米サンフランスコ拠点の動画共有サイト「クランチロール(Crunchyroll)」が、オンラインでのアニメ・
コンテンツ配信において、日本のアニメの米での制作・販売会社と正式に契約を結ぶことになった。
ここ数年、アメリカでは“ファン・サブ”と呼ばれる多数のアニメファン・サイトによる違法ダウンロードが
アニメ会社の正式流通を圧迫しており、DVDセールスを失速させる状況を生み出していた。
この“米国市場における日本アニメの危機”は無視できない事態に発展し、今年のアニメ・
エキスポでも、日本のアニメ・コンテンツ販売側やアニメ情報メディアなどが、新メディア時代に、
アニメ制作側と販売側、ファンが共存するための施策を話し合うパネル・ディスカッションが
設けられていた。
クランチロールは、こうした“ファン・サブ”の代表格。ファン・サブが合法的にアニメ・コンテンツ会社と
提携し、アニメを配信するとことはコンテンツ・ビジネスにおける大きな動きだ。Media Blastersとは
初取引、ADV Films、GDH Internationalとは取り扱いタイトルの拡大、T.O.Entertainmentとは
新作コンピューター・アニメ映画“EGG MAN”のワールド・プレミアという形で、画期的な提携を
進めていく。
クランチロールは、2006年8月に、熱心なアニメ・ファンたちが趣味として立ち上げた動画共有サイト。
今では17人のスタッフを抱え、月間アクセスは2億1500万PVという規模に成長している。
同社の共同創始者Vu Nguyen氏は、「クランチロールのユーザー層の99%は13〜34歳。29%が
13歳〜17歳という比較的若い世代です。インターネット使用に抵抗がない上、お金より時間が
あるため、インターネットでの配信が適している。アニメ会社には、違法ダウンロードやDVDセールスの
下降による損失を補うためにも、ファンが求めるオンライン配信に前向きになってほしい」と、
今後も提携先を拡大していく意気込みを示した。
一方、Media Blastersのゲイリー・コナー氏は、「クランチロールのようなオンライン配給元と
提携することにより、新しいビジネス・モデルが築けるだろう。また、デジタル配信によりコストが
削減され、価格も下がり、ファンや消費者へのメリットにもなる」と期待を寄せている。
また、ADVの代表ジョン・レッドフォード氏も、「18〜34歳といったメイン層の消費者たちは、ビデオ店や
ケーブル・テレビにとどまらず、インターネット上のメディアでのコンテンツを欲している。こうした
技術に優れた新世代のアニメ・ファンたちに向けたプラットフォームとして、クランチロールは最適だ」
と前向きな姿勢だ。
なお、今回の提携タイトル名は、8日(金)〜10日(日)まで米メリーランド州ボルチモアで開催中の
アニメファン・イベント「OTAKON」にてお披露目される予定。
今回の提携は、“米国市場における日本アニメ危機”の状況に、新たな風をおくり込むことになりそうだ。
*今回、新たにクランチロールで取り扱われる主なタイトルは下記の通り。
●T.O. Entertainment:EGG MAN
●Media Blasters:女子高生 GIRL’S HIGH、無敵看板娘、カイト リベレイター、片腕マシンガール
●ADV Films:Angelic Layer、幻影闘士バストフレモン、極上生徒会、Chance Pop Session、
Lady Death、Magical Play、劇場版 機動戦艦ナデシコ、ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて」、
Parasite Dolls、幻想魔伝 最遊記
●GDH International:カレイドスター、PEACE MAKER鐵
Variety Japan
http://www.varietyjapan.com/news/animation/2k1u7d00000a3bja.html