2ちゃんだけのかまいたちの夜 Part5

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1名無しのオプ
◆「かまいたちの夜」を題材にしたリレー小説のスレ、Part4です。◆

・かまいたちの夜なら1でも2でもかまいません。オリジナルストーリーも歓迎です。
・基本的には以下のようなリレー形式ですが、書き手の意思優先です。

 1.書き手が選択肢でレスを締める。
          ↓ ↑
 2.ROMが選択肢からストーリーを選択する。
   あるいは、書き手本人か他の書き手が1の選択肢から選んで継続する。

・自分で続きを書く気のある人はその旨を宣言して続けて下さい。
・選択肢に至るまで複数のレスを消費してもOKです。
・ゲームのネタバレは出来るだけ控えて下さい。
・何日たっても話の続きが書かれない場合、ほかの未選択の部分から始めても構いません。
・複数シナリオの並行もOKですが、混乱を避けるためにアンカーで継続元を明示して下さい。
・煽り、荒らしは厳禁。現れても構わず、スルーを心がけて下さい。
【前スレ】
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1158103156/
【過去スレ】 過去ログ倉庫
Part1 http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1072705225/
Part2 http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1086859860/
part3 http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1128516029/
まとめサイト(Part3>>760氏作成)
ttp://kama2ch.otogirisou.com/
2テンプレ:2007/04/15(日) 12:38:20 ID:d4WgV99p
【「かまいたちの夜」関連スレ】
《ゲームサロン》 ★★★かまいたちの夜2総合スレ★★★
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1127059925/
《ゲームサロン》かまいたちの夜トリプル
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1153986988/
《ゲームサロン》 メールで】かまいたちの夜‐ニワンゴ‐【導け】
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gsaloon/1152614904/
《家庭用ゲーム》 かまいたちの夜 総合122
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/famicom/1157949467/
《レトロゲーム》 かまいたちの夜 第26章 〜不思議のペンション〜
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/retro/1152156836/
《ゲームキャラ》かまいたちの夜の真理
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamechara/1154323327/
《携帯電話ゲーム》 かまいたちの夜
http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/appli/1143064861/
《ゲーム音楽》 【街】サウンドノベルの音楽【かまいたちの夜】
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gamemusic/1115439701/
3テンプレ:2007/04/15(日) 12:39:13 ID:d4WgV99p
☆このスレのルール

・選択肢は一番最初にレスした人のものを採用する

・進行中のシナリオは、最新の筆者が特別の意思を示していない場合は、
(このシナリオは一人で書かせて下さい、等)
誰でも途中から参加し、創作することができる

・シナリオを続きから書く場合は、何番のレスからの続きなのか明記する

………………………………………………………………………………

※かまいたちの夜風の文章では、「僕」ではなく「ぼく」の方が
  原作に忠実です(強制ではなく推奨)

※ゲームオーバーになったら、直前の選択肢に戻ってやり直しましょう

※誰でも参加できます。
 別にレベルの高い文章じゃなくても大歓迎です。
  どんどん投稿してスレを盛り上げましょう
4テンプレ:2007/04/15(日) 12:40:03 ID:d4WgV99p
【参考】
かまいたちの夜〜AA編〜
http://aa.2ch.net/aastory/kako/1028/10281/1028195077.html
かまいたちの夜AA版〜ドーナツ島のわらび唄〜
http://aa.2ch.net/aastory/kako/1037/10375/1037536178.html
かまいたちの夜 〜AA編〜 Part3
http://aa.2ch.net/aastory/kako/1045/10459/1045925675.html
かまいたちの夜〜戦国篇〜
http://hobby.2ch.net/warhis/kako/1027/10273/1027307722.html
リアル かまいたちの夜(サウンドノベルツクール)
http://www7.ocn.ne.jp/~trance/snt.htm
犬小屋
http://inuhei2004.hp.infoseek.co.jp/
「鳩のなく夜」
http://www.h6.dion.ne.jp/~yatufusa/
かまいたちのペンション
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2693/kamai.htm
万年床
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Bingo/6071/
煉獄-かまいたちの夜2 another-
http://homepage3.nifty.com/varitra/kama2another/index
5テンプレ:2007/04/15(日) 12:40:35 ID:d4WgV99p
【公式】
チュンソフト
http://www.chunsoft.co.jp/
セガ かまいたちの夜×3
http://chun.sega.jp/kama3.html
テレビドラマ版「かまいたちの夜」公式サイト
http://www.tbs.co.jp/kamaitachi/

【その他】
2ちゃんだけのかまいたちの夜(意見・要望・感想)掲示板
http://9028.teacup.com/kamaitati/bbs
8音ラジオ(midi)
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley/8705/
6三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/15(日) 13:25:00 ID:d4WgV99p
前スレ>>736の続き
河村さんだった。その顔は血で染まっていた。そしてきっと、その手は・・・・。

事件は終わったのだ・・・。

午後8時
ぼくたちは屋敷に戻っていた。
生きている全員が今食堂にいる。目の前には、皿に盛られたレトルトのカレーが並んでいる。
予想通り晩ご飯はカレーになってしまった。
ぼく
真理
小林さん
今日子さん
俊夫さん
美樹本さん
可奈子ちゃん
啓子ちゃん
の8人だ。あの『かまいたちの夜』のモデルになった夜の集まりにみどりさんだけが足りない。
7三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/15(日) 13:25:36 ID:d4WgV99p
屋敷に戻ると真理は全員に
「事件は終わりました。後で全ての説明をします」 と告げた。

昼食を抜いたぼくたちは空腹だったから、とりあえず事件終了の宣言を受けて食事を作ることにした。
料理好きの小林さんも厨房に置いてあったレトルトのカレーを作ることに反対しなかった。
レトルトカレーの中では一番人気のある種類だ。全てにコンビニの値札が貼ってある。スーパーより高いのに何でコンビニでこんなに大量に買ったんだろう?
「透。ちょっと地下にお酒でも無いか見てきて」
真理が今日子さんとカレーのパッケージを開けて、鍋に入れ込む作業をしながら言った。
「うん。分かったよ」
昨夜、飲み過ぎたせいで、厨房には缶ビールくらいしか無かった。
シュプールの地下室を思い出す。
あのときは、ぼくがおもしろ半分で覗いて、怪我して俊夫さんに迷惑かけたなぁ。
それで、みどりさんが代わりに吹雪き始めた中で買い出しに行ったんだっけ・・・。
厨房の隣、物置スペースから地下室を降りると、ボイラーや貯水タンクといった機械が置いてあった。
何かが動いてるようだから、発電機もあるのかも知れない。
地下室を見回す。
「ダメだ。何も置いてない。厨房にしか置かなかったんだろうな」
考えてみればキヨさんがここに重い物を置いたら運べるはずがない。そんな面倒な事をする必要もない。
扉もないからどっかに通じてるってわけじゃないだろうけど・・。
ふと、畳半畳くらいの怪しい仕切りが床にあるのに気付いた。鍵穴までついている。
何だろう?しかし、仕切り部分が完全に溶接されて開きそうに無かった。
かなり昔に溶接したらしく、さび付いている。
8三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/15(日) 13:27:44 ID:d4WgV99p
何もなかったのでぼくは落胆して、厨房に戻り真理に告げた。
「そう。とりあえず、飲み物はここにある開いてないペットボトルや缶ビールで済ませましょう」
レトルトのカレーが温まり、ご飯が炊き終わった。
ぼくたちはカレーの鍋や炊飯釜ごと台車に乗せ食堂に運んだ。

みんなが自分でカレーを皿に盛った。
かなり落ち込んでいた俊夫さんも小林さんの「少しは口にいれなさい」という言葉で、本当に少しだけ皿に盛った。
啓子ちゃんは予想通り大盛りだ。

午後8時
全員の前にカレー皿が並び、ぼくたちは誰かの合図を待った。
ちらっと啓子ちゃんの方を見るとつまみ食いでもしたのか、少し減ってる。
「食べようじゃないか」
小林さんの声でみんながスプーンを持つ。
ぼくはカレーをじっくり眺めた。味は中辛だった。ぼくとしては辛口の方が良かった。
よく食べるので、味も具の形もはっきりと分かっている。
何か違和感を覚える。ジャガイモが削れたような変な形だ・・・。違う。少し粉末がついたような感じなんだ。
これは・・・

A、「いただきま〜す」ぼくはカレーを口に運んだ。
B、「ダメだ!!!みんな食べるな!!!このカレーには毒が入っている」ぼくは叫んだ。
9名無しのオプ:2007/04/15(日) 13:37:17 ID:BXx5Yk76
スレ立ても乙です。
Bで。
10三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/15(日) 15:53:00 ID:d4WgV99p
>>10のB
「ダメだ!!!みんな食べるな!!!このカレーには毒が入っている!!」
ぼくは立って叫んだ。
「透?昨日のアレ?」
「違う!!!本当に毒が入っているんだ!!」
ガタンッ
誰かが机に突っ伏した。その人物の目の前のカレー皿に顔が当たり、皿は踊ってカレーは机にこぼれる。
啓子ちゃんだ。
「啓子!!しっかりして!!啓子」
隣にいた可奈子ちゃんが、啓子ちゃんを揺する。
「はき出させるんだ!!」
ぼくは可奈子ちゃんに言う。だが啓子ちゃんは呼吸困難を引き起こしている。
まずい。
いや、意識がはっきりしていないなら、もう逆に押し込まないと吐瀉物で窒息する可能性もある。
ダメなのか・・・。
「啓子!!!啓子!!!目を開けて」
可奈子ちゃんが泣き叫ぶ。
「とにかく動かさないで」
ぼくはなるべく静かに言った。
啓子ちゃんを食堂にあった椅子をいくつか使って横にした。
可奈子ちゃんがタオルで啓子ちゃんの顔を拭く。
「啓子。どうしてつまみ食いなんかするのよ…。こんな時まで食い意地はって」
泣き続けた。
11三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/15(日) 15:53:34 ID:d4WgV99p
啓子ちゃんはまだ生きているようだが、本土への連絡手段が無い今、どうしようもない。
頼みの綱の美樹本さんの船も壊されていた。
「アンタ。もう事件が終わったって言ったじゃないの!!!」
可奈子ちゃんはそう言って真理に詰め寄った。
「…わたしのせいです。まさかレトルトのカレーの中に毒が入ってるとは思いませんでした」
涙を浮かべた。後悔しているのか?
「そう?このカレーを鍋に入れたのは、アンタとその人よね?毒を入れることだって可能じゃないの?」
「そんな…。わたし達、そんな事してません」
真理が泣きながら、言った。
「アンタ達以外に、どうやってカレーに毒を入れることが出来るのよ。レトルトパックなんでしょ?穴が開いてたり開けてたりしたら気付くじゃない。
事件が終わったって言って油断させるためだったのね!!許せない!!!」
「……」

A、「違う。あらかじめ毒を入れておく方法はある」
B、「そうだ。真理と今日子さんが犯人だ」
12名無しのオプ:2007/04/15(日) 16:04:47 ID:LpEaPdHr
A
13名無しのオプ:2007/04/15(日) 16:05:41 ID:LpEaPdHr
まちがえた
BBB
14名無しのオプ:2007/04/15(日) 17:48:53 ID:BXx5Yk76
誰が犯人にしろ、怪しいのは鍋とコンビニのシールか。
カレーは箱にパックが入ってるタイプなのか、レトルトパック自体がパッケージになってるタイプなのか。
それに、わざわざ鍋に中身を移し変えて温めるよりレトルトごと温めた方が手軽だけど。
単にその方がていねいとかおいしいとか、人によって量を自由に変えられるからとか、色々理由は考えられるけど。
15名無しのオプ:2007/04/15(日) 20:46:33 ID:d4WgV99p
ごめん。そこまで真剣に考えるとは思ってなかった。出かけるんで適当に切っちゃったけど、選択肢は完全に推理みたいだね。実はどっちも同じだけど。
そこを推理問題にするとカレーを盛った順とかまで必要になるしねぇ。とりあえず箱じゃない奴ね。
そこまでまともに考えるのなら、個別の殺人事件については後で情報として整理することにするよ。
16三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/15(日) 21:30:35 ID:d4WgV99p
>>11のB
「そうだ。真理と今日子さんが犯人だ」
「透…本気で言ってるの」
「それと同時にぼくも可能性があるし、他の人間の可能性もある。可奈子ちゃん、きみだってその可能性はあるんだよ」
「私が啓子を殺そうとする訳ないじゃない!!!」
「どうやってそれを証明するんだい?」
「私たち親友なのよ。なんでそんな事しなきゃいけないのよ?」
「親友だからってのは理由にならないだろ」
「そんな…」
可奈子ちゃんは押し黙る。
「考えられるのは予め、レトルトカレーのパックに混入してた事だと思う」
「どうやって?パック自体は未開封だったのよ」
「コンビニのシールの下に穴が開いてると思うんだ。箱詰めタイプじゃないから可能だと思うよ」
ぼくは厨房に戻ってゴミ箱を食堂に持って行き、みんなに見せた。
パックを取り出し、値札のシールを剥がす。予想通り、1mm程の穴が開いていた。
「ほら、恐らくここから注入したんだ」
「だったら誰がそんな事したのよ!!!どうして私達が殺されなきゃならないのよ!!」
可奈子ちゃんがヒステリックに言い放つ。
17三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/15(日) 21:31:52 ID:d4WgV99p
「『我孫子武丸』」
真理がポツリとつぶやいた。
「犯人は『我孫子武丸』よ。わたし達をこの島に招待した。
その前に、美樹本さん、香山さん、俊夫さん。一つ確認して良いですか?それから透も」
「何だい?」
「みどりさんの死体の事です。みどりさんの死体は全員で確認したわけですよね」
「ああ。俺たち全員がドラム缶にあった首を確認した。氷が詰まっていたが間違いない」
「わしも」
「俺もだ。俺はその後の事は覚えていない」
俊夫さんがそう言った。ショックだったからだろう。
「それで、わしらが俊夫くんに声かけとったら、急に美樹本くんが倒れて」
「ああ、何かで殴られたんだ。その後は覚えていない」
「振り向いたら、あのコート男が立っとたんや。それでわしも殴られ、何か薬のようなもんをかがされたのか寝てもうたんや」
真理がメモを見ながら頷く。
「首から下はその時あったんですか?」
ぼくはふと疑問に思って聞いてみた。
「いや、分からんわ。氷がつまっとたからなぁ」
「ああ、そこまでは確認する余裕は無かった。何せ俊夫くんが・・・」
「俊夫さんは眠らされた時の事は覚えていますか?」
「分からない。気付いたらみどりの首をだいていたんだ」
俊夫さんの証言はあてにならないか・・・。
「起きた順は?」
真理が尋ねる。
「わしかな?美樹本くんもすぐに起きよったけど」
「それから二人で俊夫くんを起こしたんだが、それが、結局、あの調子だったから」
俊夫さんが申し訳なさそうな表情をした。
真理はしっかりと確認したようだった。
18三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/15(日) 21:32:50 ID:d4WgV99p
「透?みどりさんの死体はあそこで首を切られたのは間違いないのね」
「うん。確実にあそこで切られている。ドラム缶の中で、血の跡も完全にそんな感じだった。
死んでからじゃなく、生きている内に切られたのかも知れない」
「人を入れたドラム缶自体移動させることは?」
「無理だね。重いし、大の大人でも不可能だと思うよ」
「あの小屋のあの場所に置き放しだったのは間違いないって事ね」
「うん。間違いないだろうね。小屋の入り口下に転がしたような跡も無かったし」
「そんなことも見てたの?」
真理が呆れた。たしか濡れていたはずだけど・・。

「だから、結局犯人は誰なのよ!!?『我孫子』ってのは!!」
可奈子ちゃんが焦れて叫んだ。

真理が一呼吸おく。
食堂にいる生存者全員の視線が真理に注がれる。
「…河村亜季です」
真理は静かにその名前を告げた。やっぱりといった表情をする人、驚く人・・・。

そして、真理は真相を話し出した・・・。

A、何も言わず、静かに聞く。
B、疑問を挟みながら真理の推理を聞く。
19名無しのオプ:2007/04/15(日) 22:02:26 ID:BXx5Yk76
>>15
いや、こっちこそごめん。色々深く突っ込んで。
それだけ面白くて奥が深いってことなんだけど。
じゃあBで。
20三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/17(火) 15:47:14 ID:PP5U4FmV
>>18のB
「まず第一に説明しなければならないのは、事件の動機です。なぜ、わたし達をこの島に呼びつけたのか?」
真理がみんなの顔を見ながら、それぞれの反応を窺う。
「みなさんの中に自分が殺される理由があると思う方いますか?」
誰も頷かない。逆にいきなりそんな事を言われて戸惑っている様子だ。
「ゲーム『かまいたちの夜』の登場人物の中で、現実のモデルになったあの日、一人だけいなかった人物がいます」
「河村亜季か・・・」
美樹本さんがつぶやいた。
「ええ。では彼女は何者だったのでしょうか?」
「『シュプール』にあの日宿泊する予定だった客か・・・」
小林さんが何かを思い出すように言った。
「ゲームが出て、それをやるまでは特別な日だった訳じゃない。真理が透くんを連れてきた以外はね」
だから、キャンセル客の名前をいちいち覚えていなかった。
「特に吹雪で急にこれなくなるなんて事は、あの辺では日常茶飯事だからな」
それはそうだろう。交通手段も限られてくるし、『シュプール』は少し行きづらい。
「これを見て下さい」
真理がぼくの部屋に置かれていた新聞記事の切り抜きを取り出した。
「これが今回の事件の動機だと思います」
「交通事故、被害者は…河村 亜季!!!?それにこの日付…」
可奈子ちゃんが真理から切り抜きをもぎ取った。
「はい。わたし達がこの島で初めてあった河村さんは実は接点があったんです」
「交通事故の被害者と加害者か・・・」
美樹本さんがうなる。
「それでも、なんでみんな呼ばれなあかんのや?それに警察は何しとったんや?」
香山さんがそう言うのももっともだ。
「おそらく、有益な証拠は見つからなかったんだと思います。本来ならきちんと捜査するべきだったんでしょうが、河村さんは意識不明、しかも吹雪の中の救出、死んでいた訳ではないから、事故の時間帯も不明…」
「そんな…」
今日子さんが悲しそうな声を出す。
21三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/17(火) 15:48:19 ID:PP5U4FmV
「つまり、今回の事件の動機は『復讐』だったんです。河村亜季の事故に対する」
「それって、おかしくないか?」ぼくは聞いてみた。
「ああ。少し引っかかるな」
「意識が戻って、後遺症が若干あるとはいえ、普通に生活をおくれるくらい回復してるんだ。どうして復讐なんかしようとするんだ?」
「時間はとても大切でしょう?意識のない1年半の間に何かあったのかも知れない。大切な人との別離とか…」
そこまでは、分からないという事か・・・。
「全員を呼びつけたのは、事故の加害者、すなわち復讐の対象となる人物が誰か分からなかったからか?少なくとも『シュプール』の客であったことを除けば・・・」
美樹本さんが真理に聞いた。
「ええ、おそらく…」
ぼくは聞いてみることにしてみた。

A、「ぼく達全員を殺すつもりだったのか?」
B、「あの夜、いなかった人が殺されてるのはどうしてなんだ?」
C、「わざわざ、河村さんがみんなの前に姿を現した理由は?」
D、「河村さんはあの夜いなかったのに、どうやって、あの時の会話の一部を再現したかのようなゲームのシナリオを書くことができたんだ?」
22名無しのオプ:2007/04/17(火) 16:21:47 ID:zzoNGWuY
どれも気になるけどDで。
23名無しのオプ:2007/04/17(火) 16:24:42 ID:vd8ialJ/
うぇあ。
Bを選ぼうとしたけど僅差で負けた!
24名無しのオプ:2007/04/17(火) 16:40:50 ID:zzoNGWuY
>>23
ごめん。Bについては犯人のモノローグで少し触れてたので。まだ隠された真相もありそうだけど。
Aも復讐するべき相手が分かったからみんなを殺さず、毒カレーは始末するのを忘れただけって可能性もあるけど、
本当にそうなのかはやはり今の段階では分からないし。

Cも新聞記事を透の部屋に置いた理由と同じかなあって。
そんなわけでDにしました。
25三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/18(水) 15:41:13 ID:XsOiPjdL
>>21のD
「河村さんはあの夜いなかったのに、どうやって、あの時の会話の一部を再現したかのようなゲームのシナリオを書くことができたんだ?」
「記憶が変わったんじゃないかしら?」
「記憶が変わる?」
「ゲームの中の登場人物が行ったことを、ゲームをすることで実際に自分がそれをした気になったとか…」
「そうかなぁ」
「わたし達はほとんど会話の内容までは覚えていなかった。何について話したか?なんて事までは覚えていても」
「そうだな」「そうかも知れないわね」
「だから、ある程度の想像はついたんじゃんないかしら。実際の事件に照らし合わせ、吹雪や銀行強盗のニュースについて会話したこととか」
真理の言葉にみんなが納得する。
ただ、ぼくだけは違う。なぜなら、ぼくはゲームをしていないからだ。
真理にゲームの説明を聞いたとき、ぼく自身はあの夜を再現した会話があったと思っていた。
普通に考えて、一見の客達が、リビングで集まって会話するような事が想像つくだろうか?
記憶の逆塗りはぼくに関しては行われてはいないんだ。

ここに一つの大きな矛盾が存在している。
26三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/18(水) 15:43:21 ID:XsOiPjdL
「まず、正岡さんの事件から説明しましょう」
大局的な動機についての説明が終わった真理が話を続けた。
「そうだな。今のでは正岡さんが殺された理由は説明できないからな」
「そうです。美樹本さん。だから、これは間違い殺人だったんです」
真理は美樹本さんの方を見ながら言った。
「おいおい。もしかかすると俺が狙われたって事か?」
美樹本さんが苦笑した。
「ええ。事件の動機から推測するとそれ以外考えられません」
「勘弁して欲しいな。俺は事故なんか起こしちゃいない」
ぼくもゲレンデからの帰りに人を轢いた覚えはない。
「先ほど説明したとおり、誰が事故の加害者か分からなかったのね。その理屈は河村さんには関係なかったんでしょう。
河村さんは深夜に行動を開始した。そして、美樹本さんに割り当てた部屋、例の角部屋に侵入した。
寝ている時に襲われたんですから、正岡さんが部屋に招き入れた可能性は無いと思います」
それはもちろんそうだろう。正岡さんを起こしたのなら、そもそも間違って殺す必要もない。
「部屋の侵入時に、ドアノブの鍵とスライド錠が掛かっていたかは分かりません。ただ、少なくとも、殺害後に合鍵を使って部屋を閉めたのは事実だと思います」
「合鍵をもっていたのは彼女自身が『我孫子武丸』、すなわち屋敷の持ち主だからか」
小林さんが話す。
ここでもぼくは口を挟むことにした。

A、「外側からわざわざ、スライド錠を掛けた理由は何?」
B、「そもそも部屋の鍵を閉めた理由は何だったんだ?」
C、「他に合鍵を持っていたキヨさんの犯行の可能性は?」
D、「みどりのさんのマニキュアを部屋の中に置かなかった理由は?」
E、「『我孫子』に正岡さんを殺す動機があった可能性は?」
27名無しのオプ:2007/04/18(水) 16:18:18 ID:rv6NSywL
Eで
28三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/20(金) 15:13:29 ID:NAFE+otX
>>26のE
「『我孫子』に正岡さんを殺す動機があった可能性は?」
「ないんじゃないかしら」
「どうして?」
「だって、正岡さんは飛び入り参加だった訳でしょ。招待すらされてないわけだし…」
何か引っかかる・・。
正岡さんの部屋に何かあるべき物が無かった気がする。ぼく達の部屋にはあって・・・。
そもそもどうして間違い殺人が行われたんだ?
そう、部屋割りのせいだ。だけど・・・。

「正岡さんの事件から犯人を割り出すのは難しいと思います。犯行は深夜でアリバイが確認できませんから」
「私達は一緒にいたんだがな」
小林さんが今日子さんと確認しあう。夫婦は便利だ。普通の事件なら警察に家族の証言はダメだと言われるところだろう。
「俺もみどりと一緒にいたぜ」
真理が首を振った。
「一晩中で無かったのなら、そのアリバイに意味はありません。それに叔父さん達も共犯の可能性がありますから、アリバイに関しては意味が無いと思って下さい」
「真理・・」
スライド錠をかけた理由は何だったんだろう?50年前の事件と同様、ここでも合鍵の存在がキーポイントか・・。

「正岡さんの事件を調べている時に、わたし達は夏美さんの悲鳴を聞きました」
「そうや。あのとき、わしがきちんと夏美と一緒におればよかったんや」
そもそも朝から別行動してたんだから、それは無理というものだろう。
「あの事件こそが犯人を指摘する重要なポイントだったんです」
「1階にいたのは河村さんとキヨさんだけだったからか…」
ぼくは一応確認してみることにした。

A、「具体的な方法は?」
B、「ちょっと時間が足りないと思うんだけど・・・」
29名無しのオプ:2007/04/20(金) 15:16:03 ID:td9YgaCq
A
30三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/21(土) 18:46:44 ID:73Kd9my6
>>28のA
「具体的な方法は?開かずの間が開いた方法とか?」
「まず、開かずの間を開けておくことができるかどうかだけど」
確か昨日の夜にきんぞく詰まって開かないと夏美さんが言っていた。
「あれの説明は簡単にできるわ。昨夜、わたしも確認したけど、鍵穴には何か詰まってたとは思うの」
「だったら、鍵穴を「開」状態に出来ないんじゃないかな・・・」
「いいえ、詰めた物を鍵で押し込む事によって、邪魔な異物を奥に押し出したりすれば、鍵が正常に動くようになるわ」
確かに、それも可能かも知れない。
「でも、あそこをわざわざ犯行現場に選んだ理由は何だろう?」
「夏美さんに『護符が剥がれてますよ』とか言って、あの部屋に誘いこみ、注射をして殺害したんでしょうね」
部屋自体が開いていたのならそうだろうけど・・・。
「部屋に来た、夏美さんは河村さんが注射を持っていることを不審に思い、叫び声を上げた。
一方、河村さんは急いで、夏美さんに毒物を注射して、部屋の扉を閉めて自分の部屋に戻った。
それでわたし達が1階で色々動き回り、そのタイミングに合わせて、いかにもずっと部屋にいたかのように顔を出した。
部屋が最初に開いたときに札が破れ、また、あとは鍵は閉めるだけで十分だった。それができたのはキヨさんとみどりさんを除けば、やっぱり1階にいた河村さんしかいないと思うの」
ただ、重要な問題がある。それだけの作業をしようとしたら、時間が足りないと思う。
それに、ぼくが貼ったシールが剥がれていなかった事は、何を意味するのか?
仮に犯人がシールに気付いていれば、札を破った以上、シールを剥がさないなんて事はあり得ない。
この事件は何か他の事件と違って意図が全くはっきりしない。明らかに異質だ。
そもそも・・・
「そもそも何で夏美さんが殺されなきゃならないんだ?」
「分からないわ。事件について何か重要な事を知っていたとか?」
そうだろうか?
「そうして、後は夏美さんの死体を見て失神したフリをします」
演技だったのか、アレは・・・。
「半狂乱になったと見せかけながら屋敷を脱出、次の人物を殺す機会を伺います」
次の事件か・・・。

A、「キヨさんの事件かい?」
B、「みどりさんの事件かい?」
C、「全員が眠らされた事件?」
31名無しのオプ:2007/04/21(土) 20:08:55 ID:LLx4Zc6b
Aで。
32三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/22(日) 11:41:22 ID:AWKvkmNn
>>30のA
「キヨさんの事件かい?」
「いいえ。キヨさんは既に殺されてたんじゃないかしら?河村さんはそのまま外に出て行ったから・・・何もする余裕が無いと思うの」
「ちょっと待ってくれ。キヨさんは自殺じゃなかったのか?」
小林さんが聞いてきた。今更、何を言っているんだろう。
「自殺じゃないわ。不審な点が多すぎるから」
「じゃぁ、誰がキヨさんを?」
「みどりさんね」
「みどりが!!?」
俊夫さんが急に声を張り上げた。
「どうして、みどりがそんな事をしなくちゃいけないんだ」
「そうだ。真理、それにキヨさんの遺書にはみどりくんを殺したと書いてあったじゃないか?」
「何ですって?オーナー、アンタ、あのとき、みどりが死んでたのを知っていたのか!!」
俊夫さんが小林さんに詰め寄った。
「やめて下さい」
ぼくは俊夫さんを止める。
「そもそも、自殺じゃないなら遺書の内容、存在自体を疑う必要があると思うの」
真理が辛そうな顔をして続けた。
「みどりさんのマニキュアや香水をわざと現場に残し、その上で遺書に既に殺したかのような錯覚させる内容を書いておけば、みどりさんの遺体が発見されない限り、逆にあやしくなります」
自殺を偽装したではなく、自殺を偽装した殺人と断定させるための工作。
「つまり、篠崎くんが共犯者だったと言うのか?」
美樹本さんが真理に尋ねる。シノザキくん?誰だ?
「ええ、あのキヨさんの首つりは遺書に書かれたみどりさん自身の犯行であり、ただし、その指示は『我孫子武丸』すなわち河村さんがした」
シノザキミドリ・・・。
みどりさんの本名は篠田きみどりじゃなく、篠崎みどりだったんだ・・・。
しまった!!!それならもっと早く気づけたんだ。少なくとも誰が『我孫子武丸』なのか、絞る事ができたはずだ。
「重要なのは死期だったんです。キヨさんが殺される前にみどりさんが殺されたと思わせる・・・」
それにしても何だ?何かがくっついた気がする。
重要なのは死期・・・・ジュウヨウナノハシキ・・・。
33三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/22(日) 11:42:22 ID:AWKvkmNn
「みどりがなんで犯人の指示に従わなければならないんだ?」
俊夫さんが真理につっかっかる。
「そこまでははっきりとは分かりませんが・・・。事故の加害者がみどりさんだった可能性もありますね。それで脅迫されたとか」
「みどりが?買い出しに行った時か?あの時に河村亜季をはねたとでも言うのか?」
「今となってはわかりません。ただ、みどりさんを殺した事で連続殺人を止めた事は事実です」
「ちくしょう!!だったらあのとき、俺が買い出しに行けば良かったんじゃないか!!そうすればみどりがこんな目に遭わずに済んだんだろ!!」
「俊夫さんのせいじゃありませんよ」
ぼくは慰めるように言った。
「ああ、君にも責任の一端はあるんだからな!!」
俊夫さんが狂気をやどしたような目でぼくを睨み付ける。
「どういうこと?」
真理が聞いてきた。
「ぼくがシュプールの地下室でねんざをして、俊夫さんに介抱してもらい、代わりにみどりさんが買い出しに行ったんだ」
「そう…」
真理が悲しそうに俊夫さんを見た。

「わたし達が塔の下にいるときに、みどりさんがタイミングを見計らってキヨさんの死体を放り出します」
「あらかじめ鍵が掛かっていたから、塔に昇るにしろ、鍵を壊して侵入するにしろ、外側の窓からロープを使って逃げる時間があった」
現場にいた美樹本さんも思い出しながら口にした。
「ええ、河村さんにできないのであれば、あのとき、所在のはっきりしなかった人物はみどりさん一人しかいません」
「けど、そんなタイミングで脱出をしようとしたら、門の外に誰かいたら一発でばれるよ」
気になるので言ってみた。
「でも、脅迫されたのなら仕方ないでしょ。文字通りのつなわたり成功させるしかない」

A、「外側の南京錠を閉めた理由は?時間稼ぎなら内側の鍵だけでいいはずだ」
B、「キヨさんが殺される理由は何だったんだ?」
34名無しのオプ:2007/04/22(日) 11:48:35 ID:Xh07esE4
B
35三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/22(日) 19:31:37 ID:AWKvkmNn
>>33のB
「キヨさんが殺される理由は何だったんだ?」
「それは・・・キヨさんも共犯者だったんじゃないかしら?自分が犯罪の片棒を担いでいたと思ってなかったかも知れないけど。
結局は口封じのために…」
キヨさんも共犯者か・・・。あり得ない訳じゃない。
いや、『我孫子』に雇われてるんだからその可能性はむしろ大きい。
昨日、厨房で50年前の話を聞いた段階では、誰も死んでいなかったし、特に何も無かったから気にしてないが、人が死んだ以上、最も責め立てられたはずだ。
キヨさんも合鍵を持っていた。
また一つ何かがくっつく。だから、正岡さんの部屋のスライド錠が閉められ、そして、また、閉められたんだ。

「みどりさんは外で河村さんと落ち合い…。そして、殺されました。あの小屋で…。
どうして氷漬けにされたのか…。それはもうはっきりとしてます。自分が味わった苦しみをはねた本人にも味あわせたかった…」
おかしい。やっぱりおかしいんだ。みどりさんの事件はあまりにもおかしすぎる。
「事故の犯人をみどりさんだと判断し、その復讐を終わらせた河村さんは、崖から身を投げました。これが今回の事件の真相です」
沈黙が食堂を包む。全員が事件を振り返っているのだろうか・・・。
犯人はもういない・・・。
それは安堵の沈黙でもあったかもしれない。

ぼくがそれを打ち砕かなければ・・・。
36三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/22(日) 19:32:23 ID:AWKvkmNn
「なぜ、ぼく達は全員眠らされた?」
ぼくは真理に聞いた。
「えっ?」
「俊夫さん達が発見したみどりさんは既に死んでいた。みどりさんを殺した後なら、ぼく達を眠らせるような真似をしなくても良かったはずだ」
「自殺する時間が欲しかったとか?」
「崖から飛び降りるだけなら誰にも邪魔されない。首つりと違って時間はかからない」
ぼくにはこの事件の構図が浮かび上がっていた。犯人には時間が必要だった。
「このカレーにしたってそうだ。本当に全員を殺すつもりだったから、保険として恐らく全てのカレーに毒を混ぜたんだ。自分は食べるフリをしてみんなを殺すつもりだったんだ」
カレーを食べるフリ。ごはんだけを食べたりするというやり方もある。
「河村亜季さんは『我孫子武丸』じゃない。本当に1年半も入院していたのならゲームのシナリオなんて書けやしないんだ」
「あっ」
これが大きな矛盾だ。だから・・・。
ぼく達が殺される動機が『河村亜季の事故』にあるのなら・・・。
重要なのは・・・。

「犯人は・・・。みどりさんや正岡さんをあんな目に遭わせ、夏美さんとキヨさんを殺した人間はこの中にいます」
ぼくは言った。
そう、犯人は※※※※だ。

犯人名入力※※※※
37名無しのオプ:2007/04/22(日) 19:46:19 ID:s/CLv42a
きょうこ
38名無しのオプ:2007/04/22(日) 19:49:52 ID:UBFWSf0V
きょうこ
39名無しのオプ:2007/04/23(月) 01:40:06 ID:LF8ZP5Bx
おもすれー
40名無しのオプ:2007/04/23(月) 14:59:17 ID:BYarlWWP
かまいたち
41名無しのオプ:2007/04/23(月) 22:15:42 ID:HcbUChxT
面倒だから選択肢にしよう。
42三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/23(月) 22:16:57 ID:HcbUChxT
>>36
犯人は今日子さん・・・?
ではない。
今日子さんには出来ないことが多すぎる。
もちろん、小林さんと一緒にいたという証言や失神したことが狂言だったという可能性もある。
その場合、小林さんも怪しい。
しかし、それならもっと色々やれたはずだ。
完全に犯人に的を絞らせないような・・・。
今、ぼくが犯人だと思っている人物は食堂にいる人物、ただ一人。
「開かずの間の事件」は真相を知る上で最も重要だ。

しかし、犯人を知ることに、それは全く意味がない。
他の事件だけに目をやらなければいけない。

犯人が残したぼく達に分かる程度の手掛かりは恐らくもう消されている。警察の捜査が入れば、犯人は分かると思うが、その頃にはとっくに逃げているだろう。
なぜなら、ぼく達が警察に通報するまでに、まだ、相当の時間がかかるからだ。
なら、ここで終わりにするしかない。
いくつものトリックを使った犯人が、どうしても消せない事実。
犯人が分かることによって、暴かれるトリック。
真理は犯人にとって優秀な駒であったかも知れない。
そして恐らく、ぼくがその役割を与えられるはずだった。
だから、ぼくの部屋に新聞の記事を入れておいたんだ。
「犯人がゲームと同じように探偵役をぼくに仕立て、ぼくが犯人河村亜季を指摘する」
だが、ぼくは推理をしなかった。事実だけをただ、頭に入れていた情けない小さな存在だ。
43三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/23(月) 22:18:31 ID:HcbUChxT
そう、ぼくを含め探偵役以外の人物は、ただそこに在った石のような存在だ。
命すら盤上に並べたゲーム・・・。
犯人は恐らく勝ったのだろう。
だから、ぼく達は生きている。

「氷塊」そして「氷解」
食堂にいる全員を見て、そして犯人に目をやる。
そうだ。犯人は・・・。

A、 美樹本洋介
B、 久保田俊夫
C、 香山誠一
D、 渡瀬可奈子
44名無しのオプ:2007/04/23(月) 22:31:13 ID:GD77c1d1
一番のりー…って責任が重過ぎて選べないので次の人ドゾー
45名無しのオプ:2007/04/23(月) 22:33:39 ID:woF8zkBy
46名無しのオプ:2007/04/24(火) 07:36:52 ID:jtnEs5Tv
ついに4択で来ましたか。自分が予想してた犯人と全く違うしorz
今までにも抽出して何回か読み直してるのだけど、
4人それぞれを犯人と仮定してまた読んでみよう。
47推理:2007/04/25(水) 19:40:43 ID:0zIncUZx
第一段階
@正岡の殺害⇒全員可能⇒犯人特定不可
A開かずの間の事件⇒川村さんだけ可能⇒ただし透の情報で全員不可能⇒犯人特定不可
Bキヨの事件⇒みどりのみ可能⇒トリックを使用することで全員可能⇒犯人特定不可
Cみどりの事件⇒みどりが生きていたと仮定すると外にいた川村さんのみ可能⇒ただし、氷は?
       ⇒氷、その他の情報からみどりの殺害が深夜、屋敷内で行われたとしたら?⇒なぜ首を切られていたのか?⇒首だけなら
       ⇒あの人しかいない
       ⇒持ち運ぶのも不可能なほどのいっぱいの屋敷の氷は屋敷で捨てればいい⇒では氷はどこから?⇒あそこから
D川村さんの殺害⇒小屋を閉じ込めた3人以外可能⇒小屋にいた3人でもトリックを使えば可能⇒犯人特定不可

となるとCがキーポイントになる。
そう考えるとあっさりと答えが出てしまったのだ。「氷解」って奴だ。ただ構成が緻密なのか真相がすごいよくできてると思った。
犯人は二人いたんだね。共犯のようで共犯でないような。
犯人A⇒我孫子武丸⇒目的は河村亜季の復讐⇒全員殺害
犯人B⇒殺害阻止?⇒我孫子サイドの人間および共犯の殺害⇒犯人A+キヨさん
で、推理を最初から組みなおす。
48推理:2007/04/25(水) 19:55:41 ID:0zIncUZx
@正岡さんの殺害
殺す相手を間違えた理由は?⇒部屋を交換したから
透⇒何か引っかかる・・。
正岡さんの部屋に何かあるべき物が無かった気がする。ぼく達の部屋にはあって・・・。
そもそもどうして間違い殺人が行われたんだ?
そう、部屋割りのせいだ。だけど・・・。
⇒無かった物は?→正岡さんの部屋の鍵?
犯人A⇒顔の辺りまで布団を掛けていたのを好都合とばかりに、確認もせず、喉元にナイフを突き立てたのだ。
⇒布団を顔の辺りまでかけていたから?⇒透が調べたときには布団はなぜかベッドの下に。
A開かずの間の事件
⇒まったく開いてない⇒少なくとも透がシールを貼った時からそこにいた?
⇒夏美の悲鳴?⇒部屋が閉まっていたらそこまで聞こえるのか?⇒違う人物が出した声?
Bキヨの事件 犯人Bの犯行と仮定して
横一文字の跡+ゴムバンド+「アレ」でできるかも
全員可能だが透のおかげで犯人Bが一番可能性が高くなっている?(ほかの人間は犯人Bから盗むしかない?)
Cみどりの事件 
殺されたのはモノローグの時と同じなら⇒犯人Bが首と服を外に運ぶ⇒時間が結構余裕あるので、ドラム缶に氷を詰めて首を乗せてお帰り
犯人Aの登場時に犯人Bも気絶したふりをする。
犯人Bが犯人A眠らせ着替えさせてドラム缶内で殺害⇒コートを着て、島中の人間を眠らせる。
啓子の発言「あたしの真後ろにトイレの鏡にゲームの田中さんが映ってた!!!コートのボタンを上までしっかり閉めてた!」 ⇒鏡に映ったコートの上まで見えた。⇒背が高い?

犯人Aの考察
夏美の声⇒開かずの間の事件の前 それと香山さんが小屋で聞いた?
夏美⇒厚化粧、金髪、関西弁
河村⇒化粧なし、ショートカット、めがね、発音のおかしい標準語
重要なのはシキ⇒秋が来ないと夏が泣いてござる?

よって犯人Aは
って、ところでどうなんでしょうか
49名無しのオプ:2007/04/25(水) 21:39:09 ID:7HsY+8SW
まぁ所詮は脳内ストーリーやし、他の人の話の方が気になる。
50三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/25(水) 21:48:12 ID:7HsY+8SW
>>43のB
ぼくはさっと食卓に飛び乗り、くるっとターンをして決めた。
「犯人はあなただ。俊夫さん!!」
「なんだとっ。なんで俺がみどりを殺さなきゃいけないんだ」
「夫婦喧嘩ですよ。ほら犬も食わないって奴です」
「意味が分からないわ。透?」
「ぼく達は俊夫さんとみどりさんの夫婦喧嘩に巻き込まれたんだ」
「なんでみどりさん以外の人間が殺されるの?」
真理が不審そうな顔をする。
「巻き添えさ」
ぼくはニヤリと笑った。
「ふざけるな!!!」
俊夫さんは叫ぶと、マチャアキのようにテーブルクロスを思い切り引いた。

ぼくはテーブルの上で派手に転び、後頭部を打った。
そのまま、薄れていく意識の中で思った。
そうだよなぁ。俊夫さんじゃ出来ないことが多いなぁ。
誰かが笑った気がした。
犯人だったんだろうか?

終「滑り」
コンティニュー>>43のAorCorD
51名無しのオプ:2007/04/25(水) 22:05:27 ID:MPolyP1q
Dでお願いします。
52三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/25(水) 22:51:57 ID:7HsY+8SW
>>43のD
犯人は可奈子ちゃんだ。
実は啓子ちゃんと河村さんの三人で計画を立てて、ぼく達を殺そうとしたんだ。
あのゲームに仲良し三人組として登場してたらしいって事には意味があったんだ。
だからぼく達は復讐されるんだ・・・。
それに三人なら、何だって出来そうな気がする。

「犯人は可奈子ちゃん。キミだ」
「はぁ?何ソレ。何であたしが啓子を殺すのよ」
「違う。本当は殺したかったんじゃない。啓子ちゃんが間違って食べちゃったんだ。
毒を入れたことを忘れて・・・」
「どこまで食い意地が張ってるのよ。いい加減な事言わないで!!!」
「だって、そうとしか考えられないじゃないか?二人一緒にいたようにみせかけて実は個別に行動してたとかさ」
「透?夏美さんの事件はどうなるのよ?」
「あれは別の話だよ。あの事件は真理の言うとおりだけど鍵は開けていないんだ」
シールの事がある。あれは多分トンネル効果だ。廊下で殺してトンネル効果が起きたんだ。
「じゃぁ小屋で俊夫さん達を襲ったのは?」
「河村さんさ。三人はグルだったんだ。それで仲間割れして河村さんを殺したんだよ」
「はぁ・・・・」
真理が大きなため息をついた。
「で、その説で行くと屋敷の外にいたみどりさんを殺したのは河村さんで、みどりさんは三人に脅迫されてた訳?」
真理だけでなく、みんな不機嫌そうだ。
「納得できない?正岡さんを3人で殺して、夏美さんを1階にいた河村さんが殺して、キヨさんを今日1日見かけなかったみどりさんに殺させ、みどりさんを河村さんに殺させ、ついには河村さんを殺した。
そしてカレーでみんなと啓子ちゃんを殺そうとした。犯人はキミしかいないんだ!!可奈子ちゃん」
ぼくは正しいと思うんだけど・・・。
現実はそんなものなんだ。小説やゲームとは違うのだ。
53三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/25(水) 22:57:18 ID:7HsY+8SW
「どうやって氷を外に運んだのよ?河村さんは何も持っていかなかったのよ」
「雹が小屋の中にふったのさ。おっともちろん。屋根を貫通したなんて無茶は言わない。
昨日のかまいたちの夜の風の強さを体感しただろう?あんな風が雹を押し込んだんだ」
「小屋中に氷は無かったけど?」
真理が疑わしそうな目つきで言った。
「それに普通のブロックアイスだったぞ」
俊夫さんがそう言った。確か美樹本さんもさっきそんな事言ってた。だが、ぼくは反論できる。
「そういう形の雹だったんですよ!!」
決まった・・・。
これで真理もベタ惚れに違いない。

ぼくはニヤリと笑った。誰もあれだけの氷を運ぶのは不可能だ。
河村さんにしたって屋敷を出てからそんなに時間が経っていた訳じゃない。
俊夫さんや香山さんが見たときはドラム缶一杯だったらしいし。製氷器の中の氷の量も相当なものだった。あれはキヨさんが不注意で溶かしちゃったんだ。
今日1日、外に出てないからって犯人じゃないと決めつけるわけにはいかない。

満足したぼくは空腹感を覚え、目の前にあったカレーを口に入れた。
ああ、うまい。うますぎる。
うま

終「最後の晩餐」
コンティニュー>>43のAorC
54名無しのオプ:2007/04/26(木) 00:03:08 ID:j1SXzIp6
Cのような気がするので
Aから選択します
55名無しのオプ:2007/04/26(木) 02:10:47 ID:tpir7wSw
>>47
正岡の殺害である程度絞れる
動機が「交通事故の復讐」の類のものなら、という前提条件つきだけど

確か部屋割りを決めたのは『我孫子』
裏で面識ない限りは正岡が閉所恐怖症だなんて知る由もない⇒ミッキーが外れる
根拠は、自分でわざわざトリック使うための場所に行くはずがない

また、正岡を殺す予定は別にないんだから、正岡とミッキーが部屋を替わったことを知らない人も
容疑者から外れるんじゃないかな
知らないことの証明は難しい(嘘をつけば済む話)けど

残った2人からなら、答えは、香山=我孫子だね
56名無しのオプ:2007/04/26(木) 07:14:06 ID:4idDzzB8
>>55
気になるのは動機なんだよね。河村亜季の”為”の復讐なら彼女を殺す必要はない。
もちろん彼女が確実に死んでいて、河村亜季を殺した犯人が別にいないという前提でだけど。

「”人”の人生を奪って」というのが本当に河村亜季を指してるのかも不明。
犯人本人か犯人の身内の事かもしれないし。
あと、透が河村亜季に見覚えがあるというのが伏線かと思ってたのだけど、
どう考えても香山さんと美人の部類に入るらしい河村さんが似てるとは思えないから除外してたw
似てるのは春子さんでもいいんだよね。仲が険悪になってたとか、慰謝料がどうとかもカモフラージュだったとか?
57名無しのオプ:2007/04/26(木) 07:21:10 ID:4idDzzB8
あと香山さんが犯人だとしたら、夏美さんはみんなが部屋に入った後に殺された事になる訳か。
香山さんが夏美さんを騙して悲鳴などの演技をさせたか、
声はトリックで睡眠薬などで眠らされてたのかは不明だけど。
夏美さんがシールをはがさずにどうやって部屋に入ったのかも分からないけど、それもじきに明かされるか。
58名無しのオプ:2007/04/26(木) 19:37:05 ID:UpdxiRmB
実は透がシールつけた扉に関してはちょっと考えてることが

実は蝶番の方から開く扉だった、という罠…はないかな?w
59名無しのオプ:2007/04/26(木) 21:33:42 ID:BWv3/KRO
みんな凄いな。
自分はミステリ自体あまり読まないから、到底そこまで推理できないよ。
作者さんは予め犯人(動機もトリックもだけど)を決めて書いてるのかな?
こんなに予想されたらやりにくくならないの?
60名無しのオプ:2007/04/26(木) 22:11:47 ID:YJdBVnMY
最初から犯人もトリックも動機もストーリーの時系列も決まった状態から書いてるよ。やりにくいというより読む人が気にならないなら別に書く分には全然問題ないかなぁ。
でも、まさかこんなに推理されるとは思ってなかったんで、ちょっと恥ずかしい。読み返してもああすれば良かったとか後悔してるし。
本当に大した事ないので、正直申し訳ないかと。特に現場の描写とかもっとしっかりやっとくべきだったし。大雑把すぎる。
61三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/26(木) 22:38:07 ID:YJdBVnMY
>>43のA
「犯人はアンタだ!!美樹本さん!!」
ぼくは美樹本さん・・・美樹本に向かって言った。
美樹本は何も言わずに、ニヤリと笑った。
「どうしてなの?透?どうして、美樹本さんが犯人なの?これはゲームじゃないのよ?」
真理が不思議そうに聞いてきた。ゲーム?どういう意味だ?
「誰が犯人なのか最後まではっきりと分からなかったんだ・・・」
ぼくは正直に言った。それは事実だ。
「犯人は・・・美樹本・・・さんは誰もが可能である状態で犯罪を犯そうとしてたんだよ。あるいは誰かしか不可能だっていうね」
「それが河村さんであり、みどりさんであった訳?」
「そうだよ」
あまりにも厄介だった。
トリックを使えば一人だけ可能・・・。
そんな簡単な事じゃない。
トリックを使えば誰でも可能・・・。
それがあまりにも難しすぎて、結局警察が見つけるであろう証拠から犯人を割り出すほかないとぼくは思っていた。
真理の推理を聞くまでは。
62三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/26(木) 22:39:58 ID:YJdBVnMY
パチパチパチパチ
急に拍手が鳴る。美樹本だ。やっぱり、この男は殺人をゲーム感覚で楽しんでいたんだ。
「いやぁ。素晴らしいね。さすがは透くんだ。キミにとっては何が決め手だったんだ?」
ニヤニヤと笑いながら、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「余裕あるんですね?美樹本・・・さん。自分のした行為がそれほど満足ですか?」
どうして、こんなに余裕があるんだ?

「コイツがッ・・・。夏美を殺したんか?ホンマにお前が犯人なんか?」
香山さん・・・。
「ええ。その通りですよ。俺が夏美を殺しました」
挑発するかのように笑いながら言い放つ。
香山さん、本人は気付いてないだろうけど、今生きている中ではこの事件のもう一人の重要人物だ。
多分、ぼく達、石ころと同じ立場の人間ではない。
「ちくしょうっ!!夏美の仇取ったるでぇっ!!」
香山さんがカレーのスプーンを持って急に走り出し、美樹本に突進していく。
美樹本が何か黒い物を握っているのを捉える。
マズイッ

A、「香山さんっ!!!やめろっ!!」ぼくは香山さんに体当たりして吹っ飛ばした。
B、「うおぉぉぉぉぉ!!」ぼくも美樹本に向かって頭突きで突進した。
C、もうダメかも分からんね。香山さんを諦めた。
63名無しのオプ:2007/04/27(金) 00:11:50 ID:ugXAxozf
だぶんCが正解なんだろうと思いつつ、ここはBで一旦クールダウンしたい。
64名無しのオプ:2007/04/27(金) 13:27:17 ID:KfXYGghd
あれ?本当に美樹本さんが犯人なの?
透が真理の部屋を訪ねようとして殺されるバッドエンドと、
その後の犯人のエピローグで絶対違うと思ってたのに。
本当の犯人(香山さん)を動かすための嘘?
65名無しのオプ:2007/04/27(金) 18:55:03 ID:ugXAxozf
メル欄に書いた事が重要ポイントだと思ってるんだけど、
ミスリードに利用するのが凄く面白い着眼点だと思う。
ここでは今までトリックと展開の妙が重視の作品が多かった気がするので
三日月島真相編って珍しいタイプの作品だと感じてる。
全部じぶんの勘違いかも知れないけどw
66名無しのオプ:2007/04/27(金) 20:27:48 ID:KfXYGghd
>>65のメル欄にも何らかの意味があるとすると、
透に探偵役をやらせようとしたのにも意味がある事になるね。
実は真理に推理を丸投げするような選択肢を選んだのは自分なんだけどw、
そうせずに透がそのまま推理をしてたらまた違った展開になってたのかな?
67名無しのオプ:2007/04/27(金) 20:28:51 ID:KfXYGghd
>>66を書いて思ったけど、犯人は>>65のメル欄の事実を知ってるのかな?
68名無しのオプ:2007/04/27(金) 20:49:35 ID:IdE87JeJ
ゲームはやってるものと思ってるはず
三日月島の招待状にゲームも添えてたような
69名無しのオプ:2007/04/27(金) 21:02:52 ID:+Cyk7Xvc
>>64
ごめん。納得いくかどうかは分からないけど、それは嘘ではないよ。ただ、透がその時のその犯人の行動や心理、パラレルワールドも全く知らないだけで。
透は正岡さんの事件で犯人を除外も断定もできてないってことで。今は推測してるけど。
まぁ、でも、とりあえず終わった後に、いくらでも叩いて貰えばいいので・・・。
70三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/27(金) 21:09:33 ID:+Cyk7Xvc
>>62のB
「うおぉぉぉぉぉ!!」
ぼくも美樹本に向かって頭突きで突進した。
「透っ!!!!!!」
真理が悲鳴をあげる。
何と無く頭突きが冴えてるような気がする。まるで既視感を感じるくらい自分の頭突きの体勢は素晴らしい。
今なら扉すら破壊できそうだ。
今のぼくには頭突きの神様ジネディーヌ・ジダンが舞い降りてるんだ。
今ならどんな相手でも倒せる。
やってやるさ。

パァンッ
乾いた破裂音と共に頭に痛みを感じ、景色が一瞬で消えた。

終「頭突きの神様」
71負馬投票券 ◆xdsUui9gxA :2007/04/27(金) 21:36:26 ID:IdE87JeJ
頭突きしたら必ず死ぬなw
わかってたけど
72名無しのオプ:2007/04/28(土) 00:49:31 ID:2COIbEGL
>>69
いや、こっちこそごめん。
全て読む前に今まで読んだ事だけで判断して勝手に色々書いて。しかも全く見当違いな推理。
パラレルワールドについては、本作かま3みたいに展開によってはある人物が殺人鬼になったり何も犯罪を犯さなかったり、
今回の話でいうと人殺しなどしそうもないキヨさんが透が間違った行動を起こすと殺してしまったりとかの事かな?
73名無しのオプ:2007/04/28(土) 01:20:02 ID:zk0rM4TG
ここまで面白い流れで来て、オチを読んだら叩きたくなる作品て
どんだけアクロバティックなトンデモオチなんだよwと
逆に変な期待をしてしまうぞw
と、いうのは冗談として、マジで面白いし楽しませて貰ってるから
既にかなりの満足感だよ。
余り心配しないで予定通りに完結まで読ませて欲しいです。
次は>>62のB以外の選択肢を選ぶのでいいのかな?
74名無しのオプ:2007/04/29(日) 12:18:57 ID:js/ep/vM
ごめん。書き忘れてた。誰か>>62のAかC選んだって
75名無しのオプ:2007/04/29(日) 14:10:12 ID:tx7QDRDq
じゃあCで
76三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/29(日) 20:54:21 ID:js/ep/vM
>>62のC
パンッ
何かの破裂音がした。
香山さんはその場で、どさりと尻餅をついた。
「何やソレ」
青ざめた顔で美樹本の手を注視した。
ぼくもソレを見た。
拳銃だった。テレビのサスペンスドラマなどでみかける物だ。
「おっと、すいませんね。外してしまって、慣れてないんですよ。あっはっはっは」
美樹本は笑いながら、銃身を玩ぶ。
これが奴の余裕の正体だったのか。
「香山さん。落ち着いて下さい。美樹本・・・さんはぼく達を殺すつもりも無いと思います」
ぼくは香山さんに説明した。
「ほう。どうしてだ?俺は二人も殺してるんだ。二人殺す三人殺すも変わらないぜ」
二人・・・か?この状況で嘘をつくとは思えない。
となると計算上は美樹本が殺したのはあの二人だけという事になる。
『かまいたちの夜』の登場人物でないあの二人だ。
77三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/29(日) 20:55:51 ID:js/ep/vM
「本当に殺すつもりならもうとっくに殺してるんじゃありませんか?」
殺すチャンスは十分にあった。ぼく達は全員眠らされていたんだ。
「まぁ。そうだな」
美樹本はゆっくりと歩きながら、椅子を扉の位置まで運んだ。
背中を見せながらだったが、ぼく達は美樹本に近づくことができないままだった。
扉の前に椅子を置き、ふてぶてしく座る。
「さて、予定が変わってしまったな。この状態で一晩過ごさないといけなくなった」
「…どういう事ですか?」
真理が聞いた。
「本当は事件が、真理くん、キミの推理で終わり、俺達はゆっくりと今晩休む予定だった訳だ。
だが、透くんがここで名探偵になってしまったので、それが不可能になった」
「明日の早朝、みんなが寝ている間にクルーザーで逃げる・・・。その予定が変更になった。そういうことですか?」
ぼくは美樹本に言った。
「やっぱり気付いていたのか?クルーザーが実は故障してないことに」
「ええ。そうだと思いましたよ。そうでないと犯人は島から出ることは出来ませんからね」
「えっ透?どうして、明日には迎えが来るんじゃないの?」
「迎えの船は来ないんだ。これは想像でしかないけど・・・」
たしか昨日、船長は
『ああ、本当はこれで終わりのはずじゃが、何でも仕事の都合で遅くなるらしいの。全く面倒な事じゃ。別料金貰わんとなぁ』
と言ってた。
「船長は仕事が全て終わったから正岡さんを運ぶのを別料金と言ったんじゃないのか?」
「えっ」
「船長は正岡さんが美樹本洋介だと思ってたんだ。違いますか?」
ぼくは美樹本に聞いてみた。
「そうだろうな。それで人数は正しいからな」
人ごとのように言った。
「そもそも飛び入りって事はぼくらの中に情報提供者がいるって事だ」
「それは我孫子武丸…つまり美樹本さんて事なの?」
「そう考えると辻褄が合わない。なんで殺人をするというのに無関係な人間にそんな情報を流すんだ?」
78三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/29(日) 20:59:37 ID:js/ep/vM
「おいおい。そんな説明は別にいいだろ?」
美樹本が少し不機嫌そうに言った。
「とりあえず、全員そっちの壁に並べよ」
拳銃をちらつかせながら、美樹本に一番近い位置の腰が抜けた香山さんに近づき肩を貸して抱える。重い。
「みんなで一斉にかかれば、お前なんか・・・」
俊夫さんが歯ぎしりしながら、美樹本に言葉を吐き捨てる。
「やれよ。面白い。やってみろよ」
「俊夫さん。止めて下さい。美樹本・・・さんは殺すつもりはないと思いますが、向かってきたら平気で殺すと思います」
ぼくは俊夫さんに言った。
「ああ、その通りだ。透くん、キミは物わかりが良くていい。だから、探偵役に選んだんだが、用意したシナリオじゃなく真実を見破るとは思ってなかった」
「探偵役?随分と上から物を言うんですね?思い通りにいかなくて負けたなんて思ってないんですか?」
「負けてないのはキミも知ってるだろう?この状況でも勝ちは勝ちさ。たった一晩のシナリオが変わった。それだけだよ」
「さっきの言葉を訂正して下さい。ぼくは名探偵じゃない。ぼくを持ち上げて、自分の犯罪の評価を上げようとしても意味がありませんよ」
「はっはっはっ」
美樹本は笑いながらも、目だけは真剣だった。ぼくはゆっくりと香山さんを壁際に連れていく。
79三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/29(日) 21:01:51 ID:js/ep/vM
「夏美〜、夏美〜」
香山さんの泣き声、震え・・・無念さが肩越しに伝わってくる。
(香山さん?美樹本の持っている銃って何か分かりますか?)
ぼくは泣きやむのを待ち、香山さんに聞いてみた。ぼくにははっきりとは分からない。ぼくの声に香山さんは反応してくれた。
(・・・恐らくマカロフや。比較的、簡単に手に入る)
(装弾数は?)
(8発やな。わしもやんちゃやった頃に撃った覚えがあるで)
アンタ、昔何してたんだ?
それにしても8発か・・・。今撃ったから最大でも残りは7発。
ぼく
真理
小林さん
今日子さん
香山さん
俊夫さん
可奈子ちゃん
啓子ちゃんを除くとちょうど7人だ・・・。
急所を貫かれなければ良いと言っても、貫通でもしたら手当もできないこの島では死は免れない。
下手に動くと命取りだ。
一晩、この状況で耐えるしかないのか?
ぼく達は言われたとおりに壁に並ぶ、美樹本との距離はかなり遠い。
可奈子ちゃんも泣きながら、並んだ。
80三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/29(日) 21:02:21 ID:js/ep/vM
あっ
一人だけ、いた場所から動いてない人物がいた。俊夫さんだ。
「お前がみどりを殺したのか・・・」
わなわなと震え、顔は怒りで真っ赤だ。
「・・・早く並べよ」
感情のこもらない声を投げかけ、美樹本が俊夫さんに銃を向ける。
「透くん。俊夫くんを何とかしてやってくれ。キミだけ動いて良いぜ」
ぼくは俊夫さんに近づく。
「透…」
真理に向かって、大丈夫だと言うように頷いた。
「俊夫さん・・・。いきましょう」
俊夫さんの腕を引く。
「はなせっ!!!ゆるさねぇ!!!」
ぼくの腕を振り払い、美樹本に向かって歩き出す。
「死んで貰うか・・・」
美樹本がため息をついて、引き金に指をかけた。

A、「ダメだっ!!!俊夫さん!!」ぼくは俊夫さんに後からタックルした。
B、「俊夫さん!!止めろ!!」ぼくは俊夫さんに向かって頭突きをした。
C、もうダメかも分からんね。ぼくは俊夫さんを諦めた。弾数減るしね。
D、「みどりさんを殺したのは美樹本さんじゃありません!!」ぼくは俊夫さんに向かって叫んだ。
81三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/29(日) 21:10:08 ID:js/ep/vM
>>78訂正
拳銃をちらつかせながら言った。
ぼくは美樹本に一番近い位置の腰が抜けた香山さんに近づき肩を貸して抱える。
82名無しのオプ:2007/04/29(日) 22:41:31 ID:/cf6071p
ここはDで。
83名無しのオプ:2007/04/29(日) 23:02:00 ID:lTYErqNL
>「犯人は・・・。みどりさんや正岡さんをあんな目に遭わせ、夏美さんとキヨさんを殺した人間はこの中にいます」

>となると計算上は美樹本が殺したのはあの二人だけという事になる。
>『かまいたちの夜』の登場人物でないあの二人だ。

自分の弱い頭ではもう訳が分からなくなってしまったw
夏美さんとキヨさんを殺したのは美樹本で確定で、あとの二人は殺そうとする前に他の人物が殺してしまった。
でも原因を作ったのは美樹本=我孫子に変わりないからって事?
そして殺人事件に関しては共犯ではない複数犯って事でいいのかな?
84名無しのオプ:2007/04/30(月) 00:35:21 ID:+qAd89br
>>83
そういうことなんじゃないかな

でも、最後に亜紀を殺した人は…?
85名無しのオプ:2007/04/30(月) 00:52:39 ID:CgsaIr5u
透も亜紀の名前だけは出してないんだよね。亜紀は死んでない、もしくは自殺説濃厚?
本物の河村亜紀は入院した後に亡くなってて、島にいる亜紀は彼女の振りをした別人の可能性もある?

流れと他の人の推理からすると亜紀と夏美さんが身内の気がするのだけど、
それに美樹本も加わるのかな?身内だからこその色々な確執や恨みもあるというか。

そして、「あの夜にいた人たちを全員殺し、それ以外の人物を殺す事も厭わない」犯人Aと、
「目的の人物のみの殺害、そして犯人Aの(自分もターゲットに入ってる)連続殺人を止めるのが目的?」の犯人B=我孫子=美樹本?

夏美さんが言ってた怨霊や、50年前の事件の真相も気になるのだけど。
86三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/30(月) 14:28:04 ID:GpfIaSQq
>>80のD
「みどりさんを殺したのは美樹本さんじゃありません!!!」
ぼくは叫んだ。
俊夫さんの動きがピタリと止まる。
「どういう意味だ?・・・君がさっき『みどりと正岡をあんな目に遭わせた』と言ったじゃないか?」
「殺したとは言ってません。そのみどりさんと正岡さんに関しては誰が殺したかまでははっきりしてなかったんです」
「・・・・。あんな目に遭わせたってのはどういう意味だ?」
背中越しに怒りが伝わってくる。
「・・・みどりさんの首を氷漬けにしたのは確実に美樹本・・・さんだった。それは間違いありません」
「くそっ。何が何なんだ?お前ら二人揃って巫山戯てんのか?」
「・・・・・」
「ふん。まぁいい。あっちにいけよ」
美樹本が俊夫さんに向かって言った。
「っ、くそっ!!!」
俊夫さんがこちらを振り向く。肩越しに美樹本が銃を構えている。引き金に指がかかったままだ。
しまった!!!!!
ぼくは何も考えずに走り出した。俊夫さんの驚いた表情を捉える。
パンッ
そのまま俊夫さんにぶつかったのと、肩に痛みを感じたのと、破裂音を聞いたことはぼくには同時だった。

「いやっ透っ!!!」
真理の声が背後から聞こえる。足音が聞こえる。
「動くなッ!!!お前らは分かってないのか!!?さっきも言っただろ?
俺はお前らを殺すのは別に構わないんだぜ」
「殺すなら殺せば良いじゃないの!!?蛇の生殺しのような真似して!!啓子までこんな・・・」
「おいおい。まだ分かってないのか?とにかく命が欲しかったら動くな。いや、他の人間の命も守りたかったら・・・な」
87三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/30(月) 14:29:33 ID:GpfIaSQq
ポタッ
肩から血が落ちる。美樹本の銃弾がかすったの肩の上、幸い動脈は外れた。
とりあえず、そのうち血が乾いて、栓の役割を果たすはずだ。死ぬことは無いと思うけど・・・。痛い・・・。痛すぎる・・・。
「分かってるのか?お前らのせいで透くんが怪我をしてんだ。おとなしくしろよ。そうすれば命だけは保証してやる」
「透くん・・・。すまない。俺がかっとなって」
俊夫さんが身体を起こしながら謝る。
「俊夫さんのせいじゃありません。美樹本・・・さんと『我孫子武丸』のせいですよ・・」
ぼくは痛みをこらえながら、何とか強がった。
「ほぅ。面白い。俊夫くん、透くんを椅子に座らせて壁の所に行けよ」
俊夫さんはぼくの身体をゆっくりと抱えて椅子の座らせてくれた。
「…ねぇ。お願いだから透の手当をさせて」
真理が美樹本に懇願する。
「ダメだ。それくらいじゃ死にはしないさ。そこに転がってる奴は時間の問題だがな」
美樹本は啓子ちゃんに銃を向けながら再び笑った。
「真理。美樹本・・・さんの言う通りにするんだ。ぼくは大丈夫だから」
肩を見ると、出血もそれほど多くない。本当に皮をかすめただけだ。
88三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/30(月) 14:30:15 ID:GpfIaSQq
「さて、時間もたっぷりとある。透くん。せっかくだからゲームをしようじゃないか?」
「ゲームだと?巫山戯やがって」
俊夫さんは心底腹を立てているようだ。
「おっと、君たちはゲームの景品になって貰うよ。君たちの命を賭けるんだ。透くんが勝てば全員無事で生き残れる」
「何を言ってるの?そんなの…信じられない」
「これ以上、横槍を入れるのなら、ゲームの景品としての参加券すら失うがいいかい?」
「どういう意味なんだ?」
小林さんが聞き返す。
「殺すって事さ。今も見たろ。俺は自分から殺すつもりは無いが、俺の邪魔をするのであれば容赦はしない」
美樹本は既に狂気に蝕まれている。これから先、人を殺すのを躊躇うことはないだろう。
俺は自分から殺すつもりはない・・・か。なんて卑怯な言いぐさだ。
「さぁ、プレイヤーは君だ。透くん。俺にとってはただの時間つぶしだが、君にとっては大事な人間を守るためのゲームだ」
「もし断ったら?」
「せっかく、思いついたんだ。不参加は認めない。全員殺すまでさ」
残弾数は6発、少なくとも拳銃では全員は殺せない。しかし・・・

A、「やるしかないようですね」これ以上、誰も死なせるわけにはいかない。
B、「誰がやるもんか」そんな巫山戯た事に付き合ってられるか・・。
89257 :2007/04/30(月) 15:27:58 ID:VRWNnlB5
頭突きorモップを期待してBw
90名無しのオプ:2007/04/30(月) 19:22:46 ID:NQhr15qw
そろそろ終わってしまうのかと思ったら、もう少し続きそうでwktk
もう一人の犯人やトリックや動機や犯罪に至る背景などを早く知りたいジレンマも同時にあるけど、
美樹本のゲームってのがその中の一部の謎解きだったりするのかな?

