>>637 私の力…信彦くんの妹の舞ちゃんによって与えられた
傷や病気を癒す"ヒーリング"能力。
昨日むやみに使っちゃいけないと言われてがっかりしていたのに
こんなに早く使う機会が来るとは思っていなかった。
『サンジェルマン病院わかるよね? そこにいるから!』
「う、うんいいけど…着替えるからちょっと遅くなるかも」
『そんなのいいよ! タクシーで来て! お金は出すから!』
どうやらかなり切羽詰った状況のようだった。
普通の部屋着で出かけるのは少し抵抗があったが、しかたがない。
「ふぅ、わかった。 じゃあすぐ出るね。 着いたら電話するから」
『ありがとう!』
荒い息のまま、彼は電話を切った。
一体どんなことが起こったんだろうか。
「ま、とにかく行ってみますかぁ」
私は上着だけ羽織って、家を出た。
信彦くんが急いでいるのはわかったけれど
この時の私はまだ、事態をあまく重く捉えてはいなかった。