ユリマリ

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1SN

おもしろくなかったらごめんなさいです。
2第1話 発育の止まったあたし:2001/06/11(月) 12:08 ID:l9GyrcAU

そこはコンサート会場だった。あたし達を囲んだ満員の観客が一生懸命声援を飛ばして
いる。あたし達はその声援に答えようと光がまぶしくてよく見えない観客席に向かって
手を振り続けていた。
「みんなありがとー!なっちこと、安倍なつみでしたー!」
「ありがとうねー!後藤真希でした!」
誰かが名前を言う度に声援は大きくなる。音は大きなかたまりになって会場にぶつかり、
壊れるのではないか?と思えるほど壁や天井を震わせていた。
そしてあたしの番。叫んだ。「頑張りましたー!関口由里でしたー!」
言い終わった瞬間、世界は一変した。すべての音が消えて、スポットライトがあたしだ
けを照らした。さっきまで近くに居たモーニング娘。はいつの間にかはるか遠くに行っ
ててあたしを冷たい目で見ていた。観客の目も冷たかった。
あたしはスポットライトで熱くなっていく身体の外側と、そんな目で見られて急激に寒
くなっていく身体の内側を感じた。嫌な汗をかいた。息苦しい。
3名無し娘。:2001/06/11(月) 12:09 ID:ZC4xNqaU
>>1
( ´ Д `)<3点
4名無し娘。:2001/06/11(月) 12:48 ID:aqZzXVuo
TERU亜美結婚秒読みだってよ。
5名無し娘。:2001/06/11(月) 12:50 ID:l9GyrcAU

観客やモーニング娘。の「誰?」「何?」と言った疑いの声に包まれたあたしは、はる
か遠くにいるモーニング娘。の中に、さっきまでいなかったはずのあの子がいる事に気
付いた。あたしを笑ってる。その笑顔はきっと、光の舞台にいて良いのは影の中を生き
てるあなたなんかじゃなくて、光の中を生きてるあたしの方よって意味だろう。
「そうだよね」あたしはそう呟くと泣いてしまった。恥ずかしくて、悔しくて。
床に落ちた涙は波紋になって広がった。波紋はあたしの衣装を破って、足元を崩し、暗
闇に落とした。上からはあたしを笑う声が続いていて、あたしは助けも求められずただ
上を向いて口唇をかみしめた。それでも涙は止まらなかったけど。
あたしを取り囲む笑い声は大きく高くなり続けた。がまんできなくなって耳を押さえる
と急に、目覚まし時計の音に変わった。
6名無し娘。:2001/06/11(月) 12:51 ID:l9GyrcAU

起きたら泣いていた。顔を洗いながらあたしは「なんで朝から泣いてなきゃなんないん
だよっ!」と吐きすて、鏡の中のあたしをにらみつけた。「お前のせいだ」
関口由里、19歳。
その辺の短大に通ってるその辺の家庭の生まれの子で、16歳までそこそこ幸せに生き
てきたあたしは、17歳になるちょっと前に自分に関係の無いところで人生の転機を迎
えた。と言うか迎えさせられた。
あたしとそっくりな顔をした子、矢口真里がモーニング娘。にデビューしたのだ。悪い
事にあたしは声もなんとなく似てて、背も低かった。
7名無し娘。:2001/06/11(月) 12:51 ID:l9GyrcAU

「矢口真里に似てるね」それがほめ言葉とは逆効果と気付かないのか、新たに出会う人
はまず口にした。何度も何度もそう言われるうちに、あたしが出会った人の内のほぼ大
多数があたしをまったく見てないで、あたしの向うの「矢口真里」と出会っている事に
気付かされた。もともとほめてる訳じゃなかった。めまいがした。
不幸も連続で訪れた。憶えてもらえない本名、カラオケで歌わされるモーニング娘。の
曲、突然見知らぬ人に腕をつかまれたり、ストーカーっぽい事も何度かされた。それは
少しずつ少しずつあたしの性格と人生をゆがめていったと思う。
8名無し娘。:2001/06/11(月) 12:51 ID:l9GyrcAU

矢口がデビューしてから半年くらいしてからあたしは、あたし自身を見てもらえるよう
にしよう!と思い立って、全てを矢口の逆にするよう心がけた。彼女が黒のショートカ
ットならあたしは茶髪にウェーブをかけたし、彼女が金髪のパーマなら、あたしは髪を
おだんごにしてた。今のあたしの髪はなんだかんだで黒のショートになってる。
服の趣味も逆にしようと、年相応と言うかギャルっぽい服を着る矢口と正反対を行くよ
うに心がけた。その結果あたしはシャツやパンツやジャケットばかり着る事になってし
まって、おかげで小さいとは言え、まず年より下に見られる事はなかった。それが良い
事かどうかは良くわかんないんだけど。
9名無し娘。:2001/06/11(月) 12:52 ID:l9GyrcAU

