあれなんだろう?
211以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 00:12:31.13 ID:h5afWocF0
あれください
212以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 00:16:16.93 ID:pA8FcsM50
>>211
シャブ
213以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 00:19:17.73 ID:TlZfvPYs0
え?ほんとにあれなの?
214以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 00:19:21.66 ID:h5afWocF0
>>212
あれですかわかりました
215以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 00:33:28.79 ID:feF7LvmU0
| ・ω・)
216以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 00:48:54.84 ID:4ujE0uKi0
↑よ。君は一体いつからここにいるんだ
これの十四個前のスレに、もういたぞこのお方は
217以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 01:31:53.49 ID:9zF/Wt4rO
コダマだ
好きにさせておけば悪さはしない
218以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 01:43:56.26 ID:pA8FcsM50
ほしゅに貢献してくれるいい子だよ
219以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 02:50:34.86 ID:kE9hYada0
220以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 03:17:53.93 ID:dGOZZpB/O
眠れないのでくださいな
221以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 03:20:11.89 ID:yoI0iiuf0
校門
222以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 03:24:06.63 ID:dGOZZpB/O
>>221
ありがとうございます。
223以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 04:25:42.79 ID:kE9hYada0
224以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 05:30:42.73 ID:pA8FcsM50
225以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 06:20:52.64 ID:kE9hYada0
226以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 07:30:32.12 ID:9zF/Wt4rO
227以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 08:31:31.81 ID:kE9hYada0
228以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 08:54:07.67 ID:qJ6fxuZS0
保守がてら何か書いてみようかな
お題下さい
229以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 08:56:21.80 ID:FrujEwV/0
荒ぶる女子中学生
230以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 08:58:47.52 ID:qJ6fxuZS0
>>229
ちょwwww
おk
231以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 09:23:59.94 ID:XIXESFWPI
これ外国からでも保守出来るのだろうか
232以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 09:29:13.80 ID:kE9hYada0
いいIDだな
233以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 09:48:40.60 ID:9zF/Wt4rO
逆SEXか
234以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 11:13:47.06 ID:FrujEwV/0
彼は奴隷だった 命令一下行ったり来たり
 鉄の首輪は骨まで食い込む
やがて「自由」がその所有者の名を消し
 鋲かたく締め おのが名刻みぬ


EMANCIPATION【解放】
自分以外のものによる暴虐から自分自身による圧制へと奴隷がその身の上を変えること。
235以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 12:31:16.27 ID:9zF/Wt4rO
236以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 13:03:03.59 ID:KdPnFXpl0
>>217
アシタカさんチィーッスwwww
237以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 13:40:57.78 ID:gubk+emJO
てすほ
238以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 13:42:43.50 ID:gubk+emJO
au規制解除キター!!

これで昼間も保守できる
239以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 15:31:37.19 ID:9zF/Wt4rO
とや
240以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 16:16:30.91 ID:7lyD3szAO
eo規制されてるこんな私にもお題を…
241以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 16:23:23.56 ID:sGMdK3gX0
>>240
隠れ家
242以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 16:26:53.10 ID:7lyD3szAO
早い…了解しました
243以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 17:19:15.71 ID:gubk+emJO
スマホにする
244以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 17:24:45.69 ID:9zF/Wt4rO
IS03か
245以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 18:12:21.74 ID:v+mx64G20
ほほ
246以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 18:23:00.55 ID:FrujEwV/0
「力は正に暴力(Might)である」と教師がいった――「その定義は正しいのだ!」
 少年は何も言わなかったが、それと違うこんな考え方をし、
ぶんなぐられた頭のことを思い出していた
「力とは多分(might)ではなく絶対(must)なんだ!」と

FORCE【力】
247以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 19:02:33.19 ID:FrujEwV/0
   野蛮人は死ぬと――彼らは一頭の馬を生贄にする
   天国へとその友の死体を運ぶために
   我々の友が死ねば――我々は金に翼をつけ飛ばす
   友の魂が金を追って天へ行くのを期待して

FUNERAL 【葬式】
葬儀屋を金持ちにすることによって、我々の故人に対する敬意を
立証するだけではなく、我々の呻き声を一段と深めると同時に、
我々の涙を倍増させる出費によって、我々の悲嘆を一層強める
ところの華麗なる儀式。
248以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 19:37:09.53 ID:v+mx64G20
249以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 19:51:21.84 ID:Tyc28P4E0
お題くだしあ
250以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 19:53:40.43 ID:v+mx64G20
線路
251以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 19:54:09.89 ID:Tyc28P4E0
>>250
ありがとう!
252以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 20:44:20.66 ID:v+mx64G20
ほい
253以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 21:12:34.90 ID:FrujEwV/0
No.01 総理のいうことを聞きなさい ◆X78jHks0c氏

No.02 非常識な正解 ◆iI30KISp/.氏

No.03 内容は無いよう ◆Ego1E1r00Y氏

No.04 NOPQRに揺れる ◆Lq1ieHiNSw氏

No.05 完全犯罪 ◆FcModpyaRc氏

No.06 ココア ◆IOXYmSMPl6氏

ZEN-KAN 【全感】
古強者は言った――「感想が無いのも感想」と。
254以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 21:51:35.95 ID:9zF/Wt4rO
255以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 22:01:50.35 ID:9zF/Wt4rO
ようやく読み切ったんで投票

【投票】:No.04 NOPQRに揺れる ◆Lq1ieHiNSw
【関心】:No.01 総理のいうことを聞きなさい ◆X78jHks0c氏
256以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 22:35:53.56 ID:FJ/TfYKw0
はふん
257以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 23:02:33.14 ID:FrujEwV/0
23時を回りました、皆様投票はお早めに
258以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 23:34:32.09 ID:FJ/TfYKw0
えっ?
259以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/05(火) 23:36:50.38 ID:kE9hYada0
extu
260以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 00:12:29.81 ID:ubhTKmRY0
261以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 00:43:52.88 ID:ubhTKmRY0
262以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 00:53:26.83 ID:FTgDVNm90
| ・ω・)
263以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 01:16:26.24 ID:RMqh30820
寝る帆
264以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 01:25:57.49 ID:wpY5yMv80
結果は?
265以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 01:39:30.31 ID:B+/hfR6I0
投 関
−  1 No.01 総理のいうことを聞きなさい ◆X78jHks0c氏
− − No.02 非常識な正解 ◆iI30KISp/.氏
1 − No.03 内容は無いよう ◆Ego1E1r00Y氏
1 − No.04 NOPQRに揺れる ◆Lq1ieHiNSw氏
− − No.05 完全犯罪 ◆FcModpyaRc氏
−  1 No.06 ココア ◆IOXYmSMPl6氏
266以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 01:40:27.71 ID:bvYzRDFH0
おつ
267以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 01:44:25.47 ID:/sKOszck0
おつ
ついでにお題くれ
268以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 01:45:26.05 ID:ubhTKmRY0
「勝利」
269以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 01:46:19.40 ID:lDm2Mm7K0
◆Ego1E1r00Y氏と◆Lq1ieHiNSw氏が優勝のようなのでさっさとお題出せ
270以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 01:46:19.96 ID:B+/hfR6I0
というわけで優勝は
『No.03 内容は無いよう 』を書いた◆Ego1E1r00Y氏と
『No.04 NOPQRに揺れる』を書いた◆Lq1ieHiNSw氏です。
優勝おめでとうございます。
お題発表時期の発表その他諸々お願いします。
皆様お疲れ様でした。
271以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 01:51:01.50 ID:bvYzRDFH0
今回は参加できなかったぜこの作品はいつかまた流用しようと思う
272 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/06(水) 01:52:44.18 ID:B+/hfR6I0

それは甘く美しく。


第○○回週末品評会  『退廃』

規制事項:(レス数の制限や、シチュエーションの縛りなどを明記して下さい)

投稿期間:2010/10/09(土)00:00〜2010/10/10(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2010/10/11(月)00:00〜2010/10/12(火)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
273 ◆Lq1ieHiNSw :2010/10/06(水) 01:54:09.67 ID:B+/hfR6I0

それは甘く美しく。


第236回週末品評会  『退廃』

規制事項:5レス以内

投稿期間:2010/10/09(土)00:00〜2010/10/10(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2010/10/11(月)00:00〜2010/10/12(火)24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
274以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 02:40:09.99 ID:NdfxDT8yO
兵どもが夢の跡
275以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 04:08:34.31 ID:ubhTKmRY0
◆Ego1E1r00Y氏は今いないのかな
276以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 06:03:23.74 ID:bvYzRDFH0
ねるまえほ
277以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 07:26:49.63 ID:ubhTKmRY0
ねずのほ
278以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 08:21:21.57 ID:2SbjzeuG0
おめでとう
279以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 09:43:15.35 ID:ubhTKmRY0
めでたいなあ
280以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 10:03:34.33 ID:Bzq3OmAt0
彼は他の宗教は全て嘘八百なりと断じ
マモンにひたすらぬかずいた


MAMMON 【拝金】
世界第一の宗教の神。その第一の神殿は聖都ニューヨーク。
281以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 11:15:47.59 ID:ubhTKmRY0
保守
282以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 11:36:22.08 ID:riMePD2hO
結婚式終わって暇になったので今週からまた参戦できる
283以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 11:48:35.15 ID:NdfxDT8yO
その結婚式での体験を存分に活かして退廃について書くのだ
284以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 12:09:44.27 ID:ubhTKmRY0
たい‐はい【退廃/×頽廃】[名](スル)
1 衰えてすたれること。くずれ荒れること。廃頽。「旧家が―する」
2 道徳的な気風がすたれて健全な精神を失うこと。「―した社会」
285以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 13:21:23.97 ID:riMePD2hO
まあ結婚披露宴ってのも功利的でないっつー意味で退廃的なところもあるか。
286以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 14:19:47.07 ID:riMePD2hO
287以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 14:21:56.38 ID:riMePD2hO
さげてまた。ほ
288以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 15:45:47.17 ID:NdfxDT8yO
えい
289以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 16:54:51.70 ID:NdfxDT8yO
290以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 17:25:31.55 ID:riMePD2hO
ある
291以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 18:11:10.52 ID:kHkYdarP0
ho
292 ◆Ego1E1r00Y :2010/10/06(水) 18:34:21.00 ID:k55CLKVt0
第236回週末品評会  『選択肢』

規則事項:5レス以内

投稿期間:2010/10/09(土) 00:00〜2010/10/10(日) 23:30
宣言締切:日曜23:30に投下宣言の締切。それ以降の宣言は時間外になります。
※折角の作品を時間外にしない為にも、早めの投稿をお願いします※

投票期間:2010/10/11(月) 00:00〜2010/10/12(火) 24:00
※品評会に参加した方は、出来る限り投票するよう心がけましょう※
293以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 18:48:25.19 ID:riMePD2hO
だいぶ難易度に差があるな。どっちで書こうかね
294以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 18:55:05.31 ID:kHkYdarP0
退廃のがやや楽だが作品がかぶりそうだ
295以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 18:58:31.02 ID:0GnKq59b0
自分的には選択肢のほうが書きやすそうだ
でもきっと不参加だ
296以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 19:40:33.37 ID:kHkYdarP0
ほい
297以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 20:06:37.43 ID:kHkYdarP0
いえい
298以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 20:08:12.08 ID:BbDeZj5p0
お題くれ
299以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 20:16:43.80 ID:riMePD2hO
>>298
残業
300以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 20:34:20.66 ID:RXj6MEAlP
久々に文才スレ来た
変わってないようで安心したぞ
301以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 21:01:52.74 ID:sU0uXni30
ho
302以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 21:39:43.86 ID:2SbjzeuG0
るん
303以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 22:10:04.83 ID:2SbjzeuG0
るん
304以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 22:10:55.64 ID:riMePD2hO
>>300
過疎ってるということか!!
305以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 22:27:19.98 ID:yshioIY70
いまさらだけどケコーンした人がいるのか
おめでとう
306以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 22:58:32.31 ID:2SbjzeuG0
おめでとう
307以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 23:02:00.10 ID:NdfxDT8yO
祝えばいいのか悼めばいいのか
308以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 23:19:58.82 ID:2SbjzeuG0
笑えばいいと思うよ
309以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/06(水) 23:45:30.49 ID:NdfxDT8yO
310以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 00:17:22.29 ID:exfQqFUV0
| ・ω・)
311以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 00:40:38.14 ID:jFzjtimA0
>>305
>>306
ありがとう。退廃いたします。
312以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 01:29:04.05 ID:y+jlmcFGO
ほし
313以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 01:34:08.53 ID:F8zzfsu/O
寝れないからお題下さいな
314以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 01:37:14.95 ID:J2Qg7Snl0
>>313
照明
315以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 01:40:11.89 ID:F8zzfsu/O
>>314
承りました
316以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 02:09:40.21 ID:5smN0Jjn0
初カキコ
酔った勢いで処女作を書きます。お題くだしい
317以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 02:10:13.29 ID:0+h2nGLe0
>>316
夜明け
318以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 02:11:47.69 ID:5smN0Jjn0
>>317
ウィームッシュ
緊張するぜwww
319以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 02:26:11.00 ID:y+jlmcFGO
書くの初めてなら>>1のwiki読んどくとよろし
特に文章作法
320以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 02:33:20.92 ID:5smN0Jjn0
>>319
あいよ
ありがと
321以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 02:55:13.83 ID:y+jlmcFGO
そんじゃそろそろ果てしない夢を追いかけてくるわ
322以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 04:03:04.85 ID:DA99xCCn0
ありったけの夢をかき集めー
323以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 04:13:48.06 ID:S2KvkTkQ0
次の品評会は書きたひ。
久々なのでリハビリにお題下さい。
324以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 04:20:17.64 ID:DA99xCCn0
電車
325以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 04:23:03.24 ID:S2KvkTkQ0
thx
326以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 05:42:21.34 ID:DA99xCCn0
早朝のほ
327お題:電車(0/4):2010/10/07(木) 06:30:28.51 ID:S2KvkTkQ0
書けた。投下します。
328お題:電車(1/4):2010/10/07(木) 06:31:14.18 ID:S2KvkTkQ0
 大晦日の日は暮れようとしていて、俺は結婚前夜で、俺たちは三人で飲んでいた。
 話すのは、学生時代のことばかりだった。
「部活がなー。やっぱ……よかったよなあ、タク部」
 綿貫の言葉に、俺と大房が無言のまま頷く。あれはいい部活だった、とか、そんな風に。
 さて、俺たちの母校には当時、「タク部」と略される部活は三つあった。その一つが「卓球部」であり、もう
一つが「帰宅部」であり、最後の一つがつまり、俺たちの所属する「卓上旅行部」だった。
 卓上旅行部。
 これは内容のわりに名前にパンチ力のあるからか、妙な存在感だけは抜群にある部であったと思う。自己紹介
で「所属している」と話せば「え、実際どんな活動してんの?」と必ず聞きかえされるような、そんな部だった。
 そういう持ちネタができる、というだけでも、ある意味で所属する甲斐のあるところだったのかもしれない。
まあ、そうとでもフォローしなければ、いまいちしまらないような、少々情けない部活動だったのだ。
 ご存じだろうか? 卓上旅行。
 分厚い時刻表を手に、旅行の計画を立てる趣味のことだ。まあ、こだわりどころは色々とある。
 例えば「如何に早くいけるか?」「如何に遠回りができるか?」「如何に安く済ませるか?」――といったこ
とを卓上で真剣に考える。
 でも、実際に旅行はしない。
 他にも、「ここは全力で走れば乗り継ぎに間に合うんじゃないか?」「ここはもはや隣の駅までバス、いや、
いっそ走ることによって効率化できるのではないか?」「体力を資源と考えれば無理のない経路こそむしろ美し
いのではないか?」――といったことを卓上で真剣に議論する。
 でも、実際に旅行はしない。
 ……そう、卓上旅行部は、実際には旅行しないのだった。なぜかといえば、卓上旅行部だから。
 行動力のない旅行好き、金のない鉄道好きといった、まあ総じて根性のない連中の集まって、放課後に時刻表
片手にぐだぐだと旅行計画を喋り続けるだけの下らない部活。俺や綿貫などはネタ目的で入ったものだから、そ
もそも当初は旅行にさえ大した興味はなかった。
 だがこれが俺の高校時代の青春で、これが俺にとってはひどく面白い遊びだった。
「下らなかった」
「でも、楽しかったな」
「それは否定はしないけどな」
 くつくつと、声を立てて綿貫が笑った。大房が思いだしたように「ダーツが出てきてからが熱かったよな」と
いった。
329お題:電車(2/4):2010/10/07(木) 06:32:11.89 ID:S2KvkTkQ0
 ああ、と俺は頷く。あったな、ダーツ、と。
 卓上旅行部の部室には二種類、大きな地図が貼ってあって、要するに日本地図と世界地図なのだが、それと数
少ない備品の一つとして、ダーツの矢が常備されていた。
 初期の頃はなかったように思う。記憶が確かなら、俺が入って半年ほど経ったころに顧問が購入したものだっ
たはずだ。当時、あまり上手く旅行できていなかった俺たちを見かねての備品導入だったように思う。
 何に使うか? というとこれは至極単純で、地図に向かってダーツの矢を投げる。そして刺さった所を目的地
として卓上旅行を開始するのだった。
 地図に刺さったダーツを指さし「ここまで、旅行してごらん」という顧問の優しい声が、今も耳にこだまする。
 俺たちはこれには、ハマった。
 なにせ自分がどこを目指すか、始めるまで自分ではわからないのだ。
 旅行を想像する、といっても、目的地をうまく自分で設定するのは難しい。自分で決めたところに辿り着く快
感はもちろんあるのだろうが、しかし自由意志で決定すると、つい自由意志で挫折してしまう。
 これが、ダーツという偶然によって決められることで、不思議と俄然熱くなる。
 最初は目的地を決めるのみに使用されていたのが、二年にあがった頃から交通手段を限定する用途でも使われ
始めた。所持金はいくらで、目的地はどこで、というのはすべてダーツによって決定された。時には二千円で徒
歩とバスで青森まで行け、というような話になることもあって、笑いながらみんなで頭を捻ったものだった。
「結局行けたんだっけ、青森」
「徒歩だと九日か、十日くらいかかるんだったか。一日二百円で凌げるかがカギ、みたいな話になってたな」
「いつもは食費度外視してたのに、あの時だけなぜかリアル志向なのな」
「難易度あがると、みんなつい燃えてくるんだ」
 酒を傾けながら、思い出話に浸る。こうした機会ももう、そうそう持てないだろう事は全員がわかっていて、
そのせいか、三人とも普段には見られないほど饒舌になっていた。
 俺は結婚するし、綿貫は会社のアメリカ支社に呼ばれて、来年は渡米することになっていた。大房は父親の具
合がよくなく、実家に戻るそうで、恐らくは農家を継ぐことになるだろうと話している。
 別れは近く、しかし共通の話題は尽きなかった。特に、部活のこととなればなおさらだ。住んでいる町の遠か
ったこともあり、あまり一緒に遊びにいくようなことも少なかった俺たちだが、しかし何百回という旅行を共に
楽しんだ仲でもあるのだった。
「そういえば、覚えてるか?」
 大房がいった。
「なんだ?」「今日、大晦日だぜ」「いやそれを忘れるってやばいだろ」
330お題:電車(3/4):2010/10/07(木) 06:33:25.41 ID:S2KvkTkQ0
「違う。そういう意味じゃない」
 大房が仰々しく首を振った。俺たちの顔を見回しながら、「旅規百五十七条。第二項」と低くいった。
 それを聞いて、
「ああ」
 と綿貫が得心したように頷いた。俺も、それに遅れて口角を持ちあげる。
「……大回り乗車か」
 JRの旅規――旅客営業規則をすべて諳んじているわけではない。が、百五十七条は鉄道マニアにとって、少
々特別な意味を持っている。
「懐かしいな」
 大都市近郊区間における選択乗車。鉄オタのいう「大回り乗車」とは、A駅からB駅に辿り着くまでに、可能
な限りの『遠回り』するような乗車選択を行うことをいう。百五十七条第二項は穿った見方をするならば、それ
が正当な乗車方法であることを認める項目だった。
 簡単にいえば、大都市近郊区間においてはその経路が一筆書きであれば、異常な遠回りをして隣の駅まで行っ
たとしても一駅分の運賃でいい、というルールである。
 これは、熱い。
 途中下車はできない、というルールもあるのでもはや旅行でさえないが、しかし隣の駅までいったいどれだけ
の遠回りができるのか? という問いは、当時の俺たちを夢中にさせた。
 有効期限は、一日だけ。しかし経路の選択次第では始発から終電まで使って隣駅に辿り着くことができるわけ
だ。できたからなんだ、という話ではない。できることが重要なのだった。
 そして今日。始発から終電、という制限さえ取り払うことができるのが大晦日という日だ。
 大晦日から元旦における終夜運転を利用することによって……一年に一度、今日だけは、丸一日を使って、隣
駅へ、格安の料金で行くことができるのである。
 旅行に興味のなかった俺たちだったが、これだけは一度試したい、と話したのを覚えている。
「結局、行けなかったな」
「俺の親の許可がでなかった」
 大房が苦々しげにいった。
「お前、ガン泣きだった」
「悔しかったし」
「あん時さあ……」
 ビールを口に入れて、いったん言葉をきった綿貫に、俺と大房が黙って注目した。
331お題:電車(4/4):2010/10/07(木) 06:34:14.45 ID:S2KvkTkQ0
「いつか、社会人になったら、っていったよな」
 そして俺たちの視線を受けて綿貫は、寂しげに、そう、呟いた。
「……そうだったな」
 俺も覚えていた。
 悔し涙を流す大房に、これが最後の機会じゃないさ、といったのは他ならぬ俺だった。いつかまた一緒に行こ
う。卒業してからだっていい。親元を離れて、大学生や社会人になれば、止める人間はいないさ。
 そんな風に大房と、自分自身を慰めていた。
 あれは高校生の頃だ。
 そして、俺たちはもう、とっくに社会人になっていた。
「……」
「……」
「わり。もうちょい飲もうぜ」
 澱のように室内に溜まった沈黙を追い払うように、綿貫は笑った。
「……なあ、行くか?」
 と、大房がいう。
「行くって?」
「東京。神田から、大回りで。……なに、式の前には帰れるさ。一駅分だけ金持ってけばよりスリリングだぜ。
Suicaも置いてってさ。これから。三人で。なんだろ、とりあえず時刻表だけ買ってさ。あー、時間あれば
さあ、チェックポイントみたいに、コインロッカーにアイテム置いてっても面白かったな。次の目的地、とか書
いてあるやつ。来年とか、再来年とか、そういうのやってもいいな。それで今日はとりあえずさ――」
「大房」
 遮って綿貫がいった。
「飲もう」
 コップを差し向けられて、そのまま無表情に大房は黙った。そうしてコップを受けとって、一気に煽った。
 綿貫は冷静だった。大房は今日、悔し涙を流さなかった。俺も、最後の機会じゃないさ、とはいわなかった。
 ただ三人とも理解していたのだ。
 大回り乗車は一筆書きしかできないルールで、つまりもう、過ぎた駅には戻れないのだと。

