【シェア】チェンジリング・デイ 2【昼夜別能力】

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485『異形の来訪者』:2010/07/09(金) 21:45:08 ID:M09LS+ME

鎌田は力強くうなずくと上着を脱ぎ捨て、堂々とした態度でチンピラたちに対面する。
足は肩幅。両手は握り腰の横に構える。

「…変…」

両腕を真っ直ぐ伸ばし、腰の前、低い位置でクロス。同時に指を広げて両手が開かれる。

「…身…!」

持ち上げた右手は顔の右前方、左手は胸の横に。
握った手から人差し指、中指を付け根で曲げて伸ばし、前方を向ける。

次の瞬間、鎌田の全身が一瞬歪み、その姿は薄緑の外骨格に包まれた昆虫人間に変化を遂げるのだった。


心強い背中を眺めながら、晶がポツリと呟く。

「…あの…陽太。変身ポーズって本来いらないんだよね?」
「いるっての! 変身能力だぞ? 変身ポーズは男の浪漫だろうが」
「無駄に派手になってない?」
「おお、カマキリ人間だからな。蟷螂拳のテイストを入れてみた」
「………さいですか」

わからない。男の浪漫ってわからない。
胸を張る陽太にどこか冷めた目を向けながら、自分は女なんだなと再認識する晶だった。


<続く>

大根さんに新たな設定が追加されたぞ!
まあ戦闘には役に立たないけどねw
486創る名無しに見る名無し:2010/07/09(金) 23:35:17 ID:CUn3skMJ
晶ちゃんがいちいち俺のツボを突いてくる

大根さんはもう万能すぎだろwww
487名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 09:31:11 ID:dlb8TBpi
岬陽太
特技:お手玉New!
というわけですね

しかし前から思ってたが、投擲力もすごいんだよな
陽太は野球部のエース…というフレーズが浮かんですぐ消えた
488名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 10:07:33 ID:nHWCNwAK
バットマンと陽太の対決…というフレーズが浮かんですぐ消えた
489名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 10:34:06 ID:gB7knEu+
消える魔球ならぬ食える魔球として株とか投げるわけですね
490名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 10:38:53 ID:lnP3rBtT
いつでもどこでも即座に弾が出せるって点が奴の生命線なので。
でもアクアニードル(ウニ)とかは痛くて投げられないの。

奴に野球やらせたらきっと分身魔球投げて即退場食らうぞw
491名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 13:30:12 ID:dlb8TBpi
妄想が爆発したので書いてしまった
ただの小ネタ投下します
492神に叛く男の学校生活 ◆VnGyt8606Q :2010/07/10(土) 13:32:26 ID:dlb8TBpi
「あーあ。すっかり遅くなっちまったな」
 とっぷりと日も暮れた中学校の下足室で、上履きを片付けながら一人呟く少年。普段は一緒に帰る
ことの多い幼馴染も、この日ばかりはさすがに待ってられず先に帰ったらしい。
 
 静まる校舎の中、岬陽太は一人きりだった。そう、少なくともつい五秒ほど前までは。

「おい、野球部部長さんよ。いるんだろ? 出て来いよ」
「ククク。さすがだな岬君。オレが見込んだだけのことはあるな」
「フン。あんたの禍々しい気配は五十メートル離れててもわかるさ」

 陽太の呼びかけに応じ、下足室に壁のように並ぶロッカーの陰から姿を見せた男。
 小さめの陽太と比べるまでもなく、中学生としてはかなりの長身。細身の体型が、彼の身長をより
際立たせる。
 そしてその頭髪は――いわゆる坊主。丸刈り。マルコメ。はっきりとした顔立ちと相まって、やや
強面そうな印象を与えている。

「何の用か、なんて聞くまでもねえか。まったく懲りねえ人だよな、あんたは」
「ククク。もちろんだとも。我々野球部は君の力を必要としているんだ。部の輝かしい未来の為、君
を野球部に引き込む。これが野球部部長としてオレが果たすべき使命なんだ」
「フン。使命、ねえ。一応聞くがその使命ってやつは、誰が決めたもんなんだ?」

 陽太の質問を受けて、野球部部長は一瞬怪訝そうな顔になった。まるで「そんなこともわからない
のか」とでも言いたげに。

 それは陽太としては不本意だった。実際のところ、彼には答えはわかっていたのだから。だからこ
そわざわざ「一応」と断りを入れておいたというのに。

「ククク。君はまだ若いしな。オレが当然のように知っていることも知らないというのは致し方ない
ことか。使命っていうのはな、「人」と「人」の間で成り立つようなちっぽけなものじゃないんだよ。
それはつまるところもっと高次の――」
「もっと高次の存在。「神」と「人」との間で成り立つ契約、ってか?」
「……オレの発言を遮るとはな。ククク、まあ許す。どうやらちゃんと理解しているようだし」
493神に叛く男の学校生活 ◆EHFtm42Ck2 :2010/07/10(土) 13:34:57 ID:dlb8TBpi
 青々とした頭を撫でながら、発言とはあまり一致しない爽やかな笑顔を浮かべつつ、部長が言う。
 その答えに、陽太は完全に納得した。自分はもう、何も遠慮などすることはないのだと。右手を
握って、軽く力を込めながら言葉を返す。

「なあ、部長さん。俺の本当の名前を知ってるか?」

 不意の問いに、部長の顔は「?」が張りついたような表情になった。まあ当然か。そう思いながら
陽太は、少し自嘲気味に息をついた。

「俺の名は岬月下。神に、その神が定めし理(ことわり)に叛く男だ。だから俺は断じて叛かなきゃ
ならねえ。神に託されたあんたの使命ってやつに」

 名乗り終えて、陽太は右手をスッと差し出した。そこには、一つの真っ赤に熟れたトマトが出現し
ていた。

「こいつは宣戦布告ってやつだ。ありがたく……受け取れよ部長!」
 差し出した右手を大きく後ろに引き、溜めを作る。そのまま流れるように肩から腕を振り抜く。
 ちょうど野球の投球、しかも理想的フォームに近いそれで放たれた真っ赤なトマトは、過たず野球
部部長の顔面に向け、一直線の軌道を描いて飛んでいく。