Bを選んで、バッドエンドなのか強行突破出来るのか、むしろそっちが正解なのかも非常に楽しみだし。
91三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/30(月) 21:49:00 ID:GpfIaSQq
>>88のB
「誰がやるもんか」
パンッ
左足に鋭い痛みを感じる。さっき撃たれた肩よりも痛い。
「がっ・・・・」
椅子の上で前のめりになった。
「透っ!!!!!」
「言っただろ?不参加は認めないって。とりあえず、そこで寝てる奴を殺させて貰うぞ。透くん。キミのせいだぜ」
「やめてっ!!!!」
可奈子ちゃんが叫んだ。
「啓子を助けて!!!お願いだから!!!!」
前のめりの状態で首を曲げ後を見ると、よろよろと可奈子ちゃんが啓子ちゃんの方へと向かって歩いている。
「二人仲良くあの世に送ってやるよ」
美樹本が不機嫌そうに言った。
ちくしょう・・・。

「・・・やめてくれ。アンタのゲームに付き合うよ。美樹本・・・さん」
足からは結構な量の血が流れている。ぼくの人生で、これほどの怪我は初めてだろう・・・。
「ふん。最初からそう言えばいいんだ。ほら、戻れよ」
美樹本は可奈子ちゃんに指示を出した。
「透を助けて。ねぇ、美樹本さん、お願いだから…」
真理が泣いている・・・。ぼくの身体は痛みと出血で熱さを感じていた・・。
いつまで冷静な状態でいられるんだろう?ぼくは死んでしまうのだろうか?
冷静でないのは美樹本も同じだ。極限までに緊張している。
残りの弾数は5発。再装填しないところを見ると予備は無いのかも知れない。
92三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/30(月) 21:50:46 ID:GpfIaSQq
「ゲームのルールは簡単だ。推理クイズさ。キミはこの島で起こったことや事件の裏側までを答えるんだ」
「・・・・」
「賭け札は、その問題を出した時点で決めよう。外れたらその人物を殺す」
ドサッ
「今日子!!!しかっりしろ!!!」
今日子さんがまた、失神したのか・・・。それも無理はないだろう。
美樹本は構わず、説明を続ける。
「正直に言えば、俺が分からないこともある。それもきちんと説明して欲しいな」
「・・・・勝ち負けなんてないじゃないか?」
ただの、一方的な蹂躙だ。こんな物はゲームじゃない。
「そんな事は俺はかまいやしない。俺がルールだからな。さて、第一問から始めよう」
「透…」
真理の声が聞こえる。今は美樹本を見ているから表情は分からない。
「・・・大丈夫だから」
とだけ言った。
「第一問『我孫子武丸』は誰か?」
美樹本が愉快そうに言った。
「えっ『我孫子武丸』は美樹本くんじゃないのか?」
小林さんが聞いてきた。
「俺じゃないですよ。最も透くんは俺が『我孫子』じゃないって事は分かってたみたいですがね。皆さんも声かけるだけなら認めましょう。動いたら殺しますがね」
「何がどうなってるの?透…」
「この問題の答えをアンタは知っているって事か?」
ぼくは美樹本に向かって聞いた。
「ああ、知っている。言わば、共犯関係だからな。さて、今回の賭け札は・・・そうだな、香山さん。あなただ」
「なっ、なんでわしが、そんな・・」
いきなり指名された香山さんは、恐らく驚いているだろう。美樹本が香山さんを指名したのには理由がある。
それはきっと香山さんが『我孫子』に関わっているからだ。こんな事までゲーム気取りだ。
93三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/04/30(月) 21:54:13 ID:GpfIaSQq
この島に来て、ぼくはいくつかの情報を得た。
部屋割りを決めた『我孫子』。そして、部屋に掛けられた名前。
『我孫子』がぼく達をこの島に集めた動機が、そして殺人の動機が『河村亜季』にあるのなら・・・。
ぼく達が殺される動機が『河村亜季の事故』にあるのなら・・・。
『…実は私『我孫子』の親戚なんです』
昨日の河村さんの自己紹介を思い出す。
そうだ、あの『河村さん』は誰に似ていたのか・・・・。
それは・・・・あの『河村さん』は『我孫子』と『河村亜季』を繋げる線だ。

条件の一つはゲーム「かまいたちの夜」のモデルになったあの夜の参加者である事だ。
そして、もう一つは財力・・・。
ゲームのシナリオで得られる収入だけじゃ到底足りない気がする・・・。
恐らく美樹本のクルーザーも、『我孫子』の支援があってのことだと思う。なぜならあの船はもう一人の犯人の脱出手段でもあったはずだからだ。
最後に『河村亜季』の親戚であることだが、これはもう想像の産物でしかない。
「さぁ言って貰おうか?」
ここで間違ったら、香山さんが死んでしまう。
これは単なる勘だが、ぼくが死んだとしたらやり直しが出来そうだが、香山さんが死んでも構わず進みそうで怖い。
慎重に答えないといけない。
痛みをこらえながらぼくは言った。
「※※さんですね」

『我孫子』の正体は※※入力。
94名無しのオプ:2007/04/30(月) 21:58:33 ID:GpfIaSQq
と言うわけで、3日間程小旅行に行って参ります。
ガイドブック代わりにQEDの熊野残照と内田康夫の熊野古道殺人事件を持って南紀へ・・・。
95名無しのオプ:2007/04/30(月) 22:00:26 ID:GBxeGO1Z
行ってらっしゃいノシ
96名無しのオプ:2007/05/01(火) 00:38:45 ID:vNjs68pV
『はるこ』
97名無しのオプ:2007/05/01(火) 06:18:01 ID:sjvRVr8B
行ってらっしゃい。その間じっくり推理をするとします。
98名無しのオプ:2007/05/01(火) 09:32:51 ID:D8HDX2Fp
美樹本が”共犯”という言い方をしてるのがちょっと気になった。
彼も我孫子に踊らされてるだけなのか、
利害の一致で組んでただけで用済みになればお互いを殺す可能性もあると分かってたのか。
前者じゃ美樹本がマヌケすぎるから後者なのかな。

そうなると正岡が閉所恐怖症というのも嘘で、美樹本の方が何らかの理由をつけて交換したのかも。
鍵の細工に気付けば自分も殺されると分かるだろうし。
ただ、我孫子は「(何を?二人のどちらに?)気付かれなかったのは幸いだった」みたいな事を考えてるんだよね。
この辺の真相や二人の駆け引きは複雑すぎてよく分からないなあ。

それでもみんなの前では共犯だと言ってるのは、
「仮に俺一人をどうにか出来ても、この屋敷にいる我孫子がお前らを殺す」との牽制?
後はこの部屋もしくはどこかで様子を伺ってるであろう我孫子に、
「あんたを信じてるよ」と自分の立場がやばくならない為のアピール?
99名無しのオプ:2007/05/01(火) 11:10:19 ID:NsgsRBic
>>98
我孫子とミ美樹本は最初は組んでたんだと思う
で、三日月島に行くぐらいの段階で我孫子が急遽裏切りを決意し(たかどうかはわからんけど)、
端の部屋の鍵の細工を使って事情を知るミ美樹本を殺そうと考えた
しかし美樹本は端の部屋に配置されたことで我孫子の裏切りに気づいた

こんなところじゃないかな
最後の段の、
>「仮に俺一人をどうにか出来ても、この屋敷にいる我孫子がお前らを殺す」との牽制?
これはそうだと思う。としたらこの中にはいない?
まさか美樹本が我孫子を殺してしまう、なんてことは考えられないし
100名無しのオプ:2007/05/01(火) 13:34:57 ID:Gl9Idkec
ミ美樹本が底蟲村編みたいでワロタw
101名無しのオプ:2007/05/03(木) 20:21:14 ID:+CgwfD9z
人質軍団の中に我孫子がいるなら、透は失敗し続ければ消去法的に我孫子を見つけられる
と考えたが無茶もいいところだった
102名無しのオプ:2007/05/04(金) 02:31:17 ID:ZItDvsa8
食堂から夕食が運ばれてきた。
作りたてを思わせる湯気が立ち上るスープ、
焼きたてのパン、新鮮な野菜のサラダ…。
前菜からして素晴らしい出来だった。
「どう?透。
叔父さんのお料理は世界一でしょう?」
真理は得意げに言った。
気に入らなかった。
昔から、ぼくは何でも一番にならなければ気が済まない性質だった。
それを、こう面と向かって“世界一”などと言われれば、
ぼくとしては不快になるのは当然だった。
「いや、そうは思わないね。」
ぼくは鼻で笑いながら、目の前の料理を批判した。
103名無しのオプ:2007/05/04(金) 02:35:53 ID:ZItDvsa8
「まず、このスープ。
コンソメのようですが、油が多過ぎて若干濁っている。
これでは真のコンソメスープとは言えない。
コンソメスープは、あくまで琥珀色で透き通っていなければいけない。
次に、このパン。
明らかに焼き過ぎです。
これでは硬くなるし、風味も損なわれる。
客が多いから、手を抜いたんだろうね。
粗製濫造ではプロとは言えない。
最後に、この野菜サラダ。
味のバランスを考えず、ただ単にとれた野菜を盛り付けただけ。
料理でも何でもない。
こんなものは犬にでも食わせておけばいい。

…どうだい?
前菜だけでも、これだけケチが付くんだ。
真理、君の叔父さんの料理は失敗作だね。」
104名無しのオプ:2007/05/04(金) 02:41:55 ID:ZItDvsa8
ぼくの言葉を聞いた真理は、口を開いて唖然としている。
更に、その後ろには、自慢の料理をメッタ打ちにされた
小林オーナーが、拳を握り締め、立ち尽くしていた。
「透くん…、今の君の言葉を聞いてしまっては我慢ならない。
今から、君と私で料理の勝負をしようじゃないか。」
小林オーナーは、鋭い視線をぼくに送りながら、
宣戦布告してきた。
「おや?
この程度の料理しか出来ないあなたが、
このぼくに勝負を挑もうと言うのですか?」
「…名誉挽回の機会を与えてくれても良いのではないかな、
透くん。」
小林オーナーは、度重なる挑発に対する怒りを抑えつつ、
紳士的に振舞った。
ぼくは…、

A. 「いいでしょう。」
B. 「今のは冗談です。勘弁して下さい。」
105名無しのオプ:2007/05/04(金) 05:22:24 ID:w6tQTqKK
新作キター!もちろんAで。
106名無しのオプ:2007/05/05(土) 00:56:53 ID:jrJ9YgXN
>>104の続き

A. 「いいでしょう。」

ぼくは即答した。
「それで、どんなジャンルの料理で勝負するんですか?」
「キッチンにある冷蔵庫にある材料のみで、
何か好きな料理を作るということでどうだい?」
「なるほど。
単純に料理の腕前を競うだけでなく、創作力も問おうという訳ですか。
では、キッチンに行きましょうか。」
ぼくは、余裕をかましながらキッチンへ歩き出した。
真理やその他の客たちも付いていく。

「これが、シュプール唯一の冷蔵庫だ。
さあ、開けて中を見てごらん。」
小林オーナーに促されると、ぼくは冷蔵庫の扉を開けた。
中には、

【※1】
牛肉、豚肉、白身魚、光物の魚、緑黄色野菜、卵、パスタ、缶詰、
フルーツジュース、牛乳、調理用の酒

が入っていた。
「どうだい?透くん。
どの材料を選ぶか決まったかね?」
ぼくは…、

【※1】の中から、好きな材料を3つだけ選んで下さい。
107名無しのオプ:2007/05/05(土) 01:09:24 ID:wk5xHKeG
フルーツジュース、パスタ、光り物の魚
108三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/05(土) 15:50:13 ID:GrE2g9Ix
>>93の続き
「春子さんですね」
そう言って後を向いた。河村さんは春子さんに似ていたのだ。
ぼくの言葉に最初に反応したのは、香山さんだった。その名前が出てくるとは思って無かったに違いない。
「なんで、春子が『我孫子』なんや・・・わし、そんな事一言も聞いとらんで」
「まず、あのゲームのモデルとなった夜なんですが、再現してある以上、あの時の宿泊客が『我孫子』であると考えるしかありません」
「誰かに聞いたとか?」
真理が聞いてきた。
「それでも、その『誰か』は我孫子関係者であることに違いない」
「…そうね」
「ははは」
美樹本が笑った。
「そうだ。香山春子が『我孫子武丸』だよ。どうして気付いた?」
「部屋割の名前が、みどりさんは『シノザキ』と書かれていた。そして他の人達は名字、唯一の例外が小林さん、真理と今日子さん。同姓の場合、フルネームになってました。
だけど、夏美さんは『ナツミ』としか書かれていていませんでした。島に来てから部屋割りを決めたのであれば、みどりさんの名前を変わってるはずです。
これは島でみどりさんと俊夫さんが結婚したという情報を得るより先に部屋割を決めたからだと思います」
「つまり?」
「香山さんが離婚して、再婚した事を知っている人物に絞られる・・・。島で初めて夏美さんに会った人達は除外できる。
香山さん、夏美さん、そして春子さんです」
「夏美さんはあの夜いなかった・・・。我孫子武丸は香山さんか春子さん?でも香山さんから個人的に話を聞いた人達もいるかも知れないわ」
「いますか?香山さん?」
「いや、わしはあの夜の参加者の誰にも言うとらん」
「そうでしょうね。あの法外な慰謝料も目的があれば納得できます。島を買って復讐するという目的があったから。
それに、それ以外の事も考慮したら香山さんが『我孫子』じゃおかしいですから」
109三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/05(土) 15:51:20 ID:GrE2g9Ix
「ふん。次の問題にいく前に一つはっきりさせた方がいいな」
「何をですか?」
美樹本が香山さんに銃を向けながら話す。
「春子が仕組んだことだよ」
「春子さんが仕組んだことですか・・・。夏美さんを香山さんに近づけさせて離婚に持ち込んだって事ですか?」
「何やと!!!?」
美樹本がニヤリと笑う。
「ああ、アンタはただ利用されたに過ぎない。河村亜季の復讐をするお膳立てさ」
「わしがだまされとったちゅうんかい!!!」
「そうだ。夏美をアンタにけしかけ、浮気をさせる。その現場を押さえれば、有利な条件で離婚できる」
「そんな・・・。わしは・・・」
香山さんがわなわなと震える。怒りだろうか?
「アンタを試したんだとさ。アンタは見事に引っかかった。残念だったな。言わば、この事件の発端はアンタみたいなもんだ」
まただ・・・。また、美樹本は責任を転嫁するような事を吹聴した。
根本にあるのが河村亜季の事故で、『我孫子武丸』が春子さんである以上、あの時、一緒に来た香山さんだけは事故の加害者としては除外できる・・・。
自分がこうしたのは自分のせいではない・・・か。

「さて、ついでだ。第二問。この島で正岡と篠崎君を殺したもう一人の方の犯人も言って貰おうか?」
もう考えるまでもない。春子さんの関係者だ。

A、正しい答えを言う。
B、わざと間違う。
110名無しのオプ:2007/05/05(土) 16:17:22 ID:NvWUQolI
>>109
お帰りなさい。
ここまで来たらなるべくハッピーエンドで進みたいし(透が人質が死んでもそのまま進むかもみたいな事言ってたしw)、
重要人物の香山さんをここで死なせるのは色々都合が悪そうなのでAで。
111三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/05(土) 17:48:03 ID:GrE2g9Ix
>>109のA
「正岡さんとみどりさんを『あんな目に遭わせた』のは美樹本さんだけど、実際に殺したのは別の人物なの…?」
真理の声が揺れる。
「夏美さんですね」
「正解だ。夏美は自分が死ぬ前に二人の人物を殺した。それが俺の代わりに死んだ正岡と篠崎、ああ久保田みどりだった」
「正岡さんが殺された理由は部屋を入れ替えたから・・・。美樹本・・・さん、今朝の閉所恐怖症ってのは嘘だったんですね」
「知らないな。もしかしたら本当に閉所恐怖症かも知れないぜ」
「どうして、殺されると気付いたんですか?」
情けない話だが、ぼくには全てが分かった訳じゃない。
「部屋のスライド錠に細工がしてあったからな。こいつは怪しいと思ったんだ。それにわざわざ部屋割を決める必要なんてないだろう」
「なるほど。正岡さんを薬か何かで眠らせ、荷物を置きっぱなしにして、正岡さんに頭まで布団をかぶせた。こんな夏場に頭まで布団をかぶって眠る人間なんて普通いない。
夏美さんは布団がかぶってるおかげで、声も抑えられるし、返り血を浴びる可能性も減る。そう思ったかも知れない。
美樹本・・・さんめがけて刃物を振り下ろした・・・。『我孫子』関係者である夏美さんが合鍵を持っているのは当然。
その後、美樹本・・・さん。あなたは正岡の部屋に侵入し布団をベッドの下に隠して、荷物を移動させ、あの部屋の正鍵で施錠し、スライド錠を閉めた」
「そうだ。全くその通りだよ」
112三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/05(土) 17:48:55 ID:GrE2g9Ix
「一つ、聞いて良いですか?」
「なんだ?」
「夏美さんはスライド錠を閉めてましたか?」
「それが何か問題あるのか?」
自分のやったことに気付いてない。美樹本はどこまでも他人に責任を転嫁するつもりだ。
「閉まっていたなら夏美さんはキヨさんを殺すつもりは無かったという可能性がある。つまりあなたは自分の都合のためにキヨさんを殺した・・」
ぼくは美樹本に言い放つ。恐らく予想外の反論に美樹本の口元が少し引きつる。どうやら、スライド錠は閉まっていたようだ。
「なぜ夏美がキヨを殺そうとしなかったか分かるんだ?」
「もし仮にキヨさんが生きていればスライド錠を掛けておかないままだと、キヨさんの合鍵で部屋を開ける事ができます。
正岡さん殺しが早い段階で発覚した場合、復讐どころじゃありません。なぜなら全員殺さないといけないからです。
キヨさんが合鍵を開けた場合でも、正岡さんが内側からスライド錠を閉めていたと思わせれば、中で眠っているだけだと思うでしょうからね」
「その理屈だと、俺が自分の荷物を移動させるために部屋を開けるのはどうすればいいんだ」
「問題ないですね。正岡さんを邪魔だから殺したと言って、部屋に入らないようにあなたに説明した・・・。多分、今朝の朝食時に
夏美さんはあなたがあの殺人のお膳立てをしたとは思ってなかったでしょうからね」
「ふふ、そうだ。荷物の一部は先に運んでたからな。朝、打ち明けられたときには、笑いをかみ殺すのに大変だったよ」
またも歪んだ表情を見せる。
113三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/05(土) 17:50:34 ID:GrE2g9Ix
「そうだ。『我孫子』の話をするか。春子と夏美、そして河村亜季は姉妹だった」
「何やと!!!そんなの知らんでっ!!」
香山さんが声を張り上げる。
「ぼくは昨日夏美さんに『お久しぶりです、春子さん』と言いました。あれは何と無く夏美さんが春子さんに似ていたからです。
婚姻届に姉妹などを書く必要はありませんからね。言わなければ分かりません」
「春子、夏美、河村亜季は生き別れの姉妹だそうだ。と言っても両親の離婚の末で、互いに、所在ははっきりしていたからしい。
だが、河村亜季がシュプール近くで事故にあったのは偶然だ。『看護士』をしていた夏美は看病をしながら恨みの念を積んでいった」
あの時、神社であった河村さんは春子さんに似ていた。
「元々は春子より夏美の方が復讐に精力的だった。春子にしてみればゲーム内で全員殺すという復讐をしている。決して、それで取り戻せるわけじゃないがな。
実際、春子は確実なアリバイを用意するためにこの島にはいない。夏美が殺害の実行に関しては春子の手を汚したくなかったと。
招待したのは春子だから、疑われるのは当然だが、急な用事を用意をしておくことによって、春子の『我孫子』のアリバイを作っておけば、夏美本人だけが手配される。
そのつもりだったが、少々浅はかだったな。夏美は島で全員を殺した後、海外へ逃亡するつもりだった」

「美樹本さんが共犯なのにどうして最初に狙われるのよ」
可奈子ちゃんが声をあげる。
「共犯だからだろうね。事前準備だけさせて口封じをする必要があったんじゃないかな」
「ああ、わざわざ、顔の利く雑誌にシュプールの幽霊の噂話なんか載るようにし向けたりしてな。それとあのクルーザーも色々必要だったからな。
そうして、いざ、復讐を始めたら最初にポイだ。たまったもんじゃない」
例の雑誌や心霊写真か。もし、事故の心当たりでもあれば気が気でなかっただろう。もしあればの話だが。
美樹本は笑っているが、目は真剣だ。美樹本の殺人はやはりこの島で夏美さんとキヨさんを殺そうとして、一連のトリックをやってのけたんだ。
114三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/05(土) 17:51:33 ID:GrE2g9Ix
「さて、続いては第3問だな。どっちの方から先にするかな・・・。重要なのは死期だからな」
重要なのは死期か・・・。真理の言葉だ。一方で期せずして春、夏、秋の四季とダブルミーニングになった。
「キヨさんの事件からの方があなたにとっては良いんじゃないですか?」
ぼくは言った。
「どういう意味だ?」
「嫌なことは後回しにしましょうよ。みどりさんの事件に関して言えば・・・ね」
美樹本が一瞬引きつる。自分の失態に気付いているんだ。挑発は効果的・・・だったか?
「ちょっと待って。その前に夏美さんが殺されたのがあるじゃないの?どうしてそれを飛ばすのよ」
「そうや。あの事件のネタを明かさない事には終われへん」
あれは・・・・美樹本が何も知らないから・・・。これをゲームと仮定するならば逆に唯一のアドバンテージになる。
「例の開かずの間の事件か・・。夏美がお札を貼った・・・」
美樹本が考え込む。
「キヨさんの事件は、機械的なトリックが使われました」
ぼくは美樹本の思考を中断させるかのように、説明を始めた。
「ふふん。透くんに乗ってやるよ。第3問だ。キヨ殺しを説明して貰おうか」
「透。あの時、美樹本さんも一緒にキヨさんが飛び出すのを見ていたのよ。どうすればあれができるの?」
「透くん。もしキミが思っているトリックが、アレを使ったのであれば、俺以外にも可能じゃないのか?」
そう言って、美樹本は拳銃を構える。
「そうだな。小林オーナーにでも命を賭けて貰うか?」
小林さんの方を見る。倒れた今日子さんを抱えた状態だ。

A、「小林さんには不可能ですよ」
B、「小林さんにも可能ですね」
C、「自殺で手を打っても良いですよ」
115名無しのオプ:2007/05/05(土) 18:19:34 ID:lgqHDH4j
Bで
116三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/05(土) 21:00:22 ID:GrE2g9Ix
>>114のB
「小林さんでも可能ですね」
「そうだろう。むしろ小林オーナーの方が怪しくないか?証拠もあったわけだしな」
何がそんなに楽しいんだろうか・・・。
「ただし、ぼくが小林さんの『自動巻き取り機能の付いたリール』を蹴っ飛ばして壊さなければですが・・・」
『なんとプログラムを組んで、自動的に釣り糸を動かしたり時間が来たら自動的に巻き取る事ができるんだ〜』
ぼくは昨日、小林さんの荷物を蹴飛ばして、あのリールを壊したのだ。
「なっなんて事をしてくれるんだ透くん!!」
案の定、小林さんが反応した。
「もうっ、叔父さん今はそんな事言ってる場合じゃないでしょう」
全くだ。もし、生き残ったら弁償でも何でもしてやるさ。・・・・ローンで。
「美樹本・・・さん。あなたも持っているらしいですね。そういうリール」
「くっくっ。まさか、こんな犯人の断定の仕方があるとはな」
「今朝、美樹本・・・さんは屋敷から出る前に、キヨさんを殺害しました」
「ふんふん、それで?」
美樹本は愉快そうだ。
「キヨさんを殺害した動機についてですが、キヨさんが『我孫子』に雇われた人間であったことと、合鍵が必要だったからだと思います」
「合鍵?何に使うって言うの?」
「みどりさんの首を切って持ち出すことだ。恐らく、みどりさんの死体は誰かの部屋に入れられた状態だった。
美樹本・・・さんが朝の段階で自由に出来た鍵は自分の部屋と正岡さんの部屋だけだからね。
キヨさんの死体をとりあえず、監視塔の中に放り込みます。そして、塀の外側の窓にロープをさげておく。
その後に入り口の南京錠を閉めた。合鍵を奪い、みどりさんの首を切り取って、朝持っていた荷物に詰める。
たしか、カメラバッグ以外にもクーラーケースなども持っていましたよね・・・。あの中にみどりさんの首が入っていた・・。そうとしか思えません」
「ロープはさげたままか・・・。見つかったら危険だな」
美樹本は笑った。
「見つかっても構わないでしょう。その場合、見られて困る物は無いし、誰が犯人か分からない。結局『我孫子』の所為にすればいい訳ですから」
117名無しのオプ:2007/05/05(土) 21:00:58 ID:NvWUQolI
小林さんと美樹本の共通点と言えばやっぱアレか。
具体的にどういうトリックを使ったかまでは分からないけど。
氷の問題についても関係してるだろうし。
118三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/05(土) 21:02:08 ID:GrE2g9Ix
「肝心の方法を言えよ」
「河村さんを追いかけようとして、塔の下でぼくと真理は話してました。タイミング良く美樹本・・・さんがやってきて話に加わりましたね」
「きみたちがいて運が良かったとも言えるか。今となってはどうでもいいか」
「ちょうど話してたから気付きませんでしたが、何かして、人を呼ぼうと思ったんでしょうね・・・。
あらかじめ設定した時間に自分が目撃者として存在していれば、疑われるのはその場にいない人間・・・あの時はみどりさんでしたか・・・になる。
とにかく、自分が見ている前で、キヨさんの首つりがまるで今起きたかのように発見できればいい」
「ふん」
「そのために必要なのがあの『リール』だった訳です」
「小林オーナーのリールは壊れていたか・・・。あのバンドも無意味だったな」
あのゴムバンドか・・・。監視塔の上の部屋に転がっていた・・・。
「無意味?違うでしょう。昨日、ぼくが拾い忘れた小林さんのゴムバンドも重要だったんじゃありませんか?」
「とにかく、説明してくれよ。あっちのみんながそれを期待してるぞ」
血は乾いて止まったようだが、痛みは引かない。

A、キヨさんの死体を塔の部屋に残すために使った。
B、小林さんに罪を着せるためだけに使った。
C、キヨさんがたまたま持っていた。
D、キヨさんの死体を出現させるために使った。
119名無しのオプ:2007/05/05(土) 21:35:49 ID:as8E/2pr
Dで
120三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/06(日) 18:36:13 ID:PpP70wvG
>>118のD
あのゴムバンドはキヨさんの死体を出現させるために重要なアイテムだった。
「あのゴムバンドの使用方法ですが、アレは『リール』の糸の先に付いてたんでしょうね」
「じゃぁ、あの時の『ガタンッ』と何かが倒れる音は・・・?」
真理が聞いてくる。
「あれは、ストッパーが外れる音だったんだ。キヨさんの死体を部屋の中に止めておくためのストッパーが・・・。
キヨさんをぶら下げた、ロープ自体は例の首つりロープの中からちょうど良い物を利用した。
塔の先端についてた外がわのロープだから、普通に死体を吊り下げた場合、ちょうど窓の外にぶら下がることになる。
キヨさんの首の裏側に横に痣ができていた。首とロープの間に、角材か鉄パイプを横にして挟んでおき、それをさらに角材を立てて止めておく。
窓枠に角材を横にして止めておくと、死体が見えてしまうから、部屋の中で鳥居のような形にしておいたんだと思う」
ぼくは指で「π」のような形を描いた。
傍らのテーブルの上にあるスプーン3本で、「H」のような形を構成する。
「このどちらかの足の部分に、例のゴムバンドを巻き付けておく。ちょっとバランスが難しいですが、キヨさんの体重は軽かったので、一度固定できれば大丈夫だと思う。
もちろん、そのバンドには『リール』の糸の先の釣り針がくっついていた。
時間が来たら、『リール』が巻き取りを始め、ゴムバンドを巻いた角材は引っ張られ倒れ、一気に角材が外れて、バランスが失われ塔の先端についてたロープの方、すなわち窓の外にキヨさんの死体がぶらんぶらんと飛び出るわけです」
「バランス調整ね。相変わらず無茶苦茶だな。そんな変なピラミッドを作るのか?」
「実際は「X」型でも出来たでしょうけどね。要は支点部分がしっかり止まってれば言い訳ですから」
「それだと・・・つまり、誰にもアリバイは存在しないという事になるのか?」
俊夫さんが聞いてくる。
「内側の鍵が閉められていた以上、犯人は一度は絶対に外を経由してると考えるほかありません。
窓は塀の内と外、どっちにもついていますが、内側を利用するのは、リスクが高いと思う」
121三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/06(日) 18:39:30 ID:PpP70wvG
「キヨの殺人はそれで正解だ。キヨの死体を引っかけておいた後、『リール』は塀の外の見つかりにくい所に置いておき、後で回収した。釣り針のついたゴムバンドが引っかたかして、部屋に残ったのも偶然だ。
まぁ、ゴムバンドは残っても回収できてもどっちでも良かったからな」
「自分は、それを利用して容疑者から外れようとした訳ですね。あの遺書についても、シナリオ上、みどりさんに罪を被せるつもりだった・・・?」
「あれは、引っかけだな。あらかじめダミーを用意しておき、隠れた真相を見破ることの方が探偵役にふさわしいだろ?真理くん?そういうシナリオはさっきまで実現してたんだ」
「…」
真理が息を飲む。
あの遺書はやっぱり、わざとだったんだ。

「さて、次の問題だ。いよいよ。大詰めという気もしてきたが・・・」
「大詰め?とっくに終わってますよ。くだらないシナリオですね」
ぼくは痛みをこらえながらも、強がってみせる。
「終わってないさ。これから殺人事件が起こるかも知れないだろう?」
「あなたが勝手に起こすのであればね」

パンッ
「くっ」
銃の音が聞こえた。ぼくの身体には新しい痛みはない・・・。
おそる、おそる後を振り向く。
が、誰も怪我している様子は無かった。
「おいおい、俺は慈悲深いから生かしておいてるだけで、キミがそんな態度ならゲームを中断してもいんだぜ」
残弾数は4発・・・。ゲームの中断というのは恐らく、全員を殺すと言うことだ。
こんなことなら、犯人の指摘なんてせずに、おとなしく時間が過ぎるのを待った方が良かったのだろうか?
さっきまで笑っていた美樹本だが、少しづつ苛立ちを抑えられなくなっている。
まだまだ、有利なのは美樹本なのに・・・。

A、「まるで子供ですね。簡単に盤をひっくり返すんだ」ぼくは挑発した。
B、「すいません。調子こいてました」ぼくはおとなしく謝った。
C、「夏美さんの事件について説明しましょう」ぼくは説明を続けた。
D、「3問終わりましたよ。今度はこっちから質問させて下さい」ぼくは逆に質問することにした。
122名無しのオプ:2007/05/06(日) 18:42:57 ID:6/S/TMom
Cで。
123三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/09(水) 20:17:21 ID:iLQ/hZ+O
>>121のC
「夏美さんの事件について説明しましょう」
ぼくは美樹本から主導権を奪うべく、説明を続けた。
「おい、俺が問題を出すんだろう」
苛立ちながら、椅子から立ち上がった。
「分かりました。では問題を出して下さい」
「・・・・・ふん。夏美の事件てのは何を指して言ってるんだ?」
「夏美さんが殺された事件ですよ。あなたの手によって・・・。
そして、もう一つ、夏美さんが死んだ事件です」
「何やとっ?透くん。キミ何を言っとるんや?」
香山さんが近づいてきた。
パンッ
「うごくなっつってんだろう!!!!」
美樹本が銃を撃つ。もちろん、誰にも当たらない・・・。これで残りは3発だ。
「ひっ」
ドサッ
香山さんが尻餅をつく。
「もういい。コイツは死んで貰うぞ」
美樹本が香山さんに狙いを付ける。
124三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/09(水) 20:21:32 ID:iLQ/hZ+O
「止めて下さい。ぼく達は何もできません」
ぼくは努めて冷静に言った。
「ふんっ」
美樹本がどすんと腰を下ろした。
「説明を続けろよ」
「『開かずの間』の事件、あれがこの島で起きた事件の中の唯一の例外で、この島の事件の真相を導き出す出来事だったんだ」
「でもっ、あの事件は犯行は河村さんにしか出来なかったわ。だったら河村さんがっ」
真理が話す。
「違うんだ・・・」
「何が違うの?」
「ぼくはあの部屋の扉と壁にくっつくようにシールを貼っておいた。夏美さんがお札を貼ったようにね」
「シール…」
「お札は綺麗に破れてたけど、ぼくの貼ったシールには何の変化も見られなかった・・・。目立たないところに隠れるように貼ったからね」
「それじゃぁ。扉は…」
「そうだ、扉は開かれなかったんだ・・・」
「じゃぁ隠し通路があったとでも言うの?」
「違う。そんなものは無い」
「それだったら、全くの不可能犯罪じゃないのっ!!まさかトンネル効果でも起こったって言うの?」
「あの部屋の事件が物語っていることは、誰にも犯行が不可能であったと言うことだ」
現実的な可能性は、つまり

A、トンネル効果が起きたんだ。
B、あの死体は最初からあの部屋にあった。
C、香山さんが素早く殺したんだプゥ。
D、夏美さんの超能力だ。
125名無しのオプ:2007/05/09(水) 20:35:15 ID:XhK5o0Yo
126三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/09(水) 21:50:54 ID:iLQ/hZ+O
>>124のB
「あの死体は最初からあの部屋にあった。そう考えるしかない」
「何だと・・・」
「何やて・・・」
「何ですって・・」
美樹本も、香山さんも、そして真理も驚く。
「死にたてホヤホヤって言ったやないか・・・?あれは嘘やったんか?」
「違います。あの時は死んだ直後でした・・・」
「どういうことだ?」
美樹本も表情を曇らせる。さっきの真理の推理から『河村さん』が『夏美さん』を殺したんだと思っていたのかも知れない。
「順番に説明しましょう。事件はこのように起こりました。
1夏美さんの悲鳴を聞く。
2『開かずの間』の扉を開ける。
3夏美さんの死体を発見する。
の3段階です。それに現実的な解決を求めて、かつ合理的に説明できたのが、さっきの真理の推理です。
しかし、実際に『扉が開かなかった』事を付け加えると、それが不可能になります。
では、何が起きていたのか?
実際は1の前に「0」の段階がありました。
それが『0、『夏美さん』が心停止状態に陥る』です」
喉が渇いた。水に手を伸ばし掛けたが、止める。
全員の反応は沈黙・・・。ぼくは説明を続けた。美樹本は恐らく、根本のカラクリを知っている。だが、はっきりとした事が分からないのだろう。
127三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/09(水) 21:51:40 ID:iLQ/hZ+O
「『夏美さん』が急に死亡したために『夏美さん』は悲鳴を上げ、誰かに開かずの間を開けるようにし向けます。
そして、扉を開けた結果、ぼく達は『夏美さん』の死体を発見しました。
そこで、それを現実として知った『夏美さん』は失神した・・・。
ここまで説明すれば、分かると思いますが、

つまり、夏美さんは二人いたんです。ぼく達の前に『河村亜季』と『香山夏美』を一人二役で演じた『夏美さん』と、『開かずの間』に監禁されていた『夏美さん』です」

「何やてっ!!!!どういうことなんや!!!!夏美と河村亜季?巫山戯るのも大概にせいよ」
「おいおいっ」
「どういう事なの」
「何がどうなってるんだ?」
香山さんが口火を切ったのと同時に全員が騒ぎ出す。

パンッ
一発の銃声が鳴り響く。全員が静まりかえった。
「夏美が二人いた。それはそれでいい・・・。だが、なぜ、外の『夏美』は、あの部屋の中の『夏美』が死んだことが分かった?」

A、「無線式のホルター心電図です」
B、「双子のテレパシーです」
C、「女の勘です」
D、「何か、それっぽい何かです」
128名無しのオプ:2007/05/10(木) 01:43:35 ID:uogLozdN
Aで。
129名無しのオプ:2007/05/10(木) 02:07:20 ID:H6UQtpPQ
ホルター心電図とは何だろう・・・?
ぼくはgoogle先生に尋ねてみた
130名無しのオプ:2007/05/10(木) 03:08:09 ID:LdpwLstB
自分もホルター心電図という言葉を初めて知ってググったw
◆TmTfkIMkPkさんは医療関係者?
ものすごく頭の良い人なんだろうなとは思ってたけど。
基本的にこのスレの書き主さんってみんな頭良さそうだけど。
131名無しのオプ:2007/05/10(木) 04:58:45 ID:XRS8cdUk
自分は周りにしたことがあった人がいたので偶然知ってたけど…無線式があるとは知らなかった;
しかし離れたところでも心電図が診れるというのは結構すごい気がする。
電波とかどうなんだろう…とか邪推しつつも楽しみに見てます。
>>130
自分も書いてますけど頭は普通です。
書いてれば自然に語彙力とか文の使いまわしとか覚えていきますので。
しかしそれでも最初から文の構成を組み立てられる◆TmTfkIMkPkさんはやはり凄いと思います。
132三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/13(日) 17:52:18 ID:KO2GxXSp
>>127のA
「無線式のホルター心電図です」

「ホ…ルター…心電図…?」
「何や?それは一体何なんや?」
「通常の生活を行ったり、動いたりしてても脈拍などのバイタルデータ・・バイタルサインを調べることが出来る機械です。
小型の物もあって、外見上、目立たない様に装着することが出来ます。もちろん多少は盛り上がりますが・・」
「無線式ってのは、一体どういうことだ?」
「元々、時限式で小型レコーダーにバイタルデータを記録しておくのがあったんですが、病院などに直接データを送信する無線式も現在では存在してます。
その一つとして、介護施設や監獄と言った敷地内無線・・・トランシーバと同じような構造でごく限られた範囲内でデータをやり取りする機械も存在してるんです。
また、レシーバー側のモニターも小型の物もあり、実用されてる機械なんです」
「つまり、死期を知ることは十分可能だった・・・そう言うことか・・・」
美樹本が納得する。
「この事件が全てを物語る鍵になるのは、そこなんです・・・。
監禁されていた『夏美さん』は、騒がなかった。一方で外の『夏美さん』はわざわざお札を貼ってまで、他の人間が立ち入らないようにしていた。
これは一体どういう事なのか?」
「監禁していることがバレないようにしたって事なんでしょう…?あれは夏美さんの演技だった。怨霊を封印するなんて…」
可奈子ちゃんが、昨夜の事を思い出したように言った。
「監禁・・・は監禁なんだけど・・・。なぜ、そんな真似をしたのか・・・。そこは、もう想像の域を出ないんだけど」
「想像・・・?」
「なぜ、中の『夏美さん』は監禁されていたのに騒がなかったのか?そして、なぜ、心電図を装着していたのか?
何よりもどうして、ここに居て、そして、外の『夏美さん』は死を知って動転してのか?
この事件が『河村亜季の交通事故』を発端とし、その復讐が目的だとしたら・・・。
中にいた『夏美さん』の正体・・・、ぼく達は今、ある一人の人物を知っています。
あの夜、いなかったゲーム『かまいたちの夜』の登場人物、彼女は1年半もの間、意識が無く、そうして、今朝、天に召された・・。
本当の『河村亜季』さんだったんじゃないだろうか?」
133三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/13(日) 17:53:22 ID:KO2GxXSp
全員が既にそれを予想していたように、驚くという反応はない。
夏美さんと河村亜季が姉妹であった事はさっき説明していたから、話の途中で予想はついてたんだろう。
「意識不明の患者をわざわざ、こんな島まで連れてきた理由・・・。
『意識が無い河村亜季の目の前で復讐する』つもりだったからだと思う。
そして、もう一つ、夏美さんが『河村亜季』として、変装し、みんなの前に現れたのは、誰かが事故を起こしたことを知っているか反応を窺ったんだ。
だけど、誰も・・・誰も何も知らなかった・・・。交通事故を起こしたことも、『河村亜季』という人物の事も」
もしかしたら、だからこそ、夏美さんは事故を起こした人間が許せなかったかも知れない。
誰かが罪の意識を持っていたのなら、そして、それを贖罪しようというのであれば、こんな悲しい事件は起きなかったのかも知れない・・・。
そして、みんなの前では決して口に出したくない想像・・・。
身体的には小康状態にあったかも知れないが、1年半も意識が無い人間が意識を取り戻すことは希有だ。
もしかしたら『夏美さんは心電図に映し出されたバイタルサインだけで、恐らく意識が戻ることのない河村亜季の生を感じていたかったんじゃないだろうか』という根拠のない妄想。

それでも、ぼくは半ば、同情しつつも、殺人という手段を選んだ夏美さんを決して肯定することはできない・・・。
食堂は静まりかえる。
美樹本も今の話の意味を咀嚼しているようだ。
134三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/13(日) 17:54:30 ID:KO2GxXSp
「船の計算も変わってくるのね…」
真理がポツリとつぶやいた。他の人間には分からない話だけど。
「うん。結果はこうだった。
まずキヨさんは前日入りだったと思う。一緒に来たのであれば、迎え入れるのに招待客を待たせることになるからね。
第一便で来たのは女性3人。
可奈子ちゃん、啓子ちゃん、そして・・・」
「流しの料理人…ね」
真理が答えた。ぼくも頷く。真理の方を見ていると、美樹本を視界に捉えることは出来ないが、今はおとなしい。
「…私達は料理人の人と一緒に来て、キヨさんに迎えて貰ったわ。大量の荷物を持ってたけど、力持ちなのか、顔色も変えずに厨房に運んだ」
可奈子ちゃんが言った。
「第二便は香山さん、夏美さん、そして俊夫さん、みどりさん。ここで入れ替わりに料理人が帰る。じゃぁあの監禁されていた河村さんはいつ誰が運んだのか?」
「俺だよ。一昨日の事だ。まだキヨが来る前さ」
美樹本が言った。話を聞いていたのか・・・。
「俺が前日に夏美と一緒に運んだ」
「夏美さん一人では無理だったからですね。特に船は必要だった」
「俺はさっきまで夏美が河村亜季を殺したと思っていた。真理くんがそう推理したようにな。トリックに関しては俺は情報を持っていなかった。
殺されたという事実だけで判断した。あいつは既に狂っていたと思った」
さきっまでと違い、淡々と話す。狂った共犯者・・・か。
もしかしたら・・・。

あとに残された事件は美樹本自身がミスを犯したみどりさんの事件とそれに付随した『河村亜季』の状態で殺された夏美さんの事件の説明だ・・・。
残りの弾数は2発・・・。後は・・・。

A、「次は、みどりさんの事件を説明しましょう」
B、「この島の事件を最初から順番に説明していきましょう」
C、「美樹本・・・さんが殺した、あの夏美さんの説明をしましょう」
135名無しのオプ:2007/05/13(日) 20:01:12 ID:+YY9cyC/
どれも非常に気になるのだけど、Bで。
136三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/13(日) 21:21:58 ID:KO2GxXSp
>>134のB
「そもそもの発端は、あの夜の事故です。そこで河村さんは誰かにはねられた。
はねた人間は何かがぶつかった程度か、あるいは、吹雪き始めたせいか分かりませんが、河村さんに気付かなかった。
河村さんは意識不明の状態で、救出された。ただ、生きていたのは幸いだったのか、不幸だったのかは分かりません。
生きていたのなら、人間は身体をなるべく正常になろうとします。死んでいたのなら、正確な時間も割り出せたかも知れません。
加えて、これも想像ですが、外傷はほとんど無く、軽傷に見えた。そのため、警察は楽観視していたのかも知れません。
だけど、河村さんの意識は戻らず、親戚に預けられる事になった。また、吹雪のせいで、証拠も見つからない・・・。
あまりにも、辛い出来事だと思う。
親戚だった春子さんと夏美さんは、復讐を誓った。もしかしたら『かまいたちの夜』を世に出すことで、犯人の謝罪を求めるつもりもあったかも知れない。
でも、それは不可能でした。誰もはねた覚えが無かったから・・・」
誰か、それに気付けば、自首しただろうか?
「春子さんも夏美さんも、きっと事件が終わったら警察に自首するつもりもなかったんだと思う。
だから、こんな辺鄙な島の屋敷を買った。言わば河村さんの墓標で、ぼく達の命は捧げられる予定だったんだ。
137三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/13(日) 21:23:27 ID:KO2GxXSp
美樹本・・・さんが共犯に選ばれた理由は何だろう?
カメラマンで編集部に顔が利く事や、船舶免許なんかもあるだろうけど、もう一つ、ぼく達と決定的に違うことがあった。
正確に言えば『違いを挙げることによって、共犯者に引き込む説得力をもたせた』んだ」
「・・・・・」
美樹本が、こちらをじっと見る。
美樹本が問題形式としたせいで、分散していった事象の説明を最初から説明していくのだ。
少しでも、少しでも、最終的に真理を助ける事ができるように・・・。
きっと、美樹本はぼく達を、結局殺すつもりだろうから・・・。
「説得力…?」
「事実を元にした説得する材料だ。あの夜、美樹本・・・さんが来た時間を覚えてる?」
「ゲームでは、一番最後、9時前だったかしら」
「現実でもそうだ。ぼくは覚えている。それが、美樹本・・・さんを事故の犯人から除外できる説得力だ。
救出されたのが、美樹本・・・さんの到着時間よりも前だったら、美樹本・・・さんは犯人じゃない。
実際は嘘だったんだと思う。だけど、美樹本・・さんはそれを聞いて復讐に手を貸すことにしたんだ」
「・・・・・」

「どうしてなの…?」
真理が美樹本か、ぼくか、どちらに聞いているのか分からない様な聞き方をした。

A、「なぜ、人殺しの手伝いをしようとしたんですか?」ぼくは分からなかったんで、美樹本に聞いてみた。
B、「きっと、春子さんも夏美さんも殺人をするなんて言ってなかった。だまされたんだ」ぼくは、そう思った。
C、「美樹本・・・さんが快楽殺人者だからさ。この男は人殺しが好きなんだ」ぼくは美樹本を睨んだ。
138名無しのオプ:2007/05/13(日) 22:11:38 ID:AhD6wt2W
どれも違いなさそうな気がするのでAで
139三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/16(水) 14:59:52 ID:+96FHR7F
>>137のA
「なぜ、人殺しの手伝いをしようとしたんですか?」
ぼくは分からなかったんで、美樹本に聞いてみた。
人間の行動原理をきちんと一つに当てはめる事はできないと思う。動機なんてのは当人以外、はっきりと分からない。

「ふん。面白そうだからでも、騙されたでも、好きな様に決めてくれ」
美樹本がつまらなさそうに言う。
やはり、本人へのこれ以上の追求は無意味か。分かる事実だけを説明するしかない。
「春子さんが『かまいたちの夜』を作り、それが、ヒットした。
元々、それを事件に活かそうとしたのか、人気が出たから事件を決行しようとしたのかは分からない。
とにかく、ぼく達は招待され、私刑、処刑されることになった。
ぼく達の内、誰が河村さんをあんな目に遭わせたか分からなかったから、全員殺すつもりで招待した」
頭がぼぅ〜とする。血が流れすぎた生で、軽い貧血状態だ。
「実行役の夏美さんは『河村亜季』として、みんなの前に現れ、反応を見たが、はっきりと犯人はわからなかったんだ。
そこで、予定通り、全員を殺すことにして、美樹本・・・さんを殺害、ここで正岡さんと間違えたわけだけど、恐らくその次ぎにみどりさんを殺害した。
みどりさんが、俊夫さんの所に戻らなかったのは、昨晩の時点で殺されたからだと思う。
今朝、美樹本・・・さんは夏美さんから、話を聞き、その際、田中さんの変装セットを外に持ち出すように言われた。あれは、夏美さんにとっては、島での殺人に都合がいいアイテムだからだ。
正岡さんの死体が発見されなかった場合、あれを着ていれば正岡さんだと誰でも思うからね。
そして、美樹本・・・さんは、自分を殺そうとした夏美さんに逆襲することにしたんですね?」
「さぁ・・な」
140三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/16(水) 15:00:21 ID:+96FHR7F
「美樹本・・・さんはキヨさんを殺害し、塔に死体を放り込んでおく。遺書も偽造した。合鍵を奪って、みどりさんの死体のある部屋で、みどりさんの首を切り取り外へと持ち出す。
これは夏美さんの指示か、美樹本・・・さん自身の考えかは分からない。
ただ、復讐の見せしめ的な意味があるなら、もっとはっきりやったんじゃないかとも思う。
結局、みどりさんの首を運べたのと、もう一つ『氷』を用意できたのは、午前中に屋敷から出て行った美樹本・・・さんだけだ。
美樹本・・・さんが犯人、少なくとも共犯者であることは疑いようがない。
厨房の製氷器の氷の方はあらかじめ処分しておいた。あれにも意味があった。特に氷に関しては」
「意味?何なの?」
真理が聞いてきた。

A、「自分以外の人間を疑わせるためだ」
B、「演出のためだ」
C、「みどりさんの死体に細工するためだ」
141名無しのオプ:2007/05/16(水) 15:05:40 ID:Epv0duG7
Cでお願いします。
142名無しのオプ:2007/05/17(木) 00:39:50 ID:Smt6zpdq
次の話が来るまでの間に推理とは全く関係ない感想を。

今までの流れで、本物の亜季は意識不明だった為完全な夏美の一人二役だったのが判明したけど、
同一人物だというのを誰にも気付かれない位外見も話し方も必死で変えてた夏美にちょっと萌えたw
いや、妹の復讐の為に無関係の人間まで殺して罪悪感も感じないような人に萌えちゃいけないんだろうけど。

本物の亜季も夏美のようにコテコテな関西弁の派手なオネーチャンだったのか、
夏美が演じたように地味で落ち着いた感じの人だったのか。
むしろ夏美の方が春子と姉妹だというのを悟られないように、
わざとケバイ雰囲気にしてただけかもしれないけど。
143名無しのオプ:2007/05/17(木) 02:34:00 ID:/jBIqmna
亜紀を覚えてた人は誰だろう。いたっけ?
そもそも最初から自作自演…じゃなかった一人二役を疑ってる人なんていないんだし、
ちょっと変わったふいんきの2人(ここでは派手なオネーチャンと地味で落ち着いた人)を演じてたら、
演技がちょっとぐらい怪しくてもそれに気付く事なんてないんじゃないかな
144名無しのオプ:2007/05/17(木) 15:02:45 ID:Uuszedkh
>『夏美さんは心電図に映し出されたバイタルサインだけで、恐らく意識が戻ることのない河村亜季の生を感じていたかったんじゃないだろうか』

萌えるつうか、何かきゅんとくるな。死んでたら、忘れることもできたかも知れんが、生きてても意識がないから余計に恨みがつもったのかも
145三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/17(木) 15:55:00 ID:0pjaEgnk
>>140のC
「みどりさんの死体に細工をするためだ」
「どうして、そんな事をする必要があるんだ?」
俊夫さんが怒りをあらわにしながら、聞き返した。
みどりさんを、死んだ人間を傷つける行為に嫌悪を抱いたのだろう。
「元々、キヨさんの偽物の遺書に、みどりさんは殺されたと書かれていました」
「そうよ!だから、遺書が偽物で、みどりさんは生きているというのが、わたしの考えた結論だった」
「うん」
真理の考えは、そう言う意味では間違っていない。
「だって、みどりさんを殺した事を知っている人間が、本当の事を書くのはおかしいんじゃない?」
「ぼくの印象は『自殺を偽装したことを強調させた』だ。
自殺を偽装した犯人がいる事を、さらに偽装した。遺書が偽物であるから、内容が偽物と判断してしまったんだ。
つまり、偽物の中に本当の情報を入れることで、本当の情報を偽物にしたてあげた。
それが、美樹本・・・さんが遺書を捏造した理由だ。
結果、『みどりさんを共犯者とした河村亜季犯人』というシナリオが出来上がったんだ。
そのシナリオを作ることができるのはやはり、みどりさんが死んでいたことを知ってないと不可能なんだ。
そこで重要になるのが、みどりさんの死体の扱われ方だった」
146名無しのオプ:2007/05/18(金) 01:14:06 ID:UF5dXZ3r
あげ
147三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/18(金) 15:23:14 ID:jvcaGBob
あら、続きを書き込んでたつもりが、書き込まれてなかったorzしかも保存してないし・・・。むぅ
148三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/18(金) 15:37:38 ID:jvcaGBob
>>145の続き
「だから、みどりの死体が何だって聞いてるんだ?」
「みどりさんが、キヨさんの死体発見時に生きていた。シナリオに沿って、そういう形にする必要がありました。
ぼくたちがキヨさんの死体を発見した後、小屋で美樹本・・・さんと香山さん、俊夫さんが3人で、みどりさんの死体を発見した。
キヨさんの死体を出現させるために、みどりさんが生きていたのであれば、河村さん以外、犯行は不可能という事です。
一方で、みどりさんの首は昨夜殺されたのなら、相当時間も経って、ある程度の知識があれば、死亡時間を割り出すことも可能かも知れません。
だから、氷を使った。まるで、演出のように。
そして、もう一つ、身体部分を隠すためです。
恐らく、俊夫さん達が発見したとき、ドラム缶の中、氷の下に身体は無かったんだと思います。
首だけがあり、ぼく達が眠らされた後で、身体を用意したんだ。
だから、時間が必要だった」
「ちょっと待って。透。さっきあの死体の身体はドラム缶の中で殺されて、首を切られたって言ってたじゃない?」
真理が当然の疑問を口に出した。
「そうなんだ。それが少し引っかかったけど・・・。香山さん・・・」
ぼくは香山さんの方を見た。
「何や?一体どうしたんや?」
「さっき小屋で夏美さんの声を聞いたって言いましたよね?」
「あっ」
真理が小さく声をあげた。
「夢の中で聞いた訳じゃない。香山さんは意識が朦朧としている状態で現実の夏美さんが発した声を聞いたんだ」
「そんな・・・。わしがあの時、しっかりしていれば夏美を・・・」
それはどうだろうか?
あの時の、香山さんは既に夏美さんが死んでいたと思ってたわけだし、それに夏美さんは、ぼく達、全員を殺そうとした犯人でもある。
ただ、それでも、香山さんが夏美さんを救いたかったという気持ち、そして救えなかったという後悔は心の底から出てきたんだろう。
149三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/18(金) 15:38:47 ID:jvcaGBob
とにかく、香山さんには冷静でいて貰わないと困る。ぼくが今からやろうとしている事が成功するかどうかの鍵なんだ。

「つまり、あのドラム缶の中で殺されたのは、夏美さんだった。みどりさんの服を着させられた・・・。
氷漬けにされたおかげで、体格もある程度はごまかせると思う。
そして、今度は夏美さんの首と、屋敷にあったみどりさんの身体を田中さんの変装グッズを利用してくっつけて、崖から突き落とした。
崖の下の死体が、妙な形をしていたのは、そのせいじゃないかな。
小屋でみどりさんの首を発見した時、香山さん達は田中さんに襲われたわけだけど、これはもちろん夏美さんの変装だった。
美樹本・・・さんは上手く、やり過ごし、逆に夏美さんを殺した。あの小屋の中でね」
「小屋にも仕掛けがあった訳ね」
真理は既にそれに気付いてるんだろう。
「うん。美樹本・・・さんのトリックは正岡さんの事件、みどりさんの事件、キヨさんの事件、そして、河村亜季に扮した夏美さんの事件と、全て、自分が容疑の圏外におかれるようにしている」
夏美さんが、全員が可能であるから犯人が分からないように行動した一方で、美樹本はトリックを使い、自分だけは不可能であるように見せかけたんだ。
150三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/18(金) 15:39:39 ID:jvcaGBob
「そうだ、俺たちは閉じこめられていたんだ。あれはどうやった?」
俊夫さんが、疑問を挟む。
「ここにも氷が使われたんです。鉄パイプの下に氷をパイプが斜めになるように扉の留め具に、載せておきます。
扉の閉まる直前まで、自分で斜めの状態で片側に止めておき、隙間が狭くなったら、小屋にあったベニヤ板で、止めておきます。
後は扉を閉めきると鉄パイプは斜めに滑り、扉に閂のように掛かるわけです。角材とかが使われなかったのは、斜めにするための空間が無かったから。
そして、一番左の留の底の左部分が上の方にかなりねじ曲がっていたから、パイプは飛び出ることなく、しっかりと止まった」
「氷を積んだの?綺麗に?」
「どうだろう?そもそもこの屋敷の製氷器にあった氷は家庭用のブロックアイスと同程度の物だけど、実際にはクルーザーにあった氷を使ったはずだから、形は何か良い物があったのかも知れない。
そして、中から弱くても、振動を与え続ければ、氷は砕けたり、溶けやすくなる。
小屋を外側から閉めたようにしまるで閉じこめられたかのようにみせかけ、ここでも、自分に容疑がかからないようにしている。
そして、何食わぬ顔で、自分が描いたシナリオの通りに事が進むのを見ていた」
「透・・・くん。きみのおかげで、俺は助かった。いや、ここにいる全員だがな」
今まで黙って説明を聞いていた美樹本が、口を開いた。少し口調がおとなしい。
「カレーの件ですか」
ぼくは啓子ちゃんを見ながら言った。全員を助けることが出来た訳じゃない。
151三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/18(金) 15:40:43 ID:jvcaGBob
「感謝してるさ。てっきり、全てが終わったと思ってたし、何より昨夜の料理に毒は入っていなかった訳だからな」
美樹本の、変化は河村さんの・・・開かずの間の事件を聞いた時からだ。
「さて、これでこの島の事件の全ての説明が終わった訳だが・・・」
美樹本が随分と冷静な口調で言い始める。
「・・・やはり、全員に死んで貰う事にしよう」
「・・・・・!!」
やはり、そうきたか。
「っ」
ぼくは足の痛みをこらえながら立ち上がった。
「透っ!!!」
「透くん。最初に死にたいのはキミか?」
ぼくは机に手をのせた。

A、 イチかバチか、頭突きを敢行する。
B、 手をあげて命乞いをする。
C、 机の上の物を美樹本に投げつける。
D、 机の上の皿を美樹本めがけて投げつけた後、頭突きで突撃する。
E、 「地震だ!!!」と言って机の下に潜り込む。
152名無しのオプ:2007/05/18(金) 16:06:35 ID:7zvTZ049
念を入れてDで。
153三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/19(土) 17:15:22 ID:Hw7s8Dny
>>152のD
美樹本とぼくの距離はそんなに遠くない。
ぼくが怪我をしていたことと、本当に最初は殺すつもりが無かったという理由からだ。
「ゲホッゲホッ・・・カッ」
精一杯の演技をして、できるだけ自然な形で、よろめいたようにテーブルの上に手をのせた。
「おいおい、急に立ち上がって何をする気だ」
「はぁはぁ・・・・」
苦しいフリしてみせる。実際に苦しいのは確かなんだけど・・・。
テーブルの上のカレー皿を、さりげなく掴む。
そして、

ガチャッ

そのまま下投げで、美樹本めがけて投げつけた。

ガシャァンッ

皿は美樹本の近くに飛んでいったが、外れて扉付近で割れた。
「くそっ」
美樹本が、ぼくに狙いを付ける。
今度は、はっきりと美樹本を見ながら、もう一枚、皿を投げつけると同時に、足の痛みをこらえ、床を蹴り走り出した。

ガンッ

パンッ

今度の皿は、美樹本の銃を持つ腕と、逆の腕に命中した。美樹本は思わず引き金に掛けていた指を引いたんだろう。
銃は天井の方に発射された。
美樹本の状態を視界に捉えながら、ぼくは美樹本の胸めがけて思い切り頭突きでぶつかりにいく。

弾はあと一発。
当たるなら当たっても良い!!!
154三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/19(土) 17:16:11 ID:Hw7s8Dny
ドンッ
パァンッ

「いやぁぁぁぁぁっ」

ぼくの頭に何かにぶつかったような衝撃と、脇腹にえぐるような痛みを感じたのは、ほぼ同時だった。

ガンッ

「ぐぁっ!!」
ドンッ
美樹本が食堂の扉に身体をぶつける。
「ちくしょうっ!!!糞ガキがっ!!!!ぶっ殺してやる!!!」

ドサッ
ぼくは、痛みでそのまま床にうつぶせに倒れ込んだ。
だけど、今がチャンスだ。
「香山さん!!!!!!俊夫さん!!!!!!今です!!!!!」
ぼくは美樹本を見上げながら叫んだ。
「死ね!!!!」

カチッ、カチッ

美樹本の銃から弾は発射されなかった。
勝った・・・のか?

「はっ。そうや俊夫くん!!!あの銃は8発で打ち止めや!!!!いくでっ!!!」
「分かったっ!!!!」
説明はいいから・・・早く。早くして  くれ。お願いですから・・・早く。
ダダダッ
ぼくの視界は、既に薄くなっていた。ぼんやりと靄がかかったように、実像を捉えきれないでいた。
ただ、音だけが、鮮明だった・・・。
155三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/19(土) 17:17:30 ID:Hw7s8Dny
パァンッ

何の音・・・だ?今のは銃声?
香山さんの足音も、俊夫さんの足音も聞こえない・・・。
「はは、そう言うことか。弾数を計算して、強行手段に出たわけだな」
美樹本の声が頭上から聞こえる。もう、顔はぼんやりとしていて、はっきりとは分からない。
「くそっもう一個、銃があったのか」
俊夫さんが悔しそうな声を絞り出した。
「何や、それ、詐欺やないか・・・」

ぼくは浅はかだった。
美樹本が弾を再装填しなかった理由を弾が無いと、自分の都合の良いように考えてしまっていた。
「さすがは透くんだ。素晴らしい考えだったな。だが、銃がもう一丁あるとは思ってなかったのか・・・」

どくっ
どくっ
ドクドク
ぼくは、今、初めて自分の脇腹から、血が溢れているのに気付いた。
だから、こんなにも視界がぼやけていたんだ・・・。もう・・・何もかも終わりだ。
「まぁ仮に銃があってもいいチャンスだったが、期待した味方が悪かったな。もう少し、頭の良い奴なら、キミの考えたプランで取り押さえることが出来たかもな」
違う。
美樹本・・・あんたはまた、そんな責任を転嫁するような事を言い出すんだ。
「叫ぶ前に、キミのやろうとした事を理解して、俺に飛びかかれるような人間がいたら、俺は捕まり本当に綺麗な解決だったな」
「ちが・・・・・」
違う。ぼくの浅はかな考えが通用しなかった。それだけだ。
香山さんも俊夫さんも、悪くなんて無い・・・。
「まぁ、いいさ。カレーまでぶちまけられたんだ。望み通り、ぶっ殺してやる」
156三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/19(土) 17:20:24 ID:Hw7s8Dny
タタッ

誰かの足音が近づいてきた。
「やめてっ」
ぼくの目の前に一人の人物がやってきた。ぼんやりとしててはっきりと見えない・・・。
ぼくは脇腹を押さえる。もう血が流れすぎた。止めをさされることなく、ぼくはもう・・・。

近づいてきた人物は美樹本の前に立ち、両手を広げているようだ。
「どけよ。後でちゃんと殺してやるから。最初はそこで転がってる名探偵を殺したいのさ」
「やめてっ!!!!」

・・・真理・・・・。真理がぼくの目の前で、ぼくを守ろうとしている。だけど・・・。
「やめ・・・・て・・・・くれ。真理・・・・逃げ・・・」
扉はすぐそこだ。今なら、真理だけなら、上手く逃げられるかも知れない。
「透くんが逃げろって言ってるぞ。どうする?」
「透を助けてっ!!!!」
「やめ・・・・て・・・。真・・・理・・・もう・・・いいから」
真理が殺されるなんて嫌だ。
「お願いだから、助けて。わたし達、あなたのことを警察にも言わない。透を助けてっ」

「ふん。嫌だね。そんなに死にたいなら、先に死ねよ」
美樹本が残酷に言い放った。

パァァァァァァァァンッ

ドサリッ
銃声が響き・・・・ぼくの・・・目の前に立っていた・・・人物は・・・まるで糸が切れた人形のように・・・ぼくの目の前に・・・崩れ落ちた。
「真・・・・・理・・・・・・・」

嘘・・・・・・だ。

続く
157名無しのオプ:2007/05/20(日) 07:16:59 ID:BGYg3Yt0
また非常に気になる所で中断してくれましたねw
このまま春子さんが登場しないで終わるとも思えないのですが、どうなのでしょう?

