●趣味の部屋『塔矢愛好会』Part42○

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946名無し草:03/09/21 22:56
シャングリラキタ━━━(゜∀゜)━━━━!!
こみ上げる笑いを抑える事が出来ない兄貴がチト切ないな。
ヒカルの事になるとムキになるアキラたんハァハァ(;´Д`)
この後そのまま就寝するのか???!続き待ってる。

避難所にフランダースの犬ごっこ(改良バージョン)
キタ━━━(゜∀゜)━━━━!!
改めて大笑いした。ヤシーロが大きな体を丸めて犬の姿をしてるのかと
思うと、けなげでアキラたんでなくともご褒美をあげたくなる(w
947名無し草:03/09/21 23:10
>936
ただいまアキラたん。革で全身を包むアキラたんだよなきっと。カコエエ〜!!
シャングリラキタ━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━━━━━━━(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)━━━!!
兄貴は絶対にアキラたんを突き放せない。必ず負けちまうみたいだな。
ちさーい頃から面倒見てきたらそうだろうなあ。
読んでる俺だってアキラたんの痛々しい様子にギュウッとしたくなってるハァハァ(;´Д`)
しかしヒカルの拝金主義ってのはなんじゃらほい。やっぱ外道なのか?(w

948名無し草:03/09/21 23:11
小説キタ Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!
シャングリラ、詰めの甘い兄貴いいじゃねえか!身勝手な相手に翻弄されるのもまた楽し。
兄貴の膝に登って懐くアキラたん(;´Д`)ハァハァふわんふわんかわええ〜!
アキラたんにこんな風にスキンシップされたいぞ!
ライム絞りカルピスは美味そうだな。秋の夜長にアキラたんと飲みたい爽やか飲料(;´Д`)ハァハァ

フランダースのぱとヤシロ、アキラたんに大好きだよとか言われてるじゃね〜か!(;´Д`)ハァハァ
倒錯系ほのぼのエロ(;´Д`)ハァハァ犬が大好きなご主人様に大喜びでシッポ振って
むしゃぶりついてるようなぱとヤシロがかわええ!
前回はおあずけ状態だったが改良バージョンではぱとヤシロがご褒美もらえてよかったよ!
949名無し草:03/09/21 23:19
パトヤシロ読んだ━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━━━━━━━(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)━━━!!
ワロタ(w
このふたりのバカップルぶり微笑ましくも羨ましいハァハァ(;´Д`)
アキラたんのためならバカになれるよなハァハァ(;´Д`)
しかしパトヤシロ、よく耐えたなつД`)
950名無し草:03/09/21 23:25
ぱとヤシロ、よく読むとヤシロもお預けされてるが
アキラたんも1時間我慢してるんだな(;´Д`)ハァハァ
劣情に耐えてよく頑張った!感動した!

とりあえず新スレ勃ててくる(;´Д`)ハァハァ
951名無し草:03/09/21 23:29
952名無し草:03/09/22 01:19
   ┌─────――――┐
   │Bar. チチャーイやまねこ│
   └─────――――┘
それでは開店致します!!

   日 凸  ▽ ∇ U
    ≡≡≡≡≡≡≡  /|||||"||ヽ オキャクサン タクサン クルトイイナァ…
     U ∩ [] %..   |(*゚▽゚)||
   _________(つ)Uと)_
   ―――――――――――――

      ━┳━   ━┳━
      ̄ ┻  ̄ ̄ ̄┻ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(11)
「アキラくん!?」
緒方が慌ててアキラのパジャマの端を引っ張り引き留める。
今にも地面に達そうとしていたアキラの爪先がくるんと宙を掻き、軽い体が緒方の腕の中に
倒れこんできた。代わりに小さなススキが、縁側の向こうにパサリと落ちた。
「・・・お庭、行っちゃダメ?」
緒方の胴から膝の部分にかけて小さな頭と背中を凭せかけた体勢のまま、アキラはぽつりと
聞いた。いつ眠くなってもいいようにと夕方に風呂に入れられたその体からは、
清潔で甘い匂いがふんわりと漂ってくる。
「庭に、どうして行きたいんだ?」
「ン・・・もっと、お月さまの近くで見たい・・・」
いつまで経っても兎が出てきてくれないことが諦め切れないのだろう。アキラは空に浮かぶ
月から目を離さないまま答えた。
――近くと言っても、縁側と庭先でせいぜい数歩分しか距離は違わないだろうに。
緒方はアキラを縁側の縁にしっかり座らせると、自分は少し先に揃えてあった
大人用の庭履きサンダルをつっかけ、アキラに背を向けて低くしゃがみ込んだ。
「・・・なぁに?」
「なるべく近くで見たいんだろう?乗っていいぜ。・・・肩車だ」
傍らの地面に落ちていたススキを拾い上げ、後ろ手でアキラに渡した。

「わぁっ、すご・・・っく高いねぇ!」
「どうだ?肩車して、良かったろ」
「ウンッ!」
初めアキラは恥ずかしがってなかなか深く跨ろうとしなかったが、ぐらぐらと不安定な
肩上の恐怖に腹を決めたらしい。今ではパジャマに包まれた脚で緒方の首や肩をぴっちりと
息苦しいくらいに締め付け、緒方の頭につかまりながら器用にバランスを取っていた。
ずっと縁側に出ていたせいか、小さな裸足の足はすっかり冷たくなっている。
緒方はそれをアキラが驚いてバランスを崩さない程度にさりげなく、そっと掌に包み込んで温めた。
願わくは今夜、アキラがあの月の隈の秘密に気がついて、兎の夢を永遠に失ってしまうような
ことにならないようにと念じながら。
(12)
「そこからだとよく見えるか?」
「ンー・・・あんまり変わんない」
緒方はカクッとよろけそうになった。確かにその通りだろうが、子供は正直だ。
「あそこの枝は、さっきよりずっとよく見えるのになぁ・・・?どうして・・・」
納得がいかない様子で、アキラはとりわけ背の高い庭木の梢をススキで指差した。
「それは・・・あそこの木に比べて、月のほうがずっとアキラくんの遠くにあるからだよ」
「えー・・・?」
「月はあんまり遠くにあるから、人間がちょっとくらい背伸びしてもほとんど距離は
縮まらないんだ」
アキラは黙っている。まだ少し難しかったろうかと緒方は一瞬後悔した。
だが、アキラは緒方の髪を掴んでもしょもしょと手繰りながら考え考え言った。
「・・・夏休みにねぇ、お父さんとお母さんと、熱海のりょかんに遊びに行ったんだよ。
そしたらね、ボクはどんどん富士山に近づいてるはずなのに、富士山はなかなか大きく
ならなかったの。・・・それと一緒?」
緒方は大きく頷いた。
「そう、それと一緒だな。月は富士山より、もっと遠いからな」
「そう・・・だったら、うさぎちゃん遠過ぎて見えないのかもね」
「え?」
「だって、富士山に登ってる人がいても、下からは見えないでしょ?
・・・だから、お月さまのうさぎちゃんは、ボクには見えないんだねぇ・・・」
憧れて夢見るような口調でアキラは言った。
その言葉に魔法をかけられたように、一瞬、実は本当に月には兎が隠れ住んでいるような
気がした。
――いつも、遠過ぎるから見えないだけで。
夜空にまるく光り輝く月を緒方は眩しく見上げた。
(13)
「ふぅー・・・」
アキラが溜め息をついた。肩の上の体がほんの少しだけ、ぐったりと重くなった。
「・・・そろそろ戻るかい?」
「ウン。・・・その前にもうちょっとだけ、いい?」
「うん?いいよ」
するとアキラは無言で、片手を緒方の髪から離し頭上で何やらし始めた。
重心の移動とフワッフワッと空を切るような気配で、アキラが月に向かって何度も
ススキを振っているのだと察しがついた。
遠過ぎる月に向かって、それでも呼びかけの合図のように、一生懸命に。

