可憐のこの言葉に野梨子は途切れていた言葉を取り戻した。
「私、清四郎にも魅録にも甘えきっていたんですわ」
互いの心臓の音が聞こえそうなくらい、辺りは静まり返っていた。
野梨子の声はかすかに震えてはいたが、そこには確かな野梨子の意思が
備わっている。ゆっくりと魅録の目を見つめて再び口を開く。
「清四郎は私にとって大切な人です」
その言葉に魅録はいたたまれなくなって反射的に耳を塞ごうとした。
清四郎の名が出たことで今までの関係に何らかの決着が着いてしまう。それを恐れた。
「魅録!最後まで聞いてください、お願い」
野梨子は魅録の塞いだ手をゆっくりと自分の方に引き寄せた。
「私裕也さんを訪ねて金沢に出掛けた時、ずっとどきどきしっぱなしでしたの」
野梨子が魅録を自分のほうに引き寄せた為二人の距離はずっと近い。
魅録は野梨子の瞳に映る自分を見ていた。
「魅録と二人きりでいられるのが嬉しかったんです」
野梨子は嘘偽りのない感情を魅録にぶつけるよう覚悟を決めた。
「魅録が金沢行きを提案してくれた時点で、私の裕也さんに対する想いはすでに
いい思い出に昇華していました。でも私、本当のことが言い出せなかったんですの」
野梨子は魅録の手を被ったままにしていた。そうしていると一層勇気が出せる気がした。
「野梨子・・・」
何か言いかける魅録を制して野梨子が続ける。
「私、魅録といると胸が苦しくって苦しくって、でも清四郎にも本当の事が
言えなくて。・・・それ程私にとって魅録は特別な人ですの」
野梨子がしっかりと魅録の瞳を見据えて言った。
「私はあなたが好きです」
いたたまれなくなって野梨子に告白させてしまいました
中途半端でスマソ
>ホロ苦
>「あなたが好きです」
キタ━━━━━━\(゚∀゚)/━━━━━━ !!!!!
野梨子の告白、読んでてドキドキしますた。
作者さま、進めてくれてありがとう。
>ホロ苦い青春編 魅×野
キターッ!いよいよクライマックス!?
野梨子の告白にモエモ~
<暴走愛>うpします。
まっ逆さまに暗くなってきました。
ダーク&Rなので苦手な方、お子さまはスルーお願いします。
>>681 よく晴れた朝、剣菱家の若夫婦付きの運転手、小輪は寒さに身をすくめながらも
ぴかぴかに磨き上げたロールスロイスの艶に満足していた。
黒い鏡面に映る自分の顔を見ながら、煙草に火をつける。
寒さに震えながら白煙を吐き出し顔を上げると、落ち着いたサーモンピンクの
ワンピースに灰色の高価そうなコートを手にした若奥様がメイドに見送られ
車の前に立っている。あわてて煙草を携帯灰皿で揉み消した。
「失礼しました。おはようございます、可憐さま」
おはよう、と優しく微笑む可憐は少し眠そうだった。
「小輪が磨いた車は乗るのが勿体無い位、ぴかぴかね。うれしいわ」
褒め言葉に小輪の耳が赤くなる。そこへ豊作も出て来て、車に乗り込む。
「おはようございます、豊作さま。今朝は剣菱電工の新社屋でよろしいですね」
「ああ」
新妻の横に乗り込んだ豊作は可憐の衣装を褒めると、ワープロ文書を取り出した。
「今日の新社屋完成披露パーティーで、祝辞を言わなければならないんだ。」
「大変ね」と可憐が労うと、豊作は苦笑して、親父の代理も大変だよとこぼした。
案内されたパーティー会場は、普段は大会議室らしかった。
会場へ足を踏み入れた二人、いや特に豊作は、いつもと違う雰囲気を感じた。
財閥の会長であり、電工の名誉理事である万作の、代理である自分が顔を出せば
たちまちワッとお偉方に取り囲まれるのが常であった。
ところが、今日は先に出来ていた人垣から、一向にこちらに人が寄って来ないのだ。
豊作の顔が強ばったのに可憐は気づいた。
人垣の中心になっている二人がこちらに気づいたようだ。
「にーちゃん!」
サイケデリックな色彩が渦を巻いたようなファッションの悠理が無邪気に手を振って
いる。その後ろにスラリとスーツを着こなした清四郎が、部長達を従え、悠然と
立っていた。
可憐は頬が引きつるのを感じながら、無理矢理笑顔を作り、悠理に手を振り返す。
二つのカップルを比べてみれば、圧倒的に悠理達に華があった。
可憐は笑みを浮かべながら、豊作を引っ張り悠理に近づく。
彼女に近づいて、せめて会場の華の一部になろうとした。
やがて剣菱電工の社長の挨拶が終わり、乾杯の声がかかる。
しばらく歓談の時間があった後、司会者が壇上に上がる。
きっと来賓から祝辞をもらおうとするに違いない。
豊作はグラスを置きかけた。
『……それでは菊正宗清四郎さん、こちらへお願いします!』
可憐は持っていた皿を取り落としそうになった。
あわてて豊作を見ると、彼の顔は青いのを通り越して土気色になっていた。
壇上では清四郎が、社長と週末ゴルフに行った話を交え、ユーモアたっぷりな
祝辞を披露している。会場のあちこちから笑い声があがった。
男性陣はこの若い男を感心したように眺め、奥様方は小声ではしゃぎながら
お互いに突つき合って、若くハンサムな弁士をうっとりと見つめていた。
会場の注目を一身に浴びている清四郎に、可憐は唇を噛み締めた。
なぜ、なぜ清四郎が先に挨拶するの? お義父さまの代理で来ているのは豊作さん
なのに……
割れんばかりの拍手に送られて清四郎が壇を降りた後、つけたしのように豊作の名前が
呼ばれる。豊作は取りあえず余裕の顔を作ったものの、頭の中は真っ白になっていた。
用意したコメントも肝心の部分でつっかえて、会場に白けた雰囲気が漂う。
清四郎と比較され、笑われているのが豊作には痛い程わかった。
豊作は心の中で、父・万作を呪った。
なぜだ、なぜ僕にこんな仕打ちを!? お父さん……!
