>>335 >「ドラゴンボールの噂などは信じていなかったが、その姿を見る限りでは真実のようだな。
フリーザは深紅のワインを飲み干すと不気味な笑みを浮かべた。
そしてドラゴンボールの内の1つをメタルクウラの前に取り出す。
星の数は4つ。地球では四星球と呼ばれているものだ。
「ええ、私はドラゴンボールを手に入れ復活しました。
そして、他の星――つまりは地球にも同じような7つの玉があると
知ったのです。」
>タイムマシンというのも興味がある。
>しかし、誰がお前を生き返らせたのだ?
>親父殿か?いや、親父殿も死んでいるんだったな」
「あんな役立たずのパパはもう必要ありませんよ。あぁ、そうでしたね。
私がここにいるのはあの御方のお陰ですよ。ええ、彼には随分と
お世話になりました。タイムマシンを使って私を呼んでくれたんですからねぇ。
地獄にいた私と、超サイヤ人になれなかった孫悟空を殺せた未来の私。
この2つが融合したのが、現在の私です。」
フリーザは笑みを消し去りメタルクウラの全身を射抜くように見つめる。
そしてスカウターの数値を確認しながら、再び笑みを浮かべた。
「貴方は、本物の兄さんでは無いようですねぇ。どうやら、機械化された
体のようです。それにしても、何故あのような戦闘力の低そうな連中と
つるんでいるんですか?仮にも貴方は我が偉大なる一族の1人。
悪い事は言いませんよ、私と共にこの星のドラゴンボールを探し出し
野望を叶えようじゃありませんか……」
フリーザはクウラの目を見つめ、残忍な笑みを浮かべた。
>「あっもしもし、お布団用意してもらっていいですか。何人か酔いつぶれちゃったんで」
宴会は終わった。ジェンタイルは一足先に、一人で床の間へと移動していた。
メタルクウラは旧知であるフリーザ達と、密談に臨んでいる。
ローゼンは、分からない。未だに騒いでいるのか、それとも酔い潰れているのかすら。
>「あー、愉快だなあ。楽しいなあ」
「良かったじゃないか。最後にいい思い出が出来て」
ジェンタイルの背後から、声がする。一切の音を引き連れずに、影がいつの間にか立っていた。
窓から差し込む月光に照らされた影の顔からは、赤らみが消え去っている。
表情も、微笑みだけが静かに揺蕩っていた。
「さぁ、行くぞジェンタイル。世界を変えに」
手を差し伸べる。だが返って来たのは右手の温度ではなく、戸惑いの面持ちだった。
影の面持ちから笑みが消え失せる。彼は代わりに眉を顰めて、怪訝の色を滲ませた。
「……何だ、怖気付いたか?平穏で愉快な生活が愛おしくなったか?」
影の顔つきは定着しない。
訝しみの次は、無表情へと、徐々に変化していく。
「悪いのかよ、とでも言いたげじゃないか。だから答えてやろう」
一拍の静寂を挟んで、口が開かれる。
「別に悪くなんかないさ」
あっさりと、影は言ってのけた。
「悪役に必要不可欠な物を教えてやろうじゃないか。それはな、目的へと突き進む確固たる決意と姿勢だ。
昨今の悪役が主人公の説教であっさり改心して不評を得たりしているのは、それがないからさ。
勿論この前言った『絶対悪』、意志なき殺人機械は決意なんて持ってないが……代わりに徹底してる。
字面通りの意味で、冷たい鋼鉄の心を搭載していると言う訳だな」
静かな声色で、言葉は続く。
「……例えば長き生の果て人間に絶望して、例えば最愛の人を失って、例えば自分の故郷が滅亡の危機に瀕していて、
悪の道に身を沈めるほどの何かがあったと言うのに、それが場合によっては未成年の青二才の言葉で覆る。
そんな悪役は、もしかしたら美しくはあるのかもしれないが……私に言わせれば不純で成り損ないの悪だよ。くだらない」
言い終えて、影は視線を横に逸らしながら嘲笑を零した。
「だからジェンタイル。その決意がないお前は、文字通り悪くないんだよ。
未来永劫、悪役にはなれやしない。世界を変えたりなんか、出来る訳がない」
ジェンタイルを見下して、影は右手を胸の高さに掲げた。
「……町の外で、私は十分だけ待とう。もしお前が決心出来ないのなら、ここでお別れだ」
次に会った時は敵同士だなと言い残して、影が指を弾いた。
薄暗い部屋に快音が響いて、次の瞬間には影の姿は宵闇に溶け去っていた。
「……来ない、か。仕方ないな。それがアイツの選んだ最良の道だと言うのなら」
町の外壁に背中を預けていた影は溜息を一つ零す。
そして再び、右手を掲げて指を鳴らそうとしていた。
【発破かけました】
>>336 >「あんな役立たずのパパはもう必要ありませんよ。あぁ、そうでしたね。
>私がここにいるのはあの御方のお陰ですよ。ええ、彼には随分と
>お世話になりました。タイムマシンを使って私を呼んでくれたんですからねぇ。
>地獄にいた私と、超サイヤ人になれなかった孫悟空を殺せた未来の私。
>この2つが融合したのが、現在の私です。」
世の中は不思議なことで満ち溢れているな。
死者蘇生があったことも驚いていたが、違う世界の自身と融合とは。
どうやって融合したのかを聞いてみようと、私は思っていたが、フリーザはスカウターを弄る。
これは、バレたか?
いや、地獄に行っていたのならば、死んだクウラと出会っていてもおかしくはない。
最初からバレていたかもしれんな。
>「貴方は、本物の兄さんでは無いようですねぇ。どうやら、機械化された
>体のようです。それにしても、何故あのような戦闘力の低そうな連中と
>つるんでいるんですか?仮にも貴方は我が偉大なる一族の1人。
>悪い事は言いませんよ、私と共にこの星のドラゴンボールを探し出し
>野望を叶えようじゃありませんか……」
とんでもないプレッシャーが私を襲う。
さすがはフリーザと言ったところか。
しかし、私だって意地がある。
友を馬鹿にされたままでは終わらない。
「確かに、現在の私を含めて戦闘力は高くない。
私は本体のクウラの数百万分の一の戦闘力しかない。
だが、奴らは宇宙でも稀に見る特殊な技能を持った存在だ。
精霊と言う存在を知っているか?
精霊は永劫の存在とされ、奴らはその精霊とコンタクトできる。
その精霊の力を借りて、奴らは不可思議な力を起こすことができるのだ。
例えば、死者を蘇生させることとかな」
普通の魔法でも死者を生き返らせることは可能だがな。
「私は精霊の調査をし、可能ならば精霊を捕縛して、精霊の力を持つ私達を量産するつもりなのだ。
そして、私は不老不死への到達も、永劫の存在である精霊が絡んでると睨んでいる」
はっきりと言おう。
適当なことを言っただけである。
「すまんな。私はドラゴンボール集めよりも、こちらを優先する」
>332
ネタ振りに応えてジェン君が帯を引っ張った!
「あ〜れ〜〜〜〜〜〜!」
これぞ以心伝心。最高の相方だよ。僕にツッコミきれるのはジェン君しかいないよマジで!
ここで記憶は途絶え、次に目覚めた時からシーン再開。
「う、うーん……」
もそもそと起き上がる。
「なんでこんなものを……!」
変なカチューシャを外す。
そうか、脱がされて変なテンションになったまま飲みに突入して酔いつぶれて奇行を繰り広げた挙句寝てしまったのだ。
布団をかけてくれたのは誰だろう。ジェン君やクウ君はどこに行ったのかな。
「……。まずい……!」
一刻の猶予もない状況なのを感じ、切羽詰まった表情になる。
『どうしたの? 我は何も感じないよ?』
そりゃ精霊は感じないだろう。
「……漏れそう」
『えぇええええええええ!? あんなに飲むからだよ! 早よ行け!』
ダッシュしたいところだけど足がふらついて思うように歩けない。
おまけに方向感覚も分からない。
>339
どこをどう歩いたのか、目の前にあった扉を開けると、クウ君とオーナーの宇宙人が密談っぽいことをしていた。
どいつもこいつも何で僕を差し置いて内緒話してるんだ! でも今はそれどころじゃない!
「ヤバイ、ヤバイよ! トイレどこ!? 漏れる漏れる!」
『あぁああああああ! 我がマスターながらこれは酷い! すいません! 視聴者の皆さんすいません!』
>>336>>339>>340 >>338 >「……町の外で、私は十分だけ待とう。もしお前が決心出来ないのなら、ここでお別れだ」
悪意から色を抽出して大気を染め上げたような闇に、大先輩は消えていく。
冬の夜更けの身を刺すような空気を肺に入れて、白の煙を吐き出した。
ゆっくりと。思考を冷却する。
大先輩の言う事はもっともだ。俺には、悪に染まるだけの過去も理念も信念も何もない。
悪くない。
悪にはなれない、ということ。
この狂った世界をどうにかしたいという漠然とした夢想はあっても、理想と夢想は違う。
明確に現実を変えるのに必要なのは、夢じゃなく理屈。理(ことわり)を通さんとする想い。
それが理想。それこそが悪の必須条件。
「……はっ、」
口の中に生まれた苦味を、俺は息と一緒に吐き捨てた。
くだらねー。悪がそんな小難しいこと考えてたまるかよ。
あるじゃねーか、もう一つ。悪役が悪役足りえる心の最終進化系。
メタルクウラは店長とどっか行った。ローゼンはお花摘みに行って戻らない。
座敷には坊さんたちとハムの人の芸人軍団、それからブロリーなんかが雑魚寝していた。
暖房効いてるから風邪引くことはないだろうけど、念のため腹だして寝てる連中に布団をかけ直してやる。
今この部屋で起きてるのは俺一人。独壇場だ。何だって出来る。――悪いことだって、出来る。
手始めに全員の額に"肉"と書いておく。油性ペンだ。
それから寝てる奴らの服の袖同士を固結びに結束。しかるのちに粘着テープで布団に固定しといてやる。
「…………」
鞄からルーズリーフを一枚抜き出して、『さがさないでください』それから『決勝で会おう』とペンを走らせる。
俺の名前を書き添えて、机の上にペンと一緒に置いておいた。
ヒートテックの肌着の上にパーカーを着て、上等な毛の外套を羽織って。さてさて支度は完了した。
寝てる連中を起こさぬよう、起きてる連中に気付かれぬよう、抜き足差し足で座敷を出て、俺の分だけチェックアウト。
だいぶ財布も軽くなっちゃったなあ。まあ道中でモンスターを倒していけば宿代ぐらいは確保できるだろ。
魔法使いにとってMPの枯渇問題は死活問題だ。ゆえに新しい町についたら最優先で宿屋を捜す。これ旅の鉄則。
かに将軍の前でタクシー捕まえてトアル郊外まで出ると、果たして大先輩は闇の中で案山子のように立っていた。
>「……来ない、か。仕方ないな。それがアイツの選んだ最良の道だと言うのなら」
独り言でけーよ。ひきこもりになると人と喋る機会がめっきり減るから自然と独り言が多くなるらしいね。
テレビとかゲームに日常的に突っ込み入れてる奴は要注意だ。人前でその癖でちゃうと恥ずいぞ!
