イイダカヲリは電気羊の夢を見るか?

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1名無し娘。
( ゜皿 ゜)
2立て逃げかよ : 2001/02/23(金) 22:57 ID:H/ZnWsXo
立て逃げかよ
3名無し娘。 : 2001/02/23(金) 23:11 ID:fpOiebkw
>>1
小説でも書いてよう。
4名無し娘。 : 2001/02/23(金) 23:22 ID:Wm/BQbTE
イイダカヲリは電気ひ辻の夢を見るか?
5名無し娘。 : 2001/02/24(土) 00:25 ID:KUV80Utw
『高い背の女』
6名無し娘。 : 2001/02/24(土) 13:03 ID:hwe3VdwQ
いいらさんがれぷりかんと?
・・・なんのことかよくわからないれす。
7名無し娘。 : 2001/02/24(土) 13:06 ID:Wdrwloxc
電子工学の神に会わせてやるぞ
8名無し娘。 : 2001/02/24(土) 13:29 ID:34eGVw2s
オランダ人
9名無し娘。 : 2001/02/24(土) 13:56 ID:Wdrwloxc
>>8
ルトガー・ハウアーのことか?
10名無し娘。 : 2001/02/24(土) 18:06 ID:5Lz.nEMg
今発売中のmusicnetのアンケート結果

☆恋人にしてみたいアーティスト
2位:後藤真希
4位:安倍なつみ
7位:石川梨華
8位:加護亜依
9位:辻希美
10位:矢口真理

☆結婚してみたいアーティスト
1位:安倍なつみ
5位:石川梨華
6位:矢口真理
7位:中澤裕子
8位:吉澤ひとみ
9位:後藤真希
11なぜここに貼る : 2001/02/24(土) 18:08 ID:D/8Qh9Ic
12名無し娘。 : 2001/02/24(土) 18:09 ID:19gF1SbE
結婚するとなるととたんに低くなる後藤
13名無し娘。 : 2001/02/24(土) 20:21 ID:dGJH/bFs
飯田は雷の属性を持っており、地・水の属性には非常に弱い
14ゾルス旧友 : 2001/02/24(土) 20:50 ID:cAxp8aIQ
>>10
ようするに家庭的に見える人と結婚したいと思われるわけだな。
石川は家庭的じゃないけどな。
15名無し娘。。 : 2001/02/24(土) 21:18 ID:pWjY83kA
>>10
石川ランキング、急上昇中。

オタ以外にもそんなに知名度高いか?
16名無し娘。 : 2001/02/24(土) 22:10 ID:jihi262I
カレル・チャペック「わたしはイイダカオリ」
17名無し娘。 : 2001/02/24(土) 22:29 ID:stTrifLo
うどん屋矢口「2人で十分ですよ、わかって下さいよ」
つんく「いや四人だ」
18名無し娘。 : 2001/02/24(土) 22:43 ID:3E5O.P/Q
市井「俺は、おまえら凡人には想像もできないものを色々見てきた。
ミリオンを目前にして炎に包まれた福田。
ドラマーの子供を身篭った石黒を見た。
それら全ての瞬間は時が来れば失われる、雨の中の涙のように。
逝く時間だ。」
19名無し娘。 : 2001/02/25(日) 13:54 ID:UKnSrL2k
今日のハロモニでの飯田の転び方を見ると手足の末端まで神経が来てないものと思われる。
20名無し娘。 : 2001/02/25(日) 14:17 ID:mObSvasQ
>>19
CPUのクロックが外部機器のスピードについていってないきわめて特殊な例と思われます。
Z80なんで・・・
21名無しちゃむ : 2001/02/25(日) 14:21 ID:PT/gD8ro
何だこのスレは。SFヲタでモーヲタとは業が深いな。
22名無しモニ。 : 2001/03/01(木) 02:55 ID:H21Hn7ns
マックスヘッドルームって新シリーズあったんだね、知らんかったよ。
23名無し娘。 : 2001/03/03(土) 04:13 ID:D1vVqWVo
7回払いのその瞳 ブリジットタイプのそのうなじ
悩ましい白いボデー 眩しさは僕のもの
満ち足りた微笑み 最高級品のレプリカント
24ななし : 2001/03/03(土) 05:35 ID:PWN8Mci6
みんな、このスレタイトルの元ネタわかるのか?
当時PC持ってるのってヲタだった時代だろ?
25名無し娘。 : 2001/03/03(土) 05:37 ID:T9QeQ7ho
イイダカオリは、あと3回変身を残している。
26名無しです。 : 2001/03/03(土) 05:43 ID:iG9l4zyA
>>24
別に大したモンじゃないよ。
マンガ・エッセイ・パロディその他、山ほど引用された。
当時PC持ってるのっていうくだりは厨房の証明。
27(流れ者) : 2001/03/03(土) 06:01 ID:QwQ9KK8Q
川 `〜` )|| レプリカントには過去が無いの
28名無し娘。 : 2001/03/03(土) 10:47 ID:nM2JTVCU
( ゜皿 ゜)<グホホホホ

29名無し娘。 : 2001/03/07(水) 01:06 ID:itSiKnzg
小説でもかこうかな
30名無し娘。 : 2001/03/11(日) 00:50 ID:9Ygid.cs
小説希望age
31名無し娘。 : 2001/03/12(月) 01:30 ID:KXeIMw42
箱庭諸島@モー板

本家(マターリ) :常時3h更新
http://www.ah.wakwak.com/~moja/cgi-bin/hakoniwa/hako-main.cgi
常時接続 :テレホ3h更新、その他の時間帯10min更新
http://www.morning.dyn.to/~seineko/cgi-bin/hakoniwa2/hako-main.cgi
テレホ :テレホ10min更新、その他の時間帯3h更新
http://hakoniwa1.morning.dyn.to/main.cgi
短期間バトル :金、土曜日のみ0:00から4min更新
http://www.morning.dyn.to/~seineko/cgi-bin/test/main.cgi
32名無しさん娘。 : 2001/03/12(月) 01:39 ID:wuqC.Spk
流れよ、我が涙。とイイダカオリは言った
33名無し娘。 : 2001/03/12(月) 01:48 ID:Vl1c9dbg
ここにネタ書くために原作読んでみようかな。
3429 : 2001/03/12(月) 14:53 ID:Zds2DLiM
というわけひっそりと小説書きます。
お手柔らかに。
とりあえずプロローグだけ。
あ、タイトルは上の通りで。