帰りの車中で豊作はずっと黙りこくったまま、頭を抱えていた。
可憐は豊作の気持ちを思うと、どんな慰めの言葉も気休めにしか聞こえないような
気がして、黙って彼の手を握りしめていた。
運転席では二人のただならない様子が気になるのか、時々小輪がミラー越しにこちらを
伺うのがわかった。心配そうな声で病院に向かいましょうか、と聞いてくる。
豊作は手を振って、いい、というジェスチャーをした後、可憐の肩にもたれてきた。
「父さんは、清四郎くんに剣菱の後を継がそうとしているのかもしれない」
可憐は全身に冷たい水を浴びせられた気がした。
「彼が来てから、ずっと感じていたことなんだ。この剣菱の中で少しずつ少しずつ
彼の発言権が増して来ている。僕の力は、その度に少しずつ少しずつ取り上げられて
いってるんだ。今日のことがあって、わかった。父さんは、剣菱万作は僕を後継者に
する気はない」
「そんな……。豊作さんの考え過ぎよ」
と言いながら、可憐は小輪が気になった。こんな重大な話を他人がいるところでして
いいものだろうか。豊作は力なく笑う。
「小輪は大丈夫だよ。車内でのことは彼ら運転手は一切『見てない』んだ。名輪の
息子だから、その辺はしっかり仕込まれてるよ。なっ、小輪?」
ミラー越しに小輪は黙って目線で頷く。
眼鏡をはずして豊作は疲れたように目を押さえる。
「期待されてないとは思っていたが、まさか10も年下の若造に脅かされるとはな。
身内だと思って甘く見てた」
「だって、そんなはずはないわよ。清四郎は剣菱に籍を入れてないし、悠理だって
豊作さんを差し置いて、なんて考えてるはずないわ。だってお兄さんですもの。
お義父さまだって、お義母さまだって可愛い豊作さんを見捨てるわけないわ」
可愛い、という言葉に豊作は苦笑いする。
「可愛い……か。僕達に子どもでもできたら、孫可愛さに考え直してくれるかも
しれないね」
豊作は少し元気を取り戻したかのように見えた。
可憐は胸がいっぱいになって、豊作の手を握りしめる。
「そうよ! 心配することないわ。元気出して豊作さん!」
「可憐……」
初めて豊作は「ちゃん」をつけずに妻の名を呼ぶ。
優しい彼女の笑顔に言葉がつまり、妻を抱き寄せた。
強く抱擁されながら、可憐は豊作の耳元で「大丈夫、大丈夫」と囁く。
豊作には天使の声に聞こえた。
突然、豊作の中で堰が切れた。
可憐は呆然として、年上の夫が、いつも大人で紳士然として振舞う夫が、溢れる涙を
堪え切れず、声を上げて泣くのを見つめた。
「……豊作さん、」
その声に弾かれたように豊作は可憐をシートに押し倒した。
妻の唇に激しくキスをしながら、彼女の体をまさぐる。
豊作が何をしようとしているのかに気がついて、可憐が驚愕した。
「や、やめ……豊作さ」
「小輪、そのまま走り続けろ」
豊作はそう命令すると、後部座席のカーテンを引き、運転席と後部座席の境の窓も
ピシャリと閉める。
「やめて、豊作さん!嫌よ、こんなところで!」
必死の可憐の哀願も豊作には届かない。
「可憐……お前だけだよ、側にいてくれるのは、可憐……」
ワンピースが裂ける音がして、乳房が露出する。
思いきり乳首を吸われて、可憐はうっと喘いだ。
小輪は運転に集中しようとしていた。しかし、思わずバックミラーに目をやると、
豊作が美しく白い太腿から下着を剥ぎ取るところだった。
小輪は危うく赤信号の交差点に突っ込みそうになった。
豊作は可憐の膝を彼女の口元まで折り曲げ、その膝を自らの両手で押さえつけている。
上半身はワイシャツのまま、ズボンをずらし、自分の悲しみを
美しい天使の体内に叩きつけていた。
可憐は彼の激情にあえぎながら、豊作が何度も
「愛してるんだ、可憐、愛してる……」
囁くのを聞いて、目をつぶった。
豊作の悲しみも可憐の悲しみも知らず、
車内には、ただ、二人の肉体が擦れ合う、淫猥きわまりない音が響いていた。
続く
>>622の続きです
「それでは御式は21日という事で」
清四郎が結婚を承諾してからというもの
すっかり機嫌が良くなった兼六夫人がいそいそと事を切り出す。
「はぁ?」
清四郎の母が、間の抜けた返事を返す。意味がわからない。
「御心配いりませんのよ、1週間もあれば東西一の結婚式の準備が出来ますから」
「あ、あの・・・21日ってもしかして今月の――」