「選択したぜ大先輩。決意とか覚悟とか、そういう難しい話はまだわかんねーけどさ」
俺は掌に出現させた火の玉を松明代わりに闇を光で食い荒らしながら、壁にもたれる大先輩の顔を照らし出した。
「俺は今の世界が気に入らねえ。だから変える。これは俺の趣味だ。休日ホビーだ。俺自身の私利私欲の為なんだよ。
信念も説教も、初めから知ったこっちゃねーのさ。……こういうのも、ある意味悪役らしくて良いだろ?」
悪役の美学に造詣深い大先輩の琴線に触れるかどうかは分からないけど、俺は闇の向こうへゆっくり拳を突き出した。
俺は、趣味で世界を変える。
>>339 >「すまんな。私はドラゴンボール集めよりも、こちらを優先する」
クウラの返答を聞き、フリーザは少しだけ残念そうに溜息を漏らす。
しかしすぐに携帯電話を取り出し何処かへとかけ始めた。
「あ、どうも。カニ将軍の社長のフリーザですよ、オッホッホ。
実はナメック人の奴隷が足りなくなったので補充をお願いしたいと
思いましてね。ええ、なるべく長持ちしそうなのを頼みますよ。」
電話を終えるとバックルームの外、ジェンタイルのいた店内を指差す。
そしてフリーザはスカウターの数値を確認すると微笑を浮かべた。
「兄さん、貴方のお仲間が1人。いや、2人ですかねぇ。
この場を離れたようですよ。いいのですか?大切な仲間を引き止めなくて。
しかしその精霊とやらは興味がありますねぇ。私も調べてみましょうか。
それでは私はこの辺で。また、お会いしましょう。飲食業は忙しいんですよ・・・ホッホッホ」
フリーザはポッドに飛び乗ると奥の部屋へ入っていった。
私はなんとなく目を覚まし…目の前の光景に目を疑った。
辺りは石畳に石造りが目立つ、どこか見慣れない町並み。
慌てて立ち上がるとガチャガチャと金属音がして、自分がプレートメイルを着ていたと気付く。
背にはご丁寧にハルバードまで負っていて、どうやら体格まで恐ろしく良くなっている。
(何このネトゲっぽい夢…)
月並みに頬をつねろうとしてリアルなヒゲの感触にぎょっとする。
(…寝すぎて乗り越さなきゃいいけど)
我ながら素晴らしい適応力で思考を切り替えると私は町を歩いてみる事にした。
少し歩くと怪しい小道具に囲まれた小屋が目に入った。
看板には《占い婆チェーン・トアル支店》と書かれている。
「あのー、この夢から出たいんですけど」
小屋の中のいかにもな姿の老婆に訊ねると、老婆はふひゃひゃ、と笑った。
「この世界…お前さんは“夢”だと思ってるけどねえ…それが目的を達したら出られるさ。
ああ、でもまずは、お前さんのこの世界での姿を教えといてやろうねえ。ほれ」
名前:ガッチー
性別:男
年齢:22
外見:筋骨隆々の大男
職業:戦士
装備:プレートメイル・ハルバード
特技:地脈を操る
備考:>47のテンプレに、どこかの寝ぼけた霊が憑依したもの。
原作者と違って性能は悪い。
このレスの秒数(奇数/偶数)でポジション(勇者側/敵側)を決定。
たっぷり1分は絶句した後、ようやく私は口を開いた。
「で、この世界の目的って何なんですか?」
「いつの間にかハムの人おらんようになりましたね。いいんですか?」
山崎はカニ鍋をつっつきながら一人ぼやいていた。
浜田はその横で店員の宇宙人おねえちゃんの谷間を凝視している。
そして遠藤は、ポケットビスケッツの「グリーンマン」を熱唱していた。
「千秋ぃ!!俺のう、歌を聴いてくれぇ!!さ、再婚してとは言わないが!!
もう1度だけ###させてくれ〜♪」
浜田はおねえちゃんの尻を触りながらカニ鍋の中からカニの甲羅だけを取り出し
味噌を啜り始める。その顔は、皺が眉間に集まり不気味かつブサイク過ぎた。
「あ〜美味いわぁ。戦いの後の食事は格別やで!!ハムの人なんてどうでもええやん。
どうせまた1人で山に篭って警官隊と戦ってるんちゃうかぁ?」
やがて宴会の時は流れていき、皆がダウンダウンしていく。
その時、起き上がった山崎は書置きを見つけ絶句する。
>『さがさないでください』それから『決勝で会おう』
「は、浜田さん!!あ、あの、シュッとした顔の子いなくなってますよ!!」
無理やり起こされた浜田は不機嫌そうな顔で書置きを凝視する。
その2つの眉間が脈動し、ローゼンを見やる。
「あいつ、出て行きよったなぁ。で、どうすんの自分。」
その時、ガラガラと店の扉が開いた。
新たな隊長が招集されていたのだった。
「こんな時間になんやねん……」
坊主頭の男、ヒトシは眠気ナマコでローゼン達のもとへ歩き出した。
何故かステテコ姿で。
>「選択したぜ大先輩。決意とか覚悟とか、そういう難しい話はまだわかんねーけどさ」
>「俺は今の世界が気に入らねえ。だから変える。これは俺の趣味だ。休日ホビーだ。俺自身の私利私欲の為なんだよ。
> 信念も説教も、初めから知ったこっちゃねーのさ。……こういうのも、ある意味悪役らしくて良いだろ?」
影が指を鳴らそうとした刹那、赤みがかった灯りが彼の顔を照らした。
虚空に浮かぶ炎の主は、炎の四大精霊と契約せし者――ジェンタイル。
「来たか……。それにしても、強情を張ったものだな」
一度解かれた右手が、再び打楽器の構えを取った。
体の奥底から力を迸らせて、暫しの無言と共に影はジェンタイルを直視する。
「……ふっふ。だがまあ、いいだろう。合格点をやろうじゃないか。
その『我侭』を、お前が貫き通せると言うのならな」
笑みが零れた。同時に影は指を弾く。
瞬間、周囲にジェンタイルの炎が薄らぐ程の光が満ちた。
白昼の如き光は、影の体躯の芯から横溢していた。
丁度、業火に投じた炭が赤熱するように。
「それじゃあ、行こうかジェンタイル。……あ、ちなみにこの明かりは後の伏線だったりするから覚えておけよ。
こうやって未知の力をこっそりと覗かせておくのは、地道だが悪役の大事な仕事の一つだからな」
ふふんと口元を吊り上げて笑いながら、影は講釈を垂れる。
「ともあれ、まずは王都へ向かうとするか。これからどうするにしろ、あそこはこの国の中心だ。
全ての道は王都に通ず、だ。それに……あそこには聖地もある。とは言え、今のお前にどうこう出来る物じゃないがな」
光の横溢する指先で、夜闇にこの国の地図が描かれた。
トアルの町と王都が、輝きの筋によって結ばれる。
間に挟まれているのは、巨大な山脈と小さな村。
「まずはこのトアル山脈を超える事になるな。そこから一日もしない内に、村がある。
えぇっと、ここは確か……湖畔村とか言ったかな。それじゃあ、行こうか」
ジェンタイルに歩調を合わせて、影は歩き出した。
そうして山脈に踏み込んでややあってから、彼が思い出したように人差し指を立てる。
「あぁ、ちなみに私は石鹸おじさんの時と同じように画面上方に名前の表示されない方向で行くから安心しろ。
頼りにしてくれて構わないぞ。……おっとぉ?早速お出ましだぞ、ジェンタイル」
木々の隙間から宵闇の幕を切って、魔物が現れた。
「ふふん……所詮は格の違いすら分からない低級な奴らだな。さて、それでは行くぞ!」
意気揚々と影が叫ぶ。
そして、
「かげは ゆかいそうに ジェンタイルのせんとうを ながめている」
影は愉快そうにジェンタイルの戦闘を眺めていた。
「ん?どうした?ほらほら余所見をしていたら危ないぞ。
頼りにしてくれて構わないとは言ったが、期待に応えるとは一言も言った覚えがないからなぁ」
再び得意げな笑みを浮かべて、彼は嘯く。
「まぁ気が向いたら援護くらいはしてやるが、実質お前の一人旅って訳だな。
つまり麻痺に陥ったりしたらその時点でゲームオーバーか。ははは、大変だなぁジェンタイル。はっはっは」
快活な笑い声が夜山に響いて、更に魔物を呼び寄せた。
「……と、まぁこの後もジェンタイルが昏睡魔法を食らったり
魔法封じを持つ相手に先制されたけど奇跡的に何もされずに済んだりと
色々あるんだが……それをいちいち記していくのは非常に骨が折れるんでね」
誰にともなく影はそう言って、指を鳴らした。
快音が響き渡り――
「――さて、湖畔村に到着したな。凄いじゃないかジェンタイル。まさか死なずに到着出来るとは思わなかったぞ。
で、どうするんだったかな?宿屋を探すんだったか?……おいジェンタイル、返事をしろ。
この世界じゃ返事をしない奴は字面通りに問答無用でしかばね扱いなんだぞ。なんてな、冗談だ冗談。はっはっは」
【湖畔村に到着】
>>340>>341>>342 >「兄さん、貴方のお仲間が1人。いや、2人ですかねぇ。
>この場を離れたようですよ。いいのですか?大切な仲間を引き止めなくて。
>しかしその精霊とやらは興味がありますねぇ。私も調べてみましょうか。
>それでは私はこの辺で。また、お会いしましょう。飲食業は忙しいんですよ・・・ホッホッホ」
「うむ、また機会があれば会おう」
フリーザは退出した。
私は急いでパワーレーダーを起動させると、確かにジェンタイルの戦闘力はこの場から離れた場所にあった。
石鹸悪魔であるローティアスの先輩の反応も、ジェンタイルの隣にある。
私達に黙って出ていくとしたら、私は怒ってやる。
>「ヤバイ、ヤバイよ! トイレどこ!? 漏れる漏れる!」
偶然にもローゼンがやってきた。
急ぐことになりそうなので、わざわざ迎えに戻らなくていいのはありがたい。
私はローゼンの肩を触り、共に瞬間移動した。
たどり着いたのはジェンタイル達の目の前。
「私はお前の道を見させてもらうと言ったはずだ。
どの道を行こうとするのかはお前の勝手だ。
だが、私に黙って行こうとするのは許さん。
お前の義務は、世界を変えて行く姿と結果を私に見せることだ」
占い婆は宙を見つめて
「偶数秒だったねえ」
と呟くと、さらりととんでもない事を言った。
「お前さんがここから出るには、世界を破壊しないとねえ」
「…無理!大体破壊って何!!ていうか多勢に無勢で私が殺られる!!!」
私の抗議も占い婆は意に介さない。
「目的を悟らせないよう巧くおやり。因みに破壊の解釈は任せるよ」
只でさえ酷過ぎるミッションなのにレギュレーションまで酷いらしい。
「あと一人称が被ってるからどうにかするといいねえ…」
占い婆は追い討ちをかけるように言うと姿を消した。
>341 >347
なぜか瞬間移動させられた。寒風吹き抜ける外に。嫌がらせか!?
「ああああああ! クウ君いきなりどこ連れてきてんの!? ここでしろってか!?」
が、目に飛び込んできたのは大先輩とジェン君の姿だった。
「ジェン君……?」
ジェン君は今まさに悪い先輩に唆され連れていかれようとしていた!
俗っぽく見せかけて油断させて酔い潰れてる間にジェン君に悪いことを吹き込んだんだな!
あいつの掌中にまんまとはまったってわけだ! あいつ文字通り悪魔だ!
>「私はお前の道を見させてもらうと言ったはずだ。
どの道を行こうとするのかはお前の勝手だ。 だが、私に黙って行こうとするのは許さん。」
クウ君の言葉が終わるのも待ちきれずに僕は叫んだ。
「行かないで!」
形振り構わずに追いすがる。
「世界を変える旅なんてしてたらもう一年浪人しちゃうよ! せっかく勉強教えてあげたのに!」
元素が美少年に擬人化された萌え萌え元素辞典を使ってイオン結合や共有結合について熱い講義を聞かせてあげたものだ。
といってもジェン君が浪人生なのかはよく知らない。
「キミはただの村人なんだよ! 世界を敵に回すような壮絶な過去もないでしょ!?
