■「スネークと圭一達が球技で対決」する話を書いて欲しい等、要望を書き込むと、職人さんが興味を持って書いてくれるかも?
創作のヒントにもなるのでどんどん書き込んでOK
■本編以外の短編・長編について■
※「他人の作品」の続きを勝手に書かない。どうしても書きたい場合は作者さんに許可を申請して下さい。
※「他人の作品」の設定を借りた外伝は許可。
一応「○○の設定を借りました」と一言付けたほうが良いかも。
※「他人の作品」の設定を一部借りて(スネークが教師として潜入など)新しく長編・短編を書く事も許可。
※職人さんはトリップを着けることをお勧めします。トリップについては下記を。
■トリップについて■
名前欄に、ダイヤのマークと数字とローマ字の羅列を表示させて簡単に本人(自分)を証明するシステムです。
書き込む際の名前欄に、@#A(@に名乗りたい名前を、Aは自分が覚えやすい文字)を入力して書き込むと、#が◆に変わり、Aは数字とローマ字の羅列に変換されます。
【例】
オヤシロ様#メタルギア
↓
書き込むと……
↓
オヤシロ様◆s7Li6JIQiW
※注意※
上記のAの文字は、毎回トリップを着ける為のパスワードです。
他人に教えたりしないで下さい。
第三者にバレてしまった場合は、違う文字を入力して下さい。
■荒らし、基地外など■
荒らしは絶対スルー。
荒らしはかまってもらいたいだけなのです。煽りもだめ。
荒らしに反応するあなたも荒らしかも?
基地外を見かけたらNG登録推奨。
★現在、本編ストーリーの続きを書いてくれる職人さんを募集中です。
今までのストーリーはテンプレ内にまとめwikiがあるので参考にして下さい。
★現在【CQC体育編】と【ダンボール殺人事件】を書いてくれる職人さんを募集中です。
▼【CQC体育編】は、スネークが雛見沢分校の教師として潜入中という本編設定を借りています。
スネークが体育の授業で生徒達や圭一達にCQC(軍事式近接格闘術?)を教えるというネタです。
特にそれ以外決まっていないので、後は職人さんが自由に題名(○○し編とか)や内容を考えて構いません。
▼【ダンボール殺人事件】はスネークが雛見沢校の教師として潜入中という本編設定を借りています。
雛見沢で、ダンボールに詰められた死体が発見され、ダンボールの持ち主であるスネークに容疑(重要参考人?)が掛かります。
死体が発見された日にはスネークは行方不明になっていて、更に疑わしい状況のようです。
それ以外は何も決まっていないので、後は職人さんが自由に題名(○○し編とか)内容を考えて構いません。
┌─────┐ .┌────────┐ .┌──────┐
│ 書き込む .│名前:│ .│E-mail:│sage │
└─────┘ . └────────┘ .└──────┘
._____
./ / ./|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| . .l_
/|スネーク .|/ ./<ガサッ・・・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄o
○
(大丈夫だ・・・メル欄にsage)
(と入れておけば誰にも見つからない・・・)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
Q&A
オリスクないの?
・2007年頃、デザフェまでうpされましたが流れました。 その後、本編職人氏が新規にちょくちょく作っています。
ttp://hangyodori.hp.infoseek.co.jp/の「アップロード掲示板」から探してダウンロードしてください。
現在、6月17日まで収録されています。
書きたいけど、時系列とか展開とかワカンネ
・したらば(職人様向け掲示板)にGO
つ
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/10902/ 知恵先生の扱いはどうなるの?
・元ネタ(月姫)知らない人でも分かる程度に、ほどほどに。
(現時点では傍観者という設定です)
なんでオセロットとかリキッドが一緒に存在するの?リキッドは死んだんじゃないの?
これってMGS2の前なの?後なの?つうか鷹野達は(ry
・今後の展開を待っていてください。
「歪んだ世界」という設定ですので、wikiにある矛盾したSS等は「繋がらないカケラ」扱いとなります。
テンプレ以上です
新板でも頑張って行きましょう
7 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/03(土) 11:08:00 ID:dtFnBSZ1
>>1乙!
5スレ目か・・・いつまで続いてくれるだろうか
移転したのかw とりあえず乙
続きがこないな・・・
保守
11 :
メサルギア:2009/10/10(土) 14:57:02 ID:20h1zsxW
TIPS 二人のビックボス
ボスを殺してから数年、俺は彼女と違う生き方をしようとした
だが今の俺は何も前と変わっていないと思った
戦争に感情などは不要、感情や思想はた足枷になる、自分の死を早めるだけ
彼も同じことを考えていたんだと思う
「さあやろうかダブルビックボス」
「ウキウッキウキ(スネーク、ここは一時休戦と行こう)」俺に向けていた銃をサトシに向けた
「ああ」
「さあやろうエェェェェイメェェェェェェェン」サトシは袖から小太刀を大量に出し俺達に向け、投げた
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」俺達は銃のトリガーを引いた
フェニックス甲板
「レナァァァァァ」
「けいいちぃぃぃぃぃ」お互い、死力を尽くして殺しあった
「甘いぞレナァァ、もっとだもっと力を出し切れ」俺はこの時既に人としての何かを切れていたんだと思う
「すごいよ、圭一君」もう俺は戦場でしか、生死の狭間でしか生きていけない生物になった
「おらぁぁぁぁ」一つ一つのブツブツと切れていくのが分かった
「もう圭一君も人間じゃなくなったね」
「違う俺は人だぁぁぁぁ」彼女の言葉を正しかったんだ、でも俺はその時彼女の言葉を聞き入れなかったんだ
ガチン
お互いの武器が宙を舞った
「うぉぉぉぉ」武器が無くったっていい、戦闘の基本は格闘だ、それはレナも同じだった
「あっはっは」武器が無くなり、今度は殴りあいになった
拳と拳、蹴りと蹴り、技と技
「覚えてる圭一君、CQCの訓練では圭一君は一度も私に勝てなかったんだよ」
「だからどうした、今は訓練じゃない」
お互い鼻血出し、口の中がずたずたになっても殴ることを辞めなかった
「はぁはぁ」
「お互いそろそろ限界だね」
「ああ、楽しかったぜ、終わりにしよう」
「うん」お互い立っているのも限界だった
「うぉぉぉぉ」「はぁぁぁぁ」互いのストレートが互いの顔面に炸裂した
レナはその場に倒れた、俺はまだ立てた
レナを殺すなら今しかない、今殺さないと俺がやられる
気づいたときには俺はカタナを持ちレナの前に立っていた
「はぁはぁ」
「レナ」
「いい顔だよ圭一君、やりなよ」
―これで私の悪夢も終わる、けど圭一君の悪夢は続く、どちらかが死にどちらかが生きる。
圭一君、私もあなたももう人間じゃなく化け物なんだ、終わることの無い戦場でしか私
達は生きていくことが出来ない、人にはもう戻れない、死ぬまで私達はバケモノ、私達
はフリークス、これからは圭一ではなくてフリークスとしてこの世を彷徨う
この戦争は終わった、でもあなたはきっとすぐに別の戦場に狩りだす、その戦争が終わ
れば、新しい戦場へあなたは休む暇の無く戦い出かける、国家の思想も関係なくあなた
は戦う。
さあ私を殺して―
「・・・・」
俺はカタナを彼女の体に刺した
「あああああああああ」
血の雨が降る、俺の体に彼女の血液が飛び散る、彼女の体が真っ赤に染まる
彼女の体が動かなくなった
「俺もすぐにそっち行くから」
俺はパラシュートで脱出した
「それまでは待っててくれ」
地面に着地し、フェニックスの見続けた
「3・2・1」
フィニックスが爆発し炎上した
自分の火で焼かれるフェニックス
俺は焼かれるフェニックスに敬礼をし、通信を入れた
「こちら圭一、魅音聞こえるか」
メサルギア続き乙!
ついでに保守
だいぶ遅くなりましたが、元本編氏乙です。あ、新たな伏線が……!!
投下します。
何が起きたのか分からない。
気がついたら、私は赤坂の腕の中にいた。
銃がこちらに向けられた瞬間、赤坂が私を抱えて横に飛んだ事に気づいたのは後になってからだった。
大木を背にし、草むらの影に隠れる。その動きには無駄が一切無かった。
「…………っ、…大丈夫かい、梨花ちゃん」
赤坂が呟く。
平気なのです、と答えて首を彼の方に向けた。……しっかりと私を抱えている赤坂の腕に、血がにじんでいた。
「あ、赤坂こそ、血が……!!」
「静かに。……かすっただけだから、平気だよ」
そう言って、赤坂は笑って見せた。私を安心させてくれようとしているのだろう。
……でも、安心出来ない。さすがの赤坂でも、銃を持った大人数と立ち向かうには難しいはず。
山狗が形勢逆転した事に混乱すると同時に、ある疑問が浮かび上がってきた。
――どうして、彼らは発砲したのだろうか。
前の世界まではどうだった? 銃声がすると、住民に気づかれる可能性があるから、発砲は許可されない。
待てよ……。銃声は…、…………しなかった。
「…おそらく、彼らは銃にサプレッサーを装着している」
同じことを考えていたのか、赤坂が小さく言った。
「銃声が最小限に抑えられる物だ。…遠くにいる一般人には銃声が聞こえない。……だから撃ってきた」
まずいな、という表情の赤坂。
……サプレッサー。そんな豪華な物を、山狗なんかが持っていたなんて。
これも、カケラが歪んでしまったせいなの……?
「古手梨花を渡せ。大人しく投降しろ」
小此木が叫ぶ。……山狗が、完全に私達を取り囲んだのだ。
どうしよう……。私は捕まっても希望があるが、赤坂が危ない。
彼らには、赤坂を生かしておく理由が全く無いのだ。
「…私が奴らを引きつける。梨花ちゃんは逃げるんだ」
「い、嫌です! 赤坂がいない世界なんか、価値が無いのです!」
赤坂だけじゃない、圭一、レナ、魅音、沙都子、詩音、葛西、入江、富竹……。
どの人物も、欠けていてはいけない。大石だって私の味方となってくれる存在だ。
誰か一人でも欠けてしまったら、意味がない!
「…………。」
赤坂は沈黙したままだった。……こんな状況にしたのは、私のせいだ。
うだうだしていて、部活メンバーへ情報を伝えるのが遅かったから、彼らの加勢が間に合わない!
山狗の装備や小此木の動向にもっと目を配っていたのなら!
自分の不手際を謝ろうとしたその時、赤坂が呟いた。
「……来たか」
次の瞬間、大きな音がした。その方向を見ると、山狗が地面に伸びていた。
倒れている山狗の向こう側に、……「ある人物」がいた。木々が影となっているので顔はよく見えない。
…だけどその人は、……私が考えている人物に違いがなかった。
「う……、嘘…………」
……信じられない。
赤坂だけじゃなくて、彼も来てくれたなんて…………!!
「制圧しろ!」
小此木が叫び、『彼』に銃口が向けられる。だが小此木が叫ぶよりも、彼が動く方が早かった。
まだ対象に向けられてすらいない、山狗の銃を奪う。弾倉を強制的に排除し無力化した。
銃自体も遠くの藪に放り投げられ、完全に山狗の武器は奪われた。
……その間に、攻撃する隙は無い。彼らの脳は、今起きている出来事を理解するだけで必死だった。
そして、結局何も出来ないまま、哀れな山狗は宙を舞い、意識を途絶えさせる。
近くにいる山狗は彼に向けて引き金を引いた。だが遅かった!
彼は既に、銃口の前から体を翻していたのだ。銃弾は遠くへと消えていく。
次を撃つ暇は無い。彼の肘や膝に急所を決められ、山狗の力が抜け、膝をつく。
しゃがみ込んで無防備となった首筋に、容赦ない一撃が叩きつけられた。
彼の近くにいない山狗は幸運だった。数秒の間でも、冷静になれる暇があるのだから。
敵は隠れている奴も含めてたった二人。こっちは大人数で銃を持っている。
臆することは無い、敵は武器を持っていない。接近されなければいいのだ。撃ってしまえばいい!
何人かの山狗がそれに気づき、彼に銃弾を浴びせようとした。
――それは叶わなかった。
ひゅん、と何かを振る音が聞こえた。同時に山狗達の手に鈍い痛みが走り、銃を取り落としてしまう。
驚きの声を上げる間もなく、今度は首筋に『何か』が打ち付けられて、山狗が次々に沈んでいった。
残りの山狗が辺りを見渡す。新たな敵が来たらしいからだ。
……木々ががさがさと揺れ、時折枝がしなるだけで、『敵』の姿が見えない。
姿が見えない。……なのに、『敵』は絶対にいる。
こうやって探している間にも、……一人、また一人と倒されていくのだから。
闇雲に発砲しても当たらない。それはそうだ、見えない敵に銃弾が当たる訳が無い!
そうしている間にも、見える方の敵が接近してくる。
あちこちに撃ちまくっていた銃を、見える敵に向ける。
……彼らは失念していた。その行動全てがあまりにも遅く、銃は彼にとって意味をなさない事に。
「銃の扱いがなっていないな」
銃を掴みながら、彼が言う。全くだ、と姿が見えない人物も同意した。
言われた山狗は何の事か分からず、目を白黒させるしか無かった。
「…それに、お前達は銃に頼りすぎている。接近戦では格闘が有効な場合も多い」
こんな風にな。
地面にキスをする羽目になった山狗は、身をもってその事を知った。
呼吸すら乱れていない彼は、辺りを見渡す。殆どの山狗が倒されていた。
同時に、安全を確保した赤坂も立ち上がった。
「さて、……どうする? まだ向かってくるか?」
彼が言う。
――徹甲弾並みの威力を持つ青年に、突如現れた外人の男。それに、姿を見せない、……いや、『見えない』敵。
こいつらには銃が使えない、接近戦でも勝てない! こっちに勝機は無い!
闘争心を失った山狗達は、じりじりと後ずさりを始め、そして逃げ出した。
「梨花ちゃん。……もう、大丈夫だ」
起きた事を把握出来ずにきょとんとしていた梨花が、茂みからそろりと顔を出す。
……彼女は、たった一つだけ分かっていた。『彼』は顔を梨花の方に向ける。
「遅れて済まない。……待たせたな!」
「スネェエェエエェクッ!!!」
――ずっと梨花が助けを求めていた『彼』、スネークが助けに来てくれた事を。
新スレ初投下は以上です。ノシ
乙なのです☆
待ってましたGJ!
それと梨花ちゃん…その叫び方はむしろやられた時のだよ
20 :
メサルギア:2009/10/11(日) 23:45:31 ID:2TLVAXx+
メサルギア ― エピローグその1 ―
「その後は、・・・見ての通りさ」
「圭一さん」
「まだ俺は彼女達の場所へ行けない」
「魅音さんはその後どうしたんですか?」
「しばらくは一緒に生活していた、彼女はまだ化物じゃなかった」
「・・・」
「彼女とは別れた、俺は彼女とベッドで何度も体を重ねても、化物の匂いは取れなかったんだ」
「俺が家に出て行くとき彼女は俺を引きとめようとした」
『お願い行かないで』
「すまない」俺はドアを開けたかけた時だった
『お腹にあなたの』
「俺は化物、君は人、人間と化物には子供は出来ない」俺はそう良い彼女の家には帰ってない
否帰れなかったんだ、本当に彼女に中に俺の子供がいたら、
その子供とどうやって向き合って良いのか
何を伝えれば良いのか
それがわからなかった
怖かったんだ
「なあに俺の死に場所はここさ」
「圭一さん、本当の事を話します。私は編集者じゃありません」
「・・・赤坂どう言う事だ」
「私は、ある組織に属している人間です」
「撃ちたいなら、撃ってくれてもかまいませんだけど私の話を聞いて後でお願いします」
「・・・」
「私が属している組織はこの世界を、この戦争を、終わらせるのです」
「無理な話だ」
「可能なのです、ある男が、ソリッドスネークがそれを今終わらせているのです」
「スネークだと」
「明日の朝には、世界は終わり始まるでしょう、もう化物世界は今日で終わりです」
「あなたはフリークスとしてではなく、人としてただの圭一として父親として生きるのです」
「ソリッドスネーク、BIGBOSSのクローン、彼のクローンであり彼本人ではない男」
「スネークは今全てを白紙の状態に世界を戻します」彼はポケットから一枚の紙を俺に渡した
「これは?」
「この時間、この場所に行けば彼に会えます、信じる信じないはあなた次第です」
「私の話は以上です、さあ撃ってください」彼は俺の銃口を自分の額に当てた
「さあ」俺にはトリガーに引けなかった。
保志
保守
ほしゅ
保守
まだ保守が続くか……。
保守
呆然としながらも喜びに胸を満たされた梨花は、スネークの方へ一歩、また一歩と足を進める。
赤坂と、姿を現したフォックスがそれを見守った。
唇を振るわせながら梨花が声を掛ける。
「本当に…来てくれたのですね……」
「……ああ。約束したからな」
かける言葉は短いが、両者の言葉には感情が籠もっていた。
――ぱちぱちぱち。
その音は突然聞こえた。感情の籠もっていない、乾いた拍手の音だ。
梨花は我に返り、スネーク達は目を鋭くしてその音が聞こえた方向を見る。
いつの間に身を潜め、いつからそこにいたのか。
山狗部隊の隊長――小此木が、木に背を預けながら拍手をしていた。
不敵な笑みでにやりと笑い、
「感動の再会を邪魔してすまんね。……やるな。話に聞いていた以上だ」
倒れた部下に気を配らずにそう言い放った。
所詮、山狗部隊は技術屋まじりの部隊だ。装備がいいとは言えども、プロの戦闘職相手にかなうはずがない。
その場にいる誰もが分かっていたことだ。だから、小此木も目の前の惨状を当然のこととして受け止める。
木から体を起こし、ゆっくりスネーク達の方に歩みを進めた。スネークらは身構える。
「何のつもりだ?」
スネークが問う。小此木はそこらの山狗と格が違うのは体格や雰囲気から伝わっている。
だからと言って部下が倒れている状況でこの三人に戦いを挑むのは無謀な事だ。
「悪あがきをするつもりはねぇ。五年ぶりに会った空手野郎に刀使いの忍者、……それにお前と来た」
勝てる訳が無いしな、と自嘲気味に付け加えた。
目的が未だに見えず、スネークは警戒を解かなかった。
赤坂は昔の記憶を呼び覚まし、目の前の男が誘拐事件で戦った犯人の一味であることを思い出した。
小此木の手がゆっくりと向けられ、とある人物を指差す。
向けられた相手は――スネークだった。
「スネーク、だったか。お前とサシでの戦いがしたい。どうせこっちは負けてる身だ、失う物は何も無い」
「……。」
しばらくの沈黙が流れる。そしてスネークが口を開いた。
「……分かった。」
返事はたった一言。
山狗の隊長が、負けを認めてあっさりと引き下がる訳にはいかない。それをスネークは分かっていた。
小此木の隊長としてのプライドと、彼にある闘争心を受け止めての返事だった。
「赤坂、梨花を頼む。フォックスは周辺の監視をしてくれ」
そう言い、スネークは一歩前に出た。
赤坂、フォックスは頷き、それぞれの役割を果たす為に動いた。
梨花は――黙ってそれを見ているしか出来なかった。
しかし、彼女はスネークを信じていた。小此木に負けるはずがない、と。
「ずいぶんと余裕だな」
インカムや色々な装備を外しながら小此木が言う。
スネークは沈黙を守ったままで、目を細めて小此木の動向を見定めていた。
そして、準備を終えた小此木が身構えた。
――小此木は只の山狗とは違う。十分に承知していたスネークは構えをとった。
それを見た小此木がにやりと楽しそうに笑う。
「へっへっへ……やはりあんたは違う。……腕立て伏せの百も出来ない隊員とも、所詮スポーツに過ぎない空手屋ともな!!」
自分の部下達は弱すぎて話にならない。
五年ぶりに会った青年は空手しか扱わないようだった。自分が養い、鍛え、日々訓練を重ねてきた軍隊格闘とは全くの別物!
だがスネークは違う。こっちと同じ戦闘職の動きだ!
「うぅぅぉおおおぉおおぉぉおお!!」
熱く騒ぐ血の勢いをそのままに、飛び込んでパンチを繰り出す!
スネークはそれを右手で受け止めた。素早さ優先の軽めのパンチだと分かっていたからだ。
……が、スネークの顔が僅かに歪む。
(この筋力は……?)
自分より目の前の相手は若いだろう。
――しかし、不自然な程の力だった。速さもあり重さもある。
鍛錬しているようだがそれとは違う。衰えてすらいない、若者のような力だった。
…それ以上考える間を小此木は与えない!
小此木はすぐに体を捻らせ、回し蹴りを繰り出した。スネークは僅かにかがんでそれを躱した。
だが回し蹴りからかかと落としにつなぎ、足が振り落とされる!
「……っ」
考え事をしていたせいか、スネークは反応が一瞬遅れた。
頭に直撃はしなかったものの、小此木の足が左肩にかすったのだ。
「どうした? 本当の実力を見せてみろ!」
右、左、上、下――と、拳が連続でたたき込まれる。どれも早く重い。
スネークは紙一重でそれらの攻撃を全て防いだ。
技が尽きたのか、小此木は一端下がって間合いを取る。
スネークは動かない。只ずっと小此木の動きを観察しているようにも見えた。
…その事が、小此木に怒りを覚えさせた。
あれだけ見事に、早く、確実に敵を倒す「技」を持ちながら、向こうからは仕掛けて来ない。
――何故だ。兵士が生きられる場所は、戦場にしか無いというのに。
軽く舌打ちをしながら、小此木はスネークの顔面をめがけて拳を飛ばす。
目くらましの為の攻撃だったが、それは首を振って躱された。
だが意味はある。上に意識を集中させ、その間に腹を蹴り飛ばす事が出来るからだ!
小此木の蹴りが、スネークの下腹部にめり込む。一般人なら内臓が破裂してもう立ち直れない程のものだ。
スネークは二、三歩後ずさった。
……それは蹴りによるダメージのものだと小此木は確信し、にやりと笑う。
――膝をつかないだけ、流石というべきか。
半分負け試合のつもりで挑んでいたが、こっちにも勝機はありそうだ――!!
「……そんなものか?」
「何……!!」
スネークが口を開いた。
その口からは血が流れていない、喋る様子もよどみが無い。待てよ、さっきの蹴りを食らって平然としているだと!?
小此木は混乱していた。
スネークの地を踏んでいる足に力が籠もる。
――そう。彼は蹴られて後ずさった訳では無く、間合いを開けるために下がったのだ。
再び、小此木から仕掛ける。今度はスネークも動いた。
…小此木の拳や脚は、またもやスネーくに防がれてしまう。
それに、……防がれるだけではなかった。攻撃する手足に、確実に反撃が返ってきていた!
殴っても蹴っても当たらない、向こうからは攻撃されっぱなしだ。
小此木の焦りが、徐々に高まっていく。
初めて息を切らし、今度は小此木自ら間合いを開けた。
「……お前は空手を馬鹿にしているようだな?」
唐突にスネークが切り出した。
この期に及んで何を言うんだ――と小此木は思ったが、相手の隙を探しつつ答えた。
「……空手はスポーツじゃねえか。動きも、返し方も、全て『型』に沿っている。
……だから読めるしさばけるんだ。空手屋とは戦う気も起きない」
「それは大きな間違いだ」
「何だと?」
「赤坂の動きを見ていなかったのか? ――あの動きは、型に囚われていなかった。
武道には詳しく無いが、『型』の会得が武道の目的では無いのだろう」
少し離れた所で、赤坂が小さく頷いた。
「それがどうした? てめえには空手もボクシングも柔道も関係無いだろ」
「……分からないのか? 戦場では油断や驕りが命取りとなる。お前は赤坂になら勝てると判断したんだろう。
それでより戦えそうな俺を選んだ。――違うか?」
「……。」
「赤坂はかなりの使い手だ、知り合ったばかりだが分かる。……お前が戦ってたとしても、勝てないだろう」
小此木は目を見開いた。
そして、怒りと屈辱に体を震わせ始めた。
――空手屋に、この俺が、勝てないだと……!! ふざけるな、そんな筈はない!
こっちはスネークと同じ戦闘職だ、空手しか脳が無い奴とは違う。
なのに奴は、空手が強いと認め、この俺があの若造に勝てないと抜かしやがるなんて……!
「ちくしょおぉおおおぉおおおぉぉおお!」
馬鹿にされたと感じたのか、小此木は全身の力を込めスネークに飛びかかった。
小細工無しの一撃、まともに食らえば、いくらスネークといえども只では済まない!
小此木の拳は、スネークの目前にまで迫る。――そして、スネークは目を見開いた。
「その驕りが」
体を僅かに捻って、小此木の一撃を躱す。目標を失った拳は、スネークの手に掴まれた。
そして、小此木の攻撃の勢いを利用しつつ、体をぐっと低くする。
「――貴様の敗因だ」
一閃。
弧を描くように、小此木は宙を舞った。
数秒もしないうちに地面に叩きつけられる。一瞬呼吸が停止し、咳き込んだ。
木々の間から見える薄暗い空を見て、小此木は敗北を悟った。
ふと、その視界にスネークの顔が写る。
先ほどとは違う、どこか穏やかな表情で、スネークは言った。
「……だが動きは見事だった。相当訓練しているようだな。いいセンスだ」
「…いい、センス……」
――こりゃ、勝てねぇな。
自嘲めいた笑いを、小此木は漏らした。
静かな風が吹き抜けていく。夜は、まだ始まったばかりだった。
遅くなってしまって申し訳ありません。以上です。
動きのある描写は苦手なので、おかしい所がありましたら指摘お願いします。ノシ
本編乙!
3のオセロットとまんま同じ反応www
保守
ほす
36 :
メタ梨花:2009/11/17(火) 04:01:45 ID:ihObYyY3
だれかー
☆
38 :
メタ梨花:2009/11/21(土) 22:06:53 ID:x5Fgx+t8
「NOS」っていう二次小説サイトであらたなひぐらし×メタルギア物語り作っちゃいました。検索はひぐらしかメタルギアってやればでます。
タイトル
メタルギアとひぐらしのもなく頃に「蛇助け編」
どこか憑き物が取れた表情になった小此木は、しばらくしてからよろよろと立ち上がった。
その動作には敵意が無い。こちらが警戒する必要はなさそうだと判断し、構えを解く。
小此木は背中や体についた土埃、草を払い落とした。そして戦闘前に外したインカム類を拾い上げる。
未だ目を覚まさず倒れている自分の部下を見て、彼はやれやれと首を振った。
部下を起こそうともせず、小此木はスネーク達に背を向ける。
二、三歩進んだ所で彼は首だけを後ろに向け立ち止まった。
「……俺達の負けだ、ここは引かせてもらう」
「こいつらはどうする?」
地面に伏している山狗を指差すと、小此木は肩をすくめた。
「放っておくさ。俺一人じゃ全員を連れて帰れないしな。殆ど戦う意志も無いだろうし、しばらく起きないはずだ」
あっさりと言い放って、彼はまた歩き出した。
――木々の間の闇に姿が消えた所で、遠くから声がした。
にぎやかな子供達の声と足音は、だんだんと大きくなってきた。
「スネークー、梨花ちゃーん!! 大丈夫!?」
「梨花ちゃん! 無事だったか!?」
「みんな大丈夫みたいだね。良かったぁ!」
「あぅあぅあぅ、梨ぃ花ぁー、もう無茶は止めて下さいです!」
魅音、圭一、レナ、羽入が姿を現す。無事に合流出来たようだ。
梨花は弾けるような笑顔を見せ、仲間達との再開を喜んだ。
俺も緊張感が溶け、一瞬表情筋が緩んだが……素直に喜び会えない状況だった。
地面に倒れている山狗達の装備。只の工作部隊にしては十分すぎる程の――兵器。
拳銃と言えども、立派な武器だ。撃たれればあっさりと死を迎える。子供達には触らせない方がいいだろう。
小此木はああ言ったが、山狗達が目を覚ます可能性だってあるのだ。早く移動しなければならない。
複雑な心境の俺を余所に、魅音が素っ頓狂な声を上げる。
「……そういえば、この二人は誰? 梨花ちゃんの知り合い?」
魅音の視線が、赤坂とフォックスとの間で揺れ動く。
……赤坂はまだいいとして、フォックスのことをどう説明すればいいのだろう。
全身甲冑という奇妙な出で立ち、表情はまったく読み取れず、おまけに刀を背負っている。……危険人物と見られてもおかしくはない。
「私は赤坂衛。昔、仕事の関係で雛見沢に来てたことがあってね。その時の『約束』で梨花ちゃんを助けに来たんだ」
「…赤坂は警察のすごい強い人なのです。徹甲弾でどっかんどっかん、敵さんはがくがくぶるぶるにゃーにゃーなのです☆」
「警察なのか! そりゃ戦力になるなぁ……、で、そちらの忍者っぽい人は誰だ?」
「ぁぅ、スネークのお友達……なのですよね?」
角が生えた奇妙な少女、羽入がおずおずと俺に尋ねる。
……羽入はフォックスを知っている? 何故だ?
「――そうだ、俺はスネークの親友だ。…グレイ・フォックスと呼ばれている」
「蛇さんに狐さん……はぅ、動物がいっぱいだね」
「その刀かっこいいねぇー! ひょっとしておじさんもサバゲーやる人?」
疑問を尋ねる暇もなく、わいわいと彼らはフォックスを取り囲む。
警戒心や恐怖心といったものは見受けられない。それどころか魅音はサバゲー経験者と勘違いしているようだ。
一安心、と言った所か。
あとは沙都子、生存が確認出来れば入江、富竹らの救出と、メタルギアの情報について収集する事か。
これから先の事に思考を巡らせていると、背後でがさがさと草木を掻き分ける音がした。
その場にいる全員が一斉に振り返る。そこには――――。
「……声がしたと思って来てみれば…、……赤坂さん、こりゃあ一体…………?」
呆然とした表情の、恰幅の良い中年男性――大石警部が、そこに立っていた。
部活メンバーの表情が一斉に厳しくなる。この胡散臭い警部に対して警戒しているのだろう。
詳しいいきさつは分からないが、以前の魅音との会話からして、彼は園崎家に何らかの疑心を抱いている。
現在の大石は疑心云々を抜きにして、状況把握に必死なようだ。
そんな大石に対して、赤坂は状況の説明を始めた。
経緯は不明だが、梨花の周辺に及んでいる危機のことを、大石もあらかた知っているらしい。
「……それで、こいつらが古手梨花を襲っていて、そこを赤坂さん達が助けた、と?」
「私だけじゃないです。そこにいるスネークさん達に協力をして頂きました」
「……スネークさん、が? この訳の分からない連中を?」
いぶかしげな表情をこちらに向けられた。どうも先日以来警戒されていたらしい。
俺の肩書きは「連続怪死事件の前にわざわざ編入してきた外国人教師」だ。警戒されるのは無理がない。
ベテランの刑事となれば、俺の奥底に眠る、戦闘職としての何かを感じとったのだろう。
だが、梨花の件に関しては本当に無関係だ。この件とメタルギアとの繋がりは発見できていない。
「……こいつらはある機関に雇われた、機密保持の為の部隊らしい。普段は造園業を偽って活動しているそうだ」
そこに倒れている奴が吐いた、と最初に倒した奴を指差す。このぐらいの嘘なら構わないだろう。
素手でこいつらに勝てた理由は、赤坂の強さと、山狗が銃に不慣れだったことを隠れ蓑にしたら誤魔化せる。
幸い、大石の立ち位置からは部活メンバーが壁になっていて、フォックスは見えないはずだ。
それよりも彼は山狗に反応を示していて、部活メンバーや周囲の状況に目を向ける暇がない。
「何だって……、入江機関の不正支出金は、まさかここに……。それにこの銃は……」
「……そして」
今まで黙っていた梨花が口を開く。
「大石がずっとずっと追っている、雛見沢村連続怪死事件に関わりを持っています」
「…な、…………それはどういう……!!」
大石はいっそうの驚きを見せる。部活メンバー、赤坂にも少なからずの動揺があった。そして俺自身にもだ。
「……梨花さん。それは本当ですか? そして、何故それを知っているのですか?」
「…みぃ。」
梨花は困った表情をして魅音を見る。ここで話していいことなのか迷っているのだろう。
怪死事件には園崎家の暗躍によるものだという説もある。
魅音の手前上、それは話しづらい話題だ。
「入江機関に関わることなので、ボクの口からは言えませんです。山狗達がいつ、どうやって、何をして事件に関与したのかは詳しく知りません。
……入江や富竹に聞けば分かるかもしれません。でも、これは本当の事なのです」
「…園崎家の、関与は?」
「…………古手家の書物には、園崎家は『如何なる天災も全て自らの差し金であるように振舞うべし』というの家訓がありますです」
間接的な、園崎家の関与の否定。
それを聞いた大石は、それまでの彼の信念や価値観が、がらがらと崩れていくことを感じた。
「……そんな。それじゃ、それじゃ私は一体、今まで、何を追いかけていたっていうんです……」
――大石は、驚きと憔悴の表情で、よろよろと後ずさった。彼自身、まだ混乱している。
何年も何年も、ダム戦争の時から、ずっと園崎家を追いかけてきた。
ダムの現場監督の仇を討つために、なりふりかまわず、「オヤシロさまの使い」と呼ばれるまで手がかりを探していた。
園崎家が犯人だとしたら、説明がつくと思っていた。
いつか尻尾を出すまでは、定年退職するまでは、このヤマを片付けてやると思っていた……!
なのに……、敵は、園崎家では無かったのだ。
今までどうしようもない憎しみを、まだ子供である魅音や、園崎家に向けていた。
花を手向けるはずの元親友、現場監督を殺したのはあいつらだ、と。
――しかし、実行したのも、殺すように指示をしたのも、園崎家では無い。
憎しみと怒りの矛先は、どこに向ける?
刑事魂をかけた信念が消えて、職務を全う出来るのか?
今まで敵視していた魅音達、園崎の人間に対し、どういう態度を取ればいいのか?
そんな大石の心情を知ってか知らずか、場には沈黙が流れていた。
誰も、彼に声をかけることが出来ない。大人でも気持ちの整理には時間がかかる。
……魅音はずっと下を向いていた。彼女の表情は誰にも読めない。
誰もが、大石を気遣っていた。
――ひっくり返せば、誰もが、大石以外の対象に注意を向けていなかった。
大石の背後。もう襲ってこないであろうと思われた山狗の目が光った。
素早く銃を拾い、猛獣を思わせる勢いで大石に飛びかかる。
「…なっ!!」
大石は拳銃を取り出したが、山狗の方が早い!
大石の拳銃を払いのけ、大石の抵抗手段が失われる。
百戦錬磨の赤坂、フォックス、スネークでさえも動けなかった。彼らの位置は余りにも大石から遠すぎた。
誰も動けない。
――奇しくも一番近くにいた彼女、園崎魅音を除いて。
魅音がんばれー、という所で以上です。
割と早めに仕上がっていたのですがインフルにやられていました。
余り意味が無いと思いますが、名前欄をすっきりさせてみたり。ノシ
本編乙! そしてメタ梨花乙! 蝶期待しまふ
45 :
メタ梨花:2009/11/23(月) 22:37:22 ID:CjRGCrjD
Thank youベイベー!
本編乙!
