小説『返事はいらない』

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1チャーミー剣士
過去に「誰かいしよし小説かいてくれ!!」スレ内で書かせて頂いていた
小説の続きです・・・

これまでのお話は >>2 を見てください

それでは、稚拙な文章ですがお楽しみください・・・
2チャーミー剣士:2001/08/23(木) 20:32 ID:Z1tO.QcY
これまでのお話です

http://home.talkcity.com/MemoryLn/novelsheep00/novel00/985016348.html

http://www.interq.or.jp/yellow/hiuga/novel/ishiyoshi2.html

共に72番から本編開始です
下の方(保存屋さんのところです)は途中までしかありませんので、
上の方を見てください
3チャーミー剣士:2001/08/23(木) 20:33 ID:Z1tO.QcY
すいません、もう少しスレが下がってからはじめたいと思います
以前書いた分をいくつか再アップしてから、更新分を書きます・・・

1ヶ月以上も間が空いてしまい、本当に申し訳ありませんでした
4名無しかもしれない:2001/08/23(木) 20:34 ID:l5zq8nEk
(^▽^)<頑張って!
5名無し娘。:2001/08/23(木) 20:42 ID:Q4IBbdC2
辻のエロ小説きぼ〜ん
6名無し娘。:2001/08/23(木) 21:07 ID:cekmlePA
チャミ剣ハケーン!!!!
期待sage
7チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:42 ID:Z1tO.QcY
お待たせしました。続きです
8チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:42 ID:Z1tO.QcY
――
夕暮れ。そして夜。
今日に限っては、暗い夜道も明るく見えてしまう。
それくらいに明るい1日だった。

後藤と友達になれた。
さっきから梨華の頭の中はこの言葉が繰り返されいてる。
あの後は梨華も少しは知っていることだったため、特に興味深い話は聞けなか
った。
後藤と矢口の不仲の原因は、結局矢口の完璧主義のせいらしい。
ただ、どれだけそう言われても梨華には信じられなかった。
後藤が矢口のことを誰にも言わなければそれで終わりなんじゃないのか?
誰だってそう思うだろう。
後藤は「それが先輩のイヤなところなんだよ、邪魔なものは絶対に片づけない
と気が済まない性格だからね」と言っていた。
邪魔なもの。
矢口にとって後藤は邪魔な存在なのは分かった。
でも、後藤はどうしてそこまで分かっているのに、何もしないのだろう。
矢口に狙われていることを分かっているのに、何か対策をしているわけでもな
いし、どこかへ逃げようともしない。
梨華は、後藤にはまだ何か秘密があるような気がした。
もっと深いところにある、根本的な何かが。

「到着っ!」
考え事をしていたためか、いつもよりも早く家に着いた気がする。
中から漏れてくる美味しそうな香りに誘われるように、梨華は玄関のドアを
開けた。
「たっだいまー」
靴を脱いでさあ上がろうとしていると、ドタドタと誰かが走ってきた。
「遅ーい!!」
9チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:43 ID:Z1tO.QcY
「あれ?ののちゃんじゃない
どうしたの?」
ごく当然の反応だと思うのだが、そう尋ねた梨華に向かって希美は眉間にしわ
を寄せて、梨華の手をとって引っ張り出す。
「いいから、早く来てよー!」
「なっ、なに?
もうののちゃんどうしたのよー!
あ、ちょっとそんなに引っ張らないでっ」
引きずられるような格好で希美に文句を言うが、聞こえてないのか聞かない
ようにしてるのか、希美はさらに強く梨華を引っ張って行く。
「もう・・・」
何を言っても駄目そうだったので、梨華も諦めて連れて行かれることにした。
すると、希美はどうやら食卓に行きたかったらしく、梨華をいつもの位置に座
らせると、自分もその前の椅子に座った。
「お姉ちゃん!」
「はい!」
すぅっと大きく息を吸い込んだ後、希美は梨華に向かって大きな声で言った。
梨華は、希美の勢いに押されて思わず返事をしてしまう。
「今何時だと思ってるの!」
そう言われて、梨華は改めて壁にかかっている時計を見た。
「えっと・・・9時半・・・」
「えっとじゃないでしょ!
9時半よ?9時半!いつまで待たせりゃ気が済むのっ!」
良く分からないまま希美に怒られていると、騒ぎを聞きつけたのか2階から母
が降りてきた。
「まあまあ、ののちゃんもそんなに怒らないで」
希美の肩に手を置いて、文字どおり子供を諭すように笑顔で言う。
「うー・・・」
10チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:43 ID:Z1tO.QcY
目の前で唸っている希美に恐怖を感じながらも、梨華は母に聞いてみることに
した。
「の、ののちゃんどうしたの?」
「梨華が帰ってくるまで夜御飯食べないでずーっと待ってたの
もう大変だったんだから・・・」
「遅ーい!!」
既に右手には箸を持って待機しながら、希美はまた文句を言ってきた。
「あ!そうなんだ!
ごめんっ、早く言ってくれれば良かったのに!」
「早く言おうにもお姉ちゃんいないじゃん!
もうお腹空いたぁー!!!」
希美も、だんだんと文句を言うよりも食欲の方が大きくなったようで、梨華を
睨むことよりも目の前のテーブルに広がる食事を見ることが多くなっていた。
「あ、それじゃあ梨華を責めるのはこれくらいにして
とりあえずは御飯食べよう!」
母のこの一言でなんとか梨華は開放された。
みんなで口をそろえて「いただきまーす」と言ったと同時に、希美の意識は
料理に集中していた。
「あはは・・・」
呆れたように乾いた笑いを浮かべながら、梨華はようやくある疑問に気付いた。
「あれ?ところでなんでののちゃんがいるの?」