 部長は微動だにしない。もはや避けることも諦めたかのように。そうして部長の顔面がトマトの果
肉で赤く染まる、かに見えた時。

「なっ!?」
 部長に向けて飛んでいるはずのトマトが、なぜかだんだん自分に近づいてきているような気がした。
「くそっ! ……ふう、危なかった。自分で投げたトマトに当たるとかマジあり得ねえ」

 首を左に逸らし、間一髪の回避。背後で壁かロッカーにでも当たったんだろう、グチャッと耳障り
な音がした。
 状況を整理できず一人焦る陽太を、部長は物言わず爽やかな笑顔で眺めていた。当然その顔はつぶ
れたトマトにまみれたりなどしていない。

「ククク。岬君。君は本当に素晴らしい。君の肩の正確さはイチロー並だと思うよ。だからオレはそ
の力が欲しい。我が野球部の輝かしい未来のため、たとえ力ずくでも、な」


 打ち切り
494 ◆EHFtm42Ck2 :2010/07/10(土) 13:39:19 ID:dlb8TBpi
投下終わりです
なぜか1レス目トリ間違っちゃった…
なおご覧の通り打ち切りです。決して続きはありませんw
495名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 16:02:47 ID:nHWCNwAK
打ち切りwww
部長は一方通行みたいなアレなんだろうか
496名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 21:35:49 ID:gB7knEu+
アクセラレータだったらデッドボールとか怖くねぇなw
497名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 20:00:42 ID:zoPW9gRj
なにげにもう450KB
498名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 21:14:20 ID:7klrjsKj

                      マ゙ターリ゙リ゙しτょυぅょぅ
              ∧∧   マ゙マ゙マ゙マ゙ターリ゙しτょυぅょぅ
            ε⌒ つ     マ゙ターリ゙しτょυぅょぅょぅょぅょぅ
            くε  。 つ
           くく =゚ω゚ つ
           丿:::   ◎)        __
          (○):::  。・゜ヾ    (( /__ ヽ
          く:::::::(●)。・°     //  ヽ二二θ) ))
           ):・::::ω・゜・ミν_//
          ιυιミν つ つ/  ))
   。・・.°。・゜ ιυωυυυ
 ・゜°・゜°・゜°
499名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 21:19:56 ID:7klrjsKj
間違えちった
ごめんちい
500名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 21:51:25 ID:IXZRRaTU
陽太器用すぎるw 晶の反応がいいなぁ。
結衣さんの能力まぢ欲しい。選挙にきて行く服がありませんとか言わずにすみそう・・・


ttp://loda.jp/mitemite/?id=1236.jpg
501名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 21:58:56 ID:zoPW9gRj
    _  ∩
  ( ゚∀゚)彡 ふともも!ふともも!
    ⊂彡
502名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 22:21:00 ID:JrVcpAbz
うおっ! これはすごい。炎の表現が綺麗だなあ。

絵の感じでどっかの超電磁砲思い出した
503名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 22:24:10 ID:zoPW9gRj
>どっかの超電磁砲
ああ、わかる
504名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 22:49:30 ID:7klrjsKj
>>500
ぺろぺろ
505臆病者は、静かに願う ◇EHFtm42Ck2:2010/07/12(月) 00:42:31 ID:nuwQ5Em/
避難所より代行です

「あー、いっつつつつ」
 深更、腰とあばらの痛みで……というわけでは別にないが、私は目が覚めた。のそのそと眼鏡を探
し当てて確認すれば、時計はちょうどLの字。普段眠りの深い私が、こんな時間に目を覚ます理由は
決まっている。

 夢を見ていた。久しぶりに見る夢だった。

 ――あなた、忘れ物ない? 
 お、おい、あなたはやめてくれってば。なんか背中がムズムズするよ。
 ――やーだ。結婚したら、旦那さんのことは「あなた」って呼ぶって決めてたんだから。大丈夫すぐ
慣れるって。てゆーか慣れて。
 ……はい、努力します。ってあれ、お弁当忘れてるみたいだ。ごめん、取ってきて。
 ――ちょ、ちょっと秀祐! 愛妻弁当忘れるなんてんもぉー! 自分で取ってきなさい!
 ははは、秀祐って呼んだー。ちなみに弁当はちゃんと持ってるよ。じゃ、行ってきまーす。

 私が自分の命を危機にさらした夜、必ずこの夢を見る。その関連性こそ明白だが、それが何を意味
するのかは未だにわからないままだ。

 ――おかえり、あなた。
 うん、ただい……やっぱりダメだってあなたは。うわ、じんましん出てきた。
 ――慣れなさい。慣れよ、慣れ。そんなことよりほら、ご飯できてるから食べよ? わたしもうお腹
ぺっこぺこだもん。
 あれ? 先に食べてなかったのか?
 ――だってー新婚早々晩ご飯も一緒に食べないなんて寂しいじゃない。秀祐はそう思わないの?
 まあ、確かにそうだけど……いや、そうだな。一緒に食べるほうが美味しいだろうな。

 ただの荒唐無稽な夢ではない。私の記憶だ。今よりずっと若い頃、今よりもっと幸せだった日々の。
 私が人生の中でただ一人愛した女性は、今はもうこの夢の中でしか出逢うことができない。

 十年。彼女とともに過ごしたよりも長いその月日は、残酷にも私から彼女の記憶を少しずつ奪って
いった。

 時間の流れを恨むことはできない。だから私は、己を憎むしかない。心から愛した人の肌、声、私
を見つめてくれる眼差し。それすらも気がつけば忘れようとしている薄情な己を恨むしかない。

 それでもこの夢を見るたび、私はそれらの全てに出逢うことができた。
 それはとても不思議な体験だ。私の記憶の中に、彼女の鮮明な画像は残っていないというのに。な
ぜかこの夢には在りし日のその人が、あの日のままの姿で現れる。