しばらくして、緒方の視界に小さなススキが力なく降りてきた。
「・・・もういいのか?」
「ウン。緒方さん、ありがとう」
「・・・きっと」
「エ?」
「きっと、月まで届いたよ」
バランスが崩れないようアキラの脚をしっかり押さえながら、片手で小さなススキを
ちょんちょんと指差してやると、頭上でアキラが声を出さずにコクンと頷く気配がした。
956通過儀礼:03/09/23 10:05
自覚

(1)
少年はランドセルを背負ったまま、通学路とは違う方向へ息を切らしながら走る。この年
代の子どもなら下校途中に道草をしたりするのは当然なのに、少年はただまっすぐ目的地
を目指していた。
「こんちはっ!」
目的地である囲碁教室に着いた少年は、戸を思い切り開けて挨拶をした。
「おぉ〜、加賀君。こんにちは」
中からちょっと細めの中年の男性がでてくる。
「先生、始まるまで打ってていいだろ」
加賀はそう言ってランドセルをおろすと教室に入ろうとした。
「あぁ、加賀君。今日は塔矢君ももう来ているんだ。一局お願いしてみたらどうだね」
塔矢と言う名前を聞いて加賀は固まった。なぜなら急いで囲碁教室に来たのはアキラに勝
つ練習のためだったからだ。それなのに自分よりも先に来ていると聞いただけで負けた気
がしてならない。加賀は返事もせず苛立ちながら教室の扉を開けた。
小さな教室の隅でアキラは一人黙々と碁を打っていた。集中しているのか、加賀が来たこ
とに気づかない。加賀はその態度にさらに苛立ちを感じ、邪魔したくなった。そっと足を
忍ばせながら後ろにまわりこむ。そして加賀はアキラの腰を思い切りくすぐった。
「きゃんっ! あはは、やだー! やめてよぉ」
まるでイキのいい魚のように体をビクつかせながら、アキラは加賀の手を振り払った。
「もうっ、なにするの!」
アキラは椅子からおりると加賀を睨みあげた。突然くすぐられた怒りでじっと睨んでくる
アキラを加賀はざまぁみろとからかおうとした。だが目を潤ませながら睨むアキラを目の
当たりにして照れてしまった加賀は何も言えなかった。

957通過儀礼:03/09/23 10:06
(2)
アキラはふてくされつつも、驚いた拍子に床に飛び散ってしまった碁石を四つん這いにな
って拾い始めた。それを見て加賀も拾うのを手伝う。
「う〜ん、取れない…」
アキラのその声に気づいた加賀は振り向いた。そしてその姿を見て思わず赤面した。
アキラは棚の下に転がった碁石を取ろうと必死になって手を伸ばしていた。だが腕が短く
て届かないらしく、尻を高く掲げながら棚の下に手を伸ばしていた。尻の間にうっすらと
小さな膨らみがあるのが見える。アキラは手を伸ばすたびに尻を高く掲げるので、その度
に股間の膨らみもズボンの上からはっきりと形をあらわした。
加賀は息をのんでそれを見つめる。
「ふ〜、やっぱり取れない。加賀君取って」
アキラは振り向き加賀に頼む。だがその無垢な目はさらに加賀を戸惑わせた。加賀はアキ
ラの体を見ているうちに性的欲求を感じていたのだった。
「あ…、ああ」
加賀はゆっくりとアキラに近づき向かい合うように座ると、アキラの指差す方へ手を伸ば
した。
「取れた?」
アキラの声に加賀は振り向く。アキラは正座を崩したように座って棚の下を心配そうに見
つめていた。しかし加賀の視線はちょうどアキラの股間にいくような体勢になっていた。
股間を間近に見た加賀は興奮して胸の高鳴りが止まらず鼻息が荒くなった。冗談じゃない
と思った加賀は、碁石を掴むと急いで起き上がった。
「ありがとう」
アキラは先ほどのことなど忘れて無邪気に手を差し出す。だが加賀は碁石を背中に隠した。
「右手と左手、どっちに入っているか当てたらやるよ」
加賀は口元をニヤリとさせた。アキラに対する欲情を信じたくなかった加賀は、からかわ
ずにはいられなかったのだ。
アキラは小首をかしげて少し考え込むと右手と言った。
「残念。左手でした〜」
加賀は嘲るようにして言うと背中から碁石を掴んだ左手を見せた。
その態度にアキラは苛立った。
958通過儀礼:03/09/23 10:06
(3)
「ずるいよ。だって今のボクが右手って言った後に左手に石を隠すことだってできるもん」
アキラは文句を言う。だがイカサマなどせずに偶然勝った加賀は、それを聞いて怒りを自
制できなくなった。
「何だよそれ。おまえがはずしただけなのに、何でオレがズルって言われなきゃならない
んだ?」
「それじゃあもう一度しよう。今度はズルしないように腕を隠さないで前に出してよね」
アキラは威張るようにそう言った。負けず嫌いと不正を許さない真面目さがそうさせたの
だろう。だがそれは加賀の目には生意気にうつった。
「どっちに入っているかなんて、そんなの石を握る手は握ってない手より力が入っている
んだから見ればすぐわかるだろ。それならどっちの手に入っているかじゃなくて、手に何
個石が握られてるか当てるゲームにしようぜ」
「…いいよ」
加賀の提案にアキラは頷いた。一度始まってしまったゲームを途中で終わらせることなど
できなかったアキラは、絶対に勝つとでもいうような目で加賀に挑んだ。
959通過儀礼:03/09/23 10:07
(4)
加賀は碁笥を持ってくると、音をたてないようにそっと碁石を両手で握った。
「ホレ、何個入ってるか」
目の前に出された手をアキラは唇を噛みしめながら見つめる。何個入っているかなどわか
るわけがなかった。しかし一度やると言った以上後には引けない。アキラは握る手の大き
さから勘で数を言ってみた。
「12個」
すると加賀は手を開いて見せた。
「はずれ〜。7個でした」
加賀は楽しそうに笑った。
「こんなの見ただけでわかるわけないよ」
アキラは悔しそうに、そしてこのゲームの不条理さを指摘した。
「それならオレの手をさわってもいいぜ。少しはヒントになるだろ」
加賀は新に碁石を握り直すとアキラに見せた。アキラはその手を包み込むように握る。だ
が小さいその手は加賀の大きな手にふれたところで、碁石が何個入っているかなど予測で
きなかった。それどころか何度も握り直す加賀の手が微妙に大きさが変わっているような
気がして、何度も手にふれて確かめる。その姿を加賀は呆然と見つめていた。真剣なまな
ざしで何度も自分の手にふれてくるアキラがかわいくて、加賀は次第にこの気持ちが嘘で
はないことに気づく。そして自分の気持ちを理解した途端、下半身が熱くなるのを感じた
加賀は、握っていた碁石を投げ捨ててアキラを抱きしめた。
突然抱きつかれたアキラは一瞬何が何だかわけがわからなかった。だが自分が加賀の腕の
中にいるのだとわかると暴れだした。
けれども加賀は放すどころかさらに抱き寄せる。加賀は自分を抑えきれなくなっていた。
「やだ! 加賀君、はなしてよ」
きつく抱きしめられ、息もし辛くなったアキラは逃げようと身を捩った。
「加賀君てば! 聞こえてるの? ゲームの途中だよ。ふざけないで」
同じ小学生とはいえ体格の差が激しく、体の小さいアキラの抵抗は無に等しかった。それ
なら言葉でと思い話しかけたのだったが、それは逆にアキラをさらに追い詰める結果とな
るのだった。
960名無し草:03/09/24 13:28
| |_
| ||||,||ヽ
| |ー゚)_|  カガクン・・
| ⊂ ノ
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(14)
縁側にアキラを降ろしてから、また二人で元のように障子の陰に座り込んだ。
アキラがこてっと小さな頭を緒方の脇に凭せかけてくる。
「眠くなったのか?」
「ン・・・」
目をしぱしぱさせているアキラの体をゆっくりと横たわらせ、自分の膝に頭を載せさせた。
「寝ちゃっていいよ。後で、運んであげるから」
低い声で囁きながら冷えないように上着を掛け、甘い匂いのする素直な髪をそっと
整えてやると、アキラはうっとりと瞬きをした。