アリバイ作りの為に島には来ない計画だったらしいですが、
「(美樹本殺害に失敗して返り討ちに遭う可能性も含めて)やっぱり夏美と亜季が心配で」とか、
「計画が完了したら夏美から連絡があるはずなのに、一切ないから何かあったと思って」などの理由で
突然登場する可能性もあるのかな?
そうするには時間が足りなさすぎる気もするけど。
158名無しのオプ:2007/05/20(日) 12:55:54 ID:I4I7OXCu
1.ヘリで颯爽と登場
2.地下室でペンション「シュプール」と繋がってる
3.香山の中に入ってる

・・・これだと1か
しかし何なんだ俺の発想の貧困さはw
159三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/20(日) 22:52:52 ID:rRgIvnaJ
>>156
全てが終わった。
真理が殺された今、ぼくに残された選択肢は、ただ、死を待つ事だけだ。
美樹本に撃たれるのか、それとも、失血死か。

「真理!!!!!真理!!!!!!」
小林さんの叫ぶ声が聞こえる。
「いやぁぁぁ!!!いやぁぁぁぁぁ!もういやっぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!」
可奈子ちゃんの悲鳴が、耳に痛い。

もし、ぼくが犯人を指摘しなければ・・・。
もし、ぼくが弾を撃ち尽くさせて、攻撃しようとしなければ・・・。
身体をはいずる痛みよりも、心に突き刺さった痛みは、大きかった。
ぼくの思考はもう後悔だけ。
真理が目の前で殺された。映像は全く見えなかった。
真理の死に顔すら、ぼやけて、はっきり分からない。

「さて、透くん。今、随分辛いだろうが、すぐ楽にしてやる。俺は慈悲深いからな。
彼女に寂しい思いをさせないよう、すぐに送ってやるよ」
音は、音だけははっきり聞こえる。
喉がカラカラだ。
身体を伝う液体が、涙か汗か血か分からない。
もう、何もかも終わりなんだ・・・。
そう、思った・・・。
160三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/20(日) 22:54:16 ID:rRgIvnaJ
時間がゆっくりと流れている気がする。
ギィッと食堂の扉が開かれた。
中から外に出ようとする人物がいた訳じゃない。
外から中に、誰か入ってきたんだ。
その人は何か叫ぶと、目の前の美樹本に、掴みかかった。
「くっ」
美樹本は、予想外の襲撃に、よろめく。
パンッ
銃声が響く。
誰かに当たったんだろうか。
目の前では、二人がまだ、掴みかかっていた。
ダダッ
背後で足音が聞こえた。
俊夫さんかな?
「うぉぉぉぉぉぉぉ」
叫び声を上げながら、俊夫さんも美樹本に掴みかかろうとした。
「放せ!!!!」
美樹本は、最初に掴みかかった人物を突き飛ばした。
「きゃぁっ」
ドサッ
その人物は小さな悲鳴を上げて、床に尻餅をつく。
バンッ
その次の瞬間、俊夫さんは、美樹本に飛びかかり、そのまま押し倒した。
「俊夫くん。そのまま抑えるんだ!!!!」
小林さんも近くまで来ていたようだ。
「ちくしょう、コイツッ!!!みどりの仇、真理ちゃんの仇」
ドコッドコッ
何かを叩き付けるような音。
視界がぼやけて、まるで馬乗りしているような人影しか見えない。
「や・・・め・・・ろ」
美樹本の声が聞こえた。
弱々しい。
161三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/20(日) 22:56:12 ID:rRgIvnaJ
「俊夫くん。もう、いい。これで縛ろう」
小林さんが、言った。何か縛る物があったんだ。
「うう・・・・・・・」
俊夫さんの嗚咽が聞こえる。
何かの作業をする音が聞こえる。
「こんな、こんな事になるなんて・・・・」
食堂の外からやってきた人物が言った。女の人だ・・・。
誰だ?
「は・・・・・る・・・こ」
ゆっくりと、その人物の名前を呼ぶ、香山さんの声を聞こえた。
そうか、春子さんが、助けに来てくれたんだ・・・。
よか・・・・。
162三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/20(日) 22:58:27 ID:rRgIvnaJ
「誰かっ!!!!!!誰か透の手当を!!!!」
その声が、ぼくの意識を呼び戻した。

真理・・・・?
ここはあの世なのか?
いや、あの世だったら、手当なんて・・・。
「真・・・・理・・・・」
ぼくは、横に座る人物に手を伸ばした。
「透っ!!!」
ぼくの手を真理がしっかりと掴んだ。
ああ、生きているんだ。
一緒にいても、こんな風に触れることは無かったんだ。
生きてくれてたんだ。
「透の…透のくれたペンダントが守ってくれたの」

あのペンダントが?
「ほら、これ」
そう言って、ペンダントから外れた隕石の欠片を、ぼくに握らせる。
「守ってくれたから、これが守ってくれたから、弾が当たってどっかに跳ね返ったのよ」
「ち・・・が・・・」
「血が・・・止まらないのね。お願い。叔父さん!!!」
違う。そう言いたかったんじゃない。そんな事はもういいんだ。
ペンダントに弾が当たって、跳ね返るなんてあり得ない。
仮に弾の勢いより固くて強くても、どこかに固定されてる訳じゃないなら、隕石の欠片をはじき飛ばして、真理の身体を貫通していたはずだ。
もちろん、あの至近距離で美樹本が、はずす訳もない
美樹本の弾が空砲だった。
それも、はっきり言えば、奇跡に近い。
それでも、その可能性の方が、はるかに高いと思う。
こんな時に正直に話しても・・・・仕方ないか・・・な。
163三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/20(日) 23:00:32 ID:rRgIvnaJ
「そうだ、俊夫くん。早く、応急手当を。河村さんの部屋か、管理人室に何かあるはずだ」
「分かった」

「夏美から亜季が死んだと連絡を聞いて、この島に来たんです。船長もすぐに来ます。それからヘリで警察も」
「なんやと!!携帯は通じないんやで!?」
「いいえ、丘の上まで上がれば、なんとか通じる場所があるんです」
夏美さんが、河村さんの死体を見て、外に出た時に、連絡をしたのか。
「・・・・こんな夜に来るとは思わなかったぜ・・」
美樹本・・・。縛り上げられたみたいだ。

ぼくの身体には、小林さんと俊夫さんが応急手当をしてくれて、包帯が巻かれている。
だけど、あまりにも血が流れすぎて、今にも意識を失いそうだった。
致死量に近い、血が流れている。ぼく自身、生きているのが不思議だった。
「船長に無理をお願いしたんです」
『あの、船長か。なら、知っとるかもしれん。アレは子供の頃から、本土とこの島を父親と一緒に行き来しとった』
たしか、キヨさんがそう言ってたな。夜でも、長年の勘で何とかなるのかな・・・。
持ち主のいない時の管理会社は、船長を利用していたのかも知れない。
「急いで、こっちに来たんですが・・・・」
パシンッ
誰かが、誰かをひっぱたいた。
「お前は人を試して、夫を試して、こんな殺人を考えて、夏美まで見殺しにして」
香山さんだ。春子さんをひっぱたいたんだ。
「夏美も・・・・そう」
春子さんは、つぶやいた。夏美さんがこの場にいない時点で、夏美さんの死を薄々、感じ取っていたんだろう。
パシンッ
もう一度、叩いた。
「この、あほうが!!」
164三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/20(日) 23:02:33 ID:rRgIvnaJ
「止めて下さい!!!」
誰かの声が聞こえた。
「・・・・叔母さん」
今日子さんが、香山さんを止めたのか・・・。失神していたけど、目が覚めたんだ。
「わたしも、前の結婚生活はうまくいきませんでした・・・・」
今日子さんが話し始めた。そう言えば、一度離婚してるんだっけ・・・。
そうか、今日子さんが、ここから香山さんを、説得するんだ。
やっぱり、いい人なんだな。
どんな事を言うんだろう?
「・・・で・・・・・ぁ」
あれ。声が聞こえにくいぞ。
いや、なにか、雑音みたいに音が濁って聞こえる。
・・・・あれ・・・・。
さっきまで白くぼやけてた目の前はいつの間にか真っ暗。音が、遠のく・・・・。
「・・・・・ぉ・・・・」
真理・・・・?
何か言ったのか・・・・?

ガタンッ

続く
165選択肢編を始めよう!:2007/05/21(月) 02:05:03 ID:601xGdYq
横レス失礼します。
三日月島真相編 ◆TmTfkIMkPkさん、とても頑張っていますね。
続きが気になります!

しかし、非常にシリアスな展開ですし、そうなると選択肢を出すことが難しいので、スレが過疎化してしまいます。
そこで、かまいたちの夜の面白さは、選択肢とバッドエンドだという原点に帰りたいと思います。
三日月島真相編および他の作品と同時進行で、『選択肢編』をやりましょう!

【選択肢編のルール】
誰でも参加可能ですが、一つのレスの最後に、必ず面白い選択肢を3つ以上つけてください。
さらに、最初に選ばれた選択肢は、必ずバッドエンドにしてください。
次に書くときは、バッドエンドになった選択肢を選び直してください。

また、強制ではありませんが、同時進行の作品が複数あるので、できれば名前欄に『選択肢編』と書いて欲しいと思います。
本当に誰でも参加自由ですが、明らかな荒らしや、かまいたちの夜を理解していない人のは、スルーしてください。
今までROMだった人も、どんどん参加しましょう!
それでは、スタート!
166選択肢編165:2007/05/21(月) 02:06:53 ID:601xGdYq
よく覚えたボーゲンでなんとか麓レストハウスまで
辿り着き、ぼくは一息付いていた。
真理はそんなぼくの目の前で、雪をけたてて
鮮やかに止まった。

ゴーグルが粉雪にまみれになって、何も見えない。
「あはっ、透ったら、雪だるまみたい」
ぼくはゴーグルを外しながら体に付いた雪を払い落とした。


A「どうせぼくは、身も心も冷たい人間ですよ」
B「今まで秘密にしていたのに、どうしてぼくが雪だるまだって分かったんだい?」
C「犯人はお前だ!」
D「雪だるま? 真理は、雪だるまの定義を正しく理解しているのか?」
E「死ねよブス」
F「雪だるまみたいに太ってるのは真理の方だよ。鏡を見たことがあるの?」
167名無しのオプ:2007/05/21(月) 03:17:39 ID:dhEVu2fT
書き手さんを増やす目的なら、選択肢3つ以上っていうのはいいけど「面白い」
って制約みたいなのはいらないんじゃないかな。変に考えちゃうし。
あとどういう話になるか分からないけど、終盤まで
最初に選択したものが必ずバッドエンドになると、それはそれでまどろっこしいような気がします。
ということでとりあえずバッドにしやすそうなBを選らんでおきます。
168選択肢編165:2007/05/21(月) 03:31:36 ID:601xGdYq
「今まで秘密にしていたのに、どうしてぼくが雪だるまだって分かったんだい?」
 ぼくは真理に詰め寄った。
 真理は、悲しそうな顔をした。
「そう。やっぱり透は、自分が雪だるまだってことがバレていないと思っていたのね……」
「どういう意味だ?」
 ぼくは、真理の言葉に混乱した。
「分かったわ。最初から話す。私には、美雪という名前のお母さんがいた。
でも、お母さんは、悪霊にとりつかれて、死んでしまった。私は悲しかった。
私は、『美雪』という名前から雪だるまを連想し、お母さんの形をした雪だるまを作った。
でも、そこに憑依した霊は、お母さんの霊ではなく、透、あなただったのよ」
「そうだったのか……」
 ぼくは、ぼくを作ってくれたのが真理だということが、嬉しかった。

「ところで、春が来たら、ぼくはどうなるの?」

                    バッドエンド1「春になったら」
169165:2007/05/21(月) 03:43:22 ID:601xGdYq
>>167
分かりました。
無理に「面白い」選択肢は考えなくてもいいです。
でも、できる限り一つのレスに三つ以上の選択肢をつけてください。
終盤の真面目な話になったら、選択肢がなくても構わない、ということで。
解決編は、私が何とかまとめてもいいですし、他の人が書いてくれてもいいです。
170名無しのオプ:2007/05/21(月) 04:25:03 ID:dhEVu2fT
話がまとまってくると、書く人も固定されてくるような気もします。
あと続きを書いてたけど、別の人に先を書かれてしまったというような初期のスレにもあった
競合があるかもしれません。
まぁ諸問題は置いといて普通にAで進めてみますか。
171名無しのオプ:2007/05/21(月) 08:03:22 ID:eQfZGKsz
>>159-164
読み応えのある文章、いつも乙です。
透が真理にペンダントを渡したシーンを何回も読み直し済みで、
いずれ真理が撃たれるシーンも絶対あるんだろうなと予想してたのに、
いざ撃たれた時にはその事をすっかり忘れて本気で心配した鳥頭の自分w

そして春子さんが来てくれたというのに、
「実はまだ亜季を轢いた犯人を知らない or 秘密を知られたからには生かしちゃおけない」
という理由で皆殺しモードに入るのじゃないかとドキドキ。
とりあえず香山さんにおとなしく叩かれてる時点でそれはないかな?
妹を二人も亡くしてしまった事で、更なる復讐に燃えるよりは脱力感と自責の念の方が強いだろうし。

何はともあれ、続きを楽しみにしてます。
172名無しのオプ:2007/05/21(月) 08:07:52 ID:eQfZGKsz
>>165
これもすごく楽しそうな企画ですね。過去にもやった事があるのですか?
原作の細かい部分は忘れてる所も多いので文章は書けるか分かりませんが、
選択の方でぜひ参加したいと思います。

ちょっとスレ違いですが、選択肢はアイレム系のノリで行くのも面白いかも。
(ハチャメチャ、鬼畜系の選択肢も加える)
173選択肢編165:2007/05/21(月) 14:09:06 ID:1JOnwee5
A「どうせぼくは、身も心も冷たい人間ですよ」
「そういう意味で言ったんじゃないってば。透、上達早いと思うわよ」
 真理もゴーグルを外し、笑顔を見せる。
 だが、ぼくはそんな真理を冷たく無視した。
 どうせぼくは、冷たい人間なのだから・・・・・・。
「もう一回だけ、滑ろ?」
 真理はそう言ったが、相変わらずぼくは冷たい態度をとり続けることにした。


Aぼくは、真理とリフトに乗り、真理をリフトから突き落とすことにした。
Bぼくは、さっさと駐車場に行き、小林さんに借りた4WDに乗り込んだ。
Cぼくは、その場で服を脱いだ。
D「早く帰らないと、ペンションでバラバラ死体が発見されているかもしれないよ」
E「犯人はお前だ!」
F「浪人生のぼくに向かって、よくそんな無神経なことが言えるね」
174165:2007/05/21(月) 14:13:58 ID:1JOnwee5
>>170、172
175165:2007/05/21(月) 14:16:45 ID:1JOnwee5
えーと、ごめんなさい。174は誤爆しました。
本文を書き込む前に書き込んでしまいました。
基本的に、選択肢にしろ、本文にしろ、最初に書いた人のを採用するということで。
先のストーリーはまだ考えなくてもいいので、みなさん競って書いてください。
一人で書いてると、ネタ切れするので・・・・・・
176名無しのオプ:2007/05/21(月) 20:56:00 ID:sb+c9qOK
>>171
>>113の美樹本のセリフで
「元々は春子より夏美の方が復讐に精力的だった。春子にしてみればゲーム内で全員殺すという復讐をしている。決して、それで取り戻せるわけじゃないがな。
実際、春子は確実なアリバイを用意するためにこの島にはいない。夏美が殺害の実行に関しては春子の手を汚したくなかったと。
てのがあるから、皆殺しモードはないみたいだ。
どちらかと言えば、後者の止めれなかった事を悔やんでる方だろうね。
しかし、選択肢が推理に活かされるってのはすごい気がする。
177名無しのオプ:2007/05/21(月) 22:16:47 ID:AFJfuNgk
>>176
>しかし、選択肢が推理に活かされるってのはすごい気がする。

うん。実は前スレ>>478で、夏美さんを春子さんと呼んでしまう選択肢を選んだのは自分なのだけど、
それもしっかり伏線として生かしてくれたのには感服した。
違う選択肢を選んでいたら、また違った所で「春子と夏美は血縁関係」というのを匂わせたのだろうし。
178名無しのオプ:2007/05/22(火) 06:18:01 ID:wePYQV7G
>>173
原作とは違った設定のFで。
179選択肢編165:2007/05/22(火) 13:47:08 ID:SBLPEmZ2
>>173
F「浪人生のぼくに向かって、よくそんな無神経なことが言えるね」
 ぼくは、真理に冷たく言い放った。
「え? 何、どうしたの、透?」
 真理の笑顔が憎らしかった。
「ぼくが今年で四浪していることを知っていて、『もう一回滑ろう』
だなんて……。ひどすぎるよ」
 ぼくは、自分でも気付かないうちに涙を流していた。
「私、そんなつもりじゃなかったの。本当よ!」
「もういいよ、真理」
「待って、透。分かった。白状するわ。受験シーズンのこの時期に
スキーに誘ったのは、透を滑らせるためだった」
 ぼくは、真理の告白に愕然とした。
「そんな……。どうして、そんなことを」
「私、透のお嫁さんになるのが夢なの。ね? だから、私が歌舞伎町で働いて、
透を養ってあげるわ。私、透がニートでもヒモでも構わない!」
「そうか、分かったよ。結婚しよう、真理。ぼくはホームステイパパになるよ!」

 次の年、ぼくたちは晴れて結ばれた。

                 バッドエンド2「本当にハッピーエンド?」
180名無しのオプ:2007/05/22(火) 21:39:23 ID:uaC40K7z
>>173
もうどれが正解か分からないw
Cでお願いします。
181選択肢編165:2007/05/22(火) 22:48:43 ID:SBLPEmZ2
>>173
Cぼくは、その場で服を脱いだ。
 と言っても、もちろん、全裸になったわけではない。
 ぼくが全裸になることを期待している人は大勢いるだろうが、さすがにぼくも
そこまで馬鹿ではない。スキーウェアを脱いだだけだ。
「ぼくは、身も心も冷え切っている。きみに暖めてほしい」
 ぼくはそう言うと、真理の身体を抱き締めた。
「ちょっと! 透、こんな人目のあるところで、何をやってるのよ」
 真理は顔を赤らめた。
「分かった。人目が気になるなら、続きは小林さんに借りた4WDの中でやろう」
 ぼくは、真理の耳元で囁いた。耳を攻められると弱い真理は、小さく頷いた。

 ところが、車の中には、

A美樹本さんがいた。
B田中一郎がいた。
C熊がいた。
Dぼくたちよりも先にカーセックスをしているカップルがいた。
Eもう一人真理がいた。
Fバラバラ死体があった。
G大量の札束があった。
182名無しのオプ:2007/05/23(水) 00:29:14 ID:E0X1/aWR
Fで。
183選択肢編165:2007/05/23(水) 02:12:48 ID:vAe7Xp2h
Fバラバラ死体があった。
 まったく。こんなところにケチャップのついたマネキンを置いたのは誰だよ。
 ぼくはそう思いながら、車内の腕を持ち上げた。腕は腐りかけていた。
「きゃーっ! 人殺し!」
 真理が叫んだ。駐車場にいた人たちが集まってくる。
「え?」
 ぼくは、状況が掴めなかった。
 スキー場にいた警備員に取り押さえられたぼくは、そのまま警察に引き渡された。
 何度も冤罪だと主張したが、裁判では有罪になり、禁固刑十五年を言い渡された。



バッドエンド3「こういうベタな選択肢って、逆にバッドエンドにしにくいし、
        バッドエンドにしてもつまらないから困るんだよね。ていうか、
        165以外に選択肢編を書いてくれる人いないのかよ!この選択肢じゃ
        物足りないっていう人は、選択肢を加えるだけでもいいから
        参加してください。いや、本気でお願いしますよ。もしかすると
        最初に選ばれた選択肢は必ずバッドエンドになるってルールが
        駄目なのかもしれないけど」
184名無しのオプ:2007/05/23(水) 07:13:29 ID:DkdGTrnf
>>183
確かに、ずっと一緒に行動してて小林さんの車にも一緒に乗って来てた真理が、
死体を触っただけで透を殺人犯呼ばわりは無理ありすぎますねw

参加したいのはやまやまなのですが、この流れで選択肢を選んだ本人が続きを書くのもなんだかなあと思ったので。
もちろんローカルルールではそれも可みたいですが。
選択肢を加えるってのは具体的にどう書けばいいですか?

例えば>>181なら、

H異次元空間になってて、三日月島へ続いていた
I赤ちゃんが泣いていた

と加える感じですか?
185名無しのオプ:2007/05/23(水) 08:05:18 ID:uoF1K+3C
J せっかくだから僕はROMる事にした。
186選択肢編165:2007/05/23(水) 09:36:40 ID:1qw2+6Fi
>>184
I赤ちゃんが泣いていた。
「どうして、こんなところに赤ちゃんが?」
 ぼくは、首を傾げた。確かに、車の鍵をかけていたはずだ。
 実際、ぼくが今開けたドア以外は、すべて施錠されている。
 それにしても、困ったことになった。こういうときは、警察に届けるべきだろうか。
それとも、スキー場に知らせるべきなのだろうか。

 とりあえず、真理の意見を聞こうと思った。すると、真理は、

A恐怖の表情を浮かべていた。
B歓喜の表情を浮かべていた。
Cいつの間にか赤ちゃんに授乳していた。おっと、この展開でポロリはないだろ!
D別の車に赤ちゃんを入れ直すところだった。
Eいつの間にか姿を消していた。
Fなぜかスキー場に設置されていた赤ちゃんポストに赤ちゃんを入れていた。
187165:2007/05/23(水) 09:45:34 ID:1qw2+6Fi
↑参加したい人は、こんな感じでお願いします。
 ここまでで、大体流れは掴めたでしょうから、みなさん気軽に参加してください。
 せっかくなので、184さんの加えてくれた選択肢を、さっそく採用してみました。
188名無しのオプ:2007/05/23(水) 14:11:55 ID:N2sZBXkI
>>186
Eいつの間にか姿を消していた。

あれ?真理がいない…。まさか逃げたのか?
でも足はこの車しかないはずだし…と思ってたら係員さんを呼んできてくれた。
赤ちゃんは警察に預けられたが親は見つからず、施設に入るという話になった。

「ねえ、透。私達であの子を育てない?
施設に入るのが可哀想だからって言うんじゃなくて…。何かほっとけないのよ」
実はぼくも同じ事を考えていた。
なぜか鍵のかかったあの車にいたのも何かの運命かもしれない。
こうしてぼく達は周囲の反対を押し切り、結婚して赤ちゃんの親になった。
真理は大学をやめ、ぼくは必死でバイトをしながら何とか乗り切った。
189名無しのオプ:2007/05/23(水) 14:13:41 ID:N2sZBXkI
それから時が過ぎ、亜季と名づけたその子ももう15になり美しく成長した。
真理は反抗期で困ると嘆いていたが、なぜかぼくにはそんな事はなく、
後ろから抱きついて来たり一緒にお風呂に入ろうとしたり(もちろん必死に断るがw)と、
むしろ子供の頃より懐いてるみたいだった。

しかしそういう亜季の言動に、ある種の異常さも感じていた。まさか真実を知ってしまったのか?そしてぼくを…。
確かめるべく、亜季がお風呂に入った隙に久しぶりに彼女の部屋に入ってみた。
ふと机を見ると、卓上カレンダーの今週の土曜日にハートマークが付いていた。
真理が泊りがけの同窓会に行く日じゃないか!

いや、きっとぼくの思い過ごしだ。
こっそり彼氏でも作っててデートするに違いない、
と一般の父親とは明らかに違う心配をしながら部屋を出た。
でももしどこにも出かけなかったら…?
廊下でお風呂上りの亜季とすれ違う時に、今まで見た事もない妖艶な笑みを浮かべられた気がした…。

バッドエンド?4「ぼくの人生で一番恐ろしい週末」
190名無しのオプ:2007/05/23(水) 15:54:58 ID:uvBMUL4F
>>188のように選択されなくても続きを書いてもいいのだろうか。
191165:2007/05/23(水) 20:04:00 ID:1qw2+6Fi
>>190 OKだと思いますよ

>>1に、
 1.書き手が選択肢でレスを締める。
          ↓ ↑
 2.ROMが選択肢からストーリーを選択する。
   あるいは、書き手本人か他の書き手が1の選択肢から選んで継続する。

 と、書かれているので・・・
192名無しのオプ:2007/05/23(水) 20:10:00 ID:dUdwWjNG
いやCだ
193名無しのオプ:2007/05/23(水) 21:38:14 ID:bSIBECtn
久々にここに来てみました
まだ中々盛り上がってますね!
いつだか雪の女王篇を誰かとリレー式に書いていったのを思い出します
194選択肢編165:2007/05/23(水) 23:00:14 ID:1qw2+6Fi
>>186
Cいつの間にか赤ちゃんに授乳していた。おっと、この展開でポロリはないだろ!
「真理。いつの間に、母乳を出せるようになったんだ?」
「え? そんなの出るわけないでしょ。おしゃぶりの代わりにさせてるだけよ」
 何だ、そうだったのか。……って、納得できるか!
「この赤ん坊、どうするの?」
 ぼくは真理に訊ねた。真理は、赤ん坊を包んでいた毛布の中から、手紙を発見した。
〈この子の名前は冬美です。ペンション『シュプール』で育ててください〉
 つまり、この子の保護者は、わざとぼくが借りた車の中に置き去りにしたのか。
「ねえ、透。手紙にも書いてあるし、この子、シュプールに連れて帰らない? 実は、
一年前に今日子さんが流産したする前に買ったオムツやミルクが地下室に残っているの」
「でも、幼児誘拐と間違われると困るよ」
 ぼくが渋っていると、真理はさっさとスキー場の管理室で事情を説明し、館内放送を
してもらった。しかし、結局保護者だと名乗る人物は現れず、保護者が見つかるまで
シュプールで面倒を看ると言うと、逆に感謝されたくらいだった。吹雪の中を運転し、
急いでシュプールに戻ると、玄関で出迎えた小林さんは、冬美ちゃんを見て顔色を変えた。
「きみたち、大変なことをしてくれたな」
「小林さん、どういう意味ですか?」
 ぼくが聞くと、小林さんは意外なことを言い出した。

A「この辺に、鬼子母神伝説があるのを知っているか?」
B「この辺が、悪魔信仰の地だということを知っているか?」
C「この辺で、昔、生贄の儀式があったのを知っているか?」
D「この辺に、雪ん子伝説、という昔話があるのを知っているか?」
E「今日子が子供を作ることができない身体だということを知っているか?」
F「今、シュプールで乱交パーティーが行われてるから、十八歳未満の子がいると困るんだ」
G「せっかく、今夜は透くんと二人きりで過ごせると思ったのに……」
H「その子は私の隠し子なんだよ」
I「展開が早すぎるだろ! せっかくのポロリだったのに!」
195名無しのオプ:2007/05/23(水) 23:03:51 ID:2gkmJH2H
Iだと言って欲しいのかこのやろう!



















Iお願いします
196選択肢編:2007/05/23(水) 23:30:01 ID:77nEky0O
>>194
I「展開が早すぎるだろ! せっかくのポロリだったのに!」
という事で、ぼくは強引に>>186に戻った。

Cいつの間にか赤ちゃんに授乳していた。おっと、この展開でポロリはないだろ!
ぼくは真理がナマ乳を見せてくれた事よりも、普通に授乳してた事に驚いた。
「真理、母乳出るのか?」
「いやだ。私が産んだんだもの、当たり前でしょ。
託児所が一杯だったから車に寝かせておいたんじゃない。
シュプールに預けて行くのもみんな忙しくて悪いし」
こんな赤ん坊を車内に何時間も放置してるなんて虐待だろ。
誘拐される可能性もあるし。誰かに見つかってたらぼくらは即逮捕だ。

いや、そこも大問題だがそれ以前に。
「ぼくと真理の子、なのか?」
「あのねえ、誰が父親以外の男とわざわざ赤ちゃん連れでスキーに行くのよ」
頭の中がグルグルしてきた。どういう事だ?
そもそもぼくと真理はまだそういう関係ではないはずなのに。
でも真理の様子からすると、嘘をついているようにも見えない。

記憶喪失?タイムスリップ?パラレルワールド?
しかしもうぼくにはそれを確認する事は出来なかった。
あまりの出来事にぼくの頭はショートしてしまったらしい。

バッドエンド5「真実は神のみぞ知る」

ややこしくなるので、次の選択肢は>>194からでいいですか?
197165:2007/05/24(木) 02:48:11 ID:sIZm709k
書き手さんが増えて来て嬉しいです。
188さん、196さん、参加ありがとうです。
もちろん、選択肢を選んでくれるROMの人もありがとうです。
まさか、二回連続でポロリの選択肢が選ばれるとは思いませんでしたがw
何ですか? 次もポロリの選択肢を入れて欲しいんですか? 期待されてるのか俺?

次は194の選択肢から選び直してください。
198選択肢編:2007/05/24(木) 14:07:07 ID:5uBofSb5
このまま選択肢と続きを書いてしまいます。では次はぜひポロリをw
>>194
H「その子は私の隠し子なんだよ」

な、なんだってーー!!と言う前に真理が小林さんを罵倒してた。
「じゃあ何?叔母さんを裏切って浮気してたの!?フケツ!サイテー!信じられない!!」
「す、すまない。実は一年ほど前、行きつけのバーのママと一度だけ関係を持ってしまって。
シュプールの経営で色々あって、今日子とも流産の件で気まずくて」
「彼女も寂しかったんだろう。その後妊娠してると告げられ、
結婚はいいから認知だけでもと言われたんだが、私はお金を渡してなかった事にしてくれと。…最低だよ」

「そのまま彼女からの連絡は途絶え、私も店には行ってなかったんだが。まさかこんな事になるとは」
「今日子は流産で子供が出来ない身体になってしまった。
同じ頃に私が別の女性と子供を作ってたなんて知ったら・・・」
真理は怒りに震えて言葉もないようだ。同じ女性として今日子さんの立場を思いやっているのだろう。

A「今日子さんと別れるしかありませんね」ぼくは冷たく言い放った。
B「辛いでしょうけど、今日子さんに事情を話してみましょう」ぼくは何とか場を収めようとした。
C「とりあえずそのママと連絡を取ったらどうですか?」ぼくは現実的な意見を述べた。
D「今日子さんに子供が出来ないのならちょうどいい。このまま引き取って育てては?」ぼくは非情な事を言った。
E「避妊は考えなかったんですか?」ぼくはどこかで聞いたような不毛な発言をした。
F「じゃあ小林さんの子とは限らないんじゃないですか?」DNA鑑定だ。
G「一番大事なのは、冬実ちゃんをどうするかって事でしょう?」何も知らずに笑ってる彼女が不憫だった。
H本当に小林さんは最低だ。ぼくは一発思い切りぶん殴った。
Iそんな事より、そのママとの一夜の話をもっと詳しく聞きたかった。
199198:2007/05/24(木) 14:10:24 ID:5uBofSb5
冬美ちゃんの字を間違えました。すみません。
200名無しのオプ:2007/05/24(木) 19:21:11 ID:GpCnTyry
>>198
明らかにバッドエンド向きの選択肢Hの隠し子で話を先に進めるとはw
どれを選んでもバッドエンドにできそうだけど、198もHでお願いします。
201選択肢編165:2007/05/24(木) 19:44:50 ID:upyDiN0b
H本当に小林さんは最低だ。ぼくは一発思い切りぶん殴った。
 小柄な小林さんは、まるでサンドバッグのように吹っ飛び、柱に頭をぶつけて倒れた。
 小林さんは、ぴくりとも動かない。
 おいおい。まさか、打ち所が悪くて死んだとかいうバッドエンドか?
「透! 叔父さんになんてことするのよ!」
 真理が叫んだ。その叫び声を聞きつけ、今日子さんがやって来た。
「あなた! どうしたの、あなた!」
今日子さんは小林さんの身体を激しく揺さぶるが、小林さんは目を覚まさない。
「……死んでる」
 今日子さんが顔を上げた。今日子さんの血走った目が、ぼくの顔を捉えた。
 もはや、今日子さんには、真理の抱く冬美ちゃんも目に入らないらしい。
 今日子さんは奇声を上げると、除雪をするために玄関に置いてあった角型シャベルで、
ぼくの脳天を――


バッドエンド6「今日子さんにシャベルで」
202名無しのオプ:2007/05/24(木) 20:37:30 ID:GpCnTyry
もう一回選択肢を選んでもいいのかな?
マジで冬美ちゃん可哀想だから、Gで。
203選択肢編165:2007/05/24(木) 21:09:18 ID:upyDiN0b
G「一番大事なのは、冬美ちゃんをどうするかって事でしょう?」
 何も知らずに笑っている彼女が不憫だった。
「え? 冬美? その子の名前は、冬美なのか?」
 小林さんが意味不明なことを言い始めた。そう言えば、赤ちゃんが車の中に
置き去りにされていたと言っただけで、赤ちゃんの名前はまだ教えていなかった。
「叔父さんの隠し子の名前は?」
「亜季だよ。……なんてこった! 別の子供だったのか!」
 小林さんは頭を抱えた。ぼくは、もう一度、最初から説明した。ぼくと真理がスキーを
している間に、鍵のかかった車内に置き去りにされていたこと。手紙を発見したこと。
「きみたち、頼む。隠し子のことは、今日子には内緒にしてくれ」
 ぼくと真理は、冷ややかな目で小林さんを見ていたが、今日子さんの気持ちを考えると
頷かないわけにはいかなかった。
「とりあえず、お腹空いてるみたいだから、ミルクをあげましょう」
 真理の提案で、ぼくは地下室から粉ミルクを持ってきて、談話室で冬美ちゃんにミルクをあげた。
 そこへ、香山さんと春子さんと夏美さんがやってきた。夏美さんは香山さんの前妻の
子供であり、香山さんの後妻である春子さんとは血が繋がっていない。
 すると、香山さんが冬美ちゃんを見て、余計なことを言い出した。

A「なんやなんや、透くんと真理ちゃんの子供かいな」
B「粉ミルクじゃ味気ないやろ。真理ちゃんが授乳してあげえや」
C「わしの胸で授乳したろか?」
D「可愛い子やな。わしの養子にしたいくらいやわ」
E「もしかして、小林くんの隠し子の亜季ちゃんか?」
F「夏美にも、こんな可愛い頃があったんやけどな……」
G「まさか、わしの隠し子とちゃうやろな」
H「雪神様の崇りじゃあああ!」
204名無しのオプ:2007/05/24(木) 23:05:28 ID:MQjllnoS
205選択肢編165:2007/05/25(金) 00:04:07 ID:ME1Paxnt
>>203
B「粉ミルクじゃ味気ないやろ。真理ちゃんが授乳してあげえや」
 香山さんがセクハラ発言をした。
 訴えてやる! と、ぼくは叫ぼうとしたが、その前に真理が言った。
「そうね。やっぱり、母乳の方がいいわよね」
 いつの間にか赤ちゃんに授乳していた。おっと、この展開でポロリはないだろ!
 何なんだ? 最近はポロリの選択肢を選ぶのが流行りなのか?
 順応性の高い真理は、みんなの期待に応えようとしているのか?
 よし、ぼくも思い切って、リクエストしてみよう。
「ねえ、真理。ぼくにも授乳してくれないかな?」

 和やかな雰囲気だったシュプールの空気が、一変した。

 あれから三ヶ月が過ぎた。
 ぼくは今でも、あれはセクハラではないと主張し、裁判で戦い続けている。


バッドエンド7「三回もポロリの選択肢を選ぶからこんなことに……」
206名無しのオプ:2007/05/25(金) 01:46:36 ID:NCqFwGT7
予想通りの展開にw
次はGでお願いします。
207選択肢編165:2007/05/25(金) 02:34:57 ID:ME1Paxnt
>>203
G「まさか、わしの隠し子とちゃうやろな」
 香山さんが、春子さんと夏美さんに聞こえないように、ぼくに耳打ちした。
 ぼくは眩暈を感じた。いったい、何人の父親候補がいるのだろう。
「あなた。透くんと何をこそこそ話してるの?」
「セイちゃん、隠しごとは無しやで」
 春子さんと夏美さんが二人で香山さんを責める。父親をセイちゃんと呼ぶのは
おかしいような気もしたが、夏美さんらしいと言えば夏美さんらしい。
「いや。この子の名前を聞いとっただけや」
「この子の名前は、冬美ですけど」
 ぼくが答えると、香山さんはまたぼくに耳打ちした。
「よかった。わしの子とはちゃうみたいやわ。わしの隠し子は男の子やさかいに」
「だから、何をこそこそ話してるの?」
 春子さんが疑うのは当然だ。香山さんは誤魔化すのが下手すぎる。本当に商人なのか?
 そこへ、今度は美樹本さんがやって来た。

 美樹本さんは、

A山男のような髭を生やしているにもかかわらず、冬美ちゃんにすりすりし始めた。
B手馴れた様子で冬美ちゃんのオシメを換えてあげた。
C全裸になった。
D「粉ミルクじゃ味気ないだろう。真理ちゃんが授乳してあげなよ」と言った。
E「まさか、俺の隠し子じゃないだろうな」と言った。
F恐ろしい形相でぼくを睨んだ。
G「小林さんの隠し子の亜季ちゃん? それとも、香山さんの隠し子の夏彦くん?」
 と、空気を読めない発言をした。
Hカメラマンらしく、冬美ちゃんを抱いている真理の写真を撮り始めた。
I蒼ざめた顔で冬美ちゃんを見ると、何も言わずに二階へ走り去った。
208名無しのオプ:2007/05/25(金) 04:07:35 ID:NCqFwGT7
Jここまでポロリ選択肢を入れてくれる165さんの真意と、
 ここの住人が期待しているものが判断しかねるので、今回はROMることにした。
209165:2007/05/25(金) 05:31:56 ID:ME1Paxnt
ていうか、お願いだからもうDを選ばないでください。
A〜Iを見て、話を進めるときはFとかIを選んで欲しいんだな、と察してください。
C、D、Eのような、明らかにバッドエンド用の選択肢で話を進めるのは勘弁して欲しいです。
「Cぼくは、その場で服を脱いだ」というので進めたときも、無理ありすぎでしたし……。

ああ、やっぱり、選択肢に問題があるのかもしれない……。
210名無しのオプ:2007/05/25(金) 05:39:21 ID:t+8bgWeY
選らばないでほしいなら作らなければいいのでは。
それと話が進めにくい選択肢なら別にバッドが2連続であってもいいような。
とにかく、あまり無理することはないと思いますよ。
211名無しのオプ:2007/05/25(金) 13:33:02 ID:xJAbRxto
>>209
ああ、やっぱりそういう意図がありましたか。
あんまりバッドに繋がる選択肢ばかり選んでると、
三日月島編の初期のキヨさんに殺されるエンドのように、
強制的な不条理エンドになる可能性もあるかなと思ってたので。

C、D、Eを選んで自分でもう一回位バッドに繋がる話を書いてもいいかなと思ったのですが、
そろそろかま夜らしいストーリーを進めた方がいい気もしますので、ここは順当にFを選ぶ事にします。


>>210
その意見も一理ありますが、自分個人としては選択肢そのものも作品の一部と捉えて読むのも書くのも楽しんでるので、
今まで通りでいいかなと。別にバッドが何回か続いてもいいんじゃないかというのは同意です。
212165:2007/05/25(金) 18:42:47 ID:ME1Paxnt
 本当に申し訳ありません。
 やっぱり、最初に選ばれた選択肢が必ずバッドエンドになってしまうというルールに
問題がありました。素直に非を認めます。俺が馬鹿でした。
 よって、選択肢編のルールは、「一つのレスの最後に三つ以上の選択肢をつける」。
 これだけということにさせてください。バッドエンドが複数続いてもいいし、
正解以外の選択肢はバッドエンドになってしまう、ということです。
 だから、書き手の意図を読み取ることなく、ギャグ選択肢を選んでくれてもいいです。
 また、終盤の解決編では、選択肢がないレスがいくつか続いてもいいことにします。

 もちろん、165以外の書き手さんも上記のルールで書いてくれて結構です。

 最後に、この「選択肢編」の正式名称を募集します。
 完結までに投票された「○○編」の中で、「選択肢編」の正式名称として相応しいものを
採用します。ただし、それだけだとレスを大量消費するので、「○○編」という名前は、
選択肢を選んでくれたレスのみ、投票権があるということにしてください。
213165:2007/05/25(金) 18:49:16 ID:ME1Paxnt
207までの状況を整理。

207までにシュプールに登場している人物は、
矢島透、小林真理、小林次郎、小林今日子、香山誠一、香山春子、香山夏美、美樹本洋介、冬美。

これからシュプールに登場しそうな人物は、
田中一郎、篠崎みどり、久保田俊夫、北野啓子、渡瀬可奈子など。
ジェニーや菱田キヨや村上つとむや正岡慎太郎が登場するかどうかは、これからの展開による。

シュプールにはいないが存在を明らかにされている人物は、
亜季(小林の隠し子)、夏彦(香山誠一の隠し子)、小林の浮気相手のバーのママ(亜季の母)。

ただし、田中一郎、亜季、バーのママは、誰かと同一人物の可能性あり(言っとかないとアンフェアなので)。

ここまでの主な謎は、
冬美の正体、もしくは冬美の親。
冬美が鍵のかかった車内にいたのはなぜか(合鍵? 超常現象?)。
冬美の毛布の中の手紙の意味(なぜシュプールで育ててくださいと書いてあったのか?)
真理が冬美に異常とも言える愛情を注いでいる理由(ポロリのせいで謎になってしまった)。
透が妙に卑屈な理由(どうせぼくは、身も心も冷たい人間ですよ、など)。
今日子が流産した理由(事故? 精神的ショック?)。
香山誠一の隠し子である、夏彦。
田中一郎の正体(笑)。

そろそろ殺人事件が起こりそうですね。
214選択肢編165:2007/05/25(金) 19:39:05 ID:ME1Paxnt
>>207
F恐ろしい形相でぼくを睨んだ。なぜだ? どうして美樹本さんは、あんな顔でぼくを
睨むのだろう。美樹本さんの恨みを買った覚えはないのだが。
「そっかー。冬美ちゃんって言うんか。うちと名前が似とるなー」
「あら、私とも似ていますよ。だって、春と冬ですもの」
 夏美さんや春子さんや真理は、冬美ちゃんをあやすのに夢中になっている。
香山さんは隠し子の件で気まずくなったのか、姿を消している。
そんな中、一人険しい表情の美樹本さんは、完全に浮いていた。
 ぼくは立ち上がると、美樹本さんの近くに行った。
「どうしたんですか、美樹本さん」
「あの赤ん坊を連れてきたのは、きみたちなんだろう? どうしてシュプールに
連れてきたりしたんだ。スキー場に預けてくればよかっただろう」
「でも、シュプールで育ててくれと手紙にありましたし」
「そうか。きみは、かまいたち伝説を知らないのか」
 ぼくたちの会話がおかしな方向に進みかけたとき、可奈子ちゃんと啓子ちゃんが
二階から降りてきた。可奈子ちゃんと啓子ちゃんは、仲良しの夏美さんに話しかけた。
可奈子ちゃん、啓子ちゃん、夏美さんの『新OL三人組』は、何かを見て驚いている。
「えーっ! ほんまに? 信じられへん」
 夏美さんが大声を上げ、談話室の中にいた皆が注目した。ぼくは様子のおかしい美樹本さんと
話をすることに嫌気がさしていたので、可奈子ちゃんの持っている小さな紙切れを覗き込んだ。
 そこには、こう書かれていた。

『こんや、かまいたちがあらわれる』

Aぼくは、その手紙の筆跡が、冬美ちゃんの毛布に残された手紙の筆跡と同じであることに気付いた。
B「全部平仮名で書いてあるってことは、この文章を書いた犯人は、まだ小学生ですね」
 と、ぼくは名推理を披露した。
C「意味がよく分からないから、2ちゃんねるの住人に聞いてみるよ」
 と言い、ぼくはフロントのPCでネットに接続した。
D「美樹本さん、さっきの話と関係があるんですか?」
E「今夜、かまいたちが洗われるってことは、乾燥室に関係があるんでしょうか?」
215名無しのオプ:2007/05/25(金) 20:48:18 ID:VFe4b4ba
これまた正解(らしい)選択肢と、明らかにバッド行きのはっきり二つに分かれましたねw
とりあえずBでお願いします。
216選択肢編165:2007/05/25(金) 21:43:04 ID:ME1Paxnt
>>214
B「全部平仮名で書いてあるってことは、この文章を書いた犯人は、まだ小学生ですね」
 と、ぼくは名推理を披露した。
「まあ、凄いわ、透」
 真理が素直に感心してくれる。
「なるほどなあ。それは盲点やったわ」
 夏美さんも、心底驚いた様子だった。
「透くん、頭がいいんですね」
 春子さんが、人妻の魅力を全開にして言った。
 可奈子ちゃん、啓子ちゃん、美樹本さんも、ぼくを褒めちぎった。
「でも、今シュプールに小学生はいないわよ」
 真理が疑問を投げかけた。そう言えばそうだ。ということは、犯人は……

A「一番年齢の近い冬美ちゃんだ! 間違いない!」
B「謎はすべて解けた! 冬美ちゃんの犯行だ!」
C「犯人はあなたですよ、冬美ちゃん」

 こうして、ぼくの推理は冴え渡り、皆が口々に褒めてくれた。

 三ヵ月後、ぼくは弁護士に相談しに行った。
 シュプールの正体は、カルト教団「かまいたち」の支部だったのだ。「かまいたち」は、
カモとなる人物を選ぶと、同級生を装った美人(この場合は真理)を近づけ、いい関係にさせる。
その後、シュプールに連れ込み、大勢で寄ってたかってカモを褒めちぎる。調子に乗った
カモは、やがて洗脳され、馬鹿高い化粧品や英会話の教材を買わされるか、「かまいたち」の
一員となる運命なのだ。ぼくは借金地獄に陥り、弁護士の元を訪れたのだが、その弁護士もまた、
「かまいたち」の息のかかった人物であり、ぼくは更なる破滅の道を選ぶこととなった……。


バッドエンド8「カルト教団かまいたち」
217名無しのオプ:2007/05/25(金) 23:17:35 ID:xSWgoD7o
Cで
何人が2ちゃん知ってるかしらないけどw
218名無しのオプ:2007/05/25(金) 23:41:38 ID:bvM66k87
>>211
ああ。ごめん。あの時、一応の意図は説明したし、最初の頃に気にせず好きな選択肢選んでって言ってたし。
何を選ばれてもあんまり困ること無いし。そんな簡単に切れることはないよ。
ほんと、選択肢で困ってることないんだけど、曲がったモチベーションのせいで、意外と重くなっちゃてたね。
物語的にははね逃げ編の時より、マシだけど、はね逃げ編の様にサービス精神も全く無いしorz
ファビョったせいか本気で駆け足で終わらせること考えてたみたい。よく考えると、ひどいなぁ。せっかく読んでもらってるのに。
ある意味リベンジしたい気分だ。
真相編について、結構言って貰ってるように、妙な選択肢にも一応の意味をもつようにしてたし、バッドも整合性だけは外さないようにしてたんだけど・・・。
過疎化するなんて言われて(てか元々・・・。それに透、虫の息で何もできそうにない状態だったし、長い時は選択肢無しでもいいじゃない・・・。仕事もあるんだし・・・みたいな)
バキッと折れたモチベーションをガツンと立て直して(てかスレやテンプレもしっかりと立て直したい気分だ)、いざ最終章へと・・・。相変わらず自意識過剰でした。
↓三日月島エピローグ編へGO
219三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/25(金) 23:42:35 ID:bvM66k87
>>164の続き
『真理だ。
信じられない。
そう、信じるしかない。
(いや、ちょっと待った。そこで真理はないだろ)
ぼくは、OL達の部屋に向かい、OL達の死体を確認した。
3人とも死んでいる・・・。
予想通りだった。
(予想通り?いや、何が?そこは突っ込み所だぞ透!!!)

廊下に出ると真理が、部屋から飛び出てきた。
ほっとしたような表情を浮かべて、真理が、飛びかかってきた。
ぼくを殺すために・・・。
(あり得ない。それはあり得ないぞ。やめろ透!!!!)

ぼくはモップで』

ボンッ

8月下旬某日
ぼくは、自分が横になった病室のベッドの上、自分の足の当たりに、携帯ゲーム機を、投げ飛ばした。
ゲームソフトは『かまいたちの夜』・・・つい最近携帯ゲーム機用に移植され発売されたばかりのゲームだ。
遅ればせながら、やることにした。
「また、バッドエンドだ」
ボタンを押し間違えて、真理を犯人にしてしまった。
しかも、とんでもないエンディングだ。
自慢じゃないが、ぼくはモップで人を殺した事なんて無い。
その前に見たエンディングは、真理にストックで刺された。
腹が立つので、今度は『透』の名前を変えよう。
220三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/25(金) 23:43:28 ID:bvM66k87
あれから十数日。
三日月島で意識を失ったぼくは、すぐに到着した救急ヘリで病院に移送された。
大量の出血だったが、ヘリでの輸血が功を奏し、何とか生き延びたのだ。
死んでもおかしくない。
ぼくは、意識を失う直前にそう思ってたし、実際に救急隊員も、手遅れだと思ってたらしい。
だけど、ぼくは生きていた。
意識が戻らない可能性もあったらしい。まるで河村さんのように・・・。

奇跡か・・・。
美樹本に殺されそうになった時、春子さんが助けてくれたのも奇跡のようなものだった。
事件はぼくが説明したとおりの事があったと説明を受けた。
やはり証拠はいくつかあったらしい。血痕の下に毛根でもあれば一発だ。
あれから、かなりの時間が経ったような気がする。

3日間、意識がなかったせいで、真理に会えなかった。
真理は意識が戻るまで病院にいると言ってたらしいが、真理の両親や小林さんの説得で、渋々家に帰ったのだと聞いた。
ぼくの・・・・島へ行った目的は真理に告白するためだったはずだが、結局、それは叶わなかったな。
電話で話をしたとき、涙ぐむ声が聞こえた。
「よかった。よかった」そう繰り返した。

横になったまま窓の外を見る。
未だ外出許可のおりない、ぼくには憎らしいほどの晴天だ。
「さて、『かまいたちの夜』をやり直すか。名前は何にしようかな」
でも、そんな事で、頭を悩ました訳じゃない。
だから、ぼくは独り言をつぶやいていた・・・。
「真理にあいたいな」と・・・・。
221三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/25(金) 23:44:22 ID:bvM66k87
「ほんと?」
急に声が聞こえた。
「・・・・・真理?」
そう言えば、誰か扉を閉めてなかった。
「会いたいな?ってほんと」
「ああ・・・・いや・・・・その・・・あの」
「ふふ…わたしは会いに来ちゃったわ」

真理が立っていた。
これも奇跡・・・か?
ガチャリ。扉を閉める。
「扉を開けっ放しにして、そんな事言うなんて、ちょっと恥ずかしくない?」
真理が笑いながら言った。
相当、恥ずかしいです。はい。
「あら?」
真理がベッドの上に転がった携帯ゲーム機を見つける。
画面はついたまま、表示されているのは・・・
「わっちょっと待った」
ぼくは、ベッドの上で上半身を起こして、真理からゲームを奪い取ろうとした。
「ダーメ」
真理が、ゲーム機を上に上げる。
「エッチなシナリオやってたんでしょ?ピンクの」
ピンク?何だソレ。
そう言って真理が画面に目をやった。

もちろん映し出されたのは
「終 彼女をモップで・・・」
222三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/25(金) 23:46:40 ID:bvM66k87
「…」
「・・・」
真理が少し笑いながらこっちを見る。怒ってるのか?
「透探偵。わたしが犯人ですか?」
ちょっと怒ってるみたいだ。
「違うんだ。さっきだって真理にストックで刺されたし」
「そういうエンディングもあったわね」
くすくすと笑う。
「でさ、全然犯人が分からないんだよ。トリックも・・・」
「え?」
真理が驚く。
「嘘でしょ?透?犯人分からないの?」
「分からないよ。誰なんだか、さっぱりだ」
真理が口許に手を当てて、本気で笑い出した。
「あ〜おかしい。どうして分からないのよ」
「だって、透過レーザー光線を使えば、誰だって犯人の可能性あるんじゃない?それにシュプールの外に、誰かいるかも知れないし」
「何よ。ソレ。ふふ。透名探偵が…。へぇ。ふふ」
ぼくが犯人が分からないのが、相当可笑しかったらしい。

「調子はどう?」
ひとしきり、笑い終わった後で、真理が聞いてきた。
「う〜ん。元気だけど退屈。それと、縫合したところに何か違和感がある」
肩と足は、幸いかすり傷ですんだが、脇の傷は縫うしかなかった。
「傷跡残るかもしれない」
「そっか・・・」
真理は少し申し訳なそうにした。真理のせいじゃないんだけどな。
「そう言えば、香山さんにね。夏美さんから手紙が来たの。わたしも見せて貰ったんだけど」
「内容は?」
ぼくは聞いてみた。
「もし、自分が死んでたら迷惑かけてごめんなさいって。それと香山さんを利用したことにも謝罪してたわ。大半は罪の告白で、計画の事も詳細に書いてあった。夏美さんも結構悩んだんじゃないかな」
「ふ〜ん」
223三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/25(金) 23:49:36 ID:bvM66k87
「…」
「・・・・」
妙な沈黙。
「えいっ」
急に真理が、ぼくの鼻の頭を指で押さえた。
「いふぇ。はひぃふぅんはよ」

「わたし、ふと思ったのよ。透は、考えないんじゃなくて、答えが分からないときに言わないんじゃないかって」
ぼくの鼻から指を離した。
「それから今の『ふ〜ん』もね」
「へ?」
「50年前の殺人事件の話を聞いたとき、透、今みたいに『ふ〜ん』って言ったでしょ。
これってわたしが言ったことが、おかしいと思ったからじゃないかって…」
「・・・」
「それも、ただ否定するんじゃなく、ある種の解答をもってるけど、言わなかったんじゃないかって思ったのよ」
「・・・・どうして、そうなるの?」
「可能性がいくつもある内は、言明しない。それが透の考え方だったのよ。船の件もそうね。誰が乗ってきたか、推理しようが無かったから、あなたは考えなかった」
「ぐぅ」
ぐぅの音というものを出してみた。
「そして、今ね。かまをかけてみたの。夏美さんの手紙でね。案の定、出てきたわ。『ふ〜ん』が」
やられたの・・・かな。
「わたしが言ったことが間違ってると思ったんでしょ。手紙は、わたしも間違いだと思ってるわ」
にこにこしながら言う。
やっぱり、ぼくなんかより、よっぽど名探偵だ。
「さて、真の解決編を始めましょう。あそこで説明されなかった謎を解き明かして頂戴。わたしは、そのために来たのよ」
あの、真理さん・・・。ぼくに会いに来たって言ったじゃない?

A、「夏美さんの手紙、偽物だね」
B、「何も言う事なんて無いですよ。キミの瞳に乾杯以外はね」
C、「×××してくれたら全て言うよ」
D、「50年前の殺人事件の真相は、こうだ」
E、「それよか、『かまいたちの夜』の犯人教えてくれない?」
224165:2007/05/26(土) 01:49:02 ID:T/+ymjbG
>>218
そんなつもりはなかったんですけど、不愉快な気持ちにさせたのなら謝ります。
本当にごめんなさい。

前スレまででも、いくつもの作品を同時進行で進めていましたし、
共存できればいいと思っていたのですが、218さんが書きにくくて困るなら、
三日月島編が完結するまで、選択肢編は自粛してもいいですよ。
225211:2007/05/26(土) 06:40:19 ID:Dc4z/1eQ
>>218>>224
いや、変な事を書いてしまい謝るのは自分の方です。ごめんなさい。
「不条理エンド」なんて失礼な書き方をしてしまったのも、別に書き手さんが切れたという意味ではなく、
選択する方も悪気はなく単に面白い流れにしたいだけなのだけど、
結果的に困らせてしまってたのではという心配があったもので。

整合性の取れたバッドも、パラレルワールドのように全く別の方向に話が進むエンドも、
単にこれは間違った選択でしたよと分かるエンドも、バラエティがあって面白いので何でもオッケーです。本当に。

話は変わりますが、◆TmTfkIMkPkさんも165さんも、お互いや他の書き手さんに遠慮しすぎてる所が気になります。
ほぼ選択肢を選ぶだけのROMの一意見を言わせてもらえば、スレが盛り上がって楽しめるのが一番の望みなので、
どんどん平行して話を進めてもらいたいです。
その為に名前欄にタイトルを付けてるのでしょうし。

>>223
Dでお願いします。
226名無しのオプ:2007/05/26(土) 08:08:53 ID:04uK/KRZ
わっふるわっふる
227 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/26(土) 13:26:46 ID:YTn93JTY
>>224
書きにくいなんて言ってない。自粛する必要なんて全くない。あきらかに新規ぽいのに、なんで前スレがどうのと・・・。
そもそも同時進行なんて今までだって、自分でもやってたんで全然問題ない。
はっきり言えば、いきなり過疎化するなんて言われて腹が立っただけ。
作品側の文句やつまらんとかは言ってもらえばいいけど、なんで、そんな事言われないといけないのかって事。
反応が薄くても別に何とも思わない。読み手の干渉も評価も参加も強いるつもりもない(むしろ推理や感想が多くて驚いてる)。選択肢もどれ選ばれても別に困らない。完全に丸投げする気もない。
お互い、完全にスタンスが違うんだから、相互理解できるとも思ってないんで、普通に進めて。こっちはもうすぐ終わるし。
>>225
いやアレが不条理なのはわかってるんだけど、それが、選択肢を選び続けた結果によるものじゃないんだよってだけの話。バッドエンドも結構ノリノリだし。
もちろん、こっちの反応気にしながら、機嫌伺ってもらう必要も無いよ。そりゃ根が単純だから褒められると喜ぶのは事実だけど。
それと遠慮はしてないよ。ただ、選択肢が無いことを非難された上で、それを過疎化の要因にされるのが正直ウザって思っただけ。選択肢が無いことは今までもあったし。
書く人間にも読む人間(選択肢を選ぶ人間)にも、個人の考え方ややり方があるんだから、普通に始めてくれればいいやんって話。
殺人貴編とか強盗のやつとか自分も先が気になる好きな話とかあるし、新しい話が始まるのはむしろ歓迎なんだけどね。
228名無しのオプ:2007/05/26(土) 16:16:02 ID:OkE+ukbU
確かに新参ぽいwてか、続きが気になるとかうわべだけって感じだ。結構、非を認めては謝る人だから、それだけで切れるとは驚いたが。
元々、過疎スレで1ヶ月くらい進展がないのも当たり前だったから、昨今の盛り上がりは稀な例。
選択肢ないなんてかまいたちとして・とか>>165が思ってやり始めたかも知れないけど、参加しないとごねたり、選択肢を察してくれと言ったり>>213みたいな意味不明なことやり始めたり・・・。
今の段階で出てこない登場人物がどうだとか何も書いてないことを自分から謎って言い出すのはミス板的にどうなんだ・・・。
企画したのに乗ってこなかったってすねるなよw
ここだけ殺人事件から流れてきたんだろか。
三日月島編は稀有な例で、話の途中で議論したり、感想言ったりってのは、今までは一言二言程度だったし、今回みたいに作品途中でわいわい言って相応の盛り上がりを見せたのは、吸引力があったからだからで、
初期のリレー時は結構、面白半分につなげてて、それを拾う人がいるうちは続いてたけど、「ここだけ」と同じで、終局とかまで勢いを維持できてなかった(てか、作品的には一部それがまだ終わってないw)
選択肢のあたり方も、それを選んだことで何が起こるのか?ってのが魅力で現に、三日月島編では想像通りだったり、いい意味で裏切られたり、無理やり捻じ曲げたかwみたいなのがあったり、いろんなことを収束させてるわけだ。
選択肢は作品の一部でもあるけど、書いた以上、続けることのできる人間が必要だし、それがつくった本人ができないからといって、ROMに期待するのも虫のいい話で。初期は人が多かったから、それでもよかったんだけどね。
話がわからなくなる。気に入らない方に進む。そうやってリレースレはどんどん書く人が減っていくんだ。 そして結局は一人で続けるはめになる。最初のころに無責任においた設定を何とかしようとしたり、無視したりしてね。
もし、>>165が最後までリレーでいけると思ってんなら、やってみせてほしいな。手を貸してくれるだろうし。それと最終的な話の決着のつけ方も楽しみにしてる。
どうせこっちは最初から書くつもりないんだし。
229名無しのオプ:2007/05/26(土) 17:48:08 ID:JKcrMZi4
荒らし、煽りはスルーで
さて、最終的にリレーする書き手はいなくなると思うが>>165は続くのか?天然ぽいけど。
まぁ、確かに前スレの最後で、ある種の静観モードみたいになってたから、いきなり過疎化ってのは( ゚д゚)ポカーンだったし、
>>183>>209とかでも( ゚д゚)ポカーン、お前少しは考えろよみたいに思ったけどさ。
230名無しのオプ:2007/05/26(土) 18:58:19 ID:amuBqvJU
確かに真相編に選択肢がないのは全く気にならなかったなあ。
それよりも定期的に配信される小説を読むようなwktk感の方が強かったし。

書き込みが途絶えても、書き手さんにも忙しかったりなどの事情が色々あるのだから
のんびり続きが来るのを待とうってスタンスだったし。

選択肢編も序章が終わったばかりでこれからって感じの所だから、
このまま続けては欲しいけど。
231釘魔編 ◆IJUrPaET6E :2007/05/26(土) 19:54:36 ID:04uK/KRZ
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1158103156/545
B 「もしそうだとして、どうなりますか?」
  ぼくは美樹本さんの答えを待った。

「どうなるって…、時限装置で音を出したって言うことだよ、透くん。
つまりあのとき、ご主人たちの呼び掛けに応じた人も犯人だって言えるのさ」
時限装置…。
「つまり、ここにいる全員に犯人の可能性があるってことだ。」
ぼくは黙ってその言葉を聞いていた。
「ガラスが割れたのは夜の夜中。もちろん仕掛けの仕込みはそれより前の、皆が寝静まっていた頃だ。
誰にだってチャンスはあった」
…そんなはず、ないだろ?
ぼくは考えながらゆっくりとしゃべり始めた。

A 「そうでした」
  まさかこんなことを見落とすなんて…

B 「それはありえません」
  まさかそんなところにこだわるなんて…
232名無しのオプ:2007/05/26(土) 20:01:40 ID:HzSTm1N5
165は天然なんだよ
天然は天然でも、かなり悪質なタイプだがw
233名無しのオプ:2007/05/26(土) 20:11:12 ID:IcHToDQC
165さん、あなたは2ちゃんねる初心者ですか?
書き込む前にSG(セキュリティー・ガード)に登録しないと危険です。
SGに登録せずに書き込んだ場合、あなたのPC内の情報が他人に見られる恐れがあります。
初期の頃から2chにいる方達は、殆どSGに登録しています。
リモートホストを抜かれ、住所まで公開された人も数多くおり、社会的に抹殺されてしまう。
それが2chの隠れた素顔でもあります
SGしておけば、どんなにスキルがある人でもリモートホストを抜く事が不可能になります。
登録する方法は、名前欄に『fusianasan』と入れる。これだけです。
一度登録すれば、電話番号を変えない限り継続されます。
fusianasanは、正式にはフュージャネイザン、又はフュジャネイザンと読みます。
元々は、アメリカの学生達の間で、チャットの時のセキュリティを強化する為に開発されたシステムです。
fusianasanを掲示板に組み込むのは結構面倒なのですが、2chにカキコしてたら個人情報が漏れた、等の
抗議がうざったくなったひろゆきが、仕方なく導入しました。
悪意のある人間にクラックされる前にSGを施す事をお勧めします。
234名無しのオプ:2007/05/26(土) 20:13:45 ID:vufBwBvr
>226
どうでもいいが、このスレでは
わっふるわっふる
より
モップるモップる
のほうがふさわしい気がする。
235名無しのオプ:2007/05/26(土) 20:51:07 ID:vY3XF3je
>>228
どう見ても新参者なのに、前スレがどうとか、とても頑張っていますね、など、新参者ではないふりをするのが痛々しいw
誰か、もっと早くバレバレだって事教えてやればよかったのに。
かまいたちの夜の面白さは選択肢とバッドエンドだとかほざいておきながら、>>165の書く選択肢やバッドエンドは全然面白くないというのもご愛嬌・・・。
挙句の果てには自分で状況の整理とかやりだすし。
何、あれ?あれは笑うべき箇所だったのかw田中一郎の正体のあとに(笑)が入ってるけど、そんなんで笑うのは>>165だけ。
自分で選択肢を書いておきながらこの選択肢は選ぶなとか、意味不明な言動が多すぎ。選択肢を書いた以上、どの選択肢を選ばれても文句言うなよ。
>>165が作品以外の文章を書いたレスとかは僅か14なのに、その一つ一つが濃すぎ・・・。作品も整合性が取れていないが、本人の人格も整合性が取れていない。素直に謝ったかと思いきや逆ギレしたり居直ったりする。
一人になった>>165が、こっちが終わった後も書き続けるか見物だ。
236名無しのオプ:2007/05/26(土) 21:18:17 ID:amuBqvJU
>>231
続きを首を長くして待ってました。
Bでお願いします。
237名無しのオプ:2007/05/26(土) 21:21:12 ID:15mR4Ojw
>>235
結局リレースレの苦悩を知らん新入りが意味不明な事を喚き散らしていただけというバッドエンドかw
そもそも過疎化してないのに選択肢が無いことが過疎化の原因だとか言うのは、頭がどうかしてる・・・。
書き手さんが増えて来てくれて嬉しいですとか綺麗事を言えば、つくった本人の評価が上がるとでも思い込んでいたんだろうか。>>165の礼儀や愛想は表面的な事に過ぎないから、
すぐにボロが出てしまうんだろう。結局素顔を暴かれて尻尾を巻いて逃げ出したがなw
それぞれ違う考え方を持ってるんだから、>>165>>165でやってくれればよかった。作品を始めるときに余計な事を言うからスレが荒れてしまった。無責任にも程があるよ。
238釘魔編 ◆IJUrPaET6E :2007/05/26(土) 22:35:24 ID:04uK/KRZ
>>231 B
B 「それはありえません」
  まさかそんなところにこだわるなんて…

「どうしてだい? いかにもありそうじゃないか。 いや、ひょっとしたら既に誰かが実行しているかも…」
「アリバイ工作の為だとすると、いかにも不確実です。雪が落ちるタイミングなんて、気温、降雪量、暖房の
強度で
いくらでも変わるでしょうし」
ぼくは美樹本さんの言葉を遮り、切って捨てた。
「それにその方法では窓の蝶番が壊れることはあっても、窓が叩き付けられてガラスが割れるには至らない
と思います」
「…うん、まあ、そうか」
美樹本さんはどうやら自説を引っ込めるようにしたようだ。
ええと…、窓ガラスが割られていたのが不自然、のところの説明からだっけか。
「タイミング的にガラスが割られた時点で犯人と田中さんが争っていたとは思えません。バラバラにする時間
がいりますから。
となると、どういうことか」
「…あえて犯人が割ったっちゅうことか、仕掛けも何も使わんとその時に自分の手で」
「ええ、そうなると思います。」
「どうしてでしょうか? あえてそんなことをするのはよほどの理由が無いとやらないと思いますが」
香山夫妻が交代で声をかけてくる。
ぼくは夫妻に目を遣り、
「そう、よほどの理由が無い限りやらない。しかし、それを犯人はやったんです。それは

A 雪で隠したいものがあったのです」

B 死体を部屋に投げ込むためです」

C 判断力を欠いていたためでしょう」
239 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/26(土) 23:34:31 ID:YTn93JTY
>>238
自分は釘魔編も好きなので、あえてCで。
>>228
切れたというか何というか・・・。いやぁな気分で。

