1 :
ラフレシア(アラビア):
2 :
_:2009/06/13(土) 01:06:26.55 ID:Gk67I0yS
|\_/ ̄ ̄\_/|
\_| |_/
(^ ▼ .〈▼ リ
.しi r、_) |
| `ニニ' / わしが炎上させた
ノ `ー―i´
(⌒`:::: ⌒ヽ
ヽ:::: ~~⌒γ⌒)
ヽー―'^ー-'
〉 │
3 :
ロウバイ(東京都):2009/06/13(土) 01:06:30.80 ID:MFfUlGvT
おせーぞ豚
4 :
スミレ(catv?):2009/06/13(土) 01:06:38.26 ID:DQaFR7Rb
まだかよ。。。
5 :
バーベナ(関西地方):2009/06/13(土) 01:06:41.41 ID:t7R6vqzK
草薙「うわぁ〜軽いですね〜」
SCE「えへへえhwwwありがとうございますwwww」
草薙「出た〜!1000からありますねこれ XMB!XMB!」
SCE「ハハハ・・・・・www」
草薙「これもう完成してるんじゃないんですか?」
SCE「うははあwwwwww」
平井「まだです これからですww」
草薙「もういいじゃないですかこれ・・・」
SCE「いえいえwwww」
草薙「・・・もうこのままで良いって言ってるんですよ・・・」
SCE&平井「え?」
草薙「いいから早く出してPSP2作れよ・・・ちゃんとしたものをな・・・」
草薙「こんなのPSPじゃない!」
そういいDSを床へ叩きつける
会場内は騒然となる・・・
6 :
カキツバタ(福岡県):2009/06/13(土) 01:06:47.90 ID:EN4Bc0xa
氏ね → ◆aLICeotiAI
7 :
チドリソウ(福岡県):2009/06/13(土) 01:06:48.21 ID:gZ6Gar8n
↓
r'´:/:::::::,イ:::::::::: |::jハ;:::::::::ヽ:::::::::::\
|::/::::::::/│::::::::::|::| |::::ヽ:: ',:::::|:::::::..', これは
>>1乙じゃなくてツインテールですから
!:l:::::::/ ̄|::::::::::// ̄|:::从:: |:::::|::::::::::r 変な勘違いしないで下さい
ノ:|::::/ ___レヘ:::::/ ___V ';::|:::::|::::::::::|:――--――ヘ
. !:::{从rテ示 ∨ rテ示7 V::::::|::::::::/l:.:..: : : : : : : : : : 〉
/:::::::::リ ヒソ ヒソ /::::::/::::::/――――ァ´:./
|:::::::: ′ /:::::::「`)イ /: :/
|:::::::小、 /::::::::::r'´ /: : : / ,、
|∧:::| l::> .. _ ̄ .イ::::::::::/ /: : : / }: :ヽ
l| V !:::::::::|rュr勹 フ::::/V /: : : 〈___/: : : 〉
|:::::/ん)´ /:/ン勹ぅ- 、 \: : : : : : : : : : : : /
|::/ r')ヘ んr'´ノ´ ヽ ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あ?
10 :
チドリソウ(愛知県):2009/06/13(土) 01:06:51.22 ID:X1fTtyXz
たまご△
調子に乗った僕は、右手で胸への愛撫を続けたまま、左手を下腹部に。
おとじつ千本ノック
「嘘つき…」
体調が悪いのか、ふらふらしている。
何かの間違いで、夕飯の支度がしてないかな、などと、あるわけのない事を考えてしまう。
力が満ち満ちていく
∧∧
ヽ(・ω・)/ ズコー
\(.\ ノ
、ハ,,、  ̄
いつもの場所に、戻ってきたんだから。
「マリアちゃん、顔をあげてよ。ホント、気にしてないんだから」
「今度、アリスと一緒に泊まりにおいで」
「雪が泳げれば…お助けできましたのに。すみません」
「赤ちゃんができたら…私にも、おっぱい出るのかなぁ…」
雑音混じりの、だけど、とても綺麗な歌声。
「そっか。そんなに仲がいいわけでもないのかな」
どうして僕は、一緒に来てあげなかったんだろう。
「暇な時は、私も手伝うよ」
子供にしか見ることができない少年、それがピーターパン。
「雪さ…っ…」
服が体に張りついて気持ち悪い。
「ふふ、失礼しました。大丈夫ですか?」
なんなんだ?
「違う。僕は、あなたを迎えに来る船と、戦わなきゃいけないはずなんだ」
唇を離す。
だけど僕は、すぐそばにある彼女や友人たちの手は離さなかった。
彼女の視線は僕を通り越した、その先に注がれている。
ふたりに連れられて、校舎裏を訪れた。
門を施錠していたものだ。
「…じゃあ、もらっておくね。ありがとう牧野さん」
「過保護は良くないんじゃない? こっちは見ての通りなんだし…少しくらい放っておいても大丈夫よ」
「そうか? じゃあ、俺は席取っとくわ。後でからかうためにも、めいっぱい近くで見てやらないとな」
そういえば、ずいぶん長いこと忘れてたけど、大丈夫なのか?
「そういうんじゃないよ。そういえば、夢でもお姉さんがどうとか言ってたことがあったな…」
「ごめん…っ…限界…」
ふたりが、顔を見合わせた。
すると、遠目にも彼女の顔がみるみる赤く染まっていくのがわかった。
夢を見るための、話なんだから。
「んー、じゃあ、期待してる」
彼女は照れたようにうなずいて、
「あっ…な、なに?」
頑張れ、頑張れ――
誰も知らない、言葉にもなっていない不定形の力が、僕たちの間に働いているとしか思えなかった。
「おまえらに気づかれるとはね。とにかくそういうわけなんだが…」
『山ノ民、と呼ばれる者たちがいる』
覚めるからこその、夢。
余計なことを言うのはやめよう…。
「透矢ちゃーん、どう?」
和泉ちゃんの席だった。
「変態って…やめる?」
「んーっ、遊んだ遊んだ。キミたち、楽しめた?」
「おねーちゃんっ」
違う、というのは、彼女の生い立ちのことだろう。
駄目だ…ぼけっとしていたみたいで、話がまったく通じていない。
庄一は、そんな僕の様子に笑いをかみ殺しながら、
唐突すぎたか、花梨は完全に固まってしまった。
「ばーか、勘違いしないの。キミに教えてもらう時間、好きだったよ」
「手伝うなんて言ったのに、邪魔しちゃった…」
負けを認めた僕だから、その点については素直に認めておくことにした。
「和泉ちゃん、俺がきれいだって言ってもそんな反応してくれたことないのに…」
「山行くんだからハイキングじゃん」
「…ばっちり。でも、ちょっと疲れたから休むね」
「もっと…はっ…ぁ…こちらも…お願いしますわ」
和泉ちゃんから望んだ事とはいえ、僕はそれに応えたんだ。
「ここは…?」
花梨は、庄一は、どこでこの音を聞いているだろう。
75 :
ニオイタチツボスミレ(東京都):2009/06/13(土) 01:07:06.46 ID:s8d+BNL7
またやってんのか
じゃまくせーぞ
「はい。ですけど、それは透矢さんも一緒だと思います」
勢いあまって転びかかったところを、花梨に助けられていた。
「うん。じゃあ、キス…して」
「透矢さんですか? 見たことはありませんね。とはいえ、人に見せるものでもないでしょうから…」
「やっぱり、庄一は、和泉ちゃんのこと、好きだったの?」
「これで大丈夫。行きましょう」
「この子ったら、勘だけは私よりいいのよね。頭は悪いくせにー」
『い、いいってば。動物が相手じゃ仕方ないよ。また次の機会に見せてよ。楽しみにしてるから』
「なんて恰好させるのよ、もう…」
突然のお手紙でごめんなさい。
抗議の声を上げかかったところで、制止された。
「うん。だけど…」
「あんまり、寝られなかったかな」
その代わり、くいくいと僕の服を引っ張るのだけはやめない。
でも、僕は今、その花梨と手を握っていて…
みんなを、傷つけて…