 そんな理屈だって、本当はどうでもいい。目が覚めて、虚しさと懐かしさで涙が流れようと、私に
笑顔を向けてくれる彼女に逢えるならそれでいい。

「なあ、こんな俺は女々しいと思うか? でも本心だからさ、許してくれよ」
 答えなんて返ってくるはずもない。問いかけが一人の中年のぼやきに変わったことを確認して、私
はまた目を閉じた。
506臆病者は、静かに願う ◇EHFtm42Ck2:2010/07/12(月) 00:43:49 ID:nuwQ5Em/
 明けて月曜日。
 サザエさん症候群に駆られながらも身を奮い立たせて出勤すると、いつもはコーヒー片手に窓辺に
たたずんでいる助手くんが何やら色めき立っていた。

「もうっ! ドクトルJ遅いじゃないですか! いつものことだけど! 聞いてください! 大変なん
です……って、なんかドクトルJ薄荷臭い」
「階段踏み外して転げ落ちちゃってさ。腰とあばらを強打したもんだから、湿布貼ってるんだ」
「まったく何やってるんですか! そんなだから減給される一方なんですよ!」

 本当のことを言うのは躊躇われた。理由は二つ。彼に余計な心配をさせたくないこと。そして見て
わかるように彼は若いのに妙に説教臭い。今のこれなんてほとんど言いがかりだと思う。この状態で
本当のことを言ったりしたら、それこそ床に正座で説教かっ喰らうとか普通にありそうだ。面倒い。

「まあ確かにいろいろ転げ落ちてるけども。どうしたの朝からそんなに興奮して」
「そうでした! ドクトルJが臭い話なんてどうでもいいんです! また出たんです被害者が!」
「……なーんか誤解を招くよね今の言い方。あんまりよくないけどもういいや。八人目ってこと?」
 
 それって私のこと……でもあるのは事実だが、この状況に限っては違うと言えよう。しかし普段クー
ルぶっている助手くんのこの慌てよう。少し嫌な予感がする。

「もしかしてその被害者って……知り合いか?」
 そう聞くしかなかった。一番あってほしくない、それでいて一番可能性の高い問い。
 私の問いに、助手くんは下唇をぐっと噛みしめた。堪えているのだ。何を、とはあえて言わない。
彼のそんな表情を見るのも久しぶりだった。

「……第4研究チームの、尖崎主任です」
507臆病者は、静かに願う ◇EHFtm42Ck2:2010/07/12(月) 00:44:48 ID:nuwQ5Em/
 尖崎鋭一郎、26歳。
 主として変身型の能力に対する医学的見地からの研究を行う者として、ERDO研究部門に果たしてき
た貢献は極めて大きい。
 浮世離れした奇人ではあったが、その明晰な頭脳はこれから先もERDOにとって必要不可欠なものだっ
た。

 私も彼を頼りにしていたし、期待していた。なぜか被研能力者にやたらと幼い女の子ばかりを希望し、
その度私が諫めてきたことなども、もはやいい思い出となってしまった。

 なぜ、彼が死ななければならなかったのだろうか。ある意味危険な人物だったかもしれないが、そ
の実彼はとても誠実で無害な男だった。

 世界はかくも理不尽だ。それは隕石が落ちようと落ちまいと、人が進化しようとしまいと関係がない。
案外世界というものは本当に、神が振ったサイコロ遊びで決められているのかもしれない。

「……尖崎君は、どんな風に死んだのかな」
「はい?」
「惨い殺され方をしたのかな、って」

 私も助手くんも仕事をする気が起きず、窓辺に置かれたテーブルで向かい合っている。部下の研究
員たちは各々動き回ってくれているが。

 助手くんもさすがに知らないのだろうか、問いへの返事はない。ちらと彼に視線を向けると、なん
か面白い顔で考え込んでいた。しばらくそうして、おもむろに口を開いた。
508臆病者は、静かに願う ◇EHFtm42Ck2:2010/07/12(月) 00:45:37 ID:nuwQ5Em/
「ドクトルJ。あなたは一つ、大きな勘違いをしている」
「え? な、何その喋り方」
「僕は尖崎主任が死んだとは一言も言っていません」
「……へ?」
「死んでいません。重傷を負ったものの、命に別状はないそうです」

 ……何よそれ。助手くんついさっき泣きそうな顔してたじゃん。あんな深刻そうな顔見せといて「実
は死んでませんでしたー」って、なんのドッキリなの?

「いやーだって尖崎主任がいてくれないと、リアルで飛び回るシリルたんに会えないんですよ! 僕
にとっては号泣ものの大問題です」
 知らんよそんなの。だいたいなんだよシリルタンって。

「助手くんって結構薄情者だな。とりあえず詳しいことを教えてよ」
 薄情者じゃありませんよー、と反論してから、助手くんは説明を始めた。それによると。

 尖崎君は昨日、予約していたフィギュアを買った帰りに襲撃を受けたそうだ。注意喚起メールがあっ
たというのに彼もなかなか神経が太い。それほどフィギュアが大事だったのか。
 襲撃者の詳細は不明。私の場合とは違って市民を積極的に巻き込まず、ピンポイントで彼が狙われたらしい。

 よく死ななかったね。私が思わずそう言うと、助手くんはうんうん頷きながら人差し指をぴっと立て、
「尖崎主任の昼間能力はやっぱり凄まじいことが判明しました」
 と得意げに語った。

 尖崎君の昼間能力は、無生物に生命を与えるというもの。それだけでも十分恐ろしいが、それ以上
の何かがあったというのか。
 助手くんがさらに語ったところでは。
509臆病者は、静かに願う ◇EHFtm42Ck2:2010/07/12(月) 00:46:42 ID:nuwQ5Em/
 襲撃を受けた尖崎君は、咄嗟に買ったばかりのフィギュアに能力を使用したそうだ。命の危険を感
じた人間が咄嗟に取る行動として、フィギュアに命を与えるっていうのはどうなんだと思ったのだが、
いざという時わけのわからない行動を取るのが人間という生き物でもある。あの尖崎君であれば余計
にそうかもしれない。

 さておき、この辺の話は聞き慣れない単語(おそらくフィギュアの名前なんだと思うが)が多くて
わかりにくかったのだが、要約すると命を与えられたこのフィギュアが襲撃者に応戦して退け、尖崎
君を守ってくれたということらしい。

