【なりきりリレー小説】ローファンタジー世界で冒険!

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282ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/05(月) 23:34:12.41 ID:zzk8Gj1p
ゲッツは、相手に問う。
そして、その問いに真摯に答えようとしてくれている時点で、こいつはやはり信用できる、と理解した。
アブサンを口に流し込みながら、僅かに口角を吊り上げ犬歯をむき出しにして、笑う。

>「オレには夢があるっていったろ? この世界に神曲を送り出す事――それには題材《テーマ》が必要だ。
>最高のテーマに出会ってしまったんだよ。誰も見た事の無い伝説……世界に二つとない唯一無二のテーマにな!」

(――ったく、似てやがる。 伝説を作るのと、伝説になりたい奴。ま、出会っちまったんだ、しゃーなしだな)

喉を震わせて、低音の笑い声を響かせるゲッツ。
その表情は、平時の狂笑や、暴力感溢れる高笑いではなく、本当に普通の笑いだ。
何かとても、嬉しいことがあったような、幸せな笑い。

>「ああもう面倒臭い奴だなあ!
>頼むよ、この世に自分が居たって証拠を残させてくれ。その代わり……」

相手の言葉を、みなまで聞きたかった。
竜人は、闘うこと以外存在しない。相手のように素晴らしい歌を歌うことも出来ない、言葉だって直接的なことばかりが流れ出る。
その戦いだって、まだまだこの世界では上の存在などそれこそ無数に存在しているのだから。
だが、それでも竜人は戦いから身を引こうとは思わない。きっと、フォルテが歌を歌うのも、同じように、魂の叫びが体を動かしているからだと思う。

>「オレがお前を、伝説の勇者にしてやるよ!! そのためなら、戦ってもいい――!」

「っはッ……! ヒヒャハハハ――! いいぜ、そういう熱い言葉は大好きだァ! 上等だぜェ! フォルテ!
 テメェの命はオレが守る! テメェと一緒にオレは拳も! 剣もッ! 炎もォ! 鋼もッ! 振るおうじゃねェか!
 だからお前は、オレの姿を力を歴史に刻め! オレを謳うテメェの名前と一緒によ、面白おかしくこの世界に爪痕を残していこうじゃねェか!」

竜人は、飾り気のある美しい言葉も嫌いではないが、今のフォルテが口にしたような、心をむき出しにしたような言葉を何よりも好む。
嘘のない、混じりけの無い言葉こそが何よりも心を打ち、魂に灯火をつけるのだ。
哄笑を響かせ、一息にアブサンを飲み干し立ち上がるゲッツ。それと同時に、アサキムがこの店に現れた。

>「見つけたぞ、さあ行こうか」
>「導師様といえど邪魔をするのは無粋というものだよ」

立ちはだかるボルツ、この世界に置いても最強クラスに数えられるであろうアサキムを足止めしようと考え、それを実行に移せる時点で、この男も相当非常識だ。
少なくとも、あのアサキム相手に数秒以上の均衡状態を作り出すことが出来た時点で偉業といっても良い。
動き出すフォルテ、それを見てゲッツもまた歩みを進め出す。強く地面を蹴り、加速を産み。金髪は風に流れて赤と金の混じる軌跡を作る。

>「知り合いなのか!? 丁度いい足止め頼んだ! 逃げるぜゲッツ!」

「ヒャハッ! 任せたぜ、ボルツのおっさんよォ!
 っしゃ、逝くぜ、行くぞ、突っ走るぜぁ!」

ゲッツは、フォルテが己の手を取った瞬間、わしづかみにして引き上げて肩に担ぎ上げる。
フォルテを運送するのが日常茶飯事になりつつ有るが、こちらの方が早いのだからしかたがないだろう。
狭い裏路地では翼を広げて飛翔することが困難であるため、加速を得て最速で飛ぶ為に大通りを目指していく、が。

>「あ、そちらのカップルさん? パンは如何です……きゃあっ!」

「カップルじゃねーってのォ! って、悪ィ!」

駆け抜け路地を飛び出した時点で、リンセルと接触。
フォルテの服にバスケットを引っ掛けてしまうものの、今は足を止めている余裕などはなかった。
開けた空間に出たその瞬間、地面を蹴り飛ばし、飛翔しようとする。
だがしかし、その瞬間に衝撃がフォルテを担ぐゲッツに襲いかかった。
視界が揺れ、衝撃に骨が軋み、脳裏に星がちらつく。ローファンタジアの崩壊時点であれば、ここで既に斃されていてもおかしくはない。
だがそれでもフォルテを庇いながら立っていたのは、ゲッツが戦いの中で成長していた故だろう。

>「お分かり頂けましたか?遅いですけど。」
>「ああ。二人を頼むぞ。」
283ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/05(月) 23:35:22.63 ID:zzk8Gj1p

「だァれが、お分かり頂けたってェ?
 この通り、ひょろひょろ吟遊詩人は別として、最強のイケメン戦士様は見ての通りピンピンだぜこの野郎ァ!」

犬歯をむき出しにしながら、高笑いを響かせるゲッツ。
その気配は、アイン・ソフ・オウルの圧力とは異なる性質の、黒い性質を持った圧。
他の竜人種に比べて血が濃い<Qッツは、並の竜人よりも遥かにタフで、遥かに再生能力に長ける。
血まみれになり、骨に罅が入ろうと笑い続けていられるのは、その肉体と戦士の誇りが無ければありえなかっただろう。

「やれやれ、相変わらず無茶をするね、ゲッツ君。
 まあいい、流石にかの導師アサキム殿と、その相棒のアヤカ殿二人を相手に攻勢に出るのは無謀というものだが。
 15分、そこまでならこれ以上彼らを先に進ませぬ事を確約しよう。……老兵だが、まだ剣も心も錆び付いてはおらん」

いつの間にか、アサキムとアヤカ、フォルテとゲッツの間に割りこむように存在していたボルツ。
最初からそこにいたかのような自然さは返って不自然と言うに他ならない現象だろう。
そしてまた、唐突に老勇者の両手には、ミスリル銀で出来た剣の柄が握られている。
一瞬魔力が弾け、風の魔力で形成された不可視の刃が二本生成。そして、手袋から銃口が飛び出し、火炎弾を数十発一息で発射。
目潰しとして相手に着弾する直前に炸裂させ、視界の全てを爆風で覆い隠す。

「ゲッツ君の師匠として、本当の全方位殲滅師の戦い方というものを披露しようか。
 剣を握るのは――半年……いや、済まなかった昨日振っていたばかりだったな。
 さっさと逃げたまえよ、そこのやんちゃ坊主達は」

ぐっと静かにボルツはサムズアップ。
ゲッツもまたサムズアップをして、鋼の翼を広げて天空に舞い上がる。
フォルテの服に引っかかったバスケットがひっくり返り、スラム街にパンの雨を降り注がせた。
飢えた子どもたちにも、この日の祭のお裾分けだ。

銀と金、赤の竜人は吟遊詩人を拉致するような姿で、大聖堂の方向へと飛翔していく。
楽しそうに哄笑を上げ、縦横無尽に空をかける姿は、なるほど、やんちゃ坊主と言う他なかっただろう。

「さーって、どうせあとちょっとの逃避行だ!
 どうせならここで一番高い所行ってやろうじゃねぇか、なぁ!?」

そう叫ぶと、フォルテを肩車して、高く高く飛ぶ。
目指すは、大聖堂の時計塔。風を切り飛翔するゲッツは、謎の魔力の壁のようなものも気にせず粉砕し、時計塔の窓から中へと入り込んでしまった。

「ヒャッハァーっ!到着ってかァ!?」

時計塔最上部、なにもない殺風景な部屋の中は騒然としていた。
――なんと、その部屋の中に、ドナルド達と戦闘した時に現れた神官と同じ格好をした人々が十数人居たのである。
彼らの格好は、白いローブに鏡の仮面、そして胸元には三神教団のロザリオ。
彼らはそれぞれの武器を構え、フォルテとゲッツに対して敵対心を見事に顕としているのだった。

「何者だ貴様!」
「くッ、もしや我々の計画を――!?」
「殺せ、扉を固めろ、さっさと潰せ!」
「これも我らが神の試練か……、だが、真なる神の教えは我らとともに有り!」

「「「「「「「「「「「「我ら、真なる神の教えと共に生きるものである!」」」」」」」」」」」」

武器を構え、今にも襲いかかりそうな神官達を前に、ゲッツはフォルテを下ろして、笑う。

「なーなー、これも伝説に刻んでおいてくれるかァ?
 っても、こんな雑魚連中なら対して面白くもねぇか! ギャヒャハハッハハハハハ!」

鋼の腕を武器に変えて、相手達を挑発するようなセリフを吐き出すこの竜人。
だが、警戒と敵意を一人に集中させることで、フォルテに対するマークを逸らす戦略でもあった。
――どうにも、このセレモニー。予想通りにきな臭いことになっているようだ。
284エスペラント ◆hfVPYZmGRI :2012/11/06(火) 01:32:33.23 ID:3jAN9z/1
とある喫茶店で待っていたのだが約束の時刻になっても
広域補助機関の構成員は出てくる様子も無く、連絡も無い
情報網ではこのエヴァンジェルでは不穏な動きがあるという事を聞いたので
その詳しい話を聞くべく来たのだか

「(まさかとは思うが…)」

最悪の可能性が頭を過ぎったその時、今まで同行していた大人しかった淫夢君が急に走り出して
他の客の出入りと共に空いた扉を抜け出て外に出てしまう
突然の出来事だったものの、すぐに反応して淫夢君を追いかけるべく暫く走り回っていると

>「このまま泣き寝入りは出来ないし、聖堂騎士団に通報しなくちゃ」

ようやく追いついた時には一人のパン売りの少女の足元で一部始終を見ていたようで哀れだと思ったのか
その愛らしい外見を利用してまるでマスコットキャラクターのように客寄せをしているように見えて、人が集まっているようであった。
中には淫夢君に餌をやるためにパンを上げているようでおいしそうに食べている

「ふう、仕方ない」

淫夢君に餌を上げようとしている連中も増えてきて完全に売り切れる前を見計らい
エスペラントが近づくと素早く肩の上まで上ってくる。

「すまない迷惑をかけたな、迷惑料だ受け取ってくれ」

とりあえず行動する上で金銭面での援助はほぼ無制限に近いため
残り一つを金貨一枚を渡してパンを買うと内心もう来ているだろうかと
思いつつも喫茶店に戻るように立ち去り、その後姿からひょっこりと淫夢君は少女の方を向いて
バイバイ、と挨拶するように手を振っていた
285アサキム ◆JryQG.Os1Y :2012/11/06(火) 10:51:25.27 ID:CB9eEOAl
「ゲッツすご。」
アヤカの本気のパンチを食らって生きてるとか。
「ったく、少しまずそうだな。」
>>「本当の全方位魔術師の戦いというのを見せてやろうか。」
「上等。、アヤカそこにry」
いない。またか
「ビャク、手段は問わないから大至急二人をを追ってくれ、さもないと」
「二人の命が俺の嫁に狩られる。」
とりあえず、通信機で伝える。
「さて、ケンカを売られた身だ、買うのが妥当だな。」
仙気を解放し、ラクネルを持つ。
286リンセル ◆Ac3b/UD/sw :2012/11/07(水) 00:37:10.74 ID:esKWxHpX
リンセルが大通りを歩いてパン屋の前まで辿り着くと、何処からか狐とも猫ともつかない生き物が足元に寄って来た。

「あなた、狐? 猫? 栗鼠猿? 見た事ない生き物ねー?」

しゃがみ込んで訪ねても、言葉を持たぬ獣から返事が返って来る筈もない。
謎の小動物は小首を傾げる仕草をすると、くるくると飛び回ったり、跳ね回ったりを始めた。
道行く通行人も思わず足を止め、この珍奇な獣が踊る様を見入る。
無論、リンセルは人が集まって来た絶好の機会を逃さない。
ロルサンジュの中に入り、幾つかのパンを籠に詰めると商売に勤しむ。

「古の詩人はかく語りき、涙と共にパンを食べた者にしか人生の味は分からない。
 そう、パンを食べずに人生は語れません! パンの美味しさが無ければ人生の半分くらいは損してます!
 ロルサンジュのパンも涙が出るほど美味しいですよ〜。
 お昼にパンはいかが〜。パンはいかがですか〜」

しばらくすると獣の飼い主らしき涼やかな感じの青年が現れ、跳ね踊る獣がスルスルと彼の肩に登ってゆく。

>「すまない迷惑をかけたな、迷惑料だ受け取ってくれ」

パンを求めた彼にトリスブレッドを手渡すと、黄金に輝きく貨幣が返って来る。

「あ、これエルデ金貨?」

レートの変動はあれど、エルデ金貨一枚は良質の銀貨にして二十枚分の価値。
混ぜ物の多い悪貨、ペラル銀貨一枚ですらパン一つと代えるにしては多過ぎる。
リンセルは喉元まで出かかった、多いですよという言葉をグッと堪え「ありがとうございましたっ」と笑顔を返す。
これで、さっき失った籠とパンの代金を差し引いても余りあるくらいの実入りを得た。

「でも、それはそれ、これはこれ」

リンセルは己の受けた被害を訴えるべく、元勇者と導士が衝突する通りを避け、東区の小聖堂へ向かった。
小聖堂とは街の東西南北にある施設で、大聖堂を使うまでもない小規模な礼拝を行い、その管理は常駐する司祭が行う。
内装は宗教的な厳かさを感じさせる装飾なのだが、どうにもこぢんまりとした印象は否めない。
今日、14才女子の不平不満を聞く相手は、皺だらけの顔に山羊のような白い髭を生やす老人。
長年三神教団で司祭を務め上げ、齢も百に届こうかというフェオン=ランギイル司祭だった。

「ですから! ならず者に狼藉を働かれたので、聖堂騎士団の出動をお願いしたいんですっ!」

「ほ、いやいや、その銀の燭台は彼に上げたものでしてな……」

このフェオン司祭、歳月を重ね過ぎた影響が体の各所に現れているせいで、リンセルとの話もなかなか噛み合わない。
それどころか、うつらうつらしながら過去の彼方の人物と話し始め、小聖堂には無為の時が過ぎて行く……。
287フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/10(土) 00:26:44.51 ID:ayoXoGtF
>「っはッ……! ヒヒャハハハ――! いいぜ、そういう熱い言葉は大好きだァ! 上等だぜェ! フォルテ!
 テメェの命はオレが守る! テメェと一緒にオレは拳も! 剣もッ! 炎もォ! 鋼もッ! 振るおうじゃねェか!
 だからお前は、オレの姿を力を歴史に刻め! オレを謳うテメェの名前と一緒によ、面白おかしくこの世界に爪痕を残していこうじゃねェか!」

「お前……分かってて言わせただろ」

なんだか一本取られた気がする。だけどとても幸せな気分だ。
いつの頃からだっただろうか、虚飾と戯言の中に本心を紛れ込ませるようになったのは。
本心を曝け出して傷付くのは怖い、だけど分かってほしいという矛盾。
でも、はっきりとか無意識的にかは分からないけど、こいつはきっと分かってくれていたんだ。

「だったら……お前の誇りはオレが守る! この歌で何度だって立ち上がらせてやる!
全部全部聞いてくれよ! 勇気の歌も希望の歌も歓喜の歌も絆の歌も……!
だからそんじょそこらの伝説と同じなんて駄目だぜぇ! 由緒正しき英雄譚の様式美ブチ破ってやろうじゃないか!!」

ゲッツの手を取った瞬間に担ぎ上げられる。うん、やっぱそうなるよな!
これぞ文字通りのお荷物。ナマモノにつき取扱い注意。
アヤカ導師のマジ攻撃を受けるも、ゲッツはオレを見事に庇い切った。
どこからとこなく現れたボルツ店長が立ちはだかる。
288フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/10(土) 00:27:54.42 ID:ayoXoGtF
>「さーって、どうせあとちょっとの逃避行だ!
 どうせならここで一番高い所行ってやろうじゃねぇか、なぁ!?」

「あははは! 馬鹿と煙は高い所が好きってかー!?」

なんで服にパンのかごがくっついてるんだろう。オレの服は鳥の巣か!
魔法障壁を突き破った! 時計塔に突入した! 怪しい集団と目が合った!