「何か、お手伝いできないかなって、思ったんだけど」
和泉ちゃんはいない。
「馬子にも衣装さ。なあ?」
「勘弁してよ…」
今度は、和泉ちゃんがへろへろ駆け寄ってきて、もはや当然の流れで、砂浜に顔面を叩きつけていた。
「ふん、お人好しなのは確かみたい。で、名前は?」
海の時とは違って、ずいぶん上機嫌だ。
緊張は、ない。
「…双子、か」
「ごめん。普段はお賽銭とか取ってるくせに、本当に神様の力が欲しい時はこうなんだよね」
話題づくりにもなるし…
「透矢くぅん…透矢く…っ…」
あんまりそっけないから、本当に怒ってしまったのかと不安になる。
「っっ。か、花梨、つま先で蹴らなくてもいいのに」
じゃあ、あれはいったい…
つまるところ、よくわからなかった。
「あは、良かった。じゃあ、もっとキスしてください」
僕はそんなに、ひどい顔をしているんだろうか。
「透矢くん、どうする?」
三人は行ってしまった。
「だけどは、なしだぜ」
「うん。ありがとう、雪さん」
「ったく、他の患者が迷惑だろうよ。ま、上手いこと言っておくさ」
「ぅ、ぅぅ?」
正直まだ、どこか信じられないような気持ちもあったけど、僕は雪さんに習い、頭を下げた。
つま先をぐりぐり…
「そういうことじゃなくて、わざわざ戻ってきてくれたんだね。気づけなくて、ごめん」
夢で見た横顔が、そこにはあった。
「パーマかけたんだよ。くせっ毛だったから、嫌で」
「だから、嫌いでした」
「けっこう、恥ずかしいんだよ…」
『何かあったら、このボタンを押してください』
「嘘だけどね。さて、せっかくだからお参りでもしていこうか」
「確かにね」
「だけど、おまえが言いたかったのは、そういうことだろ? 部活に出ろって言うんだから」
「ぅぅ…?」
「…そんなことないよ」
「ち、違うって! そういう意味じゃなくて…だから、雪さんの家族として…」
返事に窮していると、渦中の少女が、くすくす笑い出した。
雪さんが引いてくれた椅子に座ると、自然と、ため息が出た。
ぶるぶると、大きく震える体を、ひときわのけぞらせて、
「ほらほら、ぼーっとしてないで窓くらい開ける。いい天気なんだから」
「雪のおむねが好きなんですか? それとも、おっぱいが飲みたいんですか?」
彼女が大人しくなるまでの間、僕は頭を撫で続けた。
あははと笑って、そのまま目を閉じる花梨。
「あいかわらず、ぐーぐー寝てらぁ」
「そうですわね。ふふ…」
「馬鹿兄妹。やっぱり同じレベルなんだよね」
白い肌、黒い髪、そして赤い瞳。
うぜぇええ
ゾッとしたし、けっきょく自分では何もできなかったのが情けなく思えた。
僕が腰を浮かせるたび、花梨の豊かなお尻がパンパンという音をならして揺れた。
「ごめんごめん。行こうか」
『おねがい…マリアを助けて…』
試合にデートに、失敗続きだ。
それでも親切にしてくれるのは、前の、瀬能透矢が好きだからだって、そう思いこんでいた。
「この町の事に関する本…って、そんなのまで点字本になってるわけ?」
「目?」
「っくん…透矢さんの唇も、気持ちいいですよ」
「そうですか。記憶をなくされたと、うかがいましたけど…」
何を言われても、されても、今は『ごめん』としか言えない。
「元の本を点字化した人間がいるってことでしょう? あんまり需要も無さそうなのに…」
「ぁ…は、はい!」
「寝ぼけてる?」
「ちょっと信じられんな…」
恥ずかしいし、汚いことも考えてしまうけど、今は彼女を想って優しい気持ちになることができた。
「私も、透矢さんがいい…」
「ごめん、八つ当たりするなんて最低だ」
「心臓の音、聞こえますよ」
自分が無気力になっているのなんて、わかっている。
「いや、そう言われても…」
「やっぱり、じかに触ると違うね」
その拍子に、テーブルのはしに手の甲がぶつかる。
ぎゅっ――で通じるようになってしまった。
「違いますの。和泉さんが、おかしなことをおっしゃるから」
彼女は、緊張している。
「なんですか、透矢さん」
「ああ、僕の家の前で会ってから…どうして?」
「っぁ! んぅぅ…っぅぁぁ!」
「はは…って、なに?」
「誰もいないって。家にいけば自転車があるから、それで送る」
「はいはい、冗談ですよ。きのうごちそうになったばっかりだもんね」
「透矢ちゃーん、今のだぁれ?」
175 :
クリサンセコム・ムルチコレ(dion軍):2009/06/13(土) 01:07:08.23 ID:JVQFglQi
おわり
「だって、めんどーい」
「透矢…これ…」
「でも、人の世界で生まれる」
確かに、今、一瞬だけ光が見えたような気がしたけど…
「へえ、ちゃんと読んだんだ。やっぱり真面目だよね、透矢くんは」
「透矢さんのそういうところ、雪は好きですよ。あまりお人好しすぎるのは考えものかもしれませんけど」
都合のいい一般論に聞こえなくもないけど、雪さんの曇りない口調で言われると、妙に説得力があった。
「ええっと、牧野さんって体調をくずしてたんだよね、大丈夫なの?」
と――
「私なんか、ただおんなじ町に生まれて、たまたま知り合ったっていうだけで…大違いだ」
「やっぱり…その…」
抵抗はない。
歯止めが利かないのか、和泉ちゃんは花梨の体を大きく揺さぶり始めた。
むせかえるようだけど、どこか、懐かしいような気持ちにもさせてくれる。
「それは、わかってるつもり」
「私の心配してくれたの?」
そして僕は、何も言えなくなる。
そして、口をつけたまま、僕は、彼女の頭を撫でた。
「雪さん…?」
「はーい」
それは、みんなの――少なくとも花梨の期待を、背負ってしまったっていうことなのかもしれない。
僕は、胸に目がいかないように、気をつけながら続けた。
「驚かせようと思ってね。行こう」
一瞬、左側の波が、右側の波を浸食して流れ込む。
でも、アリスは多分、嘘をついている。
「透矢くんは、そう思わない?」
「ん、じゃあ、よろしくね」
「無理しないでよね。じゃあ、他の所に行く?」
「可愛く、ありません?」
「あー、もー、ストレス溜まるー」
「僕がお願いしなくても、しちゃったりしない?」
相変わらず、仲のいい親子だ。
「にしても、そんなに焦ってお見合いなんかさせてどうするんだろうね…」
とりあえず、そこに積まれた本を、上から手に取ってみることにした。
「あんまり自信ないけど…これが、私の素顔」
「…大好き? 本当に?」
「アリス。あの…中に…」
「信じるよ。そういう月が一つくらいあっても、いいと思う」
「大和神社にいたっていう、あれ?」
「そう? じゃあ続けてみようか」
もう少しだけ、他の誰でもない、僕のためのメイドさんでいてほしいんだ。
アリス、こういう時は異様に恥ずかしがりだ。
この人に優しくされるのは、どうしてこんなに気持ちいいんだろう。
続いて、香坂姉妹、和泉ちゃんが、暗がりの向こうから姿を現した。
ずっずっずっ――吸い込まれるように、僕のものが彼女の中に埋没していく。
「ひとりでいいよ。それじゃあ、ちょっと行ってくるね」
そして、そのまま舌をからめ、互いの体を抱きしめ合った。
「はい。せっかくいただいた水着を、一度も着ないというのは失礼ですしね」
僕は、現在の状況をふたりに語って聞かせた。
「以上、キミのお母さんの受け売りでございましたとさ。あのときはこれで泣きやんでくれたけど」
入り口を押し開く。
「んー、とりあえず足のこととか」
それだけで、目に見えて落ちつきを取り戻す。
「いいですよ。雪は透矢さんのものなんですから、拒否権なんてありません」
「そう…じゃあ、そうするよ?」
「あ、いえ。ええと…」
「ケガ人だよ、私。話し相手になってあげたんだからいいじゃない」
「今日、雪さんに案内してもらったばっかりだから…」
親子二代で、妄想癖でもあるのかもしれない。
「どうして、僕に?」
「いいよ。雪さんは、僕のためにしてくれたんだから」
「嫌な日だね。…ひょっとして、さっき僕の手を離してくれなかったのも、そのせいだったりする?」
「あ、いえ。ですけど、結末が変わらないのが残念ですわ」
「ぁ、そうですよね…すみません」
「…こんにちは」
“ずざざざざざざざ!”
