http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030429-00000513-yom-int 【バグダッド=西島太郎】開戦前の先月15日から閉鎖されているバグダッドの
日本大使館。激しい戦闘や略奪が繰り返される中、必死に大使館を守ってきたのは、
近くに住むイラク人家族だった。業務再開に向け、日本人の大使館関係者は29日、
被害状況の調査を始めた。"隣人"たちが守り抜いてくれた日の丸が再びはためく
日は近い。
日本人スタッフが国外退避し、大使館業務を停止した後、14人のイラク人スタ
ッフが情報収集や警備を続けていた。しかし、市街戦などが相次ぎ、バグダッド陥
落の前後は、現地スタッフさえ出勤できなくなっていた。
大使館は、空爆による大きな被害は受けなかったが、多くの盗賊たちに狙われた。
「裕福な日本の大使館なら、宝物があると誰でも思うさ」と、イラク人の警備担当者
は話す。
そんな中で、大使館を守ったのは、向かいに住む元公務員モナサル・アルオブーディ
さん(45)の一家だ。バグダッドが陥落した翌日の今月10日、一家6人は協力して、
大使館内に掲げられていた日の丸を下ろし、看板をはずした。外交官ナンバーの乗用車
は自宅の庭に隠した。
「日本大使館だと分かれば、盗賊たちに狙われると思ったから、自主的にやったんだ。
国旗はどの国の国民にとっても1番大切なものだろう? 燃えたり奪われたりしたら、
みんなが悲しむと思って」。モナサルさんはそう話し、ほこりと油煙ですすけた日の丸
を大事そうに広げてみせた。(写真)
盗賊たちは、何度も姿を見せたという。そのたびにモナサルさんと長男のハイダル
さん(22)は、カラシニコフ小銃を携えて自宅2階に駆け上がり、戦った。
「撃ち返されたこともあったが、大使館を守るために必死だった」とモナサルさんは
振り返る。
大使館からはパソコン4台とエアコン1台が奪われてしまったが、「あの混乱の
中、これだけの被害で済んだのは彼らのおかげだ」と、イラク人の大使館スタッフ
は称賛する。
モナサルさんは、「私は15年間もここに住んでいる。大使館は大切な隣人。
隣人を守るのはイラク人の務めだ」と誇らしげに語り、「我が家は日本人が大好きなん
だ。みんなやさしいからね」とほほえんだ。