■RAGNAROK Online Ep1.5 Lv789 りゅう君
2 :
名も無き冒険者:03/01/30 23:54 ID:UGTuoeFH
2!
死にたいと友人に言いたかったりするけど
それは助けて欲しいからで
だけども言ったら相手に少しばかり負担になるんじゃないかと思ったら
言えないわけで、相手はその程度なん俺らとか言ってくれるわけで
すっげぇ嬉しいけど、まぁそういう感じで結局伝えたくても伝えれない状況で追い詰められてます
キリマンジャロ
1桁ゲト
5 :
魚醤屋:03/01/30 23:54 ID:DhJv9FSM
6 :
アラーム:03/01/30 23:54 ID:yD5vWN9E
もやすみ〜
乙
□注意□
・このスレッドはフィクションで、登場人物は実在の人物とは一切関係がありません
10 :
魚醤屋:03/01/30 23:55 ID:DhJv9FSM
チェキタイム警報が発令サレマスタ
□お約束□
・RMT(現金取引)・チート行為・バグ利用・BOTは見かけたらGMへメール
・メール欄にsageは必須。故意age・煽り・荒らし・駄コテは絶対放置
・2ゲット・乙・バーヤ・首太いね・お察しください・IDチェキは無駄な消費です。AAも控えましょう
・透明あぼーんを効果的に使いましょう。というか使いなさい
・書き込みは、既出かどうか検索を(Win「Ctrl+F」キー、Mac「コマンド+F」)キタ━(゚∀゚)━!は実況で
・ネタ、釣り、縦読みはメール欄を上手に活用しましょう
・サーバー別の出来事は、各サーバーの該当スレへ。論争に発展したら隔離でドーゾ
・雑談はIRC「#RO_2ch」で。ROMでもOK だけど結構排他的
・あぷろだは分けて使い、転送量の分散を図りましょう
・新スレは
>>900に一任、無理なら
>>900が指名、反応無い時は
>>930、その次は
>>950 ・スレ立て該当者は、立てる前後に必ず報告をして下さい
・新スレ誘導前の書き込みは自粛。立ったら誘導しつつ会話続行。
・スレの進行速度が速い場合は避難所を利用。勝手にスレを立てては重複の元です
8ゲット
15ゲトー
16 :
名も無き冒険者:03/01/30 23:56 ID:UGTuoeFH
りゅう君てのはRO厨でいいんだな?
17 :
名も無き冒険者:03/01/30 23:57 ID:CBQt085c
18ぐらい!
後ろの■は取り外すことにしたのか?
チェキ
>>16 それでいて、短パンの似合うショタい感じの見た目小学生、実は中3
.ハ ,ハ
/ノ/ノ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(,,゚Д゚) < 乙だフルァ!
ノ uu| \_________
_( , ヽ、∧_
"--−´ (⌒) <ダンダンダン!!
りゅう君の将来が楽しみです。
いまなら言える。
Rough Sketch11のPASS教えてくれ!!
('A`)
25 :
20:03/01/30 23:59 ID:hCfvmX7a
更に、短パンはハンタより短い足のつけねギリギリ
金 曜 日 の お か ず は フ ラ イ デ ー
短パンって言ったらB'zだろ
新スレ立ったから風呂いってくる
俺がいない間も大切にこのスレを育て上げてくれ。
ちなみに今回のスレの能力値
攻撃力:5254
防御力:9048
あと
>>1乙でした
はい、高齢のIDチェキ
俺のIDに俺の好きな人の頭文字Hがあったら
近いうちに告白ります
乙ってことで
早速IDチェキ
早速IDチェキ
+激しく+
(σ゚∀゚)σチェケラー
ヽ( ・∀・)ノウンコー
今更ながらROを始めようとはじめてのROを購入しますた
IDでぶちのめせ!
殿堂入り来いやぁ!
ヽ( ・∀・)シッコー
>>28 B'z は小学生に見えないので脳内BAN
チェケダ
やることねぇな。ROも飽きてきた。
IDに214の数字がすべて入ってたら、
バレンタインにチョコケーキ焼くことにする。
いぢき!
予想通りのスレタイやね・・・。
IDに1が入ってたら孫でオナる!
IDにPかpが入ってたら逆毛ピクミンでオナる!
IDに+が入ってたらベランダから外にオナる!
チェキ(*´д`)σ
IDにroがあったら母ちゃんと犯る。
(σ゚∀゚)σチェケラー
HDDがカラカラ言ってるんですが
どうしたらいいでしょうか?
ちぇき
ちぇき
\\
\\\ @@@ あんたら!
(⌒\@# _、_@ ちぇきちぇき言ってないで宿題やんな!
\ ヽヽ( ノ`)
(mJ ^ ⌒\
ノ ∩ / /
( | .|∧_∧ OKOK。
/\丿 | ( ) 母者マテ!ときに落ち着けって!
(___へ_ノ ゝ__ノ
捨て垢で座ってエロゲトークしてる馬鹿の足元に
ポタ出してる時が一番楽しかった・・。
IDちぇき
IDにWMが入ってたら900円残ってるWMの番号を公開する
チキ
苺ましまろ、おもろいな
>>44 火遊びが大好きだな。今回も漢を見させてもらった。
IDにsとoとnがあったら孫一族を滅したい
>>54 残念ながらIRisのGameMaterですた
IDに数字が2つ以上入ってたら来月は幼女の乳をナデナデできるはず('A`)
この流れなら言える。
この1ヶ月まともなレアが出なかった俺に、久しぶりにレアがキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!
小説Wizardry「隣り合わせの灰と青春(JICC版)」+「風龍(上・下復刻版の初版)」
なんとなく立ち寄った古本屋さんで発見して即買いしたよ(・∀・)
…ファミコン必勝本のころはよかったなぁ(´ー`)y―┛~~
IDに記号が入ってたら今日は徹夜。
IDにRかOが入ってたらねーちゃんとハァハァする
>>62 おめ。
IDに4が入ってたら今年も離れ離れの親戚の子(3歳♀)に会える!!
流れに乗じてIDチェキ
たいしたことないIDだったら今日提出のレポートやります('A`)
・・・('A`)ノ メンドクセ
どこまでもつづく海を見たことがある。
どうしてあれは、あんなにも心に触れてくるのだろう。
そのまっただ中に放り出された自分を想像してみる。
手をのばそうとも掴めるものはない。
あがこうとも、触れるものもない。
四肢をのばしても、何にも届かない。
どこまでもつづく海を見たことがある。
どうしてあれは、あんなにも心に触れてくるのだろう。
そのまっただ中に放り出された自分を想像してみる。
手をのばそうとも掴めるものはない。
あがこうとも、触れるものもない。
四肢をのばしても、何にも届かない。
水平線しかない、世界。
そう、そこは確かにもうひとつの世界だった。
そしてその世界には、向かえる場所もなく、訪れる時間もない。
でもそれは絶望ではなかった。
あれこそが永遠を知った、最初の瞬間だった。
大海原に投げ出されたとき、ぼくは永遠を感じる。
そういえば今日まだIDチェキしてなかった
だからぼくは、小さな浜辺から見える、遠く水平線に思いを馳せたものだった。
虚無…。
意志を閉ざして、永遠に大海原に浮かぶぼくは、虚無のそんざいだった。
あって、ない。
でもそこへ、いつしかぼくは旅だっていたのだ。
夕日に赤く染まる世界。
IDにFかZが入ってたら漏れのギルドに人が来る!
IDに数字が入ってたら大学合格
静止した世界。
べつに光景が止まっているわけじゃない。
光は動いているし、バイクの加速してゆくエンジン音だって聞こえる。
静止していたのは、それを見ている自分の世界だった。
真夜中、誰もが寝静まった中、遠くに犬の遠吠えや、バイクのエンジン音を聴くのに似ている。
そういうとき、ぼくは属する世界が違うという違和感を覚えるものだった。
聞こえるのだけど、そこにはたどり着けない。
永遠、たどり着けない。
どれだけ歩いていっても、あの赤く染まった世界にはたどり着けないのだ。
それがわかっていた。
そこには暖かな人々の生活がある。
でもそこにはたどり着けないのだ。ぼくは。
ころころ…。
微かな音がした。
それは確かにこちら側の音だ。
(あそこには帰れないんだろうか、ぼくは)
訊いてみた。
(わかってるんだね、あそこから来たってことが)
(ああ、わかる。でも、ほんとうにあの街のどこかに住んでいたわけじゃない)
(そう。すごいね)
(つまり、あっち側の一部だったってことがわかるんだ)
(でもね、旅立ったんだよ、遠い昔に)
(そうだね。そんな気がするよ)
(でも遠い昔はさっきなんだよ)
IDチェック
やっとこさレベル71になったアサですが
廃と呼んでもらえるでしょうか?
エロ小説キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
(それも、そんな気がしてた)
(つまり、言いたいこと…わかる?)
(わかるよ。よくわかる)
ずっと、動いている世界を止まっている世界から見ていた。
一分一秒がこれほど長く感じられることなんてなかった。
もどかしいくらいに、空は赤いままだったし、耳から入ってくる音は、変わり映えしなかった。
(それも、そんな気がしてた)
(つまり、言いたいこと…わかる?)
(わかるよ。よくわかる)
ずっと、動いている世界を止まっている世界から見ていた。
一分一秒がこれほど長く感じられることなんてなかった。
もどかしいくらいに、空は赤いままだったし、耳から入ってくる音は、変わり映えしなかった。
漏れのID激しいな
違うな…。変わるはずがないんだ。
進んでいるようで、進んでいない。メビウスの輪だ。
あるいは回転木馬。リフレインを続ける世界。
(世界はここまでなんだね…)
ぼくは彼女に言った。
(飽きたら、次の場所へ旅立てばいいんだよ)
(……そうだね)
ヘッドライトがヘッドライトを追ってゆく。
何度も見ている一定の距離感を置いて。
(いや…もう少しここにいるよ)
(そう? そうだね…)
ぼくは体を慣らすように、その光景に身を浸していた。
急ぐ旅でもない。
ずっと、眺めていた。
また…悲しい風景だ。
(どうしてぼくは、こんなにも、もの悲しい風景を旅してゆくのだろう)
(あたしにはキレイに見えるだけだけど…でも、それが悲しく見えるのなら、やっぱり悲しい風景なんだろうね)
(ひとが存在しない場所だ)
(そうだね)
(ひとが存在しない場所にどうしてぼくは存在しようとするのだろう。もっと、ひとの賑わう町中や、暖かい家の中に存在すればいいのに)
(さあ…よくわかんないけど。でも、あなたの中の風景ってことは確かなんだよ)
(つまりそれは…ぼくの心を風景に置きかえてみたときの姿なんだろうか)
(だったら、少し悲しすぎる…?)
(わからない)
(でも、こんな世界だからこそ、ぼくは求めたんだろうけどね)
帰れない場所。
もう、そこからはどこにもいけない場所。
すべてを断ち切った、孤立した場所にぼくは、ずっと居続けていたいんだ。
そして、そんななにもない、どこにも繋がらない場所で、ぼくはぼくを好きでいてくれるひとだけの存在を、もっと切実に大切に思うのだ。
きみと一緒にいられること。
それはこの世界との引き替えの試練のようであり、また、それこそがこの世界が存在する理由なのだと思う。
(次はどこにいこうか)
(大丈夫。あたしはどこだってついていくよ。ずっとね)
(そうだね)
(このままずっと、いけばいいんだね)
(そう。ずっと)
どこまでもいけばいい。ぼくの心の中の深みに。
(ねぇ、たとえば草むらの上に転がって、風を感じるなんてことは、もうできないのかな)
(ううん、そんなことはないと思うよ)
(そうしてみたいんだ。大きな雲を真下から眺めてさ)
(だったらすればいいんだよ。これはあなたの旅なんだから、好きなことをすればいいんだよ)
(でも、どうしたらいいんだろう。ぼくはいつも見える世界の外側だ)
(まだ、難しいのかな。あたしは感じられるよ。草の匂いを帯びた風が)
(やり方を教えてくれよ)
(うーん……じゃあ、手伝うよ)
彼女が僕の背中に回って、そして両腕で僕の体を抱く。
(いい?)
(あ、うん…)
(雲が見えるよね…)
すぐ耳の後ろで声。
(見えるよ)
(ゆっくりと動いてるよね)
(そうだね。動いている)
(あれは、何に押されて動いてるのかな)
(風)
(そう、風だね…)
(風は、雲を運んで…ずっと遠くまで運んでゆくんだよ…)
(…世界の果てまでね)
(………)
草の匂いが、鼻の奥を刺した。
それは風に運ばれてきた匂いだ。
(きたよ…風…)
(そう、よかった)
(でも、もう少し手伝っていてほしいな)
(うん、わかったよ)
もう少し、抱かれていたかった。
>>61 ポタ屋中にそいつに話しかけられたことあるかもしんね。
もう強制的に古城に送りたかったな、あれは
いよいよ葱板ですねアーハハ
バフォメットキタ━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
これでまた葉鍵が叩かれるのかΛ||Λ
世界の果てまで届くという風を感じながら。
(空だけの世界…)
(この下には、何があるんだろうね)
(なんにもないよ)
(そうかな。あたしは、広大に広がる野に、放し飼いの羊がたくさんいると思うよ)
(いや、ずっと空だけが続いてるんだと思う)
(どうして…? 羊を放し飼いにしておこうよ)
(大地がないから、羊はみんな落下してゆくよ)
(だったら、大地を作ろうよ。新緑の芽生えたばかりの大地)
(いらないよ。海でいい)
(羊は、みんな海に落下してゆくの…?)
(そう。ぼちゃぼちゃと海に落ちる。一面水平線の海。そこでぷかぷかと浮かんで余生を送るんだ)
(でもその羊たちは、みんなあなたなんだよねぇ?)
(そう。僕だよ。無力な羊はぜんぶ僕だ…)
(…というよりも、今の僕が、海に浮かぶ羊なんだと思う)
海に浮かぶ羊。それは唐突にしっくりくる、たとえだという気がした。
(でも、夢の中ではみんな、空を飛ぶんだよ)
(羊が空を飛ぶのかい)
(飛んでもいいと思うけどな)
(それはたぶん滑稽だよ。似合わない…)
(…羊たちは、自分の立場をわきまえた上で、海を選ぶんだ)
(それも自分の比喩…?)
(………)
(…少し言い過ぎたかな)
(ううん、気にしてないけど…)
つまりは僕は、自分の立場をわきまえてこの世界を選んだのだと。
それはこの世界を蔑んでいることになる。
彼女を含むこの世界を。
…気づいているだろうか?
この僕の猜疑心に。
>>61 (゚д゚)<壁してください
あれか?
ちょっと前に本スレに「壁って何ですか、faqにも載ってないし」とか言ってたヤツだったり
(でも羊たちは、とても泳ぎがうまいんだ)
(ほんとに…?)
(じゃぶじゃぶと波を掻き分けてゆくよ。たぶんね)
(だったらいいよね。空が飛べなくても)
でもたどり着ける島なんて、ないんだ。
ないんだよ。
たとえば泣きたいときがある。
どこへ向かって泣けばいいのだろう。
なにを思って泣けばいいのだろう。
虚無からは幸せは生まれない。
そんな気がしていた。
放り出された海に浮かび、ぼくはなにを泣き叫ぶのだろう。
そんなことをする気にすらならない。
それが幸せなのだろうか…。
空虚は、ぽっかりと胸に空いた穴。
もう失うこともない。
それが完全な形なのだろうか。
なにも失わない世界にいるぼくは
なにをこんなにも恐れているのだろう。
選択肢のない袋小路だった。
つまりそれは、終わりだ。
それを自分でも気づかないうちに心のどこかで悟っていたから、こんなにも空虚だったんだ。
空虚だったんだ。
帰り道…
(ん…?)
帰り道を見ている気がするよ。
(そう…?)
うん。遠く出かけたんだ、その日は。
(うん)
日も暮れて、空を見上げると、それは違う空なんだ。いつもとは。
違う方向に進む人生に続いてるんだ、その空は。
その日、遠出してしまったために、帰りたい場所には帰れなくなってしまう。
ぼくは海を越えて、知らない街で暮らすことになるんだ。
そしていつしか大きくなって、思う。
幼い日々を送った、自分の生まれた街があったことを。
それはとても悲しいことなんだ。
ほんとうの温もりはそこにあるはずだったんだからね。
(………)
(…それは、今のあなたのことなのかな)
そんなふうに聞こえた…?
(うん…)
ぼくはね、最後まで頑張ったんだ。
(………)
あのとき、頑張って、自分の街に居続けることを願った。
それは別にこの世界を否定しようとしたんじゃない。
この世界の存在を受け止めたうえで、あの場所に居残れるんじゃないかと、思っていたんだ。
でもダメだった。
(そんなことわざわざ言って欲しくないよ…)
ただね、もっとあのとき頑張っていれば、ほんとうに自分をあの場所に繋ぎ止められたのか、それが知りたかったんだ。
(どうして?)
べつに、可能性があったとして、それはここに来ないで済んでいたのか、という話しじゃない。
ただ、もしほんとうにできるんだったら、ぼくの人との絆っていうものがそれだけのものだったのかと、悔しいだけなんだ。
どう思う?
(たぶん…無理だったと思うよ)
(この世界は終わらないよ)
(だって、すでに終わっているんだから)
また、ぼくはこんな場所にいる…。
悲しい場所だ…。
ちがう
もうぼくは知ってるんだ。
だから悲しいんだ。
(悲しい…?)
今さら、キャラメルのおまけなんか、いらなかったんだ。
(たくさんあそべるのに?)
うん。
いらなかったんだ、そんなもの。
(゚д゚)<突きとか 気合と〜か 最初にやりだしたのは〜
(どうして?)
おとなになるってことは、そういうことなんだよ。
(わからないよ)
わからないさ。
だってずっと子供のままだったんだから…
………。
ちぇけら(´∀`)
ここは本ヌレです。
ROの話題はやめてください
('A`)<人がレポートやろうと気張ってる時に荒らすんじゃね
……。
…。
うあーーーん…
うあーーーーーーーんっ!
泣き声が聞こえる。
誰のだ…?
ぼくじゃない…。
そう、いつものとおり、みさおの奴だ。
「うあーーーーん、おかあさーーんっ!」
「どうしたの、みさお」
「お兄ちゃんが、蹴ったぁーーっ!」
「浩平、あんた、またっ」
「ちがうよ、遊んでただけだよ。真空飛び膝蹴りごっこして遊んでたんだ」
「そんなのごっこ、なんて言わないのっ! あんた前は、水平チョップごっことか言って、泣かしたばっかじゃないのっ」
「ごっこだよ。本当の真空飛び膝蹴りや水平チョップなんて真似できないくらい切れ味がいいんだよ?」
「ばかな理屈こねてないで、謝りなさい、みさおに」
「うあーーんっ!」
「うー…みさおぉ…ごめんな」
「ぐすっ…うん、わかった…」
「よし、いい子だな、みさおは」
「浩平、あんたが言わないのっ!」
じっさいみさおが泣きやむのが早いのは、べつに性分からじゃないと思う。
ぼくが、ほんとうのところ、みさおにとってはいい兄であり続けていたからだ。
そう思いたい。
母子家庭であったから、みさおはずっと父さんの存在を知らなかった。
ぼくだって、まるで影絵のようにしか覚えていない。
動いてはいるのだけど、顔なんてまるではんぜんとしない。
そんなだったから、みさおには、男としての愛情(自分でいっておいて、照れてしまうけど)を、与えてやりたいとつねづね思っていた。
父親参観日というものがある。
それは父親が、じぶんの子供が授業を受ける様を、どれ、どんなものなのかとのぞきに来る日のことだ。
ぼくだって、もちろん父親に来てもらったことなんてない。
でもまわりの連中を見ていると、なんだかこそばゆいながらも、うれしそうな顔をしてたりする。
どんな頭がうすくても、それは来てくれたらうれしいものらしかった。
しかしそのうれしさというものは、ぼくにとっては、えいえんの謎ということになる。
きっと、たぶん、二度と父親なんて存在はもてないからだ。
振り返ったとしても、そこには知った顔はなく、ただ誰かから見られているという実感だけがわく、ちょっと居心地の悪い授業でしかない。
ぼくの父親参観とは、そんな感じでくり返されてゆくのだ。
でもみさおには、男としての愛情を与えてやりたいとつねづね思っているぼくにしてみれば、ぼくと同じような、
『ちょっと居心地の悪い授業でした』という感想で終わらしてやりたくなかった。
だから、一大作戦をぼくは企てたのだ。
「みさお、ぼくがでてやるよ」
「お兄ちゃんって、あいかわらずバカだよね」
「バカとは、なんだ、このやろーっ!」
「イタイ、イタイよぉーっ、お兄ちゃんっ!」
アイアンクローごっこで少し遊んでやる。最近のお気に入りだ。
「はぅぅっ…だって、お兄ちゃん、大人じゃないもん」
「そんなものは変装すればだいじょうぶだ」
「背がひくすぎるよ」
チェキラッチェ
「空き缶を足の下にしこむ」
「そんな漫画みたいにうまくいかないよぉ、ばれるよぉ」
「だいじょうぶ。うまくやってみせるよ」
「ほんとぉ?」
「ああ。だから、次の父親参観日は楽しみにしてろよ」
「うんっ」
そういやβ2終了頃に名前は違ったが
>>61と同じようなヤツにあった覚えあるな・・・・・・・・
初めはバカにしていたみさおだったが、最後は笑顔だった。
みさおの笑顔は、好きだったから、うれしかった。
そして来月の父親参観日が、ぼくにとっても待ち遠しいものになった。
みさおが病気になったのは、そろそろ変装道具をそろえなきゃな、と思い始めた頃だった。
ちょっと治すのに時間がかかるらしく、病院のベッドでみさおは過ごすことになった。
「バカだな、おまえ。こんなときに病気になって」
「そうだね…」
「おまえ、いつも腹出して寝てるからだぞ。気づいたときは直してやってるけど、毎日はさすがに直してやれないよ」
「うん、でも、お腹に落書きするのはやめてよ。まえも身体検査のとき笑われたよ」
ぼくはいつも、油性マジックでみさおのお腹に落書きしてから布団をなおしてやるので、みさおのお腹はいつでも、笑ったり、泣いたり、怒ったりしていた。
「だったら、寝相をよくしろ」
「うん。そうだね」
みさおの邪魔そうな前髪を掻き上げてやりながら、窓の外に目をやると、自然の多く残る町の風景が見渡せた。
そして、秋が終わろうとしていた。
「みさおー」
「あ、お兄ちゃん。どうしたの、こんな時間に」
「みさお、退屈してると思ってな」
「ううん、だいじょうぶだよ。本、いっぱいあるから、よんでるよ」
「本? こんな字ばっかのが、おもしろいわけないだろ。やせ我慢をするな」
「ぜんぜんがまんなんかしてないよ。ほんと、おもしろいんだよ」
「というわけでだな、これをやろう」
ぼくは隠しもっていた、おもちゃをみさおに突きつけた。
「なにこれ」
「カメレオンだ」
「見たらわかるけど…」
プラスチックでできたおもちゃで、お腹の部分にローラーがついていて、それが開いた口から飛び出た舌と連動している。
「みろ、平らなところにつけて、こうやって押してやると、舌がぺろぺろ出たり入ったりする」
「わぁ、おもしろいね。でも、平らなところがないよ」
「なにっ?」
言われてから気づいた。
確かにベッドで過ごしているみさおからすれば、平らな机などは、手の届かない遠い場所だ。
「あ、でも大丈夫だよ。こうやって手のひら使えば…」
ころころ。
「お、みさお、頭いいな。でも少し爽快感がないけどな」
「そんな舌が素早くぺろぺろ動いたって、そうかいじゃないよ。これぐらいがちょうどいいんだよ」
ころころ。
「そうだな」
「お兄ちゃん、ありがとね」
「まったく、こんなくだらない本ばっかでよんで暮らすおまえが、見るにたえなかったからな。よかったよ」
「うん。これで、退屈しないですむよ」
しかし話しに聞いていたのとは違って、みさおの病院生活は、いつまでも続いていた。
一度、大きな手術があって、後から知ったのだけど、その時みさおのお腹は、みさおのお腹でなくなったらしい。
前スレ
>>978 せんせいナツカスィ・・・(´・ω・`)
&チェケラッチョ
そして、そのころから母さんは病院よりも、ちがう場所に入りびたるようになっていた。
どこかはよくしらない。
ときたま現れると、ぼくたちが理解できないようなわけのわからないことを言って、満足したように帰ってゆく。
『せっぽう』とか言っていた。どんな漢字を書くかはしらない。
「わ、病室まちがえたっ!」
「合ってるよ、お兄ちゃん」
連番で抜けまくってんのは何でだ?
「え…? みさおか?」
「うん、みさおだよ」
みさおは、髪の毛がなくなっていた。
「びっくりしたぞ、お兄さんは」
「うん…」
ただでさえ、ここのところやせ細っているというのに、さらに頭がツルツルになっていれば、ぼくだって見間違える。
そのくらい、みさおは姿が変わってしまっていた。
「やっぱり、お腹がなくなったから、体重減っちゃったのか?」
「そうかも」
喋りながら、ころころとカメレオンのおもちゃを手のひらで転がしていた。
ぺろぺろと舌が出たり入ったりするのを、みさおはくぼんだ目で、見つめていた。
ぼくはみさおには絶対に、苦しいか、とか、辛いか、とか聞かないことにしていた。
聞けば、みさおは絶対に、ううん、と首を横に振るに違いなかったからだ。
気を使わせたくなかった。
だから、聞かなかった。
ほんとうに苦しかったり、辛かったりしたら、自分から言いだすだろう。
そのとき、なぐさめてやればいい。
元気づけてやればいい。
そう思っていた。
年が明け、みさおは、正月も病室で過ごしていた。
ぼくも、こんなにも静かな正月を送ったのは初めてだった。
「みさおは、今年の願い事はなんだ?」
「もちろん元気になることだよ。それで、お兄ちゃんがきてくれる、ちちおや参観日をむかえるの」
「そうだな。去年は無理だったもんな」
チェキっ娘
「うん。今年こそはきてもらうよ」
時間はあのときから止まっていた。
そろえ始めていた変装道具も、中途はんぱなままで、部屋に置いてある。
進んでいるのは、みさおのやせる病状だけに思えた。
そのときを機に、みさおは父親参観日のことをよく口にするようになった。
ぼくも、今年こそはと、強く思うようになっていった。
本日のIDチェキッ!
