【速報】おとじつ39

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1 ラフレシア(アラビア)

けいおん!紅茶267杯目
http://hideyoshi.2ch.net/test/read.cgi/anime/1244738651/184
184 名前:雑用@お止め組。 ★[sage] 投稿日:2009/06/12(金) 02:28:34 ID:???
京アニま〜た学祭エンドか?
2_:2009/06/13(土) 01:06:26.55 ID:Gk67I0yS
|\_/ ̄ ̄\_/|
\_|       |_/  
  (^  ▼ .〈▼ リ    
  .しi   r、_) |  
    |  `ニニ' /    わしが炎上させた
   ノ `ー―i´
  (⌒`::::  ⌒ヽ  
   ヽ:::: ~~⌒γ⌒)  
    ヽー―'^ー-'
     〉    │
3 ロウバイ(東京都):2009/06/13(土) 01:06:30.80 ID:MFfUlGvT
おせーぞ豚
4 スミレ(catv?):2009/06/13(土) 01:06:38.26 ID:DQaFR7Rb
まだかよ。。。
5 バーベナ(関西地方):2009/06/13(土) 01:06:41.41 ID:t7R6vqzK
草薙「うわぁ〜軽いですね〜」
SCE「えへへえhwwwありがとうございますwwww」
草薙「出た〜!1000からありますねこれ XMB!XMB!」
SCE「ハハハ・・・・・www」
草薙「これもう完成してるんじゃないんですか?」
SCE「うははあwwwwww」
平井「まだです これからですww」
草薙「もういいじゃないですかこれ・・・」
SCE「いえいえwwww」
草薙「・・・もうこのままで良いって言ってるんですよ・・・」
SCE&平井「え?」
草薙「いいから早く出してPSP2作れよ・・・ちゃんとしたものをな・・・」

草薙「こんなのPSPじゃない!」
そういいDSを床へ叩きつける
会場内は騒然となる・・・
6 カキツバタ(福岡県):2009/06/13(土) 01:06:47.90 ID:EN4Bc0xa
氏ね → ◆aLICeotiAI
7 チドリソウ(福岡県):2009/06/13(土) 01:06:48.21 ID:gZ6Gar8n
8 チドリソウ(東京都):2009/06/13(土) 01:06:49.15 ID:37/e0Z7p
  r'´:/:::::::,イ:::::::::: |::jハ;:::::::::ヽ:::::::::::\
  |::/::::::::/│::::::::::|::| |::::ヽ:: ',:::::|:::::::..',  これは>>1乙じゃなくてツインテールですから
  !:l:::::::/ ̄|::::::::::// ̄|:::从:: |:::::|::::::::::r  変な勘違いしないで下さい
 ノ:|::::/ ___レヘ:::::/ ___V  ';::|:::::|::::::::::|:――--――ヘ
. !:::{从rテ示  ∨ rテ示7 V::::::|::::::::/l:.:..: : : : : : : : : : 〉
/:::::::::リ ヒソ     ヒソ /::::::/::::::/――――ァ´:./
|:::::::: ′          /:::::::「`)イ     /: :/
|:::::::小、         /::::::::::r'´      /: : : /     ,、
|∧:::| l::> .. _ ̄   .イ::::::::::/      /: : : /     }: :ヽ
l| V !:::::::::|rュr勹   フ::::/V       /: : : 〈___/: : : 〉
    |:::::/ん)´  /:/ン勹ぅ- 、    \: : : : : : : : : : : : /
    |::/ r')ヘ   んr'´ノ´   ヽ     ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
9 オランダミミナグサ(千葉県):2009/06/13(土) 01:06:50.31 ID:mJg+UBmS
あ?
10 チドリソウ(愛知県):2009/06/13(土) 01:06:51.22 ID:X1fTtyXz
たまご△
11 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:04.52 ID:qpqQdUXr
 調子に乗った僕は、右手で胸への愛撫を続けたまま、左手を下腹部に。
12 セントウソウ(東京都):2009/06/13(土) 01:07:04.39 ID:6ty0dygg
おとじつ千本ノック
13 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:04.91 ID:qpqQdUXr
「嘘つき…」
14 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:04.95 ID:qpqQdUXr
 体調が悪いのか、ふらふらしている。
15 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:04.96 ID:qpqQdUXr
 何かの間違いで、夕飯の支度がしてないかな、などと、あるわけのない事を考えてしまう。
16 ハナムグラ(catv?):2009/06/13(土) 01:07:04.73 ID:yVmD54wz
力が満ち満ちていく
17 ラッセルルピナス(アラバマ州):2009/06/13(土) 01:07:04.97 ID:5qyM3Vmq
    ∧∧
       ヽ(・ω・)/   ズコー
      \(.\ ノ
    、ハ,,、  ̄
18 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:04.99 ID:qpqQdUXr
 いつもの場所に、戻ってきたんだから。
19 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.01 ID:qpqQdUXr
「マリアちゃん、顔をあげてよ。ホント、気にしてないんだから」
20 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.13 ID:qpqQdUXr
「今度、アリスと一緒に泊まりにおいで」
21 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.33 ID:qpqQdUXr
「雪が泳げれば…お助けできましたのに。すみません」
22 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.34 ID:qpqQdUXr
「赤ちゃんができたら…私にも、おっぱい出るのかなぁ…」
23 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.37 ID:qpqQdUXr
 雑音混じりの、だけど、とても綺麗な歌声。
24 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.41 ID:qpqQdUXr
「そっか。そんなに仲がいいわけでもないのかな」
25 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.43 ID:qpqQdUXr
 どうして僕は、一緒に来てあげなかったんだろう。
26 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.44 ID:qpqQdUXr
「暇な時は、私も手伝うよ」
27 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.45 ID:qpqQdUXr
 子供にしか見ることができない少年、それがピーターパン。
28 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.46 ID:qpqQdUXr
「雪さ…っ…」
29 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.47 ID:qpqQdUXr
 服が体に張りついて気持ち悪い。
30 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.48 ID:qpqQdUXr
「ふふ、失礼しました。大丈夫ですか?」
31 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.49 ID:qpqQdUXr
 なんなんだ?
32 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.50 ID:qpqQdUXr
「違う。僕は、あなたを迎えに来る船と、戦わなきゃいけないはずなんだ」
33 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.52 ID:qpqQdUXr
 唇を離す。
34 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.63 ID:qpqQdUXr
 だけど僕は、すぐそばにある彼女や友人たちの手は離さなかった。
35 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.69 ID:qpqQdUXr
 彼女の視線は僕を通り越した、その先に注がれている。
36 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.76 ID:qpqQdUXr
 ふたりに連れられて、校舎裏を訪れた。
37 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.77 ID:qpqQdUXr
 門を施錠していたものだ。
38 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.79 ID:qpqQdUXr
「…じゃあ、もらっておくね。ありがとう牧野さん」
39 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.87 ID:qpqQdUXr
「過保護は良くないんじゃない? こっちは見ての通りなんだし…少しくらい放っておいても大丈夫よ」
40 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.93 ID:qpqQdUXr
「そうか? じゃあ、俺は席取っとくわ。後でからかうためにも、めいっぱい近くで見てやらないとな」
41 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.94 ID:qpqQdUXr
 そういえば、ずいぶん長いこと忘れてたけど、大丈夫なのか?
42 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:05.97 ID:qpqQdUXr
「そういうんじゃないよ。そういえば、夢でもお姉さんがどうとか言ってたことがあったな…」
43 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.03 ID:qpqQdUXr
「ごめん…っ…限界…」
44 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.04 ID:qpqQdUXr
 ふたりが、顔を見合わせた。
45 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.07 ID:qpqQdUXr
 すると、遠目にも彼女の顔がみるみる赤く染まっていくのがわかった。
46 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.10 ID:qpqQdUXr
 夢を見るための、話なんだから。
47 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.12 ID:qpqQdUXr
「んー、じゃあ、期待してる」
48 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.13 ID:qpqQdUXr
 彼女は照れたようにうなずいて、
49 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.14 ID:qpqQdUXr
「あっ…な、なに?」
50 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.16 ID:qpqQdUXr
 頑張れ、頑張れ――
51 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.16 ID:qpqQdUXr
 誰も知らない、言葉にもなっていない不定形の力が、僕たちの間に働いているとしか思えなかった。
52 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.19 ID:qpqQdUXr
「おまえらに気づかれるとはね。とにかくそういうわけなんだが…」
53 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.21 ID:qpqQdUXr
『山ノ民、と呼ばれる者たちがいる』
54 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.18 ID:qpqQdUXr
 覚めるからこその、夢。
55 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.24 ID:qpqQdUXr
 余計なことを言うのはやめよう…。
56 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.25 ID:qpqQdUXr
「透矢ちゃーん、どう?」
57 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.31 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんの席だった。
58 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.32 ID:qpqQdUXr
「変態って…やめる?」
59 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.33 ID:qpqQdUXr
「んーっ、遊んだ遊んだ。キミたち、楽しめた?」
60 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.35 ID:qpqQdUXr
「おねーちゃんっ」
61 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.37 ID:qpqQdUXr
 違う、というのは、彼女の生い立ちのことだろう。
62 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.40 ID:qpqQdUXr
 駄目だ…ぼけっとしていたみたいで、話がまったく通じていない。
63 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.42 ID:qpqQdUXr
 庄一は、そんな僕の様子に笑いをかみ殺しながら、
64 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.43 ID:qpqQdUXr
 唐突すぎたか、花梨は完全に固まってしまった。
65 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.48 ID:qpqQdUXr
「ばーか、勘違いしないの。キミに教えてもらう時間、好きだったよ」
66 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.51 ID:qpqQdUXr
「手伝うなんて言ったのに、邪魔しちゃった…」
67 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.53 ID:qpqQdUXr
 負けを認めた僕だから、その点については素直に認めておくことにした。
68 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.55 ID:qpqQdUXr
「和泉ちゃん、俺がきれいだって言ってもそんな反応してくれたことないのに…」
69 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.56 ID:qpqQdUXr
「山行くんだからハイキングじゃん」
70 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.59 ID:qpqQdUXr
「…ばっちり。でも、ちょっと疲れたから休むね」
71 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.60 ID:qpqQdUXr
「もっと…はっ…ぁ…こちらも…お願いしますわ」
72 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.61 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんから望んだ事とはいえ、僕はそれに応えたんだ。
73 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.66 ID:qpqQdUXr
「ここは…?」
74 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.67 ID:qpqQdUXr
 花梨は、庄一は、どこでこの音を聞いているだろう。
75 ニオイタチツボスミレ(東京都):2009/06/13(土) 01:07:06.46 ID:s8d+BNL7
またやってんのか
じゃまくせーぞ
76 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.69 ID:qpqQdUXr
「はい。ですけど、それは透矢さんも一緒だと思います」
77 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.70 ID:qpqQdUXr
 勢いあまって転びかかったところを、花梨に助けられていた。
78 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.73 ID:qpqQdUXr
「うん。じゃあ、キス…して」
79 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.76 ID:qpqQdUXr
「透矢さんですか? 見たことはありませんね。とはいえ、人に見せるものでもないでしょうから…」
80 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.77 ID:qpqQdUXr
「やっぱり、庄一は、和泉ちゃんのこと、好きだったの?」
81 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.80 ID:qpqQdUXr
「これで大丈夫。行きましょう」
82 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.82 ID:qpqQdUXr
「この子ったら、勘だけは私よりいいのよね。頭は悪いくせにー」
83 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.84 ID:qpqQdUXr
『い、いいってば。動物が相手じゃ仕方ないよ。また次の機会に見せてよ。楽しみにしてるから』
84 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.86 ID:qpqQdUXr
「なんて恰好させるのよ、もう…」
85 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.86 ID:qpqQdUXr
 突然のお手紙でごめんなさい。
86 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.88 ID:qpqQdUXr
 抗議の声を上げかかったところで、制止された。
87 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.91 ID:qpqQdUXr
「うん。だけど…」
88 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.93 ID:qpqQdUXr
「あんまり、寝られなかったかな」
89 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.94 ID:qpqQdUXr
 その代わり、くいくいと僕の服を引っ張るのだけはやめない。
90 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.95 ID:qpqQdUXr
 でも、僕は今、その花梨と手を握っていて…
91 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.96 ID:qpqQdUXr
 みんなを、傷つけて…
92 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:06.97 ID:qpqQdUXr
「何か、お手伝いできないかなって、思ったんだけど」
93 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.06 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんはいない。
94 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.07 ID:qpqQdUXr
「馬子にも衣装さ。なあ?」
95 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.10 ID:qpqQdUXr
「勘弁してよ…」
96 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.10 ID:qpqQdUXr
 今度は、和泉ちゃんがへろへろ駆け寄ってきて、もはや当然の流れで、砂浜に顔面を叩きつけていた。
97 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.12 ID:qpqQdUXr
「ふん、お人好しなのは確かみたい。で、名前は?」
98 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.13 ID:qpqQdUXr
 海の時とは違って、ずいぶん上機嫌だ。
99 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.15 ID:qpqQdUXr
 緊張は、ない。
100 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.15 ID:qpqQdUXr
「…双子、か」
101 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.17 ID:qpqQdUXr
「ごめん。普段はお賽銭とか取ってるくせに、本当に神様の力が欲しい時はこうなんだよね」
102 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.18 ID:qpqQdUXr
 話題づくりにもなるし…
103 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.19 ID:qpqQdUXr
「透矢くぅん…透矢く…っ…」
104 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.20 ID:qpqQdUXr
 あんまりそっけないから、本当に怒ってしまったのかと不安になる。
105 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.21 ID:qpqQdUXr
「っっ。か、花梨、つま先で蹴らなくてもいいのに」
106 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.28 ID:qpqQdUXr
 じゃあ、あれはいったい…
107 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.29 ID:qpqQdUXr
 つまるところ、よくわからなかった。
108 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.30 ID:qpqQdUXr
「あは、良かった。じゃあ、もっとキスしてください」
109 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.32 ID:qpqQdUXr
 僕はそんなに、ひどい顔をしているんだろうか。
110 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.33 ID:qpqQdUXr
「透矢くん、どうする?」
111 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.34 ID:qpqQdUXr
 三人は行ってしまった。
112 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.36 ID:qpqQdUXr
「だけどは、なしだぜ」
113 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.36 ID:qpqQdUXr
「うん。ありがとう、雪さん」
114 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.41 ID:qpqQdUXr
「ったく、他の患者が迷惑だろうよ。ま、上手いこと言っておくさ」
115 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.42 ID:qpqQdUXr
「ぅ、ぅぅ?」
116 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.45 ID:qpqQdUXr