「家族がみんな旅行に行っちゃったんだって」
食べながら目で訴える希美の方はとりあえず置いておいて、母から事情を聞く
ことにした。
「ののちゃん置いていかれたの?」
梨華の質問に希美は心外だと言うようにこちらを向いて何か言っているが、
口の中の物のせいで梨華には聞き取れなかった。
「部活があるから行けないんだって」
代わりに答える母の方を見て、希美は満足そうに頷く。
「そうなんだ・・・
じゃあ、しばらく家に泊まっていくの?」
たずねる梨華に、希美は今日初めての笑顔を見せると大きく頷いた。
11チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:43 ID:Z1tO.QcY
「でもさぁ」
「うん?」
電気の消えた部屋の中で、梨華のベッドの隣に敷いた布団に包まった希美が口を開い
た。
まだ眠るつもりはなかったからカーテンと窓は開けているため、薄く影ができるくら
いに星明かりが差し込んでいる。
昔は――昔と言っても小学生とか幼稚園だけど――よく梨華のベッドに2人で寝たも
のだ。
でも、希美も梨華に負けないくらいに寝相が悪かったため、朝になるといつもどちら
かが床で寝ていた。
「お姉ちゃんなんで毎日病院に行ってるの?」
「なんで・・・って、うーん
お友達が入院してるから、そのお見舞いかな」
友達と言えることが嬉しかった。
これまでは一方的な友達だったけど、今は後藤もそう思ってくれている。
それだけで梨華の心は何倍にも何十倍にも温かくなる。
「そうなんだぁ
それって私の知らない人だよね?」
「うん、あのね・・・
前にさ、私が線路に落ちたこと覚えてる?」
「そりゃ覚えてるよ
お姉ちゃんもう少しで死ぬとこだったじゃん」
「あのね、その時助けてくれた人なの」
「入院してるのが?」
「うん」
夜の魔力というのか、布団に入るとなんとなく秘密にしたいことでも口からするっと
出てしまう。
希美だから大丈夫だと思うが、後藤のことでいろいろ聞かれると説明するのが難しく
なりそうで、言ったことを少しだけ後悔した。
しかも好奇心の塊のような希美のことだ。興味を持つことは簡単に予想できた。
12チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:44 ID:Z1tO.QcY
「それって
後藤さんって人だよね!」
案の定、希美は布団を跳ね除けて梨華のベッドによじ登ってきた。
「あれ?
ののちゃん後藤さんのこと知ってるの?」
仕方なく梨華も起き上がって、希美の正面に座り直す。
「え?だって何回か話してたじゃん
携帯の番号渡しちゃったとか、私も聞いてたの覚えてるでしょ?
それに、よっすぃーからもいろいろ聞いた」
そう言えばそんなこともあったような気がする。
とはいえ、多くの事は吉澤が言ったのだろうと思い、希美に聞いてみる。
「ほとんどよっすぃーから聞いたんでしょ?」
「うん、そう」
やっぱり。
吉澤から聞いたとなると、今度はどこまで知っているかが気になった。
「ね、後藤さんのことってどのくらい知ってるの?」
「どこまでって?」
頭の上にハテナを浮かべながら、希美はベッドに転がった。
「えっと・・・
どんな人だとか、どこに住んでるとか・・・?」
「うーん・・・あ!
あのね、矢口さんていう人と友達なんだよね?」
この言葉に梨華は頭を抱えてしまった。
(もうよっすぃーてば、どこまで話しちゃったのよー・・・)
全部人から聞いたこととはいえ、結構深いところまで知っていそうだ。
13チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:44 ID:Z1tO.QcY
――
やけに暑いと思ってテレビを付けてみると、今人気のお天気キャスターが今年何度目に
なるだろうか『この夏一番の暑さです』と言っていた。
だが、そう言われると確かに今までになく暑い気がする。
8月7日。
暑さのピークを迎えた頃だろうか、世間では盆が近いこともあって忙しく動いている
ようだった。
唸るような暑さ。そんな言葉がぴったり当てはまっている。
夏休みなのだが、なるべく朝のうちに移動したいこともあって、梨華は今日も8時前
には目を覚ました。