『イイダカヲリは電気羊の夢を見るか? 』
35プロローグ : 2001/03/12(月) 14:55 ID:Zds2DLiM
<ゆめ>

 私は雑踏の中を早足で歩いている。

 夕方、昼と夜の境界。繁華街は昼の仮面を脱ぎ捨て、夜の顔になるため、一日で
一番人の多い時間帯に差し掛かる。通りは、無数の人が別の目的を持って往来して
いる。私はその中を早足で歩いている、私の目的のために。

 通りは混んでいて、私は先を急いでいるので、たびたびすれ違う人とぶつかる。
そのたびに抗議の視線が、あるいは露骨な不平の声が私に投げつけられるが、私は
それに耳を貸さない。
 町は黄色い靄に覆われている。夕暮れ時だからだろうか。通りの空気が夕日を反
射しているからだろうか。歩きながらぼんやりと考える。

 突然、足がもつれて、私は転びそうになる。どうやら私はひどく疲労しているよ
うだ。そう言えばとても眠い。私は、私を無限の暗闇に引きずり込もうとする眠気
を振り払い、足を進める。
 目的の路地の位置は憶えている。その先であの娘が待っていることも知っている。
私はあの娘の顔を思い出そうとする。不意に眠気が増大し意識が遠のく。私は慌て
て頭を降り眠気を追い出と、ふと自分が通りの真ん中で立ち止まっているのに気付
く。

 再び歩き出す。
36プロローグ : 2001/03/12(月) 14:56 ID:Zds2DLiM
 私はその娘の顔を思い出せない。何度思い出そうとしても猛烈に眠くなる。私は
諦め、歩くことに集中する。私は無数にある路地の内の一つの路地の入り口に立っ
て、大きく息をつく。予想以上に疲労しているようだ。

 この先だ。

 薄暗い路地に入っていくと町の騒音が遠のいていく。辺りが暗くなったからだろ
うか、静かになったからだろうか、あるいはひんやりとした空気のせいだろうか、
幾分感覚がクリアになる。路地の奥の建物、既に取り壊されてもおかしくない、お
そらく住む人などいないであろう打ち捨てられたビル、その一階の一番端に小さな
ドアがある。ドアは錆び付き、薄汚れ、ビルに溶け込み、風景の一部になっている。
一見したらドアがあることすら気付かないであろう。
 私はドア目の前に辿り着く。この中にあの娘がいる。ドアのノブを握る。ふと、
今ならあの娘の顔を思い出せるかもしれないと思い、意識を記憶の再生に向ける。

 と、突然最大級の眠気に襲われる。

 意識を失いかけ、私はノブを握ったまま崩れ落ち、ひざを突く。ひざに感じた鋭
い痛みで我に帰る。下を見ると突いたひざの下に小さな血溜まりができ、それが少
しずつ大きくなっている。小石かガラスの破片の上にひざを突いてしまったようだ。

 危なかった。
37プロローグ : 2001/03/12(月) 14:57 ID:Zds2DLiM
 私は体を起こしてノブを回す。ドアを空けるとそこには狭い階段が上に続いてい
る。

 さっきの痛みで吹き飛んだはずの眠気がじわじわと、意識を侵食する。

 階段の一段目に足をかける。ひざの痛みは気にならない。

 眠気は徐々に増大する。この上だ、この上にあの娘がいる。

 ああ、眠い。一段、一段階段を上がる。

 ああ、眠い。階段の終わりはまだ遥か上だ。

 眠い。階段を上がる。

 ねむい。あと少し。ねむい。ねむい。

 あと、すこし。ねむい。ねむい。ねむい。

 もうだめだ。もしここでねむってしまったら、

 わたしはあのこのゆめをみれるのだろうか。
38名無し娘。 : 2001/03/12(月) 18:29 ID:KVlQl0xI
期待sage
3929 : 2001/03/14(水) 00:33 ID:jWOnYFqs
ひっそり続きます。

プロローグ読んだだけじゃ主人公が誰なのかもわからない事に気付いた。
少し続けます。
40Day 1 : 2001/03/14(水) 00:35 ID:jWOnYFqs
1.<目覚め>

 ブゥゥゥゥゥゥゥン

 ヒーターが部屋を暖めるために動き出す。そのときに立てる小さく低い音が加護
を起こしてしまう。加護は一回、ビクッと震えて目を覚ました。まだ部屋が暖まる
前。部屋は凍えるほど寒い。
 目覚ましのアラームがなるのは、ヒーターが動き出してから、きっちり30分後。
それが冬の習慣だった。しかし、最近はよく、このヒーターの駆動音で叩き起こさ
れる。そして寒い部屋の中をうろつく破目になる。
 体を部屋の冷たい空気にさらさないよう、加護はベットに横たわったまま首をひ
ねり、壁にかかっている時計を確認する。

 9時27分。アラームの30分前。

 昨日仕事を終えて、帰ってきたのが午前3時。帰ってすぐにベットに入ったから、
少なくとも5時間は眠れるはずだけど、加護の体には昨日の疲れがべったりと張り
付いたままだった。最低の目覚め。
 加護は最近不眠症に悩まされている。ベットの入っても眠れない、眠れても眠り
が浅い、きまって悪夢を見る、そしてすぐ目が覚める。その繰り返し。原因はわか
っていた。
41Day : 2001/03/14(水) 00:36 ID:jWOnYFqs
 ベットに横になったままぼんやりと考える。確か夢を見ていた。どんな夢だっけ。
思い出せない。さっきまで憶えていたのに。憶えているのは、夢の中なのに酷く眠
かったということだけ。