 正直まだ、どこか信じられないような気持ちもあったけど、僕は雪さんに習い、頭を下げた。
117 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.55 ID:qpqQdUXr
 つま先をぐりぐり…
118 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.56 ID:qpqQdUXr
「そういうことじゃなくて、わざわざ戻ってきてくれたんだね。気づけなくて、ごめん」
119 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.58 ID:qpqQdUXr
 夢で見た横顔が、そこにはあった。
120 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.59 ID:qpqQdUXr
「パーマかけたんだよ。くせっ毛だったから、嫌で」
121 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.60 ID:qpqQdUXr
「だから、嫌いでした」
122 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.63 ID:qpqQdUXr
「けっこう、恥ずかしいんだよ…」
123 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.64 ID:qpqQdUXr
『何かあったら、このボタンを押してください』
124 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.66 ID:qpqQdUXr
「嘘だけどね。さて、せっかくだからお参りでもしていこうか」
125 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.66 ID:qpqQdUXr
「確かにね」
126 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.68 ID:qpqQdUXr
「だけど、おまえが言いたかったのは、そういうことだろ? 部活に出ろって言うんだから」
127 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.69 ID:qpqQdUXr
「ぅぅ…?」
128 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.71 ID:qpqQdUXr
「…そんなことないよ」
129 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.62 ID:qpqQdUXr
「ち、違うって! そういう意味じゃなくて…だから、雪さんの家族として…」
130 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.72 ID:qpqQdUXr
 返事に窮していると、渦中の少女が、くすくす笑い出した。
131 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.73 ID:qpqQdUXr
 雪さんが引いてくれた椅子に座ると、自然と、ため息が出た。
132 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.79 ID:qpqQdUXr
 ぶるぶると、大きく震える体を、ひときわのけぞらせて、
133 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.79 ID:qpqQdUXr
「ほらほら、ぼーっとしてないで窓くらい開ける。いい天気なんだから」
134 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.81 ID:qpqQdUXr
「雪のおむねが好きなんですか? それとも、おっぱいが飲みたいんですか?」
135 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.80 ID:qpqQdUXr
 彼女が大人しくなるまでの間、僕は頭を撫で続けた。
136 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.82 ID:qpqQdUXr
 あははと笑って、そのまま目を閉じる花梨。
137 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.83 ID:qpqQdUXr
「あいかわらず、ぐーぐー寝てらぁ」
138 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.84 ID:qpqQdUXr
「そうですわね。ふふ…」
139 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.86 ID:qpqQdUXr
「馬鹿兄妹。やっぱり同じレベルなんだよね」
140 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:07.87 ID:qpqQdUXr
 白い肌、黒い髪、そして赤い瞳。
141 チチコグサ(千葉県):2009/06/13(土) 01:07:07.73 ID:BBPnNb+q
うぜぇええ
142 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.01 ID:qpqQdUXr
 ゾッとしたし、けっきょく自分では何もできなかったのが情けなく思えた。
143 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.02 ID:qpqQdUXr
 僕が腰を浮かせるたび、花梨の豊かなお尻がパンパンという音をならして揺れた。
144 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.03 ID:qpqQdUXr
「ごめんごめん。行こうか」
145 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.06 ID:qpqQdUXr
『おねがい…マリアを助けて…』
146 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.07 ID:qpqQdUXr
 試合にデートに、失敗続きだ。
147 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.06 ID:qpqQdUXr
 それでも親切にしてくれるのは、前の、瀬能透矢が好きだからだって、そう思いこんでいた。
148 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.10 ID:qpqQdUXr
「この町の事に関する本…って、そんなのまで点字本になってるわけ?」
149 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.11 ID:qpqQdUXr
「目?」
150 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.11 ID:qpqQdUXr
「っくん…透矢さんの唇も、気持ちいいですよ」
151 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.06 ID:qpqQdUXr
「そうですか。記憶をなくされたと、うかがいましたけど…」
152 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.13 ID:qpqQdUXr
 何を言われても、されても、今は『ごめん』としか言えない。
153 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.16 ID:qpqQdUXr
「元の本を点字化した人間がいるってことでしょう? あんまり需要も無さそうなのに…」
154 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.16 ID:qpqQdUXr
「ぁ…は、はい!」
155 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.18 ID:qpqQdUXr
「寝ぼけてる?」
156 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.17 ID:qpqQdUXr
「ちょっと信じられんな…」
157 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.20 ID:qpqQdUXr
 恥ずかしいし、汚いことも考えてしまうけど、今は彼女を想って優しい気持ちになることができた。
158 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.25 ID:qpqQdUXr
「私も、透矢さんがいい…」
159 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.26 ID:qpqQdUXr
「ごめん、八つ当たりするなんて最低だ」
160 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.27 ID:qpqQdUXr
「心臓の音、聞こえますよ」
161 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.29 ID:qpqQdUXr
 自分が無気力になっているのなんて、わかっている。
162 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.29 ID:qpqQdUXr
「いや、そう言われても…」
163 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.30 ID:qpqQdUXr
「やっぱり、じかに触ると違うね」
164 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.32 ID:qpqQdUXr
 その拍子に、テーブルのはしに手の甲がぶつかる。
165 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.32 ID:qpqQdUXr
 ぎゅっ――で通じるようになってしまった。
166 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.35 ID:qpqQdUXr
「違いますの。和泉さんが、おかしなことをおっしゃるから」
167 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.35 ID:qpqQdUXr
 彼女は、緊張している。
168 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.36 ID:qpqQdUXr
「なんですか、透矢さん」
169 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.38 ID:qpqQdUXr
「ああ、僕の家の前で会ってから…どうして?」
170 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.39 ID:qpqQdUXr
「っぁ! んぅぅ…っぅぁぁ!」
171 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.40 ID:qpqQdUXr
「はは…って、なに?」
172 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.41 ID:qpqQdUXr
「誰もいないって。家にいけば自転車があるから、それで送る」
173 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.42 ID:qpqQdUXr
「はいはい、冗談ですよ。きのうごちそうになったばっかりだもんね」
174 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.43 ID:qpqQdUXr
「透矢ちゃーん、今のだぁれ?」
175 クリサンセコム・ムルチコレ(dion軍):2009/06/13(土) 01:07:08.23 ID:JVQFglQi
おわり
176 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.47 ID:qpqQdUXr
「だって、めんどーい」
177 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.49 ID:qpqQdUXr
「透矢…これ…」
178 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.51 ID:qpqQdUXr
「でも、人の世界で生まれる」
179 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.52 ID:qpqQdUXr
 確かに、今、一瞬だけ光が見えたような気がしたけど…
180 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.54 ID:qpqQdUXr
「へえ、ちゃんと読んだんだ。やっぱり真面目だよね、透矢くんは」
181 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.58 ID:qpqQdUXr
「透矢さんのそういうところ、雪は好きですよ。あまりお人好しすぎるのは考えものかもしれませんけど」
182 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.60 ID:qpqQdUXr
 都合のいい一般論に聞こえなくもないけど、雪さんの曇りない口調で言われると、妙に説得力があった。
183 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.64 ID:qpqQdUXr
「ええっと、牧野さんって体調をくずしてたんだよね、大丈夫なの?」
184 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.65 ID:qpqQdUXr
 と――
185 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.68 ID:qpqQdUXr
「私なんか、ただおんなじ町に生まれて、たまたま知り合ったっていうだけで…大違いだ」
186 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.69 ID:qpqQdUXr
「やっぱり…その…」
187 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.70 ID:qpqQdUXr
 抵抗はない。
188 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.72 ID:qpqQdUXr
 歯止めが利かないのか、和泉ちゃんは花梨の体を大きく揺さぶり始めた。
189 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.73 ID:qpqQdUXr
 むせかえるようだけど、どこか、懐かしいような気持ちにもさせてくれる。
190 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.77 ID:qpqQdUXr
「それは、わかってるつもり」
191 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.77 ID:qpqQdUXr
「私の心配してくれたの?」
192 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.75 ID:qpqQdUXr
 そして僕は、何も言えなくなる。
193 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.78 ID:qpqQdUXr
 そして、口をつけたまま、僕は、彼女の頭を撫でた。
194 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.79 ID:qpqQdUXr
「雪さん…?」
195 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.82 ID:qpqQdUXr
「はーい」
196 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.81 ID:qpqQdUXr
 それは、みんなの――少なくとも花梨の期待を、背負ってしまったっていうことなのかもしれない。
197 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.84 ID:qpqQdUXr
 僕は、胸に目がいかないように、気をつけながら続けた。
198 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.83 ID:qpqQdUXr
「驚かせようと思ってね。行こう」
199 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.85 ID:qpqQdUXr
 一瞬、左側の波が、右側の波を浸食して流れ込む。
200 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.86 ID:qpqQdUXr
 でも、アリスは多分、嘘をついている。
201 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.88 ID:qpqQdUXr
「透矢くんは、そう思わない?」
202 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.89 ID:qpqQdUXr
「ん、じゃあ、よろしくね」
203 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.90 ID:qpqQdUXr
「無理しないでよね。じゃあ、他の所に行く?」
204 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.91 ID:qpqQdUXr
「可愛く、ありません?」
205 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.93 ID:qpqQdUXr
「あー、もー、ストレス溜まるー」
206 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.94 ID:qpqQdUXr
「僕がお願いしなくても、しちゃったりしない?」
207 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.95 ID:qpqQdUXr
 相変わらず、仲のいい親子だ。
208 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.96 ID:qpqQdUXr
「にしても、そんなに焦ってお見合いなんかさせてどうするんだろうね…」
209 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.97 ID:qpqQdUXr
 とりあえず、そこに積まれた本を、上から手に取ってみることにした。
210 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:08.98 ID:qpqQdUXr
「あんまり自信ないけど…これが、私の素顔」
211 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.00 ID:qpqQdUXr
「…大好き? 本当に?」
212 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.01 ID:qpqQdUXr
「アリス。あの…中に…」
213 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.04 ID:qpqQdUXr
「信じるよ。そういう月が一つくらいあっても、いいと思う」
214 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.05 ID:qpqQdUXr
「大和神社にいたっていう、あれ?」
215 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.06 ID:qpqQdUXr
「そう? じゃあ続けてみようか」
216 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.08 ID:qpqQdUXr
 もう少しだけ、他の誰でもない、僕のためのメイドさんでいてほしいんだ。
217 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.09 ID:qpqQdUXr
 アリス、こういう時は異様に恥ずかしがりだ。
218 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.19 ID:qpqQdUXr
 この人に優しくされるのは、どうしてこんなに気持ちいいんだろう。
219 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.25 ID:qpqQdUXr
 続いて、香坂姉妹、和泉ちゃんが、暗がりの向こうから姿を現した。
220 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.26 ID:qpqQdUXr
 ずっずっずっ――吸い込まれるように、僕のものが彼女の中に埋没していく。
221 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.27 ID:qpqQdUXr
「ひとりでいいよ。それじゃあ、ちょっと行ってくるね」
222 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.29 ID:qpqQdUXr
 そして、そのまま舌をからめ、互いの体を抱きしめ合った。
223 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.30 ID:qpqQdUXr
「はい。せっかくいただいた水着を、一度も着ないというのは失礼ですしね」
224 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.32 ID:qpqQdUXr
 僕は、現在の状況をふたりに語って聞かせた。
225 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.33 ID:qpqQdUXr
「以上、キミのお母さんの受け売りでございましたとさ。あのときはこれで泣きやんでくれたけど」
226 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.35 ID:qpqQdUXr
 入り口を押し開く。
227 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.36 ID:qpqQdUXr
「んー、とりあえず足のこととか」
228 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.37 ID:qpqQdUXr
 それだけで、目に見えて落ちつきを取り戻す。
229 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.37 ID:qpqQdUXr
「いいですよ。雪は透矢さんのものなんですから、拒否権なんてありません」
230 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.38 ID:qpqQdUXr
「そう…じゃあ、そうするよ?」
231 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.41 ID:qpqQdUXr
「あ、いえ。ええと…」
232 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.41 ID:qpqQdUXr
「ケガ人だよ、私。話し相手になってあげたんだからいいじゃない」
233 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.42 ID:qpqQdUXr
「今日、雪さんに案内してもらったばっかりだから…」
234 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.43 ID:qpqQdUXr
 親子二代で、妄想癖でもあるのかもしれない。
235 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.44 ID:qpqQdUXr
「どうして、僕に?」
236 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.47 ID:qpqQdUXr
「いいよ。雪さんは、僕のためにしてくれたんだから」
237 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.46 ID:qpqQdUXr
「嫌な日だね。…ひょっとして、さっき僕の手を離してくれなかったのも、そのせいだったりする?」
238 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.52 ID:qpqQdUXr
「あ、いえ。ですけど、結末が変わらないのが残念ですわ」
239 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.52 ID:qpqQdUXr
「ぁ、そうですよね…すみません」
240 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.52 ID:qpqQdUXr
「…こんにちは」
241 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.52 ID:qpqQdUXr
“ずざざざざざざざ!”
