コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ36
■全般
・支援はあくまで規制を回避するシステムなので必要以上の支援は控えましょう
(連投などに伴う規制について参考
>>4-あたり)
・次スレ建設について
950レスもしくは460kB近くなったらスレを立てるか訊くこと。立てる人は宣言してから
重複などを防ぐために、次スレ建設宣言から建設完了まで投稿(SS・レス共に)は控えてください。
※SS投稿中に差し掛かった場合は別です。例 940から投稿を始めて950になっても終わらない場合など
・誤字修正依頼など
保管庫への要望、誤字脱字等の修正依頼は次のアドレス(
[email protected])に
※修正依頼の際には、作品のマスターコード
(マスターコード:その作品の投稿が始まる、スレ番号-レス番号。保管庫の最優先識別コード)
を必ず記述して下さい
例:0003-0342 のタイトルを○○に カップリングを○○に
(↑この部分が必須!)
マスターコードを記述されず○スレ目の○番目の……などという指定だと処理ができなくなる場合があります
■SSを投下される方へ
1.投下前後に開始・終了の旨を書いたレスを入れて下さい(または「何レス目/総レス」を名前欄に)
2.前書き・後書き含めて10レス以上の連投になると同一IDからの投稿が規制されます。(←「さる」状態)
間に他IDからの「支援」が入ることで規制は回避できますので、規制にかかりそうな長文投稿の際は
投下前に支援を要請して下さい。逆に、必要ない場合は支援の要らない旨を書いてください。
前レス投稿から30秒ほどで次レスを投稿することができます。(投稿に関する規制については
>>4- あたり参考)
3.投下前は、他作品への割り込みを防ぐ為に必ずリロード。尚、直前の投下完了宣言から15分程度の時間を置いてください
4.投下許可を求めないこと。みんな読みたいに決まってます!
5.なるべくタイトル・カップリング・分類の表記をして下さい。(特にタイトルはある意味、後述の作者名よりも重要です)
・読む人を選ぶような内容(オリキャラ・残酷描写など)の場合、始めに注意を入れて下さい。
6.作者名(固定ハンドルとトリップ)について
・投下時(予告・完了宣言含む)にだけ付けること。その際、第三者の成りすましを防ぐためトリップもあるとベスト。
(トリップのつけ方:名前欄に「#(好きな文字列)」#は半角で)
・トリップがあってもコテハンがないと領地が作れず、??????自治区に格納されます
前書きの中に、以下のテンプレを含むことが推奨されます。(強制ではありません)
【メインタイトル】
【サブタイトル】
【CP・または主な人物】
【ジャンル】
【警告】
【背景色】
【基本フォント色】
■創作発表板での投稿規制について 参考(暫定)
1レスで投稿可能な容量
・X:1行の最大 / 255byte
・Y:最大行数 / 60(改行×59)
・Byte :最大容量 / 4095Byte
但し、改行に6Byte使うので注意。例えば60行の文なら59回改行するので
6Byte×59=354Byte これだけの容量を改行のみで消費する
さるさん( 過剰数の投稿に対する規制 )
・1時間に投稿できる数は10レスまで。それを超えると規制対象に
・毎時00分ごとにリセット。00分をはさめば最長20レスの連投が可能
連投規制( 連続の投稿に対する規制。短い間隔で連続の投稿ができない )
・30秒以上の間隔をあければ投稿可
おしりくさい虫( 携帯のみ?同一内容の投稿に対するマルチポスト規制 )
・「支援」などの同じ言葉を繰り返し投稿することでも受ける規制。
違う内容を投稿すれば解除される。スペースを挟むだけでも効果あり
■画像投稿報告ガイドライン
ロスカラSSスレ派生画像掲示板
PC用
http://bbs1.aimix-z.com/gbbs.cgi?room=lcsspic 携帯用(閲覧・コメントのみ)
http://bbs1.aimix-z.com/mobile.cgi?room=lcsspic 1.タイトルとコテハン&トリップをつけて絵を投稿する。
尚、コテハン&トリップについては、推奨であり強制ではありません。
・挿絵の場合は、誰の何のSSの挿絵と書く
・アニメ他公式媒体などにインスパイアされた場合は、それを書く(例:R2の何話をみてテンさんvsライを描きました)
2.こちらのスレに以下のことを記入し1レスだけ投稿報告。
(SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください。)
例:「挿絵(イメージ画像)を描いてみました。 画像板の(タイトル)です。
〜(内容・注意点などを明記)〜 よかったら見てください。」
・内容:挿絵の場合は、SSの作者、作品名等。それ以外のときは、何によってイメージして描いたのかなど
・注意点:女装/ソフトSM(首輪、ボンテージファッションなど)/微エロ(キス、半裸など)
/ゲテモノ(爬虫類・昆虫など) など(絵はSSに比べて直接的に地雷になるので充分な配慮をお願いします。)
画像掲示板には記事No.がありますので、似たタイトルがある場合は記事No.の併記をおすすめします。
*ただし、SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください。
3.気になった方は画像掲示板を見に行く。
画像の感想は、原則として画像掲示板に書き、SSスレの投稿報告レスには感想レスをつけないこと。
画像に興味ない人は、そのレスをスルーしてください。
4.SSスレに投稿報告をした絵師は以下の項目に同意したものとします。
・SSスレに投稿報告した時点で、美術館への保管に同意したものと見なされます
・何らかの理由で保管を希望しない場合は、投稿報告時のレスにその旨を明言してください
・美術館への保管が適当でないと判断された場合、保管されない場合もあります
(ロスカラ関連の絵とは言えない、公序良俗に反するなど)
1乙
もう490超えていたとは
9 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:22:28 ID:JLJFxQGZ
...空気読まず投稿しまっくてすみません。
早速ですが、今から「中編1」を投稿してもいいですか?
投下お願いします。
支援待機します
ひとつ言っておくとさるさんはスレ単位だから
スレが変われば他のスレでさるさんでも書き込み可能
13 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:34:08 ID:JLJFxQGZ
皆さんのご厚意感謝します。
次からは気を付けます。
また長くなってしまいますが、
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」 (中編1)
投稿します。
オリジナルキャラ続出です。
少しグロありです。
皆さんの感想、待ってます!
支援
15 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:37:38 ID:JLJFxQGZ
スザクとユーフェミアがナナリーたちの元に訪れていた頃。
アッシュフォード学園の女子寮の屋上には3人の中等部の制服を着た女子生徒がいた。
広大な敷地があるアッシュフォード学園を一望できる、女子寮生のみが利用出来るお勧めスポット。
少し肌寒い風が吹いていた。
眼鏡をかけた三つ編みの金髪の女の子は、地べたに制服を敷いて寝っ転がっているルームメイトに話しかけていた。
「ねえ、そんな所で寝てたら風邪ひくよ?」
「だーいじょうぶよ。イレブンの諺では『馬鹿は風邪をひかない』っていうし…」
「なら、風邪ひいちゃうじゃない!」
「昨日と一昨日、私が何時に帰ってきたか知ってんの?」
「朝の6時頃だろ。全く何してたんだか。賭けチェスで儲け過ぎて、悪い奴らに追っかけまわされてた?」
寝っ転がっている女の子を見下しながら、腕を組んでいる茶髪のボーイッシュな女子生徒は呆れながら言った。
「む…随分と的確な回答だな。ノエル」
「ええっ?それ、本当なの!?」
「ああ、襲われたよ―――――――――――――――――――――――――――犬に」
三つ編みの金髪の女の子は目をパチクリさせていた。
それを見たノエルという女の子は大声で笑う。
「だぁーから、冗談を真に受けるなって、アンジェリナ。こいつはアンタの反応を面白がってるだけだから」
「もうっ!ヒドイ!私、ものすごく心配したよ!」
「ごめんよ。アン。お詫びにツカモト店のシュークリームが冷蔵庫にあるから。それで許してくれ」
「例のシンジュクのやつ!?ねえねえ、私の分もある!?」
「6つだ。一人2個。文句あるか」
「無いっす!!」
「あ・り・あ・りよ!それってまた賭けチェスで儲けたお金でしょ?しかも私をモノで釣ろうなんて、随分甘く見られたわね!」
顔を赤くして怒っているアンジェリナを見て、上半身を起こし、壁に背持たれた。少女は軽く頭を下げる。
「ごめん。アン」
「フン!一回謝っただけじゃ済まないんだから!」
「じゃあ、シュークリームは…」
「食べるわよ!」
そう言うと、アンジェリナは身を翻して階段へ向かっていった。
「あー。じゃ、私も行くわ。そろそろ休憩時間終わるし、今日はゆっくり寝てていいよ。担任には欠席するよう言っておいたから」
「…恩にきる。お礼に私の分、一つやるよ」
「え?本当!?わーい、やったー!あ、でも明日も休んで3日連続はダメだからな!じゃあね〜」
ノエルの姿が見えなくなるまで、少女は手を振っていた。
二人の友人を見送ってから、取り残された少女はそっと呟いた。
「ごめんなさい。アン。ノエル。私、本当に襲われてたのよ。犬よりも価値の無いクズに」
唐突に、彼女の傍から少年の声がした。
16 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:38:46 ID:JLJFxQGZ
「もう行ったの?」
「…ええ、そろそろ授業が始まるし、この寮には今だれもいないわ。私と貴方以外は」
「驚かないんだね。僕がいきなりここに現れたことに」
「一昨日起きたことに比べたら、ね」
それもそっか、などと呟いて少年は一人で頷いていた。
目の前の少年を見ていて、少女は再度認識した。
あれは悪夢なのではない。現実だったのだと。
少年は笑顔で、少女に話しかける。
「ねえ、どうだった?僕が与えたギアスは」
「…まあまあね」
「あはははは、結構気に入ってくれたみたいだね。少なくとも頼りにはなるでしょ?」
少女は左目を閉じ、右手で瞼に触れる。
そして、手を離し、瞼をゆっくり開けた。
そこには妖しく眩く赤の紋章。彼女の綺麗な琥珀色の瞳は無かった。
人はそれを『ギアス』と呼ぶ。
「リリーシャ・ゴットバルト――――――――――――僕が言ったこと、覚えてるよね?」
ようやく、少女と少年の視線が交差した。
少女の端正な顔に、強い意志が宿る。
屋上に吹く風が、彼女の青い長髪を靡かせた。
「あなたの願いって何?――――――――――――――――――――X.X.(エックスツー)」
その返答に、少年の笑みはより一層深くなる。
右目は黄金の瞳。左目は深緑の瞳。
左右非対称の目の色に、細い線の整った顔立ち。女性より美しい白の長髪を黒いリボンで結えている。貴族の坊ちゃまのような、赤い舞踏会用の服装。
年齢に似合わない存在感。そして、一昨日の出来事。
リリーシャにはその少年が決して人が届かぬ『人外』の者に見えた。
支 援
18 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:39:53 ID:JLJFxQGZ
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00「終わる日常」(中編1)
40時間前に遡る―――――――――――――――――――――
青い長髪に琥珀色の瞳を持ち、一目惹くほどの容姿を持つリリーシャ・ゴットバルトは、郊外にある夜の街の巨大な地下カジノ、『アンダーゴールド』と呼ばれる場所に来ていた。
会員制の違法カジノであり、このエリア11に住むブリタニア人の貴族の中でも、特に腹黒い連中が集まる場所だ。
かつてブリタニア軍が地下基地として扱っていた巨大ホールを改装したものであり、その規模はエリア11で最大である。
チップを上乗せするだけでリフレインを混ぜたカクテルが手に入るし、奥に行けば、私より年下の女の子がベッドで待っていたりする。
テロが一際激しいこのエリアでは武器や兵器のバイヤーが多く存在する。
裏では、製造業で余った、劣化した武器や兵器をイレブンに高く売りつけて、テロ活動を行わせる。表では軍を動かし、適度な勝利と消耗戦を展開し、成果を上げて名声を得る軍人が多く出入りしている。そのビジネスに取り巻く連中も大勢いる。
そうした金で、さらなる嗜好を富ませた遊戯をするために作られた『貴族』の遊び場。
武器売買だけはなく、IDの無いイレブンや乞食のブリタニア人の人身売買や児童買春も珍しくない。
下劣極まりない遊戯が多くあるこのカジノでも、古代からあるブリタニアならではの至高の知的ゲーム。
チェスの決闘は存在している。
賭けチェスの棋士として、貴族の令嬢のようなドレスを身に纏った一人の美少女、リリーシャ・ゴットバルトはここにやってきた。
昔から知的ゲームが好きだった私は、年齢が二ケタに達する前には10歳以上離れた兄よりもチェスが強く、やがて親類でも友達でも相手になる者がいなくなった。
小さい頃から頭の回転が速く、何でもそつなくこなすことができたので、周囲の人々が自分より努力しながらも、自分より成果が出せないことが疑問だった。
そして、ある事件をきっかけに、努力することに意味を見いだせなくなり、周囲の人間と歩調を合わせるために、あえて何もしなくなった。
私が家族から親類に『問題児』と言われるようになったのも丁度この頃からだった。
エリア11に派遣された兄を追ってアッシュフォード学園に入学したが、そこでも私を魅入らせるものに巡り合わなかった。
簡単すぎる授業に嫌気が指し、唯の退屈凌ぎのために賭けチェスをやり始めた。
本国では年齢制限の厳しい裏舞台でも、テロが頻繁に起こるこの植民地ではそういった規制が緩い。
近頃は授業を抜けて、カジノに出かけることもある。
いつだったか。『アンダーゴールド』の会員権を戦利品として入手して、それから、よりハイレートの賭けチェスにまで手を染めていた。
調子が良かった時は、一晩で小さな一軒家を購入できるほどの大金を稼いだ事もある。けれども、使い道が無かったのでとりあえず銀行に預けておいた。
支援
20 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:41:10 ID:JLJFxQGZ
ゴットバルト家は代々、軍人として神聖ブリタニア帝国に仕えてきた家系だ。母の家系も同じく軍人を多く輩出している血族だ。
だからといって私に愛国心があるかと言えば、極端に希薄であると言える。
私は世界最大の国家である神聖ブリタニア帝国の国民であることに誇りに思っているわけではないし、真っ直ぐ過ぎる父や兄のように、ブリタニア帝国そのものに忠誠を誓っている訳でも無い。
別に名誉や財産が欲しいわけではない。私はただ、仲の良い友人たちと恙無い生活を送って一生を終えればそれでいい。
ルームメイトのアンや悪友のノエル。それに、家族が無事でいれば十分だ。
けれど、今、私がやっていることは何だろう。
負ければ、どこかの変態に身を売られた後で、全身の臓器を闇ルートで売り飛ばされても足りないくらいの金を賭けて、私の命を左右するゲームに身を投じている。
なぜ私はこんなことをしている?
両親や兄妹に抑圧されていた鬱憤を晴らすためだろうか。
いや、違う。
私が生粋の軍人の血を引く身だからだろう。
命のやりとりの際に味わう、全身が凍てつくような緊張感に、どうしようもないほどの歓喜を覚えてしまうのだ。
この矛盾は私の存在を揺らがせるものでありながら、同時に私という個人を定義するものでもある。
私の前に、血肉が脇踊るような出来事が、あるいは人物が現れないか。
心の奥底で、私は運命を大きく変える転機を探している。そんな愚かしいことを切望しながら私はこうしているのだろう。
しかし、
本当に、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――つまらない。
「チェックメイト」
ポーンをクイーンに変えた後、一気に相手のキングを仕留めた。今まで戦ってきた中では強いほうだったが、私の血を躍らせるには物足りない相手だった。
若くてそれなりに顔立ちも良かったので、近頃この業界で噂になっている『プリンス』様かと思ったが、どうやらハズレだったようだ。
相手の貴族様は、戦況が悪化した後半あたりから両手に侍らせていたイレブンのバニーガールに八つ当たりしていた。
そして負けた途端、盤上の駒を全て弾いた。
自分の腕に随分と鼻にかけていたみたいだから、よほど悔しかっただろう。
しかも腐ってもアマチュア並みの腕はある。だから気づいたのだろう。
私との差を。
今日は調子が悪かった、可憐な乙女に花を持たせてやった、などと。
中身が空虚でプライドばかり高い男など、見苦しい事この上ない。
兄もプライドばかり高い馬鹿男だが、男であろうが女であろうが負けたならば潔く『負け』を認める人だ。
馬鹿真面目な馬鹿だけに。
だから、彼に世話を焼こうとしたバニーガールがぶたれた光景を見た時は、吐き気すら覚えた。
私は、彼を通り過ぎる時に足を引っかけてやった。
面だけが良いお坊ちゃまは大きな音を立てて、無様に転がった。
一瞬、何が起きたか分からない顔をしている青年を見下し、
私は淑女たる仮面を被る。
「あら、ごめんなさい。……では、これで失礼します。『盤上の騎士』様」
スカートの両端を掴んで一瞥した。周囲に群がる見物客を無視して、私は膝を返した。
今日もつまらなかったな。
そんなことを心でぼやきながら、花の香りとマリファナの匂いが混じり合うこの大広場から出ようとした時。
「お、お待ちください!エルネスタ様!」
と、背後から大きな声がして私は呼び止められた。
支 援
22 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:46:36 ID:JLJFxQGZ
エルネスタ・ラウディス。
それがここでの私の名前。以前、登録されたどこかの貴族の名義をそのまま使っている。
私が振り向くと、先ほど、対戦者のとばっちりを受けたイレブンのバニーガールがいた。
ぶたれた跡が痛々しい。豊満な胸が特徴的で、小柄なイレブンの女性だ。
彼女は私と目が合うと、頭を大きく下げた。
高校生にも満たないこの私に、大のオトナが。
「あ、あの、ありがとうございます」
想定していた言葉に、想定していた返答をする。
「一体何のことですの?」
私より視線を下げるために、膝を屈めて身を恐縮させていた。
「先ほど、私を助け…」
「何を自惚れているのかしら。イレブン風情が」
私の言葉に、バニーガールの女性は大きく目を開く。
「貴女とあの方がわたくしの通行の邪魔だった。ただそれだけよ」
凍りついているバニーガールを無視して、私は視線を逸らす。
「ねえ、そこの使用人。ここの経営者を呼んできてくれるかしら」
腰の低いイレブンの中年男は、私に近寄ってきた。
「はっ?何事でございましょうか。お嬢様」
「この女、クビにしてちょうだい。わたくしを不機嫌にさせたのよ。このイレブン」
それを聞いた男は少し面喰った後、返事をした。
「…かしこまりました」
「っ!!そ、そんな!?エルネスタ様!?」
その言葉に眼前にいるバニーガールが狼狽する。
「どうか、どうかそれだけはご勘弁を!私には他に何処にも行くあてが無いのです!先ほどの無礼、大変申し訳ありませんでした!私に出来ることなら何でもいたします!で、ですから…」
涙を瞳に溜めて、ひたすら謝り続ける女性。
「ではお聞きましますけど、このわたくしに対して一体貴女に何が出来るというの?わたくしには下働きの人間は足りているのよ」
「そ、そ、それ、それは……う、くぅ」
下唇を噛みしめ、口ごもってしまった。
私はあからさまに大きなため息をついた。
「フン。今さっきわたくしに吐いた言葉は真っ赤な嘘だったのね。全く、能の無いイレブンはこれだから…」
侮蔑の言葉を吐き捨てると、私は手元にある3つの札束を、彼女の胸の谷間に突っ込んだ。
まだ余裕があるのかと驚きつつも、私は驚愕の表情を浮かべた彼女に背中を向ける。
「いいですこと?二度と『わたくし』の前に姿を表さないで」
彼女は何か私に言っていたが、それを無視した。
そのまま一度も振り向かずに、私は一直線に出口へと向かった。
支援
24 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:47:39 ID:JLJFxQGZ
カジノの出口を抜けて、赤い絨毯が敷かれている大きな階段を上って扉のむこう側に出ると、そこには十数台の黒塗りの車と、廃墟と化した町並みが目に映った。
目の前に立つ初老の運転手に誘われるがままに、車の後部座席に乗り込んだ。
「トウキョウ疎界まで」
「かしこまりました」
そういって、車を発進させた途端、いきなり車の前に2人の屈強な男が立ちふさがった。
急ブレーキがかかり、私は前方に全身が傾いた。
(何事!?)
運転手が文句を言おうと窓を開けた瞬間、彼は無理やり外に引きずり出された。
いきなり二人の男が前の席に乗りこんでくる。
「ちょ、ちょっと貴方たち、何してるの!?」
驚いた私は、前に座る2人の男の肩を掴んで問いかけた。
しかし、何も答えない。
その時だった。私の問いに答えたのは。
「私が送って差し上げますよ。エルネスタ・ラウディス嬢」
扉を開けて後部座席にいる私に話しかけてきたのは、紳士の仮面をかぶった『盤上の騎士』様だった。
支 援
支援
27 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:49:59 ID:JLJFxQGZ
私は外の風景を見ていた。
確かにトウキョウ疎界の方角だが、行き先がトウキョウ疎界でないことは明白だった。
前の座席には二人の男が座っている。先ほどから一言も喋っていない。
それに対して、私の隣に座っている『盤上の騎士』様はペラペラと私に話かけて来た。
「一体、何処に向かっていますの?」
平淡を取り繕って、私は隣の青年に問いかける。声は上ずっていない。
「ちょっと、面白いところですよ」
その言葉に、込み上げてくる恐怖を抑え込むことに私は必死になった。
そんな私の葛藤を余所に、彼は話を続けた。
「私、来年はチェスの棋士になろうと思ってるんですよ」
「それはそれは…とても素晴らしいことではありませんか。貴方のお父上もさぞかし鼻が高いことでしょう。棋士は、ブリタニア国内では高貴な身分でありますからね」
持ちあげられたことを鼻にかけたのか、それとも私の淡泊なお世辞を鼻で笑ったのか、
彼は不快な笑顔を浮かべていた。
「私の父は、あのカジノのオーナーでしてね。私と貴女の決闘をモニタで見ていたんですよ」
「…私は言いふらすつもりはありませんよ」
「いやいや、そういうことじゃないんですよ。私は父の前で恥をかいてしまった。私が手加減をしたばっかりに」
「…ではここで再戦いたしませんか?それで――――」
ガッ!!
私はいきなり口を塞がれた。青年の紳士の仮面が外れた瞬間だった。
彼の醜い心の素顔が、私の前に晒された。
「そういう気取った態度が気に喰わないんですよぉ。貴方のような態度が如何に周りに迷惑かけているかご存じないでしょう?」
青年の腕に力がこもる。呼吸が苦しい!
私の背筋に冷たい悪寒が走る同時に、黒い怒りが心の奥底から込み上げてきた。
…腐っている!この男。性根から!
「…人の口に門は立てられません。それに、私より強い棋士がいること自体、私は許せなくてね」
青年は血走った目を浮かべると、私のドレスに手をかけた。胸当たりから、一気に引きずり下ろした。
「!いぃ、いやっ!?」
全身から怖気がした。
下品な笑みを浮かべた『盤上の騎士』が、私に覆いかぶさる。
その間、前の座席に座っている男たちは一言も声を発さなかった。
首に生暖かいものが触れる。舌が私の肌を這いずった。彼のつけている香水の下に隠れる男特有の匂いが私の鼻を刺激した。
もう、耐えられない―――――――――――!!!
「い、いってぇ!!こ、この女ぁあああ!!僕の顔に爪を立てやがってぇ!!」
彼の拳が私の腹に入った。
その衝撃に、胃の中身が込み上げてくる。
顔に飛んでくる拳を手で塞いでいた。
いたい!や、やめて!!
「おいっ!!そこの倉庫で車を止めろぉ!!早くしろよぉ!」
青年がそう叫ぶと、車の猛スピードを出した。体が一瞬、反動で振り動かされる。
瓦礫が多い地面を走り、ガタガタと車体は揺れる。
支援
29 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:52:39 ID:JLJFxQGZ
その時だった。
「「むっ!?」」
初めて前に座っている男たちが声をあげた。
瞬間、何かに激突したような音がして、すぐ後に大きな石の上に跨ったような感覚が車体に伝わった。
「おい。さっき人を轢かなかったか?」
私は驚愕した。
(な、何だって!?)
「は、はっ。申し訳ありません…」
「まあいいよ。こんな所にいるのはどうせイレブンだろ?」
(こ、こいつ!人の命を何だと思ってるの!?…腐ってる!腐りきってる!)
そして、急に回転するような反動がくると同時に、大きな音を立てて車は止まった。
「おいっ!外に出ろ!」
扉をあけられた途端、私は青年に押されて、冷たい暗闇の中に引きずり出された。
ビリビリと、服の破ける音がする。
床はコンクリートで、冷たく硬い感触が肌に伝わった。
ふらふらとする視線で、私は車のヘッドライトに照らされている先に目をやって、
私は絶句した。
「あっちゃー。ありゃ死んでるなぁ。おい、早くここの電気をつけろ。何も見えないよ」
「はっ、ただいま」
ライトの先に照らされているのは、タイヤの跡にこびり付いている血の跡と、転がっている幼い子供の死体。
茫然自失となって地べたに座り込んでいると、倉庫内の電気がついた。
「うっ―――――――――――――!!!」
照らされると共に、子供の無残な死体が私の目に焼き付いた。
「ねえ、どうなの?」
青年は私の腕を掴んだまま、死体を確認している男に、平然と話しかけていた。
「イレブンではありません。ブリタニア人のようです。即死ですね。しかも顔が潰れていて確認できません。服装から察するに、ここに住んでいる貧困層の人間でしょう。死体は後で片付けますので…」
もう、耐えられかった。
人を殺したのに、平然とやりとりをする異常者の言動に。この異常者どもの言動に。
これが裏の社会。
分かっていた。頭では分かっていたはずなのに。分かっていて足を運んでいたのに。
「おえ、おえええええええっ!!」
私は胃の中にあるを吐き出してしまった。
両手では押さえられず、白い物体が地面に飛び散る。
「うわああ!きったねえ!ちょっとこいつ押さえてよ!僕触りたくない!」
支援
31 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:54:20 ID:JLJFxQGZ
全てを吐き出した私は、いつの間にか二人の屈強な男に両腕を抑えつけられた。
必死に抵抗するが、振り解けないことは理解していた。
私は、歯を食いしばりながら、射殺す目で眼前に立つ青年を見上げた。
正面には、青年と、轢かれて死んだ子供の姿が目に入る。
彼の心と同じように、ひどく歪んだ青年の顔がそこにあった。面白くてたまらないといった目で、私を見下していた。
「化粧が滅茶苦茶でせっかくの顔が台無しだねえ。吐くわ叫ぶわ…レディとして、品性のかけらも無い。…それに、君、随分と若いだね。化粧で分からなかったよ」
青年は懐から、一丁の拳銃を取り出した。
それを見た私は喉元が干上がった。
「ひ、ひいいいぃ!」
「あああっははははははっ!!いいねいいねその顔!まったくガキのくせに大人ぶっちゃてさあ。僕、そういうの一番嫌いなんだよ!」
怖い、怖い!怖い!!
「本当はさ。犯したあとに、このナイフで顔を切り刻んでやろうかと思ってんだけど…」
そう言って、スーツの内ポケットにぶら下げている大きなバタフライナイフをちらつかせた。
「僕。ムカついちゃって……一発で殺すことにしたよ」
ガキリ、と鉄槌を降ろす音が聞こえる。
ゆっくりと私の顔に銃口が向けられた。
首を大きく横に振り、手足を必死に動かすが、取り押さえられて全く動かすことが出来ない。
私は理性も失って、仮面を取って、泣き叫んだ!
「いあああっ!やめて、やめてええ!!死にたくない!死にたくないよお!」
私はこんなところで終わるの?こんな唐突に!理不尽にも終わってしまうの!?
いやだ!いやだ!!私はまだ!まだ、まだ死ねないの!
「わ、わた、私はまだ死ねないの!こんなことで死ねないのよおお!!お兄ちゃんの、た、ためにも、私はあああああああああ!!」
「うっるせえええええ!!もう喚くな!死んじまえ!!」
銃口が私の眼前に迫ってきた!
その時だ。
支援!
33 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:56:02 ID:JLJFxQGZ
力が、欲しいか?――――――――――――――――――――――――――――――――
(えっ?何、さっきの声?)
力が欲しいか?―――――――――――――――――――――――――――――――――
(誰、誰が!?)
その時、死んだはずの子供の手が、かすかに動いた。
「ひっ!!?」
(ウ、ウソでしょ!?車に轢かれてるのに、生きてるの?)
生きたいのなら、生きて成し遂げたいことがあるのなら、僕と契約しないか――――――
(き、君が喋ってるの?それに、け、契約?)
うん。君に力を与えるかわりに、僕の願いを叶えてほしい。それが契約――――――――
(ち、『力』?)
君に迫る運命を捻じ曲げてしまえるほどの、人ならざる『力』――――――――――――
私の前に、知らない光景が映った。
二つの灰色の惑星の接近。
何世紀も前の服装を着た、目を閉じた子供たち。
空白の世界にただ一人、佇んでいる少年の姿。
焼けた、何も無い荒れ果てた荒野。
もう一度、問おう。力が、欲しいか?――――――――――――――――――――――
…いいわ。やってやるわ。
私には成し遂げなければならない事がある!
こんなところで死んでたまるか!
受けて立とうじゃない!その契約!
じゃあ、君に『王の力』を授けよう―――――――――――――――――――――――
その瞬間、私は暗闇に捕らわれた。光る糸に絡まれて、振り解こうとしても私の体に巻きついてくる。そして、私の視界は真っ白な光に包まれた。
そして『私』は目を開けた。
支援
35 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:56:52 ID:JLJFxQGZ
「おい、何とか言えよ。女ァ。いきなり黙るなよ…つまんなくなっちゃうじゃん」
歪んだ青年の顔が目の前に迫っていた。
私は怒りで睨みつける。
その時、体の内から込み上げてくる『何か』が私の頭に突き刺さった。
熱い感覚が左目に走る。
見開かれた眼に、彼女の琥珀色の瞳に眩い光と共に、赤の紋章が浮かび上がった。
妖しく光る、鳥のような悪魔の刻印。
「何だ?その左目は…」
怪訝に私の瞳を覗き込んだとき、その『力』は産声を上げた。
赤の紋章が、はばたく。
「その銃で、この男を殺せ!」
バン!
と青年の持っていた銃が火を吹いた。
いきなり、私の左側に立っていたボディガードが崩れ落ちる。
「え?」
一瞬、何が起きたか分からかった青年はそのまま固まってしまった。
まだ煙を吹く拳銃を見ながら、彼は呟いた。
「お、俺は一体何を?」
「イ、イアン様!何で撃ったんですか!?な、何でジャイルズを!」
私の腕を離し、もう一人のボディガードは撃たれた男に駆け寄っていた。
「……るさいうるさいうるさいうるさい!!黙れよお前!パパに拾ってもらったクズのくせに!!」
狂気じみた目を私に向けて、イアンと名乗るらしい青年が子供のように喚いていた。
「女ああ!!お前が叫んだせいで、人を殺しちゃったじゃないか!どうしてくれんだよぉ!」
子供じみた責任転換。私に銃を向けた。
私はもう一度『命令』する。
「その男も殺せ!」
私に向いた銃は、方向を変え、倒れた男を介抱するもう一人のほうへ向けて、その男に近寄った。
銃口をその頭に付けた。
近距離で引き金を引いた。
銃声と共に、男は一際大きく体を震わせ、折り重なるように倒れた。
「あ、ああああああああっ!!?な、何で、何で体が勝手に動くの!?何でカーコフも殺しちゃうのおお!!?」
再度、私に銃口を向けた。顔はくしゃくしゃに歪んでいる。
「お、おおおおお女ああああ!!ぼ、僕に、なにをしたあああああ!!!」
撃たれる!?そう思って、体を仰け反らせた。
が、一向に弾が発射されない。
「ど、どうして引き金が引けない!?なんでどうしてどうしてどうしてぇえええ!!?」
彼は、私に銃を向けている。
私は『命令』する。
「私に銃を向けるな。手持ちのナイフで、己の腹を刺せ」
青年は、手から銃を落とし、後ろに隠していたバタフライナイフを取り出して、
両手で思いきり、自分の腹を刺した。
36 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:58:25 ID:JLJFxQGZ
「ごぼっ!?」
「刺せ」
もう一度、刺す。
「刺せ!」
さらに、刺す。
私の血が、まさに踊り狂おうとしていた。目の前で起こる奇劇に。
「フヒ…」
「い、いだぁ!!」
「ふひ、ふひひひひひ…」
「うぎゃ!ぎひっ!いた、ぐぶっ!な、何でっ、手が、手が止まらな…ぎゃあああ!!」
青年は、手に持っているナイフで自分の腹を刺していた。
何回も。何回も。何回も。
彼の悲鳴と鈍い音が私の耳に届いて、心の温かい部分を抉った。
青年の周りには、腹部を刺すたびに血が飛び散った。
痛みに歪んだ表情を、霧散する赤い血を、耳を鳴らす悲鳴を、私は五感を通して味わっていた。
彼にその悲劇を止める術は無い。
一方的な暴力の前に蹂躙されるがままの羊の光景を目の当たりにし、私の理性はコワれてしまった。
「うひゃはははははははははははははははは!!!あはははははははははははは!!」
声がかれすれても、私の絶叫は収まらない。体の奥底から溢れ出すエクスタシーを全身全霊で受け入れていた。
「いだい!いだいよぉおお!!お、お前、あがっ!一体何を、いぎぃい!!」
うるさい!お前はただ悲鳴をあげていればいいんだ!私に、その無様な姿を見せつけておけばいいんだ!それがお前に与えられた役目なんだよぉ!!
チェスで私の足元に及ばぬ馬鹿がっ!親の七光りで平気で人を陥れる下衆がっ!
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえっ!!このクズがああああ!!」
今度は、腹に刺したナイフをぐりぐりと動かしはじめた。
息も絶え絶えになり、もはや声にすらなっていない。
その音がどうしようもなく気持ちよくて、
虫唾が走った。
私の笑い声よりも、男の悲鳴がうるさくなったのだ。あまりにも耳ざわりなので、
私は、腹を刺すことを止めさせた。両手を伸ばしたまま、彼は血を吐いて、訳の分らない雄叫びを上げるだけ。
もう十分だ。
五月蠅いから、
目障りだから、
終わりにしよう。
だから、血塗れになったナイフを首筋に向けてやった。
「や、やめてくれえええ!謝るから!お金ならいくらでもやるから!」
そんなものはいらない―――――――――――――――――
私はただ―――――――――――――――――――――――
お前の命が――――――――――――――――――――――
欲しい!!――――――――――――――――――――――
支援
38 :
POPPO:2009/02/03(火) 20:59:27 ID:JLJFxQGZ
瞳に輝く赤の紋章が、さらに妖しく光り出す。
「いやだあああああああああああああああああああああ!!!」
ザクゥウウ!!
青年はナイフを勢いよく、己の首に突き刺した。
刃が柔らかい肉をズブズブと貫き、骨の合間を通って反対側の皮膚を破った。
傷口から血が溢れ出し、全身は痙攣を起こしている。
ヒ、ヒュー、ヒュー、ヒュー………
かすれた呼吸音は、だんだん小さくなり、最後は聞こえなくなって、
彼は動かなくなってしまった。
どのくらいの時間、呆けていただろうか。
足が冷たい。
薄いタイツなので、地面の冷たさがじかに伝わってくる。
お気に入りだったハイヒールが折れていた。
白いリボンは振り解けていて、
ピンクのロングドレスはスカートが太もものところから破れ、所々に泥や血が付いていた。
唾液を呑み込むと、口紅の味がする。
私は、虚ろな目で辺りを見回した。
目の前に転がるのは蹲るように死んでいる青年。
左右には眉間に風穴をあけて絶命している屈強な男。
私より強い力をもっていたとしても、
私が得た『チカラ』の前では無力だった。
黒塗りの車のヘッドライトが、私を照らしていた。
真正面からそれを見てしまい、私は目がくらんだ。反射的に両手で顔を隠す。
彼女の左目はまだ、赤の紋章が妖しく輝いていた。
支援
支援
ID:fM7tiysNさん
支援ありがとうございました!
これで「中編1」
投稿終了です。
…いまさらなんですが
「前編3」は削除されるのでしょうか?
>>41 削除??
前スレは埋まれば落ちるはずですが、
保管庫にはちゃんと収納してもらえるはずだと。
それと支援は他の方もされてますよ。
乙でした!
これからゆっくり読みますね。
なんだか血の匂いがするみたいで。ドキドキします。
>>41 POPPO卿、乙でした!
リリーシャ・ゴットバルト、そしてギアスを与えたX.X.
一人の人間にたいしていくつもの命令をしていますが、如何なる能力なのでしょうか。
行動中にも明確な意思はあるようですし……
むぅ、続きがとても気になります。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
45 :
POPPO:2009/02/03(火) 22:06:25 ID:JLJFxQGZ
保管者トーマスさん。
「提案」
マジでお願いします!!GJです!というか最高です!
それとその設定なんですが、内容を追加していけるのでしょうか?
であれば最高なんですが、もしお手数がかかるようでしたら、前編3の末尾でお願いします。
この作品、オリジナルキャラがあと3人、KMFが3機ほどあって、物語が進むにつれて
入れていきたいと思ってますが・・・
あと、大変申し訳ないんですが、「前編2」の35スレの325〜327の所は削除できないでしょうか?
できるならお願いします…
また、31の「大人ぶっちゃてさあ」→「大人ぶっちゃってさあ」
33の「車に轢かれてるのに」→「車に轢かれたのに」
の誤字修正をお願いします。
…なんか、我儘言い放題ですみません。
自重します。
ID:fM7tiysNさん。
再度になりますが、支援、本当にありがとうございます。
>それとその設定なんですが、内容を追加していけるのでしょうか?
はい、出来ます。その際にはどこから設定なのかを書いていただけると助かります
>「前編2」の35スレの325〜327の所は削除できないでしょうか?
すいません、あれは当方の消し忘れです。修正しておきました。
誤字の件も修正しました。領地よりご確認ください。
あと、その手の「我儘」は有益な意見として受け取っていますので、遠慮なくどうぞ。では。
47 :
POPPO:2009/02/04(水) 02:01:04 ID:VihRNli3
すみません。
またひとつ、書き終わりました。
今から「中編2」を投稿したいと思います。
今日は休日だったので存分に書きました。
暇を見つけては話を進めていきたいと思っていますので
今後ともおろしくお願いします。
48 :
POPPO:2009/02/04(水) 02:01:47 ID:VihRNli3
あの悪夢のような夜から2日経って、
女子寮の屋上で、リリーシャとX.X.は再び出会った。
立ち話もなんだし、とリリーシャはX.X.を自室へ案内した。
中等部女子寮の一室。二人一組の部屋であり、机をベッド、そしてクローゼットが左右対称に置いてあり、リリーシャの机の隣には、1メートル程の高さの冷蔵庫が置いてある。
「飲み物はいる?」
と、リリーシャは、貴族のお坊ちゃまのような格好をしたX.X.に問いかけた。
「ん?別にいいよ」
「じゃあ、お菓子は?シュークリームはあるけど…」
「シュークリーム?何それ?」
「え?知らないの?」
首を傾げるX.X.を見て、リリーシャはそれが冗談では無いことが分かった。
「まあいいわ。食べてみなさい。美味しいから。あ、柔らかいから気を付けてね」
箱から一つ取り出して、ティッシュと共に手渡した。
X.X.は手に取ったシュークリームを訝しげに見回した後、大きく齧り付いた。
もふもふ、と言わせながら口からクリームが溢れ出してきた。
「言っとくけど、一つだけしか…」
私が言葉を言い終わる前に、
「ん」と、X.X.は両手を突き出していた。
口の周りにシュークリームの黄色いクリームを付けて、先ほどのシュークリームは消えていた。
両手を突き出すX.X.の姿は、年齢相応の可愛い少年だった。
その無垢な瞳に、リリーシャは無意識に2つ目のシュークリームを手渡していた。
その後、友達にやるはずだったシュークリームが無くなってしまったのは言うまでも無い。
49 :
POPPO:2009/02/04(水) 02:02:39 ID:VihRNli3
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」(中編1)
X.X.は私のベッドに座るように促して、私は自分の椅子に座って彼のほうを向いた。
シュークリームのクリームで私のベッドが汚れないように、濡れたタオルでX.X.の手と顔を拭いてやった。
肌が柔らかくてずっと触っていたかった、というのは黙っておこう。
とりあえず聞きたいことが山ほどある。私は足を組んで、私はノートパソコンを起動させた。
重要なことは書き落としておかねばならない。
ずっとX.X.の可愛い顔を見つめていたかったが、そうもいってられない。
私から話を切り出した。
まずは初めて会った時のことからだ。
「あの後、X.X.はどうしたの?それに、車に轢かれた形跡が無いなんて、一体何者?」
「僕は不老不死だからね。車に轢かれても、銃で頭を打ち抜かれても死なないよ」
あまりの返答に頭を揺さぶれた。
「……不老不死?ちょっと待って。じゃあ貴方、今いくつなの?」
「うーん…寝ていた時間を省くと、700歳かな?」
…ごめん、今クラリときたわ。700歳!?700年前って、まだ銃すら発明されていないじゃない!
「ちょっと信じがたいけど、あれから無傷で生きてるから、ね。不老不死か、うん。不老不死、ね。うん。納得」
…じゃあ、あの子供みたいな素振りはまさか計算づく!?
そんな思いが頭を駆け巡り、警戒心が緩んでいた私のX.X.に対するイメージが180度回転しようとしたその時、
「でも、よく分かんないや」
と、にっこりと満面の笑みで私を見つめた。
ヤバい!マジで可愛い!
計算づくでも構わないわ、と心底思ってしまったことがくやしい…
「それで、リリーシャはあの後、一体どうしたのさ?僕、目が潰れてたから、目が見えるようになった時は死体と車だけしか無かったんだけど…」
「…無我夢中だったから少し記憶が曖昧なんだけど、トウキョウ疎界が見えていたから、そのまま走って帰ったのよ。服は海に捨ててきたわ」
そう言って私は机の下から、裁縫道具箱を取り出した。
その中から、あの時拾ってきた拳銃を取り出して、それをX.X.に見せた。
「…銃なんてそこらへんのゲットーで手に入るけど、高い上に領収書が来ないからね。貰っておいたわ。持ち主は使えないから、ね」
少し、暗いジョークを織り交ぜてX.X.に目をやった。
「うん。そうだね♪」
と、X.X.は笑いながら頷いた。
…この子。やっぱり狂ってるわね。人間の常識や倫理が通用しない。
700年も生きれば、精神は擦り切れてしまうのか。
私はX.X.の認識を改めた。
彼は私が考えている以上に危うい存在だと。
「そうそう。僕が与えた『力』。ちゃんと分かってる?なんなら…」
「ああ、それなら…」
と私はこの力についての説明を始めた。
50 :
POPPO:2009/02/04(水) 02:05:04 ID:VihRNli3
「能力は、対象者の意思とは無関係に、他者の身体を思いのままに動かすことができる力。
操作対象者は国家、人種、性別を問わず、人間のみ。
その他の動植物、または遺伝子的に人間と近い動物に対しても無効。
また、死んだ肉体にも効果は無い。
操作できる人間の数は一人。
複数の人間の同時操作は不可。
条件は、対象者の生身の一部分を見ること。もしくは対象者の皮膚に触れること。
言葉を発さずとも、脳内命令で操作が可能。
対象者の顔、正確には眉間から上部にある頭部を視認することで、全身を支配することができる。
しかし、対象者の頭部を見ずに体の一部分を見た場合は、その部位しか効果が無い。
全身が服やヘルメット、手袋などで覆われて素肌が見えないときは効果が無い。
また、身体の間接に矛盾した動きを命令するもことも可能だが、体を宙に浮かせるといった身体能力以上の動きができないことから、物体を動かすようなサイコキネシスではなく、筋肉を動かす電気信号に直接干渉する力だと思われる。
効果範囲は左目の視界領域。テレビや録画による映像を介しての視認は効果無し。
しかし、ガラスや鏡、または双眼鏡や望遠鏡のようなもので光の透過と反射を利用し、肉眼領域以上の範囲を広げることは可能だが、距離に長さに比例して、その効力も弱まるので実質上の効果範囲は500メートル程度。
そのことから、左の肉眼で反射した光が対象者に当たり、対象者が人間であるという認識を私が持って初めて効果があることが分かった。
対象者に直接触れている時は相手の思考すら支配下に置けるが、触れなければ幾ら接近しようとも思考は操れない。
400メートル以降では、頭部を視認したとしても、指一本がかろうじて動かせる程度。
また、対象者の思考が支配下にある場合、対象者には術中とその前後の記憶が欠落する。
発動から人体操作までのタイムラグは0,1セカンド。
効果持続時間は対象者を視認し続ける間は常に効果があり、瞬きで効果が途切れることは無い。しかし、一秒以上目を離すと効果は失われてしまう。
また、同じ対象者に対して、何度も操作は可能。
…………と、今、分かるのはこれぐらいだけど、ってどうしたの?」
つらつらと能力の詳細を喋る私を見ながら、少年は目を丸くしていた。
変なこと言ったかしら?私。
「あっははははは!昨日と今日でそこまで調べたんだ。すごい、すごいね!君。
うん!僕、リリーシャの事、気に入っちゃったよ!」
何を思ったのか。私に握手を求めてきた。
「…それはどうも」
わざわざ学校休んで動物園まで足を運んで、サルやゴリラにまで試したんだから。
これくらいは、ね?
51 :
POPPO:2009/02/04(水) 02:06:22 ID:VihRNli3
「確かに、君の能力は人の脳の電気信号に直接干渉できる力みたいだからね。能力について僕が教えることはほとんど無いみたい。というより、今は君の方が知ってる」
「『みたい』?ちょっと待って。あなた、私の能力を完全に把握してるわけじゃないの?」
「うん。発現する能力はその人の精神のあり方が反映されるからね。その人がどんな能力を持つか。僕にも分らないんだ」
「…『ギアス』。といったかしら。この力」
「うん。本当は名前なんて無かったけど、いつの間にかそういう名で呼んでた」
「…ふうん」
「どうしたの?何か不満そうだね?」
「いえ、私もこの力に名前を付けたのよ。でも。ギアスのほうがかっこいいから、それでいいわ」
「一体どんな名前を付けたの?」
「…言いたくない」
「ねえ、教えて」
「い、いや、本当に言いたくない」
「おーしーえーてーよー」
目をウルウルさせながら、好奇心一杯で私を見つめるX.X.
うっ!!なんてカワイイの!この子!
ダメ、ダメよ!リリーシャ!顔に騙されちゃダメ!
昔、『マリアンヌ様に惚れた!』などと抜かした兄に、『所詮男は顔か…』とバカにしていたのに、私も同類なわけ?
いえ、断じて違うわ!
全力で否定する!拒否するわ!
だが、そんな私の葛藤を余所に、
X.X.は上目づかいで、私の理性の砦をやすやすと撃ち破った。
「ねぇ、ダメ?」
ああ、ごめんなさい。兄さん。私、兄さんのこと、馬鹿って言えない。
私は意を決すると、口を開いた。
声が上ずってしまうのは仕方がない。
「み、ミラクルパワー…」
次の瞬間、少年の笑い声が一室に響き渡った。
52 :
POPPO:2009/02/04(水) 02:10:25 ID:VihRNli3
「ごめんごめん。リリーシャ。もう笑わないからさ。拗ねないでよー」
ひとしきり大笑いしたX.X.は、青髪の少女ににこやかに話しかけていた。
「……別に拗ねてなんかないわよ」
(そんなに笑わなくてもいいじゃない!私、必死に考えたんだから!)
と、内心で思っていても顔には微塵も出さない私。
「こんなに笑ったのは久しぶりだよ。ミラク………ブふッ!」
X.X.っっうううううううう!!可愛いけど、可愛いけど憎いわ貴方!
命の恩人だけど、その口は噤んでもらうわよ!X.X.!!!
X.X.を見据えて、私は迷いなく『ギアス』を発動した。
しかし―――――――――――――――――
「ああ、言い忘れてけど。ギアスは僕に効かないよ。リリーシャ」
「えっ!?」
X.X.はこっちに視線を向けて言った。薄笑いを浮かべたまま。
いくら睨みつけても、指一本一つ動かせない。
そのことが分かった私は、左目の赤い紋章を閉じた。
「…ど、どうして?」
「それは簡単。僕は人間じゃないからさ」
…たしかに、普通の人間じゃない。
一昨日は、車に跳ねられた後に轢かれたんだ。あれだけ血まみれの重症を負ったというのに全くといってほど傷痕が見受けられない。
それに私に与えた『ギアス』の力。
それはもう『人間』の外にいる『何か』
「…私のギアスは人間だけにしか効かないから。そういう理屈では貴方は人間じゃないわね」
「あ、でも安心して。僕以外の人には効くからさ」
いや、全然安心できないんですけど…
「最初はどうなる事かと思ったけど、リリーシャが面白い人間だったから良かったよ」
?何かひっかかる言い方よね。
それを聞こうと声を出そうとした時、
「でさ、リリーシャ。君の成し遂げたい事って何だい?」
と、彼の言葉によって遮られてしまった。
「…私は貴方の願いを聞くためにここに連れてきたんだけど」
「リリーシャが言った後、僕も言うよ。僕の願いはリリーシャが願いを叶えた後にやってくれればいいから…」
その言葉は私にとって想定外のものだった。
「…いいの?そんな気長なことで」
「僕は不老不死だからね♪」
…確かに。と、私は納得した。
やはり考え方が違う。
時間の観念が鈍くなるのか。時間が有限で無くなってしまうと…
私は一呼吸置いて、
言葉を紡いだ。
「真相を」
53 :
POPPO:2009/02/04(水) 02:12:42 ID:VihRNli3
「真相?」
X.X.は無垢な顔で問いかけた。
「X.X.私はオレンジ事件の真相を知りたいの」
「オレンジ?」
X.X.は首をかしげていた。
やはり知らないようだった。まあ、想定の範囲だ。
「エリア11に来て、まだそんなに時間が経ってないの?」
「うん。こっちの世界に来てから、まだ一週間も経ってないからね」
「こっちの世界?X.X.貴方、天国にでもいたの?」
「まあ、それに近いところかな」
「へえ。興味があるわね。その話、もっと聞かせてくれないかしら」
「ダーメ。教えなーい」
べー、と舌を出した。
くっ!どこまでもガキなんだから!でもカワイイわね。畜生!
…コホン。
「私には兄がいるの」
「うん」
「兄は、オレンジ事件の張本人なのよ」
「お兄さんが犯人だったの?」
「…と、言われているわ。まあ、あの中継を見ていた人間は普通そう思うでしょうよ」
「???」
首を傾げているX.X.に、私は一から出来事を説明した。
兄がブリタニアの軍人であり、例に見ないほどの大失態を演じてしまったことを。
兄の行動と言動が後の証言からも不可解きわまりないことだったことを。
「それってお兄さんが悪くない?オレンジっていうスキャンダルがあったんでしょ?」
と、一般的な解答を返された私は、想定されていた言葉を綴った。
彼の理解力は大体把握できた。
今の彼の言動と行動が全て偽りで無かったらの話だが…
「そんな兄でも…私の兄さんなの」
「……」
沈黙するX.X.
やはり兄弟の絆のようなものは理解があるみたいだった。
「それで、わたしは、一つの仮説が浮かび上がった」
「うん」
「ねえ、X.X.私の質問に答えてくれる?」
そう言うとX.X.が頷いた。彼の後ろで結えている長い髪の毛が揺れた。
「僕が知ってる範囲でならいいよ」
「分かったわ。ありがとう。それじゃあ、質問に答えてね?」
私は、心を喫して言った。
私の想定が正しければ、これは…
「ギアスを使える人間は、他にもいるの?」
その言葉を聞いたX.X.は目を丸くした。
その後、彼は笑った。
口を大きく引きつらせ、目を歪ませて、
子供が決してできない邪悪な悪魔の笑顔。
私は、その表情に息を飲んでしまう。
「イエス、だ」
54 :
POPPO:2009/02/04(水) 02:13:22 ID:VihRNli3
―――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!
今度は私の頬が大きく引きつってしまった。
まるで悪だくみがうまくいったような邪悪な笑顔。
「うふふふふ……あはははははははははははは!!!」
彼女はいきなり狂ったように笑いだした。
「ありがとう!X.X.!これではっきりしたわっ。あっはは」
何が?とはX.X.は言わなかった。私の言葉が続くことを待っている。
「ゼロはギアスを持っている」
「へえ?それは面白い話だね。詳しく聞かせてよ。ところでゼロって何?」
「…本当に知らないのね。このエリア11でゼロを知らない人はリフレインの末期患者と赤ちゃんくらいよ」
「ゼロって、ゼロって〜?」
ちょっと!私のベッドで足をバタバタさせないでよ!ああ!でもカワイイから許してあげる!
「ゼロはこのエリア11最大のテロ組織、『黒の騎士団』のリーダー。いつも仮面を被ってて、その正体は幹部すら知らないらしいわ」
「何それ?そんな得体の知れない奴がリーダーなの?随分と変わった組織だね」
あなたもゼロと同じくらい得体が知れないわよ!と心の中で突っ込んだのは秘密だ。
「兄の不可解な行動。戯言のような証言。『ギアス』というキーワードを当てはめれば全てが繋がる」
「僕の答えは確証を得るためだったの?」
「ええ。最初からそう踏んでいたわ。そして能力が私と異なるのであれば、と。元々、その前提で仮説を立ててたんだけど、確信が持てたわ」
「ゼロのギアスは、相手に触れなくとも命令を下せる力。それにいくつかの条件もあるみたい。今のところ分かっている条件は3つ。
相手を視認しなければならない。
言葉による命令。
そして命令できる内容は有限。それも極端に少ない、ってことくらいかしら」
私の胸の中に、青い炎が宿った。
何が目的かは知らないが、ゼロがエンターテイメントの小道具のように兄を利用し、兄の軍人としての道を踏みにじった真の犯人だと分かったのだ。
これでようやく、貴方を憎むことができる。
兄は賄賂や横領などといった汚職が大嫌いだった。
『オレンジ』などというのはただのデマカセだろう。純血派のリーダーとなっていた兄がスキャンダルを自ら犯すわけがない。
そのことは妹の私がよく知っている。
馬鹿真面目な馬鹿だけに。
それにゼロがギアスを持っている以上、さらなる混乱がこのエリア11で起こることは間違いない。
ゼロはカオスの権化だ。存在そのものが罪だ。
だから私は兄に代わって、『正義』を行う。
「X.X.私の願い。決まったわ」
「私は、ゼロを殺す」
私の目を真っ直ぐ見たX.X.は、にっこりと微笑んだ。
窓から差し込む日差しが、彼を優しく照らす。
それはまるで一枚の絵のよう。
「分かったよ。リリーシャ。じゃあ、僕の願いを言うね」
薄い口元が、ゆっくりと開いた。
「僕の願いは―――――――――――――――――――――――――――――――――」
少年は告げる。彼が私に託す『願い』を。
そして、リリーシャ・ゴットバルトの運命は静かに、
動き出した。
投稿終了です。
ご意見、ご感想待ってます!
>POPPOさん
すごい。怒涛の三編、読み応えありました。
とにかく乙です。
一言で言ってしまえば、面白い。
ライとスザクとの問答、この作品の世界の抱える問題や方向性を見せて貰えた感じ。
様々な陣営が絡むギアス世界に大胆に切り込んでいく意気込みがうかがえて
正座したくなりました。
カジノやギアスのディティールも飽きさせない。
めりはり利いていて本当に読みやすいです。
リリーシャとその契約者、キャラ立ってますね!
容赦ないギアスとそれを納得させる描写や展開、。面白い。
眠っていた契約者……気になるタイミング。
リリーシャの動機がどう話に絡んで来るのかも気になります。
タイトルには「覇道」。どうなるの!
執筆投下共にお疲れ様でした。
続きを心待ちにしています。
長文感想になっちゃいましたが三本分だしということでご容赦。
57 :
POPPO:2009/02/04(水) 08:28:08 ID:VihRNli3
保管車トーマスさん。
48の「机をベッド」→「机とベッド」
49の「中編1」→「中編2」
また「前編3」にある「経済特区日本」→「行政特区日本」
(スザクとライの会話中に続出してます!)
の誤字修正お願いします。
…毎度毎度、ホントにすみません。
58 :
POPPO:2009/02/04(水) 09:08:38 ID:VihRNli3
すいません…
「前編2」の後半部分のライとC.C.の会話。
「…もしかして。今の全部、聞いていた?」→「…もしかして。今の全部、聞いてた?」
「前編3」のルルとユフィの会話。
「…しきなり仕事の話か」→「…いきなり仕事の話か」
「自分の耳を疑った」→「自分の目を疑った」
も修正お願いします。
…遠慮なすぎる自分がイヤなんですが、
ここはトーマスさんのご厚意に甘えてもよろしいでしょうか?
また、X.X.,アンジェリナ、ノエルの設定は
「中編」が終了して出したいと思います
リリーシャは「中編3」の投稿終了に出す予定です。
では!
>>55 POPPO卿、GJでした!
人の身体を操るギアス、その詳細を一日で調べあげるリリーシャ。
……ルルーシュよりしっかりしてる気が……
>ミラクルパワー 吹いたw
しかし、奇跡の力、その通りでもある。
ゼロを殺すというリリーシャの願い、X.X.の願いは何なのか。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>55 GJでした!
スザクとライの対話、熱いです…「親友さ」には痺れました。二人やルルーシュ、カレン、ユフィの
願い通り、この世界が平和なままなら…と思ってしまいます。波乱の予感にハラハラしながら、
でもライ達を信じています!
そしてリリーシャ、可愛いじゃないか…!一個のキャラとしても場をかき回す敵対キャラとしても、
凄く魅力を感じます。また攻略が難しそうなギアスに、どうやって立ち向かっていくのか…
続きを楽しみにしています!
ちょっと質問
リリーシャって金髪の美少女説が多いけど、
どっかでルルーシュのそっくりさんって話も聞いたことあるんだ
どっちも正しい?
ぐぐってもいまいちはっきりしないの
前者が正しかった気がする。
後者は没設定
64 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 20:49:47 ID:vyQxYmQj
どっちでも好きな方を使えばいいと思う。
使いたいのなら
結局本編には出てこなかったキャラなんだし、どっちが正しいってのはないんじゃね?
そうだね。
兄同様の髪色というのも十分ありだと思う
45分頃に投下させて頂きます
前書き・本文・後書き合わせて全部で19レスです
支援したいのですが休憩がもうすぐ終わり…
申し訳ないです
お久しぶり、こんにちわ
定刻通りに只今到着、なんちゃって
え〜時間になりましたので投下します
今回は待たせた分だけボリュームアップ!