あれから、梨華は毎日病院へと通っている。
10時を少し過ぎたくらいに家を出ると、病院の面会時間が始まる11時前後に着くた
めに都合が良いのだ。
「ふう」
ため息ではないのだが、小さく息を吐き出して梨華は階下へ向かった。
「おはよう」
声をかけても誰からも返事がないのは分かっているのだが、いつもの習慣というか、
一種の癖でなんとなく言ってしまう。
それから、いつも通り風通しの良い台所に並べてあるささやかな朝食をとるために準備
をはじめた。
戸棚からコップを取り出し、冷蔵庫へ向かう。
それから、これも定例行事なのだが、まず冷たい麦茶を少しだけ喉の奥へと流し込むの
だった。
「んー!」
まだ動き出してない胃が突然の刺激に驚いていた。
14チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:44 ID:Z1tO.QcY
どうやらテレビで言っていたことも嘘ではなさそうだ。
まだ10時だというのに頭の真上から照り付ける太陽は、それだけで体力を吸い取っ
ていくようだ。
あの長い上り坂も、見上げるとゆらゆらと陽炎が昇っている。
こういう時にはアスファルトって嫌なものなんだ、と思いながら梨華はゆっくりと
坂を上がっていった。
隣を元気良く走り抜けていく真っ黒に日焼けした小学生を見ると、いくら自分は高校
生とは言ってもその若さが羨ましい。
そう言えば希美はこれくらい元気かもしれない。
ということは、暑さに勝つか負けるかの境界線は中学生から高校生になる頃なのだろ
う。まあ、吉澤を見る以上だとそれ意外にも境界はありそうなのだが。

ぼおっとした頭でそんなことを考えていると、いつの間にか駅に着いていた。
いつも通りに券売機で切符を買う。
ふと思ったのだが、1ヶ月分だけでも定期券を買った方が得しないだろうか。
学生割引きで買うとどう考えても安くなりそうだ。
「まあ、でもいつ退院するか分からないしね・・・」
定期を買って次の日に退院なんてされた日には、笑い話じゃすまなくなってしまう。
だからと言って退院して欲しくないわけはない。
「んー」
そして、あまり重要ではない悩みに頭を抱えながら、梨華はいつも通りの時間に電車
へと乗り込んだ。
ここからは約10分、電車に揺られることになる。
15チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:49 ID:pPx6Uz5I
いつも通りの景色を、同じような速度で走るこの大きな鉄の塊は、決して快適とは言え
ないけれども、人々のライフラインになっていることは間違いない。
終点へたどり着く前に、各駅で多くの人を吐き出しては、また新たな人を飲み込む。
その地味で機械的な作業が3回目になろうとしたときに、梨華は降車した。
そして、一時は恐怖の対象になっていた電車にお礼を言うこともなく、梨華は駅を出て
いく。