「知性ねぇ…」
そうしなければいけないからと、どこかに言い訳を見つけて。
244 :
p3254-ipbf504okidate.aomori.ocn.ne.jp:2009/06/13(土) 01:07:09.30 ID:6d0eGHjv
邪念婆
「…微妙に違うんだね」
静かで涼しい、自然にあふれた空間。
当然、これに和泉ちゃんが気づかないはずもなく、彼女は拗ねたように口をとがらせた。
「なんか投げやりー。ま、いいや。練習するから、来て」
「落ちついてるんだね」
「切りますよ?」
「…あるわ」
「まあ…」
私は、息子の見た少女が幻だとは思っていない。
僕は逃げた、彼女は逃げなかった。
「けど?」
「わかんないじゃないか、今は引けないんだし」
しかも、僕の片手にはウサギの頭をかたどった風船がにぎられている。
「嫌なら言ってね?」
「雪さ…雪さん!」
「それじゃあ、私はここで」
二人の間にはさんで…っていうことらしい。
どうして?
伸ばした手を払いのけ、アリスは頭を抱えた。
「ぅぉ…」
「どうして、僕に?」
「んぐ…っ…んっ…ぅぅ」
おかげで、少しだけ、締めつけもゆるくなる。
「真面目な話さ。こういう儀式だと、薬とか使われてたみたいだぜ。それで神様を降ろしてみたり…」
しかし、私にはどうしても、それが夢や幻の類とは思えなかった。
「ええ。わたくしは、生まれた瞬間から、この年齢で、こういう記憶を持っていたのかもしれませんわ」
「ひとりではありませんでしたわ。ただ…その方はもう、役目を終えてあなたの側にはいません」
これが自分の中にもあること、それは認めよう。
「僕が雪さんの服を脱がせたことなんて、あるの?」
「私のいれたお茶、まずかったんだ…」
時計を見ると、ちょうど七時。
「そんなにつまんないこと言うのは、お姉ちゃんだけだもん」
もちろん気のせい…だよな。
そうなのかもしれない。
「進歩ないわよね」
意味が、わからなかった。
七月七日といえば、あの手紙で指定されていた日付だ。
「勝手に話を進めてるなぁ」
「本当にね。それにしても…キミ、また夢見たの?」
「もぉー、花梨ちゃんの馬鹿ぁ」
『ナナミ様、ナナミ様…』
「人殺し…かしら」
「キミ、いつの間に」
「あるわけないでしょ、この馬鹿ぁ…」
そういうことになるらしい。
最後に改めてデートの約束をし――僕たちは手をつないだまま帰路についた。
夢の中の僕だって、苦しんでる。
「ほら、熱いですよ、やっぱり」
和泉ちゃんにいたっては、方向感覚を無くすために行う最初の動作で目を回して終了。
僕は彼女のことを、何もわかっちゃいなかった。
背中から声がかかった。
顔が熱くなった。
「ど、どちらかといえば好き…」
「いいけど…ちょっと、やりすぎちゃったかな…」
生まれのために、っていうのは、いったいなんだ?
「震えながら言っても説得力ないぞー」
不慮の事故でも起きたらどうしよう、雪さんと離ればなれになったらどうしよう。
それくらい、自分でわかる。
「まあ…その話はいいか。少なくとも嫌われてないんだから喜ばないとね」
「彼女は…」
「思い出して、いただけたんですね?」
僕には念じることしかできなかった。
「どれどれ、貸してみなさい」
『七月七日 午後五時 公園で待っています』
「ぃ…」
ピンと立った乳首が誘っているように思えて、僕はすぐさま、そこに口をつけていた。
「もう、大丈夫ですからね」
「お姉ちゃん、おねーちゃん」
「やだ、どうしたの? 何か悩み事があるとか…」
「っぁん…」
「防空壕にばっかり気を取られてて…うかつだったわ。この国のキツネは霊獣だった」
弓を引き絞り、離す直前の構えが、他の子に比べ、異常に長い。
それに応じながら、僕は彼女の足を開いて、その間に立った。
「でしたら、ゆっくりできますね」
「ふふ、遅れると、どやされてしまいますものね」
「どうしても、気になられるんですね、あの方のことが」
神社っていう場所のせいなのか…それとも、僕の、眠った記憶のせいなのか。
「…そうなんだけどね」
「雪さん、こんな昔のこと、記憶をなくす前も覚えてなかったに決まってるよ。次に行こう」
「兄弟かな…?」
「だから、僕とがんばろうよ」
「マリア…?」
「ずっと?」
和泉ちゃんは、妙に年寄りっぽいかけ声をかけてベンチに腰をおろした。
たとえば計算問題。
だから、雪さんがいきなり大きな声をあげた時は、本当におどろかされた。
腰を振る、背筋を何かが駆け上がってくる。
机、本棚、ベッド、クローゼット、
僕はふたりに気づかれないように、礼拝堂の扉を閉めた。
引っかかりを、強引に引きはがすと、いかにも弾力のありそうな胸が飛び出した。
「気持ちいいんだけど痛い。透矢のそれと同じだと思うよ。そっちも、キツいんなら脱げば?」
「にしても、すごいって」
「…何か隠してない?」
「や、やめてよぉ」
「ふふ…おやすみなさい」
それでまた、彼女っていう幻が見られるようになるなら、僕はどうなったって構わない。
妙なところでつながる――いちおう、調べてみる価値はありそうだ。
泣き出しそうな瞳に見つめられると、もう、止めようなんて気になれず、
「あのー、マリアちゃん、あんまり跳ねないほうが…」
「庄一んとこの神社でも見たし…」
「わかった、この俺が」
それでも、一日が流れ出した。
(もっとも…)
にやにや――意地が悪い。
家の灯りに、ほっとするのを感じながら歩調をゆるめると、門の前に人影があることに気づいた。
さすがに、マリアちゃんも顔を真っ赤にしてうろたえている。
「そんなことはないと思うけど、今日も仕事だって言ってたね」
祈りで蛇の猛毒を消す?
