魔女っ子&変身ヒロイン創作スレ2

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1創る名無しに見る名無し
魔女っ子もの、変身ヒロインものの一次、二次SS、絵も可
皆さんの積極的な投下お待ちしております

前スレ 魔女っ子系創作スレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1224577849/
2創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 12:35:22 ID:J4R41r4k
>>1
まさか俺の提案したテンプレが採用されるとは思わなかった
3創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 12:46:10 ID:pneIUTqM
>>1乙〜
4創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 13:16:17 ID:0vp9Q3s4
>>1
なんか書いてみたいけど携帯しかないから、どうも…
5創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 13:25:10 ID:nXFCjUIL
携帯電話用キーボードを使えばいいじゃない
6創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 14:13:47 ID:vLvlVi3x
>>1乙です
あとはまとめサイトが欲しいとこだね
7創る名無しに見る名無し:2009/02/18(水) 20:30:31 ID:b/msEhBY
>>1
乙乙なのです。
こう広いと投下したくなりますな!
8まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/18(水) 23:16:43 ID:Upc3ZzCU
>>1乙です。前スレにまなみ第五話投下しました。
9創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 20:05:11 ID:0j4uHAsv
もしかしたら前スレにも入ったかもしれないけど、
よくわからないのでこちらへ投下予告。

がっかりヘヴン☆ゆゆるちゃん第八話
「自愛と憎愛のラプソディ」

20:30ごろより、ゆるシリアスに投下します。
10がっかりヘヴン☆ゆゆるちゃん第八話 1/2 ◆GQ6LnF3kwg :2009/02/19(木) 20:31:13 ID:0j4uHAsv
第八話『自愛と憎愛のラプソディ』

「杖の誓い。それは魔女の愛とも呼べる杖に口付けさせることで、対象の支配権を永遠に
得ることができる儀式」

 力を抜いてしまえば倒れてしまいそうなゆゆるちゃんを支え、俺もまた目の前に突き出
された掃除機棒に、ただ愕然としていた。
 紅潮した微笑みでゆっくりと俺の手を掴み、その小さな胸へとあてがう。

「あなたの言葉が、私をどれだけ高ぶらせたか分かるよね?」

 手に伝わってくるのは、柔らかな感触と魔女の鼓動。
 それは俺の中での魔女像。つまりゆゆるちゃんやきりりちゃん、お姉さんが持っている
雰囲気とは大きく異なる、現実的で淫猥な行動への嫌悪でしかなかった。

「ねえ、私と一緒にずっと暮らそうよ。毎日毎日愛し合って、それで――」
「悪いんだけどさ!」

 声に顔を向けたちるるさんが、鈍い衝突音とともに姿を消した。一瞬の悲鳴に替わり、
目の前に現れたのは、金色のぐるぐる頭だった。

「こいつを召喚したのは私なんだから、勝手な妄想しないでよね!」

 吹き飛ばされたちるるさんに向かって吼えた後、きりりちゃんは酷く侮蔑的な目で俺を
見て、静かに口を開く。

「思わせぶりなこと言ったんでしょ。ちるるさんはそういうのに弱いんだから」
「い、いや、まさかあんな人だとは思ってなくて」
「違うわよバカ! そんなの誰にしたってダメに決まってるじゃん!」

 鳩尾に走った鋭い痛み。それはきりりちゃんの小さな肘だった。
 返す言葉もない。俺はとんでもないバカ野郎だ。

「私だって、そうなんだから……」

 漆黒の空と暗緑の地面が作り出す僅かな境界線。その間で起き上がり近づいてくる黒い
影は、お姉さんのもつ威圧感にも似た、しかし、全く異質な憎悪の塊。

「でもしょうがない。あなたを呼んだのは私なんだし、ここは私が責任とるから」
「……てっきりゆゆるが召喚したのかと思ってたけど、支配権がきりりにあるなら話は別」
「そうよ、私を倒さなければ誓いは立てられないわ」
「あは、面白いじゃない」

 きりりちゃんの足元につむじ風が巻き起こり、一陣の強い風を纏って空へと飛び立つ。
 こんな時、なにか冗談のひとつでも言ってやるのが俺なのだろうが、さすがにそんな気
は起こらない。
 はたからみればくだらない争いにも思えるのかもしれないが、ちるるさんはお姉さんが
要注意とするほどの危険な魔女であり、何かしらの恐ろしい力を秘めていることは間違い
なく、このような状況になってしまったことに俺は多大なる責任を感じているのだ。

「無事だったらデートぐらいしてあげるわよ!」

 とは言え、凡人かつこの場に及んではダメ人間である俺が反省しながら肩を落としてい
られる状況でもない。ここはきりりちゃんに任せ、この場から離脱するのが最善。ゆゆる
ちゃんを抱き上げ、杖の木を目指して走る。
 すまない、きりりちゃん。デートはともかく、無理だけはしないでくれ。

「さあ、このラブミーステッキでちるるさんも私に夢中になっちゃいなさい!」
「くだらないわ」
11がっかりヘヴン☆ゆゆるちゃん第八話 2/2 ◆GQ6LnF3kwg :2009/02/19(木) 20:31:57 ID:0j4uHAsv
 最後に聞こえた冷たい声を背に、始まったのであろう戦いによって明滅する景色の中を、
俺は走り続けた。

 ようやくたどり着いた杖の木にゆゆるちゃんを降ろし、何とか目を覚まさないかと頬を
叩いてみるが、柔らかい肌に僅かな波紋を起こすだけで様子は変わらない。
 あの掃除機のような杖に何かを吸い取られたとか、なんとなくの予想はできるが、それ
もそこ止まり、今はきりりちゃんを信じるしかない。

 そう思って振り返った時、緑色の塊が頭を掠め、髪を揺らした。
 続けざま響く衝撃音を後ろに、天空からはいくつもの赤い実が降り注ぐ。
 それは幹に叩きつけられ、苦悶に顔を歪めるきりりちゃんであった。

「お、おい!」
「いったあ……何なのよ、あれ」

 ぺたり、ぺたりと近づいて来るちるるさんの右手には掃除機の杖、そして左手にはぼん
やりとした赤い光を纏っていた。

「この杖はね、愛を奪うことができるの。あなたの自愛なんてたかが知れてるわ」
「くっそー!」

 へたり込んだままラブミーステッキをぐるぐる回し、光の玉を生成する。
 その大きさは今まで見てきたものとは比べ物にならないほど巨大であり、やはりゆゆる
ちゃんとの戦いにおけるそれは遊びだったのではと思えるほどだった。

「何度やっても無駄なのに、わからない子ね」

 しかし、ちるるさんが掃除機棒を構えたとたん巨大な光球はそれに吸い込まれ、左手の
輝きがさらに強さ増す。

「逃げてーっ!」

 叫び声と同時にちるるさんが光る腕を上に構え、振り払った手の先からは無数の赤い蝶
が放たれた。その速度は俺の動体視力を凌駕し、まるで赤い光弾のようにきりりちゃんへ
と向かう。そして、耳を裂くような叫び声――

「ちるるさん! やめてくれ!」
「召喚支配権を持たれてると誓いが立てられないのよ。自業自得でしょ?」

 きりりちゃんの小さな身体には、数え切れないほどの赤い蝶が突き刺さっていた。

「ご、ごめん。私、もうだめっぽいや。かっこ悪いね……」
「き、きりりちゃん……」

 かくりと頭を落としたきりりちゃんを抱きかかえ、ふとした予感にゆゆるちゃんへ目を
向けると、その背中には一羽の赤い蝶が深々と突き刺さっていた。

「なんてことを……」
「あら、私のせいじゃないわよ? 私はこの子達の愛を倍にして返してあげただけなの。
混じった憎しみの分だけちょっぴり痛いかもしれないけど。ま、それも自業自得よねー」

 自業自得とは、それは本来俺にこそ向けられるべき言葉なのだ。
 その場凌ぎの軽薄な愛の言葉。たとえちるるさんの事を知らなかったとは言え、そんな
つもりは無かったとは言え、俺は男としてあるまじき罪を犯したのだ。

「さあ、誓いを立てて。死ぬまで私と一緒に暮らしましょう」

 ――だからこれは「罰」なのかもしれないと、俺はそう考え始めていた。

つづく
12創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 20:32:47 ID:0j4uHAsv
投下おわりです。
週末には完結できるといいなあ。
13創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 22:17:02 ID:k/iAOG+N
投下乙です。う〜むホントシリアスだなぁ…
そして完結が近いのか、もっと見たかったなぁ。
なにか新しい作品をまたやってほしいなぁ

>>6
まとめサイトか、前スレは容量関係で終わったから
1000行ったスレと違って落ちるのはまだ先だけど少し急がないとな
14創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 22:46:39 ID:0j4uHAsv
今書いてるのが終わって、誰もまとめ作れる人がいないようであれば
ちょっと調べて挑戦してみます。

じゃあ、それいつできるのよ? とかなると困っちゃうから、
経験者の人がいてくれるといいのだけどね。
15創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 23:59:30 ID:3jPHd0Eu
http://atwiki.jp/

これを
16創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 02:46:51 ID:BDIAMCK2
ゆゆるちゃん乙だぜー
ホントにガチンコシリアスでびびっております
17創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 22:34:30 ID:TeNMGAQ5
がっかりヘヴン☆ゆゆるちゃん第九話
「厳愛と憎愛のノクターン」

23:00ごろより、ゆるへヴィに投下します。

タイトルが厨二っぽいなあと思う今日この頃。
18がっかりヘヴン☆ゆゆるちゃん第九話 1/2 ◆GQ6LnF3kwg :2009/02/20(金) 23:01:13 ID:TeNMGAQ5
第九話『厳愛と憎愛のノクターン』

 二人の身体に突き刺さっている赤い蝶は手で触れる事ができず、従って引き抜いてやる
こともできない。仮にそれで救えたとしても、二人がまた打ちのめされる姿は見たくない。

 自分が原因で起きた災いであるにも関わらず、俺は無力だった。ぺたぺた近づいてくる
ヒヨコのスリッパに顔を上げれば、そこには再び杖が突きつけられている。
 どうやったって俺がなんとかできる状態じゃない、ならばいっそ。

「誓いを立てたら、そこの二人を救ってくれるか」
「ええ、もちろん。その代わりあなたは一生私の愛の奴隷よ」
「……わかった。もう、それでいい」

 迫る杖、しかしそれがが唇に付くよりも早く、頬に冷たく堅いものが触れるのを感じた。
見覚えのある銀色の銃身、これはお姉さんの――

「反省しても気力を欠いてしまっては、本末転倒ですよ」

 背後から聞こえた穏やかな声に、ちるるさんの目が曇る。
 反省棒を肩から外し、しかし銃口はちるるさんに向けたまま、しずしずと前に歩み出る
お姉さんは、これはもうまるで逆転の女神様だ。

「先ほど召喚申請の上書きが受理されました。この方の支配権、今は私にあります」
「何ですって!」

 獲物を奪われた狼のような目つき。それに銃口を近づけて、お姉さんは続ける。

「期限は夜明け。時が来れば彼は自然に元の世界へ戻ります」
「どうしていつも邪魔ばかりするのよ! なんで私の恋を遂げせてくれないのよ!」

 感情をあらわにしたちるるさんの額を、銃口でぐいと押す。

「お黙りなさい」
「……私を撃っても無駄よ」

 静かな緊迫の中で途切れる会話。彼方で輝き始めた月が二人の影を伸ばした。

「心を溶かすような人間との恋、なのに訪れるのは悲壮だけ。そのどうしようもない運命
を一緒に嘆いたじゃない。りりのなら分かってくれるでしょ? この高ぶる気持ちを」

 二人の過去にどういった経緯があるのか詳しくは知らない。
 しかし、きりりちゃんの家で見たお姉さんの涙、夕焼けの中でちるるさんが見せた悲し
そうな笑顔、記憶の蓋と寿命の違い。思い描くにはそれだけで十分すぎる。

「それとこれとは別」
「別なんかじゃないわ、目の前にあるんだもの! もう辛い思い出に涙を流すことも――」

 言葉を遮って鳴り響いた発砲音に、ちるるさんの頭が仰け反った。
 お姉さんの杖は、その被弾者を強制的に反省させるという力を持っているはず。それは
厳しくも優しい、お姉さんなりの愛の力。これでちるるさんも元に戻るのだ。
 遠く囲む山々が銃声を何度も何度もこだまする。

 そして、ゆっくりと頭を戻したちるるさんは、笑っていた。

「無駄だって言ったじゃない……結果こそ憎しみであれ、私が持つのは愛。反省すること
など何一つもないのよ!」

 驚愕に目を見開いたお姉さんの前、ヒヨコのスリッパから巨大な金色の羽が伸びる。
 狂笑と共に羽ばたき舞い上がるそれは、月の光を浴びる邪悪な女神のように見えた。
19がっかりヘヴン☆ゆゆるちゃん第九話 2/2 ◆GQ6LnF3kwg :2009/02/20(金) 23:01:56 ID:TeNMGAQ5
「そこまで堕ちてしまったというの、ちるる……」

 羽ばたき滞空するちるるさんを見上げ、ちらりとゆゆるちゃんを見る。そのお姉さんの
表情はとても辛そうであった。

「ちるるの杖もあのような力ではなかったはず。これでは私とて夜明けまで持つかどうか」

 反省棒を構えると鈍い音が地面を揺らし、お姉さんの身体には何重ものバレットベルト
が巻きついていた。

「それまでにゆゆるが目覚めてくれれば、もしくは――」

 ベルトの先をがつりと杖に挿し、銃口をかつての親友へ向けて、引き金を引く。
 無数に放たれる銀色の弾丸は空の闇と狂笑に吸い込まれ、そこに赤い光を灯した。

「お姉さん、危ない!」

 顔色を変えず発砲を止め、中空に四角を描く。と、そこに巨大な鋼鉄の板が現れ、迫り
くる無数の赤い蝶を弾き返し始める。

「このようなものであれば、なんとか持ちこたえられるかもしれません」

 屋根に豪雨でも降り注いでいるかのような音が鳴り響き続け、俺は身を強張らせた。

「相変わらずおっちょこちょいねっ!」

 瞬間、横から聞こえた甲高い声が、目の前に鈍い衝音と短い悲鳴を生み出し、お姉さん
のふんわりした髪が、唖然とした俺へとゆっくり倒れこんでくる。
 その胸にはちるるさんの光る拳が突き立てられていた。

「お待たせしちゃったね、さあ続きをしましょ!」

 俺は一体何をしているんだ。何故なにも出来ないんだ。
 全部俺のせいだ、最初から最後まで。雰囲気に流されるだけで二人を叱ってもやれず、
適当な優しい言葉でその場を取り繕おうとした俺のせいだ。俺は最大級のバカだ。

 震える小さな手が絶望する俺の腕を掴み、消えてしまいそうな細い声でささやく。

「ピ、ピアラの実を潰して、ゆゆるの多幸棒へ塗りなさい……それで直るはず」
「た、多幸棒?」
「あれは人を幸せへ導くための夢を見せる杖……ゆゆるが目覚めるかは分かりませんが、
それでなければ今のちるるを制することは……」
「お姉さん!」

 天高く上った月は、力を失った三人の魔女を優しく照らしていた。

 さて、俺は今まで二十数年間の人生を歩んできた訳だが、非常に穏やかな性格らしく
「お前もうちょっと怒ったほうがいいぞ?」みたいなことをよく言われるのだ。
 そうした性格はどこから来るのだろう、と思い巡らせて見れば、俺は他人というものを
それほど好きになったことがないからだと結論してみる。

「ちるるさん。誓おうじゃないか、君への永遠の愛を」

 だから俺は今。
 自分の周りを賑やかにしてくれる親愛なる魔女たちをここまで痛めつけた、ちるるとか
いうガキみたいなビッチ女に対して、心の中で中指をつき立ててやっているところだ。

 お姉さんが気づかせてくれた、僅かながらも確実に存在している「勝算」を胸に。 

つづく
20創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:04:47 ID:jq6uJL8C
21創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:04:57 ID:TeNMGAQ5
9話投下終わりです。
あんまりゆゆるちゃんぽくないのかな、でもいいの。
それがゆゆるファンタジー。

まとめサイトに関しては、前スレ478さんのお返事待ちです。
わーい
22まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/20(金) 23:33:09 ID:Gk7jyp9I
ゆゆる作者様、投下乙でした。続いて炎術剣士まなみ第六話投下します。
23まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/20(金) 23:34:37 ID:Gk7jyp9I
炎術剣士まなみ 第六話『真実の心の色を伝えて』
 昼休み開始のチャイムの音が鳴り響き、桜花高校の生徒たちはそれぞれ飯を食べに
行ったり、部活や、友達との交流などをして時を過ごしていた。伊織はまなみと裕奈とは
別のクラスのため、二人に会うため先ほどまで授業をしていた音楽室から足早に出て
彼女らの元へ急ごうとした。階段を上ろうとした時、不意に呼び止められる。
「ねぇ、伊織ぃ〜!ちょっと話があるんだけど」
「理恵さんに亜里沙さん…何か用ですか?」
以前、まなみたちと知り合う前に伊織をいじめていた、二人組の少女であった。
伊織の表情が曇る。そんな彼女を見て理恵が不機嫌な顔をする。
「なによ、なんだかすんごく嫌そうじゃない。伊織、あんたさぁ、あのまなみって
正義の味方ちゃんと一緒に戦ってるんしょ?気弱で泣き虫なあんたがそんなこと
するようになるなんてね。ちょっと変身してみせてよ」
「…出来ません。変身して戦うっていうのは見世物じゃないんです!それに…もう私は
あなたたちの命令は聞きません」
以前と変わり、はっきりと拒絶してみせる伊織に対し、今度は亜里沙が口を開く。
「言うようになったじゃん。でもさ、変身したって別に減るわけじゃないんだし
いいじゃん、記念に一発!ウチら友達っしょ?」

本心から言ってるとはとても思えない友達という台詞。伊織はしばらく黙り込み、
ため込んだものを徐々に開放するように喋り出す。
「友達なら…そんな強制的なことはしないはずです!それに無理やり何かをさせようと
するっていうことは何かよくないことを考えてるんでしょ!?だったら尚更です!」
理恵と亜里沙は、伊織のその強い語調に一瞬押され、顔つきが険しくなる。
「ふん!調子に乗っちゃって生意気なんだよ!正義の味方っても所詮、自己満じゃん!
あのまなみも裕奈もそうだぜ、絶対。チヤホヤされたいに決まってるね」
二人を馬鹿にする発言に対し、伊織は俯き、肩を震わせている。
「まなみさんと裕奈ちゃんを…馬鹿にしないで!」
パンッ!と廊下中に音が響き鳴った。涙混じりに伊織の平手が理恵の頬を引っ叩き、
理恵は頬を抑えていた。
「ぐっ…なにすんだよ!」
24まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/20(金) 23:35:25 ID:Gk7jyp9I
平手を返そうとする。しかし、伊織は紙一重で身を避わした。
「ちっ、避けるんじゃないよ!」
「まなみさんと裕奈ちゃんの悪口は許さない…!まだ二人のことを悪く言うなら…」
怒りに溢れた伊織の表情。それを見た二人は伊織に対して初めて焦りの表情を浮かべた。
「行こう、亜里沙!伊織…あんた、ただじゃおかないからな…!」
捨て台詞を残し、二人は校舎から出て行った。伊織は少し何かを考えながら、
まなみたちの元へまた歩き出した。

次元鬼族の本拠地、次元魔城ではベルディスがご機嫌で何か機械いじりをしている。
「お姉さま、この砲筒はなんなの?」
なにか不思議そうにそれを見つめながらスクリタが疑問をぶつけてみる。
「ふふん、これは生物や物を即席で別の何かに変えちゃう物質変換砲よ。特に憎しみとか
悪しき心が強い者なんかは強力な怪物になるわ。これを次元鬼に装備させて街中大混乱!」
上機嫌に鼻歌交じりで答える。その時、二人を見つめる位置で女帝フリッデが現れる。
「ベルディスよ、随分と自信があるようだな。その憎しみに満ちた心の持ち主で
目ぼしい者を見つけたというのか?」
「はい、その通りでございますフリッデ様。我らに楯突く剣士の一人、姫倉伊織に
憎しみを持つ者を見つけました。その者を使えば…」
ベルディスは不敵に笑みを浮かべながら、物質変換砲を磨き始めた。

屋上では伊織が暗い表情をしながらため息をついていた。
「伊織ちゃん、自分の意志であいつらを突っぱねたんでしょ?それってすごいよ、
だって今までされるがままだったんだし」
裕奈が伊織を褒めようと声を掛けるが、本人は首をフルフルと振り
「違うの、裕奈ちゃん。私、理恵さんと亜里沙さんに自分の気持ちをぶつけてみたけど、
なんだか気分が晴れなくて…やっぱり手をあげちゃったからかな…」
初めて、自分の意志で拒絶してみたが、どこか後味が悪い。それは暴力によるものなのか。
そこにまなみがポンと肩をに手をやった。
「まなみさん?」
「伊織は、今まで自分を抑えすぎてたんだよ。だから自分を解放してみたら、
何か違和感を感じたとかそんな感じじゃないのかな。はっきりとした答えは出せないけど」
「そう、ですかね…」
二人が言葉を投げかけても、伊織はやはり気分が晴れない。もっと、大きな心の問題の
ような気がしている。
25まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/20(金) 23:36:47 ID:Gk7jyp9I
その頃、理恵と亜里沙は校舎裏で地べたに無造作に座り込み、お菓子を食べている。
「…ちっ、あいつらの変身後の生写真を撮って送りつければ5万ももらえたってのに!
伊織の奴、言うこと聞かないどころか、あたしを殴りつけやがった」
「どーする?また別の方法考えてみる?」
理恵はスポーツドリンクを一気に飲み干して答える。
「もう、金なんかどうでもいいよ。あたしはな、伊織の奴の泣き顔を
また拝んでやりたいね。ついでに他の二人も痛い目に合わせてさ。亜里沙はどうよ?」
「同意だね、一発仕返ししてやらないと、ムカついちゃってしょうがない」
「その仕返し、私が手伝ってあげましょうか」
どこからともなく、声がし、二人は立ちあがって辺りを見回すが、誰もいない。
幻聴かと思い、再び座ろうとすると、突然周囲に黒く不気味な空間が広がっていく。
「な、なんだよ…!なんだっつうんだよ!」
亜里沙の憤りにも近い叫びが響く。すると、二人の目の前に人影が。
「はぁい!驚かせちゃってごめんなさいね。私はベルディスっていうの、よろしくね」
「あ、あんた何者なんだよ!?」
「あらぁ、そんな怖い顔しないで。あなたたちの大嫌いな姫倉伊織ちゃんに
復讐する方法を教えてあげようと思って」
その言葉に、二人は反応しベルディスに詰め寄る。
「ほ、本当か?嘘だったらただじゃおかねーからな!」
物騒な言葉を吐きながらも、期待の眼差しを向ける二人。それに対し、ベルディスは
邪悪で妖艶な笑みを浮かべ始めた。
「本当よ、その方法ってのはね…あなたたちが次元鬼になることよ!」
先ほどまでの期待の色を浮かべた表情は、一瞬何のことか理解出来ずにいた後、
一気に恐怖の表情に変わっていく。
「ちょ…ちょっと待てよ!あんな化け物にしようっての!?や、やめろ!」
「出せ!ここから出せよ!」
必死に逃げようとするが、見えない壁にぶつかり、追い込まれてしまう。
「馬鹿な娘たち…じゃ、私の部下になってもらいましょうか」
どこからか現れたスライムのような次元鬼が物質変換砲を肩から取り出し、一気に放つ。
一筋の閃光が走った。それは獣のような姿へ変わっていく。

まなみたちが教室に戻ろうと、階段を下りていくと周りから悲鳴が聞こえだした。
「いったいどうしたんだろ?」
「あっ、まなみちゃん!あれ!」
窓から外を覗いた裕奈は、校庭を指さす。そこには二体の虎のような怪物が暴れまわっている。
三人が校庭へとたどり着くと、空からベルディスが姿を現す。
26創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:37:15 ID:TeNMGAQ5
 
27まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/20(金) 23:37:46 ID:Gk7jyp9I
「待ってたわよ、剣士のお嬢さんたち。今日は速攻で決めるからね♪」
指を鳴らすと、物質変換砲を装備した次元鬼が出現と同時に光線を放射する。まなみと
伊織は素早く避わすが、裕奈は不意を突かれて浴びせられてしまう。
「きゃあぁぁぁ!ちょ、なにこれぇ!?」
「裕奈ちゃん!」
裕奈の体が発光しながらその姿を変えていく。光が止み、二人が裕奈の方を向くと
そこには青い毛色をした子猫の姿が。
「にゃにゃ!?にゃぁん!」
「ゆ…裕奈ちゃんが猫になってる!?」
「次元鬼チェンゲル!もう一回発射しなさい!」
物質変換砲にエネルギーが集束されていく。それを見て、伊織は猫化裕奈を抱えて
まなみと一緒に大きく飛び上がる。
「炎心変幻!」
「雷心変幻!」
光線を回避しながら、紅と山吹色の剣士は着地する。猫裕奈を脇にやり、二人は抜刀する。
伊織が目の前に現れると二匹の虎の次元鬼は彼女に殺意を浴びせていく。

「なっ…なに、この殺気…!」
「ああ、そうだった。伊織、この虎ちゃんたちはね、あなたをいじめてた子よ」
「な、なんですって!?」
「いい機会じゃない、あなたの復讐がてらこの虎ちゃんたちの首を刎ねちゃえば?
憎くてしょうがなかったはずでしょ?それにこの子たちの怒りは逆恨みなわけだし」
まなみはチェンゲルを火炎で攻撃していく。しかし、地面に潜られ回避され、
出てきたところを叩こうにも意外とすばしっこく、捉えられない。
二匹の虎が伊織に飛びかかり、片方は刀で受け流すが、もう片方の攻撃は肩を掠める。
再び虎が噛みつこうとした瞬間、伊織は分身し、それを横に避わしながら蹴りを入れ
さらに何度も拳を撃ちつけていく。それは伊織らしからぬ攻め方だった。
「伊織!憎しみのまま戦うなんて駄目よ!」
「ごめんなさい、まなみさん…私、ベルディスさんの言うとおり、この人たちは
憎いんです。理不尽な暴力もあれば、お金を取られることだって…殺したいと
思ったことだって何度もあります…今でもこの人たちを軽蔑してます」
伊織の憎しみの言葉が放たれる。それを聞いたベルディスはニヤリと笑い
「やっぱりね!正義の剣士って言っても所詮は人間、心にはいろいろ抱え込んでるわよね!」
その言葉が合図だったのか、チェンゲルの物質変換砲が伊織に向かって発射され、
大きな爆煙が巻き上がった。
28まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/20(金) 23:38:31 ID:Gk7jyp9I
「ああ!い…伊織!」
「ふふ、これで伊織も私たち、次元鬼の仲間入りってわけね…な、なに!?」
煙が消えていくと、そこには新たな次元鬼ではなく、元のままの伊織の姿が。
彼女は前方に雷の気で発生させた防御壁で完全に光線を防いでいた。
「でも…そんなことをしたらこの人たちと同じか、それ以上…!私はそんな風にはならない!
憎しみはあるけど…それには屈しない!」
虎は並んで伊織に飛びかかってくる。それを見て伊織は両手に雷の気を集中させ始める。
「雷神掌!!」
虎との距離が1mにも満たないとこで伊織は両手を突き出し二匹の額に当て一気に
電撃を流し込む。虎は海老反りのようになりながらその場に倒れこむ。
「おのれ、伊織!チェンゲル!」
チェンゲルが変換砲の代わりに溶解液を吐き出し二人を攻撃していくが、それを避わされ、
一瞬の隙が出来、その隙を逃さずまなみは火炎弾を連続で飛ばしてその身を焼いていく。
苦しみ身体を痙攣させながら辺りを転げ回っている。
「今よ、伊織!」
「はい!雷鳴大破斬!!」
伊織の叫びに呼応し、刀に雷の気が纏われ、チェンゲルを十文字に斬り裂き消滅させた。
「今日は絶対うまくいくと思ったのに!」
捨て台詞を残してベルディスは撤退した。

物質変換砲の主が倒されたからか、その効力は切れ、猫は裕奈の姿に戻り、二匹の虎は
理恵と亜里沙の姿へと戻っていく。二人は気絶したままだ。
「にゃ〜やっと元にもどったにゃあ…あれ?口調が治らない…にゃ」
「あはは、脇で鳴き過ぎよ。…伊織?」
ふと、伊織の方を見ると彼女は何か考えているようだ。
「まなみさん…私に剣士の資格なんてあるんでしょうか…?相手が私の嫌いな人だって
分かったら、私は思いやるどころか、何度も攻撃を加えてしまった…こんなんで人々を
守るなんて…」
悩み考え込んでいる伊織の肩にまなみは手を置き、話し始める。
「そうそう、割り切れる人なんていないわよ。としか言いようがないかな…でも
自分でもいったじゃない、憎しみには屈しないって。そう思ってる限り、伊織は
戦士でいられるよ」
自分でもまだ明確な答えは出せないが、まなみは伊織を元気付けるよう言葉を掛けた。
伊織は小さく頷き、まなみたちとその場を後にした。

次回予告「伊織です。今、私に出来ることってなんなんでしょう…。私たちが
まなみさんの家で遊んでるとき、悠美さんがどこかへ出かけたみたいです。
そんな矢先、次元鬼族から伝言が。いったい何が起ころうとしてるの…?
次回は『卑劣なる次元鬼の罠!』え!?あれって…!」
29まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/20(金) 23:42:09 ID:Gk7jyp9I
第六話投下終了です。それにしても、まなみって他の二人より
あんまり強くないなぁ〜と書いてて思う、今日この頃。
30創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:47:19 ID:TeNMGAQ5
まなみはちゃんと一話一話にテーマがあっていいよねー
裕奈は猫のままでもよかったけどさ!

改行を少し増やしてくれると、読みやすいかな?
入れすぎるとゆゆるみたくなっちゃうけど。
31創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:53:59 ID:jq6uJL8C
セリフ以外の地の文を字下げしたら、読みやすいのではないかしら。。。
32創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 23:55:32 ID:2f7dsHDw
ゆゆる作者さんとまなみ作者さん投下乙でした

>ゆゆる作者さん
最終回に向けて盛り上がってますねぇ
シリアスだけど最後はハッピーエンドであればいいな

>まなみ作者さん
確かに伊織は今回強かったですね。憎しみパワーって奴なのか
もしかして次回はまなみママンが活躍したり!?
33まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/20(金) 23:58:19 ID:Gk7jyp9I
>>30-31
ご意見ありがとうございます。
次回からはもうちょっと改行増やしてみます。
今まで場面ごとに行間開けてたから、場合によってはまるで空白が
無かったりしたことも振り返ればありましたしね…
34創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 18:44:36 ID:R9hICLZr
 多田野 厨二(ただの ちゅうじ)は平凡な中学二年生だった。
 今日は休日。
 姉が出掛けているのを見計らい、彼は中学生男子の日課をこなすことにした。
 カーテンを閉め、先輩からもらったDVDをPCにセット。はたと思いだし、部屋の鍵をロック。

『なんでAVに出ようと思ったんですか?』『えーとぉ、それわぁ……』

 勝手に再生が始まったAV冒頭の猥褻インタビューをイヤホンで黙らせる。
 さて、ここからが彼の欲情タイムである。
 厨二は割と可愛い顔をしているので、このまま彼の痴態を観察するのも一興だろう。
 厨二はティッシュを用意して、興奮するシーンを探した。

キュルキュル、カカカ

 DVDを読み込むドライブの音が部屋に満ちる。
 やがてマウスから手が下ろされ、厨二は興奮の中心を握る。
 興奮は焦燥に変わり、頭がAVの喘ぎに満たされた。
 あわや解放と言うその瞬間──

ドカーン!!!!

──厨二の部屋が吹き飛んだ。

「ええ?! え? うえええ?!」

 厨二は慌てながらズボンをずり上げたが、そのせいで完全にパンツに放流してしまった。
 どうやら外から何かが降って来たらしい。
 土埃を舞い上げながら、厨二の部屋をぶち壊した落下物が動いた。
 それは全身銀色の、モジモジくんみたいな格好をした女性だった。
 モジモジくんとの違いをあげるならば多少ヘルメットがかっこよくてベルトが付いてい
る事だろうか。

『そこの君!早く逃げなさい!』
「はぁ!?ここ俺んちなんスけど?!」

 偽モジモジくんな女性が機械的な声を荒げるも、厨二は展開に着いて行けず、股間の生
暖かさに悪寒を感じるばかりだった。ていうかキレた。

「キャハッ☆みぃつけた!」

 厨二とモジモジくんの口論が勃発しようとしているところへ、第三の陳入者が現れた。
 二階にある厨二の部屋の、風通しが良くなった天井のそのまた上に、箒に乗った魔法少
女的格好の女の子が浮いていたのだ。

「なんなんだよ!今この人に家ブッ壊されて腹立ってんだよ!話があるなら降りて来いよ
!コスプレ!パンチラ!」
「む☆、あたしエッチな男の子って嫌いなのら。御仕置なの!」
『危ない!伏せて!』

 魔法少女がスカートの裾を引っ張りながらステッキを振ると、見る間にステッキの示す
虚空に巨大な火球が膨れ上がった。
 少女がステッキをえい☆、と振ると、巨大な火球が厨二に向けて飛んできた。

「ぎゃー!俺の人生詰んだー?!」

 厨二がみっともなく叫んだ横で、モジモジくんな女性が動いた。
 女性が掌底を打つように腕を動かすと、ビー玉大の大きさの何かが火球向けて飛んでい
った。
 ビー玉大だった何かは空中で3メートルほどの巨大な球に膨らみ、魔法少女の放った火
球を防いだ。
35創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 19:01:46 ID:jtPVEm3+
ニヤニヤしながら待ってるんだけど、投下終わりなのだろうか……
俺はアリだと思うww
36創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 19:04:03 ID:R9hICLZr
「むむ、バランスボールでベギラゴンを防ぐとは、やるなモジ子ちゃん☆」
『バランスボールじゃない!不透過領域(ナル・フィールド)だ!モジ子でも無いし!』
「あー、いっけない☆忘れてた!アタシ見たい番組があるのら!またねモジ子ちゃん」
『モジ子じゃないって!あ、ああー、行っちゃった……』

 魔法少女は箒で飛ぶと言うより、空間から掻き消えるように瞬時に姿を消した。

『また逃げられたか……』
「逃がさねーぞ」

 厨二はギンギラギンの女性の肩を掴んだ。

「修理代払えよ!家の!」
『……えっと……銀河連邦クレジットは使えるか?』
「使えねーよ!モジ子の馬鹿!」
『待て、私はモジ子ではないと』
「うるせーモジ モジ子!パンツ洗わせるぞハゲ!」

 厨二は知らなかった。
 国連が銀河連邦の傘下に入ることも、モジ子の中身が厨二の姉であることも。
37創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 19:36:32 ID:jtPVEm3+
壮大カオス臭がプンプンするぜええ!(良い意味で)
続いて欲しいけど続くのかしら。

あと投下終了お知らせしてくれると助かるw
38創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 19:58:00 ID:jtPVEm3+
新作の投下に心躍らせつつも

がっかりヘヴン☆ゆゆるちゃん最終話
「魔女たちのファンタジア」

20:30ごろより、ゆるゆる投下予定
39携帯 ◆4c4pP9RpKE :2009/02/21(土) 19:59:16 ID:R9hICLZr
ゴメンヌ
次書く時は「終」って書くよ
40創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 20:00:26 ID:jtPVEm3+
>>39
いえいえそんな。楽しくいきましょうぜ。
最終話『魔女たちのファンタジア』

 言われた通りに蛸棒、もとい多幸棒を直せば何とかなるのかもしれないが、その使い手
であるゆゆるちゃんに目を向けても、相変わらず意識を取り戻す気配はない。
 そっとお姉さんを地面に降ろし、ついに三度目にして差し向けられる掃除機杖。

「さあ、もう邪魔者はいないわ」

 込みあがる怒りをぐっと堪えながら、近づいてくる杖を睨む。
 ――そして、唇に触れる寸前で握り止め、力を込めた。

「……何よ」

 その怪訝な声に、決意を固める。
 俺が巻いた種、それによって芽吹いた悪は自分で摘み取らねばならんのだ。

「なあ、ちるるさん。あんたの過去に何があって、どんな辛い思い出がその心を捻じ曲げ
ちまったのか、俺にはとても計りかねん」
「諦めたのかと思えば唐突ね、力でなら私を超えられるとでも思って?」

 杖を握り返してくるちるるさんの力は、その質素な服装からは想像できないほど強く、
俺の腕を押し戻す。正直言って半端じゃない、気を抜けば押し倒される。

「何ならあなたの愛も吸い取って腑抜けにしてあげるわ、私はそれでも構わないのよ」

 徐々に熱を帯びる杖、聞こえる吸気音に嫌な汗が流れた。
 勝算があるとは言え、それは僅かな望みでしかないのだから。

「その、愛を倍にして返すという力。本来あんたは大変優しい魔女なのではないかと、俺
は想像しているのさ」
「それはお門違いね。人の愛を奪うのが私の杖の力、目覚めた私の真の力なのよ。そして
愛の愚かさに気づかせるの、そんなの無駄だってね! 素敵でしょう!」

 向けられた吸気口に、徐々に身体の力が抜け始める。
 待っていたのはこの瞬間、しかしこれは一種の賭けかもしれない。

「違う、あんたは優しい魔女なんだ。その杖にそんな力はないと、お姉さんは言っていた。
杖の力は魔女が一番強く願う心だと、きりりちゃんは言っていた。だからきっと――」

 俺は、杖を掴んだ手に隠し持っていた木の実を握りつぶした。

「この杖は壊れているんだ」

 したたる赤い液体が掃除機杖を染めていく。驚愕で見開かれるちるるさんの瞳。

「それはピアラの実! はっ、離せっ!」
「死んでも離すか! 自分を思い出せ!」
「貴様ァッ!」

 繰り出された光る拳が俺の胸に突き刺さる。しかし痛みなどない。
 恐らくは直ったのであろう掃除機杖によって作られた純白の輝きが、穏やかな気持ちと
なって流れ込んでくるのみ。

「貰った愛を返す。単純なことだが一番大切な気持ちじゃないか」
「人間なんて……人間なんて誰一人それに応えてくれなかったじゃない!」

 杖によって増幅された愛のハウリング。ちるるさんの身体から大量の白い蝶が溢れだす。

「俺が言うのもなんだが、人間を代表して謝らせてくれ。その儚い記憶力と、短い寿命を。
あんたの雄大な愛、普通の人間はそれを受け止める器を持ち合わせていないんだ」
 おびただしいほどの白い輝きが夜空を明るく照らし、きりりちゃんとお姉さん、そして
ゆゆるちゃんの身体に群れをなす。

「し、しまった!」

 光に包まれた三人の影が、ゆっくりと立ち上がった。

「よくわかんないけど、年貢の納め時っぽいわよ! ちるるさん!」
「その悲しみは理解できれど、この罪に情状酌量の余地はなし」
「あれ、おねえちゃん?」

 人を心を変えるのは、なにも魔女の杖だけではない。

「すまんが、みんな。ここは俺にまかせてくれ」

 俺は目の前の少女に最大級の愛を込めて、平手打ちをくらわしてやった。
 乾いた音が響き、一瞬の静寂を取り戻す。



 溢れる光の中、みるみる顔を歪ませるちるるさんの頬を、ぼろぼろと涙が零れ落ちた。

「うわーーーーん、どうじで―、どうじでなの、ぢるるわるぐないのにーーーー」

 正しく言えば、俺にも多少悪い部分があった事は認める。
 ただ、この際申し訳ないが、そいつはこの手のひらに生じた痛みで相殺してやってくれ。

 それにしても、いやはや――魔女ってやつはみんなこうなのだろうか?

「びぇーーーー」
「さあ、ゆゆるちゃん。多幸棒を」

 泣きじゃくりながら撒き散らされる白い蝶に囲まれて、脇にひょっこりと現れたゆゆる
ちゃんの杖に実を塗りつける。

「たこうぼう?」
「そうだ、ちるるさんへ」
「たこぼうでしょ?」
「いや、そうじゃなくて」

 これ以上続けるとややこしいことになりそうな上、ここは大変にシリアスな場面なので、
名前にひとまず譲ることとし、とりあえずちるるさんへと差し向ける。

 ゆゆるちゃんが多幸棒をくるくると回すと、その口からは虹色の煙が噴出され、白い蝶
と混ざり合うそれは、夜の闇を淡いパステルカラーで彩り始めた。

 やがて煙が柔らかくちるるさんの身体を包んだかと思うと、泣き声は夜の闇へと静かに
溶けていった。
☆ ☆ ☆

 遠い地平線、昇る朝日が俺の意識と身体をぼかしていく。お姉さんによって書き換えら
れた召喚期限が満了したのだ。

 おぼろげな視界の中、三人の魔女に囲まれて眠る、ちるるさんの姿があった。
 その表情は涙を流しつつもどこか穏やかで幸せそうな、柔らかい笑顔で満たされている。
どんな夢を見ているのか分からないが、きっと暖かいものであるに違いない。
 それ以上の詮索は、男として無粋極まりないことだ。

 ぺたぺたと俺の元へ走ってくるゆゆるちゃんが、頭で結わえた髪と一緒にお辞儀をする。

「ほんとうにありがとう。おねえちゃんもなかなおりするって」
「そいつは良かったな」
「うん」

 うむ。凡人だって、その気になれば人の役に立つのである。

☆ ☆ ☆



 さてさて、社会人の夏期休暇というのは学生時代に比べると絶望的に短いわけで、その
うち約二日間という貴重な時間を、俺は魔女界で過ごしたことになる。

 そこで繰り広げられた魔女たちの愛の応酬に多少食傷気味になっていた俺は、結局恋愛
DVDを見る事も無かったのだが、どちらにせよ見なかった気もするので全く問題はない。
 周りに流されるのも今日で終わりだ。

 しかし、それでも俺はあの時、あのタイミングで魔女界に行けたことを感謝せねばなる
まい。魔女たちの無茶苦茶ぶりに翻弄されたとは言え、結果、自分も何か精神的な成長を
遂げたと感じているからだ。
 精神の成長なんて基準もへったくれもないように思えるが、特殊な環境の中で生活する
俺には、それを計る物差しがあるのだ――

 洗面所から、甲高い声が響く。

「きゃーー」
「ゆゆるー、ちるるさんシャワーの使い方分からないってー」
「よーし、ゆゆるがおしえてあげよー」

 部屋の窓を開けると、澄んだ青空と大きな入道雲が広がっていた。

「すみませんね、急に四人で遊びに来てしまって」
「や、気にしないでください。せっかくだからみんなで遊園地にでも行きましょうか」



 爽やかに吹き込んでくる夏の風が、思いつきで付けていた風鈴を鳴らす。
 少しだけ伸びていた自分の髪が目に入り、瞼を閉じた。

 さて、次は彼女たちのどんなお話を書こうか、などと思案をめぐらせて見たところで、
それほど思い当たることも無く、また、そうであれば無理をするのは自分の流儀に反する
ことになるからして、やはりこの辺で筆を下ろそうかな、と思うのが俺らしくもある。

 人生波乱万丈、誠に結構。されど波は穏やかなのが一番なのである。



44創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 20:34:28 ID:jtPVEm3+
ということで長々とやってしまいましたが「がっかりヘヴン☆ゆゆるちゃん」完結です。

感想やご意見をくださったかた、本当は全てにお返事したいところなのですが、
馴れ合いうぜえwwwみたいになるのもアレなので、まとめてで申し訳ない。

読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました。
45創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 21:08:04 ID:kXEDaDuK
うおお!終わっちゃったよぉ!もっとあのユルユル雰囲気を
楽しみたいのになぁ。一期も二期もアッという間に最終回を迎えた…
また続編なり新作なり見たいなぁ、と願望を書きつつ乙でした
46創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 05:03:02 ID:s6YQBzo2
乙だぜ!
やっぱりハッピーエンドが一番だよね

次回作なり続編なり気長にお待ちしております

>>39
次待ってるぜー
47創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 23:38:35 ID:mCE1vxxO
このスレのキャラ達がカードゲーム化したらなんて妄想した
48創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 07:39:28 ID:4q8x0G+t
前スレはウメ子に任せることにする

>>ウッメー!(OKの意) 
そのまますぎて吹いたわw

埋め時にだけ現れるのだろうか。
もったいない気もするが、そこはあえて追求しないぜ!
49創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 15:28:08 ID:EO4q1lYQ
>それにみんなウメ子の活躍が見たくて書き込みを自粛したに違いないわ!

まさに真理
という訳で乙だぜ
50創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 21:48:03 ID:4q8x0G+t
ウメ子って色んなスレに出てくる人なんだ、知らなかった。
ともかくお乙だよー
51創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 23:51:37 ID:e3hDMBn0
うーむ、今日は投下無しかな、残念
52創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 19:04:12 ID:uqZPVy8i
昨日はウメ子が投下されてたじゃないか!

>>47
割と魅力的なオリキャラ多いものね
カードゲームツクールとかあればいいのに

いいのに
53創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 21:49:46 ID:oM/1tNdT
2chだとシステム作ってもどうしようもないんだよねぇ
カードゲームのシステム作るの大好きなんだが
54創る名無しに見る名無し:2009/02/24(火) 23:41:12 ID:YFIS37i8
カードゲームか…あんま詳しくないけど
ここの作品をそうすると、ゆゆるちゃんやまなみ本人たちが
戦うためのカードで各々の技や魔法が補助的な役目を
担うカードになるのかな
55まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/25(水) 22:10:55 ID:86eElaq4
書き込みたくても書き込めないジレンマ…それは規制…
ようやく解除されました。というわけで炎術剣士まなみ第七話投下します
56まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/25(水) 22:11:44 ID:86eElaq4
炎術剣士まなみ 第七話『卑劣なる次元鬼の罠!』

 次元魔城では三剣士への対策を練っていた。それこそ徹底的に攻め立てられるような
ものを考えようとしている。
「もっともっと強力な次元鬼を作り出して、それをぶつけましょうよ!」
「ベルディス、そんなことは今まで散々試してきただろう。だが、どれも剣士どもの
技の前に敗れていった。それどころか、ただの人間の兵器に倒されたことすらあった。
ただ単に強い次元鬼を送りつけるだけでは駄目だ」
場の空気を読まないベルディスに呆れ、溜息をつきながらウルムが指摘する。

「じゃあ、人質作戦!抵抗出来ないところをジワジワなぶり殺しよ!」
「馬鹿ねぇ、あっちには忍びの技持ちがいるでしょ。気付いたら人質が取り返されてる
ことだってありうるわよ。なにせ憎しみすらプラスの力に変換させるような奴だし」
あっさりと意見を否定され、スクリタはぷぅっと頬を膨らませている。
一向にこれと言って妙案は浮かばないまま時が過ぎようとしていた…
だが、ウルムが何かに気づき、スクリタに顔を向ける。

「いや…人質作戦…上手くいくかもしれないぞ。それも奴らにとって最悪の形でな…」
「ウルムお姉さま、どうするの?」
「なに、ちょっとある者の心をいじるだけよ…ふふふ」
不敵な笑みを浮かべたウルムの背後に、黒いローブを身に纏った人物が現れた。
その人物に振り向かずにウルムは静かに意思を伝える。
「操心師レームア。新堂悠美を捕らえよ」
「御意。吉報をお待ちください」
レームアなるローブの人物は闇に紛れてその場から姿を消した。
57創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 22:11:57 ID:4co2xwvs
くそう、投下がねえとうずいてくるぜ。
しかしそんなうずきをよそに、どれみシャープを見るんだぜ。

ぽっぷかわいいよぽっぷ
58創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 22:12:30 ID:4co2xwvs
ぐは、とおもったらきてた。ごめん支援
59まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/25(水) 22:12:32 ID:86eElaq4
日本は穏やかなオレンジ色の空に包まれている。まなみの自宅では裕奈と伊織が
テレビゲームをして遊んでいる。どうやら格闘ゲームのようで、裕奈は白い道着で
鉢巻をしている武道家、伊織は仮面を被ったナルシストっぽいキャラを使っている。
「うう…さっきから伊織ちゃん強すぎだよ…全然当たんないよぉ」
「ふふ、裕奈ちゃんとはやり込み度が違うんだから!はい、おしまい!」
スピーカーからうーあうーあうーあ…と声が響き、画面にKOの文字が浮かぶ。
仮面のナルシストは優雅な時を過ごさせてもらったなどと口にしている。
裕奈が項垂れ、がっかりしている時、まなみがジュースを盆に乗せて部屋に入ってくる。

「ねぇ伊織、次は私と交代してよ」
まなみの言葉を聞くと、裕奈は残念そうな顔つきになる。
「えー、まなみちゃんじゃ逆に弱すぎるしなぁ」
「ちょっと!さっきはいいようにやられたけど、次は負けないんだから!」
伊織から半ば無理やりにコントローラを取り、裕奈と対決する。まなみは軍人キャラ使用。
それから30分後。もはや飽きたかのように欠伸をしている裕奈と、
どんよりしているまなみ。

「こ、これで…0勝10敗……!」
「まなみちゃん、やっぱ下手くそだねぇ…ところで悠美さん見ないけど、どこ行ってるの?」
何気なく質問する裕奈だったが、これが一気に場の空気を変えてしまった。
「え?ああ、お母さんはお父さんのお墓参りに行ったよ」
「まなみさん、お父さんって…」
「うん、お父さん、私が幼いころに亡くなってさ。それからお母さんと二人暮らし」
決して悲しそうな顔はせず、あくまで笑顔で答えるまなみ。場は一瞬静まり返り、
すぐに裕奈がハッとなり、申し訳なさそうに口を開く

「ご、ごめんね、まなみちゃん!あたし知らなくて…」
「いいのよ。それに私、幼かったからお父さんの記憶とかあんまり残ってないし…
でも、遊園地に連れて行ってもらったことは覚えてるなぁ。楽しかったよ、とっても」
まなみは明るい表情だが、どこか寂しさを感じさせた。
60まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/25(水) 22:13:06 ID:86eElaq4
夕焼け空の下で、和服姿の悠美が花を持ってゆっくりと歩いている。その足取りは
ひっそりとした、小さなお墓の前で止まる。そこに花を添え、手を合わせる。
「誠一さん、あまり来ることが出来なくてごめんなさいね」
眼差しは墓石を見ているというより、もう遠くにいってしまった、
夫へと向けられているようだ。悠美は言葉を続けていく。

「まなみちゃんも大きく、立派に成長しています。あなたに似て、正義感が
強くて、思いやりがあって。あ、でも結構おっちょこちょいだったりもしてね……」
悠美はまなみのことを中心に思い出を語りだし、終わるころには夕日も落ちようと
していた。悠美はこの場を去ろうと立ち上がる。
「それでは…誠一さん、また来ますからね。まなみちゃんのこと、見守ってあげてね」
背を向け、歩き出す。墓地の出入り口まで来ると、ピタリと立ち止まる。

「…先ほどから気配を感じていましたが…何者ですか!?姿を見せなさい!」
悠美が落ちる日の方向に向かって鋭く発する。物陰から人影が現れ、次第にはっきりと
見えてくる。そして姿が明確になるにつれ、悠美の表情が驚愕へと変わっていく。
そこには背の高い、どこか清々しさを感じさせる顔立ちの男の姿が。
「久しぶりだね、悠美」
「せ…誠一さん…!いえ、違う…あなたは誠一さんじゃない」

夢か幻か。その男は、悠美が唯一愛した誠一の姿であった。だが、悠美は
一瞬驚きはしたが、すぐにどこか禍々しい気を感じだした。
「おいおい、悠美…君は僕のことを偽物だと思うのかい?」
「誠一さんは、そんな邪な雰囲気の人ではなかった…第一、もう…」
「死んでるっていうのか?でも、僕はここにいる。君が信じようが信じまいが」
ゆっくりと誠一は悠美に詰め寄り、その分、悠美は後ずさりしていく。
だが、石壁に阻まれ悠美はすでに下がることは出来なくなっていた。

「悠美、もう一人にはしない…僕と一緒に行こう」
そっと、誠一は悠美を抱きとめる。それは長らくご無沙汰であった優しい抱擁。
「うう…だめ……あなたと一緒に行ったらまなみちゃんはどうなるの…」
「まなみ?いいじゃないか、もうそんなことは忘れて…君の幸せについて考えればいいさ」
その抱擁のなか、目を合わせ、誠一は唇を奪った。悠美の瞳の光が次第に弱くなる。
「(ごめん、ね…まなみちゃん……お母さん、もう…)」
瞳はトロンとし、全身から力が抜け、誠一にもたれ掛かる。誠一の優しい笑みは
邪悪で禍々しいものへと変わっていく。
「悠美、君は僕のものだ…」
「は、い……誠一さん…」
61まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/25(水) 22:14:15 ID:86eElaq4
その頃、まなみは帰りが遅い悠美のことが心配になり、家の中をぐるぐる歩き回っていた。
「まなみさん、少し落ち着きましょうよ」
伊織がそう言って、まなみを座らせても、今度はため息をついたり、
頭を掻いたりで、やっぱり落ち着かない。
「そんなに心配なら携帯に電話すればいいんじゃないの?」
「お母さん、携帯は持ってないから」
そわそわが止まらないまなみと、それを呆れるように見ている二人の時間は
黙々と過ぎていく。

その沈黙を鳴り出した自宅の電話が破った。まなみが駆け寄って電話に出る。
「もしもし!お母さん?」
「こんばんは、新堂まなみさん。私よ、スクリタです」
「す、スクリタ!?なんでうちの電話番号知ってんのよ!」
相手は次元鬼三姉妹のスクリタであった。そのことに驚くのも束の間、
スクリタが要件を伝え始める。

「番号のことなんてどうでもいいじゃない。電話帳にだって載ってるんだし。
それよりも、あなたのママ、こっちで預かってるから迎えに来たら?」
その言葉に、まなみの表情が緊迫したものへと変わる。
「お、お母さんが!?あなたたち、お母さんをどうしたのよ!」
「安心して。命は無事だから。今から私の言う場所まで来たらお母さんに会えるわよ」

スクリタはまなみに、町はずれの廃工場に来るように伝え、あとは一方的に電話を切った。
「まなみちゃん!悠美さん、あいつらに…!」
「早く助けに行きましょう!」
「うん…なんとしてもお母さんを取り戻す!二人とも、力を貸して…!」
三人は手を合わせ、頷き合うと、そのまま変身し剣士の姿となる。そして三人それぞれの
気が混じり合い、それは高まっていく。
「「「時空転幻!!」」」
三人の叫びと同時に眩い光が彼女たちを包み込み、消えた。
62まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/25(水) 22:15:09 ID:86eElaq4
スクリタに伝えられた廃工場の入り口前。光とともに三人の姿が現れる。
「裕奈、伊織。当たり前だけど、何が待ってるか分からない。今回は私のお母さんのこと。
それでも…」
「今さら何言ってんのまなみちゃん!」
「そうですよ、悠美さんが心配なのは私たちも同じです!」
二人の真剣な表情に、まなみは心から感謝し一緒に工場へと足を踏み込んでいく。

廃工場は、最初は使い古され、破棄された機械群が並び、人がお化け屋敷として
再利用できそうな感じであったが、奥へと進むにつれ、それは工場の中というより
深い、光も差さない不気味な森の中のようになっていく。
「まなみちゃん、そろそろ来そうな予感だよ…」
「そうみたいね…そこっ!」
裕奈の勘は当たり、茂みの中から次元鬼が飛び出してくるが、まなみの炎流波が飛び
接近される前に燃やし尽くした。続いて巨大な花の怪物が現れる。

「まなみさん!ここは私と裕奈ちゃんに任せて先へ行って!」
「でもっ…!」
「いいから早く行ってまなみちゃん!後から追い付くから!」
裕奈と伊織はまなみを先へ行くように言い、花の怪物に向かって斬り掛かっていく。
まなみは意を決したようにグッと拳を握りしめ、二人の方を一瞬振り返ったあと
さらに森の奥地へ駈け出していった。

しばらく進むと、一筋の光が見え始める。それに向かってまなみは走る。
光へと到達すると、一瞬何も見えなくなり、その後、視界が広がっていく。
そこは綺麗に整備された石造りの巨大な部屋。無駄な物はなにもなく、奥に階段と
二つの柱があるだけであった。
「スクリタ!お母さんを迎えに来たわ!早くお母さんに会わせて!」
まなみの叫びが部屋の中を木霊する。それに呼応したかのように、奥の階段から
コツコツと足音が聞こえ始める。まなみが奥をじっと見据えている。

闇の中から少しずつ、現れていき、それはまなみのよく知る姿へと変わっていく。
「…お母さん……!」
すぐに駆け出し、悠美の和服を掴む。だが、悠美の反応はない。
「お母さん…ねぇ、どうしたのよ!?」
呆然と光を失った瞳でいる悠美の身体を揺する。
「…まなみちゃん、うるさい」
大きく乾いた音を響かせ、悠美は声を発したかと思った瞬間、まなみを殴りつけていた。
何が起きたのか理解できず、まなみは呆然としていた。
63まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/25(水) 22:16:02 ID:86eElaq4
どこからか、低い笑い声が響きだした。その直後、次元鬼三姉妹が階段の前に姿を現した。
「ふふ、新堂まなみ。殺気のこもった母親の拳の味はどうかな?」
「くぅ…あなたたち!お母さんには何もしていないって…!」
「あら、『命』には何もしてないわよ。そう言ったじゃない」
スクリタの言葉は確かに嘘ではなかったが、これは予想外の形であった。
「まなみ、今でもこの状況を理解できない、あなたに追い打ちかけちゃう♪
ほら、早くあれやりなさいよ」
「はい…」

ベルディスの言葉に従って、悠美の身体から光が発生する。そして呟いた。
「炎心変幻」
悠美を包み込むように火柱が発生し、その中で先ほど来ていた和服は光となり
新たにまなみのそれと同じように白い着物と紅い羽織。羽織の袖口はまなみの
それと違い白く染め上げられている。袴はミニスカ状ではなくいわゆる
ノーマルなタイプでストライプ状の模様が入っている。そして足袋と草履が履かされ
籠手と刀が現れ、それを装着する。

「うそっ…!お母さん……」
先代の炎術剣士の姿へと変身した悠美の姿を見て、まなみは頭の中が
かき回され、余計に今の事態を飲み込めないでいた。
「新堂悠美、まなみを殺せ」
「分かりました…まなみちゃん、悪いけど…死んでちょうだいね」
抑揚のない声で宣言すると、抜刀し、正眼の構えに移る。
「うふふ、先代の剣士にしてまなみのママが娘を殺す…最高のショーですね、お姉様たち!」
三姉妹の笑い声が響き渡るなか、まなみの瞳は絶望が色濃くなり、いまだに
足がすくんで立てないでいた。
「そん、な……こんな…こんなことって……!嘘だ…嘘だ……お母さぁぁぁぁぁぁん!!!」
泣き叫ぶまなみに向かって悠美はその刃を娘に振りかざした。


次回予告「どうして、こんなことに…お母さん、お願いだから目を覚まして…!
でも、そんな願いは次元鬼の操心の効果で打ち消されて…だけど、私は諦めない。
絶対にお母さんを取り戻してみせる。次元鬼なんかにお母さんは渡さない…!
次回『悲劇の母娘!想いを炎に乗せて』かならずお母さんは助けてみせる!」
64まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/25(水) 22:18:04 ID:86eElaq4
というわけで第七話投下完了です。初の前後編です。
それにしてもカードゲームかぁ、面白そうっすね
65創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 22:23:01 ID:4co2xwvs
乙乙ー
規制だったのかー、途中ではさんじゃってごめんね

お母さん強いんだろうなあ、続きが気になるぜ!
ところで風術剣士っていないのかすら
66創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 22:59:37 ID:ifeLsoCf
http://www15.atwiki.jp/majokkoxheroine/
でーきーたーよー

これだけ作るのに三日もかかったっさ
とりあえず見栄えは良くなったので暫定的に放流
後で細部を作り直す気マンマンです

SSの件ですが、作者様には無断で申し訳ありませんが、
改行とかの部分を見やすくするためにちょろっと弄らせて頂きました

ま、後は…追々やっていこうと思います
足りないところは皆が助けてくれるはず……

というわけで早速助けていただきたいのですが、
このwikiにある、“まとめサイト作成支援ツール”が使いこなせません
だもんで、どなたか前スレまとめていただきたい お願いします
67創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 23:01:35 ID:8++fZbp8
乙といわせていただく!!
68創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 23:05:38 ID:4co2xwvs
おおおおお乙GJ!

とりあえずゆゆるの誤字脱字修正と
がっかりヘヴンの2話目を書き直し予定

マイティ☆まどか好きだったんだけどなあ……
CMが長すぎるのである。
69創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 23:12:28 ID:ifeLsoCf
気づいたらまなみ七話きててびっくりだわ GJ乙
今まなみ七話追加しておきましたー

さ〜て、んじゃ俺も一介のSS書きに戻るかな…
70創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 23:13:48 ID:4co2xwvs
>>69
もちろんここに投下なさるんですよね?

よね?
71創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 23:18:20 ID:Rm99l6pc
実はサミーさんというオチ
72創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 23:22:29 ID:2zeK7OHB
まとめサイトの人乙!編集は手伝える時は協力したい

まなみ作者さん規制だったのか〜OCN?
よく洗脳話はあるけどまさかまなみママンとは思わなかったぜ
でも個人的に好きなのはゲーマーな伊織かなw
73創る名無しに見る名無し:2009/02/25(水) 23:22:40 ID:4co2xwvs
なに、そうだったのかw

ともかくお疲れ様でした。
というか続きを書くのも頑張ってえ
期待してますですので!
74創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 00:45:47 ID:gVKmvm+0
>>71
あっしは暇さえありゃエロいこと考えてる様な人間ですんで、
ましてやサミーさんみたいに、あんなに長い文章を短時間で書き上げる芸当をもってやおりません

だもんで中途半端に残ってるSSがチラホラある状態…
そっちをいくつか終わらせたら、ここにも投下したいと思っておりやす …気長にお待ち下さい

書いてるどのSSを見ても、魔法少女やらヒロインやらが出てくるんですけどねー
まぁ…根っからの魔法少女&変身ヒロインスキーなもんで
75創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 19:45:05 ID:X2rfezT9
>>まとめてくれた方様

もしこれを見かけたら、ゆゆるちゃん第一期一話のタイトルを
「はじめまして☆ゆゆるちゃん」
に変えていただけるとたすかります、なんかうまくできなくて。

いまちょいちょいと誤字直し中
76創る名無しに見る名無し:2009/02/26(木) 23:35:56 ID:ZXD+b5C2
まとめサイトも出来てよかったなぁ
時にまなみ作者さん、まなみのお母さんの話とか考えてる?
77まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/26(木) 23:58:43 ID:yCi961Ju
だー、八話完成しなかった…。

>>66
非常に乙でした!自分、改行不足気味だったので
そこを直してくれたことにも感謝です。

>>65
残念ながら風術剣士はいないですね。最初は伊織が雷じゃなくて
風の術で戦うというようにしようかと思ってましたが、
イメージカラーが黄色で風はあってないよなぁ…と。緑色にすると
なんだか魔法騎士みたいだし。

>>72
そうです、OCNです。最近規制なかったから油断してました…。

>>76
う〜ん、考えてないわけじゃないです。機会があれば
それも作って発表出来ればとは思います
78創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 00:19:53 ID:TxWTSeCm
投下してみようかなぁ。
でもあんまり文章うまくねぇしな
79創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 07:41:49 ID:5sLolDA8
>>78
やっちまいな!
80魔法少女トゥインクル・オーガスト(1/4):2009/02/27(金) 14:28:50 ID:NmNEhFrH
 夜空には月が出ていた。
 細い路地を、半袖姿の巡回の警官二人組が懐中電灯を手に歩いている。
 その頭上を、黒い影がかすめた。
 しかし、汗を拭う彼らはそれに気付く事は出来ない。
 それはそうだろう。
 家の屋根から屋根へと女の子が疾走しているなど、想像出来るはずがない。
 年の頃は九か十だろうか。
 巫女装束に身を包み、足が動くたびに、腰まである長い黒髪と後ろで括られ
た赤いリボンが風になびいている。
 棍を手に持ちその表情は、凛と……しているとは言い難く、情けなさそうに
眉は八の字に垂れていた。
 少女の左肩には、小さな生き物が腰掛けている。赤く、額に二本の角が生え
ているその容姿は、一般的に鬼と呼ばれるモノだ。小動物サイズなので子鬼と
言うべきか。

 その子鬼は警官を見やり、小声で囁いた。
「……予想通り、警察は通り魔と見ているな」
「そ、そうみたいだね」
 巫女装束の少女、トゥインクル・オーガストは頷いた。
 そして、次の屋根へと素早く跳躍する。
「高いところは苦手か、天が……いや、オーガスト」
「そ、そうでもないけど……」
「ある意味、初の実戦だ。緊張するのは分かる」
 子鬼は励ますように、トゥインクル・オーガストに囁いた。
「う、うん……木じ……ボルト君、私に、ちゃんとできるかな」
「大丈夫。お前の運動神経は俺が保証する。練習通りにやれば、問題はない」
「う、うん……あ、もうすぐ近くかも」
 トゥインクル・オーガストの心臓にある第六感が、『相手』の存在を教えて
いた。
 これも、今の自分の姿の効果なのだろう。
「分かるか。急げよ。時間がない」
「う、うん――いた!」
 一人と一匹の足が加速する。

 仕事ですっかり遅くなってしまった。
 そのOL、戸隠智佳(とがくれ ちか)は足早に、自宅のマンションへと向
かっていた。
 人員整理で社員が減ったとはいえ、こう毎日残業ではやっていられない。満
足に夕飯の自炊も出来やしない。
 せめてお盆は休ませてくれるんでしょうね。
 熱帯夜の暑さにイライラしながら、彼女は角を曲がった。
 この、ほんの数十メートルの路地を通り抜ければ、すぐ目の前がマンション
だ。
 服やスカートを切り裂く通り魔の噂は聞いていたが、こんな短い距離だ。大
丈夫だろう。
 そう思い、智佳は足を速めた。
 しかし数歩も行かないうちに突風が吹き、たまらず彼女の足は止まってしま
う。
「う……」
 嫌な予感に、智佳の足はすくんだ。
81魔法少女トゥインクル・オーガスト(2/4):2009/02/27(金) 14:30:52 ID:NmNEhFrH
 狭い路地の向こうには、マンションの明かりが見える。
 しかし、自分とその明かりの間には、何か。
 見えない何かがいる。
 背中を嫌な汗が流れた。
 子供の頃、近所にいた大きな野良犬に出くわした事があった。アレと同じ緊
張感。
 薄暗い路地に、細い風の吹く音が響く。遠くで車の走り去る音。
 ジリ……と智佳が後ずさりすると、ハイヒールが甲高い音を立てた。
 それと同時に、風の音が高く凶暴なモノに変化した。
 ――来る!
 声は出せなかった。
 身を翻す余裕もなく、見えない『何か』が智佳に殺到する。
 同時に、頭上からも光り輝く『何か』が降って来た。

「逃げて!」
 頭上から降ってきた少女の肩にいた子鬼――ボルトの声に、女性は身を翻し
た。
 一方、トゥインクル・オーガストは見えない『何か』を精霊力を込めた棍で
殴った感触はあった――が、暗いは相手の姿は見えないはで、伝えたダメージ
の程は分からない。
「思った通り、『カマイタチ』だ。ここじゃ俺達に勝ち目はない。行こう、オ
ーガスト!」
「う、うん!」
 トゥインクル・オーガストが跳躍する。
 そのすぐ後ろを、見えない『何か』――いや、カマイタチが追ってきている
のが、心臓を通して伝わってくる。
「う、後ろにいるぅ……!」
「当然だ。そうじゃなきゃ、話にならない」
 ボルトは冷静に言う。
「あ、あの、ボルト君……な、なんか、カマイタチさん、すごく怒ってるみた
いなんだけど……」
「出会い頭に殴られれば、普通は怒る」
「ふえぇ……!? じゃ、じゃあ襲われたら……」
 ボルトの言葉に、トゥインクル・オーガストは涙目になった。
「今までの事件みたいに、服やスカートじゃすまないだろうな」
「え、あ、うぅ……」
 本当に泣きたくなってきた。
「大丈夫だ、オーガスト。短距離ならその姿になったお前の方が速い」
「そ、そうなの……?」
 袖で目尻を拭いながら、トゥインクル・オーガストはボルトに尋ねた。
「ああ。長距離ならやばかったけど。いいか、とにかく全速力で作戦通り、あ
そこに向かえ」
「う、うん……でも、ほ、本当にやるの?」
「ああ、今のところ、これが一番勝算の高い方法だからな。それに変身時間も
残り少ない」
「あと、何分?」
「何分というか……あと四十五秒だ。いよいよやばい」
「ふええぇぇ……!」
 屋根から屋根へ跳躍――というよりもはや、駆け抜ける勢いで、トゥインク
ル・オーガストは目的の場所へと向かった。
82魔法少女トゥインクル・オーガスト(3/4):2009/02/27(金) 14:32:44 ID:NmNEhFrH

 風の精霊カマイタチは巫女装束の少女の背中を追い駆ける。
 逃がさない。
 肩に乗っている子鬼は大きさこそ小動物サイズになっているが、間違いなく
魔界の獄卒鬼ボルトだ。魔界を脱走した自分達を追ってきたのだろう。
 となると、あちらの少女は現界でのパートナー、トゥインクル・オーガスト
なのだろう。契約をしてまだ日も浅いのか、足取りもおぼつかない。
 何故、ボルトがあんな風に縮んだのか知らないが、今の自分ならトゥインク
ル・オーガストごと倒す事は難しくないはずだ。
 絶対やっつける。
 そして現界で自由を謳歌するんだ。
 己を鼓舞し、カマイタチはトゥインクル・オーガストの背中に迫った。
 その時、跳躍したトゥインクル・オーガストが身を翻した。
 カマイタチに対して精霊棍を構えたまま、彼女は自由落下に突入する。
 ……何を考えている?
 そうは思ったが、今がチャンスだ。
 カマイタチは精霊力を高め、トゥインクル・オーガストに牙を剥いた。自分
の武器、真空の刃を振りかぶり――少女の肩に乗っていたボルトが、ジッと自
分を見つめているのに気が付いた。
 何かを見落としている。
 思考時間はほんのわずか。
 そして気がついた。
 少女、トゥインクル・オーガストの落下地点は、町で一番大きな公園にある
湖だった。
 カマイタチは自分の失敗を悟った!