そんな歴史に名を刻むような事をしなくても何事もなく平和に楽しく暮らせればそれでいいじゃん!」
言っても無駄だと分かっていたけど、言わずにはおれなかった。
我ながら夢が無いけどそれで結構。僕は世界を敵に回してまで夢を叶えたいとは思わない。
その代わりあるのが当然過ぎて大事と思った事もないような大事なものを僕の側から奪っていくやつは許せない。
大先輩を睨み付ける。前を押さえながら。もう限界だ。
漏らしたらジェン君に一生ネタにされる! それは最悪だ! 辺りを見回す。あれだ!
「いつかボコってやる! 覚悟しとけ!」
そう言い放ち、近くにあった噴水の中に飛び込んだ。
「てりゃああああああああああああああッ!!」
金管楽器にも似た甲高さを孕んだ、しかし爆音の如き大音声を兼ね備えた裂帛の気合が響いた。凄まじい大声が周囲の木々を鳴動させる。
ここは湖畔村から程近い位置にある森林だ。水場がすぐ近くにあるこの森は野生の生物からすれば、根城とするに最適な地形だった。
故にここには人畜無害な小型獣から、結界がなければ一晩で村一つを壊滅させてしまうような正真正銘の化物まで、数多くの魔物が存在している。
「これで……!トドメです!!」
そんな森の中で、一人の少女が戦っていた。鋭利な視線の先に聳え立つのは背丈が彼女の倍近くある、猿人系の魔物だ。
筋骨隆々の肉体は剛毛に覆われていて、両の眼には野獣の本性だけが宿り、四肢の末端と口内を飾る爪牙は酷く鋭い。
だが少女に臆した素振りは見えなかった。それどころか彼女は強く地を蹴る。発揮されるのは砲弾にも勝る超高速。
振り下ろされた鋭爪の迎撃を掻い潜り、少女は猿人獣の懐に潜った。
そして――拳を叩き込む。
軸にした腰の横回転から生じた慣性を上乗せした拳の鉄槌は、猿人獣の堅牢な腹筋をも物ともしない。
猿人獣の体がくの字に曲がって吹っ飛び、それきり起き上がってはこなかった。
「ふぅ……終わりましたよぉ!家探ししちゃいましょー!」
汗を拭い、少女は周囲に向けて呼び掛けるように叫んだ。
彼女の名はリヨナ・リリウム。クラスは『衛士』だ。本来は王都の守護が使命である衛士だが、彼女達は国王直々の命令でここにいる。
「ありましたかぁ?」
「……いいや、ありゃしねえな。転がってるのはどれも動物の骨だ」
国王の命令には、先日の天から降り注いだ数多の光柱が関係していた。
魔物が蔓延るこのご時世、人が集まる所には魔除けの結界が張られている。
とりわけ王都のそれは強力で、驚異的な威力の光柱を受けてもヒビ一つさえ刻まれる事は無かった。
しかし僻地の村や町となってくると、話は別だ。甚大な被害が出たと報告の上がってきた町村も少なくなかった。
中には他方に手を貸す余力のない所、自力での復旧復興が不可能な所もあった。
そのような町村に対して国王の計らいによって、被害の全く出なかった王都の人員が派遣される事になったと言う訳である。
光柱とは直接関係の無かった湖畔村にも、やはり王都以外からは人員が割けない為リヨナ達が派遣されたのだった。
「駄目だ。見つからねえ。こりゃ噛み砕かれたか、さもなきゃ鳥獣の餌にでも……」
猿人獣の巣を這い回っていた衛士の一人が、額に浮かんだ汗を拭いながら愚痴を零す。
と、次の瞬間リヨナは彼の鼻先に人差し指を突き付けていた。
「駄目とか言っちゃダメですよぉ!絶対に見つかります!お父さんお母さんだって、待ってるんですから!」
リヨナ達は、とあるモノを探していた。彼女達が探しているモノ、それは――
「絶対、メルフィちゃんは見つかりますよ!さあ、次行きましょう!次!」
メルフィと言う名の、少女だった。村人全員を蘇生した後で、娘がいないと騒ぐ夫婦がいたのだ。
村中を隈なく探索したが、死体の欠片すら発見出来なかった。
そこで魔物に餌として死体を持って行かれたのではないかと言う推論が挙げられて、衛士達は近隣の魔物の巣を探索する事になったのだ。
かくしてリヨナ達は次なる魔物の巣へと向かう。
「……これはまた、大勢で歓迎してくれたモンですねぇ」
彼女らを出迎えたのは、森の木々が開けた広場に数え切れないほど跋扈する、小型の獣竜だった。
体躯は小さいが代わりに小回りが利いて素早い。更に爪牙も先の猿人獣に劣らず尖鋭だ。
そして何より、数が多い。獲物を囲み、巧みな連携を以て消耗を誘う手管は、熟練の狩人と呼ぶに相応しい。
「だがよぉ……チームワークなら俺達だって負けてないぜ!!」
「おぉともよ!揃いも揃って女の居ねえ俺達の結束は鋼をも上回るぜ!?」
「え?」
「え?……え?ちょ、はぁ!?お前まさか」
「いやぁ……実はこの前の休暇に酒場で……」
「はぁあああ!?……あ、無理。もう俺お前とチーム組めねえ!」
「えぇえええ!?鋼をも上回る結束は何処へ行ったんだよ!?」
「いや、無理無理!俺もうお前がアイツらに襲われたとして咄嗟に助けられる気がしないも……いってえ!?」
純然たる敵地の中で俄かに始まった漫談を、リヨナは二人の頭を掴んでかち当てて断ち切った。
頭蓋の内側で蠢動する鈍い痛みに頭を抱える二人に、呆れの溜息が零れる。
「バカな事言ってないで、さっさとやりますよぉ!」
両拳を握り締め、体の前で強く打ち付けて、リヨナが先陣を切り飛び出した。
散々戯言を飛ばしていた二人も表情に真剣味を宿して、追随する。
「ハイハイこちら王国民生活センターでーす!庶民からの通報がありましてね、ちょっとガサ入れさせて頂きますよぉ!」
対立が決定的となり、獣竜が二匹跳躍する。
鋭利な爪が左右同時に振り下ろされ、だがリヨナは怯まず前に踏み出した。
上体を大きく後ろに逸らし、反作用を右脚に乗せて振り上げる。上段の回し蹴りは獣竜の爪よりも遥かに長い間合いを誇る。
一匹目の首の骨を粉砕した確かな手応えが右脚から伝い、更に振り抜いた。
微塵も威力の減衰していない蹴りは二匹目の頭部に命中して、頭蓋を砕く。ちっぽけな脳と眼球が四方八方へと散乱した。
退けたが――たかが二匹だ。次が迫る。蹴り足が再び地面の感覚を得るよりも早く、間隙を置かず牙を向いた獣竜が正面から。
対してリヨナは――倒れる。重心調整を放棄して、敢えて自ら背中を地面に預けた。すぐ頭上で、鋭牙の噛み合う音が響く。
倒れ込んだ勢いを殺さず、リヨナが体を丸めた。手首を返した状態で両手の平を地面に付け、頭上の獣竜に両足を蹴り出す。
下顎もろとも脳髄を破壊されて、獣竜が断末魔の悲鳴を上げた。
「チョロいですよぉ!」
気合いと興奮が腹の底から雄叫びとなって戦場を奮わせる。
と、不意にリヨナの背後でけたたましい鳴き声が響いた。
「っと、危ないあぶな……」
しかしリヨナは危なげなく身を躱して――獣竜の爪が頬を掠めた。
「あ……」
声が漏れた。皮膚がぱっくりと切り裂かれて、鮮血が溢れる。同時に彼女の思考をたちどころに靄が覆った。
息が乱れて、湿気が混じる。地に縫い付けられたように止まった足は、微かな震えさえ帯びていた。
獣竜の爪に毒があった訳ではない。寧ろ原因はリヨナ、彼女自身にある。何を隠そう彼女は――
(あぅ……気持ちいいよぉ……)
――マゾだった。マゾヒスト、被虐趣味、彼女にとって戦闘中に齎される痛みは、快楽でしかないのだ。
(ちょっと……我慢出来ないです……。ちょっとだけ……)
周囲から追撃が押し寄せる。リヨナはその全てを体裁きで、紙一重で躱した。真紅の筋が次々と彼女の白い肌に刻まれていく。
伴って、彼女の表情は蕩けていった。傷口の奥で灯った痛痒の炎が溶けて、神経を伝って下半身へと流れ落ちていく。
「ふぅ……んっ……」
まだ避けられる、まだ逆転は出来ると、リヨナは劣情を脳髄から払拭出来ずに回避を続ける。
獣竜の一匹が彼女に飛び掛かった。遥か大上段から、大口を開けて牙を剥く。陽光を受けて牙が鋭利に煌めいた。
狙いは首元、喰らえば致命傷は免れない。
(ご立派な牙ですねぇ。……喰らったらきっと、すっごく痛いんでしょうねぇ。……えへへ)
それでもリヨナには、その鋭牙がとても魅力的な物に見えた。そして彼女は――牙を受け入れる。
牙の羅列が彼女の首に深く、食い込んだ。数多の神経が冒涜的に断ち切られる。電流に似た激痛が全身を駆け巡った後で、下腹部へと。
意識に暗幕をそっと掛けられる感覚が、殺人的な勢いで血液の失われていく酩酊のような感覚さえ、彼女には心地良い。
「あぁクソが!リヨナが喰われた!」
「引き剥がせ!最悪でも頭だけは守んぞ!」
同僚達の狼狽を宿した怒声が徐々に遠ざかっていった。体温が失われて、闇が視界の外枠を徐々に塗り潰していく。
そして、彼女は死んだ。
「――あ」
真っ暗だった視界に突然、光が訪れる。
長らく光を拒んでいた網膜は、視野を満遍なく白ませていた。
「あ、じゃねえよ。まーたやらかしやがったな」
横たわっていた体を起こしたリヨナは、背後から頭を小突かれた。
痛みに至らない軽い一撃は快楽には変化せず、彼女は振り返る。
「うぅ、面目ないです……」
「一発もらうとホント一気に崩れるよなお前。そう言う時こそ集中しなきゃだろ」
「あはは……返す言葉も御座いません……」
リヨナの性癖は、まだ同僚にはバレていない。一撃貰ったらつい次が欲しくなってしまう衝動を、彼女は焦ってしまうのだと誤魔化していた。
苦笑いと浮かべつつ背を丸め、しょげた様子を見せていた彼女は、しかし場所を教会から二階が宿屋を兼ねている酒場に向かう途中で、不意に顔を上げる。
「……そう言えば、結局見つかりましたか?」
同僚の衛士は無言のまま、首を横に振って答えた。
俄かに場を包む雰囲気が薄暗くなる。
「だ、大丈夫ですよぉ!メルフィちゃんは見つかります!……絶対に!」
精一杯明るく振る舞って、リヨナは根拠のない希望を主張した。
>>346 と、不意に酒場の扉が軋みを上げて開いた。見覚えのない、蘇生させる為に死体を集めて並べた時には無かった顔だ。
つまり旅人だ。出し抜けにリヨナが両手をテーブルについて、立ち上がる。
「もしかしたらここに来るまでに、死体を見てるかもしれないです。私、ちょっと聞いてきますね」
手短に言い残して、彼女は二人組の旅人へと歩み寄った。
「衛士隊のリヨナ・リリウムと申します!お疲れの所恐縮なのですが、道中で人の死体を見かけませんでしたか?
メルフィちゃんと言いまして、まだほんの小さな女の子なのですが……」
【新規参加します!よろしくお願いします!
湖畔村を訪れた二人組の旅人にメルフィちゃんについての話題を吹っかける】
トリップの次はID忘れてた!
