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>>1のつづき)
プレーでも模索した。中へ中へと絞るオフェンスに疑問を感じ、外に開いてみるのだが、ボールは
来ない。たまに来てクロスを放っても、ゴミスが決められない。するとまたベンチに戻された。
「いろんな人が、試合に出ていないというだけで自分を評価するのが厭だったし、また、出た途端に
コロリと変わるところもね…。これがサッカーなんだなって思い知った」
それでも松井は、けっして監督批判をしなかった。
ただ、一度だけ、声を高めたことがあった。
10月末のこと、ルセイ監督(当時)が、国内リーグとUEFAカップをほぼ同じメンバーで乗り切ろうと
している無理を指摘されて、「12人か13人しか90分プレーできる選手がいないからこのやり方を続けて
いるのだ」と放言した。まるで「控えが無能なせいだ」といわんばかり。普通の監督なら、「控えの選手は
大切なグループの一員」と心から思い、また言うものである。
ところがルセイ監督は、レキップ紙がこれを批判的トーンで紹介した当日(10月26日)に、それへの
あてつけのように、突然、松井に先発をふった。…それが松井の、なんと、ホーム初先発だった。しかも
相手は日本がらみのグルノーブル。どこかにネガティブな意図が見え隠れしていると感じたのは、
果たして私だけだったかどうか…。
だが、そんな報道事情まで知らなかった松井は、一種の罠にはまってしまう。というのも、チームは
すでにガタガタで、松井が絡む以前に、守備の崩れからたった3分で勝負を決められてしまったのに、
監督は真っ先に松井を45分でベンチに下げたのだ。レキップ記者に「ほら見ろ」といわんばかりに…。
(つづく)