 背中から、トゥインクル・オーガストは湖へと飛び込んだ。
 そしてそれに続くように、透明な獣も水中へと追ってくる。
 風の精霊、カマイタチ。その姿は、尻尾を巨大な刃に変化させたイタチによ
く似た動物だった。
 水の中で初めて姿を見せたカマイタチは、しかしその動きは鈍かった。風の
精霊だけに、水中ではろくに身動きがとれないようだ。
 トゥインクル・オーガストは、ボルトに目配せする。
 作戦通り!
 ボルトも頷き、トゥインクル・オーガストは精霊棍に霊気を込める――!!

 次の瞬間、夏の夜の湖が、高らかに噴き上がった。

 ピラリロリン。
 公園の木陰、白いブラウスと赤のプリーツスカートをずぶ濡れにしたトゥイ
ンクル・オーガスト――いや、天神はづき(あまがみ はづき)が携帯電話の
撮影ボタンを押すと、高らかに電子音が鳴り響いた。
 ディスプレイの中では、半透明の獣が目を回していた。
 そして、実際に芝生の上で気絶していたカマイタチは、スゥッと姿を消した。
「ふぅ……」
 そこでやっと、はづきは安堵の吐息を漏らした。
「何とか終わったな」
 同じくずぶ濡れになった短髪で愛想のなさそうな少年、木島勇人(きじま 
ゆうと)が明後日の方向を向いたまま、はづきに言った。
「そ、そうだね。まずは一体、かな」
83魔法少女トゥインクル・オーガスト(4/4):2009/02/27(金) 14:34:32 ID:NmNEhFrH
「……先は長いな」
「う、うん。でも、がんばらないと。私たちにしか、出来ないお仕事だもの」
「ああ」
「……? あ、あの、木島君?」
「何だ」
「その、どうして、ずっと向こう向いてるの?」
「…………」
 勇人は彼方を見据えたまま困ったように頭を掻き、はづきを指さした。
「服」
「え?」
「透けてる」
 はづきは自分の服を見た。ずぶ濡れになったせいで、下着が透けていた。
「きゃあっ!?」
 慌てて、胸を腕で隠した。
 勇人はポケットに手を突っ込むと、歩き始めた。
「帰ろう。夏場とは言え、濡れっぱなしじゃ風邪を引く」
「そ、そうだね……」
 はづきは、勇人の背中を追った。
 勇人の家は反対方向だったような気がするが、勘違いだったら恥ずかしいの
で聞く事は出来なかった。

 翌朝。
 木々の狭間から蝉の鳴く声が響く通学路を、着替え袋を持ったはづきは友人
二人と歩いていた。はづき達の通う冬月小学校は夏休みの間、プールが開かれているのだ。
「あっ、ななみん、そのスカート」
 はづきの前を歩く大須紫苑(おおす しおん)が、隣を歩く友人、三宮那波
(さんのみや ななみ)のロングスカートを指さした。
「はい、ママに縫ってもらいました」
「お気に入りだったもんねー。あ、こっちの近道使う?」
 那波の答えに紫苑が頷き、路地を指さした。
 しかし、那波は眉を下げ、首を振った。
「……ごめんなさい。しばらく、そちらは使う気になれません」
「っと、あ、あたしこそ、ゴメン。そうだよね。早く捕まらないかなぁ、あの
通り魔。怖いよね」
「はい……」
 つい先日、那波は塾からの帰宅途中、この界隈を騒がせる『通り魔』の被害
にあったばかりだ。
 でも、もう心配はいらない。もっともその事を知っているのは、現状はづき
ともう一人しか知らないのだが。
「……もう、現れないから大丈夫だよ、那波ちゃん」
 そんなはづきの呟きに、紫苑は振り返った。
「ん? 何か言った、ハッチン?」
「う、ううん。何でもないよ」
 その事実ははづきと勇人だけの秘密。
 という訳で、はづきは控えめに首を振るのだった。
84創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 14:37:12 ID:NmNEhFrH
投下完了。
なんかバトル寄りになってしまいました。(汗
85創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 18:04:15 ID:5sLolDA8
新作投下きたーー
バトル寄りというか、そのへんツボを抑えた魔女?っ子の良さがあって
(携帯の中で目を回すとか)俺は好きだ。

続きに期待させてもらうぜ!
86創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 22:36:13 ID:5sLolDA8
そして唐突にゆゆるちゃんの絵を描いてみたんだ。
まあイメージは俺の中のってことで...

http://www6.uploader.jp/dl/sousaku/sousaku_uljp01021.jpg.html
87創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 23:21:21 ID:KAPYFDhf
新作きたー!バトルヒロイン風味は良いと思います
続きに期待する!

ところで関係ないけど、まとめサイトにチャットとか
あればいいなぁ。交流用に。
88まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/27(金) 23:29:31 ID:RwVVcsay
新作投下乙でした。巫女装束姿かぁ…そそられるなぁ。
さて、炎術剣士まなみ第八話投下します
89まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/27(金) 23:30:26 ID:RwVVcsay
炎術剣士まなみ 第八話『悲劇の母娘!想いを炎にのせて』

前回、まなみの母・悠美は次元鬼族に洗脳され先代炎術剣士の姿へと変身し、
まなみに襲い掛かった。悲しき戦いが始まろうとしている…。

悠美がまなみに斬りかかってきた。咄嗟にまなみも刀を抜き、それを防ぐが、剣圧が
まなみを吹き飛ばし、壁に叩きつけてる。苦痛で表情を歪ませるまなみ。
「うああっ!お、母さん…やめて、目を覚まして!」
「…うるさいっ!」
悠美の腕から炎が放たれ、まなみの周囲を焼いていく。炎に囲まれ、
まなみは怯んでしまう。そして斬撃が再び襲い掛かってくる。

「くぅぅ……どうして、お母さん…!」
「お母さんね、まなみちゃんのことなんか、もうどうでもいいの。だって
ここには幸せがあるんですもの」
鍔迫り合いをしながら、どこか妖艶な表情な悠美の言葉に少なからずショックを受ける
まなみ。それでもまなみは悠美になんとか問いだす。
「お母さんの…幸せってなんなのよ!?」
「うふ、それはね…」

すると、悠美が現れた階段からまた新しい人影が。そちらにまなみが振り向くと
彼女は驚愕する。そこには父・誠一の姿があったからだ。
「やあ、まなみ…大きくなったね」
「ま、間違いない…お父さんだ…!」
「そうよ。お母さんね、誠一さんとずっと一緒にいたいの…」
「やめて!お父さんはもう死んだんだよ!?そんな幻に惑わされないで!」
「死んだ…馬鹿なこと言わないでちょうだい!誠一さんがいる…それだけでいいのよ!」
まなみの叫びも空しく、悠美は正気に戻るどころか、攻撃の激しさが増してきた。
90まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/27(金) 23:31:22 ID:RwVVcsay
「まなみ、しばらく見ないうちに随分と母さんに反抗的になったんじゃないかい?
そんな悪い子にはお仕置きをしてやらなくちゃいけないな、悠美」
誠一が悠美と目を合わせると、一瞬赤く光り、悠美は静かに頷く。
「ごめんなさい、誠一さん…躾がなっていなかったみたい…もう一度躾直します!」
再び攻撃を再開し、何度も何度も斬りつけていく。

母を傷つけることなど出来ないまなみは、防戦一方、なにかいい対抗策もない。
不意を突き、悠美がまなみを蹴り飛ばし、まなみは仰向けに倒れる。
「ぐぅっ!…お母さん……」
「悪い子にはお仕置きよ、まなみちゃん…はあぁぁぁ!」
悠美の炎の気が刀に纏われていき、まなみは思わず、瞼を固く閉ざす。
その時、水流と稲妻が悠美とまなみの間に降り注がれた。

それが飛んできた方角には裕奈と伊織の姿が。
「まなみちゃん大丈夫!?どうして悠美さんが…」
「悠美さん!まなみさんに酷いことしないでください!」
二人の剣士は悠美を止めようと、駆け出す。それを見た悠美は八相の構えを取り
水平に空を斬る。すると、斬撃の勢いが衝撃波となり、二人を吹き飛ばした。

なんとか起き上がり、刀を構えて悠美の方へと視線をやる。
「くぅ、なんとかして、悠美さんを止めなきゃ伊織ちゃん!」
「ごめんなさい悠美さん、あなたがまなみさんを手に掛けようというなら…」
「裕奈ちゃん、伊織ちゃん……思い上がるのも、いい加減にしなさい!」
低く静かに悠美が普段は見せない鋭い眼光で二人を睨みつけながら発する。その瞬間、
二人に戦慄が走り、震えが止まらなくなる。

「あ、あぁ……!」
「私たちなんかじゃ…比べ物にならない…」
蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れず足も竦んでしまう。それをウルムが笑う。
「当り前であろう。まだ完全に力を使いこなせていないお前たちと、新堂悠美とでは、
経験始め、あらゆる面で雲泥の差がある。さあスクリタ、ベルディス。
裕奈と伊織を始末しろ」
スクリタとベルディスは顔を向けあい、怪しい笑みを浮かべ二人の目の前に移動する。
91まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/27(金) 23:32:21 ID:RwVVcsay
「ふふん、所詮、あんたは力ばかりのガキんちょなんだよ!」
「うあっ!が、ガキじゃないもん…あうぅ!」
スクリタは裕奈を何度も蹴りつけ、踏みつけていく。裕奈の悲鳴が上がるたびに
残酷で嬉々とした表情を浮かべるスクリタ。反抗的な声が発せられると、踏みつけを
強くしていく。

「こうなってしまえば、我々を苦しめていたこいつらも、ただの娘ですわね…。
恐怖に塗れながら死ね、伊織!」
「きゃあぁぁぁ!…く、あぁ…わた、し…死ぬの……?」
ベルディスは右腕からどす黒い光線を伊織に放射し執拗に浴びせ、伊織は苦痛で
泣き叫び、命の危機を感じたか、小さく呟く。

「裕奈!伊織!…っんぅ!」
二人に呼び掛けるが、悠美がそれを遮断してしまう。まなみの進路上は炎に包まれた。
「僕たちの娘だというのに、なんと駄目な子だろう…悠美、ひと思いに
まなみを殺しなさい」
「はいっ…」
いまだ輝きを失った瞳の悠美は刀に気を集中し始める。

「じゃあ、まなみちゃん…私と誠一さんのために死んで」
「違う…違うよお母さん!私の記憶にあるお父さんはこんな人じゃない!
思い出して、お母さん!」
何度も呼びかけるが、返答はなく、静かに必殺の構えに移行する。
「新堂まなみ、残念だがお前がいくら頑張ろうと、悠美の心を解放することはできん」
冷徹にウルムが言い放つ。だが、まなみは決意した表情になり、母と同じく
刀に気を集中し始め、必殺の構えに。

「分かった…だったら、お母さん!まなみは…お母さんと戦う!
そして勝ってお母さんを連れ戻す!」
互いの刀に纏われた気は炎となり、光を放つ。そして同時に飛び上がる。
動きをシンクロさせながら、気は最高潮に達する。
92まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/27(金) 23:33:02 ID:RwVVcsay
「「火炎大破斬!!」」
二人の刀が交わり、そこを中心に眩い光が辺りを包み込む。その光の空間の中で
互いに一歩も引かずに長い鍔迫り合いが行われていた。だが、まなみの刀に
ひびが入り始める。それを見た悠美はニヤリと笑う。
「まなみちゃん、すぐに殺してあげる!寂しくないように裕奈ちゃんと
伊織ちゃんも、同じところに送ってあげるわ!」

悠美が刀を押し込み、まなみの刀のひび割れが広がっていく。
「お母さん…今こそ、私はお母さんを超える!うああぁぁぁぁぁぁっ!!」
まなみの気力が爆発的に増幅していき、一気に押し返していき、体勢を崩させる。
そしてそれを整わせる間も与えずにすれ違いざまに袈裟掛けに斬り裂いた。
「あぁぁぁぁっ!?」
娘の渾身の一撃をくらい、悠美は転落し、ドサッと音を立てながら地に伏せた。

その光景を見たウルムは驚愕の表情であった。
「馬鹿な…まなみのどこにこんな力があったというのだ!?」
「お姉さま!どういうことなの!?」
思わずベルディスとスクリタは攻撃を止め、ウルムの方に振り返る。
まなみは、自ら倒した悠美に向かって駆け寄り、抱き起そうとする。
「お母さん!しっかりして!」
「くっ…まなみめ、よくも…悠美!今度こそまなみを殺せ!」

誠一の言葉が合図のように、悠美がフラっと起き上がり、まなみから離れる。
それを見たまなみは、万策尽き打ちひしがれた。
「さあ、殺れ!」
「はい…ただちに!」
結局、母を救えず、自分も、裕奈も、伊織もここで終わってしまうのかと思うと
まなみは死への恐怖より、自分の無力さに悲しくなり、一筋の涙が流れた。

そして悠美の刀が振り下ろされ、まなみは瞳を固く閉ざす。
だが、何も起きない。ゆっくりと目を開くと、悠美の刀が誠一に突き刺さっていた。
「…ぐぐっ…どういうことだ…!?貴様は完全に私の支配下にあったはず…!」
「誠一さん…いえ、次元鬼!あなたたちには私とまなみちゃんの…
いや、人の絆など分かりはしない!はぁっ!」
刀から炎を発生させ、誠一の身を焼いていく。すると、誠一は光を発しながら
姿を変えていく。それは黒いローブを纏い青く暗い瞳をした、女性であった。
93まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/27(金) 23:34:01 ID:RwVVcsay
それは次元鬼三姉妹の命を受け、悠美をさらった張本人レームアであった。
「私の操心を破るとは…がはっ!」
吐血しながらも、顔をあげ、恨むような眼で炎術剣士母娘を見つめている。
「まなみちゃん、いくわよ!」
「はいっ!」
二人の刀が、再び気を纏っていく。そして駆け出し、同時に交差しながら
レームアを斬り裂き、彼女は小刻みに震え瞳をカッと見開きうつ伏せに倒れる。

「なん、という奴らだ…うぐ、うわああああああ!!」
大絶叫し、レームアは光の粒子となりながら消滅していった。
それと同時に裕奈と伊織がふらつきながらも立ち上がり、
スクリタとベルディスに飛びかかる。
「なっ、お前たち!?」
「まだ立ち上がれるというの!?」

驚きを隠せない二人に、攻撃の態勢へと移る。
「やられっ放しじゃないんだから!てやぁー!大滝落としぃぃ!!」
スクリタを掴み上げると、彼女が抵抗する間もなく、上空から一気に叩き落とした。
「雷術流…稲妻分身殺法!!」
雷がベルディスの動きを止め、分身した伊織が手裏剣を投げつけたかと思えば
真上からまきびしをばら撒き、締めに刀で水平に斬りつけた。

「ぐぅ…はぁ、はぁ…な、なんなのよ、こいつら…!」
ベルディスが顔をあげ、二人を見る。散々痛めつけたはずなのに、気が充満していた。
「ベルディス、スクリタ!撤退するぞ!」
ウルムに従い、ベルディスはスクリタを抱えて時空の歪みから消え去った。
94まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/27(金) 23:35:13 ID:RwVVcsay
裕奈と伊織は、まなみと悠美の元へ駆け寄る。
「まなみちゃん!…あれ、まなみちゃん?」
見ると、まなみは目に涙を浮かべ、悠美を見つめ、次の瞬間、抱きついた。
「うぅ…お母さん…よかった、よかったよぉ……私、お母さんまで
いなくなっちゃったらなんて考えたら…うあぁぁぁぁん!!」
泣き出し、嗚咽をあげるまなみに、悠美は娘の頭を撫でる。

「よしよし、まなみちゃんは良い子ね…ごめんね、まなみちゃん…。
お母さんがしっかりしてなかったから、あなたに辛い思いをさせちゃって…」
泣きやまないまなみにいつまでも、優しく穏やかに抱擁し撫でている。
それを見て伊織と裕奈は微笑みあった。


次回予告「裕奈だよ!まなみちゃん…本当に良かったね。こっちまで
泣いちゃいそうだよ。さて、次回はなんかの雑誌の記者やってるお姉さんが
あたしたちのことを取材しようとしてるみたい。あたしは別にいいけど、
戦いの最中までそんなことしてたら危ないよ?
次回『徹底取材だ!剣士の秘密』ところで、ギャラって発生するの?」
95まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/02/27(金) 23:38:00 ID:RwVVcsay
第八話投下終了です。

>>87
チャットでしたら、良いのというか、面白いの知ってるので
それを追加しましょうか?
96創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 01:02:03 ID:Kf2ZrnB3
オリジナルヒーロースレと何が違うの?
似たようなスレ多すぎorz

話しも退屈だし
97創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 08:59:34 ID:9zbgoHNM
>>トゥインクルオーガスト作者様
巫女なのにこの名前というギャップにカルチャーショックを受けつつ
賑やかそうな雰囲気に期待しております

>>86
かわいいですねー、絵なんて書いてもらえるのは本当に嬉しいです
がっかりヘヴンはのんびり成分が少なかったなあ、と猛省中

>>まなみ作者様
途中までお母さんは真性Sなのかと思っていましたw
次回はなにやらどたばたしそうな予告なので楽しみ
98創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 15:40:42 ID:oN6mD9wV
邪気眼入った魔法少女ってどうなりそうだろう


とふと想像した
99創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 19:01:54 ID:Kk8Nmrq+
>>98
俺があんまり知らないだけかもしれないけど
他に読んだ事がないので面白そうかもしれない

以前、魔力暴走系の魔法少女を書いたことがあって
読み返してみたら色んな意味で寒気がしたw
100創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 21:01:09 ID:/u0IPsGG
昨日レスした後にまなみ来てたのか…
まなみママン強いなぁ、裕奈と伊織を睨みつけるだけで止めたり
まなみは実はマザコンなのかと思いました
チャットはあればいいなって感じなんでそちらにお任せします
101創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 21:02:13 ID:vgnEhubG
俺としては雑談するならスレの方がいいと思うけどな
102創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 21:05:29 ID:Kk8Nmrq+
チャットも楽しそうではあるけれども
雑談はここでいいと思うな
103創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 21:48:16 ID:Kk8Nmrq+
通常の邪気眼とは違うけど、こんなの思いついてみた。

女子中学生の主人公、周りからはクールがウリで通っている。
しかし中身はとっても優しい女の子

眼帯を外せば恋の魔術で人助け
包帯をめくれば愛の魔法が炸裂する

正体がばれたらはずかしい、それでも町の珍事は見過ごせない。
がんばれ主人公! まけるな主人公!

うーむ、、、
104創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 23:24:52 ID:hBROgYZJ
チャットは別にあってもいいんじゃないかな。
あって不都合ってこともないだろうし。
雑談ばかりのスレになるってことは今のとこ無さそうではあるけど。
105創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 00:15:57 ID:jro5dovc
雑談はできるだけスレでやったほうがいいよ
感想雑談が盛り上がってると活気がまして人も入りやすくなる
106創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 10:26:47 ID:lWfu/AJw
オフ会まではいかなくても、定期的に交流あるといいな。
スレだけだと、どうしても書き流しだから、それきりの関係だもんね。
107創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 11:00:07 ID:VsUhqWGl
じゃあ俺も思うところを書いてみる

・スレの内容に関する雑談自体はやはりスレがいい
・チャットをまとめに置く事自体は反対ではない
 むしろ賛成

なんにしてもまだまだ人も少ないし、とりあえずは
ここを盛り上げないとね、って感じる部分はあるなー

まとめサイト訪問→チャットで仲良く→ようこそスレへ

的な流れが作れるのであれば、大変よいかと思う。
108創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 11:14:06 ID:VsUhqWGl
連投ごめん
ついでにまとめサイトに関してなんだけど、
ちょっと画像の雰囲気が暗いような気がw

決してくさそうとして書いているわけじゃないのよ!
109創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 11:34:20 ID:HlsLymig
馴れ合いうぜぇ
ってなるから馴れ合いもほどほどに
新しい人入って来にくいよ。
ちなみに雑談はsageの方が良いのでは
110創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 19:04:22 ID:VsUhqWGl
時間が空いてたのでまとめ更新お手伝いしておきました。

トゥインクルオーガストさんはとりあえず単発に入れてあるので
続きがあれば連載に移動しましょう。

細かい部分は作者様で直していただけるとたすかります。
111まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/01(日) 23:53:21 ID:CezAl2x/
>>110
まとめ更新乙でした。ありがとうございます。

とりあえず、チャットは今回は見送りということですかね。
確かにもっと人が増えてからの方がいいかも
112創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 15:38:59 ID:gVEziEVG
初めて来たがなかなか面白いな
オリジナルの魔女っ子とか変身ヒロインって
ネットで探してもこれ!というのになかなか出会えないから
ここも活気ついてほしい
113創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 23:38:05 ID:R4at5eX8
ヤンデレな魔法少女or変身ヒロイン
あまりに正義感が強くてそれでいて敵ともわかりあえると信じている
そのため何度やりあっても話が通じないと
「なんで…なんで分かってくれないんですか!?」
「争いを止めない人達なんて…みんな滅んでしまえ!」
とかそんな感じになって敵の返り血浴びるような
114創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 22:26:01 ID:zhT/eDUL
簡単に騙されて敵に拉致られそう

その後は当然イヤボーンで
「誘拐なんてする人は心が腐ってるんですっ!
私が…その腐った性根を叩き直してあげますっ!」
で敵さんボコボコに


でもこの設定いいな…自分の正義こそが平和に繋がると信じるて戦うヒロイン
正義じゃないものは絶対に許さない、何がなんでも、最終的には力業で矯正もしくは粛正する
“平和”じゃなくて“正義”の為に戦うヤンデレヒロイン……面白そう
115創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 22:33:45 ID:cbsEmnB4
もう、誰か書いちゃえばいいじゃない!
ヤンデレでもやっぱり心に一つ筋が通ってるってのはいいよね。

お題魔女っ子創作なんてのもおもしろそう。
なーんて、それはもっと盛り上がってからの話しよねっ
116サミー書いてる人:2009/03/03(火) 22:57:54 ID:Sf6pOfTx
ならここは俺がそのネタをっ!

・・・サミー完成させてから名乗り上げるべきですね、サーセン


新スレなので美紗緒の名前は修正しました
まとめスレの方も今度直しておきます
117魔法少女プリティサミーCB 第九話 1/12:2009/03/03(火) 22:58:47 ID:Sf6pOfTx
第九話 『ともだち』



ガタンゴトン......
ガタンゴトン......

規則正しい揺れが、美紗緒の頭に響く。
美紗緒が目を覚ました時、そこはどこかのベッドの上だった。

そのベッドの端に腰掛けている人物がいる。
それは……。

「砂沙美ちゃんの……ママさん……」
「あら、目が覚めたのね、良かった」

ハイキングルックの津名魅は、美紗緒が目を覚ましたのに気付くとニッコリと微笑んだ。

「でも、まだ寝てていいわよ。岡山まではまだしばらくかかるから」
「え、岡山……?」

美紗緒は周囲を見回す。
窓の外を見ると、すごい勢いで夜景が流れていくのが見える。
どうやらここは寝台列車の中らしい。

「それにしても、道端で倒れている美紗緒ちゃんを見つけた時はビックリしたわ。
 私ったら気が動転しちゃって、思わず乗る予定だった電車まで連れてきちゃったの」

悪びれた様子もなく、そう言い切る津名魅。
一歩間違えば、ただの誘拐である。

「岡山にはね、友達に会いに行くの。美紗緒ちゃんも折角だから付き合ってくれないかしら?」
「…………私は…………」
「ね、おねがい♪」

小首を傾げてニッコリと笑う津名魅。
押しに弱い性格の美紗緒は、津名魅の誘いを断れなかった。

「……分かりました。ママさんと一緒に行きます」
「良かった!」

嬉しそうに津名魅は微笑む。

「でも、ママさんはやめてね。津名魅でいいわ」
「分かりました、よろしくお願いします津名魅さん」
「ふふっ、よろしく美紗緒ちゃん」

美紗緒は思う。
今の自分は、魔法も、友達も、全て失ってしまった身だ。
このまま誘われるままに津名魅についていくのも一興だろう。


そう、これが自分の人生で最後の思い出になるのかもしれないのだから。






「さて、岡山に着いたのだけど……」

津名魅は空を仰ぎ見てみる。
まだ日は昇りきっておらず、空は暗い。

「……やっぱり、先に勝仁さんに挨拶してきた方が良いかしら」

津名魅は美紗緒に振り返る。

「ごめんね美紗緒ちゃん、友達の所に行く前にちょっと寄り道させてもらうわね」
「……はい」

津名魅はそっと美紗緒の手を取ると、歩き出した。




「ここは……神社ですか?」

綺麗に掃除された石段を登った先には、立派な神社があった。
脇には住み込みの神主用であろう住居もある。
そこの軒先で、竹箒を持って掃除をしている青年の姿がいた。

「て……天地さん……」

その青年が天地だと気付いた美紗緒は、思わず津名魅の後ろに隠れる。

「天地くん、元気にしていたかしら?」
「あ、津名魅さん!」

津名魅に気付いた天地は、挨拶をしつつも頭をかく。

「まいったなぁ、まさかこんなに早くに来るなんて。まだ掃除終わってないんですよ」
「そんなこと気にしないでいいのに」

と、ここで天地は津名魅の後ろに隠れている少女に気付く。

「あれ、美紗緒ちゃん? どうしてこんな所に?」
「私が連れてきたのよ」
「ふぅん?」

天地は少し不思議そうな顔をしたが、特に追及はしなかった。
一方の美紗緒は気まずそうだ。

「まぁ、上がってくださいよ。ジッチャンは中に居ますから」

天地はそう言って、二人を家の中に案内した。




津名魅と美紗緒は朝食をごちそうになった後、神社を出発しようとしていた。

「ごちそうさまでした。お世話になりました、勝仁さん」
「いやいや、こちらこそ大した物を出せなくて申し訳ない。
 せっかくこんなに可愛らしいお嬢さんがウチまで来てくれたと言うのに」

天地の祖父で、この神社の神主でもある勝仁は、美紗緒を見てニッコリと笑う。
「あ、あの……ごはん、美味しかったです!」

美紗緒は深々と頭を下げる。

「そう言ってくれると助かるよ、ありがとう美紗緒ちゃん。
 ヒマがあればまた……そう、今度は砂沙美ちゃんと一緒に来るといい」
「……はい……」

少しうつむく美紗緒。

「……そうじゃ。天地、お嬢様方と一緒に行ってやれ」
「えーっ?」
「御二人さんが不慣れな土地で道に迷ったら困るじゃろ」
「津名魅さんはこっちの出身じゃ……」
「……うぉっほん」
「わ、わかったよ……」

勝仁に片目で睨まれ、しぶしぶ天地は外出の仕度を始める。

「荷物は全部お前が持つんじゃぞ」
「へぇーい……」

こうして、天地を加えた三人で津名魅の当初の目的地へ行くことになった。






「さて、ちょっと大変だけど頑張ってね」

津名魅率いる一行がやってきたのは、ハイキングコースの入り口だった。
伸びている道は、標高800mの山頂へと続いている。

「山……登るんですか?」

津名魅の友達とは、山の上にでも住んでるのだろうか。
何にしろ、こんな山を登らなければならないのは美紗緒にとって想定外だ。

「こんな険しい山、私には登れません……」
「おいおい、最初から決め付けていたら登れるものも登れないぜ」
「うーん……前に砂沙美ちゃんを連れて来た時は迷わず登ってくれたんだけど……」

その言葉に思わずムっとする美紗緒。
砂沙美には勝てないと自分の中で結論が出たはずなのに、
未だに砂沙美への対抗心が残っていることに自分でも驚く。

……そうだ、どうせ捨てるつもりだった人生だ。
ゴミ箱に直行させる前に、一度ぐらい自分に似合わないことをしてみよう。
そう決めると、美紗緒は思い切って山道に足を踏み出した。





「美紗緒ちゃん、大丈夫か?」
「はぁ……はぁっ……」

山を登り始めて30分ほど。
美紗緒はひょいひょい登っていってしまう津名魅の後を必死に追うが、
体力の無い美紗緒はすぐに息が切れて止まってしまい、そのたびに天地が心配して声をかけてくる。

「……だ、大丈夫……まだ行けます……」

再び歩き始める美紗緒。
……が、その歩みは頼りない。

「美紗緒ちゃん、頑張ってるわね」

美紗緒の苦労を知ってか知らずか、
上で待っていた津名魅はニコニコと美紗緒に笑いかける。

「前に砂沙美ちゃんを連れてきたって言ったけど、あの時の砂沙美ちゃんはすぐに音を上げて帰っちゃったの。
 その点、美紗緒ちゃんは偉いわ。辛そうでも弱音を吐かないで、一生懸命に歩き続けてるもの」
「……………………」

津名魅の言葉を聞いた美紗緒の歩みが、僅かに力を取り戻す。

(砂沙美ちゃんが4歳の頃の話だけどね)

心の中でペロっと舌を出す津名魅。
嘘も方便である。まぁ厳密には嘘をついたわけではないが。

「あんまり無理そうなら、美紗緒ちゃんは僕が背負っていきましょうか?」
「ううん、大丈夫よ。美紗緒ちゃんはそんなに弱い子じゃないわ」

美紗緒を心配した天地がそう言うが、
美紗緒が最後まで自分の力で登りきることを、津名魅は信じて疑っていない様子だった。





登頂開始から1時間半ほど。
三人は、やっと頂上に到着することが出来た。

「やっと着いたわ。美紗緒ちゃん、大丈夫?」
「は、はい……」
「よく頑張ったよなぁ、偉いよ美紗緒ちゃん!」

美紗緒は息も絶え絶えで、顔を上げる余裕すらない。

「それにしても今日はいい天気だなぁ。俺、折角だからちょっとその辺で景色撮ってきますね」

天地はそう言うとカメラを取り出し、どこかへ行ってしまった。

「さぁ、見て美紗緒ちゃん」
「……?」

津名魅に腕を引っ張られた美紗緒は、何とか顔を上げてみる。
そこは開けた崖で、見下ろすと青々とした木々、更に下方には豆のようになった家々が見える。
前方には何も視界をさえぎるものはなく、遠くの山までハッキリ見ることが出来た。

「……すごい……」
「でしょう? この場所、私と私の友達のお気に入りの場所なの」
「……………………」

返事をするのも忘れるほど、美紗緒は景色に見入っている。
そんな美紗緒を、津名魅はしばらく黙って見守ることにした。

ふと、我に返った美紗緒は津名魅に向き直る。

「……津名魅さん……ありがとうございました。
 津名魅さんに連れて来てもらったおかげで、こんな素敵な景色が見れました」
「違うわよ、この景色は美紗緒ちゃんが頑張ってここまで登ってきたから見ることが出来たの」
「……違います、私なんて……自分の力じゃ何にもできないんです」

うつむく美紗緒に、津名魅はそっと語りかける。

「美紗緒ちゃん、あなたは自分が何にも出来ない子だと思ってるみたいだけど……それは違うわ」
「……………………」
「人はね、みんな誰だって心に魔法を持ってるの。
 その魔法を信じさえすれば……できないことなんて、何も無いのよ」
「魔法……」

美紗緒にとっては聞きなれた言葉……だが津名魅の言う魔法は、それとは違うものなのだろう。
しかし不思議とその言葉には強い説得力があった。

(私にも……できるのかな……。魔法の力じゃなく、私自身の力で何かをやりとげることが……)

考え込む美紗緒。
それを他所に、津名魅は何かを思い出したようだ。

「……あっ、忘れる所だったわ!」

津名魅はあわてて少し離れた所の大きな樹の根元に駆け寄り、しゃがみこむ。

「……? 津名魅さん?」

津名魅は、土を盛って作られた小山に向かって、両手を合わせている。

(あれは、お墓……? 津名魅さんの言ってた友達って、もう亡くなってる人なのかな……)

美紗緒もそこに近づいてみる。

「えっ、あれは!?」

美紗緒はある物の存在に気付く。
山になった土の上に立てられていたのは……魔法のバトンだった。

「あら、これが気になるの? それなら手にとって見ていいわよ」

そう言って、あっさりバトンを引っこ抜いて美紗緒に手渡す津名魅。

(やっぱり……間違いない!)

両端と中央を金色の金具で止められている二つ折りのバトン。
留魅耶から貰った物とは全く違うデザインだが……紛れもない、魔法のバトンであった。
古ぼけてこそいるが、未だその機能を失っていないであろうことが美紗緒には感じられた。
122創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:01:11 ID:g+9F+Xib
 
「これはね、私の一番の友達が使っていた物なの」
「津名魅さんの友達が……?」
「その人は、これを使って、私に大事なことをいっぱい教えてくれたわ……」

(津名魅さんの友達って……魔法少女だったの……?)

興味が沸いた美紗緒だが、流石にそのことを正面切っては尋ねにくい。

「その人は……今、どうしてるんですか?」
「それは分からないわ……とても遠いところへ行ってしまったから……」

津名魅は、そっと空を見上げる。

「もう別れてから随分経つけど……それでも、あの子との思い出は私の心の中に生き続けているの」
「……仲の良い友達だったんですね」
「ええ、美紗緒ちゃんと砂沙美ちゃんに負けないぐらいね」
「……………………」

その言葉を聞いて、美紗緒は表情を暗くする。
津名魅は砂沙美と自分の間に何があったのかを知らないのだ。

「……津名魅さん……私、もう砂沙美ちゃんには会えないんです」
「会えない? どうして?」

津名魅は拝むのをやめ、立ち上がって美紗緒に向き直る。

「だって……」

口ごもる美紗緒。
そんな美紗緒に、津名魅は優しく語りかける。

「何があったかは知らないけど、会おうと思って会えないわけでは無いんでしょ?」
「そうです、けど……」
「なら、美紗緒ちゃん次第じゃない。砂沙美ちゃんに会いたいか、会いたくないか。それだけよ」
「私……は……」

その言葉で、美紗緒は自分が自分の気持ちと向き合っていなかったことに気付く。
自分は砂沙美に会いたいのか、会いたくないのか……一体、どちらなのだろう?

「……美紗緒ちゃん、私はあなたが羨ましいのよ」
「えっ」
「私の友達は遠い所に行ってしまったから、もう会いたくても会うことは出来ない。
 でも美紗緒ちゃんは、望みさえすれば大好きな友達と一緒に居ることが出来るんだもの」
「津名魅さん……」

津名魅は、少し寂しそうに笑った。

「もちろん、美紗緒ちゃんと砂沙美ちゃんも、いつかはどうしようもない別れが来るのかもしれない。
 でも、だからこそ悔いは残すべきでは無いと思うの。
 言いたいことは、会えるうちに全部言っておくべきだと思うわ。……お互いにね」
「……………………」

より深く考え込んでしまう美紗緒。
少々暗い雰囲気になってしまったのに気付いた津名魅は、話題を変える。

「美紗緒ちゃん、そろそろお腹が空いて来ないかしら? そろそろお昼時よね」

津名魅は背負った荷物を下ろそうと肩の辺りをまさぐって数秒後、自分が何も背負ってないことに気付く。
124創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:01:51 ID:g+9F+Xib
 
「……あっ! お弁当、天地くんに持たせたままだったわ!」

周囲をキョロキョロしてみる津名魅。
少なくともここから見える範囲には天地の姿は見当たらない。

「私、天地くんを探してくるわ。美紗緒ちゃんはこの辺りで待っていてね」

津名魅はそう言うと、天地を探しにこの場を去っていった。




残された美紗緒は、手元に残されたバトンを見つめながら考え込んでいた。

(このバトンがあれば……またミサになれる……でも……)

『人はね、みんな誰だって心に魔法を持ってるの。
 その魔法を信じさえすれば……できないことなんて、何も無いのよ』

津名魅の言葉が美紗緒の脳裏をよぎる。

(私……自分自身の力を信じてみたい……だけど……)

美紗緒は怖かった。
自分の弱さは自分が一番良く知っている。
本当に、自分は魔法の力に頼らずとも生きていくことが出来るのだろうか?
そうした不安が、手元のバトンを手放すことを躊躇させた。

その時……。


(……!)

空を見上げていた美紗緒は、ハート型の閃光がこちらに飛んでくるのに気付く。
その閃光は美紗緒の近くに着弾する。

とっさに木陰に隠れる美紗緒。

「美紗緒ちゃん!!」

現れたプリティサミーは、何故かびしょ濡れだった。
水滴を振りまきつつ、ぶんぶん首を振って周囲を見回している。
美紗緒の名前を呼びはしたものの、その存在を確認したわけではないようだ。

「また失敗かぁ……こんな山奥に美紗緒ちゃんが居るわけないよ」

同じくびしょ濡れの魎皇鬼は、少々疲れたような顔をしている。

「まだまだっ! 砂沙美は美紗緒ちゃんに会えるまで諦めないからね!」
「そ、そろそろ休憩しようよぉ」
「却下!」

サミーはバトンを力強く振り上げる。

「よーし、プリティテレポート―――」
「待って!!」

美紗緒は、思わずサミーの前に飛び出していた。
どうしてそのまま隠れ続けなかったのか、自分でも分からなかった。
126創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:02:34 ID:g+9F+Xib
 
「……美紗緒ちゃん……本当に、美紗緒ちゃんだよね!?」

気が抜けたのか、サミーの変身が解ける。
喜びと不安が綯い交ぜになったような砂沙美の表情。
美紗緒に近づこうとするが、美紗緒が身を引いたのを見て足を止める。

「砂沙美ちゃん……わたし……」
「美紗緒ちゃん……」

互いに言葉が続かない。

――先に話を切り出したのは、美紗緒の方だった。

「……砂沙美ちゃん……おねがい、もう私に構わないで。
 砂沙美ちゃんや町の人たちに迷惑をかけたのは謝るから……だから、私のことはもう放っておいて!」
「……放ってなんて、おけないよ……。だって、美紗緒ちゃんはあたしの友達だから!」
「友達……」

『だって砂沙美と美紗緒ちゃんは友達じゃない!』

美紗緒は砂沙美と友達になった時のことを思い出す。
あの時の砂沙美も、今と同じことを言っていた。

「……砂沙美ちゃん……どうして、私なんかと友達になろうと思ったの?」
「どうしてって……」
「私……弱くて、ズルくて、ウジウジしてて……とても、つまらない子なのよ?」
「そんなことないよ! 美紗緒ちゃんは―――」
「だから、私は……」

美紗緒は、後ろ手に隠していたバトンを掲げる。

「私……これからはずっとミサとして生きるわ……もう二度と美紗緒には戻らない。
 ……だって、美紗緒なんていう空っぽの子はこの世界にはイラナイ……そうでしょ?」
「違う……それは違うよ!!」

砂沙美は、挑むような目で美紗緒を見つめていた。

「あたし……美紗緒ちゃんがまたミサになって、それでずっとミサに変身したままで……。
 もしもそのまま二度と美紗緒ちゃんに戻らなかったりしたら…………絶対にイヤだっ!」
「……っ」

あくまでも、砂沙美はもう一人の自分であるミサを否定すると言うのか。

「そう……砂沙美ちゃんは私に一生、美紗緒のまま、良い子のフリをして生きろって……そう言いたいのね」
「違うよっ、そんなのも絶対にイヤだっ!! ずっとミサのままで居るのと同じぐらいイヤだよっ!!」
「えっ……!?」

美紗緒はその言葉に驚いて砂沙美を見る。

「だって…………ミサも、美紗緒ちゃんも、砂沙美にとって大事な友達だもんっ!
 だから、どちらかしか会えなくなるなんて、砂沙美は絶対に納得できない!!
 良い子の美紗緒ちゃんも、悪い子のミサも…………ずっとずっと砂沙美と一緒に居て欲しいっ!!」

砂沙美の瞳は真っ直ぐで、その言葉には迷いが無かった。

「か、勝手なことばかり言わないで!! 砂沙美ちゃんに私とミサの何が分かるって言うの!?」

キッとサミーを睨みつける美紗緒の顔は、まるで黒髪になったミサのようだった。
128創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:03:05 ID:g+9F+Xib
 
「砂沙美ちゃんは偽善者よ……表面だけで人を見て……。
 そしてサミーになってからはプリティ空間で人の心を覗き見て……。
 それだけで何もかも、相手のことを分かったつもりになってるんでしょ?」
「そんな……砂沙美、そんなつもりじゃ……」
「私の本当の気持ちなんて、全然分からないくせに……。
 それなのに、分かったつもりで友達になって、弱い私を守ることで……。
 自分がいい子ちゃんになって優越感を感じたい……それだけなのよっ!!」

しかし、そんな美紗緒を前にしても砂沙美は怯まない。
美紗緒の勢いに負けずに、自分も全力で思いの丈をぶつける砂沙美。

「そうだよ…………砂沙美は、わかんない……。
 美紗緒ちゃんが何を考えてるのかなんて……全然わかんないっ!!」
「ほら見なさいよ! 砂沙美ちゃんは―――」
「……でもね……そういう美紗緒ちゃんだって…………砂沙美の気持ち、全然分かってないよ!!」
「え……?」
「……どうして砂沙美が美紗緒ちゃんと友達になろうと思ったか……さっき聞いたよね……?」



  『天野美紗緒です……よろしくおねがいします』

  (美紗緒ちゃんって言うんだ。キレイな子だなぁ)

  砂沙美、転校してきた時からずっと、美紗緒ちゃんのことが気になってたんだ。



  『天野美紗緒ちゃん、なんと100点でぇす!』

  (す、すごぉい……砂沙美なんて62点だったのに……)

  砂沙美はバカだから、頭の良い美紗緒ちゃんはすごいな、って思ったの。



  『あらぁ、なんで何も無いところで転んでるのかしらぁ?』

  (あの子……イジワルされて気分悪いだろうに……笑ってる……)

  辛いことがあっても笑っていられる美紗緒ちゃん……強いなって、思った。



  そんなある日、砂沙美は天地さんとケンカして落ち込んでいたら、
  音楽室からとっても綺麗なピアノの音色が聞こえてきたの。

  砂沙美、その演奏に感動しちゃって、とっても元気になれたんだ。
  それで先生が演奏してるのかと思って中を覗いて見たら……。
  ピアノを演奏してたのが美紗緒ちゃんだったから、とっても驚いちゃった。

  (あのピアノ……美紗緒ちゃんが弾いてたんだ!)

  テストで100点取ったり、辛くても笑ったりは、砂沙美も頑張れば出来るかもって思える。
  でもね、美紗緒ちゃんみたいにピアノで誰かを元気にするのは絶対にムリだって、そう思った。




130創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:03:28 ID:c6RN3x6N
131創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:03:36 ID:g+9F+Xib
 
「砂沙美……美紗緒ちゃんが弾いてたピアノ、もっと聴きたかったの……。
 美紗緒ちゃんのピアノを聴いてると、砂沙美、元気が湧いてくるから……。
 だから、あの時……思い切って美紗緒ちゃんに声かけたんだよ。
 砂沙美……美紗緒ちゃんと、友達になりたいと思ったから!!」
「さ、砂沙美ちゃん……」
「美紗緒ちゃんは自分が空っぽだって、そう言うけど……そんなことない!!
 だって砂沙美は、美紗緒ちゃんからいっぱい色んな物を貰ってるんだよ!!
 いつだって強くて優しい美紗緒ちゃんは、砂沙美の憧れだったんだからっ!!」

砂沙美の眉は八の字に曲がっており、今にも泣き出しそうだ。

「だから、砂沙美は美紗緒ちゃんが苦しんでるなら助けてあげたい!!
 悩んでいるのなら、いつだって相談に乗ってあげたい!!
 辛い思いしてるなら、ずっとずっとそばに居て慰めてあげたい!!
 だってだって…………砂沙美は、美紗緒ちゃんの笑顔が見たいから……。
 だから…………だから……笑ってよ、美紗緒ちゃん……。
 美紗緒ちゃんが笑ってないと、砂沙美も笑えない……笑えないよっ!!!」
「…………私…………私は…………」

美紗緒はかぶりを振る。

「ウソよ……だって、私は砂沙美ちゃんをあんなに傷つけたのに……」

その時、魎皇鬼がそっと前に歩み出る。

「美紗緒ちゃん、聞いてくれ。砂沙美ちゃんは、魔法を使ってキミを見つけた。
 砂沙美ちゃんは魔法がヘタクソだから何度も何度も失敗してしまって、
 美紗緒ちゃんのところへ来るまでこんなに時間がかかってしまったけど……。
 それでも、決して諦めることなく、キミの元へ辿り着けるまで、何度だって呪文を唱え続けたんだ。
 魔法は想いの力……だから、砂沙美ちゃんがキミの所に辿り着けたということは……。
 キミのことを本当に大切に思っているという……何よりの証拠なんだ!」

海に突っ込むわ、下水に突っ込むわ、ホワイトハウスに突っ込むわ、もう散々な失敗の連続だったが、
それでも諦めなかったサミーは、26度目の正直にして美紗緒の元へやってくることに成功したのだ。

「美紗緒ちゃん……砂沙美は美紗緒ちゃんが思ってるほど強くないんだよ……。
 だから、砂沙美と一緒に強くなろうよ……。
 大好きな友達だから……一緒に強くならなきゃいけないんだよっ!!!」

とうとう、砂沙美の目からは涙が溢れ出した。

(一緒に強くなる……砂沙美ちゃんと、一緒に……)

美紗緒は、どこか砂沙美と自分が吊り合いが取れないと思っていた。
それがとても悔しくて……そして、怖かった。
だから魔法を求めた。砂沙美を超えようとした。

でも、今なら分かる……。
砂沙美も、そして自分も……本当は、そんなことを望んではいないのだ。

「……………………」

美紗緒は、そっと手元のバトンを見る。

「……砂沙美ちゃんは、私のことが好きって……。
 ミサのことも大好きだって、そう言うけど……。
 ……私は、嫌い……自分が大嫌い……。だから……」
「あっ!?」
133創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:04:00 ID:c6RN3x6N
134創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:04:09 ID:g+9F+Xib
 
美紗緒は、バトンを宙に放り投げた。
投げたバトンは、元の土山のてっぺんに突き刺さる。

「だから……強くなって、自分を好きになって……。
 そうやって、自分自身の力で……ミサに、会いに行くわ。
 だから砂沙美ちゃん……。悪いけど、それまでミサに会うのは我慢して……ね?」

美紗緒は笑う。
愛想笑いでも、嘲笑でもない、自分をさらけ出した決意の笑顔。

「う……うん、我慢する……我慢するよ……。
 あたし…………美紗緒ちゃんが大好きだからっ……!」

美紗緒に抱きつく砂沙美。
涙を溢れさせながらも、その表情は晴れやかな笑顔だ。

そんな砂沙美に釣られるように、美紗緒の瞳からも涙がこぼれる。

「私も……頑張る……強くなるよ……。
 だってだって…………私、砂沙美ちゃんが大好きだからっ……!」

そう……。
大好きな友達とずっと一緒に笑って居たい。
二人の望みは、ただそれだけだった。


(……あれ?)

砂沙美は、不意にクラッとめまいを感じた。

(あ……そういえば、結局昨日から寝てな……)

「砂沙美ちゃん……?」

美紗緒に抱きつくように倒れこむ砂沙美。
砂沙美は美紗緒の腕の中で、すやすやと寝息を立て始めていた。

「もう、砂沙美ちゃんったら……」

そんな砂沙美を見ている内に、山登りで疲れていた美紗緒も段々うとうとしてくる。
砂沙美の後を追うように、美紗緒も眠りの世界へと誘われていった。




砂沙美と美紗緒は、木の根元で手を繋いで眠っていた。
それはさながら、遊び疲れてそのまま眠ってしまった子供のようだった。

「砂沙美ちゃん……お友達を、助けてあげることが出来たのね」
「まさかとは思ったけど……本当に砂沙美ちゃんがプリティサミーだったなんて……」

優しく二人の寝顔を見守る津名魅と、少々複雑な表情を浮かべる天地。
彼等は砂沙美と美紗緒のやりとりを物陰で見守っていたのだ。
136創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:04:41 ID:c6RN3x6N
137創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:04:42 ID:g+9F+Xib
 
津名魅は美紗緒を、天地は砂沙美を、それぞれ担いで山を降りる。

「やれやれ、人が悪いよな、おまえも」

天地は足元を走る魎皇鬼に、ボヤくように言う。

「何であの時、プリティサミーの正体を教えてくれなかったんだよ。俺、こっち来てからもずっと悩んでたんだぜ」
「べっつにー。砂沙美ちゃんを悲しませたのはどっちみち事実だしー」
「ちぇっ、まぁいいけどさ」

拗ねたように顔を逸らす天地だが、その表情は晴れやかだった。

「それで、天地はどーすんのさ? また海の星町に戻ってくんの?」
「いや、まだしばらくは帰れそうにない。じっちゃんに色々と仕事言いつけられちゃってさ……」
「ふーん」
「いいじゃない、今のうちにいっぱいお爺さん孝行しておいた方がいいわ」

ニコっと天地に笑いかける津名魅。

「それにしても津名魅さん、本当に何があっても動じませんよね」
「そうかしら?」
「いや、自分の娘が魔法少女だって知ったら、大抵の親はビックリすると思いますよ」
「そうそう、ボクが喋ってても全然驚いてないし」
「ふふっ」

津名魅は、ちょっとおかしそうに笑う。

「だって私は前から知ってたもの、砂沙美ちゃんが魔法を使えるってこと」
「えっ、いつから気付いてたんですか?」
「そうねぇ、砂沙美ちゃんが保育園に上がるぐらいにはもう気付いてたかしら」
「またまたぁ……」

突拍子の無い発言に苦笑する天地と魎皇鬼だが……。

「あら、冗談だと思ってるの?」

当の津名魅は、キョトンとした表情だった。



                     〜 最終話へ続く 〜
139創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:05:13 ID:g+9F+Xib
 
140創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:06:02 ID:c6RN3x6N
投下乙!
141創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:06:39 ID:g+9F+Xib
投下乙です!
142サミー書いてる人:2009/03/03(火) 23:08:05 ID:Sf6pOfTx
二人の魔法少女の和解は、サミーという作品の中で最も重要な部分なので、
納得行くまで何回か書き直しするハメになりました

・・・まぁ、投下した内容で心底納得してるかというと微妙な所だったりしますがw
原作は偉大だということです


まとめサイト管理人様、サイト作成ご苦労様です
修正したい部分が結構あるので、サミーが完結してから作業に入ろうと思います
143創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:15:52 ID:g+9F+Xib
次が最終回なんだね
魔女っ子スレ初期に二次創作総合スレからの引き抜きwを提案した者だったりするんで、何か感慨深いものが
申し訳ないことに最近このスレを見てなかったりするんでww前スレをもう一度最初から読み直してみようと思いますw改めて乙です
144まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/03(火) 23:25:59 ID:B+Yzb8hO
サミー作者様、投下乙でした。そうか次回で最終回か…
どきどきしながら待ってます。

続けて炎術剣士まなみ投下します。
145まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/03(火) 23:26:38 ID:B+Yzb8hO
炎術剣士まなみ 第九話『徹底取材!剣士の秘密』

 東京都内某所には走団社という出版社のビルがある。そこのビルの一室には
ここの看板的週刊雑誌、Kセブンの編集室があり、中は皆、忙しそうに
作業をしていたり、取材のための電話を入れていたりした。そして、奥の席では
編集長が皆の仕事ぶりを見つめている。

ただ、編集長席のすぐ右側後ろの扉から何か異質なオーラが漂っていた。
その部屋の中は暗く、光は蛍光灯の小玉電球からのオレンジ色しかなく、
部屋の真ん中にはテーブルとイス、そしてノートパソコンが置かれており、そこに
一人のシルエットからして女性と思わしき人物がいる。
パソコンの画面にはまなみ、裕奈、伊織の三人の写真が映し出されていた。

女性の掛けている眼鏡がキラリと光ったかと思うと、何やら小声で独り言を始めだした。
「…噂の正義の味方三人。この子たちのあんなことやこんなことを記事に
出来れば、大スクープ間違いなし!私は一気に大出世!あはははは!!」
いつの間にか大声で語っている女性に、編集長は深く溜め息をついた。


ある晴れた昼下がり。まなみたち、剣士三人組は駅前の喫茶店でお茶していた。
「ふはー!やっぱりここのオレンジジュースは最高だよぉ」
「味覚まで子供っぽいのね、裕奈ちゃん」
「子供じゃないもん!だったら伊織ちゃんだって甘甘ココア飲んでるじゃん」
悪気なく、穏やかに毒を吐く伊織に裕奈がムスッとしながら指摘する。
そんなやり取りをまあみは苦笑いしながら見ている。

「ふふ、ココアといっても、これはジュースじゃないから子供向けばかりとは…」
「あー、あの裕奈、伊織。ちょっと話したいことがあるんだけど」
あまりレベルの差を感じられない口論を、まなみが遮断する。
「なぁに、まなみちゃん?」
「この前のこと。私たちの力が急に上がったことよ」
146まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/03(火) 23:27:34 ID:B+Yzb8hO
前回の戦いで窮地に陥った三人は急激に気力があがり、まなみは完全に操られていた
母を解放し、裕奈と伊織は次元鬼三姉妹の三女と次女を倒したほどとなった。

「お母さんは、私たちが気の使い方を一人前にこなせるようになったからだって
言っていたけど、他にも要因があるんだって。二人はなんだと思う?」
「え〜そんなこと言われてもよく分かんないなぁ。あの時は無我夢中って感じだったし」
「私も…でも、パワーアップ出来たんですからあまり気にすることも
ないんじゃないですか?なにかマイナスなことがあったわけじゃないし…」

そう言われて、まなみもまだ疑問が消えたわけじゃないが、今はとりあえず
考えないことにした。そしてまなみがコーヒーカップを持った瞬間、パシャという
音が響き、三人の周りが光に包まれる。
「やぁ〜っと見つけたわぁ!剣士の三人娘!」
「うおっ、まぶし!なんなのいきなりぃ〜?」
裕奈がボケながら聞くと、カメラを持った眼鏡の女性はあやしく笑いながら近寄る。


「あはは、ごめんごめん。驚かしちゃったねぇ。私はこういうものよ」
ポケットから名刺を取り出し、三人に渡す。
「えーと…走団社、Kセブンの川村真紀さん?何の用ですか?」
「ふふ、ズバリ!私はあなたたちのこと、もっと知りたいってことよ!
ま、早い話が取材ってこぉとさー!」
人差し指を突き出し、テンション高くぶちまける真紀。

それについていけないといった表情のまなみと伊織。だが、裕奈は目を輝かしている。
「ね、ね、真紀さん!ギャラはいくら!?」
「うふふ、水無瀬裕奈さん…協力してくれるならこれぐらいは出すよ?」
電卓を取り出し、その数字を見せる。すると益々目の輝きが強くなった。
「まなみちゃん、伊織ちゃん!こんだけ貰えるんなら取材受けようよ!」

すっかり金に目が眩んでる裕奈だが、まなみは厳しい表情。
「あのねぇ…裕奈、私たちの力は見世物じゃないのよ?それにただでさえ
プライバシーとかそういう問題は今までも散々あったでしょうに。ようやく
落ち着いてきたのに、またぶり返させる気?」
まなみの苦言に伊織が続く。
「そうだよ、裕奈ちゃん。それにあんまりお金にがめついと、神様に怒られるよ?」
147まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/03(火) 23:28:14 ID:B+Yzb8hO
「う〜でもでも!」
「とにかく!私と伊織は取材には付き合ってられないから!受けるんなら
裕奈だけでやりなさい。それじゃ、今日は解散」
まなみと伊織は席を立ち、その場を去ってしまう。残された裕奈は何故か
目がウルウルとしていた。

「もー!まなみちゃんと伊織ちゃんの分からず屋!いいもん、あたしだけで
取材でも何でも受けるもん!」
一人吠えてる裕奈を脇に、真紀は少し残念そうである。
「出来れば、他の二人にも話を聞きたいとこだったんだけどねぇ〜まあ今日は
裕奈さんだけでいいか。後々、カメラに収めるとして…ふふふ」
なにやら怪しい笑みを浮かべるのであった。


裕奈と真紀は場所をファミレスに移してインタビューを始めようとしていた。
「…裕奈さん。まだ食べるの?」
「もぐ…もぐ…インタビュー受ける条件の一つだから!これ食べたらね!」
ちゃっかり真紀の奢りで裕奈は10皿目のスパゲティを食べていた。
ようやく腹に全て収め、口を拭いた。

「じゃあ、そろそろ始めて!それなりに答えるから」
「それなりにって…まあいいわ。それじゃ、裕奈さんはお風呂はどこから洗うの?」
「え〜とねぇ、右腕」
わけのわからない質問を吹っ掛け、それに対し、特に何も思うことなく答える裕奈。
さらに質問は続いていき、大好物はハンバーグとカレー、得意なスポーツは
空手と柔道と、ありきたりな質問と答えばかりかと思えば

好きな路線は西武新宿線、休日は何をしているかと聞かれればまなみの家で
遊んでご飯をもらうことと、微妙な質問も多く続いた。
「ふ〜、だいたい聞きたいことは聞いたわ。ご協力ありがとう。
次に、あなたの写真を何枚か取りたいんだけど…」
「うん、いいよ。じゃあ外に行きましょ」
148創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:28:16 ID:c6RN3x6N
149まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/03(火) 23:29:21 ID:B+Yzb8hO
彼女らが来た公園は広く、木々が茂り、池にはスワンボートかいくつも設置されてる。
そして真紀がカメラの準備をしている最中、空に暗黒が広がったかと思うと
そこから、次元鬼三姉妹末っ子のスクリタが現れた。
「水無瀬裕奈!こんなとこにいたのね!」
「スクリタ!なによ、今日は取材とかで忙しいんだからまた今度にしてよ!」

「取材ぃ?そんなあんたの都合なんてこっちは知ったこっちゃ…」
「おお!まさか次元鬼まで出てくるなんて!」
スクリタの姿に驚きながらも取材熱が上がりシャッターを連写する。
「…なんなのよ、あんた」
「私はいわゆる一つの大スクープ求めてひた走る、カメラマン!そしてライターです」

一々ポーズを決めながら語る真紀。よほどテンションが高くなってるらしい。
「ふ〜ん。じゃあ明日のニュースは水無瀬裕奈死す!なんてものかしら?」
「ちょっと!あたしはスクリタみたいなおこちゃま体系には負けないんだから!」
「なんですってぇ、あんたの方がよっぽどおこちゃまじゃないの!」
まったくレベルの変わらない言い争いが始まり、それはお互い息が切れるまで
続き、ようやく終焉を迎えた。

「はぁ…はぁ…ほら、そろそろ次元鬼でもなんでも出しなさいよ…」
「ぜぇ…ぜぇ…くぅ、この前、あんたに投げ飛ばされた恨み…
ここで晴らすんだから…出てきなさいガマルク!」
言うと、スクリタの真後ろにカエルのような姿をした次元鬼が現れた。
それが裕奈に向かってくるが、余裕で避わされる。

「真紀さん!あたしの戦いっぷり、ちゃんとカメラに写しといてね!水心変幻!!」
変身し、ガマルクに向かって飛び蹴りを放ち、さらに肘打ち、裏拳と連続で
攻め立てていく。しかし、あまり大きな効果はないようだ。
「くぅ〜じゃあ一発で決めちゃうんだから!おりゃあああ!!」
ガマルクに向かって瞬時に駆け出し、掴みかかろうとする。

「りゃあああ…ってなにこれぇ!?」
だが、ぬるぬると滑って上手く掴むことが出来ない。そして眠そうな表情を
していたガマルクの目が光ったかと思うと、長い舌を突き出し、裕奈の身体を
くるくると巻きつき、絞め付けてしまう。
150まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/03(火) 23:30:10 ID:B+Yzb8hO
「あははは!いい様ね、裕奈。カエルなんだからそんな簡単に
捕まるわけないじゃん!脳みそまでおこちゃまね!」

「おこちゃまじゃないもん!うぐぅぅぅ…!」
反論しようにも絞めつけが強くなり、声も出せずに苦しむ裕奈。
「裕奈さん!」
さすがに取材どころじゃないと感じたか真紀が声を上げるが、彼女の力では
現状の打破は難しい。いったいどうすればと考えた時、手元にあったカメラが
目に映った。

「ガマルク、とどめ行っちゃって!それじゃ、バイバイ裕奈」
ガマルクの舌が上昇し、裕奈を天高く持ち上げる。このまま叩き落とす
つもりなのだろう。だが、閃光がガマルクに向かって浴びせられる。
それは真紀のカメラから発せられたフラッシュであった。突然のことで思わず
目を強く瞑ったガマルク。

「…今だ…はあぁぁぁぁっ!」
力を振り絞り、拘束を破る裕奈。そして舌に刀を突き刺し、それを軸にして
地上に叩きつけた。休む間もなく刀に気を集中し始める。
「とどめのぉ…水迅大破斬!!」
横一文字にガマルクを斬り裂き、消滅させた。

「また失敗したぁ…今度こそあんたを叩きのめしてやるんだから!」
捨て台詞を吐くと、スクリタは空間の歪から姿を消した。
「へへん、おととい来やがれってね!…真紀さん、いい写真撮れた?」
刀を肩に掛け、胸を張ってる裕奈のもとに真紀が駆け寄る。
「裕奈さん…うん、おかげでいい写真が何枚も撮れたわ。
それよりも、あなたって本当、大変な戦いをしてるのね」

感心し、微笑みながら言う真紀に裕奈は照れ臭そうに口を開く。
「あたしだけじゃないよ。まなみちゃんも、伊織ちゃんも、いつだって命懸け。
二人は真紀さんの取材断ったけど、あたしはみんなにあたしたちの戦いってのを
知ってほしくて…」
「裕奈さん…じゃあ、ギャラはいらないね」
「いや、それはもらうから」
151創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:30:46 ID:c6RN3x6N
152まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/03(火) 23:31:06 ID:B+Yzb8hO
後日、発売された週刊Kセブンは裕奈の記事が載っていた。
「まなみちゃん伊織ちゃん!ほらほらあたしの載ってる雑誌買ってきたよ!」
「へぇ、どんな風に書いてあった?」
「いや、まだ見てないの。楽しみは最後に取っておこうと思って。
だから先に二人が見てよ」

二人が雑誌に目を通し、しばらくすると笑いを我慢するように吹き出した。
「な、なに?なんか変なこと書いてあった?」
「ううん、裕奈ちゃんのこと、正しく書かれてると思うよ」
口に手を当て、伊織が雑誌を手渡す。それを見た裕奈の顔がだんだん赤くなっていく。

記事にはこうあった。水無瀬裕奈は強い。私も、彼女が戦っているところを
直に見たから分かる。だが、見た目は年齢の割には他の二人より小さく
知らない人からすれば子どもに見えてしまうだろう。とても戦士の顔つきに
見えなかったり、やたら大食いだったり。だがそれも彼女の魅力の一つなのは間違いない。

「うぅ…あたしは子どもじゃなぁぁぁい!」
空に裕奈の叫びが響き渡った。


次回予告「伊織です。裕奈ちゃんはあんなこと言ってるけど、実際、小さいし…
私、最近はボランティアで子どもたちと遊んでるんです。だけど、次元鬼は
子どもたちを人質にするという古臭い手を!絶対に私が救い出して見せます!
次回は『恐怖の遠足!稲妻よ走れ』なんだか、タイトルまで古臭いです…」
153まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/03(火) 23:32:04 ID:B+Yzb8hO
というわけで第九話投下完了。
明らかに伊織とスクリタのキャラは初期と変わっています
154創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:34:26 ID:c6RN3x6N
乙!
155創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:35:26 ID:g+9F+Xib
うわ出遅れた、乙です!
156創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:52:49 ID:mso5Vg+a
サミーとまなみ投下乙でした!
サミーは最終回直前でまなみは裕奈のドタバタ?で
どっちも意味合いは違うけどいい感じに盛り上がって面白かったです
157創る名無しに見る名無し:2009/03/04(水) 23:36:44 ID:hw5RY1F7
人がいるようでいないよなぁ、このスレも…
昨日は投下が二つもあったのに。

…ま、それはともかくスレ住人は何が切っ掛けで
魔女っ子や変身ヒロインにハマったの?
158創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 00:01:40 ID:hQt4zJm5
連日投下があって当然みたいに言われても…
159創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 21:27:29 ID:0ASRPLsI
おー、2つ同時に投下とは。
サミーも次で終わりかあ、寂しいけどなんだか新作も書いてくれそうだし
wktkさせていただきます。

>>まなみ
裕奈が術使うところってあんまりないよね、でもそれがいいのよねー。

>>157
魔女のきっかけというと、うーん。実は某島スレからだったりするw
実際ここのスレって読み手より書き手需要が多いのかな?
160創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 21:33:23 ID:j491XgE3
読み手需要も板内有数ですぞ!
161創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 21:58:27 ID:pPDt7QO3
このスレの魔法少女や変身ヒロインで格ゲーとか面白そうだよなぁ…
まあ僕に作る技術は無いんですがね
162創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 22:58:30 ID:0ASRPLsI
格ゲーかー、最近やってないなあ。
サウンドノベルとかなら作れるのかしら。

妄想だけならタダよ! タダ!
ってスレもどこかにあった気がする。
163まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/05(木) 23:44:07 ID:MA7iHP4n
まとめサイト管理人様へ。自分で編集してみたのですが手違いで、
まなみ第九話のページが二つになってしまいました。
頭に炎術剣士〜がついてる方を消してください。お手数掛けます。

>>159
感想ありがとうございます。…今回、すっかり使わす気がなかった。
せっかく一人で戦ってんのに。

>>161
格ゲーですか…好きなジャンルだけど、下手くそな自分w
でも、格ゲーの妄想は楽しかったり。
164創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 20:48:40 ID:LNVJl1dM
あともう一作、なにか連載しないかな〜
まなみとサミーだけだしなぁ、今は
そしてサミーも次回で終わっちゃうとまなみだけに。
さすがに寂しい
165創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 20:51:08 ID:brQvIUlK
ひそかにトゥインクルオーガストに期待してるんだけど……
こないのかなあー

作者さん! ここに期待してる人がいますよ!
166創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 22:27:14 ID:XSfBLr3V
次スレを立ててウメ子を召還するというのはどうかね?
380KBにも及ぶ壮大な埋めSSw
167創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 22:44:24 ID:roAGthNU
それはひどいww
168創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 23:07:56 ID:LNVJl1dM
>>166
それはちょっと違う。
新たな作家さんが来て継続的に話しを書いてくわけじゃないし
169創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 23:11:08 ID:brQvIUlK
いま某所でごにょごにょしてるので、終わったら新しいの書こうと思ってます。
サミーさんもヤンデレ魔女書いてくれるはず!
170創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 23:18:41 ID:l5LAuyWb
つ自分で書く
171創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 11:21:26 ID:KDlcrUhE
予告編


病弱だった私が小さい頃看護婦さんからもらった不思議なプレートのお守り…
その中に封印されていたのは別の世界の戦略兵器!!何よ!それ〜
おまけに変な人達が現れて襲われる!