 遠くに、中央線の走る音が聞こえている。
(了)
332以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 06:36:36.05 ID:S2KvkTkQ0
以上です。鉄道も地名も詳しくないのでなんか勘違いとかしてるかも。
とりあえず久々に書き終えられたことに気をよくしつつ寝るノシ
333以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 06:43:01.17 ID:DA99xCCn0
たまらないな
ノスタルジィが溢れ出てる
334以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 06:47:17.93 ID:DA99xCCn0
335以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 07:12:16.15 ID:jAyElNiEi
類似スレwwww良かったら書いてくれwwww
336以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 07:16:06.64 ID:qOdRHmSs0
意味がわからん。
というか、海賊版を作るなよチャイニーズ。
337以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 07:26:40.03 ID:Hk8HTvcIO
おはー
338以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 07:31:11.65 ID:uwv4PsxtO
ここでやれば良いのに
339以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 08:29:22.54 ID:DA99xCCn0
ああ
340以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 09:22:59.87 ID:Hk8HTvcIO
ほす
341以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 09:24:09.80 ID:uqB2fQcP0
342以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 09:28:43.55 ID:DA99xCCn0
なんだこれは
343以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 10:18:02.12 ID:7KjFkC7g0
PALACE 【御殿】
豪華な住居で、特に高級官僚のそれ。キリスト教会の高位の者たちの
住居は宮殿(パレス)とよばれ、一方その宗教の「創始者」の住居は
乾燥場、もしくは路傍として知られていた。そこに進歩あり。
344以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 11:33:22.10 ID:y+jlmcFGO
ローソンの白まる肉まん美味しいです
345以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 12:18:12.63 ID:j2KA9VaS0
お題が……欲しいです……
346以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 12:32:08.51 ID:Hk8HTvcIO
>>345
フライ
347以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 13:43:55.46 ID:qOdRHmSs0
静かだね
348以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 14:09:04.01 ID:vxtW6q/W0
お題ください
349以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 14:11:30.27 ID:Hk8HTvcIO
>>348
沈黙
350以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 14:19:57.13 ID:siXjZkoO0
先週の品評会はなんで人が少なかったんだろう
学校が始まったのかね
351以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 14:49:07.56 ID:Hk8HTvcIO
>>350
期末で忙しかったとか?
書きやすそうなお題だったのにね
352以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 14:53:25.56 ID:y+jlmcFGO
いや、難しいよ
353以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 15:43:05.97 ID:Hk8HTvcIO
>>352
そうなのか。不参加だったのでピンときてないが。あとで前回の作品読んでみるわ。

今週は人が増えるといいなあ
354以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 16:46:42.77 ID:y+jlmcFGO
355以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 17:04:55.58 ID:vxtW6q/W0
投下します
356ワンダランド (お題:沈黙) 1/4 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/07(木) 17:11:54.10 ID:vxtW6q/W0

 音が聞こえない世界。
色彩を認識できない人々が住むモノクロの世界。
恋慕の情を理解できずにいる私たちの世界。
誰もが、自分だけの世界を持っている。
人それぞれのワンダーランドを持っているのです。

ーAメロ

昼間から飲むビールは格段に上手い。
真っ白な泡を、口元に塗りたくって笑みを零す。
懐から取り出した煙草の箱から、一本抜き取ると、先端に火をつける。
アルコールとニコチンを十分に取り込んだお陰で、少しずつ、頭の中にある歯車が廻りだしたみたいだ。
 最近は歯車の調子が悪かったから、不安に思っていたのだけれど、少しだけなら動くみたいで良かった。と安心する。
ゆらゆらゆらめく煙を眺めていると、だんだんと切なくなってきた。
感情が外に漏れ出してきたのだろうか。
それまで聞いていたPOPなメロディーも私の耳には悲しい呟きにしか聞こえなくなってきた。
私の悪いクセだ。酒を飲むと、感傷に浸ってしまう。そして、煮え切らない気持ちを人にぶつけてしまうのだ。
さっきまでは一人で平気だったのに、ふと淋しさに耐え切れなくなって、顔を歪ませる。
歪んだ顔のまま、サンダルをつっかけて、家から飛び出す。
君のところへ。ワンダーランドの入り口へ。
357ワンダランド (お題:沈黙) 2/4 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/07(木) 17:13:51.03 ID:vxtW6q/W0
ーBメロ

君は温かく迎えてくれた。最初は、どうしたの?なんてとぼけていたが、私の歪んだブサイクな顔を見て、私の気持ちを察したみたいだった。
「また、飲んだんですね。本当にどうしようもないんですから」
君は、君らしい明るめの黄色の上着を着て、君らしく笑った。
「もう恋愛ごっこはおしまいと、あなたが言い出したんですよ?どうして」
君の言葉を遮って、私は一生懸命、私の想いをぶつけるのだ。
「もう十分です。どう頑張ったってあなたを幸せにできない。あなたの苦しむ表情なんて、見たくないんです。嘘の愛を深めても、行き着く果ては何もないんですよ」
もうやめて。と私を拒否する君。
悲しい。苦しい。でも、私は、君に一言伝えるために、ここに来たんだ。
私は君の腕を力強く、それ以上に優しく掴む。
息を飲み込こんで、
ゴクリ
何度も用意した言葉を
あの、あの、あの!
君に届ける。
「君のことが大好きだから。君が一番大好きだから。人と上手く話せない私だけど……こんなブサイクで、それで、あの、あの……」
君は、笑顔を崩さず、まるでひまわりのような上着の裾をぎゅっと握り締める私を抱きしめる。
「本当に、どうしようもないんですから……」
君らしい言葉のせいで、私は目元から、オイルを流した。
358ワンダランド (お題:沈黙) 3/4 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/07(木) 17:15:20.04 ID:vxtW6q/W0
ーサビ

感情を手に入れ、人間以上に人間らしい、ロボットである私は「人でなしの恋」に没頭して、夢の中を彷徨った。
初めて目にした、美少女フィギュアは私の世界をワンダーランドに変えていった。
動かず、しゃべることもない人形は、動き回り汚い言葉を罵る私達と比べて、完璧なものに映ったのだ。
そんな「完璧な存在」を見つけた私は、すぐさま、家と人形を扱っている店を何度も往復して、妄想の世界での逢引きを繰り返した。
ロボットと、人形の恋。
誰も理解できないであろう、美しい愛の形を、私の世界だけが許してくれる。
だんだんと、頭の歯車がかみ合わなくなってきたって、体の故障のせいで感情がごちゃまぜになったって、私が生きてきた意味を見つけたのだ。
私は、幸せだ。

ーCメロ

「とうとう動かなくなってしまったのね……あぁ、あぁ!アルフレッド!!」
薫の目の前で、古くなった機械が鳴らす独特な音が、とうとう鳴り止み、沈黙が訪れた。
機械音の主は、薫が愛情を注いでいた「アルフレッド」という名の型遅れなロボットだった。
薫の後ろに立っていた、老人は、優しく薫の肩を抱く。
「お嬢様。アルフレッドは人生……いやロボット生を全うしました。お嬢様の悲しみはわかります。ですが、しょせんはロボット……型遅れでございましたし」
「型遅れなんていわないで!!私は、アルフレッドが悲しんでいるのを知っていた。心が綺麗だったから、人間に絶望していたのよ。私が支えになってあげられなかったから……うう」
低い呻き声と、嗚咽を交互に漏らして、薫は涙を流し続けた。
薫は誰よりもアルフレッドを愛していた。心が綺麗で、優しくて、支えになってくれたアルフレッド。
だが、アルフレッドは一ヶ月前から、様子がおかしくなった。
苦痛を訴えるような歯車の音。そして、人形に愛情を感じるという現実逃避。
そういう薫もロボットに愛情を感じていたのだから、何もいえなかったが、それでもその様子は常軌を逸していた。
毎日毎日飽きもせず人形に語りかけては、家に戻ってくる。まるで夢遊病者のように、薫の目には映ったのだ。
薫は、目の前の鉄屑を優しく抱いて、唇を噛み締めた。
「あなたは、幸せだったの?ねぇ。アルフレッド、答えてよ……また笑ってよ」
人形に恋したロボットに恋した薫は、叶うはずのない願いを、鉄屑に向かって呟き続けたのだ。
359ワンダランド (お題:沈黙) 4/4 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/07(木) 17:18:38.98 ID:vxtW6q/W0
 ー大サビ

「理解の外のワンダーランド」の上映が終わって、ブザーが鳴り響く。
私は、ブザーが鳴っても、体を動かすことができなかった。
一体なんだったんだ?この映画は何を伝えたかったんだ?面白かったのか?悲劇だったのか?
そんな問答が頭の中で繰り出される。
ふと周りの観客達を見渡すと、自分と同じく、誰一人も動こうとしなかった。
声を発する人も、帰ろうとする人もいなかったので、辺りは沈黙に包まれていた。
私は、ふと、奇妙な感覚に襲われる。
映画館にしては静かすぎないか?
「理解の外のワンダーランド」という映画のせいで受けた衝撃が強すぎたとしても、全員が全員黙りこくって座り続けているなんておかしすぎる。
内容も内容なだけに、批判やヤジがあってもおかしくないはずなのに。
この奇妙な映画の言っている通り、私は「自分だけのワンダーランド」に迷い込んだっていうのか?馬鹿馬鹿しい。そんなくだらないことがあっていいはずが無い。
私は固まった体をほぐすように、背もたれに再度体重を掛ける。
ギシ
音が鳴る。
と、同時に緊張の糸が切れたように、観客の人たちは動き出した。
その様子を見渡して、私は安心する。
そうだ。ワンダーランドなんて映画の中だけの世界だよ。あまりにも上映後が静かすぎたんで、ちょっと不思議な感覚に囚われていただけだ。そうだよ。
「理解の外のワンダーランド」だって、振り返ってみると、とんでもSFものじゃないか。
息を吐き出して、ゆっくりと席を立つ。
どうやら長いこと考え込んでいたらしい。もう自分意外の観客はいなかった。静まり返った上映室に、多少気味の悪さを覚えながら、重い扉に力を込める。
ふと、「ワンダーランドの入り口」という単語が頭を駆け巡る。
そんな、ははは、映画に影響されすぎだな。多少怯えながら扉を開いた。
扉の向こうでは、さっきまであの映画を見ていた人たちが、映画の批評なんかしているかもな。
そんな気持ちで、私は扉の向こうを見渡した。
さっきまで映画を見ていた人たちが何十人と立っていた。そして、その人たちは全員、私に向かって、静かに、それでもしつこく視線を投げ続けていた。
その視線を受けて、私はやっと気づいた。
ここまでが、物語だったんだ。
世界の外で、ついさっき聞いた、ブザーの音が聞こえた気がした。
360以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 17:20:38.68 ID:vxtW6q/W0
投下終了
お粗末さまでした
361以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 18:06:06.29 ID:dUlAxSbo0
ho
362以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 18:28:24.06 ID:5H7DWEpx0
>>353
ついでに感想も書いてくれるととってもうれしい。
363以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 18:56:04.61 ID:7KjFkC7g0
お題
364以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 19:02:32.47 ID:VtxAyg+v0
>>363
誇大広告
365以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 19:02:56.78 ID:Hk8HTvcIO
>>362
りょーかーい。いま仕事中なんでいつになるかわからんけど。