ずっと擦れ違ってきた分、梨華は今のこの状態が楽しみで仕方がなかった。
後藤も最近は梨華に、そして友達という関係に慣れてきたのか笑顔を見せることが多く
なってきている。
病院に着いて、最初にドアを開けるときが一番の楽しみだ。
「おはよう」という言葉に返ってくる後藤の「おはよう」。
その一言は単純だけど、とても心地が良かった。

「おはよう!」
今日も梨華は元気良く病室へと入っていった。
「あ、おはよう・・・」
暇を持て余していたようで、後藤はすぐにぎこちない笑顔で挨拶を返してくる。
何年間も押え込んでいた表情だけに、その笑顔が不器用に見えることは仕方がない。
後藤以外には誰もいないこの小さな部屋で、梨華は今日もゆっくりと流れる時間を過ご
そうとしている。
さすがに病院だけあって、空調の管理はしっかりしていた。
暑いとも寒いとも感じない、ちょうど良い温度。
そんな小さな部屋で、何をするわけでもなくただベッドに座っている後藤。
自分ではこの何とも言えないまどろみのような時間を過ごすのは好きだけど、後藤はどう
なのだろう。
16チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:50 ID:pPx6Uz5I
「なぁんか、こう毎日病院で会ってると話すこととかなくなってくるよね」
普通に友達と話す感覚。
もともと梨華は後藤に対して好意を持っていたこともあって、向こうが自分を友達だと
言ってくれている以上、戸惑いはしても不安はなかった。
「あ、うん。そうだよね・・・
そういえば、私っていつになったら退院できるんだろ」
「うーん・・・
保田さんに聞いてみよっか?」
「あ、うん。そう、そうだよね
看護婦だから分かるかも」
それに比べて、なるべくそっけない返事にならないように必死で頭を働かせている後藤
の姿を見ると、梨華は頬のあたりの筋肉が緩むのを感じずにはいられなかった。
「・・・でも、どうなんだろうね
あのさ、私って病気のこととか何にも分からないけど
心臓病って言っても、全然軽いんだよね?」
「さあ、どうだろ?
あの時の私・・・心臓病で死んじゃった方が良いかなって・・・思ってたから
先生の話もほとんど聞いてなかったよ・・・
でも、うん・・・
普通の心臓病よりも軽いとは言ってたかな?
がっかりしたの覚えてるから」
「がっかり?」
「そう。それじゃあ死なないんじゃないか、って・・・
せっかく死ねると思ったのに、病気まで私を裏切ったんだ、って」
以前だったら、後藤の口からこんな言葉が出てくる度に梨華も気が気でなかっただろう。
ただ、今なら。こういうことを笑顔で言える後藤だったら何の心配もない。
「・・・ね、今は?今はどう思う?」
少しいたずらっぽく笑いながら、梨華は分かりきった質問をしてみる。
「・・・うん、今は、それで良かったと思う」
17チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:50 ID:pPx6Uz5I
――
「っくしゅん!」
外ではセミが騒がしいが、吉澤は寒さで目を覚ました。
冷たい空気をこれでもかと送りつづける冷房のスイッチを切ると、想像以上に冷えて
いる部屋を少し暖めようと窓を開ける。
時間は11時。
この時期になると、朝の7時を過ぎた辺りでどうしても暑さで目を覚ましてしまう。
その度に吉澤は冷房を稼動させているのだが、なぜだか年に1回はそれが原因で風邪を
引いてしまうことがある。
今のくしゃみはその前兆ではないかと思って少し緊張するが、別に喉も痛くないし、
体調も悪くなさそうだ。
取りあえず安心して、改めて時計を見てみる。
この時間だと梨華はまた病院に行っていることだろう。
最近、梨華は毎日のように病院へ行っている。
確かに自分は真夏の昼間に活動するタイプではないため、特に大事な用があるわけでも
ないのだが、この所ないがしろにされているようでなんとなく寂しくもあった。

それでも夜になると梨華はよく吉澤のところへとやってくるため、吉澤も後藤に関する
ことなら結構深いところまで理解はしている。
梨華から聞く限りでは、後藤は自分が以前に思っていたような危険な人物ではなく、
後藤について回っている多くの噂はやはりただの噂でしかないようだった。
それどころか、本人はそういった噂とはほとんど正反対の性格のようで梨華が言うとこ
ろによると「寂しがりやさん」だそうだ。
夜になってから梨華と会うことは多いが、最近は後藤の話が大半を占めているために、
吉澤としても後藤という人間が前以上に気になっていた。

