仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.9

このエントリーをはてなブックマークに追加
1創る名無しに見る名無し
当スレッドは、「仮面ライダーシリーズに登場するキャラクターでバトルロワイヤルをしてみよう」という趣旨のSSスレです。

企画の性質上、登場人物が敗北・死亡する描写や、残酷な表現が含まれています。
また、二次創作という性質上、原作本編のネタバレを多く含んでいます。
閲覧の際は、その点をご理解の上でお願いします。

企画の性質を鑑み、このスレはsage進行でお願いします。
また、このスレの話題をこの板の他のスレや、特撮!板の関連作品スレに持ち込まないようにしてください。
2創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 23:42:55 ID:3FoLVjIb
Ignis aurum probat, miseria fortes viros.
(黄金は炎に、強き者は悲しみによって証される)
                 セネカ「神慮について」

まとめwiki
http://www8.atwiki.jp/rnext/
避難所(様々な議論や交流雑談、試験投下や規制時の一時投下など)
http://riders.sphere.sc/rb/rnext/
雑談スレ
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1206169641/l50
議論スレ(強制ID)
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1210423244/l50
予約スレ
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1216126570/l50

初めての方は、ゲーム進行上の特殊ルールをまとめた以下のページもあわせてご覧下さい。
http://www8.atwiki.jp/rnext/pages/29.html

初めて投下する方は、以下のページで予約システム等を確認してください。
http://www8.atwiki.jp/rnext/pages/36.html

誤字脱字や矛盾の指摘以外の主観的な意見や批判は「毒吐きスレ」で。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1182007206/
#書き手は毒吐きスレを見る義務はありません。
#吐き出しですので、むしろ見ないことをお勧めします。
3創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 23:43:27 ID:3FoLVjIb
■作品の投下と進行について
作品の投下前には、必ず予約が必要です。
予約は以下のスレで、トリップをつけてお願いします。
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1216126570/l50

投下までの期限は予約から一週間となります。
申請により、三日間の延長が可能です。

投下後、作品に明らかな問題があると判断されたときは、NG(修正・破棄)が発議されることがあります。
NG発議をする人はレス内にそのことを明記し、発議の理由を具体的に述べた上で
以下の議論スレに誘導し、議論スレに論点をまとめた書き込みを行ってください。
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1210423244/l50
誘導のない発議、議論スレにまとめのない発議は有効なNG要求と見なされません。

NGを発議出来るのは、以下の条件を満たすときに限ります。
1:文章そのものが小説の体をなしていない(日本語として意味が通らない・台本形式等)
2:作品の中に矛盾がある、時間の進行が明らかにおかしい、重要な出来事の描写がない、状態表と本文が一致しないなど、内容的な不備がある
3:原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている
4:前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている(死んだキャラが普通に登場している等)
5:全体のバランスをこわしかねない展開やアイテムが含まれている(ただし、あらかじめ相談の上、住人や他書き手の承認を受けている場合を除きます)
6:企画の基本的なルールを逸脱している場合(予約されているキャラを別の書き手が投下、参加者の追加、制限の無視等)

以上の条件を満たさないNG発議は無効です。
「贔屓キャラが死んだ」「先の構想が潰された」などの主観的な不満は愚痴に過ぎません。
毒吐きスレで存分に吐き出してすっきりしてください。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1182007206/

投下ルールについて、詳しくは、以下のページを参照してください。
http://www8.atwiki.jp/rnext/pages/36.html
4創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 23:45:23 ID:3FoLVjIb
■参加者名簿■

主催者 村上峡児

【初代】1/4
●本郷猛/●一文字隼人/○死神博士/●ゾル大佐
【アマゾン】2/4
●山本大介/●モグラ獣人/●十面鬼ゴルゴス/●立花藤兵衛
【クウガ】4/5
○五代雄介/●一条薫/○ゴ・ガドル・バ/○ゴ・バダー・バ/○ン・ダグバ・ゼバ
【アギト】4/5
○葦原涼/○風谷真魚/○北條透/●水城史朗/○風のエル
【龍騎】4/5
○城戸真司/○東條悟/○香川英行/○手塚海之/●芝浦淳
【555】5/5
○木場勇治/○長田結花/●海堂直也/○北崎/○澤田亜希
【ブレイド】3/5
●剣崎一真/○橘朔也/●金居/○城光/○志村純一
【響鬼】4/4
○日高仁志/○桐矢京介/●和泉伊織/○歌舞鬼
【カブト】4/5
●天道総司/○影山瞬/○乃木怜治/○加賀美新/○風間大介
【電王】3/5
●モモタロス/○ハナ/○桜井侑斗/●デネブ/○牙王
【FIRST・NEXT】3/5
●本郷猛/○一文字隼人/○風見志郎/○三田村晴彦/●緑川あすか
5創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 23:48:16 ID:3FoLVjIb
■参加者名簿■

主催者 村上峡児

【初代】1/4
●本郷猛/●一文字隼人/○死神博士/●ゾル大佐
【アマゾン】0/4
●山本大介/●モグラ獣人/●十面鬼ゴルゴス/●立花藤兵衛
【クウガ】4/5
○五代雄介/●一条薫/○ゴ・ガドル・バ/○ゴ・バダー・バ/○ン・ダグバ・ゼバ
【アギト】4/5
○葦原涼/○風谷真魚/○北條透/●水城史朗/○風のエル
【龍騎】4/5
○城戸真司/○東條悟/○香川英行/○手塚海之/●芝浦淳
【555】4/5
○木場勇治/○長田結花/●海堂直也/○北崎/○澤田亜希
【ブレイド】3/5
●剣崎一真/○橘朔也/●金居/○城光/○志村純一
【響鬼】3/4
○日高仁志/○桐矢京介/●和泉伊織/○歌舞鬼
【カブト】4/5
●天道総司/○影山瞬/○乃木怜治/○加賀美新/○風間大介
【電王】3/5
●モモタロス/○ハナ/○桜井侑斗/●デネブ/○牙王
【FIRST・NEXT】3/5
●本郷猛/○一文字隼人/○風見志郎/○三田村晴彦/●緑川あすか
6創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 23:51:39 ID:3FoLVjIb
過去スレ
仮面ライダーバトルロワイヤル2nd Part0
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1201602112/
仮面ライダーバトルロワイヤル2nd Part1
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1204780567/
仮面ライダーバトルロワイヤル2nd Part2
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1207484751/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.3
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1209566468/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.4
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1210669557/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.5
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1211736341/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.6
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1213529559/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.7
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1215358420/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.8
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1219136974/
仮面ライダーバトルロワイヤル THE NEXT Version.9
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220351089/
71:2008/12/28(日) 23:52:54 ID:3FoLVjIb
すいません。
Version.10でした。
ミスしてごめんなさいorz
8創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 00:11:03 ID:+Z22rVIj
>>1乙!
9創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 00:59:36 ID:yDf/FlV6
次スレどこに立てるか議論中だったんじゃ……w
10創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 01:35:52 ID:sZAUYhQt
>>9
特撮板に立てたらまたあすむが荒らしに来るかもないな・・・
11創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 02:11:59 ID:uSzXCtCh
あれ?もう議論に決着ついたの?それとも知らずに立てちゃった系?
12創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 06:34:03 ID:K2FAMmQS
>>1
議論中なのに勝手に立てるな
ちゃんと自分で削除依頼してこいよ
13創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 10:11:49 ID:xLi/GUDm
なんか移転騒ぎでもみ消されたけど、あのグループ内じゃ
ギルス、デルタは危険人物扱い
木場勇治、海堂直也は友好的な人物扱いじゃなかったの?
14創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 10:30:24 ID:yDf/FlV6
まず揉み消す以前に誰も突っ込んでないな
要点纏めて修正スレ誘導してくれ
15創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 11:06:16 ID:AlIh2mIE
>>14
もう通った話に修正は不可能だろ。
確かに言われてみればリレー前も後も問題なんだが、この場合どうするんだ?
16創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 11:56:35 ID:yDf/FlV6
◆Z9氏の本投下は完了していないし現在修正中
◆N4氏が修正する間◆Z9氏の期限を凍結すれば良い
デルタギルス問題がどう軌道修正されても◆Z9氏のパートに支障は出ないはず


つーか誰も突っ込まないが◆Z9氏の今回の話は香川と五代組の合流っていう話のキモがまず問題だろ
E-6ホテルにいる教授が移動してE-4に到着するまでに、
ドラグブラッカー出現〜戦闘終了後の態勢立て直し時間の僅かな期間しか掛かってない・・・・
最短ルートでもD6〜D4エリアの迂回が必要にも関わらずだ

これを成立させるには教授の出発を早めるか到着を遅らせる(次の時間帯にする)しかない
ただ前者だと教授の行動方針無視になる上E-4に行く理由が作れない
後者だと五代達がいつまでも動かないで油売ってることになってやはり理不尽

正直な話今作は破棄を考えてもらわざるを得ない気がする・・・
17創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 23:38:17 ID:cK+V9Zly
それは議論スレで言うべきことなんだろうが、今は板問題の議論中だしな・・
18 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/30(火) 11:13:19 ID:ykuIW1lT
香川英行、投下します。
19 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/30(火) 11:15:24 ID:ykuIW1lT
「あれは…!」
ホテルの窓から眺める香川英行は、をある物に見て驚いていた。

共に戦ってきたはずの木場勇治に突如として襲われ川へと突き落とされ、そうして這い上がった先で今居るホテルを発見した。
「プラトン」そう看板に書かれているがホテルの名前だろうか、別に気には留めなかった。
濡れた衣服のまま行動していては体力は落ち病に冒されてもしかたがない。
着替えと体力回復にうってつけと考えホテル内へと潜入した。
やはり人の気配は無く無人と化している。
誰かが潜むには持ってこいの場所だが、今のところは敵の気配すら感じない。
そうして辺りを警戒しながらホテル内を探索する香川は従業員用の更衣室を見つけた。
着替えがないかと思い、入った結果、当たりだった。
ホテルマンの制服と、誰かが着てきたであろう黒いスーツがハンガーに掛けられていた。
スーツの方を掴み取った香川は次にフロントへと向かった。

シャワーを浴びるための客室の鍵を手に入れるからだ。
難なくフロントに辿りつき適当に鍵を掴んだ香川。
「315号室」そう書かれた部屋を求めて階段を昇った。
意図も容易く辿りついた客室に素早く入り鍵を掛けると、軽くシャワーを終わらせた。
そして濡れた衣服を余所目に、新たに手に入れたスーツへ着替え始める。

その時だった、島全体に響き渡る放送が聞こえたのは…。

次々に呼ばれる死者の名前、その中で知った名前が出てきた。
『海道直也』、共に赤い化物と戦った者だった。木場勇治と同じくオルフェノクだった青年。
彼は、危険視すべきだと判断したオルフェノクの中でも除外だと思っていた。しかしその彼も死んでしまった。
これで信頼しうるオルフェノクはいなくなった。
だとすれば残りのオルフェノクは全て危険人物だと見たほうがよさそうだ。
主催社スマートブレイン、龍のような怪人、木場勇治。しかし木場勇治に仲間が他にいてもおかしくはない…。
20 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/30(火) 11:16:41 ID:ykuIW1lT
「…海堂君、君の死を無駄にはしません」
そう考えながら香川は新たに着替えたなスーツに袖を通して呟いた
と、そこへ2つの排気音が外から聞こえてきた。
それに少しだけ目線を移すと、道路を走り抜けていく2台のバイクが見えた。眼鏡を掛けているとはいえ肉眼では顔まで判別できなかったが、どちらも2人づつ計4人が乗っていたようだ。高速のスピードに走り抜けていった2台のバイク。
それほどに急行することがあるのだろうか。

僅かに思考しながらも着替えを済ませた香川はデイパックを担ぎ直した。
そして、窓から視線を外そうとしたとき、まだ何かやってくるのが見えた。
バイクが去った後を歩く5人の集団。この地に着てからは集団行動をしているのは余り見ていない。
敵対する者同士が組む可能性は低い…だとすればおそらく戦いに乗っていないのだろう。
「…ふむ」
集団を見つめながら香川考える。今は武器も何も無い状態、このまま戦うにも無理がある。いくら頭脳で勝負できるとはいえ限度というものもある。
先程のバイクと、この集団があの距離で気付いていないはずが無い。
ならば協力的な関係にあり、何らかの理由で2手に分かれたと考えるのが妥当だ。
つまり、あの集団に近づいても害は無いだろう。もしかしたら新たな脱出への情報、戦う術が見つかるかもしれない。
そう考えた香川は急いで客室を飛び出し、ホテルの外へと出た。

21 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/30(火) 11:18:20 ID:ykuIW1lT
しかし、その幾分か後だった。ある物、黒き龍が空を舞うのが見えたのは。
「あれは…!ミラーモンスター!?」
遠目にだが、黒い巨体は明らかにミラーモンスターだとわかった。
城戸真司の契約する赤い龍と酷似してからでもある。
モンスターに色違いの亜種がいるのは断然把握している。
問題は、龍が先程の集団の近くに存在することだ。
可能性として「仮面ライダー」が操っている確率が高い。
はたまた、モンスターさえスマートブレインの駒なのか。

「…急いだほうが良さそうですね」
武器がないのは何度も確認した。
あのモンスターを集団が召喚したのか、それとも別の誰かが召喚したのか。
どちらにしても戦いに乗っていないであろう集団が何らかの戦闘に巻き込まれているのは明白だ。
助けようにも力が無いが、あの集団を失うわけにはいかない。
「東條君…あなたではありませんよね」
眼鏡越しに姿の見えなくなった黒龍を睨みつけた香川は、集団の元へと駆け出した。



東條を止める。



そして、オルフェノクは全て危険人物と頭に叩き込みながら…。
22 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/30(火) 11:23:54 ID:ykuIW1lT
【香川英行@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:E-6・ホテル前道路】
【時間軸】:東條悟に殺害される直前
【状態】:深い後悔、強い決意。全身に中程度のダメージ。
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いの阻止
1:木場勇治の抹殺。
2:木場勇治を抹殺後、侑斗と合流。
3:黒龍のいる場所へ急ぐ。
4:集団との接触を図る。
5:東條は必ず自分が止める。
6:ガドル(名前は知らない)、北崎を警戒 。
7:侑斗を生存させるため、盾となるべく変身アイテム、盾となる参加者を引き入れる。
【備考】
※変身制限に気づきました。大体の間隔なども把握しています。
※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。
※木場からオルフェノク・スマートブレイン社についての情報を得ました。
※死者の蘇生に対する制限について、オルフェノク化させる事で蘇生が可能なのではと思いはじめました。
※集団はゲームに乗っていないと考えています。
※黒龍はミラーモンスター。
※オルフェノクは常に危険視。
23 ◆Z9EUSuuwiU :2008/12/30(火) 11:27:33 ID:ykuIW1lT
以上、投下終了します。
今度からは指摘された部分も頭に入れて行きます。
あと、タイトル忘れてました。「道の先」です。

それでは皆さん、良いお年を。
24創る名無しに見る名無し:2008/12/30(火) 19:00:25 ID:vsqqfgVN
>>◆Z9EUSuuwiUさん
スレの上のほうでも指摘されていますが
このスレは今後の進行に関する議論を確認せず、
つまり住人の総意を得ずに立てられたスレです。
そのようなスレに先走って書き込みをされると、
のちのちの運営に悪影響が出ないとも限りません。
今後、このような行為は慎んで頂くようお願いします。

なお、今後の進行に関する話は、議論スレでお願い致します。
25創る名無しに見る名無し:2008/12/31(水) 21:59:57 ID:i+DivYAe
◆Z9氏
手塚が起きるのを待ってた響鬼組の方が出発は後なのに
バイクの去った後を歩く五代組を見つけるのは時間的におかしい。
さらにその数分後に数エリア(およそ10km)離れたドラグブラッカーを発見。
禁止エリアを全て記憶していて間に合わないことを理解している、
疲労回復をしようとしている教授が向かう理由が希薄。
以上の理由から修正を要求します。

◆N4氏
デルタとギルスの姿をその前の話で闘いに乗っている危険人物と認識しているので
ヒビキと一文字の行動が不自然です。

さらに言うと◆WR氏の集団結成話でなされた情報交換の描写が曖昧なため今後の展開に
今回のような悪影響を与えていると思います。
26創る名無しに見る名無し:2009/01/02(金) 03:15:19 ID:xssMKPKP
レジアス探したがエロと呼べそうなのが困難しかなかった
http://www.uploda.org/uporg1901670.jpg

俺は今度こそもう寝る
27創る名無しに見る名無し:2009/01/02(金) 03:15:51 ID:xssMKPKP
……ごめん、誤爆した
28創る名無しに見る名無し:2009/01/02(金) 21:45:49 ID:LOvnzTOQ
>>1です。
議論中なのを知らずにスレを立ててしまいました。
すいません。
消去依頼を出します。
29創る名無しに見る名無し:2009/01/09(金) 23:56:43 ID:vNJkPwpF
投票中か
30創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 00:16:18 ID:XXoCxfgQ
ここが本スレって事でいいんだな
31創る名無しに見る名無し:2009/01/12(月) 00:25:25 ID:aAN19QJt
じゃあこちらで、今後ともよろしくってことでw
32創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 22:16:46 ID:Wzyw+SaR
どうせ特撮板に投票した書き手はもう来ないんだからマターリやろうぜ
33創る名無しに見る名無し:2009/01/13(火) 23:49:39 ID:n/DvkMci
来るよ!ていうか普通にいるって!
34創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 12:36:56 ID:eU0sfEns
ここんとこちょっとグダっちゃったから人居ないね
また書き手さん来るまでマターリ雑談でもしてますか
35創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 14:05:33 ID:4YF2IhJl
予約したくても予約できねーしな、今
36創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 17:58:35 ID:EeOb+gBB
つーか前スレのWBRX氏の病院話がwiki未収録だからなんとかしたいんだが
ログ残ってないか?
37避難所”管理”担当 ◆SBNext.HzA :2009/01/16(金) 20:33:00 ID:IF22KF5h
先日(12日頃)からホスティング会社の不手際で避難所が繋がらなくなってしまい
大変申し訳ありませんでした。
こちら側ではいかんともしがたい状況なので復旧をまっていましたが、
あまりに長い時間がかかっている様ですので、URLの変更作業を行いました。
関連するすべてのURLのriders.sphere.scをfx.media-luna.netに変更してください。
例:避難所
旧:http://riders.sphere.sc/rb/rnext/
新:http://fx.media-luna.net/rb/rnext/

なお、以前のアドレスも復旧後は新しいアドレスに同期されます。
今度からは自前のドメインですので
これ以上なにかあっても、もうURLの変更はしなくてすむ……はずです。

また、前スレを倉庫に収納しました。
http://www6.atpages.jp/riders/bbs/test/read.cgi/log/1220351089/l50

作業が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。
38創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 20:35:14 ID:GnkGsqrn
>>37
おつです
39創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 20:46:38 ID:in6XUMao
>>37
作業乙です。
お疲れ様でした。
40創る名無しに見る名無し:2009/01/16(金) 21:01:09 ID:EeOb+gBB
>>37
作業乙です。
41創る名無しに見る名無し:2009/01/17(土) 13:12:37 ID:x699NZ3Y
>>37
乙です
42創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 21:20:46 ID:kq2jb+JB
前スレの死神博士の英語がどうたらこうたらって話はどうなった?
43創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:18:47 ID:8Ckf+yjh
一人で全話感想してもいいかな?
44創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 23:20:28 ID:LM3vxkCZ
確か何話までかは進んでいたはず>全話感想

>>43もちろんO.K.です!
45創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 18:13:39 ID:z+NUwrWV
みんな怪人ロワがしたいってよ
46創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 23:33:32 ID:iEZSGMLz
mixiにコミュが立ってた。
47創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 00:44:23 ID:kHHzXBea
mixi他人が見れない分何言われてるのかわからなくて怖いじゃないか
48創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 17:33:30 ID:xhaSKAZk
予約二つktkr
お二方期待してます!
49創る名無しに見る名無し:2009/01/29(木) 21:07:00 ID:47Cx/FsX
予約が2つ入った〜!
御二方共に、頑張って下さい。
50創る名無しに見る名無し:2009/01/30(金) 11:21:48 ID:f6haXYnu
おお!楽しみにしてます!!
51創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 00:25:18 ID:inPmb8Ia
これって勝敗とか、誰と誰がぶつかるかとかは作者の胸先三寸なん?
52創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 00:31:33 ID:7epGio2X
>>51
矛盾がなければ。てか、テンプレくらい読め
53創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 00:52:31 ID:inPmb8Ia
読んだけどその辺よくわかんなかったのよ
54創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 01:06:07 ID:dOtC7JB7
半年ロムれ
55創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 01:12:29 ID:zBCVHFhI
荒らし乙
二度とくるな
56創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 05:36:01 ID:zFp4XZNP
マガジンZが休刊すると知った一昨日の俺……
書く意欲が一気に削がれた。

しかし魂はチンミの隣になると知った今朝の俺。
スーパー1の寸勁って文章として微妙かなぁ、と悩んでる。

動きが魅力の赤心少林拳的にはどうだろうね。
57創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 10:08:48 ID:7epGio2X
いかに文章でスピード感を出せるかに尽きるかな>スーパー1の赤心小林拳
58創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 11:29:46 ID:tXMNpQDu
予約2つにwktkしつつ、待つがてら。
今後の活躍を期待しているキャラっている?(色んな意味でw)
59創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 12:07:30 ID:R7e09JoF
長田結花
オルフェノク態にならないまま退場とかだけは勘弁してくれw
歌舞鬼
いい事思いついた。お前ステルスになって暴れまくれ
三田村晴彦
あれ?君死んでないよね?生きてるよね

俺はこの3人に期待してる
60創る名無しに見る名無し:2009/01/31(土) 12:50:12 ID:ex8BLgAQ
志村
なんとか再起してくれよw
葦原さん
もっと不幸に堕ちてくれ…
そして三田村
>>59が言いたいことを全部話してくれた
61 ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:05:21 ID:2bw8mJDO
こんばんは。
葦原涼、木場勇治、歌舞鬼、桐矢京介投下します。
62顔  ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:08:35 ID:2bw8mJDO

ファイズギアが入ったデイパックをしっかりと胸に抱え、桐矢京介は川沿いの道を進んでいた。
いつのまにか汚れてしまった、ブランド物のスニーカーが小石を蹴る。

最初は住宅街を隠れるようにして移動していたのだが、敵が物陰に潜んでいるのではないかという不安に耐えられず、迷った末に前方が見渡せる比較的広い道を進む事にした。
極限状態の京介にはもう、どちらがより安全で、危険であるのか判断できない。
ただ、存在するかしないかわからない恐怖に怯えるよりは、目視した危険から速やかに逃げられるようにと思ったのだった。
後ろ向きではあるものの、本来の負けず嫌いな性質がそうさせたのかもしれない。

一歩歩くたびに、デイパックの中でファイズギアがカチャリ、と小さな音を立てる。
警戒心から普段以上に神経質になっている事を考えても、そんな音が聞こえる程の不気味な静けさである。
本来雑多な音で満ち溢れているはずの街中でなら、尚更だ。
京介はもう一度周囲を見回す。何の変哲も無い住宅地。
生垣越しに民家の庭を覗き込むと、カーテンの開けられた窓の向こうの室内は暗く、やはり無人。
外観も玄関先が妙に砂っぽいのを除けば、芝生もきれいに整えられ、荒れた様子は全くない。
それが京介の目にはよりいっそう異様に映った。

「……まるでマリー・セレスト号みたいだな」

京介は呟く。その声も、自分以外の誰の耳にも届かず消えていくのだと思い、心細さに京介は身を竦ませた。
無論、巷で言われるようなオカルティックな要因で、かの船から乗客が消え失せたのではないと知っている。
だが、都市伝説としてまことしやかに囁かれている状況に、今のこの島はあまりにも似ていた。

その時、不意にデイパックの中から振動を感じ、京介は飛び上がらんばかりに驚いた。
半ばパニックになりながらも、定時放送の時間だと気付き、震える手で携帯電話を開く。
内容を慌ててメモに取り―――女の声で、『海堂直也』の名が呼ばれた時、手が止まった。

(海堂って人……やっぱり殺されたんだ……)

どれだけ北崎に叩きのめされても立ち上がり、向かって行った姿を思い出し、罪悪感が湧き上がる。
しかしすぐに気を取り直して、放送の続きを書き取る。
やはり逃げて正解だった、と京介は思う。もし自分があの場に留まったとしても、海堂を助けることは出来なかった。
歌舞鬼と三田村はやはりまだ北崎と行動を共にしているのだろうか?
名前が呼ばれなかった事から生きてはいるのだろうが、どちらにせよわざわざ会いに行くつもりもない。
京介が探すのはヒビキ。他の参加者はあまり信用できそうもないと、今までの経験から断定する。

―――でももし、ヒビキに会えないまま危険な参加者と遭遇してしまったら?

京介はデイパックを見つめる。いざという時、このファイズギアを使えば、自分も戦えるのではないか。
そう思うものの、踏ん切りがつかない。
明日夢やあきらの前で虚勢を張るのとは訳が違う。
自分の命を懸けて敵と戦う勇気は、今の京介にはなかった。

不安な気持ちのまま、京介は再び歩き出す。静寂がそれを見守っていた。
63創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:10:53 ID:01oEKknv
全力で支援
64創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:11:09 ID:IwLqJXqQ

65顔  ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:11:29 ID:2bw8mJDO
※※※


木場は葦原の後ろで、スピードに乗って流れていく景色をじっと見ていた。
握った地図の端が風に煽られて激しく震える。
建物の白、木々の緑、看板のオレンジや赤が目に飛び込んできては一瞬で通り過ぎていく。
その様子に、木場は今日の出来事をぼんやりと思い出す。
突然この島に連れて来られて、殺し合いを強いられた。
様々な人と出会い、戦い―――たった半日の出来事が、恐ろしく長く続く、悪い夢のように思えた。

(……いや、夢なんかじゃない……)

伏せた瞼の裏に、永遠に会うことの叶わなくなってしまった友人の顔が浮かぶ。
海堂を失った悲しみと後悔が蘇り、暗く冷たく沈んでいきそうな心を、目の前の背中を見つめる事で押し止める。
葦原は、自分自身を信じると言った。どんな現実にも逃げずに戦うと。
お互い言葉の多い方では無いため、交わした会話といえば些細なものだ。
だが木場は葦原の言葉の端々に、彼の例えようもない孤独と、それを超える心の強さを感じ取っていた。

交差点に差し掛かると、葦原はカブトエクステンダーを止めた。後ろを振り返って、木場に降りるよう促す。
素直に従うと、葦原もエンジンを切ってスタンドを下ろし、ヘルメットを外して息をついた。

「これでこのエリアは一回りしたって事になるな」
「はい、ざっとですけど」

褪せたような色の前髪をかき上げながら言う葦原に、地図を眺めながら木場が答える。
動物園から出発した二人は、南下を始める前にお互いの探す相手が居ないかエリアを回ってみる事にした。
とはいえ、1エリアにそれなりの広さがあり、建物の中や狭い路地などに隠れられていては見つけようがない。
しかし、それ以外に当てもないので、地図を頼りにエリア内を一回りしていたのだった。

「もう少し探してみますか?」
「……俺の探す相手はバイクを持っていた。もうこの近くにはいないんだろうな。 あんたがもう少し探したいんなら―――」
「いや、葦原さんに従います。そういう約束でしたし……少ししたら、移動しましょう」

そう言った木場を、葦原がじっと見返す。強い眼差しに、思わず目を逸らしてしまう。
葦原は何も言わずに目線を外し、ガードレールにもたれてペットボトルの水を飲んだ。
彼はきっと解っているのだ、木場が再会を果たす事を恐れているのを。
会って話し合いたい、誤解があるならそれを解きたいと願っているのは本心だが、やはり心底では自分の強さを信じきれないのだ。

「葦原さんは……怖くなかったんですか?」

小さく尋ねる木場に、葦原は意図を問うような視線を投げかける。
葦原が語った境遇は、木場から見ても決して恵まれたものではなかった。
自分と同じく、ある日突然異形と化し、大切な人たちは遠ざかり、他の者には敵対視される。
孤独に戦い続けてなお、『現実』から目を逸らす事なく自分を信じられる強さは、一体どこから来るのか。
出会った時に感じた疑問を、思わず口にしていた。

「自分が人と違うものになってしまったと知って、その姿のように、人の心まで失くしてしまうんじゃないかと思ったことはないんですか?」

葦原の隣に腰を下ろして、横顔を見る。削げた頬に意志の強そうな眉。
その下の瞳は過去を懐かしむのでも、悔いるのでもなく、『今』を見ているのだ。

「俺は、俺のままだ」

葦原は静かに、だがきっぱりと、そう呟いた。
木場は俯く。以前なら自分も同じ答えを返しただろう。だからこそ、悩む巧の背中を押したりもできた。
だが他者を信じられず、守る価値を疑ってしまっている今は?
66創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:12:52 ID:IwLqJXqQ
支援
67創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:13:08 ID:01oEKknv
支援
68顔  ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:14:25 ID:2bw8mJDO
木場の目の前に飲みかけのペットボトルが突き出される。
葦原の差し出したそれを受け取ると、表面に自分の顔が丸く歪んで映っていた。
薄く被さる灰色の影を見つめながら木場は思う。
自分は、彼のようになれるだろうか……。


※※※


市街地を抜けると、京介の目の前には海が広がっていた。
きらきらと光を反射する水面に目を細める。春の日差しに暖められた風が、潮の匂いを運んで来る。
地図を確認すると、島の端まで来てしまったようだ。
急に開けた視界に、誰かいないかと期待と緊張が入り混じった感情を覚える。
辺りを見回すが、コンクリートの波止場にも、砂浜にも、動くものは見当たらない。
―――いや、砂浜に何かある。ぽつんと小さく横たわる何かが。
最初は流木か何かかと思った。確かめようと近づいて、京介は息を呑んだ。

「アマ――ゾン――さん!」

そこにあったのは以前自分と行動を共にしていたアマゾンの遺体だった。
瞳は固く閉じられ、口の端には赤黒く血がこびりついている。
京介が見ていたような屈託のない表情はすっかり消えうせていたが、確かにアマゾンだ。
一目見て命はないと分かる、血まみれの四肢、胸に開いた大きな穴。

「う……っ」

初めてこの目で見る、人間の死体。あまりの凄惨さに京介は砂浜にへたり込み、こみ上げる吐き気に口を塞ぐ。
目を背けて弱々しく後ずさり、最初の衝撃をなんとかやり過ごすと、次に京介の脳裏に浮かんできたのは疑問だった。
一体誰が、こんな事を。
アマゾンは何者かを追って飛び出して行ったように思えた。もしかして、その相手に?
そう思い当たって、自分の血の気が引くのを感じた。

(まだ近くに、そいつが潜んでいるかもしれない!)

アマゾンの傷の状態から見て、その相手が人間だとは思えなかった。
灰色の巨体で海堂を一捻りにした北崎や、一瞬で相手を焼き殺すあの白い怪物のような奴に違いない。
幾度も感じた命の危険が蘇る。京介は慌てふためいて立ち上がり、砂を蹴ってその場から走り去った。

物言わぬアマゾンの体の上で、二つの腕輪が小さく光っていた。
69顔  ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:15:58 ID:2bw8mJDO
※※※


歌舞鬼は何度目かに見る海岸線に顔をしかめた。
目的地に向かって移動しているつもりでも、不慣れな乗り物の操作に気をとられて周囲の確認は疎かになる。
しかも、歌舞鬼にとって住宅街の建物はどれも似たり寄ったりで、迷ってしまうのも無理はなかった。
どうやらまた、角を何度も曲がるうちに元の道へ逆戻りしてしまったらしい。
溜息をついて足をつくと、バイクに寄りかかる。気付けばそのボディは、随分とすり傷だらけになっていた。

「やれやれ、どーしたモンかねぇ……」

白く光る水平線を眺めながら呟く。
収穫がなかった訳ではない。住宅街の外れに、デイパックが一つ落ちていた。
持ち主らしき人物、あるいはその死体は見当たらなかったので、拝借した。
中身はざっと確認しただけだが、邪魔になるものでもないし、いずれ役に立つ事もあるだろう。

歌舞鬼が気を取り直し、エンジンを掛けようとすると、僅かな叫び声が耳に届いた。
あれからしばらく経っていたが、他の参加者には会っていない。
何よりもその声に妙に心がざわつき、バイクから降りて声のした方向へ向かった。
物陰からそっと様子を伺う。遠目にはしかとは判じかねたが、自分が殺したアマゾンの傍らに人影が見えた。

(……京介)

歌舞鬼が見ていると、京介はしばし呆然とした後、慌てて走って行った。
おそらく恐怖に駆られて逃げ去ったのだろう。
京介の姿が見えなくなると、歌舞鬼はアマゾンの亡骸にゆっくりと歩み寄った。
京介は気付いただろうか、アマゾンを殺したのが自分だと。
そんなはずはないのだが、何となく胸が苦しいような、そんな気持ちがした。
アマゾンの顔を見下ろす。血の気が失せて白っぽくなった頬を、明るい陽の光が照らしている。
激しい苦痛と殺意によって、まさに修羅のような表情を宿していたアマゾン。
自分がこの手で体を貫いた瞬間、それらから開放され、今はこうして穏やかな顔をしている。

子供たちが浮かべる無垢な笑顔。それがこの殺し合いによって失われるなら―――

歌舞鬼は踵を返し、再びバイクに跨ると、顔のない街に消えた。


※※※


(オルフェノク、か)

街を駆けながら、葦原は思案する。
木場が言うには、ヒトが一度死を迎えた後蘇り、異形の力を得たものだと言う。
自分自身の境遇との奇妙な符合にも驚いたが、この殺し合いを仕組んだスマートブレインがそうだという話にも驚いた。
ここで遭遇したアンノウン、未確認生命体四号のみならず、未知の存在が噛んでいる。
その事が一体何を意味するか……細かい事は解らないが、事態は思っていたよりも複雑そうだと葦原は思う。
だが、これで自分の何が変わるという訳でもない。救いを求める者は救い、戦いを望む、危険な者とは戦う。
70顔  ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:18:25 ID:2bw8mJDO
(命を懸けて、必ず倒す……この手で!)

今までもこれからも、それは変わらない。
ハンドルを握る手に力がこもる。ヘルメットのバイザー越しに、前を見据える眼光が一層輝きを増した。

視界の端に葦原が人を捉えるのとほぼ同時に、同乗者が声を漏らした。
川を挟んだ道を、建物の影に隠れるように進んでいる若い男である。
カブトエクステンダーを止め、バイザーを上げて背後の木場を伺うと、険しい表情で男を見つめていた。

「探していた奴か」

察した葦原が尋ねると、木場は小さく頷いた。
聞いた話からすると、あれは桜井侑斗という人物のようだ。
川沿いに植えられた桜の並木に遮られてか、あちらはまだ自分たちに気付いていないらしい。

「どうする。あいつがあんたの思うような答えをくれるとは限らないぞ」

木場の瞳が一瞬揺らいだ。変わった男だ、と葦原は思う。
時に頑固で、驚くほど真っ直ぐなものの見方をするかと思えば、こうして迷いを覗かせる。
無論、葦原は木場の心の揺らぎが、必ずしも悪いものではないと思っている。
それでもこうして確認をするのは、現実が彼らの想像するより残酷な答えを用意しているかもしれないからだ。

「行ってください―――俺はその答えを聞かなければいけない。どんな答えでも」
「……だが、俺はあんたが間違っていると思ったらあんたを止める。忘れるなよ」
「わかっています」

唇を噛んでこちらを見返し、言葉に決意を乗せて木場が言う。
その答えを聞いた葦原は黙ってバイザーを下ろした。


※※※


少し道を戻り、川に掛けられた橋を渡る。
川幅は対岸の人の姿が大体確認できるほどで、そう広くもないため、すぐに追いつく事になった。
排気音に気付いたのか、残り数十メートルという所で青年がこちらを振り返る。

「桜井君!!」

木場が大きな声で青年を呼ぶ。
その途端、青年は脱兎の如く走り出した。葦原はバイクの速度を上げ、必死に逃げる青年を追う。
細い道に入ろうとして角を曲がった時、足がもつれたのか、青年が転倒した。
バイクを止め、退路を断つ形で木場と二人青年を囲む。
ようやく起き上がった青年は、怯えたような目でこちらを見上げている。

「桜井君、俺は……」

木場が何か言いたげに一歩歩み寄る。葦原はただ黙って、二人の様子を眺めていた。

「く、来るな! 何なんだ、あんたたち……どうして皆、俺の事を桜井なんて呼ぶんだ!」

パニック状態の青年が喚く。木場は眉をひそめて、尚も言いつのる。
71創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:19:24 ID:RCR5tZWH
支援
72顔  ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:21:26 ID:2bw8mJDO
「何を言っているんだ、君は桜井侑斗だろう? 俺と一緒にいたはずだ、ショッピングセンターで―――」
「違う! 俺は桜井侑斗なんかじゃない!」

葦原が視線を投げかけると、木場は戸惑いの表情を浮かべたまま見返した。
木場の様子からすれば、確かにこの青年が『桜井侑斗』なのだろう。
だが、本人はそれを否定している。しらを切るにしても、そういった問題ではないような気がする。
木場もそう思ったのか、でも、まさか、などと呟きながら青年の顔を見つめていた。

「そんなはずは……桜井君、信じてくれ! 俺はあの時君を守ろうとして……」
「う、うわあああ!! く、来るなああ!!」

困惑のあまり思わずといった様子で木場がさらに近づくと、恐慌状態に陥った青年が腕を振り回す。
青年がデイパックから何かをつかみ出すのを見て、葦原も前へ進み出る。
その時、何かが割れるような、倒れるような、大きな物音が辺りに響いた。

「―――!?」

音のした方向へ振り返るが、人影はない。ややあって、バイクの走り去る音も聞こえた。
葦原と木場の注意が逸れた隙を突いて、青年が走り出す。
二人が気付いた時には背を向けて入り組んだ路地へ駆け込む所だった。

(このタイミングで物音を立てるって事は……仲間がいたのか)

葦原はカブトエクステンダーに向かって歩き出す。
木場は呆然と立ち尽くしたままだ。拒絶され、ショックを受けただけにしては反応がおかしい。
訝かしむ葦原が声を掛けた。

「おい、どうした」
「葦原さん……あれは―――あのベルトは―――」

『桜井侑斗』らしい青年が取り出したもの。
葦原からはよく見えなかったが、木場には覚えのあるものだったらしい。

「俺が海堂に預けたものです……!」

振り向いて、震える声でそう告げた木場の表情は、月光を浴びたように青ざめている。
これで彼が『桜井侑斗』本人なのか、別人なのかに関わらず、海堂の最後に居合わせた可能性がある事が解った。

「……乗れ。追うぞ」

短く言うと、バイクのスタンドを外し、エンジンを掛けた。
73顔  ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:24:00 ID:2bw8mJDO

【葦原涼@仮面ライダーアギト】
【1日目 日中】
【現在地:G-6 中央部】
[時間軸]:第27話死亡後
[状態]:全身に中程度の負傷、中程度の疲労、腕部に小程度の裂傷、変身の後遺症(やや回復)、仇を討てなかった自分への苛立ち
[装備]:フルフェイスのヘルメット、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト
[道具]:基本支給品×2、ホッパーゼクターのベルト、デルタギア
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いには加担しない。脱出方法を探る。
1:『桜井侑斗』らしき青年を追い、話を聞く。
2:立花を殺した白い怪物(風のエル)、あすかを殺した白いライダー(ファム)未確認生命体4号(クウガ)に怒り。必ず探し出して倒す。
3:立花藤兵衛の最後の言葉どおり、風見の面倒を見る?
4:黒いライダー(カイザ)を探してみる。
5:五代雄介の話を聞き、異なる時間軸から連れて来られた可能性を知る。
6:白い怪物(ダグバ、ジョーカー)を倒す。
7:木場が間違いを犯した場合全力で止める。
8:デルタギアを誰か、はっきりとこの殺し合いに反抗する者に託す。(今の所木場が有力)
【備考】
※五代の話を聞き、時間軸のずれを知りました(あくまで五代の仮説としての認識です)。
※剣崎一真の死、ダグバの存在、ジョーカーの存在などの情報を五代から得ました。
※ホッパーゼクターが涼を認めました。(資格者にはすぐにでも成り得ます)また、デイバックの中に隠れています
※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。
 今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。
※デルタギア装着によるデモンズストレートによる凶暴化などは知りません。(デルタギアの使い方は知っています)


【木場勇治@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:G-6 中央部】
【時間軸】:39話・巧捜索前
【状態】:全身に中程度の打撲。他人への不信感。中程度の疲労、背中等に軽い火傷。30分変身不可(ホースオルフェノク)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×1、Lサイズの写真(香川の発砲シーン)、サイガギア、トンファーエッジ
【思考・状況】
基本行動方針:???
1:『桜井侑斗』らしき青年を追い、話を聞く。
2:香川と侑斗と話し合う。その上で人間の真意を見極める。
3:葦原に憧れに近いものがある。
4:死神博士、ゴルゴス、牙王、風のエル(名前は知らない)、東條を警戒。影山はできれば助けたい。
5:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない。
【備考】
※香川から東條との確執を知り、侑斗から電王世界のおおまかな知識を得ました。(赤カードの影響で東條の情報だけが残っています。)
 また、第一回放送の内容も二人から知りました。
※香川を赤カードの影響で危険人物として認識したままです。
※桐矢が『桜井侑斗』なのかそうでないのか、半信半疑の状態です。
※自分を信じるが、自分さえも信じられなくなったらその時は…?
74創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:27:11 ID:Xr4K2MaN
 
75顔  ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:29:34 ID:2bw8mJDO
【共通事項】
・情報交換により、お互いの境遇・世界の事をおおまかに知りました。
 また、それによってお互いの捜す相手・敵対する相手も共通して認識しています。



※※※


京介が逃げるのを見届けると、歌舞鬼は再び鉄騎を走らせた。
最初は様子を見るだけのつもりだった。
だが、二人の男に詰め寄られ、怯える京介を見ているとたまらない気持ちになった。
そこで思わず、道端のゴミ箱を蹴り飛ばして二人の注意を引きつけたのだった。

怯えきって、瞳を見開き、震えている様子は歌舞鬼の哀れみを誘った。
頬をなぶる風を感じながら、思い出す。
今までにあの顔を何度見てきた事か。
魔化魍に襲われた村で、めちゃくちゃになった家の隅に隠れている子供たち。
自分を置いて、我先にと逃げ出した両親を必死に探す姿。
村の為と言い含められて、生け贄に捧げられるのをただ待つだけの少女―――皆、同じ顔をしていた。

(そんな顔は、もう二度と見たくない)

京介はすぐに見つかった。今までの印象から、体ばっかり育った割にあまり体力があるとは思えない。
思った通り、そう遠くない路地に、息も絶え絶えといった様子で隠れていた。

「よう、京介。災難だったな」

軽い調子で声を掛けると、恐る恐るといった様子で顔を上げた。眉尻が下がって、なんとも頼りない。

「歌舞鬼……さん? もしかしてさっきのは、歌舞鬼さんだったんですか?」
「あぁ、そうだ」

辺りを見回す。まだあの二人組はこちらには来ていないようだ。

「この前は悪かったな、助けてやれなくって。おっかない目に遭わせちまったな……でも、もう大丈夫だからな」

やさしく言うと、京介の体から緊張が抜けるのが見て取れた。歩み寄って、ポンと肩を叩く。
その途端、京介は顔をくしゃくしゃにして、とうとう泣き出した。

「よかった……俺ッ、一人でどうしていいか解らなくて……怖くて……」

涙を零す京介の頭を、歌舞鬼はいつかのように乱暴に撫でてやった。
歌舞鬼の上着を掴む手は震え、泥で汚れてしまっている。

「おう、よしよし。泣くなよ、もうなんにも心配はいらねえ。この俺がいるんだからな」
「で……でも、あいつ等が追ってきたら……そ、それに……アマゾンさんも……」

消え入りそうな声で京介はそう言うと、恐怖を思い出したのかまた震えだした。
無理もない。ここは普通の人間、それも子供が子供らしく生きていくには相応しくない、狂った世界だ。
弱い者から、食い物にされていく。
76創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:32:10 ID:kpUe2HAe
  
77創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:32:34 ID:L0ZM9sZ+

78創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:33:28 ID:kpUe2HAe
     
79顔  ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:33:31 ID:2bw8mJDO
(いや―――どこも同じ、か)

歌舞鬼が元いた世界もそう変わりはない。力を持たぬ人は魔化魍に怯えて暮らし、人の中でも弱い者は虐げられる。
だからこそ、歌舞鬼は戻って戦わなければならない。弱い者のために。

京介は落ち着かない様子で、歌舞鬼に背を向けて路地の外の様子を伺っている。
二人の男に詰め寄られている京介の姿を見た時から決めていた。
もし京介が酷い目に遭わされるようなら、助けよう。
―――そして、この手で楽にしてやろう。
歌舞鬼は自分の顔が、能面を着けたように表情を失っていくのを感じた。

もう後戻りはできない。

京介の背後で、音叉剣が冷たくきらめいた。



【歌舞鬼@劇場版仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:G-6 中央部】
[時間軸]:響鬼との一騎打ちに破れヒトツミに食われた後
[状態]:健康 、バイク搭乗中、一時間変身不可能(インペラー)
[装備]:変身音叉・音角、音撃棒・烈翠
[道具]:基本支給品×4(ペットボトル1本捨て)、不明支給品×1(風のエル・歌舞鬼確認済)、歌舞鬼専用地図
    音撃三角・烈節@響鬼、GK―06ユニコーン@アギト、ルール説明の紙芝居、インペラーのカードデッキ@龍騎、KAWASAKI ZZR250
【思考・状況】
基本行動方針:優勝し、元の世界に戻って魔化魍と闘う。そして最後は……
1:桐矢、三田村がつらい思いをしているならば楽にしてやりたい
2:E−6は人が集まるはず。まずは情報収集
3:北崎はいつか倒す。
【備考】
※カードデッキの使い方は大体覚えました。
※E−6を目指していますが、バイクの運転に不慣れの為目的地までたどり着けない可能性があります。
※G-6エリアに放置されていた基本支給品+不明支給品×1を回収しました。


【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:G-6 中央部】
[時間軸]36話、あきらに声を掛けた帰り
[状態]:走り回った事による中程度の疲労、軽い擦り傷、僅かな人間不信、激しい動揺
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料紛失) ラウズカード(スペードの10、クラブの10) 、ファイズギア
【思考・状況】
基本行動方針:生き残る
1:歌舞鬼に守ってもらう。
2:激しい恐怖(特にダグバ、ゾルダ、ドラゴンオルフェノクに対して)
3:あの二人組が追ってこないか心配。
4:『桜井侑斗』はもしかしたら危険な人物なのかもしれない。
5:誰かにファイズギアの使用法を教え、その人物に保護してもらう。(出来ればヒビキが良い)
6:ヒビキが助けてくれることへの僅かな期待。
【備考】
※自分を助けてくれた男性(水城)の生存の可能性は低いと予想
※食料は移動中に紛失しました。
※ファイズギアの装着者の条件は知りません。
80創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:34:19 ID:kpUe2HAe
 
81創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:34:29 ID:L0ZM9sZ+

82創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:34:39 ID:Xr4K2MaN
 
83顔  ◆yFvLIBbl9I :2009/02/05(木) 00:36:14 ID:2bw8mJDO
投下終了です。支援してくださった方ありがとうございました!
矛盾点等ございましたら指摘宜しくお願いいたします。
84創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 00:42:57 ID:kpUe2HAe
投下乙です。
桐谷と侑斗が似ているのが仇になりましたか。
歌舞鬼の優しさがどう転ぶか……。
葦原さんが実に葦原さんw
GJ!
85創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 01:19:57 ID:E6m2/XtW
投下乙です
歌舞鬼の一種の達観した心理がとても印象に残りました
木場と芦原さんの誤解コンビの運命はどうなることやら……
京介はロワだと本編以上に侑斗との精神面での違いが際立ちますね…w
GJでした
86創る名無しに見る名無し:2009/02/05(木) 17:51:28 ID:01oEKknv
投下乙です〜
歌舞鬼カッコイイよ歌舞鬼!
葦原・木場組とこのまま一戦交えるのかそれとも……
京介はファイズギア所持で木場と遭遇とか運が無さすぎるなあw
文章の方も相変わらず落ち着いた描写が見事です
両繋ぎGJでした
87創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 22:24:03 ID:WlweJQCR
特板で同じようなことしてるみたい

俺達もライダー大戦しようぜ!
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1233744738/
88創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 23:57:32 ID:Cstrq0rH
SSとは違うんじゃないの?
まあ面白そうではあるけど
89創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 11:04:24 ID:GpEVHP5E
保守
90創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 22:52:07 ID:pkNKIIYP
保守
91創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 23:29:11 ID:Iwh3Wqz0
支給品ってなんかいいな。
92創る名無しに見る名無し:2009/02/14(土) 23:47:20 ID:KCEonlji
>>91
スマブレのロゴ入った携帯電話俺も欲しいわ
93創る名無しに見る名無し:2009/02/19(木) 00:03:53 ID:6wqR/LpS
予約きたあああ!!
体に気をつけて頑張ってください!
94創る名無しに見る名無し:2009/02/20(金) 00:04:38 ID:turI7QFm
予約ktkr
がんばってください!
95創る名無しに見る名無し:2009/02/21(土) 09:50:09 ID:ex43cD36
一週間、ネットから離れていたら、予約三昧になっていたww
皆さん、頑張って下さい。
96創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 13:15:25 ID:4XDX9UBL
未だ劇場版剣未見の俺では質問に答える力はなかった…
97創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 16:42:03 ID:xVgGDe4i
ライダー大戦がまんまライダーロワになりつつあることについて
ttp://www40.atwiki.jp/rider-battlefight/pages/35.html
98創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 17:06:54 ID:mqNFpu18
気にするな
99創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 19:46:48 ID:FwlTMLU+
やっぱりパロロワとは違う気がするんだぜ
100R-0109 ◆eVB8arcato :2009/02/22(日) 20:30:35 ID:kHZZXhq3
どうも、初めまして。
「バトルロワイアルパロディ企画スレ交流雑談所(以下交流所)」の方でラジオをしているR-0109と申します。
現在、交流所のほうで「第二回パロロワ企画巡回ラジオツアー」というのをやっていまして。
そこで来る3/1(日)の21:00から、ライダーロワ1stを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?

ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。

交流所を知らない人のために交流所のアドレスも張っておきます。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1229832704/ (したらば)
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html (日程表等)
101創る名無しに見る名無し:2009/02/22(日) 20:44:56 ID:FwlTMLU+
>>100
これは期待
ライダー1stはあんまり詳しく無いけどこれを機に見てきますわw
102創る名無しに見る名無し:2009/02/23(月) 22:59:39 ID:YM28aQP5
>>100
○ロワのが聞けなくて残念だったので、ぜひ聞きたいです!
103創る名無しに見る名無し:2009/02/27(金) 21:01:38 ID:wXu5By5W
ええと、業務連絡です。

◆LjZgviCI4Yさん、予約期限から半日が過ぎています。
延長が必要なのでしたら早急にご連絡ください。
ご連絡をいただけない場合、予約は破棄扱いになりますのでご了承ください。

……明日の朝9時で期限から一日経ちますので、それくらいが目安でしょうか。
104創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 10:48:16 ID:xa5SE14t
◆LjZgviCI4Y氏の予約をwikiから削除しました
また、◆N4mOHcAfck氏も予約破棄とのことなので同じく削除しました
105創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 10:59:47 ID:NXwifUJ3
>>104
wiki編集、毎度乙です
106創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 11:43:51 ID:hDLmyTFM
>>104
乙ー
N4m氏は投下する気がまだありそうだし期待して待ってます!!
107創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 18:50:00 ID:hDLmyTFM
CIP氏復活……だと!?
wktkせざるを得ないw
108創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 23:32:14 ID:xa5SE14t
CIP氏がいれば安泰だね
これが呼び水になってくれるといいんだけど
109 ◆CIPHER0/kY :2009/03/01(日) 20:18:36 ID:FEX7A0SW
それでは投下行きます。
110Storm und Drache ◆CIPHER0/kY :2009/03/01(日) 20:19:22 ID:FEX7A0SW
 イカデビルのマントの裏は鮮血のごとき赤に妖しく輝き、飢えた天使の欲情をかき立てる。狂気に満ちた奇声を上げて舞い降りてくる風のエルの振り下ろす刃を避けると、耳元の大気が異常な気配をはらんで震えた。
 その刃に籠る振動、あるいは得体の知れないエネルギーと言うべきか。これが科学であるならば、この世にはまだ彼も知らない真理があるということだ。
 ーーーーこの、時の摂理が乱れた世界には。
 脅威を冷静に評価しながらも、死神博士は触手をふるって相手の腕に絡めた。踏みしめた足が、コンクリートの破片を微塵に砕く。
 剣を掴んだ腕の自由を奪われ、血に飢えた御使いが必死に抗う。しめた、とおもった次の瞬間、相手は逆にひび割れた地面を蹴ってこちらに突進してきた。
 突き出された剣先を交わした瞬間、わずかに緩んだ拘束を風のエルは見逃さない。弧を描いた空虚の刃がたわんだ触手を切り裂き、傷口から引きちぎられた絆を掴んだまま、二体の怪人は反動で後ずさった。
 風のエルは再びゼクターの力を刃に込める。イカデビルが天を仰いだのは、あるいは嘆きにも見えたかもしれない。だが次の瞬間、天使の見えない翼を打ち据えようと上空から灼熱の塊が降り注ぐ。
 ひと呼吸の後、衝撃に震え上がった辺り一面の窓ガラスが、掠れた悲鳴とともに砕け散った。

          *

 目の前に山をなし、なおも降り積もる瓦礫。護身の前に後ずさった影山の耳を、警報が激しく追い立てる。舞い上がった埃が穴と言う穴からなだれ込み、彼は思わずむせ返った。
 繰り広げられる戦いの激しさに二の足を踏んでいたところ、そのまま足止めを食らってしまったというのが客観的な事実だろう。とはいえ、影山の内心にその『事実』を縦にしたいほどの恐怖心があったのもまた事実だった。
 ザビーに見捨てられた苛立ちは、すぐさま周囲に渦巻く脅威への恐れに変わった。
逃げなければ。生き残らなければ。死にたくないという欲求をまるで下された命令のようにすり替える。
 死神博士はきっとあの化け物を始末してくれるだろう。その後ならきっとザビーが取り戻せる。ザビーが逃げて行ったのは、あの怪物が持つわけのわからない道具に強制的に重用されたからだ。そうに違いない。
 考えてみれば、ザビーを奪われたせいで怪物と戦う力のない自分が側にいた所で、戦える者にとっては足手まといにしかならない。だから自分は身の安全を考えるべきなのだ。それこそが、死神博士のためにもなろう。
 身勝手な感情を都合のいい憶測でつなぎ止め、影山はひたすら廊下の奥へと走った。アルミ作りの安っぽい通用口を体当たりでこじ開けると、打ちっぱなしのコンクリートの帯が隣の建物へと続いているのが目に入る。彼は迷わずその建物に『身を隠した』、つまり逃げ込んだ。
 よそよそしいほどの清潔感のある内装にほっとした瞬間、遠い爆音が壁を震わせる。
 影山は悲鳴を飲み込むと、少しでも安全な場所を求めて辺りを見回した。
 受付とおぼしきカウンターには紙が何枚か散乱したまま、ほこりを被った留守電のランプが虚しく点滅している。どことなくすえた臭いが漂うのは、この場所が放棄されてから時間がたったせいだろうか。
 とりあえず身を隠そうとその先のトイレのドアを明けて脚を踏み入れた青年の足下に、赤茶けた砂粒と何かの影が映る。
 彼はゆっくりと顔をあげ……悲鳴とともに廊下へ飛び出した。

          *
111Storm und Drache ◆CIPHER0/kY :2009/03/01(日) 20:19:54 ID:FEX7A0SW

 一進一退、というところだろうか。
 技で言えばイカデビルが勝っている。一方、風のエルは傷つき疲れているものの、その手に握る刃の切れ味は今だ鋭い。なにより、狂気の淵からわき上がる情動は、一度獲物と見定めたものをおいそれと投げ打ちはしない。
 受け流すのは易いが、仕留めるにはこちらが決め手を欠く。瓦礫の山を築き上げながらも、死神博士は冷静に状況を分析していた。
 獣の顎門を逃れさえすれば十分に勝算はある。ならばいっそ勝機のために、『餌』をくわせてやるか。
 パーフェクトゼクターを引きずってこちらを見据える風のエルを誘導するように、イカデビルはゆっくりと位置を取る。瓦礫の間で足を止めると、視線を落とさぬままに爪先でそれを蹴り付けた。
「いつまで寝ているつもりだ。それでも仮面ライダーか!」
 低く鋭い一喝に、風のエルが煽られたかのように身を弾ませる。
 と同時に足下の瓦礫が僅かにゆらぎ、塵にまみれた人影が身を起こす。
「くっそ、油断したぜ……」
 赤いスーツに身を包んだ戦士が、ゆっくりとその場で膝を立てた。背後の建物に残る硝子が、朱の鱗をまとう聖獣の姿を映し出す。
 死神博士が内心口元を緩めたことに気づいたものはいなかったろう。龍と鳳、存分に噛み合えばいい。所詮役立たずなら、当て馬の労程度は果たしてもらわねば。
 立ち上がり、体勢を整える城戸の傍らで、もう一つの人影が動き出す。こちらは既に変身を解かれ、惨めなほどに塵にまみれている。
 対峙する風の使いと龍のあるじをよそに、風間大介は服の汚れを払った。なすすべもなく傍らで舞うドレイクゼクターをかまいもせずに呟く。
「花を渡る風ともあろうものが、惨めなものですね……」

 それは単なる自虐に過ぎなかった。それ以上にも、それ以下にもなり得なかった。その言葉を発した者からしてみれば。
 だが、言葉とは聞かれて初めて意味を持つ。
 風のエルは、まるで己の名を呼ばれたかのように身を震わせた。感情はおろか本能ですらない、存在の根源に直接触れるその言葉が、瞬時に感覚を麻痺させた。
 そもそも自分が風の力を得ていることなど、人間には知りようがないはずなのだ。それを見通され、あまつさえ己の行いを責められるとは。
 常ならばそのような誤解も抱かなかっただろう。かかる拙い過ちを犯してしまうことそのものが、風のエルが主の御旨を踏み外したことの証明でもあった。むろん、それを当人が理解しているはずもない。
 ただの一言に魂が芯まで凍てついたせいか、ふと辺りの光景が目に入る。
 冷たいほどに白く清潔な壁はすでに隕石がまとった黒煙と亀裂とに穢されている。とはいえ、割れた硝子や開け放たれた扉の隙間から漂ってくる無機質な匂いが、その場所の性質を明確に物語る。
 墜ちた人間たちを滅ぼすことを定めるまで、主が足を止めていた場所。病んだ人間たちが互いの傷を舐め合い、痛みを癒していた場所。
 主がいたはずの場所で、主にしか語れないはずの言葉を聞く。その現実に、エルの意識は混濁した。
 聖と汚れの感覚、畏れと嫌悪の感情。相対するそれらも、文明の初期においては同じ概念であったと言われている。人ならぬ御使いの身に、人間の持つ感情は本来無縁であったろう。それも人の血に汚れ、地に墜ちた天使となればことは違った。
 汚れた人間に対する嫌悪と主に対する恐れ。対立する感情がないまぜになったまま、風のエルは衝動的に預言の主に飛びついた。先を失った腕でその身体を抱え上げると、露を払うかのように一度刃で振り払い、地を蹴る。
 その聖なる鳥を撃ち落とさんばかりに天空から飛来した隕石は、赤紅の龍の身に阻まれた。
「何をしている!」
 飛び去る影に迷いを残して空を舞うドラグレッダーの姿に、死神博士が怒号を浴びせる。
「だって、危ないじゃないか!あんなのが当たったら、大介だって無事じゃ済まない!」
 言い返しながら変身を解く城戸の表情に、死神博士は苛立たしい絶望感を感じる。この男は役立たずなだけではない。足手まといを通り越して邪魔者だ。使い捨ての駒にすらならないとは。
「そんなことより、はやくあれを追いかけなきゃ……影山は?あいつはどこにいったんだ?」
 人間としては真っ当かもしれないが、真司の言動はつくづく死神博士の神経を逆なでする。瓦礫の向うへと小走りに去る小柄な背中を、博士は苛立たしげに追った。

          *   *   *
112Storm und Drache ◆CIPHER0/kY :2009/03/01(日) 20:20:38 ID:FEX7A0SW

 瓦礫と粉塵で廃墟の趣を漂わせる建物の裏、影山は渡り廊下に呆然と立ちすくんでいる。死神と城戸が鼻の先まで近づいて、ようやく彼は顔を上げた。
「なぜ逃げた。ここで何をしている」
 追及の言葉に、影山は掠れ声で呟いた。
「……死体を、発見しました」
 すっかり顔が土気色の影山からは、明らかにすえた臭いが漂ってくる。臭いが染み付くほどの腐乱死体であれば、時間的に他の参加者のものとは考えにくい。
「案内しろ」
「あ、はい……」
 影山は消え入るような声でそう答えたものの、明らかに腰が引けている。
「なんだよ、どうしたんだよ」
 洞察とは無縁なのだろうか、ストレートにいぶかしむ真司に、影山は怒りの視線を投げつけて向きを変えた。歪んだ通用口に歩み寄り、ドアノブに手をかけてまた顔をしかめる。
 覚悟を決めて扉を押し開けると、きしみとともにかすかに死臭が漂ってきた。それと気づいた真司が眉をひそめるが、死神博士は表情一つ買えない。
「こちらです」
 押し殺した声で呟き、影山が二人を廊下へと招き入れる。
 辺りに漂う死臭の他には、さほど異様な気配のないごく普通の病棟だった。進むほどに異臭が強くなり、一層の違和感を醸し出す。
 影山は女性用トイレの開け放されたドアの前で足を止めた。そのまま自分を追い抜いて行く死神博士の様子をちらりと横目で伺っている。
 真司もジャケットの襟で口元を押さえたまま、中を覗き込んだ。と、眠気も疲労もすっかり醒めて息をのむ。
 どす黒い塊が、個室の枠から釣り下がっていた。
 死体の足下には褐色の小さな染みが残り、そこを中心に赤茶けた砂粒のようなものが散らかっている。その一部が動いているのに気づいた瞬間、真司の背筋を冷たい電撃が走った。
 蛆だ。
 ならば足下に散らばっているものはーーーー卵か蛹か、いずれにせよそういう類のものだろう。
 それを理解した途端に彼の胃が疼いた。視線を移すためについ顔を上げて、死体がひからびてできた隙間にぎっしりとつまりっている蠅の蛹と、うごめいていまにも這い出そうとしている白い切れ端を見てしまう。
 真司は顔をしかめ、口元を押さえたまま廊下へと出て行った。げんなりとした顔で呟く。
「ったく、しばらくはゴマシオ掛けたおこわが食えなくなりそうだな」
「想像させるな!本当に食えなくなるだろうが!!」
 半ば裏返った声で真司を怒鳴りつける影山の目が微妙に充血して見えるのは気のせいではないだろう。明瞭な死、それもここまで醜い形に歪められた死を目にして、落ちついていられるほうがおかしい。
 彼は改めて口元をジャケットの襟で覆いながら、中に一人残された死神博士の様子を伺った。
113Storm und Drache ◆CIPHER0/kY :2009/03/01(日) 20:21:21 ID:FEX7A0SW

 奇矯な黒装束の紳士は、表情を変えずに目の前の死体を観察している。
 便器のふたは閉じられ、その上にスリッパが並べられている。便器を足台にしての首つり自殺といったところか。
 手術着とおぼしき、膝上まで薄いローンの布を纏った『それ』の露出している下肢部分は、黒ずんだ筋肉組織の間から白い骨が見え隠れするほどに腐敗し崩落していた。足下の染みはおそらく脚部や内臓が腐敗したときに落ちた体液や組織によるものだ。
 それにひきかえ上半身は黒ずんでこそいるが、ほぼ全体を残したまま縮れている。
 通常、死体のミイラ化にはある程度条件が整っても三ヶ月かそれ以上かかる。
 この死体は換気を大切にするトイレの送風口の下にぶら下がっていたおかげか、風の当たる上半身だけが希代の好条件で『ひもの』にされたのだろう。下半身が腐敗しているのは、そこまで風が通り切らなかったせいだ。
 としても一週間程度でここまで完全なミイラになるとは考えにくい。少なくとも一ヶ月、おそらく二ヶ月かそれ以上経っているに違いない。
 加えて、トイレという場所も気になる。
 病院にとって、衛生管理は最も重要な問題だ。加えて患者・スタッフ・来客、すべてに開放されているトイレと言う場所で患者が自殺などすれば大変な騒ぎになる。スタッフが慌てて片付けるだろう。
 とはいえ迷い込んできた人間が、わざわざここで手術着に着替えて自殺したとは考えにくい。
 もうひとつ、気になるのは死体の左肘の内側に固定された点滴用の針だ。
 数日に渡って点滴がつづけられる場合、針だけはそのまま固定して輸液とチューブだけを交換することがある。とすればあそこで死んでいたのは、この病院で入院治療を受けていた患者と見て間違いない。
 つまりーーーー。
 患者がこの場で自殺したとき、この病院にスタッフはいなかった、ということだ。
 通常の施設閉鎖なら患者は移送される。それが出来ないほどのどさくさにまぎれて自殺者が出たのか、それとも取り残されたのか。いずれにせよ、異常な事態だったことは想像に難くない。
 死神は廊下に戻ると、そそくさと外に逃げ出そうとする影山を呼び止めた。
「他の部屋は調べたか」
「いえ」
「調べてこい」
 冷たく命じられて、影山が一瞬身をちぢ込ませる。躊躇うというよりは怯えるように少しの間その場に立ち尽くしていたが、視線に促されてようやく奥へと歩き出す。
「じゃ、俺も行ってきます」
「お前はここにいろ」
 どうせこいつを偵察に行かせた所で大した訳にも立つまい。その判断から、死神博士はあえて真司を入り口近くに残しておく選択をした。万が一侵入者があれば、身を以て警鐘を鳴らすくらいのことはしてくれるだろう。
 廊下の奥には幾つか処置室が並んでいるが、診察室と書かれた部屋はない。奇妙に思いながらも進むと、広い階段に行き当たった。上の階からかすかに腐臭が漂ってくる。
 廊下の突き当たりをうろちょろしている影山の姿を確かめると、死神は静かに階段を上った。
 二階の廊下は想像以上に殺風景だった。所々開け放たれた部屋はすべて個室で、どこも大仰な医療器具が放置されたままだ。採尿袋に残った液体が茶色く濁るほどになっている様子から、その部屋の住人が退院したわけではないことがわかる。
 閉め切られたままの扉を一つ開けてみると、途端に大量の蠅が飛び出してきた。死神はマントを振ってそれを払い、部屋の奥を見通す。
 ベッドの上に、縮れて虫にたかられた腐乱死体が沈んでいた。虚しく動き続ける人工呼吸器の中にまで蛆が入り込み、空になった点滴の管はまだベッドの中に繋がったままだ。
 死神博士はベッドに歩み寄り、点滴の袋を調べた。
 つり下げられた輸液のバッグの一つには、マジックで鎮痛剤の名前と量が記入されている。それもただの鎮痛剤ではなく、麻薬に分類される代物だ。もう一つは高カロリー輸液のバッグ。これは食事が一切取れない時に栄養補給として使われる。
 食事も自律呼吸もできず、麻薬で痛みを抑えている。明らかに死を待つだけの末期患者だ。ショッカーの技術を駆使すればいざしらず、通常の医術では救いようがなかったのだろう。
 とはいえ、救いようがなかろうがどうであろうが、患者を放置し死なせるような病院があるわけがない。これは熟考すべき点だ。
 博士はまとわりつく蠅を払いつつ、その部屋を後にした。

          *
114Storm und Drache ◆CIPHER0/kY :2009/03/01(日) 20:21:48 ID:FEX7A0SW

 受付の書類を適当にひっくり返す真司を、影山は憎々しげに睨んでいる。お前一人楽をしやがって、とでも思っているのだろうか。だが死神の鳴らす足音に途端に姿勢を正すあたり、よほどの小心者だ。
「あ、博士。ちょっと面白いもん見つけたんすけど」
 真司がカウンターの中から声をかける。死神は仕草で続けるよう促した。
「じゃ、ちょっとこの留守電聞いてくださいね」
 青年がボタンを押すと、電話機から女声のメッセージが流れ出した。
『こちら、よつば療養所の小林です。井上研究室から受けたシュルトケスナー藻の薬理実験の結果が出ております。確認をお願いしたい、と米村先生にお伝えください』
「よつば療養所って、このボードにも貼ってありますけど、温泉のとこにあるみたいです。で、井上研究室ってのがこの大学」
 伝言板に貼られた、色あせた地図を指差しながら真司が説明する。
「いつの伝言だ」
「えっと、この日付けからすると……二ヶ月ぐらい前、かな?」
 簡潔な問いに、真司は携帯の日付けを見比べて答えた。
 計算は合う。死神が深く頷くのを見て、真司が首をかしげた。
「あ、あの、何かわかったのでありましょうか!」
 死神博士はちらりと影山の方を見ると、おもむろに口を開いた。
「おそらくこの病院は、数ヶ月前に放棄されている。それも患者を残したまま、だ。おそらくは、その伝言があった日の前後に放棄されたのだろうよ」
「え、ちょっとそれヤバくないすか?そんなことがあったら、絶対スクープになるからーーーーって、ああああああ!!」
 出し抜けに城戸が大声を上げる。
「オレ、すごいスクープがあるってメールであの会社に呼ばれたんだった……」
 頭を抱えて天を仰ぐその姿に、死神博士は小さく首を振った。
「それにホイホイ引っかかったというわけか」
「馬鹿だな」
 頷いた影山に、真司がムキになってかみつく。
「死体見てちびってたお前に馬鹿言われたくねーよ!」
「ちびってなんかない!」
 低レベルの争いをおっぱじめた二人をよそに、死神は地図を取り出し、改めて場所を確かめた。
 伝言が言及していた二つの施設は、ともに島の東海岸に沿った道路に面している。幸い途中に設定された禁止エリアは一つだけ、それも簡単に迂回できる。
 手がかりを探しに行く価値はあるだろう。そして行くのならば急ぐに越したことはない。死神博士はそう定めると、地図を畳んだ。
「療養所に向かうぞ。ついてこい」
 言い放ち、確認もせずに外へ向かって歩き出す。
「あの、俺のザビーは……」
 言いかける影山を押し退けて、真司は死神の前に立ちはだかった。
「そんなことより、大介はどうするんだよ!化け物に連れて行かれたんだぜ、あのまま放っておくわけにはいかないだろ!?」
「行方に関して、手がかりはあるのか?」
「それは……」
 口ごもる真司を押し退けて、死神は再び歩き始める。
「ああ、そうだ。風間が残した荷物を回収してくるがいい。向うの瓦礫の中だ」
 ぎろりと睨みつけられた影山が慌てて外に飛び出す。
 実際のところ、今風のエルを追う価値はないのだ。こちらとしてはすぐには戦えない。なにより、役立たずに用はない。
 もっとも、その本心を明かす義理はなかったが。

         *   *   *
115Storm und Drache ◆CIPHER0/kY :2009/03/01(日) 20:22:12 ID:FEX7A0SW
【G-4 病院】【日中】
【死神博士@仮面ライダー(初代)】
【時間軸】:一号に勝利後。
【状態】:擦り傷程度の傷多数  イカデビルに2時間変身不能
【装備】:鞭
【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王、ハイパーゼクター
【思考・状況】
基本行動方針:この殺し合いをショッカーの実験場と化す。
1:療養所、大学(研究室)を探索。現状を把握する。
2:集団を結成し、スマートブレインに対抗する。
3:影山や真司のような役立たずはいずれ切り捨てる。
4:首輪を外す方法を研究する。施設の候補は研究所か大学。首輪のサンプルが欲しい。
5:未知のライダーシステムおよびハイパーゼクターの技術を可能な限り把握する。
※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。
※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。
 尚、キック殺しは問題なく使えます。
※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。
※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。
※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。
【考察まとめ】
1.首輪の100%解析は不可だが、解除することは可能。
2.首輪を外せるのは罠で、タイミングが重要。
3.時空を超越して逃げても、追跡される。
4.会場に時の列車はない。あるとしてもスマートブレインの手の中。
5.ガオウから聞いた、デンライナーの持ち主は干渉を避けるために既に死んでいる可能性が高い。
6.ハイパーゼクターはカブトムシ型ゼクターで変身するライダーの強化アイテム。
7. この島では2ヶ月ほど前になんらかの異変が起きた。
116Storm und Drache ◆CIPHER0/kY :2009/03/01(日) 20:22:34 ID:FEX7A0SW
【影山瞬@仮面ライダーカブト】
【時間軸:33話・天道司令官就任後】
【状態】:全身に若干の疲労。背中に軽い裂傷。 ザビーを失った悲しみ。
【装備】:ザビーブレス
【道具】:支給品一式×3、ラウズカード(◆J)、不明支給品0〜2(確認済)、オロナミンC2本(ぬるめ)
【思考・状況】
基本行動方針:とりあえず死神博士についていく
1:ザビーを返してくれよぉ……
※不明支給品は彼に戦力として見なされていません。
※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。

【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
[時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前
[状態]:全身に大ダメージ。本郷、芝浦の死に悲しみ 。龍騎に2時間変身不能。
[装備]:カードデッキ(龍騎)
[道具]:支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
1:仲間を集めて主催者打倒 。そのためにもなんとか風間を取り戻す。
2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…?
3:本郷の分まで戦う。
4:志村の後を追い、長田結花との合流を目指すついでに話を紐解く。
5:手塚に似てるなぁー。
[備考]
※不信感を多少持ちましたが、志村をまだ信用しています。
※名簿に手塚、芝浦、東條、香川の名前がある事から、スマートブレインが死者蘇生の技術を持っていると考えています。
※連続変身出来なかった事に疑問を感じています。
※志村について話していません。
※カブト世界について把握しました。
117Storm und Drache ◆CIPHER0/kY :2009/03/01(日) 20:22:57 ID:FEX7A0SW

 これほど眺めのいい場所は、島中を探してもそうそう見つからないだろう。
 放送局の屋上にしつらえられた電波塔。鉄骨とアンテナとが複雑に入り組んだ建造物の一番高いところに彼は身を置いていた。とはいえ、自分の意志でそうしているわけではない。
 彼、風間大介は、そこに吊るされているのだった。
 下手人ーーーー人ではなかったがーーーーは、すぐ足下で彼を崇めるように見上げている。
「主よ、御身の望む通り、人の子の血を流そう」
 『笑顔』としか言い得ない表情を口元に浮かべて、御使いは彼に告げた。
「我は地の塩を知った。人の子は我が火で塩の味を付けられるだろう。すべて、御身の望む通りに」
 その手に異形の剣を握り、風のエルは大きく礼を施す。
 話が通じる相手ではない、と大介は理解した。この怪物は狂っている。自分を誰かと誤解しているだけではない。その『誰か』の名に於いて、とてつもなく物騒な行動を起こそうとしている。
 彼の身を案じるように、ドレイクゼクターが周囲を舞っている。名にし負う竜であればともかく、華奢なその身では人ひとりを背負ってどうこうすることもかなわない。風の精霊は、ただ翼に怒りをたたえて風の天使を睨み据えるばかりだった。

118創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 20:23:23 ID:BgDEY3o+
 
119創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 20:24:02 ID:BgDEY3o+
  
120Storm und Drache ◇CIPHER0/kY代理投下:2009/03/01(日) 20:31:02 ID:BgDEY3o+
【G-3 放送局・屋上】【日中】
【風のエル@仮面ライダーアギト】
[時間軸]:48話
[状態]:頭部にダメージ。全身に大程度の負傷・行動原理に異常発生。左手首欠損。2時間能力発揮不可。
[装備]:パーフェクトゼクター(+ザビーゼクター)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して帰る。 帰還した暁には、主に未知の力を報告。
1:「仲間」を持つ「強き者」を殺す。容赦する気はない。
2:人を殺すことに、快楽を覚えた。
3:人間の血から、主の人間へ抱く感情の一端を知りたい。
4:パーフェクトゼクター(名前は知らない)を有効活用したい。
[備考]
※デネブの放送、および第一回放送を聞いていません。
※首輪の制限時間に大体の目星を付け始めました。
※ショッピングセンター内に風のエルの左手首が落ちています。
※パーフェクトゼクターの使用法を理解しました。
※パーフェクトゼクターへの各ゼクターの装着よりも、基本的には各ライダーへの変身が優先されます。現在は資格者不在のザビーゼクターのみ装着されています。
※風間をオーヴァロードと勘違いしています。
121Storm und Drache ◇CIPHER0/kY代理投下:2009/03/01(日) 20:31:46 ID:BgDEY3o+
【風間大介@仮面ライダーカブト】
[時間軸]:ゴンと別れた後
[状態]:鼻痛(鼻血は止まっています)。 全身に大ダメージ。鉄塔に宙づり。ドレイクに2時間変身不能。
[装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター
[道具]:なし
【思考・状況】早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
基本行動方針:打倒スマートブレイン
1:目の前の怪人から逃げて、仲間と合流。
2:協力者を集める(女性優先)
3:謎のゼクターについて調べる。
4:あすかの死に怒りと悲しみ。
5:移動車両を探す。
6:影山瞬に気をつける
※変身制限に疑問を持っています。
122創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 20:32:37 ID:BgDEY3o+
以上で投下終了です。ご指摘などよろしくお願いします。

-------------------------------------------------------------

代理投下就労します。
123Storm und Drache ◇CIPHER0/kY の代理投下:2009/03/01(日) 20:33:04 ID:Cw0ylGSn
【G-3 放送局・屋上】【日中】
【風のエル@仮面ライダーアギト】
[時間軸]:48話
[状態]:頭部にダメージ。全身に大程度の負傷・行動原理に異常発生。左手首欠損。2時間能力発揮不可。
[装備]:パーフェクトゼクター(+ザビーゼクター)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して帰る。 帰還した暁には、主に未知の力を報告。
1:「仲間」を持つ「強き者」を殺す。容赦する気はない。
2:人を殺すことに、快楽を覚えた。
3:人間の血から、主の人間へ抱く感情の一端を知りたい。
4:パーフェクトゼクター(名前は知らない)を有効活用したい。
[備考]
※デネブの放送、および第一回放送を聞いていません。
※首輪の制限時間に大体の目星を付け始めました。
※ショッピングセンター内に風のエルの左手首が落ちています。
※パーフェクトゼクターの使用法を理解しました。
※パーフェクトゼクターへの各ゼクターの装着よりも、基本的には各ライダーへの変身が優先されます。現在は資格者不在のザビーゼクターのみ装着されています。
※風間をオーヴァロードと勘違いしています。
124Storm und Drache ◇CIPHER0/kY の代理投下:2009/03/01(日) 20:34:31 ID:Cw0ylGSn
【風間大介@仮面ライダーカブト】
[時間軸]:ゴンと別れた後
[状態]:鼻痛(鼻血は止まっています)。 全身に大ダメージ。鉄塔に宙づり。ドレイクに2時間変身不能。
[装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター
[道具]:なし
【思考・状況】早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
基本行動方針:打倒スマートブレイン
1:目の前の怪人から逃げて、仲間と合流。
2:協力者を集める(女性優先)
3:謎のゼクターについて調べる。
4:あすかの死に怒りと悲しみ。
5:移動車両を探す。
6:影山瞬に気をつける
※変身制限に疑問を持っています。


----
以上で投下終了です。ご指摘などよろしくお願いします。
125創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 20:42:56 ID:BgDEY3o+
投下乙です。
風に反応して大介をエルが誤解するとはw
小林井上米村と、小ネタに思わず反応しました。
二ヶ月前に起きた事件が少しだけ顔を出したのが気になりました。
真司はやっぱり馬鹿でないとw
面白かったです。
126創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 20:48:37 ID:Cw0ylGSn
代理投下被ってしまって本当に申し訳ないです。
リロードしていませんでした。

凄惨な物語の美しいはじまり。その描写に圧倒されました。GJです!
127創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 20:55:18 ID:ok4ic4ro
投下乙です!!
エルの暴走っぷりがおかしいw
脚本家ネタに留まらずまさかのもずく風呂フラグがwwwwwww
そしてまた謎が……何が二ヶ月前に起きたのか気になります。GJ!
128R-0109 ◆eVB8arcato :2009/03/01(日) 21:01:03 ID:UeZ0adf+
http://r-0109.ddo.jp:8000/ (ラジオアドレス)
ttp://cgi33.plala.or.jp/~kroko_ff/mailf/radio.htm (聞き方)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1235908815/ (実況スレ)

です。 よろしくおねがいします。
129創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 21:02:50 ID:l6UJ13F/
投下乙です。
風のエルの勘違い&暴走ぶりと対を成すような、死神博士の冷静な思考。
でも、それを上回る真司のお人よしっぷりが、良かったです。
脚本家ネタと、もずく風呂のサービスにはww
GJでした。
130創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 21:52:38 ID:eeISL5o9
投下乙です!
精緻な描写は元よりそれに描き出される二ヶ月前に起きた事件……。
断片しか見えないだけに否が応にも想像を掻き立てられます。

各キャラに目を向けても戦いを続けるエルと冷静に事態を見極める死神。
どんどん小心さがむき出しになってきている影山とこちらも今後が楽しみな状況w
131創る名無しに見る名無し:2009/03/01(日) 21:56:19 ID:KskfQiUB
投下乙でした。
大介涙目すぎるでしょこれは……w
もずく風呂出るのかなあ、橘さん生きてるしw
提示された謎が明らかになるのが今から楽しみです!!

それと、一つ気になる点を
>伝言が言及していた二つの施設は、ともに島の東海岸に沿った道路
地図の上を北としてみれば温泉と大学は西じゃないですかね?
今までの話だとマップの下=南だった気がするんで
132 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 00:17:20 ID:42ES2m8T
東條悟、北崎、三田村晴彦、投下します。
133 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 00:18:29 ID:42ES2m8T
包丁を研ぎ終えた東條悟は、微笑みながら放送を聞いていた。

「さすが、先生だ…ちゃんと死なずに居てくれてる」
東條にとって放送で呼ばれた人数などさほど興味はない。
あるのは唯一、香川英行の名前。
師事した彼の命を奪うことが、英雄への道の通過点なのだ。

「…さてと、今度こそ会えると嬉しいなぁ、ねぇ先生?」
包丁を仕舞い込んで大型のバイクに跨った東條は、誰に問いかけるでもなく呟く。
そうして、大きく排気音を鳴り響かせながら大型バイク凱火は走り出した。

   *   *   *
134 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 00:19:07 ID:42ES2m8T
「あれ?海堂のやつ死んじゃった」
放送で告げられた先刻戦った男の名前を聞いても北崎はあっけらかんと応えていた。
そんな北崎に、恐怖の表情を見せないようにする三田村があった。

(本郷猛が死んだ!?)
確かに海堂の死にも驚いたが、それ以上に本郷の名が呼ばれたことに驚いた。
ショッカーを裏切った2体の改造人間、ホッパー1号とホッパー2号。そのホッパー1号こと本郷猛が死んだというのだ。スパイダー、バットを葬り、自らをも死の直前まで追いやった男。
そこまでの強さを持つ男が命を落とすこの戦い。自分が生き残ることなどの皆無なのかもしれない。
更に北崎に目を付けられているから尚更だ。

「ねぇ、もしかして、あのカブキってやつがやったのかな?」
「そんな、カブキさんがそんなことするはず…」
海堂を連れ去ったカブキ。もちろん救出のためだと思っている。
それにアマゾンと京介と一緒に面倒まで見てくれた彼が、海堂を殺すわけがない。
「ふーん、僕の言うことが違ってるって言うんだ?」
「え…?」
三田村のカブキを庇護する言葉を聞いた北崎は、つまらなさそうな顔をして対面に立った。
北崎の覇気を潜めた瞳に三田村の足が一歩後退してしまう。

「僕の言うこと違うかな?」
更に強めて言う北崎は三田村の肩に手を置いた。
瞬間、肩から砂が散り始め衣服とディパックの持ち手を削った。
「…ッ!?…うわ!わわああッ!!」
何が起きたかわからない三田村は慌てて北崎の手を振り払った。
同時に肩部の一部は削られ、デイパックも地面に落としてしまった。

「ねぇ、僕の言ってること正しいよね?」
「あ、あぁ…!」
不気味な笑顔の奥に悪魔の顔を隠した北崎に気づいた三田村は急いで首を縦に振った。
変身もしていないのに、奇妙な能力まで使える北崎。まだまだ未知の部分が多すぎる男、敵に回してはいけない。味方でいてくれる内に打開策を考えなければならない。
すると落としたディパックを拾い上げて、そのまま肩に背負った北崎。それを見ながら三田村は息を呑んで心を落ち着かせた。

「僕がこれを持ってあげる代わりに、君にこれからの行き先を決めさせてあげるよ」
「…え?行き先?」
別に持ってくれと頼んだわけでもない。それに落としたのは北崎のせいだ。
それでも逆らうわけにはいかない。
「そう、できれば新しい玩具や仮面ライダーのいるとこがいいな」
「そんなの知ってるわけ…」
逆らうわけにはいかない。死にたくなかったら…。

「わ…わかった、こっちだ…行こう」
「よろしくね、三田村君」
三田村は笑って声を掛ける北崎に恐る恐る頷くしかなかった。もちろん北崎の言うような場所を知っているわけもない。だが、NOと言えば命がないかもしれない。だから賭けるしかない、これから向かう先に北崎の言う玩具。または、仮面ライダーがいることを…。

そうして不安と恐怖に満ちた精神状態の三田村を先頭に2人は足を進めた。

      *   *   *
135創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 00:20:55 ID:BAtFM1VW
  
136 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 00:21:11 ID:42ES2m8T
しばらく歩いた三田村と北崎は、交差点へとたどり着いた。
二車線の道路が四方から交じり合う場所。周りにはちらほらと建物が立ち並んでいる。
それでももう少し先に見える市街地に比べれば少ないはある。隠れながら逃げようと思えば逃げられるだろうか。
(上手くやれば…なんとか…)

「ねぇ、三田村君」
しかし、そんな淡い希望の思いをかき消すように北崎が話しかけてきた。
「な、なんだ?」
心を読まれたのかとひやりとしながらも応える三田村。

「君さ、あの紫のになれる?」
「紫の…あぁ、コブラのこと…」
ショッカーによって与えられた新たな体。改造人間コブラ。仮面とスーツによって人間には到底及ばない力を発揮できる。しかしそれも、この戦いのルールなのか思うようには扱えない。

「…いや、無理なんだ、何か制限みたいなのがあるようで」
「ふーん、僕もさ、オルフェノクになれないんだ。まぁそれくらいハンデが有ったほうがおもしろいけどね」
三田村は『オルフェノク』という単語に疑問を持つ。
自分と同じく姿を変われないとするなら、おそらく同時間に変身していた灰色の怪人のことだろう。
つまり今は、あの『オルフェノク』には変われない。あるのは砂に化す能力だけ。
だったら逃げる隙もどこかに…。

「だからさ、このベルトしか玩具がないんだよ」
すると言いながら北崎は銀のベルトと黒の携帯電話を取り出して呟いた。
瞬間、三田村は即座に考えを改めた。甘かった。まだ戦う術を持っていたのだ。当然といえば当然である。
見れば海堂の持っていたベルトとも似ている。おそらくは同型のもの。
それこそ彼の求める玩具、そして仮面ライダーへと変身させる道具なのだろう。
海堂の変身していた…ファイズだったか…あれのような力を集めることが北崎の目的。
それが深い意味があってやることなのか。それともただ単に戦いを楽しむために集めるのか。
先程の「おもしろい」という言葉と、これまで行動から後者だと判断する。

(やっぱり…逃げられないのか…)
遊ぶようにベルトと携帯電話を持つ北崎に、心中で溜息を付く三田村だった。
と、その時…。

「ねぇ、誰か来たみたい」
北崎が交差点の向こうを見ながら呟いた。その声に即座に反応して視線を同じにする三田村。
すると、交差点の向こうの道から排気音を鳴らしながら1台のバイクがやってきた。

やがてバイクは2人の前で止まり、運転手の青年の瞳が怪しく睨み付けた。

 *   *    *
137創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 00:21:49 ID:BAtFM1VW
  
138 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 00:23:16 ID:42ES2m8T
東條悟は、特別どこへ行こうと決めていたわけではない。
ある程度の力を持ったものを間引き、英雄になるための「相手」を探していたに過ぎない。
とりあえずは道なりに進んでいった先で、2人組の男達と出くわしたのだ。
「誰か来たみたい」
すると睨み付けていた男のうちの一人の声が聞こえた。
緩くパーマのかかった黒い髪の青年、いや雰囲気だけなら少年と言っても可笑しくない。
そう、一度戦ったことのある男。灰色の怪人と黒い戦士に身を変えた男。

「また君かぁ…まあ、いいけど飽きさせないでよ?」
それを見て、驚くどころか笑みを零す北崎。三田村は敵の出現と北崎の反応に二重に驚いている。
「三田村君、やるね。仮面ライダーのいるとこまで来れたじゃない」
「あ…あぁ、まぁな…」
咄嗟に応えるも空返事にしかならない。目の前の男が仮面ライダーかは知らないが、どうやら北崎が言うにはそうらしい、しかも一度会ってもいるようだ。ならば結果的には賭けに勝ったとも言えよう。
しかし次なる危機が目前に迫っていた。

「遊びで戦うなんてさ…英雄のやることじゃないんだよ」
バイクに跨ったまま2人へと告げた東條は灰色のデッキをサイドミラーにかざした。
瞬間、銀色のベルトが腰部に巻かれる。
「変身」
少しだけ笑みを含んで、戦士へと変わる言葉を発した東條に幾重にも鎧が重なる。
そして犀を模した戦士、仮面ライダーガイへと変身を遂げた。

変身に驚く三田村が、瞬きした瞬間、大きな排気音が響いた。
ガイがバイクのアクセルを全開にして2人へと突進してきたからである。
139 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 00:24:41 ID:42ES2m8T
「…ッ!?」
全速力で轢き殺しにかかってきたバイクを、即座に横っ飛びで回避した三田村。北崎はほんの少し動いただけで回避を済ませてしまう。
2人の間を通ると一気にブレーキを掛けて停車するガイは、路面にタイヤの跡を残しながら振り向いて2人を睨んだ。すると同時に契約モンスターであるメタルゲラスがバイクの車体越しに吼えているのが見えた。

