また、シンガポールやインド、インドネシアといった海外政府と、クリエイティブ産業分野での協力を
進める文書の合意を実現しました。これはネットでも話題になった講談社の「クリケット版の巨人の星
(スーラジ ザ・ライジングスター)」などの形で結果が出てきています。
さらに約10億円の予算をもとに、前述のパルコの事業を含んだ15の海外事業で市場調査やテストマーケティングなどの支援を行いました。
ただ一方で、省庁の予算は単年度主義であり、複数年にわたっての支援には不向きです。
そういう中でクール・ジャパンファンド―我々は「機構(クール・ジャパン推進機構(仮))」と呼んでいますが―の存在が重要となってくると考えました。
--クール・ジャパンファンドについて、詳細を教えて下さい。
現状、クール・ジャパンが海外に出ていくには
(1)収益モデルの不透明感からくるクール・ジャパン関連企業への資金供給不足、
(2)現地商業施設などの足がかりとなる拠点の不足、(3)情報やノウハウの不足
――といった課題を解決しないといけません。
ただ、一番大事なことは、こういった取組みによって海外でのビジネスモデルを構築し、人材を
育成していくということです。2003年から2007年に存在していた産業再生機構のように、
日本の知が集まって、プラクティスを形式知化する。そして組織が解散した後にはそこにいる人材が
日本中、ひいては海外に出て行くということが重要になると考えています。
具体的には、クール・ジャパン推進機構にて、財投特会(財政投融資特別会計)から500億円を出資し、
あわせて民間からも出資を募る予定です。そして、20年の存続期間の中で、おもに民間企業や金融機関、
民間のファンドなどで組織するプロジェクト会社等に対して出資してきます。
投資対象については、最終的にこの機構のCEOやCOOらの判断になると思いますが、
コンテンツ関連であれば、海外の商業施設やメディア・ネット空間、放送枠の獲得などを考えています。
食であればフードコートやセントラルキッチンの獲得、ファンド・オブ・ファンズとして地域企業などに投資する
ということも検討しています。「ジャパンストリート」といった形で、日本のコンテンツや衣食住等が
集まる空間 を構築することも検討できるのではないでしょうか。
もちろん、事業の収益性や波及効果等を踏まえた支援基準については、現在どのような基準にするかも含め検討中ですが、基準を設ける予定です。
日本のアニメには、(表現によっては)海外でポルノ同様に扱われることで、ビジネスチャンスの
可能性が狭まるものもあったということを聞いたことがあります。そういった点も含めて基準を設けないといけないでしょう。
--これらはいかに海外に出るかといういわば「外向き」の支援施策です。日本の中にあるコンテンツをいかに育てていくかという「内向き」の施策はどうなるのでしょうか。
日本国内での企業の取組み自体が、法律上、出資対象外というわけではありません。
例えば、海外の人達を呼ぶことができる事業を実施する企業なども出資対象として除外していません。
単純なイベントだけを支援することは難しいかもしれません。ですが例として挙げるなら、
ただ「コスプレイベントをやります」というだけでは支援が難しいでしょうが、「海外のファンを日本に
呼び込むような世界規模のコスプレイベントを開催する。それを含めた事業展開」となると話は別であるということです。
--ファンドには民間からも出資を募るということですが、金額的にも官主導の側面が濃厚です。官主導だからこその強みについて教えて下さい。
我々は最低限のことをやって、極力民間企業にやってもらうという考え方です。ですが、国が絡むことで加速化できることはあります。
まず、国が事業を民間へ委託することになるので、民間事業者は国に委託報告書を提出します。
これによって海外展開に関する戦略の共有ができます。民間であれば、成功したノウハウを共有する
ことはしませんが、ここでは公共物として共有し、さまざまな方に形式知として残すことができます。
また、国と民間で「どこの国にどういったものを提供するか」といった戦略を立てることができます。
また、民間企業だけでは難しい規制についても―インドなどの事例のように―国レベルの折衝で緩和し、協力関係を結ぶことができます。
ただ出資はワンオブゼムの施策です。官民が議論して、ハンズオンの経営者も入り、知見ができることこそが重要だと考えています。
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