もうこうなったらやるしかない!


ちょっとの勇気とワンパターンの物語が始まります。タイトル未定です。
172創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 12:11:57 ID:HLcj6I7m
な、なんかきたーーー!
173創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 17:00:56 ID:ZGcAj4rw
本編!ほんぺん!
174クロスミラージュの作者 ◆W5keXcuJzM :2009/03/07(土) 22:05:13 ID:KDlcrUhE
第一話


夕日がまぶしい…と思いつつ、真由は友達と下校する何時もの光景だ…
「ねぇ〜真由〜いつも首から下げているプレートすごい綺麗だね〜」
「ただの鏡みたいだけど内側はプリズムみたいになっていて不思議な感じだね…」と友達が私に言ってきた…
少し微笑みながら「これ…私が病気で入退院繰り返していた頃に看護婦さんからもらったんだ…病気に負けない強い自分になれるお守りのプレートなんだ…」とプレートを撫でながら返事を返す。
友達と別れ真由は薄く暗くなり始めた裏路上を独り歩く…
すると突然背中から女の子の声が真由を呼び止められる感じがした…
真由は振り返って見ると猫が一匹路上の真ん中に座っているだけだった…
真由は思わず猫に話かけた…
「まさか、猫さんあなたじゃないよね…」
すると突然猫が二足で立ち上がり
「あんたのことに決まっているわ!頭鈍すぎよ!」と答え返した!
真由は自分がおかしくなって猫がしゃべるはずがない…半分自分がおかしくなっているんだなと思った…
その時、後ろの路上から男が…
「我がカンパニーが探したぞ…8年間…まさか、こっちの世界のガキがもらっていたなんてな…その胸のプレート渡して貰おうか!」
真由は唖然としたが「何を言っているの!あなた言っている意味が全くわからない!」と叫んだ。
すると、「早く逃げるわよ!あなたが刃向かったら一瞬でチリにされるわよ!」と叫び。
私もそれが一番の得策だろうと納得して家の方向へ走った。
真由は息を切らしなら路上を走った。
ゴミ箱を横切った直後で爆発した。
「あいつ!こんなところで魔法を使うなんて…マジでミンチにするつもりね!」一緒に走っていた猫が叫んだ。
次の瞬間、真由は何かに躓いた瞬間プレートの紐がちぎれアスファルトに倒れたと同時に粉々になったプレートからステッキと箱が現れたのだった…
「いたた…えっ…何よこれ?」粉々になったプレートと見たこともないステッキと箱を真由は地面にうつ伏せになったまま見つめていた…


第二話に続く


誤字や表現がめちゃくちゃですが…修正しますので勘弁してください…
175創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 22:20:15 ID:HLcj6I7m
お、なんだか面白そうな展開だw
連載ということで非常に楽しみ、がんばって!

といいつつ気になる点は書いちゃうのです。
読みやすさの点だけなので、↓はあくまでも読み手意見
参考にしていただければと。

・会話文と地の文は改行したほうがいいと思う
・句読点類が一切無いので、読みつぎしずらい
・「…」が多い。というかこれを「、」「。」に替えれば読みやすくなりそう

期待してます!
176まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/07(土) 23:17:34 ID:dg+DlWAU
おお、新作が!クロスミラージュの作者さん、これからの
話の展開が楽しみです。

では、炎術剣士まなみ第十話投下します。
177まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/07(土) 23:18:36 ID:dg+DlWAU
炎術剣士まなみ 第十話『恐怖の遠足!稲妻よ走れ』

 吉祥寺駅から離れ、住宅街に入ってすぐの場所にひだまり幼稚園という
施設がある。そこの門を伊織がくぐり抜けて入ってきた。
中にいたボールで遊んでる男の子が伊織に気がつくと駆け寄ってくる。

「伊織お姉ちゃん!来てくれたんだ!」
「こんにちは和馬くん」
笑顔で和馬という少年を抱き上げる伊織。他の子どもたちも伊織に気づいて
彼女を囲むようにして集まってくる。伊織はボランティアでこの幼稚園に
来てから、子どもたちと仲良しなのだ。

「伊織お姉ちゃん、今日は何して遊ぶの?」
「そうだね…じゃあ、みんなでかくれんぼしようか?」
伊織は自ら鬼をやると決め、子どもたちは各々隠れ始めた。十、数え終わると
ゆっくりと後ろを振り向き、「もういーかい?」とみんなに声を掛けた。
返事が無かったので、伊織は探し始める。

それから10分後、あらかた見つけ終わった伊織は最後の一人、和馬を探している。
だが、まあ実際は木に登っているというのはバレバレであったが、あえて
見つけられてない振りをする伊織であった。
頃合いと思った時に、伊織は木に向かって一気に飛んだ。

「和馬くん…みぃ〜つけたっ!」
「うわわ!?」
驚いた和馬は危うく木から落ちそうになるが、素早く伊織が
抱きかかえて事なきを得る。ニコっと伊織が微笑むと、
和馬も笑みを浮かべた。
178まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/07(土) 23:19:12 ID:dg+DlWAU
もうそろそろ子どもたちを迎えに、各々の親がやってこようという時間。
「伊織お姉ちゃん、明日の遠足にも来てくれるんだよね?」
「もちろんよ。私もみんなと一緒に遊びたいからね」
伊織の言葉にみんな、嬉しそうに盛り上がる。それがようやく収まると同時に
迎えがやってきて、伊織は手を振って子どもたちと別れた。


次元魔城では、巨大なモニターで地球の様子を窺っている。
そして、偶然にも伊織の姿を見つけだした。
「なるほど…伊織は明日、子どもたちと遠足に…ふふ」
ベルディスが何やら思いついたらしく、怪しい笑みを浮かべた。
その時、ベルディスの背後に火柱が発生した。気づくとベルディスは片膝をつく。

火柱の中からは久々に次元鬼の長、フリッデが現れた。
「ベルディスよ、剣士の娘を潰すいい方法でも思いついたか?」
「はい、フリッデ様。単純で陳腐な作戦だからこそ、嵌まってしまうものです…」
「よし、ベルディス。吉報を待っておるぞ」
そう告げると、再び火柱がフリッデを包み、止むと姿を消した。


翌日。転機は気持ちが清々しくなるような青空。伊織は、手作り弁当を入れた
バックを持ち、幼稚園へとやってきた。
すでにバスは発車準備完了状態で、子どもたちは先生たちからの話を聞いている。

「ごめんなさい、お待たせしました」
「伊織お姉ちゃん!」
和馬が真っ先に飛びつこうとするが、伊織に辿り着く前に、担任の真白先生に
キャッチされ、元の場所に戻されてしまう。

「和馬くん、嬉しいのは分かるけど、ちゃんと大人しくしてようね〜?」
「う、うん…」
目の奥が笑ってない真白先生に恐怖を感じたか、途端に静かになった。
「真白先生、今日はよろしくお願いします」
「いいえ、こちらこそ。いつも子どもたちの相手をしてくださってる
伊織さんには感謝してますよ。普段は、戦いで忙しいでしょう」
179創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:19:45 ID:Z4qP3rH0
180まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/07(土) 23:19:55 ID:dg+DlWAU
真白先生の問いに伊織は首を振る。
「大丈夫です。この子たちと遊んでいればそんなことは忘れちゃいますから」
「そうですか…でもあまり無理はしないようにしてくださいね」
「はい。ありがとうございます」
礼を述べると、先生と一緒にバスに搭乗した。中ではさくら組の子どもたちが
既に乗り込んでいた。

バスの中で、伊織はお菓子を交換したり、ゲームをして遊んだり、楽しく
時間が過ぎていこうとしていた。しかし、バスが遠足予定地の昭和記念公園まで
あと、少しというところで、バス内に異変が生じた。
「これは!?」
「伊織お姉ちゃん、怖いよぉ!」

バスが急停止したかと思えば、次の瞬間、運転席の後ろに黒い歪が発生した。
それから光が発生し、真白先生と運転手が気絶したかと思えば
歪の中からベルディスと黒装束の次元鬼が現れた。
「こんにちは、かわいい子どもたち…そして伊織!」
「ベルディスさん!?どうして…!」
「どうしてって、私たちとあなたは敵対関係。あなたを倒せるチャンスは逃さないわけ」

「くっ…雷心変幻!!」
その言葉にハッとなった伊織は変身し、子どもたちを守る立ち位置に。
「お姉ちゃん…」
「大丈夫よ、和馬くん…私がみんなを守ってみせるから…」
伊織の言葉を聞いた瞬間、ベルディスは笑い出す。

「おほほほ…バカね、伊織。こんな狭いバスの中、子どもたちを守りながら
戦うなんて出来やしないわ。刀を平気で振り回せるの?」
ベルディスの言うとおり、バス内で子どもを守りながら戦うには無茶な話であった。
刀は使いにくく、伊織自慢のスピードも発揮できない。

「下手に長引かせるのもあれだから…デライヤ、やっちゃって」
黒装束の次元鬼が一瞬にして伊織に接近したかと思うと、拳を突き出し
伊織を殴り飛ばしてしまう。
「きゃあぁぁぁっ!?」
後ろの窓を突き破り、バスの外へと追いやられてしまう。
181創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:20:16 ID:Z4qP3rH0
182まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/07(土) 23:21:03 ID:dg+DlWAU
「ふふっ、いい様ね、伊織。子どもたちを帰してほしかったら記念公園の
トランポリンのとこまで来なさい。それじゃあね♪」
「伊織お姉ちゃぁぁん!」
最後に和馬の叫びが木霊し、ベルディスは次元鬼と子どもたちを
連れて消え去っていく。


目覚めた真白先生に伊織は事の顛末を話した。
「そんな…では、あの子たちは次元鬼の人質に…」
「ごめんなさい、私がしっかりしていなかったから…先生、私はこれから指定された
場所に行きます。先生はここで待っていてください。必ずみんなを救い出して見せます」
言い終わると同時に、伊織は公園内へと向かっていく。その姿を真白先生は
心配そうに見つめていた。

トランポリンは白く、いくつもの小さな山のように連なっている。
何故か人っ子一人おらず、不気味な程に静まり返っている。一番奥のトランポリンに
辿り着くと同時に、目の前に異空間ゲートが発生した。
「入れってことね…」
伊織は、軽く息を吐き、ゲートの中へと突入する。

中はどこかの工場内のような雰囲気で、辛うじて先が見える程度。
しばらく進んでいると、唐突に奥から足音が聞こえだした。それに警戒し、伊織は
構えをとる。だが、足音の主が視界に入ると警戒は解ける。
「和馬くん!無事だったのね!」
「伊織お姉ちゃん!」

足音の主は和馬であった。伊織は疑うことなく和馬の肩に手を掛ける。
「伊織お姉ちゃん…怖かったよぉ…みんなはまだこの先にいるの」
「わかったわ、和馬くんはここで待ってて。私が助けに行ってくるから」
「うん…だけどその前に、抱っこしてお姉ちゃん」
上目使いでお願いする和馬に伊織はすんなりと抱き上げた。

しかし、次の瞬間、伊織の表情は驚愕に変わる。和馬の頭からカチ、カチと
時計の針が動くような音が聞こえだしたからだ。すぐに和馬を離そうとするが
信じられない力で抱きつかれて、離れることが出来ない。
和馬の体から光が発生し、爆発した。
183創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:21:09 ID:Z4qP3rH0
184創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:21:29 ID:gGr2a1CI
あんまり厳しいことは言いたくないが、
流石にもうちょっと推敲してから投下しようぜ・・・

予告した以上、早く投下したい気持ちは分からんでもないが、
締め切りがあるわけでもないんだから、焦らず落ち着いて書き上げて欲しい
185まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/07(土) 23:22:12 ID:dg+DlWAU
「うぅ…ぐっ…あぐぅぅ!」
伊織は変身し、なんとか爆発に耐えたが、直撃は免れず、すでに戦闘着は焼け
綻びが出来ており、右腕から流血していた。
「さすがにこの程度じゃやられないのね、伊織」
ベルディスが現れ、同時に辺りが明るくなる。ベルディスの他に子どもたちの姿と
先ほどの次元鬼・デライヤの姿があった。

痛みに顔を歪めながらも抜刀する。だが、痛みは全身に走っており、思うように
動くことが出来ない。デライヤの動きに追い付くどころか翻弄され
さらに傷は増えていく。
「あぁぁぁぁっ!!」
鋭い痛みが背中に走り、伊織はうつ伏せに倒れてしまう。

「伊織お姉ちゃん!」
「お姉ちゃん!負けないで!」
縄で縛られ捕まっている子どもたちの伊織を応援する声が響く。

だが、伊織はそれに応えることが出来ず、起き上がろうとしても倒れてしまう。
「無駄よ、伊織はあなたたちの前で死ぬの。大好きなお姉ちゃんの最期、
ちゃんと見てあげましょうね」

満面の笑みで残酷な発言をするベルディス。そして止めを刺そうとデライヤが
手首に剣を作り出し、伊織に飛び掛かる。…だが、それは防がれた。
「うぅ…くっ」

ギリギリのところで刀で防御している伊織。押せば再び倒れてしまいそうなほど
ふらついている。
「まだ立ち上がるなんて…どうしてそんな力を出せる!?」

「みんなが…私を信じてくれている。それに私は答えたい…だから…あなたたちに
負けるわけにはいかない!そして…あなたたちが作ったとはいえ、子どもの姿をした
兵器を作り出すなんて絶対に許せない!」

最後の力を振り絞り、刀をデライヤに突き刺し、手を高く掲げる。
「走れ稲妻…轟雷ストォォォーム!!」
叫びが辺りに響くと、激しい轟音とともに稲妻がデライヤに刺さった刀に落ち、
その身を一気に焼き焦がし、砕かせながら消滅させた。
186創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:22:40 ID:gGr2a1CI
すまん、まなみさんに言ったんじゃなくて>>174にね
リロ忘れスマン・・・
187創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:22:47 ID:Z4qP3rH0
188まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/07(土) 23:23:01 ID:dg+DlWAU
なぜか刀は無傷で伊織の元へと戻ってくる。
「伊織め…またしても!」
ベルディスが去り、伊織は子どもたちを縛っている縄を解く。

「みんな…大丈夫だった?」
「ありがとう、伊織お姉ちゃん!でも…伊織お姉ちゃんこそ大丈夫?」
本物の和馬がボロボロの伊織を心配する。それに応えるように伊織は
優しく笑みを浮かべ和馬の頭を撫でた。


次元鬼を撃退し、今度こそ楽しい遠足再開。だが、伊織は腕に包帯を巻いて
みんなの遊んでる姿を見るだけに。真白先生が声を掛けてきた。
「伊織さん。子どもたちを助けてくれてありがとう。でも、残念ね…」

「いいんです。私、子どもたちが無事でいてくれるなら、それで…」
そうは言うが、やはり少し寂しい表情を浮かべる伊織。目を細めて子どもたちの
姿を見ている。

「伊織お姉ちゃん!」
和馬と何人かの子どもたちがハンモックで遊びながら伊織に手を振る。
それに応えて伊織も手を振り返した。が、怪我をした右腕だったので
悶絶しながら腕を抑え出すのだった。


次回予告「まなみです。あれ?今回、私の出番無いじゃない!でも、次回は
私が頑張るからね!東京に咲いた新種の花。見た目は綺麗だけど、とても
危険な花粉をばら撒いているの。みんな倒れちゃって、あとは私がなんとかするしか!
次回『東京が滅ぶ!?美しき殺人花!』あのセクハラした防衛隊の人も出るの?
はぁ…うんざり…」
189創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:23:17 ID:Z4qP3rH0
190まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/07(土) 23:25:11 ID:dg+DlWAU
第十話投下完了。タイトルに偽りあり…まなみ出てねーよ

まとめサイトの方にまなみの詳細な設定入れてみました
どうでもいい情報もいろいろ。興味ある人は見てください。
191創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:25:23 ID:Z4qP3rH0
192創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:29:11 ID:gGr2a1CI
乙です
まとめサイトに詳細設定なんてあったんですか、後で見てみます
193まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/07(土) 23:31:15 ID:dg+DlWAU
>>192
はい、つい先ほどなんとなく入れてみましたw
これからもネタバレしない程度に追加予定
194創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 23:45:37 ID:EP8nwBoV
まなみ乙でした!
まあたまには主役不在の話しもよいんではないかと
195創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 23:01:59 ID:RtDpI9EJ
まなみはまだまだ続きそうだし、新作来てるし
サミーの人もサミーの後にまた何か書いてくれそうだし
作品の供給は大丈夫そうだね。でも読み手というか作者以外の人は
このスレ何人いるのかね?
196創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 23:07:42 ID:dAP8C9tN
点呼か?

だったらはい! ノシ
197創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 23:10:33 ID:XO1tFdbD


普段レスを控えてる人もここは思い切って挙手だ!
198創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 23:13:20 ID:JsIRTmbx


さぁここは乗っておこう
199創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 23:45:00 ID:cQVh0MWt
ノシ
200195:2009/03/08(日) 23:50:42 ID:RtDpI9EJ
俺含めて現在は五人?
まあ創発板は元々過疎な方ではあるけどね
201創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 12:10:07 ID:O/zBrEV1
ROMってるだけですが

202創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 19:59:42 ID:+39KY8x2

読んでるよ
204創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 16:56:52 ID:UxkfwdFz
なんだ、案外人いるじゃん
感想書く人は少なそうだけど
ROMってる人が多いのかな?
205創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 17:15:03 ID:kiz49aoG
ROMです。ノ
206創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 18:57:04 ID:rG1A0N88
このスレが、まるで魔女っ子・変身ヒロイン専門の文芸雑誌のように、連載陣で賑わうことを祈るぜ
207クロスミラージュの作者 ◆W5keXcuJzM :2009/03/10(火) 19:52:42 ID:7Y4sS99E
只今、第一話の大改訂版と第二話の構想を練ってます。もうしばらくお待ちください。
208創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 19:53:29 ID:pUANlOQc
ゆっくりかいてね!!!
209まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/10(火) 23:23:13 ID:VpAe4P8H
炎術剣士まなみ第十一話投下します
210まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/10(火) 23:23:56 ID:VpAe4P8H
炎術剣士まなみ 第十一話『東京が滅ぶ!?美しき殺人花!』

 深夜。東京の到る所に真っ赤な大きな花が咲き乱れ始めていた。
風もないのにゆらゆらとそれは震えていた。
次元魔城のモニターにその様子が映っている。
「フリッデ様、これが殺人花・エビルフラワーです。これから放たれる花粉は
人間にとって猛毒…一斉に花粉が舞えば、東京は全滅します」
「ふふふ、面白い作戦だ。しかし、剣士の小娘たちが邪魔をするのでは?」

フリッデの問いにウルムは不敵な笑みをしながら答える。
「その点も抜かりはございません。奴らにはエビルフラワーの毒の
実験対象になってもらいます」
「ふむ、吉報を待っているぞ」
「お任せください」
フリッデが姿を消すと、ウルムも人間界に出発した。


翌朝。東京中に咲き乱れたエビルフラワーは、新種の花としてニュースに
取り上げられた。人々は珍しいものを見るように花に近づく。
とある自然公園でもカップルがそれを興味深そうに見ている。
「へぇ〜綺麗な花だなぁ」
「本当、でもどうしてこんな花が急に咲き出したのかしら?」
「教えてやろう」

声に驚いた男女が振り向くと、そこにはウルムの姿が。
「この花、エビルフラワーは貴様ら人間を駆逐するための存在。
ある条件が満たされれば、東京の全ての花から毒花粉が飛ぶ」
「な、なんだってぇー!?」
「その毒を貴様らで試させてもらうぞ」
211まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/10(火) 23:24:41 ID:VpAe4P8H
言うと、ウルムの隣に影が映り、それは花のような次元鬼の姿へと変わる。
「次元鬼ドイズス、やれ」
静かに命じると、ドイズスはカップルに向かって襲いかかる。
「うわぁぁ!」
「きゃあぁぁ!」

逃げ出そうとするが、二人とも腰が抜けてしまい、逃げ出せない。
「ははは!ドイズスが完全に成長しきれば、花も一斉に活動する。
そうなれば、お前たちだけでは済まされまい…むっ!?」
突然、ウルムの足下に手裏剣が突き刺さった。それが飛んできた方向をみると
木の枝に変身した伊織と裕奈が立っていた。

「ウルムさん!話は全部聞かせてもらいました!」
「その次元鬼を倒して、東京を救うんだから!さあ、早く逃げて!」
カップルを逃がし、伊織がドイズスに、裕奈がウルムに攻撃を仕掛ける。
それに対抗して、ドイズスは大鎌を取り出し、伊織と斬り合い、
ウルムも剣を出現させ、裕奈と戦う。

何度かお互い斬り合うと、ドイズスとウルムは距離を離す。
「逃げる気!?」
裕奈の言葉に不敵な笑みを浮かべ、答える。
「逃げる?違うな、ドイズス!あれをやれ!」
ドイズスの口が大きく開くと、黄色いガスが放射され、裕奈と伊織を包みこむ。

「うぐ…げほっ……な、に…これ」
「はぁ…はぁ…ち、からが抜ける…」
二人は脱力したかのように、その場に膝からゆっくりと倒れこむ。
「まんまと引っ掛かったな、裕奈、伊織。お前たちはエビルフラワーの毒の
実験台だ。この毒ならいくら貴様らといえど死ぬことになるだろうなぁ」
212まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/10(火) 23:25:23 ID:VpAe4P8H
「そう…簡単には…死なないんだから……!」
力なく、裕奈がウルムの足を掴もうとするが、簡単に避けられ、逆に蹴り飛ばされる。
「馬鹿な奴だ。何だったら、今すぐ死ぬか?」
「きゃあぁぁっ!」
何度も裕奈を踏みつけ、蹴りつけるウルム。遠慮も容赦もない、裕奈にとっては
地獄のような責め苦であった。

その時、火炎弾がウルムと次元鬼にかすり、背後で燃え盛る。
「ウルム!次元鬼!裕奈と伊織を放しなさい!」
怒りに満ちた瞳で炎のフィールドを纏いながら変身したまなみが姿を現した。
「まなみ!貴様も、二人と同じ目に合わしてくれる!」
ドイズスが再び、毒ガスを吐き出しまなみの周りに飛び交る。

「げほっ、なによ、こんなの!」
一瞬、息苦しそうになるが炎で毒ガスをかき消すまなみ。それに驚いた様子のウルム。
「なに!?まなみには毒が効かないというのか!仕方ない、ドイズス!一時撤退するぞ!」
「くっ、待て!」
まなみが追いかけようとするが、ウルムが光線を発射し、それを妨害する。

爆風が起き、それが止むと次元鬼たちの姿は消えていた。
「逃げられたか…裕奈、伊織、しっかりして!」
二人を抱き起こすが、どちらも毒の影響で顔色が悪い。熱が酷く、どちらも
下手に動かそうとすると、余計、症状は悪化してしまいそうだ。
「どうしよう…なんとか病院に運ばないと…」
「まなみさん!私にお任せください!」

声のした方を振り向くと、二階建てアパートぐらいの高さのロボットの姿が。
カラーは緑で、頭にはモノアイが付いている。体系はずんぐりむっくりしている。
「もしかして…防衛軍の武田さん!?」
「その通りです!まなみさんの炎のにおい染み付いてむせる…いやいや
そのにおいを辿って今に至るわけです!」
ロボの腹から武田が現れ、笑顔で手を振る。

「ふ〜ん、私のにおいを辿って…それってへんた…」
「おっと!無駄話をしている場合じゃないです!早く裕奈さんと
伊織さんを連れて行きましょう!この新型量産機・スモークドロップなら
すぐにお二人を、病院へ連れていくことが出来ます!」
都合の悪いことは遮断し、武田がロボットに二人を収容するのを手伝う。
まなみはジト目で武田を見ながらも、二人を抱きかかえた。
213まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/10(火) 23:26:19 ID:VpAe4P8H
次元魔城では何故、まなみには毒が効かなかったのか調べていた。
それの結果は、毒は強い炎で中和されてしまうということが分かったからだ。
「お姉さま、これではエビルフラワーとドイズスが完全に成長しきっても
まなみに燃やされれば、効果は半減ですわ」
ベルディスが結果をウルムに伝え、残念そうな表情をしている。

「ベルディス、毒を改良してまなみにも効くようにしろ、すぐにだ」
「ええ〜!?そんなすぐには出来ませんわ!」
ベルディスが不機嫌に答えるが、ウルムに睨まれると、諦めたかのように溜息を吐く
「はぁ、分かりましたわ。でも、失敗してもお姉さまの責任ですからね」
言い残すと、ベルディスは部屋から出て行った。


防衛軍の特別病院で裕奈と伊織は治療を受けたが、未知の毒のため、
これと言って、有効な治療法が見つからなかった。
「やっぱり、あの次元鬼を倒さないと二人は助けられない…
どうしよう…二人にもしものことがあったら…」
まなみが泣き出しそうになるが、武田が肩に手をやり話す。

「まなみさん!気をしっかり持ってください!」
「武田さん…」
「お二人を救えるのはあなたしかいないんです!私も微力ながらもまなみさんの
お手伝いをします!頑張ってお二人を助け出しましょう!」
武田の言葉に、一瞬キョトンとしながらも、照れたように笑みが零れるまなみ。

「まさか武田さんに、そんな風に言われるなんて思わなかったわ」
「まなみさんが元気を出してくれればそれでいいんです!他に求めるものなど…」
言いかけた瞬間、武田の手が滑って、まなみの体に合わせて落ちる。
武田の手がたどり着いた場所は何やらふかふかでぽよぽよしていた。
「あがっ!こ、これは…その…じ、事故ですまなみさん!」
「…そんな言い訳が通じるとでも…?」

まなみの背後が炎に包まれた。本人の能力か、怒りのオーラか、
混じっていて分からない。そして武田は壁に殴り飛ばされた。
「がぼへぇっ!?」
「この前に続いて今回も!このおっぱい星人!武田さんなんか嫌いよ!」
「も、申し訳ございまへん…」
214まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/10(火) 23:27:03 ID:VpAe4P8H
その頃、ウルムは改良された次元鬼ドイズスを連れて、繁華街へとやってきた。
「ドイズスよ、今度は炎ごときに消されない毒だ。存分に暴れまわれ!」
ドイズスが辺りの人々に毒ガスを浴びせ、皆、次々と倒れていく。
警察が駆けつけ、応戦しようとするも、近づくことすらままならない。
「ははは!街中を地獄に変えてしまえ!」

次元鬼が暴れてるという情報は、防衛軍の病院にも伝わってきた。
「よし、今度こそやっつけてくるわ!裕奈、伊織…待っててね、必ず助け出すから」
「…まなみさん!自分が現場まで連れて行きます!」
病室から駆け出そうとするまなみに武田が呼びかける。
「…またセクハラはしないでくださいね」
武田の表情が明るくなり、二人はスモークドロップに乗り込んだ。

現場に到着すると、すでにそこはゴーストタウンと化していた。助けを求め
呻き声を出す人々、荒らされつくした街の建物。そして次元鬼とウルムの姿が。
「武田さん、後は私が。武田さんはここで待機していてください」
ハッチが開かれ、まなみが飛び出し、空中で変身しながら次元鬼の背後に着地する。

「次元鬼!ウルム!あなたたちを倒して街の人を…裕奈と伊織を助け出すわ!」
まなみの方へ振り返ったウルムは余裕そうな表情をしている。
「来たか、まなみ。もうすぐエビルフラワーとドイズスが完全に成長する。
そうなれば東京は全滅。その前に最後の憂いである貴様を殺す」
ドイズスが花びらをカッターのように飛ばすが、まなみはそれを斬り払い
足に炎の気を纏わせ、空高く跳躍する。
215まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/10(火) 23:28:07 ID:VpAe4P8H
「火炎閃光キィィック!!」
強力な飛び蹴りがドイズスに直撃したかと思った瞬間、毒ガスが吐かれる。
間一髪、諸に吸うことはなかったが、先ほどと違って一瞬立ちくらみがした。
「くっ…さっきのとは…違う!?」
「まなみ、ドイズスの毒は前よりパワーアップしているのでな。
さあて、今度こそ貴様の最後だまなみ!」

休む間もなくドイズスはまなみに向けて毒ガスを放射する。それを空中回転しながら
回避し、反撃の隙を窺うが、なかなか機会は訪れない。
「このままじゃ…!くっ、炎流波!!」
火炎光線で毒ガスを相殺するが、残りカス程度の毒でもまなみは
強烈な脱力感に襲われた。

「ここまでだ!死ねぇ、まなみ!」
膝をついてるまなみに向かって最大級の毒ガスが放たれようとした。
が、それは唐突に止まった。苦しみのたうち回っているのはドイズスの方であった。
見ると、ドイズスの胸に脇差が刺さっていた。
「ウルム、私が飛ばしたのが炎流波だけだと思ったのが失敗ね!」

いつの間にか飛び上っていたまなみは太陽に紛れるように降下し、次元鬼の
胸に刺さっていた脇差を抜き、暁一文字と合わせ二刀流の構えに。
「烈風竜巻返し!!」
二刀で何度も斬りつけ、止めに高速回転しながら炎の竜巻を起こし、
その中で次元鬼は爆発四散した。それと同時に東京中に咲き乱れていた
エビルフラワーも力を失ったかのように、みるみる枯れていった。

「作戦は失敗か…覚えておれ!」
ウルムが捨て台詞と共に消える。街の人たちが眠りから目覚めたかのように
立ち上がっていく様子を見てまなみは急いで武田と共に病院へと戻る。
病院に到着すると、勢いよく病室のドアを開ける。そこには
裕奈と伊織がご飯を食べている姿が。裕奈はすでに五杯はお代わりしていた。
216まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/10(火) 23:29:12 ID:VpAe4P8H
「裕奈、伊織!よかった…」
「まなみさん!おかげで助かりました、まなみさんが倒したんですよね、次元鬼」
「さっすがまなみちゃん!あたし、今回は本当に死んじゃうかと思った」
「なぁに言ってんのよ!私は二人を死なせはしない…だって仲間なんだから」
まなみが二人の肩に手を掛けると、裕奈と伊織も微笑んだ。

「だけど、どうしてまなみさんには毒が効かなかったんでしょう?」
「それはねぇ、伊織ちゃん。まなみちゃんはなんとかは風邪引かないって奴だよ」
平気で失礼な物言いをする裕奈に拳骨を食らわすまなみ。
「っつ〜〜!冗談なのにぃ〜ひどいよ、まなみちゃ〜ん!」
「自業自得でしょ!まったく、私はその、なんとかじゃないっての」

反論するまなみだったが伊織の一言がとどめを刺した。
「でも、まなみさんって勉強はともかく、周りを確認しないとこありますよね
おかげで私たちの正体って世間からバレバレだし」
「うっ…それは…」
痛いところを突かれて、まなみは何も言い返せなくなった。それをケラケラ笑いながら
見ている裕奈に腹が立ったか、また八つ当たり気味にデコピンを食らわすのだった。

次回予告「裕奈だよ!もう、冗談なのにまなみちゃんって容赦ないんだから!
今度は次元鬼に絡まれてる女の人を助けるんだけど、その人、別の世界の
お姫様なんだって!あたしたちに助けを求めて、人間界に来たんだって。
それなら、あたしらが黙ってるわけにはいかないってね!
次回『びっくり!お姫様がやってきた』じゃあ、次回もみんなで見てね!」
217まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/10(火) 23:32:16 ID:VpAe4P8H
というわけで第十一話投下完了。
まなみも最近影が薄かったのでようやく表だって活躍したって感じです
218創る名無しに見る名無し:2009/03/10(火) 23:55:52 ID:UxkfwdFz
乙でした。武田は完全に不可抗力のセクハラ野郎なのか…w
219創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 20:24:48 ID:CMjahYxS
武田いいキャラだよねえ。
まなみは意外といいサブキャラがいると思うw

次回も楽しみだー
220創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 22:21:08 ID:XYE0NnjK
まなみの詳細設定を見てみたが…
裕奈ちっさ!wwマジで超小柄キャラだったのね
221創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 20:38:18 ID:qmpD3AvU
今日は投下が無いなら雑談だ!
以前、ここの作品でゲーム妄想してるって人が何人かいたけど
ゲームにするならスパロボチックなのもいいなと思う
もしくは、サウンドノベルとか。てか今投稿されてるのに
音と絵がつけば一応サウンドノベルになるんだよねw
222創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 20:48:32 ID:ssRAxlgu
そういやスパロボってやったことないなあ、CMは良く見るんだけども。

絵も字も音もってことになると、なかなか全部できる人はいないし、
そういった人たちを呼び込めるだけの力が欲しいなあと思うよね。
223創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 21:08:33 ID:DgEpOJ/I
224創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 21:15:17 ID:ssRAxlgu
>>223
これはwwww

→体験版ダウンロード
225創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 22:03:23 ID:qmpD3AvU
>>222
とりあえずもう少し作者が増えることを祈るわ
もっとスレが活気に溢れればそういった人も増えるかもしれないし
226創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 22:36:04 ID:gCvBuYJy
>>223-224
なついなあw
もう活動しないのかな
227まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/13(金) 16:54:26 ID:ubW4YvoB
炎術剣士まなみ第十二話投下します
228まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/13(金) 16:55:10 ID:ubW4YvoB
炎術剣士まなみ 第十二話『びっくり!お姫様がやってきた』

 夜の街道を走っている人影。そのシルエットからして女性らしい。
彼女は何かから追われてるかのように必死に走っていた。しかし道を曲がると
そこは壁で隔たれていた。急いで道を戻ろうとするも、彼女を追ってきた者が
現れ、完全に逃げ場はなくなる。月の淡い光が追われる者、追ってきた者の姿を照らす。
金髪の長い髪と、青いロングドレスを着飾った女性と
二足歩行の体色は銀色、ロボットのような怪人の姿が映った。

その怪人の目から光線が放たれようとし、女性は悲鳴を上げた。
その時、紅い光が女性を助け出し、怪人を吹き飛ばした。
「大丈夫ですか!?」
「は、はい…ありがとうございます」
女性を助け出したまなみは、怪人に向かって火炎弾を作り投げつけた。

直撃するも、それを物ともせず、前進してくる怪人。そこに蒼い光が怪人の
目の前に飛び、姿を現す。
「裕奈!」
「遅れてごめん、まなみちゃん!うおおりゃあぁぁぁ!!」
気合いを込め、連続で打撃を繰り返し、水流波で押し飛ばす。

それに怯んだ怪人に追い打ちを掛けるように今度は空から稲妻が降り注ぐ。
電柱の天辺に伊織が刀を高く掲げていた。
「まなみさん!裕奈ちゃん!」
稲妻でその身を切り裂いていく。しかしそれでも立ち上がり、背中から
ミサイルを雨のように連射してくる。
229まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/13(金) 16:55:43 ID:ubW4YvoB
三人は紙一重でそれを斬り払っていき、三人同時に怪人に斬りかかるが
鋼のように頑丈なその体に跳ね返されてしまう。
「くっ!タフな奴ね…」
「まなみちゃん!こうなったら、あれやろうよ!」
「私もそうした方がいいと思います!」

まなみが静かに頷く。三人は宙で並ぶと、腕を突き出した。
「「「龍陣波動!!」
炎、水、雷の気が合わさり、放射され怪人に降り注がれていく。
表情は見受けられないが、動きからして明らかに苦しんでいる。
装甲がボロボロになっていき、動きも鈍くなっていく。

「今よ!たぁっ!!」
三人が重なるように並び、まなみから始まり次々と斬撃を繰り出していく。
「「「逆鱗超破斬!!」」」
星形に斬られた怪人は、ゆっくりと崩れ落ちていき、頭まで地に伏せると
同時に爆発四散した。

「成敗…!もう、大丈夫ですよ。怪我はありませんか?」
まなみが襲われていた女性に声を掛ける。震えていた女性が少し顔を上げた。
「いえ、大丈夫です…あの、あなたたちが剣士の方ですか?」
「うん!そうだよ!もしかして、あたしたちのファン?」
女性の問いに屈託のない笑顔で応える裕奈。それを聞いた女性は涙が交じった
真剣な表情になる。

「お願いします!私の国を救ってください!」
「…はい?国を救えって…」
突拍子もないことを言われ、困惑するまなみ。女性はさらに続ける。
「私の国、メリアスは今、危機に陥っているのです…」
「まなみさん…とりあえず、どこか別の場所に移動して話を聞きましょう?」


伊織の提案に賛成し、まなみの自宅に女性を連れて行き、話を聞くことに。
落ち着いてもらうよう、女性にお茶を飲ませた。
「ズズッ…はぁ〜わざわざありがとうございます」
「いえ、気にしないでください。それよりもさっきの話なんですけど…」
お茶を飲み終わり口を拭いた女性はゆっくりと話し始める。
230まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/13(金) 16:56:32 ID:ubW4YvoB
「はい。申し遅れました、私はフィリナ=メリアス。メリアス王国の王女です」
「聞いたこともない国ですね…」
「そうでしょう。メリアスはこの世界とはまた違う世界の国ですから」
伊織の疑問に、フィリナは答える。その話に、三人は特に驚く様子はない。
「…あれ?驚かないんですか?えぇー!異世界の王女様ぁ!?みたいな」

「い、いや。だってあたしたち、別の世界から来た敵と戦ってるし」
むしろ急にテンションが上がったフィリナの方に驚いている。

「あ…ですよねー。では本題に入ります。メリアスはそれはもう平和な国でした。
争いとは無縁の…ですが、ある日!そのメリアスにギノスという悪い連中が
やってきてしまったんですねぇ!そのギノスという組織は、メリアスの秘宝である
聖水晶を狙ってやってきたんです!聖水晶から時折、流れる聖水はそれを浴びた者を
物凄くパワーアップさせるちゃうのです!」

さらに話は続く。
「まあ、ギノスの連中も、目くそ程度のチンケな連中がほとんど!
それだけなら我が国の軍だけでよかったのですが…ギノスには特別強い将軍が
何人かいてそいつらは軍の攻撃を物ともせずに、どんどん侵攻してってるんですねぇ!
そこで、お父様は私にこう言ったのです。
『人間界に行き、剣士のお嬢様たちに救いを求めなさい!』
『でもお父様たちが!』
『私たちのことは心配するな!さあフィリナ!』
そう言って、時空ゲートを開き私を人間界に…!ああ、お父様お母様!
フィリナは必ず戻ってお助けいたします!」

いつの間にか、紙芝居を用意し大袈裟に動きをつけながら話すフィリナ。
それに苦笑し、引いてるまなみ。話の内容が全部飲み込めず、ハテナマークを頭の上に
出している裕奈。伊織は疲れ果てたような表情。
「…えーと、まあ大体分かりました。じゃあさっきのロボットみたいな怪人も
次元鬼じゃなくて…」
「はい、ギノスが私を始末するために送りつけてきた機械人形でしょう」

「なるほど、フィリナさんは私たちにメリアス王国解放の手伝いを
してほしいということですね」
「その通りです。それにギノスを倒すことは人間界のためにもなるのです」
「ふぇ?どういうこと?」
裕奈が目をパチクリさせながら聞く。
231まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/13(金) 16:57:14 ID:ubW4YvoB
「はい。ギノスは聖水晶を手に入れたら人間界に侵攻するという噂なのです」
「なんですって!?次元鬼に続いてギノスまで来たら…」
「まなみさん!フィリナさんのためにも、私たちの世界のためにも
ここは戦いに行きましょう!」
静かに頷くまなみ。
「フィリナさん、メリアスに連れて行ってください」
「まなみさん、裕奈さん、伊織さん…ありがとうございます」
お辞儀をし、深くお礼をするフィリナ。

フィリナに連れられ、多摩川のとある橋の下にやってきた三人。
「メリアスに到着したらすぐに戦闘が始まると思います」
「分かりました。裕奈、伊織、変身よ!炎心変幻!!」
「水心変幻!!」
「雷心変幻!!」

用心のため、予め変身する三人。全裸の彼女らを炎、水、雷の気が纏わり
アレンジされた侍風の戦闘服が包み込んだ。
「さあ、行きましょうフィリナさん!」
「ええ!時空ゲートよ…今こそ開け!」
壁に黒い穴が開き、フィリナが先行して入る。それに、まなみたちも続いた。


一瞬周り全てが見えなくなり、すぐに光が目の前に溢れ、景色が映される。
そこは石造りの建物が並んでいるが、どこも焼け崩れ、酷い有様だった。
そしてすぐに、黒い鎧を纏った集団が凄い勢いで彼女たちに向かってくる。
「フィリナ王女だー!ものども、ひっ捕らえろ!」
先頭を走っていた男が叫ぶと、一斉に剣が抜かれる。
232まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/13(金) 16:58:25 ID:ubW4YvoB
「あれがギノス…!」
「はい、みなさんお願いします!なぁに、先ほど申した通り、チンケな連中ですから」
まなみたちも刀を抜くと、集団を斬り崩していく。
「今日は大サービスでやっちゃうよぉ!!」
裕奈が敵兵の足を掴むとジャイアントスイングの要領で振り回し、
周りの敵もろとも倒していく。

「よし、私も!とあぁぁ!!」
伊織は何人か倒したあと、手裏剣を両手に持ち、空中回転しながら一気に投げつける。
伊織が着地するのと同時に、手裏剣が刺さった敵はバタバタと倒れていく。

「最後は私よ!てやぁぁぁ!」
脇差を抜き、二刀流で敵兵を次々と斬り倒していく。とどめに地面に手をやると
炎を放射し、周りの敵を焼き払った。
メリアスに着いた途端、いきなりの戦いだったが、それをなんなく倒し、
三人はフィリアを護衛しながらメリアスの王城を目指して突き進む。

「まなみさん、聖水晶は強力なバリアで守られています。だけど、
それもいつ破られるか分かりません…急ぎましょう!」
「はい!」
「まなみちゃん、次の相手が来たよ!」
三人は新たな敵に突撃していく。こうして三人の猛攻により、
ギノスが占領した土地は取り戻されていく。
233まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/13(金) 16:59:09 ID:ubW4YvoB
その様子はギノスの本部にも伝えられた。
「報告します!フィリナ王女が連れてきた人間界の剣士が、メリアスを
奪還しようと、進攻しています」
「分かった、もういい下がれ」
椅子に座っていた、一人の青年。その者こそ、ギノスの大将であるエルガであった。

「エルガ様、いかが致します?」
隣にいた大柄な男が聞く。男は肩に棘のついた鎧を着込んでいる。
「さすがにこのままにしておいたり、しないでしょうね」
天井から、黒い、肌の露出が激しい服を着た短髪の女が降りてきた。

「ふふ、問題はない。もうすぐ聖水晶を守るバリアも破壊される。そうなれば
あんな剣士ども、物の数ではない。だけど…ソルド、レキュス、
君たちにはそろそろ働いてもらおうかな」

エルガが怪しく笑みを浮かべると、二人は黙って跪く。
「フィリナ王女の目の前で、自分が連れてきた希望を打ち砕いてやるのさ!
フィリナだけじゃない、抵抗している者すべてが我々ギノスに屈服するのだ!」
辺り一面に笑い声が響く。まなみたちにはどのような運命が
待ち構えているのであろうか…。


次回予告「伊織です。メリアス王国の城下町に突入した私たち。だけど、
行く手を阻むように襲いくるギノスの将軍。私たちはそれぞれひとりひとり
敵に当たることにしました。まなみさん!フィリナさんを連れて早くお城へ!
次回『決戦!聖なる力は誰に微笑む』負けられない!戦いはこれからです!」
234まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/13(金) 17:00:05 ID:ubW4YvoB
投下完了です。二回目の前後編です
235創る名無しに見る名無し:2009/03/13(金) 22:18:33 ID:S+f7Fo7i
まなみ投下乙です
これまた印象に残るサブキャラが出たなぁw
紙芝居はどこから出したとかツッコんじゃいけないんだろうな
236創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 10:10:17 ID:6fx8J4Ai
このなんでもありっぷりを自然にみせるのは、まさにまなみマジックww
第三勢力の出現にどきどきしつつ、時間も楽しみにしてますよ!
237創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 12:18:42 ID:6fx8J4Ai
時間>次回

どんな誤字だ。
238創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 21:14:21 ID:N16MoPGI
まなみは2〜4日のペースで投下されるから
続きが気になる時も生殺し状態が短いな
それにしても一話完結式とはいえフリーダムだw

ところでクロスミラージュの続きはまだかなぁ?
239 ◆GQ6LnF3kwg :2009/03/14(土) 21:44:14 ID:6fx8J4Ai
まなみは読むのに長さもちょうど良いしね。
クロスミラージュも楽しみ。

で、現在この板の箱庭モノなるスレで、
ゆゆるちゃん番外編
「なかよしハウス☆ゆゆるちゃん」を連載してます。

勝手ながらも、このスレに人が少しでも呼べればと思った次第。
しかしそもそも、あそこの人たちはここを見てるのではないかと
不安でいっぱいです。
240創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 23:44:27 ID:lK1MAZuG
えぇ〜ここじゃないの?と思ったけど、箱庭スレってクロスオーバースレなのね
クロスオーバーなら、このスレの魔法少女や変身ヒロインも
お互い共演したりしたら面白そうだなぁ。昔よくあったアニメ映画みたいな
241創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 23:49:19 ID:6fx8J4Ai
このスレクロスだけならここでもできるし、こんどためしに書いてみようかな?
242創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 09:13:29 ID:bmxC2snC
と、↑のような事を書いてみてからに、どう考えても短編で収まらないので
早朝から断念しました。お恥ずかしい。

ところでまなみの設定がさらに更新されてましたので、なんとなく報告。
宇宙進出してるのかよ! いやいや巨大ロボとかあっただろ!

とか、一人談義をしてしまったw
243創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 13:49:45 ID:ko5Wyx9H
変身ヒロインではないし、魔女っ子と呼ぶのも年齢的に厳しいような気がするけど投下してみます
244猟騎烈掃ブラック・ジュジュ:2009/03/15(日) 13:59:04 ID:ko5Wyx9H
1/8

ジュジュは16号線沿いのビジネスホテルでアンジーを拾った。
アンジーは一階のラウンジの、新聞スタンドとパキラの鉢植えの間の狭い空間に挟まっていた。
人目を気にしながら、埃まみれになった小さな茶色のテディベアを物陰から引っ張り上げると
それを持って、チェックインもせずにすぐホテルを出た。
腕時計を見るとちょうど午後の五時半で、外は雨が降っていた。
来たときと同じように駆け足で駐車場を横切り、路肩に寄せて置いてあった黒いバンに乗り込んだ。
テディベアは助手席に放って、車を発進させようとして一瞬戸惑う。箒の操作と間違えそうになったのだ。
瞑想は必要ない、これはただの車だ。気づいて、今度はちゃんとエンジンキーを回して発進させた。

米軍基地の周辺を流していると、助手席のテディベアがひとりでに立ち上がり、ワイパーの動きに合わせて首を振った。
その動作は古い人形アニメのコマ撮りのようにぎこちなく、テディベアの周囲だけが
多分に省略を含みながら圧縮された、現実とは別の時間感覚でもって支配されているようだった。
プラスチックの黒い瞳が対向車のライトを受けてきらめく、一瞬の光だけが運転するジュジュの時間と歩調を合わせた。
アンジーが現実に踊っているのか、それとも単なる幻に過ぎないのか、彼女には判別できない。
『今夜の仕事は箒を使うわね』
「ふーん」
ジュジュはなるべくクマを見ないようにした。見ていると目が眩むようだったし、それに
たとえ中身がアンジーだと分かっていても、自分の車の中で、ストップモーションでくねくねと踊るテディベアは不気味だった。
土曜の午後、ぬいぐるみと二人きりで雨の中ドライブする仕事とは一体何なのかと思うと、
彼女はむず痒くなって、つい語気を荒げてしまう。
「動かないでよアンジー、見られたらどうすんの」
『身体を……動かさないと……肩が凝るのよ』
ジュジュの耳元で響くアンジーの声には、さっきからずっと気泡音に似たノイズが混じっている。
通信状況がよくない。クマの踊りに現実感がないのも同じ理由だ。この場所はまだ魔法の世界との壁が厚い。
「気持ちわりいよ、お願いだから座っててよ」
『あたし、一時間あそこで待ってたんだけど』
「あんたが待ってんのはモニターの前ででしょうが」
アンジーが二本足で立ったまま動きを止めた。
車が信号につかまると、慣性の法則でのめって座席の下に落ちた。
『助けて』
「知らねえよ」
車列が動き出した。基地のゲートの前を通り過ぎた。そのまま走っていく。
彼女は、自分の隣にいるのがぬいぐるみでない生身のアンジーだったら、と想像した。
人間のときのアンジーの、まっすぐな長い黒髪を想像した。少し厚ぼったい一重の瞼や
時々きつすぎると感じるあの口紅の色を思い起こした。自分と揃いの黒いパンツスーツ姿を、
開いた襟元の、シャツに負けないくらい真っ白な肌を想い描いた。
記憶の中の香水の匂いがジュジュの空想上の嗅覚を刺激し、
冷え性知らずのアンジーの温かい手が、膝に置かれる想像をした。ジュジュの空しさはいや増すばかりだった。
『もう少し進んだら、どこかでUターンして』
本物のアンジーは今、座席の下に転がって、テレパシーでジュジュに指示を飛ばしている。
彼女はジュジュのナビゲーターなのだ。前回は大きなセルロイドの人形に化けていて、とても怖かった。
ジュジュは運転しながら、バックミラーの角度を下げて、
そばかすだらけで化粧っ気のない、二十歳の小娘というよりはほとんど少年のような顔立ちをした自分を映した。
短く刈った髪は金に染めていたが、染め直しをさぼっているので、頭のてっぺんはもうだいぶ黒くなってしまっていた。
斜めに下ろした髪が右目を覆っていたので、少しずらして目を出す。
自分が人形でなかったことに安心しつつ、ジュジュはスーツの肩についた埃を払った。
245猟騎烈掃ブラック・ジュジュ:2009/03/15(日) 13:59:38 ID:ko5Wyx9H
2/8

アンジーの指示に従って来た道を引き返す。やがて、右手の商店の並びにつぶれたバーを発見する。
『あれよ』
その店には、マルボロマンの偽者のような、白い歯を剥いて笑う大きなカウボーイの描かれた看板がかかっていた。
かなり目立つ外観のはずなのに、ジュジュは行きにそれを見た覚えがない。
『車を入れて』
アンジーの声からノイズが消え、ジュジュは特異点に接近していることを悟る。
バーの裏の小さな駐車場に乗り入れて、車を停めると
ダッシュボードを開けて、拳銃の入ったホルスターを取り出して腰に帯びた。
それからアンジーを抱いて、傘なしで雨に打たれるのも構わず車を降り、
前に回って、違反切符みたくワイパーに布製の護符を一枚挟んだ。これで車を「向こう側」へ持っていくことができる。

『箒を組み立てて』
「わかってるよ」
ジュジュは駐車した位置が表通りから見えず、駐車場の後ろの畑や住宅にも通行人がいないことを確かめると
アンジーを地面に置いて、今度はバンのリアドアを開き、後部に積んでいた戦闘箒を下ろした。
艶消しのダークグリーンで塗られた折り畳み式の機体を素早く広げて、暗灰色の穂先を取り付けると
箒は全長が3メートル近くになる。更に操縦桿(スティック)とフットペダル、シート、着陸用そり(スキッド)が組み立てられ、
柄の前部には自動小銃を改造した機銃一丁と榴弾砲が乗せられた。
その他細かな装備の点検を簡単に行い、機体に車と同じ護符を貼ると、
ジュジュは箒と一緒に積んであった青いナイロンのスポーツバッグから小物を空けて、自分自身の準備にかかる。
『パイロットスーツは?』
「この下に着てるよ」
ローファーを専用のブーツに履き替え、スーツの袖とパンツの裾をストラップで締め、薄手のグローブをはめ、
透明のゴーグルをかけ、マスク代わりの黒いバンダナを顔に巻き、トンファー型の杖(ロッド)を持った。
最後に、白い箒星のマークと「CHASSEURS A BALAI(シャスール・ア・バレ)」というロゴが入った
紐付きの黒いとんがり帽子をかぶると、アンジーを拾い上げる。
「準備終わった」
『お店の中に『出口』があるわ』
表はシャッターが下りていたが、裏口の鍵が開いていたので、破壊行動なしに侵入することができた。
壁にスイッチを見つけたが、電気が通っていないらしく反応しない。暗い店内を、ライターの火を灯りにして探索する。
埃のつもったカウンター、英語表記のメニュー、空っぽの棚、壁には擦り切れた映画のポスター。
『ジューク』
「あ?」
『ジュークボックス』
隅のほうに、樽型の古いジュークボックスが置いてあった。
電源が入っておらず、手当たり次第にボタンを押してみてもやはり反応はない。
「切れてんじゃん」
『これを使って』
アンジーはジュジュの腕の中でもぞもぞ動いて、どこからともなく一枚の硬貨を取り出した。
それは大きさや手触りこそ5セント硬貨に似ていたが、図柄は卑猥な笑みを浮かべた謎の人物と
ジュジュが見たこともない奇形じみた不気味な動物で、打刻された文字や数字は
サンスクリット語とキリル文字が結婚してできた子供みたいな、解読不能の宇宙語だった。
硬貨を投入口に落とすと、電源が入っていないはずのジュークボックスが点灯する。
曲を選ぼうとしたが、曲名のラベルも宇宙語だった。アンジーが番号を言い、ジュジュはそのボタンを押した。
汚れで曇ったガラス越しにアームが動いて、選択されたレコードをターンテーブルに乗せるのが見えた。
針が落ち、曲が始まる。逆再生のシャンソンみたいな奇妙な歌が、バーの暗く淀んだ空気を震わせる。
ジュジュはカウンター席に座り、曲が終わるまでアンジーと二人でぼうっとしていた。
246猟騎烈掃ブラック・ジュジュ:2009/03/15(日) 14:00:17 ID:ko5Wyx9H
3/8

『潜った』
アンジーが言った。ジュークボックスは一曲終えても点灯したままだった。
店から出ると雨は降っておらず、雲ひとつない夕焼け空になっていた。
アスファルトの地面は濡れた跡さえなく、空気は乾いている。
車の音も、人や鳥の声も聞こえない。生き物の気配はない。バンと箒はちゃんと残っていた。
駐車場のフェンスの向こうは畑が消え、代わりにさっきまでなかったはずの汚い灰色のビルが建っている。

ジュジュたちが立っているのは現実界と魔界との狭間、魔法界だった。
現実界の法則と魔法が共存し、両界の特異点を結びつけるどっちつかずの煉獄(リンボ)のような場所。
ジュジュはたった今からこの空間を清掃しなければならない。

アンジーを持って箒にまたがると、腰をシートに落ち着けて、ベルトでアンジーごと胴体を固定した。
肩からもベルトを回して、完全に身体が固定されると、帽子の紐を結んだ。
いよいよ左手でスティックを握ると、
『オーケイ、接続開始』
「接続開始します」
ジュジュは目を閉じて瞑想に入った。
心を静めて慎重に呼吸を続けると、瞼を閉じているにも関わらず、段々と外の景色が目に映ってくる。
同時に、デジタル表示のインジケーターのイメージが頭の中に浮かんで離れなくなる。
やがて瞼を閉じたまま完全にものが見えるようになり、また、ものを見ながらも
イメージの中のインジケーターがはっきり読み取れるようになった。
それはまるで、思考に張り付いて消えない想像の絵のようだが、
表示された値は、戦闘箒に搭載された箒空電子機器(ブルーモニクス)が本当に出力した数値だ。
「接続完了」
別に目をつむったままでも飛べるのだが、ジュジュは一応マニュアル通りに、目を開けて肉眼で外を確認した。
戦闘箒とパイロットとの精神接続は、現実の時間では一秒足らずだ。周囲は何の変化もない。
『作戦領域の地図を送る』
ジュジュの思考に二枚目の絵が加わった。
高高度から地上を俯瞰した粒子の粗い衛星写真で、ある一地域が拡大されている。
そこにはマーカーでもって中央にジュジュたちの現在位置、
北西端には今回の標的が観測された地点が数箇所記されており、
倍率を下げると、約10キロ平方の正方形の地域だけ残してあとは灰色の無の領域だった。

無の領域といっても画面に表示されないだけで、そこからいきなり地面が途切れて海が滝になるという訳ではない。
実際に箒で飛んでみれば、地図に選択された領域を外れた後はただ、同じ地形の繰り返しが
果てしなく続いていることが分かるだろう。おそらく本当に果てはない。空間自体は無限の広がりを持っている。
だが、現実界と魔界との接点に当たる特異点とその周囲の限定された範囲だけは
繰り返しを避け、特異点の保持者である「アンカー」と呼ばれる魔法生物の生活圏として存在している。
247猟騎烈掃ブラック・ジュジュ:2009/03/15(日) 14:01:03 ID:ko5Wyx9H
4/8

『これが今夜の相手』
また写真が送られてきて、そこには、夕日をバックに雑居ビル群の上空を飛ぶ何かが映っていた。
「何これ」
『さあ。この領域の生体反応はこれ一匹で、こいつがアンカー。こいつを駆除すれば』
「今日一回で作戦終了。やってみるよ」
両足を伸ばしてペダルを踏むと、軽く蹴ってビンディングでブーツを固定する。
ロッドは一度シートの脇のホルダーにしまい、右手を遊ばせておく。
左足でシフトペダルを操作しながら、右足を踏み込む。
動力のディーンドライブが唸りを上げ、機体が水平を保ったまま浮遊する。
箒の高度はバーの建物を越し、偽マルボロマンの裏側の木枠が見えた。
ゆっくり飛んで、道路に出てみる。もちろん車は一台も走っておらず、人の姿もない。
通りのこちら側には建物がちゃんと並んでいたが、米軍基地はフェンスだけ残して消滅しており、
フェンスの向こう側の跡地には広大な湿原が出現して、地平線の彼方までそれは広がっていた。
湿原は青々と茂った水草に覆われ、ところどころに開いた池塘の水面は空を映して赤黒く輝いている。
引き返して、バーより後ろの町を飛んだ。50メートルほどの高度を取って、北西へまっすぐに。
エアロパーツと風防代わりの、不可視の防壁(シールド)が箒の柄の先のほうから張り出されて、飛行中はほとんど風を感じない。

3分ほど飛行を続けたところで会敵した。
レーダーが反応し、ジュジュの肉眼も夕空に浮かぶ黒い点を捉えた。
ジュジュは脚の間の小さな操作卓(コンソール)で火器管制を行うと、
視界の端から自動照準の緑色のグリッドが現れ、すべるように動いて敵影に重なった。
『マジックアロー、照準乗ってる』
「はいはい」
コンソールの、キャラメル大のボタンを叩いた。
戦闘箒の柄の先端、シールド放射器より前から、夕日のような色をした光弾が飛んでいった。
敵が左に旋回して避けた。魔法の矢は箒からの誘導を受け、敵を追って軌道修正する。
レーダーの、敵を示す光点が不意に広がった。光点は薄い霧のような光に飲まれて、正確な位置がわからなくなった。
『魔法雲! ジャミングを受けている!』
レーダー上のマジックアローが霧に飲まれた。
ジュジュの肉眼では、光弾が敵から逸れてどこか明後日の方向に飛んでいくのが見えた。
普段なら、敵と接近する前にアローの一撃が標的を落としてしまって作戦終了なのだが、
「もう一発」
光弾が再度発射される。レーダーの敵は光の霧を撒き散らしながら移動している。
飛行速度はかなり早く、ほとんど箒並みだった。
やはりアローは命中せず、ジュジュは箒で敵目がけて突っ込んだ。
敵の斜め後ろにつけて飛ぶと、姿がはっきりと見えるようになった。
248猟騎烈掃ブラック・ジュジュ:2009/03/15(日) 14:01:51 ID:ko5Wyx9H
5/8

敵は箒の倍ほどの体長の、空飛ぶ巨大なアカエイだった。
全身墨色で、背中に縦一列、眼らしき白い斑点が三対乗っており、
扁平な身体の後ろからは吹流しに似ていて、無数に生えた長い帯状の尾がまっすぐ風になびいている。
「うわ、大物」
『機銃の射程よ!』
スティックの上についた、機銃のトリガーボタンを親指で押して何発か撃った。
数発が背面に命中して墨色の肉片が散ると、エイの飛ぶのが速くなった。
突然、今まで吹き流されるがままだった尾が一斉に風に逆らって動き、鞭のようにジュジュに襲いかかる。
横隊となって飛んでくる攻撃をきりもみで反射的にかわした瞬間、
全ての尾の先に鋭く尖った棘が生えているのが見えた。慌てて低空に離脱し、
地上の雑居ビル群に格子状に刻まれた、幅の狭い路地のひとつに潜った。

敵の追撃がないことを確認して箒をホバリングさせながら、ジュジュは肩で息をする。
「ちくしょう死ぬところだった」
服の下で裸身に張り付くパイロットスーツが暑苦しい。シャツの襟を開けた。
ゴーグルとマスクをずらし、顔からどっと吹いた汗を袖で拭う。
『無誘導のマジックアローで撃墜できないかな』
「真後ろにつけるのは無理だ。あいつ飛ぶの速いから、離れると避けられるし
近づいたら近づいたで、さっきのあれが飛んできて芋田楽にされちまう」
『上からかぶって、敵の進路にアローの打ちっ放しで一撃離脱』
「ケツを持ってかれそうだなあ」
249猟騎烈掃ブラック・ジュジュ:2009/03/15(日) 14:02:36 ID:ko5Wyx9H
6/8

道伝いに飛んでビルに隠れつつ、レーダーに雲を引いて移動する敵を再度追跡した。
危険は去ったと見たのか、敵の飛行速度が落ち、
ジュジュは地上の複雑な地形をなぞっての移動でもどうにか追いすがることができる。
『正面に回りたいが……』
敵は魔法雲を吹きながら南東に向かっていて、ジュジュはその右斜め後方を飛んでいる。
「あの野っぱらに出られたら、どうせお互い丸見えになっちまう。仕掛けるわ」
『ジュジュ!』

路地から高角度で飛び出し、急上昇して高度を取っていった。
Gがジュジュの胸に圧しかかる。シールドに切り裂かれた風の音が耳を聾する。
機体が震える。思いきり引いていたスティックを戻し、今度は横に倒す。
箒は水平に戻りながら、くるりと横転して背面飛行に移る。風の音が消える。
ジュジュは逆さまになって地上を見上げ、自機のほぼ真下に敵を捉えていると分かると、
深呼吸し、背面飛行から一気にダイブした。
16号線によって切り分けられた湿原と街が、みるみる近づいてくる。
小さな黒点が、次第にやじりのような形を取り始める。瞬きをしても
予想される敵の進路上にアローの照準を振り向ける。コンソールに手を置く。
ジュジュは一撃離脱のことだけ考える。エイの尾の束がほどけ、もうすでにこちらを狙っている。
『撃て!』
コンソールを叩いて、スティックを引いた。息が詰まる。
アローが放たれ、槍ぶすまがジュジュの眼前に迫ったかと思うと、すぐさま視界から外れる。

ジュジュの箒は回避に成功した。全速で水平飛行に移った彼女の背後で、くぐもった爆発音が響いた。
振り返ると、エイの胴体ではなく尾の束が、血しぶきと共に散っていくのが見えた。
「尻を撃った」
エイは煙を吐いてゆっくりと降下していく。ジュジュは反転して、墜落するエイを追った。
『とどめが必要かも知れないわ』
エイは土埃をあげて、その巨体を16号線に叩きつけた。上空を旋回して見守る。
尾の束は、道沿いのビルの屋上に引っかかってぶら下がっていた。
滴る黒い血がビルの壁面を塗りつぶし、ガソリンに似た臭気が辺りに漂い出す。
本体は胸びれをむなしく波打たせ、背中についた六つの眼がぎょろぎょろと動いている。
ジュジュは上空からの観察で、エイの眼が充血した白目とうつろな黒目に分かれていて、
人間の眼にそっくりだということを知って気分が悪くなる。
「片付けるよ」
降下し、道路に沿って猛スピードで低空を飛行する。
エイの上に来たところで機体を横倒しにし、ロッドを剣のように振りかぶる。
マジックアローと同じオレンジの閃光がロッドからほとばしり、光の刃が路面ごとエイの背面を引き裂く。
血の蒸気を巻いて箒が飛び去ると、真っ二つに切られたエイは完全に動かなくなった。
250猟騎烈掃ブラック・ジュジュ:2009/03/15(日) 14:03:30 ID:ko5Wyx9H
7/8

ジュジュたちは、来たときと同じ手順で現実界に復帰した。
曲を終えたジュークはもはや点灯せず、バーの天井近くに開いた換気用の窓は、
16号を走る車のライトを透かしてひっきりなしに光った。バーを出る。
雨はまだ止んでいなかったが、空はさっきより夜の色に近くなった。
駐車場の箒を分解してバンに積み、自分も乗り込む。脇に抱えたクマはもう喋らない。
車を道に戻すと、ジュジュの携帯電話が鳴った。アンジーからだった。
社章入りのとんがり帽子を脱いで、電話に出る。
『お疲れさま』
「はいはい、お疲れ。で大丈夫そう?」
『アンカーの消滅後から特異点は収縮しつつあるわ。明日にはもうあの店も見つからなくなるわね』
バックミラーを覗いたが、カウボーイの看板は辺りが暗くてもう見えない。

ああいった抜け穴は世界中に空いていて、誰かが迷い込まないよう、発見次第一個一個閉じていかなければならない。
それは必要な仕事に違いないが、ジュジュにとっては大した達成感ではない。
もう一年ばかりこの仕事をしてきて、これがつまり慣れ始めというものなのだろうとジュジュは思った。
なんたって会社員だものな、スーツ着て働いて、給料もらって。未だにウソのように思えるときがある。
彼女は十代の終わりに、こことは別の特異点に遭遇したばかりに、否応なしに戦闘箒乗りの教育を受け、
『シャスール・ア・バレ(猟騎箒兵)』などという会社に「清掃員」として入社させられてしまったのだが、
そのことで誰かを恨んだことはなかった。どうせやることもなかったし、大概が暇な職業だ。給料もいい。
何より「魔法」というのがいい。限られた人間だけが知る、この世界の裏側だ。仕事もタフだ、それだけが誇りになる。

電話口のアンジーの声はノイズも少なく、クリアに聴こえる。魔法ではない、通常の電波による通信だった。
アンジーと箒のメンテナンスに関する事務的な会話をしながら、
もはや必要ないというのにうっかり車に乗せてしまったあのクマを、どう処分したらいいものか、ジュジュは思案する。
そして考えた挙句、ぬいぐるみは拳銃と一緒にダッシュボードに放り込んでおくことにした。
道端に捨てるには忍びない。いつかは邪魔になって結局捨てるのだろうが、
巨大なフランス人形ほど場所を取るものでもないから、少しくらい手元に置いてあっても平気だ。
251猟騎烈掃ブラック・ジュジュ:2009/03/15(日) 14:04:09 ID:ko5Wyx9H
8/8

雨が強まり、ワイパーの振りが忙しなくなる。
長々と続いた車列に混じって走りながら、今夜泊まる場所を探す。
「あー、飲みたい」
『飲めば』
「あんたいつこっち来んのよ?」
『来月中には機材と一緒にそっちへ行くわ。
レオンとCJも、香港のヤマが片付き次第日本に回されるでしょ』
ジュジュの頭の中の予定表が来月まで空白になった。ジュジュは慌てて空想の予定表を修復する。
計器のようにしっかり張り付いていてくれれば、そんな恥ずかしい展開はなかったろうに。
アンジーを拾ったビジネスホテルに通りかかったが、そこは止めておいた。通り過ぎて、ずっと走っていく。

『あたしがいなくて寂しい?』

面白がるような口調だったが、出動のたび、会話のどこかで繰り出されるお約束のやり取りだから
アンジーが本気で面白がっている訳でもなし、半ば癖になっているだけだと推察した。
そうやってうがった考えをしてしまう自分がみじめだった。ジュジュはさりげなさを装おうとして
途中で考え直し、別にさりげなさを装おうともしていない普通のトーンで答えるつもりになったが
それ自体さりげなさの演出なのだと思い至って硬直する。答えが出ず、気まずい雰囲気になる。