>>363
夜食
366以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 19:40:52.88 ID:dUlAxSbo0
ho
367以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 19:56:13.38 ID:7KjFkC7g0
>>356-359
構成を凝ったのが徒になってるなあ。技量が追いついていなくて、読者にしてみればナンノコッチャって感じ。
書き始めて間もないんなら、起承転結という物語作りの基本をおさえてみてはいかがかしらん。
導入部のワケワカラン「文章の形態をとってる何か」にしてみても、厨二病患者が往々にして陥りがちの
恥ずかしい自己陶酔みたいなものが匂ってくるぜ。かっこつけなくていいんだよ、書きなれてないうちは。
それとまあ、昔から口すっぱく言われてきたことだが文章作法にきっちり則って書こう。
あれは意味のない規則なんかではなくて、読みやすくするっていう大事な目的があるんだからさ。
そーゆーのぶっ壊していくのは、そこそこ書けるようになってからでも遅くないと思う。
368以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 20:37:47.02 ID:y+jlmcFGO
あげ
369以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 21:15:59.02 ID:jFzjtimA0
きたくほす
370以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 21:19:43.47 ID:gmF4QrCj0
転載スタート
371永遠の逃走(お題:隠れ家) 1/5 ◇4enDguKo8U:2010/10/07(木) 21:20:34.80 ID:gmF4QrCj0
 栗多金属で働いて二ヶ月。といっても正社員ではない。私達はとある派遣会社からとばされてきた日雇い派遣だ。
深夜〇時半。一時から作業開始だ。それまでは、正社員の休憩場の裏で一服しながら雑談が通例である。
 「夜勤で六時間気ぃ狂いそうな作業やって六千五百円なんて安いっすよねぇ、園田さん」
 同僚の不季はセンサーライトの範囲に座りながら煙草をぷかぷか吸って苦笑する。私は
 「はは、全くだね」
 と口少なく言って自販機の缶コーヒーのボタンを押した。昔は
 (仕事貰えるのはありがたいもんだよ)
 なんて言っていたけれども、十数年日雇い派遣で働いて五十そこそこになると、そんな台詞も吐かなくなった。代
 わりに、妙に心にしっくりこない笑顔が増えた。
 同じ仲間の星崎は、休憩室の二階へ繋がる階段の下のほうで、ひっそりと立っていた。今日から社長に(勿論派遣
の)、この子様子見てやって、と言われた人だ。不季が来る前は、その近くの柱に息苦しそうに凭れていたのだが、
不季が来るとそそくさ遠慮して今の場所に移った。その様子を見た不季は、
 「あんま気使ってたら体持たねぇぞ。もっと肩楽にな。」
と言われていた。しかし星崎は
 「あ、はい」
とまるで意を得ない様子で場所を譲ってしまった。一方不季は苦笑いしながら近くのバケツを裏返してどかりとその
場に座った。加えて私も
 「兄ちゃん、立ち仕事ばかりだから今から座っていたほうがいいよ」
と言って階段の裏からパイプ椅子を持ち出して彼の近くに腰を下ろした。星崎は見た目普段着と変わらない様子だっ
たから、
 「作業着か汚れても良い服着ておいた方が良いよ、油とか使う仕事に回されるかもだからね」
というと彼は驚いた表情で
 「あの、仕事内容には作業着貸与って書いてあったんですけど」
と返した。私も昔こういう質問をしたから、その時のチーフに言われたように私も
 「そういうとこいい加減だからね」
と答えて予備の作業着を一着彼に貸した。
 他の同僚達は、やれパチンコで七万ふっとんだだの、小指を回して「できた」と言いながら笑っていたりと、皆陽気
な様子だ。
 夜一時五分前になった。
 「そろそろ行きましょうか」
372永遠の逃走(お題:隠れ家) 2/5 ◇4enDguKo8U:2010/10/07(木) 21:21:47.05 ID:gmF4QrCj0
私のかけ声を合図に、さっきまでの笑顔がまるで変わって、不季以外だるそうな面持ちへと変わっていくのが手に取
るようにわかった。
 「星崎君は、ちょっとついてきてくれるかな」
 「はい、わかりました」
 きりっとした表情で彼は私の後をついていった。
工場はとても広い、なんて言ったら稚拙かも知れない、が実際大きい。段ボールの中に何枚もの皿みたいにみえるタ
イヤの部品が入っていたり、ウチナベとかかれたものが積み上がっていたりするわけだが、それがどこまでも続いて
いる場所もあれば、蒸気につつまれ、金属を洗浄、仕分けしているところもある。更にその部品に傷がついていない
かを確認して積み上げる場所もある。働いて二ヶ月経ってはいるが、まだ入ったことのない場所も勿論ある。現場監
督の人に適当に挨拶を済ませると、監督からは
 「じゃあ園田さんとペアでいこうか」
と告げられた。私は彼とともに一礼して、星崎君を引き連れ梱包作業場へ向かった。正社員の女性が残業を止め帰る
ところに丁度居合わせ、お疲れさまですと声をかけた。女性は黙って一礼だけして私の横を通り過ぎていった。
 「正社員の人には逆らっちゃダメだからね。どんなことがあっても」
と、居なくなってから彼に呟いた。彼は同期の社員にすら逆らうことの無さそうな生真面目な顔で、はい、と答えた。
そんな生真面目さなんて要らない、そう思ったが、目の前のベルトコンベアが再び稼働を始めたのを見て、くだらな
い事は頭の隅へ追いやった。
 「まずは私の作業みておいて」
 ウチナベと呼ばれる円錐台に更に角度の鋭い円錐台が乗っかったような製品が、ベルトコンベアから流れてきた。上
に穴があいており、その穴を掴んでその上に青いビニールをかぶせ、またウチナベをのせ、シートをかぶせの繰り返
しで十個の山を作る。二回か三回その作業を繰り返すと
 「最初は十個は難しいから五個ずつやろうか、私はそれをまとめて段ボールに入れるから」
と言っておいた。
 簡単な作業と思うかも知れない。ウチナベ自体も一キロ無い。だがそれを十個ともなると運ぶのが凄く重い。ベルト
コンベアから流れてくるものをシートで保護するのも、これを延々と立ったままやるのだから、足も腰も感覚が麻痺し
てくる。何よりこのベルトコンベアから延々と流れてくるのが、まるで高い津波がとても遅いスピードで襲ってくるの
に逃げられない、そんな感覚を与えてくる。頭すら痺れる嫌な作業だ。無心で自分も機械にならなければ、壊れてしま
う。
 ある程度順調に作業が進んでいって、やがて十個ずつやれるようになると、一旦現場を星崎に任せて、この商品を検
品している不季に尋ねた。
373永遠の逃走(お題:隠れ家) 3/5 ◇4enDguKo8U:2010/10/07(木) 21:23:10.18 ID:gmF4QrCj0
「後何個?」
 「あと二千?半分は、いってないって言ってたっすね」
 不季は笑いながら言った。
 不季の作業は、奧から洗浄され巨大なベルトコンベアから流れてくるウチナベに傷がないかを検品する作業だ。流れ
作業で、時間内に一個終えなければ次のウチナベを処理するのに間に合わない。間に合わなければベルトコンベアの電
源を止めなければならないが、そうすると監督や洗浄している人たちから文句が飛んでくる。両耳に老朽化した機械の
ガタガタとした音が染みつき、作業を終えた後もしばしば残っている気がするほどだ。
 そんな中不季は、慣れてきたからというもの常に微笑を浮かべながらこの作業をやっている。「気ぃ狂った」わけで
はない。屈託のない笑顔でもない。何かしら憂いのある笑顔だと、私は知っていた。

 不季から枚数を確認した後、星崎が段ボールに収めることができなかったものを箱に詰めたり、足りなくなりそうな
ビニールシートを倉庫から引っ張り出したりした後は、ひたすら星崎の補助に回って三時間立ちっぱなしの作業をしていた。
 次の休憩十五分を終えると、星崎は大きな給食用のトレイにエアーをかける仕事を任された。まず隣にいる不季が細
い縁の所に見た目さっと一拭き(といってもエアーの勢いは手が押し返されそうなぐらい強いのだが)、これを四辺に
渡って行う。やってみなと不季は星崎にエアー噴出器を渡した。
 渡されたピストルのようなものの引き金を引くと、手がどっと押し返された。不季は
 「みんな最初はそうだから」
 と言って苦笑しつつ、ベルトコンベアを一旦止めてもらって改めて星崎に教え直した。
 一方、私はそのエアーのかけられたトレイの短い二辺にクッションを敷いて段ボールに詰める作業だ。さっきのウチ
ナベと違い、重さは一キロではすまないが、補助してくれる同僚がいるだけまだ楽なほうだった。
 「実際は一人で全部こなすこともあるからね」
 と星崎にいうと、凄いですね、自分も完璧にできるようになりたいです、と返された。思わず私も苦笑いして
「こんな仕事、完璧じゃなくて良いんだよ。一生懸命さは大事だけどね。好きこのんで…」
 と言いかけたが、そこで監督が偶々こちらの様子を見に来てしまった。私は言葉を慎んだ。不季は相も変わらず微笑
しながら、黙ってエアーのかけられたトレイを検品していった。その笑顔がちょっと陰差すものだったのには、星崎は
まるで気づいていなかった。私はその二人の様子に、自分勝手ながら不快さを覚えた。ベルトコンベアはガタガタとき
しむような音を音を立てていた。
 「こんな作業で暗くなっていたらやってられませんよ」
 そう過去に休憩中語ったのは不季だった。
 「ずーっと渋い顔して、黙々とやり続けてたら、その内あのベルトコンベアに巻き込まれて潰されちまおうかなって
374永遠の逃走(お題:隠れ家) 4/5 ◇4enDguKo8U:2010/10/07(木) 21:23:59.26 ID:gmF4QrCj0
思ったりね。暗くなってばかりはよくないっすよ」
 トラック運転手の正社員である程度真っ当な生活を送っていた彼が、度重なる交通違反で辞めさせられた後、行き着
いた先がこの日雇い派遣だった。もう行き着く先はどこにもない。幾度も日雇いを辞め、他の職種へ手をつけようとし
ても何処も雇ってはくれなかった。…そんなことが珍しくないのは、私というものが実証している。だから、彼が笑っ
ている理由がもう一つあるだろうなと思って、そう、としか答えられなかった。それ以来、彼の笑顔は私にとっての苦
痛になった。
 足が棒になり腰が捻ることもままならなくなったら終業の合図だ。外では朝日がのぼり、正社員達が体操をしている。
…もうそんな身分になれないことを、同僚の誰もが知っている。
 同僚達は大概、深夜ここに来た時の多弁さなどすっかり失せて休憩室の裏でぐったりしていた。煙草を吸う、珈琲を
飲む、携帯をいじる。私は煙草だった。ぷかぷかとういた煙が雲みたいになって、視界を塞いでも、気にも留めず吸い
続けた。一方で、不季は煙草の煙を何故か嫌そうに皆から離れながら菓子パンをかじっていた。
 「不季さんもどうです、一服」
 「ああ、吸いたいっすね。でも俺ちょいと吸うの減らしてるんですよ」
 「高くなったからですか」
 というと不季は、まぁ、というだけで他に何も答えなかった。煙草を吸って気分良く帰るのが皆の通例だったけれど
も、筋は通っていたのでそのまま納得した。
 一方で星崎はというと、疲労困憊という顔をして柱にもたれかかり、半分寝かけていた。不季は、だから言ったのに、
と言ったがその顔は笑ってはいなかった。
 「お疲れさまでした」
 いつもは同僚と煙草を吸って遅々として帰らぬ不季は、何かに急かされたように一礼して帰っていった。煙草の煙た
さが、少々煙草への欲求をくすぐるから嫌になったのかもしれない。私はそう勝手に解釈した。他の皆も同じ事を考え
たのか、ムードメーカーの彼が消えたからか、少々私達の休憩所は息苦しいように感じた。
 自転車でぼろいアパートに帰宅して、昨日ビデオで録画しておいた旅行番組を見た。時折見るこれが、現実を忘れさ
せる唯一の手段であった。最近ではめっきり貯まりっきりであったが…。
 「N県の隠れ家旅館、新鮮な山の幸が食べ放題」
 という題で放送される番組。山の麓の小さな旅館は、民家を改造しただけのように見えた。だが、それで良いなと思
った。気を楽にするというのであれば、豪勢な旅館なんて要らないと感じ始めたのは、いつ頃からだろうか。恐らく不
季が笑うようになってからだろう。
 私は、安易に声をかける割には不季が嫌いだった。仕事が辛いと投げ出したくても、逃げることすらままならず、「気
ぃ狂いそうな」事を機械のように延々とこなし続ける。腰は痛み足は棒になる。腰痛が出ても仕事をやっている内にそ
375永遠の逃走(お題:隠れ家) 5/5 ◇4enDguKo8U:2010/10/07(木) 21:24:40.00 ID:gmF4QrCj0
れが当たり前になった。その中で少しでも気を楽にしようとした生存本能があの笑顔だ。不季の笑顔は、少なくとも私に
とっての絶望だった。そしてその絶望に、私も徐々に染まりつつある。
 幸福の中で最も小さくて良い、そういう幸せのほうが、自分には身にしみる。
 そう考えた時、ふと
(生きたいなんて願望、かなぐり捨てたくなる)
 できれば、隠れ家とやらに住んでいたい。永遠にあの笑顔を思い出さずに済むようなそんな隠れ家だ。
 私はアパートから逃げ出した。生きていたくない。あの笑顔が生存本能だというならば、私はそれに逆行したい。たと
え死という道を選んでも、そこが、そこが。
 近くの安い六階建てのマンションに入ると、私は真っ先に最上階に登っていった。そしてそこから…。
 …。
 気がつくとそこは天上であるらしかった。下界を見ると既に深夜だ。栗多金属では、星崎が悲しそうな顔をしながら休
憩所で休んでいた。恐らく私が死んだことを知っているのだろう。だが何故か補充は二名新人が来ていた。よく見ると不
季も居ない。
 「園田さん」
 下界を雲の隙間からみていた私が振り返るとそこには不季が立っていた。
 「園田さんじゃないですか、お互い今まで本当に…」
 不季が全てを語る前に、私はその場から後ずさりして、うわぁ、と叫んだ。嗚呼、嗚呼、と叫びながら立って、永遠に
叫び続けながら、三途の川とは反対方向へかけだしていった。だがもう下界には戻れなかった。それでも隠れ家を探して。
 私は発狂した。

376◇4enDguKo8U:2010/10/07(木) 21:25:20.63 ID:gmF4QrCj0
初投稿で拙いですが感想をいただければ幸いです。
377≪§-START≫――スピード×スピード――1/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:26:01.83 ID:gmF4QrCj0
品評会5レス作品の書き直しだけど、13レスに加筆修正してるから
もう別モノだよね、って感じで甘えてみた。
書き直しスレ誰も見てくんねーし、本スレ過疎だからいいんじゃね。

手間かけて申し訳ないけど、誰か転載よろしくお願いします。

それと先週品評会作品に投票出来なくてすみません作品読む時間なかた

投下します
378≪§-START≫――スピード×スピード――1/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:27:03.82 ID:gmF4QrCj0
≪§-1≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 夜九時の池袋はごちゃごちゃとした賑やかな喧騒に包まれていた。
 うろつくガキども。いい年こいた会社帰りのソープ通い。客引きのニーチャンネーチャン。街の光はまるで蛾を呼ぶ無数の灯火。
 俺は慣れ親しんだ空気を感じながら街を歩く。
 今日の池袋はガキの人口密度が異常に高かった。引き寄せられるように、ガキどもはある目的地に向かって歩いてく。
 それは今日が、この夜の池袋を舞台にした障害物競走、『レース』の日だからだ。俺もその目的地に向かって歩く。
 ふと顔を上げる。
 街の人工の星海に侵略された、天然の星の無い夜空。
 俺は意味もなく「ヒュー」と口笛を鳴らす。

 ――いきなり、がつん、と誰かと肩がぶつかった。
「おいコラいてぇじゃねーかよ。アァ? 慰謝料払えよコラ!」「オレにも金くれ」「オレもオレも」
 なんというステレオタイプの不良たち。今時いねーぞ普通。
 今日は『レース』で人が集まり金が動くから、こういうヤツらの懐も温まるんだろうな、と俺は一人しみじみと。
 あっという間に三人のガキに囲まれた。
 ……まぁ、構ってる暇は無い。
 俺はポケットに右手を突っ込む。ガキどもは俺のポケットをじっと見つめる。俺は『何か』を指で摘む。
 財布かナイフでも取り出すと思っていたガキどもは、ポケットから出てきた俺の指が摘んでいるモノを見て笑う。