実を言うとただの詰め込み過ぎなだけなんですけどね
【タイトル】コードギアス 反逆のルルーシュR2 RADIANT WORLD
【ジャンル】シリアス(長編)
【警告】ギアス篇&黒の騎士団篇の合いの子ルートの
ギアス篇ENDからスタートしています
R2の豪快なifルート&オリジナルメカが登場するので
苦手な方は御注意下さい
言葉が雄弁に意思を語る術だとしたら、行動は意志を雄弁に語る術なのだろうか。
だとしたらいつかの言葉も行動も嘘ではないのだろう。
願い続けた想いはそうして色づいていったのだから―――――
エリア11、トウキョウ租界にあるブリタニアの政庁。
その総督執務室には一人の少女がいる、名前はナナリー・ヴィ・ブリタニア。
以前はナナリー・ランペルージという名で生活していたが、今はその名を知る者は少ない。
彼女がエリア11で生活をしていた頃を知る人物がいたら今の彼女の姿を見た時どう思うだろう。
神聖ブリアニア帝国の皇女である事に驚くのだろうか。
ユーフェミア・リ・ブリタニアと同じお飾りの総督だと思うのだろうか。
少なくとも彼女はそう思われないように、そう思わせないために毅然としていた。
皇女として、総督として、為政者として、なによりナナリーとして。
だが、彼女はまだ未成熟な少女だ。
日本の皇神楽耶や中華連邦の天子と変わらぬ年代の少女。
その彼女をそうまでして駆り立てるのも、彼女にとって大切な何かがあるからだ。
「失礼します。総督、来客です」
「ミスローマイヤ? 私に来客、ですか?」
「はい、本国のライという方からの紹介との事ですが……」
「ギルフォードさんまでいらっしゃるのですか?」
ナナリーは今までにない来客に驚いていた。
アリシア・ローマイヤ、彼女はナナリーの補佐官として本国からこのエリア11へと派遣された文官である。
当然、ナナリーの執務室へと出向いてもおかしい事ではない。
ギルフォードもナナリーが就任するまで代行をしており引継ぎを含め訪れる事はおかしくはない。
しかしこの二人が同時にというのは些かおかしい、それが彼女を悩ませたのだ。
「エニアグラム家の執事であるジョン・ウエストウッド氏からの書面もあります、ですので私は問題は無いと思うのですが……」
「証があろうと素性が怪しい者を通すわけにはいきません、ましてや総督へ直々に会うなどと―――――」
「ミスローマイヤ、正式な書面ならば問題はないでしょうし通して下さい。私も是非会ってみたいです」
ナナリーはローマイヤの心配を遠回しに宥めて来客を通すように促す。
自分への来客を珍しいと思いながらも不思議と不安を感じてはいない。
それは口添えしている人物への信頼の表れであり、ローマイヤにとっては忌むべきものでもある。
その険悪な空気を諌める様にギルフォードは了承の意を伝え来客を執務室へと通すように警備兵に促した。
扉が開いてから少し間を置いて背丈が幾らか小さいナナリーと同年代の少女は姿を再度二人に見せる。
後ろに結った髪を揺らし、二人からの視線を気にもかけずゆっくりとナナリーの前へと歩いていく。
「はじめまして、ナナリー総督。私はアリス・ザ・スピードと申します」
「お若い方……ですね、ライさんからの御紹介との事ですが……」
ナナリーはアリスの肯定する返事、そして情報から彼女を信用する。
それと同時に同席していたローマイヤとギルフォードに席を外すように申し出た。
その命令にも似た言葉に二人は渋々従い執務室を離れていく。
去り際に警備兵へ注意深く厳重に警護するように言い含めて。
「まったく……総督の行動には毎度悩まされる……」
「過度の心配ですね、彼女には問題はないのですよ?」
「だからといって卑しい者の紹介を無条件に受け入れるのはどうかと思いますが? いくら口添えがあろうとも―――――」
政庁の廊下にローマイヤの愚痴が響く中、執務室からは和やかな笑い声が響いていた。
「いつもと同じ様に『ああ、なにかおかしいか?』とか言いますし」
「ふふっ、でもお優しい方でしたでしょう?」
「ええ……私以外にも優しくして下さいましたよ、口数は少ないですけど」
「ここ最近はお会いする事がありませんでしたけど、でも……あっ―――――」
談笑に夢中になりすぎてナナリーは思わず用意されていたティーカップを落としてしまう。
しかし、彼女の耳にはティーカップが割れる音も床に落ちた音も聞こえてはこなかった。
「ナナリー総督、そう慌てないで下さい。私は貴方の傍にいるように言われていますから」
「えっ? あ、ありがとうございます……アリスさん」
「アリスで結構ですよ、聞けば同い年だそうですから」
「えっ……そうなのですか! だったらそんな話し方はなさらなくてもいいですよ」
ナナリーはティーカップの音の行方よりもアリスが同い年である事に興味が移っていた。
同時にアリスは不用意すぎた事を悔やんでいた。
幾ら目が見えないとはいえ、自分の特異な能力であるギアスを使ってしまった事を。
(不用意に使うなって言われてたのに……それにしても本人に会えばわかる、か。ホントその通りね)
彼女が会話を続ける脳裏ではある少年の事が浮かんでいた。
中華連邦に出向いたであろう少年の事を。
それと同じ頃、政庁近くのブリタニア軍駐屯地では軍人達がトレーニングに励んでいた。
いや、励むというよりはしごかれているという表現が正しいだろう。
「まだ半分……」
『そ、そんな殺生な!?』
アーニャの無慈悲な一言は軍人達を奈落の底へと叩き落すかのようなものだった。
その反応を気にもせず彼女が携帯を弄る作業に戻るのを見てジノは大笑いしてしまう。
「おいおい、これじゃあ駄目だろアーニャ」
「別に……ラウンズなら普通……」
ラウンズから駐屯軍への手解きを是非とも、というグラストンナイツからの申し出があり彼女は暇な事もあり了承した。
ただ、惜しむらくはアーニャではなくジノに頼むべきだった事だろう。
とはいえジノがしていたとしても精々程度が軽減されるだけではあるが。
「二人共、もう少し彼等の事を考えてあげなよ」
「ん? スザク、政務はもう終わったのか?」
「総督に来客があったからね、今は休憩だよ」
「客……?」
スザクの言葉に二人は少々頭を悩ませた、総督への来客についてだ。
来客がある事自体に疑問があるのではない、二人にあるのは来客した人物についてである。
ナナリーが着任してからそれ程時間は経っていない。
そう、特区の事を踏まえても今のこの時期に来客する理由がある要人がいるのかだった。
スザクはライからの紹介だと口に出して誰が来たのかを説明しようとしたのだが、それは携帯電話の着信コールによって阻まれる。
『スザク、忙しいのにすまないな。聞きたい事があるんだが……』
「ルルーシュ? 一体どうしたんだい?」
『会長が中華連邦に滞在しているからな、お前ならなにか知っているかと思って』
「こっちにはまだなにも。でも大丈夫だよ、あそこには他のラウンズが同行しているから」
スザクは努めて平常を保ったままルルーシュに簡略して今の状況を説明していく。
が、胸中では違う考えが渦巻いている。
(ルルーシュはここにいないはずだ、しかし―――――)
最新の情報では中華連邦に黒の騎士団が現れたという情報も混じっている。
この電話もそこからしているものかとも考えられたがシャーリーやリヴァルといった他の生徒会のメンバーの声が聞こえてきている。
電話越しで確認できるものは少ない、だが彼には信頼できる情報もある。
(ライ……君の目的は一体……)
スザクも中華連邦にいる筈の少年を脳裏に思い浮かべている。
それは学園にいるロロも同じだった。
ルルーシュ、今は篠崎咲世子が扮するではあるが彼女が枢木スザクに連絡をするというのを彼は止めなかった。
通話を終えミレイが無事だという情報もあるという言葉にシャーリーとリヴァルは緊張を解いて張っていた肩を一気に落とす。
そのままリヴァルは椅子へ腰を投げるかの様に掛けて机にうなだれ、シャーリーは目に涙をためて安堵していた。
ロロは渦中にいるであろう少年を思い浮かべながら、咲世子がシャーリーへハンカチを差し出す光景を見て彼女を生徒会室から連れ出す。
(今は学園でのトラブルを防がないと……)
彼は咲世子の優しさを少し咎めて学園地下にある機情の司令室へと足を運ぶ。
シャーリーの校内放送が響く中で咲世子はなにが駄目だったかと不思議そうな表情をしながら彼に追従している。
司令室には黒の騎士団の作戦推移を示す画面が展開されているが、状況図は斑鳩が足止めされているところで止まっていた。
(この情報が本当なら足止めしているのはきっと……)
ロロもまた中華連邦で騎士団と対峙しているであろう少年を思い浮かべている。
ブリタニアでの少年の軌跡を知っている数少ない人物である三人。
その三人が少年ライへと向ける感情は感謝と信頼、そして懐疑だった。
しかし思う先は同じである、その真意はなんなのかと。
誰にも語らず誰にも悟られず孤独な道の先に求めるもの。
それが友へと向ける銃口の先にあると信じて彼は円卓へと足を進めていた。
第十一話『明日 を 求めて』
VARISの照準は艦橋に向けられている。
クラブに騎乗している少年がなぜこんな凶行をするのか、それがわからない団員達はただ困惑して事態の理解に努めていた。
ルルーシュとC.C.を除いては―――――
「天子の返還? ライ、それはできない相談だな」
『なら、撃ち抜こうか? 僕は躊躇しない人間だぞ』
「できるものならやってみるがいい。天子諸共失っていいのなら、な」
ルルーシュは絶対の自信を持ってライを挑発していく。
斑鳩には輻射障壁という防御手段がある、そして天子の所在がわからない以上は無闇に手は出せない。
輻射障壁は実弾等に対して絶大な防御力を発揮できる、これはランスロット等に使われているブレイズルミナスに対抗する為でもある。
そしてクラブが現れる前に行なわれた狙撃を見てもハドロン砲の類ではないのも容易に想像できる。
次に天子の返還を要求している以上は殺したくはないという事情。
これ等を踏まえれば彼が強攻策を選ぶとは考えられないというのがルルーシュの答えだ。
勿論、彼への全幅の信頼があるというのも理由の一つであるが。
「一つ聞きましょう、貴方の真意は?」
『ディートハルトか……前々から聞きたかったんだが、君はゼロをどう見ているんだ?』
「カオス、混沌を生む者と捉えていますが。貴方はどうなのです?」
『……僕もほぼ同じ意見だ。だからここにいる、無秩序で指向性のない力は暴力にもなるからな』
彼の返答にディートハルトは自分の見識、そして予感は正しいものだったと確信した。
ゼロという大輪の華を咲かせるのを阻害されるという予見を。
同時に考えも改めていた、彼もまた唯一無二の素晴らしき存在だと。
しかし、彼にとってそれはゼロという存在をより確固たるものとするだけでの意味でしかない。
「ゼロ、ご命令……いえ、彼を断罪しろと団員達に告げるべきです」
「撃てってと言うのか、以前は仲間だった人間を!」
扇も状況把握はできていない、しかし蓬莱島での彼との約束。
あの約束を守らないとも思えない扇には敵側にいるとはいえライを討つという行動には賛同できない。
だが、ディートハルトは混沌に対する秩序たらんとするライは邪魔でしかないと主張した。
艦橋は沈黙の中で意見が分かれつつある中、ルルーシュは反対寄りの思考をもって意見を述べていく。
「っ……ディートハルトよ、切り捨てるという発想だけではブリタニアに勝てん。ましてライは―――――」
「貴方が信頼を寄せているのは承知しております。しかし彼は貴方に、我々に反旗を翻したのです。これ以上の言葉は―――――」
一人の団員への贔屓とも取れる、それは組織のトップに立つならば排除すべき感情だ。
しかし、ライの思惑とルルーシュの算段がある以上はここで団員達を捨てる選択はできない。
その結果も予想されたものだろう、退路を塞がれていくのも想定内だろう。
ルルーシュとライ、自分達が選んだこの道は私情を挟む余地を着実に削っていく。
『……答えは決まったか?』
「ライ……答えはノーだ、今ここで降伏する事はできない。我々には成さねばならない事があるからな」
退く道はない、後方からは中華連邦の陸軍も迫ってきている。
そして黒の騎士団にとっても退路を選ぶ選択肢はない。
僅かな沈黙、後にクラブはVARISの銃口をゆっくりと下げて後腰部にあるガジェットへと銃身を預けた。
その行動を虚ろな目で見ていたカレンは違和感を覚える。
ここまでしておきながらチェックをかけない行動、その答えは―――――
『だそうだ、黎星刻』
「っ!? 卜部さん仙波さん離れて!」
『ふっ、段取りに感謝する!』
一筋の閃光が迫る中、この状況下でライの意図に気付いたのは恐らくカレンだけだろう。
紅蓮の輻射波動機構を即座に稼動させて迫っていた攻撃を横合いから妨害する。
神虎の天愕覇王重粒子砲が全開であったなら防ぎきる事はできない攻撃。
奇しくも天子がいるという事は少なからず騎士団にとって有利に働いていた。
『紅蓮可翔式、紅月カレンか。だが二度目は無いぞ、この神虎が相手ではな!』
星刻の駆るKMFの姿を斑鳩の艦橋が捉えた時、ラクシャータや彼女のKMF開発チームは驚愕した。
彼等の眼前を舞う神虎は以前からパイロットがおらずインド軍区の倉庫で眠っている筈だからだ。
その情報はルルーシュにとって誤算であり、そして危惧の念を抱いた。
「マハラジャのジジイ、また勝手に!」
「ラクシャータ、あのKMFを知っているのか?」
(マハラジャ、インド軍区の指導者だったな。となればインドの裏切り、か? いや……一枚岩ではないという線が濃厚だな)
ラクシャータの神虎の説明に耳を傾けながらインドの動向へ注意を向けていく。
神虎、ハイスペックを追求しすぎてパイロットは最初から不在。
既存の規格を離れ飛翔滑走翼や天愕覇王重粒子砲というエネルギー兵器、更には伸縮自在のフーチ型スラッシュハーケン。
規格の中で生み出されたKMFではなく、システムを活かす為のKMF。
そういう存在でありながらスペックを全て活かす者はおらず、この機体もまた主の登場を待っていたKMFだった。
クラブ・ドミネーターと呼ばれるライが駆るKMFと同じ様に。
「凄いな、あの距離からでも正確に射撃ができるのか」
式典会場近くの迎賓館でノネットはアヴァロン高速強襲型から送られてくる映像を映すハンドモニタに釘付けだった。
その子供がヒーロー番組に食い入る様に見る姿にドロテアとカノンは些か腹立たしい感情を抱いている。
原因は式の最中のノネットの行動についてだ。
「エニアグラム卿、私から言いたいのは―――――」
「わかっているさ、浅はかだと言いたいんだろう。なあアッシュフォード、こいつがあいつのKMFでな」
「副官が差し出がましいとは思いますが、私も状況を考えて行動なされたとはとても思えませんが?」
「結果はイーブンだしいいじゃないか。お披露目もできたんだし、なあ?」
ノネットの同意を求める声にミレイも流石にたじたじとなる。
結果論で言えばライが式典の報を聞いて即座に迎撃ラインを設けノネットがそれに乗ったという形だ。
だが、過程においてはライがそんな事をしているとは彼女は知らないし考えてもいない。
行動の発端は明らかに個人的感情であり世界の情勢やブリタニアたらんとする者としては愚かな行為である。
その恨み節をのらりくらりとかわしながら彼女はクラブが搭載しているユニットに興味が移っていた。
「あは〜流石だね、光ディスクと概略書の情報だけでここまで使えるなんて。これもエニアグラム卿の教えの賜物ですか?」
「ロイドさん! 申し訳ありませんエニアグラム卿……」
「構わんよ。それよりもだ、コンクエスターより趣が随分と違うな」
ノネットはクラブのドミネーターユニットについて軽く自分の意見をまとめて告げた。
背部の非対称の砲身は腰部前面で展開、連結を行いVARISを結合させて砲身の延長及び長距離射程を可能とする。
その距離を稼ぎ打ち抜く為の機構としてはシリンダーロールバレルというものが組み込まれていた。
それは内部にある筒を高速回転させて力場を生み弾丸を打ち出す力を増幅するという機構である。
これとVARISのインパクトレールの発射エネルギーを合わせてはじめて長距離狙撃が可能になるのだ。
武装とユニットに使われているこの新機軸の機構の二つ、それが合わさり生み出された武器。
それと同時にノネットの中にはもう一つの答えがあった、勿論ロイドやセシルもわかっている事柄だ
「確かに距離は脅威だが汎用性を欠いていないか、砲兵として支援に徹するならともかく前線に出る私達には邪魔だろ?」
「それについては砲身に換装機構を取り入れて対処してあります。ショートやハドロン、それから今使っているロングバレル」
「MVSはヴィンセントと同じランスタイプ、デヴァイサーの能力も考慮すればクラブも唯一無二の汎用型KMFなんですよ〜」
このロイドの自慢は留まる事を知らず次々とクラブとライ、そしてランスロットの進化論へと話が進んでいく。
その勢いにミレイとドロテアは飲まれセシルとカノンはまたはじまったなどと思っている。
熱い演説の様に言葉をロイドが吐き出し続ける中、シュナイゼルが現れたのを逸早く察したノネットは彼に謝罪を述べた。
「殿下、先程の軽率な行動をして申し訳ありません」
「気にする事はないよ、状況も良い方向に向いてきているしね」
「……と、言いますと?」
「正式な要請が後程大宦官達から出されるみたいでね、我々も出向く機会があるということだよ」
既にノネットとドロテアのKMFもアヴァロンに搭載されており、後は主達が乗り込むのを待つばかりと準備は整っている。
その言葉に彼女は外していた視線をモニタに戻してクラブが銃口を下げた光景に一抹の考えを過ぎらせた。
(……歪み、か。それを正そうとするのも歪んでいる、とも思うんだがな)
各人がアヴァロンへと足を進める中、ノネットが複雑な表情をしている事に気付いたのはドロテアだけだ。
不可思議な表情をすると思った彼女だったが口には出せない、それは影ながらもラウンズを支えてきたノネットへの敬意の表れだった。
ノネットの奔放さは彼女にとって正直に言えば頭痛の種だ、だからこそジノやーアニャといった人材がいるとも言える。
その彼女の難しい表情を見たノネットはといえば、心中を悟らせずいつもの通りの軽快な声で彼女を労った。
「心配するな、ラウンズとしての務めは果たすさ。それよりお前はちゃんと見た事がなかったな」
「なにをです?」
「あいつの双剣だよ―――――」
赤と青、その二色が織り成す斑鳩前方の戦場は激戦区だった。
紅蓮と神虎は今現在のところ互角だが、神虎はスペックの全てを出してはいない。
いや、出せないという表現が正しいのだろう。
黎星刻という人材でさえ手に余るという最高のKMFの一つである証、しかし紅蓮は全てを使ってその位置と対等なのだ。
そのラクシャータの目測を聞いたルルーシュは事前に立案してある策を実行に移す為に応戦を指示していく。
「斑鳩を反転、このまま迎え撃つ。今インドへ撤退するのは危険だからな」
「だけど、こんな状況でどうするんだ!」
「扇、今は応戦に専念しろ。星刻に私だけが指揮官だと気取られるぞ。南、機を見計らって斑鳩を天帝八十八陵へと進ませろ」
斑鳩前方から進軍してきたKMFはクラブと神虎のみ、つまり先回りできたのはこの二機だけだという事。
このルルーシュの戦略予想は概ね正しい、集中すべきは後方からの中華連邦陸軍であるのも間違いではない。
血の気が幾らか治まっているカレンなら神虎相手に無茶をしないとも読めている。
問題は洛陽から迫るであろうアヴァロン、そしてライだった。
そのライは主戦場を離れて対峙している二機の後方で状況を傍観していた。
彼が介入できたのは中華連邦が得をして、華を持つという餌があればこそだ。
つまり過度の手助けは彼の手柄目当てだと受け取られてしまう。
だからこその傍観ともいえる、それは真意を知らない者達にとっては見下す行為でもあれば不明瞭な行動でもあった。
「総領事館で興味を抱いたのは間違いではなかったようだな、流石だと言わせて貰おう」
「減らず口じゃない、その余裕もいつまでかしらね!」
先の敗北でカレンは冷静に相手を対処している、しかし意識が神虎へと向ききってはいない。
その先、神虎の後方で物見遊山の如く静観するクラブを彼女は見据えている。
『エースが聞いて呆れるな、邪魔だ』
(邪魔……ですって!? 踏みにじったままで終わらせないわよ!)
その感情が紅蓮をより速く、より強くさせていくが対する星刻は平静に機体を疾らせていく。
フーチを手首で高速回転させてミサイルを防ぎ、呂号乙型特斬刀と呼ばれる小型ナイフも中国刀を模した武器であしらう。
カレンは決め手の徹甲砲撃右腕部を叩き込む好機を探すが、それを見せてくれる易しい相手でもない。
『紅蓮の性能でカバー出来ているけど、もっと小手先の技を使う事を考えた方がいいんじゃないか?』
(私は負けない! あんな言葉になんか―――――)
神虎が刀を振り上げたのを見た時、斬りかかってくると思い彼女は小型ナイフで応戦しようとした。
だが星刻は彼女の読みに反してそれを投げ放ち、神虎を最大加速させて紅蓮の上方へと舞っていく。
その意図に反した攻撃に右腕で反射的に対処したが、それは自らを死地へと招く一手だった。
「しまっ―――――」
「君は黒の騎士団のエースだったな、有効活用させて貰うぞ」
両手のフーチを紅蓮に幾重も巻きつかせ完全な拘束を施して星刻は斑鳩へと通信を繋いだ。
カレンと天子、人質としては価値がイーブンとも思えなかったがここで仕留めれば神虎の力を証明できる。
黒の騎士団のエースであろうと敵ではないという力の証明を。
その状況に藤堂達を後方支援しようとしていた卜部と仙波は即座に反転したが、時は既に遅く紅蓮は身動きが取れずにいる。
頼みの右腕も使えず障壁の出力ではフーチも断ち切れない。
「再度言わせてもらおう、天子様を返せ」
「……できないと言ったら?」
「拒否するのであれば彼女には―――――」
星刻の次の言葉はなく、彼の口から出たのは血だった。
天から二物を授かった麒麟児である彼に与えられなかった時間、それは命においても同じである。
(こんな時に……対処しきれるか、今―――――)
援護に来たであろう暁・直参仕様が二機、神虎の両手は使用不可。
彼が応戦するには攻め手と決め手、その両方がない。
紅蓮の解放か無理に応戦するかの選択、だが第三の選択肢は彼の思惑とは裏腹に動いていく。
『一度後退しろ、竜胆(ロンダン)に戻り指揮系統を再編してからでも遅くはないだろう?』
ライは傍観に徹していたのを止めたのか、神虎へと高速で近づきながら寄り添う様な形で彼の退路を示した。
ただ、ある行動だけを除いて―――――
「君の手助けには感謝しよう、しかしこれはどういう事だ?」
『借りがある、それに約束は極力守りたい』
彼は神虎に寄り添う際にフーチを切り裂いて紅蓮を解放したのだ。
星刻にしてみればそれは余りにも不愉快であり同時に不思議なものでもある。
それは彼が約束を重んじ、その為に生きてきたからだろう。
「約束、か……裏切っておきながら変わった男だな」
『些細な事だ。そのまま後退しろ、それ位は問題ないだろう?』
ライは神虎が投擲して落とした刀を返してそのまま下がらせていくが、その二機を追従しようとする者はいない。
先の交戦で見せた彼の実力、示威行為としては既に絶大だった。
卜部と仙波。彼の実力を知るが故の武人として、戦士としての直感。
それが二人を躊躇させている、しかし彼女は違っていた―――――
「待ちなさいよ、私はまだ戦えるわよ!」
解放された紅蓮の各部チェックを手早く済ませカレンは主機関の出力を上げていく。
その彼女に興味も示さず後退していく二機への怒りを隠さず紅蓮を加速させたが、ラクシャータと二機の暁によってそれは阻まれた。
「恐らくだけどあれはボウヤの専用機よ、言いたくは無いけどカレンちゃんじゃ―――――」
「ラクシャータさん、私はまだ戦えます! それに紅蓮可翔式なら―――――」
「いい加減にせんか! 独断と怒りで命を散らそうとするだけでは飽き足らず味方まで危険に晒すでない!」
カレンの血気に任せる行動に業を煮やしたであろう仙波は彼女を一喝した。
その怒声にカレンは一瞬体を強張らせたが、それでも納得はできないでいる。
紅蓮は主戦力の一機であり、実力も申し分ない。
だからこそ軽率な行動は慎むべきなのだが、それでも彼女の怒りは収まりどころを見つけられない。
その怒りもルルーシュと卜部の言葉で悔しさに変わってしまう。
「紅月、今は目の前に専念するんだ。彼の事は気にするな」
「でも!」
「カレン、今は戦線を構築する為にも斑鳩に一旦退け。感情だけで勝てる程、今の戦況は甘くない」
「……わかりました」
渋々、というよりも否応の無さに彼女は後退の支持を受諾した。
誰もが思う疑問、それよりもこの戦いを切り抜ける事を彼等は優先するしかない。
「大尉、彼は―――――」
「卜部よ、今は目の前の事を片付ける事だ。恐らく中佐も感づいておる」
団員達の思惑とは裏腹に次第と離れていくクラブ、そのライも感情を排して行動に徹する。
ドミネーターユニットの狙撃によるエナジーフィラーの過剰消費。
紅蓮可翔式との交戦で行なった無茶な戦法、蓋を開けてみればライもギリギリだった。
久々に騎乗したクラブの進化や半ば専用機と化した反動による身体への過負荷。
(苦労しそうだな……それも当然か……)
「ライ卿、アヴァロンがこちらに向かうそうだ」
「動くのか……ヴィレッタ卿はそのまま戦況の監視をしていて下さい」
続けてライはアヴァロン高速強襲型に着艦準備、及びアヴァロンへの接舷準備をする様に伝える。
これにはドミネーターユニットの換装もあるが、ライの戦略眼からではあるが今現在のところで早期決着の目処が見えていないからだ。
目処が見える時が来るとすれば、それはルルーシュが用意する策とシュナイゼルが動く時が星刻と重なった時。
(地形は平坦、部隊の配置から見ても当面は双方に大きな変化は起きないだろう。となれば―――――)
「急ごしらえの部隊など指揮系統を集中させればすぐに牙城を崩せる、しかし相手のKMFの性能は侮れん」
「星刻は指揮系統の一極化を狙ってくるだろう、相手もこちらのKMFの性能を甘くは見ない筈だ」
(セオリーと実力、その材料の中で星刻が選ぶ選択は恐らく―――――)
「となれば、我等が選ぶべき作戦は神虎を先鋒にしての中央突破!」
「星刻は自ら打って出てくるだろう。藤堂には抑えを任せる、四聖剣は空中から地上部隊の援護―――――」
陣形が整う中で星刻は己の勝利を、天子の奪還を確固たるものとせんが為に。
ルルーシュは己が打って出るべき好機を逃さず掴む為に、二人の指揮官は静かに相対していく。
クラブの攻撃からはじまった攻防、時刻は既に陽が落ちはじめようとする頃合だった。
「私達が出る機会は無さそうですわね、シュナイゼル様」
「カノン、それは早計だと思うよ。ゼロは手強い、それに星刻という指揮官も」
シュナイゼル達が乗るアヴァロンが主戦場に到着した時、戦局は些か異様を呈していた。
黒の騎士団は応戦隊形を取ってはいるが、明らかに後ろ向きな配置である。
まるで誘うかのように動く敵、その敵に星刻は足止めを狙う隊形を取っていた。
じわじわと後退していく黒の騎士団、その目的は―――――
「勝利を掴む為の後退でしょうね、方向的にインドへでは無さそうですけど」
「この先にあるのは天帝八十八陵だったかな」
高速強襲型の格納庫でライは状況推移を述べていく
それを聞きながらノネットはパイロットスーツの上半身だけを脱いだライのインナーから見え隠れする痣に目を向けた。
なにかに激しくぶつけたというよりは無理な姿勢を取った様にも見える痣。
「やっぱりシートが合わなかったのね……ロイドさん、シートもすぐに換装しましょう」
「そうだね〜後、ホントに使うのかい?」
「ええ、狙撃が済み次第換装しようと思います」
ライはドミネーターユニットのショートバレルへの換装を注文していた。
しかし、取り付けられてはされておらず換装の準備段階としてカタパルト上部に設置されただけである。
つまりハンガーで行なっている作業はユニットの各アタッチメントの不具合の有無確認とセシルが立案したシートの換装だけだ。
「つまりだ。ゼロの目的は、はじめからそこだったと?」
「どうでしょうね、どちらにせよ今の状況だけじゃ意図は不明ですよ」
「こちらも所詮は客将です、これからの動きはシュナイゼル殿下に一任しましょう。それとライ卿」
「なんですか、エルンスト卿?」
「エニアグラム卿の尻拭い、代わりに感謝する」
「ドロテア、私がミスをしたみたいな言い方をするな」
ラウンズの二人、いや三人は一応の結論を出してそれぞれが出撃準備を進めていく。
ノネットは若干乗り気ではないのか、パイロットスーツのしなりを確認するのが些かゆっくりである。
対するドロテアは手早く確認しながら連れてきていた直属部隊の数人に指示を出していく。
今回の戦闘の状況次第ではロールアウトしたばかりのヴィンセントの量産型、ヴィンセント・ウォードも使う予定があるからだ。
その対照的な行動をする二人を眺めながらライも換装されたシートのチェックをしている。
同時にユニット換装によるFCSのシステム変更を手早く行なえる様にする準備も含めて。
『ライ卿、黒の騎士団の目的地は天帝八十八陵で間違いなさそうだ』
「そうですか、KMF部隊の展開に変化は?」
『量産機は新型と旧型の混成に切り替えたようだな、他は専用機らしきKMFが一機とエース用らしきKMFが四機。会戦から特に変化はないな』
「わかりました。ヴィレッタ卿も帰艦して下さい、そろそろ大きな動きがありそうですから」
『イエス、マイロード』
通信を終えてからハッチを閉めてライは幾つかの案を考えた。
ルルーシュの目的、これについては篭城戦を画策しているというのは読みは正しいだろう。
その目的の先はなんなのか、事前策があるとして使う材料は―――――
(シュナイゼル……ではないな。となれば大宦官か、欲深そうだったからな)
天子の奪取を目論んだ以上は中華連邦を取り込むつもりとも読める。
しかし、これだけでは足りないとも彼は思っていた。
(しかし、なぜ紅蓮を出さない……出し惜しみする必要はない筈だ)
ルルーシュの策、その全容を聞けば彼は納得すると同時に些か無謀とも思うだろう。
そして紅蓮が出撃しない真の理由を知った時、彼はなにを想うのか。
艦内のアナウンスは静かに黒の騎士団が天帝八十八陵へと到着した事を告げる。
「歴代の天子が眠る墓、か。藤堂さんはどうです? これが僕達の墓標っていうのも―――――」
「無駄口を叩くな朝比奈。中佐、これからは?」
「今は座して待つしかないだろう。補給が必要な者と換装が必要な者は手早く済ませろ、それ程時間を稼げるとは思えん」
藤堂はKMF部隊がまだ必要であると踏んでいる、勿論ルルーシュもだ。
この戦いの終わりはまだ遠い、星刻との戦いで藤堂はそれを確かに感じていた。
地の利が無いところを運河の決壊を利用しての地盤の欠点を生む。
陣形次第ではかなりの戦力が奪われていただろうと感じさせられた一戦。
ルルーシュが考えていた事前策は奇しくもまた有利に働いている。
同時にそれは正面からの決戦をするには黒の騎士団はまだ力不足なのだという証明でもあった。
「中佐、先程の事なのですが……」
「卜部か。仙波もいるなら丁度いい、お前達はどう見る?」
藤堂の質問の意図、それがわからない程この二人は付き合いは短くない。
「敵意はあれども殺気は感じられず、といったところですな」
「大尉と同じ意見です。本気は本気だったのでしたが、明らかにこちらを殺そうとしたとは思えません」
「そうか……これがゼロの策だとするなら、なにが目的だ……」
藤堂の中に芽生えるのは僅かな疑心、あれ程重要視した人間が敵に寝返る。
それを平然と受け流すかの様な態度に感じる不安。
しかし、団員達の中にはそれでも信用したい者達も多かった。
「あいつ……信用できると思ってたのによぉ……」
「玉城、泣き言を言うな。まだ戦いは終わってないんだぞ」
「でもよ、杉山!」
玉城達の言葉は藤堂にとっても同じだった、今更裏切るのはおかしいと。
同時に信用するに値していた人物である事もだ、それは斑鳩の艦橋にいる扇達もまた同じだった。
「ゼロ、これからどうするんだ? ブリタニアの航空艦も二隻来ているし……」
「焦るな、まだ敗北したわけではない。四番隊と五番隊には砲撃支援の追加装備を準備させろ、カレンは?」
『紅蓮から出てこないわ〜なんとかして頂戴』
ラクシャータの格納庫からの半ば呆れながらの嘆願の声にルルーシュは躊躇する。
しかし、ライの行動とディートハルトの言葉。
自分がなにをすべきでなにをやり遂げねばならないのか、それが躊躇を消し去り彼をゼロへとしていく。
「……そうか。C.C.、カレンはお前に任せる。南は―――――」
「待て、私よりお前が行くのが妥当だろう?」
「今は一人にだけ構ってはいられん。南は艦首ハドロン砲の準備、輻射障壁の―――――」
ルルーシュの力強い言葉、その言葉をC.C.は渋々ながら受諾して格納庫へと足を進めていく。
嫌々ではあるが彼女にもやり遂げたい事がある、願いという果実を得る為に。
格納庫に着けば紅蓮は鎮座状態でメンテナンスを受けている。
ただ、コックピットのハッチが帰艦してから一度も開かれない事を除いて―――――
「なぁに、あんたが来たの?」
「ゼロの代理だ。おい、早くハッチを開けろ」
紅蓮のパイロットであるカレンに向けて彼女は告げたが無音のまま。
その反応に彼女は苛立ちより呆れが込み上げてきたが、今は楽観視できる状況ではないのも理解している。
紅蓮へと近づきタラップを上りコックピットの近くまで行って彼女は言葉を続けた。
「実力で負けたとでも思っているのか? だとしたら愚かだな、お前は自分に負けたんだよ」
「……どういう意味よ、それ?」
「なんだ、反応する気力はあったのか。だったらさっさと降りてメディカルチェックを受けろ」
「待ちなさいよ!」
カレンが反応するのを見るや彼女は紅蓮から離れようとしたがハッチを開いたカレンは彼女を呼び止めた。
だが、振り返りもせずただ足を止めて彼女はそのままの意味だとだけ告げて再度足を進めていく。
「お前が負けたのはあいつの言葉とお前の慢心だ、実力ではない」
「なによそれ……ふざけてるの!」
「ふざける? ふざけているのはどっちだ、お前はライに忠告されたんだろう? 戦闘での悪癖を」
「だから……どうだって言うのよ……」
「それに反発するから負ける。忠告通りにしていれば拮抗できたのに、だ」
ガウェインでの戦闘経験、ライとカレンの蓬莱島での模擬戦、カレンの性格。
それ等を知る彼女から見てあの一戦は明らかに怒りと対抗心で戦っていたと見えていた。
それはカレンも自覚している、だからこそ認められない。
ライがブリタニア側にいる事を、その人間の忠告を。
「お前は親衛隊隊長でありゼロだ、拘りや一時の感情で無駄な行動をするな」
「でも……だからって……」
「認めろ、今のあいつは敵だ。だが、今までのあいつを否定する必要は無い」
「嘘をついてた人間の忠告を信用しろって言う気?」
「自分が信じたいものを信じろとしか言えんな、大体私はあいつで―――――」
『各団員に通達! 星刻率いる部隊が中華連邦から砲撃を受けている模様! 繰り返す―――――』
この行動に団員達は驚愕したが、ルルーシュは一抹の勝機がある道を見出していく。
事前策、そして自身を活かすKMF蜃気楼の出番を。
「星刻、十分な働きであったぞ。後はこちらに任せるが良い、強力な戦力が援軍に来てくれたからのう」
「愚かな……この中華連邦内でブリタニアの武力を正式に使わせる気か!」
星刻は大宦官の行動に憤慨するしかなかった。
ライの武力介入は僅か、そして個人的な貸し借りにおいての支援であり国としてではない。
それがあるからこそ認めた介入だったのだが、この状況での支援は完全に采配のミスである。
アヴァロンがいるという事、それは指揮官がシュナイゼルだという証明だ。
ブリタニアが今の今まで手を焼いていたEUをその手腕で奪い取っていった男。
(わかっているのか大宦官共! 相手は第二皇子のシュナイゼルだぞ!)
星刻の危惧、しかしそれはルルーシュにとって好機の一つでもあった。
「ふっ……これならば。ディートハルト、回線の準備はどうなっている?」
「もう暫くお待ちを」
「KMFは前面に展開、状況に応じて応戦。これでいいのか、ゼロ?」
「上々だぞ、扇。星刻諸共始末する気だろうが、そう簡単には幕を降ろさせん。紅蓮は?」
『カレンちゃんが口喧嘩中で駄目ね〜』
「早くしろ、舞台は完成しつ―――――」
「前方より高速せっ―――――」
オペレーターが攻撃を報せようとするが、発射から着弾までの速さが尋常ではなかった。
輻射障壁を突破し斑鳩上部を突き抜け天帝八十八陵を貫通した威力に団員達は無言になるしかない。
(ちっ……この攻撃はライのか? 厄介だな、これは)
アヴァロンの隣、高速強襲型のカタパルトにいるクラブの狙撃形態を斑鳩の望遠カメラは確実に捉える。
青き騎士の戦慄を明確に伝える様に―――――
「ホイール圧正常、バレル異常なし。どう、問題は無かったライ君?」
「特には。ただ、発射時の射線ぶれが少し気になります」
高速強襲型のカタパルトではクラブがユニットの展開をして狙撃形態をとっていた。
ただ、先程とは些か違う部分が多い。
一つ目にカタパルトからの直接射撃だ、通常は地上から発射してランドスピナーで反動を殺すか狙撃姿勢の二択しかない。
その理由としてはフロートの調整が済んでいない為に飛翔状態では反動を殺せず撃てないからだ。
その反動を殺すのに必要なフロートエネルギーを測定する為に今回はカタパルトを利用している。
次に外部接続をして戦艦のエネルギーを利用する事、その為に外付けの更に大型のバレルと姿勢制御のパーツがユニットに装着されている。
これは超長距離と高威力を得る為のシステム、勿論艦上からの狙撃と砲撃支援を前提としたものだ。
「でも概ね問題は無いですね、ショートバレルへの換装をお願いします」
「一発でいいのかい?」
「示威行為としては十分だと思いますけど?」
ライはロイド達を応対しながら眼下に広がる戦火を見ていた。
星刻は見捨てられたのだろうか、味方からの砲撃を受けている。
それを見届ける中、彼にとっては意外な人物が連絡をしてきた。
「正式な要請が出されたよ」
「シュナイゼル殿下……では、出撃をするべきですか?」
「そうだね。それから前線の指揮は君に一任するよ、栄えあるラウンズの新しい騎士である君にね」
(余計な事を……)
シュナイゼルの心中、その真意を読めないライだが反対する理由もない。
不安材料も多い、しかし自分が前線に出ればという考えもまた彼にはある。
「イエス、ユアハイネス。指揮権の委譲を受諾します、ウォードの指揮はエルンスト卿に」
「了解した。全機体、指示があるまでは艦内で待機しておけ」
「最初は三人で出ます、ノネットさんは―――――」
「私は星刻の相手をする、藤堂にも手は出すなよ? ああ、それから紅蓮が出てきたら私が相手をするからなー!」
「はあ……わかりましたよ。出撃後は各個遊撃で交戦、ヴィレッタ卿には僕達の援護をお願いします」
高速強襲型の上部ではKMF用のカタパルトが三つ、徐々に展開していく。
KMFの運用を前提とした航空戦艦、その真価の片鱗を表すように。
「発艦フェイズのプリセット、ロード。各機、出撃体勢へ!」
セシルの号令と共に各々の機体が構えを取る。
スプリンターがスタートの合図を待つように、猛獣が檻が開くのを待つように。
深く静かに前だけを見据えて―――――
「進路クリア、全機発艦!」
『発艦っ!』
カタパルトレールから火花を散らして円卓に名を連ねる三人が空を舞う、その光景に星刻は焦りと不安を抱く。
同時にそれを見ていた団員達にも動揺が走る、それは格納庫にいるカレン達も同じだった。
「どうするんだ? ライも出撃したみたいだぞ、斑鳩もこのままでは危険だな」
「わかってるわよ……」
「だったらさっさとチェックを受けろ、私も暁で出る」
「……さっきからなんでそう平然としてんよ!? あんただって信用してたじゃない!」
カレンの大声が格納庫に響いたが、それに反応して俯く団員達が多数だった。
なぜ裏切ったのだろうと、だがC.C.とラクシャータはそうでもない。
ラクシャータは一抹の不安、ライを失う可能性を考慮していた。
対するC.C.も今更な結果をただ受け止めているだけ。
それ以外の団員達は考えられずにはいられない、裏切りという代価と意味を。
そして立ち止まる事ができないC.C.にはカレンを慰める暇はない。
その為に自分用の暁のチェックを止めて彼女へと振り向き鋭利な言葉で心を突いた。
「だからなんだ? 喚いても結果は変わらんぞ」
「これじゃトウキョウ租界の二の舞―――――」
「そうさせない為にも今は戦うべきではないのか。お前は誰を信じているんだ? ゼロか? ライか?」
「そ、それは……」
「少なくともあの二人は自分を、己の決断を信じているぞ。その結末がどうなろうともな」
信じるべきものが揺らいだ時。なにを信じるのか、なにを信じればいいのか。
象徴か、それとも信念か、勿論違うものを信じている者もいる。
爆撃を受ける天帝八十八陵を守ろうとする黎星刻、彼は己の約束を信じている。
「貴様等、天子様を―――――」
天帝八十八陵に今の天子を埋葬するという決断。
オデュッセウスとの釣り合いの取れる天子の手配。
既に国すらも傀儡としようとする大宦官の欲による暴挙を止めるべく、彼は黒の騎士団から反転して止めようとする。
だが、それを阻むのは奇しくもブリタニアの騎士だ。
「やはり始末されるか、欲深い人間の相手は大変そうだな」
「くっ、ノネット・エニアグラムか! これは我が国の問題だぞ、それにブリタニアが正式に介入するのか!」
「言っただろう、私の与り知らぬところだと。それに今の国の代表は一応あちらだ!」
斧の刃と槍の刃の部分を併せ持つ戦斧と呼ばれる武器、それがノネットの獲物だった。
その斧刃の部分での攻撃を星刻は刀で咄嗟に受け止めたが、刃を引きながら下段からの柄の部分の攻撃で機体を仰け反らせてしまう。
崩れた姿勢を整えて再度眼前を見据えた時、空中に慄然として立ち阻む三機のKMFに冷や汗を流して現状を受け止める。
「ははっ、いい性能と腕だな。あの紅蓮を捕縛するだけはあるという事か」
「僕は下にいます、エルンスト卿は御自由に」
「また尻拭いか……」
「こらっ、そういう言い方をするな!」
「ライ卿、援護は?」
「必要ないでしょう、鋼髏(ガン・ルゥ)だけなら問題はありませんよ」
グロースターをクラブとヴィンセントが確立した技術で改修されたKMFを駆るのはノネット。
ベーシックはそのままだが肩部からはショルダーアーマーが追加されたMVハルバートを使用する白兵戦重視型。
ドロテアはヴィンセントをベースにしているが主機関の高出力に合わせて各部が少々大型化されている。
それでもサイズは通常のKMFのままで武装は収納式の手甲とスラッシュハーケン、そして小型の機銃のみの完全近接型。
どちらも中身は第七世代基準の技術を使用したカテゴリー第八世代相当のKMFである。
(手強いな……しかし、ここで退くわけにはいかん!)
ライが自分から離れる行為にも不安はある、鋼髏では止められない事も承知の上だ。
しかし三機を自分では止められないならば今は戦力を分散させるしかない。
だからこその疑問、なぜ三機で攻勢に出なかったのかと―――――
「射程は厄介だが、この位置取りでは活かせないだろう」
「き、きたぞー!」
「この鋼髏の機動力を舐めアッー!」
降下直後からMVSブレスタイプを同時抜刀、そのままランドスピナーで突進してくるクラブに星刻の部隊は恐慌状態になる。
その二刀が織り成す剣技は固定キャノンの弾を切り裂き、時には弾き、その前進を止める術として機能しない。
MVSブレスタイプの斬撃から数テンポ遅れて脱出ブロックが次々と飛び交う爆炎を背にする鋼鉄の蒼き騎士。
(なるほど……確かにあの双剣は見事だ、閃光の様に迷いなく一閃してはいるが―――――)
ドロテアはクラブの二刀が繰り出していた猛撃を冷静に見つめ、そしてある答えを導き出していた。
躊躇はない、敵意は十分、ただ殺気が足りないと。
(バベルタワーの時とは訳が違う、できれば穏便に済ませたいが……)
次々と迫る鋼髏を破壊していきながらライは着実に斑鳩へと近づいていく。
そして有視界で捉えられる位置に辿り着き上空で追従していたドロテアも少し遅れて到着した。
「やはり大した抵抗はでき、ん? レーダーに反応、黒の騎士団か?」
「エルンスト卿、迎撃を。フロートタイプのKMFは恐らくエースです、油断は―――――」
「心配は無用だ、それより初陣に花を添える努力をするといい」
「こちらの航空戦力は限られている、ブリタニアの相手だけに執心するな。各機、一騎当千の気構えを持て!」
『承知っ!』
中華連邦の爆撃部隊が迫る中、藤堂は攻めを選んだ。
爆撃までの猶予はある、それならばライ達の撃破を先んじてと。
「機動性ならさ、こっちが上だよ」
「落ちてもらうぞ!」
朝比奈と千葉はドロテアの撃墜を主眼に置いて連携技での攻撃を仕掛ける。
それに対してドロテアは自機の武装を装着させた。
撃鉄音にも似た大きな音を立てて手甲は前腕部に展開される。
千葉機が繰り出してきた正面からの廻転刃刀の一撃もその左手は難なく受け止める。
「余裕のつもりか。しかしこれで動けまい、朝比奈っ!」
「わかってるよ、覚悟っ!」
僅かな隙を見逃さず、朝比奈は追撃を右側から仕掛けるがそれすらも身動ぎ一つなく受け止められる。
「暁二機でも圧しきれんとは!」
「へえ、これは厄介かもね!」
「MVSをも弾く手甲も舐められたものだな。そろそろ頃合か、ウォード隊は全機発艦しろ」
上空から火花が散る中、藤堂はライとの対立を静かにはじめる。
「君と戦う事になるとはな、俺としては残念ではあるが―――――」
「お互い迷う事もないでしょう? 貴方が潔い敗戦より勝利を選んだ様に、僕にも目指す先はあります」
軍人としての責務、奇跡の藤堂としての責任、日本人としての誇り。
それと同じ様な各個たる意思をもっての行動、その言葉を聞いて藤堂は善しとした。
ただ、藤堂が思う事は惜しむらくもその先の為に選んだ国がスザクと同じブリタニアである事だろう。
「そうか。では、その心意気に応えよう。藤堂鏡志朗、罷り通る!」
斬月が対KMF戦闘用日本刀である制動刀を正眼に構えたのに対してクラブは二刀の構えを解いた。
一呼吸、双方が剣先を見据えて。
二呼吸、戦士としての高揚を互いに感じて。
三呼吸、合わせるでもなく二機は同時に滑り出した。
一撃目―――――
(正面、これならば!)
(避けられるだろうがそれでも構わん!)
制動刀の突きを機体を捻らせて交わすがライは攻撃の糸口を掴めず機体を流していく。
二撃目―――――
(やはり手強い!)
(二段目も読んだのか、しかし!)
空中で交差する事ができずクラブは斬月の二度目の突きを頭部に喰らいそうになるがクラブはライの反応に応えてさらに機体を捻る。
その刹那の中でライは確実に感じていた。忘れていた昂ぶりを、思い出したくもない昂ぶりを。
三撃目―――――
「ぐぅ!」
「三段突きを凌いだか、見事だ!」
クラブは斬月の制動刀の突きを全て捌いた。いや、防いだが妥当だろう。
三度目の段階でもライは攻勢には出ず防御に徹するしか他はなかった。
その為ブレイズルミナスで受け止める形になり互いに膠着状態へと縺れ込んだのだが―――――
斑鳩の艦前へと少しずつ近づきながらノネットは神虎を後退させていく。
普段の星刻ならば勝敗を決する段階でどちらに軍配が上がるかは不明瞭だ。
しかし、長時間の交戦と病の負荷で確実に不利になってきている。
(藤堂と交戦しているのか? ドロテアもフォローができんな、紅蓮も出てきたとなると流石に辛いか)
「悪いな、今日はここまで十分だ」
「ぐぅ……なにを考えている、貴様ならばここで私の始末もできるだろう?」
「そうなんだがな、手負いの人間を倒しても面白くはないだろ」
「どこまでも自分に興ずるつもりか?」
「そうでもしていないとできんだろう」
その先の言葉、それは膝蹴りで掻き消され神虎はまたしても体勢を崩してしまう。
だが、彼の耳にその続きがはっきりと聞こえていた。
世界と戦うのは、と。
その言葉に星刻はブリタニアにもまた悩む戦士はいるのだと知った。
国か、民か、誇りか、それとも―――――
崩された体勢を立て直し斑鳩を見据え自分の戦う理由はそこにあるのだと彼は考える。
その想いは彼を戦場へと舞い戻らせていく。
「ほらほら邪魔をするな、こっちはまだ元気だぞ!」
「大尉、後退を!」
「わかっておる!」
ノネットのKMFが高速接近するのに即座に呼応して卜部と仙波が応戦しようとする。
だが、この二人も連戦の消耗が激しくハーケンスラッシュの攻撃に防戦になりノネットの突破を許してしまう。
その先、メディカルチェックを受けたカレンが駆る紅蓮がクラブへと狙いを定めていた。
(藤堂さんが抑えてる今なら……)
膠着状態のクラブと斬月、今なら掛け値なしでライを撃破できる。
だが迷い、不安、躊躇、様々な感情の波の中でカレンは攻撃を仕掛けられずにいた。
「次世代の量産型も投入してきたぞ、急げ」
「わかってるわよっ!」
「おいおい、そう簡単にやれると思うなよ?」
カレンが声に反応して見上げた先にはハルバートを振り上げたノネットのKMFが迫っていた。
咄嗟に右手を突き出して柄の部分を掴んだが左足の蹴りですぐにそれも放されてしまう。
「戦場ですぐに再会か、因果なものだな」
「邪魔する気、私の用があるのは青いKMFだけよ!」
「そう釣れない事を言うな、なあドロテア!」
ドロテアは膠着状態を止めてノネットの背後でウォードと共に陣形を整えている。
ライも同じく斬月との膠着状態を解いてヴィレッタと共にノネットの側面へと移動していた。
状況は四対七、数では黒の騎士団が有利ではある。そして―――――
「敵を援護しなければならないとはな、だが天子様を守る為には!」
「星刻か? ならば……四聖剣は爆撃の阻止を優先しろ、ここは我々が抑える」
四聖剣が離れ状況は四対四、数で圧す事よりも優先すべき事がある。
そう、藤堂達には敗北する事ができないように斑鳩も守らなくてはならない。
これは決闘ではない、ただ勝てばいいという戦いではないのだ。
「紅蓮は任せろ、今のこいつなら期待できそうだからな」
「わかりましたよ……エルンスト卿は藤堂機の相手をお願いします。ヴィレッタ卿は新手のKMFの相手を」
「イエス、マイロード。ヴィンセントの力、ここで発揮させてもらうぞ」
「いいだろう。ウォード隊、突破した四機は任せる」
「さあ、はじめようか!」
八機のKMFが同時に弾けて空を舞う、互いに躊躇いはない。
それぞれが螺旋を描いて舞う姿、それを眺めながらルルーシュも動き出していく。
問題は状況を誘発できるか、それがネックだが彼の目論見ではこれ以上の時間を稼げる道はなかった。
「……回線をオープンで開け、今すぐだ」
「え? あ、はい、わかりました」
「それから会話は斑鳩艦内の全てに聞こえるようにしろ」
「艦内全て、ですか?」
「そうだ、神楽耶様と天子のいる部屋も含めてな。ラクシャータ、準備を」
『はいはい、早くしてよね』
「扇、戦線の指揮はお前に任せる。南、お前は斑鳩の防衛に専念しろ」
それだけを言い残してルルーシュは艦橋を離れた。
舞台と役者が揃い物語も佳境、そうなれば必要になるのは幕引きだ。
彼がするのはそれを誘発させるだけ、その為の天子でありゼロという記号。
開戦から既に十数時間、この戦いの終わりはそこまで迫ってきている。
「我々が有利のようですわね、流石はナイトオブラウンズ」
「しかし、ゼロの動きが気になるね」
「まったく動かないところがですか?」
シュナイゼルの言葉にニーナは内にある怒りと共に疑問をぶつけた。
確かにルルーシュ自身は動いていない、同時にシュナイゼル自身も動きを見せていない。
それはなにかを待っているような形だ。
「どうセシル君、彼の調子?」
「バイタルは正常ですけど少し気になりますね」
アヴァロンの艦橋に映しだされている映像には双方のエースが入り乱れて戦っている。
その光景を冷ややかに、そして確かな熱さを持ってシュナイゼルは見ていた。
『エニアグラム卿、貴女までこの戦いに参加されるとは意外ですね』
「今はシュナイゼル殿下の指揮下にいるからな、当然だろ」
オープン回線によるルルーシュからの通信、それに戦場にいる者達は驚いたがライやノネット、シュナイゼルは落ち着いたままでいる。
回線がオープンである以上、当然双方に聞こえており事態の変化が起こるのは誰の心中においても明らかだった。
『これは驚きですね、貴女程の人物なら大宦官達の所業を許すとは思えませんが?』
「おいおい、私と政治の話をする気か? だったら他所でしろ、お前とは相容れられんだろうからな!」
『ほう。では、貴女はブリタニアがこの中華連邦と同じく僅かな人間による傀儡国家になっても気になさらないと?』
ハルバートが雄々しく振り回され紅蓮を弾き飛ばしたが、その隙を斬月が追撃を仕掛けるもドロテアの機体も斬月へと迫る。
槍の様に一筋の軌跡を残して迫る足刀の一撃、その一撃も斬月の衝撃拡散自在繊維という髪の毛状で受け止められる。
「なるほど、貴様は口だけでなく人を唆すのも上手そうだな」
『おや、ナイトオブフォーである貴女も同じ意見ですか?』
「貴様は強者が弱者を虐げないという世界が作りたいそうだな、詭弁もそこまでくれば大したものだ!」
蹴撃に続けて拳撃の攻撃を斬月は避けきれずそのまま機体を流していく。
その衝撃を殺さず藤堂は勢いを重ねる様に制動刀の噴射機構を作動させ回転斬りの応用で反撃する。
意外と思いながらもその反撃にドロテアは冷静に両腕を重ねて斬撃に耐えた。
「我等にもまた意地はある、その意思を否定するのか!」
「否定? 藤堂、データでしか知らないが案外と狭量な軍人の様だな」
「なんだと!」
「では聞くが、貴様達自身が最後まで勝利し強者となった場合―――――」
「見逃した手前、その強者たるお前達を誰が裁くのかは聞いておきたいな!」
鍔迫り合いにも似た二機の空間を壊す様にノネットの機体が迫る。
それを横合いから妨害するのは赤いKMF、紅蓮可翔式だ。
その二機はもつれ合いながら滑空しながら降下しつつ体勢を互いに立て直していく。
「詭弁? 笑わせないでよ、そういう考えを否定するあんた達ブリタニアがやってる事はなんなのよ!」
「侵略だろ? 私は自分の行動を取り繕わんぞ、だがイレブンの現状はお前達が勝手に暴れて作り出した結果なのは忘れるなよ?」
「偉そうにそうやっていつも上からの目線で!」
二機が交差する様に再度飛翔していき機体がぶつかり合う。
紅蓮の振り上げた右腕をノネットはハルバートを片手に持ち直し空いた手で受け止める。
KMFの単純な出力はノネットが勝る、しかし紅蓮の右腕部だけならそちらが勝っている。
ノネットの機体はモーターが悲鳴にも似た咆哮を上げてじわじわと圧されはじめる。
「そうとしか見えんだろうな、だがユーフェミア殿下はその垣根を壊そうとしたぞ?」
「今更その話!?」
「当然だろ。副総督の凶行を止めなかった軍部の体制、殿下の行いは許されんだろうさ。だがな―――――」
膠着を壊すようにノネットは腕を強引に引いて紅蓮をよろめかせた。
そのまま距離を取りながら地上へと降り立つ、毅然と誇りを害わない構えで。
「お前達が勝てば全てのブリタニア人は今のナンバーズと同じ扱いをされるだけだぞ、お前はそういう世界が望みなのか?」
「そ、それは……」
「お前達も私達も傍から見れば狂人なんだよ。その上お前達は弱者を救うといいながら、その行動の結果は新たな弱者しか生まん」
「カレン、敵の言葉に耳を傾けすぎるな!」
「それがわかっていながら、なぜその横暴を止めようとしないのだ!」
C.C.の暁と神虎が二機に迫るが戦場にはまだ他にも戦士はいる。
ライとヴィレッタ、この二人が迫る二機を抑えにかかる。
「C.C.捕獲作戦、今ここで終わりにさせてもらう!」
「ちっ! 機情の奴か、まったく」
「貴方でもこの問題に対しての明確な答えはもっていないでしょう?」
「君か、君も志を共にする人間だったのだろう!」
クラブのMVSブレスタイプと神虎のフーチが火花を散らして重なり合う。
お互いに双撃、退く道を知らぬ二人と同じくKMFも退く術を使おうとはしない。
「そうですね。だからこそ、ここにいるとも言えます」
「肯定するのか、ブリタニアの行動を」
「いいえ、正しいとは思えません。そういう貴方はどうなんです、天子については」
「天子様だと?」
「仮に天子を取り戻せたとして、そのまま連邦のトップにでも据える気ですか? 彼女にそれ程の政治的手腕はなさそうでしたが?」
「それは我々が代行し執り行えば……っ!?」
「結局のところ大宦官達と変わらない、天子を傀儡にしているのと同義ですよ」
クラブはブレイズルミナスを両腕に展開して強引に神虎を弾き飛ばす。
だが追撃はしなかった、いやする気がないのだ。
「貴方が天子になにを想うのかは知りませんが、しようとしている事は大宦官達と変わらない」
「ならば民はどうなる! 天子様が飾りだと知れば民は誰を心棒すればいい!」
『シュナイゼル殿下、貴方はどうなのです?』
オープン回線から混雑する様々な主張、それに耳を傾けていたシュナイゼルもルルーシュの言葉は流石に予想外だった。
この主張のぶつけ合い、それを誘発させたであろうルルーシュの言葉。
その言葉に乗るかどうか、シュナイゼルはただあるがままだった。
「君が理想主義者なのは意外だね、それに彼等の主張もよくわかるよ」
『では、貴方はブリタニアは現状のままでもいいと?』
「エリア11の総督であるナナリーが行政特区を再度設立したように世界は常により良く変わろうとする、なにも私や君が出る必要は―――――」
『ないとおっしゃるのですか。これは面白い、ですが大宦官達はどうですかね?』
ルルーシュは大宦官達がいる竜胆だけに回線を絞り言葉を続けていく。
シュナイゼルの言動、ルルーシュにはそれが活路となるだけだ。
『どうしても攻撃を止めない様だな、星刻は天子を守ろうとしているのに』
「天子など所詮はシステムよ、代わりは幾らでもいる。取引材料にはならぬな」
『ほう、つまりブリタニアへの貢物にするという事は変わらないという事か。それだけではなく国や民衆すらも売り払うと?』
大宦官達だけによる取引、ブリタニアでの爵位、領土の割譲、不平等条約、それは彼等の欲を満たす為に投げ出されている。
その情報はルルーシュにとって最高の火薬だった。
「我々は既にブリタニアの貴族、関係のない話よ」
『残された人民はどうなっても構わないと言うのか。貴族になろうという人間が貴族主義、ノブレス・オブリージュも―――――』
ルルーシュは糸を引き寄せる様に大宦官達の言葉を誘っていく。
破滅という糸を招くように―――――
少女は斑鳩の甲板を目指して走っていた、正体を知らなければ彼女はまだ幼いだけで終わるだろう。
防音された室内に響いてくる数々の言葉こそが今の彼女を走らしている。
天子という中華連邦の象徴、お飾りだと比喩される彼女だが彼女なりの想いはある。
それが戦火の広がる斑鳩の甲板へと進ませるのだ。
「もう止めてー!」
彼女は絶叫したが誰一人として耳を傾けるものはいない。
だが姿を見つける者はいる、ライと星刻は砲撃と爆撃の雨の中で吹き飛ばされる彼女を見つけた。
その光景に星刻はライとの戦いよりも彼女を守ろうとライから離れる。
そしてライの胸中も複雑なものだった。
『兄様見て、今日はね―――――』
(……今更迷うのか。迷ってどうする、僕は―――――)
ライはその感情の中でただ光景を傍観するしかない。
中華連邦軍は天子を殺そうと砲撃体勢に入っている、これもまた歪んだ軍部の形なのだと示すように。
僅かな人間、もしくは一人の人間の言葉は簡単に世界を歪められると。
『蛮族は皆殺しにせよ!』
「わかっていた……のにな……」
砲弾の嵐をただ一人で防ごうとする星刻とそれに応える神虎。
拾われる音声が繋ぐ二人の意思―――――
「誰か! 誰でもいい、彼女を救ってくれ!」
(過ちと悲劇……繰り返すのはもういいだろう……必ず……終わらせてみせるさ……)
クラブのドミネーターユニットが腰部に展開されVARISが繋がれる。
狙いは星刻、そして天子だ。手加減をするべきではない。
「ゼロ、ここで終わりだ!」
轟音と共にショートバレルから発射された弾道にぶれも迷いもない。
ただ一直線に進むだけだ、破壊するものを目指して―――――
『聞き届けてやろう、その願いを』
着弾による爆炎。
その中から言葉と共に黒き魔神の象徴たる鋼鉄の騎士は姿を見せた。
KMF蜃気楼、それがルルーシュが駆る新たなKMF。
(御膳立てはここまでか、この戦いはもう終わりだな)
「指揮官自ら最前線に出るとはな、つくづく酔狂で変わった男だ」
「なにを考えている?」
誰もが抱く疑問、ブリタニアと中華連邦はこの行動に困惑しているが黒の騎士団はようやく荷が下りたのだと悟る。
だが、それで止まる人間がいる筈もない。
少なくとも大宦官達はそうだ。
『何をしている! 一斉射撃で―――――』
「弾の無駄使いは止めておけ、今ここにいるKMFではあのKMFは一生破壊できないぞ?」
ライは大宦官達の行動を制止してドミネーターユニットによる射撃を再度行なった。
だが、先と同じくそれは蜃気楼の眼前に展開されたエネルギーシールドによって阻まれる。
「ロイドさん、あれは……」
「やられたね。ガウェインのドルイドシステムを流用した物だろうね、あれは」
「流用ですか? 信じられません……一体どんな人が……」
ラクシャータがドルイドシステムを咀嚼してルルーシュに合わせて改良した絶対守護領域。
その硬度は世界でも最高峰、それを示すようにライが撃った弾丸ですらダメージの一つも負わせていない。
勿論防御だけではない、攻撃においても隙はない。
胸部が展開して一つの弾頭が撃ち出された後、一筋の光がそれを目掛けて伸びていく。
その伸びた光は雨となって空を舞い大地に降り落ちる。
(液体プリズムによる乱反射機構と拡散構造相転移砲、か。レポートが役に立っているようだな)
「こんな攻撃で私達をやれると思ったのか?」
「エニアグラム卿、狙いは陸軍でしょう。現に戦線が崩壊しています」
ライ達はブレイズルミナスを高出力で展開して身動ぎ一つなく攻撃を防いでいる。
だが鋼髏は成す術もなく次々と破壊されていく。
ノネットとドロテアは陸戦部隊の瓦解を懸念したが、ライはするべきであろう選択を選んだ。
「どうしますかシュナイゼル殿下、持久戦に持ち込んでもかまいませんが?」
「……なにかおかしい、君はそう思わないのかい?」
「特には思いません」
「私はそうは思わないね、なぜゼロはこんなタイミングで出てきたんだろうね?」
シュナイゼルの疑問、先のオープン回線での通信による発端。
ルルーシュの掌の上にある答え、それはゼロとしての答えを示していく
「予め用意していた策だったんだろうね、それもゼロのではなく―――――」
「そう、クーデターに合わせての人民蜂起。君の策、有効活用させて貰ったよ」
星刻が中華連邦内の腐敗を明るみに出し大宦官達の悪行を知らしめる。
そして人民による蜂起、これが当初の狙いだった。
だがクーデターは失敗した為に星刻はこの策を後回しにしていた。
それをルルーシュはディートハルトが入手した情報とすり合わせて使ったのだ。
根回しさえ済んでいるのなら後は火を点すだけだ。
「黒の騎士団の地上部隊も出てきたか。シュナイゼル殿下、まだ交戦を継続しますか?」
「いや、撤退しよう。国を動かす常に人々だよ、民衆の支持を失った大宦官達に国を代表する資格はない」
(国とは領土でも体制でもない、か。わかっていながら流れに乗るだけとは変わった男だな、あの男の子供とは思えないな)
「イエス、ユアハイネス。ノネットさん、撤退しましょう」
スラッシュハーケンを解いてライ達も撤退していく。
それを止めようとカレンは応える筈のないライへと通信した。
「待ちなさいよ! あんた、なに考えて―――――」
「カレン、まだ敵の残存勢力がいる。そちらを先に始末しろ」
C.C.はカレンを嗜めた、今はそれが一番すべき行動ではないのだと。
地上部隊の展開と共に中華連邦軍は黒の騎士団の行動、そして自分達の主たるは天子という想い。
露呈した事実、星刻のクーデターからはじまったこの騒動は大宦官達の処刑によって幕は閉じた。
時刻は日の出、地平線から太陽もゆっくりと昇ってくる。
世界は夜明けを静かに告げる。
だが今回の戦いに参加した双方の人間の心、そこへの夜明けが来なかった者はまだ多い―――――
中華連邦内での戦いが終わりを告げた時を同じくする頃。
世界の変革を望む者の夜明けは日の出と共に訪れた。
「ここはどこだ、私達はブリタニアにいた筈―――――」
バトレー率いる研究チームはシャルルに召集されて遺跡へと招かれた。
そして気づいた時には見知らぬ場所へと導かれた。
見覚えのある遺跡の壁画の前にいる二人、一度会った事のあるV.V.と自分達の所業の象徴の一人であるジェレミア・ゴットバルトの下へと。
「それも皇帝陛下の御命令だと言うのですか!?」
「そうだよ。C.C.の力を再現しようとして君達が改造したんだよね、このジェレミア卿を」
「然り。ならば貴公達が最終調整をするのも当然であろう?」
バトレーの額から大きな汗が幾つも流れていく。
それは同行している研究員も同じだった。
またあの悪魔の所業を、悪夢の様な研究の続きをするのかと。
「聞けばライ卿にも随分としたそうではないか、それを今更躊躇うのは可笑しい話であろう」
「そう、これは君達以外に適任なのはいない証でもあるんだよ」
「これは随分と大層な名誉ではないのかね、バトレー将軍?」
言葉と共に冷ややかな笑みをしながら去っていく二人をバトレーはただ黙って見送るしかない。
それが覚えのない肉体改造、そして人体改造と力の研究による代価なのだと。
静かにそれを受け止める他はない、同時に歩を進める二人もまた代価を払わねばならない。
「中華連邦も掌握されたんだろうね、となればここもすぐに攻め込まれるかもしれないよ」
「では、ここはライ卿の忠告通りに移転の話を受諾されるのが良いかと」
「あまり教義は曲げたくはないんだけどね、でも―――――」
進めていた足を同時に止めた時、V.V.はジェレミアを見上げた。
その眼は明確な敵意を示している、少年らしからぬ奥深い闇を灯して。
「ゼロには一度お仕置きしておかないといけないよ、僕達の邪魔をするなってね」
「承知しております、その為の私とライ卿。そして―――――」
二人が辿り着いた漆黒の空間、ジェレミアが視線を向けると同時に幾つものライトが一斉に明かりを灯す。
その眼下には巨大なKMF。いや、KGFが慄然と姿を見せる。
KGFジークフリート、ガウェインが蜃気楼と斑鳩へと生まれ変わったように。
この魔弾の射手も再誕したのだ、射抜く敵を求めて。
明けない夜はない、だが必ずしも明るい夜明けだけとは限らない―――――
以上です。
話が小難しい? もっとシンプルにしろ?
ホントに申し訳ないです…書いていたら色々と…気をつけます…
さて、今回は一応の答えもなくただ問答があっただけですが
この問題に対して次回以降のルルーシュはどうするのか
そして明後日な方向を見ているライはどこへ行くのか
地味にカレンが捕まっていないのとグラストンナイツが全員生きているのは御愛嬌
伏線が増えたり減ったりしているのは作者の力量不足
そんな詰め込み過ぎな上に本編との剥離が益々激しくなる次回はラブアターック
じゃなくてインド漫遊記に期待しましょう
……えっ?