『もしもし? どうかした?』
「別に何とも。じゃあね、切るよ」
電話を切った。交差点に差しかかると左に曲がって、JRの駅のある方向へ進んだ。
まずはどこかでパイロットスーツを脱ぎたい。それから駅前で食事を済ませてしまおう。
パチンコ屋の前を通る。打ったことはないが、そのうちやってみるつもりでいる。
ピンク映画の看板が目に止まる。大きなシネコンも近くにあるから、もう少し走って、映画を見に行ってもいい。
次の仕事まで、ジュジュにはどうせやることもなかった。
252創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 14:04:43 ID:ko5Wyx9H
以上です
253創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 14:18:38 ID:kpgcyfvS
二十歳の魔法少女……ゴクリ
254創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 14:24:23 ID:bmxC2snC
なにこの読み応え。
すげーおもしろかった、箒かっこよすぎだろww
いろいろ謎めいた設定もきになるところだ……

魔女っ子なんてのはあれですよ、作者がそう言い切れば年なんて関係ないんです!
ゆゆるちゃんなんて400歳ですし。
255創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 22:01:45 ID:RKqOmWrz
なんだか渋くてクールでいいな
まなみや、ゆゆるちゃんが夕方放送アニメなら
ジュジュは深夜アニメみたいな…いや良い意味でよ?
なんかいい表現が見つからんなぁ
256創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 23:44:43 ID:PM/tlAgG
新作も来たし、この前の点呼でもそれなりに人はいたし、
そろそろまとめにチャットのページ作ってもいいんじゃないかな
257創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 02:22:47 ID:8xCcC/4z
共通の魔法少女体験がなくて会話にならんけど、創作や交流目的での雑談ならおk
258創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 12:52:23 ID:dSOS1AEn
ちょっと失礼、このスレに規制されてる魔女っ子はいないかい?
したらばに創発避難所があるから、規制報告にレス代行となんでも活用しておくれ

創作発表板 避難所
ttp://jbbs.livedoor.jp/internet/3274/
259創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 12:56:18 ID:BP+CUwnA
告知おっつー
確かにこのスレは避難所知らずにじりじりしてる規制魔女っ娘がいそうだ
260創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 18:31:07 ID:TUi+qhHH
ということで書き込み規制されちゃってる人は、>>258からレス代行してもらえるそうです。
チャット開設自体は反対意見がなかったと記憶しているので、やっちゃえやっちゃえー
261創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:00:33 ID:oRUGA7/5
>>258
乙です。これで投下したい病の時も安心だw

それでは炎術剣士まなみ第十三話投下します。
262まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/16(月) 20:01:41 ID:oRUGA7/5
炎術剣士まなみ 第十三話『決戦!聖なる力は誰に微笑む』

 異世界の国・メリアスの王女フィリナ。メリアスはギノスという悪の組織によって
侵略寸前であった。彼女はまなみたちに救いを求め、メリアス奪還が始まった…。

ギノスの軍勢をものともせず、まなみたちは突き進む。刀を一振りするだけで
敵兵はポンポン吹き飛ばされていく。
「ね?本当にチンケな連中でしょ?」
「そ、そうですね…でも、ギノスには強い将軍がいるって話でしたよね?」
「はい。そいつらに気をつけてください。まあ、裏返せば他は救いようのないほど
弱い連中だということですけどね!」

笑うフィリナに、三人はちょっと引き気味。敵軍を倒し進んでいくと、
ついにお城が見え始めた。
「城下町を抜けるとすぐにお城です。皆さん、よろしくお願いします」
「分かりました。だけど、街にもギノスがいるみたい…出てきなさい!」
まなみがフィリナの方を向いたまま、姿が見えない相手を呼ぶ。

すると、屋外だというのに周りが暗くなり、次にはライトアップされながら
プロレスなどで使うリングが地面からせり上がってくる。その中心には
マントを羽織った人物が仁王立ちしていた。
「な、なんかやけに凝った登場の仕方だね…」
「ふふふ…はははは!俺様こそギノス将軍の一人、ソルドだ!お前たちを
始末する命を受けた。さあ、いざ尋常に、勝負!」

ソルドと名乗った人物がマントを投げ捨てると大柄で鎧を着た男の姿が。
次の瞬間、裕奈がリングに飛び上がる。
「裕奈!?」
「まなみちゃんたちは先に行って!ここはあたしが引き受けたよ!」
「分かった…!絶対、無理しないでね!」

まなみたちを先へ進ませ、裕奈は柔道の構えを取る。
「お前が俺の相手か!ちびっ子に俺を倒すことが出来るかな?」
「ちびっ子言うな!水術剣士、水無瀬裕奈が叩きのめすんだから!」
どこからかゴングが鳴り、ソルドは裕奈に向かって突進してくる。
それを、腕を掴み背負い投げする。
263まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/16(月) 20:02:29 ID:oRUGA7/5
まなみたちは城門の前まで来ていた。フィリナ王女が門を開けようとした時、
突然、伊織がフィリナを突き飛ばした。
「きゃあ!?」
「伊織!突然どうしたの!?」
「ふぅ…これを見てください」

フィリナ王女が立っていたところに鋭い針が突き刺さっていた。すると、どこからか
女性の高笑いが響いてくる。
「よく今の攻撃を避けたわね。私はレキュス。さて、誰から殺そうかしら」
すると、伊織がまなみとフィリナの前に立つ。
「私が相手をします。まなみさんはフィリナさんと早くお城へ!」

「行かせるか!」
レキュスが飛びかかるが、伊織が刀でそれを止める。
「さあ、まなみさん!フィリナさん!」
まなみは一瞬、振り返るが、すぐにフィリナを連れて城内へと進んだ。

「命を弄ぶ者…雷術剣士、姫倉伊織が許しません!」
「ちっ…まあよい。可愛らしいお嬢様を甚振るのも一興」
「残念ですが、私はあなたみたいなおばさんには負けません!」
「お、おば…誰がおばさんですってぇ!?」
血管を浮かび上がらせ、声を上げるレキュスに伊織はニヤニヤしながら続ける。

「誰って、ここにおばさんと言える存在はあなただけじゃないですか。
あ、本当のこと言ってごめんなさい。おばあさんに失礼なこと言っちゃって!」
「なに…さりげなくバージョンアップさせてんのよ!」
伊織の挑発に怒り心頭に発したレキュスが怒涛の勢いで突撃してくる。
しかし、攻撃した瞬間、伊織の姿はなく、気づくと背後に回られていた。

「なっ!?」
「遅い!やあぁぁぁっ!」
伊織が斬撃を放つもそれは避けられる。しかし、肩に赤い一筋の線が出来ていた。
「まなみさんとフィリナさんのとこへは行かせない!」
改めて刀を構え、雷の気を辺りに放つ。
264まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/16(月) 20:03:18 ID:oRUGA7/5
まなみはフィリナとともに城内の敵を蹴散らしながら玉座の間を目指す。
「もうすぐです!玉座のすぐ後ろに聖水晶はあります!」
「わかりました!…邪魔、しないでよ!」
尚も斬りかかってくる敵兵を一気に炎流波で倒していく。
そしてようやく玉座の間に到着する。玉座には一人の男が腰かけていた。

「やあ、フィリナ王女…ようやく戻ってきたんだね」
「あなたは…エルガ!」
エルガという青年は立ち上がり、まなみに視線をやる。
「君が人間界から来た剣士のお嬢さんか…だが、
君に僕たちの邪魔を…ってうぐわぁっ!?」

台詞の途中、エルガの腹部にまなみの拳がめり込んでいた。
「あなたとお話する時間なんてないの!フィリナさん、聖水晶のとこへ!」
「ふはははは…!」
まなみが奥へ行こうとした時、エルガが静かに笑いだした。
「な、なにがおかしいのよ!」

「いや、失礼。僕はとても君には敵わない。それは他の二人の将軍もそうさ。
だけど、聖水晶が既に僕の物になっていたとしたら…!?」
「エルガ!あなた、まさか!?」
エルガが懐から丸いクリスタルを取り出した。

「聖水晶!あのバリアを破壊したというのですか!」
「やたら強固で苦労したよ。でもこれさえあれば全ては僕らの物だ!
聖水晶よ、力を与えたまえ!」
エルガの叫びに呼応し、聖水晶が光を発する。聖水が溢れだし、それを浴びた。

「ははは!これで僕はもう無敵の存在だ!」
「フィリナさん、下がって!てやぁぁぁっ!!」
まなみが飛び上り、エルガに斬りかかる。速さからして避けることもままならない。
しかし、それは止まった。見ると、刀身がエルガの指に挟まれていた。
265創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 20:03:56 ID:Lzbgr8Dc
266まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/16(月) 20:04:40 ID:oRUGA7/5
「う、くぅ…な、こんなことって…!」
「先ほども言った通り、僕は君には勝てない。でも聖水を浴びた今、今度は君は
僕には勝てないのさ。はあっ!!」
エルガが手をまなみの腹部にやると音もなく、まなみは吹き飛ばされてしまう。
「あぁぁぁっ!さっきと、全然違う…隙がまるでない…!」
「ふふ、聖水の力はこんなことも出来る。それ!」
すると聖水晶から光が発せられ、それはソルドやレキュスの元へと飛ぶ。

ソルドは見た目に反してとてつもないパワーファイターな裕奈に苦戦し
焦りの表情を浮かべていた。しかし、光がソルドに注がれ、急激に力が湧きだした。
「おお!エルガ様、ついに聖水晶の力を!水無瀬裕奈!貴様の最期のようだな!」
言うと、裕奈に向かって突進する。裕奈はそれを防ごうとするが、今度は
先ほどのように、余裕で受け流すことが出来ず、易々と叩きつけられてしまう。

「きゃああぁぁぁ!?うぐ…なっ、段違いに強くなってる…!」
「まだまだこれからだ!ははは!」
再び抱えあげ、裕奈を何度も叩きつけたり、蹴りつけていく。
それに抵抗しようにも、力が出ず、押される一方の裕奈。

レキュスは伊織の挑発で冷静さを失いかけ、スピードでも到底敵わなかった。
だが、彼女にも聖水晶の力が降り注がれていく。
「エルガ様…これで我らギノスの勝利は間違いないというわけですね!」
「くっ、まなみさんたちは間に合わなかったの!?」
「お嬢様、無駄口を叩く暇は無いんじゃないかしら?」

伊織が気づくよりも速く、背後に回ったレキュスは肘打ちで伊織を前のめりに倒す。
「うあっ…!こ、この」
伊織が立ち上がろうとすると、レキュスは針をシャワーのように飛ばし、伊織の
身体を傷だらけにしていく。

「くあぁぁぁ!速い…こんなに速くなるなんて…」
「さっきはよくもおばさんなんて言ってくれたわね。口の利き方も分からない
あなたはしっかりとその身で教えてあげないといけないわね…!」
「ああっ!うぁぁ!」
レキュスは伊織を何度も鞭で叩き、その度に伊織の口から悲鳴が上がった。
267まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/16(月) 20:05:38 ID:oRUGA7/5
玉座の間ではまなみがエルガに首を絞められ、脱出しようにも出来なかった。
「ぐ…かはっ……はな、せ…!」
「分かった、放してやろう。そぉら!」
勢いに任せ、まなみを壁に投げつける。人型にめり込んだ壁からまなみが
崩れ落ちながら倒れ伏す。もう指を動かすのさえ辛くなってきたまなみを
エルガは容赦なく踏みつける。

「フィリナ王女。あなたの目の前で希望の存在を打ち砕いてやる!」
「まなみさん!エ、エルガ!お願いします、まなみさんを殺さないでください!」
「嫌ですね、僕らギノスの目的は聖水晶の力で全てのものを支配すること。
それに逆らうものはこうなるってことさ!」
フィリナの願いを無視し、エルガはまなみを攻め立てる。

「くっ…やめなさい!」
フィリナがエルガに向かって聖水晶を取り上げようとするが、当然敵うわけもなく
簡単に振り払われてしまう。
「あうっ!」
「フィリナさん!」
「残念だなぁ、フィリナ王女。下手に逆らわなければ僕のお妃にでもしてあげたのに。
じゃあ、フィリナ王女から殺すとしようか」

後ずさりするフィリナに威圧感を出しながら近づいていく。
だが、まなみがエルガに力を振り絞り飛びかかる。それを気にも留めない様子のエルガ。
「もう分かっているだろう、君は僕には勝てない」
「それでも…負けるわけにはいかない…うあぁぁぁぁ!!」
まなみの全身から火柱が上がり、エルガもろとも焼きつくそうとする。

「くっ、そんなものが効くものか!」
まなみを払いのけるがその瞬間、聖水晶を落としてしまう。
「しまった!」
「フィリナ王女…!聖水晶を!」
素早く聖水晶を拾い上げたフィリナが高く掲げる。

「聖なる力よ、今こそ正義のためにその力を現し給え!」
フィリナの言葉に呼応し、聖水が溢れ、それは光となり、裕奈に、伊織に
そしてまなみへと飛ぶ。そして光を浴びた三人は信じられないほど
底から力が湧きあがり、戦闘着こそボロボロだが、身体にはすでに痛みなどなかった。
力が満ちた証としてか、三人の周囲に黄金のオーラが纏わる。
268まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/16(月) 20:06:55 ID:oRUGA7/5
裕奈がゆっくりと立ち上がると、次の瞬間、素早くソルドの腹部に拳をめり込ませ、
続いて連続で蹴りを入れていく。
「ぐっ!?うおぉぉぉぉぉぉ!!」
「あたしは、あんたを許さない!大滝落としぃぃぃ!!」

その巨体を持ち上げ、ブンブンと振り回し、空高く放り投げた。
あとは勢いに任せ、リングの中央にソルドが頭から落ちてくる。
「ぐああぁぁ…!」
完全にダウンしたソルドを見届け、裕奈は城へと走り出した。


鞭打ちされていた伊織は鞭を受け止め、それを奪い、投げ捨てる。
「おばさんの相手をしている暇はない…早々にケリをつけさせてもらいます!」
「くっ、調子に乗るんじゃないよ!」
レキュスが常人には姿が見えない程、素早く動き出すが、彼女の視点からは
伊織の姿を確認することが出来ない。

「遅いですね…そこ!」
いつの間にか、レキュスの背後に回っていた伊織は手を当て、
一気に雷の気を放出した。
「雷神掌!!」
強烈な電撃が流れ、声も出せずにレキュスはその場に倒れ、動かなくなる。


そして、まなみは先ほどのお返しとばかりに、エルガを何度も
斬りつけ、炎を纏った拳で殴りつける。
「ぐぅああ!くそ、くそ!こんな…」
「こんなはずじゃなかった?聖水晶の力を得た今、私たちはあなたたちには
負けはしない!はあぁぁぁっ…!」

まなみが両手を上げ、そこに炎の気が集まり、巨大な火の玉になる。
「いっけぇぇぇぇ!!火柱ストォォォォム!!」
火の玉を投げつけ、エルガを燃やしつくしていく。
「うああぁぁぁぁ!!」
火柱の中で苦しみ、呻き声をあげる。
そして火柱が消滅していくと、そこにはエルガの姿はなかった。
269まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/16(月) 20:08:06 ID:oRUGA7/5
まなみたち、三人がギノスの将軍を倒し、残ったギノスの兵たちは皆、降伏した。
こうして、まなみたちは勝利し、メリアス王国の奪還にも成功した。
フィリナが三人と、城の地下牢に向かうと、底にはフィリナの父と母の姿が。
「お父様!お母様!」
「フィリナ!よくぞ無事で…」

親子が抱擁を交わす。フィリナは涙を流している。
「よかった…お父様とお母様が無事でいてくれて…」
「もう心配することはない。これからみんなでメリアスを再興していこう。
…あなた方が、人間界の剣士のお嬢様たちですな?」
国王がまなみたちに視線をやる。

「はい、私は新堂まなみ。で、こっちは…」
「水無瀬裕奈です!」
「姫倉伊織と申します」
三人それぞれ名乗ると、国王は深く頭を下げる。
「あなた方のお陰で国は救われました。それにフィリナのことも…本当にありがとう」
三人は照れ笑いしている。外は平和を象徴するように青空が広がっている。


どこかの別時空。そこに傷ついた身体を休めるかのように一人の男が
座り込んでいた。それはまなみが倒したはずのエルガであった。
「はぁ、はぁ…ギノスは…全滅、か…しかし、これさえあれば、まだ再起は…!」
エルガが懐からボトルを取り出す。その中身は一見水だが、光を発していた…。


次回予告「まなみです。今回の戦い、フィリナさんがいなかったら
負けていた…。それにしても、戦い続きでさすがに私たちも疲れが溜まるわ。
というわけで、みんなで海に行こう!正義の味方も休息は必要だよね!
次回『夏だ!海だ!全員集合!』だけど普通の休日にはならないんだよね、
やっぱり。あはは…」
270まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/16(月) 20:11:14 ID:oRUGA7/5
というわけで、第十三話投下完了。長くなった…。
チャットでしたら、以前もお話ししましたが、自分でよければ
部屋、作ってきます。
271創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 21:40:10 ID:TUi+qhHH
まなみさん投下乙です
気になる余韻を残しつつ、いろいろと賑やかになっていきますなー
伊織ってわりと痛そうな目にあうのが悲しいwww

チャットの件もまなみさんにお任せに一票
272創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 23:12:06 ID:XPufy4Pl
まなみ乙です。最初はギャグっぽかったのに一気にシリアス風ですな
まなみ作者さんは、変身ヒロイン物とはいえ女の子を
フルボッコするシーンが多いなぁ
いいぞ、もっとやれ

チャットもまなみ作者さんお任せでいいかと
273創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 02:19:17 ID:vxNhHwhi
相互リンクの申し込みが来たのでリンク貼っておきました
ついでにカウンターも

チャットの件に関しては、まなみさんが良いのを知っているということなので
まなみさんにお任せします、ということで宜しい?
274 ◆gPASwT/foo :2009/03/17(火) 19:15:47 ID:bfisrrIk
創作発表板に投下されたSSをゲーム化するスレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1237278391/

というところからやってまいりました
こちらのスレは普段から楽しく拝見させていただいてます

簡潔に用件を述べるとするならば、
こちらの前スレに投下された◆GQ6LnF3kwg氏の、
「ゆるりんまじょ☆ゆゆるちゃん」のゲーム化の許可をいただきたい!

もしゲーム化してもいいのであれば、
一度スレの方までご足労いただけると感謝のキワミです

ダメだったら無視してくださって結構です
という訳でスレ汚しすいませんでしたー
275 ◆GQ6LnF3kwg :2009/03/17(火) 20:01:57 ID:IfD7agGL
>>274
鼻血を拭いつつ、スレの方へご連絡いたしました。
276創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 21:22:14 ID:HiAOdxS8
ゆゆるさん乙
夢だと思ってたゲーム化がまさか叶うとは……

こうやって一つひとつ夢が叶っていって
このスレがほんわか賑わっていくといいなぁ
277創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 21:26:51 ID:D0OeyiGT
じゃあ次はこのスレの作品のアニメ化だ!
278まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/17(火) 22:30:08 ID:RjyhUaIS
ゆゆるちゃんゲーム化か、いいなぁ

チャットルーム作ってきました。
まとめサイトのトップページにURL載せました。念のためここにも
http://uzeee.orz.hm/bargiko/bargiko.php?type=freetalk&id=1237296125964

しばらく自分待機してます。
279創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 22:01:45 ID:flrl03PX
遅ればせながらチャット乙です
それにしてもこのスレって案外いろんな人が見てんのね
他のスレ行ったら話題出てたし
その割に伸びがすごいって感じはしないなぁ
280創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 23:50:25 ID:O0Au2w9x
人稲でおなじみの創発ですからw
パート化してるスレは充分大手だと思います><
281創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 23:51:08 ID:SQ2X3Cpq
ROM専が多いんじゃない?
どうせなら、なんか書きこんだ方がいいだろうけど
282創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 23:54:10 ID:drP6HxCn
そうだねぇー
割とROMってしまうことが多いかもです
283創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 23:55:00 ID:SQ2X3Cpq
間違えてageてもうた…
でも、ここもゆゆるや、まなみが投下されるまでは
サミーぐらいで、過疎ってたんだよなぁ
最近投下されたジュジュとかトゥインクルオーガストは連載なのかな?
それならいいんだけど…。あと、クロスミラージュはどうなったんだろ?
284創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 23:57:07 ID:w0Xbdwja
チャットって人いんのかな
何となく入り辛い
285創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 00:09:14 ID:0aZtz7ni
最近だと馬たんチャットぐらいしか入ったことありません
こわくて10秒で退出しました><
286創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 00:20:51 ID:Dg6emAjh
チャットするなら、ここで入室宣言してもらえるとありがたいい
287創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 00:50:05 ID:opk192WG
このチャットって入室せずに中は見れないの?
中がどうなってるのかわからなくて入りにくい
288創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 00:55:54 ID:0aZtz7ni
名無しで入れた
誰もいないけどなにこれ、おもすれえwwwwww
289創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 01:02:19 ID:0aZtz7ni
想像以上に高機能なチャットでおどろいた
ネトゲのノリですな
290創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 01:03:15 ID:71OWsAw6
なんかすごかったね
名無しでも入れるのはいいが、すごすぎて何を話していいやらw
291創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 01:03:48 ID:0aZtz7ni
>>287
ttp://uzeee.orz.hm/bargiko/read.php?type=freetalk
この部屋一覧から中にいる人数は見えそうだな
292創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 01:04:33 ID:0aZtz7ni
あんなチャットみたことないw
293創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 01:10:57 ID:PW/3wbs0
定期チャットタイム決めればいいんじゃないかな
土曜11時とか
294創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 01:11:50 ID:0aZtz7ni
いいかもね
板的リアルタイムイベントのひとつになりそうだw
295創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 14:26:14 ID:vg8XrrFD
チャットの話題ばかりでスレが流れるのは微妙だし
wikiの相互リンク先のヒーロー学園スレは掲示板があるので、相互リンクの仲だし共有掲示板に出来ないか聞いてみた。
296スーパー魔女テニアちゃん:2009/03/19(木) 15:54:33 ID:QY3+AnFg
ある日、洋子ちゃんが公園で遊んでいると突然悪の帝国
ワルスギールの悪魔が襲ってきた。
悲鳴を上げながら逃げる洋子ちゃんだったが、転んで追いつかれそうに。
その時、地面を掘って正義の魔女っ子テニアちゃんが現れた!
「テニアキャノン!」
テニアちゃんの持っていた杖が変形し、巨大な大砲になるとそこから光線が飛び
一撃で悪魔を粉砕したぞ。こうして洋子ちゃんは救われた!ありがとう、テニアちゃん
と、思ったら新たな悪魔が現れた!戦いに終わりはないのだ!

むしゃくしゃして書いてみた。ごめん
297サミー書いてる人:2009/03/19(木) 17:54:55 ID:85CEO4OE
最終話、投下させて頂きたいと思います。
最終話 『魔法があってよかった!』




少し郊外に出た所にある海の星コンサートホール。
美紗緒の父、天野茂樹の演奏会はそこで行われた。

上演開始のブザーが鳴り、壇上に現れる茂樹。
彼は自分のことを熱心に見つめる二人の少女の姿を見つけると、
そっと少女達に微笑んだ後、席について演奏を始めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


演奏が終わった後、茂樹は二人の少女を楽屋に招いていた。

「美紗緒、見に来てくれてありがとう」
「ううん、パパの演奏は絶対見たかったもの!」

屈託の無い笑みで、父親の手を握る美紗緒。

「そちらのお友達のキミも、美紗緒と一緒に来てくれてありがとう」
「いいえー、こんな素晴らしい演奏をタダで聞かせてもらったんだから申し訳ないぐらいですよー!」

砂沙美は、たははっと照れくさそうに笑う。

「でもね、美紗緒ちゃんのピアノも凄いんですよ!
 もちろんパパさんにはまだ敵わないけど、それでもどんどん上手くなっていってるんです!」
「え……美紗緒、ピアノを続けていたのかい?」

茂樹は少々驚いたような顔をする。
妻と離婚して以来、美紗緒は一度も父の前でピアノを弾くことが無かった。
何度もやり取りしている手紙でも、ピアノを練習している素振りは全く見せなかったのだ。

美紗緒は言う。

「私……やっぱりピアニストになりたい……。
 私はピアニストの……天野茂樹の娘だから……」
「……………………」

そんな美紗緒の言葉に対し、茂樹は少し難しい顔をしていた。

「美紗緒……おまえは自分のやりたいことをやりなさい。
 無理をして、僕の後を追ってピアニストの道を歩むことは無い」
「違う……違うのっ! 私……真剣にピアニストになりたいの!!」

真剣な目で父を見つめる美紗緒。

「私のピアノで、誰かを元気にしてあげたい……それが、私の夢なの……!」

美紗緒はあくまで目を逸らさず、キッパリとそう言った。
そんな美紗緒を、茂樹も見つめ返す。
「それならば、何よりも人の和を大切にしなさい……。
 ピアノは一人でも弾くことが出来るから忘れてしまいがちだが、
 例えソロの演奏会だって、決して一人で出来るわけではないんだ。
 沢山の裏方さん……そして、見に来てくれるお客さんが居て、初めてピアノの演奏は成り立つんだ」

茂樹は、美紗緒の目を覗き込むようにじっと見る。

「……僕の言いたいこと、分かるね?」
「……うん……」

茂樹は、美紗緒が合唱部に行かなくなったことを言っているのだろう。
後ろめたさから、ズキンと美紗緒の心が痛んだ。
でも、もう痛みから逃げるわけには行かない。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


合唱部に戻ろうと決意した美紗緒は、放課後に合唱部の前まで来ていた。
だが、やはりいきなりは顔を出し辛い……。

「美紗緒ちゃん!」

その時、誰かが背後から声をかけてきた。
それはツインテールの青髪の少女だった。

「砂沙美ちゃん……」
「美紗緒ちゃん、あたしも合唱部入るよ!」
「えっ、どうして……」
「えへへ、天地兄ちゃんが田舎に帰っちゃってヒマだし……ダメかな?」
「ううん……ありがとう、砂沙美ちゃん」

二人はそっと手を重ね、ドアノブを回した。




「天野さぁん、やっと合唱部に戻ってきてくれたのねぇ!」

栗色の髪をしたショートカットの少女は、目をキラキラさせて万感の喜びを表現した。
学級委員にして合唱部の部員でもある伊達映美である。

「発表会まで一月を切ったっていうのにぃ、ピアノ弾ける人が居なくて本当に困って困ってぇ……」
「う、うん……今までゴメンなさい、伊達さん……」
「いいの、いいのよぉ!」

映美は美紗緒の手を取ってぶんぶん振る。
そうやってしばらく美紗緒が振り回された後、映美はようやく隣の人物に視線を移した。

「……で、萌田さん。どうしてあなたまでついて来てるの?」

一瞬前とは対照的に、心底どうでも良さそうな顔で砂沙美を見る映美。

「えへへ……あたしも合唱部に入部しようかと……」
「萌田さん、歌なんて歌えるのぉ?」
「舐めないでよね! これでも演歌は十八番なんだからっ!」
砂沙美は幼い頃から河合ちひろという演歌歌手の大ファンで、
ヒマさえあれば彼女の歌声を真似て喉を鍛えていたものだ。

もっとも、河合ちひろはアイドル崩れの歌手だったため、
歌唱力に関してはイマイチ良い評価をされていない人物だったりするのだが。

「とにかく、早速だけど天野さんはピアノをお願いね。曲は例のアレよぉ」
「うん……任せて!」

力強くうなずくと、ピアノの前に向かう美紗緒。

「あたし達で一回合わせるから、萌田さんはとりあえず見学してなさぁい」
「うん、分かった」

映美は他の合唱部員と共に壇上に並ぶと、美紗緒に合図を送る。
美紗緒は小さくうなずくと、ピアノを奏で始める。

「あれ……この曲……」

砂沙美は、この曲に聞き覚えがあった。

美紗緒が昔からいつも弾いていた曲。
砂沙美が何度も勇気付けられた曲だった。

これならきっと砂沙美も歌える。
美紗緒ちゃんの曲はいつも砂沙美の頭の中に……。
ううん、心の奥に残っているから。





砂沙美も参加し、本格的に合唱の練習を始めるする面々。
心配された砂沙美の歌も、それなりに上手く溶け込んでいるようだ。

一方、映美は気が散ってしょうがなかった。
とある一節に差し掛かると美紗緒がぴくっと反応し、チラリと映美の方を見るのだ。
最初は無視していた映美も、何度も繰り返されると流石に気になってくる。

ピアノの演奏が停止すると同時に、映美は美紗緒に詰め寄った。

「ちょっと天野さぁん!」
「ま、待ってよ委員長!」

砂沙美が慌てて二人の間に割って入る。

「邪魔しないで萌田さん! 天野さんだって言いたいことがあるならはっきり言えばいいじゃないのぉ!」
「み、美紗緒ちゃん……」

映美の剣幕を受け止めつつも、困ったような顔で美紗緒を見る砂沙美。

「あ、あのね……」

美紗緒は、おずおずと口を開いた。
「……あそこの音、違うと思うの……」
「えっ?」
「もっと高く、伸ばすように発声するべきなんじゃないかって……」
「…………天野さ―――」
「そうそう、俺もそこおかしいと思ってた」

何かを言おうとした映美に、部員の一人が割り込む。
それを皮切りに、他の部員達もワァッと言いたいことを言い始める。

「やっぱりそうだよな、気になってるの俺だけかと思ってた」
「映美ちゃんは声が大きいのはいいけど、ところどころ音がおかしいんだもの」
「でも委員長はおっかないからなかなか文句言えなくてさぁ」
「物怖じせずにちゃんと指摘した天野さん、偉いわ!」
「え、えっと……その……」

思わぬところで部員達に褒められ、美紗緒はおどおどしてしまう。

「むぐぐ……あたしだって自分が下手なことぐらい分かってるわよ!
 だから天野さんに付き合ってもらって必死に練習してたんじゃない!」

映美は、美紗緒にキッと向き直る。

「天野さぁん!」
「は、はい……」

映美の強い語気に気圧され、思わず縮こまる美紗緒。

「今みたいにおかしい所あったら、ガンガン指摘しなさぁい!
 あたし、もっともっと上手くなって、天野さんを見返してやるんだからっ!」

言うだけ言うと、とっとと列に戻ろうとする映美。
美紗緒はそんな映美を、少し躊躇った後に呼び止める。

「……あ、あのっ!」

振り向いた映美を含め、みんなの視線が美紗緒に注がれる。

「そ、その……。あ、ありがとう……。
 ずっと部活を離れてた私なんかの言葉を聞いてくれて……」
「なぁに言ってるの! そんなの当たり前でしょ!」
「えっ……」
「天野さぁん、あなたは合唱部の大事な一員なのよ!
 ちょっと来なかったぐらいでどうってことないわよ!」
「そうそう!」
「みんな天野が帰ってくるの待ってたんだぜ!」
「おかえり美紗緒ちゃん!」

口々に温かい言葉をかけてくれる合唱部員の面々。

砂沙美は、そっと美紗緒に耳打ちする。

「……良かったね、美紗緒ちゃん。
 みんな、美紗緒ちゃんのこと大事な友達だと思ってくれてたみたい」
「……うん」
「これからは、みんなでいっぱい笑えるね!」
「……うんっ!」
美紗緒は気付く。

自分はずっと臆病だった。
あんたなんか友達じゃないと言われるのが怖くて、いつも他人の領域に踏み込めなかった。

でも、それは違った。
自分の心の蓋を開ければ、誰とでも友達になれる。
友達か否かを分けるのは他人じゃない、自分の心なんだ……!


何事も無かったかのように練習は再開される。
でも、少しだけピアノの音色が暖かくなったように感じたのは、きっと自分だけじゃない……。
砂沙美は、そう思った。





「お疲れ様でーす」

部活の時間が終わる。
挨拶をして帰っていく部員達。

静まり返った部室には、砂沙美、美紗緒、映美の三人だけが残った。

「天野さぁん、今日ばかりは居残り練習に付き合ってもらうわよ!
 しばらく来なかった分の遅れを取り戻さなきゃならないんだからっ!」
「うん、分かってる」

映美に呼びかけに、美紗緒は笑顔でうなずく。
そんな美紗緒に砂沙美は耳打ちする。

「美紗緒ちゃん、本当にいいの?
 いくら合唱部に戻ったからって、委員長のワガママに付き合うことないと思うけど」
「萌田さぁん、聞こえてるわよぉ!」
「ううん、大丈夫……。だって、私と伊達さんは、友達だから……」
「……!」
「友達だから……私に出来ることなら、喜んで力になりたいの」

微笑む美紗緒。

「……突然、恥ずかしいこと言わないでぇ。さっ、練習を始めるわよぉ」

誤魔化す映美だが、まんざらでも無さそうだった。

「うん!」
「あたしも練習付き合うよ、美紗緒ちゃん!」

ピアノの音色と、二人の少女の歌声が重なる。
三人の居残り練習は、日が落ちるまで続いた。





「天野さんが言い出したのよぉ。パパに作ってもらった曲があるから、合唱に使わせて欲しいってぇ」
「へぇ、そうなんだー」

居残り練習も終わり、砂沙美と美紗緒と映美の三人は、適当におしゃべりをしながら家路を歩いていた。
「でも知らなかったな、あの曲に歌詞があったなんて」
「うん……ごめんね、内緒にしてて」
「ううん、別に責めるつもりで言ったんじゃないよ」
「本当は、砂沙美ちゃんには合唱が完成してから聞いて欲しかったの。
 でも……砂沙美ちゃんと一緒に合唱できるなら、こっちの方が良かったかも」

そう言って顔をほころばせる美紗緒。

「でへへへ……砂沙美も美紗緒ちゃんと合唱するの楽しいよ!」

同じく、顔をとろけさせる砂沙美。

「あーあー、本当に仲が良いわねあなた達は」

そんな二人を、呆れたような目で見る映美。

「とにかく、明日からもビシバシ練習するわよぉ!
 特に萌田さん、新入部員のあなたが一番の不安要素なんですからねっ!」
「ちぇっ、委員長には言われたくないなぁー」
「な、なんですってぇ!? 萌田さん、あなた新入部員の癖に―――」
「伊達さん、砂沙美ちゃんは私が責任持って練習させるから」

砂沙美の何気ない一言で頭に血が上り始めた映美を、美紗緒が制す。

「砂沙美ちゃん、土日は私の家に来て、一緒に練習しよーね♪」
「ええーっ、土日もーっ!?」
「うん!」
「……ちょ……ちょっと勘弁して欲しいかなー……なんて……」
「砂沙美ちゃん……」

美紗緒の全身から、にわかに健気ウェーブが放出されはじめた。

「砂沙美ちゃん……友達だから、一緒に強くなるって言ってくれたアレ……嘘だったの……?」
「う、うぐっ!!」

美紗緒に涙ぐんだ瞳で訴えかけられ、砂沙美の良心に多大なダメージが加算される。

「わ、わかったよ美紗緒ちゃん!! 土日もちゃんと練習するから、泣かないで!!」

(えへっ♪)

慌てる砂沙美を尻目に、笑顔で小さく舌を出す美紗緒。
こうしたズルさを体得することも、彼女が強くなるためには必要なことなのかもしれない。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


休日。
美紗緒の家に集まり、一心不乱に練習に没頭する砂沙美と美紗緒。

砂沙美は歌を。
美紗緒はピアノを。
お互いに負けないように、高めていく。

そんな二人の様子を、魎皇鬼が温かい瞳で見守っている。



演奏に集中していると、美紗緒の脳裏に様々な記憶が蘇ってくる。

この曲を作ってくれたパパのこと……。
この曲が大好きだと言ってくれる砂沙美のこと……。
この曲で歌うことを選んでくれた合唱部のこと……。
いつも傍らで演奏の感想を聞かせてくれた留魅耶のこと……。

(……ルーくん……。ちゃんとお母さんに会えたかな……)

その時、美紗緒は、はっと気付く。

(お母さん……ママ……。……そうだ……そうだった……!)

突然、美紗緒は演奏を中断してしまう。

「どうしたの、美紗緒ちゃん?」
「……………………」

美紗緒は楽譜をたたむと、そっと胸に抱え込んだ。

「この曲……本当は、パパがママの為に作った曲なの……」
「えっ、そうなの?」
「でもね、作曲の途中で離婚しちゃったから、それからパパは私のためにこの曲を完成させてくれたの……」
「そうなんだ……」
「……今思うと……まるで、この曲をママから奪っちゃったみたいで…………」

うつむく美紗緒。

「だから……あれ以来、パパの前でピアノを弾いた事が無かったんだと思う……」
「……………………」

美紗緒は黙り込んでしまう。
しばしの間、二人の間に沈黙が流れる。

そんな美紗緒の背中を、砂沙美がつんつん突く。
思わず美紗緒が振り返ると……砂沙美は何かを思いついたかのように笑っていた。

「ねぇ、美紗緒ちゃん! これから美紗緒ちゃんのママに会いに行こうよ!」
「えっ!?」
「それで完成した曲、それにいっぱい練習したピアノ、ママさんに聞いてもらっちゃおう!」
「……うんっ、私……ママにこの曲を聞いてもらいたい!」

砂沙美の提案に、パァッと顔を輝かせる美紗緒。

「でも……ママが住んでる所なんて分からないわ」
「う〜ん、電話帳で調べてみるとか?」
「あっ、おじいちゃんに電話してみれば分かるかも!」
「探偵事務所に依頼を……」
「霊界通信で……」

思いつく限りの方法で美紗緒のママを探してみる二人だが、
いくら調べても、手がかりすら見つけることは出来なかった。

「探偵事務所ってお金かかるんだなぁ……」
「おじいちゃんも、今は連絡がなくて分からないって……」
「うーん、何かいい方法ないかなぁ……」

途方にくれる砂沙美と美紗緒。
そんな二人を見かねてか、魎皇鬼がずいと身を乗り出してきた。
「……方法はある」
「ホント、リョーちゃん!?」

魎皇鬼はうなずくと、一回転して魔法のバトンを取り出す。

「そう、サミーの魔法だよ! 心と心を繋ぐサミーの魔法なら、きっとママさんの所へも……!」
「あ、そっか、その手があった!」

バトンを受け取ると、早速サミーに変身する砂沙美。

「えっ、何々、一体どうするの?」
「美紗緒ちゃんの演奏を『想い』という形に変えて、コケティッシュボンバーに乗せて打ち出すんだよ。
 美紗緒ちゃんがママさんを想う気持ちを魔法に込めれば、きっとママさんの所へ届くはず!」
「そんなこと、できるのかな?」
「砂沙美と美紗緒ちゃんが力をあわせれば、絶対できるよ!」
「……分かった、やってみる!」

相槌を打って、ピアノに向かう美紗緒。

「行くよ、美紗緒ちゃん!」

サミーは、プリティ空間を発動する。
広がった魔法の空間は、二人の少女の心を一つに繋ぐ。

『ママ……私……』

今になって、美紗緒の心に不安が現れる。
ママが……この曲を聞くことを望むだろうか?

『美紗緒ちゃん、恐れないで! 美紗緒ちゃんの中を全部、ママさんのことでいっぱいにして!』
『…………うん、そうよね…………逃げて後から悔やむのは、もう嫌だものっ!』

美紗緒は意を決して、演奏を始める。
指先から紡ぎ出されるメロディ、その一つ一つにママへの想いを籠める。

『ママ……ママ……。私、この曲をママに届けたい!
 だって……パパが作った曲だから……。
 だって……ルーくんが褒めてくれた曲だから……。
 だって……合唱部のみんなと一緒に歌う曲だから……。
 だって……砂沙美ちゃんが大好きな曲だから……。
 だって……私、この曲と一緒に強くなってきたから……。
 だって…………大好きなママに、聞いて欲しいと想うからっ!!』
『……す、すごいパワー……これなら……!!』

サミーのバトンに、とても強いエネルギーが伝わる。
プリティ空間を通して伝わった、ママを想う美紗緒の心。
その心にそっと自分が美紗緒を想う気持ちを加え、サミーは叫ぶ。

「プリティー・コケティッシュ・ボンバー!!!」

サミーは部屋の窓から、力強く、そして優しいハートの魔法を空に向けて打ち放った。
『ピアノの音色』を載せたその魔法は、空を越えて、遠く遠く飛んでいった。

「ママに届くかな……?」
「届くよ、絶対!」

自分達の魔法を信じる二人の表情は、一切の曇りが無かった。


一週間後、美紗緒の元に絵葉書が届く。
そこには美紗緒のピアノを褒める言葉と、満面の笑みをたたえた母の姿が写っていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「美紗緒ちゃん、良かったね。お母さんに気持ちを伝えられて」

美紗緒ちゃんに絵葉書を見せてもらった帰り道、
砂沙美と魎皇鬼は一緒に歩きながら色々と話をしていた。

「砂沙美ちゃんのおかげだよ。
 美紗緒ちゃんがママを思う気持ちもモチロンだけど、
 砂沙美ちゃんが美紗緒ちゃんを思う気持ちが強かったから、あの魔法は成功したんだ」
「えへへ」

褒められて悪い気はしない。
思わずニヤニヤしてしまう砂沙美を、微笑ましく見つめる魎皇鬼。


―――ふと、魎皇鬼の表情に影が落ちる。


「ん……どうしたの、リョーちゃん?」
「ボク……砂沙美ちゃんが最初は魔法を使えなかった理由、今なら分かる気がするんだ」
「えっ? どういうこと?」
「ボクは魔法が人を幸せにするんだとずっと思ってた。
 でも、それは間違いだったって、砂沙美ちゃんを見ていて気付いたんだ」

魎皇鬼は砂沙美をじっと見つめる。
砂沙美の目に映る魎皇鬼の瞳は、いつになく真剣で……どこか寂しげだった。

「魔法はまやかしの術だ。魔法で人の夢をかなえても、真夜中の十二時がくればその夢は消えてしまう……」
「……………………」
「でも、砂沙美ちゃんが使う魔法は違う。
 砂沙美ちゃんが誰かにかけた魔法は消えたりはしない。
 砂沙美ちゃんの笑顔が人の心に灯した魔法は、その人の中でずっと生き続ける。
 そう……砂沙美ちゃんは、最初から人を幸せにできる魔法を持っていたんだ」

魎皇鬼は悲しそうに首を振る。

「魔法は人を幸せにすることはできない……。
 本当に人を幸せにできるのは、その人を想った心からの笑顔だけ……。
 だから、砂沙美ちゃんにはボクの魔法なんて必要なかった……それなのに、ボクがそれを押し付けてしまった。
 ボクは…………いやジュライ人は…………こっちの世界に、来るべきじゃなかったのかもしれない」

魎皇鬼は唇をかみ締める。
そんな魎皇鬼に、砂沙美は首をぶんぶん振って答える。

「ううん、それは違うよ! リョーちゃんの魔法が無かったら、
 砂沙美はきっと、美紗緒ちゃんの本当の気持ちが分からないままだったと思う。
 ううん、美紗緒ちゃんだけじゃない。魔法のおかげで、色んな人の心と触れ合うことができたの」
「…………でも…………」
「聞いて、リョーちゃん」

目を逸らす魎皇鬼を、今度は砂沙美がじっと見つめる。
「確かに、魔法は人を幸せにすることはできないかもしれない。
 でもね、人と人の心を繋ぐことはできる。みんなを笑顔にするお手伝いができる。
 砂沙美はそんな魔法が好き。だから、プリティサミーになれて本当に良かったって思ってる」
「……………………」

魎皇鬼は、そっと視線を元に戻す。
砂沙美は優しく笑っていた。
その笑顔によって、魎皇鬼の心には何度目かも分からない魔法が灯る。

「……ありがとう、砂沙美ちゃん……。
 ボクは、魔法の国の住人に生まれたこと……。
 そして……プリティサミーのパートナーとなれたことを、心から誇りに思ってる」

そう言って、魎皇鬼は誇らしげに微笑んだ。
そしてどちらからともなく、その言葉は自然に二人の口からこぼれていた。


「『魔法があって良かった!」』


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「さて、今日も元気に行ってきまーす!」
「いってらっしゃい!」

今日も元気に学校に出発する砂沙美と、それを見送る魎皇鬼。


ピコン、ピコン、ピコン!


「むっ!?」

警報音と共に、魎皇鬼の額のタトゥーが点滅していた。

「……そっか、もうそんな時期か……」

その現象の意味を理解すると、魎皇鬼は一人、物思いに沈んだ。






「砂沙美ちゃん……」
「あれ、リョーちゃんどうしたの?」

放課後、魎皇鬼が校門の前で待っていた。
彼がこうして砂沙美を待っているのは、しばらく無かったことだ。

「砂沙美ちゃん、人助けを……正義の魔法少女の使命を果たしに行こう!」
「え、どうしたの急に?」
「いいから!」
「……うん、分かったよ!」

今日の魎皇鬼は、いやに真剣に見えた。
砂沙美はそれに気付いたが、あえて詮索はせず、魎皇鬼に付き合うことにした。
砂沙美は後ろの美紗緒に振り返る。

「ごめん美紗緒ちゃん、発表会を控えてるのに悪いけど、今日は合唱部は休むね。みんなにもよろしく言っておいて」
「うん、分かった」
「ごめんね、ありがとう!」

大きく手を振りながら駆け出す砂沙美と魎皇鬼を、美紗緒はそっと手を振って見送った。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ウチの猫が帰ってこねーんだ!」
ガラガラガシャーン



「ネズミに結婚指輪取られちゃったの!」
シュタシュタシュタッ



「おい、肉屋のロクさんと豆腐屋のギンさんがケンカおっぱじめたぞ!」
ドタゴタバッタン



「はぁっ、はぁっ・・・・・・」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


いつものお堂のテラス。
適度に人助けを終えた後、二人はそこで夕日を眺めていた。

「……なんか……あたし、全然成長してないような気が……」

抱いたバトンで肩をぽんぽん叩きながら、そうボヤく砂沙美。

「そんなことないよ。正義の魔法少女として、すごく立派になったよ」
「……………………」

今日の魎皇鬼は、さっきからずっとこんな調子だ。
妙に堅苦しく、いつものイタズラっぽいやんちゃな所はおくびにも出さない。

「……ねぇ、今日のリョーちゃん何かヘンじゃない?
 急に使命がどうとか言い出すし、ヤケに砂沙美のことを褒めてくれるし……」
「…………それは…………」

魎皇鬼は少し言いよどんだが……意を決して、口を開く。

「……今朝、合図があったんだ。帰還魔法発動の合図が」
「それって……」
「儀式の期限が来たんだ。ボクは、ジュライヘルムに帰らなくちゃならない」

魎皇鬼は、そっと夕日を見つめる。

「帰還魔法の発動は日の落ちる頃。……そう、もうすぐだ」
そっと砂沙美に振り返る魎皇鬼。

「だから……最後にもう一度だけ確認したかったんだ。
 ボクはプリティサミーという偉大な魔法少女と、共に戦ってきたんだってことを」
「……………………」

すがるような魎皇鬼の視線に対し、砂沙美の反応は薄かった。

「そっか、リョーちゃん帰っちゃうのか……寂しくなるなぁ……」

テラスに肘をかけ、そっと夕日を見つめる砂沙美。
寂しくなると言う割りに、その表情にはあまり動揺は感じられない。

ふと、砂沙美は何かを思い出したかのように口を開く。

「……そういえばリョーちゃん、善行ポイントって結局いくつになったの?」
「えっ、あっ、そういえば!」

魎皇鬼は慌てて手帳を開いて確認する。

「……10610ポイント……良かったぁ、目標達成してるよ!」
「……リョーちゃん、ひょっとしてポイントのこと忘れてたんじゃ……」
「うっ……」
「全く、しっかりしてよね」
「みゃ、みゃはは……」

笑って誤魔化す魎皇鬼。

そんな二人の後ろに、誰かがやってくる。

「やっぱり、ここに居たのね」
「美紗緒ちゃん?」

やってきたのは、ちょっと心配そうな顔をした美紗緒だった。

「練習終わってから、急いで来たの。
 魎皇鬼ちゃんの様子、なんだかおかしかったから……」
「ほら、美紗緒ちゃんにまで気付かれちゃってるじゃない!」
「うーん……」

そんなにボクって態度に出やすいかなぁ?と思いつつ、美紗緒に説明する。

「ボク……あの夕日が落ちたら、ジュライヘルムに帰るんだ」
「やっぱり……そうなんだ……」

美紗緒はきゅっと口元を結ぶと、魎皇鬼に向き直る。

「魎皇鬼ちゃん……私、あなたに言わなければならなかったことがあるの……」
「言わなければならないこと?」
「……………………」

美紗緒は…………深々と頭を下げる。

「今まで悪の魔法少女として迷惑をかけて……あなたのことを傷つけて……本当にごめんなさい……」
「……なんだ、そんなことか」
「そんなことって……」

魎皇鬼に怒声を浴びせられた時の記憶は、未だ美紗緒の中に鮮明に残っている。
しかし当の魎皇鬼は、さもどうでもいいことかのように振舞っていた。
「気にしないでよ。美紗緒ちゃんがいなかったら、きっと善行ポイントも目標達成できなかっただろうしね」

そう言っていたずらっぽく笑う魎皇鬼。

「も、もう……魎皇鬼ちゃんったら……」

ちょっと怒ったような顔をする美紗緒だが、
内心では魎皇鬼がもう気にしていなかったことに安心した。

「……あ、そうだ」

何かを思い出し、神妙な顔になる美紗緒。

「あの……一つだけお願いを聞いてもらってもいいかな?」
「なんだい?」
「ジュライヘルムに帰ったら、ルーくんに……」
「あぁ……あいつ、絶対に美紗緒ちゃんのこと心配してるだろうから、
 ボクが責任持って伝えておくよ。全く全然これっぽっちも心配御無用、ってね」
「ふふ……ありがと魎皇鬼ちゃん」

美紗緒は、そう言って微笑んだ。




そうこうしている内に、夕日は海の向こうへと落ちていた。

魎皇鬼の帰還魔法が発動しはじめる。
天から伸びた光の帯が、魎皇鬼の身体を包む。

「おわかれだ、砂沙美ちゃん……」

思わず目から涙がにじむ魎皇鬼だが、
笑って見送る砂沙美の顔を見て、グッと堪える。

「リョーちゃん、砂沙美が見てないからってダラけちゃ駄目だよ。
 しっかり規則正しい生活を送って、天地兄ちゃんみたいにカッコイイ男の人になってよね」
「カッコイイの基準が天地かよ。ボクは賛同できないね」
「ひっどーい、天地兄ちゃんに言ってやろー!」
「砂沙美ちゃんこそ、また天地の奴に泣かされたら言ってよ! ボクがぶっとばしてやるから!」
「あはは……その時はよろしくね」

軽口を叩いているが、これから魎皇鬼が大人になると、もう二度と地球にやってくることはできない。
つまり、二人が今後再開することもない。
これが今生の別れになるのだ。

そう考えてしまうと、もう駄目だった。
魎皇鬼の瞳から、一気に涙が溢れてくる。

「くぅ……に、似合わないな、こんなの……。男は泣いちゃダメだって、姉さんから教わってたのに……」
「リョーちゃん……」
「ヤだよ……ボク、砂沙美ちゃんと離れたくないよ……!」

涙と共に、抑えていた感情が溢れる。

「……リョーちゃん、このバトンを見て!」
「えっ……?」

そんな魎皇鬼の眼前に、
砂沙美は魔法のバトン―――プリティサミーのバトンを突き出してみせる。
「ジュライヘルムに帰っても、これだけは忘れないで!
 どんなに離れてたって、リョーちゃんは砂沙美の……。
 魔法少女プリティサミーの、最高のパートナーだってこと!」

そう言って、砂沙美は力強く笑った。

「う……うん……。ボクたちは……ずっとずっと、死ぬまでパートナーだっ!」

砂沙美に負けじと、涙を拭って魎皇鬼は笑った。
その次の瞬間、彼の身体は光に包まれ、天の向こうへと消えていった。



魎皇鬼が去った後……砂沙美の頬には、そっと二筋の水滴が流れた。

「砂沙美ちゃん……」
「……え、えへへ……砂沙美が泣きじゃくって、リョーちゃんが帰り辛くなっても困るもんね……」

空を見上げながら、あくまで笑顔を作ろうとする砂沙美。
しかし、その眉はプルプル震えている。

「でも、リョーちゃんはちゃんと帰ったから……ちょっとぐらい、泣いてもいいよね」
「うん……砂沙美ちゃん、とっても立派だったよ」

美紗緒は微笑みながら、砂沙美に向かって両腕を開く。

「ありがとう……美紗緒ちゃん……」

誘われるまま、砂沙美は美紗緒に抱きつき、泣き濡れた瞳を美紗緒の肩に埋める。

泣き声は、上げなかった。



「……よっし、いつまでも泣いていられないぞ!」

袖でゴシゴシと涙を拭った砂沙美は腕をまくる。

「魔法少女の使命は終わったけど、今の砂沙美には合唱部の発表会を成功させるという使命があるんだもんね!」
「うん、また明日から頑張ろうね!」

決意を新たにし、家に帰り始める二人。

その時……。


『どろぼーーーーッ…………!』


二人の居るテラスに、女性の悲鳴が聞こえてきた。
ここは丘の上なので、風に流された音がここまで運ばれてくることがままあるのだ。

「泥棒!? 大変、懲らしめなきゃ!」
「待って砂沙美ちゃん、もう魔法少女でもないのに無茶は……」

そこまで言って、二人は傍と気付く。
「……あれ、そう言えばこのバトン……」

魎皇鬼が回収し忘れたのか、砂沙美の手には魔法のバトンが収まったままだった。
思わず顔を見合わせる砂沙美と美紗緒。

「……えへへっ」
「……うふふっ」

二人は同時に笑った。
故意か過失か知らないが、あるものを利用しない手はない。

「プリティミューテーション・マジカルリコール!!」

光に包まれ、砂沙美はプリティサミーに変身した。
お馴染みの決めポーズ、そしてもう何度言ったか分からない決め台詞!

「正義も恋も友情も、サミーにおまかせっ!!」

正義の魔法少女・プリティサミーの活躍は、まだまだ終わらないようだ。





        魔法少女プリティサミーCB コツコツ社会貢献!編

                       〜 完 〜


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
313エピローグ:2009/03/19(木) 18:07:58 ID:85CEO4OE
ジュライヘルムに帰ってきた魎皇鬼は人間の姿に戻り、女王の前で跪いた。

「女王様、使命を果たしてただいま戻りました」
「本当に地球の善悪バランスを戻すことに成功するなんてねー。
 やるじゃない、魎皇鬼。正直言ってアンタには絶対無理だと思ってたわ」

ジュライヘルムの女王である赤髪の女性は、褒めてるんだか貶してるんだか分からない言葉で魎皇鬼を労った。
それからしばらくは女王の自慢話みたいなものが長々と続いたが、魎皇鬼の耳には入っていなかった。





「……なぁ、魎皇鬼」

女王の間から出来てた魎皇鬼を、脇から呼び止めたのは留魅耶だった。

「あぁ、留魅耶。無事だったんだ」
「いや、全然……」

留魅耶は痛みに顔を歪めながら自分の頭をさすってみせる。
母である女王にこってり絞られた結果のタンコブは、まだ完全には直っていなかった。

「ともかく、お役目ご苦労さん」
「いやいや、はっはっは、ボクみたいな天才魔法少年にかかれば大したことないよ!」

女王の前では我慢していた分、魎皇鬼は思う存分ふんぞり返った。

「で、何か用? ボクの活躍を称えたかっただけ?」
「いや、それは……その……」

留魅耶は何とも言いにくそうだったが……それでも、そっと訊ねてくる。

「あのさ……。美紗緒、あの後どうしてた?」
「……………………」

どう答えるべきか少し迷った後……魎皇鬼は、自分が見たままの事実を述べた。

「いっぱい、笑ってたよ。砂沙美ちゃんと一緒に」
「……そっか…………良かった」

留魅耶は、そっと笑った。
本人すら気付いていなかったことだが……。
事故で地球に飛ばされて以来……彼が笑顔を見せたのは、これが初めてのことだった。
314サミー書いてた人:2009/03/19(木) 18:08:56 ID:85CEO4OE
長いこと駄文にお付き合い下さり、本当にありがとうございました。
実は『コツコツ社会貢献!編』というサブタイトルは1話の時点で存在していたのですが、
スペースの都合で削ったまま、最後の最後まで公開する機会がありませんでした。

ロクに物を書いた経験も無いのに思いつきと勢いで書き始めた物語でしたが、
振り返れば山のように苦労や挫折が積み重なっていました。

自分の力量では巨編になっては畳むことは出来ないという確信があったので、
原作からは必要最小限の部分だけを頂いて、なるべく小さく世界を作る予定だったのですが、
結果として無駄に長大となった上、必要な描写は全く足りず、
出したかったネタも使えずじまいという三重苦に陥るハメになってしまいました。
特に砂沙美の姉を結局登場させることが出来なかったのが大きな心残りです。
後は原作と違って美紗緒が自覚して悪事を働いていたという設定も、後々まで尾を引いてしまいました。

とまぁ、反省点を挙げだしたらキリが無いのですが、
今はやはり最後まで書き上げられた喜びが大きいです。
苦労も多かったですが、サミーを書いてる時はいつも幸せでした。

それにしても時間だけはそれなりにかかっただけあって、その間に色々なことがありました。
スレにお世話になり始めた当初は自分しかおらずに少し寂しかったのですが、
いつの間にやらこんなにも沢山の人に囲まれた賑やかなスレとなっておりました。

これからの予定とかは正直あまり考えてませんが、
とりあえずはまとめサイトに収録された自作に目を通して誤字等を修正した後、
今後もこのスレには何らかの形で関わっていけたら良いなぁ、と思っております。


『だって…………私は魔女っ子スレが、大好きだからっ!!!』
315創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 23:21:23 ID:0eE8mUSq
投下乙です。
そして長編お疲れ様でした。
まとめwikiを少しづつ読み始めたところです。

295さんのご提案はスレで相談しますので、少し待ってください。
316レス代行:2009/03/19(木) 23:26:36 ID:3FDoN4pM
魔法少女サミー最終回投下乙でした!
気持ちのいい締め方だった…サミーというと昔、テレビ版のを
見ていた時はギャグ物っぽい印象を受けていましたが、
こういった、感動ものになるとは…いや本当素晴らしいです。

今後は、以前仰ってたヤンデレ魔法少女はやったりします?w
317創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 23:27:32 ID:3FDoN4pM
そして俺からも乙です
長編完結させるってのはそれだけで凄いことだと思います
318創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 23:39:02 ID:5QdFCL/a
完結乙です
最終話はサントラかけながら見てましたw

言い回しとか文章表現は原作に近いのに、どこか新鮮な感じの話でしたわ
要素絞り込んでるのが上手く働いてるのかなー
魔法の使い方(特にミスティクス)は原作より上手かった気がw

そして裸魅亜が女王になっててワロタwww
319創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 23:42:28 ID:2JTefK1M
完結お疲れ様でした。
本当によくここまで長い話をまとめたなあと、GJですよ。
きっと新作を書いてくれると期待をしつつ、改めて乙でした!
320創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 17:22:01 ID:69OzEI2+
土曜11時チャット提案した者だけど、本気でやってみない?
俺も行ってみるから、みんな11時にチャット行こうぜ!
321サミー書いてた人 ◆61whokRPik :2009/03/22(日) 01:36:48 ID:jCM77/A7
業務連絡です。
今度、ヒーロー学園スレの方にクロスオーバーSSを書いて頂く事になりました。
魔女っ子スレのヒロインを扱う許可をスレに宣言して欲しいとのことなので、
便宜上、トリップをつけて事情を説明させていただくことにしました。

もっとも、自分は二次創作なので本当は許可がどうこう言える立場ではないのですけどw

トリップつけるのをサボってたので、本人証明が困難なのですが、
これは次回作を投下することで証明したいと思います。(まだ出来てませんが)

ちなみに後から本人様からレスがあると思いますが、
ゆゆるちゃん作者を初め、他作者様もこのことは了解済みです。


業務連絡終わり。
以下、返信レスです。

>>315
これから読んでくださるようで、ありがとうございます。
もう遅いかもしれませんが、まとめサイトの掲載文は読みやすいように加筆修正作業中です。
現在は7話まで修正完了済みです、残りは近い内に・・・。

>>316
原作からしてギャグの皮を被った感動モノですw
よければ原作(特にTV版)もどうぞw

ヤンデレ魔法少女は実はこっそり書いてます。
おそらく近い内に1話をお見せできるかと。

>>317
ありがとうございます。
こんな分量になるとは正直思ってませんでしたw
見積もり甘い自分を何度も呪いましたとも、ええ。

>>318
サミーのサントラはいいものです。
自分は「進行進軍ジュライヘルム」がイチ押しですが、
本編中にはその曲が妥当なシーンはほとんど無しというw

ミスティクスは俺設定が入りまくってるので、
原作と使い方を比較されてしまうとちょっと困りますw
ただ、魔法少女をミスティクスは絶対にやりたかったネタでした。

裸魅亜に気付いてくれましたかw
姉から母へと奇跡のクラスチェンジを遂げた彼女ですが、
ルーくんがホームシックになるならやっぱり姉より母かなぁ、
などと安直な発想で変換されました。反省はしていません。

>>319
新作についてですが、先ほど言ったヤンデレ魔法少女の他に、
サミーの同一世界観の番外編のネタがいくつかあったりします。
ただ、需要があまり無さそうなので、
今はヤンデレ魔法少女に注力しようと思っています。


長くなりましたが、以上です。
今後ともよろしくお願いします。
322ゆゆる書き ◆zavx8O1glQ :2009/03/22(日) 14:26:26 ID:miBZYAeP
諸般の事情でトリ変更しました、元◆GQ6LnF3kwgです。

>>321

業務連絡、確認しました。
ヒーロー学園スレの皆様、楽しみにしております。
323 ◆4fjagbuKVQ :2009/03/22(日) 23:03:22 ID:9TubWPJw
クロス作者です。
主役には既に物語がありまして
http://www27.atwiki.jp/herogakuen/pages/274.htmlを先に読んでいただけると
把握しやすいかもしれません。(汗)
それでははじます。
わたくしの名前は、サオトメ・リカと申します。
ヒーロー学園 正義部機械科にて 銀河連邦警察 刑事部 刑事課 特別捜査官候補生として勉強している者です。
肩書きの方は特に覚えていただかなくても、一年生と覚えておいていただければ結構。

さて今日はどうしてこの魔法大陸の方に来ているかと申しますと、
ドクトル・マザー先生の魔法学の授業にて、魔法についてのレポートを出す課題が出たからです。
あの先生については、ドクター・ストレンジ先生のお弟子さんという事しか、わたくしは存じ上げません。

「そこは右です。」
助手席に座っておられるのは、悪部2年生のフレイア先輩です。
フレイア先輩はエルフの王様の娘さんで、マザー先生の教え子ということもあって魔法に詳しいのと、
女子寮で隣室の縁がるのと、今回引率者をしてくれました。

「たく、俺が何で責任者なんてしなきゃいけないだよ〜。
 もっと適任者いるだろ、イルーゼとかイルーゼとか……(ブツブツ)。」

後部座席に1人座ってらっしゃるのは、正義部4年生のコウジ先輩。
今回のツアー(?)の責任者をやってくれています。
魔女の国には女性が多いと聞いて、2つ返事で引き受けてくれました。

「リカさん、そこ左折して!
 コウジ様、何度も言いますが学園でのような振る舞いをすると、
 国際問題になりかねませんので、気をつけてくださいね。」

コウジ先輩は女性が大好きなので、フレイア先輩が改めて釘を刺しました。

(あ……。)

今後方確認をしてい思い出しました。
後に黒いバイクと白いバイクが走っているのですが、
別にワタクシ達が当局にマークされているとか、この車がスピードー違反をしているというわけでありません。

黒いバイクに乗っているのが、タルタロス君、
白いバイクに乗っているのがヨハネ君です、同じく正義部 機械科 一年生の学生です。
本来ならばこの車で一緒に行く予定だったのですが、
責任者がコウジ先輩と聞いて逃げたんです。
正確に言うと、確信犯的寝坊とでも言うのでしょうか。
「出発時間を遅らせようか?」という提案もしたのですが、
「先輩を待たせるなんて失礼でござる。」とか
「これから旅の安全を願って、祈りを捧げんねん。」と乗りたくありませんというアピールされました。
わたくしも空気を読んだわけであります。

お陰でわたくしは、学園からずっと運転です。
先輩に「運転してください。」なんて言えないじゃないですか。
船に乗っていつまでもクルージングできていればどんなに良かった事でしょう。

『残り500mで目的地付近です、音声ガイドを終了します。』
最初の目的地は、港からそう遠くない『海の星タウン』です。
今回のレポートはこの大陸を西から東へ横断し、
その感想をまとめる課題でして、演習の少ない一年生では進級に大きく影響するようです。

『商店街で強盗が〜』
『道端に刺し傷のある男性が倒れて〜』
『議員のB氏が汚職を〜』

どこでも聞けるニュースですが、初めての街で聞くと不安になるのはわたくしだけでしょうか。

「いやぁ、スマンかったなぁ。(棒読)」
「2人一緒になったのは、たまたまでござる。(棒読)」
駐車場に車を止め、3人に合流しました。

タルタロス君のバイクは、冥府の番犬と呼ばれる相棒のケルベロス君が変身した姿なのです。
「ちょっと早いですが食事にでもしませんか?」
フレイア先輩がレストランを指差します。
「あ……、俺パス、
 俺はそこ等辺ぶらついて、適当に女捕まえてデートでもしてるから
 用事が済んだら、知らせてくれ。」

コウジ先輩はそういうと、金髪の頭をかきあげ振り向き歩き始めます。

(なんですか、このフラグみたいなのは……。)

「コウジ様はもう4年生ですし、あれだけ念を押せばトラブルは起こさないでしょう。
 さて私達は食事にしましょう。」
フレイア先輩とわたくし達はレストランで早めの昼食を取ることにしました。

「申し訳ありません。
 当店はペットのお持込はお断りさせていただいております。」
ウェイターさんがペコペコ頭を下げます。

(ペット?)