「うっ」
時間にしてほんの2,3分程度なのに、もう部屋は汗ばむくらいに暑くなっていた。
急いで窓を閉めると、もう一度エアコンのスイッチを入れる。
「私も会ってみようかな・・・」
18チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:51 ID:pPx6Uz5I
「え?よっすぃーが?」
「うん、だって梨華ちゃん最近ずっと病院行ってるじゃん」
「私はいいけど・・・」
「後藤さん?」
「うん・・・」
「ダメかなぁ?
私だって後藤さんのことちゃんと分かってるつもりだけどな」
「それは私だって分かってるよ」
その日の夕方、梨華はいつも通り吉澤の部屋でくつろいでいた。
まだほんの少しだけ空は明るい。
太陽が沈んで、5分と経ってないだろう。
ちょうど月と交代する間際の時間。そんな感じだ。
午後4時に面会時間が終わって、それから帰るとだいたい同じような時間に吉澤の家に
着くことになる。
ただ、今日は帰り際に保田と話し込んでしまったこともあって、少し遅い到着になって
しまった。

吉澤が「私も病院に行く」と言い出したのは、梨華がここに来て10分程過ぎた頃だ。
梨華も最初は驚いたが、話を聞くうちにだんだんと納得してしまう。
「私だって後藤さんのこと色々調べちゃったりしたしさ
やっぱり気になるし、梨華ちゃんがそこまで言うほどの友達なら
私だって友達になれると思うよ」
そう言ってにっこり笑われると、梨華には断る術がなくなってしまった。
「じゃあ、後藤さんにも言わないとダメだから・・・
あさって一緒に行ってみる?」
「あ、明日伝えてくれるんだ」
「うん」
19チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:51 ID:pPx6Uz5I
「でも、よっすぃーが自分から友達になりたい!って言うの
すっごく珍しいよね」
「うーん、そうかな?」
「そうだよ
よっすぃーって、どっちかって言えば人見知りするでしょ?」
「あー、そうかも
・・・でも、慣れちゃうと後は一直線だよ」
吉澤はそう言いながら、立ち上がって窓の外を一直線に指を差して笑った。
「なにそれー!」
まるでどこかの熱血ドラマのように、腰に手をあてて空を指差す吉澤の姿があまりに
不似合いだったため、梨華も笑いが込み上げてきた。
1月前には、後藤のことでこんなに笑えるなんて考えもしなかった。
事態は確実に良い方に向かっている。自分たちの関係も、後藤の病気も、両方とも。
20チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:51 ID:pPx6Uz5I
「でもさぁ」
ひとしきり笑ったところで、ふと思い付いたように梨華が言った。
「何?」
「よっすぃー、後藤さんと仲良くなったら大変かも」
「え?なんで?」
しばらく考えるが、良く分からない。
不思議そうな顔をして梨華を見ると、梨華は少し真面目な顔に戻って、それからベッド
に寝転んで言った。
「だって、後藤さんと矢口さんって仲良くないよね
で、よっすぃーがどっちとも仲良くなったら困りそう」
梨華にそう言われてはじめて気が付いた。
確かに、2人が何かのきっかけでもめたりしたら、中途半端な立場の自分が一番困ること
は間違いなさそうだ。
「・・・でもさ、まだ分かんないよ
とにかくまずは後藤さんと私が友達にならないと」
「うん、そだね!」
吉澤の楽観的とも前向きともとれない返事に、梨華は何の疑いも無く納得したようで、
少しずつ広がっていく期待を楽しんでいた。
21チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:51 ID:pPx6Uz5I
――
「おはよーう!」
翌日、いつものように病室へと入った梨華は、後藤の様子が少し違うことに気がついた。
梨華の言葉に、後藤も少しはずんだ声で「おはよう」と返してくる。
「あれ?どうしたの?
なんかいつもより明るい感じだよ」
不思議に思いつつも、梨華も嬉しくなってつい声が明るくなっていた。
「うん、昨日あの後に病気のこと聞いたの」
「あ!保田さんに?」
「うん、そう」
実は、梨華もそのことについては昨日この病室を出た後に保田まで聞きに行ったため
に、それが良いニュースだということは分かっていた。
ただ、それを後藤に伝えるのが自分だと思っていたこともあって、少し拍子抜けした
感じもある。
「あ、でももう聞いたんでしょ?」
「うん、私も昨日保田さんに聞いたよ
でも良かったね!もうすぐ退院できるんだよね?」
「・・・うん、ありがと」
22チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:52 ID:pPx6Uz5I
昨日、梨華は帰りにナースステーションまで保田を訪ねた。
どうやら保田も梨華と後藤が打ち解けたことを知っていたらしく、今までになく明る
い応対となった。
そこで聞かされたのが、後藤の退院のことである。
「後藤さん、肩の傷もそろそろ良くなってきたし
心臓も特に心配ないみたいだし
後1週間くらい様子を見て、何にもなかったら退院だって」
保田は笑いながら、その後に「石川さんと会えなくなるのが寂しいね」と冗談っぽく
付け加えた。

