【古書屋 想鼠堂】

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1ハル
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              ∧_∧  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
             (´∀` )< ここは何のスレ?
  ∧_∧ .        (    ) \_________
 ( ・Дメ)       | | |
 (つ|⌒|⌒|        (_(_) .∧ ∧ホンバッカヨンデネーデ ソトデアソベ!
  (⌒)(⌒)             (゚Д゚ ) ̄ ̄ ~〜
___∧_________ U U ̄ ̄U U
|ここは、過去(昔)に読んだ本を持ち寄るスレ。
| 一分一秒前に読んだものでもかまわん。
|  ま、詳しくは>>2-10ぐらいをを見てくれ。
2ハル:02/02/17 15:02
みなさん、今までに色んな本を読んできたと思います。

思い出に残っている本、漫画等があるでしょう。
雑誌、その他で言えば「歌詞カード」でもかまいません。
(横開きでページがめくれるなら、『本』って事にしてください(笑)
その中で「心に残るフレーズ」「好きな格言」
「ストーリーそのもの」でもかまいません。
それらを紹介して欲しいのです。

作者、本の題名なども載せてくれたら嬉しいです。

とは言っても、俺が気に入ったのを載せたいがために作ったスレなんですが、
「あ、それ見た事ある!」ってのでもいいんで、
ご協力くれた方には、もれなく俺からのレスが付きます(笑)
3ハル:02/02/17 15:08
そして俺は「言葉」とそれに対する「想い」に
少し、こだわる所がある。
そんな想いゆえに立てた、俺の自スレ。

昔板
『[次世代突入] 〜想〜 part2』
http://mentai.2ch.net/test/read.cgi/mukashi/1013777526/

壁板
『鼠鼠鼠アノ日!アノ時!アイツの言葉!鼠鼠鼠』
http://choco.2ch.net/test/read.cgi/wall/1008846467/

純情恋愛板
『〜想〜@名無し』
http://love.2ch.net/test/read.cgi/pure/1010590262/
4ハル:02/02/17 15:09
ま、ここは壁以上にマターリしてるんで、
ゆるりといきます(笑)
5ハル:02/02/17 15:20
貴志 雄介著『クリムゾンの迷宮』
ただいま、読書中・・・

人生を謳歌していた男が、ある日失業。
堕落した生活を送るが、気が付くと別世界にいる事に気づく。
その男の回想シーンより

『だが、気が付いたら失業者だった。
社宅からの退去期限の三日前に、杏子は家を出て行った。
子供もいなかったし、今から思えば、
会社が傾きかけたときには、すでに腹を決めてたに違いない。
世間体を気にして、時期を見計らっていたのだろう。

もともと、妻と心が通い合ったことは一度もなかった。
あの女はただ、ピーク時の俺の年収と、
安定した将来という幻想に、心惹かれただけだったのだ』

・・・、結婚って、やはりこんなもんなんだろうか。
悲しい事だ。
6Kaz ◆wiiMOUSE :02/02/17 16:29
じゃ、マンガでいくで!
ハロルド作石著『BECK』4巻

何の取り得もない少年(中学生)が、
ひょんな事がキッカケでギタリストを目指す。
しかし、不良どもに目をつけられハブに。

ある日、転校生が話し掛けてくるんだが、
「自分に近づくと、キミもいじめられるよ」と忠告。
その時、転校生が言った主人公への励ましの言葉。

『この世の中には2種類の人間がいる』

『賢い人間と素直な人間だ』

『賢い人間は、誰かの作った規律と道徳が、
この世の中を動かす全てだと思っている』

『だがおれは、そんなもん屁とも思っちゃいない』

・・・、うーん、耳に痛い言葉やな!
7NO.9:02/02/17 16:48
>6=Kazサン
今日、その『BECK』を買いに行ったけど、
売られてなかったよ・・・。
これ読んでもっと欲しくなったよ〜
8Kaz ◆wiiMOUSE :02/02/17 19:15
>7=ナイン
ん!ええぞ!このマンガは!

ハロルド 作石著『BECK』6巻

ついにはいじめて来てたヤツと、
ギターを通じて強敵と書いて「とも」と読む関係に。
本当に、共通の趣味ってすごいものがあるな。

俺もこんな風に堂々と人前で出来るものがあったらなぁ。

いや、今から作り出せばいいのか・・・。
9ハル:02/02/17 22:41
すいません、わけあってここは
他の板に移転させます。

ホント、申し訳ない。
手前のミスです。

http://www7.big.or.jp/~mb2/bbs2//test/read.cgi?bbs=dame&key=013952929

移転先はこちら。
その名も「へたれ板」
へたれな俺に、もっとも相応しい・・・ってコルァ!
10ハル:02/03/26 22:44
京極夏彦 著 『姑獲鳥の夏』

自分と関係の無い事件なのに、首を突っ込もうとする関口。
どうやら久遠時涼子に特別な思い入れがあるようだ。
それを一度は止める京極堂だったが・・・。

『いいか、関口。<主体と客体は完全に分離できない>、
 つまり完全な第三者というのはあり得ないのだ。
 君が関与する事で、事件もまた変容する。
 だから、君は善意の第三者では既になくなっているのだ。

 いや、むしろ君は、いまや当事者たらんとしている。
 探偵がいなければ、起きぬ事件もある。
 探偵などというものは、はなから当事者であるにもかかわらず、
 それに気付かぬ愚か者なのだ』



これまた・・・(w
11ハル:02/03/26 22:45
うむ、誤爆した。
しかし、あっちの類似スレがレス数超えちゃったしな。
こっちでも続ける事に決めた。

ま、相も変わらずマターリいきます。
12ももこ:02/03/26 23:36
「ソフィーの世界」

「世界一やさしい哲学書」として世界・日本でベストセラー。
昔は1冊の分厚いやつだったらしいけど、
私が買ってもらったのは上下に分かれた復刻版。
(それでも分厚い・・・)

はじめから最後まで1回読んだら、もう1度はじめから
読まないとダメな本。
はじめの方で思っていた先入観をひっくり返されます。

哲学の本でもあるしミステリーでもあるし、
とりあえず読んでみるとおもしろいですよ。

途中で飽きちゃったり最後までなかなか読み終わらない大人も
いるようですが・・・
私は2日で読んじゃったよ。夜中ベットの中で。
ほんのちょっと飛ばしたけどね。
ま、集中力と興味があれば難しくても読み進められるんだなと。

13ハル:02/03/27 21:41
へー、ももこは>>12哲学とか読むのか。
「世界一やさしい」
それなら哲学でも読めるかもなぁ。

それに「ミステリーでもある」ってのが興味をそそる。
次は新ジャンルってのもアリだな。

ああ・・・、日に日に読みたい本が増えていく・・・。
14ハル:02/03/27 23:29
田口雅之 画 『バトルロワイヤル』4巻
高見広春 著

孤島内でクラスメイト全員の殺し合いの中、仲間の典子が傷を負い高熱を出す。
手遅れにならない内に診療所へ運ぼうと言う秋也に対し、
川田は「今は動くべきではない」と冷たく言い放つ。
ついには別行動を起こす秋也だったが、
「いくら正しい判断でも、人の心が分からなければ正解ではない」
という言葉に動かされた川田に、今まさに殺されようとする所を救われる。
「オレがもっと考えて行動していれば。正しい答えを見つけていたら」
と謝罪する秋也に対して言った川田の言葉。

『もういい・・・、その事は言いっこ無しだ。
 俺もだ・・・、
 俺もお前も少しずつ間違っていたんだ。

 だから俺とお前でだ。
 俺の判断とお前の心が一つになって本当の正解だ』

と、譲り合って仲直り。
いいねぇ、友情ってヤツは・・・。
15NO、9 ◆RDeE7N2o :02/03/29 11:25
本じゃ無いですけど、、。
中島みゆき『時代』

「そんな時代もあったねと
いつか、話せる日がくるわ
あんな時代もあったねと
きっと、笑って話せるわ
だから、今日はくよくよしないで
今日の風に吹かれましょう
廻る廻るよ時代は廻る
よろこび悲しみ繰り返し
今日は別れた恋人達も生まれ変わって巡り会うよ」

中島みゆきサンの曲は特に歌詩がイイです。
嫌な事が色々あった時にこの曲を聴くとすごく気持ちよかったです。
他の曲もメロディーと歌声、詩が良くあっててイイですよ。
16ハル:02/03/30 21:07
ん、歌詞カードも本の形をしている。
と、いう事で。
古本屋で売れそうなのは何でもいいよ。
近頃ではゲームまで売ってるそうだしね(w

歌って、その時々のココロ、状況によってはまってしまうよね。
「ああ・・・、この歌詞、分かるなぁ」と。
その年でその歌詞は驚きだが(w

中島みゆきはあまり知らないけど、好きな歌はあるよ。
ひとつは「ひとり上手」
もう一つは・・・、
17ハル:02/03/30 21:12
中島みゆき 『空と君のあいだに』

『君が涙のときには 僕はポプラの枝になる
 孤独な人につけこむようなことは言えなくて
 君を泣かせたあいつの正体を僕は知ってた
 ひきとめた僕を君は振りはらった遠い夜
 ここにいるよ 愛はまだ
 ここにいるよ いつまでも
 空と君とのあいだには今日も冷たい雨が降る
 君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる
 空と君とのあいだには今日も冷たい雨が降る
 君が笑ってくれるなら僕は悪にでもなる』

これと同じ状況になった事があった。
でも俺はカッコツケだったんで、言えなかったんだ(w
「好きな子に告げ口」ってのがどうしてもダメで。
で、結局そのコは捨てられて俺は後悔して。
「言っとけばよかったのか」と。

それからそのコとしばらく遊んでたけど、
お互い忙しくなって段々疎遠になって。もう何年も会ってない。
元気にしてるかなぁ。
18ももこ:02/03/30 21:48
おすすめアーティスト
小松未歩 DEEN

小松未歩の「君がいない夏」(をDEENに提供してる。小松verの方が好き)
『忘れかけてた甘い夏の日を
あれからどれくらいの時間がたつの?
大好きだったあの笑顔だけは
しばらく近くで重ねあう日々を
ahh もう戻れない時を小さく祈っている

忘れかけてた甘い夏の日も
いつかは二人の胸によみがえる
少し大人になれる気がしてた
それぞれ違う人生を選ぶことで
ahh もう戻らない時を小さく祈ってる

鮮やかすぎる 君がいない夏
あの声 あの仕草が 広がってく
言葉になんかできなくてもいい
こぼれた日差しに心がにじんだ
ahh もう戻れない時を小さく祈っている』

今日は暑くて夏みたい。
空気が暖かくなるとこの曲を思い出す。

小松未歩はいいねぇ・・・続く。
19ももこ:02/03/30 21:57
「青い空に出会えた」小松未歩

『せいいっぱい愛した
でもあなたの夢については行けなかった
ほらあの夏が近づいてく
「願い事は叶うよ」そういつも話していたね
ああ笑って会える日がくるなんて寂しい』

夏の歌が圧倒的に多い気がする彼女の歌は。
私は特に夏に思い入れはないけど、でも好き。
春の歌を作って欲しいかも。

続く。
20ももこ:02/03/30 22:14
またまた夏の歌、今度はDEEN。

「少年」
『どんな辛いこと起きたとしても
無口で逃げる真似はしたくない

遠い夏の日
探していた宝物は見つからないけど
家路を急ぐ少年たちを眺めていたなら
君の笑い声聞こえた気がして

何かをあきらめることが
大人になることじゃない
捨てる物ひとつもなかった
あの日の僕らのように
自由に…

遠い夏の日
探していた宝物は見つかったかい
都会の流れに
大切なこと忘れそうな時は
君のまっすぐな瞳が見つめてる』

夏の歌。しかも大人が少年時代を懐かしむ歌なんだよね。
「僕は週末以外ネクタイ締めてありきたりな日常」
とかあるし。
でもなんか好きな歌。
私も昔を懐かしんでるさ・・・まだ若いのに(w

以上。
今度は本も書かせてもらいますです。
21珈琲紅茶 ◆dPyZXuuM :02/03/30 23:35
ネズミーマウスパレードより。

「(´∀`)ズコー(´∀`)ズコー(´∀`)ズコーズコーズコ」
感動した。
22対対:02/03/31 23:57
菅浩江 著 『五人姉妹』収録「KAIGOの夜」

遠い未来、原因不明の疫病で人間が死に絶えた世界。
そこは中枢という名のコンピュータが人間(ロボット)を
シミュレートしている。
中枢が人間恋しさにロボット介護士に語らせる言葉。

「人間は、我儘で嘘つきな存在なんですよ」

SF界のせつなさの女王がせつなくさせてくれます。
他に「夜を駆けるドギー」という2ちゃんねるタッチの
短編も収録されていて吉。
23ハル:02/04/03 17:26
DEENは俺も好きだよ。
というか、>>18それって・・・。
>少し大人になれる気がしてた
>それぞれ違う人生を選ぶことで
こんな歌をイイと思える人生をすでに送ってるんだね(w

その歌>>19、ここがいいな。
>せいいっぱい愛した
>でもあなたの夢については行けなかった

で、>>20ここ、最高。
>何かをあきらめることが 大人になることじゃない
これを胸に生きていきたいな。
24ハル:02/04/03 17:29
・・・、どこをどう感動したのかわかり辛いが、
>>21確かにいいフレーズだな。
流行りそうだ。

その作者>>22、見た事あるな。
ほかに何か書いてたはず・・・。
いい言葉だ。
でも、そう思って人と付き合いたくはないね。

>SF界のせつなさの女王
これが激しく気になるな(w
25ももこ:02/04/03 23:25
次は本を書こうかと思ったけどちょい後回し。
おすすめな歌詞、やっと見つけたんですよ。
カップリングだからなかなか歌詞載ってるサイトなくて・・・。
長くなるけど全部書かせてください。

「光色のかけら」愛内里菜
『何を守ろうとしていて 何を守りたかったのか
思いあぐねる胸を何度痛めただろう?
動けずに目に閉じてたよ ここに存在することに
おびえながら 何も見えないフリをつづけてた

真実を最初から疑い
確かな言葉は風に流され・・・

この涙の果てに見つけた光色のかけら
誰も奪うことはできない 守ってみせるよ
僕らは生きているんだから 悩んでゆけばいい
意味を見つけたいからこそ悩み
大切な痛みを知ってくよ

流れてく雲の行方は 分からないものだけれどね
まるで夢をのせて 運んでいるようだった
何が ”イイコト” かなんてね 終わってみなきゃ分からない
だからこそ そう僕らは いまを生きたいと思える

大きな流れの中のちっぽけな僕らを
とりまくものは多すぎるけど・・・

この涙の果てに見つけた光色のかけら
誰も奪うことはできない 守ってみせるよ
出来事は幸せなことばかりじゃないけれど
僕らにあたえられたとくべつなものだから
通りすぎないでいて

ここに見え、聞こえるものがすべてキレイゴトじゃないと僕らは知っているなら
目をそらさずに、強くあることだけだよ。

この涙の果てに見つけた光色のかけら
誰にも奪うことなんてできないけれども
きっと強くなった僕は これから出会ってく
大切な人に光色のかけらをずっとあたえてゆけるだろう』

いいフレーズが多いです!
私はこれ聞いて感動しましたね。
カップリング曲だから知ってる人少ないけど。

光色のかけら・・・関係ないけど光物は大好きです。
宝石とか目がないね(w
ダイヤとかピンクトパーズとかアクアマリンとか。クリスタルも。
う〜ん光るものってステキ。
26NO、9 ◆RDeE7N2o :02/04/04 00:26
>>25
何か深い詩ですね。個人的には
『何が ”イイコト” かなんてね 終わってみなきゃ分からない
だからこそ そう僕らは いまを生きたいと思える 』
って所が好きです。
27NO、9 ◆RDeE7N2o :02/04/04 00:40
俺も詩をひとつ。。

「金もうけのために生まれたんじゃないぜ」RCサクセション

『金もうけのために生まれたんじゃないぜ 
金もうけのために働くのはいやなのさ
金もうけに疲れて
死んでいくなんて 悲しいことさ
金もうけのために したくない仕事に 
金もうけのために 一生かけるなんて
それで人間かよ ロボットと同じさ 虚しい事さ』

この詩を初めて聞いた時はスゴク驚きました。
こんな詩は今までの聞いてた歌に無かった詩で
すごく感動しました。
古いけど、心に残っている歌詞なので

「歩いていこう」JUN SKY WALKER(S)

言葉じゃたりなくて
気持ちじゃ見えなくて
から回りしている時の中
走って来た
なぜか君の目は
悲しく語ってた
自分を信じて
あせる事は何もない
WOO- 歩いていこう
WOO- これからもずっと
WOO- 歩いていこう
前が見えるように

分かった僕は今
おお金つまれたって
ただの紙切れに
火をつけて燃やしてやる
生まれ変わった僕は
何も恐れてない
こんなにきれいな
空だってちゃんと見える
WOO- 歩いていこう
WOO- 振り向かずずっと
WOO- 歩いていこう
前が見えるように

色々な意味で迷っていた時に聞いて、本当に大事な物って
なんだろうって考え直した歌です。
29ハル:02/04/04 23:13
うっ、しまった。>>26先に言われたか(w
俺もそのフレーズが気に入ったな。
しかし>>25
>う〜ん光るものってステキ。
これは・・・、女心ってやつか?難しい・・・。

しかし全てがいいね、その>>27歌詞。
けれどそれを見て「当たり前だろ」て思わなきゃいけないんだろうな、
本来ならば。

深い。>>28
『色々な意味で』ってのが、意味深長だ(w
きっと、大変な時期だったんだろうな。
しかし懐かしい・・・(w
30YAN:02/04/04 23:32
三浦実子の「リターン」

主人公はいきなり事故で死んでしまう。
で、同時刻に死んでしまった女の子の体に憑依。
自分の家に向かうが、
葬式後、母は普通に買い物、
友人はナンパ、親友は笑って過ごしてる。
『人の死ってその程度の事なのか、
それとも自分がその程度の人間だったのか』と悩む主人公は、

「おれなんて いてもいなくてもよかったのかな。
おれの16年間て いったいなんだったんだ?
誰にも必要とされない事が、こんなにも寂しい事だったなんて。

今度生まれ変わったら誰かを愛したい。
心から愛して、愛されたい。
そんな人がいたら、その人さえいれば、
世界中の人から見捨てられても 寂しいなんて思わないのに」
と、泣く。

・・・、そして僕も泣きました(笑)
31珈琲紅茶 ◆dPyZXuuM :02/04/06 22:06
夢野久作「ドグラ・マグラ」

読んだら一度は精神に異常をきたすといわれる
幻想怪奇小説。物語は主人公が精神病院らしきとこの中で
目覚めるところからはじまる。
まぁ単刀直入にいってしまえば基地外が主人公の探偵小説。
評価としても、表現・描写はそこらへんの小説と同じ。

だけど、これ、マジで夜中とか読めません。
流れが正常なハズなのに、ベクトルが極端に曲がっているらしく、
漏れの場合本から視点をハズしたまま
20分ぐらい思考停止してました。怖かった。

思いっきり"自分"という存在を見失える作品です。
最後まで読めませんでした。漏れ。
32ハル:02/04/07 16:37
すごく読みたい・・・>>31
つーか、持ってきてくれなかった・・・(ナンテナw

言いたいことは伝わるけど、実際どんな心境になるのか想像もつかん。

今ある本を読んだら買いに行こう・・・。
(いつになるのか)
33Kaz ◆wiiMOUSE :02/04/07 19:21
尾田栄一郎 著 『ONE PIECE』
ボン・クレー最高!!

ボン・クレーがいきなり現れていきなり去って行く時、
主人公達に言うたセリフ!

「アラ!もうお別れの時間!?残念ねい。
 悲しむんじゃないわよう、旅に別れはつきもの!!
 でもこれだけは忘れないで、

 (ここで親指を突き立て)
 友情ってヤツァ・・・、つきあった時間とは関係ナッスィング!!!」

カッコ良すぎ〜!!
34ももこ:02/04/08 20:29
「リターン」読みました。全部まとめて1時間ほどで(w

生まれ変わるのはずるいだろ(話として
と思ったけど泣けましたね。
男→女はいいかもしれないが
女→男はいやだなぁと思う私であります。

親友っていいなぁ・・・としみじみ思いましたにょろ。

生まれ変わりネタで思い出したのは、
アニメ「セイバーマリオネットJtoX」あかほりさとる原作
ですね。
原作は違うのかな?Jの方も話は違うみたい。
このアニメの最後、何度見ても号泣ものでした。
 解説は↓
35ももこ:02/04/08 20:35
男しかいない惑星テラツー。地球環境悪化で
新しい星を探しに出た何百年も前の宇宙船。
それがテラツーに不時着。生き残ったのは男たちと一人の女。
 
テラツーにはその女性のみが唯一生きた女性で
あとはクローン?によって生まれた男性のみ。
意志をもたないマリオネットが女性のかわりとされている。
そんな中、乙女回路という意志をもったマリオネット3体が
目覚め・・・。


最後だけみてもそれまでのあらすじ知ってれば泣けます。
涙ぼろぼろです。
OPとEDは主人公の声優、林原さんの歌ですが
この歌詞も今聞くと話と合ってて良いです。
おすすめにょろ!!

JtoXはあんまりいい評価がないみたいだけど
私は好きです!!
36ハル:02/04/08 21:06
う〜ん、ごめんな、>>34友情物で(w
けど良かったろ?