「ペットなんていませんよ?」
思わず聞き返してしまいました。

「ワイはどっから見ても、牧師やで。
 ちょっと緑やから違うかもしれんけど……。」
「拙者は黒装束に鬼の面と怪しく見えるかもしれぬが、身分証もちゃんとある。」
フレイア先輩も人間の姿をしているから、問題ないはずですし……。

(まさか。)
おかしいです。
「わたくしは……。」

「いえ、そちらのお客様が……。」
ウエイターさんの指先に視線が集まります。
「あ!!!×4」

「なんだズラ?」
そうですよね。
学園では確かに見慣れてるから、1人ってわたくしはカウントしましたけど、
一般的には匹って数えるのが普通ですよね。
ニックネームも番犬ですし。

「ペットだズラ?これ程の屈辱を受けたのはユイどん以来だズラ。
 絶対に訴えてやるズラ!!(タルタロスが)」
「拙者でござるか。」

(ユイ先輩そんなこと言っちゃったんだ。)

でも確かに相棒って紹介されても、
ライオンの顔にヘビのたてがみをした生き物をペットと言わずして、何と表現すれば良いのでしょう。

しかもこれがピンクとかこう爽やかな色なら、まだ言い訳のしようもあるかもしれませんが、
真っ黒ですからね、不気味を通り越して怖いと思う人も居るかもしれません。

ちなみに最近知ったのですがメスだそうです。

「仕方ありません。
 他を探しましょう。」
フレイアさんはそういうと店を出ます。

「二度と来るかズラ!
 絶対地獄に落としてやるズラ!!!
 魂の色覚えた!!」

タルタロス君は冥府からやってきたのです。
あのエンマ大王の息子さん、
その相棒が地獄に落とすというのが、シャレであることを祈りましょう。

「困りましたねぇ。」
その後片っ端から入店拒否をされ困り果てたワタクシ達は、
公園のベンチで途方にくれていました。

「この街は呪ってやるズラ!」
「ちょっと黙ってるでござる。」
空腹のタルタロス君は少し不機嫌そう。
「教会もここらへんあらへんしなぁ。」
328創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 23:11:09 ID:l+jsKW16
しえん
「みなさん、本題を忘れていませんか?
 ここにはランチを食べにきたわけでも、観光に来たわけではありません。
 実習で来ているんですよ。」
流石、フレイア先輩は気丈に振舞います。
「腹が減っては戦ができぬというズラ。」
台無しの一言です。
諸悪の根源の自覚はありません。

『君達、落ち着いて。』
(え?)
そのとき、マイクの拡声器の音がしました。

『その生き物が研究所から逃げ出した兵器だということは分かっています。
 今麻酔銃を撃ち込むから待ってるんだ。』

銃を構えた機動隊員達がジリジリと近寄ってきます。

「誰と間違えているのかしらんが、拙者に刃を向けるとは……、
 生憎今機嫌が悪いでござる。」

「今度は強盗ってどうなっとんねん。」
(あの人の話聞いてますか?)
フレイア先輩は諦めたのか、ジッと目を瞑っています。

空腹で虫の居所が悪い2人は、腰にある刀に手を当てながら武装警官との間合いを計り始めました。
2人とも剣術の達人のため、凄惨な現場になる可能大です。

(そんな事になったら、また怒られてしまいます。)

2人の親指がピクと反応した瞬間、

「プリティミューテーション・マジカルリコール!!」

わたくしたちを眩い光が包み込ました。
「あれ、ここは??」
ワタクシ達はどこかの部屋にテレポートしたようです。
さっきの光はなんだったのでしょうか。

「安心してください。
 ここはあたしの家です。」
「君達はテレポーテーションしたんだよ。」

「猫が喋ったズラ!!」
「ライオンが喋ってるよ!!」

動物は環境の変化に敏感だという学説があるのは知っていますが、
こんなに順応が早くて良いのでしょうか。

「こちょこちょこちょ。」
「ちょっとくすぐったい!!」
ライオンが猫を襲っているのではありません。
ただじゃれあっているだけです。

「あたしは色々あって魔法少女サミーやってまして
 あっちのリョーちゃんは魔法の国・ジュライヘルムの住人にして、
 エリート魔法少年なんです。」
「ワタクシは、サオトメ・リカと申します。リカと呼んでください。」
警察手帳を見せながら挨拶しました。
「それでさっきは何を??」
「リョーちゃんがテレビを見てて、
 お姉さんから強い魔力を感じるから気になるっていうんで、助けてあげたの。」
「これで善行ポイントが10000点にまた近づいたよ。」

リョーちゃんと呼ばれた猫は、魔法の手帳と言う物をわたくし達に見せながら喜びます。
そこには、『善行ポイント:3565点』と書かれていました。

「フレイアさんはこ〜なることがわかってたんだよね?」
リョー君がフレイア先輩の膝の上に転がりながら尋ねます。

「ええ、まぁここまでタイミングよく来て貰えるとは考えてませんでしたが、
 魔法使いは引き合いますから、私は瞑想することで魔力を高め合図を出したのです。」

なら最初からそう言ってくださいよ〜。
てっきり諦めちゃったのかと思いましたよ。

「ところでさっきのお話では、砂沙美さんは生まれながらの魔法使いじゃないんですよね?」
「うん。」
砂沙美さんは元気よく答えます。
331創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 23:17:12 ID:l+jsKW16
しえん
332創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 23:17:53 ID:nKoQfL0q
しえん
333創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 23:21:04 ID:miBZYAeP
 
「ということはワタクシにも、いつか魔法が使えるようになったりするんですかね?」
「う〜ん、サミーちゃんの場合は僕によるところが大きいからなぁ、
 そういうのは特殊なケースで人間が魔法をだよねぇ……。」

(やっぱり無理なんでしょうか。)

ワタクシ実は格闘技とかが滅法苦手でして、
それでちょっと魔法なんぞ使えたら良いなぁと思った次第です。
淡い期待は無残にも打ち砕かれてしまいました。
やっぱり努力するしかないですよねぇ。

「ただボクの故郷、魔法の国・ジュライヘルムとか、
 この大陸のどこかに魔法をカードに封印して、
 それを普通の人が使えるようにしたシステムがあるって深夜もテレビでやってたような……
 ちょっとごめん記憶が定かじゃない。」

「でレポートはまとまりそうなの?
 何だったらもう少し魔法見せましょうか?」
いえいえ、そんな滅相も無い。
テレポートで充分です。

「また遊びに来てね。」
「砂沙美ちゃんも学園に遊びに来てください。」
砂沙美さんにチェックポイントとである海の星中学校を案内してもらい
魔法と日常についてのヒアリングを終えたワタクシ達は次のチェックポイントへと向かいます。
「変身×2」
「トランスフォーム!」
「殖装!」

説明しよう
殖装(結晶に追加)
ヒーロー学園が管轄する軌道衛星から放たれた、光線に含まれる微小の分子体と結合!
僅か0.01秒でメタルスーツへと変身を完了するのだ!(ポロリもあるよ)
今年から喧嘩等に使えないように、担当教授が調査し
不適当と判断された場合には、強制的に変身が解除されてしまう。
「プリティミューテーション・マジカルリコール!!」

「はい、チーズ。」
最後にやることといえば、記念撮影ですよね。
「サミーちゃん凄いファッションです。」

サミーちゃんの上半身は和服をイメージしてると思われる振袖なのですが、、
胸部が派手なピンク色で、非常に浮いています。加えて下は短いひらひらのスカートで、明らかに統一感が無い。
ワタクシの場合は同じ派手なピンクでも、メタリックピンクで統一されているので
そんなに浮いていないと思うのですが……。
この格好はちょっと可哀想な気がします。

「気にしてるんで言わないでください。」
「ご……ごめんない。」
「フレイアさんは大人びた格好ですね。」
「そう?褒め言葉とっておくわ。」
フレイアさんは黒い羽衣、濃い青の三角帽子をかぶって
両耳には赤いハートのイアリング、
首には髑髏のネックレスと赤い宝石のネックレス
左手には骸骨のついた杖が握っていて、両手の全ての指にカラフルな指輪をしています
帽子を深くかぶっているため、顔は暗くて見えず、瞳だけが黄色く浮き出ているように見えます。

「エルフ族は高い魔力を持っているとは知っていたけど、みんなこんななの?」
リョー君の話ではフレイアさんの装備品は、並みの魔法使いなら一個装備しただけで
ミイラになってしまう物ばかりだそうです。

(フレイアさんって凄い人だったんですね。)

「また遊びに来てくださいね。」
「学園にも遊びに来てください!」
「元気でねぇ。」

「はい、もしもし?」
用事が済んだので、ナンパに繰り出していたコウジ先輩も合流です。
どんな人と遊んでいたのか聞いても答えてくれません。
ナンパが失敗したのかというと、そういうわけでもないようです。
「あ……、アカカゲ先生? 
 えっとはい、無事最初のチェックポイントを通過しまして、
 今から次のチェックポイントに向かいます。
 もちろん、目を離さず、積極的にアドバイスしてやってますよ。」

さっきまで後部座席に踏ん反りかえっていたのに、
急に姿勢が正しく、言葉遣いが丁寧になりました。
それだけで電話の主が誰だかわかります。

「流石のコウジ様もアカカゲ先生に頭が上がらないようですね。」
「そうですね。」
「え?ちょっと待って貰えます?
 はい、どうぞ。00457-14785-〜〜〜」
コウジ先輩はカーナビにどこかの地点を入力し始めました。

「はい!わかりました、先方にはまだ知らせてないんですね。
 お疲れ様です、失礼します。」
電話を切ると、さっきよりもっとシートに深く座ります。

「チェックポイント追加だってよ。
 なんか風を操る、音を操る くの一保護しろってさ。」
「忍者でしたら先輩の専門分野ですねぇ。」
「ツルヒメ先生がさ、
 本来ならミユキ女史とユイに行かせようと思ったんだけど、
 近くにいるから言って頂戴だってさ。」
さっきの電話の主はツルヒメ先生だったんですね。
「保護したら、OJTで近くに居るユキチさんに預けて先に進めとさ。」
ユキチ先輩というのは忍者ゼミの5年生の先輩のことです。
ワタクシはまた会ったことが無いのですが、結構男前な女性と噂の先輩。

「え?リカですか?はいはい。今運転中ですよ。」
「ワタクシですか?」
再び電話が鳴ったので、コウジ先輩モテルんだなぁと思っていたら何故かワタクシ

「おい、スピーカーにしろって。」

「あの〜、サオトメですけど……。」
「やっと繋がった、何度電話したと思ってるのよ!」
(電話?)
そういえばジャケットのポケットに入れたままでした。

暑かったので車に置いたままにしていたのです。
『14:11 シャイダー先生 14:12アニー先生 14:13アニー先生……15:11アニー先生』
急いで履歴を見ると、借金の取立てかと言わんばかりの録音メッセージも残されていました。
メールも「至急連絡されたし」とかそういうメールが一杯来ています。

「変身のどこにあったのか聞きたくてさぁ、
 すぐ解除してんじゃん?」

「ええっとですねぇ、それはですね……。」

「写真を撮ってました。
 仲良くなった魔女っ子と……。」
フレイアさん言わないで下さいよ〜。
怒られるに決まってるじゃないですか。

「反省文提出ね。あと責任者どういう……。」
「今から地下高速道路に入るので、すみません切ります。ツーツー」
「強気ですねぇ。」
「付き合ってられるか。」
コウジ先輩の鬼をも恐れぬこの行動……、きっとワタクシに反動がくるんでしょうね。
「忘れてるわよ、旅は長いんだし。」
フレイアさんも他人事だと思って笑っています。

というわけで、次の目的地は桜花シティーだそうです。


次回 宇宙刑事 マリリンの事件簿〜守れ!未来の魔法剣士!!の巻〜に続く

第一話ということで、紹介ばかりになってすみませんでした。
338創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 00:15:51 ID:RvxjYgeF
乙なのー!
そういえばジャケットのポケットに入れたままでした。

暑かったので車に置いたままにしていたのです。
『14:11 シャイダー先生 14:12アニー先生 14:13アニー先生……15:11アニー先生』
急いで履歴を見ると、借金の取立てかと言わんばかりの録音メッセージも残されていました。
メールも「至急連絡されたし」とかそういうメールが一杯来ています。

「変身の必要がどこにあったのか聞きたくてさぁ、
 すぐ解除してんじゃん?」

「ええっとですねぇ、それはですね……。」

「写真を撮ってました。
 仲良くなった魔女っ子と……。」
フレイアさん言わないで下さいよ〜。
怒られるに決まってるじゃないですか。

「反省文提出ね。あと責任者どういう……。」
「今から地下高速道路に入るので、すみません切ります。ツーツー」
「強気ですねぇ。」
「付き合ってられるか。」
コウジ先輩の鬼をも恐れぬこの行動……、きっとワタクシに反動がくるんでしょうね。
「忘れてるわよ、旅は長いんだし。」
フレイアさんも他人事だと思って笑っています。

というわけで、次の目的地は桜花シティーだそうです。


次回 宇宙刑事 マリリンの事件簿〜守れ!未来の魔法剣士!!の巻〜に続く

第一話ということで、紹介ばかりになってすみませんでした。
340創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 00:22:47 ID:xNCS6zkN
なんか来てるw
他スレからの来客とはすごいなぁ、
こんな感じでどんどんスレ同士の交流も活発になるといいね
ごきげんよう

ここは魔女島の首都
あ〜この地域では、日本という国なのでしたね。
とにかく東京という街に来ています。

私はヒーロー学園悪部バイオ科二年フレイアと申します。

ある理由で今は一族を追放され、ダークエルフをしていますがその話はいずれ

「俺達はマリリンの事件簿を見に来たんだ!」とか
「エルフは引っ込んでろ」とブラウザを閉じようとしている方々
ちょっと待っていただけませんでしょうか?

これには理由があるんです。

先日のサミーさんの件でのリカさんの提出前のレポートを拝見したら、
あまりにも出来が悪く、
これでは単位の修得が危ないということで代筆することに致しました。

タルタロスさんとヨハネさんはいつのまにかレポートを送っているので

どんな内容になってるかは見ていません。

さて前書きはこのくらいにして話を進めましょう。

海の星タウンからここ桜花シティーに来るまでの道中で
いくつかのトラブルがあったのですが、

それは皆様のご想像にお任せ致します。

桜花シティーというのは、

23のエリアと16のシティーから形成される東京の中では三番目に大きいシティーです。

若干中心地から離れてはいますが、首都圏ということもあり人も車も混雑していました。

私達が宿に到着したのは夜中でした。
「ここ温泉なんですか?」
ずっと運転しっぱなしのリカさんは少し嬉しそうです。

「しかも混浴やで。」
ヨハネさん……あからさまに大声出しすぎです。
初心なリカさんがドン引きしてますよ。

「当たり前だ 誰が取ったと思ってやがる。
 俺はちょっと出掛けてくるからな。」

コウジ様が車内で一番暇なので宿の手配をされたのです。
(私は運転手のリカさんの話し相手という重要な任務があります。)

「こんな時間におでかけですか?」
「旅の恥はかき捨てっていうだろ?」
最初の海の星タウンから気になっていたのですが、
コウジ様はリカさんのいうとおり、本当に喜んで責任者になってくれたのでしょうか。
それに私達がサミーさんと会っている間は、本当にナンパにくりだしていただけなのでしょうか。
どうしてこんなに気にするかと申しますと、少し気になることがあるのです。
道中は学園から支給されたお金で生活しておりまして、
私が無くさないように毎日回収して帳簿をつけているのですが
コウジ様の分は全く減っていないのです。

あれだけ行く先々で単独行動をとっていれば、とっくに使い果たしているはずなのですが……。

それにナンパなどしなくても
学園に帰れば他の二人と違って、(失礼)
コウジ様に言い寄ってくる女性などいくらでもいます。
(私は違いますが……。)

「明日は早いですからね。」
「わかってるよ。」

「フレイアさ〜ん部屋いきましょうよ〜。」
コウジ様の背中を見つめていると、リカさんの甲高いアニメ声が聞こえます。

「はいはい、 今行きますよ。」
次の日

「じゃ行きましょうーか。」

時間はまだ朝の5時
朝に弱いリカさんでなくてもまだ眠い時間ですが、目的地まではまだだいぶん距離があります。

ふと後部座席で紙を見ているコウジ様に話しかけます。

「コウジ様、
 今回保護する方の情報はないのですか?

「ああ、宿でメールを印刷して貰ったから見せてやろう。」

鞍馬 麻衣子:身長178cm スタイル・モデル体型 誕生日8月8日 血液型AB型
       髪型・銀髪を丁髷のようにしている。
       服装:銀色のコートを着ている。
       能力:ヒーロー学園クラマの妹で817歳。風術剣士に変身する。
          兄の行方不明により、第55代鞍馬天狗の継承権が転がり込んだ。
          兄と同じで風輪斬術という殺人剣の使い手だが、奥義は習得していない。
          (奥義書を継承者の兄が持っていたため。)
          ちなみにこの剣術は完全習得するには、100年近くかかるところを5年で習得した。
          充分早いのだが兄は3年で習得したため、自分には才能がないと思い込んでいる。
          性格は心配性のため、雑魚を叩くときは大技を使う。
          何故か男言葉を使う。
     決め台詞:「お前も聞いただろう?風の声を……。」
          武器はチェーンソーの様な大刀。名前は風正(妖刀)の二刀流
       変身後:大天狗に変身し、剣術や風の忍術を扱う。
      保護理由:次元魔城には奥義書を報酬として貰えるという契約で宝石の間の用心棒としていたが、
           当然約束は反故にされ、離脱しヒーロー学園に連絡を取った
      

深田 音葉 :身長168cm スタイル・巨乳体型 誕生日5月5日 血液型A型
       髪型・赤いロングヘアーをポニーテールにしている
       服装:黄色服を好む
       能力:無音神風流という殺人剣をマスターしており、指の動きでかける催眠術が得意技
          厳しい修行のお陰で盲目になったことを機に、剣術の1つの究極の型『心眼』を開く。
          その正体は、数十キロ先で食事をしている客が使ったのは、醤油とソースの音を聞きつける程の異常聴覚である。
          また匂いにも敏感である。
          戦闘では、筋肉の軋む音から相手の攻撃姿勢を、足音と空気を切り裂く音から相手の位置を予測して攻撃する。
          また、心音を聞き取ることで相手の心理状態を読むことができる。
          字を読むことはできないが、書き順などから推理したり、キーボードの音でだいたいの文面を予測可能。
          性格は非常に温和 黄色の瞳
     決め台詞:「聞かせてやろう!!死への交響曲第〜楽章。」
           武器は虎徹のような形状 名前は無音丸(仕込み刀)
       変身後:仮面ライダー(剣)ブレイドに変身し、タルタロスやコウジのように縮地からの剣術と音や催眠術を操り戦う。
           (滅多に変身しない。) 
    保護理由:出身は不明だが魑魅魍魎を1000人以上を斬ったため、
         次元魔城にて囚われの身になっていたので、鞍馬と一緒に脱出した。
盲目の方は五感が鋭くなると聞きますが、オトハという方もその類のようですわ。

(もう一人は……。)
あのクラマ様の妹さんとはこれはこれは……。
これは一騒動ありそう。

「入学したら二人共、二年に編入でクラマの妹は悪部予定だそうだ 」

同級生なのですね。
でも私人も知りなんです。

「でもなんでクラマさんは悪部なんです?」
「詳しくは知らんが、追っ手が学園に来ないようにするみたいだぞ」

確かにある意味ウチの学園って、業界団体みたいなとこありますものね。

「ま、後のことはユキチさんに任せるから気にしなくて良い。
 そうだ。忘れてた。
 リカ、お前ユキチさん初めてだろ?
 あの人家業が伝統芸能の家だから、女みたいな顔してるけど言うなよ
 気にしてるんだから。」

「え?女性じゃないんですか?」
「下級生になぜがそんな噂が流れてるが男だ。」

確か重力を操る特異体質者なんでしたわよね。
私も二度見かけたくらいです。

『残り500m目的地付近です。音声案内を終了します。』

いや終了されても、見渡す限り建物です
「おい、ここからだろうが!!このポンコツ!」
「コウジさん叩かないで下さいよ〜。」

(困りましたねぇ。)

「リカは車止めてこいよ。
 降りてさがしてるから……。」

コウジ様は走行中の車から颯爽と飛び降ります。
私はもちろんそんなこと出来ませんし、
仮にやったとしても忍者でもない限り怪我するだけですので、
リカさんに車を止めて貰いました。

時間にしては数秒なのですが、
車は超高速運行中でしたからだいぶん離れてしまいました。

「はいもしもし。」
すぐにコウジ様からお電話です。
「そっちの住所どうなってる?」
電柱の住所を読み上げると、こちらに来ていただけるそうです。

言われた通り一歩も動かず、
ぼんやりと電気屋にならんでいるテレビを見ています。
たまたま流れているニュースでは
剣士と名乗る戦士が怪人達と戦っていました。
ただ人前で変身してしまったため、報道陣が自宅まできているようです。
学園で学んだ者ならありえないことです。
仮に万が一あったとしても、特殊諜報員と広報課および卒業生が情報操作するんでしょうけど。

「この三人がこの世界のヒーローというわけか。
 なかなか良い腕をしている。」
「あのー、コウジ様?
 画面の右隅で戦っている黒騎士と白騎士に見覚えがあるんですけど……。」
「あのバカ共!」
「もしもし?」
噂をすればなんとやらリカさんから電話です。
「リカです、
 あのタロス君達が怪人に襲われている人を助けたんですけど、
 何故か戦う羽目になっちゃって……。」
「リカさんはどこにいるの?」
「わたくしですか?今路地に隠れてます!!」
いや、止めましょうよ。
『火炎大破斬!!』
「ああ……危ない危ない……。
 早く来てくださいよ。」
リカさんの声は半泣きでしてよ。
消防車の向かう方向に急ぎますわ。

「変身 !!」

走りながらコウジ様が、珍しく仮面ライダートールに変身されました。
雷神の名にふさわしいライトゴールドを基本としたボディーはいつ見ても美しいですわ。

「トランスフォーム!」
私も及ばすながらお手伝いしますの 。

ビルの屋上から登場の挨拶ですわ。

「戦いが呼ぶ 血が呼ぶ 女が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ。
 俺の名は仮面ライダートール!!」  
「仮面ライダー?」
「聞いたこと無いですねぇ。」
「さてはあなたも次元鬼の一味ね!」
紅の剣士の一人がこちらに向かってきます。
「フレイア、水系だ。」
「コーラルレイン!!」

呪文を唱えると
空が真っ暗になり、大雨が降り始めます。
そして
コウジ様は腕を振り回して、地面に雷をおとしました。

「気をつけろ。
 濡れた体はよく電気を通す。」

「うわぁぁ。」
紅の剣士が痺れていらっしゃる間に、私達は速やかに撤収ですわ。


「今のうちだ。」
いつの間にかコウジ様は気絶させた二人を肩に背負っています。
戦っていたお二人の剣士の姿が無いのは、ヨハネさんの目でどこかに飛ばしたのでしょうか。

「マヌーサ!!」

霧を発生させ混乱に便乗してその場を離れます。

「こっちの山に逃げろ。」
私達は近くの山へと逃げ込みましたの。
暫くして

「怪人に襲われていた民間人を助けたでござる。
 そしたらあの三人が突然、拙者とケルベロスに斬り掛かってきたのでござる。」
「怪しい奴とか言ってたで、ワイはそれで助けに入ったんや。
 もちろん変身は見られてへんで。」

ヨハネさんはともかく、
タルタロスさんの変身後(タナトス)はとてもヒーローには見えませんものね。
しかもテーマが死の権化ってどうなんでしょうか。

「もうすんだことは良い。
 問題は……。」

そう、集合場所に近づけなくなってしまったことですわ。
見られたのは変身後だけですが
またあの剣士に出くわさないとも限りませんもの。

「ケルベロス、空からちょっと付近の様子を見てくれ。」

黄色のマントから手を出して上を指差します。
ケルベロスさんは翼を広げ、空高く舞い上がりしばらくして戻ってきました。

「近くに大きな屋敷があるズラ。」
「仕方ない、今夜はそこに泊めて貰え。
 男は野宿だ。」
「女だけなら向こうも気を許すかもしれない。
 念のためケルベロスも付いていけ。」
「がってん承知だズラ、
 ぬいぐるみのマネをすれば良いと、リョーどのに教わったんだズラ。
 さぁ胸元で抱きしめるズラ。」
リカさんじゃなくて、私の方に来たのは何故なんでしょうか。
初心過ぎてセクハラで訴えられるのを恐れているからかしらね。

「ついでにこの世界の情報を少し収集してきてくれ。」
コウジ様はそういと地面に転がり、マントにくるまりました。

私はリカさんと山を下り、ケルベロスさんが見つけたという屋敷へと向かいましたの。

「夜分遅くにすみません。
 ワタクシ こういう者でして……。」
リカさんが家の主と交渉しています

こういうときリカさんは有利です。
銀河(中略)特別捜査官見習いでも
向こうは早口言葉のように聞こえて、本当の捜査官が来たと勘違いさせてしまうのです

(断ったら逆になんか隠してるみたいでしょ?)
「フレイア先輩!
 リカさんは親指をぐっとやっています。」

「遠いところが大変だったわねぇ。
 その手に持ってるのはヌイグルミ?
 真っ黒じゃない、洗濯機貸してあげましょうか?」
「け……、結構です。」
思わず声が上擦ってしまいました。
怪しまれないように気をつけなければ……。

応対してくれた方は女子高生くらいにしては、
しゃべり方が若くないのですが、そういう世界なんでしょうか。
(何というか大人びているというか。)

「お客さん?」
妹さんでしょうか。
案内され屋敷の今に通されました。
「おじゃまします。」
「ちょっと道に迷ってしまいまして……。」
妹さんらしき方は普通の話し方です。

お姉さんはユミさん 妹さんはマナミさんとおっしゃるそうです。

雨風をしのぐどころか
食事までご馳走になってしまいました。

(コウジさんたち大丈夫でしょうか。)

『本日夕方
 商店街にて炎術・水術・雷術剣士と謎の騎士が……。』

テレビから聞こえてきたニュースに思わず
私とリカさんの手が、止まったのをユミさんは見逃しませんでしたの。
「どうかしましたか?」
「い……いえ、剣士って何かなと思って。」
慌てて私が誤魔化しお茶を濁します。

「剣士達は代々人の手に負えない魑魅魍魎を倒してきたわ。」
『騎士達は仮面ライダーと名乗っており、現在も行方を追って捜索中とのことです。』
「変わったお名前の方達ですね。こちらはご存じ?」
リカさんと目で合図します。
「全然知りませんわ。」
「わたくしもそんな野蛮な方しりませんね。」
危ない危ない。
「どうやらこの地域は、
 三人の剣士に守られているようです。」

コウジ様にメールを送りながら、
縁側に座って星をながめていると、ユミさんが話しかけてきました。

「今朝から気配が全くない人が何人か近くにて、気味が悪いんだけどお友達?」
「いいえ 何か?」
コウジ様達のことですわね。
確か忍者ゼミでは周りに溶け込む方法を教えていると聞いた事がありますもの。

「朝から気持ち悪くて注意してたら、
 夕方頃一瞬動揺したのか気配がはっきりして、またすぐ消えたものだから……。」

「もう余所へ行ったんじゃないでしょうか?」

「近くにいることはわかるの。
 貴女達も気をつけなさい。」

気配を悟れるのが本当だとしたらかなりの実力者ですよね……。
翌日

泊めて貰ったお礼にマナミさんを高校に送ってから
買い物にいくユミさんに教えて貰いながら、合流地点へと向かいます。

コウジ様達ともそこで待ち合わせです。

「悪いわね。」
「こちらこそ、お世話になりました。」
「しっかり頑張りなさい。」
「住所によるとあの店よ、
 それじゃあ元気でね、」

駐車場でユミさんと分かれようとした

そのとき、
空から人がフロントガラスに落ちてきました。
周囲の建物の窓は割れ、何か高速で動いていることは間違いありません。

(コウジ様達でしょうか?)

違うような気がします。

「フレイアさん!」

フロントガラスに落ちた女性は、昨日コウジ様に見せて貰った人物マイコさんその人です。
リカさんとあわててかけよります。

(良かった。)
気を失ってるだけのようです。

ということは、
一緒に居るというオトハさんも近くにいるのでしょうか。

「大丈夫?」
謎のグレイのライダーが突然横にあらわれます。
私達ヒーロー学園の者です
「オイラは仮面ライダー剣(ブレイド)です。
 3人しかいないのん。」
「1人は民間人でして……。」
「民間人?さっきの筋肉の軋みはそうは聞こえなかったが……。」
ユミさんを見つけながら首を傾げています。

「今はまぁいいや、敵はたくさんですよ。」
「後から助っ人がきます。」
「一緒に戦いましょう。」
「トランスフォーム!」

私は変身し目を閉じ魔力を高めます。
実は変身しなくても、魔法は使えるのですが威力や魔力が普段は1/1000なんですわ。
「イオナズン!」
(あ! いけない!)
避けられて、ビルが壊れてしまいました

「もっと小技はないのか。
 的は素早く動くぞ。」

ブレイドさん少し怒ってますわね。

「ヒャド ヒャド ヒャド」
掌から氷を飛ばしてぶつけます。
殺傷能力はあまり高くない魔法ですの。

「キリがないですわ。」
「無念、ここまでか。」

私達は囲まれてしまいました

「10-9-8-7-6」

『とうとう追いつめたぞ。』
『裏切り者を処刑せよ。』

「5-4-3」
相手は戦闘員含めて50人以上

一方こちらは
手負いのブレイドさんと私、マリリンは落ちてきた方を守るので精一杯

あと巻き込まれた形のユミさん
ユミさんは何かブツブツと数字を数えています。

「2-1」
『お前さっきから何をブツブツ言ってる。
 念仏でも唱えているのか。』
「0!」
「戦いが呼ぶ!血が呼ぶ!悪を倒せ!と俺を呼ぶ
 貴様等 俺の(知り合いの)女に好きかってしてくれたな!」

私がいつコウジ様の女になったのでしょうか。
あんな高い所に上る時間あるならさっさと来てください

『何だ貴様は一人で何ができる?』
「一人ではござらん。」
「その命神に返すんやな。」

路地からタルタロスさんとヨハネさんが出てきました。

「何者だ!」
「俺 は  通りすがりの仮面ライダーだ!!!」
「拙者は 通りすがりの仮面ライダーでござる!!!」
「ワイは 通りすがりの仮面ライダーや!!!」

「変身!!!×3」

『仮面ライダー?』

「気にせぬことだ、
 これから死に逝く者には関係の無い話でござる。
 ああ、すまぬ
 貴様らはもう死んでいるでござった。」
タナトスがカチャと刀を鞘にしまうと
ユミさんに刀を振り下ろし掛けていた戦闘員や取り囲んでいた戦闘員達が地面に倒れます。

「もう安心です。」
この三人がいれば、下手な軍隊より強いのですものね。
ブレイドさんは変身を解くと、ニコリと笑いました。

「手伝ってあげようかと思ったけど、やっぱり必要なかったようね。
 それじゃ。」

ユミさんは最後まで不思議な人で、
脇の路地を抜けてどこかへ去っていきましたわ。
ライダーの事は口止めしておいた方が良かったのでしょうか。
「さぁ私達も今のうちに。」
背後の路地に入ると、そこには般若の面をした方が立っています。

「よくやった。
 あとはワタシが引き受ける。」
「隠れてるなら、助けてくれても良いじゃないか!」
リカさんの抗議は当然かもしれません。
あと少し遅ければ、民間人のユミさんに危険が及んでいたかもしれません。

「おまえ等と一緒にいた女がただ者じゃなかったからな
 一応様子を見ていたんだ。」
さっきオトハさんも、そんなこと仰ってましたわよね。

「何者なんでしょ?
 知らんし興味がない
 ダークヒーロでないことは確かだろうな。
 俺は一足先にこの2人を連れてこの世界が脱出する。
 それじゃ 実習に戻れ。」

リカさんからマイコさんを肩で受け取ったユキチさんは、
胸ポケットから紙を取り出しました。

「次のオーガストシティーまでのチェックポイントだ。
 だいぶん道をそれたから、いくつか追加されたらしい。
 健闘を祈る、それでは!」

その後 コウジ様と合流した私達は次の目的地へと向かうのでした

謎のナレーション

暗闇の中、水晶で戦いを見つめていた男達……。

「この世界も破壊されたか。」
「うろたえるな、これは計画通りだ。」

次回に続く
パラレルクロスなんでカタカナにしてみました。(滝汗)
2人がどうなったかとか何故捕まっていたかとかは
ヒーロー学園スレでいずれ…
355代理投下:2009/03/23(月) 23:15:17 ID:YrECqOPj
炎術剣士まなみ第十四話、投下します。


133 :まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :sage :2009/03/23(月) 22:37:48 ID:Y2E7hpNI0(9)
炎術剣士まなみ 第十四話『夏だ!海だ!全員集合!』

 太陽の日差しがきつい。風鈴が涼しげになるが、そんなの何の効果もない。
まなみは自宅で裕奈、伊織と一緒にぐったりしていた。
「あつ〜い!まなみちゃん、扇風機は?エアコンは?」
「エアコンなんて高価なもん、家にあるわけないでしょ…。扇風機はさっき、
あんたが壊したんでしょうが。叩けば直るとか言って」
三人のすぐ近くに、首から見事に90度の角度で曲がってる扇風機の姿が。

「裕奈ちゃん…怪力発揮するのは戦闘だけにした方がいいよ…?」
「む〜、昔の人が叩けば直るって言ってたから…」
汗が止めなくダバダバ流れる。唐突にまなみが起き上がる。
「よぉし、二人とも!海に行こう!」


まなみの自宅の前にワゴン車が止まる。中から眼鏡を掛けた女性の姿が。
「真紀さん、久し振り!」
裕奈が明るく声を掛ける。以前、裕奈を取材した川村真紀は小さく溜息をつく。
「裕奈さん…海へ行くなら電車とか使っていきなさい。タクシーじゃないんだから」
「でも、来てくれたってことは乗せてくれるってことでしょ?いいじゃん、
海に連れてってくれる代わりにまなみちゃんたちの取材もOKになったってことで。
まなみちゃん、伊織ちゃん、早く早くぅ〜!」

まなみたちが荷物をトランクに突っ込むと、早々に出発した。
三人は車の中でグダっとしている。車は快適に走り、一気に海へと到着した。
「いいねぇ、青い空に海!日頃の疲れを忘れさせてくれるよう」
「まなみちゃん、はやく行こうよ!」
早くも砂浜に向かって駆け出した裕奈が手を振る。

「わかったわかった。真紀さんはどうします?」
「私は別に泳ぎに来たわけじゃないからね…みんなが遊んでる間は写真でも撮ってるわ」
「じゃあ、また夕方に」
真紀がと別れると、まなみは二人の元へ駆けて行った。
356代理投下:2009/03/23(月) 23:15:34 ID:YrECqOPj
三人は特に何の変哲もない、海の家に入り、更衣室で水着に着替え始める。
その最中、裕奈は二人をジッと見つめている。
「ん?どうしたの、裕奈」
「というか、どこ見てるの裕奈ちゃん…」
「ずるいよ…二人とも」

呟くと、ガバっと顔を上げ、二人の胸を狙って手を突き出す。
それをギリギリの位置で止める、まなみと伊織。
「こんなにバインバインとかさー!神様は不公平だぁー!」
「「うるさいっ!」」
どこから取り出したのか二人同時にハリセンで裕奈の頭をペシっと叩く。

「いったぁ〜…ひどいよ、二人ともぉ…」
「あんたがいきなりセクハラしようとするからでしょうが!」
「それに、胸以外なら裕奈ちゃんも…」
裕奈が着ていたのはやはりというかスク水。
ご丁寧に胸のとこに『ゆうな』と名前が書いてある。
「これしかなかったから」
「「嘘でしょ」」

泳ぎにいく前に、三人は海の家で食事を取ることに。
まなみは焼きそば、伊織はラーメン、そして裕奈は、あれこれ頼みまくっていた。
「本当、裕奈ちゃんっていっぱい食べるね」
「ご飯を食べてる時が、最高の幸せだよぉ。あ、来たみたい」
大量の飯が乗っているトレーを運びながら、女性アルバイターがまなみたちの席へやってくる。

「お待たせしました…ってまなみ!?」
突然、声を上げた女を見ると、まなみも驚いた。
「沙羅!?ここでバイトしてたの?」
それはまなみの学友の沙羅だった。沙羅はウルウルと涙目で話し出す。
「もんっのすごく暇だったからね。だってまなみってば、水無瀬さんや、姫倉さんとの
付き合いが多いし。私のこと忘れられてるんじゃないかと思ってたよ」

「あはは…そんなことないって」
まなみは微妙に目を合わせないようにしている。ジト目で見つめる沙羅。
「本当にぃ〜?まあいいわ。それじゃ、またねまなみ!」
料理が運び終わると沙羅は厨房へと引っこんでいった。
「ごめん、沙羅。もう少し会う回数減っていたら忘れてたかも…」
357代理投下:2009/03/23(月) 23:15:51 ID:YrECqOPj
飯も食べ終わり、伊織がパラソルを借りに行ってる間、一足早く、まなみと
裕奈は泳ぎ始める。裕奈が水中から顔を出すと、笑顔で喋り出す。
「あははは!冷たくて気持ちいいね、まなみちゃん!」
「そうね、やっぱり家の中でゴロゴロはよくないわ」
そういって、二人は波に揺られている。

伊織がパラソルを砂浜に刺し、拠点を作ると彼女もまなみたちの元へと駆け出す。
「まなみさ〜ん!裕奈ちゃ〜ん!」
「伊織ちゃん、今からあそこの島まで競争しよう!」
「いいよ。私、裕奈ちゃんには負けないよ?」
「水の中だったら、あたしの縄張りって奴だもん!さあ勝負!」
二人の目から火花がバチバチと飛んでるかと思うと、次の瞬間には同時に
泳ぎ始める。

その様子を笑って見つめているまなみ。だが、次の瞬間、驚きの表情に変わる。
それはまなみだけではなく、裕奈と伊織も。
突然、海面が盛り上がり、他の海水浴客もろとも、砂浜に打ち上げたからだ。
それが収まると、そこには潜水艦のような物が浮いていた。
「いったいなんなの!?」

まなみが声を上げると、潜水艦のハッチが開き、中から人が現れた。
「まなみさん!海へ行くなら自分に言っていただければよかったのに!」
「た、武田さん!?」
防衛軍の武田が太陽をバックに海パン一丁で仁王立ちしている。
白い歯がキラッと光りだす。

「ふふふ…まなみさんの行くとこなら自分は察知できるのです!」
「へぇ…つまりそれってストーカーじゃないですか。防衛軍隊員ともあろう方が…」
「あ、いや、そういうわけでは…」
武田は弁解しようとするが、次の瞬間、武田に向かって浮き輪がポンポン投げられてきた。

「おいっ!そんなとこに潜水艦出されちゃ泳げねぇだろ!」
「急に出てくるから子供が泣き出しちゃったじゃないの!どうしてくれるの!」
「み、みなさん!落ち着いてくださ…ぶほぉ!!」
人々からの怒りの声が上がり、浮き輪攻撃もさらに拍車が掛かり、武田を
ボコボコにしていくのであった。
358代理投下:2009/03/23(月) 23:16:02 ID:YrECqOPj
まなみたちのいる地点から少し離れた場所に、三人の女の姿がある。
一人の女がサングラスを外して、喋り出す。
「お姉さまぁ、地球を征服したら、この海も我々のものですわね」
「その通りだ。地球の海は、人間どもにはもったいないほどのものだ」
「お姉さまたち、こんな時まで地球征服の話は止めましょうよ。
せっかくのバカンスなんだから」

そこにいたのは次元鬼三姉妹だった。しかし、いつもと格好は変わり、全員水着姿だ。
「ふっ、そうだなスクリタ。では飯でも食べに行くか」
三人は揃って、近くの海の家へ行こうとする。その時、ベルディスが別の方向を見る。
「どうした?ベルディス」
「あっちの方がなにやら騒がしいですわ。お姉さま、スクリタ、いってみません?」

三人がそちらに到着すると、全員驚愕の表情に。まなみたちの姿が見えたからだ。
彼女らの周りでは怒号が飛び交い、潜水艦がライフセーバーに案内されて
別のとこへ移動しようとしていた。
「し、新堂まなみ!?」
「裕奈に伊織まで…!」

声に気づいたまなみたちも驚きの表情に。
「あぁ〜!次元鬼三姉妹!こんな時まで、悪いことでもしようって魂胆!?」
「まなみさん、みなさんバカンスを満喫してるみたいです」
伊織の言った通り、三人の姿はまさにそれであり、思わず裕奈は吹き出しそうになる。
「次元鬼でも、海に来て泳いだりするんだ。…ふふん、勝った」
裕奈はスクリタのことをまじまじと見て、ぼそりと呟いた。

それが聞こえたのか、スクリタは顔を真っ赤にして怒りだす。
「ちょ、なにが勝った、よ!あんたの方がおこちゃま体型でしょ!
それに…なんなのよ、そのまさに狙ってる水着はさ!」
「これは由緒正しい女の子の装備ですぅ!スクリタみたいに無理してない分
逆に受けがいいんですぅ!」
359代理投下:2009/03/23(月) 23:16:15 ID:YrECqOPj
主に小さい二人のいがみ合いが続く中、ウルムが口を開く。
「まぁ待て。我らも今日は休日。無闇に剣士どもと戦うことはあるまい。
それでもというなら…ここは海。ビーチバレーで勝負しようではないか」
ウルムからの意外な発言に全員、目を丸くする。
「ビーチバレー、ね。いいわ、平和的だし。裕奈、伊織、やるよ!」

早々にビーチバレーのセットが組み立てられ、試合が始まった。
「バレーでも、私たちが勝ってみせるわ!必殺サーブ!!」
気合いが込められたサーブが飛び、ウルムの足下に直撃しそうになる。
「甘いわ!はぁ!」
うまく飛びこむ形でトスを上げ、ベルディスに回す。

「くらいなさいですわ!」
ベルディスがボレーを叩き込むが、伊織が瞬時に現れる。
「左手はそえるだけ…」
ボールを裕奈に回し、ものすごい勢いでジャンプする。
「とどめの一撃ぃぃぃ!!」

裕奈の強力な一撃が、スクリタに向かって飛ぶ。それを受け止めようとするが、
体に当たり、弾き飛ばされるように倒れる。
「へへん!スクリタなんかには負けないんだから!」
「いったぁ〜!裕奈めぇ…もう一回よ!」
その後も、一進一退の攻防が続くが、辛くもまなみたちが勝利した。

「普段の戦いでも、ビーチバレーでも私達の勝利…もう諦めたら?」
「悔しいですわ…!こうなれば!スクリタ!」
「はい、お姉さま!」
スクリタがベルディスに向かってヒトデを投げる。それをベルディスが光線を発し
姿形を変えていく。人間とほぼ変わらぬ大きさになったそれはまなみたちに飛びかかる。

「次元鬼ヒトデメン!やっちゃいなさい!」
「火炎閃光キィィック!!」
だが、飛びかかってきたそれを、まなみは変身することなく技を使い、一撃で撃破した。
「そんな即席の次元鬼なんか、一々変身することないわ。まだやる気?」
「うぅ…こいつらめ、どんどん強くなりやがって…」
360代理投下:2009/03/23(月) 23:16:28 ID:YrECqOPj
ちょっと口が悪くなったベルディスを尻目にウルムが口を開く。
「ベルディス、さっきも言っただろう。我々は今日は休みなんだと」
「そんなこと言って、お姉さまが一番遊びたいのでは?」
「そ、そんなことはないぞ!では、剣士ども、また会う時は敵だからな」
むんずと二人を掴み、彼女らを引きずるように去っていくウルム。

再び海で泳ぎ出したまなみたち。しばらくするとまなみが喋り出す。
「なんだか、今日の一面だけ見るとそんなに悪い奴らには見えないわね」
「それでもあたし、スクリタだけはきらーい!絶対、あいつの方が小さいもん」
ふと、空を見上げる伊織。時はすっかり夕方であった。
「いろいろありましたけど、楽しかったですね」
伊織が笑顔でみんなに言う。

「そうね。そろそろ真紀さんも迎えにくるだろうから、着替えに行きましょう」
「もっと遊びたかったなぁ…」
ボソッと呟く裕奈に対してまなみは穏やかな表情で言う。
「また来ればいいじゃない。みんな一緒でさ」
裕奈が笑顔になる。真紀の車がやってきたのを見ると、三人は
海の家に向かって歩き出した。

三人がいなくなったあと、一人の男が砂浜に現れた。
「まなみさーん!自分と海辺で語らいませんかぁ!」
それはようやく潜水艦を停留所に留めてきた武田の姿であった。
しかし、誰もいない空間に叫びが木霊するだけ。途中から涙目になりながらも
叫びが止むことはないのであった。


次回予告「裕奈だよ!今日はとっても楽しかった!またみんなで行こうね!
さてさて、今度のお話は街中の大人がみんな子どもになっちゃった!
その上、気づいたらまなみちゃんの姿もないし!どこ行っちゃったの?
次回『子どもだらけの大都会!』あれ、この子は誰だろう?」
361代理投下:2009/03/23(月) 23:16:53 ID:YrECqOPj
139 :まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :sage :2009/03/23(月) 22:43:15 ID:Y2E7hpNI0(9)
投下終了です。全員集合といいつつ、今までのゲストは全員集まってない…
今回は規制されているので代行スレの方に依頼しての投下です。
362創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 23:47:02 ID:hx2zwGGw
うぉぉ!久々のまなみだ!
変身しないでも技使えるんだwまなみつえーw
363創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 14:40:46 ID:XWiAeuHY
裕奈の水着がお約束すぎるw
364創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 17:26:24 ID:htA2lDVi
クロスがうまくできてるね。
連日投下恐るべし
365創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 07:49:10 ID:VUlm7kTf
>>354
ここまで一気に読みました
個性的なヒーロー学園キャラににやけつつ
今後も魔女スレキャラとの絡みがすごい楽しみです
てか、こんなとこで風術剣士とはw
ぜひぜひ続きを!

>>361
この憎めない敵とのどたばたはやっぱり良いですなー
ビーチバレーってのはなかなかw
しかし結奈とスクリタのキャラが突出して立っていると
感じるのは俺だけなのだろうか。
いやいや、きっとみんなもそうだよね!
リョウコの優雅なる日記帳

こんにちは

私はファンガイアの次期女王よ

ヒーロー学園
悪部バイオ科4年の学生。
一応副自治会長なんてやったりしてるんだけど、
ほとんど未来の旦那様に任せっきりなの。

むしろ吹奏楽部主将としての方が熱心かしらね。

今日は美味しいご飯を食べるという名目で、
後輩のエリカとプルート、ポルックス

それに正義部機械科トシゾウ、カストルと旅行に来てるのよ

「次のパーキングでは、ソフトクリームが美味しいらしいわよ。」

「また止まるんですか?」

トシゾウは少し不満そう。

「だめ?」

「魔女島に到着してはや一週間
 まだ三つしかチェックポイント通過してないんですよ。
 リカに負けちゃうじゃないですか!」

「えーあの子どんくさいからトラブルに巻き込まれてるわよ。」

ナレーション
『大正解』

「そうかもしれませんがね、
 俺は圧倒的にブッチぎって今後300年は 追いつけないと思わせたいですよ。」

トシゾウの鼻息は荒い。
彼の両親それに親戚はみな特別捜査員なので、当然長男である彼にかかる期待は大きい。
トシゾウにしてみたら、リカなんか野良犬同然でしょうね。

「そのためなら 、
 ファンガイアが空腹で餓死して、ミイラになるくらい大きな問題ではないと?」

私は大袈裟に泣きながら嗚咽を繰り返す。
涙を流すなんて手慣れたものよ。
「いーけないんだ、いーけないんだ。
 キングに言ってや〜ろ♪」
エリカが私の髪をなでながら指をさす。

「キ…ング…それはまずいな。」

キングは私の未来の旦那様で、悪部に居ながら学生の鏡として
学生はもとより教授陣からも絶大なる信頼があるの。
私も鼻が高いわ。
(何もしてないけど。)

「しかしですねぇ
 これは俺の魔法実習なわけでして……。」

「アタシ達は本来なら引率する正義部のジュリさんとタカノリが過去に行ってるから、
 どうしても協力してくれってギャバン教授が言うから仕方なく付き合ってあげてるんだよ?
 気に入らないんだったら、ホテルでセクハラされたとか、
 酔って身体検査と称して襲われたって報告してあげようか?」

「それは困ります。」

エリカ頑張れもう一息よ!

「カストルお前もなんとかいえよ。」
「僕はフォックスの強化とデータ収集が出来ればそれでいいから……。」
※フォックスというのは、トシゾウのメタルスーツの名前

「ジュリにはカストルは、とてもよくしてくれたと言っておくわ。」
「ありがとうございます。」

「わかりました。
 こうしましょう。
 幸いなことに、次のチェックポイントはもうすぐそこですし先に進みます。
 次のチェックポイントで先輩達は、自由行動ということでどうでしょう?」

「1対3なのにトシゾウってワガママなんだね。」
「特別捜査官だからってそんなに威張り散らしてると先が思いやられるわ。
 報告しておきましょう。」
私はカリカリとノートにメモを取る。
(性格に少し問題があると思われる……と)

「カストル、俺が悪いのか?」
トシゾウが助手席に座っているカストルに尋ねる。
なかなか頑固な性格なのね。
「ジュリさん頑張ってるかなぁ。」
慌てたようにカストルが顔を背け窓の外を見て呟いた。
なんやかんやで、ホテルに到着

本来ならご飯だけで学園支給分の予算を使い切るような超一流ホテルなんだけど
このホテルはカストルの経営するオリュンポスグループの関連会社
そのため宿泊費用や美容院代は全てタダ、
(あくまで私の立場からするとよ。)

『一度親切にされたら、骨の髄までしゃぶり尽くせ!!』
がポリシーの私とエリカは、
もちろん最初からそれが目当てで責任者と引率者を引き受けたわけ。
まぁ、消去法で行くと私達くらいしか居ないのも事実よね。

で将来のことも考えて、貸しをつくったままにしておきたくないという
特別捜査官候補生のトシゾウが、
(これは試験じゃないって言ったんだけどね。)
ホテルのレストランで夕飯をご馳走してくれることになったの。

「何で先輩達にまで奢らないといけないですかね?」
席に座って開口一番、トシゾウが不満そうに呟く。
「なんでこんなに機嫌悪いのじゃ?」
ハーレーで移動していたプルートは事情がまだ飲み込めていないみたい。
「さぁ?」
隣でバイクを走らせていたポルックスに聞いてもわかるはずないでしょう。

「社長 ご注文はどうしましょうか?」
カストルが社長って呼ばれてるわ
考えてみるとジュリって社長夫人なのよね

ポワーンとジュリがドレスを着た姿を思い浮かべてみたの。

(似合わないわ。)

普段ジーンズだから想像ができないし……。
結婚式が楽しみだわ。

「クイーンさんとエリカさん何か食べたければ、好きなものを注文してください。」

カストルが私とエリカにメニューを渡してくれたわ。。
「こういうところは流石よねぇ〜。」
チラリとトシゾウを見ながらチクリと嫌みを言う。

「じゃあアタシこのページとこのページのお酒全部!!」
「かしこまりました。」
水の精霊の影響で
どれだけ呑んでも酔わない酒豪のエリカは、お酒を注文したみたいね。
「フフフ」
また悪酔いしたフリして両サイドを困らせるのかしら……。
「エリカもまだまだね。
 ページ全部なんて、成金みたいではしたないわよ。
 先輩として、私が注文の仕方を教えてあげる。」
(どうせ払わないんだしね)

「このホテルで一番高い料理から順番に持ってきて頂戴。」
私がメニューも見ずに注文する。

「かしこまりました。」

「優雅じゃのぉ〜。」
「気品を感じるわ。」
「何が来るか楽しみですね。」
「いや払うの俺だし」

一人頭を抱えているトシゾウを尻目にお酒が運ばれてきたわ。

「長旅お疲れ〜乾杯。」

「ジュースみたいなお酒……。」
エリカが不満そうに首を傾げる。
「ねぇ店員さん
 さっきのお酒の注文なんだけど、このホテルで一番高いお酒から順番にに変更してくれない?」

「かしこまりました。」
「かしこまるなよ!」

「忘れないうちに実践しないと。」
エリカがあっけらかんと笑ってる。

「ところでカストルとポルックスは、お酒どのくらい飲めるの?」

「ぼくは……。」
「ハモった!!」
「兄さんからいいなよ。」
ポルックスが舌打ちしてカストルに順番を譲る。
この兄弟 ヘレネから聞いていた通り あまり仲良くないみたいね

(ま、どうでもいいけど )

そして
久しぶりのまともな食事を楽しんだわ

エリカは食堂の総本店でアルバイトしているだけあって、調理法に興味を持ったのか、
コックさんを何度か呼んで説明を聞いていたわ。

「お会計は98………195円となります。」
トシゾウの顔が真っ青になる。
「計算間違えでは?」
「二度計算しておりますので、ございません。」

「トシゾウお金足りないの?」
「かっこ悪いのぉ。」
「姉さんから聞いてて、こうなることがわかってたから
 僕が払うって言ったんだよ。」

眉毛を人差し指で掻きながらカストルがスマートに会計をする。
ちなみに合計金額は人間の生涯賃金の半分くらいらしいわ。
今日このためにカストルが希少で高級なお酒を用意するように指示していたらしいわ

「流石モテる男は違うわねぇ、口だけの誰かと違って。」
「くっそ〜。今に見てろよ。」
「良いんだよ、どうせ視察ってことにして経費で落とすから……。」
見かけによらず几帳面な性格なのね。
ジュリはここらへんに惹かれたのかしら。
会計を終え

女性陣はスイートルームへ

「クイーン、お風呂がプールみたいだよ。」
「ベッドがふわふわじゃ。」
窓の外を眺めていると

!!!!

「ちょっと外に出かけましょうか。」
「余はもう寝る。移動でクタクタじゃ。」

「アタシも行くー。」

部屋を出ると
向かいの部屋からカストルが出てきたわ。

「そっちの二人は?」
「酔っぱらってて気がつかなったみたいです。」

「現れたようね
 アスガルド軍団大魔導師部隊。」

「アポロンによると、この世界のヒーローが戦闘を開始したみたいです。」

アポロン
カストルと契約している光の精霊で、
予知を司る精霊である。
カストルがウォッチメンを継ぐ者となったのもこのせい。

まぁ美味しい話には必ず裏があるわけで
よい子のみんなは気をつけましょうね。

出来るだけこの世界に影響を与えないように3…4年生だけでって話だけど、
火の精霊の契約者のプルートや
大地の精霊の契約者のポルックスにまで、内緒にする必要は無いと思うわ。
(大人の事情っていうのかしらね。)

「創造せよ!」
右で観葉植物の葉をちぎって念じる。
私には無機物に生命を与える力があるの。
(便利でしょう。)
紋章の力で葉は、大きな三枚の円盤になった。
「乗って!」
「出発前に学園でお話した通り、
 僕はウォッチメンとして、
 この世界のヒーローに事情を説明したあとは、ただの傍観者ですので……。
 戦闘要員としては期待しないで下さいね。」
ジュリと正反対ね。
こういうのが夫婦の秘訣なのかしら。

「あそこ!」
エリカが指さすその先では風の刃がとびかっているわ。
(敵は3人みたいね。)

「じゃカストル行ってきて頂戴。」
「この中を僕がですか?」
「駄目?」
「無理です!!!」
「ジュリにはカストルは身を挺して私とエリカを守りながら、
 頭脳プレーで卑劣な敵を倒したと話してあげるつもりよ。」

「ありがとうございます。」
「でもジュリって嘘が大嫌いなのよね。」
「いってきまーす。」

(単純な人で助かったわ。)
「ねぇクイーン〜。」
「なーに?」
「知らないうちにアタシ達は色々な世界をワープさせてるんだよね?」
「そうよ、本来なら別の時代や場所なのに、アズガルド帝国がくっつちゃったの。」
「放っておいたらどうなるんだっけ?」

「カストルの予言では世界が崩壊するらしいわねぇ。」

「今更言うのもあれなんだけど、
 そんなピンチなら六年生とか、もっと強い人の方が良かったんじゃない?」
「ヒーローにも得意分野、不得意分野があるのよ。
 それに消去法で行くと現代にいる学生で、悪者に見えない人ってそんなにいないでしょう?」

「ふぅーん。
 だから機械科とバイオ科の魔法演習に乗じて、アタシ達が送り込まれたのね。」

簡単な背景説明どうもありがとう。
エリカは納得したのかカブトゼクターを呼び出す。
ほんとカブトは時空を超えてどこまででもやってくるのね。
ガタックやアギトもそうなのかしら。

「変身!!!」

それじゃ私も今のうちに

「ククルカン!」

創造の精霊ククルカンを呼び出し、紋章をかませる。

ククルカン
8つの頭と8本の尾を持ち、 目はホオズキのように真っ赤な大蛇


「仮面ライダーカブト!」
「仮面ライダーサガ!」

「うわぁぁ!!」
カストルが鼻水を垂らしながら円盤で戻ってきたわ。
重量があるため、あまり円盤のスピードが出ていないみたい。

「説明したんですけど、理解してくれませんでした!」
「じゃ無理ね、帰りましょう。」
「はぁ〜い。」
私とカブト(エリカの変身後)が、
ホテルへ戻ろうと向きを変えると、風の渦が目の前に現れたの。
その中から現れたのは、
大きさこそ小動物サイズになっているけど鬼よ。
「待て。」
「あら、どちらさま?」
「俺の名はボルト!獄卒鬼ボルトだ!」

(可愛いわね、連れて帰ってペットにしようかしら?)

「獄卒?ハイドとかプルートとかタルタロスって知ってる?
 あとケルベロスとか……。」
エリカって順応早いわね。

「坊ちゃん達がどうかしたか?」
「アタシ達、ハイドの同級生なの。」

「ヒーロー学園の学生というわけか……。
 ということは、
 やはりそこの巨人や光の精霊が、言うことは本当というわけか。」

「そこまでわかってるなら、協力してくれないかしら。」
「ハヅキは人見知りなんだ。
 俺から言うよ。1対3で苦戦してたんだ。
 あと時間がもう残ってなくて……。」

知らないわ、そんなこと。
色々言われるとやる気がなくなるのよね。
(別にこの世界が崩壊しても、ファンガイアさぇ無事ならそれでいいもの)

「ねぇクイーン、こっちに4人がくるよ。」
「ちょっとちゃんと撒いてきなさいよ。」
「逃げるので精一杯ですよぉ。」
あのスピードじゃ、追いつかれるのも無理は無いか。
(しょうがないなぁ。)
「じゃあボルトはちゃんと巫女さんに説明してちょうだい。」
 私達はあの魔導師二人を倒すから
 カストルは危ないから隠れてて……。」
アタシの名前はエリカ。
ただいま彼氏募集中。
好きなタイプは〜んん、優しい人。

さて恋人募集中の広告はバッチリね。
今日のアタシはクイーンとお揃いの黒いフードを被ってるの。

「えっさ、ほいさ。」
「貴様空を飛べるのか!」
「違うよ。」
空気中の水分を凍らせて足場にしてるだけ。
だって円盤だと動きにくいんだもの。

「アンタ誰?」
「私はアスガルド軍団魔導師軍団グリモア!!
 見よ!!ビショップ様より教わった我が魔法!!」
ビショップ?どこかで聞いたような。

グリモアが両手を重ねて、巨大なエネルギー弾を地上に向けて発射したよ。
(はぁぁ?)

「貴様も木っ端みじんにしてくれる。」

地上にはクレーターのような大穴が開いてるよ。

(あんなのまともに受けたらさぁ。)

あ……もしかして、
アタシに力を見せつけてくれたってわけ?

「遊びがすぎるわよ。」

アタシはパチンと指をならす。
するとグリモアの周囲360度に数万という氷の刃が現れ、一斉に襲いかかる。

「バカななんだこの威力は!!」
突然の攻撃にたじろぎながら、グリモアが尋ねる。
「あれまだ生きてるの?」
「当たり前だ!
 ここまで引っ張っておいて、こんな雑魚扱い許されるか!!」
別に引っ張ったわけじゃないんだけどさ、

「食らえ!!」

(無駄だよ。)
氷の壁をつくり魔法を防ぐ。

「かかったな!!
 魔法が二段構えとは気がつくまい!!」

背後からギルモアが突っ込んできた。
間違えました。
ギルモア→グリモアです。
(しょうがないなぁ。
 ウィンディー、クイーンも見てないだろうし、
 ママに教えて貰ったアタシとウィンディーの本来の力使うよ?)

『そうね、わかったわ。』

「超変身! ハイパーカブト! ハイパークロックアップ!!」
「な、早い。」

魔法はアタシの残像にぶつかり消滅した。

「アタシの能力ってさぁ
 一度触れた人の能力や見たことのある技をコピーして再現できるのよ。

 例えば今みたいにヘレネに変身して、超光速移動することも出来るだけじゃないよ。

 ハイドの黒い鬼火を真似して、アンタを魂ごと燃やすことだってできる。、
 
 なんならテュポンさんみたいに全身を刃物にして、抱きついて切り刻むこともできるし、
 
 ゴーストライダー(プルートの変身後)みたいに心を焼くこともできるんだから。
 
 それだけじゃないよ、
 能力を組み合わせることもできるの、
 例えばエキドナ先輩の能力と組み合わせて、氷を爆弾にするとか、
 クイーンみたいに命を与えて、氷の鳥にしてさらにハイドの能力とか。」

噛まずに言えて良かったよ。
長いセリフは苦手なの。

「インチキだろ!!」

「水って形がないからさ。
 ごめんね?」

「そんな卑怯な手で負けるなんて!」

アタシはアンタが街を破壊しなきゃ使うつもり無かったよ。

「みんなには内緒だよ?
 アタシ戦うの好きじゃないの。」
「いかん、ビショップ様に報告しなければ!!」
あああ、もうメンドクサイなぁ。
グリモアはアタシに背を向け、逃げ出そうとしている。

「しょうがないか……。」
アタシはグッと握るとグリモアがドカンと爆発した。
『エリカ……、何をしたの?』
(ん…ん?)
グリモアの体液を引火性のある液体に変えたの。
『残酷なことするわね。』
(そうかなぁ。)
まぁ良いじゃん、終わったことだし……。
そういうとアタシは変身を解いて、
クイーンとこの世界のヒーローとの戦いに目を向ける。
クロス第三弾前編でした。
魔女っぽくなくてすみませんでした。
379創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 22:07:20 ID:ioOYwKvb
てゆーか普通にヒーロー学園スレでやれって感じなんだが
魔女っ子ほとんど関係ないし、クロスの割には
このスレのキャラとかが出てないし
380創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 22:53:49 ID:VP2BkHTV
ずいぶん痛いところを
まだ前フリだから、後編に期待しよう
381創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 01:58:56 ID:S02vN0BG
チャット来てくださった方、
今日ああだったのは本当に偶然なんです
懲りずにまた来て下さいね
382 ◆ccu2hP6PPA :2009/03/26(木) 11:44:01 ID:evGqm0VG
すれ違いを投下してしまい申し訳ありませんでした。

私の投下は無かったことにしてください。

貴重なレスを消化してしまい申し訳ありませんでした。
383創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 20:02:49 ID:LUszDvw1
>>382

ええw

でも、本スレも見てますので、続きに期待しておりますですよ!
384 ◆OiaAMhRUKU :2009/03/27(金) 16:15:57 ID:2l8xL2Ak
ジュジュ二話投下します。あとトリつけてみました
385猟騎烈掃ブラック・ジュジュ ◆OiaAMhRUKU :2009/03/27(金) 16:17:32 ID:2l8xL2Ak
第二話

1/8

朝の十時きっかり、会長室のドアをノックする。
「成海です」
「おう、入れ」
ドアを開けて入った。
会長の新藤が、デスクの向かいに座って自動小銃を磨いていた。成海は小さく歓声を上げる。
「すげえ、ゴルゴの銃じゃないっすか」
「そうだよ、アーマーライト。ジェイクから買っちゃった」
デスクの後ろのカーテンは閉め切られ、朝だというのに部屋は薄暗かった。
床の灰色のカーペットと、熱心に銃を磨く新藤の禿げあがった額に、陽に透けたカーテンの格子模様が映る。
成海はそれを見て、ぼんやりとマン・レイの写真を思い出す。
あれは裸の女だったが、こっち、おやじの禿頭に映ったのではどうにもしまらない。

会長室はA駅から徒歩十分のところにある小さな事務所の二階で、一階からは電話番の若衆が
お定まりの「はいこちらリコーリアス・コーポレーション……」を唱えているのが聞こえた。
一昔前は怒鳴るように「新藤組!」と威勢よくやっていたらしいが、
成海が「入社」したときには、すでに組の看板を降ろして健康食品・グッズ販売の会社に転身しており、
社長の石島に言わせれば、往年の気風を偲ばせるものは、新藤会長の相変わらずの趣味と
昼間から事務所にたむろしている柄の悪い新入社員連中くらいなものだそうだ。
その新入社員も、今は研修などといってほとんどが余所へ働きに行き、
平日の午前中には電話番の若衆と広告書きの成海、会長の新藤しか出張っておらず、事務所は静かなものだった。

「ローソン寄ってきたの」
新藤は、成海が手に提げてきたコンビニの袋を見た。
「ありますよ、いつもの」
成海は格好ばかりでろくにものも置いていない会長のデスクに、
買い込んできたコーヒーの缶を袋から取り出して並べた。
「コーヒーメーカー、そろそろ買おうかね」
「レンジも買い換えなきゃ。あれ使うと、何分やっても弁当が真ん中冷たいままなんすよ」
「お前今日暇なんだよな」
そう言って、新藤はおもむろに銃を下ろして膝に置き、
「ビデオ観るか」
新藤は銃を用意してあったケースに仕舞うと、リモコンを取って窓際にあるテレビの電源を入れた。
「裏モノっすか? ロリータものは勘弁っすよ」
テレビのワイドショーを横目に、成海は部屋にあったキャスター付の椅子を引き寄せて座った。
「そういやこないだ入った矢野ってバイトいるじゃないすか、
昨日ここであいつと話してたら、あいつ児童ポルノの『じどう』って、
ずっと自動販売機の『自動』だと思ってたらしいんすよ。なんだよ自動ポルノってって聞いたら
インターネットの動画がどうとか、ようつべってサイトがどうとか言い出して
お前もしかしてそれYouTubeのことじゃねえのって……」
「お前映画詳しいんだってな」
成海の話は遮られた。はっきりそうだと答える自信がなく、茶髪の頭をかきながら言いよどむ。
「あ、いや、まあ、普通です」
「そうか」
新藤がビデオデッキにも電源を入れて操作を始めると、
成海は羽織っていたオリーブドラブのミリタリージャケットを脱いで、椅子の背にかけた。
マーティン・スコセッシ監督の映画『タクシードライバー』で主演のロバート・デ・ニーロが着ていたのと同じ、
アメリカ海兵隊のM65フィールドジャケット。
「とりあえず観ようや」
「呪いのビデオじゃないっすよね」
「どうかな」
386猟騎烈掃ブラック・ジュジュ ◆OiaAMhRUKU :2009/03/27(金) 16:18:57 ID:2l8xL2Ak
2/8

夕方のバイトの時間まで、蛇目(じゃのめ)京助にはやることがなかった。
カーテンを閉め切ってもなお、窓から漏れ出す朝の光に目が冴えてしまって、
いくら布団を身体に巻きつけても眠ることができない。
仕方なく起きると、低くまでぶら下がった電灯の紐を引っ張って明かりをつけた。
散らかった荷物で足の踏み場もない居間を踏み越え、台所へ行って冷蔵庫を開ける。
中身の少ない冷蔵庫をしばらく眺めていると、空腹のはずなのに何故か食事が面倒になってくる。
諦めがついたところで扉を閉じた。玄関ポストから新聞を取ってくると居間に戻り、
今度は出かける決心がつくまで布団の上に座ってそれを読み続ける。
静かな中で響く時計の針の音が耳障りだった。京助はテレビ欄を読み終えた。次の面へ。
四コマ漫画を読んで、面白くもないのに習慣で笑う。知らない有名人の訃報を読んだところで、早くも嫌気がした。
新聞を投げ、ズボンを履いた。それからジャンパーを着て、薄い財布と携帯電話だけ持って逃げるように部屋を出る。

三月末、花曇りで陽は淡いが暖かい日だった。
携帯電話で時間を見る。午前十時を回った頃。
人気のない、静かな住宅地のどこかで鳩が鳴いている。京助はあてもなく歩いた。
とにかく歩けば気分が晴れる、などとは信じていないが、歩けば時間がつぶせることは確かだ。
金がかからないし、多少は運動にもなる。仕事がない日の京助はいつも、足が震えるまで歩き続ける。
散歩がランニングになる日もある。部屋を出る気のないときでも、目的なしにひたすら身体を鍛える。
今日俺は多摩川を見に行くのだ、と彼は考える。おそらく、今歩いている方向は川に向かっているに違いない。
人通りは少なく、時折すれ違う自転車からは、
昼間からこんなところをぶらついている自分を咎めているような視線を感じた。
半分がた単なる自分の被害妄想なのだと知りながら、京助は身を隠したいという衝動に駆られる。
通りがかった民家の塀の向こうで犬が吼える。鎖を鳴らして走る犬の足音。ゴミ収集車の音楽。
彼が正体を知らない、何かの花か木の匂いがする。大きな通りまで歩くと、排ガスの匂いがそれに代わった。
向かいの通りの、建物と建物のあいだから遠くの山が覗けた。
A駅方面へ向かっていた車の列が途切れ、不意に辺りは静かになる。車はないが、わざわざ歩道橋を使ってみる。
歩道橋を上がったところから見下ろすと、一台のジープが蛇行しながらこちらへ近づいているのが見えた。
酒気帯び運転かと思えたが、ジープは歩道橋の下を通り過ぎると、しばらく走ってガードレールに激突した。
大してスピードは出ていなかったが、それでもバンパーが軽くへしゃげて、砕けたヘッドライトが飛び散った。

動かなくなった事故車の幌に女が立っている。黒い着物をつけた女の後姿だ。
京助には、彼女が激突の瞬間からジープの上に突然現れたように思えた。
ざんばらの長い金髪だった。細身で腰が高い。上背もありそうだ。
足元はよく見えないが、まるでその女には体重がないかのように、
ジープの薄い幌が沈むことなく平らに張ったままでいる。
黒い着物は振袖で、だらりの帯と、何かの花を描いたらしい絵羽模様が血の色をしていた。
右手で肩に担ぎ上げているのは刀だ。
黒漆塗りの大太刀、帯取の紐は赤く、着物と色を揃えたのだろう。
女が振り返る。目鼻立ちよりも、青紫の瞳と紅をさした唇が目に焼きつく。
女は歩道橋の上でで立ちつくしている京助を見ると、真っ赤な唇から歯を剥いた。
387猟騎烈掃ブラック・ジュジュ ◆OiaAMhRUKU :2009/03/27(金) 16:19:40 ID:2l8xL2Ak
3/8

気がつくと京助は走っていた。走って、とうとう自宅のあるアパートに着いてしまった。
部屋に帰って、震える手で煙草を吸う。事故よりも尋常でないものを見てしまった気がして、
驚いたとも恐ろしいともつかない強烈な感情に捉われていた。
目の前で起きた事故を放置してしまったことも気がかりだった。
しかし歩道には自転車に乗ったおばさんが走っていたような気もするし、
他に誰かいれば通報しておいてくれるだろうから、ひとり逃げたところで平気だと自分に言い聞かす。
動悸が収まらない。