正月も終わり、街並みが元通りの様相に戻ってゆく。
でも、みさおの過ごす部屋だけは、ずっと変わらなかった。
「みさおー」
「お兄ちゃん、また、こんな時間に…」
「また手術するって聞いて、きたんだよ。また、どこか取るのか?」
「ううん…。その手術はしないことになったよ」
>>121 (゚Д゚)<ラオウなのかしら? 駆け抜けて逝く〜(駆け抜けて逝く〜)
「そうか。よかった。どんどんみさおのお腹が取られてゆくようで恐かったんだよ」
「うん。もうしんぱいないよ」
「ほんと、よかったよ」
「うん…」
ころころ。
ふたりが黙り込むと、ただカメレオンを手のひらで転がす音だけが聞こえてくる。
「おかあさんは、どんな感じ?」
「相変わらずだよ」
「お兄ちゃん、おかあさんのことも心配してあげてね」
「うん、そうだな…」
「じゃあ、そろそろ眠るよ」
「ああ」
静かに目を閉じる、みさお。
手には舌を突きだしたままのカメレオンを握ったままだった。
恐いくらいに静まり返る室内。
「………」
「…みさおー」
………。
「…みさお?」
………。
「みさおっ!」
………。
「みさおーっ! みさおーーっ!」
「…なに、お兄ちゃん」
「いや、寝ちゃったかなと思って」
「うん…寝ちゃってたよ。どうしたの?」
「ううん、なんでもない。起こしてわるかったな」
「うん…おやすみ」
「おやすみ」
月がまた変わった。
でもぼくたちは、なにも変わらないでいた。
みさおは誕生日を迎え、病室でささやかな誕生会をした。
でもぼくひとりが歌をうたって、ぼくひとりがケーキをたべただけだ。
………。
ころころ。
「………」
………。
ころころ。
「………」
「おにいちゃん…」
「うん、なんだ?」
「ちちおや参観日にしようよ、今日…」
「今日…?」
「うん、今日…」
「場所は?」
「ここ…」
「ほかの子は…?」
「みさおだけ…。ふたりだけの、ちちおや参観日」
「………」
「だめ?」
「よし、わかった。やろう」
「…よかった」
みさおが顔をほころばす。
ぼくは走って家に戻り、変装道具を押し入れから引っぱり出し、それを抱えて病院へと戻った。
病院の廊下で、ぼくはそれらを身につけ、変装をおこなった。
スーツを着て、ネクタイをしめ、足の下に缶をしこんだ。
そして油性マジックで、髭をかいて、完成した。
カンカンカンッ!と、甲高い音をたてながら、みさおの部屋まで向かう。
ドアの前にたち、そしてノックをする。
ノックより歩く音のほうが大きかった。
「みさおー」
ドアを開けて中に入る。
………。
「みさおーっ?」
………。
「…みさおーっ?」
「う…おにいちゃん…」
口だけは笑いながらも、顔は歪んでいた。
「ちがうぞ、おとうさんだぞ」
みさおが苦しい、辛いと言い出さない限り、ぼくも冷静を装った。
「うん…そだね…」
「じゃあ、見ててやるからな」
ぼくは壁を背にして立ち、ベッドに体を横たえる、みさおを見つめた。
ころころ…。
弱々しくカメレオンが舌を出したり、引っ込めたりしている。
ただそんな様子を眺めているだけだ。
………。
ころころ…。
「………」
………。
ころころ…。
「………」
「うー…」
「みさおっ?」
「しゃ、しゃべっちゃだめだよぉ…おとうさんは…じっとみてるんだよ…」
「あ、ああ…そうだな」
………。
「うー…はぅっ…」
苦しげな息が断続的にもれる。
ぼくはみさおのそんな苦しむ姿を、ただ壁を背にして立って見ているだけだった。
「はっ…あぅぅっ…」
なんてこっけいなんだろう。
こんなに妹が苦しんでるときに、ぼくがしていることとは、一番離れた場所で、ただ立って見ていることだなんて。
………。
「はーっ…あぅっ……」
………。
カメレオンの舌が動きをとめた。
そして、ついにみさおの口からその言葉が漏れた。
「はぁぅっ…くるしいっ…くるしいよ、おにいちゃんっ…」
だからぼくは、走った。
足の下の缶がじゃまで、ころびながら、みさおの元へ駆けつけた。
「みさお、だいじょうぶだぞ。お兄ちゃんがそばにいるからな」
「いたいよ、おにいちゃんっ…いたいよぉっ…」
カメレオンを握る手を、その上から握る。
「だいじょうぶだぞ。ほら、こうしていれば、痛みはひいてくから」
「はぁっ…あぅっ…お、おにいちゃん…」
「どうした? お兄ちゃんはここにいるぞ」
「うんっ…ありがとう、おにいちゃん…」
うお、気付かなかった。
かちゅのNGワード万歳。
ぼくは、みさおにとっていい兄であり続けたと思っていた。
そう思いたかった。
そして最後の感謝の言葉は、そのことに対してのものだと、思いたかった。
みさおの葬儀は、一日中降り続く雨の中でおこなわれた。
そのせいか、すべての音や感情をも、かき消されたような、静かな葬儀だった。
冷めた目で、みさおの収まる棺を見ていた。
ちぇっくいっとあうと
みさおのシーンは何回読んでも泣ける
こいつの部屋がどんなだか目に浮かぶな・・・
俺が言いたい事は・・・
IDチェキ
母さんは最後まで姿を見せなかった。
ぼくはひとりになってしまったことを、痛みとしてひしひしと感じていた。
そして、ひとりになって、みさおがいつも手のひらでころころと転がしていたカメレオンのおもちゃを見たとき、
せきを切ったようにして、ぼくの目から涙がこぼれだした。
こんな悲しいことが待っていることを、ぼくは知らずに生きていた。
ずっと、みさおと一緒にいられると思っていた。
ずっと、みさおはぼくのことを、お兄ちゃんと呼んで、
そしてずっと、このカメレオンのおもちゃで遊んでいてくれると思っていた。
もうみさおの笑顔をみて、幸せな気持ちになれることなんてなくなってしまったんだ。
すべては、失われてゆくものなんだ。
そして失ったとき、こんなにも悲しい思いをする。
それはまるで、悲しみに向かって生きているみたいだ。
悲しみに向かって生きているのなら、この場所に留まっていたい。
ずっと、みさおと一緒にいた場所にいたい。
うあーーーん…
うあーーーーーーーんっ!
泣き声が聞こえる。
誰のだ…?
ぼくじゃない…。
そう、いつものとおり、みさおの奴だ。
「うあーーーーん、うあーーーんっ!」
「うー…ごめんな、みさお」
「うぐっ…うん、わかった…」
よしよし、と頭を撫でる。
「いい子だな、みさおは」
「うんっ」
ぼくは、そんな幸せだった時にずっといたい。
それだけだ…。
あの日から、ぼくは泣くことが多かった。
泣いていない隙間を見つけては、生活をしているようだった。
ぼくはみさおと過ごした町を離れ、叔母さんのところへとあずけられていた。
4月の陽光に映え、緑がきれいな町だった。
でも、それでも、ぼくの涙は乾くことはなかった。
どれだけ涙というものは流し続けられるのだろう。不思議だった。
「泣いてるの…?」
そしてその町で、最初に泣いているぼくをみつけたのがその女の子だった。
晴れた日、曇りの日、小雨がぱらつく日…。
泣くぼくの隣には、彼女がいた。
「いつになったら、あそべるのかな」
毎日のように泣き伏すぼくを見つけては、話しかけてくる。
ぼくは口を開いたことがなかった。開いたとしても、嗚咽を漏らしただけだ。
もう空っぽの存在。亡骸だった。
うぉ、IEでのぞいたら爆撃されてんじゃんΣ(゚Д゚;)
チェキ。
それにもかかわらず、彼女はそこに居続けた。
いったい、その子が何を待っているのか、ぼくにはわからなかった。
「…きみは何を待っているの」
初めて、ぼくは話しかけた。
「キミが泣きやむの。いっしょにあそびたいから」
「ぼくは泣きやまない。ずっと泣き続けて、生きるんだ」
「どうして…?」
「悲しいことがあったんだ…」
「…ずっと続くと思ってたんだ。楽しい日々が」
「でも、永遠なんてなかったんだ」
そんな思いが、言葉で伝わるとは思わなかった。
でも、彼女は言った。
「永遠はあるよ」
そしてぼくの両頬は、その女の子の手の中にあった。
「ずっと、わたしがいっしょに居てあげるよ、これからは」
言って、ちょんとぼくの口に、その女の子は口をあてた。
永遠の盟約。
永遠の盟約だ。
今さら、キャラメルのおまけなんか、いらなかったんだ。
いらなかったんだ、そんなもの。
(どうして?)
おとなになるってことは、そういうことなんだよ。
(わからないよ)
わからないさ。
だってずっと子供のままだったんだから…
みずかは。
キミは…。
(………)
長い時間が経ったんだ。
いろいろな人と出会って、いろいろな日々に生きたんだ。
ぼくはあれから強くなったし、泣いてばかりじゃなくなった。
消えていなくなるまでの4ヶ月の間、それに抗うようにして、ぼくはいろんな出会いをした。
乙女を夢見ては、失敗ばかりの女の子。
光を失っても笑顔を失わなかった先輩。
ただ一途に何かを待ち続けているクラスメイト。
言葉なんか喋れなくても精一杯気持ちを伝える後輩。
大人になろうと頑張り始めた泣き虫の子。
そして、そこでも、ずっとそばにいてくれたキミ。
駆け抜けるような4ヶ月だった。
そしてぼくは、幸せだったんだ。
(滅びに向かって進んでいるのに…?)
いや、だからこそなんだよ。
あ〜、アレですよ。
('A`)ノさわんじゃね
それを、知っていたからぼくはこんなにも悲しいんだよ。
滅びに向かうからこそ、すべてはかけがえのない瞬間だってことを。
こんな永遠なんて、もういらなかった。
だからこそ、あのときぼくは絆を求めたはずだったんだ。
…オレは。
長森「浩平〜っ、お湯出しといたから、寝癖直すんだよーっ!」
洗面所のほうから長森の声が聞こえてくる。
浩平「あぁ、先に飯を摘ませてくれ」
キッチンまで、ぼりぼりと頭を掻きながら歩いてゆく。
朝食がなかった。
一度だけならまだしも、二日続きで。
流しを見ると、ひとり分の食器だけが、浸け置きしてあった。
それは間違いなく由起子さんのものだった。
彼女は、自分の分の朝食を食べ、そして出かけていったのだ。
もしかしたら、何かの話しの行き違いがあったのかもしれない。
だがここ最近、由起子さんには会っていないし、その日常の繰り返しに変化が起きるほうがおかしい。
浩平(………)
一度、会って話せばいい。
会って話して、どうして朝食を作っておいてくれなくなったのか、聞けばいい。
案外簡単な理由かもしれない。
そろそろ自立しなさい。
由起子さんなら、ありそうな話しだ。
彼女自身が自立した女性であるし、オレにもそろそろ自分のことは自分でしろと。
なら、書き置きのひとつぐらいあってよさそうなものだ…。
………。
長森「ほら、浩平ーっ! 時間ないよーっ!」
再び長森の声。
浩平「ああ、今いくって」
自分が急速に消えゆく感覚。
それはまるで、遠い昔に描いた夢のようだった。
ずっと昔。
それは幼い日の戯れだ。
浩平「望んだ世界が生まれていたとして、そうしたら、どうなると思う?」
オレは唐突に話しを切り出した。
長森「望んだ世界…?」
浩平「そう。例えばこうだ」
実際NGワード使ってると大して問題ないんだよね
スレ立ての時期以外
ボスGPSってなに?あるの?毎回オシリスになったらいるんだが
だめーじもふりーもおかしいよ
教えてエロい人
あーあ、ツッコんじゃえ。
おまえらさぁ、つまんね。
オモシロクねーよ。もっと叩きがいのある荒らししろよ
これはなんかのゲームの台詞?マンガ?アニメ?小説?
浩平「小さなときに、お菓子の国のお姫様になりたいと強く思っていた女の子がいたんだ」
長森「あ、わたしがそう。そんなこと思ってたよ」
浩平「時が経って、ほんとうにお菓子の国は、その子の強い願望によって生まれていたんだ」
長森「そんなことあるわけないよ」
浩平「あったとしたら、だよ。想像力を働かせろ」
長森「あ、うん…」
浩平「小さなときに、お菓子の国のお姫様になりたいと強く思っていた女の子がいたんだ」
長森「あ、わたしがそう。そんなこと思ってたよ」
浩平「時が経って、ほんとうにお菓子の国は、その子の強い願望によって生まれていたんだ」
長森「そんなことあるわけないよ」
浩平「あったとしたら、だよ。想像力を働かせろ」
長森「あ、うん…」
どこまでもつづく海を見たことがある。
どうしてあれは、あんなにも心に触れてくるのだろう。
そのまっただ中に放り出された自分を想像してみる。
手をのばそうとも掴めるものはない。
あがこうとも、触れるものもない。
四肢をのばしても、何にも届かない。
水平線しかない、世界。
そう、そこは確かにもうひとつの世界だった。
そしてその世界には、向かえる場所もなく、訪れる時間もない。
でもそれは絶望ではなかった。
あれこそが永遠を知った、最初の瞬間だった。
大海原に投げ出されたとき、ぼくは永遠を感じる。
ヽ( ・∀・)ノウンコー
だからぼくは、小さな浜辺から見える、遠く水平線に思いを馳せたものだった。
虚無…。
意志を閉ざして、永遠に大海原に浮かぶぼくは、虚無のそんざいだった。
あって、ない。
でもそこへ、いつしかぼくは旅だっていたのだ。
夕日に赤く染まる世界。
静止した世界。
べつに光景が止まっているわけじゃない。
光は動いているし、バイクの加速してゆくエンジン音だって聞こえる。
静止していたのは、それを見ている自分の世界だった。
真夜中、誰もが寝静まった中、遠くに犬の遠吠えや、バイクのエンジン音を聴くのに似ている。
そういうとき、ぼくは属する世界が違うという違和感を覚えるものだった。
聞こえるのだけど、そこにはたどり着けない。
永遠、たどり着けない。
どれだけ歩いていっても、あの赤く染まった世界にはたどり着けないのだ。
それがわかっていた。
そこには暖かな人々の生活がある。
でもそこにはたどり着けないのだ。ぼくは。
ころころ…。
微かな音がした。
それは確かにこちら側の音だ。
(あそこには帰れないんだろうか、ぼくは)
訊いてみた。
(わかってるんだね、あそこから来たってことが)
>>206 葉鍵板行け。そうすれば分かるから分かったら全速力で帰って来い。
(ああ、わかる。でも、ほんとうにあの街のどこかに住んでいたわけじゃない)
(そう。すごいね)
(つまり、あっち側の一部だったってことがわかるんだ)
(でもね、旅立ったんだよ、遠い昔に)
(そうだね。そんな気がするよ)
(でも遠い昔はさっきなんだよ)
219 :
ロリ皇帝:03/01/31 00:30 ID:WIWR5fd0
ちぇけら
(それも、そんな気がしてた)
(つまり、言いたいこと…わかる?)
(わかるよ。よくわかる)
ずっと、動いている世界を止まっている世界から見ていた。
一分一秒がこれほど長く感じられることなんてなかった。
もどかしいくらいに、空は赤いままだったし、耳から入ってくる音は、変わり映えしなかった。
違うな…。変わるはずがないんだ。
進んでいるようで、進んでいない。メビウスの輪だ。
あるいは回転木馬。リフレインを続ける世界。
(世界はここまでなんだね…)
ぼくは彼女に言った。
(飽きたら、次の場所へ旅立てばいいんだよ)
(……そうだね)
ヘッドライトがヘッドライトを追ってゆく。
何度も見ている一定の距離感を置いて。
(いや…もう少しここにいるよ)
(そう? そうだね…)
ぼくは体を慣らすように、その光景に身を浸していた。
急ぐ旅でもない。
ずっと、眺めていた。
また…悲しい風景だ。
(どうしてぼくは、こんなにも、もの悲しい風景を旅してゆくのだろう)
(あたしにはキレイに見えるだけだけど…でも、それが悲しく見えるのなら、やっぱり悲しい風景なんだろうね)
(ひとが存在しない場所だ)
(そうだね)
(ひとが存在しない場所にどうしてぼくは存在しようとするのだろう。もっと、ひとの賑わう町中や、暖かい家の中に存在すればいいのに)
(さあ…よくわかんないけど。でも、あなたの中の風景ってことは確かなんだよ)
(つまりそれは…ぼくの心を風景に置きかえてみたときの姿なんだろうか)
(だったら、少し悲しすぎる…?)
(わからない)
(でも、こんな世界だからこそ、ぼくは求めたんだろうけどね)
帰れない場所。
もう、そこからはどこにもいけない場所。
すべてを断ち切った、孤立した場所にぼくは、ずっと居続けていたいんだ。
そして、そんななにもない、どこにも繋がらない場所で、ぼくはぼくを好きでいてくれるひとだけの存在を、もっと切実に大切に思うのだ。
きみと一緒にいられること。
>>206 アニメかなんかだとしてもツマンネ-だろ。こんなセリフだし。
貧弱な文章力だしな。
( ´_ゝ`)触っちゃったよゴメソ
(^^)(^^) 山 崎 渉 通 信 vol.1 (^^;(^^;
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
さあ、今日からキミも1日1回、山崎カキコをしよう!
やり方はとても簡単!
名前欄「山崎渉」、E-mail欄と本文に「(^^)」を入れて書き込むだけ!
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
229 :
ロリ皇帝:03/01/31 00:30 ID:WIWR5fd0
IWとfdきたーー
それはこの世界との引き替えの試練のようであり、また、それこそがこの世界が存在する理由なのだと思う。
(次はどこにいこうか)
(大丈夫。あたしはどこだってついていくよ。ずっとね)
(そうだね)
(このままずっと、いけばいいんだね)
(そう。ずっと)
どこまでもいけばいい。ぼくの心の中の深みに。
(ねぇ、たとえば草むらの上に転がって、風を感じるなんてことは、もうできないのかな)
(ううん、そんなことはないと思うよ)
(そうしてみたいんだ。大きな雲を真下から眺めてさ)
(だったらすればいいんだよ。これはあなたの旅なんだから、好きなことをすればいいんだよ)
(でも、どうしたらいいんだろう。ぼくはいつも見える世界の外側だ)
やっべ
ウェブマネー買い忘れた・・・
やっべ
(まだ、難しいのかな。あたしは感じられるよ。草の匂いを帯びた風が)
(やり方を教えてくれよ)
(うーん……じゃあ、手伝うよ)
彼女が僕の背中に回って、そして両腕で僕の体を抱く。
(いい?)
(あ、うん…)
(雲が見えるよね…)
すぐ耳の後ろで声。
(見えるよ)
(ゆっくりと動いてるよね)
(そうだね。動いている)
(あれは、何に押されて動いてるのかな)
(風)
(そう、風だね…)
(風は、雲を運んで…ずっと遠くまで運んでゆくんだよ…)
(…世界の果てまでね)
(………)
草の匂いが、鼻の奥を刺した。
輝く季節でぐぐってろ
海賊王に俺はなる!!
それは風に運ばれてきた匂いだ。
(きたよ…風…)
(そう、よかった)
(でも、もう少し手伝っていてほしいな)
(うん、わかったよ)
もう少し、抱かれていたかった。
手動嵐カコワルイ
世界の果てまで届くという風を感じながら。
(空だけの世界…)
(この下には、何があるんだろうね)
(なんにもないよ)
(そうかな。あたしは、広大に広がる野に、放し飼いの羊がたくさんいると思うよ)
(いや、ずっと空だけが続いてるんだと思う)
ここ何スレよ?
奈々氏で書き込み始めた?(;´Д`)
(どうして…? 羊を放し飼いにしておこうよ)
(大地がないから、羊はみんな落下してゆくよ)
(だったら、大地を作ろうよ。新緑の芽生えたばかりの大地)
(いらないよ。海でいい)
(羊は、みんな海に落下してゆくの…?)
(そう。ぼちゃぼちゃと海に落ちる。一面水平線の海。そこでぷかぷかと浮かんで余生を送るんだ)
(でもその羊たちは、みんなあなたなんだよねぇ?)
(そう。僕だよ。無力な羊はぜんぶ僕だ…)
(…というよりも、今の僕が、海に浮かぶ羊なんだと思う)
海に浮かぶ羊。それは唐突にしっくりくる、たとえだという気がした。
(でも、夢の中ではみんな、空を飛ぶんだよ)
(羊が空を飛ぶのかい)
(飛んでもいいと思うけどな)
(それはたぶん滑稽だよ。似合わない…)
(…羊たちは、自分の立場をわきまえた上で、海を選ぶんだ)
(それも自分の比喩…?)
(………)
(…少し言い過ぎたかな)
(ううん、気にしてないけど…)
つまりは僕は、自分の立場をわきまえてこの世界を選んだのだと。
それはこの世界を蔑んでいることになる。
彼女を含むこの世界を。
…気づいているだろうか?
この僕の猜疑心に。
(でも羊たちは、とても泳ぎがうまいんだ)
(ほんとに…?)
(じゃぶじゃぶと波を掻き分けてゆくよ。たぶんね)
(だったらいいよね。空が飛べなくても)
でもたどり着ける島なんて、ないんだ。
ないんだよ。
たとえば泣きたいときがある。
どこへ向かって泣けばいいのだろう。
なにを思って泣けばいいのだろう。
虚無からは幸せは生まれない。
そんな気がしていた。
放り出された海に浮かび、ぼくはなにを泣き叫ぶのだろう。
>>237 ああなっとくれ。ついでに岩窟王になって温泉掘り当ててくれ。
そんなことをする気にすらならない。
それが幸せなのだろうか…。
空虚は、ぽっかりと胸に空いた穴。
もう失うこともない。
それが完全な形なのだろうか。
なにも失わない世界にいるぼくは
なにをこんなにも恐れているのだろう。
選択肢のない袋小路だった。
つまりそれは、終わりだ。
それを自分でも気づかないうちに心のどこかで悟っていたから、こんなにも空虚だったんだ。
空虚だったんだ。
帰り道…
253 :
名も無き冒険者:03/01/31 00:32 ID:S2gIPtaH
ボスGPSってあるの?
(ん…?)
帰り道を見ている気がするよ。
(そう…?)
うん。遠く出かけたんだ、その日は。
(うん)
日も暮れて、空を見上げると、それは違う空なんだ。いつもとは。
違う方向に進む人生に続いてるんだ、その空は。
その日、遠出してしまったために、帰りたい場所には帰れなくなってしまう。
ぼくは海を越えて、知らない街で暮らすことになるんだ。
そしていつしか大きくなって、思う。
幼い日々を送った、自分の生まれた街があったことを。
それはとても悲しいことなんだ。
>>241 ただいま りゅう君が降臨しております。
自分でさわっちゃった・・・('A`)
ほんとうの温もりはそこにあるはずだったんだからね。
(………)
(…それは、今のあなたのことなのかな)
そんなふうに聞こえた…?
(うん…)
ぼくはね、最後まで頑張ったんだ。
名無しになったな。ちょっとは知恵つけたか(´-`)
(………)
あのとき、頑張って、自分の街に居続けることを願った。
それは別にこの世界を否定しようとしたんじゃない。
この世界の存在を受け止めたうえで、あの場所に居残れるんじゃないかと、思っていたんだ。
でもダメだった。
(そんなことわざわざ言って欲しくないよ…)
(………)
あのとき、頑張って、自分の街に居続けることを願った。
それは別にこの世界を否定しようとしたんじゃない。
この世界の存在を受け止めたうえで、あの場所に居残れるんじゃないかと、思っていたんだ。
でもダメだった。
(そんなことわざわざ言って欲しくないよ…)
「age」をメールあぼーんに。
ただね、もっとあのとき頑張っていれば、ほんとうに自分をあの場所に繋ぎ止められたのか、それが知りたかったんだ。
(どうして?)
べつに、可能性があったとして、それはここに来ないで済んでいたのか、という話しじゃない。
ただ、もしほんとうにできるんだったら、ぼくの人との絆っていうものがそれだけのものだったのかと、悔しいだけなんだ。
どう思う?
(たぶん…無理だったと思うよ)
(この世界はあなたの中で始まっていたんだから)
やっぱりそうか…。
(うん…)
でも、それが無理でも、この世界を終わらせることはできたかもしれない。
(………)
いや、できる、かもしれない。
(この世界は終わらないよ)
(だって、すでに終わっているんだから)
また、ぼくはこんな場所にいる…。
悲しい場所だ…。
ちがう
もうぼくは知ってるんだ。
だから悲しいんだ。
(悲しい…?)
今さら、キャラメルのおまけなんか、いらなかったんだ。
(たくさんあそべるのに?)
うん。
いらなかったんだ、そんなもの。
チュェキ
(どうして?)
おとなになるってことは、そういうことなんだよ。
(わからないよ)
わからないさ。
だってずっと子供のままだったんだから…
………。
……。
…。
うあーーーん…
うあーーーーーーーんっ!
泣き声が聞こえる。
誰のだ…?
俺のだ
ぼくじゃない…。
そう、いつものとおり、みさおの奴だ。
「うあーーーーん、おかあさーーんっ!」
「どうしたの、みさお」
「お兄ちゃんが、蹴ったぁーーっ!」
「浩平、あんた、またっ」
「ちがうよ、遊んでただけだよ。真空飛び膝蹴りごっこして遊んでたんだ」
「そんなのごっこ、なんて言わないのっ! あんた前は、水平チョップごっことか言って、泣かしたばっかじゃないのっ」
「ごっこだよ。本当の真空飛び膝蹴りや水平チョップなんて真似できないくらい切れ味がいいんだよ?」
「ばかな理屈こねてないで、謝りなさい、みさおに」
「うあーーんっ!」
「うー…みさおぉ…ごめんな」
「ぐすっ…うん、わかった…」
「よし、いい子だな、みさおは」
「浩平、あんたが言わないのっ!」
じっさいみさおが泣きやむのが早いのは、べつに性分からじゃないと思う。
ぼくが、ほんとうのところ、みさおにとってはいい兄であり続けていたからだ。
そう思いたい。
母子家庭であったから、みさおはずっと父さんの存在を知らなかった。
ぼくだって、まるで影絵のようにしか覚えていない。
動いてはいるのだけど、顔なんてまるではんぜんとしない。
そんなだったから、みさおには、男としての愛情(自分でいっておいて、照れてしまうけど)を、与えてやりたいとつねづね思っていた。
父親参観日というものがある。
それは父親が、じぶんの子供が授業を受ける様を、どれ、どんなものなのかとのぞきに来る日のことだ。
ぼくだって、もちろん父親に来てもらったことなんてない。
でもまわりの連中を見ていると、なんだかこそばゆいながらも、うれしそうな顔をしてたりする。
どんな頭がうすくても、それは来てくれたらうれしいものらしかった。
しかしそのうれしさというものは、ぼくにとっては、えいえんの謎ということになる。
きっと、たぶん、二度と父親なんて存在はもてないからだ。
振り返ったとしても、そこには知った顔はなく、ただ誰かから見られているという実感だけがわく、ちょっと居心地の悪い授業でしかない。
ぼくの父親参観とは、そんな感じでくり返されてゆくのだ。
でもみさおには、男としての愛情を与えてやりたいとつねづね思っているぼくにしてみれば、ぼくと同じような、
『ちょっと居心地の悪い授業でした』という感想で終わらしてやりたくなかった。
だから、一大作戦をぼくは企てたのだ。
「みさお、ぼくがでてやるよ」
「お兄ちゃんって、あいかわらずバカだよね」
「バカとは、なんだ、このやろーっ!」
「イタイ、イタイよぉーっ、お兄ちゃんっ!」
アイアンクローごっこで少し遊んでやる。最近のお気に入りだ。
「はぅぅっ…だって、お兄ちゃん、大人じゃないもん」
「そんなものは変装すればだいじょうぶだ」
「背がひくすぎるよ」
「空き缶を足の下にしこむ」
「そんな漫画みたいにうまくいかないよぉ、ばれるよぉ」
「だいじょうぶ。うまくやってみせるよ」
「ほんとぉ?」
「ああ。だから、次の父親参観日は楽しみにしてろよ」
「うんっ」
('A`)トリップ付けとけよ
初めはバカにしていたみさおだったが、最後は笑顔だった。
みさおの笑顔は、好きだったから、うれしかった。
そして来月の父親参観日が、ぼくにとっても待ち遠しいものになった。
みさおが病気になったのは、そろそろ変装道具をそろえなきゃな、と思い始めた頃だった。
ちょっと治すのに時間がかかるらしく、病院のベッドでみさおは過ごすことになった。
「バカだな、おまえ。こんなときに病気になって」
「そうだね…」
「おまえ、いつも腹出して寝てるからだぞ。気づいたときは直してやってるけど、毎日はさすがに直してやれないよ」
「うん、でも、お腹に落書きするのはやめてよ。まえも身体検査のとき笑われたよ」
ぼくはいつも、油性マジックでみさおのお腹に落書きしてから布団をなおしてやるので、みさおのお腹はいつでも、笑ったり、泣いたり、怒ったりしていた。
「だったら、寝相をよくしろ」
「うん。そうだね」
みさおの邪魔そうな前髪を掻き上げてやりながら、窓の外に目をやると、自然の多く残る町の風景が見渡せた。
そして、秋が終わろうとしていた。
「みさおー」
「あ、お兄ちゃん。どうしたの、こんな時間に」
「みさお、退屈してると思ってな」
「ううん、だいじょうぶだよ。本、いっぱいあるから、よんでるよ」
「本? こんな字ばっかのが、おもしろいわけないだろ。やせ我慢をするな」
「ぜんぜんがまんなんかしてないよ。ほんと、おもしろいんだよ」
「というわけでだな、これをやろう」
ぼくは隠しもっていた、おもちゃをみさおに突きつけた。
「なにこれ」
「カメレオンだ」
「見たらわかるけど…」
プラスチックでできたおもちゃで、お腹の部分にローラーがついていて、それが開いた口から飛び出た舌と連動している。
「みろ、平らなところにつけて、こうやって押してやると、舌がぺろぺろ出たり入ったりする」
「わぁ、おもしろいね。でも、平らなところがないよ」
「なにっ?」
言われてから気づいた。
確かにベッドで過ごしているみさおからすれば、平らな机などは、手の届かない遠い場所だ。
「あ、でも大丈夫だよ。こうやって手のひら使えば…」
ころころ。
「お、みさお、頭いいな。でも少し爽快感がないけどな」
「そんな舌が素早くぺろぺろ動いたって、そうかいじゃないよ。これぐらいがちょうどいいんだよ」
ころころ。
「そうだな」
「お兄ちゃん、ありがとね」
「まったく、こんなくだらない本ばっかでよんで暮らすおまえが、見るにたえなかったからな。よかったよ」
「うん。これで、退屈しないですむよ」
しかし話しに聞いていたのとは違って、みさおの病院生活は、いつまでも続いていた。
一度、大きな手術があって、後から知ったのだけど、その時みさおのお腹は、みさおのお腹でなくなったらしい。
そして、そのころから母さんは病院よりも、ちがう場所に入りびたるようになっていた。
どこかはよくしらない。
ときたま現れると、ぼくたちが理解できないようなわけのわからないことを言って、満足したように帰ってゆく。
『せっぽう』とか言っていた。どんな漢字を書くかはしらない。
「わ、病室まちがえたっ!」
「合ってるよ、お兄ちゃん」
「え…? みさおか?」
「うん、みさおだよ」
みさおは、髪の毛がなくなっていた。
「びっくりしたぞ、お兄さんは」
「うん…」
ただでさえ、ここのところやせ細っているというのに、さらに頭がツルツルになっていれば、ぼくだって見間違える。
そのくらい、みさおは姿が変わってしまっていた。
「やっぱり、お腹がなくなったから、体重減っちゃったのか?」
「そうかも」
喋りながら、ころころとカメレオンのおもちゃを手のひらで転がしていた。
ぺろぺろと舌が出たり入ったりするのを、みさおはくぼんだ目で、見つめていた。
ぼくはみさおには絶対に、苦しいか、とか、辛いか、とか聞かないことにしていた。
聞けば、みさおは絶対に、ううん、と首を横に振るに違いなかったからだ。
気を使わせたくなかった。
だから、聞かなかった。
ほんとうに苦しかったり、辛かったりしたら、自分から言いだすだろう。
そのとき、なぐさめてやればいい。
元気づけてやればいい。
そう思っていた。
年が明け、みさおは、正月も病室で過ごしていた。
ぼくも、こんなにも静かな正月を送ったのは初めてだった。
「みさおは、今年の願い事はなんだ?」
「もちろん元気になることだよ。それで、お兄ちゃんがきてくれる、ちちおや参観日をむかえるの」
「そうだな。去年は無理だったもんな」
なんのネタかはシランが
みさおって俺の弟と同じ名前だ。関係者か?