「そのサイ…見るだけでイライラするよ」
微かに映るメタルゲラスを睨みつけて北崎は、ベルトを巻きながら黒い携帯電話、オーガフォンを開く。
手早く0、0、0、と変身コードを入力し一旦オーガフォンを閉じる。

-Standing by-

「変身」
僅かに怒りを見せて呟くと、オーガフォンをベルトへセットする。

-Complete-

ベルトから金色のフォンブラットが駆け巡り、黒き王者へと姿を変えさせる。
そうして仮面ライダーオーガへと変身を遂げた北崎は、赤き単眼を光らせ改めてガイを睨んだ。

「三田村君、先に遊ばせてもらうね」
「え…あ…あぁ」
オーガから溢れる不気味な殺気を感じた三田村は頷くだけだった。
だが同時に「先に」という言葉に疑問を感じた。「先に」とは、後に自分の番があるということだろうか…。
バイクの男と遊べというのか、それとも北崎と…?
考えただけでも気分が悪くなった。

すると、困惑する三田村を置いてオーガはガイ目掛けて駆け出した。
同時に再びアクセルを全開にしてバイクの向きをオーガに向けるガイ。
排気音を轟かせ前輪を浮かした大型バイク凱火が、オーガを押しつぶすように襲い掛かった。
140創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 00:25:22 ID:BAtFM1VW
   
141 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 00:26:57 ID:42ES2m8T
瞬間、凱火の前輪がオーガを踏み潰した。
――かのように見えた。

ウィリーの形でオーガに迫った凱火はその身を停止させていた。否、正確にはオーガによって動きを止められていた。上から迫った前輪を片手で受け止めたオーガは、ハンドルを握るガイに視線を合わせた。
瞬間、アクセルを吹かすガイだが高速で回転する前輪はオーガの手との摩擦で、黒い削りカスを飛ばすだけであった。

「タイヤが無くなっちゃうよ」
そう呟いたオーガは片手に力を込めると回転する前輪を無理やり止め、凱火を少し持ち上げて横方向へと振り投げた。
「…ちっ!」
宙を浮く凱火から咄嗟にジャンプして自身への被害を無くすガイ。
主人を無くした凱火は火花を散らしながら路面を滑り、サイドミラー一本を失って停止した。

難なく着地に成功したガイは急いでオーガに視線を向けると、そこには既に冥界剣とも呼ばれるオーガストランザーを構えたオーガがいた。
それを見たガイは素早くデッキからカードを引き左肩のバイザーへとセットする。

-STRIKE VENT-

電子音が響き、ガイの右手に角型の剣メタルホーンが装備される。
と、同時にオーガストランザーがガイ目掛けて振り下ろされた。

強烈な金属音を響かせて2つの剣がぶつかり合う。

「あんまり好きじゃないけど、それ…僕に頂戴」
「…神崎にでも…言ってよね」
鍔迫り合いの中で言葉を交わす2人。
しかしそれは、片方の剣が吹き飛ぶ合図でもあった。

吹き飛んだ剣、メタルホーンは弧を描いて三田村の足元に突き刺さった。
「ひっ…!」
完全に油断していて気の抜けた声が出てしまった三田村。
あわよくば2人が戦っている隙に逃げ出そうと考えていた矢先だったからである。
突き刺さったメタルホーンが、まるで自分の考えを見透かした北崎の警告にも思えた。
142 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 00:28:00 ID:42ES2m8T
そんな三田村には見向きもせず2人は戦いを続ける。剣を失ったガイは瞬時にバックステップで後退しオーガとの距離をとる。すると同時にオーガの手がベルトに装着された携帯電話に伸びるのが見えた。
その瞬間、ガイは前のオーガとの戦いを思い出す。
今から取るであろう行動は見たことがある。携帯電話のキーを入力することによってアクションを起こす。
ひとつは変身。そしてひとつは…あの剣が巨大に伸びること。
あの時はゾルダがその餌食になっていたが…。
(…それだったら)
考えをまとめたガイはデッキへと手を伸ばし一枚のカードを引き抜いた。
手にしたのは『コンファインベント』、敵による効果を打ち消す力を持ったカード。
これによって前の戦いでもオーガの剣をかき消したのだった。
(…このカードで)
だが、ガイが確認に一瞬カードへ視線を移した…その時だった。

――Burst――

初耳の電子音と共に光弾がコンファインベンのカードを貫いていった。

「なっ!?」
驚くガイの手からカードが燃え尽きていく。
そんなガイを嘲笑しながらオーガフォンをバーストモードに構えたオーガがいた。
「なんだ、ファイズのと一緒かぁ」
呟くオーガは手早くオーガフォンを元に戻すとミッションメモリーを引き抜き、再びオーガストランザーを
構えた。

―Redy―

オーガの次なる動作に気づいてガイは急いでデッキへ手を伸ばす。

――Exceed Charge――

聞き覚えのある電子音が聞こえる中、ファイナルベントのカードを引く。
だが、同時にオーガストランザーはその輝く刀身を伸ばし、ガイへと迫った。

「…間に…合え!」
左肩のバイザーへカードを入れて、後はバイザーを降ろすだけ。
しかしその、降ろすだけの一手が決まらなかった。
刹那、巨大な黄金の剣がガイを挟み込み、空高く押し上げる。
「ぐ…あぁああ!」
挟み込まれて身動きの取れないガイが声を上げる。
だがオーガは、それを待っていたかのように笑うと、そのまま勢いよく剣を振り下ろした。
同じく挟まれたガイも剣と動きを同化させられ、容赦なくコンクリートの路面へと叩きつけられた。
143 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 00:30:08 ID:42ES2m8T
「…ぐっ…が…は」
衝撃によって変身が解けた東條。背中から落ちたせいか、深刻なダメージとは言わないが強烈な痛みが全身を襲った。だがそれ以上に、精神的なダメージがあった。落ちた衝撃によってガイのデッキが吹き飛んだのである。そしてその吹き飛んだ先が、敵の足元であったことである。

「なぁんだ、もう終わりか」
ガイのデッキを拾い上げて呟くオーガは、徐に変身と解除した。
変身を解いた理由に特別な意味はない。ただ単に相手の姿を見て興が削がれた、それだけである。

(やっぱり…楽しんでるだけだ)
そんな北崎を見つめて三田村は思う。
相手の変身が解けると同時に目の前に突き刺さっていた剣が消えた。敵の力の効力が切れたことを表しているのだろう。今ならとどめを差そうと思えば充分にできるのにやろうとしない。
あの男を自分と同じように友達だとか言って連れ回す気だろうか…。

すると、あれこれと思考する三田村の前で新たな動きがあった。
「まだ…終わってないよ」
北崎を睨みながら呟く東條は、新たなデッキを取り出した。
そして近くに転がっていた凱火の折れたサイドミラーを反対の手で拾い上げた。

「あぁ、そっか…もう一個持ってるんだったね」
それを見ても驚きもしない北崎は、手に持ったガイのデッキを軽く振ってみせる。
すると、少しだけ考えを巡らせたのか手を止めた。
「そうだった…三田村君」
突然、三田村の名を呼んだ北崎はガイのデッキを投げ渡した。

「「!!」」
それを見て東條と三田村が驚く。
当然である、両者とも北崎がガイに変身して戦うと思っていたからである。

「それで遊ばせてあげるよ、僕は優しいからさ」
咄嗟にでもうまくキャッチした三田村を怪しく睨む北崎。
そんな視線の意味を理解しながら三田村はガイのデッキを握り締めた。
144 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 00:31:06 ID:42ES2m8T
「…どっちでもいいよ…君たちはどうせ、僕が英雄になるための糧なんだ」
ガイのデッキを持つ三田村に視線を変えながら、破片のサイドミラーにデッキを映す東條。
瞬間、銀色のデッキが東條の腰部に現れる。
するとそれに気づいてか、三田村も倒れた凱火に駆け寄ってサイドミラーにデッキを映す。
同時に東條と同じく銀色のデッキが腰部に出現したのを確かめる。

「「変身!」」
2つの声が響き、2人の戦士を出現させた。

鋭き爪を持った白虎の戦士――仮面ライダータイガ。
全てを貫く角を持った灰犀の戦士――仮面ライダーガイ。

北崎を挟み込むように、2人の仮面ライダーが対峙した。

「頑張ってよ三田村君、使い方わかるでしょ?」
オーガドライバーをディパックに詰めながら言う北崎。
それに無言で頷いたガイは、力強く大地を蹴ってタイガ目掛けて駆け出した。

   *   *   *
145 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 01:44:05 ID:42ES2m8T
2人の仮面ライダーが睨みあい間合いを取りながら駆け抜ける。先程の交差点から少し離れ、既に北崎からは姿を見えない場所にいる。小さな一軒家や小屋などが疎らに立ち並ぶ中でようやく足を止めた。

そうして視線をぶつけあう中で両者は同時に動いた。

―STRIKEVENT―
―STRIKEVENT―

同じ電子音声が響き、両者に武器が与えられる。
タイガには両手に鋭い爪が。ガイには先程、北崎に弾かれた剣が。

それぞれに与えられた武器を構えて攻撃の機を伺う。

そうして仮面の下に覗かせた瞳に敵を映すと、両者同時に地を蹴った。
先に振り下ろされたメタルホーンを左手のデストクローで防御するタイガ。金属音と火花を散らして体に振動を感じながら余った右手の爪でガイを引き裂く。
しかし、身を捻って回避したガイによって爪は空を切るだけに終わる。すると捻った体を一度回転させたガイは、メタルホーンに遠心力を加えて再び振り下ろした。
それに瞬時に反応したタイガ、今度は両手のデストクローを盾にして防御に成功した。
再度散る火花と金属音。だが今度はそれにガイの声が続いた。

「待て!話を聞け!俺は……味方だ!」

その不可解な言葉に、メタルホーンを払いのけて間合いを取るタイガ。
「…どういう意味かな?」
「味方」だと言って近づいて不意打ちを狙うなど幼稚な手だ。
自分に適わないと悟って言い出したことか…いずれにせよ鵜呑みにはできない。

「お前もわかっただろ!あの北崎ってやつは化け物だ!」
ガイの言葉に先程の男の事を思い出すと、少しだけ黙って耳を傾けるタイガ。
「お前一人で戦ったって勝てやしない!」
北崎の恐ろしさを知っているからのガイの言葉は重みを背負っている。

「…それで、一緒にあいつを倒そうっての?君、あいつの味方なんじゃないの」
「…今だけだ」
タイガの問いに渋って声を出すガイ。
「ふーん…それで、2人であいつを倒そうっての?」
「そうだ!今のあいつは戦う力が無い!さっきの黒い奴にもオルフェノクってのにも制限でなれない!」

そう、これこそがガイ…三田村の考えだった。
ガイのデッキを渡されたとき、瞬時に脳裏を駆け巡った考え。
今、北崎が変身できないのなら倒せるかもしれない。それだけが何度も心に囁いた。
実際北崎には制限によって戦う術は無い、あるのは触れるだけ砂化させる能力だけ。
それだけに気をつければ負けることは無い。確実に勝てる。それもこの男と協力できればなお確実だ。
だからこそ北崎には会話が聞こえぬ位置まで戦いの場を移した。それもすぐに実行に移せるように遠からず近からずにあって死角になる場所だ。
「頼む!力を貸してくれ!今しかないんだ!」
これは奇跡に近い千差一隅のチャンスなのだ。これを逃せば北崎を倒す機会は無くなる。
そう考えても可笑しくない、それほどまでに北崎は強敵である。
逆らえずただ玩具のように振り回されるのは御免だ。ここで逃れてみせる。

146 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 01:44:30 ID:42ES2m8T
「ふぅん…」
必死な声のガイにタイガは少しだけ思考を巡らせる。
おそらくは本当のことを言っているのだろう、必死さからもそれが伺える。
あの男を倒すことに否定はしないが罠の可能性も捨てきれない。
「……いいよ、手を貸してあげるよ」
「ほ、本当か!?」
冷ややかな声の賛成に驚いてしまったガイ。
「本当さ、やるなら急ごうよ。僕たちの変身も長く持たないしさ」
「あ、ああ…そうだな!よし、こっちだ!」
変身時間のことまで気にかけるタイガの言葉に協力の確信を持ったガイは、北崎打倒の心を燃やして敵の居場所へ駆け出した。

だが、それを後ろから追いかけるタイガは仮面の下で怪しく微笑む。
北崎を倒せれば、また一歩英雄に近づける。そして幾ら好機とはいえ簡単に敵であった者の協力を信じるとは愚かである。そんなことでは英雄には程遠い。
所詮この男も英雄にはなれない、自分が英雄になるための踏み台なのである。

(あいつを倒したら…次は君だよ)
先を走るガイを見ながらタイガは仮面に隠れた瞳を鈍く光らせた。

*  *  *
147 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 01:45:14 ID:42ES2m8T
正直、すんなりと賛成してくれるとは思っていなかった。
唐突であり、罠と疑ってくるかと思っていた。いや…罠と疑いながら協力してくれているのか。
どちらでもいい、罠ではないのだから疑いもすぐに晴れるだろう。
先程の交差点を目指し駆けるガイは、後ろを走るタイガに気をかけながらも北崎を探す。

(…ッ!いない…!?)
だが、そこまで急ぎ足で来ていた2人の足がピタリと止まった。
そこにいるはずの北崎の姿が見えないのである。
まさか自分らを置いて去っていってしまったのだろうか、しかしこれまで一緒に行動してきてそのような行動を取るとは思えない。もしかして自分の作戦に気づいてたのだろうか…。焦って辺りを見回すガイ。するとそこへ聞き覚えのある声が聞こえた。

「やぁ、三田村君」
少し離れた小屋の裏から聞こえた倒すべき男の声。北崎は小さく笑いながらガイとタイガを見つめた。
「北崎!そこにいたのか!」
思いがけない所から登場した北崎に驚きながらも、ガイは平静を装って言葉を告げる。

「なんで戻ってきたの?もしかしてそいつも僕の友達になってくれるとか?」
「…あ、あぁ、そうなんだ」
咄嗟に付いた嘘。これが通れば不意打ちも可能である。
なんにせよここで逃げられては元も子もない。絶対に今倒すしかないのだ。

「なぁ、北崎…」
だがガイの言葉はそこで遮られた。
「嘘はいけないなぁ三田村君…2人して僕を倒しに来たんでしょ?」
北崎の微笑んだ口元が少しだけ釣りあがった。

「な…っ!?」
瞬間、ガイに衝撃が走った。作戦が筒抜けである。
何故北崎はこの事を知っているのか?自分ひとりで考え、伝えたのも後ろの男だけ。
それもつい先程、北崎のいた位置からは到底聞こえるはずもない。
ガイの中を疑問が駆け巡る。

148 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 01:46:50 ID:42ES2m8T
「ごめんね、僕、人より少し耳がいいんだ…”人”よりね」
不気味に微笑む北崎。それを見たガイは仮面の下で表情が強張ってしまう。

「…別に構わないよね、どうせ倒すんだから」
すると動揺を隠せないガイを押しのけるようにタイガが前へ出て言う。
奴に気づかれていようと関係ない、ここで仕留めることには変わりはない。
同時に、デッキからカードを引こうとするタイガ。
と、そこへ再び北崎の声が聞こえた。

「悪いけど、僕もやられたくないからさ…」
そう言いながら2つ持ったディパックの1つから何かを取り出す。
「遊ばせてもらうよ」
瞬間、取り出した何かを小屋の窓ガラスに翳した。
同時に北崎の腰部に銀色のベルトが巻かれる。

「「…ッ!?」」
その光景に目を疑うガイとタイガ。

「変身!」
北崎は掛け声と共に手に持った何か…カードデッキをベルトにセットする。
それに合わせて幾重にも戦士の影が重なり、新たなる姿を北崎に与える。

そこに現れたのは蟹を模した、金色の戦士…仮面ライダーシザース。

深く強烈な遊び心と覇気に満ちたシザースを前にして息を呑むガイ。
タイガも驚きをしたが、すぐにでも落ち着きを取り戻した。

「こんな…はずじゃ…」
北崎の新たなる変身に混乱が続くガイ。
奴は戦う術を持っていなかったはず、それなのに何故…。
作戦も見透かされ、戦う力まで隠し持っていた、何もかも北崎にわかっていたということだろうか。
小屋の裏から出てきたのはこの力を探していたのか。どこかで見つけてディパックにしまったとでも言うのだろうか。やはり逆らうべきではなかったのか。

「しっかりしてよね…君が言い出したことなんだから」
するとそんなガイを見かねてかタイガが声を掛けた。
「こっちは2人なんだよ?それに…僕がいるんだ、負けるわけないよ」
そう意気込むと同時にカードをバイザーにセットするタイガ。

149 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 01:47:43 ID:42ES2m8T
ADVENT

電子音が響くと同時にシザースのすぐ横に立つ小屋の窓ガラスから白虎のモンスター、デストワイルダーが襲い掛かった。鋭い爪を伸ばしてシザースを刈り取ろうとする白虎。しかし、それを見切ったかのように縦に跳躍し回避に成功するシザース。
そのまま攻撃を空振りしたデストワイルダーを脇目に、小屋の屋根に立って2人を見下ろすシザースは、デッキからカードを一枚引くと素早くカードの絵柄と文字から効果を理解して左手のバイザーへセットする。

STRIKEVENT

瞬間、シザースの右手に鋏型の剣シザースピンチが装着される。
そして左手のシザースバイザーと右手のシザースピンチの二刃を構えてタイガへと飛び掛った。

「ふん」
屋根上からシザースピンチを振るいながら迫ってきたシザースを一歩下がるだけで避けるタイガ。
目標を失ったシザースピンチはコンクリートの地面を砕き散らす。
だがシザースはそのまま次の攻撃を仕掛けると、左手にあるシザースバイザーの刃をタイガへと振るう。
空を切る音を鳴らしながら迫る刃は、タイガの胸部プレートに火花を散らしながら斜め上に走りきった。

「チィ…ィ…ッ!」
ダメージを意に介さずシザースを睨み返すタイガ。
反撃のためにデストワイルダーを呼ぶにも距離がある、ここは新たなカードを引くべきと考えてデッキへと手を伸ばす。そうしてカードを引こうとした、その時。

STRIKEVENT

シザースの背後から新たな電子音が響くと同時にメタルホーンを装備したガイがシザースへと迫った。

「うぉおおお!!」
声を上げて迫るガイにとって、これが最後のチャンスかもしれない。
ここで倒さねば未来はない…必死であった。

だがそんな声にも動じないシザースは背を向けたままで素早く行動を起こした。
右手のシザースピンチを、カードを引こうとしていたタイガの腕へ目掛けて投げると、綺麗に直撃させる。
「…ッ!」
腕を痛めたタイガの驚愕を見ずして、次のカードをバイザーへセットするシザース。

GARDEVENT

電子音と共に左手のシザースピンチの上からシェルディフェンスという名の盾が装備される。
それを備えて振り返りながらガイの攻撃へと盾を合わせた。

ガキン!と強烈な金属音が響き、シザーズには微笑みと、ガイには動揺を与えた。
150 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 01:49:47 ID:42ES2m8T
火花を散らせて睨む2人だが心境には雲泥の差が生じていた。
ガイは攻撃が防がれたことにより更なる焦りが心を包んでいた。
絶対に倒さねばならない、こうなった以上は逃げることもできない…急がなくては変身時間にも制限がある。メタルホーンへと込める力が増していく。

と、その時シェルディフェンスがほんの少し身を引いた。
「え?な…!」
焦った気持ちによって力込めすぎたため突然の引きに耐えられず前のめりになってしまう。
それを狙ったシザースは体勢を崩したガイの顔面へと強烈な右ストレートをお見舞いした。
「があ…ッ…ぁ!!」
ほぼカウンター気味に入った拳はガイの仮面の半分を砕き、その身をコンクリートの地面へ転がせた。

「あきらめなよ三田村君」
顔を抑えながらも立ち上がるガイを見て囁くシザース。もはやガイは眼中にない、敵はタイガ1人。
だがそれも自分より先に変身しているのだ、変身が解けるのは2人が先である。…勝利は確実である。
しかしそう考えるシザースの背後からタイガの声が聞こえた。
「君さ、余裕見せすぎなんだよ」
そう言いながらシザースを羽交い絞めにするタイガ。
「気持ち悪いなぁ、離してよ」
「あぁ君が死んだらね」
まるで動じないシザースへ返すタイガの視線は、新たにカードを引くガイへと向いていた。
それに気づいてシザースも再びガイへと視線を戻す。
羽交い絞めにあっているシザースは身動きを取れない。いや抵抗の意思を見せないようにも思える。まるでガイの次の攻撃を待ちわびるような感じである。
「どうにかして楽しませてよ、三田村君?」
シザースの興味はガイの持つカードに向いていた。

これが本当に最後のチャンスである。これを逃せば次はない。
「これで、終わりだ北崎!」
割れた仮面の奥から瞳を光らせて叫ぶと、ガイはファイナルベントのカードをセットする――。

――はずだった。
「…!?ぐっ…が…は…ッ」
突然、ガイの全身を衝動が襲い、仮面の上から血を吐き出した。あまりの衝動に持っていたカードも地に落とし膝を突いてしまうガイ。
(な…んだ…これ………)
彼を襲ったのは拒絶反応――リジェクションと呼ばれるものだった。
三田村晴彦、いや、改造人間コブラだからこそ起きた事態。定期的な血液交換を必要とする機械の身体、コブラが最後に血液交換を行ったのはいつなのか、それは彼自身しかわからない。
だが今の三田村には、この衝動が血液交換の怠りから来るものとは知る由もない。彼にとっては初めての衝動、当然、理科不能である。

「…?なにやって…」
そんな光景を目の当たりにして驚くタイガ。だが、その瞬間をシザースは見逃さなかった。
わずかに力が緩んだタイガの腕を払いのけると同時にシェルディフェンスを装備したままの左手でタイガの顎を殴りぬけた。
「…ッ」
顎から伝わる衝撃が脳を揺らしてタイガの意識を一瞬奪う。
それを見ながらタイガの首へと片手を伸ばして掴み掛かるシザース。そうするとそのまま力任せにタイガを投げ飛ばした。

「!?」
ガイがそれに気づいた時にはもう遅かった。投げ飛ばされたタイガが一直線に自分へと迫ってきていたからだった。驚きを声に出す暇もなくリジェクションの反動が残る体にタイガを受け止め、地面を転がるガイ。

151 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 01:52:14 ID:42ES2m8T
FINALVENT

次の瞬間、先ほど自分が使おうとしていたカードの名が電子音によって告げられた。
ガイの目に映るのは止めを差そうと金色の蟹を出現させたシザース。
意識がおぼつかないタイガと、ボロボロのガイ。そんな2人へとシザースは真っ直ぐに狙いを定めた。
シザースは仮面の下で僅かに微笑んでボルキャンサーのレシーブを受けて勢いよく跳躍する。
そうして身を丸めて高速で回転するとそのまま2人へと突撃した。

(駄目だ…もう、終わりだ…)
ガイの心中は絶望に染められていた。やはり適わない、倒せやしない。始めから逆らうことなどできなかったのだ。
眼前にまで迫ったシザースアタックに、もはや勝機を失っていた。
そして、今まさに2人に直撃せんとした、その時…。

デストワイルダーが2人の前に盾となって塞がった。
刹那、シザースアタックは両手を交差させて防御する白虎と激突する。
デストワイルダーが塞がったのはタイガの僅かながらに送った指示であった。
意識をおぼつかせながらも窮地にあって契約モンスターに指示を与えたタイガ。
だがしかし、それも寸分遅かったのかデストワイルダーの防御は不十分でありシザースアタックの前に敗れ去ると、その身を大きく吹き飛ばした。
当然のその背後にいた2人はデストワイルダーごと地面を転がった。

「あーぁ、もう少しだったのになぁ」
倒れた凱火の前に着地を決めたシザースは2人と1匹が吹き飛んだ場所を睨んで言う。
もちろん楽しみを邪魔されて気分を害しただけの言葉。それ以上の意味はない。
そんな無邪気な殺意を先へと送ると、そこにいたのは変身を解除された三田村と東條であった。

「う…うぅ…」
声を出せているのは三田村だけ、東條は今の衝撃で完全に気を失ってしまった。
デストワイルダーの防御が無ければ死んでいたであろう、気絶で済んだのは幸運である。それにタイガのデッキも少々ヒビが入っているが健在である。
だが自分の、ガイのデッキはそういかなかった。衝撃によって粉々に砕け散りその役目を終えてしまった。

「あーあ、壊れちゃった…ま、いいか。それ、あんまり好きじゃなかったし」
壊れたガイのデッキを見て呟くシザースは、身を起こそうとする三田村を見やる。

「…ねぇ三田村君、このデッキがどこから出てきたか教えてあげようか?」
「…え?」
2人を見下したように言うシザースの突然の問いに三田村は脳を回転させる。
152 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 01:53:36 ID:42ES2m8T
確かに北崎は黒い戦士へしか変身できないと言っていた。
それも先程の戦いで変身したため制限で使えないのはわかる。ということは更にデッキを隠し持っていたということだろうか…。
こうなることまで予想して、デッキのことだけ伏せたのか、だがそれならベルトの方も伏せのが普通である。

「これね、君の荷物から出てきたんだよ」
「…!?」
瞬間、三田村は声を失った。北崎が「持ってやる」と言って預けたディパック、その中に入っていたというのだ。
(そんな…荷物は確認し…)
三田村は心の声をそこで止めた。自信がなかった。本当に確かめたのか…一度でもディパックの隅々まで確認したのか。こうなってしまっては記憶はあやふやである。
確かめたと思いたいところだが、そうではないという答えが強く浮かぶ。そして次に思ったのは北崎の行動である。
もし、あの『荷物を持ってやる』という行動が、ここまでを計算したものだったとしたら…。

「さぁ、どうするの三田村君?そのデッキで仮面ライダーとなって、もう一回僕と戦う?」
絶望の表情を見せる三田村にシザースは落ちたタイガのデッキを指差して言う。
その言葉に息を荒くして震えた手をデッキへと近づける三田村。

(こう…なったら…)
もはや完全に勝機はない。今更許しを請うても無駄であろう。仮にこれで変身したとして勝てるわけでもない。
変身時間ならあちらが先に解除されるが、まだ何かを隠しているかもしれない。
自分のディッパックへの記憶のあいまいさがそれを更に際立てる。

すると傷ついた体をゆっくりと起こした三田村は、タイガのデッキを掴むと東條の荷物からはみ出た包丁の刀身にかざした。
「へ、変身…」
現れた銀のベルトにひびの入ったデッキをセットし、白虎の戦士、仮面ライダータイガへと変身した。

「そうこなくっちゃね」
微笑を仮面に隠したシザースは新たなタイガへと睨みを強めた。新たな遊び、新たな玩具である。楽しまなければ意味がない。
だが、そんなシザースの期待を知っているはずのタイガが取った行動は…。

瞬時に倒れた東條を担ぎ上げその場から逃げ出した。
なりふり構わず全速力で逃げるタイガは、交差点を離れすぐ傍の雑木林の中へと走り去って行ってしまった。

153 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 01:56:24 ID:42ES2m8T
「…ちぇ」
それを目撃したシザースは肩を落として舌打ちをした。新たな遊びが始まると思っていたのが裏切られたからだ。
またしても逃亡という結果。まるでファイズのベルトを持って逃げ出した京介のようだった。
「あーぁ、また一人か」
タイガの足音がオルフェノクの聴力を持ってしても聞き取れなくなったのを確認して変身を解いた北崎。
三田村のような者をもう一人増やそうとも考えていたが、その三田村に逃げられてしまった。
追いかけても良かったが気分を削がれたことが上まって、溜息をつくだけに終わってしまった。

「ま、いいか、新しい玩具が増えたからね」
だが、すぐに気持ちを切り替える北崎。
手に黄金のデッキを持ちながら、倒れた凱火を見つめると小さく笑う。
「やっぱり仮面ライダーっていうぐらいなら、何か乗り物に乗ってなきゃ」
デッキをしまって凱火を起こすとゆっくりと跨って息を付く。

三田村とあの男の会話が聞こえた時点では戦う術がないためこの場を去ろうとしたが、ただなんとなく三田村のディパックを探って見つけたカードデッキによって行動を変えた。おかげで遊びを味わえたし新たな玩具も手に入れた。

あの時はカードデッキを見つけただけで満足していたが、まだディパックの中身全部を確認したわけではない。もしかしたらまだ新しい玩具が眠っているかもしれない。

「さてと、次はどこにいるのかな、仮面ライダー」
そう呟きながらアクセルを回し、生き返ったような排気音を聞きながら北崎は凱火を走らせた…。

【北崎@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:日中】
【現在地:G-5交差点】
[時間軸]:不明。少なくとも死亡後では無い。
[状態]:全身に疲労。頭部、腹部、両腕にダメージ。背部に痛み。ドラゴンオルフェノクに一時間変身不可、オーガ、シザースに二時間変身不可。
[装備]: オーガギア  シザースのデッキ
[道具]:凱火(サイドミラー片方破損) ディパック(三田村、本支給品×1)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しんだ上での優勝。
1:三田村のような人間をまた探して手下にするのも面白いかも。
2:五代雄介、「仮面ライダー」なる者に興味。
3:桜井侑斗、香川英行とはまた闘いたい。
4:ゾル大佐、橘朔也と会ったら今度はきっちり決着をつけ、揺ぎ無い勝利を手にする。
5:「仮面ライダー」への変身ツールを集めたい。
6:木場勇治はどうせだから自分で倒したい。歌舞鬼はいつか倒す。
7:海堂はカブキが殺したと考えているが、あまり興味はない。
※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。
※桐矢京介を桜井侑斗と同一人物かどうかほんの少し疑問。
※どこへ向かうかは次の書き手さんにお任せします。
154 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 01:57:54 ID:42ES2m8T
【三田村晴彦@仮面ライダー THE FIRST】
【F-5 上部  川沿いの雑木林】【日中】
[時間軸]:原作での死亡直前から
[状態]:全身に中度の疲労、全身に強い痛み、不可解な衝動(リジェクション)への疑問、北崎に対する強い恐怖 、一時間コブラへ変身不可能 、二時間タイガへ変身不能
[装備]:特殊マスク、鞭
[道具]:なし
【思考・状況】
基本行動方針:彼女を救いたい。
1:望みを叶える為にも、バトルロワイヤルに生き残るしかない。
2:生き残るためには北崎から限りなく離れる。
3:東條の目覚めを待ってから行動する。
4:いざとなれば迷わない……はず。
5;桐矢、海堂に僅かな罪悪感。
【備考】
※変身制限がある事を把握しました(正確な時間等は不明)
※リジェクションの間隔は次の書き手さんに任せます。(現状は頻繁ではない)


【F-5 上部  川沿いの雑木林】【日中】
【東條悟@仮面ライダー龍騎】
[時間軸]:44話終了後
[状態]:中程度のダメージ。気絶中。タイガに2時間変身不能。
[装備]:カードデッキ(タイガ)、田所包丁@仮面ライダーカブト[道具]:基本支給品×2、サバイブ烈火@仮面ライダー龍騎、首輪(芝浦、金居)
[思考・状況]
基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる
1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』
2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい
3:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い。積極的に外す 。
4:木場(名前は知らない)に自分が英雄であることを知らしめる為、自らの手で闘って殺す。
5:可能なら包丁で殺害する。
備考
※東條はまだ芝浦の特殊支給品(サバイブ烈火)を確認していません


※メタルゲラスが野生化しました。(行動方針はお任せします)
155創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 02:51:05 ID:s1aTlxLS
投下乙
蟹が普通に活躍してるwやっぱ中の人次第か
で誤字です
―Redy― →Ready
GARDEVENT →GUARDVENT
初耳の電子音と共に光弾がコンファインベンのカードを貫いていった。
                ↑コンファインベント
あと電子音の表記を、――で挟むのかどうか統一した方がいいかと
156創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 05:58:29 ID:6EFKGu1J
三田村はタイガに変身して逃げたのに何故デッキが東條の元にあるのでしょうか?
157創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 06:00:45 ID:6EFKGu1J
あぁ、わざわざ返したのか…すいません気付かなくて
158 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 07:09:51 ID:42ES2m8T
「はぁ…はぁ…ッ!」
力の限りを尽くして雑木林を駆けていくタイガ。助かりたいが為だけに動いている。
戦って勝てる相手ではないのはよくわかった、ならば逃げるしかない。だが逃げ切るれるかはわからない。
奴なら追いついてきても可笑しくない、後ろに奴がいるかと考えると怖くて振り向きもできなかった。
こちらは男一人を抱えているのだから多少速度は落ちるが、追いつかれるわけにはいかない。
そう必死に駆けるタイガだったが、そこへ変身時間の終わりが訪れた。

「う、わ!わ…!?」
勢いの付いた体を倒さぬように必死に急ブレーキをかける。と、同時に四方八方に目線を配り気配を探る。
奴が…北崎がいないか、それだけが気になった。それが生死の分かれ目なのだ。
(…よかった…いない…みたいだ)
敵の気配が無いことに溜息を付いて落ち着きを取り戻すと、担いだ男を降ろした。
なぜ、この男を連れてきたのか…。
ショッカーの改造人間としては、あのままこの男を放置しようと関係はない。
だが三田村晴彦としては、北崎を倒そうと持ちかけといてあの失態、それによってこの男が北崎の玩具にされるのはなんだか気が滅入る。北崎の性格からしてすぐに命を奪うような真似をしないでも、共に行動するとなれば地獄のなにものでもない。
それを自分の変わり身としてこの男を置いてきたとなれば、自分の気持ちがいたたまれなくなってしまう。

そうすると三田村は目の覚めぬ男を見ながら先程の不可思議な事態を思い出す。
男が北崎を羽交い絞めにした時のことだ。あのとき止めの攻撃が成功していれば、勝敗は逆転していたはず。しかしそうはいかなかった。
あの時襲った謎の衝動、今はもう治まっているが感覚はまだ残っている。
いったいあれはなんだったのか…機械の詰まった身体が悲鳴を上げているような…。

自分の身に起こった事態を把握できぬままの三田村は、間もなく目覚めそうな男をただ眺めて様子を伺うだけであった…。

159 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 07:10:46 ID:42ES2m8T
【三田村晴彦@仮面ライダー THE FIRST】
【F-5 上部  川沿いの雑木林】【日中】
[時間軸]:原作での死亡直前から
[状態]:全身に中度の疲労、全身に強い痛み、不可解な衝動(リジェクション)への疑問、北崎に対する強い恐怖 、一時間コブラへ変身不可能 、二時間タイガへ変身不能
[装備]:特殊マスク、鞭  カードデッキ(タイガ、ひび有り)
[道具]:なし
【思考・状況】
基本行動方針:彼女を救いたい。
1:望みを叶える為にも、バトルロワイヤルに生き残るしかない。
2:生き残るためには北崎から限りなく離れる。
3:東條の目覚めを待ってから行動する。
4:いざとなれば迷わない……はず。
5;桐矢、海堂に僅かな罪悪感。
【備考】
※変身制限がある事を把握しました(正確な時間等は不明)
※リジェクションの間隔は次の書き手さんに任せます。(現状は頻繁ではない)


【F-5 上部  川沿いの雑木林】【日中】
【東條悟@仮面ライダー龍騎】
[時間軸]:44話終了後
[状態]:中程度のダメージ。気絶中。タイガに2時間変身不能。
[装備]:田所包丁@仮面ライダーカブト[道具]:基本支給品×2、サバイブ烈火@仮面ライダー龍騎、首輪(芝浦、金居)
[思考・状況]
基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる
1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』
2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい
3:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い。積極的に外す 。
4:木場(名前は知らない)に自分が英雄であることを知らしめる為、自らの手で闘って殺す。
5:可能なら包丁で殺害する。
備考
※東條はまだ芝浦の特殊支給品(サバイブ烈火)を確認していません


※メタルゲラスが野生化しました。(行動方針はお任せします)
160 ◆Z9EUSuuwiU :2009/03/02(月) 07:12:44 ID:42ES2m8T
以上投下終了です。
最後部分おかしなことになってすみませんでした。>>154の三田村と東條の状態表は忘れてください。
あとタイトルは「金色の戦士」です。他、矛盾点などあったらお願いします。
161創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 11:27:15 ID:2m0zeB8T
投下乙です!まさかの蟹デッキ大活躍w
三田村が東條を助けた事で『大切な人』フラグが立っちゃうんじゃないかと心配w
バトル描写も楽しめました!GJ!
162創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 13:30:52 ID:Tir0R3ro
投下乙です。
東條助けた三田村。後悔しなければいいですがね……。
GJでした。
163創る名無しに見る名無し:2009/03/02(月) 18:42:59 ID:3zoG/6wI
投下乙です!!
三田村に恐怖の死亡フラグが……
しかもテレビで数年ぶりに蟹が復活したこのタイミングでの北崎蟹wしかも強いwww
メタルゲラスは本編同様再契約が待っているのかそれとも…想像を掻き立てられます。
GJでした!!
164 ◆CIPHER0/kY :2009/03/02(月) 18:53:19 ID:BBIJTybM
投下乙です。
危険マーダーの不気味な動き満載、楽しませて頂きました。
あとウエンツ、お前いろんな意味で死亡フラグ立ってんぞ!

っと、方角については>>131さんのご指摘の通りです。
テンパってたので右も左もわからなくなってました。
後ほどwiki収録時に修正しておきます。

さらにはどーでもいいことにタイトルまでスペルミスしてました。
正しくは「Sturm und Drache」です、はい。
165 ◆WBRXcNtpf. :2009/03/03(火) 11:45:21 ID:9JURBtPR
牙王 ゴ・ガドル・バ ン・ダグバ・ゼバを投下します。
166激突! 二人の王 ◆WBRXcNtpf. :2009/03/03(火) 11:46:24 ID:9JURBtPR
「どうした、もっと喰い甲斐のあるところを見せろ」
「へぇ、凄いじゃない。その調子で楽しませてよ……」
二人のライダーは静かに言葉を掛け合う。その声の大きさとは裏腹に両者の刀は何度もぶつかり合い、激しい火花が散っていた。
「…リントにしてはなかなかやるじゃない」
マッハによる奇襲を防がれてもグレイブは余裕の姿勢を崩さない。力強く斬り込んで来るガオウの太刀筋を見極めて丁寧にラウザーで受け止めていく。
「そういうお前は評判ほどじゃねえみたいだな…」
一方、ガオウもただ受け流されるような男ではない。一回一回の切り込みの威力を比較すればグレイブラウザーとガオウガッシャーでは明らかにガオウに有利な展開だ。貧相なラウザーの刃でガオウの大剣を捌き続けるのは難い。徐々にガオウがグレイブを押していくのは明らかだ。
『SLASH』
「グッ…」
これまで軽く受け止められたラウザーの威力が急に上がり、ガオウは完全に不意をつかれた。
ガオウの思考を読んだかの如く、グレイブは新たなカードを読み込んだのだ。―Slash Lizard―、ラウザーの切れ味や威力を倍増させるカードだ。
「どう? ちょっとは楽しめそうかな?」
「…上等だ」
ガオウは勢いよくラウザーを弾くとそのままグレイブを袈裟懸けに斬りつける。
「お前は俺が喰ってやるよ…ダグバ!」
「いいね君…僕も楽しくなってきたよ…」
167激突! 二人の王 ◆WBRXcNtpf. :2009/03/03(火) 11:47:06 ID:9JURBtPR
二人の激しい戦いをガドルは遠巻きに眺めていた。ガオウの力は自ら経験済みであり、その程はよく理解している。そこから察するに今ダグバが纏っているリントの鎧は自分と同等もしくはそれ以上の力であろう。
「だが…ダグバの真の力には及ばない…」
何故ダグバは自分の力を使わないのか。制限がかかっているのか、それとも…
「…そろそろ喰ってやるよ」
変身制限が近いことを予期したガオウはマスターパスを手に取る。
「ええと…これだったかな…?」
そんなガオウをよそにグレイブは何枚ものカードの中からある1枚を選び出す。
『ABSORB』
ラウザーに表示される数字が上昇し、再び最大値へと戻っていく。
「そうそう…カード使うと減っちゃうんだよね…この数字」
「遊んでる暇があるのか?」
『Full Charge』
ガオウの最大の攻撃を予期したグレイブは3枚のカードを取り出す。
―『KICK』、『THUNDER』、『MACH』―
――『Lightning Sonic』――
「ふふふ…ライダーキック…」
勢いよく飛び上がったグレイブは青い稲妻が宿った右足をガオウへと向ける。
「ライダーキックねえ…見飽きたんだよ、その技はよ!」
ガオウはこの島に来てから既に2号のライダーキックやギャレンのバーニングディバイドをその身で実感していた。力勝負は嫌いじゃないが既に見切った技を何も馬鹿正直に迎え撃つことはない。
ガオウガッシャーに宿った光の刃は宙を舞い、グレイブへと向かっていく。
「ハッ!」
ガオウは腕を振るうと同時にその体を回転させて立ち位置を大きく横へ移動する。それに合わせて光の刃も旋回し、グレイブの背後へと回り込んでいく。
「くたばれ!」
光の刃、タイラントクラッシュはグレイブのライダーキックを後押しするかのように無防備な背中に命中し、タイラントクラッシュの威力によって加速されたライダーキックは横へ回避をし終えたガオウには当たることなく、その威力のままにグレイブを道路に叩きつけた。
168激突! 二人の王 ◆WBRXcNtpf. :2009/03/03(火) 11:47:39 ID:9JURBtPR
「…どうだ…ダグバ?」
削れ飛んだアスファルトの煙の中から姿を現した白衣の青年にガオウは語りかける。
「いいよ君…響鬼っていう鬼のリントといい、楽しい戦士が多いじゃない…」
ダグバが歩み寄ると同時に制限によって変身が解除された牙王にダグバはバックルを投げ渡す。
「それ使っていいよ。もっと戦おうよ…君ならもう少し楽しめそうだ…」
「それはどうもご丁寧に…」
牙王はダグバの意図を探った。このタイミングでわざわざこちらに変身アイテムを渡す余裕。これはダグバの自信の表れだろう。つまりは死力を尽くした自分の戦いが奴にとっては遊びに過ぎないという絶対的な余裕。
「ますます喰らい甲斐がありそうじゃねえか…なあ、ダグバ!」
牙王は懐に忍ばせていたカードデッキをダグバに投げ渡す。
「お前もそれを使え…貸し借りがあるのは好きじゃない」
「これは赤や黒のリントの戦士になるときに使ってた道具かな? …いいよ。もっと僕を笑顔にしてよ…」
『OPEN UP』
「変身!」
「ふふ…変身…」
―グレイブVSオルタナティブ・ゼロ―
牙王とダグバの第2ラウンドが幕を開けた。
じっくりと刀を競り合った第1ラウンドと異なり、今度はいきなり両者がカードに手を伸ばす。
『SLASH』、『MACH』
『SWORD VENT』、『ACCELE VENT』
電子音声が鳴ると同時に両者ともに超高速で動き始めた。そのスピードのためか第1ラウンドよりもさらに激しく刀がぶつかり合う。
「何だかんだ言って短期決戦が希望なんだ?」
「…腹が減ってな。早く喰らいたくて我慢できないんだよ…」
ガオウの言葉は半分正しく、半分嘘だった。強き者を少しでも早く喰らいたいという欲求も確かにあったがそれ以上に肉体への負担が大きくなってきているのを感じたのだ。
ギャレンに負わされた怪我にこれまでの連戦を考えれば当然の結果といえるだろう。
「さっさと決めさせてもらうぞ…」
「もっと楽しみたかったんだけど…仕方ないね」
『FINAL VENT』
―『KICK』、『THUNDER』―
――『Lightning Blast』――
「ねえ、教えてよ…君の名前を」
「俺は全てを喰らう王…牙王だ!」
バイクとキックの激突の末に残っていたのは………
169激突! 二人の王 ◆WBRXcNtpf. :2009/03/03(火) 11:48:10 ID:9JURBtPR
「さて、ガドル…君はどうするの?」
横たわる牙王のそばに立ったダグバはこれまでの戦いを見ていたガドルに話しかけた。
「ダグバ…私は今そこに横たわっている男に一度敗れた。今の私ではあなたには勝てない…」
「そう…つまらないね」
ダグバは辺りに散らばるカードを拾い集めるとガドルに背を向けて歩き始めた。
「だが!」
ガドルは去り行くダグバに大声で話し続ける。
「…私は私のゲゲルを行う! この島にいる強きリントの戦士を…クウガを含め全ての戦士を倒して見せる! そうしたらあなたとのザギバスゲゲルだ!」
「…待ってるよ。ガドル」
ダグバは小さな声で呟くように返事をしながら去っていった。
「…さて、こちらも行くか」
ダグバの姿が完全に見えなくなった頃、ガドルは牙王を担いで歩き始めた。
「私も貸し借りは好きじゃない…」
以前見逃してもらった礼を込め、ガドルは歩いた。今はひとまずの休息が必要だ。
「保養所とやらの風呂は壊してしまったが…確かあの近くに別の建物もあったはず。休息をとるには十分だろう」