清四郎の母は青ざめながら聞き返す。彼女はこの場の急すぎる展開についていけていない。
「ええ、ちょうど大安ですし、土曜日ですから御式には都合が良いかと」
スラスラと暦や曜日が出る所を見ると、予めこの日を予定していたと思われる。
「僕はそれでかまいません、よろしくお願いします」
清四郎はまるで事務処理のごとく、淡々と話す。
「ねぇ、清四郎さん」
綾香が甘ったるい声を出す。
「今、清四郎さんが通ってらっしゃる学校とうちではかなり距離がありますわ。
うちに来て頂く事になれば、きっと通学が不便になると思いますの」
綾香はちらちらと野梨子を意識しながら話している。
「思い切ってうちの近くの高校に転校して頂いた方が良いと思いますわ」
清四郎はほんの数秒考えていたが、やはり先程と同じく淡々と答えた。
「それではお言葉に甘えて、そうさせて頂きます」
「おまえ!何考えとるんだ!!」
台を叩く大きい音と共に、ついに今まで黙っていた修平が怒り出した。
「そうだよ清四郎!それがどういう事だかわかって言ってるの?
野梨子だけじゃない、僕らとも離れる事になるんだよ!」
美童は必死になっている。こんな事で清四郎と離れたくは無い。
「後々の事や、利便性を考えると――」
「りべんもせんべいもねぇ!!」
清四郎の言葉を、激昂した悠理が遮る。
「お母様」
綾香は自分の母親に眉根を寄せながら話し掛ける。
「こんな害虫の溜まり場みたいな所に、清四郎さんを置いておくのは忍びないですわ」
まるで汚物でも見るかのごとき顔で悠理を睨む。
「早速、明後日の月曜日からうちに来て頂きましょうよ。
その日にプレジデントの退学の手続きと新しい学校の転入手続きも行って。
そうすれば次の日からスムーズにうちから新しい学校へ通えますわ」
「ちょっと待ってよ!じゃあプレジデントにはもう1日も来れないって事になるじゃないか!」
美童が激しく抗議するも、どんどん綾香のペースに陥る。清四郎が同意する分、速度は速い。
「月曜に退学届を出す時に行きますよ」
清四郎の口から、何とも淋しい答えが返ってくる。
「清四郎!!」
いきなり名を呼び、パァンと強烈な張り手の音が響く。
「うわっ!」
美童が両手で目を覆う――。見ている方が痛くなりそうな強烈な平手打ちだ。
「――話にならないわ」
和子は清四郎の頬を叩き、それ以上は何も言わず黙って部屋を後にした。
こんな事が、現実にあるのだろうか?
野梨子には信じられない――。
『例え綾香さんと結婚しなくても、野梨子とは結婚出来ませんし、付き合う事も出来ません』
それは謎多き清四郎の言動を、野梨子の頭の中で全て解明させるのに充分なセリフだった。
もし野梨子の推測が当たっていれば、清四郎は大きな思い違いをしている事になる。
こんな馬鹿げた話は、ここにいる誰に話してもきっとわかってもらえない。
野梨子自身でさえ、清四郎のその心情を読み取ることは出来ても、理解も納得も出来はしない。
それは感情より脳が先に働く、清四郎自身にしか判らない気持ちだろう。
「清四郎」
誤解は解けないかもしれない、だけど何もしないよりはずっと良い。
「貴方を愛しています」
上手く伝わると良いが――。
「貴方が誰と結婚しても、わたくしの事を愛してなくても――例え」
こんな悲しい思い違いは、あってはいけない。
「――もう一生、逢えなくても」
まるで切り取られた絵のように、2人の間にだけ、甘いとも切ないとも言えない空気が流れる。
「自分の心を、もう一度見つめ直す事です。
野梨子、真実は君の心の中にある――」
悲しいかな、やはり野梨子の予想した通りの答えが返ってくる。誤解は解けていない。
「てめえはノストラダムスか!!」
予言めいた清四郎の謎の言葉に、悠理が苛立ちを露わにする。
「僕は綾香さんと結婚します」
改めて言われても、野梨子は取り乱したりはしなかった。
「かまいませんわ」
自分の心は決まっている。
「それでも、わたくしが愛するのは貴方だけですわ。
今も、これからもずっと―――」
パンパンと、ゆっくりとした拍手が響き渡る――。
「素敵!素敵ですわ!!素晴らしいスタンドプレーでしてよ、野梨子さん。
白鹿流茶道家元のお嬢様は『男嫌い』でも、離れていく男を引き止めておく術は
よく御存知ですのね、どなたの御仕込みなのかしら?」
綾香が聞くに堪えないセリフを言う。
「でもごめんなさいね。清四郎さんが選んだのは私なの」