「ねぇ緒方さん、今日、ススキを取りに行ったでしょ」
昼間から片時も離さないススキをぱさんぱさんと眠たげに弄びながらアキラが言った。
「ああ、行ったな」
「お月見の時に、ススキを飾るのって、どうしてだと思う?」
膝の上の小さな頭がのろのろ動いて、澄んだ黒い目がこちらを見る。
少し悪戯っぽい響きを含んだ声は、言外に自分に答えを言わせろと甘く要求している。
上着からはみ出す冷たい足先を手で握って温めてやりながら、緒方は調子を合わせた。
「・・・さぁ、どうしてかな。アキラくんは知ってるのかい?」
「ウン、あのね・・・お月さまには、ススキがいっぱい生えてるんだよ。それでね、
フワフワして気持ちいいから、うさぎちゃんはススキが大好きなの・・・」
(15)
「だから、ススキを飾るんだ」
「そう。お月さまからススキが見えたら、もしかして、うさぎちゃんがお月さまと間違えて、
遊びに来ちゃうかもしれないでしょ・・・」
また兎への執着が甦り目が冴えてきたのか、アキラが身を起こそうとした。
緒方はそれをやんわりと押しとどめてもう一度横たわらせた。
普段ならアキラはもう寝ている時間なのだから、今からあまり興奮させないほうがいい。
ポンポンと寝かしつけるように軽く体を叩くと、アキラは素直に頭を緒方の膝に戻し
体の力を抜いた。

「・・・もし兎が遊びに来たら、アキラくんは何をして遊ぶんだい?」
「えー・・・とねぇ、ご。とねぇ、ときょうそう」
「徒競走?」
「うさぎちゃんは脚が速いでしょ。ボクとどっちが速いかしょうぶするの」
「そうか。・・・碁は、兎よりアキラくんのほうが強いだろうな。何子置かせてやるんだ?」
「えー?それは、うさぎちゃんに『きりょくはどれくらいですか?』って聞いてからだよぉ」
自分のほうが強いと言われてまんざらでもなさそうにアキラはニコニコ笑った。
「それでね、疲れたら一緒にお団子食べるの・・・」
「そうか」
目がトロンとなってきたアキラの眉間を、円を描くようにそっと撫でてやる。
今夜の夢の中で、アキラはきっとくたくたになるまで兎と駆けまわって遊ぶのだろうと思った。
今日見たススキの原のような、見渡す限りの――月の原っぱで。
(16)
「うさぎちゃん、今何してるかなぁ・・・」
小さなススキが、月に向かって儚げに揺れる。
眉間を撫でる緒方の指の隙間から、アキラはまだ名残惜しそうに半開きの目で月を見ていた。
月を見ながら、だんだん小さくなっていく声で、途切れ途切れにお喋りを続けていた。
「うさぎちゃんも今日・・・お餅を搗いて、えんかいしたのかなぁ・・・あ、そうだ、さっきの
ご本ねぇ、もう一つヘンだったんだよ。・・・お正月にお餅を搗く時は、二人でやるでしょ?・・・
なのにね、あのご本のうさぎちゃんは一人で・・・
・・・あ」

その時のアキラの表情は見ていない。
緒方は咄嗟に、眉間を撫でていた手でアキラの目を覆ってしまったのだった。
「あら、アキラさん寝ちゃったかしら?メロンを切ってきたんだけれど」
柔らかな声に振り返ると、香り高い碧と橙色の果実を二人ぶん皿に載せた明子夫人が
室内の煌くような賑わいを背に微笑んでいた。その後ろから赤い顔の芦原がひょいっと
覗き込んでくる。
「えー、アキラもう寝ちゃったんですかぁ。ひどいですよ緒方さん、自分ばっかりアキラと
ほのぼのしちゃってぇ。オレなんか何杯飲まされたと思ってるんですか〜。ホントに
寝ちゃったのかよ、遊ぼうよ〜。アキラぁ」
「わっおい、芦原」
酔っ払い特有の憎めない図々しさで、芦原がニコニコとアキラの目を覆っている緒方の手を
取り除けた。
その下のアキラがどんな表情をしているかと、緒方は一瞬身が凍った。
(17)
だが、覆いを外されたアキラの顔は目を閉じたまま小さな呼吸を繰り返して、
既に眠り込んでしまっているように見えた。
「この子、一度眠り込むとちょっとやそっとじゃ起きないから・・・ごめんなさいね芦原さん。
また次に会った時遊んであげてちょうだいね。アキラさん、アキラさん。おねむでしょうけど、
歯磨きだけしちゃいましょうねぇ」
そのままアキラは母親の胸に抱き上げられ、連れて行かれてしまった。
小さなススキがいつの間にかアキラの手から落ちてその場に置いてきぼりにされていた
ことには、アキラが行ってしまってから気がついた。
小さなススキをいつまでも指先で弄び眺めている緒方の横で、芦原が二人分のメロンを
ぱくつきながら「今日はホント、いい月ですねぇ」と心から感嘆したように言っていた。