 一度目が覚めてしまうと、眠気は吹き飛んでしまい、この状態で再び眠りに戻る
ことは不可能であった。加護はしかたなくベットから出て、疲れた体を無理やり動
かして、キッチンに向かった。冷蔵庫を開け、中からミネラルウォーターを取り出
し、ポットに水を注ぎ、コーヒーメーカーにセットする。毎日繰り返している同じ
動作。今日も繰り返す。

 大きなあくびが出る。

 加護は苦笑した。眠くないのに出るあくび、ベットに戻ってもどうせ眠れないだ
ろう。

 小さなブザーがコーヒーができたことを知らせる。カップに注ぎ、リビングに移
動、テレビをつけてソファーに座る。今日は非番。一日中テレビを見て過ごすのも
イイかもしれない、とそんなことを思っていた。
 テレビの中ではキャスターがニュースを読み上げている。ニュース番組。全世界
の様々なニュースが流れる。加護は聞き流す。右耳から左耳。アメリカの連続殺人
犯逮捕、英仏トンネルで脱線事故死者百数十名、木星探査船行方不明、火星鉱山で
大規模暴動発生アンドロイド多数が火星を脱出…。

 『アンドロイド多数が火星を脱出』
42Day 1 : 2001/03/14(水) 00:38 ID:jWOnYFqs
 『アンドロイド多数が火星を脱出』

 加護は立ちあがり、電話のほうに歩いていく。目的は電話をかけること、ではな
く、電話線を引っこ抜くこと、である。電話線を手にし、渾身の力をこめてまさに
引っこ抜こうとしたそのとき、目の前の電話がまるで命乞いでもするかのように、
鳴り出した。電話線を引っこ抜く寸前の姿勢で、しばらく固まっていた加護は考え
た。このまま引っこ抜くか、電話に出るか。電話の相手はわかっている。しかし今
日は非番だ。しかし…。

 加護は電話に出た。仕事をして疲れれば、もしかしたら眠れるかもしれないと思
っていた。無駄だということはわかっている。だって昨日はもうクタクタっだった
んだから。

 「はい」
加護はできるだけぶっきらぼうに、休暇を邪魔されてウンザリしているように、そ
して相手が少しでも罪の意識を感じるようにした。
 「あ、加護?アタシ、保田。ニュース見たでしょ。今から出てきて。
  大至急。」
電話の相手は、加護よりぶっきらぼうで、加護が休暇だということが知らないかの
ように、そしておそらく加護に対してこれっぽちの罪の意識を感じずに、言いたい
ことだけいって切れてしまった。
 加護は大きくため息をつくと、シャワーを浴びるためバスルームに向かった。

 休暇は返上、である。当然。
43名無し娘。 : 2001/03/16(金) 17:25 ID:6sylSO/I
ワクワク。
44名無し娘。 : 2001/03/22(木) 16:36 ID:1BRZWgJ.
続きは?
4529 : 2001/03/24(土) 00:36 ID:p3sl55WE
ひっそり続きます。

読んでくれてる人 ありがとう
更新遅くて ごめんなさい
4629 : 2001/03/24(土) 00:39 ID:p3sl55WE
2.<出勤風景>

 警察署の地下駐車場。加護の運転する車が静かに滑り込んでくる。車は低い音を
立てながら、場内をゆっくりと進み、空いているスペースを見つけるとそこに停ま
った。
 大通りに吹く一月の冷たく乾いた風は、駐車場の奥まで届くことはなく、入口付
近で渦を巻き、ひゅうひゅうと悲しげな音を立てていた。僅かな音を立てていたモ
ーターのスイッチをオフにすると、辺りは風の音が作り出す悲しい静寂に包まれた。
 時刻は10時40分、保田の電話の約一時間後。加護は出勤した。

 車の助手席、シートの上に小さな銃が置かれている。加護は鈍く光るそれを手に
取ると、自らの左腋の下のホルスターに収めた。銃は小さなものだが、彼女にはそ
れでも少々大きく、腋の下のそれは、ホルスターに収まっても尚、まるで自分の持
つ力を誇示するかのように、小さな違和感を加護に与えていた。
 リアシートに放り投げてあったジャケットを掴むと、加護はドアを開けた。車を
降りた加護は、ジャケットを羽織りながら入口に向かった。ブラウンのジャケット。
しわだらけのジャケット。まるっきり時代遅れだが、刑事らしいといえばそうなの
かもしれない。
 助手席に銃、リアシートにジャケット。いつもどうり、加護の同乗者はその二つ
だけっだった。
47Day 1 : 2001/03/24(土) 00:42 ID:p3sl55WE
 弛緩しきった埃っぽい空気が漂う警察署の中。この時間、内勤の警官以外はほぼ
全員が出払ってしまうので、署内にいる人の数は少くなる。加護は、閑散としてい
る署内を、保田のオフィスを目指して進んだ。途中、数人の署員とすれ違うが、早
足で歩く加護に、声をかける者はいなかった。

 署内での加護の立場は微妙なものだった。13歳という年齢とそれに相応しい容貌
は、嫌でも署員の目を引き、最年少の幹部候補から最年少のバウンティ・ハンター、
という、極めて異例な経歴は、好悪とりまぜた様々な噂の的になった。
 彼女は完全に浮いていた。そして加護自身も自ら望んで孤立していた。

 『バウンティ・ハンター』

 彼らは、『特殊刑事課』所属の、一応は警察官である。しかし、やっていること
と言えば、昔ながらの賞金稼ぎと何ら変わらない。賞金首を探し、捕らえ、賞金を
受け取る。カウボーイの時代と全く同じ。違うのは、雇い主が警察であることと、
バッチを持っていることくらい。
 数年前に、警察官の士気向上を目的として発足したこの課であったが、現在は経
費削減と人員削減の隠れ蓑に使われている。この課の、異常に高い殉職率と途中退
職率も、そのことを物語っていた。
 辞めるか死ぬか、特殊刑事課にとばされたデカは、最初に選択を迫られる、と噂
された。
48Day 1 : 2001/03/24(土) 00:46 ID:p3sl55WE
 3ヶ月前、加護はある問題を起こし、この課に左遷された。そのときはまだ、復
帰のチャンスが必ず巡ってくると信じていた。だから加護は、警察を辞めなかった。
それが正しい選択だったのか、加護にはわからない。