言葉とは裏腹に、心から嬉しそうな顔を隠しもしない。
「『かまいません』と言いましたわ」
大事なのは自分が清四郎を愛しているという気持ちだ。
何を失っても、それだけは見失ってはいけない。
「わたくしが本当に欲しいのは『清四郎の愛』
貴女が手に入れようとしているのは『清四郎』という名の虚像ですわ」
清四郎を除く全員が、野梨子と綾香のやり取りを息を呑んで見つめている。
「清四郎の意思を無視して横から無理矢理奪ったところで、喜びも幸せも感じませんわ」
綾香は『ふふん』と声が聞こえてきそうな顔をして、余裕を見せる。
「仕方ありませんわねぇ、言わせておいて差し上げますわ。負け犬は吠えるのが仕事ですもの」
「ぷっはー!!」
悠理が真っ赤な顔で、息を存分に吐き出す。
悠理は2人のやり取りを熱心に見つめる余り、息をするのを忘れていた。
「おい、清四郎!こっちを見ろ!!」
突然、隣にいた野梨子の肩をつかむ。
「いいか、よく聞け!野梨子はあたいが一生守る!!」
悠理は清四郎に本気で腹を立てていた。
このお見合いを壊すために、悠理は走り、可憐は考え、魅録も美童も奮闘した。
清四郎の家族や野梨子の母も、家を犠牲にする覚悟で清四郎を守ろうとした。
野梨子においては清四郎に告白して気まずくなっても尚
婚約者の振りを努め、清四郎の結婚宣言を聞いても『愛している』と健気な態度を見せる。
なのに清四郎自身は何もしていない。
やっと口を開いたかと思えば、自分達の苦労を端から崩す事ばかり言う。
清四郎が一体何を考えて結婚を承諾したかは判らないが、人の気持ちを無にするのも程がある。
悠理はつかんだ野梨子の肩をぐっと自分の方に引き寄せ、高らかに清四郎に言い放つ。
「おまえがその女と離婚して、後になって『やっぱり野梨子を返して下さい』
って土下座して謝っても、絶対返してやらないからな!!」
『肩を抱かれて、自分の事を「一生守る」と力強く宣言される』
プレジデントの悠理のファンの女の子なら、誰もが夢見るそんなシチュエーションを
惜しみなく野梨子に捧げる――。
「後悔しても遅いんだぞ!!」
悠理は清四郎の気持ちを野梨子に向けるために、頭の中に思いつく限りのセリフを並べてみる。
「じゃあよろしくお願いします」
清四郎からあっさり返事が返ってくる。
「あぁ?」
「悠理が野梨子を守ってくれるのなら安心です。思い残す事無く結婚できます」
不覚にも、清四郎を不安にさせるどころか、安心感を与えてしまう結果となった。
「お前――後押ししてどうするんだよ」
案の定、魅録から悲しい突っ込みが入る。
悠理の渾身の作戦はここに終了した――。
「とりあえず一旦帰ろうよ。何か変だよ、清四郎」
美童が可憐と魅録の間で囁く。
「そうだな」
魅録も頷く。これ以上自分達がここにいても、事態はきっと好転しない。
「おい、ちょっと待て!清四郎とあの女をボコボコにしてから―――」
魅録が悠理の口を手で塞ぎ、引きずって連れて行く。
「清四郎・・・」
可憐が搾り出すような声を出す――。
「せいしろうっっ!!」
怒鳴っても、清四郎はピクリとも動かない。話を聞いていないのかもしれない。
「野梨子は、野梨子はねぇ・・・」
所詮は負け犬の遠吠え、だがこれからの野梨子の気持ちを思うと言わずにはいられない。
「あんたの事を信じてたのよ――」
結局、可憐は誰も幸せには出来なかった。
「あんたが結婚を承諾する――最後のその瞬間まで」
この世に本当に神様がいるならば――。
今の可憐の願い事はただ一つ。
『玉の輿』も『運命の王子様』もいらない。
だから神様――。
――野梨子を助けて。
清四郎を――連れて行かないで。
9月13日 金曜日 先負
結婚式まで――あと8日。
本日はここまでです。
ありがとうございました。
>檻
最近この作品がうpされるのが楽しみになってます。
キャラがそれぞれ、らしくて、読んでいて面白い!
それまで黙ってた修平さんがとうとう怒鳴っちゃうあたりに、事の
異常さを感じました。
式まで時間がないけど、これからメンバーが阻止のためにどういう
行動をとるのかも楽しみ。清四郎の心情も気になります。
>ホロ苦
きゃーーーー!!!むねきゅん!!
でもまだまだ終わってほしくないなぁ。
>暴走愛
豊作さんを見てるといたたまれないです。
でも清四郎カッコイイ…
>檻
清四郎は何を考えているのでしょうか?