えっと…で、では次回投下する前日譚パートUの時にまたお会いましょうね
失礼しました〜
乙でした。
これはもう続きが気になってしょうがない!
本編とはまったく違う展開に引き込まれます。
次回も頑張ってください!
失礼、84と85の間に下記の文章を入れるのを忘れてしまいました
「組むべき相手を間違えたな、星刻」
「そうかもしれんな、だからといって貴様の部下になる気はない」
「当然の答えだな、だが私に必要としているのは同志なのだよ」
ルルーシュは再度オープン回線による通信を行なった。
その光景をカレンは眺めている事に執心してしまう。
自分達の正義、世界を変える代償、その答えを探してしまうかの様に―――――
「余所見をするとは随分と余裕だな」
「えっ?―――――」
振り上げられたハルバートが紅蓮の眼前に迫る。
どう足掻いても避けられない。
死の予感、そして実感。
その狭間で見たのは頭部に届く事はないハルバートの刃だった。
「……こら、いいところで邪魔をするな」
「そういう言葉はオープン回線に耳を傾けてから言って下さい」
クラブのスラッシュハーケン、それがノネットの攻撃を防いでいた。
同時に二人がオープン回線から入る情報を耳にした時、それは戦局の終焉を告げる合図でもあった。
中華連邦内で同時多発テロ、ルルーシュは大宦官達の我欲を民衆の怒りを誘う火薬にしたのだ。
天子が艦上に出たのはルルーシュにとって予想外のトラブルではあったが民衆の行動を更に加速させる材料にもなった。
だが、肝心の導火線はルルーシュが用意したものではない。
話が少々チグハグしてしまい迷惑をかけて大変申し訳ありません
では、失礼しました
>>86 ぷにぷに卿、GJでした!
カレンを解放するライ、追撃しようとするカレンを一喝する仙波さんの渋さが光る。
これもifならではの光景ですね。
カレン捕虜にならず=紅蓮魔改造フラグクラッシュ!
ライが裏切ったことを信じきれない騎士団員、玉城の叫びがはっきりと脳内に響きました。
原作どおり民衆を使い勝利をおさめた騎士団。
どんどん出てくる違い、続きがとっても楽しみです。
ジェレミアの真意も未だ不明、マリアンヌへの忠義かあるいは……
貴公の次の投下も全力を挙げてお待ちしております!
ぷにぷに卿、乙です。
ただ今回、迷いながらも天子と星刻に銃口を向けるライ。
あれは主人公の行動としては不満を感じますし、星刻はともかく天子を殺そうとする意味が分かりません。
>>86 GJでした。
四聖剣やグラストンナイツの生存、
更にはカレンが捕虜にならないと、確かに本編との乖離が激しくなりますね。
だからこそ、続きが激しく気になる。
次回の投下を楽しみにお待ちしております。
乙でした!
今回ライその他の介入で変化した中華戦線そのものより
ナナリーの傍近くに配置されたアリスの動向が気になったり。
ちらりと触れた教団やロロとの関係等、どう拾われていくのか興味津々です。
続きを楽しみにおまちしています!
93 :
カズト:2009/02/06(金) 01:02:12 ID:+BZxqgDD
リロっても大丈夫のようなので投下いたします
本文は6〜8レスといったところ
タイトル「追憶の旅路 第十七章 日常への帰還」
あらすじ
ある日、運命はわき道に逸れた
カレンはマオに拉致された
マオに一度は心を壊されたカレンだったが、ライへの愛によって自力で復活
マオを倒し、心身ともに叩き伏せたが
助けに来たライはすでに心を壊されていた
C・Cの力でライの精神世界に飛び込んだカレン
そこで、カレンはライの過去を知る
ライの苦しみ、罪業を受け止めたカレン
そして、カレンはようやくライの心の中でライと出会う
カレンの愛を受け取り、己の弱さに克ったライ
二人の心は一つに結ばれ、ライは現実世界へと帰還した
注意点
・実質完全オリジナルと言う言葉が取れました……
・カレンがライの過去編を精神体という形で見ておりましたが、ようやく現実世界に戻ってまいりました
・オリキャラあり あくまで別人でした……
・前半ラブコメになってます・・・・・コメディと真面目のバランスを試してみたりする
94 :
カズト:2009/02/06(金) 01:02:39 ID:+BZxqgDD
僕は再び目覚めた……
見慣れない天井が見えた、ここは病院のようである
カレンがリンゴをむいていた
「あ……カレン……」
「ライ、起きたのね……あなた、あれから丸一日寝ていたのよ
(ゼロも)大げさよね……寝ていれば回復するのに……」
ルルーシュはマオの恐ろしさを知っていたためにライに大事を取らせていた
「そうか、カレン……あらためて言うよ……ありがとう」そう言ってカレンを見つめる
「ど、どういたしまして……」カレンはただ照れてうつむいていた
「ねえ……ライ……」
「なんだい……カレン?」
「可愛い娘だったね……」
「ぐぼあ!!」ライは痛いところを突かれた!
なにしろ自分の初恋もしっかりと見られたのだから
「いや……それはその……カレンと出会う前だったし、
僕は今!!カレンが好きなんだ!!そ、それに……ファーストキスや……童貞は君に……」
「ばっ馬鹿!!本気にしないでよ!!や、やきもち焼いてみたかっただけじゃない!!」
病院の個室で二人の世界が繰り広げられていた
そんな幸せな空気を部屋の外で、鋭い四つの視線が射抜いていた……
(あの、入りづらいんですけど……)シャーリーがミレイに尋ねる
(うーむ……カレンよ……先に「卒業」されたのは分かっていたのだが、くやしいのう……)
ちなみに、ミレイにいたっては二つの意味で「留年」していたりする
(ミレイちゃん……一旦帰った方がいいかも……)ニーナが帰りを促す
(いや!これは、いいサンプルになるんじゃないですか!ミレイ会長!!)
ミレイは既に生徒会長ではなくルルーシュに会長職を譲り「元会長」として、ちゃっかり権勢を振るっていたりする……
リヴァルが言った会長は「生徒会長」という意味ではなく
ミレイが趣味で立ち上げた「男女交流生態学会」の会長を指していた
学園に時々現れる銀髪の美少年ライ、「病弱」なシュタットフェルト家の令嬢カレン……
このカップルは今や学園中の話題の種であった
(あのさ……二人の会話から分かったんだけど……ライの記憶って一部戻っていたりするんじゃないかな?そして、思い出したのは記憶を失う前に恋人がいたという事!!)
ミレイが自らの推理を展開した!!
(あ……俺もそう思った!!)リヴァルがミレイに同調した
(つまりはこういう事じゃないかな……)シャーリーが想像力豊かに膨らませた
そして、三人は子芝居を始めたりした
レナ(仮名)役 シャーリー(ライ!!やっと見つけた!!探したわ!!)
ライ役 リヴァル(き、君は誰なんだ?一体……う……あ、頭が!!)
レナ(仮名)(ライ!!ま、まさか記憶を失っているの!?あたしよ!レナ(仮名)よ!!覚えてないの!?思い出して!!)
レナ(仮名)が頭を抱えたライに駆け寄った……そこに現れたのが
カレン役 ミレイ(ライ!誰なの!?その女……)
(中略)
レナ(仮名)(さようなら……ライ……愛していたわ……幸せになって……)
ライ(すまない俺はミレイを愛してしまったんだ……さあミレイ!!一緒に教会へ!!)
ズビシッ
カレン……いやミレイのチョップがリヴァルの額を捕らえたのだった……
(調子に乗るな!つーか、なんで名前変わってんのよ!)
(みんな……なんでこんなに想像力豊かなんだろ?)ニーナだけが置いてけぼりを食らっていた
95 :
カズト:2009/02/06(金) 01:03:55 ID:+BZxqgDD
そんな外のコントをよそにライとカレンが甘い時間を過ごしていた……
「ねえ……あたしの事……好き?」
「当たり前じゃないか」
「あの娘よりも?」
「もちろんだよ!!す、好きだよ……カレン……」
「じゃあ……証明して!!」そう言ってカレンは人差し指で自分の唇を押さえた
すかさずライはカレンを抱き寄せ、その唇を奪う!!
「ん!んむ……んん……ふぅ……」
(か、会長ーーーーーーい、糸……糸引いてますーーーー!!)
シャーリーの顔が興奮で真っ赤に染まっていた!!
(ライ、やりおるのう……あの胸も……既にライのものかああああああ!!!)
カレンが生徒会に入ったばかりの頃、女子メンバーでお風呂に入った時、
ミレイは「身体測定」と称して、さんざんカレンの胸を揉みまくったのを思い出す、
大きさでは負けていなかったが、張りが印象的だった……「病弱」な割には……
(ぬおおおおおお!!こ、これは!「朝から生本番」!?)
チャーチャーチャッチャラッチャーー♪チャッチャッチャー♪
チャーチャーチャッチャラッチャーー♪チャッチャッチャー♪チャラ♪
そんなBGMがリヴァルの脳内で流れていた
(み、みんなまずいよ……帰った方が……)だが、ニーナはこうなるともう止められないと既に諦めていた
コツコツ……
ニーナは足音が聞こえてきたその方向を見る
(ルルーシュにスザクとナナリーに咲世子さん……えええええええ!!どうしてあの方がここに!?)
ニーナはその方向へと向かった
(お客さん……コイツはすげぇですよ!!)リヴァルは興奮の極みに達していた!!
ミレイもシャーリーも同様であった
そんな三人の状態などお構いなしに、ニーナはズカズカ歩いてきて、ドアに手をかけた
(あの……ニーナちゃん……まさか……)ミレイの言葉を無視して、
ガラッ!!
ニーナはドアを開け放っていた!!
「え……ニーナ!?いや、あの……これは……」いきなりの来訪者にライは戸惑っていた
「ちょ、ちょっと……ニーナ!」ライとのラブラブタイムを邪魔されたカレンは顔を真っ赤に染めていた
「カレン!!とにかくライから離れて!!」ニーナは二人にズカズカ近づいて、カレンをベッドから引き摺り下ろし、椅子に座らせた!!
「おおおーっと!!ライとカレンのガチンコ勝負にニーナ乱入か!?修羅場!まさに修羅場ぁぁぁぁぁぁ!!」後にアナウンサーになるミレイの名調子が炸裂する!!
カレンを椅子に座らせたニーナは意外にも、病室の外に向かい……
「もう大丈夫ですよーー片付けましたので!!」
(私の女神さまに、こんなものを見せるわけにはいかないんだから!!)
どうやら、誰かを呼んでるようだった……
入ってきたのは、ルルーシュ、スザク、ナナリー、咲世子さん……そして、サングラスをして帽子を被ってはいたが……
「ユ、ユーフェミア皇女殿下!?」そう、そこにいたのは文化祭の時の格好で一目ではわからないが、間違いなくユーフェミア副総督であった
いかにスザクの知り合いとはいえ、一学生の見舞いに来るなど誰が信じるだろうか
今回は、スザクが護衛についているようだ
「あの、私……もう皇女ではないのですが……」
彼女はそう言っているが、特区日本、ゲットーで未だに特区入りを希望する日本人たちはユーフェミアを巷でそう呼んでいた
彼らは皇位継承権を失っても、彼女に皇帝になってもらいたいという願いを込めているという事だろうか
96 :
カズト:2009/02/06(金) 01:08:40 ID:+BZxqgDD
「あの、副総督としてお忙しい身で、なぜここに?」ライは尋ねる
「はあ……私にもよくわからないのですが、あなたにお礼をいわなければならない気がして……」
「お礼……ですか?」(妙に曖昧だな……)
「その……なんと言いますか、私あなたがいなければ、何かとんでもない過ちを犯してしまっていたような気がして……あと、それと……その、何でもありません……」
(そういう事か、まあ、あの時は必死だったからなあ……それと、まだ何かあるみたいだ)
ユーフェミアの隣でルルーシュがバツの悪そうな顔をしていたのだった……
みんなで談笑して、しばらくしてシャーリーがカバンから何やら本を取り出した
「あ、会長、頼まれていた本、やっと……手に入りました
あちこちの書店で売り切れていましたから、本を手に取ったときの達成感も一入でした」
「でかした、シャーリー!図書委員からもせっつかれてねえ……」ミレイが安堵の息をついた
「あ、読んでみる?ニーナ」シャーリーが薦める
「あ……私はいいよ……」(その本知ってるけど、相手の男性って確かイレブンとのハーフ……)
「あら、その本私も読んでおりますわ、何度も読み返しています」ユーフェミアが嬉しそうに答える
キュピーン!!
(えっ?ユ、ユーフェミア様が読んでおられる……わ、私も読まなければ!!)
ニーナが興奮した目でユーフェミアを見つめたのであった
「シャーリーその本は?」カレンはその本のタイトルを覗き込む……
「銀色の風に吹かれて……」 それがその小説のタイトルだった
「カレン!知らないの!?今、このエリアの女子の間で流行なんだって!今度、生徒会でも「学園推薦図書」に推す予定なんだから!読んでみてよ!!」
シャーリーはそう言って、カレンに手渡す
カレンが本を開き、あらすじを読んだ
ピキッ!
カレンが何やら固まったようだ
ギギギギギギギギギ……
カレンは首をからくり人形の様に回し、顔をライに向けた
「ラーイ……面白いわよーこれ……」微笑みながら、何やら意味深な口調であった
(め、目が笑ってないんだけど……)カレンの態度にいやな予感を感じたライは
「か、会長!!自分はもう大丈夫であります!!生徒会の仕事どれくらい溜まってますか?さ、さあて、退院の手続きをしなくちゃ!!」
がしっ
カレンがライの肩を掴んだ
「駄目よう……ライ、しっかり休まなくちゃいけないわよお……」
ギリ……ギリギリ……
(い、痛いよお……カレン……)
カレンの輻射波動(←ただのアイアンクロー)がライの肩に食い込んでいた
逃げられないライはやむなく本を開くのだった……
「ぐ……こ、これって……」
小説の内容は、とある皇女の悲恋の物語であった
ヒロインの名前は、レフィーナ=リ=ブリタニア
そう、ライの初恋の女性の名前だった……
対する相手役の名前はライエル=スメラギ=フォン=ブリタニア
それは、自分の初恋が、このエリア中で読まれている事を意味していた
ライは冷や汗をかくのであった……
97 :
カズト:2009/02/06(金) 01:09:38 ID:+BZxqgDD
ライは腹を括るしかなかった
ふと考えた、自分は彼女の事を何も知らないんじゃないか?
ライは会った時の彼女しか知らない……
さらに、どう解釈すればいいのかわからないが、
ブリタニア史の教科書にも彼女の名前がなかった……
ライの中で、様々な思いを混在させたまま病室を舞台とした咲世子の朗読会が始まった
とにかく、咲世子の朗読術は只者ではなかった!
ナレーションはおろか、登場人物においては老若男女全ての微妙な個性を表現しており、病室にいた全ての人間が、咲世子の読む物語の世界観に引き込まれたのだった……
帝都の第五皇女レフィーナ=リ=ブリタニアは健やかに生まれ、花よ蝶よと育てられた
しかし、幼い頃から兄弟達の醜い争いを目の当たりにしており、毎日怯えて暮らしていた
ある日、彼女は暗殺者に殺されかける
それ以来、本を読み耽り、物語の世界に逃げ込むようになっていた……
そんな彼女の心の救いになったのが、ミコト=スメラギ……ライの母親であった
ミコトはレフィーナに、上に立つ者の責任……ノーブルオブリゲーションを諭すのだった
ある日、ミコトとの話の中で、ライエルという名前を聞く
驚くことに自分と同い年でありながら、自ら志願して戦場に出たという
幼い頃から、鍛錬に励み王位継承権と血のハンデに負けない強い息子だと聞いた
ライの名前は初陣により意外にも、帝都に知れ渡っていた
レフィーナはそんなライに恋心を抱くようになっていた
ライに恥じぬように、勉学や稽古に励み、彼女は変わった
ブリタニアと各国との騒乱が激化する最中、「狂王」と呼ばれているライの治める辺境視察に志願するのだった
町での出会いにおいて、アルベルト王の武勇、ミコトの聡明さと徳を兼ね備えたライに惹かれていく
そして、ライと接していく内に、彼の孤独を感じるのだった
いつしか心が通じ合い、月に照らされてた木の下でのキスシーン……
帝都への帰りの日、彼の宝物である小刀を贈られた
その日が今生の別れであり、小刀が形見の品となったのである
そして、この小説でのライは彼を快く思わない奸臣の陰謀で「殺される事」になる
隣国との決戦において、帝都の皇族に唆された謀臣が敵国の民への虐殺命令を出し、事件を収めようとしたライを後ろから刺したのであった、もっともこの謀臣も騒乱の最中、混乱の中で私刑に遭うこととなる……
ライの死亡が正式に発表されて、レフィーナは部屋に篭り嘆き悲しんだ
絶望して、命を絶とうとも考えたが、
ライを描いたスケッチブックが床に落ち、描きかけライの姿を見て死を思いとどまった
皇族にライを「鮮血の魔王」として貶める者がいるのを思い出す
彼女は決意する!!彼の名誉を少しでも回復しようと……
惨劇の舞台であるライの国の領主に志願し、復興するのだった!
さらに、レフィーナはそこで善政を行い民から尊敬される領主となった
しかし、その後、ライの国を治めるために心を疲弊させ……誰とも添い遂げることなく若くして亡くなった……
だが、彼女の思いは今もなお、その土地において貴族と民の教訓として息づいているのであった……
98 :
カズト:2009/02/06(金) 01:10:58 ID:+BZxqgDD
全てを読み終え、咲世子は息をついた……
オーーーー!!パチパチパチパチパチ!!!
いつの間にか、他の入院患者が集まっていた
「メイドさんすごいよ!!」「ブラボーーーー!」「う……うぐっ、ひっく……皇女様可愛そう……」「ブリタニアにも「優しい世界」があったのですね……」「メイドさん……あんた一体どこの劇団の人だい?」
「いえいえ……私はただのメイドです、これもメイドの嗜みでございますから……」
咲世子さんが堂々と答えていた
カレンがふとベッドの上を見ると、そこにライはいなかった
病室を出たカレンは迷うことなくそこへ向かい、そのドアを開ける……
誰もいない病院の屋上、そこにライはいた……
「う……うぐっ、ひっく……う……うううう……」屋上の柵にもたれ、うずくまって泣いていた
「やっぱり、ここにいたのね……」カレンがライの側によって一緒に座った
ライはその後の彼女の事を知らなかった……
いや、知るのが怖かった
自分を忘れて幸せになって欲しかったのに
惨劇を起こした本人が死んで、おしまい、めでたしめでたしと言う訳ではなかった
レフィーナ姫はライの国の復興と治世に尽力したという……
破壊の後には再生が来る、その再生にかかるエネルギーがどれだけ掛かるのかが想像できなかった
自分の罪業の後始末を彼女に押し付けたようなものだ……
確かに、遺跡で自分にギアスをかけた瞬間、彼女への恋心は断ち切った
だが、ライは彼女に対し改めて強い尊敬の念を抱く!
そして、ライは決して忘れる事はないだろう彼女の名を……
レフィーナ=リ=ブリタニア……それが自分の初恋であった事を……
今、自分はどれくらい涙を流しているのだろう……
カレンはライの思っていることが全てわかるのか、ただ側にいた……
涙を流しきって乾いた頃、ライの目により強い光が宿り、
そしてライは立ち上がる……
「……立ち止まってなんかいられない!自分も何かしなきゃいけない気がする!!
行こう、カレン!!退院手続きをしなくちゃ!!」
「ライ、そうね……行きましょう!!あたしもね、ライが退院したら、腕によりをかけて、おいしいご飯を作ろうと思っていたんだから!!」
そう言って屋内に戻ろうとしていた
99 :
カズト:2009/02/06(金) 01:12:06 ID:+BZxqgDD
ガチャ……
ドアが開いて、スザクとユーフェミアが屋上に出てきた
「あ……スザク、ユーフェミア副総督まで」
「どうしたんだい?急にいなくなって……」スザクが心配そうに尋ねた
「いや、単に風に当たりたくなってね……、スザク、お見舞いに来てくれてありがとう……
おかげで元気になったよ、それよりもユーフェミア副総督、わざわざ来ていただいて、こちらこそ感謝いたします、それよりも……何か他に用事があったのではないのですか?」
「……っ!」
ユーフェミアは見抜かれたのか、何かを深く考えているようだ……
「ライさんと言いましたね……メイドの方が読んでくれたお話、悲しいお話でしたが、心に染み入るいいお話でした……
ヒロインの方、あれは私の直系の先祖の妹君……言うなれば、私にとって、遠い叔母上様と言う事になります……」ユーフェミアは突然ライに言う
ライは思った、なぜそんな事を言うのだろう?まるで、ここにいるライというより……
「叔母上様は幸せだったはずです、愛する人をただ一途に思いながら、自分の人生を精一杯生きたのですから……少なくとも私はそう思います」
そう言って、ユーフェミアがライの側に寄って来た……そして、顔をライの耳に近づけて、
カレンとスザクに聞こえないように一言囁いた……
その言葉を聞いて、ライの顔が青ざめる!!
「な……なぜそれを知って……はっ……!」ライはあわてて自分の口を塞ぐ!!
「う、嘘……まさか、あなた、本当に……あの……」
自分で尋ねたはずのユーフェミアでさえ信じ難い事だったのだろう……彼女も血の気が引いていた……
「ライさん……いつでもいいですから、暇があれば、政庁に来てください……
行きますわよ、スザク……」
彼女の顔は既に、気さくなユフィではなく、公の顔であるユーフェミア副総督に戻っていた
「イエスユアハイネス……」何か、不可解な会話ではあったが、深く追求することなくスザクは屋内に入るユーフェミアに従い、彼女のあとを追うのであった……
ライは呆然と立っていた……
カレンはそんなライを見て、心配そうに尋ねる
「一体どうしたの、ライ……彼女に何を言われたの?」
「なんで……なんで知っているんだ!?」ライは息苦しそうに取り乱していた!
「ライ、落ち着いて!!一体何があったの?」
「カレン……彼女はさっき僕の事を間違いなくこう言ったんだ……」
「え……?」
「ライエル王って……」
100 :
カズト:2009/02/06(金) 01:12:46 ID:+BZxqgDD
ふう・・・・・
ようやく
ここまでたどり着きました
ライの過去編も苦労しましたが、書き応えありました
この事をきっかけにこれからのライに大きな成長を促させて頂きました
ミレイ シャーリー リヴァル の子芝居(中略)の部分は御想像にお任せいたします
咲世子さんは一つスキルを加えたところで、もう何でもありですな・・・・・・
ライの初恋も書かせていただきましたが
ライ×ユフィ ライ×ネリ 思いつかないのが残念です
次回でこのシリーズも最終回です
ではまた!!
>>100 カズト卿、乙でした!
何だこのショートコントwww
糸を引くほどのディープなキッス、いろんな意味で凄いなこの二人。
ユーフェミアが現れ、シャーリーが本を出す。
そして始まる咲世子さんの朗読会。
なんで違和感が無いんだろう? メイド万能説?
レフィーナはライの国を治め、若くして無くなった……うぅ、泣けんでぇ。
ユフィも知った真実、そして長いようであっという間、次回が最終回。
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
カズト卿、乙です。
・・・な、涙が止まらない。
屋上でのユフィの言葉、それを通して確かにレフィーナを感じました。
きっとそこにはレフィーナが居て、ライに想いと別れを告げたのだと思うと、尚更に涙が・・・
次回でついに最終回。
最後の投稿、全力をもってお待ちしております!!
104 :
テリー:2009/02/06(金) 21:13:35 ID:qv/OaKYH
どうもこんばんわ、誰もいない様なので投下の方行かせていただきます。
「明日の為に」
6レス位でしょうか
105 :
テリー:2009/02/06(金) 21:14:17 ID:qv/OaKYH
「明日の為に」
第九章2項
4月11日 13:24 沖縄本島那覇市
瓦礫だけの町並みを少しでも早く元に戻そうと撤去作業が進んでいた。
ルルーシュ達もKMFを使い手伝っているかいもありあっという間に
殆どがかたずいたがどの顔も元気はない。
「こんなに良い天気なのにバカンスといけないとはな」
「仕方ないノネット、こんな事になったんだから・・・・・」
「そうだが・・・・・」
「・・・・・っ!!」
アーニャが突然海の方を向きかたまった。
「どうした?アーニャ」
「・・・・・・来る」
「まさか・・・・アーニャ!」
頷いたアーニャはノネットと全速力で駆け出していった、何かに吸い寄せられるように。
那覇市政庁内 復興対策本部
「この場所は新しく公園にしよう」
「ではここのビルはどういたしましょう」
「町のここ、ここに建設しようと思うが」
「コーネリア殿下それはいささかどうかと思いますな。ここに建設すれば
町並みの“見栄え”が悪くなりましょう」
「ではジェレミアよ貴様はどこに置く?」
「は、私なら――――」
「失礼します!!!」
「姫様!!!!」
106 :
テリー:2009/02/06(金) 21:15:15 ID:qv/OaKYH
「どうしたギル・・・・・・・・まさか」
「はい!!」
「殿下!!!」
またここでも会議を放り投げ全員が駆け出す
ベースキャンプ KMF格納庫
「確かなのか・・・それは」
「はい!!間違いありません!!」
「・・・・C.C、ゆ、夢じゃないよね」
「当たり前だならその涙は偽物か?」
「違う!!」
「なら行くぞ!!」
ルルーシュ達のいる岬
「あいつは約束を守る男だ・・・・だが」
「こんなに大きな奇跡を起こすだなんて」
「大したもんだよ・・・・戦友!!」
「港に急ごう!!」
「よっしゃ!!」
13:28 ついにライの艦隊が沖縄に到着した
「艦長、長い道のりの様な気がします今回の戦いは」
「ああ、長かった・・・・だがその長い時間を我々は生きた」
「は、確かにそうですな」
「あの時はさすがに焦ったぞ、直撃を免れたのが奇跡だ」
「それも艦長が“奇跡の藤堂”とかつて呼ばれていたせいでしょうか?」
「いや、今回の奇跡はライ君が起こしたものだ」
107 :
テリー:2009/02/06(金) 21:16:14 ID:qv/OaKYH
「何を言います藤堂さん皆のおかげですよ」
「大丈夫ですか?頭は」
「心配いりません、天使がついて来てくれましたから」
「ライさん!天使だなんて、そ、そんな」
実は今回の海戦にはナナリーが治療科の一員として大和に乗艦していたのだ。
当然ルルーシュは知らないからこの後どんな事になるか安心している乗組員は
見物として楽しみにしているくらいだ。
ちなみにナナリーの戦闘服はナース服ですけど戦闘が終了した今はライ達と同じ
黒の軍服を着ている。
「それにしてもいつの間に医療技術を?」
「学園の高等部に進学した際、目と足を治した時に将来はお医者様になって
多くの命を救いたいと思いまして」
「KMFのパイロットを目ざしてたんじゃないの?」
「確かにそうだったんですけど・・・・その・・・・ナース服の方がライさんに
気にいってもらえると思いまして 」
最後の部分だけ小声だったためライには聞こえなかったが、他の方達には
ばっちり聞こえてるのだ
「モテモテだなうちの艦隊司令殿は」
「まったくです、それでいて鈍感なんだから困ります」
「ナナちゃん顔真っ赤よーーーーー」
「ちゃ、茶化さないでくださいミレイさん!!」
「ミレイ中佐、持ち場はいいのですか?」
「大丈夫です、部下に任せてきましたから」
「相変わらずと言うか何と言うか」
表の顔はお天気おねえさん、しかしその実態は特区防衛軍の情報部員!!
え、後からとって付けたんじゃないかって?皆さん、ミレイ嬢は何を
しでかすか解らない方ですぞ、この位のサプライズ?はありますです。
ちなみにナナリーは政務官兼医師で階級は准佐です。今はKMFの
パイロットになるべくカレン、アーニャの下で訓練中。あ、ルルーシュ
は知りませんけど。
「さて、そろそろ入港です」
「うん!皆が待ってるからな、早く元気な姿を見せないと」
「でもその頭の包帯はどうするんですか?」
「ちゃんと説明するさ、生きてるんだから大丈夫!」
「うん!!ライは笑顔が一番ね!!」
支援
109 :
テリー:2009/02/06(金) 21:17:18 ID:qv/OaKYH
あの時艦橋に直撃したKMFは実は衝突直前に弾け飛んだのだ。艦そのものに
ダメージは無かったものの衝撃は物凄くライは羅針盤に頭をぶつけてしまい
切ってしまったのだ。血を流しながらも戦闘終了まで医務室に行かず指揮を
とり続けた。
入港した艦隊を傷ついている島民は大歓声で出迎えた。ルルーシュ達も
その中に入って無事に到着した事を大いに喜んだ。ライは仲間達との
無事な再会をクールに喜びあう。
「よく生きていたなライ!!」
「ありがとうゼロ」
「良かった、本当に良かった!!」
「スザク泣きすぎだよ」
「そんな固い、お?あれナナリー皇女じゃないか?」
ドキッとなるのはライ本人である。公衆の面前であるため面と向かう事が
出来ないルルーシュはわなわな震えていた。
「な、なぜナナリー皇女様がこのような所に」
「それはゼロ、ナナリー様の志願です!」
「ミレイさん!?乗ってたんですか」
「ええ、飛び乗りだけどねぇーーーーー」
「ほーーーー、ナナリー様は度胸がお有りだなー」
「ありがとうございます、これもライさんの為ですから」
ピキッ!!
「あーーーらナナリー大胆ねーー」
「はい、どこかのエースさんとは違いますから」
「ほう、さすがはマリアンヌの娘だな。よく言う」
「いえいえそれほどでもありません、魔女ほどでは」
「ナナちゃん、ぬけがけは良くないわよーーーー」
「皆公平、それが一番」
「アーニャ、ミレイさん、人の事言えるのかしら?」
一触側圧の雰囲気にさしもの兵達もだじろぎ、これから始まる新しい
“戦い”を思い浮かべる皆さんでした。
110 :
テリー:2009/02/06(金) 21:18:13 ID:qv/OaKYH
それから数日して
東京ゲットー後地にある公園の屋台で四人の男がおでんと熱燗で
夜酒としゃれこんでいる姿があった。
「またこうして酒が飲めるなんてな」
「美味しいお酒だよ、今日のは特に」
「ああ、特別な酒だよ」
「3人共ありがとう、またこうして語り合える事が出来てよかった」
「問題はない」
「当たり前の事だろ?」
「また、出港するのかい?」
「うん、ナイトオブツーとしての役目もあるから」
「何時でも帰って来いよライ、俺は待ってるからな。ジノ、ライを頼むぞ」
「任せとけルルーシュ!しっかり面倒見るからよ!!」
「僕は子供じゃないよ!!」
「あははははははははは!」
今日もまたライは生きて行く、明日の為に、誰かの為に
しえん
112 :
テリー:2009/02/06(金) 21:22:51 ID:qv/OaKYH
以上であります、さて次回は各ヒロインとのカップによるエンディングと
なります。6人の予定ですので6にまたルートが分かれます、ぜひご覧を!
では失礼します。あと108の方支援ありがとうございます!!
>>112 テリー卿、乙でした。
ライは生きていたか、良かった良かった。
って、ナナリーも乗っていたのか……ミレイさんも!?
しかし、何だろう?
こう、イマイチすっきりしない、どこか違和感を感じてしまう……
……個人の好みの問題かな?
貴公の次の投下を全力で待っています!
乙でした
はっきり感想を書くと、焦りすぎ
会話文と比べて状況を説明する文が少ないのでこう感じました。
いまいち登場人物の気持ちも伝わらないので違和感を感じる人がいたのだと思います
続きも楽しみにしてます
またもや過疎ですか(涙
ああ、文才のない自分が憎い
ぴんぽんぱんぽーん!
「はじまるザマスよ」
「いくでガンス」
「フンガー」
ついに月曜日を迎えた深夜、みなさんいかがお過ごしでしょうか?(オイ
青い人です。一ヶ月とちょっとぶりにようやくやってまいりました
[手をとりあって]その3 お送りしま〜す
支援いたします
支援
■本日の注意書き■
コードギアス LOST COLORS [手をとりあって]その3 【シュナイゼル】
※オリジナル設定、オリジナルキャラ? 出てきます
※シュナイゼルの性格が本編と違う! と貴方を不快にさせる可能性があります 要注意です
※今回はあとがきナシの11レスです
では、よろしくおねがいしま〜す
支援
───2018,Jul,ヒューストン──新大陸
ダラスの研究所での仕事──いわゆる“私的”な“公務”というやつだ──を終えた後、私とシュナイゼル殿下は新大陸の南の玄関口ヒューストン市に足を休めていた。
一夜が明け、もうじき午前6時。私の起床時間としてはそう早いものでもない。
なぜならシュナイゼル殿下ならばすでに起きておられる時間だからだ。
殿下の朝は早い。早い起床と遅い就寝。別に上に立つ者であるからといってそのような生活態度を心掛けておられるわけではない。
ただただ殿下にとっての一日はとても短いから。理由はそれだけだ。
季節は夏。早朝の日はすでに高い。
亜熱帯に属するだけにこの地の暑さは厳しい。今日も気温は35℃を越えるらしい。
「あらいやだ。紫外線危険度も警報クラスになっているじゃない」
高温多湿のこの地では紫外線対策も苦労の種だった。外出は控えるべきでしょうねと思った時、私の静かでゆったりした時間を通信システムのコール音が引き裂いた。
・
・
・
「どうしたんだい、カノン。今日は君も公休日ではなかったかい?」
朝食はもう済ませたのだろう。給仕が殿下のカップに紅茶を注ぐ。香気が辺りに広がった。
「シュナイゼル殿下………」
我ながら情けない。発した声がかすれている。
その私の様子に只ならぬものを感じたのか、殿下はサッと手を振って給仕や近侍の者を下がらせる。
彼らが退室するのを待って、私はカラカラに乾いた口を開いた。
エリア11の行政特区日本においてテロと思われる爆破事件が発生
発生したのは特区の行政を司る政庁において
強力な爆薬を用いたものらしく、多数の死傷者が出た模様
特区の行政府はただちに事件の概要を世界に向けて発信。確定した死者・負傷者のリストを公開した
殿下は口を挟むことなく私の報告を聞いていた。待っていたのだ。最も重要な報告がなされるのを。
「そして………」
私は視線を逸らしてしまった。手元のプリントアウトされた報告書に目を落とす。
なんど見返しても、そこにある名前が消えることはない。そこにある名前が別のものに変わることはない。
「そして……、なんだい?」
殿下が口を挟んだ!?
それは驚くべきことであると思う。普段けっして他人の話を急がせることなどない方であるのに!
汗が頬を伝った。
どんな報告であれ、職務であればソレを口にすることを恨んだことなどはない。
だけど、
「この爆破テロによって………」
声が震えた。
「確認された死者は現在38名。この数は今後増えることはあっても減ることはない、とのことです」
シュナイゼル殿下の視線は真っ直ぐ私を捉えている。
「その確認された死者に……死者に…」
手にした報告書を握りしめる。このような報告をしなければならない不幸を私は恨んだ。
「ユーフェミア・リ・エアルドレッド伯爵夫人の名前があがっていた…そうです」
カチャン。
ティーカップが置かれた、小さな音を立てて。その微かな音が部屋中に響き渡った。
「そうか、ユフィが……」
すぐに私の方へ向きなおり、殿下は指示の言葉を発された。
「どうやら公休を楽しむという訳にはいかない事態になりそうだ。カノン、すぐにペンドラゴンへ向かう足を用意してくれ」
殿下の言葉はただそれだけだった。私は一礼し、御前を辞した。
報告を行う前。報告を行った後。
そのどれを取ってもシュナイゼル殿下の表情に、態度に、佇まいに変化はなかった。
ただ、扉を閉める際。微かな声を耳が拾った。
「殺したのか、ユフィまで………」
私は目を瞑った。何も聞かなかった、何も聞こえなかった。ただ静かに扉を閉めて私は……。
支援
半年前、行政特区日本が設立されてユーフェミア様が皇籍奉還特権を行使された際の皇都。
あの時の混乱ぶりは悲劇よりも喜劇に属する類のものであったと思う。
もっとも今だからこそ言えることだ。あまりの混乱の最中、私だってそうやって斜に構えて評することなどとてもできなかった。
それが終息に向かったのはあるまことしやかな噂話が人々の口の端に上るようになってからだ。
───この行政特区日本の構想はシュナイゼル宰相閣下とユーフェミア皇女殿下の計略である。なぜなら黒の騎士団を自称するテロリストはその戦力を失うこととなった。結果として無力化することに成功したではないか!
とにもかくにも特区に参加させたことで、エリア11最大の反抗組織が体制に組み込まれたという事実は事実。その噂をもっともなものとして人々が受け入れたのは不思議なことではない。
特区という構想に反感を持つ貴族は多い。だが、彼らは噂を信じることで『我らの計略にまんまとはまった愚かなナンバーズ』と納得し溜飲を下げることが出来たというわけだ。
殿下に噂に示されたようなお考えが全くなかったなどとは思わない。
行政特区構想は黒の騎士団を無力化する斬新な計略であったと言える。無論それはユーフェミア皇女殿下が意図したものではない、想定外の副産物のようなものだったのだろう。
その副産物を実施段階で殿下が気がつかず、意識しなかったはずはないのだ。
だけど私は見てしまっていた。
それは混乱がようやく収束しだした春先の4月。特区設立から3ヶ月目のこと。
その日、私は殿下の遅い夕食に陪席していた。
「カノン、私はね」
給仕が言うには食後酒には甘口のシェリーが良いらしかった。芳醇な香りを楽しみ、グラスを傾ける。
彼らを下がらせ、シュナイゼル殿下が珍しくご自身の方から口を開いた。そう、あれはユーフェミア様の話題が持ち上がった時だ。
「人々が平和を求めるのであれば、明日というものは不要だと思っていたのだよ」
明日が不要だと仰るその真意を測りかね、私は開きかけた口を閉じたが殿下は別に相槌を求めてはいらっしゃらない様子だった。
殿下にはそういうところがある。あるいは殿下に限らぬことなのかもしれない、意見を求めるわけではなく、ただ話を聞いていることを求めて口を開くということは。
「明日というものは不確かなものだ、実にね。明日は良い日になるかもしれないと信じてたくさんの者が暗闇の中、底知れぬ穴に落ちていく」
私が思うに……と断りをつけて殿下は例え話を持ち出した。
「パンドラの箱の寓話における最大の悲劇は最後に希望が残ったことにあるのだと思うんだ」
「希望が残ったことが悲劇なのですか?」
聞き返しはしたが、そういう考え方があるということは知っていた私だ。それはいつの世、誰にでもあるパラドックス。
「この希望というものがあることで、人はより良い明日があると期待し、不確かな未来へと行進していく。行く手にはより悪い明日に続いていることとてありえるのにね」
だから人々に、その未来に明日という概念は不要であると? 殿下は頭を振った。
長くない、かといって短くもない沈黙。殿下はグラスを傾ける。
だけどね、と殿下自身がその考えを否定してみせた。
そういえば殿下は最初に何と仰ったか。“思っていたのだよ”それは過去形ではないか。
「ユフィはね、カノン。彼女は本当に良い娘なんだ」
私はハっとするものを感じた。
善性の吸引力とでも言おうか、あの純真無垢なお姫様そのものといったユーフェミア・リ・ブリタニア───皇籍奉還した現在は母君の旧姓であるエアルドレッド性を名乗られている──はそうとでも形容するしかない“何か”を持っていた。
人々を惹きつけ、従わせる…魅力? 一言で説明がかなうものではない。私はため息をついた。やはり“何か”としか言い様がない。
だがそれはいい。彼女の本質について多くを知らない私であっても、その彼女を──妹姫を殿下が愛しておられることがわかったのだから。
支援!
それは信じがたいことであった。
この世界の一切のものに執着を示さない、自分自身──御身にさえ執着の薄いシュナイゼル殿下がユーフェミア様に対してお優しい目をされておられる…。
新鮮な驚きだった。それと同時にやはりとも思ったのだけど。
つまりは、それがユーフェミア様という人物の“何か”としか形容しようがない“力”なのだ。
「彼女は本当に良い娘なんだ」
その日、それ以上殿下がユーフェミア様について語ることはなかった。
なかったのだけれど、総てはソレが物語っていたのだ。
仮面の下に垣間見えた殿下の素顔によって。殿下は必ずしも政略の面から…それのみでユーフェミア様の案を是としたのではなかったのだ。
不確かな“明日”ではなく、今のままの“今日”を維持することが人々に平和を与えることになるはずだと仰った殿下。
ユーフェミア様のお考え、「明日を良い日にするためのきっかけを、第一歩を」というそれとは相反するお考え。
だけど殿下はそれをお認めになり、為しとげるための助力を躊躇わなかった。
それは、他者が噂話にささやく計略などではなく、打算が産んだ利用などでもなく…。
たった一度。たった一度だけ殿下が持たれた“希望”。
殿下にとって最初で最後の不確かな“明日”への期待だったのではなかったか………。
コードギアス LOST COLORS [手をとりあって]その3 【シュナイゼル】
頭のどこかに霞のようなもやもやがかかっている。
「陛下は誰ともお会いされない、拝謁は許可されないと…そうご指示なされたわけなのだね」
「そのように申し上げました。皇帝陛下にあらせられましてはセントダーウィンの離宮にてご静養中にて」
ベアトリスはそのように私の要求をあっさりと退けた。無論多少面白くはない。
彼女は──誰に対してもそうなのだが──感情を失ったかのような無機質な表情で私に正面から対峙していた。
二人の間の距離……間にある大きなデスクの存在がこの際ありがたいなと思う。私がその様に感じる女性というのはそう多くはないのだけど。
それにしても、またセントダーウィンの離宮で静養…か。ここ数年、あの場所で過ごす時間が増えたと感じるのは気のせいではないだろう。
セントダーウィン。皇族のみが立ち入ることを許される保養地。他に何があるわけでもない土地。
なのに何かが引っかかるのはなぜだろう。そこで静養しているというだけの話。その説明には別に不審を抱くような点などないのに。
「しかし皇帝陛下のご裁可が必要な案件が18件もあるのです」
カノンがせめてもの抵抗を行う。舐められてたまるかとばかりに食い下がる。が、私には彼女の返事がわかりすぎるほどわかっていた。
「陛下のお言葉を重ねて申し上げます。些事全般はシュナイゼル閣下に任す。陛下はその様に伝えよ、と」
話はそれで終わったとばかりにベアトリスは着席した。憤るカノンを私は抑える。
「時に」
ベアトリスがもう一度その顔を上げた。
「エリア11において発生したテロに関して、それは陛下の耳に届いておられるのかな?」
「属領において発生した多くの事件のその中のたった一つ、それをあえてお知らせし、御近侍をお騒がせする必要がありましょうか」
ベアトリスの即答を私はそのままに受け止めた。首席秘書官たる彼女の言はそのまま皇帝の言であると受け止めた。
話はそれで全て。元より彼女から──“彼”から何を引き出そうというものでもなかったのだから。
私はカノンを伴い退室した。
もやもやは、晴れない。
・
・
・
ベアトリスがそうであった様に、帝都の混乱も大したものではなかったなどということはなかった。
ユフィは国民に強い影響力を持ち始めていたからだ。
大したものでないどころか、混乱は時間と共にその大きさを増していっている。これは不味い。
「どうしたものかな」
「どうもこうもありませんわ。とりつくしまもありはしません」
カノンはまだ熱が冷めていないようだった。
支援
支援
怒っても仕方がないことだと思いもするけど、彼の場合は私の分まで怒ってくれているのだから悪い気など起きようがなかった。
「まぁいいさ。確かに些事さ。帝国にとっては……“彼”にとっては関心を持つ必要もない出来事なのだよ」
カノンのキツイ目が今度は私に向けられた。ふむ、どうやら失言だったようだ。
「殿下、ここは皇都で、皇宮で、必ずしも気の抜けない場所なのですから…!」
私の側に寄って、小声でささやく。
「ましてここは特務総監ベアトリス・ファランクスの腹の中なのだから、だろう?」
わかっておられるのならそれなりの警戒心というものをですね、などと小言をつらねるカノン。
おやおやいけない、矛先が自分の方へと巡ってきてしまったな。私は肩をすくめてみせた。
エリア11での事件を皇帝は重要視していない。もしかして知ってすらいない?
さすがにそうは思わないが、何のアクションも見せていないということは………そういうことなのだろう。
確かにベアトリスが言うようにたかが属領──殖民エリアで起こった多くの事件の内のたった一つの事柄だ。それは間違いない。
しかし不味い。
命を落としたユフィは元とはいえ皇族なのだ、国民の人気も高い。まして現在の世界に強く影響を与える存在の一人となった人物だ。その力は日を追うごとに強くなっていっていた。
行政特区日本の存在が、その意義が、ブリタニアのみならず多くの世界に影響を与えてはじめていたのだ。
ブリタニアの中に生まれたブリタニアではないという可能性。
中華連邦では各自治州で、EUではその勢力に組み込まれた小国家群で、それぞれ民族自決運動がその機運を増しているという。
その中心にあるのはユフィの理念。世界中が注視していたユフィの理想。
それがテロによって泡となって消えた。舵取り役を失った理念が今後どう変質していくのか…、それは容易に予測できるものではない。
これが些事と言って片付けられるほど小さな事柄だろうか。
いや、彼にとってはそうなのだろう。
今日と言う日に興味など持たない、過去という蜃気楼の中に遊ぶ“彼”には。
私は軽く視線を横に振った。
皇宮の回廊は明るい。夏の日差しにしては柔らかな暖かさが投げかけられている。左手の庭園からは花の香気が漂ってくる。
ここは別世界だ。隔絶された世界。痛みを知ることのない世界。
「矛盾だ…」
この国には矛盾しているのに矛盾ではないという現実がままにある。
私の小さくつぶやいた言葉はカノンの耳にも届かなかったようだった。
その時、おやと思った。庭園をはさんだ向こう側に視線を感じたのだ。奥からこちらを窺がっているのは…。
「外務次官のオブライエン公爵のようです」
彼は不意に顔を引き、右手で襟首を弄る。内密の話がある…そういう合図だ。
「それにしても彼の顔を見るのも久しぶりのような気がするね」
呆れたような顔をカノンが私に向ける。
「オブライエン閣下に対EU戦略の陣頭指揮をお任せになったのは殿下ではないですか」
もちろん忘れていたわけではない。それによって彼がおよそ半年に渡って国の内外を飛び回り、帝都にあっては帰宅も叶わず外務省の執務室に寝泊りしているということも含めて。
「何か話があるのだろうね」
「それも内密に」
「良い話だとよいのだけどね」
「殿下にとっては良いお話よりも、退屈を紛らわせられるお話の方がよろしいのでしょうけど」
カノンの言葉に私は苦笑した。確かにそういう一報の方が私にとっては願ったりなのだけどと言うのは本心だ。
そして足早に立ち去る彼の横顔を見るに、根拠のない甘い予測よりはカノンの予測の方が近いものなのではと感じ取れた。
私は再び歩き始めた。あくまでゆっくり。後にカノンが続く。カツンカツンと響く足音が小気味良い。
EUの件で進展があったかのか、それとも変事が起きたかな。あるいはその両方か。
無論、私のそのような予感は大体において的中するのだ。
・
・
・
「ぶしつけなお呼び立てなど失礼致しました」
部屋に入ってきたオブライエンは開口一番そんなことを言って深々と一礼したものだった。
カノンがどうぞお楽にと椅子を勧める。私もかまわないから座るようにと促した。律儀な男なのだ。
支援!
支援
「初めて使う部屋ですが、防諜は?」
「窓は耐熱真空二重強化ガラス、レーザー盗聴にも万全の備えですわ。もちろん壁もご同様。盗撮も不可能です」
ふうっと溜息をついて彼はようやく着席した。
「なにせ外務省もほとんどは皇帝親政派ですから。外務尚書からしてガチガチの保守本流でありますし」
「そんな中シュナイゼル殿下にご協力いただけるオブライエン閣下には感謝の言葉もありませんわ」
「恐縮です」
さて、とオブライエンは懐から紙の束を取り出してデスクの上に広げた。手書きの物が10枚。
「もっともこれらにしたところで、今回エリア11で発生したテロが及ぼす影響によっては再度分析の必要性が発生し得るのですが……」
そうつぶやきながら一枚々々を順に、やや神経質気味に私に示していく。
その用心深さがこの男をこちらに引き込んだ理由だった。
PCは何処からモニターされているか知れたものではない、ファイルは削除したとて復元されるかもしれない。
だから決して肌身離すことのないメモにだけ手書きだけですます。万が一の際には簡単に処理できる水溶性のメモ。処分も全て己の手で直に行う。決して誰も何も信用しないその臆病さ。
私は高く評価しているのだ。
強い人間は評価に値しない。臆病な……弱い人間こそ使うに値する。
アドリアン・オブライエンは実に評価に値する人物だった。その能力についてはもちろん、使い勝手という意味でも。
「まずはこれです。EUが再び強硬論に傾き始めています。こちらは鉄鋼と電子機器の流通をまとめたもの…一月前のEU総会の前後から緩やかに取引が活性化しています」
すでにご存知のことかと思いますが、と彼は付け加えた。
およそ3年にわたって懐柔工作を行い、イタリアにフランス、それにかつてのブリタニア──イングランドに至ってはほぼ親ブリタニアに引き込めた。
そのはずだったのだけど、ここしばらく状況が不安定になっている。
もちろん把握はしていた。そういうケースももちろん想定はしていたけれど。
「各市場に動きが見られるようになるのはもう少し先の話になるでしょう、中華連邦に豪州の市場も動き始めています」
「つまり軍備拡張の準備段階に入っていると?」
「おそらくすでに準備段階は終了しているでしょう。鉄鋼に関してはチタンにモリブデンが多いですな。間違いなく軍需とは思いますが、専門的な分析までは手がまわりませんでした」
そう言って額の汗をぬぐう。
「先日お引き合わせするとお約束をした男などでしたら流通を分析するだけで目的から何から割り出せるのですが……」
「君が推すのだから有能な人材だというのは疑っていないよ。財務省の人間だと言っていたね」
「はい、以前省庁間交流の一環で軍務省の兵站局に派遣されたこともあり、軍需にも明るいのです。国外に出張中でして。………で、これらの物資の行き先ですが、はっきりいたしません」
おそらくはドイツではないかなと私は思った。EU内部でもっとも反ブリタニアを主張する国。
「私見ですが、おそらくはドイツだと考えております。最近ワイマール体制の改定を主張した保守右派が政権を奪取しましたし……それに」
それに?とカノンが途絶えたオブライエンの話を促す。
「中華連邦領インド軍区のエージェントがEUの……というよりドイツそのものですな、そちらの軍高官と接触を繰り返しているという確かな報告がありましたから」
ドイツとインド。それはまたよくわからない組み合わせだった。カノンもそれは確かな話なのかと疑問を呈する
これまで全く接点のなかった二国だ。降って沸いたように突然交流が始まるほど国家間の関係などというものは単純なものではない。
どういうことなのだろう? 初めて胸の中に何かが湧き上がった。
自分の知らないところで何かが勝手に動いている…そう、不快感。勝手に動かされているという不愉快さ。
オブライエンが再び口を動かした。
「ゼロ」
カノンの顔が不快感に歪む。
「またその名前ですか」
「意外だとは思われますまい。九州戦役の前後に黒の騎士団が中華連邦の革新派勢力と接触していた件に関係するのですが、ゼロはその際に築いたコネクションを特区成立後も利用していた模様です」
「利用とは?」
「おそらくはエリア11───日本の国際社会での地位確立。今後再び独立の機運が高まった時のための布石でしょう」
支援
支援
つまり、だ。
「その過程においてゼロはEUとのつながりを求めたというわけだね。その際にインドや中華連邦の革新勢力とドイツの間を取り持った」
おそらくは…と言って彼は私の言葉を肯定した。
「閣下の予測通りゼロも特区日本が成立して全て良しなどと楽観はしていなかったということです。むしろその後のことを想定した長期戦略を進めていたと考えるべきでしょう」
オブライエンの言葉にハッとするものを感じる。そう、ゼロはブリタニアに膝を屈してなどいない、ただ深く静かに潜行することを選択しただけなのだ。
ふうむ。私は背もたれに体をあずけて一息をついた。
またしてもゼロ、だ。興味深い人物だった。
自らを正義の味方と称し、ブリタニアに反旗を翻した人物。
ユフィの行政特区参加の申し出をすんなり受けたときは少し失望したものだったけど、それでも面白い人物であることに変化はなかった。
だけど。
「軍部からの情報ではインドが黒の騎士団に技術供与を行っていたといいますし、ドイツも同じようにインドからの技術提供を求めたといったところでしょうか」
オブライエンの話は続く。だけど私の興味は次第に彼の語るEUの不穏から離れていっていた。
ゼロ。ゼロ。ゼロ。ゼロ。ゼロ。
君というやつはまったく。君がいるエリア11……そういう呼び方は失礼かな? ニッポンと呼ぶべきだろうか? 君はそこで何をしている?
ユフィが殺された時、君は何をしていた? 何をしたのだ? むしろ何故ユフィを殺したのかと聞くべきだろうか?
それにしても、
「奇妙な縁だね。私の行く先々で彼は何かと絡んでくる。むしろ逆かな? 私が彼の行く先々に絡んでいると。運命的なものを感じるじゃないか」
カノンはにこりともしなかった。
「面白くない話ですわ、反ブリタニアの旗頭でもあるドイツに中華連邦の革新派。それらがゼロを中心につながっているというのは」
オブライエンの方へ視線を向ける。
「ゼロとの接点を務めたドイツの軍高官、中華連邦の革新派の人物。特定はできているのですか?」
彼は初めて不明瞭な言葉を発した。
「……ドイツ側の人物に関してはまだ絞り込めておりません、ただ先頃空軍の戦闘機隊総監に着任したアーデルハイド・ガランドか国防軍中将のルーデルなどが怪しいところかと」
どちらも若くして──そのうえ女性だ──栄達した軍人。人気、地位、能力…言う事のない人材に思える。
目利きは自分だけではないということか。
カノンはそれにはあまり注視すべき点を見出さなかったようだ。不確定な情報には意味はないということなのだろう。彼らしい。
「もう一方に関してはいかがなのです?」
今度はオブライエンも即答した
「現在は中華連邦ブリタニア総領事駐在武官の任にある、黎星刻という男です」
・
・
・
クッと喉を湿らす程度に紅茶に口をつける。
透明なさっぱりとした風味が広がる。だけど香気は私の気分を晴れやかにはしなかった。
問題はやはりゼロに帰結するのだろうか? EUの不穏、中華連邦の革新派勢力の水面下の動き。それらの中心にはゼロがいる。
そしてユフィの命を奪った爆弾テロ。
「ですからお兄様からも言ってやってくださいませ、淑女が目を通すようなものではありませんのよ」
考えてみればEUの不穏、あれは行政特区日本での変事と連動するものだったのではないか?
ゼロは反ブリタニアの外国勢力と何かしらの密約を交わしていた? そのためのテロ? ユフィは生贄の羊にされたのか?
だが弱い。
「ギネヴィア姉さまも一度読んで見たらいいのよ。庶民の娯楽にしてはありえないくらい面白いンですから」
動機としては弱すぎる。第一として反ブリタニアで密約を交わしたとして、己の膝元でテロを行う必要があるのか? 何の必要があってユフィを殺さなければならない。
理由などないのか? 侵略を受けた日本のブリタニアへの報復、復讐。だがイレブンの民衆にとってもユーフェミアは人気が高かった。そこに動機があるとは思えない。
もちろん特区への参加に反対し、強硬に反ブリタニアを主張する反抗組織はまだ存在する。しかし、これほどのテロを実行できる組織であるかと言えば答えは否、だ。
「まぁまぁ二人とも。ギネヴィアもいいじゃないか。熱中することがあるというのは良いことだよ。そうだろう? シュナイゼル」
支援
不意に話を振られる。何の話だったかな……そう、カリーヌが小説…探偵小説だとかに凝り始めたとかいう話だった。
高尚なものではない、テレビドラマの脚本をそのまま活字にしたような下世話なサスペンス物だとかで、ギネヴィアがはしたないと口を挟んだのだ。
「そうですね……何であれ活字に触れるのは良いことだと思いますよ」
無難な返事だけでもしておこうとオデュッセウスに視線を向ける。彼はまだ私に視線をとどめていた。
「やはり気分が優れないのかい?」
正直言ってこの男にはあまり関心がない。優柔不断で難しいことなど考えることができない凡庸な男。何が出来るわけでもない人物。で、あるのにそのくせ彼は───いい人なのだ。
「君にはすまないと思っているんだよ。わたしが出来ないことを全て押し付けてしまって……。今度もエリア…11だったかな? ユーフェミアのことで大変な思いをさせてしまっている」
だから気を使ってアフタヌーンティーにご招待いただいたというわけなのですね。
渡りに船ではあったのですよ、兄上。皇都では派手に大体的に動き回るというわけにはいかないのですから。
ベアトリスに腹を探られても困るし、かといって何もしないでボーッとしていられるほど呑気な性格でもない。
『兄上のようには、ね』
とそっとつぶやく。もちろん仮面の下で。
だから貴方のお誘いはカモフラージュのため、そして時間潰しにちょうどよかったのです。
会話の相手を適当にこなしながらでも思索にふけることはできるのだから。
「本当に………、何だってこんなことになってしまったんだろうね。ユーフェミアはまだ17だったのに」
「愚かなナンバーズのやることですわお兄様。欲望のままに走る蛮人の所業です。彼らに理性などありはしないのでしょうから、何故などと考えることからして無益なのですわ」
表情を暗くするオデュッセウスにギネヴィアが声をかける。それは慰めで言っているのだろうか?
言っているのだ。深い考察などない。自分たちとそれ以外。ブリタニアとそれ以外。そういう見下した視点しか彼ら、彼女らにはない。
「え〜、そんなのってありえないわよ〜。論理的思考じゃないわ」
一瞬誰が、何で、どういう意味で発した言葉なのか理解できなかった。
部屋にいるのは私に、オデュッセウス、ギネヴィア、そして給仕が何人かと………カリーヌのそれだけ。
オデュッセウスもギネヴィアも目を丸くしてその言葉の意味を図りかねているようだった。
私もだ。第一“論理的”とか“思考”などといった言葉に一番縁遠そうなのが彼女、妹のカリーヌではないかと。
カリーヌは一同の注目が自分に集まったことに満足そうに鼻を鳴らすと、得意げにしゃべりだした。
「姉さまも兄様方も勘違いしているのよね、事件というのは結果。結果には過程と起点というものがあるものなのよ」
「それはどういうことだい、カリーヌ?」
なお得意気にカリーヌはオデュッセウスに答える。
「理由のない犯罪などありえないということよ。この謎、カリーヌが証明完了してみせるんだから!」
フ……と思わず失笑がこぼれた。これは傑作だと思ったら、自制する間もなくこぼれてしまっていた。
「あ〜、シュナイゼル兄様ったら笑ったわね?! ありえな〜い!!」
「カリーヌ、あなたその探偵小説とかいうものの読みすぎなのではなくて?」
呆れたように窘めるギネヴィアに私は笑いながら「よろしいではないですか」と告げた。
「聞いてみたいなカリーヌ。名探偵の知恵を私に貸してくれないだろうか」
バカバカしくはあるが、退屈はしのげそうだった。
機嫌はすぐに治ったようだ。カリーヌは席を立ち、テーブルの周りをゆっくりと歩き出す。
支援!
「まずありえないのよね。ぶっちゃけこの事件で殺されたのは、ユーフェミアではないのよっ!」
ほう、それはまたまた。
「そうなのかい? ユーフェミアが生きてるってことなのかい?」
オデュッセウスが素っ頓狂な声をあげる。そんなわけないだろう。
私は心の中で溜息をついた。
エリア11総督府からも、派遣されている諜報員、民間その他ありとあらゆる情報網のその全てがユーフェミアの死を確認したと発信しているというのに。
ずいぶんとステキな妄想だね、カリーヌ。そう思った時、得意そうにカリーヌは人差し指を立てて左右に振って見せた。
「そうじゃないのよ、オデュッセウス兄様。ちょっとだけ考えてみればわかることよ」
席についている私たちを順に見回し、芝居がかった口調でカリーヌは身振り手振り話し始める。
ようはこういう事だ。
ユーフェミアは行政特区の発案者であり、ナンバーズのイレブンにとってはその権利を庇護する立場にいる人間だ。
ユーフェミアはナンバーズのイレブンに肩入れをしていて、大多数のイレブンからの支持を確立している。
ユーフェミアは皇籍を放棄し、現在は伯爵位を有するとはいえ一私人である。国家としてのブリタニアを代表していない。
ユーフェミアはその立場をエリア11総督府が保障すると同時に黒の騎士団のゼロをはじめとするイレブンの団体も保障している。
ユーフェミアは立場的に行政特区の首長ということになっていて、それを運用する人々にとってリーダーである。偉いということだ。
ユーフェミアは庶民受けが良い。事実エリア11に限らず人気があるようだ。
ユーフェミアは………とりあえず若い女の子で見た目がいい。
最後あたりはどうでもいい気がするが、要点はわかった。
「つまり、彼女にはイレブンから害される理由がなかったと。そう言いたいわけだね?」
「そうそう! それが言いたかったわけ!!」
そんなことは言われるまでもなくわかっていたことなのだけど。
「イレブンがユーフェミアに──ブリタニアに怨みをもっていたとしても、その彼らを代表するゼロとかいうテロリストが彼女を支持している以上、手を下す理由がないんじゃないかしら」
「それほど簡単な話ではないのではなくて?」
「カリーヌの推理はなるほどとは思うけど、政治が関わる話はそう単純なものではないんじゃないかな? どうだろうシュナイゼル?」
いいえ、とカリーヌはさらにさらに得意気に目を輝かせる。
「これは非常に単純で簡単な話なのよ!」
私は今度は失笑を自制することができた。彼女は何をもって簡単だなどと言うのだろう。
「だって、ユーフェミアが死んだところでイレブンには何の利益も発生しないんですもの!!」
オデュッセウスとギネヴィアがはぁとかほうとかへぇとか気のない返事をしていた。
「いいこと? 犯罪というのはね、一部例外を除いて必ずそこには目的と結果に利益というものが存在するの!」
それが存在しない以上、この事件はイレブンが手を下した犯罪ではないということ。それがカリーヌの言う推理というわけだ。
「では誰がテロを行ったというのかしら。中華連邦? EU? それともまだ他にそんな事を実行できる者がいるの? 結局ユーフェミアを害した犯人は何者だってことになるの?」
「それはわからないけど………でもでも! はっきりしていることはあるのよ!!」
一瞬トーンダウンしたカリーヌがもう一度声を張り上げる。
「それは、狙われたのはユーフェミアじゃないってことっ! 間違いないンだからねっ!」
・
・
・
支援
支援
風が強い。
オデュッセウスの私邸を出た私をまず迎えたのは強い風、そして夏らしい強い日差し。もう5時をまわっているというのに日はまだ高い。
「どうなさったのですか殿下」
部屋を静かに出て、そしてホールを早足で通り抜け、玄関を飛び出した私にカノンが追いついて不審気に問いかける。
「カノン、宰相府に戻ろう。なるべくゆっくりと、できるだけ急いで」
車に乗り込み、続くカノンにそう告げる。自分でも気分が高揚しているのがわかった。
常にないことだ。まさかなと自分でも不思議に感じる。でも確かに胸に感じる。
「まず調べて欲しいことがあるんだ。テロ当日のユフィの動向。その際に同行していた人間のリスト、それから最新の犠牲者のリストだ」
「了解いたしました」
カノンは何も聞かずにさっそく作業を始める。
愛用の端末をリズミカルに叩き始めた。
─── 狙われたのはユーフェミアじゃないってことっ! ───
なるほど、まさかカリーヌなどに指摘されることになるとは、指摘されてようやく気が付いたなどとは………屈辱というのではないが、いささか自分自身に失笑を禁じえなかった。
凶行の現場となった行政特区日本に命を失ったのはユフィ、当然のように狙われたのはユフィだと思い込んでしまった。
そう、思い込んでしまったのだ。
なぜ狙われたのがユフィだと断言できる? 事前に予告があったわけではない、犯行声明が出たわけでもない。そう、彼女が狙われて、彼女が殺されたわけではない可能性だってあるのだ。
そんな当たり前のことにも気付かないでいた……自分で思っているほど冷静ではなかったということか、私は。
彼女の言うとおりなのだ。この事件によって一番の利益を得るのは誰か? それは少なくとも彼らイレブンではない。ゼロでもない。
「ところで………殿下、そのままお聞きくださいますか」
モニターから目を離さずにカノンが言う。
「エリア11総督府に潜入させていた諜報員からの報告がつい先程。あまり良い話とは思えない内容ですが」
「むしろ望むところだよ。聞こうか」
「…………」
ほんの一瞬ためらいを見せてカノンはなおキーボードを叩く速度を速めながら彼は報告を始める。
「テロが発生する三日前に身分を秘匿した一団が22名エリア11に潜入していたとのことです───身元や所属の照会に手間取ったそうですが、確認が取れたため報告を上げたそうです」
「うん、それで?」
「内19名が機密情報局所属。残り3名は帝国国教会の聖職者であるとのことです」
これはまた予想の斜め上とはよく言ったものだ!