つくづく自分は詰めが甘いなぁ
持ちキャラ増やして話を操作するなんて魂胆はなくてですね。単にやってみたかったからやったのです
ペースも遅らせるつもりはありませんので、どうか許して下さいな
>>354 「大丈夫やで、心配すんなや。そういう間違いもあるって。
いや、普通は気を付けたら大丈夫やと思うけど。
うっかりミスとかあるやろ?な?」
ハマタはPCの前に立つ人物の肩を叩き微笑んでいた。
その横ではジェンタイルとメタルクウラ達の近くにいつの間にか到着していた
山崎や遠藤が怪訝な顔で浜田を睨んでいた。
「なんやねん?ムカつく顔やなぁ」
「浜田さん、人のこと言えないと思うんですけど・・・」
「・・・・・・。」
(さて…ミッションが何であれ、まずはこの世界の仕組みを調べつつ力を付けないと…)
当面は旅人を装う事にしよう。レベル上げって奴だ。
となれば、するべきは適当に歩いて歩いて歩き倒す事だが、さて、どこへ行こうか。
奇数…湖畔村方面
偶数…トアル市内
教会の壁に掲示してあるタウンマップによると、
この町を出て山を越えると湖畔村という所に着けるようだ。
私はそこを目指す事にして、軽く荷物を整えると出発した。
山道は、適度に野生動物や低レベルモンスターが出現する
一人旅には最適な環境だった。
私の体はプレートメイルを着たまま山道を苦もなく歩くことができ、
絵でしか見た事の無いハルバードも握れば不思議と体が使い方を知っている。
時折モンスターを倒し、たまにはきずぐすりの世話になりつつ、
私はわずかな金とレベルを稼いで湖畔村に到着した。
次は、店や宿屋や酒場で村人の話を片っ端から聞いて回る番だ。
村の中央らしい、噴水のあるちょっとした広場に人だかりが出来ている。
(…もしかしてイベントフラグ?)
私は近寄って確かめる事にした。
>>346>>347>>349 大先輩に導かれ、いざトアルを発とうとしていた俺の目の前に、見覚えのある閃光。
やがて人の姿を二つ吐き出した現象の名前を俺は知っている。メタルクウラの瞬間移動――
>「私はお前の道を見させてもらうと言ったはずだ。どの道を行こうとするのかはお前の勝手だ。
だが、私に黙って行こうとするのは許さん。お前の義務は、世界を変えて行く姿と結果を私に見せることだ」
「うわちゃあ、バレちゃったか。ちゃんと書き置きしといたんだからそこは察して行かせてくれよ!
……決意とか、もう鈍らせたくねーんだよ」
メタルクウラに掴まれる形で、ローゼンが居た。何故か股間を抑えながら、困惑した目で俺を見る。
>「行かないで!」
>「世界を変える旅なんてしてたらもう一年浪人しちゃうよ! せっかく勉強教えてあげたのに!」
「や、やめろ!受験のことは言うな!」
ああ、目を逸らしたい現実。
俺は無謀にも王都の大学に行こうとそれ単願で受験して、ものの見事に落っこちたのだった。
いや、これから受験控えてる人ごめん。ちょっとネガティブな話になるけど、模試じゃあ結構良い線行ってたんだ。
センター英語で長文読解の例文があまりにも難解すぎた。言葉の意味はわかるんだけど、どういう文脈なのかさっぱり掴めない。
トムとキャリーが鉛筆と消しゴムのやおいについて論を交わし始めたときはこの世の絶望を感じたね。
訳読んでもわかんなかったもん。トム、お前男なんじゃあ……?みたいな。その頃は腐男子って人種を知らなかったもんなあ。
のちに意外と高学歴なローゼン先生にご教授願ったはいいけれど、ごめんなさい無理ッス。理解が及ばねーッス。
>「キミはただの村人なんだよ! 世界を敵に回すような壮絶な過去もないでしょ!?
そんな歴史に名を刻むような事をしなくても何事もなく平和に楽しく暮らせればそれでいいじゃん!」
だけど、その言葉だけは聞き捨てならなかった。
「勘違いしてもらっちゃあ困るぜローゼン先生」
俺は筋肉に絶妙な捻りを加えた立ちポーズを決めながら、ずっと心に秘めていた想いを放つ。
「俺はもともと悪い子ちゃんだ。そこの関しちゃ初期設定からブレた覚えはねえ。
むしろお前らに善人に唆されてちょっといい奴っぽいキャラになってたけどよー、もとより俺は世界の敵だ」
悪い先輩に影響されたんじゃねーんだよ。俺を唆してたのは、お前らの方だ。
だって俺、アウトローだもん。やんごとなき悪側のキャラだもん。
「壮絶な過去なんていらねー。それでも俺には世界を変える理由がある!何かって?決まってんだろ。
――受験のストレスだ!ムシャクシャしてやった、今は反省しているってな!」
だから。
だからもう、お別れだ。
>「いつかボコってやる! 覚悟しとけ!」
ローゼンは内股でしばらくぶるぶるしたかと思うと、大先輩に啖呵を切って噴水に飛び込んだ。
何やってんだあいつ。
「つーわけで、あばよローゼン、メタルクウラ。お前らと過ごした何年間か、楽しかった。愉快だった。
次会うときは正真正銘の敵同士だ。だから、これを最後の馴れ合いと決める」
俺はメタルクウラの拳に自分の拳を軽くぶつけて、ローゼンに手を掲げた。
さよならは言わずに。これで十分だ。
>「それじゃあ、行こうかジェンタイル」
大先輩が発光しながら言った。
「ってなんで光ってんの!?」
いやいやいや。出オチかよ。なんだこの先輩、まさかメタルクウラのポジションに滑り込もうってのか?
>「……あ、ちなみにこの明かりは後の伏線だったりするから覚えておけよ」
ああもう!大先輩は突込みどころ多くてネタに困らねえなあ!
もしかしたら、このボケは大先輩なりの発破のかけかただったのかもしれない。辛気臭い別れを、蹴り出す為の。
>「ともあれ、まずは王都へ向かうとするか」
「だな。あと俺今年のセンター試験も受けたいから、しばらく王都に滞在すんぜ」
辺境村の田舎者にとって全国共通一次試験は受けるだけでも一苦労だ。山脈越えていかなきゃいけないからね。
センターまでまだ期間はあるけれど、受験料払っといて受けれませんでしたじゃお話にならねー。
>「まずはこのトアル山脈を超える事になるな。そこから一日もしない内に、村がある。
えぇっと、ここは確か……湖畔村とか言ったかな。それじゃあ、行こうか」
あれ?仲間になった表示が出ない。まあNPC扱いかよ。
ちっ、仲間に入った途端に装備全部かっ剥いで売っ払おうと思ってたのによー。
>「……おっとぉ?早速お出ましだぞ、ジェンタイル」
「おー、ついに初のエンカウントバトルか!やったるぜ!援護は任せろ大先輩!」
魔法使いは後衛ポジションだからね!殴り合いとかマジ勘弁。後ろから砲撃が近代魔法戦の在るべき姿だ!
よーし早速広範囲滅殺全体攻撃魔法で焼き払ってや――
「ぐべぇっ!?」
殴られた。普通に殴られた。魔物たちは前衛の大先輩をガン無視し、まっすぐ俺を殴りに来た!
「ちょっ、大先輩!なにやってんスか!」
>「かげは ゆかいそうに ジェンタイルのせんとうを ながめている」
「前衛いいいいいいいいいいいい!!!」
>「ん?どうした?ほらほら余所見をしていたら危ないぞ。
頼りにしてくれて構わないとは言ったが、期待に応えるとは一言も言った覚えがないからなぁ」
アンタ小学生かよ!?そんな詐欺の仕方、きょうびお子様でもやらねえよ!
くそう、やっぱ思ったとおりこのおっさん中身子供だ!こんなんならローゼン達と旅してたほうが遥かにマシだった!
いきなり後悔。いやごめん、決意も覚悟も関係ねーとは言ったけれど、流石に想定外だわ。
「このおおおおおおおお!」
迫り来る魔物の腕、その先端の鉤爪が鋭く空を裂く。
弧を描く殺傷力の化身に炎弾をぶち当てることで逸らし、回避する。
頭を抱えて身を低くして、林立する魔物達の間を駆け抜けた。密集状態が上手く作用し、追撃は降ってこない。
どうにか殺傷圏から脱出し、暗がりの地面へまろび出た。
「炎精霊!力貸しやがれっ――」
無言。俺の言葉は虚しく虚空を駆り、シカトされたのをあざ笑うように魔物が攻勢に出る。
「あの、炎精霊さーん?」
鼓動のように、今度は微かに反応があった。
<<――ちょっと待って今ご飯食べてるから>>
ええええ!?精霊ってご飯食べるもんなの!?ていうか契約者の命の危機のが大事だろうがよ!
さっさとリンクしろよリンク!マジでヤバイの!囲まれてんの!大先輩役にたちゃしねーし!
<<――食事中に中座は禁止されているのである。お父さんに怒られるのだ>>
家族でご飯食べてんのかよ!四大精霊の威厳とかそういうのどこ行ったの!?
<<――この悪習のせいでワンピースが見れないのである>>
くそっ、こいつゴールデンタイムにアニメが見れない家庭なのか!なんて可哀想なんだ!
ていうか炎精霊さん自分の都合で動きすぎだろ。
他の四大精霊(水とか風とか)が倍率すげえ高いのにこいつだけ定員割れしてる理由が今分かった。
ローゼンがオススメしなかったわけだぜ!炎精霊は気難し屋だからって。最早そういう問題でもねーな!
大先輩と言いどいつもこいつも中学生かよ!
「えーい仕方ない!バトルパートは描写が面倒だからダイジェストで行くぜ!」
俺は地中の金属を鍛造しトラバサミを作って魔物たちの動きを拘束した!
中に昏睡系の魔法を使う魔物がいて俺は眠ったけど受験勉強の為に常備していた眠眠打破でステータス回復した!
魔法封じかけられたけど相手がそれ以外の攻撃手段を持ってなかったのでなんとか逃げ切った!
……ふう。こんなもんでいいかな。
>「――さて、湖畔村に到着したな。凄いじゃないかジェンタイル。まさか死なずに到着出来るとは思わなかったぞ」
「………………」
>「……おいジェンタイル、返事をしろ。この世界じゃ返事をしない奴は字面通りに問答無用でしかばね扱いなんだぞ」
沈黙状態(魔法が唱えられなくなるバッドステータス)のせいで俺は喋れなかった。
したがって文句の一つも言えなかった。くそっ、このぼっち悪魔、いつかぜってー倒す。下克上だ。
さてさてそんなこんなかくかくしかじか紆余曲折、まあいろんなことがあって、俺たちは湖畔村に到着した。
すげえな俺、一日で山脈越えちまったよ。あと一人であれだけの魔物相手にしたからかなり経験値入った。
レベルとか一気に10ぐらい上がったもん。バイキルト覚えた。攻撃力二倍にする奴。これで殴れってか。
>「衛士隊のリヨナ・リリウムと申します!お疲れの所恐縮なのですが、道中で人の死体を見かけませんでしたか?
メルフィちゃんと言いまして、まだほんの小さな女の子なのですが……」
なんでもなおしを使って沈黙を解除した頃、体育会系っぽい女に声をかけられた。
王都の衛士服。ギルドの連中か。そして聞かれた名前に覚えがあった。そういやここは全滅事件の現場かー。
メルフィちゃんの故郷。……あ。そういやあの娘を送り届けてやるみたいなこと言ってたな俺。しまったなあ。
「死体っていうか、ご本人様とつい昨日まで一緒にいたぜー。今どうしてるかって?
んっんー、お姉さんそりゃあタダで聞くのは野暮ってもんじゃない?んん?ほら、何とは言わないけどさあ
誠意的なものがやっぱこっちとしても欲しいなあ。わざわざトアルくんだりから情報持ってきた労力に見合う、ねえ?」
さっそくだが悪党っぷりを発揮してやるぜ。経験値は貯まったけど旅費が底を尽きそうで、今夜の宿代もままならねーもん。
というわけで情報売買。どうだい大先輩、俺ってかなりの悪だろ?
