三題噺スレに投下するつもりが1人で盛り上がって暴走してしまいました。
完全なウケ狙いですが、絶賛してくれると嬉しいですw
【郵便】【脇役】【ビー玉】
23時40分。
アパートの郵便受けにチラシやダイレクトメールに混じって黒皮でできた小さな箱が入っていた。
『 選ばれし者 我を見よ
「 ……。」
男は箱を開けた。中には黒地の古紙に赤文字で記されたメッセージカードとビー玉を
ふた回りほど大きくしたような透明なガラス玉が入っていた。
『 選ばれし者 我を見よ 大きな力を望むなら 我を手に
更なる力が欲しければ 友に会い 友と舞い 闇に従え 』
「 何だこれ。いたずらか? 」
男はガラス玉を左の手のひらでコロコロともてあそびながら
意味不明な赤文字を再度読み直した。
「 ひっ 」
男は小さく悲鳴をあげた。ガラス玉の中でどす黒い邪悪な赤が激しく渦巻いた。
「 ! 」
反射的に左手がガラス球を投げ出したはずだった。しかし、まだ男の左手にはガラス玉があった。
手のひらに妖しく輝くガラス玉を乗せたまま男は動けなくなり、まばたきすらできなくなった。
何かが男の体を支配した。
「 やめろ。やめてくれ 」
左眼は男の手のひらにあるガラス玉から目を逸らさなかった。
叫ぼうにも、わめこうにも声が出ない。巨大な万力で締め付けらたように、男の喉は
うめき声すら漏らせなかった。男の左眼が手のひらのガラス玉に向かっていく。
ガラス玉は赤黒く輝いている。薄気味悪く笑っている。
「 嫌だっ、やめてくれ! 」
男の悲哀は誰にも届かない。
じわじわと、そして確実に男の顔面は手のひらに近づいていく。
もう焦点が合わないほどの位置にガラス玉があった。さらなる力が男の頭を押した。
「 やめろーっ! 」
ガラス玉に左眼が押し付けられた。死を思わせる圧迫感が男を襲った。
懇親の力で抵抗するも無意味だった。「 ぐいっ 」ガラス玉を乗せた左手が男の顔面を押しきった。
男の頭の中で何かが潰れる鈍い音が響いた。男の全身が激しく痙攣した
「 がぁああぁあぁああ!!! 」
声にならない悲鳴をあげて男は気を失った。
02時50分。
左眼の異物感に促されて男は目を覚ました。一瞬、ワイシャツ姿のまま床に転がっていることを
男は理解できなかった。
左眼が疼く。違和感が男の記憶を呼び戻す。恐れのあまり思わず手で左眼を覆う。
警笛を鳴らすかのように男の心臓は激しく鼓動する。
「 夢だ。夢であってくれ…… 」
畏怖と恐怖を携えたまま男は鏡の前に立った。そして左手をゆっくりとよせた。
願いは叶わなかった。鏡に写る男の左眼は大粒のルビーのように妖しく輝いていた。
「 ぅああぁぁあああぁぁぁぁ!!! 」
男は叫んだ。その瞬間、禍々しい黒い翼が背中のシャツを切り裂き、おぞましいくさびの
ついた尾尻がズボンを突き破った。
「 ぅああぁぁあああぁぁぁぁ!!! 」
衝動的に男は部屋の窓ガラスに突っ込んでいった。二重ガラスをものともせず男は窓ガラスを
粉砕し突き抜けた。自由になった禍々しい翼は大きく羽ばたき、くさびのついた尾尻は
バランスを保つため左右に振られた。
明けきらない夜の闇の中、あてもなく意味も分からぬまま男は彼方を目指し飛び立った。
東京とロンドン。同日同時刻、2人の男が窓ガラスを破り失踪した。
ニュースにもならない、新聞にさえ載ることのない、ほんの些細な事件だった。
【 悪魔の義眼 】 あらすじ
第一章 「 深紅の左眼 真紅の右眼 」
男は翼に任せるまま飛びつづけた。
そして男は互いに引き合うように1人の物静かな西洋人と出会う。
彼の右眼には、男の左眼と同じような赤く輝くガラス玉が埋まっていた。
2人はそれぞれの身体的異変について語った。普段の生活上では何も問題は無かった。
ただ、得られた能力を使うときは激しく義眼が輝いた。そして何かが起こる直前には
危険を察知する探知機のように鈍く疼いた。
互いの義眼を意識しながらも、行動をともにする二人。ささいな怪奇事件に巻き込まれ
ながらも、義眼の謎を探求していく。
第二章 「 まだ名も無き悪夢 」
義眼の謎に迫るにつれて、2人は得体のしれない不安に苛まれていく。
義眼によって人知を超えた力を得たが、魔の歴史の中では2人はほんの脇役に過ぎなかった。
猟奇的な大量殺人事件が連続発生する。否応無しに2人は事件に巻き込まれる。