「……機密情報局の軍人というのならばそうは驚きもないけど、教会の黒服がとは恐れ入ったね。想像もしなかったよ、いや………」
「そうです。今回の事件が例の[CODE−R]、国教会が絡んでいたという可能性も考えられるのでは?」
帝国国教会、遠い昔ローマ教皇庁から分派したブリタニアの教会、ブリタニア人の信仰の中心。
エリア11で拾ったバトレーと研究員たちによってクロヴィスが関わっていた“研究”についてはいくらかの解明もできていた。
[CODE−R]不老不死の魔女、そして超常の力。それらとある種の──まったくもって漠然としていて、確証などはないのだが──つながりを持つという帝国国教会。
バトレーによれば、エリア11にはそれらを解明する…あるいは手に入れるための“鍵”があるらしい。で、あれば教会の人間が潜入に同行するという話にも説得力が生まれる。
「そういえば国教会といえば先ごろ検察と使途不明金の指摘でずいぶんと揉めていたようだったけど」
「オブライエン閣下が仰ってましたね。国教会の財務に関する特査チームを立ち上げたのが財務省に勤める御友人だとか」
まぁそれは関係あるまい。
だけど行政特区で事件が発生する直前に“神聖皇帝直属”の機関の人間が秘密裏に潜入していたことは看過できない事実だ。
─── では誰がテロを行ったというのかしら ───
うっすらともやもやが晴れてきたような気がした。これだけ情報が集まれば真実の証明はたやすいと信じられる。
『もし予測の通りの事実が発覚したら?』
仮面の下で自問する。
支援!
支援
どうもしはしない。その事実を確認し、受け入れる、だけだ。
『受け入れてどうする? 受け入れたところで何も行動しないのであれば意味などない。それは目を瞑り、耳を塞ぎ、口を噤む幼児の振る舞いだ』
幼児、か。
『幼児だ。母御を奪われて、ただ泣くばかりで何もできない、何もしない幼児と同じ』
違う。
『違わない』
違う。
『何も違わない』
違う。
『何一つ違わない』
違う、はずだ。
「殿下?」
ハッとした。視線が泳ぐ。カノンがいつになく怪訝な表情で私をとらえていた。
「ご気分が優れないのですか?」
いや、とそれは否定し、私は窓の外に視線を向けた。
嫌なことを思い出したものだった。普通ならば舌打ちでもしようものだけど。
宰相府はまではあと10数分といったところだろう。もう一度深く思考の世界に入ろうとして……できなかった。時計を見る、手元を見る、もう一度車窓から外を見る。
「殿下」
カノンの声が再びもやもやし出した思考から私を助け出してくれた。
「確認がとれました。事件当日、ユーフェミア様のスケジュールには急な時間変更が起きています」
やはりそうか。
「事件の際に出席されていた会議ですが、本来は18時ではなく20時開始だった模様です。この時、ユーフェミア様は視察のため行政特区を離れていたようですが…」
「急な変更ではあっても間に合わせるべく無理をして、結果18時に間に合わせた……そういうことなのだね」
「そのようです」
大した名探偵だ、カリーヌ。彼女の推理の通りに狙われたのはユフィではなかった? これが間違いないのならば、首謀者はむしろユフィを巻き込まないよう会議開始の時間を工作したとも考えられる。
では、やはりこの事件を策定し実行したのは………。
ゼロに謝らなければならないかもしれないな。狙われた対象と真っ先に疑うとしたらまずは君だろうに。犯人が我が帝国であるならば。
しかし、私はあえてそれ以外の可能性を調査する。
それにしても、ユフィを殺したのが君ではなく、イレブンですらなく、身内だったのだとしたら。それはもう笑うほかない。
「最新の被害者のリストは更新されていません。殆どは行政特区政庁の職員や関係者のようですが………ただ、一人該当の可能性のある名前がありました」
「それは?」
「ブリタニア人のジョナサン・ポールマン。本国から特に派遣されていた財務省の官僚です………ユーフェミア様の実務補佐に派遣されたとありますが」
財務省の官僚か。何かに関わりがあるのだろうか? それともまだ他に何かがあるのか?
その彼に関する何か特別な情報は? そう言いかけたときだった。
車がキッと音を立てて停車する。
宰相府までもうしばらくの辺りだった。
「どうしたの? なぜ車を止めるの!」
横付けに別の車が止まる。間髪入れず降りてくる男。見覚えがあった。宰相府の人間たち、忠実なエージェントだった。
「フーバーにロッシ? 貴方………」
フーバーが車外で辺りを見回す、ロッシが車の中に滑り込んできた。
「閣下、緊急事態です。エリア11において、コーネリア殿下が行政特区日本に向け軍を動かしました」
!!!
考えられないことではなかった。
誰よりもユフィを愛していた彼女ならば、激情にかられて最終手段をとるのではないかと。
支援
支援
「コーネリア殿下はダールトン将軍を主将に旅団規模の部隊を派遣なされた模様です。混乱する特区周辺区域の治安維持を名目にしているようですが………」
アンドレアス・ダールトン、なかなかに有能な男と聞いていたけど、コーネリアを抑えることは出来なかったと見える。
だが、予測の範囲内だ。対処法は緊急措置を含めて32通りのプランが用意してある。忠実なロッシやフーバーが泡を食って駆けつけるまでの緊急事態ではないと思った。
だけど。
いつかカノンが言っていた。
──私としては殿下のご趣味に合わせているつもりですわ──
気になる事柄、重要な事案の報告はいつも最後に口にする。ケーキの苺はいつも最後、楽しみは必ず最後までとっておく。
人と人というのは互いに影響しあうものだと言う。
ロッシもフーバーも、カノンも…私もだろうか? きっと影響しあっているのだろう。
だから。
ロッシも一番大切なことを口にしたのは最後だった。
「より深刻なのはこちらの緊急連絡かもしれません。ダラスの研究所が査察を受けました」
カノンの顔色がサッと変わる。
なるほど。
「査察………受けたのはバトレーたちのいるゼネラルマトリクスの研究所なのだね? 検察ではあるまい。軍?」
「はい。軍務省から派遣された憲兵部隊との事です。8492憲兵中隊。しかし……」
血の気を失ったその顔で私は全てを悟った。
「そのような部隊はどこにも存在しない。少なくともそのような符丁の部隊は公式には、存在しない」
「?!」
先回りして答えた私にロッシもカノンも驚きの表情を隠せない。
なぜそれを?! 言葉に表れていなくともそれくらいは理解できる。
そうだろうとも。だけど、君たちだとて知っているはずだ。
この国には、矛盾しているのに、矛盾していない。そのようなことが、ままに起こるのだ、と。
「し、しかし、令状、命令書、それら全ては正規のものであったと、正当なものであったとの連絡でありました。存在しないはずの部隊であるのに正当であるのです。矛盾しているのです!」
ロッシの表情はもはや蒼白を越えて今にも失神でもしかねない壮絶な色になっている。
自分が見聞きしたのは一体なんだったのだろうか。幽霊でも見たとでもいうのか?
その通りなのだよ、ロッシ。
この国には幽霊が、亡霊が存在しているのだ。
ダンッ!
拳を握り締めて力任せに肘掛けに振り下ろす。
鈍い痛み。だけど比べようのない痛みをかつて私は感じたのだ。
私は知っている。おそらくは、私だけが知っている。
幼子から母御を奪う、そんな亡霊がこの国にはいるのだ。
白金の髪、豪奢な王者の衣、子供の姿の亡霊が。
けして忘れられない姿、私だけが知っているこの国の矛盾。
それはこの国を表す、一つの象徴なのだ。
いけない。もっと仮面を使いこなさなくては。
深く、静かに、潜る。真意を隠してもっともっと深く潜行しなければ。
欲しいのならばくれてやる。バトレー、研究員、それにあの実験適合生体。それは取りも直さず、あれらが秘密の中心に近い存在だという裏づけになる。
私が秘密の中心に近付いているという証明なのだ。
「だから────」
支援!
その3 終了です
最初に書き直しをしようと考えた時、まず入れようと思ったのが[シュナイゼル編]なのですが
書き直しに書き直しを繰り返し、こんなに時間がかかってしまいました
お待たせした分、期待に応えられていますでしょうか?
シュナさんに関しては本編でも明らかにされた設定が少ないので色々とオリ設定で補ってます
それゆえ色々と違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが
そこは「青い人版シュナイゼル」と思っていただければ・・・と都合良いこと思ってます
ではまた「その4」でお会いしましょ
次回は日本側に舞台を移し、本編で男を下げた“あの人”メインでお送りします
ご期待いただけたら嬉しいです
BLUEDESTINY卿、投下お疲れ様でした。
相変わらず凄いですね。全体の構成、人物や心理描写などどれも卓越していると思います。
そして時折盛り込まれるオリジナル要素・キャラもいい味が出ています。
続きを楽しみに待っております。
ちょっと修正箇所を一つ
最後の11レス目、下から4行目
×私が秘密の中心に近付いているという証明なのだ。
○私が矛盾の中心に近付いているという証明なのだ。
トーマスさんへ
こちらで修正をお願いします
修正したつもりで治ってないのとか多いなぁ。気をつけます
それではおやすみなさ〜い
>>150 BLUEDESTINY卿、GJでした!
明日を求めるのに多少肯定的なシュナイゼルでしたね。
何というか、人間味がありいいかんじだと思いました。
カリーヌの言葉で考えを修正し真実に近付くシュナイゼル、少しずつ変わっていく彼のこれからの行動は!?
次回もとても楽しみです!
貴公の次の投下も我が全身全霊、全力を挙げてお待ちしております!
BLUEDESTINY卿、乙です。
毎度ながら文才、構成、心理描写に磨きがかり実にお見事でした。
本編ではアレなシュナ殿下でしたが、この物語での立ち位置ではどうなるのか?
叶うならばブラックリベリオンの結末を変えるキーパーソンになることを祈ります。
次回の投下も全力でお待ちしております。
>>150 ああ、とても面白かったです。
本編では、最後までもうひとつ「つかみ所のない人物」という
印象がぬぐえなかったシュナイゼルでしたが、
彼なりの理由も執着もある一個の人物として像を結ぶのを見せていただいた思いです。
これは、VVとの因縁??なんて気になる引きだ!
各話、視点を移して多重的に立体的に描き出されていくスタイルも、効果的でとても面白い。
スポットがの当たりにくかった人物の魅力を引き出す筆力、感服します。
次回を拝見できる日を楽しみに。執筆、投下おつかれさまでした!
BLUEDESTINY卿、GJです!
何と言うか…言葉が見当たらない。ちょっとマニアックな軍事ネタ、それを生かしきる文章力。
質も量も異次元のものを生み出す貴方には驚嘆と羨望を覚えます。
ブリタニア側のキャラがいいですね。シュナイゼルやカリーぬなども原作には出てこなかった部分が
補完されていてとっても嬉しいです。
続きを全力でお待ちしています!
10分後に投下します。支援は必要ありません
では投下します。
注意事項
・ライ×アーニャ
・ラウンズ大作戦シリーズの第5話。覚えている人なんていないと思うけど
・ギャグというより真面目に馬鹿
・前までの話を読んでないとさっぱり分かりません。詳細なあらすじを下記に用
意しましたが、一番手っ取り早いのは保管庫へ。ピンクもふもふ領にあります
・支援は無くてオッケーです
〜今までの詳細なあらすじ〜
モニカがライアニャレクの接続を発動したよ
§0
晴れた空。
ブリタニアと呼ばれる大地の上に広がる空。
その空の、折り重なった雲のさらに上にそれはあった。
ブリタニア皇帝用浮遊航空艦【グレートブリタニア】。
本来はグレートライアニャと皇帝が名付けようとしたところで、対外的な面で
差し控える事となったという逸話を持つ総旗艦だ。
余談だが、皇帝シャルルはグレートライアニャの名前が不採用になった事を不
服に思い、ギャラハッドの大剣をエクスライアニャーと名付けた事は有名である
。
ビスマルクもギャラハッドを乗り捨てた際にエクスライアニャーだけは軍に回
収するよう命ずる程お気に入りだ。
そんなグレートブリタニアの中で、通信士が慌てて皇帝シャルルの下に走って
来た。
「こ、皇帝陛下!」
「なんだぁぁあああああ!! 騒がしいいいぃぃぃ……」
煩わしそうにシャルルは返す。
どっちが騒がしいんだ、という思いを抑えて通信士は息を整え急ぎ答えた。
「モニカ・クルシェフスキー卿より“特一級命令”の信号が発せられました…!
」
「ほう……」
通信士の言葉を聞いた瞬間、シャルルは俯いてぷるぷると体を震わせた。
そこにあるのは恐怖か、畏怖か?
違う。
「ぶわーはっはっはっ! あやつめ、やりおったか!!」
感嘆の叫びをシャルルは上げた。
特一級命令。その命令はもはや皇帝をもってしても撤回する事が不可能な命令
。
ナイトオブライアニャ会長であるモニカにのみ与えられたその命令は“ライア
ニャレクの接続”のみ。
シャルルは笑みを深め、
「ふはははは、遂に古き世界は生まれ変わる。新たな世界の誕生よ」
言った瞬間、グレートブリタニアからでも肉眼で確認できる程の光がライのい
るテーマパークの方角から発せられた。
そしてそこを中心として飛沫となった光が、大陸中を、世界中を、星中を駆け
巡った。
―――世界が、ライアニャに染まる
‡ラウンズ☆大作戦‡
Mission 5:『ライアニャレク の 接続』
§0.5
同時刻、テーマパークの中にいた一人の男は立ち止まっていた。
「どうしたの、あなた?」
男が前を向く。そこには男より少し小柄な女性――彼の妻が不思議そうに、そ
して妻と手を繋いだ子供がもっと不思議そうに男を見つめていた。
男は事情を説明することなく黙ったまま、やがて頭を下げて、
「すまない。やる事ができた……」
「やることってなあに〜?」
「教えられないんだ、ごめんよ……」
歯がゆい気持ちを必死で抑えるような表情を作り、男がそのまま妻と子供の前
から立ち去ろうとしたその時だ。
妻が男を呼び止めた。
「待ってあなた……これを持って行って」
「おまえ……」
妻が一枚のカードを差し出す。
手のひらサイズのそれには、妻の顔写真と、名前と、生年月日やらが書いてあ
る。
男はそれを見てはっとした。
後ろポケットから牛革製の財布を慌てて取り出し、中から同じようなカードを
引き抜く。
男のカードも妻のカードも、柘榴色の光を帯びていた。
「それ、なあに〜?」
何かの玩具と思ったのか、子供が興味深げに問うてくる。
その様子を見て、男は妻と微笑み合って言った。
「会員証さ」
「かいいんしょう?」
「ああ、そうだ。そしてこのカードが輝く時。それはつまり――」
言いかけて、男は時間をロスしている事に気付いた。これ以上ここに留まって
いる訳にはいかない。
それを察した妻は、
「さあ、行って。この子は任せて、あなたはミッションを」
妻の言葉に男は無言で頷き、別れのキスを交わしてその場を走り出した。
背中に二人の視線を感じつつ、男は走り続ける。
全ては、真に男が心を通わせて貰いたいと願う相手のために。
間違えてはいけない。
男が、“その2人の心”を通わせたいと願うのだ。より正確に言うならば、彼
ら達が。
走っていた男はふと横を見る。
そこには男と同じように光るカードを手にして走る人々がいた。
やあ、と誰かが手を上げて挨拶し、やあ、と誰かが返す。
「君もか」
「俺もだ」
「君達もか」
「俺達もだ」
「彼らもか」
「彼らもだ」
皆がカード、会員証と呼ばれたそれを見合わせ笑顔を交わし、そして走る。
会員証には所有者に関する表記と、更に一様に書かれた、ある文字列があった
。
皆の覚悟を、魂を、想いを、希望を、夢を――それら全てを宿して刻まれてい
たその文字は。
“ナイトオブライアニャ会員証”
彼らは会員証を天高く掲げながら、
「「「イエス アワ ライアニャ!!」」」
男も女もない。年齢も関係ない。
彼らはただ一つの、ナイトオブライアニャとしての個として顕現した。
己が欲望を叶えるために、明日へと繋がる未来を閉ざさないために。
――ライアニャ、ライアニャ、ライアニャ!
世界が雄叫びを上げ、魂の詔を告げる。
――ライアニャ、ライアニャ、ライアニャ!!
世界中の声という声が空に響き、一組の男女の下へと集う。
――ライアニャ、ライアニャ、ライアニャ!!!
§1
くるくるくるくる。
回転する景色の中、ライが呟いた。
「ここのコーヒーカップはあんまり回らないんだな」
「うん……」
アーニャは気の抜けたような返事を返す。
大好きな、大好きなライの前だというのに。彼が話し掛けてくれているのに。
(全然、楽しくない……)
楽しめない自分がいる。
「アーニャ、僕は君には怒っている訳じゃないんだよ」
「…………」
ライは優しく、柔和な笑顔で諭すようにアーニャに言った。
「あんな真似をしたモニカ達が悪いんだ。アーニャが気にする必要はない」
「ほん……とう?」
ライは大きく頷いて、
「ああ。でも、流石に今日はもう気は乗らないか……。気を取り直して、また次
の休みの日にでも一緒に遊びに来ようか」
「……うん」
ライの提案に、アーニャは無理やり作った笑顔で答えた。
……一緒に遊びに。
その言葉は、アーニャの心に重くのしかかった。
(デートじゃなくて……)
思い、はっとする。
(私は何を期待しているの?)
もう終わったのだ。今まで積み上げた物を、ライとの関係をアーニャは全て失
った。
ライとはもはや『兄と妹』とか『仲の良い同僚』とかいう今までの括りの中で
しかいることは出来ない。
考えてみれば、ライには大変失礼な事をした。アクシデントに見せかけ、しか
しそれらは全て計算と演出によるもの。
ライはモニカ達に怒っているが、それは彼の勘違いで。真に責められるべきは
自分だ。
(私は、ライの気持ちを弄んだんだ……)
だからもういい。今までのはほんのご褒美のような物で、それを利用した自分
への罰がこれだ。
そう思えば、幾分か気が楽になった。別にライに嫌われた訳じゃないのだから
。
「アーニャ、気分悪いのかい?」
「ううん……ちょっと疲れただけ」
そう言ってアーニャはライの肩に寄りかかり、ライもまたそれを受け入れた。
自然に、まるで最初からそれが当たり前の姿だと言わんばかりにアーニャはす
っぽりとライの腕に収まる。
温もりに抱かれ、アーニャはほぅと息をついた。
上気した頬を悟られないよう顔を俯け、伝わる感触にだけ体を預ける。
(ほら、簡単)
自分は妹。妹になれば体を預ける事に不自然さは湧かない。
トクンと胸が高鳴るが、アーニャはそれを無視した。
「ん……」
ライに頭を撫でられれば、どんなに心が冷えきっていたとしても安堵の感情が
生まれる。
心地よさにいつまでも身を委ねていたいと思う。
(これで十分、幸せ……)
例え一番になれなくてもいい。
一緒にいられれば、それが自分にとっての最上の幸福なのだ。
だから――……。
「アーニャ?」
ライが驚いた表情で言った。
「なに?」
アーニャが小首を傾げて返すと、ライは心配そうに、
「……どうして泣いているんだ?」
「え……」
言われて気づいた。
目尻から滴がこぼれ落ちる。
一つ、また一つと涙が溢れ、そして滴が流れになって頬を伝い落ちていく。
「あれ……私…ひくっ…どう…して…?」
完全にアーニャの制御を受け付けなくなった涙腺は緩み続け、涙の勢いが増し
て、次第にアーニャの声に嗚咽が混じりだした。
(止めなくちゃ……)
そう思っても止められない。涙が全く止まらない。
どうしようもなく切なくて、どうしようもなく悲しい。
胸が締め付けられたように痛み、目の奥がチリチリして、喉はカラカラだ。
心が苦しい苦しいと悲鳴を上げている。
(いけないのに……ここで泣くのは、おかしいのに……!)
妹を、友人を演じる。想いを秘める事など、今までのアーニャにとって簡単な
はずの物であったのに。
そんな簡単な事が、できない。
「ふぇ……ライ…ライ……!」
アーニャはライの名前を呼んだ。縋るようにライの胸に顔を押し付け、何度も
何度も呼び続ける。
限りなく近い場所にいるのに、決して埋まらない隔たりの先にいる存在を呼び
続ける。
どう思われたっていい。この心を静めて欲しいと願いながら、アーニャは呼び
続けた。
「アーニャ、僕は――」
無言でアーニャが呼ぶのを聞いていたライが、何か言おうとしたその時。
「――ん?」
音が響いた。
風のざわめきに似たそれは、アーニャ達に向かって近づいてくる。
数は一つではなく、徐々にその数を増しているようにも聞こえる。
「あれ……?」
そこでアーニャは気付いた。
「ひくっ……誰もいない」
「何だって?」
ライも異変に気付き、慌てて辺りを見渡した。
先ほどまでとは違う。
何が、と問われても分からない。ただ何かが違うとアーニャは感じた。
敢えて言うならば、世界が変わってしまったというのか。
コーヒーカップから見える景色からは誰も見当たらない。
アーニャ達の視界から、完全に人影が消えてしまった。
「いつの間に……」
「……ライ、あれ」
†
アーニャの指差した方を見て、ライは絶句した。
「な…………」
今、ライの視界にあるのは大勢の人の群れ。
全員がこちらに向かって波となって進み、そして何かを呟いている。
「「「ライアニャライアニャライアニャ……」」」
意味は分からないが、とりあえず危険な存在だとライは即座に判断した。是非
とも関わりたくない。
彼らは獰猛な肉食獣が如きギラついた視線を寄越し、ただただこちらへ向かう
行軍が続く。
いつの間にか消えてしまった周囲とは打って変わって、向こうの人口は過密。
そして彼らは一様に手を胸の辺りに掲げて、「ライアニャライアニャライアニ
ャ……」と声を出し続けたままだ。
正直、怖い。
「ライ……」
心細げにアーニャが自分の名前を呼ぶのが聞こえた。少しだけ震えているのを
見て、考えている事は彼女も同じだろうとライは思う。
(ライアニャ……僕らの事か?)
嫌な予感そのままに、ライは立ち上がった。
彼らの狙いが自分達であるならば、じっとしている訳にはいかない。
「何だか分からないが、逃げよう」
言って、ライがアーニャと手を繋いだ瞬間。
百人に達しようとしていた人だかりが文字通り、爆ぜた。
「「「うおおおお! 生・ライアニャ手繋ぎだーー!!!」」」
「「「きゃあああああーーー! ステキィィィィイーー!!!」」」
男どもの野太い地声と女性の黄色い歓声が木霊する。その木霊に感応して、彼
らは再び叫ぶ。
笑顔、吐息、万歳、包容、跳躍……とにかくあらゆる動きで彼らは喜びの感情
をさらけ出していた。
「な……なんだっ!?」
突然の騒ぎに流石のライにも動揺が生まれる。
(手繋ぎ? ……手を繋いだ事がどうしたっていうんだ!)
思わずアーニャを見た。彼女も同じく困惑した表情で、そのまま視線が繋がれ
た手に向けられる。
「くっ……」
ライは頬が熱くなるのを感じ、それを振り払うのと同時にアーニャを強く引っ
張った。
「逃げるぞ!」
「う、うん!」
手を繋ぐのは、身長差があるから速度を合わせるため。ライはそう自分に何度
も言い聞かせながら、
(何で……手を繋いだくらいで……)
あまり意識しないでいた行為が急に恥ずかしく感じられ、それがつい最近にも
経験した感情だと気づく。
(ベンチでアーニャのアイスを拭った時……)
あれにに近い。
あの時の自分は、アーニャにどこかいつもと違う感情を抱いていた。
先程もそうだ。突然アーニャが泣き出した時。
『アーニャ、僕は……』
(あの時、僕は何を言おうとした?)
分からない。自分の感情が把握出来ないでいる。持て余したそれが、今の自分の熱くなって
いる頬の理由になっているのかもしれないと思う。
(まったく……!)
こんな事になったのは何もかも全て――。
「モニカ達の仕業か!」
ライは走りながら叫んだ。後ろからは例の集団が迫ってきているのが足音で分
かる。
アーニャは息を乱し、それでもこちらに必死に追いすがりながら、
「でも、こんな作戦聞いてない……!」
「だとしたら隠し玉か……くそ、こっちにも来た!」
コーヒーカップにいたのとはまた別の集団がぞろぞろと集まってくる。
こちら側もまた数百人の規模を成している。
(一体何人いるんだ!?)
遊園地中の人間がこうなっていたらと考え、ぞっと背筋が凍りつく。
8492には思わずニヤリとした
「「「ライアニャライアニャライアニャーー!!!」」」
「ひうっ!」
もはや狂気としか見えない状態に、アーニャは怯えを見せた。ライの腰にすが
るようにしがみつく。
気持ちは分かると、ライは内心頷いた。あれは確かに怖い。
(これがお化け屋敷だったら繁盛するだろうに……)
妙に変な考えが浮かぶのは、自分も動揺しているからか。
(とりあえず状況を把握しなければ……)
ライは表面上冷静を装い、狂気集団に呼び掛けた。
「あなた達は一体何なんですか!」
すると、彼らは一つの反応した。
返答でも、無視でもない。
にんまり。
ただ、にんまりとした笑顔だけを返してきた。
にんまりにんまりにんまりにんまりにんまりにんまりにんまりにんまり…。
「ライ……!」
怖い。助けて。余りに異常な世界に、弱気な姿をあまり見せない彼女から発せ
られた声。
168 :
ラウンズ大作戦 7/16 :2009/02/09(月) 14:04:00 ID:dCq1/oST
自然とライの体は反応した。
――アーニャを、抱き寄せた。
他意はない。悪意と狂気の“にんまり”からアーニャを庇うべく、行動しただ
け。ライとしては当然のその行為。
しかし、
「うっひょーーーーー!!」
「ハグだぜハグ!」
「マジかよ! 俺初めて見たぜ!」
「あれこそ幻の技、『HOU☆YOU』!」
「まさか伝説に遭遇するとは…」
「俺達はこの物語を未来へと語り継ぐ義務がある。そう、歴史の担い手として」
「写真撮ったか!?」
「バッチリだ。だがこの感動は生でないと味わえない。劣化は免れん」
「母さん、僕は死に場所を見つけたようです。もう悔いはありません。妹によろ
しく」
「来て良かった!」
余りの反応に、ライは慌ててアーニャに回していた腕を離す。アーニャも顔を
赤くしながらこちらから距離を取った。
その様子にブーイングするギャラリー達。それらを見て、ようやくライはこの
策の恐ろしさを理解した。
(……何という作戦だ!)
こちらのする行為一つ一つが、彼らの興奮の対象となる。
意識せず成された行動が、一瞬でピンク色の妄想をかき立てる嬉し恥ずかしの
ラブラブアクティビティに昇華されるのだ。
こちらが思う事と言えば、
(恥ずかしい……)
あまりにも下らない、しかし効果的な策だ。人の煩悩に漬け込む卑劣な策とも
言える。
「とりあえず隠れよう!」
「う、うん」
怯えるアーニャの手を引き再び走り出す。またも奇声が上がるが、その隙に逃
げ出し、二人で近くの茂みに飛び込んだ。
急いで追いかけてきた数十人が自分達を見失うやいなや、
「どこ行った!?」
「ん……これはアーニャたんの髪の毛!」
「よし、近くにいるはずだ! 探せ!」
言って、地面に伏せたかと思うと鼻をくんくんと鳴らしながらこちらの位置情
報を確認し出した。
茂みから観察していたライはその様子に呆れて物も言えない。
(彼らは獣か……)
こちらを見る目は確かに猛禽類のそれと言っても過言ではないかもしれないが
。
「奥の方に隠れよう」
「うん」
息を潜め、アーニャと共にこそこそと茂みの奥に下がる。
隠れるためではあるが、体が密接しているのが妙に気になってしまう。
(モニカ達の策に上手くハマっているな……)
思わずライは舌を打つ。
(このままここにいてもその内見つかる。テーマパークは既に“彼ら”で一杯に
なっているとして、どうにかして逃げる方法は……)
考える。
相手の手札の一番大きい部分は数だ。
ここまでするくらいなら、ナイトメアも出撃している可能性がある。ならば目
立つ行動は回避する必要も出てくる。
(アトラクションを利用するか? 誘導……は駄目か。数が多すぎる。くっ……)
考えれば考えるほど、逃げ場が無い事が分かる。
焦燥が汗となって首筋を流れ出した時、服の裾がくいっくいっと引っ張られた
。
「ライ、」
「ちょっと待ってくれ、今策を練って……」
「でも、空に……」
「空?」
見上げた空には巨大な存在がいた。
天を覆うように広がるそれは、ライがよく知るものだ。
しかしそれが正しいのか判断が出来ない。否、違うと思いたい。
「ライ、あれってまさか……」
「たぶん違うさ。仮にそうだとしても、僕達に関係無いだろう」
「でもどんどん近づいてる」
「う……」
アーニャの言うとおり、上空に広がる天井は徐々に高度を落としている。
ライは腕で目をこすって見間違いではないかと何度も確かめた。
しかしライとアーニャの視界からそれが消える事はない。
嫌な汗が背中に流れているのを感じつつ、ライは突きつけられた現実に呟いた
。
「ここまでするか……」
ライ達の上空にあったのは、ブリタニア皇帝用浮遊航空艦『グレートブリタニ
ア』。
テーマパーク上空に舞い降りた航空艦はピタリと静止すると、ノイズと共にス
ピーカーを開いた。
大きく息を吸い込む音がした後、ライもよく知る皇帝の声で、
『オォォゥゥル・ハイィィル・ライアニャーーァァアアア!!』
「「「「「オォォゥゥル・ハイィィル・ライアニャーーァァアアア!!」」」」
」
茂みの中で、ライとアーニャは頭の痛くなるような轟音を聞いた。
ライアニャライアニャライアニャ!!!
テーマパークの中から。そしてその外から重なり連なる数百数千数万数億の声
が響く。
それはライ達に、自分達の状況がどれだけ酷いものかを理解させるのには十分
であった。
「ライ……どうしよう」
不安げな視線を寄越すアーニャに、ライは対照的に希望を見つけたような笑顔
を見せた。
「いや……これで条件はクリアした。アーニャ、行こう」
「……う、うん」
怯えたままのアーニャの手を取り、ライは進み出した。
「モニカ達の好きにはさせない……」
§2
ライとアーニャがグレートブリタニアと遭遇していた頃、モニカは園内にある
飲食店にいた。
小腹が空いた訳ではない。何故ならそこは既に飲食店ではなく――、
「状況を確認しましょう」
作戦支部であった。
机にはPCが並び、スクリーンには周辺地域を含めた地図が映し出されている
。
そしてモニカの呼び掛けに対し、一人の青年が起立して答える。はきはきとし
た喋り方で、
「はっ! グレートブリタニア及び皇帝陛下が園内上空にご到着した所であります
」
そう、とモニカは淡々と頷き、
「ライアニャの位置は?」
「それが……現在グレートブリタニアの協力で上空からも捜索しているのですが
……」
「隠れたか……」
ちっと舌打ちして、モニカは椅子に腰を下ろした。そんな彼女の不機嫌な様子
に、慌てて報告をしていた部下が付け足す。
「で、ですが包囲網は完璧です。例えどれだけ隠れようと逃げる事は…」
「その油断が命取りよ」
そう言って、モニカは長い髪を煩わしそうにかき上げた。
油断が命取り。それは先ほどの自分に対する言葉でもある。
だからこそ、モニカは焦っていた。
(はやく見つけないと……)
何しろターゲットの一人、ライはかなり頭がキレる。
冷静かつ客観的に策を講じられれば、いくら完璧な作戦だろうと逃げられる可
能性がある。
何より、頭を冷やしたら恋愛どころではない。
アーニャと別行動でもして、撹乱させるような手だって――。そこまで考えて
、モニカはそれは無いと思った。
(ライは、決してこの状況でアーニャを手放さない)
それが一番有効な手であろうと、絶対に彼はやらない。そう思う確信がモニカ
にはあった。
(あの時……)
ベンチでアーニャの口元のアイスを拭って、顔を真っ赤にしたライ。
あの表情を見て、気付かないはずがない。
(ライも、きっとアーニャが好き…)
上手くいった。上手くいき過ぎた。彼は意識するどころか、最初からアーニャ
が好きだったのだ。
ライ本人は気付いてない。気付いて、それでポーカーフェイスでいられる程器
用なら、あの場で恥ずかしがる事なんてないのだ。
だからモニカは喜んだ。このままいけば2人はくっつく。……そんな油断が生
まれた。
(油断した……)
油断。油断。油断。油断した。
モニカは何度も心の中で呟いた。まるで、あれは油断したせいだったと、それ
以外に理由は無いと自分に言い聞かせるように。
――――――――――――…
―――――――――…
――モニカ・クルシェフスキーはアーニャ・アールストレイムが好きだった。
モニカにとって、アーニャは最初に親友と呼べる存在だった。
あちらはどう思っているか知らないが、少なくともモニカは親友だと思ってい
る。
初めて会ったのは、ナイトオブラウンズになって二年目の春。その頃モニカに
は友達や、話し相手すら満足にいなかった。
年齢、性別、貴族、地位。周りが引いていく理由は色々あるだろうが……。つ
まらない、本当につまらない世界に生きていた。
そんな時、自分より年下の女の子がラウンズに入ったきたのだ。
……無口な子。
それがモニカの彼女に対する第一印象。ぺこりと頭を下げただけの挨拶。素っ
気ない態度。だが、
……それは私もか。
饒舌な筈の自分も、話す相手がいなければ結局彼女と同じだ。
そう思うと、自分が彼女よりよっぽど惨めな存在だと感じた。
……誰も私を見てくれない。
いつしかそんな風に思うようになっていた。
しかし、そんなつまらない、本当に本当につまらない自分を見てくれた人がい
た。
その事を、その存在を忘れる筈が無い。
……アーニャ。
†
その日、モニカは何となく庭園で昼寝をしていた。勿論独りで。
寂しい気持ちやその他諸々を背負うのに疲れ、「もうラウンズなんかやめよう
かな……」と愚痴た言葉に、
「やめるの?」
ピピッという携帯カメラのシャッター音を鳴らして、こちらの顔を覗き込んで
きたのがアーニャだった。
驚いて飛び上がって、吐露してしまった心情が聞かれてしまった事を恥じる。
するとアーニャは黙ったままのモニカに言った。
「やめるんだ。もっと記録したかったけど……」
「え……?」
突然の事にぽかんとしたモニカを気にもせず、アーニャはそのままどこかへ行
こうとした。
「ま、待って!」
そして気付いた時には、アーニャを呼び止めていた。
「何?」
「あ……えと、わ、私モニカ!」
「知ってる。私はアーニャ。で、何?」
「うん、えーと、その――」
そこから先は流れるようだった。
アーニャを横に座らせて、モニカは喋った。それはもう、喉が枯れるくらい喋
った。
それに対しアーニャは聞いているのかいないのか、曖昧な相づちを打つだけで
ずっと携帯をピコピコピコピコ……。
……でも、楽しかった。
久しぶりにモニカは人と会話らしい会話をした。ラウンズの同僚とも事務的な
話しかした事が無かったのだから、それはもう随分と久しぶりだった。
……会話なんて言える程、アーニャは喋らなかったけど。
ただただ一方的に喋って。下らない会話を続けて、喋り疲れたモニカは、やが
てアーニャに向かって問いかけた。
アーニャの話も聞きたかったからかもしれない。
「ねえ、あなたはどうして何でも写真に収めてるの?」
「…………?」
「あ、言いたくなかったら別にいいのよ」
そう言うと、アーニャは少し考え込むように難しい顔をした。言いたくない訳
ではなく、どのように話し出せばいいか分からなかったのだろう。
少したってから、アーニャはぽつりと返した。
「……これは、記録」
「記録?」
「私、記憶が無いの」
次はアーニャが話す番だった。
記憶が無い事、今でも時々途切れる事。それで自分という存在が希薄で曖昧な
事。ラウンズになったのは、戦うことでしか自分の存在価値が見いだせなかった
からだという事。
言葉の声量は小さく、そしてゆっくりで儚げではあったが、しかしモニカはそ
れを力強く感じた。
モニカは夢を見ているかのように、朦朧とその話を聞いていた。
故に、突然の出来事にモニカは驚いた。アーニャは一通り喋り終えた後、モニ
カの方を向いて、
「だから、あなたとお喋りした事も記録」
ぽかん、と口をだらしなく開けたモニカの顔を、パシャっとシャッターの眩い
光が包んだ。
光の向こうにはいたずらに成功したような小さな笑みを浮かべたアーニャがい
た。
モニカはその表情を見て惚けてしまい、何が起きたかを理解する前に一つの感
情が湧き上がってくるのを感じた。
……嬉しい。
私を見てくれた、私を見てくれる人がいた。そう、何度も何度もその喜びを噛
み締めた。
そしてモニカはアーニャと友達になった。
モニカは誓った。絶対にこの子を、自分を救ってくれた存在を大切にすると。
守ってみせると。
その誓い通り、破ることなくモニカはアーニャと接していた。だが、そこにあ
る綻びが生じた。
……あいつが現れた。
†
「今日ね、ライが……」
アーニャが嬉しそうにその日にあった事を話す。場所は二人の思い出の庭園だ
。
いつも暇な時はここで世間話を嗜むのが二人の日課だった。
しかしある日を境に、アーニャの口から紡がれる話の中に「ライ」という単語
が含まれる回数が増えている事に気付いた。
ライがね、ライはね、ライとね……。顔をほころばせて話すその表情からは、
アーニャの想いが簡単に見て取れた。
……アーニャは、ライが好きなんだ。
それに気付いた瞬間、モニカは体が焼けるように熱くなったのを感じた。
喜びに打ち震えていたのではない、激昂していたのだ。
……どうして、あんな男に!
嫉妬。なんて醜い感情だったろうかと、今でも思い出し落ち込む程に嫉妬に狂
っていた。
急に現れたそいつは、ぽっと現れてアーニャの心を攫ってしまった。
だがアーニャのためを思い、モニカは決して彼女の意志を無下に扱う事はなか
った。応援もしなかったが。
そして、アーニャのライへの想いが鰻登りに上がっていった頃。
モニカは見てしまった。
……アーニャと、ライ。
話をして、楽しそうに笑い合っている二人の姿。
……あんなアーニャ、見たこと無い。
自分の前では決して見せない、頬を赤らめ恋する女の子そのものの表情。
それをライには存分に見せつけ、しかもあろうことか二人がいた場所はモニカ
にとって大切な、あの思い出の庭園だった。
……裏切られた。
そう感じた。モニカにとっては、それに近い行為だった。
だから二人の下へ駆け寄った。行って、文句の一つでも言おうとした。
……アーニャを、渡したくはなかった。
庭園に入り、あと一歩で二人の前に出る。そこまでやって来た所で、
「ここは、だからモニカとの思い出の場所なの」
――モニカの足が止まった。音を立てずにいられたのは奇跡に近い。もしかす
るとライの方は気づいていたかもしれないが。
「そっか……アーニャの携帯じゃ、とても収まりそうにないね。残念?」
「ちょっとだけ。……でも、私は記憶してるから。それに、ライにも話したから
」
「じゃあアーニャがここを忘れちゃったら、必ず教えなきゃいけないのか」
「よろしく」
「はは、責任重大だ」
笑いながらライはアーニャの頭を撫でる。
その光景に、モニカは思わず見とれてしまった。
庭園に溢れるどんな花よりも艶やかで、香しく、美しかったその光景。
どうしてこうまで二人は自然体でいられるのだろう。そんな切ない苦しみがモ
ニカの胸を襲った。
しっくりくる、という表現が一番かもしれない。二人の姿を見て、モニカはそ
う思った。
そして何よりも、
――アーニャは、私を大切だと思ってくれていた。
裏切られたなんて思った自分がとても恥ずかしく、卑しく感じた。
アーニャはアーニャでちっとも変わらないでライの側に並んでいた。そしてそ
れはきっと、ライも同じ。
なのに二人はこんなにも美しい。
等身大の自分をさらけ出して尚、絶妙かつ奇跡的なバランスで影を一切被せず
に、互いの魅力を引き出し合いながら咲く二輪の華。
……彼しかいない。
アーニャに存在理由を与え、そしてアーニャの隣に立つべきはライだと、モニ
カが初めて実感したのはその時だった。
――――――――――――…
―――――――――…
(それなのに、私は……)
ナイトオブライアニャ作戦支部と化した飲食店にて、モニカは机に突っ伏して
いた。
周りの音は何も聞こえず、世界に1人取り残されたような感覚。
そこにあるのは、一つの可能性だ。
(もしあれが、油断じゃなかったら?)
モニカは今までアーニャにアドバイスをして失敗した試しがなかった。それは
アーニャもそう言っているから間違いない。
(だけど……)
それは本当だろうか。モニカは自問する。
(もし、もしも――私が絶対に成功する、確実な作戦しか指示してなかったとし
たら?)
そうかもしれない。実際自分は勝負に出る事は少ないのだから。
モニカは唇を噛み、さらに自問。
(もし自分が作戦の成功の後、ただアーニャに感謝して貰える事を目的にしてい
たとしたら?)
そうかもしれない。実際自分はアーニャに感謝されて喜んでいたのだから。
噛んだ唇から血の味が伝わってくる。さらに自問。
(もしあれが油断ではなく、――ライとアーニャの関係が失敗するよう自分が望
んでいたとしたら?)
問うた瞬間、モニカは立ち上がった。
「っ!」
辺りを見渡して、
「誰も……いない?」
作戦支部には、モニターやら地図が散乱したまま、モニカ以外の誰もいなかっ
た。
「ああ、そっか……私がそう指示したんだっけ」
だが、それをいつ指示したかも分からない。それほどモニカは混乱していた。
「くっ……!」
自分の真意はどこにあるのか。本当にアーニャの幸福を願っているのか。
自信が持てない。
モニカの目尻から涙が一筋流れた。
「私は、私は……!」
「気は晴れたか?」
突然、背後から声が掛かった。
「!? ……ジノ」
モニカの背後に悠然と立っていたのはジノだった。
†
作戦支部。物々しい設備が横たわる中、ジノとモニカは対峙していた。
「何の用よ……」
吐き捨てるようにモニカが呟いた。
まだ気が収まらないのか、少し息を乱しながらギラついた視線をジノに向けて
いる。
「いやね、お前の指示通り全員定位置に着いた事を伝えに」
至ってのん気な口調でジノは返す。
モニカはふと暗い陰を表情に落とし、
「そう……なら後はあなた達に任せるわ。私はもう無理なの」
「とは言ってもなあ…お前の指揮じゃ無いとライアニャレクは上手く作動しない
し。私にも信頼があればいいんだが」
自分で言ってて悲しくなるが、普段のお調子者が災いしてか、案を出しても大
概無視される。
仮に信頼されていたとしても、モニカほどの頭脳を持っている訳でもないが。
「じゃあもう止めましょうよ、こんなの」
「それでいいのか?」
「だってそうでしょう!?」
モニカは地団太を踏んだ。
だって、だってと何度も繰り返し、勢い込んで叫んだ。
「こんなの――おかしいじゃない!」
「…………」
「みんな分かってる! こんなのおかしいって!」
なにがだ? と、ジノは心の中で問うた。
「ライアニャレクって何? ナイトオブライアニャって何? アーニャとライを応
援する物?」
質問にジノは答えない。何故ならこの答えを出すべきはモニカだからだ。
モニカは涙をぽろぽろと流し、情けない顔で続ける。
「違う。違う違う違う! 私達は、私は……」
一息、
「ライとアーニャの恋を見て、ただ楽しんでいただけだった……」
最後の方は、ジノにすら届かないほど小さくなっていた。
だらんと顔を俯け、涙を流すモニカを見てジノは思う。
(馬鹿だよな)
ライを鈍感鈍感と言ってるモニカが一番自分の気持ちに鈍感だった。何という
皮肉だろう。
(お前が、アーニャが好きって事くらいみんな知ってるさ)
だから彼女の出した答えが違うのもジノは知っている。そしてそれを正せる立
場にある人間は、今ここにいる自分しかいない。
「今更だなモニカ。私はそのつもりだったんだが」
「……?」
「こういうのをお節介、って言うのか? まあ、アーニャ見てると楽しかったから
それで良かったし」
「なん――」
なんですって。そう言おうとしたモニカに、しかしジノはしてやったりという
笑みを浮かべ、
「おっと。モニカが先に言ったんだからな? 二人を見て楽しんでたっていうのは
。怒るのは筋違いってもんだ」
「っ……!」
「そういう事。……まあ、最初だけだけどさ」
「え?」
ジノは、懐からケバブを取り出した。
ケバブに意味は無い。ただ、食べたくなっただけだ。
逆に、この会話に大した意義など無い事が伝わるかもしれないとも思った。結
論は既に出ているのだから。
「お前に毒されたかな。今では本気で二人を応援しているんだ」
息を詰め、後ずさりするモニカとは対照的にジノは足を前に踏み出して言った
。
「お前は本当にお遊びだったか? ……違うだろう。そんなに後悔しているんだか
ら」
「っ……」
「私達は確かに間違えた。だけどこんな結末で、モニカはいいのか? こんなエン
ディングで、お前は満足か?」
「私、は……」
「甘えるな。目を逸らすな。逃げるな。戦え。お前の望んでいた景色を――もう
一度思い出せ!」
一息、
「アーニャの笑顔、見たいんだろ?」
モニカは息を詰め、唇を震わせ返答に窮していたが、やがて大きく頷いて言っ
た。
「っ…………ええ!」
§3
【一時間後、グレートブリタニア艦内】
「まだ見つからんのか」
ブリタニア皇帝シャルルの、苛ついた声が響いた。
「はっ……ラウンズも動員して虱潰しに捜索しているのですが……」
「むむぅ……」
シャルルは唸るしか出来なかった。
無理もない。今やテーマパーク内から外縁部に至るまでナイトオブライアニャ
の面々が集っているというのに。
それでもライとアーニャは見つからない。
「むぅぅ、このままでは……」
「お困りのようですね、陛下」
「お前は……!」
扉から入ってくるなり不躾に言葉を投げ掛けたのは、モニカだった。
彼女はどこか吹っ切れたような、今までとは違う輝きを放っていた。
モニカはブリッジの中心に立ち、
「普通にライを探しても無駄ですよ」
「ほう、お前には検討が付いていると?」
「ええ。彼の事ですからこちらの一番の強みを潰す事を第一に考えるでしょう。
……恐らく、ナイトオブライアニャの会員になりすましているでしょうね」
言った瞬間、ブリッジにいた兵に動揺が走った。
ナイトオブライアニャの会員は次々とテーマパークに集まっている。とても数
え切れるものではない。
もしそんな中に紛れ込んでいるとしたら……。
「だが、ライ達は会員証を持っていない。テーマパークは外には出られないよう
検問を用意しておる」
モニカは頷き、
「そう。だからこそ……ライの狙いはここにある」
そう言って、モニカは踵をかつんと鳴らす。
シャルルは笑った。成る程、と。
グレートブリタニアは現在テーマパークの中央広場に停泊している。
更に作戦本部と化したここには……。
「ナぁイトメアかぁ!」
「その通りです。恐らくライは敵である私達の本拠地に乗り込んでくるでしょう
。いえ、……もう既に」
瞬間、けたたましい警報音がブリッジを包んだ。
次いで兵士の一人が、
「格納庫より、対象がウォード・エアを奪取した模様! ハッチより脱出します!
」
騒然とした艦内とは打って変わって冷静な様子でモニカは報告を聞いて、右手
を掲げた。
「ライ。掛かったわね……来なさい!」
†
奪取したウォードの中で、ライは苦笑を浮かべた。
「まいったな……読まれていたか」
『そういう事だ。堪忍するんだな、ライ』
ライの目の前にいるのは、ナイトオブスリー専用ナイトメア・トリスタンだ。
それだけではない。
グレートブリタニアに搭載されていたロイヤルガードのヴィンセントに囲まれ
ている。
「ライ……」
「うん。かなりやばい」
言葉のノリは軽いが、それは冷静に状況を判断したからである。
(逃げられない……)
こちらがクラブやモルドレッドならまだ違ったであろうが、量産機で彼ら全員
を相手にする力は無い。
(どうしたものか……)
こうなったら、後は交渉しかない。何が取引材料になるかは分からないが、こ
ちらの手札は全て使い果たしてしまったのだ。
『はろー。ライ、アーニャ』
ウォードに軽い声で通信が入る。
一般回線だ。モニカは外の者達にも聞こえるようにするつもりらしい。
「モニカか」
『そうよ、堪忍してくれた?』
「どういう意味か判断しかねるが……」
『いい加減素直になりなさいな。……これはアーニャにも言ってるのよ』
「っ!」
最後の方は少しだけ低い声色で、モニカが言った。
「モニカ……もういいよ。今までありが――」
『ああ、はいはい。そういうのは無し無し』
モニカはアーニャの言葉を無下に扱い、
『いいから二人とも聞きなさい――私達は本気よ。もう手段は選ばない』
凄みのある声に、ライとアーニャは黙る事しか出来なかった。
故に、反応が遅れた。
『やりなさい』
『はいよっ』
「しまっ……」
どん、という腹に響く轟音がしたかと思うと、機体が傾いた。
見ればトリスタンがこちらのフロートユニットをへし折り、地面へと叩き落と
してきたのだ。
「ひゃっ」
「ちぃぃっ!」
ライは舌打ちしながら、機体を安定させて安全に着地させるため操縦桿を強く
握った。
「アーニャ、しっかり捕まっていろ!」
†
グレートブリタニア甲板に立っていたモニカは、テーマパークの広場に落ち行
くウォードを見た。
安全確保のため、既にその場からは会員を退けている。
あの状況から無事に着地するライの腕に満足し、
「諸君、」
マイクを口元に寄せて言う。
視線という視線が自分に注がれるのを感じながら、
「あそこにライとアーニャがいるわ。私達の目標が」
目を閉じ、
「私達は多くの苦悩を経験してきた。何度それを乗り越えても、幾度も再び新た
な壁が立ちふさがってきた。そして今もまた、最大の壁に直面している。――し
かし、聞きなさい!」
空を見上げ、
「今日が決着のときよ! 進むことを恐れるな! 悲劇や嘆きを踏み潰し、望みを
叶えるために抗いなさい!」
一息、
「そして二人に見せてやりなさい――私達が決して屈しない事を! 理解や誤解と
いう名の勘違いを殴り捨て、愛という事実を残して――教えてやりなさい!」
懐から会員証を取り出し、天高く掲げ、
「答えなさい! 我らの契約の証を! オーーール・ハイーーール・ライアニャー
ーー!!」
『『『オーーール・ハイーーール・ライアニャーーー!!! オーーール・ハイー
ーール・ライアニャーーー!!!』』』
ライアニャ。ライアニャ。ライアニャ。
モニカを含めたナイトオブライアニャ全ての意志を込めた叫びがテーマパーク
中に木霊した。
あらゆる所から返る響きにモニカは頷き返して言う。
「ライ、アーニャ……」
するとモニカの足下から、何かのコンソールが突き出した。
モニカの指は淀みなく、転がるようにコンソールの上のタッチパネルを叩いて
いく。
コンソール上、モニタの一つに武装のロック解除シークエンスが始まったのを
見ながら、モニカは言葉を続けた。
「これはもう、あなた達のためだけの問題じゃなくなったの」
スロットに会員証を挿入すると、コンソールに新たな画面が立ち上がった。
複数の大きな文字列によって画面が次々と満たされていく。
『Certification:Monica Kruszewski』
『Certification:The Release of the Safety Catch』
『F.L.A.I.N.Y.A.;Fierce Love Achieve Immortal Nation /Yell
Armament
−system』
(まさかこれを使う事になるとはね……)
コンソールを操作しながら、モニカは内心溜め息をついた。
最終戦略兵器フライニャ。長年の開発を経て作り上げた一発限りの虎の子だ。
『Complete:Firing Sequence』
しかし後悔は無い。モニカは笑顔のまま右手を振り上げ、最後の操作を行った
。
『Blastoff――Y/N?』
『Y』
「だからね。ライ、アーニャ。あなた達は……私達のためにも、くっつきなさい
!!」
次回予告
久しぶりに続きが投下されたラウンズ大作戦シリーズ。しかし、まだその物語
は終わらずにいた。
モニカは己の決意を堅めたが、ライとアーニャは未だ己の心に戸惑い続けたま
ま。
そんな彼らに業を煮やしたナイトオブライアニャは最後の作戦を開始し、ライ
アニャを実現すべく動き出す。
そして遂に現れた最終戦略兵器『F.L.A.I.N.Y.A.(フライニャ):Fierce
Love Achieve Immortal Nation
/Yell Armament−system』が猛威を振るう。
ロスカラSSスレ史上かつてない規模と馬鹿らしさで描かれる超ド級のラスト
バトル。
最終戦略兵器フライニャの力とは?
アーニャは果たして想いを伝える事が出来るのか?
そもそももっふーは続きをいつ投下するのか?
次回、ラウンズ☆大作戦 Mission:Final
『Re;』
さぁて、この次もライアニャライアニャ♪
以上、投下終了です。改行しすぎで弾かれました。分数がおかしいのはそのためです
ピンクもふもふよりトーマス卿にお願い。
以下のSSを保管庫より削除お願いします。
・ロストメモリーズ
0012−0291
0012−0768
0013−0546
0015−0042
0015−0721
0016−0131
0018−0115
0018−0900
0019−0947
・ライと天子の甘い旅
0012−0349
0015−0606
これら二つは連載途中の作品ですが、この度保管庫からの削除をお願いします
。
ただ、別にこれら連載を投げ出すという訳ではなく、少し違った形で提供出来
ればなと思っています。まぁこのスレに投下という形ではないのですが。
では、よろしくお願いします。
あれ、コテが違う
>>183 ピンクもふもふ卿、GJでした!
詳細なあらすじの簡潔っぷりにまず吹いたw
エクスライアニャー、いいのか!? 最強の剣、それでいいのか!?
ナイトオブライアニャ、怖っ!
何だこの集団はwww 地面を嗅ぐなよwww
確かに真面目に馬鹿だ、ギャグのようでギャグではない、嘘偽りないね。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
POPPOです。
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」 (中編3)
を投稿したいと思います。
スレが設定を含めると15くらいなので支援お願いします!
187 :
POPPO:2009/02/09(月) 17:56:58 ID:eXt0A6ea
「ふあはぁ〜」
アッシュフォード学園中等部の廊下。一人の中学生が空を見上げながら、大きなあくびをしていた。日差しをまともに受けながら目に涙が浮かぶ。
その生徒に話しかける二人の女子生徒がいた。同じ中等のピンクの制服を着た生徒。
小柄で金髪の三つ編みをした少女と茶髪で溌剌とした少女である。
「リリーシャ。また夜更かし?いい加減にしなよ。肌荒れるよ?」
「腕、そこにつけないほうがいいわ。埃つくから」
「わかってるわよ。昨日、ちゃんと拭いておいたから。掃除当番として」
「流石は天才。抜け目無いね」
「どういたしまして」
リリーシャは窓に寄りかかり、二人の友達とは目を合わさずに言った。
彼女のその態度を見た金髪の眼鏡をかけた少女、アンジェリナは両手を腰に当てて、困った顔でノエルに言った。
「ねえ、何とかしてよ、ノエル。最近ずっとこんな感じなのよ。さっきの授業だってまるまる寝てたし…」
「マジで?ブレンメ先生の授業でしょ?何で外に出されないのさ」
「…一度、リリーシャだけに特別な試験受けさせて、満点取られちゃったからだよ。『これが出来たら、お前の素行には口を出さん』なんて言ってたから、先生、何も言えないの」
「嘘!?それ初耳だよ!リリーシャ、やるねえ!」
「…どういたしまして」
茶髪の体育会系の女の子、ノエルはその話に目を輝かせていた。それを見た金髪の小柄な少女は目を吊り上げて咎めた。彼女の三つ編みと豊満な胸が揺れる。
「もうっ!そんなこと言わないでよ、ノエル。リリーシャがつけ上がっちゃうじゃない!リリーシャみたいな『問題児』は一人で十分なの!」
「それは手厳しいなぁ…」
そのやり取りを聞いていた青髪の少女は、空から目を離し、ようやく二人の友達の方に目を向けた。琥珀色の瞳が彼女たちの目を捉えた。
「…ねえ、ノエル。『問題児』ってところは否定してくれないの?」
188 :
POPPO:2009/02/09(月) 17:58:06 ID:eXt0A6ea
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」 (中編3)
私、アンジェリナ、ノエルの3人が中等部3年生の廊下に戻ってきた時、中等部の職員室の前で人だかりが出来ていた。それを見た3人は人ごみの中に入って行った。
ノエルは人の群れを分けて。
アンジェリナは人の群れを潜って。
私はノエルの後ろを歩いて。
そして、ようやく目的のものに目にした。三者三用の反応があった。
ノエルは納得した顔で。
アンジェリナは口を横一文字に結んで。
リリーシャは平然とした顔で。
「おおー。またか」
「うう。くやしい!」
それは先々週に行われた学科試験の結果が張り出されていた。
一学年1000人単位の学生数を誇るアッシュフォード学園で、上位50名のみが各学科の点数と順位が発表される。まだ、答案は個人には戻っていないが、成績優秀者のみは先に知ることができる上に、皆から受ける評価も良い。
そこで3人が注目したのが、
2位 リリーシャ・ゴットバルト
3位 アンジェリナ・ウッド
という名前と順位である。
「一位のゴールズはともかく、今回もアンジェリナはやられたか」
「何で!?何でリリーシャに勝てないの!?私」
「…あんまり興味無いんだけど」
「ゴールズは勉強ばっかしてるから分かるんだけど、リリーシャは…」
「私、リリーシャが真剣に勉強してるとこ見たこと無い」
「だよなぁ」
「ですよね」
うんうん。エリア11に来てから学校の勉強まともにやった試しがないわ。だから私は素直に返事をした。だってそんなもの小学生の時に終わったわ。
「認めるのかよ!」
すかさず突っ込むノエル。それを見越して私は言った。
「あーあ。じゃあ1位にノエル・パッフェンバウアーっていう名前が載ったら私たち最強トリオなんだけどなあ」
「うぐっ!」
「でも今回はそれなりに良かったはずだよ?ノエル。私の勉強についてきてたし、100番以内には入ってると思うんだけど…」
「とりあえず名前が載ることからね。それじゃあ教室に戻りましょ。いくら見たって結果は変わらないわ」
「…リリーシャ。それ、結構心に刺さるものがあるんだけど…」
そうかしら?ゴットバルト家では当たり前よ?
結果が全てだもの。
189 :
POPPO:2009/02/09(月) 18:03:22 ID:eXt0A6ea
私は自分の席に着いた。すでに教科書は机に置いているので準備はこれでいい。授業がつまらなければ、これからの活動についてのことを思案していればいい。
なんせ私が三日三晩シミュレートしているのに全く良い案が思い浮かばない。どうしてもこのギアスについて知るためには…
「ちょっと、リリーシャ。聞いてるの?」
「…え。あ、ごめん」
本当に聞いてませんでした。何かしらノエル。
「私さ。ルルーシュ様ってやっぱり格好良いと思うのよねー」
…また始まったか。ノエルの美形好きが。たまについて行けないのよね。ノエルのミーハーぶりには。
「確かに格好良いと思うけど、ルルーシュ先輩って彼女いなかったけ?生徒会のメンバーの中に…」
「というかノエル。貴女、彼氏持ちなんだから、そういうのは控えめにしたほうがいいと思うわ」
「まあまあ。それはそれ。これはこれよ。カーティスも私のこういうところも許してくれてるし」
カーティスというのは高等部1年の乗馬クラブの先輩で、ノエルの彼氏。彼も線の細い美形で、ノエルにしては上々の『獲物』だった。
…言い方が不適切だったかしら。
でも体育会系の少年女ですもの。
ノエル。その彼氏。大切にしなさい。他の男に目が向いている女を許すなんて、なかなかの器を持ってる男じゃない。
「でさ。先週、私見ちゃったんだよ。ルルーシュ様とライ様が二人並んで笑いながら歩いているところを。もうっ、ホンっトに絵になるっていうか、格好良すぎじゃない!?」
「どっちも彼女持ちじゃない。私、聞いたよ。ライ様ってあのカレン先輩と付き合ってるんだって」
へぇ。それは絵になるわね。『銀の王子様』に『病弱なお嬢様』か。
思春期って大変ねぇ。
あ、私もか。年齢的に…
高等部の話はよく耳にする。
アッシュフォード学園のプリンスといえばルルーシュとライ。
アッシュフォード学園のプリンセスといえばカレンとミレイ。
それぞれに正式なファンクラブがある。
ノエルはアッシュフォード学園の二人のプリンスのファンクラブに入っている。活動内容は詳しくは知らないが、イベントがあるたびに応援や写真の展示会などをしていたことを見たことがある。
私の目から見ても、この4人は確かに美男美女だ。その上、成績もかなり優秀だと聞いている。
ルックスに頭脳。そして人受けが良い性格。これさえ持ちあわせれば、人目を惹くには十分だろう。
その美男美女が…
「あれ?それって大事件じゃない?だってあのライ先輩とカレン先輩でしょ?ファンクラブ解散の危機以前に、私、その話初耳なんだけど…」
先ほど浮かんだ疑問をそのままノエルにぶつけてみた。
ノエルは私の前に立っていて、顎に手をあてた。隣にはアンが耳を立てていた。
「それがねー。事実確認がまだなのよ。ルルーシュ様はシャーリー先輩と付き合っているって言うのは公言されてるんだけど、ライ様とカレン様の仲はまだ噂でしかないのよね。
校内ではあまり見かけないのよ。二人が一緒なところを。でも生徒会室に入っていく時の二人が話してるところを見ると、ねぇー…」
「?何なの?」
「雰囲気が、もうヤバいらしいのよ」
何がヤバいの?