 特殊刑事課のオフィスは、署の一番奥にある。基本的に独立して捜査を行うハン
ターたちには、捜査会議も自分のデスクも必要無い。ハンターたちが警察署に来る
のは、仕事をもらいに来る時ぐらいだった。だからオフィスの場所は、署の一番端
にある小さな部屋、デスクも課長の保田のものがあるだけだった。

 ハンターになって3ヶ月。この3ヶ月で、加護は変わってしまった。仕事を惰性
でこなす毎日。退屈な日常は、きっと殉職するまで続くのだろう。ぼんやりとした
焦燥の中で、加護はふと、結局自分も知らぬ間に『死』を選択していることに気付
いた。気付いたところで、どうなるものでもなかったが。
 復帰のことなど、もうどうでも良くなってしまっていた。

 『特殊刑事課 課長 保田 圭』

 そう刻まれたプレートが掛かっているドアが、加護の目の前にある。加護は保田
の部屋のドアの前に辿り着いた。

 ノックもせずにドアをあける。

 結局加護は、署に入ってから一言も口を利かなかった。
4929 : 2001/03/24(土) 00:52 ID:p3sl55WE
>>46のタイトルは『Day 1』です。 マチガエタ…

飯田はおろか、娘。すら出てこない展開が続きます
更新急ぎますから、お付き合いくださいね

調子良ければ次は今週末かな?
50名無し読者 : 2001/03/24(土) 07:18 ID:DSn10RUk
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
51名無し娘。 : 2001/03/25(日) 00:10 ID:73dFo.ac
>>49 (29)
羊板の小説総合スレッドでも紹介してもよろしいですか?
5229 : 2001/03/25(日) 23:31 ID:8vEjAouQ
>>51
ありがとうございます
お手数をかけます
53名無し娘。 : 2001/03/30(金) 02:08 ID:1KeOEkwY
保全
5429 : 2001/03/31(土) 00:17 ID:6hWYdc1I
ひっそり続きます。

読みやすいレイアウト研究中
とりあえず句読点で区切ってみました
見にくかったら言ってください
55Day 1 : 2001/03/31(土) 00:18 ID:6hWYdc1I
3.<依頼>

加護が部屋に入ってくると、保田はデスクに座り、
手に持った書類を読んでいるところだった。
狭い部屋の中に、ぽつんと置かれた保田のデスクは、
完璧主義の彼女の性格を証明するように、きれいに整頓されていた。
そんな保田が、デスクの上だけでなくオフィスも掃除してしまうので、
部屋の中は妙に片付いていた。
警察署らしくない部屋の中を加護が近いていくと、保田が書類から顔を上げた。

 「来たわね。遅いわよ!」

そう言って、保田は読んでいた書類を差し出した。
加護がそれを受け取ると、保田は立ちあがり、加護に背を向け、
事件の説明をはじめた。
挨拶も、休暇返上に対する謝罪も無しである。
もっとも加護は、そんな言葉が保田の口から聞けるなんて、
これっぽちも期待していなかったけど。
56Day 1 : 2001/03/31(土) 00:19 ID:6hWYdc1I
 「72時間前、火星鉱山において労働者たちによる大規模な暴動が発生。
  暴動は24時間たっても沈静化せず、逆に市街地に拡大。
この混乱を利用して市内に潜伏中のアンドロイドが空港を襲撃。
  警備隊と交戦の末、ジェットを強奪し火星を脱出。
  今から6時間前に地球に侵入した。
  空港を襲撃したアンドロイドは全部で11体。
  火星脱出時に空港で2体、地球進入時に1体を『廃棄処理』。
  同時に1体を捕獲。残りは7体。これが今回のターゲット。」

報告書を暗記したのだろうか、保田はそこまで一気に話すと、
降りかえって加護の顔を見た。
保田と目が合ってしまった。
57Day 1 : 2001/03/31(土) 00:22 ID:6hWYdc1I
保田は特徴的な顔をしている。少なくともブスではないと加護は思っている。
ちゃんと化粧をすれば綺麗になるだろうし、笑えば多分愛嬌のある顔になるだろう。
ただ、保田は化粧も笑うことも滅多にしないので、
実際にそれを確認するのは不可能であるが。
だから加護を含めた署内での、保田の容姿に対する評価は、
少なくともブスではない、で止まっている。

 「ん?ちょっとアンタ大丈夫?ちゃんと聞いてる?」
かなり失礼なことをダラダラと考えていた加護は、
相当間抜けな顔をしていたのだろうか。保田は少し心配そうな顔をしていた。
 「ああ、すいません。ちゃんと聞いてますから続けてください。」
慌てて返事をした加護を見て、保田は、そう、とつぶやき、
少しの間加護の顔を見ていたが、やがて説明を再開した。
もしかしたら休暇のことを気にしているのかもしれない。
58Day 1 : 2001/03/31(土) 00:24 ID:6hWYdc1I
 「アンドロイドは火星脱出と地球侵入の際に警官隊と交戦。
  この交戦における当方の損害の合計は死者11名、重軽傷者48名。
  本日午前6時、警察機構はこのアンドロイドの『廃棄処理』を決定…」

 「ちょっとまってください」
説明を聞きながら報告書に目を通していた加護は、保田の話を遮った。
 「なに?」
説明を中断された保田は、加護の顔をじろりと見た。
保田は別に怒っているわけではなかったが、鋭いその視線を
まともに受けてしまった加護は、緊張で固まってしまう。
それだけの力を保田の視線は持っていた。
59Day 1 : 2001/03/31(土) 00:25 ID:6hWYdc1I
加護が最年少ハンターなら、保田は最年少の管理職である。
加護が踏み外した道を、保田は歩き続けている。
ただ、保田は経歴だけではなく、刑事としての能力も非常に優秀であり、
管理職になる前の実績も高く評価されていた。
当然加護もそんな保田の能力を認めているし、尊敬もしている。