犯人らしき4人組を見つけ廃屋に追い詰める。しかしその刹那、4人の両眼が妖しく光り異形の
魔物に変わる。そして2人に魔物達が襲い掛かる。
煉獄の業火を浴びている最中、義眼は2人にけしかける。
「 恐るることは何も無い。求めよ。力を望め! 」
義眼が激しく2人の魂を焦がす。やめろ!戻れなくなる!どこかで声がした。
しかし2人には届かない。限界を超え、理性のたがが外れた。
歓喜と恍惚のおぞましいおたけびが廃屋に響き渡る。義眼に身をゆだね2人は魔物と殺しあう。
そして、狂気の世界から目覚めたとき、2人は驚愕し絶望する。
第三章 「 闇に向かう者 」
「 誰も殺してはいない。俺たちが殺したのは『 魔物 』だ。」
呼吸困難になりそうな壮絶な血の匂いと、人の形をとどめない死体の前で2人は黙り込む。
「 何故こいつらは両眼なんだ? 俺たちとは違うのか? ……俺たちも人を殺すようになるのか? 」
4人の生首はいずれも、ガスバーナーで焼ききったかのように両眼は消失していた。
色の違いはあれど、4人の眼が激しく輝いてそして魔物になった。正真正銘の化け物だった。
2人が殺したのは間違いなく魔物だった。しかし肉の塊となった4人は人の姿に戻っていた。
結果的に人を殺めたという自責の念に苛まれながら2人は日々を過ごしていく。
4人組の魔物を倒した以降、世間を騒がせるような事件はなくなり2人は平穏な生活をしていた。
ある日2人は街で全盲の老婆に話し掛けられる。
「 年寄りの戯言、つまらない昔話だが聞いてくれまいか 」
老婆の家に招かれもてなしを受ける。そしてぽつりぽつりと老婆は語り始める。
2人の義眼は静かに疼き始めていた。
最終章 「 悪魔の義眼 天使の魂 」
ここで力尽きてしまった(面倒になったw)
1:デビルマン落ち(人類滅亡、二人で戦いあって1人生き残り、悪魔or天使誕生)
2:悪魔誕生。を2人、老婆の知恵で阻止。もしくは老婆の知恵、1〜2人犠牲wで阻止→人類平和
3:義眼の主である悪魔は、実は善良な悪魔w 悪い奴らをやっつける為、2人を使って24時間戦っている。
あとは脳内で補正してください。
おわり
投下直後に失礼。
>>34です
連絡遅れてごめんなさい。たくさんの感想ありがとうございました。
自分の武器と弱点を整理してまた頑張りたいです。
104 :
創る名無しに見る名無し:2009/08/29(土) 20:19:11 ID:JYeK6xOo
>>100-102 うわー、まさかの読み手選択オチw
文章が雑(粗筋なのでしょうがないか)で、マンガにありそうなネタだけど
wktk感はあったのでちょっともったいない気がした。
個人的にオチ3はあまりにも少年マンガぽいので、オチ2を希望w
105 :
創る名無しに見る名無し:2009/08/29(土) 21:18:10 ID:DE4BjT9H
>>100 序盤の右眼がつく展開が痛くてドキドキしました
あらすじですが全体的にダークな雰囲気が冒頭と印象と良く合っていて
凄くおもしろそうだと思いました
とりあえず最終章には2を押しますw
雰囲気あるねぇ。
ウケ狙いと最初に言われたので、どこにネタが仕込んであるのかと
思ったら、そういう意味でのウケ狙いかよw
まあ、確かにそういう意味でもウケたけどもw
個人的には、最終章は1と2の合わせ技が見たいかな。
107 :
79:2009/09/03(木) 03:33:14 ID:c198LZeM
>>82-83 亀レスですが有難うございました!とても嬉しかったです、ほくほく。
108 :
創る名無しに見る名無し:2009/09/12(土) 22:31:59 ID:2PujUP75
age
少し傲慢で知識の無い俺が批評してみる。
優しい気持ちとまではいかないけど、手紙に男の切々とした想いは伝わってくる。
ただ俺個人の感覚だと「少し傲慢な〜」じゃなくて「かなり傲慢な〜」の方がしっくり
くる。単に俺が他人から貴様と呼ばれたくないだけだがw
詩や散文、小説をまったく理解していない俺が言うのもなんだけど、このくらいの長さならタイトルを
「少し傲慢な〜」にして詩スレでもいいんと思う。ただ、微妙な長さなので投下前にテンプレで
作品の長さが大丈夫かどうかは確認したほうがいい。1スレで収めるのがいいじゃないかなと思う。