とりあえず、↓で、三日月島編は最後の選択肢。
240三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/26(土) 23:37:49 ID:YTn93JTY
>>223のD
「50年前の殺人事件の真相は、こうだ」
真理が一番、気になっているのは、あの事件のことだと思う。
「え?どうしたの急に」
「もちろんキヨさんが、殺人犯でないという確信もないけど」
「ええ、それはそうね」
「それから自殺の可能性もないだろうね」
「ええ、部屋の外側の鍵が閉まってたから・・・。難しいわね」
ぼくは、美樹本に割り振られ、正岡さんが殺されたあの部屋を思い出しながら言った。
「見立ては行われなかったと考えるんだ」
「え?あれは見立てじゃないの?」
「うん。あれは偶然の産物なんだよ」
「偶然・・・・」
「まず、見つからなかった凶器だけど、厨房の包丁とかでもないとしたら、外にあった剣山だね」
「え?あの部屋の下にあった剣山?」
「つまり2階の窓から、当主は突き落とされたんだ。そして、偶然、剣山によってのどや手首が切れた」
「そんな・・・偶然なんて」
真理がうつむいて考え込む。
「ありえないわけじゃないか」
一応、納得する。
「突き落とした人物は言うまでもないね?」
「キヨさんの代わりに、門を閉めに行った人物。なぜなら、彼以外、当主の死体に鍵を戻すことはできなかったから」
「うん。そしてその人物は、あの呪われた部屋を鍵で閉めたが、窓を開けたままだった。これがミスか意図的なものかはわからないけど。ミスだった可能性は高い」
問題は、この後だ。
「鍵を当主の死体に戻し、門を閉め、屋敷に戻る。ここから何が起こったのか?」
「何が起こったの?」
直球で聞いてくる。
「死体が移動したんだ。誰の力も借りずに・・・。死体を運んだのは・・・かまいたち」
「うそでしょう?」
241三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/26(土) 23:39:14 ID:YTn93JTY
「もちろん、うそだよ。あの死体や部屋の状況が見立てじゃないとしたら、あの部屋の事象にもうひとつあったのは?」
「床一面の水」
真理が即答する。
「つまり、水に浮いた死体の服が窓の外の風切鎌にかかり、そして死体はあの部屋に水とともに流れ込んだ」
「そんなに大量の水がどこで・・・・」
「三日月館は、きっと門が閉まると、水が溜まるんだ。あの円形の塀の内側にね。そこで、計算してみたんだ。入院で退屈だったからね。
三日月館の塀の中の屋敷の述べ床面積を除いた面積と、二階までの高さ・・・つまり水の必要量だ。
そして、かまいたちの夜の降雨量、夏の台風、夜8時ころから朝4時くらいまでと計算して・・・」
「それで、それで、どうだったの?」
「足りなかったよ。全然」
「ぷっ。何それ?結局推理ははずれ?」
「水は足りなかった。でも、それで終わりじゃない。足りない水を増やせばいいんだ。それが、当主を殺した男の狙いだった」
「え?」
「犯行を行う機会は、ほかにもあったはずだ。なんで50年に一度の暴風、かまいたちの夜に犯行を行ったんだ?」
「水が必要だった・・・まさか」
「そうだ。かまいたちの夜の水と、ほかの手段で塀の内側に流れ込む水を合わせたら、2階まで到達した。もっとも犯人は塀の外に流し出そうとしたんだ。
それが閉め忘れた窓に入ってしまった。そして、水位はそこまでしか上がらなかった」
「どういう手段で・・・・」
「地下に溶接された扉があった。湖と館つなげる下水道のようなものであれば」
「外には出れるけど、屋敷には入れない。門は閉まっているから。でも、水は人造湖から引き込む手段があった・・・」
「うん。そうすれば水量は足りる。死体が2階の部屋に流れ込むのは湖と雨で十分だ」
「・・・」
50年前の事件。この推理はあまりにも突拍子もない話だ。誰にも真相はわからなかった。キヨさんが犯人であるという結論。それを否定すれば、あるいは誰かがたどり着いたのかも知れない・・・。
だけど、真理が考えたような見立てや、かまいたちの夜という状況が、島の人たちに呪いを思わせた。
242三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/26(土) 23:40:58 ID:YTn93JTY
「夏美さんの手紙、きっと春子さんが作ったのよね」
真理が不意に関係ないことを言い出した。
カチカチ
「たぶん・・・ね」
夏美さんは海外へ逃亡するつもりだった。おそらく春子さんが謝罪のつもりで書いたんだろう。
だけど・・・・
「きっと、香山さんは救われた。裏切られたとか色々思ったかもしれないけど・・・。夏美さんの手紙によって救われたんじゃないかな」
真理が、そう言った。
「正岡さんの部屋のマニキュア。あれ、誰がやったと思う?」
思う・・・か。つまり、はっきりと断定できないことを真理は知っている。
「可能性があるのは3人」
「物理的には夏美さん、美樹本さん、そして、俊夫さんね」
ぼくは頷いた。
「心情的に、死体を見つけて欲しくなかった夏美さんを除外して」
「美樹本さんか、俊夫さんのどっちかね」
「せーので決めよう」
「そんなので決めるの?おかしい」
「いいから、いいから」
『せーの』
「美樹本」「俊夫さん」
お互いに顔を見合わせる。
「意見が真っ二つに分かれました」
ぼくはおどけて言った。真理もくすくすと笑い出す。
カチカチ
「今度、俊夫さんを追及してみよう。『あなたが犯人です』ってね」
243三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/26(土) 23:43:28 ID:YTn93JTY
「それでね。香山さんの話なんだけど。春子さんから、三日月館を譲り受けることになったのよ」
春子さんは、逮捕された。きっと、春子さんは夏美さんと共同正犯の道を選ぶだろう。
「来年、みんなでもう一度集まらないかってさ。あの島で亡くなった人たちのために、供養したいって」
「・・・そっか」
河村さん、夏美さん、正岡さん、みどりさん、キヨさん・・・。
「それから、こっちの手紙は正真正銘、本物の手紙」
ぼくは真理からそれを受け取った。
「感謝してるって」
手紙は可奈子ちゃんからだった。啓子ちゃんは一命を取りとめた。そのことを感謝していた。手紙から、思いが伝わる。
「睡眠薬が効きにくいうえ、毒物まで、効きにくかったなんて、お得な体質ね」
お得はお得なのかもしれないけど・・・。
「睡眠不足になったら大変だね」
「ふふ、そうね。それから俊夫さんはね。みどりさんの分も、がんばって生きるって・・・。仕事に復帰したわ」
「当たり障りのない・・・」
「当たり前でしょ」
「センセーショナルに、プロスキーヤー目指すとか、何か劇的な変化がないと・・・」
「はいはい。勝手な願望を言わないの」
244三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/26(土) 23:44:37 ID:YTn93JTY
「ところで、もう一つ、推理があるの」
「?」
何の話だ。
「これ、見て」
真理がぼくに小さな黒い塊を見せた。
「これって・・・・」
「そう。透がくれたペンダント」
「こんな形だったっけ?」
もっと丸くて、岩みたいな感じだったはずだ。目の前のそれは、何かヘコミがあり、削れたような塊だ。
「透、わたしが撃たれて、生きてたと知ったときに、弾丸がペンダントに当たって跳ね返るなんてありえない。きっと美樹本さんの撃ったのは空砲だった・・・。
そう思ったんじゃない?」
「・・・・嘘だ。ありえない・・・」
ぼくは驚いた。三日月島の事件で、春子さんが飛び込んできたときより、もっと。
「ふふ。透の負け〜」
何が負けなのか。とにかく真理はうれしそうだ。
「美樹本さんの撃った弾は、これに当たって、わたしを守ってくれた。警察でも、きちんと調べてもらったのよ」
「ぶっ」
ぼくは思わず吹き出した。
「あははは。そんな、できすぎだ。ははは」
信じられない事実が、最後にあった。
そういうものなのかも知れない。
そういうこともあるのかも知れない。
245三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/26(土) 23:46:54 ID:YTn93JTY
カチカチ
「もし、ぼくが美樹本を告発しなかったら、最後にあんな事は起きなかった」
「でも、透は美樹本さんの推理クイズを、外さなかった。透にしかできないと思う」
「そうじゃないよ。ぼくしかない情報があった。それが決め手になったんだ。同じ事を知っていれば、きっと真理にだって分かったはずだ」
「ううん。きっと怖くて、ちゃんと答えられなかったと思う。『だから、正解を選び続けた『あなた』に感謝してる』」
「でも、あの状況を作ったのは、ぼくだよ。結局、自業自得さ」
「そう思ってると思ったわ。だから、わたしは言いに来たの。あなたのせいじゃないって」
「どうして?ぼくが美樹本に犯人だと言わなければ、次の日には、美樹本は勝手に島を出て行った。
そりゃ殺人犯が、逃亡するのがいいことだと思えないけどさ。誰かを怪我させる可能性もつくらなかった」
「ぶっぶ〜。もし、夜中に美樹本さんが『気が変わったら』?」
「あ」
そうだ。単純な事だ。人は『気が変わる』ことがある。
カチカチ
「まさしく、かまいたちの夜の再現だ。ゲームじゃ脈が無くなってた美樹本が犯人な訳ないけど、現実ではぼくたちを一人一人殺してたかもしれない」
「ゲームじゃって・・・。でも、本当にそうでしょう。そう言えば、最初は殺さないと言ってたのに、途中から、みんな殺そうとしたわ。あれってどうして?」
「夏美さんの、開かずの間の事件の真相を知ってからだったね」
「ええ。どういう心境の変化なのかなって思って」
「あれは夏美さんを殺す理由が揺らいだんだ。当然、殺されそうになったから殺したんだけど。美樹本は夏美さんが『妹』すら殺した非情な人間だと思った」
「そっか、だから、狂ったなんて言ったのね」
「美樹本は自分の行動に、何か理由が必要だった。それも、自分のせいじゃないっていう理由が」
「夏美さんを殺した理由を、二つ作ってしまったのね」
「うん。自分が殺されそうになった上、相手は肉親すら殺す非情な人間だ。だから、殺してもいいと自分で定義したんだ」
「だけど、一つの条件が消えた。定義が揺らいだのね。その心の弱さを、知られたくなかった。だから、島で全員を殺すしかないと思った」
246三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/26(土) 23:48:03 ID:YTn93JTY
「美樹本は・・・ぼくたちが、それに気づくのが許せなかった。自分がミスした事や、開かずの間の事件を自分が取り違えた事、それらを生きているぼくらがいずれ、思い出として嘲笑する日が来るのが許せなかったんだ」
「人が生きているのが許せない・・・・なんて。ひどい・・・」

美樹本と夏美さん、あの島の二人の主人公。
「美樹本はゲーム感覚だった。自分が相手を殺すか、その前にぼくたちが全滅するか」
「何それ?美樹本さんに感謝しろって言うの?夏美さんに殺されずに済んだのは、美樹本さんのおかげですって」
「そうじゃないよ。ただ・・・・」
ただ、
夏美さんは妹のために、怒りで身を焦がした
香山さんも、自分が試されたと知って怒った。
俊夫さんは、みどりさんを失い、自我を失いつつあった。
加奈子ちゃんは、啓子ちゃんのために半狂乱になって泣き喚いた。
今日子さんは、現実に耐え切れず、気を失った。
小林さんも、今日子さんを大事に守った。
美樹本を覆ったのは恐怖だったのかも知れないかなと、ただ、少しだけ思っただけなんだ。
だけど、ぼくは、心を論じることができるほど、強くも賢くもない。

カチカチ
「ところで、さっきから何してるの?」
さっきからカチカチという音がしていた。真理が見えない片手に何か持っている。
「透。何か、わたしに言うことない?」

A、「真理、きみが好きだ」
B、「あるような、ないような」
C、「来年、一緒に三日月島に行こう」
D、「今年の冬『シュプール』に行かない?」
247名無しのオプ:2007/05/27(日) 00:54:03 ID:vo1wCTn5
>>246
Dでおながいします

50年前の事件、前スレでの俺の透以上の無気力な推理は外れてたんですなw
248名無しのオプ:2007/05/27(日) 04:14:00 ID:f3l0p0mW
>>228、235、237はいったい何なんだ?
IDは違うが、どう見ても同一人物の仕業だ。
自演で荒らしてるのはお前の方だろう。
荒らし、煽りはスルーが原則だが、いくら何でもこれは酷い。
249選択肢編165:2007/05/27(日) 09:12:05 ID:FBFMmy/4
>>214
C「意味がよく分からないから、2ちゃんねるの住人に聞いてみるよ」
 と言い、ぼくはフロントのPCでネットに接続した。2ちゃんねる検索に、「かまいたち」と
入力した。意外なことに、本文での検索結果は2000件近い。知らなかった。かまいたちって、
そんなにメジャーな言葉だったのか。ぼくが、その中でめぼしいリンクを押そうとしたとき、
どこか遠い場所で、爆発音がした。映画の中では、爆弾が爆発したときや事故のシーンで
お馴染みの音だったが、現実世界で聞いたのは初めてだった。
「何? 今の音」
 真理が顔を上げる。談話室の中にいた全員が、黙り込み、耳をすませた。
 ぼくもPCの画面から目を離し、意識を耳に集中させた。爆発音はもう聞こえないが、
代わりに別の音が聞こえた。
 滝の音。
 ぼくの第一印象は、滝の音だった。遠い場所から、滝が近付いてくるような錯覚を感じた。
だが、同時にカタカタと耳障りな音もした。壁にかけられた鳩時計が揺れ、カタカタと
音を立てていたのだ。揺れているのは、鳩時計だけではなかった。マウスが動き、
フロントから滑り落ちた。電灯が揺れ、談話室の中にいる八人の影が躍った。
 地震だろうか。
啓子ちゃんや可奈子ちゃんが悲鳴を上げる。真理は冬美ちゃんを抱き締めている。
春子さんと夏美さんは、不安げに手を取り合っている。美樹本さんは、窓の外を見ていた。

 そして、突然、美樹本さんが叫んだ。

A「近くに飛行機が墜落したんだ! 警察に通報しろ!」
B「火山が噴火したんだ! 急いで避難しろ!」
C「雪崩が起きたんだ! 窓から離れろ!」
D「シュプールが浮遊しているんだ! 絶対に外に出るな!」
E「2ちゃんの住人の仕業だ! PCを強制終了させろ!」
F「UFOが現れたんだ! 宇宙人の襲来に備えろ!」
G「タイムスリップしたんだ! 騎馬隊に気をつけろ!」
250名無しのオプ:2007/05/27(日) 09:24:56 ID:cu+Jmc1W
1日休んだと思ったら、凄い超展開だ。しかし、この期に及んでギャグ選択肢を入れるとは、いい根性してる。荒らしに負けるなよ。
全部バッドエンドになりそうだけど、とりあえずAかな。
251選択肢編165:2007/05/27(日) 10:18:20 ID:FBFMmy/4
>>249
A「近くに飛行機が墜落したんだ! 警察に通報しろ!」
 美樹本さんの声で、ぼくたちは窓に駆け寄った。
 窓の外を見ると、まず目に入ったのは、紅蓮の炎だった。
 赤々と燃える炎が、雪の上に散乱している機械の残骸を照らし出していた。
 吹雪は既にやんでいたので視界はよく、まだ回り続けているプロペラまで肉眼で識別できた。
 滝の音だと思ったのは、あの不規則に回るプロペラの回転音だったらしい。
 二階から田中一郎が下りてきた。食堂で夕食の準備をしていた小林さん、今日子さん、
俊夫さん、みどりさんもやって来た。まずは警察と消防署に通報した。その後、全員で手早く
相談した結果、一度部屋に戻って、暖かい格好をしてから救助に向かおうという話になった。
 ぼくは階段を駆け上がって、クローゼットの中のコートを着込むと、ベッドの脇の
常備灯を手にした。普通の懐中電灯は全員分はないので、常備灯で我慢しなければならない。
 冬美ちゃんを一人にするのは不安だったが、それどころではない。地下室に置いてあった
ベビーベッドを小林さんが持ってきて、その中に冬美ちゃんを寝かせた。
 飛行機の墜落から十五分後、ぼくたちは玄関に集合した。 
 除雪用のシャベルや救急箱や毛布など、各自が必要と判断したものを持っている。
「危険だから、絶対に単独行動するな。墜落現場に着いたら、三つのグループに分かれよう」
 俊夫さんが、そう提案した。
 ぼくたちは雪原を前進しながら、チーム分けについて話し合った。
 Aチームは、真理、小林さん、今日子さん、田中。
 Bチームは、美樹本さん、香山さん、春子さん、夏美さん。
 Cチームは、俊夫さん、みどりさん、啓子ちゃん、可奈子ちゃん。
 という内約になった。

 ぼくは、

A真理がいる、Aチームに入れてもらうことにした。
B頼りになりそうな体格の美樹本さんがいる、Bチームに入れてもらうことにした。
Cスポーツの得意な俊夫さんがいる、Cチームに入れてもらうことにした。
252三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/27(日) 11:27:11 ID:Kfu8/ZvU
>>246のD
ぼくは意を決して、真理に向かって言った。
「今年の冬『シュプール』に行かない?」
もし、河村さんの心がシュプールの近くに置き忘れられたままなら、ぼくたちは一度、そこにいかなくてはいけない。
ぼくが、事故をおこしたのかも知れないのだから。
真理はにこりとして
「ええ。いいわよ。一緒にアルバイトしましょう」
あ、そういう話だったっけ。
ぼくにとっては、一大決心をして、誘ってみたんだが、意外と簡単にOKがでた。
「透も今度は上級コースを滑らないとね」
「うう」

「いてて・・・」
ずいぶん、長時間、話してたのと、妙な体勢がたたって、傷口が少し痛み出す。
どちらかといえば、かゆいといった感じだったが・・・。
「おまじないしてあげよっか?」
「おまじない?」
「痛みを軽くする、おまじないよ」
真理はそう言うと、扉の方を少しだけ伺った。
そうして、座っていた椅子から腰をあげて、ぼくに顔を近づける。
ドキドキ
これって、もしかして
ドキドキ
253三日月島エピローグ編 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/27(日) 11:28:23 ID:Kfu8/ZvU
「はい」
真理の顔の前に、異物が現れた。
「えっ?」
目の前の携帯ゲーム機、かまいたちの夜の画面が現れた。さっきからカチカチといってた音はゲームを操作してたのか。
画面の中の真理が、画面の中の透にキスをした。 一瞬の出来事だった。
「えっ?ええ?何、何これ?」
何だ?これはいったい何なんだ?
「痛みやわらいだ?」
というか、驚いた。復讐の目的で作られたゲームに、どうして・・・。いや、そんな事はもういいや。すばらしいゲームだな『かまいたちの夜』って。うん。
たしかにグッドエンドがないと、ゲームは成立しない。
「うん。うん。でも、もう一度・・・」
「ダーメ。ゲームの方は犯人をきちんと当てて、見て頂戴」
犯人を当てれば、この画面が見られるのか。よーし、がんばるぞ。
「じゃなく、現実で、本当にさ・・・。いてて、いたいよ〜。ママ〜」
「もうっ。情けない声出さないの」
そう言って、真理はぼくに顔を近づけた。

羽毛が舞い降りるみたいに、彼女の唇がぼくの唇に触れた。
「・・・痛くなくなったみたい」
本当だった。

「じゃぁ、また電話するからね」
真理は顔を赤くして、ぼくの返事を待たずいそいそと病室を出て行った。日帰りだったのか。
外に目をやる。
まだ、季節は夏だ。
だけど、必ず、秋はやってくる。
そして、冬には真理と一緒に『シュプール』に行くんだ。

窓の外、木々の葉を揺らす、風は穏やかだった。

完「三日月島殺人事件(autumn never die)」
254 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/27(日) 11:37:14 ID:Kfu8/ZvU
長い間、駄文にお付き合いくださり、どうもありがとうございました。
展開やトリック、犯人を推理した人が納得できたかどうか不安だけど。
>>247
その節はどうも、かなり偶然だよりなので、あたりはずれで論じてはいけないのかも・・。
今回のトリックや、諸々は明らかに小説でしか使えない程度のものなので、
また、いずれ蜘蛛の会とかで出題はしたいと思うので、そのときは遊んでやって。
ただvistaに変えたら使いにくくて・・・orz
>>165
がんばって。
255名無しのオプ:2007/05/27(日) 12:21:08 ID:JccQWpqy
           ,-=;,
          {__7!
          〔_ラレ        ,、_,-‐y;
           `y"l       rヲレへシ'"
           iト-ヘ、      (_;フイ             r;_/iレソ
            l  'ヽ      ル ||                し ン′
              ヽ   ヽ     レ' ||!            人_フ
             V  ヽ,    |   |.| r‐-、=‐-、    _/ /
              ヽ   ヽ,  ト = }{i y=‐'~Y__ 〉  / /
               `i 、,  ヽ, }- ルハjト'`_ント∠-r'   シ´ ←◆TmTfkIMkPk
                V   `;|   i∨  ̄~7  ン〈___/
                V丶  |   リ >,    ( _/ ,_
                 ヾ  {   ソ レ  ン ;_ン'" ,r" rn ゞミヽ
                  ゝ、ゝ = 〃ソノ__/   / y''J | \` ヽ
   rn,              rfレ`ー-=-‐''~ ̄   /`7  `、|  ヽ-'ヽ
  rJllル7       rnh;   l´ ´'リ  ,rn     / r'ン==ト、!__  V ヽ
  〉__ソ       ヾヽ``ij'l 〉 /、,ハjjj し'l mhレ'   /f, |リ<レ7,,m〉  |  |
  |  {   rfjn   ,;'V _ン',/ //〉r>,、__//リリ ト  〈 }'=‐' ソ 〉トii,_/  j
256名無しのオプ:2007/05/27(日) 16:33:58 ID:6sbBX3QV
>>254
長い間、お疲れさまでした。とても面白かったです。
真理は、自分でもよく見えない状態で携帯ゲームのかま夜をあのシーンまで進めたのかw
直前のシーンまで透に会う前に進めておけば楽なのに、それも愛ゆえか。

あと、春夏秋三姉妹や首を突っ込んだばかりにとばっちりで殺された村岡さん、
そしておそらく亜季さんを轢いた事に気付かないで”のうのうと”過ごしてたかもしれないけど、
別に殺すまでしなくても良かったのではないかというみどりさん、みんな可哀想そうだけど、
今回の話で一番可哀想なのはキヨさんかな。
ずっと殺人犯の汚名を着せられた上に、たまたま辺鄙な島にあった施設のお手伝いを過去にしてたというだけで、
妙な犯罪に巻き込まれた挙句、殺されてしまった。

色々感想や推理を書き込んだ内の一人だけど、特に矛盾や不満点はないですよ。
むしろ選択肢付きという制約がある条件の中で、よくここまで完成された物を書いてくれました。すごいです。

もし気がむいたらまた新作をお願いします。
257256:2007/05/27(日) 17:08:08 ID:6sbBX3QV
うわ、すごい勘違いしてました。すみません。
>>253で出てきたゲーム機って、>>221で真理が透から取り上げた物だったんですね。
透がその事に全く気付いてなかったから、たまたま真理も同じ物を持って来てたのだとばかり。
いずれにしても、透と事件の話をしながらこっそりゲームを進めてた真理は相当すごいですけど。
258名無しのオプ:2007/05/27(日) 18:25:39 ID:gWH8Vm6K
しかもモップで殴り殺すバッドエンドだったから、1からやり直したのかw
なんという早業。
259228:2007/05/27(日) 22:17:53 ID:qDzDy8J7
>>◆TmTfkIMkPk
お疲れ様でした。実は俺は一回も選択肢選ぶ機会に恵まれませんでしたw
しかし、真理の推理や、それをひっくり返した推理などよくできてて、最初から計算されつくした展開や緻密に巡らされたプロットを楽しめました。
一部、透の選択肢をひっくり返した言い方をしたり(yes noの選択肢のように見えて実はどちらでも同じだったり)、ちょっと言い回しが、卑怯ぽい所があるかなと思いましたが、多分、書き手さんは自分でもそれに気づいてたんじゃないかと思ってます。
また、何か次回作でも思い浮かべたら、書いてほしいです。
>>248
本当に同一人物だと思ってる?同じこと思ってる人が何人もいるとおかしい?過疎スレだからID変えて自演してるかもってw?
やらねぇよwそんな面倒なことw
だったらこっちは本人乙とでも言おうか?それと擁護するなら>>165のいい所あげてくれ。
自分からかまいたちの原点は選択肢とバッドエンドとか言い出して、自分で選択肢やバッドがつまらないとか言い出してんだぜwその上、選択肢をどうしようもないとか、選ぶなとかw
そんなん、バッドエンドなんて人によっては、単なる回収作業だっての。1みたいな本筋バッドはいいけど、2みたいな、明らかに数あわせにつっくたような突発バッドをたくさん作りたいんなら、人に頼らず自分でやって見せろよ。
俺はそんなの原点なんて思ってないしさ。本筋あってのバッドエンドだと思ってるし。人それぞれだから押し付ける気ないけど、自分で言い出したこと簡単に捻じ曲げるなよ。
てか、明らかに反応うかがってるだけだろwしかも好評や、アイデアマンとほめられるのをさ
「つまらないですね」「そんなことないですよ」とか「選択肢がだめなのかも」「全部、先が気になるくらい魅力的ですよ」とかwありえねぇってwしかも時どき、上から目線w
>>165には期待はしてるって。今の段階でも、破綻してるものが、これからどう展開し、どう仕上がるか楽しみで仕方ない。
ちなみに俺も、どんな作品でも楽しみたい派だが、>>165の押し付けがましさや企画、私的感情を登場人物に織り込むやり方はあまりにもひどいと思うがな。
260名無しのオプ:2007/05/27(日) 22:43:59 ID:cMe9KHSE
◆TmTfkIMkPkさん乙!



正直に言うと、少なくとも235と237は俺一人で書いた。
途中で一度電源切ったせいでIDが変わっていた。
紛らわしいことしてすまなかった。
そう考えると、>>165を批判してる奴の数は見た目よりも少ないのかもしれない。
261名無しのオプ:2007/05/27(日) 22:51:47 ID:Z2WM8Uw7
>>254
お疲れ様でした。今日、何度も読み返しては久々の完までのストーリーを楽しませていただきました。
>>259
言いたいことは分かるが、煽り口調はやめろ。
三日月島編の作者の人も、大人な感じだったのに、そんな小さいことでそれほど腹が立つとは思ってませんでした。
ただ、Part3以降の頑張りや、今までの積み重ねたものが、バカにされたと思ったのだとしたら、たぶん、そんなことはなく、本当に何も考えてない天然な子だと思うので、許してあげてくれないでしょうか?
あと少しで完結するところで、最後まで気持ちよく書けなかった事の心中はお察しますが、ぜひ、いつかまた楽しい作品を読ませてほしいと思います。
262名無しのオプ:2007/05/27(日) 22:58:40 ID:Z2WM8Uw7
>>260
どうなんだろうね。ミス板的に見ると、>>213とか自分から相当痛いことしてるのは事実だし。
実際、わざわざ反応伺ったようなやり方してるのは確かだからね。しかも持ち上げてほしいような。ただ、>>259は明らかに煽りすぎだ。
私は今までのスレ何度も読み返して三日月島編の作者が結構頑張ってやってくれてた事が、その本人に向かって過疎化するって言える>>165の無神経さもちょっと引っかかることは確かだからね。
263名無しのオプ:2007/05/28(月) 00:08:32 ID:I622f4is
とりあえず改行はしっかりしよう
話はそれからだ
264名無しのオプ:2007/05/28(月) 06:49:36 ID:SVoMpKXw
このスレが書き手さん一人の事でここまで荒れるのは珍しいので正直驚いてる。
>>165さんを非難してる人たちの意見も納得出来るものが多いのだけど、
ずっとスルーかやり方に対してやんわりと意見を述べてただけなのに、
◆TmTfkIMkPkさんが実は過疎化と言われた件に対して腹を立ててたというのが判明した途端、
鬼の首でも取ったように叩き始めるのはある意味卑怯では。
265名無しのオプ:2007/05/28(月) 07:32:01 ID:+h8BO0Gj
本人も非を認めて謝ってるんだし、もう天然だからしょーがないということでいいのでは。
これ以上どう165が謝罪しようと、どうせうわべだけの謝罪だとか言い出すに決まってるし。
266名無しのオプ:2007/05/28(月) 09:11:30 ID:SVoMpKXw
>>251はAで。
267 ◆TmTfkIMkPk :2007/05/28(月) 09:45:04 ID:OEWcCnw1
今スレも、もう容量200まで来ちゃったし、次スレ用テンプレ作りながらまったりしてる(part「4そのままコピっただけで申し訳ない)
むしろ荒らして申し訳ないと、心からそう思うよ。狭量な自分が勝手に切れてるだけのつもりだったから。
268雪隠し伝説編165:2007/05/28(月) 20:09:01 ID:3/+d8GPK
>>251(以下、選択肢編改め、雪隠し伝説編とします)

A真理がいる、Aチームに入れてもらうことにした。
 やっぱり、真理の傍にいたいと思った。
 飛行機の墜落現場には、どんな危険が潜んでいるとも限らない。
 いざというときは、ぼくが真理を守るのだ。
「ぼくはAチームに入るよ」
 ぼくがそう言うと、真理は嬉しそうな顔をした。
 除雪されていない新雪の上を歩くのは、容易ではなかった。先頭を歩く俊夫さんがザクザクと
進んだ道を、後続のぼくたちが踏み固めていく。生存者がいた場合はシュプールへ運ばなければ
ならないので、歩くのが楽な道を作るのは、意味のあることだ。
「おい。誰かいるぞ」
 俊夫さんが、木の陰を指差した。
 そこに、老人が倒れていた。しかし、老人が既に絶命していることは誰の目にも明らかだった。
老人には、下半身がなかったからだ。断面は焼け焦げていて、湯気が立っていた。
 さらに進むと、手首から先だけや、臓物だけが落ちているのが目に入った。
 ついに、可奈子ちゃんが泣き出した。
 啓子ちゃんと夏美さんが、可奈子ちゃんを説得し、現場に向かう。
 十分近くかかって、ようやく事故現場に着いた。
 そして、あまりにも凄惨な状況に、ぼくたちは目を覆った。
269雪隠し伝説編165:2007/05/28(月) 20:11:15 ID:3/+d8GPK

 機械の残骸から火の手が上がり、雪原を明るく照らしていた。炎の下の雪は溶け、地面が露出していた。
 あちこちに、懐中電灯の光では機体なのか人間の身体の一部なのか判断がつかないものが散乱している。
 巨大な機体は、翼の根元辺りで真っ二つに割れていた。
 ぼくも今まで何度も飛行機に乗ったことがあるが、飛行機事故がこんなにも悲惨だと知っていたら、
決して飛行機には乗らなかっただろう。
 女の子たちは、散乱する何かを指差しては、悲鳴を上げている。
「よし。さっき決めた三つのグループに分かれよう」
 小林さんが言った。
 ぼく、真理、小林さん、今日子さん、田中一郎のAチームは、機首の方を調べることにした。
 プロペラの回転音が徐々に大きくなる。プロペラは、不規則に回転を早くしたり遅くしたりしていた。
「おい、何人か倒れているぞ」
 田中の声に、ぼくたちは注目した。プロペラの下には、中学生くらいの少女がいた。折れた翼の下には、
老婆がいた。機体から分離された座席の上には、中年男性がいた。
 この位置から見た限りでは五体満足の身体だが、三人の生死を確かめなければならない。

 ぼくは、

A少女の生死を確かめることにした。
B老婆の生死を確かめることにした。
C中年男性の生死を確かめることにした。
270生き埋め編165:2007/05/28(月) 20:13:57 ID:3/+d8GPK
>>249(以下、選択肢編改め、生き埋め編とします。雪隠し伝説編とは全く異なるストーリーです)

C「雪崩が起きたんだ! 窓から離れろ!」
 そう叫ぶや否や、美樹本さんは階段を駆け上がった。
 ぼくが立っていた位置からは、窓の外がよく見えた。雪は既に止んでいた。
 だが、斜面の方から、迫ってくるものがあった。
 怒涛の勢いで、大量の雪の塊がこちらに向かってくる。

 飲み込まれる――。

 ぼくの脳裏に浮かんだ言葉は、それだった。このままでは、雪に飲み込まれる。
 滝の音だと錯覚したのは、次から次へと押し寄せる雪崩の音だったのだろう。
 夏美さんは素早く反応し、春子さんの手を引いて食堂の方へ走っていく。
 冬美ちゃんを抱いている真理と、啓子ちゃんと可奈子ちゃんは、あまりの出来事に
棒立ちになっている。真理はどちらかと言えば窓からは少し離れた位置にいるが、
それでも危ないかもしれない。一方、明らかに危険に曝されているのは、啓子ちゃんと
可奈子ちゃんだった。二人とも、窓の真正面に立っている。
「二人とも逃げろ!」
 真理を守らなければならない。その思いだけがぼくを突き動かしていたが、同時に
啓子ちゃんと可奈子ちゃんにも警告した。
 ぼくは、真理のところへ走った。
 玄関に向かう廊下の方へ、真理の身体を突き飛ばした。真理が短い悲鳴を上げる。
冬美ちゃんが泣き出した。同時に、ぼくも廊下へ転がった。
 啓子ちゃんと可奈子ちゃんは――。
 ぼくは、廊下の床に転がったまま、首だけを動かして談話室の様子を見た。
 啓子ちゃんと可奈子ちゃんは、何と、窓を背にして走っていた。
 何をやっているんだ、とぼくは思った。
 後ろに逃げるんじゃなくて、横に逃げろ!
 ぼくがそう叫ぼうとしたとき、轟音が耳を劈いた。雪の塊が、窓ガラスを突き破ったのだ。
271生き埋め編165:2007/05/28(月) 20:16:10 ID:3/+d8GPK
 それは、交通事故に似ていた。
 ぼくは昔、目の前でダンプカーが自転車に乗った少年を撥ねるのを目撃したことがあった。
そのときぼくが立っていた位置からは、交差点を右折しようとした自転車が、ダンプカーの
目の前に飛び出すのが、手を取るように分かった。だが、少年はそのことに気付かないらしい。
ダンプカーがハンドルを切ると同時にブレーキを踏んだが、間に合わなかった。
 少年の身体は、一瞬にして、ただの肉塊に変わった。ぼくは、何もできずに立ち尽くしていた。

 あのときの事故が、目の前で再現されているような気がした。
 雪の塊が窓ガラスを突き破るのに、どうすることもできないのだ。
 事故を目撃するときはスローモーションのように見えると、よく言われる。
 啓子ちゃんと可奈子ちゃんは、ゆっくりと走っている。
 その速度は、悲しさを覚えるくらい遅い。その一挙一動がよく見える。
 啓子ちゃんと可奈子ちゃんは、手を繋いでいる。何かを叫んでいるが、聞こえない。
 二人は、窓の真正面にある地下室のドアに向かっている。
 ぼくは叫ぶ。横に逃げろ、と。
 駄目だ、間に合わない。二人は、地下室のドアまで辿り着くことができない。

 間、に、合、わ、な、い――。

 雪の塊が、走っている二人の身体を弾き飛ばした。
 二人は、まるで発泡スチロール製の人形のように吹っ飛び、壁にぶつかる。
 だが、雪崩の音が大きすぎて、壁にぶつかった音は聞こえなかった。

 床の上に崩れ落ちた二人の上に、大量の雪の塊が押し寄せた。
 たちまち、雪に埋もれて見えなくなる。

 真理の悲鳴が上がった。
 冬美ちゃんの鳴き声が、ますます大きくなったような気がした。
272生き埋め編165:2007/05/28(月) 20:17:52 ID:3/+d8GPK
 雪の塊が、悪夢のような速さでシュプールの中に侵入してくる。
 その勢いはとどまることを知らず、壁にぶつかり、砕け散りながら談話室の中を埋めていく。
「透、危ない!」
 真理が叫んだ。
 その声に反応してぼくが身体を捻ったとき、それまでぼくの頭があった場所に雪の塊が
押し寄せてきた。
 ぼくの身体は雪に押され、冬美ちゃんを抱いた真理と共に、廊下を滑っていく。
 あと少しで玄関の上がり口から真理が落ちるというときに、ようやく雪の勢いが弱まった。

 …………。

 どれくらいの時間が経過したのだろう。
 ぼくは、随分長い間、自分の激しい息遣いと、冬美ちゃんの鳴き声を聞き続けていたような
気がしたが、実際には短い時間だったのかもしれない。
「ケイちゃん、カナちゃん!」
 という声で、我に返った。夏美さんの声だ。だが、その叫び声は雪の壁に遮られ、
くぐもったようにしか聞こえなかった。
「ねえ、透。啓子ちゃんと可奈子ちゃん、どうなったの?」
 真理だって見ていたはずなのに、ぼくの返答を求めた。ぼくは、答えることができなかった。
「助けなきゃ。早く助けないと、二人とも死んじゃう」
 助ける。そんなことができるだろうか。ぼくに、二人を救い出すことができるだろうか。
 迷っていたぼくの目に、除雪をするために玄関に常備してあったシャベルが目に入った。
 ぼくは、そのシャベルを掴んだ。
「うん。助けよう」
 ぼくはそう言って、振り向いた。そして、あまりにも絶望的な状況を目の当たりにした。
273生き埋め編165:2007/05/28(月) 20:28:40 ID:7liTaFOL
 そこに談話室という空間があったことが信じられなかった。
 雪崩は、談話室の天井近くまで埋め尽くし、廊下をも侵食しようとしていたのだろう。
 ぼくたちがいる玄関から見ると、廊下は談話室に向かって、雪で階段状に埋め尽くされている。
 こんなシャベル一本で、啓子ちゃんと可奈子ちゃんを救出することができるのだろうか?
「透、早く!」
 真理がせかした。確かに、迷っている暇はない。
 昔読んだノンフィクションに、雪崩に巻き込まれたときのデッドラインは、十五分なのだと
書かれていた。時間が経過すれば経過するほど、助かる可能性は低くなっていく。
 ぼくは、やけっぱちになりながら、雪にシャベルを突き立てた。
 固い。
 これは、新雪ではなく、根雪なのだろう。殆ど、氷の塊だ。
 それでも、ぼくは手を休めなかった。
「私も手伝うわ」
 真理がそう言ったが、ぼくは断った。
「真理は、冬美ちゃんを守っていて。気温が急激に下がっているから、赤ちゃんには危険だ。
冬美ちゃんは少なくとも体調を崩してしまうだろうし、下手をすると、命が危ない状態に陥る
かもしれない。冬美ちゃんを抱き締めて、保温していてくれ」
「でも……」
「それに、どのみちシャベルは一本しかないし」
 だが、果たして、このまま掘り進めていていいのだろうか。
 本当に、これで、間に合うのだろうか。
 談話室の天井には隙間がある。あの隙間を通って、向こう側に回ったら?
 そして、向こう側から掘り進めた方が、効率がいいのではないだろうか?
 しかし、ここまで掘り進めた分が、無駄になってしまう。
 どちらが正解なのだろう?

Aぼくは、このまま掘り進めることにした。
Bぼくは、一か八か、向こう側に渡ることにした。
274名無しのオプ:2007/05/28(月) 20:40:09 ID:Xl6AR98b
>>269
Aでお願いします。
275雪隠し伝説編165:2007/05/28(月) 21:21:55 ID:7liTaFOL
>>269
A少女の生死を確かめることにした。
「ぼくは、あの女の子の生死を確かめに行きます。小林さんと田中さんは、あの男の人を。
真理と今日子さんは、あの老婦人を確かめてください」
 ぼくがそう言うと、四人は厳かに頷いた。
 ぼくは、新雪に足を取られながら進んだ。先ほど先頭を歩いていた俊夫さんの苦労が、
ようやく分かった。これは大変だ。
 ぼくは苦労しながら、プロペラの下に倒れている少女のところへ行った。まだ中学生くらいの
少女は、雪の上にうつ伏せに倒れている。ぼくは屈んで、少女の身体を仰向けにした。

 少女には、顔がなかった。本来顔があるべきはずの場所がごっそりと削げ落ちており、
骨が剥き出しになっていた。
「うわああっ!」
 ぼくは、悲鳴を上げながら立ち上がった。
 ところが、中途半端な体勢でいきなり立ち上がったせいで、バランスを崩してしまった。
顔がない少女の上に覆い被さるような格好で、倒れた。
「ひいっ」
 ぼくは、急いで体勢を立て直すと、立ち上がった。
 そのとき、回転を気まぐれに速くしたり遅くしたりしていたプロペラが、突然、激しく回転し始めた。
 ぼくは、プロペラに吸い込まれそうになった。咄嗟に、顔のない少女の遺体にしがみついた。
だが、少女の身体ごと、ぼくは浮かび上がった。
 そして、激しく回転するプロペラに――。




                                雪隠し伝説編バッドエンド1「プロペラ」
276名無しのオプ:2007/05/28(月) 22:19:57 ID:SVoMpKXw
>>273
Bで。
277名無しのオプ:2007/05/29(火) 05:18:23 ID:YRRQnpll
>>269Cがいいです。
278生き埋め編165:2007/05/29(火) 06:43:12 ID:o7DuUmwn
>>273
Bぼくは、一か八か、向こう側に渡ることにした。
「真理。ここで、待っていてくれ」
「待っていてって……。透、どうするつもりなの?」
「談話室の天井と雪の間に、五十センチくらいの隙間があるだろう? あそこを通って向こう側に渡る」
 ぼくが答えると、真理は蒼ざめた。
「透、駄目よ。危険すぎるわ。まず、第一に、あの隙間がずっと向こう側まで続いている
という保証がない。第二に、向こう側からの方が、啓子ちゃんや可奈子ちゃんが生き埋めに
なっている場所に近いとは限らないわ。第三に、また雪が侵入してきたり、どこかに挟まって
動けなくなってしまったら、今度は透が生き埋めになる。ねえ、ここまで掘り進めたんだもの。
このまま、ここから掘って行った方が確実だわ」
「それじゃ間に合わないんだ!」
 ぼくは、つい、大声を出してしまった。真理は弾かれたように沈黙した。
「……大声出して、ごめん。行ってくる。冬美ちゃんを頼む」
 ぼくは、階段状になった廊下の雪の斜面をよじ登り始めた。ぼくは室内用のスリッパを
履いていたので、それは簡単ではなかった。一メートルほど登ってから、玄関で靴に
履き替えるべきだったと後悔したが、そんな時間はない。それに、どのみち、談話室の
中では腹ばいになって進まなければならないので、何を履いていようが関係ない。
 ようやく、談話室の入り口に着いた。近くで見ても、屈んで通ることはできなさそうだった。
匍匐前進で通るのがやっとだろう。
 ぼくは、真理を振り返った。真理は、玄関の上がり口に腰かけ、冬美ちゃんをあやしながら
ぼくを見守っていた。
「第四に、私の傍にいてほしかった」
 真理が、穏やかな声でそう言うのが聞こえた。
「でも、それは私の我が儘だから。行ってらっしゃい」
 行ってらっしゃい。真理は、まるでぼくが買い物にでも出かけるかのような、何気ない
口調で言った。ぼくは、胸が痛んだ。
「行ってきます」
 ぼくはそう言い、談話室の天井の、僅かな隙間に潜り込んだ。
279生き埋め編165:2007/05/29(火) 06:59:11 ID:o7DuUmwn
 談話室の電灯も、雪に埋もれてしまっているのだろう。室内は暗かった。
 懐中電灯を持って来るべきだったと後悔したが、後の祭りだった。どうしてぼくは、
こんなにも要領が悪いのだろう。そんなふうに弱気になる思いをこらえながら、
ぼくは腕を動かして這って行った。シャベルが引っかかるので、先に進むのは楽では
なかった。本来ならば、手探りで自分が前進することのできる空間があるかどうか
確かめるべきなのだろうが、両手が塞がっているので無理な相談だった。
 頭をぶつけませんようにと祈りながら、匍匐前進していく。
 途中、何度も雪が崩れてきて飲み込まれそうになったり、行き止まりになっていたりした。
たちまち、方向感覚を失った。
「啓子ちゃん! 可奈子ちゃん! どこだ?」
 ぼくは叫んだ。もちろん、何メートルの下の雪に埋まっている二人が、返事を
してくれるはずがない。ところが、意外な人が返事をしてくれた。
「透くんか? おーい、こっちだ!」
 美樹本さんの声だった。
「美樹本さん? どこですか?」
「こっちだ! 今、啓子ちゃんと可奈子ちゃんを救出しようとしているところだ!
きみも早く来てくれ!」
 今度は、どの方向から聞こえたのか分かった。ぼくは、必死の思いで進んだ。
 急に、視界が開けた。談話室の向こう側に辿り着いたのだ。
「おお、透くん、手伝ってくれ」
 美樹本さんが言った。不思議なことに、雪に埋もれた談話室の中で、美樹本さんの
立っている場所だけは、雪がなかった。どうしてだろう? ぼくは疑問に思ったが、
怪我をしないように、そっと雪の上から飛び降りた。
 その場所に立つと、どうしてそこだけ雪がないのか、ようやく理解できた。
 地下室のドアが開いているからだ。
 雪崩がある程度収まった後で、雪の重みに耐え切れず、地下室のドアが開いたのだろう。
そして、雪の塊の一部が地下室の中へ流れ込み、このような空間が生まれたのだ。
 啓子ちゃんと可奈子ちゃんは、雪に飲み込まれる直前、地下室へ向かっていた。
 地下室の前には、空間が生まれている。
 やったぞ、とぼくは思った。一か八か、こちら側に来て正解だったのだ。
280生き埋め編165:2007/05/29(火) 07:17:03 ID:o7DuUmwn
 ぼくが持っているシャベルを見ると、美樹本さんは安堵の表情を見せた。
「シャベルがあるのか。有り難い。今まで、素手で掘っていたんだ」
 ぼくは、こちら側に回ってくるのに疲れていたので、美樹本さんにシャベルを渡した。
 美樹本さんは、急いで掘っていく。
「あ、そっちじゃないですよ。二人は、地下室のドアに近い場所の、壁際の床に倒れて
いるんです」
 ぼくは、美樹本さんに、そう説明した。真っ先に二階に上がった美樹本さんは、
啓子ちゃんと可奈子ちゃんがどこに倒れているのか知らなかったのだろう。
「ケイちゃん! カナちゃん! しっかりしいや!」
 夏美さんの声が聞こえた。
 雪崩が起こったとき、夏美さんと春子さんは、食堂の方へ駆け込んでいた。
 食堂への廊下にも、さきほどの玄関への廊下と同じように雪が侵入し、こちら側に
来るのは難しいのだろう。ぼくと美樹本さんの二人で、啓子ちゃんと可奈子ちゃんを
救出しなければならない。
 ぼくは履いていたスリッパを脱ぐと、それを手袋代わりにして掘ることにした。
 やはり、二人で掘るのは早い。
先ほど、玄関側で一人で掘っていたときとはスピードが違う。
 すぐに、かまくらのような穴ができた。
「おい、服が見えたぞ」
 美樹本さんが言った。ぼくは、穴を覗き込んだ。青い服が見える。
「青い服を着ていたのは……可奈子ちゃんですね。二人は手を繋いで走っていましたから、
啓子ちゃんも近くにいるはずですよ」
「よし、ここからは、慎重に掘り進めよう」
 美樹本さんが入り口の穴を大きくし、ぼくが可奈子ちゃんの周辺の雪を掻き分けることに
なった。生きていてくれ。頼む。ぼくはそう思いながら、声をかけた。
「可奈子ちゃん、啓子ちゃん! 返事をしてくれ!」
 可奈子ちゃんの服は、ぴくりとも動かない。
 ぼくは、我武者羅に雪を掘り分けた。
 ようやく、可奈子ちゃんの腕が露出した。
281生き埋め編165:2007/05/29(火) 07:37:46 ID:o7DuUmwn
 その手を握ってみる。それは、生きている人間の手だとは思えないほど冷たかったが、
かすかに握り返されたような気がした。
 生きている? まだ、生きているのだろうか?
 雪崩から、どれくらいの時間が経過したのか分からない。時間の感覚を失っていた。
 だが、相当時間が経っていることは間違いない。生きているのは、ほとんど奇跡だろう。
 雪崩に巻き込まれて死ぬ原因は、窒息、外傷、体温の低下なのだと聞いたことがあった。
雪崩に飲み込まれてから十五分ほどで生存率が急激に下がるのは、主に窒息が原因だ。
呼吸できる空間を確保できていれば、生存率は上がる。しかし、呼吸できる空間が確保
できていたとしても、長時間経過すると、呼気によって雪が凍ってしまい、呼吸ができなく
なってしまうアイマスク現象や、雪に体温を奪われることで低体温になり、やはり生存率は
下がってしまう。
 まだ間に合うかもしれない。
 生きているかもしれない。
 いや、生きていて欲しい。
 ぼくはそう思いながら、腕のつけ根、首の方へと掘り進めて行った。
 雪に髪の毛が混じった。顔が近い。
「可奈子ちゃん!」
 ついに、可奈子ちゃんの顔が現れた。ひどい顔色をしている。だが、かすかに呼吸する
音が聞こえたような気がした。ぼくは、可奈子ちゃんの頬を叩いた。
「う……ん……」
 可奈子ちゃんの口から、呻き声が漏れた。
 生きている。生きているのだ。
「美樹本さん! ぼくの身体を引っ張ってください!」
 ぼくは、可奈子ちゃんの肩を掴みながら、そう言った。
 すぐに、ぼくの足が持ち上げられた。美樹本さんが引っ張ってくれる。かなり重いはずだが、
美樹本さんは文句も言わない。
 じりじりと、可奈子ちゃんの身体が出てきた。
 やがて、勢いよく飛び出した。
282生き埋め編165:2007/05/29(火) 07:57:46 ID:o7DuUmwn
 ぼくも美樹本さんも、激しく息をしながら、可奈子ちゃんの身体を、地下室の前にできた
狭い空間に横たえた。
「次は、啓子ちゃんの番ですね」
 ぼくはそう言い、再び穴に入っていった。
 今度は、すぐに啓子ちゃんが見つかった。どうやら、啓子ちゃんは、可奈子ちゃんに
覆い被さるような形で埋もれていたらしい。ぼくは、顔のある位置を掘った。
「うわ……」
 ぼくは、悲鳴を上げたくなるのを我慢した。

 啓子ちゃんは、もう、息をしていなかった。

 目が開いたまま瞬きもしないのを見れば、彼女が亡くなっていることは一目瞭然だった。
 だが、少しでも蘇生する可能性があるのならば、引っ張り出さなければならない。
 加奈子ちゃんのときと同じ要領で、啓子ちゃんの身体を出した。
「間に合わなかったか」
 美樹本さんの口からも、残念そうな溜め息が漏れた。それでも、ぼくたちは啓子ちゃんに
心肺蘇生法を施すことにした。美樹本さんが、啓子ちゃんの胸を垂直に押し下げる。
 ぼくは、啓子ちゃんに人工呼吸をした。ぼくが心肺蘇生法を習ったのは、自動車の運転
免許を取得するときだった。こんなことなら、もっと真剣に覚えておけばよかったと思った。

 結局、啓子ちゃんは、息を吹き返さなかった。

 だが、可奈子ちゃんは助けることができた。それだけでも、ぼくのしたことには意味が
あったのだ。ぼくは、自分自身にそう言い聞かせた。
 ぼくと美樹本さんは、交代で、食堂への道を作ることにした。
 早く可奈子ちゃんの身体を温めなければ、彼女の命も危険だ。
 掘った雪は、地下室の中に落としていく。二十分ほどかけて、やっと道が開通した。
 食堂の中には、夏美さん、春子さん、香山さん、小林さん、今日子さん、俊夫さん、
みどりさんの七人がいた。七人は、食堂側からも、談話室の方に行こうと苦労していた
らしかった。啓子ちゃんが亡くなったことを告げると、誰もがやりきれないという表情をした。
283生き埋め編165:2007/05/29(火) 08:16:58 ID:o7DuUmwn
 だが、可奈子ちゃんの身体を温めてくれと頼むと、夏美さん、春子さん、今日子さんたち
女性陣は、台所のお湯で、彼女の身体を温めると言った。ぼくは可奈子ちゃんを任せた。
「そうだ。警察と消防には知らせましたか?」
 ぼくが訊くと、小林さんは首を振った。
「どうやら、雪崩のせいで電話線が断線したみたいなんだ。雪のせいで、携帯電話の
電波も届かないし……。だが、雪崩が起きてることはすぐに誰かが気付いてくれる
だろうし、ここにシュプールがあることは地元の人はみんな知ってるから、すぐに
救助が来ると思うよ。それに、冬美ちゃんを預かるときにスキー場にここの住所を
知らせたんだろう? 電話線が切れてることにも、すぐに気付いてくれるさ」
 小林さんの返答は、楽観的だった。「すぐに」という言葉を三回も使っている。
 啓子ちゃんの遺体を見ていないから、そんなことが言えるのだろう。
 だが、啓子ちゃんが亡くなったことは非常に悲しいが、他に犠牲者がいないことに、
ぼくは少しだけ安堵した。……待てよ? 他に犠牲者がいない?
 ぼくは、そのときようやく、一人忘れていたことに気付いた。
 コートを着て、サングラスをかけた、あの男。田中一郎のことを忘れていた。
「田中さんは?」
 ぼくが聞くと、美樹本さん、小林さん、香山さん、俊夫さんは、ハッとした表情になった。
「俺は見てない」
「わしも見てんわ」
 俊夫さんも香山さんも知らないらしい。
「私が最後に田中さんの声を聞いたのは……そうだ、内線で、ルームサービスの冷凍の
ピザを頼まれたときだった」
 小林さんが答えた。
「ピザ? せっかくのマスターの料理を食べずに冷凍食品だなんて、変わった奴ですね」
 俊夫さんが、冗談とも本気ともつかないことを言った。
「ルームサービスって、何時頃でしたか?」
「確か……六時少し前だったね。ほら、きみたちが冬美ちゃんを連れて戻ってくる直前だよ」
 ぼくは、小林さんの隠し子の亜季ちゃんのことを思い出して不愉快になったが、
今はそんな場合ではない。
「そんな時間にルームサービスですか? おかしくありませんか? だって、七時半には
夕食の時間じゃないですか」
284生き埋め編165:2007/05/29(火) 08:40:33 ID:o7DuUmwn
「私もそう言ったんだが、どうしても腹が減っているんだと聞かなくてね」
「とにかく、行ってみよう」
 俊夫さんが言い、男性ばかり五人で行くことになった。
 小林さん、俊夫さん、香山さんは、啓子ちゃんの遺体を見ると、短い黙祷を捧げた。
 美樹本さんが二階から下りてきたときは、天井近くの隙間を通って、地下室の前の空間に
辿り着いたのだそうだ。玄関からこの場所にかけての隙間よりは、通りやすい。
 だが、一人だけ中年太りの進んでいる香山さんは、通ることができなさそうだった。
 香山さんは、ムッとした表情だったが、こう言った。
「しゃあないなあ。先に行っててくれ。わしは、シャベルで二階までの道を作っとくわ」
「あ、それなら、先に玄関の方へ掘り進めてくれませんか? 真理と冬美ちゃんがいるんです」
 ぼくは、香山さんに頼んだ。
「よっしゃ。わしに任せとき。ああ、そうそう、可奈子ちゃんの服を取ってきたりや」
 そうだ、彼女の服のことを忘れていた。
 ぼく、美樹本さん、小林さん、俊夫さんの四人は、天井の隙間を通って、階段に辿り着いた。
 順番に階段を上っていく。ようやく、二階に辿り着いた。
 ぼくは、二階の廊下を不思議な思いで見た。
 下で雪崩が起きていたのが、嘘みたいに静まり返っている。何事もなかったかのようだ。
 だが、啓子ちゃんが亡くなり、可奈子ちゃんが生死の境をさ迷っているのは、事実なのだ。
「田中さんの部屋は、どっちですか?」
「こっちだ」
 小林さんが進むので、ぼくと美樹本さんも続いた。ところが、俊夫さんが引き止めた。
「なあ、皆、ちょっと待ってくれないか」
「何ですか、俊夫さん」
「冷静に考えてみろ。おかしいと思わないか? どうして奴は、部屋から出て来なかったんだ?」
「それは……寝ていたとか」
 答えてから、ぼくもそれがおかしいことに気付いた。
「透くん、そんなはずはないだろう? だって、奴は六時にピザを注文したんだ。七時半には
夕食があることを知っていた。そして、今は八時過ぎだ。そんな時間に寝ているはずがない。
仮にまどろんでいたとしても、あの轟音なら、目を覚ますはずさ」
285生き埋め編165:2007/05/29(火) 08:50:54 ID:o7DuUmwn
「だから、談話室みたいに雪が窓を突き破って、埋もれているのかもしれませんよ」
 そう言ってから、ぼくは啓子ちゃんのことを思い出し、ぞっとした。
 もしも田中が雪崩の犠牲になっているのだとしたら、もう助からないだろう。
 間に合わない。ぼくは、彼を見捨ててしまったのだろうか。
 ところが、俊夫さんは意外なことを言い出した。
「なあ、よく思い出してくれ。雪崩が起きる直前、爆発音がしたのを覚えているか?」
 ぼくは覚えていた。2ちゃんねるで「かまいたち」と検索したときに、爆発音が聞こえた。
そして、ぼくは異変に気付き、耳をすませた。滝の音と誤解した雪崩の迫る音が聞こえ、
美樹本さんが雪崩だと叫び、階段を駆け上がったのだ。
「あのな、きみたちは知らないのかもしれないが、こんな天候の日のあの時間帯に雪崩が
起きるのは、非常に稀なんだよ」
「そうなんですか?」
 ぼくは知らなかった。
「雪崩の発生条件は様々だから、一般化は難しいが、降り積もった雪の粒同士の結合が、
何らかの外的要因によって破壊されたときに発生すると言われている。外的要因というのは、
重力、圧力、気温の上昇などのことだ。急激な気温の上昇は、積雪内部に大きな温度変化を
生じさせる。そして、『しもざらめ雪』という弱い層が形成されることが多い。また、一度に
大量の降雪があると、弱い層の上に積もる雪に対する加重が増していく。それが急な斜面
だった場合、弱い層は重さに耐え切れなくなり、雪崩が発生する危険も高くなる。ああ、
それと、映画や小説なんかによく出てくる、『大声を出したら雪崩が起きる』っていうのは
大嘘だからな。スキーやスノボや雪山登山が好きな人なら、誰でも知っていることだ」
「ええと……つまり?」
 ぼくは、俊夫さんの言葉の意味が、よく分からなかった。
「つまり、雪崩が起きやすいのは、天気のいい日や、猛吹雪の日だということだろう?」
 俊夫さんの代わりに、美樹本さんが言った。
「そういうことですよ、美樹本さん」
 俊夫さんが答えた。
286生き埋め編165:2007/05/29(火) 09:09:35 ID:o7DuUmwn
 ぼくは、今日の天気を思い出そうとした。
 今日は、朝は晴れていた。だから、ぼくは真理とスキーに行ったのだ。
 一日中スキーをしていたが、その間は晴れていた。しかし、車内で冬美ちゃんを発見し
帰ろうとするときには、少しだけ吹雪いていた。だが、冬美ちゃんに哺乳瓶でミルクを
あげている間に、雪はやんだ。
「そういうことですか。昼間は晴れていて、雪は降っていなかった。だから、大量の
積雪が原因の雪崩とは考えにくい。しかし、暗くなってからは気温が下がり、少しだけ
吹雪いていた。だから、気温の上昇による雪崩とも考えにくいってことですか」
 ぼくは、そう言った。
「まあ、一概にこんな天候の日の、あの時間に雪崩が起きるのは、珍しいだろうな」
 俊夫さんが答えた。
「そこで問題となってくるのが、あの爆発音だということかい?」
 小林さんが質問した。
「そうだ。もしかすると、あの雪崩は、人為的に起こされたものだったのかもしれない」
 俊夫さんは、衝撃的なことを言った。
 人為的な、雪崩。啓子ちゃんの命を奪ったあの雪崩が、人間の仕業だということか?
「そんなこと、できるんですか」
 ぼくは疑問に思った。俊夫さんではなく、美樹本さんが答えてくれる。
「できるさ。俺は学生の頃、第一世界大戦についてレポートを書いたことがあってね。
そのとき、イタリア軍が雪崩を攻撃に利用したことを知ったんだ。第一世界大戦当時、
イタリア陸軍は、真冬のアルプス山脈を越境してくるオーストリア軍を迎え撃つことに
なった。そのとき、オーストリア軍が尾根を越えて下りに入ったところを背後から狙い、
砲撃した。着弾時の衝撃で雪崩を起こして、その雪崩に巻き込んでオーストリア軍を
生き埋めにするという作戦だったんだ」
 わざと雪崩を起こして、生き埋めにする。
 そんなことをできる人間の神経が理解できなかった。それは、日本に原爆を落とした
アメリカ軍の気持ちが理解できないのと同じなのだろう。
「あの爆発音が、その、雪崩を人為的に起こすときの爆発だったと言いたいんですね?」
 ぼくが訊くと、ぼく以外の三人は頷いた。
287生き埋め編165:2007/05/29(火) 09:45:21 ID:ah0t1XXs
「俊夫さんは、その雪崩を起こしたのが、田中さんだと考えているんですか?」
 ぼくの質問に答えないことが、俊夫さんの答えになっていた。
 田中さんが、雪崩を起こした犯人。そんなことがありうるだろうか?
 ……ヤクザ。
 ぼくの田中さんに対する第一印象は、ヤクザだった。
 確かに、あの人ならやりかねないという気がする。だが、第一印象で人を判断しても
いいのだろうか? そんなことが許されるのだろうか? それに、そんなことをする意味が
分からない。雪崩を起こして、何の得があるというのだろう?
「でも、もしかしたら、雪崩が起きた原因は、木にぶつかった車が爆発したことだったの
かもしれませんよ。それで、田中さんは全然関係なくて、今も生き埋めになっている
かもしれないじゃないですか」
「……透くん。きみは、何か勘違いをしていないか? 生き埋めになっているのは、
俺たちなんだよ」
 そうだった。
 シュプール全体が雪崩に巻き込まれていて、脱出できない可能性もあるのだ。
 いや、例え脱出できたとしても、車を出せないのだから、歩くしかない。夜の冬山を
歩くのは、自殺行為だ。自力で脱出できてもできなくても、同じということか。
「夏美ちゃんに聞いたんだが、『こんや、かまいたちがあらわれる』という謎のメモも
あったんだろう? あれも、田中の仕業かもしれない」
「でも、こんなことしていたって、水かけ論ですよ。どうするんですか? 田中さんの
部屋を見に行かないんですか?」
「そう。問題は、まさにそこなんだよ。俺は、雪崩を起こしたのは田中で、あいつは
とっくにどこかへ逃亡しているのではないかと思う」
「だったら、部屋を見に行っても……」
「だが、田中が雪崩を起こした犯人なのだとしたら、部屋には、罠が仕掛けられている
可能性がある。気をつけた方がいい」
 長い話だったが、結局、俊夫さんはそれが言いたかったのだろう。
288生き埋め編165:2007/05/29(火) 09:54:55 ID:ah0t1XXs
「分かりました。用心しましょう」
「物置に、モップが入っているんだが……」
 小林さんが、廊下の突き当たりのドアを指差した。モップを武器にしようということか。
 ぼくたちが物置に近付くと、ぼくたちの耳に、物音がはっきりと聞こえた。
 全員が、ぎくりとして足を止める。美樹本さんが、ぼくを見た。
『聞こえたか?』
 その目はそう言っていた。ぼくは、大きく頷いた。この掃除用具入れの中に、何が
あるのだろう? ノブに手をかけた小林さんが、皆の顔を見回した。ぼく、美樹本さん、
俊夫さんの三人は、一斉に頷いた。その瞬間、ドアが勢いよく開いて黒い影が
飛び出してきた。黒い影は、ぼくたちの足元をすり抜け、階段に消えた。
「……猫だ」
「ありゃあジェニーだ。こんなとこにいたのか」
 俊夫さんが言った。
「ジェニー?」
「ここで飼っている猫だよ。見かけないからどこに行ったのかと思っていたんだ。こんな
ところに入り込んでいたとはね」
 客商売で猫を飼うのはまずいのではないだろうか、とぼくは思った。宿泊客の中には、
猫アレルギーの人もいるだろうに。
 とにかく、小林さんはモップを手にし、田中さんの部屋のドアを開けた。
 最初、部屋には、とくに異変はないように見えた。窓ガラスは割れていないが、窓の
外は、雪の塊だった。やはり、二階も雪で埋もれてしまっているのだろう。
 だが、ぼくは、気付いてしまった。
 窓とベッドの間の床の上に、マネキン人形の部品のようなものが落ちていた。黒い
布から突き出た手首。その上に無造作に置かれた土気色をした足首。そして青黒い顔の
近くには、サングラスが落ちている。
 手足や胴体の中に糸が通っていて、それを緩めると、くしゃりと潰れる人形の玩具がある。
それらの手足はまるであんなふうに積み重なっていた。
289生き埋め編165:2007/05/29(火) 10:03:32 ID:ah0t1XXs
「なんてこった……。こりゃあ、死体だ。人間の死体だ!」
 小林さんが叫んだ。
 ぼくは、信じられない思いでバラバラ死体を見ていた。
 ドラマの中では、何度も見たことがある。だが、それを見ていても平気なのは、それが
作り物であることを知っているからだ。目の前に本物のバラバラ死体があるのだと思うと、
ぼくは吐き気を感じた。だが、先ほど啓子ちゃんの遺体を見て免疫がついていたのか、
ぼくは何とか立ち直った。
「田中さん、なんですか?」
 ぼくは訊いた。
「他に誰がいるっていうんだ?」
 小林さんが言った。
 田中さんが既に殺されていた? ということは、先ほどの俊夫さんの推理は、完全に
外れていたということになる。ぼくは、俊夫さんを見た。何やら考え込んでいる様子だ。
 俊夫さんだけに任せておくわけにはいかない。ぼくも、一生懸命推理しなければ。

 ぼくは言った。

A「雪崩を起こした人物は、まだシュプールの中にいるのかもしれませんよ」
B「この死体が、本当に田中さんのものだとは限らないんじゃないですか?」
C「田中さんは、いつ殺されたんでしょうか?」
D「小林さん。田中さんがピザを注文したのは六時少し前だと言いましたが、ピザを
  持って行ったのは何時だったんですか?」
E「田中一郎って、本名なんでしょうか?」
290165:2007/05/29(火) 10:09:56 ID:ah0t1XXs
訂正。