「雪さん、ちょっといい?」
だけど、僕はその写真に強く心を動かされていた。
その代わりに、僕は雪さんのことを話してもらうことにした。
それどころか、彼女は幸せそうな表情のまま、腰に回した手にさらなる力をこめようとしていた。
「むにゃ…」
「抜け出して来ちゃったわけだね」
「楽しいはずのデートで、そんなに疲れてどうするのさ。足は?」
「失礼しました。雪は食堂のほうでお待ちしていますから、着替えが終わったらいらしてください」
「ちょっと嘘っぽい気もするんだけどね。ちゃんとした記録もないし」
柄のところに、波打つような、奇妙な模様が彫り込まれている。
「いいってば。どうせすぐ帰ってくるんだから」
「あと五分でいいから」
いっそ、そう考えるほうが自然かもしれない。
「そういうこと。じゃあ、はじめ…よっ」
「雪さん、ちょっとだけ待っていてくれないかな?」
と、アリスが訪ねてきた。
まずは、確かめよう。
白魚のような、なんて形容が、冗談や誇張にならない彼女の手足。
「ホントに長い髪だね」
「うぁ…」
「…そう」
期待してたとか、そういうことじゃないんじゃないか。
何かあったんだろうか?
「…ねえ、それならどうしてアリスは僕のことをマリアちゃんから遠ざけようとしていたわけ?」
「いいの。透矢と一緒が、いちばん落ちつくんだもん」
「ねえ、牧野さん?」
「たまにはあの夢のように、二人でお出かけしてみませんか?」
「変なの…好きにさせるようにがんばるって言えばいいの?」
「でもまぁ、やるだけやるぜ。彼女がいつ戻ってくるか、わからないもんな」
「や、やだ、人の顔じっと見て。そんなに似合わない?」
こんなことじゃ、いけない…んだけど、可愛いものは可愛い。
見事にかぶった。
和泉ちゃんが、へろへろとした足取りでこちらに駆け寄って来る。
どくん!――我慢する間もなく、僕のものは大きく脈打ち、達していた。
「マリアって、いい子でしょう?」
「仕方ないな。いい? この問題は…」
「夢を見る? 病院のベッドは寝心地が悪いかな」
「キミは、こんな子じゃ…ないよ。どうしてもって言うなら、こんなところじゃなくて」
言いながら拳を振り下ろしてくる花梨。
392 :
オウレン(東京都):2009/06/13(土) 01:07:11.92 ID:W3tMa2Oo
ヘイヘーイ
(涙石…か)
妙なことまで、よく知っている。
矢は、岩にはじかれ、落ちる。
早く戻らないと、こっちが雪さんに捜されてしまいそうだ。
「でしたら、よろしくお願いします」
心なし、ほほが赤い。
少なくとも僕より経験がありそうだし。
「…僕は、ちょっと楽しんでたかも」
「だ、駄目だよ」
よいしょ――と、花梨は僕の背中を背もたれにして座り込んだ。
そして、そのために自分が傷つくことは一切いとわない。
「もうじきだと思うけど。そんなにスイカ割りがやりたいの?」
「神社に、何が…」
「んん…おはようございます」
きのうは、けっきょくあれっきりになっちゃったからなぁ。
「透矢さん、読書が好きでしたの?」
(まさか、な)
「おせっかいだから、ここにいるんだけどね。マリアちゃんは、どこに行ったのかわからなかったし」
『…はは、なんか、雪さんはどうしても僕に、その事を信じさせたいみたいだ』
たまらず手を伸ばす。
「ねえねえ、なーに、その写真って?」
「本当に、ゾクゾクしちゃったんだ?」
半泣きの状態だった。
もし夢の中の彼女を射抜かずに済めば、夢は続いて、僕と彼女に、新しい未来が開けていたんだろうか?
歩くだけでも汗が吹き出るような暑さの中、ふたりは仲良く手をにぎっている。
「ええ。わたくしは、生まれた瞬間から、この年齢で、こういう記憶を持っていたのかもしれませんわ」
――でも、違った。
「っひ…はぃぃ…っぁ、ぃ、いい…です」
「思ったより、悲しまないんだね」
いくら引いても震えはおさまらない。
雪さんがここに来たのも、彼女のお願い攻撃があってのことだし。
お茶を濁してみたものの…
「ええ、ちょっと…」
「だって、濡れてしまいますもの」
「…ううん、ちょっと気になったから、聞いてみただけ」
牧野さんの夢で失敗したからって、それが揺らぐことはない。
彼女が話してくれないだけなのか、僕が彼女のことをわかっていないだけなのか…
花梨との約束までには、まだ間がある。
はぁぁっ、と深呼吸して、花梨が力を抜く。
「ところで、これから、どこかにお出かけなんですか?」
「きれいな足」
「げっ!?」
(違うか…)
和泉ちゃんが、きのうと同じ顔をした。
ふるふるふる…
そして、アレが眠る場所。
「ママがいなくなっちゃって、おねえちゃんともケンカしちゃって…」
彼女の両親の死、その後の不当な扱いになんらかの関係を持っているっていうことなのか。
「透矢くんは、透矢くんだね」
だから、キツネの死体は、あのとき茂みに隠れていた、隠されていた。
「…確かに、那波も、むごたらしい死に方はしたくありませんわ」
ちょっとだけ――と自分に言い聞かせ、僕たちは防空壕の中に入った。
私が住む那波村は、正面に海を構え周囲を山に囲まれた、閉鎖的な地域である。
「大丈夫よ」
「そうは言うけどさ、食べないものは食べないんだから仕方ないじゃないか」
鈴蘭ちゃんは、たぶん天才だ。
「あ…いや、その」
なるほど…。
内臓までかき出してやろうかというほどはげしく、何度も、何度も。
「悪くないよ。すごく可愛いし、いいと…思う…けど…」
「…勝手に殺さないでよ」
「願いを叶える石って、本当だったのか」
この炎天下に外でどやされるなんてごめんだ。
そして、彼女が僕のものにしてくれたように、周辺からていねいに舌をはわせる。
「そういう事があるから、おねえちゃんも心配するんですよね」
「…もし、今日の日のことを忘れずにいてくれたなら、また会うことができるかもしれませんわ」
肩車をしたかっただけらしい。
「他人事みたいに言わないでください」
「あの、お腹の調子でも悪…っぐ!」
「透矢さんまで…」
かくして、鈴蘭ちゃんは、笑顔のまま引きずられて行った。
「だから調べる価値があるんだろ。どうせ遊びみたいなもんなんだから、面白いほうがいいって」
あの後、アリスとふたりでキツネを埋めた。
「どうせ明日になればケロっとしてるよ。それよりさ、牧野さんは?」
「保健室に行ったきり、戻って来なかったなぁと思って。大丈夫なのかな?」
「っとと…追いついたら、キミの馬鹿につき合ってあげるー! 何がいい?」
「恐ろしかったんですの。透矢さんが来るまではずっと暗闇の中で。それが、だんだん悲しくなって…」
「入れるんだ?」
「聞かせてくれる?」
うなずく彼女の首筋に顔をうずめる。
マリアちゃんは泣きだしてしまった。
「忘れ物ですか?」
そんな時に、彼女の口から和泉ちゃんの名前が出てきたんだ、慌てもする。
「続けるよ?」
「ここ、可愛いね」
花梨がいちばん激しく反応する場所――まだ歯形の残る乳首に吸いついた。
「透矢さんは、お友達ですから。ね、おねえちゃん」
「僕、マリアちゃんだけじゃなくて、アリスとも友達のつもりだよ」
「くっ」
「何度も考えましたわ。自分がいるのは夢の世界ではないのかと」
「うん…ごめん、変なこと聞いちゃって」
「夢というのは、可能性ですわ。本当にありえないことは、夢にだって見ることができませんの」
でも、何も言わずに花梨と走るその時間は、ちょっと幸せなものだった。
「透矢、そっちは…」
「あ」
「しませんよぅ。あの、それじゃあ…よろしくお願いします」
(なんか、木に登って下りられなくなった 猫みたいだな)
「マリア、夕食の時間。早く戻りなさい」
「はい。せっかくいただいた水着を、一度も着ないというのは失礼ですしね」
こんな暗闇の向こうからやってくるのは決まってる、死者だ。
そうだ、頑張れ。
「あの、お待ちしていますから」
消えてしまった思い出が、この町にはたくさんあって。
僕を救ってくれたのは、タイミング良く校門前に横づけされた、いかつい黒塗りの車だった。
だけど、僕らは、どこかお互いに惹かれ求め合っているっていうこと。
「楽しみは後にとっておかないと。今日はキスさせてもらったから満足」
「女の子の胸は、年相応にふくらんでくるものだよ。雪さんは鈴蘭ちゃんよりお姉さんなんだから」
返事は、聞くまでもないようだ。
一緒にいたのは、父さんだろうか。
な?――『僕』は何を言おうとした?