左遷され、何事も投げ遣りになっていた加護を時には励まし、時には怒り、
ハンターの基礎を叩き込んで一人前にしてくれたのは、この保田だった。
普段は表には出ないだけで、常に部下の安全のことを考えている。
加護はそんな保田の隠れたあたたかさに感謝していた。
60Day 1 : 2001/03/31(土) 00:27 ID:6hWYdc1I
固まったまま、また変な事を考えている自分に気付いた加護は、
手に持った書類をひらひらさせて、それをごまかし、慌てて質問をした。
 「アンドロイドの廃棄処理が仕事なんですよね?
  なのにこれには、彼らの情報がほとんど載っていなんですけど、
  これはどうしてなんですか?」
加護の読んでいた報告書には、暴動や空港の被害などは詳細に記載されていたが、
肝心の逃げたアンドロイドたちの情報は、ほとんど載っていなかった。

 「彼女たち。」

保田は一言、そう言った。何の事だか加護にはさっぱりわからない。
は?という顔をしている加護に気付いた保田は、
不満そうに小さな溜息をつくと、話を続けた。
 「七体のアンドロイドの性別はすべて女性。だから彼女たち。」
 「女ですか…」
加護の顔が曇る。アンドロイドの『廃棄処理』はただでさえ精神にクる仕事である。
特に女のアンドロイドの処理は、加護の経験上、辛い仕事になる場合が多かった。
61Day 1 : 2001/03/31(土) 00:29 ID:6hWYdc1I
まるで言いたくない事を言うように、多分本当に言いたくなかったのだと思うが、
保田は話し始めた。
 「アンドロイドたちは『モーニング』という店に潜伏していたの。」
 「『モーニング』?」
 「『最後の楽園』」
 「ああ…。」

火星鉱山の労働環境は過酷である。特にアンドロイドの場合は最悪で、
昨年成立した『アンドロイドのための労働基準法』も、
火星のような辺境では効力を発揮せず、事態改善の役には立たなかった。

劣悪な労働環境に置かれたアンドロイドが逃亡を試みるのは、
アンドロイドの反応としては、まったく正常なものであった。
事実、火星鉱山では逃亡アンドロイドが頻繁に出現した。
そういったアンドロイドは、たいていはその場で『廃棄処理』されたが、
中には逃亡に成功するものもいる。

鉱山から逃げ出したアンドロイドは、しばらくはどこかに身を隠しているが、
そのうち仕事を探し始める。どの世界でも生きていくためには金が必要だった。
人間もアンドロイドも同じである。金に困ったアンドロイドたちは、
男たちは下水工事やごみ処理場など、他人の敬遠する底辺の仕事に就き、
女たちは火星最大の夜の町『最後の楽園』に流れていった。
どちらも楽な仕事ではないか鉱山で働くよりは遥かにマシだった。
62Day 1 : 2001/03/31(土) 00:32 ID:6hWYdc1I
保田の話を聞くにつれ、加護の憂鬱は増していく。
聞くんじゃなかったと少し後悔した。
だが聞かないわけにはいかないし、聞いてしまった後ではもう遅い。
 「あと…」
憂鬱な加護だったが、もう一つだけ気になることがあった。

 「なに?」
 「ターゲットは7人ですよね?」
 「7『体』よ」
保田はアンドロイドを何人ではなく、何体と数える。
彼らを物として扱おうとしている保田の気持ちが、加護には理解できた。
 「少し多すぎませんか?ちょっと厳しいと思いますが?」
 「その点は大丈夫。一人ってわけじゃないから。」

またもや意味深な言い方をする保田。
加護がその意味を質そうとしたとき、背後のドアがノックも無く開いた。
オフィスに入るときにノックをするのは、他の課の者か部外者だけである。
この課の人間でノックをする者は、何故か一人もいなかった。
保田も気にしている様子もないし、それはこの課の暗黙のルールになっていた。

そして、ノックもせずに入ってきたのは、やはりこの課の者たちであった。
6329 : 2001/03/31(土) 00:34 ID:6hWYdc1I
読んでくれてる人 ありがとう

まだ勢いがたりない…本編に入れない…
プロローグの続きみたいなモンです

次回 ゲスト登場
64名無し読者 : 2001/03/31(土) 06:39 ID:M50p8C5c
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
65名無し娘。 : 2001/04/03(火) 00:16 ID:72K.1y6U
hozen
66名無し娘。 : 2001/04/06(金) 02:32 ID:lplHe7BU
続きに期待しつつ保全
6729 : 2001/04/07(土) 22:48 ID:XUhUp2yE
ひっそり続きます。

あまり期待されると困るけど
反応が無いのも悲しい…
それは矛盾です
68Day 1 : 2001/04/07(土) 22:49 ID:XUhUp2yE
4.<同僚>

加護が振り返ると、開いたドアから四人の男たちが入ってきた。
普通の刑事とはどこか違った雰囲気を醸し出している彼らは、
全員が特殊刑事課の刑事、つまりは加護と同じバウンティ・ハンター、
加護の同僚である。

先頭で入ってきた中肉中背の男が、彼らのリーダーである。
男の髪は金色で、それほど色の濃くないサングラスをかけている。
口元には常に笑みを浮かべているが、サングラスの奥の二つの瞳は、
獲物を探し求める、ハンター特有の暗く鋭い輝きを帯びていた。

加護はその男を見ると、少し緊張した面持ちで挨拶をした。
 「おはようございます、つんくさん。」
 「おー、加護かぁ。ひっさしぶりやなー。」
つんくと呼ばれた金髪の男は、その風貌に似合わない、
人懐っこい笑みでそれに応じた。
69Day 1 : 2001/04/07(土) 22:50 ID:XUhUp2yE
つんく。
彼は加護が知る限り、ナンバーワンのハンターである。
冷徹な観察眼、果敢な決断力、豊富な経験を持ち、
部下の特性を把握し、彼らを縦横に動かす彼は、
あらゆる作戦において、数多くの成果を上げていた。
加護が目標としている刑事であった。