ダグバは一人喜びを感じながら北へ向かって歩いていた。
「クウガに響鬼、そして牙王か…リントの戦士もなかなかおもしろいね…ガドルも楽しみだし」
しかし、強き戦士との戦いへの喜びに胸を躍らせる一方で僅かな怒りも育ちつつあった。
「確か…カードはもう1枚あったはずなんだけどな? 志村…」
あのカードがあればさっきの戦いももっと楽しめたかもしれない。自分の楽しみを奪った者に対する怒りも徐々に大きくなり始めていた。
「とりあえず…工場にでも行ってみようかな。リントの道具もおもしろそうだしね…」
170激突! 二人の王 ◆WBRXcNtpf. :2009/03/03(火) 11:51:00 ID:9JURBtPR
【D-4 交差点】
【1日目 日中】
【牙王@仮面ライダー電王】
【時間軸】:最終決戦前。
【状態】:全身打撲、疲労大、あばら3本骨折、腹部に重度のダメージ、1時間20分変身不可(オルタナティブゼロ)、2時間変身不可(ガオウ、グレイブ) 気絶中
【装備】:ガオウベルト
【道具】:マスターパス、基本支給品一式×2、ランダム支給品1?(牙王、ゾル大佐分。共に未確認)、
     コンビニから持ってきた大量の飲食料(中量消 費)
【思考・状況】
基本行動方針:全て喰らい尽くした上で優勝
1:ダグバを喰らう。ガドルはしばらく連れまわす。
2:最終的に全参加者を食う。
3:人が集まりそうな施設を適当に目指す。
4:機会があれば煩わしい首輪を外す。
5:ガオウライナーを取り戻して村上も喰う。
6:餌(人質)が確保できたら放送局を利用して死にたがりな獲物を誘き寄せるか?
備考
※会場のどこかに時の列車(予想ではガオウライナー)が隠されていると推測しています。
※木場の生存には未だ気づいていません
※ゾル大佐のデイパックを偶然奪いました。
【ドラグブラッカーについて】
※デッキが破壊された事によりドラグブラッカーとの契約が無くなりました。
※ドラグブラッカーはイブキを捕食した為、ある程度傷が回復、空腹状態は脱しました。
※牙王に対して非情に強い恨みを抱えています。
※E-4民家でミラーワールドに戻って以降の消息は不明です。
※今後の行動はリレーしてくださる書き手さんにお任せします。
171激突! 二人の王 ◆WBRXcNtpf. :2009/03/03(火) 11:51:39 ID:9JURBtPR
【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後
[状態]:全身打撲、疲労大、右目と左腕に違和感、右足部装甲破損、
     40分変身不可(オルタナティブ・ゼロ)、1時間20分変身不可(怪人体)
[装備]:首輪探知携帯
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:強き者と戦い、強くなる。
1:リントの戦士を倒す。
2:再びあの二人と戦う。
3:桜井侑斗と決着をつける。
4:戦闘を繰り返し、強くなる。
5:最終的にダグバを倒す。
6:クウガの異変に僅かの恐怖。何れ再戦する
7:とりあえず保養所か診療所で休息する
備考
※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。
※左腕は超常現象が起きたのか何故か治りました。右足の装甲が直らないのは、謎です
※保養所内の浴場が大破しました、使おうと思えばもしかしたら使えるかもしれません

【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:47話、クウガアメイジングマイティに勝利後。
[状態]:脇腹に刺し傷、胸部に蹴りによるダメージ、右肩に清めの音によるダメージ、全身に軽度のダメージ、2時間変身不可(グレイブ、オルタナティブゼロ)
[装備]:グレイブバックル
[道具]:基本支給品×3 ラウズカード(スペードA〜9、ハートQ)、サバイブ『疾風』 オルタナティブゼロのデッキ
【思考・状況】
基本行動方針:究極の闇を齎す。
1: 究極の闇を齎す。
2:強くなったクウガ、龍騎、響鬼、ライア(サソード)、牙王、ガドルと再戦 。
3:『仮面ライダー』と思われる一文字隼人、風見志郎、城戸真司と戦う。
4: 自分に楯突いた志村には容赦しない。
5:リントの道具の力に興味。
※自身の戦闘能力に制限がかかっていることを何となく把握。
※志村が人間でない事を知りました。
※ハートのKが無くなっている事に気付き、志村が奪ったと思っています。
※リントの道具に興味を持ち、工場に向かいました。
172激突! 二人の王 ◆WBRXcNtpf. :2009/03/03(火) 11:55:54 ID:9JURBtPR
以上で投下を終わりにします。
173創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 14:43:28 ID:/Jkl7LFf
投下乙です。
牙王もダグバの前には霞むなあw
ダグバが向かう工場でも何やら一波乱待っていそうな予感・・・
GJでした。

ここで一つ指摘させてください。
それと合わせてまず先に、◆N4mOHcAfck氏へ。
「Fatality-Cross」でガドルが使用していたバイクが、状態表に記載されていないようです。
◆WBRXcNtpf.氏。上記の問題が原因かも知れませんが、
今回の投下作でバイクについて一切触れられていません。
上記の記述漏れがあったとはいえ、◆N4氏の作中ではガドルによるバイク使用が明言されています。
リレー上矛盾するので、バイクの記述について修正をお願いします。
174 ◆WBRXcNtpf. :2009/03/03(火) 15:22:20 ID:9JURBtPR
>>173
すいません。
バイク(YAMAHAのT MAX)が使用されていましたね。
ガドルがオルタナティブに変身してから退いたのでホイールベント使用と勘違いしていました。
該当箇所を修正しだい一時投下スレに投下しておきます。
175 ◆N4mOHcAfck :2009/03/03(火) 15:59:53 ID:Q/u77GZN
>>173
対応しました
ご迷惑をおかけして申し訳ない。

>>174
ガドルがオルタナティブを使用したのは温泉へバイクを回収に行った時で、
戦闘から離脱した際にデッキを使用していたのは牙王の方です。
分かり難かったですかね……
176 ◆WBRXcNtpf. :2009/03/03(火) 16:03:39 ID:9JURBtPR
>>175
いや、こちらが正しく読んでいなかったためのミスです。
そちらにもご迷惑をおかけしてしまいすいません。以後は同じようなミスのないように気をつけたいと思います。
177創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 17:51:43 ID:CMVd+JUu
投下乙です。
ダグバの圧倒的存在感と何とか生き延びつつもリベンジを誓うガドルが面白かったです。
ガオウに借りを返すため、とはいえこの二人は似た物同士w
GJ
178創る名無しに見る名無し:2009/03/03(火) 23:44:07 ID:MpJuwZMr
投下乙です。

んー、ダグバとガドルのキャラがちょっと不自然なような。
しかし強者のバトルは燃えますね。
179クロスファイア:2009/03/06(金) 15:51:09 ID:wR4dHesX
 身動きの取れない身で彼は空を見上げた。
 太陽は今まさにその煌めきを遺憾なく発揮し、目に痛いほど。
 太陽……違う言い方をするなら、天。天上という遥か高みにあり、人の営みを見守るもの。
 この地で散った天道総司を思い起こした。あの傲岸不遜な男なら、自らが置かれたこの窮地をも振り払えるのだろうか?
 とりとめもない思考を遮ることもできず、空に向けていた視線を眼下へと下ろす。
 彼――風間大介をこの放送局の屋上へと連れ去り、鉄塔へと吊るした怪人――風のエル。
 その容貌に似合わず人の言葉を喋る風のエルは、先程から何やら慇懃な口調で祈りめいたことを口走っていた。
 行為に及ぶ前の儀式のようなものか。何にしろ今風間を殺すつもりはないようだが、それにしても安心できるというものではない。。
 放送局の屋上という、見晴らしの良いポイント。誰かいないものかと辺りを見回すも、そうそう幸運の女神は微笑んではくれなかった。
 おそらく、逸れた城戸や影山、死神博士の救援はないだろう。
 お人好しと一目でわかる城戸はともかく、合理的この上ない性格の死神博士やここぞという時に保身に走る影山は風間を切り捨てるはずだ。
 城戸にしても、空を行くこの化け物を追跡してくることは難しいはずだ。
 助けがないのならば自力で脱出するしかない。だが、ドレイクゼクターは反応しない――仕掛けられた変身制限。
 風のエルもその能力を発揮できないという点では条件は同じだが、いかんせん物騒なものを持っている。
 金色の大剣。剣としてのみならず、銃としての機能をも備える。
 ザビーゼクターが接続されていることからみてもあれは風間の世界のもの、つまりはZECT製とみて間違いないだろう。
 ZECTが作ったものであるならば、風のエル自身によらずしてエネルギーの刃や砲撃を放つことが可能なのだろう。
 こちらに戦力はなく、向こうにはある。加えて体の自由も奪われている。
 打つ手が、ない――その結論に行きつくまでさほど時間はかからなかった。
「主よ、使命を果たして参ります。御身はここで我が働きを御賢覧されたまえ」
 やがて風のエルは中世の騎士のように剣を立て、風間に向かってなにやら宣言した。
「使命? 待ちなさい、あなたは何をするつもりですか」
「知れたこと。人の子を狩り、あなたに捧げる血を流すのです」
 どうやらこの怪人は風間を誰かと勘違いしていて、その誰か=風間のために他の人間を殺そうとしているらしい。
 理解すると同時、凄まじい不快感が体を走る。勝手な思い込みで人を、もしかすれば美しい女性が殺されるかもしれない。
 止めなければならない。風間は我知らず大声を出していた。
「待ちなさい! 誰がそんなことをしろと言いましたか! 私を主と仰ぐのなら、私の命令を聞きなさい!」
「主よ、何をおっしゃられるか。我は主のために血を流すのです。それが主の望むことではありませぬか」
「私はそんなことを望んではいない!」
「おお、主よ。人の子の毒に当てられてしまわれたのですか? ならば早急に人の子の血を献上致します」
 駄目だ。まるで話が通じない。
 風間を主と仰ぎつつも、その実この怪人が見ているのは己の中にある価値観だけだ。
「人の子は粗野にして獰猛。主はここを動くことなきよう、お気をつけください」
 風間が止める手立てを思いつかないまま、風のエルは身を翻した。放送局屋上の淵に立ち、翼を広げる。
「待っ……!」
 飛び立った、その直後。
 風のエルが広げた天使が如き翼を、幾条もの光弾が貫いていくのが見えた。
 後を引く絶叫とともに怪人が地上へと落下していく。
 この高さから落ちれば人間なら一溜まりもないが、翼を傷つけたとはいえ奴なら生き延びるだろう。
 そう、まだ危機は去っていない――奴と、そしてあの光弾を撃った誰か。
 風間は警戒を高める。誰が来たところでこの状況では抵抗できないのではあるが。

 はたして――現れたのは見知らぬ「ライダー」だった。
180創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 15:51:50 ID:wR4dHesX


 それを見つけたのは偶然だった。
 放送局のロビーで休息を取っていた橘朔也は、態勢が整った後に放送局の探索を行っていた。
 放送でゾル大佐の言っていた本郷猛――何故か二人いた――が呼ばれたのはショックだった。
 金居が脱落したのも驚きだ。奴は死んだのだろうか? アンデッドといえどもここでは何が起きるか分からないということか。
 もし死体を発見できればカードを回収したいところだ。
 そして、ゾル大佐。わかっていたことだが、改めてその事実を突きつけられると悔恨を抑えきれない。
 しかし、いつまでも立ち止まってはいられない。気を引き締めなおし、今できることをやる。
 結論から言うと、残念ながら戦闘や首輪解除に有用と言えるようなさしたる発見はなかった。
 放送局らしく広域に呼び掛けられる設備はあったものの、信頼できる仲間もいないこの状況で使えば己の首を絞めるだけだろう。
 若干の落胆を感じつつ、気分を入れ替えるために開放的な空間である屋上へと出てみれば……
 正確に言えば屋上へと至る扉を押し開けようとしたとき、ガラス張りのドアが無粋な侵入者の存在を橘へと告げた。
 アンデッドらしき異形が青年を鉄塔へと吊るし、殺そうとしている。橘でなくともこの状況を見ればこう思うだろう。
 すぐにでも飛び出そうとしたが、この位置からではこちらの攻撃よりもあの青年が化け物の剣に切り裂かれる方が早いだろう。
 ならば変身してギャレンラウザーで狙い撃つか。
 いや……腕には自信があるが万が一にもあの青年を流れ弾で撃ってはならない。
 逡巡している間、あの怪人と青年が何やら言い争っていることに気付いた。今すぐ殺すつもりはないということだろうか。
 状況が変わるかもしれない。その瞬間を逃さぬべく、ギャレンバックルを定位置へ。
 いつでも飛び出せるよう、踵を浮かせ爪先に力を込める。息を止め、集中力を高める。
 やがて怪人は叫ぶ青年から離れ、翼を広げ放送局から飛び立っていった。

 ――――好機!

――turn up――
 
 変身、の言葉とともに現れたオリハルコンゲートに飛び込む。
 橘……ギャレンは廊下のガラスを突き破り下方のテラスへ落下――しつつ、飛びゆく怪人目掛けてギャレンラウザーのトリガーを引き絞った。
 狙いは違わず、怪人は地上へと落下していった。止めを、と思ったがまずは人質の青年を救出しなければ。
 屋上へと跳ぶギャレン。吊られた青年は警戒も露わに睨みつけてくる。
 ギャレンラウザーを握る右手と左手を頭上に掲げる。
「俺はギャレン……橘朔也だ。君があのアンデッドに襲われていると判断して攻撃した。大丈夫か?」
「……ええ、助かりました。私は風間大介です。……奴は?」
 鉄塔から風間という青年を下ろしつつ、言葉を交わす。
「まだ生きているだろう。君さえ動けるならここで止めを刺しておきたいんだが、どうだ?」
「私なら構いません。奴は危険だ、ここで止めなければ」
 風間の同意を得て、彼の体を抱え屋上から飛び降りる。
 現在戦闘力がないという彼は足手まとい以外の何物でもないが、かといってここに置いていくのも空を飛べる化け物と相対するこの状況では逆に危険だ。
 ジャックフォームのギャレンならともかく、手持ちのカードでは地上から屋上への攻撃は厳しいのだから。
 地上では風のエルがパーフェクトゼクターを支えに何とか立ち上がったところだった。
 両の翼には何か所も無惨な穴が開いていた。高所からの落下スピードを殺すことはできたものの、飛ぶことはできそうにもない。
 離れた所に風間を下ろし、ギャレンはラウザーを構えつつゆっくりと近づいた。
「貴様……貴様か! 我の翼を穢した人間は!」
 人で喩えるなら血走った眼で――と言うのだろうか。風のエルの形相は鬼気迫るものだった。
「理由など言うまでもないな。貴様はここで封印……いや、倒させてもらう」
 風のエルは立ち上がり、パーフェクトゼクターを銃形態にして構える。
 大砲のような外見から、その威力はギャレンラウザーの比ではないことは想像に難くない。だが、
「死ねッ!」
 放たれる光弾を、一歩バックステップしたギャレンは次々に狙い撃つ。激突した互いの光弾は刹那の輝きを残し共に消滅した。
 いかに威力があろうとも、それを操る風のエルは銃使いとしては何の心得もない。いわば武器に振り回されているようなものだ。
 が、ギャレン・橘朔也は違う。銃を扱う者として日常的に訓練をし、またアンデッドを封印する戦いで尋常でない数の実戦を経験している。
181創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 15:52:37 ID:wR4dHesX
 取り回しの悪い大砲なら射線を読むことは容易い。そこにこちらの射線を合わせることもまた、ギャレンにとっては当然にして可能なことだった。
「諦めろ。今の貴様は力を完全に発揮できないのだろう? そして銃での勝負なら貴様は俺には勝てん」
「人の子の分際で……! 我を侮辱するか!」
 怨嗟の声とともに大砲が真っ直ぐに伸ばされ、大剣となった。遠近両方に対応するマルチウェポンか、とギャレンは推測する。

――KABUTO POWER――
――Hyper Cannon――
 
 電子音声が響く。それを契機に大剣の刀身をエネルギーの力場が包み、巨大な光子の刃となった。
 振り下ろされる刃を横に転がって避ける。さすがにあれを喰らってはまずい。
 あれだけの大きさの剣、必然的にその攻撃パターンは限定される。すなわち振り下ろすか薙ぎ払うか。
 剣崎の変身するブレイドやカリスが持つラウザーのように小回りの利く剣ではない。避けることは難しくはない。
 二度、三度と避けたところで刀身から光子が霧散した。エネルギー切れか何なのか、だが今が勝機だ。
 ラウズカード2・4・6をスラッシュ。『バーニングショット』が発動した。
「止めだ!」
 剣の間合いの外から集中砲火を浴びせる。風のエルは右に左にと駆け回り必死に銃弾を回避するが、その身体は少しずつではあるが削り取られていく。
 やがて風のエルは完全に背を向けた。今だ、とギャレンは片膝をつくシューティングポジションを取り、より精確に撃とうとした。

――THEBEE POWER――

 再びの電子音声。しかし剣形態では届くはずがないとギャレンは断定してしまった。
 振り向く風のエル。ニヤリ、と口の端を吊り上げる。

――Hyper Sting――

 突き出された刀身からエネルギーが噴出した。槍のように迫ってくるそれを、片膝をついていたギャレンはまともに喰らう。
「ぐああああっ!」
 痛みにのたうち回るギャレン。咄嗟に両腕でガードしたものの、その衝撃は全身を駆け回る。
 ゆらりと風のエルが立ち上がる。荒い息をつき、伏せるギャレンの傍らに立ち剣を振り上げた。
「人の子よ、貴様の血をよこせ……!」
 咄嗟にギャレンラウザーを掲げ剣を受け止める。だが今の攻撃で両腕が痺れている、受け止めきれない――!
「そこまでです。その人を離しなさい」
 押し切られるその刹那、せめぎ合う二人の耳に第三者の声が飛び込んできた。離れた所に置いてきた風間だ。
「主よ、何故我を止めるのです? 人の子の血を流すことが御身の望みなのでしょう」
「この期に及んでまだ私を誰かと誤解しているようですね。……まあいい、私がその誰かに代わり言って差し上げましょう」
 現れた風間は戦う力もないというのに、臆することなく風のエルの前に立ち塞がった。
「お前のやっていることは私の望むことではない。いいや、主の命令という建前を隠れ蓑にした、お前自身の望みだ。
 そうやって自分の意志ではないとすり替えなければ小さな誇りを保つことすらできないのでしょう。
 お前の行いは私を、すなわち主を侮辱しているのだ!」
 吠える風間。風のエルは雷に撃たれたかのように呆然とし、パーフェクトゼクターを取り落とす。
「そんな……違います、主よ。我は主のために血を……甘美な人の子の血を……? 血、そうだ、何故我は人の子の血などを……」
 跪き、風間に懺悔を始めた風のエル。風間はギャレンに向かって目くばせする。今だ、と。
 ギャレンはしっかりと頷いた。ラウズカード3・6をスラッシュ。同時に左腕で風のエルを引き起こす。
 状況を把握させる暇もなく、発動した『アッパーファイア』で風のエルを宙に打ち上げる。
 もがく風のエル。だが翼を痛めパーフェクトゼクターもない怪人に打つ手は残されていない。
 一方ギャレンはスペードのジャックをスラッシュ。APを回復させ、再びラウズカードをスラッシュする。5・6・9のカード――

――BURNING DIVIDE――

 手足を振り回し落下する風のエル。その身体の中央目掛けて――
「うおおおっ!」
 二人に分かたれたギャレンが、左右から挟み込むように灼熱の二段蹴りを叩き込む。 
「グアアアアアアアアアアアアッ!!」
 交差した四つのキックは、狙い違わず怪人の体を二つに引き裂いたのだった。


【風のエル@仮面ライダーアギト  死亡】 
【 残り 33人 】
182創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 15:53:35 ID:wR4dHesX


「助かりました……改めて名乗りましょう。私は風間大介、花を渡る風。これが私の相棒、ドレイクゼクターです」
「俺は橘朔也。さっき見たとおり、これでギャレンに変身する」
 放送局のロビーでお互いの変身道具を見せ合う二人。情報交換と傷の手当てを並行して行っている。
 風のエルが持っていたパーフェクトゼクターは風間が回収した。風間の世界のもであるらしいし、長物は橘の趣味ではないからだ。
 ざっと、これまでの経緯を説明する。そして風間が上げた名前の中に、橘が知る男の名前があった。
「死神博士!? 彼が近くにいるのか?」
「おや、お知り合いですか?」
「直接の知り合いという訳じゃない。だが、伝言を託された……戦友からな」
 呟く橘の顔は何か事情があるのだと伺わせる。
 伝言、ということは彼は死神博士に会いに行くのだろう。だとするならこれは好都合かもしれない。
 元々風間は死神博士を、ついでに影山も信頼していない。城戸を一人で置いていくことが忍びなかったから付き合っていただけだ。
 だが橘が自分の代わりに城戸のもとに行ってくれるなら、自分は気兼ねなくハナ達と合流できる。
 会ったばかりだが、彼は信頼できる気がする。ただのお人好しというだけでなく、冷静な判断もできる人物のようだからだ。
 人心地ついたらこれからの行動を話し合おう。
 そう決めて、風間は傍らに立てかけておいたパーフェクトゼクターに視線を落とす。
 先程からドレイクゼクターがちょっかいを出しているものの、影山のゼクターたるザビーゼクターは一切の反応を示さない。
 これは奴に返すのが筋なのだろうが、わざわざ自分が出向いてやる義理もない。会ったら帰してやる、くらいでいいだろう。
 橘に一言告げ、ソファに身体を横たえる。今は少しでも休息が必要だった。
183創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 15:54:07 ID:wR4dHesX


 かくして二人の銃使いが集い、御使いは討ち滅ぼされた。
 数々の凶行を引き起こした金色の大剣はしばしその輝きを潜める。
 次にその力が放たれるとき、誰が誰を撃つのか――

 その答えを知る者は、まだ、誰もいない……



【G-3 放送局・屋上】【日中】

【風間大介@仮面ライダーカブト】
[時間軸]:ゴンと別れた後
[状態]:全身に大ダメージ(手当て済み)。ドレイクに1時間30分変身不能。
[装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター  パーフェクトゼクター(+ザビーゼクター)
[道具]:なし
【思考・状況】早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
基本行動方針:打倒スマートブレイン
1:橘に城戸を任せ、ハナ達と合流する。
2:協力者を集める(女性優先)
3:謎のゼクターについて調べる。
4:あすかの死に怒りと悲しみ。
5:移動車両を探す。
6:影山瞬に気をつける
※変身制限に疑問を持っています。

【橘朔也@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:昼(放送直前)】
【現在地:G-3 放送局ロビー】
【時間軸】:Missing Ace世界(スパイダーUD封印直後)
【状態】:悲しみ。顔・背中・腹部に打撲。生きる決意 ギャレンに2時間変身不能。
【装備】:ギャレンバックル
【道具】:基本支給品一式、ラウズカード(スペードJ、ダイヤ1〜6、9)、レトルトカレー、ファイズブラスター
【思考・状況】
基本行動方針:ゾル大佐への責任をとり、主催者を打倒する為、生き残る。
1:死神博士にゾル大佐の遺言を伝える。
2:信頼できる協力者、拠点に成り得る地点、ラウズカードの捜索。
3: 北部(研究所・大学)には準備が整うまで近づかない。
備考
※自分の勘違いを見直しました。仮想現実と考えるのはやめることにしています。
※牙王の生死を確認していませんが、基本的には死んだものとして考えてます。
※自身の知り得る参加者について以下の様に位置づけています。(※付きに関しては名前を知りません) 風間と簡単に情報を交換しました。
味方(積極的に合流):志村純一 城戸真司 日高仁志 ハナ
不明(接触の余地有):一文字隼人、金居、城光、死神博士、※一文字隼人(R)
危険(接触は避ける):※東條悟、※牙王
184創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 17:05:38 ID:NXkWlZX6
>>179
投下乙なのですが、>>3にある通り投下にはトリップをつけての予約が必要です。
予約をしていただけないと成立させられませんので、よろしくお願いします。
185創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 13:09:39 ID:E+SUcFrp
オワタ
186創る名無しに見る名無し:2009/03/11(水) 15:20:25 ID:1tZvqRTc
1stのほうがいい。
187創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 12:41:25 ID:zsoLJXfu
そんなことより次でとうとう記念すべき100話目だぞ!
188創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 15:32:01 ID:CJaIPjUE
>>187
オープニング
189創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 17:34:00 ID:2znd/4bF
実質の100話は99話でも、節目として
100のナンバリングが刻まれるのは喜ばしいな
あと企画開始一周年も近いw
190創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 20:28:53 ID:yWLskcuT
そういえば一周年って五月だっけ、もうすぐだな
なんにせよめでたい!
191創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 23:12:22 ID:2znd/4bF
確か去年のGWにチャットがあったから、開始は4月中頃だったかな?
そうなると残り一ヶ月くらいで一周年
192創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 15:57:20 ID:Tnafu1kE
予約きた!がんばってください!
193創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 21:06:50 ID:H237MA8l
2件の予約が!
お2人とも、楽しみにお待ちしています
194創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:35:11 ID:ZXxBgv2/
代理投下を開始します。
195流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:36:36 ID:ZXxBgv2/
 時刻にして、午前十一時五十五分過ぎ。
 沈黙を守る回廊の果て、男の歩行に合わせて靴が床を何度も踏みしめ、木霊する。
 一見何も考えずにテンポ良く歩いているように見える彼なのだが、実は違うらしい。
 彼が一歩を進める度に見られる無数の仕草は、死角を可能な限り減少させ、広範囲を彼の支配下においているのだ。

 男??橘はぐるりと施設を一周し始めた過程で、一つの疑問を抱く。
 それはこの放送局の位置付けについて、である。
 放送局と言えば、テレビ局を筆頭とする放送関連の事業が、電波を発信する施設。
 これが彼の認識だった。この放送局にも、島をどの程度カバーできるのかは不明だが電波塔がある。
(案外、ここで放送が行われていたりしてな……有り得ないか)

 思考の最中、ポケットに忍ばせていた携帯から送られた唐突な振動に、橘は足を止める。
 停止したことを彼は過ちだと理解。思った瞬間には、携帯から電子音が問答無用で流れだした。
 持ち主に対しての主張としてはあまりに高音量なそれの解放にワンテンポだけ遅れて、彼の右が床板を蹴った。
 左の視界に含まれている扉を開き、有無を言わさずに進入する。
 放送が直に行われると悟った上で行動を開始したというのに、この様である。
 自嘲気味にフッと笑うと、彼は室内を見渡す。
 突入した先は、狭い空間だった。続けて、言い表しようのない悪臭が鼻孔を突いてくる。
 ここがトイレだということは、彼の瞳に映る景観から容易に判断できた。
 だからといって、トイレに飛び込んだことに対するリアクションをとる暇は無い。
 放送は始まっているのだから。
196創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:37:05 ID:6s+IXoQO
 
197創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:37:15 ID:bUQ4LHP4
 
198創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:37:30 ID:s9CIKxSX
しえん
199流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:37:33 ID:ZXxBgv2/


 放送を聞き終えた橘だが、改めてゾル大佐へ思いを馳せはしなかった。
 これ以上何を思っても無駄なのだ。今更何を思ったところで、偉大なる軍人は戻ってこない。
 剣崎も、三輪も、禍木も……戻らないのだ。
 だからこそ、志村が未だ生存しているという事実は素直に喜ばしかった。
 新世代ライダーの中にあっても、扱い辛いじゃじゃ馬二人を上手く纏めて戦っていた優秀な部下だ。
 この島でも、志を同じくする参加者達と行動している姿が目に浮かぶ。
 彼はそう思う一方、自分の立場に危機感を感じ始めた。
 ??あまりにも、他の参加者達と面識がない。

 橘がこの島でまともな会話を交わした相手は、ゾル大佐ただ一人だった。
 更にその大佐に加え、関係者である本郷猛までもが死んだと放送されている。
 二度本郷の名が呼ばれた以上、「死んだのは別人」という希望的観測を使うことも不可能だ。
 しかし、面識を広げよう、と一口に言ってもどうするのが最良なのか、彼は図りかねていた。
 単純に接触するだけならば、難しくはない。他の施設を目指せばよいのだが。
 会うべき、会いたい参加者と接触できるのだろうかと聞かれれば。
200創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:37:46 ID:bUQ4LHP4
 
201創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:37:51 ID:6s+IXoQO
  
202創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:38:27 ID:s9CIKxSX
203創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:38:41 ID:bUQ4LHP4
 
204流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:38:57 ID:ZXxBgv2/
(ノー、だな)
 今回の放送でも七人の死者がコールされた。残り人数との関係を考慮すれば、前回と死亡者の出るペースは大差が無い。
 スマート・ブレインの命令通りに殺しを行っている連中が、未だ複数残っているのだ。
 安易に外をうろついていては、格好の獲物というものだろう。
 ギャレンへの変身を行使したとしても、変身制限がある。
 かと言えば、他に変身手段がある訳でも、武器を持っているわけでもない。
 非常時のバックアップ無しで暴挙に出る程、今の橘は愚かではなかった。

(……せめて、こいつが扱えれば別なんだがな)
 デイパックから橘が取り出したのは、相変わらず使い道の分からないトランクボックス。
 詳細不明の一品とはいえ、各種支給品同様スマートブレインの刻印が刻まれている以上、意味のあるものなのだろうが。
 気付いたことと言えば、ハードポイントが一箇所設けられていること。
 そして、数字のキーボタンが支給された携帯と酷似したデザインだということまでだった。
(しかし、理不尽だ……)
 現在参加させられているのは『殺し合い』である。
 そのために、戦うために支給品は与えられていると考えるのが普通だ。
 使ってもらうことを前提としながら、使用法を説いてこない……理解に苦しむ行為だった。
 その気が無いなら、始めから使える奴に渡せなどと心の奥底でぼやく。

(始めから……待て)
 ここで橘が、自身に『ラウズアブゾーバー』が支給されていない事実を思い出していれば、流れは変わったかも知れない。
 ギャレンに対するアブソーバー同様、このボックスも他のライダーが持つことで真価を発揮するのだと気付いたかも知れない。
(そうか、これは??)
 使用法は一切不明、適当な動作には反応せず、スマートブレイン製であることを示すロゴ。
 放送前から持ち続けていた一つの支給品の扱いに対する疑念が、橘の中で確信へと変わる。
(??首輪の解除に必要不可欠なものという訳か)
 全くもって、的外れな結論だったのだが。
205流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:39:41 ID:ZXxBgv2/
(つまり、首輪を解除するには現物の構造をいくら調べたところで無駄。
 このトランク・ボックスへ収められたデータを解析した者が、突破口を開けるということか)
 橘が、スマートブレイン製のライダーズギアを一つでも目にしていれば。
 この場に、スマートブレインと関わりを持つ参加者が一人でも居合わせていれば。
 間違いなく、この結果は生まれなかったというのに。
 どちらの要素も欠けているから、結局は勘違いに至る。
 一つ救いだったのは、具体的な行動プランに欠けていた彼に、当面の目的を授けたことだろうか。

(協力者と共にこのボックスを調査し、首輪を解除する……
 金居が、カテゴリーキングが本当に死んだのなら、その秘密も隠されている……ッ)
 後はいかにして仲間を得、作業に入るか??放送局の探索を継続しつつ、身の振り方を厳選する。
 橘の出鼻を挫くかの様に、『それ』はやってきた。
 歯を食い縛り、デイパックもファイズブラスターもその場に置き捨て、彼はタイルを蹴っていた。
 目の前にある便所内では大きめの????バリアフリー仕様の、個室へと。

 いかに悪食の橘朔也とて、限度が在る。
 どの程度の期間開け放たれていたかも不明な無人のコンビニで、彼は朝方、寿司を食べていたのだ。
 むしろ、違和感無くここまで過ごして来たのが可笑しい。可笑しすぎたのだ??
206流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:40:18 ID:ZXxBgv2/


  エレベータが、目的地への到着を示すベルを打ち鳴らす。両サイドへ展開するドアを見届けてから、橘は三歩前へ進んだ。
 眼前の壁に貼付けられたボードに、3Fの案内が記されている。デイパックを彼はすとん、と落として、板を凝視する。
 2F探索時に再び身につけたサングラスの、内側から。
「……」
 『現在地』と示されたエレベータ前から、ゆっくりと人差し指をスライド。橘にとって、2Fに続いて二度目の行為だ。
 自分が廊下を歩き、角で左に曲がる様子を想定するため、右に幾秒か動いた後に上方へターンしていたそれが、唐突に停止した。
「島内向け……放送室?」
 常に周囲を警戒していた筈の自身により、あっさり一言漏れたことにすら、橘は気付かないでいた。
 目を丸くしながら、再度の確認。『島内向け放送室』。見間違いではない。
(数刻前の考えが、現実に? いや、まさかな。……だが、本当に放送を行う場所なのであれば)
 脳内を思案に費やす一方、デイパックを落としたっきり御役御免と化していた左腕は、瞬時にポケットへ突っ込まれていた。
 別に、携帯を引き出してどうのこうのしようというつもりはなく、ただ『放送』という二文字に過剰反応しただけに過ぎなかったのだ。
 彼はぞんざいにそれを開いて待受を表示させるが、そこまで。特にそこから起こせることもなく、あっさり閉じる。
(見てみる価値はある、か)
 畳まれた携帯を元の位置に戻し、ポケットから抜き出された指先がデイパックを掴む。
 流れるような動作を終えると、橘はようやく息を入れた。爪先を右へ向け、左足から歩み出す。
 ボード上での指先を再現するように、両足が繊細な足どりを披露する。
 暗色系のスーツにサングラスという姿は、否が応でも不審者というワードを見るものに連想させていた。
207創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:41:08 ID:bUQ4LHP4
 
208流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:41:15 ID:ZXxBgv2/
 ??お目当ての一室は、案内通りの位置に配置されていた。銀のプレートに、黒く室名が彫られている。
 異常なまでに厚みのある引き戸が、数秒の沈黙に続いて彼を認識すると同時に、自動でレールに沿ってスライドするに従い、内部の暗闇が解放される。
 カーテンか何かで遮断されているのか、或いは窓がそもそも無いのか。廊下を照らす日光も届いていなかった。
(さて……)
 取り出したギャレンバックルに、ダイヤのカテゴリー・エースに位置するラウズカード『チェンジスタッグ』を差し込む橘。
 ロビーで休息を挟んだ時同様、有事の際に備えて万全を期した格好だ。バックルの装着を確認すると、彼は暗室へと侵入を開始。
 やけに広いようだな、と彼はマグライトで足元を照らしながら部屋へ向けて、心中で一言。
 死角を減らすため、隅へライトを当てながら近寄り、適当な荷台に自身の荷物を降ろす。
(この部屋も、やはり無人か)
 橘は円形に形作られた明かりを更に踊らせると、割と身近にスイッチの存在を認識し、無表情のままにそれを押した。
 部屋に光が満ちる。それでも仕様なのか、控え目な光源ではある。故にサングラスで防ぐ程の輝きではないが、外そうとはしなかった。

 それまでは断片的にしか分からなかった暗室の全景が、点灯によって明確にされた。
 やはりこの部屋には外界と密室を隔てる窓がなく、空調により室内の空気を安定させているということがまず一点。
 続けて、四方の壁には無数の孔が開けられており、防音機能を持つこと。
 床には無数のコードが束となり大蛇の如く這い回っていて、それは調整用機材に、更にはガラス張りを隔てたスペースに配置されたカメラへと伸びている。
 橘は機材に備えられたモニターへと近づき、「よくできている」と評した。防音室という安心感が、彼に独り言の余地を齎している。
 詳しくは分からないが、殆どの作業をこの機材が受け持ってくれるらしい。
 放送室と謳っておきながら、調整室??コントロール・ルームの機能も兼ね備えた一室に、彼は好印象持つ他ないだろう。
 その気になれば、今すぐにでもスイッチを入れてカメラの前に立ち、自らの主張を島中へ流すことが可能なのだ。
 タッチパネルを操作していくと、携帯電話へのワンセグ放送すら成し得ることができることが明らかになった。
 主催者側と同様の放送を行える設備を何故整えておいたままなのかが疑問ではあったが、これも挑発だろうと思考を打ち止め。
 マニュアルに従い下準備を終えると、サングラスを吊り上げ、スイッチを眼下に臨む。

「……上手くいけば良いのだが」
 呟き、橘はスイッチを入れる。島内に散らばる支給携帯群へと、同時に発信が行わ始めた。
 受信をするという点において、彼のそれもまた例外ではない。
 邪魔になるとの判断から、機材上に電子音を鳴らすそれを放置する。
 前奏はスマートブレインの放送と同様だ。これならば皆反応を示すと彼は確信し、ドアを開く。
 放送室のメインスペースから防音ガラス越しに写る彼の姿は、紛れもなく新生BOARDの指導者『橘朔也』であった。
209創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:41:52 ID:XIvlh1fo
 
210創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:42:02 ID:bUQ4LHP4
 
211流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:42:15 ID:ZXxBgv2/


 スイッチを入れてからカメラの前に立つまで、七秒。そして三秒の後、レンズ付近のランプが色を変えた。

『まず、この放送を目にしている参加者の皆様に突然の無礼を詫びさせてもらう』

 俺は一言吐いて、サングラスを改めて右中指で吊り上げる。
 なんとなく、間が欲しかったのだ。それ以上の理由は無い。
 次に、簡単な自己紹介を済ませようと思う。

『私……橘朔也は、君達と同様、このゲームの参加者だ』

 参加者としての立場を明確にすることで、放送の主がスマートブレインではないと聞き手に理解させる。
 突然の放送で混乱しているであろう者のためにも、ここで再び間を置く。

『君達の中には、既に私の名を聞いている者もいるかも知れない。
 が、できることならばこれからの話はそれらによる先入観を持つことなく聞いて欲しい』

 志村やアンデッド達が俺の情報をどれだけ明かしているかは不明だが、事前知識だけで判断を下す存在を求めてはいない。

『単刀直入に言わせてもらおう。……私は、ゲームの終了に必要な鍵を所有している』

 ただ、事実を俺は述べた。わざわざ放送を行ってまで公表する『鍵』の存在を、「馬鹿馬鹿しい」の一言で切り捨てる存在もまた、求めてはいない。
 それどころか、気付いて欲しい。俺は『鍵を持っている』に過ぎないと語っていることに。一人で鍵を解き明かすのは無理だというサインだ。
 実際の所では解析の自信もあるが、同行者への欲に偽りは無い。頭は回れば回る程良いのだ。

『そこで、だ。……協力者を募りたいと思う。我々の結束なくして、脱出という悲願の達成は有り得ない』

 今度は、伏せることなく本題を突きつける。馬鹿でも俺の言いたいことを察するに違いない。
 また、脱出を望まず、純粋に殺しに乗っている者の存在は、敢えて無視しなければならない。
212創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:42:50 ID:bUQ4LHP4
   
213創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:42:52 ID:s9CIKxSX
214流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:43:01 ID:ZXxBgv2/
『こちらの現在地は????君達も察しがついているだろう。……そう、放送局だ』

 俺は『放送局』をやや強調して発音した。
 この放送に当たって、『放送局』と『研究所』。これらのワードを、参加者達に意識付ける必要があった。
 現在地としての放送局、鍵を解くがための施設としての研究所を示せば、この放送に対してアクションを起こす者の大半はこれらの施設へと向かう。

 ??そして。少数の優れた者達が、真の合流地点へと気付く。

 言葉の表面に踊らされる者達が向かうであろう二箇所でなく。
 『鍵』を首輪の解除へと昇華させることが可能な設備を持ち。
 俺の現在地、放送局から安全に向かえる範囲へ位置している。

 ??会場においてただ一つ条件を満たす、『大学』の存在に。

 少々話が先走ったが、後は研究所の名を放送の中に含めれば全てが上手くいく。
215創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:43:24 ID:bUQ4LHP4
   
216流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:43:38 ID:ZXxBgv2/

『ここから我々は??!?』

 異変に気付いたのは、正に研究所の名を聴衆の脳裏に焼き付けようとした瞬間。
 俺の姿を映していた筈のカメラから、ランプの灯が消えた。
 反射的に調整器具へ視線を流す。モニターもまた、暗くなっている。

「どういうことだ」

 声を荒げて俺は、元いたスペースへと踵を戻した。
 パネルに接触をするが、反応の一切は見られなくなっている。
 ならば、とスイッチを一度切り、再び起動。
 数秒の沈黙が俺と放送室を襲い、空調音だけが弱弱しく室内を彩っていた。

 俺は放送が失敗したと結論付けた。
 放送局というワードの単発提示では、知恵者に研究所の選択肢を弾かせることができない。
 それどころか、ただ俺の居場所を『放送局』とみすみす教えただけだ。
 こうなってしまったからには、急いで此処を去る必要がある。
 放送終了につき元の画面へと戻った携帯を掴み、デイパックを持ち上げると、入室の際跨いだ敷居へ向かう。
 ????その時、だった。
217流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:44:13 ID:ZXxBgv2/
『いけませんよ〜、そんなイタズラしたら。どうやら、社長さんもお怒りみたいです♪』

 天井方面から響いてくる、嘲笑含みな女の声。一文字一文字が強調されている。
 ??やかましい。それ以上のことを考えずに俺は躊躇せずドアの前へ立つ。
 五秒程度待機すれば、認識音と共に道を開くはず……だった。

「何……?」
『勝手にお友達へ呼びかけちゃうおじさんには……罰を与えちゃいますよぉ』

 罰……だと? ……「放送してください」と言わんばかりの用意をしておきながら、か?
 完全に想定外??そう、今までの放送には、主催者側からの余裕が見て取れていたのに。
 このタイミングで……唐突に、何故放送とはいえ介入する?

(俺が、これを持っているからか?)

 デイパックに眠る鍵を持つ俺が、放送することに問題があったのか? この場を発つと困るのか?
 俺が自問自答に明け暮れる間にも、気色悪い女は続きを紡いでいく。

『あなたも参加者なら……罰ゲームの内容、分かりますよねぇ?』

 『参加者なら』。参加者である証??
218創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:44:35 ID:s9CIKxSX
219創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:46:57 ID:bUQ4LHP4
  
220創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:47:35 ID:bUQ4LHP4
  
221創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:47:41 ID:6s+IXoQO
   
222流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:47:51 ID:s9CIKxSX

「首輪……」
『正解で〜す♪ ……ふふ、おじさんには、これから「あの二人」とお〜んなじ目に、あってもらいまぁす』

 俺に対して「あの二人」と言っているのだ。十中八九、三輪と禍木のことを指しているのだろう。
 心の奥底から這い上がってくる死への恐怖心は、紛れもなく本物のソレだった。

「……………………」
『……なぁ〜んて。ウソですよ、ウ・ソ。俯いてるとせっかくの凛々しいお顔が台無しです♪』

 この言葉を聞いた時、俺はかつてない開放感と、行き場のない嫌悪感を同時に感じた。
 加速していた胸中の鼓動が瞬時に落ち着き、上方のスピーカーを見やる。

『でも、イケナイことをしたことに違いはありません。なのでしばらく、ここで反省しててもらいます』

 扉がいつまでもスライドしないのは、俺がここに閉じ込められることを意味しているらしい。

『お姉さんからのお叱りタイムはここまででぇす。心を入れ替えたら、しっかりゲームに参加してくださいネ。
 あ、途中までの放送ですけど、ちゃ〜んと皆さんに伝わってますから、ご心配なく♪』

 ……この上なく不愉快な時間は、ここで終わりを告げた。
 扉は閉ざされたまま、深い沈黙を守っている。
 腰にはレバーさえ引けばすぐにでも変身可能な、ギャレンバックル。
 強行突破する手もあるにはあるが、変身を使えば俺は二時間丸腰だ。
 あくまでも俺の策は、戦力を温存した状態でここを出ることで成り立つ。
 これは思惑を潰すがための挑発。安易に、乗るものか。

「とにかく、これ以上俺の邪魔立てはさせない……!!」
223流されぬ者は ◇N4mOHcAfck(代理):2009/03/16(月) 22:48:29 ID:s9CIKxSX
【橘朔也@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:G-3 放送局-3F、島内向け放送室】
【時間軸】:Missing Ace世界(スパイダーUD封印直後)
【状態】:悲しみ。顔・背中・腹部に打撲。生きる決意
【装備】:ギャレンバックル
【道具】:基本支給品一式、ラウズカード(スペードJ、ダイヤ1〜6、9)、レトルトカレー、ファイズブラスター
【思考・状況】
基本行動方針:ゾル大佐への責任をとり、主催者を打倒する為、生き残る。
1:放送室からの脱出法を探る。変身は状況次第で使用。
2:信頼できる参加者と大学でトランク(ファイズブラスター)を解析する手筈を整える。
3:死神博士にゾル大佐の遺言を伝える。
4:アンデッドを死亡させたメカニズムの解明。
備考
※自分の勘違いを見直しました。仮想現実と考えるのはやめることにしています。
※牙王の生死を確認していませんが、基本的には死んだものとして考えてます。
※ファイズブラスターを首輪解析に関連するツールだと考えています。
※自身の知り得る参加者の立場について以下の様に位置づけています。(※付きに関しては名前を知りません)
味方(積極的に合流):志村純一
不明(接触の余地有):一文字隼人、城光、死神博士、※一文字隼人(R)、※ハナ
危険(接触は避ける):※東條悟、※牙王
224創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:48:53 ID:6s+IXoQO
  
225創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 22:49:21 ID:s9CIKxSX
※放送室には個人で参加者の携帯、もしくは全島各所にあるスピーカーへの放送が可能な準備が整っています。
※午後二時に各参加者の携帯へ向けて放送が行われました。
※橘は自身の姿を映して放送を行ったつもりですが、主催者側の介入でスノーノイズが発生しています。ただし、音声はクリーンです。
※放送室のロックがいつ解除されるかは不明です。後の書き手さんにお任せします。

916 ◆N4mOHcAfck 2009/03/16(月) 22:15:39 ID:kQoZmtg0
以上です。ご指摘ご感想よろしくお願いします。
代理投下の方にはこの場をお礼申し上げます。



代理投下終了。
226創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 07:03:49 ID:Ahwuo5/A
投下&代理乙です

なんというダディクオリティwwww
しかし放送局が混沌として来ましたね
この先が心配(期待的な意味で)です……
227創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 07:51:46 ID:e+GHI8gt
投下乙です!!