もし詩スレが厳しくても、ここや感想を付けてもらうスレ他に行き場所の無い作品を投稿するスレ
などで今回みたいに前置きしてもらえれば感想や批評はもらえると思う。
小説と呼ぶにはちょっと厳しいので勝手に小説になるよう考えてみる。
キャラ説明文をつける(男:傲慢、不器用、偏屈。女:性格や考え方。どう進めるかによる)
「傲慢で偏屈な男の恋文」にして、今回の文のカタカナを平仮名にし、更に難解な漢字や揶揄を
増やし手紙を女に渡す。
ふられるw(傲慢、偏屈すぎる。手紙意味不明wなど)
両思いになる(傲慢だけど好き。更に難解な返事を男に出すツンデレwなど)
男の後日談にて終了(展開によって冒頭の女の性格を決める)
これぐらいで小説らしきものになると思う。
ついでに、少し傲慢で不器用な男の抗議文、クレーム、陳述書など勝手にシリーズ化w
すいません俺の芸風でついこうなってしまう。
一部を除いて過疎ってるから、ガシガシ投下してましょう。
>>110 具体的なアドバイスありがとうございます。非常に参考になりました。
精進してゆきます。
>>111 そして、このスレの趣旨を勘違いしてしまい申し訳ありません。
批評の意味を勘違いしてしまいました。次回からは適当なスレに投下いたします。
ご指摘ありがとうございました。
>>109読んだよー
ゴメン。意図したものかわからないけど、あまりの不器用で装飾的な麗句に笑ってしまいそうになったw
でも夜中に書いたラブレターってこんな風なんだよなw書いたという設定の男は、確かに不器用だと思ったwでも愛すべき不器用野郎だわ
うん、投下するなら詩スレが良いかもしれない。そのまま投下して、読者が普通の小説だと思って読んでしまうと、ちょっと困るタイプの文章かもしれん
いっぺん半ばまで読んじゃえば面白いんだけどさw難しいなぁ
115 :
109:2009/09/24(木) 22:19:40 ID:AspVizam
>>114 ご感想ありがとうございます。
男に気持ち悪いくらい殺し文句?を並べさせたつもりだったので、その不器用さが伝わってよかったです。
一応これからは、詩スレ、行き場のないスレに投下しようと考えてます。実際何度か投下していますし。
もっと読者に、コンパクトにわかりやすい形式にまとめたいですね。色々書き連ねて精進いたします。
>>109 読んでいて背中がむずがゆくなったので試みは成功していると思いますよー
あえて貴様という言葉を使うことで、逆にこの文章を書いた人が
どんな性格なのか想像したくなって良かったです
117 :
109:2009/09/26(土) 00:19:56 ID:UQ4qf3bD
>>116 ご感想ありがとうございます。
時期はずれの青春みたいな香りを出したかったので、うまくいったようで良かったです。
構成要素は「俺」と「貴様」以外できるだけ取り除いたので、色々想像を膨らませて欲しいですね。
何か予想以上にちょくちょく感想を貰い、嬉しいですねw。本当に。
おこがましいですが、僕も他の作者さまに参考に出来るようなアドバイスを送れるようになりたいです。
知ってるけど射程外のスレだ、読んでみる
でもそんなすぐ読んでレスできないから気長に
120 :
119:2009/10/12(月) 23:13:11 ID:zNEAy3/a
本スレに投下するべきか、迷ったがここにレス
もっとも一週間とはいえ、日が空いたので作者さんがここを見ているという保障はないが――
>>118 原作のゲームを全く知らない自分ですが、楽しんでさくさくと読み進めることができました。
人気ゲームの社会人モノ二次創作というのが、おもしろい発想と感じました。
表現なんかもそれっぽくて雰囲気が出てて良かったです。
主人公の人とか結構渋くて好きなのですが、それにしても考えてみればまだ若い。
元々のものかもしれませんがその渋さももしかしたら過去の出来事との関係かなと感じました。
キャラが結構出たのが心配所ですが、考えてみればまだ序盤で、
話もまだまだ展開していくようですし、あの人数ならむしろ普通かもですね。
これからあのキャラ達がどう話を織り成していくのか、そこが楽しみです。
もっとニコ動のコメントとか外人みたいに大げさに褒めてもいいんだぜ?