外見からだと、包帯で包まれているために傷の回復が分かりにくいのだが、保田の話
から察するに、傷はほとんど治っているらしい。
また、これが一番の心配なのだが、心臓の具合も今のところは特に問題もなく、悪く
はないということだった。
「でもね、発作っていつ起きるか全然分かんないし
薬を持ってても、いざという時には混乱して中々飲めないものなんだって
だから、後藤さんがこの状況に慣れるまでで良いんだけどさ
病気のことを知ってる石川さんが、なるべく側に付いててあげて欲しいの」
保田の言ったこの言葉が、梨華には想像以上に重荷になりそうだったが、後藤がまた
外へ出られるということを考えると大したことじゃないような気がした。
そして、保田は前もってカプセル型の、思ったより小さな薬を1袋だけ梨華に渡して
説明をしてくれたのだった。
「何かあったら、いつでも良いからすぐに相談に来るのよ?」
正直に言って、梨華はこの保田という看護婦がこれほどまでに力強い存在であること
を初めて理解した。
「はい、ありがとうございます!」
23チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:52 ID:pPx6Uz5I
「あのさ?」
「うん」
全然見えなかった自分の退院の時期が見えて安心しているのか、今日の後藤はやはり
いつもよりも明るかった。
「突然で戸惑っちゃうかもしれないんだけど
聞いてくれる?」
梨華は今にも飛び出してきそうな心臓を静めながら、その緊張をなるべく後藤に悟ら
れないように昨日の話を切り出す。
吉澤をここへ連れてくる。ただそれだけの言葉なのに、妙に緊張してしまう。
せっかく時間をかけて築いてきた関係を壊したくない。考えたくないのに、その不安
は梨華の中で次第に大きなものとなっていた。
「え・・・うん」
不思議そうな顔をしながらも、後藤は素直に梨華の方へと顔を向ける。
真っ向から目が合って少し驚いたが、梨華は目をそらすことなく、それでいて小さな
声で言った。
「明日なんだけどさ・・・
私のお友達を連れてきてもいいかな?
「・・・え?」
今まで明るかった後藤の顔が一気にこわばったように見えた。
いきなり何を言い出すんだ?というような表情で、梨華の真意がつかめずに焦ってい
るようだ。
「あのね!
私の、一番のお友達なの!
ずっと、小さい頃から一緒で、だから後藤さんとも絶対お友達になれると思うの」
「・・・でも・・・」
本当に突然のことで、まったく予想もしてないことだ。しかも、自分にとってこれは
とても大事な問題でもあるように思える。
梨華以外の人と上手くやっていけるのか?梨華だからこんな風に笑っていられると
思ってるのに、他の人の前だとこうはいかないんじゃないか。
24チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:52 ID:pPx6Uz5I
「わ、分からない・・・よ」
梨華の友達という人物がここへ来ても良いのか悪のいか。それだけのことだ。
それなのに、自分のことなのに、自分で決められる質問ではなかった。
心中では、強く嫌だと訴えている。でも、これから先のことを考えるとこれは拒んで
はいけない事のように思えてくる。
「・・・うん、ごめんね
急に言われても後藤さん困るよね・・・」
梨華も無理強いをするつもりは毛頭ない。
自分でも思ったのだが、今日聞いてさあ明日!というのは普通に考えても無謀だろう。
ただ、後藤を自分以外の誰かと引き合わせることは必要だと思った。
「でもね、その人ね・・・
私と一緒にずうっと後藤さんのこと探してくれてたの
そう、最初に私を助けてくれたのが後藤さんじゃないかな?って言ったのもその人
私って、何かあるとすぐ落ち込んじゃって、いっつもめそめそして・・・
そんな時だって、いつもよっすぃーに助けてもらってた」
言った後に、梨華は「あっ」と口を押さえる素振りを見せてから言い直した。
「その人、よっすぃーっていうの。吉澤さん」
「・・・うん」
どう答えれば良いのか分からないのだろう、後藤は小さく相づちを打って横に置いてある
タオルケットを握り締める。
「だから、いつか後藤さんにも会ってもらおうって思ってたんだよ
私だってこんなに急になっちゃってびっくりしてるけど・・・」
「うん」
「会って、くれないかな?・・・ダメ?」
梨華の表情を見て、その華奢な体の中で考えていることを思って、まだおかしな感情が
うずまいているけれども、後藤はゆっくりと答えた。
「ううん、ダメじゃないよ・・・」
25チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:53 ID:pPx6Uz5I
――
後1週間でこの部屋ともお別れ。
そう考えると、毎日のように見てきた明るい星空も感慨深いものだった。
窓枠の中でだけ光る星たちは、まるで額縁に入れられた1つの絵画のように見える。
普段は絶対に気付かないような、耳をすましても消えていくようにしか聞こえないささ
やかな虫の寝息も。
遠くの方で、誰かが音を立てないように注意して歩いている、その足音も。
どこで走っているのか、かすかに体を振動させる寝台車も。
今日だけはすべてが心地良かった。
「石川・・・梨華・・・」
自分の人生を大きく変えてくれた、その少女の顔を思い浮かべて、虚空へと呟く。
ここにいると、普段は何もすることがない。
そんな時は、ずっと梨華のことを考えていた。
今どうしてるんだろう。今日は何を食べたんだろう。
・・・そして、誰と遊んでるんだろう。
「子供なんだよ」
誰にでもない、自分に言い聞かせる。
自分が一番頼っている、信じている人が誰か他の人と仲良くする。
子供だから、それが許せないのだ。
26チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:53 ID:pPx6Uz5I
そして、同時にどうしようもない恐怖。
梨華は、その友達のことを「ずっと、小さい頃から一緒」にいる「一番の友達」だと
言っていた。
自分みたいな人間が、その輪の中に今さら入れない。
いつも一緒にいる2人の間にどうして飛び込めるというのだろうか。
「でも」
それが梨華だから、そして梨華の一番の友達だから安心できた。
悪いことを考えるのはキリがない。それはこれまでの経験で分かっている。
だから、今度こそ。
良いことを考えて、そしてそれが現実になるように願ってみよう。
病気も治って、梨華ともその友達とも仲良くなって、みんなで笑いながらごく普通の
学生のように生活する。
「いいなぁ・・・」
そうなったら、週末に買い物にでも行ってみようかな?
そう思うと、この夜はとても気持ちの良いものだった。
全ての雑音が気持ち良い。
会ってみよう、その友達に。大丈夫、今の自分は変わったんだ。