「あ、お邪魔しました。帰ろうかゲッツ」

>「「「「「「「「「「「「我ら、真なる神の教えと共に生きるものである!」」」」」」」」」」」」

しかし まわりこまれた! 戦闘が始まった!

「……だよなー!」

>「なーなー、これも伝説に刻んでおいてくれるかァ?
 っても、こんな雑魚連中なら対して面白くもねぇか! ギャヒャハハッハハハハハ!」

「ならいっそギャグパートにすればいいんじゃね!? 最高に楽しい歌でなあ!
万歳!聖なる女王様《Hail Holy Queen》!」

邪教の信徒にお見舞いするは讃美歌らしからぬノリノリな讃美歌。
ステップを踏みながらタンバリンを打ち鳴らす。
前半はカットでいきなり中盤の盛り上がるところからだ!

「たまらんかすり傷海老よ おお毬屋 泡擦り笊を塩ビだ おお毬屋
ジャイアントコーンinジャガビー(チェルシー) Singing風呂敷ジャガビー
ヘルメット大好きサンターアンダギー さーね さーね さーねレジーナ
あーれーるーやー!」

「むぅ…我々の理解の範疇を超えている! 新種の黒魔術か……!?」
「気にするな、どうせ出鱈目だ!」

「松子と待つレンタルランタン サッと散歩中ストップ犬っす
いいこれニーチェまたニーチェ サッと散歩中ストップ犬っす
あーれーるーやー!」

「はっ、何故私は手拍子をしているのだ……!?」
「釣られるなたわけ!!」
「そういう先輩は不思議な踊りを踊ってますよ!」

白ローブ達はいい感じにコントをし始めた! 蹴散らすには十分すぎる隙だ。
せっかく謎めいた邪教集団っぽくキメた服装が却ってシュールさを増幅し、ご愁傷様の限りである。
289ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/10(土) 23:51:58.61 ID:3YOV23Ni
ゲッツとフォルテの前には雲霞と立ち塞がる白装束。
皆ある程度以上の練度は有るようで、槍の穂先は振るえること無く突き付けられている。
が、しかし。超人共の戦いを見慣れてしまったゲッツもフォルテも、この現状に危機感を抱く事はない。

現に、今この状況ですら――

>「ならいっそギャグパートにすればいいんじゃね!? 最高に楽しい歌でなあ!
>万歳!聖なる女王様《Hail Holy Queen》!」

「ヒャハハハ! そりゃァいいぜェ!
 だったらオレはハートでヒートなビートを刻んでやるかァ!?
 まあ、ぶっ叩くのはドラムじゃなくて肉だけどなぁ!」

ゲラゲラゲラと下品な笑い声を響かせながら、ゲッツは物騒な事をさも楽しそうに語ってみせる。
勢い良く左腕を回し、息を深く吸って悠然と準備運動。

>「たまらんかすり傷海老よ おお毬屋 泡擦り笊を塩ビだ おお毬屋
>ジャイアントコーンinジャガビー(チェルシー) Singing風呂敷ジャガビー
>ヘルメット大好きサンターアンダギー さーね さーね さーねレジーナ
>あーれーるーやー!」

>「はっ、何故私は手拍子をしているのだ……!?」
>「釣られるなたわけ!!」
>「そういう先輩は不思議な踊りを踊ってますよ!」

目の前で踊る白ローブ達を見据え、拳を鳴らせば次第に白ローブ達にも恐怖の輪が広がっていく。
逃げ出そうにも踊らされ、目の前には今にも全滅させに掛かるような巨大な竜人。
正直言えば、ご愁傷さまだ。
支援職と前衛職の相性はやはり良いのである、現に今の状況がそうだ。

「――さーって、空中散歩と行こうかテメェらァ!」

床の石が砕け、ゲッツの姿が消える。
体こそ大きいが、かと言って速度が遅いわけではない。むしろ狩猟者としての肉体は高い機動性を持っている。
振りかぶる腕は、平手。

すっぱぁん!ととてもいい音を響かせて、窓ガラスを突き破って白ローブが吹き飛ばされた。
直後、人数分のスパンキング音とガラスが砕ける音と人が吹き飛ぶ音。
要するに、全力ケツドラムでいい音響かせながら白ローブ共を全員纏めて空の旅にご招待。
後は落下して蘇生を待つばかり、かと思ったのだが――。

>「ビャク、手段は問わないから大至急二人をを追ってくれ、さもないと」
>「二人の命が俺の嫁に狩られる。」

窓から吹き飛ばした白ローブがまた窓から戻って壁に叩きつけられてど根性ガエルである。
ついでにどういう事情か窓から入ってきたのはアサキムの嫁、アヤカ。
まるで使徒のように目を赤く光らせて口から白い煙を吐き出している。正直言えば白ローブなど目ではないくらいに恐ろしい光景がそこにあった。

「――――やっべ、やっべって、マジやべーって、何がヤベーって全部やべーって、どうするよヤベェよ」

言語中枢がただでさえ欠陥だらけだというのに更に言葉が崩壊していた。
逃げようにも窓の側にアヤカが居るため窓から逃げることは出来ない。
流石にそろそろ年貢の納めどきかもしれない。尚、新教皇のセレモニーは夜。後数時間だ。
290ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/10(土) 23:52:59.30 ID:3YOV23Ni
そして、所は変わってアサキム側。
ボルツとアサキムの戦いは凄まじい惨状と化していた。
流石に超人同士とは言えどレベル差は覆し難くボルツが劣勢。
スーツに乱れが生じ、ところどころから血が滲んでいた。

「厄介、だねぇ。
 なんでもあり、とはいやはや、実力が有れば何に特化しようとも意味が無いと言うことを如実に知らされるよ」

毒の魔力で出来た刀身を構えてボルツは苦笑を零す。
時計塔にゲッツ達が入ったのには気がついている。

「……さて、じゃれあいは終わりにしようか。
 エスペラント殿もアサキム殿もご婦人方も、後で私の店に来てくれるかね?
 ゲッツ君とフォルテ君は私が責任を以て捕獲してくると確約する。どうだい?」

若さ故の過ちは多いにするべきだというのがボルツの持論だ。
だからこそ、ゲッツとフォルテの考えの浅い、暴走行為の後押しをしていたのだが、この国にはとある事情がある。
少なくとも、真面目にエスペラントとアサキムという二人の超人を交えて何かの話し合いをしなければならない程度の。
ボルツの真面目な表情からは冗談の要素は無く、何らかの危機にこの都市もまた陥っている事が分かるだろうか。
291エスペラント ◆hfVPYZmGRI :2012/11/11(日) 03:20:10.65 ID:yIZQrHZZ
そして先ほどの喫茶店に戻りながら、肩で大人しくしている淫夢君に声を掛ける

「どうして急に飛び出したりしたんだい?」

頭を優しく撫でながら問いかけるがやはり返事は来ない
まぁ仕方あるまいと思い、その行動に関しては追求しても答えは返ってこないのは明白なので
もしかしたらもう今頃には広域補助機関の構成員も来ているかも知れないと思いながら歩みを進めている矢先
持ち歩いているPDA型COMPに通信が来ている事に気づき覗いて見る

>「ビャク、手段は問わないから大至急二人をを追ってくれ、さもないと」
>「二人の命が俺の嫁に狩られる。」

エスペラント自身は通信用アドレス交換はした覚えは無いのだが
それにしても奴は以前言った事を忘れているのか

「仕事が入っているから構っている暇は無いと宴の席に言った筈なのだが…
正直に言えばこんな物は無視なのだがな」

修行に関する事は付き合えないと告げた以上は無視を決め込まれても攻められる謂れはまったく無い
酷な事を言えばこの程度で殺されるようじゃフォルテとゲッツはそれまでである
運が無かったと嘆くべきか、あるいはその程度を乗り越えられなければ此処で終わったほうが幸せなのかもしれない
白状と言われようがこちらのやるべき事を無視してでも協力せねばならないことではないという判断の元、
PDA型COMPの通信を切り、仕舞おうとするが

>「……さて、じゃれあいは終わりにしようか。
 エスペラント殿もアサキム殿もご婦人方も、後で私の店に来てくれるかね?
 ゲッツ君とフォルテ君は私が責任を以て捕獲してくると確約する。どうだい?」

切ろうとした時に見知らぬ男と思われる者からのそんな声が聞こえた
なぜ自身の事を知っているかは知らないが、その事には少しの警戒心に興味と関心がある
淫夢君もなにやらもぞもぞと身体を動かしている、まるでそんな事言わないで行こうよと言いたいように
ジェスチャーで示しているようにも見えたため、しばし如何するべきか思考すると

「……いいだろう、少ししたらそちらに行く
場所を教えてもらおうか?」

男に場所を教えてもらうと通信を切り先ほど回った区域に向かう
情報収集に回っていた静葉を呼び出すと
指定された場所にある宿屋をすぐに探し当てる
扉を開けて宿屋に入るのであった。
292リーフ@NPC ◆jIx.3BH8KE :2012/11/11(日) 06:12:02.69 ID:yQZYO45X
私はヤクザのような男に連行され、大聖堂の奥まった場所にある小部屋に連れ込まれました。
椅子にぐるぐる巻きに拘束されます。

「あのぅ……教団関係者なんですか?」

「大聖堂の中にヤクザの事務所があっても何ら不思議はないだろう。
この度新しく借りた事務所だ!! 文句あるか」

「不思議ありまくりですよそれ!
ところであなた……ガチなホモ略してガチホモですね!?
だったら私を連れてきても意味ないじゃないですか!」

「いい事に気付いたな……いかにも。女には露ほども興味は無い!
お前は奴らをおびき寄せるための囮だ!」

「庇い立てでも何でもなくそれはガチでやめた方がいいですよ!
一瞬でミンチにされてお終いですから!って何撮ってるんですか!?」

「式典中に大スクリーンにこの映像を流す!!
そうすれば奴らが慌てて助けに来ると言う寸法だ!
さあ泣きながら助けてと叫べ!」

「すいませーん、捕まっちゃいました〜。
皆さんの実力なら一瞬で終わると思うので空いた時間に助けに来ていただけると大変助かります」

カメラ目線で何とも間の抜けた救援要請を出すのでした。
“これは罠よ! 来たらいけない!”なんて言った方が盛り上がるのでしょうがただのホモヤクザより味方側の方が実力が明らかに上。
来たらいけない理由もありません。
293リンセル ◆Ac3b/UD/sw :2012/11/11(日) 09:03:14.67 ID:FlGb5i9Y
「それじゃ騎士さん、恐ろしい凶漢たちの捜索を宜しくお願いしますね。
 お金を払わずにパンを盗むなんて……決して許されざる大罪ですから!」

老司祭との長い交渉の末、パン屋の少女は聖堂騎士団から暇そうな人員を一人確保する事に成功した。
海の神の末裔とも呼ばれるスキュラ族で、名前はアリアード・レーシャル。
長くて艶やかな金色の髪に柔らかそうな薔薇の頬、常に夢見るような表情を浮かべる女である。

 名前:アリアード・レーシャル
 種族:スキュラ
 性別:女
 年齢:18
 技能:神聖魔術(ツルア派・水系統)、水棲、妖獣部位の自律行動
 外見:上半身は人間の乙女、下半身は犬の六頭を備えた獣
 装備:白い法衣、聖別された短剣、ロザリオ
 操作許可指定:誰でも可(おっとりしてるが、食欲が高じると下半身の獣が無意識に周囲の生物を襲って食べる)
 設定許可指定:誰でも可(聖堂騎士団所属)

アリアードは神官らしく銀刺繍の白衣で身を覆っているのだが、腰の部分から下は六頭もの犬の頭を生やす赤黒い獣。
スキュラ族は水陸に適応した妖獣種であり、本来はエルフのような亜人種に比べれば他種族とも友好的ではない。
しかし、この聖なる都ではこのような妖獣でも、神への信仰と法を尊重する心があれば居住を許されるのだ。

「そろそろ、午後の仕事が始まっちゃう……。
 あの、二つか三つの店を回る程度で終わると思うので、騎士さんも付いて来てくれませんか?」

「はぁあい、いいですよぉ。
 お仕事が終わるまではぁ、後ろで巡回警備してますねぇ」

リンセルが働くパン屋は付近の飲食店、特に自前の窯を持っていない店などにパンを卸す。
得意先を定期的に周り、在庫の減り具合に応じてパンの配達を行うのだ。
主にサンドイッチ用のパンやロールパンが主力商品で、ボルツの経営するウ・ボイもお得意様の一つ。
しばらくすると、背後に威圧感のある妖獣を引き連れたリンセルが酒場の戸を潜り、店内へと入って来る。
真っ直ぐにカウンターへ近づいたリンセルは、グラスを磨いているボルツに軽く会釈。

「こんにちは、スティルヴァイさん。パンの注文はありませんか?」

「ロルサンジュのお嬢さん、いつも閑古鳥を鳴かせるウ・ボイへの御足労、有り難く思う。
 とは言え、祝祭の期間ともなれば多少なりだが客は増える。
 特別食べそうな客も何人か入りそうなので、もう少しパンを頼めるかな?
 プルマンブレッド、クロワッサンを中心にライ麦や五穀のブレッドも多めに欲しい」

「分かりました。それでは後ほどお届けいたしますね」

パンの注文を受ければウ・ボイとの商談も終わりなのだが、リンセルは踵を返す前に店内の様子をそっと眺めてみる。
ボルツの言う通り、確かに普段と比べれば客足も多いようだ。
294アサキム ◆JryQG.Os1Y :2012/11/11(日) 16:50:47.19 ID:p0MJeRtS
「ああ、仮にもテイルの子なんだから。復活して、スーパーノヴァ食らっても知らんよ。」
【ビャクの、モバイルの連絡を知ってるのは、アサキムだから。】
>>「ゲッツとフォルテ君は私が責任を持って、捕獲してくる。」
「その言葉を聞いて安心しました。」
アサキムもなかなかダメージを受けていた。
「さて、アヤカは。」
千里眼で、探すと。
「あー、これやばいな。」
完全に、アヤカが暴走モードに入っている。
「めんどくさいな。」
アヤカの元に魔法陣を形成し、そのまま、アサキムの元に転送させる。
295アサキム ◆JryQG.Os1Y :2012/11/11(日) 16:55:29.21 ID:p0MJeRtS
送られてきた、アヤカは完全にノックアウトされていた。
「はぁ、転送魔法の、一番古いのだからな。負担も大きい。」
でも、アヤカは仙人、どれだけもつかわからない。
「ううん」
(マジカよ。)
起きてしまった。
「あれ、私。」
「捕獲が目的だからな。ミンチにしようとしているところを止めさせてもらった。」
アヤカは、名残惜しそうな顔をしながらしょうがなさそうにアサキムについてきた。
296フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/11(日) 17:01:21.59 ID:9ZxXSd5e
歌とケツドラムで盛り上がっていたのも束の間。
使徒襲来、そんな素敵ワードがオレの脳裏によぎった!

