インサイダー取引を行ったとして、金融商品取引法違反に問われた横浜市中区、会社役員加藤(本名・金)次成被告(67)の判決で、
横浜地裁の朝山芳史裁判長は、共犯に問われた元SMBC日興証券執行役員の吉岡宏芳被告(51)との共謀を認定せず、検察側の構図を明確に否定した。
現状のままでは、吉岡被告に無罪判決が言い渡される公算が大きく、検察側は窮地に立たされた格好だ。
吉岡被告が加藤被告に情報提供を続けた背景について、
検察側は公判で、吉岡被告が仲介した融資の焦げ付きで加藤被告に損失を与えた穴埋めや、
今後も融資を引き出す目的があったなどと指摘。吉岡被告は株取引の利益を受け取っていないものの、
「経済的な共存共栄関係を維持し、保身を図るなどの利益・動機が存在した」と主張していた。
朝山裁判長は、判決でそうした検察側の主張をほぼ認めた一方、
「吉岡被告には、株取引で経済的利益を得ようとする直接的動機が欠けている」と指摘。
株取引は「加藤被告が提供された情報を取捨選択し、自らの判断で行っていた」と認定し、吉岡被告が共謀したとする構図を否定した。
金融庁の金融審議会委員を務める田島優子弁護士は判決について、
「情報提供者を共犯として認定するには、情報提供者が得た利得の内容を具体的に立証する必要がある。
検察側の見込みが甘かったと言わざるを得ない」と指摘。
吉岡被告の弁護人を務める佐藤博史弁護士も「検察が吉岡被告を有罪に持ち込めないのは明らかで、公訴の取り消しを求めていきたい」と話した。
現行の金融商品取引法では、情報を漏らす行為自体は罰則の対象外で、
大手証券会社から企業の内部情報が漏れてインサイダー取引が相次ぐなど問題が起きている。
そのため、金融庁はインサイダー取引をさせる目的で情報を漏らし、不正取引が実際に起きた場合を罰則の対象に加える規制強化策を盛り込んだ同法改正案を通常国会に提出する方針だ。
(2013年3月1日08時55分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130301-OYT1T00090.htm