>>357 よろしくお願いします!湖畔村で一悶着してるので是非絡みにきてください!
>>349>>355>>358 >「うわちゃあ、バレちゃったか。ちゃんと書き置きしといたんだからそこは察して行かせてくれよ!
>……決意とか、もう鈍らせたくねーんだよ」
私は書き置きなんて見ていなかったがな。
>「いつかボコってやる! 覚悟しとけ!」
ローゼンが受験のことを持ち出してまで引き止めていたが、ジェンタイル決意は固い。
引き止められないと悟ったのか、ローゼンは噴水の中に入って先輩に啖呵を切った。
小刻みに震えているのは怒りからだろう。
>「つーわけで、あばよローゼン、メタルクウラ。お前らと過ごした何年間か、楽しかった。愉快だった。
>次会うときは正真正銘の敵同士だ。だから、これを最後の馴れ合いと決める」
私とジェンタイルは拳を合わせた。
「いいだろう。
私は貴様の最大にして最凶の宿敵として、何度でも立ちふさがってやる。
さらばだ、親友。そして、また会おう宿敵」
ジェンタイルは悪魔と共に去っていった。
私はまだ噴水に浸かっているローゼンを抱きかかえて引っ張り上げ、瞬間移動の態勢に入ろうとした。
「ん?ふふふ……まるで盛大なお漏らしをしたみたいだな、ローゼンよ。
それで思い出したが、トイレは大丈夫なのか?」
>「なんやねん?ムカつく顔やなぁ」
>「浜田さん、人のこと言えないと思うんですけど・・・」
>「・・・・・・。」
気がつけば同行していた傭兵部隊がこの場に来ていた。
「私達は旅館に戻るが、お前達はどうするのだ?
私に触れていれば、瞬間移動で一緒に連れて行ってやるぞ」
傭兵部隊にそう言って、私はメルフィの気を頼りに瞬間移動で戻った。
>「衛士隊のリヨナ・リリウムと申します!お疲れの所恐縮なのですが、道中で人の死体を見かけませんでしたか?
メルフィちゃんと言いまして、まだほんの小さな女の子なのですが……」
ジェンタイルに付いて宿屋に入ると、前のめりな勢いの声が影を出迎えた。
衛士を名乗る少女は、道中で死体を見なかったかとジェンタイルに問い掛ける。
「メルフィ……?何処かで聞いた名前だが……いまいち思い出せないな。お前はどうだ?ジェンタイル」
顎に右手を添えながら頭上を見て数秒、結局芳しい答えは浮かばなかった。
顔を上げたまま、隣にいるジェンタイルを横目で見下ろして、問いを受け渡す。
>「死体っていうか、ご本人様とつい昨日まで一緒にいたぜー。今どうしてるかって?
んっんー、お姉さんそりゃあタダで聞くのは野暮ってもんじゃない?んん?ほら、何とは言わないけどさあ
誠意的なものがやっぱこっちとしても欲しいなあ。わざわざトアルくんだりから情報持ってきた労力に見合う、ねえ?」
「あぁ、そうだった。しかしお前が答えてしまったから私は何もする事がなくなってしまったじゃないか。
仕方ないからまた講義でも垂れ流すとするか。そうだな……それじゃあ今回は『冒険について』語るとしよう」
ジェンタイルやリヨナの状態は全く気にかけず、影は目を瞑って人差し指を立て、語り出す。
「まず第一にだ、冒険には『目的』が付き物だ。例えば『自分探し』や『人探し』、
オーソドックスに『世界を救う』でもいい。お前の場合は『世界を変える』だったか。
時には『冒険する』事そのものが目的である場合もあるがな。ドラクエ7初期辺りがそうだな。
不評だったらしいが、私は結構気に入ってたんだ。……っと、話が逸れてしまったな。
とにかく冒険には目的があるが……それだけじゃ物語は成り立たない。
目的に辿り着くまでには幾つもの停車駅があり、そこでもまた小さな『目的』が生まれる訳だ。
『疫病を治療する為に薬の材料を取りに行く』とか『生贄を求める神を力尽くで鎮める』とかな。
全く関係のない小さな『目的』を達成していく事で、いつの間にか『最終目的』への鍵が手の内にあった……
なんて話もあったりするな。ちなみに『小さな目的』は、基本的に『イベント』と言う形で提示されるから覚えておくといい」
閉ざしていた目を開いてリヨナを見据え、影は言葉を再開する。
「そう言えばさっき、外の噴水の周りには人だかりがあったな。こんな夜更けに、
わざわざ篝火を焚いてまでしなくてはならない『何か』があるって事だ。
どうだ?ジェンタイル、何だか『イベント』の匂いがするじゃないか。
ちなみに『厄介事』と書いて『イベント』と読んでも全く問題ないぞ。はっはっは」
這い寄る騒動の気配に、影は口角を吊り上げて笑っていた。
差し向けた問いを出迎えたのは枷に縛られた真実だった。鍵を意味するのは対価、純然たる交換条件――情報売買だ。
露骨に嫌らしげな表情で代価を煽るジェンタイルにリヨナは後退り若干たじろぎ、しかしすぐに表情を決意で固めて一歩踏み出す。
「……分かりました」
頷き確かな肯定の仕草を見せた後で、今は酒場のカウンターにいる店主を振り返った。懐から取り出した一枚の金貨を指で弾く。
小気味いい金属音を奏でながら回転し、飛翔する金貨は狙いを過たずに店主の手元へと舞い降りた。
「上の部屋を一つ、お借りします。お釣りは結構ですよぉ」
手短に告げて、リヨナはジェンタイルを振り返る。そして彼の耳元に唇を忍び寄らせて、密やかな声色で囁いた。
「あの、私恥ずかしながら初めてなので優しくして欲しい……かなーとか。あとその……ずっと昔に張子を使ってしまった事はあるんですけど、
多分蘇生とか全身治癒とかでもう膜は治ってますから安心して突き破って下さい。一応優しくして欲しいとは言いましたけど、
乱暴なのがお好きでしたらどんなに乱暴にされても大丈夫ですよ。我慢しますから。
寧ろ正直な事を言えば乱暴にしてくれたらそれはそれで嬉しいな、なんて……きゃー言っちゃいましたよぉ。
あ、道具が使ってみたかったら是非お申し付け下さいね。専用の物は持ってないんですけど、
衛士隊に支給される短剣の柄とか使えますし、同じく支給品の拘束用ロープもあります。
革のベルトだって鞭の代わりになると思うんですよね。それに裁縫用の針だって持ってますよ?
こうやって地味に家庭的な所をアピール出来ると女の子してるなーって気がするんですよねぇ。
って、話が逸れちゃいましたねごめんなさい。えっと何処まで話したんだっけ。そうそう裁縫針でしたっけ。他にも道具は色々ありますよ?
お風呂場のタオルは目隠しに使えますし。あ、て言うかさっき短剣の柄って言いましたよね。
でも使ってみたかったら短剣の刃の方だって勿論大丈夫ですよぉ。切った張ったは職業柄慣れっこですから。
けど私焦らされるのはあんまり好きじゃない……いえ好きじゃない訳じゃないんですけど、何と言うかその、苦手でして。
あ、もしかしてこんな事言ったら逆にされちゃったりするんでしょうか。もしそうだったらお手柔らかにお願いしますね。
あとこれだけは流石に譲れないんですけど、子供が出来ちゃうような真似は絶対駄目ですからねぇ。もしやったら捻じ切りますよ。何処をとは言いませんけど。
私いつか綺麗なお嫁さんになるのが夢なんですよぉ。相手の人は優しくて誠実でカッコ良くて。あ、でも背はあまり高くない方がいいかなぁ。
だってあんまり背が離れすぎてると不意を突いて「えいっ」って感じにキスが出来ないじゃないですか。
やっぱり背伸びしたらギリギリ唇が届くくらいがベストですよねぇ。
あーだけど遙か大上段から見下されて罵倒の限りを尽くされるのも捨てがたいかなぁ。
そう、私は家畜に向けるような視線で俯瞰されていたと思ったら突然こう髪の毛を鷲掴みにされるんですよぉ。
当然それは痛いんですけど、だけどその髪の毛の根本に灯った痛みの炎はすぐに重力に従うように私のお腹の下ら辺に流れ落ちていくんです。
たったそれだけで私はもう蕩けちゃって、そんな私を彼はゴミのような扱いでベッドに投げ捨てて、小作りに臨むんですよぉ素敵だと思いませんか。
子供は最初に女の子が二人で、最後に男の子がいいなぁ。
貴方もお顔はまぁ悪くないかなーって思うんですけどぉ、初対面で交換条件とか出しちゃう根性には正直ドン引きしちゃいますよぉ。
こう言うのは押し付けるものではありませんけど、最初に善意100%で接しておけば結果として好意や信頼って言うリターンがあるのに勿体無いですねぇ全く。
あ、すいません。つい本音が出ちゃったんですけど、怒っちゃいましたか?けど大丈夫ですよぉ、その鬱憤は全部ベッドの上で晴らして下さいねぇ」
異常性癖を全力全開――いや全壊でリヨナは解き放っていた。語る内に勢いが生まれてジェンタイルの肩をしかと掴んで、更に体をしな垂れかけるように体重を預ける。
魔法使いの貧相な膂力では彼女の勢いを相殺する事など出来る訳もなく、二人の体勢はリヨナがジェンタイルを壁に押さえ付ける形に成り果てていた。
ジェンタイルの耳元で紡がれ続ける声には、徐々に湿り気と熱が孕まれていく。
>「そう言えばさっき、外の噴水の周りには人だかりがあったな。こんな夜更けに、
わざわざ篝火を焚いてまでしなくてはならない『何か』があるって事だ。
どうだ?ジェンタイル、何だか『イベント』の匂いがするじゃないか。
ちなみに『厄介事』と書いて『イベント』と読んでも全く問題ないぞ。はっはっは」
けれども横合いからの笑い声で、彼女の精神は若干の正常さを取り戻した。暫し沈黙し、それから数秒前の自分の暴走ぶりを思い出して、彼女の頬が真っ赤に染まる。
慌ててジェンタイルから離れると同時に、わたわたと両手が落ち着きなく宙で踊った。
「あ、あはは……そう言うのをお求めでしたか?えっと……すいませんでした!今のは是非何とか出来れば絶対に忘れて下さい!
で、えーっと……外の噴水周辺の人だかりでしたっけ?あれはお察しの通りイベントがあるんですよぉ。
この土地には昔から聖なる存在が眠っているって伝承がありましてね、毎年お祭りをしていたらしいんです。入念に準備してね。
でも今年はほら、本当なら準備している筈の期間に村が皆殺しにされちゃったじゃないですか。でもお祭りを中止する訳にはいかない。
だからああやって、急ぎでやっているんですよぉ。もうそろそろ、準備も終わるらしいですけどねぇ」
とか言いつつも宿屋で何回寝ても祭りが始まらないのがこの世界である。
冒険者の都合で大事なお祭りを無期限に延期してくれるのだから親切な事だ。
【聖なる存在を祀るイベントがあるよと】
>>361 「なんかドラクエみたいになってるなぁ。まぁドラゴンボールのフリーザもおるし
似たようなもんやろけど。」
浜田は青い座布団をしいた簡易椅子に座り神妙な面持ちで
コーヒーを飲んでいる。
松本は携帯で2ちゃんねるの創作文芸板を見て「キャラクター分担型小説」
の内容を把握していた。
「うわ、ここID出るやん・・・自演出来へんやんけ!!
わ、あかん!!別の板で自分にレスしてもうた!!」
>気がつけば同行していた傭兵部隊がこの場に来ていた。
>「私達は旅館に戻るが、お前達はどうするのだ?