>「――――やっべ、やっべって、マジやべーって、何がヤベーって全部やべーって、どうするよヤベェよ」

「よし! オレに任せろ!」

光速の速さでその場に正座し、額を床につける。
遥か東方の島国に伝わる究極奥義、DO☆GE☆ZAである!

「申し訳ありませんでしたー!」

「いや、許さんし」

「全然駄目じゃねェか! どーすんだよ!」

「ごめん、万策尽きた!」

顔を上げると、目の前にボルツ店長の後姿があった。
そしてアヤカ導師の鉄拳を受け止める――かと思いきや、アヤカ導師は忽然と姿を消した。
店長ったらバ○ルーラでも使った!?

「て、てんちょおおおおお! 助かった!」

「鬼ごっこの時間はお終いだ、帰ろうか」

あっという間に魔法のロープのようなもので簀巻きにされて連行される。

「あれ? あれー?」

なんだよ店長、あっち側に取り込まれちゃったのかよ!
297ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/11(日) 21:51:09.25 ID:3c2Su06W
なんだかんだ有って、アサキムはアヤカを回収し、ゲッツとフォルテは神出鬼没の宿屋店主ボルツの手で捕縛されてしまう。
結局、簀巻きにされてフォルテとゲッツは店の端に転がされることとなった。
尚、ゲッツには腹パンとローキックのおまけ付きだが挨拶である。

>「分かりました。それでは後ほどお届けいたしますね」

「ああ、そうだ。ロルサンジュのお嬢さん。
 あそこに君のパンを奪った犯人が居るのだが、済まないが私の古い馴染みとその友人でね。
 話を聞く所によると追われている途中で服のフリルに引っ掛けてしまったようだ。
 ……というわけで、今回の支払いには少し色を付けさせてもらいたいのだが、いいかね?」

リンセルに対して、店の端でボロ雑巾にされている二人を指さして、犯人だと示した。
その上で、一応制裁は加えた事を口にしつつ、支払いに色をつけることでこの事件を示談で済ませようとしているようだ。
余り褒められた行いではないが、大人は汚い。支払おうとチラつかせる硬貨は、籠の分を合わせても有り余る程度には高い値段であった。

そして、エスペラント、静葉、アサキム、アヤカが店にたどり着くと、テーブル席を勧める。
ゲッツとフォルテも椅子にしばりつけて逃げないようにしている辺り、ボルツも鬼畜に見える。
が、その内心としてはここで対策を取っているスタンスを見せることで他の者からの風当たりを弱くする狙いがあった。
ぱちりと意味有り気にフォルテとゲッツに目配せをしてからウィンクを忘れない。

ことり、と皆の席に紅茶を置いてから菓子をサーブする。
全体に茶と菓子が行き渡ったのを確認すると、先程の戦闘など感じさせない元の格好に戻ったボルツもまた席につく。

「……さて、と。アサキム殿は知っておられるようだが、ゲッツ君の元上司のボルツ・ステルヴァイと言う者だ、よろしく頼むよ?」

ゲッツの上司という事は、元傭兵という事だが、粗暴な様子を見せることはない。
友好的な笑顔で、先程戦闘していたアサキム達や、話しかけたばかりのエスペラントと握手をかわしていく。
その手は固く鍛えられたもので、なるほど歴戦の戦士であると思わせる存在感の有る手だった。

「これでも、私は一応元勇者な訳でね、そこそこ世界情勢にもアンテナを張っているのだが。
 ローファンタジア崩壊以降、各地で黒い宝石が原因と見られる事件が多発していてね。
 この都市もまた、例外ではない。黒い宝石から魔物が生まれたり、結界が侵食されたりダンジョンが作られたり、結構色々なことが起こっているんだ」

情報を集めていたであろうエスペラント等は知っていることだろう。
この都市にも、幾つかの災厄の種は落ち、それらが事件を引き起こしていたのだ。
だがしかし、都市内に混乱が生じている様子が無い。それには間違いなく理由がある。

「それらの事件を解決し、黒い宝石を回収しているのが、次期教皇の派閥、真裏派[しんりは]なんだ。
 民衆の不安を払拭してくれたのはいいのだが、色々と背後関係が不透明でね。
 宝石も教皇の私兵が回収して、行き場が分からなくなってしまっているのだよ。
 ……色々ときな臭い気配がしてね、恐らく彼らの気配などから察するに、今日の夜のセレモニーで、何かが起こると思う。
 君たちには、それらについて強く警戒しておいて欲しいと思ってこうして話をさせてもらった。
 故郷に帰れない私は、ここに骨を埋めるつもりでね。どうか、君たちにこの都市を守ってもらいたい、そう思うんだ」

口髭を整え、片目を眇めて真っ直ぐ皆を見据えるボルツ。
ゲッツはといえば、かつて苦楽を共にした仲間の言葉に、沈黙を保っている。
そして、僅かな間を置いて、ゲッツは超人二人とその相方二人に向き直る。

「――あーっと、なんだ。逃げたのはマジで済まんかった。
 リーフが悪ノリで薬盛ったのも、一応オレの方から後で焼き入れとくから許してやってほしい。
 んで持って、更に迷惑掛けることになるんだが――、ボルツのおっさんに頼まれたんでな。
 オレはとりあえずこの街のきな臭い所吹っ飛ばすまではここにいようと思う。
 あんたらが残るか残らんかはあんたらの自由なんだが――、お前らだって黒い宝石回収するのが目的だろ?
 宿屋ならボルツに頼めば只で泊まらせてくれると思うし、今日の夜まで修行とかお預けにしてくれれば良いんだが……どうだ?」

珍しく、このゲッツが頭を下げた。
師であるボルツの頼みに、仁義を重んじるゲッツは断る理由を持ち合わせていない。
だからこそ、今後どんな厳しい修行が来ようともやる事を確約しつつ、助勢を頼み込むことにしたのである。
298アサキム ◆JryQG.Os1Y :2012/11/11(日) 23:21:10.97 ID:p0MJeRtS
「ああ、宜しく。」
改めて挨拶をする。
「ところで、アサキム。」
「あっ?」
「何で、ボルツさんのこと知ってんの?」
「ああ、それは。偶々、」
「ふうん」
【言えない、勇者名簿に偶々載ってたからとか言えない】
>>「それらの事件を解決してるのが、次期法皇の派閥の真理派だ」
「真理派ねぇ。」
聞いたこともないとか思い資料持ってくればよかった。そう思った。
「まっ、こっちこそ悪かったな。別に、逃げたのは怒ってないんだ。だけど」
「薬盛るのってねぇ。やりすぎだとは思わないかい?」
アサキムの顔にステンドガラスのような模様がでる。
【この模様はめったにでず、かなりキレている証。】
「アサキム?顔ステンドガラス出てる」
「あっ。」
あわてて冷静になり。ステンドガラス模様を引っ込める。
299リンセル ◆Ac3b/UD/sw :2012/11/12(月) 21:57:42.47 ID:0XHS8YZQ
>「ああ、そうだ。ロルサンジュのお嬢さん。
> あそこに君のパンを奪った犯人が居るのだが、済まないが私の古い馴染みとその友人でね。
> 話を聞く所によると追われている途中で服のフリルに引っ掛けてしまったようだ。
> ……というわけで、今回の支払いには少し色を付けさせてもらいたいのだが、いいかね?」

「はい、もちろんです。
 こちらこそ、そのような経緯があったとは露知らず。
 うっかり、聖堂騎士団にまで話を持っていってしまいました」

ウ・ボイのマスターから示談を持ちかけられたリンセルは、あっさりと提案を呑んだ。
彼がお得意様である事に加えて、いつもの数倍の支払いを提示されたからである。
この街で、ボルツがある程度知られている事も幸いした。
少なくとも、この街で暮らすなら無意味に敵対して得となる人物では無い。

「えぇっとぉ、私の出番、これで終わり?」

「はい、思ったより早く解決いたしましたので。
 街中を色々探すかな、と思いましたが早期解決でしたね」

「そぉ……犯人探ししてる振りして、いろいろ食べたかったなぁ」

リンセルの背後に控えていたスキュラが不満そうな声を上げた。
上半身の少女部分は、青色の瞳で縛られたゲッツとフォルテを見つめ。
下半身の獣たちは、全てが涎を垂らしながらエスペラントの連れている小動物を凝視している。

「それでは、お忙しいようですので私はこれで失礼しますね。
 トリス・エヴァンジェル」

パン屋の少女は挨拶の言葉を述べると、聖堂騎士を引き連れてウ・ボイを去った。
別れ際の言葉は日常的な挨拶で、貴方にも神の恵みがありますように……程度の意味である。
300エスペラント ◆hfVPYZmGRI :2012/11/13(火) 03:10:32.53 ID:T/5tWS5/
店に入り、周囲を素早く眺めるとなんと先ほどのパン売りの少女がいる事に気づく
簀巻きにされて転がっている二人は一瞥しただけで、すぐに目の前の男に視線を移す
やはり二人を捕まえられるほどの実力はあると見て間違いないだろうと内心相応の実力者である事に
気づきながら

>「……さて、と。アサキム殿は知っておられるようだが、ゲッツ君の元上司のボルツ・ステルヴァイと言う者だ、よろしく頼むよ?」

元上司と名乗る笑顔のボルツに対して此方も既に新しい仮面を被っているため表情は見えないものの
こちらも少しは表情を和らげて握手をするために相手の差し出した手と握手する時点で
思っていたことが確信に変わるがそれでも口にはしない。

「何処で私を知ったかは今更は聞かん、それで用件を聞こうじゃないか」

全員集まったところで手早く自分と静葉を呼んだ事に関する本題を切り込む。

>「これでも、私は一応元勇者な訳でね、そこそこ世界情勢にもアンテナを張っているのだが。
 ローファンタジア崩壊以降、各地で黒い宝石が原因と見られる事件が多発していてね。
 この都市もまた、例外ではない。黒い宝石から魔物が生まれたり、結界が侵食されたりダンジョンが作られたり、結構色々なことが起こっているんだ」

ボルツという男はこの世界に置けるかつての世界における自浄存在―つまりは世界の危機を乗り越えようとするこの世界に置ける防衛機構
勇者であったようだ。そしてどうやらいろいろなコネやら伝手はあるらしく我々の知りうる情報を彼も知っているという事だ。
この時点でもやはりこの男は只者では無い、なんせ普通では緘口令に近い状態で出来る限りその性質から情報が広まる事が大変な事態を引き起こすからだ
それを知っているという時点で特別な情報源か悪用している者以外はほぼ知り得ないのだから。

>「それらの事件を解決し、黒い宝石を回収しているのが、次期教皇の派閥、真裏派[しんりは]なんだ。
 民衆の不安を払拭してくれたのはいいのだが、色々と背後関係が不透明でね。
 宝石も教皇の私兵が回収して、行き場が分からなくなってしまっているのだよ。
 ……色々ときな臭い気配がしてね、恐らく彼らの気配などから察するに、今日の夜のセレモニーで、何かが起こると思う。
 君たちには、それらについて強く警戒しておいて欲しいと思ってこうして話をさせてもらった。
 故郷に帰れない私は、ここに骨を埋めるつもりでね。どうか、君たちにこの都市を守ってもらいたい、そう思うんだ」

そして此処からが自分達を呼んだ主な理由である、教皇の派閥、真裏派――
この都市にてやはりきな臭い気配と動きをしているという事、この男は此処を自身の生涯を全うするつもりであり
守って欲しいという事を頼んでくる。
正直に言えばそれはと管轄外として切り捨てる事も可能である範囲の願いではあるものの
しかし、多世界に飛び散る脅威に繋がる情報がある以上は無視もできない
それ以前に個人の感情として、もしも最悪の事が起これば此処にいるパン売りの少女の命が失われることになる
そんな事を断じて許すわけにはいかない

「私は無神論者で正直に言えば宗教は嫌いな方でね、翻弄される弱者がいる以上は私には場合によっては打倒すべき存在だ
宗教派閥がどうなろうが知った事では無いし、興味もない…がやはり一部のそういった連中のせいで被害を被る
何の罪も無い者たちを見捨てる事は性分的に出来ないんでね、この都市が絶対に無事これからも平穏になるという保障はできん
だがやれる事は協力すると約束しよう」

彼は女神転生的に言えば属性はライト・ニュートラルに近い立ち位置に近い
だが秩序を人に必要以上には押し付ける考えは良しとしないしむしろそれは誰よりも嫌っている存在だ
故に比較的に異教に関しては寛容ならば文句は言いはしないし、力を持って改宗を強いる連中には何処までも容赦が無い
これが聖堂関係者からの依頼ならば、場合によって一蹴するものの
あくまでも関係が無く、弱者が必然的に関わるのならば断る訳もなく
自身の主の命には従う静葉も肯定の意思を示す。
301エスペラント ◆hfVPYZmGRI :2012/11/13(火) 03:31:41.65 ID:T/5tWS5/
>「――あーっと、なんだ。逃げたのはマジで済まんかった。
 リーフが悪ノリで薬盛ったのも、一応オレの方から後で焼き入れとくから許してやってほしい。
 んで持って、更に迷惑掛けることになるんだが――、ボルツのおっさんに頼まれたんでな。
 オレはとりあえずこの街のきな臭い所吹っ飛ばすまではここにいようと思う。
 あんたらが残るか残らんかはあんたらの自由なんだが――、お前らだって黒い宝石回収するのが目的だろ?
 宿屋ならボルツに頼めば只で泊まらせてくれると思うし、今日の夜まで修行とかお預けにしてくれれば良いんだが……どうだ?」