すごくキャラ立ちしてて、セリフ回しに
魅力を感じます。悠理の「一生守る」
すごく感動しました。
>694さんの続きです。
自分の耳に届いた言葉が信じられなかった。
ほんの数秒前まで、野梨子はただの友達としてしか自分のことを見ていないと思っていた。
一番近くで彼女を見守ってきた清四郎には敵わないと思っていた。
しかし、今、野梨子の目は魅録をしっかりと見つめている。
――信じられない。
心の中で繰り返す。
呆然とするというのは、こういう状態なのだろう。
黙りこくっている魅録の様子に不安を覚えたのか、
真っ直ぐに魅録を見据えていた野梨子の表情が揺らぎ始めていた。
自分はどうするべきなのだろうか。
魅録はぎゅっと目を瞑った。
目の奥に浮かぶのは、大切な仲間だった。
先ほど、自分と清四郎を心配そうに見つめていた可憐の表情。
野梨子のことで、あれほど不安定な様子を見せた清四郎。
悠理、美童――いつもその仲間達と共に過ごしてきた楽しい日々。
そこには微笑む野梨子の姿も必ずあった。
どちらも失いたくない。どちらかを選ぶなんて出来るようなもんじゃない。
だけど――野梨子のこの手を離したくない。
ゆっくりと目を開けた。
魅録の手は野梨子の手のひらに包まれたままだった。
ぎゅっとその手を握り返す。
野梨子の肩がびくっとした。そのまま野梨子を引き寄せながら、魅録は心を決めた。
「好きだ」
野梨子は先ほどの自分と同じように呆然としていたが、魅録はその顔に自分の顔を近づける。
初めての口づけは、甘いだけでなく、なんだかとても切なくて、魅録は少し胸が詰まる気がした。
どなたか続きお願いします。
>暴走愛
清四郎の悪役振りがイイ!
豊作さんが哀れ〜
可憐はやさしいなぁ。
これからどうなるのか、ドキドキしてます!
>暴走愛
豊作しっかりしろー!
原作で、結婚騒動の時にバルコニーで泣いてた彼を思い出しました。
豊作さんのことまであんまり深く考えて読んでなかったなかったけど、
実はこんな心境だったのかなぁと急に気の毒になってしまった・・・
>ホロ苦
ちゅーキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
でももう一波乱きぼんぬw
>檻
清四郎は一体何を勘違いしてるんだろう…早く知りたい!
それにしても皆さんも書いてらっしゃいますが、
面白杉。登場人物がイキイキしてて、行動も有閑らしくって
すごく楽しいです。早く続きが読みたいです。
>ホロ苦い青春編
魅×野ついに告白しましたね。だが、鬼畜な私はホロ苦い結末キボンヌ〜
>ホロ苦
付き合ってまだまだ波乱が欲しいところw
<暴走愛>うpします。
大人向け昼ドラ泥沼系なので、苦手な方、お子さまはスルーお願いします。
>>703 剣菱家のコンピュータルームに入ると、プリンタが音を立てて紙を吐き出していた。
目当ての人物がいないことに、なぜか可憐はほっとしつつ、何気なく印刷された
用紙を1枚手に取った。「剣菱グループ 再編案」とある。
「企業秘密ですよ、可憐。たとえ次期会長の奥様と言えども、お見せできません」
聞き慣れた男の声と共に、手の中の紙が取り上げられ、可憐は驚いて振向いた。
「……清四郎」
清四郎がコーヒーを片手に立っている。
「『義姉さん』。僕に何か御用ですか」
言いたい事を暗唱してきたのに、いざ威圧感漂う清四郎を前にすると、何も言葉が
出て来ない。
「悠理とはうまくいってるの?」
「わざわざ、そんなことを聞きに来たんですか。うまくいってますよ、最高に」
清四郎の言葉に含まれた棘に、胸がずきりとする。
「ねぇ、なんで悠理と結婚したの?……あたしへの当てつけ?」
「そうです」
サラリと肯定されて、可憐の心臓がバクバク言い始めた。
彼は一体何を考えているんだろう。
「嘘でしょ、そんな理由で結婚するなんて……悠理がかわいそうじゃない」
「彼女は願ったり適ったりで喜んでますよ。この先男とつきあう気もないのに、
いずれ縁談がセッティングされるのは目に見えてますからね。それなら、気のおけない
友人を旦那にする方が、赤の他人とセックスするよりいいと思ったんじゃないですか」
「やめてよ……二人とも変よ、そんな愛のない結婚するなんて……」
「不思議なもので」
清四郎はコーヒーをすすりながら淡々と答える。
「毎日肌を重ねていると、自然と愛が生まれるみたいですね。」
プリンタが吐き出した紙がトレイから溢れて床に舞い始める。
悠理が清四郎と寝ている。夫婦なら当たり前のことだ。
にも関わらず可憐は動揺している自分に、驚いた。
心のどこかでこの二人に限って「ない」と考えていたのだろうか。
清四郎は悠理と結婚しても、まだ自分を忘れられずにいるのではないか。
そんな虫のいいことを考えていた自分に気づき、泣きたくなる。
清四郎は皮肉な笑みを浮かべている。
「そちらこそどうなんですか、豊作さんとの体の相性は?
