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――対日強硬・軽視路線の背景は
「プーチン首相が練り上げた。『クリールは絶対に返還しない』というメッセージだろう。
メドベージェフ大統領のクリール訪問も、ガスプロムの調印式キャンセルも同じ。
権謀術数にたけたプーチン首相は、菅政権を翻弄しようとしている」
《ロシアの国営ガス企業『ガスプロム』と日本政府がウラジオストクで計画していたLNGプラント建設事業について、
ロシア側は10日、合意文書の調印式を突然キャンセルした》
――メドベージェフ大統領の国後島訪問について、日本のメディアは「次期大統領選を見据えたアピール」と報じた
「まったく違う。メドベージェフ大統領はあくまで、プーチン首相の『パペット(=操り人形)』に過ぎない。
再来年(2012年)の大統領選は、プーチン首相の単独出馬でほぼ決まり。メドベージェフ大統領がクリールで、
イクラのサンドイッチを食べている映像があったが、まるでハイキング。ロシアの強いリーダーはあんなシーンは絶対に見せない」
――対日政策転換のきっかけは
「9月の露中首脳会談で互恵関係発展が合意された。この席で、ロシアの東シベリア資源開発に、
中国が資金を相当負担することが決まった。開発が悲願であるロシアと、ノドから手が出るほど資源が欲しい
中国との利害が一致した。また、中国の釣魚島(日本名・尖閣諸島)、ロシアのクリールに関する主張を、
両国は全面的に受け入れた。これでロシア首脳は強気になった」
原油高を背景にロシアは高成長を続けている。これにGDP世界2位となった中国からの投資にもメドがたち、
日本の資金援助は必要がなくなったということなのか。
極東研究所日本センターのキスタノフ氏は「日本の対露投資は世界各国の中で10番目。
日本が領土問題の対抗措置として、ロシアの地下資源や水産物の輸入を拒否しても、
販売先は中国やASEAN諸国など数多くある」とウソぶく。
ロシア大統領府の関係者も「日本が領土問題で譲歩する意思がなければ、わが国と交流する必要ない」と居丈高だ。
北方領土周辺の資源への固執もあるという。
ロシア有力紙「コメルサント」のミロスラフスキー記者は「クリール周辺には、石油や天然ガス、金、レアメタルなどの
莫大な資源が眠っている。周辺海域での水産物水揚げも年間2000億円はある。『資源こそ国家』と公言する
プーチン首相が“宝の島”を手放すはずがない」と語る。
ロシアの攻勢に対し、菅首相は機密情報も外交カードも持たず、「ロシアのどこかで交渉・協議に入りたい」
との意向を示した。このままでは「飛んで火に入る夏の虫」となるのは必至だ。