「うん。今年こそはきてもらうよ」
時間はあのときから止まっていた。
そろえ始めていた変装道具も、中途はんぱなままで、部屋に置いてある。
進んでいるのは、みさおのやせる病状だけに思えた。
そのときを機に、みさおは父親参観日のことをよく口にするようになった。
ぼくも、今年こそはと、強く思うようになっていった。
正月も終わり、街並みが元通りの様相に戻ってゆく。
でも、みさおの過ごす部屋だけは、ずっと変わらなかった。
「みさおー」
「お兄ちゃん、また、こんな時間に…」
「また手術するって聞いて、きたんだよ。また、どこか取るのか?」
「ううん…。その手術はしないことになったよ」
2a/2ZN0o
QNPneCDR
∧∧ ) <300げとー
⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡
_, ,_
( ・д・)y-~~ ガキが…
「そうか。よかった。どんどんみさおのお腹が取られてゆくようで恐かったんだよ」
「うん。もうしんぱいないよ」
「ほんと、よかったよ」
「うん…」
ころころ。
ふたりが黙り込むと、ただカメレオンを手のひらで転がす音だけが聞こえてくる。
300!
普通にみてるから透明にできねーんだよなー…
IDチェキ
今日はどんなIDかな
「おかあさんは、どんな感じ?」
「相変わらずだよ」
「お兄ちゃん、おかあさんのことも心配してあげてね」
「うん、そうだな…」
「じゃあ、そろそろ眠るよ」
「ああ」
バ鍵は早く氏ね。息するな。空気の無駄だ
静かに目を閉じる、みさお。
手には舌を突きだしたままのカメレオンを握ったままだった。
恐いくらいに静まり返る室内。
「………」
「…みさおー」
………。
「…みさお?」
………。
「みさおっ!」
………。
「みさおーっ! みさおーーっ!」
「…なに、お兄ちゃん」
「いや、寝ちゃったかなと思って」
「うん…寝ちゃってたよ。どうしたの?」
「ううん、なんでもない。起こしてわるかったな」
「うん…おやすみ」
「おやすみ」
月がまた変わった。
でもぼくたちは、なにも変わらないでいた。
みさおは誕生日を迎え、病室でささやかな誕生会をした。
でもぼくひとりが歌をうたって、ぼくひとりがケーキをたべただけだ。
………。
ころころ。
「………」
………。
ころころ。
「………」
「おにいちゃん…」
「うん、なんだ?」
「ちちおや参観日にしようよ、今日…」
「今日…?」
「うん、今日…」
「場所は?」
「ここ…」
「ほかの子は…?」
「みさおだけ…。ふたりだけの、ちちおや参観日」
( ´_ゝ`)・・・・
「………」
「だめ?」
「よし、わかった。やろう」
「…よかった」
みさおが顔をほころばす。
ぼくは走って家に戻り、変装道具を押し入れから引っぱり出し、それを抱えて病院へと戻った。
病院の廊下で、ぼくはそれらを身につけ、変装をおこなった。
スーツを着て、ネクタイをしめ、足の下に缶をしこんだ。
そして油性マジックで、髭をかいて、完成した。
カンカンカンッ!と、甲高い音をたてながら、みさおの部屋まで向かう。
ドアの前にたち、そしてノックをする。
ノックより歩く音のほうが大きかった。
「みさおー」
ドアを開けて中に入る。
………。
「みさおーっ?」
………。
「…みさおーっ?」
「う…おにいちゃん…」
口だけは笑いながらも、顔は歪んでいた。
「ちがうぞ、おとうさんだぞ」
みさおが苦しい、辛いと言い出さない限り、ぼくも冷静を装った。
「うん…そだね…」
「じゃあ、見ててやるからな」
ぼくは壁を背にして立ち、ベッドに体を横たえる、みさおを見つめた。
ころころ…。
弱々しくカメレオンが舌を出したり、引っ込めたりしている。
ただそんな様子を眺めているだけだ。
………。
ころころ…。
「………」
………。
ころころ…。
「………」
「うー…」
「みさおっ?」
「しゃ、しゃべっちゃだめだよぉ…おとうさんは…じっとみてるんだよ…」
「あ、ああ…そうだな」
………。
「うー…はぅっ…」
苦しげな息が断続的にもれる。
ぼくはみさおのそんな苦しむ姿を、ただ壁を背にして立って見ているだけだった。
「はっ…あぅぅっ…」
なんてこっけいなんだろう。
こんなに妹が苦しんでるときに、ぼくがしていることとは、一番離れた場所で、ただ立って見ていることだなんて。
………。
「はーっ…あぅっ……」
………。
>>299 ( ´_ゝ`)フーン
暇だから自作自演してみる
カメレオンの舌が動きをとめた。
そして、ついにみさおの口からその言葉が漏れた。
「はぁぅっ…くるしいっ…くるしいよ、おにいちゃんっ…」
だからぼくは、走った。
足の下の缶がじゃまで、ころびながら、みさおの元へ駆けつけた。
「みさお、だいじょうぶだぞ。お兄ちゃんがそばにいるからな」
(゚д゚)<コロコロコミック
「いたいよ、おにいちゃんっ…いたいよぉっ…」
カメレオンを握る手を、その上から握る。
「だいじょうぶだぞ。ほら、こうしていれば、痛みはひいてくから」
「はぁっ…あぅっ…お、おにいちゃん…」
「どうした? お兄ちゃんはここにいるぞ」
「うんっ…ありがとう、おにいちゃん…」
ぼくは、みさおにとっていい兄であり続けたと思っていた。
そう思いたかった。
そして最後の感謝の言葉は、そのことに対してのものだと、思いたかった。
みさおの葬儀は、一日中降り続く雨の中でおこなわれた。
そのせいか、すべての音や感情をも、かき消されたような、静かな葬儀だった。
冷めた目で、みさおの収まる棺を見ていた。
母さんは最後まで姿を見せなかった。
ぼくはひとりになってしまったことを、痛みとしてひしひしと感じていた。
そして、ひとりになって、みさおがいつも手のひらでころころと転がしていたカメレオンのおもちゃを見たとき、
せきを切ったようにして、ぼくの目から涙がこぼれだした。
こんな悲しいことが待っていることを、ぼくは知らずに生きていた。
ずっと、みさおと一緒にいられると思っていた。
(゚д゚)<ペヤング
ID:28gCT1Oe
ID:a8gfOepx
ID:zGf0xxA+
ID:U1izZVoS
ID:JMh4ZLsG
ID:NdWcWVBV
_, ,_
( ・д・)y-~~ また粘着の釣りか…
何も釣れネーヨ プププ ←組体操っぽくない?
ずっと、みさおはぼくのことを、お兄ちゃんと呼んで、
そしてずっと、このカメレオンのおもちゃで遊んでいてくれると思っていた。
もうみさおの笑顔をみて、幸せな気持ちになれることなんてなくなってしまったんだ。
すべては、失われてゆくものなんだ。
そして失ったとき、こんなにも悲しい思いをする。
それはまるで、悲しみに向かって生きているみたいだ。
ID:V+IbCwao
ID:agdyGkj9
ID:/nhDriwB
ID:ilYKD1h/
ID:uVttbjSz
ID:WvhewJEa
ID:hHKRl2dZ
ID:qn6jM9tY
ID:QNPneCDR
ID:2a/2ZN0o
ID:KtYGfLod
ID:+iO9z6MP
俺の塩ストックが3個切ったわけだが
悲しみに向かって生きているのなら、この場所に留まっていたい。
ずっと、みさおと一緒にいた場所にいたい。
うあーーーん…
うあーーーーーーーんっ!
泣き声が聞こえる。
誰のだ…?
ぼくじゃない…。
そう、いつものとおり、みさおの奴だ。
「うあーーーーん、うあーーーんっ!」
「うー…ごめんな、みさお」
「うぐっ…うん、わかった…」
よしよし、と頭を撫でる。
「いい子だな、みさおは」
「うんっ」
ぼくは、そんな幸せだった時にずっといたい。
それだけだ…。
あの日から、ぼくは泣くことが多かった。
泣いていない隙間を見つけては、生活をしているようだった。
(゚д゚)<斜め二_〜
ぼくはみさおと過ごした町を離れ、叔母さんのところへとあずけられていた。
4月の陽光に映え、緑がきれいな町だった。
でも、それでも、ぼくの涙は乾くことはなかった。
どれだけ涙というものは流し続けられるのだろう。不思議だった。
「泣いてるの…?」
そしてその町で、最初に泣いているぼくをみつけたのがその女の子だった。
お正月は、「ラグナロクオンライン」で楽しんでいただけましたか? 七福神に会えたラッキーな方はどなたでしょう?
今月も新しく「ラグナロクオンライン」の仲間に13000人もの方に入っていただきました。ありがとうございます! これからどうぞよろしくお願いいたします。
私たちスタッフは、毎日ユーザーの皆様からいろいろな意見をいただきます。励ましの言葉をいただいたり、時にはお叱りの言葉であったりもします。
その中で先日、小1のりゅう君がかわいいモンスターの絵を送ってくれました。「このモンスターを登場させてください」と。
私たちは、そのかわいらしいモンスターを見て、ユーザーの皆様からのすばらしい意見やアイデアをいただきながら、「ラグナロクオンライン」を運営させてもらっていることを改めて認識しました。
今年、ガンホーはユーザーの皆様に少しでも満足してゲームをプレイしていただけるよう全力を尽くしたいと思います。
皆様の声をきちんと反映できるよう、りゅうくんのモンスターも登場できる日がはやく来るよう・・・がんばります!
(゚д゚)<
晴れた日、曇りの日、小雨がぱらつく日…。
泣くぼくの隣には、彼女がいた。
「いつになったら、あそべるのかな」
毎日のように泣き伏すぼくを見つけては、話しかけてくる。
ぼくは口を開いたことがなかった。開いたとしても、嗚咽を漏らしただけだ。
もう空っぽの存在。亡骸だった。
それにもかかわらず、彼女はそこに居続けた。
いったい、その子が何を待っているのか、ぼくにはわからなかった。
「…きみは何を待っているの」
初めて、ぼくは話しかけた。
「キミが泣きやむの。いっしょにあそびたいから」
「ぼくは泣きやまない。ずっと泣き続けて、生きるんだ」
「どうして…?」
「悲しいことがあったんだ…」
「…ずっと続くと思ってたんだ。楽しい日々が」
「でも、永遠なんてなかったんだ」
そんな思いが、言葉で伝わるとは思わなかった。
でも、彼女は言った。
344 :
NG:03/01/31 00:40 ID:84H3JYXE
ID:28gCT1Oe
ID:a8gfOepx
ID:+6jwdh0+
ID:thZomzsg
ID:3Gowcf/R
ID:zGf0xxA+
ID:U1izZVoS
ID:JMh4ZLsG
ID:NdWcWVBV
「永遠はあるよ」
そしてぼくの両頬は、その女の子の手の中にあった。
「ずっと、わたしがいっしょに居てあげるよ、これからは」
言って、ちょんとぼくの口に、その女の子は口をあてた。
永遠の盟約。
永遠の盟約だ。
今さら、キャラメルのおまけなんか、いらなかったんだ。
いらなかったんだ、そんなもの。
(どうして?)
おとなになるってことは、そういうことなんだよ。
(わからないよ)
わからないさ。
やっべ
コンビにの前にDQNが集まってるよ
やっべ
だってずっと子供のままだったんだから…
みずかは。
キミは…。
(………)
長い時間が経ったんだ。
いろいろな人と出会って、いろいろな日々に生きたんだ。
(゚д゚)<
ぼくはあれから強くなったし、泣いてばかりじゃなくなった。
消えていなくなるまでの4ヶ月の間、それに抗うようにして、ぼくはいろんな出会いをした。
乙女を夢見ては、失敗ばかりの女の子。
光を失っても笑顔を失わなかった先輩。
ただ一途に何かを待ち続けているクラスメイト。
言葉なんか喋れなくても精一杯気持ちを伝える後輩。
大人になろうと頑張り始めた泣き虫の子。
そして、そこでも、ずっとそばにいてくれたキミ。
駆け抜けるような4ヶ月だった。
そしてぼくは、幸せだったんだ。
(滅びに向かって進んでいるのに…?)
いや、だからこそなんだよ。
それを、知っていたからぼくはこんなにも悲しいんだよ。
滅びに向かうからこそ、すべてはかけがえのない瞬間だってことを。
こんな永遠なんて、もういらなかった。
だからこそ、あのときぼくは絆を求めたはずだったんだ。
…オレは。
長森「浩平〜っ、お湯出しといたから、寝癖直すんだよーっ!」
洗面所のほうから長森の声が聞こえてくる。
浩平「あぁ、先に飯を摘ませてくれ」
キッチンまで、ぼりぼりと頭を掻きながら歩いてゆく。
朝食がなかった。
一度だけならまだしも、二日続きで。
流しを見ると、ひとり分の食器だけが、浸け置きしてあった。
それは間違いなく由起子さんのものだった。
彼女は、自分の分の朝食を食べ、そして出かけていったのだ。
もしかしたら、何かの話しの行き違いがあったのかもしれない。
だがここ最近、由起子さんには会っていないし、その日常の繰り返しに変化が起きるほうがおかしい。
浩平(………)
一度、会って話せばいい。
会って話して、どうして朝食を作っておいてくれなくなったのか、聞けばいい。
案外簡単な理由かもしれない。
そろそろ自立しなさい。
由起子さんなら、ありそうな話しだ。
彼女自身が自立した女性であるし、オレにもそろそろ自分のことは自分でしろと。
なら、書き置きのひとつぐらいあってよさそうなものだ…。
………。
長森「ほら、浩平ーっ! 時間ないよーっ!」
再び長森の声。
浩平「ああ、今いくって」
自分が急速に消えゆく感覚。
それはまるで、遠い昔に描いた夢のようだった。
ずっと昔。
それは幼い日の戯れだ。
浩平「望んだ世界が生まれていたとして、そうしたら、どうなると思う?」
オレは唐突に話しを切り出した。
長森「望んだ世界…?」
浩平「そう。例えばこうだ」
いつおわんの?つかフラッシュは?
手動にしろ何にしろ、全部タイピングしたんか・・・
ガンガレ
メール欄「age」をNGワードにすれば問題ないってところがまた素敵だな。
浩平「小さなときに、お菓子の国のお姫様になりたいと強く思っていた女の子がいたんだ」
長森「あ、わたしがそう。そんなこと思ってたよ」
浩平「時が経って、ほんとうにお菓子の国は、その子の強い願望によって生まれていたんだ」
長森「そんなことあるわけないよ」
浩平「あったとしたら、だよ。想像力を働かせろ」
長森「あ、うん…」
フラッシュ、どんなのが良い?
JMh4ZLsG
U1izZVoS
2a/2ZN0o
QNPneCDR
KtYGfLod
qn6jM9tY
hHKRl2dZ
WvhewJEa
+iO9z6MP
ilYKD1h/
35/0b/nA
V+IbCwao
/nhDriwB
uVttbjSz
agdyGkj9
zGf0xxA+
激しくすれ違いだが
劉君ってだれ?家なき子の犬?
浩平「すると、どうなると思う」
長森「女の子は選ぶんだろうね。その国に移り住むのか、あるいはここに残るのか」
選択肢なんてあるのだろうか…?
違う…。この物語には第三者が居たはずだ。
浩平「王子様がいるんだ、その国には」
長森「うん」
浩平「盟約を交わしていたんだよ。一緒に暮らすっていう」
長森「うん」
浩平「条件が変わった。すると、どうなると思う」
長森「うーん…そうなると、その国に強制的に連れていかれるんじゃないかな」
浩平「するとオレは…いや、女の子は、この世界ではどうなると思う」
長森「いなくなるんだよ」
オレは刹那、薄ら寒さを覚えた。
すると、なんだ。
オレは今からこの世界から消えてなくなろうとしているのか…?
そんな子供の戯れ言のようなおぼつかない口約束が、現実にオレの存在を危うくしているというのか…?
まさか…。
しかしオレは実際、その過程上にいるじゃないか。
由起子さんに忘れ去られて…長森にだって、オレは記憶を曖昧にされている。
本当に、あの遠い空の向こうへとオレは旅だってしまうのだろうか…。
浩平「なあ、瑞佳」
長森「うん…?」
浩平「できるだけ、オレのことを思っていてくれよな」
長森「そんなこと言われなくたって、いつだって思ってるよ。勉強してるときとか以外はね」
長森「でも、どうしてそんなこと急に言い出すの?」
浩平「いや、オレもおまえのこといつも思ってるからさ。ただの思い損にならないように」
長森「大丈夫。ぜったい、わたしのほうが浩平のこと考えてること長いと思うよ」
浩平「そうなのか…?」
長森「うん、絶対。たぶん浩平がわたしの頭の中知ったら、びっくりするよ。浩平のことばっかで」
浩平「へえ、そりゃ気づかなかった。そういうことはいちいち口に出して言ってくれたらいいのに」
長森「そんなの口がいくつあったって足りないって」
長森「あ、また袖のところ汚いな、とか、ちゃんと朝食は食べてきたのかな、とか、顎のところに髭が伸びてるな、とか」
長森「ちょっと今優しかったな、とか、今の浩平ちょっと格好よかったな、とか、ちゃんとそんな浩平のために頑張れてるかな…とか…」
最後のほうは、俯き加減で言葉をくぐもらせた。
浩平「そんなこと心配してたのか、おまえは」
長森「うん…」
浩平「不甲斐なさ過ぎるオレには立派すぎる彼女だよ」
浩平「オレのほうが頑張らないとな」
長森「そんなことないよ? 浩平だってわたしのために頑張ってくれてるよ。すごくすごく」
浩平「そうだったらいいけどな…」
ふと顔をあげて、遠くを見る。ただぽぉっと心の奥底に灯った幸せに照れていただけだ。
でも、それが今かけがえのないものとなろうとしている。
過去の盟約が、現実のものとなろうとしている。
その事実だけが、遠く視界の先にあった。
休み時間になると、屋上に続く階段に腰掛け、その前を横切ってゆく生徒たちを長く眺めていることが最近多かった。
それはシニカルに今の自分を見つめる行為だった。
なにをしてるんだろう、と少し冷めた風に、自分を嘲笑してやる。
そして実際、一体何人の顔見知りがオレの目の前を抜け、そして目を合わさず過ぎてゆくのだろう。
まるで置きざりにされたその気分を味わい、それが現実であると痛感して、また笑うのだ。
始業間際の校門で。
昼時の学食で。
放課後の通学路で。
オレは立ちつくし、そして流れてゆく生徒たちの中に身を置く。
それは早送りするビデオテープの映像の中心に居続ける自分というものを彷彿させた。
時間の対比。そして孤独感。
流れては過ぎ去ってゆく。
声「あ、浩平ーっ」
だから、そんな中でもオレの存在を見つけてくれるひとがいることに驚きすら感じる。
それもまた嘲笑めいた表現だ。
長森「どったの? こんなところで?」
浩平「待ってたんだよ、おまえを」
長森「えっ? こんなところを通りかかることなんてそんなにないのに」
浩平「じゃあ、ここで会えたのは奇跡だな」
長森「そだね」
浩平「隣、座らないか」
長森「うん」
オレの隣に長森が腰掛ける。
長森「それで、こんなところで何してたの?」
浩平「ほんとに奇跡を待ってたんだよ」
長森「わたしと会える?」
浩平「ああ」
長森「あは、嘘でも嬉しいけどね」
>>368 配布されてる荒らしスクリプトそのまま使ってるだけじゃないのか?
浩平「嘘じゃないさ」
長森「うん、どっちでもいいよ」
浩平「あのな、長森」
長森「うん」
浩平「オレはおまえとずっと一緒にいたいよ」
長森「え?」
浩平「離れず隣にいてくれよな」
今のオレにはそんな陳腐な言葉でも約束を交わさねば、不安でしかたなかった。
長森「うん…浩平がそうしたいならそうするよ…」
長森「でも、わたしが鬱陶しくなったりしたら、正直に言ってよね。浩平に迷惑かけたくないし」
長森「それまではずっと一緒にいるよ」
長森「って、別に恋人同士でもないのに、ずっと一緒にいるなんてヘンかな…?」
よく思えば、オレたちは別れたままだった。
でも『好きだ』とか、『付き合って欲しい』なんて言ってしまったら、それはまた、どこにでも居るようなふたりになってしまうような気がした。
今そんな軽率な言葉でふたりの仲を小さく切り取ってしまいたくない。
もし長森とずっと一緒にいられることがわかって、そして言える言葉があったら言おう。
それまではオレはその言葉を取っておく。
浩平「いや、いくらヘンだとしても、ふたりがそう思わなければ、それがオレたちの普通なんだよ」
長森「そだね。これが、わたしたちの普通だよねーっ」
浩平「ああ」
その普通にどれだけ縋っていられるのだろうか。
………。
……。
…。
陽光が暖かくなりはじめ、そして日常は日常通りに過ぎてゆく。
長森「また浩平のせいで遅刻だよーっ」
浩平「だから、おまえがもっと早く起こせばいいんだ」
長森「もー、面倒見きれないよーっ」
浩平「ばか、先の先を読んで行動しろっていつも…」
日常は日常通りに…。
長森「浩平、前!」
声「きゃ!」
浩平「…え?」
ズドーーーーーーーーーーーーーンッ!!
衝突。
浩平「イツツ…」
となれば、七瀬しかいない。
案の定、その七瀬が地面にうつぶせに倒れていた。
浩平「相変わらず、オレが悪いみたいじゃないか…」
七瀬「…って、当然でしょっ!」
七瀬「ねぇ、そこの人見てたでしょっ!?」
あれ…? 聞いたことがあるセリフ…。
スピード感がある奴とかかな、見たいフラッシュ
あぼーんに[age]で快適だぁ
>●オンラインイベント お正月イベント
>クリスマス熱も冷めやらぬ中、日本独自にお正月イベントを行いました!
>一つ目はお年玉イベントです。各ワールドに七福神が登場し、お供え物を出した人だけ「今年の運勢を占ってくれて」なおかつ「特別なアイテム」がもらえるというイベント。七福神はとっても恥ずかしがり屋のため人の少ないマップで出現していたようです。
>会えた人はとっても運がいいのかも!?
各ワールドに七福神が登場し、お供え物を出した人だけ
各ワールドに七福神が登場し、お供え物を出した人だけ
各ワールドに七福神が登場し、お供え物を出した人だけ
姿 も 見 え ぬ の に ど う や っ て お 供 え 物 を 渡 せ と ?
長森「え…? あ、うん……浩平が悪いかな…」
七瀬「って、瑞佳じゃない」
長森の顔を見た後、その目をオレに向ける。
七瀬「あれ…?」
そして虚勢を削がれたように、きょとんと立ちつくす。
浩平「………」
その目は疑問を抱いていた。
つまりはそういうことだ。
七瀬との関係だって、初めて出会った頃…
そう、オレのことを知らなかった頃に戻っているのだ。
…白紙だ。
すべてが忘れ去られてゆくだけの存在…。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
O 。
, ─ヽ
________ /,/\ヾ\ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|__|__|__|_ __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/''' )ヽ \_________
||__| | | \´-`) / 丿/
|_|_| 从.从从 | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
|_|_|///ヽヾ\ / ::::::::::::ゝ/||
────────(~〜ヽ::::::::::::|/ = 完 =
オレは、もう七瀬に声がかけられなかった。
なぁ、七瀬…と声をかけて、オレの予想通りの言葉を返されるのが恐い。
だれ…?
と。
長森「ん…? どったの? どったの?」
長森ひとりがわけがわからない様子で、ふたりの顔を交互に見ていた。
七瀬「先…いく」
七瀬が制服をぱんぱんと手で叩くと、そのまま背を向けて走ってゆく。
長森「…あ、時間やばいねぇ。わたしたちも急ごうよ」
我に返ったように長森が急かす。
浩平「ああ…」
重い足取りで、再び走り出した。
オレは校門をくぐるところで、二の足を踏んだ。
長森「どうしたの?」
浩平「いや…」
もう次の現実を突きつけられるのがいやだ。
もう、いやだ。
浩平「さぼろうぜ、学校」
長森「え?」
浩平「どっか行って遊ぼう、ふたりで」
長森「うーん…」
浩平「な」
長森「やっぱ、ダメだよ。次の休みにしようよ」
待てない。待てないんだよ、瑞佳。
浩平「うー…」
長森「ほら、約束するから」
差し出された指。
オレは無言で、その指に自分の指を絡めた。
長森「あはっ、指きった」
長森「…あれ?」
切れない。
オレが固く押さえつけているからだ。
長森「浩平、ほら、切って約束は成立するんだよ?」
浩平「いやだ。このまま連れてゆく」
長森「わっ…そんなダメだってばっ…」
浩平「瑞佳、いくぞ。どこだっていい。遊園地だっていい」
風呂入り終わってみてみればまたもや凄いことに。
しかしそれでもIDチェキラー
浩平「ふたりでジェットコースター乗るぞ。ふたりで観覧車乗るぞ。ふたりでコーヒーカップ乗るぞ」
浩平「ぐるぐる回してやるからな。一生懸命回してやるからな」
長森「イタイよ、浩平っ…」
浩平「あ…悪いっ…」
それで指は切れた。
長森「ほら、もうチャイム鳴るよ、いこっ」
浩平「ああ…」
先に立って、走ってゆく瑞佳。
オレは、後を追わなかった。立って、見送っていた。
始業のチャイムが校庭に鳴り響く。
瑞佳が振り返ったとき……たぶんオレはいなかった。
なんでもいいから、自分との接点を見いだしたかった。
そして、この場所に必要とされる理由を探し出したかった。
…ない。こんなところにはない。
………。
……。
…。
………。
……。
…。
…どこにもない。
大体にして、オレひとりでいること自体、もはや意味なんてない。
それは消費されてゆく時間を無意味に過ごしているだけだ。
瑞佳と、大好きな瑞佳と、バカなオレを好きでいてくれる瑞佳と、大切に思ってくれる瑞佳と、それ以上に大切に思う瑞佳と…
…この大切な時間を過ごさなければ意味がない。
いくあてなんてない。
当たり前だ。
オレが居る場所なんて、瑞佳のそば以外にないんだから。
気づくと、オレは駆け出していた。
瑞佳。
オレはおまえを連れて行くぞ。力尽くで。
………。
見知った連中が、オレに目もくれず、通り過ぎてゆく。
それは痛い現実だった。
でも、オレはおまえを連れ出すためなら、どこだってゆく。
痛くたって、ぜんぜん平気だぞ、オレは。
………。
…瑞佳。
教室からひとりで出てくるところだった。
どこへいくつもりなんだろう。
しかしそんなことは関係ない。
どこへいくつもりでも、オレは連れてゆくんだから。
でも、オレは…
オレは、最も突きつけられたくない現実を突きつけられてしまう。
開いた目が、そのまま、瑞佳のいなくなった先の壁を見ていた。
瑞佳が、最後にオレを見た目は…
他人を見る目だった。
………。
なんで爆撃されてんの?
>>366 山瀬がストーカーをしているアイドル。
ストーカーの域を越えてるが。
……。
………。
…由起子さんに見つかったら、やばいかな。
でも、昔から干渉し合わない暮らしをしてたからな……大丈夫かな…。
ただ、飯にありつけなくなっただけか。
まあ、いい。
食う気なんて起こりはしなかったから。
ベッドに体を横たえ、四肢を伸ばしきる。
消えてなくなればいい。
オレはついに、最も近くにいてくれる人にまで忘れ去られた存在だった。
つまり、もうこの世界に繋ぎ止めるものなどなにもなくなったのだ。
オレの体は空中に放たれたと同じだ。
今日は雑談できないからもう寝る('A`)ノモヤスミsakageタチ
???
いつからこのスレは短編小説スレになったんだ?
/ヽヘ z z Z
/ ノノ i'ヽハ
(*゚ー゚) ヽ l 丿 o
o(ηvvη ⊂(Д-,,⊂⌒'つ
マターリ
そして俺は寝る
しかし、毎回ID変えながら大変だな、中の人も。
まさかこのまま全部やるのか?