『この辺り』
ジュジュは道端にバンを停めた。住宅地にある、一軒の古いアパートの裏が今日の現場だ。
大きなピンクパンサーのぬいぐるみを引きずって車を降りると
アパートの塀を乗り越え、屋外に放置されたままの壊れた洗濯機にたどり着いた。
洗濯槽に突っ込まれた傘やらハンガーやらを引き抜いていくと、底のほうに何か白いものが落ちている。
「これ?」
『それ』
腕を伸ばして拾い上げると、首のもげかけた小さな布製の人形だった。
フェルト一枚でできた貧相な羽と頭の輪っかで、ジュジュにはそれが天使の人形であると分かった。
握った感触から、中身が綿でないことも分かる。目は粗いがポリエチレンビーズでもない、もっと硬い感触だ。
『首を取って、中身を出して』
「なんか嫌だな」
首を留めていた糸がほつれていて、更に引っ張っていくと首が落ちた。
手のひらに人形の中身を空ける。白い粒状のものがこぼれ出す。
『これは……』
「星の砂だ」
周囲に人影のないことを確かめると、ジュジュは手のひらのものをばっと宙に撒いた。
388猟騎烈掃ブラック・ジュジュ ◆OiaAMhRUKU :2009/03/27(金) 16:20:22 ID:2l8xL2Ak
4/8

京助は窓の外の様子が変わったことに、カーテン越しに一瞬明滅した光の色で気づいた。
アルミの灰皿で煙草をもみ消して布団から立ち上がると、京助はカーテンを開けた。
曇りガラスで景色はぼやけて見えたがそれでも、窓の外から
普段あるはずのアパートの塀と隣家の壁がなくなっていることを知るには充分だった。
窓を開けると、そこは雪のように白い砂浜だった。少し先には緑の松林が、綺麗に高さを揃えて茂っている。
空だけは今朝から変わらない明るい曇り空で、砂の反射のせいか辺りは眩しいくらい光に溢れている。
浜に音もなく吹く穏やかな風に乗って、潮の香りが、やもめ暮らしのアパートの狭い部屋に流れ込んできた。
京助は玄関に走った。自分でもばかに冷静だなと思いながら靴を履き、玄関ドアを開ける。
外廊下は消えて、玄関のコンクリから一歩降りるとすぐ砂だった。
彼方まで続く砂浜と、左手には嘘のように透んだエメラルドグリーンの海が静かに打ち寄せている。
部屋から出ると、足の下の砂の感触は硬かった。京助がひざまずいて手ですくってみると
その砂は全て、海辺や水族館の土産屋で売っていそうな大粒の「星の砂」だった。
再び歩き出す。振り返るとアパートは、京助の部屋の部分だけカステラのように切り取られた
コンクリート製の小屋となって残っていて、波打ち際からほんの数メートルのところに建っている。
風景は海、砂浜、松林が三色旗のように平行して、彼方までまっすぐ並ぶばかりで、
松より高い場所には雲しかないといった風情だ。気温は、暖かくはあるが暑くはないといったほどで、
しかし空気は熱を帯びたように、陽炎かあるいは蜃気楼に似た、霞み、震える膜で京助を取り囲んでいる。

京助は夢うつつに歩いていくうち、揺らめく砂浜の遠景に、黒い人影の動くのを見つけた。
今までは潮騒ばかり響いて、カモメの鳴く声も聞こえなかった浜辺に鈴の音が鳴り渡る。
京助には鈴の音が、自分より先を歩く人影の鳴らすもののように聞こえる。
そしてその黒い人影こそ、事故車の天蓋に立っていたあの女なのだと訳もなく信じている。
だが、初めて見たときほど女の後姿は恐ろしくなかった。
それどころか、次第に輪郭のはっきりしてくる、背筋のすらりと伸びた美しい立ち姿が京助を惹きつけた。
絵羽の模様も見当がついた。赤い色の彼岸花だ。何本もの彼岸花が、着物の裾から火のように立ち昇る。

「またフキナガシだ!」
レーダーが魔法雲の筋を発見した。
だだっ広い松林の上を飛びながら、ジュジュはアンカーを追う。
ピンクパンサーのぬいぐるみはやはりベルトでくくりつけ、背中に回してある。
逃げる敵を視認すると、コンソールを叩いて火器の安全装置を解除し
戦闘準備に入ったというところで、アンジーの声が耳元でがなる。
『海のほうを見て!』
「んなヒマないよ」
『いいから見ろ!』
いつになく強い調子で言われたので、戸惑いながらも白い浜辺を横目に見た。
誰かが歩いている。
389猟騎烈掃ブラック・ジュジュ ◆OiaAMhRUKU :2009/03/27(金) 16:21:08 ID:2l8xL2Ak
5/8

真っ白な砂浜を矢印の形の影が駆け抜けた。同時にごう、と風の吹いたので、京助が驚いて見上げると、
砂浜の上の低空を、吹流しの尾をたなびかせた大きな墨色のエイが飛んでいる。
それを追って箒そっくりの飛行物体がまた、京助の頭上を飛び去っていく。

『ジュジュと同じ、迷い人よ』
「マジかよ、勘弁してくれ……」
『でもここまで接近してしまったら、アンカーの処理が先ね』
「へいへい、ようがす」
『えっ、何? 何か言った?』
ジュジュは自動化された滑らかな手つきでコンソールに触れる。
箒の、暗灰色の穂先の毛にオレンジの光が走った。と、穂先は光を集めて炎のように輝きはじめる。
稼動中のディーンドライブが放射する余剰魔力を再吸収するのではなく、
竹箒様の穂先の繊維に編み込まれた呪術文様を通して、推進剤として利用する再燃機構(アフターバーナー)だ。
ジュジュの箒は飛行速度を急激に増し、勢いのまま、海上に出たフキナガシの後ろにつける。
『無茶しないで!』
アンジーの声を無視して、フキナガシの尾が届くぎりぎりまで一気に接近すると
敵の進路を読みながらアローを撃って、素早く逃げた。
尾の束が弾け、フキナガシの高度が落ちる。
ジュジュは止めとばかりに上方に回り込み、背中を二発目のアローで叩いた。
巨体は散り散りの肉片になって海に落下し、エメラルドグリーンの水が辺り一面真っ黒な血で濁る。
フキナガシの撃墜を確認すると、ジュジュは上空に上がってアクロバット飛行を繰り出し、右の拳を掲げて吼えた。
390猟騎烈掃ブラック・ジュジュ ◆OiaAMhRUKU :2009/03/27(金) 16:21:51 ID:2l8xL2Ak
6/8

京助は着物の女を見失った。砂浜から影も形もなくなり、鈴の音も絶えた。
ひとしきり雄叫んで気が済んだジュジュは、箒で彼の元に降り立つと、顔からゴーグルとスカーフを外した。
着物の女の髪より硬くて少し黄色っぽい、金色の前髪から汗が滴り落ちる。
京助は、赤ら顔で息を吐くジュジュを前に戸惑っていた。
「ここは……どこですか?」
ずいぶん間抜けな質問だとは思いながらも、京助に他に言うべきことはなかった。
ここがどこかだって? アパートの部屋を出たら街がそっくり海と砂浜に変わっていたなんて、
どこも何もない、ここはどこでもない場所なのだと答えてもらったほうが真実味がある。ここはどこでもない。
空飛ぶ箒をまたぎ降りると女は、彼の質問に答える代わりに尋ねた。
「あなた一人?」
「もう一人、前を歩いてたはずだけど」
「どんな格好の? 知り合いじゃないの?」
ジュジュはYシャツの襟を開いて、そこから服の中を手で扇いだが暑さには効かなかった。
身体にぴったりとついたパイロットスーツのせいで潮風もあまり涼しくない。
頭にかいた汗がとめどなく滴ってきて不快だ。いっそ海に入りたいと彼女は思った。
「知り合いじゃないけど、なんか黒い着物の女の人です」
「探してくるわ。あなたはこの場所から動かないで」
ジュジュはそう言って箒に乗り直したが、
京助は心のどこかで、着物の女は見つからないだろうと、そう考えていた。
色覚細胞に痛痒を感じさせる、あまりに鮮やか過ぎる海と砂浜と同じくらい
あの女の存在には現実感が欠けていた。彼女はほとんど風景の一部だった。

案の定着物の女は発見できなかったらしく、箒は京助のところに戻ってきた。
ジュジュは、今度は箒から降りずに命令をした。
「一緒に来て」
京助は、ジュジュが黒いパンツスーツのくびれた腰もとに
オートマチックの拳銃の収まったホルスターを帯びているのに気づいた。
自分が人気のない砂浜に立たされて、後ろから頭を撃たれる様子を想像した。
あるいは、エイの怪物を撃墜したあの光のミサイルで粉々に砕かれる様子だ。
「俺、どうなんの?」
ジュジュは、迷い人の男が怯えているのを当然だと思いながらも、
彼女自身自覚しないほどの微かな嫌悪を感じてもいた。
京助はジュジュとほぼ同年代だろう、小振りのアフロヘアで、
セットされた濃い口髭を生やしていた。彫りの深い外人顔だ。運動は欠かしていないらしく、血色も体格もいい。
そうした外見とは裏腹に、彼の身振りはどことなく控えめであまり男らしくなかった。
彼が革のジャンパーの下に着た白いTシャツには筋肉が浮いていた。たぶんシャツの袖は余っていないのだろう。
ジュジュはふと、彼はゲイなのではないかと考えたが
彼女は特に同性愛者恐怖症でもないしゲイにも詳しくなかったので、それはどうでもよかった。
今はとにかく、彼に大人しくついてきてもらえるよう精一杯柔和な笑みを浮かべて、京助に話しかける。
「あたしらの言うこと聞いてりゃ死にゃしないから大丈夫」
箒は地面すれすれの高さを、歩くくらいの速さで飛んだ。京助も後ろから箒についていく。
見れば見るほど冗談のような乗り物だ。彼は内心乗せてもらえることを期待したが、
道中一度だけ振り返った女が訊いたのは、彼の髪型のことだった。
「なんでアフロ? それ地毛?」
「地毛だけど……別にいいじゃん」
「別に悪かないけどさ」
京助も、ジュジュの背中の荷物について訊き返した。
「あんたこそ、なんでピンクパンサー? いや別にいいんだけどさ」
「これも機材なの」
391猟騎烈掃ブラック・ジュジュ ◆OiaAMhRUKU :2009/03/27(金) 16:22:57 ID:2l8xL2Ak
7/8

ビデオが終わると、新藤はテープを巻き戻した。
巻き戻し中のビデオ1のチャンネルでは、民放の昼のニュースが流れている。
「結構派手で面白いんだけどよ、なんか色々パクリ臭くないかこれ?
用心棒の『鉄砲は止してもらおう』なんてあれ、『座頭市』じゃねえの?」
「変ですよ、この映画」
成海は頭の中でビデオ冒頭のタイトルバックを反芻する。
詳しくは思い出せないが、彼には見覚えのあるタイトルだ。
乾いた日差しを受け輝く砂の小道をバックに浮かんだ、いかにも荒々しい毛筆の書体は血の色をしていた。
タイトル後に流れるキャストの名前、どれも知らない名前ばかりだった。
最後のスタッフロールにも知った人間はいない。
「これ、本物っすか? 東映の70年の映画なんすか」
「東映のあの、波がザバーンってなるやつなら最初にちゃんと流れたけどな」
デッキの挿入口からラベルのない黒いビデオが出てくると、新藤より先に成海が歩いていって取った。
成海は抜き取ったビデオを掲げて新藤に向く。
「これちょっと借りていいすか? 調べてみたいことが」
新藤は答える代わりにデスクの引き出しを開けて、中に詰まった何本ものビデオを見せる。
「ジェイクから同じのを何十本と預かってるんだ」
「ジェイクが?」
新藤は部屋の隅に置かれた小銃のケースを顎で指した。
「銃の代金を負ける代わりに、ビデオを買って街に流してほしいって頼まれてな。
理由は教えてくれなかったが、中身を観るなとも言われてないし、どうして流してもらいたいのか気になったからな。
でも頭のほうは観たとこ普通の映画だし、俺にはよく分からん。変だってならぜひ、お前のほうで調べてくれよ」
成海は手にしたビデオをしげしげと眺めた。
ラベルも張っていない、黒いプラスチックの表面にも傷の少ない、真新しいVHSのビデオテープだ。
「いまどきビデオでバラまくんすか。何なんだろう」

デスクの上の電話が鳴った。新藤が椅子を回して取ると、
電話番の若衆からの内線で、それからまた誰かの電話に取り次いだ。
「ああ奥さん……えっ事故? うん、うん……こっから近いな、病院は?
……うん、うん、分かった、俺も行くよ。今後のことは相談に乗るから、それはまた後で話そう、うん、それじゃ」
電話を切った新藤は、妙な表情で成海に向き直った。
「ジェイクの奥さんから。あいつ車で事故りやがった、病院行くから運転してくれ」
「やばいんですか?」
「死んだよ。なんか運転中の急病、脳卒中とかそんなんらしいけど、詳しいことは分からんな」
「俺、先に降りて車出してきます」
成海はビデオを置くと、椅子にかけてあったジャケットをつかんで部屋から飛び出していった。
残った新藤もいそいそと立ち上がり、溜め息ひとつついて
「『堕地獄任侠/彼岸花』ねえ……『リング』じゃあるまいし、呪いのビデオってこたあないだろうけど」
デスクの引き出しを仕舞った。
392猟騎烈掃ブラック・ジュジュ ◆OiaAMhRUKU :2009/03/27(金) 16:23:40 ID:2l8xL2Ak
8/8

乗っていた箒を折り畳むと、今度は星の砂をすくって天使の人形に詰め直す。
京助は横でジュジュの作業を見ながら、どうしてそんなことをするのかとは尋ねなかった。
彼に特異点に関する知識はまだないが、これが元の世界に戻るための儀式なのだということは何となく分かった。
ジュジュは人形に中身が充分入ったところで、もげた首を手でつなぎ合わせた。
砂浜の反射が二人の目を焼き、慌てて瞼を閉じたところで周囲の空気が一変した。
波の寄せる音と潮の香りが消えて、昼下がりの住宅街の空気に戻る。
着いたのは京助が住むアパートの裏だった。建物は京助の部屋だけでない全体の外観を取り戻している。
海も砂浜も松林も跡形もなく消えていて、予想できたことではあったがさすがに面食らった。

ジュジュは洗濯機に天使を捨てた。塀を乗り越え、分解し折り畳んだ箒を担いでバンまで歩く。
荷物の積み込みを京助も手伝おうとしたが、ジュジュに断られた。全て片付いたところで彼女は言う。
「これからあたしの車に乗って空港まで行きます」
「成田? 羽田?」
「成田」
京助が携帯電話を取り出すと、ジュジュがちょっと怖い目をした。慌てて弁解する。
「夜バイトあんだけどそこに電話していい? ってか、身辺整理の時間とかあります?」
「電話くらいなら」
ジュジュがぬいぐるみと一緒に運転席へ乗り込み、京助にも乗るよう手招きした。
「どんくらい拘束されるわけ?」
京助は携帯電話片手に車の前で躊躇していたが、
「あたしは一ヶ月かかった」
開きかけていた携帯電話を閉じて、車に乗った。発進するバンの助手席で京助は独りごちる。
ここらで納得したつもりになろう、自分にはどうせやることもないし、
もしも女や女の仲間に洗脳されるなり殺されるなりするなら、俺はそれまでの人間だってことだ。
「そっから先はあんた次第だね。フリーター? 独身?」
「どっちもそうだけど」
「じゃあよかった。まあ、そんなに悪いことにはならないよ」
393創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 22:01:59 ID:TLFeJUZT
キャージュジュサーン!!
戦うクールビューティはたまらんのうたまらんのう

アフロも戦闘員に改造されるのかなw
394創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 23:57:11 ID:hhAORP/A
実在の物や、地名が多くて思わずニヤリとする要素が多くて
溶け込みやすくていいね。
改行をもう少し増やしてくれると見やすくていいかも
395魔法少女トゥインクル・オーガスト2(1/8) :2009/03/28(土) 10:50:42 ID:SszQsVFE
 冬月町には、風杜神社というそこそこ大きな神社があり、そこには『波山流
(はざんりゅう)杖術・剣道場』という道場が併設されていた。
 休館日にも関わらずこの日、木と木が打ち付け合う高い音が、夜の境内にま
で響き渡っていた。


 例えるなら、大小の台風が一つずつ。
 すさまじい勢いで、二つの棍がぶつかり合っては弾け飛ぶ。
 二つの台風が、一瞬大きく間合いを開く。
 先に動いたのは小さい方の台風だった。
「たっ、やっ、はぁっ!」
 黒髪のポニーテールをなびかせながら、道着姿の天神はづきは、嵐のような
突きを父でもあり師匠でもある天神雨水(あまがみ うすい)に向かって繰り
出した。
 しかし。
「ほほう、いつの間にか腕を上げましたね」
 雨水は微笑みを崩さないまま、その連打を時に避け、時に受け流していく。
「あ、ありがとうございます……」
 手を休めないまま、はづきは礼を言う。
 小学四年生のはづきでは、長身の雨水との体格差は圧倒的だ。それでも、は
づきは泣き言一つ言わず、攻撃の手を休めない。
 が、不意に背筋が寒くなり、本能のままに跳躍した。
 一瞬後、わずなか隙を突いて雨水の棍が横殴りに飛んできた。その棍を素足
で踏み、そのまま後方へ跳躍。
 とはいえ、空中にいる弟子の隙を雨水は見逃さない。
 棍を振り抜き、そのまま逆の先端ではづきを狙い撃つ。
「男児三日会わざれば刮目して見よとは、よく言ったモノです」
 乾いた音が響く。
 持っていた棍の腹で、はづきが師匠の突きを受け止めたのだ。
「あ、あの、師匠……私、女の子……」
 そのまま板床に何とか着地する。
「細かい事を気にする必要はありません。――しかし、まだまだですね」
 ひょい、と足の裏を棍で掬われそうになる。
「あっ」
 短い跳躍で、かろうじて回避する。
「……ほう、これを避けますか」
「ま、まだまだっ……!」
 不安定な体勢のまま、はづきは棍を振り下ろす。
 だが、いつの間にか半身の構えになっていた雨水には当たらない。
「棍で攻撃するとは限りませんよ」
 攻撃直後のはづきを、雨水の掌底が打ち抜いた。
「ふゃっ!?」
 道場の壁にまで吹き飛ばされる、はづき。
 しかし何とか激突直前に垂直の板壁を足で受け止め、回転しながら床への着
地にかろうじて成功した。それでもダメージはゼロではなく、片膝をついてい
る。
「ほほう……」
 雨水が笑顔のまま唸ったと同時に、道場の隅でブザーが鳴った。
 試合終了だ。
 雨水は棍で床を突いた。
396魔法少女トゥインクル・オーガスト2(2/8) :2009/03/28(土) 10:53:06 ID:SszQsVFE
「とはいえ、なかなか頑張りましたね。これからも精進して下さい」
「あ、ありがとうございましたぁ……」
 精根尽きたはづきは、その場に崩れ落ちた。


 天神家に受け継がれている八山流(はざんりゅう)杖術だが、実際の所杖術
を習おうなどという酔狂な人間はまずいない。
 という訳で、一般にも受け入れられやすい剣道を道場で取り入れていた。道
場に通いに来る小中学生は、全員がそちらを習っている。
 幼い頃から、父親だけが杖術を使う事を不思議に思ったはづきだけが、それ
を受け継いでいた。これでも経験は六年になる。


 はづきの頭に、ふわりと手拭いが下りてきた。
「さて、そろそろ晩ご飯の時間です。切り上げましょうか」
「う、うん」
 父親の言葉にはづきは頷き、手拭いで汗を拭きながら後頭部のポニーテール
を解いた。
 その時、道場の隅に折り畳まれたはづきの制服と一緒に置いてあった携帯電
話から、刑事ドラマの着信音が鳴り響いた。
「ぴゃっ……!?」
 思わず、はづきが跳びはねる。
 この着信音は、つい先日友人になった少年からのメールだ。
「どうかしましたか?」
「あ、その。ちょっと友達からメールが来て……」
「はい。それでは、先に家に戻っていますね」
 父親の了承を得て、はづきは携帯電話のある部屋の隅へ駆けていった。


 道着姿のまま、はづきは境内に出た。
 夏の境内は蒸し暑く、はづきは噴き出した汗を手拭いで拭う。
 本当は着替えたかったのだが、また制服に着替えるというのも変な話だ。か
といって、相手はすぐ近くに来ているらしいので、部屋に戻っていると待たせ
る事になる。
 だが。
「……あれ?」
 はづきは、境内を見回す。
 その相手は、境内にいなかった。
 ……これなら、部屋で着替えた方がよかったかな。
 そんな事を考えたその時。
「天神」
 闇の中から声がした。
「ふゃあっ!?」
 はづきは両手を挙げて驚いた。
 よく見ると、神社の植え込みに溶け込むように、肩から鞄を提げた愛想のな
い短髪の少年が立っていた。全然気付かなかった。
「大きな声を出すな。せっかく気配を消していたんだ」
「な、ななっ、何で気配なんて消してたの……?」
「他に誰かがいたら困るからだ」
「あ……そ、そっか」
397魔法少女トゥインクル・オーガスト2(3/8) :2009/03/28(土) 10:54:47 ID:SszQsVFE
 淡々と言う少年の名を、木島勇人(きじま ゆうと)という。はづきのクラ
スメイトだ。この愛想のなさは別にはづきが嫌いな訳ではなく、誰に対しても
平等である。
 故にクラスでは、やや怖い、という評価を受けている。
 しかし、はづきは勇人が単に口下手なだけだという事を既に知っていた。
「驚かせたみたいだな。悪い」
「い、いいよ。気にしてないから……」
「そうか」
 間が生まれる。
 元々はづきは極端に内気な性格で、しかも相手が男子という事もあって、勇
人と話すのも恥ずかしい。何を話せばいいのか、分からない。
 一方、勇人も基本的に必要な事以外(たまに必要な事も)、ほとんど話さな
い。
 境内を、静寂が包んだ。
 やがて、沈黙に耐えきれず、はづきの方が口火を切った。
「そ、それで、また事件?」
「いや、今日は俺が図書館の帰りのついでに寄っただけだ」
 言って、勇人は鞄を軽く叩いた。
「……精霊が関係するような、怪しい事件は今のところない」
「そ、そうなんだ……」
「必要な道具を持ってきた」
 言って、勇人は鞄から何か細長いモノを取り出した。
 ひょい、と投げられたそれを、はづきは受け取る。
「え、えと……これ、扇子?」
 開いてみると、扇には日本画が描かれていた。独特の香の匂いが、はづきの
鼻を刺激する。
「ああ。精霊を召喚するのには媒介が必要なのは前に説明した通りだ。この間
捕まえたカマイタチは風の精霊だからな」
「それで扇子……」
 暑いし、仰いだら駄目かな、とかはづきはちょっと考える。
「数が増えると、動きが鈍くなる。媒介用のアイテムは小さい方がいい」
「そ、そうだね」
 この会話、誰かが聞いていたらどう思うだろう、とはづきはちょっと気にな
った。
 何かのゲームの話とでも思ってくれるといいのだけれど。
「今、時間はあるか」
「ちょ、ちょっとだけなら……大丈夫だと、思う」
 辺りを見回し、はづきは頷いた。
 勇人が何を言いたいのかは分かっている。
「よし、それなら少し試してみよう。実戦で練習する余裕はないからな」
「そ、それもそうだね……じゃあ」
 はづきは、胸元からネックレスを取り出した。
 細い鎖の先に付けられているのは、青い光を放つ勾玉だ。不思議な事に、勾
玉は宙に浮いていた。
 右手を前に差し出し、左拳を腰に。
 精神を鎮めると、それに呼応するように勾玉は光を増した。
「変、身……っ!」
 右拳を腰に戻し、両腕を交差。
 勾玉の光が極限まで高まった所で、腕を下ろす。
 青い光がはづきの身体を包み、代わりに勇人の身体が赤色の光を放つ。
398魔法少女トゥインクル・オーガスト2(4/8) :2009/03/28(土) 10:56:10 ID:SszQsVFE
 その輝きがやむと、はづきは白と朱の巫女装束をまとっていた。
 一方、勇人の身体は縮み、人形サイズの赤い子鬼と化していた。


 数日前、クラスの友人達と行った肝試し。
 そこで、二人は巨大な鬼と出会った。
 鬼の名はボルト。魔界の住人であり、この世界に逃亡した精霊達を追ってき
た獄卒鬼だ。
 しかし、ボルトと脱走精霊の争いに巻き込まれ、勇人ははづきを庇う形で生
命を落としてしまう。
 現界の人間を巻き込む事をよしとしなかったボルトは、その魂を勇人と融合
した。
 力の大半を失ったボルトに代わり、彼の意志を継いだ勇人と、現世で精霊力
を振るう事の出来る契約者・トゥインクル・オーガストとしてはづきは、精霊
達を捕らえる仕事をする事となったのだった。


 二本角のミニ赤鬼・ボルトがはづきの肩に乗る。
 身体を包む精霊の力を抑え、肉体に馴染ませる。
 軽く跳躍すると、五メートルほどの高さに至る。
 着地と同時に、石畳に落ちた葉が何枚かふわりと宙に浮く。そのスローモー
ションの動きを確かめ、トゥインクル・オーガストの手が瞬いた。
 次の瞬間には、トゥインクル・オーガストの細い指の間には何枚もの葉が挟
まれていた。
「よし、それじゃやってみるぞ。まずはカマイタチ」
「うんっ! ――『風』の証に依りて出でよ、『カマイタチ』!」
 懐の扇子に意識を集中する。
 すると、トゥインクル・オーガストの手に風の力が集い始めた。
「振れ!」
「う、うん!」
 轟、と掌から突風が生じ、境内の木々を大きく揺らした。
「す、すごい力……」
 風になびく黒髪を抑えながら、はづきは呆然と声を漏らした。
 はづきが込めた力は、全力ではないのだ。その気になれば、『カマイタチ』
の名にふさわしい、風の刃を生じる事も可能だっただろう。
 精霊の力を調節して、二度、三度と小さな風を掌から放つ。
 全力全開は危険だな……と、トゥインクル・オーガストは思った。
「『鬼』の力も使ってみようか」
「う、うん……」
 こちらはあまり気が進まない。
 とはいえ、鬼の力を借りて変身するトゥインクル・オーガストは、唯一媒介
いらずの能力でもある。
 一番、使うのになれなければならない力なのだ。
「『角』の証に依りて出でよ、『アカオニ』!」
 叫ぶと共に、トゥインクル・オーガストの全身を見えない重さが包んだ。
 その重さは圧倒的なエネルギー。
 例えるなら人の形を取ったダンプカー、あるいは石油タンカー、あるいは原
子力発電所。
「ふぅー……」
 トゥインクル・オーガストが息吹を整えると、石畳が軋みを上げ、ボコリと
円状の亀裂が走った。
399魔法少女トゥインクル・オーガスト2(5/8) :2009/03/28(土) 10:57:53 ID:SszQsVFE
 ちょっと悲しくなった。
「どうした?」
 それを察したのか、ボルトが顔を覗き込んできた。
「……これ、何かすごく体重が増えてるような気がしてちょっと嫌」
 トゥインクル・オーガストも、女の子なのである。
「でも、非常時にすぐ使えるように慣れておく必要はある」
「そうなんだけどね……」
 実際、その通りではあるのだ。
 この力は強すぎて、下手をすると容易に周囲を巻き込みかねない。小学生が
ダンプカーのアクセルを踏むようなモノなのだ。
「扱いには気をつけろ。これは、オーガストの主力精霊でもある。力が強い、
というのは純粋に有利だ」
「……うん」
 故に、この力がトゥインクル・オーガストには、ちょっと怖い。
「オーガスト、武器を」
 ボルトの声に、ハッと我に返る。
「う、うん」
 懐から、扇子を取り出す。
 閉じたままの扇子の骨を握りしめると、扇子は青い光を放ちながら棍へと変
化した。
「精霊棍も、召喚には別に本物の棍は必要ない。今みたいに扇でもいいし、物
干し竿でも割り箸でもいい。棒をイメージするモノを手にすれば、召喚が可能
だ」
「た、例えばアンテナとか……?」
 トゥインクル・オーガストの問いに、ボルトは頷いた。
「ああ。それも、有りだな。街の中にはいくらでもそういうモノがある。色々
試してみるのもいいかもしれない」
「……例えば標識とか?」
「……それは、国土交通省とかいう奴が、調査に乗り出しそうだから自重した
方がいい」
 精霊棍は呪印を刻み込んだ、金属製の棍だ。
 軽さの割に、相当な威力がある。
 トゥインクル・オーガストは、普段から習っている型を軽く演じてみた。
 一振りする度に、棍が派手に空気を切った。
「これで終わり……かな?」
 精霊棍を扇子に戻し、懐に入れる。
「もう一つ、前回は使えなかったけどイッタンモメンがあっただろう」
「あ……あのタオルに取り憑いてた精霊だね」
 カマイタチが起こした切り裂き事件の一つ前の事件を、トゥインクル・オー
ガストは思い出した。
「そう。タオルはかさばるからという事情で持たなかったけど、ちょうどいい
のが手元にある」
 そう言ってボルトが指差したのは、近くの木の枝に引っかかっていたはづき
の手拭いだった。
「あ、これ?」
「そう、それでちょっと試してみよう」
「う、うん」
 トゥインクル・オーガストは手拭いを握ると、精霊の力をそれに注ぎ込んだ。
「ぬ……『布』の証に依りて出でよ、『イッタンモメン』!」
 すると、青い光と共に手拭いは全長は十メートルほどはあろうか、長い布へ
と変化した。

400魔法少女トゥインクル・オーガスト2(6/8) :2009/03/28(土) 10:59:46 ID:SszQsVFE
「わ……」
 恐ろしく軽いそれに意識を込めると、それに応じて身体にまとわりついてき
た。
 さながら、天女の羽衣のような形を取る。
「ほう……」
「す、すごいね」
「もしかして、飛べるんじゃないか?」
「飛べると言うより、跳べる、かな……」
 そう、イッタンモメンの力をまとったトゥインクル・オーガストの肉体は、
まるで羽のように軽くなっていた。
「布の精霊だからな」
「風に乗るって感じ……かな?」
 微かに吹く風を意識して、足を乗せてみる。
 すると。
「わ、と、わあぁっ……!?」
 トゥインクル・オーガストの身体は、風に乗って高く空に流された。
「落ち着け」
「お、落ち着けって言われても……!」
「体制を整える事だけ考えろ。それ以外は余分だ。落ち着いたら、泳ぐイメー
ジを取ってみろ」
「う、うん……!」
 ボルトに言われた通り、体制を整える事に集中する。
 やがて安定すると、やがて風に身を任せる事にも慣れてきた。
 そしてふと眼下を見下ろすと、そこには冬月町の夜景が広がっていた。
「わぁっ……」
 闇に浮かぶ無数の輝きに、トゥインクル・オーガストは歓声を上げる。ひと
きわ多く光が集まっているのは、おそらく繁華街だろう。
「感動している所悪いが、あまり長居は出来ないぞ」
「え……?」
 肩から聞こえてきたボルトの声で、トゥインクル・オーガストは我に返った。
「この状態で時間切れになったら、死ぬぞ」
 木島勇人と融合したボルトの力は、現界では三分間しかもたない。
 それはつまり、トゥインクル・オーガストの力もたった三分しか使えない事
を意味していた。
 この夜空でそれが解けたら……。
「お、下りる! すぐ下りる!」
 トゥインクル・オーガストは、急いで風杜神社に向かって落下していく。


 境内に着地すると、ほぼ同時に変身が解けた。
「空を飛べるのはいいけど、遅いのが難点だな」
 人間の姿に戻った勇人がボソリと呟く。
「うん、風任せだからね。あと、袴が……」
「どうかしたのか?」
「な、何でもない!」
 はづきは、真っ赤になりながら両手を振った。
「風と言えば『カマイタチ』と同時に使ってみたらどうだろう」
「……多分、突風すぎて、制御出来ないんじゃないかな」
 布にジェットエンジンの噴射をぶつけるようなモノだ。
「となると、それは最後の手段だな」
401魔法少女トゥインクル・オーガスト2(7/8) :2009/03/28(土) 11:01:41 ID:SszQsVFE
「最後の手段でも、あんまりしたくないけど……でも、『イッタンモメン』は
楽しいかも」
「そうか?」
「う、うん。何て言うかこう、魔法! って感じがする」
「確かに超怪力や風の刃よりはな」
「それにわたし、魔法少女はどっちかって言うと戦うより人助けがお仕事じゃ
ないかと思うし……」
 少なくとも、はづきが知ってるアニメは、そういうモノだ。
 言われ、勇人も小さく唸る。
「言われてみれば、戦ってばかりだな……しかし、困っている人を助ける、っ
ていう意味では間違ってはいないはずだ」
「むー……」
 はづきにも、言わんとしている事は分かる。
 でも、何となく納得がいかないのだ。
 そんな様子のはづきに、勇人はポケットに手を突っ込んだまましばらく考え。
 やがて、頭から煙を噴きながら頭を振った。
「……すまん。うまい言葉が出てこない」
 それでも、勇人は表情を崩さない。
 が、勇人の必死さは伝わった。
「い、いいよ。無理しなくても。それ以上考えると、木島君、倒れちゃう」
 そうだな、と勇人は頷いた。
「精霊事件も、まだ三回。最初の事件を引いてもたったの二回。戦わないで済
む事件も、そのうち出くわすだろう」
「そうだといいな……」
「だな。別に俺も、争いが好きな訳じゃない」
 何となく沈黙が生まれた。
 やっぱり間が持たなくなって口を開いたのは、はづきだった。
「そ、それと、たった三分ってのは、問題だよね……」
「一応、変身時間を延ばす事も出来るが……」
「……木島君達の魂を消耗するんだよね。それはやっぱり駄目だよ。せっかく
木島君、生き返ったのに」
「まあ、最後の手段だな。それじゃ用事も済んだ」
 勇人は自分の携帯電話を取り出すと、時計を確かめた。
「あ、うん」
 はづきも自分の携帯電話を懐から取り出した。この携帯電話もボルトの力で
強められており、精霊を封印する力を持っている。
 お守りと一緒で、トゥインクル・オーガストに変身している時に装備してい
ないと、精霊の力を借りる事は出来ないのだ。
 時間を確かめると、長かったようで、五分も経っていない。
「じゃあな、天神。おやすみ」
「う、うん、おやすみなさい」
 足音もなく境内を去っていく勇人の背を、はづきは見送った。


 はづきは息を吐き出す。
「ふむ……」
 唐突に、背後からそんな声が聞こえ、
「ひゃあ!?」
 はづきは死ぬほどビックリした。
 振り返ると、父、雨水が立っていた。
402魔法少女トゥインクル・オーガスト2(8/8) :2009/03/28(土) 11:03:19 ID:SszQsVFE
 雨水は既に着替えを済ませており、ワイシャツにスラックス。その上にエプ
ロンを羽織っていた。
「はづきちゃんもいつの間にか大人になってるんですねぇ……ちょっと感慨に
ふけってしまいます」
 うんうん、とお玉を手にしきりに頷く雨水であった。
「お、お父さん、いつの間に……!?」
「ついさっきですよ。それとも何か、お父さんに知られたくない事でもあるの
ですか?」
 いつもと変わらない微笑みに、はづきは内心うろたえる。トゥインクル・オ
ーガストの事がばれたのかばれていないのか、さっぱり分からない。
「な、な、ないけど」
「接吻はお父さん、少し早いと思います」
「してないよ!」
「そうですか。よかったです。お父さん、小学生を相手に本気を出したくあり
ませんから」
 微笑みのまま、雨水が何かすごい迫力を出してきた。
 はづきには、何だか手に持っているお玉が精霊棍より物騒な武器に見えた。
「し、死んじゃうから! 木島君、死んじゃうから駄目!」
「木島君というのですね。お父さん、覚えました。今度の授業参観が楽しみで
す」
「何する気なの!? だ、駄目だよ? 木島君のお父さん、警察官なんだから!」
「ああ、なるほど。道理で聞いた事のある苗字だと思いました。そうそう、警
察官と言えばですね、警察署にも道場があるのは知っていますね?」
「? ……うん」
 父、雨水は時折、所轄の警察署に武道の指導に出向する事があるのだ。
「僕もよく指導に行くんですけど、あの人達は別に強くなるのが一番の目的じ
ゃないんですよ。町の治安を守るためです。犯罪と向き合うのは危険な仕事で
すからね」
 ふと、はづきはさっき勇人と交わした会話を思い出す。
「お巡りさんの本分は、困っている人を助ける事です。パトロールをしたり、
迷子の子を保護したり、それと同じなんですよ」
「困っている人を助ける……」
 雨水も勇人と同じ事を言う。
 ただそれは、口下手な勇人の言葉を補強しているかのようにはづきには感じ
られた。
「はい。戦わずに済むなら本当に、それが一番なんですけどね。何のために強
くなるのか、何のために戦うのか。忘れそうになっているのに気付いたら、そ
れを見つめ直すといいでしょう」
 そして雨水は、娘の頭にポンと手を置いた。
「という事を、まだ小学生のはづきちゃんに話しても、ピンと来ませんよね。
さあ、家に戻りましょう。晩ご飯が冷めてしまいますよ」
「あ、うん」
 二人は手を繋いで、家に向かう。
 はづきは少し考えてから、雨水を見上げた。
「……あの、お父さん」
「何でしょう?」
「ご飯終わったらもう少し、稽古いい?」
「はい、軽くでしたら」
 微笑む雨水に、少しだけスッキリしたはづきだった。

<おしまい>
403創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 11:04:37 ID:SszQsVFE
もうちょっと早く投下する予定でしたが、寝過ごしました。
今回は設定話。

あ、メールって送信者別に着信音を分けられたかどうか、よく知りません。
友達少ないので。orz

ところでこれの設定を整えている最中にディケイドが始まりまして。
そして、思い出しました。
これクウガだ。(汗

あと、魔法少女が戦うのは云々とはづきが言ってますが、私はなのはとかも好
きだったりします。
戦う魔法少女を否定する気はまったくありませんので、はい。

た、楽しんでいただければ、幸いです。
404創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 11:05:46 ID:jTOA+9uB
トゥインクルきてるーーー!!
巫女魔女もへぇーーー

あ、着信音はちゃんと分けられますよ
405創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 11:09:00 ID:jhYJlB9I
投下乙です。
リアルタイムで読みました。
シリーズ化期待してます。

設定話ってことは今後重要なんかな。


ところでチャットなんだけど、作者の馴れ合い場になってるのってなんか違うくね?
いちいち読者かとか聞かれるのうざいんだよな。
406創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 11:21:28 ID:jTOA+9uB
最初に立ち位置を尋ねるのは仕方がないよ
板住人ですらない人がフラっとやってくるカオスチャットだからw
407創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 11:32:43 ID:jhYJlB9I
>>406
馴れ合い作者乙

チャット頑張ってね。
たまには投下もしてくれよ。
408創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 11:52:46 ID:IBZdIxAS
チャットはあんまり参加したことないから、毎回来る人に対してそうなのかは知らんのだけど
>>405みたいに感じる人もいるということで、いきなり身元確認みたいのはアレかもしれないよね。

ただ>>407みたいなのは落ち着けといいたいw
409創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 13:01:16 ID:gHAHMNGy
>>403
なんだか空気的にCCさくら思い出した
「風」とか「跳」とか……

ジュジュは魔女版ブラックラグーンのよう……でもないか…

とにかくどちらも面白いので期待してます


チャットに関しては、開催日すらわからんのでなんとも言えないけど…
小さいこと気にしないで楽しんだもん勝ちだと思うよ
410まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/28(土) 20:48:26 ID:rlDFdw76
炎術剣士まなみ第十五話投下します
411まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/28(土) 20:49:55 ID:rlDFdw76
炎術剣士まなみ 第十五話『子どもだらけの大都会』

 新宿にある、超高層ビル。あらゆる企業が入所しているオフィスビルである。
入口には警備員が二人ほどいて、辺りを監視している。
そこに、みすぼらしいコート姿の男が、やってきてビルに入ろうとした。
当然、警備員は男を止める。

「すみませんが、入場許可証をお見せください」
警備員がそれを提示させるように求めるが、男は何も言わずに無理やり入ろうとする。
「おい!聞こえて…」
警備員が言いかけると、男の目が光り、光が飛んだ。
次の瞬間には警備員の姿はなくなった…代わりに、子どもの姿が二人ほどある。

「な、なんだこれ!」
「うわぁ!逃げろぉ〜!」
透き通るような声を出しながら、ダボダボの警備服を着た子ども二人は
どこかへ逃げ出してしまった。


桜花高校は昼休み。まなみたちは食堂で飯を食べている。
「いっただっきまぁ〜す!バグバグ…!」
「裕奈、もうちょっと落ち着いて食べなよ」
「まなみさん、裕奈ちゃんにそんな話は通じないと思いますよ」
特になんの変哲もない、いつも通りの食事タイム。だが、それを
テレビのニュースが水を差す。

「新宿から大人の姿が消え、子どもが大量に溢れています!難を逃れた
人々からの目撃談によりますと、コートを羽織った男により、子ども化された
という話で…」
そのニュースを聞いたまなみは、立ち上がり、食堂から出ようとする。
「まなみさん!置いてかないでくださいよぉ!」
「私ならバイクもあるし、先に言って様子を見てくるわ」
412まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/28(土) 20:50:49 ID:rlDFdw76
そう言ってまなみは食堂から出て行ってしまった。伊織は心配そうな目つきで
まなみの後を追おうとするが、裕奈がいまだに飯を食べているのを見て
何も言わずに、後ろの襟を掴んで引きずり出した。
「げほっ!い、伊織ちゃんまだ食べてる途中なんだよ〜!」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ…ほら、私たちも早くまなみさんの
後を追わなきゃ!」

裕奈の叫び学校中に響いてる頃、まなみはすでに新宿に到着していた。
ニュース通り、辺りは子どもだらけで大人の姿は見当たらない。
その時、何かを感じたか、まなみは素早く後ろに振り返る。
「…!ウルム!やっぱり次元鬼の仕業ね!」
「新堂まなみ!その大きさのお前も今日で見納めだ!」

二人の間に、黒い影が現れ、それは形を成していく。
「次元鬼リバスト、やれ!」
リバストという次元鬼がまなみに向かって破壊光線を放つが、
それをバイクから飛び降りながら回避し、紅い光に包まれていく。
「炎心変幻!」

剣士の姿へ変身したまなみは、暁一文字を抜刀し、次元鬼に立ち向かう。
「たあぁぁぁ!」
何度か斬りつけ、隙を見て火炎を放射し攻撃していく。
「こんなものなの?今日は楽勝みたいね」
「ふふ、粋がっていられるのも今のうちだ。リバスト、あれをやれ!」

リバストの目が光ったかと思うと、その光はまなみを包み込んでいく。
「な!これは!?」
「まなみよ、これで貴様もおしまいだな!」
その時、次元鬼に向かって水流が飛んできた。
「そこまでだよ!ウルム、次元鬼!…まなみちゃんはどうしたの!?」

ウルムが後方へ飛んだかと思うと怪しく笑みを浮かべる。
「まなみ?奴ならお前達のすぐ近くにいるではないか?…はぁっ!」
ばらまくように光弾を放射し、裕奈たちが気づくとすでに
次元鬼とウルムの姿はなかった。
413まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/28(土) 20:51:47 ID:rlDFdw76
「私達のすぐ近くって…まわりには子どもしか…」
伊織がふと、見た先には長い黒髪をした女の子の姿があった。
まさかとは思うが、放しかけてみることに。
「あの、あなた。もしかして…まなみさん?」
伊織の呼びかけに振り向いた少女は、満面の笑みを浮かべながら飛びつく。

「いおりおねえちゃん!そうだよ、まなみだよ!」
「ほ、本当に…まなみちゃんなの…?」
「あー!ゆうなおねえちゃんうたがってるんだ!じげんきがまなみのこと
こどもにしちゃったの!はやくやっつけようよ!」
見た目どころか、明らかに精神まで幼児化しているまなみ。
ひとまず、二人はまなみを自宅へと連れて行くことにした。


リビングでは伊織と裕奈が真剣な眼差しでこれからのことを考えている。
だが、そんなことはお構いなしに、まなみはゲームで遊んでいる。
「ねえ、おねえちゃんたち!まなみおなかすいた!おやつちょうだい!」
「おやつなんて、今日はないよ、まなみさ…まなみちゃん」
伊織がそう答えると、まなみはジワッと瞳に涙を浮かべる。

「おやつ!おやつたべたい!かってきてよぉ〜!」
駄々をこねだすまなみに、どうしようもなくため息を漏らす二人。
そこに、悠美が帰ってきた。
「あら、二人ともいらっしゃい…まなみちゃん!?」
「あ、おかあさん!」

母に抱きつくまなみ。それを笑顔で受け止め、頭を撫でる悠美。
「あのね、まなみ、おやつたべたいのに、おねえちゃんたちがいじわるして
まなみにおやつたべさせてくれないの!」
その一言で、悠美の表情は穏やかなままだが、目の奥がギランと光る。

「まなみちゃん…わがままを言ったらいけませんと、お母さん何回も
言ったわよね?守れないなら…また、アレをやるわよ?」
声のトーンが変わったわけでもないのに、穏やかな表情は変わらないのに
どこか、恐ろしさを感じさせる悠美の言葉にまなみはガタガタと震えだした。
「ご…ごめんなさい!アレだけはいやぁぁ!いおりおねえちゃん、ゆうなおねえちゃん、
まなみ、わがままいってごめんなさい!」
414まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/28(土) 20:52:50 ID:rlDFdw76
「い、いいってまなみちゃん。…アレってなんなんだろう…?」
取り乱したまなみの様子に、何か不吉なものを感じる二人だが、とりあえず
今は考えないことにした。
「ところで、まなみちゃんはどうしてこんなに小さくなっちゃったの?」
「ええとですね、悠美さん。次元鬼の攻撃を受けてそれの影響で…
今、どうしたらいいか考え中なんです」

「あら、そういうのは、原因の元を叩けばいいって相場が決まってるじゃない!」
「そ、そういうものなのかな〜?」
「そういうものなの。裕奈ちゃん、伊織ちゃん、頑張ってきてね!」
無理やりに自分の考えを押し付け、悠美は二人を見送る。
「あ、まなみちゃんも忘れないで!」
伊織に向かってポーンとまなみを投げ、渡す。

「む〜!ものみたいになげないでよぉ〜!」
不満を口にするまなみをスルーし、悠美はにこやかに手を振っている。
三人は今度は渋谷に向かうと、案の上、そこも子どもだらけにされていた。
「みんな子どもにされちゃって、誰もどこかに連絡できないから、
あたしたちは後を追うしかないね、伊織ちゃん…」

「その必要はない!」
声に驚き、振り返ると、そこにはウルムと次元鬼リバストの姿が。
「ウルムのおばちゃんだ!」
唐突に言い出したまなみの一言に、血管を浮かばせながら叫ぶウルム。
「お、おばちゃんではない!と、とにかく…裕奈、伊織。貴様らも
まなみと同じようになってもらう。三人仲良く遊びまわればよいわ」

次元鬼が攻撃を仕掛けてくるが、裕奈と伊織は上手く回避し、変身する。
そしてそのまま二人同時に飛び蹴りをかます。
「まなみちゃんたちは元に戻させてもらうよ!てやぁ!」
裕奈が飛びあがり、水流波を放ち、相手が怯んだ隙に拳に水の気を纏わせる。
「水迅旋風拳!!」
415まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/28(土) 20:53:41 ID:rlDFdw76
強力なその一撃が決まったかと思われた。が、ギリギリでそれを防ぐリバスト。
そしてリバストの目が光り出す。
「いいぞ、リバスト!裕奈も子ども化させろ!」
「うああ!?」
「裕奈ちゃん!」
その光が裕奈を包み込んでいく。ウルムは勝ち誇ったように笑みを浮かべている。

だが、光が止むと裕奈は特に姿が変わった様子はなかった。
「な、なぜ裕奈は変わらんのだ!?」
「ひょっとして…裕奈ちゃんって精神が子どもだから…」
「子ども言うな!くぅ、効かないのがなんだかムカついてきたよ!」
「仕方ない、次は伊織にやれリバスト!」
ウルムの指示に従い、伊織に向かっていく。だが、それを炎が妨害する。

「おねえちゃんたちをいじめちゃだめぇ!」
そこには変身したまなみの姿が。小さいままで。
まなみは子どもサイズの暁一文字を抜刀して何度も斬りつけていく。
その姿は子どもが部屋の中で暴れてるかのようであった。

「今だ!てやああああ!!」
まなみの猛攻のようなもので怯んだ次元鬼の胸目掛けて伊織が刀を突き刺す。
光が漏れ出し、それは東京中に降り注いでいく。
すると、子ども化した大人たちは元の姿に戻って行った。当然、まなみも。

「やったぁ!元に戻った!次元鬼、よくも私をこんな目に合わせたわね!
覚悟なさい!」
まなみが刀に炎の気を纏いながら、近くに偶然あったバイクに飛び乗り走り出す。
そして、そのまま次元鬼に突っ込んでいく。
「火炎!隼!スラァァァッシュ!!」
416まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/28(土) 20:54:24 ID:rlDFdw76
すれ違いざまに水平に斬りつけ、バイクが停止するのと同時にリバストは爆発した。
「ちっ、またしても…」
ウルムが悔しそうにしながら、姿を消す。裕奈と伊織はまなみの元へ駆けていく。
「まなみちゃん!…よかったぁ」
「ありがとう、裕奈、伊織。二人のお陰で元に戻れたのよ」
笑い合う三人の剣士。空には気持ちのいい青空が広がっていた。

後日、まなみは不機嫌な表情でいた。それというのも、裕奈たちが
自分にとって、汚点な話を何度もしてくるからだ。
「まなみちゃんって、子どものころってワガママだったよね、絶対!」
「違うわよ…あれは…次元鬼のせいで…」
「でも、次元鬼はみんなを子ども化しただけですし、行動はまなみさんの
意思じゃないんですか?」

「あ〜もぉ!」
顔を真っ赤にして、頭を机に伏せさせるまなみ。
裕奈と伊織はまたまなみを弄る要素が増えたことに内心愉快であった。


次回予告「伊織です。子どもになったまなみさんは可愛かったです。おかげで
また面白い一面を見れましたし。次回はなんと、裕奈ちゃんが芸能界に
スカウトされたらしいんです!なんだか、妙に人気も出てきてるし…
裕奈ちゃんじゃフードファイトぐらいしか活躍できなさそうな感じなんですけどね。
次回『裕奈アイドルデビュー!』裕奈ちゃん、あまり天狗になっちゃダメだよ」
417まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/28(土) 20:56:42 ID:rlDFdw76
第十五話投下完了です。
ジュジュやトゥインクルオーガストが投下されて
また盛り上がっていくといいですね。

えー、チャットのことですが、まずごめんなさい。
確かにいきなりは馴れ馴れしかったですよね。自重します。
418創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 22:34:06 ID:jhYJlB9I
まなみってさ、
魔女っ子でもないし変身しなくても強いんならスレ違いだろ。
こんなに長く続くならスレ立てて余所でやって欲しいよな。
419創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 22:43:18 ID:EtBNM9Wx
なんでそういう事言うかね。
楽しみにしてる奴がいるんだからいいじゃねえか。
420創る名無しに見る名無し:2009/03/28(土) 23:44:14 ID:QyEbceVd
ID:jhYJlB9Iってオーガストの感想よこして僕は荒らしじゃないよ
アピールした嫌がらせ君だよね。空気悪くしたいだけ
421創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 01:07:14 ID:OYmlUFqF
その展開は見苦しい
422創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 14:19:58 ID:xv6I07ia
長く続いてるんだし、おおめに見れば良いのではないだろうか。
クロスに「魔女っ子が出てない。」とかみついた人と一緒でしょ。
変身ヒロインスレでもあるんだし。
マターリいきましょうや
423創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 14:30:00 ID:YifP6V8l
おおめに見るって言い草が既におかしいよ

まなみは当時みんな納得して受け入れた作品で、
スレタイ変更の是非を問うた時も全く反対意見出なかったのに、
今更になっていちゃもん付ける方がおかしい
424創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 15:04:21 ID:DpOZT+Iy
まなみ作者擁護にまで反論とか必死すぎだろ。
何が気にくわないんだ。

もうこの辺にして魔女っ子の話しようぜ。
425創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 18:43:24 ID:7vrAqGZm
変身ヒロインなんだから全然スレ違いじゃない。>>418が荒らしたいだけ。以上

とりあえずまなみ投下乙
まなみママンって昔からまなみをいじくって遊んでたんだろうなw
426創る名無しに見る名無し:2009/03/29(日) 23:20:02 ID:DpOZT+Iy
だよな。
変身ヒロインなんだから良いじゃんかな。
427創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 12:10:46 ID:+UGpE9ID
荒らしもそうだけど、チャットにいつ見てもいる自治厨みたいなのもなんとかして欲しいです。
作者らしいんだけど、
ちょっと意見言ったらクレーマーとかいって因縁つけてくるんですもん。
勘弁してくれよ。
前のレスにもあったけど、前スレで前スレでって言ってるけど、まだPART2ですよ?
新参と賞賛以外お断りってのは時期早くないですか。

チャット設置のときといい。
雑談しててたまに出てくるまとめる人みたいなの
(104、107、221、256、283、293、320、423)
もこの作者が名無しで自演してただけなんじゃないでしょうか。
428創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 12:21:56 ID:+UGpE9ID
新参じゃなくて、古参だ。
顔洗ってこよう。
429箱庭スレの>>1:2009/03/30(月) 14:41:06 ID:Z7qaTNOu
>>427
次回作が少々、魔法少女としてアレなので同じように指摘されるだろうな、という話の流れで出てきたんですよね。
何が魔法少女として正統かの議論はおいといて、まともな指摘でも、あの語調では因縁と受け取られかねない。
あまりに度が過ぎるとクレーマー扱いされても仕方ないよな、という趣旨の発言だったんですが、言葉足らずで申し訳ない。
入室時点での発言ログしか閲覧できないから仕方ないんですけどね。
430創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 23:27:33 ID:FGCqgdrp
せっかくの良スレも誰かの一言で嫌な空気になるな
ここの作者陣がこの流れを断ち切るのを祈るばかり
431創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 01:20:12 ID:zq3axV2F
まなみ作者が後付けでも良いからあれは第一段階の変身を無意識にしてるとか
あれは変身より弱いとかフォローすればあとは信者がなんとかすんじゃないですかね?

というか、もうややこしいから魔女っ子スレに戻そうよ。

まなみはまだまだ続くんでしょうし
もう単独スレでもやってけいけると思います。
剣道少女スレとかそういう需要もありそうですし。

この雰囲気じゃ
他の魔女っ子作者が迷惑だろうに。
432創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 01:23:39 ID:p9ZRf9W+
ええっ!?
変身ヒロインも無しか!?


……そりゃ困ったな。
433創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 03:20:02 ID:IpZN5hCT
こうやって無意味にジャンルが細分化していくのだろうか
434創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 09:18:41 ID:zq3axV2F
変身ヒロインスレ立てておきましたので、まなみ作者さんとその周囲の人はそちらでお願いします。
もうこのスレで、これ以上問題起こさないで下さい!

みんなウンザリしてます。

>>432
変身ヒロインスレで問題ないですよね。
それとも、魔女っ子スレじゃないと絶対にいけない理由でも?

というわけで、この話題終わり。
435創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 09:21:33 ID:zq3axV2F
436創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 09:56:22 ID:bMMBsrl4
本人の意思も聞かずに一方的に絶縁宣言って、なんか魔女狩りみたいだな
魔女っ子では無い方を狩るって点が本物と違うが

ただ、作者様さえ納得するのなら俺もスレを移るのがベストだとは思う
一度出てきて作者様の意思を聞かせて欲しい
437創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 10:39:00 ID:c5I/mzMF
っていうかまなみ作者叩いて追い出そうとしてる奴って一人だな
今日はID:zq3axV2Fで一昨日あたりから一人で批判してたのもコイツか、まるわかりだな

>zq3axV2F
誰にウンザリしてるって? 勘違いも大概にしろよコラ
問題起こしてんのはお前だろ? 雰囲気悪くしてる元凶だろうが
みんながウンザリしてんのはお前の方だよ
はっきり言ってアナタの方が迷惑です

変身ヒロインスレ消してROMるか空気読んで二度と来るな
438創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 10:48:02 ID:UVbGsP5E
問題だと言ってるのはID:jhYJlB9Iだけだったよな
むしろ、問題起こしてるのはID:jhYJlB9Iだと思うんだがな
>>434が言う周囲の人というのはID:jhYJlB9Iを含むんだろうが
439創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:12:21 ID:vKhqQfZw
あー、自分の意見に自信とかなくて「みんなほげほげしてます!」って言っちゃう人いるよな
ていうか単なる荒らしにしか見えないw
440創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:14:21 ID:vKhqQfZw
というかこういう反応して荒れ荒れにするのもどうかとおもうんだ、俺含めてw
441創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:32:45 ID:K/wvmJ9L
てゆうか、もう終わった問題を勝手に蒸し返してまた荒そうとすんなや
まなみの何が気に入らないが知らんがお前が一番の問題、荒らしだよ
たった一つの描写でこれは問題だ!スレ違いだ!とかほざく奴のがうざい
勝手に立てたスレの削除依頼出してもう二度と来るな
442創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:41:53 ID:zq3axV2F
自分と違う意見は全部荒らし扱いかよ。俺は初期からのROM専だよ。

何で今頃と言われてもカキコなんて気分だろ
443創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:44:50 ID:4oCXXptl
>>431
本人から説明がないから仕方ないけどさ
作者の説明不足か、読者の誤読という可能性も捨てきれないよな
この段階でのスレ立ては先走りすぎだと思う
ほぼ全員が変身に意味ないと感じたから、誰もそのことで擁護してないけどな
だから残された可能性としては、作者の説明不足しかありえないのだが
444創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:44:55 ID:zq3axV2F
書き込んだの今日が初めてだよ。
445創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:49:02 ID:c5I/mzMF
荒れるのもそうだけど、この流れをまなみ作者さんが深刻に捉えてしまった場合
もう連載しないなんていうことになってしまうのが恐い

まなみ作者さん!みんな待ってるんで気にしないで頑張って下さい!

>>438
jhYJlB9I=zq3axV2F
荒らしてるのは一人、まなみ作者さんに嫌がらせしたいだけ
せっかくみんなマッタリほのぼのしていたのに、一人の自己中な子供のせいで雰囲気ぶち壊し
446創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:49:04 ID:vKhqQfZw
いやまあ、あんたの意見はあんたの意見です
でも誰もあんたの意見に従う義理はないってだけじゃないかな

それにしても不自然に単発ID沸きすぎじゃね?
わざと荒らそうとしてるひとり上手にしか見えないんだが
447創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:55:25 ID:rlYQP0GC
「さつばつとしたスレに魔女けんざん!」
「ああ? テメエ空気読めよ。今、そんな状況に見えるか?」
「お茶どうぞー」
「お、す、すまねえな」
「みなさんも、お茶どうぞー」
「ズズ……つっかお前、お茶出す以外、何か魔法使えないのか?」
「コーヒーとか紅茶とか出せますぞー」
「……ドリンク以外でだ」
「ありませんぞー。だってわたし、まったり専門の魔女ですからなー」
「そうかいそうかい。じゃあ、あっちいきな」
「あ、そーだ。もう一つだけまほう使えるの!」
「ほう。やってみな」
「いくよー! イダワノギツー! ニウヨタッカナ! モトゴニナ! 空気せ
ーじょーのまほう!」
「という訳らしい。お前らも茶でも飲め」
「お邪魔しましたー」


「で、お前名前は?」
「なごみー」


意見よりはSS落としますよ職人ですから。
魔法少女も変身ヒロインも、仲良くしましょーよ。


……どうでもいいけど、
本当にKY言われたらどうしようとビクビクしながらの投下です。
448創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:56:56 ID:Xrx8P8lg
まったり魔法少女なごみ連載希望!
449創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:57:42 ID:yDfvr0pf
…………はっ!?
一体何があったんだ???

450創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 11:57:54 ID:vKhqQfZw
なんて勇気のある魔女だw
歓迎なんだぜ
451創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 13:48:46 ID:c5I/mzMF
>>447
おいしいお茶を貰ったので返杯
( ´・ω・`)つ旦〜ドゾー

ん〜?このなごみちゃんの雰囲気、前にどっかで……?
452創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 14:40:03 ID:IL0jQYLv
チャット入ってみた
453創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 15:04:11 ID:yDfvr0pf
>>452 まだおる?
454まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/31(火) 22:27:34 ID:Soy1ZsMQ
皆さん、なかなか反応出来なくて申し訳ありませんでした。
まず、問題となった、変身前でも技を使えるについてですが、
あれは変身前よりはずっと弱いという設定で、敵を倒せたのも
敵が何の準備もしてない、即席で作られた存在で非常に弱かったというものです。
その辺りは自分の描写不足や、設定集に書いていなかったということで
自分が悪かったと思います。本当、すみませんでした。

それで、今後のことですが、自分はこれからもこのスレで続けていきたいです。
今までこのスレでやってきたから、ちゃんとここで終わらせたいと思います。

ご迷惑おかけしました。失礼します。
455創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 22:39:41 ID:K/wvmJ9L
謝る必要なんか全然ないのにw
荒らし君が勝手に暴れただけなんだから
今後もこのスレで問題ないでしょう
荒らしが勝手に立てたスレに行く道理は無い
次の投下楽しみにしてるよ
456創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 22:42:04 ID:b7bpoHsO
一連の流れはすっ飛ばして、次回も楽しみにしてるぜ!
結奈! 結奈ァァァア!
457創る名無しに見る名無し:2009/03/31(火) 23:04:19 ID:bMMBsrl4
まなみ作者様
今、スレに出てくるのは並大抵の覚悟ではなかったでしょう
辛い心中お察しします

俺はまなみ作者様がここで続けたいとおっしゃる意思を尊重します
これからも頑張ってください
458まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/03/31(火) 23:11:08 ID:Soy1ZsMQ
>>454の文章がおかしいですね
正確には『変身前でも技は使えるが変身後よりずっと弱い』です

>>455−457
ありがとうございます。
自分なりに精一杯やっていきますので、どうかよろしくお願いします。
459創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:03:43 ID:SURdgHjL
えー、突然失礼します。
当方↓のスレの者です
ノベルゲーム【immortal maidens】製作スレ part6
ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1237625814/l50

今日は四月一日という事で、
エイプリルフール特別企画として、
こちら向けのSSを投稿させていただきたいと思います!
ぶっちゃけ宣伝ですw

それでは、はじめさせていただきます。
460創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:05:03 ID:SURdgHjL
いもでん四月馬鹿特別企画



「マギステル☆クララ 食い尽くされる街を救え」

街のお城に住む大金持ちのお嬢様。
クラリッサ・コーデリア・フォン・アイブリンガー・ウント・フォン・ヘルリングは、毎朝のお茶を欠かさない。
今日も優雅に、庭で鳥の声を聞きながら、食後のお茶を楽しんでいる。
見た目は十歳そこそこの少女だが、その立ち居振る舞いには気品が漂っていた。

そしてその同じ庭先では、何故かセーラー服で木刀を一心に振るう少女の姿が。

「リンコさん。今日もご精が出ますわね」
カップを傾けながら、クララはその少女に声を掛けた。

少女の名前は薬丸凛子。
訳あってこの城に住み込む、食客みたいなものか。

「ああ、クララさん。朝はこうやって汗を流すのが気持ちいいっスよ」
丁度キリがいいのか、凛子は首からかけたタオルで汗を拭いながら近づいてくる。
彼女は、この城の主であるこの少女の事をクララと呼ぶ。
名前が長すぎて覚えきれないのだ。
クララと対面の席に座ると、冷めかけたカップの中身を一気に呷った。
「いやあ、汗をかいた後のお茶は最高っスねえ」
そう言って、がっははははと豪快に笑った。
この上品な場には似合わない笑いだが、お嬢様は気にする様子は無い。
静かに微笑んで見ているだけだ。

そして、その視線をいつも見慣れた街へと移す。
今日街は平和だ。
静かで穏やかな朝のひと時を迎えている。
461創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:05:36 ID:CJ3dZPLo
しえん
462創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:06:26 ID:SURdgHjL
――と、その時。

ドーン!

今彼女達が眼を向けているちょうどその先で轟音が鳴り響き、
もうもうと黒い煙が上がった。

「大変ですぅ、大変ですぅ!!」
城の奥から、大声を上げながら走ってくる者がいる。
シャツに短パンのラフな格好でメガネを掛けた、小学生程の年頃の少女。
この城に住んでいる少女、鈴那だ。
手にしている白い携帯型ゲーム機の画面をチラチラと見つつ、慌てた様子である。
「街にかいじゅうが出ましたぁ!」
その言葉を受け、クララと凛子は互いの顔を見て頷く。

「この街は、わたくし達が護ります! 行きましょう、リンコさん! 鈴那さん!」

城から走り出したのは、メルセデスベンツSSK。
タイプは古いが頼りになる、クララの愛車だ。
その助手席に凛子が乗り込み、膝の上に鈴那も座る。

向かう先は町の中心部。
駅前の商店街だ。



「くっくくくくく……よこせぇ! もっと食い物をよこせぇ!!」

黒い服の金髪少女が、遠巻きに見つめる人々に凄んでいる。
眼は赤くギラリと光り、その表情は凶悪だ。

「もっとだぁ! 肉をっ!! 野菜をっ!! 貴様らの今日の糧を全てよこせぇぇぇ!!」
ヨダレを垂らしながら、商店やそこに来た客に襲い掛かる。

463創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:07:21 ID:SURdgHjL
――そこへ。

「そこまでですわ!」
大きな制動音を響かせて、クラシカルなオープンカーが商店街に滑り込んでくる。
「……ムッ!?」
少女の姿のかいじゅうは、突然の闖入者に気を取られ、その動きを止めた。

「……なんだ貴様らは〜!?」
凄むかいじゅうにも恐れる様子を見せず、二人の少女が地面に足を下ろす。
一人は日本刀を携えたセーラー服少女。
そしてもう一人は、白いドレスに身を包んだ銀髪の少女。

「通りすがりの魔法少女ですわ」
「同じく……通りすがりの剣士っス」

二人は口々に名乗る。
それぞれに爽やかな笑いと不敵な笑みを浮かべながら。
それを聞いていたかいじゅうの方はポカンとしていたが。
「訳のわからん奴らだ、まあいい。貴様らも妾の胃袋に収めてやるわっ!!」
そう激昂すると、
「下級モンスターどもよっ! やれっ!!」
その号令と共に、地面から半物質の様な液体状の物が湧き出してきた。
それはどんどん大きさを増し、人に似た姿を取る。
「くっくくく……貴様らごとき、物の数ではないわ」

得意そうに笑うかいじゅうだったが……。

――タンッ!

弾ける様な音が響いた。
今地面から生まれたばかりのモンスターが、通常攻撃では効かないはずの身体に穴を開けて、その場に崩れ始めている。

撃ったのは、白いドレスの少女、クララだ。
硝煙の匂いを漂わせ、真っ直ぐに拳銃を構えている。
モーゼルミリタリーM712・シュネルフォイヤーだ。

464創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:07:32 ID:CJ3dZPLo
しえんえん
465創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:07:44 ID:CJ3dZPLo

466創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:10:23 ID:SURdgHjL
しばし沈黙が流れるが……。

「ちょっと待てっ!?」かいじゅうは叫ぶ。
「貴様今魔法少女だとかほざいていただろう! なんで拳銃なんか持ってるんだっ!?」
抗議する様に言うが、それを受ける方は涼しい顔だ。
「魔法は弾丸の方に掛かっていますわ。だから貴方の手下さんはやられたのではなくて?」
そう言われるとぐうの音も出ないかいじゅうである。
出鼻をくじかれた形になり、少し躊躇いを見せるが、
「い……行けっモンスターどもっ!!」
右手を振り、手下をけしかけた。
「あたし……行くっス!」
それとほぼ同時に、凛子が駆け出す。
腰に差した名刀・孫六に手を掛けながら。
「はぁぁぁぁぁっ!」
走りながら、刀を抜く。
抜きざまに斬り裂き、そのまま走り抜ける。
そしてそれを待ち受ける金髪かいじゅうの少女に向かって、手にした刀を振り上げた。
「いざ――覚悟っス!!」
「ふんっ――無駄だっ!!」

――ガキッ!