――あの時アキラは本当に眠っていたのだろうか?
咄嗟にアキラの目を月から隠すように覆ってしまった自分の行動を、アキラはどのような
意味に受け取ったのだろうか。
秘密を隠そうとすることによって、却ってそこに隠しているものがあることをアキラに
気づかせる結果となってしまったのではないだろうか。
それと同時に、そんな隠し事をしながらアキラに調子を合わせて会話していた自分の
卑怯さをも。

後から思うと、あの時、目を覆われる前、アキラがあの月の隈の形に気づいていたとは
限らないし、仮に気づいたからと言ってそれが直接アキラの兎の夢を壊すことに繋がるとは
限らない。もっと巧い対応の仕方があったはずだと何度も後悔した。
次にアキラが兎の話題を持ち出してきたらこう答えるのがよいか、いやああ答えるのが
よいかと、頭の中でシミュレーションを繰り返しもした。
だが、あれから緒方の前でアキラが月の兎のことを口に出すことはなかった。

――光り輝く月の中の、透きとおるような黒い兎の影が今も目に焼きついている。
あと少し続きます。
966通過儀礼:03/09/25 05:17
(5)
「そうだったな。ゲームの途中だ」
加賀はそう言うとアキラを抱いたまま碁笥に手を伸ばした。そして碁石を掴めるだけ掴み
取ると、おもむろにアキラのズボンを引っ張った。隙間から小ぶりの形のいいぷりんとし
た尻が見える。加賀はその中に握っていた石を押し込んだ。
「ヤッ…、冷たい!」
下着の中に何個もの碁石を入れられたアキラは、石の冷たさとこれから何をするのかわか
らない加賀の怖さに驚いて泣き出しそうになった。
「ホラ、何個入っているか当ててみろよ」
加賀はそう言って尻やら股間をしつこいくらい何度も揉んだ。その度に碁石のひんやりと
した冷たい感触やゴツゴツとした石の硬さがアキラの珍子やアナルを刺激して、アキラは
悲鳴をあげた。
「ア…ッ、アアン! 揉んじゃやだぁ。取って、石取って」
アキラはしきりに頭をふって嫌がった。だがそのあえぎ声は加賀をさらに昂らせていた。
「なんだよ、気持ちよさそうな声あげちゃってさ」
その反応が面白くて加賀は股間をまさぐる手を止めない。その刺激に耐えられなくなった
アキラは、足をガクガクさせながら床へ崩れ落ちた。それに覆いかぶさるように加賀はア
キラにまたがる。
床に押さえつけられ逃げられなくなったアキラは、加賀の手を払おうと宙に手を泳がす。
それでも加賀の不躾な手は容赦なくアキラのまだ幼い股間を刺激する。
アキラも負けじと抵抗した。だが次第にそれは珍子をなでられる快感を思い出させ、アキ
ラは戸惑った。しかしそれを快感なのだと自覚すると、もっとその快感に浸りたくなった
アキラは目を閉じて股間に意識を集中させた。
967通過儀礼:03/09/25 05:17
(6)
加賀は無我夢中になってアキラの股間を撫で回した。自分より体の小さい年下の者をいじ
めるのは趣味ではないが、今はアキラをもっとなかせたくて仕方なかった。なぜアキラの
自由を奪ってでもしたいと思ったのかはわからない。だが確実にアキラのサイズの小さい
体と、そこから発せられているとは思えないほど甘く色っぽいあえぎ声、そして決して嫌
がっていない表情などが加賀を惑わせていた。
「か…加賀君。そろそろ、アンッ! …皆来ちゃうよ?」
快感だと自覚したアキラは先ほどの抵抗とは違い、まるで時間が過ぎるのが惜しいとでも
いうような口調で加賀に忠告する。
加賀は壁の時計を見た。あと30分もすればこの教室にはたくさんの生徒であふれる。残
された時間を冷静になって考えた。ここでやめなければ誰かに見つかってしまうだろう。
だがやめることができるほど加賀は満足していなかった。そしてアキラもまた満足しきれ
ていない瞳で加賀を見つめる。
加賀はアキラを抱き起こした。立たせた瞬間、下着の隙間から碁石がポロッと音を立てて
落ちる。アキラは碁石が落ちないように股間を握ると、加賀に手を引かれて教室をあとに
した。
968通過儀礼:03/09/25 05:18
(7)
教室を出た二人は迷うことなくトイレへと駆け込んだ。アキラを個室に入れると、加賀は
気持ちを落ち着けようとゆっくり鍵をかけた。
振り返ると股間を握って俯いていたアキラが心配そうに顔を上げた。
加賀はアキラの前にしゃがむとその手を優しくどけた。アキラは全く抵抗する気配がない。
それをこれから自分の行うことに合意したのだと受け取ると、加賀はアキラのズボンを脱
がした。アキラはそれを恥ずかしそうに見つめる。するりとズボンが床に落ちる。すると
石が詰まって膨らんだ下着があらわになった。
加賀は息をのんで足の間に手を差し入れると、ゆっくりと太ももを伝いながらそこを握り
締めた。カチャッと冷たく硬い石と石がぶつかる音がする。そしてその硬さの中にむにっ
と柔らかく温かいものがあるのを見つけた。ズボンの上からではわからなかった感触に加
賀の興味は一心に向けられた。
下着へ手を伸ばした加賀は碁石を落とさないようにゆっくりゆっくりと下着をおろす。
徐々に白く透き通るような白磁の肌をもつそこが顔を出す。加賀はそれをまじまじと見つ
めた。しかしアキラにはそれが焦らされたような気がして、早く珍子にさわって欲しいと
ムズムズと腰を揺らした。それと同時にアキラの珍子もぷるんと揺れる。加賀はそれを目
の前にして思わず口にくわえてしまった。
「ヤァッン! 食べちゃやだよ。口から出して」
驚いたアキラは加賀の頭を叩いた。だが加賀はアキラの珍子を味わうように口の中で転が
した。湿った生温かい口腔内に包み込まれる初めての感覚に、アキラはそんな快感がまだ
あったのかと抵抗をやめて感じていた。
ちゅぽんっと音を立てて加賀がアキラのそこから離れる。そして尻や珍子などをなでまわ
しながらアキラの表情をうかがった。アキラは熱い吐息を吐きながら恍惚とした表情で呆
然としている。
「なんかスンゲー気持ちよかったみたいだな」
アキラは顔を赤らめると素直にコクンと頷いた。
969名無し草:03/09/26 07:41
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| ||||  タベチャヤダ!!!
| |ヽつ
| | ) )
| |JJ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
970名無し草:03/09/27 02:10
日 凸  ▽ ∇ U.   
≡≡≡≡≡≡≡ /|||||"||ヽ オキャクサン コナカッタナア!
 U ∩ [] %..  |(゚ぺ*)||
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971名無し草:03/09/27 15:05
  ウィーッス (((((")))∩
       (□o□//
     ⊂二    /
     |  )  /
    口口'    ̄)
      ( <⌒<.<
       >/
(12)
「・・・っ、・・・っ、ぅう・・・っ!」
衣服の下に潜り込んだヒカルの指が肌の上を辿るたびに、アキラは声を殺し
ビクビクと身を震わせた。そんなアキラの額に額をくっつけ合わせてヒカルが笑う。
「我慢してる?もっと声出せよ」
「駄目・・・だよ・・・いつも言っているだろう。お隣に聞こえたら・・・」
「隣いま留守だよ」
「何を、いい加減なことを言ってるんだキミは。・・・さっきTVの音がしたよ・・・」
「別に聞かせてやったっていいだろ」
「良くない」
「なら、隣に聞こえないように、オレだけに聞かせろよ。ホラ」
金色の髪を少し鬱陶しそうに振り払って、耳をアキラの口元に近づけてやる。
「・・・・・・」
「どーした?」
「・・・は、恥ずかしいよ。・・・そんな、待ち受けるようにされたら」
アキラは上気した顔に困ったような表情を浮かべたが、拒絶の言葉を紡ぐその唇は
先刻のキスの余韻に濡れてつやつやと赤く潤いを湛え、抗議するように眇められた瞳は
熱っぽく潤んでその縁をピンクに染めている。
ピンクや赤に彩られたその表情が、もうそれだけで甘い媚を含み男を誘っているように
見えた。
(んなエロい顔野放しにしとくほうが、よっぽど恥ずかしいぜ・・・)
じわじわと持ち上がってくる体熱を何とかやり過ごしながら、ヒカルは照れ隠しのように
アキラの前髪をちょっと引っ張って言った。アキラが痛っ、と声を上げる。
「・・・今さら何、ブリッコしてんだよ。オマエが恥ずかしいとか別にそんなのどーだって
いいんだよ。オレが聞きたいの。だから・・・聞かせろよな?」
(13)
囁きながらアキラの温かな脇腹を掌でゆっくり撫で上げると、
アキラは一瞬息を呑んだ後戸惑うように、あるはずもない逃げ場所を探すかのように
顔を逸らして視線を彷徨わせた。
構わず手を敏感なあちらこちらに滑らせながら「ん?」とヒカルがもう一度促すように
耳を近づけてやると、アキラは震える手でヒカルのTシャツの肩の部分を掴み
絞り出すように小さな声を洩らした。
「・・・ぁ、・・・あッ・・・あぁ、あ・・・んっ!」
音量のセーブされた、自分だけのために発せられた甘い声に、ヒカルはアキラの呼気が
触れた所から耳と頬の産毛が総毛立つ感覚を覚えて思わず目を閉じた。