こんな人知れない努力は人知れないと言ってるだけあって人には伝わらず、男の人から
は「矢口みたいにすればもてるのに〜」とよく言われた。新しい女の知り合いは「矢口
そっくりの友達がいるって言うと合コンの誘いへの食いつきが良いのよね〜」と平気で
言ってくれたりした。あたしはその度に笑顔で「そんなことないよ」なんて答えたりし
てたら、心が傷つくたびに作り笑いが上手くなっていく事を発見した。いらない知識。
きっとあたしは16歳から友達が増えていない。
10名無し娘。:2001/06/11(月) 12:53 ID:l9GyrcAU
>>3
ありがとごっちん。3点って言われたら3点な気がしてきたよ…。
11 :2001/06/11(月) 13:36 ID:UBOcXnA.
なんか20年くらい前の漫画っぽいストーリー
12SN:2001/06/12(火) 00:30 ID:ZGNAWaY2
>11

マジで燃えてきたよ、この言葉。
ちょっとね、ストーリーと文章力を磨いて出直して来るよ。
13名無し娘。:2001/06/12(火) 08:51 ID:8IVX7g5g
えっ・・・
続きは・・・
読みたいのに・・・
14名無し娘。:2001/06/13(水) 02:35 ID:uHqypGJI
>>13
うっ。バカだから、そう言われると書きたくなる(笑)
じゃあ、ゆっくりと書こうと思います。我ながら単純ですが。
1513:2001/06/13(水) 21:58 ID:uE4GeYmQ
>>14
がんばって
待ってるよ
16SN:2001/06/15(金) 01:15 ID:NT.jQeJg
>>15
ありがとう( ^ - ^ )
何か理解がむずかしい書き方とか、設定に無理があると感じたら
言ってみてください。次から気をつけるようにしてみますので。
17第2話 新宿で拉致られそうなあたし:2001/06/15(金) 01:16 ID:NT.jQeJg

土曜日。あたしは新宿に買い物に来た。渋谷の方が安いし欲しいものが多いんだけど、
渋谷は行くたびに騒がれたりジロジロ見られたりするので、いつも新宿で買い物をする。
いつも来ているわりには安くて好みのお店にさっぱり出会わなくって嫌になる時もある
が、この気安さに比べればがまんの範囲内だった。
それでも頑張って「地味なのに流行りそう」という服を探してた時、急に男の人に腕を
つかまれた。昔のあたしならただ震えるだけだったけど、今は「あの、やめてくれませ
ん?」と目を見てハッキリ言える。こうしないとつけあがられる。この冷たい応対だと
すぐにどっか行ってくれてあたしにはありがたいんだけど、矢口には世間の評価が下が
って迷惑な事だろう。知った事では無いが。
しかしその男は違った。立ち去らなかった。「やっと見つけた」その男は小さな声でそ
う言うと、あたしの持ってたシャツを奪い、会計を済ませ、あたしの腕を引いて歩き出
した。あたしは何と言って良いかわからず「あの、シャツどうもありがとうございまし
た」とだけ言った。
18名無し娘。:2001/06/15(金) 01:17 ID:NT.jQeJg

男はあたしの腕をつかんだまま足早に歩き続けた。なんだか今までに無い反応であたし
はどうしたら良いかわからなく、とりあえず引かれるままに歩いた。まぁ良いや。悪い
人には見えないから大した事考えてる訳でもないだろう。今あたしを引っぱっているの
はどっちかって言うと悪い事な気もするけど。そんな事を考えていると、突然男が口を
開いた。その目はこっちを見ていない。ずっと前を見たままだった。
「どういうつもりだよ?」
それはこっちが言う事じゃないか、と口を開く前に男は続けた。
「話は車の中でじっくり聞く」
…クルマ?
その一言がひっかかった。同時に、男が前に止まってるライトバンを見てる事に気付い
た。明らかにそれに向かって歩いている。あたしの頭に拉致という文字が浮かんだ。
あせった。あたしは自分の考えの甘さを悔やんだ。
「ち、ちょっと!離してよっ!やめてよ!人さらい!!」
叫んだ。誰か来て。「お、おい!」男が口を押さえようとする。あたしは指に噛み付き、
わめき、腕を振り回して必死に抵抗した。
19名無し娘。:2001/06/15(金) 01:18 ID:NT.jQeJg

そこに声が響いた。女の子の声だ。「なにーっ!?大丈夫ーっ!」希望の声かと思った
が、その声は今まさに連れ込まれようとしているライトバンからだった事に気付いた。
あたしは一瞬で希望から絶望に落とされた。自分から落ちたとも言えるけど。
そしてライトバンのドアが開いて一つの影がおり立った。それはあたし。格好とか髪型
は違うけど、その顔はまぎれもなくあたしだった。
「あれ?」
「あたし?」
「2人?」
同じ顔が2つあるこの状況を理解してたのは3人の中であたしだけだろう。
金髪でウェーブなんかかかった髪をしてるこの子。
身長がやけに低くて何だかはでな衣装をしたこの子。
割り箸を握りしめて、口にはソースと青のりなんかつけてるこの子は。
矢口真里だ。
あたしは今朝みた夢の事を思い出した。光と影の夢を。一瞬だけ。
20名無し娘。
うむ、そう言うことか…。面白い。