今、「これが一番」ってのを思い出したんで、また紹介するよ。

セイバーマリオネットか〜。
それは実は見た事ある。
というよりも、思い出に残っている(w

友人に勧められて見たんだ。
最初はバカにしてたんだが、なかなかどうして良くてな。

『あやつり人形な毎日の中で、ゼロと無限の狭間を迷ってる。
からまった糸を断ち切る力は、キミの心の中にまだ眠っている』

だっけ?なぜか覚えているよ。すごく内容と合ってていい歌だった。
エンディングは・・・、どんなだっけな・・・?
37ももこ:02/04/08 21:15
>>36
その歌詞知らない・・・Jの方では?
EDは
「信じている 信じられる これから歩くこの道を
君がいるよ 僕がいるよ これ以上何もいらない
生まれた意味探すよりも 今生きてること感じて
答よりも大事なもの ひとつひとつ見つけてゆく」
ってやつ。OPの方がマリオネットっぽいかも??
懐かしいなぁ・・・。
38ハル:02/04/08 21:16
しまった。検索してみたらJの歌詞だった。
すまん(w
39NO、9 ◆RDeE7N2o :02/04/12 00:29
RCサクセション『イマジン』
天国はない ただ空があるだけ
国境もない ただ地球があるだけ
みんながそう思えば簡単なことさ
社会主義も 資本主義も
偉い人も 貧しい人も
みんなが同じならば 簡単なことさ
夢かもしれない でもその夢を見てるのは
一人だけじゃない 世界中にいるのさ
誰かを憎んでも 派閥を作っても
頭の上には ただ空があるだけ
みんながそう思うさ 簡単なこと言う
 夢かもしれない でもその夢を見てるのは
きみ一人じゃない 仲間がいるのさ

ジョンレノンのイマジンの日本語バージョンです。
簡単そうな歌詞に見えて、凄く深いです。
いろんな事が起きている今にふさわしい曲だと思います。
個人的には『みんながそう思うさ 簡単なことさ』ってのが好きです。
40ハル:02/04/12 21:09
おお、それは>>39すごく有名なやつじゃないか。
そんな歌詞だったんだね。

俺はキミの
>いろんな事が起きている今にふさわしい曲だと思います。
このセリフが気に入ったよ(w
41NO、9 ◆RDeE7N2o :02/04/13 16:31
>>40
そこにツッコまれると、恐ろしく恥かしいです(w
42日本昔名無し:02/05/27 22:18
島田荘司 著「アトポス」

読んでから、三つ目の作品だと知った・・・。
意地でも1、2、を読まなければ・・・。
43影。:02/06/16 03:20
GAKU-MC 「昨日のNo,明日のYes」


ほっとくといつも君は全てを一人で背負うようなトコがある
だからそういう意味だ 頑張りすぎのようだ どことなく
さぁ 感じるこのビートに その身を委ねてもいいのに
もっと Take It Easy 気楽に行けばいい
寝不足のそのまぶた 隠そうとする帽子目深にかぶって
歩く かなり脇目も振らずガムシャラに
心配事は尽きないほうだね いつのまにか社会人と呼ばれ
君を理解する人はNo Body 不条理なこの町にもうダメ
たまの休み あの子とすれ違って する事も無く寝ちまって
しまいにゃ寝違えて なんかパッとしねぇな まるで三日目の二日酔いみてぇだ
あの日描いてた大人の理想 かけ離れて流れてここにそう
たどり着いた場所で己に問う
「鏡の中のキミは誰でしょう?」

昨日のOh!No は明日のYes 変えるのは君なのです 君なのです
こけるのは何度だってかまわねぇのです
昨日のOh!No は明日のYes 変えるのは君なのです 君なのです
最後に笑っていればそれでいいのです

サイコー。てか泣いた(ワラ
44日本昔名無し:02/06/16 22:20
少し毛色のかわった旅行ガイド本を、
紹介させていただいてもよろしいでしょうか・・・。

     望遠郷:同朋舎出版

一冊1都市紹介で、内容は500頁弱あります。
(もとは外国の出版社のガイドで、それを日本語訳したもののようです。
情報は最新のものではないと思いますが、
想像力をかきたててくれる構成になってます。
都市の町並みや、産業、建築物の縦断図等、
挿絵入りでとても美しい本です。

本屋サンでも置いてるところは少ないのですが、
見つけたら立ち読み(いや、立ち眺めヵナ・・・)してみてください。
どんな旅行ガイドとも違います。(多分
旅行に行かない人が欲しくなる旅行ガイドです。

旅行に行ったつもりで・・・・・・・・旅行本。(ハハ;;
という方にはうってつけの本です。
45日本昔名無し:02/06/20 22:01
>>43
>昨日のOh!No は明日のYes 変えるのは君なのです 君なのです
>こけるのは何度だってかまわねぇのです
>昨日のOh!No は明日のYes 変えるのは君なのです 君なのです
>最後に笑っていればそれでいいのです
ここがすごくいいな。
いろいろあるだろうけど、がんばってください。

>>44
題名がいいな。
しかし・・・高そうだ(w
読みたいけど、本当に立ち読みになりそうだよ。
46日本昔名無し:02/06/25 14:05
『詳しい地名は・・・、ま・・・いいだろう。
 そこにとある牧場があってなあ。
 牧場っつーても、そんなに大きくないんだけど
 そこの夫婦は齷齪働いてたよ。
 そしてその一人息子はそんな生活が嫌だった。

 朝早くから 「さあ 仕事だ」
 休日?んなもんあるか。
 同級生のどの親よりも自分の親は老けて見えた。

 多分・・・、息子が最も嫌になったのは、
 母親の霜焼けで真っ赤になった指を見た時だと思う。
 ぱんぱんに膨れ上がった指の皮は、
 その膨らみに追いつかずピシピシと割れた。
 血と汁が滲み出、指もよく曲がらない。
 でも母親はそれを当然のように受け入れる。

 息子はたまらなくなり、18の時に家を出て、
 東京での悠々自適な生活を夢見る。
 「俺は」「こんな所で一生を終わらせる気はないね」

 しかし現実は甘くなかったね。
 そいつは東京で落ちぶれていたのさ。

 望郷の想いが募り、仲間にぽつぽつと語る。
 次第に帰郷の念に駆られるんだけど、息子には家を出た意地がある。

 そんな中。

 数年ぶりに田舎へと連絡を取ってみると、電話の向こうから母親が言う。
 「父さんの具合が芳しくない――――――― 」』
47日本昔名無し:02/07/07 12:07
浦沢直樹 著 「20世紀少年」

一九六九年に、
ウッドストックフェスティバルっていうのが開催されてな・・・。
40万人以上の人間がコンサートに集まったんだ。

愛と平和の祭典なんて言われてるけど、
しょせん世の中、金だ。
金がなけりゃ、あんなすごいメンツそろえられるわけがない。

ところが、
押し寄せた大群衆にゲートもフェンスもなぎ倒されて・・・
いつの間にかフリーコンサートになっちまった。

しょせんは世の中 金だが、
それがすべてじゃない・・・




本気で勝負すると。






何かが決壊するんだ。
48日本昔名無し:02/07/14 11:14
『仏様の罰(バチ)って当たった事あるかい?

 ほら、子供の頃よく言ったろ?
 "いい子になりますから願いをかなえてください"

 だけど本当は、いい子にしてたって叶わない願いは叶わないし、
 叶う願いは何やってたって叶うわけだ。

 俺だって、
 決して優しくも友達思いでも無かったし、
 バレなかっただけでいい子じゃなかってけど、他の子供よりずっと恵まれてたし、
 俺より正しく優しく生きてる奴らと争っても、俺は勝ててしまうんだ。

 いくらでもあることだよな。
 世の中はものすごく不公平に出来ていて、成功不成功は善悪に関わってこない。
 悪い方向でなきゃ、成功しない奴だっているかもしれない。
 天上の人達は下界からの願いを無視し続ける。
 人は自分に向いた生き方をすればいいんだ』

そんなアイツに言いたかったんだ、
世界中で一番自分自身を嫌ってるアイツに。

『悪い奴は、いずれちゃんと負けるし、
 善い奴は貧しくても幸せになるし。

 世の中は不公平でも、お前が心配してるほど悪くない。
 お前が自ら不幸になる必要なんか無いんだから』って・・・。
49:02/07/14 21:46
うーん、俺ばっか書いてるな・・・。
いや、まあ別にいいんだけど・・・。
50:02/07/17 21:30
東野圭吾 著 『悪意』

浜岡少年がいじめの標的になった理由は明確になっていない。
浜岡少年によれば、
「ある日突然悪霊の封印をはがしてしまったかのように」
いじめは始まったのだ。
これは昨今のいじめ事件にも共通していえることである。
彼は負けまいとするが、やはり次第に恐怖と絶望が胸の中を支配するようになる。

『彼が恐ろしいと思ったのは、暴力そのものではなく、
 自分を嫌うものたちが発する負のエネルギーだった。
 彼は今まで、
 世の中にこれほどの悪意が存在するとは、想像もしていなかったのだ』
51日本昔名無し:02/07/18 01:04
身近な悪意の最も恐ろしい部分は、
連鎖によって生まれるのかもしれないね。
52日本昔名無し:02/07/19 04:34
岡倉天心 著  「茶の本」より

『茶道は美を見出さんがために美を隠す術であり、
 あらわす事をはばかるることをほのめかす術である。』


こういう視点に慣れておくと、
自分の今ある環境の中に、救いを見つけやすいように思う。
田舎に逃げ出さなくても、都会の中の自然、ガラクタの中に埋もれた宝物、
・・・自分のココロ救うものに敏感になる極意だと思う。

是は人間が相手でもそうだろう。
現状が辛い時は、つい遠くのゴール(?)ばかりに
目が行ってしまう(逃避?)ものだが、
「遠い」ということは「現在」の自分の身の丈には
あってない答えということだ。
そういう時に、実は現在の自分に馴染む答えは、
足元にあったりするもの。
いい意味でアラサガシ。(w

ええ、座右の銘です。(w
53:02/07/19 15:14
おや、珍しい。お客さんか(w

>>51
でも自分が出来る事は、
それを恐れたり警戒する事じゃなく、
自ら出る突発的な悪意を どうにか封じ込める事だと想ってる。

>>52
「風流」ってやつだね?(w
>そういう時に、実は現在の自分に馴染む答えは、
>足元にあったりするもの。
「望む答え」じゃなく「馴染む」って所に共感。
54:02/07/19 15:16
真船一雄 著

初めて患者に死なれ、落ち込む若い医者。
それに対して冷静な先輩を 若い医者は「冷たい」と罵るが――――――


お前・・・、いっぺんに二人死なれた事あるか?

オレはある。
オレがまだ医者になりたてで、
寺沢病院に入ったばかりの時、患者に死なれてな。
脳腫瘍だった。
オレが初めて受け持った患者だった。

悔しくて、やるせなくて、オレは自分の非力を責めた。

今のお前みたいに荒れてな、オレは病院を脱け出した。
とにかくオレは病院にはいたくなかったんだ。
その日、当直であったことも忘れてな。

街を五、六時間歩いただろうか。
オレは当直であった事を思い出し、走った。
急患が運び込まれていない事を願いつつ。
551@続:02/07/19 15:16
「それで急患は?」

いたんだ。
オレが着いた時、先輩が・・・・

『交通事故だ、全身打撲に内臓破裂。
 それに脳内出血もあったからなぁ。たった今、息を引き取ったよ』

脳内出血。
オレの専門の分野だ。

『お前のせいじゃないよ。
 お前がいたとしても結果は変わっちゃいなかったさ』

オレは一日に二人も死なれたんだ。
確かに先輩の言うとおり、オレがいたとしても助けられなかったかもしれん。
だが、オレは今でも夢に見る。
オレが最初からいれば、なんとかなったんじゃないか・・・と。

何よりも、オレが前の患者の死を引きずり過ぎた為に、
医者としてその患者を看取ってやる事ができなかった。
その事が今でもオレの心に深く突き刺さっている。
561@続:02/07/19 15:17
確かに患者が死ぬのは辛い。
だが、医者であるオレ達が泣きぬれていてどうする?
周囲の人間は、泣いている医者をいい人だとは思ってくれるだろうが・・・、
果たして患者が自分の身を任せようとするだろうか?
看護婦が必死にサポートしようと思うだろうか?

オレ達は平凡な町医者だ。
お前の知り合いの先生のような、スーパーマンとは違う。
だから、せめて。
自分の手の届く範囲の患者だけは、
確実に治してやれるように万全の準備をしておこうじゃないか。

さあて!12時を回った!!
これでようやく二人とも晴れて非番となったわけだ!
今日は飲むぞ!オレがおごってやる!



良き先輩がいると、それだけで財産になるね。
57:02/07/21 02:32
荒木飛呂彦 著

小学校教師
『○○さん、お宅の典明君は友達を全く作ろうとしません。
 そう、嫌われているというより、まったく人と打ち解けないのです。
 担任教師として、とても心配です』

『それが・・・、恥ずかしい事ですが・・・。
 親であるわたしにも何が原因なのか・・・』

子供の時から思っていた。
町に住んでいると、それはたくさんの人と出会う。
しかし、普通の人達は一生で真に気持ちが通い合う人が、
一体何人いるのだろうか・・・?
581@続:02/07/21 02:33
小学校の●●くんのアドレス帳は、友人の名前と電話番号でいっぱいだ。
50人ぐらいはいるのだろうか?100人ぐらいだろうか?
母には父がいる。父には母がいる。
『自分は違う』
TVに出ている人とかロックスターはきっと何万人といるんだろうな。
『自分は違う』

『自分にはきっと一生誰一人として現れないだろう』
『なぜなら、これが見える友達は誰もいないのだから』
『見えない人間と真に気持ちが通うはずがない』

みんなに出会うまで、ずっとそう思っていた。
彼らの事を考えると背中に鳥肌が立つのは何故だろう。
それは、目的が一致した始めての仲間だったからだ。
数十日の間だったが、気持ちが通い合っていた仲間だったからだ。



さて・・・。
59:02/07/23 20:42
藤田和日朗 著 「うしおととら」

常に偽者の笑顔で過ごして来た少年が、
災難に会い、また逃げようとする。そこで・・・

『まーた逃げるんかー?

 生きてりゃさ・・・
 なんでこんな目に会うんだ―――とか
 なんでオレばっかり――――とかいう目にゃ、山ほど会うわなァ。

 事故とか病気とかな。

 なんでかなァ?

 現に今、私らがこんな恐ろしい目に会ってるのに、
 のほほんとメシ食ってる人間もいるんだよなァ。

 不公平だよな。なんでだと思う?
601@続:02/07/23 20:43

 わかんねえのさ。

 いろんな不幸が、なんで自分に起きるのか・・・なーんて、
 先生にも私にも・・・誰にもわからんのさ。

 でも・・・、抵抗するしかないもんなァ。
 そのなんだから分からんもんにスネてみても・・・
 逃げてみても・・・仕方ねえもんなァ。
 みんな、自分(てめえ)の為、家族の為、抵抗すんだよなァ。

「そんなコト・・・分かってる・・・」

 なら一緒に抵抗してくれる、
 自分っちゅうパートナーを好きんなってやらんとなァ。
 そのカオは、自分(てめえ)がキライでキライでしょうがねえってツラだなァ。

 野村くんよ。

 トンネルってよ、いやあな時みたいだなァ。
 一人っきりで・・・寒くてよ。
 でもな。


 


        いつかは抜けるんだぜ!?』
61日本昔名無し:02/07/26 02:51
今日は罪の話を・・・
私の最も好きな日本映画と原作本。
日本映画中の名作中の名作だと、
個人的には評価しています。(オーバー w

松本清張 原作「砂の器」

ある老巡査が、国鉄の操車場で殺された。
刑事が被害者を調査しても、出て来るのは、
彼の素晴らしい人格を裏付けるものばかり。
彼の生前の人格を知れば知るほど、刑事は
その殺人に疑問をもつ・・・
なぜ彼は殺されなければならなかったのか。

ある病についての、認識の薄い時代の日本がよくわかります。
是非楽しんでいただきたいので、
こんなありきたりのあらすじしか書けません。(スマン

VIDEO化もされていますが、何と言っても後半の映像が圧巻です。
科白ナシ、音楽のみで、美しい四季をバックに苦しい遍路の旅を続ける親子の姿は、
見ているだけで号泣ものです。
映画を見て泣くということが殆どない私ですが、
このシーンばかりは泣きました。(苦笑

私はVIDEOで感動して、後で本を読みました。
設定は少し違いますが、どちらも間違いなくお奨めです。
本の方も読み応えはすごいです。
長い夏休み中に是非一度読んで欲しい本ですね。
62:02/07/27 23:38
>>61
オーバーではないよ。
清張はそれは良い作品が多い。
(と、慣れ慣れしい呼び方をしてみようか(w

しかし、それも読んでいるはずなんだけど、
小学生の頃とはいえ、内容も題名もあやふやで・・・。
読み返しすべきかなぁ・・・。

うーむ、素敵なあらすじのせいで、楽しめそうだよ(w
63:02/07/27 23:39


『きっと・・・、気付かないものなんだろう、そういう事は。

 今、自分がどれぐらい幸せかとか、
 どれぐらい愛されてるかとか。

 気付いたその時には・・・』
64:02/08/06 22:23
島田荘司 『アトポス』

「私はあなたが好き。
 花が雨を欲するように、
 不治の病が、それでもつかの間の薬を欲するように、
 あなたが好き。
 この想いが忘れられたら、どんなに楽でしょう」
65:02/08/06 22:28
藤田和日朗 『うしおととら』

『咳をする・・・
 風を捲いてへばりついた犬の遠吠えが・・・
 ぼくの外套(コート)にべったりと・・・
 こすってもこすっても三日月の形に落ち込んでゆく・・・

 真直ぐな深淵は・・・
 ななめに歪む夜に・・・
 虚しく咳こんでぼくをうつす・・・

 ぼくは浅ましくない・・・
 もう一人の家にいこう・・・

 母さん・・・母さん・・・

 ぼくは病んでいるんだね・・・』
66:02/08/07 21:10
『頼り方』

あれは9歳の頃だ。
学校から帰ると、父はもう帰ってきてたんだ。

驚いたよ。
夜の7時前に薬局を閉めるなんてなかった人だったから。

母は一生懸命、風呂に入れるようにと父のシャツを脱がせようとしてたが、
父は払いのけて・・・、かなりの痛みがあるようだったのに。
父は、俺が見ているのに気付くと「あっちへ行け!」と怒鳴った。

父はもう何年も関節炎を患っていたんだ。
知らなかったがね。
でもそれが父の信念だったんだろうなあ・・・。

男たるもの、泣いてはならぬ。
男は、不平不満を零してはならぬ。
頼ってはならぬ。

心配する家族まで遠ざけて・・・

俺は、そんな父を見て、大きくなったんだ。
67:02/08/09 14:29
『優しいという事』


「でも・・・。でもやっぱり僕は、
 お兄さんだったら、
 小さい妹や弟は大事に守ってあげなきゃと思うけど・・・」



「守られてばっかりいたら弱くなるのは当たり前だろう!!
 他人がやっちゃいけない事なのに、
 お前がやらなかったら、一体誰がこいつを泣かすんだよ!

 そんでその時は、嫌われても憎まれても、
 ほんとの気持ちはいつかは伝わるんだから・・・」
68:02/08/10 22:24
『僕から君へ』

友人が死ぬ間際に残した詩。


≪ありがとう ありがとう
 
 話してくれて ありがとう
 遊んでくれて ありがとう
 怒ってくれて ありがとう
 笑ってくれて ありがとう

 僕は言葉を選ぶのが下手だから 上手く言えないけど

 僕から君へ
 
 親友の君へ

 ありがとう≫
69:02/08/12 17:59
東野圭吾 著 『秘密』


この夜の食事は、直子と結婚して以来最悪の食事となった。
どちらも一言も口を利かず、ただ黙々と箸を動かした。
かつて何度か夫婦喧嘩をした時と決定的に違っていたのは、
気まずさの底にあるのが、怒りではなく悲しみだという点だった。

平介は腹を立ててはいなかった。
直子と自分との間にある、未来永劫埋まる事の無い溝の存在を認識し、
たまらなく悲しくなっていた。
そして同様の思いを彼女も抱いていることは、
身体から発せられる雰囲気でわかった。
皮肉な事に、こんな時だけ夫婦特有の以心伝心というのものが働くのだった。
70:02/08/14 11:13
『懐想』

子供だった頃 毎日毎日驚きの連続だった

子供だった頃 僕はよく 露の降りた芝生に寝ッ転がり
果てしない夜空を横切って飛ぶ流れ星を待ち受けた

子供だった頃 友達と森の奥深くに探検に行き 死神の話しをしたものだ
片手に鎌を持って 次の犠牲者を冷酷に探す
でも怖くはなかった 死ぬのは年寄りだ 僕らじゃない

子供だった頃 寂しい時は母の腕に飛び込んだものだ
何かに迷った時は父の目を見た

子供だった頃 不思議だった いつ大人になるのか

きっとあの頃から
僕は「いまのうちに いまのうちに」って焦って生きてきたんだ


でも 大人になった今
    
      もう一度子供に戻れる気がする・・・
71:02/08/19 16:49
きたがわ翔 著 『HOTMAN』

「ねえ ゆうやけって
 どうして あんなにきれいなのかなあ」

「・・・・それはだな、きっと・・・・
 お別れする時が何でも 一番きれいだからさ」

「おわかれ?」

「そう・・・今、空のお日さまが、
 俺や七海やみんなのいるこの地球に
    別れの挨拶をしているところなんだ・・・」
72:02/08/22 16:40
綺麗、
キレイ、
きれい。

ひらがなで書くのが一番「きれい」に見えるのは俺だけだろうか。


さて、相変わらず客のいない本屋だが(w

続いて営業していこう・・・。
73:02/08/22 16:42
船橋タケル 著 『ほんとう(幸せ)を探して』より


ぼくは探してる

ほんとうを探してる

それは遠くに
きっと遠くにあるのだろう


ぼくは旅に出る
見つかるまで旅をする

だけど ぼくは帰りたい

ほんとうは―――――

ほんとうのことは

とても近いところにあるかもしれない

とても普通のところに

          あったらいいなと思う・・・
74:02/08/25 19:18
『別々の進路』


「なあ、女って何考えてるか分かるか?
 