「そ・・・それで、いーんだよ。・・・えっと。・・・前から思ってたんだけどさぁ、
オマエのカラダってなんか、面白いよな」
「・・・おもしろ・・・い?」
アキラはあのピンクと赤に彩られた煽情的な顔でハッハッと小さく息を乱しながら
ヒカルの顔を見た。
「ウン。ちょっと感じ過ぎじゃねぇ?」
手探りの指先が尖り立った乳首の先端にほんの僅か触れただけで、電流でも流された
ようにアキラの体がビクンと跳ねあがった。
「ア、アッ・・・!」
「ホラな!わ、すげ・・・!この辺全部、鳥肌立ってる」
脇腹の腋の下に近い部分を五本の指の腹で興味本位のようにまさぐられて
アキラは目尻に涙を滲ませ、首を振った。
そんなアキラを眺めながらヒカルが楽しそうに言った。
「さっきも手ぇ舐められただけで今にもイキそうな顔してたしな?オマエの手が
そんなに感じるなんて知ったら、次から打つ時にオマエの手見て、エロい顔まで
思い出しそ・・・」
(14)
囁きながら片方の手でさっき自分が舐めたアキラの手を握り、もう片方の手で
しっとりと汗ばんだ腋の下を掻いてやると、アキラの喉から尾を引くような
細く甘い喘ぎが洩れた。
ヒカルの耳と頬がまた総毛立つ。
ヒカルに握られたアキラの手は、衣服の下で震える体と連動するようにビクビクと
痙攣している。
まるでそういう風に作られた人形か何かのように、指の先までも自分が与える愛撫に
素直に反応しているその体がいとおしくて、ヒカルはアキラの手指に自分の指を
しっかりと絡め合わせた。

・・・そうやっていつまでも、オレに触られたら気持ちよさそうにして、
オレのやる事なす事いちいち反応して喜んだり、困ったり、怒ったりして、
オレがいなくなったら追い駆けてきて、いつもオレのことだけ見てて欲しい。
でなきゃ何のために、オレがあんな悲しい思いをしなきゃなんなかったのかわからない。
なぁ、塔矢。
オレとオマエが会ったのはきっと神様が特別に決めたことだから。
社も、他の誰も、オレたちの間には入り込めないはずだろう?

「塔矢。・・・塔矢、ベッドに行ってもいいけど、立てる?
・・・立てないならここで、やっちゃうぜ・・・?」
だが潤んだ目を閉じフローリングの上にぐったりと身を横たえたアキラのシャツを捲り
その下の肌を露わにしてみて、ヒカルは思わずそこに触れていた手を離してしまった。
975戻り花火 ◆pGG800glzo :03/09/28 21:56
(1)
パチパチと色とりどりの炎が夜の暗闇を輝かす。
「キレイだな」
「うん」
二人はもうずっと、ほとんど言葉を交わすこともなくただ互いの指先の延長に咲く
光の火花を眺めていた。
花はすぐに散ってしまう。
すると二つあった光が一つきりになって、そのぶん夜の闇がぐっと迫ってくる。
闇に対抗するように、次々と新しい炎の花を咲かせた。
火薬の匂いと白い蝋燭が溶ける甘い匂いとが混じり合ってむず痒く鼻腔をくすぐる。
「煙くねぇ?」
「少しね」
「・・・オマエ、冷静なのな」
ヒカルはちらりと自分の傍らにしゃがむアキラを見た。
アキラは穏やかな表情で手元の花火を見つめている。花火に照らされたアキラの顔も瞳も、
色とりどりの光と影で揺らめいて見える。
自分と話しているのに視線をこちらに向けようともせず、花火ばかり見ているアキラに
ほんの少し寂しくなった。
花火の光と熱に魅せられて忘れていた、肌寒い初秋の夜の闇が急に身近にまとわりついて
くるように感じる。
ヒカルはぶるっと身震いをした。わけもなく心細い気分が込みあげる。
縋るようにヒカルは端正なアキラの横顔に向かって声をかけた。
976戻り花火 ◆pGG800glzo :03/09/28 21:56
(2)
「なぁ、ちょっとこっち見て」
「どうして?」
「どうしても」
「理由を言え」
「・・・かっ、かわいくねーな。いーだろ、ちょっとくらい!減るもんじゃなし」
「減る」
「減らねーよ!」
「・・・こうしている間にも、どんどん燃え尽きていってしまうだろう?」
「ん?・・・あー」
整いすぎるほど整ったアキラの横顔は、静かに揺れ輝く光を映している。
自分の手の中で一時明るく熱く燃え上がっては瞬く間に尽きていく儚い命を惜しむように、
アキラは慈しみにも似た眼差しで手元の熱の花を見つめていた。
たまにアキラはこんな表情をする。
静かで安らかな、全てを許し慈しむような。