 ――それはどぎつい赤色の、一粒の錠剤。
 俺はその笑いを無視して、錠剤を口に放り込み奥歯で噛み砕く。言い表しようのない苦さが口内を伝導する。

 ――その瞬間、世界はスローモーションになった。
 四方を歩く人々。笑いながら拳を上げて振りかかる三人のガキ。全てが遅い。
 いや、世界が遅くなったわけじゃない。『俺が速くなった』だけだ。
 五感がフル稼働する。脳内分泌速度、思考速度、神経伝達速度、筋肉収縮速度、エトセトラ……。俺という人間の全ての速度が加速する。
 肉体のコンディションは一瞬にしてトップギアに。左足を踏み出す。地面を蹴る。ガキはまだ拳を振り上げたまま。
 俺は一瞬にして三人の間をすり抜ける。5m駆けたところで振り返る。ガキどもは俺がそこから居なくなったことにやっと気づく。
 俺はコマ送りのような速度で歩く人々の流れの中を疾走していった。俺の通り過ぎた空間に、一つの旋風の軌跡を描きながら。
379≪§-START≫――スピード×スピード――2/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:29:24.09 ID:pbHbTXIG0
≪§-2≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ある日、どこかの港の廃倉庫で高校をサボっていたガキの群れがいた。ガキの群れは遊びに興じていた。危ないお薬の掛け合わせ。
 ガキどもには金が無い。良い薬は金が掛かる。だから安い薬を掛け合わせて良い薬を作り出そうってわけ。バカみたい。
 そうして出来た薬。それは作ろうと思っていた薬の失敗作。それでもガキどものジャンケンで負けたヤツが一人それを飲む。
 副作用とかそういうのを一切考慮に入れてない、刹那的な生き方。悪く言えば、いつでも死ねる生き方。
 はい、飲む。さて、お味は? 味? そのガキに起こった出来事は、――それどころでは無かった。
 飲んだガキの見る世界がスローモーションになった。ただ、腕を振る、空を蹴る、自身が動くその速度だけはスローモーションでは
無かった。世界が遅くなったわけじゃない。ガキが速くなっただけだった。
 これは大発見。飲むと超人化して加速する薬。その場のガキどもはすぐにその調合比率で同じ薬を作り出し、飲む。
 超人にはならなかった。でたらめな速度の暴走。快感だけが暴走して射精したヤツもいたり、視覚伝達速度だけが暴走して動きがと
てつもなく変になったヤツもいたり、その他色々様々に、感覚がでたらめに先行し暴走する。
 少し経って分かったこと。その薬は肉体のありとあらゆる速度を増幅し加速させる。ただしそれを自在に制御する為には、全ての速
度が均一に加速しなければならない。そして均一加速は努力とかでどうにかなるものじゃない。生まれながらのセンス。持つ者にとっ
てのそれは夢のお薬。持たざる者にとってのそれはタチの悪い感覚暴走剤。最初のガキは持っていた。それ以外は持っていなかった。
ただそれだけ。そしてそれはガキにしか効果が無かった。
 その薬の利権でガキどもは金を稼ぎ、いつの間にか目立ったヤツが警察にしょっ引かれた。管理のずさんさからその調合レシピは流出。
 神に選ばれしガキをスーパーマンにする薬に付けられた名は『§(セクション)』。スピード(薬の隠語)とスピード(加速)の頭文字。洒落てる。
 これで『§』誕生秘話は終わり。
 最後に付け加えると、一番最初に加速したのは俺。
 あの頃はホントバカだったな。今でもバカだけど。

≪§-3≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 俺は二年の夏に高校を中退。ちょうど一年後ぐらいの今ではどこぞの喫茶店でバイトしている。
 今の俺はあの頃の俺をバカだと思う。
 『人間は幸福を得るために生きるのだから、その幸福を作り出す脳内分泌液を直接得ればいい』というどうしようもない判断のもと、
俺は薬に走った。
 今では、この『§』以外の薬は止めている。便利なことに今のところ『§』には中毒性も無く副作用も無い。ヤった後に死ぬほど体
がしんどくなって二〜三日眠りこけるだけ。
380≪§-START≫――スピード×スピード――3/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:30:20.80 ID:pbHbTXIG0
 ただし今のところは。副作用が突然やってきて明日死ぬかもしれない。
 でもそれでいい。今『レース』を走れたら、それでいい。
 昔の俺は薬に幸せを感じて、今の俺は走ることに幸せを感じる。
 何も変わっちゃいない、刹那的な生き方。本当にバカは死ぬまで治らないらしいな。
 加速化された思考を止めた俺は『レース』用に変装した灰色のサングラス越しに、横に並ぶ三人の男を見る。三人ともガキどもを束
ねるチームヘッド。下は一五歳から、上は二三歳まで。
 『§』を使いこなすヤツはガキどもの尊敬を集める。それに、一般人が喧嘩で勝てるわけ無いしな。頭の出来た『§』に選ばれしガ
キは自然と上にのし上がる。
 俺? 俺は人を顎で使うのが下手。だからいい。それに孤高と孤独を読み間違えた一匹狼の方が俺に似合う。
 さて、『レース』について。
 加速しながら喧嘩するのも花だが、すぐに終わっては見てる方は楽しくない。
「速くなったんだし走れば?」
 そんな誰かの一言で一ヶ月おきに開催されるようになった『レース』。夜の池袋をスタートからゴールまで疾走するお茶目なかけっこ。
 その勝敗でチーム間の色々なことを決めたりする。俺には無縁のお話。
 勝者には賞金。こっちには縁がある。一位にしか支払われないそれを得れば一か月分は金に困らない。
 観客のガキどもは合同チーム取り仕切りのもと、誰が勝つか賭けをする。ダービーレース。
 あと、『レース』中の俺たちの走りは池袋のあちらこちらに仕掛けられた―監視カメラにカモフラージュされた―カメラと、足りな
い場所はその近くの監視カメラをハッキングして、映像として映し出される。
 『レース』参加者の俺たちに取り付けられた発信機はリアルタイムで俺たちの居場所を本部に届けて、池袋中にあるカメラを使って
俺たちを追跡。その映像は本部でリアルタイムに編集される。観客のガキどもはこの池袋のあちこちにある『見せ場』に置かれたテレ
ビを見て俺たちの走りを観賞する。
 警察のご心配? 大丈夫。今の池袋の治安はありえないぐらい良好。ガキどもを束ねるチームヘッドのおかげ。
 チームヘッドが「池袋の犯罪に走りやすいガキどもを抑えているから、『レース』は見逃してくれよな」と言いながら警察の上層部
に札束を握らせれば、それでお終い。

≪§-4≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 そろそろレースが始まる。横にいるヘッドの一人、ダイキが俺に話しかける。『§』をヤっているヤツにしか分からない早口。
「今日こそはオレが勝たせてもらうからな」
「三ヶ月連続で俺がメシ代貰ってくよ」
381≪§-START≫――スピード×スピード――4/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:31:49.15 ID:pbHbTXIG0
「……お前、チーム作れよ。お前の元にならオレ以上に人が集まるぞ」
「興味ねーよ。俺は走れればそれでいい」
「謙虚なこった」
 俺は首をコキコキとならす。観客から見ればその首の動きすら高速なんだろう。司会者の男が車の上に立つ。コインを指に乗せる。

「待ってください! 私も参加します!」

 そのゆっくりとした言葉の発生源、後ろを向く。プーマの紺色ジャージ姿の女の子。俺と同じ灰色のサングラス。ハサミで大雑把に
切り揃えたようなショート。目隠れてるけど可愛いな。サングラスの下から顔を覗く。

 ギクリとした。
 俺の高校の元同級生だった。高校時代の記憶の中のこいつは本当に優等生だった。
 俺は口で言っても早口過ぎて通じないと思うのでそこらへんの誰かから携帯を借り文字を打ち込む。それを見せる。
[飛び入りは一応オッケーだけど『§』出来るの? それに怪我とかしても知らねーからな]
 すると少女はゆっくりとポケットからどぎつい赤色の錠剤を一錠。口に入れ噛み砕き、『俺の知覚速度と同じ速度で』俺の灰色のサ
ングラスを少しだけはずす。
「心配無用です。星河君」
「……分かりましたよ梅野さん」
 俺は携帯で[こいつ参加。名前はウメな]と打ち込み他の三人に見せて車の上に立つ司会者のところまでそれを。ウメは簡単な処理
を済ませ、参加決定。
「お前なんでこんなところに。今頃あっちでお受験のお勉強だろ?」
「それは全て『レース』の後でお話します」
 優等生の中の優等生ともあろうお方が、薬に手を出して、更には『レース』に参加。世の中って不思議だな。ギャップ萌えってやつ?
「よぉガキども! 『レース』の時間だぜ! 今日はヘッドのダイキ、サツ、リョウと一匹狼のホシ。そしてなんと可愛い美少女ウメ
の飛び入り参加だ! 今夜のオカズはこれで決まりだなヒャッハー! さぁ、『レース』開幕! 今宵の勝利の女神は誰の手に!?」
 車の上でいきり立つ司会者の長ったらしくて遅い口上が終わる。そいつはコインを指に乗せる。上に弾く。軽い金属音とともに俺の
神経はそれに集中し、それ以外の音が消える。
 地面に落ちると同時に『レース』スタート。
 じっと待つ。ずっと待つ。
382≪§-START≫――スピード×スピード――5/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:32:59.65 ID:pbHbTXIG0
 ……チャリン。

≪§-5≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 音と同時に五人は飛び出した。
 スタートダッシュからトップギアの肉体は一瞬にして、そこに風を置いていく。俺は前のダイキから二番目。驚いたことにウメは俺
の後ろ。少しだけあいつの『才能』を垣間見た。俺は前を見る。平坦なストリートを疾走する。
 暗さは全く気にならない。研ぎ澄まされ増幅し加速された肉体。通り過ぎていく観客のガキども。50mを3秒以内で走り抜ける俺の速
度、時速60kmオーバー。
 俺は風を裂き疾走する。激しい空気抵抗の壁は幸せの証。アドレナリンはもはや限界を超えて溢れ出している。今にもトリップして
しまいそうな幸福感。
 それでも俺の表情は冷静そのもの。もっと走りたい、幸せを感じたい、そして、出来れば一位になりたい。だから俺は今を全力で。
 平坦を真っ直ぐ走るだけじゃどうあがいてもダイキには勝てない。けれどもここは学校の運動場じゃない。ここは夜の街だ。
 さて、そろそろ平坦は終わりだ。あるのは建物。『レース』はいわば障害物競走。スタートからゴールまで。決められたコースは無
い。俺たちが駆ける道が俺たちのコース。自分だけのコースは綿密に事前調査する。戦略は勝敗を左右する。
 俺は道を曲がり歩く人々の間に風を残し、人気の無い駐車場に突入する。塀にジャンプする。横幅15cmのコンクリートブロックの上
を疾走し、民家の屋根に飛び乗った。ご迷惑おかけしますね、と住民に謝罪。
 俺は池袋の夜の街の屋根を駆ける。夜空は曇り。雲の切れ目から臨む月。十六夜。餅が食べたくなった。まぁ、勝ったあとでたらふ
く食えばいい。
 俺は屋根から屋根へと飛び移る。長屋のアパートを助走をつけて高低差を利用して駆け抜けて、狭い道を隔てたマンションのバルコ
ニーの鉄柵へとジャンプ。着地と勢いの衝撃を、体を捻り後ろへ飛ばす。俺は鉄柵からジャンプし、すぐ後ろの電柱に突き刺さった鉄
棒に手をかける。遠心力を利用し自身の体を半回転。そこで手を離す。俺の体は空中を捻りながら一回転して、垂直上方に飛ぶ。電柱
に突き刺さる―これより上にそれは存在しない―鉄棒に、地面に立つように乗る。そこでまたジャンプ。マンションの屋上に着地して、
そのまま駆ける。
 この『レース』で重要なのは、高さ。今回のゴール地点は三階立ての民家の屋上。安心してくれ、どこかのチームのガキ提供の家だ。
 ここで高さを稼いでおけばゴールする時は飛び降りるだけでいいし、何より道を走るのは曲がりすぎて非効率的だ。俺の頭の中には
池袋の街のパースがぎっしり入り込んでいる。勉強は出来なかったが、毎日毎日頭に叩き込めば流石に俺でも出来る。努力はした。だ
からそのパース、今回の『レース』に勝利するためのコースはもう出来ている。俺は今、そのコースを駆けている。
 さっきの屋上を飛び、更に屋上を駆けている時、横に人影を見つけた。俺と同じ様に走り、俺と同じ高さの屋上を駆けている少女。
383≪§-START≫――スピード×スピード――6/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:33:59.21 ID:pbHbTXIG0
 ――ウメ。驚いた。初めての『レース』で、この俺と同等……。
 ウメは確か、高校時代の陸上での走りの速さは有名だった。勉強も出来て運動も出来る学校内のスーパーアイドル。
 ただ、この『レース』はそんなお遊びじゃない。下手すれば落下して死ぬかもしれない、命を掛けたバカみたいな戦い。
 俺は今、走ることを生き甲斐にしている。『§』を使いこなす才能は元からあった。ただ、正直に言って、俺にはあまり『レース』
の才能は無かった。『§』を得た後に俺は『レース』に対する喜びを知った。才能が無い俺は『レース』に対する努力を惜しまなかった。
 『§』に対する才能の有無は絶対。ただし、『レース』に対する才能の有無は絶対ではない。だから俺は努力を惜しまなかった。
 なのにウメは……。悔しいが、あいつの走りをちょっとだけ見ても分かる。あいつには『レース』の才能がある。絶対的な才能が有る。
 ――俺には無い。
 ああ……、くそっ……。

≪§-6≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 俺は高低差を稼ぎ、七階建てマンションの屋上を疾走していた。
 俺の遥か後ろの地表にはダイキ。単なるダッシュは俺たちの中でもトップクラスだが、高いところのトリッキーさの場合は一番下。
俺に勝つには百年はえーよ。
 今日の敵は、体がクソ柔軟なサツと、――『レース』の絶対的な才能を持つウメ。
 俺は七階建てマンションの屋上から四階建てマンションの屋上へとジャンプ。斜め上方。夜空を飛ぶ。
 観客のガキは『見せ場』にいる。『レース』に参加するヤツらは『見せ場』を通らなければ失格。
 まぁ、他のヤツらは下の三階建てアパートを駆けていたと思うが、俺は七階建てから四階建てを飛翔中。ガキどもが全員度肝を抜か
しているのがありありと分かる。だってこの道幅、20mはあるからな。
 俺はたっぷりと滞空しGを味わい風を感じ、四階屋上に両手から着地。衝撃を、両手を引き寄せることによって受け流しそのまま縦に
転がる。下方向の衝撃を緩め、下方向の衝撃を進行方向に移動させ、二回転後には普通に走っていた。
 遠くからゆっくりとしたガキどもの歓声が聞こえてきた。

≪§-7≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 『レース』開始から3分11秒が経過したことを俺の体内時計が知らせる。俺の見込みだと、このままではゴールまであと30秒。
 今走る場所では屋上の高度が似たようなマンションが多い。俺は今、八階建てを疾走中。
 俺は途中でコースが合流したサツを追い抜かした。ウメは、俺と併走していた。俺の右側を、独自ルートで駆けていた。
 身長も普通。体格も普通。普通の可愛い女の子にしか見えないウメ。ただし、絶対的な才能を身に付けていた。フォーム、ジャンプ、
384≪§-START≫――スピード×スピード――7/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:35:03.26 ID:pbHbTXIG0
着地、受身、衝撃方向の変換、ダッシュ、戦略考察。全てが完璧に近かった。とても初めての『レース』とは思えなかった。
 
 ――だからどうした。

 俺は気づく。俺は『負けたときの言い訳』を考えていたに過ぎなかったのだ。ウメには才能が有り、俺には才能が無い。俺は自身の
ちっぽけなプライドを守るために、そんな詭弁を必死に繰り出していたに過ぎなかったのだ。
 そんなことどうでもいい。勝てばいい。負けたくないなら、勝てばいい。
 だから俺は、無謀としか言えない戦略(コース)変更をした。
 ゴールの三階建て一軒家の屋上。その家を囲むようにそびえ立つ難関。大きな八階建ての幅広マンション。そこを攻略する二つのル
ート。右回りか、左回りか。どちらにしろその幅広を回りきるために大量の時間をロスする。
 そこで俺は第三のルート、上から攻めることにした。30mもの道を隔てた十一階建てマンションから。
 十一階からの八階へ。道幅30mの大ジャンプ。残り15秒。

≪§-8≫――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 階段を疾風の如き速度で三階分。屋上へと続くフェンスを飛び越える。ここから端まで17m。
 階段を上った所為で、蓄えられた運動エネルギーはいまやゼロ。
 俺は走る。全てをかなぐり捨てて走る。風を裂き、風を纏い、風を取り残し、駆け抜ける。
 空気抵抗の壁を強引に走り破る。
 50mを2秒で済ませる、正真正銘の全力疾走。
 足に力を込め、斜め上方に十一階から夜空へと、飛ぶ。
 空中の俺は世界と同調したスローモーション。慣性と重力と空気抵抗に為されるがまま。