「必殺光線まで放ったらしいですからね。単に命を与えるってだけではないみたいです」
 必殺光線まで放ったんですって。もう何がなんだか。

「結果として尖崎主任は、お腹の脂肪をごっそり抉られることにはなったみたいなんですけど、覚醒
シリルたんのおかげで生還できました、と」
 わー。めでたしめでたし。

 決してふざけているわけではない。生きているのなら、それ以上にめでたいことなどないのだから。

「あ、そうだ」
 パンと手を合わせながら、助手くんが明るい声で言う。
「昼休みにお見舞い行きましょうよ。尖崎主任の入院先、どうせすぐそこですよ」
 そう続けて、窓の外を指さす。

 その先にある建物。ERDO研究部門と同じ敷地内で、一般には一体の施設と認識されている場所。こ
の地域でも指折りの大病院の病棟が、どっしりと鎮座していた。


 つづく



以上、避難所より代行終了です。
510 ◆akuta/cdbA :2010/07/12(月) 15:47:42 ID:PYxEgm8n
>>500
失禁…じゃなくて保存したっ

なんちゃってアニメ塗り挫折\(^o^)/
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1237.jpg
511創る名無しに見る名無し:2010/07/12(月) 17:58:27 ID:2RhNa7oM
尖崎主任なにげに好きだったから生きててほっとしたww

そしていい表情だな峰村w
512創る名無しに見る名無し:2010/07/12(月) 23:44:53 ID:AxXjHmoK
>>505
尖崎主任生きてた! よかったー。すげー能力じゃないか
助手君はもう完全に染まっちゃってんのなw

>>510
なんとチェンジリングアニメ化w これは夢すぎるw
なんとも良い表情描きやがる。


さてさてさって、そろそろ2スレ目も終わりか。盛況で楽しいねえひゃっほい。
モチベーション高いと筆がサクサク進むぜ。

『月下の魔剣〜異形【せいぎ】の来訪者〜』

>>481-485の続き投下いきます。
513『異形の来訪者』:2010/07/12(月) 23:46:25 ID:AxXjHmoK

「さて、携帯は無事返してもらったし、犬もいない。君たちの切り札はなくなってしまったわけだ。それでもやるかい?」

昆虫人間と化した鎌田が余裕の態度で尋ねると、チンピラたちは一歩後ずさる。

「まあ、元々君たちに用は無い。黙って退却するなら追いかけはしないよ」
「…くっ…!」

悔しげに顔を歪めるモヒカン。だが一瞬、何かに気付いたような顔を見せて

「……く、くっくっく……はぁっ、はっはっはっはっは!!」

突然、テレビ番組の悪役よろしく高笑いを始める。隣でニヤニヤと笑うスキンヘッドが不気味だ。
警戒して構えをとる鎌田。陽太も手元に残ったグレープフルーツを握りしめる。

「な、なんだ…!?」
「はっはっはぁっ! 俺たちの切り札がなくなったって!? 馬鹿がっ! とっておきがあんだよぉっ!!」
「そっちのスキンヘッドの能力か…!」
「まだ気付かねえのかノロマがっ!! 空を見ろぉっ!!」

鎌田はチンピラたちから顔を少しも逸らさず、複眼の持つ広い視界で全天を確認する。
チンピラたち向こう、東の暗い赤から西の紫へと美しいグラデーションを見せる、雲ひとつない空。何の変哲もない夜明け前の空。

「って…えええっ!!?」

驚きの声を上げたのは晶だった。理由を聞こうと声を出す直前に鎌田、陽太もその異常に気付く。
チンピラたちと出会ったのがおおよそ深夜1時半。それから今まで、長く見積もっても15分。夜明け前なんてあり得ない。

「えっ! 嘘ぉっ!!?」
「馬鹿なっ!? 6時だとっ!!?」

背後で叫ぶ声で鎌田も時刻を知る。確かに朝6時でこの空は妥当だが…

「どういう…ことだ…?」
「俺の能力だ」

初めて聞く低い声でスキンヘッドがボツリと言う。その肩をポンと叩いてモヒカンが説明を継いだ。
514『異形の来訪者』:2010/07/12(月) 23:47:34 ID:AxXjHmoK

「こいつの能力は……『周囲の時間間隔を短くする能力』。俺たちはせいぜい数分程度だと思ってた時間がよぉ、
 実際は……4時間以上経ってたってわけだ。なあ、ビックリだろ……? まあ、欠点としちゃ……」

やけにじっくり時間をかけて説明していたモヒカンがスキンヘッドの肩に手を置いて、いやらしく笑う。

「発動中…こいつはろくに動けねえってことかぁ」
「なっ…まさか今も!」
「させるかぁっ!!」

叫ぶと同時にそのスキンヘッドへと一直線に飛ぶグレープフルーツ。だがぶつかる直前にモヒカンの手に弾き落とされる。

「もう遅いっ!! 日の出だぁっ!!」

陽太が反射的に合わせた手から、得意武器、魔剣レイディッシュこと大根が発生しない。
晶の脳にざわざわと小動物たちの雑踏が返ってくる。
チンピラたちの背後から昇る眩しい朝日に、鎌田が顔をおさえる。

「変身さえなきゃてめえなんて雑魚だぜハッハァ!」
「ヒャッハアアアァァ!!」
「死ね貧弱眼鏡」

どこから出したのか、長い鉄パイプを手にしたモヒカン。ナイフを取り出した赤髪、特殊警棒のスキンヘッドが、
それぞれの雄叫びと共に鎌田に一斉に襲い掛かる。

「かっ、鎌田っ!!」
「鎌田さんっ!!」

金属がぶつかりあうような硬質な音が、早朝の自然公園に響いた。
515『異形の来訪者』:2010/07/12(月) 23:48:21 ID:AxXjHmoK


「なん…だと…!?」

眩しい朝日に照らされてなお、透き通るは大きな複眼。自然公園によく似合う薄緑の外骨格。
振り下ろされた鉄パイプを右手の鎌で。特殊警棒は左腕。低く突かれたナイフは右足の膝で。
三方向から迫る凶器を、鎌田はその昆虫人間の身体で完璧に受け止めていた。