アキラをこちらに向かせるのは諦め、その代わりにヒカルはアキラに寄り添うように
肩を触れ合わせてしゃがみ込んだ。
アキラは何も言わない。
「・・・ちょっと寒くなってきたから、こうさせてくれよな」
「うん」
アキラの花火が一際明るい緑がかった白い光を放ち、燻すような音を立てて燃え落ちた。
同じ袋詰めにされて一時の慰みのために売られる花火でも、アキラの手の中で
アキラの視線を一身に受けて燃え尽きるならこの世に生まれてきた甲斐もあろうと思う。
アキラと同じ生身の人間でさえ、その手に触れることもその視界に入ることすら困難だというのに。
977戻り花火 ◆pGG800glzo :03/09/28 21:58
(3)
後を追うようにヒカルの花火もまた持ち主の頭髪のような金色の光を放って燃え尽きた。
途端に辺りの温度が下がる。
風に揺れる小さな蝋燭の灯りを頼りにヒカルはがさごそと派手な色の袋を探り、
新しいのを二本取り出してババ抜きのようにアキラの前に並べて突き出した。
アキラはちょっと指を迷わせてから、濃い赤紫の芯にキャンディのように先が捩れた
黄色と赤の紙飾りがある一本を選んだ。
もう片方の、銀と青の縞模様がついた細身の一本をヒカルが右手に持ち直す。
「・・・オマエ、こーゆー時は必ずハデなほう選ぶよな」
「え、そうかな。すまない。キミがこっちのほうがいいなら・・・」
「いいよ、オマエが好きなほう取ってくれたほうが。ただ・・・」
「・・・何」
「・・・意外と、ガキっぽいよな」
返事はない。
ちらりと横を見ると薄暗い中でアキラの端正な横顔が不服そうに唇を尖らせていた。
そういう所も意外と子供っぽくて、意外と可愛いと心の中だけでヒカルは思う。

小さな蝋燭の炎の上に二人して花火をかざす。
風があるせいもあってどちらもなかなか火が点かない。
暗い中で会話が途切れると互いの吐息の音と心音が伝わるようで、ヒカルは息苦しくなってしまう。
だがアキラは何も言わない。
ぼんやりとただ、黄色と赤の紙飾りの先をちろちろと焼く小さな炎を眺めている。
978戻り花火 ◆pGG800glzo :03/09/28 21:59
(4)
今夜アキラが言葉少ななのは、美しい花火の短い命を惜しむためだけではないのだろうと
ヒカルは思った。
全てを忘れさせるような美しい光を瞳に映しながら、アキラの目はどこか遠い所を見ている。
遠い誰かの姿を幻のように、光と熱の中に追っている。
小さな炎がヒカルの胸の奥をもちろちろと焼いた。
胸の奥底で焦がれた火の粉が気管を通って口から出るように、ヒカルはつい言葉を洩らしていた。
「・・・社も、今日ここにいられれば良かったのにな」
他の人間ならきっと気づかないほどの一瞬の沈黙があって、それからアキラが小さな声で
「うん」と答えた。
二本の花火が同時に炎を宿し、精一杯に花開いて夜の暗闇を輝かせた。
979名無し草:03/09/29 20:28
アキラたん(;´Д`)ハァハァホシュ
(13)
「わぁ……」
怒りに任せて寝室のドアを勢い良く開けたアキラだったが、
ベッドを見て思わず感嘆の溜息を漏らした。
シーツも、揃いの布団カバーも、ここに良く来ていた頃のお気に入りだった。
おねぇさん達の誰かが持ち込んだ、少し良いものらしいが
緒方は興味がなく無造作に扱い、使っていた。
本当は緒方が朝、シーツを替えたときに、
リネン棚の一番上にあった物を使っただけなのだが
それに気づかないアキラは、ただ嬉しく思った。
(緒方さん、もしかしてまだ覚えててくれたのかな……)

アキラはそっとドアを閉めると、バスローブを脱ぎ捨て
そのままベッドに潜り込んだ。
全身で感じるその肌触りは変わることなく気持ち良くて
あっという間にアキラは眠りについた。
(14)
緒方はゆっくりとビールを流し込んでいく。
喉を通りすぎる冷たさと泡の感触に生き返る心地がした。
最後の1滴まで飲み干してから、アキラの様子を見に
緒方は寝室へと立った。
音を立てないようにドアを開けると、アキラはもう眠っている様子だった。
ドアの隙間から差し込む明かりを頼りに周りを見回すと、
バスローブは脱ぎ捨ててあるが、用意しておいたパジャマや下着もそのままだ。
本当に裸で寝たのかと、半ば呆れながらアキラをもう一度見遣った。
横になって向こう向きに眠るアキラの上に掛けられた布団は
少しずれていて、背中が半ば剥き出しになっている。
このままでは風邪を引く、掛け直してやろうと緒方はベッドに近寄った。
細く光が差し込むだけの暗い室内で、アキラの背中は白く浮き上がり
緒方は吸い寄せられるままその背中に口づけていた。
外気に晒されていたその肌は、ひんやりと冷たくその美しさを裏付けたが
その冷たさに、何か不安をかき立てられるような気がして
手のひら全体で、今アキラが間違いなくここに存在するということを
確かめずにはいられなかった。触れた肌は滑らかで間違いなく、
それ故に、一度肌の上を滑らせた手はもう離すことが出来なかった。
(15)
アキラは夢中で、微かに感じる温もりに手を伸ばしていた。
その温もりが何で今どういう状況なのかは全く分からない。
気がついたら、少し温かかった。その温かさがもっと欲しくて
手を伸ばしてはみたが、それは背中にあったせいか
伸ばしたはずの手は何度も空を切り、なかなか届かない。
アキラは癇癪を起こしたように、ぶんぶんと手を振った。
その手に確かな質感のある手が重なり、アキラの手は脇腹に置かれた。
その温かさは幻ではなかった。安堵して、アキラは更なる温もりを願った。
――願いはすぐに叶えられ、少し窮屈だが温かいばかりの場所に匿われた。
これまでいくら願っても与えられることのなかった温もりの中で
全身から力が抜け落ちていく感覚が心地よかった。
983名無し草:03/09/30 13:01
   || | ||
   || | || ピュー
   || | ||
   /|||||''|⊂ヽ
   ||(*゚ー゚) ノ
    ( ⊃  /
    |   i
    ⊂ニノ
    ∪
984 ◆pGG800glzo :03/09/30 18:33
落ちてくるアキラたんをキャァァァッチ!(;´Д`)ハァハァ