>>286
十行目


×「まあ、一概にこんな天候の日の、あの時間に雪崩が起きるのは、珍しいだろうな」

○「まあ、一概には言えないが、こんな天候の日の、あの時間に雪崩が起きるのは珍しいだろうな」
291名無しのオプ:2007/05/29(火) 10:41:00 ID:RNd9fO0o
>>289
Dでお願いします
292雪隠し伝説編165:2007/05/29(火) 11:30:18 ID:ah0t1XXs
>>269
C中年男性の生死を確かめることにした。
「ぼくと真理は、あの男の人の生死を確かめに行きます。小林さんと今日子さんは、
あの老婦人を。田中さんは、あの少女を確かめに行ってください」
 ぼくがそう言うと、四人は厳かに頷いた。
 ぼくは、新雪に足を取られながら進んだ。先ほど先頭を歩いていた俊夫さんの苦労が、
ようやく分かった。これは大変だ。
 ぼくと真理は、苦労しながら、機体から外れた座席の上に座っている中年男性のところに
行った。
 ぼくは、男の脈をとった。腕は非常に冷たいが、まだ血が通っている。生きている。
 肉眼でざっと見た限りでは、目立った外傷はない。
 四十歳前後の男は、どちらかと言えば小柄な方で、ぼくよりも背が低かった。これなら、
背負ってシュプールまで運ぶことができそうだ。
「透くん、こっちのお婆さんは、まだ生きてるぞ!」
 小林さんの声が聞こえた。
「叔父さん、この男の人も生きてるわ!」
 真理が返事をした。
 田中が見に行った、プロペラの下に倒れていた少女はどうなのだろう。ぼくはそう思い、
田中の方を見た。そのとき、回転を気まぐれに速くしたり遅くしたりしていたプロペラが、
突然、激しく回転し始めた。
 田中の身体が、浮び上がりかけた。田中は、倒れている少女にしがみついた。
 だが、少女の身体ごと、田中は浮かび上がった。
 そして、激しく回転するプロペラに吸い込まれ――。
「真理! 見るな!」
 ぼくはそう言って、真理の顔を自分の胸に押し当てた。
「見ちゃ……いけない」
 田中と少女の身体は、プロペラに轢断されている。
 プロペラの後ろから、血肉のシャワーが排出されていた。赤い霧のようにも見える。
 田中の身体と少女の身体を見分けるには、DNA鑑定でもしなければならないだろう。
293雪隠し伝説編165:2007/05/29(火) 11:48:17 ID:ah0t1XXs
「きゃああああ!」
 今日子さんが悲鳴を上げた。真理は今日子さんの方を見たそうな素振りを見せたが、
ぼくは許さなかった。今日子さんには小林さんがついている。今日子さんを見れば、
同時に田中の最後まで見ることになる。真理に、あんなものを見せたくない。
 馬鹿だった。
 ぼくは、どうしようもない馬鹿だった。よく考えもせずに、田中にあの少女の様子を見てきて
ほしいと頼んでしまった。ぼくがあんなことを頼まなければ、田中は死なずにすんだのに。
「小林さん、こっちへ来てください」
 ぼくは、小林夫妻を呼び寄せた。小林さんは、ちゃんとお婆さんを背負っている。
「ちょっと、あの翼の陰で相談しましょう」
 ようやく、ぼくは真理を離し、今日子さんを頼むと言った。
「何て言うか、思った以上に危険ですし、想像していたよりも凄惨な現場ですよね」
「そうだな。私も、ここまで酷い状況だとは思わなかった」
「やっぱり、三つのグループに分かれるのはやめた方がいいかもしれませんね。全員で
固まって行動した方がいいですよ」
「うん……。とりあえず、その男と、このお婆さんをシュプールに連れて行く係の人が必要だな。
残りの人は、捜索を続けなければならないが」
「この人たちを運ぶのは、女の子たちに頼みましょう。体力のない女の子に、生存者を運べと
言うのは酷な気もしますが、幸い、二人とも小柄ですから、女性でも二人で一人を運ぶことは
できると思うんです」
「そうだな。とりあえず、みんなと合流しよう」
 ここから近いのは、美樹本さん、香山さん、春子さん、夏美さんの四人の、Bチームだ。
 ぼくたちは、勘を頼りに進んだ。ぼくが中年男性を背負い、小林さんが老婆を背負っていた。
 真理と今日子さんは、ぼくたちが歩く道を作る係だ。
 進むに連れて、何やら騒がしい声が聞こえてきた。男性二人が言い争っているらしい。
「何かしら?」
 真理が訊いた。
「とにかく、行ってみよう」
294雪隠し伝説編165:2007/05/29(火) 12:06:46 ID:ah0t1XXs
 機体の残骸の陰で争っていたのは、香山さんと美樹本さんだった。
「この人でなし!」
 香山さんが、そんなことを叫んでいる。
 美樹本さんは、雪の上に膝をついて、唇の端の血を拭っていた。
「俺は……俺は、自分の仕事をしていただけだ」
 美樹本さんは、そう言った。弁解しているような口調だ。
「仕事? 仕事やて? 死体の写真を撮るんがお前の仕事なんか! 仕事っちゅうんはな、
もっと尊いもんやねん。お前がやってることは最低や!」
 香山さんが挑発した。美樹本さんの表情が変わった。
 美樹本さんは、軽快なフットワークで香山さんの懐に入った。
 香山さんは、左の頬を殴られた。香山さんの身体が吹っ飛び、雪の上に転がった。
「もうやめて! セイちゃんも、ミッキーも、もうやめてや!」
 夏美さんが、そう叫ぶ。春子さんは、どうしていいのか分からない様子で、立ち竦んでいる。
「おい! きみたち、やめないか」
 小林さんが声をかけた。小林さんは、お婆さんを今日子さんと真理に預けると、香山さんと
美樹本さんの間に割って入った。
「何があったんですか?」
 真理が、夏美さんと春子さんに話しかけた。
「それが……美樹本さんが、事故現場の写真とか死体の写真ばかり撮っているものだから、
主人が怒り出してしまって……」
 春子さんが、申し訳なさそうに言った。
「美樹本さん、どうしてそんなことをしたんですか?」
 ぼくには、美樹本さんの気持ちが理解できなかった。
「ふん。きみたちには、この事故現場が宝の山だということが分からないんだろうな」
 美樹本さんは、まるで吐き捨てるような乱暴な口調で言った。
「宝の山?」
 ぼくは、聞き間違えたのかと思った。
295雪隠し伝説編165:2007/05/29(火) 12:31:41 ID:ah0t1XXs
「そうだ。さっきから俺が撮っていた写真が、一枚いくらで売れるのか、きみたちには
想像もつかないだろう」
 美樹本さんが口にした金額は、確かに、ぼくの想像を超える値段だった。
「つまり、お金のために写真を撮っていたんですか? カメラマンとして?」
 真理が、信じられないという表情で言った。
「そうだ。おいおい、聖人君子ぶるんじゃない。きみたちだって、もしも自分がこの事件に
かかわらずに、どこか遠い場所……そうだな、例えば北海道とか沖縄あたりで起こった
飛行機事故の写真が、週刊誌や新聞に載っていたら、それを買って見るだろう? テレビの
特番を見てみろ。事故が起こったときに撮影したフィルムを、何百回も何千回も使い回して
いるじゃないか。皆、そういうのが好きなんだよ。他人が苦しんでいたり、傷ついていたり
するシーンを見るのが好きなんだ。だから、俺は皆の望みを叶えようとしただけだ」
 美樹本さんは、完全に開き直っていた。
「この……この人でなし! お前には、人間の心っちゅうもんがないんか!」
 香山さんが、まだ喚き散らしている。
 ぼくは、溜め息をついた。
「そんなことしている場合じゃないってことぐらい、分かっているでしょう。生存者が
いたんです。この人たちを、シュプールに運ばないといけません。二人とも軽装ですから、
このままだと凍死してしまいます。それに、一刻も早く他の生存者を探さなければ」
 ぼくはそう言った。
 春子さんが、シュプールから持ってきた毛布をお婆さんの身体にかけてあげた。
 美樹本さんが、どこかから取り出したカメラで、その様子を撮り始めた。
「お前は――。いい加減にせい!」
 香山さんが怒鳴った。
 その脇を、真理がすり抜けた。真理は、乱暴に雪の上を歩きながら、美樹本さんに
近付いた。美樹本さんは、毛布をかけられたお婆さんの写真を撮るのに夢中になっていて、
真理が近付くのに気付かなかったらしい。真理はカメラを取り上げた。
「おい、何するんだ、返せ!」
 美樹本さんが言ったが、真理はカメラの蓋を開け、フィルムを取り出した。
 真理は、フィルムを引っ張って伸ばすと、雪の上に棄てた。そして、こう言った。
「少しは、目が覚めましたか?」
296雪隠し伝説編165:2007/05/29(火) 12:53:06 ID:ah0t1XXs
「このアマ……」
 美樹本さんが、真理に掴みかかろうとする。
 そこへ、夏美さんが割って入り、美樹本さんの頬を叩いた。
「ええ加減にせいっちゅうとるやろ!」
 女性二人に邪魔されたことで、美樹本さんもさすがに大人げないと思ったのだろうか。
香山さんと夏美さんと真理を、それぞれ憎々しげに睨むと、バッグを手にしてどこかへ
行ってしまった。おそらく、あのバッグの中には、救助用の道具ではなく、カメラの機材が
入っているのだろう。美樹本さんがあんな人だとは知らなかった。
「まったく、困ったやっちゃな」
 香山さんが、憤懣やるかたない様子で言った。
「ああもう、とにかく、残りの四人と合流しましょう」
 ぼくは、中年男性を背負い続けていることに疲労を覚え始めていた。
 そこへ、Cチームの俊夫さん、みどりさん、啓子ちゃん、可奈子ちゃんがやって来た。
 俊夫さんは、誰か知らない男の人を背負っている。
「生存者がいたんですか?」
 真理が訊いた。
「うん。足に怪我をしていて、危険な状態だけどね」
 俊夫さんが答えた。
「さっき小林さんと相談したんですけど、女性の方は、二人一組で生存者をシュプールまで
運んでくれませんか? そして、そのまま看病してほしいんですけど」
 ぼくがそう提案すると、可奈子ちゃんや啓子ちゃんは、目に見えて嬉しそうになった。
 シュプールまでの道は、ここに来るまでに踏み固めておいたので、女性だけでも運ぶことが
できるだろう。
「え? いいんですか?」
 可奈子ちゃんはそう訊いたが、返事を待たずに、毛布をかけられているお婆さんのところへ
行った。彼女は、ここに来る途中で泣いていたくらいだから、あまりにも悲惨な現場の様子に、
本当に嫌気がさしていたのだろう。
「啓子、早く」
 可奈子ちゃんは啓子ちゃんを呼び、それぞれ手と足に分かれて、お婆さんを持ち上げた。
 生存者三人の中で一番軽そうなお婆さんを真っ先に選ぶとは、可奈子ちゃんは要領がいい。
297雪隠し伝説編165:2007/05/29(火) 13:09:53 ID:ah0t1XXs
「でも、二人一組だと、一人余っちゃうわね」
 みどりさんがそう言った。
「じゃあ、私が残って、捜索を続けますよ」
 真理がそう言って、みどりさんの耳元で「今日子さんが参ってるみたいだから、気をつけて
ください」と囁いたのが聞こえた。
 みどりさんは、初めて今日子さんが蒼ざめているのに気付いたらしい。
「今日子さん、どうしたんですか?」
 みどりさんは、恐る恐る今日子さんに話しかける。
「目の……目の前で、た、田中さんが」
 それだけ言うと、今日子さんは絶句してしまった。
「田中さんが、どうしたんですか? どこにいるんですか?」
「田中さんは、プロペラに巻き込まれて死んだ。今日子は、その現場を目撃してしまったんだよ」
 小林さんが答えると、みどりさんも俊夫さんも驚いた様子だった。
「死んだんですか? 田中さんが?」
 みどりさんが訊いた。この事故現場で、何十体もの死体を見たはずだが、多少なりとも
知っていて、さっきまで自分と同じ空間にいた人が亡くなるというのは、やはりショックだろう。
 ぼくは、ついでに美樹本さんに会っても相手をしないようにと忠告して、今日子さんと
みどりさんが、それまで俊夫さんが背負っていた男の人を運んでいくのを見送った。
「じゃあ……この人たちが落ち着いたら、うちもまた捜索を手伝いに来るでな」
 夏美さんはそう言って、春子さんとともに、ぼくが背負っていた中年男性を引き受けてくれた。
「それと、冬美ちゃんの世話も忘れないでね」
 ぼくは、二人に頼んだ。ようやく、文字通り肩の荷が下り、ぼくは少し気分が楽になった。
 残っているのは、ぼく、真理、小林さん、俊夫さん、香山さんの五人だけだった。

 ぼくは言った。

A「まず、機体の胴体の中に入って、生存者を探しましょう」
B「まず、機体の周囲を一周して、生存者を探しましょう」
C「真理はここで待っていてくれ」
D「美樹本さんの様子がおかしかったのが気になります」
298名無しのオプ:2007/05/29(火) 15:33:03 ID:Bo7ZN+w1
>>297
299生き埋め編165:2007/05/29(火) 18:13:34 ID:ah0t1XXs
>>289
D「小林さん。田中さんがピザを注文したのは六時少し前だと言いましたが、ピザを
持って行ったのは何時だったんですか?」
 ぼくは、そう訊いた。
「え? 何時だったかな。そんなこと、いちいち覚えていないよ」
 小林さんは、困ったような顔をした。
「じゃあ、ピザを持っていったのは、ぼくと真理が戻る前でしたか? それとも、後でしたか?」
「えーと、田中さんにピザを注文されたのが、六時少し前だった。それで、冷凍のピザを
冷凍庫から取り出して、オーブンで焼き始めた。その直後、透くんと真理ちゃんが到着した。
……うん、その後だな。田中さんにピザを持っていったのは」
「なるほど。そうでしたか」
 ぼくは、あのときのことを思い出した。小林さんは、ぼくたちを出迎えたとき、冬美ちゃんを
見て、自分の隠し子の亜季なのではないかと言い出した。その後、気まずくなり、小林さんは
台所へ戻っていった。そして、ぼくと真理は地下室で粉ミルクを探し、談話室のポットのお湯で
ミルクを作って、冬美ちゃんに飲ませた。ぼくと真理が談話室に戻ってから、雪崩が起きる
までの間、小林さんは一度も談話室に現れなかった。
 つまり、小林さんがぼくと真理に見られることなく田中さんの部屋へ行き戻ってくるチャンスは、
一度しかない。ぼくと真理が、地下室へ行っている間だ。
「おい、透くん、そんなことに、何の意味があるんだ?」
「いえ。ただ、タイムテーブルを作ってみようと思っただけです。誰が、何時に何をしていたのか、
早いうちに調べた方がいいでしょう」
「それは、このシュプールの中に、田中を殺した犯人がいるという意味か?」
 小林さんは、不愉快そうな顔をした。
「いえ。もちろん、外部犯の可能性もありますよ。でも、その前に、皆の行動を把握して
おきたいんです」
 それは、はっきりと、シュプールの中にいる人を疑っていることを意味していた。
 ぼくにも、そのくらいのことは分かっていた。だが、その疑いは、先ほど俊夫さんが、
田中が雪崩を起こした犯人なのではないかと疑ったのと、同じ程度のものだった。
「とにかく、皆に田中が殺されていたことを知らせないといけないだろう」
 俊夫さんが言い、ぼくたち四人は階段を下りた。
300生き埋め編165:2007/05/29(火) 18:37:58 ID:ah0t1XXs
 だが、途中で可奈子ちゃんの服を持ってくるのを忘れていたことに気付き、一旦引き返した。
 再び階段を下り、談話室の中の、地下室の前の狭い空間に戻った。香山さんが、玄関への
道を作ろうと努力していたことは認めるが、あまり作業が進んでいるとは言い難かった。
 先ほど、可奈子ちゃんを救出したときに作った穴を利用しているのだから、もう少し作業が
捗っていてもいいのにと思う。だが、従業員用の部屋への廊下が除雪されているのを見て、
どうやらこちらを優先して除雪したのだと気付いた。
「啓子ちゃんの遺体はどうしたんですか?」
 ぼくは香山さんに訊いた。
「ああ、床に寝かせとくんは忍びないっちゅうて、今日子さんが持ってきた予備の布団に
くるんで、従業員用の休憩室の畳の上に寝かせたんや。それにしても、除雪っちゅうんは
思ったよりも大変やな。ええダイエットになるわ」
「俺が代わりますよ」
 俊夫さんはそう言った。
「そうか。おおきに」
 香山さんは、俊夫さんにシャベルを渡した。
「真理! 聞こえるか?」
 ぼくは叫んだ。すぐに、返事が返ってくる。
「聞こえるわよ!」
「寒くないか? 冬美ちゃんはどうしてる?」
「大丈夫、今のところそんなに気温も下がってないし、冬美ちゃんも寝ているわ!」
 その答えを聞いて、ぼくは安心した。
 ぼくは、食堂に行った。そこには、みどりさんしかいなかった。
「あれ? 可奈子ちゃんや今日子さんたちは?」
「ああ、従業員用の部屋への廊下の除雪が終わって開通したから、可奈子ちゃんをお風呂に
入れているの。可奈子ちゃんは、まだ目を覚まさないわ」
「じゃあ、これ、可奈子ちゃんの服の入っている旅行鞄をそのまま持ってきたんですけど、
みどりさんが届けてくれますか」
「いいわよ」
 みどりさんが食堂にいてくれて、よかった。可奈子ちゃんが入浴しているところに服を
届けに行くのは、気まずかったからだ。
301生き埋め編165:2007/05/29(火) 18:59:05 ID:ah0t1XXs
 その後、ぼくは、真理がいる玄関への道が開通するまでの間に、可奈子ちゃんと真理を
除く全員に質問し、フロントのメモ帳とペンで簡単なタイムテーブルを作成した。ただし、
これは、全員が正直に話していると仮定しての話である。生き残っている者の中に犯人が
いた場合、当然嘘をついているからだ。
 雪崩が発生した時間を特定するのには、雪崩が起きる直前にぼくが表示した2ちゃんねるの
ページが役に立った。ぼくはあのとき、2ちゃんねる検索で「かまいたち」について検索を
した。検索結果のリンクの下には、そのリンクが最後に更新された時刻が表示されている。
どちらかと言えば2ちゃんねるが賑わっている時間帯だったので、そのリンクの更新時刻は、
雪崩発生時刻に、ほぼ一致することになる。ちなみに、ネットは接続できなくなっていた。


四時半頃    透、真理がスキー場で冬美を発見し、保護する。
五時半過ぎ   キッチンで、小林夫妻、俊夫、みどりが夕食の準備を始める。
        田中がシュプールに到着。俊夫が出迎え、キッチンに戻る。
六時少し前  小林が、田中から内線でルームサービスを頼まれる。
六時頃     透、真理がシュプールに到着。小林が出迎え、キッチンに戻る。
六時過ぎ    透、真理、地下室で粉ミルクと哺乳瓶を探す。
        ↑同時刻、小林が田中の部屋へ行き、キッチンに戻る。
        透、真理、談話室に戻る。
六時半頃    香山夫妻、夏美が二階から下りてくる。
        香山、食堂へ行く。
六時半過ぎ  美樹本、シュプールに到着。
        可奈子、啓子が不審な手紙を発見し、二階から下りてくる。
七時過ぎ    透、手紙を読み、2ちゃんねるに接続。
        雪崩が発生。
        美樹本、二階に避難する。
        夏美、春子、食堂へ避難する。
        透、真理、玄関へ避難する。
        啓子、可奈子、生き埋めになる。
        可奈子を救出し、真理と冬美と田中を除く全員が合流。
八時過ぎ    透、小林、俊夫、美樹本、バラバラ死体を発見。
302生き埋め編165:2007/05/29(火) 19:38:57 ID:ah0t1XXs
 もちろん、これは、あくまでも「簡単な」タイムテーブルである。正直に言うと、
何しろぼくが作成したものだから、信憑性は薄いかもしれない。
 生き残っている人間の中に犯人がいるのならば、その人は嘘をついているはずだし、
啓子ちゃんと可奈子ちゃん、田中の行動は、よく分からない。
 だが、それでも、ある程度、生き残っている人間の行動を把握することはできる
はずだ。可奈子ちゃんが目を覚ましたら、彼女からも話を聞いてみるつもりだ。

 次に、簡単に補足する。
 ぼくと真理は、スキー場から雪崩が発生する時刻まで、ずっと一緒にいた。これは、
ぼく自身がよく知っているので、問題ない。
 俊夫さん、みどりさん、今日子さんの三人は、ほとんど行動を共にしていて、特に、
ルームサービスの内線電話があってからは、ずっと一緒にいたことになる。ただし、
俊夫さんは、田中がシュプールに戻ったときに従業員を呼ぶ声がしたので、出迎えたと
主張している。その声は、小林さん、みどりさん、今日子さんも聞いていたと証言した。
田中が従業員を呼んだのは、車を駐車した位置が正しかったのかどうかを聞くためだった
らしい。俊夫さんは問題ありませんと答え、キッチンに戻ったと主張している。
 小林さんが六時少し前に出たという内線電話が鳴ったのは、今日子さん、みどりさん、
俊夫さんも聞いていたと言った。このペンションの内線電話は、客室にある受話器を
取り上げると、自動的にキッチンかフロントのベルが鳴るというタイプである。
客室から客室に電話することはできないし、どの部屋からの電話なのかも分からない。
小林さんは田中の部屋にピザを届けたが、田中は内線で部屋のドアの前に置いて
おいてくれと頼んでいたらしい。小林さんはその通りにしたと言った。その後、キッチンに
戻ってからは、今日子さん、俊夫さん、みどりさんとずっと一緒にいたらしい。
 香山夫妻は、ぼくと真理がいる談話室に来るまでは、ずっと一緒にいたらしい。
夏美さんは、香山夫妻の部屋と、『新OL三人組』で借りている部屋を行き来していた
と主張した。夏美さんの話によると、啓子ちゃんや可奈子ちゃんも、昼過ぎにスキー
から戻ってからは、ずっと二階にいたらしい。
303生き埋め編165:2007/05/29(火) 20:04:30 ID:ah0t1XXs
 美樹本さんがシュプールに戻るところは、談話室にいたぼくも目撃している。
 美樹本さんは、写真撮影を兼ねたスキーから戻ってきたのだと言う。何と、美樹本さんは
ぼくと真理がスキー場でアナウンスしてもらった、冬美ちゃんの保護者はいないかという
放送を、スキー場の中で聞いていたのだそうだ。それで、ぼくと真理が、談話室で
冬美ちゃんにミルクをあげているのを見て、「あの赤ん坊を連れてきたのは、きみたち
なんだろう?」と、ぼくに確認したというわけだった。

 このタイムテーブルを見て、ぼくは思った。

(下記の選択肢は、五十音順に並べてあります)

Aこの時点では、まだ田中さんを殺した犯人を特定することはできない。
B田中さんを殺した犯人は、外部犯だ。
C田中さんを殺した犯人は、可奈子ちゃんだ。
D田中さんを殺した犯人は、香山さんだ。
E田中さんを殺した犯人は、今日子さんだ。
F田中さんを殺した犯人は、啓子ちゃんだ。
G田中さんを殺した犯人は、小林さんだ。
H田中さんを殺した犯人は、ジェニーだ。
I田中さんを殺した犯人は、田中さんだ。
J田中さんを殺した犯人は、俊夫さんだ。
K田中さんを殺した犯人は、夏美さんだ。
L田中さんを殺した犯人は、春子さんだ。
M田中さんを殺した犯人は、複数犯だ。
N田中さんを殺した犯人は、冬美ちゃんだ。
O田中さんを殺した犯人は、ぼくだ。
P田中さんを殺した犯人は、真理だ。
Q田中さんを殺した犯人は、美樹本さんだ。
R田中さんを殺した犯人は、みどりさんだ。


304名無しのオプ:2007/05/29(火) 20:36:37 ID:YRRQnpll
303の選択肢、選びたくない・・・・他の人に譲ります
305名無しのオプ:2007/05/29(火) 21:00:58 ID:A2MhIKCE
ではIでお願いします
306雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 07:06:46 ID:qdBDtQiF
>>297
A「まず、機体の胴体の中に入って、生存者を探しましょう」
 ぼくはそう言った。
「せやな。胴体の中の方が、外に出とる人よりも生きとる確率高いかもしれへんしな」
 香山さんが頷いた。
 ぼくたちは、真っ二つに折れた機体のうち、前部の方に向かった。後部の方では、機体の
中で火の手が上がっているので、機体の中に入ったら、煙に巻かれて窒息死してしまうだろう。
 山の天気は気まぐれで、変わりやすい。
 ぼくたちが歩き始めたとき、ちらほらと雪が降り始めた。
「また雪だわ。彼女たち、大丈夫かしら」
 真理が不安そうに言った。
「彼女たちがシュプールに着くまでくらいなら、本降りにならずにすむと思うんだけど……。
逆に考えれば、先に帰して良かったということにもなるし」
「そう言えばそうね。ところで、誰か、傘を持ってないの?」
「毛布ならあるけど、傘は忘れたな。盲点だった」
 ぼくはそう言って、真理に毛布をかけてあげた。
「ありがとう」
 真理は、にっこりと笑った。
 徐々に、雪の量が増えてきた。
 寒くなるのも困るが、視界が悪くなるのも問題だ。
「これは、俺たちも早く捜索を切り上げないと、本気で凍えちまうぞ」
 先頭を歩く俊夫さんが言った。
「そうだね。思ったよりも生存者は少なかったし、残っている捜索場所は、機体の中だけ
だからな。あそこが終わったら、もうシュプールに帰った方がいいかもしれない」
 小林さんが言った。
「でも、もしかしたら、瓦礫の下敷きになっている犠牲者がいるかもしれないわ」
 真理が言った。
307雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 07:17:28 ID:qdBDtQiF
「ぼくたちは、消防隊員でもなければ、自衛隊員でもないんだよ。何の訓練も受けていなくて、
何一つ特別な装備も身に着けていない。素人が事故現場に深入りするのは、危険すぎるよ。
それに、墜落事故があってから、随分と時間が経っちゃったからね。瓦礫の下敷きってことは、
生き埋めになってるってことだし、たとえ生きていたとしても凍死していると思うよ。仕方が
ないんだ。仕方がないんだよ」
 ぼくは、真理に言い聞かせた。真理は、先ほど美樹本さんのカメラのフィルムを使うことが
できなくしたことからも分かるとおり、正義感が強い。真理に無理をさせないのは、ぼくの
役目だと思った。
 真理が、失望したような表情でぼくを見た。
 やめろ。
 やめろ!
 そんな目でぼくを見るのはやめてくれ! そんな、ぼくが冷酷な人間であるかのような
目つきでぼくを見るのはやめろ。ぼくは美樹本さんとは違う。ちゃんと、善意のボランティアで、
生存者を探しているんだ。ぼくは冷たい人間なんかじゃない。
 ふと、今日、スキー場で、「あはっ、透ったら、雪だるまみたい」と真理に言われたときの
ことを思い出した。あのとき、ぼくは、「どうせぼくは、身も心も冷たい人間ですよ」と答えた。
 真理は「そういう意味で言ったんじゃないってば」と否定してくれた。
 だが、それは真理の本心だったのだろうか?
 もしかすると、ぼくは本当に冷たい人間なのではないだろうか?
 ぼくは、本当に、身も心も冷たい人間なのかもしれない。


 ぼくが小学校三年生のとき、学校で宿題が出た。自分の名前について、作文を書いて
くるようにという内容の宿題だ。ぼくは、学校から帰ると、母に訊いた。
『ねえ、お母さん。どうして、ぼくの名前は「透」なの?』
 洗濯物を干していた母は、手を止めると、ぼくの顔を見た。
『あなたは――。そう、とても透明な子供だったから』
『透明?』
『そう。あなたは、とても透き通るような子供だったのよ』
 母は、そう言って、ぼくの頭を撫でた。
308雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 07:34:51 ID:qdBDtQiF
 とても透明な子供だった。
 とても透き通るような子供だった。
 だった。
 なぜ、母は過去形にしたのだろう。それに、よく考えるとおかしかった。子供に名付けるときは、
普通、出生届を役所に提出する期限の二週間以内に名付けるものだ。その二週間の間に、
『透き通るような子供』だと親に感じさせたものは、いったい何だったのだろう?
 ぼくがそう疑問に思ったのは、中学生になったときだった。だが、その頃には、母はもう
亡くなっていた。



「気をつけろよ」
 と、俊夫さんが注意する声で、ぼくは我に返った。
「はい。気をつけます」
 ぼくは素直にそう答えて、飛行機の胴体の中に入った。暗い。非常に暗い。外にいたときは、
炎の光を雪が反射していて明るかったので、懐中電灯や常備灯がなくても困らなかった。
 だが、この機体の中では、慎重に足元を照らしながら歩かなければ、命の危険に曝される
ことになるだろう。プロペラに巻き込まれ、倒れていた少女と共にミンチになってしまった
田中さんのことを思い出した。ここにも、何か、思いもよらぬ危険が潜んでいるかもしれない。
「誰かいませんか!」
 真理が、大声で言った。
「誰か、生きている人はいませんか!」
 ぼくも、声を振り絞った。
 機体は傾いていた。
 その傾斜角は、ぼくが今日スキーをした斜面に比べれば、非常に緩やかなものだった。
 実際、足を動かして登るのには、さほど苦労しない。だが、周囲の壁が平行ではないので、
まるで三半規管を損傷してしまったかのように平衡感覚を失っていた。
 通路に隣接する座席の背もたれに掴まりながら、必死に登って行く。
309雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 07:51:04 ID:qdBDtQiF
「誰かいませんか!」
 何度叫んでも、返事はない。
 座席に誰かが座っているときは、生死を確かめるのが基本だと分かってはいたが、そんな
必要もない人が大半だった。首を失ったフライトアテンダント。右半身のない初老の男。
首を奇妙な角度に曲げてお辞儀をしている形で固まっている、小学生くらいの男の子。
「ひどすぎる……」
 真理の口から、溜め息のような言葉が漏れた。
「これは、本当に生存者が残っているのか怪しいな」
 俊夫さんが、首を振りながら言った。
「この年になると、葬式で死体は見慣れとるもんやが、さすがに、わしも気分が悪くなってきたわ」
 いつも虚勢を張っている香山さんですら、弱音を吐いた。
「外に三人の生存者がいただけでも、奇跡だったのかもしれないな」
 小林さんが、何かを諦めたような口調で言った。
 やはり、ぼくは、冷たい人間なのだろうか。真理や小林さんや俊夫さんや香山さんのような
反応が、正常な人間の反応なのだろう。彼らのようには感じないぼくは、何か根本的な部分で
大切なものが欠落しているのかもしれない。
 プロペラに吸い込まれた田中さんを見て、悲鳴を上げた今日子さん。彼女は、ずっと蒼ざめた
表情をしていて、満足に話すこともできない状態になっていた。
 一方、今日子さんと同じように田中さんの最期を見届けたぼくは、今もこうして、捜索に
加わっている。
 ぼくと今日子さん。どちらが、正常な人間なのだろう。ああ、どうしてぼくは、今日子さんの
ことが気になるのだろう。
 少し考えて、ようやく分かった。今日子さんは、似ているのだ。今日子さんは、ぼくが中学校に
上がる前に亡くなった母に、雰囲気が似ているのだ。外見は似ていない。ただ、その性格や
挙動が、ぼくの亡き母の面影を喚起させるのである。
「でも、一応、機首までは行ってみましょう」
 ぼくだけ何も話さないのは不自然なので、何か適当なことを言ってみた。
 こんなときですら、ぼくは、自分の体裁ばかり気にしていた。
310雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 08:05:47 ID:qdBDtQiF
「待て」
 俊夫さんが振り返り、唇に指を当てた。全世界共通の「静かにしろ」というジェスチャーだ。
 ぼくは、足を止め、耳をすませた。
 ……聞こえる。
 確かに、何かが聞こえる。
 何だろう? とても聞き覚えのあるものだ。つい最近も、何度も聞いたような気がする。
 真理が、ハッとした様子で顔を上げた。
「赤ちゃんの声だわ!」
 そんな馬鹿な、とぼくは思った。周囲の乗客は、皆、ひどい有様なのだ。このような絶望的な
状況で、赤ちゃんだけが生き残っているはずがない。
 だが、小林さんもこちらを見た。
「やっぱり、赤ちゃんの声だと思うか?」
 ぼくは混乱した。
 聞こえない。
 ぼくには、そんな声は聞こえない。
 赤ちゃんの泣き声なんて聞こえるはずがない。
 今、この状況、この暗闇の中で、赤ちゃんの声が聞こえてもいいはずがないではないか。
 真理も小林さんも、どうかしている。
「こっちから聞こえるみたいやな」
 香山さんが指差す。
「そうですね。向こう側の通路に渡りましょう」
 俊夫さんが、座席と座席の間を通って、反対側の通路に向かっていく。
 嘘だろう? どうしてだ? 赤ちゃんの泣き声が聞こえないのは、ぼくだけなのだろうか?
「ねえ、皆、何を言っているんですか?」
 ぼくは、恐る恐る訊ねた。
「何って……何のこと?」
 真理が、まるで禅問答のように聞き返した。
「赤ん坊の声なんて、ぼくには聞こえないんだけど」
「透には、どう聞こえるの?」
 真理は、奇妙に乾いた声音で言った。
「ぼくには、ただの風の音にしか聞こえない」
311雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 08:24:20 ID:qdBDtQiF
「嘘だろう?」
 そう言ったのは、俊夫さんだった。
「嘘? 嘘って何ですか? ぼくは、嘘なんてついていません。ぼくには、風の音しか聞こえ
ません。嘘をついているのは、あなたたちの方でしょう? 皆でグルになって、ぼくを担ごうと
しているんでしょう?」
「透、落ち着いて」
 真理が、ぼくの肩に手を乗せる。
「だけど、真理だっておかしいと思わないか? これだけの人が亡くなっている大規模な事故
なのに、何で真っ先に死んでしまう赤ちゃんが生き残っているんだよ」
「たくさんの人が亡くなった大きな事故でも、赤ちゃんが生き残った例はいくらでもあるわ。
透だって、それくらい知っているでしょう?」
「透くんは、疲れているんだよ。ほら、田中さんが、プロペラに飲み込まれたところを見た
だろう? それを見て悲鳴を上げた今日子なんか、凄い顔色をしていた。透くんは頑張り屋さん
だから、捜索を続けているけれど、やっぱり疲れが出始めているんだよ」
 小林さんが、優しい口調で言った。
「頑張り屋さん? そんな、小学生に向かって言うような言葉を使わないでください」
「な、なあ。とりあえず、他の四人には聞こえるんやし、行くだけでも行ってみんか? 赤ん坊が
えんかったらえんかったで構わへんのやし」
 香山さんが、とりなすように言った。
「……ええ。いいですよ」
 ぼくは、渋々頷いた。
 傾いている座席と座席の間を通るのは大変だったが、ぼくたちは向こう側の通路に渡った。
 そして、耳をすませながら登って行く。
「ここだわ!」
 真理が、座席の上の荷物を入れる場所を指差した。
 俊夫さんが、慎重に開ける。そこには、間違いなく、赤ちゃんがいた。俊夫さんが言う。
「おそらく、墜落の最中に荷物入れが開いて、そこに、座席から浮き上がった赤ちゃんが
入り込んだんだろうな。奇跡だ」
 ぼくは、眩暈を感じた。確かに、今は、赤ちゃんの泣き声に聞こえる。
 それなのに、どうして、先ほどは風の音だと聞こえたのだろう
 小林さんの言うように、ぼくは、本当に疲れているのだろうか?
312雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 09:04:45 ID:qdBDtQiF
 赤ちゃんを抱いた俊夫さんには、先に下りて待っていてもらうことになった。ぼくと真理と
小林さんと香山さんは操縦席まで行ってみたが、あの赤ちゃん以外に生存者はいなかった。
 結局、この飛行機事故で助かったのは、ぼくの入っていたAチームが発見した中年男性、老婆、
そして、俊夫さんの入っていたCチームが発見した三十過ぎの男、そして、ぼくたちが見つけた
赤ちゃんの、四人だけだということになった。
 機体の外は、猛吹雪になっているだった。
 こういうのを、ホワイトアウトというのだろうか。
 一メートル先も見えない。
「これはヤバいぞ! 急いで戻らないと」
 先ほどぼくが真理に羽織らせた毛布を、今度は赤ちゃんのために使った。
「はぐれないように、このロープを身体に結び付けてくれ」
 俊夫さんは、そう言って、救助のために持ってきた洗濯用のロープをぼくたちの方に放り
投げた。ぼくたちは、言われた通りに結んでいく。ぼくは、中学生の頃にやった、ムカデ競争を
思い出してしまった。先頭から、俊夫さん、ぼく、真理、小林さん、香山さんという順になった。
 赤ちゃんを抱くのは、ぼくの役目になった。この中では、俊夫さんの次に体力があるからだ。
「行くぞ! 少し速めに歩くが、遅れないようについてきてくれ。さっき皆で作った道を見失って
しまったら、遭難してしまうからな」
 俊夫さんが、そう脅かした。
「大丈夫や。シュプールに着くまでくらいやったら、凍え死ぬこともあらへんやろ」
 香山さんがそう言って、生真面目になり過ぎている観のある俊夫さんをリラックスさせた。
 ぼくたちは、猛吹雪の中を歩き続けた。
 誰も、話さない。赤ちゃんも泣き止んでいる。風の唸り声だけがBGMだった。
 顔に当たる雪が痛い。ぼくが住んでいる東京でも雪が降ることはあるが、こんなにも吹雪が
体力を消耗するものだとは思わなかった。だが、先頭を歩く俊夫さんが雪道に慣れている
おかげで、安心して進むことができた。
 ようやく、シュプールに着いた。玄関を開け、中に入る。暖かい空気を吸って、生き返った
ような気がした。
 そして――ぼくたちは、そのときになって、初めて恐ろしいことに気がついた。

 最後尾を歩いていた香山さんが、いなくなっていたのだ。
313雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 09:30:39 ID:qdBDtQiF
「香山さんは……?」
 ぼくは、呆然として、小林さんの後ろにいるはずの香山さんを探そうとした。
 だが、そこには誰もいない。ぼくたち五人の身体を結び付けていたロープは、小林さんの
後ろでほどけていた。
「そんな――そんな馬鹿な。さっきまで、私の後ろにいたのに」
 小林さんが、狼狽しながらロープを手繰り寄せる。結び目すらなかった。
「はぐれちゃったってこと? そんなの、おかしいわ。だって、もしも香山さんが倒れたり
休んだりしていたとしても、ロープが引っ張られるから気付くはずよ。ロープがほどけちゃった
んだとしても、『ちょっと待って』と言えば、みんな香山さんがロープを結び直すまで待つわ」
 真理も、香山さんがいなくなったことに驚きを隠せない様子だった。
「勝手にほどけちゃったって、香山さんも気づかなかったことはないか?」
 小林さんが言った。
「そんなはずない。香山さんは、ベルトとか服にロープを結び付けていたんじゃない。身体に
ロープを結んでいたんだ。ロープがほどけて気づかないはずがない!」
 俊夫さんが早口に言った。ぼくも、それは覚えていた。香山さんは、中年太りが進んでいる
腹の上にロープを巻いていた。どうしてだ? なぜ、香山さんはいなくなってしまったのだろう?
 そこへ、パタパタとスリッパの音がして、夏美さんがやって来た。
「遅かったなあ。うちも手伝いに行くつもりやったんやけど、雪が降ってきたで、これは皆も
帰って来るやろうなあ思て、待っとったんや。それにしても、大変なことになってしもたわ。
さっき、警察から電話があってな。近くまでヘリコプターが来とったらしいんやけど、この
吹雪で危険やて言うて、引き返してもたんやて。おまけに、シュプールに来る途中の道に、
飛行機の大きな残骸が落ちていて、そのせいで車も来られへんらしいんやわ。明日の朝、
救助隊が来るまで、生存者をシュプールで預かっていてほしいって頼まれたんや。小林さん、
別にええよな?」
 小林さんは、しばらく、自分に話しかけられているのだと気づかなかったらしく、遅れて答えた。
「……ええ、もちろん、いいですよ」
 その後、夏美さんはようやく言った。
「ところで、セイちゃんはどないしたん?」
314雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 10:20:03 ID:qdBDtQiF
「香山さんは、その、いなくなってしまったんです」
 誰も説明しようとしないので、仕方なくぼくが答えた。
「いなくなった?」
 ぼくは、夏美さんに詳しい事情を説明した。
「そんな大事なこと、何でもっと早く言わんかったんや!」
 それは夏美さんが話すタイミングを与えてくれなかったからなのだが、もちろん、
そんなことは口が裂けても言えない。
 夏美さんは、談話室の方に走って行き、すぐに戻ってきた。コートを着て、毛布を
抱えている。そして、夏美さんは、靴を履き始めた。夏美さん以外に、赤ちゃんも含めて
五人も玄関にいるので、非常に狭い。
「夏美さん、何してるんですか」
 真理が訊いた。
「何って、見れば分かるやろ。セイちゃんを探しに行くんや」
「駄目ですよ。外は猛吹雪です。危険すぎます」
 小林さんが止めた。
「ほんなら、あんたらがセイちゃんを探しに行ってくれるんか?」
 そう訊かれて、ぼくも真理も小林さんも俊夫さんも、口を噤んだ。
 確かに、客観的に見れば、香山さんが蒸発したのは、ぼくたちの怠慢が原因のように見える
だろう。だが、そうではないのだ。ぼくたちには、何の過失もない。香山さんがいなくなって
しまうだなんて、誰にも想像できなかった。
 夏美さんが靴を履き終わった。小林さんの持っていた大型の懐中電灯を奪い取る。
「夏美さん、待ってください」
 ぼくはそう言って、外に飛び出そうとした夏美さんの腕を掴んだ。
「離せ!」
「いえ、離しません。代わりに、話し合いましょう」
 ぼくは、努めて穏やかに言ったつもりだったが、夏美さんは分かってくれなかった。
 夏美さんは、懐中電灯で、ぼくの腕を殴りつけた。
「痛い!」
 ぼくは、反射的に夏美さんの手を離してしまった。
 次の瞬間、夏美さんは吹雪の中へ消えてしまった。
 ぼくも夏美さんを追って外に飛び出したが、既に彼女の姿はなかった。
315雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 10:48:44 ID:qdBDtQiF
 ぼく、真理、小林さん、俊夫さんの四人は、気落ちしながら談話室に行った。赤ちゃんは
真理が抱いている。
 三人の生存者の姿は見えないが、空き部屋のベッドに寝かせているのだろう。
「あなた、お帰りなさい。さっき、玄関の方が騒がしかったし、夏美ちゃんが凄い勢いで戻って
来たと思ったら飛び出していったんだけど、何かあったの?」
 今日子さんが、小林さんに言った。
 ああ、やっぱり、今日子さんはとても優しい。たとえ、流産のせいで子供を作ることが
できない身体になってしまったのだとしても、小林さんには今日子さんを幸せにする義務が
ある。それなのに、小林さんはバーのママと浮気し、亜季という隠し子を作っているのだ。
小林さんは、何て卑怯なのだろう。
 ぼくたち四人は、代わる代わる状況を説明した。
 赤ちゃんを発見したことを告げると、今日子さんは本当に嬉しそうな顔で赤ちゃんを抱いた。
その顔は、まるで聖母のように慈愛に満ちていた。
 やはり、今日子さんは、ぼくの母に似ている。外見は似ていないのだが、その仕草や表情が、
ぼくの母を思い出させるのだ。
 ところが、香山さんがいなくなり、夏美さんが香山さんを探しに行ったことを話すと、談話室の
中は騒然となった。
 啓子ちゃん、可奈子ちゃんは、仲良しである夏美さんのことを心配したし、みどりさんは
俊夫さんに「俊夫くんのせいじゃない」と言った。
 ぼくたちよりも先にシュプールに帰り、談話室の隅で一人お酒を飲んでいた美樹本さんですら、
その話には興味を覚えた様子だった。
 だが、ぼくは、激しい違和感を覚えた。
 何かがおかしい。
 どこか、この場面、このシーンはおかしい。
 何かが、決定的に欠けている。
 ぼくは、その違和感の正体に気づいた。
316雪隠し伝説編165:2007/05/30(水) 10:58:48 ID:qdBDtQiF
 春子さんだ。
 春子さんは、香山さんの後妻であり、夏美ちゃんの継母だ。それなのに、少しも心配している
様子を見せない。どうしてだ? どうして、彼女は、あんなにも平然としていられるのだろう。
もしかすると必死に動揺や不安を押し殺しているのかもしれないが、それにしても、この場合は
夏美さんのように取り乱す方が自然だと思えた。もちろん、本当に夏美さんのように香山さんを
探しに行かれては困るのだが。
 一方、美樹本さんも、心配しているという様子ではなく、面白がっているように見える。
お金儲けのために死体の写真を撮るような男だから、心配する様子を見せないのは別に不自然では
ないのだが、それでも、面白がっているというのは、理解できない。
 春子さんと美樹本さんの二人は、明らかに何かがおかしい。
 この二人は、何かが決定的に間違っている。

 ぼくは言った。

A「美樹本さん、かまいたち伝説って、いったい何なんですか?」
B「美樹本さん、死体の写真を撮った本当の理由は何なんですか?」
C「春子さん、どうしてそんなに平然としていられるんですか?」
D「春子さん、どうして香山さんと結婚したんですか?」
317名無しのオプ:2007/05/30(水) 12:36:16 ID:yfbtsBnN
Bでよろしく
318生き埋め編165:2007/05/30(水) 13:01:13 ID:qdBDtQiF
>>303
I田中さんを殺した犯人は、田中さんだ。


 午後九時。談話室から玄関に向かう道の除雪が、ようやく終わった。
真理は、冬美ちゃんを、近くにいた今日子さんに預けると、ぼくの胸に飛び込んできた。
「透……もう一度会えて、よかった」
 可哀相に。長い間玄関にいた真理の身体は、冷え切っていた。冬美ちゃんが凍えない
ように、冬美ちゃんをずっと抱き締めていたのだろう。
「ぼくも真理と会えてよかった。とりあえず、食堂で暖かいココアでも飲むといいよ」
 ぼくが言うと、真理は素直に頷いた。普段もこれくらい素直だといいのだが。
 真理が食堂に行くと、ぼくは、シュプールの中にいた全員に、食堂に集まってくださいと
言った。

 みんなが、ぼくに注目している。
「透、どうして皆を食堂に集めたの?」
 真理が訊いた。
「真相が分かったんだ。バラバラ殺人の犯人がね」
 全員がぎくりとした様子でこちらを見る。
「ほ、本当かね?」
 小林さんも驚いている。
「犯人って、まさか、私達の知っている人の中に犯人がいるって言うんじゃないでしょうね?」
 真理は恐る恐る訊ねた。
「残念だけど、そういうことになる」
「そんな……」

 ぼくは言った。
「犯人は、田中さんだ」
319生き埋め編165:2007/05/30(水) 13:25:56 ID:qdBDtQiF
(以下、ゲーム「かまいたちの夜」本編のネタバレを多少含みます。そんな人はいない
とは思いますが、ゲームをプレイしていない人は読まないでください)

>>318
 ぼくが言い切ると、しばらく居心地の悪い沈黙が支配した。
 その沈黙を破ったのは、真理だった。
「ねえ、透、何言ってるの? 犯人って、田中さんを殺した犯人のことでしょう?
その犯人が田中さんって、一体どういう意味なのよ」
「ぼくは田中さんを殺した犯人が分かったと言ったつもりはないよ。いいですか、ぼく達は
みんな勘違いしていたんです。二階にあるあの死体は、田中と名乗って宿泊していた
あの人ではないんです」
「被害者が田中さんでないのなら、一体どこから入ったというんだ?」
 小林さんが眉をひそめる。
「もちろん正面ドアからですよ」
「そんなはずはない! ドアが開けば奥でチャイムが鳴るようになっているから、たとえ
フロントにいなくても見逃すはずはないんだ。たとえ田中と名乗った人物が駐車場の件で
呼ばなくても、キッチンにいた誰かが対応しに行ったはずだ。現に、透くんと真理ちゃんが
帰って来たときも、私が出迎えに行っただろう? 美樹本さんのときは、きみたちが
談話室にいるから大丈夫だろうと思ったが」
「確かに見逃さないでしょう。一人で入ってきたのならね。でも、誰かと一緒なら話は
別です。被害者は、田中さんと一緒に入ってきたんですよ」
「一体何を言っているんだ? あの人は一人だったよ。間違いない」
 田中さんを出迎えた俊夫さんが、怒ったように断言した。
「スキーバッグの中を確かめましたか? 被害者は、その中にいたんですよ。すでに殺され、
バラバラにされた姿でね」
 女の子たちは全員一斉に息を呑み、吐き気さえこらえるように口を手で押さえた。
「じゃあ……じゃあ、死体をバラバラにしたのは……」
「そう、運びやすくするためだったんだ。真理、雪崩が発生したときのことを覚えているかい?」
320生き埋め編165:2007/05/30(水) 13:31:42 ID:qdBDtQiF
「ええ、もちろん」
「実は、俊夫さんの推理によると、あの雪崩は、人為的に起こされたものである可能性が
高いんだ」
「そうなの?」
 真理は、まだ知らなかったらしい。ぼくは、俊夫さんの説明を繰り返した。
「その方法で、時限爆弾を使えば、いつでも自由に雪崩を起こすことができます」
「ほな、何で雪崩なんか起こしたんや?」
「ぼくたちの注意を引くためです。あの雪崩で、ぼく達は一箇所に集まり、その結果、
田中さんだけがいないことに気づきました。犯人はわざと、ぼく達が死体を発見する
ように仕向けたんです」
「どうしてそんなことを?」
 真理が当然の疑問を発する。
「……実際の犯行時間を誤認させてアリバイを作るためだよ」
「なるほど。じゃあその間に犯人は、ここからずっと遠く離れたところに行って、
アリバイを作っておくことができるわけだ」
「そうですね。でもそれだとアリバイとしちゃ不完全でしょう。この天候で、きちんと
したアリバイが作れる場所まで行くのに一体どれくらいの時間がかかります? しかも、
ぼくたちが、雪崩が起きた時間をはっきりと記憶している必要がある」
「確かに、ひどく偶然を当てにした計画になるわね」
 真理が言った。
「犯人は、もっと周到な計画を立てていたと思う。この吹雪の中、立ち往生してしまう
危険を冒すより、ずっといい方法があります。服も、髪型も変えてこのペンションに
戻って来て、ぼく達と一緒に死体を発見する。ねえ、その方がいいと思いませんか、
美樹本さん」
 全員が一斉に、美樹本さんの方を見つめた。彼はぼくの視線を受け止めたまま微動だに
しない。ぼくは再び口を開いた。
「小林さんや俊夫さんの話によると、田中さんはずっとサングラスをしていたんですよね?
サングラスを外し、服を着替えて付け髭をつければもう、ぼく達にはそれが田中さんである
とは分からないはずです」

 すると、美樹本さんはこう言った。
「やれやれ。きみの推理には、大きな穴があるよ」
321生き埋め編165:2007/05/30(水) 13:44:54 ID:qdBDtQiF
「穴? どこに穴があるんですか?」
 ぼくには分からなかった。
 すると、美樹本さんは、ぼくが持っていたタイムテーブルを取り上げた。
「いいかい? きみの推理によると、俺が田中と名乗った人物に成りすましていた
場合は、俺がシュプールに着いてからは、ずっと完全なアリバイがないと、
このトリックを使う意味がなくなるということにならないかい?」
「そうですけど……」
 ぼくは、頷いた。美樹本さんは、紙を指差した。
「では、皆さん。このタイムテーブルを見てもらえますか? この部分です」


六時半過ぎ  美樹本、シュプールに到着。
        可奈子、啓子が不審な手紙を発見し、二階から下りてくる。
七時過ぎ   透、手紙を読み、2ちゃんねるに接続。
        雪崩が発生。
        美樹本、二階に避難する。
        夏美、春子、食堂へ避難する。
        透、真理、玄関へ避難する。
        啓子、可奈子、生き埋めになる。
        可奈子を救出し、真理と冬美と田中を除く全員が合流。
八時過ぎ   透、小林、俊夫、美樹本、バラバラ死体を発見。


「あっ! そういうことね!」
 真理が声を上げた。
「え? どういう意味だい?」
 ぼくは、真理に訊ねた。
「ほら、美樹本さんは、雪崩が起きたときに、二階に避難しているわ。そして、
バラバラ死体も、二階で発見された。ということは、雪崩が発生した後二階にいた
のは、美樹本さんと『田中さんと名乗った人物、もしくは田中さん本人』の、
二人っきりになってしまう。これじゃあ、アリバイが成立しないわ」
322生き埋め編165:2007/05/30(水) 14:14:14 ID:qdBDtQiF
 本当だ。これでは、先ほどのぼくの推理したトリックを使う意味がなくなってしまう。
 もしも、美樹本さんが犯人だとしたら、別に田中さんに成りすまさなくても、雪崩が起きた
後、二階で二人っきりになったときに田中さんを殺せばいいだけの話だからだ。
 しかし、ぼくは悔しかったので、無駄だとは思いつつも、反論してみた。
「でも、この方法を使えば、いくつかメリットがありますよ。それは、田中さんを予め
殺しておくことができる、ということです。田中一郎というのが偽名なのだとしたら、
あの死体の身許を特定することは難しくなります。ほら、よく言うでしょう。警察は、
まずは動機の線から犯人の目星をつけると。あの死体が身許不明ならば、動機の線から
犯人を特定することは非常に困難になります」
「なるほど、それはあるかもしれないな」
 小林さんが賛同してくれた。
「それはないんじゃないかな。だって、俺は田中さんを出迎えたときに近くで声を聞いて
いるけど、美樹本さんの声とは、似ても似つかなかったよ」
 俊夫さんが、さらに、ぼくの推理の否定材料を出す。
「最期に、この髭は、本物だよ。透くん、触ってみるかい?」
 美樹本さんが、余裕綽々たる面持ちで言った。
「いいんですか? 本当に、触りますよ?」
「ああ、構わないとも」
 ぼくは、美樹本さんのところへ行き、髭を触る。ごわごわだ。揉み上げと髭が繋がって
いるが、どこにも継ぎ目があるようには見えない。
 ぼくは、さらに髭を撫でた。これが付け髭なのだとしたら、口の周りに捲る場所がある
はずなのだが……。残念ながら、髭の生え際も、全く不自然な点はなかった。
 やっぱり、駄目なのだろうか。ぼくが落ち込んでいると、美樹本さんは、突然、ぼくの
頬にキスをした。
「な、何するんですか!」
「いや、あまりにも顔が近くにあったからね。ちょっとからかってみたくなって」
 美樹本さんは、にやにやと笑っている。
 完全に馬鹿にされている。ぼくは、恥ずかしさのあまり、顔が熱くなってきた。

 ところが、そのとき、香山さんが言った。
「しかし、こうして見ると、アリバイがないのは美樹本さんだけやな。たとえ透くんの
言っとったトリックが使われんかったとしても、怪しいことに変わりはないんとちゃうか?」
323生き埋め編165:2007/05/30(水) 14:45:01 ID:qdBDtQiF
「そう言えば、その通りですね。アリバイがないのは、美樹本さんだけです」
 ぼくの書いたタイムテーブルを覗き込んでいた、みどりさんが言った。
 美樹本さんは、みどりさんを睨んだ。みどりさんが首をすくめる。
「アリバイがない人間は、俺だけじゃない。俺以外にも、四人いるだろう」
 美樹本さんが、憮然とした面持ちで言った。
「四人も? 誰ですか?」
 ぼくは訊いた。
「まず、最初の一人は、小林さんだ」
 美樹本さんが言うと、小林さんは椅子から立ち上がった。
「な、何で私が。私は、ずっと今日子や久保田くんや篠崎くんとキッチンにいた」
「ずっとじゃないだろう? 内線の電話をもらって、田中の部屋に行ったんだろう?」
「そんなの、無理だ。ほら、このタイムテーブルを見れば分かるだろう。私が田中さんに
ルームサービスのピザを持って行ったのは、透くんと真理ちゃんが、冬美ちゃんのための
粉ミルクと哺乳瓶を探している間の僅かな時間だ。二階に行くには、必ず談話室の前の
階段を通らなければならない。それ以外の時間に出入りすれば、必ず二人の目に止まる。
なあ、透くん、真理ちゃん、きみたちが地下室に行っていたのは、どれくらいの時間
だった?」
「ええと、十分くらいだと思いましたけど……。真理は?」
「私も、透と同じく十分くらいだと思うわ」
 ぼくと真理が答えると、小林さんは勝ち誇ったように言った。
「ほら、見ろ。たった十分だ。食堂から談話室を通り、階段を上って田中さんの部屋に
行き、部屋のドアをノックして、『ルームサービスです』と言う。そして、階段を下りて、
談話室の前を通って食堂に行く。それだけの時間しかないだろう?」
「それはどうかな。走って往復するだけなら、二、三分だろう」
「すると、残りは差し引き七、八分か。そんな短時間で、田中さんを殺し、バラバラにすることが
できたと思うかね? これで、アリバイは成立だろう」
「まあ、確かに……」
 美樹本さんは、渋々頷いた。
「第一、透くんと真理ちゃんが、いつ地下室に入り、いつ地下室から出てきたのか、私には
全く分からないんだぞ? もしも、透くんと真理ちゃんが一時間近く地下室でミルクを探して
いたら、私のアリバイは成立しなかったんだ。そんな偶然に頼ると思うか?」
324生き埋め編165:2007/05/30(水) 15:37:24 ID:qdBDtQiF
 そのとき、どこか場違いな声が聞こえた。
「あのう、ちょっといいでしょうか」
 今日子さんが手を上げていた。
「何ですか?」
 ぼくは訊いた。
「今、主人のアリバイが問題になってるんですよね?」
「そうですよ」
「私、透くんがタイムテーブルを作るときには質問されなかったから答えなかったんです
けど、主人が田中さんにピザを届けるとき、夕食のデザートのケーキを焼いていたんです」
「ええと……それが、今の話と関係があるんですか?」
 ぼくには、話の流れがよく分からなかった。
「はい、あります。実は、田中さんがルームサービスの電話をかけてきたのは、主人が
ケーキの生地をオーブンに入れようとしたところだったんです。でも、田中さんから電話で
ピザを頼まれたから、仕方なく、ケーキの代わりにピザを焼き始めました。そこへ、透くんと
真理ちゃんが帰って来たんです。その後、主人はピザを皿に乗せ、代わりにケーキを
入れました。そのケーキは、シュプールオリジナルのケーキで、雑誌にも紹介されたもの
なのですが、焼き時間は十一分ちょうどです。主人はタイマーをセットして、ピザを持って
キッチンを出て行きました。そして、主人が戻ってきたときには、まだケーキは焼けて
いませんでした」
 ようやく、今日子さんの言いたいことが分かった。つまり、小林さんが田中さんのピザを
届けて戻ってくるまでの時間は、十一分以内だということか。
「それ、私も覚えていますよ」
 みどりさんが言った。
 すると、俊夫さんも言い出した。
「そうだ、俺も覚えてる。ケーキっていうのは、卵やバターの鮮度によって、微妙に焼き時間が
変わるんだ。それで、いつも俺は、ケーキを焼き過ぎないように、たとえタイマーが
鳴らなくても、オーブンのスイッチを切る役目を小林さんに頼まれているんだ。もちろん、
今日も俺はオーブンの中のケーキを見張っていた。今日はタイマーの時間でぴったりだった
から、オーブンのスイッチは切らなかったけど、その前に小林さんは戻ってきた。はっきり
覚えている」
325生き埋め編165:2007/05/30(水) 16:01:53 ID:qdBDtQiF
「田中さんを殺してバラバラにするには、少なくとも三十分ぐらいはかかるんじゃ
ないか? どうだ、これで、私が犯人ではないということが証明できただろう。私の
アリバイは完璧だ。それが分かったら、二度と私を犯人扱いしないでくれ」
 小林さんは、そう言うと、ようやく椅子に座った。
「犯人扱いされたくないのは、俺だって同じだ!」
 突然、美樹本さんが叫んだ。
「一人だけアリバイがないってだけで、犯人扱いされてみろ。どんな気持ちがする
と思う?」
 美樹本さんは、怒りをあらわにした表情で言った。
「せやけど、美樹本さん以外には、犯行は不可能やったわけやし……」
 香山さんは、困ったような表情で言った。
「だから、俺以外にも四人アリバイのない人間がいると言っただろう。小林さんの
アリバイは完璧だったようだが、夏美ちゃん、啓子ちゃん、可奈子ちゃんの
『新OL三人組』のアリバイはどうかな?」
「うちが犯人やって言うんか!」
 夏美さんが、椅子から立ち上がった。
「犯人だとは言っていないさ。ただ、アリバイが不完全だと言っているだけだ」
「せやけど、犯人の可能性があるっちゅうとるやないか」
「ああ。そうだ。まず、夏美ちゃんだ。啓子ちゃんは雪崩に飲み込まれて亡くなり、
可奈子ちゃんは、まだ目を覚まさない。その二人と一緒にいたと証言している夏美
ちゃんのアリバイは、疑わしいとは思わないか?」
 美樹本さんが言うと、本当にそんな気がしてくるから不思議だ。
「そんなん、可奈子が目を覚ませば、ちゃんと証言してくれるはずや」
 夏美さんは、心細そうな声で言った。
「つまり、可奈子ちゃんが目を覚ましていない今は、まだ夏美ちゃんのアリバイは
完璧じゃないってことだな」
「でも、セイちゃんや春子さんと一緒におった時間もあるし……」
「そう、問題はそこだ。香山夫妻の部屋と、『新OL三人組』の部屋を行き来する
間に、一度には無理でも、少しずつバラバラにすることができたんじゃないかな?」
326生き埋め編165:2007/05/30(水) 16:26:45 ID:qdBDtQiF
「いや、それは無理やわ」
 そう言って否定したのは、香山さんだった。
「どうしてですか?」
 ぼくは訊いた。
「夏美が、わしと春子の部屋と、『新OL三人組』の部屋を行き来するときは、必ずわしらが
一緒やったでや」
「意味がよく分からないんですけど……」
 ぼくは言った。
「つまりな、今回の旅行は、わしがスポンサーになっとるんや。春子や夏美の旅費はもちろん、
啓子ちゃんや加奈子ちゃんの旅費も、わしが出したげてるんや。それで、わしは、わし春子の
ための二人部屋と、『新OL三人組』のための三人部屋の、二部屋を借りたんや。それでな、
この五人の中で、夏美だけは、『香山親子』と『新OL三人組』の、二つのグループに所属しとる
っちゅうわけや。わしと春子が夏美に用があるときは、わしと春子のどちらかが、『新OL
三人組』の部屋に、夏美を呼びに行った。逆に、啓子ちゃんや可奈子ちゃんが夏美に用事が
あるときは、啓子ちゃんや可奈子ちゃんが夏美を呼びに来た」
「携帯とかメールで呼んだりはしなかったんですか?」
 ぼくは訊いた。
「それはあらへん。だって、すぐ隣の部屋なんやで? 隣の部屋にいる人を呼び出すのに、
いちいち携帯やメールを使うのは面倒やし、何よりも無駄やろ」
 香山さんが言った。それは、もっともな意見だと思った。
「しかし、部屋を行き来していたときにバラバラにするのは無理だったにしろ、啓子ちゃんが
亡くなり、可奈子ちゃんが目を覚まさないんだから、その二人といたと証言している間の
時間のアリバイが、不完全であることに変わりはない。まあ、亡くなった啓子ちゃんの
アリバイもよく分からないが、自分が起こした雪崩に巻き込まれて死ぬほど馬鹿だとは
思えないから、考えなくてもいいだろう。啓子ちゃんと同じことが、可奈子ちゃんにも言える」
 美樹本さんが言った。
 これで、アリバイがあやふやなのは、美樹本さんと夏美さんの、二人になったということ
だろうか。
327生き埋め編165:2007/05/30(水) 16:38:01 ID:qdBDtQiF
 ここまでの話を聞いて、ぼくは思った。


(下記の選択肢は、五十音順に並べてあります)


Aこの時点では、まだ田中さんを殺した犯人を特定することはできない。
B田中さんを殺した犯人は、外部犯だ。
C田中さんを殺した犯人は、可奈子ちゃんだ。
D田中さんを殺した犯人は、香山さんだ。
E田中さんを殺した犯人は、今日子さんだ。
F田中さんを殺した犯人は、啓子ちゃんだ。
G田中さんを殺した犯人は、小林さんだ。
H田中さんを殺した犯人は、ジェニーだ。
I田中さんを殺した犯人は、俊夫さんだ。
J田中さんを殺した犯人は、夏美さんだ。
K田中さんを殺した犯人は、春子さんだ。
L田中さんを殺した犯人は、複数犯だ。
M田中さんを殺した犯人は、冬美ちゃんだ。
N田中さんを殺した犯人は、ぼくだ。
O田中さんを殺した犯人は、真理だ。
P田中さんを殺した犯人は、美樹本さんだ。
Q田中さんを殺した犯人は、みどりさんだ。
328名無しのオプ:2007/05/30(水) 21:16:11 ID:Zwl/UJVt
R田中さんを殺したのは、西村京太郎だ。
ぼくは読点の多さからそう確信できた。
329名無しのオプ:2007/05/30(水) 21:45:32 ID:bQEzoEs3
アリバイ崩しは苦手なので、他の人の推理に期待します
330名無しのオプ:2007/05/30(水) 22:36:00 ID:BSDP1+pj
Pで
331推理:2007/05/31(木) 06:29:16 ID:JDPmuBbj
というか、犯人特定どころか、問題となっているアリバイもおかしくない?
死体がどこでいつバラされたのかもわからないし・・・。現場の血痕とかで、そこで死んだか、どうかくらい誰か言明しないと。
あと、死体バラバラにするなら5分でもできるよ。
レインコート着て、電動のこぎり(チェンソーとか)で切るだけなら5分でバラバラ。返り血浴びたレインコートは隠せばいいし・・・。
@その場所、その時間限定でないなら、誰でも可⇒例:田中がシュプールにバラバラ死体だけ運び、部屋にまいて、誰かが田中を殺すなり眠らせるなりして、別の部屋に置いとくとか。
A小林さんが上記の電動ノコギリを使えば無問題。せまいシュプールでむしろ10分も何してたのやら。動機:浮気を脅迫のタネに?