 俺はさー、思った事がすぐ態度に出るんだけど、
 女はさ、その態度の裏の裏に気持ちがあるわけよ。

 そんなのわかんねーよなー。俺バカだしさー・・・」
75:02/08/26 20:08
東野圭吾 著 『秘密』

「世の中には、素晴らしい物が本当に沢山あるのよね。
 そんなにお金をかけなくても幸せになれるものだとか、
 世界観が変わっちゃうものだとかが、簡単に手に入る。
 どうして今まで気がつかなかったのかなと思っちゃう」

感動する本や音楽に出会った時など、彼女は目を輝かせてこう言うのだった。
76:02/08/31 22:36
『後継ぎ』

「――――お父さんのお蔭だ。この恩は絶対忘れない」

「・・・なあ、だからここに来たいのか?
 急に「病院を継ぎたい」なんて・・・恩返しのつもりか?」

「違うよ!そんなんじゃないよ。
 僕はただ・・・僕がこの病院を継げばお父さんも喜ぶかと想って・・・。


 ・・・何?」

「ふふ、今、急に、昔の事を思い出してね。
 10歳の時、お前は何を思ったかヨットに乗りたいと言い出した。
 小さいから無理だと言っても耳を貸さないし・・・。
 基本を教えてやって、いよいよ一人で海に出した。
 最初の何時間かは酷かったよ。全然ヨットが進まないんだ」

「覚えてるよ(w
 それでも僕は意地を張ってた」
771@続:02/08/31 22:37
「そうやって散々悪戦苦闘して、ついにお前は勝った。
 風をヨットの帆にいっぱいはらませて、
 すべる様に走り出した時のあの笑顔といったら・・・。

 俺は浜に座って、お前がいくのをただ、眺めてた。

 ・
 ・
 ・
 お前の人生なんだ。思うとおりにやりなさい」

「お父さん!!」

「いいかい?子には親から受けた恩は返せない。
 返さなくていいんだ。
 お前が俺に感謝してくれるというなら、
 その気持ちを自分の子供に与えてやりなさい。

 さあ。
 母さんが待っている。帰ろうか」

「お父さん・・・」
78:02/09/03 18:37
東野圭吾 著 『同級生』

由紀子の死を知ったときの事を、俺は何度も振り返ってみるのだった。
あの時の感情の起伏が、恋人を失った男のものとしてふさわしかったかどうか、
俺にはさっぱり自信がない。

そして、そんな自分をもう一人の自分が見ていて、そういう計算をする事自体、
お前が最低の人間だという証拠だと、耳元で囁きかけてくるのだった。
79 ◆FsM/0AQ. :02/09/06 13:33
tesuto
80:02/09/06 17:42
>>79
おや?お客さんじゃない・・よな?

なにかあったらどうぞ。
81:02/09/06 17:43
『11年前』

彼女は

最後まで 昨夜の俺の行動を責めなかった

だから俺は気付かなかったんだ
彼女が酷くキズついていたことを


結婚後もそういう事が 多々あった

なぜだろう?
今なら分かる

彼女は人をキズつける言動を恐れていた

それ位だったら自分が耐えればいい
そう想っていたようだ

それに気付いた俺は
ショックと自分の無神経さに腹が立ったが

後に彼女が俺へと甘えてくれた事が せめてもの救いだった
82:02/09/06 17:44
あとで、人を傷つけてた事を知るのって・・・、ほんとツライよな。
83:02/09/08 21:13
『9時52分』


「そう・・・人形は変わらない。死にもしない・・・。

 だが、人間は違う。
 彼は・・・私が手当てをしなければ死んでしまうのだ。

 ああ・・・なんて愛しいのだろう、人間という生命は。
 
 いくら年を経ても、赤子のまま、
 儚く、頼りなくて・・・。

 他人がいなければ生きてゆけないのだ」
84:02/09/08 21:14
「それ」をちゃんと理解出来る者こそが、本当に強い人間なんだろうね。
85:02/09/10 04:40
あれ?
スレのシャッフルがあった・・・?

ま、いいか。
86:02/09/10 04:40
インド古代叙事詩『ラーマーヤナ』より


その昔・・・、
国を追われ、この森で生活していた、英雄ラーマとその最愛の妻シータがいました。

しかし、それが魔王ラヴァナに見つかり・・・
ラーマが目を離した隙に、シータだけが連れ去られてしまったのです。

ラーマは嘆き、悲しみました。
そして、その事を彼に知らそうともしなかった森の全ての精霊に言いました。


「この森の全てよ、呪われてしまえ!!」
87:02/09/10 04:41
気持ちは解らんでもないが、勝手なやつだな(w
88:02/09/12 19:37
『かわらない明日』

「俺 キミがほんとに好きだった。
 一緒にいるにはどうすればいいか、ってことばかり考えていた。
 キミのことばかり考えていた。

 キミの気持ちが俺に向かないのが理解できなかった。

 でも、そういうこともあるって、ほんとは気がついてた。


 だから、もう、会わないよ・・・」
89:02/09/12 19:38
自惚れた奴だ。
だがしかし、この切なさは一体・・・。
90 ◆RDeE7N2o :02/09/14 14:20
作詞・バリー・マクガイア。訳詞・高石ともや『明日なき世界』

「東の空が燃えてるぜ 大砲の弾が破裂してるぜ
お前は殺しの出来る歳 でも選挙権も持たせれちゃいねぇ
鉄砲かついで得意になって これじゃ世界が死人の山さ
でもよぉ 何度でも何度でもオイラにいってくれよぉ
世界が破滅の前夜だなんてウソだろぉ!!」

いつ聴いても、これはホントにすごい。
91:02/09/19 20:17
>>90
うん、すごく、「強い」「力のある」言葉だね。
そういうセリフは、俺からは出てこない・・・(w
92:02/09/19 20:21
東野圭吾 著 『同級生』

だが俺はこいつらでさえ、
やはり心の片隅には、俺を疑う気持ちを持っているだろうなと思っていた。
もちろん、だから誰も信用できないというのではない。
俺が彼らの立場でも、そうであろうと思うし、それが当然なのだ。

ただ彼らはそのことで、無意識のうちに俺に対して後ろめたさを感じてくれている。
そしてそれが俺への気遣いとなって現れているのだ。
93:02/09/19 20:22
「信頼」、「信用」か。
難しいね。
94:02/09/25 10:09
東野圭吾 著 『トキオ』

「変な奴だな。まあいいや。
 でもそうすると、お前の事を何て紹介すればいい?」

「友達でいいじゃないか。それとも、友達じゃ駄目かい?」

「構わねぇよ、俺は。じゃ、友達って事で」

拓実は頬杖をついていた腕を外し、首の後ろを掻いた。
友達という響きは彼を落ち着かなくさせていた。
久しく自分にはそういう存在がいなかったことを思い出していた。
親しくなった人間に対しても、決して心を許すまいと思って生きてきたのだ。
95:02/09/25 10:09
しかし「それ」を得ることが出来れば・・・
96:02/09/28 14:41
藤田和日朗 著 『Au revoir, ルシール』


時間切れさ。
人生は、そういうものだよ。

生まれた時、人は白い画用紙と色とりどりのクレヨンを渡されて、
「なんでも描いていいよ」と言われる。

さて、何を描こうか考えてるうち・・・
たっぷりあったはずの時間は過ぎてゆく・・・。
971@続:02/09/28 14:41
ようやく描きたいものが決まった時には。
もう帰る時間さ。
描きかけの紙とクレヨンは、取り上げられてしまうんだ。

私はね、ずっと、紙の端を黒く塗っていたよ。
ウサギを描きたかったんだけど、気付いた時には・・・、
もう、白い所は全て塗り潰していた。

大切な人を守って、守り抜いて、ずっとその人を愛するがいい。
自分の持ち時間は決して、憎む事に使ってはいけないよ。
愛する事に使うんだ。

そうすれば逝く時が来ても、

きっと。

後悔はしない。
98:02/09/28 14:41
特に
>自分の持ち時間は決して、憎む事に使ってはいけないよ。
>愛する事に使うんだ。

ここが好きだな。
99日本昔名無し:02/09/29 21:15
―――想いを返してもらうことだけが恋じゃないよ

追いかけて追いかけて
最後までわがまま言って

それでも駄目で
下を向くことがあっても

それは絶対 かっこ悪いことなんかじゃないよ

前を向かずに大切な物なんて
手に入るわけないから―――

某漫画より。
100:02/09/30 15:57
このスレは、上がらなくていいんだが。

>>99
いいね。何の漫画なのか気になる所だ(w
先入観を持って欲しくなくて書いてない事が多いが、
上には漫画ネタも多いんだよ?
101:02/09/30 15:58
東野圭吾 著 『トキオ』

名古屋行きの電車の入ってくる時刻が近付いていた。

「お引き留めして申し訳ありませんでした。
 もしもまたこちらにいらっしゃることがあれば」
そこまで言ったところで彼女はかぶりを振り、微笑んだ。
「いいえ、やめておきます。どうかお元気で」

拓実は答えず、トキオに向かって「行くぜ」と声をかけた。
そしてまだ何か躊躇っているトキオを残し、改札口を通った。
1021@続:02/09/30 15:59
東条淳子の声が後ろからした。「拓実さん」
彼は足を止め、振り向いた。
彼女は呼吸を整えるように胸を上下させながら言った。

「義母が今よりまだ少し元気だった頃、あたしに言った事があります。
 この病気は天罰だって。受けて当然の報いだって」

拓実の胸で何かが固まりになった。
しかし彼はそれを腹に呑み込んだ。
唇を固く結ぶと、淳子に向かって一礼し、再び歩き始めた。
103:02/09/30 15:59
人を許せる時というのは・・・。
104:02/10/01 21:50


『夢というものはですね、自分がつくり出した話で、
 痛みを感じなかったり、ゆめの世界の出来事ではあるが、
 頭の中で精神的なダメージや喜びや感覚があるからして、
 夢の中でとっぴょうしのないことやありえないことがあったとしても、
 それは常に現実になりうる可能性を多大に秘めている』
105:02/10/01 21:51
うむ、いいね(w
夢、か・・・。
106:02/10/05 23:03
尾田栄一郎 著 『ご記憶下さいますように』

「逸れちまったら、それも巡り合わせだろう?」

「その通り。
 運命とは常に人間の存在価値を計るもの・・・・・」
107:02/10/05 23:05
人と人との出会いが
存在価値によってもたらされてるのだとしたら。


俺は・・・自惚れていいのだろうか(w
108test:02/10/10 07:58
test
109:02/10/22 19:58
ダニエル・キイス 著 『アルジャーノンに花束を』



疑いない。僕は恋をしている。
110:02/10/22 20:00
その確信を得る時ってのは、いつでも「ある日突然」だ。

いや、そうじゃない。
「いつの間にか」って時もあったっけ・・・(w
111:02/10/23 10:38
『恐怖』

「先生、その手術中の事故だが、どのようにして起こったのかな?」

「その時患者はかなり大量の出血を起こしており、輸血も早められて、
 執刀医から出血箇所を電気凝固するように指示されたのです。
 ところが凝固の間、間違えて小腸に穴を開けてしまいました」

「・・・、とういうことは、どういうことかな?
 先生、電気メスに意識を集中していたのなら、どうして小腸に穴を開けるのかね?」

「・・恐らくブレードの手前の方が謝って接触してしまったんだと思いますが」

「恐らく?いいか、電流はブレードの先端だけじゃなく手前にも流れているんだぞ?」

「知っています」
1121@続:02/10/23 10:38

「ならどうして小腸に穴を開けてしまったんだ?」

「・・・・わかりません」

「分からない。そうかね。ありがとう。大変参考になったよ。
 患者が私のところに来て、
 何故小腸に穴があいたのかと聞かれたらこう答えればいいわけだ。
 『担当した医師は解らないそうです。』
 ・
 ・
 ・
 いいか!先生!覚えておきなさい!!
 知識として頭で知っているのと、実際にできるのとは、違うんだ!!」
113:02/10/23 10:42
その後、その違いの距離があまりに開いている事に気付き、
この若き医師はどんどん自信を失っていく・・・。
114日本昔名無し:02/11/25 00:32
東野圭吾 著 『トキオ』

トキオが言う。
「すごいな。でも竹美さんって、そんな苦労をしてるように見えませんよね」

「苦労が顔に出たら惨めやからね。それに悲観しててもしょうがない。
 そら誰でも恵まれた家庭に生まれたいけど、
 自分では親を選ばれへん。
 配られたカードで精一杯勝負するしかないやろ」

彼女は拓実を見た。

「小学校で英語を習わせてもらえるかどうか程度のことが何やの。
 そんな事で人の人生が変わるかいな」
115《続》:02/11/25 00:32
拓実は俯いた。
彼女はさっきの話を聞いていたのだ。

「あたし、千鶴からいろいろと聞かされた。
 確かにあんたも可哀想やと想うよ。
 けど、あんたに配られたカードは、そう悪い手やないと想うけどな」

こう言った彼女の口調は、それまでよりは少し穏やかなものだった。
拓実は何も言えず、無精髭の伸びた顎をこすっていた。
116:02/11/25 00:33
そう。「自分」って、意外と悪くないものだ(w
117日本昔名無し:02/11/25 21:07
き ら 著 「まっすぐにいこう。」

照:百合子さんは ダンナにベタボレだったか。

岡田:おーーーう!ベタボレもベタボレ!
    自分のダンナ以外目に入りませんって感じだね!
    仕事も順調!家庭も円満!
    輝いてたね。昔よりいい女になってた。ダンナの為に女磨いてんだろうなあ(w

照:で、「想いは冷めた」か。
  岡ぽんは、昔から自分に惚れない女には興味持てないんだよな?

岡田:その通り!さすがだね照ちゃん、よくわかってる!
    おれに惚れた女におれが惚れる!合理的だろ?(w

照:お前に惚れてる牛なら山ほどいるがな。

岡田:照ちゃーん、どっかにいい女いねーかな〜〜おれにベタボレしてる女〜〜
    牛じゃなくってさ〜〜・・・…...


*****************************

照:荷物は出来たかい?

郁:照ちゃん・・・。

照:これで。

  これで終わりにしよう。
  あいつなりに片をつけたんだ。
118:02/11/25 21:08
激しく切ない話だったな、これは(w
119日本昔名無し:02/12/01 11:08
ダニエル・キイス 著 『アルジャーノンに花束を』

他人に対する振舞い方を 人はどうやって学ぶのだろうか。
女の扱い方を 男はどうやって学ぶのだろうか。

書物はたいして役にたたない。

だが今度こそ、彼女におやすみのキスをしよう。
120:02/12/01 11:09
そう、授業の内容なんて、なおさら役に立たなくて(w
121山崎渉:03/01/05 05:59
(^^)
122:03/01/06 01:16
>>121
123日本昔名無し:03/01/06 01:17
東野圭吾 著 『同級生』

一応筋が通ってるとも言えなくも無い。
しかし、こんなに単純な動機で次々に人を殺すものだろうかという気もした。
また一方で思う。
いいや、こいつらをまともな人間だと決め付ける根拠は何もないぞ、と。

考えてみれば、俺たち生徒は教師の事を何も知らないのだ。
人権無視と言いたくなるほど、教師は生徒のプライバシーを侵害するが、
こちらから向こうは全然見えない。そういう仕組みになっている。

その仕組みを、ぶっ壊してやるか、と俺は思った。
124:03/01/06 01:19
好感を持てる教師の方が多かった俺は・・・、運が良かったんだろうな。
125日本昔名無し:03/01/15 00:39
『ぼくの夢』 広瀬努

ぼくの夢は、お金持ちになる事です。

お金がいっぱいあったら、欲しいものがたくさん買えるからです。
ぼくは今、欲しい物がいっぱいあります。

そしてお父さんとお母さんに楽をさせてあげます。

お父さんには夢をかなえて欲しいです。
お母さんにはひまだと怒るくらい休ませたいです。

だから、ぼくは、お金持ちになりたいです。
それが、ぼくの夢です。
126山崎渉:03/01/17 13:13
(^^;
127日本昔名無し:03/02/02 11:31
浦沢直樹 著 「20世紀少年」

『いいか、
 ボウリングでストライク狙おうとして、
 ド真ん中に、力いっぱい投げるとな・・・、
 両端にピンが残って、ビッグ2っていうスプリットになるんだ。

 あれは、めったなことじゃスペアは取れない。

 真ん中から外れたって気にすんな。
 ちょっとズレてるぐらいがいいんだよ』
128山崎渉:03/02/13 21:07

----------------------------------------------------------------
                                      山発第250号
                                   平成15年2月13日
 2ちゃんねる
 関係者各位
                               山崎渉実行委員会
                                 実行委員長 山崎渉

             【(^^)山崎渉再開のお知らせ(^^)】

  拝啓 余寒の候、毎々格別のご厚情を賜り、まことに有り難うございます。
平素は山崎渉をひとかたならぬご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
  さて、早速ではございますが、先日サービスを終了させていただきました
山崎渉を皆様からのご声援とご要望にお応えして、再びサービスを再開する
運びとなりましたのでお知らせいたします。
  つきましては、関係者の皆様には既に山崎渉の使用をお止めになった
方もいらっしゃると思いますので、この機会に再度ご使用いただけますよう
お願い申し上げます。

  これからも何卒変わらぬご愛顧を賜りますよう、お願い申し上げます。(^^)

                                           敬具
----------------------------------------------------------------
129日本昔名無し:03/03/08 21:20

別に勝ち組になろうとしてるわけじゃない。

これといって欲しい物は無いし、何かを目指してるわけでもないさ。


ただ、たまらなく「今」が厭なんだ。
130山崎渉:03/03/13 17:26
(^^)
131日本昔名無し:03/03/29 20:14
東野圭吾 著 『トキオ』

「あんた・・・・あんた一体この手紙のどこを読んだんだよ!」

トキオが顔を歪め、巧みの襟首を掴んできた。かなり強い力だった。

「どんな思いであんたのお父さんがおかあさんのことを逃がしたと想う?
 最後の言葉を読んでないのか!?
 今この瞬間でも僕は未来を感じることが出来るから―――
 この言葉の意味がどうしてわからないんだよ!!」

「死ぬ前だから、ちょっとは格好のいい台詞を吐こうと想っただけだろ」

「馬鹿やろうっ!!」
132:03/03/29 20:15
トキオの声と共に拓実の眼前が一瞬暗くなった。
と同時に衝撃を受け、彼は後ろにひっくり返っていた。
殴られたのだと解った時には、トキオに乗りかかられていた。
トキオは拓実の襟を掴み、激しく揺すってきた。

「死を前にしてる人間の気持ちがあんたにわかるのかよ!
 ふざけるんじゃねぇよ!!炎がすぐそこまで迫ってきてるんだぞ!?
 そんな時にあんた、未来なんて言葉を使えるのか?
 それを感じられるなんて、口先だけで言えるのか!!」

トキオの目から涙が溢れているのを拓実は見た。
その涙は彼からへらず口を叩く気力を奪った。
133:03/03/29 20:16
「好きな人が生きていると確信できれば、死の直前まで夢を見られるってことなんだよ。
 あんたのお父さんにとって、おかあさんは未来だったんだ。
 人間はどんな時でも未来を感じられるんだよ。
 どんなに短い人生でも、例えほんの一瞬でも、
 生きているという実感さえあれば未来はあるんだよ。

 あんたに言っておく。
 明日だけが未来じゃないんだ。それは心の中にある。
 それさえあれば人は幸せになれる。
 それを教えられたから、あんたのおかあさんはあんたを生んだんだ。
 それをなんだ!?あんたはなんだ!!
 文句ばっかりいって、自分で何かを勝ち取ろうともしない!!
 あんたが未来を感じられないのは誰のせいでもない。
 あんたのせいだ!!あんたが馬鹿だからだ!!」

必死で怒鳴り続けるトキオの顔から、拓実は目をそらす事ができなかった。
トキオの言葉の一つ一つが拓実の体に鎖のようにからみつき、彼を動けなくしていた。
134日本昔名無し:03/03/30 15:48
皆川亮二 著  『ARMS』


『その腕が掴むものは・・・
 神の未来か、悪魔の過去か・・・』
135日本昔名無し:03/03/31 20:37
貴志 祐介 著『クリムゾンの迷宮』

『結局、どうにも耐え難かったのは、
 ひもじさでも、夜の寒さでも、風呂に入れないことでもなかった。

 目の前を行き過ぎる無数の、無関心な脚。
 ちゃんと行き先を持っている脚。
 こつこつと堅い靴底のたてる音が、絶えず、
 お前は誰からも必要とされていないんだと告げる。

 こっちは、生きるために苦闘している。
 だが、あの足音が、おまえは敗残者だ、
 おまえのやっている事は何もかも無意味だと言い続けるんだ』
136日本昔名無し:03/04/01 20:14
尾田栄一郎 著 『受け継がれる意志』

『人は、いつ死ぬと思う・・・?
 心臓を銃で撃たれた時・・・、違う・・・。
 不治の病に犯された時・・・、違う・・・。
 猛毒のキノコのスープを飲んだ時・・・、違う!!!


 人に忘れられた時さ・・・』
137日本昔名無し:03/04/02 22:22
皆川亮二 著 『SPRIGGAN』

「世界は一見何の変哲も無いように見えますが、
 すでに以前の状況とは一変し、情勢は予断を許さない。

 一見愚かな行為でも、
 あらゆる価値観は主観の相違によって変わるもの・・・。
 "賢者"か"愚者"か、"正義"か"悪"かの判断は、後の人間がする事です。

 従って真の結論は最後まで分からない。

 他人には愚かに見える行為でも、
 常にあなたにとって一番いい選択をしなさい・・・」
138日本昔名無し:03/04/03 18:47
田村由美 著 『BASARA』

「本当のこともあったさ・・・。

 多くが嘘で知らない事だらけでも、
 自分が惚れた少しの部分は真実(ほんとう)だったと信じてやれよ」
139日本昔名無し:03/04/04 18:02
尾田栄一郎 著 『ドクロと桜』

聞け。こんな話しがある。

遠い西の国に一人・・・、大泥棒がいた。

そいつは心臓に重い病を持っていたんだ。
だが幸運にも金は有る。
ありとあらゆる名医を尋ね回り治療を受けたが、
誰一人その病気を治すことはできなかった。
"不治の病"ってやつだ。

ついに死を宣告され、
苛立ち荒れる男は通りかかったある山で、
見たこともない息をのむ程の美しい風景を目にした。

何を見たと思う?

『桜』だ!
『山いっぱいの鮮やかな桜』を見た・・・。

そして再び医者にかかって男は驚く。
こう言われたからだ。
「まるで健康体だよ」と。
治ったんだ!!