「馬鹿な…変身が!?」
「…ふっ!」

茫然と動きを止めるチンピラたちに対して、鎌田の動きは速く。
鎌の根元の手で鉄パイプを掴み、左腕の特殊警棒を払いのけ、持ち上げた右足をそのまま赤髪の胴体にめり込ませる。
引っ張った鉄パイプを手放さず付いてきたモヒカンに、カウンターで腹に打ち込む左の肘、顎に裏拳の連続技。
堪らず手放した鉄パイプを手に半回転、加速した遠心力でもってスキンヘッドの特殊警棒に思いきり叩きつける。
盛大な金属音と共に無理矢理弾かれ、手から離れた特殊警棒は茂みの中へと消えていった。

無駄のない、流れるような動きだった。
続く攻撃がないのを確認すると鎌田は動きを止めて、ほっと小さく息を吐く。

「残念ながら、悪の企みなんていつだって上手くいかないものさ。それがどんな世界だろうと」

膝を付き、地に伏せ、手をおさえてうめき声を上げるチンピラたちを見回して、朝日に照らされ立ち上がる昆虫人間。

「最後に勝つのは、正義だから」

それは正しく、誰だって一度は憧れる、正義のヒーローの姿だった。
516『異形の来訪者』:2010/07/12(月) 23:49:33 ID:AxXjHmoK

「なっ、何なんだっ!! てめえ一体何者だっ!?」
「鎌田之博。通りすがりのライダーさ」
「んなこと聞いてねえっ!! なんで変身が解けねえんだよっ!?」
「答える義理は無いね。そんなことより…」

うろたえるモヒカンに、鎌田はピタリと鉄パイプを向ける。

「まだやるかい?」
「ちっ………」

ギギギと歯を噛みしめて、鎌田を睨みつけるモヒカン。ダン!と大きな音を立てて一歩踏み出し…
直後、回れ右。一目散に逃げだすモヒカン。それを慌てて追いかける赤髪とスキンヘッド。

「ちくしょおおおおおっ! 今日はここまでにしといてやるよおらあああ! 次は姐さん連れてきてやっからなああ!」
「ブラッディベル舐めんなあああっ! てめえなんか姐さんにかかりゃボコボコだー!」
「化け物め。覚えてろよ」

なんともありがちな捨て台詞を残して、チンピラたちは朝日の中を元気に逃げていくのだった。

「…姐さん姐さんって…どんな女だよそれ」

陽太はポツリと呟いた。


<続く>

彼は知らない。以前、暴走した彼を一発ノックアウトした鈴本青空こそ、その「姐さん」であることを。

まだしっかり考えてはいないんだけど、ブラッディ・ベルのヘッドって形でソラ姐さんと再会して
まことにやっかいな状況になるのが目に浮かぶようです。

なお、このチンピラたちは名前も昼能力もなーんも考えてないので好きにしちゃっていいですー。
517創る名無しに見る名無し:2010/07/16(金) 20:05:48 ID:8JveYynr
ちょっと離れてた間にスレスト…だと…

>>509
ドクトルの奥さんか…過去に何があったんだろうか
シリルたんに会えないって片桐君www

>>510
これはいい揺さぶり

>>516
鎌田かっけえ!
チンピラの方も何気に凄い能力を持ってるな
518創る名無しに見る名無し:2010/07/18(日) 21:50:52 ID:M31xqa6y
スキンヘッドの能力がやたら凄いって話になってるw
そうは言っても本人動けないし外から干渉もできない、かなり捻らなきゃ有効に使えない能力なんですよ。
使い方によっちゃ化ける可能性はあるけど、それは物好きな他の誰かに任せます。

ぶっちゃけ能力のモデルは『ピューと吹く!ジャガー』に出てくるテルミン使い「ペイズリー柄沢」だったりする。

『月下の魔剣〜異形【せいぎ】の来訪者〜』

容量足りるよね? >>513-516の続き投下いきます。
519『異形の来訪者』:2010/07/18(日) 21:52:50 ID:M31xqa6y

鎌田はいそいそと脱ぎ捨てた上着を着込み、フードを目深に被る。
カマキリの顔と翅は見えなくなるが、袖から覗く手は依然昆虫のような手で。

「あの…鎌田さん…?」
「鎌田お前…何で能力切り替わっても変身解けねえんだ?」

確かに昼能力で出したカロリーメイトを咥えつつ、陽太が尋ねた。

「ああ…ええと…僕のは昼も似たような能力なんだよ、ハハハ…」
「人間には戻らないのか?」
「んー…変身したらしばらく戻れないんだ」
「嘘つけお前、夜はさんざ変身したり戻ったりしてたろ」
「……うーん……」
「嘘が下手だな鎌田」
「鎌田さん…」

黙りこんでしまった鎌田の手に晶の手が触れる。硬質で鎌と一体化する不思議な手。

「陽太は悪気があって言ってるんじゃないんです。詮索してほしくないなら止めさせます。
 でもその…鎌田さんに困った事情があるなら…僕は力になりたいんです。陽太もそう思ってます」
「はっ! 何適当言ってんだ。俺はそんな聖人君子みたいな男じゃねえよ馬鹿」
「このツンデレめ」
「つっ!? ツンデレ言うなコラ!」

10年前の運命の日。チェンジリング・デイ。
人は傷つき、多くの命が失われ、世界は悲しみに包まれた。大切な人を失ってしまった者は数知れず。
家族でたった一人生き残り、孤児になってしまった子供たちもいる。
それでも彼らは互いに助け合い、分かち合い、力強く生きてきた。

「せっかくこうして知り合えたんです。困っているなら助けるのは当然じゃないですか」
「水くせえんだよ鎌田。一人でウジウジしやがって」
「晶君……陽太君……」

そんな中、晶と陽太の家族は誰一人として欠けることなく、安穏な暮らしは現在に至る。
多くの人が失ってしまった愛を、その一身に受けながら幸せに育ってきた。
自分たちは圧倒的に恵まれている。それを彼らはわかっていた。