242 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.52 ID:qpqQdUXr
「知性ねぇ…」
243 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.53 ID:qpqQdUXr
 そうしなければいけないからと、どこかに言い訳を見つけて。
244p3254-ipbf504okidate.aomori.ocn.ne.jp:2009/06/13(土) 01:07:09.30 ID:6d0eGHjv
邪念婆
245 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.56 ID:qpqQdUXr
「…微妙に違うんだね」
246 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.57 ID:qpqQdUXr
 静かで涼しい、自然にあふれた空間。
247 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.59 ID:qpqQdUXr
 当然、これに和泉ちゃんが気づかないはずもなく、彼女は拗ねたように口をとがらせた。
248 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.60 ID:qpqQdUXr
「なんか投げやりー。ま、いいや。練習するから、来て」
249 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.62 ID:qpqQdUXr
「落ちついてるんだね」
250 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.62 ID:qpqQdUXr
「切りますよ?」
251 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.63 ID:qpqQdUXr
「…あるわ」
252 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.69 ID:qpqQdUXr
「まあ…」
253 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.71 ID:qpqQdUXr
 私は、息子の見た少女が幻だとは思っていない。
254 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.71 ID:qpqQdUXr
 僕は逃げた、彼女は逃げなかった。
255 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.72 ID:qpqQdUXr
「けど?」
256 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.74 ID:qpqQdUXr
「わかんないじゃないか、今は引けないんだし」
257 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.75 ID:qpqQdUXr
 しかも、僕の片手にはウサギの頭をかたどった風船がにぎられている。
258 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.76 ID:qpqQdUXr
「嫌なら言ってね?」
259 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.77 ID:qpqQdUXr
「雪さ…雪さん!」
260 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.79 ID:qpqQdUXr
「それじゃあ、私はここで」
261 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.80 ID:qpqQdUXr
 二人の間にはさんで…っていうことらしい。
262 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.81 ID:qpqQdUXr
 どうして?
263 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.83 ID:qpqQdUXr
 伸ばした手を払いのけ、アリスは頭を抱えた。
264 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.84 ID:qpqQdUXr
「ぅぉ…」
265 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:09.88 ID:qpqQdUXr
「どうして、僕に?」
266 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.00 ID:qpqQdUXr
「んぐ…っ…んっ…ぅぅ」
267 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.02 ID:qpqQdUXr
 おかげで、少しだけ、締めつけもゆるくなる。
268 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.02 ID:qpqQdUXr
「真面目な話さ。こういう儀式だと、薬とか使われてたみたいだぜ。それで神様を降ろしてみたり…」
269 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.04 ID:qpqQdUXr
 しかし、私にはどうしても、それが夢や幻の類とは思えなかった。
270 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.05 ID:qpqQdUXr
「ええ。わたくしは、生まれた瞬間から、この年齢で、こういう記憶を持っていたのかもしれませんわ」
271 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.07 ID:qpqQdUXr
「ひとりではありませんでしたわ。ただ…その方はもう、役目を終えてあなたの側にはいません」
272 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.07 ID:qpqQdUXr
 これが自分の中にもあること、それは認めよう。
273 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.08 ID:qpqQdUXr
「僕が雪さんの服を脱がせたことなんて、あるの?」
274 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.09 ID:qpqQdUXr
「私のいれたお茶、まずかったんだ…」
275 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.13 ID:qpqQdUXr
 時計を見ると、ちょうど七時。
276 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.12 ID:qpqQdUXr
「そんなにつまんないこと言うのは、お姉ちゃんだけだもん」
277 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.14 ID:qpqQdUXr
 もちろん気のせい…だよな。
278 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.17 ID:qpqQdUXr
 そうなのかもしれない。
279 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.17 ID:qpqQdUXr
「進歩ないわよね」
280 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.17 ID:qpqQdUXr
 意味が、わからなかった。
281 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.11 ID:qpqQdUXr
 七月七日といえば、あの手紙で指定されていた日付だ。
282 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.18 ID:qpqQdUXr
「勝手に話を進めてるなぁ」
283 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.21 ID:qpqQdUXr
「本当にね。それにしても…キミ、また夢見たの?」
284 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.21 ID:qpqQdUXr
「もぉー、花梨ちゃんの馬鹿ぁ」
285 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.23 ID:qpqQdUXr
『ナナミ様、ナナミ様…』
286 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.22 ID:qpqQdUXr
「人殺し…かしら」
287 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.27 ID:qpqQdUXr
「キミ、いつの間に」
288 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.29 ID:qpqQdUXr
「あるわけないでしょ、この馬鹿ぁ…」
289 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.31 ID:qpqQdUXr
 そういうことになるらしい。
290 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.32 ID:qpqQdUXr
 最後に改めてデートの約束をし――僕たちは手をつないだまま帰路についた。
291 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.34 ID:qpqQdUXr
 夢の中の僕だって、苦しんでる。
292 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.33 ID:qpqQdUXr
「ほら、熱いですよ、やっぱり」
293 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.35 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんにいたっては、方向感覚を無くすために行う最初の動作で目を回して終了。
294 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.39 ID:qpqQdUXr
 僕は彼女のことを、何もわかっちゃいなかった。
295 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.37 ID:qpqQdUXr
 背中から声がかかった。
296 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.40 ID:qpqQdUXr
 顔が熱くなった。
297 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.40 ID:qpqQdUXr
「ど、どちらかといえば好き…」
298 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.39 ID:qpqQdUXr
「いいけど…ちょっと、やりすぎちゃったかな…」
299 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.42 ID:qpqQdUXr
 生まれのために、っていうのは、いったいなんだ?
300 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.44 ID:qpqQdUXr
「震えながら言っても説得力ないぞー」
301 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.46 ID:qpqQdUXr
 不慮の事故でも起きたらどうしよう、雪さんと離ればなれになったらどうしよう。
302 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.45 ID:qpqQdUXr
 それくらい、自分でわかる。
303 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.47 ID:qpqQdUXr
「まあ…その話はいいか。少なくとも嫌われてないんだから喜ばないとね」
304 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.63 ID:qpqQdUXr
「彼女は…」
305 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.64 ID:qpqQdUXr
「思い出して、いただけたんですね?」
306 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.65 ID:qpqQdUXr
 僕には念じることしかできなかった。
307 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.66 ID:qpqQdUXr
「どれどれ、貸してみなさい」
308 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.67 ID:qpqQdUXr
『七月七日 午後五時 公園で待っています』
309 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.68 ID:qpqQdUXr
「ぃ…」
310 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.70 ID:qpqQdUXr
 ピンと立った乳首が誘っているように思えて、僕はすぐさま、そこに口をつけていた。
311 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.70 ID:qpqQdUXr
「もう、大丈夫ですからね」
312 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.71 ID:qpqQdUXr
「お姉ちゃん、おねーちゃん」
313 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.73 ID:qpqQdUXr
「やだ、どうしたの? 何か悩み事があるとか…」
314 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.74 ID:qpqQdUXr
「っぁん…」
315 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.72 ID:qpqQdUXr
「防空壕にばっかり気を取られてて…うかつだったわ。この国のキツネは霊獣だった」
316 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.75 ID:qpqQdUXr
 弓を引き絞り、離す直前の構えが、他の子に比べ、異常に長い。
317 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.77 ID:qpqQdUXr
 それに応じながら、僕は彼女の足を開いて、その間に立った。
318 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.78 ID:qpqQdUXr
「でしたら、ゆっくりできますね」
319 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.79 ID:qpqQdUXr
「ふふ、遅れると、どやされてしまいますものね」
320 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.81 ID:qpqQdUXr
「どうしても、気になられるんですね、あの方のことが」
321 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.90 ID:qpqQdUXr
 神社っていう場所のせいなのか…それとも、僕の、眠った記憶のせいなのか。
322 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.91 ID:qpqQdUXr
「…そうなんだけどね」
323 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.93 ID:qpqQdUXr
「雪さん、こんな昔のこと、記憶をなくす前も覚えてなかったに決まってるよ。次に行こう」
324 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.96 ID:qpqQdUXr
「兄弟かな…?」
325 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.97 ID:qpqQdUXr
「だから、僕とがんばろうよ」
326 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:10.98 ID:qpqQdUXr
「マリア…?」
327 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.00 ID:qpqQdUXr
「ずっと?」
328 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.01 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんは、妙に年寄りっぽいかけ声をかけてベンチに腰をおろした。
329 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.01 ID:qpqQdUXr
 たとえば計算問題。
330 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.03 ID:qpqQdUXr
 だから、雪さんがいきなり大きな声をあげた時は、本当におどろかされた。
331 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.03 ID:qpqQdUXr
 腰を振る、背筋を何かが駆け上がってくる。
332 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.05 ID:qpqQdUXr
 机、本棚、ベッド、クローゼット、
333 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.06 ID:qpqQdUXr
 僕はふたりに気づかれないように、礼拝堂の扉を閉めた。
334 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.10 ID:qpqQdUXr
 引っかかりを、強引に引きはがすと、いかにも弾力のありそうな胸が飛び出した。
335 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.08 ID:qpqQdUXr
「気持ちいいんだけど痛い。透矢のそれと同じだと思うよ。そっちも、キツいんなら脱げば?」
336 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.10 ID:qpqQdUXr
「にしても、すごいって」
337 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.11 ID:qpqQdUXr
「…何か隠してない?」
338 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.12 ID:qpqQdUXr
「や、やめてよぉ」
339 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.19 ID:qpqQdUXr
「ふふ…おやすみなさい」
340 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.20 ID:qpqQdUXr
 それでまた、彼女っていう幻が見られるようになるなら、僕はどうなったって構わない。
341 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.22 ID:qpqQdUXr
 妙なところでつながる――いちおう、調べてみる価値はありそうだ。
342 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.23 ID:qpqQdUXr
 泣き出しそうな瞳に見つめられると、もう、止めようなんて気になれず、
343 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.24 ID:qpqQdUXr
「あのー、マリアちゃん、あんまり跳ねないほうが…」
344 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.27 ID:qpqQdUXr
「庄一んとこの神社でも見たし…」
345 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.28 ID:qpqQdUXr
「わかった、この俺が」
346 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.27 ID:qpqQdUXr
 それでも、一日が流れ出した。
347 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.29 ID:qpqQdUXr
(もっとも…)
348 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.30 ID:qpqQdUXr
 にやにや――意地が悪い。
349 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.32 ID:qpqQdUXr
 家の灯りに、ほっとするのを感じながら歩調をゆるめると、門の前に人影があることに気づいた。
350 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.27 ID:qpqQdUXr
 さすがに、マリアちゃんも顔を真っ赤にしてうろたえている。
351 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.33 ID:qpqQdUXr
「そんなことはないと思うけど、今日も仕事だって言ってたね」
352 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.34 ID:qpqQdUXr
 祈りで蛇の猛毒を消す?
353 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.35 ID:qpqQdUXr
「雪さん、ちょっといい?」
354 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.35 ID:qpqQdUXr
 だけど、僕はその写真に強く心を動かされていた。
355 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.38 ID:qpqQdUXr
 その代わりに、僕は雪さんのことを話してもらうことにした。
356 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.38 ID:qpqQdUXr
 それどころか、彼女は幸せそうな表情のまま、腰に回した手にさらなる力をこめようとしていた。
357 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.40 ID:qpqQdUXr
「むにゃ…」
358 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.42 ID:qpqQdUXr
「抜け出して来ちゃったわけだね」
359 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.43 ID:qpqQdUXr
「楽しいはずのデートで、そんなに疲れてどうするのさ。足は?」
360 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.50 ID:qpqQdUXr
「失礼しました。雪は食堂のほうでお待ちしていますから、着替えが終わったらいらしてください」
361 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.51 ID:qpqQdUXr
「ちょっと嘘っぽい気もするんだけどね。ちゃんとした記録もないし」
362 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.52 ID:qpqQdUXr
 柄のところに、波打つような、奇妙な模様が彫り込まれている。
363 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.53 ID:qpqQdUXr
「いいってば。どうせすぐ帰ってくるんだから」
364 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.55 ID:qpqQdUXr
「あと五分でいいから」
365 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.55 ID:qpqQdUXr
 いっそ、そう考えるほうが自然かもしれない。
366 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.57 ID:qpqQdUXr
「そういうこと。じゃあ、はじめ…よっ」
367 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.59 ID:qpqQdUXr
「雪さん、ちょっとだけ待っていてくれないかな?」
368 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.60 ID:qpqQdUXr
 と、アリスが訪ねてきた。
369 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.61 ID:qpqQdUXr
 まずは、確かめよう。
370 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.62 ID:qpqQdUXr
 白魚のような、なんて形容が、冗談や誇張にならない彼女の手足。
371 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.64 ID:qpqQdUXr
「ホントに長い髪だね」
372 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.64 ID:qpqQdUXr
「うぁ…」
373 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.65 ID:qpqQdUXr
「…そう」
374 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.68 ID:qpqQdUXr
 期待してたとか、そういうことじゃないんじゃないか。
375 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.68 ID:qpqQdUXr
 何かあったんだろうか?