エスペラントと静葉は普通の人間じゃないため幾ら効かないとは言え
それはやはり冗談や悪乗りで許せる許容範囲を超えてる
親族や友人などを人質に取られてそんな事をしなければならないという事は別としてだ

「私達だから効果はそんなにも現れなかったが恐らくは分かっていたからこそとんでもない量を入れたんだろう
それが普通の人間ならば大変な事になっていただろう、其処まで行けば犯罪にだ
無罪放免で許されるのはどこぞホモAVだけだ、官憲に突き出されても文句は言えんぞ」

「……私も主様と同意見ですね、やっていい事と悪いことがあります
私達の住んでいた世界では犯罪ですよこれは」

やはりふざけるという限度を超えているため、簡単に許すということは
彼らに対して甘さを捨てるという言葉を撤回するも同然の言葉である
そうすればまた同じ繰り返しになることであり、此処は厳しい態度で望まねばならない

「逃げたことに関しては何も言わんが、お前達は干渉する気はないと言った私たちにも盛ったな
多少は大目に見てたが、お前達がそういうつもりならば私は今後擁護も庇いもせん
アサキム、お前の考えを尊重する好きにしろ」

とりあえずアサキムの言葉を尊重する旨を告げる。
最早この二人には対しては今後とも余程の無茶だろうが
出来ると判断した事は彼らの意見は尊重しない厳しい姿勢を見せることになるだろう
甘やかす事は彼らのためにならないと完全にそう思うようになったようだ
情け容赦の無い方が彼らを成長させるのだから
302フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/13(火) 23:37:06.84 ID:8XpKahA2
オレ達は簀巻きにされて店の隅に転がされた。
パン屋がスキュラ引き連れてやってきて店長が大人の方法で追い返したりした。
店長マジサンキュー。
店長には感謝だが、折角逃げ出したのになぜにすぐに捕まって簀巻きになって転がらにゃならんのか、とも思う訳である。
妖精は気分屋なのだ。
店長が超人達に何か依頼しているけど知らんがな。どーせオレなんていてもいなくても変わらんしやる気無くした。
と、不貞腐れていたのだが……

>「――あーっと、なんだ。逃げたのはマジで済まんかった。
 (中略)
 宿屋ならボルツに頼めば只で泊まらせてくれると思うし、今日の夜まで修行とかお預けにしてくれれば良いんだが……どうだ?」

ゲッツが頭を下げて頼み込んでいた。でも、ゲッツが謝る筋合いはないと思う。
あんなノリで意味不明の修行場に連れて行かれかければ逃走するのも当然だし、ヤクを盛ったのはリーフが勝手にやった事だ。
頭を下げてまでも、お世話になったボルツさんの力になりたいのだろう。
というか会ったばかりのオレを体を張って庇ってくれるような奴だ。
こいつにとって恩がある人が困っているのに放っておくなんて有り得ないのだ。
303フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/13(火) 23:38:42.38 ID:8XpKahA2
>「私達だから効果はそんなにも現れなかったが恐らくは分かっていたからこそとんでもない量を入れたんだろう
それが普通の人間ならば大変な事になっていただろう、其処まで行けば犯罪にだ
無罪放免で許されるのはどこぞホモAVだけだ、官憲に突き出されても文句は言えんぞ」
>「……私も主様と同意見ですね、やっていい事と悪いことがあります
私達の住んでいた世界では犯罪ですよこれは」

見事なキレっぷりだな、これ。
それにしても真面目な台詞にさらりとホモAVという単語を混ぜるなこの超人は!

>「まっ、こっちこそ悪かったな。別に、逃げたのは怒ってないんだ。だけど」
>「薬盛るのってねぇ。やりすぎだとは思わないかい?」
>「アサキム?顔ステンドガラス出てる」

うっわー、完璧プッツンいってるじゃん。

「ふふっ」

不謹慎にも、思わず笑いがこぼれた。

「何がおかしい?」

「だってさ、あなたたちってオレには想像もつかないような大局を見据えてこの地上に派遣された存在でしょ?
地上の人間とは全然違う感覚を持ってると思ってたのに……人間より人間らしい感情持ってんだね。
ごめんね、別に指示を出したわけではしてないんだけどリーフが勝手に気を利かせてというか何と言うか……」

エスペラントさんは結論的にはアサキム導師に合わせると言うので、真顔になってアサキム導師に向き直る。

「アサキム導師、逃げようと唆したのはオレなんだ。ゲッツは悪くないよ。
でも元はといえばあなたが何故オレ達なのかの理由も言わずに訳の分からない場所に連れて行こうとしたからなんだよ?
仕方の無い事ではあるけどね、物事には”語るべき時”というのがあるからさ――
だけどね。お願い!こいつの頼み聞いてやってほしいな。
こいつはオレとは違って命より大事にしてる事のためにしか頭を下げないんだから。
これが終わったら修行でも何でもやってもいいから、な……?」

ぶっちゃけ修行とか時代遅れだし汗臭いし痛いし何より即死しそうで嫌だけど、ゲッツがお前の命は俺が守ると言ってくれたから。
それはそうと、リーフには怒っとかなきゃ。まさか殺人事件仕様の量を盛ったとは思わなんだ。

「リーフ! 殺人的な量を入れたなんて聞いてないよ!? ……あれ?」

なんとなくいるような気がしていたが、リーフの姿が見当たらない。

「リーフは? 一緒じゃないの!?」

エスペラントさんとアサキム導師に尋ねる。
てっきり超人グループと一緒にいると思ってたんだけど……。
304アサキム  ◆JryQG.Os1Y :2012/11/14(水) 13:36:12.68 ID:PSPyqj/T
「いや、良いんだけどさ。逃げたことをあれしてるじゃないし。」
「リーフをミンチにすれば後は良いよ。」
ホモAVはスルーだ。
「まぁ、修行メニューは二つから。選んでね。」
「一つは、俺よりも鬼畜な筋肉ムキムキ老人にみっちりしごいてもらうか。」
「一つは、俺よりはましだけど、53体のアンデットを倒すか。」
「選べ。」
305ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/15(木) 19:42:11.79 ID:lB6k4/FM
>「それでは、お忙しいようですので私はこれで失礼しますね。
> トリス・エヴァンジェル」
「ああ、今後共よろしく頼むよ。ではまた、トリス・エヴァンジェル」

去っていくリンセルとアリアードを見送るボルツ。
彼女らの産土であるここが危機にさらされていることは、彼女らに話すことはない。
話した所でどうにもならぬし、喝采が欲しいわけでもない。只、この地をこの男は守りたいだけだ。

>「真理派ねぇ。」

「協力を強制する積りは私には欠片もない。
 だが、あなた方の助力を、私は願いたい。
 ……どうか、力を貸してもらえぬだろうか?」

ボルツとゲッツは無言で頭を深く下げる。
師は、追われる身を受け入れたこの都市に報いる為に、この都市を救おうとしているからこそ、必死。
弟子は、朽ちる身を救い上げた師への恩に報いる為に、この都市を救う為に破壊を振るおうとし、それでは足りないと理解しているからこそ、必死。
必死に生きる、超人じみた常人が、超人二人とその相方達の前で深々と頭を下げていた。

>「私は無神論者で正直に言えば宗教は嫌いな方でね、翻弄される弱者がいる以上は私には場合によっては打倒すべき存在だ
>宗教派閥がどうなろうが知った事では無いし、興味もない…がやはり一部のそういった連中のせいで被害を被る
>何の罪も無い者たちを見捨てる事は性分的に出来ないんでね、この都市が絶対に無事これからも平穏になるという保障はできん
>だがやれる事は協力すると約束しよう」

「協力、感謝するよ。エスペラント殿。
 ……本当を言うと私も出たい所なのだがね、大分耄碌してきている老頭児だ。
 現役ほどでもないし、逆に君たちの足を引っ張ってしまいそうでね」

その礼は、心の底からのものである。
そして、その表情に混ざっている物は、苦々し気な感情。
必要と有らば自分でも力になりたいが、力になるには年齢を重ねすぎてしまっているというどうしようもない現実。
だからこそ、この店主は誰かに己の意思を託すしか無い。己の弟子との再会は、代替わりを示す予兆であったのかもしれない。
老兵は只死ぬのではない。経験を次へと繋ぎ、未来を新兵に託すのだ。

「――ゲッツ君、君は何を言おうとどうせ闘うつもりだろう。
 だから何も言いはしない。言葉は呉れてやらんが、餞別は呉れてやろうと思う。
 私の剣の柄だ。……まあ、君なら何かできるだろう、お守りと思って受け取っておけ」

ミスリル製の剣の柄をゲッツに託すボルツ。
ゲッツは何も言わず、犬歯を剥き出しにした笑顔を浮かべ、ボルツから剣の柄を受け取る。
そして、受け取った瞬間にボルツの顔面に拳を振りぬき、カウンターでゲッツが顔面に拳を喰らい、吹き飛んだ。

「……っは、老頭児名乗るにァまだ早ェと思うがね。
 まあ、俺は何と言われても闘うつもりだぜェ? それは、ボルツのおっさんへの恩なんかじゃねェ。
 俺は、強いやつと闘うのが好きだからよ。こんな大事件ならそりゃあもう絶望的に強い輩が出てくるに決まってンだ。
 だから、俺は俺の為に戦う。……お前の為なんかじゃねぇからな?」

お前の為に闘う、などと言う言葉は傭兵としては気恥ずかしいものだ。
互いにその感情は理解できていたため、建前だけの言葉の応酬を交わすこととなる。
今回の件に参加する物は、ささやかと言っても多額の金銭が報酬としてボルツから支払われることになるだろう。
306ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/15(木) 19:43:03.10 ID:lB6k4/FM
>「アサキム?顔ステンドガラス出てる」
>「あっ。」
>「逃げたことに関しては何も言わんが、お前達は干渉する気はないと言った私たちにも盛ったな
>多少は大目に見てたが、お前達がそういうつもりならば私は今後擁護も庇いもせん
>アサキム、お前の考えを尊重する好きにしろ」

「ああ、今回の件ばっかしは弁解のしようもねぇ。
 ……フォルテとリーフにゃ俺がガチでヤキ入れとくからこいつらはかんべんしてやって――」

頭を下げるゲッツは、このまま全ての責任を自分が負うことにしようと考えていた。
自分が手を下した部分は極僅かであるにしろ、彼らの行動に乗っかったのはまた事実なのだ。
故に、汚れ仕事と面倒を引き受けるのが仕事であったゲッツは、その僅かの手出しを根拠に自分に責を向けようとした、がしかし。

>「アサキム導師、逃げようと唆したのはオレなんだ。ゲッツは悪くないよ。
>でも元はといえばあなたが何故オレ達なのかの理由も言わずに訳の分からない場所に連れて行こうとしたからなんだよ?
>仕方の無い事ではあるけどね、物事には”語るべき時”というのがあるからさ――
>だけどね。お願い!こいつの頼み聞いてやってほしいな。
>こいつはオレとは違って命より大事にしてる事のためにしか頭を下げないんだから。
>これが終わったら修行でも何でもやってもいいから、な……?」

「って、フォルテ――」

自分の言葉を遮るようにして発せられたフォルテの言葉に、胸を打たれた。
無言でゲッツはフォルテの頭に手を置き、ぐしゃぐしゃと髪をかき回す。

「……ま、なんだ。ガチでサンキュ。
 流石にあいつらのお仕置きを俺一人で受けるのは気が気じゃなかった。
 お前は殺させねぇし、リーフも殺させるつもりはねェ。お前は安心して後ろで謳うのを仕事にしな」

素直な感謝。
時として頑固な竜人の性質には、全てを背負い込もうとする悪癖がある。
言えなかったこと、出来なかったことを、軽いとも言うが、自由な妖精はやってのける。
一族の誇り、戦士の誇り、誇りに縛られる生き方を自らの意思で選択したとは言えど、その窮屈さで自分を縛る生き方は時として自分の首も締めることとなる。
ある意味、このコンビはいろいろな意味でバランスがとれている、と言えただろう。

>「リーフは? 一緒じゃないの!?」
「おい、ちょいと待ちなァ。
 ……スペアポケット借りるぜ」

ゲッツはフォルテの持つスペアポケットを勝手に手に取る。
そして袋に手を突っ込み、手を引き抜けばそこには紙片が有る。
それを開き中の文章をゲッツは読み上げた。

「えーっと、要約するとホモヤクザの事務所に連れていかれてるっぽいな。
 大聖堂の中に閉じ込められてるっぽいけど、ホモだから貞操の危機とか命の危機は無さそう、だな。
 ……ま、なんとかなるんじゃね? 悲壮感とか感じられねぇし、この文面」

テーブルの上にメモを放れば、メモの文字がリーフの文字だと分かるだろう。
訳の分からない状況だが、ホモAVだからと言ってこいつらの前では無罪放免で済はしない。
犬歯をむき出しにした竜人の笑みは、ただ荒事の予感しか感じさせなかった。

>「選べ。」
「前者一択。限界とか気にしないで厳しくしな、死ぬくらいでちょうどいい、加減は要らねェよ」

アサキムの提案に、ゲッツは即答する。
限界を越えるとかそういった事を言っている限りは甘えでしか無い。
死ぬ気などといった言葉は死んでからしか意味が無い。
だからこそ、死線をくぐらせるような修行を、とゲッツは要望した。
修行という物は部族の主義としてはそれほど好ましいものではないが、ここで無碍にするのは望ましくない。
ならば、極限に挑むのみ、である。
307アサキム ◆JryQG.Os1Y :2012/11/15(木) 20:03:25.74 ID:HT6pdDPw
「あーおk。どっちとも行ってみようか。」
軽いのりで、ゲッツの修行決定
「次は、フォルテ。二つあるよ。セイレーンの元で精神崩壊するまで修行するか、それか、体を極限まで鍛えて音自体を鎧にするか選べ。」
選べのところに若干殺気を混ぜてみた(笑)
>>「ああ、ちょっと待て、スペアポケット貸せ。」
「ああ、そんなのが有んのか次貸せ。」
ゲッツから、スペアポケットを渡されるとアサキムは、黒い謎の物体を入れる。
その正体は、彼のみが知る。
そのうち、事務所から爆発と悲鳴が起きるだろう
308リンセル ◆Ac3b/UD/sw :2012/11/16(金) 23:46:08.47 ID:XNWQn4Tv
ウ・ボイで修行の話が繰り広げられている時刻。
太陽は僅かに西へと降り始め、それに合わせて大地に描かれる影も東へ伸び始めていた。
パン屋への道を急ぐリンセルは、道程も半ばに差し掛かった頃、雑踏の人だかりを見て驚愕する。
そこでは、一人の見慣れぬ少年がパンを売っていたのだ。

(私の縄張りが荒らされてる!)