「進歩ないわよね」
「あん…本当に、赤ちゃんになってしまわれたんですか? 雪、まだ、おっぱいはでませんよ?」
「図書館ですわ」
弓引きには神への願いも込められておりこれもまた、よく神の耳に届く。
「…僕のほうが、弓道が上手いからっていうの? だったら…」
「せっかく?」
僕のほうが忘れかけていた。
「そうだったね」
でも、本当に困ったのは、それに対してリアクションを返さなきゃいけない僕のほうだった。
考えるだけで、あの、なま暖かい感触がよみがえってくるようだった。
「そっか、残念。宮代神社って言ったら、この辺りじゃ有名なんだけどなぁ」
「おい、調子が悪かったんじゃ…」
「あそこ」
「あんなふうに、男の方と接吻してしまうだなんて…恥ずかしくて…」
「…すごく、良かった」
霊感、ってやつだろうか。
「透矢さんが…いっぱい…優しくしてくれました」
「聞かないほうがいい?」
家を出る前に、庄一に連絡を取った。
「和泉ちゃんだって忙しいだろ? 拘束される時間が増えた、って」
「なんでって…迎えに来たのに」
「透矢さん。書斎にいらっしゃるなんて珍しいですね」
だから夢に見た、だから弓を引くのが怖かったのかもしれない。
記憶喪失だからって理由で、自分に都合の悪いことをぜんぶ忘れた。
…看病するのは、ちょっと楽しいけど。
「…なんとなく、わかる」
「だけど、こんなところでつまずいていられないじゃないか。こんなのも引けないなんて」
そう言って、庄一は人の間をぬってスイスイと舞台に接近していく。
「私もそうだけど…どうする、私たちも行く?」
「…ぐすっ、おねぇちゃぁぁ〜ん」
「止めろというから何かと思えば、瀬能のせがれか」
「和泉ちゃん…駄目だよ…」
何もできなかった時のみじめさを、僕は嫌というほど知っている。
「やっ…お、お願い、いちど切って! すぐかけなおすから」
「わからない…」
「山って危ないところじゃないの?」
「もう一回、する?」
「こんなお話、信じられませんか? でも雪の知っているお月様はそうなんです」
祭りが終わってから、花梨もまた、意識を失ったきりだ。
「参ったな、雪さんのことだから、ゲームでも、僕をだまそうとはしない――なんて油断してた」
年代物の弓矢が一式。
覚悟を決め、訪ねてみることにした。
「やっ…やぁぁぁ…」
「女の子が、男の人の前で、あんな恥ずかしいところ見られたんだよ? もう、お嫁にいけないじゃない」
「ふーん…まあ、そうかもね」
「そそそ、そんなことないですよぅ!」
…小学校の先生にでもなった気分だな。
「産んでも…いいですよね?」
「こんなことしたいなんて、変なの」
「おまえはホントにうるせーな。せっかく透矢をからかって楽しんでるのに」
七夕、精霊流し、ちょうちん――
神が落とした奇跡の涙、願いを叶える涙石――
詳しいことはわからないけど、危ない状態らしい。
自分から率先してしゃべりはしなかったものの、よくこれだけ無駄話ができたものだ。
「夢ですわ、透矢さん。覚めれば忘れてしまう夢」
思い当たって、ぱらぱらとページをめくる。
言いながら、雪さんは僕の着ているシャツを見て『ああ』と、合点がいった様子でうなずいた。
「っぃぁ! うれし、っひ…っぁ、ぁぁ」
「止められなかったか?」
「つねられても覚えてないんだけど」
「…待って」
「あっさりしてるなぁ。本当に大丈夫?」
暗い、暗い海の底へ…
「母だ。やはり早くに亡くなった」
これが、単なるハイキングコースならともかく…僕たちが今いるのは、まさに山の中。
拝殿の前で、ぶんぶんと手を振る花梨、ぽやっとした顔でたたずむ和泉ちゃん。
「う、ウザイって…」
570 :
スズメノヤリ(中国地方):2009/06/13(土) 01:07:14.62 ID:ShTxyxfX
おまんこ
「駄目って言ったら駄目だよ、雪さん」
「ううん、起きたところだから。何?」
ただ、試合があるだけの朝なのに…
(なんだ、ここ?)
一夜が明け、僕はけっきょく彼女たちを放っておくことができず、教会に足を運んでしまった。
「…ばか」
ぶるっと震えたと思うと、言葉通り、割れ目からじんわりと、新しい愛液が広がり始めた。
この子はこの子なりに本気のようだし、あとはもう、僕の意志によりってところだろうか…
「昔からそうなんだよ。どう考えても誰かの手が入ってる。町で維持してるってことかなぁ…」
身につけたものを手あたり次第に投げつけ、それの進行を邪魔することばかりを考えて。
「私が好きじゃないの!」
雪さんに簡単な言付けをして、僕は彼女が待つであろう、海岸へ向かった。
話の流れはわかるけど、何が起こっているのかはさっぱりだ。
何度目だろう、僕は息をのんだ。
「ありがとう、和泉ちゃん」
「牧野さん、それじゃあ、やっぱり」
しゅん、となってしまったマリアちゃんの頭を、アリスが優しく抱き寄せた。
「いい加減、洋服くらい一人で脱げるはずでしょう?」
僕にはもう、弓を引くなんて出来ない。
「いえ。夢を見ている時点で、それは夢という世界にいるという現実ですから…」
「…慣れの問題よ。だいたい、私たち、夜は早くに寝ちゃうし」
ガチガチに固まっている。
なんだか不思議な組み合わせだ。
来た――牧野さんだ。
「気になるんですか?」
(しかし…さっきから、庄一の他は女の子ばっかりだなぁ)
改めて自己紹介を終えたところで、花梨が、注目を集めるようにポンと手を鳴らした。
「あっ、はい。なんですか?」
和泉ちゃんのことが好きだけど、他の子にも、僕のことだけ好きでいてほしい。
「はい。なんか邪魔になるからって」
夢…そうだ、ここは夢で見た風景。
自分は顔をそらさずに言う。
「それ、ほめてる?」
「あなた、そんなことまでわかるの?」
着替えをしてくる、と花梨はすごい勢いで社務所のほうに走って行ってしまった。
「……わかった」
「あの…和泉ちゃん…」
雪さんは、いつも落ちついているのに、不意に、こういう無邪気な仕草を見せるんだから、ずるい。
「目当てのものは、あったの?」
和泉ちゃんには、それが、わからないんだろうか?