つんくに続いて入ってきた3人の男たちは、それぞれの格好には
何一つ共通するものは無いが、その目にはつんくと同じ、ハンターの
輝きを宿していた。

つんくは常に数人のチームを組んで捜査を進める。
最近は四、五人で行動しているようで、この男たちは、
そんな『つんくチーム』のメンバーである。
70Day 1 : 2001/04/07(土) 22:51 ID:XUhUp2yE
 「おはよう、あいぼん」
つんくの部下の一人、茶髪で坊ちゃん刈の男が、
加護に馴れ馴れしく声をかけてきた。加護はこの男が苦手だ。
 「そのあいぼんっていうのやめてくれませんか、まことさん。」
警察学校時代の子供染みたあだ名を、本人が
嫌がっているのを承知で、わざと使ってくる。
多分、からかっているだけで悪意は無いのだろうが、
無神経で意味の無い軽口は、確実に場の空気を悪くする。
そんなまことが加護は好きになれない。

 「ええやん。その方がかわいいし。」
 「嫌なんです、その呼ばれ方。」

そう言うと加護は黙り込む。こんな無駄話をしに来たわけではない。
そんな二人の横で、その様子を面白そうに見ていたつんくは、
笑みを浮かべたまま保田のデスクに向き直って、
 「まあ大体想像つくけど、なんでここに加護がいるんや?」
と聞いた。
71Day 1 : 2001/04/07(土) 22:52 ID:XUhUp2yE
 「加護にもこの件を担当してもらうことにしたんですよ。」
保田は敬語で答えた。年齢も、刑事としてのキャリアも
上なので、一応の敬意を示しているのだろう。
ただ、普段の保田からするとかなり不自然である。

 「なっ!」
まことの横にいるサングラスをかけた痩せ男、たいせーが声を上げた。
 「なんでや!ぼくらでじゅうぶんやろ!」
この男、黒い短髪に、濃いサングラス、黒ずくめの服装という、
クールな外見をしているが、実はかなりの直情タイプである。

保田は全く動じていないらしく、
 「十分とは思えませんね。現にミスをしているわけだし。」
と火に油を注ぐようなことを、さらっと言い放った。
 「ミスっておまえ!」
案の定、ミスという言葉に、たいせーは過剰に反応する。
72Day 1 : 2001/04/07(土) 22:53 ID:XUhUp2yE
 「やめんか!」
つんくが鋭い声でたいせーを制した。
 「でも!」
 「えーから!」
つんくの再度の声で、たいせーはようやく黙ったが、その目の中に
渦巻いている、保田に対する怒りが消える事は無かった。

加護は、このやり取りからまったく取り残されていた。
どうしてたいせーがそれほどまでに怒ったのか、まるでわからない。
いかに直情タイプでも、単に自分のミスを指摘されただけでは、
あれほどまでに激昂することはないだろう。

 「保田さん、これはどういうことなんですか?」
加護は保田に説明を求めた。
保田は、怒りがおさまらない様子のたいせーを一瞥すると、
普段の不敵な顔に戻り、事情を説明をした。
73Day 1 : 2001/04/07(土) 22:54 ID:XUhUp2yE
 「この仕事は最初、つんくさんたちに任せたのね。
  人数も多いしちょうどいいって思ったわけ。
  相手は7体もいるし。でも、彼らはいきなり失敗した。」
 「失敗って?」

 「気付かない?一人いないでしょ?」
現在、つんくたちは四、五人のチームで行動している。
部屋に入ってきたのは四人だが。
そういえばもう一人いた気がするような、しないような。

 「しゅうさん…」
 「そう、しゅうさんが殺られたの、アンドロイドにね。
  頭に一発くらって即死よ、即死。」
加護はいつも思うが、保田の言い方にはデリカシーが無い。
そんな風に言われれば、誰でも怒るような気がする。
74Day 1 : 2001/04/07(土) 22:55 ID:XUhUp2yE
 「しゅうさんが…」
 「そう。で、あんたが補充されたってわけ、わかった?」

保田の説明で、自分が呼ばれた理由と、たいせー激怒の理由はわかった。
ただ、補充とはどういうことなのだろう。加護につんくのチームに入って
一緒に捜査をしろというのか。加護は少し不安になる。

 「事情はわかりましたけど、補充ってなんですか?」
好んで一匹狼になっている加護には、今更誰かと組むつもりなど毛頭無かった。
 「そうや!こんなガキと一緒に動けるか!」
たいせーが怒鳴る。まだ怒り足らないらしい。
今度は加護がそのとばっちりを食ってしまった。

 「別に一緒に行動しろと入ってないわ。つんくさん。
  あなたたちは今までどおりアンドロイドたちを追ってください。
  加護には別のターゲットを同時進行で追わせます。」
保田はつんくに向かってそう言った。
たいせーは全くの無視。目を合そうともしない。
75Day 1 : 2001/04/07(土) 22:57 ID:XUhUp2yE
 「そんなことせんでも、うちらだけで十分…」
 「アンドロイドの廃棄処理が時間との勝負なのは
  わかってるでしょ?」
たいせーのせいで、さっきからちっとも話が進まない。
保田の口調が、だんだん乱暴になってきた。地が出てきただけなのだが。

別にアンドロイドの追跡に限った事で無く、犯罪の捜査において、
発生からの経過時間が短ければ短いほど、犯人の検挙率は高い。
それはアンドロイドの廃棄処理についても言えることで、
もし、アンドロイドが追跡の手を逃れ、社会の深部に
潜ってしまえば、それを探し出すのはかなり困難になる。
廃棄処理はその前、地球侵入から遅くとも一週間以内、
その間に完了するのがベストであるとされている。
76Day 1 : 2001/04/07(土) 22:59 ID:XUhUp2yE
そこのところを理解してるのだろう。つんくは、別に怒るでもなく
 「わかってるって、保田。しゅうが殺られたのは、おれのミスや。
  加護の補充も、まあ理解できる。まあ、うちらもライバルがおれば、
  張り合いがでるっちゅうもんやしね。」
と言った。ただ、まだ何か言いたそうな顔をしている
たいせーを察してなのか、つんくは少し強い口調で続けた。
 「けど、しゅうを殺ったアンディ。これはうちらの獲物や。
  うちらが始末する。これは譲れんからな。いいな。保田。」