浅黒い肌の少年は白い麻布の服を着て、日差しを避けるつば広帽子を被り、土埃で汚れた靴を履いている。
その恰好と朴訥そうな雰囲気から、リンセルも一目で彼が農村部の出身であると分かった。
横に止めた台車には、平たい箱に詰められたパンの山。
都市のパン屋は競合を避けて一定の範囲内でしか商売をしないものだが、農村から出稼ぎに来たパン屋は違う。
人の多そうな所を見つけては、誰に気兼ねすることなくパンを売る。

「ちょっとちょっと、何やってるの!?
 この辺りはロルサンジュのテリトリーよ、商売の優先区域!」

リンセルは、つかつかと少年に向かって歩み寄ると捲し立てた。
何とかしてここから追い払わなければ、この辺りをパン販売の拠点にされかねない。
それは、今後のロルサンジュの売り上げにも少なからず響くだろう。

「この辺りでパンを売っている人は、見た所じゃ特にいないようだったけどね。
 それに僕がどこで商売しても、街の法に違反していなければ誰かにとやかく言われる覚えは無いよ」

農村のパン売り少年は、あまり抑揚の無い声で反論する。
確かにリンセルが長らく持ち場を離れていた為に、この辺りでパンを売っている者はしばらくいなかった。
さらに外部から来る商人には、都市の掟が通じない事も少なくない。

(な、なんですって! 素直に謝って立ち去れば許してあげようと思ったのに!)

リンセルは怒りのあまり、わなわなと肩を小刻みに震わせる。
そして、まだ一緒に付いて来ていたアリアードへ振り返ると、不満を爆発させた。

「騎士さん、都市でパンを製造販売するには厳しい査察が必要なはずです!
 衛生面、味、品質、どれをとっても、この人のパンが必要な基準を満たしているとは思えません!
 パンは生活の要! 食の根幹! こんな粗製乱造のパンを許していてはエヴァンジェルが滅亡してしまいます!」

「ん……んー? そうねえ、聖都滅亡は困るー……。
 それじゃあ、シンプルにパン勝負をしましょお! 味とか品質を比べ会うのー」

「分かりました。ロルサンジュのパンは世界一です! 誰にも負けません!」

世界を懸けた大きな戦いの裏で、小さな戦いの火蓋もまた切られた。
規模は異なれど、生命ある所では常に争いが繰り広げられるのだ。
人類は……戦わずにはいられない悲しい性を持っているのかも知れない。
309フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/18(日) 00:53:31.15 ID:mP5brfuj
>「私の剣の柄だ。……まあ、君なら何かできるだろう、お守りと思って受け取っておけ」
>「だから、俺は俺の為に戦う。……お前の為なんかじゃねぇからな?」

しかしこの師弟、分かりやすすぎるツンデレである。典型的すぎて見てるこっちが逆に恥ずかしいわ!
でもそんなやり取りができる二人が羨ましくもあった。
オレに精霊楽師としての手解きを施した父さんはもうこの世にいない。
腹いせにおちょくってやろう。

「ふふっ、ゲッツは幸せ者だね。恩返しをする相手がいて。
お父様、御子息にはわたくしが付いておりますわ。どうか心配なさらず。
……って何言わせんだお前等!」

―――――――――――――――

>「……ま、なんだ。ガチでサンキュ。
 流石にあいつらのお仕置きを俺一人で受けるのは気が気じゃなかった。
 お前は殺させねぇし、リーフも殺させるつもりはねェ。お前は安心して後ろで謳うのを仕事にしな」

「本当の事を言ったまでさ。
バカだなあ、一応オレのほうが年上なんだからこいつに誘拐されましたー!って言えばいいのに。
でも安心した。お前も怖いなんて思う事があるんだ」

そして、修行メニューが決まっていく。

>「あーおk。どっちとも行ってみようか。」

「はあ!? ちょっと待てよ!」

>「次は、フォルテ。二つあるよ。セイレーンの元で精神崩壊するまで修行するか、それか、体を極限まで鍛えて音自体を鎧にするか選べ。」

「ああ、オレは別コースか。ってえぇええええええええええええええ!? マジで!? 別コース!?」

というか体を鍛えて音自体を鎧にするって……体を鍛えてもそんなトンデモな能力は身に付かんだろ。
もう一つの方は、なかなかに興味を惹くものがあった。
セイレーン――旅人をナンパし船を難破させる妖獣。
人間に友好的とは言えない恐ろしい奴らだが、呪歌に関してのスペックは文字通り人知を超えている。
もしもその技を盗むことが出来たなら、大きな前進になるかもしれない。

「そのセイレーンは知り合いか? 
美形で美声のトップアイドルが行くから楽しみにしてろと伝えておいてくれ!」

恐怖が無いわけではないけど、満更でもない気分になっている事に自分でも驚いていた。
――そっか、決めたからな。この型破りな勇者様を謳うにふさわしい吟遊詩人になるって。

>「ああ、そんなのが有んのか次貸せ。」

アサキム導師がスペアポケットに謎の黒い物体を放り込む。

「ちょっと待てそれって……!」

どう見ても爆弾です本当にありがとうございました。
310アサキム  ◆JryQG.Os1Y :2012/11/18(日) 14:24:23.28 ID:BFbHrn60
>>「はぁ、ちょっと待てよ。」
「バカじゃねぇの、お前みたいなひょろひょろは、2秒でミンチだ。」
事実だ。
>>「その、セイレーンは、知り合いか?」
「知り合いだ。俺とアヤカの仲人だ。」
これもまた、事実だ。
「まぁ、音を鎧にした方が、自分の身を守ったほうが良いんだが。」
>>「おい、まて、それって」
「………ノーコメントだ。」
フォルテは、爆弾と思っているらしいが、正確には暗黒物質【ダークマター】だ
どんなのかは、ご想像にお任せする。
311エスペラント ◆hfVPYZmGRI :2012/11/19(月) 21:58:52.74 ID:tS1Y4E2x
>「協力、感謝するよ。エスペラント殿。
 ……本当を言うと私も出たい所なのだがね、大分耄碌してきている老頭児だ。
 現役ほどでもないし、逆に君たちの足を引っ張ってしまいそうでね」

深く頭を下げるボルツに対して内心というよりも仮面の下では
困惑の表情を浮かべつつも

「とは言っても君達からの尺度からすれば私の方が既に相当な年だとは思うがね
貴方を子供扱い出来るほどとは思ってはいないが、頭を上げられよ
如何に我等が頑張った所で貴方の望む良い結末を迎えられるとは限らない
もしかしたら最善を尽くしても最悪あのローファンタジアの再来と言われる結果になるかもしれない
それを努々忘れないで欲しい」

事実、何が起こるかも分からない以上はあの種子が関わっているのなら
どう足掻いても自らの手で滅ぼしたに等しいローファンタジアの二の舞になるかもしれない
自分とて望まぬ結末だとしても運命は思い通りに行かない物だ
望まないまま最愛の人を自ら手を掛けねばならなくなった彼のように

>「ふふっ」
>「何がおかしい?」
>「だってさ、あなたたちってオレには想像もつかないような大局を見据えてこの地上に派遣された存在でしょ?
地上の人間とは全然違う感覚を持ってると思ってたのに……人間より人間らしい感情持ってんだね。
ごめんね、別に指示を出したわけではしてないんだけどリーフが勝手に気を利かせてというか何と言うか……」

突然笑い出したフォルテは、自分達が人間らしい感情を持ち合わせているという事に関して
雲の上の人だと思われていたようでそんな事でおかしくなったらしい
まるで親近感を感じているというみたいに

「私は最初から今のような人ならざる者ではなかった―と言えば嘘になるかな?
正直に言えば私は神やその類からすれば人であることに拘り続けている異端者なのだろう
しかし何も変わらない不変の存在になど興味は無いのだよ、其処に生きている実感がないからな」

彼は既に最早二度と人間のように老いるまでに至る過程がなくなった
齢十五の時に時間が止まった肉体だが、不思議なことに永遠の十五になったものの
戦闘能力やら身体能力に関しては成長期の肉体故に止まることがない言わば停滞や全盛期という訪れが存在しない代わりに
年は取らず永遠に成長し続けるというやはり人でなくなるもその中でも異端な存在なのである
それが人である事にこだわり続けるのだ、彼は最早その力から
人でもなければ神ではないそんな存在になりつつあった。

「今の私が居るのは人間でありたいと思っているから此処にこうしていると思っているんだよ
――話はズレたが、奴が全てを仕込んだという訳か」

こうなったらリーフに対しても何か考えねばならんなと思った矢先
フォルテが周囲を探しても居ない事に気づく

>「リーフは? 一緒じゃないの!?」

「いえ、私達は知りません。
途中で別れてきりですし…」

そういえば今までなんだかんだで姿を見ない
なんだか嫌な胸騒ぎがするエスペラントであった。
312エスペラント ◆hfVPYZmGRI :2012/11/19(月) 22:41:43.03 ID:tS1Y4E2x
>「おい、ちょいと待ちなァ。
 ……スペアポケット借りるぜ」
>「えーっと、要約するとホモヤクザの事務所に連れていかれてるっぽいな。
 大聖堂の中に閉じ込められてるっぽいけど、ホモだから貞操の危機とか命の危機は無さそう、だな。
 ……ま、なんとかなるんじゃね? 悲壮感とか感じられねぇし、この文面」

どうやら何時の間にかにリーフの奴はヤクザに拉致されていたらしい
なぜスペアポケットから出てきたのかは敢えて突っ込まないが
問題は居るのが大聖堂ということだった

「なぜ大聖堂なんだ?別に其処である必要があるとは思えんのだが…」

それこそスラム街の廃墟などが連中には相応しいのだが
もしや今回の件に何らかの関わりがあるのか

>「ああ、そんなのが有んのか次貸せ。」

アサキムは何かを入れた
それに関しても特に何も言わない
どうせ奴の事だからろくでもない物に決まっているから

「善は急げだ、今やれることをしなくてはな
静葉には潜入調査を任せる、私もさすがにこれ以上相手を待たせる訳にもいかん
少し出かけてくる」

「御意」

静葉に対して大聖堂に向かわせ
既に待ちくたびれているだろう広域補助機関の現地構成員との待ち合わせの場所である
喫茶店に向かうのであった。
313ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/20(火) 01:03:54.83 ID:5qgsu3UZ
>「ああ、オレは別コースか。ってえぇええええええええええええええ!? マジで!? 別コース!?」

「うっわぁ、ぶっ飛んだ修行プランだなそりゃァ。
 ……ま、死なないように祈っとくぜ。俺は死なねぇしな」

フォルテの修行も大分地獄だなぁ、と思いつつ、とてもいい笑顔でサムズアップ。
デフォルトで鬼畜でアッパー入ってるが、平時からこんなものな為何ら問題は見当たらない。
どっちにしろ、この案件が終われば竜人も吟遊詩人も地獄を見るのは違いないだろう。

覚悟はできているため、それ以上文句を言うことはあり得なかった。
竜人は恩師から受け取った剣の柄を軽く握りしめて振りぬき、腰のポーチにしまい込む。
アースクエイクを喉に流しこみ、強烈な味に脳天を文字通り揺らしながら、口元には笑みを浮かべた。

これからやってくるであろう鉄火場を思い浮かべ、己の力の発揮場所を楽しみにしていた。
戦いが起きなければ良いとか、力は使わないのが一番だ、等と綺麗事を言うタイプの存在ではない。
力があるのだから力を振るう戦場は望む所であるし、力があるなら全力を出せる機会をこの竜人は何よりも望んでいるのだ。

>「とは言っても君達からの尺度からすれば私の方が既に相当な年だとは思うがね
>貴方を子供扱い出来るほどとは思ってはいないが、頭を上げられよ
>如何に我等が頑張った所で貴方の望む良い結末を迎えられるとは限らない
>もしかしたら最善を尽くしても最悪あのローファンタジアの再来と言われる結果になるかもしれない
>それを努々忘れないで欲しい」

「幾ら勇者であっても、私は結局の所人でしか無い。どこまで行こうと私は人間の勇者∴ネ外には成れそうもないさ。
 私は君たちの様な長寿種よりも早く歳をとるし、早く寿命が来るし、容易く死ぬ。
 ……だが、だからこそ、私達の様な物は、なりふり構わず最善を求める。
 君たちが全力を出してこの地を守れなかったとすれば、恐らくこの土地の誰が同じ事をしても同じ結果になるだろうさ」

ボルツは、ゲッツの組むパーティのメンバーについてはある程度の知識を得ている。
その中でも、別格といっていい二人の超人の存在も。
だからこそ、頼むのである。少なくとも、この地に於いて教皇等と同等以上に渡り合える物に、この都市の命運を託したいのだ。

頭を上げ、口髭を整えて柔和な笑みを浮かべるボルツ。
ふと時計を見て、ゲッツの方に向き直るボルツは、視線で合図を送る。
それで全てを察したゲッツは立ち上がり、声を張り上げる。

「……さって、と。
 そろそろ、セレモニーの時間だったんじゃねェかね。
 何が起こるか全くわからねェ玉手箱がお待ちかねな訳だが、ちょいと遊んでこようじゃァねえか!
 つー訳で、祭に出ようぜ! 嫁さん方は別に旦那共とイチャついててもいいんだぜェ? ヒィーヒャヒャヒャヒャァッ!」

高笑いを響かせるゲッツは、いつも通りのハイテンションで、扉を蹴破る勢いで強く開ける。
そして、背後に立つボルツに向けて無言で左手を差し出し、ボルツはその左手に向けて浅く魔剣を振るい、紋を刻んだ。
刻み込まれたひび割れた歯車と螺子の文様を懐かしげに見つめて、無言でゲッツは歩き出す。

ひょい、と肩にフォルテを担ぎ上げるのはいざという時守りやすいという実利的なものだが、もはや様式美だろう。
数分も歩けば、中央広場にたどり着く。
大聖堂、人だかりの奥にあるのは、演説席。そう、教皇が後継の儀を行い、声明を発表する場。
人だかりは興奮ばかりである。なにせ、200年ぶりの教皇の交代だ。
歴史に名を刻まれるような大きなイベントを寿命の内に経験できるのだから、その興奮はひとしおと言ったところである。

「――諸君。静粛に」

副官であろう神官がマイクを通して全体のざわめきを抑えこもうとする。
そして、ここは宗教都市だ。神官の言葉を受ければ、先程までの喧騒が嘘で有ったかのような静寂が場を包む。
大聖堂の正面門から演説台まで引かれた赤絨毯。その赤絨毯を引く理由となった本人が、正面門が開き現れる。
314ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/20(火) 01:05:20.30 ID:5qgsu3UZ
清冽にして凄烈だ。
その男が与える印象は、まずそれだったことだろう。
涼やかな銀色の瞳に、後ろに撫で付けられた金髪。
皺一つ見当たらないものの、苦労を重ねてきたであろう事が分かる、独特の重みの有る顔。
体格は神官戦士としてよく見られる程度であり、右手には神官杖を握っている。
服装は、華美でありながらも、装飾は最低限という上品な物。