>私に触れていれば、瞬間移動で一緒に連れて行ってやるぞ」
浜田はメタルクウラのツルピカ○ゲ頭に触れる。
同時に松本や遠藤、山崎もメタルクウラの
足や手、そして股間に手を伸ばす。
「すまんな、フリーザ。俺らも帰るわ。」
「浜田さん、フリーザちゃいますって。コルド大王さんですよ」
「山崎も浜田も何言うてんねん。こいつはクーラーやで。」
遠藤だけ近くにいたローゼンの塗れた股間を無言で凝視していた。
>358
>「つーわけで、あばよローゼン、メタルクウラ。お前らと過ごした何年間か、楽しかった。愉快だった。
次会うときは正真正銘の敵同士だ。だから、これを最後の馴れ合いと決める」
その言葉に、決壊するとは思ってなかった所まで決壊した。涙が溢れて止まらない。
契約精霊に扱いの難しい炎精霊を選んだり王都の大学に単願で出すなんて無茶をしたり
どうしていつもいつも僕の忠告を無視してハードモードな人生を突き進むんだろう。
世界を敵に回して、色んな人から憎まれて、それってすごく辛いよ!
『ああもう嫌だこの人! 色んな所から液体垂れ流すんじゃない!』
どうせ全身ずぶ濡れだ。バレないから大丈夫だ問題ない!
>「いいだろう。
私は貴様の最大にして最凶の宿敵として、何度でも立ちふさがってやる。
さらばだ、親友。そして、また会おう宿敵」
「分かったよ、次会ったら久しぶりに喧嘩だ!
負けないよ! 正義の味方は悪役には負けないんだよ! アホジェン!」
精一杯の笑顔を作り、手を振って見送る。
実のところ肩肘張って悪い子やるよりいい子にしとく方がずっと楽だし、正義の味方になるのは悪役になるよりずっと簡単である。
何も崇高な自己犠牲の精神とか持ってなくても、悪い事なんて出来ないヘタレが悪役と敵対関係になればそれすなわち正義の味方だ。
>361 >365
ジェン君の姿が見えなくなっても呆然とその方向を見ていると、クウ君に引っ張り上げられた。
>「ん?ふふふ……まるで盛大なお漏らしをしたみたいだな、ローゼンよ。
それで思い出したが、トイレは大丈夫なのか?」
「な……!」
恥ずかしさのあまり暫し返す言葉を失ったが、我に返って全力で否定する。
「へ、変な事を言うな! RPGの登場人物はトイレなんて行かない!」
>「私達は旅館に戻るが、お前達はどうするのだ?
>私に触れていれば、瞬間移動で一緒に連れて行ってやるぞ」
瞬間移動のために芸人軍団が集まってきて、団子状態になって帰ることに。
パンツ一丁の変態が変な所を見ているような!?
全身濡れてるから分かる訳ないんだけど見透かされてるような!?
「どこ見てんだよ、誰が漏らすか!」
>354
瞬間移動でかに将軍の前まで帰ると。
モシャスしたのはいいけど名札を変え忘れて正体がバレたらしくて悩んでいる名も無き精霊がいた。
「うん、気にしなくていいんだよ! 堂々と同じ名札をつけとけばいいんだ。
でもあんなにそっくりに化けれるなんてマジすごいね!
僕なんてどんな姿になっても一瞬でバレるのに!」
『何言ってんの!? さてはまだ酔っぱらってるな!
もしかしてキアリーとかポイゾナの類で治るんじゃない?』
そういえば解毒魔法で酔い覚ましってソードワールドのセッションではお約束のネタだった気がする。
まさかと思うけど試しにやってみた。
「レストア・ヘルス」
はたと思考がクリアーになる。寒い。
ジェン君がいなくなったから…………って何だよこの恰好! 寒いはずだよ!
『あ、治った』
裸芸人化から噴水ダイブまでの数々の放送事故を認識し、叫びながら転げまわりたくなる。
アホジェンのエロ精霊に脱がされてからというもの酷いキャラ崩壊をしてしまった。
僕は美少年の相手役にふさわしいイケメンなのに!
そうだ、美少年悪役ジェン君のライバルキャラに女は邪道!
「服を買おう、燃え盛る炎にこの正体を暴かれぬように」
そもそもスーパーの安売りの服の上に適当にそれっぽく防具つけて
正統派中世ファンタジーだぜ!とか言ってたからいけなかったのだ。
RPGの登場人物は燃やされようが真空刃で切り裂かれようがいちいちサービスシーンにはならない。
つまり防具屋で一式そろえればあんな放送事故が起こることもない。多分きっと。
丁度向かいにあった防具屋に入る。
「嬢ちゃん、それ男物だよ」
「普通防具屋のオヤジは黙っとくもんでしょ! いいの! 僕は協会員名簿でも住民票でも男なんだよ!」
「これなんかどうかね」
「ゴスロリじゃん! 今更リリアンとお揃いで白ゴス黒ゴスしろと!?
ってどっかで聞いたような組み合わせだなおい!」
うるさい防具屋のオヤジをあしらいながら選ぶ。
ジェン君が抜けたって事はもしかして画面表示キャラに昇格だったりして!? 気合いれていかなきゃ!
「これ一式下さい」
「ここで装備していくかい?」
「はい」
防具屋のおっさんがナチュラルに文字通り装備させようとしてきた。
「何するねん! 自分で着るわ!」
○○を装備”させてもらった”! って何気なく流してたけどこういう事だったのか!
クレジットカードで支払いを済ませ、店から出る。
ルーンが刻まれたオサレな革の肩当てと胸当て。余談だが男物の平らな胸当ては普通に合う。(むしろ女物はなぜか合わない)
別に底を上げてるようには見えないブーツ。(そりゃマジックアイテムだから実際にも底を上げてるわけじゃない)
体形をそれとなく隠すマントみたいなコートみたいなもの。
腰には綺麗な装飾のついた剣。(剣なんて飾りです。だって実際に使うのは精霊剣だもん)
ついでに頭にはいかにも魔法剣士なサークレット。
ステータス画面を開くと、言うまでもなく性別男で身長175cmと表示されている。
どこからどう見ても主人公系ど真ん中のイケメンだ。
これから男キャラを貫き通す! といっても普通にしてればそうなるだろう。
なぜならRPGの登場人物はトイレも行かないし風呂も入らない。
着たきり雀で着替える事もない。増してや戦闘中に脱がされたりしない。
『えー!? 漏らしてたの誰だっけ? 死因の一位が風呂での転倒なのは誰だっけ!?』
普通RPGではそんなものは描写されない。描写されないものは無い事になるのだ。
あったとしたら酷い放送事故だ。そんな酷い放送事故が一つの話で何回もあるだろうか、嫌、あるはずがない!
念のため大いなる存在に語りかけておいた。
「放送事故するなよ? 絶対放送事故するなよ!?」
私がさりげなく噴水に近付いている間に、喧嘩でもしていたように思えた人だかりは消えていた。
盛大な水しぶきにふさわしい人数が立ち去ったにしては、気配がなさ過ぎる。
(…消えた?)
考えながら広場を歩いていたら、村人達に囲まれてしまった。
「あいつらの仲間だな!」
「噴水に飛び込むなんて非常識やらかした責任取ってもらおうか」
「せっかく祭りに備えて池を磨き上げ、山の湧き水に入れ替えたのに」
「こりゃあもう一度磨き上げて水を入れ替えてもらわんとな」
「ああ、今すぐにだ」
奇数…走って逃げる
偶数…とりあえず謝り、言われた通りの作業をする
ガッチーさんどこにいるの?
>>368 「ん?何だか外が騒がしいじゃないか。……ほぉ、祭りの噴水に飛び込む馬鹿、か。
そう言えばトアル村の方でも、お前の友人……ローゼンだったかがまったく同じ事をしていたじゃないか?ジェンタイル
さて、ところで私は急に講釈が垂れたくなった。と言う訳で今回のお題は……『TRPGにおけるキャラクターの位置関係』についてだな。
TRPGのキャラクターと言うのは必ずしも同じ場所、また時間軸に存在する訳ではない。
場合によっては別行動、或いは先行した事によって少し未来に存在する事もあり得る。
時間に対して普通は『位置』と言う概念を採用したりはしないが、時系列の上での相対的な『位置関係』は存在するからな。
まあぶっちゃけた話をすれば、今私やジェンタイルがいるのは、ローゼン達よりもやや未来であり――別の場所と言う事になる。
それを間違えたり、誤って認識してしまうと、ちょっとした面倒に繋がったりもするんだな。
まあ時間軸に関しては激しく前後していなければスルーされる事もままあるんだが……まあいい。
ともあれこう言う場合は、まあ暫く与太話をしたりイベントの準備をしたりで足踏みをしているといいんだが……
おっと、誰かが濡れ衣を着せられているみたいだな。噴水に飛び込んだだけに濡れ衣か。なんてな、はっはっは。
おや? どうやらこちらに逃げてくるみたいだが……この暗さじゃ顔がよく分からないな。名もなき旅人なのか、それとも……。
まぁ、すぐに分かる事だな。ちなみに私も正直TRPGが得意とは言えないんでね、この講釈も与太話の内、程度に受け取ってくれよ」
【えっと、誤解があったら申し訳ないんですけど現在地はローゼン達→トアル村、ジェンタイル達→湖畔村です。
ガッチーさんのレスに湖畔村に向かった後で噴水について言及されてたので自分のレスでも書いてしまいましたが、
混乱させてしまいましたか?すいませんでした】
「違う!何だか知らないが、私だって様子を見に来ただけだ!」
私は慌てて弁明し、村人を押しのけて広場から伸びる適当な道を走り出した。
村人はまだ何か言っていたが、追っては来ないようだ。この装備とガタイのお陰だろうか。
少し行くと宿屋の看板があった。
中に入ってみると、目の前であたふたする少女>364と少年が向き合っていた。
「……し、失礼」
カウンターに向かおうとして二人を避けて回り込んだ私は
ぶつかりかけてようやく影>362に気付いた。
(えーと…)
誰かに話しかけなくてはいけない事は分かっているのだが、揃いも揃って雰囲気が微妙過ぎる。
熟慮の末に、私はカウンターに向かい、宿を取ってから店主に祭りについて適当聞く事にした。
「この土地には昔から聖なる存在が眠っているって伝承がありましてね。
広場の噴水を扉に変える力を持つとも言われてるんで、
祭りの前には噴水を磨き上げて清めるのがならわしで」
【レス番順に、大悪魔さん達が湖畔村に着いた後で
ローゼンさん達がトアルから瞬間移動で湖畔村まで追って来たのだと思っていましたが
ジェンタイルさん視点だと違うので正直どちらを取るか迷いました。
まあ、そういう事故をどうにかするのもキャラクター分担型リレー小説の楽しみの一つですよね】
>>365-
>>367 私はローゼン達を引き連れて、かに将軍まで戻ってきた。
メルフィの気を頼りにしていたので、私は部屋に出ると思ったが、外に現れた。
こんな夜遅くなのに、店の前で一人でメルフィは立っていた。
「何をしているのだ?」
私は見えない何かと会話していてるローゼンを横目に、メルフィに聞いた。
寂しかった、と帰ってきた。
私は涙目になっているメルフィを無言で抱きしめる。
「すまなかった……」
思えば、両親や故郷、ローティアスを失い、メルフィの心は不安定になっていたのだろう。
ローティアスの敵であった私達を、一人で待っているくらいだ。
メルフィは少しでも見知った人の温もりに抱かれていたかったのだ。
彼女の心は孤独に耐えられなかったのだろう。
「もう、寂しい思いはさせんさ」
私はメルフィをお姫様を扱うように抱っこして、部屋に戻ると、メルフィと一緒の布団で寝た。
一緒に寝ているメルフィは私の鋼の体を強く抱きしめる。
私は、そんなメルフィを優しく抱きしめた。
373 :
横山やすし:2011/01/21(金) 02:24:42 ID:bIr9+dgL
日本一の漫才師、代理完了したでしかし!!