金属同士が衝突する音を立てて、二人の動きが止まった。
凛子が振り下ろす孫六を、かいじゅうが素手で受け止めている。
「くうっ……さすがかいじゅうっス!」
「妾の名はマリーだ……かいじゅうと呼ぶな不愉快だっ!」
力は拮抗し、動く気配が無い。
467創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:11:15 ID:n4tBP/ff
しえん
468創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:11:16 ID:CJ3dZPLo
そういえばかいじゅう、名前の割にでかくないのなw
469創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:11:31 ID:SURdgHjL
次々と弾丸を撃ち込み、下級モンスターを倒してゆくクララ。
「……はっ! リンコさん!?」
膠着状態に陥った二人を見て、それをチャンスと受け取ったか。
両手の拳銃を素早く仕舞いこみ、眼を閉じる。

《我この地上に降り立ちし鋼の申し子
 今こそこの身に、鉄壁の力を――纏わせよ!》

高速で詠唱される呪文は、常人の耳には感知されない。
唱え終わると同時にカッと眼を見開いた少女は、足元に展開された法陣の光に包まれた。

その光が少女の身体にフィットする様に形を変え、弾けると――。

そこには、銀色の装甲に全身を隙間無く包まれた人間が立っていた。
表面の金属部分に赤い魔術紋様を明滅させ、
各関節からは放熱の蒸気を噴出し、
黒いバイザーには、人間と同じ配置の二つの眼がギンッ! と輝いた。

鋼の魔導で生み出された、機甲戦士(パンツァートローペン)の誕生である。

「マギステル☆クララ、参上つかまつりましたわ」

銀の装甲人間が発するのは、間違いなくそこに立っていた少女のものだ。

そこに。
「ふふふ……やはり出てきたなマギステル☆クララ」
「……忌々しい人……死んじゃえばいいのに」
「…………」
クララの変化を受けての事か、側のビルの屋上に三人の人影が現れた。
黒いボンテージに身を包み、頭に角、背中にはコウモリの羽根をつけたセクシー少女。
そして黒い法衣を纏い、唯一表に出した顔には、左目に黒いアイパッチを着けた白髪の少女。
もう一人の、黒い法衣でスッポリと全身を覆った小柄な人影は、沈黙を護っている。

「貴方達、何者ですか!?」
ビルの上を見上げ、クララは声を上げた。
「ふふふ、私達は……」
「この世界を掌中に収めようとする、偉大な方のしもべです」
「…………」
立っているのは三人だが、喋るのはやはり二人。

「まずは名乗ろう。私はシスター・リーザ。この世界を隠微とエロ――」
「私はシスター・サナ。この世界を死の恐怖で満たします」
堂々と胸を張るリーザのセリフに被せる様に、サナがセリフを発した。
最後まで言わせたくなかったのだろうか?
リーザは悔しそうにサナを睨むが、無視を決め込まれていてはどうしようもなく、諦めて小さく咳払いなどしている。
「そして、彼女がシスター・イレナ。人呼んで電子の魔女です」
三人目はやはり声も出さず動きもせず、サナが紹介する形になった。
470創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:12:16 ID:n4tBP/ff
しえん
471創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:12:36 ID:CJ3dZPLo

472創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:13:38 ID:n4tBP/ff
 
473創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:17:45 ID:CJ3dZPLo
お?
474創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:22:56 ID:n4tBP/ff
連投規制か!?
475創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:25:55 ID:kcuoTq2x
チャットしてるよ
476創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:26:00 ID:n4tBP/ff
更にしえん
477創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:26:31 ID:SURdgHjL
「私達が出てきた以上、貴方もこれで最後だ」
「手始めにまず、この街を支配します。――イレナ、やってください」
「…………」
動きも喋りもしなかった小さな黒い法衣の人物は、そこで動き始めた。
わずかに外に出した両手に、鈴那がいつも手にしているのと同じ携帯ゲーム機の黒いタイプがある。
起動した状態らしいそれを左手に持ち、右手に持ったタッチペンで画面を突いた。

クララの周囲の景色が揺れ始める。
「……これは……一体!?」
事態を把握しようと辺りを見回す銀の人影に、
「貴方をとっておきのステージにご招待よ」
「そこで死んでください」
「…………」

周囲の物質と非物質の境界が曖昧になる。
クララが纏う装甲服は魔力で防護されているので、直接の影響は受けないが――。
それでも周囲の変化は物理的に影響する。
脚は地面に沈んでゆく。
まるでそこが底なし沼であるかの様に。
「……くっ!」
鋼の魔女を、電子の魔女の力が蹂躙する。

身動きも取れずにされるがまま、地面から異空間へと吸い出されるクララ。

放り出された先は――すべてが黒雲で覆われた世界。
足場も無く、上下の感覚すら感知出来ない。

(……こうなったら……)
沈黙していたバイザー奥の双眸が、再び光を発した。
「来なさいっ……ビスマルクっっ!!」
そのコールは、距離も、次元の壁をも越えて伝達される。

……ゴゴゴゴゴゴ……ドォォォォ……ン!

空間全体が鳴動し、雲の一点が激しく爆発した。

そこから現れたのは、一隻の大型戦艦。
一見クラシックな、水上に浮いているのと同じデザインだが、中身は違う。
クララの魔力で異なる次元へも航行する能力を得た、かつて世界最大を誇ったドイツの戦艦ビスマルクの改造艦だ。

その名も、超次元戦闘母艦・ビスマルク。
名前までそのままに、今度はどことも知れない異空間の空を行く。

銀の装甲服が、その広い甲板へと降り立った。
「次元壁を突破します。――砲撃準備っ!」
艦橋の前に装備された合計四門の砲塔が、音声の指示に従う様に動き始める。
それらが狙うのは、黒雲に覆われた空間の一点。

ここへ進入して来た時と同様に、今度も砲撃による突破を試みようという訳だ。

「照準固定――撃てーっ!!」

砲門が一斉に火を噴いた。
478創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:27:17 ID:SURdgHjL
(クララさん……あたしは無事を信じるっス!)
かいじゅうとの直接戦闘をなんとかしのぎながら、凛子は考える。
やはり手にした武器が優秀でも、相手が怪物では勝てるものではない。
「こらっ! 今貴様怪物とか思っただろう!? 妾はアンナだ怪物ではないっ!!」

依然としてそこから状況が動かない二人を上から見つめ、
「役に立たないねえあの食欲魔神。加勢する?」
「食べるだけしか能の無いかいじゅうは困るわ。死んじゃえばいいのに」
「…………」
地獄耳のかいじゅうには、その勝手極まる外野の発言が許せない。
「ぬううっ……ふん!」「うあっ!」
素手で受け止めた日本刀を跳ね除け、ビルの屋上を見上げる。
「貴様らーっ! 勝手な事ばかり抜かしおって!! なんなら貴様らもまとめて相手してやるから降りて来ーい!!」
人差し指を突きつけ、叫ぶ。

そんなやり取りをしている頭上で、何も無い空が不意に――爆発した。

その場にいた者は、そちらに気を取られる。
唯一その現象の意味がわかるのは凛子のみ。

「あ……クララさん! やっぱり帰ってきたっス!」

虚空に突如出現したのは、超次元戦闘母艦・ビスマルク。
次元の壁を突破して、この世界に戻ってきた。

甲板の上には、太陽の光を受けて輝く装甲服の姿も見える。
その輝きが、直接地上に向けて身を躍らせた。
「クララさん! これ使ってくださいっス!!」
凛子は手にした孫六を投げる。
自由落下の途中でそれを受け取ったクララは、双眸を輝かせて――。
《我が掌に掴み取りし鋼の牙よ。
 今ここに、我が振るうべき姿を――顕せっ!》

孫六が光に包まれた。
そして、地上に降り立ったクララの手に握られていた物は――。

「顕現……マギステルブレードっ!」

光の刀身を持つ武器を手にしたクララに敵は無い。
「食欲魔神アンナっ! これ以上街の食料は奪わせないっ!!」
そう言って、振り被った。

「食らいなさいっ!――メッサーシュナイダーっっ!!」


479創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:27:36 ID:CJ3dZPLo

480創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:27:51 ID:CJ3dZPLo
しえん
481創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:28:22 ID:SURdgHjL
     ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 


バンッ!
激しく机を叩く音が、書庫に響く。
「この脚本、書き直しを要求する!」
アンナ=マリー・グリニッジは、強硬に意見を述べた。

対面でカップを口に運んでいたドイツ人少女は、何事かという目でアンナを見つめる。
「あの、何か問題でも?」
「大ありだっ!!」
丸めた初稿台本を丸め、相手の鼻先に突きつける。
「これではヒロインが貴様みたいではないかっ!」
「いえ、みたいではなくて。一応その脚本はわたくしの主演になっておりますけど」
常ならそう動く事もない表情をわずかに強張らせ、クララは答えた。

「だがおかしいのではないか?
 大体妾がかいじゅうというのがおかしいだろう?
 しかも街を破壊するのではなく、商店街で食い物を漁っている。
 これではまるで物乞いではないか。
 しかもなんだ? リンコの奴まで語尾が改変されている。
 あ奴は“ス”などと語尾には付けん。
 それにスズナとかいう小娘は何だ? 出しておいて途中から出てこなくなるし。
 敵の女幹部というのも色々おかしい」

捲くし立てる吸血種の真祖。
「あのー、頭の中で随分改変なさってらっしゃいませんか?」
クララが見せた脚本は、精々アンナが敵怪人として暴れまわる、位のものだ。
後の事は、クララは書いた覚えが無い。
何故ならば、クララが書いたのは、正統? な魔法少女物だったのだから。

一番目立つ役が良いと言われたのでその要求に従ったまでだが、どうやら主役がお望みだったらしい。

困り果てて目を転じると――。
書庫の隅では、正座した凛子がクララから借りた抜き身の日本刀を手に、うっとりとそれを見つめていた。
大戦中、ドイツに鍛鉄の研究用として流出した日本刀の一振りで、本物の関孫六である。
口に和紙を咥え、打ち粉を振って返しては、またうっとりと見つめる。
それがさっきから数十分間繰り返されていた。

どうやらこの様子では、凛子も助け舟は出してくれないだろうと観念したクララは、
「では、アンナさんを主役に据えて書き直しとしましょう」
溜息をついて、ついこの間買ったばかりのノートパソコンを開いた。

詩作や戯曲の文章構成は貴族の嗜みだという事で、広く発表する予定も無いこんな物を書き始めたが、なかなか上手くは行かない。
パソコンの扱いを覚える為の練習も兼ねていたが、どうやらそれ以外の苦労も背負い込みそうだ。

内容はとても、貴族が書くに相応しい物とは言えなかったが。


     ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
482創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:28:38 ID:n4tBP/ff
 
483創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:29:00 ID:cv8Otmhk
 
484創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:29:13 ID:CJ3dZPLo

485創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:29:17 ID:SURdgHjL
「悠久戦隊っ!」
「「「イモデンジャー!!」」」

ドカーン!!

名乗りと共に豪快な爆発が起こった。
色が付いて非常に派手な爆煙だが――。
「きゃあっ!」
黄色いコスチュームの少女が、その爆発に驚いて耳と眼を塞ぎ、うずくまった。
ヘルメットは被っているが、口元は露出しているため、少女だとすぐわかる。
「ううう……こんなの聞いてないよぉ〜〜〜」
涙を浮かべて呟くが、

「こらそこーっ! 何をやっておるのだ根性出せー!!」
「だ……だってぇ〜」

ここはどこかの、一見自衛隊の演習地に見える荒野。
人跡未踏のはずの大地に戦車の履帯の轍を刻むこの地で、少女達が全身タイツの戦闘員達に囲まれている。
こんな状況で、赤いコスチュームの少女にどやされる少女を含んだこの一団は――。

地球の平和を守る、美少女(?)戦隊だ。

今はとても内輪で揉めている場合ではないのだが、
「とにかく、最初が肝心だ。名乗りやり直しっ!!」
リーダーらしき赤い少女が叫ぶと、他のメンバーもやれやれと並びを直し始めた。

「いいか行くぞっ!」
その言葉と共に、全員がサッとポーズを取る。

「レッドデンジャー!」
「……ブルー」
「ぐっ……グリーン?」
「い……いえろ〜っ!」
「ピンクっ!」
「はあ……ブラック」

ここで、メンバーは動きを止めた。
486創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:29:58 ID:n4tBP/ff
支援
487創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:30:09 ID:SURdgHjL
沈黙がしばし続き……。

「なあ」レッドが口を開いた。
「普通、戦隊と言えば五人だな。なんか人数多くないか?」
「いや。アンナさん、今はそんな場合じゃないですよ」
「貴様! この格好の時はレッドと呼べと言ってるだろうがっ!!」
緑色の少女に対して激昂する赤。
「リンコさん、あれでも一応リーダーですから、逆らわない方がよろしいですわ」
「クララさん……そうですね」
ピンクの少女が小声で囁くのを受け、グリーンも頷いた。
「こらそこっ! コソコソ何やってるのだっ!! 今はそんな場合ではないっ!!」
自分の事は棚に上げてメンバーに檄を飛ばすレッド=アンナである。

だが。
「そうか……そういやそうだな」
黒いコスチュームの少女は、妙に達観した様な言葉をこぼすと、
「だったら……私いちぬ〜けたっ!」
そう言って一気にコスチュームを脱ぎ捨て、露出の多い姿になる。

「切り替え早っ!?」「あらあらまあ!」「ええええっ!?」「…………!」
グリーン、ピンク、イエロー、ブルーはそれぞれがいかにもな反応を示す。

この勝手な行動に黙っていられないのはリーダーのレッドだ。
「なっ!? 貴様裏切るのかブラック!!」
「もうブラックじゃないよ。リーザって呼ぶんだな」
言うが早いか、その頭に角が。
背中にはコウモリの羽根が生えた。
「見ての通り元々私、正義の味方ってガラじゃないからね」
「では……私も……」
青いコスチュームの少女も、小さく手を上げて一団から進み出る。
「え? ちょっとブルー……西郷さん!?」
グリーン=凛子が驚いて叫ぶが、
「やってられませんから。こんなリーダーの下では」
そう言ってヘルメットを取ると、長い白髪がパサリと下りた。
「ではリーザさんとサナコさん……これからどうなさるおつもり?」
俯いてじっと聞いていたピンク=クララが顔を上げ、二人を見据えた。
「そうだなあ。悪の幹部かなんかでがんばろうかなあ?」
「精々四人でがんばってください。色も数も中途半端な戦隊ですけど」
そう言って二人が去ろうとするが――。
「わたしもやめるっ! 爆発怖いもん!!」
イエローもピョンと飛び出し、あっさりヘルメットを脱ぎ捨てた。
「あ、ちょっと! 鈴那ちゃん!?」
凛子は静止しようとするが、
「ほっとけグリーン! やる気の無い奴はいらん!!」
スパルタンなセリフを吐いて、アンナは腕を組んだ。
「いえ……内輪で揉めてる場合では……」
クララが辺りを見渡すと、いつしか敵戦闘員達も消えていた。
488創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:30:39 ID:CJ3dZPLo
 
489創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:30:40 ID:n4tBP/ff
しえん
490創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:31:40 ID:cv8Otmhk
  
491創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:31:49 ID:SURdgHjL
「えーっと、レッドとピンクと……グリーンの戦隊ですか……」
イモデンジャーが基地にしているクララの城の一室で、凛子は考える。
「なんだか、締まりがありませんわね色彩的に」
クララも凛子の言葉を受けて呟く。

「そんなもん、色を変えれば良いのだ色をっ!」
バンっ! と机を叩いて、リーダーのアンナは叫ぶ。
「リンコ! 貴様は今日からブルーだ!! キザにキメろ!!」
「ええっ!? あたしが……キザって?」
「チッチッチとかやれば良いんだ! 簡単だろう?」
「?????」
困惑する凛子を放置しつつ、
「クラリッサ、貴様はイエローだ! カレー食えカレー!!」
「はあ? 意味がわかりませんわ!?」
「これはそういうものなのだ! 説明するまでもない!!」

アンナの知識と感性はかなり古い。



「確かに最初グリーンって言われた時は、なんだか微妙だなあって思いましたけど……」
凛子はぼやいた。
その場しのぎみたいな調子で、今更ブルーをやれと言われても困る。
「わたくしはアンナさんをリーダーとして立てる覚悟は出来てましたから、ピンクでもイエローでも別に構わないのですけどね」
クララもカップを口に運びつつ、凛子に言った。
今この場にアンナはいない。
陰口を叩いている様で気が引けるが、いる所で出来る話でもないのだ。

大体、仲違いはしてもなんだかんだで上手くいくのが、この手の番組でのお約束だ。
発足して最初の戦闘で、メンバーがいきなり、本当に抜けてしまうなど前代未聞である。

鈴那はともかく、リーザと真子の決意は本心からだろう。
あの二人、あまり団体行動も得意では無さそうだ。
「まあ、色はともかく。今は三人で何とかするしかありませんわね」
そんな事を言われると「あたしも辞めます」とは言えない凛子である。
元より辞めるつもりは無いが。
凛子にとっては、身に付けた剣術を役立てる事が出来る数少ない機会だ。
ただ鍛錬を積んだだけでは、立派な剣士にはなれない。
それがわかっているからこそ、この誘いにも喜んで乗った。
(……うん! クララさんもこう言ってるし、がんばろう!)
拳を握り締め、改めて決意を固める少女であった。

492創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:32:13 ID:n4tBP/ff
 
493創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:32:13 ID:CJ3dZPLo
裏切るのかw
494創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:32:49 ID:SURdgHjL
そんな凛子をよそに。
「ああ、こういう事だったのですか!」
不意にクララが声を上げた。
お茶を飲みながら凛子とも言葉を交わしつつ、傍らに置いたノートパソコンで何か調べていたらしい。
「え? 一体どうしたんですかクララさん?」
不思議そうに質問する凛子に、
「いえ、黄色の戦士とカレーとの因果関係が、ようやくわかりましたわ」
嬉しそうにそう答えると、
「リンコさんも、もしキザに振舞うのが苦手でしたら、アンパンを召し上がると言うのはいかがでしょう?」
「……はあ?」
「それで立派なブルーになれますよ。リンコさん!」
常識人に見えて、どこかが著しくズレているお嬢様である。

いずれにしろ、このお嬢様が行き当たった情報もかなり古い。

「となると……わたくしはカレーパンでも戴けばよろしいのでしょうか?」
「えっと……どうしても食べ物で解決しなければいけないもんなんですか、これ?」

これには凛子も答えは出せない。
テレビは時代劇を観る事が多いので、そもそもこの手の番組は知らないのだ。
「いっそ個性的にやっちゃった方が良くないですか?」
「個性的……ですか?」
「それぞれの得意分野であれやこれや」
「そうですわねえ……きっとアンナさんは気に入らないでしょうけど」
「うーん……そうですねえ……」

ふたりはそれぞれ俯いて、それぞれ考えを巡らせる。
(グリーンだって言うから……それに合わせて武器も用意しちゃったしなあ)
(ピンクらしい装備……イエローでもそのまま使えるのでしょうか?)

色が何であれ、この二人の武器自体は変わらないようにも思えるが。
それでも主な悩みはそこに持ってきてしまう凛子とクララであった。
495創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:34:02 ID:SURdgHjL
レッドデンジャーことアンナ=マリー・グリニッジは、一人荒野を歩く。
メンバーの半分がいきなり離脱する事になってしまった、忌まわしき初陣の場だ。

残った二人のメンバーは同行させてはいない。
と言うよりも、ここへは何も告げずにやって来た。

あの時はああいう態度を取るしかなかったが、わかっている。
全ての原因は自分にあるのだ。
わかっていても、それを素直に肯定する事が出来ない局面という物もある。

元々、集まったメンバーは寄せ集めだ。
選考の基準は「ある特殊な体質の有無」一点のみ。
色の振り分けも、アンナが勝手に見た目のイメージで適当に決めたに過ぎない。
だからこそ、いわゆる「強権的なリーダー」を演じて、メンバーを一つにまとめようと思っていたのだが。
それが裏目に出てしまったと言う事か。

演じている以上に、自分の地の性格が出てしまったと言うのもある。
それでも幸い、全員が抜けた訳では無いのが救いではあった。
クララはあれでサブリーダー的な自分の立場を良く理解して、さりげなく助けてくれる。
凛子は剣一筋で生きてきたところがあるので、それ以外の細かい事はあまり気にしない。
それがやり易くもあり、助かる部分だ。
(……しまった!)
ここでアンナは思い至る。
(ブルーとイエロー、役割を逆に振れば良かった!)

事ここに至ってそんな事を考えてしまうのは、残った二人に対する安心からか。

強がってはいるが、アンナはこれで結構寂しがり屋だ。
長い間一人で過ごしていた期間があるため、孤独でも耐えられる。
耐えられるが、それで平気という訳では無い。
やはり仲間は欲しいのだ。

冷たい風だけが吹きぬける、だだっ広い景色を見渡す。
そんなところに――。
496創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:34:31 ID:CJ3dZPLo
どうせ銃と剣だしなw
497創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:34:31 ID:n4tBP/ff
 
498創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:34:48 ID:SURdgHjL
「一人で散歩か? レッドデンジャー、いやアンナ=マリー・グリニッジ」
不意に投げ掛けられた問い掛けに、赤い服のスカートを揺らして反射的に動くアンナ。

背後にそり立つ断崖の上を見上げると――。
そこには三つの人影が見えた。

「……リーザ……サナコ……それに、スズナか」

かつては、仲間とも思い手を携えて来たはずの者達が、冷ややかな眼で見下ろしていた。
服装は、なんだかいかにも悪役っぽい大胆なデザインで、いずれも黒い。
「それとも、とうとうあの二人にも見捨てられたか、アンナ?」
「あなたがリーダーなら、無理も無い事だと思いますよ」
「わたし……ず〜っと怖かったんだからねぇ!」
口々に言いたい事を投げつけてくる。
だが、言われる方はどこ吹く風だ。
「フッ……どうやら本格的に悪の道を行くつもりらしいな、貴様ら」
その言い方は、どこか虚勢を張っている様にも見えたか、
「まるで自分が正義とでも言いたそうだな」
「この世に正義なんて存在しません。あなたわかってます?」
「もうどうでもいいもーん! わたし怖いのヤダもーん!!」
何の疑いも無い、とばかりに反論する。
そして、
「まあ一人では何も出来ないって事を、教えてあげるよ」
リーザがそう言って、上げた右手を振ると――。

ザッ!
ザザッ!!

崖の上の三人の周りに。
そして、崖下のアンナの周りにも。

一斉に、黒一色で身を覆った戦闘員達が現れた。
「自分の無力さを、ここで思い知るのですね」
真子が薄い笑いを浮かべて言い放つ。
その横では、鈴那が「やーいやーい」などとはやし立てていた。

確かに、今のままでは駄目だ。
たとえ変身した所で、一人では限界がある。

だが。
あの二人を今から呼んだところで、間に合うのか?
いや、それ以前に。
二人は呼び掛けに応じてくれるのか?

他人を信じきれない自分がいる。
悲しいが、今自分を見下ろしている三人の事を考えると――。
さっきまで安心していたあの二人に対する想いが、揺らぐ。

それでも。
悪は許す訳には――いかない。
499創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:35:10 ID:CJ3dZPLo
500創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:35:40 ID:cv8Otmhk
 
501創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:35:44 ID:SURdgHjL
一人でも戦う覚悟を決めた、その時。

――ドンッ!
不意に大きな轟音が響き、
「ギイィィィィィっ!」
爆発でアンナを囲んでいた戦闘員が数人吹っ飛ぶ。

「むっ! アレは!?」
「……馬鹿な人達……」
「ええ〜!? 来ちゃったの〜?」

リーザ、真子、鈴那の声に、アンナは三人が眼を向けている方向に視線を動かす。

そこに立っていたのは――。

馬鹿長い日本刀を、鞘に巻きつけた緑の下緒で肩に担ぐ様に背負う、セーラー服の少女。
肩辺りでカットした黒髪と制服のスカートが、風に揺れている。
そして、右肩に長い筒の様な物を担いだ、ピンクのワンピースを着た銀髪の少女。
筒の先から煙が上がっているところを見ると、今の爆発はこの少女の仕業だ。

彼女達が誰かは、最早問い質すまでも無い。
剣術使いの女子中学生、薬丸凛子。
そしてドイツ出身のお嬢様、クラリッサ(中略)ヘルリング。
最後までアンナを信じ、リーダーとしてサポートする決意を決めた頼もしい仲間だ。

二人は戦闘員達よりも少し離れた所で、互いの背中を合わせて立っている。
「アンナさん……ちょっと冷たいんじゃないですかぁ?」
「こういうお散歩でしたら、わたくし達もお誘いくださればよろしかったですのに」
二人は不敵に笑っている。

「あなた達は……本当に馬鹿だな」
「本当に、救いようが無いです」
「バーカバーカ!!」

三人が大声を上げる。
だが。
「あたし達は、別に馬鹿でも何でも良いよ」
「悪と呼ばれるよりは、そちらの方が余程マシですわね」
凛と答えるその表情には、最早迷いは無い。

その様子を見て、アンナも口元に笑みを浮かべた。
「フッ……貴様らっ! 何をボヤボヤしているっ!?」
凛子とクララへの檄だ。
「変身だ! こいつらまとめて、地獄へ送るぞっ!!」

そう叫ぶと、両手首にはめたブレスレットを胸元でカチンと音をさせて組み合わせる。

「エターナルチェンジ――イモデンジャー!!」

コールの終了と同時に両腕を前に突き出すと――。
アンナの体は、光に包まれた。
502創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:35:51 ID:n4tBP/ff
 
503創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:36:32 ID:CJ3dZPLo

504創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:36:42 ID:SURdgHjL
その光が消失すると、三人の姿がそこには無い。

「ムッ? 逃げたか!?」
「逃げるつもりなら、最初から来ないでしょう」
「怖くなったんじゃないの?」

口々に勝手な事を言う三人に、

「どこを見ている! ここだっ!!」
威勢の良い声が上がった。

悪の三人が立つ崖と向かい合う様にそびえる小さな岩山に、三つの人影がシルエットになって見えた。

一人は赤いコスチューム。
引き締まるような黒とのツートンのスーツは、膝までを覆う赤いレガースが印象的だ。
スパッツ風の黒い布地が太股のラインを際立たせる。
両手の赤いグローブには、ナックルパートの鋲と甲の部分にクロスする鎖が光った。
ヘルメットと素肌の肩口には、アラビア数字の“1”の文字が。
「レッドデンジャー!」

そして緑のコスチューム。
太股辺りまでを黒いニーソックスで包み、足首辺りまではハイカットの緑のシューズ。
腕も肩口近くまで黒いタイツ地で覆い、肘から先は緑の手甲を着けている。
僅かに覗いた肩の素肌とヘルメットの数字は“3”
「グリーンデンジャー!」

最後はピンクのコスチューム。
一人だけ短いスカート風なのが女の子らしい。
膝上まで白いブーツなのも、後の二人とは少し違う。
腕も白いタイツで覆い、肩とヘルメットの数字は“5”
「ピンクデンジャー!」

それぞれのポーズを決めた後、最後の仕上げにポーズを揃えると、
前の六人の時には無かった揃いの白いスカーフが大きく揺れる。

「悠久戦隊っ!」
「「「イモデンジャーっ!!」」」

ドカーン!!

三色の煙を巻き上げて、三人の背後から爆発が起こった。

「ああ……あーあ、やっちゃった」
「あの二人……本当に付き合いがいいですね」
「ちょっとカッコいいかも……しんない」

悪側は三人三様の感想を漏らしながら、半ば呆れた用に見つめる。
だが、イモデンジャーの三人は堂々とポーズを決め、迷いは見られない……はずだった。
505創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:37:30 ID:SURdgHjL
「きっ……貴様らーっ!!」
レッド=アンナは激昂する。
「ブルーとイエローだと言っただろうがっ! なんで色が変わってないのだっっ!?」
本気で怒りまくるその様子を見ながら、
「いやあ。グリーンだと思って、それに合わせて武器用意しちゃったんで」
「良いではありませんか。わたくしも、今更色を変えろと言われても馴染めませんし」
グリーン=凛子はヘルメットの上から頭を掻き、ピンク=クララは取り成すように言う。
それを黙って聞いていたレッドだったが、やがて――。

「くっくくく……はははははっ!」

突然笑い出すと、
「フン……まあいい。色の話は後だ」
そう言って、敵のいる眼下を見下ろす。
「今回が実質初めての戦いだ。負けて醜態を晒すなよ」
「もちろん……そのつもり!」
「思いっきり、やらせていただきますわ!」
変身前に持っていた日本刀を引き寄せるグリーン。
そして、両手に何やら長めのペッパー・ミルの様な物を握り締めるピンク。
それを見て取ったレッドは、鎖をジャラっと鳴らして拳同士をガチンと打ち付ける。

改めて気持ちの結束を確認したこの三人に、退くなどという選択肢はありえない。

「いくぞっ!」「はいっ!」「ええ!」
イモデンジャーの三人は、一斉に宙へと飛び出した。
黒一色に染まる、数の上では圧倒的に不利な戦場へと。

「どうやら、やるしか無いって?」
「仕方がありませんね」
「え? え? わたしも行くのぉ!?」

若干チームワークに不安を残しながらも、もう一方の三人も飛び出す。
地面に降り立ち、
「さあ戦闘員ども! やってしまって!!」
「ここを彼女達の墓場にするんです!!」
「ふえええ〜ん! もう知らないからぁ!!」
その声と同時に、黒い集団が動き出した。
506創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:38:03 ID:n4tBP/ff
 
507創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:38:16 ID:CJ3dZPLo
>「ちょっとカッコいいかも……しんない」

いやwwwwww
508創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:38:26 ID:SURdgHjL
「先に行きますっ!」
グリーンデンジャーが、駆ける。
左手に握った長大な日本刀の柄に右手を添え、抜き放つタイミングを計りながら。
「はあああああっ!」
気合一閃。

――フォンっ!

風を裂いて刃が煌めく。
正体を現したその日本刀は、ただの刀ではない。
四尺近い刀身と通常の倍はある柄を持つ、確実に遣い手を選ぶ一振りだ。
全長だと五尺近く。それを振るうグリーンの身長にも匹敵する。
俗に野太刀と呼ばれるそれは、かつて戦場で、馬ごと敵将を叩き斬ったとも言われる剛刀だ。
剃刀の斬れ味よりその重量を利した操刀法が、強烈な斬撃を生み出す。

横一線に薙いだ刃は、それを振るう者の身体も独楽の様に回すが――。
無理に止めはしない。
逆にそれを利用して、続け様に二撃目に入る。

黒い群集の間を駆け抜けるのに経過した時間はほんの一瞬。
最初の抜き付けで発生した慣性が収まり、緑の戦士がその動きを止める。

長くて重い刃が、ピタリと横一文字の位置で止まると――。
向かってくる一人を包囲する様に迫っていた戦闘員達は、ドサドサと一斉に崩折れた。
斬り倒した方は、それを目で確認する事もしない。
手応えで確信しているからだ。
それよりも、目を離せない相手が目の前にいる。
立ち上がり、ゴーグル越しに真っ直ぐ見据えた。

かつて、イエローデンジャーとして共に戦おうとしていた仲間。
今は敵側に廻ってしまった少女、鈴那である。
「……鈴那ちゃん……」
グリーンデンジャーが絞り出す言葉に、
「怖くない……怖くないもんね……」
普段は温厚なグリーン=凛子の事を知っているせいか、そう強がって見せる。
だが、今のグリーンが発している闘気を感じているのか、身体は震えていた。
その脅えぶりは端から見ていても可哀相なくらいではあったが、
「帰っておいで……って言っても、無駄なのよね? 多分」
グリーン=凛子は、そんな見た目には騙されない。
むしろ逆だろう。
脅える人間が、自分の身を守るために起こす行動がどのように働くか。
それは誰にも予想出来ないものだ。
ましてや目の前の少女は、その能力を認められて一度は戦うための仲間となった存在。
油断は出来ない。
「知らないっ! わたし悪くないもんっ!!」
鈴那は叫ぶ。
確かに、今ならまだ悪いと言うほどの事はしていない。
だが、今彼女がいる組織は、日本を恐怖のどん底に陥れようと暗躍する悪の組織なのだ。
このまま黙って見過ごす訳にはいかない。
「仕方が無いね。あたしも戦いたくないんだけど」
グリーン=凛子は、長大な刃を右肩に担ぎ上げた。
その重みがズシリと掛かる。
鈴那は懐から取り出した携帯ゲーム機を、震える手で開いた。
やる気だ。
少女達は、相手の動きに注意を払いつつその秘めた力を蓄積しはじめた。
509創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:38:46 ID:CJ3dZPLo

510創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:39:04 ID:n4tBP/ff
 
511創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:39:23 ID:cv8Otmhk
  
512創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:40:20 ID:SURdgHjL
ピンクの少女が、群衆の中へと身を躍らせる。
両手に持った棒は、粒の胡椒を入れて必要な時にそれを挽く容器にも似ているが――。
それとは違うが、実際に調理器具の名で呼ばれている物だ。
それを棍棒の様に振るって敵の足元を払い、腹に突き込み、上段から叩き伏せる。
だが。
「――やはり、一人一人お相手していたのでは埒が明かない、と言う事ですわね」
何人目かもわからなくなった相手を大地に叩き伏せたところで、ピンク=クララは周囲を見渡した。
すっかり囲まれている。
全員が手にしているのは、短い両刃の直剣。
口々に「ギギギギギ……」などと恐ろしげな声を上げているが、
「あら。わたくし存外殿方に人気……と言う事なのでしょうか?」
などと、とぼけた事を言ってみせた。
見た目に反して、この状況でも動じない心の強さを持っている。
「でも困りましたわ。わたくしこれで、お相手にはうるさい方ですのよ」
ヘルメットから覗いた口元が、不敵に歪む。
そして、遠巻きにこちらを覗っている戦闘員達に対して、
「遠慮なさらずに、どうぞ傍までおいでなさいませ。素敵な贈り物がありますわ」
大胆にもそんな事を言った。
それが引き金になったか、

黒い人影が、津波の様に押し寄せる。
手が突き出され、どんどん狭くなってゆく円周の真ん中で微笑んだピンクの少女は――。

一瞬で掻き消えた。

「!?」
あまりに唐突の事に、とっさに動きを止めた戦闘員達の真ん中に、

――ゴトゴトッ!

重い音を立てて投げ込まれた物がある。
それはさっきまで、ピンクデンジャーが棍棒の様に使っていた二本の棒。
さらに、それに引き続いて、

――ドスッ!

先端の部分だけを六つ、まるで花びらの様に針金で周りに括りつけた同じ棒が投げ込まれる。
その首には、本当に花束の様にピンク色のリボンが結ばれていたが。
それが地面でバウンドした、その瞬間。

ドドドドカーン!

まるでタイミングを計った様に、その棒はその場で一斉に爆発した。

513創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:40:24 ID:CJ3dZPLo

514創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:41:11 ID:CJ3dZPLo

515創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:41:18 ID:SURdgHjL
ピンクは棍棒の様に使っていたが、これは実は棍棒などでは無い。
日本での正式名称・二十四式柄付き手榴弾。
第二次大戦中、ドイツで採用された携行式の手投げ爆弾だ。
結束して使うと、戦車の履帯でさえ破壊出来ると言う強力な爆薬である。
その外見から“ポテトマッシャー(ジャガイモ潰し)”などとも言われるが――。
文字通り、ジャガイモと言うよりも、トマトの様に敵を潰す。

一塊になっていた戦闘員達は、一斉に吹き飛ばされた。

爆発の煙と砂埃で霞む場所に、ピンク色の戦士が降り立った。
「わたくしからの手向け、お気に召していただけたかしら?」
そう言って、まだ視界がハッキリしない先に視線を向ける。
徐々に晴れてゆくその場に立っていたのは、
「やはり……危険なのはアンナよりあなただよ、クララ」
頭には角。背中にはコウモリの羽根。
露出の多い黒いコスチュームに身を包んだ、少し大人びた少女だ。
「それはどうも。あなたには負けると思いますけれど」
そう言うピンク=クララも負けてはいない。
「個人的には恨みも何も無いが――因縁だな」
かつてブラックデンジャーと呼ばれた少女・リーザが言う。
その因縁は、半世紀以上前に彼女達とは関わり無いところで生まれた物だ。
だが。
彼女達にとっては、戦うに充分な理由でもある。
「では、はじめましょうか。ドイツ対ソ連の……新たなる戦いを」
相手の言う事を全て察し、クララも応じる。
「今度は――雪の味方は期待できなくてよ!」
「なんのっ! どこで戦おうと一緒だ!!」

二人の少女は、互いに相手の出方を覗い始めた。
516創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:42:24 ID:CJ3dZPLo
意外な組み合わせだの
517創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:42:35 ID:SURdgHjL
「おおおおおっ!!」
レッドデンジャー=アンナが叫ぶ。
握り締めた両の拳が、走る動きに合わせてブレながら、甲の部分でクロスする鎖を鳴らした。
高速で移動しながら、軽やかなフットワークで左右に動いて敵を翻弄しつつ、敵の顔面に拳を、腹に脚を叩き込む。
このような乱戦で、ハイキックなどは使わない。
華美な技は廃し、確実に相手を叩き伏せてゆく。

それでも、敵の攻撃は止む気配が無い。
肉体のみを武器とするレッドを軽く見たか、間髪を入れない猛攻だ。
右手に持った剣を振り下ろし、横に払い、或いは突き。
それらを的確に捌きながら、赤い戦士は突き進む。
だが、以下に歴戦の戦士と言えど、集中力は無限ではない。

(――しまった!)
背後から振り下ろされた剣に気付くのが遅れ――。
交叉した両手の甲で、まともに受け止める事になってしまった。
鎖がガッチリ噛みこんで、その刃を防ぐが、
「……くっ!」
上からのしかかるその力に、レッドは思わず声を漏らす。
そこにワラワラと他の戦闘員も集まり、黒い山になったかと思われた――その時。

「でりゃああああああああっ!!」

レッドデンジャーの絶叫が響いた。

――ドオッ!!

轟音と共に沸き立った砂埃の中から、一瞬巨大な黒い握り拳の様な物が見えたが――。
一斉に跳ね飛ばされた戦闘員が地面に投げ出され、視界が晴れた時には、そこに立っていたのはレッドデンジャーただ一人であった。
「ふふん。ただの戦闘員にしては、なかなかやるではないか」
最後は危なかったが、それでも息一つ乱してはいない。
さすがに少しは身体にも攻撃を受けたらしいが、それは彼女の弱さではなく、戦闘スタイル上仕方の無い話だろう。

群がっていた戦闘員達は一人残らず地面に倒れ、倒した当の本人もそれには目もくれない。
彼女がゴーグルの奥から見通すその先には――。

長い白髪を揺らす、黒衣の少女の姿が見えた。

「……まったく……戦い方まで野蛮な人」
元ブルーデンジャー・真子は呟く。
いかにも、こういう振る舞いが気に入らないと言った風情だ。
だが。
「自分は奥で見ているだけで、戦う者は道具扱い。これも美しいとは言えぬわな」
返すレッドの言葉は冷静だ。
元々真子の戦闘スタイルは承知していたが、改めて見るとそのやり方には不満が残ると言った様に見える。
敵味方に分かれたのは、ある意味必然と言えるかもしれない。
互いが互いのやり方を気に入らないのだから。
となれば、後の展開は一つ。
「サナコ……貴様の鼻っ柱、我が拳で砕いてくれる」
「こっちこそ……あなたを五体満足ではいられなくしてあげる」

二人の闘気は、見る間に膨れ上がっていった。
518創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:43:37 ID:cv8Otmhk
 
519創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:43:47 ID:SURdgHjL
――今っ!!
覚悟を決めたグリーンデンジャーが、野太刀を担いだまま一気に駆け出す。
スーツの力で瞬間的な加速力が強化されているが、元々グリーン=凛子は動きが素早い。
「――ひいっ!?」
それを見て、鈴那は悲鳴に近い声を上げた。
そして反射的に、手にした携帯ゲーム機のパネルをタッチする。

ドカーン!

グリーンが疾る足元が、突然爆裂する。
高速で移動している為間一髪避けている状態だが、
「……くっ!?」
その予測不可能な攻撃を受けている方はヒヤヒヤものだ。
別にあらかじめ地雷などが仕掛けられている訳ではない。
鈴那はグリーンと自分がいる場の大地を、手にした携帯ゲーム機を介してコントロールしているのだ。
爆発させる方はゲーム感覚でも良いのかもしれないが、それで吹っ飛ぶかもしれない方は堪らない。
「えいっ! えいっ! 死んじゃえっ!!」
ゲームと違い思うに任せないからか、鈴那は苛立ちを感じている様だ。
今足がある位置をクリックしても、爆発した時にはもう相手は動いている。
先読みしても、爆発した瞬間相手は軌道を変える。
ゲームの様にプログラムされた動きではないのだから当然だ。
「いやあああああっ!!」
相手に肉薄し、担いだ刀を振り上げる。
「きゃあああああっ!!」
グリーンの余りの迫力に、鈴那は慄きの声を上げつつ――タッチペンを画面に押し付けた。

長大な凶器が振り下ろされるのと、グリーンの直下が爆発するのがほぼ同時。

「わああああああっ!」
「いやあああああっ!」

二人の姿は、もうもうと沸き起こる煙に掻き消えて、見えなくなった。
520創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:44:27 ID:CJ3dZPLo

521創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:44:39 ID:SURdgHjL
かつて繰り広げられた戦場からは遠く離れた日本の荒野で、
再び時を超えた戦いが始まろうとしている。
向かい合っているのは、ピンクで全身を覆う少女と、肌の露出の多い黒服の少女。
もはやこの二人の間に、余計な言葉は要らない。
互いが互いの動きを見切ろうと、注意深く覗っている。
二人とも武器は手にしてはいないが――。
お互いが判っている。
そんな見た目に騙されてはいけないと。
「……ふっ」
リーザの顔に笑みが浮かび、
「…………」
ピンク=クララも口元をほころばせると、
二人は同時に動いた。

駆け出すピンクに対し、リーザは人差し指を立てた右腕を振るう。
その指からは電撃がほとばしり、鞭の様にピンクを襲うが――。

紙一重で避けながら、ピンクは距離を詰める。
動きながら両手に持つのは“ポテトマッシャー”
柄の端の蓋を最初から外し、中に入っている紐を指にかけて投げる。
こうする事で、中ではマッチの様に摩擦で着火され、爆発させる事が出来るのだ。
走る足の動きは止めず、左右に動きながら、次々と投げる。
もはやリーザも、どこからそれを取り出しているのかなどと問う事はしない。
ただ電撃を繰り出しつつ、ピンクの投げる手榴弾を避けるだけだ。
手数が増えれば増えるほど視界は悪くなっていくが、躊躇ってはいられない。
何度目かの攻防を繰り返しつつ、リーザは前に飛び出した。
敵が放つ爆薬で巻き上げられる土埃を隠れ蓑にして、一気に間合いを詰めようと言う算段だ。
視界を遮る靄の中に飛び込み、敵の姿を捉えようとした――その時。

目指す敵は、目の前にいた。
宙に身を躍らせたリーザと同じ高さ。
それも手の届く距離に。
だが。
ピンクの手には、凶悪な武器がある。

対戦車用無反動砲・パンツァーファウスト。
ただの筒の先端に破壊力抜群の成形炸裂弾を取り付けただけの、強力な歩兵用火器だ。
すでに安全装置を兼ねた照準器は立ち上がっており、いつでも発射できる状態なのが判る。
それがリーザの胸元にピタリと狙いを付け、避けようが無いほどの至近距離にあるのだ。。
「……辛抱強くないあなたならば、必ず前に出てくると思いましたわ」
狙いをつけつつ、ピンクは籠もった声で冷ややかに言う。
首に巻いたマフラーで口元を覆っているのだ。
「フッ……読み合いでは私の負けか……だがっ!!」
リーザも腕を一振りだけで、必殺の一撃を放てるのだ。
電撃が早いか、
それとも引き金を引くのが早いか。

勝負を決めるのは一瞬。

リーザの指からは激しい電光が走り、ピンクデンジャーのマスクを砕く。
と、同時に。
ピンク=クララの指は確実に引き金の操作を終えている。
最早自殺行為に等しいこの距離で、互いの必殺の一撃を放った二人。

空中で起こった激しい爆発は、その後の二人の安否確認を困難にする物であった。
522創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:45:05 ID:CJ3dZPLo

523創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:45:54 ID:CJ3dZPLo

524創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:45:57 ID:SURdgHjL
「これで戦闘員を倒したと思うあなたの認識は……甘い」
真子はそう呟くと、倒れ伏す無数の黒い人間達に眼を向けた。
「立ち上がりなさい! 敵を倒すまで、あなた達は死ねない!!」
バッと手を振ると、非情な叫びを上げる。
その声に従うかの様に、レッドが倒したと思っていた戦闘員達は、ゆっくりと身を起こし始めた。
全身を包む黒いコスチュームのおかげで、破裂した様な者はいないが……。
レッドとしては、再起不能な状態まで容赦なく叩き伏せたはずだった。
これが人間ならば……だが。
「……傀儡か……」
レッド=アンナは、戦っていた相手の正体を悟った。
そう。
道具の様に使うのではなく、文字通り道具だったと言う事だ。
真子の単独の戦闘力は、そう大した物ではない。
だが、群体を操って戦うのは得意だ。
まさかただの人形を使うとは思っていなかったが。
「やはり……気に入らん!」
レッドは拳を握り締めた。
「戦いと言う物に対する考え方の違いです。気に入らなければそれで結構」
言われる方は動じない。
気に入らない相手を否定するには――。

全力を持って叩き伏せるしか、道は無い。

下げた拳をギュッと握り締めたレッドに、復活した戦闘員が一斉に襲い掛かった。
「調子に乗るな雑魚以下共があぁぁぁっ!!」
もう遠慮はしない。
そんな気迫が、レッドデンジャーから噴出する。
相手はそんな物に圧されたりはしない。
だが、レッド=アンナは構う事無く、そんな相手に対しても拳を振るう。
それで怒りをさらに増幅させようとでも言う様に。

拳を、裏拳を、肘を膝を足を。
五体の全てを振るって戦う赤い戦士の姿は美しい。
「……まるで阿修羅ですね」
武器を持たず、たくさんの敵を相手にするとも怯まず向かってゆく闘神。
その姿を重ねてみる真子にも、美しさだけは伝わっているのだろうか。

「くっくくく……」
満足そうな声が自然に漏れた。
「さあ、貴様のオモチャは全て壊した。後は貴様自身だけだ」
そう叫ぶと、レッドデンジャーは駆け出す。
判っているのだ。
これだけで終わる訳が無い。
だが、この辺りで元を叩いておかなくては、終わりの無い戦いになってしまう。
だから、ここで終わらせる。

525創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:46:10 ID:n4tBP/ff
 
526創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:46:41 ID:SURdgHjL
「……これで終わりな訳がないじゃない……」
そう呟く真子の足元の地面が、ボコボコと音を立てて盛り上がり始めた。
新たな戦闘員の出現だ。
だが、レッドの足は止まらない。

「行くぞっ! インフィニティ――ナッコォっっ!!」

振りかぶったレッドの右拳の鎖が弾ける。
これは単なる装甲代わりではないのだ。
装着者の意のままに動き、自在に形状を変える精神感応金属製のチェーン。
どこに収納されていたのか、長く引き伸ばされた鎖が、自らを絡める様に一塊になると、巨大な何かを形成する。

それは黒光りする、巨大な拳だ。

レッドの動きをトレースするかの様に、それは見事な拳を作っている。
先ほどレッド一人を圧し包むように襲ってきた戦闘員達を一斉に弾き飛ばしたのもこれだ。

「技まで野蛮……」
そう言って、新たに生まれた戦闘員を盾にしようというのか、自分の前に立たせる真子。
「そんな物……無駄だっ!!」
レッドは怒りをさらに高め、右腕を突き出した。
盾となった戦闘員もろとも、殴り倒すつもりだ。
大気を押し退けながら迫る巨大な鉄の拳を、戦闘員の一体が避けた。
そしてそのまま――剣を構えてレッドに迫る。
「――しまった!?」
気付いた時にはもう遅い。

真子がいた場所を、レッド=アンナの拳が叩き割るのとほぼ同時に、
レッドの胸は、戦闘員の剣によって貫かれていた。

土埃が舞い上がり、視界が塞がれる。

二人の安否は、窺い知る事が出来なかった。
527創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:47:48 ID:CJ3dZPLo

528創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:48:05 ID:SURdgHjL
     ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「なんだこれはっ!」
再びアンナの絶叫が書庫に響いた。
「これでも、アンナさんのご要望には沿ったつもりなのですけれど」
クララは戸惑いながら返答する。
「なんだか妾だけが目立っているという感じではないなあ」
クララとしては、今小さな女の子達の間で流行っているらしいプリティでキュアキュアなアレを想定して書いたのだが……。
どうやら集団では駄目らしい。
「戦いがなかなかハードなのは良い。だが貴様らも妾並に目立ちすぎだ!」
アンナの言う「貴様ら」というのは、クララと、おそらく凛子もだろう。
確かに同じ敵と戦う仲間として、登場させている。
だが。
ハードな戦いとはなんだろう?
クララには書いた覚えが無い。

「……はあ、少し休ませてくださいな」
目元をを押さえつつ、お嬢様は席を立つ。
今日はずっと座りっぱなしだ。
側に控えるメイドにお茶を淹れてくれる様に頼み、窓から外を眺めた。

この街は平和だ。
出来れば、このまま続いてくれれば良いと思う。
だが、それはおそらく叶うまい。
この街に、自分と同じ様な存在が集まってきている以上、それはあり得ない。

「ねえアンナさん、次は時代劇ってどうですか?」
不意に声が響いた。
もう一人の客、薬丸凛子だ。
「あー、日本のサムライムービーか? 妾はあまり知らんのだ」
「一度見てみてくださいよ。面白いですよ」
クララが物語を書いていて、それにアンナが不満を漏らしているという事を知ってか、好きな事を言う。
書くのはこのドイツ人少女なのだが。
「わたくしも、ジダイゲキと言うのは存じませんわね。勉強しておきます」

529創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:49:27 ID:CJ3dZPLo
プリティでキュアキュアかーw
530創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:49:51 ID:SURdgHjL
「次はアレだ、恋愛物なんてどうだ?」
アンナの発言も勝手だ。
大体、恋愛と言うなら相手が要る。
この永遠の人外少女に、相応しい相手がいるのだろうか?
「お相手は、どのような殿方がお望みなので?」
クララは問い返す。
作り話なのだから、相手は何とでもなる。
だがこの際、アンナの男性の好みくらいは知っておきたい。
「ふむ……改めて訊かれると困る物だな」
そう言って、同じ席に着いたセーラー服少女に眼を向ける。
「え? え?」
アンナの視線を追って向けられたクララの注目も浴び、凛子は戸惑った。
「貴様くらい判り易ければ、クラリッサも苦労はするまいよ」
「そうですわね。リンコさんはとっても判り易いですわ」
「なっ……何言ってるんですか二人ともっ!?」
凛子は顔を赤らめて大声を上げる。
「貴様は“お兄さん”がいれば良いのだろう?」
アンナはニヤリと口元を歪める
「なっ……なっ……何をっ……!?」
「そうですわね。では今度は、リンコさんを主人公に恋愛物など書きましょうか」
クララもアンナに合わせて、済ました顔でノートパソコンを開く。
「わっ! わわわわーっ!! やめてっ!」
からかう二人に、凛子は堪らず声を上げた。

お嬢様の処女作品は、まだ仕上がりそうに無い。



――終――
531創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:50:33 ID:CJ3dZPLo
大作乙カレー
532創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:53:30 ID:SURdgHjL
えー、支援ありがとうございました。
これで終わりです。

今回のこのSSはネタバレの心配はまったくありません。

エ イ プ リ ル フ ー ル 用 の 嘘 S S で す か ら w

ですので、安心して読んでくださいませ。

では、ノベルゲーム“immortal maidens―しなないむすめ―”
よろしくお願いいたします。

では、失礼しまーす。
お邪魔しました〜。
533創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 00:56:34 ID:CJ3dZPLo
>>460,462,463,466,469,477,478,481,485,487,491,494,495,498,501,504,505,508,512,515,517,519,521,524,526,528,530

お疲れさまでした
534創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 07:23:17 ID:CJ3dZPLo
535創る名無しに見る名無し:2009/04/01(水) 16:26:13 ID:BE1toEdN
ちょっと宣伝。
私の方も4/1という事で、SS投下してみました。
少しだけ、トゥインクル・オーガストともう一人参加です。

ttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1223547316/l50

作品の形式上、ここには投下出来なかった物で……。

536創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 11:22:21 ID:nczxPm6q
エイプリルフールおそるべし……gkbr
俺もう何を信じていいのかわかんないよ>< ともあれ、いもでん期待してますw
537まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/04(土) 19:46:06 ID:Fctp2VNR
炎術剣士まなみ第十六話投下します。
538まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/04(土) 19:46:57 ID:Fctp2VNR
炎術剣士まなみ 第十六話『裕奈アイドルデビュー!』

 裕奈とまなみは原宿でアイスを食べている。伊織は幼稚園のボランティアで
二人にはついていけないので、今日は二人で適当にブラブラしているところだ。
「アイスおいしいね〜」
「何食べてもあんたは美味いって言うじゃん。まあ、青空の下で食べる
アイスってのは悪くないわね」

アイスを食べ終わり、買い物にでも行こうと二人同時に立ち上がった瞬間、
スーツを着た女性がこちらに向かって歩いてきた。
彼女はジトーっと裕奈のことを品定めするように見る。
「えーと…お姉さん?」
「あなた…水術剣士の水無瀬裕奈さんよね?」

「うん、そうだよ。で、あたしになんか用?てゆうか、お姉さんだぁれ?」
「おっと、申し遅れたわね。私はこういうものです」
彼女が胸ポケットから名刺を取り出し、渡す。
「まつたけ芸能プロダクションマネージャー…深沢紗枝さん?
そこのマネージャーさんがどうしたの?」

「よくぞ聞いてくれました!私はね、裕奈さん。あなたにアイドルとしての
素質があると思うわけよ。ま、早い話があなたをスカウトしようと思ってね」
「ん…それってつまり…」
名指しされた裕奈も横から聞いてたまなみもキョトンとした顔で、お互いを見る。
そして次の瞬間に飛び上がるかのような勢いで驚いた。

「裕奈がアイドルデビュー!?で、でもなんで裕奈なんかにアイドルの素質があるなんて」
「まなみちゃん!裕奈『なんか』ってなによ!」
「ふふ、水無瀬裕奈さんは小柄な体躯ながら、超大食い!超怪力!そのギャップが
いけると私は踏んだわけよ!時代はギャップ萌えって奴なのよ!」
まるで自身がタレントかのように大げさな素振りで言う紗枝。
本当にその判断が正しいのか、まなみは疑わしく思うのだった。
539まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/04(土) 19:47:38 ID:Fctp2VNR
その晩。まなみの自宅に伊織が来訪してきた。
「…それで、裕奈ちゃんはその話は受け入れたんですか?」
「面白そうだって、その場でOK出しちゃってた。今は、事務所にその
マネージャーさんと一緒に出向いてるところ」
「裕奈ちゃんがアイドル、ねぇ…でも、裕奈ちゃんじゃ大食い企画ぐらいしか
活躍できなさそうですよね」

軽く毒突く伊織。その表情は全然悪いとは思っていない。二人はお茶を飲んでいる。
しばらくすると、家のチャイムが鳴り、まなみが玄関に向かうと、裕奈の姿が。
「こんばんは〜!まなみちゃん、あたし明日からさっそく芸能界入りだよ!」
「はや!…まあ、とりあえず上がって話を聞かせてよ」
靴をひょいっと脱ぎ捨て、リビングへまなみと一緒に向かう。

裕奈は興奮していつも以上に落ち着かないでいる。
「あのねあのね!歌が主役でご飯も食べ放題なの!」
「裕奈ちゃん、支離滅裂だよ。ちょっと落ち着いて、ね?」
伊織が諭し、裕奈にお茶を飲ませる。それを一気に飲み干しようやく少しは
落ち着いてきたようだ。
「ええとね、あたし、歌手やるんだって!」

「裕奈が歌手ねぇ…童謡とか?」
「むぅ〜またそうやって!ちゃんとした奴だもん絶対!」
頬を膨らます裕奈。どうやら、まだ、どんな歌を歌のかは分からないようだ。
「まあ、デビューするなら頑張ってね、裕奈ちゃん」
「うん!任しといてよ!」


次の日、これからのことを決めるため、裕奈は再び事務所に出向くことに。
それを見送るまなみと伊織。裕奈を迎えにマネージャーの紗枝の車が到着した。
「まなみちゃん、伊織ちゃん、またね」
「うん、頑張ってね、裕奈」
走り出した車を見届ける二人。
「裕奈がアイドルか…まあ、いくらなんでも大ブレイクってことはないよね…」
540まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/04(土) 19:48:29 ID:Fctp2VNR
そんなことを考えていたまなみ。しかし、一ヶ月後に予想に反した
出来事が起きるのであった。その日は裕奈のデビューシングルの発売日である。
「うぅ…一生懸命歌ったけど、どうなるのかなぁ」
発売イベントとして、渋谷の大型店で自ら売り、サインも書くことになった裕奈。
この一ヶ月、歌のレコーディングが終わった後は、CMやらネット配信やら
テレビ出演やらで剣士としてではなく、アイドルとしての知名度を少しづつ
上げていった裕奈。

しかし、本人にとっても未知の世界である。細かいことは気にしないつもりでも
やはり不安が募っていく。そしてお店の開店時間となった。
裕奈が恐る恐る、店の入り口へと目をやる。その光景にまさに開いた口が
塞がらない状態の裕奈。店の外には大勢の行列が出来ていたのだ。
「いやいや。目的はあたしじゃなくて、別の誰かの曲かもしれないし…」
いつもと正反対のネガティブシンキングな裕奈。

しかし、そんな思いも数秒で消え去った。行列は雪崩の如く、裕奈のいる
カウンターへと突き進んでいったのだ。
「み、水無瀬裕奈ちゃん!本物だぁぁぁぁ!!」
「握手してください!サインもください!」
「ゆうなぁぁぁ!!ゆっ、ゆあぁー!ゆあああ!!」

完全に興奮しきっている裕奈ファンの皆さん。それに応えず呆然としている裕奈。
「こ、こんなに来てくれるなんて…」
後ろからマネージャーに呼びかけられ、裕奈はハッとなりようやく応対し始める。
「えっと…あたしのCD買いに来てくれてありがとうございます!」
一人一人のお客に、礼を述べ、握手したりサインしたりとぎこちなくも
こなしていく裕奈。CDは僅か30分程で完売しきった。

その日を皮切りに裕奈は、着々とメディア露出が激しくなっていった。
クイズ番組に出て、食べ物と漫画、ゲームの知識だけは豊富なとこを見せつけたり
ドラマのゲストで不本意ながら小学生役をやらされたり、
そんな嫌な仕事も来たが結局やってるうちに、どうでもよくなっていった。
541まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/04(土) 19:49:27 ID:Fctp2VNR
まなみと伊織はテレビで月面都市グルメ店めぐりをしている裕奈を見ている。
「まさか本当にここまで引っ張り蛸になるとは思わなかったわ」
苦笑しているまなみに、伊織が小声で話し出す。
「でも…最近は出てきてないですけど、次元鬼が出てきたら
どうするつもりなんでしょう…」

「…あまり聞きたくはなかったけど…でも、その辺ははっきりさせなきゃいけないか…」
まなみは裕奈の携帯に電話をするが、電源が切れてるのか、繋がらない。
仕方なく、メールで明日、直に会うように連絡しておくことに。
「なんだか嫌な予感がします…」
伊織がぼそりと呟いた。


次元魔城。玉座の間のモニターにアイドル活動している裕奈の姿が。
そしてそれを何か悔しそうな表情で見ているスクリタ。
「むぅ〜!なんで裕奈みたいなガキンチョがちやほやされてんのよ!」
「スクリタ。なぜあなたが裕奈に嫉妬してるのよ。どうせ、そのちやほやしてるのも
滅ぼすか、下僕にする運命の人間ども。それにあの類の人気は一過性よ、きっと。
放っておけば、勝手に消滅するわよ」

ベルディスが諭すが、それに頬を膨らまして反論するスクリタ。
「ダメなの!今、あいつをケチョンケチョンにしてやらないと気が済まないの!
お姉さまぁ、次元鬼なんでもいいから作ってくださいよぉ〜!」
駄々っ子のようにしているスクリタに手に負えんとばかりに部屋から出て行こうとする。
「分かったわよ…明日、好きに暴れてきなさい。やるからには確実に
裕奈を仕留めてきなさい」

そう言って、部屋から出ていくベルディス。残されたスクリタは
明日、どんな風に嫌がらせしてやろうか考えほくそ笑んでいた。
「明日は…へぇ、裕奈の奴、生意気にもライブなんかやるんだ。じゃあライブ会場に
来たあいつのファンどもを皆殺しにしちゃうってのが面白いかも」

翌日。まなみと伊織は、特別に設置された裕奈のライブステージの控室に
来ていた。そこの水無瀬裕奈様と張り紙されている扉を開ける。
「失礼します…裕奈!」
「まなみちゃん、伊織ちゃん…今日はどうしたの?」
二人が会いに来たというのにそっけない態度の裕奈。
542まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/04(土) 19:50:09 ID:Fctp2VNR
「何って、メール見なかった?次元鬼との戦いはこれからどうすんのって話よ」
「…なんだ、そんなことか。あたしね、剣士はもうやめる」
興味を示さないどころか、剣士をやめるとさえ言いだす裕奈に伊織が
詰め寄り、思わず頬をぶつ。
「裕奈ちゃん!また次元鬼が暴れだしたら、アイドル活動どころじゃないんだよ!」

頬を抑える裕奈。少しの間をあけると裕奈が俯いたまま口を開く。
「…伊織ちゃん…だって、あたし、せっかくアイドルになれたんだもん!
それを手放したくないんだよ!」
しばしの沈黙のあと、まなみがそっと裕奈の肩に手をやる。
「わかった、わかったよ裕奈。戦いたくないならそれでもいい。だけど、アイドルも
剣士も、あんただけの問題じゃないのよ。それを覚えといて…じゃあね」

まだ何か言い足りなさそうな伊織を引っ張り、まなみは控室を後にした。
裕奈は体育座りで黙りこくが、しばらくすると紗枝がライブ開始の時間が
近いと呼びに来た。
「さあ、裕奈さん。あなたにとって初のライブね。頑張って成功させましょう」
「う、うん…」


客席はすでに満席で、ざわざわとしている。そして開演まであと、五分を
切ろうとしていた時、ステージの中心にドス黒い光が現れた。
そこから、恐竜のような姿をした次元鬼とスクリタが出てくる。
「ふふん、ここが裕奈のライブ会場かぁ!これから台無しにしてやるんだから!」
突然、ステージに現れたスクリタに裕奈のファンは驚くも、すぐに怒りの目を向ける。

「次元鬼だ!裕奈ちゃんのライブを邪魔する気か!」
裕奈LOVEと、書かれた鉢巻きをしている青年が声を上げる。それに続き
でっかくYUNAと書かれた旗を振っているボディビルダーな体型のごついおじさんが叫ぶ。
「裕奈ちゃんのライブを台無しにはさせないぞぉぉ!!」
次の瞬間、恐竜型次元鬼に裕奈ファンが突撃する。

「ちょ、あんたたち馬鹿じゃないの!?ま、殺す手間が省けるだけか。
ティラノファイター!やっちゃって!」
ティラノの名に相応しい力で、押し寄せるファンをポイポイ投げ飛ばしていく。
「みんな!水心変幻!!」
そこに駆け付けた裕奈。変身して、ティラノファイターに挑みかかる。
543まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/04(土) 19:51:24 ID:Fctp2VNR
ファンの一人を掴み掛かっていた腕を斬りつけ、助けだす。
「みんなで楽しもうとしていた時に、それを邪魔する次元鬼!
水術剣士、水無瀬裕奈が叩きのめすんだから!」
見得を切った裕奈は斬撃を浴びせていくが、それを物ともせず、次元鬼は
裕奈の右肩に鋭い牙で噛みついてくる。

「うあぁぁぁぁ!!」
あまりの痛みに悲痛な叫び声を上げ、その場にガクリと崩れる裕奈。
肩から血が流れ、刀を握る手から力が抜け始める。
「あはは!裕奈ぁ、ここで終わりかなぁ?あんたを始末したらあんたのことが
大好きな人間どもも寂しくないように同じとこへ送ってあげるよ」

スクリタの嘲笑が響き、裕奈は立ち上がろうとするも、次元鬼に踏みつけられてしまう。
「裕奈ちゃん!…頑張れー!」
「負けるなぁぁ!裕奈ちゃぁぁん!」
応援コールが次第に大きくなっていき、それに元気づけられたか、裕奈が
再び立ち上がろうとする。しかし、踏みつけは強く傷ついた裕奈の体では
起き上がるのは至難の業であった。しかし、次の瞬間、赤と黄の閃光が走る。

それはティラノファイターを押しのけ、裕奈を救いだした。
「うぅ、まなみちゃん…伊織ちゃん…」
二人は剣士の姿で、まなみは裕奈をお姫様だっこし、伊織は裕奈の肩に
気力を注ぎ、応急処置を施した。
「ごめんね、二人とも…あたし、調子にのってた…」

「気にしないの。裕奈、戦えるよね?」
「…うん!」
笑顔になると、立ち上がり、次元鬼の方へ向く。
「いつもいつも空気も読まないで、みんなに酷いことして許さないんだから!」
刀に水の気を纏わして、水平に構え、横払いに振り抜く。

「水迅光波斬!!」
刀から水の気がかまいたちのように放たれ、それはティラノファイターを
斬り裂きながら、大きく吹き飛ばし爆発した。
「裕奈、あんたは次こそ消すからね!覚えときなさいよ!」
スクリタが消えると、裕奈は笑顔を観客に向け、歓声が沸き上がった。
544まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/04(土) 19:52:47 ID:Fctp2VNR
ライブが終了し、裕奈はファンのみんなへと声を掛ける。
「みんな、今日は来てくれてありがとう。でも、突然だけど…
みんなとは今日でお別れです」
裕奈の台詞に騒然となり、紗枝も思わず、飛びだしてくる。
「ちょっと、裕奈さん!どういうつもり…」

紗枝を制止し、裕奈は話を続ける。
「アイドルは楽しかったし、ファンの人たちも大好きだよ。だけど、次元鬼は
あたしが何してようが関係なく襲ってきて、それでみんなが危険になるのが
嫌だと思ったの。だから…」
その言葉に観客はしばらく困惑してるような状態だったが、一人一人
思い思いのことを言っていく。

「裕奈ちゃん!また会える時まで頑張ってくれ!」
「俺たちはいつまでも応援してるぞ!」
「そうだ裕奈ちゃん!次元鬼退治が終わったら必ず戻ってきてくれよ!」
裕奈コールが響き渡り、会場に響き渡り、裕奈はいつの間にか
涙を流し、「ありがとう」と何度も呟いた。

「裕奈さん、こんなこと本来なら許されないんだからね。早く次元鬼を倒して
そしたら、また一からやり直しよ」
「…うん、ありがとう紗枝さん!」
紗枝は厳しい表情だったが、穏やかにそう言った。
そして、アンコールが響き、裕奈は最後の一曲を歌い始める。
ライトアップで裕奈の姿は光り輝いて見えた。


次回予告「まなみです。次回は次元鬼もいよいよ業を煮やしたのか、
巨大な戦艦で日本を攻撃する気らしいの。そんなの黙って見過ごせないって。
でも地上には再生次元鬼軍団がいっぱい!伊織、戦艦を叩き潰すのは任せたよ!
次回『一点突破!稲妻の嵐』…伊織の様子のなんだかおかしいような…
でもいつもこんな感じかもね」
545まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/04(土) 19:54:39 ID:Fctp2VNR
第十六話、投下終了です。地味に宇宙設定出してみたりw
546創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 22:02:40 ID:j949Kq9L
投下乙です。アイドルよりも剣士を選んだ裕奈は
偉いけどちょっと可愛そうかもね。
ファンの人達、無謀過ぎるw
547 ◆vGw/wR461o :2009/04/12(日) 18:45:59 ID:U8dVMWGg
お邪魔します。
ゆゆる作者様にご相談があります。

当初ゲーム化企画を進めていた裸G男氏が音信不通のため、
繋ぎとしてFlashによる実装バージョンの製作を初めてみております。

開発中URL
http://nonchang.web.fc2.com/souhatu_yuyuru2/

本来裸G男氏が利用許諾を確認されたプロジェクトであり、
僕自身が許諾頂いた訳ではないので、継続して問題ないかどうか
確認させて頂けると幸いです。

スレ汚し失礼いたしました。
548 ◆vGw/wR461o :2009/04/12(日) 18:55:42 ID:U8dVMWGg
スレ提示忘れてました。重ねてスレ汚しすみません

創作発表板に投下されたSSをゲーム化するスレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1237278391/
549創る名無しに見る名無し:2009/04/17(金) 18:55:18 ID:rHdMbfVH
ヤンデレ完成しました
原案を下さった>>113氏と>>114氏、ありがとうございます

それでは投下します
550ヤム   1/12:2009/04/17(金) 18:56:30 ID:rHdMbfVH
 夜の8時を廻った頃。
 俺は自宅で一人、TVを見ていた。

 その時、携帯に電話がかかってくる。

「おう、ディー! ちょっと町のほう出て来ないか?」

 かけて来たのは高校の同級生にして、悪友の一人でもあるユウだった。
 ちなみにディーというのは俺のあだ名だ。

「ヒマだったらちょっとツルもうぜ。エスとケイも一緒にいるからさ」

 ユウの言う通り、期末も終わって今はヒマだった。
 俺はユウの提案に乗ることにした。




 俺が集合場所である路地裏に到着した時、
 ユウ達三人は何かを囲んでいたぶっていた。
 猫だか犬だか知らないが、弱いものイジメはあんまり好みじゃない。

「おい、おまえら何やってんだ! やめろよ!」
「あっ、ディー!」

 俺が一喝すると、ユウ達は驚いて対象から距離を取った。

 奴らが囲んでいたのは、謎の赤い物体だった。
 俺は近づいてみようとすると、赤い物体がぬるりと立ち上がる。

「私を助けようとしてくれたんですか。あなた、いい人ですね」

 赤い物体は、ニッコリと笑った。
 その笑顔はあまりにも邪気が無く、俺は少し寒気を覚えた。

 赤い物体は、細身の少女だった。
 ひらひらしたフリルとレースがふんだんに使われた真っ赤なドレス。
 同じく、頭のてっぺんに蝶々結びにされている大きな真っ赤なリボン。
 それらは人形が着るような、何とも現実味に欠けたファッションだ。
 嫌でも目立つその特異な格好の中で、
 不健康なほどに白い肌と、艶めく長い黒髪の存在が、逆に異彩を放っていた。

 少女は土をパンパン払うと、ぐるっと自分を囲むユウ達を見渡した。
 一人ずつ、顔を確認するかのように丁寧に。

 それが終わった後、少女は再び口を開いた。

「あなた達、悪い人ですね」
「なんだとぉっ!?」
「やめろって言ってるだろ!」

 悪人認定されていきり立つエスを、俺は身体を張って抑える。

「また今度、愛と正義を伝えに来ます。それまで待っていてくださいね」

 少女はペコリを頭を下げると、そのままテクテクと歩き去っていった。
551ヤム   2/12:2009/04/17(金) 18:57:12 ID:rHdMbfVH
「……なぁ、何アレ?」

 俺はユウ達に事の顛末を尋ねてみる。

「いや……ディーを待っていたら、あのガキが突然やってきて……。
アイがどうの、セイギがどうのって、訳分からんことをぎゃあぎゃあ抜かすんで、
あんまりしつこいもんだから、ここはシメとくべきかなって……」
「でもあのガキ、いくら殴ろうが蹴ろうが、
ケロっとして表情すら変えねぇでやんの。気味悪いったら無かったよ」
「まぁ何でもいいけど、弱いものイジメはやめろよ。
先公やポリ公に見つかったりしたらコトだろ」
「そうだな。じゃあみんな揃ったし、どっか行くか」

 少女の話を切り上げ、俺達は夜の町を徘徊し始める。
 華やかな夜の町はいつも通りの輝きを放っていたが、
 どうしてもさっきの気味の悪い少女のことが頭から離れなかった俺は、
 心おきなく夜遊びを楽しむことはできなかった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 あれから数日後。
 俺があの少女のことを忘れかけた頃。

 突然、ユウが高校を休んだ。
 奴はちょい悪のくせして皆勤賞を狙ってる変わり者で、
 風邪を引いてても無理して登校してくる性質だったんだが……。

 まぁ、たまにはそんなこともあるだろうと、
 その時の俺は、そこまで気に留めなかった。


 だが、更にその数日後、今度はエスが来なくなった。
 ちなみにユウも未だに顔を見せていない。

 仲間内の二人まで急に居なくなっては、
 流石に不安を感じてくる。

「見舞いに行ってやろうぜ。俺、あいつ等の住所しってるからさ」

 ケイがそう提案するので、俺達はユウとエスの見舞いに行くことにした。



552ヤム   3/12:2009/04/17(金) 18:57:54 ID:rHdMbfVH
 俺達はユウの家に行き、
 出迎えてくれたユウのオカンに無理を言って、ユウの部屋まで案内してもらった。

 暗い部屋の中にいたユウは、部屋の隅っこでブルブル震えていた。
 その身体には木刀、エアガン、フライパンなど、
 武器に使えそうな物が沢山括りつけられている。

「お、おいユウ!」

 尋常ならざる様子のユウに、慌てて近づこうとする俺達だが……。

「く、来るなァっ!! 化け物、あっちに行けェっっっ!!!
お、俺なんか食べても美味しくねぇぞォっっっ!!!」

 ユウは訳の分からないことを言いながら、
 手に持ったフライパンをぶんぶん振り、俺達を近づけまいとする。

「ちょ、どうしたんだよユウ!? 俺だよ、ディーだよ!!」
「出てけ、出てけ出てけ出てけェっっっ!!!」
「うわったっ!?」

 木製の椅子まで投げつけてきたので、俺達は慌てて部屋から逃げ去る。

「ごめんねぇ……優一ったら、この前から様子がおかしくて……」
「何かあったんですか?」
「それが、分からないの……」

 申し訳なさそうにそう言うユウのオカン。

「おい、ディー、今はユウはそっとしておこうぜ」
「……そうだな。じゃあ次はエスのとこに行くか」

 ユウが元に戻ることを祈りつつ、俺たちはエスの家に向かった。




 エスの家は一人暮らしのアパートだ。
 いくらチャイムを鳴らしてみても反応が無かったため、
 鍵が開いてることに気付いた俺達は中に踏み込むことにした。

 そうして発見したエスは、耳を塞いで布団の中に包まっていた。
 何事かをブツブツとつぶやいている。

「ご、ごめんなさい、ごめんなさいィ……」
「お、おいどうしたエス! しっかりしろ!」
「……ディー……それにケイ……」

 俺達の姿を認めると、少し安心したような顔をするエス。
 ユウと違って、ちゃんと話をすることが出来そうだ。

 ……などと思ったのも束の間、
 エスの表情はあっという間に青ざめ、俺達から距離をとる。

「おい、エス?」
「お、おまえらもか…………おまえらも、俺に謝れって…………!」
「なんだぁ? 何を言って……」
「わ、悪かった、この通りィっっっ!!」

 エスは震えながら、何度も頭を地面に打ち付ける。
553ヤム   4/12:2009/04/17(金) 18:58:38 ID:rHdMbfVH
「す、すまなかったァ、謝るから、許してくれェ、たのむゥ……。
ゲーセンでディーの100円かすめとったのはァ、出来心だったんだよォ……!」

 そういや、ゲーセンで置いといた100円が消えて、
 コンティニューが間に合わなかった時があったような……。

「ごめんごめんごめん許してくれよォ!!」

 俺達の言葉が耳に入らないのか、
 何を言ってもただひたすら謝り続けるばかりのエス。

「……悪いエス、俺達もう帰るわ」

 気味が悪くなった俺達は、そう言ってそそくさとエスの家を後にする。
 玄関を出てからも、エスが謝る声は聞こえ続けていたが、
 俺もケイも聞こえないフリを決め込んだ。




「……なぁディー、どう思う?」

 何とも気まずい帰り道、
 ケイは不意にこんなことを聞いてくる。

「ユウとエスのことか?」
「あぁ。同じ時期にいっぺんにおかしくなるなんて、本当に偶然か?」
「偶然じゃなかったらなんだって言うんだよ」
「わかんねぇけど……」

 ケイは何か気になることでもあるようだった。

 ともあれ、互いの帰路が分かれる所まで来たので、
 俺とケイは別れてそれぞれの家に帰った。

 ……言い知れぬ不安をその胸に抱きながら。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 翌日、高校の昼休み。

 俺は内心で頭を抱えていた。
 とうとう、ケイまで様子がおかしくなったのだ。

 ただ、ケイの場合はちゃんと登校して来た上、
 会話もちゃんと通じていたのが他二人との大きな違いだろう。
 問題があるとすれば、
 会話の内容に全く現実味が無いということだろうか。

「お、俺……殺される……あん時のガキに……!」
「あん時のガキ?」
「忘れたのかよ!? あん時のガキったらあん時のガキだろ!!」

 ケイは興奮して机をバンと叩く。
554ヤム   5/12:2009/04/17(金) 18:59:19 ID:rHdMbfVH
「おい、落ち着いて話せよ。トンカツ食うか?」
「え……」

 俺が差し出したトンカツを見て、ケイがジュルリを涎を吸い込んだ。
 なんだ、腹減ってるのか?