最近豊作さんはお疲れのようですね。可憐がおねだりし過ぎなんじゃないですか。
年なんですから少し労ってあげないと、この先持ちませんよ」
可憐は恥辱を受けて顔を赤くした。
「豊作さんはまだ34よ!自分が若いからって自惚れないでよ。
男はねぇ、30過ぎてからが勝負なんだから。清四郎もせいぜいやり過ぎないようにね」
「そうしますよ。悠理にまともにつき合ってたら身が持ちませんからね」
可憐は身をひるがえした。背中に清四郎の冷たい声が投げかけられる。
「帰るんですか?」
そうだ。わざわざ見たくない男に会いに来たのには用があったからなのだ。
「……清四郎、豊作さんをどう思う?」
意地の悪い笑みが清四郎の顔に浮かぶ。
「どうって……正直に言っていいんですか、パートナーの前で」
「どうぞ」
くっと笑い声がする。
「豊作さんは真面目で、責任感が強い。実直で、下にも上にも気を使う気さくで
人好きのする性格です」
思いがけない褒め言葉に可憐の顔がほころぶ。だが無情にも清四郎は後を続ける。
「……が、彼には圧倒的に経営センスというものが欠けている。剣菱万作に見られる
博打打ちのような決断力も、かと言って物事を冷静に見極める判断力にも乏しいと
言わざるをえません。肝心な場面、特にリストラなど人的問題には極めて逃げ腰で
自らの手を汚すのを避ける典型的なお坊っちゃん気質です。経営者には、時には冷徹で
毅然とした態度も要求されるのを彼はわかっていない……続けますか?」
首を振って目をふせた。
「もう、いいわ」
一呼吸おいて可憐は哀願するように言った。
「でも豊作さんは悪い人じゃないわ」
「そんなことはわかってます」
「これ以上、彼を悪い立場に追い込まないでほしいの」
「それは僕が決める問題じゃない、お義父さんの意向です」
「お義父さまの……?」
清四郎は可憐の手を取って、巨大なスクリーンの前の皮張りのチェアに座らせる。
背もたれが可憐の頭以上もある、それは非常に座り心地がよい。
「これは元々お義父さんが座る椅子です。そして、今は僕が座っている。
豊作さんに、ここに座る度胸があるかどうか、お義父さんは疑ってらっしゃるんです」
目の前に刻々と変わる剣菱グループの状況が映し出されている。
巨大グループの常として、剣菱グループも大きくなり過ぎたようだ。
屋台骨がしっかりとしているようでいて、徐々にどこかが軋み始めている。
思い切った改革が必要だった。
可憐は重大局面に立たされる豊作を思って、黙す。
悄然とする豊作の妻に容赦ない清四郎の声が飛んだ。
「失敗したと思ってるんじゃないですか、可憐? 豊作さんじゃなく、僕を選んで
おけば、今こんなに彼の処遇に奔走することもなかったかもしれないと」
可憐は美しい瞳で声の主をキッと睨んだ。
清四郎の瞳に気がついてドキンとする。
いつのまにか可憐の全身に清四郎の視線がからみついている。
清四郎は腰かけた可憐の前に膝まずく。
「……剣菱の後継者である剣菱豊作でなく、僕を選べばよかったんだ。
あんな頼りにならない男ではなく、医者を目指していた、この僕を。
そうすれば、こんなに惨めな思いをすることも、明日のことを考えて
眠れなくなることもなかったのに。そう考えているんじゃないですか」
「やめて……清四郎」
男の指が脚を登ってくる。足首から脛、膝、太腿、腰を撫でるように動く。
やがて可憐の両肩をつかみ、彼女の顔へ自分の顔を近づける。
可憐はじっと清四郎の顔を見据えた。
彼の息がかかりそうだ。
思わず瞳を閉じたその瞬間、ふいに彼は立ち上がった。
軽蔑の眼差しが可憐を射ぬく。
「義理の弟とはいえ男の前で目をつぶるのは軽率ですよ、お義姉さん」
清四郎は立ち上がると、コンピュータルームの扉を開け、うやうやしく廊下を
指し示す。可憐に帰れと促しているのだった。
「義兄さんにお伝えください。義理の弟が『義兄さんに期待してる』と
申しておりましたと」
可憐は立ち上がると清四郎には目もくれず、コンピュータルームを出ていった。
立ち去る可憐の後ろ姿を清四郎は見送ると、部屋に入ってドアを閉めた。
向こうからやって来た剣菱豊作が二人に気がついて足をとめ、妻の後ろ姿と
コンピュータルームに消えた男を見比べ、暗い瞳をした。
続く
>暴走愛
清四郎の悪漢ぶりが(・∀・)イイ!
豊作は二人の関係に気付いていそうですね。
可憐と清四郎がなぜ別れたのか、悠理と清四郎の
本当の仲は? など、気になることだらけです。
続きが楽しみ〜
>713さんのつづき。
抱きしめたまま、顔を見ないまま言う。背中に響く声。
「あっち行った時も、ずっと気にしてた。お前を傷つけちまったって、来なきゃ
よかったって思ったけど、でも」静かに息を吸い込んだ。
「裕也にお前をさらわれなくて良かった、って思った」
ギュッ よりいっそう強く、抱きしめる。
「あとあの電話」「!」「清四郎からの。出て欲しくなかった。何度も何度も鳴って、
けど出なくて、すげぇホッとした。嬉しかった」野梨子の瞳がひとまわり大きくなる。
胸の鼓動が、甘く高鳴ってくる。魅録に伝わってしまうかしら…
扉の向こうで、可憐は瞳を閉じた。2人は何をしているのだろう。
でも、入っていけない。自分の予感がそう告げている。
清四郎が、こちらを向いた。もう帰ろうと、瞳で促す。やわらかく微笑んだ。
彼に似合わない、気持ちがむき出しの表情。
(清四郎────!)