376 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.68 ID:qpqQdUXr
「…ねえ、それならどうしてアリスは僕のことをマリアちゃんから遠ざけようとしていたわけ?」
377 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.69 ID:qpqQdUXr
「いいの。透矢と一緒が、いちばん落ちつくんだもん」
378 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.84 ID:qpqQdUXr
「ねえ、牧野さん?」
379 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.86 ID:qpqQdUXr
「たまにはあの夢のように、二人でお出かけしてみませんか?」
380 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.87 ID:qpqQdUXr
「変なの…好きにさせるようにがんばるって言えばいいの?」
381 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.88 ID:qpqQdUXr
「でもまぁ、やるだけやるぜ。彼女がいつ戻ってくるか、わからないもんな」
382 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.90 ID:qpqQdUXr
「や、やだ、人の顔じっと見て。そんなに似合わない?」
383 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.89 ID:qpqQdUXr
 こんなことじゃ、いけない…んだけど、可愛いものは可愛い。
384 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.91 ID:qpqQdUXr
 見事にかぶった。
385 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.92 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんが、へろへろとした足取りでこちらに駆け寄って来る。
386 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.94 ID:qpqQdUXr
 どくん!――我慢する間もなく、僕のものは大きく脈打ち、達していた。
387 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.94 ID:qpqQdUXr
「マリアって、いい子でしょう?」
388 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.96 ID:qpqQdUXr
「仕方ないな。いい? この問題は…」
389 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.97 ID:qpqQdUXr
「夢を見る? 病院のベッドは寝心地が悪いかな」
390 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.98 ID:qpqQdUXr
「キミは、こんな子じゃ…ないよ。どうしてもって言うなら、こんなところじゃなくて」
391 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:11.99 ID:qpqQdUXr
 言いながら拳を振り下ろしてくる花梨。
392 オウレン(東京都):2009/06/13(土) 01:07:11.92 ID:W3tMa2Oo
ヘイヘーイ
393 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.14 ID:qpqQdUXr
(涙石…か)
394 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.15 ID:qpqQdUXr
 妙なことまで、よく知っている。
395 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.18 ID:qpqQdUXr
 矢は、岩にはじかれ、落ちる。
396 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.17 ID:qpqQdUXr
 早く戻らないと、こっちが雪さんに捜されてしまいそうだ。
397 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.19 ID:qpqQdUXr
「でしたら、よろしくお願いします」
398 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.21 ID:qpqQdUXr
 心なし、ほほが赤い。
399 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.21 ID:qpqQdUXr
 少なくとも僕より経験がありそうだし。
400 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.20 ID:qpqQdUXr
「…僕は、ちょっと楽しんでたかも」
401 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.23 ID:qpqQdUXr
「だ、駄目だよ」
402 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.25 ID:qpqQdUXr
 よいしょ――と、花梨は僕の背中を背もたれにして座り込んだ。
403 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.25 ID:qpqQdUXr
 そして、そのために自分が傷つくことは一切いとわない。
404 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.26 ID:qpqQdUXr
「もうじきだと思うけど。そんなにスイカ割りがやりたいの?」
405 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.28 ID:qpqQdUXr
「神社に、何が…」
406 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.30 ID:qpqQdUXr
「んん…おはようございます」
407 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.35 ID:qpqQdUXr
 きのうは、けっきょくあれっきりになっちゃったからなぁ。
408 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.44 ID:qpqQdUXr
「透矢さん、読書が好きでしたの?」
409 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.41 ID:qpqQdUXr
(まさか、な)
410 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.40 ID:qpqQdUXr
「おせっかいだから、ここにいるんだけどね。マリアちゃんは、どこに行ったのかわからなかったし」
411 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.44 ID:qpqQdUXr
『…はは、なんか、雪さんはどうしても僕に、その事を信じさせたいみたいだ』
412 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.40 ID:qpqQdUXr
 たまらず手を伸ばす。
413 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.41 ID:qpqQdUXr
「ねえねえ、なーに、その写真って?」
414 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.40 ID:qpqQdUXr
「本当に、ゾクゾクしちゃったんだ?」
415 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.50 ID:qpqQdUXr
 半泣きの状態だった。
416 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.51 ID:qpqQdUXr
 もし夢の中の彼女を射抜かずに済めば、夢は続いて、僕と彼女に、新しい未来が開けていたんだろうか?
417 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.52 ID:qpqQdUXr
 歩くだけでも汗が吹き出るような暑さの中、ふたりは仲良く手をにぎっている。
418 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.54 ID:qpqQdUXr
「ええ。わたくしは、生まれた瞬間から、この年齢で、こういう記憶を持っていたのかもしれませんわ」
419 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.55 ID:qpqQdUXr
 ――でも、違った。
420 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.56 ID:qpqQdUXr
「っひ…はぃぃ…っぁ、ぃ、いい…です」
421 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.57 ID:qpqQdUXr
「思ったより、悲しまないんだね」
422 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.58 ID:qpqQdUXr
 いくら引いても震えはおさまらない。
423 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.59 ID:qpqQdUXr
 雪さんがここに来たのも、彼女のお願い攻撃があってのことだし。
424 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.60 ID:qpqQdUXr
 お茶を濁してみたものの…
425 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.61 ID:qpqQdUXr
「ええ、ちょっと…」
426 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.62 ID:qpqQdUXr
「だって、濡れてしまいますもの」
427 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.64 ID:qpqQdUXr
「…ううん、ちょっと気になったから、聞いてみただけ」
428 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.66 ID:qpqQdUXr
 牧野さんの夢で失敗したからって、それが揺らぐことはない。
429 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.66 ID:qpqQdUXr
 彼女が話してくれないだけなのか、僕が彼女のことをわかっていないだけなのか…
430 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.68 ID:qpqQdUXr
 花梨との約束までには、まだ間がある。
431 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.76 ID:qpqQdUXr
 はぁぁっ、と深呼吸して、花梨が力を抜く。
432 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.78 ID:qpqQdUXr
「ところで、これから、どこかにお出かけなんですか?」
433 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.82 ID:qpqQdUXr
「きれいな足」
434 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.83 ID:qpqQdUXr
「げっ!?」
435 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.85 ID:qpqQdUXr
(違うか…)
436 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.86 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんが、きのうと同じ顔をした。
437 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.91 ID:qpqQdUXr
 ふるふるふる…
438 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.93 ID:qpqQdUXr
 そして、アレが眠る場所。
439 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.95 ID:qpqQdUXr
「ママがいなくなっちゃって、おねえちゃんともケンカしちゃって…」
440 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.94 ID:qpqQdUXr
 彼女の両親の死、その後の不当な扱いになんらかの関係を持っているっていうことなのか。
441 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.96 ID:qpqQdUXr
「透矢くんは、透矢くんだね」
442 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.97 ID:qpqQdUXr
 だから、キツネの死体は、あのとき茂みに隠れていた、隠されていた。
443 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:12.98 ID:qpqQdUXr
「…確かに、那波も、むごたらしい死に方はしたくありませんわ」
444 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.00 ID:qpqQdUXr
 ちょっとだけ――と自分に言い聞かせ、僕たちは防空壕の中に入った。
445 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.00 ID:qpqQdUXr
 私が住む那波村は、正面に海を構え周囲を山に囲まれた、閉鎖的な地域である。
446 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.02 ID:qpqQdUXr
「大丈夫よ」
447 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.01 ID:qpqQdUXr
「そうは言うけどさ、食べないものは食べないんだから仕方ないじゃないか」
448 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.05 ID:qpqQdUXr
 鈴蘭ちゃんは、たぶん天才だ。
449 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.06 ID:qpqQdUXr
「あ…いや、その」
450 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.07 ID:qpqQdUXr
 なるほど…。
451 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.04 ID:qpqQdUXr
 内臓までかき出してやろうかというほどはげしく、何度も、何度も。
452 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.07 ID:qpqQdUXr
「悪くないよ。すごく可愛いし、いいと…思う…けど…」
453 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.09 ID:qpqQdUXr
「…勝手に殺さないでよ」
454 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.09 ID:qpqQdUXr
「願いを叶える石って、本当だったのか」
455 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.11 ID:qpqQdUXr
 この炎天下に外でどやされるなんてごめんだ。
456 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.11 ID:qpqQdUXr
 そして、彼女が僕のものにしてくれたように、周辺からていねいに舌をはわせる。
457 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.13 ID:qpqQdUXr
「そういう事があるから、おねえちゃんも心配するんですよね」
458 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.14 ID:qpqQdUXr
「…もし、今日の日のことを忘れずにいてくれたなら、また会うことができるかもしれませんわ」
459 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.15 ID:qpqQdUXr
 肩車をしたかっただけらしい。
460 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.17 ID:qpqQdUXr
「他人事みたいに言わないでください」
461 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.18 ID:qpqQdUXr
「あの、お腹の調子でも悪…っぐ!」
462 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.19 ID:qpqQdUXr
「透矢さんまで…」
463 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.20 ID:qpqQdUXr
 かくして、鈴蘭ちゃんは、笑顔のまま引きずられて行った。
464 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.27 ID:qpqQdUXr
「だから調べる価値があるんだろ。どうせ遊びみたいなもんなんだから、面白いほうがいいって」
465 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.28 ID:qpqQdUXr
 あの後、アリスとふたりでキツネを埋めた。
466 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.29 ID:qpqQdUXr
「どうせ明日になればケロっとしてるよ。それよりさ、牧野さんは?」
467 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.31 ID:qpqQdUXr
「保健室に行ったきり、戻って来なかったなぁと思って。大丈夫なのかな?」
468 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.32 ID:qpqQdUXr
「っとと…追いついたら、キミの馬鹿につき合ってあげるー! 何がいい?」
469 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.33 ID:qpqQdUXr
「恐ろしかったんですの。透矢さんが来るまではずっと暗闇の中で。それが、だんだん悲しくなって…」
470 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.35 ID:qpqQdUXr
「入れるんだ?」
471 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.36 ID:qpqQdUXr
「聞かせてくれる?」
472 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.37 ID:qpqQdUXr
 うなずく彼女の首筋に顔をうずめる。
473 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.38 ID:qpqQdUXr
 マリアちゃんは泣きだしてしまった。
474 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.39 ID:qpqQdUXr
「忘れ物ですか?」
475 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.41 ID:qpqQdUXr
 そんな時に、彼女の口から和泉ちゃんの名前が出てきたんだ、慌てもする。
476 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.41 ID:qpqQdUXr
「続けるよ?」
477 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.42 ID:qpqQdUXr
「ここ、可愛いね」
478 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.43 ID:qpqQdUXr
 花梨がいちばん激しく反応する場所――まだ歯形の残る乳首に吸いついた。
479 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.45 ID:qpqQdUXr
「透矢さんは、お友達ですから。ね、おねえちゃん」
480 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.48 ID:qpqQdUXr
「僕、マリアちゃんだけじゃなくて、アリスとも友達のつもりだよ」
481 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.48 ID:qpqQdUXr
「くっ」
482 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.50 ID:qpqQdUXr
「何度も考えましたわ。自分がいるのは夢の世界ではないのかと」
483 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.51 ID:qpqQdUXr
「うん…ごめん、変なこと聞いちゃって」
484 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.53 ID:qpqQdUXr
「夢というのは、可能性ですわ。本当にありえないことは、夢にだって見ることができませんの」
485 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.61 ID:qpqQdUXr
 でも、何も言わずに花梨と走るその時間は、ちょっと幸せなものだった。
486 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.62 ID:qpqQdUXr
「透矢、そっちは…」
487 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.63 ID:qpqQdUXr
「あ」
488 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.64 ID:qpqQdUXr
「しませんよぅ。あの、それじゃあ…よろしくお願いします」
489 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.65 ID:qpqQdUXr
(なんか、木に登って下りられなくなった 猫みたいだな)
490 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.66 ID:qpqQdUXr
「マリア、夕食の時間。早く戻りなさい」
491 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.68 ID:qpqQdUXr
「はい。せっかくいただいた水着を、一度も着ないというのは失礼ですしね」
492 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.69 ID:qpqQdUXr
 こんな暗闇の向こうからやってくるのは決まってる、死者だ。
493 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.69 ID:qpqQdUXr
 そうだ、頑張れ。
494 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.70 ID:qpqQdUXr
「あの、お待ちしていますから」
495 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.72 ID:qpqQdUXr
 消えてしまった思い出が、この町にはたくさんあって。
496 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.74 ID:qpqQdUXr
 僕を救ってくれたのは、タイミング良く校門前に横づけされた、いかつい黒塗りの車だった。
497 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.76 ID:qpqQdUXr
 だけど、僕らは、どこかお互いに惹かれ求め合っているっていうこと。
498 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.76 ID:qpqQdUXr
「楽しみは後にとっておかないと。今日はキスさせてもらったから満足」
499 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.77 ID:qpqQdUXr
「女の子の胸は、年相応にふくらんでくるものだよ。雪さんは鈴蘭ちゃんよりお姉さんなんだから」
500 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.78 ID:qpqQdUXr
 返事は、聞くまでもないようだ。
501 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.82 ID:qpqQdUXr
 一緒にいたのは、父さんだろうか。
502 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.87 ID:qpqQdUXr
 な?――『僕』は何を言おうとした?
