イタリアのベルルスコーニ政権が「プライバシー保護」を理由として、
盗聴捜査や盗聴内容の報道を規制する法案を伊議会に提出し、上院で可決されたた
め、伊メディアは9日、一斉に抗議のストライキを行った。
政権幹部の醜聞や汚職報道の妨害を狙った「言論抑圧」と疑うためだ。
法案には伊司法界も猛反発しており、成立の見通しは不透明だ。
伊各紙は同日、ベルルスコーニ首相(73)に近い一部の右派系紙などを除き、
紙面の発行と電子版の更新を中止した。テレビも国営、民放各局がニュースの放映時間を通常の約5分の1に短縮した。
上院が先月可決した法案は、捜査当局が盗聴や隠しカメラで得た情報を
報道機関が容疑者の起訴前に伝えることを禁じ、違反した場合は、報道機関に
最高45万ユーロ(約5030万円)の罰金などを科す厳しい内容。捜査当局に
対しては、盗聴捜査の正当性を示す証拠を裁判所に提示するよう義務づけた。
首相率いる与党「自由の人民」のロベルト・チェンターロ上院議員は
「『報道の自由』を盾に販売目的で扇情的なニュースが流されている」と
報道規制の必要を強調。実際、イタリアの盗聴件数は人口10万人当たり
76件と欧米では最高で、世界でも有数。ベルルスコーニ政権としては「盗聴天国」の汚名を払拭する狙いもある。
これに対し、国内の記者の大半が属する「伊ジャーナリスト協会」のロベルト
・ナターレ会長は「政治家の醜聞報道妨害が狙い」と反発。盗聴捜査が1990
年代の政界スキャンダルで、数々の証拠をもたらしたことから、検察も法案に強く
反対しており、1日には、検察官の大半が加盟する「全国司法官協会」が記者協会への支持を表明。
先月下旬に行われた世論調査でも、法案への反対は71%に上っており、政府・
与党内部では、フィーニ下院議長ら重鎮は法案に慎重姿勢を保っている。29日に審議が始まる下院での法案可決は微妙な情勢だ。
http://news.www.infoseek.co.jp/world/story/20100709_yol_oyt1t01008/