よくわからん。とりあえず、情報足りないでいいんじゃない?
332名無しのオプ:2007/05/31(木) 06:44:23 ID:bOOssjzJ
>>328
なんだか田中さんがR田中一郎に思えてしょうがないw

ていうか選択肢じゃなくて犯人名入力でいいのに
333名無しのオプ:2007/05/31(木) 07:47:14 ID:GxuSdGez
>>332
冬美ちゃんとかジェニーとか、名前入力だとおそらくほとんど選んでもらえないだろうキャラにも、
それなりに面白いバッドエンドを用意してるとか?
この殺人のトリック自体が普通の人間には無理なのだとしたら、
この二人(?)がとんでもない超能力を持ってたってオチにも出来るけど。
334雪隠し伝説編165:2007/05/31(木) 08:51:46 ID:VrvdBXd/
>>316
B「美樹本さん、死体の写真を撮った本当の理由は何なんですか?」
 ぼくがそう訊くと、美樹本さんは明らかにぎくりとした顔をした。
「本当の理由? 一体、何を言っているのか分からんね。言っただろう。新聞社やテレビ局
などのマスコミに、高値で売れるからだと」
「そうですね。あのときは、それで納得してしまいました。あの異様な現場の中で、わざと
憎まれ役を演じてみせたんですからね。ぼくなんか、カメラマンというのは、そこまで非情で
なければいけないのかとすら思いましたよ。でも、よく考えるとおかしいんです。日本の
マスコミは、死体の写真を新聞や雑誌に載せたり、テレビで放送することを、極度に嫌います。
いえ、マスコミだけじゃありませんね。一般市民がインターネットで死体の写真を公開して
いただけでも問題になり、ニュースになります。確かに、マスコミに売ろうと思えば売れる
でしょう。でも、さっき美樹本さんが言ったほどの金額で売れるとは思えません。事故現場の
写真なら売れるかもしれませんが、死体の写真は売れないでしょう」
 今や、談話室の中にいる全員が、ぼくたちの会話に耳をすませている様子だった。
 すると、美樹本さんは笑い出した。
「いやいや、透くんは視野が狭いね。確かに、日本のマスコミには売れないだろう。だが、海外の
マスコミだったらどうかな? 海外で起こった飛行機事故が日本でも放送されるように、日本で
起こった飛行機事故だって、海外で放送されるんだよ。それにね、この広い世の中には、三度の
飯より死体が大好きという奴らだっているんだ。真理ちゃんが台無しにしてくれたフィルムは、
とても貴重なものだったんだよ。あの後、別のカメラで撮り直したから、意味がなかったんだがね」
「なるほど。確かに、そう聞くと、本当にお金儲けのために死体の写真を撮ったとしても、
おかしくはありませんよね。では、逆に、お金のためではないと考えてみたら、どうですか?
お金のためではなく、死体を撮る理由があるとしたら、それはどんな理由だと思いますか?」
「どんな理由があるのか、こっちが教えてもらいたいくらいだね」
「そう。まず、ぼくが最初に思いついたのは――美樹本さんが撮っていた死体は、実は、
美樹本さんのよく知っている人物だったという可能性です」
335雪隠し伝説編165:2007/05/31(木) 09:12:20 ID:VrvdBXd/
「よく知っている人物?」
 真理が、よく分からないという表情で訊き返した。
「あくまでも、可能性の問題だけどね」
「馬鹿馬鹿しい! たとえ知っている人物だったとしても、どうして俺がそんなことをしなきゃ
いけないんだ!」
 美樹本さんが、苛立ったように言った。
「透くん、他にはどんな可能性が考えられるの?」
 そう訊いたのは、みどりさんだった。
「そうですね……実は、美樹本さん本人が、死体が大好きだとか」
 ぼくが言うと、女の子たちは一斉に、吐き気でもこらえているような顔をした。
「他には?」
 俊夫さんが訊いた。
「他には――心霊写真を撮るため、というのはどうですか?」
 ぼくが言うと、啓子ちゃんや可奈子ちゃんは「嫌だー」と言いながら、少し笑い合った。
 最近の女の子たちが、心霊現象めいたものが好きだという話は本当なのだろう。
 本物の死体は大嫌いなのに、霊や妖怪やプラズマは好きだというのも、ぼくにはよく理解
できないのだが。
「いい加減にしろ! さっきから、わけの分からない因縁をつけやがって」
 美樹本さんが怒鳴った。
「でも、ぼくには、何か別の理由があるような気がしてならないんですよ。だって、そうでしょう?
普通の人は、お金儲けのために死体の写真を撮るような人間だと思われるよりも、知り合いの
写真を撮ったり、心霊写真を撮ろうとしたりしている人間だと思われる方がマシじゃないですか」
「だから、きみの価値観を俺に押し付けるなということが言いたいんだ」
 ぼくと美樹本さんの諍いが、エスカレートしてきた。
 このままでは、あの事故現場での香山さんと美樹本さんの喧嘩のようになってしまうだろう。
 ぼくは、そこまでのことは望んでいなかった。

 そのとき、妙に間延びした声が聞こえた。
「すまない。ここは、いったいどこなんだ?」
 生存者の一人である中年男性が、談話室の入り口に立っていた。
 機体から外れた座席の上に座っていて、ぼくが生死を確かめた中年男性だった。
336雪隠し伝説編165:2007/05/31(木) 10:53:09 ID:VrvdBXd/
 背の低い、がっしりとした体格の男だ。目の端をひくつかせている。
 彼は、作曲家の村上つとむと名乗った。
 ぼくと真理、小林夫妻、俊夫さん、みどりさん、春子さん、美樹本さんは、簡単に自己紹介した。
「飛行機事故に遭ったことは覚えていますか?」
 ぼくは訊いた。
「ああ、もちろん覚えているとも。私は以前、『仮名たちの夜』というゲームの音楽を手がけた
こともあるんだ。その続編を作ることになってね。その続編の舞台となる島を観に行った帰り
だったんだ。せっかくインスピレーションが湧いたのに、この事故で台無しになってしまった」
 村上さんは、憤慨した様子で言った。
「『仮名たちの夜』? 真理、そんなゲーム知ってる?」
 ぼくは小声で訊いた。
「ええ。プレイしたことはないけど、名前だけなら知ってるわ。全員仮名の登場人物たちが、
吹雪のペンションで殺人ゲームを行うという話よ」
「ふーん。村上さんって人は?」
「知らないけど……」
 小林さんが、村上さんに近づいていく。
「目が覚めたばかりで、疲れているでしょう。温かいココアでもいかがですか?」
「おお、ここのオーナーの小林さんだったかな? ありがたい。いただこう」
 村上さんが尊大な態度で言い、小林さんがココアを入れて持ってきた。
 村上さんは、談話室のソファに座り、ココアを啜り始めた。
 そこへ、さらに、ふらふらと足元の覚束ない足取りで男がやってきた。足を怪我しているのだ。
 俊夫さんたちが発見した男だ。彼は、村上さんと同じように、ここがどこなのか説明を求める
かと思いきや、いきなり名刺を出した。
「よろしく。正岡でーす!」
 そう言って、真理、啓子ちゃん、可奈子ちゃん、みどりさん、今日子さんの五人にだけ
名刺を渡す。ぼくと俊夫さんと美樹本さんと小林さんと村上さんは、完全に無視されていた。
337雪隠し伝説編165:2007/05/31(木) 11:57:07 ID:VrvdBXd/
「きゃあ、ゲーム・プロデューサーだって!」
 名刺を見た可奈子ちゃんが大声を出した。
「正岡慎太郎と申します。フリーのゲーム・プロデューサーをしていて、業界では少しは名の
知られた人間です。ヒットした『仮名たちの夜』も私が手がけました」
 正岡さんは、五人の女性だけを見ながら言った。
「正岡さん、ここのオーナーの小林ですが、温かいココアはいかがですか?」
 小林さんがそう言ったが、正岡さんは首を振った。
「いえ、ココアではなく、ビールをもらえますか。寒いときは酒で体を暖めるのが一番ですから」
 何とも図々しい男だ。
「ところで、ここは、どこなんですか」
 今頃になって、正岡さんは訊いた。ぼくたちは、代わる代わる説明した。

「まさか、生存者が、たった四人だとは……」
 尊大な性格の村上さんも、さすがに蒼ざめている。一方、正岡さんは平気そうだ。
「いやあ、やっぱり、ぼくは運がいいなあ。ゲームっていうのも、事故と同じなんですよね。
運のない人間は、どんなに努力しても生き残れないし、逆に、運のある人間は、どんな逆境でも
生き残るんですよ」
 正岡さんは、早くも酔いが回っているのか、べらべらと無神経なことを喋った。
「おい、あんた。あれだけの人が亡くなったのに、よくそんな酷いことが言えるな」
 俊夫さんが、正岡さんに食ってかかる。
「いや、ぼくは、ただ一般論を言っただけですよ」
 どうやら、正岡さんは「いや」とか「いえ」が口癖らしい。こういう人間がいるものだ。
自分一人では何もできないのに、他人がやってくれたことには、平気で批判し、文句をつける。
そういう人間に限って、自分は誰の世話にもなっていないと思い込んでいるのだ。
 ぼくの父も、そういうタイプの人間だった。いつもお酒ばかり飲んでいて、他人の悪口ばかり
言っていた。
 ぼくの父は、昔は名の知れた作家だった。だが、やがて自分の才能に溺れて努力をしなく
なった。さらに、父は、自分の非を認めることができない人間だった。他人に謝ることができず、
自分の欠点と向き合うことのできない人だった。父は、他の作家の書いた小説にけちをつけた
のがきっかけで、芋づる式に人間関係を悪化させ、ついには父の書いた本も売れなくなったのだ。
338雪隠し伝説編165:2007/05/31(木) 12:38:11 ID:VrvdBXd/
――ねえ、お母さん。どうして、ぼくの名前は「透」なの?
――あなたは――。そう、とても透明な子供だったから。
――透明?
――そう。あなたは、とても透き通るような子供だったのよ。
 幼い頃の、母との会話が耳に蘇った。母は、とても優しかった。
 どうして、母は、あんな男と結婚したのだろう。
 ぼくは、父が出版業界を追われることとなった文章を読んでみたことがあった。確かに、
どれも、批判されている人にも問題はあったが、諭すのではなく煽っている父の文章にも
大きな問題があった。しかも、相手が自分の欠点を認めても、父は別の欠点を指摘し続け、
自分の非は認めようとはしなかった。
 ぼくは、今でも、母が亡くなったのは父のせいだったと思っている。
 母は、ぼくが中学に上がる前に、過労死したのだ。

「ところで、生存者四人のうちの一人のお婆さんの姿が見えないようだが……」
 村上さんの声で、ぼくは現実に引き戻された。
「そうですね。私、様子を見てきます」
 そう言って立ち上がったのは、みどりさんだった。
「俺も行くよ」
 俊夫さんが立ち上がったが、みどりさんは笑って手を振った。
「私一人でいいわよ」
「そうか……」
 俊夫さんがソファに座ると、みどりさんは従業員用の部屋へ歩いていった。
 ぼくたちは、村上さんと正岡さんに、説明を続けた。ついに、香山さんがいなくなってしまった
件と、夏美さんが香山さんを探しに吹雪の中に飛び出してから戻らないところまで、話が進んだ。
「じゃあ、その香山さんという男の人や、夏美さんとかいう女性を見捨てたのかい?」
 予想通り、正岡さんが無神経なことを言った。
「それなら、あんたが探しに行けばいいんじゃないのか?」
 俊夫さんが冷たく言い放った。
「いや、ぼくは足に怪我をしているから……」
 正岡さんが、口癖の「いや」を言った。そのとき、村上さんが妙なことを言い出した。
「それって、もしかすると、『雪隠し』かもしれないな」
339雪隠し伝説編165:2007/05/31(木) 13:47:52 ID:VrvdBXd/
「ゆきかくし? ゆきかくしって、一体何なんですか?」
 ぼくは訊いた。
「そうか。きみたちは知らないのか。その前に言っておくが、実は、私は今は東京に住んでいるが、
元々はこの地方の出身でね。ここから車で一時間ほどの場所で育ったんだ」
「へぇ。何市ですか?」
 小林さんが訊いた。村上さんが答え、そこなら知っていますよ、と小林さんが相槌を打つ。
 このまま話が脱線しそうだったので、ぼくは言った。
「それで、ゆきかくしっていうのは?」
「ああ、すまない。『雪隠し』というのは、この地方では、『神隠し』とほとんど同じ意味で
使われる言葉なんだ」
「『神隠し』っていうと、あの、人が消えちゃうって奴ですか?」
 真理が訊いた。
「そうだ。神様が人を隠すという意味で、日本では、人が蒸発する現象を『神隠し』と名付け
られた。まあ、アニメのタイトルにもあったから、『神隠し』は皆知っているだろう。一方、
『雪隠し』というのは、雪が人を隠すという意味なんだ。『神隠し』と『雪隠し』が違うのは、
『雪隠し』は吹雪のときにしか起こらない、ということだな」
 村上さんが説明すると、居たたまれない沈黙が談話室の中に満ちた。
「つまり、香山さんは、その『雪隠し』に遭って、消えてしまったと?」
 啓子ちゃんが、非常に控えめに質問した。
 村上さんは頷いたが、ぼくの頭には、どうしても「雪隠」という言葉が浮かんでいた。
「あのう……、『雪隠し』とは関係ないとは思いますが、雪を隠すと書いて『せっちん』と
読むのは、トイレのことですよね?」
 ぼくは、そう指摘せずにはいられなかった。
「ああ、昔は、『口に出すのが憚られる』という理由で、トイレのことを『はばかり』とか
『雪隠(せっちん)』とか『厠』とか『手水(ちょうず)』と呼んだらしいね。でも、今は
せっちんなんて言っても通じる人は少ないと思うよ」
「それはそうですが……」
「それにね、言葉ができた順序としては、『雪隠(せっちん)』よりも『雪隠し(ゆきかくし)』
の方が先なんだ。しかし、後から『せっちん』という言葉ができたせいで、紛らわしいから
と言って、この辺では、本来は『雪隠し伝説』と呼んでいたものを、「かまいたち伝説」と
言い換えたみたいだね」
340雪隠し伝説編165:2007/05/31(木) 15:49:14 ID:VrvdBXd/
「雪隠し伝説」と「かまいたち伝説」では、随分と印象が違う。
 いや、それ以前に、ぼくは「かまいたち伝説」という言葉を聞いたことがあった。
「ねえ、美樹本さん。確か、今日、最初に冬美ちゃんを見たときにも、かまいたち伝説がどうとか
って言ってましたよね」
「ふん。どうだったかな」
 美樹本さんは、先ほどの死体の写真の件でむくれているのか、答えようとしない。
 ぼくは、相手にせずに、村上さんに訊くことにした。
「どうして、元々は雪隠し伝説と呼んでいたものが、かまいたち伝説に変わったんですか?
もちろん、雪隠と紛らわしいというのもあるでしょうが、雪隠しとかまいたちでは、語感も意味も
違いますよね?」
「実は、雪隠しという言葉には、先ほど言った神隠しと同じような意味以外にも、『隠し子』
とか『隠し財産』という意味もあるんだ」
 ぼくは、隠し子と聞いて、真っ先に、小林さんの隠し子の亜季ちゃんのことや、香山さんの
隠し子のことを思い出した。
 そして、今、ベビーベッドの中で眠っている冬美ちゃんも、もしかすると隠し子なのかも
しれない。
「さて、どうして昔は雪隠し伝説と呼ばれていたものが、現在はかまいたち伝説と呼ばれる
ことになったのか、その説明の前に、きみたちは、かまいたちについてどれくらい知っている?」
 村上さんが訊いた。真理が答える。
「何もしていないのに、突然、皮膚上に鎌で切りつけられたような傷ができる現象のことですよね。
現在では、乾燥した肌が衝撃を受けることで裂けると生理現象であると判明しているらしいですけど。
最近までは、空気中にできた真空によって引き起こされると説明されていたんですけど、科学的な
根拠がないということで、現在は生理現象とされているそうです」
「妖怪のことじゃないの?」
 そう訊いたのは、可奈子ちゃんだった。
「俺が聞いたのは、かまいたちは『構え太刀』が転じたもので、本来はイタチとは全く関係が
ないって説だったけどなあ」
 俊夫さんが言った。
 同じ言葉でも、人によって、随分考えていることは違うものだ。
341雪隠し伝説編165:2007/05/31(木) 16:29:33 ID:VrvdBXd/
「よし。それでは、雪隠し伝説の説明しよう」
 村上さんは、ココアで喉を潤すと、話し始めた。
「この地方では、稀に、このような吹雪の日に男女一組の孤児が現れることがある、とされている。
その孤児の年齢は、まだ生後間もない乳幼児から一歳近い赤ちゃんまで、様々だ。ただ、共通
しているのは、男の子の赤ちゃんと、女の子の赤ちゃんが、同じ日に現れる、ということだ。
その二人の赤ちゃんを引き取って育てた者には、富や名声を得たり、恋人や配偶者に恵まれたり
するなど、様々な幸福が訪れる。ただし、その幸福は、ゼロから生まれたものではなく、周囲の
人間の幸福を、その赤ちゃんが奪い取り、自分を育ててくれている人間に与えるのだ」
 男の子の赤ちゃんと、女の子の赤ちゃん。
 ぼくは、冬美ちゃんと、飛行機の中で発見された男の子のことを思い出した。
 まさか――。
 いや、そんなのは、ただの伝説だ。
 迷信だ。
 ぼくたちが黙って村上さんの話を聞いているのは、ただ、退屈だから、怪談でも聞こうとしている
だけなのだ。
 ぼくは、無理やり自分に言い聞かせた。
「この伝説は、『狗神使い』によく似ている。狗神とは、憑き物の一種で、その姿は鼠に似ている
と言われる。狗神は、人間によって作り出される特殊な動物霊で、その創生法は、生きた犬を
首だけ出して土に埋めて、餌を与えずに放置し、餓死寸前の犬の前に餌を置いて、狂ったように
吠え出したところで、首を斬り落として餌に噛み付かせる。そして、その首を焼いて骨にして
木箱に入れ、人の往来の激しい道に何日も埋めた後、祭壇に安置して手厚く祭り上げることに
よって狗神は生まれると言われている。そして、狗神は創造主の家系に永遠に従属する神となり、
その家に富をもたらす。だが、主人が少しでも憎んだり妬んだりした人間に対しては祟り神となり、
取り憑いて病気にしたり、殺したりする。また狗神は、男系だけではなく女系を通じても伝え
られたので、この家筋の娘が嫁いだ先にも憑いて行った。そのため、狗神の信仰が根強い四国や
九州の山間部の地域では、『狗神使い』の家筋は、他の家から恐れられた上、縁組を嫌がられる
こととなったらしい。私は、この『狗神使い』の話が、本州に伝えられる際に、『雪隠し伝説』に
変化したのではないかと思う」
342雪隠し伝説編165:2007/05/31(木) 17:02:44 ID:VrvdBXd/
「なるほど。『狗神使い』の話と『雪隠し伝説』は、少し似ていますね。『狗神使い』の家には
富をもたらすが、他の人には祟り神となるという部分と、『雪隠し伝説』の赤ちゃんを育てた
者には幸福を与えるが、その幸福は周囲の人間の幸福を奪い取ったものだ、という部分が
似ていますね」
 ぼくは、そう感想を述べた。
「でも、一つは生きている人間の子供で、一つは死んだ犬の話でしょう? それを同列で語る
のはおかしいと思うわ」
 真理が、率直な意見を言った。真理は、飛行機の中で発見された男の子を抱いている。
「この話には、続きがあってね」
 村上さんは、ココアをもう一口飲み込むと、言った。
「確かに、『雪隠し伝説』で、赤ちゃんを育てた者には、幸福が訪れる。しかし、それは、その
赤ちゃんを育て始めてから、五年以内に限っての話なんだ」
 期限付きの幸福というわけか。
「五年を過ぎると、どうなるんですか」
 啓子ちゃんが訊いた。
「五年を過ぎると、その赤ちゃんには、他人の幸福を吸い取る能力がなくなってしまう。その
赤ちゃんを育てていた人間は、元来の運気、元来の能力に戻る。だが、悲しいことに、大部分の
人間は、赤ちゃんが与えてくれる幸運を自分のものだと思い込み、自惚れてしまい、努力をしない
人間になってしまう。その結果、赤ちゃんの能力が失われた後は、本来の自分と向かい合わない
限り、不幸になってしまう」
 確かに、そうだ。先ほどの正岡さんのように、単なる幸運を、自分自身の能力だと勘違いして
しまう人間というのは、確かに存在する。
「その赤ちゃんのうち、男の子と女の子のどちらか一人を育てるのであっても、幸福が訪れて
くれるんですか?」
 可奈子ちゃんが訊いた。村上さんは頷く。
「その通りだ」
「ところで、『幸福を奪い取る』って、奪い取られた人間は、具体的にどうなるんですか?」
 小林さんが訊いた。
「それは、人によって様々だ。事業に失敗したり、事故に遭ったり、家庭内のトラブルが起きたり、
病気になったり、ひどいときには『雪隠し』――つまりは、『神隠し』に遭うこともある」
 これで、何となく、「雪隠し」という言葉に、「神隠し」と「隠し子」と「隠し財産」の三種類の
意味があることが理解できた。
343雪隠し伝説編165:2007/05/31(木) 17:51:33 ID:VrvdBXd/
「で、どうして『雪隠し伝説』が『かまいたち伝説』になったんですか?」
 ぼくは訊いた。
「先ほど、言っていた、妖怪のかまいたちの話に戻る。かまいたちという妖怪は、父親、母親、
子供の、三匹で一組なんだ。風に乗って、どんなところにもやって来る。父親のイタチが人を
転ばせ、次に母親のイタチが鎌で斬りつけて逃げていく。だが、最後に子供のイタチが傷薬を
塗ってくれるので、大怪我にはならない、というわけだ」
「だから、それが、今回の話と関係があるんですか?」
 可奈子ちゃんが、痺れをきらしたように言った。
「この妖怪のかまいたちと、『雪隠し伝説』には、一つだけ共通点がある」
 そう前置きをしてから、村上さんは言った。


「それは、親が子供を助けるのではなく、子供が親を助ける、というところだ」


 そう言われてみると、確かにそうだ。雪隠し伝説では、赤ちゃんが他人から奪い取った幸福を、
自分の育ての親に与える。一方、妖怪のかまいたちでも、両親の傷害を子供が庇う。
 ニュアンスは違うが、確かに、構図としては似ている。
「また、それ以外にも、先ほど小林さんに聞かれて、幸福を奪い取られた人間がどうなるかを説明
したが、その『事故に遭う』というのには、かまいたちに足などを斬られる、というものも含まれて
いる。だから、この辺では雪隠し伝説のことをかまいたち伝説と呼ぶようになったんだろう」

 そのとき、ぼくはあることに気づき、言った。

A「美樹本さんは、どうしてかまいたち伝説のことを知っていたんですか?」
B「お婆さんの様子を見に行ったみどりさんが戻ってくるのが、遅すぎると思いませんか?」
C「その事故には、もしかして、飛行機事故も含まれるんですか?」
D「最近でも、その雪隠し伝説が起こったことがあるんですか?」
E「香山さんが雪隠しに遭ったのは、冬美ちゃんたちのせいだと言いたいんですか?」
344165:2007/05/31(木) 18:11:07 ID:VrvdBXd/
訂正。

>>336
25行目。
×そう言って、真理、啓子ちゃん、可奈子ちゃん、みどりさん、今日子さんの五人にだけ名刺を渡す。
○そう言って、真理、啓子ちゃん、可奈子ちゃん、みどりさん、今日子さん、春子さんの六人にだけ名刺を渡す。


>>337
5行目。
×正岡さんは、五人の女性だけを見ながら言った。
○正岡さんは、六人の女性だけを見ながら言った。
345名無しのオプ:2007/05/31(木) 18:29:11 ID:PXdI5MD8
>>343
Bでお願いします。
>>344
まさにその部分を突っ込もうとしてましたw
346生き埋め編165:2007/05/31(木) 19:08:46 ID:VrvdBXd/
>>327

(人間をバラバラにするのに三十分はかかるが、十分では無理だろうというのは、
ゲーム「かまいたちの夜」本編に出てきた台詞を参考にしています)

P田中さんを殺した犯人は、美樹本さんだ。
 ぼくがそう思ったとき、真理が小声で話しかけてきた。
「ねえ、透は、アリバイのない美樹本さんと夏美さんのうち、どっちが犯人だと思う?」
「ぼくは、美樹本さんが怪しいと思う」
「やっぱり? 私もそう思うの。確かに、現時点では夏美さんのアリバイも不完全だけど、
もしも夏美さんが嘘をついていたとしたら、可奈子ちゃんが目を覚ませばすぐに嘘だって
ばれちゃうんだし、そんな危険な真似はしないと思うの」
 真理はそう言った。もちろん、人間というのは、すぐにばれる嘘をついてしまう生き物だが、
真理の意見も一理あるような気がした。
「ねえ、皆さん、こうしませんか。警察が来るまで美樹本さんと夏美さんを監禁しませんか?」
 ぼくが言うと、俊夫さんがうんうんと頷いた。
「俺も、今、そう言おうと思っていたんだ」
「そんなん、おかしいわ! 何でうちがそんな目に遭わなあかんねん」
 予想通り、夏美さんが、凄まじい形相でぼくを睨んできた。
「おいおい、勘弁してくれよ」
 美樹本さんも、相当苛々している様子だ。
「夏美には、絶対に人殺しなんてできひん! わしが保障したる!」
 香山さんがそんなことを言い出したが、もちろん、誰も耳を貸さなかった。
「でも、どこに監禁するの? 地下室は雪で埋まってるし、他の部屋だと窓から逃げる
かもしれないわ」
 みどりさんが言った。俊夫さんが答える。
「一階のトイレでいいんじゃないかな。他の人は、各自の部屋を使えばいいでしょう」
 そのとき、思いがけない声が聞こえた。


「――啓子は?」
 青白い顔をした可奈子ちゃんが、食堂の入り口に立っていた。
347生き埋め編165:2007/05/31(木) 20:31:44 ID:VrvdBXd/
 誰もが、言葉もなく可奈子ちゃんを見ていた。
 啓子ちゃんは、雪崩で亡くなった。
 ただ一言を口にするだけなのに、それがどれほど困難なことなのかを見せつけられた
ような気がした。
「ねえ、啓子は?」
 もう一度、可奈子ちゃんが訊いた。
「カナちゃん! 目が覚めたんか!」
 夏美さんがそう言って、可奈子ちゃんのところに駆け寄ろうとした。
 ところが、美樹本さんが夏美さんの手を掴んで止めた。
「何するんや」
 夏美さんが、美樹本さんにドスのきいた声で言った。
「今日子さん、みどりさん。可奈子さんと話をしてもらえませんか。この中では、今日子さんと
みどりさんの二人が、一番完璧なアリバイを持っていますから」
 美樹本さんが、静かな声でそう言った。ようやく、美樹本さんの考えが読めた。
 夏美さんが可奈子ちゃんに質問した場合、可奈子ちゃんを誘導尋問したり、可奈子ちゃんが
口裏を合わせるように仕向ける可能性があるのだ。
 今日子さんとみどりさんは、困ったような顔をしていたが、やがて、立ち上がって加奈子
ちゃんのところへ行った。
「ねえ、可奈子ちゃん。よく聞いて。今日、あなたは、どこに誰といたの?」
 今日子さんが、可奈子ちゃんの肩に手を置きながら訊いた。
「あの、言っている意味がよく分からないんですけど……」
「いいから答えて。雪崩が起きる直前、あなたは二階から下りてきたのよね? それはなぜ?」
「あの……啓子が、部屋の中に変な手紙があるのを見つけたんです。そこには、『こんや、
かまいたちがあらわれる』って、わけの分からないことが書かれていました」
「それまで、あなたはずっと、啓子ちゃんと同じ部屋にいたの?」
「はい……。ときどき、夏美が出入りしましたけど」
「夏美ちゃんが出入りするときは、夏美さんは一人で来たの?」
「いえ、違います。私と啓子が、香山さんと春子さんの部屋に呼びに行ったり、香山さんや
春子さんが、私たちの部屋に夏美さんを呼びに来ました」
「夏美さんが出入りしたのは、全部で何回だった?」
「そんな細かいこと、覚えていません……。それより、啓子はどうなったんですか?」
348生き埋め編165:2007/05/31(木) 21:31:01 ID:VrvdBXd/
「可奈子ちゃん、これが最後の質問よ。あなたと啓子ちゃんは、昼過ぎにスキーから戻って
から、ずっと一緒にいたのよね?」
「はい」
 可奈子ちゃんは、はっきりと言った。
 みどりさんが、今日子さんを見た。もういいでしょう、という表情だった。今日子さんは
頷いた。確かに、可奈子ちゃんの証言は、香山さんや夏美さんが主張していたものと、
完全に一致していた。これで、夏美さんのアリバイは証明されたと考えていいだろう。
「可奈子ちゃん。よく聞いて」
 みどりさんが言った。
「はい。聞いています」
「啓子ちゃんは、亡くなったわ」
 みどりさんがそう言うと、もともと顔色の悪かった可奈子ちゃんの顔から、さらに血の
気が引いた。
「嘘」
 可奈子ちゃんは、独り言のように呟いた。
「嘘じゃないわ。雪崩に飲み込まれて、掘り起こしたときには、既に亡くなっていたの」
「そんな……。そんなの、嘘よ。嘘だわ!」
 可奈子ちゃんは、そう言うと、食堂を飛び出していった。
 今の可奈子ちゃんは何をしでかすか分からない。ぼくたちは、可奈子ちゃんの後を追った。
 廊下に出ると、可奈子ちゃんが従業員用の休憩室の中に飛び込むところが目に入った。
 ぼくも、急いで休憩室に入った。
 可奈子ちゃんは、呆然とした表情で、畳の上に横たわった啓子ちゃんの頬に触れていた。
「啓子……?」
 可奈子ちゃんの両目から、大粒の涙が溢れた。だが、本人は、自分が泣いていることにも
気づいていないらしい。それほどショックだったのだろう。
 あまりにも痛々しい光景に、ぼくはどうすればいいのか分からなくなった。
 やがて、可奈子ちゃんは、わなわなと震えだした。
「いや……。いや! こんなの嫌! いやあああああああああぁっ!」
 可奈子ちゃんは、そう叫ぶと、啓子ちゃんに覆い被さるようにして倒れた。
 再び、彼女は気絶したのだった。
349生き埋め編165:2007/05/31(木) 22:07:13 ID:VrvdBXd/
「なあ、確かに、啓子ちゃんが亡くなったのがショックだったのは分かるけど、それにしても
可奈子ちゃんの反応は過剰すぎると思わなかったか?」
 可奈子ちゃんを従業員用のベッドに寝かせ、食堂に戻った後で、俊夫さんが言った。
「あの、そのことやねんけど……」
 夏美さんが、居心地が悪そうに言った。
「何ですか?」
 ぼくは訊いた。
「言おうかどうか迷っとったんやけど、さっきのカナちゃんの様子を見とったら、やっぱり、
みんなにも知ってもらっといた方がいいと思ったんや」
「だから、何をですか?」
 ぼくが訊くと、夏美さんは思い切ったような表情で言った。
「ケイちゃんとカナちゃんは、真剣に愛し合っとったんや」
 ぼくは、開いた口が塞がらなくなった。
「つまり、二人はレズの関係にあったということか?」
 俊夫さんが、目を丸くしながら訊いた。すると、夏美さんは、キッと俊夫さんを睨んだ。
「『レズ』っちゅうんはな、差別的な呼び方なんや! 二度とそんな呼び方するな!」
 夏美さんは、ぼくが今まで見た中で、一番怒っているような顔をしていた。
 自分が犯人扱いされているときですら、ここまでは怒っていなかった。
「あ、いや、その……。ごめんなさい」
 俊夫さんも、夏美さんの剣幕に押されたように謝った。
「これからは、レズビアン、もしくは女性同性愛者って呼ぶんやで」
「ええと……分かった。本当にすまなかった」
 俊夫さんは、素直に頷いた。
「その、夏美さんも、同性愛者なんですか?」
 真理が、控えめな口調で訊いた。
「うちはちゃう。うちは男の人が好きや。せやけど、あの二人が愛し合っていても、別に
嫌な気はせんかった。あの二人は、うちの親友なんや。せやのに……せやのに、ケイ
ちゃんは死んでもうて、可奈子ちゃんは動揺してるし、うち、もうどうすればいいんか
分からへん……」
 夏美さんは、涙を流していた。
350生き埋め編165:2007/05/31(木) 22:09:27 ID:VrvdBXd/
 夏美さんが落ち着くのを待って、ぼくたちは話し合いを再開した。
「結局、夏美さんのアリバイも証明された以上、ちゃんとしたアリバイがないのは美樹本
さんだけってことだよな」
 俊夫さんが、そう切り出した。
「いや、待て。もしかすると、外部犯なのかもしれないじゃないか」
 美樹本さんは、慌てた様子で言った。
「外部犯、か。外部犯が、どうやってシュプールの中に入ってきたんだ? 玄関を開ければ、
フロントやキッチンなどでチャイムが鳴るんだぞ」
 俊夫さんは、馬鹿にしたような口調で言った。
「別に、玄関から入ってきたとは限らないだろう。田中さんが、自分の部屋の窓を開けて、
ロープでも垂らしてやったのかもしれん」
「何で田中さんがそんなことをしなければいけなかったんですか?」
 ぼくは訊いた。
「そんなの知るか。犯人と二人して、何かよからぬことを企んでいたのかもしれない。
それで、仲間割れをして、田中さんが殺されてしまったのかもしれない」
「本当に外部犯なのだとしたら、もしかすると、犯人はまだこのペンションの中に潜んで
いるかもしれませんね」
 そう言ったのは、春子さんだった。
「そうやな……。一度、みんなでシュプールの中を詳しく見て回ろうか」
 香山さんがそう提案した。

 まず、地下室に犯人が潜んでいないか、ぼくと俊夫さんの二人だけで調べた。
 結局、地下室には誰もいなかった。その後、シュプール全体を調べる間、美樹本さんには
地下室で待っていてもらうことにした。地下室には大量の雪があり、おまけに談話室の
雪解け水が地下室に流れ込んでおり、かなり寒いのだが、シュプールを調べる間くらいなら
平気だろうということで納得してもらった。
 地下室に鍵をかけ、シュプール全体を調べたが、結局、誰もいなかった。
351生き埋め編165:2007/05/31(木) 22:23:33 ID:VrvdBXd/
「やっぱり、美樹本が犯人なんとちゃうんか?」
 二階の廊下で、香山さんが言った。
「そうですね。地下室は寒すぎるから駄目ですが、どこか別の場所に監禁した方が……」
 ぼくがそう言うと、俊夫さんは首を振った。
「待ってくれ。一つ思いついたことがあるんだ」
 そう言って、俊夫さんは田中さんの部屋に向かった。
「何をするんですか?」
「もう一度、バラバラ死体を詳しく見てみよう」
 ぼく、俊夫さん、小林さん、香山さんの四人は、田中さんの部屋に行った。
 何度見ても慣れないが、それでもぼくはしっかりと見た。
 俊夫さんが、台所用の手袋を嵌め、生首の顔を、こちら向きにした。首は、どちらかと
言えば胴体に近い部分で切断されているようだった。
「うん? これは、もしかすると……」
「何か発見したんですか?」
 ぼくは訊いた。
「ほら、よく見てくれ。目の周りが赤くなっているのが分かるか?」
「はい、確かに赤くなっていますね。それがどうかしたんですか?」
「それだけじゃない。顔のどの部分を見ても、肌が荒れて、粉が吹いている。首や額にも
深い皺がある。首の周りには、大量の引っかき傷がある」
「だから、それがどうしたっていうんですか?」
「もしかすると、田中さんは、アトピー性皮膚炎だったんじゃないかな」
 ぼくは、俊夫さんが何が言いたいのかよく分からなかった。
「だから?」
「サングラスは、目の周りが赤くなっているのを誤魔化すため。屋内でもコートを着ていた
のは、首の周りの皺や引っかき傷を見えないようにするためだったんじゃないのか?」
「あっ……」
 そんな可能性は、今まで一度も考えたことがなかった。
「昔、俺が高校生だった頃、隣の席の女の子が、サングラスをかけて授業に出たことが
あった。先公が怒って、サングラスを取れと言った。ところが、その子が本当にサングラス
を外したのを見て、逆に先公の方が謝ったってことがあったんだ」
 俊夫さんは、考え込むように言った。
352生き埋め編165:2007/05/31(木) 23:29:35 ID:VrvdBXd/
「せやな……。眉毛が薄うなってるのを見ても、重度のアトピー性皮膚炎やったみたいやな」
 香山さんも言った。
「つまり、田中さんがサングラスやコートを身に着けていても、不自然じゃなかったって
ことですか?」
 ぼくは確認した。
「うん。この死体が田中一郎本人である可能性が高くなったということだね」
 小林さんが言った。
「でも、田中一郎なんて、偽名でしょう?」
 ぼくが訊くと、小林さんは首を振った。
「私の友人には、山田太郎という名前の人もいるよ」
「なあ、今思ったんやけど、こういう可能性は考えられへんか? 田中本人が、シュプールに
バラバラ死体だけ運んだっちゅう可能性や」
「でも、それはさっき、ぼくが推理したら美樹本さんが田中さんに成りすましていた可能性は
ないという結論に……」
「ちゃうちゃう。わしが言いたいのは、田中と名乗った人間がバラバラ死体を部屋にまいて、
その後で、田中がここから逃亡したっちゅう可能性や」
「それは、難しいような気がしますね。だって、部屋の中には大量の血液がありますよ」
「そんなもん、後から血だけ撒けばいいだけの話やろ」
「いや、待て。ほら、ここを見てみろ」
 俊夫さんが、壁の一部を指差した。
「これは、勢いよく噴き出した血が壁に付着したんだな。生きている人間でも切断しない
限り、こんな血の痕は残らないと思う。俺は、殺害現場がここだと考えていいと思うが」
 確かに、部屋の中は血だらけだ。あちこちに、何かを引き摺ったりぶつけたりしたような
形の血の痕が残っている。田中さん殺害現場がここだというのは、間違いないと思った。
 ぼくは、もう一度、部屋の中を見回した。ベッドにも血が染み込んでいるし、壁にも
血飛沫の痕が残っている。部屋の隅のテーブルの上には、小林さんが運んだルーム
サービスのピザを載せてあったのであろう、皿が置いてあった。

 美樹本さんと可奈子ちゃんを除く、生きている全員が食堂に集まり、もう一度話し合う
こととなった。
353生き埋め編165:2007/05/31(木) 23:49:52 ID:VrvdBXd/
 いよいよアリバイのない美樹本さんが犯人である可能性が高くなった。
 全員で相談した結果、美樹本さんを一階のトイレに閉じ込めることになった。
 一階のトイレには窓がないので、逃亡される危険はない。トイレの前のドアには、
バリケードを作っておくことにした。
「美樹本さん。もう出てきていいですよ」
 そう言って、地下室のドアを開けた。油断した美樹本さんが出てきたところで、ぼくは
美樹本さんの頭に袋を被せた。俊夫さんが美樹本さんを倒し、体を押さえつける。
 小林さんが美樹本さんの手を洗濯用のロープで縛り、香山さんが足を縛った。
 美樹本さんの体を苦労して運び、トイレに閉じ込めた。ただし、美樹本さんが自力で
ロープを解くことができるように、カッターナイフを渡した。
 全員で、大急ぎでバリケードを作り、美樹本さんを閉じ込めた。
「待ってくれ! 俺は、本当にやってないんだ!」
 美樹本さんが、トイレの中から叫ぶ。ぼくは言った。
「往生際が悪いですよ、美樹本さん」
「待て。別の可能性を思いついたぞ! チェーンソーを使えば、七、八分しかチャンスが
なかった小林さんでも、田中さんをバラバラにすることができるんじゃないか?」
 美樹本さんが言った。香山さんが答える。
「いや、それは無理やわ。だって、田中さんの部屋は、わしと春子の部屋の隣やからな。
チェーンソーなんてつこたら、音で分かるわ。それにな、田中さんの死体は、裸やってん。
バラバラにするだけなら七、八分でできるかもしれんけど、服を脱がす時間も考えると、
無理やわ」
「そんな……」
 美樹本さんは、まだ何か言い足りなさそうな物言いだったが、やがて静かになった。
「これで、もう大丈夫なんですよね」
 みどりさんが言った。ぼくは答える。
「大丈夫、だと思いますけど。後は、救助隊が来るのを待って、寝ましょうか」
「でも、本当にそれでいいんでしょうか? 私たちは、今、生き埋めになっているんでしょう?
酸素がなくなって、窒息死したりしませんか?」
 春子さんが不安そうに言った。
「いや、このシュプールの体積なら、一日や二日くらいは平気ですよ。ただ、念のため、
料理などで火を燃やして酸素を消費させるのは控えましょうか」
 小林さんがそう答え、ぼくたちは眠ることにした。
354生き埋め編165:2007/05/31(木) 23:57:42 ID:VrvdBXd/

 激しくドアをノックする音で、目が覚めた。枕元の携帯電話で時刻を確かめると、深夜
一時だった。
「誰ですか?」
 ぼくは、目をこすりながら言った。
「私よ」
 真理の声だった。ぼくは、部屋のドアを開けた。
「透、大変なことになったの」
 真理は、涙を流していた。これは、ただごとではない。
「どうしたんだよ、真理」
「叔母さんが……叔母さんが」
「今日子さんが、どうしたの?」
「叔母さんの死体が、食堂で発見されたのよ」


 可奈子ちゃんと美樹本さんを除く全員が、再び食堂に集まった。
「今日子……」
 小林さんは、今日子さんの遺体を抱き締めながら、泣いていた。今日子さんは、包丁で
心臓を背中から一突きにされていた。
「今日子さんが亡くなったのは悲しいけど、この犯人が誰なのか、探さないといけませんね」
 ぼくは、力なく言った。
「ねえ、美樹本さんは?」
 真理が言い、ぼくたちは、美樹本さんを閉じ込めたトイレの前に集合した。バリケードは、
ぼくたちが美樹本さんを閉じ込めたときと、何も変わりなく見えた。
「美樹本さん、聞こえますか」
 ぼくは声をかけた。返事が返ってくる。
「何だ?」
「今日子さんが殺されたんです。美樹本さんは、ずっとトイレにいましたか?」
「当たり前だろう。いったい、どうやってここから出るって言うんだ」
 美樹本さんが憤慨した声で言った。
 ぼくたちは、美樹本さんに謝り、彼をトイレから出した。
355生き埋め編165:2007/06/01(金) 00:10:39 ID:uJq1jZCH
 ぼくたちは、今日子さんが殺されたと思う時間帯の、それぞれのアリバイを確かめる
ことになった。
 誰かと部屋にいたと証言したのは、香山さんと春子さんだけだったが、二人とも一度は
眠ったらしいので、頼りにならない。
 小林さんは、目が覚めると隣に今日子さんがいないことに気づき、今日子さんを探して
いたら、食堂で発見したのだそうだ。今日子さんが殺された以上、当然、小林さんにも
アリバイはない。
 ぼく、真理、俊夫さん、みどりさん、夏美さんの五人は、自分の部屋で一人で寝ていた
ので、もちろんアリバイを証明することはできなかった。可奈子ちゃんは体を揺さぶっても
起きなかったので、彼女だけはそっとしているが、もちろん、可奈子ちゃんにもアリバイは
ないはずだ。
 結局、今日子さんが殺されたときのアリバイを証明できるのは、田中さんが殺された
事件では唯一アリバイのなかった美樹本さんだけだという、皮肉な結果になった。
「もう、わけが分からへんわ。いったい、どうなっとるんや。田中さんが殺されたときには
アリバイのあった人には、今日子さんが殺されたときにアリバイがない。一方、田中さんが
殺されたときにはアリバイがなかった人には、今日子さんが殺されたときには鉄壁のアリバイが
あるなんて……」
 香山さんが、頭を抱え込んでいる。
「田中さんを殺したのと、今日子さんを殺したのが、別の人間だという可能性はありませんか?」
 ぼくは、そう言ってみた。
「便乗殺人っちゅうわけか? どうやろうなあ……」
 香山さんが渋い顔をした。
 みんなが黙り込んでいる。考えても、よく分からない。
 ぼくは、空腹を感じた。キッチンの冷蔵庫から、何か調理しなくても食べられるものを
もらってこようかと思った。
 そのとき、美樹本さんが顔を上げた。
 美樹本さんの目は、輝いているように見えた。
「ようやく、真相が分かったぞ! 田中さんが殺されたときに、一見アリバイがあるように
見えながら、実はアリバイがなかった人を発見した。心理的な死角というか、盲点になって
いた人物だ」
356生き埋め編165:2007/06/01(金) 00:24:11 ID:uJq1jZCH
 そんな人がいるだろうか。美樹本さん以外には、田中さんが殺されたと思われる時間帯に
アリバイのなかった人間はいないはずだ。
「いったい、誰のことを言っているんですか?」
 ぼくは、恐る恐る、美樹本さんに訊いた。
 美樹本さんの口から飛び出した名前に、ぼくは唖然とした。



「真理ちゃんだよ。田中さんを殺したのは、真理ちゃんだ」



 全員の視線が、冬美ちゃんを抱いている真理に集まった。
「え?」
 真理は、何が起こったのか分からないという表情をしていた。
 美樹本さんは、続けて言う。
「確かに、雪崩が起きるまで、真理ちゃんは透くんと二人で行動していた。その間の
アリバイは完璧だろう。だが、雪崩が起こった後、透くんは啓子ちゃんと可奈子ちゃんを
救出するために、談話室の天井と雪の間を通って、地下室の前にできた狭い空間に
行った。それからは、真理ちゃんは、自由に行動できたんだ。つまり、アリバイがない。
真理ちゃんは冬美ちゃんを抱いていたが、所詮、冬美ちゃんはただの赤ちゃんだ。凍えない
ように毛布でくるんで、カイロでも貼って温めておけば、冬美ちゃんが凍死する危険も
ほとんどないだろう。たとえ冬美ちゃんが死んだとしても、雪崩から避難するときの
ショックが原因で冬美ちゃんは死んだのだろうと思われるだけだ」
 そんな……。
 そんな、馬鹿な。
 ぼくはそう言いたかったが、なぜか、言葉を発することができなかった。
 真理は、蒼ざめた表情で、冬美ちゃんを抱いていた。
357生き埋め編165:2007/06/01(金) 00:37:55 ID:uJq1jZCH
 美樹本さんは、推理を続ける。
「透くんが可奈子ちゃんと啓子ちゃんを助けようと必死になっている間、真理ちゃんは
冬美ちゃんを玄関に放置すると、透くんと同じように談話室と天井の間の隙間に潜り込んだ。
迂闊なことに、俺も透くんも、そのことに気づかなかったんだ。なぜならば、
『二階に上がるには、必ず談話室の前の階段を上らなければならない。談話室に誰かが
いるときは、その人に見咎められずに階段を上ることができない』
と、みんな思い込んでいたからだ。確かに、普段の状況ならば、それは正しい。だが、
雪崩が発生したばかりのあの時間帯は、談話室の中にいる俺や透くんに気づかれること
なく、真理ちゃんは二階に上がることができたんだ。大量の雪が目隠しになっていたから、
俺や透くんには、真理ちゃんの姿は見えなかった。真理ちゃんは、透くんが地下室の前に
できた空間に向かったのとは、別の隙間を通って、階段に行った。そして、二階で田中
さんをバラバラにした後、再び同じ隙間を通って、冬美ちゃんのところに戻った。
そして、後は何食わぬ顔で、地下室の前から玄関までの道が除雪されるのを待てば
いいだけだったんだ」

 真理の近くに座っていた春子さんが、真理から冬美ちゃんを取り上げた。そのまま、
春子さんは逃げるように真理から離れた。みどりさんや夏美さんも、春子さんのところへ
行った。
 美樹本さんや俊夫さんや香山さんは、今にも真理に飛びかかろうとしている。
 奥さんを殺されたばかりの小林さんは、姪が犯人だったことに驚いているのか、呆然自失の
態で、成り行きを見守っている。 
「待ってください! 私、そんなことしていません! 田中さんを殺したりしていません!」
 真理が泣き叫ぶ。
「今さら信じられるか! この人殺しめ!」
 俊夫さんが叫んだ。
「信じて! 誰か信じて! 私は本当に田中さんや今日子さんを殺してないの!」
 真理の目が、ぼくを見据えた。
「……ねえ。透は、私を信じてくれるよね?」

Aぼくは、犯人は真理だったのだと思った。
Bぼくは、犯人が真理であるはずがないと思った。
358名無しのオプ:2007/06/01(金) 06:09:25 ID:izN/hpvY
Bで。
359推理:2007/06/01(金) 06:32:02 ID:pYRMN+HD
>>165
別に無理に言った可能性消さなくてもいいですよ。ちなみ電動ノコギリは静音のもあるから、そういうのいちいち消してったらキリないんで。まだ、他にも方法あるし。気にせず普通にやっていって下さい。
>>267
なるほど、そういうことね・・・。外れたらどうするつもりだったんやら。
360名無しのオプ:2007/06/01(金) 07:03:20 ID:izN/hpvY
夏美が部屋を移動してた時の、他の四人のアリバイが詳しく知りたいな。
証言でも二人の関係的にも可奈子と啓子は二人一緒で夏美を呼びに行ってたのだろうけど、それも確定ではないし、
香山と春子はどちらか片方が呼びに行ってたらしいし。
すぐ隣の部屋といっても、呼びに行ってそのまま雑談でも始めれば20〜30分位すぐに経ってしまうだろう。

まあ元々夏美に用があるから呼びに行くのだし、向こうの部屋でゆっくりしてきていいと言うのも妙だから、
意図的にそう仕向けるのは難しいだろうけど。
361名無しのオプ:2007/06/01(金) 07:27:14 ID:izN/hpvY
100%じゃないけど、向こうの部屋に長居させる方法はあるか。
用事がそれほど急ぎじゃない時に、夏美の好物を差し入れとして持たせる。
当然夏美も欲しがるだろうし、流れ的に「じゃあ一緒に食べませんか」となる。
夏美だけ置いていったら意味がないので、
必然的に迎えに行った側も残る事になりゆっくりせざるを得ない。
362名無しのオプ:2007/06/01(金) 11:52:51 ID:okbZtAqk
夏美が怪しいと思ってたのにこんな展開になるとは…
ていうか真理のあのいかにもヒロインっぽい言動は何だったんだ…
雪隠しはまだまだ続きそうだけど生き埋めはもうクライマックスなのかな?
363推理:2007/06/01(金) 14:25:59 ID:pYRMN+HD
まぁ、とりあえず、ピザ頼んだのは別人(犯人)で、犯行は注文前だったで安定してるんじゃない?小林さん声聞いたの電話が初めてだったかも知れないし。
そこらへんのアリバイについては啓子と可奈子、透真理コンビ以外はっきりしてないし、逆に前者の二人でも共犯なら問題ないし。香山さんたちが6時以降の話を前提にしてるなら「(シュプールに来てから)一緒」というつもりでは会話してないのかも。
あと、田中さん(の格好した人)が二人とかね。変な格好の人間が二人いるとは思わないから。玄関二回入ると言うのもありかも。
玄関で人を呼ぶ(チャイム1)⇒俊夫「俺が行きます」⇒田中A俊夫駐車場へ(チャイム2)⇒田中Bすぐさま普通に玄関から入る(チャイム3)⇒田中Aと俊夫玄関から入る。(チャイム4)
チャイム2とチャイム3は従業員的には俊夫が対応しているので、ほかの人間は判別しなかったとか。いずれにせよ、犯人の枠が分からないので、まだ情報不足なのかな。
まぁ単なる戯言なんで別に違っててもわざわざ作中で否定してくれなくてもいいですよ。
364名無しのオプ:2007/06/01(金) 15:07:54 ID:izN/hpvY
>>359
下のレス番って合ってるんですか?
何が外れたのかが分からないので、教えてください。
365名無しのオプ:2007/06/01(金) 15:58:41 ID:okbZtAqk
みんなよくそんな可能性思いつくなあ…
個人的には真理のアリバイがないことに気づいてなかったし真理が犯人って結論になってもいいと思うけど
まだどうなるか分からないけどね
それより今日は165さん書き込み遅いなあ
最近は毎日本当に一人で書いてるのかと思う量を書いてたのに
366名無しのオプ:2007/06/01(金) 17:34:15 ID:izN/hpvY
>>365
そりゃあ個人的な用事で忙しい事もあるでしょう。
むしろ自分はこの書き込みの多さからして、空いてる時間は全てこれに費やしてるんじゃないかという
余計な心配までしてた位。
その場その場で考えてるにしろ、過去に大筋だけは温めててそれを一気に放出してるのにしろ、すごいと思う。
367雪隠し伝説編165:2007/06/01(金) 23:22:31 ID:EtUB8VJW
>>343
B「お婆さんの様子を見に行ったみどりさんが戻ってくるのが、遅すぎると思いませんか?」
 ぼくがそう言うと、談話室の中にいた全員が、ハッとした顔をした。
 おそらく、みんな、同じことを考えているのだろう。
「透、見に行きましょう」
 真理が立ち上がった。
「うん」
 ぼくは頷いた。
「俺も行くよ」
 俊夫さんは、顔から血の気が引いていた。
 ぼく、真理、俊夫さんの三人は、生存者の最後の一人のお婆さんを寝かせている従業員用の
休憩室に急いだ。何事もなければいいのだが。
「みどり!」
 俊夫さんが、そう叫びながら、休憩室のドアを開ける。畳の上には、お婆さんが苦しそうな顔で
寝ているだけだった。飛行機事故の夢でも見ているのか、魘されている。
「みどりさんは……? みどりさんは、いったい、どこに消えちゃったの?」
 真理が、怯えた表情で言った。声が不自然に震えている。
 俊夫さんが、休憩室を飛び出すと、その隣にある従業員用の部屋のドアを、次々と開けていった。
 どこにも、みどりさんの姿はなかった。俊夫さんは掃除用具入れまで開けたが、もちろん、
そんなところにみどりさんが隠れているはずがない。
「透。おかしいわ。だって、この従業員用の部屋がある廊下は、行き止まりになっている。それ
なのに、みどりさんはどこに消えたっていうの? この廊下から出ようと思ったら、必ず談話室の
前を通らないといけないのに。私たちが談話室に戻ってきたみどりさんを見逃すはずがないわ」
「まさか……雪隠し?」
 ぼくが呟くと、俊夫さんは苛立たしげに、壁を拳で叩いた。
「そんな馬鹿な! 何で、みどりが雪隠しに遭わなきゃいけないんだ! みどりが何をしたって
いうんだ!」
 それを言うなら、既に雪隠しに遭っている香山さんだって、何もしていないはずだが。
 とりあえず、ぼくたちは談話室に戻ることにした。
 すると、談話室の方から、何か騒いでいるような声が聞こえた。
368雪隠し伝説編165:2007/06/01(金) 23:38:26 ID:EtUB8VJW
「何なんだ、これは?」
 ぼくは、そんなことを呟いてしまった。
 ぼくは、まるで喜劇の一場面でも見ているような気分になった。
 美樹本さん、春子さん、正岡さんの三人が、飛行機事故から生還した男の子の赤ちゃんを
奪い合っているのだ。
「俺は、もうこの子の名前だって決めたんだ! この子の名前は夏彦だ。名付け親になったから
には、俺がこの子を育てる!」
 そんなことを叫んでいるのは、美樹本さんだった。
「何だって? 何が夏彦だ。そんな古臭い名前、この子には似合わない! センスのないお前には、
この子を育てる資格なんかない!」
 正岡さんは、そう叫びながら、赤ちゃんを抱いていた。美樹本さんと春子さんが奪い取ろうとして
いるが、正岡さんは必死に赤ちゃんを抱き続けている。
「あなたたち、いったい、何を馬鹿なこと言ってるの? 男のあなたたちに、こんな小さな子供を
育てられるはずがないでしょう! ここは、女の私が引き取って育てるべきだわ」
 そう主張しているのは、春子さんだった。
 小林さんと今日子さんは、何やら諦めたような表情で、その醜い奪い合いを見ていた。
 可奈子ちゃんと啓子ちゃんは、呆れた顔をしている。
 村上さんは、興味がないような表情で、ココアを啜っていた。
「あなたたち、いったい、何をやっているんですか?」
 ぼくは三人に訊いたが、誰も答えてくれない。
 代わりに、小林さんが答えてくれる。
「三人は、それぞれ、自分があの赤ちゃんを育てると言って聞かないんだ」
「どうしてそんなことを?」
 ぼくはそう聞いてから、理由が分かった。
 雪隠し伝説だ。
 雪隠しの赤ちゃんには、他人の幸福を吸い取って、育て親に与える能力がある。その期限付きの
幸福を手に入れるために、美樹本さん、春子さん、正岡さんの三人は争っているのだろう。
 今のところ三人が手に入れようとしている赤ちゃんは、飛行機事故から生還した赤ちゃんだけだが、
いつ冬美ちゃんに矛先が向くか分からない。ぼくは、冬美ちゃんの寝ているベビーカーを、三人から
離れた場所に移した。
369雪隠し伝説編165:2007/06/01(金) 23:49:09 ID:EtUB8VJW
 ぼくは、大岡越前の有名なエピソードを思い出した。うろ覚えだが、確か、こんなストーリー
だったはずだ。育ての親と産みの親が、一人の子供の親権を争う。それを見かねた大岡越前は、
子供の手を引っ張りあい、自分の方に引き寄せた方の親に親権を与える、と言うのだ。ところが、
実際に引っ張り合いを始めると、子供が痛がって泣き出してしまう。その様子を見た育ての親は
子供の手を離す。大岡越前は、それを見て、子供の親になる資格があるのは、本当に子供のことを
考えている、育ての親だと言うのである。
 ぼくは、少なくとも、美樹本さん、春子さん、正岡さんの三人には、親になる資格はないと思った。
「お前ら、それどころじゃないんだ! みどりがいなくなったんだ。みんなで、手分けをして
探してくれ」
 俊夫さんが、そう言った。美樹本さん、春子さん、正岡さんの三人は、そう聞いても赤ちゃんを
奪い合うことをやめなかったが、俊夫さんも、最初からその三人には期待していなかっただろう。
「みどりさんまでいなくなっちゃったんですか?」
 可奈子ちゃんは、口に手を当てて驚いている。
「やっぱり、雪隠しですか?」
 啓子ちゃんは、怯えた表情だった。
「だけど、みどりちゃんは、一体どこから出て行ったの? 従業員用の通路から出る廊下は、
この談話室に通じているから、見逃すはずがないのに」
 今日子さんは、驚きを隠せない様子だった。
「私は……みどりさんは、香山さんや夏美さん同様、雪隠しに遭った可能性が高いと思う」
 沈痛な面持ちでそう言ったのは、小林さんだった。
「え? 夏美さんも?」
 真理が、驚いた顔をした。小林さんが答える。
「ああ。夏美さんが玄関を飛び出したときのことを覚えているか? すぐに透くんが夏美さんを
追いかけて外に出たのに、もう夏美さんの姿は消えていた。夏美さんがオリンピック級の陸上
選手だとでも言うのなら話は別だが、あのタイミングで姿を消すのは、おかしいと思う。夏美
さんも、雪隠しに遭ってしまったんじゃないだろうか」
 夏美さんまで、雪隠しに……? ぼくは、あのときのことを思い出し、その可能性は高いと
思った。
「みどりさんが窓から外に出たっていう可能性はありませんか」
 そんなとぼけたことを訊いたのは、啓子ちゃんだった。
370雪隠し伝説編165:2007/06/02(土) 00:14:18 ID:t8HnlM2A
「何で、みどりがそんなことをしなきゃいけないんだ?」
 俊夫さんが、理解に苦しむ様子で言った。
「さあ。何か、特別な事情があったのかも」
 啓子ちゃんも、どうやら深い考えがあって言ったわけではなさそうだった。
 ぼく、真理、俊夫さん、小林夫妻、啓子ちゃん、可奈子ちゃん、村上さんの七人は、それから
シュプールの中を捜索した。ただし、美樹本さんたち三人が冬美ちゃんまで奪い合う危険性が
あったので、冬美ちゃんは真理が抱いていた。
 シュプール内を隈なく捜索したのだが、結局、みどりさんは見つからなかった。
 どこにもみどりさんがいないという事実を目の当たりにした俊夫さんの落ち込みようは、見て
いる方が辛くなるくらい酷かった。
「今夜は、『かまいたちの夜』だからな。雪隠しも多いはずだ」
 村上さんが、そんなことを言った。初めて聞く言葉なので、ぼくは説明を求める。
「かまいたちの夜って、何ですか?」
「雪隠し伝説の、男の子の赤ちゃんと女の子の赤ちゃんが現れた夜のことだよ。その日のことを、
この地方では『かまいたちの夜』と呼ぶんだ。二人の赤ちゃんが現れた日の夜は、かまいたち
現象や神隠しが多いというのが、『かまいたちの夜』という言葉の語源だろう」
 村上さんは、そう説明した。
「かまいたちの夜、ですか。そう言えば、可奈子ちゃんと啓子ちゃんが、変な手紙を見つけたと
言っていましたね。確か、『こんや、かまいたちがあらわれる』と書かれた手紙でした」
「ほう。そんなものがあったのか。それは珍しい。その手紙を見せてもらえないか?」
 村上さんが言い、可奈子ちゃんと啓子ちゃんはポケットを探った。ところが、手紙は見つから
なかった。
「どうなってるの?」
 可奈子ちゃんは、わけが分からないという表情をした。
「ねえ、透。そう言えば、あの手紙って、冬美ちゃんの毛布に残されていた手紙と筆跡が同じ
だったわよね」
 真理がそう言ったので、ぼくはポケットを探った。ところが、見つからない。確かに右の
ズボンのポケットに入れた記憶があるのに、手紙はとうとう発見されなかった。
 まさか、手紙までもが雪隠しに遭ったとでも言うのだろうか。
371雪隠し伝説編165:2007/06/02(土) 00:17:16 ID:t8HnlM2A
 実りのない疲れ果てたぼくたちは、談話室に戻った。
 そこへ、美樹本さん、春子さん、正岡さんの三人が話しかけてくる。
 三人は、みどりさんが見つかったのかどうか訊くかと思いきや、とんでもないことを訊いた。
「なあ、あんたちは、誰が一番夏彦ちゃんの育て親に相応しいと思う?」
 美樹本さんが、そう訊いた。
「おい。まだ名前が夏彦だと決まったわけじゃないぞ!」
 正岡さんが、怒鳴りたてた。
「冬美ちゃんを育てる権利は真理ちゃんと透くんにあると思うけど、この男の子を育てる
権利は、今シュプールにいる全員にあると思うの。誰が一番育て親に相応しいと思う?」
 春子さんが、そう訊いた。
 この人たちは、本当に……。
 せめて、雪隠しに遭った香山さん、夏美さん、みどりさんのことを心配するそぶりでも
見せろよ、とぼくは思った。だが、聞かれた以上、答えないわけにはいかない。

 ぼくは答えた。

A「育て親に相応しいのは、美樹本さんです」
B「育て親に相応しいのは、春子さんです」
C「育て親に相応しいのは、正岡さんです」
D「育て親に相応しいのは、小林夫妻です」
E「育て親に相応しいのは、ぼくと真理です」
F「育て親に相応しいのは、可奈子ちゃんです」
G「育て親に相応しいのは、啓子ちゃんです」
H「育て親に相応しいのは、俊夫さんです」
I「育て親に相応しいのは、村上さんです」
372165:2007/06/02(土) 00:24:58 ID:t8HnlM2A
 訂正。
 大急ぎで書いたので、誤字脱字や表記ミスが多いみたいです。ごめんなさい。

>>370 5行目。
×ぼく、真理、俊夫さん、小林夫妻、啓子ちゃん、可奈子ちゃん、村上さんの七人は、それからシュプールの中を捜索した。
○ぼく、真理、俊夫さん、小林夫妻、啓子ちゃん、可奈子ちゃん、村上さんの八人は、それからシュプールの中を捜索した。

>>371 1行目。
×実りのない疲れ果てたぼくたちは、談話室に戻った。
○実りのない捜索に疲れ果てたぼくたちは、談話室に戻った。

 他にもあるかもしれませんが、どう間違えたのか分かるのであれば、脳内変換して読んでください。
373生き埋め編165:2007/06/02(土) 00:42:01 ID:t8HnlM2A
>>357

Bぼくは、犯人が真理であるはずがないと思った。
「みなさん! 冷静に、よく考えてください。真理に、人殺しなんてできるはずがない
じゃありませんか」
 ぼくはそう言ったが、誰も耳を貸そうとはしなかった。ただ、真理だけは、悲しさと
嬉しさが入り混じった表情で、涙を流していた。
「せやけど、真理ちゃん以外に犯行が可能やった人間はおらんのや。真理ちゃんが犯人
やとしか思えん」
 香山さんが殺気立った表情で言った。既に、啓子ちゃん、田中さん、今日子さんの、
三人もの人間が殺されているのだ。神経が参っているのも無理はない。
「でも、香山さん。あなたは、夏美さんが犯人扱いされようとしたときに、言ったじゃ
ありませんか。『夏美には、絶対に人殺しなんてできひん! わしが保障したる!』って。
あの言葉を、今度はぼくが使ってはいけないという法律でもあるんですか? 真理は、
絶対に人殺しなんかじゃない。ぼくは、真理を信じている」
 ぼくは、堂々と言った。
 真理が、泣きじゃくりながら、ぼくに抱きついてきた。
「そ、それはそうやけど……」
 香山さんは、顔を背けた。
「それなら、俺だったら人殺しができるとでも言いたいのか?」
 美樹本さんが、仏頂面で言った。
「うちなら人を殺せると言いたいんか?」
 夏美さんが、眉を吊り上げて言った。
 駄目だ。ぼくが真理を庇えば庇うほど、逆効果だ。ぼく一人が真理を庇っても、恋に盲目に
なってしまった男が、殺人犯である彼女を隠匿しようとしているようにしか映らないのだろう。
 ぼくは、何を言っても無駄だと思った。
「逃げろ!」
 ぼくは、咄嗟に、真理の手を引いて食堂を飛び出した。
 どこにも行く当てはなかった。ぼくは、食堂を飛び出した後、本能の赴くがままに走った。
 何も考えずに走っているぼくの足は、一度通った道を辿っていた。前に可奈子ちゃんを追い
かけた道だった。そう気づいたときには、遅かった。ぼくと真理は、従業員用の休憩室に
飛び込んだ。そこには、啓子ちゃんではなく、気絶した可奈子ちゃんが寝かされていた。
374生き埋め編165:2007/06/02(土) 01:03:06 ID:t8HnlM2A
 ぼくは、急いで内鍵のツマミを回した。
 間一髪だった。ぼくが内鍵をかけた直後に、がちゃがちゃとノブが回された。ここの
ドアは、鍵穴が二種類あった。ツマミを回すだけの内鍵と、外鍵と共有しているタイプの
鍵穴だ。こんな奇妙な作りの鍵になっているのは、スキーのシーズンでなく、俊夫さんや
みどりさんのような従業員を雇う必要がないときは、ここを倉庫代わりに使っているから
だろう。
「小林くん! マスターキーを持ってくるんや!」
 香山さんが叫ぶ声が聞こえた。誰かが走り去っていく足音も聞こえた。
「真理! 小林さんが鍵を持ってくる前に、バリケードを作るんだ!」
 ぼくはそう言いながら、部屋の隅に置いてあった机をドアの前に置いた。真理が、
座椅子を机の前に置く。ぼくは、テレビを座椅子の前に置き、テレビの台を横にして
乗せた。だが、これだけでは、駄目だ。軽すぎる。体当たりでもされれば、ドアを
破られてしまうだろう。
 ぼくは焦った。
 そんなぼくに、床に置かれたガムが目に入った。おそらく、俊夫さんやみどりさんの
私物だろう。これだ。ぼくは、急いでガムを噛むと、それを吐き出し、鍵穴に詰めた。
その直後、香山さんの声が聞こえた。
「小林くん、遅いで」
 そして、鍵穴に鍵が差し込まれた様子だった。だが、ガムのおかげで鍵は開かなかった
ようだ。ぼくは、安堵の溜め息をついた。
「みんなで体当たりするんだ!」
 俊夫さんの声が聞こえた。
「真理! ドアを押さえろ!」
 ぼくは言いながら、ドアを押しつけた。真理も手伝う。
 そして、ドアに激しい衝撃があった。ドアにトラックがぶつかったのではないかとすら
疑いたくなった。押さえていた手が痺れたような気がした。
 このままでは、いつか、ドアを破られてしまうだろう。
 生存者の中で一番おとなしそうな春子さんまでもが、斧のようなものはないんですか、
と大声で訊いている声が聞こえた。
 雪崩で生き埋めになり、連続殺人が発生するという極限状況のせいで、みんな、
おかしくなってしまっているのだ。
 ぼくは、追い詰められた人間の弱さが、悲しかった。
375生き埋め編165:2007/06/02(土) 01:13:46 ID:t8HnlM2A
「……透」
 真理が、ぼくを呼んだ。ぼくは、真理の濡れた瞳を見た。
「私のせいで、ごめんね」
「真理のせいじゃないよ。ぼくは、真理は犯人なんかじゃないって、信じてる。おかしく
なっているのは、みんなの方なんだ」
「ありがとう……」
 真理が、儚い笑顔を浮かべた。
 ぼくは、こんなにも悲しい笑顔を、今まで一度も見たことがなかった。
「ねえ、私が今まで素直になれなくて言えなかったこと、言ってもいい?」
 こんな状況だというのに、真理は、照れたような表情を見せた。
 また、俊夫さんたちがドアに体当たりしたらしい。ドアを押さえつけている手に、激しい
衝撃が走る。
「いいよ。言って」

「私、透のこと、本気で好きだったよ。愛してた」

 好きだったよ。
 愛してた。
 それは、ぼくが長い間待ち望んでいた言葉のはずだった。だが、何かおかしかった。
何かが間違っていた。
 再びドアに衝撃があった後で、ぼくは言った。
「……真理。どうしてだ? どうして、過去形にするんだよ。『だった』って、何だよ」
「ごめんね。だって……だって、私は――」
 俯いた真理の目から、大粒の涙が零れる。
「ぼくは、真理を愛してる。真理は人殺しなんかじゃないって、信じてる。世界中の人間が
きみを敵に回そうと、ぼくだけは真理の味方だ!」
 ぼくは、そう叫んだ。その直後、ドアに、これまでにない衝撃が走った。畳の上で踏ん
張っていたぼくの足が、押されて滑った。ぼくは、必死に体勢を立て直した。