これが"奇跡"・・!!
確かに"奇跡"だ。
だがそうじゃない!これは立派な"医学"だ!
感動によって男の体に何らかの変化が起きたんだ!
140日本昔名無し:03/04/06 16:03
『日記篇』

6月17日月曜日

今日、息子にゲームをねだられた。
ゲームなんて、社会に出たら、
なんの役にも立たんからダメだ、と言ったら、
役に立たないものは世の中に必要ないの?
と聞かれてしまった。ううむ。
141日本昔名無し:03/04/07 19:37
『未来のボクへ』

『未来のボクへ。
 どんな大人になってますか?
 なりたかったパイロットにはなってますか?
 もし、なってなくても、ボクは怒りませんから』
142日本昔名無し:03/04/08 20:03
岩明均 著 『寄生獣』

ある日道で・・・

道で出会って知り合いになった生き物が
ふと見ると死んでいた。

そんな時、なんで悲しくなるんだろう

「そりゃ人間がそれだけヒマな動物だからさ。
 だがな、それこそが人間の最大の取り柄なんだ。
 心に余裕(ヒマ)がある生物。
 なんとすばらしい。
 
 だからなぁ・・・・
 いつまでもメソメソしてるんじゃない」
143日本昔名無し:03/04/10 19:21
J.K.ローリング 著『ハリーポッターと賢者の石』

「勇気にもいろいろある」

ダンブルドアは微笑んだ。

「敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる。
 しかし、
 味方の友人に立ち向かっていくのにも同じぐらい勇気が必要じゃ」
144日本昔名無し:03/04/12 22:26
『日記篇』

ボク:「ねえ、おじちゃん。おじちゃん、将来何になりたいの?」

おじちゃん:「え?」
145日本昔名無し:03/04/13 22:22
GARNET CROW 『Mysterious Eyes』

目に映るもの
手に触れたり 感じるもの
それが僕らの世界のすべて
どんなに夢を見ても

幼き日々の
両手に溢れていた小さな a pebble
誰にも見えない
宝のように輝いた時間の中で

気が付けば 求めていて
同じじゃない 愛 すれ違う
形の無いものに焦がれて
true heart for mystery eyes
146日本昔名無し:03/04/14 17:42

『馬鹿になれ とことん馬鹿になれ
 恥をかけ とことん恥をかけ
  
 かいてかいて恥かいて 裸になったら見えてくる 
 本当の自分が見えてくる


 本当の自分も笑ってた・・・ それくらい 馬鹿になれ』
147日本昔名無し:03/04/15 19:14

――――「すこし」、というのは、この世でいちばん優しい言葉、だと思う。

だってそうだろう。
もし、「さびしい」という感情に「すこし」と付かなかったら、
それは絶望的な孤独である。
あるいは、「かなしい」という心に、「すこし」が寄り添えないなら、
それは救いようのない「不幸」
「あやまち」への自覚が「すこし」を無くしたら、もう取り返しのつかない「悔恨」となる。
いやいや、「うれしい」という気持ちだって、
もし「すこし」を忘れたら、燥ぎ過ぎてその悦びの本当の意味を見失ってしまうだろう。

そのように、ぼくたちは「すこし」の御蔭で、傷つかず、驕らす、
自らの「幸福」を信じて暮らしていくことが出来るのだ。

「すこし」とは真に大切な、人生の智恵の果実としての、言葉ではないだろうか。
148日本昔名無し:03/04/15 19:16
つーか、誤字が多いな、俺は(w
149日本昔名無し:03/04/16 21:06
尾田栄一郎 著 『雪物語』

「いいかい!優しいだけじゃ人は救えないんだ!!
 人の命を救いたきゃ、それなりの知識と医術を身につけな!!

 腕がなけりゃ誰一人救えないんだよ!!」
150山崎渉:03/04/17 12:18
(^^)
151山崎渉:03/04/20 06:08
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
152日本昔名無し:03/04/20 09:47
東野圭吾 著 『悪意』

結果的には作家になったが、
教師という職業について彼がどう思っていたかはわからない。

ただ、当時彼が私に、こんなふうに言ったことがある。
「教師と生徒の関係なんてのはね、錯覚の上で成り立ってるんだ。
 教師は何かを教えていると錯覚し、生徒は何かを教えられていると錯覚してる。
 そして大事なことは、そうやって錯覚してるのがお互いにとって幸せだということだ。
 真実を見たって、いいことなんて何もないからね。
 我々のしてることは、教育ごっこにすぎないんだ」

どういう体験に基づいてこのようなことを言ったのか、それについては分からない。
153日本昔名無し:03/04/21 21:13
『僕から君へ』


《なあ、俺たち友達だよな?》

「・・・親友だよ」

《よかった(w  俺だけがそう思ってたらいやじゃん?》
154日本昔名無し:03/04/22 18:02
『泣いてみた』


「泣いてみた

 真夜中に悲しみを心に集めて泣いてみた

 涙の流れが川となり
 岩にぶつかり砕け散っても
 いつかは大河へと流れ行く

 悲しみに心を浸して真夜中に泣いてみた・・・」
155日本昔名無し:03/04/23 18:48
『日記篇 6月分』


■ 6月26日水曜日
思いがけず、ケンちゃんと再会。
小学校の同級生だ。夢中で3時間も話し込む。
気づくと、自分のことをボクなんて言っていた。
思わぬ開放感。夏休み、また会おうぜ。
156日本昔名無し:03/04/24 19:56
王維


『渭城の朝雨 軽塵を潤す

  客舎青々として 柳色新たなり


 君に勧む 更(ことさら)に尽くせ一杯の酒

  西のかた陽関を出ずれば故人無からん』
157日本昔名無し:03/04/28 19:12
皆川亮二 著 『ARMS』


「確かにあなたは私がお腹を痛めた子じゃない。
 
 でも・・・、これだけは覚えておいてね。
 あなたは私が生涯でもっとも心を痛めた自慢の息子よ」
158日本昔名無し:03/05/04 09:30
『雨宿り』

一里塚ってあるじゃない。
昔の街道に一里ごとに作られた。

そこには木が植えてあったんだ。
冬でも葉の落ちない常緑樹。

その下で旅人たちは出会って、雨や日差しをしのぎながら、
お互いの旅の話しをしたんだろうね。

例え雨がやまなくたって、
日暮れまでそこにいる訳にはいかないんだけれど。
だけどそこは、とても居心地が良くて・・・。

あの時、祈ってしまったんだ。誰にだか分からないけれど、心から。

『どうかもう少しの間、ここにいられますように』って―――――――――
159山崎渉:03/05/22 02:17
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
160山崎渉:03/05/28 17:09
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉
161日本昔名無し:03/05/30 18:15
『ノーランドの日誌』

1122年5月21日

――――その島に着き我々が耳にしたのは
森の中から聞こえる奇妙な鳥の鳴き声と、大きなそれは大きな鐘の音だ。

巨大な黄金からなるその鐘の音はどこまでもどこまでも鳴り響き
あたかも過去の都市の繁栄を誇示するかの様でもあった。

広い海の長い時間に咲く文明の儚きによせて
たかだか数十年生きて全てを知る風な我らには、それはあまりにも重く言葉をつまらせる。

我々はしばしその鐘の音に立ち尽くした――――――――
162わむて ◆zImIqLDhik :03/06/05 19:18
 
163日本昔名無し:03/06/08 21:49
山田 詠美 著 『賢者の皮むき』

山野舞子は、傷ついた表情を浮かべながら
ハンカチで口を押さえていた。
可愛い花模様のハンカチ。
どうしてそんな仕草をするのだろう。
そのハンカチをどけて見ろと、僕は言いたかった。
ハンカチの下の唇がどのように醜く歪んでいるのか、見せてもらいたいものだ。

「山野さん、自分のこと可愛いって思ってるでしょ。
 自分を好きじゃない人なんているわけないと思ってるでしょう。
 でも、それを口に出したら格好悪いから黙ってる。
 本当はきみ、色々なことを知ってる。物知りだよ。
 人が自分をどう見るかってことに関してね。
 男がどういう女を好きかってことについては、きみは熟知してるよ。
 
 完璧に美しく、けれども完璧が上手く働かないのを知ってるから、
 いつもちょっとした失敗と隣り合わせになってることをアピールしてる。
 
 確かに、そういうきみに誰もが心を奪われてるよ。
 だけど僕はそうじゃない。
 きみは自分を『自然に振舞うのに何故か人を引き付けてしまう』
 そういう位置に置こうとしてるけど、
 僕は『心ならずも』という難しい演技をしてる風にしか見えないんだよ」

山野は無言で立ち尽くしたきりだった。
顔はいっそう青ざめていたが、
もうそれは背後の紫陽花のせいばかりではなかった。
164日本昔名無し:03/06/12 23:00
z
165日本昔名無し:03/06/22 13:21
こんなスレがあったとは。
166日本昔名無し:03/06/23 17:17
このレスを見た人間は十三日以内に死にます。
      ※あなたに訪れる死を回避する方法が一つだけあります。
     それはこのコピペを一時間以内に7つ、別の板に貼り付ける事です
    /\___/ヽ   ヽ
   /    ::::::::::::::::\ つ
  . |  ,,-‐‐   ‐‐-、 .:::| わ
  |  、_(゜)_,:  _(゜)_, :::|ぁぁ
.   |    ::<      .::|あぁ
   \  /( [三] )ヽ ::/ああ
   /`ー‐--‐‐―´\ぁあ
167日本昔名無し:03/06/30 01:20
『新陽』

高速増殖炉は、現在日本の商業用原発で採用されている軽水炉とは、
あらゆる面で大きく違っている。その最も大きな違いは燃料だろう。
軽水炉で使われるのはウラン235という物質であり、
高速増殖炉ではプルトニウム239というものが使われる。

なぜプルトニウムを使おうとするのか。
それはウラン235は天然ウランの中に0.7パーセントしか含まれておらず、
恒久的に必要量を確保できる保証がないからである。
天然ウランの残り99.3パーセントはウラン238という物質だが、
これは殆ど燃料としては役に立たないのだ。
今のままで世界的に原発が増え、そこでウラン235が燃やされ続ければ、
七十五年ほどで枯渇するというのが科学技術庁での試算結果である。
168《続》:03/06/30 01:21
では、プルトニウム239なら大量にあるかというと、じつはそうではない。
それどころかこの物質は、自然界には全く存在しない。
プルトニウム239は、前述のウラン238が中性子を吸収した時に、成り代わる物質である。
そしてこのプルトニウム239ならば、燃料として使うことが出来るのだ。
もちろん燃料が変われば、原子炉の仕組みも違ってくる。
軽水炉では、燃料は水の中に浸されている。
ウラン235を核分裂させるためには、
燃料間を飛び交う中性子の速度を落としてやる必要があるからだ。
だからこの場合、水は減速材とも呼ばれる。

一方プルトニウム239を核分裂させるのに、中性子の速度は落とさない。
だから水の代わりに、液体ナトリウムが入れられている。
飛び交う中性子は高速のままだ。高速炉、といわれるのは、ここからきている。
169《続》:03/06/30 01:22
では「増殖」とはどういうことか。
これは燃料を燃やすと同時に、それ以上に多くの燃料を得ようとすることである。
具体的には、プルトニウム239の周りにウラン238を並べた状態で、
原子炉の中に入れて核反応を起こさせる。
するとどうなるか。
プルトニウム239は核分裂し、熱と高速中性子を出す。
その中性子をウラン238が受け取って、プルトニウム239に変身する。
最初にセットしておくウラン238の量を増やせば、
消費した以上のプルトニウム239が生み出されるわけだ。

高速増殖炉、という名前は、こういう仕組みからつけられたものである。
そして科学技術庁での計算では、この方式を使えば、向こう数千年は原子炉燃料に困らないはずだった。

来世紀には必ずやってくるエネルギー危機を乗り切るには、
この素晴らしい仕組みを使うしかない。
自分たちの研究は、今生きてる人間たちのためのものではない。
未来に生まれてくる子供たちに捧げられるべきものなのだ。
こんなところで挫折などしてはいられないのだ。
なぜそれを理解してもらえないのだろう――――――――――――
170日本昔名無し:03/07/04 17:37
浦沢直樹 著 『旧交』


「ガキの頃なら、今日あたりから
 夏休みの宿題でヒーヒー言ってるな・・・

 早く宿題なんかない大人になりたいと想ったもんさ。

 ところが大間違い。
 大人になったら宿題だらけだ!ハッハッハッ!」
171日本昔名無し:03/07/07 17:52
山田詠美 著 『時差ぼけ回復』

田嶋の言った片山の話とは、こういうことだ。
彼が何かの本で読んだことには、人間とは本来、
25時間を1日の周期として生きる動物だというのである。
それを24時間に合わせて行くと、どうしても1時間の時差が出る。
その1時間を、それではどのようにして解消していくのか。
普通の人間は、食事や仕事や遊びなど日常の動作を繰り返す内に少しずつ体をだまして、
小刻みに時間を振り分けて行く内に、つじつまを合わせて行くのだそうだ。
しかし、中にはそれがどうしても出来ない人間たちがいる。
そういう人たちが、体をだませずに不眠症になったり、日常に支障をきたしたりするのだそうだ。

「で、ぼくは生まれたときから時差ぼけなんだよって続けたんだよな、あいつ」

田嶋は、僕の足許の布団のところを枕にして、ごろりと横になって言った。
ぼくはその時の片山の表情を思い浮かべた。
皮肉そうに、片頬を歪めて笑っていたっけ。
確か、ぼくは彼の話しを聞いて、
海外旅行の時差ぼけに比べりゃどうってことないぜとか何とか軽く言ったと思う。
もちろん、ぼくたちは誰も海外に旅行したことなどなかったのだが。
172《続》:03/07/07 17:52
「時差ぼけで死んだってのか?」
「うん。うちの姉貴、旅行から帰るといつも変な時間に起きて困ってるもん。
 あれが続いたら、大変だと思うよ」
「でも、正常なら、すぐ治るんだろ」
「正常ならね。でも、生まれた時から、そうだったら、ぼけてるのが普通だと、体は思うよ。
 その普通が世の中では、まかり通らなかったりするんだから、やっかいじゃん」
「そんな苦労をしてるようには見えなかったけどな、あいつ」
「そう見えてたら、誰かが救ってたよ」
「本当に遺書とかなかったのかな」
「なかったって聞いたけどね。おれ思うんだけど、あいつ、死ぬ願望なんて、本当にあったのかな。
 そういうこととは違うことで、飛び降りちゃったんじゃねえのか?」

田嶋の言葉に、ぼくは首を傾げた。
飛び降りれば死ぬと解っていた筈だ。
目的と結果が一致していなかったとでも彼は言いたいのだろうか。
尋ねようとして、ぼくは彼の顔を覗き込んで、ぎょっとした。泣いていたのだ。
173《続》:03/07/07 17:53
「なんだよ、泣くなよ。そこまで親しくなかっただろ」

田嶋は、ごしごしと目を擦った。

「なんでかな。なんか、悲しいじゃん。あいつ、悪い奴じゃなかっただろ。
 皆に嫌われてた訳じゃないし、登校拒否してた訳でもなし。
 目立たない男だったのに。そうならないように努力してたみたいだったのに、
 自殺なんかで、皆の注目、浴びることになっちゃって」

そりゃあ可哀相だと、ぼくも思った。
でも、ぼくは泣けない。どうしてだろう。
風邪を引いているからに違いない。熱があるから、心が、あるべきように反応しないのだ。
と、すると、悲しみとは健康体の特権なのか。

「あいつの親、悲しんでるだろうな」
「うん。でも、あいつは、そんなの予想出来なかったんだよ。
 でなきゃ、飛び降り自殺なんて」
「そうかな」
「そうだよ。死んだ後がどうなるかなんて、どうでも良かったんだよ。
 だって、なんたって、時田、片山の奴、時差ぼけだったんだぜ」
174日本昔名無し:03/07/08 23:26
175日本昔名無し:03/07/09 22:33
藤田和日朗 著 『一時閉幕』

―――――男がな、全部ハラにしまって
たった一人で歩かにゃならん時はな

ぎゅっと手をにぎってそれを見ろ。


それがこの世でたったひとつ

お前と大事な人を守る 力強いこぶしなのだ。
176日本昔名無し:03/07/13 08:07
177日本昔名無し:03/07/14 04:13
         / ̄ ̄ ̄ ̄\
        (  人____)
         |ミ/  ー◎-◎-)
        (6     (_ _) )
         |/ ∴ ノ  3 ノ
         \_____ノ,,
           /,.   つ
          (_(_, )
            しし'
178山崎 渉:03/07/15 11:04

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
179日本昔名無し:03/07/21 22:50
丸山真男 著 『日本の思想』

民主主義というものは、人民が本来制度の自己目的化―――物神化―――
を不断に警戒し、制度の現実の働き方を絶えず監視批判する姿勢によっ
て、はじめて生きたものとなりうるのです。それは民主主義という名の制
度自体について何よりあてはまる。つまり自由と同じように民主主義も、
不断の民主化によって辛うじて民主主義でありうるような、そうした性格
を本質的に持っています。民主主義的思考とは、定義や結論よりもプロセ
スを重視することだといわれることの、もっとも内奥の意味がそこにあるわけです。
ハッキリ言ってアメリカなどの多民族国家では黒人の方がアジア人よりもずっと立場は上だよ。
貧弱で弱弱しく、アグレッシブさに欠け、醜いアジア人は黒人のストレス解消のいい的。
黒人は有名スポーツ選手、ミュージシャンを多数輩出してるし、アジア人はかなり彼らに見下されている。
(黒人は白人には頭があがらないため日系料理天などの日本人店員相手に威張り散らしてストレス解消する。
また、日本女はすぐヤラせてくれる肉便器としてとおっている。
「○ドルでどうだ?(俺を買え)」と逆売春を持ちかける黒人男性も多い。)
彼らの見ていないところでこそこそ陰口しか叩けない日本人は滑稽。
181日本昔名無し:03/07/22 21:06
『おまえはもう死んでいる』


ほらを吹く、という言葉がある。
意味としては「実際よりおおげさに言うこと、まるででたらめな嘘を言うこと」
であるところのこの言葉、現在では広く「法螺を吹く」という字を宛てて使われている。
ほら貝の「法螺」だ。
が、実のところこれは誤用に伴う借字であって、
本来この言葉は「鯔を吹く」と表記するのだ。ボラを吹く。そう魚のボラだ。

つまり、出世魚であるボラのごとく次から次へと
どんどん嘘が大きくなっていくところからして「鯔の大言を吹く」になり、
そこから「鯔を吹く」とこういった具合に派生していったのである。
それがいつの頃からかボラが「ホラ」になってしまい、
法螺の字が宛てられたのだろう。
ほら貝を実際にブオーと吹くことと「おおげさに言うこと」は
どう考えても繋がらないが、これが「鯔を吹く」になればすんなりと説明がつく。
ちょっと聞くと何だか嘘みたいな話だが、その通り、嘘だ。
182日本昔名無し:03/07/24 21:32
浦沢直樹 著 『しんよげんの書』


ケンヂおじちゃん言ってた・・・。

ライブに出る直前は、いつも心臓が口からとび出そうになるって。
何度やっても吐きそうになったって。
だけどそれがいいんだって・・・・。



   《それがなきゃ、ライブなんてやんないさ》
183日本昔名無し:03/07/27 18:50
『天声人語』

先輩記者が女子大生達から招待状を受け取った。
「枯れ木も山のにぎわいと存じます。ぜひご出席を。」
枯れ木としては、山をにぎわせるべきかどうかに迷う。
「情けは人のためならず」といったら
「なるほど情けをかけてはかえって人を傷つけるのか」とうなずく若者がいたそうだ。
「学研」が集めた誤字・当て字優秀作?に
「ご立派な低宅をお建てになり」という新築祝いの手紙があった。
むろん邸宅の間違いだが、低宅には妙な実感がある。
「やはり脳力がなかったようです」とは、受験に失敗した若者の便りだ。独創的能力はあるのに。

こういう実例を並べては国語力の低下を嘆き、国語の乱れをなじるのが世の常だが、
そのなじるご当人が、順風満帆をマンポと読んだり、
不祝儀をフシュウギと読んだりするのだから、日本語というのはややこしい。
青筋をたてて、国語の乱れに警鐘を打ち鳴らす人がいるのはいいことだ。
でも、そういう「けしからん派」だけでは息がつまるとは思いませんか。
山本周五郎の代表作「おたふく物語」の主人公おしずは、山本作品の中の、
最も魅力的な女性の一人だが、このおしずさんのしゃべる言葉は、ずっとんきょうで、
そそっかしくて、いつも間違いばかりしている。
「金時の火事見舞い」を「金時のカゼ見舞い」などと平気でいい、周囲を笑わせる。
目黒の茶店へ行けば本気で名物のサンマをと注文し、店の老夫婦を喜ばせる。
その言葉はとんまなようで情があり、間違ったいい回しがかえって、
あたたかい笑いを呼ぶ。ただひとつ、どんなでたらめをいってもおしずは
絶対に人を傷つける言葉は使わない。「枯れ木」といえば相手がどう思う
か、を常に考える心配りがある。周五郎はおしずという人物像を描きながら、
本当の生きた言葉とは何かを考えていたのだろう。
私たちはどうやら、枝葉末節の間違いにこだわりすぎているように思う。
184日本昔名無し:03/07/29 02:02
尾田栄一郎 著 『突き上げる海流』


「小僧!!おれァ、ここでお別れだ!!
 
 一つだけ。これだけは間違いねェ事だ・・・。

 "黄金郷"も"空島"も!!
 過去誰一人"無い"と証明できた奴ァいねェ!!!

 バカげた理屈だと人は笑うだろうが、結構じゃねェか!!

 それでこそ!!"ロマン"だ!!!」
185日本昔名無し:03/08/01 21:07
山田詠美 著 『時差ぼけ回復』


景色は次第に、のどかさを増して行った。
隣りの座席では、おばあちゃんが居眠りをしていた。車内は暖かかった。
眠るのに、これほど気持ちの良い場所はないように思われた。
ぼくは、ふと、片山のことを思い出した。ここで寝てりゃ良かったのに。
そんなふうに思いついて、ぼくは口惜しい気持ちになった。一時間ぐらい、あっと言う間じゃないか。

でも、本当にそうだろうか。片山のように自覚しなくても、
人は誰でも、気付かない所で時差を引きずっているのかもしれない。
人は遅かれ早かれ、誰でも死に至るのだ。
片山は、ここで寝ることすら出来ずに、
早目に一生分の時差を清算したかったのかもしれない。
彼の自殺が幸福だったのか不幸だったのかを他人が言い当てることなど出来ない。

しかし、しかしだよ。
こんなふうにぼんやりと電車に乗って、春が来たと思うのは、
ささやかだけれど、やはり、楽しいことなんじゃないのか?
微笑を口許に刻める瞬間てのは、やはり、必要なんじゃないのか?
他愛のない喜び、それが日々のひずみを埋めて行く場合もあると、ぼくは思うのだ。
186《続》:03/08/01 21:07
考えることを考える、と片山は言った。
彼はやり切れなかったのかもしれない。
けれども、そのことを彼にさせていたのは、彼自身だ。
彼の皮膚、彼の瞳、彼の舌、感じる器官を持ったすべての体の部分が彼自身を作っていたのだ。
そよ風が、もし、彼の皮膚を心地良く撫で、そしてそれを受け入れることが出来ていたなら、
彼の考えは、あるいは、違った方向へと進み、
彼の足は地面に向けて飛ぶより別な動きを選んだかもしれない。

片山はぼくたちを笑わせることだって出来たのだ。
彼の唇は、そういう言葉を紡ぐことだって出来ていたのだ。
もったいないじゃないか。
春の空気はこんなに気持ち良く、そしてその春は、毎年、裏切らずに巡って来るというのに。

「おにいさん、大丈夫かね」
眠っていた筈のおばあちゃんが、いつのまにか心配そうに、ぼくを覗き込んでいた。
「これで、涙、拭いたらいいよ」
「はい、すいません」
「何があったか知らんがね、元気出しなさいよ」
「はい」
ぼくは照れ笑いをして、おばあちゃんのハンカチで顔を覆った。
     ∧_∧  ∧_∧
ピュ.ー (  ・3・) (  ^^ ) <これからも僕たちを応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄ ̄∪ ̄ ̄〕
  = ◎――――――◎                      山崎渉&ぼるじょあ
188日本昔名無し:03/08/02 22:31
尾田栄一郎 著 『Last waltz』


「命を懸けてダチを迎えに行くダチを・・・、

 見捨てておめぇら明日食うメシが美味ぇかよ!!!」
189日本昔名無し:03/08/07 19:57
小池真理子 著 『仮面のマドンナ』


その夜、その店を肩を並べて出てから、ふたりは居酒屋に入り、
焼酎を飲みながらいわしのつみれを食べた。
彼は自分のとっておきの失恋話を話してくれた。
役者の卵だった時、少し売れ出した新米女優に猛烈な恋をした。
彼女もまんざらではなさそうで、ふたりはしょっ中、デートをした。
初めてのクリスマス夜、
彼は自分の四畳半のアパートに大きな本物のもみの木を置き、
デパートで買ったデコレーションセットを飾った。

クリスマスケーキもシャンペンも、フライドチキンも揃え、
彼女が好きだった水玉模様のテーブルクロスの上に並べた。
190《続》:03/08/07 19:57
彼女へのクリスマスプレゼントは、以前、
彼が仕事でスリランカに寄った時に買っておいた
天然石を加工したペンダントだった。加工してもらうのに十日もかかったが、
見事な仕上がりであった。奮発して、純銀のチェーンもつけた。

彼はそのペンダントを箱に入れ、大きなもみの木に吊るした。
真っ赤なオーバーを着た彼女は、やってくるなりそのプレゼントに気付いた。
箱を開け、わあ、と言ったものの、すぐに表情が曇った。

「その石がエメラルドだと思ったんだ、その子」
と、彼は私に言った。
「ただの加工した石だとわかると、ケーキも食べずに帰っちゃった。
 他に男がいたんだ。多分ね」
191山崎 渉:03/08/15 22:42
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
192日本昔名無し:03/08/24 20:00
『男の世界』

主人公は大学野球の外野手で、確実な打棒と強肩を生かした
正確な返球を売り物にしていた。
その選手がある試合で大きなミスを犯す。

ワンアウト一塁三塁というピンチで、相手打者の放った当たりは
ヒット性のライナー、それを主人公はダイビングキャッチした。
そこまではファインプレーだ。
だがその後がよくなかった。
三塁ランナーのタッチアップを防ぐため、彼はバックホームしてしまうのだ。
じつは一塁ランナーが飛び出していたため、
一塁に投げればダブルプレーが成立して試合終了だった。
彼のミスでこの試合を落としたチームは優勝争いから後退してしまう。
その試合でのミスはしばらく語りぐさとなった。
193《続》:03/08/24 20:01
プロ入り確実と見られていた彼だが、プロには進まず就職した。
同時に野球からも離れてしまう。
大学時代から交際していた女性と結婚したのも、そういう時だった。

だが時が経つにつれて妻はなぜかよそよそしくなっていった。
前のように完全に心を開いてくれているようには思えない。
不自然さを感じつつ、彼は生活を続けていく。
194《続》:03/08/24 20:01
それから三十年後、彼は病床についていた。
枕元には妻がいる。
不治の病であることを知っている彼は彼女の手を取り、礼の言葉を述べる。
するとそんな彼に妻は、意外なことをいう。

「礼なんかよりも、私にいうことがあるんじゃないですか。
 それとも、死ぬまで私をその世界には入れてくださらないのですか」

どういう世界だと訊く彼に、彼女は答える。
「男の世界、とかいうところです」

何のことかわからない、と彼はいう。
すると彼女は耐えかねたように叫ぶのだ。
どうして私にいってくださらないのですか。左目が見えないのだと。
だから一塁ランナーのことも見えなかったのだと。
それで夢を捨てたのだと―――――――。
195日本昔名無し:03/09/03 20:38
尾田栄一郎 著 『4』


「いいかチョッパー、男には!!!
 たとえ死ぬほどおっかねぇ敵でもよ!!
 たとえ到底勝ち目のねぇ相手だろうともよ!!

 男にゃあ!!!
 どうしても戦いを避けちゃならねぇ時がある!!

 
 ーーー仲間の夢を笑われた時だ!!!」
196日本昔名無し:03/09/04 09:09
尾田栄一郎 著 『貝バトル』


ン〜〜ンンンン〜〜♪

みなみのし〜〜まは あったけえ〜〜♪
あたまポカポカアホばっか〜〜〜♪

き〜た〜のし〜〜まは さ〜〜む〜い〜〜〜♪
あたまブルブルアホばっか〜〜〜♪
197日本昔名無し:03/09/11 21:54
東野圭吾 著 『美しき凶器』


「何を読んでるんだ」
有介が訊くと彼女は、「これ」といって表紙を見せた。妊婦用の月刊誌だった。
「もうそんなものを読んでるのか」
「だって、今読まなきゃ読むときがないわ」
「・・・・・・それもそうかな」
チーズケーキをフォークで切りながら、有介は小夜子の腹部を見た。
三ヶ月ということだが、彼の目にはその変化がわからなかった。

彼が小夜子と結婚したのは一年前だった。
彼女は出版社のアルバイトをしていて、そこで顔を合わせるうちに親しくなったのだ。

結婚と同時に、三鷹にあるこのマンションを買った。
それまでは吉祥寺にいたので多少不便を感じなくもないが、
3LDKの広さはそれを差し引いてもおつりがくるほどだった。
スポーツライターとしての地位も固まってきており、まずは不安のない生活が続きそうな気配だった。

守らなければな、と有介は思った。
この生活を何としてでも守らなければならない。
幸せそうににしてる小夜子に、自分との結婚を後悔させるようなことだけは、
決して起こしてはならない。どんなことをしてでも・・・。
198日本昔名無し:03/09/15 19:38
京極夏彦 著 『姑獲鳥の夏』


「面白い、面白くないという君の尺度にもよるが、
 だいたいこの世に面白くない本などはない。どんな本でも面白いのだ。
 だから読んだ事がない本は大抵面白いが、一度読んだ本は
 それより少し面白がるのに手間がかかるという、ただそれだけのことだ」
199日本昔名無し:03/09/20 20:54
東野圭吾 著 『美しき凶器』


「悪いけど、また出てくる。編集者と会うんだ」
いい捨てて玄関に向かった。だがその彼を小夜子は追ってきた。「あなた」

有介は靴を履いてから妻のほうを振り返り、少しどきりとした。
彼女の真摯な目に、一瞬たじろいだ。

「何だい?」
「あなた・・・・・・あたしには何もかも話してね」

有介は苦笑を作った。
「話してるよ。変な心配するな」

だが彼がドアのノブを掴んだとき、小夜子はいった。
「さっき刑事さんから訊かれたの。
 九月九日の夜、ご主人はどちらに出かけられましたかって」

有介はゆっくりと小夜子の顔を見た。彼女の目の縁が赤くなっていた。

「だからあたし、いったの。ずっと家にいましたって。それでよかったのよね」
「小夜子・・・・」

有介は胸の中を激しくかき乱されていた。
九日の夜、彼は取材に行くといって家を空けたのだった。

「行ってくる。少し遅くなるかもしれない」
そういって彼はドアを開けた。「行ってらっしゃい」という細い声が、背中から聞こえた。
200日本昔名無し:03/09/23 22:19
『最終章・縹――愛と書く――』


「心を受けとる」と書いて「愛」と読むのだ。
201日本昔名無し:03/09/28 23:20
東野圭吾 著 『魔球』


「宮本が主将をやることに、おまえは反対すると思ったけどな」

武志の背中を押しながら田島は小声でいった。
武志の身体は柔らかい。足を百二十度以上開いても、胸がぴったりと地面につく。
抵抗が少なくて、押している田島が物足りないほどだ。
田島は続けた。
「宮本たちは北岡のやり方に不満を感じてた。たぶんずいぶん方針が変わると思う。
 そうすれば須田としてもやりにくくなるんじゃないか」

武志は目を閉じて、田島が押す方向に身体を曲げながら、
「何も変わらないさ」
感情のない声を出した。
202《続》:03/09/28 23:20
「そうかな、どうして?」
田島が訊いたが、武志は答えなかった。

交代して、今度は田島が柔軟体操をする番になった。
彼は身体が固いので、これが苦手だった。
足を開いて背中を押されると、大腿の裏側に痺れるような痛みが走る。
彼の固い身体を押しながら、武志が静かにいった。

「別に何も変わりゃしないさ。ここの連中はただ待ってるだけだ。
 待っていれば、いつかは点が入るだろうと思っている。相手投手が甘い球を投げるのを待っている。
 エラーしてくれるのを待っている。誰かが打つのを待っている。
 あげくの果てに、自軍の投手が相手打線を完封してくれるのを待っている。
 そんな連中が何かを変えたりできるものか。変わるのは一つだけだ。もう勝てなくなる」

田島は顔をしかめて身体を曲げながら、彼の言葉を聞いていた。
聞きながら、この男は何かを待つなんてことはないのだろうなと思った。
203日本昔名無し:03/10/18 22:35
鈴木志保著 『船を建てる』

いろんなことが あったね
そうね でも もう おしまい

そうさ パーティは いつか 終わるけれど
終わるから また パーティ しましょ

ねえ そして あの パレードが

永遠に つづく だろ?
永遠に つづく でしょ?

新しい 船を 建てるの
204日本昔名無し:03/10/24 21:32
『I will come to you』

When you have no light to guide you
And no one to walk to walk beside you

I will come to you
Oh I will come to you
205日本昔名無し:03/11/08 22:24
『哀歌』


「人から何かを奪う時は、相手の価値観ってのを考えなきゃな」
変わらず自信たっぷりの顔で男は続ける。
「解らないか?宝石に執着の無い相手から宝石を盗っても無駄だろ?
 せいぜい、お前の自己満足を埋める事が出来るくらいだ。
 結局、相手は全てを手に入れ、日々を楽しく過ごす」

「でも、それでも・・・・」
後に出そうになった言葉を私は必死に飲み込んだ。
206 ◆sz/lfG9LqA :03/12/24 00:29
身人
207日本昔名無し:04/01/01 12:30
2083 ◆3vbZXXfjiE :04/02/26 06:18
>>184
駄目でした。
・・ハァ。新しいPS2買って来ようかなあ。

はなし変わるけど、携帯ゲーム機"プレイステーションポータブル(PSP)

 久夛良木氏は,“PSPはゲーム業界が待ち望んだ究極の携帯機”として説明。「ここまでやるかと言われるスペックを投入した」という。
 発表によれば「PSP」は,曲面描画エンジン機能を有し,3Dグラフィックでゲームが楽しめる。
7.1chによるサラウンド,E3での発表以来,クリエイターたちにリクエストが高かった無線LANも搭載(802.11)。
MPEG-4(ACV)による美しい動画も楽しめるという。これによりゲーム以外の映画などでのニーズも期待する。
 外部端子で将来,GPSやデジタルチューナーにも接続したいとする。
また,久夛良木氏は,繰り返し「コピープロテクトがしっかりしていること」と力説。会場に集まった開発者たちにアピールしていた。
 さらに,ボタン設定なども明らかにされ,PS同様「○△□×」ボタン,R1・L1,アナログスティックが採用される。

この際、スク・エニもGBAからPSPに乗り換えたらどうでしょう。スク・エニの場合、PSPの方が実力を出しやすいような気がするんですが。
任天堂が携帯ゲーム機で圧倒的なシェアをもってるなら、スク・エニがそれを崩してみるのもおもしろいですし。かつて、PS人気の引き金となったFF7のように。

突然変なこと言い出してすまそ……
GBAと比べてみてどうなんでしょうか?(シェアの事は抜きで)
209日本昔名無し:04/09/24 17:30:55
簡単に捨てられたすれやね
210日本昔名無し:05/01/29 14:53:52
坊やだからね
211日本昔名無し:05/03/05 02:55:28
あけ
212日本昔名無し:2005/06/08(水) 14:56:01
伊藤は俺と同じだな
213日本昔名無し:2005/10/06(木) 13:46:25
o(><;)(;><)o
214チャリ ◆Chari3bXpk :2006/08/04(金) 23:27:13
怪人二十面相(エドガー・ア・ランポー)
215日本昔名無し:2007/05/18(金) 23:55:08
o(≧∇≦)o ◆zelfa5.w6U
216o(≧∇≦)o ◇zelfa5.w6U :2007/05/18(金) 23:56:22
217日本昔名無し:2007/06/20(水) 05:56:01
2006年のレスはひとつかよォィ
218日本昔名無し:2007/06/23(土) 15:39:51
上前津にある古本屋だっけ??
勇者特急マイトガインの絵本が350円で売っていました。
219日本昔名無し:2007/10/29(月) 10:46:35
えいっ!
220日本昔名無し:2008/07/14(月) 23:49:22
あけましておめでとうございます
221日本昔名無し:2008/08/18(月) 22:43:50
[[AS18-YSJ0LF0J-BD]]
222日本昔名無し:2008/08/31(日) 19:08:26
11a
223日本昔名無し:2010/01/05(火) 20:38:29
堀井雄二(ドラクエの作者)が大昔、文筆業を始めたころ書いた本「いたずら魔」
捨てちゃったのは惜しいことしたなぁ・・・今でも持ってる人いるのだろうか。
内容はもう憶えてないけど、その中のあるページの「個室での空想と思考」
というサブタイトルだけは覚えている。
要はトイレでのいたずら集だけど、「空想と思考」の文字のフリガナが「クソとシッコ」だったww
224日本昔名無し:2010/05/22(土) 00:21:38
マルクス・アウレリウス 著 『自省録』

遠からず君はあらゆるものを忘れ、遠からずあらゆるものは君を忘れてしまうであろう。
225日本昔名無し:2010/05/24(月) 13:18:17
ジョン・ホーガン 著 『科学の終焉』

もちろん、カントも知識の限界に挑んだ。スコットランドの偉大な物理学者マックスウェルも、
同じように限界に挑んだ。(中略) マックスウェルが想像した悪魔の本当の意味は、我々は
熱力学の監獄の中にいて逃げ出すことができないということなのだ。我々がこの世界から
情報を集めるとき、我々はそのエントロピーとその不可知性に寄与することになる。我々は
無常にも熱的な死へと向かっている。「科学の限界についてのすべての話題は、悪魔たち
の話題でもあるのだ」。
ここでロスラーはしーっと言ってあたりを見回した。「私たちは悪魔たちと闘っているんだ」。
226日本昔名無し:2010/05/24(月) 17:18:33
ダニロ・キシュ 著 『死者の百科事典』

なぜなら――それこそ『百科事典』の編者が言わんとするところだと思うのですけど――
人間の歴史には何ひとつ繰り返されるものはない、一見同じに見えるものも、せいぜい
似ているかどうか、人は誰でも自分自身の星であり、すべてはいつでも起きることで二度
と起きないことなのです、すべては繰り返される、限りなく、類なく。(だから、この壮大な
相違の記念碑、『死者の百科事典』の編者たちは個なるものにこだわるのです、だから、
編者たちにとっては一人ひとりの人間が神聖なのです。)
227日本昔名無し:2010/05/25(火) 20:15:18
田上太秀 著 『禅語散策』

 禅宗では「さとり、迷い、涅槃、修行、仏性、煩悩、仏、凡夫」などを万事という。(中略)
いったんことばで表現されると、人はそのことばの意味に支配され、そのことばを手がかりと
して信仰するようになる。また、そのことばに左右されて、ことばそのものの意味がいかにも
存在するかのように思い込む。それが人の迷いとなる。心が落ち着かなくなる。一つの目的
に執心するという事態に陥る。
 そこで禅宗では、ことばによって表されたものは本来「空」であると観察して、それらに対す
る執着を捨てることを「万事を休息する」といったのである。(中略)万事休すの意味には悲観
的絶望的な意味は含まれていない。日常使っている意味とは正反対である。
228日本昔名無し:2010/05/26(水) 16:35:47
夏目漱石 著 『草枕』

「西洋の本ですか、六ずかしい事が書いてあるんでしょうね」
「なあに」
「じゃ何が書いてあるんです」
「そうですね。実はわたしにも、よく分らないんです」
「ホホホホ。それで御勉強なの」
「勉強じゃありません。ただ机の上へ、こう開けて、開いたところをいい加減に読んでるんです」
「それで面白いんですか」
「それが面白いんです」
「何故?」
「何故って、小説なんか、そうして読む方が面白いです」
「よっぽど変っていらっしゃるのね」
「ええ、些(ちつ)と変ってます」
「初から読んじゃ、どうして悪いでしょう」
「初から読まなけりゃならないとすると、しまいまで読まなけりゃならない訳になりましょう」
「妙な理屈だ事。しまいまで読んだっていいじゃありませんか」
「無論わるくは、ありませんよ。筋を読む気なら、わたしだって、そうします」
「筋を読まなけりゃ何を読むんです。筋の外に何か読むものがありますか」
余は、やはり女だなと思った。
229日本昔名無し:2010/05/27(木) 00:10:18
真木悠介 著 『時間の比較社会学』

そしてわれわれが、現時充足的な時の充実を生きているときを振り返ってみると、それは必ず、
具体的な他者や自然との交響のなかで、絶対化された「自我」の牢獄が溶解しているときだと
いうことがわかる。すなわちわれわれの現在の時が、未来に期待されている結果のうちにしか
その意味を見出せないほどに貧しく空疎となるのは、われわれが人間として自然を疎外し、個
我として他者を疎外し、いいかえれば現在の時にそれ自体としての充足を与える一切の根拠を
疎外し、ミンコフスキーが <生きられる共時性> と名づけた、存在のうちに交響する能力を疎外
しているからだ。
230日本昔名無し:2010/05/28(金) 22:38:43
泉鏡花 著 『売色鴨南蛮』

宗吉は、跣足で、めそめそ泣きながら後を追った。
目も心も真暗で、町も処も覚えない。颯と一条の冷い風が、電燈の細い光に桜を誘った時である。
「旦那」
とお千が立停まって、
「宗ちゃん――宗ちゃん」
振向きもしないで、うなだれたのが、気を感じて、眉を優しく振向いた。
「……」
「姉さんが、魂をあげます」――辿りながら折ったのである。……懐紙の、白い折鶴が掌にあった。
「この飛ぶ処へ、すぐおいで」
ほっと吹く息、薄紅に、折鶴は却って蒼白く、花片にふっと乗って、ひらひらと舞って行く。
……これが落ちた大きな門で、はたして宗吉は拾われたのであった。
231日本昔名無し:2010/05/30(日) 16:33:42
アレッサンドロ・バリッコ 著 『海の上のピアニスト』

だけど、境界線だけは、なかったんだ。
ぼくの目に映らなかったものというのは、あの町並みの尽きるところのことさ。この世界の限界
ああ、考えてもみてくれ。たとえばピアノ。鍵盤はここから始まって、ここで終わる。
知ってるだろう、キーは全部で八十八。これは誰もごまかせない。
キーは果てしなくあるわけじゃない。でも、弾く人間のほうは無限だ。
鍵盤上で奏でられる音楽も無限。鍵盤は八十八キーだけ。でもそれを弾く人間は無限。
(中略)
何億何十億というキーがどこまでも続く巨大な鍵盤、これがぼくの見たものさ。無限の鍵盤
鍵盤が無限なら、さて、そんな鍵盤の上で人間が弾ける音楽なんて、あるもんか。
232日本昔名無し:2010/05/30(日) 16:36:57
鷲田小彌太 著 『現代思想がわかる事典』

なぜ人間は、無制限な欲望をもつのか。生来のエゴイストなのか。
無限な欲望を生み出す「性質」(力と構造)をもっているからだ。
無制限な欲望の出所はどこか。身体の性状ではない。生物学的な身体に起源をもつ欲望
などというものはたかが知れている。無制限な欲望を生み出す真の犯人は、「言葉」である。
(中略)
言葉は、現実に「ない」ものを自在に喚起することができる。だから、人間以外の生物の欲
望の限界は生理的な満足にあり、人間の欲望に限界は「ない」のである。
233日本昔名無し:2010/06/03(木) 16:15:40
ヴォルフガング・ヒルビッヒ 著 『ゆるぎない土地』

たとえば、すでに予測できたことだが、この食堂での勘定が払えないときには、この金曜日に
始まったわが沈没への道を――たいていの曜日にいったんは始まるものだが……それをやり
過ごす力がわずかしかない場合はほとんど常に――私はそのまま下降するしかなかった。世
界が穏やかに機能し続けている間にも、千鳥足はこの斜めに傾いた軌道の上ですでに始まっ
ていたのだ。ほんのささいなきっかけがありさえすればよかった……
234日本昔名無し:2010/06/06(日) 12:57:15
E・M・シオラン 著 『歴史とユートピア』

だが、人間の意志が良いものだという証拠は、どこにもありはしないのである。(中略)
意志に欠陥のある人間だけが、生まれながらにして善良であるにすぎない。他の連中は
善良たるべく刻苦せねばならず、骨身を削るような努力の結果、ようやく善良さに辿りつく
にすぎない。悪は行為と分かちがたいものだから、私たちの企ては、必然的に、誰かに、
あるいは何かに逆らって実行されるという結果になる。そして最終的には、私たち自身に
逆らってなされることになる。いくらでも執拗に言い張るつもりだが、通常、私たちは他者
を犠牲にしなければ意欲することができないのである。
235日本昔名無し:2010/09/10(金) 17:34:39
石田吉貞 著 『隠者の文学』

さび系の美というのは、一木一草の美のなかに、無常と、さびしさ――悲しさ・あわれ等
も含まれたものとしての――と、万有とが感じられた美であって、隠者の文学芸道のなか
に流れている美は、たしかにそのような美を中心としたものである。(中略)美による万有
や存在の捉え方は、美を通して、万有の夢まぼろしの姿に観入し、一切が生死無常の流
れのなかに永遠に流れていく姿を観取するのである。禅は、一切をあるがままの姿におい
て、仏であり、永遠であり、真であるとするものであるが、さび系の美は、一切を美において
捉え、美感のなかに、存在の姿を感じようとするものである。
236日本昔名無し:2010/10/06(水) 01:46:29
岩波文庫 『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』

物の極限はすべてその物のいかなる部分にも属さず、他のものの始まりである。
そこで、物の極限がその物にもまたその物に触れているものにも属さない以上、その極限
は無にあたる。そして無にあたるものはすべて互いに相等しく、合計した全部がその各々に
等しく、その各々は全部に等しい。それゆえこの場合には部分が全体に、全体が部分に、
分割可能なものが分割不可能なものに、有限が無限に等しいということになる。従って上述
せるところによって、面、線、点は無である。というのは、その極限は無にあたるが、数学的に
説明されるように、あらゆるゼロは全部のゼロに等しく、全部のゼロは一つのゼロに等しいから。
237日本昔名無し:2010/11/13(土) 22:39:24
諸坂成利 著 『虎の書跡 中島敦とボルヘス、あるいは換喩文学論』

部分を失うことを怖れて全体を失う。この愚かしさを『孟子』は説いているわけであるが、
全体よりも部分に執着し、これに価値を見出す思考方法が【狼疾】と言うことになるだろう。
(中略)
筆者の述べる【換喩】とは、現実の、リアルな【全体】を捨てて、観念の、イマジネールな【部分】
に赴くことに他ならない。そして言語とは、内的言語、言語以前の言語、言語に先立って存在する
言語、等から(垂直的に)生起してくるのではなく、(水平的に、あるいは隣接的に)派生した存在
であり、言語はその内的言語からいつも遅延させられる存在である、などの認識に立てば、言語
は宿命的に【換喩】的でしかあり得ない。そして【換喩】から派生するのではなく(今度は垂直的に)
生起してくるメタテクストは、常に捉えがたく、内的言語があるそのままの状態に近づいていく、と
いう認識である。
238日本昔名無し:2010/11/15(月) 23:09:50
坂部恵 著 『<ふるまい>の詩学』

【ミーメーシス】(模倣再現)は、こうして単に人間の本性に根ざして、最初の【まねび】【まなび】を与え、
反復を通して【ならい】への素地を整えるにとどまらず、その成果との関わりは、【まなび】、【推論し】、
新たに見出すことの純粋な精神の【喜び】【愉悦】という、人間の生きがいにとっての不可欠な情緒の
基底へと人を根づかせ、あわせて、いわば発見的【推論】として、【こころ】(意味)を採り集めつつ働く
【ロゴス】※の最初の芽生えに向けて生動する【こころむき】(志向)を生成、分節せしめる。

※それは、声と結合すれば「こわぶり」(大森荘蔵)として、まさにそれ自体がミーメーシスの一環、
それももっとも高度の分節と屈折をはらみ、【人間】をそれとして特徴づける種差ともされる、人間なら
ではのミーメーシスの一翼をなすということになろう。
239日本昔名無し:2010/12/28(火) 02:11:49
マーク・ローランズ 著 『哲学者とオオカミ』

サルの中で最初に形成されるのが正義感であるのは、偶然ではない。もしサルが他のサルを
攻撃し、その攻撃が悪意のある予謀をもって行われ、襲われる側が相手をなだめる身振りをして
も回避できないのなら、このような攻撃があまり頻繁に起こらないことが重要になる。さもないと、
群れはやがて崩壊してしまう。したがって、サルではその悪意と暴力的な性格のゆえに、一種の
繊細さの、少なくとも萌芽が見られるのだ。(中略) 理由、根拠、正当化、権限。真に卑劣な動物
だけが、これらの概念を必要とする。その動物が不愉快であればあるほど、そして悪意に満ち、
仲直りの方法に無関心であればあるほど、正義感を火急に必要とするのだ。自然全体の中で、
サルはまったく孤立している。サルだけが唯一、道徳的な動物となる必要があるほどに不愉快な
動物だからだ。わたしたちがもつ最高のものは、わたしたちがもつ最悪のものから生じた。
240日本昔名無し:2010/12/30(木) 02:03:09
ミラン・クンデラ 著 『存在の耐えられない軽さ』

 われわれの人生の一瞬一瞬が限りなく繰り返されるのであれば、われわれは十字架の上のキリ
ストのように永遠というものに釘づけにされていることになる。このような想像は恐ろしい。永劫回帰
の世界ではわれわれの一つ一つの動きに耐えがたい責任の重さがある。これがニーチェが永劫回
帰という考えをもっとも重い荷物と呼んだ理由である。もし永劫回帰が最大の重荷であるとすれば、
われわれの人生というものは、その状況の下では素晴らしい軽さとして現れうるのである。
(中略)
 Einmal ist keinmal (一度は数のうちに入らない)と、トマーシュはドイツの諺をつぶやく。一度だけ
起こることは、一度も起こらなかったようなものだ。人がただ一つの人生を生きうるとすれば、それは
まったく生きなかったようなものなのである。
241日本昔名無し:2011/01/01(土) 17:33:30
ドブロリューボフ 著 『オブローモフ主義とは何か?』

 時代は移り変わって、いまや社会そのもののなかに行動への要求が生まれてきている。かつては
芽生えたばかりで、ささやき声の不明瞭な片言でしか表現されなかったものが、今ではすでにはっきり
した形をもって、公然と、かつ声高に語られるようになっている。行動を伴わないことばはすでにその
意義を失っている。だがオブローモフたちは会話に時を過ごそうとしている。彼らは困難と戦うことを
おそれ、何一つ遂行することができない。そして居心地のよい休息所のなかに閉じこもって、孤独な、
自分だけの幸福の上に安住し、まわりの現実を見ることをやめる。
 彼らにとって生活上の必要物ともなり、心から神聖なものともなり、宗教ともなるような仕事、彼らの
肉体と有機的に結びついて成長し、それを取り去ることが彼らの生命を奪うことを意味するような仕事
は、彼らの生活のなかにはなかったのだ。彼らはいずれも行動への無益なあこがれを抱いている。
そして自分は多くのことを成し得るかもしれないが、結局は何もしないだろう――という予感にとらわれ
ている。そして何もしようとしない。こうして彼らは実生活の上でいずれも無力な余計者と化してしまう。
242日本昔名無し:2011/02/02(水) 23:02:57
ルドルフ・タシュナー 著 『数の魔力』

デカルトの世界観を要約すれば「空間と思考は対立項である」ということになるだろう。
しかし実際には、これはまったく当たらない。空間は思考の対立項ではなく、思考の対象なのだ。
(中略)
そして空間とは、数によって把握可能な「思考された対象」なのだ。
果てしなく巨大な宇宙には、耐えがたい空虚さが広がっており、われわれはそこに目標もなく迷い込んでいる…。
そんな神話は妄想であり、遠くの山が青く見えるのと同様の錯覚であることが、かくして判明する。
実際には宇宙の巨大な距離が「存在している」のは、ひとえにわれわれがそれを計算できるからだ。
数よりほかには何一つ、空間のうちに見いだせるものはない。
そして、宇宙の広さは、数学的思考の深さによって決められているのだ。
243日本昔名無し:2011/04/15(金) 23:35:45.64
小室善弘 著 『芥川龍之介の詩歌』

ひたぶるに耳傾けよ
空みつ大和言葉に
こもらへる箜篌(くご)の音(と)ぞある

「空みつ」は大和にかかる枕詞。「箜篌」は雅楽に使われる竪琴。「こもらへる」は「籠る」に
継続の助動詞「ふ」が添ったもので、かくれ籠っている、という意味。(中略)短歌や俳句を
除いた日本の韻文、すなわち催馬楽、平家物語、謡曲、浄瑠璃などには、幾多の詩形が
眠っている。<< それ等の詩形の中に何か命のあるものを感ずる(略)その何かを今よりも
意識的に攫めと言ひたい >>というのが作者の主張であった。そのとき芥川は、<< 僕等の
言葉に必然的な韻律 >>ということを言っていた。
244日本昔名無し:2011/05/03(火) 09:25:49.37
九鬼周造 著 『「いき」の構造』

客観化は種々の制約の拘束の下に成立する。したがって、客観化された「いき」は意識現象としての
「いき」の全体をその広さと深さにおいて具現していることは稀である。客観的表現は「いき」の象徴に
過ぎない。それ故に「いき」の構造は、自然形式または芸術形式のみからは理解できるものではない。
その反対に、これらの客観的形式は、個人的もしくは社会的意味体験としての「いき」の意味移入に
よって初めて生かされ、会得されるものである。
245日本昔名無し:2011/05/09(月) 00:19:40.34
山室静 訳 『タゴール詩集』

単独でいる者は無にすぎない
彼に実在を与えるものは他者である

死の精神は一つであり、生の精神は多様だ

河が海にそそぐように
仕事はそれの完成を閑暇の深みに見いだす

美とは真理の微笑
彼女が完全な鏡の中に自分の顔を認めた時の

花はその花弁のすべてを失って果実をみる
246日本昔名無し:2011/05/13(金) 20:46:16.08
J・モノー 著 『偶然と必然』

個々の分子は、これからいっしょに構造を構成してゆくこととなる相手分子を識別する性質以外には、
いっさいの活性、いっさいの内在的な機能的特性を欠いているのであるが、これらの分子の無秩序な
混合物のなかから、秩序と構造的分化が出現し、機能が獲得されるのである。(中略)結晶の場合と
同じく、全体を組み立てるための情報の源は、集合してくる分子の構造そのものなのである。(中略)
多分子よりなる複雑な構造体の有機的な全体性は、構成要素のなかにそれぞれ潜在的に含まれて
はいるが、それらの構成要素が集合してはじめて開示され、そして顕在化する、というわけである。
247日本昔名無し:2011/06/08(水) 00:14:31.14
LARISON CUDMORE 著 『生きているとはどういうことか 細胞の科学』

というのは、原生生物に由来した繊維がわれわれの脳の基本構造かもしれない。われわれの意識
と人間性を宿す脳、これの由来を知るにはミドリムシまで遡らなければならない。(中略)
もっとも簡単な神経系は環境からの情報を受ける感知器と、それに対して反応する応答器だけ、まさ
に眼点と鞭毛でよいのである。われわれの視覚細胞での視神経への刺激伝達は繊毛の束によって
行われる。眼点からの情報をその長さに沿っての動きで伝える鞭毛と全く同じ仕掛けである。(中略)
眼は脳の直接の延長であり数センチの視神経で脳に直結していると教わったがこれは逆に考えたほ
うがいい。つまり、脳は眼の延長なのだ。
248日本昔名無し:2011/06/09(木) 00:30:17.25
カレル・チャペック 著 『平凡な人生』

他の人たちのすべても、どんな人であろうとも、きみと同じにやはり群集なのだということが、わから
ないだろうか?実際に、きみはいかにすべてを他の人たちと共有しているか、わからないだろうか?
本当に彼らの人生も、同様に、きみの内部にある、可能な無数の人生の一つなのだ!(中略)
かれらはまるで縁日に集まっているようだ、そんなにも数限りなき群集だ!神よ、何と多くの人たちだ!
きみが誰であろうとも、わたしはきみを見分ける。実際にわたしたちは、それぞれが異なる可能性を
生きるということで、これ以上ないほど平等だ。きみが誰であろうとも、きみはわたしの中の無数の
「わたし」の一人なのだ。
249日本昔名無し:2011/06/09(木) 16:10:11.72
れせら
250日本昔名無し:2011/06/15(水) 00:21:44.78
澤田直 訳編 『ペソア詩集』

好きになるのが好きになるのが好きだった
ちょっと待って……煙草をとってくれるかな
そのナイトテーブルの上にある箱がある
つづけて……きみの話では
カントからヘーゲルにいたる形而上学の発展のうちで
あるものが失われたというわけだ
もちろん ぼくもまったく賛成だ
うん しっかりと聞いていたよ
「いまだ好きになってはいなかったものの 好きになることが好きだった」(聖アウグスティヌス)
観念連想というのはなんて奇妙なものだろう
別のことを感じるという考えには疲れたよ
ありがとう 火をつけるのでちょっと待ってくれ さあ
 つづけて ヘーゲルは……
251日本昔名無し:2011/07/02(土) 01:41:26.92
長谷川三千子 著 『日本語の哲学へ』

つまり、この「物」という抽象語はいかなる意味のメカニズムによって出来上がっているかと言えば、
いま見たとおり、「人間が感知し認識しうる対象のすべて」から、そこに感知し認識されるすべての
具体相を消し去る、という捉え方で出来上がっているのである。このような意味のかたちをそなえた
「もの」という語が「無」の影を漂わせているとしても、なんの不思議もあるまい。この語の出発点を
「存在」という言葉で表現してしまったところに大野氏(著名な国語学者)のつまづきのもとがあった、
とも言えるのであって、物を「物」として成り立たせているのは、この「消し去る」はたらきなのである。
252日本昔名無し:2011/07/05(火) 22:55:59.26
伊藤邦武 著 『偶然の宇宙』

このパースの考えによれば、外なる宇宙の驚くべき相貌をきっかけとして動き出す人間の精神は、
さまざまな合理的説明を求める憶測の試みのなかで、自らのうちに多くの想念が集まって、次第に
ひとつの知解可能な観念の形を形成することを感得する。そしてこの想念どうしの自由な展開を通じ
た適合の過程が、宇宙全体の諸法則の自由な展開を通じた体系化の過程の、遠い残響に他ならな
いことを感知する。このとき、ひとつの精神のなかで生じる合理的な仮説の形成過程と、宇宙全体の
遠大な形成過程とは、それ自体が大きな類比的関係に立っているように見えてくる。
253日本昔名無し:2011/07/13(水) 19:51:02.01
。、k
254日本昔名無し:2011/07/22(金) 21:48:16.99
三浦雅士 著 『漱石 母に愛されなかった子』

人はなぜ他人の身になれるのか。もちろん、自分というものがもともと他人から出来上がっているから
である。自分とは、他人の視点、他人の体験を自分のものにするということなのだ。これはじつは言葉
を習得するのとまったく同じことです。言葉の意味とは、他人にとってそれが何を意味するかに他ならない。
(中略)人間は群れをなす動物だが、対面すること、対面し相手に成り代わることを習得することによって、
単独者として振る舞う動物の特性をも身に着けることができた。虎や熊や狼など、畏怖すべき対象に成り
代わる能力を身に着けた。それは世界を俯瞰する能力に他ならない。
255日本昔名無し:2011/07/29(金) 00:29:20.95
木田元 編 『日本の名随筆 別巻92 哲学』

私の生活にある出合いがあって、それが人であろうと、事件であろうと、その出合いが私の中に新しい
生活の次元を開いていく、そして生活の意味自体が変化していく。それを私は「経験」と呼ぶのであって
記憶の中にただ刻みつけられ、年月とともに消磨していくもの、あるいは、自分の生活の一部面の参考
となるに止まって、そこに新しい次元を展くに到らないもの、それを私は「体験」と呼ぶのである。だから
時間が経過しなければ、ある人にとっての出合いが経験か体験か判らないし、また時間の経過と共に
全く違う新しい生活の展望が拓けて来るのだったら、それを同じ名で呼ぶことは不当であろう。
256日本昔名無し:2011/07/31(日) 01:45:15.22
安野光雅 編 『日本の名随筆89 数』

群と集合は異なる。集合とは、或るものがそれに属するか否かが、少なくとも理論上、はっきりと弁別
されるような集まりでさえあればいいので、そのものが、いかなるものであっても差し支えないのだ。
これに反して、群においては、これに属する任意の二つのものの間に、なんらか一定の結合法があり、
それによって結合した結果が、やはりその同じ群中の或る一つのものでなければならぬという条件が
ある。条件はこれだけではない。群を形成する個々のもの、A、B、Cをその群の原素といい、各原素は
単に結合可能(例えば加法)であるにとどまらず、さらに各々の間に、(AB)C=A(BC) なる関係をもって
いなければならない。次に群中の任意の原素Aにたいして、AE=A となるような原素Eが存在していなけ
ればならず、このEを単位原素と称する。そうして最後に、各原素にたいして、その逆原素なるものが
なければならぬのである。逆原素とは、群中の任意の原素Aにたいして、AX=E なるがごとき原素Xを
意味する。
257日本昔名無し:2011/08/06(土) 00:29:55.33
三木卓 編 『日本の名随筆91 時』

エントロピーは一つの系全体にわたる積分として与えらるる性質のものであって、それが指定されても
系を組織する各個体の現状は指定されない。(中略)かように、エントロピーの役に立つ場合には、必ず
そこにいわゆる「分子的に混乱した系」がある。分子やエレクトロンの数が有限である間はエントロピー
は問題にならず、変化は単義的で可逆であるが、これが無限になって力学が無能となるときに、始めて
エントロピーが出て来る。(中略)すなわち系の複雑さが完全に複雑になれば統計という事が成り立ち、
公算というものが数量的に確定したものになる。そして系の変化はその状態の公算の大なるほうへ大
なるほうへと進むという事が、すなわちエントロピーの増大という事と同義になるのである。
258日本昔名無し:2011/08/09(火) 00:19:55.63
今井むつみ 著 『ことばと思考』

 ことばの意味の学習とは、単に、一つのモノの事例とある特定の音の列の結びつきを覚えることでは
ない。そのことばが指し示す対象の集合(つまりカテゴリー)との対応づけを学習することなのである。
(中略)
 先ほど述べたように、モノや出来事を無意識に見るという行為でさえ、言語の存在が脳の計算プロセス
の一部になっているのだ。このように考えると、私たちは言語のフィルターを通して、少々歪められた世界
を見ているのである。呼吸をするのと同じように無意識に当たり前に行っている、身の回りのモノや出来事
を見て、認識して、記憶する、という行為を脳がどのような認知プロセスで行っているかを明らかにすること
は、人間の思考、知性について理解するために絶対に必要なことだ。
259日本昔名無し:2011/08/16(火) 22:23:54.62
岩波文庫 『大手拓次詩集』

ゆふぐれは そこにちかづいて
ことばを さしいれる、
きえてゆかうとする あをいことばを。

ゆふぐれは うすいろのきものをきて、
こころのおもてに
うまれない星を ちりばめる。

ゆふぐれは あのひとの こゑのないことばを
そよそよと そよがせ、
みづのやうに こころをふかくする。

ゆふぐれは はなればなれの思ひを
けむりのやうに つなぎあはせ、
かくれてゐる おどろきを そだててゆく。
260日本昔名無し:2011/08/20(土) 00:10:44.24
ディーノ・ブッツァーティ 著 『タタール人の砂漠』

こうしてドローゴはまたもや峠へと谷道を登って行く、
少なくともまだ十五年はそこで暮らさなければならないのだ。
だが彼は自分があまり変わったとは思っていない、
時があまりにも速く過ぎ去ったので、心が老いる間がなかったのだった。
過ぎ行く時に対する漠とした不安が日々に募るとはいえ、
ドローゴは大事なことはこれから始まるのだという幻想になおもしがみついているのだった。
いまだ訪れない自分にとっての運命の時を辛抱強く待ちつづけて、
未来がもうひどく短いものになっていることには思い至らない、
もう以前のように将来の時間が無限にあり、
いくら消費しても心配ないほど無尽蔵だと思うことはできないのに。
261日本昔名無し:2011/09/09(金) 22:11:01.02
ラース・スヴェンセン 著 『退屈の小さな哲学』

個人の意味――僕だけの意味、それだけで僕の人生に意味を与えられる意味――には到達できないこと
は明らかである。もちろん、僕たちはそれを期待して一生過ごすこともできるのだが、決して現れないだろう。
(中略)
退屈はハイデッガーが思い描くような隠れた大きな意味に行き着くものではない。
退屈は意味の欠如から湧き出るが、しかしそこに与えられる何かがあるという保証にはならない。
(中略)
深い退屈の発生源は、僕たちが小さな意味で甘んじなければならないときに、大きな意味を要求することにある。
たとえ大きな意味が存在しなくても意味はある。
(中略)
深い大きな意味の欠如といっても、存在のすべての意味が消えているということではない。
262日本昔名無し:2011/09/17(土) 00:23:43.25
木村敏 著 『偶然性の精神病理』

生命の生成そのものは、どのようにしても認識の真理にとって接近不可能である。生成にとっての
真理などというものは、ありえない。真理を可能にするために、力への意志は <<生成に存在という
性格を刻印>> し、存在者という仮象を虚構することによって「真理」という名の誤謬を構築しなけれ
ばならない。
(中略)
「生き生きした現在」(主体)は生きものとして絶えず行為している人間的現存在が、やはり絶えず
変転している世界と生命的・行為的に出会い続けている接触面に成立する。(中略)つまりそれは、
構成作用によって構成されるところの――「向こう側」にある――客観に「こちら側」で対峙している
「構成する主観」の個所に成立するものではない。生命的現在のアクチュアリティが生成しているの
はむしろ、行為し構成する意識の志向性が、世界に触れ、世界から触発される接触の場所においてである。
263日本昔名無し:2011/10/07(金) 23:30:50.31
講談社文芸文庫 『石原吉郎詩文集』

僕らが<死>というとき、それは常に時間を媒介とした観念である。しかし、死をただ時間的にしか
捉えることができないのであれば、そのような死について考えることは無益で滑稽なことであろう。
しかし、死は生のすべての瞬間に<同時性>をもって考えなければならないものだ。時間の終末に
来るもの、それはもはや<死>とすらいいえないものである。それはただ、その生の各瞬間において
僕らが同時に死につつあったということ、その生の各瞬間において僕らが完璧に死に引き渡されて
いたということの最終的な<確認>にすぎないのだ。
264日本昔名無し:2011/10/21(金) 21:04:09.16
中島敦 著 『無題』(「中島敦全集3」より)

「しかし、其の『魔』にしたところが、その知り得る範囲は単に物質の組合わせ方に過ぎなかろうではないか。
どういう外界の出来事が、どういう人間に、どういう肉体的変化をもたらしたか、ということは解るかも知れないが、
その生理的変化に従って、どういう微妙な情緒の動揺が起るか、自分の愛する男から初めて愛の告白を受けた時、
少女の心が如何に震えるか、それはついにラプラスの『魔』といえども、理解出来ないんじゃないかな。」
「君の言うことは、そりゃ解るぜ。それが科学の限界だって言うんだろう?そりゃ解るけれどね、
それを科学の意味と関連させて、云々することは、全然問題にならんね。
それは結局、科学が、又、仮説というものの意味が解らぬことだよ。」
265日本昔名無し:2011/11/07(月) 00:21:13.22
浅野俊哉 著 『スピノザ 共同性のポリティクス』

スピノザにおいては、意志を使って、あるいは理性を働かせることによって真理が発見されるのではない。
十全なものは表現され産出される。
真理の一致説からは導き出されない、力の問題がここに導入されるというのはこの意味においてである。
一言でいえば、十全な観念とは、存在し活動する力が精神のうちに自律的に展開をみせることである。
存在し活動する力(これをスピノザは神と呼んだのだが)が、一つの産出性ないし能動性として、
自己展開するメカニズムとして私たちのうちに定立されるとき、私たちは十全な観念を持つ。
というより、私たち自身のありようが十全な観念となるのである。
266日本昔名無し:2011/11/30(水) 22:04:22.08
中西新太郎 著 『シャカイ系の想像力』

既存の秩序の不動性を暗黙の前提として「意識改革」をめざす「自分さがし」の問題系とは異なって、
「生きづらさ」の問題系は、「わたし1人」の感じ方を問う場合でさえ、
強大な威力をそなえた社会秩序に突き当たらせるのである。
このように、日常圏の困難と社会圏のそれとが重ね合わせになっている以上、
こうした脱出回路を探る想像力は社会的なものである。日常圏と社会圏とを分断することなく、
自己の生の現実に引きつけて閉塞からの脱却を探る心性を、この意味で、シャカイ系の想像力と呼ぼう。
267日本昔名無し:2011/12/03(土) 22:37:08.40
山口裕之 著 『ひとは生命をどのように理解してきたか』

・・・こうした研究手法が明らかにするのは遺伝子と形質のあいだの相関関係であって、因果関係ではない。
相関関係とは要するに、ある事象AとBが同時に起こるということである。
そしてAとBが単に同時に起こるということからは、両者のあいだに因果関係があるとは言えない。
単なる偶然かもしれないし、Cという知られていない原因からAとBが帰結しているのかもしれない。
このとき、CからA、CからBについては因果関係が言えるが、AとBのあいだには因果関係はない。(中略)
我々が「因果関係」だと思っているものは・・・ある原因と、我々が【気づいた】結果との関係だということである。
我々は実験において、客観的に実在している因果関係を確定するというよりは、
現象を理解するために、因果関係の枠組みを当てはめるというべきであろう。
268日本昔名無し:2012/01/15(日) 22:03:41.43
どなたか存じませんが、いつも読んでいます。これからも楽しみにしています。
269日本昔名無し:2012/01/17(火) 13:53:33.55
森博嗣 著 『僕は秋子に借りがある』

「私、怠け者だからかな。バイトしすぎで、ついつい大学の方は怠けちゃったし」
「怠け者は三十キロも歩かないよ」
「三十キロ?そんなにある?」
「とにかく、怠け者には無理な距離だと思うよ」
「ううん、それは違う。三十キロくらい歩く怠け者は沢山いるんだよ。木元君、それは覚えておいて。
私ね、ちょっといかがわしい店で働いてたことあるんだけど、みんなみんな、もの凄くよく働くのよう。
一生懸命仕事するのよう。でもね、駄目。みんな脱落者なんだ。怠け者なんだもん。
三十キロ歩けてもさ、一ページの文字を読もうとしない。なにより、自分を怠け者だって信じているし。」
(中略)
「あ、これあげる」テーブルの上で箱を滑らせて彼女が言った。
「煙草って、私どうも体に合わないから」
「じゃあどうして吸ってるの?」
「堕落しようと思って……」悪戯っぽい目つきを僕に向けて、秋子は言う。
270日本昔名無し:2012/02/03(金) 20:05:59.57
川村湊 著 『言霊と他界』

 言葉は、それが明らかにした世界の一面以外の側面を覆い隠す働きを持っている。
「空は青い」と断言したとき、その言葉は空が空気の澄み具合、濁り具合、温度、湿度などの
様々な要素で青くも、赤くも、白くもなることの可能性を隠蔽してしまうのである。もとより、
空の青さが主観的なものであって、人の感情のままに、黒くも、灰色にも、真っ赤にもなりうることも
すべて捨象されてしまうのだ。
 とすると、言葉は何かを表現するというよりも、何ごとかを表現しないために使われるのであり、
言葉の意味とは、その意味の背後に隠された、いまだ意味を持たざるすべての意味の世界を
その内部に潜めたものにほかならなくなるだろう。
271日本昔名無し:2012/04/27(金) 21:13:25.34
オルダス・ハクスレー 著 『スピノザの蟲』

何故といって、基督教的観念によれば、「超人間的なること」は、人間の性質の中でも極めて人間的な要素
と云はるべきものを絶えず犠牲にすることを命ずる所の道徳体系によって、始めて実現され得るものだから
である。併し、斯うした犠牲は、かの、極めて人間的な立場、好もうと好むまいと、我々が大抵は其処に住む
ように、運命が定めた、其の面(高低度)を毀損するものである。 (中略) 復讐神とは、平均の原理である。
もし貴方自身が自分でバランスをとらないならば、神々が貴方に代って貴方のバランスをとってくれる――
そうして復讐を以ってそれを果してくれるのである。最も熱心な超人間主義者の生涯は、天の嫉妬を証して
余りあるものだ。用意周到なる神は、排他的な、均衡を失った過度を憎み、之を罰するのである。
272日本昔名無し:2012/04/28(土) 13:53:16.75
藤原定 著 『僕はいる僕はいない』

行こうと思えばどこへでも行けるのに
八方塞がりという顔付をして
お前はじつと立ちすくんでいる
誰にもお前が譲ろうとせず
飼いならしてきた自由を
もてあましてきたのではないかと私は恐れる
そうしていつまでも立ちすくんでいると
やがてお前が歩き出そうとするとき
お前の右足と左足とは
互いに譲りあって動けなくなりそうだから

(中略)

明るい行為の前でうなだれる
お前は一匹の犬
お前の中であまりに重くなつてきた自由が
やがてお前をあの女靴磨きのように
この道端に坐らせるだろう
けれどもお前が何かを編んでゆくためには
固くなつてしまつた自由を
飢えにふるえる手で解きほぐしてゆかねばならない
もうそれが無くなるとき
お前がやつと糸口を見つけ出すために
273日本昔名無し:2012/05/14(月) 00:46:45.74
オシップ・マンデリシュターム 著 『石』

「石」という題名は、フョードル・チュッチェフの詩『プロブレム』から取られた。

山から転げ落ち、石は谷間に横たわった
どうして石は落ちたのか? 今では誰にも分からない
頂きからひとりでにはがれたのか
それとも他の者の意志で投げ落とされたのか
百年また百年と時を重ねたが
誰もまだこの問いには答えられない

(中略)詩人は次のように述べている。「・・・チュッチェフの石」とは、すなわち言葉である。
この予期しない落下のときにあげる資材の声は、明瞭に聞き取れる言葉のように響く。
この挑戦の声に答えることのできるのは建築だけだ。
274日本昔名無し:2012/06/21(木) 22:59:38.76
ブライアン・ロトマン 著 『ゼロの記号論』

ゼロは数の始源だとすると、単位を含むところのすべての数に対し、自由で対象の指示され
ざる記号という格位を要求することになる。何等かのモノの記号すなわち<アリトモス>でなく、
ましてや実在的な集合でもない、また、数の外に、それより先にあると見なされがちな「単位」
抽象でもない、算術的表記でもって算術的表記内に生産される記号。
(中略)それはゼロが数学の記号体系内で他の記号との関わりから見たときにのみ意味作用
を有するからである。(中略)すなわち、ゼロには指示対象性、「実定的内容」が欠落しているが、
それはすべての数へ転移するという解説に。
275日本昔名無し:2012/07/10(火) 21:31:28.87
レナード・M・ワプナー 著 『バナッハ=タルスキの逆説』

 バナッハ=タルスキの定理のパラドックスを作り出しているものは、分割と寄せ集めによる体積
の増加である。何もないところから何かを作り出すように、体積を結合させることができると考える
こともできる。しかし、実際には、バナッハ=タルスキの定理に使われている部分集合には体積が
ないので、体積は結合されないのである!
 それでは、1つの球体から2つの球体を作り出したわけではないのか?いや、実際に作り出した
のである!しかし、1=1+1のような不合理性を主張しているわけではないということに気付けば、
パラドックス性がいくぶん和らぐだろう。選択公理と非可測集合の存在の結果として、見事な方法
で球体を分割し、それらを寄せ集めることができるということを単に主張しているのである。
 もし、定義できない表面積と定義できない体積が可測であるとして、何もないところから何かを作
り出すとなると、困難な問題が生じてしまう。そのため、バナッハ=タルスキの定理は非可測集合
の存在を裏付けていることになる。
276日本昔名無し:2012/07/12(木) 22:39:34.55
W.ハイゼンベルク 『部分と全体』

世界における目に見えるような秩序を、また自然法則を、すなわち化学元素の形成やその性質とか、
結晶の構造とか、生命の生成とかその他すべてのことを支配するような、同一の秩序だった傾向が
あり、それは人間の魂の生成の際にも、魂そのものにも左右するものである。それは物に表象を対応
させ、概念の構成を可能にする。実際に存在している構造はこの傾向によるものであり、その構造は
われわれ人間的な観点から考察したとき、またその構造を思考の中に固定させたときにだけ、一つの
客体――物――と一つの主体――表象――とに分離して現れてくるように見える。(中略)同時にマ
ルブランシュは、因果的に経過して行く個々の事件の鎖だけでは説明しつくせないつながりというもの
が問題であるということを強調している。いいかえると――結晶の形成とか生命の生成の際のように、
原因と作用というような対の概念でもっては十分にとらえられないようなより形態学的な性格をもった、
より高級な構造が作用するのであるということをね。
277日本昔名無し:2012/07/16(月) 08:10:58.39
このスレ良いですね
278日本昔名無し:2012/07/17(火) 22:06:26.08
グレッグ・イーガン 著 『万物理論』

でも、このゲームには別の遊び方もあるわ。答えとなる物を思い浮かべないままゲームをはじめるの。
そして質問にはいくらかランダムにイエスかノーで答えていく
――ただし、それまでの答えとの一貫性が求められるという制限つきで。
もし、“それ”は全体が青いと答えたら、あとで気を変えて、それは赤いということはできない。
“それ”がなんなのか、自分では相変わらずよくわかっていなくてもね。
でも、より多くの質問が重ねられるにつれて、“それ”がなんでありうるかの範囲は狭まっていく。
ホイーラーは宇宙そのものが、この遊び方での未定義の物体と同じにふるまっていると提唱した
――同様の質疑のプロセスを経てのみ、なにか特定の存在になるのだとね。
279日本昔名無し:2012/07/23(月) 22:26:56.33
キース・J・ホリオーク/ポール・サガード 著 『アナロジーの力』

二つの状況間に働くアナロジーの制約にしたがって、それら状況間の要素が対応づけられ、一方の
情報が他方に持ち込まれるとき、それら状況間に新たな類似性が作り出されるのである。その結果、
ターゲットとベースは「同類の事柄」として認識されることになる。しかしアナロジーによって得られた
同類認識は、最初にアナロジーを導いた直観的もしくは表面的な類似性に比べて、構造的制約や目
標の制約を考慮している分だけ複雑なものとなっている。この包括的な類似性の形成は、アナロジー
の全過程、すなわち、ベースの選択、ベースとターゲット間の対応づけ、アナロジーの結果に対する
修正や却下等の評価、さらに当該のベースとターゲットを超えて一般化した学習、のすべての過程に
依存している。
280日本昔名無し:2012/08/31(金) 22:44:40.65
富士谷御杖 著 『真言弁』

表となるは時をなげく情、裏となるは偏心の理、境となるは偏心の達せぬ憤なり。
かく裏をかけて境を知れば、その歌ぬしの時宜のために所欲をなぐさめ、
まことにやむことを得ざるよりいでたる真言なること、鏡にかくるよりも猶明らかなるべし。
されば此の表裏境まなび知らずばあるべからず。然れども前にいふ如く、
元より具るべき理なる物なれば、歌よまんにこれにほだ(拘泥)さるる時はかへりて真を失ふべし。
此の故に詞はただなり出でむに任すべきなり。されど又あまりなり出づるに任すれば
用なき所足らぬ所いでくれば、これまた心あるべき事なり。
裏境の力はひとり詞の上のみならず、萬の事にもわたりてその事を尽さむに功あるべし。
(中略)
この表裏境の力をかりて思ひ入るる時は、わたくしのたばかりにあらずして、実にそのぬしの霊にあふ心地すべし。
281日本昔名無し:2012/09/11(火) 21:56:10.41
立川武蔵 著 『空の思想史』

しかし、果たして時間はそのように一本の帯のように流れるものであろうか。仏教はそういった原因、
手段、および結果が一系列をなすという考え方が崩れる時点があると、どの学派も口をそろえていう。
悟りなり救いなりが達せられたその瞬間においては、過去、現在、未来、あるいは現状認識、手段、
結果という系列が崩れる。しかし、その瞬間の混乱が過ぎ去ると、また元のかの原因、手段、結果と
いう秩序に戻ってくる。ただ、第一の時間における世界とまったく同じ世界に戻るというわけではない。
282日本昔名無し:2012/09/18(火) 23:36:54.58
ジョスリン・ゴドウィン 著 『星界の音楽』

上方倍音が次々とより速い振動およびより小さな振動部分に対応してゆくのに対して、下方倍音は
ますます大きな共鳴体によってしか得られないようなより遅い振動に対応してゆく。(中略)われわれ
は身体の諸部分を内にもつがゆえに感覚を用いて上方倍音を把握することができるが、下方倍音は
それがわれわれの外側の大宇宙に属するがゆえに把握することができない、(中略)一つの分子と
一つの分母によって表されるこれら分数のそれぞれが上方倍音列と下方倍音列との交差による産物
である。すなわち、あらゆる音はそれぞれのタイプの倍音列の一つの構成要素として生起する。(中略)
収縮と拡張というこの二つの力が出会い、ある比率で平衡を保つときにはいつでも、ある存在が出現し
――そしてある音が鳴る。
283日本昔名無し:2012/10/03(水) 01:11:52.01
植島啓司 著 『男が女になる病気』

それぞれの伝統文化には、必ず、<隠れた自然>を見るための文化的装置があった。そして、
「この文化的装置によって、村びとのうちの何人かは、目のあたりに<隠れた自然>を見たの
である。」われわれはそうした機械装置を見失っているのであろうか。置換するコードさえ見
つかれば、われわれは、あらゆるものが了解可能であると容易に信じてしまう傾向がある。
だが、実際には、もとの意味はそうした置換によって必ずや変化し続けるのである。一つの
建築物の破片からもう一つの建築物をつくり上げる作業を永劫に繰返すなかで<隠れた系>
はいずこに生れ出るのであろうか。
284日本昔名無し:2012/10/05(金) 23:54:16.97
フィリップ・ラクー=ラバルト 著 『経験としての詩』

美は明らかにミメーシスと結びついている。
このことはとりわけ、美を「類似という状態における経験の対象」と定義したベンヤミンにおいて明白である。
ベンヤミンはこの点にかんしてヴァレリーを引用している。
「おそらく美は事物のなかにある定義できないものの盲従的な模倣を要求する。」
もしもこれをもっと進めて「事物のなかにある模倣できないものの盲従的な模倣」と言うなら、
このときツェランにとってポエジーの本質をなすもの、
言いかえるならポエジーを美にもミメーシスにも宿命づけることのないものに触れることになるであろう。
しかしまた、模倣できぬものの模倣というこの純粋な撞着語法はポエジーの不可能性をもしるしている。
これこそ、ツェランにおける悲劇なのだ。
285日本昔名無し:2012/10/24(水) 20:44:19.77
アーネスト・ゼブロウスキー 著 『円の歴史』

ルイ・ドブローイは、すべての物質には波の特性があることを示した。原子にとらえられている電子には、
10のマイナス10乗メートルの波長がある。これは原子そのものの直径の大きさとだいたい同じ程度である。(中略)
定常波の必須の特徴は、弦の有限の長さのせいで、半波長の整数倍が利用できる場所におさまるもの以外の
すべての波を許容しないということである。(中略)このような弦を、閉じた環にくるんだとしたらどうなるだろう。(中略)
電子はその波が幾何学的に最初に戻ってくるものでなければ閉じた軌道をたどることができない。
これがあてはまらない半径上に置かれると、電子はエネルギーを放出し(あるいは使えるエネルギーがあれば吸収し)、
いずれかの定常波パターンに収まることになる。この定常波モデルは、公転する電子がらせんを描いて原子核に
落ちていかない理由を説明する。原子の規模では、電子の波としての特性が粒子としての特性より支配的になる。
電子はその波長より小さな空間には落ち込みえない。物理的な大きさがその波長よりも小さくなることはありえないからである。
286日本昔名無し:2012/11/05(月) 01:50:46.84
マレイ・ゲルマン 著 『クォークとジャガー』

磁石を構成している素粒子に対する方程式は、それらがすべての方向を同等に扱っているために対称であるが、
方程式の個々の解は、明確な方向を指すことで対称性を破っている。
しかし、これらすべての非対称性の解を集合したものは、それぞれの方向が一つの解に相当しており、
全部を集めると完全な対称になるので、対称となっている。
対称性の自発的な破れの本質は、まさにこの状況にある。
特定の対称性をもつ方程式は、そのすべての解の集合であるが、個々にはその対称性を破る解をもつことができる。(中略)
基礎にある基本理論の方程式は、時間反転に対して対称なのだろう。
この破れは、対称な方程式が非対称な解の対称的な集合をもっており、その非対称な解の一つが、
自然のなかで発見されている別の例を表しているのだろう。この場合、時間の方向が異なる二つの解があるだろう。
287日本昔名無し:2012/11/22(木) 00:19:53.63
スタニスワフ・レム 著 『高い城・文学エッセイ』

ここで何も意味しない世界というのは要するに、メッセージの性格を帯びておらず、客観的な独立性の度合いに関して、
家具から星に至るわれわれを取り巻く事物と肩をならべられるような世界という意味である。
このような世界を描こうとすることこそが、SFの根底に内在している致命的な誤りなのだ。
なぜならば、意図的な傾向性が許されない所にも、意図せざる傾向性は浸透してくるからである。
ここで傾向というのは、ある種の党派性、すなわち、神のように客観的にはなり得ない視点という意味である。
叙事詩の視点はその点、まさに神の視点のように客観的なものに見えるかもしれないが、
それは叙事詩が呈示すること(何)の中では、その呈示の仕方(いかに)がわれわれの目に見えないように隠されているからにほかならない。
したがって、叙事詩もやはり出来事を傾向的な立場から物語ったものだということになるが、
その傾向性はわれわれ自身も共有していてその外にのがれることができないので、それを発見することもできないのだ。
(中略)
唯一の真実とか、唯一の客観的描写などというものは存在しない。
真実とか客観的描写と言われるもののどちらにも、歴史的相対性という取り去ることのできない係数が含まれている。
288日本昔名無し:2012/12/09(日) 17:37:05.80
森毅 著 『指数・対数のはなし』

しかし本当のところ、時間が均質的に加法的か、という問題もある。
現在から遠く離れた10年と、現在の10年は同じだろうか。
ひょっとすると、時間というものも、対数直線で書くべきものかもしれない。(中略)
エジプト王朝の1000年間を、ほんの短い期間のように考えたり、
長い縄文時代を短い弥生時代とそれほど違わぬ程度に考えたりするのも、自然なことである。
これは遠い過去を眺めるときに、それを対数直線で眺めているからだ。(中略)
こうした意味では歴史の時間は均質に流れていない。
まして、共通の尺度である人間の生のない時代を考えるとなると、これは対数直線が自然なのである。(中略)
時間が均質に加法的に流れるというのもまた、きわめて人工的な世界なのだ。
289日本昔名無し:2012/12/11(火) 02:18:38.48
瀬山士郎 著 『なっとくする集合・位相』

よく考えてみると、距離についてわれわれがいえることは、より近いあるいはより遠いということであって、
二つの点の距離が絶対的に近いとか絶対的に遠いとかはいえないことに気がつく。(中略)
近いとか遠いという概念は相対的なものであって、二つの距離を比較するという視点をやめてしまったとき、
ある点の近くという概念を決めるにはどうしたらいいか、ということの定義だけが問題になるのである。
距離空間では2点の間の距離を測る距離関数というものを導入して、点の間の距離を測った。
2点の距離が決まってしまえば、二つの実数(集合)を比べてその大小で近い・遠いを判定すればよい。
その結果、ある点の列が別の点にいくらでも近づいていくということが数学的に表せるようになる。(中略)
距離を捨て、関数の連続性で定義された開集合を拾い上げることによって、位相空間が定義されたのである。(中略)
開集合を「近い点」から「つながり」に呼び換えると、位相とは、集合の点のつながり方を規定している構造である。
(以上編略)
290日本昔名無し:2013/01/01(火) 02:28:22.38
遠山啓 著 『無限と連続』

空間の次元に3という宿命的な壁を置いたのはたしかに自然そのものであったが、
この壁をつき破ることをわれわれに強要したのもまた自然そのものであったといえる。
(中略)
3次元空間のなかに一つの質点(質量をもった点)Pが運動しているとき、
ある瞬間におけるその質点の位置の目印はもちろん3個の実数である。P=(x,y,z)。
もし二つの質点P、Qが運動しているとき、その2点の組の位置を定めるには、
P=(x,y,z)、Q=(x',y',z')であるから6個の実数の目印が必要になる。
このような事態に直面すると数学者はまことに特別な態度をとる。
すなわち、2個の点が3次元空間を動いていると考えるかわりに、
1個の「点」(x,y,z,x',y',z')が6次元空間のなかを動いていると考えるのである。
291日本昔名無し:2013/01/09(水) 23:52:53.34
ジョナ・レーラー 著 『プルーストの記憶、セザンヌの眼』