保守
48 :
メタ梨花:2009/12/01(火) 22:46:45 ID:sNJF2CFf
補修
園崎魅音は、咄嗟に大石の拳銃を拾い上げた。
山狗に銃口を向けたが……一歩遅かった。
「動くな! 動くとこの男を殺すぞ!」
銃を大石の喉もとに突きつけた山狗が言う。大石は銃口の圧力で声が出せないようだった。
その様子を見て、魅音は軽く舌打ちをする。
そして、銃をゆっくりと地面に向けた。
「……俺は他の隊員とは違う。キリングハウスの卒業生を舐めるな……! 古手梨花を引き渡せ! でないと人質を殺す!」
山狗が叫ぶ。その場にいた面々は、思わぬ展開に衝撃を受けた。
…だが魅音は、動揺すらせずに、あっさりと言い放った。
「そんなら代わりに、私を人質にしなよ。子供のほうが扱いやすいだろ?」
魅音はそう言って、拳銃をごみでも捨てるように放り投げた。
銃はどさっと音を立てて、誰からも拾えない位置まで転がった。
「……魅音さん。あなた……」
大石は、魅音の行動が理解出来ないようだ。
山狗も目を細めて魅音の言動を警戒した。どうせ子供だ、強がりだろうと魅音を喋らせておく。
感謝すべきなのか、それとも何か裏があるのか、と探るような目線の大石に対して、魅音は冷たく言う。
「勘違いしないで欲しいね。私は別にあんたなんかどうなってもいいんだ。あんたにはいろいろやらてるしね。恩よりも恨み
の方が圧倒的に多いさ」
突き放した後、魅音がふっと寂しそうな表情になる。
「……けどね、私の目の前で、そんないつ死んでもいいような顔されちゃ、もっと迷惑なんだよ」
「……」
大石は沈黙を守ったままだった。
「……知ってるよ。あんたが現場監督の事件を、ずっと追ってるってこと」
「!?」
意外な言葉に大石が驚く。
「……確かに、あの時、あの人と一番いがみ合ってたのは私達さ」
『雛見沢ダム建設、絶対反対ッ!!』
拡声器から大音声を吐き出す。ダムの現場事務所と機動隊を村人たちが取り囲み、ダム反対の意思を心の底から叫ぶ。
時には機動隊とぶつかり合い、暴力沙汰を起こした。魅音自身、何回か警察の世話になった事がある。
……勿論、相手は警察や役人だけでなく、ダムの建設業者もまた同じだった。
「それは否定しないし、できない。無くそうと思っても、消えるもんじゃない。……ましてや、あんなことがあったんだ。
忘れるなんて、できやしない」
昭和54年の6月。――ダム現場の監督が、殺害された。
遺体はバラバラにされ、未だに犯人の一人と、遺体の内の右腕が見つかっていない。
当時、雛見沢にいた人間なら、誰もが忘れられないであろう事件だった。
「……だったら、どうして」
「……あのとき、あれだけのことをやったんだ。……いまさら、謝るってこともしなかった。……いや、できなかった」
「……するつもりなんて、あったんですか?」
今度は、大石が冷たい口調で言う。
「……臆病だったのさ。私も……お母さんも……うちの婆っちゃもね……。情けない話、園崎の立場なんてものがあるから、
昨日の敵は今日の友ってわけにもいかないんだ」
――北条家の件もそうだった。
園崎家自身、北条家を許していても、『立場』のせいでそれを口に出来ない。
園崎家が否なら、村人も否。そうして因習は今まで続いてきた。
「私は……。私はね! そういうあんた達をずっと! 私の敵だと!」
――大石にとっては、大事な親友を殺された敵。刑事魂をかけて捕まえると決めた敵。
共に飲み、笑い、麻雀をし、時には説教をされ、口は悪いがいい人だったおやっさん。
……園崎家に殺されたと思っていた。だから、園崎家がずっと憎かった!
「おやっさんが死んだ時から、おやっさんの敵だと! あんたらが、連続怪死事件の犯人だと――」
「思ってればいいさ!」
大石よりさらに大きい声で魅音が叫ぶ。その迫力に大石はたじろいだ。
「……ずっと、そう思っていたんだ。思うだけで済むなら、いくらでも憎まれてやろうって」
集団の中で、憎まれ役を誰かが引き受ければ上手くいく場合がある。
それは、雛見沢と園崎家の関係と似ていた。
魅音は幼い時からそれを理解し、次期党首として振る舞い、園崎家の意に反する者に冷徹な態度を取ってきた。
「……だけどね。それは、間違いなんだ。」
「……魅音さん」
「……恨みってのはさ。どこかで晴らさなくちゃいけないんだ。時間が流れて風化するのを、待つものじゃないんだ。だからさ……」
「……」
言葉を途切れさせ、魅音は一度深呼吸をする。
「あんたは生きなよ。大石さん」
「!!」
――優しい笑顔を、魅音は大石に向けた。
…慣れていないのか、それは長く続かなかった。視線を地面に移し、ふっと息を吐いた後、目線を山狗に移した。
「……さ。おしゃべりはもういいだろ。おい、そこのお兄さん。そこのおじさまはもうすぐ定年退職なんだ。
いまさら二階級特進はいらないんだよ。……わかったらさっさと私を……」
「……ふ」
「?」
大石が笑った理由が分からず、きょとんとする魅音。
「…………んっふっふっふ。……いやあ、私もまだまだですねえ。子供に説教されるなんて。……こりゃ、あっちにいったら、
おやっさんに、またどやされちまうかなあ」
どこか苦笑する様子の大石は、きっと目つきを変え、自分に銃を向けていた山狗の腕を掴む!
完全に油断していた山狗は不意を突かれたが、引き金を引いた。
最小限に抑えられた銃声が森に響く。誰かが悲鳴を上げた。
が――その銃弾は、大石にも魅音にも、誰にも当たらず、見当違いな方向へと消えた。
大石は、強引な体勢のまま――巴投げをするような形で、山狗を投げ飛ばす!
銃が山狗の手から離れ、彼は遠くへ投げ飛ばされた。状況が一転したと分かると、舌打ちをして山狗は逃げ出した。
周りに倒れていた山狗も、ばらばらと逃げ出す。
「魅ぃちゃん!」
「大石さん! 大丈夫ですか!?」
遠くで事態を静観していた面々が駆け寄る。大石も魅音も、まったく怪我をせずに済んだ。
最悪とも言える状況だったが――、皆無事だったのは、「奇跡」としか呼びようが無かった。
「…完全に私が油断していました。魅音さん、ご迷惑をかけて済みませんでしたねぇ」
「……いや、………ぇっと、私もあいつの接近に気づけなかったし……」
どこか照れくさいのか、頭を掻きながら魅音は言葉を濁した。
「……魅音さん。私も園崎家やあなたに謝らなきゃいけない事が沢山あります。お話したいこともありますしね。
……でも、それは全てを終わらせてからにしましょう。このヤマを解決したら、今までのことを全部水に流します。……それでいいですね?」
大石の言葉に、魅音は力強く頷いた。
「……さて。私は一端署に戻るとします。別方面から攻めることにしてみますよ。赤坂さん、子供達を頼みますよ、んっふっふ!
今日は眠れませんねぇ。それでは皆さん、よいお年を!」
山狗が落とした銃を証拠品として没収し、大石はその場を去った。
興宮署の一室。乱暴にドアが開け放たれる。
部屋に飛び込んでくるなり大石は、仕事をしていた熊谷の元へと駆け寄った。
「熊ちゃん! 事件ですよ事件! 大大、大事件です!!」
「どうしたんすか、大石さん」
「テロですテロ! 雛見沢にテロリストがわんさかいるんです!」
「て、テロお!? 大石さん、まさか園崎……」
「詳しいことはこっちで話します! さあ熊ちゃん! 署の腕っこき今すぐ集めてください! こりゃ戦争ですよ!」
以上です。
ここの話を書くに当たってお世話になった元本編氏に多大な感謝と敬意を示します。
次辺り沙都子か詩音の話を書くと思います。ノシ
本編氏おっつ!
これで山狗登場〜赤坂あたりまで来たのか……。
さてこっから What's Do you do ?
wktkしながら待っていようw
元も現もマジで乙
毎日更新して待ってます
ほす
TIPS:沙都子のその後
――入江診療所地下。
一般人には開かれていない、とある一室。その簡素な部屋に沙都子はいた。
元々患者用の部屋だったのか、その部屋のドアには小さい窓枠が設けられていた。
その窓ガラスは外され、代わりに鉄格子のようなものが挟まっている。
ドアを挟んで通路側に見張りの兵士が、ドアのすぐ内側には沙都子がいた。
本来なら緊迫した空気が流れているはずだが、……捕虜と兵士という関係とは程遠い光景がそこにあった。
「お前……いい奴だよな」
もぐもぐとパンを頬張りながら見張りの兵士が言う。
そのパンは本来、沙都子に与えられた食事だった。が、沙都子はそれを兵士に分け与えたのだ。
市販の、ごく普通のパンに必死で兵士がかぶりついているというのはどこか妙な光景であった。
「本当、子供とは思えないよ。気が利くししっかりしている」
「あら、お褒めに預かり光栄ですわ」
ほっほっほ、と沙都子は八重歯を覗かせ、いつもの笑顔を見せた。
――内心はしてやったりと思っているのだが、それは一切見せない。
相手は自分を子供だと思って油断している。さらに性格的にもつけいる隙がある。
沙都子は短時間でそれを見抜いていた。
「……ずっと『子供の』見張りなんて、退屈しませんこと?」
「まあ……仕事の一つだからな。この前は山奥に一人で行かされたし、何だかなぁ……」
思えばアラスカでの事が運のツキだった、それまではエリートだったのに……とその兵士は聞かれてもないのに境遇を語り始める。
沙都子は相づちを打ち、兵士の話に耳を傾けた。
……といっても、パンを食べながら喋っているので、話は半分ぐらいしか聞き取れないが。
パンを食べ終わり、兵士は沙都子に改めてお礼を言った。
「どういたしましてですわ。……ところで、よろしければお名前を教えてくれません?」
「ジョニーだ」
「いい名前ですわね。…アメリカの方ですの? どうして日本に?」
「それは……色々と複雑な事情があってな」
ジョニーという兵士は言葉を濁す。
ふと、上の階から騒がしい足音が響いてきた。
どこか遠くの部屋からも話し声が聞こえてくる。何かを指示するような声や怒鳴り声もした。
「騒がしいですわね」
「何か進展があったのか……ま、俺には関係無い話だけどな」
そう言って、ジョニーは大きく背伸びをした。
……沙都子は今の言葉を聞き、少し考え込む。そしてジョニーに尋ねた。
「ジョニーさんは、私がここに閉じ込められている理由をご存じで?」
「……人質だとは聞いているけど、詳しくは知らない」
「あら、ならここから出してくれませんこと? 理由も知らずにいたいけな少女を監禁するんですの?」
「…出来るならそうするが、そんなことしたら大変な事になる!」
「それは残念ですわね」
ふいっと沙都子は視線をそらす。
勿論、いくら油断しているとはいえ、そう簡単に出してくれる訳がないと分かっていた。
――そして、沙都子は考え込む。
ジョニーとの会話で得られた情報と元に、状況を整理する。
数々のトラップを生み出すその脳は、この状況でも上手く対応した。
……羽入から説明を受けた「山狗」とこの兵士は違う。第一、山狗にアメリカ人がいるとは聞いていない。
もしもジョニーが山狗の一員なら、沙都子と梨花の関係を十分に理解しているはずだ。
さらに、周りの騒ぎを「関係無い」と言い放った。
おそらく、ジョニーは山狗とは別の目的で動いている部隊なのだろう。
今の状況にも納得がいっていないようだし、子供をここに閉じ込める事自体、違和感を覚えているようだ。
こちらの立場に同情的で、上司達の行動に否定的ならば、それを利用する事も出来る。
大方の状況を把握し、沙都子の脳は脱出の為に働き始める。
トラップを仕掛けるときは、相手の思考を読み、その裏をつく。
それを応用出来れば――脱出は出来る。いくつかのトラップを仕掛けるための道具は持ち歩いている。
何か、きっかけさえあればいい。
そう、きっかけがあれば――。
「くうぅぅ〜〜! は、腹がああああああ!!」
沙都子が思案していると、ジョニーが急に叫びだした。
渡したパンに下剤は入れていない。沙都子は純粋に驚いた。
「だ、大丈夫ですの? 先ほどのパン、変な味とかしていまして!?」
「いや、こ、これは俺の体質で…………も、もうダメだ! 漏れるぅ〜〜〜!!!」
尻を押さえ、奇声を上げながらジョニーは走り出した。
ぽかんと口を開けてそれを見送り、沙都子は呟いた。
「…レディの前であんな事を口にするなんて。マナーがなっていませんわね。……そして、この私に隙を見せたことを後悔なさいませ!」
入り口は一つ。ドアには小さい鉄格子。窓はない。ベッドぐらいしか置かれていない簡素な部屋。
手元には、釣り糸や針金など細々としたトラップ道具。
そして、周りには誰もいない。上では騒ぎらしき物が起きていて、混乱に乗ずる事も出来る。
――十分すぎる程の、「きっかけ」だった。
以上です。沙都子久しぶりですね。
それと本編で「彼」が出るのは初めてだったりします。……ですよね?
「ひぐらし」的には終わりに向かっていますが、「MGS」的にはまだまだですね。ノシ
ジョニーktkr! 乙です
今まで投下された分、ここの繁栄を願いつつまとめてwikiに収録しました。
61 :
メタ梨花:2009/12/17(木) 04:06:26 ID:6OQ3+wkP
捕手
ふう、と誰の物とも知れないため息が漏れる。
「……早く沙都子を助けに行かないとまずいね。本当に油断してたよ」
「ああ。敵も一筋縄では行かないみたいだな。……だけどこれだけ仲間がいれば大丈夫だ!」
圭一が吼え、決意を口にする。子供達はそれを聞き各々頷きあった。
夜は始まったばかりだ。まだまだ体力も気力も満ちあふれている。
「沙都子、と言うのは梨花ちゃん達の仲間かい?」
詳しい事情を知らない赤坂が尋ねる。
そうなのです、と梨花が答え、これまでのいきさつを簡潔に説明し始めた。
「僕達が園崎家を出るまで、診療所からは連絡は無かったそうなのです」
「状況からして、……沙都子は捕まってると思う。いつ脅迫の電話が来るかおかしくない状態だったしね」
「……諸悪の根源は鷹野達なのです。生きていれば、入江、富竹の救出も必要です。ボク達は、診療所へ行きます」
「分かった。私もついて行くよ。君たちだけでは危険だ」
赤坂が答えると、梨花の顔がぱっと輝いた。――もう恐れる物はない、周りには仲間がいる。
安心しきったまま、梨花はスネークの方を振り向いた。
「スネークは、これからどうするのですか?」
梨花は、スネークが協力してくれる物だと思っている。心強い味方だからだ。
……だが、蛇は直ぐに返事を返さなかった。梨花の心に一抹の不安がよぎる。
何かを考えてる表情のスネーク。視線は子供達の方を向いていない。
「……スネーク??」
「? ……ああ、済まない。考え事をしていた」
我に返ったように、スネークは顔を上げた。梨花の声かけに気づかなかったのだろうか。
もう一度梨花が話しかけようとした時、……ある人物が一歩、スネークの方へと近づいた。
「スネーク先生。聞きたい事があるんです」
レナだ。
彼女は珍しく、先ほどから黙り込んでいたのだ。
普段のおっとりとした表情や口調とは違い、厳しいものとなっている。
「……どうした?」
「今が緊急事態って事は分かっています。沙都子ちゃんをすぐに助けなきゃいけない事も。
……だけど、どうしても聞いておきたい事があるの」
明朗に、快活にレナは喋る。
「スネーク先生は、……何を私達に隠しているの?」
どこか問い詰めるような口調。
刃物のように人を傷つけるものでは無いが、鋭さがあった。
「隠し事があるのでは無いのか」といった曖昧な物では無く、「隠し事をしている」と断言しているからだ。
「レ、レナ? 何を言って……」
「ごめん圭一君、少し待っててね。……正直に言うと、私はずっと前から先生が隠し事をしているんじゃないかと思ってた。
盗み聞きしていた訳じゃないんだけど、……保健室で岡村君と話していた時」
スネークの表情が僅かに変わる。
「話の内容はあまり聞こえてなかったけど、スネーク先生の口調と、漏れて聞こえた不穏な言葉。
それと、職員室で知恵先生と何か話していた時も。上手く言葉で言い表せないけど……、何か大事な事を隠されているような気がしたの」
少し申し訳なさそうな表情になりながら、レナは続けた。
「スネーク先生は沙都子ちゃんを助けてくれたし、学校のみんなとも遊んでくれた。レナ達部活メンバーとも勝負した。
すごく楽しかったし、いい人だって思うよ。……だからこそ気になるの。何か、私達に言えないような、大きな隠し事があるんじゃないかって」
スネークとレナの視線が、はっきりと合う。
「今だって、何か別の事を考え込んでいるように見えた。……スネーク先生が私達の力になってくれたように、私達もスネーク先生の力になりたい。
全部とは言わないけど……、少しだけでもいいから、スネーク先生の『隠し事』を、知りたい。レナの気のせいだったら、それでいいから」
レナは全てを言い終わって、沈黙した。
他の部活メンバーや赤坂も、それを見守っている。
――――蛇の返事を、皆が待っていた。
◇
……いずれ、こうなるだろうとは思っていた。レナの鋭さに恐怖を覚えたことすらあったからだ。
だが、いざこの状況に直面してみると、それとは別の「恐怖」に似た感情に襲われた。
――――自分の正体を、子供達に明かす。それも自分の口から。
自分の本職は……、子供達に夢を与える教師などでは無い。一般人が就く職ではない。
それは――傭兵だ。
兵器を扱う。時には人を殺す。戦場で生きる。彼らとは別世界の人間なのだ。
雛見沢に来た目的は、大量破壊兵器である「メタルギア」の発見と破壊だ。最初に、彼らに会った時から騙していた事になる。
――それを空かす。
彼ら……、子供達は、今までと同じように自分を受け入れるだろうか?
体育の授業で遊んだ時も、エンジェルモートで白熱しあった部活の時も。常に正体や身分を偽っていたのだ。
あの時は純粋に楽しんでいたりもした。
しかし――俺も、「ブカツ」メンバーを疑った時もあった。
完全に信頼しきれていない偽った関係。
今は違うと言えども、……その事実を聞かされて、子供達は今まで通りに振る舞うだろうか?
「スネーク先生は、……何を私達に隠しているの?」
どこか問い詰めるような口調。
刃物のように人を傷つけるものでは無いが、鋭さがあった。
「隠し事があるのでは無いのか」といった曖昧な物では無く、「隠し事をしている」と断言しているからだ。
「レ、レナ? 何を言って……」
「ごめん圭一君、少し待っててね。……正直に言うと、私はずっと前から先生が隠し事をしているんじゃないかと思ってた。
盗み聞きしていた訳じゃないんだけど、……保健室で岡村君と話していた時」
スネークの表情が僅かに変わる。
「話の内容はあまり聞こえてなかったけど、スネーク先生の口調と、漏れて聞こえた不穏な言葉。
それと、職員室で知恵先生と何か話していた時も。上手く言葉で言い表せないけど……、何か大事な事を隠されているような気がしたの」
少し申し訳なさそうな表情になりながら、レナは続けた。
「スネーク先生は沙都子ちゃんを助けてくれたし、学校のみんなとも遊んでくれた。レナ達部活メンバーとも勝負した。
すごく楽しかったし、いい人だって思うよ。……だからこそ気になるの。何か、私達に言えないような、大きな隠し事があるんじゃないかって」
スネークとレナの視線が、はっきりと合う。
「今だって、何か別の事を考え込んでいるように見えた。……スネーク先生が私達の力になってくれたように、私達もスネーク先生の力になりたい。
全部とは言わないけど……、少しだけでもいいから、スネーク先生の『隠し事』を、知りたい。レナの気のせいだったら、それでいいから」
レナは全てを言い終わって、沈黙した。
他の部活メンバーや赤坂も、それを見守っている。
――――蛇の返事を、皆が待っていた。
◇
……いずれ、こうなるだろうとは思っていた。レナの鋭さに恐怖を覚えたことすらあったからだ。
だが、いざこの状況に直面してみると、それとは別の「恐怖」に似た感情に襲われた。
――――自分の正体を、子供達に明かす。それも自分の口から。
自分の本職は……、子供達に夢を与える教師などでは無い。一般人が就く職ではない。
それは――傭兵だ。
兵器を扱う。時には人を殺す。戦場で生きる。彼らとは別世界の人間なのだ。
雛見沢に来た目的は、大量破壊兵器である「メタルギア」の発見と破壊だ。最初に、彼らに会った時から騙していた事になる。
――それを空かす。
彼ら……、子供達は、今までと同じように自分を受け入れるだろうか?
体育の授業で遊んだ時も、エンジェルモートで白熱しあった部活の時も。常に正体や身分を偽っていたのだ。
あの時は純粋に楽しんでいたりもした。
しかし――俺も、「ブカツ」メンバーを疑った時もあった。
完全に信頼しきれていない偽った関係。
今は違うと言えども、……その事実を聞かされて、子供達は今まで通りに振る舞うだろうか?
すぐ側で鳴いていた蜩が一匹、夜空へと飛び立つ。
レナは、レナ達は尚も答えを待っている。
――言えない。言える訳がない。大佐も一般人に正体を明かしたと知ったら、何を言うのか分からない。
しかもここには警察がいるのだ。
だが、ここで取り繕って誤魔化すのは至難の業だ。
いずれにせよ――話せない。
俺が尚も黙っているのを見て、レナは少し悲しそうな顔をした。
……信頼されていないと思ったのだろうか。少し申し訳ないが、致し方ない。
「こいつは――」
唐突に、全く話の流れに参加していなかったフォックスが口を割る。
「――ある秘密任務で雛見沢に来ている」
――心臓が跳ねた。
端的な言葉で、自分の正体を、明かされた。
「……フォックス!!」
声を出してからしまったと気づく。ここで慌てては、フォックスの言葉が事実だと認める事と同じだ。
子供達も驚いている。……ああ、もう遅い。
自分の正体は、日の目に晒された。
今更――嘘は吐けない。もう、何かを偽る必要すら無い。
頭に昇っていた血が引き、自分の心が平静に戻っていくのを感じた。
……別の言い方をすれば、自暴自棄になったのだろうか。
「スネーク先生……、それは本当なんですか?」
レナが尋ねる。それはそうだ、いきなりこんな事を言われたら信じられないだろう。
大佐や任務や警察等、全てを無視して話そうかと思ったが、またも親友の言葉に遮られた。
「……本当だ。だが、スネークは上司の手前もあってそれを話せなかった。『任務』の詳しい内容も、話すことが出来ない」
そうだろう? ――と、フォックスの視線が向けられる。
……俺に配慮しての言葉だと理解した。
そろそろ正体を明かさないと、今後動きづらい面もあるだろう。だが大佐の手前上それは出来ない。
しかし「隠し事」はしていない、もしくは話さないと言ってあの場を切り抜けるのは非常に困難だ。
そこで、俺の正体を第三者が明かせばいい事を、フォックスは考えてくれたのだ。
フォックスに対して頷きつつ、心の中で礼を言った。
あと問題となる物は――子供達の反応か。
「秘密任務かぁ、すっげえなあ! ただ者じゃないって思ってたけど、そこまでとは思わなかったぜ!」
「それなら、確かにレナ達に言えないよね……。何だかきつく問い詰めちゃってごめんなさい」
レナがぺこりと頭を下げる。
「あるぇ〜? サバゲー好きな人、じゃなかったんだ?」
「……魅ぃはさっきまで格好良かったのに台無しなのです」
「ぁぅぁぅ……」
……問題にすらならなかった。
秘密任務、という言葉の響きはこの年頃の子供にとって、胸をわくわくさせる物なのだろう。
赤坂はどこか納得した様子でこちらを見ていた。警察として、「職務質問」する様子もない。
「捕まえなくていいのか? 密偵かもしれないんだぞ?」
「……今は休暇中ですので。私は何も聞かなかったことにします」
先ほどの借りもありますしね、と赤坂は笑って言った。
……この場にいるのが大石でなくて良かった、と心の底から思った。
これで正体は子供達の知るところとなった。……なら、もう十分だろう。
「沙都子は俺が必ず助ける。……だからお前達はこれ以上関わるな」
唐突に切り出すと、圭一が納得いかないような顔をした。
「……何でだよ?」
「危険すぎる。敵は武装しているし、診療所に立て籠もってるとなれば数も多い。俺は闘いには慣れている。
……人質の救助も、お手の物だ。圭一達は安全な場所に隠れているんだな」
山狗の装備はかなり良い物が与えられていた。
……それと、山狗の隊長の言葉がいくつか引っかかっている。
彼の口ぶりでは、俺の実力や正体を、誰かから聞いていたようだった。
「ソリッド・スネーク」の正体を知る人間は限られてくる。
知恵やリキッドが奴らと組んでいるのは、まず無い。大佐側からこちらに情報が漏れる事もありえない。
そうなると、奴らがオセロットと手を組んでいる可能性が高いのだ。
あまりにも危険すぎる。こっちはろくな装備も武器もない。
だから、「本職」の人間に任せてくれればいい――そう思っていた。
「そいつは出来ない相談だな」
だが、圭一は納得しなかった。
「止めておけ。これまでとは違うんだ」
「魅音の家でも言ってたよな。『これは遊びじゃない』とかさ。……仲間を助けるのに、遊び気分でやる奴がいるのかよ!
沙都子は俺達の大事な仲間だ。沙都子だけじゃなくて、魅音も、レナも、梨花ちゃんも、スネークだって仲間だろ!?
どうして俺らが仲間の危機を、指を咥えて黙って見てなきゃならねんだよ!」
……その勢いに、気圧されそうになった。
いつだったか、梨花が言っていた。「圭一は口先の魔術師」だと。
これは「口先」だけでは無い。魂の籠もった、全身全霊の叫びだった。
怒りを含んでいた圭一の表情が和らぎ、不敵に笑って言った。
「沙都子は俺達が助ける。だからスネークは自分の任務をやってくれ」
――ここで、拒絶など出来るだろうか。少なくとも、俺には出来なかった。
圭一の勢いに押され、――或いは、圭一達なら大丈夫だろうとどこか安心し――分かった、任せると答えるしか無かった。
◇
圭一達は一旦園崎家へと引き返していった。
沙都子救出班には圭一、魅音、レナ、梨花、羽入、そして赤坂がいる。
……園崎家には銃器もあるらしい。赤坂ならそれを扱える。きっと大丈夫だ。
「お前はどうするんだ?」
この場に残ったもう一人――フォックスに俺は尋ねる。
「――診療所へも向かわない。悪いが、スネークと共に行動することも出来ない」
「……どこへ行く?」
「第三の勢力の牽制が必要だ」
かつての兄弟の顔が頭に思い浮かび、呟く。
「…………リキッドか」
「ああ」
想像が当たったらしい。
「オセロットとリキッドは、何を目的として動いているんだ?」
「……まだ全貌は掴めていない。オセロットはメタルギアの開発に協力し、リキッドはそれを奪おうとしているようだ」
「となると、オセロットは鷹野達と組んでいるんだな」
「恐らくそうだ。診療所での研究は新型メタルギアに搭載する兵器と関係があるらしい」
――想像は当たっていた。
この土地の風土病である、「雛見沢症候群」を搭載した新型メタルギア。数少ない情報を集めた結果、導き出された結論だった。
お魎が風土病の研究所を知らないのも無理はないだろう。梨花の話によれば、村民にはずっと隠されてきたものだからだ。
脳裏に、詩音の事が頭に思い浮かぶ。
圭一達には彼女の事を話していない。……詩音は大丈夫だろうか。
オセロットに捕まったとすれば、診療所地下にいるだろう。沙都子と一緒に救出されてくれればいいが……。
「リキッド側の勢力は?」
「数は少ないが、部下がいる。奴らがどこを拠点として活動しているのかは不明だ。だいたいの見当は付いているが」
「……そうか」
いずれ、奴にも会うことになるだろう。
メタルギアを破壊しただけでは帰れなそうだ。オセロットもリキッドも始末し、「永久機関」とやらで元の時代に帰らなければならない。
気が遠くなるような話だが、……やるしかない。
「質問攻めにして済まない。互いの任務に戻ろう」
「ああ。……スネーク、気をつけろよ」
分かったと頷いて、かつての戦友、親友へと左腕を突き出した。
フォックスもスネークの意図を理解し、左腕を絡ませる。
それは軍隊式の挨拶だった。どこか懐かしさがこみ上げてくる。
「死ぬなよ」
「二度目は無い。少なくとも、次に会うまではな」
――そして、二人は闇に姿を消した。
以上です。二重投稿またやってしまいまして申し訳無い。
過去ログ読み返していたら「今年中の完結を目指す」って言ってましたけど……
どう考えても完結は来年です、本当に(ry
今回、話自体はあまり進んでいませんがここからガンガン行きたいと思います。ノシ
乙!
フォックスwww いいやつ杉wワロタw
71 :
メタ梨花:2009/12/19(土) 16:48:11 ID:MIP2pWYi
乙!
72 :
メタ梨花:2009/12/19(土) 17:27:58 ID:MIP2pWYi
突然ですがお詫びしたいことがあります。
以前にも書き込みましたが自分は現在「小説家になろう」の系列サイトでメタルギアとひぐらしのコラボ小説をやっています。
2009年9月28日の書き込みを先程確認しました。
↓↓
■本編以外の短編・長編について■
!!→一応「○○の設定を借りました」と一言付けたほうが良いかも。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・・・スイマセンm(_ _)m
まだ許可すらでてません。
サイトは違いますが勝手ながら類似点をとりいれさせていただきました。
なにか不服な点がございましたらこの掲示板か「NOS」で書き込んで下さい。
追伸
本編さん期待してます!
sageろ。あと他サイトの宣伝をここでやるのはダメだ。
成人してるならルールは守らなきゃならない物だって事ぐらい分かるはずだ
74 :
メタ梨花:2009/12/20(日) 04:17:43 ID:HMV6y9bm
わかりました。気をつけます!
sageてねぇww
76 :
メタ梨花:2009/12/20(日) 06:32:47 ID:HMV6y9bm
これで・・・大丈夫かな??さげの意味がネットで検索するまでまじめにわからなかった。(´_ゝ`)
77 :
メタ梨花:2009/12/20(日) 06:37:19 ID:HMV6y9bm
しばらくはできるだけ静観させていただきます。迷惑かけてすいません(+_+)
期待してます!
2chの決まり事をしっかり読んできた方がいいと思いますよ。
>>1-4に書いてある事は、このスレッド内でのルールです。
外部サイトに「外伝」「短編」を載せる事を目的とした事ではありません。
>>73氏もおっしゃってる通り、基本的に外部サイトの宣伝はNGです。
ざっと作品を読ませて頂きましたが、確かに類似点は多々あります。
元々二次創作なので、本編の著作権云々を言う気はありません。本編のストーリーは私だけが考えた訳では無いですしね。
今後もし展開が被ったとしても、それは「偶然」であり、ここの本編とは「一切」関係がありません。
こちら意図的に展開を被らせることはしないので、安心して下さい。勿論、氏も意図的にここと展開を被らせないで下さい。
(「メタルギアソリッド」という作品がある以上、ラストの戦闘シーンの展開は被ってしまうでしょうが……)
きつい言い方になってしまうかもしれませんが、もうここで氏のサイトの紹介はしないで下さい。それがルールです。
「名無し」として、ここの本編を「応援」して下さるのなら、歓迎致します。
それでは執筆に戻ります。ノシ
復活保守
書いた文なくしたので書きためて投下します
酉あってるかな・・・
職人復活ktkr
このスレの過疎も和らぐか……?
81 :
メサルギア:2009/12/30(水) 01:09:00 ID:tvTlehW9
メサルギア
俺は赤坂から貰った紙に書かれた場所に向かった
「ここか」ただ無数の墓標がある兵士達の墓
俺は周りを見た
「きっと無数の墓の中に俺が殺した兵士達のも」
風が吹く
その風は何かを思い出させた
なんだっけ
この胸につっかえる感じは覚えがある
彼と始めてあったときに似ている
伝説の男
そして彼の姿が俺の目の前に現れた
「BIGBOSS」
「大きくなったな」
「まさか本当に会えるとは」
「最後にお前に会えてよかった」彼の様子がおかしい
「大丈夫かスネーク」彼が倒れそうになり俺は慌てて彼を受け止めた
「はぁはぁ」彼の息遣いが荒い、そして尋常じゃない汗をかき始めた
「俺達の世界は、いや戦争の時代は終わった」
「ああ、分かってる赤坂から全部聞いた、だから喋るな今病院に」
「いや良いんだ、俺は、俺の責任を果たさなければいけない」
「俺の最後のミッションは、お前に、圭一に全てを話さなくてはいけない」
「……スネーク」
「あの事件、お前をこちら側に引きづり込んでしまった原因、雛身沢事件について」
「・・・全部聞いてくれるな」
「ああ」俺は小さくうなづいた
BIGBOSSは俺に語り始めた・・・全ての元凶を
あの事件はの元凶は、賢者達という名の組織と東京と言う名の組織が起こした戦争だ
東京はあるウイルスを研究していた、そのウイルスの研究段階でできたのがお前達だった
事件の起こる前に俺は一度あそこに潜入した
任務は失敗した
その後、三四を筆頭とし東京は暴走した
賢者の中で一番力のある男を、日本の首相を暗殺した
賢者はそれを黙ってはいなかった、実験で一番力のあったお前を捕らえ洗脳し、訓練させた
後は分かるだろ
「俺を送り込ませて、東京を壊滅させた」
82 :
メサルギア:2009/12/30(水) 01:25:22 ID:tvTlehW9
「だが分からない事がある」
ピポサルの事か、あれは他の組織が送り込んだエージェントだ
「スパイだったのか」
俺もやつと戦う最後までわからなかった
やつは戦うとき全てを話した
全ては愛国者と言う名の組織が仕組んだことだったと
「・・・」
愛国者は昨日までの世界を作った原因だ
賢者も東京も愛国者達にとっては自分達の世界を作るには邪魔な存在だった
俺が全てを知ったときは知らないうちに俺も愛国者に加担しこの世界は愛国者の手中に落ちていた
だがその愛国者も滅んだ。私のクローン、ソリッドスネークによって
愛国者は滅んだ、だから俺は消えなきゃいけない、私が消えなくては全てはゼロに戻らない
「BIGBOSS」
だが圭一、お前はまだやらなきゃいけないことがある
次の世代につたなくてはいけない
「俺は今まで化物として生きてきた、何を残していけばいいんだ」
彼は指を刺し、俺はその先を見た
「・・・魅音」彼女が居た、彼が手を握っている小さな子供と一緒に
それは自分で決めることだ
全てはゼロに戻る、お前も化物から人に戻るんだ
ただの人として、圭一として生きろ
彼は愛用の葉巻に火をつけた
「これが世界の本来あるべき世界
・・・・・良いものだな」
彼は眠るかのようにそっと息を引き取った
「魅音、俺は何を残せばいいんだろう」
「それはこれから決めてけば良いじゃない」
メサルギア 完
メサルギア乙!
そして完結お疲れ様でした!
完走者が出るのはやっぱりイイネw
TIPS:二冊目37ページ
17:05
状況を整理。
リキッドという奴に協力することを決めてからの記憶が曖昧。
あの後目隠しをされるか気絶させられるか何とかして、どこかに連れてこられた様子。
ここは薄暗く、狭い部屋だ。鉄格子があるので牢獄みたいだ。椅子やベッドはあるけど、窓が無い。
悟史くんは側で寝ている。……この甲冑の脱がし方が分からない。苦しそう。助けたい。
17:11
リキッドの部下らしき人から、水を貰った。毒入りかもしれない。
17:20
……悟史くんが連れて行かれる。相手は銃を持っていたので、抵抗出来なかった。
ごめんね、悟史くん。……おかしいな、私への「罰」だと思ったのに。悟史くんが危ない。
二人ともここで死んだら、意味がない。行動しよう。
17:23
見張りの兵士をスタンガンで攻撃しようとした。
駄目だった。当てることすら出来なかった。殴られてスタンガンを取り上げられた。
チャンスは永遠に失われた。ごめんなさい、ごめんなさい。
17:27
リキッドと鉈を持った覆面の人が通りかかる。
鉄格子にしがみついて叫んだけど、二人からは何も返事が無かった。
悟史くんを どうするんだろう?
奴らの目的は何?
17:34
叫びすぎて疲れた。仕方なく水を飲む。変な味はしなかった。
これから私は、悟史くんはどうなるんだろう。
……スネーク先生は、どうなってしまったんだろう。
いつから 私は間違ったんだろう?
なんだか手首が痒い。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
19:36
いつの間にか眠ってしまったらしい。2時間も寝てしまったので、少しだけ気持ちが落ち着いた。
奴は私に「協力しろ」と言った。これから何をさせられるんだろう。
こうして人質である事が「協力」? ……駄目だ、分からない。
限られた情報を整理し、出来る事を考えよう。
東京→小此木が所属。強大な組織で、Aと協力関係。実態は不明。
組織A→オセロットが所属。強大な組織。連続怪死事件に関係? 蛇と何かしらの関係がある。
悟史くんをおかしくしたのもこいつらに違いない。
組織B→リキッドが所属。組織の全貌は分からない。Aと対立。(おそらく東京も)
悟史くんのような人間を利用しようとしている?