創作する場なのだから気持ちを盛り上げることを優先しよう
122 :
119:2009/10/14(水) 15:48:12 ID:08UHS9v3
やっぱそう感じたかw
もっと砕けた感じにすりゃよかったな
123 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/16(金) 03:51:08 ID:D8MgP+un
ニコ厨化の促進はやめれ
つうかニコ動で大袈裟なコメ連投は自演だと思った方がいいぜ。あそこはむしろそういうのを薦める文化だからな
外人っていうか英語圏は言語上の語意量を表現力でカバーする文化だからまた別物だ
ここでは抑えるくらいがちょうど良いよ
突き放さない程度の優しさが一番育てる
各々好きにやりゃいいべ
日常で使う語彙の量なんて英語も日本語も変わらんだろ。
表現が大袈裟だったりするのは単純に大陸と島国の違いからくるもの。
汝の為したきように為すがよい。ただし優しくしないと駄目ダゾ♪
と我が神は仰っておられます。
127 :
118:2009/10/17(土) 20:47:59 ID:1H/rVwL0
>>120様
読んでいただき、ありがとうございます!
誰も読んでいないと思っていたので、嬉しくて涙が出そうです
良かった、原作知らなくても楽しんでいただけるよう心がけたつもりです
キャラは、これ以上増やさないでやっていくつもりですが、
はじめから一気に出し過ぎたかもですね
あたたかいお言葉、感謝します
もっとも、これに甘えず精進していく所存です
ありがとうございました
128 :
創る名無しに見る名無し:2009/10/19(月) 21:04:19 ID:AA4yFR0e
来たれッ!
[92]季節外れの凧上げ [sage] 2009/10/16(金) 16:55:14 ID:rT/aS8/R
AAS
どうにも、落ち着かない。
中空に在る我と地上にある彼とを繋ぎ止めているのは一本の糸。
唯それのみである。
落ち着けと云うのが土台無理な話しなのだ。
それにしても。
凧上げといえば正月であろう。
尤も昨今では元日に凧を上げる童子もめっきり見なくなったが――そんな事はどうでも良い。
問題は、何故あの男が斯様な時期外れに凧を上げようと考え、実行したかである。
解らない。
他人の思考など、理解出来よう筈もない。
もし他人の考えが解るという人間がいたのなら、それは思い違いに他ならない。
他人の思いは届かない。
己の思いも届かない。
伝わらない。
圧倒的に隔たっている。
その溝は埋まらない。
永遠に。
永劫に。
永久に。
――だから。
だから、こうして繋がっていたいのか。
隔絶した彼我を。
糸という目に見える形で。
質量を伴った物質で。
しかし、それも。
矢張り我の思い違いなのだろう――
先日某所に投下したSSです
感想を付けにくいSSのようにも思いますが、できるだけ多くの方にご感想を頂ければ嬉しいです
というか全力で構え
嘘です構って下さい
構われたいのであげます
>>129 凧視点ってのがいいね、興味深かった
その独特な口調から、長い間放置されていた凧の雰囲気が感じ取れる
最後で「思い違い」と否定してるから、延々とループできるね、それがまたいい
なんか、色々と深読みしちゃうな。
凧がどういった境遇だったのか、そして男との関係はどういったものなのか、
さらにはこの話の直後はどうなっているのか、これからどうなっていくのか。
色々と気になってしまう。
>というか全力で構え
その姿勢や善し!w構うよ!