 その時、俺は重大な事実に気づいた。八階建ての幅広マンション。急斜面の三角屋根。

 ――やっちまった。

 屋上が無かった。

 ……終わった。俺は死ぬ。
385≪§-START≫――スピード×スピード――8/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:35:58.58 ID:pbHbTXIG0
 後悔よりも、どうしようもない満足感が心を支配した。
 心が真っ白になった。

「ここまで走ったんだ。もう、いいだろ?」

≪§-9≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 俺の体は上昇を止め、重力に引きずられていく。夜空を落下していく。
 『§』による加速効果と死に際の動物本能が相乗し、究極にアクセラレートされた知覚。
 あくびが出るほど死を待ちくたびれる、だらだらとしたスローモーションの世界。

 ゴミクズのような走馬灯が脳内を駆け巡る。

 ――人間は幸福を得るために生きるのだから、その幸福を作り出す脳内分泌液を直接得ればいい。

 ――ある日、どこかの港の廃倉庫で高校をサボっていたガキの群れがいた。ガキの群れは遊びに興じていた。危ないお薬の掛け合わせ。

 ――そうして出来た薬。それは作ろうと思っていた薬の失敗作。それでもガキどものジャンケンで負けたヤツが一人それを飲む。

 ――副作用とかそういうのを一切考慮に入れてない、刹那的な生き方。悪く言えば、いつでも死ねる生き方。

 ――飲んだガキの見る世界がスローモーションになった。

 ――腕を振る。空を蹴る。その速度だけはスローモーションでは無かった。世界が遅くなったわけじゃない。ガキが速くなっただけだった。
 
 ――『§』を得た後に俺は『レース』に対する喜びを知った。

 ――昔の俺は薬に幸せを感じて、今の俺は走ることに幸せを感じる。

 ――何も変わっちゃいない、刹那的な生き方。本当にバカは死ぬまで治らないらしいな。
386≪§-START≫――スピード×スピード――9/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:37:22.94 ID:pbHbTXIG0
 すがすがしいまでに自業自得。
 どうやら、バカを治す時が来たようだ。
 俺は落下しながら声を張り上げて笑った。腹が捩れるほど笑った。
 すると両目から涙が零れてきた。泣いている? いや、ただの泣き笑いだ。純粋に、笑いすぎたせいだ。
 溢れ出た涙滴は上へ上へと舞う。夜空に溶けていく。
 俺は両手を広げて天空を臨む。
 街の人工の星海に侵略された、天然の星の無い夜空。
 そう。天空はどこまでも薄暗く。

 ――ただ地表は明るかった。

 ふと下を見る。

 空から見る池袋の夜の街は綺麗だった。
 ごった返した光の奔流。
 汚くて綺麗。そんな矛盾を内在させながら、いつまでも輝く愛しき星海。

 真っ白になったはずの心がぐちょぐちょとした汚い色に染まりきった。にやけてきた。
 心の奥底で何かが芽生えた。諦めでは無い。しぶとさが。

「――もっと走りたい。これで、走り終わりとか……。まだ、生きてーな」

≪§-10≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 あれほどの急斜面の三角屋根では受身を取ることなど不可能だ。ぶつかって転がって下に落ちて死ぬのがオチ。
 だから俺は、敢えて身体を進行方向の正面に、両手両足、身体をあらん限りに広げた。
 押し寄せる空気抵抗を増大させた。推進力を減速させた。
 そして、俺は今、八階建てマンションの壁面すれすれを落下していた。
 意図的に作り出した状況。
 助かる方法は、これしかない。
387≪§-START≫――スピード×スピード――10/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:39:04.12 ID:pbHbTXIG0
 バルコニーが目の前を上に通り過ぎようとする。俺は右手でそれを掴む。歪な音を立てて、右手の骨は折れる。落下は止まない。
 ただ、少しだけ落下速度が下がった。
 また上に過ぎ去ろうとするバルコニー。今度は左手でそれを掴む。さっきと同じ様に左手は折れた。
 落下速度はまた下がった。
 そして過ぎ去ろうとするバルコニー。ここで俺は揃えた両足を引っ掛ける。そのまま落下エネルギーは背中に移動し、壁に激突した。
 両腕が死ぬほど痛い。背中もめちゃくちゃ痛い。
 ――それでも俺はまだ生きている。それでも俺はまだ走れる。
 バルコニーから即座に起き上がり部屋を見る。無人。人の住む気配無し。管理人さん、後で金払うから。
 俺は窓を蹴破り部屋を駆け扉を蹴破り廊下を駆ける。階数表示が目に映る。ここは五階だった。
 俺はそのまま廊下から飛び出し、直接ゴール地点の三階建て民家にジャンプ。ゴールまで、あと0秒。
 両手が骨折して使えなかったために受身を失敗。両足が骨折した。
 両手両足骨折。――バカ過ぎだろ。まぁ、死ぬよりマシか。
 見事一位。みなさん俺を見て感動を通り越して呆れてる。俺も呆れてる。
 数秒後にウメがゴール。綺麗に着地。俺を見て驚いた。
 俺はにやつきながら、勝ち誇ったように言葉を紡ぐ。

「俺の勝ち」

 言い終えると同時に世界が真っ暗になった。

≪§-11≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 俺は闇医者に担ぎこまれて、ここは病室。真っ白い空間。俺は両手両足を吊り上げられながらベッドの上に。そして病室に咲く一輪
の花のごときパイプ椅子に座ったウメさん。可愛いなぁオイ。
「そこの封筒に入った金、いつでもいいから部屋ぶっ壊したマンションの管理人さんに届けてくれねーか?」
「お安いごようですよ」
「あと、あのさ、結局なんで優等生さんがこっちの世界に来ちゃったワケ?」
「……私は高校生活を勉強と陸上部活で過ごしてました。私はそれがある日突然嫌になって、薬に手を出しました。その時の薬が『§』です。
 以上。これだけです。これだけが私の全てです」
「後悔とか、してない?」
388≪§-START≫――スピード×スピード――11/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:40:42.00 ID:pbHbTXIG0
「全然してません。むしろ、『§』は再び走る喜びを教えてくれて、感謝しています。それにもし、『§』以外の薬に出会ってたかと
思うと、自業自得ですけど、ぞっとします」
「そうか。で、何で俺のこと知ってたの?」
「えっとですね……『§』をやり始めてから、また走るのが本当に好きになりました。もちろん『レース』もその時知りました。
 私はずっと『レース』を見てました。そこで灰色のサングラスをかけた見知った顔、星河君が居ました。私は『レース』に出ること
を夢見てました。そしてそれが、飛び入り参加で叶いました。練習した甲斐があって、結構いいところまでいけました」
「……やっぱ練習してたの」
「はい」
 このウメのことだ。もしかしたら、俺以上の努力だったのかもしれない。
 何が『絶対的な才能』だよ。笑わせる。才能の有無とか関係無しに、結局みんな頑張ってるんだよな。
「ウメ。お前ホント才能あるよ。多分もっとテクニック覚えたら今の俺なんか目じゃないくらいに」
「出し惜しみせずに教えてくれますか?」
「いいぜ。まぁ未来の俺もその分ウメより上手くなるけどな」
 ウメは笑った。ひかえめに、上品に。やっぱこの空間、心地良い。
「星河君、それにしてもよくこれだけで助かりましたね。全治二ヶ月。二ヵ月後にはよろしくですね」
「おっけー」
「あ、そういえば星河君。言われてたお餅、持って来ましたよ。今食べます?」
 ……――俺は池袋の夜の街の屋根を駆ける。夜空は曇り。雲の切れ目から臨む月。十六夜。餅が食べたくなった。まぁ、勝ったあと
でたらふく食えばいい――……。
 勝利の祝い餅ってことで。
「あー、でも両手吊り上げられて食べれねー」
「いいですよ。私が食べさせてあげます。星河君、赤ちゃんみたいですね。お口を開けてください。詰まらせないでくださいね。はい、
あーん……」

≪§-12≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 今日は『レース』の日ではない。
 それでも夜九時の池袋はごちゃごちゃとした賑やかな喧騒に包まれていた。
 うろつくガキども。いい年こいた会社帰りのソープ通い。客引きのニーチャンネーチャン。街の光はまるで蛾を呼ぶ無数の灯火。
 俺はウメと共に歩きその慣れ親しんだ空気を感じながら、ふと顔を上げる。
389≪§-START≫――スピード×スピード――12/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:42:58.45 ID:/fNeI/M00
 灰色のサングラス越しに臨む、街の人工の星海に侵略された、天然の星の無い夜空。
 代わり映えのしないこの大切な世界に安心感を覚えた俺は、敬意を込めて「ヒュー」と口笛を鳴らす。
「ウメさー。まだ高校行ってるよな。大学行くの?」
「一応日本で一番賢いところにですね」
「何か夢でもある?」
「いいえ。何もありません。相変わらず高校は窮屈です。多分大学も窮屈になります。将来は無難に高収入を稼げる職業に就くと思い
ます。両親の願いはそうですからね」
 ウメは間を空けて、
「それでも……今走れたら、そんなことはどうでもいいんです」
 俺と同じ灰色のサングラスで隠された笑顔。笑ったウメは、ギャップ萌え。
「よーし、単刀直入。まずお前に走りを教える前に、一回俺と勝負しろ。ゴールは前と同じあの家の屋上」
「いいんですか? 一週間練習したとはいえ、二ヶ月のブランクは結構きついと思いますが。それに星河君が寝ている間、私はずっと
走っていましたよ?」
「気にすんな。全力で来い」
「分かりました」
 俺はポケットからどきつい赤色をした一粒の錠剤、『§』を取り出し、口に放り込み奥歯で噛み砕く。言い表しようのない苦さが口
内を伝導する。

 ――その瞬間、世界はスローモーションに。
 ウメも同様に行為を済ませる。
 『§』をヤっているヤツにしか分からない、高速の会話。
「勝ったら、何かご褒美でも貰えませんか?」
「なんでもいいぜ」
「まだ残暑です。私が勝ったら、私を海に連れて行ってください」
「おっけー。それじゃあ俺も」
「何です?」
「俺が勝ったら、俺を海に連れてってくれ」
「……負けられないですね」
「負けてもらうからな」
390≪§-START≫――スピード×スピード――13/13 【走る】 ◇FcModpyaRc:2010/10/07(木) 21:43:45.55 ID:/fNeI/M00
 俺はポケットから10円玉を取り出す。右手の親指に乗せて、弾く。
 軽い金属音とともに俺の神経はそれに集中し、それ以外の音が消える。
 じっと待つ。ずっと待つ。

 ……チャリン。
 『レース』スタート。


 俺とウメは疾走する。



 池袋の夜の街、汚くて綺麗なこの星海に、二つの旋風の軌跡を描きながら。



≪§-END≫―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
391以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 21:45:01.50 ID:/fNeI/M00
やはりこれだけ連投すると二度は規制されるものだね。
392以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 21:52:23.92 ID:7KjFkC7g0
グレートな転載に乙を
393以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 22:25:35.31 ID:y+jlmcFGO
乙華麗
394以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 22:48:06.92 ID:jFzjtimA0
乙乙
395以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 22:53:49.39 ID:2Ekz2Nxa0
長文失礼します

>>367
 感想ありがとうございました
 ナンノコッチャな気分にさせてしまったのは申し訳なく思います
 文章作法については、今勉強してますので、この感想を次回になるべく
生かしたいと思います

>>371-375
 読みました
自分も工場のバイトの経験があるので、かなり胸にキましたwww
 不季の最後をほのめかすような、伏線があるといいなぁと思いました
 ですが、工場の陰鬱な描写がこれでもか! というように書かれていたので
読者を引っ張っていく点ではいいなと思いました
 なによりも、転載お疲れ様です

>>378-390
 読みました
「勝ったら、何かご褒美〜」という会話で、思わずニヤリとしてしまいました
スピード感と、アクションの描写は楽しいなぁ、上手いなぁと関心してしまいました
 何か一つ言うならば、もう少し、主人公以外の人間(特にウメ)との会話を
膨らますことができれば、感情移入できて、最後のオチも気分良く
終われたのにな。と、思います
 それと、「セクション」を服用して、「レース」に参加していない人たちの
描写もあると、もっと世界観にのめりこめるかも
 何はともあれ、お疲れ様でした
396以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 23:17:53.07 ID:jFzjtimA0
ほそくながくほしゅ
397以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 23:37:52.04 ID:R2wE7g1K0
お題
398以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 23:45:56.34 ID:2Ekz2Nxa0
>>397


私もお題ください
399以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 23:47:56.57 ID:jFzjtimA0
>>398
釣る
400以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/07(木) 23:47:58.57 ID:SUxu5Hmg0
>>398
ドア
401以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 00:18:17.99 ID:dNzmykLTO
ほい
402以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 00:42:04.43 ID:Q6+56O6g0
品評会迷走中なう
403以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 00:54:50.97 ID:63FSm6kR0
品評会用の話の形は頭の中にできたけど今回は書く時間がない。
404以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 01:04:15.75 ID:eqTKi5zZ0
| ・ω・)
405以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 01:25:47.23 ID:eqTKi5zZ0
| ・ω・)<さようなら

|彡
406以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 01:31:49.43 ID:Q6+56O6g0
>>405
しゃべった!?
407以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 01:33:05.86 ID:joIcAJpx0
                       _,.>
                   r "
 しゃべった!?         \    _
                    r-''ニl::::/,ニ二 ーー-- __
                 .,/: :// o l !/ /o l.}: : : : : : :`:ヽ 、
                  /:,.-ーl { ゙-"ノノl l. ゙ ‐゙ノノ,,,_: : : : : : : : : :ヽ、
              ゝ、,,ヽ /;;;;;;;;;;リ゙‐'ー=" _゛ =、: : : : : : : :ヽ、
              /  _________`゙ `'-- ヾ_____--⌒     `-: : : : : : : :
...-''"│    ∧  .ヽ.  ________   /   ____ ---‐‐‐ーー    \: : : : :
    !   /   .ヽ  ゙,ゝ、      /  ________rー''" ̄''ー、    `、: : :
    .l./     V   `'''ー-、__/__r-‐''"゛     ̄ ̄   \   ゙l: : :
                   l     .,.. -、、 _ ‐''''''''-、    l   !: :
                  |   /    .| .!     `'、  |   l: :
                      l   |     .l,,ノ     |  !   !: :
                       / '゙‐'''''ヽ、 .,,,.. -''''''''^^'''-、/  l   !: :
             r―- ..__l___    `´            l   /   /: :
                \      `゙^''''''―- ..______/_/   /: : :
408以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 01:37:02.39 ID:dNzmykLTO
コダマだ
好きにさせておけば悪さはしない
409以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 02:37:00.61 ID:Q6+56O6g0
ねるまえほ
410以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 03:30:25.44 ID:Q6+56O6g0
もかいほ
411以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 03:42:43.43 ID:O9EnIdBz0
投下します
412ホラー談義 (お題:ドア) 1/7 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 03:45:32.74 ID:O9EnIdBz0
夏が終わり、秋の季節をひしひしと感じさせる。
所狭しと黄色や、オレンジ色を山々にばら撒いて、白い雪を待つ風景が目の前に広がる季節。つまる
ところ初秋が訪れる。
大学のサークルや同好会が、競って合宿所に予約を入れる時期がやってきた。
野球部やサッカー部、さらにはラグビー部など、運動系を中心として、いろんな体育会系と文系の
部活が、合宿という名目でお泊り会を開くために、合宿所を借りるために予約を入れるのだ。
我が「語り部」も、例にも漏れず数ヶ月前からこの時期に合わせて、合宿所に予約を入れた口だった。
「語り部」という名前を不思議に思う人は大勢いるだろう。それもそのはず、この大学だけの部活
だと私は思う。「語り部」なんていう奇妙な名前は、どの大学のホームページにも乗っていやしない
し、名前だけでは何をする部活なのかわからない。私は、そういった奇妙さに惹かれ、「語り部」
メンバーに加わる決意をしたのだ。

