■吹き抜けの大空間
都営荒川線の「鬼子母神駅」から歩いてすぐの場所に、東京メトロ副都心線雑司が谷駅は建設された。
地上部分の建物の外観は、茶の素焼きの厚い板を並べ木目調に。
周辺の住居に溶け込み、地下鉄の入り口を示す案内がなければ見過ごしてしまいそうだ。
駅の近くには、鬼子母神堂へ続くケヤキ並木がある。このケヤキ並木が同駅のコンセプトだ。
雑司が谷駅をはじめ、副都心線開業に併せ新設される6駅は、それぞれ1人の設計者がデザインを担当。
地域に親しまれる駅にしようと、周辺地域の特徴を取り入れた駅作りとともに、
駅を象徴する「ステーションカラー」を採用した。雑司が谷駅は、ケヤキ並木にちなんだ青竹色だ。
最も駅の特徴を表しているのは、改札階からホームへ続くエスカレーター付近だろう。
天井は、地上建物と同様に木目調を採用。壁面が曲線を描くことで、歩く人にケヤキ並木を
歩いているような感覚を持ってもらえるようにした。「天井の板のすき間から差し込む光は
木漏れ日をイメージしました」と語るのは、同駅の建設を担当した
東京メトロ工務事務所建築第4課の山根好数さん(33)だ。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200805280012a1.jpg デザインに凝りすぎても駅本来の機能が損なわれてしまう。何よりも、誰もが安全に駅を使ってもらうための
駅作りに心を砕いた。雑司が谷駅周辺には高齢者も多く住む。段差の解消や視覚障害者への音声案内など
バリアフリー設備の充実、わかりやすい案内表示などがそれだ。
副都心線駅の設計に取りかかったのは、3年前。実はこのとき、山根さんが担当したのは北参道駅だった。
国立能楽堂が近いことから、和をイメージしたデザインとしたという。2年前の駅の建設着工と同時に
雑司が谷駅を担当することになった。自ら設計した駅の建設に携わることはできなかったものの、
同駅を設計した同僚からも「イメージ通りに完成したと言ってもらえました」と、仕上がりに満足そうだ。
副都心線の駅は、これまでの地下鉄駅にない開放感が特徴だ。新宿三丁目、雑司が谷など4駅で
天井を高くした大空間を取り入れたのも、利用客に地下という圧迫感を与えることなく快適に過ごして
もらうための試み。これまで天井は高くても3メートルだったが、吹き抜け構造の雑司が谷駅の改札階の
天井高は5メートルと高い。地上から改札階へ降りる途中には、ベンチが置かれた空間が広がり、
地域の人が憩う公園のようでもある。
山根さんにとって、まったく新しい駅の設計に携わったのは初めての経験。
「自分のイメージする駅を作り、それをお客さまに利用していただけることがうれしい」という。
今後は、既存駅の大規模改修などに今回の経験を生かしていくことになるが、
「新しいデザイン、材料を取り入れ、近代的で環境に優しい駅を設計していきたい」
と抱負を語っていた。
FujiSankei Business i.
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200805280012a.nwc 東京メトロ|副都心 縦断。
http://www.tokyometro.jp/fukutoshin/