だからこそ、愛を与える側になる。自分の身を削って、人を助ける人になる。
そんな風に、彼らは生きてきたのだ。

「何と言うか…君たちって本当にいい人だよね」
「えへへ…よく言われます」

人はそれを、お人好しと言うらしい。
520『異形の来訪者』:2010/07/18(日) 21:54:21 ID:M31xqa6y


鎌田はその異形の手を顔の前に持ち上げて動かして見せた。硬い指がぶつかりあいカチカチと音が鳴る。

「ただね、これはそんなに深刻なことじゃないんだ。たぶん君たちの思っていることとは違う。
 僕自身に何か異常があるわけじゃないんだよ」
「えっ…? でも……」

鎌田は顎に手を当て少し考えると、よし、と呟いて顔を上げる。

「そうだな、君たちは命の恩人だ。それにせっかく心配してくれているのに隠し事はよくない」
「それじゃあ…」
「ああ。話すよ、僕のことを」

表情という表情の見えないはずの虫の顔から、晶は鎌田の決意の表情を確かに見るのだった。


20分後、晶、陽太と鎌田は陽太の家のテーブルに向かい合って座っていた。
日の出からすでに30分以上経っているにもかかわらず鎌田が人間に戻る気配はなく、
本当に訳ありな人なんだと晶は再認識する。

「さて…どこから話したものか……」

触角をクイクイと揺らしながら考えていた鎌田が、おっと、と呟いて姿勢を正す。

「今まで、恩人の君たちを騙す形になってしまった。申し訳ない」
「えっ!? いえいえ、いいですよそんな…」

頭を深々と下げる鎌田を晶は慌てて止めた。ただ…と鎌田は付け加える。

「言い訳になってしまうけど、他意があったわけじゃない。ただ常識的に考えて信じ難い話だから…あえて黙っていたんだ」
「信じ難い…話…」
「あり得ない、なんてことはあり得ない」

考え込む晶を横目に陽太が口を出す。

「それがこの世界だ。信じるさ。お前が……」

言葉を留めて、ニヤリと笑う陽太。

「…実は人間じゃない、なんて話もな」
「えっ!?」
「ちょっ! 陽太っコラ!」
「なんでそれを」
「ええっ!? 鎌田さん!!?」

振り下ろされず停止した晶のチョップを頭上から退けて、陽太はふっ、と不敵に指を組んだ。
521『異形の来訪者』:2010/07/18(日) 21:55:20 ID:M31xqa6y

「昆虫を模したその姿。高い戦闘能力。怪しい言動に行動。ヒントは無数にあった。
 お前は正体を隠してたつもりだろうが……俺に言わせりゃ公表してるようなもんだぜ」
「正体って」
「お前のその姿は、チェンジリング・デイとは無関係。そうだろ?」
「あ…ああ、確かに」
「やはりな。つまり、お前は……」

陽太の言葉に全神経を傾けて、晶はゴクリと唾を飲む。

「悪の秘密結社に改造された…改造人間だ!」
「かっ……!?」

驚愕に目を丸くする晶。元々目は丸い鎌田。陽太は自信満々に続ける。

「それまでごく普通の一般人だったお前は悪の秘密結社にさらわれ、カマキリ怪人となるべくその身体を改造された。
 だが脳を改造される前に研究所を脱出。お前は正義の心を残したまま昆虫人間への変身能力を得たんだ」
「…あの…」
「お前の大切な携帯、無意味な携帯電話ってのは偽装だな。本当は脱出の際、機密文書か、超兵器の設計図か、
 ともかく秘密結社の重大な何かを移した大容量メモリーだ」
「ちょっとあの…陽太君」
「お前は正体を隠し旅を続けながら、秘密結社を潰すだけの力を持ち信頼に足る仲間を探している」
「………」
「そうだろう! 改造人間、鎌田之博!」

ドン! といった感じの擬音が似合うだろう。陽太は自信に満ちた顔で言い切るのだった。

「…君は凄いな、陽太君」

唖然とする晶は言葉が見つからず。陽太は澄まし顔で次の言葉を待つ。

「完璧に大ハズレ」

ゴン!

突然の大音量に驚いて晶が隣を見ると、陽太が勢いよくテーブルに額をぶつけていた。
そのまま動かない陽太。音からしてかなり痛かったと思う。自業自得である。

「もー…だからずっと言ってるでしょ。そんな突拍子もない話は現実にはないの! 厨二病は卒業しなきゃダメなんだから」
「いや……晶君。もしかしたら、陽太君の話のほうがまだ信じられるかも知れない」
「え…それってどういう…」
「僕の現実は、それよりもっと突拍子もない話なんだ」

晶と、早くも復活した陽太は、黙って鎌田の言葉に耳を傾ける。
522『異形の来訪者』:2010/07/18(日) 21:56:40 ID:M31xqa6y

「一言で言ってしまえば……僕は、この世界の住人じゃない」

瞬間、二人の頭に同じ単語が浮かんだ。
反射的に立ち上がった椅子が大音量と共に倒れ、衝撃的なその単語が二人の口から飛び出す。

「う…宇宙人!!?」
「ちょっ!? 違う!」

慌てて立ち上がった鎌田の椅子もガタンと倒れた。

「…まあ、とりあえず座ろう」

椅子を立てて座り直す三人。コホン、と小さく咳払いして、鎌田が続ける。

「ともかく、宇宙人ってのは断固違う。僕は正真正銘、地球人だよ。っていうか日本人だ」
「ええぇ…」
「じゃあ何だってんだよ…」
「僕は……」


「僕は鎌田之博。佳望学園、高等部の蟷螂人だ」


<続く>

ええ、本人です。スターシステムとかじゃなくて。

衝撃の事実…も何もないなこれ。もはや気付いてない奴いないだろこれ。
まあ自分もさほど隠す気はなかったしねw

鎌田の住む世界 → http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1277458036/l50
佳望学園 → http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/33.html

生みの親は他ならぬイラストのakuta氏(承諾済み)。非常に感謝しています。

ただ、元ネタ必須ではないです。知らない人を困惑させないことは肝に命じております。
(知ってたらニヤリとできる程度のネタは出ますが)
体格が人間に近いことと、戦闘能力に若干補正かかってる気はしますが、それ以外は元のままです。
気が向いたらあっちのスレも見てやってください。避難所に案内板置いときますので。

