【サッカー】「我々はついに松井大輔を見た」 “人生一番の谷底”から這い上がったマツイ・ルネッサンス[12/12]

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3 ◆cwSHAKEbig @鮭おにぎりφ ★
>>2のつづき)
 貴重なホーム初先発をこんなかたちでフイにしてしまった松井は、さすがに試合後、「今日のレキップに
何て書いてあったの?」と私に質問した。そしてローテーションの欠如に疑問を呈した記事だとわかると、
「その通りだと思うよ、俺は!」と珍しく声の調子を上げた。「11人だけでやってるというか、あんまり他の
選手のことは考えてないってのはあるかもしれないっす。みんなが悪いのに、俺たちが悪いみたいに
なっちゃってるから、それが悔しい」とも言った。だが、それ以上の言葉を自分に禁じるように、記者団に
背を向けた。レキップに同調はしたけれど、監督批判はついにしなかった。

 そして3日後の試合(29日)でもベンチに張り付けられた松井は、静かにこう語った。

 「僕の人生の中で一番の谷底かもしれないけど、それを登っていけばこそまた自分の進化ができるんだ
と思う。人生ずっと楽しいわけじゃないし、苦しい時期も乗り越えないと、前を向けないし前がない。サッカーは
僕の生き甲斐。だから楽しくなるようにしたい…」

 にもかかわらずロメイエ会長は30日、「松井はニセモノなんじゃないか。従兄だか兄弟だか」と、ひどい
皮肉をサポーター会合で吐いた。思えば、地獄の1週間だった。

 それでも松井は、ひたすら、ただ一つのことを念じ続けた。「いつか必ずチャンスが来る。それを待とう」。
自分にもそう言い聞かせ、ブログにもそう書き、記者たちにもさとすようにそう繰り返した。忍耐することも
サッカーだ、と思い続けた。
そんな松井を、変わらずに支え続けたファンやチームメイトがいたことも、救いだった。

 「コロリと変わる人もいたけど、同時にね、変わらずに応援してくれるファンやサポーターやチームメイトもいた。
ジャノとかヨアンとかソジェがね、『絶対に大丈夫だよ。必ず君の時代が来るよ』って。しんどかったけど、
これがサッカーなんだと思った」

 ジャノはサポーター人気がクラブ断トツのGK、ヨアン(オットクール)はルマンの仲間だったMF、ソジェは
しっかりしたDFだ。とくにジャノは、松井の才能をフランスメディアに堂々と訴え続けた(自分のことでは
つい怒りが爆発し、ホテルの窓ガラスを割ってしまったけれど)。
(つづく)