この男が、今代からの教皇、ミヒャエル・リントヴルムX世。
種族は人間、年の頃は40前半と言う、教皇としては異例の若さ。
しかし、前教皇の遺言や、ローファンタジア壊滅以来の執政等から評価を得て教皇に収まった、敬虔なる神の信徒である。

そして、男は歩く。
数千の人々の視線から、一歩も引くこと無く、身を捩ること無く。
一定の速度で、三主の意思の体現者は、只々歩き、壇上にたどり着いた。

「まず、ローファンタジア崩壊事件に付いて、私の身からも弔辞を述べさせて頂く。
 信徒ら、黙祷」

壇上に上がり口にしたのは、無数の人名が失われたローファンタジアについての弔辞。
男も目を伏せ、両手をあわせ祈りを捧げ冥福を祈る。
……祈る神が、何なのかは、定かではないが。

「……私が309代教皇を務める事になった、ミヒャエル・リントヴルムである。
 この都市に留まらない、種族年齢問わぬ信徒50億人の幸福と平和は、私が守る事を宣言しよう。
 そう、今この時、この瞬間より。汝らは我らとともに有り、我らの手を持ってして神の加護を身に受けることとなる」

穏やかかつ、重い笑みには説得力がある。
静かな語り口調には嘘は何一つ混ざっては居ないし、この男は心の底から信徒を救済しようとしている。
そう、奇跡をもってして。
315ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/20(火) 01:06:20.84 ID:5qgsu3UZ
「――――奇跡を、ご開帳しよう」

副官であろう上級司祭が、台を捧げ持ち教皇の元へと歩いて行く。
その台の上には――、幾つかの漆黒の宝玉があった。
同時に、大聖堂が鼓動し、都市の地下から何かのうめき声が聞こえるような、錯覚が襲いかかることだろう。

異変が、起こりつつ有った。
人の身で、宝玉の力に飲まれること無く、宝玉の力で何かをなそうとする者がここに居る。
ローファンタジア異変並に不味い事が起こる予兆が、広場全体に広がりつつ有る。

同時に、聖堂騎士団達が現れ、教皇の周囲を固め始める。
空気の変化に気づいた国民たちは、恐怖に怯え逃げ出すものも現れれば、教皇の姿に魅入られ動けないものもいる。
教皇が、宝玉を掴んだ。天へと掲げるのは、宝玉を握る左腕。

「呪われた者達が退けられ、無限の劫火に飲まれるその時、
 祝福された者達と共に我が名を叫べ
 汝らの心が、灰燼の如くに砕かれようとも、絶望の火に飲み込まれようとも
 汝ら神の神名の元に跪き、ひれ伏して懇願せよ
 ――来たれり、終末の時よ、と!」

宝玉が力を膨れ上がらせていく。
同時に、この男の精神も高ぶらされ、常人ならば正気を失い滅びていてもおかしくない状態まで追い込まれる。
だが、それでも宝玉から力を引き出し続けた男は、限界まで引き出しきった上で――膨れ上がった宝玉を握りつぶし粉砕した。

生まれたのは、沈黙。
だが、それは安心ゆえの沈黙ではない、平和ゆえの沈黙ではない。
これからくる絶望の予兆に、全てが停滞するほかなかった為の沈黙であった。

直後、大地が震え、裂けた。
直後、天蓋が砕け、割れた。
直後、湖畔が踊り、燃えた。

天から現れたのは、無数の触手を生やした四角錐の形をした異形。
大地から現れたのは、蟻と蜘蛛を合わせてその上に人の皮膚を張り合わせたような異形。
外部の堀から内部へなだれ込むのは、獅子のたてがみとして蛸の足を生やした異形である。

どれも、この世界の魔物図鑑では観測されていない、新種。
否、人々が忘れ去ってしまうほどの古代に存在していた、人間が認識するのを拒否する異種――旧神の欠片だ。
旧神の欠片達は、広場の人々を襲い、飲み込み、同化し始める。
何とかしてこの状況を打破しなければならないことだろう。
316 ◆JryQG.Os1Y :2012/11/20(火) 16:29:00.22 ID:5QtYW0tK
「こいつは、始めてみるな。」
アサキムでさえ、見たことのない、生き物
「まさに、絶望だな。」
唖然としながら、
「でも、倒せなくはない。」
ルナティックアーチェリーをその手に持ち。
両目のコンタクトを外す。
「アサキム タグラスが命ずる。」
両目に、王の紋章がでる。
「時を止めよ。」
周りに、赤いフィールドが広がると同時に、活動が止まる。
「まずは、あの生物だな。」
大地から、現れたものを照準とする。
「創世葬送曲」【クロニクル レクイエム】
矢を、天に放つ。
すると、一万二千本の矢が、大地からのやつに放たれる。
ここで、全体にかかるギアスを解除。
大地からのものは、今気づいたようであった。
一万二千がでたあと、八千本の矢、続いて一億と二千本が放たれる。
317リンセル ◆Ac3b/UD/sw :2012/11/21(水) 01:49:23.63 ID:O/0UrEHl
「やっぱり、パン勝負を行うなら人通りの多い所が良いです。
 そろそろセレモニーが始まる頃ですから、大広場の近くで行いましょう。
 あの辺りなら治安も良いですし、一番安全な所ですからね」

パン勝負を始めようとするリンセルたちは、ぞろぞろと連れだって中央広場の方へ向かう。
大通りを歩いて程なく、中央広場を囲む白い壁と美しい水路が目に入った。
中央広場への入口であるアーチ門からは、絶え間なく大きな喚声が聞こえて来る。

「景色も良いですし、観光客やカップルの数もまあまあ。
 広場の中で行うとセレモニーの邪魔ですから、この辺りが良いでしょう。
 それでは、どちらのパンが上か……勝負を決めようではありませんかっ。
 私は生地に牛乳を練り込んだトリス・ブレッド改を出します!
 コクが深くて味もまろやか、これに勝るようなパンはエヴァンジェルにありません!」

リンセルは広場に向かう人たちを呼び止め、ロルサンジュのパンを配布し始めた。
無論の事だが、セレモニーが始まっているので広場の中に入ってまでパンを配る事はしない。

「そこの人っ、ぜひともトリス・ブレッド改を食べてみてください。
 そして、10点評価で10点を付けて頂きたいですっ! 足りなければ20点でもいいです!」

城壁外でパン勝負が繰り広げたのと同時刻、大聖堂を擁する中央広場に教皇が現れた。
彼が奇跡の顕現を宣言し、漆黒の宝玉が衆目の目に晒された瞬間、大地が鳴動したかのような音が群衆の心に響く。
辺りを見回しても何かが揺れている様子は無いのだが、リンセルは咄嗟に地震と錯覚してしゃがみ込んだ。

「えっ、地震……?」

教皇が黒い宝玉を握り潰した瞬間、中央広場を取り巻く水路は一瞬にして清らかさを失う。
透明に澄んでいた水は、まるで病んだ獣の血を流し込んだように黒ずんだ赤へと染まった。
突然、その澱んだ水路の一角が大きく盛り上がり、飛び散った水飛沫が翡翠色の石畳を不快な色で穢す。
水面下の異界から這い出て来たのは奇形の巨神、“海を燃やすギェリム”の欠片。
三主教・真裏派は、“海を燃やすギェリム”への恐れがツルアの偶像を創り出したと定義している。

「え、あ……ぁ……ぁ……ぁ……ぁ…………………………」

異形の神が視界に入った瞬間、リンセルの精神は放心の海に沈んだ。
恐怖で身じろぎ出来ないどころか、本能的に五感が現実を拒絶してしまう。
開いた瞳孔は物を見ず、口は神への祈りを発することなく、逃げるために立ち上がる事すら出来ない。
それは周囲の人間たちも同様で、まるで人の群が生ける石像と化したかのようだった。

≪01010100101010101010100101010110111010111100101010101010010101――!!≫

海嵐にも似た轟音が硬直した大気を劈く。
リンセルには意味ある言葉として認識されなかったが、或いは神の言語かも知れない。
咆哮するギェリムの欠片は城壁外の水路から這い出ると、太い根のような触腕を四方八方に伸ばした。
城壁を乗り越えて中央広場の中に入る為なのだろう。

そして……無作為に伸ばされた太い触腕の一本は、リンセルの頭上へも落ちて来る。
単に移動の為に広げられただけに過ぎない脚でも、人間を圧死させるに充分。
広場の中の人間たちと同じく、触れただけで三主の神と同化してしまう可能性も少なくない。

とりあえず、パン屋たちの戦いはあっさり終結した。
318フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/22(木) 19:46:00.81 ID:6bNv0d+C
>「……さって、と。
 そろそろ、セレモニーの時間だったんじゃねェかね。
 何が起こるか全くわからねェ玉手箱がお待ちかねな訳だが、ちょいと遊んでこようじゃァねえか!
 つー訳で、祭に出ようぜ! 嫁さん方は別に旦那共とイチャついててもいいんだぜェ? ヒィーヒャヒャヒャヒャァッ!」

「KY承知で一応言っとくけど何も起きないに越したことは無いんだからね!?
つっても残念ながらこの超人達が何かが起こると踏んでいる以上まあ起こるだろうけどな」

例によってゲッツに運搬されて広場に向かう。
ちなみに、女装をやめるタイミングを逃して結局女装したままだ。
女装したままボス戦に突入してもふざけているようにしか見えない件。

そして、新教皇就任のセレモニーが始まった。
新教皇は教皇としては異例の若さとはいえ、落ち着いた雰囲気を纏っている。
また神魔大帝みたいな見るからに胡散臭いイケメンが登場するのかと身構えていたんだけど……。

>「まず、ローファンタジア崩壊事件に付いて、私の身からも弔辞を述べさせて頂く。
 信徒ら、黙祷」

「……」

短くない時間を過ごした都市がもう無い事を改めて実感する。
安アパートの大家の婆ちゃんも、行きつけの定食屋のおじさんも、路上ライブを冷やかしにきた子ども達も、もういないんだ。
母さんはローファンタジアを必死に守ろうとして戦って重傷を負った。
あんなことはもうあってはならない、二度と、ね。

>「……私が309代教皇を務める事になった、ミヒャエル・リントヴルムである。
 この都市に留まらない、種族年齢問わぬ信徒50億人の幸福と平和は、私が守る事を宣言しよう。
 そう、今この時、この瞬間より。汝らは我らとともに有り、我らの手を持ってして神の加護を身に受けることとなる」

立ち振る舞いといい、表情といい、いかにも教皇になるにふさわしい人格者に見える。
もはやこのまま何事も無く式典が終わる気しかしない。

「残念だったな、何も起こりそうにないぞ。
ま、某小学生名探偵じゃあるまいし行く先々で大事件が起こるはずねーよ」
319フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/22(木) 19:50:56.45 ID:6bNv0d+C
>「――――奇跡を、ご開帳しよう」

なんだなんだ? 余興にマジックでも披露するのか?
台座の上に黒い球体が見えた途端、そんな呑気な考えは吹き飛んだ。
黒い球体を集めて回ってるって言ってたけど……マジで使うためだったのか!

>「呪われた者達が退けられ、無限の劫火に飲まれるその時、
 祝福された者達と共に我が名を叫べ
 汝らの心が、灰燼の如くに砕かれようとも、絶望の火に飲み込まれようとも
 汝ら神の神名の元に跪き、ひれ伏して懇願せよ
 ――来たれり、終末の時よ、と!」

「冗談抜きで使徒キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

空から地面から、海の方からもなんかうじゃらうじゃらした巨大な怪物が三体現れる。
こいつ、ローファンタジアご愁傷様言った舌の根もかわかぬうちに……!

「祭りの時間だ、行ってらっしゃい!」

阿鼻叫喚の中、躊躇なくうじゃらうじゃらした怪物に突撃していく超人や戦闘狂達を見送る。
こいつらを直接どうにかする力はオレには無い。第一キショいし。
要は操ってる教皇を止めさせればいい。一刻も早く教皇の元へ行かなければ。
普段は出す事のない妖精の羽根を顕現して空中を横切る。
何故こんな事をしたのか自分でも分からない。相手が人間ならまだ話が通じそうだと思ったのかもしれない。

「三主教教皇ミヒャエル・リントヴルムX世!! 星霊教団の大聖母”星の巫女”を代理して謁見を申し込む!」

「無礼者! 失せろ!」

動こうとする聖堂騎士団を、教皇が制する。

「良い、通せ。そのお方は星の巫女が御子であらせられる。
よくぞ来てくれた。丁度こちらからお連れしようと思っていたところだ」

「何故それを知ってる!?」

教皇の目前に降り立つ。
対面した瞬間、まるで二人っきりで異次元に隔離されたかのような物凄い威圧感を感じる。
320フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/22(木) 19:51:51.57 ID:6bNv0d+C
「我が情報網を舐めて貰っては困るよ。母君の事は残念だったね」

大体の事は知っているが母さんが実は死んでない事までは知らない、という事か。

「教皇様、先刻ローファンタジア事件への弔辞をおっしゃったばかりではないですか。
何故にこのような行いをなさるのですか? 何ですあれは!?」

「素晴らしいだろう。見よ、あの神々しいお姿を。
真の三主神に身をゆだねる事で我々は全ての苦しみから解放されるのだ」

「真の……三主神!?」

オレがその言葉の意味を理解できないうちに、教皇は更にトンデモない事を言ってきた。

「そこで君にはかの神々を崇め奉る歌を歌って欲しい。
さすれば神々は更なる力を得、世界中の人々を救済する事が出来るだろう」

教皇はそう言って、オレを演説台の方へ促す。
あろうことか、教皇はオレに破壊に手を貸せと言ってきやがったのだ。
教皇をキッと睨み付けて拒絶の意思を示す。

「嫌だ! 歌をそんな事のために使うなんて……!」

「そんな事? 君なら知っているだろう。力持つ音楽の事を何故神曲と言うか。
呪歌は本来精霊等という下位の存在にくれてやるものではない。
神に捧ぐ供物だったのだ」

「そうじゃなくて! あんなのどう見ても神じゃねーし!」

教皇は静かに歩み寄って、リボン付きのヘッドギアに手を伸ばしてきた。
逃げなければいけないのは分かっているのに、圧倒されて動けない。

「そんな物を付けているから分からぬのだ。聞いてみるがよい、神の声を!」

「あ……」

超常の声に対する鋭敏すぎる聴覚を封じる枷が、外される。
その瞬間、この世界の言語ではとても筆舌に尽くす事が出来ない、膨大な混沌とした情報が流れ込んできた。
321ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/26(月) 02:06:37.55 ID:sM/n8jp1
>「創世葬送曲」【クロニクル レクイエム】

