インサイダー取引:日興証券事件 

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毎日新聞 2013年03月01日 地方版

 ◇立証の不十分さ指摘
 SMBC日興証券(旧日興コーディアル証券)が担当した株式公開買い付け(TOB)を巡るインサイダー取引事件で、
金融商品取引法違反に問われた会社役員、加藤=本名・金=次成被告(67)に対する横浜地裁(朝山芳史裁判長)の28日の判決は、
加藤被告に未公表のTOB情報を漏らしたとして起訴されている同証券元執行役員、吉岡宏芳被告(51)との共謀を認めなかった。
検察側が描いた構図を否定しており、吉岡被告の公判への影響は避けられない。【飯田憲】

 同法はTOB情報を立場上知った「公開買い付け等関係者」と、
その人から情報を聞いた「第1次情報受領者」が公表前に該当株を売買することを禁じる。
「公開買い付け等関係者」が情報を漏らす行為自体は処罰対象にならない。

 検察側は、TOB情報を知る立場にあった吉岡被告が、
紹介した融資の焦げ付きで損害を与えた加藤被告に常習的に情報提供していたとして、
「公開買い付け等関係者」が株売買者と共謀しインサイダー取引をしたとの構図を描いた。

 しかし、判決は吉岡被告について「株取引で重要な役割を果たしていない」と認定した。
朝山裁判長は共謀関係を必要としない起訴内容への変更を検察側に勧告しており、その通りの判断となった。
検察側は、「第1次情報受領者」の加藤被告による事件との構図を追加する一方で、
従来の主張も維持したが、判決で立証の不十分さを指摘された。

 さらに判決は「吉岡被告には一連の取引で経済的利益を得ようとした直接的動機が欠けている」と言及した。
吉岡被告は公判前整理手続き中だが、公判は同じ朝山裁判長が担当する。このまま加藤被告の判決が確定すれば、従来の起訴内容では有罪認定は難しくなる。吉岡被告側は不正取引自体を否認しているため、検察側の立証のハードルが高まるのは必至だ。

 吉岡被告の弁護人は起訴の取り消しを求めているが、地検幹部は「取り消しはありえない。
控訴や吉岡被告の訴因変更も含め、上級庁と判決文を精査して対応を決めたい」としている。
http://mainichi.jp/area/kanagawa/news/20130301ddlk14040226000c.html