合宿所の二階の一室で、私達「語り部」メンバーは一同集まって、いそいそとこれから始まるで
あろう談義の準備をしていた。
あるものは古びたノートであったり、映画のDVDであったり、雑誌であったり……さまざまだった。
私も、急いでその準備に取り掛かる。
413ホラー談義 (お題:ドア) 2/7 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 03:48:17.05 ID:O9EnIdBz0
私達の準備を待つように、ホワイトボードを背にした部長は一室を見渡して、一旦頷き、ゆっくり
と前置きを話し始める。
「みんな、知ってのとおり、語り部のための秋がやってきた。語ることの尽きない君たちのため
だけの季節だ。死ぬほど語って」
部長の言葉を聞いて、小野先輩は囃し立てる。
「岩井部長の前置きは、長いので有名なんですよね。いいからちゃっちゃと先に進んでくださいよ。
風邪ひいちゃう」
それを受けて、部長は苦笑いを浮かべ、直ぐに顔色を元にただし小野先輩に向けて尋ねる。
「小野の言いたいことは十二分にわかる。……これすらも前置きだというのかもしれないが、では
小野。お前が、この会合の趣旨を手短に説明してはくれないか。俺も、会が始まる前に部員達の
やる気を削いでは困るのでな」
小野先輩は、その言葉を受けて、別段困ったという風ではなく、鮮やかに部長の言葉を繋げた。
「岩井部長の命を受けての司会交代だけれども、気を悪くしないでね。今回の秋合宿記念すべき
一回目で、今回のお題は、ホラーについてよ」
小野先輩はそう言った後に、私達を見渡してニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
しんと静まり返った部屋がおかしかったのか、小野先輩はあからさまに楽しいといった様子で
笑い声を上げた。
「ふふふ。びびりすぎよ。別に、怖い話をするからといって、怖い雰囲気を作り出してなんて
言ってないのよ? ただ、合宿所という閉鎖的な空間で、存分に恐怖について語りましょうっていうだけ
の話なんだから」
小野先輩は吸血鬼にも似た青白い顔を、蛍光灯の光で、存分に照らされながら舌なめずりをした。
414ホラー談義 (お題:ドア) 3/7 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 03:52:02.88 ID:O9EnIdBz0
一室の真ん中に置いてある机を囲むように座っている部員の人たちは、待ってましたと言わん
ばかりに、持ってきた資料を開いて、小野先輩の言葉を待つ。勿論私もその中の一人である。
小野先輩は部員のそういった行為を見て、いち早く準備が終わったのであろう遠藤に、最初の語る
権利を与えた。
「こほん。えー、俺はまず恐怖とは何かについて調べてみた。最初に断っておくが、ここで議論
する恐怖とは、生物的な行動、及びトラウマといった類の話じゃぁない。一般的な娯楽としての恐怖だ」
遠藤は、持参の小説「姉飼」を掲げて、熱っぽく語る。
「この小説は、現代のホラーに衝撃をもたらした。少なくとも、俺のホラー人生に革命を起こしたんだ。
何が凄いといえば、この小説の、土台である状況設定がそもそもの恐怖なんだよ。
 普通の怪談だったら、雨がしとしと降る夜……と長々続くところを、姉という不気味なものがある。
という設定で不気味さを演出している。そして、それをリアリティ溢れる登場人物の心情描写で、
非現実と現実が交じり合って、より効果的な恐怖を生み出しているんだ」
私も実は遠藤が語っている「姉飼」を読んだことがある。
その内容はグロテスクではあるのだが、色彩描写の美しさという側面も持ち合わせているので、
ただグロテスクという一言で終わりにできない気持ち悪さが際立っている作品であった。
それを聞いていた大石先輩は、静かに手を上げる。
ちなみに余談ではあるが、「語り部」のルールは基本的に語る人の邪魔をしない、というもの
なのだが、挙手をして、語っている人の了承を得ることができたなら、口を挟んでもいいという
ルールがあるのだ。
熱弁していた遠藤は、手を上げている大石先輩を見て、どうぞ、と反論の了承をした。
415ホラー談義 (お題:ドア) 4/7 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 03:56:39.93 ID:O9EnIdBz0
 「遠藤、悪いな。お前の言いたいことは大体わかった。設定が突飛であるが、それを他の面でカヴァー
すれば非現実と現実の境目があやふやになる。そういうところで恐怖を演出している。俺も納得したよ。
と、いうかそういう話だったら岩井部長のほうが詳しいだろうな。岩井部長だったら、時代背景も
さることながら土地の歴史まで引っ張ってきそうだものな。
 だがな、俺はそれよりも人間の感情に重点を置いたほうがいいと思うんだ。例えば、執念だとか、
嫉妬だとかそういった内なる感情にこそ、恐怖が宿ると思うんだよ」
 大石先輩が自分のノートを広げたのを遠藤は見て、口惜しそうに座った。
 遠藤にしてみれば、これからのところに横槍を刺された気分なのだろう。大石先輩は遠藤の先輩で
何も言えないから、渋々バトンを渡したように見受けられた。
 大石先輩はそれを気にも留めず、語りだす。
「そもそも狂気という言葉が便利過ぎたんだ。なんでもかんでも狂気なんていう二文字を並び立て
れば、一応は読者も理解の外として納得する。俺は、そういう便利で曖昧な言葉で物事を批評する
人間は嫌いだ。狂気であっても、人間の行動であるならば、必ず人間の理解しうる感情だと思っている。
そして、その狂気が人間の感情として、一部でも他の人の理解できる範囲にあるならば、それこそ
が恐怖というまったく別物の解釈の仕方で俺達の手元に現れると信じているんだ。
 とにかく、狂気を含めた恐怖というものは感情であって、それ以外のものでは無い。だから感情に
重点を置くべきだと思う」
 大石先輩は、全てを語りつくしたと言わんばかりに満足そうな表情を浮かべて、どかっと地面に座った。
 少しばかり沈黙が訪れたが、それを破ったのは、小野先輩だった。
416ホラー談義 (お題:ドア) 5/7 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 03:58:54.49 ID:O9EnIdBz0
 「設定と感情。まぁどちらも大切といえば大切ですけれども、どんな要素も取り込んでいるお話な
んて滅多に無いものね。ですけど、あなたたち、理系すぎるんじゃないかしら。なんでもかんでも常
識の枠内に当てはめようと躍起になって。少しみっともないんじゃなくて? 海外のホラー映画なん
て、血を飛び散らしたり、死なずに永遠と主人公を追い掛け回すなんていうものも主流じゃない。そ
れはあなたたちの論議では測りきれるものではないように思いますけど。そこの呆けている新人君は
どう思っているのかしら」
 急に小野先輩は私を見て、顎を突き出す。
 ほら、いいなさいよ。と言っているように見えて、私は急いでノートを取り出した。
  この日のために用意した「ホラー調査ノート」を胸の前で握り締める。
 私の初めての語りが上手くいくか不安だった。
「初めて語るので、不手際な説明が、目立つかもしれませんので、最初に誤っておきます」
 そういった私の声は今もなお震え続けている。
「遠藤さんの設定論や大石先輩の感情論など、面白い話で楽しかったです。ホラーのそもそもの
興味を惹く要素は何か、恐怖とは何か、について考えているところが、凄いなと思いました。そして、
私の考えがお二人に比べて、稚拙なものに感じてきました」
「もったいぶらないで、結論だけ言って頂戴。もうそろそろ眠くもなってきたんですから」
 小野先輩は、わざとらしく大きな欠伸をして、目元に涙を浮かべる。
 その様子を私は見て、ぎこちない笑顔を浮かべた。
417ホラー談義 (お題:ドア) 6/7 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 04:01:25.66 ID:O9EnIdBz0
 「前置きが長いのが小野先輩は嫌いだったんですね。すいません。結論からいいますと、私は恐怖
とはすなわち”ドア”だと思うのです」
 一瞬淀んだ空気が停滞するように感じた。
 だが、それは直ぐに混ざり消え、ざわざわと部員がざわめき立った。
 意外なことに、今まで静かに座っていた岩井部長が、そのざわめきを制した。
「こらこら。語る人の邪魔をしちゃいけない。それにしても面白いね、新人君の発想は。どうして
ドアだと思ったんだい?」
 私は興味津々に尋ねてくる部長を見て、少し嬉しくなった。
「恐怖というのは、何があるかわからない、そういった不安のことを言うんだと思うんです。
 シュレディンガーの猫をご存知でしょうか。この説は、今では小説などで良く用いられる説なので、
知っている方は多いと思いますが……。簡単に説明すると、毒ガスが噴出する匣の中に猫を入れま
す。匣の中の猫は、匣のドアを開けるまで、生きているか死んでいるかわかりません。そういった条
件の中で、猫が生きている世界と死んでいる世界という、まったく別の世界が平行して存在している
のです」
 小野先輩は「また理系の談義か」と不平をもらす。
 私は気にせず、先を急いで語る。
「もし、目の前にどこに繋がっているか分からないドアがあったとします。そのドアを開くか開
かずに立ち去るかは、各々自由としましょう。さぁ、どうしましょう」
418ホラー談義 (お題:ドア) 7/7 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 04:03:26.72 ID:O9EnIdBz0
 岩井部長は、ゆっくりと私の真意を読み取ったかのように頷いて答える。
「そこで先ほど説明したシュレディンガーの猫だな。猫が生きている世界と死んでいる世界の二通
りの世界が存在する。それはとても受け入れがたい事実だ。それを確かパラドックスというんだった
な。新人君は、そのパラドックスにこそ、恐怖を感じるといいたいんだね?」
 岩井部長の言葉を受けて、遠藤も、大石先輩も驚いた表情を浮かべている。
 私はくるりとその場で廻ると、今さっき入ってきたばっかりのドアを指差した。
「現実離れした事実に、人は恐れるんだと私は思います。この部屋のドアを開けたら、そこは合宿
所の廊下でもなんでもない場所だったら、みなさんどう思いますか。なんだか漂流教室みたいな話で
すけど、それがまぎれも無い事実だとしたら恐怖を感じるでしょう。つまり、ドアなのです。好奇心
でそのドアを開くから、恐怖を感じるのです。試しに、三津田さんゆっくりとドアを開いてもらえま
せんか」
 突然の申し出に、三津田は少し戸惑ったが、私の目を見て、ドアの傍に駆け寄った。
 多分、ホラー談義は私の語りで終了するだろう。
 ホラーを談義するだけじゃ、所詮は踏み込んだ語りなんてできないのだ。
 だったら、実際にホラーを体験しなければ語れないでしょう?
 私は笑いがこみ上げてくるのを必死に抑えて、ドアを見つめ続けた。
419以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 04:06:25.80 ID:O9EnIdBz0
投稿終了
1〜3を投下し終えて、字下げされていないことに気づきました
非常に読みにくいとは思いますが、暇つぶしに読んでくれれば嬉しいです
おやすみなさい
420以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 04:40:00.07 ID:MjHjFO9i0
>>412-418
読みました。全体的によかったです。

最初の描写ですけど
>つまるところ初秋が訪れる。
これがすこし、ひっかかるような気がしました。
自分が読む限りでは、冒頭の風景などの描写で「つまり」があると違和感を感じます。
恐らく、対して重要な情報でもないのに重要めいたような接続詞を使うと混乱を覚えるのだと思います。
これは個人の感覚的な意見なのであしからず。

言いようのない恐怖感がありましたね。ドアというのが恐ろしいものだとは思いませんでした。
421以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 06:51:12.35 ID:5J648muS0
おは
422以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 07:36:28.18 ID:dNzmykLTO
よう
423以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 08:32:03.54 ID:9y6QIG0qO
おはー
424以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 09:02:26.46 ID:icX5lkPd0
お題
425以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 09:51:22.53 ID:abaxV5ilO
>>424
本気
426以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 09:58:53.44 ID:icX5lkPd0
>>425
押忍!
427以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 10:43:28.71 ID:y5/AC9mMO
おだいくれ
428以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 10:45:01.29 ID:9y6QIG0qO
>>427
ゲームセンター
429以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 11:30:45.06 ID:9y6QIG0qO
まめにあげ
430以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 11:34:03.87 ID:+nmpQiiRO
お題
「二次元」と「俺」
431奴はワンコイン (お題:ゲーセン) 1/7:2010/10/08(金) 11:48:51.56 ID:y5/AC9mMO

ー滲むのは、数多の敵の血。
積まれるは、数多の犠牲の山。

刃の切っ先を、悍ましくもその朱に染め上げるのは、少し小柄な、白髪の少女であった。

その強き瞳の臨む先に、彼女が見ていたモノは、当時、誰にも解らなかった。

私は、目の前の彼女を知っている。
後ろ姿とはいえ、私は知っている。


彼女の名は…まほろ。


口数は少ないが、いつも、優しい人。

私の、大好きな…友達。



「それ以上近づけば、斬ります」

彼女は振り向かず、ピンッと張り詰めた氷の様な殺気を放ち、背後の気配にそう忠告した。
432奴はワンコイン (お題:ゲーセン) 2/7:2010/10/08(金) 11:50:02.86 ID:y5/AC9mMO
先だって、私は怖かった。


次に、浮かび上がる疑問。

彼女は、気付いている?

後ろに居るのが…



「例え、貴女であったとしてもです。セィラさん」



震えた。

体が。心が。

彼女は、振り向く事無く私だと認識し、その上で一音の振動無く、そう吐き捨てたのだ。


「お帰り下さい」


「どう、して…?」


「貴女には、関係無い」
433奴はワンコイン (お題:ゲーセン) 3/7:2010/10/08(金) 11:51:34.27 ID:y5/AC9mMO
…思えば私は、彼女と知り合ってから、間もない。

彼女の全てを把握なんて、私には出来ていないと思う。


でも…

そうであっても……


「ど…うして…こんな、事を…?」


どうして、何も言ってくれなかったの…?



「……私は…」



それは、今思えば、私自身の瞳に溜まった涙のせいだったかも知れない。

一瞬だけ。

彼女の肩が、震えて見えた気がした。


「私は勝たなければならないのです(財布的な意味で)」
434奴はワンコイン (お題:ゲーセン) 4/7:2010/10/08(金) 11:52:57.25 ID:y5/AC9mMO
「これ以上のお喋りは時間のムダ…御免被りたい。お帰り下さい」

「……ダメ」


「…………」

「…アナタを、これ以上進ませるわけにはいかない」


悔しい。

そんな想いが、私の財布から一枚のコインを抜き出させていた。

私は、胸の前で印を結ぶ。

“縛”のルーンが陣を描き、足元に浮かび上がる。


「私は……アナタを止める」
435奴はワンコイン (お題:ゲーセン) 5/7:2010/10/08(金) 11:53:54.72 ID:y5/AC9mMO
もはや

彼女にしてあげられる事は、

その暴挙(ワンコイン居座り)を止める事。

それだけ。


「悔しいよ…こんなの…」

「…そうですか」


握る刀の柄を反し、彼女はようやく私を見た。


鋭い、まるで全身を裂くような目つき。殺気。

今まで見た事の無い、彼女がそこに居た。



「ですが、その術式では私は捕らえられません」

「…!」
436奴はワンコイン (お題:ゲーセン) 6/7:2010/10/08(金) 11:54:47.22 ID:y5/AC9mMO
「…私には覚悟があります」


「私を止めたいなら…」


彼女は構え直した刀を、私に向け言い放った。





「私を」


「殺しなさい」





437奴はワンコイン (お題:ゲーセン) 7/7:2010/10/08(金) 11:56:02.24 ID:y5/AC9mMO
まほろが駆け出す速度は、私の反応速度などとうに超えていた。


印を解放するより速く、気がつけばまほろは、私を“通過”していた。

痛みすら感じぬままに、意識だけがゆっくりと薄れる曖昧な感覚が、私を満たしていく。



「ま…、ほ…ろ」



何故だろう。

薄れていく意識の中で、
それだけはハッキリと聴こえた気がした。


「大好きです…」

「セィラ…」


「さようなら…」


GAME OVER
438以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 12:58:21.91 ID:9y6QIG0qO
>>431
まだ中身読んでないけど、改行多いのはブラウザ環境によっては
めっちゃ読みづらくなるからここではやめたほうがいいかな。
439以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 13:23:38.95 ID:joIcAJpx0
>>431
悪名(?)高きスレイヤーズが可愛く見えるね
440以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 14:01:20.94 ID:viiGEKcw0
>>420
 感想ありがとうございます
冒頭の描写は悩んで書いた文なんです
 指摘を受けてなるほどと思いました。話の内容についての感想もくださり、
勉強になりました