「クッッハハハハハハハ――ァ!
 何を無意味な、何を無価値な、何を無駄な事を!
 届かぬよ、その程度では、その有様では、その絶対性では!
 欠片とは言えど、ここに降臨しているのは真なる神の眷属、バイト=ドローンなのだ、甘く見ると痛い目に遭うぞ」

現れた神々の欠片はアサキムの放った千の矢を受け、万の矢を受け、億の矢を受けた。
そしてそれらは確かにダメージを与え、三主の欠片たちに確かに傷を与えていた。そう、間違いなく。
だが、飛び散った触手の破片は肉塊となり、バイト=ドローンのトークンと化す事で却って被害を増やすはめになった。
彼らは現生生物達がこの世に現れる前から生きてきた、文字通りの神代の生物たち、しかし語られぬ禍津神。

天蓋を砕くイビャスのドローンがその無数の触手を蠢かせ、先端を開けば、そこから覗くのは怪しい色をした球体。
光を纏い、圧縮された破壊の力は解き放たれ、天空から数千の光条となって世界を灼く。
子どもたちが過ごした学び舎の壁が溶かされ、皆が洗礼を受けた泉の水が干上がり、明日を生きるパンを求む乞食が燃え落ちる。
世界の終わり[アポカリプス・デイ]が具現されたのならば、文字通りこういう事態を言って間違い無い。少なくとも、これ以上の世界の危機はそうそう起こり得ないことは間違いない。

「ここにあるのは絶望だ、世界の滅びだ。
 抗うことを私は止めぬ。憎まれる事を私は厭わぬ。呪われる事を私は呪わぬ。
 もはやアイン・ソフ・オウルの残滓に汚染された世界を救うには、劇薬を持って成す以外に術は無いのだから。
 誰かがやらねばならぬならば、私がやる! 否、私がやらなければならないのだ!
 それでも尚、この世界をぬるま湯の絶望に浸かり続けさせたいのであれば、貴様ら全員我らの手で滅ぼし返してくれるわ!」

朗々と声を響かせる、教皇ミヒャエル・リントヴルム。
この男だけは、真裏派の中でも唯一狂気に飲まれていない男であり、誰よりも信心深く、誰よりも神を信じていないものだ。
誇りと、使命感を持ってこの男はこの行動を決行した。間違いなく、無数の流血と絶望と滅びを覚悟の上で、である。
私利私欲、恐怖によって滅びを撒いたアイン・ソフ・オウルと異なる点はそこ。ある意味、究極的に堅固な柱を持つこの男は、実力でアイン・ソフ・オウルに劣るものの、それ並に厄介な存在であるだろう。

このままエヴァンジェルは絶望に飲まれ、そして異形に食い尽くされるのが定めなのか。
否、否。全く持って否。
ここに居るのは、伝説の勇者パーティになるかもしれない可能性が微粒子レベルで存在する#y共。
何か、何かがあれば。この現状を打破できるかもしれない。少なくとも、今回は一人一人が突出するスタンドプレイでは如何ともし難い状況だろう。

「――ち、ィ。
 半端じゃねぇ厄介さだぜ。……数が多い上に、砕けば増えるし、燃やそうとしようにも燃やせねぇ。
 餓鬼爺婆野郎淑女ども全員纏めて後ろに下がってなァ!出来ればさっさとシェルターに逃げ込みやがれ!」

降り注ぐ光条を打ち砕きながら、逃げ惑う民衆に力ある声を響かせ扇動するゲッツ。
地下シェルターに人々は逃げ込んでいき、シェルターになだれ込もうとするイビャスのドローンと互角に殴り合っていた。
肉体を取り込まれかければ、口から火炎を吐き出し自分の肉体ごとドローンを消し飛ばし、吹き飛んだ肉は竜刃で補い、更に相手を押し返す。
ドローンの中心へ鋼の左腕を叩きこみ、同化されかけながらも、中心角の小さな黒い球を引き出し、砕く。
322ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/26(月) 02:08:06.02 ID:sM/n8jp1
「……これが弱点かッ!
 だったら話は早ェしぶっ殺すだけだ!
 こんな無理無茶絶望絶体絶命だが、今の俺は胸糞煮えくり返ってんだ!
 今の俺ァてめぇ等1000億万兆人相手にしようが一歩も引く気は無ェなァ!」

皮膚から飛び出した触手を引き千切りながら、ゲッツは駆け抜け、次々とドローンのコアを引きちぎっていく。
しかしながら、その度に肉体は侵食され、ゲッツもまた正気を失い狂気に囚われつつある。
もとより正気から程遠い戦闘狂とは言えど、この状況で長く戦い続けるのは望ましくない。他の人々にとっても、間違いなく。

>「え、あ……ぁ……ぁ……ぁ……ぁ…………………………」

アサキムとゲッツに向けて、ギェリムのドローンがなだれ込んでいく。
それを見て、生身の右腕の大半が触手や粘液と同化しつつある腕を振りかぶり、大地を砕きながら飛翔。
拳を振りぬき、リンセルに向けて落下する触手を叩きのめして、粉砕した。

びちゃりびちゃりと辺りに飛び散るのは肉片と青黒い血液の滝。
腐臭を漂わせるそれらを生身で浴びながら、ゲッツはリンセルの首筋を引っ掴み、安全地帯へ放り投げる。
正気を失っているであろう今のリンセルと、周囲の人々の正気を取り戻す為に、ゲッツは声を発する。

「ガ……ッ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァ――――――――ッッ!!」

竜種の咆哮は、神の声に対抗しうるのか。
いや、し得ない。だが、強い意思を持って、人々の為に上げた叫びは、聞こえないはずは無い。
此方に人々が注意を向けた瞬間に、ゲッツは鋼の左腕を塀を乗り越えるドローンの頭に向けて構え、砲撃。

轟音と同時に、ドローンの一体を絶命させ、塀の向こうにそれをたたき落とした。
荒い息を吐き、軟質化した皮膚を引きちぎり、鋼で肉体を補いながら、全体を見回し叫ぶ。

「――塀の方は比較的数が少ないから俺がぶっ潰す!
 アサキムは空のやつぶっ飛ばすのやってくれや! 遠距離得意だろォ!? コア狙いながら乱れ打ちなァ!
 んで、エスペラント――、どこに居るか分かんねぇけど、地上組頼む! 数が多い上に固くて強い、お前さんの火力ならなんとかなる!」

指示と言える程レベルの高いものではない、と言うよりゲッツが指示をするよりもアサキムやエスペラントがする方が経験的に有利だろう。
だが、少なくとも今の時点でそれらを考える余裕は無く、ゲッツは比較的数が少ないが、サイズの大きいギェリムのドローンを相手取る。
肉体の一部は既に同化されているが、同化部位を引きちぎり、全身傷だらけにしながら、戦っていた。

リンセル達に振り向き、ゲッツは叫ぶ。

「さっさと東のスラムに逃げな!
 あっちはボルツのおっさんが撃ち漏らしをどかしてるくらいで、そんなに危険じゃねぇ!」

叫ぶやいなやそうそうに、背中から翼を生やし、左腕を剣に変形させ、ゲッツは数十体のギェリム=ドローンに対して襲いかかっていく。
触手に骨を砕かれれば、骨髄から溢れる鋼で繋ぎあわせ、血を噴出せば竜刃が擬似血液を生成してそれでも戦い続ける。
アサキム相手に瞬殺されない輩を相手にしているのだ、即死していないだけ健闘、否、奇跡と言っても過言ではなかった。
323ゲッツ ◇DRA//yczyE:2012/11/26(月) 02:09:21.03 ID:sM/n8jp1
その奇跡が現れた直後、さらに状況が変化する。
その他にも、この都市に滞在していた百にも迫ろうかという数の冒険者達が震えながらも立ち上がり、動き出したのである。
この絶望を前に闘う者達の姿を見ることで、彼らも勇気づけられたのか。力に差はあれど戦える人々は、4人だけではないのだ。
そして、外縁部等から、数多の騎士たちが集まっていく。聖堂騎士団の精鋭とはいえないまでも、日々この都市を守るために身を粉にして戦ってきた老若男女、この都市を守るのは自分たちだと叫びを上げるように化け物たちに槍を突き立て、メイスを叩きつけ、剣で引き裂く。

「――この都市は、俺たちの故郷でなァ。幾ら神様だろうと、俺の母ちゃん殺したりしたらただじゃおかねぇぞ!」
「自分、聖堂騎士団に所属したのは、弱きを助け、強きを挫く者で有りたかったからであります! 隊長、自分は弱気を捨て、強気に生かせてもらいます!」
「し、死にたくないけどよォ……、ここの大聖堂で相方と結婚するために旅しに来たんだ! こんな所で死んで溜まるか畜生が!」
「外縁部周回部隊、総員構え! 教皇がどうとかは関係ない、私達が仕えるのは、信仰であって、邪神ではないのだ!」

「「「「「こんな所で、死んで溜まるか。負けてたまるか、好き勝手にさせて溜まるかッ――――!」」」」」

戦う理由は人それぞれ。だが、戦線を支える力が確かに付け加えられた。
5人合わせてもゲッツ一人と同等程度かそれ以下だが、それが大量に入れば話は違う。
手数は数多、面で場を護り、面で敵を突き殺す。自分本位な救済を好としない、力強い生き様がそこにはある。

その中で、ゲッツはフォルテの姿を視界に収めた。
普段は付けているヘッドギアを外され、苦しんでいるフォルテ。
それを見て、ゲッツは跳んだ、そして飛んだ。

「――てめぇら、ここは任せたァ!
 俺のダチがちぃっとアブねぇっぽいんでなァ!」

空には雲霞と無数のトゥビェニ=ドローンが立ち塞がるも、それらをゲッツは次々と吹き飛ばし、粉砕し広場へと近づいていく。
上空からゲッツは、教皇に叫ぶ。

「てめぇ、俺のダチに手ェ出していいと思ってんのかァ! アァンッ!?
 こいつはなァ、神を称える歌なんか謳いやしねぇよ、ってか、それくらいなら神様も馬鹿騒ぎサせるような歌を歌っちま――――」

堂々とした態度、そして力を持つ叫び声も、別格の存在である教皇には何一つ通用しない。
教皇が持つ杖の宝玉は、いつの間にか滅びの種に変わっており、それを掲げれば、直後。
ゲッツの両翼が粉砕し、全身から鮮血を吹き出してゲッツが大地にたたきつけられた。
無慈悲な瞳、氷のように冷たく、鋼のように強硬な意思を秘めた教皇の瞳が、フォルテとゲッツを射抜いていた。

「――この滅び行く定めの世界を救うのは、強き意思、そして人々の繋がりである!
 だが、人々に強き意志を持つものなど、そうは居らず、人々はいがみ合い、争うばかりだ!
 だからこそ、私は絶対悪≠標榜しよう! 私に敵意を持て! 絶対なる悪を憎め! 恐れよ! そして抗え!
 汝らにいがみ合う暇など与えん! 弱き意思を持っていては生きていけぬようにしてやろう!
 その為には、汝らに決して滅ぼされぬ、そして汝らを滅ぼさぬも傷つける、絶対不変の力が必要なのだ!」

朗々と響く声、それは一言で言ってしまえばこういうことである。
『みんながいがみ合って居る世界をひとまとめにする為に、そうならざるを得ない存在を作り出す』
それが教皇の考えであり、人々に対する絶望の姿、最悪の神の使いを呼び出した理由。
この男自身が最悪の存在となる事で、総ての悪意を集中させ、人々をまとめ上げ、世界を救おうとしているのだ。

「故にッ……! フォルテ・スタッカート!
 謳え、使いに呼びかけ、真なる神自身を呼び出す歌を!
 世界平和の為に歌った汝を、私は讃えよう! 汝こそが真の勇者であると!」

フォルテの肩を痛いほどに掴み、謳うことを強要する教皇。
圧倒的有利の中でも、この教皇もまた、神々の使いと戦う人々と違う理由で必死である。
それが正しいのか間違っているのかは、きっと誰にも判断できない。謳うかどうかは、フォルテに託されたのだ。

「ッ、ぐ、ッ、お――!」

地面に体を半ばまで埋め、ゲッツは壇上を睥睨する。
その視線は、もしかするとフォルテと交錯するかもしれない。
ギラギラと刃物のような強い光を宿した、獣性と決意と覚悟を秘めた、心だけでも力を示そうとしている視線と、だ。
324フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/26(月) 02:23:26.90 ID:VYYNwtl0
許容範囲を超えた膨大な情報に、頭が割れそうに痛む。
認識できた僅かな断片を言葉にすると、有史以前に君臨していた者達。我々の感覚では認識不能の異界の”海”――。
人々の恐怖が作り出した偶像、神々の真の姿――。

「う……ぐっ、あぁあああああああああァッ……!」

立っていられずに膝をつき、口の端から呻き声が漏れる。
皆が信じている三神は、真実に耐え切れない弱い人々の心が生み出した虚像だった。
移ろいゆくこの世界に確かな物など何もない。
最悪の未来予想図がありありと思い浮かぶ。

―― 今までよく働いてくれたね。お前は生かしておくには知り過ぎた。ここで消させてもらう。

「導師様……」

―― 許せ! 多世界の平和のためにこの世界には犠牲になってもらう!