橘さん・・・途中まではやってくれそうだったのにw
これじゃ拡声器使用とあんまり変わらないようなwwwwww
放送が他の参加者にどう伝わるか、今から楽しみです!!
代理の人と合わせてGJ!!
228創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 11:22:16 ID:ea2dPSgN
投下&代理乙です!

ダディかっこいい!!色んな意味で!!
ブラスターを首輪解除に必要なものだと勘違いしたりするあたりがとてもダディw
スマレが出てきたときはこっちもひやっとしましたが閉じ込められるだけで
一安心…ですが他の皆も放送局に向かってるしで気が抜けない状態ですね!
他の参加者の動向も含めて楽しみです!GJ!
229創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 17:08:23 ID:3hc3cXyr
近頃、参加者紹介がよく更新されてるな。
230創る名無しに見る名無し:2009/03/17(火) 17:54:22 ID:e+GHI8gt
最近更新されるまでキャラ紹介ページを知らなかったのも私だ
追跡表しかないもんかと思ってたw
231創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 16:32:19 ID:4jF6RNxq
ちょっと文章力が微妙なキャラ紹介だけど把握のためにどんどん投下してほしい。
読み手だけど、ぶっちゃけ城光や金居なんてわからなかった。
澤田亜希や乃木怜治は今でもわからない。
澤田って男なんだよね?
232創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 17:17:29 ID:3MLeWfe2
澤田は男だよw
その四人が分からないってことは555剣カブト全部未見?結構珍しい気がw
233創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 19:11:33 ID:EnJ3pLjn
澤田や手塚の下の名前を聞いた大介が女と勘違いしてくれる…
そんな風に思っていた頃が(ry)

でも今はそれどころじゃないな、大介w
234創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 19:49:44 ID:3MLeWfe2
大介の不幸っぷりは異常
バイクはバダーに奪われ、あすかには裏切られ、ハナも一文字に取られ……
ハイパーゼクターすら掠め取られて戦闘も良い所なしに拉致され宙づり
揚げ句には携帯がないからダディの放送すら聞けないというw

これでドレイクゼクターに見捨てられたら目も当てられないw
235231:2009/03/18(水) 22:42:25 ID:4jF6RNxq
>>232
555はちょうど受験だった。
剣はしばらく見てたけど後半にはいる前に飽きて、カブトは全部見たけどアイツが乃木だと知らなかった。
さっき調べてようやく名前を知ったよ。
まだ深夜までしか読んでなかったから。

>>234
パロロワでそういうことを言うと現実になる可能性が…。
この発言も今後に影響しなきゃいいが。
236創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 14:49:51 ID:6aZwutKD
>>232
まあロワがきっかけで過去作全部見た俺のような奴もいるからな
それまで龍騎と電王しか見たことなかったしw

今ではすっかり全作のファンです
237創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 18:13:24 ID:GMacN/NL
ライダー1stが始まった時はBLACKシリーズと555〜カブト、
それに電王序盤しかライダー見てなかったわ・・・
1stの完結前にV3ストロンガーZOJアギト龍騎を見て、
NEXT始まる前に初代とアマゾン、電王の続きを把握したw
ライダーロワに出てこないと未見作品に手を出す気がしねえw
238創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 18:16:43 ID:GMacN/NL
なんか忘れてたと思えばクウガ・・・
ちなみにクウガは先日見終わったw
239創る名無しに見る名無し:2009/03/20(金) 00:15:34 ID:qifvVyYc
アギトは把握が難しい

内容が忘れやすいと言う意味で
240創る名無しに見る名無し:2009/03/20(金) 10:12:21 ID:C0zH/2sO
>>234
何だか、ホッパーゼクターが認めてくれる要素が揃ってるな風間…
241創る名無しに見る名無し:2009/03/20(金) 10:26:49 ID:0ZTAihQF
>>234

そもそも参戦時期から不幸。
本編でも少し不幸なキャラに見えた。
242創る名無しに見る名無し:2009/03/20(金) 15:45:16 ID:zzGwK1Q+
>>240
士郎と二人でホッパーならまさに双子の兄弟のようになるところだったな

>>241
本編、出番的な意味で不遇だったよなーw
エピソード自体はわりと美味しいんだが>大介
243創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 12:50:25 ID:iPEiPB9d
・合コンで人気者に→女性はみんなワーム
・天道と女性集めで勝負→全部天道に取られ、挙句一人残った女性はワーム
・女子トイレで警察呼ばれる
・ゴンとの悲しい別れ(参戦時期はココ)
・その後の人気はダウン
・指名手配される
・ワームに擬態される
・惚れた女はワーム
・劇場版では仲間に裏切られて死ぬ

ロワでは……
・バイクはバダーに奪われ、あすかには裏切られ、ハナも一文字に取られ……
ハイパーゼクターすら掠め取られて戦闘も良い所なしに拉致され宙づり
揚げ句には携帯がないからダディの放送すら聞けないという

>>234より。

ちなみに初登場のSSを書いたやつは追放。
どうせ私なんて……
244創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 14:39:21 ID:uwlfadaF
本当に第三のホッパーゼクターを用意してあげたくなるレベルだなw
次の登場には色々な意味で期待せざるを得ない
245創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 18:51:11 ID:sTaTZGr7
風間も本編で川流れしてたっけ…
流される奴はろくな目に合わないな
246創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 22:28:39 ID:vfdHY8ng
でもなんだかんだ言って最後まで生き残ってまっとうな職についてるのは加賀美と風間だけだぞ
影山とぼっちゃまは死んで天道は多分働いてないだろうし、矢車さんもそうだろう
247創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 23:38:10 ID:mGtObyco
影山については死んだか微妙じゃね?
ただ気絶させただけという可能性も少しはある
248創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 23:49:12 ID:uwlfadaF
ロワで言えば死んだ的な描写ではあるものの、【】の死亡宣言は無かった感じか
249創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 00:36:03 ID:FiEPaxY7
>>247
ワムーになってしまって絶望したのに気絶させるだけとか兄貴どんだけ鬼畜なんだよw
まあネイティブと共存する世界を作ろうとするなら生きてるかもだが
250創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 18:58:59 ID:HuMrPaoc
世界より弟だ!!
251創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 22:53:36 ID:G7hQyNb0
投下は明日かな?
252 ◆RIDERjbYCM :2009/03/23(月) 22:14:08 ID:TLr369Vp
お待たせしました。これよりバダー、ドラグブラッカー投下します
253創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:14:40 ID:NuWstk/g
支援
254創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:15:49 ID:hMG3IMxt
255藪をつついて黒龍を出す  ◆RIDERjbYCM :2009/03/23(月) 22:16:31 ID:TLr369Vp
人の目から見れば、まるで鏡写しのように全てが反転した世界。ある人間はその世界をミラーワールドと呼んだ。
殺戮の宴が行われている世界と違いそこには生命はなく、不気味なまでの静寂だけが存在している。
……否。反転してもさして変化のない青空に、一つだけ異様な速度で駆ける影があった
黒き巨体は縦横無尽に空を舞い、鋭い刃を持つ尾がその反動と共に辺りの木々を薙ぎ倒す。

蛇のように細長で、鰐のように硬い皮膚を持つそれは、想像上の動物である龍を髣髴とさせた。
血走ったかのように赤いその目は、虚像の世界など目もくれず、何かを探すように鏡の向こう側を見やる。

見ている者こそいないが、誰がが見ても何かを探しているのは明らかである。
また、どこか強く深い執念のようなものを感じさせる目をしていた。
「GUUUUU……」
じっと目を細めていたが、再び何かを求めて動き出す。知性を感じさせない唸り声は、彼が主従の契約から解き放たれた事を示していた。
存在が災厄と謳われた漆黒の龍は、獲物を求めて虚像の空を走り抜けていく。



道路を疾走する真っ赤なバイク。特異な形状をしたそれは、二つの丸い目を光らせてまっすぐ進む。

青空の下を走り抜けるそれは、周りの風景に似合わないほど目立っていた。その理由は、
赤という刺激色でも、
先程述べた特異な形状でも、
ましてや誰もいないという殺風景な情景の所為でもない。
赤いマシンが見せ付ける、風を切り裂くような圧倒的なまでのスピードである。

それもそのはず、このバイクは元は仮面ライダーの愛機として今は亡き立花藤兵衛が開発した物。
太陽の石を動力源に、最高時速は時速300kmを超えるとも言われるスーパーマシン、ジャングラーなのだから。
制限下に置かれ、最高速度を落とされたこの状況でも、その真価は遺憾なく発揮されている。

そして、そのバイクを駆るのはグロンギの中でも特にバイクの扱いに慣れている男。
バッタの能力を持つ未確認生命体第41号。またの名を、脅威のライダー――――ゴ・バダー・バなのだから。

256創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:17:25 ID:TLr369Vp

黒龍は今、現実世界ではD-7エリアにあたる場所を旋回していた。
先程の戦闘で食事を取ってから、まだそう時間は経っていない。しかしその目は新たな餌を求めていた。
そう腹が空いているわけでもない。だが今はより多くの命を食べて、より大きな力をつける必要がある。

すべては、かつての主と同様に契約をしておきながら別の契約に現をぬかし、あまつさえ自分に痛手を負わせたあの男への報復のため。

本来なら今すぐにでも噛み千切ってやりたい衝動に駆られるが、今の状態ではそれも叶わぬ願い。
契約していた間の戦闘、自身との戦闘、そして先程居合わせた大人数での戦闘。どの戦いでもあの男は苦戦せずに生き延びていた。
比べてこちらは手負いで契約を交わし男と戦う主もおらずと、互いの力の差は歴然だった。
だから、今は自分を押し殺し餌を探す。自分より相手が強いなら、それを追い抜くまでに強くなればいいだけの事。
手ごろな餌を捕食し、最後に残ったあの男を頭から丸呑みにしてくれる……暗黒龍、ドラグブラッカーの頭にはその事しかなかった。
ドラグブラッカーは空中で停止し、まるで目当ての玩具を見つけた子供のように目を輝かせる。
道路に立っている鏡の向こうに、猛スピードで動く赤い影が映る。動くということは、それすなわち生命の証。

二度三度その長身を翻したかと思うと、鏡面目掛けて急降下していった。



風が肌を突き刺し、それを制して走りぬける感覚。バダーはどこまでもこの感覚を味わいたいと思った。
それを味わえるのも、バギブソンに勝るとも劣らないこのバイクのおかげだと知っている。
あの青いリントの戦士は、このバイクをほとんど使用していなかったらしい。使っていたのならここまで手足のように扱えるはずがない。
やがて十字路に差し掛かる。右か、左か、それとも直線か。バダーは自分の持っている詳細地図を取り出す。
自分が回ったバイクの配置位置に×印をつけていくと、あっという間に島の北東側が埋まっていった。
残りは島の両端と中央部に少し、そして今だ進んでいない南側に限定される。ここから一番近いのは……東の、殆ど海岸線に近い森の中。

どこへと進もうか考えながら、頭の片隅には違和感を感じていた。
先程からずっと、誰かにつけられている気がしていたのだ――――二度目の放送が流れた辺りからだろうか。
呼ばれた名前に見知った名前はなく、禁止エリアだけを頭に叩き込むと共に、違和感は押し寄せてきた。
何かに見られている感覚というのは、気持ちいいものではない。その何者かが見えないのなら尚更だ。
姿を見せないのなら無視して進むか……などと考えつつ、何気なしに傍らに立っていたオレンジ色の鏡、俗に言うカーブミラーを覗くと。

「鏡の中から何かが、大きな口を開いてこっちに向かって突進してきた」。

一瞬面食らったかのように体が動くが、即座にハンドルを握り反応できるのは、ゴの看板は伊達ではないといったところか。



それは、遥か上空からその光景を見ていた。


257藪をつついて黒龍を出す  ◆RIDERjbYCM :2009/03/23(月) 22:18:24 ID:TLr369Vp
無意識に何かと反対方向に走り出したため、ジャングラーは島の左端へと向かっていた。

(見られていたのは……あいつじゃない、もう一人、いる……)

走りながらバダーは振り返り、追っ手が何者なのかを確認する。黒くて、大きな、蛇のように長い何か。
確認したらすぐに前を向き、違和感が消えない事に歯噛みしながらも、スピードを上げる。
それに沿うように鏡の中から飛び出した影――――ドラグブラッカーは傷に響くことも省みず追いかけた。
風を切る感覚を取り戻し、頭を冷やして冷静になるととバダーはハンドルを切って方向を変えようとする。
何もバダーはただ闇雲に走り回っているわけではない。この先に何があるかぐらいはもう考えるまでもない。
このまま直進すればいずれエリア外へと出て、その瞬間この首輪が爆発する。そんなのはごめんだ。
道路から外れた先は森の中、しかしジャングラーがその程度で歩みを止めるほど軟でない事はバダーが一番よく知っている。
脅威のライダーにとって、逃げるとなどという選択肢は最初から中に存在していない。
かといって、バイクを駆らない者を自分から仕留めるつもりもない。それも相手は素性もわからない畜生だ。

襲われたら倒すだけ、逃げるなら深追いはせず。バダーの対応はひどく単純なものだった。
走り出してから数分ほど経とうとした頃、追いかけていたドラグブラッカーの方が先に変化を見せた。
その身を蒸発させながら激しく悶え始めたのだ。先行していたバダーもバイクを止め、その様子を見る。
ドラグブラッカーはしばらく悔しそうな目で見ながらも、耐えかねた様にカーブミラーに飛び込む。
サイズに何があったのか、少々手間取ったもののやがて凶悪な頭部から刃のような尾までがすっぽりと鏡の中へ消えてしまった。
「…………」
後には、落胆こそしないが、どこか肩透かしを食らったようなバダーだけが残される事となった。
気を取り直して再び地図を広げる。森が近いことを考えるとどうやらD-8エリアの中ほどにいるらしい。

……森の中にも、配置予定の場所がひとつある。行き先を決めるのはここを確認してからでも遅くはないか。
森に進路を取り、ジャングラーのエンジンを吹かす。走り出す頃には、感じていた違和感などどこかへと消え去っていた。



それは、とても小さく、それでいて力強かった。



結論から言えば、そこにもバイクはなかった。
ここにも誰かがいて、バイクを手に入れて走り去った……バダーはそう結論付けた。
実際は配置案の場所なので元々無かったのだが、バダーは自分の仮説を疑うことをしなかった。いや、むしろ真実だと確信していた。
なぜなら、ここにも人のいた――――もっと鮮明に表現すれば、戦闘の――――痕跡が見受けられたからだった。
力任せに薙ぎ倒された木々、無数に刻まれた強い斬撃の跡、まるで親の敵のように引き抜かれた草木……草木?
それに、決定的なのは足元に転がっている二つの輪だ。拾い上げてよく見ると、片方は自分の知っている中ではベルトに近いものらしい。
しかし煤と灰だらけで使えた物ではない。少し握り締めただけで亀裂が入り、ばらばらになってしまった。
もうひとつの輪は、バダーにも見覚えがあった。今この瞬間もまるで枷の様に自分の首に巻いてあるのだから。
どうにかして首輪を外せれば、自分や、バギブソンも同様に本来の力を取り戻すだろう。その上でこのサンプルがあるのは非常に有難い。

不敵な笑みを浮かべて、バダーは手に持った首輪を――――力いっぱい握り潰した。

首輪を解除する事など、バダーにとってまったく意味を成さない行為だった。
そのような事をせずとも自分のゲゲルを完遂できる自信はある。それにリントの知恵を借りるなど笑い話にもならない。
何より……より重い制限を課したゲゲルは、それだけでやりがいが出てくるというもの。
もうここに用は無い。バダーがジャングラーにキーを差し込んで去ろうとしたとき、何かが草木の中で煌いた。
腕の長さほどあろうかという長身に、銀の装飾と鋭い刃が光る。あれは正しく……

(…………剣?)

認識すると同時に、銀色の剣が吐き気を催すような漆黒に染め上げられた。



それは、まるで機械で出来た生き物のようだった。

258創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:18:25 ID:NuWstk/g
ししし支援
259創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:18:44 ID:hMG3IMxt
260藪をつついて黒龍を出す  ◆RIDERjbYCM :2009/03/23(月) 22:19:12 ID:TLr369Vp

瞬間、バダーの姿が消え去った。現れた影の持つ、ナイフのように鋭い牙に突き飛ばされたのだ。
剣の輝きの中から飛び出したのは、言うまでもなく先ほど逃げ出したはずのドラグブラッカー。
森の中へ入ったのは想定外だが、そのおかげでギリギリまで近づき、一度逃げて見せることで完璧に不意を付くことにも成功した。
計画的な作戦にも見えるが、生憎ドラグブラッカーはそこまでの頭を持っていない。ただ獲物が油断していたからそこを襲っただけに過ぎない。
コトリ、と首輪が落下する。少し送れて落下してきたバダーは、突進の衝撃で無残にも首と胴が泣き別れに――――

「……ッ!!」

――――なっていなかった。バッタの脚力を存分に押し出した蹴りが、ドラグブラッカーの額にぶち当たった。
制限を受けていて、なおかつ人間態の状態の蹴りだというのに、その巨体を震わせるには十分すぎるほどの威力だった。
悶絶したドラグブラッカーは、痛みのあまり文字通り飛び上がった。森の上空から悲痛な叫びが聞こえ、木々の間に響き渡る。
飛び降りたバダーは首輪を――――この場で果てた、モモタロスの首輪を踏み潰す。数々の衝撃に耐え切れず、首輪は既に所々拉げていた。
肩で息をしながらも、目はしっかりと敵を捉えている。一度ならず二度も喧嘩を売られたのだ、最早逃がす必要もない。
そして、それは相手も同じらしい。空中でうねりながら視線が交差し、大きな顎から蒸気のような息が漏れ出した。
ジャングラーを立て直し、いつものように右腕を鋭く突き出す。変身ポーズとも言うべきそれは、異形の怪人へと姿を変える合図だ。

(……変わらない?)

だが……その肉体は以前人間態のままだった。何かの間違いではないかともう一度腕を振るが、結果は変わらない。
彼は知らぬ事だったが、参加者には変身可能時間に加え次の変身までの待機時間もかせられていた。
そしてバダーが変身可能になるまでは、まだ三十分以上かかる。つまり、三十分間はバイクと自身の足だけが彼の武器だった。
しかし全てはバダーの知らぬ事。彼がたった今気づいたのは、まだ自分は変身できない。たったそれだけ。
これもリントに対するハンデか……心の中で舌打ちすると、ハンドルを握って森の外へと走り始める。
ドラグブラッカーの尾による攻撃を掻い潜り、ウィリー走行のように前輪を持ち上げて、ジャンプと共に森から抜け出そうとしたその時。

「ッGAAAAAAA!!」

一際大きな唸り声を上げたドラグブラッカーが放ったのは、黒い炎の塊。それはバダーのほんの少し前方に立っていた木々を焼き尽くす。
後一歩ブレーキを切るのが遅かったら、自分の体は先の首輪の持ち主のように消し炭になっていただろう。
無意識に、バダーの体が震える。恐れから来る震えか――――断じて違う、その証拠は胸の奥で熱く沸騰するようなこの感情だ。
その名は怒り。人間だろうが、グロンギだろうが、ミラーモンスターだろうが自分の意思を持つ物は、誰でも持ちえる感情。
上を見上げると、逃がさんとばかりに炎を口に溜めている。その癖、黒炎を発射しようともしないのが癪に障った。
狩人にでもなったつもりだろうか……本来ならばそこは自分がいるべき場所。
しかもどこの馬の骨とも知れない獣風情に、自分が追い詰められているこの現実が、怒りをさらに加速させる。
リントの言葉でいえば「腸が煮えくり返る」といった所だろうか。無意識に、握り締めた拳から赤い血が流れ落ちた。

(……おもしろい)
261創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:19:26 ID:hMG3IMxt
262創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:19:40 ID:l5C6Opqo

263藪をつついて黒龍を出す  ◆RIDERjbYCM :2009/03/23(月) 22:20:04 ID:TLr369Vp
不思議と口の端がつり上がり、頭が冷えてくる。怒りという感情はそのまま体を動かす糧となり、立ちはだかる物を叩き壊す力となる。
リントですらない物が、グロンギを見下しているのだ、ならばその認識を徹底的に砕いてやろう。そしてこの俺の力を刻み込んでやろう。
そこまでやりたいなら付き合ってやる――――だが勝つのは、俺だ。そう言わんばかりに、ジャングラーの後輪が唸りをあげた。

「第二ラウンド、だ。」



森の中央部、無造作に放置された剣、ディスカリバー。ディスカビル家に代々伝わるそれも今では持つべき主を失ったただの物体だ。
しかし、その輝きは微塵も失われていなかった。特に刀身は覗きこめば下手な手鏡よりも美しく映ることだろう。
まるで鏡のように光っているからこそ、ドラグブラッカーが通り道として選んだ。この近くにこれ以上の鏡はあるまい。

――――ならば、今、ディスカリバーに映っている輝きは一体なんであろうか?

宙を飛ぶ青白い光を放つ何か。しかし輝きの強い部分はそれではでなく、頭部らしき部分から生えた角である。
ちらり、ちらりと揺れ動きながら「輝き」が刀身を見る。それほど大きくない、人の目から見ても、せいぜい虫ほどの大きさしかなかった。
太陽の光とディスカリバーの輝きに照らされた角は、金色に輝いていた。



森の中、ジャングラーが走った場所を後からワンテンポ遅れて黒炎が焼き尽くす。
第二ラウンドを宣言したものの、さっきからこの繰り返しだ。上空から見れば焼け野原の道が刻まれるように見えただろう。
戦いは拮抗していた。ドラグブラッカーは森に追い込む事が目的だったものの、上空からでは位置の捕捉が出来ず攻撃が遅れてしまう。
一方のバダーは飛び道具を持たず、ドラグブラッカーへと攻撃を仕掛けることが出来ない。だから同じ行動をいつまでも繰り返す。
ドラグブラッカーの体が消滅するのが早いか、ジャングラーのガス欠が早いか――――どちらにせよ、先に尽きたほうが負ける。
となれば早期決着を狙わなければならない。ここまで殆ど休まずに走り続けてきたのだ、いつ燃料切れになってもおかしくない。

(引き釣りおろすか)

ジャングラーの前輪を持ち上げ、手近な大樹の幹にぶつける。すると万有引力に逆らうかのように木の側面を走り始めたではないか。
バイクが走るのは地上だけではない、密林の王者であるアマゾンのために作られたこのジャングラーにはそれが顕著に現れていた。
木の幹を疾走している間もスピードを上げ続け、ぐんぐん天へと上る。そしてそのままの勢いをすべて宙へと弾き飛ばす。
瞬間、車体でも特に重い動力部を軸に回転し、行き場を失った力はそのまま回転方向へ向けられる。

そして軸から最も遠く、回転の影響を最も受ける前輪部は――――砲撃並みの威力を持って、ドラグブラッカーの下顎を打ち砕いた。

「GAAAAAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOッ!!」

もう顎としての役目をなし得ない部分から、耳を劈くほどの絶叫が轟く。その間にバダーは枝をへし折りながらも着地する。
痛みで何も考えられないのか、今まで以上に暴れまわっている。こうなればもう始末するのは簡単だ。
ハンドルを握り締めて勝利を確信する。しかし同時に、何とも言えない喪失感が襲ってくる……理由は、探すまでもなく見つかった。
ジャングラーから光が、音が、命が失われていた。
すぐに給油したいが、ガソリンスタンドまでドラグブラッカーが見逃すはずがない。かといって、バイクを持ったまま戦えるとも思えない。
(動け、動け、動け!)
何度もキーを回すが、ジャングラーは何の反応も見せず項垂れている。こいつがいないと戦いにすら――――

「ッ、ハァ」
264藪をつついて黒龍を出す  ◆RIDERjbYCM :2009/03/23(月) 22:21:06 ID:TLr369Vp
世界が白黒に点滅し、口から赤い液体が噴出した。龍の尾で薙ぎ払われたと気付いたのは、自分の盾となり砕かれたジャングラーのフィンを見てからだった。
短い呻き声が漏れ、森の中を力任せに吹き飛ばされる。勢いが落ちて木にぶつかる頃には、意識など残っていなかった。
……いや、すぐに意識を覚醒させて起き上がった。だが彼には痛みを噛み締めている余裕と、時間はない。

「ッ!」
黒い炎が周辺の草木を巻き込み襲い掛かった。体に活を入れ木の陰に隠れると、ドラグブラッカーは獲物を見失ったことに怒ったのか、滅茶苦茶に火を噴き始める。
脇に目をやると、剣が転がっている。ドラグブラッカーが現れる際に使った物、ということは元の場所に戻ってきたらしい
変身できない状態では、攻撃することもできない、炎を防ぐこともできない……俗に言う、「詰んだ」ということだろうか。
思わず自嘲の笑みを浮かべるバダー。必死にゲゲルを勝ち抜きゴの集団に入ったというのに、最後は何処とも知れぬ辺境の地で獣畜生に狩られて終わるのかと。

――――ふざけるな。

まだ自分の手足は動いて向こうは手負いだ。それにこの剣とて、跳躍して投擲できれば立派な攻撃となる。
必ずどこかに隙ができるはず、そこを突けばまだ勝機はある。最後の最後までゴの誇りにかけて諦めたりはしない。
ふと頭上の影が晴れる、ドラグブラッカーの尾が木の枝を切り裂いたのだ。土を裂きながら、バダーの喉首を掻っ切らんと猛スピードで迫ってくる。

「来いよ……」

構えられていた剣をすり抜け、刃がバダーの喉を切り裂こうとした刹那――――とても小さい何かが、両者の間に割って入った。



その輝きを、彼は見逃さなかった。
命が尽きる寸前。絶体絶命の状況。しかしバダーの目は、体は、精神はまだ生を求めて足掻いていた。
そんな状態でもなお生を諦めないその強さは、とても強い輝きを持っていた。
この強さなら自分を扱うに相応しい――――そう感じ、彼ははバダーを助け、戦いに介入することを決めたのだった。



率直な感想は、奇妙というしかなかった。
目の前の刃が突然弾かれたかと思うと、バダーとは違う何者かの力で持ち上げられ力任せに捻られる。メキメキと罅割れて、尾から全身へとそれが広がっていく。

「OOOOOOOOOAAAAAAAAA!」

耐えかねたドラグブラッカーが自分の尾ごと尾に纏わり付く何かを焼き払う。その間バダーは炎が届かない場所へと避難していた。
(……何かいる……)
なぜかはわからないが、先の攻撃は明らかに自分を助けるための物だった。しかし近くに参加者の姿はない……いや、明らかに独立した意思での攻撃にも見えた。
265藪をつついて黒龍を出す  ◆RIDERjbYCM :2009/03/23(月) 22:22:14 ID:TLr369Vp
とはいえ、ほんの少し事態が好転したに過ぎない。それにあの炎を諸に浴びたのだ、それこそ鋼鉄のような身体を持っていない限り即死だろう。

鋼鉄の身体。その単語が頭を過ぎったのと同時に、黒炎の中から輝く何かが飛び出した。

真っ直ぐ、真っ直ぐ。一切の減速をしないそれは、吸いこまれるように、ドラグブラッカーの左の血眼を突き貫く。
最早絶叫すら上げられないのか、その巨体は力なく落下し、辺りには大量の砂煙と轟音が起こす地響きが立ち込めることとなった。
砂煙で視界が遮られる中、一定の間隔で羽音のような音が聞こえる。自らの感覚を研ぎ澄まし、羽音が近づいた瞬間にバダーは手を鋭く突き出す。
恐る恐る見るとそれは、機械で出来た虫で……同じゴであるガドルに似ていた。違いを上げるとするならば、黄金に輝く角が三本あるところだろうか。
(小さい……これがあれを倒したのか)
手の中で小首を傾ける虫に、ふと何故だか笑われたような感覚を覚える。今まで感じていた違和感の正体も、この虫だと直感した。
このまま握り潰してやろうかとも考えたが、それは叶わなかった。何故ならば、

「GUUUUUUUUUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAA!!」

本当の本当に怒りが頂点に達したドラグブラッカーの火球が、頭上から降り注いできたからだ。
虫に気を取られすぎた所為でギリギリまで気付くのが遅れてしまった。今から逃げても、灼熱の海は容赦なくその身を蒸発させるだろう。
ここで終わってたまるか――――バダーの目にまごう事無き輝きを見た瞬間、その手に握られた虫が飛び出した。
ジャングラーの荷台に詰まれているデイパックへと飛び、強引に突き破って進入。しばらく中で何かを探した後、それを抱えて飛び出した。
くるりと踵を返しこちらへ向かって飛んできながら、身体全体を使ってそれを投げつけた。黒い、コブシ大の何かだ。
思わず顔を右手で守ると、まるで計算されていたかのようにカチリと子気味いい音を立てて手首に装着された。それは、自分に支給された黒いブレスレットだ。

二度三度旋回しそのブレスレットにはまる虫。少しだけ傾いているのは回せという事だろうか。
大方、何か意味を持つのだろう……ここまで来たら、この虫の誘いに乗るのも悪くない。どちらにせよ頭上には炎、選択肢は一つしか残されていなかった。

バダーが左手で虫――――コーカサスゼクターを捻ると同時に、周囲の空間ごと特大の真っ黒い火球に包み込まれた。



黒い炎が燃やした木々が炭となり、大地も焦土と化す。傍から見れば、吸い込まれそうなほどに黒い海のようにも見える。
ほんのちょっとクールになったドラグブラッカーは、今更になって燃やし尽くしてしまうと食べられないことに気付いた。
ここまで痛めつけられて得るものはなしか、ひどい物だ。ひどく落胆した様子でほんの少し火を噴く。
シュワァァァァァ……と身体が消滅し始める。ここにきて現実世界にいられるタイムリミットが迫ってきていた。
早めに次の餌を見つけなくては……そんなことを考えながら先の剣を探す――――見つからない、あの人間と一緒に溶けてしまったか。
少し面倒だが、最初に男を見つけた場所まで戻るか。深いダメージの残る身体をゆっくりと頭を動かしたその矢先だった。

ふと見上げると、太陽が少し暗いと感じる。程なくして太陽に何かの影が重なっていることに気付き、目を凝らす。
が、その姿を捉えることはできなかった。その影が細かくぶれたかと思うと、少し遅れて何か音声らしきものが聞こえてくる。

――CLOCK UP――

直後、ドラグブラッカーの腹部が爆ぜる。その痛みを知覚する前に、数多くの追撃が押し寄せてきた。
あの男に刻まれた傷が疼き、次の瞬間にはまた新たな傷が刻まれていく。ドラグブラッカーは何が起こっているのかわからず、ただ苦しんでいるしかなかった。
額に傷が刻まれた時、残された右目が、自分の体を駆ける黄金の影を捉えた。異変はこの影が引き起こしているのか。

――CLOCK OVER――
266創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:22:38 ID:NuWstk/g
支援
267創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:22:51 ID:l5C6Opqo

268藪をつついて黒龍を出す  ◆RIDERjbYCM :2009/03/23(月) 22:23:08 ID:TLr369Vp
威嚇しようと黒炎を吐き出そうと口を開く。しかし影から電子音声が流れ、それを防ごうと拳を振り上げた。
メギィ、と無理やり何かを砕く音が聞こえる。発生源は戦士の拳先、すなわちドラグブラッカーの上顎であった。

「……OO……A」

開きかけていた口を強引に閉じられたのだ。行き場を失った黒炎が体内に逆流し、傷はおろか無事な部分までをも焼き尽くす。
体中から炎を噴出して、森の中へ墜落した。両顎を砕かれ力なく口を開いており、元の鋭い顔付きは最早見る影すら残っていない。
その体に足をかける黄金の影――――直感的に感じる。この戦士は、間違いなく今しがた自分が焼き尽くしたはずの男だと。
見掛けはまったく違うが、そんなことは異形の戦士と共に戦ってきたドラグブラッカーにとって些細な問題でしかない。
青い眼から見下ろされているだけなのに感じるこのプレッシャー。この戦士は自分に苦渋を飲ませたあの男と同じ世界の住民だ。

楽な狩りだと思っていた、すぐ終わらせるつもりだった――――今更、自分の犯した大きな過ちに気付く。今狩られているのは間違いなく自分なのだ。

彼は気付くのが遅すぎた。時は、よほど大きな力でもない限り決して巻き戻すことはできない。
戦士が剣を振るい、残った右目に突き刺した。もう痛みに声も上げられない、声を上げるべき喉は、既にズタズタに引き裂かれていたのだから。

主を失い、忠実な僕から餌を求めて彷徨う獣畜生に成り下がった哀れな漆黒の龍は、閉じ行く意識の中無慈悲な死刑宣告の声を聞いた。

――RIDER BEAT――



変身をといたバダーの口から、ほう、と息が漏れた。六角形の装甲がバラバラになってライダーブレスに収納される。
コーカサスゼクターが羽音を立てて飛び回り、肩に乗ってきた。いつもなら振り払っているだろうが、今回ばかりは少し疲れすぎた。
羽に刻印された「ZECT」の文字が目に入る。空を飛ぶ昆虫、機械のような体、六角形の装甲、変身――――。
記憶を手繰り寄せて、頭の中のピースを当てはめていく。導き出されたのは、自分が出会った二人の青い戦士。
一人はこの島で二度会った男。精密な機銃を駆使した華麗な戦いで、一度は奪ったバイクを自分から奪い返していった。
もう一人は列車で対峙した男。二本の刀と自分に勝るとも劣らないほど鋭い蹴りを使った戦いぶりは、まるで鬼神のようだった。
そしてその二人は、クウガのような戦士に変身する際、どちらも宙を舞う昆虫を使役していた。
外見の特徴や電子音声からして、おそらく同じものだろう。見よう見まねで使った加速装置が備えられていた事が何よりの証拠だ。
体重をジャングラーに預け、空を見上げる。どこまでも澄み渡るような青空が、今のバダーには眩し過ぎるようだ。
ポケットを漁り、一枚のコインを取り出す。忘れかけていたが、これからどこへいくのかをまだ決めていなかった。
自分の中で表なら南、裏なら西と指定する。北側と東側のバイク配置場所はもう探しつくしてしまったからである。

ピン、と親指でコインを跳ね飛ばす。コインの両面が太陽に煌いて、回転をしながら落下してきたそれは綺麗にバダーの手の甲に収まる。
ゆっくりと被せた手をどけて行くと――――表だ、次の行き先は南に決まった。コインをポケットにしまい込み、バイクに跨った。
コツン、コツンと何かを突く音がする。コーカサスゼクターが、ジャングラーの後部、燃料部がある場所を何度か小突いていた。

(空っぽ、だったな)

どうやら、先にガソリンスタンドへ行くほうが懸命らしい。バダーは仕方なく降りて、地図で道を確認しながら手押しでジャングラーを運んでいった。


269藪をつついて黒龍を出す  ◆RIDERjbYCM :2009/03/23(月) 22:24:07 ID:TLr369Vp

【ゴ・バダー・バ@仮面ライダークウガ】
【時間軸:ゲゲル実行中(31-32話)】
【1日目 午後】
【現在地】D-8 森林
【状態】全身にダメージ、背中や腕部等に多少の火傷、右足にダメージ、二十分変身不能(グロンギ体)、二時間変身不能(コーカサス)
【装備】ジャングラー@仮面ライダーアマゾン(左のフィン破損) ライダーブレス&ゼクター(コーカサス) 
【道具】基本支給品 車両配置図 ラウズカード(ダイヤの7・8・10)ディスカリバー
【思考・状況】
基本行動方針:リントではなく自分の「ゲゲル」を完遂する。
1:ガソリンを給油し、南へ下る。
2:クウガ、イブキ、ガタック、ドレイクはいずれ自分で倒す。
3:(スマートブレイン勢力も含めた)「ライダー」の探索と殺害。
4:グロンギ族に遭遇しても、このゲゲルを終え、ゲリザギバス・ゲゲルを続行する為に殺す。
※バダーは「乗り物に乗った敵を轢き殺す」ことにこだわっています。
 選択の余地がある状況ならば、上の条件に合わない相手は殺せる場合でも無視するかもしれません。
※「10分の変身継続時間」と「2時間の変身不能時間」についての制限をほぼ把握しました。
※用意されたすべてのバイクが出そろったため、車両配置図は詳細地図としての価値以外なくなりました。
 しかしバダーはその事を知りません。
※風見志郎の事を風間大介だと勘違いしています。
※コーカサスの資格者に選ばれました。


【ドラグブラッカー@仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL  消滅】
※D-8の森林エリアが戦闘によりほぼ焼き払われました。またモモタロスの首輪とデンオウベルトは共に破壊が確認されました。
 また、少しばかり高いところからならドラグブラッカーの姿が見えたかもしれません。
270創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:24:52 ID:l5C6Opqo

271創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:26:20 ID:hMG3IMxt
272創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:27:12 ID:hMG3IMxt
273創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:27:12 ID:TLr369Vp
投下終了です。指摘、矛盾点等ありましたらよろしくお願いします。
274創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 22:27:24 ID:l5C6Opqo

275創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 10:48:54 ID:j+vcDObf
投下乙です。
空気気味だったバダーによる大立ち回り、堪能させてもらいました。
そしてドラグブラッカー……合掌。
よくやったというのと同時に、もうちょい場を引っ掻き回して欲しかった……!
でも地味にディスカリバーが回収されて喜ばしいw
氏の復帰も本当に嬉しいです。またの機会もお待ちしております!!


それにしても、感想が全然来ないのはなんでだろう……規制が酷いのかな?
276創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 13:03:17 ID:33dposzs
投下乙です!
バダーかっこいい…!バイクアクション・ドラグブラッカーとの死闘共に
迫力満点の描写ですごく興奮しました!
コーカサスへの変身を果たし、クロックアップを使いこなすとは流石だぜ!
新たな供を得たバダーのこれからに期待です!
やっぱりゼクターはみんなかわいいw
GJでした!
277創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 17:04:03 ID:uUVtn5fW
遅くなりましたが、投下乙!
ジャングラーが木を走るの想像してすげえってなったwww
ドラグブラッカーがやられたか…壮絶な死に様だったなあ
ともかく面白かったです!GJ!
278創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 22:25:40 ID:e1ot0OqB
ドラグブラッカー死んだか。
熱いバトルはやっぱ燃える!
GJ!そしてお帰りなさいです。
279創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 07:59:22 ID:Jx91JuYc
投下乙!
ジャングラーVSドラグブラッカーとか構図を想像するだけで吹くw
コーカサスを得てバダーが今後どう引っ掻き回してくるか楽しみ。GJ!

あと一つ指摘の方を。といっても大したもんじゃないですが。
状態表の【午後】についてなんですが、
グロンギ体への制限が掛かったままなので【日中】ではないでしょうか?
それ以外は特に問題ないと思います。
280 ◆RIDERjbYCM :2009/03/26(木) 13:54:34 ID:iPezOV2Y
>>279
指摘感謝です。wikiにて対応しておきました。
281創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 15:24:08 ID:ugqVXjDj
>>280
修正乙です!
とても面白かったです
282創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 08:38:37 ID:q2+uv6yi
またまた復帰予約ktkr
最近見てなかった書き手の方々が来てくれて嬉しい限り!!
283創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 10:24:25 ID:nHjRw4g/
>>282
うおー本当だ!
楽しみにしています、がんばってください!
284創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 12:07:49 ID:Tp5ZuBlW
レンストで再現したいな〜、仮面ライダーバトルロワイヤル。
285創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 16:01:45 ID:IM/a9G3C
予約に土器がムネムネだぜ!

しかしこう復帰予約が続くと某所で死んだ書き手さんも復帰するんじゃないかと少し期待してるんだぜ
286創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 17:35:17 ID:/mv5NjSo
いくら期待してcWはダメだぜ
287創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 21:15:06 ID:q2+uv6yi
某所で…死んだ?
288創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 22:01:37 ID:pJAxIX4W
書き手ロワとかかね?
289創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 22:10:24 ID:q2+uv6yi
ああ、なるほどねw把握
290創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 01:28:18 ID:QHSUKGTv
6V氏まで帰ってきた!
あの予約はまさかサービスシーン再びか…?w
291創る名無しに見る名無し:2009/03/30(月) 11:19:08 ID:MxQU6NqF
おー本当だ、これは嬉しい!
お二方執筆がんばってください!