503 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.88 ID:qpqQdUXr
「進歩ないわよね」
504 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.90 ID:qpqQdUXr
「あん…本当に、赤ちゃんになってしまわれたんですか? 雪、まだ、おっぱいはでませんよ?」
505 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.93 ID:qpqQdUXr
「図書館ですわ」
506 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.93 ID:qpqQdUXr
 弓引きには神への願いも込められておりこれもまた、よく神の耳に届く。
507 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.97 ID:qpqQdUXr
「…僕のほうが、弓道が上手いからっていうの? だったら…」
508 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.97 ID:qpqQdUXr
「せっかく?」
509 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.99 ID:qpqQdUXr
 僕のほうが忘れかけていた。
510 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.96 ID:qpqQdUXr
「そうだったね」
511 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:13.95 ID:qpqQdUXr
 でも、本当に困ったのは、それに対してリアクションを返さなきゃいけない僕のほうだった。
512 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.00 ID:qpqQdUXr
 考えるだけで、あの、なま暖かい感触がよみがえってくるようだった。
513 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.01 ID:qpqQdUXr
「そっか、残念。宮代神社って言ったら、この辺りじゃ有名なんだけどなぁ」
514 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.02 ID:qpqQdUXr
「おい、調子が悪かったんじゃ…」
515 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.06 ID:qpqQdUXr
「あそこ」
516 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.05 ID:qpqQdUXr
「あんなふうに、男の方と接吻してしまうだなんて…恥ずかしくて…」
517 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.08 ID:qpqQdUXr
「…すごく、良かった」
518 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.07 ID:qpqQdUXr
 霊感、ってやつだろうか。
519 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.06 ID:qpqQdUXr
「透矢さんが…いっぱい…優しくしてくれました」
520 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.10 ID:qpqQdUXr
「聞かないほうがいい?」
521 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.11 ID:qpqQdUXr
 家を出る前に、庄一に連絡を取った。
522 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.15 ID:qpqQdUXr
「和泉ちゃんだって忙しいだろ? 拘束される時間が増えた、って」
523 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.18 ID:qpqQdUXr
「なんでって…迎えに来たのに」
524 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.19 ID:qpqQdUXr
「透矢さん。書斎にいらっしゃるなんて珍しいですね」
525 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.20 ID:qpqQdUXr
 だから夢に見た、だから弓を引くのが怖かったのかもしれない。
526 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.22 ID:qpqQdUXr
 記憶喪失だからって理由で、自分に都合の悪いことをぜんぶ忘れた。
527 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.23 ID:qpqQdUXr
 …看病するのは、ちょっと楽しいけど。
528 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.25 ID:qpqQdUXr
「…なんとなく、わかる」
529 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.28 ID:qpqQdUXr
「だけど、こんなところでつまずいていられないじゃないか。こんなのも引けないなんて」
530 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.28 ID:qpqQdUXr
 そう言って、庄一は人の間をぬってスイスイと舞台に接近していく。
531 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.29 ID:qpqQdUXr
「私もそうだけど…どうする、私たちも行く?」
532 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.30 ID:qpqQdUXr
「…ぐすっ、おねぇちゃぁぁ〜ん」
533 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.32 ID:qpqQdUXr
「止めろというから何かと思えば、瀬能のせがれか」
534 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.32 ID:qpqQdUXr
「和泉ちゃん…駄目だよ…」
535 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.34 ID:qpqQdUXr
 何もできなかった時のみじめさを、僕は嫌というほど知っている。
536 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.36 ID:qpqQdUXr
「やっ…お、お願い、いちど切って! すぐかけなおすから」
537 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.35 ID:qpqQdUXr
「わからない…」
538 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.38 ID:qpqQdUXr
「山って危ないところじゃないの?」
539 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.38 ID:qpqQdUXr
「もう一回、する?」
540 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.40 ID:qpqQdUXr
「こんなお話、信じられませんか? でも雪の知っているお月様はそうなんです」
541 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.40 ID:qpqQdUXr
 祭りが終わってから、花梨もまた、意識を失ったきりだ。
542 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.41 ID:qpqQdUXr
「参ったな、雪さんのことだから、ゲームでも、僕をだまそうとはしない――なんて油断してた」
543 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.43 ID:qpqQdUXr
 年代物の弓矢が一式。
544 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.44 ID:qpqQdUXr
 覚悟を決め、訪ねてみることにした。
545 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.46 ID:qpqQdUXr
「やっ…やぁぁぁ…」
546 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.48 ID:qpqQdUXr
「女の子が、男の人の前で、あんな恥ずかしいところ見られたんだよ? もう、お嫁にいけないじゃない」
547 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.51 ID:qpqQdUXr
「ふーん…まあ、そうかもね」
548 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.52 ID:qpqQdUXr
「そそそ、そんなことないですよぅ!」
549 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.59 ID:qpqQdUXr
 …小学校の先生にでもなった気分だな。
550 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.60 ID:qpqQdUXr
「産んでも…いいですよね?」
551 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.62 ID:qpqQdUXr
「こんなことしたいなんて、変なの」
552 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.64 ID:qpqQdUXr
「おまえはホントにうるせーな。せっかく透矢をからかって楽しんでるのに」
553 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.64 ID:qpqQdUXr
 七夕、精霊流し、ちょうちん――
554 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.67 ID:qpqQdUXr
 神が落とした奇跡の涙、願いを叶える涙石――
555 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.65 ID:qpqQdUXr
 詳しいことはわからないけど、危ない状態らしい。
556 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.69 ID:qpqQdUXr
 自分から率先してしゃべりはしなかったものの、よくこれだけ無駄話ができたものだ。
557 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.70 ID:qpqQdUXr
「夢ですわ、透矢さん。覚めれば忘れてしまう夢」
558 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.71 ID:qpqQdUXr
 思い当たって、ぱらぱらとページをめくる。
559 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.72 ID:qpqQdUXr
 言いながら、雪さんは僕の着ているシャツを見て『ああ』と、合点がいった様子でうなずいた。
560 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.73 ID:qpqQdUXr
「っぃぁ! うれし、っひ…っぁ、ぁぁ」
561 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.75 ID:qpqQdUXr
「止められなかったか?」
562 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.76 ID:qpqQdUXr
「つねられても覚えてないんだけど」
563 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.78 ID:qpqQdUXr
「…待って」
564 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.78 ID:qpqQdUXr
「あっさりしてるなぁ。本当に大丈夫?」
565 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.80 ID:qpqQdUXr
 暗い、暗い海の底へ…
566 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.81 ID:qpqQdUXr
「母だ。やはり早くに亡くなった」
567 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.80 ID:qpqQdUXr
 これが、単なるハイキングコースならともかく…僕たちが今いるのは、まさに山の中。
568 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.82 ID:qpqQdUXr
 拝殿の前で、ぶんぶんと手を振る花梨、ぽやっとした顔でたたずむ和泉ちゃん。
569 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.83 ID:qpqQdUXr
「う、ウザイって…」
570 スズメノヤリ(中国地方):2009/06/13(土) 01:07:14.62 ID:ShTxyxfX
おまんこ
571 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.85 ID:qpqQdUXr
「駄目って言ったら駄目だよ、雪さん」
572 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.85 ID:qpqQdUXr
「ううん、起きたところだから。何?」
573 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.87 ID:qpqQdUXr
 ただ、試合があるだけの朝なのに…
574 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.89 ID:qpqQdUXr
(なんだ、ここ?)
575 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.90 ID:qpqQdUXr
 一夜が明け、僕はけっきょく彼女たちを放っておくことができず、教会に足を運んでしまった。
576 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.93 ID:qpqQdUXr
「…ばか」
577 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.93 ID:qpqQdUXr
 ぶるっと震えたと思うと、言葉通り、割れ目からじんわりと、新しい愛液が広がり始めた。
578 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.93 ID:qpqQdUXr
 この子はこの子なりに本気のようだし、あとはもう、僕の意志によりってところだろうか…
579 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.95 ID:qpqQdUXr
「昔からそうなんだよ。どう考えても誰かの手が入ってる。町で維持してるってことかなぁ…」
580 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.97 ID:qpqQdUXr
 身につけたものを手あたり次第に投げつけ、それの進行を邪魔することばかりを考えて。
581 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.98 ID:qpqQdUXr
「私が好きじゃないの!」
582 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:14.98 ID:qpqQdUXr
 雪さんに簡単な言付けをして、僕は彼女が待つであろう、海岸へ向かった。
583 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.00 ID:qpqQdUXr
 話の流れはわかるけど、何が起こっているのかはさっぱりだ。
584 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.01 ID:qpqQdUXr
 何度目だろう、僕は息をのんだ。
585 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.01 ID:qpqQdUXr
「ありがとう、和泉ちゃん」
586 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.03 ID:qpqQdUXr
「牧野さん、それじゃあ、やっぱり」
587 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.05 ID:qpqQdUXr
 しゅん、となってしまったマリアちゃんの頭を、アリスが優しく抱き寄せた。
588 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.06 ID:qpqQdUXr
「いい加減、洋服くらい一人で脱げるはずでしょう?」
589 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.08 ID:qpqQdUXr
 僕にはもう、弓を引くなんて出来ない。
590 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.09 ID:qpqQdUXr
「いえ。夢を見ている時点で、それは夢という世界にいるという現実ですから…」
591 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.12 ID:qpqQdUXr
「…慣れの問題よ。だいたい、私たち、夜は早くに寝ちゃうし」
592 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.13 ID:qpqQdUXr
 ガチガチに固まっている。
593 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.14 ID:qpqQdUXr
 なんだか不思議な組み合わせだ。
594 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.15 ID:qpqQdUXr
 来た――牧野さんだ。
595 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.18 ID:qpqQdUXr
「気になるんですか?」
596 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.21 ID:qpqQdUXr
(しかし…さっきから、庄一の他は女の子ばっかりだなぁ)
597 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.21 ID:qpqQdUXr
 改めて自己紹介を終えたところで、花梨が、注目を集めるようにポンと手を鳴らした。
598 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.21 ID:qpqQdUXr
「あっ、はい。なんですか?」
599 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.23 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんのことが好きだけど、他の子にも、僕のことだけ好きでいてほしい。
600 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.25 ID:qpqQdUXr
「はい。なんか邪魔になるからって」
601 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.26 ID:qpqQdUXr
 夢…そうだ、ここは夢で見た風景。
602 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.27 ID:qpqQdUXr
 自分は顔をそらさずに言う。
603 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.28 ID:qpqQdUXr
「それ、ほめてる?」
604 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.29 ID:qpqQdUXr
「あなた、そんなことまでわかるの?」
605 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.30 ID:qpqQdUXr
 着替えをしてくる、と花梨はすごい勢いで社務所のほうに走って行ってしまった。
606 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.31 ID:qpqQdUXr
「……わかった」
607 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.32 ID:qpqQdUXr
「あの…和泉ちゃん…」
608 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.34 ID:qpqQdUXr
 雪さんは、いつも落ちついているのに、不意に、こういう無邪気な仕草を見せるんだから、ずるい。
609 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.35 ID:qpqQdUXr
「目当てのものは、あったの?」
610 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.36 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんには、それが、わからないんだろうか?