私とアンは首をかしげた。その時、アンの豊かな胸が揺れて、私の心を抉ったのは内に秘めておく。
「なんか、こう、幸せーって感じ?カレン先輩がライ様だけに気を許してるっていうか、そんな感じ」
「それってデキてるでしょ。絶対」
「それがファンクラブのいたいところなのよねー。それを事実として認めたくないっていうか。だって憧れの二人の王子様が盗られちゃうのよ?なんかくやしくない?」
「…それってただの僻みじゃないかな。ファンクラブだったらアイドルの幸せをお祝いしようよ」
高等部だけではなく中等部にもこうして噂が広がるくらいなのだ。人気も半端じゃない。モテるって大変よね。
まあ、私には関係の無い話だけど…
ノエルの話を聞き流して、私は午後の授業も聞き流した。
それよりも私は難解な問題に直面していた。
190 :
POPPO:2009/02/09(月) 18:06:03 ID:eXt0A6ea
放課後。
私は何時の間にか。私はトウキョウ租界のリニアモーターカーの駅前に来ていた。そこに何処からともなく現れたX.X.の声によって私の思考は止まった。
今日の服装は青のプリントシャツにグレーのジャケット。それに少し短めの黒のズボン。
遊び盛りの子供のような服装だが、整った顔立ちと可愛らしい瞳は、まだまだあどけない少年そのものだ。
前に着ていた服は外に出歩いていたら、確実に目立つ服だったので、休日に私がX.X.を見繕って買い与えたものだ。
その時、男ものの服が意外に高いことが分かった。女服は面積が小さいからコストが安いのかしら?などと考えていたことを覚えている。
私のスカートを引っ張りながら、X.X.は無垢な顔で私を見上げている。
ごめん。むちゃくちゃカワイイわ。貴方。
「ねえ、リリーシャ。シュークリーム買いに行こうよ」
「そういうと思って、ほら。6つあるわよ」
と、これまたいつの間にか鞄の中に入れていたシュークリームの箱を手渡した。
それを見たX.X.の顔が綻ぶ
「わーい。ありがとう!リリーシャ」
いきなり箱を開けて、シュークリームを口に頬張った。幸せそうな顔をして、モフモフと食べるX.X.
これを見れただけでも買ってきた甲斐があったというもの。精神的にはお釣りがくるくらい。
「ほら、ついてるわよ」
一瞬、本来の目的を忘れそうになったが、X.X.の柔らかい頬に付いたクリームをふき取りながら、私は時計を見た。
「ねえ、今日は何処に行くの?」
「チバまで」
そう言って、私はX.X.の手を取って、改札口を通った。リニアモーターカーを使えば僅か一〇分で着いてしまう距離だ。
トウキョウ租界とは全く異なる荒廃した町並み。七年前の戦争の傷跡が今も生々しく残っている。崩壊したビルの数々。倒れた電柱と、横倒しになっている高速道路。実際、他のゲットーと何の変わりも無い。
チバゲットーまだ足を運んでみたけど…
やっぱり何も無いわね。黒の騎士団の支部があると分かったのだけど…
廃墟と貧困層の人間ばかり。治安も植民地の中で最低ランクだ。ここに来るまで3人の死体を見た。私もX.X.も気にしていなかったけれど、ここではそんなに珍しいことではない。
制服を着ている私は鞄を持ったまま、比較的全域を見渡せる瓦礫の山の頂上に腰を下ろしていた。
ひんやりとするコンクリートが意外に気持ちいい。そこに顎に手をついて目ぼしい個所を探していた。隣で腰を下ろしているX.X.は私に声をかけた。
「リリーシャ。大丈夫?あんまり雰囲気が良くないよ。ここ」
「大丈夫よ。私にはギアスがあるから。それに歯向かう奴は殺すわ。まだまだこの力について知りたいことがあるし」
私はプリントアウトした地図に蛍光ペンでチェックを入れ、腰を上げた。
「まずはここの6点ね。最終便に間に合うようにここを出るわよ。複数の人間に襲われたら生き残る自信無いわ」
「それは大丈夫だよ。リリーシャ。僕が決して君を死なせはしない。僕の願いを叶えてくれるまで…」
X.X.はそんな言葉を口にした。その時の彼の顔は、少年がする表情では無かった。
私は意外な言葉に思わず声を漏らした。
「へえ、それは頼もしいわね」
そして、5つ目のチェックポイントを調べ終えた頃、
急に外が五月蠅くなった。
多数のランドスピナーの音が塹壕の中に響き渡った。
私の体中から嫌な汗が流れ出る。
「不味い!ここは戦場になるわ!X.X.!早く離れるわよ!」
「え?え?何この音?」
「ナイトメアフレームが走る音!しかも、ここからそう離れていない!」
「ナイトメアフレーム?」
首を傾げるX.X.を見て、私は少し頭痛を覚えた。
そうか。X.X.は情勢に疎かったんだ。
だが、ここで彼にイチイチ説明している暇は無い。いくら彼が守ってくれるとしても、生身の人間がKMFに勝てるわけがない。それに私のギアスは肉体が見えないと効果が無いので、正面からの太刀打ちは不可能だ。
ブリタニア軍に助けを求めるのもいいが、ゴットバルト家や友達にこれ以上迷惑をかけたくないのでそれは最後の手段だ。
とにかく、ここでホトボリが冷めるまでじっとしておくのが妥当かと思い、身を屈めて外の気配を探っていたが、
191 :
POPPO:2009/02/09(月) 18:11:20 ID:eXt0A6ea
突如として、一台のバイクがこっちの塹壕に突っ込んできた。
「うわっ!?」
一瞬、自分がライトで照らされて心臓が跳ねたが、そのバイクは転倒し、乗っていた女性は目の前に転がってきた。腹部から大量の血が流れていて、汚れた土を赤く染める。
リリーシャは思った。
このイレブン。もうそんなに長くない、と。
背中にあったトランシーバーから大きな声が聞こえてきた。静かな塹壕の中で、バイクのエンジン音とその声だけが響き渡った。
『猿渡!返事をしろ!……くそっ!五十嵐!猿渡が応答しねえ!!』
『渡辺と佐々木は早くガン・ルゥに乗れ!ブリキのナイトメアに踏みつぶされるぞ!』
『ちくしょう!昨日は黒の騎士団で、今日はブリキ野郎か!つくづくツイていないわね!』
そのやりとりを聞いていた私は、ふと疑問を感じた。
(え、黒の騎士団に襲われた?イレブン同士なのに?)
倒れている女性に近寄った。X.X.は腰をかがめて女性の顔を見ていた。
「大丈夫ですか?」
傷痕を見ようと仰向けにしようとした時、X.X.は私の手を掴んだ。意外に強い力で。
「そろそろ死ぬから。何もしない方がいいよ」
X.X.の辛辣な言葉に私は声を荒げた。
「ちょっと!X.X.!それどういうこと!?見捨てろって言うの!?いくらイレブンだからって怪我人を見捨てたら、ゴットバルトの名が泣くわ!!」
「そういうことじゃないよ」
少年は冷たい目で私を見つめた。その時、私の背筋に悪寒が走った。
「リリーシャにはこの人間を救うことは出来ない。そう、言ったんだ」
私は、今、X.X.が何を考えているのか分からなかった。ただ、分かっていたのは、彼の言葉は紛れも無い真実で、彼の方が現実を見ていた。
ただそれだけだった。
急に、頭の中が沸騰しそうなほどの怒りが込み上げてきた。
(無力?無力ですって!?この私が?リリーシャ・ゴットバルトが!?)
理屈で分かっていても、理性が抑えきれなかった。手に力を込めた。爪が皮膚に食い込むほど強く。
耳に響く声を遮るため、彼女の腰に付いていた変声機付きのトランシーバーをはぎ取り、スイッチを切った。
もう、彼女に反応は無かった。
「リリーシャ。どこに行くのさ?」
「外よ!これ以上ここに留まってたら巻き込まれるわよ!それにバイクに乗ったら狙い撃ちされる危険がある!何が何でもここを抜け出すわ!付いてこないと置いてくわよ!?」
私は鞄を持つと、X.X.を無視して、そのまま光が差す方向に出た。
私にしては無鉄砲で無計画な行動だった。
192 :
POPPO:2009/02/09(月) 18:18:14 ID:eXt0A6ea
だから、外に出た途端、当たり前のことが起こった。
耳を劈くようなランドスピナーの音と共に、紫色のナイトメアが急接近してきた。
その光景に、血が上ったままの私の頭は急激に冷めた。
「サザーランド!?」
一機の第5世代型ナイトメアフレーム、サザーランドが私の前方に現れた。
『おいっ!そこの学生!こんなところで何をやっている!?』
ナイトメアのスピーカーから流れる音声が私の心臓を刺激した。
だが焦ってはいけない!ここは冷静に対処しなければ…
「あ、あの、パパが帰ってこないから、私、わた…『わぁー!!あれがナイトメア!?すごいすごーい!おっきいね!ねえねえ!リリーシャ!あれ乗りたい!!』
「ちょっと黙ってなさい!」
ああ!私の迫真の演技が!『父親を探して迷子になりました作戦☆』がっ!!
私たちの声を拾ったのだろう。ハッチが開き、中から軍服を着た男が出てきた。
「その制服、アッシュフォードか。学生証はあるか?」
「は、はい」
その時だった。
頭の中で絡まっていたものが一つの線となった。そして…
私の心に悪魔が宿ったのは。
そう、今の状況を分析し、この危機を絶好の機会に変える閃きが頭に浮かんだ。
私の知識と。戦略と。このギアスというカードがあってこその道を。
私は鞄から学生証を取るフリをして、髭が濃い男の装備をチェックした。銃は右のホルスターに入ったままだ。
その様子だと、私を警戒していない。
「あ、ありました。は、はい。これです」
私は目の前にきた軍人の手に触れた。
それが悪魔の手だとも知らずに、彼は私の手を見た。
琥珀色の瞳に赤の紋章が輝いた。
私は言葉を紡ぐ。
「ねえ、軍人さん。貴方のKMFの番号。教えてくれる?」
「ああ。認識番号FG88D6T43だ」
「ありがとう」
そう言って私は手を離し、サザーランドへ乗りこんだ。コクピットへと、X.X.と共に上げるロープに掴まり、スイッチを押した。
「…ん?私は何を…なっ!貴様、何を!?体が!?」
「ありがとう。軍人さん。ではさようなら」
そうして、左目の赤の紋章は羽ばたいた。わたしは心の中で『命令』する。
『その銃で自殺しろ』と。
「う、うわっ!手が勝手に、や、やめろ!銃を持って、私は!」
パンッ!
軍人が崩れ落ちるのを目にした私は、ハッチを閉じた。
193 :
POPPO:2009/02/09(月) 18:24:44 ID:eXt0A6ea
「さて、と…」
モニタに表示された他のサザーランドの総数と編成を確認した。
「リリーシャ。これ、使えるの?」
私の膝の上にいるX.X.が問いかけた。
「子供の頃にちょくちょく遊びで乗ってたから大丈夫よ。兄の部屋にあったナイトメアの操縦書もちゃんと読んでるから」
先ほど教えてもらった番号を入力し、待機モードになっていた機体のセーフティを解除した。その瞬間、各アタッチメントと装備の情報が表れ、『ALL CLEAR』の文字が表示された。
私は操縦幹を握る。コクピット内に男特有の汗の匂いが籠っているが、今はそんな事を気にしている場合では無い。
もう、私は踏み出してしまったのだから!
「ここから離れるわよ。少し揺れるから、私にしっかり捕まっときなさい!X.X.!」
「うん!でも、ナイトメアに乗れるなんて、ワクワクするなー」
私の腰に手を回してしっかりとひっついてきた。一瞬、X.X.の温かさに顔が真っ赤になったが彼には気づかれていないようだ。
さっきの怒りはどこにいったんだろう?
そんなことを考えながら、足のペダルを踏み、そのまま直進した。
ググッと全身に後ろに押されるようなGがかかる。久しぶりに感覚に私は少し緊張した。
「この無線機の周波数は、と」
私は先ほど奪ったトランシーバーをサザーランドの通信周波数をリンクさせた。
一〇〇メートルも離れていないビルの5階に潜り込んだ。
そこでナイトメアを止め、トランシーバーから流れてくる声を聞いて、彼らの状況を把握する。
モニタに表示されている熱源反応と総数。そしてナイトメアの性能。さらには指揮官の戦略と一個人としての駒の優劣さ。どれをとってもイレブンに勝ち目は無い。
しかし、イレブン側に鬼才の指揮官がついた時、その戦局は大きく覆ることとなる。
「ガン・ルゥを北からG1、G2、G3、G4、G5。同じくナイトポリスをN1、N2、N3、N4とする!死にたくなければ私の指示通りに動け!」
『誰だテメエは!?』
予想通りの応答が返ってきた。
しかし、この集団に一人、そこそこ頭の切れる人間がいた。
そいつが私の意図を組み取れたならば、この集団は使える価値がある!
「G2、G3、G4はそこで待機!ナイトポリスは私が指定したポイントにつけ!G1は最大速度でポイントF5からF6へ突っ走れ!G5はポイントF1で待機しろ!」
さあ、どうだ!?
数秒の沈黙の後に、それぞれの人間から罵声が聞こえた。
そして、一人の男が他のメンバーを大声で制した。静寂が生まれた後、静かに一人の男は告げた。
『…いや、この指示に従おう』
かかった!!
『何言ってんだ鬼頭!相手は素姓も知れない奴だぜ!?』
『さっき奴が言った配置。隙がない。陽導と奇襲も兼ね備えている。腕は確かだ』
『…分かりました。佐々木さんがそう仰られるなら、そうします!』
『おいっ!熊谷!それでいいのかよ!?』
『五十嵐がやられたんだ!指揮官がこちらにはいない。この声に従おう。この口調振りからして、指揮によほど自信があるらしい』
『……俺は死にたくねえからな!』
『誰だってそうさ!』
その言葉に私は口がいびつに歪むのが止められなかった。
『指示を仰ぎたい』
支援
支援
196 :
POPPO:2009/02/09(月) 18:31:48 ID:eXt0A6ea
(さて、では始めようかしら)
私は一息入れて、呼吸を整えた。そして、
命令した。
「全軍に告ぐ。敵の総数は全部で14機。2組行動(ツーマンセル)の典型的な作戦行動
だ。敵の目標はこちら側の殲滅。
心してかかれ!
ナイトポリス!G1通過後、11秒後に北北東に一斉発射!
撃墜後、西北西にあるビルに上ってN1,N2は待機しろ!
また残りの2機は60秒以内にポイントA9に急行せよ!」
そして、11秒後。
4機のサザーランドが彼らの横を何の警戒無しに横切ろうとした。
それをモニタで視認した男たちは驚嘆した。
「うわっ!本当に来た!」
「う、撃てっ!!」
「一気に4機も!」
ババババババババババッ!!
数秒間にわたる銃撃が行われ、無警戒だったサザーランドは銃弾の雨を一方的に浴びた。サザーランドのコクピットが炎上した後、ナイトポリスは二手に別れ、指令された配置についた。
4機のサザーランドに『LOST』と表示された瞬間、私は次の命令を下した。
私の頭の中では黒の『ビジョップ』が白の『ルーク』を捉えていた。
「ナイトポリスではサザーランドの武装は使用できない。無視しろ!
そしてG5!スラッシュハーケンをビルの柱に固定したまま、10秒後にその柱を破壊しろ!
N1、N2は21秒後に南から来るサザーランドに一斉射撃!」
「わ、わかった」
「ヒット」
リリーシャはそう呟いた。目の前でビルの崩壊を目にするとともに、モニタで2機のサザーランドに『LOST』の文字が表示された。
その瞬間、私の心に言い知れぬ黒い達成感が込み上げてきた。思わず声が出てしまう。
(くっくっく。ここまでうまくいくなんて…やるじゃない!リリーシャ・ゴットバルト!)
整った私の容姿に、歪んだ笑みが刻まれる。
だが、頭は氷を脳に直接突っ込まれたような冷静さで、戦況を客観的に分析していた。
残る機体は8機。私が乗っている機体を含めれば、テロリストのナイトメアと同数。増援が有る無しに、次の行動は自ずと見えてくる。
そして、ブリタニアの指揮官がブリタニアらしければブリタニアらしいほど、行動は一つに絞られる。
戦場の臨場感は少し名残惜しい気がしたが、何事も引き際は肝心だ。これが物事の勝敗、生死を分けることを私は知っている。
「では、最後の仕上げに掛かりますか」
そう言って、体に湧き上がる熱を抑えながら、リリーシャは一つのボタンを押した。
この時、X.X.の柔らかい感触ですら、彼女の興奮を抑えることが出来なかった。
「G1は南南東の大通りを抜け、最速でそのまま撤退しろ!他は60秒後までそこを動くな!G2から撤退ルートを指示する!
では――――――――」
現場から5キロほど離れたブリタニア軍のナイトメア収容車の司令室に大きな声が響き渡った。
「司令官!先ほどブリタニア人の救助を行っていたサザーランドの反応がありました!
それが今、敵機に囲まれていまして…」
「何だと!?今すぐ救援に向かわせろ!全軍を上げてだ!植民地での民間人の犠牲は軍の恥だぞ!」
「イエス、マイロード!」
「全軍に告げる!ポイントD7で民間人を保護した機体を救出せよ!繰り返す!ポイントD7で民間人を保護した機体を救出せよ!」
マイク越しに伝令担当者は全軍に通達した。すぐに了承の返事が騎士から司令室に順々に響き渡った。6機という予想外のナイトメアの損失に、多少の冷静さが失われていたのかもしれない。
全軍を集中させるという事が、どれほど戦略的に愚かなことであるということが。
その命令が命取りとなるとも知らずに…
支援!
198 :
POPPO:2009/02/09(月) 18:33:54 ID:eXt0A6ea
「こちらE5!救助に向かっていた機体を視認しました。しかし、応答がありません。
おそらくコクピット内に救出者と共に乗り込み、熱源反応を感知されないために起動していないものと思われます。
至急、増援をお願いします。テロリストは我々の間を通って撤退していきます!追撃の準備を!」
『分かった。全軍は一秒でも早い救助と保護を頼む』
「イエス、マイロード!」
そう告げると、8機のサザーランドは、ビルの一階に停止したナイトメアに接近した。
そのKMFを囲むように前方向警戒しながら、サザーランドは陣形を取っていた。
『おい。E2!応答しろ!全軍を上げて民間人の保護をしろと命令されている。早く起動させて撤退するぞ!
繰りかえ―――――――――――――』
それが、その軍人の最期の言葉となった。
ドン!!!
突然、サザーランドは大爆発を起こし、周囲にいたサザーランド8機を巻き込んで、巨大なイリュージョンを作り出した。
眩い光と大きな音が、周辺の空気と大地を震わせる。
後方200メートル先で起こった爆発を眺めている、バイクに乗った少女がいた。彼女の背中に抱きついている白髪の少年が大きな声を上げた。
「うわー!耳に響くこれー!!」
ヘルメットを着けず、ゴーグルだけかけた青い長髪を靡かせる少女は、ゴーグルを額まで上げ、その光景を歪な笑顔で見つめていた。
「流石はサクラダイトね。あの大きさでここまでとは…」
その時、変声機を巻きつけたトランシーバーから声が聞こえた
私はトランシーバーの音量を上げ、耳元に近づけた。
何事か、とこっちを見つめるX.X.を私は手で制した。声色の低い大人の声が耳に入った。
『さっきは助かった。礼を言う』
「何、当然のことをしたまでだ」
『貴方の名前を聞かせてくれないか?俺は鬼頭。『新日本党』のリーダーだ』
(―――――――――――――――っ!)
私は喉元にまで込み上げてくる笑いを必死にこらえた。
『新日本党』
それは現在の『行政特区日本』に反旗を翻しているテロリスト集団。数度、TVでその名前を耳にしたことがある。黒の騎士団が行政特区日本に参加したことで産声を上げ、今はブリタニア、イレブンからも敵視されている孤立無援の弱小組織だ。
『知識』、『知略』、『新日本党』。そして『ギアス』
このピースが一つの未来を形作った。私と、X.X.の『願い』を叶えられる未来が。
ここまで全て、私の計画通り。
この時の私の顔はどうなっていたのだろう。いやに口元が引きつっていたのを覚えている。
X.X.はこの時、私の顔を見上げながら何を思っていたのだろう。
想定通り、私が用意していた言葉がある。
『私』の計画の第一歩として。『彼』の計画の第一歩として。
声が上ずらないように注意して、私は『宣言』した。
「私は――――――――――――――――――――――――――――――――――『ゼロ』」
これは私たちの物語の始まりを告げる、悪魔の言葉だった。
199 :
POPPO:2009/02/09(月) 18:34:45 ID:eXt0A6ea
13時間後。
シズオカにある『黒の騎士団』の本部。
『イザナミ』と呼ばれる軍用基地。
元はブリタニア軍の基地だったのだが、行政特区日本設立と同時に黒の騎士団に譲渡された土地である。内部も大幅に作り替えられ、幹部ですらその全容は掴めていない。また、ナイトメアの総数は以前のブリタニア軍の所有していたナイトメアよりも遥かに凌ぐ。
そして、厳重にセキュリティが施された大きな一室に、二人の少年はいた。
一人は黒いマントを羽織り、仮面を外した『黒の騎士団』の総帥。ルルーシュ・ランぺルージ。
もう一人はゼロの右腕であり、実質的支持はゼロに並ぶNr.2の実力者。ライ。
二人の若き王は、パソコンに表示された戦況を見ながら話を続けていた。
「これが話題になっていたチバでの作戦か…」
「これはチェスそのものだね。それに、かなりの腕前だよ」
「ああ。それに面白いな。この指揮官」
「確かに、発想が柔軟だ。自分を『キング』に見立てていない。おそらくこれは『ナイト』かな?」
「まだまだ甘いが、成長すればこいつは化けるぞ」
「…僕が行こうか?」
「いや、お前はギニア共和国との交渉に専念しろ。第十八支部の近くだ。ここの責任者の今泉にスカウトさせよう。勿論秘密裏にだ。
しかし、まだゲットーにこんな人材が埋もれていたとは…日本という国は面白いな」
「…不謹慎だぞ。ルルーシュ」
「分かってるさ。ライ」
軽口を叩きあいながら、ライとルルーシュはモニタを感慨深く見つめていた。
しかし、この事件こそが、後に二人に訪れる大きな悲劇の序章だったとは、誰も知る由は無かった。
支援
支援
ID:q4TJZdl/さん
ID:XTbRRIrkさん
支援ありがとうございます!
「中編3」終了です。
今からリリーシャ、X.X.、アンジェリナ、ノエルの設定を投稿します。
『保管車トーマス』さん
設定を載せる時、キャラ一人ひとりの間隔は均等に配置してくれないでしょうか。
どうかお願いします!
203 :
POPPO:2009/02/09(月) 18:42:58 ID:eXt0A6ea
リリーシャ・ゴットバルト
Age; 15
Sex; female
Height; 172cm
本編の第二の主人公。
ある日、X.X.と名乗る不老不死の少年と出会い、彼の望みを叶える代わりにギアスという『王の力』を手に入れた少女。
アッシュフォード学園中等部の3年生であり、ジェレミア・ゴットバルトを兄として持つ。
黒に近いダークブルーの長髪、透き通るような白い肌に琥珀色の瞳。高校生と言われても分らないほどの長身。
美少女の部類に入る容姿であり、それに加えて、洗練されたスレンダーな体格であるが、本人は胸の発展途上に危機感を覚えている。
事実、平均サイズよりも下回っている。
中等部のピンク色の制服がコスプレにも見えると、ノエルやアンジェリナに指摘されたことがある。
何事にも熱くなれず、めんどくさがり屋で授業も休みがち。
しかし、生まれ持った優秀な頭脳で成績は常にトップクラスであり、抜け目のない性格なので、あらゆる意味で『問題児』の女子生徒。
実はチェスが大の得意であり、エリア11に来てからも賭けチェスで無敗記録を更新中。
親類一同がブリタニア軍に従事する一族であり、そんな環境で育った彼女は幼い頃から軍事知識に親しんでいたので、戦略、策略能力は異常なほど高い。
彼女は兄に対して冷ややかな態度を取り続けていたが、それは愛情表現の裏返しであり、約一年前に起きた兄の『オレンジ事件』の真相を秘密裏に調べていた。
X.X.との出会いにより、彼女の運命は大きく変わっていくことになる。
彼女のギアスは視覚による「絶対操作」の能力。
204 :
POPPO:2009/02/09(月) 19:01:43 ID:eXt0A6ea
X.X.(エックスツー)
Age; ???
Sex;???
Height; 125cm
リリーシャが命に危機にあったときに出会った少年。不老不死の肉体を持っている。
白の長髪で、髪を結えている黒のリボンを取れば肩までかかる髪であり、非常に整った容姿と、左右非対象の綺麗な瞳は女の子にも見える。
目覚めてから日がそれほど経っておらず、現代の時世に疎い。
外見だけでは無く、言動や態度も幼いが、その心の内はいかに…?
205 :
POPPO:2009/02/09(月) 19:02:25 ID:eXt0A6ea
アンジェリナ・ウッド
Age; 15
Sex; female
Height; 154cm
リリーシャのルームメイトであり、良き理解者でもある中等部3年の女の子。
金髪でいつも三つ編みをしており、身長に不相応な巨乳とメガネに隠れる緑色の瞳がトレードマーク。
友達思いであり、内気な外見とは裏腹に結構気が強い。怒った時はリリーシャでもたじたじになるほど。
真面目な性格で勉学にも真剣に取り組んでいるが、成績はリリーシャに一度も勝ったことが無く、世界の不条理に少々やるせなさを感じている。
両親は男爵の地位があり、政庁に勤める文官である。
206 :
POPPO:2009/02/09(月) 19:03:12 ID:eXt0A6ea
ノエル・パッフェンバウアー
Age; 15
Sex; female
Height; 165cm
ショートカットの茶髪で、赤い瞳を持ち、心身ともに体育会系の活発な少女。リリーシャやアンジェリナのクラスメイトであり、同じ寮生である。陸上部の副部長であり、同級生や後輩に人気がある。
顔に似合わず線の細い美形が好みであり、乗馬クラブの上級生、カーティスと付き合っているが、美形のミーハーぶりにはリリーシャやアンジェリナも少しついていけないところがある。
父親はエリア11有数の企業の社長であり、貴族ではないが財力は平民と比べると裕福な方。
今回の投稿はここまでです。
支援ありがとうございました!
感想の書き込みお願いします!
またまた申し訳ありません。
『保管者トーマス」さん。
193スレのテロリストの会話
「佐々木」→「鬼頭」
の誤字修正、
お願いします…
>>202 POPPO卿、GJでした!
よくあるのほほんとした日常の後の戦闘。
ギアスを使い、KMFを奪った相手を殺す辺りが徹底していますね。
まぁ、相手が記憶を持っている以上当然か。
戦いの後、ゼロを名乗る彼女の計画は如何にして遂行されるのか。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
皆様、投下お疲れ様でした。21:50頃から投下します。
本文は2レス分です。
では投下します。
作者:余暇
タイトル:春の足音
カップリング:ライ×ナナリー
本文は2レス分、そのあとあとがき1レスがつきます。
『春の足音』
ある日、冬の寒風が吹き抜ける租界の中を僕は歩いていた。
「今日も寒いな、雪でも降ってくるんじゃないか」
薄い灰色の雲が空を覆い、木の葉が冷たい風に吹かれて舞っていた。
道ですれ違う人たちも、みんな厚着をしてコートの襟を立て、寒さから逃げるように早足で歩いている。
「みんな寒そうだな、僕も早く買い物を済ませて帰ろう。ナナリーと折り紙をする約束もあるし」
僕は少し急いで買い物を済ませ、クラブハウスへと戻ることにした。
「ライさん、こんにちは」
買い物から戻った僕がナナリーの部屋の扉を開けると、僕の足音に気づいた彼女が声をかけてきた。彼女のそばにいた咲世子さんも、僕に一礼する。
「こんにちは、ナナリーに咲世子さん」
「ライ様、外は寒かったのではございませんか?すぐに温かいお茶をご用意いたしますので」
「ありがとうございます、咲世子さん。助かります」
咲世子さんは台所へ向かい、僕はナナリーの向かい側の席に座った。
「やはり外は寒いんですか?ライさんの声、少し震えています」
ナナリーが僕に尋ねてきた。
「わかるかい?今日の租界も風が冷たくて、手が凍えるかと思った」
「そうですか、それは大変でしたね」
「ここの冬は大変だな。風が冷たくて手はかじかむし、厚着をしないと外に出られない」
僕には記憶がないから、元いた場所の冬がどんなものかは知らない。だがこの土地の冬に対しては、大変だという印象を持っていた。
「確かにここも寒いと思います。でもお兄様のお話では、ここからもっと北の地方では雪がすごく降って、生活に支障が出てしまう所もあるそうですよ」
「へえ、そんなに雪が降るのか。そこに住んでいる人たちは大変だろうな。ところで、ナナリーは冬は好きなのか?」
僕はナナリーに尋ねてみた。この寒い季節を彼女はどう思っているのか、知りたくなったのだ。
「私ですか?私はどの季節も好きですよ。春は小鳥たちが楽しそうに歌って、花の甘い香りもしますし、夏はお日様が元気で、日陰の風が気持ちいいです。
秋は夜になると虫たちが綺麗な鳴き声を聞かせてくれますし、冬は風に吹かれる木の枝の音を聞いたり、ひんやりした空気を頬に感じるのが好きです」
「へえ、ナナリーはどの季節もすごく楽しんでいるんだな」
「ええ、楽しんでいますよ。それとこの時期には、もう一つの楽しみ方があるんです」
「楽しみ方?」
すると、ナナリーは笑って答えた。
「実は、冬でも少しだけ春を感じることができるんですよ」
「冬なのに春を感じる?寒いだけじゃないのか?」
「確かに、冬になってしばらくの間は寒さが厳しいです。でも年が明けてしばらくすると、次第に寒さも緩んで、少しずつ春を感じられるようになるんですよ」
「へえ、そういうものなのか」
そこへ、咲世子さんがお茶とお菓子を持って戻ってきた。
「ナナリー様。明日は風もやんで、穏やかに晴れるそうですよ」
「そうなんですか?それは良かったです、きっと街を歩く人たちも喜びますね」
「それに明日なら、春を感じられるかもしれません。せっかくですから、ライ様をお誘いして外をお散歩されてはいかがでしょう」
すると、ナナリーの顔が華やいだ。
「それはいい考えだと思います!ライさんに冬の楽しみ方を知っていただくこともできますし。ライさん、明日一緒にお散歩しませんか?」
ナナリーが僕に尋ねてきた。明日は今日ほど寒くはないのか、それなら散歩をするのもいいかもしれない。それに、彼女が言う冬の楽しみ方にも興味がある。
「わかった。それじゃあ、明日の放課後は一緒に中庭を散歩しようか」
「ええ、そうしましょう」
その後、僕たちは咲世子さんが用意してくれたお茶を飲みつつ、折り紙を楽しんだ。
翌日の放課後、僕はナナリーの車いすを押しながら、中庭を歩いていた。風は昨日に比べて穏やかで、久しぶりに太陽が地面を照らしている。
「いい天気になって良かったな」
「はい、天気予報が当たりました。これなら、春が近づいてくるのがわかりますよ」
そう言うと、ナナリーは僕の方へ振り向いた。
「ライさん。目を閉じて、耳を澄まして遠くの音を聞いて下さい。風の音がいつもと違って聞こえますよ」
「ああ、わかった」
僕は彼女に言われたように、目を閉じて遠くの音を聞いてみた。
「あれ……?」
やがて僕は、今まで感じてきた冬とは少し違う感覚に気がついた。
頬に当たる日の光は柔らかく、そして温かい。どこかから吹いてくる風もいつもの突き刺すような感じではなく、僕を包むように優しく吹き抜けていく。
遠くで聞こえる木の枝が風に揺られる音も、すごく穏やかで、聞いていて心地良かった。
「すごく優しい感覚だ。日の光は温かくて、風も優しくて、木の枝が揺れる音も気持ちいい。明らかに冬とは違う」
「それこそ、春が近づいている証拠ですよ。『春の足音が聞こえる』とも言うそうです」
「へえ、春の足音か。面白い例えだな」
僕とナナリーは、静かに自然の音に耳を傾けた。温かい日の光と風に誘われ、土の中で寒さをしのいでいた生き物が目を覚ます日は近いのかもしれない。
遠くで揺れる木の枝にも新芽が芽吹き、蕾は花開いて、優しくて甘い香りがこの街を包むのだろう。
新しい季節を運ぶ使者の足音は、僕たちの近くまで近づいている。本当はまだ寒い冬なのに、春の予感が僕の心を躍らせていた。
「ありがとう、ナナリー。君のおかげで、春が近いことを実感できたよ。ここに春が来る日も、そう遠くはないんだな」
「ライさんに楽しんでいただけて、私も嬉しいです。それに、私も春の足音を聞くことができて、何だか春が待ち遠しくなってきました」
そう言うと、ナナリーはポケットの中から昨日折った桜の折り紙を取り出した。
「春になれば、この桜の折り紙のようなかわいらしい花が、たくさん咲くんですよね。私には見えませんけど、花の香りで一面に花が咲いていることはわかるんです。
今はそれだけでも楽しめますけど、いつか目が見えるようになったら、その…ライさんと一緒に桜を見たいです。ダメですか?」
顔を赤らめつつ、ナナリーが僕に尋ねた。僕は彼女の手を取り、優しく彼女に微笑みかける。
「もちろん、いいに決まっている。僕もナナリーと一緒に、桜が見たいんだ。今年は見られなくても、来年もそのまた次の年も、春は必ず訪れるんだ。
いつかナナリーの目が見えるようになって最初の春が来たら、一緒に桜を見よう。約束だ」
「はい!約束ですよ」
桜の折り紙を持つナナリーの片手に自分の手を添えながら、僕はもう片方の手で彼女と指切りをした。
僕たちを包むように優しい風が吹き、春の便りを租界中に届けていた。
以上で投下終了です。ちゃんとナナリーを書いたのは、今回が初めてでした。
けど、みんな長編とか長文が上手だなあ。自分みたいな短編書きには、憧れというか何というか。
けどこれが自分の特長だと思って、短編に精を出そうっと。
>>214 余暇卿、GJでした!
ほのぼのとした日常風景がいいですね。
冬に感じる春、春の近づく感じを触感で感じるライとナナリーがいいかんじ。
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
>もふもふさん
なんて詳細なあらすじだ。まずここで笑いました本編前に。
と思う間もあらばこそ始まるトンでも大作戦。
ライアニャ至上の集団怖っ
真面目にドタバタはギアスの醍醐味のひとつですね。
晴れてふたりがくっつく日を楽しみに。
>POPPOさん
なるほど、「絶対操作」。操作を自覚されてしまうリスクは大きいなあ。
サザーランドから指揮するリリーシャ、燃えました。
考えてみればゴッドバルトの人間なのだしルルーシュより実機訓練も積んでそう。
登場人物たちの姿がイメージしやすくなってきました。
ライたちとリリーシャの邂逅がどんな状況下になるのか。楽しみです。
(支援要請と投下開始には、いくらか時間を空けた予告して
人が気づいて待機する猶予を作った方が支援を受けやすいかと。)
>余暇さん
春の予感、いいですね。
花とナナリー、分かちがたいモチーフだと思います。
やさしげな室内、肌にそそぐ日差し、感じられるようでほっこりしましたのです。
余暇さんの、いくつもの何気ない情景をあたたかく描く短編、楽しく拝見しています。
皆さん投下お疲れ様でした!
次作を拝見できる日を楽しみにお待ちしています。
今日はいっぱい読めたなー。幸せ
管理人へ
一ヶ月ごとの一覧に飛ぼうしてもエラーになりますがまたいつもの不具合ですか?
あとなんか35スレ目の一覧から表示が変わってるんですがどうして我々の許可を得ずに勝手にそういうことするんですか?
何が偉そうなんですか?管理人の怠慢と先走りに対して抗議しているだけですが何か?
言論統制ですか?ここは北朝鮮ですか?
というか、管理しやすいように変えているのでは?
その辺は管理人さんに任せておくほうがいいと思うのですが。
いつものアレな人だからほっとけ
1ヶ月ごとの一覧については、ちゃんと事前に説明があったでしょ?
少し前のレスくらい読もうよ
ツンデレキターw
保管庫は管理人の物であってお前の物じゃないから許可なんていらないし管理人さんも
よかれと思って保管庫を良いようにしようとしているわけだから感謝ことしても非難する
謂れはないな。あと文句があるのは君だけだから我々なんて使うな周りが迷惑する。
あと聞きたいけど君は管理人さんがどうなれば満足なわけ?管理人さんが保管庫管理を止めればいいのかい?
我々の許可を得ずにやってることが問題だと言ってるんですが?
あの管理人は首輪を付けとかないと暴走すrから言ってるんですが?
定期的にテンプレ的な難癖をつける人がいるね。
相手しても喜ぶだけだと思うから、適当にスルーでいいんじゃないかな。
>>209 トーマス卿
妙な流れの中ですが、改装お疲れ様です。
言うまでもなく、大半の人間は感謝しているはずですので。
感想が見られると、投稿時の反応・空気が後で確認できて良いですね。
>>224 保管庫は職人のものでしょ?管理人にはなんの権利も無いはずですが?
なぁ、みんなスルー検定の時間じゃないか?
あなたたちとはなすと悪質な弁護屋を見てるような気がしてきました。
自分に都合の悪いことは無視ですか?管理人への抗議メール作成に忙しいので失礼します。
今日はこちらが納得するまでとことん話し合うつもりですので。
つーか、メール送るならこっちに書き込むなよ。
レス付くまでの1時間お前はなにをしてたんだよっていうね。
んでレス付いたら即食いつく構ってちゃんは一生ROMってればいいよ。
始めからメールだけしとけば、いいのに・・・
だから構ってちゃんなんだろ
今後は専ブラでNG指定を推奨
そういえばロスカラ卿最近来てないな
国家試験が忙しいのかな
それ思っても口にしないほうがいい
まったり待とうぜ
235 :
ロスカラ×ダブルオー:2009/02/12(木) 20:01:47 ID:YRbmYw4T
初デス。突然ですが、ロスカラのクロス作品掲載できるスレ、知りませんか? あと、近いうちにSS載せるかもしれないので、その時はよろしくお願いします!
・・・・・・年下専門卿さんの『優しい世界で目覚めて』の続き 読みてぇなぁ(切実)
ロスカラじゃなくても、クロスSSスレってのがあったはず
arcadiaでもいいんじゃないのクロスなら
239 :
ロスカラ×ダブルオー:2009/02/12(木) 22:30:06 ID:YRbmYw4T
皆さんありがとうございます!早速見て来ます。
240 :
POPPO:2009/02/12(木) 23:57:31 ID:N/2B/rxv
今から
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」 (中編4)
を投稿します。
今回は支援は必要ありません。
それではいきます!
241 :
POPPO:2009/02/12(木) 23:58:17 ID:N/2B/rxv
チバゲットーにある、とある倉庫。近くには海があり、冷たい風が吹きつけている。
倉庫の中では光が明々を付いており、X.X.は簡易ベッドに寝そべりながらシュークリームを食べていた。
「リリーシャ。どう?」
何食わぬ顔でリリーシャに問いかける。
リリーシャはパソコンが置かれているデスクに腰掛け、足を組んで、顎に手を当てながら何かを思案していた。
名を呼ばれた途端、彼女はX.X.の顔を見た。
彼女の周囲には二〇を超える死体が転がっていた。
彼女の前に群がる死体は皆、黒のジャケットに黒のバイザーを被っている。
「ふむ。大体のことは把握できたわ。それに、このギアス。思った以上に使えるわね」
「そうなの?でも、リリーシャ。なんか納得いかない顔だね」
「顔に出てた?うーん…。どの殺し方が一番早く死ぬか試してたんけど、首を締めさせても、首の骨を折らせても、意識が昏倒するのは三〇秒ほどかかる。
これは医学書で詳しく調べる必要があるわね。
でも、その過程で面白い使い方が分かったから今日はこれでおしまい。X.X.シュークリームの箱は持ってきてね」
「はぁーい」
リリーシャはキーボードをたたいた後、パソコンに差さっているUSBメモリとディスクを取り出し、学校指定のカバンに入れた。そして、もう一つの大きなカバンを肩にかける。
動かすたびに、金属がこすれる音がする。
二人は倉庫を出た。
歩いて数分後。
X.X.は疑問にしていたことを口にする。空のシュークリーム箱を持ちながら。
「ねえねえ。リリーシャ。死体はほったらかしでいいの?見つかったらマズイんじゃない?」
「ああ、それなら心配な――――――」
ドン!!!
近くで大きな爆発音が聞こえた。
音がした方向に目を向けると、先ほどいた倉庫の方角から煙が上がっている。
X.X.は目を丸くしてその光景を見ていた。
「ほへー。さっきのスーツケース、爆弾だったんだ…」
「ね?心配無かったでしょ?死体をどかしたら作動するように細工してたの。
でも、こんな単純なトラップにひっかかるなんて。黒の騎士団も大したこと無いのね」
そんな言葉を吐き捨てたリリーシャは、一度も振り返ること無くその場所を立ち去った。
242 :
POPPO:2009/02/12(木) 23:59:04 ID:N/2B/rxv
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」(中編4)
シズオカにある黒の騎士団の本部、『イザナミ』。
一見はナイトメアフレームが配備されている軍用基地だが、地下も巨大な軍事施設が創設されている。
そこでは新型ナイトメアフレームの開発や公にされていない軍備があり、日本最大の軍事要塞といっても過言ではない。
そして、その軍事要塞の一角にある指令本部の会議室で、黒の騎士団の錚々たる幹部のメンバーが席を揃えていた。爆撃対策が施された巨大な窓ガラスの先には日本の象徴ともいえる富士山が見える。
『第十八支部がやられただと!』
「ああ。その支部にいた団員もすべてやられたらしい」
『何たることだっ!』
ゼロは机に拳を叩きつけた。
「爆発が発生したのは昨夜10時半過ぎ。活動内容を終え、連絡が入らないことを不審に思った第十七支部の団員が確認にいった時に起こったそうです。詳細は不明ですが、現場から発見された遺体は見るも無残な状態で、全滅した、と言ってもよろしいかと…」
数枚の紙に目を落としながら、ディートハルトが報告した。
「…ひどい」
その報告を聞いたカレンはそう呟いていた。
「これは黒の騎士団への恨みなのか?」
「でもよぉ!俺達日本人に黒の騎士団を嫌ってるやつなんかいねえぜ!?」
「また、現場近くには一機のサザーランドがいたという形跡が残っていたようですが…」
「なっ!?」
「何ですって?」
「じゃ、じゃあこれはブリタニアが…」
そうカレンが言おうとして僕は制した。
「それは無いな」
その言葉に、皆の視線が僕に集まった。
「ブリタニアがやるとしたら、叩くのは支部じゃなくてこの本部だ」
『ああ。それに我々と諍いを起こしたところで何のメリットも無い。これは明らかに第三者の介入によるものだ』
「それも強固な意志と確固たる目的があってね。ディートハルト。この事件はKMFの脅襲では無く、倉庫内に設置された高性能爆弾による爆発なんだろ?」
「はい。サザーランドは事件直後に姿を現したということですが、これは盗難されたナイトメアであったそうで、ブリタニア軍の直接的な接触は薄いかと」
「と、いうことさ」
その中で、藤堂弐番隊隊長が口を開いた。
「第三者というのは行政特区日本に不満を持つ者たち、ということか?」
『そうだ。他にも目的があるかは分からないが、奴らの大義名分は概ね間違いないだろう。これ以上の被害が無いよう、奴らは徹底的に叩く』
「これ以上、というのは?」
「各地で起こっているブリタニアへの奇襲だ。同一犯と見ていいだろう。手際が良すぎるんだ」
「え?だって、サザーランドの形跡を残していたのよ?跡なんて幾らでも消せ…」
「それも奴らの狙いだ。疑いをブリタニアに向けさせ、僕たち黒の騎士団とブリタニアの間に確執を作るためにね」
『悔しいことだが、事実、ブリタニア軍と我々との間には冷ややかな空気が流れている』
ゼロの言葉に、皆は押し黙った。その沈黙は肯定を意味するものでもあった。
243 :
POPPO:2009/02/13(金) 00:00:31 ID:N/2B/rxv
午後の休憩時間。
アッシュフォード学園の中等部女子寮の屋上で、長い青髪を靡かせた少女は片手に白い携帯を持ち、相手に話しかけていた。
彼女の周囲には誰もいない。女の子のような綺麗な白髪を持つ少年を除いては。
『指示された通りにやったが、本当にこれでいいのか?』
「ああ。証拠の隠蔽は不完全であるほうが、黒い噂は周囲に広がりやすいからな」
『確かにな。後、資金のことだが礼を言うよ。ゼロ。私たちは君の下に就くことを了承している』
「ありがとう。鬼頭。君は表だって真の日本の在り方を指し示す同志だ。君のような人間を私は失いたくない」
『…その言葉、胸に刻んでおくよ』
「ありがとう。同志諸君」
そういって、『ゼロ』と呼ばれた少女、リリーシャ・ゴットバルトは電話を切った。
「はっ。貴様らの何が同志だ。馬鹿なイレブンめ」
その後、顔を歪めて言葉を吐き捨てる。
ストローでアップルジュースを飲んでいるX.X.はリリーシャが電話を終えると、彼女に話しかけた。
今日のX.X.は白いYシャツに黒のサスペンダーに黒の短パン。赤い蝶ネクタイを付けて、豹柄のベレー帽を被っている。どこからどう見ても、ブリタニアの金持ちのお坊ちゃまだ。
「ねえねえ、リリーシャ。彼らって黒の騎士団からもブリタニアからも敵対しているんでしょ?なんでリリーシャに協力するのさ」
「機密部隊として迎え入れたい、と。そう言っただけよ」
「?どういうこと?」
「今、黒の騎士団はこのエリア11だけでは無く、海外にも支部を持っているわ。急激な軍備増強と人員増加と共にその軍事力は飛躍的に拡大した。そして今はそれに伴い、内部統制も並列的に力を入れているはず」
「うん」
「そこで重要になってくる職種があるの。組織が大きければ大きいほど、その重要性は増す職種。何だと思う?」
244 :
POPPO:2009/02/13(金) 00:01:03 ID:N/2B/rxv
X.X.は顎に手を当て、頭を左右に振りながら考えていた。
数度唸った後、私に説明の続きを促した。
X.X.の困った表情を見ているだけで満足した私は言葉を続ける。
「ネズミ狩りよ」
さらに首を傾げるX.X.。彼は人間が本物のネズミを追っかけている場面を想像しているのだろう。そんな顔もカワイイわね。
「ようするにスパイ退治ね。それは組織の中で一番重要な職種でありながら、内部の人間からは1番忌み嫌われる職種。テロリスト内部のネズミ狩りなんて熾烈を極めるわ。
私はこう言ったの。
『貴方たちの目的は私と同じだ。しかし、私はそれを公に主張することはできない。だから、非公式であるが君たちと手を取り合いたい。
援助をする代わりに、黒の騎士団の中に紛れ込んでいるブリタニアのスパイの排除と秘密工作をしてほしい。
それを完遂してくれた証には正式に『黒の騎士団』に迎え入れる』ってね」
「うっひゃああ!リリーシャって本当に頭が良いんだね。僕、ますます気に入っちゃったよ!」
「貴方も、聞き手としてはかなり優秀な部類に入るわよ」
目を輝かせながら私を見つめるX.X.
…うん。貴方のその笑顔、反則だから、ね?
「それに今までの裏工作の協力に加えて、多額の資金援助をしているんですもの。金の信頼って結構強いものよ」
「でも、よくそんなお金があるね。リリーシャってまだ学生でしょ?」
「賭けチェスで随分儲けさせてもらったからね。今までの援助額は、ツカモト店のシュークリームを部屋一杯になるまで買ってもお釣りが来るくらいよ」
「ええっ!!?ホントに!?僕、食べきれないよ〜」
「…買わないわよ。そんな量のシュークリームは」
「うん。流石に僕もそれは無理かな。1日では食べきれないよ」
若干、認識の誤差があるみたいだけど、大量のシュークリームを買わなくて済んだわね。
X.X.にせがまれたら自信無いもの、私。
「私の部屋の冷蔵庫にシュークリームがあるから、後で食べていいわよ。あ、でもちゃんと箱は持って帰るのよ」
「うわーい!ありがとっ!」
「あと、私が借りてるアパートはどう?狭くない?」
「うんっ!本当に何から何までお世話になっちゃって、申し訳ないくらいだよ」
両手で私の手を掴んで握手をしてきた。そんな可愛らしいX.X.を見て、私の頬も思わず緩んでしまう。
「それはこっちのセリフよ。X.X.こんな素晴らしい力を与えてもらったんだもの。感謝してもし足りないくらいよ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
「うふ、可愛いわね。X.X.は。じゃあ、今日はこれでお別れね。今度、一緒に携帯を買いに行きましょ」
「うん!じゃあね〜」
私の手を両手で何度も振ると、聞きわけの良いX.X.はそのまま階段を下りて行った。
十中八九、私の部屋でシュークリームを食べるためだろう。行動が子供過ぎてついつい私より長生きしている不老不死ということを忘れてしまう。
さて、と。
私は携帯電話にロックをかけてメモリを引き抜くと、口紅のキャップに包んで化粧入れのバッグに入れた。
頭を振って、思考を整理する。メリハリが一番大事だ。
「次は、体育だったわよね」
私はサンドイッチを口にしながら、女子更衣室に向かった。
…カツサンドはカロリー高いわね。美味しいけど。
245 :
POPPO:2009/02/13(金) 00:03:16 ID:LphExHiT
で、午後の体育の授業。
普段は男子と女子は混合で行われるが、今日はバスケットの試合なので、女子と男子は別々にやっている。
私は格闘技や護身術と言ったものは身に付けているが、あいにく団体戦でやるようなスポーツは苦手だ。やることに意義を見出せない。
スポーツの一つを覚えるくらいなら組み手の一つでも覚えたい。実用性のあるもの以外、私は手に着かないのだ。意欲の湧かない分野にはまず手を出さない。
それが私のモットーである。
相手とのコミュニケーションを円滑にするためにこのような遊戯も必要だと、家庭教師に教えられたが私はそうは思わない。
身分、職種に合った技能とその分野に合った人間性の確立。それだけで十分なのだ。
何故、それが分からない。
…と、私がスポーツを出来ない言い訳を考えながら、バスケットの試合に取り組んでいた。私はノエルと同じチームなので、負ける心配はあまりしていない。
スポーツも頭を使えば素人なりに活躍できるので、ボールがどこに来るのか、何処のポジションにつけばいいのか、全体を見回せば分かる。
所詮は戦争を遊戯化したもの。根本的な戦略は変わっていない。
私たちのチームがリードした後は、私の指示のもとに時間稼ぎをして、タイムアップを迎えた。
最小限の努力で最大の成果を。
面倒な物事はとりあえずこの手法に限る。
肩で息をしながら、私は心臓の鼓動が収まるのを待つ。バスケットボールっていちいち走り続けなきゃいけないから、結構きつい。
ノエルは、凄いわね。疲労の顔が全く見えない。
そして、相手側と言うと。
……うげ。
「また貴女のチームですか。点数をリードした瞬間から逃げ切るなんて、卑怯ですわ」
紫色の長髪の同級生、ヘンリエット・T・イーズデイル。成績はそこそこ優秀だが、私より上位だったことは無い。
やる気が無く、授業を休みがちな私に対して、それにも関わらす私に勝てないことに逆恨みをしている奴である。
それが原動力となって何事にも熱心に取り組んでいらっしゃるようだが、反骨精神もいきすぎるとただのストレスでしかない。
報われぬ努力の先に待っているのは大きな挫折感と歪曲した憎悪だけだ。
彼女が私に勝っている部分といえば、高慢な態度と豊満な胸くらいかしら。
「勝負の結果に卑怯なんて言葉は通じませんわ。過去は変えられませんの。いくら言葉で飾り立てようとも」
「っふん!貴女はいつもそう!何事も正面から立ち向かおうともしない。楽することだけを考えて、小手先だけで物事を終わらせようとする!」
おお。よく分かっていらっしゃる。いつも私を目の敵にするだけの事はあるわね。それ以上は何も学んでいないみたいだけど。
「流石はゴットバルト家。プライドだけはご立派ですこと」
…そのままそっくり貴女に返すわ。その言葉。
「まあ、あの『オレンジ』にして貴女あり、といったとこかしら」
――――――――――――――――――――――――――――――――――何ですって?
その場が凍りついた。
監督の先生ですら二の句を告げられずにいる。
いつの間にか、暗黙の了解でタブーとされていた私の兄に対する罵言。
あの事件以来、私はさらに浮いた存在になっていた。
しかし、ゴットバルト家はそのような泥を塗られたとしても権威のある一族。
平民が多いこの学園で私に表だって歯向かう人間はいなかった。陰口さえも怯えて口にすることが出来ない。
この国で貴族に逆らうということがどれほどの大罪かを皆は知っているから。
「ヘンリエット!あんたねぇ!」
立ち直ったノエルが吠えた。
そして、私の目の前にいる女も貴族だ。我が一族と爵位は同じ。
煮え切らない私の態度が気に障ったのだろう。
彼女は罵った。私の兄を。
『オレンジ』という言葉で。
私の顔が急に熱くなる。拳を力いっぱい握りしめた。
246 :
POPPO:2009/02/13(金) 00:14:27 ID:LphExHiT
アンタが、何を知っているというわけ?
アンタが、アンタが――――――!!!
「何も!何も知らないくせに!兄が、どんな思いで!!」
私の左目に、赤の紋章が眩く。
次の瞬間。
鈍い音が響き渡った。
「あ?…ああぁ、いったあああああああああい!!いっ、いいいたああああああ!!!」
突然、大きな声を上げてその場にへたり込むヘンリエット。
何事か!?と、周囲の人々は近づいてきた。
慌てて駆け付けた先生がヘンリエットの状態を見た。
(…しまった!やりすぎた!)
「これは…両腕が脱臼してますね。…ちょっと、ノエルさん。肩を貸してもらえますか?」
最初はヘンリエットに敵意を剥き出したノエルだったが、突然の出来事に反射的に首を縦に振っていた。
私のギアスは距離が近いほど効力が大きい。
特に直径10メートル以内であれば身体の操作だけではなく、体内の操作も可能になる。
といっても血管を圧迫させたり、先ほどのように間接を外したりと、神経の電気信号にイレギュラーにさせる程度のものだが。
人を殺すには十分すぎる能力(チカラ)だ。
247 :
POPPO:2009/02/13(金) 00:21:35 ID:LphExHiT
私は逃げるように体育館を出て行った。
そして、服も着替えずに自分の部屋に帰ってきた。
勢いよくドアを開ける。そこには口のまわりを白くしたX.X.が私のベッドに座ったままシュークリームを食べていた。
「おかえり。リリー…」
私は服に汚れが付くのを気にせず、
そのままX.X.の華奢な体を抱きしめた。
頭の中は血が上ってて、全然まともな思考が働かない。
強く、強く、私はX.X.を抱きしめた。彼のぬくもりが、私の頬に伝わってくる。
X.X.は何も言わなかった。ただ、私の背中に腕を回してきた。
「何か、あったの?」
「……うん」
目がかすむ。私は、泣いているのかな?
「聞かないほうが、いいかな?」
「…うん」
「なら、リリーシャが落ち着くまで、ずっとこうしてていいよ」
その言葉に、私の眼頭が急に熱くなった。
我慢していたものが一気に急き切ったように溢れ出てきた。
「ひぐっ…う、うわ、うわあああん!えっく、うぐっ!」
(お兄ちゃんは、ただゼロに操られただけなのに、どうして、どうして!兄が汚名を着させられなきゃならなかったの!)
私は悲しかった。
兄の汚名は、今や世界が知っていることだ。
保身のために大罪人を逃がした軍人の風上にもおけない人間だと。
それが世界の認識なのだ。世界の真実なのだ。
ゼロが真の犯人だと、誰も知らないくせに!
違う。違うのに!どうして誰も分かってくれないの!
どうして!どうしてよお!!
どうして馬鹿真面目な馬鹿なお兄ちゃんが、あんな目に合うのよ!
そして、その汚名を着させられたまま死ぬなんて、そんなの、あんまりじゃない!!
だから、私がゼロを殺す!兄の仇を取ってみせる!兄の潔白を証明させてみせる!
だから、私はっ!!わ、私はX.X.からもらったこの力で…
ゼ、ゼロを…
お、お兄ちゃんの…か…
私の視界がゆっくりとぼやけていった。
真っ白な世界に、私は引きずりこまれていった。
その時、私には聞こえた。私を抱きしめたまま、X.X.が繰り返し囁いていた言葉を。
「おやすみ…」
猿…かな?
249 :
POPPO:2009/02/13(金) 00:35:45 ID:LphExHiT
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」 (中編4)
投稿終了です。
どんな感想でもいいので、書き込みお願いします!
保管車トーマスさん
早速ですが、お願いがあります。
中編3の202以降のスレの削除。
193スレのテロリストの会話
「佐々木さん」→「鬼頭さん」
の誤字修正、
そして、設定の部分で、
旧姓、『皇(スメラギ)』から取ってつけたものである。
リリーシャ・ゴットバルト
の間を2行、開けてください。
をお願いします。
いつもいつもご迷惑をかけて申し訳ありませんが、
毎度トーマスさんには感謝してもしきれません!
それでは!
POPPO卿、投下お疲れ様です。
中篇3の余分なレス削除しました。
佐々木さん→鬼頭さんへの修正完了しました
設定について了承いたしました。2行改行してくれとの事ですが、もう一歩工夫をしてみます。
あと、ところどころ「関節」となるべきところが「間接」になっているのでそちらも修正しておきますね。
>>249 POPPO卿、GJでした!
騎士団の支部にブリタニアへの奇襲。
ゼロを装いつつ内部から組織の崩壊を狙う。
しかし、X.X.に甘いなw
兄の為に戦うリリーシャ……ジェレミアは改造されて本国送りになっているのかな?
復讐は完遂できるのか、また過程で何が起こるのか。
貴公の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
252 :
POPPO:2009/02/13(金) 01:14:58 ID:LphExHiT
えー…
保管車トーマスさん。
GJです!!
設定の工夫、
本当にありがとうございます!
これからもSSを投稿するのでよろしくお願いします!
乙でした。リリーシャが黒いですねw それにしても高度な知性と二面性、まるでもう一人のルルーシュのようだ
いや残酷さと言う点では若干上回ってるかな?この二人の対決がどのようになるのかとても楽しみです
続きを全力をあげて待ってます!
POPPO卿GJ!
ほとんどオリジナルと言ってもいいのに違和感ないのがすごいです。
続きがものすごく楽しみな作品です。
POPPO卿GJ!
ほとんどオリジナルと言ってもいいのに違和感ないのがすごいです。
続きがものすごく楽しみな作品です。
重複スマソ
0時ちょうどぐらいから投下します
では投下します。
【メインタイトル】 バレンタインメモリー
【ジャンル】 ギャグ
「ああ、ちょうど良かった。みんなケーキでも食べないか?」
クラブハウスで仕事をしているとルルーシュが差し入れを持ってきた。
「なになに?まさかルルーシュ、男に走るようになったのかー?」
「からかうなよ、リヴァル。ナナリーが作ったケーキの余りものだ」
「なぁんだ、つまんねー」
リヴァルはつまらなそうに椅子にだらりと凭れる。
「そう、ナナリーがドゥクゥズゥオヌゥオドゥアアルェクァヌィウゥワァタスクゥエェキヌォナァ」
(訳:そう、ナナリーがどこぞの誰かに渡すケーキのな)
「いや、歯軋りするか喋るかどっちかにしてくれ、ルルーシュ」
ギリギリと歯を鳴らしながらナナリーがケーキを渡す相手への憎しみを吐き出すルルーシュ。受け取る相手の人も大変だな。
「ところでそのケーキって―――」
「こんにちわーーー」
シャーリーが勢い良く入って来る。ルルーシュを見つけると、鞄から何かを取り出りルルーシュに一直線に向かう。
「あ、ルル、部屋にいないから探しちゃった。あのね、これちょっと不格好だけど手作り……」
「ああ、よかった。シャーリーもどうだい?チョコレートケーキ。ちょっとした自信作なんだよ。
なにせナナリーが作ると言い出したんでね、味も見た目も完璧に仕上げたよ」
「ルルの馬鹿ァ!!貧弱、虚弱、脆弱シスコンーーーーーーー!!」
シャーリーはルルーシュに持っていた何かを叩きつけると叫びながら走り去ってしまった。
「ひでぇ、あれはねぇよ」
「最低ね、あのカウンターはないわ」
リヴァルとミレイさんが悪魔でも見るような眼でルルーシュを見ている。なにか知らないが、ルルーシュが悪いのだろうか?
ルルーシュは若干面倒臭いシスコンを発動させながらシャーリーにケーキを勧めただけなのに……。
「俺が悪いのか……?」
「何故かわからないが、そうらしいよ?」
「……鈍感ズ」
「……チーム朴念仁」
ひどい言われようである。
「バレンタインデー?」
「そっかー知らなかったかー、女の子が決死の覚悟で愛の告白を行う、由緒正しき日よ」
「はぁ、元々は聖ウァレンティヌスが―――」
「はいはい、頭でっかちは黙って」
ルルーシュは問答無用で黙らされてしまった。ミレイさんは更にテンションを上げて説明を続ける。
「また、女の子の日頃の感謝の気持ちや、人間関係を円滑にする為の強かな計算や、お返しに対する投資的な見解が交差する日でもあるわ」
恐ろしい。どうやら女の子から贈り物(基本チョコレート)を貰った男性は一ヶ月後に三倍の利子をつけて返さなければいけないらしい。
「でも珍しいですね、そんな日にミレイさんがなにも企画しないなんて」
「そうなのよー、豆まき大会の後片付けが思った以上に大変だったから。あ、まだ片付け残ってるから力仕事よろしく。頼りにしてるわよ」
そう、豆まき大会。本当に大変だった。鬼役と豆まき役に別れたのだが、科学部の暴走で豆まき側に散弾銃だの突撃銃だのが配備されてしまった。
対抗して鬼側のルルーシュは指揮を執りだすし、スザクは壁を走るし、それに対抗してミレイさんはガニメデを持ち出そうとするし、とにかく大変だった。
一番大変だったのはミレイさんが生徒会女性メンバー(ナナリーを除く)に虎縞のビキニを着せようとした事だろう。
女性陣からは抗議どころの話ではなかった。ミレイさんの暴走を止める為に人身御供としてルルーシュが差し出された。
つまりルルーシュは女性用虎縞ビキニを着て指揮を執っていた。あの時のルルーシュの死んだ目は今でも忘れない。
「まぁ、そんなわけで今回は間に合いませんでしたぁ。ホワイトデーに間に合うようにお仕事よろしく!あ、これお駄賃ね」
何やらラッピングされた袋を渡される。なんだろう?
「チョコレートよ、日頃の感謝を込めたものだから、お返しは気にしなくていいわ」
「ありがとうございます」
うーん、学園に置いてもらっている僕が感謝するべきなんだけど。
「会長!!俺の分は!?」
「いっぱい働いたらねー」
「俺頑張る!!」
なんだろう、リヴァルを見ていると飴と鞭という言葉を思い出した。あと犬?
「でも、そういえば貴方達ふたりが手ぶらなんてどうしたの?」
はて?手ぶらだとなにか良くないのだろうか?僕とルルーシュは互いに頭を傾げる。
「あー、コイツら二人とも今日は授業に出てなくて直接ここに来たんですよ」
「まぁ、いけない子達!!もう、夜遊びはほどほどにしなさい」
「いや、ある人物に今日教室に顔を出せば大変な事になると言われまして」
ピザの匂いがする人に。
「俺は…………ケーキの試作品を作りすぎて疲労で倒れていました」
沈黙が生徒会室を支配した。ああ、それでスザクが見舞いに来てたのか。
一方、そのスザクは―――
「スザク、あの……これ……初めて作ったからちょっと失敗して」
「あ、ユフィ。一緒にどうかな?このケーキ友達が作ったんだけど、すごくおいしくて」
「スザクの馬鹿ーーーー!!天然、脳筋、変な蹴り方ーーーー!!」
「あ、ユフィ、どこへ!?」
叫びながら走り去るユーフェミア。残されたスザクはポカンとしていた。
そして、天罰は下る。
「あ、スザク君ちょうどよかった。ケーキを作ったんだけど食べない?」
黙々と仕事をしているとノックの音が響いた。
「失礼します」
咲世子さんに連れられてナナリーが入って来た。
「いらっしゃい、ナナリー」
「こんにちわ、ライさん」
ナナリーと挨拶を交わすと、背後からギリギリギリという歯軋りの音が聞こえた。なんでこっちを睨んでいるんだいルルーシュ?