>>129 語り手の視線がわかる文章が好きだ。
文中で一切描かれない筈の、”彼”の手の先を追ってふと空を見上げる語り手の姿が、その”思考”のみで表現される文章の中から見えてくる。
語り手はきっと、羨ましいと、そう思ったに違いない。だからこおs、時期外れの凧揚げという”男”の行動から目が離せないのだ。
そこには、かつて”元日に凧を上げる童子”であったころの色褪せてしまったノスタルジィがある。語り手が見ているのは凧でも”彼”でもありはしない。
語り手は”男”を理解できない。それだけが不変の物として、世界の中空に存在する。
糸のない凧は風に飛ばされるだけだ。であれば、今ここに”我”が在れるのは、しかし確かに繋がっているものがそこに存在するためなのだろう。
”元日に凧を上げる童子”は何処に行った? それは形を変えてそこにいたのだ。
なーんて、俺はそんな事を考えたぜ!良い物語だと思うぜ!
134 :
129:2009/10/25(日) 01:42:15 ID:EbT7n/1J
こんな夜中なのに、ありがとう
本当にありがとう
お前らどんだけ良い奴なんだよ涙でるよ
ていうか泣いたよ
なんなら泣きながらだよ
もうなんていうか本当にありがとう
わーーーっ!!!
投下します。
他人の夢の話ほどつまらんもんはないと言いますが、
設定が何となく面白かったので自分の見た夢についてのメモを
小説っぽい形に直してみました。
せっかく作業したので
出来ればふわふわっとした感想を頂けるとうれしいです…
かまんべいべー。
私は(何らかの使命や野望をもって?)『水の国』に迷い込む。
水の国は滑り台などが組み込まれた立体的なプールのような構造をしており、
その名の示す通り、そこで水が流れ続ける為に存在する。
したがって水の流れを堰き止める不要な人間は『水の淀み』という無気力な廃人に、
せめて流れに抵抗をしないよう弱く弱く作り変えられる。
私は自分がそうなった場合のことを全く覚えていないのだが、ある他の人間が
水の淀みになっていく過程についてはじっくりと観察していた。
まず水の国の水は障害物を感知するとたちまち波を寄越してどんなものでも
容易く飲み込んで、覆い被さる下で人間を使い物にならなくするらしい。
あの人の場合は二度波に浚われていた。
はじめに浚われたとき、あの人は一個の赤いりんごになってしまった。
次に浚われるとあの人は以前よりみすぼらしい人間の姿になっていた。
切り揃えられた清潔そうな黒い髪は洗っていないモップを乗せたような鬱陶しい
白髪頭に変わって(なぜか後頭部の耳の下辺りが真一文字に青く染まっていた)、
特に逞しいとは思わなかった印象の薄い元の身体も、水が引いた瞬間に現れた
寝たきりの老人のような、あらゆる筋肉が削げ落ちてぐにぐにと皮膚が弛んだ
身体に比べれば圧倒的に健康であったと断言できた。
ところで私はどうもあの人に連れ出されて先の過程を観察させられたらしい。
更に言えばあの人は私を助け出す為に水の国にやって来たのかもしれなかった。
その頃私はいつの間にかプール脇の木造の掘っ立て小屋の中に引き上げられて、
水の淀みに成り下がってからは日がなぼんやりと寝そべっていた。
ごろごろ転がっていると別の水の淀みの女が私を好きなように扱ってくる。
女はあるときは私の乳首に布を被せて取れないように縛り、小さな真珠を
センスの良い配置で沢山そこに縫いつけて飾り立てていた。
しかし細い糸で絞ったところで私が寝返りでもうてばそんな布切れは簡単に
外れてしまうに違いなく、所詮水の淀みの女がすることは無為なのだった。
掘っ立て小屋の中での記憶はそれ位しか無く、次に思い浮かぶのはあの人が
水の淀みになってゆくところだった。
観察を終えると私はあの人に「髪の毛ちりめんじゃこみたいになってるよ」と
声を掛けて、随分久しぶりに笑うことができた。