>>431-437
 読みました
 何度も読み返してはいるんですが、登場人物がだれで、どこにいて、
誰の言葉で話しているのかがわかりませんでした
 ゲームの中の人物が、戦っていると私は読んだんですが、
それだったら「ワンコインとか関係ないよなぁ」と思ったりで、難しく感じました
 ですが、書きたいという気持ちは伝わりましたので、次回作楽しみにしています
441以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 15:14:09.05 ID:dNzmykLTO
442以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 16:01:44.52 ID:5pn8/IeJ0
ODAIください
443以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 16:17:09.82 ID:dNzmykLTO
ジェントルマン
444以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 16:29:43.35 ID:ReyCKgkI0
>>443把握
445以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 16:42:11.75 ID:viiGEKcw0
投下します
446お釣りで繋がる物語 (お題:釣り) 1/6 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 16:44:28.53 ID:viiGEKcw0
 物には魂が宿るらしい。
 ばぁちゃんが、小さい頃の俺に優しく言ってくれた言葉だ。
 小難しい言葉で言えば、思念がどうだ、とかといった超自然的なお話なのだけれど、ばぁちゃんは
決してシャーマンの出ではないし、霊能力を信望している信者でもない。
 日本古来からある、八百万の神を俺に簡単に説明してくれただけの話だろう。
 ふと、そんな昔話を思い出したのは、引っ越すための荷造りをしていて、ばぁちゃんの形見が見つ
かったからだった。
 ばぁちゃんの形見は、ただの汚れた数珠と、数枚の5円玉が入ったぼろぼろの巾着袋だった。
 最初見たときは、懐かしさよりも汚さからくる嫌悪感を先に感じたのだが、じっくり巾着袋を見て
みると、それがばぁちゃんのいつも大事にしていたものだということに気づいたのだった。
 それに気づいた途端、言いようも無いほどの懐かしさと、何故それを忘れていたのかという悔しさ
がこみ上げてくる。
 そんな俺を見た加奈子は、ダンボールを抱えながら「どうかした?」と尋ねてくる。
 わざわざイチから説明するのは長いし、面倒だったので、適当に受け流した。いや、面倒というよ
り気恥ずかしかったのだ。あれだけ俺を大事にしてくれたばぁちゃんの大事な形見を、今になって思
い出したなんていったら、加奈子だって俺を軽蔑するだろう。
 曖昧に返事をしながら、巾着袋を上着のポケットに突っ込む。
 加奈子は小首をかしげたっきりで、深く追求しようとはせず、荷造りの作業を再開した。
 ばぁちゃんの巾着袋をポケットの中でまさぐりながら、ばぁちゃんの言葉を思い返す。
 ――物には魂が宿るんだから、大事にしなきゃぁいけないのよ。
 ばぁちゃんの形見は、加奈子の次に大事にするよ。そう心の中で呟いて、俺って恥ずかしいやつだ
なぁと苦笑いした。
447お釣りで繋がる物語 (お題:釣り) 2/6 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 16:46:54.12 ID:viiGEKcw0
 荷造りが大体終わって、昼飯を買いにコンビニに行こう、と提案したのは加奈子だった。
 「ファミレスとかじゃなくていいのか?」
 普段ご飯だけはお金を惜しまない加奈子が、コンビニ弁当でいいなんて言い出したから、俺は少し
ばかり面食らった。
 「ほら、チキンが上手い店が新しくできただろ。本当にコンビニ弁当でいいのか?」
 加奈子は俺のオーバーリアクションをいぶかしんで、俺の頭を小突く。
 「なぁに熱でもあるのか? とか雪でも降るんじゃないのか? 見たいな顔しちゃって。失礼ね。
あなたニュース見てないの?」
 まだ不思議そうな顔をする俺を見て、今度は加奈子がオーバーリアクションで驚く。
 「本当に知らないの? 考えてみたら、先日まで出張していたあなたが知らないのは、納得ですけ
ど、それにしてもニュース見てないなんてあなた本当にサラリーマンなのかしら」
 「わかったよ。俺が悪かった。そんなに大変なことが起きたのかい。あぁ、ミミズの肉が流通して
いるなんて都市伝説は言わないでくれよ」
 それとなく先制しながら、俺は加奈子のオーバーリアクションを苦々しく見る。
 加奈子は、わざとらしく両肩を上げて、口をすぼめた。
 「ぜーんぜんダメねぇ。最近あそこのファミレスで強盗が入ったのよ。何でも100万は持ってい
ったらしいわ。ここも治安が悪いのねぇ。強盗はまだ捕まっていないっていうし、最近の警察は何を
しているのかしら」
 加奈子をこのまましゃべらすと、だんだん愚痴に移行して、30分ぐらいは立ち話に興じそうだったので、慌ててまとめに入る。
 「つまり、強盗がいつまた襲ってくるかわからないから、コンビニ弁当で済ませようってい
いたいんだな。わかった。それじゃぁ弁当買いに行くか。俺は冷やし中華がいいかな」
 無理やり話を終わらせた俺を見て、加奈子は不服そうにほっぺたを膨らませた。


 家から徒歩10分のところにあるコンビニに二人並んで入る。
 それまでの10分間で、少しばかり機嫌が悪い加奈子をなだめるのは大変だった。
 だが、コンビニに入るときには、昼飯を何にするか、というので頭がいっぱいになったらしく、
機嫌も幾分直ったみたいだった。俺の気遣いも、飯の前では無力だったのだ。
448お釣りで繋がる物語 (お題:釣り) 3/6 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 16:48:43.35 ID:viiGEKcw0
 コンビニは昼飯時だというのに、以外と人がいなかった。
 俺達二人を除いたら、顔の赤い剥げた中年のおっさんと、金髪の男ぐらいなものだった。
 強盗なんていう話を加奈子がするから、店内をきょろきょろ見てしまうじゃないか。
 不安の元凶でもある加奈子のほうを見ると、サッサカサーと弁当コーナーに向かって走り出す加奈
子が見える。
 俺は、入り口横に積んである買い物カゴを一個掴むと、加奈子のほうに向かって歩いていった。
 「えーっと、あなたは冷やし中華だったわよね。私はどうしようかしら……あ、このオムライス弁
当、大きくておいしそうじゃない?」
 「あぁ。おいしそうだな。まるで」
 そこまでいった俺は、すぐさま喉元まででかかった言葉を引っ込める。まるで、加奈子みたいだな
なんていったものなら、今夜は禿山の一夜だ。何されるかわかったもんじゃない。
 「まるで何よ。デリカシーのない男っていやぁね。覚えてなさい。今に大変なことになるんだから」
 加奈子は俺の意図を少しばかり察したらしい。俺を睨みつけて、冷やし中華を戻そうとする。
 そのときだった。
 真っ黒いライダースーツと、フルフェイスヘルメットを被った男が、静かにコンビニのドアから
入ってきたのだ。
449お釣りで繋がる物語 (お題:釣り) 4/6 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 16:50:48.91 ID:viiGEKcw0
 何をしても上手くいかない。
 手元にある100万を見つめて、俺は嘆く。
 なんでこうなってしまったんだろう。手元の100万を引き出しに戻して、ウイスキーを一気に煽
る。酒は弱いほうだから、すぐに酔いが回ってくるのを感じる。
 この間のファミレス強盗も、こんなむしゃくしゃした気もちでウイスキーを煽ってからだった。
 たまたま同僚の陰口が耳に入って、疑心暗鬼に陥りかけていたときにウイスキーを飲んだのがいけ
なかったのだ。
 あれほど一緒に頑張ってきた同僚から、容姿の悪口を言われるなんて思わなかった。
 それならばまだ許せたが、同僚は、いや、あいつは俺のことを、
 「根性も度胸も無い、会社のお荷物」
 なんていいやがったのだ。
 この言葉が、誰でも無いあいつから飛び出してきたのが、信じられないし、許せなかった。
 悔しかった。煮えたぎる怒りを同僚にぶつけたかった。でも、実質小心者でもある俺は、ファミレ
ス強盗することで、「根性も度胸も無い」という言葉を見返してやることしかできなかった。
 だんだん世界が廻ってきた。天井がぐにゃぐにゃしてきて、怒りで頭がいっぱいになってくる。
 わかった。俺は、こうなる運命だったんだ。
 大好きな祖母と交わした約束は、こういったものだったんだ。
 無理やり自分を納得させて、着替えを済ます。
 祖母と交わした約束は、自分の生きる生きがいだった。所謂おばぁちゃんっこだった俺は、祖母の
言うことを真面目に聞いていれば、人生は上手くいくと信じていた。
 そんな大好きな祖母が亡くなる直前の夜、なんとか元気付けようと、俺は祖母の枕元で約束したの
だ。
 ――いつかきっとビックになって、おばぁちゃんを驚かしてあげるから。
 おばぁちゃん。見ててくれ。俺はビックになって、世界中を驚かしてやるから。
 今は、それは強盗なんてちっぽけなことばっかりしてるけど、資金が溜まったら、あっと驚かしてやる。
約束は守るから。
 もう今はいない祖母にうわ言の様に語りかけながら、ゆっくりとソファーから立ち上がった。
450お釣りで繋がる物語 (お題:釣り) 5/6 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 16:53:07.95 ID:viiGEKcw0
 加奈子は、ドアから入ってきたフルフェイスの男を指差して、ガタガタ震える。
 俺は、加奈子の肩を抱き寄せて、耳元で大丈夫と呟く。
 そういった俺は、何が大丈夫なのか、どうすればいいのかわからなくなっていた。
 そんなまさかこの男が強盗だと決まったわけじゃないし、そんなに驚くことも無いだろう。とは心
の片隅で思っていたが、それでも、昨日の今日に話した強盗におあつらえ向きの姿をした男がやって
きたら、もし強盗じゃなくても震えてしまう。
 俺は、ゆっくりとその男から逃げるように、後ずさった。
 「取り合えず、さっさと会計を済ませて帰ろう。な、加奈子」
 俺は加奈子にできるだけ優しく語りかけながら、加奈子の腕を掴み、レジまで引っ張っていく。
 それが合図だったかのように、剥げた中年の男も、フルフェイスの男も、それぞれの買い物を持ち、
俺達の後ろに並ぶ。
 レジ打ちのバイトをしている少女は、少し強張った表情で、俺達の弁当のバーコードをチェックし、
お会計を読み上げる。
 加奈子は、すぐさま財布から小銭を取り出したが、あることに気づくと、震える声で俺に尋ねて来た。
 「5円足りないの。持ってない? 早く、お願いだから」
 俺は真っ白になりそうな頭を振り回し、偶然ポケットに入れていた巾着袋を思い出す。
 確か、5円玉が数枚あったはずだ。ばぁちゃん。ありがとう。
 そう思いながら、ポケットから巾着袋を取り出し、5円玉を広げて、1枚レジ打ちの少女に手渡す。
 少女は、それを1回落としながらも、それでも拾い上げて、定型句を俺達に告げた。
 俺達は、ゆっくりと、それでもコンビニから逃げ出すように足を速める。
 次の会計を済ませているのは赤い顔した中年のおっさんだった。
 もし、フルフェィスの男がナイフなり、拳銃なりを持ち出すんだったら、俺らはすでにドアの外
だから、関係なんてない。安心できるはずだ。
 俺の後ろから、「200円からですね。5円のお返しです」という少女の震える声が聞こえた。
 よし、この調子なら、コンビニからでて、俺達は自由になれるはずだ。
 そう思った瞬間、まるで地震が起こったかのような低い唸り声が聞こえた。
451お釣りで繋がる物語 (お題:釣り) 6/6 ◆xaKEfJYwg. :2010/10/08(金) 16:55:18.33 ID:viiGEKcw0
 「うあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああ! おばぁちゃんおばぁちゃんおばぁちゃんっっうぅううううううううううう」
 何が起こったのかわからなかった。
 俺と加奈子は同時に振り返りながら、信じられない奇妙な光景を目に焼き付ける。
 俺達の目の前では、あの、中年のおっさんが、顔をゆがめながら、泣き続けているのだ。
 レジの少女は唖然としている。フルフェイスの男ですら、腰を抜かして転んでいる。
 中年のおっさんは、そんなことお構い無しに泣き続けていた。
 俺の耳には、中年のおっさんの泣き声の中に混じる嗚咽交じりの言葉が、聞こえてきた。
 「おばぁちゃんはそんなこと望んじゃいなかったんだね。おばぁちゃんは、おぇ、約束なんかより
も、俺が大事だったんだね。俺は、ひっく、俺のせいで、うわぁああ嗚呼ああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ」
 いつまでも泣き声は、止むことなく、店内を覆って、俺の耳に響き続けた。
452以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 16:56:29.44 ID:viiGEKcw0
投下終了です。
お題下さった方や、感想をくださる人に感謝感謝です。
453以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 17:46:41.88 ID:h3t9dpiq0
ho
454以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 18:17:46.76 ID:UL6A+Wa90
お題ください↓
455以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 18:22:43.65 ID:9y6QIG0qO
>>454
怒り
456以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 18:23:39.18 ID:E0RFJq7O0
457以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 18:27:06.59 ID:UL6A+Wa90
>>455-456
いただきます
458以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 18:55:18.81 ID:MVMVr7yK0
今日は本気出す
459以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 19:04:30.84 ID:rrUbTQz20
何か書いてみようかな。お題ください↓
460以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 19:06:59.02 ID:yPBB5ioN0
魔法
461以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 19:10:51.68 ID:rrUbTQz20
>>460
書いてきます。
462以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 19:34:02.05 ID:y5/AC9mMO
お題ください
463以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 19:37:00.24 ID:AWZwRGHP0
加速
464以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 20:02:33.76 ID:2roowora0
保守
465以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 20:04:54.45 ID:MjHjFO9i0
>>462
サッカー
466以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 20:15:54.09 ID:OtdEbR230
>>460
できました。投下します。
467荒れ地にて、魔の陣(お題:魔法) 1/2:2010/10/08(金) 20:18:38.08 ID:OtdEbR230
 砂埃の舞う、ひからびた大地。そこは、世界の命運をかけた決戦の地。
「魔王め!勝負だ!」
「フハハ、どこからでもかかってこい小僧が!」
 雷雲が立ちこめ不気味な光を発する空に、ノボルは両手を掲げた。
「神よ!僕に悪を討つ力を!」
 パァァァ・・・
 そう叫ぶと、空が割れ、雲の間からキラキラと力の源が降り注ぐ。
「天界からの祝福!?こやつ・・・選ばれし勇者か!」
「ゆくぞ!お前を倒して世界を救うんだ!」
 神の威光にひるんだ隙を突き、ノボルは掲げた両手を振り下ろした。
 するとキラキラと天より降り注いだ光は、魔王の足元に格子模様といくつかの記号を描く。
「なっ・・・なんだこれは!?」
「幼少期から魔王魔王とちやほやされ、ろくに勉強もせず城に引きこもっていたお前には到底わかるまい!ショウワノートも使ったことのないお前にはな!」
「ショウワノート?何故ショウワなのだ!ジャポニカ学習帳では・・・」
「ジャポニカ・・・には載ってない!多分!しかし載っていたところでもう遅いぞ!」
 ジャポニカ派の魔王を無視し、謎の格子と記号の羅列は――完成したようだ。
 2●●
 ●5●
 ●38
「ムッ・・・これは・・・」
「はいヨーイドン!」
 魔王の言葉を遮り、ノボルはカーディガンの左ポケットからストップウォッチを取り出した。
「なんなんだ一体!答えろ小僧!」
「お前を封じる魔の陣――魔方陣だ!完全に効力を発揮するまで3分ほどかかるがな!」
「3分?ククク・・・なんと詰めの甘い術だ!しかも記入欄すら設けてあるではないか!これでは私に解けといっているようなもの!」
「そうやって呑気におしゃべりしていていいのかい?時間は待ってくれないぞ!」
「これはいわゆるハンデ!このレベルのもの・・・お前と気軽に雑談しながら解いてくれるわーーー!!!」
 そう言うと魔王は、さっそく魔方陣にとりかかった。

468荒れ地にて、魔の陣(お題:魔法) 2/2:2010/10/08(金) 20:20:53.32 ID:OtdEbR230
 ・
 ・
 ・
「あらノボル先生、運動場に出て・・・どうなさいましたの?」
「おや、2組のマユミ先生。見てくださいよこれ」
「まぁこれって・・・魔方陣ね」
「そうそう。ショウワノートの表紙裏によく書いてあったでしょう?それですよ・・・――で、これだれが解いたと思います?」
「?誰か特別な子が?」
「タカシ君ですよ」
「タカシ君って・・・あの先生のクラスで登校拒否の――あのタカシ君ですか!?」
「ええそうです。彼はどうやら家でゲームばかりしているらしくって、どうしても勉強の楽しさを知ってもらいたかったんです。彼の興味をこちらに向けるのは大変でしたよ
 ・・・しかし、彼の好きなネットゲームを見て思いついたんです。ああいう子特有の強い妄想癖を逆に利用することを」
「それで運動場に魔方陣・・・考えましたね、先生」
「でも、まだ算数だけですからね――将来の・・・中学校での勉強に追いつくには、国語理科社会・・・課題は山積みです」
「私も手伝います。ファイトですよ、ノボル先生」