 「わかりました。加護には他のを追わせます。それでいいですね?」
保田は、溜息をつくと、仕方なくそれに同意した。
そうしなければ、たいせーの怒りはおさまらないだろう。
 「よっしゃ。それでええ。話は終わりや。ほら、みんな
  さっさと行くで。アンディは待ってくれへん。
  ぼやぼやしてるとアンディと一緒に、賞金も逃げていってまうで。」

そう言うと、つんくは仲間たちを急かせて、出て行こうとした。
ドアを開け、廊下に出たところで立ち止まると、つんくは降り返って
 「あ、そうそう加護。これから捕獲したっちゅうアンディーを
  見に行くんやけど。どうする?おまえも行くか?」
と加護に提案した。

 「はい。いきます。」
どっちにしろ相手に関する情報が少ない。得られる情報は、
どんな小さな事でも欲しかった加護は、その提案に同意し、
つんくの後について部屋を出ていった。
77Day 1 : 2001/04/07(土) 23:01 ID:XUhUp2yE
 「あ、ちょっと、待って加護。」
保田は、部屋を出て行こうとした加護をひきとめたが、
その声は加護には届かなかった。
 「まったく…」
保田は、誰もいなくなった部屋で、閉じられたドアを見ながら
大きな溜息をついた。あんな自己中心的なハンターたちを
管理するなんて不可能だ。

保田は煙草を吸おうと、ポケットから煙草の箱を取り出し、
そこから一本抜いたが、火を点けようとしたところで、
自分が今、禁煙している事に気付き、しかたなく煙草を箱に戻した。

ポケットに煙草の箱をねじ込むと、再び溜息をつき、
机の上のファイルを見た。机の上に広げられたファイルには、
一人の少女の胸から上の写真と彼女に関する説明が書かれた
資料が綴じられていた。

加護は自分のターゲットに関する資料を受け取るのを忘れていた。
7829 : 2001/04/07(土) 23:04 ID:XUhUp2yE
つんくたちは準主役だけど、人数合わせでもあったりします
79名無し娘。 : 2001/04/09(月) 06:11 ID:miXpc.T.

実は始めの1行を開けるだけでも結構
読み易くなると思うんですよ。あと、1行に書く
文字数は限界ギリギリまでじゃなく余裕を持って
切るとかなり見易くなると思います。
80名無し読者 : 2001/04/09(月) 07:22 ID:q0Um7Lqk
娘。小説総合スレッドの方であげさせていただきます。
8129 : 2001/04/10(火) 09:50 ID:h/dIbJ4.
>>79
ご指摘、ありがとうございます。
なるほど。始めの1行を開ける、というのは盲点でした。
目から鱗ですね。今後その形にします。

どこで行を区切るか、というのはいつも迷います。
文字数が行毎にバラバラになると、逆に見にくいような気がしたのですが。
また何かあったら言ってください。

>>80
いつもご苦労様です。感謝してます。
82アップ職人 : 2001/04/11(水) 14:19 ID:5TlieNmc
上げるといいと思うよ
83名無し娘。 : 2001/04/14(土) 00:23 ID:rKDduL6w
sagedehozen
8429 : 2001/04/15(日) 23:41 ID:qVq.lkks
ひっそり続きます。

中澤登場が中澤脱退に間に合わなかった
ま、登場はするけど…
85Day 1 : 2001/04/15(日) 23:42 ID:qVq.lkks
5.<対面>

部屋は15平方メートル程しか無くて、なんだか息苦しかった。

明かりは消され、つんくはさっきから黙ったまま。
別に張り詰めた空気、というわけでは無い。
かといって、リラックスできるわけでも無い。
中途半端な部屋の空気は、呼吸するのも億劫だ。

明かりの消えた室内で、唯一の光源は小さな窓。
つんくと加護はその前に立って、むこうの様子を見ていた。
しかし、小さな窓のむこうの景色は、青い空、では無い。

窓のむこうは、隣の部屋だった。
窓があるおかげで、むこうの部屋は見えるけど、
むこうの部屋からこっちの部屋は見えない。
マジックミラー挟まれた二つの部屋。
86Day 1 : 2001/04/15(日) 23:45 ID:qVq.lkks

むこうの部屋のデスクには女が一人、座っていた。
座って何をしているのかと言えば、飯を食っている。

捕獲されたアンドロイド『安倍なつみ』は、
現在、弁護士と接見の真っ最中。
二人は、その様子をこっちの部屋から見ている。

安倍なつみ
身長は160cm前後、茶色の髪は肩まで真っ直ぐ伸びている。
かなりの美人、いや、美少女である。
外見は全くの人間。それどころか体組織もほとんど人間と同じ。
レプリカントと呼ばれる有機アンドロイドである。

安倍は机の上に並べられた食べ物を、美味そうに食べている。
本当に美味そうに食べている。まるで本物の人間の様に。
87Day 1 : 2001/04/15(日) 23:47 ID:qVq.lkks

―――これがアンドロイド?
加護は驚いた。
どんなに人に似せても、アンドロイドはアンドロイド。
実際に接触して感じる、『不自然さ』とか、『違和感』は、
そう簡単に隠せるものではない。
しかし、目の前の安倍からは、それが全く感じられない。
もし、ここが取調べ室じゃなくて、町のレストランだったら、
自分にそれを見破る事ができるだろうか。

 「ネクサス9型や。
  まだ市場にも出ておらん、ピッカピカの最新型や。
  もちろん逃亡も今回が初。記録上は、やけどね。」

さっきまで黙っていたつんくが、目の前のアンドロイドについて、
簡単な解説を加える。
 「最新型のアンドロイドが鉱山で働いているんですか?」
加護は質問をした。
通常、鉱山労働などの重労働に使うのは、専用の量産アンドロイドで、
最新型を使うメリットはない。メンテナンスに費用がかかりすぎるからだ。
88Day 1 : 2001/04/15(日) 23:48 ID:qVq.lkks