後藤はゆっくりと睡魔に身を任せ、それから何の不安もなく眠りについた。
27チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:53 ID:pPx6Uz5I
――
「あ、よっすぃー!!」
「・・・ん?」
日も暮れてきたし、少し散歩するついでにコンビニにでも行こうか。
そう思って近道である公園へ足を踏み入れようとしたとき、後ろの方から聞きなれた
声がした。
「あ、梨華ちゃん」
後ろを振り返ると、梨華が元気良くこちらに走ってきていた。
「よっすぃーどこ行くの?」
思った以上に勢いがあって止まれないと思ったのか、梨華はそのまま吉澤にぶつかって
きた。
「うわっ」
ドン、と小さな音がしたが、梨華はそんなことはどうでも良いといった感じで、顔を上
げて再び質問する。
「ね?どこ行くの?」
「梨華ちゃん相変わらず軽いねー」
そう言いながら、吉澤は梨華を抱きかかえながら「ファミマだよ」と付け加えた。
28チャーミー剣士:2001/08/23(木) 21:54 ID:pPx6Uz5I
「あのね、後藤さんよっすぃーが来ても良いって」
「ほんとに?」
「うん、ほんとに!
良かったね、よっすぃー」
時間も手伝ってか、コンビニはそこそこ賑わっていた。
そこで、せっかくだからお菓子でも買おうかと手近にあったムースポッキーを手に
とりながら、梨華は吉澤に告げた。
「だから、明日一緒に行こう!」
「おう!
・・・で、何時にどこ?」
「えっとねぇ、10時くらいに私の家でいいかな?」
吉澤が持っているカゴの中には、ジュースやらアイスやらといろいろと冷たいもの
が入っていたが、梨華の10時という言葉を聞くと吉澤はカゴを揺らしながら駄々
をこね始めた。
「うぇー!?
10時ってすっごく暑いじゃん!」
「仕方ないでしょ
面会時間って決まってるし、なるべく早く行ったほうがまだ涼しいよ?」
吉澤としても、梨華が毎日そのくらいの時間に家を出ることは知っていたために
頭の中では納得しているのだが、体の方が拒否しているようだ。
「あー・・・
仕方ないかぁ・・・」
それでも、なんとか自分に言い聞かせるように空いた手で握りこぶしを作ると、
気合を入れたのか「よしっ!」と小さく叫んでいた。
29チャーミー剣士(休憩):2001/08/23(木) 21:54 ID:pPx6Uz5I
一月以上ぶりの更新です
長い間待たせてしまい、本当に申し訳ありません・・・