>>364>>370>>371 >「……分かりました」
体育会系っぽい女――リヨナさんとやらが承諾する。
マジで?ダメもとで言ってみるもんだな。わりとバトル展開も覚悟してたんだけど。
>「上の部屋を一つ、お借りします。お釣りは結構ですよぉ」
どうやら今晩の宿を提供してくれるらしい。結構上等な宿なので、まあ棚ぼた気分で――
>「あの、私恥ずかしながら初めてなので優しくして欲しい……かなーとか。あとその……
ちょっと待てえええええええ!以下略!以下略!放送コードっつうか、全年齢版ってこと考えて!
え?え?何言ってんのこのひと。さっきから耳慣れないというか女の子の口から出てはいけない表現が
それはもう出来の悪い洋楽の歌詞みたいにボロボロ出てくる。いやちょっとやめて生々しい!
ベルトはまあわかる。でも針とか短剣とか何に使うの!?
柄でどーのこーのって、いまどき同人誌でもそうそう見ねえよ!リアルで口に出されるとマジで酷い!
語りに熱の入った女は俺の肩をがっしと掴み、壁に押し付ける。
なにこれ。なにこの体勢。逆だろ普通。さーっと体中の毛穴が塞がり、暖炉が傍にあるのにまったく温度を感じない。
頭皮から冷たい汗が噴き出る。血の気が引いていくのがわかる。えっと、こういうとき、なんて言うんだっけ……
「いやーーーーっ!けだものおおおおおおおおおお!!!」
耳元で喋んなや!やめて!息噴きかけないで!ぞわぞわするの!
身体押し付けてこないで!俺は逃げ出した!しかし回りこまれてしまった!俺は混乱した!バッドステータス!
大先輩助けて!そこでへらへら笑いながら見てないで!何のために存在してんだよアンタ!
>「そう言えばさっき、外の噴水の周りには人だかりがあったな」
と、そこでようやく大先輩から助け舟が出された。俺はその縁を掴んで緊急脱出。
リヨナさんははっと我に返って俺から飛び退くと、顔を赤くしてかぶりを振った。
<<――力が欲しいか!!>>
おっせーよ!!いつまでご飯食べてんの!?
<<――こち亀見てた>>
ワンピースの後にこち亀って、お前んとこだけ10年前の日曜7時かよ。
サザエさんの後のゴールデンタイムだったね。あの頃はよかった。毎日が日曜日になっちゃったんだもんな今。
>「あ、あはは……そう言うのをお求めでしたか?えっと……すいませんでした!今のは是非何とか出来れば絶対に忘れて下さい!」
「ええー……」
なに無かったことにして話進めようとしてんだこの女……
よくよく考えたら辺境村出てきてこっち、こういう『女』を全面に押し出した女と関わることなかったからなあ。
ローゼンはアレだし。辺境村のトップ・オブ・ザ・アレだし。免疫ついてねーのな俺。
>「この土地には昔から聖なる存在が眠っているって伝承がありましてね、毎年お祭りをしていたらしいんです」
「はーん、なるほど見えたぞフラグが。多分このイベント消化しねえと先へ進めない仕様になってんだろ」
関所とかで塞がってたりな。
というか湖畔村自体山脈超えた後の湖を抜ける通過点みたいなもので、なんだかんだ旅人の憩いの場だったりする。
まあ、でなきゃ全滅から一日程度で発見されるわきゃねーよな。携帯とか出てたけど、この世界観。
「さて、と……フラグ溜めてイベント成立させるには、まず町の人に話聞くのが一番だな」
>「ん?何だか外が騒がしいじゃないか。……ほぉ、祭りの噴水に飛び込む馬鹿、か」
「なんだろうこのデジャビュ……」
どこにでもいるもんだなあ、ああいう常春頭は。アレか?受験のストレスか?
大先輩がキャラクターの位置関係について講釈を垂れ始めた。知ってるぜ!シドの街がどーたらって奴だろ!
あんまり掘り下げても面白くない結果を呼びそうなので自粛して、俺は噴水騒ぎの渦中に居た奴を捜すことにした。
多分このリヨナさんから話を聞いたこと自体が噴水騒ぎのイベント成立要件になってたんだろう。ストレスフリーだなあ。
>>371 「よおあんた、災難だったな。なんか噴水のあたりで騒いでたけど、一体何があったんだ?」
カウンターで店主と話し込んでいた筋骨隆々の大男に、俺はレッドブルエナジードリンクのロング缶を手渡しながら話しかける。
>341
さてさて、店に帰ってみると、ある意味大惨事になっていた。
「ふふっ、あはは、あはははははは! 何これウケる!」
まだ寝ている人の粘着テープをはがして救出してあげる。でも面白いから額の肉は黙っておこう!
>372
「メルフィちゃん、肉を消してあげるねー、あれ?」
流石に彼女は額に肉の餌食になっていなかった。クウ君にすっかり懐いて眠っている。
なら僕は美少年の布団にもぐりこんでやれ! ターゲットは……。
「……」
美少年がいない。それどころか普通の少年、いや、普通の人すらいない。ソイヤソイヤな変態ばかりだ!
気分が一気に萎えた。
『大変だ、パーティーに美少年分が足りない! 対価の枯渇が死活問題だ……!』
もしやジェン君は今頃大先輩に……ジェン君の身を案じ悶えながら座敷を転げまわる。
”身を案じ”とかいいながらちょっと楽しんでないかって!? 断じて気のせいだ!
余計な事を考えないように寝てしまおう。
>363-364
余計な事を考えないはずが、なんかよく分からないけどすっごい悪夢を見た。
ジェン君が魔性の女の餌食になろうとしている……! 美少年美青年の織りなす物語に女はいらん!
いや、男の娘と見まごうような清楚な美少女ならむしろ歓迎だけどこの手の女は最悪だ!
ふざけんな! 美しいものを汚い手で触るんじゃない!
相手が大先輩なら正直ちょっと楽しいけどこれはちっとも楽しくない!
これならウホッでアッーなガチホモがソイヤソイヤの方がまだマシだ!
大体張子を使ったってなんだよ! 意味分かんねーよ!
近い、近い、近い! ジェン君にその至近距離が許されるのは僕みたいなイケメンだけだ!
う、うあぁあああああああ!
「はいそこまでー」
ドレスを着た少年がさっきのシーンをビリビリと破り捨てる。
「ダメじゃない! 悪夢に飲まれないように気をつけなきゃ!」
あれ? リリアン、初登場時と何かキャラ変わってない?
全身に絡みつく禍々しい鎖はどうした。さりげなく“ジェンスレ攻略本”とか持ってるし。
「ゆとり世代で典型的な正義の味方のあなたがちゃんと画面表示キャラを出来るか心配で心配で思わず講釈しに登場してしまったの」
ゆとりちゃうわ! センター試験はまだリスニングが始まる前だったわ! あ、でも広義ではかなり上の年代までゆとりらしいけど!
ちなみにあのコピペの事ですね、分かります。”いつも怒っている”を”すぐ泣く”に差し替えれば完璧かな。
「『冒険について』は大先輩がやってくれたから今回のテーマは『対立軸』ね。
物語に絶対必要という訳ではないけどなな板TRPGの場合ほとんどのスレにあるわ。
と、いうのも分かりやすくドラマチックな構図を作るにあたって最も手っ取り早い方法なの。
バトル無しの日常ものやほのぼの学園ものが難しい理由はここにあると私は踏んでいるわ。
それじゃあ具体的な対立軸の例をあげていくわよ。まずは『善と悪』。読んで字のごとく説明不要。
それから『光と闇』。言わずと知れた王道中の王道。誰かさんもバカの一つ覚えのように使う常套手段ね。
当然光が善玉で闇が悪玉よ。……基本的には」
リリアンはここで一端言葉を切り、小声で付け足した。
「『善と悪』と違うところは物語が進むにつれて実は……なんて事が出来る事かな」
実は何だよ! 気になるじゃないか!
「ここまでは簡単。ここからちょっと難しくなってくるわよー。
『自然と文明』。これも結構王道ね。有名どころで言うとナウシカやもののけ姫。
ついに突き止めた敵の正体は、我がもの顔でのさばる人間に牙をむいた地球の化身だった!
もしくは妖精とかの自然に属する存在に恋してしまって全人類を敵に回す主人公!とか!
そこで生まれる葛藤はドラマよ!」
地球と書いて”ほし”と読むですね、分かります。
「そしていよいよこのスレに直接関わってくるテーマよ。『秩序と混沌』。
既存の枠組みを守ろうとする者とそれを破壊しようとする者……」
そこまで言ってリリアンはまじまじとこっちを見た。
「ごめん、あなたを秩序に当てはめたらあかんわ。この対立軸は却下で代わりに『不変と変化』。
変わらないものと変わりゆくもの。石橋を叩いて渡らない生存への渇望と自ら危険を犯してしまう成長の欲求。
これ、実のところどっちを主人公にも悪役にもできるのよ。そこが面白くも難しくもあるかな。
悪の帝国の圧政に立ち向かう解放軍の物語だったはずが変態反乱軍から国家をお守る熱き帝国騎士の物語になっちゃったり。
でもなな板TRPGではどっちが悪役か分からなくなるとちょっと敷居が高くなるのよね」
え、ヤバイじゃん! 今のところこっち側のパーティーの方が変態率が圧倒的。そのうち誰かが条例違反で逮捕されかねない。
「大丈夫よ、この場合『破壊と守護』の対立軸にも当てはまるから。ぶち壊す対象と守る対象を世界そのものにしてしまうわけ。
世界を守るって言ってる人を頭のおかしいアホだと思う人はいても悪い奴と思う人はいないでしょ?」
そこでリリアンは少し考えるような仕草をする。
「あとは何があったっけ……あ、そうそう、『攻めと受け』」
そう言ってなぜか艶めかしく寄ってくるリリアン。お前最初からそう言おうと思ってたっしょ!
これって確か魔力による精神干渉だっけ。夢の中だけど無駄にリアル。
やめろやめろ! そりゃリリアンはものすごい美少年設定だけどダメなものはダメだ!
なぜならこいつは百合一筋だ! 教会員名簿や住民票やステータス画面の性別もガン無視で僕の事を女だと思ってる!
第一これじゃあ自前NPCとイチャコラ漫才どころの騒ぎじゃない!
「ちなみに貧乳は大好物です」
言わんこっちゃない、どこ触ってる! ってかうるさい放っとけ! 断じて気にしてる事を指摘されて怒ってるわけじゃない。
なんで僕に対してそんな事を言うのかという意味で怒ってるわけだからくれぐれも勘違いしないように!
可愛い弟が悪夢から助けてくれたと思ったら結局悪夢かよ!