 「テストなんやと、テスト。新型の。
  まあ新型やから脱走に成功したんやろうし、
  3ヶ月も潜伏できた、ゆうことやね。」
 「なるほど…」

資料によると、
今回の暴動発生時に、火星鉱山から脱走を試みたアンドロイドは、
火星において、全てが『処理』済みらしい。
地球に侵入し、加護たちの標的になっているのは、
過去に脱走に成功して、『楽園』に潜伏中だったアンドロイドである。

潜伏期間は約3ヶ月と、信じられないくらい長い。
そして混乱に乗じて、ではあるが火星脱出と地球侵入を成功させた。
どちら事実も、アンドロイドの能力の高さの証明である。
89Day 1 : 2001/04/15(日) 23:51 ID:qVq.lkks

 「気ぃ付けたほうがええで。
  地球に入ってきた中には軍事用もおるらしいから。
  ま、あれはそうや無いと思うけどな。」

つんくは、隣の部屋を指した。

 「軍事用…ですか。」
軍用アンドロイド。
文字通り、戦争用のアンドロイドである。
アンドロイドに戦争をさせて、何が面白いのか加護にはわからないが、
そういうアンドロイドが存在するのは事実である。
個々の能力は非常に高く、戦闘のスペシャリストから、
高度な作戦能力を持つ者まで、タイプは多様。
そこいらの半端な悪党より、はるかに危険な存在である。

ただ、たしかにつんくの言う通り、安倍なつみは軍用とは思えない。
今も、必死に話し掛けている弁護士を完全に無視して、食事に夢中である。
本性を隠している、という可能性もないことも無いけど。多分それは無い。
90Day 1 : 2001/04/15(日) 23:53 ID:qVq.lkks

 「それであの横にいるのが弁護士、と」
弁護士はハンサムな青年だった。
 「そうや。あのオトコマエが司法取引に応じるよう説得してるわけや。」
 「でもどうしてなんですかね?
  アンドロイドの弁護なんかしても儲からないでしょう?」

ブランドもののスーツ。作り物の微笑。野心家の目。
間違っても、慈善事業で弁護をする人間じゃない。

 「賠償金ねらいやな。司法取引で免責してもろて、
  そのあと火星の鉱山会社を相手取って賠償を要求。
  賠償金の何パーかを報酬としていただくって寸法やな。」

なるほど―――
保田も言ってたが、鉱山の労働環境は最悪である。
特にアンドロイドたちは明らかに労基法違反。
勝てないほうがおかしい、というわけである。
それでぶん取った賠償金を横からかすめ取る。
ずる賢い。
まるでハイエナだ。
91Day 1 : 2001/04/15(日) 23:54 ID:qVq.lkks

それからしばらく、二人は安倍なつみを眺めていたが、
もう十分と感じたのだろう。つんくは、
 「まだ見てくか?加護?オレはいくで。」
と言うと、窓から離れ、ドアに向かって歩き出した。

たしかに、これ以上安倍を見ていても、お腹が空くぐらいで、
たいして有用な情報は得られないだろう。
 「あ、はい。私ももういいです。」
そう感じた加護は、つんくの後に続いて部屋を出た。

つんくを待っていたのだろう、
廊下の脇のベンチに座っていた金髪長髪の男が立ち上がる。
さっき保田の部屋で、一言も発しなかった男、はたけだ。
92Day 1 : 2001/04/15(日) 23:57 ID:qVq.lkks

はたけは、とても無口な男で、加護も彼と話した事は数えるほどしかない。
がっしりとした体格と鋭い眼光は、まわりに必要以上に威圧感を与える。
一見、肉体派だが、実際話してみると、頭もかなり切れるようで、
チーム内ではつんくの副官のような立場にいる。

つんくは小声で、はたけと一言二言話をすると、加護を振り返り、
 「そうそう加護。保田の部屋によってった方がええんと違うか。」
と言った。どうしてですか、と加護が聞くと、
 「おまえ資料貰ってへんやろ、アンディの。」
と笑いながら答え、加護が何か言う前に、さっさと行ってしまった。

―――忘れてた

慌てて、保田の部屋に向かおうとすると、
隣の部屋の扉が開き、弁護士が出てきた。
93Day 1 : 2001/04/15(日) 23:59 ID:qVq.lkks

 「おねがいしますよ、安倍さん。じゃあ、また来ます。」

ハイエナ――じゃなくて弁護士は、中の安倍に声をかけると、
ドアを閉めた。足を止めた加護と、弁護士の目が合う。

加護に気付いた弁護士は、
 「刑事さんですね。私はこう言うものです。」
と言って、懐から名詞を出した。加護は名詞を受け取り、
 「司法取引、応じそうですか?」
と聞いた。いまのところ重要なのは、その点だけだ。

 「応じさせますよ。それが彼女のためですから。」
加護の問いに、弁護士は力強くそう言い切った。

―――彼女のため、か。
白々しいこと、この上ない。

 「では、急ぎますので。失礼します。」
加護のあからさまな軽蔑の視線を、知ってか知らずか、
弁護士は簡単な挨拶をすると、廊下の角に姿を消した。

ふと気付いて、弁護士から貰った名刺を見た。
名詞は、力いっぱい握り締めたので、くしゃくしゃになっていた。
 「…ふん」
握りつぶし、廊下の端に設置されたごみ箱に放り投げる。
丸まった名詞はごみ箱を見事に外れ、床に転がった。
94Day 1 : 2001/04/16(月) 00:01 ID:SW0Hg2lQ

地下駐車場。
あれから、加護は保田の部屋に寄り、書類を受け取った。
保田が何か言いたそうな顔をしていたが、無視して出てきた。
どうせまた小言だろう。
一人きりの部屋で、保田が溜息をつく姿が目に浮かぶが、
そんな事にかまってる暇は無い。時間は大事なのだ。

運転席に座り、書類を捲る。
最初のターゲットが、美しいけれど、どこか寂しげな目で、
写真の中から加護を見つめていた。
書類をダッシュボードの上に置き、モーターのスイッチを入れる。

加護にとっての最後の事件が、今静かに動き始めた。
95名無し読者
>>81
どういたしまして。

モーニング娘。板名作集の方であげさせていただきます。