今のところ、予想していたのと、かなり違う状態だ。
と、泣き出してしまいそうなアリスの肩に手をかけ、戻ろうとしたところで、
「ぁ…っひ…ぅく…」
僕という人間の行く先には、こんな可能性が、いくつ転がっているんだろう。
「はう…」
「はい! 透矢さんも、良かったら、また遊びに来てください」
と、一冊の本を投げてよこす。
つまらない理想は幻想で、それを振りかざすのは、夢見がちか、ただの馬鹿か。
「…ありがとう」
改めて唇を重ねると、緊張のせいか、彼女のそこが、必要以上に固く閉じられているのがわかる。
「あの子はもう…気をつかってるんだか、つかってないんだか」
「あ、見て見て、透矢くん…」
“ガラガラガラ”
「ふぁぁ…」
「もう…巫女服に興奮しちゃったのかな」
「ん、どうしたの?」
そんな花梨を見て、和泉ちゃんが顔を逸らす。
図書館は、休日になると一般の人たちに開放されるため、来館者の数は多い。
でも、どういった事情があると承知していたところで、友達との別れが辛いことに変わりはない。
正直まだ、どこか信じられないような気持ちもあったけど、僕は雪さんに習い、頭を下げた。
「いいよ…それが普通なんだもん。待ち合わせがあるのに、ごめんね」
「…さんざん心配かけたわりに、異様に元気だよね」
あくまで部の統括役、その試合に限っての指導者という意味で大将だ。
「雪さんが寝坊なんて、めずらしいね…疲れてるんじゃないかな?」
逆にアゴをしゃくると、元来た海岸のほうをしきりに指さして、くたびれた表情を返された。
「嫌です。雪の楽しみを取らないでください」
(守ってあげないとな…)
『山ノ民、と呼ばれる者たちがいる』
「はぁ…こういうことになると、ホントにお馬鹿さんになっちゃうんだから。つき合いきれません」
「それは、その、ご主人様がそう言うのでしたら雪はそれに従いますよ」
それに僕は――彼女に何かを――
「でも……んっ…」
ぱしゃぱしゃ――
「そうは言うけどさ…」
「…もう少しだけ、お母さんの代わり、させて」
「むぉっ!」
「花梨の、すごいよ」
花梨だからきっと大丈夫と、無責任に考えていたのかもしれない。
「はぁ…ごめんね、こんな長々と…しかもそっちにかけ直してもらっておいて」
マリアちゃんは僕の手を離れ、アリスに飛びついた。
「…七月の七日」
涙を流せば願いがかなうなんて都合のいい話、あるはずがないけど、
「ありがとう、那波ちゃん」
「ふーん。ぎゅっ」
何も変わらないように見える、連続した日常。
人の想いで何かを動かすことができると彼女は言っていた。
「あれ、透矢、どこ行ったの?」
「それよりも、雪に、何かお手伝いできることはありませんか?」
「別にいちゃついてるわけじゃないんだけど…」
「うん…って、いや、そうじゃなくてさ」
「そいつはさ、何かやってから言う台詞だと思わないか」
「それが、ナナミ様の正体だと、この本には書いてありますわね」
「うん…少なくとも、この風景に関してはね。どこまでが本当かは、わからないけど」
それだけの事だ。
「今は出ていますけれど、お友達もいるんですの」
水着の隙間から、とめどない彼女の気持ちが透明な液体となり、あふれ出ていた。
四射して、けっきょくそのすべてを、花梨は外してしまった。
「あ…ご、ごめんなさい! 少しは恩返しできるかなって思ったから、それだけ、ちょっと残念で」
「よっ、相変わらず尻にしかれてんな」
「ごめん。急に座り込んだりするから、気になって」
「認められないの? 自分が死んだんだっていうこと」
自分はいったいどんな人間で、彼女が存在するとしたらどんな関係なんだろう?
僕がその怪だとでも言うのか?
「ね、見てください、素敵ですよ」
すべるように落ちた布きれの下から現れたのは、きれいな一筋のスリット。
「キミねぇ」
要請通り、花梨の家の蔵とやらを調べることになったはいいけど、
「気にしないっていうのは無理だけど…そうだね、前より迷惑かけちゃうかも」
「大したおもてなしは、できないけどね。ただし、今日だけだよ?」
悪いほうに考えたら、悪いほうに流れるものだ。
「女の子が、男の人の前で、あんな恥ずかしいところ見られたんだよ? もう、お嫁にいけないじゃない」
恥ずかしかったけど、どこか、おかしくもあった。
僕と雪さんがいたら、雪さんにじゃれつくくらいだし…。
「撮るのと見るのは好きみたいなのにね」
夢を見るんだ。
「雪さんが、タヌキ寝入りぃ?」
「そうですの…那波もですわ」
「和泉ちゃーん、ボクもほめてー」
「責任って?」
「透矢くん、どうする?」
僕が眠ったあとも、彼女は、手を撫で続けてくれた――
花梨が、わざわざデートなんて言葉を持ち出したくらいだし、きっとそうなんだろう。
「これは、だって、シートが狭いんだから仕方ないじゃないか」
頭をなでられるたびに、とめどなく涙があふれた。
“ぴぃぴぃ…”
「私たちは霊感が強い。それがどういうことかっていうと、自我が薄いってことなのよ」
「あ…ひ、ひどいですよ。雪のこと、からかったんですね」
698 :
ウグイスカグラ(関西地方):2009/06/13(土) 01:07:16.53 ID:6obo3ALf
もうやめとけ
まるで、長いこと誰の手にも触れられず野ざらしにでもなっていたようだ。
「見学だけで、意味あるの?」
「キミは…誰?」
「いつものことですから」
「違いますよ」
「別にいいよ。マリアちゃんも、呼びやすいように呼んでくれていいからね」
教室全体を見渡すと、男子と女子の比率は半々で、全体の人数は三十くらいか。
彼女が不思議そうな顔をする。
「え? ああ、さっきのこと」
新たに浮き出た汗を拭いながら、やわらかいほっぺたを撫でた。
「他にもあるんだね…」
彼女の指先が示す先に、ぼんやり青白い光のようなものが見えた。
「しっかり、してよ」
勢いよく、受話器が叩きつけられた。
(やっぱり、会いたかったんじゃないか)
「考えすぎだよ。ところで、花梨は間違いじゃないよね。どうしたの?」
何か禍々しい空気が立ちこめている、そういった印象。
いざとなると、『好きです』とか『愛しています』とか、そんな短い言葉が出てこなかった。
「本当ですの」
期待を裏切っているのがわかるから、気まずくはある。
頭をさげる鈴蘭ちゃんに、和泉ちゃんはにこにこ笑う。
「わかった。今日は和泉ちゃんにつき合うよ」
「僕、花梨の気持ちなんて、ぜんぜん気づいてあげられなくて」
「何があったんだ?」
「恩に着るわ。ありがと」
彼女の夢ひとつで、どうこうなるようなものじゃない…そう思いたい。
「…僕のほうが、弓道が上手いからっていうの? だったら…」
僕は、あるじ不在の部屋に誰もいるはずがないと決めつけ、ノックもなしに扉を開いてしまった。
海からの風に髪を押さえてたたずむ牧野さんの姿があった。
いや…でも、大変なことになっていたからなぁ。
照れくさい。
『頑張れ、透矢!』
アリスから話を聞くことは、もう二度とできないだろう。
「盆の行事だ。船に供え物を乗せて、先祖の霊を見送る」
「…いや、そうかもしれないね」
「申しわけありません。ですけど…こうしなければ、透矢さんを巻き込んでしまいます…」
「とりあえず、ふたりの所に」
「ふたり分?」
一時間も歩いただろうか。
「うん…私も、痛いけど…痛いのに…っ」
『こんなところで、何、やってるの?』
彼女は意外にすんなりと引き下がってくれた。
「して、いいわよ」
「僕で力になれることは?」
だから、これでいいのかもしれない…