 小学校の小さなグラウンド。そこに立ち尽くすは勇者ノボル。いつの日かネトゲ魔王タカシを5年1組に登校させるその日まで、彼の戦いは終わることはない!
469以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 21:09:16.63 ID:joIcAJpx0
あぶね
470以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 21:18:43.60 ID:LhwGAFPj0
471以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 21:33:42.98 ID:AWZwRGHP0
お題とかいうのくらさい
472以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 21:39:00.88 ID:MjHjFO9i0
>>471
勝利
473以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 22:06:36.06 ID:dNzmykLTO
サッカーに熱中してしまった
474以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 22:09:00.11 ID:MjHjFO9i0
同じく
まさか勝つことになろうとは
475 ◆4enDguKo8U :2010/10/08(金) 22:16:31.12 ID:LhwGAFPj0
お題:選択肢を使いまして作品を作りました。
拙作ではありますが週末品評会に参加いたします。
476以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 22:20:14.55 ID:2roowora0
品評会作品投下は土曜が始まってからだぜ
477抱擁 (お題:選択肢) 1/5  ◆4enDguKo8U :2010/10/08(金) 22:20:41.49 ID:LhwGAFPj0
 学校の授業が終わって美術部の部室の鍵を開ける前に、志島は日奈乃に呼び止められた。
「志島、五時半になったらまた皆で五組に集合ね」
「え、あ、まだ書いてる途中のもあるし、僕が来れなかったら先に…」
「部長が全員集まらなきゃ文化祭の会議が進まないでしょ。今日は代理もダメよ。部活動が少しは出来るように配慮して
あげてるんだから、我慢しなさい。んじゃ忙しいからまたね」
 日奈乃はそういうと片手鞄を肩に背負って出口へ走っていった。志島は、昔から相変わらず変わってないなと思った。
暇かどうか一つ尋ねず、相手の同意も得ないで強引に話を進めてしまうのだ。生徒会長とはそんなものだろうかと呆れて
しまう。だが志島は
(ちょっと羨ましいかな)
と思ってしまった。
 美術室独特の絵の具と水の臭いをよそに、志島はスケッチブックを鞄から取り出した。最近彼が書くのは大抵運動場で
ある。今は女子陸上部が運動場を使っている。よくみればさっき声をかけた日奈乃が走っていた。どうやら、部活動が少
しはできるように、というのも自分の都合らしい。でも、そんな自分勝手さを忘れるほどに、日奈乃の走っている姿は活
動的な美しさを示していた。
「部長、何見とれてるんですか?」
 後から入ってきた部員の一人に茶々を入れられると、思わず彼は鉛筆を動かしてごまかした。後輩はなおも続けて
「先輩、気になるんでしょ。日奈乃さん美人だもんなぁ。幼なじみだなんて、役得ですよ、なんて」
 この後輩と一緒に入ってきた他の部員もその台詞を聞いて他愛もない事をべらべらとしゃべり出す。だが志島は一言
「違うよ、多分」
 と言ったきり黙り込んで夕焼け空の運動場を書き続けた。部員達は一瞬きょとんとしつつも、結局志島と日奈乃の事に
ついて顧問が来るまで駄弁りつづけた。
「失礼します」
 会議中だと思った彼は丁寧に挨拶して二年五組の教室に入った。しかしそこには雛が一人外を眺めながら立っているだけ
で、他の部の部長達は誰も居なかった。雛はくるりと回って笑いながら言った。
「驚いた?」
「驚くって、どうしたの? 会議は?」
「…今日は特別に無しよ。話したいことがあったから」
 よく見ると雛は夕焼けに照らされているせいか妙に顔が赤かった。ちょっと緊張して、彼より低い背がより低いよ
うに見えた。自然と彼も肩が張る。
「…志島は、こー…お淑やかじゃない子でも好き? あと体育会系の子でも好きになれる?」
478 ◆4enDguKo8U :2010/10/08(金) 22:21:23.41 ID:LhwGAFPj0
失礼いたしましたorz
479以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 22:22:22.37 ID:MjHjFO9i0
後一時間半の辛抱だよ
480以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 22:24:01.15 ID:2roowora0
なに、日付変わってから改めて投下したらいいさ
481以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 22:26:45.52 ID:K4idO5Bm0
時間あるんだから推敲しろ、な?
482以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 22:51:14.90 ID:l2eFlS6P0
お題plz
483以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 23:00:29.41 ID:MjHjFO9i0
>>482
留学
484以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 23:12:40.89 ID:w9ehkTsi0
ほしゅおくん
485以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/08(金) 23:38:41.05 ID:MjHjFO9i0
486以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 00:01:27.07 ID:T/95EAzT0
0時になったよー
487 ◆4enDguKo8U :2010/10/09(土) 00:01:57.97 ID:LhwGAFPj0
先ほどは失礼いたしましたorz
今度こそ、お題:選択肢、で、週末品評会に参加いたします。
488抱擁 (お題:選択肢) 1/5  ◆4enDguKo8U :2010/10/09(土) 00:03:05.47 ID:7ytsuRNx0
 学校の授業が終わって美術部の部室を開ける前に、志島は日奈乃に呼び止められた。
「志島、五時半になったらまた皆で五組に集合ね」
「え、あ、まだ書いてる途中のもあるし、僕が来れなかったら先に…」
「部長が全員集まらなきゃ、文化祭の会議が進まないでしょ。今日は代理もダメよ。部活動が少しは出来るように配慮してあげ
てるんだから、我慢しなさい。んじゃ忙しいからまたね」
 日奈乃はそういうと片手鞄を肩に背負って出口へ走っていった。志島は、昔から相変わらず変わってないなと思った。暇かど
うか一つ尋ねず、相手の同意も得ないで強引に話を進めてしまうのだ。生徒会長とはそんなものだろうかと呆れてしまう。だが
志島は
(ちょっと羨ましいかな)
と思ってしまった。志島は鍵を開けた。
 美術室独特の絵の具と水の臭いをよそに、志島はスケッチブックを鞄から取り出した。最近彼が書くのは大抵運動場である。今
は女子陸上部が運動場を使っている。よくみればさっき声をかけた日奈乃が走っていた。どうやら、部活動が少しはできるように、
というのも自分の都合らしい。でも、そんな自分勝手さを忘れるほどに、日奈乃の走っている姿は活動的な美しさを示していた。
「部長、何見とれてるんですか?」
 後から入ってきた部員の一人に茶々を入れられると、思わず彼は鉛筆を動かしてごまかした。後輩はなおも続けて
「先輩、気になるんでしょ。日奈乃さん美人だもんなぁ。幼なじみだなんて、役得ですよ、なんて」
 この後輩と一緒に入ってきた他の部員もその台詞を聞いて他愛もない事をべらべらとしゃべり出す。だが志島は一言
「違うよ、多分」
 と言ったきり黙り込んで夕焼け空の運動場を書き続けた。部員達は一瞬きょとんとしつつも、結局志島と日奈乃の事について顧
問が来るまで駄弁りつづけた。

「失礼します」
会議中だと思った彼は丁寧に挨拶して二年五組の教室に入った。しかしそこには雛が一人外を眺めながら立っているだけで、他の
部の部長達は誰も居なかった。雛はくるりと回って笑いながら言った。
「驚いた?」
「驚くって、どうしたんだ? 会議は?」
「…今日は特別に無しよ。話したいことがあったから」
 よく見ると雛は夕焼けに照らされているせいか妙に顔が赤かった。ちょっと緊張して、彼より低い背がより低いように見えた。
自然と彼も肩が張る。
「…志島は、こう…お淑やかじゃない子でも好き? あとおてんばな子でも好きになれる?」
489抱擁 (お題:選択肢) 2/5  ◆4enDguKo8U :2010/10/09(土) 00:03:54.22 ID:7ytsuRNx0
「えっと、そりゃできればお淑やかなほうが女の子っぽいと思うし、おてんばってのも僕の性格には合わないかもしれないけど」
 志島は、嘘を言った。ここまで来て、彼女の本心が分からないはずは無かった。けれども。
「じゃあ……あたしのような女の子、好きになれない?」
 それが彼女の精一杯の告白だった。いつもは活動的で奔放な彼女の、控えめな心細い。
「…ずっと志島を追いかけてた、だから、その」
 声はやがて口元から吐息のようにしかでなくなった。どちらか声を空気に触れさせて相手に伝えなければ、終わらない静寂。そ
して静寂は、はいかいいえと言わなければ変わらなかったのに。
「日奈乃」
 志島はその答えを避けて、時間を止めた。
「明日まで、待ってくれないか…? その、僕は日奈乃の事、好きかもしれない、でもせめて整理だけさせてくれ、気持ちの」
 嘘と本音が入り交じった台詞。流されやすいなと、緊張した中で思った。
「…待ってるからね」
 日奈乃はそういって教室からかけだしていった。それ以上その場にいると、彼女は自分の強さが、保てなくなるように感じた。

 絡み合った蔓が解けないまま、志島は自宅に帰った。母には、食欲がないといって夕食をパスしてもらった。自室のベッドに片手
鞄をおいて横になると、一人でいるのに何故か日奈乃が傍に立っている気がした。緊張がまだ醒めやらないのだった。そして二度も
嘘を言ってしまったことを、どうしようかと悩んでいた。
 彼は彼女のようになりたいと何度も思った。何時も自分が先頭に立って行動する。それでいて時折、自分の思うまま振る舞う。
「その方が色んな事ができそうでしょ」
 それが、彼女が生徒会長に立候補した理由だった。そんな性格を羨むことはあっても嫌うことはできなかった。寧ろ嫌っていたのは、
大胆に、積極的に、奔放になりきれない彼自身だった。
 一方で彼女がどうして自分を好きになったのかは、まるで逆の方向だとも思った。彼は、自分が活動的な彼女の性格を羨んだのなら
ば、彼女は多分女の子らしくとは言わないまでも、落ち着いた性格な彼を志向したのだ。それが恋に転化しただけなのかもしれない。
 でも、と彼は思った。彼女は自由奔放になりたいと思っている僕の心を受け入れてくれるだろうか。一方通行の恋心が、果たして僕
全体を受け入れるのだろうかと。
 僕を尊重して欲しい、僕のありのままを認めて欲しい。でも僕はあの時、何時も通り彼女に流され、つい好きかもと言ってしまった。
回答をギリギリで保留したのは、彼のせめてものブレーキだったのかもしれない。結局、最後の最後まで答えは出なかった。流された
ままの恋で良いかもしれない。その方が多分あれこれ悩まずに楽だろう。そんな投げやりな気持ちで彼は電気を消して寝ることにした。
490抱擁 (お題:選択肢) 3/5  ◆4enDguKo8U :2010/10/09(土) 00:04:54.91 ID:7ytsuRNx0
 彼が気がついた時部屋は薄紫の闇に包まれていた。彼と、ベッドと、その上においた鞄以外は何もなくなっていた。机もなければテ
レビもない。窓もなければ電灯も無い。気味の悪い闇の渦が、何もかもを吸収していく気がした。
「夢?」
 夢にしては妙にリアルだと何故か思った。自分の意思が手にとって感じられる。ありきたりだけど頬をつねっても痛い。何より、夢の
ような薄ぼんやりとしたぶれた風景じゃない。
 そして段々と、遅々たるスピードだが確実に闇のとぐろへベッドごと進んでいるのを見て、彼は焦った。これは死ぬのではないか、
元に戻る手段はないのか。わらをも掴む思いで傍の鞄をあけた。中には不思議と教科書もなく、一冊のスケッチブックがあるだけだっ
た。中は書いたはずの運動場も消えていて白紙だった。今更不思議があっても驚く気にはならなかった。
 彼はスケッチブックを開いてがむしゃらに元の世界を描いた。何故そうしたかは彼自身にも分からなかった。ただ、それを書けば現
実に戻れると信じて。自分が望んだ世界に戻れると信じてひたすら。
 記憶に残っているだけの風景を書き終わると、それを待っていたかのように闇がスケッチブックを吸い上げていった。
 ……。
 彼は通学路にぽつりと立っていた。闇から抜け出せたのだろうか。そろそろ学校のチャイムがなる時間だと、腕時計がそう告げてい
た。彼はほっと胸をなで下ろした。
 そのまま歩いてゆくと、日奈乃の後ろ姿が見えた。恐らくだけど、昨日の今日だ。どう答えて良いか分からない。そう思って距離を
置いて歩いていると、日奈乃が彼の方を向いた。
「おはよう」
「お、おはよう日奈乃。あのな」
 日奈乃に、昨日の投げやりの気持ちを伝えようとすると、日奈乃は急にこちらへ向かってきて、彼の肘に抱きついた。
「ひ、ひなの?!」
「どこ行きたい?」
 志島はいきなりの質問に戸惑った。
「志島が行きたいところ、私も行きたいの」
 彼女の甘い猫なで声に、思わずドキリとした。学校へ行く、なんて考えはストップして、必死に彼は彼なりの答えを見つけようと
した。
 結局、彼は大胆な事は出来なくて、無難に、酷く言えばつまらない、彼がよく行く美術館という選択を選んだ。それでも日奈乃は、
心躍る様子で肘に腕を絡ませて一緒に歩いていた。
 美術館は不思議と誰も居なかった。その事を不審に思ったのは彼だけだったようで、日奈乃は入ろう入ろうとせがんだ。
491抱擁 (お題:選択肢) 4/5  ◆4enDguKo8U :2010/10/09(土) 00:07:54.34 ID:7ytsuRNx0
 そこには、自分の絵がずらりと飾られていた。正直恥ずかしかった。でも、誰も居ないのと、日奈乃が熱心に自分のスケッチブック
の絵をみて楽しそうにしているのを見て、何だか自分の心が満たされていく気がした。ただ、そこにはさっき書いた闇から逃げるため
の絵は一つも無い。
(そういやあのスケッチブックの絵も今思えば会心の出来だったな)
 恐怖に戦いて、知らずに一生懸命に書いていた絵。段々少しだけだが鼻高々になっていた彼は、思わず自分の鞄をあけようとした。
すると日奈乃は
「ダメ!」
と叫んだ。一瞬で空気の色が変わった。
「ダメってどうして…」
「良いから、開けないで。お願い、何でも望み通りにするから」
 おかしい。彼は彼女の制止を無視して鞄を開けた。すると…。
 中には何もなかった。ただ無限の闇が広がっていた。
「なんなんだ…なんなんだこれは!」
 ふとそれを知っていたはずの日奈乃の方を向いた。だがそこには日奈乃はいなかった。違う、これは本当の世界じゃない。そう認識
した瞬間、壁に飾ってあった彼の絵も消えていった。志島は走り出した。彼が作り出した世界を、彼が破り捨てる為に。
 学校の門を潜り、永遠に続くかと思われる廊下を駆け抜け、美術室の扉を蹴り飛ばして強引に開けた。スケッチブックがあるとした
らここしかない。ここで書いたのは、本当の世界なのだから。
 絵の具で汚れた机の上にスケッチブックがあった。赤ん坊が散らかしたような美術室の椅子に躓きながら、彼はそれを手に取り、ページ
をめくった。彼の書いた世界と、それから、日奈乃に告白される前に書いていた運動場の絵があった。
「本当にいらないのね」
後ろから日奈乃の声がした。怖いくらい冷たかった。
「無条件に愛される世界、認められる事の何がどうして嫌いなの?」
 志島は黙り込んだ。彼が寝る前に考えた通りの世界が消されるのを、何故望むのか。一枚の運動場の絵だけが、どうしてこうも愛お
しいのか。
「そこには…相手がいない。僕が描いた世界は、皆僕が中心だ。気味が悪いだろ? 『皆違って皆良い』なんて標語じゃないけど、で
も…それって単なる自慰行為だから」
 そういって運動場の絵だけを残して、他をびりびりに破り捨てた。
 ……。
 目を覚ますと美術室だった。日付は…日奈乃が告白した日だった。そして時計は五時半になろうとしている。運動場には日奈乃
の姿は無かった。
492抱擁 (お題:選択肢) 5/5  ◆4enDguKo8U :2010/10/09(土) 00:09:13.74 ID:7ytsuRNx0
「いかなきゃ」
 日奈乃の元へ。
 二年五組の扉を乱暴に開け放った。息が切れそうだった。本物の日奈乃は驚いていた。いつもなら、失礼します、とでもいって入って
くるものを…。
「今日、は、会議は休みなんだな?」
 途切れそうな息で声を絞り出した。
「…そ、そうよ。志島に、…その、話したいことがあったから、でも、なんで」
「僕も、話したいことがある」
 愛されるなら、愛される努力をしなければ。自分が、大胆に、積極的に、奔放な自分を持っているなら、それを認めてもらうだけの努
力をする。それは、相手がいて自分がいる世界の必然だった。
「好きだ」
「志島…」
「僕は、いつもお前のようになりたいって、考えてた」
「え?」
 日奈乃は意外そうな顔をする。それは、彼女がずっと考えていたことと、方向が真逆なだけで同じ事だったから。彼は、しかし思った。
それは自分が相手になることじゃない、と。恋人が、相手により近づきたいと思う気持ち、惹かれ合う気持ちは変わらないはずだ。それ
が自慰に繋がるわけじゃない、結び合うことになるのだと。
「志島、あたしも、その…好き、なの、ずっとずっと、志島みたいに落ち着いて、絵とか描いてるそんな『女の子』になりたかった。で
も失礼だよね、志島がまるで女みたいって言ってるのと変わらない、でも、そんな志島があたしを求めてて、もう訳わかんなくて…」
 その志島が妙に近くに感じる。同じ慣性で惹かれ合ったということを知った時の安堵。
「好き…なの…」
 志島は何も言わず日奈乃を力強く抱きしめた。最初は志島が彼女の肩に腕を回していただけだったが、やがて彼女も彼の腰に、静かに抱
きついた。
 さっきまで動かなかった時間が動き出した。日が…暮れようとしていた。

493 ◆4enDguKo8U
駄作失礼しました。ここまでお読みいただいた方へ、本当に
有り難う御座いました。ではでは。