一気にとは言えませんが、堅実に書いていこうと思うので
これからも読んでいただけると嬉しいです
それでは、よろしくお願いします・・・
30名無し娘。:2001/08/23(木) 23:56 ID:soJ3PaT6
小説総合スレッドで更新情報を掲載させていただきます。
31名無し娘。:2001/08/24(金) 00:01 ID:NJOt6Hhw
ごくろうさま。また楽しみが増えたよ
32名無し娘。:2001/08/24(金) 00:33 ID:MUzVmGjU
いしよし大好き!!
ということで、前スレから読ませていただきます!
33名無し娘。:2001/08/24(金) 00:56 ID:yxPOjxG2
お帰りなさい!待ってました!
34名無し娘。:2001/08/24(金) 03:09 ID:78Op7KkU
初めて読みました。まだ途中までですが・・・凄い。上手い。
今後、いしよしはLOVEな展開になるのかな?
35ポルノ:2001/08/24(金) 03:51 ID:T6NEo3ZE
ごくろうさまです。
前スレ立てたやつが保存しとかないといけないのに…
マジで申し訳ないッス。
がんばって下さい。
36名無し娘。:2001/08/24(金) 09:13 ID:tUN.9lUE
復活おめでとございます。
お待ちしておりました。
37名無し娘。:2001/08/24(金) 09:17 ID:Ll6hbt1A
相変わらず上手いなぁ
がむばれチャミ剣!
38名無し娘。:2001/08/25(土) 01:25 ID:kzPVnr7.
保全
39名無し娘。:2001/08/25(土) 11:32 ID:HpZigbQU
昼前にホゼムしとく。
40名無し娘。:2001/08/26(日) 00:19 ID:MNTOGGwI
保全
41名無し娘。:2001/08/26(日) 04:56 ID:sOvixvTg
ガムバレ
42名無し娘。:2001/08/26(5) 28:00 ID:SdDy0Sj6
復活してたんだ。前スレの一番最初から読んでるよ。
のんびり頑張ってね。
43名無し娘。:2001/08/26 06:12 ID:E4t.8Cnk
>>42
投稿日:2001/08/26(5)

(5)てなに?
44名無し娘。:01/08/26 11:49 ID:DT2Y/yCM
2chがなくなっても続けてね。
45名無し娘。:01/08/26 12:33 ID:An.iJnl6
>>43
投稿日:2001/08/26(5) 28:00
ここは(5)だけじゃなく、28:00にも注目しようではないか。

チャミ剣、楽しみにしてるよ。
46名無し娘。:01/08/26 20:28 ID:0q9OovJw
保全
47名無し娘。