>>290
ちょwおっさんのサービスシーン再び!?
見たいような見たくないようなw
292 ◆AMes0c0h.I :2009/04/02(木) 23:46:27 ID:40nzwOfz
仮投下をさせて頂きました。
誤字や脱字や矛盾などがありましたら、指摘をお願いしますorz
293創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 00:00:15 ID:vrQCDJVk
投下乙です。
特に問題は見当たりません。
本投下お待ちしています。
294創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 00:33:48 ID:OebazHBL
仮投下乙!!
こ、これは・・・!!
志村を橘さんがナイスアシストしたってわけか・・・w
295 ◆AMes0c0h.I :2009/04/03(金) 21:16:42 ID:p3y4/KTw
どうも、失礼します。
昨日よりちょっと早いですが……

日高仁志 志村純一 手塚海之 一文字隼人(リメイク)、投下します。
296この言葉を知っている ◆AMes0c0h.I :2009/04/03(金) 21:17:35 ID:p3y4/KTw
青空に浮かび上がる太陽は、時間の経過と共に輝きを増していく。
周りから暗闇が一切消えうせたのではないかと錯覚させられるほど、光は燦々と降り注いでいた。
クリーニング屋であれば、太陽に負けない程の輝かしい笑顔で、洗濯物を干していることだろう。
そんな暖かな情景の中、四つの人影が集まり、二つのバイクに跨っていた。


「さぁて、それじゃあ行くとしようか」

その中でも、一際逞しい体つきをした男――ヒビキは、そう言った。
竜巻と呼ばれるバイクに跨ったその男は、どこか安心を与える微笑で、周囲の反応を窺った。
すると、ヒビキから数メートルも離れてない位置で、バイクのエンジンがかかった。ガスを排気する音が辺りに響き、徐々に小さくなると、タービンが一定のリズムを刻み始めた。
誰が動かしたか……その答えを、日高は見るよりも早く理解していた。そのバイクの持ち主、一文字隼人である。
一文字は、エンジンが安定したことを確認すると、小刻みに振動するバイクに跨り、先ほどの日高の言葉に応えるため、無言で頷いた。

「えぇ……急がないと、手塚さんが心配ですからね」
一文字の後ろに、一拍子遅れて乗った男、志村純一が心配そうに応えた。
少し体調が悪そうなその青年は、数刻程前の戦闘で、手塚と同様に酷い怪我を負ったはずの男である。
それは、応急手当を施したヒビキが一番よく知っている。にも関わらず、志村は弱音を吐くどころか他人の心配までしている。
その行動に、ヒビキはなんの疑いもなくただ感動する。同時に言葉の意味も理解し、神妙な面持ちになった。
「あぁ……早く病院に連れて行ってやらないとな」
ヒビキはそういうと、自分の後ろに座らせている手塚海之に目をやった。
未だに目を覚まさないその男は、走行中に落ちないように、しっかりとヒビキの身体にロープで巻き付かせてある。
志村と同じく、先の戦闘で深手を負った手塚は、当たり所が悪かったと見え、今も眠り続けている。
どうやら峠は越えたらしく、今は安定した呼吸をしているが、それも一時的なものだろう。
このまま放っておけば、手塚は衰弱死してしまう。そう判断した彼らは、何としてでも手塚を救うため、今から病院へと向かうのである。
「すみません……僕がこんな調子でさえなければ、もっと早く出発出来たのに……」
「なに、志村が気にすることじゃないさ。俺たちだって疲れは溜まっていたんだから。なぁ一文字?」
うな垂れ、自責の言葉を呟く志村に、ヒビキは明るく声をかける。さり気なく一文字に話を振ったのは、志村についてどう考えているかを、ほんの僅かでも見て取りたかったからだ。
一文字は、志村にそっくりな男に襲撃を受けたことがあるという。そのため、今も志村に対しては警戒の念を抱いているようだ。
志村そっくりな男というのは、志村の出鱈目という可能性もあるのだが、ヒビキはこれまでの志村の動きがどうしても演技には見えなかった。
命がけで敵からカードを奪いとって自分たちの危機を救い、五代の話を何のためらいもなく信用し、自分の身体より手塚を心配した志村の行動が。
少なくとも、自分は志村を信用すること前提で動いてみたい。そんなヒビキの心を知ってか知らずか、一文字は
「あぁ、まぁな」
と、素っ気無い返事だけを返す。その事に対して少し残念に思いながらも、ヒビキはもう一度志村に語りかける。
「そういう事さ。だから、落ち込むことはないよ」
「有難うございます……ヒビキさん、一文字さん」
二人に向かって礼を言う志村に、一文字はヘルメットを被りながら応えた。
「気にするな。それより、早く病院に向かってやろうぜ」
その言葉に、ヒビキは今度こそ安堵する。少しずつではあるが、一文字も打ち解けて来ているのだろうと考えたからだ。
焦ることはない。一文字がどう判断するかは分からないが、志村が殺人者かどうか分かるまでは、俺は志村を信じてみよう。
ヒビキはそう考えると、自分もバイクのエンジンをかけ、ハンドルをしっかり握り締める。
「よし、出発だ!」
ヒビキが元気よくそう叫ぶと、携帯の電源が入り、主催者のそれとは違う放送が映りこんだ。


――『まず、この放送を目にしている参加者の皆様に突然の無礼を詫びさせてもらう』――


##############################
297この言葉を知っている ◆AMes0c0h.I :2009/04/03(金) 21:18:55 ID:p3y4/KTw
――『ここから我々は――!?』 ――

突然始まった、橘と名乗る男の放送は、そこで終わりを告げた。
あまりにも唐突な状況の変化に戸惑いを隠せなかったヒビキは、食い入るように放送を見つめるしか無かった。
一文字も同じようで、少し唇を開きつつ、顔を顰めて携帯から聞こえる声に聞き入っていた。
しかしヒビキが何よりも気にかかったのは、志村である。体調とは別に、明らかに青ざめている。
一体どうしたのかと心配になったが、その理由は、放送が中断されたと見える終わり方をした瞬間の、志村の行動により察する事が出来た。

「チーフッ!!」

携帯を強く握り締めた志村が、声を張り上げた。ヒビキと一文字は、驚いて志村に顔を向ける。
志村は、待機画面に戻った携帯を目を見開きながら見つめ、歯を食いしばっていた。
ヒビキが一文字に目をやると、一文字は険しい顔で頷いた。どうやら、一文字も事情を察したらしい。
しかし本人に確認しないことには話が分からない。そう考えたヒビキは、志村に声をかけた。
「知ってる人……だったのか?」
志村はゆっくりと頷くと、携帯から目を離さずに答えた。
「今のは……僕の上司です。ノイズで顔は見えませんでしたが……あの声は、間違いなく橘チーフです」
怒りとも悔しさとも取れない表情で、志村はそう言った。ヒビキは、その理由がすぐに分かった。
あの放送の終わり方――恐らく、穏やかではない事象が起こったのだろう。
ただの故障ならいいが、このゲームに乗っているものの襲撃か、或いは……主催側の介入か。
何であろうと、下手を打てば彼の命は無いだろう。放送の内容からも、殺し合いには不都合なものだと察することが出来るからだ。
自分の上司がそんな目に遭っているのだと目の当たりにし、冷静でいられるものは、恐らくいないだろう。
そこまで考えたところで、何も言えずにいるヒビキに向かって、志村は叫んだ。

「ヒビキさん!僕を放送局に向かわせて下さい!!」
「えぇ!ちょ…志村!?」
いきなりの申し出に、ヒビキは面を食らう。もっとも、ほんの少しは予想してはいたのだが。
「このままじゃ、チーフが危ない……!今すぐ助けに行かないと!」
「待て待て、志村!気持ちは分かるが落ち着け!」
いきり立つ志村を、何とかヒビキは宥めようとするが、あまり効果は無いとみえる。
それどころか、ヒビキが止めようとすればするほど、志村は焦っているように見えた。
「何故止めるんです!今行かないと、チーフが……!」
「罠だったら、どうする気だ?」
それまで口を噤んでいた一文字が、ぼそりと呟く。独り言にも思えるその声量は、間違いなく志村へと向けられていた。
それを聞いた志村は、騒ぐのをぴたりとやめ、一文字に向き直る。
「どういう事です? まさか、チーフが殺し合いに乗っているとでも……!?」
怒りを露にしたかのような表情で、志村は一文字を睨みつける。志村の目の前で、ヘルメットが光を僅かに反射しながら動いた。
目を合わせた志村と一文字は、お互いに無言のまま動かない。場をほんの少し静寂が支配した。
やがて、一文字が志村の問いに答えるべく口を開く。
「別にそういう訳じゃない。ただ、あの放送をそのまま受け取るのは危険だと言っているんだ。誰かに脅されてやっているとか、主催の奴らが用意した偽の映像とか……考え方はいくらでもあるだろう?」
「でも、もしあれが本当だったら…!」
「それに、手塚を放っておく気か?」
「!」
一文字のその言葉に、志村は黙り込む。そう、寄り道をするなら手塚を病院に送るという目的を、遅らせなければならないのだ。
ただでさえ容態が良くない手塚にとって、それは死活問題。捨て置ける問題ではないのだ。
いくら病院に向かう途中に放送局があるとはいえ、戦闘があるかも知れない放送局の探索には時間を割けはしないだろう。
それを理解したと見える志村は顔を下に向け、言葉を発しなくなった。
見かねたヒビキが志村に声をかけようとした、その時。

「連れて行って……やって、くれないか……」
298創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:19:16 ID:Ti2CYL9o
299この言葉を知っている ◆AMes0c0h.I :2009/04/03(金) 21:19:44 ID:p3y4/KTw
ヒビキの真後ろから、声がした。小さく掠れた声だったが、周りの皆にも届いたようだ。
「手塚!お前、目が覚めたのか!」
「あぁ……実は、さっきの放送の……少し前からな」
ヒビキの問いかけに、弱々しいながらも手塚は返事をする。その様子に、ヒビキは少しながら安心する。
志村や一文字も同様のようだ。どこかホっとした顔をし、手塚へと視線を向けている。
手塚は、ヒビキたちが出発しようとした頃には覚醒したという。ヒビキの後ろに乗っているという事に気付き、声をかけようとした時に放送が始まったというのだ。
そのため、事情は把握しているのだと、手塚は話した。
「そういう……訳だからさ。俺はもう大丈夫だから……志村の頼み……聞いてやって、くれないか……?」
手塚は、息継ぎを挟みながら、言葉を紡いだ。その様子から、強がってはいるものの、未だに危険な状態であることは用意に推測できた。
目は覚ましたものの、やはり病院に連れて行かなければいけないのは変わりないようだ。
しかし、手塚の言うとおり、志村の望みも叶えてやりたいというのが、ヒビキの本音だ。
となれば、この手段しかないだろう。そうヒビキは結論を出し、一文字に提案を持ちかけた。
「一文字。手塚は俺が病院に連れて行くから、お前は志村と放送局に向かってくれないか?」
そう、二手に分かれることである。片方が病院に、片方が放送局に。
戦力が無くなってしまうのは厳しいが、この方法なら志村の上司を救えるかもしれないし、何より手塚の安全も確保できる。
それに、バイクもあるのだから、仮に襲撃があったとしても、逃げ切れる確立は高いはずだ。
一文字もそれを持ちかけた理由を察したのか、何も言わずに腕を組み、目をつぶって考え始めた。
「な、頼むよ」
ヒビキは少しはにかみつつ、両手を顔の前に合わせてお願いする。大の男がやる行為としてはなかなか鬱陶しいものではあるが、その場にいたもので不快に思ったものはいないようだった。
それが、ヒビキの人となりなのかも知れない。

「全く……男に抱きつかれる趣味は無いんだがな……」
暫くして、一文字はそう呟いた。志村はその言葉の意味を図りかねたらしく、ほんの少し小首を傾げる。
だが、その後に続く言葉によって、ようやく真意に気付く。
「飛ばすぞ。しっかり掴まってろよ」
「! あ、有難うございます!」
志村は一文字の言葉どおり、しっかりと一文字の身体にしがみ付く。
放送局に向けて発進する直前、一文字はヒビキに向き直った。
「片がついたら、病院に行く。俺を待たずにどっかに行くなよ? 泣くぞ」
照れ隠しなのか、軽口混じりの、『合流しよう』の言葉に、ヒビキは思わず笑顔になる。
了解、という意味を込めて、右手の人差し指と中指だけをたて、額の上に持っていく。
それを確認した一文字の目が少し細くなったと思うと、すぐに正面を見据え、バイクを発進させたかと思うと、すぐに見えなくなった。
小さくなる二人を見届けると、ヒビキもすぐにバイクを動かした。手塚の傷に響かないように、なるべくゆっくり、なるべく急ぎながら。

「ヒビキさん……感謝する」
ふと、後ろで手塚の声がした。志村の頼みを聞いたことに対してか、自分を病院に連れて行ってくれることに対してか分からなかったが……
おそらく両方だろう。そうヒビキは判断すると、
「いいっていいって。ま、大人しくしてな」
笑顔でそう声をかけ、病院に向けてバイクを走らせた。

(そういえば……伝え損ねたな、アイツに……)
ヒビキの後ろでバイクの振動に身体を揺らしながら、手塚は忘れ物に気付く。
自分に似た顔をした、あの男……一文字に、本郷の死を伝えられなかった事を。
目覚めてすぐで、志村に助け舟を出してやることしか出来なかったことを悔やむ。
(まぁ……身体を治してから、詳しく教えてやるとしよう……)
どのみち今の状態では、断続的にしか話せないだろう。なら、次に病院で合流したときに、ゆっくり話そう。
そこまで考えたところで、手塚はヒビキにもたれかかり、少しの間目を閉じた。
300この言葉を知っている ◆AMes0c0h.I :2009/04/03(金) 21:20:30 ID:p3y4/KTw
【日高仁志(響鬼)@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所(病院に向け出発直後)】
[時間軸]:最終回前
[状態]:顔面に傷、腹部に中度の火傷、強い決意。
[装備]:変身音叉・音角@仮面ライダー響鬼、劣化音撃棒×2、音撃増幅剣・装甲声刃@仮面ライダー響鬼
[道具]:基本支給品一式(着替え1着と元の服を含む)、野点篭(きびだんご1箱つき)
    釘数本、不明支給品×1(確認済)、「竜巻」(HONDA Shadow750)
【思考・状況】
基本行動方針:出来るだけ多くの仲間を守って脱出
1:手塚の治療の為、病院を目指す。
2:ダグバは放置できない。
3:別行動中の仲間に対する心配。
4:もっと仲間を増やす。
5:新たな仲間を信頼。
6:志村は信頼することを前提に行動する。
7:一文字・志村とは病院で合流する。


[備考]
※猛士の剣は音撃増幅剣・装甲声刃に変化しました。
※装甲響鬼に変身するには響鬼紅の制限が解除されないとできません(クウガ、ギルスと同じ制限)。
※折れた音撃棒は修理されましたが、多少品質が落ちます。
※手塚から一文字(R)と志村に瓜二つな敵が闘っていたという話を聞き、半信半疑です。


【手塚海之@仮面ライダー龍騎】
【一日目 現時刻:午後】
【現在地:D-5 山道沿いの休憩所(病院に向け出発直後)】
[時間軸]:死亡直後
[状態]:意識朦朧、胸に一文字の大きな傷、右上腕部に斬撃による傷(応急手当済)。全身に疲労とダメージ。
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト、強化マスク
【思考・状況】
基本行動方針:運命を変えないように何としても城戸を守り抜く。
1:治療の為、移動するための体力を回復し、病院を目指す。
2:志村、ヒビキと共に城戸と合流、城戸の力となる。
3:一文字(R)を認識。次に合流した時に本郷(R)の死を伝えたい。
4:夢の内容に動揺。
5:一文字・志村とは病院で合流する。


[備考]
※城戸が自分と同じ時間軸から連れてこられたと思っている為、城戸が死ぬ事は運命を変えられなかったことに相当すると考えています。
※サソードゼクターに選ばれ、仮面ライダーサソードへと変身できます。 但し、キャストオフ、クロックアップの方法を知りません。
※本郷の言葉から一文字隼人、風見志郎、ハナ、志村純一、クウガ、ダグバの事を知りました。
※携帯にデータが残っていたため、死亡者と禁止エリアについては知っています。参加者の蘇生に関しては知りません。
※志村から一文字(R)と志村に瓜二つな敵が闘っていたという話を聞き、信じています。
※傷には応急手当が施されましたが、依然きちんとした治療を受けなければ危険な状態です。
※ライアのデッキを志村に貸しました。
301この言葉を知っている ◆AMes0c0h.I :2009/04/03(金) 21:21:21 ID:p3y4/KTw
(思い通り!!)
疾走するバイクの上で、志村はヘルメットの中、口角を吊り上げていた。
大声で笑い出したいという欲求を堪えながら、前だけを見据え、バイクを操縦する一文字を観察する。
凄まじい速度のため、飛ぶように移り変わる景色には目もくれず、ただひたすらに放送局へと向かっているようだ。
(半分も成功すればいい方だと思ったが、これだけ上出来とはな……)
きっかけは、言うまでもなくあの放送だった。
始末したい人間と、利用できそうな人間が同時に存在しているグループにいたのでは、まともに動けそうもない。
なんとかして一文字を始末もしくは離脱させたかった。そう考えていた時に、橘と名乗る男――恐らくは本人だろうが――からの、突然の放送。
放送が始まった瞬間はただ驚き、放送の主が橘と名乗った時は青ざめるしかなかった。
志村はここで会った誰にも、橘という名の知り合いがいることは話してなかった。彼の名前を利用する、いい案が浮かばなかったからである。
しかし、もしあの放送で自分の名が出てきてしまったら、情報交換のさいに話さなかった理由を勘繰られる。
そうなれば、折角得た信用もまた危ういものとなってしまうだろう。藁にも縋る気持ちで携帯の画面を眺めていると、突然放送が中断された。
その瞬間、志村にとっては天啓が下りてきた気分だった。全てにおいて都合のいい口実が出来たのだ。
そう、あのタイミングでの自分のよく知る人間の危機は、別行動を取ってしまっても全くと言っていいほど違和感はないはずなのである。
上手く行けば、あのグループとも一時的に離れられるし、何より一文字を始末する算段を整えられる。
そこまで考えたところで、志村は情に訴えかけるように行動を開始したのである。

――結果は予想以上だった。ヒビキは志村の狙った通りに悩みながらも賛同してくれ、更に失念していた手塚もこれ以上にないタイミングで助け舟をくれた。
その上、付いてきたのは一文字である。これ程、自分に都合のいい状況はないだろう。
(まるで神がお前を殺そうとしているようだよ。なぁ、一文字……?)
心でそう呟き、一文字の横顔を盗み見る。ヘルメットで表情は見えないが、少し苦しげに見える。
そのことにほんの少し疑念を抱くが、一文字が言葉を発したことにより、すぐに頭の中から消え去る。

「いつまで抱きついてるんだ、気持ち悪いな。ほら、放送局だ」
志村は顔を上げ、前を見る。目の前の建物は遠くから見えた時より更に大きく、見上げるとどこか威圧感を覚えるほどだった。
この中のどこに橘チーフがいるかは分からないが、放送したという事実を考えると、上の階なのは間違いないだろう。
志村はそう推測すると、用済みになった一文字をどうするか考える。今この場で始末しようにも、ここは放送局の入り口の目の前だ。
中に誰かいるのだとしたら、最悪、殺しの瞬間を目撃されるかも知れない。そうなったら面倒だ。
「一文字さん。すみませんが、バイクはもう少し見えないところに置きませんか?放送局の裏とか……」
「ん? どういう意味だ」
志村の言葉を受けた一文字は、ほんの少し訝しがる。
「いえ、後から来る人に目撃されたら、色々とまずいのではないか、と……」
「なるほど……ごもっともだな。志村、いいとこに気付くじゃねえか」
納得したと見える一文字は、志村の助言通り、放送局の裏へバイクを走らせる。
志村は内心ほくそ笑んだ。これで、一文字の死体は滅多なことでは見つからないだろう。
乗り物は自分が有効利用してやればいい。ヒビキたちと同様に。そう志村が思っていると、一文字がバイクを放送局の物陰に駐車させた。
「この辺りでいいよな? 俺は紫外線が嫌いなんだ」
「えぇ、ありがとう御座います、一文字さん……本当に」
志村がそう言い終わるのと、アルビノジョーカーの大鎌が振り下ろされるのは、ほぼ同時だった。


##############################
302この言葉を知っている ◆AMes0c0h.I :2009/04/03(金) 21:22:08 ID:p3y4/KTw
「…………」
巻き上がる土埃の中、アルビノジョーカーはただ無言でいた。視線の先には、今しがた振り下ろされた大鎌が、地面にめり込んでいる。
かすかに腕についた返り血は、アルビノジョーカーに何の感慨ももたらすことは無かった。
ただ、眼前に移る、自らの行動により引き起こされた「結果」を、如何にして受け止めるか――それだけを考えさせられた。

「ふん……それが、お前の本当の姿か」
そう、一文字は身を捻り、頬の皮一枚切らせて回避行動を成功させていた。
大鎌が一文字の真横をすりぬけた後、一文字はそのまま回転を行い、軸足を急激に捻るとともに、もう一方の足で大鎌を押さえ込み、地面に食いつかせたのだ。
そのままの体勢で、恐らくは手ごたえが無かったことにより、ほんの少し思考が空白となっているアルビノジョーカーに、声をかけたのである。
声に反応し、こちらを憎々しげに睨むアルビノジョーカーを、一文字は目を細くし、睨み返す。
白を基調とした肉体に、ところどころ禍々しい棘が突き出している。
胸の真ん中には目も眩むように赤い、いわゆるコアのような球体がむき出しになっている。
そして人ならざる瞳が存在する頭部には、カミキリムシを彷彿とさせる腰までありそうな長い触角が伸びており、真っ赤なバイザーから覗く顔面は、骸骨のように見えた。
――どこからどう見ても化け物だな――
一文字はそう考えながら、ほんの数秒、アルビノジョーカーと視線を絡ませた。
やがて、骸骨のような口が開き、言葉を発する。
「……いつ、気付いた」
喉の奥から響くような、禍々しい声が一文字の耳に届く。
そのあまりの不快さに一文字は軽く眉を顰める。
「……当然だが、怪しいと思っていたのは最初からだ。手塚ってやつのお陰で、ほんの少し警戒がとけてしまったがな」
一文字は追撃に備えて全神経を集中させながら、話を続ける。
「だが、俺のなかで確信を得たのは、放送の後のお前の反応だな。お前……俺の後部座席にいながら、放送局に行きたいと懇願したのは、ヒビキにだったよな?」
「…………」
「普通、本当に気が動転しているのなら、自分の乗っているバイクを動かせる人に頼むべきだよな?少なくとも、俺ならそうするだろうな」
「…………」
「お前は、俺に気付かれるのを心のどこかで恐れていたんだろうな。まぁ、俺よりヒビキの方が情に訴え易いというのもあっただろうが」
一文字が、アルビノジョーカーの目の前で、見下したかのような笑みを浮かべる。
それが癇に障ったアルビノジョーカーは、大鎌を握っていた左手を離し、一文字に向けた。
左手から光弾が発射されるが、一文字は悠々とかわし、横に転がりつつ追撃を防ぐ。
腰を落としつつ体勢を立て直すその瞬間、一文字は出現させたベルトに手を添え、手を滑らせた。
すると小脇にヘルメットがいつの間にか抱えられ、身体も、至る所に緑のプロテクターが施されたスーツに変化した。
立ち上がると同時に、バッタを模したヘルメットを頭上に高く掲げ上げ、勢いに任せ被ろうとした瞬間、アルビノジョーカーの声を聞く。
「お前の考えだと、もし俺が『本当にお人よし』だった場合の説明がきかない筈だが……?」

ヘルメットで顔が隠れ、唯一露出されている顎を隠す前に、一文字は口を動かす。
「残念だったな。実は俺も『本当にお人よし』なんだぜ?」
返答が済むと、一文字は顎の装甲を装着した。
ヘルメットの複眼が光り輝き、マフラーが棚引いた。ゆっくりと顔から手を下ろすと、変身を完了した改造人間――ホッパー二号が、そこにいた。

##############################
303この言葉を知っている ◆AMes0c0h.I :2009/04/03(金) 21:22:55 ID:p3y4/KTw
「ふん!」
一陣の風のように、ホッパー二号はアルビノジョーカーへの距離を一瞬で縮めると、左拳を突き出した。
アルビノジョーカーはそれを大鎌の柄で受けとめる。様子見の一撃を受け止められた程度とホッパー二号は思い、右足による蹴りで追撃を仕掛ける。
がら空きだったわき腹に直撃し、アルビノジョーカーはうめき声を上げつつ、少し後ろへと蹴り飛ばされる。

まさか、実力行使に頼ることになるとは――アルビノジョーカーは、そう自嘲する。
上手く事を運んだつもりが、わずかな綻びから面倒な事態を引き起こしてしまったことを悔やんだ。
なにせ、一度敗北した相手なのだ。無防備なところを襲い、確実に息の根を止めてしまいたかった。
だが、こうなってしまった以上仕方ないだろう。アルビノジョーカーは半ば諦観し、戦って殺すための算段を練る。
前回負けたとはいえ、あの時点では実力は拮抗していたはずだ。アルビノジョーカーはそう考え、蹴られたわき腹の様子を見る。
(……これは?)
わき腹に走る痛みには、確かに違和感があった。
アルビノジョーカーの頭の中で、色々な考えが巡る。前回の戦闘と、今回の戦闘で決定的に違うもの――

「はぁっ!」
だが、答えを見つけるには至らなかった。ホッパー二号による飛び蹴りが、アルビノジョーカーの思考を中断させる。
アルビノジョーカーは、凄まじい速さでこちらに向かってくる右足に対抗し、両腕を交差させる。
済んでのところで防御に成功すると、衝撃をそのまま両腕で受け止め、更に力を込め、前に押し出す。
「ぉおおおお!」
アルビノジョーカーは腕にかかる負荷をものともせず、力任せにホッパー二号を押し返す。
前に突き出された両腕が左右に開くと同時に、行き場を失った力の反発によりホッパー二号は弾き飛ばされた。
「ちっ」
ホッパー二号は舌打ちをすると、空中で一回転し、着地する。その時、一瞬だけ全身の力が抜け、膝を崩しそうになるが、すぐに持ち直す。
(リジェクションか!?クソ……せめて、この戦いが終わるまでは、もってくれよ……!)
バイクに乗っていた時は、何とか平静を保つことが出来たが、戦闘では、僅かな機微が命取りになる。
定期的に襲い掛かるリジェクションの前兆が、ホッパー二号には早期決着を余儀なくしていた。
リジェクションによって身体に負荷がかかってしまったら、恐らく勝ち目はない。そんな相手を目の前にしているのだ。

腰を深く落とし、一瞬ためを置いてから、ホッパー二号はアルビノジョーカーへと突撃する。
加速を付けた右拳を顔面に叩き込もうとするが、
「同じ手を、食うかぁ!」
アルビノジョーカーが横にスライドするように動き、突きは虚しく空を切る。
外したことによりバランスが崩れ、ほんの一瞬隙が出来る。アルビノジョーカーはその隙を見逃さず、大鎌でホッパー二号の背中に渾身の一撃を叩き込んだ。
「がはっ!」
凄まじい衝撃を背中に受け、ホッパー二号は苦痛の声を上げる。たまらず膝をつき、血反吐を地面に撒き散らす。
そんなホッパー二号の姿に、アルビノジョーカーはチャンスとばかりに、顔面に蹴りを入れた。
なすすべも無く吹き飛ぶホッパー二号に向け、左の手のひらを持ち上げる。
「こいつも、持っていけ」
アルビノジョーカーが呟くと、左手が輝き、光弾が発射された。
遠ざかるホッパー二号にニ・三発当たると、ホッパー二号は更に勢いをつけて地面に叩きつけられた。
それでも尚連射される光弾は、容赦なくホッパー二号の周りに降り注ぎ、やがて土煙が視界を奪うほどに舞い上がった。
だが、アルビノジョーカーは執拗に光弾を連射し続けた。大半は土を抉るだけのようだが、時々、地面とは違う音がした。
アルビノジョーカーは、その音が何より心地よかったのだ。

「ハッハッハ!もう粉々にでもなったかな?」
舞い上がる土煙を少し離れた場所から眺めつつ、アルビノジョーカーはそう言った。
これだけやる必要は無かったのかも知れないが、主導権を握ったと確信したからには、必ず息の根を止めなければならなかった。
だから念には念を入れて、姿が見えなくなっても光弾を発射し続けたのだ。
304この言葉を知っている ◆AMes0c0h.I :2009/04/03(金) 21:23:37 ID:p3y4/KTw
しかし、何の声も聞こえなくなったところを見ると、恐らく殺害に成功したのだろう。
その結果に満足したアルビノジョーカーは、楽しさを堪えきれずに、大声で笑いを上げた。

と、その時。舞い上がる土煙から、突然何かが飛び上がってきた。
「とぉぉぉぉお!!」
「なっ!」
絶叫を上げつつ、ホッパー二号が飛び上がった。プロテクターは砕けている箇所や欠けた箇所があった。
ヘルメットの触覚のようなものは片方が中ほどから折れており、複眼は右目にひびが入り込んでいた。
そんなぼろぼろの状態で、どうやって――アルビノジョーカーがそう考える間もなく、ホッパー二号はアルビノジョーカーに向けて蹴りを放ってきた。
「はああああああああ!!」
二度目の絶叫を上げ、渾身の蹴りをアルビノジョーカーへと打ち込む。
慌ててアルビノジョーカーは防御の体制をとるが、間に合わずに不十分な体勢で蹴りを受け止めた。
「ぐっ、がぁあ!」
吹き飛ばされこそしなかったものの、衝撃の大部分を身体で受け止めたアルビノジョーカーは、後退させられ、緑色の血を口から吐き出した。
「悪いな。俺はまだ、死んでやる訳にはいかないからな!」
叫び、ホッパー二号はアルビノジョーカーに詰め寄る。
何故か微動だにしないアルビノジョーカーに、ホッパー二号は遠慮なく拳を叩き込んだ。
何度も何度も連打するが、まるで反応を示さないところをみると、やはり先ほどの蹴りが効いたのだろう。
ホッパー二号はそう考えると、とどめを刺すため、全力の右拳を胸に放った。

「何っ!?」
だが、その拳は寸前で止められた。突然動いたアルビノジョーカーに、腕を掴まれたのだ。
驚愕の声を上げたホッパー二号を前に、アルビノジョーカーは笑みを含んだ声で口を開いた。
「くっくっく……そうか、さっき感じた違和感はこれだったか!」
そう言うと、アルビノジョーカーは掴んだ右手ごと、ホッパー二号を投げ飛ばす。
何が起きているのか分からないホッパー二号は、すぐに立ち上がるものの、迂闊に手を出せずにアルビノジョーカーを見据えた。
「軽い……軽いんだよ、一文字!お前の攻撃がなぁ!!」
心底楽しそうにアルビノジョーカーは叫び、ホッパー二号を指差す。ホッパー二号は、その言葉に動揺を隠せないでいた。
――俺の攻撃が、軽い?手を抜いた覚えも、情けをかけたつもりもないのに――
ホッパー二号は、脂汗が滲み出るのを感じた。どうしようもなく立ちすくんでいると、アルビノジョーカーは言葉を続けた。
「前に、お前と戦った時は、俺は確かにこの姿では無かった……でもこの差は、それだけでは説明が付かない……お前、持病持ちかな?」
気付かれていた!そんな思いが、ホッパー二号の頭を突き抜けた。恐らく、バイクの上での表情を見られたのだろう。
目の前の化け物は、どうやら自分より一枚上手らしい。その上――強い。
前回の手ごたえから、リジェクションというハンデがあったとしても勝てない相手ではないと思っていたが、認識が甘かったらしい。
ホッパー二号はそう感じるが、それでも闘志は無くさなかった。何があろうと、負けるわけにはいかないからだ。

「確かめてみりゃいいだろ。お前程度にそれが出来るんなら、な」
精一杯の虚勢を張り、アルビノジョーカーへと殴りかかる。
だが、繰り出した拳はことごとく受け止められ、更には反撃のおまけまでも貰ってしまう。
それならばと、足払いを仕掛ける。狙った足は避けられてしまうが、そこまでは想定の範囲内。
顎を狙ったアッパーへと繋げるが、大鎌で受け止められ、膝蹴りのカウンターを腹に受ける。
腹を押さえてうずくまり、アルビノジョーカーを睨む。アルビノジョーカーは、すぐそこでホッパー二号を見下していた。
「弱いなぁ、一文字!」
そう言うと、アルビノジョーカーはホッパー二号を蹴り上げ、地べたに這い蹲らせる。
さらに、生かさず殺さずとでも言うかのように、急所を外して大鎌できり付け始めた。
ホッパー二号の身体の至るところから血飛沫が上がり、激痛が走る。悲鳴だけは、最後の意地として上げなかった。

「それじゃ、死んでもらうかな。じゃあな、一文字」
血まみれになったホッパー二号へ、ゆっくりと右手が向けられた。
その手のひらが発する輝きを、ホッパー二号はただ見つめていた。
305創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:25:55 ID:s/Z6r/OA
306創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:51:50 ID:CYx+4Bq+
307◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 21:54:58 ID:CYx+4Bq+

##############################

いつの間にか、一文字は真っ白な世界にいた。一体何が起きたのか、理解が出来なかった。
辺りを見回すが、白以外には何も無かった。自分が立っている場所も、向こう側も、空も。
わけもわからずこんな場所にいるという事が、一文字にとっては不愉快に感じた。
だが、突然目の前に現れた人物の存在に、あらゆる考えが吹き飛んでいった。

「本……郷?」

そこには、微笑を浮かべた、この殺し合いの場で死んだはずの戦友がいた。
なぜこんなところに?そんな思いが浮かんだが、この状況に既視感を覚え少し考え込む。
そして、数時間前の出来事を思い出し、ふっと笑う。

「そうか……俺を、迎えに来たんだな?」

恐らく、自分はもう死んだのだろう。一文字はそう考えた。
まだ本郷が死んだということを知らなかった自分に、夢の中にまで現れて、別れを告げるような男だ。
きっと今回も、自分が死んだ事を知って、わざわざ迎えに来たのだろう。全く、死んでからもお節介な奴だ。
一文字はそう思いながら、本郷を見た。

本郷は、少し困った顔をしたあと、苦笑いをしながら顔を横に振った。
その後、真顔になり、胸の前で握りこぶしを作り、一文字の顔を真っ直ぐに見
308◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 21:55:51 ID:CYx+4Bq+
「……俺はまだ、生きてるってか? もう少し、頑張れって言いたいのか?」
本郷はその言葉を聴くと、笑顔で頷いた。人間の黒い部分を、普通より多く見続けた男の顔とは思えないほどの笑顔だった。
そのあまりに無邪気な笑顔に少し絆されそうになるが、現実の状況を考えると、一文字はつい愚痴りたくなった。

「無茶言ってくれるよな……俺はもうボロボロだぜ?全力でやってあの状況だ……もう無理だろ?」

そう一文字が呟くと、本郷はまた首を横に振る。しかし、先ほどのように、苦笑いでは無かった。
いつか見た、決意した男のような……共に死線を潜り抜けた、戦士の顔だった。
まるで、『お前の力はそんなものじゃない』と言ってくれているようだった。

「……わかったわかった。お前が言うなら、多少は無茶もしてやるさ」

少し呆れて、だが心強い激励をもらったような気がして、一文字は言葉を放つ。
それを受けて、本郷がまたも笑顔になる。一文字は、その笑顔をみると、何故か本当に出来るような気がしてきた。
と、周りが眩い光に包まれる。少しづつ、本郷の姿が見えなくなってくる。

「ま、あっちで大人しく待ってろよ。ちょくちょくお前に呼び出されちゃ、俺も適わないしな」

一文字がそう言うと、本郷がかすかに唇を動かした。声は聞こえなかったが、『大丈夫だよ』と言っていることが、何故か理解できた。
その唇の動きに合わせて、本郷が左手を腰に当てる。そのすぐ後に、右手を動かした。
指先まで伸びきったその右腕は、ゆっくりと胸の前を通過し、左肩の近くで停止する。
その本郷の動きを、一文字は黙って見つめて、強く頷いた。

――大丈夫だよ、一文字。だって、お前は――

309◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 21:57:13 ID:CYx+4Bq+
############################


ホッパー二号が目を覚ますと、アルビノジョーカーの右手が目の前に見えた。
もう自分が抵抗をしないのだと判断したのだろう。左手に移し変えた大鎌は地面に下ろし、すぐには構えられない位置にあった。
さらに、右手は光を放つばかりで、いつまでも光弾は発射されずにいる。チャージでもしているのか、或いは自分の反応を楽しみたいのだろう。
すでに勝った気でいるアルビノジョーカーは隙だらけだった。右拳を握り締め、がら空きの腹に狙いを定める。そして――

「ライダァァァァァーーー!!」
「!?」

叫ぶと同時に起き上がり、懐に潜り込む。まさかまだ余力を残してるとは思わなかったアルビノジョーカーは、反応が格段に遅れた。

「パァァァァァーーーーーーーンチ!!」

そのまま、腹部に正拳突きを突き刺す。今までのどの攻撃よりも、手ごたえを感じた。
「がはぁ……!!?」
腹を押さえて、アルビノジョーカーがたたらを踏む。予想外のダメージに戸惑っているようだ。
アルビノジョーカーは、信じられないといった目でホッパー二号を見上げる。そして、歯を食いしばると大鎌で斬りつけてきた。

「ライダァァァーーーー!チョォォォーーップ!」

だが、ホッパー二号は刃を潜り抜け、大鎌を中央からチョップで叩き折った。
「馬鹿なぁ!!」
アルビノジョーカーは叫び、二つに分かれた大鎌を握り締めたまま、ホッパー二号を見た。
310創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 21:57:23 ID:DAVRXXtE
311◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 21:59:17 ID:CYx+4Bq+
今まで圧倒していたはずの敵が、今度は逆に圧倒的な力を用いて反撃をしてきた。その異常な事実が、アルビノジョーカーに冷静な判断力を失わせた。
一文字の心を投影したかのような、煌々と輝くホッパー二号の複眼に僅かな恐怖を抱いたが、怒りと悔しさから我武者羅に攻撃をしかけた。
「がぁあぁぁああぁあああああああ!」
叫び声を上げながら光弾を発射するが、まるで当たらない。掠りすらしない光弾に、アルビノジョーカーは焦りと苛立ちを覚える。
攻撃を掻い潜りながら詰め寄ってきたホッパー二号に、アルビノジョーカーは左拳を突き出した。
だが、その拳は受け流されるだけでなく、絡めとられて、一瞬のうちに投げ飛ばされる。
「ぐふっ!」
背中から叩きつけられ、アルビノジョーカーは潰れたような声を上げる。
すぐに立ち上がり、辺りを見回すが、ホッパー二号は視界から消えていた。
標的を見失い、焦るだけのアルビノジョーカーに、天から声が届いた。

「ライダァァァァァァァァァァーーーー!!」

――あぁ、大丈夫さ。本郷――

「何っ!?」
力の限り叫んだ、もはや雄叫び以外に形容しようがない声に、アルビノジョーカーは硬直した。
見上げた先には、ホッパー二号が今までのどの技よりも、威圧感を放ちつつ飛び上がっていた。
高く、どこまでも高く。

――なぜなら、俺は――

「キィィィィィィィィィィーーーック!!!」

――この言葉を、知っている!――
312◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 22:00:06 ID:CYx+4Bq+

############################


「馬鹿な……馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!!」
――もはや肉体の限界を超えているであろう、あの傷で!
――なぜここまで戦える!
――認めない!俺は認めないぞ!!


明らかに改造人間のスペックを超える速度で迫るホッパー二号に、アルビノジョーカーは心で叫ぶ。
このままでは、何が起きたのかすら理解もできず、あの蹴りに砕かれてしまうだろう。
だが、避ける手段も防ぐ手段も思いつかない。混乱する頭では防御という考えすらまわらずに――

「ぐあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

『ライダーキック』を、その身で味わうこととなった。


##############################
313◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 22:00:52 ID:CYx+4Bq+

「終わった……の……か……?」
変身が解けた一文字は、息切れをしながらアルビノジョーカーの行方を見つめる。
激しい土埃のなか、志村の履いていた靴が、その方向に落ちているのが見えた。
全体像は見ることが出来なかったが、夥しい緑色の液体があたりに散らばっているのだけは確認出来た。
よく分からないが、機械のものであろう部品も落ちていた。

「倒した……ようだな……」
一文字は、それを見届けた後、大の字で地面に寝転がり、空を見上げた。
とても殺し合いが起きているとは思えないほどの青さで、雲もゆっくりと流れている。
一仕事終えた後だと、尚更それが心地よく見えた。

「まったく……感謝するぜ、本郷……」
あの時、夢で見た本郷の行動。一文字は、ほんの少しだけ理解出来た気がする。
何故かはわからないが、心も身体も奮い立たせ、自分の実力以上の力を発揮できたようだ。
恐らく、あの言葉は、まじないやジンクスとかとはまた違った――陳腐な言い回しだが――魔法の言葉なのだろう。
だが、いちいち叫ぶのは自分の性に合わない。これからも、よっぽどの事でもない限り叫びはしないだろう。
一文字は、そんな事を思いながら、少し口元を緩めた。

この後、どうしようかと一文字は思考する。
放送局に行くと提案したのは志村だ。今更、放送局に向かう義理もないはずだ。
だが……放送の主がどうなったのかは、一文字にも気になるところである。
身体を休めた後、入るだけは入ってみよう。そう考え、一文字が日陰に歩き出そうとしたその時、背後で何かが動いた音がした。

と同時に、激しい勢いで後ろに引っ張られた。
314創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 22:01:14 ID:DAVRXXtE
315◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 22:01:38 ID:CYx+4Bq+
「今のは本当に効いた……本当に、もうダメかと思ったぞ……!」

首を絞められながら、聞き覚えのある声が聞こえてきた。振り向くまでもない、志村だろう。
激しい怒りの込められたその言葉は、そのまま首を絞める「何か」にも伝わってきた。
少しずつ血の気が引くのを一文字は感じながら、志村に疑問をぶつけた。
「貴様……なぜ生きて……!?」
「足元をみてみるんだな……!」
志村にそう言われ、自分の右足を見る。太もも、膝、脹脛と続き――足首が、なくなっていた。
機械部分がむき出しになり、素人にはよく分からない部品を落としながら、電気を帯びていた。
何故、こうなったのか?それは、他でもない自分が一番よく知っている。
簡単に言うと、無理をしすぎたのだ。あれほどのダメージを受けながら、痛みを無視して肉体の限界を超えた。
それに加え、最後の一撃にはありとあらゆる力を使い切ったのだ。恐らく、過負荷に足が耐え切れなかったのだろう。
「俺に当たった瞬間に砕け散った……! お陰で、俺は生き残れたってわけさ……!!」
そう志村が言うと、更に力を入れて「何か」で首を締め付けた。首の周りが斬れ、血が滲み出てくる。

(惜しかった……んだが……な……)
遠くなる意識の中、一文字はふと、一人の女性の姿が頭に浮かんだ。
この殺し合いの場で出会った、ハナという女のことを、最後まで守り通せなかったことを悔やむ。
一文字は、彼女が生きて帰れるように、心の底で祈った。
そして、意識が途切れる寸前、文字通り最後まで力を貸してくれた親友に、言葉を残した。

「本郷……俺は……お前みたいには……やれない……な……」

次の瞬間、一文字の首と胴体が分断された。
316創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 22:01:47 ID:ALfMDREy
,
317◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 22:02:22 ID:CYx+4Bq+
##############################

ワイヤー内蔵型指輪をしまい、志村は疲れた顔に、笑顔を浮かべていた。
「ははは……! まったく、梃子摺らせてくれたな……」
目の前に転がる一文字だったものに、志村は話しかける。
もちろん、返事など期待していないが、死して尚自分に溜まったストレスが発散されないのだ。
それ故、そこにあるのが死体だろうがなんだろが、とにかく怒りをぶつけたかった。

「これはあり難くもらっておくぞ」
そういうと志村は、一文字の首を持ち上げ、そこについている首輪を抜き取る。
人の首にしか付いていないものを持ち歩く、というのは、それだけで疑われそうだが、首輪の解除にはどうしてもサンプルが必要なのだ。
それに、見せなければ問題はない。仮に見つかったとしても、灰になっていた場所の上に落ちていたなど、多少苦しくても言い逃れは出来る。
とりあえず、これを調べることが出来る条件が揃うまでは、持っていて損はないだろう。
そう考えた志村は、首輪をデイパックの奥深くへとしまう。

「さて……」
一文字の荷物も、必要なものを自分のデイパックへと入れると、志村は放送局に向かい始めた。
思ったよりも時間がかかってしまったが、放送局へ行くと言った手前、中の様子を知っておかないといけないだろう。
中に敵がいる可能性もあるが、一応はライアのデッキも持っている。殺すとまではいかずとも、逃げ出すことは出来るはずだ。
問題は、早々に橘チーフに遭遇してしまう場合だが……適当に誤魔化して、別行動を取ればいいだろう。
自分が覚えている中でも、もっとも騙しやすい人種なのだ。分かれて動き、自分が危険ではないと触れ回ってくれればそれでいい。
今は、無理に利用する必要はない。
後は、手塚やヒビキだが……三回目の放送が始まる前には、合流しておきたいところだ。
『一文字が死んだ』と彼らが知れば、間違いなく最初に疑われるのは自分だ。出来れば、そうならないように放送前に手を打つ必要がある。
318◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 22:03:03 ID:CYx+4Bq+
「ぐっ!」
そう考えをめぐらせていると、突然胸に痛みが走った。『ライダーキック』を受けてしまった場所である。
『ライダーキック』……志村の世界にも、カードを使用して使うことの出来る技に、酷似したものがある。
しかし、少なくとも志村が知る中では、一文字が放ったキックは、自分の世界のキックを遥かに凌駕していた。
もし、まともに受けていれば……?
もし、一文字が全快の時に受けていれば……?
(仮定なんてどうでもいい!勝ったのは俺なんだ!)
ふと、頭をよぎる考えを無理やり振り払い、志村は放送局へ向かう。
生き残るため、これからの策の下積みのため――そして、神となるため。




【一文字隼人@仮面ライダーTHE FIRST  死亡】

319◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 22:04:35 ID:CYx+4Bq+

##############################



【志村純一@仮面ライダー剣・Missing Ace】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:G-3 放送局裏】
[時間軸]:剣崎たちに出会う前
[状態]:腹部に軽度の火傷(応急手当済、治癒進行中)、胸に中程度のダメージ、強い疲労。2時間変身不可(アルビノジョーカー)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ラウズカード(クラブのK、ハートのK)@仮面ライダー剣、蓮華のワイヤー内蔵型指輪@仮面ライダーカブト、
    ライアのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、特殊マスク、ホンダ・XR250(バイク@現実)、首輪
【思考・状況】
基本行動方針:人間を装い優勝する。
1:放送局の中を確認する。ヒビキ達との合流は第3回放送前には済ませたい。
2:もう慢心しない。ダグバなどの強敵とは戦わず泳がせる。
3:馬鹿な人間を利用する。鋭い人間やアンデットには限りなく注意。
4:誰にも悟られず、かつ安全な状況でならジョーカー化して参加者を殺害。
5:橘チーフを始め、他の参加者の戦力を見極めて利用する。自分の身が危なくなれば彼らを見捨てる。
6:『14』の力復活のために、カテゴリーKのラウズカードを集める。
7:放送局内で橘チーフと遭遇した場合、理由を付けて離れる。
320◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/04/03(金) 22:06:16 ID:CYx+4Bq+
投下終了です。
妙な時間の投下ですみません……
指摘や感想、お待ちしてます!


代理投下終了。
321創る名無しに見る名無し:2009/04/03(金) 23:49:09 ID:8jMcMblm
投下&代理投下乙です!

うおおおお!!これはなんと見事な志村復活劇!!
橘さんの放送を利用するあたり抜け目ないなあw
バトルシーンでの立ち振る舞いや時々見せる小者っぽさがとてもらしいw
やっぱりアルジョになったらかなり強いですね。今後もステルスとしての活躍に期待できそう!

そして一文字の死力を尽くしたバトルにももちろん燃えました!
本郷の優しくも熱い励ましを受けて立ち上がる姿は本当にカッコイイ!!
それだけでなく、足首が無くなっている事に気付くシーンなどはゾクっとしました。
本郷が一文字だと思い込み後を託した手塚が志村を助け、その志村が一文字を殺す
というのもなかなか因果な事だなあ……
とても面白かったです!GJ!!

そして予約もたくさん来て嬉しい!!皆さんがんばってください!
322創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 00:23:48 ID:HyhUFOp+
投下乙!!
い、一文字いいいいいいいいいいぃぃぃぃぃ!!
……おのれ志村、もっとステルスやれぇぇぇぇぇ!!

見事な一文字の散り際と志村復活に乾杯。
アルビノジョーカーのカラーリングもあって、
どことなく本郷×ダクバを彷彿とさせる一戦でしたw
そして、間接的に本郷がこの流れを生んだのは良い意味で辛いなぁ……

別行動のヒビキ手塚は果たしてどうなるのか?
着々と火種が集まりつつある放送局の展開は?
この一話を経ての今後にも期待せざるを得ませんw
GJ!!