ルルーシュを怪訝な顔で見ていると、ナナリーが僕の前にやってきた。
「ライさん、よろしければこれを……」
ナナリーからリボンで包まれた小さな箱を手渡される。ああ、もしかしてこれがルルーシュの言っていたケーキだろうか。
「えっと、僕にかい?」
「は、はい、いつも折り紙を教えて頂いているお礼です。お兄様と咲世子さんがほとんど作ってくれたので、私はお手伝いしかできなかったのですが」
ナナリーが申し訳なさそうに俯いてしまう。僕はそっとナナリーの手を取り、お礼を言う。
「ナナリーは僕の為に作ろうとしてくれたんだろう?ならその想いがなにより嬉しいよ。ありがとう、ナナリー」
ナナリーは顔を上げ、頬を赤く染めながら、花が咲いたような笑顔を見せてくれた。
―――ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ―――
ルルーシュ、歯軋りがうるさいよ。暗に義理だって言いたいのかい?わかってるよ、そんなことは。
「あれはわかってない顔ねー」
「いやー、鈍感ってレベルを超えてますなー」
その後は不快な歯軋りの音をBGMに仕事を続けることになった。
「ふぅ、これで書類仕事は一段落だな」
「疲れた―」
肩をコキコキと鳴らしながら一息つく。すると僕の携帯電話が鳴り出した。発信者は……カレン?
「もしもし」
『あ、ラ、ライ、今大丈夫?』
「うん、ちょうど今休憩中」
『休憩中っていうことは生徒会室にいるの?』
「うん、さっきまで書類仕事をしてたんだ」
『そ、そう』
なんだか歯切れが悪い。なにか問題でも起きたのだろうか?
「誰からー?」
「ん、ああ、カレンだけど」
「カレン?あれ、そういやカレンも今日休んでなかったっけ?……ははぁん」
リヴァルがニヤリと笑う。なんだろう?
しかしカレンも休んでいたのか……そういえば今日は生徒会室に来ていない。昨日は黒の騎士団の仕事もなかったはずなのだが……。
『す、少し外に出て来てくれない』
「ああ、わかった」
僕は電話を切ると席を外すと告げて、早々に生徒会室をあとにする。
『ごゆっくりー』とリヴァルとミレイさんににやにやしながら言われた。
クラブハウスの外に出るとカレンが持っている鞄を見たり、空を見上げたりを交互に繰り返していた。
「カレン」
僕が呼びかけるとはっとしてこちらを向いた。
「あ、ライ。ご、ごめんね、呼びだしたりして」
「いや、構わないよ。それでなにかあったのかい?」
「え?えっと……………………なんでもない」
「はい?」
カレンはそう言うと『うー』と唸りながら頭を抱えてしまう。どうしたんだろう?
ふむ、今日休んでいたはずのカレンが学園に来る理由。なにか用事があった?生徒会室の用事だろうか?
いや生徒会室に来ずに、僕を呼び出したのだから用事は僕に?今日は何も約束はしてなかったはずだけど。
そう考えていると、今日が何の日か思い出した。ああ、もしかして。
「カレン」
「な、なに?」
「鞄から甘い匂いがしてるよ?」
「え、うそ!?」
鞄を抱えて匂いを嗅ぐカレン。その姿があまりに必死なので、思わず笑ってしまった。
「あー!だ、騙したのね!」
カレンは怒りながら僕に詰め寄って来る。
「ごめんごめん、でも持ってるんでしょう?バレンタインデーのプレゼント」
「う……し、知らない!!」
鞄を背中に隠して顔を背けてしまう。カレン、そこはせめて知らないじゃなくて、持ってないって答えないと。
「そうか、残念だよ。楽しみにしていたんだけど、持っていないなら仕方ないね」
「そ、そうね……持ってないから……し、仕方ないわね」
「うん、それじゃあカレン、気を付けて帰ってね」
「え?!」
カレンは困惑した声を上げると、鞄と僕を交互に見る。
「僕はまだ生徒会の仕事があるから送ってあげられないんだ。ごめんね」
「あ……うー……えっと……わ、私も」
「力仕事だからカレンには頼めないよ」
学園内ではね。言うと怒られそうなので言わないけど。
「じゃあ、また明日」
僕が軽く手を振って挨拶すると、カレンは意を決したようにキュッと目を瞑り、鞄から可愛らしくラッピングされた箱を取り出し僕の前に差し出す。
「こ、これ……チ、チョコレート。その、い、一応……て、手作りだから……」
「ありがとう、カレン」
僕はカレンの手から受け取ると、その場で綺麗に包装を剥がし箱を開ける。中には一口サイズのチョコレートがいくつか並んで入っていた。
「あ、味の保証はできないんだけど―――」
カレンがそう言うと同時にチョコレートを一つ口に放り込む。うん、甘さは抑えてあって、ほんのり苦味を感じる。
カレンは息を呑み、不安そうに僕の顔を見る。
「ど、どうかしら?」
「うん、とっても美味しいよ」
「そ、そう……よかった」
ほっと胸を撫で下ろし、嬉しそうに笑ってくれた。
「コレを作ってたから今日は学校を休んでたの?」
「?!ぜ、全然、関係ないわよ、チョコは。その……今日はなんていうか……」
慌てるカレンを微笑ましく思い眺めていると、カレンが拗ねた顔する。
「……うー……最近いじわるになってない?」
「そうかな?」
「そうよ」
カレンは頬を膨らませて僕を見上げた。
「んー、それはきっと、そうやって拗ねてるカレンも可愛いからだよ」
「………………もぅ……バカ……」
カレンは耳まで真っ赤になって俯くと、呟くようにそう言った。
「え、ここだけ馬鹿の言い方違くない!?なに、この甘ったるい空気」
「天然ね、ライ、恐ろしい子」
外野が何かうるさいけど、まぁいいか。
生徒会の仕事を終えて部屋に戻るとベッドの上にピザの箱が置いてあった。OK、犯人はC.C.だ。稀に見るスピード解決だった。
犯人がわかったところで箱を捨てようとするとなにやら重い。蓋をあけてみると中にはチョコレートがかかったピザが入っていた。
いや、デザート用にそういうものがあるのは知っている。だが目の前のピザには明らかにチーズやトマトやサラミがのっているではないか。
「これは酷い……」
「なにがだ!!」
クローゼットの中からC.C.が現われた。まさかずっと隠れてたのか?
「C.C.。済まない、君を疑ってしまった。見てくれ、まるでテロだ。いや、もしかしたらピザだけに君に対する犯行予告かもしれな―――」
話の途中でC.C.の華麗な延髄蹴りが決まった。もう少しで意識が飛ぶところだった。
「なにをするんだ!?」
「うるさい、だまれ。貴様にはこの至高のコラボレーションがわからんのか!!」
僕はピザに視点を移し、しばし凝視する。
「…………オスシとかジャムおにぎりとかの話?」
「何かは知らんが違うわぁ!!」
ボディを蹴られて、頭が下がった所に踵落としをくらう。コンビネーションが酷い。
「つべこべ言わずにさっさと食え!!」
「え?儀式かなにか?黒魔術的な?」
「ああ、もう黙れ!!ええい、せっかく貴様が私に泣いて感謝するところを隠れて見ていようと思っていたのに台無しだ!!」
「生きていることを神に泣いて感謝することはあるかもね」
「いいから口を開け!!」
「ちょ、待って、近づけないでその物体!!」
C.C.が無理矢理ピザを僕に食べさせようとする。僕は避けようとするがピザがベッドの上に落ちそうになったのであわてて受け止める。
危ない危ない、もう少しでベッドが使い物にならなく……ハッ、拙い。
「ほぉら、どうした坊や。もう逃げないのか?」
ピザをダイビングキャッチしたせいでベッドに横たわる体勢になってしまい、そこにC.C.が馬乗りになって来た。
「さぁ、口を開けろ。貴様に人生観が変わるほどの美味を味あわせてやろう」
拙い、そしてきっと不味い。人生観が変わるどころか人生が変わるかもしれない。なんとか逃げないと……。
その時コンコン、とノックが響く。助かった、ルルーシュだろうか。C.C.がチッと舌打ちするのが聞こえた。ふふん、魔女め、僕の勝ちだ。
「どうぞ、入って!!」
僕が返事をするとドアがガチャリと開いた。
「あの……ライ、夜なのにごめんね。実はチョコの箱にこの……カード……を……」
入って来たのはカレンだった。カレンは僕と目が合うと凍ったように動かなくなってしまった。
カレンが何故ここに!?しまった、クラブハウスにはルルーシュやナナリー達しかいないものだと思い込んでいた。
ハッ!?目の前の魔女が禍々しく笑った。ああ、まさしく魔女の笑みとはこういうものなのだろう。
「タイミングの悪いやつだ。せっかく今から楽しもうと思っていたのに」
くっ、嘘はいっていない。僕にピザを食べさせて楽しもうとしていたのだから。
後で追及されても言い逃れができるようにしている。狡猾だ、魔女め!!
「へぇ……そう……お楽しみだったんだ……ふぅん」
「いや、楽しんでなんかいない!!」
「ああ、まだ、な」
ちょ、そんな言い方をしたら、あとで楽しむみたいじゃないか!?
C.C.が楽しそうに笑うたびに、カレンから威圧感が増していく。ズンズンとこちらに近づいてくるカレン。
「はぁぁぁぁ」
カレンが深く息を吐く。一見溜息のように見えるが日本の武術でこういう息の吐き方があったような気がする。
「ライのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
ガシッと僕の腕を掴むと一気に引き上げる。すごい力だ。C.C.もはがれてしまった。ありがとうカレ――――
「ぶぅわぁぁああかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!」
「ちょ――――」
ガシャーーーンと盛大に窓が割れる音と共に僕は外へと投げ出される。……僕なにも悪いことしてないよね。
「ふん、だ」
カレンは窓からこちらにメッセージカードのような物を投げ渡すと、怒りの形相で去って行った。
「ふむ、結果的に私からライを遠ざけたな。計算か本能かはわからんがやるじゃないか、カレン」
魔女はチョコレートピザ(魔改造)を食べながら楽しそうに笑っていた。
余談:翌日、C.C.に止められたが無視して教室に行くと、机の上に空きスペースがないぐらい大小様々な箱が山積みになっていた。
「ふふ、ライ君っておモテになるのねー」と言ったカレンの目が一切笑っていなかったのが忘れられない思い出になった。
投下終了です。
前回の温かい感想ありがとうございます。
あと誤字報告感謝です。すいません、添削した後に思いつきで文章を足すなとあれほど言い聞かせていたのに(自分自身に)。
バレンタインネタです。カレンダーみてて気づいたので急きょ書くことにしました。
べ、別に他のやつ書いてて行き詰ったから逃避した訳じゃないんだからね。
それでは失礼いたします。
投下乙です。いやあ、無自覚って怖いなw
ルルーシュに歯ぎしりされ、カレンに甘い言葉をささやくかと思えば、C.C.に乗られてカレンに見られ……。激動の一日ですな。
しかし魔改造ピザが怖すぎて想像つかねえw
次回の投下をお待ちしています。
>>263 ワンドのナイト卿、GJでした!
ルルーシュとスザク……流石親友、何か同じような反応されてるぜw
それにしてもルルーシュ、歯軋りし過ぎたら歯をいためるよ。
チョコレートピザ、そのミスマッチさが大絶賛、なわけないか。
所々の甘さと全体的なギャグ感がGJです!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>263 ルルーシュ、試作品の疲労で倒れるって…w
セシルさんの場合はやっぱりおにぎりとのコラボか。でもお米がもち米なら何とか。
セシルさん、普通の洋菓子ならいけるかと思ったんですが・・・・・・
やはり、悪夢は変えられない
>>263 かわいいなああああ!!いちいち皆さんイキイキしてらっしゃる。
ライの基本鈍感、でもしれっとカレンをいじるところなんかはなかなか。
屈託のない笑顔にやりこめられるカレンが目に見えるようです
トリプル朴念仁ズ、それぞれGJでした。本人も女の子もみんな気の毒w
また作品を拝見できるのを楽しみにお待ちしています。
あー楽しかった。
>>264 朝からいいものを読ませていただきました。寂しい本日もおかげで乗り切れそうです。
GJでした!
>>263 ええなぁ〜にやにやして読みましたよ
今日はバレンタイン物の投下があると確信していただけに
今度は対ブリタニア編を読みたいな
>>263 まさにオールキャラ入り乱れてのラブコメですね。読んでいるうちにライがうらやま…ゲフンゲフン
と、とにかくGJでした!
>>269 イキロ
>>263 登場人物が多いのにすっごいテンポがいいですね
本当にキャラが目に見えるようで面白かった。最後まで違和感なく楽しめました
GJです。
1550から投下するけどいいよね?
答えは聞いてない!
答えはいらないか、では独り言を
かまわん!!
ぎあっす! 全力です。
タイトルは「リヴァレンタイン(仮)」
注意書き
・カップリング……ナニソレ? オイシイノ?
・ギャグだよ。
・声ネタがあります、分からない人は全力で見逃せっ!
・味は妄想です、食べ物を無駄にしてはいけませんよ。
・ライの出番は少ないよ。
・タイトルは(仮)です。 面白いタイトル思いついたら教えてください、そっちに変えます。
・まえがき〜あとがきまで14レスくらい、でも20KBくらい。
それでは、全力を挙げて投下します。
今日の彼、リヴァル・カルデモンドの朝は結構早かった。
昨日、賭けチェスで儲けた喜びもあるが、何より今日は、今日は絶対に遅れるわけには行かない、そう思いながら眠りについていた。
長くいればいるほどチャンスは増す、彼の考えが正しいのならばそういう日なのだ。
ひょっとしたら、いや、高い確率で彼は自らの親友のモテッぷりを目の当たりにする。
いや、これまでの経験からそんなことは分かっている。
その時はその時、新しく出来た親友と共にからかってやる、という思いを抱きつつ家をでる。
一応、母と生徒会の皆からは義理で貰えるだろうけど、そんなことを思いながら。
「やっぱり、本命をもらいたいのだよ、チミィ」
バイクの整備をしながらリヴァルは手伝ってくれている親友、ライに話しかけた。
「……何の話だ? リヴァル」
ライはその言葉を聞き、小首を傾げながら問う。
「だから、バレンタインだって」
リヴァルの答えを聞くと少し考えながらライは答える。
「一週間前から聞いているけど、つまりチョコレートやプレゼントを好きな人に贈る日、だろ?」
「そー、そー、そゆこと」
うん、うん、分かってるじゃないか。
そう呟くリヴァルにライは痛恨の一撃を放った。
「君からミレイさんにプレゼントを贈ればいいんじゃないか?」
「ちょっ! ……誰も聞いてないか」
いきなりの発言にリヴァルは動揺する。
「いきなり何を言うんだよ。
それじゃあ俺が会長をす、好きだって……いや、その通りだけどさ」
少しずつ声を小さくしながら言うリヴァルはそこでふと気付く。
「もしかして他の人に言ってたり……」
「……心外だな、僕はそう簡単に友人の秘密を言いふらしたりはしない」
その言葉を聞き安心するリヴァルだったがライはさらに続ける。
「要求を突き付けた上でほのめかすよ。
この場合はもっと噂の広まりそうな食堂とかで言ったり」
リヴァルは思った、お前は悪魔か!? と。
「そりゃないぜ!」
「……冗談だよ」
ツッコミに対し少し間をあけて返答するライにリヴァルは不安を覚える。
何だその間は!? 信じていいのか!? そんな具合に。
「……っと、これで大体終わりっと。
手伝ってくれてありがとな、ライ」
「気にするな、僕もやっていて面白かったし」
笑顔で言うライにリヴァルは何とも言えない気分になった。
(俺に本命チョコを渡す人がいたら一人の方が渡しやすいかな。
という邪な考えでバイクの整備をしてたとはとてもじゃないが言えないな)
「でも、やっぱり待つよりは渡す方がいいんじゃないか?」
そう言うライにリヴァルは溜め息をつきながら答える。
「俺だって出来たらそうしたいさ……でもなぁ」
「でも?」
言い淀むリヴァルにライは続きを促した。
「……ほら、会長貴族と婚約したりとかしてるじゃん。
一般ピーポーな俺じゃあ釣り合わねぇよ」
そう落ち込むリヴァルを励ますためか、ライは声をかける。
「そんなことはないさ。
リヴァルにも長所はあるって、ほらそういうのって自分では分からなかったりするだろ?」
「『も』 ……まぁいいや、確かに自分じゃ気付かないことってあるよな。
で、良いところって、例えば何?」
リヴァルの疑問に少し考えるそぶりを見せたあとでライは答えた。
「……バイクに乗れる?」
「ソコかよ! 俺の長所それだけ!?」
鋭いリヴァルのツッコミにライは軽く笑いながら返す。
「冗談だよ、冗談。
そういうのは自分で見つけるものだ」
「……さっきと言ってること違うぞ」
「えーっと、ほら、リヴァルって結構いい声だよね。
一族を兄に殺されていてすごい目を持っていたり、弓を使って霊を消滅させたり、体に鞘が埋まっていて剣が創れてセイギノミカタを目指したりしてそうないい声だよ」
誤魔化すように付け加えるライを見ながらリヴァルは言う。
「何だよその例えは……
じゃあルルーシュはでっかい槍振り回したりしそうな声で、ユーフェミア様はしましまなとらみたいな声で、皇帝陛下は――」
「待つんだリヴァル!
僕からふった話だけどそれ以上は危険すぎる!」
慌ててライはリヴァルの口を塞ぎ、そのすぐあとに予鈴が聞こえた。
「……まずい、このままじゃ遅刻だ」
「うぉ、馬鹿な話をしている場合じゃなかったぜ」
急いで駆け出す二人、授業にはギリギリ間に合ったようだ。
放課後、リヴァルを含む生徒会男子メンバーは生徒会室の扉をくぐった。
「ふふ、来たわね男子諸君!
『ロシアンバレンタインin生徒会』を始めるわよ!」
「「「……はい?」」」 「うわぁ、何だか面白そうだね」
スザクを除く男子三人が呆気にとられる。
その反応に満足気な笑みを浮かべながらアッシュフォード学園生徒会会長、ミレイ・アッシュフォードは言う。
「大成功!
いやぁ、当日まで秘密にしていた甲斐があったわねぇ」
「はぁ……で、今回のイベントの内容はなんです?」
溜め息混じりにライはミレイに聞く。
彼もいい加減ミレイの奇行に慣れてきていた。
「ふっふっふっ……今日はバレンタイン、でも普通にチョコレートをあげちゃあつまらない!
と、言うわけで貴方たちを除く生徒会メンバーでチョコレートを作ってみましたー!」
ノリノリで言うミレイに対してリヴァルが呟く。
「あれ? 結構普通?」
「甘いな! サッカリンより甘いぞ、リヴァル!
会長の考えたイベントであることとあの笑みを含めて考えればそんな普通のサプライズパーティーでは無いことは明白だ!」
その呟きに応えるようにルルーシュは言い放つ。
「なによ、その言い方。
まぁ、間違ってはいないけど……
シャーリー、アレを持ってきて」
ミレイがそういうとシャーリーが自分の傍にあったカートを押して四人の元へと近づいていった。
カートの上には白い布が被さっており、何が乗っているのかは判別出来なかった。
「さてさて、ルールは簡単、私とシャーリーとニーナにカレン、ナナリーちゃんがそれぞれ四つずつチョコレートを作ったわ、それを一人一つずつ選んでいって――」
「なるほど、つまり20個の内の幾つかにマスタードや唐辛子が入っている、と」
ミレイの言葉を聞き、ルルーシュは自らの推論を述べた。
しかしルルーシュの推論を聞きミレイは笑みを深めてそれを否定する様に首を横に振った。
「残念! ハズレよ、ルルーシュ。
そんなんじゃ生徒会副会長の名前が泣いちゃうわよ」
「なっ!?
では当たり、いや、この場合ハズレが殆どを占めると!?
いや、流石にその可能性は――」
ぶつぶつ呟きだしたルルーシュを華麗にスルーして、ミレイは言い放つ。
「正解は……スザク君の上官に作って貰ったチョコレートが一つだけあるのよ!」
その瞬間空気が凍り付いた。
生徒会メンバーはある事実を知っている。
一度、ただ一度だけだが枢木スザクは皆に愚痴った。
彼の上官、セシル・クルーミーの創った料理の味を、おにぎりにジャムをいれるその独創性を、お寿司をオスシに変えてしまった恐るべき技術を。
「じゃあ、お披露目ー!」
そんな空気をものともせずミレイ・アッシュフォードはカートにかけられていた純白の布を引っ張る。
そして現れるチョコレート。
ホワイトチョコレートにアーモンドチョコレート、小さめのチョコレートケーキにチョコチップクッキー。
綺麗に並べられたお菓子達の中心に『ソレ』はあった。
他のチョコレートを歯牙にもかけぬ存在感。
オ菓子? ナニソレ? オイシイノ?
と言わんばかりの『ソレ』を見たものは男女の区別なく驚愕の表情を浮かべるだろう。
依頼した本人、ミレイ・アッシュフォードでさえ驚いているのだから。
誰が予想できたであろうか。
「チョコレートを使ったお菓子」を依頼したら、チョコレートでコーティングされたオスシが出てくるなどと。
その混乱からいち早く立ち直った男、ルルーシュ・ランペルージは叫ぶ。
「ジャンケンポン!」
そして出す手はパー、さらにその声に釣られて他の男子三人も手を出す。
二人は握りこぶし、残る一人は手を開いて。
ちなみにいきなりの事だったのでシャーリーとカレン、ニーナも石や紙のカタチで手を出していた。
「よし、俺とライの勝ちだな。
俺は二番目でいい、ライはどうする?」
「え……あぁ、そういうことか。
僕は三番目でいいよ」
そう、当たり――むしろハズレ――一個で合計21個のチョコレート、一人ずつ順番に食べるのならば、それが分かりやすいカタチである以上最後まで残る。
最後の一個を食すものは……最初に食べ始めた者だ。
それを理解したルルーシュはじゃんけんというすこぶる民主的な手段を不意討ちで始めた。
急なじゃんけんでは多くの人は出しにくい――他の二つに比べればいささか複雑だからか――チョキを出さない。
グーかパー、つまり確率的に急なじゃんけんではパーを出せば勝率が高い。
「ルルーシュ、流石にこれはいきなりすぎじゃないか?」
「あぁ、やり直しを要求する!」
遅れてその事を理解した二人、スザクとリヴァルはルルーシュに言う。
「どんなときであれ勝負は勝負、そしてこれが出た結果だ」
「間違った方法で得た結果に意味はない!」
「うんうん、スザクの言う通り」
すぐに反論したルルーシュの言葉をスザクが否定しリヴァルが同調した。
だが、それを諭す様にルルーシュは言う。
「じゃんけんというのは、中華連邦に古代から伝わる武術の一つが変化したものであり、じゃん拳と呼ばれていた。
握りこぶし、平手、抜き手の3つの型を基本としている事からも確定的に明らかだ。
そもそも、ジャンケンポンという掛け声はこのじゃん拳の試合の開始の合図であり、その試合はいついかなる場所であれ行われた。
そういった経緯から考えるに、俺が急にじゃんけんを始めたことはこのルールに則っていると言えるだろう」
スラスラと蘊蓄を語るルルーシュにスザクとリヴァルは気圧される。
「つまり、俺の言いたいことは先程のじゃんけん、その方法は本来のじゃんけんの意味を考えれば間違ってはいない。
つまり正しい方法で得た正しい結果ということだ」
一気に語りきったルルーシュに対し、スザクは少し落ち込んだ様子で声をかけた。
「ごめん……僕はそういう経緯を知らなかったから」
「ふっ、気にする必要はないさ。
こんな知識、詳しく調べなければ分からないしな」
「……ありがとう」
ルルーシュの慰めに礼を言ってスザクはリヴァルに向き直る。
「さぁ、じゃんけんで勝負だ!」
「え? あれ? ……くそ、やってやるさ!」
「「じゃんけんぽ――」」
その時、スザクにかけられた『生きろ』というギアスが働き、彼の動体視力と反射神経は人間の限界を凌駕する勢いで働いた。
その結果、彼はリヴァルの出す手を見てから自分の手を変えるという神業を成し遂げた。
「「――ん!」」
「俺は生きる! 生きてユフィと添い遂げる!」
「……負けたぁぁぁぁぁ!!!」
スザクの爆弾発言は同時に叫んだリヴァルの声にかき消された。
「ナナリーの作ったチョコレート、美味しかったよ」
「ありがとうございます、お兄様。
咲世子さんに作り方を教えてもらったんです」
ルルーシュの言葉にナナリーは微笑みを浮かべながら言う。
「ナッツ入りのはカレンが作ったのか、とても美味しかったよ」
「……ありがとう、ライ」
カレンは頬を軽く染めながらライの言葉に返す。
あるところで兄妹の心暖まるやり取りが展開され、別の場所ではほのぼのしたカップルがいる。
そんな中、カートの前では一人の男が精神を統一――自己暗示ともいう――していた。
「……これはチョコレート、普通のチョコレート。
俺がこれを美味しく食べる姿をイメージ……」
「そう、やれるやれる! できるできる! 気持ちの問題だよ!」
スザクの声援を受け、リヴァルはお菓子という概念を嘲笑うかのように存在するチョコレートに手を伸ばす。
「リヴァル・カルデモンド、いきます!」
リヴァルは口の中にチョコを放り込む。
彼の舌を斬新な味わいが蹂躙する。
お米と混じりあったガムシロップの甘さ、それがホイップクリームと絶妙なバランスで絡み合い生まれる謎の食感。
更に加わるスシネタ、バナナの微妙な苦味とオレンジが全力で主張する酸味。
それら全てをしっかりと包み込んだビターチョコレート。
全てが混じりあったその食物により、リヴァルは天国――この場合地獄――の光景を垣間見る。
「リヴァル!? しっかりするんだ、リヴァル! リヴァル? ……リヴァルーーーーー!!!」
根性でのみこんだリヴァル、その薄れていく意識にスザクの悲痛な叫び声が響いた。
ルルーシュが大勢の女生徒にチョコレートを貰っている。
それを見て銀髪の友人と共に茶々でも入れようかと思い、探してみるとすぐに見つかった。
が、彼もまた大勢の女生徒にチョコレートを貰っていた。
そういえば彼もまた女生徒からの人気が高かったなぁとリヴァルは一人たたずんでいた。
もう一人の生徒会メンバーの男子、スザクはチョコレートを貰ってはいない。
しかし、リヴァルの考えが正しければスザクには既に心に決めた人がいる。
まぁ、スザクの言動に注意していればすぐに分かった。
プリンセスとナイト、確かにお似合いである。
もはや嫉妬する気も起きない。
ルルーシュとライが大量のチョコレートを抱えている姿を見ながらリヴァルは思う。
(……あれ? 俺は外道チョコレートを食べていた筈では?)
そう思っていると後ろから気配を感じる。
リヴァルが振り向いてみるとそこにはミレイがいた。
「……リヴァル」
「え、なんですか? 会長」
「えーっと、その、ね」
何やら躊躇っている様子のミレイ、リヴァルは彼女が頬を薄く染めているのに気付いた。
「……私、貴方が――」
包みをリヴァルへと差し出しながらミレイは続ける。
「――好き」
「……はっ!」
リヴァルは咄嗟に身体を起こす。
二、三回のまばたきの後辺りを見回す。
「……クラブハウスの客室?」
「良かった、目が覚めたんだね!」
リヴァルが声のする方に顔を向けるとそこにはスザクがいた。
「スザク? あれ? 何で俺はこんなところに?」
「君が倒れたからここまで運んだんだ。
あと、会長から伝言、『ごめん、やり過ぎちゃった』って。
あとこれも渡しておくように言われたよ」
そう言ってスザクは傍にあるテーブルの上に置いている包みをリヴァルに手渡す。
「え、これは……」
「会長からリヴァルへのチョコレートだよ」
その言葉を聞き、リヴァルはひとまず落ち着くことにした。
(会長のチョコレート、俺への……さっきの夢はもしかして、正夢?
いや待て、待つんだ俺、そんな都合のいいことがあるわけがない!
でも、もしかしたら……イヤッホゥー!!!)
全然落ち着けなかった。
しかし、急上昇するリヴァルの喜びに待ったをかけるようにスザクは言う。
「すっごく美味しかったよ。
ルルーシュも『これはいい物だ』って言っていたし」
「……へ?」
硬直するリヴァルを不思議そうに見ながらスザクは続ける。
「会長が僕とルルーシュとライと、それにシャーリーにカレン……とにかく生徒会の皆に配っていたんだ。
いつも業務を頑張ってくれているお礼だってさ。
ん、もうこんな時間……ちょっと用事があるから僕は行くよ。
じゃあまた、リヴァル。」
そう言い残しスザクは軽くスキップしながら部屋を出ていく。
「分かっていたさ、そうとも、義理だって分かっていた。
分かっていたんだ、心の底から! 夢は夢、現実は現実だってな!
……畜生!」
リヴァルは小さな、心からの叫びを口にした。
黒の騎士団アジト――特区日本成立後も組織として騎士団は残り、ブリタニア軍人達と共に警備を行っている。
しかし、愛着のあるアジトに未だ滞在している者も少なくはない。
名義上黒の騎士団ナンバーツーである扇要がその代表だ。
彼は週に一度行われる会議の際には特区日本へと赴く。
また、組織のトップであるゼロもアジトにいる時の方が多い。
そんなアジトの中を歩く男、一応黒の騎士団の幹部である玉城真一郎もアジトに愛着のある一人である。
「畜生、何なんだ皆してよー。
俺達は仲間だろうが」
愚痴りながら玉城は今日半日を振り返る。
起きた後、半日ばかりソワソワしていたが、誰からも、何も、貰えなかった。
焦れて玉城は近くにいた井上に遠回しに聞いてみた。
「なぁ、今日は俺に渡すものがあるんじゃねえか?」
「何言ってんのよ、仕事の邪魔よ」
軽くあしらわれる玉城、だが彼はめげない。
遠回しに言って駄目ならストレートに言えばいいのだ。
「チョコレートだよ、チョコレート。
義理チョコをこの俺が貰ってやるよ、あぁ、本命でも構わないぜ」
「寝言は寝て言いなさい。
なんで世話になってないあんたに義理チョコあげなきゃいけないのよ。
それともこの山積みの書類をあんたが片付けてくれるの?」
井上は玉城の言葉を日本刀の様な切れ味で切って捨てた。
「そ、そうか、邪魔してわるかったな。
頑張れよ、井上」
玉城は逃げだした。
「待ちなさい、これ、あんたへの書類よ」
しかし、まわりこまれてしまった。
「何だよ……ん、辞令!
俺も遂に役職につく日が来たのか!」
書類に大きく書かれた文字を見て玉城は喜びながら内容を確認する。
「えーっと、何々――『玉城真一郎を美化委員に任命する ゼロ』――美化委員!?」
「あら、続きもあるわよ」
玉城の後ろから井上が書類を覗き込み読み上げる。
「んーっと――『いつまでも役職が無いのは不憫だと思ってな、お前でもゴミ出し位出来るだろ、感謝しろよ。 C.C.』――ですって、良かったわね、役職に付けて」
井上はそう言うとゆっくりとデスクの方に戻り、椅子に座って書類と戦い始めた。
後に残された玉城は役職についた事を喜べばいいのか、その役職がようするにゴミ係である事に怒ればいいのか迷っていた。
とりあえず喜ぶ事にした玉城であったが、依然誰も自分に何もくれないことに不満を抱きつつあった。
「何だよ、二月に入ってから皆の手伝いとかしてたのによぉ」
彼は知らない、書類仕事をしていた女性団員の肩を揉んだ事が捻れ伝わって『玉城はいきなり女性の体に触ってくる変態』だと噂されていることを。
何か手伝おうとKMF格納庫をキョロキョロしながら往復していたために、機体の整備をしていた女性団員達の間で『下から私達を見上げている変態のおっさんがいる』という噂が広まっていることを。
結局、夕方まで一つもチョコレートを貰えなかった玉城だが、彼には勝算があった。
「もうすぐカレンが学校帰りにやって来るはずだ。
義理チョコ一個、貰ったぜ!」
特区日本内部に出来た学校からの留学生という名目で、紅月カレンはアッシュフォード学園に編入した。
シュタットフェルトの屋敷には帰れなくなっていたため、必然的に騎士団のアジトが彼女の生活の場となっている。
「カレンの兄ポジションの扇、その扇の親友である俺、つまり、俺はカレンの兄ポジション!
つまり義理チョコは確定だ、どうだこの三段論法!」
玉城は最近読んだ漫画に書いていたセリフを思い出しながら言い切った。
しかし、現実は非常である。
「ただいま!
あ、扇さん、これバレンタインの義理チョコ」
「あぁ、ありがとう、カレン
ナオト……カレンは立派に、心優しく育っているぞ」
そう言い涙を流す扇を見つつ、玉城はカレンに声をかけた。
「よう、遅かったじゃねーか。
ん? ライはどうした?」
「……知らない!」
ライの名を聞くとカレンは拗ねたようにそっぽを向き部屋へと歩き出した。
その勢いに気圧され、カレンを見送った玉城だが、少し遅れて気付く。
「……俺には何にもなし?」
「……本当に年頃の娘っぽくなってきて……」
玉城は呆然と立ちつくし、扇はどこからか取り出したハンドタオルで目を拭っていた。
「あれ、扇さんに玉城、そんなところで何を?」
後ろから聞こえてきた声に二人は振り向き、驚愕した。
「ラ、ライ……その荷物は?」
「あ、これは学校でチョコレートを貰ったんですけど、ここに来てまた沢山貰って……」
二人の視線の先にいる青年、ライの両手には大きな袋が二つずつ存在した。
「なんだそりゃ!?
俺は朝からいるけど一個も貰ってねぇのに!」
玉城はその理不尽さに怒りを露にした。
無論八つ当たりであることは本人にも分かっている、しかし叫ばずにはいられなかったのだ。
「落ち着け玉城、大人気無いぞ!」
扇がたしなめるが、玉城は義理を貰っていて更に本命をくれる人がいる者の言葉など聞く気にはならなかった。
「畜生ー!
ぐれてやるー!」
そう言い残し玉城は走り去った。
「……何がしたかったんだろう?」
「……長い付き合いだが俺にも分からないな」
残された二人は首を傾げていた。
トウキョウ祖界の一角、小さなバーに二人の客がいた。
「……分かっている、分かってたさ、結局自分から言うしかないって。
あんな夢みたいに簡単にいくわけ無いって……」
そう言ってリヴァルはグイとコップの中身を飲み干す。
コップの中身はノンアルコールである、念のため。
「ブリタニアのバッキャロー!」
叫びながら酒を飲むもう一人の客、玉城は荒れていた。
ちびちび飲みながらふと彼の隣を見てみるとブリタニアの学生がいることに気付いた。
「オイ、コラ、このブリキ野郎!
お前らがバレンタインなんて文化持ち込むから!
俺がチョコレート貰えなくて惨めな思いをすんだよ!」
「何だよ、おっさん」
絡んでくる玉城を鬱陶しそうに見ながら、リヴァルは言い返す。
普段なら無視を決め込んでいるが、彼も幸福の絶頂(夢)から普通の日常(現実)に叩き落とされて少し虫の居所が悪かった。
「言っとくけどな、バレンタインはブリタニアじゃなくてEU発祥らしいぜ。
それにチョコレートを贈るって言うのは日本の菓子業界が宣伝しだしたからだってよ。
それに俺だって……」
「おい、一体どうしたんだよ」
リヴァルの叫びを聞いた玉城は続きを促した。
リヴァルは語る、モテる親友のこと、外道チョコレートのこと、夢から現実に戻った絶望感を。
リヴァルが語り終えたとき、玉城は涙を流していた。
「お前……お前は……すまねぇ、お前の絶望に比べりゃ俺なんざ……」
そう言って玉城も語る、やたらにモテる親友のこと、チョコレートを一つも貰えなかった自分のことを。
「おっさん……ごめん、義理でも貰えるだけ良かったんだな……」
「あぁ、何か辛気くさくなっちまったな。
よし、ついてこい坊主!
一緒に飲もうぜ!」
そう言って玉城はリヴァルを店を出る、料金を支払った後で。
ゲットーの片隅にある小さな居酒屋、そこで二人は語り合っていた。
「というかさ、あいつの異様なモテっぷりの方がおかしいと思うわけよ」
「そーそー、あらゆる年齢層からモテて、お前は一体何なんだってかんじで」
「お前の友達もそうなのか」
「えぇ、しかもそんなやつが二人もいるし……」
主に互いの親友がモテている話を肴に酒をあおる。
「おぉ、いい飲みっぷりだな、坊主。
……えーっと、何て名前だっけ?」
「……だからリヴァルですって、玉城さん」
「あぁ、そうだったそうだった。
ブリキ野郎はいけ好かねぇヤツばっかりだと思ってたけどお前は違うなぁ」
玉城はリヴァルの肩に手を置きながら言った。
「別にブリタニア人全員が玉城さんの嫌いな人間じゃないと思いますよ。
……あっ、注ぎますよ」
リヴァルが玉城の杯に酒を注ぐ。
「おぅ、わりぃな。
……確かにその通りだ、俺も視野を広く持つべきだな。
でも……」
「「バレンタインなんてくそ食らえ!」」
同時に叫び、二人は笑いあう。
結局二人は一晩中飲み明かした。
おまけ・リヴァルがスザクにより客室に運ばれた後の話
「凄いね、ルルーシュ」
「何がだ? ライ」
ライはルルーシュに声をかけた。
「いや、じゃんけんの由来のこと。
僕も知らなかったよ」
そう言うライにルルーシュは小声で答える。
「あぁ……あれは嘘だ」
「え? でもあんなにすらすら」
ルルーシュは驚くライを見ながら言葉を続ける。
「昔から嘘をつくときはすらすらと言葉が出てくるんだ、アドリブも聞くしな。
例えば、そうだな鬼ごっこの由来は――」
語りだすルルーシュをライは感嘆の表情で見ていた。
おまけそのに・逆チョコ
「で、何でお前がここにいる?」
ルルーシュが部屋に入るとベッドに腰掛けるC.C.がいた。
「決まっているだろ。
今日はバレンタイン、お前と私は共犯者、つまりルルーシュ、お前は私にプレゼントを渡す義務があるんだ」
自信満々で言うC.C.を見ながらルルーシュも自信を持って言い放つ。
「……そうくるだろうと思っていたよ。
受け取れ!」
そう言って彼は手に持っていた箱をC.C.に渡す。
「ふふ、いい心掛けだ……ん、なんだこれは?」
C.C.は出てきた茶色い円形状のものを不思議そうに見つめる。
「俺とライが作ったチョコレートピザだ」
「チョコレートピザだと?
ふざけているのか? これはピザへの冒涜だ!」
怒りを露にするC.C.に落ち着きながらルルーシュは言う。
「文句を言う前に食べたらどうだ?
まぁ、食べた後ならばそんな不満は出ないだろうがな」
「む……」
C.C.は一口食べて、目を見開いた。
「な、美味いじゃないか!」
「ハハハ、そうだろう。
アーモンドスライス、トロトロのカスタードクリームとチョコソースというシンプルなトッピング。
モチッとした生地にサクサクの耳、美味くない訳がないだろう」
余裕の笑みを浮かべながら言うルルーシュにC.C.は言う。
「よし、これからおやつは毎食これだ、分かったな」
その言葉を聞いたルルーシュから笑みが消えた。
「……はぁ」
ルルーシュは思い出した、難民の子供にジュースをあげてはいけないという話を。
犬や猫の食事のレベルを上げてはいけないという話を。
とりあえず、チョコレートピザを最も安く売っている店を探すことにした。
あとがき
以上で投下終了です。
バレンタインネタでした。
甘いのが来そうだから甘くないのを書いてみた。
反省はしてないし後悔もしていない。
今はナイトメア座談会の続きとそれ以外でもそれ以上でもそれ以下でもないの続編を執筆中です。
それでは次回も全力で投下するのでよろしく!
P.S.前書きの名前募集は本気で面白いのがあったらそれにします。
GJ!
リヴァルと玉城に祝福を……
何気に同じポジションにいるんだよな、2人共
皇帝陛下は――筋骨隆々でパンツ一丁の漢女ですか?
290 :
ラ○ダーマニア:2009/02/14(土) 22:05:15 ID:1DdrXLU5
age
通りすがりのロスカラファンです。
>>全力感想人Yさん。甘く切ない話をありがとう(笑)。
リヴァル、玉城らの無念、分かってしまうのは僕だけじゃないと祈りつつ。
あと、ふたつの続編。うれしい限りです!住民さま方同様、楽しみにしてます。
長文スンマソm(_ _)m
>>288 GJ!リヴァルに玉城、ドンマイwモテる友人、実は同一人物なんだよね……。
そしてC.C.に高価な味を教えてしまったルルーシュ、後悔先に立たずだよw
次回の投下をお待ちしています。
さて、35分くらいから2レス分投下します。
そろそろ投下します。
作者:余暇
タイトル:風に舞う旅人
ジャンル:日常系
本文は2レス分です。
支援は無用か
『風に舞う旅人』
ある日、僕はアジトに向かうべくゲットーの中を歩いていた。春の暖かな日差しが降り注ぎ、爽やかな風が心地良い。
その時だった。僕の横を、白い小さな何かが飛んでいくのが見えた。
「ん?どこから飛んできたんだ?」
それは風に乗って、僕の正面からいくつも飛んできていた。フワフワと風に乗り、どこかへ去っていく。
そしてよく見ると、地面と瓦礫の隙間から黄色い花と白い物が顔を覗かせている。
「あ、これってタンポポじゃないか。こんな所にも咲くんだなあ」
そう、それはタンポポの花と綿毛だった。さっきから空を舞っていたのは、風に飛ばされた綿毛だったのだ。
「たくましいんだな。こんな悪条件の場所にもしっかり根を下ろして、花を咲かせ、種を飛ばす。自然って、僕たちには遠く及ばない生命力と知恵があるんだな」
瓦礫に腰掛け、次々に飛んでいく綿毛を眺めながら、僕は春の陽気を楽しんでいた。
「まるで行くあてのない旅人みたいだな。記憶を失っている僕も、似たようなものなのかな」
空をさまよい、どこへ行くのかもわからない不安定な存在。それが何だか、自分に重なる気がした。
僕は果たして、記憶を取り戻さないまま、ここにいるのだろうか。記憶を取り戻した時、どこへ行くのだろうか。
暖かいのどかな陽気なのに、僕の心は少し曇りがちだった。
「ライ、そんな所で何をしているの?」
顔を上げると、カレンがこちらに近づいてきていた。
「やあ、カレン。見なよ、タンポポが咲いている。僕はこれを見ていたんだ」
「へえ、かわいい花ね。こんな場所に咲くなんて、たくましいのね」
カレンが僕の隣に座り、タンポポを眺めながら言った。風が吹いて、綿毛をさらに空へと飛ばしていく。
「のどかな春って感じね。暖かくて風は気持ちいいし、すごく落ち着くわ」
「ああ、そうだな」
僕たちは空を飛ぶ綿毛を見上げながら、のどかな春を満喫した。僕の心に、少しの不安を残しながら。
「それで、何を考えていたのかしら?」
不意に、カレンが口を開いた。
「え、何がだ?」
「とぼけてもムダよ。こんないい天気なのに物憂げな顔なんかしちゃって、心ここにあらずって感じに見えたわよ」
見透かされていたのか。学園でも騎士団でも一緒にいるだけに、さすが鋭い。
「実は、空を飛ぶ綿毛が自分と重なって見えたんだ。どこへ行くのかわからない不安定な存在で、これからどうなるかも見えなくて。だから、少し不安になったんだ」
「ふーん、そうなんだ。でも、きっと大丈夫よ」
そう言うと、カレンは僕を見つめた。
「ねえ、ライ。この足元に咲くタンポポを見て、どう思う?」
「え、『どう』って……。綺麗だし、こんな悪条件の場所でもたくましく生きていて、すごいと思うけど」
「そうでしょう?だったら、ライもそれと同じよ」
「どういうことだ?」
このタンポポの花と僕が同じとは、カレンは何が言いたいんだろう。
「このタンポポも、元は空を飛ぶ綿毛だったのよ。どこへ行くのかもわからなくて、ちゃんと花を咲かせることができるのかもわからなかった、不安定な存在だったの。
でもこうして、しっかりと地面に根を下ろして、綺麗な花を咲かせて、種を空に飛ばすことができている。
今のライも同じようなものよ。私たちの世界に足をつけて、みんなと一緒に過ごして、世界を変えるために戦ってくれている。たくましく生きているじゃない」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、これから先のことは……」
「大丈夫よ、あなたなら綺麗な花を咲かせることができるわ。世界を平和で優しくして、私たちを笑顔にしてくれる綺麗な花をね。
たとえ不安になっても、私たちがいるから。このタンポポがいくつか集まって一斉に花を咲かせたように、私たちも力を合わせて一緒に咲けばいいのよ」
なるほど、確かにそうかもしれない。誰だって心のどこかに不安を抱えて、それでも力強く生きようとしている。いつか花を咲かせるために。
このタンポポのように、僕にも力強く生きて、花を咲かせる力があるはずだ。今までだってそのために歩いてきたんだし、仲間がいてくれるから一人ではない。
前向きに頑張ってみよう、この世界が平和で優しくなるために。
「ありがとう、カレン。不安がるだけじゃなくて、もっと前を見て懸命に生きないとな。このタンポポみたいに」
「そうそう、その意気よ。お世話係主任としては、あなたがしおれていたり元気がなかったりすると、心配になっちゃうから」
「ハハハ、花だけにな。心強いお世話係がいてくれると、僕も安心だ。これからもよろしく頼む」
「はいはい。その代わり、ちゃんと綺麗に咲くのよ」
冗談を言い合いながら、僕たちは空を眺めていた。誰もが花や空を眺め、笑っていられる世界を取り戻すと心の中で誓いながら。
その僕たちに見送られながら、綿毛についたタンポポの種が、長い旅へと力強く飛び立っていった。
以上で終了です。最近季節ネタとか自然ネタを書きたい気分によくなります。
でもこういう日常系は、余計淡々とした超短文になって、SSとして仕上げるのが意外と大変です。
人によるかもしれませんけどね。毎回練習です。
>>296 余暇卿、GJでした!
詩的な表現がいいと思いました。
タンポポ……根も深いところまではってるし、葉っぱも広がっていて、色んな所に生えている。
……強いなぁ。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
こんばんわ、誰かおりますか?23分に投下しようと思います。
299 :
テリー:2009/02/15(日) 20:25:43 ID:JyPitKm3
時間ですので投下の方行きます!
「明日の為に」
10レス位でしょうか?
カップ ライ×ナナリー
ナナリーの性格が変だと思いますので注意を
ちなみにナナリーの目と足は治っておりますのでそこも注意を
>>298 遅くなりましたが居ます
必要なら支援いたします
301 :
テリー:2009/02/15(日) 20:26:26 ID:JyPitKm3
朝日が差し込むいい天気わ決まっていい事が起こるのではないかと錯覚させる
こんな朝なら皆さんはどうするだろうか?
とある皇女殿下は朝のひとときを妹と優雅に過ごし
学生は親に見送られ学校へ
とある純血派の客将は朝のモーニングコーヒーを仲間と楽しみ
政庁では――――
「なーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!????」
日本全土、いや、世界を揺るがすほどの叫びをあげている青年がいたりする
「どうしたんだ、ルルーシュ!!?」
「なに、何が起きたの!?」
叫びを聞きつけ飛んで来たスザク、カレンはわなわな震えているルルーシュが目に入った
「・・・・・あ・・・あい・・・つ・・・め」
「ど、どうしたんだい?ルルーシュ」
「何か――」
「図ったなーーーーーーーー!!!!!ライーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
そう叫び鬼の形相で飛び出していったルルーシュ。それを目の当たりにし呆然の2人。
「何があったのかしら、ルルーシュ」
「さ、さあ・・・ん?このメモ」
スザクが足元に落ちてきたメモの様な紙切れを拾い上げ――――
「カレン・・・・・・これ」
302 :
テリー:2009/02/15(日) 20:27:21 ID:JyPitKm3
「・・・・なーーーるほどねーーー、これは怒るわよルルーシュ」
「ルルーシュも変わらないね何時までも、変わってる人もいるのに」
2人共呆れに呆れた。それもそのはず、何しろここは
政庁5階、506号室、室長、ナナリー・ブィ・ブリタニア
メモの内容は
「 私は常に愛しい人のもとに行く 」と
5日後ライはブリタニア本国に行く事になっている、何やら大切な式典が有るとかで
シャルル皇帝に呼び出されているからだ。
「明日の為に 専任騎士 」 ナナリーエンド編
4月26日 横浜港
あの沖縄の戦いから全ての傷が癒えたライ達は日本防衛の為に着々と準備を整えていた
と言うに大和艦橋屋上(防空指揮所)では
「・・・・・・我ながら何とも」
難しい顔をし唸る艦長の藤堂少将
「いえ、仕方ありませんよ艦長」
「気に病むことはありませんよ」
その艦長を慰める砲術長ら大和幹部達
「そうですよ、よく言うじゃありませんか―――」
らがほとんど苦笑い状態ではるか遠くを眺めている
303 :
テリー:2009/02/15(日) 20:28:21 ID:JyPitKm3
恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとやらと
「ん?・・・・ここは?」
朝日が差し込むとある部屋、その内装は豪華ホテルのスイートルームを思わせるほど
の豪華さの中で目が覚めた大将ライ。
「・・・・・ここって・・・・・何処?」
ライ本人には全く身に覚えがない、そこで記憶の引き出しを一つずつ開けていく
事にし考え込む。
(ええーーーと昨日は―――)
ガチャリと扉が開く音と一緒にそちらを見ると
「おはようございますライ様、朝食をお持ちしました」
「佐代子さん?何やってるんですか?と言うよりここは何処です?」
ワゴンにそれはそれは豪華な朝食が並んでいる、例えるならどこぞの貴族が食べる
様なそれほどまでの
「おやおや、昨日の事をお忘れですか?ライ様」
ニッコリと微笑む佐代子にライは非常に嫌な予感を覚える、この忍者が笑った時は
良くない事が起こると相場は決まっているからだ。
「えええと確か―――」
「あ、ですがせっかく作った料理が冷めてしまいます。思い出すのは
その後でもいいでしょう!ささどうぞ」
「え、でも―――」
と反論しようとした時に腹の虫が鳴り固まったライは
「先にご飯にします」
とベットから出る、服装はちゃんとパジャマ姿だったので一安心し軍服に着替えてから
テーブルに着く。
佐代子さんが運んでくれた朝食は美味しかった、しばらくの間ライはその美味な朝食
にひたりさっき疑問など吹き飛んでしまった。
304 :
テリー:2009/02/15(日) 20:29:04 ID:JyPitKm3
「それで、昨日の事ですが」
「ああそうだった、ご飯がすごく美味しくて忘れてた」
全て食べ終わりコーヒーを飲みながら浸っていた素晴らしい気分から現実に
引き戻される
「ここは何処なんですか?」
「見憶えはございませんか?周りに」
そう言われ周りを見渡してみるも全く解らない。ただ何処かの高級ホテルか
豪邸だと言う事は解るが
「まったく」
「左様ですか、では答をお教えしましょう」
と言いドアから人が入って来る、その人物は―――――
「ナナリー!」
「おはようございますライさん」
そこには微笑むナナリーがいた・・・・が、どうもその後ろに見える
黒いオーラの様な物が気になる、と言うよりライは直感した・・・・
「何か怒ってるみたいだけどナナリー、何かあったのかい?」
「何か?自分の胸に聞いてみたらいかがです?」
異様な威圧を放ちニコヤカに話すナナリーとさっきまでの素晴らしい気分など
吹き飛びだじだじになるライ
「ええと、その、全然解らないんだけど」
「そうですか、佐代子さん例の写真を」
「はいナナリー様!」
いかにも楽しそうに佐代子は取り出した写真をライの前に並べる
それを見た時のライの冷や汗の量と言ったらナイアガラの滝以上になる
「こ・・・・この写真は・・・・」
その瞬間に昨日の記憶が蘇る
(そうだ、昨日は朝ノネットさんにショッピングに付き合わされてその途中
モニカも加わりさらにアーニャまでも一緒になったんだっけ)
それだけに留まらないのがライと言う人物の性
(その後にC.Cにピザから始まり様々なお店に付き合わされてやっと解放
されたと思ったら今度はカレンとミレイさんに付き合わされて全部終わったのが
夜中の11:30ですぐに着替えて眠りこけたんだっけ)
305 :
テリー:2009/02/15(日) 20:30:03 ID:JyPitKm3
「佐代子さん・・・・一体何時から?」
「最初からですライ様」
だじだじのライに対し物凄く“修羅場って楽しい”と言わんばかりの笑顔と
ウキウキな佐代子、どう考えたって楽しんでますよこの人
「ライさん」
「は、ハイ!!!!」
飛び上がるライにさっきまでのオーラがさらに濃くなるナナリー
「思い出していただきましたか?どうしてこうなったのか」
「はい、身に染みました」
「では、責任をとっていただきます。宜しいですね?」
「は、はい。何なりとお申し付けください」
有利になってるナナリーだがその表情はどこか強張っていた、必至に辛いのを
堪えているように。
実はこれ、全部ナナリーの計略だった。ブリタニア軍コーネリア親衛隊員にして
没落しかけた純血派の救世主(ジェレミアの一方的な、でもライは嫌だったわけで
はないが)さらには幻の美形とまでされていた、人気はそれは高すぎたもの。
勇気を出してブルームーンの日にはれて恋人になったもののすぐに本国に出向き
ラウンズとなったことで唯でさえ側にいないのにさらに遠くへ行ってしまった。
ナナリーの不安と寂しさは募る一方・・・・・・。
でもそんなのは直に消え去った、それはライが毎日テレビ電話で話してくれていたから
それに思いのいっぱい詰まった手紙、誕生日プレゼントetc etc
全ての条件がナナリーを優しく包み込んでいた。その度にナナリーは思う
“この人を好きになれてよかった“と
しかし
306 :
テリー:2009/02/15(日) 20:31:02 ID:JyPitKm3
それとは別の黒い想いが大きくなっていくのをナナリー本人は感じていた。
“この人の側に居たい”“この人をもっと独占したい”“私から離れないように
鎖で繋ぎたい“etc
夢の中なんて他人には決して見せられない内容で(沙代子さんが知ったら
1週間は食料に困らないだろう、違う意味で)その後は自己嫌悪に陥るほど。
さらに不安なのだ、もしかしたら私よりも・・・・・・その不安も大きく
なるばかりだった。例え毎日声が聞こえたとしても・・・・・
そして2日前にとうとう堪え切れなくなった欲望と不安に突き動かされてしまった、
6年もの長い月日はナナリーを変えるには十分な時間を与えたのだ。
カレンに始まり、C.Cやモニカ、ミレイらに事情を説明し協力してもらうことにし
沙代子さんに写真を撮ってもらう役をお願いした。ただ自分の欲求を満たす為に
欲望を満たす為に・・・・・・
完全に疲れ切り寝込んだところを藤堂さん達にお願い(脅迫気味に)しここ
かつてナナリーが住んでいた王宮に運んでもらったのだ、2人きりになる為に・・・
でも
今あるのは罪悪感と己への失望感だけ、こんな事をして一体どうなる?
こんな事でライの本当の心は手に入るの?様々な思いがナナリーを責めて
止まない。
そのせいか一枚の書類をテーブルに置くのも堪えてはいるものの震えていた。
「婚姻届?」
「はい、それにサインして頂きます。言っておきますが断れないのは解ってますね?」
と、あえて冷たく言うもナナリーは祈っていた。
“この人の側にいたい、ライさんのそばにずっと・・・・お願いです!!どうか
私を離さないで・・・・お願い!!“
307 :
テリー:2009/02/15(日) 20:32:02 ID:JyPitKm3
「ナナリー、何故震えてるんだい?」
「!!!!」
押さえていたつもりなのにバレてしまった事に動揺を隠せないナナリー。
ライは普段は超がつく鈍感なのにこういった時は決まって鋭い。
「ナナリー、君が何故震えているのか、そんな押しつぶされそうな悲しい瞳を
してるかは僕には解らない」
そう言ってナナリーの前に立ち片手を頬にあて優しい笑顔でナナリーを見つめる。
彼女の中にある不安を和らげるために。
「ブルームーンの時から・・・いや、初めて会った時からかもしれない
僕のお姫様はナナリーだけなんだよ」
「ライ・・・・さ・・・・ん」
胸が一杯になりそうで・・・・自然と涙が零れてしまうナナリー。
ライは涙を指ですくい跪き手をそっと握った。
「僕は君とずっと一緒にいたいんだ。だから今誓うよ、例えこの先に何があろうと
もナナリーを守り抜く。僕の方からもお願いするよ――――」
「僕と結婚してくれるかい?ナナリー」
「はい!!!!」
ナナリーの不安は最初から要らぬ事、ライはたとえフラグを立てるも愛する者を
見捨てたりはしない、離したりなどしないのだ。
お互いに抱き合ってるナナリーとライの周りは別世界みたく沙代子の存在をすっかり
忘れている、まぁ沙代子さんもその成り行きを静観してますが。
愛おしくなった二人は誓いともいえるキスをしようと目をつむり顔を近ずけ――――
308 :
テリー:2009/02/15(日) 20:33:13 ID:JyPitKm3
「「異議ありーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」」
こんなに良い状況を台無しにするのは誰であろう親ば(ゴホン!!ゴホン!!)皇帝
とシスコ(ゴホン!!ゴホン!!)兄である。
「やっぱり来たのか、ルルーシュ、陛下」
「お、お父様、お兄様!?」
突如として現実世界に戻される2人
「ライ!!!貴様とナナリーの交際は認めたが!!!!」
「くぅえぇぇぇぇぇぇっこんまでは認めんぞーーーーー!!!!!」
まぁルルーシュはデートも認めませんからねぇ、でシャルルは娘離れ出来てないって
事ですよ皆さん。
「そ、そんな」
当然ナナリーはガックリくる。でも―――
「じゃあ力ずくでさらいます、それにもうこの通りサインしましたから」
力強く言い放ちナナリーを片腕ではあるが強く抱きしめる
「ライ、貴様!」
「ほほう、面白いではないか!!ではこのワシ達に勝って見せよ!!」
ものすごい威圧を放つシャルルとルルーシュ。妹の事となると別人になるみたいです彼
「ライさん・・・・」
「大丈夫心配しないでナナリー、僕を信じて」
「はい、何時でもライさんを信じています」
覚悟を決めたナナリーの瞳は強く光る、それを見たライはかつて狂王と呼ばれた
時の威圧を放つ
「ふはははははははは!!ライよ、俺と父の前で勝てるのか?奇跡に近いぞ!!」
「そのとぉぉぉぉぉり!!勝とうなど笑止千万!!」
確かに今のままでは二人には勝てないだろう、ナナリーを抱きかかえてるのだから。
「ふふふふふ私を甘く見るなよ、奇跡とは起こすものなのだよ!!」
所用あって支援不能
誰かいらっつしゃったらお支援願いします
支援
311 :
テリー:2009/02/15(日) 21:02:27 ID:JyPitKm3
と爆音と共にライの後が崩れ――――
「な、なに!!?」
「ランスロット・クラブだと!!!?」
どこからともなくライの愛機、ランスロットクラブ・アルビオンが降り立つ。
その手の上にナナリーを抱えたまま乗り移る
「何事も準備が大切なのだよ、去らば!!」
そう言い放ちクラブは空高く飛び立っていった。
「ライめ、こんな事をするとは」
「ふん!やりおるわ、狂王と言われていた男だけの事はある」
「父上!!感心している場合ですか!?」
「良いのだルルーシュ、今はほおっておくがいい。だが次はこうはいかんぞオオオオオオ!!!!かうぁぁぁぁくごしておくがいいいいい!!!!」
まだまだ諦めてない2人です。
「ライさん、あの、誰が操縦を?」
「ああ、佐代子さんだよ。二人が来るのはちょっと予想外だったけど沙代子さんが
目で語ってくれたんだ」
風を受け髪をなびかせながらライは説明する。その姿にすっかり見惚れてしまうナナリー
は顔を赤らめる
「ナナリー、これからも一緒だよ」
「はい!!よろしくお願いしますね、旦那様」
嬉しさからとびっきりの笑顔でライに抱きつくナナリーの心にはあの黒い心は
一切ない、あるのは幸福感と幸せ。
抱きつくナナリーをしっかりと受け止めるライは、もう決して離さない
何があっても守り抜くと誓い、優しく微笑む。
2人に幸せが末長く続くたらんを
猿か、投下終了?
313 :
テリー:2009/02/15(日) 21:04:27 ID:JyPitKm3
申し訳ありません!!!さるを発生させてしまったことをお詫びします!!
以上です、申し訳ありません。
314 :
咲世子:2009/02/15(日) 21:43:16 ID:vqClA+At
・・・・・・
最初に言っておく!
佐代子でも沙代子でもない、咲世子さんだ!
>>313 テリー卿、乙でした。
黒い心……ヤンデレきたか!?
とちょっと喜んでしまった。
ヤンデレって良いよね、病むほどの愛って、なんか良いよね、一途っぽくて。
……っと、脱線してしまった。
すごいね、シスコンと親バカのバカ親子。
この親にしてこの子あり、だね。
ナナリーエンド編、つまり他のキャラのエンドもある、と。
期待しています。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
誤字指摘
>>301 いい天気わ→いい天気は
>>304 だじだじになる→たじたじになる
316 :
POPPO:2009/02/16(月) 18:27:30 ID:JGeI+rHj
POPPOです。
今から
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」(中編5)
を投稿します。
サルにならないように気を付けます。
それではいきます!
317 :
POPPO:2009/02/16(月) 18:29:16 ID:JGeI+rHj
「ミレイさん。今回のお話、お受けいたします」
僕がそう言った途端、ミレイさんは生徒会室でいきなり抱きついてきた。金色の髪から仄かなミントの匂いと、カレンとはまた違う女性特有の香りが僕の鼻を擽った。
それに加えて、彼女の豊満な胸が僕の胸板に押しつけられて顔が急に熱くなる。
今は生徒会活動の時間なので、生徒会室には僕とミレイさん以外のメンバーもいた。今日は珍しくスザクも顔を出しているのだ。
久々にメンバー全員が揃っている活動のティータイム。
僕、言うタイミングを間違えたかな?
「うわっ!?ミ、ミレイさん!」
「ライ!ありがとー!うんうん。ミレイさんとっても嬉しいわ〜!」
頬をスリスリしないでくださいよ!恥ずかしいじゃないですか!
「あの、IDの件がスザクのおかげでどうにかなったもので…」
ミレイさんは腕に力を込めて僕の首を抱き寄せた。それでもスキンシップを止めず、「良かった良かった〜」と言いながら、スザクに目を移した。
「そうなんだー!ありがとう!スザクくん!」
スザクはアッシュフォードの校章が刻まれている皿にカップを置いて、ミレイさんに目を向ける。
「えっと、僕というよりユーフェミア様がシュナイゼル殿下に頼んでやってもらったことですけど…」
「「「「「えっ!?」」」」」
その言葉に、生徒会のメンバーは驚いた。ミレイさんも僕から手を離してしまった。スザクの隣に座っているリヴァルは紅茶を少し口から零していた。それを袖で拭って言葉を紡ぐ。
「シュ、シュナイゼルって『あの』!?」
「うん。僕も聞いた時は驚いたけど」
「ライくんってユーフェミア様とお知り合いなの!?」
普段は大人しいニーナも珍しく話に加わってきた。声の震えといい、結構驚いているみたいだな。
「記憶探しに町を歩いていた時に偶然知り合って、それから…」
「ライくん…普通に話してるけど、それって相当凄いことだよ」
「まさかユーフェミア様と知り合いだったとはな。驚いたよ」
ルルーシュ。そんな簡単に嘘が言えるとスザクが怪しむぞ。まあ、杞憂かもしれないけど。
「……ホント、ライって不思議な子ね〜。どんな風に歩きまわったらそんな人種に出会えるのか、教えてもらいたい位だわ」
ミレイさんは顎に手を当てて、僕の顔を覗き込んできた。
うわっ!?息が当たってますって!顔が近いですよ!