611 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.38 ID:qpqQdUXr
 今のところ、予想していたのと、かなり違う状態だ。
612 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.39 ID:qpqQdUXr
 と、泣き出してしまいそうなアリスの肩に手をかけ、戻ろうとしたところで、
613 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.40 ID:qpqQdUXr
「ぁ…っひ…ぅく…」
614 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.41 ID:qpqQdUXr
 僕という人間の行く先には、こんな可能性が、いくつ転がっているんだろう。
615 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.42 ID:qpqQdUXr
「はう…」
616 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.44 ID:qpqQdUXr
「はい! 透矢さんも、良かったら、また遊びに来てください」
617 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.44 ID:qpqQdUXr
 と、一冊の本を投げてよこす。
618 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.45 ID:qpqQdUXr
 つまらない理想は幻想で、それを振りかざすのは、夢見がちか、ただの馬鹿か。
619 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.46 ID:qpqQdUXr
「…ありがとう」
620 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.49 ID:qpqQdUXr
 改めて唇を重ねると、緊張のせいか、彼女のそこが、必要以上に固く閉じられているのがわかる。
621 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.48 ID:qpqQdUXr
「あの子はもう…気をつかってるんだか、つかってないんだか」
622 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.50 ID:qpqQdUXr
「あ、見て見て、透矢くん…」
623 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.51 ID:qpqQdUXr
“ガラガラガラ”
624 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.52 ID:qpqQdUXr
「ふぁぁ…」
625 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.56 ID:qpqQdUXr
「もう…巫女服に興奮しちゃったのかな」
626 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.58 ID:qpqQdUXr
「ん、どうしたの?」
627 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.60 ID:qpqQdUXr
 そんな花梨を見て、和泉ちゃんが顔を逸らす。
628 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.61 ID:qpqQdUXr
 図書館は、休日になると一般の人たちに開放されるため、来館者の数は多い。
629 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.63 ID:qpqQdUXr
 でも、どういった事情があると承知していたところで、友達との別れが辛いことに変わりはない。
630 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.67 ID:qpqQdUXr
 正直まだ、どこか信じられないような気持ちもあったけど、僕は雪さんに習い、頭を下げた。
631 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.69 ID:qpqQdUXr
「いいよ…それが普通なんだもん。待ち合わせがあるのに、ごめんね」
632 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.70 ID:qpqQdUXr
「…さんざん心配かけたわりに、異様に元気だよね」
633 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.72 ID:qpqQdUXr
 あくまで部の統括役、その試合に限っての指導者という意味で大将だ。
634 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.72 ID:qpqQdUXr
「雪さんが寝坊なんて、めずらしいね…疲れてるんじゃないかな?」
635 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.73 ID:qpqQdUXr
 逆にアゴをしゃくると、元来た海岸のほうをしきりに指さして、くたびれた表情を返された。
636 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.75 ID:qpqQdUXr
「嫌です。雪の楽しみを取らないでください」
637 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.76 ID:qpqQdUXr
(守ってあげないとな…)
638 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.77 ID:qpqQdUXr
『山ノ民、と呼ばれる者たちがいる』
639 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.78 ID:qpqQdUXr
「はぁ…こういうことになると、ホントにお馬鹿さんになっちゃうんだから。つき合いきれません」
640 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.79 ID:qpqQdUXr
「それは、その、ご主人様がそう言うのでしたら雪はそれに従いますよ」
641 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.80 ID:qpqQdUXr
 それに僕は――彼女に何かを――
642 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.82 ID:qpqQdUXr
「でも……んっ…」
643 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.82 ID:qpqQdUXr
 ぱしゃぱしゃ――
644 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.83 ID:qpqQdUXr
「そうは言うけどさ…」
645 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.86 ID:qpqQdUXr
「…もう少しだけ、お母さんの代わり、させて」
646 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.85 ID:qpqQdUXr
「むぉっ!」
647 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.88 ID:qpqQdUXr
「花梨の、すごいよ」
648 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.91 ID:qpqQdUXr
 花梨だからきっと大丈夫と、無責任に考えていたのかもしれない。
649 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.91 ID:qpqQdUXr
「はぁ…ごめんね、こんな長々と…しかもそっちにかけ直してもらっておいて」
650 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.92 ID:qpqQdUXr
 マリアちゃんは僕の手を離れ、アリスに飛びついた。
651 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.93 ID:qpqQdUXr
「…七月の七日」
652 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.91 ID:qpqQdUXr
 涙を流せば願いがかなうなんて都合のいい話、あるはずがないけど、
653 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.95 ID:qpqQdUXr
「ありがとう、那波ちゃん」
654 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.95 ID:qpqQdUXr
「ふーん。ぎゅっ」
655 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.98 ID:qpqQdUXr
 何も変わらないように見える、連続した日常。
656 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:15.99 ID:qpqQdUXr
 人の想いで何かを動かすことができると彼女は言っていた。
657 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.00 ID:qpqQdUXr
「あれ、透矢、どこ行ったの?」
658 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.01 ID:qpqQdUXr
「それよりも、雪に、何かお手伝いできることはありませんか?」
659 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.04 ID:qpqQdUXr
「別にいちゃついてるわけじゃないんだけど…」
660 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.03 ID:qpqQdUXr
「うん…って、いや、そうじゃなくてさ」
661 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.06 ID:qpqQdUXr
「そいつはさ、何かやってから言う台詞だと思わないか」
662 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.08 ID:qpqQdUXr
「それが、ナナミ様の正体だと、この本には書いてありますわね」
663 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.09 ID:qpqQdUXr
「うん…少なくとも、この風景に関してはね。どこまでが本当かは、わからないけど」
664 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.10 ID:qpqQdUXr
 それだけの事だ。
665 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.10 ID:qpqQdUXr
「今は出ていますけれど、お友達もいるんですの」
666 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.12 ID:qpqQdUXr
 水着の隙間から、とめどない彼女の気持ちが透明な液体となり、あふれ出ていた。
667 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.13 ID:qpqQdUXr
 四射して、けっきょくそのすべてを、花梨は外してしまった。
668 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.14 ID:qpqQdUXr
「あ…ご、ごめんなさい! 少しは恩返しできるかなって思ったから、それだけ、ちょっと残念で」
669 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.15 ID:qpqQdUXr
「よっ、相変わらず尻にしかれてんな」
670 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.17 ID:qpqQdUXr
「ごめん。急に座り込んだりするから、気になって」
671 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.18 ID:qpqQdUXr
「認められないの? 自分が死んだんだっていうこと」
672 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.20 ID:qpqQdUXr
 自分はいったいどんな人間で、彼女が存在するとしたらどんな関係なんだろう?
673 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.21 ID:qpqQdUXr
 僕がその怪だとでも言うのか?
674 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.22 ID:qpqQdUXr
「ね、見てください、素敵ですよ」
675 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.24 ID:qpqQdUXr
 すべるように落ちた布きれの下から現れたのは、きれいな一筋のスリット。
676 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.25 ID:qpqQdUXr
「キミねぇ」
677 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.26 ID:qpqQdUXr
 要請通り、花梨の家の蔵とやらを調べることになったはいいけど、
678 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.27 ID:qpqQdUXr
「気にしないっていうのは無理だけど…そうだね、前より迷惑かけちゃうかも」
679 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.29 ID:qpqQdUXr
「大したおもてなしは、できないけどね。ただし、今日だけだよ?」
680 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.30 ID:qpqQdUXr
 悪いほうに考えたら、悪いほうに流れるものだ。
681 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.31 ID:qpqQdUXr
「女の子が、男の人の前で、あんな恥ずかしいところ見られたんだよ? もう、お嫁にいけないじゃない」
682 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.32 ID:qpqQdUXr
 恥ずかしかったけど、どこか、おかしくもあった。
683 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.33 ID:qpqQdUXr
 僕と雪さんがいたら、雪さんにじゃれつくくらいだし…。
684 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.34 ID:qpqQdUXr
「撮るのと見るのは好きみたいなのにね」
685 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.36 ID:qpqQdUXr
 夢を見るんだ。
686 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.37 ID:qpqQdUXr
「雪さんが、タヌキ寝入りぃ?」
687 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.38 ID:qpqQdUXr
「そうですの…那波もですわ」
688 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.40 ID:qpqQdUXr
「和泉ちゃーん、ボクもほめてー」
689 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.42 ID:qpqQdUXr
「責任って?」
690 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.43 ID:qpqQdUXr
「透矢くん、どうする?」
691 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.44 ID:qpqQdUXr
 僕が眠ったあとも、彼女は、手を撫で続けてくれた――
692 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.45 ID:qpqQdUXr
 花梨が、わざわざデートなんて言葉を持ち出したくらいだし、きっとそうなんだろう。
693 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.46 ID:qpqQdUXr
「これは、だって、シートが狭いんだから仕方ないじゃないか」
694 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.52 ID:qpqQdUXr
 頭をなでられるたびに、とめどなく涙があふれた。
695 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.55 ID:qpqQdUXr
“ぴぃぴぃ…”
696 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.56 ID:qpqQdUXr
「私たちは霊感が強い。それがどういうことかっていうと、自我が薄いってことなのよ」
697 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.55 ID:qpqQdUXr
「あ…ひ、ひどいですよ。雪のこと、からかったんですね」
698 ウグイスカグラ(関西地方):2009/06/13(土) 01:07:16.53 ID:6obo3ALf
もうやめとけ
699 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.58 ID:qpqQdUXr
 まるで、長いこと誰の手にも触れられず野ざらしにでもなっていたようだ。
700 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.59 ID:qpqQdUXr
「見学だけで、意味あるの?」
701 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.59 ID:qpqQdUXr
「キミは…誰?」
702 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.60 ID:qpqQdUXr
「いつものことですから」
703 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.61 ID:qpqQdUXr
「違いますよ」
704 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.62 ID:qpqQdUXr
「別にいいよ。マリアちゃんも、呼びやすいように呼んでくれていいからね」
705 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.64 ID:qpqQdUXr
 教室全体を見渡すと、男子と女子の比率は半々で、全体の人数は三十くらいか。
706 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.66 ID:qpqQdUXr
 彼女が不思議そうな顔をする。
707 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.67 ID:qpqQdUXr
「え? ああ、さっきのこと」
708 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.67 ID:qpqQdUXr
 新たに浮き出た汗を拭いながら、やわらかいほっぺたを撫でた。
709 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.68 ID:qpqQdUXr
「他にもあるんだね…」
710 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.70 ID:qpqQdUXr
 彼女の指先が示す先に、ぼんやり青白い光のようなものが見えた。
711 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.71 ID:qpqQdUXr
「しっかり、してよ」
712 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.72 ID:qpqQdUXr
 勢いよく、受話器が叩きつけられた。
713 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.73 ID:qpqQdUXr
(やっぱり、会いたかったんじゃないか)
714 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.74 ID:qpqQdUXr
「考えすぎだよ。ところで、花梨は間違いじゃないよね。どうしたの?」
715 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.75 ID:qpqQdUXr
 何か禍々しい空気が立ちこめている、そういった印象。
716 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.77 ID:qpqQdUXr
 いざとなると、『好きです』とか『愛しています』とか、そんな短い言葉が出てこなかった。
717 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.78 ID:qpqQdUXr
「本当ですの」
718 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.80 ID:qpqQdUXr
 期待を裏切っているのがわかるから、気まずくはある。
719 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.81 ID:qpqQdUXr
 頭をさげる鈴蘭ちゃんに、和泉ちゃんはにこにこ笑う。
720 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.82 ID:qpqQdUXr
「わかった。今日は和泉ちゃんにつき合うよ」
721 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.83 ID:qpqQdUXr
「僕、花梨の気持ちなんて、ぜんぜん気づいてあげられなくて」
722 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.85 ID:qpqQdUXr
「何があったんだ?」
723 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.87 ID:qpqQdUXr
「恩に着るわ。ありがと」
724 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.88 ID:qpqQdUXr
 彼女の夢ひとつで、どうこうなるようなものじゃない…そう思いたい。
725 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.90 ID:qpqQdUXr
「…僕のほうが、弓道が上手いからっていうの? だったら…」
726 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.92 ID:qpqQdUXr
 僕は、あるじ不在の部屋に誰もいるはずがないと決めつけ、ノックもなしに扉を開いてしまった。
727 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.93 ID:qpqQdUXr
 海からの風に髪を押さえてたたずむ牧野さんの姿があった。
728 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.94 ID:qpqQdUXr
 いや…でも、大変なことになっていたからなぁ。
729 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.96 ID:qpqQdUXr
 照れくさい。
730 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.97 ID:qpqQdUXr
『頑張れ、透矢!』
731 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:16.99 ID:qpqQdUXr
 アリスから話を聞くことは、もう二度とできないだろう。
732 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.00 ID:qpqQdUXr
「盆の行事だ。船に供え物を乗せて、先祖の霊を見送る」
733 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.03 ID:qpqQdUXr
「…いや、そうかもしれないね」
734 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.04 ID:qpqQdUXr
「申しわけありません。ですけど…こうしなければ、透矢さんを巻き込んでしまいます…」
735 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.05 ID:qpqQdUXr
「とりあえず、ふたりの所に」
736 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.07 ID:qpqQdUXr
「ふたり分?」
737 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.09 ID:qpqQdUXr
 一時間も歩いただろうか。
738 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.10 ID:qpqQdUXr
「うん…私も、痛いけど…痛いのに…っ」
739 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.06 ID:qpqQdUXr
『こんなところで、何、やってるの?』
740 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.11 ID:qpqQdUXr
 彼女は意外にすんなりと引き下がってくれた。
741 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.09 ID:qpqQdUXr
「して、いいわよ」
742 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.13 ID:qpqQdUXr
「僕で力になれることは?」
743 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.14 ID:qpqQdUXr
 だから、これでいいのかもしれない…
744 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.17 ID:qpqQdUXr
「っふ…くすぐったいよぉ…」
745 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.16 ID:qpqQdUXr
 まだ、夢でも見てるのか、僕は。
746 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.19 ID:qpqQdUXr
 なにしろ、すべての授業が一ヶ月は遅れてしまったわけで…なかなかに辛い。
747 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.19 ID:qpqQdUXr
「透矢さん! おはようございます」
748 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.20 ID:qpqQdUXr
 花梨は、僕の眉間に人差し指を置き、目を細めて笑った。
749 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.21 ID:qpqQdUXr
 と、腰の砕けそうな声に目をやると、花梨と和泉ちゃんがじゃれ合っていた。
750 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.23 ID:qpqQdUXr
「わんっ、わぅん!」
751 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.30 ID:qpqQdUXr
「お姉ちゃん」
752 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.30 ID:qpqQdUXr
 背後で、拳の持ち上がる気配がした。
753 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.29 ID:qpqQdUXr
「ごめん、大丈夫?」
754 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.29 ID:qpqQdUXr
「ん〜」
755 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.31 ID:qpqQdUXr
「…体が覚えてたんじゃない?」
756 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.33 ID:qpqQdUXr
 牧野さんの扱いを見ていれば、なんとなくわかる。
757 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.35 ID:qpqQdUXr
「大丈夫だと思うわよ。知性って、どうしてもにじみ出るものだから…ぁ〜ぁ」
758 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.33 ID:qpqQdUXr
「ゆ、雪さぁん…」
759 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.36 ID:qpqQdUXr
「んー、お願い」
760 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.38 ID:qpqQdUXr
 危ないと思った時には、器用に体を正面に保ったまま、和泉ちゃんの体が宙を舞っていた。
761 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.39 ID:qpqQdUXr
「だからって…」
762 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.40 ID:qpqQdUXr
 心にぽっかり穴が空いたような、そんな気分だった。
763 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.41 ID:qpqQdUXr
 雪さんにお茶でもいれてもらいたかったけど、彼女の姿はない。
764 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.43 ID:qpqQdUXr
 みんなの言いたいことは、わかっているんだ。
765 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.43 ID:qpqQdUXr
 花梨が体を強ばらせるのがわかった。
766 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.45 ID:qpqQdUXr
「ひぅ…ごめんなさぁい…」
767 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.45 ID:qpqQdUXr
 射精が完全に収まるのを待ち、僕は、彼女の中から自分のものを引き抜いた。
768 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.47 ID:qpqQdUXr
「ごめん、急いでるんだ」
769 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.50 ID:qpqQdUXr
 ゆっくり、力をためこむようにして、花梨が手を離す。
770 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.47 ID:qpqQdUXr
(ええと…)
771 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.51 ID:qpqQdUXr
 まるで、世界に、ふたりだけしかいないみたいに。
772 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.51 ID:qpqQdUXr
「あの時も、景色を眺めに?」
773 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.53 ID:qpqQdUXr
 ママに撫でられる夢でも見ているのか、幸せそうな顔をしている。
774 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.54 ID:qpqQdUXr
「最低なこと、したよ」
775 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.58 ID:qpqQdUXr
「っ、っぁ、はぁぁ」
776 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.57 ID:qpqQdUXr
「大声で言わないの…もう少し品を持ちなさい、品を」
777 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.56 ID:qpqQdUXr
 だけど、父さんまで似たような場所を見たとなると…話は変わってくる。
778 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.62 ID:qpqQdUXr
「舐めるっていうこと?」
779 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.62 ID:qpqQdUXr
 そう言うと、向こうのほうから切ってしまった。
780 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.63 ID:qpqQdUXr
 廃校舎…あそこが始まりだったから、調べていない。
781 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.68 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんの目から、ポロポロと、涙があふれた。
782 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.67 ID:qpqQdUXr
 どうして、一緒に探すという和泉ちゃんの申し出をことわってしまったのか…。
783 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.70 ID:qpqQdUXr
「透矢ちゃーん、たこ焼きー」
784 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.66 ID:qpqQdUXr
 別に答えを期待していたわけじゃないのか、アリスは一拍置いただけで、すぐに続ける。
785 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.70 ID:qpqQdUXr
「いや、あのね、雪さんの声は聞こえたんだけど、意識は夢から出られないというか…」
786 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.72 ID:qpqQdUXr
 なんだ、今のは?