 しかし、ケイはハッと我に帰ると、首をぶんぶん振る。

「……い、いや、いらねぇ! それより話の続きだ!」

 ケイが言うには、昨晩、あの時の赤い少女が現れ、
 訳の分からないことを言って帰っていったのだと言う。

「ユウやエスも、きっとあいつに追い詰められたんだ……間違いねぇよ!!」
「おい、待てよ。本当にその時のガキだとしても、
所詮はただのガキなんだから別に大したことはできないだろ?」
「ふふふ、ふざけんなよ!? あいつがただのガキなもんか!!」

 ケイは再び机を叩く。

「あ、あいつはきっと魔界デビルの一種だ……。
俺の魂を恐怖で染め上げて後で美味しく頂く気だ、間違いねぇ……」

 さっきからケイの話を聞いてやってるが……。
 言いたいことは分からなくもないが、
 現実味の無い突飛なことを並べ立てるばかりで、具体的な話が全く見えない。

「……ケイ、きっとお前の妄想か幻覚だよ。
多分、良心の呵責があるんじゃないか? あのガキをボコったことに対して」
「ち、ち、ち、ちげーよ!! そんなワケあってたまるか!!」

 ケイは三度、机を叩こうとするが……。

「……そ、そうだ、イイこと思いついたぜ!
ディー、今日からおまえん家に泊めてくれ!」
「……はぁ?」
「明日から連休だし、ちょうどいいだろ!?
あのガキから逃げるにはそれがいい、いやそれしかねぇ!!」
「……………………」

 あまりにしつこいケイに、俺はちょっと呆れてきた。
 そんな俺を見て、ケイは両手を前に組んで懇願する。

「な、なぁ、頼むよディー……。
俺一人の時にまたあのガキが来たら、俺、どうすればいいか……」

 ケイは、真剣に怯えていた。
 俺には理解できないモノに対して。

「……分かったよ、けど一度家に帰って荷物まとめてから来いよ」
「ほ、本当か!?」

 俺はまだ納得したわけでは無かったが、ケイが追い詰められてるのは間違いない。
 例えそれがケイの思い込みだったとしても、
 俺はケイの気の済むようにしてやろうと思った。




555ヤム   6/12:2009/04/17(金) 19:00:00 ID:rHdMbfVH
 放課後、俺はケイの家で荷物をまとめる手伝いをすると、ケイを連れて帰宅した。
 ついでに途中のスーパーで買出しをして、晩飯の準備も万端だ。

「どうしたケイ、食べないのか?」
「い、いや……その……」

 せっかく俺が自慢のシチューを振舞ってやってるというのに、
 ケイは目を泳がせて食べようともしない。

「なんだよ、ビビって食欲湧かねぇのか?
本当に例のガキが来るっていうなら、今の内に食って力つけとけよ」
「……じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……」

 ゴクリを唾を飲み込んで、俺からシチューをよそった皿とスプーンを受け取る。
 そして雀の涙ほどのシチューをすくうと、震える手で恐る恐る口に運ぶが……。

「う…………うええええええええぇぇぇぇっっっ!!!」
「お、おい!? 大丈夫か!?」

 ケイは台所にダッシュすると、ゲホゲホとシチューを吐き出す。
 ……いや、吐き出した物のほとんどがケイの唾液だったが……。

「……わ、わりぃ、ディー……やっぱり今は食いたくねぇんだ……。
せっかく作ってくれたのに、本当にすまねぇ……」
「あ、ああ……しょうがねぇよ、そういう時もあるって」
「すまねぇ……本当に……」

 本当に申し訳無さそうにそう言うケイ。
 俺は何とも言えない息詰まりを感じた。




「おいケイ、寝ないのか?」
「い、いや……もしあのガキがここまでやって来たらと思うと……」

 布団に入ってからも、ケイは目をギンギンに血走らせて臨戦態勢だった。
 既に時計の針は12時を回っている。

「……まぁいいけど、無理はすんなよ」

 付き合ってやりたいのは山々だったが、
 いい加減に眠かった俺は、先に寝ることにした。


『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……』

(……なんだぁ?)

 うとうとしていた俺は、ケイが何かぶつぶつ言ってるのを聞いて目を覚ます。

『あの時、暴力ふるってごめんなさい、反省してます……』

(……懺悔でもしてんのか?)

 一瞬、本当に例の少女がやってきたのかと思ったが、そういうわけでも無いようだ。
556ヤム   7/12:2009/04/17(金) 19:00:41 ID:rHdMbfVH
「おいケイ……うるさくて寝れねぇよ」
「あ……悪い、ディー……」
「……ケイも早く寝ろよ」
「あ、あぁ……」

 ケイが黙ったので、俺は再び目を瞑る。

 しばらくすると、先ほどより音量を落としたケイの懺悔が聞こえてきたが、
 うんざりする気力も湧かなかった俺は、そのまま寝てしまった。




 結局、昨夜は何事も起きずに夜が明けた。

「あァ……美味そう……すげェいいニオイだよォ……。
でも、ダメだダメだダメだ…………これを食ったりしたら…………」

 一睡もしてなかったらしく、目を充血させたケイは、
 俺の作ったベーコンエッグを前に何やら葛藤していた。

「ケイ、結局昨日は何も食ってないんだろ?
だったら朝飯ぐらいはちゃんと食っておけよ」
「うぅ……すまん、やっぱやめとく……」

 ケイはそう言うと、寝室に向かう。

「悪い、俺ちょっと寝てくる……夜まで俺のことはほっといてくれ……」

 あまりにぶっきらぼうな物言いに俺がムッとする間もなく、
 ケイは部屋に篭ってしまった。

「……まぁいいか、今日バイトだし」

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……』

 俺が出かける準備を始めると、寝室から何かが聞こえてくる。
 ケイが何かぶつぶつ独り言を言っているのだ。

『あの時、暴力ふるってごめんなさい、反省してます……』

(また懺悔してんのか……よく飽きねぇな)

 ケイの様子は気になったが、俺はバイトに行くことにした。





 夜、バイトが終わって帰って来た俺の前に現れたのは、
 すっかりやつれ果てたケイの姿だった。
 結局、あれから何も食べていないし、寝てすらいないようだ。

「ケイ、ちょっとでいいから食えよ……。このままじゃ、身体壊しちまうぞ」
「い……いやだぁ…………食べたくない…………何にも…………」

 俺が鮭粥を作ってやってもこの有様だ。
557ヤム   8/12:2009/04/17(金) 19:01:22 ID:rHdMbfVH
「……ちっ、119だ!」

 救急車を呼ぶしかない。
 俺がそう確信できるほど、今のケイは衰弱していた。
 俺は備え付けの電話に手をかける。


 ……突然、手にした電話の電源が切れる。
 耳に当ててみてもプープーとすら鳴らない。


 いや、電話だけではない。
 TVからPC、照明に至るまで、完全に動作を停止したのだ。

「な、なんだぁ? 停電か?」

 俺はあわてて携帯を取り出すが……。
 何故か、電源が独立しているはずの携帯までもが動かない。


 ……その時。


 暗闇から、ゆらりと何かが現れる。

「こんばんは……二日ぶりですね」
「! おまえは!?」

 あの時、ケイ達がリンチした少女だった。
 少女の服装はあの時と寸分たがわず、
 真っ赤なドレスとリボンが闇に浮き上がっていた。

「おまえは、あの時の……」
「お約束した通り、再審判にやってきましたよ。
家を変えたみたいだから、探し出すのにちょっと時間がかかってしまいましたが」

 少女は俺に目もくれず、うずくまるケイへと視線を注ぐ。
 ケイは身を隠そうとしていたが、それも無駄だと悟り、
 慌てて少女に向かって頭を下げる。

「お、おまえがしたいのはあの時の復讐だろ……? 謝るから、許してくれ……!」
「復讐? 違うわ、私は正義と愛を説きに来たの」
「い、意味わかんねぇよ……。
路地裏でボコにした恨みでやってきたんじゃねぇのか……?」
「そう、私はアナタのところへやってきたのは、その時の件」

 少女はつかつかとケイの下へ歩み寄ると、少し残念そうな目でケイを見つめる。

「あんな風によってたかって無抵抗の人に暴力を振るうなんて……。
残念だけど、正義の道から外れた行いと言わざるを得ないわ」
「あ、あれは……おまえが悪いんだろ!
『正義と愛のため、私に協力して』とかしつこかったから……!」
「え、何を言ってるの?」

 少女は、キョトンとした表情だった。

「私は正義と愛の使者。だから、私のお願いは聞いてくれて当然でしょう?」
「……………………」

 真顔でそう言い切る少女に対し、ケイは何も言い返すことが出来なかった。
558ヤム   9/12:2009/04/17(金) 19:02:04 ID:rHdMbfVH
「……わ、分かったからもう許してくれよぉ……こんだけ苦しめりゃ十分だろ……?」
「許すも何も、人をぶったら謝らなきゃいけない。当然のことでしょ?」
「いやだから謝ってるじゃねぇか……」
「ダメ」

 赤い少女は、痩せこけた身体で必死に許しを請うケイを、一言で切って捨てた。
 そして、両手を自身の眼前で組み、何事かをぶつぶつ述べ始める。

「アナタは私に、蹴り28回、平手4回、しめて32回暴力を振るいました。
今、その数に見合っただけの数の懺悔を行ってください。
そうすれば、アナタの罪は天に赦されるでしょう」

 言い終わると少女は両手をほどき、ケイに憐憫の瞳を向ける。

「……これが、二日前に貴方に下した宣告。
にも関わらず、あなたは十分な懺悔を行わなかった」
「い……言われた通りに何度も何度も謝ったんだぜ……?
暴力ふるって悪かった……すまなかった……。ほ、ほら……これでいいだろ……?」
「ダメ」

 分かってないわね、と言いたげに少女は首を振る。

「百聞は一見にしかずってコトワザがあるわよね。
それと同じで、百謝りは一暴力の価値しか無いと、私は思うの」
「な、なんだって……?」
「先ほども言ったように、アナタは私に32回もの暴力を振るいました。
つまり、3200回謝ってもらわないと、釣り合わないってことになるわ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「アナタ、178回謝ってくれたから、あと3022回だね」

 どこで見ていたというのか、
 どうやらケイが一人でぶつぶつ言っていた分もカウント済みのようだった。

「……ふ、ふざけんなぁッ!!」
「お、おい、やめろケイっ!!」

 とうとう我慢の限界に達した様子のケイは、
 俺の制止も聞かず、目を血走らせて少女にバットで殴りかかる。


 だが……。


「私……非暴力主義者だから反撃したりはしないけど……。
でも、私に暴力を振るうって事は、罰が増えるってことだよ。分からないの?」

 少女は、金属バットのフルスイングを顔面に受けても、全く怯んでいなかった。

「ひ、ひいいぃぃぃっ!!!」

 ケイは半狂乱になってバットを振り回すが、
 少女は身体に当たるバットを全く意に介さず、そのままノシノシと歩んでくる。

「15……16……17回。
懺悔ノルマ1700回追加になったわ。合わせて4722回だね」
「そ、そんなぁ……」

 ケイは恐怖と絶望のあまり手が震え、バットを落としてしまう。
559ヤム   10/12:2009/04/17(金) 19:02:44 ID:rHdMbfVH
「……4722回……もう5000回に近いのね……」

 少女はあごに手をあて、何事かを考え込む。

「あまりに罪が重いから、更に別の魔法を重ねるという選択肢もあるけど……」
「ゆ、許してくださいィィィ……!!
……俺、悔い改めてあなたを……正義を信じますからァァァ……!!!」
「なら、私の正義のための活動に協力してくれる?」
「は、はいィィィ!! この魔法を解いていただけるならなんでもしますゥゥゥ!!!」
「良かったぁ……この人にも私の愛と正義が伝わったみたい!」

 少女の顔がパァッと明るくなり、両手を組んで天を仰ぐ。
 神に感謝の意でも伝えているのだろうか。

「でも……」
「ヒィッ!!?」

 ぐるん、と少女は気味の悪い動きでケイに向き直った。

「懺悔ノルマ終わらなかったから、ダァメ。残念だけど、一生そのままでいてね」

 そう言うと、少女はポケットから取り出した飴玉をケイの口に押し込んだ。

「う…………ウワォァァゥゥワゥアアアワァァァェーーーッッッ!!!」

 ケイは、魂の底から搾り出されるような奇声をあげ、泡を噴いて気絶した。


「正義と愛のためとはいえ、ちょっと心苦しいわ……。……ん……?」

 少女はケイに制裁を終えると、ようやっと俺の存在に気付く。

「あら……あなた、あの時のいい人……」
「お、おまえ……一体何者なんだ!?」
「私……?」

 少女は不思議そうな顔で小首を傾げる。
 可愛らしいそのポーズも、この異常な状況の中では恐怖を煽るだけだ。

「私はヤム……魔法少女ヤム……。この世界に愛と正義を伝えるため、頑張ってるのよ」

少女……ヤムは、そう言って小首を傾げたまま、ニッコリと笑った。

「ま、魔法少女……」

 変な話だが、俺はそれを聞いて少しほっとしてしまった。
 正体が全く分からなかったこの不気味な少女が、
 TVや漫画でおなじみの魔法少女だと分かったからだ。

 魔法少女なんて実在するのか?
 なんて疑問は、この超常的な少女を前にしては湧きようがなかった。
 この少女の所業を目の当たりにした今ならば、ケイの言っていたことも納得できる。
 奴がおかしくなったのは、確かにこの少女が原因だったのだ。
560ヤム   11/12:2009/04/17(金) 19:05:24 ID:rHdMbfVH
 だが、ケイに何が起こったかまでは理解できたわけではない。
 俺は思い切って少女に尋ねてみることにした。

「ヤムって言ったな……おまえ、こいつに何をしたんだ!?」
「別に大したことじゃないわ……。
この人の口にするモノ全てが腐敗した味になるよう魔法をかけただけ……」
「口にする物全て……お、おい、それって食事ができないってことか!?」
「ううん、別に食事はしようと思えばできるわよ。
腐った味に感じてしまうだけで、匂いとか栄養は全部そのままだもの。
ただ、何を食べても美味しくないだけ。だって、腐った味だから……」

 それを聞いて、今までケイが食事を拒んでいた理由が納得できた。

「じゃあさっきケイが気絶したのも……?」
「うん。飴玉はね、特に辛いのよ。
口の中にジュワーっといっぱい味が広がるから」
「…………うぇぇ…………」

 俺はその感触を想像して思わず身震いした。

「生きるためには食べなきゃいけないけど、
その食べ物がみんな酷い味だったら、みんな生きるの嫌になっちゃうわ。
でも……悲しいけど、これはしょうがない……悪いことをしたこの人が悪いんだもの」

 ヤムは、そう言って心の底から悲しそうな顔をした。

「……ま、魔法を解いてやってくれ!! 俺がケイの代わりに謝るから、頼む!!」
「こんな悪人にまで慈悲を差し上げるなんて……。あなた、本当にいい人なんですね。
もしや……あなたはブッダかキリストの生まれ変わりなのでは……?」

 そう言うと、ヤムは俺に向かって跪いて、両手を合わせて拝み始める。

「な、なんでもいいけど、早く解いてやってくれよ! 一生あのままなんて酷すぎる!」
「あら、あれはちょっとした言葉のアヤですわ。
私には元々そこまで長続きする魔法は使えません」
「そうなのか!? なら早く解いてやってくれ!!」
「本当は反省したらすぐに解いてあげたい所だけど……。
私は未熟だから、一度かけた魔法を自力で解くことはできないの」
「ええっ!?」
「大丈夫、時間が経てば自然に魔法が解けるわ。それがいつかは分からないけどね」

 そう言って悪意の無い顔でニッコリ笑うヤム。

(こいつ悪魔だ……しかも天然の……)
561ヤム   12/12:2009/04/17(金) 19:07:12 ID:rHdMbfVH
『ユウやエスも、きっとあいつに追い詰められたんだ……間違いねぇよ!!』

 ……ふと、俺はケイの言葉を思い出す。

「そういえば……やっぱり、ユウやエスもおまえが!?」
「ユウとエス? ……ああ、あの時に一緒に居た人達?
前の人には常に『謝れェ……謝れェ……』って幻聴が聞こえる魔法をかけたわ。
その前の人には他人が化け物にしか見えなくなる魔法をかけたんだったかな……」

 やっぱりか……あいつらの反応も合点がいった。

「私、いつも考えてるのよ。どんな魔法をどんな風にかけたら、
より悪人をいっぱいいーっぱい苦しませて、更正する気が起こるようにできるのかって」

 そう言うヤムが少し楽しそうに見えたのは、俺の勘繰りすぎだろうか。

「……ふふふ、何だか今日はいっぱいお喋りしちゃったわね。
私には他にも使命がいっぱいあるから、名残惜しいけどそろそろ行かなくちゃ」

 ヤムはそう言ってテクテクと歩き去り、闇の中に姿を溶け込ませていく。
 ……が、何かを思いついたかのように、ふと立ち止まり、振り返る。

「ディーさん……あなたとは、また会いたいわ……」
「え、ええっ!? 何でだよ!?」
「だってあなた……いい人だもの……」

 ヤムはそう言って……多分、微笑んだんだと思う。
 だが俺には、暗闇に浮かび上がる歪んだ口元だけしか見えなかった。



 ヤムが立ち去った後、思い出したかのように電力が復活し、部屋は明るくなる。
 まるで今あったことが夢であったかのように、いつも通りの俺の部屋だった。

 ……泡を噴いて倒れているケイの存在を除けば。




 あれ以来、俺はあの謎の少女・ヤムの姿を見ることは無かった。

 だが……俺が正義と愛に反する行いをしていないかどうか、
 常にあの少女がどこかで監視している……そんな気がしてならなかった。



                            <おわり>
562創る名無しに見る名無し:2009/04/17(金) 19:08:53 ID:rHdMbfVH
おそまつさまでした。

最初は中〜長編になる予定でしたが、
諸事情で読みきり短編に変更することになりました。

スレの雰囲気に合わなかったらごめんなさい。
やっぱり一次は難しいですね。
563創る名無しに見る名無し:2009/04/17(金) 19:54:04 ID:g6n0kOsW
こいつは濃ゆいホラーですのう……。
564創る名無しに見る名無し:2009/04/18(土) 13:46:55 ID:DAFcsDFY
違和感あるよな
565まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/18(土) 19:52:43 ID:aNwDKtFZ
炎術剣士まなみ第十七話投下します。
566まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/18(土) 19:54:00 ID:aNwDKtFZ
炎術剣士まなみ 第十七話『一点突破!稲妻の嵐』

 次元魔城、玉座の間。次元鬼三姉妹が集まっている。三人とも、表情は暗い。
「剣士どもを倒す手段…もうほとんどないぞ」
「スクリタ…あなた、結局この前も失敗して…」
「そ、それは悪かったわよ!あいつらが予想以上に強くなってくから…」
言い争いの最中に、火柱が発生し、中から女帝フリッデが現れた。

「ふ、フリッデ様…」
「久しいな、三姉妹よ。剣士共はいまだに倒せていないようだな」
「も、申し訳ありません!奴ら、意外と出来る連中でして…」
「言い訳はよい!」
三姉妹が取り持とうとするが、フリッデの一喝で静まり返る。

跪き、震え、顔を上げられない三人。フリッデがベルディスに視線をやる。
「ベルディスよ、例のものは完成しているか?」
「は、はい。あとは調整を行うだけです…」
「よし、早々に仕上げに掛かれ!ウルム、スクリタ。お前たちは今まで剣士共に
倒された次元鬼の細胞をここへ持ってくるのだ」
その威圧感から下手に逆らおうとはせず、命令されたことを黙って実行することに。

「フリッデ様、戦艦スカルローグ、いつでも動けます」
「よろしい。ウルム、スクリタ。それをこちらに置け」
二人は次元鬼の細胞が入ったカプセルを玉座の前へと置く。
「では、はじめよう…」
フリッデが両手を合わせ、気を練っていく。その気が紫色の怪しいオーラを発すると
カプセルが激しく点滅していく。

その光が止むと、カプセルの中の細胞が活性化し、ボコボコと不気味に動く。
「ふふふ…これでよい。ベルディス、このカプセルを持ってスカルローグで
人間界に侵攻せよ!」
「は、はい!仰せのままに」
フリッデは再び、火柱とともに姿を消す。しかし次元鬼三姉妹は緊張が治まらない。
567まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/18(土) 19:55:50 ID:aNwDKtFZ
東京は、今日も青空が広がり、その下で伊織は和馬と遊んでいる。
「和馬くん!ほら、そんなに遠くへ行ったらダメだよ〜!」
一人で駆け出した和馬に注意する伊織。だが、和馬は笑顔で叫ぶ。
「大丈夫だって!伊織お姉ちゃんも早く早く〜!」
しょうがないなと思いながらも、和馬を追いかける伊織。

と、その時。二人を巨大な影が包み込む。思わず上空を見上げるとそこには
巨大な戦艦が過ぎ去っていく。
「あれはいったい!?和馬くんは早くお家に帰りなさい」
「伊織お姉ちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫!さあ、早く帰って、ジッとしていなさい」
伊織は和馬に逃げるよう促し、戦艦の後を追い、駆け出して行った。


戦艦が広い草原の上空へ到着する。伊織もなんとか追いつく。そこには既に
長い黒髪の少女と水色の短髪で小さな少女の姿が。
「まなみさん!裕奈ちゃん!」
「伊織!あなたもあれを?」
「ええ、あれってやっぱり次元鬼の…きゃあ!」
伊織の台詞を途切らせるほどの轟音が響き、戦艦から黒い球体がいくつも降り注いでくる。

そして戦艦から一瞬、キーン…という音が響く。
「うっ…不快な音…」
「あーあー!マイクのテスト中!…ゴホン、剣士の三人娘!聞こえてる?」
ベルディスの声が辺りに響き渡る。
「剣士ども、今回は我々も本気よ!見てみなさい!」

すると、地に降り注いだ球体は、膨張し、形を成していく。
その姿はだんだんとまなみたちに見覚えのあるものへと変わっていく。
「あれって…今まで倒してきた次元鬼!?」
ずらっと並ぶ再生次元鬼。まなみが初めて戦った爆弾蜘蛛、裕奈や伊織の初陣相手である
岩石熊や獣蛸、怪獣のようなサイズのゴルスジーラに猛毒を振りまくドイズス。
そしてその他諸々が殺意が込まれた視線を三人に向ける。
568まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/18(土) 19:57:13 ID:aNwDKtFZ
「ふふ、次元鬼はあなたたちに斬られた恨みは忘れていないようよ…じゃ、頑張ってねー」
そう言うと戦艦は街の方へと向かっていく。
「あー!ベルディスの奴、街を襲う気だよ!」
「伊織、ここは私たちに任せて、あなたはあれを追って!」
「分かりました!まなみさんたちも気をつけて!雷心変幻!!」
剣士姿へ変身すると、光が彼女を包み、戦艦へと飛び去った。

「炎心変幻!」
「水心変幻!」
まなみと裕奈も変身し、刀を構える。その様子は多勢に無勢だが怯みはしない。
「一度。倒した次元鬼なんかに私たちは負けない!」
「そうそう!もう一回、あの世へ送り届けるんだから!」
裕奈がどこか悪役チックな台詞を吐くと同時に二人は次元鬼軍団に飛びかかっていく。


戦艦の看板へと着地する伊織。次の瞬間、防衛システムなのか、機銃が伊織に
向けられ、発砲してくる。それを正面から弾の間を掻い潜り避け機銃を破壊する。
「ふぅ…なるほど、さすがに簡単には通してくれなさそうですね」

さらに攻撃してくる他の機銃も雷神波を放ち、粉砕。内部へと突入する。
戦艦内部の最初の部屋は特に変わった個所は見受けられない。

伊織がキョロキョロしながら先へ進んでいくと、何か踏んだのか、カチッという音がなる。
すると、天井から無数の太い針の付いたブロックが落ちてくる。それは伊織へと
突き刺さる…が、突き刺された伊織は溶けるように消え去る。

「こんなことだろうと思いました…私にそんなものを当てようなんて甘すぎです」
本物の伊織は手裏剣を取り出し、何もないところへ投げつける。
数秒の後、バタリという音とともに、貧相な姿の鬼が倒れ伏した。

部屋を抜けると、吹き抜けた空間が広がり、一斉に再生次元鬼軍団が伊織に
襲いかかる。それを軽々と捌いていく。戦闘中にも関わらず、部屋のスピーカーから
ベルディスの声が発生する。
「伊織、侵入したのはいいけど、あなたの墓場はそこよ…ってもう全滅してる!?」
「こんなのが何体出てこようが私は負けません!ベルディスさん、待ってなさい」
言い放つと、駆け出し、次の部屋へと向かう。

次の部屋には怪しく光るいくつものカプセルがあり、中にはやはり今まで
倒してきた次元鬼の姿が。部屋は広く、中央に巨大モニターが設置されている。
伊織は苦無を取り出し壁へと張り付き、モニターへと目をやる。そのモニターに
表示されているのはワイヤーフレームで表現されているこの戦艦の内部図解であった。

「ベルディスさんはどこ…?見つけて叩き潰す…」
見ると、戦艦内部の一番上の部屋が点滅しているのが分かった。
569まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/18(土) 19:58:25 ID:aNwDKtFZ
伊織はそれを頼りに、進むことにし、壁から壁と飛び移りながら、部屋を抜ける。
広い廊下内を駆けていき、途中にあった罠を物ともせず、突き進んでいく。
そしてたどり着いた部屋。伊織は刀で扉を×の字に斬り、蹴破りながら
突入する。中には焦りの表情を浮かべたベルディスの姿が。

「伊織!もうここまで来たというの…!」
「ベルディスさん、この戦艦を止めなさい!あなたには万に一つの勝機もないですよ」
ベルディスが低く笑い、伊織を睨みつける。
「この戦艦、スカルローグは私の傑作よこれで、人間界を征服する。
そのために、伊織…あなたには消えてもらうわ!」

そう言い放つベルディス。すると、次は伊織が不敵に笑い始める。
「伊織…何がおかしい!?」
「次元鬼…そうやって今までどれだけの世界を滅ぼしたかは知りませんけど…
あなたたちに、こんなものは必要ない!私が叩き潰します!」
「くっ…黙れ!」

逆上したベルディスが光線を放つが、伊織は軽々と避け、飛び蹴りを浴びせ、
壁へと叩きつける。
「うぐっ!…伊織、フリッデ様の期待に応えるために、私は負けるわけには
いかない!バルディン!」
突如として空間に歪みが生じ、そこから新たな次元鬼が現れ、伊織に向かって
槍を投げつけてくる。紙一重で避けるが、背後の壁は粉々に砕け散った。

「なんて破壊力…だけど!」
「ふふ、伊織…スカルローグはね、自動で街を襲うわ。あなたがバルディンに
勝てても、ここを止めようとした頃には、街は焼け野原よ!」
言うと、ベルディスは姿を消す。
「次元鬼の思い通りにはさせません!雷神乱れ突き!」

刀に雷の気を纏うと、目にも止まらぬ速さで突きを連続で繰り出し、バルディンの
身体を一瞬のうちに粉々に砕く。完全に砂になった次元鬼を見て、
伊織は戦艦の中心部へと走り出す。
今度は一番下の部屋を目指し、急ぐ。
570まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/18(土) 19:59:32 ID:aNwDKtFZ
伊織がたどり着いたそこは、巨大な怪しく緑色に光る巨大な物体が設置されている
部屋であった。これが動力源なのだろうか。

「とにかく、ここさえ破壊すれば…孫六刀!雷鳴大破斬!!」
大技で破壊を試みるが、謎の障壁に阻まれ、弾かれてしまう。
「きゃあ!…うぅ、私だけの力じゃここは壊せないの…」

伊織は何度も攻撃を仕掛けるが、どの技でも破壊は出来ない。
気持ちが折れそうになったその時、爆音とともに壁が破壊される。
「あっ…まなみさん、裕奈ちゃん!」
「遅くなってごめん、伊織!」
「伊織ちゃん、三人でやればなんとかなるよ!」

合流した三人は頷き合い、片腕を動力源に向かって突き出した。
「「「龍陣波動!!」」」

三人の気が交わりあいながら、放射され命中する。障壁を破壊しみるみるうちに
動力源はボロボロになっていく。そして三人同時に飛び上がる。
「「「逆鱗超破斬!!」」」
星型に斬り落とされた動力源は、間もなく閃光を発し、爆発を起こす。

三人は素早く脱出し、火柱があがり、爆発が広がっていく戦艦を見届けた。
戦艦は海へと落ちていき、そこで、最後の爆発を起こしながら海の藻屑と化した。
「まなみさん、裕奈ちゃん、ありがとう、二人が来なかったら、次元鬼の
思い通りになってしまうところでした…」
深々と頭を下げる伊織。それをに対し裕奈は首を振る。

「気にしない気にしない。あたしたちこそ、ごめんね。遅れちゃった」
裕奈に続いて、まなみも言葉を続ける。
「数が多かったら、思いのほか苦戦しちゃってね。とにかく伊織が無事だったから
安心したよ。さあ、みんなで何か食べに行こう」
三人は微笑み合いながら、街へと戻っていく。

そんな三人の姿を見つめる一つの影が…。
「次元鬼、奴らも剣士に対しての対抗策を失ったようなものだな…さてどうするか…」
影は手に持っているボトルを見つめ、不敵に笑みを浮かべた。


次回予告「雷は途切れ、水は干上がり、炎は消えうせる。次回『剣士散華』」
571まなみ作者 ◆4EgbEhHCBs :2009/04/18(土) 20:04:45 ID:aNwDKtFZ
十七話投下完了。だいぶ間が空いてしまいました。
572創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 12:57:09 ID:vfEoRSx/
投下乙。伊織は強いなぁ。
次回がすごく気になる件…
573創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 23:13:06 ID:FfXxIJ83
まなみやヤンデレ魔法少女が投下されたとはいえ
やはり4月だからか、みんな忙しいのかな。
574創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 23:24:38 ID:1Xy7x15S
生活環境が変わったりもするし、やっぱ4月は忙しいよ
575創る名無しに見る名無し:2009/04/19(日) 23:53:47 ID:FfXxIJ83
そうだよなぁ。
今月の終わり辺りからまた人が増えてきたりするだろうかね
576創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 01:18:55 ID:Djp7pU47
このスレの人は、荒らしやってた企画のせいで荒れたらどう思う?
577創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 10:38:30 ID:7SFP33BG
SSゲーム化スレの話?
578魔法少女ユミナ:2009/04/20(月) 16:19:12 ID:yDNDF64r
みなさん、こんにちは。わたしはユミナという魔法少女見習いです。
いわゆる人間界とは別の次元に存在している世界ファルーア王国。
ここで、私は誕生し、成長したある日のことです。

女王様に呼ばれてお城に行くと、こんなことを言われたのです。
「ユミナ、突然ですがあなたを人間界に送ります」
「ふえぇ!?わ、わたし、まだ人間界に行く資格はないはずですよ!?」

現在、私は13歳。そして魔法の腕もまだまだ未熟。ファルーナでは
他世界に行くことが出来るのは、一人前の16歳以上の魔法使い。
どんなに早くてもあと三年は他の世界に行くことなど出来ないのに
いったいどういうことなのでしょう

「つい二日前のことです。ミラクルストーンという国宝をユミナも知っていますね?」
ミラクルストーンというのは、ファルーナ王国の国宝で、国のエネルギー関係のものを
すべて支えているとても大事なものです。

「それがあろうことか、この城に入り込んだ強盗によって誤って割られてしまったのです。
その者は捕まえましたが、これではエネルギーが足りなくなってしまいます。
そのため、国の名だたる魔法使いにミラクルストーンの代わりになるよう、エネルギーを
分け与えてもらいましたが、それでもいつまで持つかどうか…」

ミラクルストーンの力が完全に失われればファルーナは闇に包まれてしまいます!
「女王様!わたしはどうすればよいのですか!?」
「他の魔法使いたちが動けない今、あなたは人間界でミラクルストーンを修復できる
聖羅石というものを探してきてほしいのです」
579魔法少女ユミナ:2009/04/20(月) 16:19:57 ID:yDNDF64r
「聖羅石…?」
初めて聞く名前です。人間界にそのような物があるのでしょうか?
「言い伝えによれば、ミラクルストーンと匹敵するほどの物という話です。
それならば、ミラクルストーンの修復も行えるでしょう」

「わかりました!わたし、頑張って聖羅石を探してきます!」
「ありがとう、ユミナ。では、これを持って行きなさい」
女王様がわたしにくれたものは、スティックでしょうか、柄の部分は黄色くて
先端に星が付いています。天使の羽のような装飾もあります。

「それはレイジングスター。困ったことが起きたらこれを使いなさい。
必ずあなたの力になってくれるでしょう」
「はい!ありがとうございます!」

わたしはレイジングスターを鞄にしまい、女王様に見送ってもらいながら
人間界へと向かいました。女王様の話によると、聖羅石がある可能性があるのは
人間界のニホンなる国だとか。

どきどきしますが、ファルーナのためにも頑張らなきゃ!ユミナいっきま〜す!
580魔法少女ユミナ:2009/04/20(月) 16:21:40 ID:yDNDF64r
初めまして。連載するかもな感じですが作ってみました。
また思いついたら続きを書きます
581創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 16:55:52 ID:8ctctv+r
wktk
582創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 17:04:27 ID:1llhx7pD
王道っぽいな
甘甘のベタベタになりそうwww
583創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 17:31:56 ID:7SFP33BG
今までは変化球ばっかりだったからなw
貴重な王道魔法少女としてユミナには頑張って欲しい
584創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 22:29:01 ID:jBbLLeYy
変化球というか魔女っ子より変身ヒロインのが
多かったという感じかな。
ところでそろそろ容量ヤバいし次スレ立てた方がよいのでは?
585創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 22:37:26 ID:saiLgjFu
そうだね。じゃあ、ちょっと立ててくる
586創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 22:44:52 ID:saiLgjFu
立ててきたよー

魔女っ子&変身ヒロイン創作スレ3
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1240234961/
587創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 22:45:07 ID:iABWM07I
もう次スレか
早かったなー
588創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 22:53:02 ID:8ctctv+r
良策揃い乙乙

追いつけてないけどもっと感想ストームしたいスレである
589創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 23:37:26 ID:jBbLLeYy
あまりに前の話に感想つけるときは言えなかった感想スレで
書くという手もあるな。最新のはここのがいいだろうけどw
俺も次スレからは感想は出来る限りつけたい。
作者さんのやる気も上がるだろうし

あと>>586、スレ立て乙です
590創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 23:04:41 ID:346sTw4i
まとめサイトのチャットが消えとる・・・
591創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 23:24:37 ID:2kXc0Lzt
復活させといた。まとめにも貼り直した
http://uzeee.orz.hm/bargiko/bargiko.php?type=freetalk&id=1240582906406
592創る名無しに見る名無し:2009/04/27(月) 18:03:23 ID:FaZUVaHI
なんか、いいネタ出来そうなんだけど、うまく形にならない
なんとか完成したらここに投下したいとは思ってる
ということだけ書き込んでみるw
593創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 17:35:04 ID:IZaqzAx7
おお応援してるよ
けど投下は新スレ立ってるんでそっちにね

しかし日頃pinkちゃんねるが住処な俺にはここらへんのスレの進行速度ってこんな遅いもんなの?
594創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 17:40:23 ID:SZE6/hFW
いや、まだ20kbも余ってるんだからこっち使いなよ
595創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 19:45:10 ID:IZaqzAx7
でも新スレ全く書き込みが無いみたいだし、このままだと落ちちゃわない?
この板のボーダーとかよく知らんのだが
596創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 20:43:49 ID:c3eSzJ9Y
10レス未満で一週間書き込みなかったら落ちる
597創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 22:39:28 ID:9NnwbHFb
空気を読まずに投下
一応、変身ヒロイン物です
598ゆけゆけ!! メタモルゲーマーズ 1/7:2009/04/29(水) 22:40:17 ID:9NnwbHFb
「よっ。はっ。とぉっ!」

短く借り上げた赤髪の女性は、見るからに熱血系と言わんばかりの風体で、
着ているバイクスーツを上だけはだけ、アーケードゲームに熱中していた。
彼女が夢中になっているのは、対戦専用の格闘ゲーム筐体だ。

『K.O!! PERFECT!!』

「うぎゃーーー!? まさかの完封負けっ!?」

思わず仰け反った彼女 ―― 千里(ちさと)は、勢い余って後方に転倒する。

「いてて……ちぇーっ、1ラウンド目は割りといい感じやったのになぁー」
「千里、あんたは動きに無駄が無さすぎるんだよ。
 レースゲーならそれでもいいかもだけど、格ゲーじゃただのカモだよ」

そう言いながら向かいの筐体から立ち上がったのは、
女子高の制服を着た長身長髪の黒髪の美少女だった。

「なるへそー、駆け引きって奴やな。
 分かってたことやけど、やっぱ格ゲーじゃ佳奈美には敵わんなぁ」

千里の対戦相手だった黒髪の少女――佳奈美(かなみ)は、
数々の格闘ゲーム大会で優勝している名うての格闘ゲーマーなのだ。

「ま、それはこっちも同じだけどね。
 千里、またタイムアタックで世界記録出したんだろ?」
「へっへー、後ちょっとで全コース記録をウチだけで総ナメやで!」

その言葉通り、千里の方もレースゲームでは名が通っており、
某レースゲームのオンラインランキングは彼女の名前で埋め尽くされているのだ。
あまりの辣腕に、チート(不正データ使用)を疑われているぐらいだ。

「よっし、次はレースゲーで勝負――」



(ズダダダダダダンッ!!)



その時、千里の背後から怒涛の銃声があがる。

「……千里……こっちも、付き合ってよ……」

ガヤガヤうるさい店内では聞き逃しそうになるほど小さな声でつぶやいたのは、
紫の髪を頭上で纏めた、大人しそうな少女だった。
服装は短パンにパーカーという洒落っ気の無い格好だ。

少女――亜理紗(ありさ)は、
本来二人プレイ用の二丁の銃を一人で両手に持ち、
画面に現れるテロリストを一瞬のうちに撃退していた。

彼女は、見ての通りシューティングの達人だが、
ジャンル自体が下火な為、他の二人に比べて無名に近い。

「おー亜理紗、いいでー、やろっか!」

亜理紗の呼びかけに答え、千里は隣の筐体に並ぶ。
599ゆけゆけ!! メタモルゲーマーズ 2/7:2009/04/29(水) 22:41:23 ID:9NnwbHFb
「もっとも、ウチの腕じゃ足手纏いになるだけやろけどな!」
「……それが、目的……。このゲーム、2Pだと難易度上がるから……」
「なるへそ、納得や。……って、人をダシにすんなっ!」

ぶつくさ言いつつ、千里は筐体にコインを入れようとする。



(ドガシャアアアアアアアアアアーーーーーーーーン!!!)



「こ、今度は何や!?」

振り向く千里達だが、今度はゲームの音では無かった。

ゲーセンの壁に、大きな穴が空いていた。
それは、パワードスーツ?を纏った男が突っ込んできた為である。

当の男は、衝撃で倒れこんで気絶している。

「なんやうるさいなぁ。レコード出そうな時やったら確実にキレとったぞ今の」
「……それは……集中力足りないだけ……」
「じゃかあしいわ!」
「……………………」

異常事態に慌てて逃げ出す他の客をさておき、
怯みもせずに漫才を続ける千里と亜理紗。
一方、佳奈美は倒れた男に近づいていく。

「ちょっとあんた、騒音は迷惑なんだけど」
「うっ!?」

そう言って佳奈美が容赦なく蹴るので、男は目を覚ます。

「……き、きみ達、ここは危険だ!! 早く逃げなさい!!」

男はそれだけ言うと、慌てて外に飛び出していった。

「なんだアイツ?」
「……レイヤー……」
「なんや気になるなぁ。ちょっと見てみよか」

千里達は空いた穴から外をのぞいてみる。




そこには道路から建物まですべからく穴だらけになったビル街と、
三人組のパワードスーツの男達が、謎の生物と戦いを繰り広げる光景があった。

謎の生物は人型ではあったが、人間より一回り大きく、
その全身はぜん動する黒い触手に覆われていた。

銃器らしき物を持った男が謎の生物に向かって光弾を放つが、
謎の生物の動きは素早く、まるで当たらない。
600ゆけゆけ!! メタモルゲーマーズ 3/7:2009/04/29(水) 22:42:47 ID:9NnwbHFb
『シューター、何をやっている!! しっかり当てないか!!』

上官らしき者からの通信が飛ぶ。

「し、しかし、敵の動きが早すぎます!! こんな遅い弾では……!!」

確かに彼の言うとおり、
銃から発射される光弾は見てから避けるのも可能な程度のスピードだ。

『ええいっ、ドライバー!!』
「こ、こっちも制御できません!!」

業を煮やした上官は、近未来的なフォルムのバイクに搭乗する男に檄を飛ばすが、
彼もその圧倒的なパワーとスピードを全く制御できず、マシンに振り回されている。

『くっ……ファイター、おまえだけが頼りだ、何とかしろっ!!』
「わ、わかりました!!」

先ほど店に突っ込んできた男だ。
他の二人と違い、彼にはパワードスーツ以外に特殊な装備は見当たらないが、
その分、運動能力は他の二人より大きく強化されているようだ。

「食らえ、正義の鉄拳……うわぁっ!!」

男は謎の生物に格闘戦を挑むが、あえなく反撃に会い、殴り飛ばされてしまう。

「だ、駄目です……奴の動きを見切れません!!」
『泣き言を言うな!! 貴様らが勝てなければ誰が奴らから地球を守るというのだ!!』
「は、はいっ!!」

再び立ち上がり、謎の生物に飛びかかる男。
他の二人も何とか援護しようとふんばってはいるが、
装備を使いこなせていない為、まるで助力になっていない。
このままでは全滅も時間の問題だということは素人目にも分かる。




三人の少女達は、その光景を呆然と眺めていた。
だが、それはこの超常的な出来事がショックだったからでは無い。

「……佳奈美、亜理紗。あれ、どう思う?」
「…………下手すぎ…………」
「あたしらがやれば、20秒で倒せる」
「やっぱ、そう思う?」

そうこう言ってる間に男達は佳奈美達の近くまで吹き飛ばされてくる。

「く、くそぉっ……」
「このままじゃ、地球の未来が……!!」

腕に装着されたブレスレットが吹き飛ばされた為か、パワードスーツは解除され、
今の男達の格好はジャージや作業着だ。

「これが変身装置なのか?」
「……ダサい……」

佳奈美達は勝手にブレスレットを拾い上げる。
601ゆけゆけ!! メタモルゲーマーズ 4/7:2009/04/29(水) 22:43:50 ID:9NnwbHFb
「あっ、勝手に触るな!」
「なぁ、どうやって変身するん?」
「腕にハメて、『プレイ・メタモル』って叫べば……」
「教えるなバカ!!」

『『『プレイ・メタモル!!!』』』

そう叫ぶと同時に、三人の身体にパワードスーツが装着される。



佳奈美は格闘重視の『G・ファイター』に。
亜理紗は射撃重視の『G・シューター』に。
千里は操縦重視の『G・ドライバー』に。

それぞれ、その姿を変身させたのだ。



「か、勝手な真似を!! 今すぐ変身を解除して我々に返すんだ!!」
「あいつ、倒せばいいんだろ?」
「バカを言うな!! 我々ですら倒された『アンチャー』に一般人が勝てるわけが……!」
「……あの生物……『アンチャー』って名前なんだ……」
「おっちゃん、時間計っといてや」
「え? う、うん……」

千里が投げ渡したストップウォッチを男が作動させたのを確認すると、
三人は散開して『アンチャー』を取り囲んだ。

「ナンダ……キサマラ……?」
「通りすがりの格ゲーマーだよっ!!」

人語を解したことに驚きもせず、
佳奈美は『アンチャー』に向かって飛び掛っていた。

「バカメ! ニンゲンガニクダンセンデ、ワレワレニカテルトオモッタカ!」

『アンチャー』の腕が佳奈美の顔面を打ち抜く!!

……かと思われたが、佳奈美はあっさり屈んでかわすと同時に、
『アンチャー』を足払いで転倒させていた。

「ナンダト!?」
「おまえの攻撃、遅すぎる。上段見てから足払い余裕でした」
「クッ……」

想定外の事態に驚いた『アンチャー』は翼を展開し、
宙に飛び上がって佳奈美から距離を取る。

「……ムッ!?」

そこに狙い済ましたように光弾が飛来する。
しかし弾速が遅いため、『アンチャー』は軽々と回避する。

弾が飛んできた方向には、片手で銃を構えた亜理紗が居た。
602ゆけゆけ!! メタモルゲーマーズ 5/7:2009/04/29(水) 22:44:55 ID:9NnwbHFb
「ザンネンダッタナ! ソンナオソイタマニアタルワケガナイ!」
「……うん……私もそう思う……」

亜理紗は全く動揺した様子も無く、銃の持ち方を変えた。
銃底を左手で支え、右手は人差し指をトリガーに当てるだけ。

……次の瞬間、亜理紗の銃から数え切れないほどの数の光弾が乱射される。
が、その弾幕すらも『アンチャー』はあっさりとかわしてしまう。

「ケケッ! オレヲカズウチャアタルヨウナノロマトオモッタカ!」
「……思ってないけど……思ったとおりのバカだった……」
「ナニッ!? ……グェアッ!?」

『アンチャー』の身体に、瓦礫をジャンプ台にした千里のバイクが突き刺さったのだ。
千里は、先ほどの男が振り回されていたマシンをあっさりと使いこなしていた。

「ドンピシャや! さすがやな、亜理紗!」
「バカナ……コノオレヲ、ユウドウシタトイウノカ……!」

ダメージを受けた『アンチャー』は、地上に墜落していく。

「佳奈美、止めは任せたでっ!」
「分かってる!」

佳奈美は飛び上がると、『アンチャー』の身体を掴む。

「うおおおおおおっ、スクリューパイルッッッ!!」
「グアアアアアアッ!!」

佳奈美は『アンチャー』の頭を下にする形で抱え込むと、
そのまま全体重をかけて地面に叩き付けた。

頭を潰された『アンチャー』の身体は、そのまま消滅した。



「おっちゃん、何秒やった?」
「え!? ……あっ、24秒……」
「かーっ! 4秒もオーバーしとるやんけ、大失敗やな!」
「き、貴様ら、一体何者なんだ!?」
「……ただの……一般人だけど……」
「ただの一般人が『アンチャー』を倒せるわけがあるかっ!!」
「ゲームで慣れてるんだよ、ああいうの」
「……ゲームって……」

キッパリと言い切る佳奈美達に対し、男達は何も言い返せなかった。



『少女達、よくやってくれた!』
「長官!?」

その時、立体映像で現れたのはグラサンをかけた強面のオッサンだった。
603ゆけゆけ!! メタモルゲーマーズ 6/7:2009/04/29(水) 22:47:02 ID:9NnwbHFb
『素晴らしい、全く素晴らしいよ!
 その戦闘技術はどこで修得したものだね!?』
「……セブン……イレブン……」
「セブンにはワイルドガンマンは置いとらんけどな」
『意味は分からないが、とにかく素晴らしい!』
「で、オッサンは誰なんだい?」
『おお、自己紹介が遅れたな。私は地球防衛軍の長官だ。
 ダンディズムの発揮に関しては定評があるぞ!』

長官は両腕を組んでダンディポーズを取ってみせる。

『さて、自己紹介が済んだ所で君達に頼みがある。
 明日から、アンチャーを倒して街の平和を守ってくれないか!?』
「いいよ、ヒマだし」
『あっさりだね。事情とか気にならないのか?』
「……裏設定とか……別に興味ない……」
『ス、ストイックだな。いや、助かるが』
「それはそうと長官はん、バイト代はちゃんと出るんやろな?」
『うーむ、一回の出動に付き1万でどうかね?』
「乗った!!」
『他に何か質問は?』
「聞きたいこと出来たらそん時に聞くよ。通信ボタンはコレでいいんだろ?」
『分かった。こちらからも何かあれば連絡する。では……』

長官はコホンと咳払いをすると、大きく息を吸う。

『今から君達は地球の平和を守る戦士・メタモルゲーマーズだ!!』
「イェッサー!!」

力強く敬礼する長官に付き合ったのは、千里だけだった。

「なんやおまえら、ノリ悪いなぁー」
「ごめん、そういうの苦手で」
「……千里が……テンション高すぎるだけ……」
「はぁ!? 地球の平和を守るんやで、燃えシチュやろ!」
「……安っぽい……」
「あたしはシナリオとか気にしないクチだからなぁ」

相変わらず緊張感の無いノリで、あーだこーだと盛り上がる千里と佳奈美と亜理紗。

そんな三人娘を他所に、立体映像の長官は思い出したように倒れている男達に振り返る。

『……あ、お前達はもちろんクビだぞ』
「そ、そんなぁ……」

名前も与えられずにフェードアウトさせられ、ガックリする男達であった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


それから少し後の時間。
謎の暗黒空間で密談をしている謎の集団の下に、
組織の構成員の一人が倒されたという報告が入っていた。

(エリアAのボスが、メタモルゲーマーズと名乗る連中に倒されたようです)
(我らアンチャーを倒すとは、そやつらなかなかやりますな)
(ふん、エリアAのボスなど我らの中で一番の小物)
(そのとおりだ。そのメモタル何たらも所詮は人間、我らの敵ではない)
(我らが同胞を倒した罪、じわじわと思い知らせてやりましょうぞ)
604ゆけゆけ!! メタモルゲーマーズ 7/7:2009/04/29(水) 22:48:06 ID:9NnwbHFb
暗闇の中で、何重もの笑い声が、不気味に響いていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


翌日。
地球の平和を守ることになったゲーマーズ達だが、
今日も飽きずにゲーセンに通っていた。

今は佳奈美と亜理紗が『よぷよぷ』で対戦しているのを、
横で千里が観戦している。

「うっわー、今のごっつい大連鎖やなー!」
「……マグレ……」
「ちぇっ、こっちも後ちょっとで連鎖完成だったのに」

佳奈美はポケットを弄りながら、後ろの千里に振り返る。

「千里、今日はやんないのかい?」
「いやー、実は金欠でなぁ。今日は見るだけで我慢や、わはは」
「亜理紗の奴、今日は妙にツいてるからさー。ちょっと流れ変えてくんない?」
「んー、せやな。じゃあ一回だけ……」

なけなしの100円玉を投入する千里だったが……。

『エマージェンシー! エマージェンシー! 竜王町でアンチャーの出現を確認!』

腕のブレスレットから、緊急コールが鳴り響く。

『メタモルゲーマーズ、出動せよ!』
「ちょ、待ちいな!? 今100円入れたばっかやで!?」
『そんなことを言っている場合ではない! 事態は急を要するのだ!』
「ぐっ……!」

千里はクレジットをカウントしたディスプレイを忌々しげに睨み付けると、
椅子を蹴って荒々しく立ち上がった。

「千里っ、早く!」
「おう長官、今の100円、経費として払って貰うかんなっ!」
『分かったから早く行け!』
「らじゃっ!」



『『『プレイ・メタモル!!!』』』



メタモルゲーマーズの戦いは、始まったばかりである。
605創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 22:49:08 ID:9NnwbHFb
投下終わり
続き書くかは謎です
606創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 22:50:12 ID:9NnwbHFb
>>597-605
避難所よりレス代行でした
607創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 23:13:11 ID:IZaqzAx7
>>605
おお内容的にも容量的にも小気味良い出来でGJ
608創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 23:17:10 ID:SZE6/hFW
592の人かな?
609創る名無しに見る名無し:2009/04/30(木) 12:36:27 ID:gmxDyFow
>>605
なかなか良いノリですたGJ
610埋め魔女ウメ子の大冒険・DUO 1/3:2009/05/01(金) 06:28:46 ID:oaAynlHM
ウメ子は魔法少女である。
使命は考え中。

「ちょっとちょっと、どうなってるのよコレぇーーーっ!!?」

開始早々、まん丸メガネが曇りそうなほど頭から湯気を立ち上らせているウメ子。
PCモニターの前に身を乗り出して、吊り上がった目で画面を睨んでいる。

「二ヶ月ぶりの再登場だってのに、一体何の騒ぎだよ……」

ウメ子の絶叫を聞いて、使い魔である子羊のメウたんが現れる。
彼はどーせロクなことじゃないだろうと思いつつ、理由を尋ねてみる。

「前スレは四ヶ月かかったのに二ヶ月で埋まるなんて凄い勢いよねー。
 ……って、そんな話はいいのよ! この『魔女っ子&変身ヒロイン創作スレ-まとめ-』を見てよ!」
「へー、スレのまとめサイトできたんだ。ウメ子もちゃんと載ってるじゃん、何が問題なんだ?」
「ここよ、この一文よ!!」

ウメ子はメウたんの前に当該WEBページが印刷された紙を差し出す。
そこはウメ子も収録されている単発系SSのまとめページで、
『魔女っ子&変身ヒロイン創作スレで投下された単発系のSSです』と書いてあった。
それにしても何でわざわざプリントアウトするんだ。

「……やっぱりわかんね。この一文の何が問題なんだ?」
「このバカ羊!! 何が問題って、私がここに分類されてることに決まってるでしょ!!」
「……はぁ?」
「この華麗なるウメ子さまの大活躍が単発SSなんかに分類できる訳が無いでしょう!?
 『ウメ子の大冒険』は魔女っ子スレの代表作とも言うべき重厚長大な大作連載なのよ!!」
「いや……あんな今思いついたように書き流された駄文が単発じゃなかったら何が単発になるんだよ。
 つーかメウたん的には、本当に次スレで続編が書かれてしまった現実に対して驚きを禁じ得ないんだが……」
「うっさい! こうなったら変身よ!」

ウメ子は外に出て梅の木(隣家のお爺ちゃんが大切に育ててる物)の枝をぶち折ると、
それを天高く掲げて呪文を唱える。

「ショーチクバイショーチクバイ、ウメボシノタネワッテナカミマデクエヤー!」

ウメ子は魔法の光に包まれると、ベレー帽にGペン装備の漫画家ルックに変身する!
トレードマークのまん丸メガネはそのままだが、意外にマッチしている。

「小説家に変身したわ! これでウメ子さま大活躍物語を執筆しまくりよっ!!」
「おい、小説家なら羽ペンだろ! 常識的に考えて!」
「うっさいわね、常識に捕らわれてたら魔法は使えないのよ!」

そう言いつつ、パソコンに向かってキーボードをカタカタ言わせ始めるウメ子。

「Gペンすら使わねーのかよ! 意味あるのかその変身っ!?」
「あんたはコスプレイヤーが意味を求めてコスプレしてるとでも思ってんのっ?」
「コスプ……要は単なる着替えかよ! そんなことにわざわざ魔法使うな!」

何のかんの言いつつ、PCの中でウメ子氏著作の超傑作大作(自称)が完成した。

「さーて、早速印刷して出版社に持ち込みよ!」
「おいィ!? 魔女っ子スレに投下するんじゃないのか!?」
「バカね、先に現物を作っちまった方がいいに決まってるでしょ!
 スレに投下するのはその後からでも遅くは無いわ!」
「あっそ……もうなんでもいいよ」

突っ込むのに疲れたメウたんは、ウメ子の好きにさせることにした。
611埋め魔女ウメ子の大冒険・DUO 2/3:2009/05/01(金) 06:29:27 ID:oaAynlHM


「ボツ」
「ぬわぁんですって〜〜〜!? この私の傑作のドコが駄目だって言うのよ!?」
「文法無視。一定してない人物描写。矛盾したシナリオ。
 極めつけはあまりにも多すぎる誤字脱字……。申し訳無いが、門前払いレベルです」
「……あんたじゃ話にならないわ!! 責任者を呼びなさい、責任者を――ぐえっ!?」

憤るウメ子の鳩尾に、メウたんのまん丸角によるタックルが突き刺さる。

「し、失礼したぜ! ゴメンなホント!」

気絶したウメ子を背中に乗っけると、メウたんは慌てて出版社を後にした。




「メウー、参ったなぁ……。このままだとウメ子が目を覚ましたら確実に暴れ出すぞ……」

夜の街をとぼとぼ歩きながら、メウたんは途方にくれていた。
気絶したウメ子を背負ったままだったので人目を引いたが、今はそれどころではない。

その時、向こうから歩いてくる人物と偶然目が合った。

「おや、キミは……」
「あ、あんたは……!」




「ぎゃあああああああああああああっす!!!
 おんどりゃああああああああああああっす!!!」

自宅で目を覚ましたウメ子は、荒れに荒れていた。
承認欲求の不満により溜まりまくった鬱憤を、
梅の木(隣家のお爺ちゃんが大切に育ててる物)にぶつけまくっていた。
当然、枝はボキボキのボロボロである。
自宅の家具に奴当たりしない辺りが微妙にセコイ。

「……くぅぅ……どうしてこの私の純文学が理解されないの……。
 死後にならないと評価できないほどレベルが高いからかしら……」

その時、何かを持ってやってきたのはメウたんである。

「ウメ子、見ろよコレ!」

メウたんが持ってきたのは、一冊のハードカバー本だったが……。
612埋め魔女ウメ子の大冒険・DUO 3/3:2009/05/01(金) 06:30:10 ID:oaAynlHM
「こ、これ……私が書いた奴じゃない!? どうして本になってるの!?」
「あの後、出版社の偉い人がたまたまウメ子の原稿を読んで、
 これは是非とも出版して世に出すべきだって勅命が下ったらしいぜ」
「ふ……ふふふ……。やっぱり、見る人が見れば分かるのよね、私の才能は!」

すっかり上機嫌になってふんぞり返るウメ子だが、
何かを思いついて、外出の仕度を始める。

「お、おい、どこへいくんだよ!?」
「決まってるじゃない! 本屋に行って買い占めるのよ!」
「いや、今はどこの本屋へ行っても売り切れみたいだぜ。
 すごい人気でさ、俺が入手できたのも見本品が送られてきたからだし」
「えっ……ほんとだ、この本にはバーコードも何にもないね」

ウメ子の言う通り、その本は本文以外にはウメ子の名前が書かれているだけで、
他には出版社の名前すら見当たらなかった。

「まぁいいわ、これで私も印税長者の仲間入りっ!!
 さぁ、このままどんどん続編を出して、目指すは全100話よっ!!」

ウメ子のおーほっほというセレブ笑いは実に近所迷惑だったが、
彼女の報復を恐れる近隣住民はクレームをつけることは出来なかった。




「ありがとう、オッサン。これでウメ子もしばらくは大人しくなるよ」
「そうか、私なんかが力になれてよかったよ」

メウたんが路地裏でこっそり会っていたのは、例のサイフを無くしたオッサンだ。

「でもオッサンはすごいなぁ。あんな本を簡単に作っちゃうんだから」
「いやいや、大したことじゃないよ。印刷所に知り合いがいてね」

あんな本というのは、もちろんウメ子の本のことだ。
賢明な読者はお気付きだったと思うが、
あれは装丁が上質なだけの単なる自費出版本、つまり同人誌だったのだ。

「でも本当にありがとうオッサン。助かったよ」
「なぁに、困った時はお互い様さ」
「ふっ、そうだよな」

オッサンとメウたんはダンディーに歯を光らせあうと、互いに反対の方向へ去っていった。




印税が届かないことに気付いてウメ子が不機嫌になるのは、もうしばらく後の話である。
613創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 06:31:52 ID:oaAynlHM
メウたんも言ってるが、まさかの再登場
本当に100話続けるためには何十スレが必要なのだろう
614創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 16:30:58 ID:8l0lplT6
ウメコ乙でした
じゃ、また次スレ終わりになw
615創る名無しに見る名無し
皆さんお疲れ様でした〜
次スレも盛り上がりますように〜