 そのとき――声が、聞こえた。
「あなたたち、何をやってるの?」
 気絶していた可奈子ちゃんが、目を覚ましたのだった。
376生き埋め編165:2007/06/02(土) 01:38:28 ID:t8HnlM2A
 ああ、もう、どうして可奈子ちゃんは、いつもいつも、最悪のタイミングで目を覚ます
のだ。可奈子ちゃんが目を覚ましたのは、俊夫さんたちがドアに体当たりする音や、
その大声のせいだと分かってはいたが、ぼくは可奈子ちゃんのタイミングの悪さを呪い
たくなった。
「ねえ、何してるの?」
 可奈子ちゃんは、もう一度ぼくと真理を見た。
「その――実は、俊夫さんたちが暴動を起こしているんだ。この中に入ってきて、
可奈子ちゃんを襲おうとしているんだ」
 追い詰められたぼくは、とんでもないことを口走ってしまった。
 隣にいた真理が、まったくもう、とでも言いたげな呆れた表情をした。
「そんな……。何で、私を」
 起きたばかりの可奈子ちゃんは、かなり混乱していた。
「みんな、誰でもいいんだよ。みんな、ただ、怖いだけなんだ。怖くて怖くて仕方がない
から、誰かに罪を着せて、自分を安心させようとしているだけなんだ。ただ、それだけ
なんだ」
 それは、ぼくの本心だった。そして、同時に、ぼく自身にも当て嵌まることだった。
 可奈子ちゃんは、ふらふらと覚束ない足取りで立ち上がり、ドアを押さえているぼくと
真理に加勢してくれた。
 驚いたことに、まだ病人のような青白い顔をした可奈子ちゃんは、ぼくのとんでもない
作り話を信じてしまったようだった。起きたばかりで、判断力が低下していたのだろう。
もしくは、愛する啓子ちゃんが亡くなったことを考えるのを拒絶したくて、何か別のことに
没頭したかったのかもしれない。
 いや、そうではない。可奈子ちゃんは、今の状況を、全く把握していないのだ。
 可奈子ちゃんが最初に気絶したのは、雪崩が起きたときだった。夏美さんのアリバイが
問題となっているときに起き出してきて、夏美さんのアリバイを証言したのだが、本人には、
そのような自覚はなかっただろう。可奈子ちゃんは啓子ちゃんの遺体に直面して、再び
意識を失った。それから今までずっと眠り続けていたので、田中さんや今日子さんが
殺されたことはおろか、アリバイのない真理が疑われていることすら、何も知らないのだ。

Aぼくは、真理のために、可奈子ちゃんを騙して味方につけることにした。
Bぼくは、ありのままを正直に話して、可奈子ちゃんの判断に委ねることにした。
377名無しのオプ:2007/06/02(土) 08:03:07 ID:+RmciOUH
どう転がるか楽しみなのでBで。
378名無しのオプ:2007/06/02(土) 08:21:32 ID:iN7L2Sck
>>377
どのレスに対する選択肢なのか明記しないと書き手さんも困るし、他の選択肢を選ぼうと思ってる人も困っちゃうよ
>>165
やっぱり無理してそうだなあ
忙しい日は無理して書き込まなくてもいいのでは
379377:2007/06/02(土) 08:33:19 ID:+RmciOUH
>>378
あ、ごめんなさい。
複数の話が同時進行していても、直後のレスならレス番つけなくてもいいのだと勝手に勘違いしてました。
じゃあ改めて>>377>>376宛てという事でお願いします。
380名無しのオプ:2007/06/02(土) 08:36:24 ID:+RmciOUH
で、改めてスレを読み返したら>>371がまだ未選択だったのですね。
内容的にも非常に悩むし、自分ばかり選ぶのも何なので他の人に任せる事にします。
しばらく誰も選ぶ様子がなければ、その時に改めて選ぶかもしれませんが。
381名無しのオプ:2007/06/02(土) 09:20:31 ID:BKwQZjOQ
>>371
じゃあDで。
382雪隠し伝説編165:2007/06/03(日) 11:44:32 ID:T0QTXk7k
>>371
D「育て親に相応しいのは、小林夫妻です」
 ぼくは、そう答えた。
 それまで、夏彦ちゃん――じゃなかった、飛行機事故から生還した赤ちゃんを奪い合っていた
美樹本さん、春子さん、正岡さんの三人は、何が起こったのか分からないという表情をしていた。
「私、それ、いい考えだと思うわ」
 真理が、そう言って賛成してくれた。真理の隣にいる可奈子ちゃんも頷く。
「私も、小林さんたちなら安心です」
「小林夫妻なら、赤ちゃんを大事にしてくれそう。何と言っても、料理がうまいし」
 みどりさんを捜索していたときに自室から持ってきたスナック菓子を、今も口に運び続けて
いる啓子ちゃんらしいコメントだった。
「でも……、いいんですか?」
 今日子さんの頬は、上気しているように見えた。
 今日子さんは、一年前に流産して以来、子供を産むことができない身体になってしまった。
だが、今日子さん本人は、とても子供が好きなはずだった。一年経った今でも、生まれてくる
はずだった赤ちゃんのために集めた粉ミルクや哺乳瓶やベビーベッドや赤ちゃん用の服などを
地下室に片付けたまま、捨てることができずにいたくらいなのだから。
 今日子さんは、恐る恐る、思いがけない成り行きに呆然として固まっている正岡さんの腕から、
赤ちゃんを受け取った。それまで、泣き叫んでは疲れて眠るということを繰り返していた赤ちゃん
も、今日子さんに抱かれると、安心したような顔になって眠った。
 それは、絵画のように、とても微笑ましい光景だった。

――あなたは――。そう、とても透明な子供だったから。
――そう。あなたは、とても透き通るような子供だったのよ。

 幼い頃に聞いた母の声が、耳に蘇った。
 今日子さんは、ぼくが中学校に上がる前に過労死した母に似ている。だから、ぼくは、今日子
さんを喜ばせたくて、育て親に相応しいのは小林夫妻だと言ったのだ。
 ところが、今日子さんの夫である小林さんは、恐怖に引き攣ったような笑顔で、遠くから、
赤ちゃんを嬉しそうに抱く今日子さんを見ていた。それは、見守っているのではなく、本当に、
見ている、という表現が正しかった。
383雪隠し伝説編165:2007/06/03(日) 12:11:22 ID:T0QTXk7k
 なぜだ。どうして小林さんは、あんな表情をするのだ。あの赤ちゃんの育て親に選ばれた
ことが、嬉しくないのだろうか? 今日子さんは子供が欲しかったが、小林さんは、子供が
欲しくないのだろうか? ぼくは、小林さんのところに行き、真意を確かめようとした。
 しかし、その前に春子さんが叫んだ。
「ねえ、今日子さん。悔しいけど、確かにあなたはその赤ちゃんの育て親に相応しいように
見えます。でも、それを承知でお願いします。その赤ちゃんは、私に育てさせてください。
私には、その赤ちゃんが必要なんです。だから、どうかお願いします」
 春子さんはそう言って、今日子さんに頭を下げた。
「おい! そんなのずるいぞ! 誰が夏彦ちゃんの育て親に相応しいか他の人たちに訊いて、
その意見を受け入れるってことにしようって決めたじゃないか!」
 美樹本さんが、激昂した様子で言った。
「まだ名前が夏彦だと決まったわけではありませんが、そうですよ。春子さんに渡すくらいなら、
ぼくに育てさせてください」
 正岡さんも、いつもの軽薄な表情を消して言った。
 だが、正直に言うと、ぼくは、美樹本さんも春子さんも正岡さんも、あの赤ちゃんの育て親に
なる資格があるとは思えなかった。どう見ても、三人とも、雪隠し伝説の赤ちゃんが齎して
くれる期限付きの幸福が目的なのであり、赤ちゃん本人が目的ではないように見えたからだ。
 今日子さんは、三人の剣幕に押されたように後ずさった。ぼくは小林さんを見たが、彼は、
興味がないような顔で成り行きを傍観していた。
 駄目だ。小林さんは、頼りにならない。
 ぼくが、今日子さんを守らなければならない。

 ――母の代わりに。

 唐突に、頭の中に、そんな単語が浮かんだ。母の代わりに、今日子さんを守らなければ
ならない? どうして、ぼくはそんなことを考えたのだろう。母が今日子さんを守る代わりに、
ぼくが今日子さんを守るという意味ではない。母を守る代わりに、今日子さんを守らなければ
ならないと考えたのだ。
 おかしい。ぼくは、おかしくなり始めている。
 母と今日子さんを、同一視し始めている。
 幼い頃のぼくには、父に殴られる母を守ることができなかったから、今、その代わりに
今日子さんを守ろうとしているのだろうか。
384雪隠し伝説編165:2007/06/03(日) 16:21:39 ID:T0QTXk7k
 断筆せざるを得なくなった晩年の父は、本当に惨めだった。
 いや、断筆せざるを得なくなった、という表現は正しくないだろう。断筆する必要など、全く
なかったのだから。ただ、一言、父が批判される原因となった文章に関して、謝罪をすればいい
だけのことだった。ところが、父には、謝るということができなかったのだ。
 ――俺は悪くない。
 それが、ぼくの父の口癖だった。酒を飲んでは、最後にはその口癖が飛び出し、いつも不機嫌に
なった。その不満の捌け口は、いつも母だった。しかし、父は、ぼくをも殴ったり蹴ったりしよう
としたことがあった。母は、自分を犠牲にしてぼくを守ってくれた。
 その次の日、ぼくたちは僅かな金銭だけを持って、着の身着のままで家を出た。
 そして、ぼくは二度と父のいる家に戻ることはなかった。

「私は――私は、どうしても幸せになりたいんです。ねえ、今日子さん。あなたや小林さんは、
既にとても幸福そうじゃありませんか。あなたたちには、その雪隠しの赤ちゃんを育てる必要
なんてないでしょう?」
 春子さんが、そんなことを言っている。
 今日子さんと小林さんが、幸せ?
 本当にそうだろうか。
 今日子さんは、子供が欲しくて欲しくてたまらなかったのに、一年前に流産し、子供を作る
ことができない身体になってしまった。一方、小林さんは、バーのママと浮気し、亜季という
隠し子を作っている。しかも、小林さんは、そのバーのママにお金を渡して、亜季ちゃんを
捨てたのだ。しかも、今日子さんはまだそのことを知らない。
 いったい、この二人のどこが幸せなのだろう。
 ぼくは、理解に苦しんだ。
「私には……私には、どうしてもその赤ちゃんが必要なんです。五年間という期限付きの幸福
だってかまわない。五年間だけでも幸福になれるのなら、私は何でもするわ」
 春子さんは、熱に浮かされたような表情で言った。
「でも、春子さん。その幸福は、他人から奪い取った幸福なんですよ。そんな幸福を手に入れて、
本当の意味で幸せになれると思うんですか?」
 真理が、複雑そうな表情で訊いた。
385雪隠し伝説編165:2007/06/03(日) 17:48:30 ID:T0QTXk7k
春子さんは、泣き笑いのような表情で答える。
「ええ、そう思うわ。幸福っていうのは、ゼロから生まれるものじゃない。何かを犠牲にしな
ければ、幸福にはなれないのよ」
「どうして、そんなふうに考えるようになってしまったんですか?」
 真理が、悲しそうな顔で訊いた。
「あの男たちのせいよ」
「あの男たちって?」
「香山誠一。そして、香山夏美。人間の皮を被ったあいつらのせいで、私はこんなふうになって
しまった」
 雪隠しに遭った香山さんと、夏美さんのせいで?
 ぼくがそう訊く前に、春子さんは誰かに急かされているかのように話し続ける。
「あの男は、本当に最低の人間だった」
 最低の人間。その言葉で、ぼくが父を思い出したのは言うまでもない。
「それだけじゃない。あの女も、けだものだった。あんな奴ら、本当に大っ嫌い。雪隠しで消えて
くれて、せいせいしたわ。私、あの男たちを消してくれた雪隠しの赤ちゃんたちには、本当に
感謝しているんですよ」
 春子さんは、疲れた様子でソファに座ると、天井を仰いだ。
「私が香山と結婚したのは、五年前でした。私が、あんなに年の離れた男と結婚したのは、
皆さんが察しているとおり、お金のためです。私には、死んだ父が残した莫大な借金があった。
香山は、それを返済する代わりに、結婚しろと迫ったんです。でも、その結婚自体は私の弱さが
招いた事態でしたし、そのことで香山を恨んではいません」
 春子さんは、溜め息をついた。
「しかし、私との結婚が偽装だったことは、絶対に許せません。あの男は、私を愛してなど
いなかった。いえ、借金のカタに結婚を迫るようなものが愛だとも思えませんがね。あの男が
愛していたのは、自分の娘だけだった。娘を愛していると言っても、皆さんが想像したような
意味とは違います。あの男は、自分の娘と性的な関係を持っていたんです。私は、それを知って、
夏美ちゃんのために、警察に通報しました。ところが、夏美ちゃんは自分の父親から性的な
虐待を受けていたという事実を、認めようとしませんでした。『このおばはんは頭がおかしいんや。
信用せんといて』なんて言ったんですよ、あの小娘は。その当時、まだ十七歳だったくせに。
おまけに、夏美ちゃんは、警察に通報したことを香山に告げ口をしました」
386雪隠し伝説編165:2007/06/03(日) 18:04:25 ID:T0QTXk7k
「それから、私は毎日、香山からも夏美ちゃんからも嫌がらせを受けるようになりました。この
地獄の五年間で、私の性格は随分と変わってしまいました。私だって、昔はこんな性格じゃ
なかったんです。自分の幸せのために、誰かを犠牲にするような女じゃありませんでした」
 春子さんは、涙を流さなかった。
 だが、それだけに、春子さんの深い絶望が伝わってきた。
 死体の写真を撮る美樹本さんに向かって、『この人でなし! お前には、人間の心っちゅう
もんがないんか!』と怒鳴った香山さん。
 香山さんが雪隠しに遭ったことを知り、『そんな大事なこと、何でもっと早く言わんかった
んや!』と叫んだ夏美さん。
 あの二人が、そんな関係にあったなど、ぼくには想像もできなかった。
「春子さん。今から、厳しいこと言いますけど、聞いてください」
 真理が、何かを決意したような表情で言った。
「いいわよ、真理ちゃん」
「あなたが、あの赤ちゃんを育てることで不幸にしようとしていたのは、あなたの周囲にいる
人間だけじゃありません。あなたは、あの赤ちゃんのことも、不幸にしようとしていたんです」
 真理の言葉に、春子さんは胸を突かれたような顔をした。
 春子さんは、何も言わずに立ち上がった。
 お酒も飲んでいないのに、酔ったような足取りで、階段の方へ向かった。
「どこに行くんですか」
 真理が訊いた。
「今日はもう疲れましたから、寝ます」
 振り返って答えたその顔は、いつもの春子さんに戻っていた。ぼくたちは、誰も春子さんを
止めなかった。今日子さんは、心配そうに春子さんを見送った。
 美樹本さんや正岡さんは、ライバルが減ってくれて嬉しいという表情をしていた。

 十分後。
 春子さんが上っていった二階から、悲鳴が聞こえた。
 まるで、断末魔のような悲鳴だった。

 どちらにせよ、かまいたちの夜は、まだ始まったばかりのようだった。
387雪隠し伝説編165:2007/06/03(日) 19:21:29 ID:T0QTXk7k
「今の悲鳴、聞こえた?」
 真理が、恐怖に引き攣った顔で言った。
「何かあったんだ。もしかしたら、みどりが現れたのかも」
 俊夫さんがそんなことを言い、階段を駆け上がっていく。
「待ってください! 俊夫さん、一人じゃ危険ですよ」
 ぼくはそう言いながら、俊夫さんの後を追った。真理と小林さんもついてくる。
 二階に上がると、俊夫さんが香山夫妻の部屋のドアを開けるところだった。その途端、部屋から
冷気が飛び出してきた。部屋の窓が開いているのだ。カーテンが激しく揺れている。
「どうして窓が開いているんだろう」
 小林さんが訊いたが、もちろん誰にも理由は分からない。小林さんは窓を閉めた。
「それより、春子さんは?」
 真理が訊いた。春子さんの姿は、部屋の中にはなかった。俊夫さんが、バスルームのドアと
トイレのドアを開けたが、そのどちらにも、春子さんはいなかった。まさか、春子さんまでもが
雪隠しに遭って蒸発してしまったのだろうか。
 まさかそんなところにいるはずがないと思いながら、ぼくは、ベッドの下を覗き込んだ。

 そこに、人間の手首が転がっていた。

 ぼくは悲鳴を上げながら、急いで顔を上げた。
 四人は、代わる代わるベッドの下を覗き込み、その手首がぼくの幻覚などではないことを証明
した。俊夫さんが、掃除用具入れからモップを持ってきて、そのモップで手首を引き寄せた。
 間違いなく、人間の右の手首だ。
 血は流れていない。俊夫さんが、意を決した表情で手首に触れると、こう言った。
「冷たい。まるで、凍っているみたいだ」
「この大きさなら、多分女の人の右手だと思うけど、いったい誰の手なのかしら」
 真理がそんなことを訊いた。ぼくは答える。

A「春子さんの手じゃないかな」
B「みどりさんの手じゃないかな」
C「夏美さんの手じゃないかな」
D「飛行機事故で亡くなった人の手じゃないかな」
388名無しのオプ:2007/06/03(日) 23:46:41 ID:Fn4UL+kE
Dで
389名無しのオプ:2007/06/04(月) 11:58:04 ID:V5CXTaLa
横からすみません!楽しく読ませていただいて、いろいろ推理しているうちに、
生き埋め編の、メール欄が犯人のENDを考えつきました。
このスレって、途中から参加するのOKですよね?
もし、165さんの考えている犯人と違うのであれば、続きを書いてみたいのですが、
どうでしょう?
390165:2007/06/04(月) 15:29:14 ID:095Ep2qE
 まさか、今頃になって書き手さんが現れるとは思わなかったので、
正直に言うと、戸惑っています。
 もしかして、オフ会に参加した人ですか?
 続きを書いてもらってもいいような気もするのですが、もしも、二人の
考えている犯人が同一人物だった場合、二人同時に進めると、とんでも
ない結果になってしまいますよね。
 それに、次に殺される予定の人とかもいて、まだ解決編ではありません
し……。
 犯人が違うのであれば、生き埋め編の選択肢の中で、まだ選ばれて
いない選択肢を選んでいただいて、続きを書いてもらってもいいのですが。


 じゃあ、フリーメールのアドレスを載せてもらえますか?
 それで、メールでお互いに話し合って、考えている犯人が違うのであれば、
>>389さんと俺が、同時進行で生き埋め編を二種類進める、というのは
どうでしょうか?
 絶対に、携帯電話やPCの本アドは載せないでくださいね。
 また、フリーメールのアドレスも、直接載せるのではなく、
    (a)を@に変えてください。
 とか、
    最後の文字をpに変えてください。
 という感じで載せてくださいね。
391389:2007/06/04(月) 15:55:55 ID:5ml3YCVP
確かに犯人や動機などがかぶってしまうとまずいし、
同時進行だと、読む方も混乱されるかもしれないので、
自分は165さんのお話がすべて終わったとき、真相がかぶってなかったら、
未選択の選択肢を選んで書く、ということにしようかと思います。
お邪魔してすみません。続きがんばってください。
392生き埋め編165:2007/06/04(月) 19:23:04 ID:V0EmTzdL
>>376
Bぼくは、ありのままを正直に話して、可奈子ちゃんの判断に委ねることにした。
「可奈子ちゃん、今から、ぼくたちの身に起こっている状況を説明するけど、その間も
ずっと、このドアを押し続けてくれると約束してくれないかな?」
 ぼくは可奈子ちゃんに頼んだ。
「ええ、いいですよ」
 可奈子ちゃんは素直に頷いてくれた。
「まず、きみに謝らないといけない。俊夫さんたちが暴動を起こして、可奈子ちゃんを
襲おうとしているというのは、嘘なんだ」
「ええ? じゃあ、いったい誰を……」
「真理だよ。俊夫さんたちは、真理を捕まえようとしているんだ」
「どうしてそんなことになったんですか?」
 可奈子ちゃんが、わけが分からないという表情をした。
 ぼくは、まず、あの雪崩が人為的なものである可能性が高いことを説明した。
「……というわけで、あの天候の日に雪崩が起きるのは不自然なんだ」
「つまり、啓子の命を奪った雪崩を起こした奴は、今もシュプールの中にいる可能性が
高いってこと?」
 可奈子ちゃんは、激しい怒りを感じているのだろう。体が震えていた。
「まだ決まったわけじゃないけどね」
「啓子が死んだのが、事故じゃなくて殺人だったなんて。絶対……絶対に、許さない!」
 可奈子ちゃんは、悔し涙を流していた。
 そのとき、ドアの向こうから、声が聞こえた。
「カナちゃん? 目を覚ましたんか?」
 夏美さんの声だった。可奈子ちゃんが大きな声を出したので、向こう側に聞こえたのだろう。
「うん。目が覚めたの」
「カナちゃん、逃げて! 真理ちゃんは、三人もの人間を殺したんや!」
 夏美さんが叫んだ。
「ちょっと待って! 今、透さんと真理ちゃんの話を聞いているところなの! しばらくドアに
体当たりしないで!」
 可奈子ちゃんが叫び返した。間一髪だった、とぼくは思った。もしも、可奈子ちゃんに嘘を
つき続けていたら、このような展開にはならなかっただろう。
393生き埋め編165:2007/06/04(月) 19:47:53 ID:V0EmTzdL
「話を続けてもいい?」
 ぼくは、愛する啓子ちゃんが殺されたことを知ったばかりの可奈子ちゃんのことが心配
だったが、あまり時間はないはないと思った。
 いつ、俊夫さんたちがドアを突き破ってもおかしくないからだ。
「いいですよ。続けてください」
 可奈子ちゃんは頷いた。
 ぼくは、田中さんのものと思われるバラバラ死体が発見されたことを説明した。そして、
そのときに作成したタイムテーブルを、可奈子ちゃんに見せた。
「……それで、まず、美樹本さんが田中さんに成りすましていたんじゃないかって、ぼくは
推理したんだけど、どうやら外れだったみたいなんだ。でも、その後、アリバイがないのは
美樹本さんただ一人だということになって、美樹本さんを一階のトイレに閉じ込めたんだ。
だけど、みんなが寝静まってから、今度は今日子さんの死体が発見されて、やっぱり、
美樹本さんは犯人ではなかった、ということになった」
「それで、次に疑われたのが、真理ちゃんだということですか?」
「そうだ」
 ぼくが答えると、可奈子ちゃんは、タイムテーブルを睨んだ。
「私は……真理さんが犯人である可能性は低いと思います」
 可奈子ちゃんは、そう答えた。
「え? どうして?」
 当の真理が驚いている。
「だって、よく考えてください。真理ちゃんが田中さんを殺したのだとしたら、田中さんを
バラバラにするチャンスは、私と啓子が生き埋めになっている間の、僅かな時間ですよね。
もしも、透さんが真理ちゃんの様子が心配になって、真理ちゃんと冬美ちゃんが待っている
はずの玄関に戻ったとしたら、すぐに真理ちゃんのアリバイは崩れてしまいます。そんな
危険な真似はしないと思うんです」
「確かに、冷静に考えるとそうなんだよね。でも、みんなは冷静じゃなくなっているから、
そういう根拠じゃ納得してくれないと思うよ」
 ぼくは、そう言って溜め息をついた。
「私も、透が言う通りだと思う。美樹本さんが疑われたときだって、よく考えてみると、誰かが
美樹本さんの様子が心配になって二階にいっていたら、美樹本さんが犯人かどうかは、
すぐに分かっていたんだものね」
 真理も、今頃になってそんなことを言い出した。
394生き埋め編165:2007/06/04(月) 20:10:11 ID:V0EmTzdL
「やっぱり、みんなを納得させるには、ちゃんと真犯人を見つけるしかないね」
 ぼくは言った。口で言うのは簡単だが、実際にはかなり難しそうだった。
「私もそう思います。私は、啓子の仇をとりたい。啓子の命を奪った犯人を、絶対に
許しはしないわ」
 可奈子ちゃんは、決意を固めた表情で言った。それから、可奈子ちゃんは、何かに
気づいた顔で、ぼくと真理を見た。
「私が、こんなにも啓子の仇をとりたいと思っているのって、変だと思いますか?」
 可奈子ちゃんにそう訊かれて、ぼくは返答に困った。
「全然変じゃないと思うわ。愛し合っていたのなら、当然の反応だもの。私だって、
透が殺されたのだとしたら、絶対に犯人を許すことなんかできないから」
 真理は、可奈子ちゃんに微笑みかけた。
 そうだ。ぼくと真理は、愛し合っている。ぼくは真理の無実を証明したい。
「……私が啓子と愛し合っていたこと、知っているんですね」
 可奈子ちゃんはそう言って、悲しげに視線を足元に落とした。
「うん。夏美さんに聞いたんだ」
 ぼくは正直に答えた。
「私が啓子と出会ったのは、去年のパレードのときでした」
「パレード? パレードって、何のパレード?」
 ぼくは訊いた。
「『東京レズビアン&ゲイパレード』っていうやつです。今年……2007年からは、
『東京プライドパレード』に名称が変更になりましたけどね」
「へぇ。知らなかったよ。そんなパレードがあったんだね」
「西暦2000年に始まったパレードです。毎年、渋谷で行われているんです。
全国から集まった、同性愛者やバイセクシュアルやトランスジェンダーやトランス
セクシュアルの人たちが、異性愛者の人たちに、少しでもセクシュアルマイノリティを
身近なものとして感じてもらい、なおかつ、セクシュアルマイノリティに対する差別を
なくそうとするのが目的のパレードです。もちろん、孤立しがちなセクシュアル
マイノリティ同士の連結を強めようという目的もありますけどね。それ以外にも、
『レインボーマーチ札幌』とか、似たようなイベントはいくつかあります」
 啓子ちゃんとの楽しかった思い出が蘇っているのだろうか、可奈子ちゃんは、
穏やかで優しい表情になった。
 ああ、本当に二人は心の底から愛し合っていたんだな、とぼくは思った。
395生き埋め編165:2007/06/04(月) 20:41:20 ID:V0EmTzdL
「その、去年のパレードのときに、パレードに出発する前に、雨が降ってきたことがあったの。
私は、慌ててテントに駆け込んだ。そしたら、狭いところに大勢の人たちが雨宿りしようと
集まってきたから、まるで満員電車みたいになっちゃったんです。それで、啓子が持っていた
ホットドッグのケチャップが、私の服に付いちゃったんです。啓子は、慌てて謝って、クリー
ニング代を弁償しますと言ったの。私は、すぐにティッシュで拭いたら全然目立たなくなった
から、別にいいですよって答えた。でも、啓子は、ああ見えて頑固なところがあるから、
絶対に弁償すると言って聞かなかったの。それで、パレードで渋谷の街を練り歩くときに
どうするか相談しようってことになって……」
 可奈子ちゃんの目から、涙が出てきた。啓子ちゃんの遺体に直面したときのことを思い
出してしまったのだろう。
「それが、啓子ちゃんとの出会いだったんですね」
 真理が訊いた。
「うん。メールアドレスを交換して、仲良くなって……。二人とも、そのとき、まだ短大二年生
だったんだけど、就職先は同じところにしようって話し合って、面接のときとかも励まし
合ったわ。その会社で、夏美さんとも出会って、香山さんや春子さんとも仲良くなって、じゃあ
五人でスキーにでも行かないかってことになった。それで……楽しい旅行になるはずだった
のに。一生の思い出になる、素晴らしい旅行になるはずだったのに……」
 可奈子ちゃんは、顔を両手で覆って泣き出した。
「差別をなくすためのパレードって言ったけど、日本は同性愛者に寛容な国なんじゃないの?」
 ぼくは、そう訊いた。可奈子ちゃんは、悲しそうな顔で見上げた。
「日本は、主要先進国の中で、最も同性愛者を差別している国家なんですよ」
「え、そうなの?」
 そんな答えが返ってくるとは思っていなかったので、ぼくは驚いた。
「そうです。主要先進国っていうのは、日本、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、
フランスなどの、ロシア以外のG8加盟国などが挙げられますが、この主要先進国の中で、
日本は、最も同性愛者を差別している国家です」
「どうして?」
「まず、主要先進国の中で、同性間の結婚や、パートナーシップ法を認めていないのは、
日本だけです」
396生き埋め編165:2007/06/04(月) 21:03:26 ID:V0EmTzdL
「パートナーシップ法っていうのは?」
 ぼくが訊くと、可奈子ちゃんは、部屋の隅にあった鞄の中から、手帳を取り出した。
 その鞄は、ぼくがみどりさんに可奈子ちゃんに届けて欲しいと頼んだ鞄だった。
 可奈子ちゃんは、手帳のメモを読み上げた。
「夫婦に準じる権利を、同性カップルにも認める法律のことです。現在、オランダ、
ベルギー、スペイン、カナダ、アメリカのマサチューセッツ州では、同性結婚を認めて
います。また、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、グリーンランド、フランス、
アイスランド、ドイツ、フィンランド、イギリス、ルクセンブルク、イタリア、アンドラ、
スロベニア、スイス、チェコ共和国、アメリカのハワイ州、バーモンド州、メーン州、
カリフォルニア州、ニュージャージー州、コチカネット州では、パートナーシップ法を
認めています。どうですか? こうやって見ると、主要先進国の中で同性結婚や
パートナーシップ法を認めていないのは、日本だけでしょう?」
「確かに、そうだね。というより、他の国ではそんなに同性結婚を認めているとは知ら
なかったんだけど」
 ぼくは言った。
「同性結婚やパートナーシップ法が認められていないせいで、大勢の人が苦しんでいます。
例えば、『家族』とは認められないせいで、病院での面会権が認められなかったり、年金や
税金や保険や賃貸住宅など、様々な面で、私たちは差別されています。それだけじゃない。
マスメディアだって、私たちを差別している。例えば、去年はレイザーラモンHG(住谷正樹)
なんていうお笑い芸人が持てはやされたけど、あれなんかは、明らかなゲイ差別です。
どう見ても異性愛者なのに、同性愛者のふりをして、人々の意識に偏見を植え付けたり、
差別意識を利用してお金儲けをするなんて、人間として最低の行為だと思います。また、
『ホモ』とか『レズ』とか『オカマ』のように、差別的な呼び方を、何の躊躇いもなく使って、
セクシュアルマイノリティのことを馬鹿にしています」
 ぼくは、俊夫さんが夏美さんに怒られていたことを思い出した。
「確かに、差別っていうのは、殺人にも匹敵しうるくらいの、人間として最低の行為だと
思うよ。それで、殺人のことだけど、夏美さんのアリバイについて訊いてもいいかな?」
 ぼくは訊いた。
397生き埋め編165:2007/06/04(月) 21:22:36 ID:V0EmTzdL
「夏美のアリバイ……。ああ、あのとき今日子さんに質問されたのは、夏美のアリバイを
調べるためだったんですね」
 可奈子ちゃんは、飲み込みが早かった。
 ぼくは、タイムテーブルを指差しながら言った。
「田中さんがシュプールに着いたと思われる時間は、五時半過ぎだ。そして、香山夫妻と
夏美さんが二階から下りてきたのは、六時半頃だ。それまでの間、きみと啓子ちゃんと
夏美さんは、どういうふうに行動していたの?」
 ぼくは訊いた。すると、可奈子ちゃんは、思いがけないことを言い出した。
「私、田中さんがシュプールに着いたときのこと、覚えていますよ」
「え?」
「田中さんが、『すいませーん!』って大声で従業員の人たちを呼んでいる声を聞いたんです」
 可奈子ちゃんは、当たり前のように言った。
「それは、いつ?」
「確か、五時半を少し過ぎたくらいの時間だから、このタイムテーブルと一致していますよ。
五時半頃になるまで、夏美は私たち『新OL三人組』の部屋にいました。そこへ、香山さんと
春子さんがやって来て、夏美に用があると言いました。そのとき、春子さんが、『お菓子が
あるから、啓子ちゃんや可奈子ちゃんもどうですか』って誘ってくれたんです。それで、
啓子がお菓子って聞いて、目を輝かせたから、私たち三人は、一旦香山夫妻の部屋に行き
ました。でも、どうやら香山さんたちと夏美は、何か大事な話があるみたいでお邪魔そう
だったから、私と啓子は部屋に戻ることにしました。私と啓子は、お菓子だけ持って、
香山夫妻の部屋を出ました。それが、五時半過ぎだったんですけど、香山夫妻の部屋の
ドアを閉めたとき、ちょうど、『すいませーん!』っていう声が聞こえたんです」
「田中さんは、他に何か言っていなかった?」
 ぼくは、意気込んで訊いた。
「『車を停める位置は、あそこでいいんですか?』って叫んでました。その後、誰かが
走るような音が聞こえたので、従業員の誰かが応対に出たんだな、と思って、私と啓子は
自分たちの部屋に戻りました。それから、啓子が部屋の中で『こんや、かまいたちが
あらわれる』という不審な手紙を発見するまで、私と啓子は一緒にいました」
 可奈子ちゃんは、そう証言した。
「その手紙は、どこで発見されたんですか?」
 真理は、そう訊いた。
398生き埋め編165:2007/06/04(月) 21:50:57 ID:V0EmTzdL
「手紙を発見したのは啓子なんですけど、どこに手紙が置いてあったのかは、私も見ました。
椅子の脚の下にあったんです」
「椅子の脚の下?」
 ぼくは、訊き返した。
「はい。ほら、私たちの部屋は三人部屋だから、ドアを入ってすぐの場所に、小さな机が
あって、その机の上にテレビがあるんです。テレビが邪魔になってるから、実際には机と
しての機能はあまり果たさないんですけど、一応、その机にも椅子があります。その椅子の
脚の下に、手紙が挟まっていました」
「手紙がいつからあったのかは分からない?」
 ぼくは訊いた。
「それはちょっと……。私たちはベッドを椅子代わりにしていたし、ソファもあるから、
あの椅子は使わないんですよね。でも、ドアの下から手紙を差し込めば、ちょうどあの
椅子の下に手紙が挟まってもおかしくないと思いますよ」
 ぼくは、タイムテーブルをもう一度確認した。
「手紙を『新OL三人組』の部屋に入れた可能性がある人物は……、まず、部屋の持ち主
である、可奈子ちゃん、啓子ちゃん、夏美さんの三人。そして、夏美さんを呼びに来た
香山夫妻。そして、単独行動をすることができた田中さん。田中さんを出迎えた後、一人に
なった俊夫さん。田中さんにルームサービスのピザを届けた小林さん。この八人ってところ
かな?」
 ぼくは、そう訊いた。
「今の話だけで特定するのは無理なんじゃない? 手紙がいつからあったのか分からない
わけだし……」
 真理がそう言った。
「でも、午前中、私たちがスキーに行っているときには部屋の掃除があったはずだから、
少なくともその後ということになると思う」
 可奈子ちゃんは、考え込むような表情で言った。
「ねえ、透。田中さんがシュプールに着いた前後だけじゃなくて、雪崩が起きた十二月
二十一日の午前中と、その前日の二十日の、みんなの行動についても調べた方がいい
んじゃないかしら?」
 真理が、そう言った。ぼくは頷く。
「そうだね。田中さんが殺されたと思われる時間帯以外のみんなの行動も、タイムテーブル
に加えた方が良さそうだね。後で、もう一度みんなの話を聞いてみよう」
399生き埋め編165:2007/06/04(月) 22:12:05 ID:V0EmTzdL
「それよりも、私は、雪崩を起こした意味について考えた方がいいような気がしますけど」
 可奈子ちゃんがそう言った。
「雪崩を起こした意味?」
 ぼくは、可奈子ちゃんが何を言っているのか分からなかった。
「ええ。だって、よく考えてみてください。透さんたち素人ですら、あの雪崩が自然現象
ではないことに気づいたんですよ。犯人だって、警察が調べれば雪崩が人為的なもので
あることを見抜くことぐらい、想像がつくでしょう。そんな危険を冒す理由があったはずです」
「つまり……犯人は、闇雲に雪崩を起こしたわけではなく、何らかの目的があって雪崩を
起こしたと言いたいんですか?」
 真理が、そう訊いた。可奈子ちゃんは頷いた。
 雪崩を起こす理由?
 今まで、そんなことは考えたこともなかった。可奈子ちゃんは、目のつけどころが違う。
 犯人は、何のために雪崩を起こしたのか。下手をすれば、シュプール全体が雪崩に
押し潰され、全員が生き埋めになって窒息死か凍死する危険すらあった。むしろ、雪崩の
被害に遭ったのが、談話室だけで済んだことの方が幸運だろう。
 待てよ?
 今まで、ぼくは、犯人が時限爆弾のようなものを爆発させて、雪崩を起こしたのだと
思い込んでいた。だが、もしもそうじゃなかったとしたら? タイミングを見計らって、
爆弾のスイッチを押したのだとしたら?
 犯人の目的が、あのとき談話室にいた人間を殺すことだったとしたら、どうだろう?
 談話室の方向から雪崩を発生させ、なおかつ、談話室の窓に細工をして、割れやすく
しておけば、談話室が雪に埋まることは、犯人にも想像できたのではないだろうか?
 あのとき談話室にいたのは、ぼく、真理、啓子ちゃん、可奈子ちゃん、夏美さん、
春子さん、美樹本さんの、七人だった。
 だが、犯人が、この七人全員を皆殺しにしようとしたとは考えにくい。
 狙われたのは――窓の目の前にいた、啓子ちゃんと可奈子ちゃんの二人である可能性が
高い。実際、二人は生き埋めになり、啓子ちゃんは亡くなってしまったのだから。
 今まで、啓子ちゃんが死んだのは偶然だと思っていた。だが、最初から犯人が啓子
ちゃんを狙っていたのだとしたら? 動機はなんだ? 啓子ちゃんと田中さんと今日子さんの
三人を殺す動機は、いったい何なのだろう?
400生き埋め編165:2007/06/04(月) 22:36:42 ID:V0EmTzdL
「それから……田中さんをバラバラにしたことにも、何かそうせざるを得ないような
理由があったような気がします」
 可奈子ちゃんは、そう言った。
「バラバラにする理由?」
 ぼくは、鸚鵡返しに訊いた。
「だって、不自然じゃありませんか。どうしてバラバラにしないといけないんですか?
何で、普通に殺すだけじゃ駄目なんですか? 実際、今日子さんは、ただ包丁で刺殺
されていただけだったんでしょう?」
 そう言えば、そうだ。
 なぜ、犯人は田中さんをバラバラにしたのか? 思いついて然るべき謎だった。
「田中さんが憎かったんじゃないんですか?」
 真理は、そう訊いた。
「憎かったらバラバラにしなきゃいけないの?」
 可奈子ちゃんがそう訊き返し、真理もぼくも返答に困った。
 バラバラにする理由。どんな理由が考えられるだろうか。
 死体をバラバラにするには、時間も手間もかかる。バラバラにすることで、犯人は、
何かそれ相応のメリットを得たはずだ。
 ぼくが、美樹本さんが田中さんに成りすましていたのではないかと推理したときは、
『持ち運びやすくするため』と答えた。あの答えで正解だったのだろうか?
 後でゆっくり考えようと思った、そのときだった。


「春子さんが殺された!」


 ドアの向こうから、そんな叫び声が聞こえた。俊夫さんの声だった。
「何やて?」
 夏美さんが驚いて聞き返す声も聞こえた。
 ぼくは、真理と可奈子ちゃんの顔を見た。二人とも、非常に複雑そうな顔をしていた。
 ぼくは、これで、真理が犯人扱いされることはなくなったのだろうな、と思った。
 その代わり、春子さんが殺されてしまったのは、何ともやりきれない話だが。
401生き埋め編165:2007/06/04(月) 23:01:15 ID:V0EmTzdL
 誰かが走って行く音が聞こえる。
 ぼくは、ドアを叩いた。
「誰か! 何があったんですか! 春子さんは、どこで殺されたんですか!」
 ぼくはそう訊いたが、返事はなかった。みんな、ドアの前から立ち去ってしまった
のだろうか。ぼくは、鍵穴に詰めたガムを、ポケットの中のペンで穿り出すことにした。
このペンは、タイムテーブルを作成するときにフロントから拝借したものだ。
 ドアの向こう側からはガムを取り除くのは難しかったはずだが、こちら側からなら、
容易にガムを出すことができる。ところが、真理がぼくの手を掴んで止めた。
「透。待って」
 真理は、真面目な顔で言った。
「どうしたんだよ、真理」
「もしかしたら……罠かもしれない」
「罠? 罠って、何ですか?」
 可奈子ちゃんも、ぼくと同じく、真理の言いたいことが分からないのだろう。
「だから、私をおびき出す罠よ」
「あっ……」
 迂闊なことに、ぼくは、その可能性を考えていなかった。春子さんが殺されたという
のは、俊夫さんがそう叫んだ声を聞いただけだ。ドアの前には誰もいないというのも、
走り去る足音と、返事が無いことから判断しているだけだ。
 本当に、春子さんは殺されたのだろうか?
 本当に、ドアの前には、誰もいないのだろうか?
 すべてが、犯人扱いされている真理を誘き出すための狂言かもしれない。ぼくが
ガムを取り除いてドアを開けたところで、待ち伏せしていたみんなが、ぼくと真理を
取り押さえようとしているのかもしれない。
 だが、もしも狂言じゃなかったら? 本当に春子さんが殺されていたら?
 ぼくは、取り返しのつかない失敗をしようとしているのかもしれない。
 どうすればいいのだろう。ドアを開けるべきなのか。それとも、このまま開けない方が
いいのだろうか。

Aぼくは、思い切ってドアを開けることにした。
Bぼくは、このままドアを開けないことにした。
Cぼくは、窓から脱出することにした。
402165:2007/06/04(月) 23:17:01 ID:V0EmTzdL
訂正。

>>399

23行目。
×あのとき談話室にいたのは、ぼく、真理、啓子ちゃん、可奈子ちゃん、夏美さん、
春子さん、美樹本さんの、七人だった。
○あのとき談話室にいたのは、ぼく、真理、啓子ちゃん、可奈子ちゃん、夏美さん、
春子さん、美樹本さん、冬美ちゃんの、八人だった。

25行目。
×だが、犯人が、この七人全員を皆殺しにしようとしたとは考えにくい。
○だが、犯人が、この八人全員を皆殺しにしようとしたとは考えにくい。
403名無しのオプ:2007/06/04(月) 23:56:25 ID:KcwnbibV
Aで
404雪隠し伝説編165:2007/06/05(火) 13:50:36 ID:BwT5Fm41
D「飛行機事故で亡くなった人の手じゃないかな」
 ぼくはそう言った。その手首が、雪隠しに遭って消えてしまった夏美さんやみどりさんや春子
さんの右手だとは思いたくなかったからだ。
「でも、どうして、飛行機事故の犠牲者の右手が、シュプールの二階に落ちているのよ?」
 真理が、当然の疑問を投げかけた。
 そんなこと、ぼくにだって分かるはずがない。飛行機が墜落したときに、ここまで飛んできた
と考えることはできない。もしもそうなら、窓ガラスが割れているはずだ。たとえ、そのとき
偶然窓が開いていたのだとしても、今頃には室温で解凍されているはずである。そのときから
ずっと窓が開いていたのなら、部屋の温度はもっと下がっているだろう。やはり、飛行機事故の
際に飛んできたのではないだろう。
「まだ、春子さんが雪隠しで消えたと考えるのは早計なんじゃないかな。一応、二階の部屋を
全部調べてみよう」
 小林さんが、そう提案した。
 ぼくと真理は顔を見合わせたが、おそらく、二人とも考えていることは同じだっただろう。
 春子さんは、もうどこにもいないだろう。

 二階の部屋を全て調べたが、結局、春子さんは見つからなかった。
 ぼくたちは、肩を落として談話室に戻った。
「ちくしょう!」
 俊夫さんが、談話室の壁を拳で叩いた。みどりさんが雪隠しに遭ったことに、憤りを感じて
いるのだろう。俊夫さんは乱暴にソファに腰を下ろすと、テーブルの上に置いてあった果物
ナイフを取り上げ、手で弄んでいた。
 ぎらぎらと煮えたぎるような俊夫さんの目が、ベビーベッドの上で寝ていた冬美ちゃんを
捉えた。
 だが、ぼくは、母の面影がある今日子さんの様子が気になり、春子さんの捜索から戻って
きた小林さんを慰めている今日子さんを見ていた。だから、真理が叫び声を上げるまで、ぼくは
異変に気づかなかった。
「俊夫さん! 何してるんですか!」
 真理の声で、ぼくは俊夫さんを見た。俊夫さんは、冬美ちゃんを抱きかかえ、冬美ちゃんの
首筋に、果物ナイフを当てていた。
「誰も動くな! ……動いたら、この子の首を切り裂くぞ」
 俊夫さんの声は、やり場のない怒りに満ちていた。
405雪隠し伝説編165:2007/06/05(火) 14:06:39 ID:BwT5Fm41
「いったい、何が目的なんですか? そんなことをして、何になるって言うんですか?」
 ぼくは、俊夫さんを刺激しないように、細心の注意を払って訊いた。
 たかが果物ナイフだが、それでも、非力な赤ん坊の喉を切り裂くには充分すぎる凶器である。
「俺は……俺は、ただ、この赤ちゃんにみどりを返してほしいだけだ」
 俊夫さんは、思いつめた表情で言った。
 啓子ちゃんと可奈子ちゃんは、部屋の隅に避難している。
 夏彦ちゃん……じゃなかった、飛行機事故から生還した男の子を抱いている今日子さんは、
小林さんに肩を抱かれるようにした状態で、蒼ざめている。
 村上さんは、哀れむような表情で俊夫さんを見ていた。
 美樹本さんは、にやにやと笑っている。
 真理は――ぼくが真理の手を掴んで止めなかったら、俊夫さんに飛びかかっていただろう。
「みどりさんを返してもらう? そんなこと、できると思うんですか」
 真理が、敵意をむき出しにした声音で言った。
「できるさ。みどりを消したのがこいつらなら、みどりを再び出現させることだって、できる
だろう」
 俊夫さんは、醜いものでも見るような目で冬美ちゃんを見ていた。
 ……やめろ。
 やめろ! そんな目で見るんじゃない!
「本気で言っているんですか? 冬美ちゃんは、ただの赤ちゃんですよ。誰かを消したり出現
させたりする力なんてありません」
 真理は、必死に俊夫さんを説得していた。
 その間にも、俊夫さんの体は小刻みに揺れ、今にもナイフで冬美ちゃんを傷つけてしまい
そうになる。ぼくは、気が気ではなかった。
「いや。こいつらは、ただの赤ちゃんなんかじゃない。きみたちだって、知っているだろう。
まず、現れかたが不自然だった。冬美ちゃんは、鍵のかかった車内で発見され、夏彦ちゃんは、
大勢の人がなくなった飛行機の中で発見された。どう考えたって、おかしいじゃないか」
 俊夫さんは言った。真理は、首を振って否定する。
「だけど、それでも冬美ちゃんは人間です」
「いや。こいつらは、化け物なのさ。不幸を呼ぶ化け物なんだ!」
 俊夫さんは、激しい口調で言った。
 ぼくは、耳を塞ぎたくなった。
406雪隠し伝説編165:2007/06/05(火) 14:21:08 ID:BwT5Fm41
「化け物だなんて……ひどい」
 真理は、今にも泣き出しそうだった。
「なあ、おい。みどりを返せよ。俺は、みどりを返してさえもらえれば、それで満足なんだ。
香山さんや夏美さんや春子さんがどうなろうと、知ったこっちゃない。だけど、みどりだけは
駄目なんだ。さあ、みどりを返せよ。みどりを返せ、この化け物め!」
 俊夫さんは、憎しみのこもった声で言った。
 ……やめろ。
 やめろ! やめてくれ! 化け物なんて呼ぶな!



                        ぼ く は 化 け 物 じ ゃ な い !



 え? 今、ぼくは、何を考えたのだろう?
「やめてください! 冬美ちゃんに、そんな酷いこと言わないで!」
 真理が、今度こそ本当に泣きながら言った。
「別にいいじゃないか。こいつらは、ただの人間の赤ちゃんなんだろう? だったら、何を言おうと、
分かるわけないじゃないか」
 俊夫さんは、せせら笑った。
「分かるよ」
 ぼくは、それが自分の声だと気づくのに、かなりの時間がかかった。
「何を言われているかくらい、赤ちゃんだって、分かるよ」
 ぼくの口が、自分のものではないように動いて、そう言った。
 真理が、恐怖に満ちた表情でぼくを見ている。ぼくの挙動は、よほどおかしいのだろう。
 それまで、激しい怒りをあらわにしていた俊夫さんですら、目を見開いてぼくを凝視している。
「透くん、大丈夫か?」
 そう言ったのは、正岡さんだった。今の今まで、知らんふりを決め込んでいた、正岡さんだった。
 性格が父に似た正岡さんの声を聞いた途端、理性の箍が吹っ飛んだ。

 ぼくは、とうとう、思い出してしまった。
407雪隠し伝説編165:2007/06/05(火) 14:43:26 ID:BwT5Fm41
『化け物め!』
 父は、そう言いながら、ぼくを殴ったり蹴ったりした。母とぼくが、家を出る前の日の夜だ。
 母は、泣いていた。父は、激しい怒りをぼくに向けていた。
 まだ小学二年生だったぼくは、父に抵抗するすべもなく、ただ殴られるがままになっていた。
 母は、必死にぼくを庇おうとしたが、酒を飲んで暴れる父には対抗できなかった。
『化け物め! 俺の人生を返せ!』
 父は、そう叫んだ。
 ぼくは、父に何をされているのか、よく分かっていなかった。ぼくが小学校に入学する前
までは、父は世間に名の知れた作家で、テレビにも出演していたし、お金持ちだった。その頃
までの父は、とても優しかった。ただ優しいだけではなく、物事の道理を丁寧に説き、ぼくが
間違ったことをしたときは、どうしてそれがいけないことなのかを教えた上で、叱ってくれた。
理想的な父だった。だが、父が自分の書いた文章の非を認めて謝ることができずに作家を
引退してからは、ぼくたちの暮らしは惨めになる一方だった。父は酒に溺れ、荒んでいった。
父は、毎日母を殴るようになった。ぼくは、母を守りたかった。だが、ぼくにはそんな力は
なかった。そして、父は、幼いぼくまでもを殴ったり蹴ったりするようになった。
『この化け物め! 俺の幸福を返せ!』
 父の叫び声が、耳に蘇った。
 ……違う。 違う! ぼくは化け物なんかじゃない!
 ぼくは、心の中で、激しくそう叫んだ。だが、父は、ぼくを蹴りつけることをやめなかった。
ぼくは、血を吐いた。そして――。そして、ぼくは、こう思ったのだ。

             化 け 物 は 、 お 前 の 方 だ !

 次の瞬間、ぼくの人生を決定的に変えてしまった出来事が起こった。
 風が吹いた。ぼくを殴りつけていた父の腕が、見えないギロチンで切断されたかのように、
切り落とされた。父は、呆気に取られた表情で、肘から先がなくなった腕を見ていた。さらに、
風が吹いた。父の胸に刀傷のような切り跡ができ、血が噴き出した。風が吹いた。ぼくを
蹴飛ばしていた足が、切り裂かれた。風が吹くたびに、父の体は切り裂かれていった。
 窓も開いていないのに、どこから風が来るのかは、分からなかった。
「……かまいたち」
 呆然とした表情の母が、そう呟く声が聞こえた。
408雪隠し伝説編165:2007/06/05(火) 16:36:48 ID:BwT5Fm41
 かまいたち。
 そうだ。あれは、かまいたちのせいだったのだ。
 決して、ぼくが父を殺したわけではない。ぼくは、化け物などではないのだから。
 ……無理だ。どんなに自分自身に言い聞かせても、もう自分を欺くことはできない。
「これは、かまいたちのせいなのよ」
 母は、父のバラバラ死体を目の当たりにして、そう言った。
「全部、かまいたちのせいなの。だから、透は悪くないのよ」
 だが、母が何を言おうと、ぼくの心はからっぽだった。目の前の現実を、脳だけではなく、
身体も拒否していた。ぼくは、その日の夜に、高熱を出した。
 次の日の朝、ぼくは病室のベッドで目を覚ました。父がバラバラになったことを、すべて
忘れていた。
 ぼくは、二度と父のいるはずの家には帰らなかった。母が、父の死体をどうやって処理
したのか、母が死んだ今となっては、もう誰にも分からない。


 遠くで、風の音が聞こえる。
 いや、あれは、風の音ではない。赤ちゃんの泣き声だ。夏彦ちゃんを飛行機の中から
救出したときのことを思い出す。ぼくには、彼の泣き声が、風の音にしか聞こえなかった。
 ぼくは、おかしくなり始めている。
 自分自身を信じることができなくなり始めている。
 だが、それでもぼくは、目を開いた。
「透。目が覚めたの?」
 真理が、傍にいた。ぼくを看病してくれていたのだろうか。
「ぼくは……どうなったんだっけ?」
「覚えていないの? 俊夫さんが冬美ちゃんの首筋にナイフを当てているのを見て、透は
気絶しちゃったのよ。今日は、大変なことがたくさんあって疲れていたから、無理もないわ」
 真理は、優しい微笑を浮かべて言った。
「そうか。気絶したのか」
「随分と魘されていたけど、怖い夢でも見たの?」
「うん。とても怖い夢だったよ」
 ぼくは答えた。
 本当に怖かった。それが、夢ではないことを知っていたから。
409雪隠し伝説編165:2007/06/05(火) 17:07:21 ID:BwT5Fm41
 ぼくは、部屋の中を見回した。ここは、シュプールの二階にある、ぼくの部屋だった。
「そう言えば、俊夫さんはどうなったの?」
 ぼくは訊いた。部屋の中にいるのは、ぼくと真理だけだった。
「俊夫さんは、冬美ちゃんを人質にとって、隣の部屋の中に立てこもっているわ」
「隣の部屋?」
「ええ。冬美ちゃんの泣き声が聞こえるでしょう?」
 真理はそう訊いたが、ぼくには、やはり、風の音にしか聞こえなかった。
「そうだね。でも、俊夫さんの声が聞こえないね」
 ぼくが言うと、真理は顔を上げた。
「本当だわ。さっきまで、俊夫さんの『みどりを返せ!』っていう怒鳴り声が五月蝿いくらい
だったのに」
 真理の顔から、みるみる血の気が引いていった。
「まさか、俊夫さんまで雪隠しに遭って消えてしまったのかな」
 ぼくは、真理が考えていることを当ててみせた。
「私、みんなを呼んでくる!」
 真理はそう言うと、ぼくの部屋から飛び出していった。
 ぼくはベッドを下りると、部屋を出た。風の音は、部屋を出て右隣の部屋から聞こえる。
俊夫さんは従業員なので、俊夫さんの部屋は一階にあるはずだ。おそらく、空き部屋に
立てこもっていたのだろう。
 ぼくは、部屋のドアをノックした。
「俊夫さん。聞こえますか?」
 返事はない。ぼくがドアのノブに手をかけようとしたとき、真理がみんなを連れて戻って
きた。ぼくがドアを開けると、冷気が飛び出してきた。窓が開いているのだ。
 部屋の中に入ると、雪が顔に当たった。冬美ちゃんは、一応毛布にくるまっていたが、
このまま長時間放置されていたら、死んでいただろう。真理は、急いで冬美ちゃんを抱いて
部屋を出た。
「俊夫くんは……?」
 今日子さんが呟いた。
 誰の目にも、俊夫さんが消えてしまったことは明らかだった。
 そして、ぼくは、目が覚めたとき既に、俊夫さんが雪隠しに遭ったことを知っていた。
 あのときの俊夫さんは、ぼくの父にそっくりだったからだ。
410雪隠し伝説編165:2007/06/05(火) 17:58:41 ID:BwT5Fm41
 談話室の中の沈黙を破ったのは、美樹本さんだった。
「これで五人か」
 香山さん、夏美さん、みどりさん、春子さん、俊夫さん。既に、五人もの人間が、雪隠しで
消えている。本音は、誰もがこの吹雪に閉ざされたペンションから逃げ出したいだろう。だが、
同時に恐れているのだ。次に消えるのは自分なのではないかと。みんな、一人で行動することに
恐怖を覚え始めているのだ。まるで、夜眠れない小学生みたいだな、とぼくは思い、苦笑した。
「ねえ、村上さん」
 ぼくは、部屋の隅にいた村上さんに声をかけた。
「何だね? きみは……透くんだったか」
「はい。ちょっとお話があるんですけど、いいですか」
「ああ、構わないよ」
「そうじゃなくて、向こうで話しませんか」
 ぼくは、そう言って、食堂を指差した。
「透。何か、私に言えないような話をするの?」
 真理が、ぼくを睨んだ。
「いや。すぐに終わるから。ねえ、村上さん。いいでしょう?」
 ぼくが立ち上がって食堂に向かうと、村上さんもついてきてくれた。
「それで? 透くん、話っていうのは?」
 村上さんが訊いた。

 ぼくは、村上さんに言った。

A「雪隠しの赤ちゃんって、成長するとどうなるんですか?」
B「かまいたち現象で人が死ぬことってあるんですか?」
C「冬美ちゃんを育てているぼくが雪隠しに遭うことはありませんよね?」
D「何か、ぼくたちに隠していることがあるんじゃないですか?」
E「ぼくが雪隠しの赤ちゃんだった可能性はありますか?」
411名無しのオプ:2007/06/05(火) 18:33:25 ID:pvVSj+mr
>>410
Aでお願いします
412165:2007/06/06(水) 02:33:27 ID:7j104fu/
 えーと、流れを中断してしまって、本当に申し訳ありません。
 スレの容量が500KBを超えると、レスが1000を超えていなくても書き込めなく
なるんですよね?
 現在、407KBまで来てしまっています。
 一つのレスで2KBほど使用することを考えると、小説本文のレスがあと50ほどで
書き込めなくなってしまう計算になるのですが、どうしましょうか?
 とてもじゃありませんが、残り50レスで「生き埋め編」と「雪隠し伝説編」の二種類を
完結させることは不可能です。どちらか一つだけでも無理です。

 当然、『2ちゃんだけのかまいたちの夜 Part6』に続きを書くことになると
思いますが、このスレは500KB全部使い切っちゃってもいいですか?
 それとも、ある程度容量を残したまま次のスレに移って、新しく来た人たちや、
独自に推理している人たちや、「生き埋め編」の別バージョンのエンディングを
書きたい人たちが、簡単に読み直すことができるようにした方がいいですか?
 同時進行で進んでいる作品がいくつもあるので、俺一人の判断では決める
ことができません。

 こういう馬鹿なこと書くと、またしても俺のせいでスレが荒れちゃいそうで
怖いのですが、本当に迷っているので、みなさんの助言が必要です。
 どうか、無知な俺に教えてください。お願いします。
 また、お願いですから、荒らしたり煽ったりしないでください。
413名無しのオプ:2007/06/06(水) 17:39:10 ID:UIZ9nEVz
>>412
自分の意見としては、使い切らずに少し残しておいた方がいいと思います。
でも自分はこのスレの住人暦も短くて細かいルールはよく分かってないし、
>>267で◆TmTfkIMkPk さんが次スレのテンプレを作ってくれているとも言っていたので、
◆TmTfkIMkPk さん含めた他の人の意見優先でお願いします。
414名無しのオプ:2007/06/06(水) 22:32:35 ID:7b8jeKal
俺も少し残して次スレに行く方がいいと思うよ。
415 ◆TmTfkIMkPk :2007/06/06(水) 23:25:52 ID:CWcR2UV/
うん。移転が来たりすると鯖軽減で旧スレいきなり削除もありえるし、誘導する意味でも、多少は残しておくべきだと思う。
で、テンプレをpart4から新しくした。
part4のときは×3でて、更新もあったけど、リンク先HPは更新止まってるのもあるし、2ちゃん内は移動してるしスレも落ちてたりするから、必要なら好きなの貼って。ただ、公式はあったほうがいいと思う。
↓どこで止めるべきか、演出上の意味合いもあると思うし、こっちは1日に見れる時間限られてるので、テンプレ置いておくから好きな時に使って。気に入らなかったら直して頂戴。
416テンプレ@:2007/06/06(水) 23:27:09 ID:CWcR2UV/
◆「かまいたちの夜」を題材にしたリレー小説のスレ、Part6です。◆

・かまいたちの夜なら1でも2、×3でもかまいません。オリジナルストーリーも歓迎です。
・基本的には以下のようなリレー形式ですが、書き手の意思優先です。

 1.書き手が選択肢でレスを締める(強制ではありません)。
          ↓ ↑
 2.ROMが選択肢からストーリーを選択する。
   あるいは、書き手本人か他の書き手が1の選択肢から選んで継続する。

・自分で続きを書く気のある人はその旨を宣言して続けて下さい。
・選択肢に至るまで複数のレスを消費してもOKです。
・ゲームのネタバレは出来るだけ控えて下さい。
・何日たっても話の続きが書かれない場合、ほかの未選択の部分から始めても構いません。
・複数シナリオの並行もOKですが、混乱を避けるためにアンカーで継続元を明示して下さい。
・煽り、荒らしは厳禁。現れても構わず、スルーを心がけて下さい。
【前スレ】
2ちゃんだけのかまいたちの夜 Part5
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1176608182/
【過去スレ】 過去ログ倉庫
Part1 http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1072705225/
Part2 http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1086859860/
Part3 http://book3.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1128516029/
Part4 http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1158103156/
まとめサイト(Part3>>760氏作成)
ttp://kama2ch.otogirisou.com/
【公式】
チュンソフト
http://www.chunsoft.co.jp/
セガ かまいたちの夜×3
http://chun.sega.jp/kama3.html
417テンプレA:2007/06/06(水) 23:34:41 ID:CWcR2UV/
・選択肢は一番最初にレスした人のものを採用する。ただし、書き手の意思、あるいは途中参加者の希望により、複数の選択肢の続きを書く場合においては、この限りではない。

・進行中のシナリオは、最新の筆者が特別の意思を示していない場合は、 (このシナリオは一人で書かせて下さい、等)
誰でも途中から参加し、創作することができる

・シナリオを続きから書く場合は、何番のレスからの続きなのか明記する

・選択肢を選ぶ際、複数シナリオの選択肢があり選択肢が選択されてない場合、選択者はできるだけアンカーでどのシナリオの選択肢の選択か明記しておく。

………………………………………………………………………………

※かまいたちの夜風の文章では、「僕」ではなく「ぼく」の方が
  原作に忠実です(強制ではなく推奨)

※ゲームオーバーになったら、直前の選択肢に戻ってやり直しましょう

※誰でも参加できます。
 別にレベルの高い文章じゃなくても大歓迎です。
 また、完結型ショートストーリーも大歓迎です。
 どんどん投稿してスレを盛り上げましょう
418165:2007/06/07(木) 01:30:09 ID:usGutjV9
 本当にありがとうございます。
 特に、◆TmTfkIMkPkさんには凄く酷いことを言ってしまったのに、親切にしてくださって、
本当に嬉しいです。
 もう一度謝ります。>>165の発言は、本当に馬鹿でした。改めてごめんなさい。
 まだ完全に許してもらえたわけではないでしょうが、それでも、テンプレを自由に使っても
いいと言ってくださり、本当にありがとうございます。ありがたく使わせていただきます。

「生き埋め編」も「雪隠し伝説編」も、きちんと完結させてみせます。
419生き埋め編165:2007/06/07(木) 01:34:51 ID:usGutjV9
>>401
Aぼくは、思い切ってドアを開けることにした。
「真理」
 ぼくは、彼女の名前を呼んだ。真理は、泣いて赤くなった目でぼくを見た。
「何?」
「ぼくは、きみを愛している。きみを信じている。これから何があろうと、ぼくだけは、きみの
味方だからね」
 ぼくは、まっすぐに真理の瞳を見て言った。
「ありがとう。……私も、透のこと愛してるし、透を信じてるからね」
 真理は、涙を拭いながら言った。
「私も、真理ちゃんのこと信じてるよ。あなたが啓子を殺した犯人だとは思えないから」
 可奈子ちゃんが、真理の肩を叩いた。
「じゃあ……ドアを開けるからね」
 ぼくが言うと、二人とも、もう反対しなかった。ぼくは、ドアの鍵穴に詰めたガムを、ペンの
先で、すべて取り除いた。
 無言で、ドアを開ける。廊下は、静まり返っていた。まるで、何事もなかったかのようだ。
 啓子ちゃんが雪崩に飲み込まれて窒息死し、バラバラ死体になった田中さんが発見され、
今日子さんが刺殺され、真理が犯人扱いされているななんて、信じることができなかった。
全部、ぼくの妄想だったらいいのに、と思った。
 ドアを出てすぐの壁に、つるはしが立て掛けてあるのを見て、ぼくはぞっとした。この
つるはしで、ぼくと真理が立てこもっていた部屋のドアを抉じ開けるつもりだったのだろうか。
 ぼく、真理、可奈子ちゃんの三人は、息を潜めて廊下を進んだ。
 俊夫さんは、春子さんの死体がどこで発見されたのか、言っていなかった。
「みんな、どこに集まっているんだろう」
「二階じゃないかしら」
 真理が言い、ぼくたちは談話室に向かった。やはり、誰もいない。ふと、全員が殺されて
しまったのではないかという、縁起でもない想像がぼくの頭を駆け巡った。
 だが、階段を上っていくと、誰かの言い争う声が聞こえた。
「……だから、俺が犯人じゃないって言っているだろう!」
「あれ、俊夫さんの声よね。何が起きているのかしら」
 真理が不安そうな顔をする。
420生き埋め編165:2007/06/07(木) 02:00:47 ID:usGutjV9
「行ってみよう」
 ぼくは、真理の手を引いて、二階の廊下を進んだ。言い争いが聞こえるのは、香山夫妻の
部屋からだった。
「お前以外に、誰が春子を殺したっちゅうんや! よくも……よくも春子を!」
 香山さんの怒鳴り声も聞こえた。
 ぼくは、思い切ってドアを開けた。部屋の中にいた小林さん、美樹本さん、香山さん、
夏美さん、俊夫さん、みどりさんの六人が、ぼくたちに注目した。冬美ちゃんは、夏美さんに
抱かれていた。
 香山夫妻のベッドの上に横たわっているのは、紛れもなく、春子さんだった。
 春子さんの首には、ベルトが巻きついていた。いや、正確には、ベルトが首に食い込んで
いると言うべきだろう。紫色に変色した春子さんの顔からは眼球が飛び出し、ぼくを睨み
つけていた。絞殺された際に失禁したらしく、バスタオルが不自然な位置にかけられていた。
「春子さん、本当に死んじゃったんですか」
 真理が、春子さんの遺体から目を背けながら言った。
「そうや。俊夫くんが殺したんや」
 香山さんは、真理ではなく俊夫さんを見ながら言った。
「違う! 俺はやってない!」
 俊夫さんは、必死の面持ちで首を振った。
「誰か、俊夫さんが春子さんの首を絞めているところでも見たんですか?」
 ぼくが訊くと、六人は一斉に否定した。
「じゃあ、春子さんが殺された時間帯にアリバイがなかったのが俊夫さんだけだったとか?」
 真理が訊いたが、やはり違うらしい。
 ぼくと真理が、可奈子ちゃんのいた従業員用の休憩室に立てこもり、可奈子ちゃんが
「しばらくドアに体当たりしないで!」と叫んでから、部屋の外にいた六人は、それぞれ
単独行動をしていたらしい。つまり、春子さんが殺されたときにアリバイがあったのは、
ぼく、真理、可奈子ちゃんの三人だけで、残りの六人にはアリバイがなかった。
「そのベルトが、俊夫さんのものなんですか?」
「いや。そのベルトは、殺された田中さんの所持品だったようだ」
「それなら、どうして俊夫さんが犯人扱いされているんですか?」
 ぼくが訊くと、小林さんは沈痛な面持ちで答えてくれた。
「啓子ちゃん、田中さん、今日子、春子さんの四人を殺害した人間が単独犯だとすると、
俊夫くん以外には犯行が可能だった人間はいないからだよ」
421生き埋め編165:2007/06/07(木) 02:34:18 ID:usGutjV9
「え? でも、田中さんが殺されたと思われる時間帯には、俊夫さんにはアリバイがあった
んじゃ……」
 ぼくは混乱した。
「透くん。例のタイムテーブルを見せてもらえるかな」
 美樹本さんに頼まれ、ぼくはポケットから、自分で作成したタイムテーブルを取り出した。
「この部分を見てくれ」
 美樹本さんは、タイムテーブルの一部を指差した。