それはそれでスゲーな。
つまらんから詐欺でもしてこよう・・・
もういいや、モヤスミ('A`)ノ
中に人など(ry
無抵抗に海に落ちてゆくだけの存在だった。
もう一度眠れば、それは訪れる。
あの空の向こう、遠い幼い日に生まれた世界。
その瞬間にオレの体は飲み込まれて消えてしまうのだ。
それが痛切にわかる。
でも、それもいい。
>>415 イイから今日は大人しく寝ろ。
オマイラが寝たあとニャンニャンヨロシク
悪いことばかりじゃないはずだ。
考える時間はたっぷりある。
そこは永遠の世界なんだから。
ずっと旅し続ける世界なんだから。
長森との幸せな記憶を持ってゆけばいい。
そこで、オレは永遠に長森との幸せな思い出を反すうし続けることができる。
それを考えると、幸せなことだと思える。
オレには幸せだった思い出がある。
それは永遠の中でも生きてゆける糧だと思った。
胸を張ってゆけばいい。
幸せだったんだからな。
………
……
…
目覚めは最悪だ。
ずいぶんと眠ったにも関わらず、体は芯まで疲れ切っていた。
精神の疲れとは、ここまで肉体に作用するものなんだろうか。
軋むような腕を動かし、前髪を掻き上げる。
………。
訪れなかったのだ、まだ。
でも、少し時間が延びたに過ぎない。
オレは、上着を羽織り、トイレにでもゆこうと部屋のドアノブを掴んだ。
浩平「………」
ドアがわずかに開いていた。
閉め忘れたのだろうか…?
そんなはずはない。特に気を付けて、ドアはきっちりと閉めたはずだ。
それはつまり、もうここにもいられなくなった、ということなのだ。
由起子さんにも迷惑をかけてしまったかな…。
オレは机の上に放り出してあったサイフを掴むと、それをズボンの後ろポケットに無造作に突っ込む。
そして、その家を後にした。
9年間暮らしてきた街並み。
今、こうしてその中に身を置くと、いろいろな思いが沸き上がってくる。
この街で、どれだけオレが見てもなく触れてもないものが多いことか。
あの道だって歩いたことがない。
あの店だって入ったことがない。
どこからだって、物語は始まりそうだ。
人との会話から始まって、約束を交わして、再会して、お互いを知り、他人でなくなり、互いが互いを干渉し、生活が少しづつ変わってゆく…
それは幾度となく繰り返されてきた日常のはずだ。
はずだったのにな…。
空を見上げる。
今にもそこへ落ちてゆきそうだった。
それは本当に落ちてゆきそうな感覚だ。
どん、と誰かがオレにぶつかって何も言わずに抜けてゆく。
実際オレの足首には何も填っていない。
繋ぎ止めるものがない。
両手を伸ばして、それを受け入れればもう終わりなような気がした。
その世界へと落ちてゆく。
戻ってくることなどない。
オレは知っているのだから。
その世界がほんとうに存在して、ただ悔恨の中に生きてゆくこれからの自分を知っているのだから。
………。
……。
………。
………。
あ…長森…
向かい、信号を待つ姿…
長森だった。
一瞬目が合った気がした…
でも、長森に表情の変化はない。
………
やっぱりもう他人なんだな、オレたちは…。
それを突きつけられたくなかったのに…
こんなにも簡単に…
最後に出会ってしまうなんて…。
信号が青に変わる。
人の波に押されるように、お互い、歩き出す。
長森はオレを見ない。
オレも長森を見ない。
他人同士だから。
他人とは、黙ってすれ違うものだから。
痛くない…。
痛いのはオレだけだから。
近づき、距離が狭まり…
そしてふたりは、すれ違っていった。
………
さようなら。
大好きだったひと。
………
長森「捕まえたっ…」
………
長森「やっと捕まえたっ…」
………
長森「浩平っ、捕まえたよっ」
………
青信号が点滅を始める。
長森「また逃げられないように、知らん顔してたんだよっ」
長森「すぐにも走って…正面から抱きしめたかったけどっ…ぐっと我慢してっ…
長森「ぼろぼろ泣きだしそうだったけどっ…ぐっと堪えてっ…」
赤に変わった。
浩平「痛い…離してくれよ…」
長森「いやだよっ…」
長森「またわたしだけ置いて、逃げちゃうもんっ…」
耳をつんざくクラクション…
浩平「大丈夫…逃げないよ」
逃げない。
長森「ほんとう?」
浩平「ほんとう」
ほんとうだ。
長森「ただ…」
ただ…
正面から、抱きしめたいだけなんだから。
何もない。
課金切れた
うそ。
何もここには残っていない。
もし、最後に、彼女の中に何かが残されていたとして…
もし、最後に、彼女の中にふとよぎるものがあっとして…
そして振り返ったとしても、もうそこには誰の姿もなかっただろう。
ただ、すべては日常へと戻ってゆくだけだ。
何もなかったように。
ち、挿入し損ねたぜ!
BOTだとしても放置はしてないんだろうなきっとプ
………。
……。
…。
風がそよいでくる。
新緑の香り。そしてずっと知っていた香り。
それは長森の香り。
大好きな長森の。
ふぁ…気持ちがいい。
大好きな人の膝の上でごろごろできるとは。
いつも怒鳴られて起こされていたけど、今日はちがう。
もう、眠っていいのだ。
ただ、それまでの時間、ゆっくりと話をする。
浩平「なぁ、長森…」
長森「うん…」
浩平「お好み焼き食いたいなぁ…」
長森「どうしたの、急に」
浩平「いや、ただそう思っただけ」
長森「お好み焼きね…。そうだね、食べたいね」
浩平「あの駅前の…」
長森「うん。前に一度行ったことのあるところだよね」
浩平「そう。あそこのな…」
長森「美味しかったよね」
浩平「そう、うまいんだ」
浩平「いこうな、絶対…」
長森「うん、いこうね。絶対」
浩平「………」
最後の最後まで、オレたちは日常を装った。
それこそがオレが望んでいたものだと、長森も知っていたのだろう。
例えば、それは夏の夜。
祭囃子を遠くに、縁側に腰掛け、花火に興じる。
りゅう君か・・ソース出してくれた人サンクス
しかしコレで既に小学1年生がラグナロクやってる事が判明したな。
俺が小学一年生のころはスカート捲りとかメンコとかレゴブロックとか流行ったもんだが。
年取ったなオレ
じっと、線香花火を見つめる。
そしてそれが消えたとき…
「はい、まだまだあるよ」
例えば、秋の夕暮れ。
川縁を歩いて、家路を辿る。
とんぼがつがいで飛んでゆく。
今日は終わりだけど、終わりじゃない。
「ねぇ、明日はさぁっ…」
例えば、凍てつく冬。
白い町。
つるつる滑って学校へ向かう。
はぁはぁ白い息吐いて、他愛ない話をする。
「それでね、それからねっ…」
「………」
「聞いてる…?」
「あぁ、聞いてるよ」
「うんっ…あのね、それからねっ…」
例えば、春。
緑萌ゆ春。
すべては陽光を受け、きらきらと輝き出す。
まばゆく。
出会って、色んな人と出会って。
ひとつひとつが小さな幸せだ。
それを集めて、たくさん集めて。
よーし毒男張っちゃうぞ
('A`) \
/⌒⌒⌒⌒⌒ヽ ギシギシ
// ̄ ̄ ̄フ / アンアン/
/ (___/ /
(______ノ
「知ってる…?」
「ああ。知ってる」
中心にはいつも君がいる。
かけがえない。
どの瞬間も。
時を経て、大きくなって…
それでも変わらないふたりでいられたらいい。
そのときになって初めて、それが嬉しく思える。
移りゆく時間の中で、変わらないものが。
時間が経って、言えることはひとつだ…。
「同じ時間を過ごせて良かったよ」
過ぎてゆくものだから、それは素敵なこと。
かけがえないもの。
失う。
そんな日常を失ってしまうのか…。
長森「う…」
浩平「どうした長森…」
長森「ううん…」
>>446 だろうね。トリップあぼーんされてると気付いて名無しに変えたみたいだし。
どんな顔してモニタの前にいるんだろうなぁ。
浩平「………」
長森「笑顔で、いれてるかな、わたし」
浩平「ああ、笑顔でいれてるよ」
長森「そう…よかった」
浩平「で、なんだっけ…」
長森「お好み焼き」
浩平「そう、お好み焼きだな…」
長森「………」
ばさっと音をたて、木々のこずえから鳥が発った。
わたしは普通に生きていた。
それまでと同じように日常を生きることを努めた。
もちろん…色んなところで無理はでてくるけど…
でも前向きでいたいという姿勢は守りたかった。
ふと悲しくなるのはどうしてだろう。
どうしてなんだろう。
季節のうつろいは緩やかで、いつまでも同じ時間にいるような気がする。
でもちゃんと進んでいる。
同じ季節にわたしはいない。
一歩づつ、あの日から遠ざかっている。
あの日探していたものと、今探しているものは違うし、見ている風景も別だ。
すべてがうつろいゆく。
留まっているのは思い出だけだ。
色あせない思い出…
その中に身を投じれば、わたしは辛くなる。
激しく、心が震えてしまう。
「あっ…浩平っ…」
「おぅ、長森」
「はっ…あはっ…」
「どうしたんだ?」
「ううん、すごく悲しい夢を見てたんだよ。すごくイヤな夢だったよ」
これは、あれか?
夜勤か削除人に通報すれば、叩き出せるのか?
「そうか。それは可哀想になぁ…」
「…よし、じゃあ、今日はおまえのために一日時間を割いてやるか」
「ほんとっ?」
「ああ。一日遊べばきっとイヤな夢だって忘れられるだろ?」
「うんっ、おつりがくるよっ」
「よぅし、いくかっ」
「うんっ、いこっ」
たくさんの幸せのかけら。
ビー玉のように輝く小さな幸せのかけら。
浩平と集めるんだ。
一緒に集めた幸せは、ふたりの共有する幸せ。
どっちの角度から見ても、それは幸せなんだ。
「ね、浩平」
でも、それのほうがイヤな夢だったことに気付くとなにもかもを失った気さえする。
「瑞佳…?」
「………」
「大丈夫、瑞佳…?」
「はぅっ…」
無理でしょ。夜勤はここの管理を諦めてるみたいだし。
>>467 削除依頼よろ。そしてまたぷららが書き込み不可に('A`)
暇だし読もうかなぁ と思ったけどマンドクセ
>>467 どうだろ('A`)
出来たとしても少し時間かかるんじゃない?
「瑞佳っ…」
「…えっ?」
「瑞佳…」
「あ、佐織…呼んだ?」
「どうしたの、なんだか…」
「ううん、なんにも」
「瑞佳っ…」
「…えっ?」
「瑞佳…」
「あ、佐織…呼んだ?」
「どうしたの、なんだか…」
「ううん、なんにも」
「ほんと?」
「うん、なんにも。大丈夫だよ」
そして、ふと悲しみがわたしの心を捉えてしまうと、このぬいぐるみに話しかける。
「うっす、おれ、ラビット鈴木!」
「なにそれっ、呪いの言葉を吐く人形?」
「ううん、わたしを元気づけてくれる友達だよ」
「そ、そうなの…」
「そうだよ」
「ご主人様に似て、口の悪いコだけどね」
「よぉ、どうした、長森、元気ないねぇっ!」
「いいか、長森!」
「おまえのそばに、とんでもなく鈍感で頭の悪い男がいるだろう!」
「ときには、おまえさんを罵倒したり、なじったりするかもしれない!」
「でもな、許してやってくれ!」
「我慢して、そばにいてやってくれ!」
「どんなことをしたってな、そいつはおまえのことが好きなんだから!」
「だからな、長森!」
「元気なくても、そいつには元気のいい笑顔を見せてやってくれ!」
「そうすれば、バカだから、そいつは幸せでいられるんだ!」
「な、頼むぜ!」
「そしてっ!」
ぬいぐるみが続ける。
「そして、そのバカがいないときでも笑っていろよな、長森!」
「引きつりそうな限界の笑顔で、笑ってろよな!」
「じゃないと、あいつが戻ってきたときに、寂しい思いをするからな!」
「以上、ラビット鈴木が贈る、叱咤激励の言葉でした!」
「さらばぴょん!」
「あはは…」
「……?」
「おかしいよね」
「瑞佳…」
「あははっ…」
夏…
暑い夏だった。
友達は多いほうじゃなかったけど、それでもその大切さを感じた。
わたしひとりだけが、遠く南海の果てに浮くブイの方向を見ていたのに、友達はちゃんとそばに居てくれた。
それはありがたいことだった。
秋…
日常というものが、すでに失われたものであったなら、わたしは一体どこに生きているのだろう。
ふと思えば、肌寒く、わたしは風邪をこじらせたりした。
もう一度前を見よう。
しっかり顎を引いて。
冬…
凍てついたのは太陽だけでなく、心もそうだ。
もし次の季節がきて、明るい陽光が差して、溶けてくれるなら。
感情のような朝露がわたしの心の雨どいを伝ってくれるなら。
滑らかに落ちて、その下の琴線に触れてくれるなら。
春…
春という季節は、別れの季節だった。
いろいろな人と別れて…
そして今もわたしは、待っているのだ。
あのひとを。
ずっと、永遠に繰り返される、季節のうつろい…
だと思っていた。
暇だからAA張っていいかな?
「おっ、どうしてたんだ、久しぶりだなぁ」
「病気でもしてたのか?」
何人かの生徒が、驚いたような声をあげる。
「おい、待てって…」
ん…
なんだろう…。
でもちょっと手が離せない。
学級日誌つけてるとこだから。
…自習で、プリントを一枚と。
「あー…ごほんっ」
しらじらしい咳払い。
なんか、聞いたことあるな。
「えっと…長森…」
え、わたし…?
顔を上げる。
そこに居た。
少し照れたように、はにかんだ人が。
「あー…えっとだなぁ…」
「………」
「ずっと前から好きだったんだ…」
「…オレともう一度…付き合ってくれっ!」
「えっ…?」
そうその人が告げた。
ものすごく恥ずかしいことを正面きって言う人だ…。
みんな見てるのに。
でも、わたしは正直だから、答えちゃうんだ。
その人は、わたしの大好きなひとだったから。
ずっと待ち続けてたひとだから。
これからもずっと、『一緒に居たい』ひとだから。
どこまでもつづく海を見たことがある。
どうしてあれは、あんなにも心に触れてくるのだろう。
そのまっただ中に放り出された自分を想像してみる。
手をのばそうとも掴めるものはない。
あがこうとも、触れるものもない。
四肢をのばしても、何にも届かない。
水平線しかない、世界。
そう、そこは確かにもうひとつの世界だった。
そしてその世界には、向かえる場所もなく、訪れる時間もない。
でもそれは絶望ではなかった。
あれこそが永遠を知った、最初の瞬間だった。
大海原に投げ出されたとき、ぼくは永遠を感じる。
だからぼくは、小さな浜辺から見える、遠く水平線に思いを馳せたものだった。
虚無…。
意志を閉ざして、永遠に大海原に浮かぶぼくは、虚無のそんざいだった。
あって、ない。
でもそこへ、いつしかぼくは旅だっていたのだ。
夕日に赤く染まる世界。
静止した世界。
春一番キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
べつに光景が止まっているわけじゃない。
光は動いているし、バイクの加速してゆくエンジン音だって聞こえる。
静止していたのは、それを見ている自分の世界だった。
真夜中、誰もが寝静まった中、遠くに犬の遠吠えや、バイクのエンジン音を聴くのに似ている。
そういうとき、ぼくは属する世界が違うという違和感を覚えるものだった。
聞こえるのだけど、そこにはたどり着けない。
永遠、たどり着けない。
どれだけ歩いていっても、あの赤く染まった世界にはたどり着けないのだ。
それがわかっていた。
そこには暖かな人々の生活がある。
でもそこにはたどり着けないのだ。ぼくは。
ころころ…。
挿入できん!
とあせった童貞っぽく焦ってみる。
微かな音がした。
それは確かにこちら側の音だ。
(あそこには帰れないんだろうか、ぼくは)
訊いてみた。
(わかってるんだね、あそこから来たってことが)
(ああ、わかる。でも、ほんとうにあの街のどこかに住んでいたわけじゃない)
いいんじゃね?
どうせ今ココに残ってるのは
地雷原で弁当食ってるようなキワモノ揃いなんだし
大して問題ないだろ
(そう。すごいね)
(つまり、あっち側の一部だったってことがわかるんだ)
(でもね、旅立ったんだよ、遠い昔に)
(そうだね。そんな気がするよ)
(でも遠い昔はさっきなんだよ)
(それも、そんな気がしてた)
(つまり、言いたいこと…わかる?)
(わかるよ。よくわかる)
ずっと、動いている世界を止まっている世界から見ていた。
一分一秒がこれほど長く感じられることなんてなかった。
もどかしいくらいに、空は赤いままだったし、耳から入ってくる音は、変わり映えしなかった。
違うな…。変わるはずがないんだ。
進んでいるようで、進んでいない。メビウスの輪だ。
あるいは回転木馬。リフレインを続ける世界。
(世界はここまでなんだね…)
ぼくは彼女に言った。
(飽きたら、次の場所へ旅立てばいいんだよ)
(……そうだね)
ヘッドライトがヘッドライトを追ってゆく。
何度も見ている一定の距離感を置いて。
(いや…もう少しここにいるよ)
(そう? そうだね…)
ぼくは体を慣らすように、その光景に身を浸していた。
急ぐ旅でもない。
ずっと、眺めていた。
また…悲しい風景だ。
(どうしてぼくは、こんなにも、もの悲しい風景を旅してゆくのだろう)
(あたしにはキレイに見えるだけだけど…でも、それが悲しく見えるのなら、やっぱり悲しい風景なんだろうね)
(ひとが存在しない場所だ)
(そうだね)
(ひとが存在しない場所にどうしてぼくは存在しようとするのだろう。もっと、ひとの賑わう町中や、暖かい家の中に存在すればいいのに)
(さあ…よくわかんないけど。でも、あなたの中の風景ってことは確かなんだよ)
(つまりそれは…ぼくの心を風景に置きかえてみたときの姿なんだろうか)
(だったら、少し悲しすぎる…?)
(わからない)
(でも、こんな世界だからこそ、ぼくは求めたんだろうけどね)
帰れない場所。
もう、そこからはどこにもいけない場所。
すべてを断ち切った、孤立した場所にぼくは、ずっと居続けていたいんだ。
そして、そんななにもない、どこにも繋がらない場所で、ぼくはぼくを好きでいてくれるひとだけの存在を、もっと切実に大切に思うのだ。
きみと一緒にいられること。
それはこの世界との引き替えの試練のようであり、また、それこそがこの世界が存在する理由なのだと思う。
(次はどこにいこうか)
(大丈夫。あたしはどこだってついていくよ。ずっとね)
(そうだね)
(このままずっと、いけばいいんだね)
(そう。ずっと)
どこまでもいけばいい。ぼくの心の中の深みに。
>>497 >1.この荒らしがコピペ等始めたら削除依頼を出した上で、下記の要領で報告。
両方('A`)ノ
(ねぇ、たとえば草むらの上に転がって、風を感じるなんてことは、もうできないのかな)
(ううん、そんなことはないと思うよ)
(そうしてみたいんだ。大きな雲を真下から眺めてさ)
(だったらすればいいんだよ。これはあなたの旅なんだから、好きなことをすればいいんだよ)
(でも、どうしたらいいんだろう。ぼくはいつも見える世界の外側だ)
(まだ、難しいのかな。あたしは感じられるよ。草の匂いを帯びた風が)
(やり方を教えてくれよ)
(うーん……じゃあ、手伝うよ)
彼女が僕の背中に回って、そして両腕で僕の体を抱く。
(いい?)
(あ、うん…)
(雲が見えるよね…)
すぐ耳の後ろで声。
(見えるよ)
(ゆっくりと動いてるよね)
(そうだね。動いている)
(あれは、何に押されて動いてるのかな)
(風)
(そう、風だね…)
(風は、雲を運んで…ずっと遠くまで運んでゆくんだよ…)
(…世界の果てまでね)
(………)
草の匂いが、鼻の奥を刺した。
それは風に運ばれてきた匂いだ。
(きたよ…風…)
(そう、よかった)
(でも、もう少し手伝っていてほしいな)
(うん、わかったよ)
もう少し、抱かれていたかった。
世界の果てまで届くという風を感じながら。
(空だけの世界…)
(この下には、何があるんだろうね)
(なんにもないよ)
(そうかな。あたしは、広大に広がる野に、放し飼いの羊がたくさんいると思うよ)
(いや、ずっと空だけが続いてるんだと思う)
(どうして…? 羊を放し飼いにしておこうよ)
(大地がないから、羊はみんな落下してゆくよ)
(だったら、大地を作ろうよ。新緑の芽生えたばかりの大地)
(いらないよ。海でいい)
(羊は、みんな海に落下してゆくの…?)
(そう。ぼちゃぼちゃと海に落ちる。一面水平線の海。そこでぷかぷかと浮かんで余生を送るんだ)
(でもその羊たちは、みんなあなたなんだよねぇ?)
(そう。僕だよ。無力な羊はぜんぶ僕だ…)
(…というよりも、今の僕が、海に浮かぶ羊なんだと思う)
海に浮かぶ羊。それは唐突にしっくりくる、たとえだという気がした。
(でも、夢の中ではみんな、空を飛ぶんだよ)
(羊が空を飛ぶのかい)
(飛んでもいいと思うけどな)
(それはたぶん滑稽だよ。似合わない…)
(…羊たちは、自分の立場をわきまえた上で、海を選ぶんだ)
(それも自分の比喩…?)
(………)
(…少し言い過ぎたかな)
(ううん、気にしてないけど…)
+
+ + +
+
. / ̄\ +. ∧_∧アハハハ +
孫カエセヨー( ´∀`) (´∀` )
(つ つ (つ つ孫
. + ( ヽノ ( ヽノ +
し(_) し(_)
(ごめんなさいっ)
つまりは僕は、自分の立場をわきまえてこの世界を選んだのだと。
それはこの世界を蔑んでいることになる。
彼女を含むこの世界を。
…気づいているだろうか?
この僕の猜疑心に。
(でも羊たちは、とても泳ぎがうまいんだ)
どうせなら官能小説で荒らしてほすぃ(´Д`*)
(ほんとに…?)
(じゃぶじゃぶと波を掻き分けてゆくよ。たぶんね)
(だったらいいよね。空が飛べなくても)
でもたどり着ける島なんて、ないんだ。
ないんだよ。
たとえば泣きたいときがある。
>>505 (´-`)。oO(ある意味楽しめてる喪前様方が・・・・好きだゼ)
どこへ向かって泣けばいいのだろう。
なにを思って泣けばいいのだろう。
虚無からは幸せは生まれない。
そんな気がしていた。
放り出された海に浮かび、ぼくはなにを泣き叫ぶのだろう。
そんなことをする気にすらならない。
削除依頼板行ってみた。
スレ番号指定必須だと言うことがわかった。
全部書き出すの('A`)ノマンドクセ
これ書いてる香具師ごと弾いてください板って無いのか?無いのか・・・。
それが幸せなのだろうか…。
空虚は、ぽっかりと胸に空いた穴。
もう失うこともない。
それが完全な形なのだろうか。
なにも失わない世界にいるぼくは
なにをこんなにも恐れているのだろう。
こんなのならうん○のがまだいいんだが
漏れなんか地雷原で野球やっちゃうもんねー
2020年スーパーベースボール?(゚∀。)
選択肢のない袋小路だった。
つまりそれは、終わりだ。
それを自分でも気づかないうちに心のどこかで悟っていたから、こんなにも空虚だったんだ。
空虚だったんだ。
帰り道…
(ん…?)
帰り道を見ている気がするよ。
(そう…?)
うん。遠く出かけたんだ、その日は。
(うん)
日も暮れて、空を見上げると、それは違う空なんだ。いつもとは。
違う方向に進む人生に続いてるんだ、その空は。
この速さなら言える!
俺は山川恵里佳が好きだ!
その日、遠出してしまったために、帰りたい場所には帰れなくなってしまう。
ぼくは海を越えて、知らない街で暮らすことになるんだ。
そしていつしか大きくなって、思う。
幼い日々を送った、自分の生まれた街があったことを。
それはとても悲しいことなんだ。
ほんとうの温もりはそこにあるはずだったんだからね。
腹減ってきたなぁ…王将の餃子食いたい…
(………)
(…それは、今のあなたのことなのかな)
そんなふうに聞こえた…?
(うん…)
ぼくはね、最後まで頑張ったんだ。
(………)
あのとき、頑張って、自分の街に居続けることを願った。
それは別にこの世界を否定しようとしたんじゃない。
この世界の存在を受け止めたうえで、あの場所に居残れるんじゃないかと、思っていたんだ。
でもダメだった。
(そんなことわざわざ言って欲しくないよ…)
ただね、もっとあのとき頑張っていれば、ほんとうに自分をあの場所に繋ぎ止められたのか、それが知りたかったんだ。
(どうして?)
べつに、可能性があったとして、それはここに来ないで済んでいたのか、という話しじゃない。
ただ、もしほんとうにできるんだったら、ぼくの人との絆っていうものがそれだけのものだったのかと、悔しいだけなんだ。
どう思う?
(たぶん…無理だったと思うよ)
(この世界はあなたの中で始まっていたんだから)
やっぱりそうか…。
(うん…)
でも、それが無理でも、この世界を終わらせることはできたかもしれない。
(………)
いや、できる、かもしれない。
(この世界は終わらないよ)
";ヾ*;;@;ヾ;;"/"*;";^"i";ヾ
ヾ*;";"i";*;ヾ;"i";*;ヾ;"i"
|i;;ii ;iiメソ"i";*;;,*
|l!|| ll|リ/i;^*
l;l!ll |l|
|:l||| |l| ∧_∧
|;l!l| ||l ( ´Д`)<はぁースイートジェントル買い損ねた
|ill|| ll|. / \
l|il|l l!| | | | |
|::l|| !!|,,,,,,,,,,,,,| | | |,,,,,,,,,,,
ノ;;i!! !!ヽ"⊂_/\ ヽ \゛> ,,
,,, \ / ̄) ̄)
,, 丶 ノ、ノ
(だって、すでに終わっているんだから)
また、ぼくはこんな場所にいる…。
悲しい場所だ…。
ちがう
もうぼくは知ってるんだ。
だから悲しいんだ。
(悲しい…?)
今さら、キャラメルのおまけなんか、いらなかったんだ。
(たくさんあそべるのに?)
うん。
いらなかったんだ、そんなもの。
(どうして?)
おとなになるってことは、そういうことなんだよ。
(わからないよ)
わからないさ。
だってずっと子供のままだったんだから…
………。
……。
…。
うあーーーん…
うあーーーーーーーんっ!
泣き声が聞こえる。
誰のだ…?
