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>>3のつづき)
いまでは、「なんで…」の答えは、誰の目にもはっきりしている。
第一は、松井の能力不足ではなく、ルセイ監督の能力不足だったということだ。自身が元アタッカーだった
ため、オフェンス、とくにゴミスに心血を注ぎすぎたミスが1つ。グループ掌握ができず、ロッカールームは
デルニス派とジャノ派に分裂、デルニスが監督に告げ口までするようなドロドロを許してしまったミスが2つ。
実力も経験もリーダー性も抜群のジャノを外したミスが3つ。目標管理ができず、26年ぶりのUEFAカップに
熱中するあまり、国内リーグとの両立ができなかったミスが4つ…。酷だけれど、やはり実力がなかったのだ。
第二に、複雑なクラブ事情も、めいっぱい絡んでいた。数年前から2人の会長と2つの派閥に分裂してきた
歴史だ。「会長が2人いるという事実は知ってたけど、まさかこんなに複雑だとは思わなかった…」と松井も苦笑する。
早い話、ルセイ監督はロメイエ会長派に属し、松井はカイアゾ会長派によって獲得された選手だったのだ。
しかも監督は昨シーズン、解任寸前まで行ったあと選手らに救われたため、そのメンバーしか信用しなく
なって、そこにしがみついた。スポーツ部門の実権もロメイエ会長派に握られていた。だから、もともとルセイ
監督には、“敵が送り込んだ松井”を重用する気など、なかった可能性が高い。松井が厳しい状況に陥った
のには、こうした背景もあったのである。
もっとも、クラブの名誉のために付け加えておくと、2会長は個人的に憎しみあっているわけではないらしい。
ただ、フランス・フットボール誌記者によると、「ロメイエ会長は地元出身の“クラブ愛”派、カイアゾ会長はパリから
きた実業家で“ビジネス”派。このためサポーターの多数は、やはりお金よりもクラブ愛を支持している。いずれに
せよサンテティエンヌは、慢性的不安定に冒されているクラブ」だそうだ。
しかし、ともかく、歴史的連敗を重ねたルセイ政権は、崩壊した。11月10日、解任。11日、アラン・ぺラン
新監督就任。待ちに待った実力派監督の到来だった。
15節(11月22日)。とうとうサンテティエンヌに雪が降った。対するはニース。64分、ついにぺラン新監督が
松井を呼んだ。
(つづく)