「エスペラントさん……」

―― フォルテ悪ぃ、やっぱ魔王路線に転向するわ! 平和な世界には耐え切れないんだァ。

「ゲッツ――」

それはほんの少し、自分でも意識しない程度に仲間達に対して漠然と抱いていた不安。
オレはこんな事を思っていたのか。仲間の事をそんな風に思っていたなんて最低だ。
それはオレがどうしようもなく弱いから。いつか見捨てられるんじゃないかという不安があるからだ。
アサキム導師やエスペラントさんはオレを母さんと重ねてる節があるけど、オレは母さんみたいに強くなれない。

「――ッ」

声を押し殺しても、雫が止めどなく頬をつたって地面に落ちる。
そこに、心の隙間に入り込むかのような教皇の声。

「偉大な女神を母を持つというただそれだけで突然神々の戦いに巻き込まれさぞ辛かろう。
だがもう何も恐れることは無い、今こそ真なる三神に身を委ねよ!」

オレはその声に突き動かされるように虚ろな瞳で演台に歩みを進める。
破滅の神を讃える終焉の歌を歌うために。

reaty amole ora fayty ya!《愛しい者達よ 集え》
tu lio shella luty far emio《世界に我等の心を捧げよ》
la shay fierr natyya《何も恐れることはない》
iya-ha-eh (feti)lishay ray le oura《神々の御手に全てを委ねよ》

ra shooty liefar ray sheim ou deer《創られしものは全て いずれ滅び》
iya-ha-eh seida rou《神々の元へ還りゆく》
zzow nai tolan douzee fantar zie(toomie)《万物に常は無く 流転し》
iya-ha-eh seida rou《神々の元へ還りゆく》

これも神の声なのか? 無意識の海から沸いてくるかのように、この世界の言語ではない歌詞が降りてくる。
唇を開き今まさに最初の一声を発しようとして、止まる。
オレは何をやっている? 歌エ、いや、歌ウナ。
この世ニ真実ハ存在スル? 生キル事ニ意味ナンテアルノ? モウ何モ分カラナイ――
325フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/26(月) 02:25:49.24 ID:VYYNwtl0
>「てめぇ、俺のダチに手ェ出していいと思ってんのかァ! アァンッ!?」

声が、聞こえた。お世辞にも綺麗とは言えないのに、何故かオレを惹きつけてやまない声が。
今はヘッドギアを外しているから、ローファンタジアでの戦いの時以来の鮮烈さで。
さっき聞いたばかりなのに、とても懐かしい感じがする。
めくるめくあちらの世界に旅立ちかけていたオレは、すんでのところで戻ってきた。

>「こいつはなァ、神を称える歌なんか謳いやしねぇよ、ってか、それくらいなら神様も馬鹿騒ぎサせるような歌を歌っちま――――」

教皇が杖を掲げた、ただそれだけでゲッツは両翼を粉砕され地面に叩きつけられた。

「ゲッツ――!! どうして来るんだよ馬鹿……!」

危険を承知で、というよりそんな事は考えもせずに助けにきてくれたのだろう。
そんな友を異形の神の声の影響とはいえ、一瞬でも疑ってしまった。
自分に対する怒りもひっくるめて、そうさせた教皇にぶつける。

「もうやめろよ! やめてくれ! 滅びが救いとか勝手に決めつけんな!
別にお前がそう思うならそれでいいけど世界全体を救ってやろうとか余計なお世話なんだよ滅びたいなら一人で勝手に滅びとけ!
こんなの救いでも何でもねーよ!」

すると教皇は、相変わらず落ち着きくさった態度で思いがけない事を語り始めた。

>「――この滅び行く定めの世界を救うのは、強き意思、そして人々の繋がりである!
 だが、人々に強き意志を持つものなど、そうは居らず、人々はいがみ合い、争うばかりだ!
 だからこそ、私は絶対悪≠標榜しよう! 私に敵意を持て! 絶対なる悪を憎め! 恐れよ! そして抗え!
 汝らにいがみ合う暇など与えん! 弱き意思を持っていては生きていけぬようにしてやろう!
 その為には、汝らに決して滅ぼされぬ、そして汝らを滅ぼさぬも傷つける、絶対不変の力が必要なのだ!」

さっきまでと言っている事がある意味180度違う。これが本心と見て言いだろう。
つまり、さっきまでの完全にあちらの世界に行ってしまった人の振る舞いは演技。
多分、オレをお荷物だけに産地直送、じゃなかったSAN値直葬して手っ取り早く自分の意のままに動かそうとしていたのだろう。
それを阻まれ、今度は真意を明かしたという事か。
でもな、手の内を明かした敵役はそこから一気に攻め込まれるんだぜ――?
オレは怒る気を無くし、教皇を哀れむような視線で見つめる。

「仮にそれで世界が平和になったとしてもさ。
あなた自身は皆に憎まれて、怖がられて、きっと誰にも分かってもらえなくて、ずっと孤独のままなんだよ……それでもいいの?」

>「故にッ……! フォルテ・スタッカート!
 謳え、使いに呼びかけ、真なる神自身を呼び出す歌を!
 世界平和の為に歌った汝を、私は讃えよう! 汝こそが真の勇者であると!」

教皇はオレの問いに答えるかのように、謳えと言った。
こいつ、狂気以上に正気じゃない。
きっと、その心が、その意思が、あまりに強すぎる故に道を踏み外してしまった。
326フォルテ ◆jIx.3BH8KE :2012/11/26(月) 02:28:26.62 ID:VYYNwtl0
「貴方の決意はよく分かりました。謳いましょう。世界平和のために、”真なる神自身”を呼び出す歌を――」

オレは恐慌に恭しく一礼し、再び演台に歩みを進める。
地面にめり込んでいるゲッツと目が合う。射抜くような本気の瞳。
その視線に、何かを企んでいる時のウィンクで応えた。

「オレ謳うよ! 大丈夫だから。全部上手く行くから!
こんな特大ライブをそんなに近くで聞けるなんてラッキーだな!」

モナーがドラムセットに変身する。
伴奏が殆ど打楽器だけという事は、歌い手の技量がもろに出るという事だ。

「聖堂騎士団の方々!市民の皆様!
ローファンタジアのトップアイドルフォルテ・スタッカート様のエヴァンジェル初ライブだ!
オレの歌を聞けええええええええええええええ!!」

両手に持ったドラムバトンを回し、オレは歌い始めた。
出だしはやはり異界の言語。神の世界の言語なのかもしれない。

「si! yara tufary tereya 《謳え 創世の詩を》
cety durtia lofida 《与えられた命》
shenna sado passe rosaty ya! 《熱き想いと共に燃やして》
tir asce tu arreta sutyfan amole 《我等を包む全てに愛を奏でよう》
aa- miseley oh- san affara ha- 《嗚呼 祈れよ 光あれ》」

それは、終焉ではなく創世の歌。そして、天と水と大地に惜しみない感謝を捧ぐ歌。
正体を現した神がリアルタイムで暴れているこの状況で敢えて、人々が長年信じてきた三主神を讃える歌を。

「天地ひらけし時 生まれ落ちたるは神の子等 集いて祈らん 《我等が大地に祝福を》
咲きし花 愛でる子の 両の手に注ぐ雨露は  光を纏いて 大地の緑を育めり
水際にたゆたう 木の葉に 命 重ね  未来(あした)の日に導き(道)を… 繰り返す 憂いと喜び
霞みゆく遠き空 雲間に満つ 其の光  もたらす天恵よ 我等 包みたまえ
神祀り 彩るは宙を跨ぐ七つ星  清けき月影に 祈り謳 捧げん」

間奏の時に、その場にいる全員に語りかける。
神の正体を知り狂気に蝕まれている人々を引き戻すために。

「古来より世界に害成す恐ろしい者が現れた時、人々はどうしてきたと思う? 方法は大きく分けて二つ。
一つは真っ向勝負を挑み制圧すること。もう一つは……神として崇め奉り鎮めること。
珍しい事じゃないんだよ、こんなことって。確かにそれは正面から立ち向かう力の無い弱い者がする事かもしれない。
でも……それで本当に恩恵を与える神様になったとしたら? ずっとここではない世界にいれば神様でいられるとしたら?
きっと、真実は一つじゃない。
たとえ最初は恐怖が作り出した嘘だったとしても、ずっとみんなが信じて来た事は一つの真実になるんじゃないかな。
だからもう一回、信じてみよう? あなた達が信じた神を!」

神曲は、多くの人の支持を得る程その威力を増すという。
どこまでいけるかは分からないけど、狂気の浸蝕を防げれば成功。
もしも本体にも効いて弱体化でもしてくれれば儲けものだ。
オレに出来るのはここまでだ。頼んだよ? 超人組。そう思いながら、2番を謳い始める。
327エスペラント ◆hfVPYZmGRI :2012/11/26(月) 03:33:36.65 ID:+D0inRG7
「まさかこのようなことになるとはな…」

あの後エスペラントは現地での広域補助機関の構成員の居る喫茶店に戻るはずだった
しかしその道中で、思いも寄らない形で構成員と遭遇する事になる
相手は真裏派の新教皇就任のセレモニーに置いて行おうとしていた情報を知るも
その事を知った真裏派により、四六時中追い回される事になり喫茶店に行く事が出来ないほどに包囲されていた
それに負傷していたことにより下手に身動きも出来ず
故に浮浪者を装う事で機会を狙っていたらしく、たまたま構成員と遭遇しなければ今も其処に居た事には違いない。
そして情報を聞いた後は、真っ先に中央広場に向かったものの既に事は最悪の形で起きてしまっていた。

「遅かったか―三柱の邪神のようだが幸いにも本体ではないようだな」

既にこの世界が召喚された時点で災厄が広まるとされればエスペラントはすぐにでも
意思なき殺戮形態―永久闘争存在と化すが、今は意識を保てる程の力の供給が始まりつつあるようだ
だとしても決して予断は許されない状況だが

手には装飾されたバクルスの形状に近い杖という名の詠唱端末機を召還し
ある魔法―とある世界ではその際に発生させる呪素により一定量を超えると魔族と呼ばれる
災害を生み出す系統である―を唱える

『我・法を破り・理を越え・殲滅の意思を抱く者なり!・・・
グロークン・グロークン・エイテ・イム・シーンス!』

この僅かな詠唱により突如空間に強力な力場渦動を発生させ、それは三柱に対して包み込むほどの大きさであった
世界から供給された力だけではない、彼の普段からの使用しているのみだけで考えれば
この時点でも相当な実力者であることが伺える

『<ヴォルテックス>イグジストッ!』

三柱を包む大きく強力な力場渦動は三柱をを束縛し、最後の詠唱と共に
微粒子まで磨り潰して粉砕し分解する力場の渦巻きにより無限に絞り込まれていく
それは例え神だろうと跡形も残す事を許さぬと言わんばかりに

「煩くて叶わん、ヤハウェよやはり神のルールを押し付けようとする馬鹿者が
何処に行っても居るな、例え異教でもお前ならば嘆くだろうなこの状況は」

神の声を聞きながらもやはり、多世界を守るためだけに昇華した守護者的概念の存在は
その膨大な情報を聞き取りながらも、彼の知る善良で、自身の力の無さで人を救えない事を悔やみ
他者の混沌を許容しているまさに神に相応しき寛容さと誰かを見返り無しで救おうとする
神の中では珍しくも馬鹿を見ても人を信じ続ける友の名を口にし、彼とは比べようもない
邪神共に対して仕方ないとはいえ嘆息を漏らさずには居られなかった。

>んで、エスペラント――、どこに居るか分かんねぇけど、地上組頼む! 数が多い上に固くて強い、お前さんの火力ならなんとかなる!」

そしてその声に気が付けば、ゲッツは傷だらけになりながらも
逃げ惑う市民達に襲い掛かる数多き肉塊共が眼に入る
これを見逃す訳も無く

「任された―此処で奮闘せねば僕が来た意味はない
宇理炎・鉄の火!!」

右手を天高く掲げ、空には幾何学模様が発生する
それは本家本元とは遥かに劣る炎―しかしそれは不老不死の存在の生命を媒介に
廃人にするまで燃やし続ける、青白い天空から舞い降りる無数の炎の矢が
罪も無き者達を蹂躙しようとしている地上に存在するドローンにまるで
天罰の如く、その身を裁くように燃やし尽くした。
328アサキム  ◆JryQG.Os1Y :2012/11/26(月) 17:52:12.98 ID:iblIbby6
>>「アサキム、は、空の奴を頼む。」
「礼儀は、成ってないが良いだろう引き受けよう。」
【コネクト、コピー please】
連携魔法で、ウィザーソードガンを二つにする。
「乱れ撃つ!」
空の、奴に向けて、ドローンも巻き添えにしながら、撃ちまくる。
魔法の弾なので十分有効打だろう。
「雑魚は、潰した。フィナーレだ。」
そういうと、ある武器を召還する。
それは、余りにも、大きい槍
「ロンヌギヌの槍だ。当たってよ。」
アサキムは、空の怪物に向け飛び、コアにそれをぶっさす
329リンセル ◆Ac3b/UD/sw :2012/11/28(水) 07:59:08.40 ID:bsv3+izw
三主の降臨したエヴァンジェルに竜人の咆哮が轟く。
それは暴風が白い濃霧を吹き散らすかのように、混濁する群衆の精神から恐怖の呪縛を払った。
大海を揺らす程の波浪が、小さな波紋で僅かに掻き乱されたと形容した方が近いだろうか。
いずれにしても、リンセルの状態は放心から恐慌へと変化した。

「あぅっ……ぁぅぁぅ……」

パン屋を含めた困惑する一般市民に向け、満身創痍のハイランダーは叫ぶ。

>「さっさと東のスラムに逃げな!
> あっちはボルツのおっさんが撃ち漏らしをどかしてるくらいで、そんなに危険じゃねぇ!」

「は、はひぃい……っ!」

半ば這うような格好で、リンセルは群衆に紛れて中央広場から遠ざかって行く。
逃げ惑う一般市民と言う言葉で表現するのが、ぴったりの光景である。
広場から溢れた神の欠片が一般市民を襲うのを阻んだのは、街に滞在していた冒険者や聖堂騎士の奮戦。
さらに折よく天から火の雨も降って来た事もあって、幸いにもエヴァンジェルは一人のパン屋を失わずに済んだ。

――――。

人々が去った後の街路に目を向ければ、聖堂騎士のアリアードは逃走せずに残っている。
彼女は広場の門まで進むと、暴れ狂うギェリムの魁偉を見上げていた。
真裏派以外の神官は三主の真実について知らず、教皇も異形の存在を真の神としか表現していない。
従って神威ともいえる畏怖と水棲生物のような外見から、彼女は目前の巨大な異形がツルアであると正確に誤認した。

「え、えっとぉ、神様が人間を襲ってるの? 状況が分かんないよぉ……」

考え込む聖堂騎士の耳に、フォルテの発した言葉が入って来る。
だからもう一回、信じてみよう? あなた達が信じた神を……との言葉が。
アリアードはうっかり深く考え込んでいたので、最後の一文しか耳に入らなかったのだ。

果たして神とは何だろうか?
三主教の信徒たちは、自らの崇める三神が世界を創造した存在であろうと伝えている。
彼らが天を描き、大地を造り、海を満たしたと。

アリアードもそう考えており、少なくとも創造の神に対して数千単位で人間が集まったた所でどうにかなるとは思わなかった。
だから、妖獣の聖堂騎士は神の使いを見ても冒険者や他の聖堂騎士のように刃を向けない。
刃を止めて沈黙した彼らの中で、アリアードは率先してツルアに向けて加護の聖句を唱える。
真摯に、熱烈に、無心に。

「ラサ・アピシアト・ディ・ツルア(聖なる海の主、穏やかな海を司るツルアよ)。
 レザ・イディウス・ディ・ツルア(邪なる海の主、荒らぶる海を司るツルアよ)。
 セイラーン・アヴ・イーニュ(我が祈りに応え、どうか怒りを鎮めたまえ)。
 セイル・アヴィシーム・エルタウ・エルタウ・エルタウ(我らを嘆きの海へ連れて行くのは、思い止まって下さい)」
330 ◆jIx.3BH8KE :2012/11/30(金) 01:21:26.44 ID:jMyd+GI7
331創る名無しに見る名無し