>Part43の519
紛らわしいがポケットサイズも自分なんだが
先に短いのを終わらせてから、そのうちまたユクーリ再開させてもらうつもりっす。
覚えててくれてありがとな。
985戻り花火 ◆pGG800glzo :03/09/30 18:34
(5)
アキラがいつ頃から社に惹かれるようになったのかは知らなかった。
単に碁打ちとしてということだけであれば、北斗杯予選の自分と社の闘いを見た時点で
アキラは既にあの自分たちと同い年の有望な打ち手に惹かれていたのだろう。
だが碁の実力で惹きつけるだけなら、自分が社に劣るとは思わない。
それとは別の所で、いつの間にか、本当にいつの間にか、アキラの心は社に攫われてしまっていた。
今まで自分がアキラと過ごしてきた年月はいったい何だったのかと思うくらい呆気なく。

北斗杯が終わってから、アキラとあの激戦の数日間を振り返る機会は何度もあった。
だが不自然なほどにアキラは自分からは社について触れることがなかった。
ヒカルのほうから社の話題を振ると、アキラは一見平然とその話題を受けながら、
今までヒカルの前では見せたことのなかった少し哀しそうな遠い瞳をした。
そうしてその後は決まって、物思いに沈むような、何か考え事をしているような、
ヒカルの知らないおとなしいアキラになった。

不自然なのは社も同じだった。
北斗杯の後で何度か連絡を取って碁のこと、社の進路のこと、色々なことを語り合ったのに
社もまた、アキラの棋譜やアキラの父塔矢行洋について口にすることはあっても
アキラ本人については決して自分から話題にすることがなかった。

それだけなら、二人があの数日の間に喧嘩でもして仲が険悪になっているのかと
ヒカルも思ったかもしれない。
だがそうではなかった。
二人はずっと連絡を取っていたのだ。ヒカルの知らない所で、ヒカルとの会話では決して
互いの名前を出さないままで。
その頃既にアキラは、日常的にヒカルと体を重ねる間柄だったというのに。
986戻り花火 ◆pGG800glzo :03/09/30 18:34
(6)
時季外れの二人だけの花火大会の最後を締めくくるのは線香花火だった。
風に消されないよう二人が掌をかざして見守る中、
星を散らすような火花が夜の闇に弾けてジッ、ジジッと生き物が鳴くような音を立てた。
火花はやがて小さくなり、オレンジ色の熱が凝って綺麗な火の玉が出来上がる。
まるく凝った熱は自らの重みに堪えかねて、まずアキラの持っているほうが
ポトリと雫のようにオレンジ色の光の尾を引いて暗い地面に落下した。
「あ、」と少し残念そうな声を上げてから、アキラは再び沈黙した。
ヒカルが視線を上げると、アキラはしゃがんだ膝の上に手を揃えて置き、最後に残った
ヒカルの線香花火をじっと見守っている。
蝋燭と線香花火のかすかな灯りに照らされて、伏し目勝ちの睫毛が滑らかな頬に長い影を作っている。
ヒカルが花火でなく自分を見ているとは思いもしないのだろう。
僅かに唇を開いた無防備なアキラの顔からヒカルは目を離すことが出来なかった。

だから自分の線香花火が燃え尽きたのも、アキラがまた「あ、」と声を上げたことで初めて知った。
しばらくの間アキラはなお、花火の火滴が落ちていったのだろう地面の方向に視線を注いでいたが
やがて顔を上げると感心したように「凄く大きな玉だったね」とヒカルに言った。
本当はアキラの顔ばかり見ていたから花火の終焉間際の輝きなど見ていない。
だがヒカルは「あぁ」と答えた。
自分にずっと顔を見られていたなどと、アキラは知りたくないだろう。
987戻り花火 ◆pGG800glzo :03/09/30 18:35
(7)
「・・・今日は、付き合ってくれてありがとう」
「いーよ。・・・オレもこの時季に花火が出来るとは思わなかったしな」
そう、アキラがまた花火を買っていたことさえ知らなかったのだ。
「先に上がっていてくれ。ボクはこの水を流したら戻るから」
小さな青いバケツを軽く持ち上げて見せながらアキラが言ったので、
「あぁ、」と頷いて縁側から家の中に上がり込んだ。

月明かりだけが差すひっそりとした廊下を渡り障子を開けたそこは、かつて二回――
日数にすれば数日間――ヒカルが泊まったことがある部屋だ。
一人ではなかった。
いつも社が隣に布団を並べていた。
北斗杯前夜も、その後夏にこの家に滞在した時も、夜はこの部屋で社と二人で眠った。
そうしてヒカルがこの部屋に泊まった一番最後の夜には、そこにアキラが加わって
三人になっていた。

「・・・進藤。どこにいるんだ、進藤」
電気を点けていなかったから、ヒカルがどこにいるかわからないらしい。
自分の名前を呼びながら月明かりの廊下を渡ってくるアキラを、ヒカルは不意打ちのように
部屋に引き入れ抱きすくめた。
外で肩を触れ合わせている間は想像することしか出来なかったアキラの温もりを腕の中に味わう。
「しんど・・・」
瞬時に身を強張らせたアキラの唇に噛みつくようなキスをする。
アキラがそれに驚いて気を取られている隙に、ヒカルはアキラの体を宙に浮かせるようにして
部屋の隅まで移動した。
そうしてそこに畳まれてあった布団の上にアキラを投げ出すと、覆い被さって股間に手を入れ
激しく揉みしだき始めた。
988戻り花火 ◆pGG800glzo :03/09/30 18:35
(8)
アキラが息を呑み、体をよじってヒカルを押しのけようとする。
その抵抗を封じるように、服の上から股間をきつく握り込む。
「や、進藤っ・・・!放せ」
「イヤなの?・・・オレがイヤ?」
「そういうわけじゃないが・・・こんな、い、痛いよ、アァッ、」
痛いと言われてさすがに力を緩め、代わりにゆるゆると捏ね回すような動きでその部分を揉む。
瞬時に、アキラの喉の奥から押さえ切れない甘い呻きが洩れた。
掌全体でそこを包み込んでぶるぶると強めの振動を加えてやりながらヒカルは言った。
「こんな風に強引にされんの、オマエ大好きなくせに」
「そ、そんなこと・・・ぁ、・・・はぁ・・・ん、・・・あぁっ・・・!」
「社の時だって・・・」
自分の下でそのまま快楽に落ちていくかに見えたアキラが、目を見開いた。