次回、超説明回。(言い訳回ともいう)
523創る名無しに見る名無し:2010/07/18(日) 22:49:24 ID:xL0cgOvZ
投下乙です!
愛、いいよね
晶いい子だ。もちろん陽太も
月下の魔剣更新ペースが上がってきましたねw
嬉しいことですよ
524創る名無しに見る名無し:2010/07/19(月) 02:15:00 ID:mg5ZPbCl
陽太はバッカーノと針山さん読んでそうw
525創る名無しに見る名無し:2010/07/23(金) 20:50:41 ID:59x0FtIr
おいおいなんかスレ独占しちゃってねえか!?
いいのかこれ。いいんだよな。いいってことにしておこう。

『月下の魔剣〜異形【せいぎ】の来訪者〜』

>>519-522続き投下です。前に言った通り超説明回なんだごめんよ。
526『異形の来訪者』:2010/07/23(金) 20:59:49 ID:59x0FtIr

「けもう学園…?」
「蟷螂人…だと…!?」

聞き慣れない単語に目を丸くする二人と対称的に、鎌田はそれが当然であるかのように続ける。

「初中高一貫、全国的に有名なマンモス学園だ。蟷螂人もそう珍しい種族じゃない」
「ちょっと待て鎌田、んな話まるで聞いたことないぞ?」
「当然さ。この世界にはそんな学園も、種族も存在しない」
「この世界って…」
「この世界。チェンジリング・デイが起こって、人類が特殊な能力を持った地球のことだ」
「やっぱ宇宙じ」
「地球人だよ、僕は。この世界とは全く別の歴史を辿った地球の住人だ」

そこまで言って鎌田は黙り、二人をじっと見つめる。その口から何かの言葉を求めるように。

「え…え…? それって……」
「パラレルワールド…ってやつか?」
「それだ、陽太君」

待ってましたとばかりに鎌田が言葉を紡ぐ。

「僕はね。こことは別の平行世界、パラレルワールドからこの世界に来てしまったんだ」
「………」
「………」
「ね。突拍子もない話でしょ」

鎌田の言葉はあまりにも飛躍していて、晶は言葉を失った。確かに、改造人間のほうがまだ信じられる話だ。

「無理に信じろとは言わないさ。一応話は続けるよ」
「お…おう…」

さすがの陽太も反応は晶と似たようなものだった。

「僕はごく一般的な蟷螂人の高校生だ。この姿は生まれつき。当然変身能力なんて持ってなかった」
「生まれつき!?」
「そう。僕はこの姿がデフォなんだ。これが僕の世界では普通のことだ」
「そんな世界が…」
「この世界につ…来てしまった理由は何もわからない。今はその理由を探しているところでね」
「………」
「だいたい2週間前か。普通に街を歩いていた僕は突然、何の前触れもなく白い光に包まれて、気がついたらこの世界に来ていた。
 そして、同時に僕の姿が変わっていたんだ。それが君たちと最初に出会った人間の姿だ」
「あっちが能力だったってことか」
「わけがわからなかったさ。僕の世界…いや、少なくとも僕の現実には超能力なんて一切存在しなかったんだから。
 それに僕はこの世界の住人じゃない。そんな僕になぜ変身能力が発現したのか。この世界の能力っていうのは
 もしかしたらDNAではなく、隕石の影響を受けたこの地球の大気に関係しているのかもしれないね」
527『異形の来訪者』:2010/07/23(金) 21:00:35 ID:59x0FtIr

へえ…と感心する晶を見て、なーんて偉そうに言っても、と鎌田は肩をすくめる。

「僕は研究者でもなんでもない、ただの学生、しかもこの世界にとっての新参者だ。
 こんなのは僕なりにこの世界を調べた結果の、勝手な憶測でしかないのさ」

――こいつらの狙いは僕なんだ――

晶は、キメラと対峙したときの鎌田の台詞を思い出していた。
鎌田の言葉が本当なのだとしたら彼は、能力研究者にとって絶好の調査対象になるんじゃないだろうか。

「ともかく、あの変身が僕の夜能力。戻れないんじゃなくて、昼は人間に変身できないんだ」
「じゃあお前今まで昼はどうしてたんだよ」
「ああ、昼は別の変身能力があってね」

鎌田は立ち上がってテーブルを離れ、腕を顔の前でクロス、最初に見せた軽い変身ポーズをとる。

「変身」

両拳を振り下ろすと同時にその身体が光を放ち、次の瞬間、鎌田の姿はそこから忽然と消えていた。

「消えた!?」
「透明化能力だとっ!」

驚く二人の耳に、不思議な音が響いた。今まで聞いていた声とは違う、かすれたような音。

「チがう」

そう、言葉には聞こえたがそれは声と言うより、翅を擦り合わせる虫の鳴き声のような。

ブーン、と微かな音と共に手の平サイズの何かが飛び、テーブルに着地する。
それは、草原などで見るごく一般的なカマキリだった。カマキリは威嚇するかのように翅を広げて…

「やア。これガぼくのひルノうりょく」

喋った。

「かっ鎌田さんんんんん!!?」
「ちょっ!!?えええええっ!!?」

「そんナにおドろくことカな?」

唖然とする二人をよそに、カマキリに変身した鎌田は小さな首をかしげて翅を震わせるのだった。
528『異形の来訪者』:2010/07/23(金) 21:01:19 ID:59x0FtIr

「ふつウにしゃべれナイかラこおろぎミたイニはねコスってオトダしてルノ。チャンときコエてる?」
「は、はい、聞こえてます」
「ヨカッた。けっコウレんシゅウしタンダ」
「どんどん発音怪しくなってんぞ」

カマキリはテーブルから飛び降りて、着地と同時に一瞬で巨大化、片膝をついた蟷螂人の姿に戻る。

「正直疲れるんだよあれ。一日中鳴いてる虫たちってすごいよね」
「いや…鎌田さんのほうが普通にすごいと思う…」
「服とか携帯とか身につけてた物は消えるけど、戻ると帰ってくるんだ」
「とんでもない能力だな…」
「そうかな? 虫人の僕が昼は虫に、夜は人になる。割と妥当な能力だと思うけど」
「そうは言っても…」
「なんだかんだで夜人間になってるときより落ち着くんだよね。
 人と虫の中間、虫人っていうけど、深層意識はどちらかと言えば虫寄りなのかもしれない」
「はぁ……」
「虫人って…お前みたいな蟷螂人の他にも種類がいるのか?」
「いろいろいるよー。兜虫人とか雀蜂人とか友達にいるし」
「うへぇ……」