「っふ…くすぐったいよぉ…」
まだ、夢でも見てるのか、僕は。
なにしろ、すべての授業が一ヶ月は遅れてしまったわけで…なかなかに辛い。
「透矢さん! おはようございます」
花梨は、僕の眉間に人差し指を置き、目を細めて笑った。
と、腰の砕けそうな声に目をやると、花梨と和泉ちゃんがじゃれ合っていた。
「わんっ、わぅん!」
「お姉ちゃん」
背後で、拳の持ち上がる気配がした。
「ごめん、大丈夫?」
「ん〜」
「…体が覚えてたんじゃない?」
牧野さんの扱いを見ていれば、なんとなくわかる。
「大丈夫だと思うわよ。知性って、どうしてもにじみ出るものだから…ぁ〜ぁ」
「ゆ、雪さぁん…」
「んー、お願い」
危ないと思った時には、器用に体を正面に保ったまま、和泉ちゃんの体が宙を舞っていた。
「だからって…」
心にぽっかり穴が空いたような、そんな気分だった。
雪さんにお茶でもいれてもらいたかったけど、彼女の姿はない。
みんなの言いたいことは、わかっているんだ。
花梨が体を強ばらせるのがわかった。
「ひぅ…ごめんなさぁい…」
射精が完全に収まるのを待ち、僕は、彼女の中から自分のものを引き抜いた。
「ごめん、急いでるんだ」
ゆっくり、力をためこむようにして、花梨が手を離す。
(ええと…)
まるで、世界に、ふたりだけしかいないみたいに。
「あの時も、景色を眺めに?」
ママに撫でられる夢でも見ているのか、幸せそうな顔をしている。
「最低なこと、したよ」
「っ、っぁ、はぁぁ」
「大声で言わないの…もう少し品を持ちなさい、品を」
だけど、父さんまで似たような場所を見たとなると…話は変わってくる。
「舐めるっていうこと?」
そう言うと、向こうのほうから切ってしまった。
廃校舎…あそこが始まりだったから、調べていない。
和泉ちゃんの目から、ポロポロと、涙があふれた。
どうして、一緒に探すという和泉ちゃんの申し出をことわってしまったのか…。
「透矢ちゃーん、たこ焼きー」
別に答えを期待していたわけじゃないのか、アリスは一拍置いただけで、すぐに続ける。
「いや、あのね、雪さんの声は聞こえたんだけど、意識は夢から出られないというか…」
なんだ、今のは?
「和泉さんは、那波と一緒で、読書がお好きでしたから…」
「さきほど、花梨さんのお父様から連絡がありまして…」
だけど…なんだろう…
こんな小さい子に頑張ってもらうばかりなのも情けない。
自分の気持ちに自信がもてないのは、僕が、僕である自信がないってことだ。
「ぶべっ!」
きょろきょろ――だけど、境内はというと例によって閑散としていた。
「わたくしは、一日だけですわ」
「幸せでした。今日という日は、人生最良の日」
「お願い。私は…してほしいよ…」
開発は、自然環境の破壊、文化や風習の変容や消失を急速にうながした。
「じ、自分で脱ぐ…」
「連れていってあげて良かった…」
「走馬燈のようにってやつだね」
「…いや。花梨、これから祭りの準備なんだろう? 行けよ」
「こちらにも」
言いながら、また、あおぎ始めた。
「野郎の面倒見るのはごめんでーす」
「帰ろう、雪さん」
彼女はどう見たって僕と同年代――あれは、そう、牧野那波さんじゃないのか?
「…いいの?」
背中から声がかかった。
今はそうしなければならない。
そして、人影までも…
だけどいいんだ、たとえ嘘でも幻でも、これはおとぎの話、
「それはないよ。…じゃ、また今度ね」
「か弱い女の子ふたりだけで山登りしろって言うの?」
「和泉ちゃん…駄目だよ、走ると転んじゃうから」
僕は、再び胸に手をやった。
♪ ∧,_∧
(´・ω・`) ))
(( ( つ ヽ、 ♪
〉 とノ )))
(__ノ^(_)
「さすがだな。よく分析してんぜ…悪いけど、そうだよ。ただ…」
「はぁ。先住民だと何か都合が悪いの?」
「…一センチだけ」
「夢と同じなら、会えませんわ」
「ん、いいよ」
『…ふたりとも…大嫌い』
和泉ちゃんにはやっぱり笑顔でいてもらいたい。
雪さんが無邪気に笑った。
「ひ、卑怯者ぉ…」
この人も、撮られるのは嫌いなくせに、見るのは好きだっていうんだから、けっこうずるい。
素直な子って、いい。
「…知ってたよ」
あの集落に、迷い込んだ時からか。
「その言い方だと、ひょっとして、キツネの部分は本当?」
庄一、花梨、僕と、和泉ちゃんの視線が移動した。
「あれが、巫女と呼ばれるものたちが垣間見ている世界…」
「こいつはぁ。じゃあ、また騒ぎだす前に行くわ」
「花梨のお尻、好きなんだけどな」
「どうしてさ? 庄一、なんか、花梨に冷たくない?」
明日っていうのは、そんな日常。
「…はぁぁぁ」
生まれのために、っていうのは、いったいなんだ?
「駄目だよ。遊び相手にはなるから、今日くらい休んでおこう。退院したばっかりなんだから」
「図星…っと、あらら?」
いきなり、花梨のお尻と遭遇してしまった。
「…お互い、そういったことを望んでいるのかもしれませんわ」
そこまで言わせて、ようやく彼女の言いたかったことが理解できた。
僕は、雪さんに手間をかけさせる前に、台所へ出向いてしまうことにした。
「恥ずかしいこと、平気な顔で言うんだもん…」
「ちょっ、破けちゃ…う?」
「ぁ…っ…ぅぁ…」
「自分が死ぬ夢って多いと思うし、気にしすぎないほうがいいよ」
「うん。でも、それなら最初からつき合ってくれても良かったのに」
「もう一回、する?」
「だって、なんにも教えてないのに、真っ直ぐ点字本コーナーになんか来るし…」
852 :
スミレ(catv?):2009/06/13(土) 01:07:18.21 ID:DQaFR7Rb
流れがわからん
「そうかも。まあ、僕の誕生日なんて、すぐにわかることだよ。牧野さんは、欲しいもの考えておいてね」
「こういうことに、男も女もありません」
誰の価値観でもなく、僕がこの場で感じている気持ち。
「…ぞくぞく、します」
「っ…ぁ…ちょっ…とぉ…」
「確かに。首のあたりとかヒリヒリするかも」
「はい…おねがいします…」
花梨は自分の言葉を否定するように、胸の前につき出した両手を、ぶんぶんと振った。
「それより顔色が悪いよ。大丈夫?」
「おいしいです、とっても」
「キツネは?」
肩に体重がかかる、首すじを柔らかい髪がくすぐる。
「花梨ちゃんはだまっててよー! 頭がおバカなんだからー」
「…僕も、雪さんのこと…愛してる」
「いいっていいって。私だって風邪ひけば部活は休むし、それとおんなじ…にしたら失礼?」
敵の矢を何本受けても、七波は止まらなかった。
きのうの、祭りの後…具体的には舞のあたりから、明らかに様子がおかしい。
雪さんは、ためらいがちに応えて、僕の背に、完全に顔をうずめてしまった。
「透矢も、緊張してるんだ」
「これは、うん、本当にありがとう」
「あ、うん、透矢くんはそんな感じ。そのほうがいいよ」
庄一は、器用にほおづえをつき、あさっての方向を向いた。
「子供?」
てけてけ、がしっ――早々と捕獲されてしまった。
「はいはい、冗談ですよ。きのうごちそうになったばっかりだもんね」
「もう大丈夫よ。これは、私のエネルギーだけで起こした現象じゃないし」
今度は花梨。
息ひとつ乱していない和泉ちゃんが言うと、妙に説得力があってタチが悪い。
「たぶん。透矢くんと、一緒にいたみたいだし」
長い黒髪を風になびかせて、白い肌を夕陽に染め、憂いを含んだ表情で、はるか彼方を望んでいる。
風で玄関の戸が揺れているみたいだ。
恥ずかしそうに……うれしそうに?