リヴァルは睨んでくるし、ルルーシュは何だか怪訝な顔をしてるし、誰か…
ガシッ!
そう思った時、不意に後ろから襟首を掴まれた。かなり強い力で。
後ろに頭が傾いて、誰かの髪に触れた感触があった。目の前にいたミレイさんは少し目を丸くしていた。そして、なんだか意地悪い猫のような表情を浮かべている。
あー……顔を見なくても誰だが分かる。
それは先ほどから一言も喋っていない人で、このシャンプーの香りは…
「で…そ・ろ・そ・ろ離れてくれませんか?会長?」
…今日は寝かせてもらえないかな。
お手柔らかにね?カレン。
318 :
POPPO:2009/02/16(月) 18:31:05 ID:JGeI+rHj
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」(中編5)
私が『ゼロ』を名乗ってから2か月が過ぎた。
全てが順調とは言えなかったが、計画をその度立て直しながら、どうにかここまでたどり着いた。
あの事件以来、授業をフケる時間がさらに増えてしまったが、それはこの結果から良しとしよう。
今日は十分な睡眠を取ったし、朝食だってしっかりと取った。身も心も万全だ。私はこの光景を見て、思わずにやけてしまう。
今日は曇り一つない快晴な天気。時間は正午をまわった頃だ。
空を見れば、色鮮やかなバルーンが浮かんでいる。式典会場までの道脇にはブリタニアとイレブンの屋台がズラリと並んでいる。
本来なら車が通行する大通りだが、今はたくさんのブリタニア人と日本人で賑わっていた。家族連れも多く、私が見た中で一番の盛況だと思う。
それは規模的な意味では無く、ブリタニア人がナンバーズと同じ土俵で祭りを楽しんでいるという歴史的な見地から言えばだ。
これだけでも行政特区日本の特異性が見てとれる。従来のブリタニアの支配体制では考えられない状況だ。
ナンバーズの区別はブリタニアの国是であって、いま私が目にしている光景はその国是を真っ向から捻じ曲げてしまうものである。
行政特区日本が成立してからまだ1年も経っていない。
遠目から見ても、ブリタニア国民とナンバーズの間には蟠りはあるが、この短期間の変化としては驚くべき成果だろう。
私はこの日が来ることを待ち望んでいた。
しかも私が想定していた中でも、とびきりの好条件だった。これを笑わずにはいられない。そんな私の様子を横目に、右の方から聞き慣れた声が聞こえた。
「ねえ、リリーシャ。あそこにある『たこ焼き』っていうのが食べたいんだけど」
私と手を繋いで歩いている黒髪の少年、X.X.が目を輝かせて私を見ていた。
「ええ、いいわ。それと、あのブリタニアロールはどうかしら?結構オススメよ」
「じゃあ、どっちも食べる!」
「そうしましょうか♪」
私はX.X.に優しく微笑みかけると、彼も屈託のない子供の笑顔を浮かべた。
風に靡くブロンドの長い髪を押さえながら、私たちは屋台に立ち並ぶ行列に入り混じった。
今日の私は、濃青色の古着のジャケットに前一面にプリントされた白のシャツ。首元はシルバークロスのネックレスで飾り、ジーンズを履いている。
そして、頭にはウエーブをかけたブロンドカラーのカツラにアニマル柄のアンゴラーベレー帽を被っている。
ロゴの入ったブラウンのショルダーバッグを肩に下げ、普段の大人びた雰囲気とはうって変わって、遊び盛りな年相応の少女の服装を身に纏っていた。
ちなみに、X.X.も黒髪のカツラを被り、白のプリントシャツに紺のジャケットとズボンを履いている。
見た目からは仲が良い姉弟としか映らないだろう。
319 :
POPPO:2009/02/16(月) 18:32:19 ID:JGeI+rHj
二人は人が犇めき合う人ごみをかき分けて、式典会場へと向かっていた。X.X.の両手にはたこ焼きと食べかけのソフトクリームがあった。
彼の汚れている口元を、私は持っているハンカチで拭う。そして、X.X.はまた汚れるのを無視して食べ物を口に運び続ける。彼が私の目線に合わせると、口に爪楊枝を咥えたまま喋った。
こら、X.X.また口元にマヨネーズが付いてるじゃない。
「リリーシャは何で食べないの?これ、美味しいのに」
「私は基本的に間食しない主義なの。おやつを食べるなら、前もってカロリー計算して食べるわよ」
「食べたいものを食べたい時に食べることが、一番の健康だと思うんだけど…」
「美容としては一番とは言えないわ。それに偏った食生活は健康を害するわよ?」
「うはー。今の人間って変わってるね。美味しい物がこんなにたくさんあるのに食べないだなんて…」
「そうかしら?」
「それに、美味しいものをたくさん食べて病気になれるなんて、とっても贅沢じゃないか」
「…私は遠慮するわ。そんな贅沢は」
私の返答に首を傾げるX.X.を目の端に捉えて、空に浮かぶ飛行船に目を向けた。すこし、日差しが強い。
飛行船に張り付けられた巨大なモニターに映し出されている文字を見る。
『行政特区日本独立軍調印式典』
私が活動を開始してから一か月足らずで『事件』は起こった。
一月前、グンマでブリタニア軍と黒の騎士団の武装集団が衝突し、両者合わせて50名を超す死者が出たのだ。
この事件は、行政特区日本成立以来初めての不祥事であり、世間を騒がせた。
半年前までは敵同士だった両者に、この短期間で確固たる信頼関係を築けるはずもなく、私たちの扇動効果が拍車をかけて彼らの確執が浮き彫りになった事件だった。
それを憂慮した両方のトップ陣営が協議した結果、黒の騎士団を行政特区日本の正式な軍隊として認めることになった。
これによって在留しているブリタニア軍の縮小と、行政特区日本の独立を一歩前進させる異例の決議がなされたのだ。
ブリタニアの統制下に置かれているエリアが独自の軍隊を持つ。
それは事実上の独立と言ってもいいかもしれない。いくら行政の規制が緩いとは言え、軍事の裁量を委任するというのは逸脱もいいところだ。
裏では一体どのようなやり取りがなされたのか。黒の騎士団の海外進出の抑止力になるとは言え、ブリタニア側にはほとんどメリットが無い。全く、彼らに興味が尽きないわ。
だが、そんなことはどうでもいい。
急性すぎる進展と、黒の騎士団の正式な参入を祝う『式典』が行われたことに私は感謝した。
ブリタニアのように貴族階級のみの厳正な祝辞にするのでは無く、大衆向けの行事になっていた。
この式典に参加するのはブリタニ人と日本人、どちらも一般庶民が大多数を占める。
すなわち、この行政特区日本にいる国民に直接アピールする機会が設けられたのだ。
私の目的は、ここにあった。
そしてこれはX.X.の『願い』も同時に進行させることができるチャンスでもある。
320 :
POPPO:2009/02/16(月) 18:33:21 ID:JGeI+rHj
黒の騎士団の幹部に連絡が取れるシークレットコードを早い段階で手にいれた私は、あらゆる情報網を駆使して、彼らのことを調べた。
わかったのは、彼らの組織編成と、優秀な情報機関が存在するということだけだったが私には貴重な情報だった。
幹部との連絡が出来る支部はエリア11各地に存在する支部でもごく一部しかない。そこからの連絡を介して情報伝達がなされ、行動に移される。
また、物資やナイトメアの管理も黒の騎士団の幹部が担っている。これは事態に即応性のある編成では無く、反乱分子や他の組織の介入を防ぐといった保身に重点を置いた構造だった。
つまりはゼロを取り巻く幹部を筆頭とした典型的な縦組織。
特に情報管理が本国のブリタニア軍並みに徹底されていて、幹部の情報とゼロの周辺の情報秘匿も担っている。
これは『ゼロ』という正体不明のボスが成り立っているからこその情報統制であり、彼は素顔を隠すというリスクを補う程の数々の功績を生み出してきた鬼才の戦略家。
それは称賛に値する実力だろう。
しかし、そこに『ギアス』が絡んでいるとなると話は違ってくる。
今までのゼロの経歴を見てみると、彼が持っているとされるギアスの能力も想像がついた。
私のギアスもそうだが、ギアスは強力な力であるが、決して万能なものではない。
特定の条件が揃ってこそ有効に使用できるものであり、無暗に使っていてはこの能力が他人に知られるだけでは無く、自滅してしまう恐れもある。
だからこそ、ゼロもまた使う場面を極力抑えているのだ。
もしも彼が愚かな指導者で、部下を全てギアスで統制していたならば、ブリタニア軍と黒の騎士団の衝突は起こらなかっただろう。あの事件はその確認にもなった。
そして、ゼロの持っているギアスは『他人の意志に干渉できる力』。
それも私のように相手を視認し続けることなく、下した命令が完了するまで効力が途切れることが無いギアス。
私のギアスも他人の意思が支配下にある時は対象者の記憶は欠落するので、その現象は兄の証言と一致する。そして効果範囲は近接の視覚領域。肉声による命令決定。
まだまだ情報が欲しいところだが、『近づかなければギアスは使えない』ということが分かっただけでも十分だ。
私はあの日、誓った。
X.X.に出会い、彼の『願い』を聞いたあの日に。
そして私は、この手を血で染めた。自分の意思で。『ギアス』という力で。
私の友や家族とは大きく異なる、狂気に満ちた世界に足を踏み入れた。X.X.が手を差し伸べ、私がその手を取ったのだ。
あの日から私は屍を作り出し、踏みこえ、駒を用意し、動かし、そして今、ここに立っている。
紛れも無い、自分の意思で。
迷いは『罪』を招く。『罪』は恐怖を教え、人を前に進ませる。
だから、私は己の行動を振りかえらなかった。
私が後ろを振り向いたその時、私は終わるだろう。罪の意識に潰され、罪に怯えて。
兄は、今の私の姿を見て悲しむだろうか。
いや、そんなことはない。きっと褒めてくれるはずだ。だって私は『正義』なんだ。ゼロという『悪』を滅ぼすためにこの『力』を使っているんだ。誰がこの私を責められる?
だから、見ててよ。兄さん。
ありったけの絶望を与えて、黒の騎士団と共に『ゼロ』を殺してやるから…
私は人が群がっている目の前を見据え、左手をバッグに入れた。
いざという時には、私には『これ』がある。
バッグに入っている『これ』を私は取り出した。
それを見たX.X.は首を傾げた。不思議そうな顔で私を見た。
「え?何で『そんなもの』持ってるの?」
X.X.の予想通りの反応に私はにっこりと微笑んだ。ハンカチで彼の鼻についたチョコレートを優しく拭き取る。
「ふふん♪これは私の『秘密兵器』よん♪」
教えてー、とせがむX.X.
でも、こればっかりは教えてあげないわ。楽しみにしてなさい。
…でも、これはあまり使いたくは無いんだけどね。
321 :
POPPO:2009/02/16(月) 18:36:18 ID:JGeI+rHj
午後2時00分。
式典会場では行政特区日本の代表者が一堂に会し、民衆の歓声の中、華やかな前祭が終わり、行事は行われていった。会場周辺には多くの民衆と共に物々しい警備が施されている。
会場から入ってくる一般の人々には身体検査が実施され、屋台が立ち並んでいる大通りにも、祝辞用に着色されたナイトポリスが多く待機していた。
会場内にはグロースターとサザーランド。そして黒の騎士団のKMF、量産型の月下が左右対称に配備されていた。
その最前列に、ブリタニア側にランスロット。黒の騎士団側には紅蓮弐式が向かい合っていた。かつては刃を交えたKMFであるが、それは今や過去のことだ。
そして会場の裏側。
代表たちが舞台に立っている最中に多くの関係者が行きかう舞台裏で、人気が無い通路に二人の青年が立っていた。廊下にはユフィのマイクの音声が響いている。
一方の道脇には大きなダンボールや折りたたまれた長方形のテーブルが立ち並び、二人は壁に寄りかかりながら喋っていた。
一人は黒の騎士団のジャケットを羽織った銀髪の少年。
もう一人は選任騎士の煌びやかな衣装を纏った癖毛のある茶髪の少年。
「騎士候の服を着てるなんて、久々に見たよ」
「今日はブリタニアの騎士として参加してるからね。僕もあの式典以来だよ」
左胸に付けている騎士候の勲章もなんだか懐かしく見える。
「でも、スザクが席を外されるなんておかしくないか?」
「『重大な発表があるから、スザクは後で出てきてください』ってユフィが…」
「え?コーネリア様の命令じゃなかったのかい?」
「いや、それがユフィ直々の命令なんだ」
僕は頭の中でいくつもの事例を考えていた。あまりピンと来るものが無い。
「それって良いことだよね?」
「笑ってたからそうだと思うけど、僕も知らないから少し不安だな」
「まあ、楽しみに待っておこうよ。僕はその時、度肝を抜かれたスザクの表情を拝むとしますか」
「そんなことを言ってるライこそ度肝を抜かれるんじゃないかな?」
そう言って僕たちは笑い合った。その後、スザクは周りを見渡して僕に質問をしてきた。ごく自然な質問を。
「そういえば、カレンは何処にいるのさ?ライと一緒じゃないの?」
「カレンはKMFの警備担当だよ。勿論、紅蓮弐式には乗ってないけどね」
「僕のランスロットも武装解除して置いてあるだけだからね。ロイドさんが文句言ってたけど…」
「はははっ。そういえば、紅蓮弐式の開発者も同じこと言ってたよ。『KMFを観賞用に造った覚えは無いんだけど…』とか言って」
今日は黒の騎士団が正式に行政特区日本の軍隊となる調印式だ。舞台ではゼロや藤堂さんたちが参加している。
ブリタニア側はコーネリアを筆頭に、彼女の騎士であるギルバート・G・P・ギルフォードやアンドレアス・ダールトンも参列している。
そして、行政特区日本代表としてユフィ、そしてキョウト六家の大物と扇さん達が行事を進めていた。
322 :
POPPO:2009/02/16(月) 18:38:15 ID:JGeI+rHj
僕は、というと、こうやってスザクと話しているだけだった。ちゃんとした役職も任されているんだけど、今日は僕が動くことは無いと思う。だから随分と気が楽なのだ。
「…そういえば、今朝顔を合わせた時、コーネリア様に相当睨まれてたんだけど」
「あ、やっぱり?実はライの事を知りたがってるんだよ。コーネリア様」
「え?何で?」
「ダールトン参謀長が『黒の騎士団に聡明な戦士がいることをご存じですか?』とか言ってたなあ…」
…なんか気が重くなってきた。これは後でルルーシュに報告しておこう。
「僕を買い被り過ぎだよ」
「そうかな?僕はゼロよりライを敵に回す方が怖いよ。頭脳といい、身体能力といい…ハンパじゃないからね。君は」
「…褒め言葉として受け取っておくよ」
僕は一つの疑問が頭に浮かんだ。前から思っていた事だ。
(そういえば、僕の情報がいつも止められてるんだよな。ディートハルトが僕の血筋に関する情報を秘匿しているだけだと言っていたけど…あれはやりすぎなんじゃ…
その時だった。
僕の頭に激痛が走った。
「う―――――――――ぐっ!」
視界が回る。僕は頭を押さえながら、足をよろめかせてしまった。空いた手を壁に押し付けてバランスを何とか保とうとした。
「!?どうしたんだ!ライ!」
スザクが僕の異変に気づいて体を支えてくれた。肩に強い握力を感じる。
「…っつ、だい、じょうぶ、だよ。少し立ちくらみ、した、だけだから」
口ではそう告げたが、僕は言い知れぬ胸騒ぎがした。
(この感覚、何か懐かしい気がする…)
半年前の式典ではC.C.に異変が起こった。そして、今回は僕。
「本当に大丈夫かい?顔色が良くないよ?」
「…ああ、気にしないでくれ。ここのところ寝てないからかもしれない。それよりスザク。そろそろユフィの演説が終わるんじゃないのか?」
スザクにこれ以上心配されないように、僕は首を回して頭を振ると、笑顔を作った。
「あ、ああ。そういえば、もうそんな時間だね」
「ユフィが何を言うのか分からないけど…スタンバイしていたほうがいいんじゃないかい?」
「…ライは念のためにメディカルチェックを受けてきなよ。寝不足も立派な病気だからね」
「ああ。そうするよ。でも、方向は一緒だから途中まで一緒に行こうか」
僕はスザクを促して、ステージに上がる場所へ足を運んだ。
バイザーを深く被って、顔をあまり見られないようにする。ディートハルトからの助言を僕は忠実に守っていた。人気が多くなってきたところで、僕とスザクは距離をつくる。
スザクが黒の騎士団の内通者として疑われない為のちょっとしたテクニックだ。
323 :
POPPO:2009/02/16(月) 18:39:25 ID:JGeI+rHj
ステージでは調印式は終盤に差し掛かり、ユフィの演説が終わった。
目の前にいる数万人の行政特区日本の国民とブリタニア人から大きな拍手が沸き起こった。
そして、彼女は胸に手を当て、大きく息を吸った。演説は終わったというのに一礼せずに、拍手が終わってもまだ身を引かない。
怪訝に思ったコーネリアが動く前に、ユフィは意を決して口を開いた。
『行政特区日本の国民の皆さん。これは来月に正式に発表する予定ですが、今ここで皆さんにお伝えしたいことがあります』
その言葉に民衆は声を潜め、彼女の後ろに控えている代表者たちは驚いた。予定にはないユーフェミアの発言。彼女の周囲が徐々に騒ぎはじめる。
その中で一人、彼女の行動に疑問を持たなかった者がいた。
仮面の男。『ゼロ』――――――――――ルルーシュ・ランペルージである。
(フッ。何事かは知らないが、いつも突然だな。ユフィは…)
足を組み、彼女の後姿を見つめていた。日本をイメージした東洋のドレスを身に纏うユフィを。
彼の隣に座っている藤堂鏡志朗の声が耳に入ってきた。
「ゼロは知っていたか?」
『知らないな。だが、予想はつく』
「…我々にとって害をなす話題では無い、ということか」
藤堂は『ゼロ』の声色から彼の意を読み取った。ならば、特別に警戒する必要は無い。
『わたくし、ユーフェミア・ロ・レーベルマイスターは…』
キイイ―――――――――――ィィン!…ブツッ
一際甲高い音が鳴り響き、マイクの音が途切れた。
機械の故障かと思い、耳を塞いでいたユーフェミアはマイクを掴んで、マイクを色んな角度から見つめていた。
ステージの両端から、急ぎ足で2人のブリタニアの親衛隊が駆け寄った。一人の手にはマイクが握られている。機材の故障があったと周囲は判断した。駆け寄った親衛隊はユーフェミアに新たなマイクを渡す。
次の瞬間、人々は信じらない光景を目にする。
ユーフェミアがいきなり親衛隊の腰から拳銃を抜き去り、彼女の後ろに控えているメンバーに向けた。
その銃口の先にいたのは――――――――――――――――――――――――――『ゼロ』。
「えっ?」
『なっ…』
パンッ!
数万人が集まったこの式典の中心で、一発の銃声が鳴り響いた。
324 :
POPPO:2009/02/16(月) 18:44:34 ID:JGeI+rHj
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」(中編5)
投稿終了です。
中編6で終わり、その次は後編に突入します。
後編は3部です。
後編は新キャラ出ます。(というかイロイロ出ます)
また、設定も同時に出す予定です。
皆さんの感想、全力で待ってます!
>>324 POPPO卿、GJでした!
なんと!?
ユフィがゼロを撃つ……やはりリリーシャのギアス?
そして、『秘密兵器』とは?
なんかえらいことになってきたな……すごくワクワクしてきた。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
POPPO卿おつです!
いつもながらすごい!オリキャラの多用とキャラそのもの多さ、どちらも地雷になりかねないモノなのに
それを見事に生かしきってるのには感心させられます。
急転直下の展開でますます目が話せないですね。続きを全身全霊で待ってます!
ここから少しばかりご意見を。結構むずかしい漢字を多用されているようですが、ふりがなを付けてみるというのはどうでしょうか?
ぐぐればわかるとはいえ、テンポが途切れるというか。
あと、半角文字にしたほうがいいと思うところがけっこうありました。
X.X.」を「X.X.」など
これらは好みの問題だと思うので気に入らなかったらスルーしてください。
では!
POPPO卿GJでした!
最後の展開は本当に神でした!
これは次回が楽しみです
やっぱりユフィはギアスで意思をねじまげられてしまうのか……
これから、怒涛の展開が待つのでしょうね。
ルルーシュは、ユフィはどうなる?スザクはどうする。ライは。
ユフィの言いたかった事って? 気になることは尽きませんが。
続きが読める日を楽しみにお待ちしています。
(他の方が指摘された漢字についてですが、私は特に気にならず読んでいます。
対応されるのでしたら、ふりがな?を振るよりも
適度に漢字を開いて表記していただけた方が読みやすいかと思います。)
「わだかまり」とか「なびく」とかかな?
POPPOさんおつかれさまでした
ルルがユフィに撃たれてしまう超展開にわくわくしてます!
リリーシャの反逆がライにどう絡んでいくか、次回をお待ちしていますね
さて、わたしの方も0:30より投下します〜
コードギアス LOST COLORS [手をとりあって]その3.625 【玉城真一郎】
第三話と第四話をつなぐインターミッション編で5レスになります
支援はいらなさげです
───2018,Jul,伊豆
夢は官僚、その後政治家、ゴールは総理大臣。
自分で言っておいてなんだが、お笑い種だ。
他人が大真面目にこんなことを言っている所に出くわしたなら普通どうする?
俺だったらひとしきり笑った後に張り倒しているだろう。
バカで、いいかげんで、口だけのつまらないヤツ。
そう言って俺を見下さなかった奴が二人だけいた。
そいつらの第一印象は「優男」で「何を考えているかわかんねぇ奴」。
こうしてあらためて思い返してみると不思議だよな。見た目も年も性格も、何もかも違う人間なのに第一印象はまるで同じじゃねぇか。
一人は……もういないんだけどよ。
いくら探したところで、もうこの世のどこにも…いない。
お前のことなんだぜ? ナオトよォ。
『こいつにはぜってぇ勝てねェ』
そう思った。
『こいつならくだらない俺を変えてくれるかもしんねぇ』
初めてだった。
自分から素直に……そうだ、素直に誰かに従おうと思えたのは。
『こいつについていけば俺は変われる。今までとは違う俺になれる』
そう信じることが出来たから、だから、お前がいなくなった後、俺はどこか空っぽのような毎日を過ごしていたんだ。
ナオト、聞こえているか?
お前がいなくなっちまった後、俺には二人ダチが出来たんだ。
一人は奇跡を起こす男さ。お前にだって負けてねぇ、俺の親友。すげェ奴なんだぜ。
もう一人はな、不可能を可能にする男だ。こいつもな、すげェ奴なんだ。
俺をバカにしなかった、二人目の奴なんだ。
だからよ、お前に贈った“戦友”って呼び名さ、そいつにやるのを勘弁してくれよな。
いつか………俺がジジィになって、ポックリくたばって、そっちに行った時にはそいつらの事を話してやるよ。
だからよ、ゆっくりのんびりだらだらと待っていてくれや。
じゃあ、な。また来るぜ。
こう見えてもな、忙しいんだ。
行政特区日本の役人様だからよ、官僚って奴だからよ。
そうだな、第一歩達成だな。でもよ、「その後政治家、ゴールは総理大臣」ってあれな、あれはヤメ、だ。
そういうのはよ、あいつらにおまかせだ。あいつらのが相応しいからよ、きっと。だからよ、俺はそいつらを一生懸命助ける仕事をやるんだ。
あいつらが考える国を俺が作っていく。あいつらが考えたプランを俺が形にしていく、その仕事!
あいつが任せてくれたんだ、俺に。
あいつとなら、俺はバカで、いいかげんで、口だけじゃない俺に変われそうな気がするんだ。
俺は今すっげぇ充実してる。一日々々が短すぎてまいっちまうぜ。
じゃあな、もう行くぜ。
………そうだなぁ、今度はそいつを連れてくるかな。カレンと一緒にでもよ。
なんでわざわざカレンと一緒にってか?
けっけっけ。
それがよ、お前。話すと長くなるんだけどよ、あのカレンがなぁ─────
コードギアス LOST COLORS [手をとりあって]その3.625 【玉城真一郎】
異常を聞いたのは伊豆から車を走らせること数時間。そろそろフジに入ろうかといったところでだった。
ラジオから流れる緊急事態の放送、混乱と動揺とそして、そして……。
やがて知ったことは唯一つ。
俺たちの日本が、踏みにじられたってことだった。
・
・
・
───2018,Jul,行政特区日本
あの侵略を経て思い知ったことはいくつかある。
死臭の持つ陰鬱さ。
これが、その一つだ。
どんなに洗っても、匂い消しを使おうと、いくら誤魔化そうと死臭は消えない、けして消えない。
高層部分が崩落した政庁からいくらか離れた場所にある区民会館。そこに俺は駆けつけた。
そこに回収された遺体が安置されていると聞いたからだ。
死臭が満ち満ちていた。けっして慣れることなんてありえない、悪魔が懐かしむ匂い。
その次に充満しているのは慟哭、やり場のない気持ちの数々だ。
「先輩?」
聞き覚えのある声に俺は振り返った。
「おう、双葉かよ。お前なんで……」
言いかけて言葉を止めた。
何でここにいるんだ? そんな質問に意味があるのか?
あるわけがない。ここは遺体安置所じゃねぇか。
「おま…」
双葉が視線を横に逸らした。
「いいえ、わたしの身内じゃないんです」
「じゃあ、いちじくが? もしかして水無瀬かっ?!」
思わず双葉の肩をつかんで揺さぶってしまっていた。異常な状況が俺を混乱させていたんだ。
会館の決して狭くはない講堂にずらっと並べられた黒い袋───死体袋が、そこに群がるようにしている人々の姿が俺を惑わせる。
コレは一体難なんだ。なんで死んだ、どうして死んだ、なぜこんなにも………。
あぁ、暑い。ここは暑いな。夏なんだから、だから夜でもこんなものか。
それにしたって!
「先輩、先輩……痛い、です」
わずかに身をよじる双葉、その顔。「悪ィ」と俺は双葉を解放した。
「課のみんなも、わたしたちももう退庁の時間だったから何も。ただ…」
くちごもる。当事者とってはその「ただ」の方が大事なのに。
双葉の白い指先が講堂の奥の方に向いた。
「ただ、むつきちゃんが」
その指先が示す方向にうずくまる女が二人いた。
黒い袋の前でまあるくなってうずくまっていて、ポニーテールの女が髪の長い方の女の肩をだいている。
「誰が死んだんだ」
俺は無神経な事を口にしていた。
頭の奥のほうがツンとしていた。
無神経で無感動な真っ黒なものが俺の胸の中に鎮座しているのだ。それは俺の口を使って、心無いことでも平気で発する。
だけど、そんなことを口にした時、すでに俺には誰が命を落としたのか理解しかけていた。
── センパ〜イ、私のお姉ちゃんが政庁に就職できたんですよ! お祝いくださいよ〜! ──
いつもツンツンしている水無瀬がやけに機嫌良く擦り寄ってきたことがあった。
政庁の秘書室に採用になった水無瀬の姉ちゃん。
妹に比べてちょっと幼い顔立ちの──可愛い感じの女だった。大きなメガネで顔がほとんど隠れているせいか、地味な見た目が残念だった覚えがある。
── うちのホープなんだからね。手ェ出したら承知しないわよ、いいわね玉城ッ!! ──
そういえば井上のやつがそんなことを言ってたっけ。
余計なお世話だっつーの。
会ったのは一度きりだったっけな。
よし、お祝いをやろうぜ。朝まで呑み明かすぞ! なんてと言って馴染みの店を貸し切って大騒ぎをしたんだった。
ほんの二ヶ月前、初夏だってのに妙に寒くて熱燗がうまかった。
楽しかったな。井上と一緒にライのグラスにこっそり生の焼酎を注いで、そんでもって飲ませて………そういえばあいつ大丈夫だった。
いっきに飲み干しておいて「あれ? なんかヘンな味なんだけど」とか言っちゃってさ。
まだまだガキみたいな顔してるくせによ。こちとら赤くなって引っくり返る姿を期待していたっての。
むしろ主役の水無瀬の姉ちゃんの方が大変だったな。
一口飲んじゃあ顔真っ赤にして、ゆで卵を頬張ってして爆発させたり。なにかと曇るメガネ──いまどき珍しい牛乳瓶の底のようなヤツだ──を拭き拭き畏まってた。
結局いつも通りに俺たちばっかり飲んで食って騒いでお開きになったんだ。水無瀬の姉ちゃん、早々につぶれちゃってライが介抱してたもんな。
次の日水無瀬が恐縮してて面白かった。御門次長にありがとうございましたとお伝えしてくださいねッ! ってしつこく言ってきてさ。
メンドくさかったからほったらかしにしてて、結局いまのいままで忘れたまんまだった。なんで今更思い出しちまったんだろう。
そうだ、あの後その姉ちゃんが急にイメチェン始めてメガネをコンタクトにしたり、着る物が華やかになったとか水無瀬が喜んでいたっけ。
── あれ、絶対恋をしたんですよ。絶対に絶対ですから ──
あのお姉ちゃんがねぇと嬉しそうに水無瀬が言っていた。
まるで別人のようになっちゃってと井上も笑っていた。
なんでこんな時に楽しい……楽しかった思い出ばかりが浮かんでくるんだろう。こんな時だから、なんかな…。
その姉ちゃんが、か。
髪の長い方───水無瀬が肩を震わせていた。嗚咽の音は聞こえない。周りの色々な声に邪魔されて。
この場所に満ちる慟哭の渦、それが集まった人の涙と嗚咽を飲み込んでいる。
まるで海のようだ。
個々人の嗚咽はまるで聞こえないのに、場にそれらはひしめいている。
目眩がした。
泣き叫ぶ者、肩を落とす者、肩を震わせる者、それらの嘆きは溶け合い交じり合って形を失い、個人の物ではなくなり、この場そのものとなって渦巻いているんだ。
嘆きの海。涙の波。
その大きな慟哭の波に俺は押し潰されそうになっている。
八年前のあの日に感じたのと同じ無力感が俺を押し潰さんばかりに押し寄せている。
つらいよ、な。大好きだった…尊敬していた…期待していた…そういった人間が突然この世からいなくなるなんてよ。
水無瀬の肩の揺れが次第に大きくなっていく。
「おい、双葉よぉ」
俺が細々と言うまでもなく、双葉は軽く頷いて友人の側に駆け寄っていった。
「────許さない」
波の間からしぶきが一つ、飛んだ。
「むつきちゃん……」
側に駆け寄った双葉がいちじくと一緒にその肩を抱くが、水無瀬は彼女らなどそこにいないかのようにただ震えているんだ。
「絶対に許さないから」
また聞こえた。溶け合う海から、砕け散る波の間から飛ぶしぶきのような───暗い言葉。
「こんなことをしたブリタニア───絶対、絶対許さないから」
── 絶対、許さない ──
それは八年前の俺の姿だった。彼女の言葉は俺の言葉であって、かつての俺が今の彼女だった。彼女は俺だった。
俺は講堂を後にした。
逃げるようにじゃあない。逃げ出したんだ。
慟哭と憤激の大きな波に押し潰されることを恐れて、
逃げ出した。
・
・
・
会館を出たところで俺は井上のヤツと出くわした。
そう喋ることもない。水無瀬のことだけ伝えると井上も理解したように頷いていた。
あいつが運転する車に乗り込む。黒の騎士団の───特区参加の時に組織解体されたとはいえ、それは名目上のことだ───中心メンバーに召集がかかったそうだった。
「あんたにも召集のメールは届いているはずなんだけど」
支給された携帯を見れば届いているかどうかはすぐわかる。だけどそれをしようという気力が俺にはもうなかった。
そうだ、車、置きっ放しだな。あとで取りに戻らなきゃな。
日差しがどんどん高くなっていく。今日も暑くなりそうだ。
「とにかくさ、騎士団は………ゼロは健在なんだからさ、なんとかなるわよ。今までだってなんとかしてきたんだからさ」
そうだな。ゼロが、俺の親友が…奇跡を起こす男、ゼロがいればきっと。
「あったりまえだろ井上ェ! 俺たち黒の騎士団とゼロがいればな、何の心配もいらねぇんだよ!」
井上が顔をしかめる。声が大きいとでも文句を言うつもりか? いや、言わせねぇ。
「俺たちにはな、奇跡を起こす男のゼロと、不可能を可能にする男のライがいるんだからよ。そこに不屈の男、この玉城様が加われば何の心配もいらねぇんだよっ!!」
また井上が顔をしかめる。そんなにおかしいことを言ったか? そりゃあ俺があいつらと同列かって言えばそりゃ言いすぎかもしれないかもよ。
「あんた………まだ聞いていなかったの?」
キキィッ!! 軋むタイヤ、車が止まる。
急ブレーキにシートベルトが俺の肩甲骨に食い込んだ。もっと優しく止めろよっと思わず非難が口をついて出る。
井上の顔が笑っていなかった。あいつの形の良い目の端ににじんでいるのは…。
「なんで聞いてないのよ、なんでっ」
こいつの泣きそうな顔を俺は初めて見た。
「ライはね、わたしたちの戦友の…ライはねっ────」
なあ、ナオトよォ。
俺たち、なんで戦っているんだろうな。どこまで戦い続ければ終わりが来るんだろうな。
ナオトよォ、俺たち、これで良かったのかな。
■ NEXT SESSION PREVIEW ── 次回予告 ■
夢は醒める。必ず醒める。
行政特区日本は、俺たちの日本は夢だったのか?
突如起きたテロはユーフェミアを、ライの命を奪った。
迫りくるブリタニア軍の姿はささやかな未来さえ覆い尽くすのか。
俺は行政特区に参加した一市民ではなく、黒の騎士団副指令としてトウキョウ租界に向かった。
戦いを回避するために。
安息の地を得た日本人同胞を守るため、俺が得た安らぎを守るために。
しかし、トウキョウで俺たちを迎えたのは鉛の弾丸の洗礼だった。
「すまないな、俺達だって殺されるのは……好きじゃない」
「諦めが良い方じゃないだろ? 俺も、お前も」
そして
俺たちを襲う赤い光の羽ばたき。
【ギアス】
「なぁナオト。俺達、これで良かったのかな………」
コードギアス LOST COLORS [手をとりあって]その4 【扇要】
近日公開予定。ご期待ください。
以上で〜す
ほんのさわり程度の短い話でしたが、いかがだったでしょうか?
第四話は予告の通り扇さん編となります
wktkを誘えるような予告になっているでしょうか?
感想・批評・批判などなど、すべて執筆の糧になりますので、ぜひぜひお願いします
それでは、また
おやすみなさ〜い
あ゙〜〜
眠気のせいか前置き入れるの忘れてました
今更ですが一応入れておきます
■本日の前置き■
・ナオトこと紅月ナオトの設定に関しては小説版[朱の軌跡]などに準拠してます
・オペ子三人娘などと玉城の面識他についてはほぼオリ設定
・御門次長──ライの日本人としての名前【御門雷(みかど らい)】から。もちろんオリジナル設定です
えー。後出しですいませんでした。ホント気をつけます
では、また
おやすみなさいです
>BLUEDESTINY さん
なんだかじんわり。沁みました。
玉城、憎めないというのがぴたりとくるキャラクターですよね。
彼も、色々な別れを繰り返して来たんだろうなと。
「事件」のひとつの顔、対外的な側面を見せていただけました。ほんとバランスいいな!
次は扇さん。彼はどんな風に事件を捉え、関わったのか。「ゼロ」との関係は。
どんな風に光を当ててもらえるのでしょうか。
次回を拝見できるのを、楽しみにお待ちしています。
待ってたかいがあった!玉城がかっこいい!
339 :
POPPO:2009/02/17(火) 18:55:31 ID:uqOVoone
POPPOです。
今から
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」(中編6)
を投稿します。
前に書いていた中編6なんですが、
あまりにも長くなりそうなので、
6,7に分けることにしました。ウソ予告すいません…
ID:Arjqrt+さんやID:CVyqVvwLさんからご指摘があった通り、
読みやすさを重視して、自分なりに工夫してみました。
まだ文章が固いと感じるのであれば、書き込みでドンドン☆コメントお願いします!
それではどうぞ!
340 :
POPPO:2009/02/17(火) 18:56:31 ID:uqOVoone
『きゃああああああああああああああああああああああ!!!』
会場に響き渡った銃声に民衆は騒然となった。
奥からはブリタニアと黒の騎士団の兵士が出てくる。
式典は一瞬のうちにパニックに陥った。
私の左目には赤の紋章が輝いていた。
ブロンド色のカツラを被った私は、ステージから遠く離れた舞台の真正面、高さ3メートルほどの階段の席に座っていた。
口元が歪に引きつってしまう。
私がこの混乱の元凶。
そのことが私の心を大きく揺さぶった。体中から込み上げてくる、黒くて熱い衝動。
全身にその熱を帯びた。
もう、どうしようもないくらいキモチイイ。
呆然としているユーフェミアに多くの兵士が取り囲んでいた。
ゼロは撃たれたのだろう。
多くの黒の騎士団の人間がゼロを守っている。
他の出席者も席を立ちあがり、側近の兵士が彼らの下に集まっている。
私はバッグから双眼鏡を取り出し、彼らを見つめる。
バガン!!
突如、式典の左サイドに並んでいた4機のサザーランドが動き出した。
動き出すのが遅れたサザーランドは、スラッシュハーケンに捕えられた。並んでいたナイトメアはドミノ倒しのように体勢を崩していった。
金属と金属が衝突する鈍い音。そして、ナイトメアの銃声。
撃たれたグロースターや月下は炎上し、大きな音を立てて崩れ落ちた。
ランドスピナーを走らせ、3機のサザーランドは会場の出入り口に立ちはだかった。そして、残る一機はステージ上に乗り上げて、ステージの出入り口に銃弾を撃ち込んだ。
煙を上げて崩壊するゲート。
逃げ場を失った代表者たち。
泣き叫ぶ民衆を無視して、私は椅子に腰を下ろしたまま周囲を見渡していた。
双眼鏡でスナイパーライフルを構える兵士たちを見つけては『命令』した。
『民衆に紛れている仲間を殺せ』と。
弾切れしたら、拳銃で自殺させた。そして、5人目でようやく銃撃が止まった。どうやら100人ほどいたらしい。
まあ、これで私の計画に支障はない。
『動くな!』
と、オープンチャンネルで代表者たちに叫んだサザーランドは、両手の自動小銃を代表者たちに向けた。
ナイトメアのハッチが開く。
遠隔操作ができるリモートコントローラーを携えたまま、一人のテロリストが代表者たちを同じ壇上に降り立った。
40代後半の長身のブリタニア人。KMFのパイロットスーツを身に纏っている。
名を『鬼頭』という。
かつて、イレブンに育てられた貧困層のブリタニア人。彼は日本を愛し、そして今は名誉ブリタニア人でありながらテロリストの道を選んだ。
日本が真の独立を果たすために自ら人を率いて『新日本党』を立ち上げ、ブリタニア人であることを捨てた男。
彼に迷いは無かった。『新日本党』のリーダーは、死すら恐れない揺るぎない意志で会場を武力によって制圧した。
一人の少女の手の平で踊らされていることも知らないで…
341 :
POPPO:2009/02/17(火) 18:58:22 ID:uqOVoone
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」 (中編6)
「貴っ様あああああっ!!」
怒気を孕んだ声を上げるコーネリア。その姿を見たギルバートとダールトンが彼女の盾として立ちはだかった。
「お前、ブリタニア人だろう?何故このような真似する?」
いつものように低い平坦な声を発したダールトンだが、その裏に潜む憤怒は隠せていない。
一身に注目を集めている軍人は、それを平然とした表情で受け止めた。右手に構えた自動小銃を向けたまま、スピーカーを通して答える。
『私は生粋のブリタニア人ですが、今は名誉ブリタニア人です』
「貧困層の出か…まさか、ただの逆恨みという訳では無いだろう」
目を細めて、ギルフォードは鬼頭を睨んだ。
『私は今の行政特区日本を憂える者。『新日本党』のリーダーです』
「『新日本党』のリーダー!?」
「ブリタニア人が!?」
扇と杉山が声を上げた。キョウト六家の人々も鬼頭を凝視していた。日本人とかけ離れた体格。金色の髪に青い瞳。
民衆はまだ混乱に陥っていて、あちこちから悲鳴が聞こえた。
ドドドドン!!
大きな銃声が轟いた。KMFのアサルトライフルが空に向けて火を噴いた。
『黙れえええ!!!リーダーの声が聞こえねえじゃねえかよおおお!!!』
会場の中心の出入り口に立ちはだかっていたサザーランドのスピーカーから男の怒鳴り声が聞こえた。
その声に驚いた民衆は恐怖に震える口を噤んだ。会場に冷たい静寂が漂う。
観客の中でも武装した『新日本党』のメンバーが人々に睨みをきかせている。ブリタニアと黒の騎士団の兵士はVIPに銃が向けられていたので、身動きができずに両手を上げていた。
KMFに乗っているメンバーを合わせると総勢30人ほどだろう。
それだけの小人数で、数万人が集まるこの会場は占拠されてしまった。
『同志ゼロは無事か?』
『何だと!?』
鬼頭の言葉に皆は驚愕した。ブリタニアや行政特区日本の代表者たちだけでは無い。
黒の騎士団の幹部たちも同様だった。
今、何と言った?
≪同志ゼロ≫だと?
では、もしやこの黒幕は…
342 :
POPPO:2009/02/17(火) 18:59:26 ID:uqOVoone
『ゼロの身に万が一の事態が起きた場合、この式典を占拠しろとの指示だったからな。
まさか、その元凶がユーフェミア内閣総務官とは予想外だったが…』
そう言って鬼頭は自動小銃をユーフェミアに向けた。
彼女の前に立ちはだかる近衛隊も彼に銃を構える。
『ゼロはどうした?まさか…』
鬼頭はステージの奥を見つめた。そこには黒の騎士団のメンバーが取り囲んでいる。
その集団を掻き分けて、脇腹を押えた仮面の男が現れた。
ゼロの負傷を見た途端、鬼頭の頭に血が上る。
『ユ、ユーフェミアああああああああああああ!!!』
『撃つなっ!!』
ゼロはスピーカーを通して、鬼頭に叫んだ。
右手で抑えている脇腹から、彼の衣装が赤く滲み始めていた。団員や藤堂たちの静止を振り切って、前へと躍り出た。左手にコイルガンを握りしめて。
『誰の指示でこんな事を仕出かしただと!?私は知らない!お前らなど!!』
その声に、鬼頭は絶句した。
『一体何の冗談だ?ゼロ。私は君の指示で…』
『ふざけるな!!お、お前らなどっ!わた、し、は…』
拳銃を突き出そうとしたゼロは、力無くそのまま倒れ込んだ。マントが靡かせながら、この国の英雄が膝をついた。
(ぐっ…!!)
歯軋りした鬼頭は、不安を心に抱えながらも行動に出ることにした。
『ブリタニアよ!貴様らはやはりそうなのか!日本人にまやかしの希望を与え、そして奪うのか!富を!幸せを!国を!そして心までも!』
『ゼロは倒れた!ユーフェミアの凶弾によって!行政特区日本を謳う者が我々の希望を壊したのだ!!』
『制裁を受けろおお!ブリタニアあああああ!!!』
鬼頭は自動小銃を腰に戻し、取り替えたグレーの小型スイッチを押した。
ドドドン!!!
政庁関係者のブリタニア人が座っている左側の座席エリアで、爆発が起こった。
民衆の大きな悲鳴が響き渡る。
それだけでは無かった。
同時に、出入り口を遮っていた3機のサザーランドが爆発した。
それは『新日本党』のメンバーが乗っ取ったナイトメアだった。
(なっ!!!?)
その光景に驚愕する鬼頭。
(まさか、ゼロから送られてきたKMFシステムを書き換えるディスクに細工されていたのか!?この発信機とサクラダイトの暴発がリンクするように!)
振り返ると、殺気を含んだ強烈な視線が向けられていた。ブリタニア代表の人々、行政特区日本の代表達も、
そして、黒の騎士団の幹部たちも。
彼はようやく理解した。
自分たちは『道化』だったということを。
『裏切ったなあああああ!!ゼロォォォオオオオオオ!!!』
狂気に満ちた瞳で団員に囲まれているゼロを睨みつけ、KMFを動かす。
鬼頭は怒りに身を任せ、ボタンを押し―――――――――――――――――――
343 :
POPPO:2009/02/17(火) 19:00:22 ID:uqOVoone
「やめろおおおおおおおおおおおお!!!」
僕は対KMF用のロケットランチャーをサザーランドに撃ち込んだ。
ドバン!!!
大きな音と共に、肩に強い衝撃が走る。
サザーランドの胸元に当たり、巨体は仰け反りながら後ろに倒れた。
その瞬間、他の団員たちとブリタニア軍の兵士がステージになだれ込む。
彼らは僕の指示通りに動いてくれた。
ロケットランチャーを放り投げると、僕は全速力でゼロの元に駆け寄った。
「ゼロ!ゼロ!?」
団員たちを押しのけて、ゼロを見た。傷の具合に見ていた藤堂さんは僕を制したが、僕はその手を強引に振り解いてゼロの肩を掴んだ。
「ゼロは私が運びます!すでに医療班を待機させています!藤堂さんはプランFの指示を!藤原さんたちはゼロの守りを固めてください!」
「プランFだと!?」
「はい!トレーラーが『斬月』と『蒼天』を積んでいます!だから…」
「っ!承知した!」
「藤堂隊長!我々が護衛します!」
数人の団員が藤堂さんと四聖剣を取り囲んで、ステージの奥へと走って行った。
僕はゼロを肩に担ぎながら、テロリストの主犯格を睨みつけた。
その彼が一瞬の隙をつかれて、ブリタニアの兵士に捕えられる瞬間を目撃した。
そして、僕は見てしまった。
悲劇の始まりを。
344 :
POPPO:2009/02/17(火) 19:02:32 ID:uqOVoone
「チッ!!」
私は『ゼロを殺せ』と命じたはずなのに、ゼロが生きていた。この距離では効果が弱かったのか?それとも彼の持つ強運の賜物だろうか。
どちらにしてもゼロを『殺せなかった』。
腹部では生き残る可能性が高い。
計画に支障が出てしまった。
しかし、それ以外は計画通りだった。
「…フヒャハハハハハッ!!」
会場に木霊する爆発音と悲鳴。
出来の悪い3流映画を見ているようだった。
しかし、これは紛れも無い現実だ。目の前に起こる惨状。周囲に漂う凍りついた空気。すすり泣く男女の声。
炎上する席を見ながら、私は声を殺しきれなかった。
予想以上だった。
まさか鬼頭が私に隠して、このような虐殺を行うとは。
予定では催眠ガスをばらまくはずだったが、こっちのほうが世間に与える印象は強烈だ。
確かに、彼は優秀だった。優秀な『駒』だった。
私は心の中で彼に賛辞を述べる。
そして、私は立ち上がった。
この計画の目玉である『仕掛け』を民衆に披露するために。
私は『彼女』を視界に捉え、右手で指し示す。
「リリーシャ・ゴットバルトの名の下に命じます」
左目に赤の紋章が浮かび上がる。
リリーシャのギアス。『絶対操作』の力。
彼女の目に捉えられた者は、何人たりとも抗うことはできない。
「我が人形に成り果てろ。ユーフェミア・ロ・レーベルマイスター」
345 :
POPPO:2009/02/17(火) 19:06:56 ID:uqOVoone
パン!
「ユ、ユフィ!一体何を!?」
スザクが驚愕の声を上げた。
僕も目の前で起こった事が信じられなかった。
何で?
何でユフィがテロリストを殺すの?
拳銃を持った手をスザクが抑えると、ユフィの耳元に付いているマイクにスイッチを入れ、叫んだ。
『止めなさい!!イレブンが!』
ユフィの叫び声が、大音量で会場に響き渡る。
は?
ユフィはスザクを『イレブン』って呼んだのか?今。
スザクだけでは無く、周囲を取り囲んでいる近衛兵たちも驚いている。
おかしい、何かがおかしい!あれは本当にユフィなのか!?
『黒の騎士団は、ゼロは、私たちブリタニアを裏切ったのです!私は知っていました。彼らが不穏な動きを見せていると!そして、彼らはやりました!私たちをこの場で亡き者にしようと行動に出たのです!!』
な――――――な、にを、言っている?ユ、フィ…
だが、この時僕は気付いた。彼女の瞳から涙が溢れ出していた。顔を歪めて、苦しそうに。
『全軍に告げます!黒の騎士団は、ゼロは悪です!ブリタニアを、日本を裏切った大罪人です!だから…』
…やめろ、やめろ。ユフィ。それ以上言っちゃ、それ以上言っちゃだめだ!
そしたら、僕たちは、僕たちはっ!!
『黒の騎士団を殲滅しなさい!!』
(う、うあああああああああああああああああああああっ!!!!)
346 :
POPPO:2009/02/17(火) 19:08:02 ID:uqOVoone
ババババババン!!
僕のすぐ近くで銃声が鳴り響いた。
思考が停止して、体に怖気が走った。
団員の一人が、小機関銃をフルオートで発砲した。
「ふっざけんなあああ!!撃ったのはユーフェミアだろうがあ!!」
目の前にいたユフィは…倒れた。
一緒にいた近衛兵と共に、血を流しながら。
「ユフィ!!」
僕は団員達がいるにも関わらず、ユフィと叫んでしまった。
「おいっ!お前、何故撃ったああ!!何故、何故だああ!!」
俺は右手に持っている拳銃のグリップで、その団員の頭を力一杯殴った。
鈍い衝撃が腕に伝わって、頭を強打された男はその場に倒れこむ。
「ユフィ!ユフィイイイイイイイイ!!!」
スザクの叫び声が聞こえた。彼はユフィの元に駆け寄って、体を抱き上げた。
次の瞬間、
スザクは僕を睨んだ。
初めて見る、殺意が籠った彼の視線。
あまりの冷たさに、僕の背筋に寒気が走った。
一瞬、視線が交差した後、スザクは物凄い勢いでブリタニア兵の元へ走り去って行った。
バババババッ!!
敏感に反応した団員の一人が、スザクに向けて発砲した。
(――――――――――――――――っ!!!!)
バンッ!!
怒りで頭が真っ白になった僕は、引き金を引いていた。
その団員の頭を近距離で撃ち抜いた。
即死だった。
「!?ふ、副司令!?な、なにを!!」
「これ以上この場を掻きまわすな!お前たちは私の指示されたことだけをすればいいんだっ!余計な事を仕出かすな!殺されたいのか、藤原あああ!!」
銃を突き付けられた護衛部隊の藤原部隊長は目を丸くした後、直ぐに立ちなおした。
僕はゼロを担いで、医療班の元へと急ぐ。腕にこびりつく血が僕の心をグラグラと揺らす。
『何か』が体の奥底から込み上げてくる。
急に視界がぼやけてきた。目元が熱い。
(ルルーシュ!絶対死ぬなよ!絶対だからな!!)
足に力を込める。医療班のリーダーが、僕に手を振っていた。
347 :
POPPO:2009/02/17(火) 19:08:36 ID:uqOVoone
私は左目を閉じた。
200メートル以内なら手足だけでは無く、口すら思い通りに動かすことができる。
行政特区を立ち上げ、さらには黒の騎士団の参加を許可した元皇女様はゼロの『ギアス』に操られている可能性があった。
それを私は『戦姫コーネリアの妹に恥じぬ、勇敢な皇女様』に仕立て上げてやったのだ。
この私に感謝してほしいぐらいである。
しかし…
(…『これ』を使う羽目になるとは)
バッグから筆箱サイズの赤いケースを取り出した。
当初、『これ』を使う予定は無かった。どちらかというと、逃走の際に使う『補助』としての役割しか無かった。
ユーフェミアを操った後は、会場を後にする予定だったのだが…
私の計画では、ゼロはユーフェミアの凶弾で死ぬはずだった。
確かに、凶弾はゼロを射抜いたが致命傷には至らなかった。
「けど…面白いことになったわね」
これは宿命なのかもしれない。
なぜなら、自らの手で『ゼロ』を殺すことになったのだから。
「X.X.今から私、ゼロを…ってあれ?」
私はX.X.が座っていた左隣の席を見たら、彼がいない。周囲を見渡すが、彼らしき影が見当たらなかった。
目に映るのは荒れ狂う人々だけ。自分の周りに席に座っている人間はいない。
「ちょっと!私が動くまで大人しくしてなさいって言ったのに!」
耳にかけている可変型の携帯から、X.X.の携帯に電話をかけるが繋がらない。
「こんな時に迷子だなんて…ホントに700歳なのかしら?」
…まあ、X.X.は一人でもなんとかなるでしょ。
そう思って、赤いケースのフタを開ける。
入っていたのは、スクエア系のメガネ。
フレームの色は私の髪色と同じダークブルー。
今はブロンド色のカツラをしているけど、色合いは悪くないわ。
私はメガネをかけて、バッグにケースを戻した。
その時、背中を掴まれた。
振り返ると、ブリタニアの2人の兵士がいた。
「君、早くここから逃げなさい!」
彼らは全身を武装していて素肌が見えなかった。私の『力』は相手の素肌が見えないと効果は無いのだ。いくら接近されても私は『ギアス』は使えない。これが私の『ギアス』の弱点。
しかし、私は『ギアス』を発動させた。
バキッ!ドコッ!
私は一瞬で二人の軍人を蹴り飛ばした。
一人は強く頭を打って、もう一人は首を蹴られて意識が昏倒した。気絶した彼らからアサルトライフルとマガジン2層を奪う。
バッグを肩にかけたまま、そこから3メートルある高さから跳び降りた。
着地した瞬間、私は人々を足蹴にしながらステージへと走っていった。
それを見た人々が思わず声を上げた。
「あれって、人だよな?」
「なんだ、あの速さ…」
348 :
POPPO:2009/02/17(火) 19:09:03 ID:uqOVoone
人ごみを過ぎると、ステージの周囲には兵士が多く集まっていた。
正面突破はいくら何でも無理なので、私は煙が上がっている席の方に迂回した。階段を上らずに、3メートルの高さにある壁まで一気に跳び上がった。
斜め上に壁を蹴りあげて、6メートル近くある階まで登った。私を見て驚く人たちを無視して、そのまま煙の中を突っ走って行った。
先ほど鬼頭が爆破したエリアだ。鼻を突くような焦げた匂いが周囲に漂っていた。
目には煙が入ってきて、痛い。
動かなくなった人間もいれば、うごめいている人間もいる。
地面や椅子には人の血と肉がこびり付いている。
椅子の先端を蹴りあげて前へと進んでいく。バッグが上下左右に動いて少し鬱陶しく感じるが、今は時間が惜しい!
グチャッ
嫌な感触と共に不快な音が聞こえた。
誰かの腕を踏んでしまったような気がする。
ここで無視すべきだったんだろう。
ついつい、何気なく私は後ろを振り返ってしまった。
死体を踏んだのか、生きている人間を踏んでしまったのか、人を踏むことに後ろめたさを感じたんだろうか。
何であの時、振り向いたのか、今でも分からない。
振り向いて、私が踏んづけた腕の人間の顔を見た時、
私は凍りついてしまった。
その顔に見覚えがあった。
服はズタズタで、真っ赤に染まっているけど見たことがあった。
おそらく、お気に入りの服
顔は血まみれで、髪は散乱して一部は焼け焦げていたけど、私には誰だか分かった。
全身の血が凍てついて、体中が震えだしていた。
だって、つい数時間前まで一緒にいたんだもの。
私の部屋に。
私の傍に。
今日は私が早起きしたから、
びっくりして、
私はとびきりの笑顔で、
『おはよう』って声をかけて…
「ア、アン!!!どっ、どうして此処にいるのよォォおおおおおおおおおおおお!!!?」
349 :
POPPO:2009/02/17(火) 19:17:33 ID:uqOVoone
コードギアス LOST COLORS
「反逆のルルーシュ。覇道のライ」
TURN00 「終わる日常」(中編6)
投稿終了です。
中編は7で終わります。(これはマジです)
皆さんのご感想を全力で待ってます!!
…すいません。これは余談なのですが、
『セルゲイ』という名前はやはりダブルオーのイメージが強いでしょうか?
新キャラの名前に使っていいのか迷っているのですが・・・
(第1、2の代案もあるのですが、これが一番しっくりくるのでどうしようかと思いまして…)
時間が許すのであれば、こっちのほうも書き込みお願いします……
POPPO卿、投下GJ&乙でした。
326氏が仰っていた難読漢字についてですが、もし望まれるのであれば、振り仮名の指定を受け付けております
振り仮名以外にもこれだけのタグのが使えます。今後も増やしていきます
http://anime.geocities.jp/codegeass_lostcolors_2ch/Central/Datacenter/tag.html メールにてソースコードを送っていただくのが理想ですが、このスレでの依頼も可能です。
(現在の進行速度なら大丈夫と判断)勿論、押し付けではなく職人様の意思が最優先ですが、参考になれば幸いです。
以下、誤字などの報告
今回より「X.X.」と半角になっていますが、過去のものも全て統一しますか?(直ぐにできます)
>>346 小機関銃をフルオートで → 短機関銃…かな?これは好みのレベルかも
>>347 マガジン2層を奪う → マガジン2倉を奪う
ダブルオーは観てないので知りませんが、わりとありふれた名前なので好きに使っていいんじゃないかなーと個人的には。
351 :
POPPO:2009/02/17(火) 20:00:59 ID:uqOVoone
保管者トーマス さん
326氏が仰っていた難読漢字についてですが、もし望まれるのであれば、振り仮名の指定を受け付けております
はい。お願いします。
今回より「X.X.」と半角になっていますが、過去のものも全て統一しますか?
Yes,My Lord!
小機関銃をフルオートで → 短機関銃…かな?
Yes,Your Highness!
マガジン2層を奪う → マガジン2倉を奪う
Yes, Your Majesty!です!
そして、セルゲイのコメント…
もういろいろとありがとうございます!
あなた神ですか!?神ですよね!?神ですか!わかります!
あと、保管者トーマスさんの倉庫で、中編4、5のところの
『コードギアス LOST COLORS』の大文字は個人的にGJだったので
迷惑でなければこっちも統一をお願いします!
まだまだ書き続けますのでこれからもよろしくお願いします!
誤字にはマジで気を付けますので…
>>336 BLUEDESTINY卿、GJでした!
アナタのSSに俺が泣いた。
なんだこの玉城は! 凄く良いじゃないか!
事件を知った玉城の心情……泣けんでぇ!
争いの始まりとか、目にしたら相当複雑な感情になるんだろうなぁ。
何というか、心にクルね、これ。
貴女の次の投下を全力を挙げて待たせていただきます!
>>349 POPPO卿、GJでした!
重っ! 色々重っ!
ゼロを撃つユーフェミア、その混乱に乗じるように現れた新日本党。
そして引き起こされる更なる混乱!
リリーシャの驚きも凄まじい!
あぁ、イイ! これも相当クルものがある!
しかし……自分を操る、自己操作、かな?