……予約が三つ重なるのっていつ以来だろ?w
どれも展開が気になる予約で楽しみ!!
323創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 21:27:20 ID:bXlnzl1J
投下&代理投下乙です!!!
熱い…熱いぞ一文字!!!
志村も復活で今後も楽しみすぎる!GJ!!!
324創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 21:43:52 ID:0nO+J0+Z
まったく……いいキャラだったぜ一文字。
まったく……いいSSだったぜ書き手さん。

ライダーキックのシーン、かっこよすぎる。
325創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 23:06:27 ID:NrjjZ4Q4
前回のライダーロワ読破記念に全作未視聴な俺が質問

こいつらって中空からどういう原理で急降下(加速)してるの?
@人外だから空中を蹴って勢い増加
A気合い=勢いとなる見えないスラスターが付いてる
Bそういうもんなんだよ

やっぱBが正解かね?


あと、蹴りの直前に空中で回転したりしたら、推進力が落ちるだろ…とか悩んだら負け?

前回も今回も怪人がかっこいいな
326創る名無しに見る名無し:2009/04/04(土) 23:21:51 ID:HyhUFOp+
大多数はBだし深く考えたら負けだなw
稀にガチでスラスター使用するライダーもいるんだがwww

ライダーロワと言いつつ怪人関連が熱いのは良い意味で仕様だw
327創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 00:00:27 ID:7aG49tWc
本当に空中蹴れる奴もいるよなw
328 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/05(日) 22:03:34 ID:XuTcOQsx
牙王、ゴ・ガドル・バ投下します。
329牙の本能 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/05(日) 22:05:08 ID:XuTcOQsx
廃屋同然の朽ちた小屋は、変に小奇麗なだけの建物より余程落ち着いた。
保養所を目指す途中たまたま目に留まっただけの粗末な木製の家屋である。黒く変色した外壁が、過ぎ去った年月の長さを伝えている。
中は酷く散らかっていた。錆び、朽ち、同じく長期間放置されていたのだろう道具達は、専門の知識がなくとも農具の類だと知れる。
一時代昔を感じさせるそれらの風物も、ガドルにとっては「リントの道具」で一括りにされるものでしかなかった。リントの風俗に詳しいグロンギなど、居るはずもない。

腐食し、ところどころ抜け落ちている床に気絶したままの牙王を横たえる。寝かせる、と言える程の優しい所作ではない。
体力の回復を図るならそれこそ保養所等の整った設備を使うべきなのだろう。だが、勝算も考えずに嬉々としてダグバに立ち向かったこの男にそのような清潔感は無用であるように思えた。
牙王の性質は人間よりグロンギに近いのではないかとさえ思える。そんな事を考えたとき、クウガ以外のリントを個として認識したのは初めてだと気付いた。
腰を下ろし気を静める。堂々とした姿勢が軍服姿と相まって疲れを知らぬ歴戦の戦士を思わせた。
休息は牙王が目覚めるまでのしばしの間だ。
手当てまでしてやるつもりはなかった。そんなことより、突きつけられた事実の重さを考えたい。
ダグバは究極の闇の力を使うことなく、リントの道具だけで牙王を倒した。牙王程度の実力ではダグバを本気にさせることはできなかった、ということだ。
それはそのままザギバス・ゲゲルの成功の難しさを物語っている。
直接相対して良く分かった。思ったとおり、ダグバを倒すには新たな力が必要だ。
宣言したとおり、リントの戦士達と戦い、強くなる。
どれだけの強者が生き残っているかは知らないが、悲壮感はなかった。できないこととは思わない。
最強種族と謡われたゴ族にあって、頂点を極めたゴ・ガドル・バである。

330牙の本能 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/05(日) 22:06:02 ID:XuTcOQsx
牙王が目を覚ました。いかにも寝たりないと言った乱暴な所作で身を起こそうとし、苦しげに呻く。

「骨が折れているようだな」
「野郎はどうなった……。ここはどこだ」

わざわざリントの言葉を用いたガドルの僅かな気遣いさえ無視して牙王が首を振った。
ダグバと戦った地点からそれほど離れていないことを伝え、さらにガドルは淡々と事実を述べる。

「お前はダグバに負けた。ダグバに本気を出させることさえ、叶わなかった」
「ち……食いそびれた上に、勝ち逃げか」

密かに抱いた予想に反し、牙王は敗北を知らされてもそれほど悔しい様子には見えなかった。
負けたこと、戦士としての実力が下回ってしまったことについて思うことはない。それよりも決着が付かなかったことが重要だ、ということらしい。
刹那的だ。その辺りはガドルとは違う。決定的に違う。
牙王は体の調子を確かめているのか、あちこちを曲げたり触ったりしては顔を歪めている。腕は立っても所詮肉体は脆弱なリントのもの、そういうことだろう。
ガドル、ダグバとグロンギの中でも屈指の強者との連戦を経ているのだ。ガドルと会うまでのことは知らないが、性格からして似たようなことをやってきたに違いない。
生きていることが既に、奇跡に近いのだ。
そんな幸運も牙王の興味を引くことはできないらしい。どうやら動けると判断した牙王は立ち上がろうとし、そこで少しよろめいた。
心なし、顔が白い。

「休まなくていいのか」

心配ではなかった。明らかに不調を訴える体を平然と無視する、その無謀への興味だ。
自身の体の不調さえ、あたかも使い捨ての効く道具であるかのように突き放すその態度は何に由来するものか。

「必要ねぇなあ。そんなことしてる内に獲物が逃げちまう」

331牙の本能 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/05(日) 22:06:44 ID:XuTcOQsx
なるほど、とガドルは声に出さず得心する。
つまるところ、ガドルにとってのザギバス・ゲゲルのような目的はこの男にはないのだ。いや、ガドルにとっては手段でしかない戦いそのものが、牙王の目的と言うべきか。
牙王はダグバのことを聞いたときに「全てを喰らいつくす牙」と己を評した。その表現の適切さに今更になって気付く。
その通り、牙王とはまさしく牙なのだろう。食欲と言う欲望に直結し、あらよるものを喰らいつくすために振るわれる道具だ。
この男自身が本能であるなら、意思も、目的もあろうはずがない。
己の体の崩壊すら、関知するところではない。

「どうした。何をぼさっとしてる。やる気がねぇなら置いてくぜ」

ダグバとの戦いの後、移動を始めたときから考えればそこそこの時間が立っている。休養としては十分だろう。
いや、ととりあえずの否定を返す。本心は隠したまま、さりとて嘘ではない言葉を続けた。

「よくもそこまで無理をする、そう思っただけだ」

ニヤリと牙王が笑う。その意を告げるよりも早く、風化に任せていた小屋の壁を突き破って現れた怪物が、牙王に飛びかかった。
文字通り二人の間に割って入った怪物は牙王と絡まり合うように反対側の壁から外へと飛び出す。幾度か転がった後、突き出された牙王の足に怪物が弾き飛ばされ、やっと両者の間に距離が生まれた。
獰猛に体を震わせる化物は二本の足で立ちながらもその姿にはサイに似た特徴があった。メタルゲラスという名を二人は知らない。

対峙する牙王もまた既に人の姿ではなくなっていた。一目で相当な重量があると知れる怪物を蹴り飛ばした力は変身後の姿、オルタナティブ・ゼロのデッキによってもたらされたものだ。
使うものの居なくなった小屋にも、散乱するガラス片を始め反射物はいくらでもあった。荒々しい化物の立てる足音はガドルにも察知できていたし、牙王が気付かなかったはずもない。
知っていてギリギリまで変身しなかったのだ。焦らすように、楽しむように。
挿入されたカードに従い、牙王の手元から『ソードベント』と音がなる。一瞬後には槍状の得物が届けられていた。
抵抗の意思を察知した怪物が跳躍しオルタナティブ・ゼロに襲いかかる。
332牙の本能 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/05(日) 22:08:11 ID:XuTcOQsx
決着は一瞬だった。
化物の着地に合わせて身を引いたオルタナティブ・ゼロが牽制の一撃を与え、よろけた所を下から切り上げ完全に体勢を崩す。
がら空きになった胴へ腰だめに放たれた大振りの一撃が決め手となり、吹き飛ばされた怪物は爆発炎上した。
後には、若草に燃え残ったちろとろとした小さな火だけが残る。それだけだった。
熱せられた空気が陽炎を作り視界を揺らす。それを背に飢えた牙は仮面越しにガドルを見据えた。

「誰が無理してるって……?行くぜ」

疲労を感じさせぬ正確な判断力。
真の獣さえ凌駕する狂暴性と、卓越した戦闘センス。牙王の持つそれらは全て一級のものだ。
一流の戦士と呼ぶに差し支えはない。それなのに。
次がこの男の最後の戦いになる。ガドルはそう思った。


333牙の本能 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/05(日) 22:09:01 ID:XuTcOQsx
【D-3 地図に載らない程度の小屋】
【1日目 午後】
【牙王@仮面ライダー電王】
【時間軸】:最終決戦前。
【状態】:全身打撲、疲労大、あばら3本骨折、腹部に重度のダメージ、2時間分変身不可(オルタナティブゼロ)、30分変身不可(ガオウ、グレイブ)
【装備】:ガオウベルト
【道具】:マスターパス、基本支給品一式×2、ランダム支給品1?(牙王、ゾル大佐分。共に未確認)、
     コンビニから持ってきた大量の飲食料(中量消 費)
【思考・状況】
基本行動方針:全て喰らい尽くした上で優勝
1:ダグバを喰らう。
2:ガドルを連れ、人が集まりそうな施設を適当に目指す。
3:餌(人質)が確保できたら放送局を利用して死にたがりな獲物を誘き寄せるか?
4:機会があれば煩わしい首輪を外す。
5:ガオウライナーを取り戻す。
備考
※会場のどこかに時の列車(予想ではガオウライナー)が隠されていると推測しています。
※木場の生存には未だ気づいていません


【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後
[状態]:全身打撲、疲労中、右目と左腕に違和感、右足部装甲破損、
[装備]:首輪探知携帯
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:強き者と戦い、強くなる。
1:リントの戦士を倒す。
2:再びあの二人と戦う。
3:桜井侑斗と決着をつける。
4:戦闘を繰り返し、強くなる。
5:最終的にダグバを倒す。
6:クウガの異変に僅かの恐怖。何れ再戦する
備考
※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。

【 メタルゲラス@仮面ライダー龍騎  消滅 】
334 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/05(日) 22:09:44 ID:XuTcOQsx
投下終了しました
335創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 22:16:21 ID:MALpYWkz
投下乙!
……なんですが、オルタナティブ・ゼロのデッキは前話でダグバの手に渡っています……
336 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/05(日) 22:22:55 ID:XuTcOQsx
指摘ありがとうございます。これは初歩的なミスを……。
時間を少し進めて、ガオウベルトを使用する形に修正いたします。
337創る名無しに見る名無し:2009/04/05(日) 22:33:37 ID:MALpYWkz
修正頑張ってください。
内容自体は非常に面白かったですw
ガドルが冷静に牙王を分析してるのに対して、
牙王はガドルを全然相手にしてないっていう差が印象深い。
最後の予感(?)がどうなるかも非常に楽しみですね。そーいえばこの2人は橘さん放送は聞いたのかな?それで結構動きも変わりそうw

メタルゲラスが消えても悲しくなんかないぞ。うん、悲しくなんか……合掌
338創る名無しに見る名無し:2009/04/06(月) 10:51:48 ID:rhN9BgP6
お二方ともGJ!
志村復活と胸を付く一文字の死に様面白かったです。
冷静なガドルと、まさしく王の貫禄を持つ牙王の描写。まさに一級品のSSでした。
339 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/06(月) 19:27:45 ID:4K31QdbG
お待たせしました。修正版を投下いたします。

>>331以降を以下のものに差し替える形でお願いします。
340牙の本能 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/06(月) 19:30:11 ID:4K31QdbG
なるほど、とガドルは声に出さず得心する。
つまるところ、ガドルにとってのザギバス・ゲゲルのような目的はこの男にはないのだ。いや、ガドルにとっては手段でしかない戦いそのものが、牙王の目的と言うべきか。
牙王はダグバのことを聞いたときに「全てを喰らいつくす牙」と己を評した。その表現の適切さに今更になって気付く。
その通り、牙王とはまさしく牙なのだろう。食欲と言う欲望に直結し、あらよるものを喰らいつくすために振るわれる道具だ。
この男自身が本能であるなら、意思も、目的もあろうはずがない。
己の体の崩壊すら、関知するところではない。

「どうした。何をぼさっとしてる。やる気がねぇなら置いてくぜ」

ダグバとの戦いの後、移動を始めたときから考えればそこそこの時間が立っている。休養としては十分だろう。
いや、ととりあえずの否定を返す。本心は隠したまま、さりとて嘘ではない言葉を続けた。

「よくもそこまで無理をする、そう思っただけだ」

ニヤリと牙王が笑う。その意を告げるよりも早く、風化に任せていた小屋の壁を突き破って現れた怪物が、牙王に飛びかかった。
文字通り二人の間に割って入った怪物は牙王と絡まり合うように反対側の壁から外へと飛び出す。幾度か転がった後、突き出された牙王の足に怪物が弾き飛ばされ、やっと両者の間に距離が生まれた。
獰猛に体を震わせる化物は二本の足で立ちながらもその姿にはサイに似た特徴があった。メタルゲラスという名を二人は知らない。

対峙する牙王もまた既に人の姿ではなくなっていた。一目で相当な重量があると知れる怪物を蹴り飛ばした力は変身後の姿、ガオウフォームによってもたらされたものだ。
荒々しい化物の立てる足音はガドルにも察知できていたし、牙王が気付かなかったはずもない。
知っていてギリギリまで変身しなかったのだ。自らを焦らし、楽しむために。
ガオウがベルトの左右に取り付けられたパーツを乱雑に放り上げた。金色の光によって連結されたそれらは鮫の刃を思わせる凶悪な剣、ガオウガッシャーとなりガオウの手元に吸い寄せられるように落下した。
抵抗の意思を察知した怪物が跳躍し、ガオウに襲いかかる。
決着は一瞬だった。
341牙の本能 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/06(月) 19:32:14 ID:4K31QdbG
化物の着地に合わせて身を引いたガオウが牽制の一撃を与え、よろけた所を下から切り上げ完全に体勢を崩す。
がら空きになった胴へ腰だめに放たれた大振りの一撃が決め手となり、吹き飛ばされた怪物は爆発炎上した。
後には、若草に燃え残ったちろちろとした小さな火だけが残る。それだけだった。
熱せられた空気が陽炎を作り視界を揺らす。それを背に飢えた牙は仮面越しにガドルを見据えた。

「誰が無理してるって……?行くぜ」

疲労を感じさせぬ正確な判断力。
真の獣さえ凌駕する狂暴性と、卓越した戦闘センス。牙王の持つそれらは全て一級のものだ。
一流の戦士と呼ぶに差し支えはない。それなのに。
次がこの男の最後の戦いになる。ガドルはそう思った。


342牙の本能 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/06(月) 19:33:49 ID:4K31QdbG
【D-3 地図に載らない程度の小屋】
【1日目 午後】
【牙王@仮面ライダー電王】
【時間軸】:最終決戦前。
【状態】:全身打撲、疲労大、あばら3本骨折、腹部に重度のダメージ、2時間変身不可(ガオウ)
【装備】:ガオウベルト
【道具】:マスターパス、基本支給品一式×2、ランダム支給品1?(牙王、ゾル大佐分。共に未確認)、
     コンビニから持ってきた大量の飲食料(中量消 費)
【思考・状況】
基本行動方針:全て喰らい尽くした上で優勝
1:ダグバを喰らう。
2:ガドルを連れ、人が集まりそうな施設を適当に目指す。
3:餌(人質)が確保できたら放送局を利用して死にたがりな獲物を誘き寄せるか?
4:機会があれば煩わしい首輪を外す。
5:ガオウライナーを取り戻す。
備考
※会場のどこかに時の列車(予想ではガオウライナー)が隠されていると推測しています。
※木場の生存には未だ気づいていません


【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後
[状態]:全身打撲、疲労中、右目と左腕に違和感、右足部装甲破損、
[装備]:首輪探知携帯
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:強き者と戦い、強くなる。
1:リントの戦士を倒す。
2:再びあの二人と戦う。
3:桜井侑斗と決着をつける。
4:戦闘を繰り返し、強くなる。
5:最終的にダグバを倒す。
6:クウガの異変に僅かの恐怖。何れ再戦する
備考
※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。

【 メタルゲラス@仮面ライダー龍騎  消滅 】
343 ◆6VDLcuc3FQ :2009/04/06(月) 19:35:54 ID:4K31QdbG
以上で投下終了です。
344 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 01:15:15 ID:YuYJGUQa
風見士郎、加賀美新、香川英行、投下します。
345 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 01:17:51 ID:YuYJGUQa
「ふむ…」
ホテルの窓から眺める香川英行は、呟いていた。

共に戦ってきたはずの木場勇治に突如として襲われ川へと突き落とされ、そうして這い上がった先で今居るホテルを発見した。
「プラトン」そう看板に書かれているがホテルの名前だろうか、別に気には留めなかった。
濡れた衣服のまま行動していては体力は落ち病に冒されてもしかたがない。
着替えと体力回復にうってつけと考えホテル内へと潜入した。
やはり人の気配は無く無人と化している。
誰かが潜むには持ってこいの場所だが、今のところは敵の気配すら感じない。
そうして辺りを警戒しながらホテル内を探索する香川は従業員用の更衣室を見つけた。
着替えがないかと思い入った結果、当たりだった。
ホテルマンの制服と、誰かが着てきたであろう黒いスーツがハンガーに掛けられていた。
そうしてスーツの方を掴み取った香川は、そのまま客室へと向かった。
見た限りでは、いくつか開けっ放しの扉が数箇所あるのがわかる。
どうにも『突然、人が消えた』という感じに思えてくる。
そう考えながら意図も容易く辿り着いた客室に素早く入り鍵を掛けると、軽くシャワーを終わらせた。
そして濡れた衣服を余所目に、新たに手に入れたスーツへ着替え始める。

その時だった、新たな放送が聞こえたのは…。

次々に呼ばれる死者の名前、その中で知った名前が出てきた。
『海道直也』、共に赤い化物と戦った者だ、木場勇治と同じくオルフェノクだった青年。
彼は危険視すべきだと判断したオルフェノクの中でも除外だと思っていた。
しかしその彼も死んでしまった。これで信頼し得るオルフェノクはいなくなった。
だとすれば残りのオルフェノクは全て危険人物だと見たほうがよさそうだ。
主催者スマートブレイン、龍のような怪人、木場勇治。しかし木場勇治に仲間が他にいてもおかしくはない…。

「…海堂君、君の死を無駄にはしません」
そう考えながら香川は新たに着替えたスーツに袖を通して呟くと先程放送を告げた携帯電話へと目を向けた。
そこに映るのは島全体の地図。香川は現在の位置を把握するためにじっと睨み付ける。
木場に襲われ川を伝って辿り着いたホテル。その位置はおおよそには把握した。

「問題は桜井君の位置ですね…」
そう、何より先に優先したいのは桜井侑斗との合流である。
放送で呼ばれなかったとはいえ木場に襲われた可能性も高い、一刻も早く捜し出したいところである。
しかし、桜井がどう動いているかなど検討の付けようが無い。
あちらも自分を探してくれているのなら近くにいてもおかしくはないが…そんな都合良くはいかないだろう。

346 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 01:19:26 ID:YuYJGUQa
「研究所…ですか」
ふと目に留まった施設を呟いた。地図からすれば最も近い施設である。
脱出や首輪の解析を考える者が集まっている可能性は高い。
しかしそんなことを主催が黙っているだろうか?
いや…主催の真実は未だ見えていない。もしかするとそれさえも目的の内なのか。
「…ふむ」
脱出を目的とする桜井侑斗も研究所を目指しているかもしれない。
自分と同じような考えを持っていればだが…。
こんなことならはぐれた場合の合流場所を決めておくべきだった。
しかしそんなことはもう遅い、待っているだけでは合流は果たせない。

『桜井侑斗を探しつつ研究所を目指す』
それが今すべき行動である。
だが一番の問題、武器がないことが重大である。研究所までの道中に敵と出会うことなど用意に想像できる。
それこそ木場勇治との再会だって考えられる。しかし危険を承知でも行かなければならない。

そして武器ならあると、思い返した。
完璧すぎる己が頭脳。それが最大の武器である。

考えを纏めた香川は一呼吸つくと、機敏な動きで部屋を出るとそそくさとホテルを後にした。
目指すは研究所。探すは桜井侑斗。
再度の合流を求めて香川は新たな道を北へと向けた。


* * *
347 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 01:20:08 ID:YuYJGUQa
来訪者を静かに待つ風見志郎。
仕掛けた罠で多数の敵を葬るために、この研究所で待機状態であった。

「なぁ、風間」
ただただ沈黙する彼へと横に座していた加賀美新が声を掛けた。
それに目線だけを向ける風見。聞き返さずともこの男なら用件を話すだろうと考える。

「俺さ、この研究所の周りを探ってくるよ。だからさ、そのバイク少し貸してくれないか?」
少しだけ息を整えて言う加賀美は風見の所有するバイク、ハリケーンを指差して言った。
「…そう言って私から移動手段を奪う気ですか?」
「な…!?違うっての!俺はただ見回りをしたいだけだ!」
鋭い目つきで視線を向ける風見に声を荒げて応える加賀美。

「だったら徒歩で行えばいいじゃないですか」
「俺は疲れてるんだよ!」

「…なら、やめればいいじゃないですか」
2つ目の風見の台詞を聞くと同時に加賀美は視線を地へと向けた。

「何かしてないと落ち着かなくてさ…デネブや天道のためにも…一刻も早くこんな戦い終わらせたいんだ」
熱き瞳に悲しみと死者の幻を映して加賀美は言葉を続ける。
「だから必要なんだ…協力してくれる仲間が!もちろんお前にも”協力”してくれる仲間が!」
声を張って再び風見へ視線を戻したその瞳には、あきらめを知らない情熱が宿っていた。

それを聞いて僅かに思考を巡らせる風見。
加賀美の事情などはどうでもいい。彼の言う”協力”というのも自分への妨げの意味だ。
だが興味があるのは「仲間」という言葉。見回りついでに仲間となる人物を探すつもりだろうか。
それならば好都合である。仕掛けた罠への客を招いて来てくれるということにもなる。

「な!すぐ返すからさ!頼む!」
手を合わせて頼み込む加賀美。それを見る風見の口元が少しだけ釣りあがる。

「…いいでしょう。貸してあげましょう」
「本当か!」
頷く風見を見て目を大きくする加賀美。そんな彼に風見はキーを渡す。
「但し、これ以上傷は増やさないでくださいね。」
「あぁ!わかってるって!」
渡されたキーを握り締めた加賀美は、足早にハリケーンへと跨ってキーを差す。
作動させたエンジン音と駆動音を耳にしながらもう一度風見へと視線を戻す。

「じゃ、すぐに戻ってくるから!」
それだけ言い残すと加賀美の乗ったハリケーンは研究所を後にした。

「…”仲間”を頼みましたよ」
走り去る加賀美の背を見ながら微笑む風見。
あの男は単純だ。人を騙すようなことなどはできない人間である。だからこそ扱いやすい。
「戻る」と言ったのなら必ず戻るだろう。仲間という名の客を連れて…。

* * *
348 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 01:20:57 ID:YuYJGUQa
研究所を離れたハリケーンは大通りを駆けてゆく。
運転手である加賀美新はハンドルを強く握り締め辺りへ視線を配っていた。
誰かいないものか、仲間として共に行動してくれる協力者はいないのか。
そう思いながら大通りを駆け抜けていた。

だが、そう都合よく見つかるものではない。
殺し合いが行われている場で人目が付くような場所を移動するわけがない。
そんなことしているのは自分ぐらいであろう。
心のどこかで僅かに微笑むとハリケーンの速度を少しだけ上げた。
「…ん?」
しかしそんな時、横に並んで飛行するガタックゼクターが何かを発見したようなしぐさを見せた。

「お、おい!」
突然動き出したガタックゼクターは勢い良く舞い上がると、まるで目標を定めたかのように飛び出した。
「どこ行くんだよ!」
まるで自分の声が届いていないガタックゼクターを追うために、加賀美はハリケーンを最高速へと加速させた。

* * *
349 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 01:23:42 ID:YuYJGUQa
人目を避けて脇道を行く香川。もう一時間以上は歩いているだろうか、運が良いのか悪いのかここまで人っ子一人見当たりはしない。
敵ならば会いたくないが、味方になり得るならば是非とも会っておきたいところである。
そう考えながら地図を確認する。地図によれば先程より北上した交差点近くまで来たはずである。
周りには少しばかりの民家や商店が見える。
そして先程からも続くように敵らしきものとは遭遇する気配はない。喜ばしいことだが不気味にも感じる。
だがそうやって足を進める中で、一つ奇妙な物体が目に付いた。
(…あれは?)
視線の先に映ったのは、弱弱しく飛び回る小さな赤い物体だった。
赤い物体は立ち並ぶ商店の前をゆっくりと低空飛行すると一軒の商店の前で動きを止めてしまった。

「不可思議な物体ですね。ミラーモンスターとも違うようですが…」
赤い物体に視線を奪われた香川は眼鏡越しに注意深く観察する。
どうやら物体は完全に行動を停止させているようだ。ミラーモンスターのように独自の意思を持っているのか、それとも誰かの誘導で動いているのか。なんにせよ迂闊に近づくのは危険である。
(無視しても良いですが…もし利用価値があるのなら手にしたいところですね…)
もちろん無駄な行動はしないのがベストである。しかし何も道具がない今、無いよりはマシかもしれない。もしかしたら脱出の要になるかもしれない。

「ものは試しですね」
そう考えた香川は赤い物体から少しはなられた建物の影に隠れると近くに落ちていた空き缶を、物体のそば目掛けて転がした。
コロコロと音を立てて転がった空き缶は停止した物体の直ぐ傍で動きを止めた。
(…反応無し、ですか)
心中の言葉通り、物体には何の変化も無い。というよりは全くの無反応。まるで完全に機能停止しているようにも見える。これならそのまま近づいても襲われる心配は無さそうだ。
そう思い、用心の為に拾った空き瓶を破片にして握り締めると建物の影から一歩一歩と赤い物体へ近づいた。
350 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 01:25:15 ID:YuYJGUQa
「これは…カブト虫?」
香川は赤い物体を目に映して一言呟くだけだった。
思った通り物体が襲い掛かってくることはなかった。ビンの破片も用無しとしてそのまま地面へと置いた。
だがそんな考えを上回るように目に映った物体が奇怪だった。
気になった物体の正体は、なんと赤い装甲のカブト虫。それも普通のカブト虫よりも何回りから大きい。
それにどう見ても機械と思えるメカニカルなデザインである。これはどう見ても生物では無く人工物の機械である。
「こんな精密なもの一体誰が?それに何故こんなところで停止を?」
慎重にカブト虫を手に持って呟く。
精密さはもちろんのこと、これが動きを止めた場所が気になった。
『水島豆腐店』…何故、豆腐屋なんかの前で動きを止めたのか?ただ単に動きを止めた場所が豆腐屋の前だったというわけだろうか。そこまで深く考える必要はないのかもしれない。

「…それにしても見るほどに興味深い物体ですね」
場所においての考えはこれまでにして、物体の構造を見て感慨深く観察する。
カブト虫を模したメタリックレッドの機械。何処を触ろうと全く反応を示さない。やはり完全に停止してしまっているようだ。ならば先程飛行していたのは何なのか?単なる燃料切れ前の行動か。
何にせよこれを操っている者はいないようだ。いるならばこの時点で襲い掛かってきているはずである。

「…ふむ、誰か知っている人がいるかも――」
カブト虫をディパックに詰めようとした、その時。

背後から排気音が聞こえた――。

* * *
351創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 01:46:31 ID:jnvOrdhN
352創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 01:47:21 ID:jnvOrdhN
353 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 02:41:52 ID:YuYJGUQa
「…ッ!?」
瞬時に振り返る香川。手にはまだカブト虫を握り締めている。
(やはり罠でしたか!?)
先に思ったようにカブト虫を操っている者の罠だったのか。
タイミングが遅い気もするが、それも計算なのか。
瞬間、眼鏡越しに視線を強くして動揺する香川の眼前を高速の青い物体が飛び交う。
すると、それとほぼ同時に一台のバイクが現れた。

青と白を貴重としたオートバイと、それを駆るスーツの青年。
青年は不思議そうな目で香川を見つめたまま、バイクを急停車させた。
「…ガタックゼクター、この人は?」
先程の高速の青い物体が青年の肩付近に浮遊して、青年の言葉を聞いている。

すると青い物体がクワガタ虫に見えることを注意深く観察していた香川は瞬時に気が付いた。
もしかすると手に持ったカブト虫と同型のモノかも知れない。
そしてすぐに襲ってこないところを見るとこの青年は殺し合いに乗っていないか。それともそのように演じているのか。どちらにせよ油断はできない。
ここは慎重に会話を進め敵味方の判断を付けよう。その上でなら協力を仰ぎ、このカブト虫についても何らかの情報を得ることができるかもしれない。

「…君は、い「あんた!その手に持ってるの!」
香川が青年に問いかけようと言葉を発するが、それは青年の大声に遮られた。
「カブトゼクターじゃないか!それをどこで!?」
興奮したのかバイクを飛び降りて、僅かに歩み寄る青年。
香川はカブト虫にカブトゼクターと言う名があることを理解し、同時に青年が敵である可能性の低さを確信する。しかし名前ぐらいはどうでもいい、知りたいのは用途である。

「…まさか、あんたが天道を?」
しかし「どこで手入れたのか」という質問に答える前に青年は、一人で何かを納得する。
「そうか、ガタックゼクター、見つけたんだな天道の仇を」
瞬間、青年はガタックゼクターと呼ぶ青いクワガタ虫を掴んで香川を睨み付けた。
だが同時に香川は理解した。この青年は何か「勘違い」をしていると。

「待ちなさい!!」
刹那、ガタックゼクターを掴んだ青年に香川の怒声が飛んだ。
それに「え?」と言わんばかりの表情を見せる青年。
「君は何か勘違いをしているようですね。私がこのカブト虫を見つけたのは今しがたです」
その言葉に、視線を香川に残したままガタックゼクターを掴んだ腕をゆっくりと下ろす青年。
「…話を聞いてくれますね?」
興奮気味だった青年の表情が落ち着きを取り戻したのを見て、問いかける香川。
同時に、青いクワガタを手から離した青年を見て敵意の喪失を確信する。

「私は香川英行…清明院大学の教授です」
「…俺は、加賀美…加賀美新です」
2人はお互いに名を名乗ると先程の緊張感が僅かに解けたように感じる。
そうして香川は新たな名前をその優秀な頭脳にインプットして話を続ける。

「加賀美君、このカブト虫は君の持つクワガタ虫と同系の物ですね?」
「…はい。カブトゼクターとガタックゼクターです」
「ゼクター…?それはいったい?」
先程も出てきた単語だが共通する部分は「ゼクター」という部分。
それが何なのかがわからないから用途もわからないのである。

そうしてゼクターに興味を示した香川は次々と加賀美へと質問攻めを行う。
それにただ順々に応えていく加賀美であった。
354 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 02:42:37 ID:YuYJGUQa
* * *

カブトゼクターは、唯、悲観するしかできなかった。
見知らぬ異世界へと飛ばされて、主人である天道総司を失ったあの時から。
よもや天道が敗れるとは思いもよらなかった。太陽の如き存在感と正義を持った男。
彼を失った衝撃が強すぎた。島中を周っても次なる資格者として天道総司と肩を並べる者などそう容易く見つからない。それに新たな資格者を見つけてもベルトが無いのである。
ベルトは天道に勝利した男が持ち去って、男は自分とそっくりな黒いゼクターの資格者となってしまった。
このような状況では資格者を選んだところでなんの意味も無い。
だからもう自分は必要ないのだ。主人も無くベルトも無いゼクターなど役立たずの何者でもない。
自分は不必要。機能を停止させ静かに見守ろう、この異常な世界を。
天の道は既に閉ざされたのだから。

そんな中でカブトゼクターは、とある商店を見つけた。
「水島豆腐店」。豆腐…いつか天道総司が料理に使っていたのが印象に残っている。
ならば少しでも天道を思い出せる場所で自らを閉ざそう。
それが役目を失ったゼクターの末路である。

そうして豆腐店の前で機能を停止させたカブトゼクターは香川英行の手に渡った。
そして今は天道と最も親しかった男、加賀美新の手に握られていた――。

* * *
355 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 02:43:26 ID:YuYJGUQa
「なるほど、つまりこれはライダーへ変身するためのものだと」
「そうです、他にも幾つかあるけど俺がここに来てから見たのは研究所にいる風間のホッパーゼクターだけです」
加賀美への質問攻めからカブトゼクターの事を把握した香川は、再び加賀美からカブトゼクターを受け取って頷く。

「本来、カブトゼクターの所有者は天道総司という男だが…一度目の放送で呼ばれていましたね」
「……はい。だからもしかして香川さんが天道を…って思ってしまって」
先程の早合点の行動を詫びる加賀美。

「そのことは、もういいですが…何故、カブトゼクターは動かないのです?」
「わかりません…。こんなの俺も初めて見ました。ゼクターにも資格者を選ぶように意思があるんだから、自分の意思で動きを止めてるんだと思うんですが…」
2人の視線がカブトゼクターに集まり、その上からガタックゼクターが何度か突付いているが全くと動じないカブトゼクター。

「ゼクターの意思か、主催の細工か…どちらにしてもこのままでは変身は不可能ということですね」
「え、えぇ。何よりベルトも無いですし…」
新たな武器、道具になると思っていたがこのままでは何も役に立たないガラクタである。
香川には現段階ではそういう風にしか思えなかった。
加賀美の情報によればZECTなる組織が作ったライダーへの変身ツール。
しかしそれも資格者、ゼクター、ベルトのセットで初めて成立する。例え資格者になれてもゼクターだけでは何の意味も無い。凡庸性の低い代物である。

「…今はまだ無用の長物のようですね、加賀美君預かって貰えますか」
「あ…わかりました」
香川は見切りを付けてカブトゼクターを加賀美へと譲る。それをすんなりと受け取ってディパックへとしまい込む加賀美…と、その時――。

2人の携帯電話から放送用の音楽が流れた。

「「?!」」
驚いて同時に携帯電話を取り出す2人。
当然である、次の放送にしてはいくらなんでも早すぎる。死亡者の放送が定期的なものであるなら1度目から2度目までの間隔は理解できる。もしこれが3度目の放送ならば今までより断然に早すぎるのである。

注意深く携帯の画面を凝視する2人の目に映ったのは一人の男の人影だった。
映像はノイズが走り鮮明とは言えず、その姿はシルエットぐらいにしか把握できなかった。
だがしかし音声だけはクリーンに聞こえた。

〔まず、この放送を目にしている参加者の皆様に突然の無礼を詫びさせてもらう〕
〔私……橘朔也は、君達と同様、このゲームの参加者だ〕
2人の視線はノイズの入る画面へと集中する。

〔君達の中には、既に私の名を聞いている者もいるかも知れない。
 が、できることならばこれからの話はそれらによる先入観を持つことなく聞いて欲しい〕
〔単刀直入に言わせてもらおう。……私は、ゲームの終了に必要な鍵を所有している〕
その言葉に香川はあらゆる可能性を考えるが、まだ口には出さない。放送はまだ続くようだ。

〔そこで、だ。……協力者を募りたいと思う。我々の結束なくして、脱出という悲願の達成は有り得ない〕
〔こちらの現在地は――――君達も察しがついているだろう。……そう、放送局だ〕
小さく頷く香川は僅かに加賀美に目を向けると彼もまた真剣な眼差しで放送を聴いている。

〔ここから我々は――!?〕
突如、不自然な形で音声は途切れ、同時にノイズが強くなるとそのまま放送は終了した。
356 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 02:44:05 ID:YuYJGUQa
「「…?!」」
突然始まり、突然終わった放送。それにお互い視線を合わせて疑問符を打つ2人。
「どういうことだと思います?」
「…脱出のための協力要請、ですが…」
放送内容は単純であった。脱出のための協力者を募るというもの。
それだけならば理解できないことはないが、最後の不自然な途切れ方が気になる。

「この橘という者が頭の切れる者なら、もう放送局にはいないでしょう…」
「…何故、ですか?」
尋ねる加賀美を見ながら一呼吸を付いた香川は言葉を続ける。

「放送を行った以上は、放送局に人が集まるのは必須、それが敵であろうと味方であろうと、
だからそれを予測できているのなら既に放送局から離れているはずです」
「でも、それじゃ放送した意味がないんじゃ…」

「つまり…彼が望む協力者とはそこまで予測出来ている者のはずです。彼が知恵者であればですが」
香川の言葉に深く息を吐きながら頷いて納得する加賀美。

「ですが…そのような事を主催が許すわけがない。おそらく放送が途切れたのは主催が介入したせいでしょう」
「それじゃ…橘って人は…!」
「危機的状況にあるか、既に命を無いでしょう」

すると香川の最後の言葉を聞いた瞬間、加賀美の目の色が変わった。
拳を強く握り締めて携帯電話がミシミシと軋む。

「俺、助けに行きます!」
そうして加賀美は声を張って香川へと告げた。
瞬間、香川は眼鏡越しに加賀美の眼差しを見て一つの答えを出した。
この男は「敵でない」と。そして性格的には城戸真司に近いものを感じる。

「落ち着きなさい加賀美君、まだ命が無いと決まったわけではありません。それに主催の介入を逃れ既に放送局を離れてしまっている可能性もあります」
興奮気味の加賀美を落ち着かせるように香川は冷静に言う。
「このまま行けば敵に囲まれてしまうという可能性もあります。…そこで、一つ質問に答えくれますか?」
それに無言で香川を見つめる加賀美は問い掛けを待つ。

「…あなたは、ここに来るまで桜井侑斗という人物に会いませんでしたか?」
「ッ!?桜井侑斗!?そいつを知ってるんですか!?」
香川の質問が聞こえたと同時に、詰め寄って唾を飛ばしながら言う加賀美。
その反応に僅かにたじろく香川。

「どうやら、あなたも桜井君を知っているようですね。聞かせてくれませんか?その理由を」
咳払いをして再び問いかけた香川を見て、心を落ち着かせながら頷く加賀美。

「はい……まずデネブってやつと出会って…」
そうして加賀美は手短に、このゲームの現在に至るまでの事情を振り返って聞かせた。

* * *
357 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 02:45:21 ID:YuYJGUQa
〔ここから我々は――!?〕
一方で、研究所に一人残った風見士郎も、唐突の放送を聞いていた。

(…馬鹿な奴だ、殺してくれと言っているようなものだ)
放送を聞き終えて携帯電話しまいこむ。
放送など自分の位置を知らせるだけの愚策だということは承知の事実。
どうせなら研究所とでも言ってくれれば仕掛けた罠も日の目を見るというのに。
内心で溜息を付きながらスクッと立ち上がる。

(とは言え、気になるのは「ゲームの終了に必要な鍵」…)
本当にそんなものが存在するのか怪しいものである。
主催がわざわざ支給するとは到底思えない。
馬鹿らしいとは思うが…実在するのなら破壊しなければならない。
このゲームの勝利者となるためには邪魔なものである。

放送によって参加者が放送局に集まるのは目に見えている。
研究所とは正反対の位置であるため、ここに人が来ることは極めて低い。
折角仕掛けた罠も唯の飾りである。
だったら自分も放送局へと向かい参加者を直接減らすべきである。

(…それにしても、遅すぎますね)
しかし移動手段であるハリケーンを加賀美が持ち出したまま戻ってこない。
地図から見てほぼ対角線に位置する場所まで徒歩で向かうには時間が掛かりすぎる。
変身して向かうにも、現場について解除されれば意味が無い。

(そうなると残るは……電車ですか)
残った最大の移動手段は先程も途中下車してきた電車。
最寄の駅としては研究所前の駅がある。
それに先程乗っていたものが上りだとすれば下りもあってもよいとは思うが…。
正確なダイヤはわからないが行ってみる価値はある。ここにいても放送局へは近づけない。
加賀美も戻るような気配を感じられない。

(…決着は預けておきます)
考えを纏めた風見は、荷物を担ぐと踵を返して研究所の外へと向く。
もはやここに用は無い。罠であるFOX−7は後の楽しみということしておこう。
加賀美がどこへ行ったかは知らないが、ゲームの終了を阻止するのが優先である。
同時に参加者を減らせる絶好のチャンスでもある。逃さない手は無い。

そうして、ハリケーンのことを僅かに悔やみにながらも風見は足早に研究所を後にする。
目指すは研究所前の駅。そこから南下するための電車に乗る。

それが妹を救うための近道だと考えながら…。
358 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 02:46:04 ID:YuYJGUQa


【風見志郎@仮面ライダーTHE NEXT】
【1日目 午後】
【現在地:B-7 研究所外】
【時間軸:】THE NEXT中盤・CHIHARU失踪の真実を知った直後
【状態】:全身打撲、中。両腕、腹部にダメージ中。
【装備】:ホッパーゼクター+ゼクトバックルB、デンガッシャー
【道具】:基本支給品×2セット、ピンクの腕時計、ラウズカード(ハートJ、クラブJ)、FOX-7+起爆装置(残り3)
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いに勝ち残り、優勝してちはるに普通の生を送らせる。
1:D−9の駅から電車に乗って放送局へ向かう。
2:「ゲームを終わらせる鍵」の破壊。
3:研究室に設置したFOX-7を、最大の被害を与えることのできるタイミングで利用。
4:ショッカーに対する忠誠心への揺らぎ。
5:葦原涼が死んでいなかったことに驚きと僅かな安堵。
6:いずれあの男(加賀美)と決着を付ける。
【備考】
※モモタロスの死を受け止め、何か複雑な心境です。
※ホッパーゼクターを扱えます。
※FOX-7は基本的に、起爆装置を使った時にのみ爆発します。爆発の規模は使った量に比例します。
 起爆装置は全携帯が内蔵している専用アプリに起爆装置のコードを打ち込んで操作するもの。
 スイッチ式と時限式の両方の使い方ができます。
※加賀美のデイパックが二つになっていることにまだ気付いていません。


※研究所の研究室に、FOX-7が一つ仕掛けられています。


359創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 02:47:10 ID:YuYJGUQa
 
 
360 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 02:50:27 ID:YuYJGUQa
「…なるほど」
香川は加賀美のこれまでの事情を聞いて深く頷いていた。
桜井侑斗の仲間であるデネブ、加賀美の知り合いという風間と影山、紫眼のライダーと「灰色の怪人」へと姿を変えた帽子の男、それに同行する少女、そして赤いマフラーの怪人。それらが克明に頭脳へと刻まれた。
桜井のことを知っていたのはデネブという人物を通じてというのは合点がいった。
そして気になったのは「灰色の怪人」へ変わった帽子の男。おそらく…と言うよりは完全にオルフェノクであろう。話し振りからすれば殺し合いの乗っているようだ。
やはりオルフェノクは危険な存在である。木場勇治共々、排除すべき人物である。

「…考えが纏まりました。放送局へ行くべきです」
眼鏡を中指で抑えながら告げた香川。それに首を傾げる加賀美。
「でも、橘って人はそこにいないかもって…」
加賀美は先程香川が言った言葉で聞き返す。

「その通りです。しかし橘という者が主催の介入を逃れたという可能性は低すぎます」
自分の考えを淡々と告げていく香川。
「ですが何より、桜井君ならば放送局へと向かうはずです。君と同じようにね」
その言葉にハッとして香川の言いたいことを理解した加賀美。

「そうか!放送局へ向かえば橘って人も助けられるし桜井侑斗とも合流できるってことか!」
「えぇ、どちらも確実ではないですが。」
これが香川の出した答えだった。加賀美の情報によれば研究所までの間に桜井侑斗はいなかった。だとすればこれ以上の北上は無意味である。
それに桜井の性格なら加賀美と同じように放送局へ向かおうとするはずである。
ただし変に放送を勘ぐらなければではあるが。

「そうと決まれば!急ぎましょう!」
新たに意気込んだ加賀美は素早くハリケーンへ跨ると、香川を後ろに乗るように誘う。
「…それはいいのですが、確か風間という方が待っているのでは?」
加賀美の誘いは充分にわかるのだが、彼の情報の中で出てきた研究所に持つ風間なる人物。
今乗っているバイクも彼の物だと言う。
別に、このような命の保障の無い場で律儀なことを言うつもりは無いが、それでも加賀美の性格からすれば、そういうことにはキチンとしておきたのではと思ったからの言葉である。

「…そうだった、「すぐに戻る」なんて言ってからだいぶ経っちまったしな…」
思い出したかのように言う加賀美は軽く頭を掻く。
「………でも、大丈夫です。あいつは風みたいな男だから…今戻っても、もういないかもしれません」
少しだけ吹っ切ったように言う加賀美は僅かに微笑んで加賀美に告げた。
その微笑は、裏で加賀美が自分なりに思考を巡らた結果であった。

皆が放送局を目指すことになったのなら研究所へは近づかないだろう。
先程研究所の周りを探った限りでは人の気配はなかった。
例え風間がゲームに乗っていようと相手がいなければ何もできないだろう。
それにハリケーンは自分が持っているのだ、そう簡単に長距離移動もできないはず。
少なくとも間接的には風間を抑制することに繋がっている。