「うわあああああああああああああああああ!!」
叫びながら目を覚ました。
「大丈夫? ……お兄ちゃん」
メルフィちゃんが心配そうに覗き込んでいる。昨日の放送事故を見なかったことにしてくれたらしい。
「メルフィちゃん……ええ子やー! すぐお父さんお母さんの所に帰してあげるからね!」
メルフィちゃんの頭を撫で回した。
>>367 ここはガースー黒光り防具店。
商店街の一角に立つハイソな感じの店である。
しょこたん系男装女、ローゼンちゃんと共に浜田達一行は
防具を買いに来ていた。
「自分ら、俺がこうたるからええの選びや。君もええで。
あのジェンタイルっ子いなくなってもうて寂しいかもしれへんけど
元気出しや。」
浜田がプラチナカードを取り出し、ローゼンの支払いまで
すると言い出す。
流石はダウンタウンをここまでスターダムにのし上げた影の功労者である。
その横で松本は浜田を見ながら心の中で呟いていた。
(うわ、浜田こんな若い子まで狙ってるんや。どこまで溜まってんねん……)
それぞれが好みの防具を選んでいく。
遠藤は踊り子の衣装(白鳥の湖のバレリーナ)、松本は悟空の胴着を選んだ。
その一方で山崎は、何故か店主と喧嘩していた。
「あの、山崎さんには売れないだよね。」
「は?なんで?みんなに売ってるやんか!!なんで僕だけですの!?」
店主のガースーが嫌そうな顔をして溜息を吐く。
そして浜田達の方を向きながら語り始めた。
「商店街全体で嫌ってますから、山崎の事を。」
「……まぁ、しゃあないわな。そんなら。」
浜田は納得したように言い、頷くと自分の選んだ衣装へ着替えていく。
どうやた浜田はフリーザのコスプレをしたいらしい。
松本は近くにあったパンパースを拾い上げると
物凄く振り上げたモーションで山崎の顔面目掛けオムツを投げ付けた。
「山崎、はよしいや。置いてくで。ほな、松本。おまえだけ
支払いは別な。で、ローゼンちゃんどないすんの?これから。」
「は?なんで?ちょ、待てって!!」
泣きそうな山崎を残し、一団は店を出て行った。
>>375>>376 私はメルフィがぐっすりと寝た後、スリープモードに入って、機能の大半を停止させる。
起動の予定は朝の7時だ。
>「うわあああああああああああああああああ!!」
私はローゼンの悲鳴を聞いて、機能を緊急起動させた。
パワーレーダーを作動させ、外敵がいないことを確認。
時刻は6時を過ぎた程度。
私は起き上がると、ローゼンの方を見た。
>「大丈夫? ……お兄ちゃん」
>「メルフィちゃん……ええ子やー! すぐお父さんお母さんの所に帰してあげるからね!」
メルフィがローゼンのことを心配して、ローゼンは感動をしているようだ。
まぁ、私やジェンタイルのような変な子くらいしか寄ってこないのだ。
まともなよい子の反応に感動してしまうのも仕方がない。
「お姉ちゃん……大丈夫?また、死んじゃったの?」
私は普段出さないような声を出して、ローゼンに甘えるように聞いた。
メルフィは私の顔を見て、唖然としていたが、ギャップに萌えたのだろう。
「おふざけはここまでにして、これからどうするのだ?」
私は寝ている者達を叩き起こして、全員に聞いたのだ。
坊主達は私の家を乗っ取り、私を仏として奉りたいらしい。
「私は極東に行ってみたい。
あそこは蘇生をしないと、極東の旅人達に聞いたことがある。
ジェンタイルの考えている世界に一番近いと思って、私は行ってみたいのだ」
>377
>「自分ら、俺がこうたるからええの選びや。君もええで。
あのジェンタイルっ子いなくなってもうて寂しいかもしれへんけど
元気出しや。」
ハマちゃんええ人やー。
「お気持ちは嬉しいけどそんな……」
う、高い……! スーパーの安売りの服とは桁が違う!
「お言葉に甘えさせてもらいます!」
>「あの、山崎さんには売れないだよね。」
>「は?なんで?みんなに売ってるやんか!!なんで僕だけですの!?」
>「商店街全体で嫌ってますから、山崎の事を。」
>「……まぁ、しゃあないわな。そんなら。」
「え!? 可哀そうじゃない!?」
ってかなんで防具屋にオムツなんてあるの!?
>「山崎、はよしいや。置いてくで。ほな、松本。おまえだけ
支払いは別な。で、ローゼンちゃんどないすんの?これから。」
「んー、世界でも救ってみるか!」
『わーーーー! いきなりざっくりしすぎ!』
「……じゃなくてメルフィちゃんを湖畔村に送り届ける」
『いきなり本当に目先の目標になったな! 間はないんかい間は!』
無い!
>378
>「お姉ちゃん……大丈夫?また、死んじゃったの?」
クウ君の顎に指をあてて、元々あまり高くない声をさらに低くして呟く。
「僕がお前を置いて死ぬわけないだろ? それとここ試験に出るから覚えておくんだな」
ステータス画面を開いて性別欄を指し示す。
>「おふざけはここまでにして、これからどうするのだ?」
>「私は極東に行ってみたい。
あそこは蘇生をしないと、極東の旅人達に聞いたことがある。
ジェンタイルの考えている世界に一番近いと思って、私は行ってみたいのだ」
「極東ってあの世とこの世が地続きらしいじゃん。
それで聖地のいたるところに冥土カフェがあるんだって!
それって蘇生をしない事に関係してるんだよきっと!
さあ巡礼ツアーだ、目指すは聖地……確かアキヴァルハラだっけ! ……ん?」
ふとメルフィちゃんの方を見ると、世紀末覇者のスタンドが出現している!
「なーんて冗談冗談! メルフィちゃんを湖畔村に送り届けるに決まってるだろ!」
『危ないところだった……! いくらノリ重視っていっても限度があるわ……!』」
ここで一つ決めなければいけない事がある。
画面表示キャラを誰がやるかだ。俺が俺がどうぞどうぞとなる学級委員長のような役回りである。
「画面表示キャラやりたい人ー」
そう言って周囲を見回す。
銀色マッチョとかのドラゴンボールキャラ、はまだいいとして。
白鳥の湖。悟空の胴着、自称フリーザのコスプレ。極めつけはパンパース。
「うわあ! ここドラゴンボールスレじゃないし選択の余地ねええええええええ! 超やりたい! いいよね!?」
こりゃあかんわ!
普通のRPGなら放っといてもパーティーが美少年美少女の集団になってもおかしくないのになんでこうなる!?
普段のシーンはいいとしてもイベントシーンに入った途端に
この面々が後ろからぞろぞろ出てきたらどんなシリアスシーンも一瞬でお笑い番組と化す!
『アンタが戦犯ですから――ッ、残念!』
>374
>「よおあんた、災難だったな。なんか噴水のあたりで騒いでたけど、一体何があったんだ?」
「いやもう、何が何だか…」
少女との話を終えたらしい少年から手渡されたレッドブルエナジードリンクのロング缶を有り難く頂き、
近くに座るようすすめた。
(ええと、こういう時は…)
「店主、このお兄さんにポーションを。できれば瓶の奴で頼む」
幸いな事に私の願いは叶えられ、人の顔が描かれた白い缶ではなく濃い青色の瓶が差し出された。
「お兄さんはこの辺に詳しいのかい?私…」
占い婆の指摘を思い出し、少しの間一人称を探した。
「…オレはまるで初めてなんだが」
見た目通りのキャラになりきるのには少し度胸がいる。
「噴水の中で騒いでる奴がいるようだと思って見に行ったら誰もいなかった、
挙げ句に祭りの準備を台無しにした責任取れと詰め寄られたんで訳も分からず逃げ出したんだ。
店主に今聞いたとこなんだが、もうすぐ大事な祭りらしいね」
言いながら視線を向けると、店主が頷いた。
「お客さんが見たのは噴水の幻覚って奴かもしれないですね。
この地に眠る存在の力で噴水に他の場所の光景が映る事がまれにだがよくあるんですよ。
まあ、普通は祭りの期間にしか起きないものなんですが」
「他の場所が見えるのなら、噴水に飛び込めばその場所に行けたりしないのか?
いや、気を悪くしたらすまないが…」
思いついた事を後先考えずに聞いてみると、店主は微苦笑を浮かべた。
「他所の人はよくそう言いますよ。でもここの言い伝えでは噴水に飛び込むと
誰もいず何も起きずどこにも行けず無意味な時間だけが流れる“シドの街”という牢獄に送られる
っていうんでそれを聞いてまで試そうとする奴はいませんね。
大いなる存在に認められる」
ひとしきり感心してから少年に向き直ると、少年は座ったまま眠っているようだった。
奇数…眠っているらしき少年を自分の部屋に連れて行く
偶数…少年をそのままにして他の人の話を聞く
「大いなる存在に認められた者だけが噴水を扉として使えるって年寄りは言いますが
未だそんな人物が出た事はないですね」
うっかり途中で遮ってしまった話を、店主は親切に繰り返してくれた。
「珍しい話をありがとう。目が覚めるまで彼をオレの部屋に寝かせていいかな?」
私は店主にいくらか余計に払うと少年を担ごうとした。
「行き先はそっちじゃないですよ」
と、店主から声がかかる。
「>380の方で。
…お客さん、不慣れなのか不注意なのか知りませんが、間違ってシドの街に行かないようにして下さいよ」
名前:ブライン=ベルクァー
職業:妖精殺し
性別:男
年齢:32
身長:180
体重:62
性格:神経質
外見:腰までの白髪に鋭い眼つき
備考:旅人
【シドの街】
太陽に照らされて白く輝く石壁が、瀟洒な石造りの町並みを演出していた。
一際広い大通りには行商人や船乗り、花売りの娘に芸人など雑多な人々が行き交う。
「――ここがシドの街か。どう見ても普通の街だが」
この街には奇怪な噂があった。
一度足を踏み入れれば、ニ度とこの街から出られないという噂が。
俺はその噂を確かめるために、この街へやって来たのだ。
「住人も多いようだし、パン屋に酒場に劇場に鍛冶屋と一通りの施設は揃ってる……結構な街じゃないか」
俺はあらゆる神秘を暴き、解明可能な技術や現象へと貶める"妖精殺し"。
この世に奇跡など不要、この街の神秘も俺が殺してみせる。
そう意気込んで旅をしてきただけに、普通の街並みを見せるシドの街には拍子抜けを否めなかった。
「またガセということか……まあいい、それならエールでも飲んで別の幻想を殺しに行くだけさ」
俺は酒場の中に入ってエールを頼み、少々堅さを感じる寝台で眠った。
そして翌日、この街の入口である通廊へと戻る。
街はぐるりと太く高い壁に囲まれていて、その壁に造られた薄暗い通廊を抜けねば外へは出られないのだ。
通廊の傍で物乞いらしき老人が手を差し出すが、無視して先へ進む。
この街に得るものは無かった……それなら施すものもないというわけだ。
せめてエールが美味ければ、銅貨一枚ぐらいは奮発しても良かったが、な。
通廊をしばらく歩いた俺は違和感に気付いた。
先には日の光らしき白光が見えるのに、そこに近づく気配が無い。
確か街に入る時の目測では、通廊の長さは30メルテー(30m)ほどだったはずだ。
しかし、今の俺は明らかにその倍の距離は歩いている。
疑念に立ち止まった俺は、後ろを振り返むいて驚愕した。
「な……にぃいい!!」
通廊の入口にいた物乞いの老人が、巨人族と見間違うばかりに巨大な姿と化しているではないか。
いったい何だ?何が起こった!?
巨大化の魔術か?それとも幻覚か?如何なる神秘が起こったというのだ!
俺が通廊を戻ると老人は徐々に小さくなってゆく。
それで……俺は気付いた。
老人が巨大化していたのではなく、俺が縮小していたことに。
俺は周りの通路ごと一緒に小さくなっていたために、自身が縮小していた事に気付けなかったのだ。
すぐに計測を開始した。
重りで直立するようにした2メルテーの棒を等間隔に立てかけ、計測用ロープで距離を測ると結論に至った。
この通廊は全長の半分を進めば、進む者を半分の大きさに縮小させる。
そしてその位置からさらに半分を進めば、通行者をさらに半分の大きさへと縮小させる。
通行者が縮小すれば進むべき距離が増え、結果としていつまで経っても通廊を抜けられない。
「ふん、面白い……面白いがたいした神秘じゃなかったな。
こんなものは解析可能だ。
壁を解体しての成分分析と、対神秘用観測器具による空間計測で事足りる。
通廊も抜けられないなら、街を囲む壁に梯子でも架けて越えればいいじゃないか。
あるいは壁を破壊しちまうか、だ」
独り言ちながら通廊を戻ると、俺は再びシドの街へと戻った。
その際、グッグッ……と言う物乞いのくぐもった笑いを聞いた気がした。
この街を抜けるというのが、考える事すら愚かしいことででもあるかのように。
いかなる手段を持ってしても、この街からは永遠に抜けられないとでも言うかのように……。