787 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.72 ID:qpqQdUXr
「和泉さんは、那波と一緒で、読書がお好きでしたから…」
788 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.77 ID:qpqQdUXr
「さきほど、花梨さんのお父様から連絡がありまして…」
789 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.75 ID:qpqQdUXr
 だけど…なんだろう…
790 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.76 ID:qpqQdUXr
 こんな小さい子に頑張ってもらうばかりなのも情けない。
791 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.80 ID:qpqQdUXr
 自分の気持ちに自信がもてないのは、僕が、僕である自信がないってことだ。
792 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.80 ID:qpqQdUXr
「ぶべっ!」
793 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.81 ID:qpqQdUXr
 きょろきょろ――だけど、境内はというと例によって閑散としていた。
794 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.82 ID:qpqQdUXr
「わたくしは、一日だけですわ」
795 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.84 ID:qpqQdUXr
「幸せでした。今日という日は、人生最良の日」
796 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.85 ID:qpqQdUXr
「お願い。私は…してほしいよ…」
797 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.87 ID:qpqQdUXr
 開発は、自然環境の破壊、文化や風習の変容や消失を急速にうながした。
798 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.84 ID:qpqQdUXr
「じ、自分で脱ぐ…」
799 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.88 ID:qpqQdUXr
「連れていってあげて良かった…」
800 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.88 ID:qpqQdUXr
「走馬燈のようにってやつだね」
801 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.89 ID:qpqQdUXr
「…いや。花梨、これから祭りの準備なんだろう? 行けよ」
802 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.92 ID:qpqQdUXr
「こちらにも」
803 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.94 ID:qpqQdUXr
 言いながら、また、あおぎ始めた。
804 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.92 ID:qpqQdUXr
「野郎の面倒見るのはごめんでーす」
805 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.95 ID:qpqQdUXr
「帰ろう、雪さん」
806 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.97 ID:qpqQdUXr
 彼女はどう見たって僕と同年代――あれは、そう、牧野那波さんじゃないのか?
807 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.98 ID:qpqQdUXr
「…いいの?」
808 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.98 ID:qpqQdUXr
 背中から声がかかった。
809 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:17.99 ID:qpqQdUXr
 今はそうしなければならない。
810 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.00 ID:qpqQdUXr
 そして、人影までも…
811 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.02 ID:qpqQdUXr
 だけどいいんだ、たとえ嘘でも幻でも、これはおとぎの話、
812 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.04 ID:qpqQdUXr
「それはないよ。…じゃ、また今度ね」
813 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.04 ID:qpqQdUXr
「か弱い女の子ふたりだけで山登りしろって言うの?」
814 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.05 ID:qpqQdUXr
「和泉ちゃん…駄目だよ、走ると転んじゃうから」
815 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.08 ID:qpqQdUXr
 僕は、再び胸に手をやった。
816 フデリンドウ(チリ):2009/06/13(土) 01:07:17.81 ID:z5lV6Ele
♪ ∧,_∧
   (´・ω・`) ))
 (( ( つ ヽ、 ♪
   〉 とノ )))
  (__ノ^(_)
817 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.08 ID:qpqQdUXr
「さすがだな。よく分析してんぜ…悪いけど、そうだよ。ただ…」
818 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.09 ID:qpqQdUXr
「はぁ。先住民だと何か都合が悪いの?」
819 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.11 ID:qpqQdUXr
「…一センチだけ」
820 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.11 ID:qpqQdUXr
「夢と同じなら、会えませんわ」
821 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.13 ID:qpqQdUXr
「ん、いいよ」
822 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.14 ID:qpqQdUXr
『…ふたりとも…大嫌い』
823 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.16 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんにはやっぱり笑顔でいてもらいたい。
824 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.17 ID:qpqQdUXr
 雪さんが無邪気に笑った。
825 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.19 ID:qpqQdUXr
「ひ、卑怯者ぉ…」
826 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.23 ID:qpqQdUXr
 この人も、撮られるのは嫌いなくせに、見るのは好きだっていうんだから、けっこうずるい。
827 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.25 ID:qpqQdUXr
 素直な子って、いい。
828 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.26 ID:qpqQdUXr
「…知ってたよ」
829 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.27 ID:qpqQdUXr
 あの集落に、迷い込んだ時からか。
830 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.28 ID:qpqQdUXr
「その言い方だと、ひょっとして、キツネの部分は本当?」
831 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.29 ID:qpqQdUXr
 庄一、花梨、僕と、和泉ちゃんの視線が移動した。
832 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.31 ID:qpqQdUXr
「あれが、巫女と呼ばれるものたちが垣間見ている世界…」
833 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.32 ID:qpqQdUXr
「こいつはぁ。じゃあ、また騒ぎだす前に行くわ」
834 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.33 ID:qpqQdUXr
「花梨のお尻、好きなんだけどな」
835 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.34 ID:qpqQdUXr
「どうしてさ? 庄一、なんか、花梨に冷たくない?」
836 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.36 ID:qpqQdUXr
 明日っていうのは、そんな日常。
837 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.37 ID:qpqQdUXr
「…はぁぁぁ」
838 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.38 ID:qpqQdUXr
 生まれのために、っていうのは、いったいなんだ?
839 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.39 ID:qpqQdUXr
「駄目だよ。遊び相手にはなるから、今日くらい休んでおこう。退院したばっかりなんだから」
840 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.40 ID:qpqQdUXr
「図星…っと、あらら?」
841 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.42 ID:qpqQdUXr
 いきなり、花梨のお尻と遭遇してしまった。
842 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.43 ID:qpqQdUXr
「…お互い、そういったことを望んでいるのかもしれませんわ」
843 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.44 ID:qpqQdUXr
 そこまで言わせて、ようやく彼女の言いたかったことが理解できた。
844 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.45 ID:qpqQdUXr
 僕は、雪さんに手間をかけさせる前に、台所へ出向いてしまうことにした。
845 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.46 ID:qpqQdUXr
「恥ずかしいこと、平気な顔で言うんだもん…」
846 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.48 ID:qpqQdUXr
「ちょっ、破けちゃ…う?」
847 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.48 ID:qpqQdUXr
「ぁ…っ…ぅぁ…」
848 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.49 ID:qpqQdUXr
「自分が死ぬ夢って多いと思うし、気にしすぎないほうがいいよ」
849 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.51 ID:qpqQdUXr
「うん。でも、それなら最初からつき合ってくれても良かったのに」
850 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.52 ID:qpqQdUXr
「もう一回、する?」
851 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.53 ID:qpqQdUXr
「だって、なんにも教えてないのに、真っ直ぐ点字本コーナーになんか来るし…」
852 スミレ(catv?):2009/06/13(土) 01:07:18.21 ID:DQaFR7Rb
流れがわからん
853 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.55 ID:qpqQdUXr
「そうかも。まあ、僕の誕生日なんて、すぐにわかることだよ。牧野さんは、欲しいもの考えておいてね」
854 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.56 ID:qpqQdUXr
「こういうことに、男も女もありません」
855 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.57 ID:qpqQdUXr
 誰の価値観でもなく、僕がこの場で感じている気持ち。
856 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.58 ID:qpqQdUXr
「…ぞくぞく、します」
857 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.62 ID:qpqQdUXr
「っ…ぁ…ちょっ…とぉ…」
858 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.61 ID:qpqQdUXr
「確かに。首のあたりとかヒリヒリするかも」
859 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.63 ID:qpqQdUXr
「はい…おねがいします…」
860 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.64 ID:qpqQdUXr
 花梨は自分の言葉を否定するように、胸の前につき出した両手を、ぶんぶんと振った。
861 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.65 ID:qpqQdUXr
「それより顔色が悪いよ。大丈夫?」
862 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.67 ID:qpqQdUXr
「おいしいです、とっても」
863 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.69 ID:qpqQdUXr
「キツネは?」
864 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.70 ID:qpqQdUXr
 肩に体重がかかる、首すじを柔らかい髪がくすぐる。
865 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.75 ID:qpqQdUXr
「花梨ちゃんはだまっててよー! 頭がおバカなんだからー」
866 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.76 ID:qpqQdUXr
「…僕も、雪さんのこと…愛してる」
867 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.77 ID:qpqQdUXr
「いいっていいって。私だって風邪ひけば部活は休むし、それとおんなじ…にしたら失礼?」
868 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.78 ID:qpqQdUXr
 敵の矢を何本受けても、七波は止まらなかった。
869 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.75 ID:qpqQdUXr
 きのうの、祭りの後…具体的には舞のあたりから、明らかに様子がおかしい。
870 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.81 ID:qpqQdUXr
 雪さんは、ためらいがちに応えて、僕の背に、完全に顔をうずめてしまった。
871 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.82 ID:qpqQdUXr
「透矢も、緊張してるんだ」
872 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.80 ID:qpqQdUXr
「これは、うん、本当にありがとう」
873 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.85 ID:qpqQdUXr
「あ、うん、透矢くんはそんな感じ。そのほうがいいよ」
874 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.84 ID:qpqQdUXr
 庄一は、器用にほおづえをつき、あさっての方向を向いた。
875 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.85 ID:qpqQdUXr
「子供?」
876 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.87 ID:qpqQdUXr
 てけてけ、がしっ――早々と捕獲されてしまった。
877 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.87 ID:qpqQdUXr
「はいはい、冗談ですよ。きのうごちそうになったばっかりだもんね」
878 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.89 ID:qpqQdUXr
「もう大丈夫よ。これは、私のエネルギーだけで起こした現象じゃないし」
879 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.91 ID:qpqQdUXr
 今度は花梨。
880 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.91 ID:qpqQdUXr
 息ひとつ乱していない和泉ちゃんが言うと、妙に説得力があってタチが悪い。
881 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.93 ID:qpqQdUXr
「たぶん。透矢くんと、一緒にいたみたいだし」
882 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.94 ID:qpqQdUXr
 長い黒髪を風になびかせて、白い肌を夕陽に染め、憂いを含んだ表情で、はるか彼方を望んでいる。
883 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.95 ID:qpqQdUXr
 風で玄関の戸が揺れているみたいだ。
884 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.96 ID:qpqQdUXr
 恥ずかしそうに……うれしそうに?