ヒカルは唇を噛み締め、アキラの足の間に潜り込ませていた手を一旦引き抜いた。
アキラに聞かせるようにはっきりと呟きながら、手を彷徨わせる。
「・・・あの時は、どうやったんだったかな?確か・・・」
「や・・・嫌だ・・・嫌だ、進藤・・・」
アキラの声に怯えが滲むのを無視して、ヒカルは自分の両手でアキラの両手首を掴み
束ね合わせるようにしてアキラの頭上の布団の上に押さえつけた。
「確か俺がこうして、それから社が・・・」
「進藤!」
アキラが悲鳴を上げた。
それに構わずヒカルは片手でアキラの両手首を押さえつけたままもう片方の手でアキラの衣服を
剥ぎ、早鐘を打つ胸から蒼白な腿までを露わにした。その中央には、既に熱く昂り立ったものがある。
「――それでもオマエ一言も、やめろとは言わなかったんだ」
自分の影に覆われたアキラの、大きく見開かれた濡れた瞳に一瞬視線を合わせると、
ヒカルはきゅっと目を瞑りアキラの首筋に顔を埋めた。
そこはアキラの肌の控えめな甘い匂いと、火薬と煙の不穏に刺激的な匂いとが混じり合っていた。
989名無し草:03/10/01 13:24

       .  》
    / ̄ ̄ヽ《/ ̄ ̄\
  /:::::::::     ̄ / ̄゛
  |:::::::::       | |  /|||||"||ヽ
  |::::::::::      \\ |(゚▽゚*)||
  ヽ:::::::::        ̄ と  と)
   ヽ::::::::         / i   )
    \::__∧__/ し"ヽ)
990名無し草:03/10/02 12:41

   /|||||"||ヽ |\  アターレ!!
   ||(*゚ー゚)| |  ヽ
    ( ,つ≫┼∋}→
    (   ノ  |  ノ
    (/"J  |/
(18)
夢から脱け出るように、目が覚めた。
枕を背にベッドの上に足を投げ出した体勢のまま、眠り込んでしまっていたらしい。
まだ酒が抜けていないのか頭が少しぼうっとする。
両の目頭を指で揉みながら二、三度頭を振ると、緒方は室内に目を遣った。
自分の好みで快適に整えられた寝室の中には、ブラインドを上げ切った窓を通して
青く月の光が満ちている。
――そう言えば今日は、仲秋の名月か。
だからあんな昔の夢を見たのだろう。
(19)
光り輝く月から少し視線を落とすと、広いベッドの自分とは反対側の端に、
アキラが寒そうに背を向け小さな寝息を立てていた。
――もう戻っていたのか。
最近つまらないことで喧嘩をすることが多くなった。
取るに足らないようなことでアキラを責めずにいられないのは、自分がアキラから
置き去りにされるようで不安だからなのだとわかっている。
年を追うごとにアキラは美しくなり、眩しいほどに飛躍していく。
澄んだ強い瞳は真っ直ぐに世界を、未来を見据えている。
そんなアキラの行く末に、自分などの関わる余地はあるのかと思ってしまうのだ。

自分は手の中で大切に愛でてきた可憐ないのちが、昇竜の本性を現して天空へ舞い昇って
いくのを為す術もなく見守る男である。
今日も酒に任せてほとんど言いがかりに近い理由でアキラを詰り、アキラは泣き、
泣いているアキラを見て我慢が出来なくなって抱いた。
理性も死に絶えるほど抱いた。
数時間に渡る理不尽な責め苦の後、涙も枯れ果てたアキラは壁に手をつきながら
バスルームへと傷ついた体を引きずっていった。
その背中に向かって自分が投げつけた言葉はこうである。
――後始末が済んだらすぐ戻って来い。勝手に帰ったり、ソファで寝ようとしたりしたら
今度こそ足腰が立たなくなるまで抱く。今夜はオレの隣で、寝るんだ。
もっともアキラの衣服は既に服とも呼べないような状態になっていたから、
アキラがそれを着て帰ろうとするとも思えなかったのだが。
(20)
それでもアキラが戻ってきたら、キスの一つもしていつものように一つの毛布にくるまって
眠るつもりだったのだ。
それなのに、
――いつの間にか眠り込んでしまっていたらしい。
緒方はベッドの中央付近で腕を組んで座った姿勢のまま、毛布の半分ほどを脚に掛けて
眠っていたが、ベッドも毛布も後の半分はアキラのために空けてあった。
だからたとえ緒方が起きていなくてもアキラは勝手に緒方の横で、毛布に潜り込んで
寝ることもできたはずなのだが、アキラはそうはしなかったようだ。
いま緒方の眼下に横たわるアキラは、何も身に着けることなく寒そうに身を丸め
両腕で体を覆うようにして、ベッドの端で背を向けている。
寝返りでも打てばたちまち床にずり落ちてしまうだろうほど端の位置である。
それは、緒方の横暴に対する精一杯の無言の抵抗なのだろう。
言われたとおり同じベッドで寝るには寝るが、一つの毛布にくるまることはしない。
隣に寄り添うこともしない。出来るだけ緒方から遠くに離れて、背を向けて眠る。
――バスローブくらい、着ればいいのに。
緒方の住居のどこに何があるか、引越しのたびにアキラには全て教えてあった。
同じ毛布が嫌なら別の毛布でもバスローブでも引き出して使えばいいものを、
自分にまつわる物は一切使いたくないとでも宣言された気がして、緒方はジクリと胸が痛んだ。

蒼い月の光に照らし出されたアキラの身体はどこまでも白く光るように滑らかで、
いつ見ても見惚れるほど美しい完璧な骨格を誇っている。
足腰を折り曲げ身を丸めた体勢のせいで、持ち主の頬に似た透きとおるように肌理細やかな
双丘の狭間から、普段より充血したまるいその箇所が無防備に緒方に向かって晒されていた。
自分を拒絶して背を向けながら、肝心な部分はこちらに向けているアキラが
たまらなく憐れでいとおしいと緒方は思った。
「アキラくん・・・」
(16)
乞われるまま緒方がベッドに潜り込みアキラを背中から抱くと、
アキラはほんの少し身体を捩って
安らかな幸せをその口元に浮かべて見せた。
幼かった時代にはこんな表情のアキラを見た記憶もあるが
関係を持つようになってからは特に
緒方の前でそんな表情を見せる事はなかったように思う。

―――思えば、幼いころから無意識に自分を抑える術を
身に付けていたアキラには、海外を飛び回り留守がちの両親にも、
のっぴきならない事情とやらでバイトに明け暮れる恋人にも
淋しいからそばに居て欲しいと訴えることは出来なかったのだろう。
そんなところが『大人しくて聞き分けの良い子』として
周囲の大人達に愛される所以でもあったろうが
若いころの緒方の目には、渡世術に長けた
子供らしくない子供と映っていたのも事実だった。
しかし今にしてやっと、その憐れさを緒方は感じていた。

と、アキラが微かに身体を揺らした。
「ん………」
どうやら、キスのおねだりらしい。
なんとなく沸いた薄っぺらい憐憫の情から、緒方は
孤独を抱いた憐れな子供へ、望むまま与えた。
995 ◆LagunafJHY
俺、兄貴とアキラたんの関係を書くのが苦手なことに今更気づいちまった…
なにか神聖なものがあるのか、手が止まっちまう(´・ω・`)