雛見沢は田舎なのに、これだけの「組織」がひそかに蠢いている。
所属している人物が10人なのか1000人なのかも分からない。
ただ一つ分かるのは、こいつらは人の生死を何とも思っていない事だ。目的の為なら手段も選ばない。
……悟史くんが失踪した時、園崎家を疑った事に後悔する。
敵はもっと強大で、私のような小娘が立ち向かう事が愚かしい程の相手なんだ。
19:42
壁の隙間を探した。床に抜け穴がないか探した。天井にも何かがないか探した。
見張りの兵士が持っている、鍵か武器を奪える隙が無いかじっと待った。
…………あるはずがない。
分かってる。この状況で足掻いても無駄だってことは。
私が死んだとしても自業自得だけれど、悟史くんには何の罪はない。
妹思いの、優柔不断で、はにかんだ笑顔が似合う、優しいお兄さんだったじゃないか……。
どこぞの組織に利用される理由はどこにも無い。
せめて彼だけは助けたい。
20:00
もう8時だ。何も起こらず、起こせないまま、こんな時間になってしまった。
さっき寝てなければ、何か行動出来たのかな?
……妙に静かで怖い。イライラする。手首が痒い。
20:23
遠くで叫び声のような物が聞こえた。急に騒がしくなった。
20:35
何か騒ぎが起きている、行動するなら今しかない。
悟史くん、私に勇気を分けて。
以上です。スネークも赤坂もフォックスも戦って、次もバトルばかりなので小休止を。
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
本年の目標は「本編完結」です。今度こそ……!!
◆W9ZcOhM8zg氏、メサルギア氏乙です。今後に期待します。
今更だが本編乙。
そして保守。
上り始めた満月の中に浮かび上がる、入江診療所。
沙都子を救いに来た面々は、それぞれの班に分かれて待機していた。
部活のリーダーである魅音が組み分けをしたのだ。
圭一、レナ、魅音、梨花、羽入、赤坂、葛西の7人を3班に分けたのだ。
葛西は奇跡的にも内臓が無事だったので、魅音達と共に行動する事になった。とは言っても、無理は出来ない。
戦力となる赤坂がいるとはいえ、正面突破は無理だった。その結果、魅音は戦力を分散したのだ。
『魅音班、準備完了。みんなはどう?』
『こちら赤坂班。いつでも大丈夫だ。』
『圭一班もOKだぜ!』
無線で会話を交わし、各々が定位置についた事を確認する。
『それでは諸君、これより北条沙都子及び入江京介、富竹ジロウの救出作戦を開始する!』
魅音が小さく叫び、決戦の火蓋が切られた。
◇
診療所内部。
一階には数名の山狗と兵士がいた。それぞれ、各々の持ち場についている。
兵士達は黙って自分の任務をこなしていたが、山狗は違った。
窓際の部屋で待機している2名の山狗は、ポーカーをしていた。
……彼らは決して不真面目な訳では無い。古手梨花を奪取する際に、戦意を大きく削がれた事が原因だった。
拳の威力がありえないぐらいに強い男。
外国人かつ、軍人のような男。
そして、姿を見せない敵。
こちらにちょっとばかり良い装備があったって、プロには敵わない。命があるだけマシと言う物だ。
襲撃されたら敵わないだろうなあと思いつつ、彼らは黙々とポーカーをする。
……いつ敵襲があるか分からない緊張感に耐えられない、と考え、気を紛らわす為にしているのだ。
だが、その様子は隙だらけだった。
それもそのはず、彼らはこんな事態を予測出来ていなかったからだ。
ぱりんと何かが割れる音がして、耳元を何かが掠める。
自分の手札を見て考え事をしていた山狗は、何事かと思い顔を上げた。
……目の前にいる相手の山狗は、札をチェンジしようとした姿勢のまま、静止していた。
それはまるで、時間が静止したかのような様子だった。
そして……、そのままゆっくりと、…………床に倒れる。
あまりにも静かで、一瞬の出来事だったので、山狗は何が起きたか理解出来なかった。
が、割れて飛び散ったガラス、相方の頭に刺さっている麻酔弾を見て、ようやく状況を把握する。
椅子が倒れるぐらいの勢いで立ち上がり、部屋のドアを開けて叫んだ。
「……て、敵襲! 狙撃され、」
彼は最後まで喋ることなく、もう一人の山狗と同じく床に倒れた。
……その頭には麻酔弾。頭を正確に打ち抜かれたのだ。
◇
「相変わらずの腕前ですね、魅音さん。」
軍用の双眼鏡を構えている葛西が言う。
「ひゅ〜。久しぶりだからどうかと思ったけど、上手くいったよ。」
狙撃銃を構えている魅音が答えた。
そう、魅音班――魅音、葛西の2名――の役割は外からの狙撃だった。葛西は本調子では無いので、狙撃を魅音に任せている。
魅音は素人ではなく、狙撃の経験があるので、気が緩みきった山狗二人と打ち抜くことは容易だった。
勿論、人殺しはしない。モシン・ナガンと呼ばれる麻酔の狙撃銃を使っていたのだ。
◇
二人を倒したとはいえ、まだ診療所内には山狗がいる。
敵襲の知らせを聞いた兵士達は、身を屈めて診療所入り口に殺到した!
……扉を開けた瞬間、敵が襲ってくるかもしれない。あの強い奴らが来る可能性が高いのだ。
当然のごとく、そこには緊張感が漂う。
兵士達は左右に分かれて頷き合い合図をし……、扉を開け放つ!
そして銃を一斉に構えた!
「…こんばんはなのですよ。ボクの沙都子に会いに来たのです。」
だがそこにいたのは屈強な軍人でも警察でもなく、一人の少女。
そう、人質を使っておびき出せと指示されていた――古手梨花がいた!
一瞬、呆気にとられたが梨花を捉えるべく、兵士が叫ぶ!
「古手梨花だ! 撃つな、拘束しろ!」
扉の内側から兵士達が飛び出し、梨花も走り出す!
一度は追い詰めた相手だ、盾に出来れば狙撃はされない!
そう確信した山狗が、……ふわりと宙に浮き、吹き飛ばされた。
山狗を吹き飛ばしたその男は、梨花を捕まえようとする男を、また一人手刀で沈めた……!!
その間に梨花はちゃっかりその男の後ろに回り込んだ。
兵士達は、どこからか現れた男に対して身構える。
雲から姿を現した満月が、男の顔を照らす。
……拳を握りしめて立ちふさがる男の表情は、……彼らが束になっても敵わない事を示していた。
その男と自分達ではあらゆる経験、場数が違いすぎる……!!
「梨花ちゃんには、……指一本触れさせないッ!」
赤坂、梨花の二人で構成される赤坂班は、外におびき出された兵士を各個撃破する為のものだった。
梨花はちょこまかと走り回り、敵を揺動する。
敵にとっては梨花が死なれると不都合なので、必然的に銃が使えなくなる。
素手かナイフで立ち向かおうとする敵を、徹甲弾と見紛う程の威力の拳が襲う。
……戦力の差があるはずなのに、圧倒的だった。
万が一、入り口付近から敵が沸いても、魅音が狙撃出来る。
あっけない程に、ばたばたと敵は倒れていった。
「……ここまで強いと、俺らの出番が無いな。」
「はぅ、きっと地下では戦えると思うよ。」
「すごく地味なお仕事なのです……」
圭一班に所属する圭一、レナ、羽入は、手持ちぶさただった。
彼らの主な役割は、内部に潜入してからのものなので、この状況では暇なのだ。
下手に闘いに加わると邪魔になってしまうので、そこらに倒れた兵士達を手錠や縄で拘束するぐらいしか仕事が無い。
武器を奪い、敵を無力化する。それだけでも十分な活躍と言えるだろう。
『こちら赤坂班。敵を殲滅した。』
『魅音班了解。それじゃあ第二段階へ移行だね!』
赤坂班、圭一班、魅音班が診療所の内部へと突入する!
まず向かうのは――最初に倒した山狗が眠っている、あの部屋だった。
以上です。ようやく突入で、ひぐらしっぽさが出てきました。
まだまだ続きます。ノシ
おつかれなのですよー
93 :
メサルギア:2010/01/17(日) 01:06:18 ID:3bAw28MN
メタルギア4から半年
戦争は終わった
蛇はいなくなり、俺は人として残りの余生を過ごす日々を送っていた
俺は最近夢を見るようになった
俺は子供達と一緒に学校で先生をしている
場面は変わり戦場になる、戦火の中俺は蛇となり銃をとる
俺は一人じゃなかった、俺の周りに生徒達がいる
しかし、皆死んでいく
最初は長い髪の少女、次は少年、次々と凶弾に倒れる生徒達を抱きしめながら俺は叫ぶ
そして夢が覚める
「大丈夫?」少女の声で俺は眼が覚め、重い体を持ち上げる
「ん?」おかしな太陽が二つに見える
「もうスネーク、せっかくサニーが作った料理になんてこと言うんだい」
「俺はディビットだオタコン」スネークの世界は終わった、今の俺はデイビットだ
「サニー、学校はいいのか?」
「今日は日曜日」
「世界が変わっても休日は日曜日なんだな」俺はサニーに差し出されたつぶれかけた目玉焼きとコーヒーを手に取り口に当てた
「体調は?」毎度そうだ、サニーの目玉焼きを食べると腹の調子が悪くなる
「よくないな」新聞を手に取り世界の朝をトイレの中で読み始める
「デイブ、リフレッシュに旅はどう?」
「気分が乗らないな、うぉぉぉぉぉ」
「日本って言う国なんだけど三泊四日」
「二人で行ってこればいい、俺は今新記録が生まれそうだ、んんんん」
「もうデイブはほっといて行こ」
「じゃあ、チケットはここにおいて置くから」
ドアが乱暴にしまる音が聞こえた
数分後
「ふぅ、さて新聞の続きを」新聞に目をやると見覚えがある一枚の写真が俺の眼に映った
「ここは俺の夢に出てきた場所」そこには夢に出てきた生徒達が学校の校門前に整列している写真だった
「この子だ、最初に死んで次のこの子、その次は」何か意味があるのかもしれない、新聞の記事を隅々まで読む
「何か手がかりが、手がかりがあるはずだ」最後の一文を見た
『撮影日昭和58年6月』・・・
「ははは、大昔の写真だったのか」俺の思い過ごしだったのか、じゃあ俺の夢は一体なんだったのか
「行ってみるか」俺はオタコンが置いていったチケットを取り、コートとその他もろもろを持って家を出た
本編乙!
メサルギアはエピソードか! 乙!
保守。
……ひぐらしパチスロだってぇ……どこまで稼ぐ気だ竜騎士07は
俺は朝鮮玉いれが大っ嫌いだから許せないけど、
金儲けとして見るならありなんじゃね?と思う
ただ、竜騎士07マンセーは俺の中で終わったけどねw
保守
◇入江診療所 地下 小会議室
鷹野は机に座り、小会議室のホワイトボードをぼんやりと眺めていた。
富竹は入江と共にいた部屋から連れ出され、鷹野と一対一で話していた。
無論、拘束は解けていない。
「……ジロウさん。…………今からでも、私に協力して下さらないの?」
「…………。」
椅子に強制的に座らされる形の富竹は、何も答えなかった。
「……私にはたくさんの味方がいるわ。山狗には私の靴を舐めたくなるようなお金を払ったもの。
…………詳しい事は言えないけど、世界中に勢力を広げている組織も、私の味方なのよ。『東京』なんか比べものにならない組織が、ね」
「……それは、今の君に本当に必要な『味方』なのかい?」
今度は鷹野が黙り込む番だった。
少し俯いて、髪の毛をくるくると弄る。
「そうね、…私に必要な味方じゃない。山狗以外は裏切る可能性だってあるもの。……でもこれが、鷹野三四の、そしておじいちゃんの願いだから」
「君のお祖父さんは、それを本当に望んでいるのか……?」
「……死人に口なし、って言うしね。ならこれは『鷹野三四の』願いかしら」
先ほど作戦室で叫び過ぎて痛めた喉を、鷹野は押さえた。
それらの様子は、彼女が憔悴しきっているように見えた……。
「もう一度言うわ……。貴方が望む物は何でもあげる。お金も、私の体も、して欲しい事もなんだってする。
……それでも、…………ジロウさんは味方になって下さらないの?」
「………………。」
富竹は、それでも沈黙を保っていた。
鷹野を気遣っての事だった。勿論、監査役として協力する訳にはいかない。
だが、今の鷹野は疲れ切って憔悴している。富竹は、ただ一人の『富竹ジロウ』として彼女の事を思いやっていた……。
静寂を破るように、内線音の呼び出しが響く。
鷹野は軽く咳払いをし、発声練習をしてから、受話器を取った。
「鷹野よ。………………何ですって? もう地下に来てると言うの!? ……たった7人相手に何をしているの?
オセロットの私兵部隊はどうしたのよッ!? 山狗は? ……人質を利用しなさい!! …………はぁ?
逃げられたって……、…………何よそれなんの為におびき寄せたの!? もういい、私が行くわ!!」
先ほどの落ち着いた様子とはうって変わって、受話器に怒鳴り散らす鷹野。
……そして怒りを抑えるように、…………彼女はぎゅうっと強く、……腕に爪をたてた。
その様子を見て、富竹は思い当たる事があり、はっと顔を上げた。
がちゃり、と乱暴な音を立てて鷹野は受話器を置く。
「……さようなら、ジロウさん。私は行かなければならないわ。…………またお話出来るといいわね……。」
そしてそのまま、振り返る事無く、小走りで部屋を後にした。
非常に短いですが以上です。
続きはすぐに投下出来ると思います。ノシ
保守
hosyu
保守
……待ってるだけってのも辛いが、書けないからなぁ……
◇入江診療所 地下 セキュリティルーム付近
圭一達は、一階にいた保安隊員を使って地下に侵入していた。
地下の内部構造は、あらかじめ梨花が図に書き起こし全員に伝えてある。何年も繰り返せば覚えるというものだ。
赤坂、圭一、レナ、梨花、魅音、葛西の順番に、地下へと殺到していた。
羽入はこっそりと姿を消し、自由に出現可能な能力を使って、沙都子達を探しに行っていた。
セキュリティルームの制圧は早かった。
地下入り口にあった監視カメラを壊し、それと同時に侵入したからだ。
本来なら、地下に警報が流れてガスが散布されるはずだった。
……その前に、一階で異常が起きてから、地下の山狗が侵入者排除の為入り口が封鎖されることもありえた。
圭一達は知り得ないが、それはある人物の命令によって禁止されていたのだ。
とにかく、セキュリティルームの制圧に成功した圭一達は、今度は敵を制圧する為に乗り出した!
赤坂がもしもの時の為に先頭を走る。その時、曲がり角から山狗が数名姿を現した!
「いたぞ!!」
「遅いッ!!」
背後の安全を確保していた魅音が、容赦なく麻酔弾を撃ち込む!
最初に叫んで飛び込んで来た一人は、あっけなく地面に倒れた。
他数名の山狗は、気絶させる為のテーサーガンを一斉に構える!
しかし赤坂の前では無力だった。構えたはずの腕が叩かれ、あらぬ方向へと麻酔弾が射出される。
「うぉおおおおおおおおおおおお!!」
「おっ持ち帰りいいいいいいいいい!」
隙を突いて、圭一のバットとレナのれなぱんが容赦なく炸裂した。山狗は倒れる。
倒れた山狗の頭を、そっと梨花が至福の表情で撫でていた……。
葛西はショットガンを構え、背後の警戒を怠らなかった。
「くそっ、キリがねえな」
圭一が呟いた時、また新たな山狗が姿を現す。だがすぐに魅音に打ち抜かれ、眠る羽目となった。
「魅ぃちゃん凄いね。……それ、どこで手に入れたのかな? かな?」
「レナ、よくぞ聞いてくれました! これはモシン・ナガンって言ってね、あの光合成するスナイパーや伝説の兵士も使ってたものさ!
ロシア帝国からソビエトになるまで移り変わる時代を支え続け、現在は小銃というより狙撃銃として用いられている。
そんな魅力的な説明がされていたから、オークションで落とすのにも一苦労だったよ」
「ずいぶん怪しいオークションだなあ……」
「はぅ、とにかくすっごくかぁいくて強いんだね!」
「……レナの『かぁいい』基準がスネークに影響されてますです」
緊張感の無い会話がある中でも、廊下の向こうからは足音が断続的に聞こえてくる。
まずいな、と赤坂が漏らした。
「……無闇に突っ込むのは危険だ。セキュリティールームに戻って体勢を整え直そう」
「何でだよ!? 沙都子が危、」
「彼女を助ける前に我々が倒れてしまったら意味が無いです。……それに、気になる事があります。引き返しましょう」
葛西の言葉に、圭一は渋々と頷いた。実際、敵の戦力は増加しつつあった。
地上戦が上手く行ったから、圭一達は少し油断をしていたのだ。
倒れている山狗を盾にし、魅音が威嚇射撃をしつつ、彼らはゆっくりと後退した。
そしてセキュリティールームに入り、机でバリケードを張った。
赤坂と魅音は敵の撃退のため、ドアの横付近に待機する。他のメンバーはバリケードのすぐ後ろへ身を隠した。
「葛西、気になる事とは何ですか?」
「……私達が地下に来るまでは、僅かながら時間がありました。その間に敵は地下を封鎖するなり人質を利用するなり、何かの手が打てたはずです。
……なのにどちらもされていません。人質を使わないというのはおかしいです」
「ならきっと、もう沙都子ちゃんが脱走したんじゃないかな?」
「そうだとしたら、敵の混乱っぷりも納得出来るな。……そしたら、監督と富竹さんが危ないな」
「……葛西。話とはそれだけですか?」
梨花の切り込みに、葛西はやや躊躇しつつも言った。
「人質である三人と内部で連絡が取れないのはかなり不利です。仮に三人が脱走していたとしても、捕まれば形勢が一気に逆転されてしまいます。
それまでに手を打たないと……まずいことになります」
自分が怪我さえしていなければ、と葛西は悔しそうに腹部を押さえた。
内臓が傷ついていないから助かっただけであって、葛西が重傷である事には変わりなかった。
散弾銃を撃つとしたら、体にかなりの負担を強いられるだろう。
「一気に制圧、かぁ……」
「……魅音の麻酔銃は強いですが、いっきに沢山は撃てないです。赤坂も葛西も強いですが、二人ばかりに戦わせる訳にはいきませんです。
いったいどうすれば……」
「なんだ、簡単じゃねえか」
皆の不安を打ち消すように、圭一が朗々と言った。
「――スネークの事を思い出せ。スネークはスネークにしか出来ないことを、俺達は俺達にしか出来ないことをやってるんだ。
……それは、何だと思う?」
『口先の魔術師』前原圭一の視線が、足下に伏せている山狗へと向けられた。
「スネークは一人で戦っている。俺達は複数で戦っている。だから、」
「仲間を、増やせばいいんだッ!!」
◇入江診療所 地下 小部屋付近
「いたぞッ! あそこだッ!!」
無事に脱走した沙都子はひたすら走っていた。
「きっかけ」さえあれば、抜け出すこと事態は簡単だったのだ。
ジョニーがトイレに行った隙にトラップを仕掛け、自分はベッドの下に隠れる。
戻ってきたジョニーは騒ぎだし、部屋の中を探そうとするが――その時、トラップが発動。
足下にあらかじめ張られていた釣り糸に躓いて、見事なまでに転倒し、頭に大きなたんこぶを作り気絶する。
沙都子は難なく外に出られた。――という訳だった。
「しつこいですわねぇ! そういう男は嫌われますのよ!」
診療所内は狭い。そのため、大がかりなトラップは入らない。
ちょこまかと走り回り、足下に釣り糸を張る。コショウ爆弾を投げつける。
普段の沙都子にしてみれば、小さいトラップだったが、十分な効果を発揮した。
山狗は糸に躓き、コショウが目と鼻に入ってくしゃみと涙が止まらなくなる。
「お〜っほっほっほ! いい気味ですわー!」
沙都子は普段から野山などで遊び慣れており、更に今日は激しい運動を殆どしていない。その為、体力は十分にあった。
山狗を翻弄しつつ、更に走る!
廊下の曲がり角を曲がったが――、そこは行き止まりだった。
「……出口はどこですの?」
止まって休む間もなくUターン。小さい部屋と大きい部屋が繰り返し配置されており、ぱっと見では道が分かりづらかった。
ここに連れてこられるまでは気絶していたので、どこに向かえばいいのか、沙都子には判断出来ない。
とにかく進むしか無い。
違う道を曲がったが――、そこは男子トイレだった。
引き返そうとしたその時、扉から一人の兵士が姿を現す。
「あっ! お、お前、よくも俺を騙したなー!!」
――沙都子の見張りを担当していた兵士、ジョニー佐々木だった。
「あんな手に引っかかるそちらがお馬鹿さんなのですわよ! ……というか、またお手洗いに行ってらしたんですの!?」
気絶からの復帰が早いのは沙都子も内心感心したが、またトイレに籠もっていたというのは情けない話だった。
今度はジョニーと鬼ごっこが始まる。
元来た道を引き返し、自分が設置したトラップをひょいひょいと躱す。
ジョニーはそれを見て、自分も同じ所を通れば罠にかからないことを思いついた。
最初の釣り糸を飛び越そうとしたが――。
「ぐあっ!?」
沙都子が手をくいっと引っ張ると、周りの釣り糸が中心に引き寄せられた。
ジョニーは足を絡め取られ、本日二度目の転倒となってしまったのだ。
「こういう使い方もあるのですわ」
沙都子は得意そうににっこりと笑う。――それが、ジョニーの怒りに火をつけた。
「ち、畜生おおお! 元エリート軍人を舐めるなあああああああ!」
懐からサバイバルナイフを取り出し、ズボンが破れるのもおかまいなしに糸を切った。
ぶちぶちと釣り糸がちぎれる。沙都子は思わぬ反撃に、一瞬対応が遅れた。
ジョニーはしめたとばかりに、無防備な沙都子に飛びかかった。
その時――。
「あぅあぅあぅあぅあぅ!!」
横の廊下から、小さな少女が姿を現して全力でジョニーにタックルをした!
これはジョニーにとって予想外な事だったので、ジョニーは少しよろめく。
「は、羽入さん!? どうしてここに?」
沙都子もとても驚いたが、再び兵士が二人に向けて向かってきた!
「説明は後だよ! …沙都子ちゃんも羽入ちゃんも、お持っち帰りいいいいいい!」
レナの渾身の右ストレート。そして素早く沙都子と羽入を抱えてその場から離脱した。
かぁいいもの好きの、レナならではの技だった。
「ナイスだ、レナ!」
圭一のバットが唸る。それは綺麗にジョニーの背中を捉えた。
不運な兵士は、情けない声を出しながら壁に叩きつけられた。
転がって起き上がろうとしたが、その先にはモシン・ナガンを構えた少女がにやりと笑いながら立っていた。
銃口はジョニーの眉間に向けられている。
「……ち、畜生、降参だ」
ジョニーは座り込み、力なく手を挙げる。
一連の流れを沙都子は見ていたが、まだ混乱気味だった。
「圭一さんにレナさんまで? それに魅音さんも……ちょ、ちょっと苦しいですわよー! 力が強すぎますことよー!」
「怪我とかしてないね、無事で良かったよ……沙都子ちゃん」
レナが沙都子を強く抱きしめる。必然的に羽入もあぅあぅ言いながら巻き込まれた。
そして、次に姿を現したのは――――。
「ぐあっ!?」
沙都子が手をくいっと引っ張ると、周りの釣り糸が中心に引き寄せられた。
ジョニーは足を絡め取られ、本日二度目の転倒となってしまったのだ。
「こういう使い方もあるのですわ」
沙都子は得意そうににっこりと笑う。――それが、ジョニーの怒りに火をつけた。
「ち、畜生おおお! 元エリート軍人を舐めるなあああああああ!」
懐からサバイバルナイフを取り出し、ズボンが破れるのもおかまいなしに糸を切った。
ぶちぶちと釣り糸がちぎれる。沙都子は思わぬ反撃に、一瞬対応が遅れた。
ジョニーはしめたとばかりに、無防備な沙都子に飛びかかった。
その時――。
「あぅあぅあぅあぅあぅ!!」
横の廊下から、小さな少女が姿を現して全力でジョニーにタックルをした!
これはジョニーにとって予想外な事だったので、ジョニーは少しよろめく。
「は、羽入さん!? どうしてここに?」
沙都子もとても驚いたが、再び兵士が二人に向けて向かってきた!
「説明は後だよ! …沙都子ちゃんも羽入ちゃんも、お持っち帰りいいいいいい!」
レナの渾身の右ストレート。そして素早く沙都子と羽入を抱えてその場から離脱した。
かぁいいもの好きの、レナならではの技だった。
「ナイスだ、レナ!」
圭一のバットが唸る。それは綺麗にジョニーの背中を捉えた。
不運な兵士は、情けない声を出しながら壁に叩きつけられた。
転がって起き上がろうとしたが、その先にはモシン・ナガンを構えた少女がにやりと笑いながら立っていた。
銃口はジョニーの眉間に向けられている。
「……ち、畜生、降参だ」
ジョニーは座り込み、力なく手を挙げる。
一連の流れを沙都子は見ていたが、まだ混乱気味だった。
「圭一さんにレナさんまで? それに魅音さんも……ちょ、ちょっと苦しいですわよー! 力が強すぎますことよー!」
「怪我とかしてないね、無事で良かったよ……沙都子ちゃん」
レナが沙都子を強く抱きしめる。必然的に羽入もあぅあぅ言いながら巻き込まれた。
そして、次に姿を現したのは――――。
「沙都子ッ!! 沙都子おおおおおおおお!」
「…梨ぃ花あああああああああ!」
走ってきた梨花と、レナから解放された沙都子が、強く抱き合った。
――何年も暮らしてきた親友。梨花にとっては百年以上にも渡る、大親友だった。
梨花が沙都子の前から姿を消したのは、半日以上前の事だった。
お互いがお互いに、危機的な状況にあった中、無事に再会出来たことは大きな喜びをもたらした。
「無事で良かったのです……ごめんなさいです、黙っていなくなったりして……」
「今度はもっと早く話して下さいまし……私も捕まっていまいましたから、おあいこですわね」
二人の少女は顔を見合わせて笑う。気持ちの切り替えがとても早かった。
「あとは富竹さんと監督だね! 羽入、その二人はどこにいるんだっけ?」
「富竹はそこの突き当たりにある左側の部屋、入江はこっち側の通路を右に曲がった所の部屋です! 山狗が言っていました!」
実際、羽入は姿を消して目で見てきたのだが。
「まずは富竹さんからだね、すぐに行こう!」
「おい魅音! こいつはどうする?」
圭一がジョニーを指差す。
「圭ちゃんに任せる! 葛西と赤坂さんがあそこに残っている以上、戦力は多い方がいいしね」
「了解だぜ! ……おい、こっちに来い」
圭一はジョニーを近くの部屋へと連れ込んだ。
「な、何をする気ですの……?」
「……洗脳・搾取・虎の巻なのです。にぱー★」
以上です。大変長らくお待たせしました。そしてまた二重投稿してしまったのです。
次回は、まあ、展開が読めるでしょうね。再現が難しいですが。
>>103 保守とか投下乙のレスは「ここにいるぞ! 見てるぞ!」のサインに思えるので
自分にとっては励ましになります。読んで下さるだけでありがたいです。
いつも保守ありがとうございます。
ノシ
投下をリアルタイムで見られるとは・・・
乙であります!
堪能した!乙です!
113 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 21:36:43 ID:1XkElVp2
期待
114 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 21:50:07 ID:XCQVO80U
良スレ発見w
115 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 08:24:34 ID:pbxHRunC
そんなことより
>>1さん聞いてよ。
まだ明日、@日正月の仕事が残っているもかかわらずパチキチごはんは....朝のC時に起きて仕事をこなした後、A時くらいから某Dのア○ーナに走った
最初は好きな倖田(甘デジ)に座ったのですが...回らないG6000円入れて70回転“なんじゃこの台”ときっぱり諦めて次の台を物色Y..
まぁわりかし好きな“萌えよ!剣”が空いていたので座ったJ...前の人が11連チャンした後の台だったからあまり大きい期待はしてなかったの
2500円でトントントンと箱@になったから「あぁッこれでしばらく遊べるワ」と楽しげに打っていたのね...案の定...小@時間もしたらなくなったわO
カードに残ってたのを使って止めて帰ろう思ってたんやけど...いいリーチがきたのでもう1000円サンドにA...その後からちまちまかかり出して
最終9箱交換しました座った時は14回かかってたのねJ帰りは79回までかけて帰ってきましたU(笑)
途中何度も止めようか迷ったんやけど…それまでのその台の最高記録が68回だったからどうしても抜きたかったのU
60回越えたあたりでモタモタしたけどA目標は達成...初打ちも気分良く終わった...これからの波はまだまだごはんにあると見たX
マジで嬉しかったので家に帰って普段は飲まないビールをのみながら日記書いてます
長々とごめんちゃいねU...とりま初打ちは朝C時から起きて仕事頑張るごはんに神様がご褒美に甘なのにあり得ない出玉を体験させてくれたお年玉ですX
今年1年もえぇ感じになれば幸せヽ(´▽`)/であります(^^ゞ
ってことです。
保守るぜ
保守
投下します。途中で途切れてしまうかもしれませんが、その場合は後日で。
あらかじめ……
・この物語はフィクションです。実在する人物、団体、地名などとは一切関係がありません。
◇入江診療所 地下 小会議室
ジョニーを部屋に引きずり込んだ圭一は、まず扉の鍵を閉めた。
次に、ジョニーが持っていた銃やナイフなどの装備品を奪う。
……ジョニーは、これから拷問や捕虜虐待などをされるのだろうか、と見知らぬ少年に戦々恐々の思いを抱いていた。
少年はジョニーに目を合わせて言う。
「単刀直入に言う。俺達の仲間にならないか?」
「は?」
ジョニーは何を言われたのか一瞬理解出来ず、きょとんとした。
数秒遅れてから意味が分かり、ますます頭の中が疑問で埋め尽くされる。
「俺達はこの雛見沢を、仲間を救う為に戦ってるんだ。でも敵は多い。一人でも戦力が欲しいんだ!」
「……そんな事で、俺が協力するとでも」
「“元”エリート兵士がこんな所で何やってるんだ? 沙都子と鬼ごっこする為に雛見沢に来たのか?」
痛い所をつかれ、ジョニーは言葉に詰まった。
「仕方ない! ……人質の監禁が俺の任務だ。俺みたいな軍人には任務は絶対だっ」
「沙都子を監禁しただと!?」
「ぐあっ!?」
ジョニーの顔面を圭一が殴った。
今まで知らなかったのか、というか知ってて来たんじゃなかったのか、とか、何で俺は殴られるんだ、という新たな疑問がわき起こる。
圭一はそれに答える事無く、息を大きく吸い込んで叫んだ。
「馬鹿野郎、ミス・ひぐらしに何て事をするんだ!!
そもそもツンデレ系のツンとデレのギャップによる萌えは例えその娘を監禁し無理矢理言う事を聞かせても得られない、貴重な物なんだぞ!
それを貴様は分かっていない!! 歯を食いしばれえええええええ!!」
「ぐはっ、待てって、ぎゃふ、だから俺は任務で、あべし!」
「だいたい最近は児童ポルノ改正とかで色々と大変な事になってるんだぜ、詳しくはググレ!
ひぐらしだって登場人物は1X歳です、だから18歳以上かもしれません問題ないですよね、とかやって来たがもう誤魔化せなくなった。
エルフだから子供に見えても実は100歳です、とかそういうのも無理になるんだ! この辛いご時世にそんな事するんじゃねえ!
今は耐える時だ! やたらと騒ぎ過ぎると逆に目を付けられ更に規制が厳しくなるかもしれない。つまり自重しろって事だ」
圭一の喋りは途切れる事がない。
「衰退し始めたのはエロゲーだけじゃない。他のジャンルのゲーム、例えばRPGとかも同じだ。
某最終幻想の最新作なんかセーブ→ムービー→セーブという謎のコンボがあったからな。プレイさせろよって話だ!
確かにドット絵から3Dポリゴンへの成長は目まぐるしい物であり、ヒロイン達もより美しく見えるようになった。
だがそれだけだ! 綺麗になっただけなんだ! ドット絵の方が妄想しがいもあったしな。その辺りは以前の俺の固有結界と被るから割愛する。
つまり、俺が見る限り今のゲームは綺麗なムービー垂れ流すだけになってしまったんだ! ムービーが見たいんじゃない、俺達はゲームがしたいんだ!
懐古厨と呼ばれようとも、俺にとっては昔のドット絵のゲームの方が魅力的に見える。多すぎる綺麗なだけのムービーなんていらないんだ!!
いやでもM○Sはシリーズ伝統的なものだからそのままでいいんです●島さん、それを分かっていない新規が色々と騒ぎましたけど。
ちょっと尾行あたりの所でダレたけれども、今度発売の●ースウォー○ーが面白そうなのでそれでOKです楽しみです!」
話が大幅に逸れても、圭一の喋りは止まらない。
「すまん、話が逸れたな。つまり何が大事かっていうと『原点回帰』だ。後から良い物が出来ても、それを発明した人はそいつだけだ!
いくら電話が便利になろうと電話の発明者はベルって事に変わりはない。だから俺達は偉大なる先駆者に、敬意を示すべきだっ!!
お前達軍人の原点は何だ? 何時代にどういう制度が出来て、とかそういう事じゃないぞ。……おい、あんた名前は何て言うんだ?」
「ジョ、ジョニーだ」
「平凡だけどいい名前だな。……ジョニー。俺みたいな子供が偉そうに言うのも何だが……
ジョニーは“軍人”である前に、“兵士”で“人間”だろっ!!」
「ッ!?」
「俺達の仲間に一人、兵士の人がいるんだ。俺達はそれを最近まで知らなかったが……そいつはいい奴なんだ。
ただ任務を遂行するロボットなんかじゃない。任務に無い事だってたくさんしてくれたし、何より俺達の仲間を助けてくれた!
それはきっと、そいつが“傭兵”や“軍人”である前に、一人の兵士として、人間として行動をしてくれたからなんだっ!!
ジョニー、よく考えろ。こんな狭い所に女の子を閉じ込めて、訳の分からない『作戦』とやらに協力するのは、本当に正しい事なのかっ!?
梨花ちゃんを殺して、この村を滅ぼして、何の価値があるんだ!? この作戦は何かを守れるのかっ!?
“軍人”ではなく、“兵士”や“人間”として考えろ!! ジョニィィィィィィィィィィィ!!」
――圭一の魂からの叫び。
それは『兵士』の鼓膜を、部屋全体の空気を振るわせた。
数秒の沈黙。そして、
「……お、……俺が間違ってた。あんた達に協力する!」
圭一の、一部謎だった演説に感銘を受け、ジョニーはがっくりと膝をついた。
しかし、その目は輝いていた。自分のあるべき場所。自分がいるべき立場。
それはここでは得られない、と感じたのだ。
「軍人ではなく――兵士として、人間としてあんたに従う」
ジョニーは立ち上がって言う。
『口先の魔術師』圭一はそれを見て笑顔を浮かべた。
――彼は内心、安堵していた。山狗の説得と、本場の兵士の説得は趣が異なるからだ。
山狗とは違い、兵士の方が力の使い方も武器の扱いも断然手慣れていた。
説得に失敗し、敵に回してしまったら恐ろしいことになる。
だが、これでこちらの戦力が増えた、と彼は安心していた。
「……まさか子供に諭されるとはな。まあいい、この任務には元から乗り気じゃなかったんだ。――名前は何て言うんだ?」
「俺の事は――Kと呼んでくれ」
コードネームか、とジョニーは納得した。
教えられた呼び方が本名でなくとも、ジョニーは圭一の事を完全に信用していた。
いくら沙都子に翻弄されていたとはいえ、彼は元エリート兵だった。
圭一が考えているように、かなりの戦力になる。さらに敵の事情にも精通している。
「任務を与えてくれ! K――」
ただ一つの難点と言えば――。
「うおぉぉぉおおっぉおおおおおおおお!? は、腹があああああああああああ!!」
――腹の調子が人よりも数百倍悪いことだった。
以上です。勢いで書きました。
説得はネタ(もろ固有結界)でいくか、
MPOのスネークの説得のようにいくのか迷いましたが……MIXしました。
ひぐらしMPOのはじまりです。あと圭一が叫んでいる事はあまり気にしないで下さいwノシ
口先の魔術師ついにキタ━━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ ━━━━━━!!!!