最後に、あの人が私を助け出す為にここへ来たのだと信じるのは、
私の中にわたくしが取り戻されたという結果がそうさせるのだが、ちりめんじゃこの
ようだといって髪を摘まれたあの人の顔が何となく憮然としているように見えて、
彼もまたわたくしを失っていないに違いないからでもある。
>137-138
浮遊感漂う不思議な感覚だぜ。
ちょっと続きが気になるな、後日談あればぷりーず。
感想ありがとうございます。
設定のぼやけ具合が良い方に作用してくれていれば…
いいんですけどねwww
夢自体がここまでだったので、後日談は自分で話を
膨らませないと出てこないです…
それぞれの人物の動機をはっきりさせるだとか、
私とあの人で他の水の淀み達を助ける王道な展開にするとか、
書きようはあるはずなんですけどね
>>137-138 夢ならではの奇怪な世界観なのに、外面的なイメージをしやすいのは使われている
単語が適切だからだと思います。
特に髪の毛をモップとか、ちりめんじゃことかにたとえている部分が好きです。
「私(わたくし)」の性別を明言してないので、水の淀みの女の行為の様子が
読んでいる人によって全く違う印象になるのだろうな、と興味を持ちました。
夢という不条理上等な前提のあるところで、言葉の選びによってイメージしやすいと
言ってもらえるのは大変うれしいです、ありがとうございます!
掘っ立て小屋の出来事に関しては私は主観が女の方が目に優しい気がしますwww
針で乳首に寸止めされながら縫い物をされるというプレイを
M男とM女のどちらで受け入れるか究極の選択ですね。
143 :
創る名無しに見る名無し:2009/11/08(日) 02:55:15 ID:6aeUv1wb
不思議な世界だな
夢の内容をssにしたら面白そうだっていうのは割と考えることはあるんだけど、それを実際にやるのは結構難しいんだよね
夢のふわふわした感じを再現しつつ、支離滅裂にならないギリギリのラインを保ってるこの話はすごいと思うよ
144 :
元水の淀みの人:2009/11/09(月) 01:47:46 ID:lH7OvmIy
そろそろ全レスうざかったらすみません。
でもこんな掌編に対して皆さんすごく色々なことを考えて感想を書いて下さるので、
感謝と文学的な興味?から、どうしても反応せずにはいられなくて…
さすが感想を書く腕をも磨くスレ!
>>143 夢は自動ストーリー製造機というか、一応時間が経過するオリジナルの空間をつくってくれるから、創作意欲が湧きやすいですよね。
ただ確かに出来事だけを書き連ねても、それこそ他人には知ったこっちゃないような文章になってしまうので、
一応私も『水の国』の存在意義だとか、『あの人』と主観者との関係についての若干の言及なんかは後から創作で仕込んでみました。
すごいと言ってもらえると本当に作業した甲斐があって良かった!という気持ちになります。
感想ありがとうございました!
このサイトを閲覧するにはIDとパスワードがry
すみません!忘れてました。
IDはowarai、パスワードは2006です。
読んだー。
ラバーガールというコンビはよく知らないんだけど、
大水さんという人は変わった人なんだろうなぁ、と思ったね。
あと、天津向は、錯乱っぷりをリアルに想像すると、
何故かあんな状況なのにちょっとだけ笑ってしまったw
ちょこちょこ「ん?」ってなる所はあったけど、
全体的にバトロワという異常状況はよくかけてると思ったし、
そんな中であくまで自分の意志を貫こうとする強さと、
時々その意志が震えてしまっている弱さとが、よく
書けてると思いました。
149 :
145:
感想ありがとうございます!
大水さんは確かにちょっと変わった人ですねw
ちょこちょこ「ん?」ってなる所があったのは、多分私がまだ初心者だからでしょうね。
あまり文章力が無いもんで……
でもよく書けてると言って貰えて嬉しいです。