四時半頃   透、真理がスキー場で冬美を発見し、保護する。
五時半過ぎ  キッチンで、小林夫妻、俊夫、みどりが夕食の準備を始める。
        田中がシュプールに到着。俊夫が出迎え、キッチンに戻る。
六時少し前  小林が、田中から内線でルームサービスを頼まれる。
六時頃    透、真理がシュプールに到着。小林が出迎え、キッチンに戻る。
六時過ぎ   透、真理、地下室で粉ミルクと哺乳瓶を探す。
        ↑同時刻、小林が田中の部屋へ行き、キッチンに戻る。

「この図を見ると、田中さんがシュプールに到着したのは、五時半過ぎのように見える。
だが、もしもそうじゃなかったとしたら?」
 美樹本さんが、よく分からないことを言った。
「何を言いたいんですか?」
 ぼくは訊いた。
「田中さんが一番最初にシュプールに着いたのは、一昨日の夜だった。その夕食のとき、
田中さんは、現在シュプールの中にいる全員と顔を合わせている。きみも知っているように、
サングラスとコートで顔や体型を隠していたがね。そこで、きみたちに訊きたいんだが、
透くん、真理ちゃん、可奈子ちゃんの中で、田中さんの声を聞いた人はいるかな?」
 美樹本さんの質問に、可奈子ちゃんは手を上げた。
「私、聞きましたけど」
「いつ?」
「今日……じゃなかった。もう日付が変わっているから、昨日の五時半過ぎのときです」
「それ以前には?」
 そう訊かれ、可奈子ちゃんは首を振った。ぼくも真理も、聞いていないと答えた。
422生き埋め編165:2007/06/07(木) 02:47:55 ID:usGutjV9
「それなら問題はない。いいか? つまり、現在生きている全員の証言によると、田中
さんの声を聞いた人間は、昨日の五時半過ぎの『すいませーん! 車を停める位置は、
あそこでいいんですか?』という声を聞いた、小林さん、俊夫くん、みどりちゃん、可奈子
ちゃんの、四人だけなんだ」
 美樹本さんが言った。
 今日子さんや啓子ちゃんも聞いているはずだが、その二人は亡くなっているので、考え
なくてもいいということだろう。
「小林さんは、田中さんがルームサービスのピザを注文するときに聞いたんでしょう?」
 ぼくが指摘すると、美樹本さんは頷いた。
「ああ、そうだ。だが、さっきの四人に小林さんも含まれているから、問題ない」
「それ以外には、本当に、誰も田中さんの声を聞いていないんですか? 例えば、部屋を
予約するときなんかはどうだったんですか?」
 可奈子ちゃんが訊いた。
 すると、小林さんが、宿帳を開いてぼくたちの方に見せた。
 田中さんの予約が書いてあるページを指差す。何の変哲もない宿帳だ。
 それによると、田中一郎は、一昨日の十二月二十日の午後六時にシュプールに到着
している。一人で訪れ、三泊の予定だったらしい。
「これがどうかしたんですか?」
 ぼくには、小林さんや美樹本さんが何を言いたいのか分からなかった。
「これは、今日子の字だ。田中さんは電話で部屋を予約したらしいが、その予約の電話に
出たのは、今日子だったらしい」
 宿帳に書かれてある字は、非常に癖のある特徴的な字だった。夫である小林さんが、
今日子さんの筆跡だと言うのなら、その通りなのだろう。
「つまり……今日子さんが殺された理由は、田中さんの声を聞いていたから、だと?」
 ぼくは、そう確認した。
「そうだ」
 美樹本さんが頷き、彼は推理を披露し始めた。
423生き埋め編165:2007/06/07(木) 03:13:39 ID:usGutjV9
「まず、田中さんがシュプールを訪れたのは一昨日だ。その日の夜、田中さんは俊夫くん
の弱みを握るか何かして、俊夫くんを脅したのではないかと思う。とにかく、何か殺意を
抱かせるようなことをやらかしたんだろう。そして、俊夫くんは田中さんの殺害を計画した。
昨日の午後二時頃、田中さんは、シュプールを出ている。そして、俊夫くんも、食料品の
買い出しのために、同時刻にシュプールを離れていた。おそらく、俊夫くんは、その帰りに
駐車場で田中さんと待ち合わせをしたのだろう。そこで、睡眠薬入りの飲み物を飲ませたり、
殴ったりして気絶させた。そして、田中さんの身体にロープを結びつけ、そのロープの端に
重石をつけ、予め開けておいた田中さんの部屋に放り投げた。重石は、ぶつかっても音が
しないような素材を選んでいたのだろう。その後、何食わぬ顔でシュプールに戻った俊夫
くんは、さりげなく小林さんたちと離れ、田中さんの部屋に行った。そして、ロープを手繰り
寄せ、気絶した田中さんを窓から部屋の中に入れた。俊夫くんの身体能力ならば、可能
だっただろう。俊夫くんは、そのときすぐに、田中さんの身体をバラバラにしたんだ。それ
からは、できる限り小林さんや今日子さんやみどりちゃんと行動を共にするように心がけて、
アリバイを作っておく」
「え? 何を言っているんですか? 昨日の五時半過ぎに田中さんはシュプールに戻って
きているじゃありませんか」
 ぼくは、混乱しながら言った。
「いや、誰も田中さんの姿を見ていない。声を聞いただけだ」
 美樹本さんは言った。
「だから、俺が見たと言っているだろう!」
 俊夫さんが怒鳴ったが、美樹本さんは無視した。
「とにかく、田中さんの声さえ捏造することができれば、田中さんが生きているかのように
見せかけることができたんだ。姿を見ていたと主張しているのは、俊夫くんだけだからね」
「声を捏造する?」
 真理が、理解に苦しむという表情で言った。
「そうだ。まず、『すいませーん! 車を停める位置は、あそこでいいんですか?』という
声とチャイムは、予め録音しておいたものを流すだけでいい。スピーカーは、玄関に設置
しておいたんだろう」
 美樹本さんが言った。
「誰の声をですか?」
 ぼくは訊いた。当然の疑問だろう。
424生き埋め編165:2007/06/07(木) 03:30:04 ID:usGutjV9
「俊夫くんの声さ。声を変える方法はいくらでもある。録音した自分の声をパソコンなどに
取り込んで、いじくってもいいし、通信販売などで売っている、声を変える機械を持って
いたのかもしれない。だが、俺は、俊夫さんは機械を使わずに、自力で声を変えたのでは
ないかと考えている」
 美樹本さんは、落ち着き払った口調で言った。
「自力で? いったい、どうやって?」
 ぼくは、美樹本さんの言いたいことが分からなかった。
「みどりちゃんに聞いて初めて知ったんだが、俊夫くんは、腹話術の名人なんだそうだ」
 美樹本さんの返答を聞いて、ぼくは笑ってしまった。
「まさか……」
 真理と可奈子ちゃんも、苦笑している。
「腹話術? 俊夫さんが? 冗談でしょう?」
 ぼくは笑いながら言ったが、美樹本さんは真面目な顔で説明する。
「もちろん、俊夫くんの本名は、久保田俊夫(くぼたとしお)だ。だが、その一方で、彼は
朝永嘉夫(ともながよしお)という芸名で、腹話術師をやっているんだよ」
 その腹話術師は、ぼくも名前だけなら聞いたことがあった。
『ともながよしお』を略すと、『としお』になる。確かに、関係があってもおかしくないような
名前だが、それにしても……。
「マジですか?」
 ぼくは、そう聞かずにはいられなかった。
 今頃になって突然そんなことを言われても、戸惑うのは当然だろう。
「ああ、大真面目だよ。まだ腹話術から得られる収入だけで生活できるほど儲かっている
わけではないから、仕方なく、シュプールでバイトしているらしいがね。とにかく、腹話術
という特技がある俊夫くんなら、機械に頼らなくても、声を自在に変えることができる。
声色をできるだけ田中さんに近づけ、録音したんだろう。さらに、小林さんやみどりちゃんの
によると、田中さんが現れたと思われていた五時半過ぎのチャイムと『すいませーん!』
という声を聞いて、俊夫くんは自分から、お客を出迎えると言い出したらしい」
「そんなの、当たり前だろう! マスターとみどりは料理に忙しいし、盛り付けや配膳は
今日子さんの係だから、今日子さんだって忙しかった。結局、夕食の準備のときに一番
暇なのは、いつも俺だから、普段からその時間帯は俺が出迎えていたんだ!」
 俊夫さんが、声を荒げて言った。
425生き埋め編165:2007/06/07(木) 03:38:55 ID:usGutjV9
「本当にそうかな? 小林さんとみどりさんの話によると、確かに、普段から夕食の料理を
している時間帯は、俊夫くんが雑用をすることが多かったらしい。だが、実際には、透くんと
真理ちゃんがシュプールに着いたときの出迎えは小林さんが行っているし、内線の電話を
取り上げたのも、ルームサービスを届けたのも、小林さんだったじゃないか。俊夫くんは、
チャイムが鳴り、『すいませーん!』という声が聞こえたとき、真っ先に自分が出迎えに
行くと主張したんだろう?」
「そんなの、結果的にそうなっただけだ。それに、お前がやっていることは誘導尋問だ」
 俊夫さんが、顔を真っ赤にして言った。
「でも、確かにその方法なら、田中さんが帰宅したように見せかけることはできるかも
しれませんが、六時少し前にあったルームサービスの電話はどうするんですか?」
 ぼくは訊いた。
「小林さん、そのルームサービスの電話を、もう一度再現してもらえますか?」
 美樹本さんが、小林さんに頼んだ。

「ああ、分かった。まず、内線用の電話が鳴って、私は受話器を取り上げた。そして、田中
さんの声――というか、田中さんの声だと思われていた声が、
『田中です。ルームサービスのピザをお願いします』
と喋った。そこで、私は、
『七時半には夕食ですが、本当によろしいのですか?』
と確認した。すると、田中さんだと思われていた声が、
『どうしても腹が減っているんです。急いで持ってきてください。ピザは、部屋の前に置いて
おいてください』
と言った。それで、私は、
『分かりました』
とだけ答えて、電話を切った」

 小林さんは、何度も質問されて答えていたのか、特に思い出す様子もなく言った。
「どうだ? 非常に簡単な会話だろう? これくらいだったら、近くにいた俊夫さんが腹話術
で喋っていたと声だったとしても、おかしくないんじゃないか?」
 美樹本さんが言った。
「おかしいに決まっているだろう! お前、頭がどうかしているんじゃないのか?」
 俊夫さんは、呆れた表情で言った。
426生き埋め編165:2007/06/07(木) 03:51:30 ID:usGutjV9
「そうかな? 小林さんとみどりちゃんの話によると、内線電話が鳴ったとき、今日子
さんとみどりちゃんは、キッチンの内線電話からは離れた位置にいた。一方、小林さんの
近くには、俊夫くんがいたらしいじゃないか」
「だから、それは、シュプールオリジナルのケーキを焼こうとしていたときに電話が鳴った
からだと言っただろう!」
 俊夫さんは、苛立った声を出した。
 ぼくは、小林さんのアリバイが問題となっていたときに、俊夫さんが『いつも俺は、ケーキ
を焼き過ぎないように、たとえタイマーが鳴らなくても、オーブンのスイッチを切る役目を
小林さんに頼まれていたんだ』と説明していたことを思い出した。
 また、今日子さんも、『田中さんがルームサービスの電話をかけてきたのは、主人が
ケーキの生地をオーブンに入れようとしたところだったんです』と証言していた。
 それならば、電話が鳴ったときに小林さんの近くにいたのが俊夫さんだけでもおかしく
ないような気もする。
 だが、ぼくは、もう一つの問題に気がついた。
「俊夫さんが犯人だったとして、いったい、どうやって内線電話を鳴らすんですか?」
 ずっとキッチンにいた俊夫さんには、内線電話を鳴らすことはできなかったはずだ。
「内線電話を鳴らす方法は、ある」
 美樹本さんは、自身満々に答えた。美樹本さんは、ぼくたちがいる香山夫妻の部屋の
ベッドの傍の机の上にある電話を、指さした。
 このペンションの内線電話は、客室にある受話器を取り上げると、自動的にキッチンか
フロントのベルが鳴るというタイプである。客室から客室に電話することはできないし、
どの部屋からの電話なのかも分からない。
「まあ、口で説明するよりも、見ていた方が早いだろう。これを使うんだよ」
 美樹本さんはそう言って、ポケットから携帯電話を取り出した。
「雪崩のせいで、電波が来ないんじゃありませんでしたっけ?」
 可奈子ちゃんが訊いた。
「今はな。だが、問題となっている電話が鳴ったときには、携帯電話を使うことができた。
今は、電波が来ないから、その代わりにアラームを使用する」
 美樹本さんは、ぼくと真理と可奈子ちゃんに携帯電話の画面を見せながら、アラームが
一分後に鳴るようにセットした。さらに、携帯電話をマナーモードに設定した。
427生き埋め編165:2007/06/07(木) 04:17:16 ID:usGutjV9
 そして、美樹本さんは受話器を取り上げると、そのフックの上に素早く携帯電話を載せた。
携帯電話が重石になり、フックを押さえているので、内線電話は鳴らなかった。
 そして、一分が過ぎ、携帯電話が振動し始めた。
 振動する携帯電話は、やがてじりじりと移動し始め、内線電話の受話器の台の上から
滑り落ちた。同時に、フックの上の重石がなくなり、内線電話が鳴り始めた。いや、正確
には、この部屋の中では内線電話のベルの音は聞こえなかったのだが、今はそんなことは
重要ではない。
 なるほど、とぼくは思った。
 この方法なら、好きなタイミングで内線電話を鳴らすことが可能だ。
「二階には空き部屋があるから、その部屋に携帯電話を仕掛けておけば誰にも分からない
だろう。外部犯の可能性を消すためにシュプールの中全体を捜索したのは、ずっと後に
なってからだから、携帯電話を回収し、受話器を元に戻す時間はいくらでもあった。また、
仮に田中さんの死体が発見されてすぐに犯人がいないか探していたとしても、腹話術師の
俊夫くんだったら、捜索隊に加わって各部屋を回ったときに素早く元に戻すくらいの芸当は
簡単だっただろう」
 美樹本さんはそう言った。どうやら、美樹本さんは、腹話術師をマジシャンか何かと勘違い
しているらしい。
「どうや? この方法やったら、俊夫くんが田中さんを殺した犯人でもおかしゅうないやろう?
狭いシュプールの中に犯人が二人もいるとは思えんし、春子を殺したのも俊夫くんっちゅう
わけや。覚悟しいや!」
 香山さんは、今にも俊夫さんに掴みかかろうとするかのような体勢で言った。
「だから、俺じゃないんですってば」
 俊夫さんは、うんざりした表情で否定した。
「でも……何か、まるで綱渡りのように危険なトリックよね」
 みどりさんは、腑に落ちないという表情で言った。みどりさんは、恋人に近い関係にあった
俊夫さんを庇おうとしているのだろうか。
「みどりちゃんは、どこら辺が危険やと思うん?」
 そう訊いたのは、夏美さんだった。
「まず、田中さんがシュプールに戻ってきたと思い込ませるという部分よ。もしも、談話室や
玄関に、香山さんや春子さんや夏美ちゃんや可奈子ちゃんや啓子ちゃんがいたら、すぐに
偽装だってバレてしまうわ」
428生き埋め編165:2007/06/07(木) 05:25:01 ID:Gs5sxjVS
「いや、その点に関してはリスクを下げる方法があるよ。実際、俊夫くんもその方法を
使ったらしいな」
 美樹本さんが言った。
「どういうことですか?」
 ぼくが訊くと、美樹本さんは、やはりタイムテーブルを指差した。

五時半過ぎ  キッチンで、小林夫妻、俊夫、みどりが夕食の準備を始める。
         田中がシュプールに到着。俊夫が出迎え、キッチンに戻る。

「ほら、ここを見れば分かるだろうが、田中がシュプールに着いたと思われていた時刻は、
小林夫妻と俊夫くんとみどりちゃんが夕食の準備を始めたすぐ後だ。それまでに、香山
夫妻と『新OL三人組』が二階にいることを確認しておけば、香山さんたち五人が、一階に
下りてきて俊夫さんの自作自演に気づくリスクを下げることができる。盗聴機を使って、
香山さんたち五人の動きを把握していた可能性もある。まあ、もうそんなものは処分して
しまっているだろうがな」
「でも、誰かが玄関で呼んでいることに気づいて、香山さんたち五人が一階に下りていく
可能性もあるじゃないですか」
 みどりさんが不満げに言った。
「だからこそ、録音テープの内容を『車を停める位置は、あそこでいいんですか?』に
したんだよ。宿泊客に過ぎない香山さんたち五人に、そんな微妙な判断ができるとは
思えないからね」
 美樹本さんは、あくまでも俊夫さん犯人説肯定派なのだろう。
「うーん……でも、田中さんがルームサービスを頼んだという電話の声を、すぐ隣にいた
俊夫くんが腹話術で話していたっていうのは、やっぱり無理があるような気がするんです」
 みどりさんは、何としてでも俊夫さんが犯人だとは思いたくないらしい。
「やっぱり、声の質感とかで分かっちゃうような気がしますよね」
 真理もそんな馬鹿げたトリックが使われたとは考えにくいらしい。ぼくも真理に加勢する。
「それに、やっぱり田中さんと俊夫さんは声が違うし、いくら腹話術師だと言っても、
声を似せるのには限度があるでしょう」
「だからこそ、玄関から呼んだ声と、予約の電話の声が違うことに気づいた今日子さんが
殺されてしまったんじゃないのか?」
 美樹本さんは、冷ややかに言った。
429生き埋め編165:2007/06/07(木) 05:50:20 ID:Gs5sxjVS
 確かに、その可能性を否定することはできない。「田中さんと俊夫さんの声は違う」と
言ったが、ぼくだって、一度も田中さんの声を聞いたことがないのだ。だが、可能性を
否定することもできないが、肯定することもできないような気がする。
 そもそも、田中さんは、どうして一度もまともに声を発しなかったのだろう?
 ただ単に、シャイだったから、という理由かもしれない。アトピー性皮膚炎で肌が
荒れていることを隠すために、サングラスやコートを身に着けていた人だから、その
可能性は高い。
 しかし――と、思う。
 そんな人が、どうしてこのシュプールに来たのだろう? スキーやスノーボードが
目的の観光客だとは考えにくい。かと言って、ビジネスというのも不自然だ。
 あの人は、いったい何者だったのだろう?
 そこに、この連続殺人の秘密が隠されているような気がしてならない。

――それよりも、私は、雪崩を起こした意味について考えた方がいいような気がします
けど。

 ぼくは、可奈子ちゃんとの会話を思い出した。

――それから……田中さんをバラバラにしたことにも、何かそうせざるを得ないような
理由があったような気がします。

 そうだ、とぼくは思った。
 これは、計画殺人なのだ。それなのに、犯人が無駄なことをするとは思えない。
 俊夫さんだけではなく、小林さんや夏美さんや真理が犯人扱いされていたときにも
感じていたことだが、そのときに説明されていたトリックでは、雪崩を起こしたり、田中
さんをバラバラにしたりする理由がない。
 それだけではない。「こんや、かまいたちがあらわれる」という不審な手紙を『新OL
三人組』の部屋に残す理由もない。
 犯人は、とても頭のいい人物だ。意味のないことはしないだろう。
 今まで何気なく見過ごしていた謎の中にも、犯人がそうせざるを得なかったような
理由、あるいは意味があるはずなのだ。
 ぼくは、もう一度、最初から考え直すことにした。
430生き埋め編165:2007/06/07(木) 06:08:33 ID:Gs5sxjVS
「ねえ、皆さん。このまま俊夫さんを犯人扱いしていると、美樹本さんや真理を犯人扱い
して、どこかに閉じ込めていたときのような状況になってしまいますよ。美樹本さんを
閉じ込めたりしなければ、みんなが寝静まることもなくて、今日子さんが殺害されて
しまうこともなかったはずです。真理を犯人扱いして追い詰めたりしなければ、外にいた
六人が単独行動して、春子さんが殺されることだってなかったと思います。俊夫さんを
犯人だと決めつける前に、もう一度、最初から考え直しませんか」
 ぼくは、みんなにそう提案した。
「せやけど……ほんまに俊夫くんが犯人やったらどないすんねん」
 香山さんは、不服そうな表情で言った。
「そうですね。俊夫さんが犯人である可能性は否定できません。しかし、一方的に誰かを
犯人扱いして、監禁したり襲ったりするのは、もうやめましょう。一旦場所を移して、
もう一度、みんなで考え直しましょう」
「でも、どこに移動するの?」
 真理が訊いた。
 本来ならば、共有スペースが一番なのだが、談話室は雪で埋もれている。食堂には、
今日子さんの死体がある。
「えーと、『新OL三人組』の部屋にしませんか。あそこは三人部屋だから、この香山
夫妻の部屋よりも広いですし、死体もありませんから」
 ぼくの提案で、ぼく、真理、冬美ちゃん、小林さん、俊夫さん、みどりさん、香山さん、
夏美さん、可奈子ちゃん、美樹本さんの十人は、『新OL三人組』の部屋に移動した。
 それぞれ、思い思いにベッドや椅子に座った。
 そこで、まずぼくがやったことは、もう少し詳細なタイムテーブルの作成だった。
 テーブルの上のメモ帳と、ポケットの中に入れっ放しだったペンで、新しくタイム
テーブルを作成した。
 もちろん、これは、全員が正直に話していると仮定して作ったタイムテーブルだ。
犯人は当然、自分の都合のいいように嘘をついているはずだし、犯人を庇っている
人物がいるかもしれないからだ。
431生き埋め編165:2007/06/07(木) 06:45:47 ID:Gs5sxjVS
【十二月二十一日正午以降におけるシュプール内のタイムテーブル】

     (正午までに、透、真理、美樹本、香山夫妻、『新OL三人組』が出かける)


正午      小林夫妻と俊夫とみどりと田中が昼食をとる。
一時頃    香山夫妻と『新OL三人組』がスキーから戻る。
二時頃    俊夫、食料品の買い出しに出かける。
         ↑同時刻、田中が出かける。
三時半頃    俊夫、シュプールに戻る。
四時半頃   (透、真理がスキー場で冬美を発見し、保護する)
五時半過ぎ  キッチンで、小林夫妻、俊夫、みどりが夕食の準備を始める。
         田中がシュプールに到着。俊夫が出迎え、キッチンに戻る。
         ↑同時刻、『新OL三人組』が香山夫妻の部屋に行き、夏美だけを
          残して、可奈子と啓子は自室に戻る。
六時少し前  小林が、田中から内線でルームサービスを頼まれる。
六時頃    透、真理がシュプールに到着。小林が出迎え、キッチンに戻る。
六時過ぎ   透、真理、地下室で粉ミルクと哺乳瓶を探す。
         ↑同時刻、小林が田中の部屋へ行き、キッチンに戻る。
六時半頃   香山夫妻、夏美が二階から下りてくる。
         香山、食堂へ行く。
六時半過ぎ  美樹本、シュプールに到着。
         可奈子、啓子が不審な手紙を発見し、二階から下りてくる。
七時過ぎ   透、手紙を読み、2ちゃんねるに接続。
         雪崩が発生。
         美樹本、二階に避難する。
         夏美、春子、食堂へ避難する。
         透、真理、玄関へ避難する。
         啓子、可奈子、生き埋めになる。
         啓子、死亡。可奈子を救出し、真理と冬美と田中を除く全員が合流。
八時過ぎ   透、小林、俊夫、美樹本、田中の部屋でバラバラ死体を発見。
         ↑同時刻、上記の人物以外は単独行動。
432生き埋め編165:2007/06/07(木) 07:01:58 ID:Gs5sxjVS
九時頃    玄関にいた真理と冬美が救出される。
九時過ぎ   可奈子を除く全員が食堂に集まる。美樹本が疑われる。
九時半過ぎ  可奈子が現れ、啓子の死体を見て気絶。
十時前    シュプール内を捜索。田中の死体を検証。
十時過ぎ   美樹本を一階トイレに監禁し、全員が解散。
(以下、深夜とする)
一時頃    小林が食堂で今日子の死体を発見。
一時過ぎ   美樹本を解放し、可奈子を除く全員が合流。
一時半頃   真理が疑われ、透と真理が可奈子のいる休憩室に逃げ込む。
一時半過ぎ  可奈子が室外の人たちを説得し、体当たりをやめさせる。
二時過ぎ   春子の死体が香山夫妻の部屋で発見される。
二時半頃   香山夫妻の部屋で全員が合流。俊夫が疑われる。
三時頃    全員が『新OL三人組』の部屋に移動。



 タイムテーブルは、こんなところだろう。誰かが嘘をついているのだから、これ以上
正確なタイムテーブルを作るのは難しいし、あまり意味がないような気がする。
 次に、ぼくは、田中さん、今日子さん、春子さんが殺されたと思われる時刻の、各自の
アリバイについて考えてみた。冬美ちゃんは無視することとする。
 まず、田中さんが殺されたと思われる時間帯に、全くアリバイのなかったのは、美樹本
さんただ一人である。他にもグレーゾーンの人は大勢いるが、殆どアリバイを証明する
ことができなかったのは、美樹本さんだけだという意味だ。
 次に、今日子さんが殺されたと思われる時間帯にアリバイがなかったのは、ぼく、真理、
小林さん、俊夫さん、みどりさん、香山夫妻、夏美さん、可奈子ちゃんだ。
 最後に、春子さんが殺されたと思われる時間帯にアリバイのなかったのは、小林さん、
俊夫さん、みどりさん、香山さん、夏美さん、美樹本さんだ。
433生き埋め編165:2007/06/07(木) 07:24:50 ID:Gs5sxjVS
 ぼくは、『新OL三人組』の部屋に集まった全員の顔を順番に見ていった。
 まず、真理だ。真理は、冬美ちゃんを抱いて、心細そうな表情をしている。
 奥さんを殺された小林さんは、左手の薬指に嵌めた指輪を、じっと見つめている。
 現在犯人扱いされている俊夫さんは、苛立たしげに拳を開いたり閉じたりしていた。
 俊夫さんの隣にいるみどりさんは、俊夫さんの横顔を見ている。
 小林さんと同じく奥さんを殺された香山さんは、隣に座っている夏美さんを心配そうに
見つめていた。
 夏美さんは、無言で携帯電話をいじっているが、もちろん、圏外のはずだ。
 恋人の啓子ちゃんを亡くした可奈子ちゃんは、犯人を見つけてかたき討ちをしようと、
ぼくと同じく全員の顔を見回している。
 美樹本さんは、腕を組んで俯いたまま、身動きしなかった。

 本当に、この中に、犯人がいるのだろうか。ぼくだって、みんなを疑いたくはない。
だが、ここまで殺人が続いた以上、もはや外部犯の可能性はないだろう。少なくとも、
今日子さんと春子さんの殺害に関しては、外部犯はありえないはずだ。
 単独犯ではなく、共犯だという可能性はあるだろうか? あるだろう。だが、これに
関しては、誰と誰が共犯関係にあってもおかしくない。

 そして、大きな謎は、「雪崩を起こした理由」と「田中さんをバラバラにした理由」の
二つだろう。細かい謎は、数え切れないほどある。

 そして――ぼくには、ついに、犯人が分かった。大きな謎も、小さな謎も、すべての
パズルのピースが一つになり、ぼくの頭の中に絵を描いた。
 ああ、そういうことだったのか、とぼくは思った。

 一連の事件の犯人は……

〈名前を入力してください。複数犯だと考える場合は、複数名の名前を入力してください〉
434165:2007/06/07(木) 07:29:08 ID:Gs5sxjVS
 以下、「生き埋め編」は、「2ちゃんだけのかまいたちの夜 Part6」に続きます。
 犯人の名前は、Part6で入力してください。
435165:2007/06/07(木) 08:19:17 ID:DDUfM9pq
A「雪隠しの赤ちゃんって、成長するとどうなるんですか?」
 ぼくがそう訊くと、村上さんは、ぼくがなぜそんなことを訊くのか分からないという表情を
した。
「だから、さっきも言っただろう。五年を過ぎると、他人から幸福を奪い取る能力がなくなる」
「誤魔化さないでください!」
 ぼくは叫んだ。村上さんは、戸惑ったようにぼくの顔を見た。
「な、なあ、透くん。きみは、さっき気絶してから様子がおかしいぞ」
「だから、話を逸らさないでください。ぼくが訊きたいのは、『雪隠しの赤ちゃんが成長すると、
他人から幸福を奪い取って育て親に幸福を与える能力はなくなるが、他人を不幸にする能力は
そのままなのではないか?』ということです」
 ぼくが言うと、村上さんは、明らかに狼狽した表情になった。
「そんなことは……私だって知らない。私は、普通の人間の子供になるのではないかと思う」
 村上さんは、煮え切らない返事をした。
 ぼくの頭の中では、先ほど意識を失った間に見た夢が、何度も何度も再生されていた。ぼくの
ことを『化け物』と呼んだ父。風が吹くたびに、手足を切り刻まれていく父。
 あれは、ぼくがやったことなのかもしれない。

 ぼくが、両親と血が繋がっていないことを知ったのは、両親の死後だった。
 父がバラバラ死体になり、ぼくと母が家を飛び出してから四年後。女手一つでぼくを育てて
くれた母が過労死し、ぼくは親戚の家に預けられた。その家は、非常に居心地の悪い家だった。
叔母や叔父は、いつもぼくのことを見張っていた。ぼくが、亡くなった両親の養子であることを
教えたのは、叔母だった。
『まったく、いい迷惑だよ。兄さんも、何であんな気味の悪い赤ん坊を養子にしたんだか』
 叔母は、そう言った。
 さらに、叔母は、ぼくがあるスキー場の駐車場に捨てられていた子供だったこと。当時、その
スキー場で警備員の仕事をしていた父が、ぼくを発見し、引き取ったことを説明した。
 知りたくなかった、とぼくは思った。
 そんな事実、知りたくなかった。
 ぼくの信じていた平穏で幸福な世界は、ただの幻に過ぎなかったと思い知らされた。

 そして、ぼくは今日、二十年前に自分が捨てられていたスキー場の駐車場で、鍵のかかった
車内に放置された赤ちゃんを発見した。
436雪隠し伝説編165:2007/06/07(木) 08:38:30 ID:DDUfM9pq
(上記のレスは、>>410の続きでした)

 ぼくが小学校に上がる前までは、本当に幸福だった。父は有名な作家で、お金持ちだった。
母は美しく、優しかった。だが、父は、ぼくが小学校に上がる頃に、問題のある文章を書いて
しまった。父は、その非を認めて謝ることができず、作家を引退した。
 父は、ぼくが小学校二年生のときに、ぼくの目の前でバラバラになった。
 ぼくには、赤ちゃんの泣き声が風の音に聞こえる。
 ぼくは、二十年前に、スキー場の駐車場に捨てられていた赤ちゃんだった。
 もう、間違いないだろう。ぼくは、雪隠し伝説の赤ちゃんだったのだ。
 ぼくが赤ちゃんだった頃は、周囲にいる人間の幸福を吸い取り、育て親である両親に与えて
いた。だから、大して才能のなかった父でも、作家として成功することができた。だが、ぼくを
育て始めてから五年が経過すると、ぼくには両親に幸福を与える能力がなくなった。父は作家を
引退し、酒に溺れるようになった。そして、ぼくや母に暴力を振るうようになった父に対して、
ぼくは「かまいたち」を起こし、父をバラバラにした。
 雪隠しの赤ちゃんには、他人を神隠しに遭わせる能力の他に、かまいたちを起こして攻撃する
力もある。父がぼくのことを『化け物』と呼んだあの日には、雪が降っていなかった。だから、
ぼくは「雪隠し」で父を消すことができず、その代わりに、かまいたちで攻撃したのだ。自分を
守るために、父を殺した。

 ぼ く が 父 を 殺 し た 。 ぼ く は 、 本 当 に 化 け 物 だ っ た の だ 。

「おい、透くん。顔色が悪いぞ。大丈夫か?」
 村上さんの声で、我に返った。
「……ええ。大丈夫です」
 ぼくが答えたとき、真理が食堂に飛び込んできた。
「透! 大変なことが起こったの」
 またか、とぼくは思った。今日は「かまいたちの夜」だ。何が起こってもおかしくない。
「どうしたの?」
「とにかく来て!」
 真理に手を引っ張られて、ぼくは談話室に戻った。そして、目を見張った。
 窓ガラスが割れ、吹雪が談話室の中に吹き込んでいた。だが、問題はそこではない。
 窓枠の前に無造作に投げ出されているもの。それは、人間の足だった。
437雪隠し伝説編165:2007/06/07(木) 08:55:39 ID:DDUfM9pq
「どうして、こんなところに足が……」
 ぼくは、眩暈を感じた。恐ろしいと言うよりも、気持ち悪かった。
「それが――突然、窓ガラスを突き破って、この足が飛び込んできたの」
 真理は、まるで、切断された足が自分の意思で談話室に侵入してきたような表現をした。
 もう一度窓の外を見たぼくは、何かがこちらに向かって飛んでくることに気づいた。
「真理! 危ない!」
 ぼくは、真理の体を突き飛ばした。飛んできたものは、真理ではなく、ぼくの頭に当たった。
 窓の外から飛んできたものは、人間の生首だった。
 夏美さんの首だ。
「きゃああああああぁぁぁっ」
 今日子さんが、凄まじい悲鳴を上げた。いや、今日子さんだけではない。真理や、啓子
ちゃんや、可奈子ちゃんも絶叫していた。その声に驚いたのか、冬美ちゃんと夏彦ちゃんも
泣き出した。
 違う、とぼくは思った。
 これは、雪隠し伝説ではない。
 人間の仕業だ。
 ぼくは、室内履きのまま、割れた窓から外に飛び出した。その途端、激しい吹雪がぼくを
襲った。だが、大丈夫だ。ぼくは、昔、雪隠し伝説の赤ちゃんだったのだから。冬美ちゃんは、
寒いスキー場の駐車場に何時間も放置されていても、死ななかった。夏彦ちゃんは、飛行機の
墜落の衝撃にも耐えた。ぼくはもう大人になってしまったが、吹雪を無効化する程度の能力は
残っているはずだ。
 ぼくは、耳に意識を集中させた。耳が、風の唸り声を捉える。ぼくは、その風の音を「消し」た。
 すると、ぼくの周囲だけ、吹雪が収まった。「力」を使ったのは久しぶりだったので、少し
頭痛がするが、このくらいならば我慢できる。
 ぼくは、周囲を見回した。夏美さんの身体を談話室に投げ込んだ犯人は、この近くにいる
はずだ。どこだ? 犯人は、どこにいる?
 ぼくは、目に意識を集中させた。そして、目の動きだけで風を起こし、「かまいたち」を発生
させた。
「痛い!」
 向かって右側の方から、そんな声が聞こえた。どうやら、ぼくが発生させた「かまいたち」が
当たったらしい。影が逃げていくのが見えた。馬鹿なやつだ、とぼくは思った。吹雪の中で、
ぼくに勝てると思っているのだろうか。
438雪隠し伝説編165:2007/06/07(木) 09:11:25 ID:DDUfM9pq
「待て!」
 ぼくは、その影を追った。
 目に意識を集中させ、影の近くの雪の塊を「持ち上げ」た。かまいたち現象の力を応用
すれば、こんなことも簡単なのだ。どうして、今まで、こんなにも便利な能力を封印して
いたのだろう。ぼくには、自分自身のことがよく分からなかった。
「持ち上げ」た雪の塊を、影に向かって投げつける。
 影は、無様に転倒した。
 ぼくは、今度は耳に意識を集中させ、吹雪の音を「消し」ながら、悠々と歩いて、標的の
ところまで行った。
「お前は、誰だ?」
 ぼくは訊いた。返事はない。だが、相手が人間だということは分かっている。ぼくは、その
人物の顔をこちらに向けた。

 それは、香山さんだった。

 香山さんは、夏美さんのものだと思われる足を抱えたまま、気を失っていた。長いロープも
手にしている。
 ああ、そういうことだったのか、とぼくは思った。夏美さん、みどりさん、春子さん、俊夫
さんの四人をシュプールから誘拐していた犯人は、香山さんだったのだ。
 香山さんは、飛行機事故の生存者を救助した帰りに、俊夫さんがロープでそれぞれの
身体を結ぼうと言ったとき、自ら最後尾を歩くことを選んでいた。シュプールまでの帰り道に、
香山さんは自分の意思でロープを外した。
 そして、雪隠しを演出してみせたのだ。
 香山さんには、自分がいなくなったことを知った夏美さんが、シュプールを飛び出すという
ことが、予測できていた。香山さんは、玄関から飛び出した夏美さんの身体に、カウボーイの
縄投げと同じような、縄の輪を投げて捕まえ、引き寄せたのだ。夏美さんを追って飛び出した。
 ぼくたちには、それがまるで「雪隠し」のように見えていた。
 だが、実際には違ったのだ。
 そして、香山さんは、駐車場かどこかで夏美さんの身体をバラバラにした。その後、シュプ
ールの裏手に回り、窓から侵入した。一人で廊下を歩いていたみどりさんを拉致し、同じく
窓から脱出したのだろう。
439雪隠し伝説編165:2007/06/07(木) 09:25:52 ID:DDUfM9pq
 春子さんが消えたときは、二階の窓から春子さんが立っているのが見えたので、何かを窓に
ぶつけるかどうかして、春子さんに窓を開けさせた。そして、その首に縄をかけ、引っ張った
のだろう。ところが、春子さんが思いのほか抵抗したので、香山さんは、切断した夏美さんの
手首を春子さんにぶつけた。そして、春子さんは絶叫しながら二階から落ちた。そして、春子
さんと入れ違いに部屋の中に入った手首を、ぼくはベッドの下から発見したのだ。
 俊夫さんが消えたときも、香山さんが、春子さんのときと同じようにしていたのだろう。
 ぼくは、そう推理した。
 いくら今日が「かまいたちの夜」だとはいえ、五人もの人間が「雪隠し」で消えてしまうのは、
おかしいと思ったのだ。
 すべてが香山さんの仕業だったと考えれば、辻褄が合う。
 だが、香山さんの目的は、よく分からない。そんなことをして、香山さんに、何のメリットが
あったのだろう。まあ、そんなことは別にいい。後で、ゆっくり尋問すればいいだけだ。
 さて、香山さんをどうしようか。
 耳に意識を集中させて、香山さんの心臓の音に耳をすませ、香山さんを「消し」てもいい。
 だが、さすがにそこまではしたくない。ぼくは、裁判官ではない。ぼくには、誰かに裁きを
くだす権利もなければ、資格もない。
 香山さんは、シュプールに連れて帰り、小林さんたちに任せよう。
 ぼくは、そう決めた。
 次の瞬間、ぼくの頭に何かが当たった。ぼくは、雪原の上に倒れた。気が遠くなりかけたが、
ぼくは自制した。誰かに、背後から殴られたのだ。どういうことだ? 香山さんには、共犯者が
いたのか?
 ぼくを殴った相手が、視界に入れば……、と思った。相手の姿を「見る」ことさえできれば、
かまいたちを起こして攻撃することができるのだが。相手は移動しているので、耳に意識を
集中させて、相手の心臓の鼓動を聞き分けて「消す」こともできない。
 徐々に、意識が遠くなっていく。
 駄目だ。ここまで意識のレベルが低下しては、能力を使うことができない。
 ぼくは、このまま死ぬのだろうか、と思った。そのときだった。
「透! どこにいるの?」
 真理の叫び声が聞こえた。談話室を飛び出したぼくを、真理が追ってきたのだろう。
 来ちゃ駄目だ、とぼくは思った。
440雪隠し伝説編165:2007/06/07(木) 09:41:52 ID:DDUfM9pq
「来るな……。真理には、危険すぎる」
 ぼくは、そう呟いた。
 今となっては、真理は、ぼくにとって、たった一つの光であり、たった一つの希望だった。
 そんな真理を危険に曝したくなかった。
 大学に進学したぼくは、ミステリー研究会という、弱小サークルに入部した。そこで出会った
のが、真理だった。真理は、いつも眩しい笑顔を惜しみなくぼくに見せてくれた。サークルの
中でも、密かに真理を狙っている人は大勢いた。正直に言うと、ぼくもその中の一人に過ぎ
ないと思っていた。だが、今回の旅行は、真理の方から誘ってくれた。嬉しかった。本当に、
嬉しかった。それなのに、こんなことになるなんて……。
 ぼくは、ぼくなりに、真理を守りたかった。いつも光り輝いている真理を、守りたかった。
 だから、ぼくは談話室を飛び出したのだ。雪隠しに見せかけて次々と人を殺害している
犯人を捕まえたかった。
 ぼくの心は凍てつき、永遠に融けることのない氷に閉ざされている。
 だが、そんなぼくでも、誰かを守りたい、誰かを幸福にしたいと感じ始めていたのだ。
 今頃になってそんなことに気づくなんて、遅すぎたけどね。ぼくはそう思い、目を閉じた。

 …………。

「透、起きてってば!」
 誰かに頬を叩かれて、目を覚ました。ぼくは、雪の上で、真理に膝枕されていた。どんな
シチュエーションだよ、と突っ込みたくなった。真理の目から零れ落ちた涙が、ぼくの頬を
濡らしていた。ぼくと真理の周囲だけ、吹雪が「消え」ていた。
「真理?」
「透……。私、透に言わなきゃいけないことがあるの」
 真理は、思いつめた表情で言った。ああ、ようやくこのときが来たか、と思った。
「ぼくもだよ。ぼくも、真理に言わないといけないことがあるんだ」

 ぼくは言った。

A「ぼくは昔、雪隠しの赤ちゃんだったんだ」
B「ぼくは、真理が好きだ」
C「一連の事件の犯人は、香山さんだったんだ」
441名無しのオプ:2007/06/07(木) 10:07:16 ID:z13fkEAu
Bで
442165:2007/06/07(木) 10:39:02 ID:DDUfM9pq
 以下、「雪隠し伝説編」も、「2ちゃんだけのかまいたちの夜 Part6」に続きます。

↓次スレはこちらです。

http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1181169336/

 他の作品を執筆しているかたも、次スレに連載を移すことを推奨します。
443165:2007/06/07(木) 17:43:07 ID:DDUfM9pq
訂正。

>>438
26行目。

×夏美さんを追って飛び出した。 ぼくたちには、それがまるで「雪隠し」のように見えていた。
○夏美さんを追って飛び出したぼくたちには、それがまるで「雪隠し」のように見えていた。
444名無しのオプ:2007/06/07(木) 19:36:26 ID:EUZ8azcW
ちょちょwちょい待て。いくらなんでも50kは残しすぎだ。1行、2行のレスじゃ1kも使わないんだぞ。
過疎板だからまだいいものの、いくら天然でも容量やレス数残した状態では次スレは立てないようにしてくれ。乱立、重複扱いになっぞ。というか梅だ。梅だ。
445165:2007/06/07(木) 21:25:20 ID:Nh+cVAqh
そうなんですか?
でも、島田荘司スレの重複スレである
【ヴェタなタイトル】島田荘司32【つけるヴェし】
とかが生き残っているので、あれよりはマシだろう
というつもりで移ったのですが……。
446呪篇:2007/06/19(火) 22:28:13 ID:6EQr5VTU
ぼくは不思議に思った。
すばらしい朝。いき
なり殴られて目覚める。
顎が痛い朝。口
が切れた。
それが始まり。
ただ痛がる僕。
ハ゜パは怒ってる。
妹もぼくを睨む。
もうこんな家嫌だ。
私は私だ。
仮に逃げても、
運命は変わらない。
話はここから始まる。
いなくなるんだ。
決意したぼくは、
ハ゜パの居ない島に渡った。
 誰もいない島に着く。
しかし、人は居た。
はたして何があるのか。
ヤスリを持つ老女。
たけ馬に乗る男。
いて座が見える。
ラクに生きたい。
あれ?
あ!!

A ぼくは見てはいけないものを見た
B くだらないと全てを諦めた
C ぼくは謎が解けた
D ぼくは夢から目が覚めた。
447名無しのオプ:2007/06/19(火) 23:13:38 ID:ClD8E4nF
「2ちゃんだけのかまいたちの夜 Part6」はこちらです。

http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1181169336/
448矢島透 ◆OS2v2MPiG. :2007/06/20(水) 04:59:29 ID:HXLZ4/5R

ここに、「かまいたちの夜」というゲームがある。

主人公である「透」こと「矢島 透」と恋人 「小林 真理」の二人が
真理の叔父である「小林 二郎」のペンション「シュプール」に宿泊した際に
恐ろしい殺人事件に巻き込まれるというゲームだ。

そして、その続編である「かまいたちの夜 2 監獄島のわらべ唄」
最後に、シリーズ三作目となる「かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相」

これは、「1」がゲームであり 新たな舞台である「三日月島」、通称「監獄島」で
殺人事件が発生し、それに「透」と「真理」が巻き込まれるという物である。

僕は、最初このゲームが発売した時に凍り付いた。

あの時の・・・・あのペンション「シュプール」で実際に起こった
「バラバラ殺人事件」。

あの日に、ほぼ近い形でゲームが進行されていたからである。

449矢島透 ◆OS2v2MPiG. :2007/06/20(水) 05:00:59 ID:HXLZ4/5R
ある日、僕の自宅に懐かしい人物から電話がかかってきた。
「美樹本 洋介」さん。あの日のシュプールの宿泊者の一人だ。

ここで、「かまいたちの夜」をやった事のある人なら疑問が生じるはずである。
もし、あの「バラバラ殺人事件」が本当にあったのであれば「美樹本」からの電話は
可笑しいと。

僕がさっき言った事を思いだして欲しい。
「あの日に、ほぼ近い形でゲームが進行されていたからである」

まず「ゲーム」と現実との大きな違いの一つ 「美樹本さん」は犯人ではない。
あのゲームの中では演技である「美樹本さん」のキャラクターは本物だ。
彼は本当に陽気なフリーカメラマンをしている人である。

ちなみに、「香山」さんも大阪である会社の「社長さん」をやっている
奥さんはもちろん「春子さん」だ。ちなみに、娘さんは「2」に登場する
後妻となっている「夏美ちゃん」だ。

OL三人組は、「可奈子ちゃん、啓子ちゃん、そして亜希ちゃん」の三人だった。
亜希ちゃんは、実在している。小林さんの奥さんの「今日子」さんの娘ではない。
しかしながら、「亜希ちゃん」はあの事件の後「行方不明」になっている。
それについては、後で触れよう。

そして、「俊夫」さんと「みどり」さん。
彼らはゲームと違う点は特にない。ゲームの中では展開によって「みどり」さんが殺される事があるが
みどりさんは、生きている。ちなみに、現在の名前は「久保田 みどり」 結婚したのだ、「俊夫さん」と

450矢島透 ◆OS2v2MPiG. :2007/06/20(水) 05:02:52 ID:HXLZ4/5R
そして、ゲームとの最大の違い・・・・・。
それは「透」と「真理」だ。

ちなみに、ここで僕の名前を聞いて欲しい。
僕の名前は




「正岡慎太郎」 真理の恋人だ。





僕と「真理」との出会い。
「2」をやっていればわかるが、僕は本当に「ゲームプロデューサー」をやっている。
・・・・・まぁ、代表作やヒット作と呼ばれる物は一つもないが

下積み時代に、「弟切草」というゲームに関わった事がある。「かまいたちの夜」と同じサウンドノベル形式のゲームだ。
そのときの、女性キャラのモデルとなった女性。それが、「真理」だった。

「透」のようだが、しつこい僕のアタックに負けた「真理」に 「シュプール」に誘われたのだ。
本当、あの時は死ぬかと思いました。思わず、口調が変わった。それほど、嬉しかった。

ちなみに、あの時の僕と真理のやりとりは ちょっと違う。
僕は「ボーゲン」くらいはできた。

まぁ、そんなどうでもいい事は放っておくが あの後のペンションシュプールでの出来事は、ほとんど
同じだ。
451矢島透 ◆OS2v2MPiG. :2007/06/20(水) 05:04:17 ID:HXLZ4/5R
美樹本さんは、僕たちがシュプールについた時すでにそこにいた。

食堂の「田中一郎」・・・。怪しいトレンチコートの男、彼もそこにいた。

そして、遅れてやってきた男・・・・。 





その男こそが、「矢島 透」だった。

つまり、実際に起こったバラバラ殺人事件の犯人は 「矢島 透」だったわけだ。
ここで事件は終わったかに見えたが、そうではなかったのだ。


452矢島透 ◆OS2v2MPiG. :2007/06/20(水) 05:13:03 ID:HXLZ4/5R
話は戻るが、「美樹本」さんからの電話の内容
それは、もちろん「かまいたちの夜」の事だった。ゲーム業界にいるくせに、ろくにしらなかった僕は
速攻で購入し、プレイした。

まず、主人公が「矢島 透」の時点で驚愕した。そして、最後まで一通りやったが僕の名前は
出てこなかった。

「まるで、僕の存在はそこには、なかったという風に・・・・」

「真理」も何も知らなかったらしく、僕の話を聞いた時 とても「奇妙」がってた。
どうやら、他の人達もこのおかしな自体に気がついたらしく

「俊夫」さんからも連絡をもらった。

453矢島透 ◆OS2v2MPiG. :2007/06/20(水) 07:26:37 ID:HXLZ4/5R
そして、この後 僕たちにとっては「第二の事件」の発端となるある手紙が届いた。

まず、真理に招待状がきた。

「かまいたちの夜に出演いただき ありがとうございます」という「2」の始まりと同じ内容の手紙だ。
場所は、なんと「シュプール」だった。差し出し人の名前は「我孫子武丸」。

もちろん、あの日の宿泊客にそんな人はいなかった。

どうやらみんなにも同じ内容の手紙が届いたらしかった。
しかし、僕にはそんな招待状はこなかった。

そんな時 小林さんから電話がかかってきたのだった。
454矢島透 ◆OS2v2MPiG. :2007/06/20(水) 19:18:41 ID:HXLZ4/5R

「もしもし、慎太郎くん?」

突然掛かってきた電話。あの手紙の事があったから誰から掛かってくるのだろうと
不安に感じていたが、その懐かしい「小林さん」の声を聞くと僕は思わず声を上げずにはいられないのだ。

「小林さん!!」

「君も真理も元気にしているみたいだね」
小林さんは、真理の叔父だけあって僕らの事を心配してくれているようだ。

「もちろん元気ですよ」

普段ならこのまま他愛のない日常の出来事などを話したりするのだろうが
今回はそうもいかない。小林さんの用件はもちろん、あの手紙と予約の事だった。
455矢島透 ◆OS2v2MPiG. :2007/06/21(木) 06:42:18 ID:mumrhlRI
「この間、妙な男から団体客の予約があったんだよ。 自分を含めて8人泊まりたいから
部屋を空けておいてくれと頼まれたんだ。男は自分の事を我孫子と名乗っていた。その時点では不審に
は思わなかったんだが・・・・」

本当に我孫子という男が予約をいれたようだった。

「その後、どうしたんですか?」

「香山さんから電話がったんだ。我孫子って男に予約を入れられたと。
不審に思った私も我孫子にかけ直してみたんだが・・・・繋がらないんだよ」

「繋がらない・・・・って 電話番号が使われてないんですか?」

「いや、電話をかけるとキヨという使用人と思われるお婆さんしか出ないんだよ・・・・」

使用人・・・・我孫子という男はよほどの金持ちなんだろうか?
そんな男が、なぜあんなゲームを・・・・?

「そのお婆さんはなんて言ってるんですか?」

「どうやら何も知らないみたいで、主人からは何も聞いてないと言ってるんだ」
456矢島透 ◆OS2v2MPiG. :2007/06/21(木) 07:03:58 ID:mumrhlRI
「どうしようか悩んでいたら、その後、美樹本さんや渡瀬くん達からも電話が来たんだよ。
我孫子について聞かれたが私もわからないと答えたんだが、その後二人とも私の予想外の事を
言ってきたんで驚いたよ」

小林さんは、半ば呆れているようなトーンの声で言った。

「予想外な事と言いますと・・・・・?」

「その日に行くからよろしくって言われたんだ・・・・」

さすがにこの答えには僕も面食らってしまった。みんな不審に思わないのか?

「しょうがないから香山さんに電話したら、香山さんもみんなに会えるならワシも行ったるってね
そんな調子なんだよ。私は得体の知れない人からの予約だから、どうかなぁとは思うんだけど
幸か不幸かその日、我孫子以外のお客からの予約はないし、部屋は開いてるんだよ。それで、
君と真理なんだがね、君たちはどうするかと思って、来たんだろ招待状?」

実をいうとなぜか僕だけ招待状は来ていなかった。理由はわからない、かまいたちの夜にも
僕の名前は一切でなかった・・・・嫌われているのか?そんな単純な話なのかはわからないが
我孫子という男・・・・一体どんなヤツなんだ?

「慎太郎くん・・・・?」

「あっすいません、ちょっと考えてしまって。招待状は来てますよ」

「ふむ、やっぱり・・・・。で、君たちはどうするかい?」

「今、真理は買い物に行ってるんで・・・・彼女が帰ってきて相談してからでもいいですか?」

「ああ、そうしてくれ。まぁ、叔父の私としては真理をあまり危険な目には遭わせたくないんだがね・・・。
まぁ、また・・・・あんな事は起こらないとは思うが・・・」
457矢島透 ◆OS2v2MPiG. :2007/06/23(土) 17:55:21 ID:+512iBR6
小林さんの行っているあんな事・・・・。それはもちろん、あのペンションバラバラ殺人事件の事だろう。
幸い、宿泊客は誰にも被害は及ばなかったが 共犯だった「南」とかいう男が殺されている・・。

あの男・・・「矢島 透」なら、下手したら僕たちを皆殺しにしていたかもしれない。
そんな、最悪の事件をゲームにした男・・・「我孫子」。

ほぼ、あの時の様子のままという事を考えると あの泊まり客の中の誰かという可能性が高いと思う。
しかし、そんな悪趣味な人間はあの中にはいなかったと思うが・・・。

「それじゃあ、真理によろしくね 慎太郎くん」

小林さんが電話を切った。そのまま「我孫子」について考えていると真理が帰ってきた。
458名無しのオプ:2007/07/03(火) 00:31:23 ID:M7xUPVPy
まだ全部読んでないんで、保守させてください
459名無しのオプ:2007/07/05(木) 07:16:09 ID:jtxP6Oyd
保存すれば良いのでは・・・。
460名無しのオプ:2007/07/08(日) 01:42:39 ID:gzVu88ye
(チラシの裏が嫌いな人はスルーお願いします)

事情があってネットに繋げず、久しぶりにここに来た。
つくづく思ったのが、このスレ(Part5)が残っていて本当に良かったって事。
通常なら165氏や他の書き手さん達がもっとこっちを利用して、その結果、
容量等の関係でとっくに落ちていただろうから。
本来ならきちんとスレを消費してさっさと落とすのがマナーなのかも知れないが、
今回ばかりは、秀作投下続きでスレの流れが速いなか、半端に容量を残す事により
Part5を生かしていてくれた判断を、ここでこっそりと感謝したい。
いつかまとめで読めるとは思うがそれは確約されたものではないし、
こうしてスレで読むのはやはり臨場感が違う。
「雪隠し伝説編も生き埋め編も完結させます」と断言してるし、
あんだけgdgdな時でも果敢に投下してくれた165氏なら、きっとやってくれるだろう。楽しみだ。
・・・・と思っていたのだが…。
461名無しのオプ:2007/07/08(日) 01:44:47 ID:gzVu88ye
その前に、>>444が気になったのでその事も書いておこう。
165氏は(以下>>412よりコピペ)
ある程度容量を残したまま次のスレに移って、新しく来た人たちや、
独自に推理している人たちや、「生き埋め編」の別バージョンのエンディングを
書きたい人たちが、簡単に読み直すことができるようにした方がいいですか?
と、わざわざ聞いている。
つまり、自分のような人間を見越してくれていたとも言える。
(どちらかというと、読者ではなく書き手仲間が増えるのを期待したのだろうが)
決して勇み足で新スレに移動したのではない。ちゃんと理由があったのだ。
実は、創作系スレ(ここも含む)では「ここは過疎スレだから」とタカをくくっていて
久しぶりに来たら過去ログが読めずにがっかり…という経験が何度かあるので、
その気遣いがとても嬉しかった。
自分のような者は、大概の住人には「マメに来られないなら諦めろ」とか
「過去スレ(倉庫落ち)読むスキル持ってから来い」とかしか思われないし、
まとめサイトがあっても、こっちの都合良く更新してくれるとは限らない。
そしてそれらは余りにも当たり前の事だ。
だからこそ、大げさでなく165氏を弱者の味方のように感じてしまった。
わたしは同性愛者ではないけれど、「差別」や「認識不足」という事に過敏な165氏の
一連の書き込みを見て、そう感じた事をなんとなく納得した。
462名無しのオプ:2007/07/08(日) 01:46:10 ID:gzVu88ye
165氏を「天然」と軽視している住人もいたようだが、
そして確かに「慣れていない人物」だとは思うが、
指摘されればちゃんと意識してくれるし、その上でちゃんと続きを投下してくれている。
そのペースは精力的で頼もしい。(とはいえかなり前の事になるが…)
肝心の内容も、自分にとっては充分に面白いし期待していた。
なにより「かまいたちの夜」をやりこんでいるらしいのが伝わってくる文章が心憎かった。
最初に現れた時のいきなりな内容には「なに仕切ってんだコイツ?」と引いたが、
今は「実は色々と考えてる人なんだな」と、好感と期待しか感じない。
ここがミス板である事に重点を置いて読んでいる住人には物足りない作品なのかも知れないが、
自分がここに来るのはミステリを読みたいというよりは
かまいたちの世界を味わいたい気持ちが強いので、全く気にならない。
ここはミステリ板なのだから、書き手には本格的なミステリが要求されるのかも知れないが……
165氏の生き埋め編では、真相に迫る場面での大量の選択肢が意味深で見事に振り回され
ゲームの中で透が犯人を追いつめるシーンに似た緊張を感じてドキドキしたし、
雪隠し伝説編は、真相究明よりも透の隠された顔が現れてくる描写にwktkした。
それらは本格ミステリを読んで湧く気持ちとは全く異質のものではあるが決して不快なものではなかった。
もっと言うと不快どころか、自分はその部分こそに惹かれた。
なぜかというと、それらはゲーム「かまいたちの夜」シリーズから感じたものと似ていながら、かつ、新鮮だったのだ。
463名無しのオプ:2007/07/08(日) 01:48:55 ID:gzVu88ye
実はここには、>>444のように解釈している住人へ自己流解釈を絡めて
このスレを残していてくれた事への感謝の気持ちを数行記すだけのつもりでいた。
しかしスレを読み進めてみると、生き埋め編の動機解明シーンと雪隠し伝説編のその後は
投下されていないのを知った。
数日迷ったが、この書き込みをする事にした。
まさかあんな形で投下がストップするとは思わなかった。
自分も現行スレ89さんと同様に雪隠し伝説編が「金を払っても読みたい」位に好きだ。
すごく無念だ。
今までも投下が止まった事はあるが、それは書き手の都合によるもので(恐らく忙しいとか、
モチベーションが維持出来なかったとか)、だから、それなりに納得できたし、
いつか続きを投下してくれるかも?という淡い期待を持っていられるのだが。
こんなに時間が経ってからこんな事を書き込んでも165氏にとって迷惑なだけだと思うので、
こっちに書く事にした。

そして改めて、ここを残してくれた気遣いを感謝します。
それは165氏と、埋めで落としていなかった住人の方達に対してです。
出来たら今後もこんな感じで前スレを残して欲しいです。
せめて、まとめサイトにアップされた後で落とすようにする、とか。
ただのわがままでしかないので、無理なら今までのように諦めます。

長々と失礼しました。
464名無しのオプ:2007/07/08(日) 01:50:02 ID:gzVu88ye
「2ちゃんだけのかまいたちの夜 Part6」はこちらです。

http://love6.2ch.net/test/read.cgi/mystery/1181169336/
465名無しのオプ:2007/07/09(月) 22:00:25 ID:os4++Vka
>>463
無理とか、そういう次元の話じゃなく、ガイドライン、ルールとして存在してるんだから、守れないなら書き込むなよ。
どうしてそういうルールが存在してるのか?そのルールが必要だからだよ。
自分のちょっとの手間をはぶくために他人に迷惑かけてもいい人間なんだな。身勝手だ。言ってることも完全に利己主義的だし。
この鯖だってミス板だけで使ってるわけじゃないんだし。現に誘導前に落ちちゃったスレもあるんだから。
466名無しのオプ:2008/03/19(水) 19:21:53 ID:EcAsXk54
そのとおりだ!
467名無しのオプ:2008/03/21(金) 12:26:17 ID:3VK2fy3c
>>465みたいのに限って、
さっさとスレからいなくなってたりするんだよな
468名無しのオプ:2008/03/21(金) 19:44:07 ID:5d9Fg3U1
>>466
晒し上げしたかったのをずっと我慢してたのにあっさりやりやがってw

>>467
居なくなった方がスレの為だろどう考えても
469名無しのオプ:2008/03/21(金) 19:48:18 ID:1ZSONnWB
つーかさあ、>>466って真性のKY?
それとも荒らし?
もしくは馬鹿?
このスレが落ちるようにと何ヶ月も住人が書き込み自重してたのに、こいつがageたせいで水の泡じゃん。
470名無しのオプ:2008/03/21(金) 21:11:43 ID:krKKP0l8
水の泡ともそうでないとも言えるな。
466がやらなくても他の誰かがやったかも知れないんだし、
(もっと何度もやられてても可笑しくない程だw)
どれだけ経ったら落ちるかなんて誰にも分からないんだから、
>>465を見た時にはまさか八ヶ月も残ってるwwwなんて
予想できなかったのと同じで、466が無かったら
今後いつまでレス自重させられるのか見当もつかなかったんだぜ?
逆に466があったおかげでようやくこうしてレス出来るって意味で
個人的には感謝の気持ちの方が強かったりするよ。
これをきっかけに少しずつでも埋めて行きゃ良いんだからな。
落ちるまでに時間はかかるかも知れないけど
八ヶ月も書き込み自重してた方がよほどストレスだったわいwww
>>465が無かったらとっくにここは落ちてた筈だと思うけど
今それを言ってもどうにもならないし。
471名無しのオプ:2008/04/01(火) 20:05:51 ID:DSxdG0BV
福井にある居酒屋(自称:総合商社)経営のDQN親父(kazu_jyugemu氏)がヤフオクにPS3を出品。
11月16日早朝、ネラーに1円で落札される。
親父が「1億円払え」「福井まで取りに来い」等のメールを送り落札者を脅迫。
親父の個人情報から違法ドラッグ取引、アダルト店舗「エローソン」の経営(ローソン商標権侵害)、
染み付きパンツ買取(古物商無資格)、乱交など次々と疑いが発覚。
親父が2chに何度も削除依頼を出すも、DQNすぎる文章で運営に相手にされず。
別のネラーB氏が電凸。折り返し留守電に親父のエキセントリックな声が吹き込まれ全世界に公開。
親父は電凸の番号を福井県警に通報、福井県警からネラーに事情聴取の電話が来る。
その後親父は削除要請を乱立しISPに規制警告が出されたり、電凸者と思しき携帯番号晒しが行なわれたり
店先に変なステッカーが現れては消えたり、マクドナルドを敵に回すようなメニューが発見されたり
と燃料が絶えず、スレは燃え続ける。
そして親父は全国雑誌デビュー。
親父は大企業に訴訟を起こされるのか? それとも親父の逮捕が先か? 東スポの1面を飾るのか?
まとめサイトwiki http://www21.atwiki.jp/kazu_jyugemu/ (休止中)
臨時まとめ http://www42.atwiki.jp/kazu_jyugemu2/
携帯まとめ http://space.geocities.jp/llllllllllll2012/index.html
留守電の親父の声 ttp://www.youtube.com/watch?v=i6nEFwmGRxA
普段(?)の親父の声 http://www.voiceblog.jp/hesiko/

【へしこ】PS3、福井、違法薬物商標権侵害乱交疑惑【寿限無】★61
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/news2/1192377535/501-600
472名無しのオプ:2008/05/11(日) 18:07:15 ID:4NMMBwYO
Part6を見ようと思ったらdat落ちしてた
ちなみに2008/05/01(木) 09:01:35までは見てた
まあそれは別にいいんだけど、なんでここは残ってんの?
473名無しのオプ:2008/05/15(木) 18:24:24 ID:WtwxV5ug
不思議だよな。下手にコピペ貼られるより埋めたほうがいいような気がする
474名無しのオプ:2008/05/16(金) 01:12:33 ID:5CEtAlaQ
マジで、何で残ってるんだろう。

Part6は485kbで次スレに移った。
このスレは、現在473KB(奇しくも、スレ数と同じwww)。

まあ、少なくとも500KBに達したら数日でdat落ちするだろうし、
まとめサイトの過去作品を貼って埋めちゃわね?
475名無しのオプ:2008/05/16(金) 12:40:21 ID:d67DDNC/
ただ梅るのでは荒らしと変わらない。芸のある梅型したいものだが
476名無しのオプ:2008/06/08(日) 13:09:05 ID:EFMb9wqw
ここまだあったのかよw

埋めついでに。

>>473不思議だよな。とか 
>>474マジで、何で残ってるんだろう。 とかあるけど
前スレは容量いっぱい(500だっけか?)になる前に落ちたの?
それ知ってる人いないの?
容量が残っていたのかどうかって。
477名無しのオプ:2008/08/02(土) 02:27:04 ID:PJo64zwQ
この様子だと、五年位残ってそうだなこのスレwww
478名無しのオプ:2008/09/05(金) 11:35:46 ID:HG4RbFim
来年の4月15日には二周年のお祝いをせねば
479名無しのオプ:2008/09/12(金) 11:59:16 ID:kwyork3r
ここ、厳しい人と穏やに流せる人との差が激しいね。
外注してスッキリしてるか溜まって悶々としてるかの違い?
480名無しのオプ:2008/09/12(金) 12:11:06 ID:QSrvzdqE
ごめん、思いっきり誤爆したorz
481名無しのオプ:2008/09/13(土) 01:13:14 ID:KWHp+fJb
テスト
482名無しのオプ
おっと、どっこい