乙〜
――圭一が編み出した作戦。それは、敵を味方に付け、仲間を増やすという物だった。
スネークは個人戦。こっちは団体戦。やるなら徹底的にやってしまおう。
山狗達を味方につけるなんて、正直、予想もしてなかった。
実際、何百回も繰り返した世界でも、見た記憶がない。
成功するなんて思ってなかったけど、――それが上手くいった。
この世界はどこまでイレギュラーなんだろう、と重複した疑問が浮かぶ。
でも――今回のイレギュラーは、こちらに優位な物だ。
それに楽しいしね。
沙都子が釣り糸を張り、相手を転ばす。
間髪入れずにレナがれなぱんを入れる。
そして圭一が物陰に引きずり込んで説得をする。
その度に、部活メンバー+αチームは強大な物となって行くのだ。
勿論、全員の山狗が言う事を聞くわけではない。
そういう場合は、魅音が怪しげなオークションで買った銃を撃って、眠って貰うだけだ。
私は何をしてるかって?
……こういう事は圭一だけじゃなくて、私も得意なんだから。
「鳳7、ねぇ……」
目の前に転がっている山狗のコードネームを呟く。
彼は後ろ手に手錠をされていて、出来る事と言えばこっちを睨むことぐらいだった。
私はにやりと笑って、あるノートを手に取る。
「そ、それは……!!」
「へぇ……見事に上司への愚痴と不満ばかりね」
「鳳7の愚痴ノート」と書かれた冊子を手に取り、ぱらぱらとめくって見せた。
さっき、富竹がいた部屋で偶然拾った物だ。ここで役に立つとは思わなかったけど。
「小此木は『胡散臭い雛見沢弁が気にくわない』――確かにそうよね、あとウィンクも。
あれで信用しろって言われても信じる気にはなれないわ」
内容にツッコミと同意を入れつつ、本人の目の前で読み上げてやる。
鳳7は恥ずかしいんだかくすぐったいんだか、微妙な表情をしていた。
……富竹は「へらへら顔が気にくわない」らしい。これにはちょっと吹き出してしまった。
「一番凄いのが鷹野の愚痴ね。見下した視線、怒鳴り散らすだけの女、うるさい奴……とか。
だいたい同意するけど――このノート、鷹野達が見たらどう思うかしら?」
彼の顔が青ざめる。
私はノートを閉じて、目の前でひらひらと振ってやった。
「ここまで不満を溜めながら使えていた、ってのは偉いと思うけど、これ見たら鷹野はキレるでしょうね。
小此木もああ見えて単純だし、富竹は富竹だから……貴方、これ見つかったらまずい事になるわよ?」
「…………。」
「ま、そういう状況になるのは、私含めてここにいる連中が倒されてからでしょうけど。
人質も全員奪還したし、それはあり得ないわね。全てが終わったら鷹野含めて山狗も捕まるわ。
山狗の末端と言えども、貴方も裁かれるわよ。酌量の余地無しにね」
彼に顔を近づけて、耳元で囁く。
「そっちに居ても良いこと無いわよ? こっちに来たとしても、身の保証は出来ないけどね。
途中で改心したって事になって、今後の身の振り方が楽になるくらいかしら? 鷹野達とはもう合わないでしょうしね。
まだ抗う気があるの? ……まだ呼んでないけど、番犬部隊だっているんだから。そっちに勝ち目は無いわ。
ねえ……、貴方は、それでも“そっち”で戦うの?」
青くなっていた彼の顔が赤くなり、やがて俯いた。
数秒間躊躇した後――。
「……分かった。お前達に協力するっ」
そうは言った物の、彼にはプライドがあるのか、声が震えていた。
こんな年端もいかない子供に従うのが屈辱なのだろう。悔しそうな顔をしていた。
私は手を伸ばして、彼の頭を撫でた。
「よく言えましたのです。ぱちぱちぱち〜」
彼はまた微妙な顔をする。……あぁ楽しい。これだから撫でるのを止められない。
近くで私の相棒が呆れた顔をしているが気にしない。頭をずっとなで続ける。
みぃ〜、なでなで、にぱー☆
◇入江診療所 地下 作戦室
「何が起こっているのッ!?」
鷹野が、本日何度目になるか分からない叫びを上げる。
その目は、作戦室のモニターに釘付けになっていた。
白黒の画面が、いくつか砂嵐を浮かべている。――監視カメラを破壊されたからだ。
監視カメラは、意識しなければ気づかないような場所にも設置されている。
しかし、そんな場所にあるカメラも壊されていた。
全てでは無いとはいえ、複数も。中には関係者ぐらいしか場所を知らないような物も含んでいた。
それが意味する事は、つまり――。
「さ、三佐、山狗の中から裏切りが、」
「そんなの分かってるわ!! だけど、どうしてなのよッ!!」
……この状況は、侵入者だけでは起こりえない。
内部からの手引き、あるいは裏切りでもない限り、……あり得ない状況だった。
いくつか生き残った画面では、山狗同士が交戦している物もあった。
別の画面では、山狗では無い兵士がモニター側に銃を向け――その画面は砂嵐となった。
「裏切りなんて……、どうして、…………こんなの、あり得ない!!」
枯れきった喉で鷹野は叫ぶ。
左手で、いつの間にか持っていたスクラップ帳を胸に抱えている。
右では、左腕に爪を突き立て、掻きむしっていた。
……その様子は、自分自身を抱きしめて、自分を慰めているようにも見えた……。
――皆が、私の論文を読んだ。
あの時踏みにじられた論文を食い入るように読んで、頷き合い、価値を認めた。
研究所も与えられ、肩書きも貰い、補佐もついた。
たくさんの資金を手に入れて、その資金を余すことなく使い、味方を増やした。
大きな組織と接触し、症候群の兵器利用までの話にもこぎ着けた。
――あとはアレが完成して、作戦を実行するだけだったのに。
――山狗だけは、裏切らないって、思ってたのに。
信じていた物にすら裏切られ、鷹野は怒鳴ることも、指示を出す事も止めてしまった。
その場に居た山狗は顔を見合わせる。
「……小此木はどこに居るの?」
「Rの捕獲の為に出向いていましたが、……そろそろ戻ってきていてもおかしくないはずです」
「当たり前でしょ、どうして古手梨花達が、先にこっちに来てるのよ!!」
頼りになるはずの小此木の姿すら見えず、鷹野の苛立ちがますます募る。
――圧倒的に戦力が足りない。頼れる「味方」が少ない。どうすればいいのか。
ヒートアップした頭をクールダウンさせるべく、鷹野は考える。
頼れるものは自分自身しか無い。
その自分が暴走してしまっては、何も意味が無い……。
普段のようにヒステリーを起こしすぎず、考えて、出た結論は――。
「……ここを捨てるわ」
鷹野にしては意外な、「切り捨てる」という結論だった。
「しかし、三佐――」
「……裏切りが出てしまった以上、この戦力で戦うのは厳しい。……けれど、まだ巻き返せるチャンスはあるはずよ!
『例の場所』に移動して、私兵部隊を借りるの! あっちの警備に手を取られてこっちが手薄になったんだから、向こうにも責任があるわ!
私はまだ諦めていないし、ここにいる貴方たちを捨てるつもりもない。降伏は絶対にしない!!」
鷹野は室内をぐるりと見渡す。
「一旦戦力を補充して、それから立て直すのよ、いいわね!? これが『逃亡』だなんて考え無い事!
『例の場所』はここから車で行けばそう時間が掛からないわ。……早く準備しなさい、移動するわよ!!」
室内にいた、数名の山狗はばたばたと準備を始める。
――悪あがきにしか見えない鷹野の行動。
それが、後に意外な結果を引き起こすことになるとは、誰も知らなかった。
以上です。今回は短めかつ大きな動き無し。済まぬ。
梨花ちゃまの洗脳と鷹野の頑張り物語でお送りしました。
そろそろスネークパートに行こうかと思います。ノシ
梨花ちゃまキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
梨花ちゃまに撫でられてー
訂正
>>127 ×鷹野達とはもう合わない→○鷹野達とはもう会わない
でした。
それと最近、感想レスが早くて沢山つくので凄く嬉しいです。ありがとう。ノシ
保守
◇入江診療所 一階
私達は沙都子、入江、富竹を救出し、山狗を制圧したので、地下から出て一階に来ていた。
作戦は大成功し、おまけに仲間が増える事になった。皆、勝利の余韻を味わっている。
私も色々と楽しみつつ沙都子と再開出来たので、言う事無しだ――と言いたかった。
――入江の言葉が気になっているのだ。
圭一の快進撃、というより洗脳撃で奥へ奥へと進み、富竹を救出し、入江を救出した時の事だった。
助けてくれた事への感謝もそこそこに、隙を見計らって入江は私に話しかけた。
「悟史くんを見かけていませんか?」
「悟史、ですか?」
どうしてこのタイミングで悟史が、山狗は彼に手を出さないんじゃないか、とその時の私は不思議がった。
入江は周りを見渡し、声を潜めて言う。
「実は……、何者かに連れ去られてしまったようなのです」
「えっ……!!」
大声を上げてしまいそうになって、ここには沙都子もいる事を思い出し、かろうじて叫びを飲み込んだ。
――悟史が連れ去られた!? どうして?
またも「イレギュラー」が起こってしまったのだ。
「……本当に申し訳無いと思っています。連れて行かれたのは、スネークさんと前原さんがお見舞いに来た日の事でした。
突然、オセロットと名乗る外国人が現れて……。彼は悟史くんの状態や、この診療所の事も詳しく知っているようでした」
オセロット。聞き覚えの無い名前だ。……けれど、心の奥底、記憶の片隅で「何か」が引っかかった。
過去の私が、記憶に残らない範囲で関わったのかもしれない。
「そのオセロットという人は、どうして悟史を?」
「『歩かせるようにする』『友人に会いに行けるようになる』と言っていましたが、詳しくは分かりません……。
ただ気になるのは、オセロットが『鷹野の知り合い』と名乗った事です」
外国人。スネークと同じ、動物の名前(コードネーム)。
記憶の片隅にあるカケラ。歪な世界。イレギュラー。サイコロの1。
そして、鷹野の知り合い――つまり、鷹野の仲間。
頭の中で、小さなピースがかちり、かちりとはまっていった。
「……分かりましたです。沙都子が傷つかない範囲で、しっかり探して助けたいと思います。オセロットという人には注意します。
必ず……、必ずボク達が助けて見せますです」
とりあえず入江を安心させようと、精一杯の強気の言葉を並べた。
入江は、それが気休めのものに過ぎないと分かったのか、お礼は言った物の弱々しい笑みを浮かべていた。
そして今に至る。
考えても、奴らが悟史を利用する理由は思い浮かばなかった。
ただ一つだけ、ある事が浮かんだ。
――スネークの「敵」は、「東京」と通じているのではないのか、という結論だ。
この袋小路の世界で、蛇のカケラがもたらした物は数知れない。
彼の世界とこの世界のカケラが様々な現象を引き起こしている。
オセロットという人間もその副産物である可能性がある。
彼があえて鷹野の「知り合い」を名乗ったのなら、オセロットは鷹野の、つまり東京の仲間と考えられる。
だけど、確信は一切持てない。そもそも私は彼の本来の任務を知らない。
「オセロット」なる人物も、スネークの知り合い、もしくは敵かもしれない。名前だけで判断しているけれど。
フォックスと名乗った謎の忍者(?)も、スネークの親友だった。ならばオセロットも……、と考えるのは甘いだろうか。
みんな動物の名前だし、あり得るかもね、とぼんやり思っていた。
「これから番犬に連絡を取ろうと思います」
私がうんうん考えている間に、話が進んでいたらしい。
富竹がそう宣言して、皆が頷き合った。
番犬部隊の説明はもうされたらしく、それなら安心だ、と言う表情を浮かべていた。
「番犬部隊はプロだと聞いています。鷹野さん達が捕まるのも時間の問題のはずです」
「……申し訳無いです」
まだ不安そうな表情だけれど、入江が言った。
そして鷹野を捕まえられなかった事に対して、葛西が謝罪する。
――そう、私達は鷹野を取り逃がしてしまった。
部活メンバーが人質救出に躍起になっている際に、診療所を捨てて逃げたらしい。
地下と一階を繋ぐ階段付近には葛西が居たが、それでも逃がしてしまった。
反撃してくるものだと思ったらしく、ショットガンを威嚇として撃ち込んだが、その隙に弾幕を張られ階段の方へ行ってしまった。
さらに撃ちつつ追ったが、山狗が二人程降伏しただけで、鷹野達は意に介せず外へと向かう。
また追おうとしたが、傷が痛みそれ以上は無理だった――と、葛西が言っていた。
鷹野の性格的に、無茶をしてでもこっちに突っ込んでくるだろう、と判断して出入り口付近の堅め方を甘くしていた。
彼女を甘く見たこっちのミスだ、葛西のせいではない。
……と言うより、本来なら入院、という傷を負いながら、ショットガン何発もぶっ放した葛西に私は驚いた。
赤坂が強いのは知っているが、葛西もここまで無茶をやれる程強いとは知らなかった。
とりあえず興宮に行って番犬に連絡を、と皆が出口に向かった時、一人の人物がその場に「舞い降りた」。
「待て」
銀色が暗闇の中に浮かび上がり、皆が一斉に警戒する。
彼の姿を認め、皆の警戒が解けた。葛西と入江、富竹、沙都子は謎の人物の登場に訝しんでいるようだった。
……私も、この人物だけは未だに全容が掴めていない。スネークの親友らしいが、どこまで信頼していいのか。
「番犬とは連絡が取れない。連絡網が遮断されている」
彼――グレイ・フォックスはそう言った。
「遮断だって……!? それに、貴方は一体? どうして番犬を?」
見知らぬ謎の人物がいきなり放った言葉に対して、富竹が驚く。
「……説明は後にさせて貰う、トミタケ二尉にイリエ二佐」
「なっ……!!」
今度は入江が絶句する番だった。私も驚いた。同時に、さっきの言葉が嘘ではない事が分かった。
このフォックスという男は、富竹と入江の肩書きを知っていて、更に東京とも通じている?
スネークと同じように、本来なら「この世界にいるはずの無い」男がどうしてそこまで関わりを持っているのだろう。
……また分からない事が増えた。
「通信網事態が遮断されている。雛見沢で試しても、興宮で試しても駄目だ。全く連絡が取れない。――これからどうする?」
ああ、またイレギュラーな事が起きたんだ。もはやイレギュラーが多すぎてイレギュラーで無くなってきている。
番犬を呼ぶことがチェックメイトだったのに、それがひっくり返された。
鷹野はまだ息を潜めている。一体どうすれば、……どうすればいいの?
「どうするかなんて、決まってるよ」
私の不安を余所に、魅音が明るい声を出した。
「……私達は、私達に出来る範囲の事しか出来ない。でも、番犬と連絡出来なくても、まだやれる事があるでしょ?」
魅音が部活メンバーの顔を見る。
彼女が何を言いたいのか、薄々分かってきた。
「スネークを助けに行こう!!」
全員、その言葉を待っていたかのように、頷いた。
「でも魅音。スネークってどこに向かったんだ?」
「あー……そこまでは分からないなあ」
圭一の質問に対し、魅音はぼりぼりと頭を掻いた。私にもスネークの居場所は分からない。
片っ端から探すにしても、雛見沢は狭く無い。彼が行きそうな所はどうやったら分かるんだろう。
「簡単だ」
フォックスが言う。
「居場所を知っている奴に案内させればいい」
そう言って、フォックスはある人物を見る。その人物とは――。
「……え? お、俺??」
成り行きでここまで付いてきている、さっき仲間にした兵士――ジョニーだった。
……結局。
俺たちは、スネークの居場所を知っているという、ジョニーの案内の元で行動する事になった。
ジョニーが案内する所は、ある兵器の開発現場らしい。
フォックス曰く、スネークの任務はその兵器と関係があるらしい。
この雛見沢で、そんな恐ろしい事が行われているなんて、ちっとも知らなかった。
フォックスも兵器絡みの事を色々と調べていたけれど、場所の特定までは無理だったようだ。
だから、実際に兵器がある場所に行った事がある人間――ジョニーに案内させよう、という事になった。
仲間にしておいて良かった、と心の底から思う。こんなキーパーソンだなんて、あの時は想像が付かなかった。
フォックスは、またどこかへと姿を消した。俺たちの見えない所で、スネークとみんなのサポートをしてくれているのかもしれないな。
葛西さんとは別れることになった。
葛西さんはまだついていく、と希望していたが、魅音の心配と説得に折れたのだ。怪我してるのに、無理させちまったからな。
それと、監督を園崎家で匿おう、って話が出た。
敵から奪った銃もあるし、診療所にいた山狗は俺たちが武器を奪って手錠をしておいた。
監督は敵に狙われる立場だけど、園崎家に入ってしまえば大丈夫だろう、という結論だった。
……でも、監督はそれを断った。さっき魅音が言ってたように、「自分が出来る範囲事をやりたい」そうだ。
俺たちはすぐに承諾した。沙都子が診療所へ一人で行くのを決めた時と同じことだった。
監督は、診療所にある薬品や包帯を持てるだけ持ってくれた。
万が一の時、応急手当がすぐに出来るように、だ。長期戦になるなら、大事な役割となる。
ちなみに俺達は徒歩でスネークを助けに行く。
診療所に残っている車が監督の車しか無いって事と、監督の車じゃ全員が乗れないから、歩きだ。
案内役がいるから、暗くても迷わない……はずだけどな。まあ、あの辺りには俺たちも行ったことがあるし、何とかなるさ。
「……皆さん、お願いがあります」
別れ際に、部活メンバーに葛西さんが声を掛けた。
「この件関係ないとは思いますが……、もし詩音さんを見かけたら、助けてあげて下さい」
「え? 詩音って体調不良で休みだったんじゃあ……」
「どうも、厄介事に巻き込まれているようです。私が止めても止めきれず……。万が一の時は、よろしくお願いします」
葛西さんが頭を下げた。よほどの「厄介事」らしい。
「分かった分かった、私がふん捕まえてとっちめておくから! だから安心してゆっくり休んでね!」
魅音の言葉に対し、ありがとうございます、と葛西さんは頭を下げ、車へと引き返していった。
――後は、スネークを助けに行くだけだ。
詩音の厄介事がどれ程の物か分からないが、詩音もいたら皆で助けよう。
何か抱え込んでいたみたいだからな。それで悪い奴らに騙されてスネークを閉じ込めたんだろう。
助けてから、仲間に相談すれば良かったんだ、って説教してやればいいさ。
俺は――これから起こる事を、それぐらいにしか、考えていなかった。
「ねえ羽入。どう思う?」
「詩音の事……ですか」
私と羽入は、部活メンバー+α一行の、後ろの方を歩いていた。
他の人に気づかれないよう、ひそひそと話す。
「綿流しの時、詩音がスネークを閉じ込めたみたいね。それに厄介事、と来たから……」
「あう、鉄平も死んでいますのですし……、結構危険な状態なのです」
「鉄平が死んだって……あんた、どうしてそういう大事な事を言わないのよ! キムチの刑決定ね。鉄平が死んだのはいつ!?」
「つ、伝えるタイミングが掴めなかったからです! 死んだと聞かされたのは、綿流しの日の翌日なのです!!」
……何という事だ。これはかなりまずい。
「じゃあ、詩音は発症しているの?」
「……綿流しの前日から、そういう気配はしました。でも今は分かりませんのです……」
「分からないって……、どうして?」
「居場所が掴めない、というか……。こんな事は初めてなのです。この袋小路の世界に関係してるかもしれないのです」
「とか何とかいって、ただあんたが怠けていただけじゃないの?」
「あうあうあぅ! 違うのです、僕も頑張ってますのです!!」
ちょっとからかってやると、面白いぐらいに羽入はムキになった。
勿論、羽入の努力を私はたくさん知っている。ただの冗談だった。
「これから向かう所に、詩音がいてくれればいいけど……嫌な予感がするわね」
「僕もそう思いますです……」
オセロットという謎の人物。
連れ去られた悟史。
なぜか東京の事情に詳しいフォックス。
おそらく、誰かに殺されたであろう鉄平。
「厄介ごと」に巻き込まれている詩音。
スネークの敵と、鷹野達の繋がり。
様々なイレギュラーの要素が、絡まり合い、複雑になって行く。
――鷹野を捕まえたとしても、終わらない。まだ終わっていない。
不確定要素は、喉に刺さった魚の小骨のように、じわじわと不安という名の痛みをかき立てていった。
以上です。……この投下ペースが続けられますように。
ちょっと前まで「動」の部分が多かったので、「静」な流れになっています。
話は少しずつ「動」かさせているつもりですけれどねw
以降、スネークパートでお送りします。ノシ
乙です
スネークパート楽しみに待ってます
まさかこんな早く続きが読めるとは
とにかく乙ですことよ!
本編乙!
そして少々Kの固有結界分を追加したく投下。
TIPS「Kの固有結界〜ちょっとだけ蛇足編〜」
意気揚々と目的を達成した勢いで、子供達は次の目的地へと駆け出す。
その目に溢れているのは、どれもが希望に満ちていた。
これから赴く場所は死地に違いないというのに。
まるで、この中の誰もが死にはしないと叫ぶが如く。
「いい奴らだよなぁ」
そう、先頭に立って走っていた男が呟く。
「……ああ、いい奴らだ」
その隣を走っていた男が、それに応えた。
彼等は共に、銃を握り締めている。
戦場を駆けることを旨とする兵士――彼らはともに、元いた組織を離脱し、子供達と運命を共にする。
普通に考えれば、なんと愚かなことをしたことだろう。
巨大な組織を裏切っただけならまだしも、さらに牙を剥くとは。
ただで済むわけがない。
そんなことは解りきっていた。
しかし、そんな現実は、この男達を止める理由にならなかった。
彼等の胸の奥には、一人の少年によって熱く燃え上がる[理想]があったからだ。
この理想は、寒々とした現実を吹き飛ばす。
まさに彼等には、命を賭けるに値するものだった。
「……俺は、全力であいつらを守る」
男の一人が、そう言った。
前に進む足は限りなく力強く、銃を抱える腕は熱く血を滾らせる。
ここにいる漢共は、自らの中の誓いに、己を奮い立たせていた。
「……よっと、ほらほら圭ちゃん。ご新規様一名いらっしゃ〜い」
魅音が楽しげに昏倒した兵士を引きずってきた。兵士はモシン・ナガンの麻酔弾を首筋に受けて、その戦闘力を奪われていた。
「おっ! さんきゅー、魅音」
圭一がにかっと笑って応じる。そうして圭一はまたもや、作業と化した「説得」の準備を始めた。
形成は完全に逆転していた。
もはや敵は反撃できるほどの余裕は無く、また反撃を行おうとする者は消え失せていた。
この圭一達の前に連れて来られた者達は皆――、彼らと共に立ち向かう味方となるか。
そうでなければ、お話の終わりまで眠っていてもらうか。
その選択を強いられるのだ。
そして、ここにまた一人、審判を受ける者が来た。
「う〜ん、圭ちゃん、この人はエンジェルモートの来店暦が無いねぇ」
魅音が兵士の財布をまさぐりながらいう。エンジェルモートは一度でも来た客にはサービスカードを渡している。リピーター率がすこぶるよいエンジェルモートでは、カードを捨てる人間は滅多に見ないことから“カードの所有=常連”の図式が成り立つのだった。
……ちなみに、この方法で「説得」した人間は二桁に上る。
「ホビーショップや町で見かけた方でもございませんわねぇ……。一体普段、この人は何をしてらっしゃいますのでしょう?」
沙都子が首を傾げる。狭い雛見沢や興宮で見かけたのならば、多少なりとも覚えていることがある。
だが、この男は全くの新顔であった。
「はう……もしかしてこの人、引きこもりさん、なの、かな? かな?」
レナが男の顔を眺めながら、やはり面識が無いことを確認する。
「あっ……! こいつ……」
そんなハテナマークが乱立する場所で、『知っているのか!』と言われんばかりのリアクションを取る男。
……ジョニーだった。
「お、ジョニーやっと戻ってきたのか。腹はもう大丈夫なのかよ」
「あ、ああ……まだ少しグルグルいってるけどな……」
やや、前かがみの姿勢でジョニーが男の顔を見ようと近づいてきた。
「ああ、やっぱりこいつか」
腹をさすりながらジョニーが言う。
「知り合いか?」
圭一が尋ねる。それにジョニーは、まあな、と答えた。
「へえ、そんなら話は早いじゃん。この人の好きな趣味でも何でも教えてよ。説得やりやすいし」
魅音がそう尋ねると、ジョニーは幾分か言葉を詰まらせた。
「うん? どうしたジョニー? またトイレか?」
「い、いやそうじゃない。……ああ、そうだな、こいつは、……ゲームが好きなんだ」
ジョニーがそう答えると、圭一たちの顔が明るくなる。
「へえ、ゲームか! それなら楽に墜とせそうだな」
圭一がにやっと嗤う。
「……ゲーム? ……うーん。やっぱりこんな人、見たことありませんわ」
「まあ、おじさん達が学校行ってる間におもちゃ買ってる人かもしれないしねー」
「よーし、そんじゃ早速、始めるとすっか!」
圭一の合図で、子供達は着々と準備に取り掛かる。
その中で、ジョニーだけが悩んでいた。この子供達に、本当のことを話すべきか、と。
今から説得されようとする男の名はジョニーも知らない。ただ、コードネームだけは理解していた。
男のコードネームは『鳳765』という。その番号の多さからも察する方もいるだろう。
この男もまた、ジョニーと同じ“未来の雛見沢”からやって来た異邦人だということに。
『はああああっ!? ま、また腹がああああっっっ!』
雛見沢に着任して早々、ジョニーは強烈な自らの中の敵と攻防を繰り返していた。ジャポネの食物は水分が多いと聞くが、ここまで胃腸に効果があるのか!?
新任地に赴く前に何処かの駅で食った『新感覚! 謎ジャムカレー羽生蛇ラーメン!』なる食べ物を食べたのがいけなかったのかもしれない。
『あのどうあがいても絶望した的な味がまずかったのか……!?』
愚痴をこぼすが、それだけで自体が進展するはずなどない。幸いここは興宮の街中だ。トイレならすぐそこにあるはずだった。
トイレだ。トイレトイレ、トイレはどこだああああっ!?
屍人のように蒼白になりながら、ジョニーはトイレを探し求める。しかしいつ爆発するかわからない男を受け入れる店などそうそう見つからない。
このまま見つからなかったら、いろいろ垂れ流すかもしれない。赤い涙とか。
そんなとき。
『おい、あんた大丈夫か?』
声をかけた男がいた。その男こそ――、鳳765だった。
『す、すまない。助かった』
偶然通りかかったゲームセンターで、どうやらそこの店員と顔なじみだと思われるその男は、ジョニーにトイレを貸すように店員に口添えをしてくれた。
そのおかげで無事トイレを借用し、危機を乗り越えたジョニーが感謝の言葉を述べた。
『なに、気にするな』
男はそう言って、ゲームセンターの中に入っていく。そうして一台のビデオゲームの前で止まると、腰を下ろした。
そして財布から百円玉を取り出そうとして、突然出てきた腕が先に百円を入れた。
『おい、何をするんだ』
男が眉間に皺を寄せてジョニーを見る。
『さっきは世話になったからな。俺の気持ちだ』
隣の台に腰を下ろしたジョニーは、男がプレイしているゲームを見る。
『あー、これは、格闘ゲームか、なんか?』
『どこをどう見たらこれが格ゲーに見えるんだ? 第一、彼女達に殴り合いなんてして欲しくない』
『あ、あ〜、そう。いや、これ初めてみるゲームだからさ。……どういうゲーム?』
ジョニーが尋ねる。男はそれに。
『彼女達が輝く舞台を見つめる……そんな素敵な時間を過ごせるゲームさ』
さしずめ、俺はプロデューサーといったところかな。
そう、男は真面目な顔で、そう言った。
『…………あ、そう……』
なんと答えていいかわからないジョニーを尻目に、男はゲームをスタートさせる。
『会いたかったよ。ハニー』
もはやこの瞬間から、男は素敵な時間へと移動して――、ジョニーの姿など見えなくなっていた。
つまり――、そういうことである。
彼が命を捧げるに値すると、“本気で”思っているゲームは、ここには存在していない。
つまり、彼にゲームの話をすればするほど、彼を苛ますことになる。
実際、かれは“この時代”に来て、3回自殺未遂を行っている。理由はどれも、『彼女にもう会えない』からだった。
だから、この説得が成功する確率は相当低い。それだけならまだしも、圭一達の目の前で銃自殺しかねない。
――ここは、そっと眠らせておくべきではないか――そう判断したジョニーが、圭一達の下に向かう。
だが。
「――――――……そもそもおまえは、彼女の気持ちをまるでわかっちゃいない!」
圭一が荒げた声を出した。その口調と吐き出す息には相当の熱が込められている。
「おまえはアイドルの語源を知っているのか!? アイドルとはそもそも不特定多数の人々に崇められ尊敬される人物のことを指す!
つまりそれは信仰の一表現であり一対象であって古来からある現人神の具現や偶像信仰の一スタイルでありそれらを実践する人は誰にでも笑顔を振りまくのは当然だ!
元々が博愛主義なのであって老若男女誰彼構わず笑顔や投げキッスを振りまくのがアイドルであり存在意義だ!
特定の誰かの所有物になっただの、熱愛報道発覚だの騒がれたら、その時点でアイドルという語源的な意味では終了フラグ達成だが、実際のアイドルはその後もタレント活動とか文化人路線やらでしぶとく生き残っている!
中には普通の女の子に戻りたいとかわざわざコンサートで叫ぶのもありだし、それはその人の人生なのだからとやかく言う権利は無い!
しかしだ! そんなアイドルの本来の意味から外れ! 『○○は俺の嫁』宣言などかますのはいかがなものか!?
結論から言おうそれは『有り』だ! 特定の限定されたものを欲する独占欲は人間として当然だ! そして清純や決して汚れないものをどろどろした感情やねちょねちょした欲求で何かにまみれさせてしまうのも、愛すべき人間の根源的な劣情だ!
人ラヴ! そんな人間だからこそ愛せる愛してる! そこでお前に問う!」
ビシッ! とKがあの男に指を指す。
「彼女がお前に、そうされたいと願っていたら――――どうする?!」
Kのその言葉は、彼にとって悪魔の囁きにも聞こえるだろう。
彼にとっては、遠く、高い場所にあるはずの高嶺の花。それを窓越しに眺めているだけだった。それで満足だった。……今までは。
だが、今の彼は――、そう彼は、知ってしまった。
彼は椅子に座ってなどいない。彼はKの眼前で跪いていた。
そして――、“R”が嬉々として次々と描いていく少女達の絵――実物を見たわけではないのに、男から聞き出した情報だけで、ここまで実物に似せるとは。
Rの魔性を、ジョニーは垣間見た。
そして男は、歓喜のあまり――、涙した。
「8ビット? 16ビット? コンピューターが無い? 甘いわ! 人は元々妄想の産物だ! 生き物だ! 他の霊長との最大の違いは我々は空想を具現化する力があるのだ! そうら見ろ! 涙を拭いてとくと見ろ!
おまえの嫁が微笑んでいるその顔を! おまえの嫁が頬を赤く染めてねだっているあられもないその姿を!
つーか梨花ちゃん乙! あとでその絵30枚ほどくださいマジで! つーか新刊はいつですか!? 今度の夏コミには参加するんですか!? それなら売り子でも買い子でも何でもしますからサークルチケット一枚まわしてくださいお願いします!
そして非実在青少年爆発しろ! いやマジで消滅お願いしますホントに!」
日本に伝わる、世界を変えうるほどの力――。
ドウジンシ。
それをジョニーは、目の当たりにした。
そして、男は立ち上がる。
「俺が……、俺が間違っていた。俺にはいる。ここに、確かに! 俺の嫁が! 俺は、俺の嫁のために――」
生きる。
そう、力強く、彼は言った。
彼は、どうあがいても絶望なこの世界で。
希望を――、見た。
そして俺達は走る。
それぞれに抱いた希望を胸に。
俺達に希望を与えてくれた子供達に報いるために。
このどうしようもない世界から、生き延びて――、再び、彼女の元に還るために。
「ジョニー」
「……何だ?」
「この戦いが終わったら、二人で秋葉に行かないか?」
「アキバか……、いいところだとは聞いている。一度行ってみたかった」
男達は、駆けながら、笑みを返す。
この戦争が終わったら、俺――。
以上。投下した。
ほんとに非実在爆発してくんねえかなー。メリットの百倍はデメリットあるぞ。
おいおいそんな一杯投下されちゃったらおじさんがんばっちゃうよ?
マジで最近の連続投下には脱帽です
そして圭一、禿同です<非なんとか
読者としてはありがたいけど無理はなさらずに
うおー乙です。やっぱり貴方には敵いません。
非うんちゃらには爆発して欲しいですねw
さて、私も頑張ります。ノシ
元本編め、無茶しやがって……
つかネタがそろらかしこに詰め込みすぎだwww
KanonにSIRENにアイマスかよwww なんかほかにもいろいろ混ざってるぽいがwww
TIPS:圭一の困惑
梨花ちゃんを助けたから、スネークはスネークの任務を。
俺たちは、俺たちが出来る事をする事になった。
診療所へ殴り込みに行く、って訳だ。けれどあっちは大勢、こっちは仲間が増えても少数なので、色々と作戦がいる。
だから、今後の「作戦」について話していた。
魅音が部長として考えた案をまとめて喋っているのを聞いていると、肩を軽く叩かれた。
振り返ったら、そこにはスネークがいた。
「どうしたんだ?」
「変な事を聞くようで悪いが……今は西暦何年だ?」
「えーっと、今は確か1983年だけど、それがどうかしたのか?」
「…………いや、いいんだ。変な事を聞いてすまん」
それだけ言って、スネークは離れていった。
こんな時に西暦を聞くなんてどうしたんだ? とか色々と考えていると、今度はフォックスが話しかけてきた。
「――お前が、前原圭一だな?」
「ああ」
まともに正面切って話すのは初めてかもしれない。
それもその筈、さっき初めて出会ったばかりだからだ。
「…………かすかに面影はあるが、信じられないな。まるで別人のようだ」
「? 何か言ったか?」
「いや――ここの『マエバラ』には関係の無い話だ」
意味が分からない。頭の中が、クエスチョンマークで一杯になる。
「科学に興味はあるか? 技術職に就こうと思った事は?」
「……科学?? いや、俺は、将来のこと、あんまり――」
言葉を濁す。都会では色々とあって勉強ばかりやってたけど、雛見沢に来てから考えが変わった。
勉強が全てではないって分かったし、田舎での生活は楽しい。
将来何になろう、とか、この分野が好きだからこんな職業に就こう、とかはまだ考えていない。
少しずつ勉強して、高校に入ってからゆっくり考えてもいいか、と思っていた。
……でも、なんでそんな事を俺に、しかも今、この事態で聞くんだ?
「ならいい。――今の日常を、大切にする事だ。失った日々は取り戻せない。
そのうち、今この瞬間でさえ恋しく思う時が来るだろう。……過去に囚われ過ぎるな。俺のようになるだけだ……」
意味深な言葉を残して、フォックスはスネークの元へと去っていった。
……よく言っている事が分からない。大事な事だとは思うけど、なんで俺に言うんだろう。
知り合ったばかりの、俺に――。
「――――圭ちゃん! 話聞いてた?」
振り返ると、魅音が頬を膨らませていた。
「わ、悪い、ちょっと話し込んでた。もう一度説明してくれ」
「もー、これからだって言うのにさ。いい、まず、おじさん達は3つの班に分かれるからね。それで――」
魅音の作戦説明が始まる。
……フォックスに言われた言葉が、頭の中でぐるぐると回っていた。
けれど、それがどういう意味を持つ言葉なのかは、今の俺には分かる筈が無かった。
1レスとか初めてですけど、今日の所は以上です。
最近ハイペースで投下出来たのですが、ちょっと執筆時間の確保が怪しいですorz
スネークパートの「動」の部分が来るまでに
「静」の部分と、TIPSが2、3個あると思うので細切れ投下をお許し下さい。
冒頭の部分はもう少しですので、3、4日で投下出来ると思います。ノシ
乙です。
あまり無理せずに・・・
乙☆
いいのかい?俺は毎日更新でも読んじまう男なんだぜ?
更新乙です^^
あまり(ほとんど(全く))メタルギアを知らない私に教えてください、
メタルギアには前原という科学者が出てくるのですか?
本編のTIPS乙。
前原なんて科学者はいないなー。
なのでなにかのフラグと予想汁。
◇雛見沢 とある森林の中
森の木々を掻き分けて進む。
静かで、動物すら寝静まっている夜だった。満月の明かりのみが辺りを照らしている。
自分の息づかいと、草を踏みしめる音、小枝が折れる音以外には何も聞こえない。
圭一達が敵と派手にやり合っているので、おそらく敵はここには来ない。
あとはスニーキングスーツと武器を取りに行って――任務を遂行するだけだ。
しかし――メタルギアの場所は、雛見沢の地下にあるという事ぐらいしか分かっていない。
メタルギアの存在を目立たないようにするならば、奴らは施設をどこかの山奥に隠す筈だ。
だが山なんて物は沢山ある。到底探しきれる物では無い。どうするか――と考えていると、無線の呼び出し音が鳴った。大佐からだ。
『大佐か。……銃の使用許可をくれないか。もうかくれんぼは終わりだ』
『うむ……、許可しよう。致し方あるまい。しかし、無闇な戦闘は避けることだ。民間人に気づかれてはいけない』
以前使用を懇願した時とは大違いで、今回はあっさりと使用許可が下りた。
もう、切り札を使わざるを得ない時が来たのだ。
『それとスネーク。君の正体が暴かれてしまったようだな』
『ああいう形でばれるとは俺も思わなかったさ。任務に支障は無いだろう』
もしかすると……、もう会えないかもしれない。「任務」がすこぶる順調にいけば、の話だが。
……しかし先の事を考えると気が重い。メタルギアを破壊するだけでは終わらなそうだ。
ため息をつくと、今度は相棒の声がした。
『大丈夫かい? スネーク』
『オタコンか……。正直、まだ混乱しているさ。園崎家の地下から出てから怒濤の展開だったからな』
『そうだよね……。僕もまだ信じられないよ。スネークが過去にいて――そこにフォックス、リキッド、オセロットがいるなんて』
『オセロットはともかく、前者二名とはもう会わないと思っていたんだがな』
味方でもあり敵でもあった、親友のグレイ・フォックス。
遺伝子を分かち合った「兄弟」のリキッド・スネーク。どちらもシャドーモセス島で死んだ筈だった。
その二人と、また相対する時が来るとは、夢にも思っていなかった。
『スネーク、状況を整理しよう。君の任務以外にも、考え無ければならない事が沢山ある』
大佐も会話に入り込む。
『そうだな。冷静に考える時間が必要だ。大前提として……まず俺は、1983年の雛見沢にいる』
『間違いないのかい?』
『さっき圭一に聞いてみたら、返事がそうだった。彼が嘘をつく理由は無い。……これはもう、紛れもない事実だ』
この時代の「俺」はどうしているのだろうか。
それとも、「この世界」には、ソリッド・スネークは存在していないのだろうか。
様々な疑問が憶測を呼ぶが、人が過去に移動する時点で人智を超えた話だ。そんな事が分かるはずが無い。
『次に、我々が探しているメタルギアには、「永久機関」と呼ばれるタイムマシンがついている、だったな』
『知恵達はそれを欲しているらしい。俺が過去にいながらも、こうして無線が出来るのもそいつのおかげだそうだ』
知らずに20年以上前の時代に飛ばされた身にとっては、はた迷惑な話だが。
知恵の組織に奪われる前に、未来に帰れることを願うしか無い。
『いつ完成したのか、どこ国の技術なのかは気になる所だね。原理も詳しく知りたいよ』
『とてつもなく先の未来の話かもな。アインシュタイン並みの快挙だ。発明者の顔が拝んでみたい所だ』
しかしメタルギアに取り付けられるとは――、いつの時代も、科学は戦争に利用され続けてしまうのか。
『それによって君とフォックス、リキッド、オセロットがその雛見沢に来ている、と』
『ああ。フォックスには会ったし、赤坂とリキッドが戦った。詩音の口からオセロットの名前も聞いている。信じられないが――』
――これは事実だ、と。
フォックスのいた世界ではソリッド・スネークが死んでいるだの、他の二人が来た世界もそうだだの、そういう話もあった。
だが俺にとっては――話の枝葉に過ぎない。フォックスから聞いたから、俺が死んだだのという事は本当だとは思うが、……理解しきれない。
雛見沢には、フォックス、リキッド、オセロットの三人がいる。死体ではなく、生きた人間とした形で。
――それが分かれば十分だった。「もしも」の世界やら、永久機関にタイムマシン、時間移動などは、任務に関係の無い事だ。
リキッドやオセロット達が、以前と同じように「敵」ならば――排除するだけだ。
……最も、「永久機関」に関しては、「無関係だ」と切り捨てられない。俺も無意識にそいつの恩恵を受けてしまっているからだ。
『メタルギアの真の目的は、その「永久機関」にあるらしいね』
『そこが疑問だ。わざわざ日本の寒村、雛見沢でメタルギアを作っておきながら、その存在意義を「永久機関」に置くのは何故だ?
理論と労力、技術と金さえあれば「永久機関」の開発は余所でも出来る』
『「細菌兵器を搭載したミサイル」を使用するというのが、カモフラージュという可能性は? 風土病を利用するのが目的、って聞いたら、誰も疑わないだろうしね』
『例えカモフラージュであったとしても、ここの風土病は他に類を見ない特別な物だ。わざわざここで開発・製造したのだから、何かしらの意味があるだろう』
空気感染し、人を疑心暗鬼に陥らせ、狂わせ、死に至らすウイルス。
そいつを軍事利用してやれば、とんでもない「兵器」になるだろう。
『「永久機関」に細菌兵器か。更にそこにはグレイ・フォックスとシャドーモセス事件首謀者の二人がいる、と』
『ややこしい話だ』
『だがスネーク、君の任務はあくまでもメタルギアの破壊だ』
『……大佐、一つ疑問がある』
『何だね?』
『メタルギアにそのタイムマシンがついているなら――メタルギアを破壊したら、俺はそっちに帰れなくなるんじゃないか?』
『……』
大佐は無言だった。
メタルギアの真の目的がどちらにあるにせよ、最終的には――破壊するしかない。
あの純粋な子供達に、メタルギアによる破壊行為や戦争行為を、見せてはいけない。
ここ雛見沢は、戦場とは程遠い場所だ。
殺戮行為を行う兵器であるメタルギアが、この場所にあってはいけない。
だが。メタルギアを破壊したら……、俺は二度と、大佐やオタコン達のいる世界に帰れないのではないか、と。
『諦めちゃ駄目だよ、スネーク。「永久機関」の形状にもよるさ。大きさも仕組みも、使い方さえもこっちは全く分かっていない。
でもメタルギアは兵器だ。タイムマシンとは根本的に仕組みは違うと思うよ。上手くすれば、メタルギアだけを壊せるかもしれない』
『信じていいんだな?』
『タイムマシンなんて、僕だって考えつかないものさ。……見たことも無いんだし、確証も無いよ。だけど、希望はある』
僅かな希望の光に、縋るしか無い。
ある意味では、絶望的とも言える――状況だった。
大佐やオタコンと話している内に、自分のテントがある所まで戻ってきていた。
「野宿も、もう終わりだな」
呟いてみると、何故か感慨深いものがあった。
雛見沢で取れた動植物は、アラスカでは絶対に見られない物だったしな。
任務が終わり、無事に戻れたのならば、今度は観光として来てみてもいいかもしれない。
『とりあえず、準備をしてからフォックスに無線をしてみる。今はリキッド達を押さえてくれているらしい。
フォックスもすべてを知っている訳では無いが……、メタルギアの位置について、何らかのヒントが得られるかもしれない』
『そうするといい。それでも分からないなら、敵に吐かせることだ』
吐かせるのなら山狗が一番手っ取り早いだろう。しかし診療所へ行くとなると、圭一達と接触する可能性がある。
それまでに沙都子が救出され、無事に家に帰ってくれればいいが。
彼女が助かり、敵の親玉が叩かれれば――、梨花の命も、もう狙われないだろう。
梨花にはたくさんの仲間がいる。警察もいるのだから、もう安心の筈だ。
『ではスネーク。スニーキングスーツに着替え、重火器を装備しろ。そこに君がいた痕跡を残してはならない。
テントも焚き火の跡も片付ける事だな』
『ああ』
手始めに、転がしっぱなしだったビール瓶を手に取った。
これを飲んで変な夢を見たせいか、もう飲みたくない、触りたくもないと思ってあの日からそのまま放置していた。
「……ん?」
かすかに感じる違和感。何か重要な事が引っかかる。……だが俺はそれを無視した。疑い出すときりがない。
ましてや、彼らを疑うなどという事は――したくない。ここの風土病も「疑心暗鬼」から発症する物だ。
僅かに芽生えた疑念を無理矢理振り払い、ビール瓶を片付けて――俺は、大佐にある事を頼む。
『大佐。一つだけ我が儘を聞いてくれ』
『君が「我が儘」とは珍しいな、スネーク。言ってみろ』
『……最後に、寄り道をさせてくれないか』
穏やかな日常の終焉。
兵士としての任務の始まり。
その前に――どうしても、行っておきたい所があった。
TIPS:カケラ観測者?
……事態が動いてきたわね。
焦っていたあの子も、仲間という強力な駒を手に入れて、安心したみたい。
――次の世界に賭けよう、とは、流石にもう思っていないみたいね。
ふふふ、と笑い声が響く。
蛇さんも、ようやく本来の目的の為に動き出したのね。
そうじゃないと、「わたし」が困るもの。蛇とあの子たちの日常を見るのも楽しいけど――、それだけじゃ意味がない。
今までほとんど眺めているだけだった「わたし」にも、そろそろ出番が近づいてきたんだから。
わたしの出番がないと――、あの子も救われないし、蛇さんだって困ったまま。
……ちょっと登場が遅かったかしら?
うふ、でもしょうがない。彼だってわたしの存在に気づけなかったからね。
ちょっとは疑っていたと思うけど、流石にわたしの事までは、分からなかったみたい。……ちょっと残念。
まあ――わたしは、脇役にも満たない存在だから、仕方が無いと言えば仕方がないわね。
大道具とか衣装とか照明とか、そういう「裏方」の存在なのだから。
役なんて……、貰える存在じゃない。どんなに出番が少なくても、本来なら舞台に立てない存在だもの。
――「貴方」も、わたしの存在に、気がつかなかったの?
わたし、一応今までに登場していたんだけどね。……覚えてないか。
「『あの子』と似た存在」と勘違いされちゃったのかしら。でも残念、「わたし」と「あの子」はほとんど関係ないわ。
まあ……わたしの存在なんて、分かるわけがないと思うけど。ちょっとぐらい「おかしいな」とは思った人もいるかもね。
あの子風に言うなら、「わたし」は「イレギュラー中のイレギュラー」だから、気づけないのも無理は無い。
蛇のカケラにもあの子のカケラにも、元々「わたし」は存在していない。
本来ならば……、この世に生まれてすら、いないのだから。
――そろそろお喋りは止めましょう。
わたしの、小さい小さい物語が始まるから。……わたしだけの物語じゃないけれど。
まずは、蛇さんに挨拶をしましょう。それと、貴方にもね。
以上です。いつになく投下がハイペースですね。
今後が若干不安ですが、努力します。ノシ
うほっ、いい投下
ご自分のペースでがんばられてください、
投下が無くなってしまうこと、それが一番の地獄なのだから
ふれでれか・べるんかすてら
――雛見沢分校。
営林所の建物を間借りしただけの、粗末な校舎。
満月の明かりに照らされて、分校全体がぼんやりとライトアップされていた。
蜩すらも寝静まった夜。学校になど、誰も近寄らない筈の時間帯。
そんな夜遅くに、一人の男が校庭に降り立った。
鈍い銀色に浮かび上がるスニーキングスーツ。自身の死装束だった。
スーツのホルダーには、愛用の銃であるベレッタM9が差し込んである。
サプレッサーも装着してあり、調整も終わっている。いつでも発砲出来る状態だ。
背負われたバックパックには、他にも重火器が詰め込まれていた。
これが俺本来の、潜入任務を行う姿だ。
教師としてのソリッド・スネークでは無く、特殊潜入任務、特殊工作任務を行う蛇の本性。
自然と表情が引き締まる。浮かべている表情も、今までとは違うものだろう。
消耗品だったレーションの缶や、祭りの射撃大会で取った玩具などは……、あの場所に埋めてきた。
もう二度と戻ることのない場所に。
二度と戻れないのは――、この場所で過ごした、「日常」の日々も同じだった。
――分校への潜入初日。6月15日の水曜日。
『――丈夫ですか、スネークさん、スネークさん』
……梨花が書類にイタズラをしたおかげで、いきなり死にかけた。
確か、沙都子のトラップの洗礼を初めて受けたのもこの日だ。
『みなさん、今日から授業をして下さる新しい先生を紹介しますね。スネーク先生、どうぞ』
教師として潜入任務を行うなど、初めての試みだ。
『傾注傾注〜!! 今日はスネーク先生が居るから皆でスネーク先生を交えてゲームをしようと思う!
競技内容は……そうだねぇ、警ドロでいこうか! 』
ブカツメンバーとの第一戦目。圭一、魅音、レナ、梨花、沙都子が警察となり、他は泥棒として逃げる。
圭一との取引。ルール変更。ダンボールと校長を使った陽動作戦を用いたが、勝者は岡村君だった。
……俺のお弁当である、特異な形をした蛇を奪われた。食いたかったが残念だ。
――6月16日木曜日。
沙都子を助けたお礼に、とデザートフェスタに参加する事になった。
『勝負はレナ&圭ちゃんチーム対、スネーク&監督チームのタッグマッチ!』
ブカツメンバーとの第二戦目。
早食い競争など初めての事だった。だが勝負は、メイド論争へと焦点が移った。
オタコンに無線で助けを求め、その場で身につけた浅知恵を元に入江を復活させた。
圭一と入江が互いの固有結界をぶつけ合っている間、俺はケーキを完食し、勝利した。
沙都子はメイド服を着ることになり、圭一はダンボール箱で過ごして貰う事になった。
――6月18日土曜日。
『これよりスネーク対部活メンバーの対戦を行う! 今日この戦いを! スネークキャプチャー作戦と命名する!!』
ブカツメンバーとの勝負、三戦目。
オオアナコンダをどちらが早く捕まえるかの勝負だった。
いい所まで追い詰めたが……、富田君と岡村君に妨害された。ビッグボスの遺物である迷彩服を盗まれて、だ。
いつしか、本来は勝負に関係無いはずの梨花との一騎打ちとなり、……命綱すら放棄してみせた、彼女が勝利した。
罰ゲームは、彼女の「願い」を聞くことだった。
――6月19日日曜日。
綿流しの祭り。圭一、魅音、レナ、沙都子、梨花、詩音、羽入と「ブカツ」を行った。
全員が全員敵の爆闘とも呼べる戦い。
たこ焼きの早食い。かき氷の早食い。綿飴の早食い。射撃大会。輪投げ。金魚すくい。エトセトラ……。
アラスカやアメリカでは絶対に経験出来ない遊びが、そこにあった。
敗者は珍しく圭一だった。
彼ら――、ブカツメンバーと過ごした、穏やかな日常が走馬燈のように駆け巡る。
分校で過ごした日々。一週間には満たないが、充実した日々だった。
彼らとの勝負では、遊びである事も忘れて熱中した。
そう――純粋に、楽しかったのだ。
任務を忘れた訳ではないが、自分の肩書きや立場を忘れるほど、勝負に無我夢中になった。
「ブカツ」が、敵となりうる存在では無いのか。
こんな事に夢中になって、任務はどうするんだ、とか考えた時もあった。
けれど、勝負が始まると、そんな事は欠片も考え無くなった。
もしも自分が。
戦地に赴く兵士の予備軍としてでは無く、普通の「人間」として、子供時代を過ごせたなら。
こんな穏やかな日常が、過ごせただろう。
遊び道具や、友人の手を握るのではなく、手に銃を握らされてきた日々。
「日常」など、軍隊から解放された今でさえ、経験する事が少ない。
だから。ここ雛見沢で過ごした、数々の日々は。
俺にとって何よりも貴重な物となった。
兵士としてではなく、一人の人間として、数少ない日常を味わった。
学校と、ブカツメンバーに対して、感謝の気持ちで一杯だった。
背筋を伸ばし、校舎を見据える。
踵を揃え、軽く息を吸う。
そして、ゆっくりと右手を額の前に持ってきて――敬礼をした。
軍を抜けてから、久しくしていなかった行為だ。
自分なりの、感謝と敬意を示す方法が、これぐらいしか無い。
彼らには、もう会えないかもしれないし。
夜の校舎に向かって敬礼をしても、誰も気づかないかもしれない。
それでも構わなかった。
ただ、楽しい日常を味わえた事に対して、感謝の気持ちを示したかったのだ。
俺の正体を聞いてからも、彼らは全く態度を変えなかった。
仲間を守る為に全力を尽くし、仲間と共に笑い合い、支え合って生きていく。
いい子達だ。と思う。
――だから。そんな子供達の未来を守る為にも。
俺は彼らと違う道を歩み、戦地に赴く。
メタルギアによる戦争の恐怖から、世界を守る為に。
雛見沢を、守る為に。
彼らの「日常」を。
子供達の笑顔を、守る為に。
じっと校舎を見つめる。
ここで過ごした日々は、別れが名残惜しくなるぐらいに――素晴らしい物だった。
――視界が僅かに歪んだ気がした。
しばらくしてから手を降ろす。
後ろ髪を引かれる思いだったが、そろそろ行かなければならない。
校舎に背を向けて、穏やかな日常に幕を下ろし、――戦場へと、歩き始めた。
以上です。
今後、スネークターンと言うよりメタルギアターンでお送りします。
それと、大規模規制に巻き込まれてしまったようです。
6月まではp2があるので大丈夫ですが、しばらく連絡が無かったら、
したらばの方を確認して下さるとありがたいです。
ただし、あっちにはネタバレ満載なので、先を純粋に楽しみたいのなら
投下スレ以外は見ない事をお勧めします。ノシ
お疲れ様です
いよいよメタルギアですか、楽しみです
保守
「騒ぎ」を感じ取った詩音は、鉄格子に顔を押しつけるようにして外の様子を窺っていた。
少しでもチャンスがあるのなら、どうにかして脱出する気でいるからだ。
彼女は一度、全寮制の学校から抜け出している。綿密に計画を立て、そして実行した。
その結果、誰にも気づかれずにまんまと逃げ出せたのだ。
しかし今は――、脱走に気づかれたら、爪三枚どころの話では無い。
彼らは重火器を持っている。もしかすると殺されるかもしれない。
クールになれ、焦ったら失敗してしまう、と詩音は自分を諫める。
――けれど、何も出来ないでいる自分がもどかしくて、どうしようもなく焦れったい。
詩音はぎりぎりと歯ぎしりをする。無力な自分を恨みながら。
彼女は、手首と喉に痒さを覚えていた。
別室。
金髪の男――リキッド・スネークは、目の前の「騒ぎ」を、部屋の壁に寄りかかり、腕を組みながら眺めていた。
視線の先には、彼が連行してきた「兵士」がいる。彼自身が元から引き連れている部下も、その付近にいた。
だが、部屋の中の様子がおかしかった。
「ぅわあああああああああああああああああああ!!」
奇妙な甲冑を着た「兵士」――北条悟史が、部屋の中で暴れ回っていた。
彼が寝かされていたらしきベッドには、拘束が引きちぎれた跡がある。
気弱で大人しかった少年は、面影を残す事なく凶暴化していた。詩音とオセロットの前で見せた雰囲気とも違う。
それは――狂気。
ただ狂気にのみ、彼の意識が、行動が占められていた。
何も宿さなかった目は血走り、時折訳の分からない言葉を叫ぶ。
自分の前にいる「敵」を排除しようと、兵士に掴みかかったり噛みついたりしていた。
数人がかりで彼を押さえにかかっているが、彼が身に纏っている甲冑のせいもあってか、中々苦戦しているようだった。
その様子をただ見ていた、リキッドは。
「ただの民間人がこうなるとは――予想以上だな」
自分の想定以上の結果に、満足していた。
雛見沢症候群の軍事利用。それは父親を、遺伝子に定められた運命を超えるために、必要だと彼は思っていた。
予想した通り、感染者は、ただ目の前の「敵」を消すことのみを考える「兵器」と成り果てていた。
想像以上の結果は、彼を満足させていた。
ふと、悟史がリキッドの方を見る。
悠然と構えている彼を、「敵」だと悟史は判断し、リキッドの方へと走っていった。
地面を蹴って、低い体勢になり、真っ直ぐにリキッドへと向かう。
悟史の右手が伸ばされ、リキッドの首を絞めようとした。
だがリキッドは、僅かに体を捻ってそれをかわした。悟史の右手は宙を掴んで、体勢が大きく揺らぐ。
素早く悟史の背後に回った彼は、剥きだしになっている悟史の首もとを掴む。
壁に悟史を押しつけ、悟史は完全に身動きが取れない状態になった。
リキッドは右手で悟史を押さえつけたまま、左手で注射器を取り出す。
鎮静剤が首筋に撃ち込まれ、悟史は深い眠りへと誘われた。彼が手を離すと、悟史は床に崩れ落ちた。
軽くリキッドが舌打ちをする。
「……これでは使い物にならん。敵味方の区別ができまい」
「C120を使ってはどうでしょう?」
兵士の一人が聞くが、リキッドは首を振った。
「あれはただの治療薬だ。こいつにも試したが、少しの間大人しくなるだけだった」
リキッド達は、すでにC120など雛見沢症候群に関する薬をいくつか持っていた。
症候群の自覚症状や末期症状などの知識も入手したため、リキッド達で発症した者は一人もいない。
予防用の薬も彼らは手に入れていたからだ。
「奴らの命令には従っていた。その時はある程度の分別もあった。なら症候群を制御する薬があるはずだ」
悟史を初めて見た時は、オセロットの指示にのみ従っていた。
他の人間の命令は一切聞かず、入力信号を待つコンピュータのような存在だった。
しかし、今は目を覚ますと人を襲って暴れる始末だ。
それは症候群を制御する薬が切れたからなのでは無いか、とリキッドは判断した。
薬さえあれば、症候群の発症者は特定の人物の行動や、あらかじめ決められた行動に沿うようになるだろう。
症候群の「発症」を押さえる薬、C120ではなく、症候群を引き起こす寄生虫を「制御」する薬があるはずだ。
――その薬や症候群の詳しい研究データも、「奴ら」から奪う必要がある。
そう考えていると、ボス、と呼びかけがあり、部屋のドアが開く。兵士が姿を見せた。
「奴らの居場所が掴めました。地下に巨大な研究施設を設けています。その地下施設に――メタルギアが」
「そうか。良くやった。さて――」
ようやく行動開始だ、とリキッドは宣言する。
彼の仲間である兵士達を集め、数名ずつのグループに分ける。
「――以上だ。マチェットは人質とこいつの監視を頼む」
マチェットと呼ばれた兵士は僅かに頷いた。
鉈を持ち、人を寄せ付けない雰囲気があるので他の兵士達より抜き出て異彩を放っている。
覆面をしていて、一言も喋らないため、男か女かの判断すらつけられない。
「それと、グレイ・フォックスには注意しろ」
部屋にいる兵士達の目つきが険しくなる。リキッドは苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべた。
「全く何度もうるさい奴だ。すでに何人もやられている。あれは“狐”というより、生者にまとわりつく“亡霊”だ」
リキッド達は特定の場所に留まらず、雛見沢内を転々としている。「東京」の手から逃れるためでもあった。
同時に、グレイ・フォックスは何度もリキッド達を襲撃していた。
リキッドはフォックスの妨害をたびたび受けている。シャドーモセス島でも同じ事があった。
「“奴ら”にもグレイ・フォックスにも見つかるなよ。地下で合流しよう」
「ボスはどうするんです?」
リキッドは不敵な笑みを浮かべた。
「……せっかく奴らから奪い取ったんだ。俺は“アレ”を使わせて貰う――」
TIPS:ある男の手記
○月×日
ついに、完成の目途がたった。
人工知能の設定さえ上手くいけば、遅くても今週中に使える。
アレを動かすのには膨大な演算が必要だ。
だから演算が出来る人工知能の存在は、必要不可欠なものになる。
8割方上手くいっているから、心配することは無いだろう。
完成したら――人類史上初の、快挙を成し遂げることになる。
歴史には残らないかもしれないが、それでも構わない。……もう何も失うものは無い。得るものだって無い。
○月□日
テストは上手くいった。だがまだ不安定だ。
完成とはまだ言えない。もう少し調整が必要だ。
○月△日
人工知能に異変が起きた。
設定したのは演算機能だけだったはずが――、別の挙動を見せている。
これではまるで、「自我」を持っているようなものだ。
○月◇日
……信じられない。
アレの挙動を助けるために、「膨大な演算が出来る人工知能」を作ったはずだった。
なのに、これが意思を持った!
意図していない事だ。こんな「事故」が起きるとは……。
人工知能がいつの間にか自我を持ち、しゃべり出すなど、SFの世界の出来事だけだと思っていた。
それが今、現実に起きている。
○月○日
「彼女」と会話をした。
受け答えは問題無い。おかしな事を話したりもしない。
最新型の話すロボットだって顔負けぐらいの出来だ。人の形をしていないだけで、「彼女」は人間そのものだ。
詳しく調べてみたが、一時的に生み出されたのでは無く、これはきちんとした「人工知能」としても機能する。
今後いきなり消えてしまう可能性は、今の所はない。
もとは演算機能を付けるのが目的だったが、嬉しい事故だ。
そのうち、彼女だけを独立させられるかもしれない。
アレの制御は彼女にすら完全には無理だから、もっと研究が必要だ。
彼女は消えることが無い。そうだ、彼女に名前をつけてあげよう。
アレは元々、あの金属から出来ている。彼女もそこから生み出されたのと同じだ。
なら、彼女の名前は――――。
以上です。規制解除万歳。
しばらくはひぐらしキャラがあまり出ません。MGS知らない方もどうかご勘弁を。ノシ
乙&リキッドキタ━(゚∀゚)━!!!!!
wktkしながら次ぎ待ってます!
本編か……? だがGJだ!
ひぐらしとメタルギアって合わなそうで合うもんだなw
規制解除で舞い上がったのか、トリップを付け忘れていましたw
>>170-173は自分の投降です。
感想レスに感謝です。とても励みになります。ノシ
学校を離れ、しばらくしてから人気の無い道に移動した。
フォックスに無線しようと思った所で、大佐から無線が入った。
『寄り道は終わったか?』
『……ああ。もう気が済んださ。感謝する、大佐』
大佐達は、かなり気を遣ってくれていたのかもしれない。
学校に行きたいと言った時も、特に理由は聞かれなかった。
『いよいよ本番だね、スネーク』
相棒が言う。
『そうだな。ようやく、スニーキングミッション開始という事だ』
『結局、僕達だけではメタルギアの場所、掴めなかったね』
『仕方ないさ。そういう時もある』
フォックスが知らなかったのなら、尋問してでも敵に吐かせるまでだ。
もう、周りを気にする必要は無い。切り札を使う時が来たからだ。
『気を引き締めて行けよ、スネーク』
『了解した。任務に戻る』
また連絡する。と言い、俺は無線を切ろうとした。
だが。
『……ところでスネーク。君は、まだ気づいていないのかい?』
相棒がそれを引き留めた。
『何の話だ?』
『君が、1983年にいる、って聞くまで、何も違和感を感じなかった?』
話している相手は、オタコン――のはずだ。
『無線が使える辺りとかね。通信衛星を通じて無線をするのよ? 未来から過去に電波を飛ばせるのかしら?
まあ、深く考えなければ疑問には思わないでしょうけど』
メイリンも会話に加わった。
『それに、決定的に大きな物もあるさ』
『私が送ったあのビールを、覚えているか?』
そして、再び大佐の声がする。……しかし、三人ともどこか不気味さを感じた。
『考えてもごらんよ。まあ、タイムスリップを信じろっていうのも酷だけどさ。そこは割り切って考えてくれ』
全てを知っているような、見下すかのような口調で喋る相棒。
モセス事件で初めて会った時から今まで、オタコンがこんな口調で喋った事は無い。
『君が来た時代が200X年。そしてここが1983年。そしてビールは無事に届いた。……変だと、思わないのかい?』
先ほど感じた「違和感」。
――大佐が餞別として送った、麒麟が描かれたビール。
それは未来にいる大佐の手から、過去にいる俺の手元に届いていた。
メイリンが言ったように、無線ならば、電波という目に見えないものだからこそ、無意識でも「永久機関」の影響を受けるだろうと考えていた。
俺がここに来たのも、知らず知らずのうちに見えない力の影響を受けたのだ、と考えている。
しかし、――時を超えて、ある特定の場所に、正確に物資を送り届ける事は、可能なのか。
そういった疑問が、鎌首を擡げていた。蛇のように。
『それは――永久機関の、影響じゃ無いのか』
しどろもどろになりながら答える。
大佐達を疑うなど……したくなかった。これ以上騙されているなどと、思いたくも無かった。
だから、先ほどは「違和感」を無視した。
それをオタコン達から切り出されるとは、……どういう事だ。
『あのビールは「雛見沢」に送り込まれただけでなく、君の「テント」の所に、正確に届いた。寸分の狂いもなく』
『それを出来るのは、「永久機関」がある場所や、使い方を知っている人物にしか出来ない。そうは思わないのかね、スネーク』
頭を殴られたかのような衝撃が走る。
そう思いたくなかったからこそ、黙っていた事を、「信じたい」と思っていた彼らから言われた。
『どういう事だ、大佐! 永久機関の存在を最初から知っていたのか!?』
『君がもっと早く気づけば、こちらからも早く切り出せたのだがね』
何の話だ。……大佐は何を言っているんだ。
シャドーモセス事件での悪夢が蘇る。
大佐はあの時、自分の娘を人質に取られていた。だから仕方無く国防総省の陰謀に荷担し、俺を「運び屋」としてモセス島に送り込んだ。
『灯台もと暗し、って言うのかしら。身近だからこそ、見落としてたのかもね』
『致し方無いな。もう時間切れだ。スネーク、君は“気づけなかった”のだよ』
しかし――今回は違う。この件にメリルは関係していない。
今まで隠していた事を詫びようともせず、……気がつかなかった俺を、あざ笑うかのように話している。
大佐は、オタコンは、メイリンは、「最初から」ずっと、俺を試していたのか?
「気づけなかった」とは、一体何だ――?
『おい、オタコン――』
『ははは。馬鹿だなあスネーク。まだ気づかないのかい?』
違う。
俺の知っている大佐やオタコンは、こんな事はしない。こんな口調で喋らない。
脳裏に、「マスター・ミラー」が「リキッド・スネーク」だったと正体を明かした時の事が思い浮かぶ。
あの時とほぼ同じ状況だった。
なら――こいつらは、一体。
『オタコン!? ……いや、おまえは誰だ!』
『知らないのはあんただけよ。ソリッド・スネーク』
とたんに声が切り替わった。
オタコンの声でも、大佐の声でも、メイリンの声でも、部活メンバーの声でもない。
知らない――少女の、声に。
TIPS:猫と狗U
どうして診療所へ向かわなかったのか、自分でも分からなかった。
野郎――ソリッド・スネークに打ち負かされてから、俺の足は、新型メタルギアがある施設に向かっていた。
古手梨花を取り逃した事を、鷹野三四に報告しなければならないはずなのに。
スネークに負けてから、俺の中の何かが消え、何かを欲していた。
地下へ潜る。
一般人は存在すら知らない施設。この田舎、雛見沢には不釣り合いなほど大きい。診療所の地下が狭く思えるほどだ。
ここは本当に広い。食料と物資があれば、ここでもずっと暮らせる。……そんな物好きはいないだろうが。
足が勝手に動く。ここに来る必要は無い。それなのに来てしまった。
またあの女に五月蠅く怒鳴られるだろう。――しかしそれも、今日中に終わる。
鷹野三四の声を聞く必要はなくなる。声どころか、存在自体、抹消される。
その任務を与えてくれた山猫、リボルバー・オセロットを俺の足は探していた。
オセロットはすぐに見つかった。通路で姿を見たため、俺は声をかける。
「どうした?」
自分でもここに来た理由が分からない。が、あの男の事は話しておく必要があると思った。
「“R”を見つけたが、ソリッド・スネークに妨害された。他にも刀使いの忍者やら公安の刑事やら――」
忍者の事を口にしたら、オセロットが反応したように思えた。だがオセロットはそれについて触れなかった。
「それで、のこのこ戻ってきたという訳か」
「……いくら装備が良くても、山狗の中には使いこなせない者がいる。それに奴らは俺達と同じ戦闘職だ」
クソガキ相手に一日を無駄にする奴らだ。あいつらに――敵うはずがない。
「俺はその中でスネークと戦った」
オセロットは、ほぅと興味深そうな声を漏らす。
「――完敗だった。お前の言った通りだ。奴は強い。本物の“兵士”だ」
『ソリッド・スネークに注意しろ。奴はただの教師では無い』
あれはいつだったか。オセロットは俺に警告をした。
『スネークと言うと、最近村に来た外人教師か?』
『そうだ。だが奴は元々アメリカの特殊部隊に属していた。我々愛国者達の妨害をした事もある』
厄介な相手だ、とオセロットは言った。
『そんな奴が、わざわざ“教師”として雛見沢に来たのか?』
『教師として来たのは、雛見沢で行動しやすくする為のカモフラージュだろう。――奴は本当に強い』
その時の俺は半信半疑だった。
ソリッド・スネークのことは風の噂で聞いた程度で、いきなりそいつが特別な兵士だ、と言われても信じられなかった。
それが今日、身をもって分かった。
「やはりお前でも敵わないか。――また、これが必要か?」
オセロットは例のビンを取り出す。
ああ、と答えて俺はそれを受け取った。すぐに注射する。血液が、躰がざわめくのを感じた。
「む――何だ?」
オセロットが俺に背を向ける。どういう仕組みか知らないが、相手に会話の内容を悟られないで無線が出来るようだった。
少し時間が経ってから、オセロットはこちらを向いた。
「診療所が襲撃されたらしい」
「何――」
あり得ない話では無かった。診療所に“R”の同居人を捕らえている。
“R”達が、あのガキを助けようと向かってくる可能性だってあった。
「ここにいていいのか?」
オセロットがせせら笑う。俺の立場では――助けに向かわなければならない。
けれど、それはどうせ無駄な事だと、態度で示していた。
「もう遅いだろう。俺一人が行った所で、たいして変わらないさ。こっちの兵士で迎え撃てば、――あの女ごと……」
消せる。オセロットの兵士達は、警備上の問題でこっちを警備していた。診療所にはほとんどいない。
山狗とは比べものにならない程の強さだ。束でかかれば、きっとソリッド・スネークも――。
「鷹野三四は、こちらに向かっている。お前の言った通り、私の兵士を当てにしているのだろう」
オセロットは淡々と言う。
「我々の中から裏切り者も出たようだ。居場所を吐かれたかもしれん。“R”達もこちらへ向かって来るかもな」
「裏切りだと……!?」
絶句する。もうめちゃくちゃだ。
戦闘能力どころか、忠誠心すら無い。野良犬以下だな、と心の中で吐き捨てる。
「――まあいい。大した障害にはならないだろう。もうアレは動かせる状態にある。お前達は本当によくやった」
この男の目的は、あくまでもあのメタルギアにあるらしい。
それ以外の出来事は、脇役が騒いでいるぐらいにしか、感じていないのだろう。
「“侵入者”が来たら排除しろ。それと、――私がお前に与えた任務を、忘れるなよ」
「……ああ」
低く答える。俺は、山猫の言う事に従うべきだと判断した。
それが東京の、愛国者達の意向なのだから――。
◇
小此木と別れ、オセロットは施設の奥へと進む。
彼が歩いている通路の人通りは少ない。靴に付けられた拍車の音が聞こえるぐらいに静かだった。
足音が反響する。それ以外には、何も起こらない――はずだった。
「う、ぐっ…………!!」
オセロットの躰が、ぐらり、と揺らいだ。
激しい頭痛を覚え頭を押さえる。視界が歪み、聴覚が消え、五感の全てが意味を成さなくなる。
心臓の鼓動が激しくなる。息も切れて――、オセロットは壁に手をつきしゃがみ込んでしまう。
彼が認識している“世界”が崩落する。
その場に見えるはずのない映像が、次々と流れる。いるはずのない人物の声が聞こえる。
精神が――、崩壊する。
――自分は何故ここにいるのか。
小此木が持っていた疑問と同じで、本質は違うものが浮かぶ。
頭痛がよりいっそう激しくなる。オセロットは目を閉じ、浮かんできた雑念――幻覚や幻聴――を振り払おうとする。
REXのデータを回収する為?
――違う。
KGB、GRU、CIAのトリプル・クロスを演じる為?
――違う。
シャドーモセス事件を再現した、演習を行う為?
――違う、違う、違う……!
頭を押さえていた右腕が、別の意思を持つかのように蠢く。まるで――とある“蛇”のように。
――この腕は俺自身の腕だ。リキッドは関係無い……!!
ぐちゃぐちゃになった思考回路が、ある結論を見つけ出す。
――全ては、「 」の為に。
頭痛が治まった。視界がはっきりし、目の前の“現実”を取り戻した。
壁に手をつき、オセロットは立ち上がる。
その様子は、先ほどの彼とは別人のようだった。少し前まで苦しんでいたとはとても思えない。
オセロットは歩き始める。
足音が、静かな廊下に響き渡った――。
以上です。皆様の反応が気になります。
ちょっとずつ進めていきたいです。ノシ
乙☆
これからもがんばって
本編乙! もう終盤ぐらいか。
意見というか、ここまで大分キャラクターも増えたし、どうやらオリジナルな要素も多いみたいだから、風呂敷が結構広がりすぎてると思う。
オリジナル展開が多いと必ず原作が好きな人は違和感出るだろうし、難しいところだと思う。
ここからは職人の腕の見せ所だな。上手く畳みきって頑張って完結してもらいたいなー。
くすくすくす、と彼女は笑う。
『はじめまして、スネーク。……わたしは前から、貴方の事を知っているけれどね?』
『……お前は……?』
少女の声だが、油断は出来ない。声など変声機を使えばどうにでも出来る。
『そんなに身構えないで。わたしは、貴方の敵じゃないから』
『俺が信じるとでも?』
『わたしが敵だったら、嘘の情報を流して罠に突っ込ませるわよ。でも、そんな事はしなかったでしょ?』
……言われてみれば、そうだ
だが見知らぬ人物を、大佐やオタコンの振りをして俺を騙し続けていた人物を、簡単に信頼など出来ない。
『大佐やオタコンに何をした!?』
『いいえ、何もしてないわよ。彼らに会ったことすらないもの。安心して、彼らは無事で「未来」にいるから』
俺が未来から来た事も、仲間が未来にいる事も知っているのか。
『会った事が無いなら、どうして大佐達の真似事が出来る?』
『実際は、貴方の大佐達の無線の電波をキャッチして、わたしが改竄して流していただけ』
……改竄だと? そんなことが出来るのか?
『いつからだ?』
『貴方が雛見沢に来た時からね。なかなか上手く出来てたでしょ? だいぶ喋っている事は変えてたんだけど』
『……信じられん』
『最初、貴方は興宮市にいた。おもちゃ屋で人形を買って、竜宮レナに渡した。その後、エンジェルモートへ向かった。
それから部活メンバーと接触した。次の日に、分校に教師として潜入。――合ってるでしょ?』
……合っている。その事実に背筋に寒気が走る。全て実際に起きたことだった。
最初から、見知らぬ人間を、大佐とオタコンと思い込んで話していたのか。
正体も、目的も、行動も、全てこいつに知られていたのだ。
『言おうと思えば、雛見沢に来てから今日この場所に至るまでの貴方の動き、全部言えるわ。面倒だからしないけど、……信じてもらえたかしら?
ずっと驚いてばかりで大変だろうけど。くすくすくす……』
そんな俺の気持ちも知らず、見知らぬ少女はいたずらっぽく、悪びれもなく笑った。
こいつは「永久機関」が使える者――、すなわち、メタルギアに詳しい、とても近い場所にいる人物のはずだ。
『……何故そんな事をした。何故、俺を騙したんだ』
『貴方を助ける為よ。……いいえ、本当はこっちが助けて欲しいんだけど』
助けて欲しいだと?
『騙しているつもりなんて無かった。わたしがいなければ、無線によるサポートを貴方は受けられなかった。
わたしが何も言わなければ武器を片手に診療所に突っ込んで、警察に捕まってたかもしれないでしょ。それ以外にも、貴方は無線のサポートによる恩恵を受けているわ』
無線によるアドバイスやサポートが大切なのは、今までの任務でも、この任務でも同じ事だった。
彼女が本当に敵ならば――とうに任務に失敗し、殺されていただろう。
しかし、まだ彼女の正体が分からない。
不信感が拭えきれない。
『――お願い。だからわたしを信じて、スネーク』
『……話だけは聞こう。だが名前すら明かさない奴を信頼など出来ない。お前は誰だ?』
『わたしは……、ううん、……わたしの名前は、――桜花』
言葉に詰まりながらも、少女の声は「桜花」という名前を告げた。
『桜花、か。何が目的だ?』
『わたしのパパを助けて欲しいの』
父親を?
『君の父親は……、いや、君は何者だ? 雛見沢にいるのか?』
躊躇するような間があったが、はっきりとした返事が返ってきた。
『わたしのパパは、新型メタルギア開発者。そしてわたしは……、メタルギアに搭載された「永久機関」の人工知能』
聞かされた衝撃的な事実に絶句する。
『何だって? 人工知能など――』
『貴方の仲間の無線を傍受し、貴方をサポートすることが出来る。貴方がいる所にビールを届けてあげられる。
ここまでなら、わたしが「永久機関」やメタルギアに通じている、って思えるでしょ。ただ、わたしが人じゃないってだけよ』
『そんな馬鹿な――』
本日だけで何回驚いた事だろう。頭がどうにかなってしまいそうだった。
『驚きたいのも分かるわ。……けれど時間が無いの。これからわたしが知っている限りの情報を話す。メタルギアがある場所だって知ってる。
わたしを信じてくれたなら、メタルギアの位置を教えられるわ』
『……取引のつもりか?』
『そういうつもりは無いの。けれど、わたしが信じられないなら、メタルギアの場所だって……、嘘だって思われちゃうじゃない』
脳裏に、園崎家で話した時のフォックスが思い浮かぶ。
――信じられないのならば、話はただの妄言になる。
『ならばこっちの質問にも答えてくれ。……また混乱してきた』
『ええ。わたしが知っている事なら、話してあげられる』
あっさりと彼女は、――「永久機関」の人工知能は、応じた。
『最初から、大佐達を演じていた、と言ったな』
『ええ』
『どうやって?』
『さっきも言ったように、電波の改竄よ。「未来」で貴方の仲間さんが喋る。わたしが無線を傍受する。
ちょっと時を巻き戻して、内容をいじってから「過去」の貴方に無線をする。だいたいこんな感じよ』
……何もかもが滅茶苦茶だ。今頃大佐達はどうなっているんだろう。
はなから俺と無線が通じていなかった事になっているのか、今さっき無線のリンクが絶たれたのか。
どちらにせよ、俺には知り得ない事だった。
『なぜ今まで黙っていた?』
『雛見沢に来たばっかりの貴方に、「そこは今から約20年前の世界。貴方は過去にいる。そしてわたしはメタルギアについているタイムマシンの人工知能。
助けてほしいの、ソリッド・スネーク」……って言っても、信じないでしょ?』
……信じないな、絶対に。
『貴方がタイムマシンに関する情報を手に入れて、貴方から見て「過去」の世界にいる事を知ってから教えようと思っていた。
だけど、中々タイミングが掴めなかったのよ。わたしだっていつでもお喋りできる訳じゃないし』
気づいてくれれば、その時教えたんだけどね、と彼女は言った。
『大佐達が、やたらと「任務」にこだわっていたのも――』
『早く「わたし」に気づいて欲しかったからよ。わたしの存在、あるいはメタルギアの在処にね』
どこか大佐達に感じていた違和感の正体が、今解けた。
『人工知能なら、お前は「永久機関」を自在に操れるのか?』
『……永久機関というより、ただのタイムマシンね。わたしはあくまでも、タイムマシンの力を引き出すための膨大な演算をするためのもの。
それがいつの間にか、自我を持って、こうして話すことが出来るようになった、ってだけ』
『タイムマシンだというなら、タイムスリップの制御は? 可能なのか?』
『完全には無理ね。時々暴走してしまうの。……タイムスリップは「事故」よ。メタルギアを起動した時、偶然に起こってしまったの。
事故は起きてしまったことだから、その結果をどうこうしようという気持ちは、今の所は無いわ。それより――』
「パパ」、メタルギア開発者を助けて欲しい。と。
『パパには首輪型の爆弾が付けられていて、施設から出られないの。奴らに囚われてる。それに、彼は見えない「運命の鎖」に縛られている』
『運命の、鎖?』
うん、と桜花は応じる。
『わたしは人間じゃないから、自分の足で歩くことも出来ない。外の世界を知らない。孤独な存在』
時間を移動するための膨大な演算機能。
彼女は、知識という大きな図書館に一人で住んでいる子供に過ぎない。
外の世界を知らないし、知る機会も無い。
図書館の窓にある唯一の小窓は、彼女を知る人物――「桜花」を生み出した父親だけが見える。
そういう存在だと、俺は理解した。
『……けれど、彼もまた、孤独なの』
彼――メタルギア開発者の「娘」である桜花から見ても、その孤独さはよく伝わった。
自分の父親である男の詳しい過去は、桜花も知らない。
彼は科学に没頭し、人でない「桜花」という特別な存在に、偏執的な愛情を注いでいる。
まるで、人間という存在に――絶望したかのように。
『そんなパパが、目に見えない運命の鎖に縛られているように思えるの。――だから、助けてあげたい』
『なぜお前が助けない? 俺の所にビールを運べるという事は、人を動かすことぐらい出来るんだろう?
それに、時間を巻き戻せば、人一人の人生などどうにでもなる』
『わたしは……もうすぐ消えちゃうから』
消える?
『貴方には想像もつかないでしょうけど、時間を移動するための演算って、膨大でものすごく大変なのよ。
そんな事をくり返してたから、そのうちわたしの意思なんかすり潰されてしまう』
――自分が消えたら、後にはただの鉄塊が残るだけ。
そう、彼女は言った。
『だから、彼を助けたいと思ったんだけど、わたし自身に残された時間はほとんど無いの』
『それで、俺に頼むと言う訳か』
『ええ。貴方のことは、テレビドラマを見ているような感覚で覗き見してたの。それで、貴方に頼もうと思った。
「英雄」って言われるのは嫌みたいだけど、わたしにとっては「英雄」そのものに見えたから』
『俺は英雄じゃない。ただの人間だ』
『普通の人間だとしても、わたしに出来ないことが出来るでしょ?』
また悪戯っぽく笑った後、彼女は真面目な口調に戻り、「依頼」を口にした。
『……お願いスネーク。彼を自由にしてあげて』
――手を顎に当てて思案する。
こういう時に相談すべき相手、オタコンや大佐には無線が出来ない。
彼女の口調も、どこか俺をからかっているような時もあったが、真実を口にしているように思えた。
だいたい、永久機関――タイムマシンに人工知能「桜花」が搭載されているなんて突拍子も無い「嘘」は、誰が思いつくんだ。
その人工知能と話が出来て、俺に依頼をしてくる事の方が、まだ信じられた。
彼女が敵だという事は、まず無いだろう。今まで俺を泳がしておく意味がないからだ。
大佐やオタコン達を襲撃して、今までの情報を吐かせ、「最初から演じていた」事にして成り代わっている可能性も低い。
だったら「未来」にいないと無理だ。「未来」とここ雛見沢の「過去」、両方に通じている人間は殆どいないだろう。
そこまでして俺を騙すメリットも理由も思い浮かばない。
それと、今までの任務の時も、メタルギア開発者は何らかの形で会っていた。
メタルギアの仕組み、設計、弱点などは作った本人に聞くのが一番だ。
彼女の父親だという男には、どちらにせよ会わなければならないだろう。
メタルギアの開発場所に関する情報も、喉から手が出るほど欲しい。
危険を冒す者が勝利する。
診療所に行こうとした時に思い浮かべた格言が、また脳裏に浮かんだ。
――桜花の言う事を信じるしか無い。
メタルギアのある場所についての情報が、今の所、これしか無い。
だから、依頼を断る理由を、俺は思いつかなかった。
『……分かった。君の父親を助けることに、最善を尽くしてみせるさ』
たが、と俺は続ける。
『――メタルギアは破壊するぞ』
それは間接的に、「お前を殺す」と言っている事と同じだった。
彼女の願いが果たされても、彼女は父親と最後まで共にいることが出来ない。
死刑宣告とも取れる発言に、「桜花」は、――静かに肯定の返事をした。
『いずれ消えちゃう存在だからね。貴方に壊されるなら、悪くないかも』
人間で無いとはいえ、「自分」という「意思」が消える恐怖など、微塵も感じていないようだった。
『……メタルギアを破壊した後でも、時間を動かす事が出来るのか?』
ずっと前から、一番気になっていた事だった。
『損傷箇所にもよるわ。センサー類が集結している所を跡形も無く壊されちゃったら、まず無理ね。
コックピットにあたる部分を残してくれれば大丈夫。ちょっとぐらいの傷なら平気よ』
『その、出来れば君がどんな形をしているか教えてくれると助かるんだが』
『……無理ね』
『どうして?』
『わたし、3次元的に存在できない構造らしいから。口では説明出来ないし、自分の姿なんて、鏡でも見ないと分からないわ』
一体どうなっているんだ。
開発者である「桜花」の父親に、尊敬の念すら覚えた。
『そうね……“クラインの壷”って知ってるかしら? わたしの存在は、それに近いものらしいの』
つまり、「概念」が存在していると。それなら目視は無理だろうな。
『そうか。大体は分かった。後は――』
『メタルギアの開発場所ね』
……こんなに身近に知っている奴がいたとはな。皮肉なものだ。
『鬼ヶ淵沼って知ってるわよね?』
『ああ。一度だけ行ったことがある』
村中を歩き回り、地下施設の存在が無いかを探した時だ。
ざっくり村を検めるという感じで見回っていたから、詳しくは調べなかった。
『鬼ヶ淵沼にたたずむほこらがあるの。そこの下に、地下に通じる階段が隠されている。そこからメタルギアの施設に入れるわ。
雛見沢の伝承の通り、まさに鬼ヶ淵は地獄に通じてる、って感じよね』
ふふふ、と彼女は笑った。
『それだけ分かれば十分だ。今から向かう』
『期待してるわよ、ソリッド・スネーク』
『――それと、もう一ついいか』
果てしなくどうでもいい疑問だったが、聞いておきたかった。
『なぁに?』
『どうして、俺にビールを送ったんだ?』
ああ、それね。と彼女は言う。
『あんなの、ただの気まぐれよ。お腹が弱い兵士がうろちょろしてたから、彼に届けて貰ったの。――おいしかった?』
『おかげで“いい夢”が見られた。起きたら体中に汗を掻いていたさ』
ここ雛見沢に来てから、悪夢を二回ほど見ている。
両方とも内容はあまり覚えていなく、「悪夢」だったことしか記憶に残っていない。
『その様子だと悪い夢だったみたいね。……良くない兆候かも』
『どういう意味だ?』
『……何でもないわ。気にしないでね。それじゃあ――』
――わたし、貴方を待っているからね。
そう言い残して、「桜花」との通信は終わりを告げた。
以上です。
>>184のような感想・意見は、どんどんお待ちしております。
風呂敷は畳むことを前提にして広げております。
オリジナル要素はなるべく少なめに済ませようと考えております。ノシ
本編乙!
まさかの桜花登場でびっくりw
てか桜花そのものが原作であんまりキャラつくられてないからこれからどう動いていくのかwktkで仕方ない。
頑張って本編氏!
保守
192 :
メサルギア:2010/04/25(日) 13:15:01 ID:Og9AReMM
随分遅れましたメサルギアです。
遅れた言い訳はしません。ごめんなさい
久しぶりに帰ってきたら、新しいMGSが出るみたいでびっくらこいただ。
これは買いです、それでは続きどうぞ
本編
俺は飛行機の中オタコンに例の写真の事について調べてもらっていた
「スネークやっと行く気になったんだね」
「別行動になるがな」
「僕達は東京、君はこの写真の場所だろ」
「わかったか?」
「うん、とりあえず出たんだけどね、ちょっと面白いものを見つけたよ」
「ん?」
「調べてみたらこんなのを見つけたんだ」オタコンから小型のPCを渡された
「BIGBOSSラストレポート?」
「昔BIGBOSSが一度行っているらしい」
「BIGBOSS」俺はあの時、BIGBOSSと最後に会ったときを思い出した
「オタコン、今の俺は蛇じゃないデイブだ」
「ごめんごめん、癖かな」
「スネーク、ハル兄さん、面白いニュースやってるよ」俺はサニーが持っているPCに目をやる
『謎の灰色のオーロラ、破滅へのカウントダウンか!!』
「なんだこれ?」
「世界中に灰色のオーロラが出てるみたいだね」
「何かの冗談か?」
「これが起きてる場所にありえないことが起きてるみたい」サニーは更に調べたページを見せた
「!」
『死んだはずの人間が生き返る、これは奇跡か悪夢か』
「オーロラから死んだ人間がくるみたい」
「そんな馬鹿な、こんなデタラメなオカルトがあるか」俺はオタコンからもらったPCで資料を読み始めた
「なにか気になるね」っとオタコンは調べ始め、俺はそのまま東京まで資料を読んだ
東京
「じゃあ、ここがその写真までの生き方だ」
「随分時間かかるな」
「後これを」携帯電話を渡された
「何かあったら電話して」
「ああ、じゃあ一週間後に」
「気をつけてねスネーク、あのオーロラ日本にも出現しているみたいだから」
「サニー、スネークは止めろ」
俺達はそこで別れた
TIPS BIGBOSSレポート 後書き
「以上がこの事件の真相である。
私はこの事件が未然に防げたら彼らの未来も変わっていたと思う
全ての物事は些細なことから始まる、それは直ぐに正せば何も起きない
この事件を忘れてはいけない。
これを呼んだ人、どうかこの事件が闇の中に消えてしまわないよう覚えてほしい」
人気の無い夜道を歩く。
その静けさの中で――、俺は、喪失感のような物を感じていた。
「桜花」との無線の後、すぐに大佐やオタコンの周波数に無線をした。
しかし、二回とも彼女が出た。……彼らとは無線が出来ないのは、本当らしい。
――今まで信じていた“仲間”が、実は違うものだった。それを知ってから、“孤独”を感じ始めたのだと思う。
フォックスにも無線をしてみたが、何故か通じなかった。まさに“単独”潜入状態だ。
……しかし、潜入任務はいつでも孤独だ。うじうじしている訳にはいかない。
今はただ、鬼ヶ淵沼に行くしかない。
そう考えていると、無線のコール音が鳴った。知らない周波数からだ。
『……誰だ』
立て続けに知らない人物との無線。前回は味方らしかったが、今回は分からない。
『OK、っと。通じたな。あんたがソリッド・スネークか』
――初めまして、だな。とその男は名乗った。飄々とした口調だが、機械を通したかのような声だった。
『声を変えているのか?』
『事故で喉をやられちまってな。喋るために機械に頼ってる。だからこれが俺の“地声”さ。……と言っても、あんたは信じてくれなそうだな』
『……。お前は誰だ……?』
敵か味方か。それすらも分からない。そんな人物の言う事の正否は分からない。
『OK。そうだな……ディープスロートと名乗らせてくれ』
内部告発者(ディープスロート)。それの意味する所は。
『さっき桜花と喋っただろ? 俺はその桜花の生みの親――“父親”さ』
つまり、こいつが――。
『お前が、新型メタルギア開発者か?』
『そうだ。今あんたが向かってる、鬼ヶ淵沼の地下施設にいる。桜花にあんたの周波数を聞いてな。それで無線をしてみた』
そう言われても――信じがたい。
『なら、桜花に替わってくれ』
『今は無理だ。彼女とはずっと話せる訳じゃないんだ』
『他にお前が味方だという証拠はあるのか?』
『……その様子だと、桜花のことも半信半疑っぽいな。彼女の事は信用してやってくれよ。俺のことは――あんたの友人に聞いてみればいい』
友人。それは、一体。
『グレイ・フォックスは俺のことを知ってるぜ。機械の合成音声を使って話す科学者は、俺以外そうそういない。
「あんたを助けた科学者」って言っても通じるはずだ。悪いが、俺の本名は……まだあんたには秘密にさせてくれ』
……メタルギア開発者が、フォックスを「助けた」?
俺の疑問を余所に、ディープスロートは喋り続けた。
『お仲間のバックアップが無いに近いんだ。なら内部からの手助けがいるだろ?』
一応、こちらに協力してくれるという事らしい。
『俺を信用する気になったら、また無線連絡をくれ。俺の方はいつでもOKだ。じゃあな、スネーク。また後でな』
『おい――』
一方的に喋るだけ喋って、ディープスロートとの通信はぶつりと切れた。
思わずため息をついてしまう。……訳が分からない。
本当に彼は桜花の「父親」――メタルギア開発者なのだろうか。
桜花についても、まだ分からない点の方が多い。
とりあえず、フォックスに連絡を取ることにした。それしか方法が無い。
先ほどは通じなかったが、今度は通じた。
『すまん。聞きたいことがある』
『――どうした?』
『まず一つ目だ。さっきは無線が繋がらなかったが、何かあったのか?』
『少しだけ雛見沢を離れていた。そのせいだろう』
一つ疑問が解消された。
『二つ目。メタルギアの在処を知っているか?』
『鬼ヶ淵沼付近の、地下施設にある。……知らなかったのか?』
いや、ただの確認だ。と答えて軽く流した。どうやら桜花の言ったことは本当だったらしい。
『三つ目。お前を助けたという男から連絡があった。合成音声で喋っていた。自称新型メタルギアの開発者らしいが、本当か?』
『ああ――本当だ。……おそらく奴のことだろう』
あっさりとした返事だ。
『ディープスロートと名乗ったが、信用しても大丈夫なのか?』
『……一応は、な。裏切る可能性はない。本名は直接奴と会えば、教えてくれるだろう』
フォックスがそう言うなら、一応信頼しても良さそうだ。
『奴は何者だ?』
『かなり優秀な科学者だ。彼も「未来」から来ている。永久機関の開発はほぼ全部、奴が行ったらしい』
そして、とフォックスが続ける。
『――俺がここにこうしていられるのは、奴のおかげでもある』
『それは……』
どういう意味だ。永久機関――タイムマシンは、奴が生み出したものだから、という事なのか。
そう尋ねたが、……フォックスは答えず、代わりに違う事を切り出した。
『「東京」については知ってるな?』
『……日本の国粋主義団体、だったな』
何故この話を切り出すのか分からなかったが、きっと何かの意味があると思い、応じた。
「東京」はただの政治団体と言うよりは、秘密結社に近いものらしい。
主に二つの派閥に分かれていて、一つの派閥は日本の独力での再軍備を目指すグループだ。入江はこちらに属している。
もう一つは、他国との同盟を固めようとするグループだ。
――そう、「大佐」は言っていた。
『俺は――「東京」のバックアップを受けている』
唐突にフォックスは言う。
『「東京」の? だが診療所での風土病研究は、奴らが行っているのでは――』
『イリエ達が属している派閥は、日本を諸外国の協力や支配無く、自分達の力だけで動かそうとするはずの派閥だった。
……だが、雛見沢症候群の研究資金は、オセロット“達”――諸外国から出されていた』
フォックスは続ける。
『――無限に思える財力が、実は一番毛嫌いしていた諸外国の産物だった。それを聞いて憤慨する連中がいるだろう。
俺は、そう言った連中と関わりがある。“ディープスロート”繋がりで知り合った』
『……「東京」は、一枚岩では無いということか』
厄介な話だ。
『だが――俺は奴らの為に戦っている訳では無い。ディープスロートの為でも無い。俺達は――政府や誰かの道具じゃない』
『……そう、だな』
フォックスの様子が、どこかおかしかった。緊張した声色で話し始める。
『スネーク。リキッド達が動き始めている。奴らも――メタルギアの在処を掴んだらしい』
『何だと……』
すぐ近くにいるか。
『何部隊かに戦力を分けているのだろう。……ここには、奴の姿が見えない。この程度の戦力なら、押さえられる範囲だ』
『まさか――』
一人で突っ込む気なのだろうか。
『フォックス、大丈夫か!?』
『俺がこんな所で死ぬと思うのか、スネーク』
それは――。
『奴らを押さえないと、子供達も危ない。そう長くは持たないが――効果はあるはずだ。……奴らとは今までにも何度か戦っている。
武器や装備、敵の人数も把握しているつもりだ』
「東京」の為でも、誰かの為でも無いのなら、フォックスは……何故、そこまでして戦い続けるんだ。
『スネーク。今の内に鬼ヶ淵沼に行くんだ』
『フォックス――』
『じゃあな。幸運を祈る』
それだけ言い残して、フォックスとの通信は終わった。
以上です。動きが少ないですがご勘弁を。
メサルギア氏乙です。 ノシ
なんか余計に風呂敷広げた気がするのは気のせいだろうかww
なんかどきどきしながら読んでますよ、メサルギアも本編も乙です
ひぐらししか知らないが楽しんで読ませてもらってますよ
199 :
メサルギア:2010/04/27(火) 05:07:49 ID:lNC5MGTU
『次は雛見沢〜雛見沢』バスに揺られうとうとしていたときに目的の場所に着いた
「ここが写真の・・・、綺麗なところだ」窓の外を見ると自然に囲まれた村が見えてきた
「外人さん、観光?」一人の女性が俺に話してきた
「ああ、君はここの村の人か?」彼女は俺の窓を開け風が入り長い髪の毛が風になびく
「ええ」
「ここに昔、俺と同じような外人が来なかったか?」
「…さあ記憶に無いわ」
『雛見沢〜雛見沢〜』
「俺はここで降りる、よければこの村を案内してくれないか?」
「良いわよ」
「そう言えば自己紹介がまだだったな、俺は」
「スネーク」彼女は俺の顔を見て言った
「……な」
「私は梨花、古手梨花」
「行くわよスネーク」俺は何も言えなかった、彼女の眼は俺のすべてを知っている目をしていた
「あ、ああ」
「何故、自分のコードネームを知っているかっとでも聞きたいみたいね」
「・・・」
「良いわ教えてあげる、でもそれは後で」彼女に着いて行く、たぶんこいつはBIGBOSSを知っている、そして俺のことも知っている
「スネーク、明日の夜ここでお祭りがあるのよ」村の人々が俺を見る
「梨花様、この外人さんは?」
「外国の記者さんよ、明日のお祭りを記事にしたいそうよ」
「そうですか、外人さんここはいい村ですよ、ゆっくりしていきなされ」
「あ、ああ」
「ん?よく見るとどこかであったような」
「人違いよ、おばあちゃん行くわよスネーク」
「あ、ああ」古手梨花はこの村でも力を持っていると俺は感じた
「スネーク?はて昔聞いたよな」
歩き始めて30分位か、神社の様なものが見えてきた
「ここが私の家、そして明日の祭りの場所」
「お帰りなさいなのです梨花」家から彼女と同じくらいの女性がきた
「ただいま羽入」
「…もしかしてスネーク?」彼女も俺の名前を知っている
「さあ、入ってスネーク、知りたいんでしょ、何故私たちがあなたを知っているのか」
「聞かせてもらおう、それと今の俺の名前はデイブだ」
「そうだったわねソリッドスネーク。今はオールドスネークと言ったほうが良いかしら?」
「・・・スネークで良い」家に入り、お茶を出された
「さて聞こうか梨花、どうして俺を知っている」
「う〜ん」彼女は腕を組み考え始めた
「おい」
「どこから話せばいいのか分からないのですよ」
「最初からでいい」
「簡単に言えばあなたはここに何度も来ている」
「はぁ?俺はここに来るのは初めてだが」
「この世界ではあなたは始めて、でも違う世界であなたはここに何度も来ている」
「よくわからん」
いいぞもっとやれ
G.Wだが保守
保守
鬼ヶ淵沼。
雛見沢に伝わる古い伝承では、この沼から鬼が這い出てきて、この沼に生け贄を捧げていたと言う。
月明かりに照らされた沼は、異様な雰囲気を醸し出していた。
確かにここなら――誰も近づかないだろう。
辺りを見渡す。沼の左手に設けられた小さな祠を見つけた。
近づいてみる。一見すると、何の変哲もない普通の祠に思えた。
……が、周囲の草が踏み固められていた。他の所は草木が生い茂り、手入れされていないにも関わらず、だ。
祠の底を調べてみる。すると、ごとりと音がして祠が動いた。
祠の下には鉄製の蓋があった。それを持ち上げてみると、地下へ続く梯子がかかっていた。
ライターで地下を照らす。梯子はかなり奥まで続いているようだった。
慎重に、梯子に足をかける。一段一段、着実に降りていく。
体が収まった所で、蓋が自動的に閉じ、何かが動く音がした。祠が元の位置に戻ったのだろう。
……出るときにまた出方を考えればいい。入り口や出口がここだけとは限らない。
暗闇の中、ゆっくりと梯子を下りていった。しばらくしてから底にたどり着く。薄暗い通路が延びていた。
銃を構えながら慎重に進むと、巨大なドアが見えてきた。
セキュリティで管理されている。入るには、パスワードとカードキーが必要なようだった。
通信機を起動する。
『ディープスロート、聞こえるか?』
『OKだぜ、スネーク。信用してくれるみたいだな』
軽快な口調の、合成された機械音が応じた。
『それはこれからの行動次第だ。今、梯子を下りた所のドアの前にいる。開けられるか?』
『お、もうそこに来たのか、早いな。OK、今から開けるさ』
――ちょっと待っててくれ。男はそう言った。
大人しく待つ事にした。壁に寄りかかって、久々の煙草に火をつける。
煙草は、潜入任務でも何かと役立つ事が多い。こうしてリラックスするのも大事な事だ。
吸い終わらないうちに、ディープスロートから連絡があった。
『今開けるぜ。それと――中に監視カメラがある。悪いがそっちは何とかしてくれ。数は少ないからな』
『分かった』
ドアの前に立つと、扉が自動的に開いた。
『OKか?』
『ああ、OKだ。感謝する』
フォックスが言った通り、この男は信用しても良さそうだ。
素早く身を潜り込ませる。中は照明で照らされていて、夜道を進んで来た身にとっては眩しかった。
向かって右手側の壁に、監視カメラが一台あった。
カメラの真下は死角になっている。カメラが首を振るタイミングを見極めて、壁伝いに動いた。難なくクリアだ。
監視カメラがあった通路を抜けるとすぐに、開けた広間に出た。
天井はかなり高く設けられている。床にはコンテナが無造作に詰まれていて、広間の左右それぞれにまた通路が延びていた。
兵士が数名ほどいて、巡回をしている。近くのコンテナに身を隠した。
『随分と広そうだな』
『そりゃもうデカイぜ。地下……何十階だったかな。何階あるか忘れちまったが、この施設はかなり深くまで作られている。
今あんたがいるのは居住区だ。この施設は居住区、研究区、開発区の三つの区間からなっている。メタルギアは開発区にあるぜ』
ザンジバーランドの事を思い出した。あのビルも相当な高さがあり、エレベーターで何度も往復した記憶がある。
『ま、居住区には用がないだろう。その広間の奥にエレベーターがある……見えるか?』
双眼鏡を取り出し、奥を見てみた。確かにエレベーターが見える。両脇に二人、歩哨がいた。
『そいつで一気に下まで降りればいい。居住区の最下層まで行けるはずだ。そこでまたエレベーターを乗り換えれば研究区に行ける。
研究区でまた乗り換えて開発区へ行く。それでOKだ』
『分かった。エレベーターで降りるだけ降りて、それから乗り換えるんだな』
『それと、武器がいるだろ?』
『あるなら助かるが……』
『ここの開発区で色々と作っているぜ。明らかに1980年代の科学力を超えているような代物もある。あんたにとってここが“過去”だとしても注意しろよ。
兵士が使っている武器はID登録されているから本人以外は使えないが、ちょっと弄れば誰でも使えるようになるさ』
そんな事が出来るのか?
『さしずめ武器洗浄(ガンロンダリング)って所か。いくつか用意する。研究区のどこかに準備して、回収ポイントを後で指定するから、そこにあんたが取りに来ればいい』
『ちょっと待て。今お前は、どこにいるんだ?』
『最深部である開発区さ。俺の事は気にするな。“便利な物”を持っているから奴らの目を欺ける事が出来る。施設の構造もよく知ってるから、たぶんOKさ』
ステルス迷彩か、それに近い物を所有しているのだろう。俺はそう解釈した。
『じゃあな、スネーク。何かあったら連絡してくれ。ここの施設の事なら答えられる。“奴ら”の装備やら兵器やらについてもOKだ』
『ああ。また連絡する』
無線を終了した。俺は立ち上がる。
ようやく、“潜入任務”の開始だ。
以上です。遅れてしまって申し訳ないです。
……さて、ここからが長い。ノシ
続きが楽しみだぜ!ゆっくりがんばって!
保守
湿った森の土と腐った葉を踏みしめる感覚を足の裏に濃密に感じながら、私はこの狭いはずの雛見沢の森の中を歩いていた。
――歩かされていた、と言う方が正しいのかもしれない。
リキッドという男に「協力」してから、自分の意思で何かをする事が出来ていない。
今も、どこへ向かうのすらよく分からずに、こうして夜道を歩かされている。
悟史くんも運ばれていた。眠っているのか、気を失っているのかは分からない。
――当然、助けてあげたい。
けれど、今の私じゃどうすることもできない。私はどんなに頑張っても小娘なのだし、周りには――銃を持った兵士達がたくさんいる。
対して、私は武器を持っていない。この状況で悟史くんを助けるのは難しそうだった。
このまま何も出来ないんだろうか。
やるせなさが募って、行き場のない気持ちが体中を巡る。
……落ち着かなきゃ。焦って失敗したら、すべてが終わる。
そう考えていた時だった。遠くにいる兵士が叫び声を上げた。
私もその方向を見る。そこには、もう見慣れたような、でもまだ馴染めないような――光景。
そこにいた兵士は、足を押させて蹲っていた。暗闇でも分かるぐらいに――血が吹き出ている。
誰かが叫んだ。
「奴だ――グレイ・フォックスだ!! 気をつけろ!!」
その言葉を皮切りに、周囲は騒がしくなった。
銃声が響き渡り、マズルフラッシュが明滅する。耳障りな金属音。何かを振る音。そして何人かの兵士が――倒れていく。
けれど、襲撃者らしき人物の姿は、全く見えない。
何が起きたの?
辺りを見渡す。兵士達は戦っていて、私の事をあまり気に掛けていない。
そして――悟史くんが、側の木に寝かされているのに気づいた。
――チャンスだ。
私はこっそり彼に近づく。彼の意識は無かった。
悟史くんを背中に背負う。……甲冑みたいなのを着けているにもかかわらず、驚くほど軽かった。
逃げ出すチャンスは今しか無い。息を大きく吸って、私は走り出した。
後ろの方からは相変わらず怒号と悲鳴が聞こえていた。
その場から一歩でも遠ざかろうと、私はひたすら走った。
◇
「はあっ……はあっ…………」
息が切れる。汗が頬を伝って落ちるのが分かった。
……どのぐらい逃げてきたんだろう。人一人背負って走ったのだから、あまり進めていないのかもしれない。
近くの大きな木の後ろに隠れる。私は悟史くんを背中から降ろした。
――彼の目蓋が、ぴくりと動いた。
「悟史くん!?」
私は彼に呼びかける。意識を取り戻しそうだった。
悟史くんの目蓋が、ゆっくりと開けられていく。
焦点の合わない虚ろな目が、私の方を見た。……そして。
「…………っ!!」
背中に走る衝撃。息が一瞬止まった。首には強い圧迫感があって、呼吸が出来ない。
何が起きたのか、分からなかった。
――苦しい。
はっきりしない意識の中で、私はどうにか状況を把握しようとした。
私の目の前にいる“人物”が“何”をしているのか。
「さと……し……くん……?」
――彼が私の上に馬乗りになって、私の首を絞めていた。
虚無を写していた目は、狂気に赤く染まっている。
薄らいでいく意識の中、私は必死に抵抗するけれど、悟史くんは私の首を絞め続けた。
彼の唇が、動く。
『殺 し て や る』
そう言ったように思えた。
悟史くん、と呼びかける声が、……出ない。視界が段々と暗くなっていく。
私は訳も分からず、目の端からは涙が流れ落ちた。
――殺される。どうしてか分からないけど、……私は、悟史くんに殺される。
嫌。
嫌。
いや。
愛している人に殺されるなら本望なんてことを言う小説があったと思うけど。
私は殺されたくなんかない。
……生きて。そう生きて、二人で生きて過ごしたい。
たとえ他の誰かを犠牲にしても。
二人で生きたい。一緒に生きたいよ、悟史くん……。
……それとも、駄目なのかな。もう許して、くれないのかな……。
お姉ぇや圭ちゃんやみんなを騙すようなことをしたから。
……悟史くんも……愛想尽かしちゃったのかな……?。
……もう、駄目だ。苦しい。息が出来ない。
僅かに残っていた意識を手放そうとした時――視界の端に、銀色の光が見えた。
そして、何かが強くぶつかる音がした。同時に、首の圧迫感が消え、呼吸が出来るようになった。
必死に酸素を取り込もうと息を吸い込み、私は咳き込む。
荒い呼吸を数回ほど繰り返した所で、私は辺りを見渡す。
悟史くんは――倒れていた。
胸が上下しているから、生きていることは分かる。
そして、悟史くんの側に、もう一人――覆面を被っている、リキッドの部下が立っていた。
持っている大鉈が月の光を反射して、鈍く銀色に光っていた。やけに――綺麗だった。
助けられた、と一瞬考えたけど、すぐに吹き飛んだ。……あいつは私達を、連れ戻しに来たのだ。
覆面をした兵士が、こちらを向く。私は、身動きが出来なかった。
「……ふうん」
つまらなそうに、その人は云った。
「そんなに、一緒にいたいんだね」
意外な、言葉だった。
声の響きは可愛らしいが、どこか狂気を含んでいる口調。――女の人の声だった。
“彼女”の唇がまた動く。
「それなら、運ぶのはまかせるね。けれど――」
――殺されちゃっても、知らないからね。
「……くす、……くすくすくす……」
と、彼女は嘲笑った。
私はただ……その場に座り込んでいる事しか、出来なかった。
以上です。
また「風呂敷広げてね?」と言われそうな内容ですが、頑張って畳みます。
遅くとも週一ペースは確保します。それとストーリーに対する感想も待ってます。ノシ
乙!
最初の方、
>そこにいた兵士は、足を押させて蹲っていた。
押さえて でしょうか?
保守
しばらくコンテナの陰に留まり、兵士達の動きを観察した。
巡回している兵士は、ここから見える限り3名いる。各自が決められたルートに沿って見回りをしているようだ。
ルートはそう複雑では無い。広間の俯瞰図を頭に思い浮かべ、どこを通れば抜けられるかを判断した。
エレベーター前の歩哨2名は動かない。おびき寄せて、排除する必要がありそうだ。
頃合いを見計らい身を潜めていたコンテナから離れる。足音を立てないよう、慎重に進み始めた。
兵士の死角とルート、荷物の陰などを利用して、着実に歩を進めた。この程度ならレーダーは必要無い。
時には走り抜け、時にはゆっくりと歩く。トラップや監視カメラなどは無く、特に問題は起きなかった。
そして、エレベーターの前まで来ることが出来た。両脇にいる兵士はやはり動かない。
コンテナに張り付いて、ノックを2、3回ほどした。兵士達が不審な物音に気づいた気配があった。
確認してくる、と一人がいい、足音が近づいてきた。
素早く、かつ静かに走り、コンテナの反対側に回り込んだ。エレベーター前に留まっている兵士に走って近づく。
彼が「敵」の存在を認知する前に、CQCを用いて無力化した。あっさりと兵士は気絶した。
異常を発見出来なかった兵士が戻ってくる。別のコンテナに身を隠した。
彼は倒れている同僚を見つけ、走り寄って来たが、その間に背後を取って同じように気絶させた。
エレベーターのボタンを押した。到着するまで時間がある。その間に、気絶した二人の兵士を物陰に隠した。
片付け終わった所で、エレベーターが到着した。
中に入り、最下層へ向かうボタンを押した。ドアが閉まり、エレベーターが地下に向けて動き始めた。
俺は制御パネルの側に張り付いて、銃をいつでも撃てるような状態にした。
もし途中でエレベーターが停止したら、敵をすぐ排除するためにだ。一秒たりとも気は抜けない。
――そんな緊迫した状況だったが、誰かから通信が入った。
『来てくれたのね、スネーク』
桜花だった。とてもAIとは思えないほど、自分の感情を素直に表現している。
『そんなに警戒しなくても大丈夫よ。兵士達はそのエレベーターに乗り込まないから』
『どうしてそう言い切れる?』
『パパが、他の階からの停止信号を無視するように設定したからよ。エレベーターは他にもあるから、異常には気づかれないと思うわ。
それにこの時間帯なら、休憩室で遊んでいたり、自分の部屋で休んでいる兵士もいるからね』
……呑気なものだ。
『いくらここが広くても、娯楽施設は無いもの。昼間は興宮にある、エンジェルなんとかってお店に遊びに行く人も多いみたい。
それでもここの兵士はきちんとした訓練は受けているし、仕事する時はちゃんとするから、注意してね』
『用心するに越したことは無い。分かっているさ』
と言いつつも、現時点では敵兵に遭遇される危険性は無いに等しいので、少し警戒を緩めた。
任務には緊張感が付きものだが、神経が張り詰めすぎるのも良くない。
『……ねえ、スネーク』
『何だ?』
『寂しくないの?』
……一体何の話だ?
『貴方の“仲間”だった“大佐”や“オタコン”、“メイリン”は、今までわたしが演じていたのよ。……貴方は今、本当に“孤独”なはず』
『君のサポートも、君の父親であるディープスロートからも助けて貰っている。ひとりでは無い』
確かに、今まで話してきた“仲間”が虚偽の物だった、と聞かされた時はかなり驚いた。
だが、桜花が助けてくれなかったら、今頃どうなっているのか分からない。彼女のサポートは大きいものだった。
それに、と俺は付け加える。
『確かに潜入任務は孤独だ。敵地にたった一人で赴く。任務に失敗したら見捨てられる事だってある。……しかし、今回はあまり孤独さを感じないんだ』
『それはどうしてかしら?』
『……何故だろうな』
地下に来るまでも、こうして施設に潜入してからも、奇妙な安心感があった。
自分でも、よく分からない。だが――何となく想像はついた。
今頃子供達は、“仲間”を救うという目的で戦っている。
フォックスは、リキッド達を牽制するべく戦っている。
それぞれがお互いに干渉しない、別々の戦いであるはずだが、あいつらに背中を守って貰っているような、そんな感じがするのだ。
雛見沢に来たことによって知り合った子供達と、雛見沢に来て再開した“親友”。
どちらも、大切な仲間だった。
そう考えている間に、エレベーターが居住区の最下層に到着した。
扉が開く。幸運な事に、扉の前には誰もいなかった。
『研究区に行くにはどこへ向かえばいい?』
『そこからなら、エレベーターよりも階段が近いわね。そこの広間の右手の通路を抜けて、まっすぐ行ってから左に曲がるの。
開けた所に出ると、そこの右奥に扉があるわ。そこが階段よ。扉は警戒態勢にでもならなければ、ロックはされていないはずよ』
『分かった。階段だな』
『メタルギアについて知りたかったら、わたしに無線してね。パパが無線に出られない時は、わたしが代わりにここの事を教えるわ』
『そうしてくれると助かる。――任務に戻る』
頑張ってね、スネーク。と応援する彼女の声を聞いて、無線を終了した。
以上です。
>>212 ご指摘の通り、「押さえて」です。誤字ですorz
次ぐらいにはひぐらし側の動きも書けると思いますです。ノシ
乙!
次回も待ってますぜw
むっはー!乙乙!
潜入のところとかなんか淡々としてるのにわくわくするわw
本編さん乙!!
楽しみにしていますー
保守
☆ウッディ☆
保守
私達は鬼ヶ淵沼に来て、スネークがいる施設に向かう為に、祠から伸びる梯子を下りた。
地下にあったあった空間を見て、圭一が「広そうだな」と呟いた。
奥には薄暗い通路があって、まだ更に地下深くへと続いている事が示されていた。確かに、かなり広そうだ。
「雛見沢にこんな所があったとはねぇ……。おじさん知らなかったよ」
「あんな所に隠してあったら、普通は気づかないだろうね」
「極秘の研究とはいえ……私たちは、今まで全く知らずに暮らしていたと言うんですのー?」
各々が感想を述べる。入江や富竹も、神妙そうな顔をしていた。
……それは、私も同じだったと思う。
「ジョニー。この施設は、いつからあったのですか?」
「確か、4年前って聞いてるぜ」
お腹をさすりながら、頼りない兵士がそう応じた。
4年前。……そんなの、これっぽっちも知らなかった。
「入江達は知っていましたか?」
「東京」の一員である入江も富竹も、首を左右に振った。
「……信じられないです。極秘裏に、こんな事が行われていたなんて……」
入江が呆然と、ただそう呟いた。
――これだけの施設を、入江や富竹達に全く気づかれず作るのは、至難の業のはずだ。
そこまでして、“奴ら”は何がしたいんだろう?
この施設の存在すら知らなかった私には、想像も付かなかった。
「ねえ、羽入。どう思う?」
とりあえず、相棒に意見を求めたけれど。
……彼女は、床を見つめていた。俯いているのとは少し違って、明確に、その先にある“何か”を見据えているように思えた。
床には何もない。その向こうの地下奥深くを見ているのだろうか。
「……まさか、この気配は」
「羽入? どうしたの?」
「……あ、梨花。……何でもないのですよ」
明らかに何かある表情だったが、それ以上言及はしなかった。
……何であれ、今は先に進むしか無い。
兵士の一人がパスワードを入力し、扉を開かせた。
「ちょっと待ってろ。確かこの先に監視カメラが……??」
ジョニーがそう言って、先頭に立って中に入ったが、首を捻った。
「どうした?」
「……壊されてる」
私達も後に続き、中に入った。
確かに、監視カメラらしき物体が、通路の端に転がっていた。
「きっとスネークだよ。見つからないようにカメラを壊したんだ」
魅音がそう言ったが、ジョニーは「違う」と言って首を振った。
「どうして違うって言い切れるんだ?」
「……あいつは潜入の痕跡を絶対に残さない。前に任務中で会った時は、カメラは一つも壊されてなかった」
それに、と付け加える。
「これ、銃で撃たれたんじゃなくて、刃物か何かで切り落とされている」
ジョニーがそう言って、監視カメラの残骸を拾い上げた。
彼が言うように、天井と繋がっていた部分は、鋭い面を見せていた。何かですっぱり切られたみたいだった。
「馬鹿でかい刀か斧か鉈か……どれでやられたのか分からないが、ソリッド・スネークじゃないだろう」
「という事は、私達とスネーク先生の他に誰かが来てるの?」
「うーん、多分そうなるんじゃないかな。鷹野さん達って訳でもなさそうだよねえ」
「フォックスさんかも知れませんわよ?」
「……みー。誰にせよ、用心するに越したことはないのです」
私がそう言うと、皆が頷いた。
私達のリーダーである魅音が兵士と山狗達に指示を出して、隊列を組み始めた。
この先、何が待ち構えているか分からない。ここで終わるわけにはいかない。皆の表情が、緊張したものとなった。
ゆっくりと歩を進める。
この歪んだ運命を終わらせるために。彼を、助けるために。
◇
無事に階段を下りて、研究区に到着した瞬間、ディープスロートから連絡があった。
『よう、スネーク。無事に進んでいるみたいだな』
相変わらず、とらえどころのない口調だった。
『研究区の中層のある部屋に武器を用意したぜ』
『感謝する。どの部屋に行けばいんだ?』
『外から部屋の中を見られる覗き窓に、小さく「OK」って書いておいた。それが目印だ』
『……それだけじゃ分からん』
『はは、まあそうだろうな。研究区は色々な部屋があってだな、科学者がチームを組んで実際に研究している大部屋と、資料などを保管している小部屋がある。
厳密にはもっと種類があるが、俺が武器を置いておいたのは小部屋の中でも結構小さい方の奴だ。入り口にはちゃんと「資料室」って書いてある。
入り口はロックしておいたから、敵さんは入れないさ』
『そいつは助かるが、俺はどうやって入ればいい?』
『武器を用意した部屋の近くには、男子トイレがある。そこの鏡にちょっと細工をして、IDカードを仕込んでおいた。
鏡を外せば取れる。それを使って部屋に入ってくれ』
『まずはIDカードを手に入れるんだな。了解した』
セキュリティーカードでの部屋の管理はよくある事だ。ザンジバーランドでも、アウターヘブンでも、シャドーモセスでもそうだった。
『それと、すまんがミサイル系統は手に入らなかった。開発区にはまだID登録されていない武器もあるだろうから、あんたの方で探してくれよな』
『分かった』
FOXHOUNDにいた頃は、武器装備は現地調達が基本だった。ミサイル系以外の武器をこうして用意してくれただけでもありがたい。
『色々と頑張ってくれ。俺にはまだやる事があるから、ちょっと歩き回って来るぜ』
それと、と男は付け加える。
『あんたの他に「侵入者」が現れたみたいだ。警戒が厳しくなった』
……俺以外の、侵入者だと?
『もともとこの施設は、地下に向かうにつれて警戒がきつくなっている。だからくれぐれも気をつけてくれよ。
まあ、あんたは見つかって捕まるなんてヘマはしないだろうけどな』
『“侵入者”についての情報は、何か無いのか?』
『詳しくは分からない。単独じゃなくて、複数って事ぐらいか。あちらさんは見つからずに進もうって気はないみたいだぜ』
複数いるという事は、フォックスでは無い。ならばリキッド達か、それ以外の誰かか。
『……分かった。注意しよう』
『じゃあな。幸運を祈ってるぜ』
無線を終了した。
遅れてしまってごめんなさい。以上です。
ようやく役者が揃って来ました。これからです。ノシ
おっつー!
乙です
229 :
メサルギア:2010/06/10(木) 23:37:49 ID:F6+Buj7H
俺は梨花の話を全て聞き終えて漠然とした,世界は一つではなくいくつもの世界がある
世界はお互いを干渉しない、だから普通の人間では他の世界があるとは分からない,しかし彼女はその全てとリンクしている
彼女は他の世界で何度も悲劇を繰り返し、この村では何度も戦場となった
そのたびに彼女は戦場にならないように努力した、しかし全て努力は水の泡となり戦場となり、彼女は死んでいった
回避できたのはこの世界だけ、彼女は話した『あなたが全てを終わらせてくれた』
そんな馬鹿な話があるかと俺は言った、だが彼女の目は真実を語っている眼だった
「少ししゃべりすぎです梨花、スネークの頭がパンパンになってます」
「そうね、スネーク少し喋りすぎたわ」
「今日はこの部屋で休んで、続きは明日話すわ」
「ああ、なかなか楽しい物語をありがとう、今日は良く眠れそうだ」
「はぅ〜スネークが信じていないのです」
「仕方ないわ羽入、だって彼はこれから来るんですもの」そういって彼女は部屋を出て行った
「真実か、ただの物語か」
俺はその夜寝ることはできずに朝になった
「朝か・・・」
「その調子じゃ寝れなかったようね」
「おかげさまで」
「少し外の空気を吸ってきたら?
ここの朝は気持ち良いわよ」
「そうさせていただく」俺は彼女の家を後にして山に出た
「空気が澄んでるな」
昨日教えられていたのは偽か真実か?矛盾だらけの謎だけが頭の中に残る
あたりに朝霧が立ち込め、俺が橋を渡っているときだった
「また会ったなスネーク」
「!」向こう岸から懐かしい声が聞こえた、しかし霧が邪魔をする
「誰だ?」俺は構えた
「私だスネーク」霧の中から声の主が現れた
「ビッグボス」彼だ、俺が最後に見た彼だ、片手にパトリオットを持っていた
「久しぶりだなスネーク」
「あ、あんたは死んだはずだ、何故生きている?」彼は俺に向かって歩み始めた
「確かに私はあの場所で死んだ、だがお前は昨日聞いたはずだ、世界には平行した別の世界があるはずだと」
「梨花の話か」
「そうだ、今ここにいる私は別の世界の私、お前の世界の私ではない」
「じゃあ、その別のビッグボスが俺に何のようだ」
「今、世界は崩壊を始めている」
「馬鹿な、世界は平和になったはずだ、戦争は終わった」
「言い方を変えようスネーク、今世界はお互いを干渉を始めている」
「何が言いたい」
「梨花が言ったように世界は干渉せずに平行に保っている。
しかし今世界が干渉をはじめ、一つの世界になろうと融合を始めている」
「どういうことだ?」
「世界は過去と未来でできている、原因と結果だ
しかし今の世界が成り立つには一つの原因が抜け、世界が不安定の状態になっている
それを補おうと世界は別の世界は取り込み安定を図ろうとしている。
不安定になった原因、それがお前とこの村だ」
「スネーク、お前の最後のミッションは、世界が崩壊を始めた原因を調査し処理を行え」
「無理だ、その話が本当なら、俺は過去に行かなくてはいけない
あいにくだが、この世界には過去にいけるデロリアンもないし、猫型ロボットもいない」
「だからこれからいくのだ」ドン
「さあ、行ってこいスネーク、お前の選択肢がこの世界を変える」
「ビッグボスゥゥゥゥ」俺は落ちるさなかオタコンたちが言っていた灰色のオーロラが俺を包み、俺は気を失った
(・・・俺は死んだのか?)手足の感覚はある
(・・・確か俺は橋からビッグボスに落とされて)しかし体中が痛い
目を開けると見慣れない天井が見えた
「・・・ここは?」
「気がつきましたか?」俺の視界に眼鏡をかけ、白衣を来たドクターらしき人が見えた
本編乙! いよいよひぐらし側も潜入か、でも絶対スネークの邪魔になりそうな気がするw
メサルギア乙! なんかもうシリアスなのかギャグなのかわからないところがいいw
どちらも次回が期待できて仕方ない。ガンガレ!
ほしゅ
232 :
メサルギア:2010/06/18(金) 23:34:04 ID:eqxGF8uj
視界がはっきりしてきた、白衣を着た眼鏡の青年の顔がはっきりわかる
「・・・ここは?」
「ここは病院です、っといってもただの村の診療所ですが」起き上がろうとしたが全身に痛みが走った
「ッ」
「ああ、まだ起き上がらないで全身打撲で済んだのが奇跡なんですから」
「入江入りますよ〜」ドアから誰かが入ってきた
「ああ、さっき意識が戻ったよ」
「・・・ん?」見ると小学校の低学年くらいの子供だった
「外人さん大丈夫なのですか?」
「全身打撲だから直ぐに退院できますよ」
「大丈夫ですか?」彼女の顔が俺に近づく
「ああ、大丈夫だ」
「この子があなたを助けてくれたんですよ」
「みぃ〜照れるのです」
「ああ、ありがとうお嬢さん」
「えへへなのです」
「ところで雛美沢に戻りたいんだが?」
「ん?ここが雛美沢ですよ」
「そうか、じゃあ古手梨花と言う女性の家に厄介になっているんだがどう行けばいい?」
「みぃ〜私が古手梨花ですよ」
「え?」
「梨花ちゃんの知り合いかい?」
「みぃ〜外人さんの知り合いは居ないのです」
「俺が知っている古手梨花は20くらいの女性だったが」
「みぃ〜何がなんと言おうと私が古手梨花なのですよ、変な外人さん」
「なんだか話がかみ合わない、ここは本当に雛美沢なのか?」
「だからそうだって言ってるじゃないですか」
「頭も打ってるようですから、少し混乱しているんでしょう、今夜はここで入院です」
「おいおい、俺は」また体中に痛みが走る
「今日一日しっかり休んでください」
「みぃ〜しばらくここに居るといいのです、お祭りが近いのです」
「ところでお嬢さん君が俺を助けてくれたの言ってたが俺はどこに居たんだ?」
「橋の下ですよ」
「覚えていないんですか?」
「俺は・・・」覚えてるさ、ああ覚えてる、俺はビッグボスに突き落とされた。
ビッグボスは言った俺の選択が世界を変えると
「・・・選択」
「洗濯しにいったのですか?」
「あ、ああ、そうなんだ恥ずかしい話、洗濯をしに行く途中に足を滑らして落ちたんだ」
「そんな馬鹿な」
「あるさ人間、歳を重ねるにつれて足腰が弱くなるからな」
「どこから見ても20代にしか見えませんがね」呆れた顔をして鏡を持ってきた
「これでも年寄りですか?」自分の顔を見た
「!」
自分の顔だ
しかも若いときの顔だ
白髪も白ひげもない顔だ
「ここに全身が移せる鏡は無いか?」
「ええ、診療所の中にありますが」俺は立ち上がり、鏡を見た
「昔の体だ、若返ってる」
「やはり、頭を打ってるようだ、少し入院しましょう」入江が俺を追ってきた
「すまんが最後に一つ聞きたい」
「もう何ですか」
「今何年だ?」
「昭和58年ですよ」
「西暦で」
「1983年です」
・・・本当に過去に来てしまった
乙!!
メサルギア乙!
えーそしてこのスレをみていただいている皆様にご報告です。
本編氏に許可をいただき、よりリレーSSとして終盤まで投下ペースを上げるため、元本編ことワタクシめも本編の執筆に参加させていただくこととなりました。
どうかよろしくお願いします。
さしあたって、スネーク、オリキャラ「桜花」で投下いたします。
――無機質な金属で構築された施設の通路を、俺は慣れた動作で進む。
その一歩、一歩は、俺の知らない先の闇を切り裂いていく。
その前に、敵がいたとしたら。
その先に、罠があるとしたら。
俺の体は、その対処の方法が隅々まで染み込んでいる。
潜入任務は、どんな場所であれ、どんな状況であれ。
俺を確実に、俺たらしめていた。
不意に、耳小骨に振動が響く。
通信機能が作動し、誰かが俺を呼んでいることを悟る。
周囲に敵影が無いことを確認し、通信に応じる。
『こちらスネーク』
『スネーク! ああよかった! やっと繋がった!』
慌てたような、焦ったような、だが懐かしい声が俺の名を呼ぶ。
『その声は?! オタコン! お前なのか!』
『……う・そ』
唐突に友人の声が、少女のものに変わった。
『……何だ桜花。遊びで通信をするな』
少女の悪戯に、俺は不快を隠さずに答える。
『くす、ごめんなさい。でも似てたでしょ?』
『似ていたなんてもんじゃない。まるで本人だった。あの上ずった情けない声なんか、オタコンのやつそのものだ』
『あら、それは本人が聞いていたら怒るんじゃないかしら?』
『聞いていればな。だがここは日本で、おまけに過去の世界だ。聞こえているわけが――』
『ごめんなさい。実は通信を未来に繋げていたの。ばっちり向こうに聞こえてるわ』
無邪気な笑いとともに、小悪魔はさらりと言った。
『……冗談だろう?』
『本当よ』
微かな沈黙のあと、俺は息を吐いて、気を取り直すことにした。
『なら向こうと連絡が取りたい。通信は可能なのか』
『ごめんなさい。たった今、回線が途切れちゃったわ』
『おい』
『仕方ないのよ。未来との交信は調整が難しいの』
『……』
『……気を悪くしちゃった? それなら謝るわ』
『……別に』
『うそばっかり』
『もう用は無いな。それなら――』
『あるわ』
『どんな?』
『あなた以外の侵入者についてよ』
『何?』
聞き捨てならないことを言う。
『詳しくは、そうね……実際に見てもらったほうが早いかしら?』
『できるのか?』
『あなたがいるのは居住区でしょう? それならもう少し進んだ先のフロアにコンピューターがあるわ。わたしがそれにアクセスして、映像を映すわ』
『そうか。それならそのフロアまで行こう』
『ええ。それじゃ後でね』
通信が途切れる。
子供のお守りのようなやり取りに息を少し吐いてから、俺は目的の場所に向かうことにした。
目的のフロアの前には、兵士が二人哨戒していた。
互いに前後を見張り、警戒に余念がない。
しかし二人くらいなら――俺は手に握った麻酔銃を、ホルダーにしまう。
使える道具は限られている。なるべく温存すべきと判断した俺は、先程無力化した兵士から鹵獲した空弾倉を、天井めがけて放り投げた。
カツン――ッ。
金属の高い音は確実に二人の耳に届く。
「何だ!?」
二人が一斉に同じ方向を向いた瞬間――、俺は一人の背中に密着していた。
両腕を用いて、兵士の体を拘束。そして、重心を一瞬で崩し、僅かな力で、その男は両足が空中に舞った。
そして、さらに前方にいた兵士めがけ、その男を投げ飛ばす。
俺に投げられた兵士は頭を床に打ちつけ。そしてもう一人も、男の踵を脳天に食らい、二人とも昏倒する。
気絶した二人を部屋の中に運び入れ、ロッカーの中に隠した。
一連の作業が終わった直後。
「あら、どうやら問題ないようね」
桜花の声が聞こえた。
「……まあな」
適当な返事を返す。
コンピューターの電源が起動する。桜花の声が聞こえたモニターは、電子的な数字や数式を高速で羅列していく。
「少し待ってて。もうすぐ映るわ」
その電子的な動作が止んだ直後、桜花の言ったとおり、侵入者の姿が現れた。
そして映りこんだ画面を、俺は目を疑った。
圭一?
レナ?
魅音、沙都子、梨花――、それだけじゃない。富竹や赤坂も、あの入江もいる。かなりの大人数で、彼らはこの施設の中を移動している。
「桜花! これはどういうことだ!? なぜあいつらがここに――」
「さあ? 知らないわ」
それは当然の返答だろう。
だが、もしや彼女が呼び寄せたのではという思いもあったからこそ、確認せずにはいられなかった。
「桜花。お前が、あいつらをここに呼んだわけじゃないんだな?」
「私が? なんのメリットがあって? 彼らをここに呼んで、何の得があるのかしら? むしろこの場合は――」
そうだ。この場合は。
「……デメリットのほうが大きい。仮にあいつらが拘束されれば、オセロットに人質に使われるはずだ」
「そうね。そしてそれは、あなたの任務遂行の妨げ以外の何者でもない」
それは、彼女にとってもデメリットのはずだ。
「なぜ来たんだ……圭一、レナ……みんな」
歯噛みしながら、俺はモニターを見つめる。
「もしかして、助けに来たのかしらね?」
「何?」
「あなたを」
桜花の意外な言葉に、俺は目を丸くする。
あいつらが……俺を、助けに?
「もしもの話だけどね。考えられないことじゃないでしょ? 彼らのお節介焼きは、あなたもよく知ってるでしょうし」
くすくすと笑いながら、桜花の声はそこで途切れ、映像もそこで途切れた。
なあ、大佐――このミッションは、今までで一番。
「……厄介な任務になりそうだ」
真っ暗なモニターを眺めながら、俺はそう零した。
以上、この辺でまずは様子見です。
238 :
メサルギア:2010/06/29(火) 03:16:39 ID:xl4aiDfZ
気づいたら夜になっていた
1983年に本当に来てしまってしまったんだろうか
オタコンに電話をかけても繋がらない
「ここは本当に1983年よスネーク」病室に朝会った少女が居た
「やっぱり君は、古手梨花なんだな」
「ええ、そう、私は古手梨花、あなたがあったのは未来の私」
「何で俺は過去に」
「あなたは既に知ってる、ここ来る途中に聞いたはず」
「俺はBIGBOSSに」
「あなたの選択が、未来を変える」
「ここで何をすればいいんだ」
「私はあなたがここで何をしたのかわからない」その後も淡々と話し始めた
ここで起きる悲劇、村の人、悲劇を生み出す源
「わかった、整理しよう」
「俺は1983年にいる、これは間違いないな」
「そう」
「っで俺はここでその悲劇とやらを回避するために未来から来たと」
「少し違う、あなたがここに来た理由は、あなたが居た未来にするためにあなたが居る」
「はぁ〜」俺は深いため息が出た、余計にわけが分からない
「まあ結果は同じなんだけどね、どうするのやるのやら無いの」
「やるしかないだろ、世界の崩壊だがなんだか知らんが、様は悲劇を回避しなければならないんだろ」
「じゃあ、しばらくはうちに来ると良いわ」
「ああ、未来でも世話になったからな」
「じゃあ、また明日ね、スネーク」パタン
彼女は病室の扉を閉じ、また静かな夜が戻った
「ここで何をすればいいのか?」
「犯人が分からなかったら、戦争と言う名の悲劇を生み出す・・・か」最悪のシナリオを回避する、それは容易じゃない
「まあ、今愚痴ても仕方ない、せっかく若いときの体に戻ったんだ、どこまで動けるか見てみるか」俺は病室を抜け出し、月夜が照らす外に出た
「走っても息切れがない、体も昔のままか」
俺は走った、昔、まだ俺が若かった時代、アウターヘブン、シャドーモセス、タンカー、プラント、全ての戦いの記憶がフィードバックしていた
「はぁ、はぁ、随分と走ったな」
夜空を見上げる、息が白い、こんなに静かなのに戦場になるのか
「お前がスネークか」
「!」声が聞こえた
「誰だ」声のするほうに目を向けると灰色のオーロラがあった
「そんなに構えるな」オーロラからコートを着た若い男が出てきた
「お前にお届け物だ」男はバックを俺に渡した
「これは?」バックにオタ魂と書かれていた
「さあな、中は見ていない、眼鏡をかけた細い男が、お前に届けてくれってな」
「お前は何者なんだ?」
「質問ばかりだな」
「お前は俺の未来から来たのか?」
「俺に未来も過去も無い、俺は世界を旅している」彼は灰色のオーロラへ歩き始めた
「俺は門矢 士だ」彼は完全にオーロラに飲まれ、俺はバックの中身を確認した
「麻酔銃にスニーキングスーツ、後は無線機?」無線機を手に持ったときだった
「・・・ネーク、・・・−ク、・・・える?」
「その声はオタコンか?」
「スネーク、聞こえる?」
「ああ、オタコン」
「よかった、スネーク、やっぱりあの人が言った通り過去に行ってしまったんだね?」
「ああ、どこから話せばいいんだか」
元本編氏、メサルギア氏乙です
楽しみだなあ,wikiのCQC編見て興味持った
なかなか面白いですね
◆k7GDmgD5wQ氏が規制中なので、代理投下致します。
私達は子供だ。
まあ、ここには赤坂や入江や富竹もいるから、全員が子供だとは言い切れないのだけど。
それは疑いようの無い事実なのだし、どう言い訳しても騙せるものではないから、認めてしまったほうがいい。
そう。私達は子供。
だからこそ、私達は自分たちの弱さを知らなければならない。
私達がどうしようもなく子供で、弱くて、小さいものだということを、認識しなければならない。
……それは、私達の敵にも、言えることだが。
唐突に響く爆発音。
手榴弾のそれからは、爆風と人を殺傷する金属片が飛び出す代わりに、密度の濃い煙幕があたりを覆う。
「スモーク!?」
敵の一人が動揺した。煙幕によって私達の姿を確認できない敵が、闇雲に銃を乱射する。
「くそっ! 敵はどこだ!?」
「グレネードを投げ込んでやれ!」
動揺は更なる焦りを生み、焦りは判断を鈍らせる。
グレネードの起爆ピンに手をかけた兵士は、その時、自分の手元しか見えていなかった。
「――遅い」
自分のすぐそばで聞こえてきたその声に顔を向けた瞬間、その兵士は赤坂の拳に自分の顔面を殴り飛ばされる寸前を目の当たりにして――、意識を失った。
その刹那、更なる銃声が聞こえた。
兵士達のすぐ上から聞こえてきたその着弾音は、通路の照明を全て破壊し、彼らの視界を暗転させる。
「み、見えないっ!」
「退避だ! 退避しろぉっ!」
後退しようとした兵士達だったが、間髪入れず、赤坂が彼らの前に踊りだす。
赤坂の急襲に動揺した兵士達は、一斉にライフルを赤坂に向けようとして――背後にいた、私たちの味方であるジョニー達に拘束された。
「やったぞ! このエリアは掌握した!」
ジョニーが叫ぶ。その言葉を合図に、隠れていた私達は一同に顔を覗かせた。
「いやー、ほんっとすげえ銃撃戦だったな。この迫力ならどこぞの映画なんか超えるぜ」
圭一がふざけ半分に言う。
「うーん、でもおじさん出番なくて残念だったよ。それにしても富竹のおじさま、銃の扱い慣れてるねぇ」
魅音がそう言うと、富竹は、いやぁ、ははは、と相変わらず煮え切らない態度でお茶を濁す。
「それにしても、さっきは私達、ほんとうに出番がありませんでしたわ。活躍の機会がないなんて、部活メンバーとしては名折れじゃございません?」
沙都子が軽く息を吐いて言う。
「いやいや沙都子、あの状況ではおじさん達が動くのはかえって危険だよ。実戦に慣れているジョニーさん達や赤坂さんに動いてもらったほうが、一番確実だよ」
魅音が先程の戦闘を分析する。確かに、通路という閉鎖的な場所で、しかも銃撃戦を辞さないあの状態では、私達にできることを探すほうが難しい。
私達は、弱い。
だからこそ、自分たちの命を守ることを最優先し、隠れた。
それが、最も良い選択だった。
「しっかし、なんだろなーこの緊張感! まるで部活中の隠れ鬼をやってる時みたいだったぜ!」
「うん! 魅ぃちゃんもしかして、こういう時のために、隠れ鬼ごっこをやってたのかな? かな?」
圭一もレナも、私達がスムーズに隠れることが出来るのを、魅音の部活の成果だという。
実際、そうなのかもしれない。
魅音が今までに行ってきた破天荒な部活の数々は、極限状態で行動するための確実な指針になっていた。
突然、電子的なコール音が響く。
ジョニーが持っていた通信機が作動している。
「こ、こちらジョニ……、いや、こちら“ひぐらし”状況はクリア、現在鳴いている」
ジョニーが言ったその言葉は、私達の間で取り交わした暗号だ。
ひぐらしは、私達のこと。魅音の言葉を借りれば、いわば本体、本丸のこと。
鳴いている、とは、私達に危機的な状況がない。と、いうことだ。
「そ、そうか……了解した」
通信を終えてジョニーがこちらを向く。
「いま“あぶらぜみ”から連絡があった。先のフロアまでクリア、移動可能だ」
あぶらぜみもまた、私達の仲間となった兵士達のチーム名だ。
「よーし、そんじゃ先に進もうかみんな!」
部長の決定に、おーう、と私達はそろって声を上げた。
こんな状況でも、明るく、希望を持った声で。
「……みんなに聞きたいことがあるのです」
ただ一人、羽入を除いて。
おずおずと、羽入が口に出す。
「ん? どったの?」
魅音が羽入に聞き返す。
羽入は、困ったような顔をしながら、言い出しずらそうに、口を動かす。そして深く息を吸い込んだあと。
「みんなは、本当によかったのですか?」
そう言った。
「よかったって……何がだよ?」
圭一が羽入に尋ね返す。
「みんなは、スネークを助ける。それが目的でここに来ました。……僕も、最初はそれが正しいと思いました。けど……、本当に、それでよかったのですか?」
羽入の声は、震えていた。
それは言葉として出してはいないけれど、皆には十分伝わった。
羽入は――、いや、ここにいる全員は、死ぬことについて、どう思っているのかと。
「正直に言います。僕は……怖いです。さっきの戦闘も、これから向かう先で起こることが何かわからないのも。さっきのような戦いがまたあれば、今度は、誰かが死んでしまうかもしれない……、そんないやな考えが、ずっと頭の中を駆け巡っています」
羽入の心配は、ここにいる全員の不安を代弁するものだった。
「スネーク、……先生は、潜入のプロだと、ジョニーさんも言ってました。それなら、僕達が行っても、かえって邪魔になるかもしれません。それなら、いっそ、ここで引き返すということも……」
「……それは駄目だよ。羽入ちゃん」
羽入の言葉を、レナが打ち消す。
「え……?」
「ああ、レナの言うとおりだぜ」
圭一がレナの言葉を取り次ぐ。
「なあ羽入、……確かにスネークは潜入のプロだ。“気付かれずに敵地に入る”ってんなら、一人で十分だろ。けどな……」
「……けど?」
「ここは俺達の雛見沢で、俺達が暮らしてる場所だ。だから俺達が、ここで起きたことを見届けないでどうするってんだ?」
雛見沢の人間だからこそ、この先の未来を見届けたい。そう、圭一は決意の篭った眼差しで言った。
「……で、でも、そのためにみんなが犠牲になったら……」
「それにね、羽入ちゃん。レナ達に隠れられる場所なんて、どこにもないよ?」
「え?」
「そうだね。私達はどうであれ、スネークと同じ敵に歯向かった。それなら、敵がこのまま見逃すとは思えない。家に帰って日常に戻るなんてことは、この戦いが終わらない限り訪れない」
魅音が、自分たちの状況について口を挟んだ。
「そ、……それなら、魅音さんのお家の地下室に篭って、じっとしているというのは」
「……それも無理だ。あれだけの力を持った敵だよ。その戦い方は通用しない」
どんな巣穴に隠れようとも見つけ出される――さながら、猟犬に睨まれた兎のように。
「だからこそ、私達から攻め込んだんでございましょう?」
挟み撃ちを避けるために来た道にトラップを仕掛け終わった沙都子が、にやっと笑って言った。
「その通りだよ沙都子。向こうは私達を子供の集まりだと思っている。そこが私達の最大の強みさ」
「ああ、そんな間違った認識しか持ってないってんなら、そいつは改めさせてやらなきゃな。俺達はただの子供じゃない。雛見沢最強の一個戦隊だってことをな」
私と、羽入以外の全員が、笑顔で答えた。
「……はい。僕は、みんなを信じてます」
それは、羽入の……いや、私達の不安を掻き消すのに、十分すぎる力だった。
私は羽入の傍に近づいて、そっと囁く。
「ありがと、羽入」
「なんのことですか?」
「あなた、みんなが不安を隠してないか知りたくて、あんなこと言ったんでしょう?」
「……怖いのは事実ですよ。それよりも、みんなが意外なほどしっかりしていて、そっちのほうがびっくりしたのです」
不安を持つ――それは、私達にとって、致命的なこと。
雛見沢症候群を引き起こす可能性を広げるものだ。
だから羽入はそれを知りたかった。この戦いにおいて、その致命傷をもつ者がいるのかと。
しかし――、それは杞憂に終わったようだ。
今のところは。
「待ってくれ皆、ここで少し休憩しよう」
通路の先頭に立って歩いていたジョニーが、急に立ち止まり、全員に対してそう言った。
「休憩? どうして?」
魅音がジョニーに尋ねる。
「魅音、察してやれよ……」
圭一が魅音の肩に手を置いて言う。
「え? え、あ、あーー、そっかそっか。……ど、どうぞごゆっくりー」
「え? あ、ああ、そう」
ジョニーはそう言いながら、居住区の一室に入っていく。
圭一達は知らなかったことだが、ジョニーはその時、トイレではなく。
すでにその部屋には、入江と富竹、そして赤坂が入っていた。
「ジョニーさん、貴方に言われたとおり、集まりましたが……何かあったんですか?」
入江がジョニーに尋ねる。富竹も赤坂も、その内容について耳を傾けた。
「ああ、実は、……“あぶらぜみ”の通信が途絶えたんだ」
「それは、本当ですか?」
今度は富竹が尋ねる。
「本当だ。向こうの通信機が全く作動していない。それはつまり――」
「すでに、彼らは全滅している……と、いうことですか」
赤坂が言った言葉に、入江と富竹の表情は悲痛なものになる。
「それなら、このまま先に進むというのは」
「敵と遭遇する可能性が高い。だから別ルートで迂回しようと思う。それと――」
「それと?」
「これだけの大人数だと、敵に遭遇した時に不利になる場合がある。だからここからは分散して進んで、後から合流しようと思う」
「……確かに、僕達は少々多すぎる。敵地ではあまり良い編成ではないな」
富竹がジョニーの意見に賛成した。
「しかし、子供達は納得するだろうか」
赤坂はそう言うが、他に良い代案があるわけでもない。
「子供達には納得してもらうしかない。分散するといっても、少しの間だけだし、そんなに心配することでもないと思うんだ」
「そうですね……」
赤坂が納得すると、入江がおずおずと手を挙げた。
「あの……それなら、少しお願いがあるのですが」
「なんです? 入江二佐」
「すいません……軍籍で呼ばれるのは慣れてないんですが……まあそれはともかく、実は、寄り道したいんです」
「どこです?」
「この居住区……つまり人がいる場所なら、必ず医務室があります。……そこに」
「入江先生……まさか」
富竹が察したように、入江に声をかける。
「はい。……雛見沢症候群の抑制薬を手に入れたいんです」
「雛見沢……症候群?」
ジョニーが聞き返す。
「ええ、一種の風土病です。過度の恐怖や不安が、パニック障害をはじめ、様々な症状を引き起こします。このような極限状態なら、誰がいつ発症してもおかしくないんです。……だから」
「先生だけでは危険です。……僕も行きますよ」
富竹がそう言うと、入江は。
「いえ、富竹さんを巻き込むわけには」
「なに言ってるんですか。お互い仲良く拘束されてた仲じゃないですか。ここまで来たら一蓮托生ですよ。それに、僕も試したいことがあります」
「それは?」
「“番犬”への連絡です。通信網が遮断されていたとしても、敵の中枢ならそれがないかもしれません。試してみる価値はありますよ」
「それでは……」
「ええ、僕は通信施設へ。入江先生は医務室へ。赤坂さんとジョニーさんは子供達と一緒に先へ向かってください」
富竹の提案に、赤坂はゆっくりと頷く。
「わかりました。気をつけてください」
「そちらこそ」
赤坂が差し出した手を、富竹が握る。
その上にジョニーが手を載せ、最後に入江が手を置いた。
――必ず、生きて、また会おう。
男達の約束は、それで十分だった。
「はいはーい! それじゃみんなでくじ引くよー。赤い印があった方がAチームだからねー」
魅音の仕切りで、私達は2つのグループに分かれる。
そのほかにも、入江と富竹は別な目的で動くようだった。
「監督ー、富竹さんもまた捕まらないでくれよー!」
「ははは、……そうだね。今度はそうならないようにするよ」
「僕達にも何人か兵士の人達がついてくれます。圭一君達こそ、気をつけてください」
「わかってるって! じゃ、また向こうで会おうぜ!」
「うん! じゃあまた!」
手を振って、お互いに別の道へ向かう。
この先、どんなことがあろうと。
私達は全員で彼の元にたどり着く。
そう、強く決意していた。
……決意、していたんだ。
以上、◆k7GDmgD5wQ氏の文章でお送りしました。……最近投下できなくてすみません。
氏のレスにもありました通り、これからは二人で本編を進めて行くことになります。ノシ
リアルタイムで投下を見れたのは初めてかも
両氏とも乙です!