何も言えない。だけど、泣くことも出来ない。掠れた声で、やっと言う。
「…あんたはあんたの、やりたいようにやっていいのよ」「───」
「辛くなったら、あたしが─みんながいるって。ねっ」心がひりひりする。
─魅録はそっと体を離して、野梨子と瞳を合わせた。もう一度口付けて、そして抱きしめた。
「今日はすげー一日だったな」「…ええ」「何回病室出入りしたんだっていう(笑)」
つられて笑う野梨子の声が、鈴のように耳に届く。
「これから、何があっても。今日の事は絶対忘れない」「ええ。…私も」
長かった一日が終わる。夜だけが、彼らを見ている。
『これから、何があっても』─────
どなたか続きをお願いいたします。
一波乱起きてほしくてこんな感じにしてみました。
>ホロ苦
>『これから、何があっても』――――
2人がうまく行って嬉しいけれども、何かが起こるのを期待してしまいます。
それにしても、魅録の
>「何回病室出入りしたんだっていう(笑)」
私もそう思いながら、リレーを見守っておりました。
えーと、
清と野がいる病室へ魅が訪ねて来て、清退室。すぐに魅も出て行って、
その後、可が登場して、野のいる病室へ。
そこに清が再び登場。清と可が退室。野梨子がひとりぼっちで泣いていると、
最後に魅録が再来室…でいいんだよね。
みんな忙しいな(w
>ホロ苦
726さんの説明に激藁。
これでもう一波乱となると、もっと出入りの回数増えるね。
>ホロ苦
私も病室出入り解説、笑いますた。
今日はもういい加減帰りなさい、明日は学校だよ(だよね?)、学生さんがたw
って、私が看護婦ならそろそろ注意する罠。面会時間外だしw
>>728 > って、私が看護婦ならそろそろ注意する罠。面会時間外だしw
全く関係ないが「面会時間外」って言葉に萌えた!
「面会謝絶」もセクシー!(なんでだ)
Sway終了後に『清四郎の今後がちょっと気になってます』との感想をいただいて、
調子に乗って思いついてしまったのでうpします。時間のある方、読んでいってください。
「悠理、僕とデートしようよ」
放課後の生徒会室で、美童は、クッキーをぱくつく悠理に極上の笑顔で微笑んだ。
「な、何言ってんだ、お前!!」
微笑まれた悠理は驚きのあまり、手元のクッキーを床に落としてしまった。
それだけではない、その場にいた可憐は不必要に爪を切ってしまったし、野梨子は右手で
思わずカップを倒してしまい、僅かに残っていたコーヒーがテーブルに流れている。
清四郎だけが何事もなかったかのように新聞を読み続け、いささかの動揺も見せなかった。
「今日、どこかのカフェかレストランでもオープンするんですか?」
「違うよ。僕、結構本気なんだけどな。悠理、どう?」
美童は、清四郎の言葉をさらりと交わしてなおも続ける。
「僕ってさ、清四郎や魅録みたいに喧嘩強いわけじゃないから絶対悠理に手なんて
挙げないしさ、悠理が友達思いですっごく優しいのも知ってるし、そんでいっつも
明るくて素直で、でも時々泣き虫なのも知ってるしね」
その声は、きりっと引き締まるような感じこそないものの、しごく真面目なものに聞こえる。
「ねえ、美童、あんたに何があったって言うの?ここ最近、女の子に振られまくってるとか?