まぁ、詳しくは次回以降を待ちますか。
あと個人的にはセルゲイだととりあえずロシア人っぽい、とそれだけは思います。
OOの印象もありますが、そこまで強くはないです。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
では、誤字修正と仕様の「統一」完了しました。領地よりどうぞ。
振り仮名についてはまた後ほど。では。
こんばんわー。11時ごろに投下したいと思います。
支援は・・・多分大丈夫だと思います。
時間ですので投下いたします。
お待たせしました。
やっと続きです。
今回も何回も書き直しするハメになってしまいました。
まぁ、楽しんでいただければ幸いです。
タイトル 思いの後に… 第9話 絶望という名の破壊
カップリング ミレイ×ライ×ニーナ
ジャンル 昼ドロ
注意)
初めて読む方は、第1話から読む事をお勧めします。
また、ドロドロな内容ですので、そういうのが駄目な方は、スルーしてください。
また、キャラクターの何人かは、性格が壊れています。
それを覚悟してください。
356 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/17(火) 23:02:08 ID:9/UqXux9
待ってたよ
どうしたんだろう…。
私は不安だった。
あのミレイちゃんとのデート以降、ライさんの様子がおかしい。
今日一杯でミレイちゃんとの約束の期限が切れるというのに……。
なんだか顔色悪いし、落ち着かない感じ、それになんだかすごく疲れている様に見える。
いや、それだけではない。
まるで自分を責めるかのように悩みこんでいる…そんな感じさえしてくる。
そう、痛々しいまでに……。
そんな彼の姿に、私はたまらなくなって声をかけた。
「だ、大丈夫ですか?」
私の声にライさんはビクッと反応し、そして笑顔を向けてくれた。
だが、あのやさしい包み込むような笑顔ではなかった。
まるで拒絶と後悔がごちゃごちゃに混ざったような硬い…そう、とても冷たい作られた笑顔だった。
その笑顔を見た瞬間、私は言葉が続かなかった。
なにやら彼が話しているようだが、まるで耳に入らない。
ガタガタと身体が振るえ、私の心を冷たい手でつかまれたように感じた。
耐え切れなくなって、声をかけたにもかかわらずその場を走り出して逃げ出していた。
怖い…。
怖いよ…。
自分の知らないところで、何もかも変わっていく。
私は、それがとてつもなく怖かった。
思いの後に… 第9話 絶望という名の破壊
私は物陰から二人の様子を見て、楽しんでいた。
ガタガタと震えだし、恐ろしいものを見るかのような驚愕したニーナの表情。
あの歪んだ顔……。
本当にいい気味よ。
私のライを奪うようなメス猫には、丁度いいお仕置きだわ。
それに、まるで悪夢から逃れるかのように逃げ出すなんて、貴方、最高よ、ニーナ。
今までの中で最高の甘美な勝利の悦びを実感させてくれるじゃないの。
それに、ニーナが走り逃げた後も追いかける事も出来ないまま呆然としているライの様子がとてもうれしい。
今までなら間違いなくニーナを追いかけていただろう。
だけど、これからは違う。
そう…。
いいわ、ライ。
それでいいのよ。
貴方の傷ついた心を癒せるのは私。
貴方の欲望を満たせるのも私。
ああ、なんて幸せなの。
たまらないっ。
ほんと、たまらないわっ。
あはっ……うふふふっ。
自然と口から笑いが漏れ、私は打ち震えていた。
そう…今まで感じた事のないほど心を満たしていく喜びと充実感に……。
念のため支援
走り去っていくニーナを僕は追いかけることが出来なかった。
そう、僕にニーナを追いかける資格はもうない。
あれほど好きだった彼女を苦しめているのは、自分自身だという事がよけい僕を窮地に追い込んでいく。
僕はどうすればいいんだ。
あの出来事からそればかりが頭に浮かぶ。
もう、何をどうすればいいのかわからなくなってしまっていた。
思いが、責任感が、すべてが僕を押しつぶそうとしているかのように感じられる。
苦しい…。
助けて…。
心が悲鳴を上げ続ける。
なんとかそれを押さえ込み、足掻こうとする。
だが、心を支えるものが何もない今の僕にとって、それは絶望的な戦いだった。
それに足掻き続けたとしても助けは来るはずもない。
なぜなら僕の責任であり僕の問題なのだから。
誰も…。
そう…誰も助けてはくれない。
そして、助けにもならない。
すべては、僕の責任なのだから…。
そう、僕の…。
僕だけの…。
重い……とてつもなく重い責任なのだ。
そして諦めだけが僕の心を蝕み、疲弊させていく。
もう……駄目だ…。
心が、思いが、精神が……すべてがボロボロになって崩れていく感じがする。
叫びたかった。
喚き散らしたかった。
何もかもぶちまけて…。
だけどそれは出来ない。
だから、ぐっと拳を強く握り締める。
ぷるぷると手が振るえ、爪が肉に刺さって血がにじむ。
じりじりとした痛みのおかげで叫びたい気持ちをなんとか押さえ込む。
だが、心に沸き起こる諦めはますます大きくなっていった。
死んでしまいたい…。
ふと…そんな考えが頭に浮かんだ。
それはとても魅力的だった。
そう…それしかないのかもしれないな。
そう思えるほどに……。
だが、その考えはすぐに打ち消される。
そんな僕に声を掛けてくれた人がいたのだ。
「ライ、どうしたの?」
ミレイさんだった。
心配そうな顔で僕を覗き込んでくる。
「だ、大丈夫だよ…」
短くそう答えて去ろうとした。
「嘘っ」
そして、すぐに腕を掴まれる。
その言葉と行為に僕のイライラは絶頂に達し、僕は怒りに任せて手を振り解こうとした。
だけど手に力をいれて振り上げようとした瞬間、力が抜けた。
「ライ、お願いよ。私に話して…。私を頼って……」
かすれるような言葉。
そして、そこには……まるで不安で泣き出しそうなミレイさんの表情があった。
その顔を見た瞬間、一気にイライラや怒りが消え去っていく。
「私との事が原因なら、私も責任はあるわ。だから…」
目尻からすーっと涙が流れる。
僕はそれがとても綺麗なものに見えた。
そして、張り詰めていたものが………一気に切れた。
僕はミレイさんを抱きしめる。
そして涙が溢れた。
そう……僕は泣き出していた。
それを何も言わずやさしく受け止めてくれるミレイさん。
その温かさと優しさが疲弊しきった心を癒してくれる。
そして、それにしがみつきたい心境に僕は追い詰められていた。
私に抱きつき、泣き崩れるライを私は優しく抱き返していた。
いいわ。
かわいいわよ、ライ。
さぁ、もっと私に心を開きなさい。
そして、私に依存しなさい。
貴方は、身も心も私のものなのだから。
これから、もっともっと私から離れられなくしてあげる。
そう……身も心もね。
私は、偽りの優しい笑顔を浮かべると優しくライを抱いて母親が子供を落ち着かせるかのように背中を軽く叩く。
何度も何度も…。
落ち着くまで…何度も繰り返す。
そうする事が当たり前のように…。
そして、彼が落ち着いたのを見計らって私は囁いた。
偽りの優しさというオブラートに包んだ誘惑の言葉を……。
心が疲弊し、すがりつくしかない彼の心がそれを拒否できないとわかっていながら……。
私は、悪女と言われてもおかしくないかもしれない。
でも、ライだけは……譲れない。
すべてを失っても…。
誰に対しても…。
なぜなら……ライは、ワタシダケのモノなんだから…。
あれから3日が経った。
約束の日が過ぎたというのにライさんからは何も連絡すらない。
それどころか、生徒会にも顔を出さないでいる。
皆の話からいると、どうやら部屋にこもりっきりらしい。
病気かもしれないという話も出ていた。
心配でたまらない。
でも…怖くて行けない。
それに、私はあの時の自分の態度が情けなかった。
なんで逃げ出したんだろう。
あの時、踏みとどまって話を聞いていたら…。
そしたらこんな事にはならなかったかも…。
そして自己嫌悪に陥ってしまい、悪い考えばかりが浮かんではぐるぐると頭の中を回っている。
本当に何やってるんだろう……私は…。
結局、私は何も変わってはいない。
そう再認識させられた。
そして、ますます落ち込んでいく。
そんな後ろ向きな自分がますます嫌になる。
だがそんな時、背中から声が掛けられて私は我に返った。
「ニーナ、何やってるのよ」
どうやらカレンのようだ。
「え?!」
私はPC入力を止めて振り返った。
そこにはやはりカレンがいた。
少し呆れ顔の表情で私を見ている。
「もう…そこは昨日入力終わったでしょ」
そう言われて、慌てて私は打ち込みかけていた内容を再度確認した。
ああ…そうだった。
指摘の通り昨日やった作業を繰り返している。
「あ…ご、ごめんなさい」
私がそう謝るとカレンは苦笑して、そしてやさしい目で私を見つめた。
「ライが気になるんでしょ?」
彼女はそう言うとにこりと微笑む。
「え、ええっと…」
私は、真っ赤になって言葉に詰まる。
まさか、彼女からそういう事を聞かれるとは思いもしなかった。
彼女とはそう仲がいい方ではないと思う。
実際に、カレンは生徒会も休みがちで話もあまりしたことがない。
だが、嫌いでもなかった。
一生懸命お嬢様風を装っていても、時々出る年頃の女の子のような感情と態度は好感が持てた。
つまり、私にとってカレンは生徒会の顔見知り。
その程度の関係だと思っていたのだ。
そんな彼女からまさに自分の心を言い当てたかのような言葉が出てくるとは……。
私は、慌てて俯いて顔を隠した。
まるで見透かされているような気分がしたから。
そんな私の変化に気が付いたのだろう。
「隠さなくっても知ってるんだから…」
少しいたずらっ子のような笑顔が俯いた私の顔を覗き込む。
「な、なにを…で、ですかっ」
しどろもどろになりながらもそう答えるので精一杯。
そんな私をからかうような口調が続く。
「ライとデートして…」
そこで言葉を切るとにたりと笑う。
「キスしたでしょ…。それもニーナの方から…」
その瞬間、一気に沸点が上がった。
多分、耳まで真っ赤になっているだろう。
もう、首から上に一気に熱が集まった感じだ。
見られてた…。
あの時の…事を……。
思考が真っ白になる…。
「あ、あぅ…あ、あ……」
言葉にならない。
ただ、口がパクパクと動くだけ。
そう…何か言わなければと思えば思うほど言葉が出てこないのだ。
あーっ…逃げ出したいっ。
そう思ったものの、うまい具合にカレンに退路を遮断されている。
私は、ますます真っ赤になって俯くしか方法がなかった。
だが、その後にカレンの口から出た言葉がそんな私の気持ちとパニックを一気に打ち消した。
「よかったわ」
私は、思いもしなかったその言葉で一気に我に返る。
「え?!」
その言葉が何を意味するのかまったくわからない。
私は、俯いた顔をおずおずと上げでカレンの表情を見た。
そこには悲しそうな…それでいてほっとしたような複雑な表情があった。
「ライも結構満更でもない感じだったし…」
もしかしたら……。
カレンは……。
彼の……事を……。
そう、私にはわかってしまった。
彼女の彼への思いが……。
だから、私は自然と謝ってしまっていた。
「ご、ごめんなさい…」
だが、私が謝った瞬間、自分がどんな顔をしているのかはっきりと自覚したのだろう。
慌てて、誤魔化すかのようにニタニタ笑いをして私を軽く小突く。
「な、何で謝るのよっ、ニーナはっ…」
そう、自分の思いを一生懸命に隠す彼女の姿に私はますます親近感を覚えていく。
だから、ますます申し訳なくなってしまう。
「本当に…ごめんなさい」
そんな私に少し呆れ、そしてほっした表情を見せてカレンは囁いた。
「大丈夫だって…。何があったかわかんないけど、うまくいくって…」
そう囁くと私を優しく抱きしめた。
「ありがとう…」
自然と感謝の言葉が出た。
それをにこりと笑顔で返すカレン。
少し寂しげで、それでいて爽やかなそんな感じの笑顔だった。
「がんばって…ニーナ。応援してるからね」
私の背中を優しく押してくれるような言葉。
私は頷く。
そして立ち上がった。
彼に会いに行く為に…。
そして、すっきりさせよう。
私の気持ちも、それに宙ぶらりんの今の関係も…。
私は…彼が好き。
誰よりも、誰よりもライの事が大好き。
彼は、私の大切な王子様。
それを伝えに行こう。
そして、生徒会室を飛び出していた。
そんな私の背中には、
「ライをお願いね…」
そういうカレンの言葉が投げかけられた。
その言葉に包まれた彼女の思いが、私にますます勇気を与えてくれた。
はぁはぁはぁ……。
ライさんの部屋の前で胸に手を当てて息を整える。
心臓がドキドキと躍動する。
すぐに息は整ったものの、心臓の鼓動は収まる事はなかった。
それでも、私は決心していた。
深呼吸を数回繰り返す。
すーっ、はぁぁぁっ…。すーっ、はぁぁぁっ…。
少し落ち着いた感じがする。
それでも、心はそわそわとして完全に落ち着かない。
断られたら…という不安もあったが、それ以上に大好きな彼に告白するという事の喜びや期待の方がはるかに大きかった。
誰に何を言われてもいい。
どういう態度を取られてもいい。
私は……。
私は、彼にすべてを伝える。
そう、伝えよう。
この心の思いを…。
だから…。
そう、私は決心してドアをノックして声をかけた。
「ごめんね、ライさん…。お話があるの…」
返事は返ってこない。
ただ、人の気配が部屋の中からする。
多分、中にいるのだろう。
でも…どうしたんだろう…。
心配になってドアのノブに手をかける。
鍵はかかっていないようだ。
「ちょっとお邪魔するね…」
そう声をかけて、私はそっとドアの隙間から覗きこんだ。
そして……私の目に入り込んだのは……。
念には念を もいっちょ支援
ベッドで裸になって抱き合うライさんとミレイちゃんの姿。
私に気付かず、或いは…目もくれず夢中になって肉欲に溺れる二人の姿だった。
な、なにっ…。
これって何なのッ。
「ひぃぃぃぃっっっ……」
私の口から声にならない悲鳴が漏れた。
だけど、その光景から目が離せない。
部屋に入るまでの高揚した気分が一気に冷え切って、さっきまでの思いが崩れ落ちるのがわかる。
期待が一気に後悔と不安に潰されていき、それはゆっくりと絶望へと変わり果てていく。
心が、張り裂けそうなほどの痛みに包まれる。
あ……。
ああああっ………。
ついに、私は我慢できなくなってその場を逃げ出した。
もう、その場にいたくなかった。
なにより、その辛い光景を見たくなかった。
だが、逃げ出した頭の中で、その光景は焼きついて離れない。
そう…。
まるで罪人に押された烙印のように…。
じりじりと痛みが心を切り刻んでいき、どろどろとした絶望の闇の中に沈みこんでいく。
あれは夢だ。
現実じゃないっ。
そう思いたかったが、ギリギリと締め付けられるような胸の痛みがあの光景が現実だと思い知らせる。
いつの間にか涙が溢れ、そして…止まらなかった。
ああ…嫌だ…。
嫌だぁ……。
もう、嫌だよぉ…。
そして、拒否は逃避へと変わっていく。
すべてを捨てたい。
この思いを捨て去りたい。
この絶望から逃げ出したい。
そして…。
もう…生きていたくない。
死んでしまいたい。
そう思い込んでしまうほどに……。
そのためだろうか…。
自然と足は、屋上へと向いていた。
操り糸に操られている人形のように…。
いや、その通りかもしれない。
絶望が操る逃避という踊りを踊らされている哀れな人形。
それが今の私だった。
《つづく》
支援ありがとうございました。
以上で9話終了です。
しかし、書いてて思った事は、実にアイデアがいろいろ出来てしまうんだなぁという事でした。
本当は、ストーリー的には、10話までいかないで終わる予定だったんですが…。
ただ、書いているとこれも入れたい、あれも入れたいと思いついて、次々と入れていった為にこんなに長々となってしまいました。
まぁ、その分、書いているほうも楽しんでいるのですが…。
皆さんも楽しんでいただければ、いいんですけど。
ちなみに、今回のカットは11行でした。
前回に比べると少ないですよね。
だって抑えたもの。
でも…カットです。
あはははは…。
なにやってるんでしょうね。
なお、今後の予定としては、12話か13話程度で終わる予定です。
>>366 あしっど・れいん卿、GJでした!
前半と中頃、後半の落差がやべぇ。
なんと言うかこう、叩き落として引き上げといて蹴落とす、みたいな。
ヤバイよ、ニーナヤバイよ。
もう、屋上から飛び降りちゃいそうだよ。
恐ろしい、でも、続きが気になる!
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
>>366 お待ちしておりました。GJです。
カレンに背中を押される。ニーナ・・・ 良かったのか、悪かったのか。
最終的にカレンが「漁夫の利」を得るんじゃないかと考えてしまった。捻くれ者の自分。
>>362 脱字報告
>>そんな私に少し呆れ、そしてほっした表情を見せてカレンは囁いた。→ほっとした
乙でした。昼ドラの名に恥じないドロドロっぷりですねw
でもこれからの展開を考えると今はまだゆるいほうなのか…
今後もますます目が離せない展開、続きを楽しみにしています!
過疎り具合がさみしい・・・ロスカラ2はまだなのか
もうギアスブームは去ったからな
次は鋼錬かな
思っても、それを言っちゃダメっすよ!!
ギアス以降あんなに引っ張られるアニメはないと思う
どれもギアスほど魅力ある作品は個人的にない
感想保管みたいな当たり前のことをさっさと実装しなかったトーマスさんにも結構責任があるのでは?
いまさらやっても遅いからやめれば?
(ヾノ・∀・`)ナイナイ
トーマスにだって自身の生活があるわけで。
それを犠牲にしてまでSSスレに力を注ぐ必要はないよ
自身の生活ってw あいつから管理取ったらただの構ってクズじゃんw
>>374 >>377 またおまえか。
というより、構ってクズとはお前のような奴のことだと思うがねwww
お前の場合は構ってチャンの上に漢字の用法も不自由な低脳だったな
小学校の「みんなのこくご」からやりなおしてこい
337,人のことをそんな風にけなす奴のほうが十分そうだよ
っつーかそんな事は本スレで言う事じゃない。
いい加減そろそろ自分が孤立してる事に気づいたら?
反応するなよ
だからスルーしろとあれほど・・・
ごめん、ちょっとどうかしてたわ。
頭に血が上ってた。
「荒らし」はかまわないのが一番なんだよな
380ー!誤爆誤爆ー!
ほんとだ!!
377でした!ほんと今日はどうかしてるわ!
首つってくる!
386 :
テリー:2009/02/22(日) 13:29:18 ID:/xDDpGzo
投下がないなら自分行きます!!どうかしばしお付き合いを。
「英雄 序章 」
カップ ライ×シャーリー
ジャンル ライの過去話
故に 完全オリジナルです、ご注意ください
5レス位です
387 :
テリー:2009/02/22(日) 13:30:27 ID:/xDDpGzo
今日の世界史の授業は正直受けたくはなかった、僕がかつて犯した大罪が起きた時期
今より100年以上も昔の頃、狂王と呼ばれていた頃の話だったからだ。その時間は
苦痛でしかなかった・・・・胸が裂ける様な痛み、息もおぼろになりそうな苦しみ
あの悪夢が鮮明に蘇った時間だった・・・・
でも耐える事が出来た、今はもう一人じゃないから。僕の辛い表情を察した最愛の人
(大丈夫、私が付いてるよ。だから苦しまないで)
(シャーリー・・・・)
僕の隣の席に座っている彼女、シャーリー・フェネットは必死になって堪えようと
して固く握った拳を優しく、愛おしむ様にそっと片手を重ねてくれた。
そうだ
僕には大切な人が、僕を支えてくれる人がいる・・・・あの時とは違う時がある
んだ。
388 :
テリー:2009/02/22(日) 13:31:21 ID:/xDDpGzo
授業の後の放課後、僕の事を見ていた相棒スザクが
「今日は休みなよ、ロイドさんには僕が言っておくから」
僕の事をあんじてくれたスザクには感謝しきれない位だった、今日はランスロット
(クラブも含む)の新しい性能テスト日だったがこんな状態じゃあ満足に出来ない
だろう。
(スザクには何か奢らなきゃいけないな)
そんな事を考えながら紅く染まった夕焼けを公園のベンチに座りながら眺めていた
僕はあの時を思い出した、あの忌々しい悪夢の数ヵ月前のあの一大戦争を・・・・・
「ライくーーーーーーーーーーん!!!!!!」
遠くからでも解るシャーリーの元気な声、この声を聞くと本当に心が落ち着く。
自然と笑みがこぼれ癒される。
「やあシャー」
ダッシュして来たシャーリーは僕に思いっきり飛びついて来た、人眼もお構いなく。
「ちょ、ちょっとシャーリー!!危ないよ」
「えーーーそう?それにしてはライ顔真っ赤だよーーーー?」
悪戯っぽく笑うシャーリーの可愛いことったらもう死んでも良い位でここが公園で
なかったらどうなっていた事か。そんな僕とシャーリーを見ている通りすがりの人々は
「お熱い事でーーー!!」
「羨ましいなーーー」
「昔を思い出すわぁ」
などなど様々でシャーリーもさすがに恥ずかしくなってきたみたい
「そ、そろそろ行こうライ君」
「あ、ああ」
とお互いに顔を真っ赤にして公園を後にした向かうは――――――
「ただいまーーーー!!」
「お帰り、いらっしゃいライ君!今日はゆっくりして行きなさいね」
「お邪魔します、今日は御厄介になります」
ここはシャーリーの家、今日軍の仕事が休みになったためシャーリーの家の
ホームパーティーに招待されたのだ。ちなみにライとシャーリーの関係は
両親も認めている仲である、だから今回の訪問が初めてではないし会うのも
初めてではない。
389 :
テリー:2009/02/22(日) 13:32:23 ID:/xDDpGzo
「やあライ君、よく来たね」
「こんにちはジョセフさん、お邪魔します」
ジョセフ・フェネット、あのナリタの戦いでその命をライに助けられた。
ナリタで後方待機を命ぜられていた時にライは直感とも言うべき閃きが
生じ黒の騎士団の策“逆落し”を読み本陣に警告を送った。
今でこそブリタニア軍や特区日本内、世界に“蒼き軍神”と呼ばれるほどの
名だたるエース、階級は大佐で発言力もそれなりだ。しかしナリタ戦時
では一兵卒。一兵士の進言など本陣が取り扱う筈もない、ライは無断で
サザーランドを駆りくい止めようとしたものの単騎ではどうする事も出来ない。
そこで真っ先にふもとの町に向かい住民を退避させる事に死力を尽くし
何十と言う人は巻き込まれてしまったが被害を抑える事には成功した
ジョセフさんもその生き残りの一人なのだ。
「あの時は本当にありがとう、君がいなかったら今こうして娘、息子(ライ)
の顔も見れなかっただろう」
「む、息子だなんて気が早すぎますよ!」
それはつまりはシャーリーと結婚して夫となる事でライは顔を真っ赤にする。
「ははははは!照れる事は無いぞライ君」
「そうよ、いずれはそうなるのですもの!ねぇシャーリー」
ライはどう反応するのかとシャーリーを見たら――――
「・・・・・・・・・良いかも」
しかももの凄く真剣に、そして時に恥ずかしそうにしたりニヤニヤ笑ったりと
その表情は忙しない。その表情に嬉しいやらで苦笑いするライ
「シャーリー、妄想にふけているとせっかくの料理が冷めるわよ」
「あ、はい!!」
妄想の世界から母の声で現実に戻されすっとんきょうな声を上げテーブルに着く
「ライ君、娘を頼むよ」
「は、はい!」
夕食後ダイニングでシャーリーと勉強会となった。実は最近シャーリーの成績は
下降も下降の急降下、それもあのブルームーンの日からでご両親も目のつけよう
がない位に酷くなってしまった、しかもテストの答案にライの名前を書いてしまう
ほどの重症であった。だからこそライが専属家庭教師をしてあげているのだ・・が
390 :
テリー:2009/02/22(日) 13:33:44 ID:/xDDpGzo
成績は以前より上がったは良いものの重症は治らず。
「・・・・・また書いてる」
「だめぇ?」
「そんな甘えた声でも駄目です!!」
ライが目をはなした隙にまた落書きでライを描くしまつ、その度に叱りつけるも
まったく効果なしでしかも最近はかまってくれてると逆に甘えてくる・・・・・
嬉しいやらで複雑な気分なのだ。
「さてと、数学はここまで次は・・・・・・歴史やろうか」
「辛かったら無理しなくていいんだよ」
今日の復習に進み思い出す・・・・今日の項目を。
「いや大丈夫、それに今思い出した事が有ったよ」
「何、辛い事?」
「いや、あの時の中で一番僕が輝いていた時さ」
遠くを見ている様な目で思い出にふけるライはその時を鮮明に記憶している
その時が本当に輝いていた時期、妹や母の為では無い、国の為、平和の為
大義の為に戦った時・・・・・・・・
「ねぇ、聞かせて。ライが輝いていたその時の事」
大好きな彼の事は全部知りたい、そう思い尋ねるシャーリー。
「うん、いいよ。少し長いけど聞いてくれる?」
「もちろん!!」
喜ぶシャーリーにライは静かに話し始める。
「今から遠い昔、僕のギアスが暴走する4ヵ月前の事だった―――――」
「英雄」
391 :
テリー:2009/02/22(日) 13:36:47 ID:/xDDpGzo
以上であります。ここまで続いてる作品ないと思いますよ。
では失礼します!!
392 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 14:47:40 ID:ECjHE9vg
テリー卿よかったです。続きを楽しみにしています。
>>391 テリー卿、乙でした。
自分の過去の所業を授業で聞く……辛いな。
ライの過去を書くのはなかなか大変だと思いますが楽しみにしています。
貴公の次の投下を全力で待っています。
23時ごろに投下いたします。
支援は、念のため、途中1〜2回程度お願いいたします。
395 :
sage:2009/02/22(日) 22:50:57 ID:mJENXbqj
>>394 承知
ところで支援は何回毎にやるんでしたっけ
394の投下後に二回目の投下行きます。よろしいです?
えー、時間より少し早いですけど投下開始いたします。
支援は、まぁ…何回に1回というのは決まっていないので、適当に途中1〜2回入れてもらったら問題ないと思います。
タイトル 思いの後に… 第10話 復讐という名の再生
カップリング ミレイ×ライ×ニーナ
ジャンル 昼ドロ
注意点
登場するキャラクター壊れています。
キャラファンの方は、ご注意を…。
話的には、9話の続きになります。(元々、9と10話で1つの話として考えていたもので…)
よかったら、9話を読んでから、10話を読んでいただけるといいと思います。
こんな心なんて……。
こんな思いなんて……。
壊れてしまえばいいのに……。
私は、そう願っていた。
死んでそれが終わるのなら、それもいいかもしれない。
そんな事が救いのようにさえ思えてしまう。
私は、絶望という名の闇の底なし沼の中に沈みこんでいった。
ずるずると沈み込んでいく身体。
だけど私は何も出来ない。
だって抗ったって何もないもの。
そう…私には何もない。
あははは……。
自然と乾いた笑いが出た。
私……結局、ただの道化だっただけじゃない。
ぐるぐると世界が歪んで回っているような錯覚がする。
そして、どこからか私を嘲るような笑い声が響く…。
いや、実際はそんな事はないのだろう。
だが…聞こえるの…。
嘲り笑う声が…。
何人もの嘲りの声。
その中にはミレイちゃんの声もしたような気がした。
でも…もういいの。
私なんかいなくてもいいの。
だから、私は屋上の手すりを乗り越える。
そして、ゆっくりと縁に立つと足を一歩踏み出した。
ぐらりと身体が傾き、重力に従い落下していく。
これで楽になれる。
その安心感からか、すごく心が軽い。
さよなら……、ライさん。
そう…裏切られていたとしても……。
この思いが届かないとしても……。
私は……。
貴方が……。
好きです。
私の…。
王子様……。
そこで私の意識は、暗闇の中に消えた。
思いの後に… 第10話 復讐という名の再生
私は、ライを感じながら、呆然とした表情のままドアのところに立ち尽くすニーナを見ていた。
ごめんなさいね、ニーナ。
くすっ…。
お先に美味しくいただいちゃってるわよ、ライの身体っ。
残念ねぇ。
うふふふっ…。
優越感とライからもたらされる快楽に私は酔っている。
ここ3日間の間、何回もライに抱かれたが、ここまで気持ちよかったのは初めてだった。
興奮し、よりニーナに見せ付けるかのように私は激しくライを求めた。
ライもそれに答えてくれる。
多分、彼はニーナに気付いていないだろう。
もっとも、気付いたとしてもたぶん彼は途中で止められないだろうけど…。
そんな事を思いながらも、私は快楽に酔いしれる。
ライもより高みの快楽を求め、私を激しく求め続ける。
いいわ…。
もっと、もっと楽しみましょう…。
愛しい私のライ…。
貴方の心と身体が私のものであると同時に、私の心も身体も貴方のものなんだから…。
僕は何をしているのだろう…。
身体中で快楽を感じて喜びに震えながら、なぜか心にはぽっかりと穴が空いている。
そんな感覚……。
身体は満たされながら、心は渇きを覚える。
そして、快楽に溺れれば溺れるほど、その傾向は強くなっていく。
なんでだ……。
なんでなんだ……。
何が足りないんだ。
僕は、何を求めているんだ。
こんなにもミレイさんは尽くしてくれているのに……。
こんな駄目な僕を支えてくれているのに……。
何が足りないんだ。
僕の心は、満たされぬまま渇きに苦しんでいる。
何でだ。
何を僕は……。
その時だった。
すーっと脳裏に浮かぶのは一人の人影。
黒髪をおさげにした恥ずかしがり屋の眼鏡の似合う少女の姿。
そうか…。
そうなのか…。
やっぱり、僕は…。
僕は……。
支援
「……んっ……」
ゆっくりと瞼を開く。
そこに見えるのは白い天井。
あれ?
私、死んだんじゃないのかな。
それとも……ここ、天国?
ぼんやりとした思考の中、私はゆっくりと身体を確認する。
擦り傷や打ち身はあるものの、どこにも大きな痛みや骨折はないようだった。
何で……。
何で私は生きているの?
屋上から飛び降りたのに……。
ゆっくりと上半身を起こし、周りを見回す。
どうやらアッシュフォード学園の保健室みたいだ。
私は、今、保健室のベッドに寝かされているようだった。
ぼんやりと飛び降りた後の事を思い出そうとする。
だが、どうなったのかわからない。
そんな時だった。
「気がつかれてよかったですわ、ニーナ様」
ベッドをさえぎるカーテンの向こうから一人の女性が顔を出した。
「咲世子さん……」
思わず名前が口から漏れる。
「もう、心配しましたよ。いきなり上から落ちてくるんですもの」
そう言って私の方を見ると微笑む。
「落ちたんじゃありません。飛び降りたんです」
思わず、小さい声でだけどそう言い返してしまう。
だが、そう言ってみて初めて気が付く。
でも…どうして……。
確か下は空き地でクッションになりそうなものなどなかったと思ったのに……。
私の表情から思っている事がわかったのだろう。
「運が良かったんですよ。ほら…今、学園祭の準備してるじゃありませんか。
その準備の為に集めておいたいろんな材料の山に落ちたんです」
咲世子さんはそう言うと保健室の窓の方を指さした。
窓の外に確かにクッションやら木材やらが崩れ散乱しているのが見える。
「そっか…死ねなかったのね……」
すべてを理解し、私は俯いた。
目から涙が溢れ出し、ベッドのシーツに染みを作っていく。
嗚咽が口から漏れる。
何で…。
何で死なせてくれないの。
死んでしまえば、こんな苦しまなくていいのに……。
シーツを握る手に力が入る。
そんな私を咲世子さんがやさしく抱きしめながら囁く。
「大丈夫ですよ、ニーナ様。死ねなかったのは、きっとやる事がまだあるってことなのですよ」
まるで母親のように、ゆさしくゆっくりと諭すように…。
「まだやらなきゃいけない事があるのです。だからなのですよ」
何度も繰り返してそう言って励ましてくれる。
「…あ、ありがとう……ございます…咲世子さん」
嗚咽と共に漏れる感謝の言葉。
私は、しばらくそうやって泣き続けた。
すべてを吐き出すかのように…。
支援
支援
「もう少し、落ち着くまでゆっくりお休みください。いいですね」
私を落ち着かせた咲世子さんは、そう言って保健室から出て行った。
多分、まだ仕事があるのだろう。
そんな中なのに私の為に……。
感謝の気持ちで胸が一杯になる。
そして、私はぼんやりと白い天井を見ていた。
涙と共にすべて流しつくしたかと思えた思いも苦しみも無くなった訳ではない。
心の中にまだ残っている。
そう、それは泣くだけで無くせるほどちっぽけなものではない。
私は…死ねなかった。
では、死ねなかった私に何が出来るのだろう…。
咲世子さんは、きっとやれる事が残っているからと言ってくれたが、この思いも苦しみもすべて無くせるような事なんて何かあっただろうか…。
ぼんやりと考える。
そしてゆっくりと瞼を閉じる。
そして、そこに浮かぶのは、ライさんのあの優しい笑顔…。
ライさん……。
私の王子様……。
でも…彼は……ミレイちゃんと……。
そう思った瞬間、あの時見た二人の姿が脳裏に浮かぶ。
まるで獣のように激しく快楽に溺れる二人の姿…。
そして気が付く。
そう言えば……。
あの時、ミレイちゃんは私を見てなかっただろうか…。
ゆっくりとあのシーンが何度もリプレイされる。
その度に心に激痛が走ったが、なぜかその行為を止める気にならなかった。
ドロドロとしたものが心に纏わり付いていく。
そうだ……。
見てた……。
ミレイちゃんは……。
私を……見てた。
そして……
笑ってた。
その瞬間、私の中で何かが弾けた。
そうだわ…。
間違いなくミレイちゃんは……私がいるのを知っていて……笑っていた。
私のライさんへの思いを知っておきながら……。
それが判っておきながら、私の大切なライさんを奪った。
そして……ショックを受けた私を……嘲り笑っていた。
心の痛みはいつの間にかなくなっていた。
その代わり、心をゆっくりと嫉妬と恨みがじわじわと覆い尽くしていく。
それはまるで傷ついた心を守るかのようだった。
その心地よさに私は喜びさえ感じる。
そう言えば、ミレイちゃんのお見合い相手って、本当にまたちょっかいを出していたのかしら…。
嫉妬と恨みは不信を生み、そして疑惑が心に湧き上がってくる。
あまりにもタイミングがよすぎる様な気がする。
それにライさんがおかしくなったのは、あれがあってから……。
疑惑は、ますます深くなっていく。
そうだわ。
確かめよう。
確かめなければ……。
私はゆっくりとベッドから起き上がるとふらふらとまるで亡霊のような歩き方で保健室から出た。
支援
行った先は、ルルーシュの部屋だった。
彼はなにやら難しい顔をしてノートPCを覗き込んでいる。
私がドアを開けてもまだ気が付いていないようだ。
何かしら…。
そんな疑問が湧いたが、それは私の疑惑に比べれば些細なものだ。
私はルルーシュに近づくとはっきりとした口調で用件を切り出した。
「ルルーシュ…調べて欲しい事があるの」
私がいきなり来た事にまず驚き、そしてその口調にますます驚いた様だった。
「あ、えーっと…ニーナ……だよな…」
いつもクールで落ち着いた彼にしては珍しく慌てたような言い回し。
それはなかなか面白かったが、そんな事はどうでもいい。
「…そうだけど。何か問題?」
ズケズケとものを言う私にさらに驚いているようだ。
「い、いや、なんでもないよ、ニーナ」
そう言って少し間を置く。
それで落ち着こうというつもりなのだろう。
私は、そんな彼を見て意外と小心者かも…という認識を新たに思った。
今まで認識していたイメージとは違うが、今の彼を見ていればそう感じてしまう。
「で…調べて欲しい事って?」
落ち着いたのだろう。
普段と変わらない落ち着いた感じの口調で聞いてくる。
だが、それはまるで張子の虎のように…或いは彼の本質を隠す仮面のように見えた。
でも、私には関係ない。
私が今知りたいのは、疑念をはっきりさせる事だけ…。
「ミレイちゃんのお見合い相手の事を調べて欲しいの」
私の問いに怪訝そうな表情のルルーシュ。
それはそうだろう。
終わった事を再度調べて欲しいといっているのだから。
だけど、はっきりさせなければならない。
そうしなければ、私の心を覆い尽くす疑念の念は晴れないだろうから。
「あのライと一緒にぶち壊した相手だな。確かに会長にまたちょっかいを出したとかいう噂があったな……」
しばらく考えた後、ルルーシュは私を見るとうなづいた。
「わかった。その件は調べておこう。俺も関わった事だしな」
そして、私を見ると少し微笑んだ。
「しかし、ニーナも会長の事になると心配性だな。多分、噂だけだと思うぞ」
そんな彼の思惑は的外れだったが、別に私の思いを知らせる必要はない。
だから、私は頷いて言った。
「…親友だから……」
心の中で親友という言葉の陳腐さに苦笑し、もう私とミレイちゃんはそう呼べあえない関係になるかもしれないのにと思いながら……。
「じゃあ、2時間ほど後に再度来てくれないか…。その間に調べておくよ」
ルルーシュは、そう言うとPCに向き直った。
どうやら今からすぐに調べてくれるようだ。
そんなルルーシュに私は「ありがとう」と礼を言って部屋を出た。
支援
3時間後、私は一人実験室に篭っていた。
愛用のPCの席に座りじーっとディスプレイを見ていたが、内容は目に入っていなかった。
ただ、頭の中でさっきルルーシュから教えてもらった話の事だけを考えている。
調べて判った事は、ちょっかいをかけようと動いていたけれど、ミレイちゃんの祖父の力で結局何も出来なかったという内容だった。
そして、その結果によって判った事。
それは、ライさんに頼んでまで恋人の振りを偽装する必要がまったく無いということだった。
つまり、ミレイちゃんは嘘を言っている事になる。
そう…ミレイちゃんは、この件をうまく使ったんだ。
ライさんを陥れる為に…。
きっと優しい彼は断れなかったんだろう。
そして…罠にはめられた。
そういう事ね…。
疑惑は、今、確定になった。
ゆっくりと心の中にめらめらと黒い炎が燃え始める。
恨み、嫉妬という負の感情の炎が…。
その炎は、だんだんと大きくなって心を埋め尽くしていく。
ぎりぎりと歯が軋み、ぶるぶると手が震えて指が白くなるほど強く握り締められる。
眉が跳ね上がり、眉間に皺が寄る。
ニーナは知らなかっただろうが、その表情はまるで般若のようだった。
あの……女……。
私の…。
私の大切な思いを踏みにじった…。
そして……それだけでは飽き足らず……。
すました顔で親友とか言いながら……。
私の王子様を奪って……。
私を……影で嘲り笑ってたんだ。
口が大きく歪む。
憎い……。
憎いわ……。
あの女……。
許さない…。
絶対に……。
絶対に許さないっ……。
復讐してやる…。
あの女に……。
地獄の苦しみを……。
味あわせないと……気がすまない。
より大きくなる黒い炎に私は身も心もゆだねた。
完全に私の心は復讐へと染め上がっていく。
そして私は気がついた。
そっか…。
そういうことなんだ。
疑問がすーっと氷解していくようだ。
なんで死ななかったのか……。
なんで死ねなかったのか……。
これではっきりした…。
そうか……。
そういう事なんですね…、神様…。
きりきりと口元が吊り上がっていく。
ゆっくりと口が三日月を描き、そして笑い声が漏れ始めた。
うふふふふふっ…。
私は、ゆっくりと立ち上がると天を見上げる。
そして、生まれて初めて私は神に感謝した。
《つづく》
409 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 23:09:05 ID:L5sOrSwo
以上で10話終了です。
いかがだったでしょうか…。
これでミレイさんのターンは終了です。
11話からはニーナのターンが始まります。
さてさて、どうなる事やら…。
ともかく、読んでくださってありがとうございます。
楽しんでいただければ幸いです。
410 :
テリー:2009/02/22(日) 23:12:45 ID:/xDDpGzo
さて、連続ですけど投下行きます
「許されぬ恋」
ジャンル 詩
カップ ライ←妹
故に親近相愛でオリジナル注意警告大です
411 :
テリー:2009/02/22(日) 23:14:04 ID:/xDDpGzo
「許されぬ恋」
なぜなのです、なぜ私をこの様に生んでしまったのです
私の兄様、私と血を分けた兄妹にして狂王と呼ばれその名を天下に知らしめている
私の自慢の兄様、強くて、凛々しい、王
そんな実の兄を私は愛してしまった
兄様への想いに気付いたのはあの戦いの前
兄様の側に私ではない他の女がいた時からだった
いや
それよりも前にすでに気付いていたのかもしれない
気付くのが怖くて気付かない振りをしていた
その時から私の想いは暴走を始めた
幾夜も兄様の夢ばかりを見
毎日兄様の事ばかり考えてしまう、頭の中は兄様の事ばかり
兄様が想いを寄せる女と一緒の時は彼女に嫉妬し夜も眠れない
兄様の事を想い眠れない夜を幾つ過ごしたか解らない。その度に―――
「何故なのです神様!!何故私と兄様を血の繋がった兄妹にしてしまったのです!!」
叶わない恋、許されない願
実の兄妹でなければ、兄様は私を妹としてではなく
あしっど・れいん卿、投下乙です!
怖っえええ…。この人達ってどこまで堕ちていくんでしょう?
もうなんというか、流血とか通り越して死亡フラグ立ちまくりなんですが!しかも当事者以外も巻き込んで!
流石はフラグ一級建築士!(違
次回も楽しみにしております!
413 :
テリー:2009/02/22(日) 23:16:15 ID:/xDDpGzo
女として見てくれたかもしれないのに
どうして、どうしてなの!?
諦められない、諦めたくない、日増しに募る想い、大きくなる苦しみ
お願い、誰かこの苦しみから私を開放して下さい
私の願いを・・・・・・叶えて下さい
そして私は今日も兄様を想い涙を流し、心を刃物で裂かれる激痛を耐える日々を送る
その度に届かない想いを言葉にする
「好き・・・・大好きです・・・・男として・・・・に・・い・・・様・・・が」
414 :
テリー:2009/02/22(日) 23:17:25 ID:/xDDpGzo
以上です!上手く気持ちが伝わってくれればいいのですが
この詩は「英雄」とリンクさせる予定です。
では失礼します。
>>409 あしっど・れいん卿、GJでした!
飛び降りた!?
とびっくりし、助かったか……と思って安心したのもつかの間、般若ニーナに進化。
淡々とした感じが怖い。
しかし何故か笑いも込み上げてきたりする。
凄くドロドロで面白くなってきた。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
412さん、途中で遮るのはいかがかと思いますが。いくら文が下級だからって
ちょっと酷いのではないです?
しまった!!!417さんそして皆さん申し訳ないです!!
>>416 確かにテリーさんのスピードはあしっど卿の投下終了から数分と早すぎたりと色々と思いますがそれはやんわりと注意すればよいものと思います。
いくらなんでも、そこまで言う必要はないと思いますがね。俺としてはアンタも酷いですよ。
まずテリーさんへ
投下は前の方が投下終了された直後は感想を書き込む方のためにも時間をおいてからしましょう
一応投下15分後よりというローカルルールがあります
それと416の方
あなたが誰のどんな文にどういう感想を持とうとそれは個人の趣味嗜好もありご自由ですが、
それが誹謗中傷にあたるような心ない書き込みの場合は
それを書き込むのは自由であるとはいえません
ようは、書き込みを始める前にちょっと落ち着いてからしましょうということです
416はテリーさんでしたか
これは失礼
ですが、やはりローカルルールの類は一度キチンと目を通すことをおすすめします
それは文章力や技巧の有無などとはまた別の、マナーなどの問題だと思いますよ
422 :
412:2009/02/22(日) 23:42:53 ID:VUjKTT6S
>>416 いや…こちらこそリロードせずに失礼しました。
>>414 テリー卿、乙でした。
他の方が指摘していますが、あまり気にしない方がいいですよ。
間違いは正せばいい、これから気をつければいいだけですから。
あと、あまり自分を貶めちゃダメですよ。
詩……難しいですね。
とりあえず、ヤンデレなかんじがするんだぜ
というかこれがさっきのにリンク……想像がつかないな……
貴公の次の投下を全力で待たせていただきます!
>>409 次回がすごく楽しみです
期待してお待ちしております
えー、唐突に失礼します。
半年以上前に書いた小ネタSSを放置していたんですが、ここに載せても大丈夫ですかね?
SS書いてた頃、ここのスレ、流れが異常に速かったので手が出なかったんですが…
ちなみに内容はライ・ルルーシュ・ナナリーの日常の一齣。短編です。
テンプレを確認されるとよろしいかと。
>4.投下許可を求めないこと。みんな読みたいに決まってます!
ルールさえ守っていれば確認取らなくて大丈夫ですさ。
よほどのイレギュラーがあるのなら別ですけど。
>>426 おぉう。失礼しました!!
そこだけすっ飛ばして注意書きを読んでいたようです。自分でもびっくりだ…
えー、それでは投下させて頂きます。
カプは先に言ったようにライ・ルルーシュ・ナナリー。小ネタ短編です。
二番煎じどころじゃない内容でしょうが、お楽しみくださいませ〜
「……おいしい」
ふともらした僕の呟きに、ルルーシュ・ランペルージとナナリー・ランペルージは笑顔を見せた。
「咲世子さんが淹れた紅茶は格別ですから。ね、お兄様」
と嬉しそうな笑顔をルルーシュに向けるナナリーと、
「ああ、そうだね、ナナリー」
そのナナリーを、愛おしそうに見つめるルルーシュ。
いつも通りの風景だ。
いつも通りに優しくて美しくて、暖かい、風景だ。
ただ、それだけで。
この二人の傍に居るだけで、心が温まる。優しい気持ちになれる。
彼が、ルルーシュが、『仮面の男』であり、ブリタニアの皇族である事を知っても、その気持ちは全く変わらない。
「……ライ。随分と…、変わったな」
「……?」
ルルーシュの突然の発言に、首を傾げる僕。
助けを求めるようにナナリーに視線を向けると、彼女もまたルルーシュと同じ顔をしていた。
「前にも同じような事を言った気もするけど、な。お前は変わったよ。前よりずっと、笑顔が多くなった。悔しいが…ナナリーがこんなに元気なのも、そうやってお前が笑顔を見せてくれるからだ。これでも、お前には感謝してる」
「…お兄様っ!? もうっ、そんな事はありません!! ライさんの笑顔が素敵なのは本当ですけど…」
ナナリーが、頬を紅潮させてルルーシュを諫める。最後の方は小さな声で聞き取りずらかったが、聞こえなかった訳ではない。
「ありがとう、ナナリー。けど、僕を笑顔にさせてくれているのは、他ならぬ君たちなんだよ? ルルーシュと、ナナリー。君たち二人が良くしてくれるから、僕も自然と笑顔になれるんだ」
「ライさん…。それじゃあ、おあいこですね」
「……おあいこ?」
「ライさんは、私とお兄様に笑顔をくれて、私とお兄様は、ライさんに笑顔をあげて。おあいこです」
また、意識せずに笑顔になれた。ごく自然に、当たり前の様に優しい気持ちが胸に籠るのだ。
「そうだね、ナナリー。おあいこだ」
「はい!!」
「ああ。 …でも、おあいこじゃ足りないな」
「えっ?」
「僕は二人に沢山のものを貰ったから、ね。そのお礼をしなくちゃならない」
ナナリーが、僕の言葉に大きな反応を示した。
驚いた顔をして、大きな声で。
「そんなっ!! 私は何も!!」
「いいや、そんな事はないよ。それに、何も返せないままじゃ僕の気が済まない」
「……もう。ライさんは、ズルイです…。そこまで言われたら、お願いしたくなってしまうじゃないですか…」
「それで良いんだよ。何でも言って欲しい」
「あの、じゃあ…」
「うん」
「また、折り紙を教えて下さい。…たくさん、たくさん一緒に折りたいです」
そんな些細なお願いに、また笑顔がこぼれた。ナナリーらしい優しくて暖かいお願い。
「御安い御用だ。咲世子さんに折り紙を買ってきてくれるよう頼まないとね。…ルルーシュ、君は?」
腕を組み、無言で僕とナナリーのやりとりを眺めていたルルーシュが、「今度の標的は俺か」と小さく呟き、笑った。
「その『お礼』とやらは、もう返して貰ってるよ。たっぷりとな」
黒の騎士団で、という事だろう。
「……そうか。それじゃあ、これからもよろしく頼む」
「こちらこそ」
ふと、ナナリーが嬉しそうに微笑んでいるのが見えた。
「お兄様とライさん、とっても仲がよろしいんですね」
「どうだろうな」
とルルーシュが言い、僕は、
「勿論だ」
素直にそう応えた。
end...
以上です。
投下する事が出来てすっきりしました……
それでは
>>430 方舟卿、GJでした!
あぁ、ほのぼの……心が癒される。
ほっと一息つける短編、良かったです。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
久しぶりに来たけれど、職人さんが限られてきてるんだなぁ。アニメも終わって結構経つから仕方ないかもしれんが。
とりあえず、箱舟さんGJです。こういう穏やかなのは久しぶりに読みました。まぁ、ロスカラSS自体久々に読んだんですが。
>430
やわらかであたたかいです。じんわり。
なんども重ねる笑顔がそのまましあわせの証。
思わずこちらも微笑んでしまう素敵な一編、ありがとうございました。
こういうほんわかはナナリーが似合いますね、ほんと。
〜業務連絡〜
以前に提言していた「分類毎の部屋」がいよいよ実装になりました。現在のところ、「シリアス」と「ドロドロ」で試験運用中です。
36スレ目のスレッド毎一覧から行けます。
・前書きのところに書いていただいてる分類表記ですが、「シリアス」「ほのぼの」「コメディ」「ドロドロ」の
4種類のみ部屋作成の予定です。
(今後増やすかも知れませんが今のところは、という意味で。部屋増やすのって結構処理能力を食うのです)
また、通常の分類とは別に警告として「微エロ」「死ネタ」(0035-0332など)があります。分類のほうはともかく、
警告のほうは御自身で思い当たる節があれば、前書きなどに出来る限り注記してくださるようお願いいたします。
(警告につきましては、該当するような描写が含まれているのに表記がなかった場合、
当方の判断で入れることも有り得ますのでご容赦ください)
以上です。引き続き宜しくお願いします。
言い忘れました。
言うまでもないですが、過去の作品についても「これはシリアスの部屋に入れてくれ」のような要望は
いつでも受け付けますのでご遠慮なくお申し付けください。
460k超えてるみたいなので次スレ立てに行ってみます
スレ36(このスレ)が現在466KB、スレ37(次スレ)のPOPPO卿のSSが約27KB。
個人的には、こっちに投下して欲しかったです。まだ、埋めるには早すぎますし・・・
基本的にゆっくり進行しているけど、長編SSで急に加速する。次スレを建てるタイミングも難しいですねぇ。
こちらにはもう投下しない方がいいのでしょうか。数KBの短編なんですが。
いや、週末にできたら、の話ですけど。
ここの長編はほんとに長編だからね。
今までも容量ぎりぎりの投下中にスレ立てでバタバタすること結構あったし。
ハイパー埋め埋めタイム
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でもこれじゃあ相当時間かかるぞ
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焦らずのんびりいきますか
一応投下するかもしれない人がいるかもしれないんだから日曜まで待つ方がいいんでない?
投下と感想で結構いくと思うが
448 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 17:44:37 ID:fWR+SAu5
迷惑と書き込みがあったのでお手伝い。うーーーーーめぇーーーーー。
ていうか、スレ保有数がやばいから埋めろというのは嘘だった件
ただの荒らしだよねんけどやっぱり
くわしくは雑談スレへ
451 :
440:2009/02/28(土) 21:29:39 ID:5hiFhQGC
9時35分くらいに投下します。2レス分の短編です。
では投下します。
作者:余暇
タイトル:忘れ物がくれた贈り物
カップリング:ライ×ニーナ
本文は2レス分です。
『忘れ物がくれた贈り物』
「あれ?どこへしまったかなあ?」
ある日の放課後、授業中に出た課題をやろうと自室でカバンの中を探っていた僕は、目当てのプリントが見つからずに困っていた。
外では午後から降り出した雨が少し収まってきていたものの、まだ空を灰色の雲が覆っている。
「いや、待てよ。そもそも、カバンの中にしまったのか?」
確かあれは、今日最後の授業だった。授業の最後にプリントが配られて、放課後になってから教科書をカバンにしまって、プリントもしまおうとしたらカレンに呼ばれて……。
「思い出した。カレンに呼ばれたから、プリントを机の中にしまって教室を出たんだった」
そう、今度の作戦について連絡事項があったので、僕は教室を出てカレンと話をしたのだ。
そして、カバンにしまいかけていた課題のプリントを、無意識のうちに机の中にしまっていた。
さらに教室に戻ってから、プリントの存在をすっかり忘れたままカバンを持ち、クラブハウスに帰ってしまっていたのだ。
「初歩的なミスだ。あの時プリントをカバンに入れて、カバンを持って教室を出るべきだった。どうせしまう物なんて、あのプリントしか残っていなかったのに」
顔を手で覆いながら、僕はため息をついた。
「仕方がない、教室へ行くか」
僕は制服に着替えると、部屋を出て教室へ向かった。
「えーと、プリントは……。よし、これだな」
教室に着いた僕は、自分の机の中を覗き込んでプリントを取り出した。
「でも、誰もいない教室って静かだな。普段はみんなが教室にいるから、こういう風景もかえって新鮮に見えるな」
僕しかいない教室の外では、ようやく雨がやんで、雲の切れ間から青空が覗いている。僕は何となく窓の外が見たくなり、窓際に立った。
その時だった。廊下から一つの足音が聞こえて、教室の前で止まった。
「ん?誰か来たのか?」
やがて教室の扉が開き、一人の少女が入ってきた。僕はその少女に見覚えがあった。
「あれ、ニーナじゃないか。こんな時間にどうし…」
「キャアッ!だっ、誰!?」
眼鏡をかけた少女は、教室に入った途端に僕に声をかけられ、激しく動揺した。
「あー、落ち着け。僕だ、ライだ」
「へっ?ラ、ライさん…ですか?何だ、良かった……」
僕のことを確認した彼女は、ほっと胸をなで下ろした。怖がりな彼女にいきなり声をかけたのは、やはり良くなかったか。
「怖がらせて悪かった。プリントを取りに教室に戻って、その後外を眺めていたんだ」
「そ、そうだったんですか。誰もいないはずの教室に人がいて、私の名前を呼ぶから驚きました」
そう言うと、ニーナは自分の席に行って、机の中を探り始めた。
「ん?ニーナも探し物か?」
すると、彼女は恥ずかしそうにうつむいた。
「は、はい。研究室に急ぎの用事があったので、教科書を忘れたまま教室を出てしまって……」
「へえ、そうなのか。ニーナでも忘れ物をするんだな」
「ご、ごめんなさい。忘れ物をするような女で……」
「あ、いや、こっちこそごめん。責めているわけじゃないんだが」
しょんぼりしてしまったニーナを見て、僕も気まずくなって謝罪した。最初の頃よりは彼女も話してくれるようになったが、まだ二人の間には距離があるような気がする。
本当は彼女とも気兼ねなく話せるようになりたいのだが、どうすればいいのだろう。
(何だか気まずい空気だ。何とかしてニーナの気持ちを上向かせたいな)
そう思った僕が何気なく外を見ると、太陽の光と一緒にある物が目に入った。その瞬間、僕はあることを思いついた。
「ニーナ、今は時間あるか?少し付き合って欲しいんだが」
「え?時間は大丈夫ですけど、どこへ行くんですか?」
首を傾げるニーナに、僕は優しく微笑みかけた。
「そんなに遠くへは行かない、気分転換に外で景色を眺めるだけだ」
その後、僕はニーナを連れて校舎の屋上に出た。そして僕は空を見上げ、彼女もつられて空を見上げる。
「僕が見たかったのはこれだ」
「うわあ、綺麗……」
そこに広がる光景に、ニーナは目を奪われていた。綺麗な虹が空にかかり、僕たちの上を通ってはるか彼方へ伸びている。
その七色の光は僕たちを優しく見下ろし、爽やかな風とともにすがすがしい気持ちにさせてくれていた。
「すごく綺麗です、こんなに綺麗な虹は初めて見ました。ライさんは、これを見たかったんですか?」
「ああ、さっき教室で偶然見かけたんだ。それをニーナと一緒に見たくなったんだ」
「え、私とですか?」
彼女が、不思議そうに僕を見た。
「君はいつも不安そうな表情で、すぐに謝る癖がある。現にさっきもそうだった。
僕はもっと君と話がしたいし、君にも笑って欲しい。君に上を向いて欲しくて、君と話すきっかけが欲しくて、僕は君をここへ連れてきたんだ」
「そ、そうですか。ごめんなさい、私なんかのためにこんなに気を使わせてしまって」
ニーナが、申し訳なさそうにうつむいた。
「ほら、そうやってすぐ謝る。僕は君に謝って欲しいんじゃない、笑って欲しいんだ。
記憶をなくして無表情だった僕に笑顔をくれたのは、君たち生徒会のメンバーだ。僕はみんなにすごく感謝しているし、最高の仲間だと思っている。
僕はみんなにも笑っていて欲しいし、その笑顔を守りたい。もちろん、ニーナにもずっと笑っていて欲しい。かけがえのない、大切な仲間だからな」
「で、でも、ライさんを笑わせるのはいつもミレイちゃんたちで、私はつまらない女だから、全然ライさんを笑わせることなんかできません。
それなのに、どうしてこんなに良くしてくれるんですか?私がミレイちゃんのお友達で、偶然生徒会にいたからですか?」
戸惑う彼女に、僕は優しく微笑みかけた。
「それは、ニーナがニーナだからだ。僕にとって、大切な仲間で友達だから。『ミレイさんと友達だから』とか『生徒会メンバーだから』とか、そういうことじゃないんだ。
君といると不思議と落ち着くし、穏やかな時間を過ごせるんだ。たとえ交わす言葉は少なくても、僕は君と過ごす時間が好きなんだ」
「す、好き…ですか。でもそんなことを面と向かって言われると、恥ずかしいです。それに、私は面白いことを言えないのに、それで本当にいいんですか?」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら、ニーナが言った。
「ああ、いいんだ。面白いことを言えるかどうかで、僕は人に優劣をつけたりはしない。その人を大切に思えるかどうか、それが一番大事なんだ。
ニーナは僕にとって、かけがえのない大切な存在だ。だから、もっと一緒に色々な話をして、一緒に笑おう。僕はそうしたい」
僕は、偽りのない気持ちをニーナに伝えた。彼女の表情が柔らかくなり、照れたような笑みが広がっていく。
「あ、ありがとうございます。私も、ライさんみたいな人がお友達になってくれて嬉しいです。
あまり面白いことは言えないし、謝ってばかりかもしれませんけど、その…よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。やっぱり謝るよりも、今みたいに『ありがとう』と言うことを心掛ければいいと思う。
自分の心も前向きになるし、言われた方も気持ちがいいと思うんだ。僕自身も、みんなにそれを教えてもらったようなものだ」
「そうですね。何だか謝る時よりも、心が温かくなったような気がします。これからは、なるべく『ありがとう』と言うように意識してみます」
そう言いながら、ニーナは僕に笑いかけた。僕も、彼女に優しく笑みを返す。
「明日生徒会室に行ったら、きっとみんな驚くし、喜ぶと思う。ニーナが今までよりも前向きになって、笑うようになっているから」
「そうでしょうか。もしそうだとしたら、ちょっと嬉しいかもしれません」
「ああ、必ず嬉しくなるはずだ。君が嬉しいなら、僕もみんなも嬉しい。僕たちは、一緒に並んで歩いて色々なことを共有したいと思える、最高の仲間同士なんだから」
そう言うと、僕はニーナと一緒に空を見上げた。今度はみんなと一緒に青空や虹を見たい、いつまでも一緒に歩いていきたいと思いながら。
忘れ物がくれた綺麗な景色やニーナとの時間、そして改めて気づかされた仲間への想いは、僕にとって一番の贈り物だった。
以上で終了です。
ニーナは本編やロスカラでは脇寄りでしたが
そんな彼女でも一番だと思ったら大事にするライらしさに胸キュン。
そして笑顔になるニーナとのこれからの関係にもいい日が来るでしょうね。
虹の魔力は恐ろしい様で嬉しいものです
余暇卿GJでした、次回投下もお待ちしております。
>>455 余暇卿、GJでした!
今回のテーマは虹、でしょうか。
小さなテーマからこういうSSを創れるのは凄いですね。
僕にはとてもできない。
何というか読んでいてほわっ、としますね。
僕にはとてもできない。
貴公の次の投下を全力を挙げてお待ちしております!
458 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 00:29:15 ID:NmMNhkWD
初めて書き込みます。GJです。余暇卿!
ところで、月下マンとオレンジマン
のカオスなバトルの話はまだですか?
そろそろ本格的にアレなので…
テンプレをそろそろ470KBあたりに変えた方がよくないか?
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|ノ|ノ|ノ〈/ 〉 V: :\ ___\ ヽ| |: |
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/////_____...イアアアアアア\\ / ノ ///////////ト、
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\ > /
\
余暇さん、GJでした。
幸せそうなニーナにほっとします。
温かかったです。
埋め
1レスの容量は4KBくらいだから、残り3〜40KBくらいだと長編一発で埋まっちゃうんだよね。
今くらいの時期で新スレ立てて保守しつつ、容量が行けそうな作品は意識的に落としてもらうしかないんじゃないかなあ。
終わりかけのスレッドだと感想付きにくいかな。
落とす方としては敬遠したい感じだろうか。
最近の投下作は長編もの多いしね。
埋め。
464 :
埋め:2009/03/02(月) 01:47:49 ID:NaW4QcYp
「コーネリア、人々の願いはなんだい? 飢餓や貧困、差別、腐敗、戦争にテロリズム。世界に溢れるSSを読みたいと願いつつも、人は絶望的なまでに分かり合えない」
「……はい?」
「ならせめて……SSだけでも読めるようにしたいじゃないか。しかし、それに必要なのは、ライアニャでもない。ライカレでもない。まして、ライナナなどではありえない」
「?」
「このダモクレスは、SS投下後に直ちにスレッド領空に入り、保管作業に移行する」
「はぁ……」
「その後、地上三○○○キロメートルの衛星軌道上まで到達する予定だ。そして――その位置から、ノーマルカップリングを推奨する全てのスレッドに対してBLSSを撃ち込む」
THREAD 23『シュナイゼル の 保管庫』
「待って下さい! SSを保管するだけではなかったのですか!? これでは世界中が……BLで人を支配しようというのですか!」
「元々我がブリタニアもアブノーマルを推奨していたじゃないか。SSというのは所詮、幻想だよ。妄想することが人の歴史、本性。人々が職人となるためには躾が必要では?」
「スレ住民を教育するおつもりだと!? そんなことはローカルルールでもなければ許されない!」
「では、ローカルルールになろう。人々がSSを私に望むのであれば」
「の、望む?」
「SSなんて、何かを表現するためのツールの一つだよ。コテや職人などという代物ほど曖昧なものは、この世には存在しない。それ自体には何の意味もないんだ」
「あ……あなたはっ!」
「――すばらしいっ! やはりあなたに付いてきて正解でした。文才ゼロのカオスをも凌駕する完璧なる文才虚無!」
「……シュナイゼル殿下、黒の騎士団と連絡がつきました。BLについては否定的でしたが、SSを投下するためならば我々と手を組むと」
「ありがとう。これでカードは全て揃った。ルルーシュのSSを経験した住民は、よりマシなカップリングにすがることだろうね」
「兄上。まさか、そのために今まで保管せず、ルルーシュのSSを放置していたと……」
「最も被害の少ない方法だよ。たとえ十億二十億のSSがなくなったとしても、恒久的なBLが――」
「違います! ただ強制されるだけのSSなど、それは――っ!」
・・・・
・・・・・・
「悲しいね、コーネリア……」
>>464 お久しぶりのTHREADシリーズがキターッ!!!
シュナイゼル殿下っ!それでは2chのほとんどのスレが壊滅してしまいます!!とか、
騎士団手を組むなよwとか、百合はいいのか?とか、突っ込みどころ満載だwww
>>464 ブラボーwおお、ブラボーwww
BLによる支配ってなんぞwww色んな意味でやめれwww
そして、文才虚無ってwww悪口にしか聞こえんぞwww
貴公の次の投下を全力で待っています!
えーと、埋め短編投下します。
タイトル 続々続々二重人格
カップリング アーニャ×ライ
ジャンル ノロケ
全然タイトルとは関係ない内容なんだけど、前作の「続々続二重人格」の後のお話なのでこんなタイトルになりました。
まぁ、深く考えないで、まぁ、気楽に楽しんでいただければ幸いです。
続々続々二重人格
「ライ、腹が減ったぞ…」
突然の訪問者に僕は驚いていた。
「なんで、ノネットさんがここにいるんですかっ」
思わずそう聞いてしまう。
「なに、アーニャが誘ってくれたんだ、なぁ、アーニャ」
なにやらアーニャに目配せをするノネットさん。
その言葉に必死にこくこく肯定を示すように顔を動かすアーニャ。
何があったんだ…アーニャ。
ちょっと心配。
しかし、そういう事なら仕方ない。
ノネットさんは、言い出したら止まらないからなぁ。
「何かリクエストありますか?」
諦めてそう聞く。
「そうだなぁ…。そうそう、ライ特製の愛情ご飯とやらを頂こうか…」
ぶーーっ。
思わず噴出してしまっていた。
なんで…それを…。
「作ってあげてるんだろう?アーニャには、さぁ…」
ニタリと笑い、楽しそうにこっちを見ている。
アーニャの方を見ると目をあわさないように横を向いていた。
あー・・・。
それでなんとなくわかった。
言わされたな……。
あの無表情で余計な事は喋らないアーニャを堕とすとは…。
さすがですね…ノネットさん……。
しかし、よく考えてみれば、こういうちょっかい大好きなノネットさんに今までバレなかったという事は、賞賛に値するのではないだろうか。
だから、アーニャを責める事は出来ないな。
そう考えると僕は身体の向きを変えた。
「わかりました。作らせていただきます」
そう言って台所に向かう。
その僕の背中に冷やかすような視線と「オアツイねぇ…」というノネットさんの声がかけられた。
「はい、召し上がれっ」
僕はテキパキと料理をテーブルに並べていく。
「あのさ…ライ」
怪訝そうな表情のノネットさん。
「はい。なんでしょう?」
多分、くると思ったんだよなぁ…。
「料理って……これだけ?」
そう・・・テーブルには、各自1つずつ丼と汁物、それに漬物があるだけだった。
「はい。そうです」
僕は当たり前のように答えた。
僕に聞いても多分無理だと悟ったのだろう。
今度はアーニャに聞いている。
「なぁ、アーニャ…。本当に…これだけ?」
「うん……」
即答するアーニャ。
そして、考え込むノネットさんにアーニャは断言した。
「ライの愛情ご飯の中でも丼は特別に美味しいのっ」
普段の無表情では考えられないほど、ムキになっている表情と言葉。
それで納得したのか、ノネットさんは丼のふたを開けた。
ほわっとした湯気と美味しそうな匂いがたちのぼる。
ふむふむ…なかなかうまそうじゃないか…。
そう思いなおして食べ始めた。
確かに美味しい。
でも……。
何か物足りない。
そう思って、言葉をかけようとライとアーニャを見た。
そして、その目に映ったのは二人でニコニコと微笑み、楽しそうに食べている姿。
それを見てわかってしまった。
ああ……そういう事か……。
食事が終わり、食後のお茶を飲んだノネットさんは、席を立つと「こぢそうさん。うまかったよ」そう言って帰っていった。
帰る間際に何やらアーニャにいろいろ小声で話してたみたいだけどなんだったんだろう。
ちょっと気になって聞いてみる事にした。
「ねぇ、アーニャ…。ノネットさん、何か言ってた?}
そんな僕の言葉に、少し頬を染めるアーニャ。
どうしたんだろう…。
すごく気になる。
そう思ったが、その後にアーニャが話してくれたノネットさんの言葉に僕も照れて真っ赤になっていた。
「確かに料理は美味しかったけど、あの料理はアーニャの為の料理だな。
愛情がない分、私にはすこし物足りなかったよ。しかし…あそこまで愛情を込めた料理を作ってくれるんだ。幸せものだな、アーニャは……」
おわり
以上でおわりです。
まぁ、殺伐なものを書いているとたまにこういうのを書きたくなるのですよ。
突っ込みどころはいっぱいあるけど、笑って許して…。
付きの投下は、多分「思いの後に…11話」か「蒼天の騎士19話」になる予定です。
では…。
>>470 あしっど・れいん卿、GJでした!
最高の調味料、まさしく愛だ!
……言ってて少し恥ずかしくなってきたんだぜ。
何とも言えないほのかな甘さがいいかんじ。
貴公の次の投下を全力で待っています!
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