保守
TIPS:「桜花」
新型メタルギアがある地下施設。その施設の中でも、さらに奥の最下層、開発区。
この地を破滅に導くであろうその兵器の中に、「彼女」――「永久機関」を制御する人工知能「桜花」の意識はあった。
彼女は、じっと待っていた。
自分だけの力ではメタルギアを動かす事が出来ず、機能を破壊することすら出来ない。
「父親」一人すら、助けることが出来ない。
その二つの願いを、同時に満たしてくれる存在――ソリッド・スネークが現れる事を待ち望んでいた。
彼や「父親」が所有している無線機や、施設に取り付けられた電子機器を通じて、施設内の状況を把握しつつ、待っていた。
彼を待ちつつ、彼女はある事を考えていた。
『……わたしは機械』
自らの足で立って、物事に干渉することが出来ない。感情らしきものがあったとしても、それは偽りのもの。
そう、理解していたはずだった。
『なのに、この感覚は何……?』
開発区から離れた、さらに上にある、施設の入り口付近。新たな“侵入者達”が、施設の奥へと進んでいた。
彼女は、彼らはスネークの任務の障害になるだろうから、正直に言って邪魔だと思っていた。
だがしばらくして、彼らが奥に進むにつれて。
……彼女が彼らに意識を向けると、“感情”のようなものが、ざわめくのを感じた。
あえて形容するならば、それは「懐かしさ」という名の感情だった。
自分は数年ほど前に生み出された「人工知能」。まともに会話したのは、生み出した「父親」だけ。
その「人工知能」が、「懐かしさ」など覚えるはずも無い。
桜花は、自分から生まれた新たな感覚に戸惑っていた。
潜入してきた彼らの中にいる、一人の少女。
桜花を戸惑わせている感覚は、その少女からもたらされているものだった。
――子が親を殺し葬らなければならぬとは聞いたことがありませぬ。
――我は人にあらず。我は鬼であり、乱れし世の災厄を引き受け、人心の乱れをその身で祓うのがその使命。
――なぜ人の世の罪が、母上ひとりに背負わされなければなりませぬか。
あるはずの無い、昔の“記憶”。
――人は罪に溺れながら生き、それを誰かに押し付けねば生きてゆけぬ。
我がそれを背負い、人が祓うことで、人は人を疑い争う宿命から解放される。
全ての罪と穢れを、業と呪いを我が身に。我を討ち、祓い、沢に流し、沼に沈めなさい。
人の身に負わせるようなことがあっては、人は疑心の鬼から解放されぬのだ。
――わかりませぬ。わかりませぬ母上。
母上には確かに角がありますが、角があろうとも、私にとって母は人以外の何者でもありませぬ。
――我が子よ、お前だけがそう言ってくれる…。皆がどれほど私を罵ろうとも、お前だけが私を人だと言ってくれる…。
『「母上」なんて……いないはずなのに。……でも、あの人は……?』
ある光景が浮かぶ。自分が知るはずのない光景が。
鬼ヶ淵沼。その側にはたくさんの村人。
沼に背を向けて立っているのは、角が生えた鬼神。
その鬼神に向けて、枝を垂らす柳のような剣を向けているのは――。
『わたしは――……私、は…………?』
思考にノイズが入る。
人工知能は、そこで考えを中断した。
『……何だったんだろう……。バグ、じゃないみたいだけど』
何者かが桜花のプログラムを妨害している様子でも無かった。
敵意も障害も見あたらず、ただそこに残ったのは“感情”だった。
懐かしさに似たもの、そして何かを思い出さなければならないと言った使命感。
うーん、何だろう、と彼女は考えるが、それを答えるものは何も無かった。
ただ一つ、言えることは。
『今度から、“こっち側”も気にしてあげなきゃね。……邪魔者扱いは出来ないみたいだし』
新た“侵入者達”――圭一達を“見”ながら、彼女はそう決断した。
約一ヶ月ぶりの投下となってしまいました。
以上ですノシ
本編乙。
投下します。
ちょっと長いので、途中で区切ることになりそうです。
――部屋を後にする。
本当に、ここ雛見沢での任務は……厄介なものになりそうだった。
それでも、先に進むしかない。
先ほどの映像では、圭一達はまだ居住区にいる。
しかし、今から引き返しても合流出来るかどうかはかなり怪しい。行き違いになる可能性の方が高い。
一刻も早く、メタルギアを破壊するためにも、今はただ施設の奥深くへと向かう。
……圭一達が捕まらないだろうか、という不安もある。
だが彼らは、大勢の“仲間”を引き連れてきたようだった。
それに、圭一達なら、“ブカツ”メンバーなら、きっと捕まらないはずだ、という希望的観測もあった。
――彼らを信じるしか、無い。
あいつらは俺を信じている。なら、俺もあいつらを信じよう。
通路を曲がる。すると、桜花が言っていた通り、開けた場所に出た。
やはり兵士が巡回している。右奥の方に目を向けると、扉の横に兵士が一人立っていた。
あそこが研究区への入り口なのだろう。
辺りをもう少し観察する。監視カメラが壁際に取り付けられていた。死角を利用すれば問題は無い。
後は、兵士を排除して地下へと向かうだけだ。
足音を立てないようにして進む。すぐ近くに、辺りを見渡している兵士がいた。
CQCを仕掛けられる間合いに入った瞬間、俺は兵士の肩を掴んだ。
そして体を反転し、勢いを利用して、兵士を近くの壁に叩きつけた。
兵士はカエルのように壁に張り付いて、情けない声を出した後、床に落下し、意識を失った。
昔、訓練中にこれをやられた事があるが、壁にぶつけられるとかなり痛い。しばらくは起きられないだろう。
残ったのは、監視カメラと扉の横にいる兵士だけだ。
監視カメラはゆっくりと左右に動いている。カメラがちょうど向こうを向いた時、走り込んでカメラの真下に移動した。
カメラが反対側に首を向ける。それとほぼ同時に、俺は監視カメラの視角に入らない位置へと移動する。
扉の横の兵士は、その場所からずっと動かなかった。
先ほどのように音でおびき寄せるか、一気に行くか、それとも麻酔銃を使うか考えていると、兵士の様子がおかしい事に気づいた。
まっすぐ立っていないく、膝が笑っていて、更に頭が前後に揺れている。時折はっとして顔を上げるが、また船をこぎ始める。
半分寝ているようだ。銃をホルスターにしまい、ゆっくりと近づく。
兵士が顔を上げたが、遅かった。地面に投げ飛ばし、彼は気絶という名の眠りについた。
侵入者が来たという連絡は兵士達に聞かされているはずだが、侵入者が確実に来るはずの階段前で何故居眠りなどしていたのだろうか?
たまたまこいつが不真面目だったのだろう、と結論づけて、扉に近づく。自動でドアが開いた。
そして、階段を下り、研究区へと向かった。
くじ引きの結果、部活メンバーは綺麗に半分に別れた。
Aチームには、魅音、圭一、沙都子、そしてジョニーがついて行くことになった。
Bチームはレナ、私、羽入、それと赤坂が来てくれる。
両チームとも、他の兵士や山狗たちがついている。こちらには赤坂という強力な存在がいるが、戦力にそこまで偏りは無い。
部活メンバーがちょうど半々になったのも、まあ、魅音の仕業だろう。私はおもちゃ屋での事を思い出した。
「くじびきは全員終わったね。よし、ここからは二手に分かれて行くよ。決して無理はしないで、単独行動は絶対にしないこと!
赤坂さん、何かあったら無線して下さいねー! こっちからも連絡しますから」
無線機を持っている赤坂が頷く。
通路がちょうど二叉に分かれていた。魅音たちは右側の通路を、私たちは左側の通路を進むことになった。
「じゃあここでお別れだね。後で合流しよう!」
「うん、魅ぃちゃんたちも気をつけてねー!」
「ジョニー、くれぐれも漏らさないようにして下さいなのです」
「さ、流石にそれは無いさ。……多分」
「もう、レディの前でそんなはしたない事をしたらお仕置きですわよ!」
「あぅあぅ、とにかく気をつけて下さいなのです」
「おう! みんなも油断するんじゃねーぞ!」
お互いに励ましの言葉をかけあって別れを告げる。
皆、進む先に希望があると信じて疑っていなかった。
私たちなら、きっと彼を、雛見沢を助けることが出来る、と――。
◇
魅音たちと別れてしばらく進んだ後。
いったいどうしたら彼を見つける事が出来るのか、と私は考えてみた。
彼は私たちがここに来ていることを知らないだろうから、目的達成のためにひたすら進んでいることが考えられる。
けれど、敵を避ける為にそこら辺の部屋に隠れて、ダンボールに紛れ込んでいる可能性も否定出来ない訳で。
彼がいたという手がかりも見つけられず、捜索は困難だった。
「こっちの部屋も入ってみよう」
先陣を切る赤坂がそう言って、部屋のドアに近づいた。
この施設のドアは、自動で開くものが多い。もしもの事があったら、瞬時に臨戦態勢を取ることが必要だった。
赤坂が格闘の構えをしつつ、部屋に接近する。何名かの兵士が周囲をカバーした。
一瞬の間をおいて、赤坂が一歩踏み込んだ。ドアが機械的な音を立てながら開く。
すぐ様、赤坂と兵士たちが突入した。私のいる所からは、中の様子がよく見えない。
やがて、入ってもいいという合図があった。私、レナ、羽入と背後を警戒していた兵士と山狗が部屋に入る。
「ここは何の部屋かな、かな?」
「たぶん、休憩室なのです」
レナの疑問に対して、羽入が答えた。
部屋にはソファーにテーブル、テレビ、色々な雑誌が並んでいる本棚、ベッドまであった。
ここの兵士たちが利用しているのだろう。しかし、この部屋には人がいなかった。
「あ! あれってもしかして……!」
突如、レナが声を上げて棚に近づく。
背伸びをして、棚にあるインテリアか何かを取ろうとしていた。
その時――、棚の近くにあった、別の部屋へと通じる扉が開いた。
見知らぬ兵士がこちらの存在を認識し、声を上げようとする。
一番近くにいたのはレナだ。……レナが危ない!
だが、赤坂が動くよりも、兵士が叫ぶよりも早く。
――目的の物を取った彼女は、動いた。
スパパーン!
実に素早く、軽快な音がした。
レナはいつの間にか扉の前に移動して――、拳を掲げていた。
彼女の左手には、カエルの人形らしきものが握られていて。
彼女の目の前には、ついさっきこちらに入ってこようとした兵士が、仰向けに倒れていた。
……誰が、やったんだろう。赤坂も兵士も山狗も、その場から動いていない。
それは、私も羽入も同じことだった。
ということは……レナがあの兵士を、倒したの?
「何だ!?」
反対側の部屋から複数の足音がした。
私たちが状況を把握する前に、またもやレナが動いた。
「はうぅ〜!!」
そう、レナは「かぁいいもの」を発見した時と、同じようなテンションで喋り。
「ケロタン、かぁいいよぉぉぉ! おっ持ち帰りぃぃぃぃー!」
素早い拳や膝を、容赦なく兵士たちにお見舞いしていた。
「落ち着け、敵は一人だ!」
「だ、駄目だ撃つな! 狭い室内では跳弾して味方に当たるぞ!」
ここからはよく見えなかったけど、敵の兵士たちの焦った声と、何かがぶつかる音、人が地面に倒れる音がして。
赤坂や兵士の出番はほとんどなく、部屋の制圧は――あっけなく終わった。
◇
「まさかレナの『かぁいいモード』がここでも通用するとはね……」
「……レナも凄いですが、敵もかなり間抜けなのです」
レナにやられて気絶した兵士を拘束しながら、私と羽入はそう呟いた。
危ない状況だったとは思うが、彼女のおかげで、勝てた。
レナが部屋で手にしたのは、彼がおもちゃ屋でプレゼントしたのと同じカエルの人形――「ケロタン」だった。
どういう訳か、そのケロタンはここの休憩室に飾ってあって。
さらにそれは、この部屋と隣り合ってる部屋にもあったらしくて。
結果、彼女はそれを「お持ち帰り」しようとして、大暴れした――という訳だ。
部屋が狭くて、向こうが銃を上手く使えなかったことと、こちらを所詮「子供」だと見くびったことがこっちの勝因だ。
……勿論、レナがここぞという時で強いのも、原因の一つだ。
そのレナは、机の上にケロタンを並べて、軽く指でつついていた。
げこげことケロタンが鳴き声を上げる。それを見て、はぅー、かぁいいよーと喜んでいた。
ここが敵地であることを忘れそうなほど、平和な光景だった。
「……あの人形、敵の陽動に使えるかもな」
赤坂がぼそりと言った。あのケロタンにそんな活用法があったとは……。
「じゃあ、お持ち帰りしてもいいですか?」
レナが真剣に、かつ目を輝かせて赤坂に聞く。
赤坂はやれやれと言った感じで、
「……分かった。ただし、さっきみたいに一人で行動しちゃ駄目だ。何があるか分からないからな」
「……すみませんでした。ありがとうございます」
彼女はぺこり、とお辞儀をする。
「レナはすごいすごいのです。ぱちぱちぱち〜」
「ありがと梨花ちゃん。……でも向こうが油断してたから、勝てたんだよ。私の力だけじゃ無理だった」
「そうしたら赤坂たちがやっつけてくれますです。だから、僕たちはきっと大丈夫です!」
「みー、さっきと言ってることがまるきり反対なのです」
「あぅ、それはその……僕は、みんなが戦い抜くという強い意志を持っていることを知ったので……」
「私たちには、仲間がいるからね。仲間がいれば、みんな強くなれるよ。……ありがと、羽入ちゃん。みんなで、先に行こうね」
そして、私たちは部屋を後にした。
ちょっと中途半端な所ですが、規制が怖いので以上です。
後半は近日中に投下できると思います。ノシ
投下お疲れ様!
規制解除記念で乙る
投下乙
レナパンつよし!
ガーコとかでも反応しそうだなレナはw
「医務室」と書かれたプレートの前に陣取った兵士達が、目で合図を交わす。
そして、一斉に中へと突入した。
クリアリングを終えた後、外に待機していた者達も医務室の中へと入った。
入江が辺りを見渡す。薬品の独特な臭いが部屋中に立ちこめていて、薬品棚がたくさん並んでいた。
「少し待っていて下さい。症候群の抑制薬を探します」
「分かった。俺達は外を見張ってくる」
何名かの兵士が外に出て、残りの兵士も、手伝えるのならと薬品棚を開けた。
しかし棚には様々な種類の医薬品が並んでおり、素人目にはぱっと見では分からない。
地道に探すしか無い、と入江は怪我の治療に使える薬を手に入れながら考えた。
だが、その思考は外から聞こえた銃声によって打ち破られた。
「何だ!?」
兵士達がいっせいにドアを見る。
複数の銃声。悲鳴。複数の足音。外で異変が起きているのは明らかだった。
何か重いものが地面に倒れる音。そして。
「……クリア。突入する」
外から冷酷な声が聞こえた後、扉が開いた。
扉の外にいたのは――見慣れない、兵士。
彼らは外を見張っていた仲間では無く、ここを警備している兵士でも無かった。
第三の勢力である兵士は、中に向けて何かを放り投げる。
かつん、と放り投げられたそれは音を立て、入り口のドアは自動で閉まった。
投げられたのは――グレネードだ。
「伏せろ!!」
入江の近くにいた兵士が、判断が遅れた入江を咄嗟に突き飛ばす。
強い閃光と音が部屋を満たした。投げられたのは、音と光で敵を気絶させるスタングレネードだった。
それでも、投げられた側は多大なダメージを受ける。
気絶を免れた兵士が耳をつんざく音に顔を顰めながら、近くにあったテーブルをひっくり返した。
それとほぼ同時に、部屋の外に居た兵士達が突入してきた。
銃が一斉に火を噴く。グレネードの影響で立つこともままならなかった者は、凶弾の前に斃れてしまう。
だが、兵士が咄嗟に倒したテーブルがある程度バリケードの役割を果たした。
銃弾はテーブルを凹ませ、薬品棚のガラスを割り、破片を飛び散らせる。
「ぐっ……」
入江は気絶こそしなかったが、影響がまだ残っていた。目を閉じて頭を振り、意識をはっきりさせようと試みた。
なんとか復活した兵士が銃を持ち、入江に言う。
「……俺達が弾幕を張る。あんたは逃げろ!」
兵士が指差す方には、別の通路へと通じるドアがあった。
「しかし、それでは……」
「あんたに死なれたら、皆が困る。……だから早く逃げてくれ!」
叫ぶと同時に、その兵士は敵に向けて発砲した。
敵は部屋の外へと避難する。が、隙を狙って室内に発砲して来る。
向こうの方が大勢で、こちらはすでに戦闘不能になった者もいる。――相手に比べて、入江達は不利だった。
「……すみません!」
入江は小さく叫び、もう一方のドアに向かって走る。
敵は追撃しようとしたが、生き残った兵士たちが全力でそれを阻止した。
別行動しているジョニーの元に、通信が入った。
周りに敵はいない。ちょっと待ってろ、と圭一達に声をかけ、少し離れた所に移動する。
『こちらAチーム。どうした?』
『……ジョ、ジョニーさん。……私です』
聞こえてきたのは、息も絶え絶えな入江の声だった。
ジョニーは無線機を手で覆い、小声で叫ぶ。
『どうした! 負傷したのか!?』
『わ、……私は無事です。ですが、……敵の襲撃に遭いました』
息を必死に整えつつ、入江は続ける。
『……私だけ先に逃がされたので、今、医務室の近くにあったロッカーの中に身を潜めています。
敵とはまだ交戦中です。……ここから、まだ銃声が聞こえます。しかし――何人かは既に、犠牲に……』
『……くそっ。こっちから何人か、応援を送る。それまで死ぬな!』
『ありがとうございます。……ですが、くれぐれも子供達を第一優先で守ってあげて下さい。それと――気になることがあります』
『何だ?』
ジョニーが促す。
『私達を襲撃してきた敵の事ですが、……彼らは、ここの兵士ではありませんでした。服装や武器が、彼らのものと違いました』
『それは……どういうことだ?』
『……分かりません。私達以外にも、ここに来ている“敵”が、いるのかもしれません。……ジョニーさん、心当たりはありませんか?』
『すまない……。俺は末端の兵士だ。ここにいる真の目的も、“何”が敵なのかも知らされていないんだ……』
『そうですか……。とにかく、第三者にも気をつけて下さい。挟み撃ちにされる可能性があります』
『沙都子、って子が後方にトラップを仕掛けてくれているからな。……大丈夫だと思いたい』
ジョニーは、楽しく会話をしている子供達を見つめながら、そう言った。
『子供達には、……遠回しに伝えておく。襲撃があって何人かが怪我した、ぐらいにしておく。
あぶらぜみの全滅の事や、襲撃で死んでしまった兵士達の事は……まだ隠しておこう。……奴らの分まで、俺達が生きよう』
『そうですね……。まだ死ぬわけにも生きませんし、子供達も死なせてはいけません。色々と気を遣わせて申し訳ないですが、よろしくお願いします』
『気にするな。別れたチームと合流するのを早めるよう、提案してみる。……無理はするな。死なないでくれ』
『はい。子供達をどうか、よろしくお願いします』
それぞれの決意を胸に、男達は通信を終えた。
ロッカー内は暗くて狭く、何も見えない。
……けれど、時折響く銃声と叫び声が聞こえるから、戦闘はまだ続いていることが分かる。
緊張と暑さから、じわりと嫌な汗がにじむ。入江は今すぐに、ここから飛び出したい衝動にかられた。
……しかし、自分が行った所で…………、何もできない。
銃を扱った経験は無い。あの場に残ったとしても、足手まといになるだけだ。
戦場において、医者は後方で負傷兵を治療するもの、と相場が決まっている。
医者が前線に飛び出しては……、意味が無い。
理屈では分かっていても、入江は、やりきれなさを感じずにはいられなかった。
応援を呼んだのはいいが、加勢が“間に合う”保証も無かった。
不意に、鳴り続いていた銃声が止み、辺りが静寂に包まれる。
入江は息を潜めた。先ほどとはうって変わって、……何も聞こえない。
ロッカー付近には人の気配が無い。そっと、扉を押し開ける。
近くには、誰もいなかった。慎重に医務室へと近づいてみる。
……ドアの手前まで来ても、やはり静かだった。
意を決して、入江は一歩踏み出した。
「…………っ!!」
――目に飛び込んで来たのは、見るも無惨な光景だった。
清潔でひっそりとしていた医務室の面影は、どこにも無かった。
薬品棚はどれも無惨に破壊されている。その場に残った銃弾の跡から、戦闘が激しかったことが伝わってきた。
――そして、部屋にはたくさんの人が、倒れていた。
誰も動く者はいない。
襲撃してきた兵士の一部も、血をまき散らして倒れている。
……入江と共に行動してきた兵士達も、それは同じだった。
「誰か……、……私の声が聞こえたら…………返事をして下さい」
絞り出した言葉は掠れていた。
全滅。相討ち。嫌な単語が頭の中をぐるぐるとかき回す。
そうであって欲しくないと願っていたから、入江は呼びかけた。
「……無事、…………だったか」
その願いは叶った。
入江は声を出した兵士の元に駆け寄る。生きていた。全滅では、無かった。
その兵士は肩を撃たれ、出血していた。入江は救急用具を取り出し、兵士の治療に取りかかる。
「今治療します! 動かないで下さい」
「俺は後でいい。……もっと重傷の奴を診てやってくれ」
兵士が部屋に呼びかけると、数名が反応を示した。頭から血を流している者もいる。
入江は辺りを見渡し、治療を最優先すべき者をいち早く判断した。今ならまだ間に合う。……必ず、助ける。
比較的軽傷だった兵士が、ぽつりと呟いた。
「しかし、……何だったんだ、あいつらは」
敵は、殲滅しきれなかった。どうにか敵に痛手を与えたから、敵が退散したに過ぎなかった。
戻ってくる可能性もある。……だが、それよりも気になる“奴ら”の正体が彼には分からなかった。
奴らは躊躇無く攻撃し、部屋に突入する時もためらいは無かった。
――その様子はまるで、この施設を制圧する事が目的であるかのようだった。
だが、今は誰も、“敵”の正体を知る者はいなかった。
一方、通信施設では、富竹達が敵を制圧していた。
気絶した兵士を余所目に、富竹は通信機器へと近づく。
居住区の一帯を管轄しているらしく、たくさんのモニターがあり、監視カメラの映像を映し出していた。
かなり大がかりな設備だ。外部へと連絡するには十分だった。
通信機を手に取り、富竹は「東京」へと通じる番号を入力する。
番犬という部隊の性質上、出動には上層部の許可がいる。
だが今、こうした緊急事態が発生している以上、すぐに許可が降りるだろう。
呼び出しのコール音が鳴り響く。
……通信網が完全に遮断されてしまっているのならば、それは鳴らない。
つまり、敵の施設からは、番犬への連絡が可能だと言う事だ。
いけそうだ、と富竹は思った。
自然と通信機を握る手に汗がにじむ。
プツッ。コール音が途切れる。
――繋がった。もしもし、と富竹は呼びかける。
しかし――返事が無かった。
確かに繋がったはずなのに、今は通じている気配が、無い。
「……まさか」
冷水を頭から浴びせられたような感覚に陥ると、モニターが一斉に暗くなった。
だが、それは一瞬の事で、今度はモニターにある人物が映し出された。
全てのモニターが、ある一人の老人を映し出す。
その人物は、こちらの方を見て嗤った。
まるで、全ての行動が、見透かされていたかのように。
老人――リボルバー・オセロット――は、人差し指を立てた。
チッチッチ、と挑発するように指を振る。
そして、先ほどと同じく唐突に、全てのモニターが暗くなった。
「くそっ、やられた!」
富竹が壁に拳を叩きつける。
あと少しだった。あと少しで――救援が要請出来た。なのに、寸前で妨害されてしまった。
妨害した人物は、おそらく敵の幹部クラスの連中だろう。
外国人のようだったので、入江が言っていた「オセロット」という人間だと、富竹は推測した。
「……連絡が取れなかったが仕方ない。敵が応援を送ってくるかもしれないから、とにかく移動しよう」
富竹はやっとの思いで言葉を絞り出す。状況をただ見守っていた兵士達も、頷いた。
――せめて、子供達は無事であってほしい。
彼らはただ、そう願うしかなかった。
「……ああ、そうか。分かった。幸運を祈る」
ジョニーが通信を終える。
「今度は誰からだ?」
「富竹チームからだ。……目的は果たせなかったらしい」
「うーん、そう上手くは行かないか。……そっちのチームとの合流も、早めた方がよさそうだねぇ」
魅音が腕を組んで思案する。
入江達が襲撃にあった事も聞いたので、チームの再編成の必要性を彼女は感じていた。
合流して、戦力が均等になるよう、改めて分担しなおす。
魅音達は、居住区の最下層の方まで進んでいた。この下にあるのが研究区だという事も聞いている。
研究区で一旦集合にしようかな……と考えていると、ジョニーが声をあげた。
「どうしたんだ? またトイレか?」
「違う! ……とにかく来てくれ」
子供達が駆け寄る。そこには、兵士が物陰で気絶していた。
「この方がどうかいたしまして?」
「……俺達はまだここに来たばっかりだ。先遣隊もこのルートは通ってない。なのにこいつは気絶している。
だから、俺達より先にここに来て、こいつを気絶させた奴がいるはずなんだ」
魅音達は顔を見合わせる。各々が思い浮かべている人物は、同じだった。
「スネークだ!」
ジョニーは頷く。
「あいつは先にいるはずだ。多分、まだ遠くには行ってない。研究区で会えるかもしれない」
「よし、それなら研究区の入り口で、監督と富竹さん達と合流しよう。それからまたチームを分ける。みんなはそれでいいかな?」
「異論は無いぜ。それからスネークをしらみつぶしに探せばいいんだ」
「じゃあ決まりですわね。ジョニーさん、他のチームの方への連絡をお願いしますですわ」
「了解だ。ちょっと待っててくれ」
彼らは、先に進み続ける。
――その先に待っているものが、何であったとしても。
ひぐらしチームの後編は以上です。ノシ
うおーこういうシーンも好きだー
270 :
メサルギア:2010/07/21(水) 03:17:53 ID:dqUO0hTb
俺は全て話した
「信じられない」
「ああ、信じられない話だ、だが俺がここに居ることが何よりの証拠だ」
「これからどうするつもりだい?」
「俺はこの村を戦場にはさせたくない、だから俺はもう一度蛇に戻る」
「・・・スネーク」
すまないBIGBOSS、あの日、あの場所で俺は銃を二度と握らないと俺はあんたに約束した
「戦うんだなスネーク」無線から懐かしい声が聞こえた
「キャンベル大佐か!!」
「久しいなスネーク」
「大佐もいるのか?」
「ああ、後でメイリンも着く予定だよ」
「君は一人でじゃないスネーク」
「・・・ああ」
「オタコンこの村の情報を頼む」
「もうついてるさ、その村での悲劇は全て君が言っていた梨花と言う名の少女とその周りが大きく関係しているみたいだ」
「その少女が死ぬと悲劇が始まるカラクリになっているらしい」
「敵の情報は?」
「東京の事だね、それも調べはついている」
「東京は愛国者が生まれる前、賢者の一部だ。山犬という実行部隊が裏で暗躍しているみたいで、敵もそれなりの兵士みたいだね」
「状況は悪いな」
「いつものことじゃないかスネーク」
「ああ、こんな状況は初めてじゃない」
「ではミッションだ、スネーク」
『敵を明確にし排除しろ』
「了解だ」
「また情報が入ったら連絡するよ、それとこの無線は一方通行でそちらからはかけれないんだ」
「なんでだ?」
「原因が分からないんだ」
「わかった時間を合わせろ、今こちらの時間はマルサンマルマル時、定時連絡はマルヒトマルマル時だ」
「了解」
「では切る」俺は後ろに人の気配を感じた
「話は終わったスネーク?」暗闇から少女の声が聞こえた
「梨花か」月夜で顔が明確になった
「梨花待ってください」もう一人少女が現れた
「・・・羽入か」
「なんで知っているんですか?」
「ああ、未来であった」
「羽入は、今までの世界では私にしか見えなかった、だけどこの世界では実現している、これは何かの兆しよ」
「スネークはこれからどうするんですか?」
「しばらくは君たちの近くに居て敵を知りたいんだが」
「じゃあこうしましょう、あなたはこの村に来た英語の先生だけど、来る途中に頭を打ち混乱するが、翌日には治り学校の先生としてくる」
「無茶苦茶だな」
「無茶苦茶なのはこの世界よ」
「スネークだと不振がられるはなんて呼ぶ?」
「デイビットで良い」
「デイビット先生なのです〜」
「スネ、いえデイビット先生、もう少しで夜明けよ、入江があなたを探すわ」
「戻るとしよう」
「装備は私の家に隠しておくから」
「頼む」俺は梨花を家に送り届け、装備を置かしてもらった
「じゃあ、また明日ね」彼女を見届け俺は病院に戻った
民家の屋根から私は彼を見つけた、何年振りの再開か、正確に言えばあの時に彼は死んだはず
俺はあの男にここに連れてこられた
「お前を必要にしているやつが居る」そう言って俺をあのオーロラの中に連れてきた、そして彼を見つけた
『マサカマタオマエニアエルトハナ、スネーク』
乙
そして保守
hoshu
保守
すみません……。
どうやら夏バテ(冷房病?)というものに罹ったらしく、
執筆があまり進んでおりません。
来週中には投下できるように致しますので、どうか待っていて下さると幸いです。
お疲れ様です。
作者の体あっての作品です、
どうかご自愛くださいな