885 :
ダイセノダマキ(北海道):2009/06/13(土) 01:07:18.96 ID:xs27Xhb7
またか
一年前の僕では、恐らく、マヨイガにはたどり着けなかった。
『だんな、さまぁ…っ…』
ぺちぺちと後頭部を叩かれる庄一の背中には、どことなく哀愁が漂っている。
「私は単なるつき添いだけど」
「うん。今日は、ぜったい最後までさせてあげるから、安心していいよ」
「確かに苦手なところもあるけど、花梨のことは好きだよ。いろいろ助けられてるし」
「でしたら、これは?」
「雪さんが寝坊なんて、めずらしいね…疲れてるんじゃないかな?」
「透矢くんのも、こんなに…」
「疲れてるみたいだし、いいんじゃない?どうせこの子は余裕あるんだもん」
幼い頃につかみ損ねた風船。
「幼なじみで恋人のこの私に、隠し事しようってほうが間違ってるよ。身も心も一つなんだからぁ」
「いいんですの。今あることを否定して、その先にこそ、おふたりの世界がある」
(落ちつけ――)
黙りこくっていた牧野さんが、とつぜん割って入ってきた。
「ごめんね。ええと、もうしない…とは、ちょっと言えないんだけど」
「…ぐすっ、おねぇちゃぁぁ〜ん」
僕には、肯定も否定もできなかった。
「はは…それじゃあ、アリスもマリアちゃんも、次は我慢しなくていいからね」
「違うの?」
良くわからなかったけど、なんだか放っておくこともできなくて、僕は、その手を撫でた。
ただ、やはり、それがなんなのかは、まるでわからなかった。
(撃つな!)
「そ、そうか…まあ、幸せならいいんだ、うん」
「和泉ちゃんは、俺の目の前にいる、おまえのことが好きだったんだ。少しは自覚しろよ」
911 :
クサノオウ(岐阜県):2009/06/13(土) 01:07:19.32 ID:9kN9EViv
勝負
「あは、おねえちゃん照れてるー。きのうお風呂で言ってたじゃない、透矢さんのこと…」
「いっっっ!」
「ごめん。今、雪さんが体調を崩していてね…それでちょっと」
「私はマリアみたいにガキじゃないんだから、こんなの…」
「…違う、の?」
「ですけど、同じ顔をされるんですもの」
まただ…世界が波打つように揺れる。
にこーっと目を細めて、牧野さんが頭を下げる。
「…そうよね。誰かがキツネ憑きになったなんて、言ってないもん」
こうなると、こっちも意地だ。
ぎょっとして顔を上げると、ちょうど、こちらに向き直った彼女と目が合った。
自分はいったいどんな人間で、彼女が存在するとしたらどんな関係なんだろう?
「あ、うん…悪いね」
「ん? 待って。じゃあ、花梨はどうしてキスが上手いとか下手とかわかるのさ」
誘っておいて、置いてけぼりとはひどい話だ。
――おどろかないでくださいね。
僕にはもう、彼女にかけてあげる言葉が残っていなかった…
「あのね、僕はここの学生なんだから」
「なんだ、いいタイミングだな」
「わかった。ごちそうになるよ」
「じゃあ…今日はこの辺で」
「ねえ、キミは…」
「あのあのっ、信じられないと思いますけど…おねえちゃん、嘘は言っていませんから」
そのまま、彼女の割れ目をなぞるようにして愛撫する。
どういうつき合い方をしてるんだ、この兄妹は。
きつく、きつく――せめて、彼女がこれ以上、冷たい想いをしなくていいように。
「牧野さん、どうしたの、大丈夫?」
「そういう事でいいんだと思うよ」
「僕が、雪さんに、もっと優しくしてあげたいんだ」
触れられることが、自分の存在の証明につながるからじゃないかって思う。
「そーいうこと、わかってきたじゃない」
「鈴蘭さんなんですけど、雪のほうでお預かりしてもよろしいですか?」
『わからないわよ。この奥には人体実験の犠牲になった人間たちが…』
「花梨、その辺にしとけよ。しつこい女は嫌われるぜ」
でも、苦しんでいるのは、僕だけじゃなかった。
その拍子に、束ねた髪の先が僕の顔をなでる。
要請通り、花梨の家の蔵とやらを調べることになったはいいけど、
大丈夫だ。
僕は、花梨の手を取った。
暗闇の向こうから現れたのは、
(どこかから、流れてきている?)
いやいや、と首を振るアリス。
僕が腰を下ろしたこともあったんだろうか。
「…じゃあ、お互いさまっていうことで」
(まあ…仕方ないか)
和泉ちゃんは、何も言わない代わりに不満そうな顔をした。
『え…?』
異常なことなのかもしれない。
驚いたようにこちらを振り向いている。
「ここは、気持ち良くないんだ?」
「牧野、さん?」
照れ笑いを、持ち上げたスカートのすそに埋めながらうなずく。
「ここまで聞いても思い出せないから、僕はあまり気にしてなかったのかもしれないね…ごめん」
幼さすら感じさせる彼女のそこは、だけど、尿と愛液にまみれびしょぬれになっていた。
「でも、いい天気になって良かったね」
夜に、なってしまったのか。
「あ、そうだ、アルバム!」
「ホントに、離れちゃ嫌ですよ?」
「わはー、透矢ちゃーん!」
「むー、わかってるけどさ、そんなあっさり否定しなくてもいいのに。なんか感じ悪いのー」
(花梨…だよなぁ)
「遊んだ遊んだ。たまにはこういうのもいいよね」
(だけど、僕はもう――)
花梨は、ぶんぶんと手を振りながら病室を出ていった。
「ですけど、時間なんてアテにならないものですわ」
「頭のてっぺんからつま先まで、舐めるような視線を感じたんですけど」
寝ぼけている時では、ないのだ。
そして、お互いの顔を再び舐め始めた。
「あ、鈴蘭ちゃん、前っ!」
それどころか、他はなにひとつ思い出せないまま、今日、検査の日を迎えてしまった。
「思いきり息を吸っておいて。途中で大変なところがあるけど、そこを抜ければ、あとは…」
「何か気になる? あいさつしなかったのは、忘れてただけだと思うんだ。許してあげてくれないかな?」
「もうちょっと、待ってね」
不思議な子だな。
「花梨ちゃんは大丈夫なのかな…お祭り、もうすぐなのに」
「…庄一は、きっと、僕の妄想か何かだと思ってるんだよね?」
でも、ここからなら僕の声も届くかな?
「手だよ。起きてから、ずっと手をさすってるじゃない。夢を見たって言う時はいつもそう」
「違うってば。雪さんは川に出てからあそこにつくまでのこと、覚えていないんでしょう?」
「もう…また練習したほうが良いかもしれませんね」
「うん…思いきって、良かったかも…」
「夢を見ていますわ」
絵になるな、と思った。
と、今度は笛の音が聞こえてきた。
花梨なんて、ろこつにムッとした顔をしている。
「そうだね…人間と同じだ」
彼女はにっこり笑い、ご主人様の言うことも聞かず、せっせと手を動かし続ける。
急速に、意識が薄れていくのが感じられた。
「はは、固そうで柔らかいっていうのは、そうかも」
1001 :
1001: