>>139 2人は部屋の中を見回していて、何だか凄い恥ずかしい気分になる。
徳永が、この部屋暑いと言うからエアコンと扇風機をつけて室内の環境を良くしたところで、
小さいケーキみたいな16個入りのお菓子を3人で話をしながら食べる。
言葉に直すとそれだけのことだけど、実際にやってみると、なかなか大変というか、
塾の帰りに3人で歩いて家に帰るっていう状況よりも100倍くらい落ち着かない。
一口目を口にした時は「美味しい」という言葉が出てきたお菓子も、
さすがに3つ目からは特に何の感動も無く食べられるだけになってしまったし…。
と、場をどう盛り上げようかと考えてたら、塾の合宿の話をしてって言われた。
「ずっと勉強してて、外は出れなかった」っていうだけで終わってしまうと思ったら、
妙に感心されて、目を丸くした須藤さんから「すごーい」なんて言われた。
「そうでもないよ」なんて言っていると、
徳永が「ホントだよ、ずっと勉強してるなんて信じられない!頭悪いんじゃない?」なんて事を言ってきて、
ちょっとカチンときたけど「頭悪いんじゃなくて、頭いいんだよ」って須藤さんがフォローしてくれたのが嬉しかった。
でも、実際はそこまで良い成績ってわけでもないから「あんまり良くないけどね」って言ったら、
徳永が「ほら」って言って、須藤さんが「えぇー」って言って驚いた。
「でも、テストで100点取ったりするじゃん」
「私もまぁも100点くらい取ったこと有るじゃん」
「あ、ホントだ」
なんていう会話の結果、僕は頭が良いわけではないという結論になった事は
自分でも喜んでいいのか悲しんでいいのか分からないけど、
とにかくこれで緊張が少し解けて、自然な感じで話せるようになって楽になった。
>>894 BGMに何か音楽でも流そうって話になって、僕が持ってるCDとMDの中から選んでもらう。
須藤さんも好きだっていうアイドルグループのMDを聞いたり、
学校の事とか夏休みの宿題のこと、須藤さんと徳永が行ってきたっていうお祭りの話をした。
一緒にお祭りに行ったりしたいと思ったけど、この2人の仲の良さそうな感じを見てると、
僕が割り込んだらいけないような気もしてきて、なんとも言えない気持ちになった。
もちろん、そんな感傷的な気分は長く続かなくて、
扇風機を使って露天のおじさんの真似をする徳永が面白くて馬鹿みたいに笑い飛ばしてしまったんだけど。
そんなことをしてるうちに日が暮れてきて、2人が帰ろうかっていう話をし始めた。
そうだねと言って、僕もシャツを羽織ったりして、外に出る準備をした。
玄関のドアを開けて、2人が家を出るのを見届ける。
玄関を出ると、徳永は「バイバイ」と言った。
僕も思わず「うん、じゃあね」と言ってしまいそうになったけど、
喉のところでそれを押し留めて「いや、送っていくよ」と言った。
2人がビーチサンダルを履いていたので、僕もビーチサンダルを履いて外に出る。
「じゃあ、行こうか」って言って、歩いて2つ目の十字路、
右に行けば須藤さんの家、左に行って直ぐのところに徳永の家がある。
「家も近いし、じゃあここで」なんてことを言って徳永と別れて須藤さんを送っていこうとしたら、
「いっつもまぁばっかり送ってるから、たまには私を家まで送りなさい」なんてことを言い始めた。
須藤さんの方を見ると「うん、それじゃあ、またね」なんて言って、普通に帰ろうとしている。
もう一度徳永を見ると、妙に真剣な表情でこっちを見ているので、
そのまま徳永の言った事に従って、交差点を左に曲がる事にした。
(つづく)