それとも、杏樹がもてまくってるのが気に入らないとか?」
ようやく気を取り直した可憐が、美童の顔を覗き込んで尋ねる。
同様に、不思議そうな面持ちをした野梨子が、可憐と美童を交互に見つめる。
美童はそのふたりに視線を返すことなく、窓の外をチラッと見て言った。
「悠理、ほら、車来てるよ」
悠理は慌てて椅子から立ち上がり、鞄を引っつかんでバタンと音をさせて出て行った。
続いて美童までがゆっくりと席を立って帰り支度を始める。
「それじゃ、僕も帰るから。バイバイ」
後には、呆気にとられた可憐と野梨子、何食わぬ顔で尚も新聞を読み続ける清四郎が残された。
「清四郎、何かご存知ですの?」
校門を出るか出ないかのところで、野梨子は隣を歩く清四郎に言った。
自分と可憐があんなに驚いていたのに、清四郎は眉ひとつ動かさなかったのだ。
「美童のことですか?僕は何も聞かされてませんよ。恐らく、魅録もそうだと思いますけど」
清四郎はあっさりと答えた。
見上げる野梨子の目に映ったその表情は嫌になるくらい変化がなく、何を考えているのやら
全くわからない。
「清四郎は気になりませんの?」
珍しくしつこく訊いてくる野梨子に、清四郎はその場に立ち止まって逆に尋ねる。
「野梨子は、どう気になっているんですか?」
「私は、…ただ、……美童がいつから悠理のことを想うようになったのかとか、
何かキッカケがあったのかとか、……いろいろとですわ!」
清四郎の真摯な眼差しに、野梨子はしどろもどろになってしまい、思わず怒鳴って
しまった。
倶楽部のメンバーのあれこれは、普段なら、学校の行き帰りに交わされる取り留めの
ない会話のひとつでしかないはずである。
なのに、今日に限って、ふたりの間の空気はどこかぎくしゃくとしていた。
「そんなこと、僕達が気にしても始まらないと思いますがね。なるようにしかならないと
思いますよ」
清四郎はそれだけ言うと、野梨子にニッコリと微笑み、止めていた足を再び動かし始めた。
その場に残された野梨子は、急いで清四郎の後を追う。
ひとりで歩く清四郎の速度は意外に速く、野梨子は少しの間走らなければならなかった。
「せ、清四郎、ちょっと速すぎますわ」
曲がり角のところでようやく追いついた野梨子は、そこで待っていたらしい清四郎に不満を
ぶつけた。
野梨子を見下ろす清四郎は、僅かにすまなさそうな表情をしている。
「すみませんでした。さあ、一緒に行きましょう」
清四郎は帰宅後自分の部屋に上がり、昨日手に入れたばかりの医学書を読もうとページを
繰り始めた。
それは、かなりの間欲しいと思っていた英文の医学書で、都内の本屋を片っ端から
探したものの見つからず、ネットオークションで競り落としてようやく届いたものである。
昨日の夜は夢中になって読んでいたので寝たのが午前3時になってしまったのに、
今は全然内容が頭に入ってこない。
清四郎は諦めて本を閉じ、ベッドの上に仰向けに寝転がった。
そのままボーっとしていると、野梨子の問いかけが頭の中に蘇ってくる。
「『清四郎は気になりませんの?』って、言われましても…」
知らず知らずのうちに、独り言が口からついて出てくる。
清四郎は確かに美童から何を聞かされたわけでもなかったが、美童の様子がちょっと以前と
違っていることには気がついていた。
まず、携帯を手にする回数が減っている。
以前の美童なら、生徒会室で、暇さえあれば携帯を片手にエンドレスとも言えるくらい
メールを打ち続けていた。
それから、『デート』という単語が美童のボキャブラリーからほとんど姿を消している。
これも以前の美童なら、今日は誰それちゃんとデートだとか、明日は何時からデート
だから付き合えないとか、昨日のデートはどうだっただとか、それこそ耳に蛸ができる
くらい聞かされたものだ。
最後に、これは魅録が清四郎にボソッと漏らしたことであるが、美童が明らかに悠理を
『見ている』のである。
最初聞いた時は我が耳が信じられず、魅録に向かって『ムンクの叫び』のような表情を
してしまったが、冷静になってよくよく観察してみると確かに見ている。
それにしても、と清四郎が不思議に思うのは、あの、鋭い可憐が全く気付いていなかったと
いうことである。
もともとこういうことに疎い野梨子と同じくらいキョトンとしていたのだ。
しかし、可憐と魅録の間の雰囲気が随分と柔らかくなっていることを考えると、
それも無理はないと思う。
自らの思いに一途な可憐は恐らく、美童どころの話ではなかったのだろう。
胸の奥に残る割り切れない何かが、清四郎にため息をひとつ、つかせていた。
続きます。
>sway番外
わーい、番外だ!今度は美×悠も入ってくるのかな。
本編の美童がいいヤツだったので幸せになれますように……ナムナム
>sway番外
わー、番外嬉しい!
残りの4人にも幸せを見つけて欲しい・・・。特に、清四郎。
しかし『ムンクの叫び』には激しく笑いました。
>Sway番外
超待ってた!!!うれしいなぁー。
『叫び』笑いました。あれって実は、『叫び』声が
恐ろしくて耳を塞いでいる絵なんだそうですよ。
野梨子スキーなので可愛い彼女が見られて嬉しい。
あの・・・ふと気付いたんですが、450KB超えているようです。
レス番号は950よりだいぶ前だけど、
>>4にあるように早めに次スレを立てたほうがいいのかな?
>736
へ〜、へ〜、へ〜・・・そうだったのね。
私はてっきり叫んでいる図だと思ってたよ。
>>737 > あの・・・ふと気付いたんですが、450KB超えているようです。
ほんとだ。専用ツールで見てたからわからんかった。
現在490KB超えてるが、実際どの位で即死なんだかわからんが
小説うpあったらやばいのかな。(←調べたが何KBで即死か今一つわからん)
結構連載など毎日うpあるし、早めに立てとこうか。
うわっ、今492KBだよ。
500KBになると書けなくなっちゃうから、
SSのウプは新スレまで待ってもらった方がいいと思う。
残り少ない資源を大切に使うために、ひとまず
ここに書くのはやめて、まゆこスレで相談しましょう。
>ALL