カマキリやカブトムシやスズメバチ、他にも様々な巨大昆虫が当然のように飛びかう地球。
特に虫嫌いではないのだが……何か末恐ろしい光景を想像せずにはいられない晶だった。

「あ、あの…鎌田さんの世界って一体どんな世界なんですか…?」

巨大昆虫の楽園となった地球。それは一体どんな世界なのか。恐る恐る、晶が尋ねる。
透き通る複眼で二人の表情ををじっと見据えて、鎌田は小さく息を吐く。

「えーと…君たちが想像してる世界とはだいぶ違うと思うよ」

その表情は一瞬ふっと微笑んだように見えた。

「実際はこの世界とほとんど変わらない。自然環境も、科学技術も、文化も。住人を除けば違いはすぐには気付かないと思う。
 違いは大きく二つ。まず、チェンジリング・デイが起こらず超能力が存在しないこと。そして、人間の他にケモノが存在すること」
「獣? 動物ならこの世界にも普通にいるぞ?」
「ああいや、ケモノっていうのは……普通の動物から急激な進化を遂げて、動物の特徴を大きく残したまま高い知能を持って、
 二本脚で歩き、言葉を話し、社会生活を送っているひとたちの総称……かな?」
「それって…獣人…ってこと?」
「ああ、それがわかりやすいか。そうだね、一番多いのが猫人、犬人、兎人みたいな獣人。
 他にも、翼を持って空を飛べる鳥人。硬い鱗に覆われている爬虫人。僕みたいな虫人。そして人間。
 そういういろんな種族が混ざり合って平和に暮らしている、それが僕の世界だ」
「なるほどな…そういう世界か」
「僕の話はこれくらいかな」
「………」
529『異形の来訪者』:2010/07/23(金) 21:01:59 ID:59x0FtIr

ほとんど納得しているような陽太と違い、晶は現実主義。だからこそ、晶は深く考える。
鎌田の話はあまりに現実離れしていて。だがそれ故に現実味があるとも捉えることができる。
なぜなら、誰もが信じられない嘘なんてつく意味がないのだから。
しかしそれにしても…そんな異世界というのは…

そんな晶を見つめて、鎌田が思い出したように言う。

「僕は…どちらかと言えば現実主義者だ。そういう意味では陽太君より、晶君、君に近い性格だと思う」
「え…?」

突然関係の見えない話題を振られて晶は困惑する。

「例えば。僕は正義のヒーローに憧れている。でもそんな僕が実際に目指しているのは、警察官だ。
 そのために体を鍛えてるし、正式な本で調べて勉強もしている。現実的でしょ?」
「は…はぁ…」
「僕はこの世界、人類が当然のように超能力を持っている世界なんて、話を聞くだけでは絶対に信じられなかったと思う。
 だから、僕の話も信じられないのが当然だと思うんだ。君の反応が普通だよ」
「そう…ですか…」
「晶お前…鎌田は苦労してきたってのに血も涙もない奴だな」
「そう言うなって、ハハハ…」

そんな風に笑う鎌田はどこか寂しげで。晶はもう少しだけ考えて。そして、顔を上げた。

「いえ、鎌田さん。信じますよ、あなたのこと。あなたの世界のこと」
「え…」
「いろんな種族が仲良く暮らしてるって素敵な世界ですね。一度見てみたいです」
「そっ……」

そう言って晶はニコリと笑う。額に手を置いて俯く鎌田。

「そっか……ありがとう、晶君」

下を向き呟くように言う鎌田がどんな表情をしていたのか、晶にはよく見えていた。
530『異形の来訪者』:2010/07/23(金) 21:02:50 ID:59x0FtIr


「そうだな。君たちには……これを見てもらいたい」

何のことかわからず晶と陽太は顔を見合わせる。鎌田は椅子に掛けた上着をごそごそと探り、
チンピラたちから取り返した携帯電話を取り出した。

「この世界の物じゃないから繋がらないけど、これは正真正銘、僕の携帯電話だ。
 大切なデータっていうのは、機密文書でも設計図でもない、ただの写真さ」
「写真?」
「そう、去年修学旅行に行ったときの。僕の世界や仲間が写ってる」
「おいおいそんなのがあんなら最初から出せよ」
「それはそうなんだけど…合成写真か何かだと思われるのが嫌でね。あくまでただの写真だけど、今の僕にとっては、
 あの世界にいたっていう大切な証だ。元の世界との唯一の繋がりなんだ」
「鎌田さん……」

鎌田は携帯を操作し、小さなサムネイル画像が並ぶ画面を開いて晶に渡す。
改めて見れば、大き目のボタンが並ぶまるで見たことのない機種、メーカーだった。
小さな画面を二人で覗き込み、決定ボタンを押して一つの画像を拡大する。

「あっ…!?」
「うおぉ…」

立ち並ぶ派手な看板やのれん。人の多さはまさに観光地。
この世界と何ら変わらない、よくある修学旅行の風景だった。違う点はただ一つ。

そこに写る教師も、生徒たちも、あきらかに人間ではなかった。


<続く>

まだまだ続くよ説明回。動きがなくて申し訳ない。
まあ多分次回でこの話は終わるので、も少し付き合ってくださいませ。
531創る名無しに見る名無し:2010/07/23(金) 21:58:33 ID:so0SOxpI
羽音でしゃべるとかすごすぎるw
いや、どれくらいすごいのか分からないけどw


容量が危ないので次スレ立ててきました
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1279889733/
532創る名無しに見る名無し:2010/07/24(土) 04:50:47 ID:1JTVI0Oq
鎌田www
リアルカマキリになれるってそれただの虫じゃねーかwww
GJですw
533創る名無しに見る名無し:2010/07/24(土) 06:48:17 ID:eL6kEMlM
>違う世界から来ても能力が発現する

うぐああん、まさに俺のやろうとしてたことじゃねえかww
534創る名無しに見る名無し
>>526
GJっす!
いや、これは…なんか、スケールがヤバイことに!??
他スレとパラレル展開とは! これは説明回が必要ですよッ!!