ぼくじゃない…。
また、ガイガー計数管を持ったあなたのウエートレスおよび彼女があなたおよびあな
たの友達を嫌い、まったく得ることができないことを知ることができません、貢献した
、なしで、彼女の、また、売上げは、よだれを垂らすことおよびバースツールです、燃
えている。また、新聞はふざけおよび灰皿でした、退いた「ピアノを引き起こす、飲ん
でいた、ピアノは飲んでいました。ピアノは飲んでいました、ない、私、ない、私、ない
、私、ない、私、ない、私
そう、いつものとおり、みさおの奴だ。
「うあーーーーん、おかあさーーんっ!」
「どうしたの、みさお」
「お兄ちゃんが、蹴ったぁーーっ!」
「浩平、あんた、またっ」
「ちがうよ、遊んでただけだよ。真空飛び膝蹴りごっこして遊んでたんだ」
「そんなのごっこ、なんて言わないのっ! あんた前は、水平チョップごっことか言って、泣かしたばっかじゃないのっ」
「ごっこだよ。本当の真空飛び膝蹴りや水平チョップなんて真似できないくらい切れ味がいいんだよ?」
「ばかな理屈こねてないで、謝りなさい、みさおに」
「うあーーんっ!」
「うー…みさおぉ…ごめんな」
「ぐすっ…うん、わかった…」
「よし、いい子だな、みさおは」
「浩平、あんたが言わないのっ!」
じっさいみさおが泣きやむのが早いのは、べつに性分からじゃないと思う。
ぼくが、ほんとうのところ、みさおにとってはいい兄であり続けていたからだ。
そう思いたい。
母子家庭であったから、みさおはずっと父さんの存在を知らなかった。
俺だ
ぼくだって、まるで影絵のようにしか覚えていない。
動いてはいるのだけど、顔なんてまるではんぜんとしない。
そんなだったから、みさおには、男としての愛情(自分でいっておいて、照れてしまうけど)を、与えてやりたいとつねづね思っていた。
父親参観日というものがある。
それは父親が、じぶんの子供が授業を受ける様を、どれ、どんなものなのかとのぞきに来る日のことだ。
ぼくだって、もちろん父親に来てもらったことなんてない。
>>534 今ココにう○こ降臨したらある意味爆笑物なんだけどなー
でもまわりの連中を見ていると、なんだかこそばゆいながらも、うれしそうな顔をしてたりする。
どんな頭がうすくても、それは来てくれたらうれしいものらしかった。
しかしそのうれしさというものは、ぼくにとっては、えいえんの謎ということになる。
きっと、たぶん、二度と父親なんて存在はもてないからだ。
振り返ったとしても、そこには知った顔はなく、ただ誰かから見られているという実感だけがわく、ちょっと居心地の悪い授業でしかない。
ぼくの父親参観とは、そんな感じでくり返されてゆくのだ。
でもみさおには、男としての愛情を与えてやりたいとつねづね思っているぼくにしてみれば、ぼくと同じような、
『ちょっと居心地の悪い授業でした』という感想で終わらしてやりたくなかった。
だから、一大作戦をぼくは企てたのだ。
「みさお、ぼくがでてやるよ」
「お兄ちゃんって、あいかわらずバカだよね」
「バカとは、なんだ、このやろーっ!」
「イタイ、イタイよぉーっ、お兄ちゃんっ!」
アイアンクローごっこで少し遊んでやる。最近のお気に入りだ。
「はぅぅっ…だって、お兄ちゃん、大人じゃないもん」
「そんなものは変装すればだいじょうぶだ」
「背がひくすぎるよ」
「空き缶を足の下にしこむ」
「そんな漫画みたいにうまくいかないよぉ、ばれるよぉ」
「だいじょうぶ。うまくやってみせるよ」
「ほんとぉ?」
「ああ。だから、次の父親参観日は楽しみにしてろよ」
「うんっ」
初めはバカにしていたみさおだったが、最後は笑顔だった。
みさおの笑顔は、好きだったから、うれしかった。
そして来月の父親参観日が、ぼくにとっても待ち遠しいものになった。
みさおが病気になったのは、そろそろ変装道具をそろえなきゃな、と思い始めた頃だった。
ちょっと治すのに時間がかかるらしく、病院のベッドでみさおは過ごすことになった。
「バカだな、おまえ。こんなときに病気になって」
「そうだね…」
ONEを思い出して泣きそうになったのは私だ
みさおの笑顔は、好きだったから、うれしかった。
そして来月の父親参観日が、ぼくにとっても待ち遠しいものになった。
みさおが病気になったのは、そろそろ変装道具をそろえなきゃな、と思い始めた頃だった。
ちょっと治すのに時間がかかるらしく、病院のベッドでみさおは過ごすことになった。
「バカだな、おまえ。こんなときに病気になって」
「そうだね…」
で、このシナリオ知ってる人。あと何割くらいでエンディング迎えますか?
「おまえ、いつも腹出して寝てるからだぞ。気づいたときは直してやってるけど、毎日はさすがに直してやれないよ」
「うん、でも、お腹に落書きするのはやめてよ。まえも身体検査のとき笑われたよ」
ぼくはいつも、油性マジックでみさおのお腹に落書きしてから布団をなおしてやるので、みさおのお腹はいつでも、笑ったり、泣いたり、怒ったりしていた。
「だったら、寝相をよくしろ」
「うん。そうだね」
みさおの邪魔そうな前髪を掻き上げてやりながら、窓の外に目をやると、自然の多く残る町の風景が見渡せた。
('A`) \
/⌒⌒⌒⌒⌒ヽ 瑞佳ァァ瑞佳ァァ!!
// ̄ ̄ ̄フ / 浩平ェェェ! /
/ (___/ /
(______ノ
ちょとコピペタイミングシパイ。
>>566 今2周目・・・かな?
そして、秋が終わろうとしていた。
「みさおー」
「あ、お兄ちゃん。どうしたの、こんな時間に」
「みさお、退屈してると思ってな」
「ううん、だいじょうぶだよ。本、いっぱいあるから、よんでるよ」
「本? こんな字ばっかのが、おもしろいわけないだろ。やせ我慢をするな」
左手には神奈の表着を抱えている。
何に使うか教えていたら、裏葉は絶対に貸してくれなかっただろう。
やがて。
湿った風が、燈油と松脂(まつやに)が焼ける臭いを運んできた。
俺の前方、松明の明かりが煌々(こうこう)と見えた。
川面をはさんで両岸の斜面を、十名ほどが登ってくる。
みさおが生き返ってるもんね。
木立に身を隠しながら、集団の先頭をうかがう。
むずかしいのはここからだった。
相手に近づきすぎない場所から、こちらの姿をちらりと見せなければならない。
神奈の表着を開き、頭を隠すように被(かぶ)る。
裏葉が選んだ派手な色合いが、今は逆にありがたかった。
土を踏みしめる足音が近づく。
深く息を吸った。
次の瞬間、俺は木々の隙間に身をおどらせた。
先頭を歩いていた兵士が、ぎくりと立ちどまった。
松明を高くかかげ、けげんそうに俺の方を見る。
そこで踵(きびす)を返し、梢の間に逃げこんだ。
【声】「いたぞ、女だ!」
興奮した怒鳴り声。
ヒュィ〜〜〜〜。
かん高い呼び子の音が、森中に響きわたった。
思惑通りだ。
木々を縫って斜面を疾走する。
重い足音が背後から迫ってくる。
最初は沢から離れる。
追っ手をできるだけ大勢引き寄せるためだ。
【声】「くそっ、存外足が早いぞ」
【声】「見失うな、急げ!」
狩り場で鹿でも追うように、大声で指示を伝えあっている。
【柳也】「…兵は手練(てだ)れでも、指揮がなってないな」
全力で逃げ回りながら、俺はそうほくそ笑んだ。
俺なら全員の松明を消させ、闇にまぎれて包囲網を張り直す。
暗闇で、このぬかるんだ足場だ。
具足(ぐそく)をつけた兵士では、兎一匹捕まえられないだろう。
目前に急な崖が現れた。
衣をかついだまま、足場をえらんで駈け登る。
ヒュィ〜〜〜〜。
また呼び子が響いた。
…ヒュィ〜〜〜〜。
どこか遠くで、別の呼び子がこたえた。
神奈と裏葉は大人しくしているだろうか?
ちらりとそう思ったが、今はたしかめる術がない。
【兵士】「女がいたぞ、こっちだ!」
容赦なく声が飛び、別の追っ手を呼び寄せる。
【柳也】「…そろそろだな」
俺は沢にとって返すことにした。
元来た斜面を転がるように下る。
追っ手の灯す松明が、時折肩越しに見えた。
ああ、突っ込まれた瞬間に変わってるぞ
ほどなく沢に着いた。
神奈と裏葉が待つ場所からはかなり下ったところだ。
上流では雨が強いのだろう、水音は勢いを増していた。
表着を地面に放った。
手近なところに、抱えるほどもある岩を見つけた。
腰を落として持ち上げ、水面めがけて放り投げた。
…じゃばっ!
濁流の真ん中に水柱が立ちあがった。
【柳也】「女が沢に落ちたぞ!」
間髪を入れずに、俺はそう叫んだ。
直上の崖からすぐに反応があった。
【声】「沢に落ちたらしい」
こんな時・・うん○マンがきてくれれば・・
ってやってる香具師一緒か?
【声】「この真下から聞こえたぞ」
続いて、藪をかきわける音。
俺は神奈の表着を両手でひろいあげた。
【柳也】「悪いな、裏葉」
びりびりびり…
絹の布地を袖から乱暴に引き裂く。
>>572 ( Д)゚゚
見逃してたモヨリ・・・(´・ω・`)
帯のように細くなった布切れを、沢に近い木の枝にかけた。
残りの布は水面に流した。
こうしておけば、神奈はここから水に落ちたように見えるはずだ。
すべての細工を終え、沢沿いの崖をよじ登った。
岩陰に隠れ、聞き耳を立てる。
【声】「見ろ、衣の切れ端だ」
007
みさおは2度死ぬ
∧_∧ ________ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( ´Д`)/ ̄/ ̄/ < FUCK YOU
( 二二二つ / と) | ぶち殺すぞ・・孫・・・・!
| / / / | お前は、大きく見誤っている。
__ |  ̄| ̄ ̄ | 自分の頭の実態が見えていない。
\  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ | まるで70歳か80歳の年寄りのように、
||\ \ | 禿げていることを・・
||\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ̄
|| || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
.|| ||
【声】「みなを集めよ、はようせい」
ヒュィ〜〜〜〜ヒュィ〜〜〜〜ヒュィ〜〜〜〜。
呼び子がひときわ大きく鳴り響いた。
【声】「者共、ここだ!」
【声】「…下流だ、ここより下流をくまなく探せ」
漏れ聞こえてくる指示に、俺はほくそ笑んだ。
池から女神が
今度は夏か
俺は腰を上げ、そっとその場を離れた。
慎重に気配を探りながら、ゆっくりと歩を進める。
やがて、数人の兵士が具足を鳴らし、坂を駈け下ってきた。
下草に身を隠し、これはやりすごした。
姿勢を低くしたまま、上流側に移動する。
すぐに別の兵士が歩いてくるのを見つけた。
単独で、松明も持っていない。
物音を立てないように注意して、兵士が通る道筋に先回りした。
木のうしろに身を置き、しずかに抜刀した。
そのまま息を潜める。
兵士は俺のことにはまったく気づいていない。
俺の元まであと十歩。
あと五歩。
脇を通り抜けようとした刹那。
俺は兵士の喉笛に刃をぴたりと押し当てた。
【兵士】「……!」
【柳也】「大声を出すな」
答えのかわりに、ごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。
【柳也】「太刀を捨てろ」
【兵士】「………」
【柳也】「太刀を捨てろ」
声音を変えずに、重ねて言う。
兵士の手から黒柄の太刀が離れ、地面にどさっと落ちた。
【柳也】「俺の問いに正直に答えろ。そうすれば生命(いのち)だけは助けてやる」
こんな嵐の中飽き飽きしないで見ている忍耐強い香具師の為にいい話を書いておこう。
レベル上げの為に叩いていたエギラからCが出た。
アコ持ってないし、s1シューズも無かったから露店で出してたわけだ。2,1Mで。
さて、設定したし、バイトいってこよーか。
帰ってきて見ると売れていた。しかし、所持金が全然増えていない。
間違えて210kにしていたのだ。しばし呆然。
しかし、よく見てみると、同時に出していたチャットに足跡が。
「値段を間違えてしまったのでしょうか?エギラカードが210kで売られていました。
一応私が買いましたが、お間違えなのでしたらWISをどうぞ」
兵士がかすかにうなずいた。
【柳也】「なぜ神奈備命を追う?」
【兵士】「知らぬ。そう命じられたからだ」
【柳也】「神奈備命をどうするつもりだった?」
【兵士】「どうもせぬ。ただ捕らえよ、と」
【柳也】「だれの命で動いている?」
【兵士】「知らぬ」
【柳也】「隠すとためにならない」
柄に力をこめ、刃を肌に密着させる。
雨と泥で汚れた兵士の頬が、ぴくぴくと引きつった。
【兵士】「まっ、まことのことだ。われらは何も知らぬ」
【兵士】「ただ棟梁(とうりょう)は、逆賊を討つためだと申しておった」
【柳也】「どこから来た?」
【兵士】「吾妻から」
【柳也】「東国か…」
都よりはるか東に下ると、屈強な野武士をたばねた傭兵団があると聞く。
秘密裏に事を運ぶのには慣れた連中だ。
だとすれば、雑兵(ぞうひょう)がこれ以上の事情を知らされているとは思えなかった。
こんどはAirかYO
【柳也】「わかった」
俺は兵士の喉元から刃を離した。
そのまま刀を上段に振りかぶる。
兵士は一瞬、呆気にとられたようだった。
俺の方を不思議そうに覗きこんだあと、自分がどうなるのか悟った。
【柳也】「悪く思うなよ」
この速さなら言える!
今日彼女から指輪もらったんだが、
サイズ合わねぇ・・・。・゚・(ノД`)・゚・。
【柳也】「動かなければ、楽にあの世に行ける」
【兵士】「ひっ…」
腰が抜けたのか、べったりと地面に座りこむ。
【兵士】「たっ、助け…」
その首筋を狙いすまし、俺は刀を振り下ろした…
【声】「やめよっ!」
>>600 ( д ) ゚ ゚
まだROにそんな心の清い奴がいたなんて・・・
鋭い声がひらめいた。
俺はすんでのところで太刀筋を変えた。
目当てを失った切っ先が、地面に突きささった。
それを見た兵士が、兎のように駈けだした。
その手が転がっていた太刀に伸びる…
【柳也】「くっ…」
ID尽きたみたいだね
ID:/nhDriwB</dl
ID:+6jwdh0+</dl
ID:+iO9z6MP</dl
ID:28gCT1Oe</dl
ID:2a/2ZN0o</dl
ID:3Gowcf/R</dl
ID:a8gfOepx</dl
ID:agdyGkj9</dl
ID:hHKRl2dZ</dl
ID:ilYKD1h/</dl
ID:JMh4ZLsG</dl
俺はとっさに刃を返し、兵士の側頭を薙ぎはらった。
ごっ。
鈍い音がした。
声にならない悲鳴をあげて、兵士が地面に転がった。
俺は太刀をかまえ直し、体ごと背後を振り返った。
そこに立っていたのは、神奈と裏葉だった。
俺は太刀を鞘におさめた。
【柳也】「なぜここにいる?」
神奈は答えず、別の問いを返してきた。
【神奈】「斬ったのか?」
【柳也】「峰打ちだ」
峰打ちといっても、頭を鉄棒で殴られたに等しい。
しばらくは起きあがれないはずだ。
すぐ近くの地面に、兵士の太刀が落ちていた。
俺はそれを、斜面の下に蹴り飛ばした。
腹の中が、怒りと不甲斐なさで煮えくりかえっていた。
この二人は、どうして俺の指示通りにしなかったのだ?
どうせ恐怖でその場にいられなかったのだろう。
ID:KtYGfLod</dl
ID:NdWcWVBV</dl
ID:nGaRMwyK</dl
ID:qn6jM9tY</dl
ID:QNPneCDR</dl
ID:thZomzsg</dl
ID:U1izZVoS</dl
ID:uVttbjSz</dl
ID:V+IbCwao</dl
ID:WvhewJEa</dl
ID:zGf0xxA+</dl
ID:KtYGfLod</dl
ID:35/0b/nA</dl
ID:l8O3E1vG</dl
山中を闇雲に歩くこの二人を、もしも追っ手が見つけていたら…
もしもそんなことになったら、すべては終わっていたはずだ。
【柳也】「裏葉、なぜあの場所を動いた?」
【裏葉】「もうしわけございません…」
【神奈】「余が命じたのだ。裏葉に咎はない」
きっぱりと言い放つ。
俺は神奈の様子がおかしいのに気づいた。
昏倒している兵士を見やると、神奈は俺に訊いた。
【神奈】「おぬしはこの者を殺(あや)めるつもりだったのか?」
【柳也】「そうしなければ、こっちの生命が危うくなる」
神奈に俺がつき従っていることを知られた以上、生かして帰すわけにはいかない。
俺にとっては当然の話だった。
だが、俺の答えを聞いたとたん、神奈の態度が一変した。
【神奈】「恥を知れ、この痴れ者がっ!」
夜目に怒気がわかるほどだった。
俺はただ困惑していた。
神奈が何を怒っているのかわからなかったからだ。
【神奈】「おぬしは先ほど、この者に『命だけは助けてやる』と申したであろ?」
【柳也】「聞いてたのか…」
【神奈】「おぬしは平気で嘘をつくのか?」
【神奈】「おぬしは平気で誓いを破るのか?」
【柳也】「それは時と場合による」
【神奈】「余との誓いも、時と場合によっては破ると申すか?」
【神奈】「おぬしは平気で…」
【神奈】「人を、殺めるのか?」
神奈はまっすぐに俺のことを見すえていた。
小さな唇がわなわなと震えていた。
【神奈】「そのような者に、余は護られとうない」
俺は自分のうかつさを知った。
『神奈備様が命、違えぬ事を誓約致し候』
それは俺にとって、命をかけた誓いのつもりだった。
しかし神奈にとっては、単なる誓い以上のものだったのかもしれない。
神奈は雨に濡れたまま、無言で俺のことを見ていた。
そしてこう言った。
【神奈】「余はおぬしに命ずる」
【神奈】「余を主(あるじ)とするかぎり、今後一切の殺生を許さぬ」
俺は泥に片膝をつき、太刀を鞘ごと面前に置いた。
【柳也】「承知つかまつりました」
深々と頭を下げる。
【神奈】「わかればよい」
こうして、二度目の儀式は終わった。
元通りに立ち上がる。
太刀を腰に差しなおしながら、俺は思わずつぶやいてしまった。
【柳也】「…ひとりも殺さずに、この先切り抜けられると思うか?」
我ながら未練がましいが、切実な問いではある。
【裏葉】「柳也さまでしたら、たやすいことのように思えます」
【柳也】「簡単に言うなよ」
【神奈】「おぬしは以前、刀で位を得たと申したであろ」
【神奈】「ぞんぶんに腕前をふるうがよい」
【柳也】「全部峰打ちでか?」
溜息まじりに答える。
【兵士】「うう…」
兵士がかすかにうめき声をあげた。
ようやく昏倒から覚めたようだった。
俺は兵士の具足を外し、紐でかたく手足を縛った。
ついでに、口に猿ぐつわをかませた。
【柳也】「運がよければ解けるだろう」
運が悪ければ解けずにこの場で死ぬかもしれないが、俺はそこまで面倒見きれない。
【柳也】「これで文句ないな?」
【神奈】「よい。大儀であった」
人の気苦労も知らずに、鷹揚(おうよう)に言う。
裏葉が身をかがめ、縛られた兵士の耳元でこう伝えた。
【裏葉】「このような不憫を強いて、もうしわけありません」
【裏葉】「わたくしどもはゆえあって先を急がねばなりません」
【裏葉】「あなたさまのお立場は推察いたしますが、わたくしどものことはお仲間には内密にしていただければ幸いと存じます」
【裏葉】「お約束いただけますか?」
兵士が当惑しているのが、手に取るようにわかった。
無理もない。
この状況で『お約束』などと言われるとは、こいつ自身も思っていなかっただろう。
神奈と裏葉に見つめられ、兵士はこくこくとうなずいた。
【神奈】「うむ。敵ながら殊勝(しゅしょう)な心がけ、褒めてつかわすぞ」
【裏葉】「それでは、ご無事をお祈りいたしております」
木立の間に、ちょうど人ひとりが隠れられるほどの窪地があった。
俺はそこに縛ったままの兵士を横たえ、枯れ枝をこんもりとかぶせた。
仲間が探しに来ても、遠目では見つけられないはずだ。
【神奈】「おぬしも早うせんか。まったく益体ない男よの」
【裏葉】「あら柳也さま、神奈さまの表着はどちらに?」
【柳也】「…捕虜の方が扱いがましだった気がするのは、俺の気のせいか?」
【神奈】「なにか申したか?」
【柳也】「いや、何でもない」
雨が止み、長い夜が明けた。
鳥の声が森にもどってきた。
高い枝の間から、朝の光が射しこんでくる。
たっぷりと水をふくんだ木々の幹が、清々しい香りを立てている。
真のラスボス、シルビアは何週目で登場しますか?
高台に登り、辺りをうかがった。
青々とした山並みが、四方に広がっている。
追っ手の気配はどこにもなかった。
俺は斜面を下り、二人の元にもどった。
【柳也】「安心していいぞ。追っ手の姿はない」
【裏葉】「本当でございますか?」
>>666 ∧、 .----、-、 ∧_ カチャ
冫⌒ヽ\ / ___ \| //~⌒ヽ
|( ● )| i\.c´ _、ヽ,/i |( ● )| 鉛玉でものむかい…
ゝ _ノ ^i |lヽ, _.ノ`,l| i^ ゝ_ ノ
|_|,-''iつl/ w´\,;l⊂i''-,|_|
[__|_|/〉"|Y/,ゝ 〈\|_|__]
[ニニ〉 〈二二]
└―' '─┘
さっきまでの爆撃を見て、
・あー、そーいやFV版発売されたな〜
・さらにそーいや、新プロテクト採用されてたなぁ〜
・あれって、チョソ製だったっけ〜
・チョソといえば、最近ROやってないなぁ〜
・本スレどうなってんだろ。ちょっと見てみよう。
・って、ここじゃんっ!!
という、一人ボケツッコミをしてしまったオレに謝罪と補償を要ky
>>603 同じ文続いたら、アボンしてない香具師達が
「アレっ?」
とか思うかなっていう遊び心ですた・・・ゴメソ。
しまっちゃうのは堪忍してください・・・。
【柳也】「ああ」
【裏葉】「首尾よく運んだようですね」
【神奈】「やれやれだの」
安心して気がゆるんだのか、二人ともその場にへたりこんでしまう。
無理もない。
二人とも、一晩で動ける限度をとうに超えてしまっている。
特に神奈は、夜明けからしゃべりもしなかった。
【柳也】「よし、ここらで休むか」
俺は見通しのよい木陰をえらび、木の根に座りこんだ。
これ幸いとばかりに、神奈もそれにならう。
【裏葉】「ああ、お召しものが…」
【神奈】「今さらなにを申すか」
9週目
642 :
名も無き冒険者:03/01/31 01:06 ID:w62E45Lf
おーい誰かもう次スレ用意汁
乱立するといかんから漏れが指定してやる
>>天麩羅屋さん
ヨロ
着物は雨を吸い、裾には泥がこびりついてところどころ裂けていた。
裏葉にとっては目を覆いたくなるような、ひどいありさまなのだろう。
どこか遠くの幹で、熊蝉が鳴きはじめた。
暑くなりそうだった。
【神奈】「…おぬしらはなにか忘れておらんか?」
【裏葉】「なにかと申されますと?」
魔法遣いに大切なことを見るべきか
スフィアを見るべきか…悩むところだ
【柳也】「おお、そうだったな」
【柳也】「一晩歩いたご褒美だ。詠(うた)うなり舞うなり好きにしていいぞ」
【神奈】「ちがうわちがうわっ」
【神奈】「なにか食わせろと申しておるのだ」
【柳也】「身も蓋もない奴だな」
これだけ疲れきっていて、まだ食べる気力があるというのもすごい。
俺は苦笑いしながら、裏葉に言った。
【柳也】「水と干飯(ほしいい)を出してくれ」
【裏葉】「はい、ただいま」
旅装を解いた裏葉が、荷物から干飯を取り出した。
いつものようにまず味をたしかめ、竹筒と一緒に神奈に渡す。
【裏葉】「神奈さま、どうぞおめしあがりください」
【神奈】「うむ…」
竹筒をかたむけ、干飯に水をふくませる。
しばらくそのまま置いてから、口に入れる。
ぱくっ。
くにゅっくにゅっくにゅっくにゅっくにゅっ…
ごくん。
【神奈】「………」
【神奈】「…不味いぞ」
【柳也】「いらないなら俺が食うぞ」
【神奈】「だれがいらぬと申した。意地きたない奴よの」
俺の手をぴしっとたたく。
干飯をさらに水に浸し、不服そうにかじる。
俺と裏葉も食事をはじめた。
干飯が腹に落ちてから、自分が空腹だったことがわかる。
煮炊きができればましなものが作れるのだが、ここで火を使うのはまだ危険だ。
【神奈】「いつぞやに食った鮑(あわび)は美味だったの」
【裏葉】「鯣(するめ)も鯛も、大変おいしゅうございました」
【柳也】「…全部供え物だっただろ?」
【神奈】「祭壇で腐らせるぐらいなら、余の腹に納めるのが供養というものであろ」
【裏葉】「うふふふ」
【神奈】「なにがおかしい?」
【裏葉】「こうして三人して干飯などいただいておりますと、まるで…」
【柳也】「僻地に左遷され、くやし涙で飯を湿らせてるどこぞの公家さまみたいだな」
【裏葉】「たいそう風雅な喩えでございますね」
【柳也】「…だから冗談を真顔で返すのはやめろ」
無駄口をたたきながら、飯をつまんでは口に入れる。
【柳也】「神奈、食べたらすこしは寝とけよ」
話しかけたが、返答がなかった。
【柳也】「神奈?」
【神奈】「…くー」
干飯を食べかけたまま、すでに寝こけていた。
【柳也】「育ちはいいんじゃなかったのか?」
【裏葉】「お疲れのご様子でしたから、無理もありませんわ」
【裏葉】「神奈さま、こちらを枕に」
裏葉が神奈の体をささえるように導く。
神奈は素直に身をあずけ、頭を裏葉の膝に乗せた。
【裏葉】「…神奈さまのこんな安らかな寝顔、はじめて拝見いたしましたわ」
【柳也】「よく寝たかったら体を動かすのがいちばんさ」
【裏葉】「たしかに、そうでございますね」
【柳也】「裏葉も休んでおけよ。あまり寝てないだろ」
【裏葉】「でも、柳也さまもお疲れでいらっしゃるのでは…」
【柳也】「いいって、慣れてるから」
【裏葉】「戦(いくさ)に、ですか?」
それは裏葉の口から出ると、随分意外な言葉に思えた。
【柳也】「ああ、そういうことになるな」
軽く頷く。
裏葉は遠慮がちに俺のことを見つめていた。
【裏葉】「柳也さま、ひとつお訊ねしとうございます」
【柳也】「なんだ?」
【裏葉】「これからどちらに向かうおつもりですか?」
【柳也】「とりあえず、南に向かおうと思う」
【裏葉】「なぜでございますか?」
【柳也】「以前、社殿で噂を聞いたことがある」
【柳也】「ここより南の社に翼人の母子がいたらしい、そういう話だった」
【裏葉】「………」
裏葉はただ無言で、俺に先をうながした。
【柳也】「神奈は幼いころに母君と引き離されたのだと思う」
【柳也】「かりに、この話の子供が神奈だとすると…」
【裏葉】「神奈さまも母君も、かつてはその南の社に…」
【柳也】「断言はできないが、今のところ手がかりはそれだけだ」
それはただの噂にすぎない。
『南の社』が今でもあるのかわからない。
たとえ本当に翼人がいたとして、それが神奈の母君であるかもわからない。
わずかな手がかりでも、今は当たってみるしかない。
ただ…。
気になることがあった。
俺に噂をうちあけた衛士の、不安にゆがんだ顔。
『かつてここより南の社に、翼人の母子が囚われていたと聞いております』
そのあとに続いた言葉。
『母親は人心と交わり、悪鬼と成り果てた、と…』
【裏葉】「柳也さま、なにかご心配ごとでも?」
【柳也】「いや、何でもない」
あいまいに答えた。
【柳也】「…裏葉も寝とけ。俺の事はかまわないから」
【裏葉】「柳也さまこそ、お休みになってください」
【裏葉】「わたくしは沢筋で休む機会がありましたから」
【柳也】「そうだったな」
俺は太刀をかたわらに置き、木の根を枕に仰向けになった。
>>617 一番下の・・・・(´・ω・`)
ウワァァァ━━━━ヽ(`Д´)ノ━━━━ン!!
【柳也】「見張りはまかせる」
【柳也】「一刻たったら、起こしてくれ」
【裏葉】「はい、承知いたしました」
たのもしげな声を聞いてから、俺は目を閉じた。
それから数日の間、山中を進んだ。
追っ手の気配はまったくなかった。
神奈は沢に落ちて溺れ死んだと思ってくれていればいいが、さすがにそこまで楽観はできない。
亡骸(なきがら)が見つからない以上、執拗に探し続けるはずだ。
あの兵士が本隊に帰りつき、俺たちのことを報告するとも考えられる。
検問のことを考えると、街道を行くわけにはいかなかった。
たとえ追っ手はなくても、敵は別にあった。
盛夏だ。
∧_∧
(´Д` ) 雑談できなくて暇・・・
/ /⌒ヽ
_/⌒/⌒/ / |__
/ (つ /_/ /\ | /\
/ (_____/ ヽ/ \
/| ̄ ̄  ̄ ̄|\ /
/ | かまって | \/
| ください |/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
665 :
609:03/01/31 01:07 ID:1IaYVc/s
>>619 しかも彼女にサイズOKだったって言っちゃったよ;y=ー( ゚д゚)・∵
なんか宝石店とかでサイズ直してもらえるらしいから、
今度こっそり行ってくる ノシ
辺り一面に蝉の合唱が響きわたっている。
あたりまえだが、暑い。
風はそよとも吹かず、真上にある太陽は地表をこがす。
木々の色にみずみずしさを与える陽光も、今は憎らしいかぎりだ。
【柳也】「暑いな…」
【裏葉】「柳也さま、しばしお待ちいただけますか」
うしろから裏葉が呼びかけてきた。
振り向くと、すこし間が開いている。
【柳也】「あ、すまない」
二人のそばに近寄ると、神奈の顔色が悪かった。
頬といい額といい、汗が滝のように出ている。
【柳也】「裏葉、水はあるか?」
いいじゃん、このままで。
串も使い果たしたみたいだし('A`)
('A`) \
/⌒⌒⌒⌒⌒ヽ ピコピコピコ・・・・
// ̄ ̄ ̄フ / ぁ・ぁ・・ポテト上手・・/
/ (___/ /
(______ノ
裏葉は背から荷を降ろし、竹筒を振って中身をたしかめた。
【裏葉】「こちらにすこしございますが、あと一本は空のようです」
【柳也】「悪いが、汲んで来てくれないか? ここを下ればすぐに沢があるはずだ」
【裏葉】「かしこまりました」
俺に水の入った方の竹筒を渡すと、裏葉は沢筋に下りていった。
【柳也】「神奈、大丈夫か?」
クラナドってもう出たのか?