いかなる記憶も、二つのニューロン間の連結が変化することから始まる。
(中略)
もし、ニューロンが互いに接触しないのなら、どうやって記憶を形成したり、情報を交換したりするのだろうか。
カハール(神経解剖学者)は、現在私たちがシナプス間隙と呼んでいる、細胞と細胞の隙間が情報伝達の秘密基地だという仮説を立てた。
ジョゼフ・コンラッドが地図について言ったことは脳にも当てはまる。
すなわち、いちばん興味深い場所は何もない場所だ、なぜならそこは将来変化するところだから。
私たちの記憶はシナプスの力の微妙な変化として存在し、そのおかげでニューロンは他のニューロンと情報交換しやすくなっている。
(中略)
記憶を形成する過程に新しいタンパク質が必要なことはわかっている。これは理にかなっている。
つまり、タンパク質は生命にとってレンガとモルタルであり、記憶するには細胞レベルでの建設工事が必要である。
時の流れの瞬間は、脳という建築物に組み込まれるのである。
292日本昔名無し:2013/01/19(土) 00:57:34.71
小泉義之 著 『哲学のエッセンス レヴィナス』

レヴィナスは、最初に使用される語は指示語だと考えている。
たとえば、「これ(は林檎だ)」である。
自分のために生きているだけでは、事物を言葉で指示する必要はない。
黙って事物を獲得し所有し享受すれば済んでしまう。
ところが、どうしたことか、私は「これ(は林檎だ)」と発話し始める。
自分に向けて発話するはずがない。他人に向けて発話するはずである。
では、どうしてそんな出来事が始まるのか。どうして言葉は始まるのか。
他者の顔が、<生かせ><食べ物を>と命令するからだ。
そこで、私は、他者の顔に向けて、「これ(は林檎だ)」と指示する。
「これ」と指示することによって、事物は、私の所有物と決まったものではなく、
提供可能で分有可能なものへと変容する。
事物は、自分のためのものではなく、私と他人のためのものになる。
この事態はさらに拡大深化する。
そもそも「私」なる語も、そのように始まると考えられるからだ。
293日本昔名無し:2013/01/20(日) 00:52:34.13
高橋久一郎 著 『哲学のエッセンス アリストテレス』

「表象」は、明確には独立した<こころ>の「部分」とはされていません。(中略)
アリストテレスの「公式見解」としては、「現実態にある感覚からのある種の運動」とされ、
広い意味での感覚能力の働きと考えられています。アリストテレスにおいて「運動」とされるのは、
その働きが「完了」していない連続的なあり方をしている「変化」です。
表象が「感覚からの運動」とされていることは、表象が、それとしては感覚ではなく、
また理性でもなく、その固有の働きを特定できないことを示唆しています。(中略)
曖昧でありながら、この働きがないと理性は働くことができないのです。端的には感覚とも理性とも
言えない認識に関わる働きが「表象」の名のもとに括られていると言ってもいいかもしれません。
(中略)
ねずみは、例えば、小麦を見ているのでしょうか?
私たちが「小麦」という言葉で呼ぶ<えさとなるもの>を見ていることは確かでしょうが、
小麦を「小麦」として見ているようには私には思われません。
また「食べたい」と欲求しているのでしょうか?
食べることを欲求していることは再び確かでしょうが、「食べたい」と欲求しているとは思えません。
294日本昔名無し:2013/02/02(土) 08:50:27.47
萩原朔太郎 著 『詩の原理』

されば詩的表現の特色は、要するに言語が「知性の意味」で使用されず、主として「感情の意味」
で訴えられているということの、根本の原理に尽されている。詩が音律を必要とする所以のものも、
畢竟この原理に存するので、決して韻律のために韻律の形式を求めるのでない。ただ自然の結果
として、それが「韻文的なもの」に成るということにすぎないのだ。(中略)しかし音律以外の要素に
於ても、言語は「感情の意味」を語り得る。即ち今言う通り、語義を概念として使用しないで、主観の
感情に融かすことから、語感に於ける気分や情緒を表現し得る。(中略)それ故に詩の表現形式は、
単に音律ばかりでなく、音律以外の言語的要素(語感、語情)と相まって、始めて完全することを知る
であろう。(中略)実に具体的なる詩と言うべきものは、音律や語感やの感情要素が、複雑なる有機的
関係によって結合されたものであり、個々にその要素の一々を、抽象しては思考されないものである。
(中略)
詩は単に象徴の故に詩でなくして、情象の故に詩なのである。
295日本昔名無し:2013/02/05(火) 22:31:31.32
前田恵一 著 『宇宙のトポロジー』

・・・平面を同じ形の長方形に分割し、その一つの長方形を取り出します。その長方形の向かい
合った辺をひっつけることによりできるドーナツ状の曲面がトーラスなのです。(中略)くっつける
前の無限に大きい平面を長方形の形に分割したものを考えてください。ある点からずーっと上に
行ったときもう一つの長方形の底辺に突き当たります。長方形の辺を貼り合わせると、そこが、
じつは自分自身の底辺にもなっているのです。ですから、自分自身の底辺に戻ってくると考える
かわりに、分割した長方形がすべて同じ一つのものであると考えればいいのです。
(中略)
つまりトーラスを考えるというのは、無限平面を長方形に分割し、そのすべての長方形が同じだと
思ったものと同等なのです。その結果、トーラス上に存在するものは、もとの無限平面では、同じ
ものが無限個、周期的にくり返し現れるわけです。
296日本昔名無し:2013/02/25(月) 00:32:30.56
カント 著 『自然科学の形而上学』

もっぱら空間において可能となる客観のあらゆる量は、
たがいに外的な諸部分からなるのでなくてはならず、
したがって、これら諸部分は、それが実在的なもの(運動可能なあるもの)であるかぎり、
必然的にもろもろの実体でなくてはならないからである。
これに対して、内官の対象として考察されるものは実体としては、
たがいに外的な諸部分からなるのではないような量をもつことができる。
したがって、このような量の諸部分はもろもろの実体ではなく、
ゆえにまた、そうした量の生成消滅は実体の生成消滅であってはならない。
よって、このような量の増大や減少は実体の恒存性の原則を損なうことなしに可能である。
すなわち、意識はひとつの強度をもち、したがってまた、私の魂における表象の明瞭さもひとつの強度をもつ。
また、その帰結として意識の能力たる統覚が、それどころか魂という実体さえもがひとつの強度をもつ。
この強度は、なんらかの実体がそのために生成もしくは消滅することを必要とせずに、
より大きくもより小さくもなりうるわけである。
297日本昔名無し:2013/03/29(金) 00:26:22.26
渡辺慧 著 『時』

生命のエントロピーに対する作用は、ある意味で、ベルクソンの想像したところの逆であるといえる。
我々は、むしろ、生命が生きるために、外界のエントロピーを増大するのであり、したがって
エントロピーの増大は、生命の物質における自己顕現であると解することが、真実に近いと思われる。
観測の行為により設立されるこの精神と物質との連関は、
物質が物質であり、同時に、精神が精神であるための必要条件とみなされなければならない。
何となれば、いかなる精神も、物質を観測することなしには、
したがって物質のエントロピーを増大することなしには、意識をもつことができないからであり、
さらにいかなる物質も、観測され得ることなしには、
したがってエントロピー原理に服従することなしには、認識の対象となりえないからである。
換言するならば、物質の存在は精神の存在により可能とされ、精神の存在は物質の存在により可能となるのである。
(中略)
観測という行為は、この二つの実在を、一度に誕生させるところの創造者であるというべきである。
広い意味における観測とは「意識」の働きかけということである。それは生命そのものである。
298日本昔名無し:2013/04/08(月) 00:22:56.30
山内志朗 著 『哲学のエッセンス ライプニッツ』

ライプニッツは関係は仮象にすぎないと考えるのではなく、関係が成立するのに、直接的な物理的
関係は必要ないと考える。物理的関係はなくても、関係はあると考える。ヨーロッパで妻が亡くなる
とき、インドにいる夫の身に不審なことが起きるわけでもない。両者の間に物理的な関係はなかろう
と、「その限りで(その場合に限り)」という接続詞の上での結びつき(関係の表現形式)は考えられる。
これは不思議なことではない。言葉がシンボルとしての機能を持つ場合には、類似性や時間・空間的
な近接に拘束されることなく、すべてのものを結びつけ、地球の裏側にいる人との間に、論理的関係
を設定することができる。真理が言葉のうちに住む限り、真理は、物理的・因果的関係の及ぶ範囲を
超える事物を結びつけるものとなる。
299日本昔名無し:2013/04/28(日) 21:02:29.24
金森修 著 『哲学のエッセンス ベルクソン』

本来的にいうなら、知覚はもともと非人格的なものとして成立する。
<知覚の場所>は、当の対象があるところにあるのだから、当然のことだ。
だが、僕らは知覚と記憶とを連続的に把握し、
両者の間に本当は介在する質的な違いを無視してしまうという習性があるために、
まずは個人的記憶が溜まっていく場所として、個人個人の身体を指定してしまう。
そして、今度はその考え方を知覚にまでも当てはめて、
個人的な身体のなかに知覚も個人化されて成立するに違いないと考えるに至るのだ。
本当は、知覚は非人格的なものであり続けるはずのものなのに……。
(中略)
いまある一つの石を、同じ方向に同じ速度で100回、投げ続けたとする。
そうして100回投げ終えたあとでも、その石にとっては、投げられるという<習慣>が身につくことはありえない。
習慣をもちうるのは、ただ生物だけである。(中略)
なにかをなすという意志的行為は、意識的になされるが、
それが繰り返されると意識の程度は下がっていく。
習慣的行為は「自然に」遂行される。
つまり、習慣とは意志と自然の中間に位置するなにかである。
しかもその自然は、いわば第二の自然、意志が自ら生み出した自然なのだ。
300日本昔名無し:2013/04/29(月) 22:09:49.83
円城塔 著 『Self-Reference ENGINE』

線分の上に適当に点を打つ。無限個。
どこまでも、腕が疲れ果てても、この宇宙がそうであるように点を打ち続ける。
どんな風に打っても、ある程度以上離しては点を打てない距離が存在する。
どれかの点から離して打とうとすると、他の点に近づいてしまうようなそんな距離が存在する。
多分これだ。リタは無意識に片手を伸ばして、その一文を空からもぎとってみせた。
「お互いに限りなく似通った無限人の人間が存在する」
(中略)
疲労感に包まれながら、リタは考える。
祖父は、限りなく似た人間の存在するほとんど全ての人、に含まれているのだろうか。
(中略)
祖父は、自分にはどうしようもないこととして、
自分もまたほとんど確実に無限人の人に似ているだろうということを受け入れていただろうか。
そんなことは関係ないと、超然としていられたのだろうか。
ほとんど確実に、とリタは呟いた。
確率一で、とリタは呟いた。
そしてリタは、祖父がリタに何を伝えたかったのかをようやく本当に理解したと信じた。
301日本昔名無し:2013/05/06(月) 00:39:54.96
ポール・ヴァレリー 著 『樹についての対話』

ティティルス:
「ひとたび真をがっしりと掴んで、もはや虚しい思いつきに迷い込む怖れがなくなれば、
英知はまたもと来た道を引き返して、かつてつくりだされ、捏造され、考えられ、
夢見られ、信じられたことの一切、わたしたちの精神のあの驚くべき産物の一切、
わたしたちからきわめて自発的に生まれるあの魔術的な奇々怪々な物語を、
人間的なものとして、ふたたび取り上げ拾い集めねばならないのかもしれません。」
ルクレティウス:
「いかにも、真は多くの人工をつくしてでなければ、わたしたちに認識できないという
ことは確実だ(また、これはまことに奇妙である)。これほど自然的でないものはない!」
302日本昔名無し:2013/05/19(日) 00:18:59.23
曾田範宗 著 『摩擦の話』

・・・万有引力のおかげでわれわれが地球から離脱しないことと同種類の普遍的なものであり、
万有引力が質量のあるものの存在そのものに密着した自然現象であるように、
摩擦は質量のあるものどうしの接触そのものに密着した必然的な自然現象なのである。(中略)
「もしも摩擦という力が存在しなかったら」という設問をする人は、
おそらく「万有引力が存在しなかったら」という設問以上に決定的・絶対的な解答をうるだろう。
(中略)
現実にわれわれのまわりをとりかこんでいるほとんどの固体の摩擦係数が、零でも無限大でもない
ある範囲の値(0.2から0.5くらい)をもつという事実は、いやおうなしに、また無意識のうちに、
われわれの日常感覚や日常生活をこの現実の摩擦係数の大きさに順応させているのである。
303日本昔名無し:2013/05/22(水) 01:08:34.57
ジョルジュ・ベルナノス 著 『田舎司祭の日記』

自分の判断では何ら訂正すべきものをそこに見出さぬこれらの頁も、
どう読み返して見ても、空しく見える。
それは、およそいかなる推理も、真の悲しみ――魂の悲しみ――を誘発できぬか、
或ひは、それが何処とも知れぬ間隙から我々の内に入り込んだ時には、
それを克服できぬからだ。
……いや、それは入り込んだのではない。
それは我々の内に既にあったのだ。
私は次第に、それらが何か魂の動きででもあるかの如く信じようとして、
悲哀、苦悩、絶望と我々の呼ぶところのものとはつまり魂それ自身であり、
原罪以来人間は自己の内にも外にも苦悩の形でしか物を見ることができないものになったのだと、
考へるようになって来た。
超自然に対して最も無関心な者も、自己を無なりと観ずることが可能であり、
且つ、さうした馬鹿げた忌まわしい観念に対する自己の肉体の必死の反抗をば、
常に不確実な推理によって辛うじて肯定せざるを得ぬ人間のみ、
わづかに歓喜を味わい得るという恐るべき奇蹟の漠然たる意識を快楽の中にまでも持ち続ける。
神の注意深い憐憫がなかったならば、
人間は自己を意識するや否や、忽ち塵に帰ってしまふだろうと思われる。
304日本昔名無し:2013/06/03(月) 23:47:25.25
新倉俊一 訳編 『ディキンスン詩集』

百年を経たあとは
だれもこの場所を知らない
そこに演じられた苦闘も
平和のように静か、

わがもの顔の雑草がひろがり
見知らぬ人々はさまよい来て
先に身まかった死者の
寂しい綴り文字を判読した。

夏野の風だけが
この道を思い出す――
記憶が落した鍵を
「自然」の本能が拾い上げて。
305日本昔名無し:2013/06/13(木) 01:31:40.75
小田垣孝 著 『つながりの科学』

空間の中に乱雑に置かれたものが無限に広がったつながりを生じるためには、
そのものがある閾値以上の割合で存在しなければならない。
互いにつながったものの集まりをクラスターと呼べば、
閾値以下ではすべてのクラスターが有限の大きさをもつのに対し、
閾値以上になると無限に大きなクラスターが存在していることになる。
それでは丁度浸透閾値のところではどうなっているのであろうか。
(中略)
浸透閾値の所では無限に大きなクラスターができ始めるわけだから、
無限に大きなクラスターは存在するはずである。
一方、任意に選んだ点がそのクラスターに属す確率はゼロである!
(中略)
浸透閾値の所では、無限に大きなクラスターが存在する。
しかし、そのクラスターはフラクタル構造をしており、浸透確率はゼロとなるのである。
306日本昔名無し:2013/06/18(火) 00:42:07.02
富松保文 著 『哲学のエッセンス アウグスティヌス』

問うている私と、問われている事柄と、問いを差し向けられている誰かがいる。
さしあたり、この三つの項は、それぞれ別のものとしてあるように思われる。
そして、この問いの答えは、この誰かが私に与えてくれるものであるように思うかもしれない。
しかしそうでないことは、少し考えてみれば分かるだろう。(中略)
要するに、たしかに私が何かを誰かに問うのではあっても、その誰かは最後には私自身なのだ。
私が自分に対して、これは何だろうかと問う。
これまでの知識と経験を動員して、未知のこれを既知のあれやこれやに照らし合わせて(中略)
既知のものを物差しに未知のものを測る。未知のものを既知のものに結びつけようとする。
しかし、未知のものが既知のどんなものにも結びつかないときはどうなるだろうか。
(中略)
普段はとくに意識されることのない自分の身体についての知覚が前景にせりだしてきて、
何を知覚するにしてもそれを知覚している自分自身が気になってしようがなくなってくるのと同じように、
未知のものが既知のものを未知に変えてしまうとき、潜んでいた自己への問いが表舞台に姿を現してくる。
私自身が私にとって問いとなる。
307日本昔名無し:2013/07/06(土) NY:AN:NY.AN
モーリス・ブランショ 著 『肯定と否定的思考への情熱』

――その“否定性”によって、自然を否定し、みずからが自然的存在であることを
否定するわれわれの内なる人間は、みずからを努力=労働へと隷属せしめること
によって、みずからを自由たらしめ、世界を産出しつつみずからを産出する。
これは讃嘆すべきことだ。人間は絶えざる不充足への決意により満足へと到達する。
彼が自己を成就するのは、あらゆる否定を究極まで押し進めるからなのだ。
とすれば、彼は絶対に触れている、というべきではなかろうか、
――自己の否定性の全体を全的に行使する力、言い換えれば、
自己の否定性を行動へと変貌せしめる力が、彼に備わっているようであるからには。
(中略)
――人間は行動のうちに自己の否定性を汲みつくすことはない、
それゆえに、一切が完成されるとき、“なす=作る”という行為が果たされたとき、
つまり人間がもはやなにもすることがないとき、
彼は――この上なく単純な深まりをもってジョルジュ・バタイユが表現したように――
“使い道のない否定性”の状態において存在しなければならぬのであり、
内的経験とは、もはや否定すべきなにものももたぬこの徹底的な否定性が、
自己を主張=肯定する仕方にほかならぬ。
308日本昔名無し:2013/07/07(日) NY:AN:NY.AN
谷崎潤一郎 著 『文章読本』

最適な言葉はただ一つしかないと云うことを、よくよく皆さんは味わうべきでありまして、
数箇の似た言葉がある場合に、どれでも同じだとお思いになるのは、考え方が緻密で
ないのであります。(中略)然らば、或る一つの場合に、一つの言葉が他の言葉よりも
適切であると云うことを、何に拠って定めるかと申しますのに、これがむずかしいので
あります。(中略)最初に思想があって然る後に言葉が見出されるという順序であれば
好都合でありますけれども、実際はそうとは限りません。その反対に、まず言葉があって、
然る後にその言葉に当て嵌まるように思想をまとめる、言葉の力で思想が引き出される、
と云うこともあるのであります。一体、学者が学理を論述するような場合は別として、普通
の人は、自分の云おうと欲する事柄の正体が何であるか、自分でも明瞭には突き止めて
いないのが常であります。そうして実際には、或る美しい文字の組み合わせだとか、また
は快い語調だとか、そう云うものの方が先に頭に浮かんで来るので、試みにそれを使って
みると、従って筆が動き出し、知らず識らず一篇の文章が出来上る、即ち、最初に使った
一つの言葉が、思想の方向を定めたり、文体や文の調子を支配するに至ると云う結果が、
しばしば起るのであります。
309日本昔名無し:2013/07/17(水) NY:AN:NY.AN
■世界の一人当りのGDPランキング
あぁ〜!!
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_GDP_(nominal)_per_capita
人口1億以上でランクインしてる国は日本とアメリカのみぃぃ〜!!
310日本昔名無し:2013/08/20(火) NY:AN:NY.AN
【福岡】ペットショップを襲撃し、犬を虐殺した私立大学生(26)逮捕
http://unkar.org/r/news/1347966937
1 : カナダオオヤマネコ(やわらか銀行) : 2012/09/18(火) NY:AN:NY.AN ID:SQ8q+VwY0● ?PLT(12121) ポイント特典
ペット店から小型犬を盗み虐待か? 大学生を逮捕
 福岡県警西署は18日、ペットショップから小型犬2匹を盗んだとして窃盗の疑いで、福岡市の私立大生(26)を逮捕した。
 同署によると、被害に遭ったペットショップで、死んでいる犬1匹と両前脚にけがをした2匹が見つかった。立花容疑者が虐待
した可能性もあり、動物愛護法違反などの疑いでも調べる。
 逮捕容疑は8月4日午前3時45分ごろ、同市西区のペットショップ入り口のガラスを割って侵入。ショーケース内のパピヨン
など2匹を盗んだ疑い。1匹は容疑者の自宅で発見され、残る1匹は行方が分からない。
 近くでゴミ清掃中の男性が、犬の鳴き声を聞き、店から出て車で逃げた男を目撃して通報。車のナンバーから大学生が浮上
した。通報で駆け付けた警察官が、死んだ犬などを見つけた。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20120918-OHT1T00218.htm
311日本昔名無し:2013/08/20(火) NY:AN:NY.AN
ペットショップから子犬を盗んだ大学生逮捕 「なぜ盗んだのかわからない」と供述
ペットショップから子犬盗む、死骸も…学生逮捕
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120919-OYT1T00326.htm
 ペットショップから子犬を盗んだとして、福岡県警西署は18日、福岡市南区大楠3、
私立大学生、立花亮太容疑者(26)を窃盗と建造物侵入容疑で逮捕した。
 店内で別の子犬の死骸と血の付いた鉄アレイなどが見つかっており、器物損壊や動物愛護法違反容疑でも調べる。
 発表によると、立花容疑者は8月4日午前3時45分頃、同市西区のペットショップに侵入し、
ショーケースを割り、パピヨンなど子犬2匹(被害総額計24万9600円相当)を盗んだ疑い。
子犬を抱え、店の近くに止めた車で逃走する立花容疑者を目撃した人が、車のナンバーを控えていた。
 店内の玄関付近には、口から血を流したシバ犬の死骸があり、柵の中に両前脚を骨折したチワワとトイプードルが残されていた。
盗まれた2匹のうち1匹は立花容疑者の自宅で見つかったが、もう1匹は不明。
「盗んだことは間違いないが、なぜ盗んだのかわからない」と供述しているという。
(2012年9月19日12時04分 読売新聞)
312日本昔名無し:2013/08/25(日) NY:AN:NY.AN
ありがとうございました
313日本昔名無し