885 ダイセノダマキ(北海道):2009/06/13(土) 01:07:18.96 ID:xs27Xhb7
またか
886 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.97 ID:qpqQdUXr
 一年前の僕では、恐らく、マヨイガにはたどり着けなかった。
887 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:18.98 ID:qpqQdUXr
『だんな、さまぁ…っ…』
888 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.00 ID:qpqQdUXr
 ぺちぺちと後頭部を叩かれる庄一の背中には、どことなく哀愁が漂っている。
889 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.01 ID:qpqQdUXr
「私は単なるつき添いだけど」
890 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.03 ID:qpqQdUXr
「うん。今日は、ぜったい最後までさせてあげるから、安心していいよ」
891 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.04 ID:qpqQdUXr
「確かに苦手なところもあるけど、花梨のことは好きだよ。いろいろ助けられてるし」
892 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.06 ID:qpqQdUXr
「でしたら、これは?」
893 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.07 ID:qpqQdUXr
「雪さんが寝坊なんて、めずらしいね…疲れてるんじゃないかな?」
894 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.09 ID:qpqQdUXr
「透矢くんのも、こんなに…」
895 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.10 ID:qpqQdUXr
「疲れてるみたいだし、いいんじゃない?どうせこの子は余裕あるんだもん」
896 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.11 ID:qpqQdUXr
 幼い頃につかみ損ねた風船。
897 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.12 ID:qpqQdUXr
「幼なじみで恋人のこの私に、隠し事しようってほうが間違ってるよ。身も心も一つなんだからぁ」
898 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.13 ID:qpqQdUXr
「いいんですの。今あることを否定して、その先にこそ、おふたりの世界がある」
899 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.14 ID:qpqQdUXr
(落ちつけ――)
900 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.15 ID:qpqQdUXr
 黙りこくっていた牧野さんが、とつぜん割って入ってきた。
901 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.16 ID:qpqQdUXr
「ごめんね。ええと、もうしない…とは、ちょっと言えないんだけど」
902 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.17 ID:qpqQdUXr
「…ぐすっ、おねぇちゃぁぁ〜ん」
903 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.20 ID:qpqQdUXr
 僕には、肯定も否定もできなかった。
904 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.22 ID:qpqQdUXr
「はは…それじゃあ、アリスもマリアちゃんも、次は我慢しなくていいからね」
905 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.23 ID:qpqQdUXr
「違うの?」
906 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.24 ID:qpqQdUXr
 良くわからなかったけど、なんだか放っておくこともできなくて、僕は、その手を撫でた。
907 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.26 ID:qpqQdUXr
 ただ、やはり、それがなんなのかは、まるでわからなかった。
908 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.28 ID:qpqQdUXr
(撃つな!)
909 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.29 ID:qpqQdUXr
「そ、そうか…まあ、幸せならいいんだ、うん」
910 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.30 ID:qpqQdUXr
「和泉ちゃんは、俺の目の前にいる、おまえのことが好きだったんだ。少しは自覚しろよ」
911 クサノオウ(岐阜県):2009/06/13(土) 01:07:19.32 ID:9kN9EViv
勝負
912 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.32 ID:qpqQdUXr
「あは、おねえちゃん照れてるー。きのうお風呂で言ってたじゃない、透矢さんのこと…」
913 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.33 ID:qpqQdUXr
「いっっっ!」
914 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.35 ID:qpqQdUXr
「ごめん。今、雪さんが体調を崩していてね…それでちょっと」
915 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.35 ID:qpqQdUXr
「私はマリアみたいにガキじゃないんだから、こんなの…」
916 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.36 ID:qpqQdUXr
「…違う、の?」
917 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.38 ID:qpqQdUXr
「ですけど、同じ顔をされるんですもの」
918 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.39 ID:qpqQdUXr
 まただ…世界が波打つように揺れる。
919 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.40 ID:qpqQdUXr
 にこーっと目を細めて、牧野さんが頭を下げる。
920 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.41 ID:qpqQdUXr
「…そうよね。誰かがキツネ憑きになったなんて、言ってないもん」
921 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.43 ID:qpqQdUXr
 こうなると、こっちも意地だ。
922 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.43 ID:qpqQdUXr
 ぎょっとして顔を上げると、ちょうど、こちらに向き直った彼女と目が合った。
923 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.44 ID:qpqQdUXr
 自分はいったいどんな人間で、彼女が存在するとしたらどんな関係なんだろう?
924 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.46 ID:qpqQdUXr
「あ、うん…悪いね」
925 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.47 ID:qpqQdUXr
「ん? 待って。じゃあ、花梨はどうしてキスが上手いとか下手とかわかるのさ」
926 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.48 ID:qpqQdUXr
 誘っておいて、置いてけぼりとはひどい話だ。
927 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.48 ID:qpqQdUXr
 ――おどろかないでくださいね。
928 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.50 ID:qpqQdUXr
 僕にはもう、彼女にかけてあげる言葉が残っていなかった…
929 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.51 ID:qpqQdUXr
「あのね、僕はここの学生なんだから」
930 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.52 ID:qpqQdUXr
「なんだ、いいタイミングだな」
931 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.53 ID:qpqQdUXr
「わかった。ごちそうになるよ」
932 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.55 ID:qpqQdUXr
「じゃあ…今日はこの辺で」
933 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.56 ID:qpqQdUXr
「ねえ、キミは…」
934 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.57 ID:qpqQdUXr
「あのあのっ、信じられないと思いますけど…おねえちゃん、嘘は言っていませんから」
935 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.63 ID:qpqQdUXr
 そのまま、彼女の割れ目をなぞるようにして愛撫する。
936 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.65 ID:qpqQdUXr
 どういうつき合い方をしてるんだ、この兄妹は。
937 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.66 ID:qpqQdUXr
 きつく、きつく――せめて、彼女がこれ以上、冷たい想いをしなくていいように。
938 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.67 ID:qpqQdUXr
「牧野さん、どうしたの、大丈夫?」
939 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.68 ID:qpqQdUXr
「そういう事でいいんだと思うよ」
940 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.69 ID:qpqQdUXr
「僕が、雪さんに、もっと優しくしてあげたいんだ」
941 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.71 ID:qpqQdUXr
 触れられることが、自分の存在の証明につながるからじゃないかって思う。
942 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.72 ID:qpqQdUXr
「そーいうこと、わかってきたじゃない」
943 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.73 ID:qpqQdUXr
「鈴蘭さんなんですけど、雪のほうでお預かりしてもよろしいですか?」
944 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.75 ID:qpqQdUXr
『わからないわよ。この奥には人体実験の犠牲になった人間たちが…』
945 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.76 ID:qpqQdUXr
「花梨、その辺にしとけよ。しつこい女は嫌われるぜ」
946 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.78 ID:qpqQdUXr
 でも、苦しんでいるのは、僕だけじゃなかった。
947 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.79 ID:qpqQdUXr
 その拍子に、束ねた髪の先が僕の顔をなでる。
948 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.80 ID:qpqQdUXr
 要請通り、花梨の家の蔵とやらを調べることになったはいいけど、
949 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.81 ID:qpqQdUXr
 大丈夫だ。
950 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.85 ID:qpqQdUXr
 僕は、花梨の手を取った。
951 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.83 ID:qpqQdUXr
 暗闇の向こうから現れたのは、
952 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.83 ID:qpqQdUXr
(どこかから、流れてきている?)
953 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.86 ID:qpqQdUXr
 いやいや、と首を振るアリス。
954 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.88 ID:qpqQdUXr
 僕が腰を下ろしたこともあったんだろうか。
955 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.89 ID:qpqQdUXr
「…じゃあ、お互いさまっていうことで」
956 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.90 ID:qpqQdUXr
(まあ…仕方ないか)
957 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.92 ID:qpqQdUXr
 和泉ちゃんは、何も言わない代わりに不満そうな顔をした。
958 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.93 ID:qpqQdUXr
『え…?』
959 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.94 ID:qpqQdUXr
 異常なことなのかもしれない。
960 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.95 ID:qpqQdUXr
 驚いたようにこちらを振り向いている。
961 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.96 ID:qpqQdUXr
「ここは、気持ち良くないんだ?」
962 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.98 ID:qpqQdUXr
「牧野、さん?」
963 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:19.99 ID:qpqQdUXr
 照れ笑いを、持ち上げたスカートのすそに埋めながらうなずく。
964 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.00 ID:qpqQdUXr
「ここまで聞いても思い出せないから、僕はあまり気にしてなかったのかもしれないね…ごめん」
965 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.01 ID:qpqQdUXr
 幼さすら感じさせる彼女のそこは、だけど、尿と愛液にまみれびしょぬれになっていた。
966 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.03 ID:qpqQdUXr
「でも、いい天気になって良かったね」
967 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.04 ID:qpqQdUXr
 夜に、なってしまったのか。
968 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.05 ID:qpqQdUXr
「あ、そうだ、アルバム!」
969 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.06 ID:qpqQdUXr
「ホントに、離れちゃ嫌ですよ?」
970 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.07 ID:qpqQdUXr
「わはー、透矢ちゃーん!」
971 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.08 ID:qpqQdUXr
「むー、わかってるけどさ、そんなあっさり否定しなくてもいいのに。なんか感じ悪いのー」
972 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.11 ID:qpqQdUXr
(花梨…だよなぁ)
973 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.11 ID:qpqQdUXr
「遊んだ遊んだ。たまにはこういうのもいいよね」
974 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.12 ID:qpqQdUXr
(だけど、僕はもう――)
975 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.13 ID:qpqQdUXr
 花梨は、ぶんぶんと手を振りながら病室を出ていった。
976 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.14 ID:qpqQdUXr
「ですけど、時間なんてアテにならないものですわ」
977 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.16 ID:qpqQdUXr
「頭のてっぺんからつま先まで、舐めるような視線を感じたんですけど」
978 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.18 ID:qpqQdUXr
 寝ぼけている時では、ないのだ。
979 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.19 ID:qpqQdUXr
 そして、お互いの顔を再び舐め始めた。
980 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.20 ID:qpqQdUXr
「あ、鈴蘭ちゃん、前っ!」
981 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.22 ID:qpqQdUXr
 それどころか、他はなにひとつ思い出せないまま、今日、検査の日を迎えてしまった。
982 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.25 ID:qpqQdUXr
「思いきり息を吸っておいて。途中で大変なところがあるけど、そこを抜ければ、あとは…」
983 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.24 ID:qpqQdUXr
「何か気になる? あいさつしなかったのは、忘れてただけだと思うんだ。許してあげてくれないかな?」
984 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.26 ID:qpqQdUXr
「もうちょっと、待ってね」
985 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.29 ID:qpqQdUXr
 不思議な子だな。
986 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.30 ID:qpqQdUXr
「花梨ちゃんは大丈夫なのかな…お祭り、もうすぐなのに」
987 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.32 ID:qpqQdUXr
「…庄一は、きっと、僕の妄想か何かだと思ってるんだよね?」
988 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.33 ID:qpqQdUXr
 でも、ここからなら僕の声も届くかな?
989 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.34 ID:qpqQdUXr
「手だよ。起きてから、ずっと手をさすってるじゃない。夢を見たって言う時はいつもそう」
990 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.35 ID:qpqQdUXr
「違うってば。雪さんは川に出てからあそこにつくまでのこと、覚えていないんでしょう?」
991 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.37 ID:qpqQdUXr
「もう…また練習したほうが良いかもしれませんね」
992 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.37 ID:qpqQdUXr
「うん…思いきって、良かったかも…」
993 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.39 ID:qpqQdUXr
「夢を見ていますわ」
994 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.41 ID:qpqQdUXr
 絵になるな、と思った。
995 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.40 ID:qpqQdUXr
 と、今度は笛の音が聞こえてきた。
996 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.42 ID:qpqQdUXr
 花梨なんて、ろこつにムッとした顔をしている。
997 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.43 ID:qpqQdUXr
「そうだね…人間と同じだ」
998 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.48 ID:qpqQdUXr
 彼女はにっこり笑い、ご主人様の言うことも聞かず、せっせと手を動かし続ける。
999 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.48 ID:qpqQdUXr
 急速に、意識が薄れていくのが感じられた。
1000 ◆aLICeotiAI :2009/06/13(土) 01:07:20.49 ID:qpqQdUXr
「はは、固そうで柔らかいっていうのは、そうかも」
10011001
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