>>665 漏れは洗面所に誤って流したことがある。ガンガレ
IDチェキルリア
【神奈】「話しかけるでない。頭にひびく…」
【柳也】「熱気にやられたな。ほら」
竹筒をひっくり返し、神奈の頭に水をかけてやった。
【神奈】「なにをするかっ」
【柳也】「体の熱を取るためだ」
【神奈】「一言ことわってからにしろ…」
ま、ダメ人間は人に迷惑かけずに市ねってこった>万引き
文句をつける間もなく、神奈はへなへなとその場にへたりこんだ。
【神奈】「このまま溶けそうな心地がするぞ」
【裏葉】「ただいま戻りました」
竹筒をからからと鳴らして、裏葉が戻ってきた。
【裏葉】「神奈さま、お飲み下さいませ」
竹筒に自ら口をつけ、それから神奈に差し出す。
沢から汲んできたばかりの、冷たい水だ。
【神奈】「んくっんくっんくっ…はふ…」
一息で飲み干した。
裏葉はただ、神奈のことを心配げに見つめている。
その顔が、夏山の風景とどこか合っていない気がする。
【柳也】「…裏葉は暑くないのか?」
【裏葉】「先ほどから暑くてたまりません」
【柳也】「しかし、汗をかいてないように見えるぞ」
事実、裏葉の額には汗の玉ひとつ見受けられなかった。
【裏葉】「主の見ぬ間に汗を流し、涼しげな顔をたもつのが女官のつとめでございます」
【柳也】「そんな器用な真似ができるのは、おまえだけだと思うぞ」
【裏葉】「なにごとも修練でございます」
こともなげに笑う。
どうも裏葉が人ではないと思えてくるのは気のせいだろうか。
【裏葉】「ですが、神奈さまの暑気あたりはいかがいたしましょうか?」
【柳也】「いかがと言われてもなあ……」
【裏葉】「このままでは、神奈さまのご体調がととのうまで動けません」
【裏葉】「それに、まだ炎暑はなかばでございます。たびたびこのような事になっては…」
言葉を濁したが、裏葉の言いたいことはわかった。
もう一度神奈の様子を見た。
やはり暑苦しい。
薄物とはいえ、単衣(ひとえぎぬ)を数枚は重ねているはずだ。
それに、この辺りの道は、ふもとの村人が山仕事に使うものだ。
この装束でうろついていたら、あからさまに怪しい。
【柳也】「仕方ないな…」
【柳也】「裏葉、半刻ほどここで待ってろ」
【裏葉】「どうなさるのですか?」
【柳也】「ちょっと探し物だ」
立ちあがりかけて、ふとつけ加える。
【柳也】「裏葉、返品は受けつけないからな」
【裏葉】「はあ…」
裏葉の答えを聞かず、俺は山を駈け下りた。
きっかり半刻後。
俺は目的の物をたずさえて、二人の元へと戻った。
【神奈】「どこをほっつき歩いておった」
神奈の悪態で迎えられた。
さっきよりは調子がいいようだが、まだ顔が上気している。
【柳也】「ふもとに村があったんで、ちょっとな」
【神奈】「ことわりなく余から離れるでない」
【柳也】「大事な用だったんだ。大目に見てくれ…」
言いながら、俺は持っていた布の束をばさっと開いてみせた。
【神奈】「…なんだ、これは?」
【柳也】「知らないのか?」
【柳也】「これは着物といってな、袖を通して帯を締めて使うものだ」
【柳也】「当世では獣(けもの)以外はたいていこれを身につけているぞ」
【柳也】「身につけないのが礼儀の場合もあるが、どんな時かは内緒だ」
【神奈】「馬鹿にするでないっ」
【裏葉】「まあ、新しい御衣(おんぞ)でございますか?」
なぁ・・・暇つぶしに読むにも
雰囲気からアレでつまらんのだが・・・
これって人気あるの?
気の乗らない風の神奈をよそに、裏葉は目を輝かせている。
着物の生地を指でつまむと、はたと首をかしげた。
【裏葉】「生絹(すずし)にしては風合いがやけにごわごわと…」
【柳也】「麻(あさ)かなにかだろ」
【裏葉】「染めが朽葉色(くちばいろ)というのは、時節がらいささか不調法では?」
【柳也】「この期におよんでまだ色にこだわるか」
【裏葉】「重ねを工夫して涼しげに見せればよろしいのですね」
【柳也】「…重ねないでくれ、頼むから」
裏葉はまだまだ不満げだったが、顔には『早く着付けをしたい』と書いてあった。
思った通り、新しい衣の誘惑は強烈らしい。
【柳也】「裏葉の分もあるからな」
【裏葉】「あらあらまあまあ…」
【柳也】「二人で着替えてきてくれ。俺はここで見張っているから」
【裏葉】「承知いたしました」
【裏葉】「ささ、神奈さまこちらへ」
木々の奧に神奈を連れていこうとする。
【神奈】「余はこのままでよいっ」
【裏葉】「せっかく柳也さまがお持ちくださったのに、ご厚意を無為にされるのですか?」
>>676 かちゅ用のIDあぼーんリスト。一番下のは冤罪BANみたいだ。スマソ(^д^)
【神奈】「余が命じたわけではないぞ」
【裏葉】「裏葉とて、神奈さまの喜ぶお顔を拝見したいのでございます」
【神奈】「余を着せ替えて喜ぶのはおまえだろうが!」
【裏葉】「そのような聞きわけのないことを申されますと…」
【神奈】「…むっ」
殺気を感じた神奈が逃げようとしたが、遅い。
時代劇か?
【裏葉】「えいっ」
両袖で神奈の顔をおおい、そのままはがいじめにする。
裏葉の得意技だ。
【神奈】「むむーむむっ。むむ〜むむむーむ…」
じたばたじたばた。
必死で暴れているが、こうなったら逃れられるはずはない。
【裏葉】「それでは柳也さま、しばしお待ちを」
【柳也】「ああ、しっぽりと楽しんでこいよ」
【裏葉】「お心づかいありがとうございます。では」
こうして神奈は、林の奧にずるずると引きずられていった。
【柳也】「…ほとんど山賊だな」
身ぐるみ剥がしたあとに別の衣を着付けるのだから、随分親切な賊ではあるが。
手持ち無沙汰なまま、梢の間から空を見上げる。
…平和だ。
【柳也】「まだか?」
【裏葉】「まだでございます」
まあそうだろうな。
………。
【柳也】「…まだか?」
【裏葉】「今しばらくお待ちを」
そんなに悩むことでもないだろうに。
……………。
【柳也】「……まだか?」
【裏葉】「あともう一息でございます」
お産じゃないんだから、そう気張らなくてもよさそうなものだが。
…………………。
【柳也】「おい裏葉、いいかげんに…」
怒鳴りかけた時、裏葉の声が困惑ぎみに答えた。
【裏葉】「ご用意はできているのですが、神奈さまが…」
【神奈】「このような格好などせぬ、できぬ、見せられぬっ」
神奈は必死で駄々をこねているようだった。
押し問答のすえ、裏葉の声が低くひびいた。
【裏葉】「そのような聞きわけのないことを申されますと…」
【裏葉】「えいっ」
【神奈】「むーむーむっ。むむむむ〜む、むーむ…」
…結局またそれかい。
【裏葉】「お待たせいたしました」
涼しい顔の裏葉が、神奈をともなって現れた。
神奈は頬といわず耳といわず、顔中を真っ赤にしていた。
【神奈】「なぜこのような格好をせねばならんのだ」
粗末な袖をだらりと持ちあげ、情けない声を出す。
【裏葉】「よくお似合いでございますわ」
なんて面白い話なんだろう
ところでそろそろ夜食の時間だが
ゴマトーストとイチゴアイスどっちがいい?
【柳也】「似合ってるぞ、神奈」
【神奈】「そ、そうか…?」
褒められれば、まんざらでもないらしい。
【柳也】「ああ。どこからどう見ても立派な田舎娘だ」
【柳也】「これで骨張っていてもごまかせるな」
ぽかっ。
>>691 釈放されますた。
(T ゝ T*)
ゴメソ
>>691 癌じゃねーんだから冤罪はやめてヤレ。
癌の場合はパッシブスキルだから仕方ないか
とたんに鉄拳をくらった。
【神奈】「人が気にしておることをっ」
【裏葉】「神奈さまったら、おかしいんですよ」
【神奈】「馬鹿っ、それは申すでないっ」
【裏葉】「『似合いもしない衣姿は柳也どのに見せられぬ』などとおっしゃって」
【裏葉】「神奈さまは可愛らしいゆえ、どのような衣でも必ずお似合いになりますのに」
>>703 冷やしカレーを食え。もしくは俺の塩しか認めん。
あまりに自信たっぷりに言いきるので、神奈の方が戸惑っている。
【柳也】「こっちの方が目立たないし、動きやすいだろ」
【柳也】「それに、すこしは涼しいはずだ」
【神奈】「………」
【柳也】「にらむなよ。そんなにいやか?」
【神奈】「……ぅ」
洗いざらしの袖を見下ろし、情けない声をあげる。
【柳也】「そういう簡素な着物の方が、おまえにはふさわしいと思うけどな」
【神奈】「どういう意味か」
【柳也】「かたくるしいのより、元気な方が可愛いってことさ」
【神奈】「…妙な好みだの」
【神奈】「仕方ないの。我慢して着てやるぞ」
神奈がしぶしぶうなずき、衣替えはどうやら落着したようだった。
【裏葉】「ところで柳也さま、こちらの衣はどちらで?」
【柳也】「…明かさないとだめか?」
裏葉はおだやかな笑顔のままで、じっと答えを待っている。
真相を知っていて、あえて黙っているという顔つきだ。
【柳也】「川辺で篭(かご)に入れてあったのを、こっそりとな」
【神奈】「盗ったのかっ」
【柳也】「代わりに銭を置いてきたぞ」
この時勢に銭などもらって、うれしいかは別だが。
【裏葉】「失礼ながら、神奈さまの衣はすこしばかり丈が短うございます」
【柳也】「あつらえたわけじゃないからな、我慢してくれ」
【裏葉】「わたくしの衣は、逆にすこし長うございます」
【裏葉】「これは母子が身につけていた衣ではないでしょうか」
【神奈】「…余は童女(わらわめ)の装束をまとっておると申すのだな?」
【裏葉】「わたくしは母御(ははご)のものでございますね」
うれしそうに目を細める。
神奈は怒ったようなてれくさいような、なんとも複雑な顔をしていた。
【裏葉】「…そうそう、神奈さまご覧くださいな」
【裏葉】「このようなものが、衣の間にはさまっておりました」
裏葉が取り出したのは、丸く縫った布の玉だった。
【裏葉】「きっと、洗い物をする時にまぎれたのでございましょう」
全部で三つあるそれを、神奈に手渡す。
【神奈】「なんだ、これは?」
三つの布玉をぐにゅぐにゅと揉みながら、不思議そうに首をかしげる。
【柳也】「俺に訊かれても、わからないぞ」
裏葉はただ微笑んでいる。
種明かしをしたくてうずうずしている感じだ。
【裏葉】「お手玉でございましょうね」
【神奈】「おてだま、とな?」
【裏葉】「やんごとなきご身分のお子が、いしなどりをするのに用います」
【神奈】「いしなどりとはなんだ?」
【柳也】「女童(めらわ)のする遊びだ」
そのぐらいなら俺も知っている。
地面に石を置き、いくつ宙に投げ上げられるかを競うものだ。
【柳也】「なるほど、布でつくれば怪我もしないってわけだな」
神奈がもてあそぶお手玉を、俺も横から眺めた。
端切れらしい粗末な布には、何度も縫いなおした跡があった。
『貴族の遊び道具』という裏葉の説明とちぐはぐで、可笑しかった。
【裏葉】「どのような身分の者にも、子は宝でございましょうから」
俺の顔に気づき、にっこりと笑う。
【神奈】「これにはなにが入っておるのだ?」
【裏葉】「貝殻か小豆(あずき)のたぐいでございましょう」
【神奈】「ほお、小豆か…」
お手玉のひとつを顔の前に持ちあげ、しげしげと見つめる。
【神奈】「どこからも取り出せぬぞ」
【柳也】「取り出してどうする?」
【神奈】「取り出さなければ、食えぬではないか」
【柳也】「………」
【神奈】「なぜだまる?」
【柳也】「いや、なんでもない」
【裏葉】「神奈さま、お貸しくださいますか?」
神奈からお手玉を受け取り、右手の中で具合をととのえる。
【裏葉】「このように持ちまして…」
一つずつ左手に投げる。
ひょい…。
ひょい…。
左手で受け取ったそれは、次が届く前に空中に投げ上げられる。
三つのお手玉がきれいな輪をえがいて舞う。
神奈は口をあんぐりと開けて、その様子に見入っていた。
ひとしきり見せたあと、裏葉はお手玉を両手で受け止めた。
【柳也】「…お見事」
【裏葉】「恐れ入ります」
神奈はと見ると、なにやら固まっている。
【神奈】「…余にもできるか?」
どうやらそれが訊きたかったらしい。
【柳也】「そりゃ、やってみなけりゃわからないだろ」
【裏葉】「すこしばかり習えば、必ずお上手になりますとも」
例によって、裏葉が根拠なく請け負う。
【神奈】「まことにすこしばかりでよいのか?」
【裏葉】「はい」
【神奈】「まことにまことに、すこしばかりでよいのだな?」
【裏葉】「まことにまことでございます」
【神奈】「まことにまことにまことにまことに…」
【裏葉】「くどいですわ、神奈さま」
【神奈】「………」
今までにないぐらい、真剣に考えこんでいる。
【神奈】「…では、今すぐ余に教えるがよい」
【裏葉】「今からでございますか?」
こまったように俺の方をうかがう。
神奈の暑気あたりと着物の調達で、すでに日も傾きかけている。
今から出立しても、大した距離は進めないだろう。
【柳也】「いいさ。今日はここで泊まりにしよう」
【柳也】「みんな疲れがたまってるしな。休める時は休んでおこう」
【裏葉】「では神奈さま、これを」
【神奈】「うむ」
神妙な顔で、お手玉を受け取る。
【裏葉】「お座りになった方が楽でございます」
【神奈】「おお、そうか」
お手玉の習いがはじまった。
【裏葉】「まずは初歩の初歩でございます」
【神奈】「ふむふむ…」
【裏葉】「お手玉ふたつをこのように両手に持ちまして…」
真面目くさった裏葉の口上を聞きながら、俺はすこし離れた木の根に腰かけた。
荷袋をほどき、包みを取り出した。
油紙の中身は、幾巻かの書物だ。
翼人に関した資料のたぐいを集めろと命じられた時、密かに抜いておいたものだ。
「ふじたまことでございます」
社殿にあった書物は、これ以外はすべて焼かれてしまっただろう。
最初に手に取ったのは、古ぼけた巻物だった。
中は難解で、おいそれと読めるものではなかった。
次に手に取った冊子には、表紙にこう書かれていた。
『翼伐記』
表現のしにくい感情が広がった。
NGワード
【裏葉】
【神奈】
【柳也】
('A`)スッキリ
ん〜・・
どうせこの時代劇の落ちはおおかた
死に別れで次の世代で一緒になれて〜
ってよくあるリアルじゃ知障扱いがイイトコのありきたりな落ちとみたがニョナン?
勉強でもするか
とりあえず、平易な部分を拾い読みした。
どうやら、過去にも神奈のように幽閉された翼人がいたと書かれているらしい。
数頁飛ばすと、別の記述が目に飛びこんできた。
『羽の者、禍(わざわい)を招く』
『禍津日(まがつひ)の神、天雲の向伏す極みまで果つ』
翼人が災難を引き起こす神で、地上を消し去るという意味だ。
俺の知らないはるか昔にそのような事実のあったことが、こまかな字で書かれていた。
だが、それが真実であるかはわからない。
【柳也】「ふむ…」
まあ、おいおい読み解いていくしかないか。
冊子を閉じ、大きく伸びをした。
慣れないことをしたので、目元がじんとしている。
またプララが規制されんのかな('A`)
俺は立ちあがって、神奈たちに近づいた。
【柳也】「どうだ、上達したか?」
お手玉をにぎったまま、神奈がびくっと振り向いた。
そのぐらい熱中していたということだろう。
対する裏葉は、なぜか疲れた顔だった。
【神奈】「こっ、このぐらいたやすいこと」
【柳也】「大きく出たな」
【柳也】「なら、ひとつ腕前を見せてくれよ」
【神奈】「………」
【柳也】「どうした?」
【神奈】「…余の腕前を見たいと申すのだな?」
【柳也】「そうだって言ってるだろ」
【神奈】「………」
【神奈】「…よかろう」
【神奈】「おぬしは余の忠僕ゆえ、特に見せてつかわそう」
【神奈】「おぬしはまことに幸せ者よの」
【神奈】「余の手さばきを見て腰を抜かすでないぞ」
【神奈】「三つの玉が疾風(はやて)のごとくぶんぶんぶんと宙を舞うぞ」
>>732 藻前実は知ってるだろ
ちょっと違うけどナー
【神奈】「そもそもお手玉というものは…」
【柳也】「能書きはいいから早くやれ」
お手玉を右手に揃え、ものすごい形相で黙りこむ。
【神奈】「………」
精神を統一しているらしい。
なにやら嫌な脂汗をかいているようにも見えるが、名人ゆえの気取りというやつだろう。
【神奈】「えいっ…」
裂帛(れっぱく)の気合いと共に、ひとつ目が宙を舞う。
ぶんっ。
お手玉は俺の頭を越えて、足下にぽとりと落ちた。
拾いあげて、神奈に手渡す。
【神奈】「ちと手元が狂っただけだ」
【神奈】「次はきちんとするからよく見ておれ」
【柳也】「はいはい」
【神奈】「それっ…」
ぶんぶんっ。
【柳也】「…すごいな。今度は二つともか」
もう一度、拾い集めて渡した。
神奈は黙って受け取る。
【裏葉】「力まかせではいけません。ちょうど目の高さほどまで…」
【神奈】「わかっておるっ」
【神奈】「やあっ…」
ぶんぶんぶんっ。
三つのお手玉は、はるか向こうの木の幹に次々と当たって落ちた。
【柳也】「………」
もはや感想を言う気力もない。
神奈は自分で立ちあがり、無言のままお手玉を取ってきた。
【神奈】「習うて間もないのだ。このぐらいできれば重畳(ちょうじょう)よの」
【柳也】「自分で言うなっ」
すでに『初心者だから』などという言い訳ですまされる域ではなかった。
keyのゲームはoneだけクリアしたことあるよ。
友達のパソコンでctrlキー押しっぱなしで。
途中の選択肢だけでもクソシナリオだってことは分かったな('A`)
【柳也】「なんというか…」
【裏葉】「…あきれるほどにお下手でございます」
教えている間に疲れ果てたのだろう。血も涙もない声音で裏葉が言った。
【神奈】「やかましいっ」
【神奈】「すこし習えばすぐにできると申したのは裏葉ではないかっ」
懲りずにお手玉を両手でつかむ。
【柳也】「ひとつから練習した方がいいんじゃないのか?」
【裏葉】「何度もそう申しましたのに、聞き入れていただけません」
【神奈】「やかましいやかましいやかましいっ!」
【神奈】「だいたい、この玉が悪いのだ」
【神奈】「余の手には大きすぎるぞ」
【裏葉】「これは童(わらわ)が使うものですので、そのようなことはございません」
【神奈】「では小さすぎるのだ」
【裏葉】「大きさはちょうどいい按配です」
【神奈】「では…」
【裏葉】「重すぎも軽すぎも硬すぎも柔らかすぎも甘すぎも辛すぎもいたしません」
【神奈】「ではなぜ上手くいかぬのだ」
『下手だから』としか言いようがないが、ここは黙っておくのが吉だろう。
【神奈】「あ〜もうよいっ。おぬしらは下がれ、気が散るっ」
言いながら、またもお手玉をかまえる。
【柳也】「裏葉、行くぞ」
【裏葉】「はい、でも…」
未練ありげな裏葉の袖を引き、神奈から離れた。
【裏葉】「ああ神奈さまおいたわしや」
なぁ今からオナニーしようと思うんだが・・・
メイドものと看護婦ものどっちのAVがいいと思う?
73-75,77,80-83,86-87,89-97,99-100,104-108,110-120,122,126-133,135,137-138,140-144,146,148,150-152,154,
156,158-175,177,181-187,189-195,197-202,207-208,210-211,213-216,218,220-224,226,230-231,233-235,238,
240,244-249,251-252,254-255,257,260-261,263-266,268-269,271,274-280,282-286,288-294,296-297,301,305,
307-312,314-321,323,325-327,331,334-336,339,341-343,345,347,350,352-359,363,367,369-379,381-386,388,
392-393,395-400,402-409,412-413,422,424-432,434-441,444,447-451,453-456,458-460,462-466,468-470,476,
479-480,482-489,491-496,498-499,501-502,504,506-513,515-523,526,528,531,533,536,538,540,542-545,
547-550,552-554,557,559-563,567,570,573,575-579,581-582,584-585,587,589,592,596-599,601-602,605,607,
610,612,614-616,618,620-623,625-633,635,639-640,645-654,656-660,662-663,666-667,670,675,678-686,
688-690,692,694-697,699-701,704,709,711-728,730,734
…('A`)ノ
つーかお前等書き込むな。抜き出すのが('A`)ノマンドクセから
【裏葉】「この裏葉が不甲斐ないばっかりに〜」
主に暇(いとま)を言い渡され、裏葉はおろおろとするばかりだ。
【柳也】「不甲斐ないんじゃなくて、お前が上手すぎるんだよ」
【裏葉】「はあ…」
【柳也】「名人ってのは、案外教え下手なものだからな」
本当のことを言えば、神奈が名人級の教わり下手なのだが。
('A`)
【柳也】「とにかく、飽きるまでひとりでやらせるのがいいだろ」
俺はそう言い聞かせ、裏葉もやっと納得したようだった。
【柳也】「俺はちょっと出かけてくるよ」
【裏葉】「どちらに?」
【柳也】「村の近くの川に梁(やな)が仕掛けてあったんだ。運がよければ何か捕れるかもしれない」
【裏葉】「その梁はどなたのものでしょう?」
【柳也】「魚はだれのものでもないさ」
【裏葉】「…たしかに、そうでございますね」
【裏葉】「それでは、わたくしは神奈さまの表着をつくろうことにいたします」
【柳也】「もうぼろぼろだろ。ここで捨ててもいいんだが」
【裏葉】「…なっなっ、なんという不敬をっ!」
【柳也】「ああすまん。好きにしていいから」
獲物を持って戻った時には、もう日が暮れかけていた。
林間は別の世界のようだった。
年月をへた木々の肌で、刻々と光が褪せていく。
山鳥も蝉も、今は鳴りをひそめている。
やけに静かだった。
己の身が何時(いつ)にあるのか、わからないような心地がした。
やがて。
行く手から少女の声がした。
【神奈】「うがあっ。なぜできぬのだっ…」
【柳也】「………」
幽玄もなにもあったもんじゃないな。
【柳也】「戻ったぞ」
【裏葉】「お帰りなさいませ」
裏葉は困り果てた様子で、神奈を眺めていた。
【柳也】「ずっとやってたのか?」
【裏葉】「ええ…。お止めしても、お聞きくださらないのです」
【裏葉】「社殿では童遊びなど、される機会がありませんでしたので」
その瞳には、母御(ははご)のようなやさしさが滲んでいるように見えた。
俺は持っていた獲物を裏葉に渡した。
わらひもを鰓(えら)に通した川魚、全部で八尾だ。
【裏葉】「山女(やまめ)でございますね」
【裏葉】「まあまあ。どれも丸丸と肥えて…」
【柳也】「塩をたっぷり振って、焼いてやってくれ」
【裏葉】「よろしいのでございますか?」
IDあぼんしたら、随分とサッパリしたスレですね。
喪前ら、スレ建てに影響でそうですね。
塩は体に必要なものだが、旅先では手に入れにくい。
また、追っ手のことを考えて、これまで焚き火を許したことはなかった。
【柳也】「塩気のない川魚ほど味気ないものはないからな」
【柳也】「焚火は炎を小さく、松のたぐいを焚きつけないようにしてくれ」
【裏葉】「承知いたしました」
裏葉は嬉々として火をおこしにかかった。
>>754 ( Д) ゚ ゚
お疲れ様にて候。
書き込んじゃった・・・。
何だ、また人生に疲れた人が荒らしてるのか・・・。
ご愁傷様。
荒らしに立てさせれば?
どうせ見てるんだろうし
ま、そんな度胸ないだろうがな ポ
社を出てからずっと、食事に羮(あつもの)が出せないのを気にしていたのだ。
【柳也】「…神奈、夕餉(ゆうけ)はどうするんだ?」
【神奈】「勝手に食うておれっ! 余は忙しい!」
あいかわらずの調子でどなる。
神奈がここまで根気強いとは思っていなかった。
というより、負けずぎらいなだけか。
・・・なんて奇怪な行動をとる奴なんだ
>>754は
乙かれー
>>754 やっべ
お前に惚れそうだZE('A`)ノ
【柳也】「…気のすむまでさせるか」
【裏葉】「ですが、めしあがっていただかなければ、お身体にさわります」
【柳也】「匂いが立てばすぐに飛んでくるさ」
【裏葉】「…うふふ。そうでございますね」
【柳也】「神奈は食い意地がはってるからな」
【神奈】「やかましいっ! 聞こえておるぞ!」
【柳也】「怒ると手元が定まらないぞ」
【神奈】「おぬしが妙なことを申すからであろっ!」
火打石が打ちあわされ、薪に火が移った。
裏葉は小刀をたくみに使って魚を下ごしらえし、枯れ枝から串を切り出した。
串を山女に通し、炎の周りに射す。
魚の脂(あぶら)が焚き火にじゅうじゅうと落ち、香ばしい匂いがただよう。
なんか荒らしとシンなんとかティー(バキであったやつ)
しちゃったから
>>98誰も見てないかなぁ(´・ω・`)
マジで次スレいるな・・・
天麩羅屋さん早く〜
まぁ無理そうなので
>>850 に一番近い香具師ヨロ・・900じゃまにあわんよな??
案の定、神奈がのこのことやって来た。
【柳也】「お手玉はもうおわりか?」
【神奈】「暗くて手元がよう見えぬ。続きは明日にする」
すでに気持ちは魚の方に行っているようだ。
【神奈】「ふむ。今宵の献立は鯛か」
【神奈】「またずいぶんと痩せこけたやつよの」
【柳也】「こんな長細い鯛があるか。山女だ山女」
【神奈】「どちらでもよい。はように支度せい」
【裏葉】「こちらなど、ほどよく焼きあがってございます」
いちばん大きな魚を抜き、そっと身をちぎろうとする。
そこで俺は裏葉を止めた。
【柳也】「なあ、裏葉」
葉鍵にカエレ
今日は看護婦で攻めてみるよ
抜いてきますノシ
【裏葉】「はい?」
【柳也】「社殿じゃないんだから、もう毒見はしなくていいだろ」
【裏葉】「しかしながら、これがわたくしの務めです」
【柳也】「まあ、気持ちはわかるけどな」
【柳也】「これからはできるだけ、何事も神奈自身にさせるようにしたい」
俺が言うと、神奈も身を乗り出してきた。
【神奈】「余もそう思っておったところよ」
【神奈】「このようにちっぽけな魚では、余の食べるところがなくなってしまうであろ」
【柳也】「………」
裏葉はしばらく黙っていたが、手つかずの魚を神奈に差し出した。
【裏葉】「それでは神奈さま、こちらを」
【神奈】「うむ。大儀であった」
ひったくるようにして受け取り、いきなり頭から頬張ろうとする。
【柳也】「骨ごと食うなよ」
【神奈】「わかっておるわ」
はぐっ。
腹の方から豪快に食いついた。
熱かったのか、少し眉をひそめる。
おい、何があったんだ?
このスレ読み込んだら2、16、17、253、642しか表示されてないぞ('A`)ノ
はぐはぐはぐっ、ごくん。
【柳也】「川魚も美味いもんだろ?」
感想を言う暇も惜しいのだろう。神奈は無言で山女にむしゃぶりついている。
【柳也】「俺たちも食おう」
【裏葉】「はい」
三人で車座になり、焼いたばかりの山女に舌を鳴らす。
普通の小説なら読むが・・・
誰か 海辺のカフカ 読んでる香具師いない〜?
真ん中では温かな炎がゆらゆらと踊っている。
【裏葉】「柳也さま」
【柳也】「なんだ?」
【裏葉】「このように山辺(やまのべ)で炎を囲んでおりますと、まるで…」
【柳也】「姫君をさらって野に逃げたはいいが、あまりの世間知らずぶりに『やるんじゃなかった』と後悔してるどこぞの色男みたいだな」
【裏葉】「たいそう野趣あふるるたとえでございますね」
【柳也】「…たとえというか、ほとんどそのままだけどな」
【神奈】「裏葉、おかわりを持て」
【裏葉】「はい、ただいま」
【柳也】「食いたい串を勝手に取っていいぞ」
【神奈】「まことか? では…」
ひょいひょいひょいひょいひょいっ。
【柳也】「…一度に全部取るのはやめろ」
【神奈】「まったくおぬしは意地汚いの」
【柳也】「それはこっちの台詞だっ!」
社殿を脱出して、十日がたった。
あいかわらず、街道をさけて山中を進んでいた。
暑さは増すばかりだ。
【柳也】「…一度に全部取るのはやめろ」
【神奈】「まったくおぬしは意地汚いの」
【柳也】「それはこっちの台詞だっ!」
社殿を脱出して、十日がたった。
あいかわらず、街道をさけて山中を進んでいた。
暑さは増すばかりだ。
まとまった雨もなく、飲み水を確保するのも一苦労だった。
日中に休息をとり、涼しくなってから月の入りまで行動するようにした。
それでも、旅は順調だった。
神奈と裏葉が野宿に慣れてきたこともある。
神奈にいたっては、寝ることと食べることは社殿にいた時より快調だ。
追われているという意識はすでに乏しい。
午後の休憩中。
俺は社殿から持ち出した地図を広げていた。
書きこんであるのは主要な街道と河川、それに寺社荘園ぐらいだ。
土地勘のない場所では、地形を読むのもむずかしい。
【柳也】「ふむ…」
【神奈】「なにをむずかしい顔をしておるのだ?」
爆撃受けてるのROスレだけ?この坊やはROで嫌なことでもあったのかな?
ところで、スレどうすんの?もう埋まっちまうぞ・・・。
【柳也】「このまま進むと、川につきあたる」
【神奈】「渡ればよいではないか」
こともなげに言うが、この辺りの渓谷は案外深そうだ。
【柳也】「川上に迂回するか」
【柳也】「それとも、街道に出るかだな」
思案していると、横から裏葉が口をはさんだ。
せめてヌける文章にしろってんながな・・・
【裏葉】「街道を進むのがよろしいかと」
【柳也】「川を越えれば国衙(こくが)が近い。街道は人目が多いはずだ」
【裏葉】「なればこそでございます」
意味ありげに裏葉が答えた。
【裏葉】「人々が集まるところなれば、うわさもはなやかでしょう」
【柳也】「…それもそうだな」
旅の目的は、逃げることから探すことに変わっていた。
問題は、神奈の母君の居所だった。
頼りはただ、『ここより南の社』という言葉だけなのだ。
女子供の徒歩(かち)とはいえ、もう十日も南に進んでいる。
この辺りで情報を集める必要があった。
【神奈】「決まりだ。街道に降りるぞ」
やべ
最初から読んでたら気になってやめられね
【柳也】「…だからおまえが言うなっての」
【裏葉】「そうと決まれば、出立いたしましょう」
俺が荷を背負いなおした時には、すっかり準備はととのっていた。
街道ぞいは、今までになくにぎわっていた。
さまざまな装束の人々が、老若男女を問わずひっきりなしに行き来している。
【神奈】「やけにうるさいの」
【裏葉】「市が立っておりますね」
【神奈】「市とはなんだ?」
【裏葉】「品々を取り引きする場でございます」
【神奈】「ほお…」
神奈は瞳をいっぱいに見開き、きょろきょろと辺りを見渡している。
【裏葉】「随分と大きな市のようですね」
【柳也】「そうだな」
都より下ってくる産物が、主に商われているらしい。
ただの道ぞいにこれほどの市が立つというのは、意外な感じだった。
【神奈】「見よ見よっ。土器(かわらけ)が山をなしておるぞ」
【柳也】「待て」
我を忘れて駈け寄ろうとした神奈の襟首を、すんでのところで捕まえた。
【柳也】「いいか、大声をあげたりさわいだりするなよ」
釘を刺すと、大真面目にうなずいた。
【神奈】「わかっておる。余もそこまでおろかではないぞ…」
言ったとたんに、別の物に気を取られる。
【神奈】「裏葉、あれは何だ?」
【裏葉】「鳥梅と申しまして、疝気(せんき)のお薬でございます」
とりあえず
>>776の案採用しとく?
まぁ、ダメだったらピンクの方なり崖うちなりに避難
ID:+6jwdh0+もNGワードに入れちゃってたみたいだな。
それでも漏れの冤罪BAN率は癌呆より低いと断言できる!!
【裏葉】「以前、神奈さまがおいやがりになったものですわ」
【神奈】「あの途方もなく酸っぱいやつだな」
【神奈】「それは何だ?」
【裏葉】「鮒鮨(ふなずし)でございますね」
【裏葉】「以前神奈さまがつまみ食いされて、ひどくお中(あ)たりになったものです」
【神奈】「あの時は死ぬかと思うたぞ」
【神奈】「では、これは?」
【裏葉】「白酒(しろざさ)でございましょうか」
【裏葉】「以前神奈さまが度を超してめしあがり、たいそうお暴れになったあげくに…」
【神奈】「…いちいちつまらぬことを申さんでよいっ」
俺はうんざりしながら、うしろを歩いていた。
やかましいことこの上ない。
【柳也】「神奈。俺がさっき、なんて言ったか覚えてるか?」
【神奈】「『大声をあげるな、さわぐな』であろ?」
【柳也】「わかってるならすこしは黙れ」
【裏葉】「よろしいではございませんか」
涼しい顔で裏葉が言う。
【裏葉】「これほどの活気があれば、少々の騒ぎなどかき消されます」
【神奈】「裏葉、裏葉っ。なんだこれは? まことに珍奇な形をしておるぞっ」
【裏葉】「瓢箪(ひさご)ですわ。酒などを入れておくのに用います」
売り手の市女(いちめ)が、うさんくさそうな目で神奈を見ている。
【柳也】「とにかく来い」
俺は強引に神奈をひっぱって、店の前から移動させた。
【神奈】「そう急(せ)くでない。痛いであろ」
【柳也】「首に縄でもつけてやろうか…」
【神奈】「おぬし、口やかましいぞ。すこしは楽しまぬか」
【柳也】「あのなあ、俺たちはお尋ね者なんだっての」
【神奈】「この人混みで、だれが余を見わけるというのか?」
【神奈】「身は骨張っておるし、どこから見ても村娘のようであろ」
【柳也】「どうでもいいことを根に持つなよ」
【柳也】「わかった、俺が悪かったよ。おまえは可愛い。壮絶に凄絶に愛らしい」
【柳也】「目立って目立ってしょうがないぐらい愛らしいから、大人しくしててくれ」
【神奈】「…いつものことだが、おぬしの言葉には誠意というものがないの」
【柳也】「とにかくだ、ここで目立つ行動はこまる」
【柳也】「この人出なら、たしかに俺たちも目立たない」
【柳也】「でもな、それは忍び寄ってくる敵の姿も見わけにくいってことだ」
【柳也】「もしも不意打ちを食らったら、ひとたまりもない」
【柳也】「裏葉や俺が追っ手に討たれる姿、見たくないだろ?」
【神奈】「おいそこの者、この白い棒杭(ぼうぐい)はなんと申すのだ?」
【柳也】「…聞いちゃいねーし」
【売り子】「清白(すずしろ)だよ」
【神奈】「でたらめを申すでないぞ、無礼者」
【神奈】「すずしろといえば、かゆに入れる草のこと。この図体では椀におさまらんぞ」
【売り子】「…あんた、どこの御殿の姫さまだね?」
【神奈】「ここより十日も歩いた山の…ふむぐっ」
【柳也】「いやこの娘、すこしばかり頭(おつむ)が足らず難儀しておるのだ」
【売り子】「それはお気の毒なことで」
【神奈】「むむふむ〜。ふむむむふむ〜ふむむむ…」
頭の足りない娘を笑顔ではがいじめにしたまま、そそくさとその場を離れる。
【神奈】「…ぷはっ」
【神奈】「だれの頭が足りんと申すかっ!」
【柳也】「おまえ以外にだれがいるんだ」
【柳也】「裏葉も気をつかってくれ…」
言いかけて気づくと、通りすがりの見知らぬ親爺に話しかけていた。
【柳也】「…いやしねーし」
きょろきょろと周りを見わたすが、裏葉らしい人影は見あたらない。
名が知れわたっている恐れもあるから、呼びかけてみるわけにもいかない。
【神奈】「裏葉ーっ、どこにおるかーっ! 裏葉ーっ!」
【柳也】「だああっ、やめろおっ!」
【神奈】「むがーっ」
じたばたじたばたじたばた。
【柳也】「あばれるなっ」
【神奈】「うーっ」
がぶっ。
【柳也】「いててっ、噛むな噛むなっ!」
まさに阿鼻叫喚(あびきょうかん)である。
【神奈】「…おぬしが狼藉(ろうぜき)ばかり働くからであろっ」
【柳也】「いいからおまえは二度と口を開くなっ!」
【柳也】「暮れてきたな…」
溜息まじりに、俺はつぶやいた。
情報を集めるつもりが、神奈のお守りで半日おわってしまった。
裏葉はまだ現れない。
どうせそこいらで、新しい衣でも物色しているのだろう。
心配はしていないが、そろそろ合流しなければ夜になってしまう。
あれだけにぎやかだった市も、今は閑散としている。
市女たちが店をたたみ、ぽつりぽつりと去っていく。
夕陽が山際にせまり、喧噪も褪せていく。
昼間の熱気を惜しむように、蜩(ひぐらし)が澄んだ声をひびかせている…
…はずなのだが、聞こえるのは不機嫌そうな雄鶏のつぶやきばかりだ。
【鶏】「こっこっこっ…」
【神奈】「おぬしのように不細工な鳥など、聞いたこともないぞ」
【鶏】「こっこっこっこっ」
【神奈】「そのように気ぜわしいさえずりでは、売れ残るのも道理というもの」
【鶏】「こっこっこっこっこっ」
【神奈】「時鳥(ほととぎす)も仏法僧(ぶっぽうそう)ももっとおかしげに鳴くぞ」
【鶏】「こっこっこっこっくけ〜っ」
ばたばたばた、かぷっ。
【神奈】「痛いぞ、指を噛むでない」
【鶏】「くけ〜っ」
【神奈】「こら、つつくなと申すに」
【鶏】「くけ〜こけ〜っ」
【神奈】「むかっ。鳥獣のぶんざいで余をせせら笑うとは無礼千万」
【神奈】「そのふざけた尾羽(おばね)、根こそぎひん抜いてくれようぞ」
【鶏】「こけこっこ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
羽のある者同士、楽しげに語らっている。
【店主】「頼むからやめてくれ。そいつはうちでいちばん上物の尾長なんだ」
店の主もたいそう嬉しそうだ。
『頭の弱い可哀相な娘だ』と言ってはあるが、我慢もそろそろ限度だろう。
【柳也】「こら、いいかげんにしろ」
神奈を鶏からひっぺがし、また歩きはじめる。
【神奈】「次はどれを見るのだ?」
【柳也】「次なんてない。裏葉を探してから…」
言いかけて、か細い声が呼んでいるのに気づいた。
【声】「…お武家さま」
痩せこけた乞食が、道端にうずくまるようにしている。
【声】「お武家さま、どうかお慈悲でございます」
…太刀を履いているだけで、『お武家さま』とは気前がいい。
俺が立ち止まったのを合図に、乞食は口上を言いはじめた。
【乞食】「三日前に郷(さと)を追われ、着の身着のまま逃がれてまいりました」
【乞食】「老いはてたこの身では、これより先は歩くことさえままなりませぬ」
【柳也】「戦か?」
【乞食】「わかりませぬ」
悲しげに首を振る。
俺は警戒をとかずに、乞食のことを念入りに見あらためた。
怪しい様子はないし、武器を隠しているようにも思えない。
【乞食】「あらあらしき武者装束の一団にただ『立ち退け』とだけ命じられ、家屋敷はおろか田畑(でんぱた)も召しあげられました」
【乞食】「村の者も散り散りとなり、私のごとき身寄りもない年寄りは、ただ途方に暮れるばかりでございます」
【神奈】「それは災難であったの」
乞食さえも目新しいのだろう、神奈が身を乗り出すようにして答えた。
その顔を、乞食はまじまじと見つめ返してきた。
自分が立てれそうなものだが、
新スレ今の状態で立てるのは不味くない?
【乞食】「そちらの娘さまは、もしやいずれの高貴な血筋を引くお方では?」
【神奈】「おお、そなたわかるか…」
勢いこんで答えようとした神奈を、あわてて目で制止する。
こほんと咳払いして、神奈は言いなおした。
【神奈】「断じてちがうぞ」
【神奈】「余はなにひとつ怪しいところのない、かわいらしい村娘であるぞ」
+6jwdh0+は自分であぼーんリストに入れてた可愛いヤツだ
なんて言うか・・・・・・
りゅう君の寿命も短かったですな・・・(・ω・)プォ
癌の冤罪率(100%)を超えるにはこの世の理を乗り越えなければならない罠
あぼーんだらけ
【柳也】「………」
【神奈】「なにをぼさっとしておる。この者になにか取らせるがよいぞ」
貴人の気安さで鷹揚(おうよう)に言う。
【柳也】「なにかって言われてもなあ…」
【柳也】「扇子(かわほり)ぐらいしかないぞ」
たしなみで袖にしのばせてはいるが、開いたこともない。
俺は扇子を取り出して、乞食の前に置いてやった。
【柳也】「たいした品ではないが、足しにはなるだろう」
【乞食】「かたじけのうございます」
扇子を顔の前でささげもち、深々と平伏する。
【乞食】「このご恩は忘れませぬ」
【神奈】「達者で暮らすのだぞ」
暫くは避難所生活の方がいいと思う
そして俺たちは乞食から離れた。
背後では、いつまでも伏して見送る気配があった。
【神奈】「よいことをしたの」
上機嫌の神奈が言った。
【柳也】「そうとは限らないけどな」
【神奈】「なにゆえだ?」
【柳也】「騙(かた)りかもしれないってことさ」
俺だって、食うのに困ればだましもすれば誉めもする。
乞食の身の上話など、信じる方が馬鹿を見るというものだ。
【神奈】「ほんにおぬしはうつけよの」
【神奈】「あの者が痩せ細っておったのは、相違(そうい)ないであろ」
当然の顔で諭されて、思わずうなってしまった。
【柳也】「そうか。なるほどな…」
神奈の言葉に素直に感心できたのは、これがはじめてのような気がする。
【神奈】「しかし、腹が空いたぞ」
【柳也】「…感心したそばからこれか」
【裏葉】「神奈さまは育ちざかりでおられますゆえ」
【柳也】「もう『育ちざかり』って年頃でもないけどな」
【柳也】「どうせ育つんなら、尻でなく胸の辺りをもっとこうぷっくりと…」
【神奈】「やかましいわっ」
【柳也】「自覚があるから腹が立つんだろ」
【神奈】「………」
ぽかっ。
【柳也】「…いてて。無言で殴るなよ」
【神奈】「さわいで殴ればよいと申すか」
【柳也】「そんなに乱暴だから、食っても食っても胸が小振りなんだぞ」
【神奈】「そんなわけあるかっ!」
【柳也】「大ありだぞ。なあ裏葉」
【裏葉】「………」
【柳也】「元気がないな、裏葉。どうした?」
【裏葉】「…驚きにならないのですね」
突然の復帰をかるく流されて、かなりがっかりしているらしい。
【柳也】「うわっ。裏葉おまえ、いつの間に帰ってたんだ? ちっとも気づかなかったぞ」
【神奈】「ほんに裏葉は神出鬼没よの」
【裏葉】「まことに白々しいお心づかい、ありがとうございます」
【柳也】「で、どこに行ってたんだ?」
【裏葉】「足りない物などをあれこれと求めておりました」
裏葉は言いながら、腕にかかえた布包みを示してみせた。
【裏葉】「神奈さまにはおみやげが…」
ふところから取り出されたのは、ころりと丸い木の実だった。
【裏葉】「胡桃(くるみ)でございます」
【柳也】「この季節にめずらしいな」
【裏葉】「さる杜(もり)に一枝だけ早成りした、縁起ものだそうです」
【柳也】「ふうん」
【裏葉】「神奈さまの好物ですし、滋養もありますので」
【神奈】「これはまた、ずいぶんと大きいの…」
言いながら胡桃を受けとり、茜色の夕空にかざす。
その仕草がやけに大真面目で、俺はまたも笑ってしまいそうになる。
【柳也】「割ってみなけりゃ、中身はわからないだろ」
【神奈】「そうか…」
神奈はうなずいたが、未練がましく胡桃をもてあそんでいる。
神奈に歩幅をあわせ、三人でならんで歩く。
三つの影がよりそい、道に長く落ちていた。
俺は裏葉の横顔に言った。
ageをNGワードに入れたらsageまで消えるな・・・
【柳也】「買い物があったにしても、だまって行くことはなかっただろ」
【裏葉】「ほかに調べものもございましたので」
【柳也】「調べもの?」
訊ねると、裏葉は俺の耳に唇をよせてきた。
【裏葉】「橋をわたった先に、関がもうけてあります」
『関』と聞いたとたん、体内に冷たい緊張が満ちるのを感じた。
【柳也】「本当か?」
【裏葉】「はい、まちがいございません」
【裏葉】「若い娘だけを選び、衣をはだけさせ、背を改めておりました」
【柳也】「そうか…」
背中の羽をたしかめようというのだろう。
【柳也】「俺たちが従っていることは、知られているようだったか?」
新すれどうすんだ
【裏葉】「供の者については、さほど気にかけていない様子でした」
【裏葉】「しかしながら、神奈さまがおひとりで逃げ続けているとは思わないでしょう」
【柳也】「そうだな」
うなずいてから、今後の方針を考えてみた。
このまま街道を進むわけにはいかない。
今夜は野宿し、渓谷を迂回する道を探さなければならないだろう。
【柳也】「しかし裏葉、よく関に気づいたな」
俺が感心してみせると、裏葉はにっこりと微笑んでみせた。
【裏葉】「ここは市が立つにはいささか不便な場所でございましょう」
【裏葉】「いぶかしく思っておりましたところ、『関止めで市が移った』と小耳にはさみましたので、あるいはと」
こともなげに言うが、裏葉の勘と機転はやはり並大抵ではない。
【柳也】「わかった、助かったよ」
【柳也】「山裾までもどって、そこで飯にしよう」
【柳也】「神奈、行くぞ…」
がりがりがりっ。
【柳也】「…なにしてるんだよ?」
神奈は胡桃と格闘中だった。
【神奈】「うがあ〜っ。なぜ割れぬのだっ」
がりがりがりがりがりっ。
【柳也】「歯で割れるかっ!」
【裏葉】「うふふふ。栗鼠(りす)のようで愛らしいですわ」
【柳也】「笑いごとじゃないだろ。だいたい裏葉がいなくなったから、俺がひどい目に…」
【柳也】「………」
【柳也】「…裏葉おまえ、『市を見るなら神奈がいると邪魔だ』とか考えなかったか?」
(・ω・)プォ
【裏葉】「そんな不敬を思いつくのは柳也さまだけでございます」
丸丸とふくれた布包みを胸に、涼しい顔で答えた。
山道にもどった時は、日没が近かった。
林の中は嫌にがらんと感じられた。
斜光が木々を橙色に染め、闇を迎え入れていく。
野営の場所をさだめ、背から荷を降ろした。
建てるの自粛の方向でつか。
【裏葉】「すぐに水を汲んでまいります」
竹筒を取り出した裏葉に、めずらしく神奈が言った。
【神奈】「余も手伝おうぞ」
【柳也】「じっとしてろ。怪我でもされたらかなわん」
【神奈】「………」
【神奈】「わかった」
いつになく神奈は神妙な様子だった。
俺からすこし離れたところで、言いつけられた通りにしている。
その様子が、どこか儚(はかな)げに見えた。
【柳也】「…神奈?」
【神奈】「ここにいるぞ」
【柳也】「そうか…」
意味のない会話が、どこか照れ臭かった。
【柳也】「遊ばせとくのも惜しいから、薪でもひろってくれ」
神奈が意外そうに俺のことを見た。
【神奈】「…よいのか?」
【柳也】「ああ。ただし、俺から見えないところには行くな」
【柳也】「蝮(まむし)にも気をつけろよ」
当分自粛の方がよさそうね。幸いまだフラッシュ劇場の時間じゃないし
【神奈】「わかっておるわっ」
快活に答え、ぱっと走り出す。
思うところあって、その背中に声をかけた。
【柳也】「ちょっと待て」
【神奈】「なんだ?」
【柳也】「胡桃を置いていけ。割っといてやるから」
神奈はふところから胡桃を取りだし、俺のてのひらにぽとりと置いた。
【神奈】「割るのはまかすが、食うでないぞ」
【柳也】「だれが食うかっ!」
神奈が林の奧に走っていった。
薄闇の向こうで、髪に飾った響無鈴(こなれ)だけが西日にちろちろと光る。
離れるなと言ったのに、ずいぶん遠くにいる。
昼間の神奈は、本当に嬉しそうだった。
あれほど多くの人や物に接したのは、はじめてだったはずだ。
興奮が大きければ大きいほど、おわれば夢をつかむような心地になる。
今の神奈には、じっとしているのはつらいのだろう。
たぶんそれは、俺も同じことだった。
【柳也】「………」
てのひらの中に、胡桃がある。
意識からそれ以外の事象を追い出す。
すうと息を吸いこんで、とめる。
下手投げで胡桃を放る。
同時に太刀を抜き放った。
かしゅっ。
かすかな音が夕闇をふるわせた。
流れのままに太刀をおさめる。
胡桃は両断され、地面に落ちていた。
【柳也】「…ふう」
どうやら腕は鈍っていないらしかった。
【柳也】「見事なもんだろ、裏葉」
木立の背後に呼びかけた。
思ったとおり、鳥の子色の衣が音もなく現れた。
【裏葉】「…おそれいります」
あいかわらず、裏葉の気配はつかみにくい。
こちらが神経を研ぎ澄ませていれば、かろうじて気取れるという程度だ。
【裏葉】「それほどの技を、どちらで?」
【柳也】「こんなものはただの座興さ」
【柳也】「胡桃がひとつ割れたところで、今生(こんじょう)は渡れない」
裏葉は何も答えず、腰をかがめて胡桃を拾い集めた。
【柳也】「それは神奈に渡してやってくれ」
【柳也】「太刀を使ったことは言うなよ。『胡桃も生物だ』なんてごねられたら困る」
【裏葉】「『余を主とするかぎり、今後一切の殺生を許さぬ』、ですか」
神奈の言葉そのままを、裏葉が繰り返した。
【柳也】「その誓い、俺が本当に守ると思うか?」
たわむれに訊ねると、裏葉の表情が変わった。
【裏葉】「神奈さまにはかたく口止めされているのですが…」
そう前置きして、裏葉は言った。
【裏葉】「社を出奔(しゅっぽん)した夜のことを覚えておいででしょうか?」
【裏葉】「山中の沢筋で、柳也さまは『ここから動くな』とお命じになりました」
【柳也】「ああ」
【裏葉】「あのあと、追っ手の呼び子を聞いた時、神奈さまは半狂乱でした」
【裏葉】「『柳也どのが追われておる、余が出向かねば殺されてしまう』、と…」
【裏葉】「わたくしが策略だと説いても、お聞き入れくださいませんでした」
あの雨の夜。
氷焔(ひょうえん)のような神奈の怒りを思い返していた。
俺を救いたい一心で、言いつけをやぶった神奈。
敵の命乞いを聞くことなく、太刀を振り下ろそうとした俺の姿…。
【柳也】「そうだったのか…」
言葉が続かなかった。
左腰に吊った太刀の緒が、じんじんと疼(うず)いていた。
裏葉は微笑み、おだやかに言葉を続けた。
【裏葉】「おそれながら、柳也さまは不殺(ころさず)の誓いをお守りになるでしょう」
【柳也】「なぜそう思う?」
【裏葉】「あの時、『その者を斬り捨てよ』と神奈さまが命じられたなら、柳也さまはどうなさいましたか?」
【柳也】「………」
【柳也】「怒っただろうな。『人の生命をかるがるしく扱うな』って」
【裏葉】「そうでございますよね」
【柳也】「大人は童子に範を示してやらないとな」
【裏葉】「そのとおりでございます」
いつかのように、ふたりして笑う。
その時、がさっと下草が鳴った。
振り返ると、神奈が俺たちのことを見ていた。
【神奈】「何をしておる」
【柳也】「ちょっと立ち話だ」
【神奈】「夕餉の支度はどうしたのだ。まったく益体もない…」
よほど腹が減っているのかと思ったら、どこか様子がそわそわしている。
【柳也】「おまえこそ、薪を集めてたんじゃないのか?」
【神奈】「あちらに見える村が、なにやら妙な風なのだ」
【柳也】「妙な風?」
裏葉と顔を見合わせた。
神奈に急かされて、三人で林の端に移った。
【神奈】「あれだ」
ついと、細い指で示す。
薄闇におおわれるように、小さな山間の村が見える。
なにかを用意しているのか、開けた場所に足場を組んでいるのが見えた。
【柳也】「物見櫓(ものみやぐら)か…?」
神奈たちを奧に隠そうとして、裏葉の訳知り顔に気づいた。
【裏葉】「あれは、祭のようですね」
【神奈】「祭とな?」
【裏葉】「神さまに感謝と願いを届ける儀式でございますわ」
【神奈】「あの村にも社があると申すか?」
勢いこんで訊ねた神奈に、裏葉がやんわりと首を振った。
【裏葉】「いえ、一口に祭と言っても色々なものがございます」
【裏葉】「まつられる神もまたさまざまです」
【裏葉】「あちらに見えますのは、火祭のようですね」
村人たちは、手に手に木切れを持ち寄っている。
妹が風呂入ってるみたいだから、俺も一緒に行ってくるわノシ
男たちがそれを受けとり、櫓に運びあげる。
【裏葉】「あの櫓の最上にて、炎を焚いて祈ります」
【神奈】「なにゆえにか?」
【裏葉】「ほんのわずかでも神さまに近づくため、でございましょうか」
【神奈】「そうか…」
わかったのかわからないのか、あいまいに頷く。
夕風に乗って、囃子(はやし)の音が流れてきた。
祭りがはじまったようだ。
うねるような鼓(つつみ)の拍子を、笛が追いかける。
雅楽(ががく)とはおもむきの異なる、にぎにぎしく素朴な節回し。
櫓の上に、ぽっと炎がともった。
またたきはじめた星を目指し、煙が昇っていく。
人々の歓声が、そのあとを追う…
【神奈】「ずいぶんと楽しげよの」
だれに聞かせるでもなくつぶやく。
自分とは無縁の幸せを垣間見る、隠者の口ぶりだった。
裏葉がさりげなく目くばせしてきた。
仕方なく、俺も目でうなずいてみせた。
【裏葉】「神奈さま、もっと近くでご見物なさいませんか?」
【神奈】「よいのか…?」
輝かせた瞳を、あやふやに伏せる。
ここまで気後れした神奈を見るのははじめてだった。
【柳也】「林から眺めるだけならな。輪の中に入るのは駄目だぞ」
警護担当にとっては、これが最大の譲歩だ。
神奈はなにか思案していたが、やがて小声で言った。
【神奈】「よい。では、余を祭まで案内せよ」
【柳也】「お供つかまつります」
うやうやしく頭を垂れる。
【柳也】「途中で暗くなるな。裏葉、手を引いてやってくれ」
【裏葉】「はい。では神奈さま、お手を」
袖をととのえてから、神奈の右手をそっと握る。
【神奈】「やさしすぎて、気色が悪いぞ…」
そんなつぶやきが聞こえた。
辺りに闇が満ちるにつれて、祭の音がだんだんと近くなってきた。
【裏葉】「神奈さま、こちらならよく見えます」
裏葉が言った。
瞳を凝らした神奈が、思わず声をあげた。
【神奈】「おお…」
祭りはまさに酣(たけなわ)だった。
燃えさかる火櫓の周りに、たくさんの村人が輪をなしている。
ある者は空を仰ぎ、煙と炎の行方を追う。
ある者は一心に舞い踊り、衣の裾を滑らせる。
囃子はいっそう高く響く。
炎と闇が人々をひとつに結ぶ。
太古から続く寿(ことほ)ぎの調べが、天に還っていく。
【神奈】「なにゆえにみな、あれほど楽しげなのだ」
それは素直な問いなのだろう。
舞い踊る人々から視線を外さず、神奈がつぶやいた。
【裏葉】「あの火の粉を浴びますれば、息災(そくさい)に過ごせるのだと聞きます」
【柳也】「ああして羽目を外せば、日頃の憂(う)さもまぎれるってことさ」
【裏葉】「それだけではございません」
すかさず裏葉が口をはさんだ。
横目で俺をにらみつけ、『興醒めなことを言うな』と釘を刺す。
【裏葉】「みな、信じているのでございます」
【裏葉】「願いは必ずや天に届くと」
願いは必ずや天に届く。
そう聞いた時、神奈の肩がびくりと震えたのがわかった。
【神奈】「だれが願いを届けるのだ?」
たじろいだ裏葉の顔を、濁りのない瞳が覗きこむ。
【神奈】「余は神になど会ったこともないぞ」
【神奈】「幼きころより何遍(なんべん)もためしたが、余は空など飛べぬ」
【神奈】「社殿の屋根より飛びおりた折も、木の葉ほども浮かばなかった」
【神奈】「どんなに羽ばたいたとて、余の背羽は空(くう)を切るばかりだ」
【神奈】「余の背羽は、益体もないまがいものぞ」
【神奈】「余は願いなど、届けられぬ」
【神奈】「届けられぬぞ…」
ごうと音を立て、炎が燃えさかった。
降りかかる火の粉に、笑い声がはじける。
神奈の瞳が紅蓮(ぐれん)を映し、どこかうつろに揺らぐ。
一度は振りはらったはずの日々が、神奈を責めさいなんでいる。
【裏葉】「神奈さま…」
心細げに震える背に、裏葉がそっと寄り添った。
粗末な袖で、神奈の身体を被う。
嵐に迷った水鳥が、こごえた雛を羽毛でつつむように。
【柳也】「…祭もそろそろ佳境だな」
俺は言うでもなく言い、神奈に歩み寄った。
【柳也】「おまえも願っておけよ、ついでだからな」
きょとんとした顔で俺を見返す。
何を言われたのか、とっさにはわからなかったようだった。
【神奈】「余も…」
【神奈】「余も、願うてよいのか?」
【柳也】「あたりまえだろ」
【神奈】「何をささげればよいのだ?」
【神奈】「余は薪など持っておらんぞ」
【柳也】「燃やす物なんていらない」
【神奈】「あのように踊ればよいのか?」
【柳也】「踊りもいらない」
【神奈】「では、どうすればよいのだ…」
途方に暮れて、俺を見返す。
【柳也】「願いを心に想えばいいんだ」
マクロで寝てるだろうから次ぎスレ立てても反応しねーんじゃね?
【柳也】「それだけでいい」
神奈が押し黙った。
俺に教えられた通り、心をひとつにまとめようとする。
神奈が何を願っているのか、俺にはよくわかった。
見開いたままの、あどけない瞳。
その先に、神奈の願いはたしかにあった。
幼子(おさなご)を抱き、幸せそうに笑う母。
温かな母の胸で、きゃっきゃとはしゃぐ娘子。
どこにでもあるはずの、どうということはない夏祭の光景。
神奈が瞳を逸らす。
目の前のものが信じられない、そう言いたげに。
神奈の頭にぽんと手を置いた。
つややかな黒髪を、そのままくしゃっとかきまぜる。
【柳也】「そんな顔するな」
【柳也】「おまえの願いはきっとかなう」
【柳也】「きっとかなう」
【柳也】「そうだよな、裏葉」
【裏葉】「…ええ」
【柳也】「('A`)ノマンドクセ」
【裏葉】「そうでございますとも…」
神奈を抱いたままの袖に、きゅっと力がこもる。
【神奈】「裏葉、痛いぞ」
【裏葉】「………」
【神奈】「くすぐったいぞ…」
そうだ。
神奈の願いはきっとかなう。
俺たちが、かなえてみせる。
夜気にさらされたまま、俺たちはずっとそうしていた。
祭の炎はいつまでも、夏の夜空に照りはえていた。
翌朝。
日の出前に出立し、午後には峠を越えた。
関のあった村から山をひとつ越し、街道を離れた。
翌日も山中をすすみ、沢合いで野営した。
さしせまった危険を察したからではない。
神奈が市で目立ちすぎたので、念には念を入れてだ。
追っ手にとって、神奈はあくまで貴人の姫君だ。
山奥で野猿なみの暮らしをしているなど、思いもよらないにちがいない。
こちらから街道に近づかないかぎり、見とがめられる恐れはない。
俺はそう判断していた。
午後。
俺たち三人は、櫟(くぬぎ)の木陰で涼をとっていた。
ひさしぶりの休日だ。
森の中には、降るような蝉の声が満ちている。
あーあ、リログしようと思ったらチケット切れてやんの。
買っちゃった。1ヶ月分。
しかし、暑いというほどではない。
吹き渡る風も、どこか空(うつ)ろな気配をのぞかせる。
夏はさかりを過ぎようとしていた。
それなのに、俺は汗だくだった。
朝からずっと、面白くもない書を読み続けているせいだ。
『願いをかなえてやる』と大口をたたいたまではいい。
(´・ω・`) ノシ● ウンコドーゾー
マジギレしそうなんだが
メルマガ、染色かと思ったら女性社員で作るだァ!?
んなの答えられるかっての!!
なにが教えてあげたいけど教えてあーげない、だコラ!
母君の居場所がわからないのでは、話にならない。
しかし、関が設けられている以上、街道には近づきたくない。
となれば頼りは、俺が社殿から持ち出した文書だけだった。
【柳也】「…もののけにむかひて物語りしたまはむとも、かたはらいたけ…」
【柳也】「これもちがうか」
ばさっ。
放り投げた書が、地面でぱらぱらとめくれた。
大きく伸びをしながら、視線をとなりに送る。
裏葉が身じろぎもせずに巻物をたぐり読んでいる。
【柳也】「裏葉、なにかわかったか?」
【裏葉】「いえ、これと言って」
【柳也】「そうか…」
とりあえず一応削除依頼出してきたよ。
ボクはもう疲れたよ・・・。一緒に眠ろう、サカゲ・・・。
裏葉はつとめがら、仮名も真名も読みこなせる。
俺は読み書きの素養があるわけではない。
書状ぐらいならどうにかなるが、漢書はおおよその意味しかわからない。
【柳也】「…こいつは役に立たないし」
じろっと見た先には神奈。
幹にもたれかかり、だらしなく寝ほうけている。
ヌいてきた・・・
やっぱ看護婦はイイ・・・
そのまわりには、遊びかけのおもちゃが散らばっている。
雛人形、竹細工、土鈴、笛、蜻蛉玉(とんぼだま)…
すべてこの前の市で、裏葉が手に入れたものだ。
裏葉に遊び方を教わっては、夢中であれこれ試している。
俺もとばっちりを受けている。
ここのところ、休憩のたびに人形遊びにつきあわされていたのだ。
ちなみに俺の人形は、お姫さまにこき使われる家来の役だ。
しかも数が足りないので、俺のだけいいかげんな木っ端製だ。
人形界のこととはいえ、我が身が不憫でならない。
【神奈】「…すう…すう…」
寝顔だけは大人しい。
【神奈】「まったくおぬしはうつけよの」
【神奈】「…ぐう…」
【柳也】「………」
【柳也】「けなげに立ち働く家来に対してそのふざけた寝言はなんだこらっ!」
思わずつかみかかろうとして、冷ややかな視線に気づいた。
【裏葉】「………」
【柳也】「すまん、ちょっと取り乱した」
【裏葉】「お手を動かしくださいませ、柳也さま」
【柳也】「わかってる」
しかたなく、次の書に取りかかる。
【柳也】「ぐわあっ」
全部漢文だった。
頭をかかえながらも、たどたどしく読みはじめる。
しばらくすると、神奈がもぞもぞと動き出す気配がした。
【神奈】「…ふぁーっ」
【神奈】「よう寝たの」
大あくびと共に、木の根から腰をあげる。
【裏葉】「神奈さま、お目覚めでございますか?」
【神奈】「うむ」
【神奈】「喉がかわいたぞ、水はないか?」
【裏葉】「はい、こちらに…」
【神奈】「よいよい。自分でしようぞ」
立ちあがろうとした裏葉を制して、竹筒を持ちあげる。
【神奈】「んくっ、んくっ、んくっ…」
【神奈】「…ぷはぁ」
美味そうに飲みきって、特大の吐息をひとつ。
【神奈】「やはり夏はこれよの」
【柳也】「幸せそうだな、神奈」
嫌味のひとつも言いたくなる。
【神奈】「おぬしはずいぶん薄幸そうよの」
【神奈】「ずっと書を読んでおったのか? 柄にもないことを…」
【柳也】「そう言うおまえは読めるのか?」
【神奈】「だれも教えなかったのだ。読めるはずがないであろ」
意味もなく威張りながら言う。
【柳也】「よく裏葉が放っておいたな」
俺がそう言ったとたん、裏葉の眉がぴくっと動いた。
【裏葉】「放ってなどおきませんっ」
【裏葉】「神奈さまが、『裏葉にだけは習いとうない』などとおっしゃって…」
【神奈】「あれは裏葉の咎(とが)であるぞ」
【裏葉】「ひどいっ。この裏葉が何をしたとおっしゃるのですっ?」
【神奈】「歌集の件、忘れたとは言わさぬぞ」
【裏葉】「あれは神奈さまのお心を豊かにしていただきたいがため…」
【神奈】「あの教えようでどこが豊かになるかっ!」
【柳也】「…なんの話だよ?」
【裏葉】「以前、神奈さまに和歌をお教えしたおりのことでございます」
【裏葉】「少々の苦労は手習いごとにつきもの。それなのに神奈さまときたら…」
【神奈】「一日に百首そらんじるのが少々の苦労と申すかっ」
【裏葉】「全部で四千五百首あるのですから、ぐずぐずとはできません」
当然のように真顔で言う。
漏れは看護帽が気になってダメだな。>看護婦モノ
要するに以前、神奈にぶ厚い和歌集を丸暗記させたことがあるらしい。
ためしに想像してみた。
和歌を一日百首ずつ、四十五日の間ひたすら覚え続ける。
しかも裏葉つきっきりでの手ほどき。
【柳也】「…よく死ななかったな」
【神奈】「うむ、それよ」
止まりそうもないね
一度この板からも離れるという意味で お前は―(略
の方に移動と、いうことでいいかな?
【神奈】「このままでは殺されると思うたのでな」
【神奈】「夜中のうちに起きだして、歌集全巻をかまどに放りこんでやった」
【裏葉】「おかげで、せっかくの古今六帖一具が朝餉(あさけ)の焚きつけに」
【裏葉】「あれだけのものを都合するのに、この裏葉がどれほど身をくだいたことか…」
【神奈】「うむ。あの日の飯はまことに風流な味だったぞ」
【裏葉】「そのような妄言をのたもうのはこの口でございますかっ」
神奈の唇に小指をつっこみ、左右にびろーんと伸ばす。
【神奈】「ひゃっ、ひゃめんかふりゃは〜」
【裏葉】「和歌のひとつも詠えぬ口など、無用の長物というもの」
【神奈】「むっ、むひゃをひゅうでなひ〜」
【裏葉】「いっそ縫いつけてしまいましょうか」
満面の笑みのまま、とてつもないことを言い放つ裏葉。
【神奈】「にゃにほひてほるー。ひゃほふにはすへんは〜」
…助けろと言われても、俺だって命は惜しい。
【神奈】「ひょっ、ひょのひゃくたいなひ〜」
【裏葉】「…はっ」
そこで裏葉が我にかえった。
俺の視線に気づき、つっこんだままの指をあわてて離す。
【裏葉】「もうしわけありません。少々取り乱しました」
【柳也】「いやいや、気にしなくていい」
【神奈】「…なぜおぬしがゆりゅすのだっ!」
【柳也】「まだ言葉が変だぞ」
【神奈】「むぅ」
伸びてしまったほっぺたに、両手をあてて揉む。
とにかく、こいつがいると仕事がはかどらないのは確実だ。
【柳也】「手伝えないんなら、ひとりで遊んでろ」
【神奈】「ひとりではつまらぬ」
【柳也】「おもちゃならそこにいくらでもあるだろ」
【神奈】「飽きたぞ」
【柳也】「おまえなあ」
ったくログインできねーよ。
糞が。
呆れていると、ふところからお手玉を取り出した。
【柳也】「お手玉だけは飽きないみたいだな」
【柳也】「下手の横好きというやつか」
【神奈】「やかましいっ」
【神奈】「ここは邪魔が多いゆえ、あちらでやることにする」
裏葉の方をじろりと見てから、向こうの木まで歩いていく。
ううう、と悲痛な声が聞こえたが、気にしないことにしよう。
そんなこんなで。
何の成果もないまま、夕方になってしまった。
南の社の場所はおろか、俺たちがいた社のことさえどこにも書かれていなかった。
なぜそこまでして翼人のことを隠す必要があるのか。
それさえわからなかった。
(´・ω・`) ノシ1000 ドーゾー
代わりにわかったのは、翼人という存在がいかに謎めいたものであるかだった。
同じ書の中で、扱いがまったく正反対の場合さえあった。
人に知恵と知識をさずけた、貴(たっと)ぶべき神。
かつて地上に災厄をもたらし、人により掃討された悪鬼。
最後にあたった古い書物には、こんな記述があった。
『鳳翼不老不死以其羽記天命』
【柳也】「不老不死、か…」
思わず、神奈の方を見た。
地面に落ちたお手玉を拾い集め、また空中に投げている。
ここまで根気強い奴だとは思っていなかった。
【神奈】「うがあっ。なぜうまくゆかぬっ」
…ここまで不器用だとも思っていなかったが。
【裏葉】「柳也さま、こちらはすべて終わりました」
俺のとなりで、裏葉が巻物のひもを結びながら言った。
何の成果もなかったことは、横顔を見ればわかった。
【柳也】「『ここより南の社』だけじゃな…」
俺がつぶやくと、裏葉が問いかえしてきた。
【裏葉】「仮にでございます」
【裏葉】「南の社の翼人が母君だったとして、今もそちらにおられるでしょうか?」
【裏葉】「神奈さまは年ごとに社を移っておいででした」
【裏葉】「とすると、神奈さまの母君も居所を移っているのでは?」
それは俺も考えていたことだ。
だが…。
【柳也】「おそらく、それはないと思う」
【神奈】「お察しくださいっ」
【裏葉】「なぜでございましょう?」
【柳也】「勘というやつだ」
ずっと胸に引っかかっていることがある。
衛士が打ち明けた最後の言葉だ。
『母親は人心と交わり、悪鬼と成り果てた』
悪鬼と呼ばれるほどの存在を、連れ回すことなどできるだろうか?
そもそも、悪鬼とは何のことなのだろうか?
黙りこんだ俺を見て、裏葉がそっとつぶやいた。
【裏葉】「勘でございますか…」
【柳也】「何か言いたそうだな」
【裏葉】「いえ」
【裏葉】「柳也さまの勘は、いつもお確かですから」
例によって真顔で答える。
【柳也】「とりあえず、俺の勘が当たっているとしてだ」
【柳也】「南の社のありかがわからないことには、どのみち動きようがない」
【裏葉】「そうでございますね…」
そう答えたきり、考えこんでしまう。
【柳也】「せめて神奈が何か覚えていればな…」
次のスレは?
これほど話が早いことはない。
だが、謎を知るはずの本人に、鶏ほどのもの覚えもないのだ。
溜息をつく。
お手玉に興じる神奈を、しばし眺める。
【神奈】「おぬしはまた逸れるかっ」
三つ目のお手玉を手に、何やらこんこんと説教をしている。
【神奈】「他のふたつの玉はいい具合に舞うというに、なぜおぬしだけそう不器用なのだ」
【神奈】「まったくおぬしはぐずでのろまよの。柳也」
【柳也】「…お手玉にまで俺の名をつけるのはやめろっ!」
【神奈】「やかましいぞっ! 気が散るではないか」
【柳也】「いいからちょっと来いっ!」
俺が呼ぶと、ぶつぶつ不平をこぼしながらやって来た。
【神奈】「何用か?」
【神奈】「夕餉にはまだ早いであろ」
【柳也】「食うことしか頭にないのか」
【柳也】「母君と別れた時のこと、なにか覚えてないか?」
訊ねたとたんに、嫌な顔をした。
【神奈】「覚えていないと再三申しておるであろ」
【柳也】「母君のことでなくてもいい。何でもいいから覚えてないか?」
顎に手をあてて、しばし考え込む。
【神奈】「…何でもと言われてもの」
【柳也】「最初にいた社の様子とか、旅の道のりとか、何かないか?」
藁にもすがる思いで、しつこく訊きなおす。
神奈はやっと、何かを思いだしたようだった。
【神奈】「幼きころは、社を移るのはまことにつらい旅であった」
【神奈】「乗りたくもない牛車(ぎっしゃ)に詰められ、歩くことも許されぬ」
【柳也】「そりゃそうだろ」
徒歩(かち)で旅する貴人など、聞いたこともない。
【神奈】「牛にも乗させてもらえなんだぞ」
【柳也】「…乗ってどうするんだよ?」
【神奈】「車の中は地獄のように蒸し暑いのだ」
【神奈】「せめて涼もうと衣を脱いでおったらな、見つかって大さわぎよ」
【柳也】「おまえ、本当に貴人か?」
幼い頃のこととはいえ、まともな女子(めのこ)のすることではない。
【神奈】「それにな」
【神奈】「随身(ずいじん)の男が礼儀知らずの大うつけでの」
【神奈】「余が従わぬと、『おまえも金剛に封ずるぞ』などと脅してな」
【柳也】「…金剛に封ずる?」
【神奈】「聞きわけのない翼人は、昔からそうするものと決まっておるそうな」
【神奈】「あのころはもの知らずだったゆえ、それは脅えたものぞ」
遠い目をして言う。
【神奈】「それはそうと、金剛とはなんだ?」
【柳也】「今でも充分もの知らずだっての」
【裏葉】「金剛とは宝石でございます」
【裏葉】「この世でもっとも硬く、また美しいものと伝え聞いております」
【柳也】「金剛か…」
話には聞くが、実物を見たことはもちろんない。
神奈を大人しくさせるなら、そのぐらい持ち出さないと駄目だろう。
【神奈】「して、どうやって余をそれに封じるのだ?」
【柳也】「そりゃ俺が知りたいぞ」
【柳也】「………」
【柳也】「おまえのように大食らいで聞きわけのない翼人は、こうしてくれるっ」
【神奈】「こっ、こらやめんかっ。うあああぁぁぁ…」
あっという間に小さくなり、金剛に吸い込まれる神奈。
呪文ひとつで出し入れ自由。
かさばらず、持ち運びも手軽。
この上なく便利だ。
翼人警護者の間で大人気まちがいなしの逸品だ。
【神奈】「…余はおぬしが今、この上なく無礼なことを考えておるような気がするぞ」
【柳也】「気のせいだろ」
【神奈】「………」
ぽかっ。
【神奈】「なにゆえおぬしから先に殴ってくるかっ」
【柳也】「すまん。殺気を感じたんで手が動いてしまった」
【神奈】「こっ…」
その時、いきなり裏葉が叫んだ。
【裏葉】「…柳也さまっ!」
【柳也】「なんだよ、いきなり」
【裏葉】「南の社というのは、神社とはかぎらないのでは?」
【柳也】「ああ?」
【裏葉】「貴人を衆目から隠すには、襤褸(ぼろ)をかつがせましょう?」
【裏葉】「あるいは、袈裟(けさ)などを…」
あべし!
【柳也】「袈裟?」
神社ではなく寺院に隠すという意味か?
俺がわからずにいると、裏葉はするりと立ち上がった。
地面に放ったままの絵地図を広げなおし、俺の目前にかかげる。
【裏葉】「この辺りが神奈さまの社、こちらが都でございます」
【裏葉】「斑鳩(いかるが)を越えて、さらに南に下りますと…」
うわらば!
裏葉の指が、地図の一点を示した。
【裏葉】「ここに金剛がございます」
正しくはそれは、広大な山群そのものを表していた。
俺は二の句がつげなかった。
裏葉が辿り着いた答えが、それほど突拍子もないものだったからだ。
『意に従わない翼人は金剛に封じる』
「それは、とてもとても悲しい」
「冬の日の、幻想物語なんですよ」
と見えた俺は、既にカプラさんの虜なのかもしれない。
金剛とは何のことか?
悪鬼を封ずるほどの力を持つ『社』とはどこなのか?
【裏葉】「…ここが真言の霊山」
【裏葉】「高野山、金剛峰寺でございます」
その晩は、なかなか寝つけなかった。
何の気配もしないのに、心がざわついておさまらない。
やがて、妙な夢を見た。
神奈がひどく真剣な顔つきで、俺を覗きこんでいる。
背後に月がある。
濡れたような唇のあたりが、妙になまめかしい…
【神奈】「…柳也どの」
俺の名をささやいている。
【神奈】「柳也どの…柳也どのっ」
眼を開けると、本当に神奈の顔があった。
ほのかな月光の下でも、頬が上気しているのがわかった。
【柳也】「…なんだよ」
木の幹に寄りかかったまま、俺はそう訊いた。
【神奈】「柳也どのに、見てほしいものがあるのだ」
【神奈】「まだ、ちと恥ずかしいが…」
【神奈】「見てくれるか?」
ほっそりとした神奈の指が、着物の襟元に触れる。
そして、神奈は言った。
【神奈】「ではゆくぞっ」
【柳也】「………」
【柳也】「それは何だ?」
神奈がふところから取り出したものを指し、俺は訊いた。
【神奈】「お手玉だぞ」
【柳也】「…念のために訊くけどな。おまえはこれから何をするつもりだ?」
【神奈】「だからお手玉だと申しておるであろうが」
【神奈】「さっきな、三つきちんと舞ったのだぞ」
斑鳩か〜。
【柳也】「………」
【神奈】「その目は疑っておるな」
【神奈】「まことだぞ、まことに三つきれいに回せたのだっ…」
【柳也】「………」
【柳也】「……」
【柳也】「………」
【柳也】「おやすみ…」
【神奈】「寝るでないっ!」
【柳也】「寝かせろっ! こっちはさっき寝ついたばかりなんだ」
【神奈】「ええいっ、寝るでない寝るでない寝るでないっ!」
【神奈】「主が秘芸を見せてやると申しておるのだ。ひれ伏して拝見するのが臣下の務めというものであろっっ!」
【柳也】「無茶苦茶言うなああっっ!」
深夜の森に絶叫がこだまする。
まさに悪夢のようだった。
このままでは埒(らち)があかないと思ったのだろう。神奈が最終手段に出た。
【神奈】「では、余はおぬしに命ずるぞっ…」
【柳也】「わああっ。待て待てっ!」
俺はあわてて神奈の口をふさいだ。
例の不殺の誓いだけでも大変なことになっているのだ。
この上、妙な誓いを増やされてはたまらない。
【神奈】「ふむむ〜。ふむうむ〜むむむうむぐむう…」
じたばたじたばた。
あばれる神奈を押さえつけていると、何だか空しくなってきた。
眠気など、もうとっくに失せてしまっている。
【柳也】「…はいはい、わかったよ」
【柳也】「見てやるから、早めに済ませてくれ」
ぱっと手を離しながら、俺は言った。
神奈が俺をぎろりとにらみつける。
が、文句よりも先にお手玉を披露したいらしい。
【神奈】「よいか? よ〜く見ておるのだぞ」
言いながら、俺の前にぺしゃりと座りこむ。
神奈がお手玉を持って構えた。
ぴんと背筋を伸ばした姿勢は、なかなか堂に入っている。
【神奈】「それっ」
ひょい…ひょい…ひょ…。
【神奈】「…あう」
失敗した。
二つ目を投げるのが早すぎて、右手がついていかないのだ。
【神奈】「さっきはできたのだ」
【神奈】「もう一度するから、よく見ておれ」
【柳也】「ああ、何度でもやってくれ」
お手玉を拾い集め、もう一度かまえなおす。
【神奈】「…それっ」
お手玉は山なりに宙を舞い、右手へと渡る…
【神奈】「むっ…」
だが、左手が動かなかった。
【柳也】「今度は溜めすぎだな」
【神奈】「嘘ではないっ。さっきは本当にできたのだぞ!」
【柳也】「だれも嘘だなんて言ってないだろ」
【柳也】「落ち着けって。気を静めてやらないと、名人でもできないぞ」
【神奈】「うむ。わかった」
【神奈】「…すう…はあ」
大きく息を吸い、そして吐く。
【神奈】「ゆくぞ」
【柳也】「ああ」
【神奈】「…今度こそ」
つぶやいて、お手玉を宙に放った。
ひとつ、ふたつ、みっつ……。
お手玉は不器用ながらも、たしかに輪を描いていた。
【神奈】「ほら、できたであろっ!」
だが、喋ったとたんに輪が崩れた。
お手玉が神奈の指先をかすめ、地面にぽとりと落ちた。
【神奈】「…あ」
視線が宙を泳ぐ。
夢中でお手玉を拾い、もう一度投げようとする。
そこで、俺の視線に気づいた。
【神奈】「さっきはもっと回せたのだっ」
噛みつくように言う。
【柳也】「それだけできれば大したもんさ」
【神奈】「慰めなどいらぬ」
【柳也】「慰めで言ってるわけじゃない」
【柳也】「そこまでできるようになったのは、おまえが頑張ったからだろ」
言いながら、自然と笑みがこぼれてしまう。
神奈の様子がおかしかったからじゃない。
最初の時のことを思い出したからだ。
石つぶてかなにかのように、勢いよく宙を飛んだお手玉。
あれから毎日、神奈は手習いを繰り返していた。
ここまで上手になるとは考えてもいなかった。
【柳也】「あきらめが悪いってのは、すごいことだな」
【神奈】「誉められておるのか、けなされておるのか、わからぬ」
困ったようにつぶやく。
【柳也】「誉めてるんだって」
【柳也】「何にせよ、よくやったな。神奈」
頭にぽんと手を置いてやった。
やわらかな髪の感触が、たしかに伝わってくる。
【神奈】「………」
【神奈】「もっと、上手になりたいぞ」
【柳也】「毎日続ければ、きっと達人になれるさ」
【神奈】「大げさよの」
【柳也】「本当だって」
戸惑った神奈が、やがてぎこちなく微笑んだ。
【神奈】「…余のお手玉、また見てくれるか?」
【柳也】「ああ、俺でよければいつでも見てやるよ」
【柳也】「ただし、夜中はもう駄目だぞ。裏葉が心配するからな」
俺の言葉に、こくりと頷く。
【神奈】「わかった」
そろそろ1000?
【柳也】「じゃあな。おやすみ」
神奈の後ろ姿が、闇の奧に戻っていった。
ひとりになると、虫の音がいやに淋しく感じられた。
【柳也】「………」
まあいい、寝よう。
木の幹に背中を預け、太刀を抱えたまま目をつぶる。
ヽ(`Д´)ノウワァァン
1000
やわらかな眠気が波のように満ちてきた。
これならすぐに熟睡できそうだった。
【裏葉】「おはようございます、柳也さま」
【柳也】「…ぐをあっ!」
今度は裏葉の顔が真正面にあった。
【裏葉】「お二人で、楽しそうでございましたね〜」
地獄の底から響いてくるような、重苦しい声音で言う。
【裏葉】「裏葉はひとりで寂しゅうございました」
【柳也】「見てたんなら、来ればよかったのに」
【裏葉】「お呼びくださるのをずっと待っておりましたのに…」
【裏葉】「神奈さまのお手さばきを間近で拝見したかったのに〜」
よよよ、と泣き崩れる。
単にうらやましかっただけのようだった。
月光が、降りそそいでいた。
名もない森の隅々まで、淡い光が満ちていた。
俺は思いだしていた。
蒸し暑い社殿の夜。
神奈がつぶやいた言葉。
989 :
魚醤屋:03/01/31 01:37 ID:RywtRsCF
『逢いたい…』
すべてはあの夜からはじまった。
あれからちょうど、一月が過ぎようとしていた。
霊峰高野山。
金剛峰寺のふところに、俺たちはいた。
【神奈】「寺などどこにもないではないか」
『逢いたい…』
すべてはあの夜からはじまった。
あれからちょうど、一月が過ぎようとしていた。
霊峰高野山。
金剛峰寺のふところに、俺たちはいた。
【神奈】「寺などどこにもないではないか」
【神奈】「どこまで行っても見たような森ばかりだ」
【神奈】「景色がかわらず退屈だぞ」
【柳也】「…だまって歩け」
金剛峰寺とは、高野山にある幾百もの寺院をまとめて指す名だ。
高野山そのものも、同じように金剛峰寺と呼びならわす。
【柳也】「もう高野の領内に入っているはずだ」
とりあえず998をください
(´・ω・`)
警護の者がいても不思議はない。
【神奈】「さっきから同じところを回っている気がするぞ」
【柳也】「気のせいだ、だまって歩け」
【神奈】「…むぅ」
さっきから同じ会話を何度もしている。
俺も何かおかしいと思いはじめていた。
【柳也】「1000!」
山中で道に迷うのは、周りの景色に頼りすぎるためだ。
ここまで俺は、月を頼りに歩いてきた。
方角を間違えるはずはないのだ。
だが、何かが微妙におかしい。
夏の夜にはめずらしく、月は冴え渡っている。
満月にはほんの少し満たない月。
バウムクーヘン分割
しんがりを歩いていた裏葉が、不意に立ちどまった。
【柳也】「どうした、裏葉」
【裏葉】「柳也さま、これを」
見ると、太い杉の幹に麻縄が巻かれていた。
そこから等間隔に、白い紙が垂らされている。
【柳也】「注連縄(しめなわ)か」
と千尋!
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。