「さぁ急ぎましょう!香川さん!」
改めて誘いを掛ける声に張りがかかる加賀美。それに応じるようにガタックゼクターが飛び回る。

「あなたがそれでいいなら構いませんが」
そう言いながらハリケーンへと歩み寄って加賀美を見やる。
それに唯、加賀美は力強く頷いた。

「…わかりました、それではお願いしますよ」
加賀美の応えに了承した香川は、そう言いながらハリケーンの後部へと跨った。

香川がしっかりと座したことを確認した加賀美はハリケーンのハンドルを回し排気音を響かせる。

そうして名前の通りの走りを見せるオートバイは2人を乗せて駆け出した…。
361創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 03:25:23 ID:MDEUoPTP
遅いかな?支援
362 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 04:02:40 ID:YuYJGUQa
【加賀美新@仮面ライダーカブト】
【1日目 午後】
【現在地:D−8 豆腐屋前】
[時間軸]:34話終了後辺り
[状態]:脇腹に刺し傷、頭部に打撲、肩に裂傷、背中に複数の打撲、右足にダメージ
   強い怒りと悲しみ。新たな決意。
[装備]:ハリケーン、ガタックゼクター、ライダーベルト(ガタック)
[道具]:基本支給品一式 ラウズカード(ダイヤQ、クラブ6、ハート6)不明支給品(確認済み)2個、カブトゼクター(機能停止)、放置されていたデイパック(基本支給品×2、ラウズアブゾーバー、V3ホッパー、首輪(一文字))。
[思考・状況]
基本行動方針:桜井侑斗を始めとする協力者と合流する。
1:香川と共に放送局へ向かいつつ桜井侑斗と合流する。
2:橘朔也(顔は知らない)の救出。
3:風間(風見)と危険人物以外との戦闘は阻止する。
4:危険人物である澤田と真魚、バダー(名前は知りません)を倒す。
5:風間(風見)といずれは戦うことへの迷い。出来れば戦いたくない。
[備考]
※デネブが森林内で勝手に集めた食材がデイパックに入っています。新鮮です。
※首輪の制限について知りました。
※友好的であろう人物と要注意人物について、以下の見解と対策を立てています
味方:桜井侑斗(優先的に合流)
友好的:風間大介、影山瞬、モモタロス、ハナ(可能な限り速やかに合流)
要注意:牙王、澤田、真魚、バダー(警戒)
※風間大介(実際には風見志郎)が戦いに乗っていることを知りました。
※放置されていたデイパックの中身は確認していません。
363 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 04:03:20 ID:YuYJGUQa
【香川英行@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:午後】
【現在地:D−8 豆腐屋前】
【時間軸】:東條悟に殺害される直前
【状態】:深い後悔、強い決意。全身に僅かなダメージ。
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:殺し合いの阻止
1:加賀美と共に放送局に向かいつつ侑斗と合流。
2:オルフェノクは全て危険視。
3:木場勇治を抹殺後、及び侑斗と合流。
4:東條は必ず自分が止める。
5:ガドル(名前は知らない)、北崎を警戒
6:五代雄介に一条薫の死を伝える。
7:侑斗を生存させるため、盾となるべく変身アイテム、盾となる参加者を引き入れる。
【備考】
※変身制限に気づきました。大体の間隔なども把握しています。
※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。
※木場からオルフェノク・スマートブレイン社についての情報を得ました。
※死者の蘇生に対する制限について、オルフェノク化させる事で蘇生が可能なのではと思いはじめました。
※帽子の男(澤田)はオルフェノクと確信。
※少女(真魚)、マフラーの怪人(バダー)、風間、影山は警戒。



※カブトゼクターは、自らの意思で機能停止しています。心境の変化や新たな資格者を認めれば目覚めるかもしれません。
364創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 04:04:24 ID:MDEUoPTP
支援
365 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/07(火) 04:06:59 ID:YuYJGUQa
以上投下終了します。
タイトルは「夢と野望と現実と」です。
366創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 15:29:42 ID:tPTWz3WP
投下乙です
指摘が幾つかあります

まず、香川教授ですが、前回の話で「私たちは動物園に向かう」と発言しています
状態表には存在していませんが、行動指針を定めていたのは間違いないと思います
なので、何処に行こうかと思考することはまず無いと思うのですが…この辺りの説明をお願いします

次に、加賀美についてですが…加賀美は今まで自分から風見の下を離れたことはありません
これは「風見から目を離さない」という目的があったからこその動きです
事実、離れた事があるのは襲撃に乗じて風見が逃げたあの一件だけであり、しかもその後に執念深く風見を探し出しています
この状況下で自分から風見から離れるとは思えません

あと、これは小さい問題なのですが、風見の口調も少し違いますね

以上の理由により、該当箇所の修正を要求します
367創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 15:40:28 ID:tPTWz3WP
あ、それともう一つ
こちらは内容とは関係ないのですが

投下が規制された場合、一時投下スレにて一時投下を行い、代理投下を促すのがマナーです
今回は投下開始から投下終了までで3時間ほどかかっているようなので…
投下終了の宣言が無いと、その間誰も書き込めなくなってしまいますのでご理解願います
368創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 16:27:52 ID:ZA4kcYXb
投下乙です。

今回の氏の作品には複数の問題点があったと存じます。
よって、この場で修正破棄要求をさせていただきます。
個人的に問題と思われる場所をまとめましたので、以下の議論スレで対応をお願いします。
また他の住民の方も意見がありましたら、同スレに。
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1210423244/l50
369創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 16:30:30 ID:ZA4kcYXb
おっと、ID:tPTWz3WPとの被り申し訳ない。
書き込み前に新着レスをチェックしそこねました。
とりあえずルールに則り、以後は議論スレに場所を移しましょう。
370創る名無しに見る名無し:2009/04/07(火) 16:34:47 ID:tPTWz3WP
了解しました、誘導感謝致します
では、以降は議論スレという事で
371 ◆Z9EUSuuwiU :2009/04/08(水) 03:29:31 ID:qEcfIALu
本当に申し訳ありませんでした。
他作品を把握しきれていませんでした、よって破棄させてもらいます。
ご迷惑おかけしました。
372創る名無しに見る名無し:2009/04/12(日) 00:17:07 ID:xWVSWRB6
こういった破棄された作品たちがもし、採用されていたとしたらどうなったんだろ……。
chiharuが大暴れしてたりとか。
373創る名無しに見る名無し:2009/04/12(日) 01:18:17 ID:1k5G3qgC
そういえば最初の方でちはる出てきて破棄になったのあったっけ。
まぁ一応リレーなんだしもし一つでも違ってたらその先の展開も大きく変わってただろうなぁ
374創る名無しに見る名無し:2009/04/12(日) 01:22:50 ID:k+rxsnJl
正直ちはる出してもなーと。
展開以前にルールくらいは最低把握して色としか言えん。
375 ◆N4mOHcAfck :2009/04/12(日) 06:09:49 ID:CZadZzzI
東條悟、三田村晴彦投下します。
376大切な人は誰ですか ◆N4mOHcAfck :2009/04/12(日) 06:10:57 ID:CZadZzzI
 下半身に走る鈍い痛みの理由が、折れた木枝にあると認識したのは何時頃だっただろうか。
 悪魔の如き戦闘能力を見せ付けて来た北崎との一戦から逃れ、気絶したまま――正確には、一度目覚めた後再度意識を手放した――東條悟の回復を三田村晴彦は待つ。
 逃げ込んだ先は有り触れた雑木林。靴裏が軽く振動する度に、敷き詰められたままの落ち葉が連続して旋律を響かせていた。

 ふと、本体から剥がれ落ちたクヌギの表皮を指先で掴んで、弄繰り回す。
 程無くして崩壊したそれが地に還る様子を眺め終えて、彼は正面に二つ並べられているデイパックに手を突っ込んだ。
 一通り中身を確認、半円を描く様にしてそれらを並べる。恐らくはゲームの参加者全員に与えられている共通の支給品類が二組に、飲食物、木製の箱、首輪、カード一枚。
 その中から、栓を開けられた形跡のないペットボトルを選択し、恐る恐るそれを掴んだ。
 ライダーに変身しての行動とは言え、一人の人間に二つのデイパックを抱えての全力疾走は喉にも答えるものがある。
 乾きを水で潤しながら、横目でチラリと他の品々を見据える。
 食料は、デイパック毎に差異があるらしい。既にある程度食べられた形跡があるが、残っているものも晴彦の食した缶詰とは異なる。
 キャップを閉めてボトルを置くと、入れ替わりにカードを一枚手に取る。

「サバイブ…………?」

 survive。『生き残る』ことを示すそのカードに、強いメッセージと可能性を感じずにはいられなかった。
 実際問題、強大な力を秘めていることは間違いないのだろう。
 現在晴彦や北崎の所持しているデッキに納められているカード群と共通性を抱えていることは、疑いようがない事実だ。
 だが東條はこのカードを用いなかった。あるいは、使用不能だったのだろうか。
 木箱や首輪とは別のデイパックに所在していたことから、このカードを入手してから然程時間は経過していないのかも知れない。

 そして、二つの首輪。外装にこびりついている血が、嫌でも人の『死』を認識させた。
 無論この首輪の存在は、そのまま東條による殺害行為へと直結するというものではない。
 しかし放送で十数人もの名前がコールされた過去を塗り潰すような衝撃が、この首輪にはある。
 いよいよもって間近へ迫ってきた恐怖に背筋を凍らせながらも、晴彦は次へ視線を揺らす。

 木箱の中から取り出されたのは、長方形の刃をした薄刃包丁だった。
 この一品がどんな用途を想定して支給されたのか、殺人に用いることが可能なのかを考証する程、晴彦は調理器具に親しんではいない。
 形状の関係上、ナイフのように刺し殺すための起用は叶わない。だったら、斬り殺すのはどうだろうか。
 丁度目の前には、まな板に乗せられた食材を彷彿とさせる沈黙振りを見せる格好の『獲物』がいる。
 いくら病院暮らしが長かったとはいえ、青魚の首と胴、大根の葉と根が切り離されるビジョンを想像できない程、彼は愚鈍ではない。
 その気になれば、眠りについたままの東條の首を刎ねられるのではないか、と思考したところで、先程の首輪が目に入る。
 直後、疑念が点火した。――――こうして、二人殺したのか?
 勿論、ライダーへの変身能力を考慮していない訳ではない。が、この瞬間、『東條が二人の参加者を殺した』ことは彼の中で決定的となった。

 転じて、彼は自身へ向けて注がれる視線に身を震わせた。

「おおお、起きたのか」

 晴彦にとっては限りなく最悪に近いタイミングと呼べる中での、東條の目覚め。
 上半身を起き上がらせた彼を前にして、未だ包丁へ添えられたままの両手が、がくがくと脅えを見せる。
 焦りを伴いつつそれを木箱に乗せて、彼の反応を待つ。
377大切な人は誰ですか ◆N4mOHcAfck :2009/04/12(日) 06:11:45 ID:CZadZzzI

「……僕が生きているのは、残念だったかな」

 張り詰めた雰囲気の中での第一声に、想定との猛烈なギャップを感じながらも、晴彦は次第に警戒を解いていく。
 今の東條には、自分を殺す術がないと判断したためだ。
 始めに横たわらせた直後何か隠し持っていないかチェックもしたし、デイパックや支給品も全て自分の掌中にある。
 完全に優位だと自覚したことで、詰まっていた返答が小さく開いた唇の合間から漏れる。

「な、なんで急にそんなことを……」

 あくまでも返答を搾り出せただけらしい。虚勢すら張れていない、酷く弱々しい応答。
 自分はこんなにまで弱気だったのか、などと内で嘆きつつも、晴彦は会話の続きを求めていた。
 東條との間になんとか協力態勢を継続して、次の目的を定める――――そんな形へ、話題を展開するために。

「別に。君なんかに話しても、無駄なんじゃないかな」

 どう返せば良いのか、咄嗟にはとるべき対応が思い浮かばなかった。言意というよりも、その暗いオーラに包まれたトーンに対して。
 これが幸いしてか、晴彦は先程感じたギャップの原因に気付く。大きな、読み誤りに。
 もやもやとした違和感が晴れていく課程を経て、彼は起き上がって以降、身を屈めたままの体勢を維持している東條の全体像を視界に収めた。
 たった一度の瞬きを境目として、印象がガラリと変わった。自分が無意識の内に生み出していたフィルターを、切り換えたかのような感覚に襲われる。

 元々は、北崎と同じ類に括られるような人間なのだと感じていた。
 どんな状況下にあっても必ず己は高い位置に構える自信家で、こちらを見下してくる。そんな奴なのだと。
 違いと言えば、北崎は自分と同様ヒトを越えた異型の存在であることが明らかなのに対し、東條は現時点ではただの人間として映ること。
 ただ一度共闘しただけの間柄である彼に晴彦がそんな感想を持ったのは、妥協を込めた願望が混じっていたからだろう。
 更には持って間も無い、『東條が二人の参加者を殺した』実績への確信。

 つまり、晴彦は東條に代役を求めていたのだ。同時に、北崎を裏切ったことを後悔している証でもある。
 だから裏切る前に状況を似せようとして、彼に期待を寄せた。再び他者に従属して、生存への路を開こうとした。
 だというのに、希望と反して彼は縮こまっている。これでは代役など期待の仕様がなかった。
 こうなったら殺すべきなのではないのか、と一考する中、葛藤に中断を持ち込む様に彼が口を開く。

「君は、三田村……だっけ?」
「そうだ。僕は、三田村……晴彦」

 名前を知っている理由を思い起こせば、『三田村君』というフレーズを多様してきた北崎の笑顔が真っ先に浮かぶ。
 ある時は龍人に、あるいは帝王に、更には金蟹に外見を変化させ、彼は晴彦に声を掛け続けた。東條の発言も、そこに由来があるのだろう。

「そう。僕の名前は……さっき話したっけ、三田村君?」
「ああ。凄く聞き取り難かったけど……東條悟だよな?」

 軽く首を縦に振りつつ、自分に聞き間違いがないか確認で聞き返した。
 『さっき』とは、ここに身を潜めて間もなくして東條が目覚めた時のことを指す。
 その際に晴彦は彼の名前を聞いたが、直後に彼が目を閉じたので会話はそこで中断されていたのだ。

「そう思ってくれて構わないよ。……で、あの北崎とか言う奴は倒せたの?」
「い、いや……それが……」
378大切な人は誰ですか ◆N4mOHcAfck :2009/04/12(日) 06:14:08 ID:CZadZzzI

 簡単にこれまでの経緯を話す。と言っても、東條が気絶して以降の僅かな行動に過ぎない。負けて、逃げて、荷物を確認。それだけだ。
 確実に勝利を掴むことができるという触れ込みで彼に停戦を持ち掛けた晴彦なだけに、敗退の報告には息がつまる思いだった。

「あんな大口を叩いておいて、結局負けたんだ。しかも、大事なデッキまで……」

 東條はそう言うと、周辺に転がった幾本かのペットボトルを全て片方のデイパックに滑りこませる。理由を求められた彼は簡潔に可能性を語った。
 カードデッキ損壊によって無効となったミラーモンスターとの契約。それによって起こり得る事態――鏡面からの銀犀による奇襲。
 君がそれを使えばなんとかなるかもね、と虎の紋章が彫られた青のカードデッキが指差された時、晴彦はみるみる内に自身の顔が青く染まっていくのを感じていた。
 タイガへの変身を移動のために行使済だとあたふたしながら伝えるが、相変わらず表情を欠いたまま。
 戦力が包丁一本という状況への焦りや怒りも、あわてふためく眼前の青年への嘲笑も、姿を表すことがない。

「なあ、本当に……どうかしたのか?」
「君には関係のないことだよ」

 一蹴。問い掛けた晴彦も、これには思わずふさぎ込む。間を持たせられなくなった末に、小規模ながら散乱した食料品へと手を伸ばした。
 モンスターの襲撃を阻止するために戻されたペットボトルに習い、食料品を同じデイパックに、もう一方へ共通の支給品群を詰め込む。
 しばしの時を稼いでも無駄なのだと頭では理解しながらも、別の選択が過ぎらない現状を嫌悪していた。
 いや、選択肢などいくらでもあるのだ。殺すでも、引き連れていくのでも良い。
 初めて北崎と対峙した時も、後に裏切った時にも、殺す覚悟を抱いて戦に臨んでいた。
 ショッカーの支配下にあった頃は、幾人もの配下達を従えていたこともあった。
 そんな自分が、今更人間一人に引っ張られるのを望むことこそ筋違いと言える。
 正確には、今更決断一つ成せない己を憎むべきだった。それも分かっているのに、何故先へ進めないのか。
 震える手でサバイブのカードを掴む。閉ざされた唇の奥で噛み締められた歯がぎりぎりと音を立てていた。
 カードの中央に描かれた金色の翼が、背後でその威風を引き立てている烈火が、数刻前より輝いて、そして羨ましく映る。
 持ったカードをどうするか悩んだが、デイパックにわざわざ戻す必要のあるものでもない。
 暫定的な措置として、タイガのデッキにカードを滑り込ませる。次に変身する場面が訪れれば、カードの真価も見出せるだろう。

「ねえ」

 突如掛けられた声に異変を察知して、晴彦が思わず顔を向けた。

「今のカード、見せてくれないかな」

 東條の表情に、玩具の話をする北崎がダブって見えた。
379大切な人は誰ですか ◆N4mOHcAfck :2009/04/12(日) 06:15:48 ID:CZadZzzI


 この島に、殺し合いに来るほんの少し前。東條悟は一人のライダーを殺した。
 実の所止めを刺したのは彼ではないのだが、彼に真相を知る由もない。
 何れにせよ、その勝利は敗戦を重ねていた彼に名誉挽回を齎した。
 更にこの島では、三人の参加者を殺した。仮面ライダーガイ、仮面ライダー二号、ギラファアンデッド。
 様々なシチュエーションで彼らの命を絶っていく内に、元の世界で失いかけていた自信は完全に取り戻されつつあった。
 自信が戻っていったが故に、気に入らない存在への憎悪も募っていった。
 変身不可能な状況であるにも関わらず、ライダーとなっていた自分を撃退した本郷猛は、既に死んでいる。
 残るは馬を模した異形や銀の装甲に赤のラインを駆け巡らせたライダーに変身する青年と、北崎というらしい龍人。
 彼の英雄観を打ち砕いた前者に加え、正面切っての戦闘で彼を圧倒した後者。
 両者共に、英雄までの道のりに避けては通れない存在だった。
 その筈が、必要条件として越えなければならない相手に負けた。
 スペック上では同等か、それ以下のデッキを用いられた際にまでもだ。
 本来ならば一人でも勝てて当然という解釈があった以上、三田村晴彦の吐血による攻撃失敗は、この場合問題ではない。
 遂には、事が終わった後に殺害しようとしていた相手に情けを掛けられて、無様に生き残っている。
 ようやく再構築されようかというところだった彼のプライドは、ズタズタに切り刻まれた状態に等しい。
 何か浮上する切欠はないのかと、沈んだ気持ちで物思いにふけっていた時。"ソレ"に彼の目線は固定された。

「ねえ、今のカード、見せてくれないかな」

 晴彦が深刻な表情で眺めていたカードは、城戸真司が所有している筈の『サバイブ』だった。
 神崎士郎がライダーバトルの進行を促すために一部のライダーへと与えた、戦闘力強化カード。
 サバイブがライダーに与える力の程は、東條も良く知る所だった。

(このカードが使えれば、北崎って奴も倒せる。もう一度、英雄を目指せるんだ)

 急に訪れた東條の変調に驚愕した晴彦は、拒否することなくデッキを渡してきた。
 話に寄れば、サバイブのカードはデイパックに入っていたらしい。

(確かこいつのデイパックは、奪われたままだったよね。つまりこれは……)

 東條自身のデイパックは包丁を取り出した際に隅々まで調べてあることから、島で最初に出会った芝浦の支給品ということになる。
 つまりは戦利品だ、自分の力で勝ち取ったものだ、と満足しつつ、カードが発見されたデイパックを晴彦の付近から引っ張り込む。
 もしかすれば、まだ何かが入っているかも知れない――期待を膨らませて、基本支給品の類を掻き分け彼の手は進む。

「それって、一体どんなカードなんだ」
「……これはね、タイガのデッキじゃ使えないみたいだ。使うには、城戸真司のデッキを奪うしかないね」

 『仮面ライダー龍騎をサバイブ態へ変身させる』とだけ書かれた紙切れを引っ張りだした東條が言い、少しばかり残念な表情を形作る。
 しかし、明らかにその表情は色と呼べるものを取り戻していた。
 指針を見出せず四苦八苦していた自分が余計に情けなく思えて、晴彦は思わず目を背けながら声を上げた。

「でも、その城戸真司って奴がデッキを持ってるとは……」
「彼は生きてるみたいだし、多分持ってるよ。僕も自分のデッキを支給されたしね。
 君みたいな弱い奴には、この島に来てない奴のデッキが渡されてるみたいだけど」
「そ、そうなのか……でも、そこまでして使う必要があるカードなのかな」
「性能は僕が保証するよ。あの力を手に入れれば、あの北崎を殺して英雄に近づくのも遠くない」
「英……雄?」

 不適に笑う東條に北崎とは一風違った狂気を感じつつ、晴彦は英雄について恐る恐る問う。

「そう、英雄。この戦いに勝ち残って、香川先生の前で、僕は皆から認められる英雄になるんだ。
 ……君は分かってくれるよね? 僕の、この英雄的行為の素晴らしさを」
「あ、ああ…………やっぱり、その香川先生っていう人も……」
「当然じゃないか。先生は僕に道を示してくれた大切な人さ。
 もう一回死んだ筈だけど、この島には先生がまだ生きてる。
 そんな先生を次に殺した時、僕は真の英雄になれるんだから」
380大切な人は誰ですか ◆N4mOHcAfck :2009/04/12(日) 06:16:47 ID:CZadZzzI
 溢れる笑みに歯止めをかけようともせず、東條は理想の展望を垂れる。
 香川なる人物が東條にどの様な影響を与えたかは定かではない。

(一回死んだ筈、か……)

 自分と同じ境遇の参加者がこの島にいる。それは即ち、スマートブレインの死者蘇生技術がいよいよ現実味を帯びてくることにもなる。
 死ぬ訳にはいかない。まして、せっかく生きながらえた大切な人を再び死に追いやろうとする、東條の様な人間に殺される訳にはいかない。

「じゃあ、そろそろ行こうか。君はまだ、殺さないでおくよ。荷物運び位にはなるよね?
 ……もしかしたら君も、僕にとって大切な人かも知れないし、ね」

 木箱に戻した包丁と首輪をデイパックに入れつつ、東條は立ち上がり、歩きだす。
 追従する晴彦はもう片方のデイパックを担ぎ、堂々たるその背中を見据えていた。
 今しばらくはこれでいい。相反する望みを持った二人の歩みがいつまで続くのか、定かではない。

【三田村晴彦@仮面ライダー THE FIRST】
【F-5 上部  川沿いの雑木林】【日中】
[時間軸]:原作での死亡直前から
[状態]:全身に中度の疲労、全身に強い痛み、不可解な衝動(リジェクション)への疑問、
    北崎に対する強い恐怖 、一時間タイガへ変身不能
[装備]:特殊マスク、鞭
[道具]:飲食物(二人分)
【思考・状況】
基本行動方針:彼女を救うために勝者となる。
1:当面は東條に従って行動する。
2:北崎とはできるだけ離れたい。
3:リジェクションへの不安。できるだけ早く原因を突き止めたい。
4:いざとなれば迷わない。
5:桐矢、海堂に僅かな罪悪感。
6:自身が改造人間(コブラ)であることは東條に黙っておく。
【備考】
※変身制限がある事を把握しました(正確な時間等は不明)
※リジェクションの間隔は次の書き手さんに任せます。(現状は頻繁ではない)
381大切な人は誰ですか ◆N4mOHcAfck :2009/04/12(日) 06:18:04 ID:CZadZzzI

【東條悟@仮面ライダー龍騎】
[時間軸]:44話終了後
[状態]:中程度のダメージ。タイガに1時間変身不能。
[装備]:カードデッキ(タイガ・若干ひび割れ)+サバイブ烈火@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品×2(飲食物抜き)、首輪(芝浦、金居) 、田所包丁@仮面ライダーカブト
[思考・状況]
基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる
1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』
2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい
3:龍騎のデッキを入手するため、城戸真司を探す。北崎と戦うのはその後。
4:三田村は生かしておく。殺すかタイミングは今後の動向次第。
5:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い。積極的に外す 。
6:木場(名前は知らない)に自分が英雄であることを知らしめる為、自らの手で闘って殺す。
※三田村が改造人間(コブラ)であることを知りません。


投下終了です。
矛盾等ありましたら指摘お願いします。
382創る名無しに見る名無し:2009/04/12(日) 11:09:40 ID:HX9ZSflz
投下乙です!

東條と三田村の会話が凄くいいですw
相変わらずネジの飛んだ東條に気弱な三田村…
二人の取る行動が一々それらしいのがいい味出してますね!

東條の最後の言葉に思わずぞくっとさせて貰いました
もし万が一、東條に気に入られてしまったら三田村は…
二人がどう動いていくのかが気になりますねw
面白かったです、GJ!
383創る名無しに見る名無し:2009/04/12(日) 16:31:18 ID:xWVSWRB6
第二回放送でゾル大佐は「ゾル大佐」って呼ばれてるけど、
ディアゴスティーニによるとバカラシン・イイノデビッチ・ゾルっていうフルネームがあるんだ。
細かいことだからいいけど、他のヒビキとかも本名だしフルネームがいいかなあ……って思ったんだけど。
384創る名無しに見る名無し:2009/04/12(日) 16:53:52 ID:CswF9tGY
ゾル大佐でエントリー(名簿)してるから問題ない
385創る名無しに見る名無し:2009/04/12(日) 20:50:29 ID:5S+kDzOK
投下乙です!
東條こええwww
三田村も一難去ってまた一難って感じですね。
次のターゲットにされた真司逃げて超逃げて!!
ナイス繋ぎでした、GJ!
386創る名無しに見る名無し:2009/04/13(月) 01:10:08 ID:38GjQjqK
投下乙です。
駄目だこの組み合わせ・・・長持ちしそうにないw
サバイブに気付いたらやっぱ龍騎デッキ欲しがるよなぁw
二人の大事な人に対する考え方の違いが面白かったです。GJ!!
387創る名無しに見る名無し:2009/04/13(月) 10:15:20 ID:bgJ4h/h+
遅ればせながら投下乙です。
丁寧な情景描写と晴彦の心理描写が綺麗でした。
次回作も楽しみにしておりますGJ!

誤字がありました。
>>376
喉にも答えるものがある。

喉にも堪えるものがある。
が正しいのではないでしょうか?
388 ◆N4mOHcAfck :2009/04/13(月) 18:26:12 ID:qyknaPkt
感想、指摘ありがとうございます。

>>387
失礼いたしました。wikiにて対応させていただきました。
389創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 22:02:57 ID:MeZOkyHg
最近また予約来なくなったね・・・
ディケイド、ディエンドが参戦したらやばいだろうな〜
390創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 22:54:36 ID:Bk50vVno
士 なんだかんだで人を助ける。あとユウスケと夏みかんを優先的に探すはず
  他の、少なくとも平成ライダー勢の能力を既に知っているのは大きなアドバンテージだと思う。
  ただ能力的に強すぎるから途中退場の可能性は高そう(天道や本郷のように)

海東 お宝いっぱいだぁ♪お宝頂戴♪の支給品強奪キャラになると予想。
    殺しはしないだろうから恐らくはサラマンダーか。
    案外生き残って士の代わりに世界を〜のようなラストもあるかもしれない

ユウスケ 物凄いお人好しの彼には他の参加者をマーダーの手から護って死ぬのが似合う
       ただ黒クウガフラグはちょっと捨てがたい魅力がある(夏みかんの夢の中とはいえ実際に変身したし)
       ところでひょっとしてユウスケクウガはライジングになれないんじゃ…?
391創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 23:04:19 ID:XRbcHHYS
ストロンガーに電気流されれば成れるんじゃない
392創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 23:10:54 ID:lXx3FIHB
鎌田 二段変身という大きなアドバンテージを持つ。
   それも、ほぼ確実にマーダーに回るだろうから序盤は強力。
   志村の二の舞にならなければの話だが。

鳴滝 士を殺害するために、あらゆるライダーに嘘の情報を流し込んでディケイドと対立される。

ワタル 参戦時期によればマーダー化して人を襲いだす。

シンジ レンが参加していれば、もしかすればレンを倒すために戦うかも。
    一応一般人なので、1stの明日夢の二の舞になる可能性もある。

カズマ まずは士を捜すだろう。

タクミ 彼も二段変身というアドバンテージを持つ。
    タッくんよりとは違い、ちょっとしたピンチでオルフェノクであることをバラしそう。

ショウイチ 微妙。人を守ろうとするだろうが、変身アイテム狩りをする。
      カードデッキをぶっ壊して契約者がボルキャンサーに食われるとか。

ガミオは出てもグロンギ化とか制限されそうだし(ヘタしたら使徒再生みたいに使用不可)、
ビートルファンガイアはワタルのためなら殺し合いそうだが簡単にはマーダー化しなさそう。
タイガーオルフェノクも流石に復活能力ないだろうし……鎌田とバッファローロードくらいしかボスキャラで使えそうなヤツはいないかも。
393創る名無しに見る名無し:2009/04/20(月) 23:11:07 ID:Bk50vVno
ストロンガー再選は無理そうだからブレイドに頼むか…
394創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 00:20:31 ID:kcuyBcOd
一度も出てない轟鬼がいるジャマイカ
395創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 00:33:54 ID:2C4vPND8
放送がみゆきちキバーラという電波を受信した
396創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 17:25:10 ID:RVKaqQQp
RXじゃなくてBLACKなてつをは見たい気がする……
間違いなくライダー1stと同じ道を進みそうだがw
397創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 17:28:47 ID:b/NdOiLU
BLACKとして参戦

途中で重症を負う

RXに進化

1st1話へ
398創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 17:32:10 ID:RVKaqQQp
そして中ボス戦でロボに、ラスボス戦でバイオ化……
チートが過ぎるw
399創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 17:35:24 ID:b/NdOiLU
いっそ主催にすれば……ダメだ。どうやったって勝てねえwww
400創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 20:58:09 ID:DmBaVwHZ
なんだかんだでキバ参戦したらおもしろいだろうな。
193は使いやすそうだ。
401創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 21:28:51 ID:4p14CAxn
まだまだ先だろうけどこれが完結して、次のライダーロワが出来たら今度はキバとディケイドのメンツに期待だな
ディケイドは10個も世界あるだけにやっぱり枠はちょっと多めなんだろうか
402創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 22:04:13 ID:e9rK1Evh
バッシャーフィーバーは可能か否かで議論起きたらちょっと笑う
403創る名無しに見る名無し:2009/04/21(火) 22:55:28 ID:cAROI/RV
1話のライダー大戦まともに受け取るとディケイド一人で皆殺しだな
404創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 03:47:44 ID:LxzOGYju
ディケイド含めてバトロワやったら鳴滝は主催者キャラに結構合ってるんじゃないだろうか…?
と思ったが黒幕の言いなりになって色んな世界から参加者集めるだけの役になりそうだな。


キバ勢は糸矢が何かしら大活躍してくれそう。というかしてほしい
405創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 08:55:25 ID:z+GJlvjB
まぁ今後ライダーロワやるならディケイド世界の扱いは重要だろうな
406創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 09:17:46 ID:0cR/dDjz
来年のことを言うと鬼が笑う
407創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 09:32:17 ID:rbU2zDfC
響鬼「HAHAHA」
408創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 11:38:15 ID:wHVo2hcq
まあなんというか、先より今を見ようぜ
ゆっくり進んでいるけど、今の時間帯の展開は今後を考えると重要っぽくね?
409創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 18:56:53 ID:IsWYM2+T
変身すると死ぬダキバ、めちゃくちゃ喋る支給品・キバット。この辺すごく面白そう。
カイザも含めると、変身すると死亡のアイテムが増えそう……。
410創る名無しに見る名無し:2009/04/22(水) 23:14:56 ID:0Rts/efo
過去イクサと現在イクサが同時に来るとかなり面白い事になりそうだ
支援くらいしか参加出来ないのが残念で仕方が無いなぁ
411創る名無しに見る名無し:2009/04/23(木) 11:44:28 ID:ujbGLqFu
おばあちゃんは言っていた。
『先の事しか見えない者に、今は掴めない』
412創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 16:15:05 ID:RNaX1xYS
今の事しか見えない者に、未来は掴めない。
413創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 18:46:10 ID:DQ9Dd/kK
なんでそんなに次のロワを話したいか分からん。
それにこの過疎状態を見て、次のロワを立てて成功すると考えている能天気さが最も理解できない。
414創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 19:55:55 ID:JqDK1iCI
付き合ってからより付き合う前のが甘酸っぱさで悶える
文化祭当日より、文化祭の準備してる間のが楽しくて楽しくてしかたがない
密着していちゃつくのが楽しい、挿入はついで

こんな感じだろ
なんとなく理解出来ない方が感性がおかしい
415創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 19:57:24 ID:re8UsGhD
つらい現実を見続けると、人は夢を見たくなる
416創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 20:19:12 ID:DQ9Dd/kK
>>414
おかしいかどうかはさておき、下品すぎる。
マナーがなっていないな
417創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 20:41:26 ID:xQVpLBbV
この過疎じゃ妄想したくもなるさ。
でもこれはあくまで妄想、こんな風になったら楽しいなって雑談に過ぎないんだし、
そんなに目くじら立てなくてもいいと思うよ。
次の予約が来るまでの話のネタ程度なら。
418創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 21:17:01 ID:3ZBi7Fam
いい加減にしなよ。
完結に向けて頑張っている書き手さん達に失礼だとは、思わないのか?
まだ中盤、これから頑張らなきゃいけない時に、する話じゃないだろ。
傍で見ててもいい加減、腹に据えかねる。
419創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 21:30:29 ID:xQVpLBbV
正直すまんかった。
妄想するのは確かに楽しいがそこまで考えてなったわ。
自重するよ。
420創る名無しに見る名無し:2009/04/24(金) 21:42:31 ID:Ywg47Eh2
正直何が切っ掛けでぶり返すかわからないし雑談しない方がいいっぽいね
421創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 02:34:09 ID:0Ojb1Zf7
これでまた話題なしか
422創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 20:32:53 ID:G1Tl5viw
雑談がほしいほしい言いながら雑談封殺
423創る名無しに見る名無し:2009/04/25(土) 23:23:03 ID:DHtjcaFq
SSタイトル元ネタ探しでもしようぜ。


0〜10

さくらの花の咲くころに→渡辺美里の歌謡曲
『Chosen Soldier』→仮面ライダーTHE NEXTの主題歌
人か?野獣か?密林にいた凄い奴!→仮面ライダーアマゾン第一話「人か野獣か?!密林から来た凄い奴!」
闇の中で唯一光る→仮面ライダー電王挿入歌「Action ZERO」の歌詞
そういう・アスカ・腹黒え→新世紀エヴァンゲリオンの登場人物「惣流・アスカ・ラングレー」
Action−DENEB→Action ZERO

書き手さんの承認は得てないけど。
「かげやまのなく頃に〜仕切り直し編〜」とかはわかりやすくていいな。
前作でも「ドラスのなく頃に」っていう回があった気がする。
「そういう・アスカ・腹黒え」っていうタイトルはちょっと強引だけど面白い。
424創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 04:10:37 ID:GO4p+DYN
そういう・アスカ・腹黒え
の元ネタに一年間気付かなかった俺って……(´・ω・`)
425創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 23:01:59 ID:VA36HfSc
面白いって……当時、某所でそのタイトルを叩いていた人がいたけどな
426創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 23:08:11 ID:K96/goaU
実はいまだに元ネタを知らない俺には、なにが面白いのか、なにが起こるところなのか、わからんw
427創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 23:25:42 ID:GO4p+DYN
まあタイトルは人によって好みの別れるところじゃないかな……
ネタ的なタイトルが好きな人もいれば、原作絡みタイトル好きもいるっしょw
そして漢字二文字のタイトルだと喜ぶ俺はクウガ好きw
428創る名無しに見る名無し:2009/04/26(日) 23:49:44 ID:bN8YRIxx
>>427
クウガキャラの出る話で漢字ニ文字タイトルだと嬉しいよなーw
と言いつつ俺も原作絡み以外の元ネタはあまりよく解らなかったりするw

そして予約きた!!頑張ってください!
429創る名無しに見る名無し:2009/04/27(月) 17:54:41 ID:Dv3v+6OJ
11人も来たぞ!
430創る名無しに見る名無し:2009/04/27(月) 18:06:50 ID:fDlauAop
いまじゃ!パワーを◆N4氏に!
431創る名無しに見る名無し:2009/04/27(月) 23:29:49 ID:2uSYKZG4
いいですとも!!
432創る名無しに見る名無し:2009/04/28(火) 00:28:25 ID:973TeYO3
>>431
まさかこのスレでゴル兄に会うとは思わなかった
433創る名無しに見る名無し:2009/04/28(火) 21:18:36 ID:tD5OIJWa
このバトルロワイヤル敵強過ぎるだろwwwww
敵の生き残り率が異常
434創る名無しに見る名無し:2009/04/28(火) 21:41:33 ID:B1U1uy/p
>>433
それこそが、ライダーロワの醍醐味!

予約、GW休みの無い自分にとって、楽しみが出来ました
どうか、頑張って下さい
435創る名無しに見る名無し:2009/04/28(火) 22:20:01 ID:zPVT1zYJ
悪役好きな俺にとってはたまらない状況だw

今回の予約も一筋縄では行きそうにないし楽しみすぎる!
俺もGW休みないけどこれを糧にがんばるぜ
436創る名無しに見る名無し:2009/04/28(火) 22:28:50 ID:blShYIH/
最近活躍中の歌舞鬼さんに期待したい
でもサイガ&ギルス(Pホッパー?)と真っ向から一人でやり合うのは無茶だよなあw
437創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 23:09:49 ID:CyJrxDjZ
大規模予約が二つか……残ってるの誰だっけか
438創る名無しに見る名無し:2009/04/29(水) 23:27:58 ID:d1TL5xRg
何も持ってない教授
ガス欠のバダー
工場調査の乃木北條
工場へ向かうダグバ

こいつらだけっぽい
439創る名無しに見る名無し:2009/04/30(木) 02:58:18 ID:pNCqzy4e
>>438
個人的にはダグバや北崎にも引けを取らない筈なのに空気すぎるぜ、最強のワーム!
440創る名無しに見る名無し:2009/04/30(木) 03:03:41 ID:V8xgb90o
北条がいるから大暴れできねぇんだよな…
441創る名無しに見る名無し:2009/04/30(木) 08:03:04 ID:OYPszr+Y
乃木「南の連中が潰しあったら本気だす」
442創る名無しに見る名無し:2009/04/30(木) 23:44:15 ID:0o/8C3C+
>>441
今まさにその状態だしなー
でも乃木さんの強さはガチだと思うんで今後の大暴れに期待
443創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 00:21:47 ID:iMJaF2lA
ワームとは秘するもの…
444創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 02:07:31 ID:XEi7461T
ここまで戦闘によるダメージ皆無(全勝)
クロックアップ
首輪解除に一番近い(?)
未契約カード二枚
傍らには人質兼頭脳の北條さん
いざとなれば擬態能力

乃木さん最高すぎワロタ

スタンス的にも単なるマーダーとは違う活躍をしてくれそうw
445変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 17:49:36 ID:Oo+hhJQr
五代雄介 長田結花 城光 ハナ 牙王 ゴ・ガドル・バ 死神博士 影山瞬 城戸真司 風間大介 風のエル 東條悟 北崎 三田村晴彦 橘朔也 志村純一
投下します
446変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 17:50:16 ID:Oo+hhJQr
【1日目 日中 F-4 道路】
高々と昇った日の光に照らされて歩く4名。しかし、その胸の内は果てしなく暗かった。
中でも一際足取りの思い少女は美しい女性に支えられながら珍妙な細工の施された笛と円盤を抱きながら涙を流していた。
(私が…私がしっかりしていればイブキさんは……)
一人の女性が時折後ろを振り向き、その様子を確認する。
過ぎたことを考えても仕方のないこと、寧ろそれが足枷になってしまっては本末転倒。光は泣きじゃくる少女をなだめることもままならず、逞しい男性と共に意気消沈した集団の先頭となって歩みを進めていた。
今は一刻も早く放送局へと辿り着かなければならない。

【1日目 午後 G-3 道路】
「博士…もう少しゆっくりいきませんか…?」
「若者のくせに軟弱な…不満なら置いていくぞ!」
どちらが若者なんだか分からないくらいに死神博士は影山とは対照的に元気はつらつとしている。
今の目的は療養所、大学に赴きこの地に起こった異変を解き明かすこと。
それも出来れば他の参加者に出し抜かれる前に真実に辿り着きたい。城戸が見つけた留守番電話のメッセージやあの病院の有様を見れば只事ではないのは一目瞭然。
少しでも他者に対して有利となり得るカードを保有するのはこのような異常事態では必須。
それに先程の橘とかいう男の放送。城戸をなだめるのには苦労したが同様に放送局へと向かう参加者は確実に増加するだろう。
南下の流れに逆行し、他の参加者と差をつけるタイミングは今しかない。
(何者か…おそらくは主催者―スマートブレイン―の仕業だろうが、いったい何の目的が…)
447変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 17:51:44 ID:Oo+hhJQr
【1日目 午後 D-3 地図に載らない程度の小屋】
「…聞いたか、今の放送?」
「だったらどうするつもりだ…?」
ミラーモンスターの襲撃を退けた二人は、今まさに出発しようというそのときあの不定期な放送を耳にした。
「決まってるだろ。馬鹿な餌どもを喰いに行くぜ」
ガドルは休息のために保養所へと向かう予定だったが、牙王はそれを一蹴した。
(無理もないか…)
本能の赴くままに闘い、敵を喰らう牙。あのような餌をちらつかされて動かぬ方が無理というものだ。
「だが、今のお前に闘うすべはない…無駄足に終わるのではないか?」
ガドルの言い分は尤もだ。カードデッキはダグバに奪われ、たった今ガオウにも変身したばかり。
「なぁに…この無駄に重い荷物の中に食い物以外も入ってるかもしれねぇ…」
ガオウは2つのデイパックの中身を確認し始めた。

【1日目 午後 F-3 道路】
(まもなく到着だな)
地図と照らし合わせて現在位置を確認しながら光たちは放送局へと向かっていた。
先程の臨時放送を聞くに放送局での参加者からの放送は可能。しかし同時に大変なリスクを伴うのだろう。
放送局にちかづく参加者も増え、ここからはより危険が増すことになる。
「ん…ハナさんじゃないすか!?」
真剣に考えていたときに聞こえた素っ頓狂な声に思わず皆が顔を見合わせる。
「…城戸さん!」
向かいから歩いてくる集団の中にいたのは白い怪物との闘いの最中に出会った仲間。
「城戸…知り合いか?」
「ええ博士。ほら病院で合流する予定だった仲間ですよ!」
「なるほど…」
共通の知り合いに出会った2つの集団は合流するかと思われたが、
「城戸さん…そちらは?」
ハナは死神博士に手を向けて確認をとる。
「ああ、死神博士っていって本郷さんや一文字さんと知り合いなんだって!」
「そう…」
城戸の返事を聞いた4人は即座に構える。五代と光は戦闘態勢に入り、ハナは結花を庇うように奥へ立たせてデッキを取り出す。
「ちょ…待って! 何なんだよ!?」
「城戸といったな…」
光は一歩前に出ると語りだす。
「私たちは情報交換のときに一文字から“イカの怪物に変身する老紳士”に襲われたと聞いている」
「というか…城戸さんだって一文字さんから聞いてたでしょ?」
「あ…そういえば…」
思い返せばそんなことを一文字から聞いた気がする。おまけに先程病院で博士が変身していた姿は…
「博士! それってどういう…」
城戸の言葉よりも早く死神博士は鎌を振り下ろした。
448変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 17:52:48 ID:Oo+hhJQr
「…ようやく本性を現したな」
タイガーアンデッドはその素早い動きで飛び込み、間一髪のところで博士の鎌を受け止めた。
「くそ…」
(まずいな…まさか城戸の知り合いが“あっちの”一文字だったとはな…)
死神博士は最初の放送で呼ばれた一文字を始めて出会った柔男の方だと瞬間的に判断していた。
まさかそのつけがこんなところで回ってくるとは思ってもいなかった。
(1対4もしくは5…このままでは…)
死神博士が考えあぐねている所にそれはやって来た。
バイクに跨った二人の戦士。
「あいつら…また来たのか!」
バイクから降りた男“牙王”は腰にベルトを巻きながら近寄ってくる。
「またお前らか。今度こそ全員喰ってやる…変身!」
光に包まれ、牙王は茶褐色の鎧を纏った兵隊―ライオトルーパー―へと姿を変えた。

【1日目 午後 D-3 地図に載らない程度の小屋】
ガオウは2つのデイパックの中身を確認し始めた。
そして獲物から奪った方のバックに興味深いものを見つけた。
「これは使えそうだぜ…」
最初の見せしめ時に無数の兵隊が身に着けていた鎧。それを纏うためのベルト、スマートバックルがそこにはあった。
本人は確認することは出来なかったが、本来これはゾル大佐への支給品であった。
一流の大佐へ部下の強化用の装備を与える意図がスマートブレインにはあったのかも知れないが今となってはもうどうでもいいことだった。
重要なのは新たな牙を手に入れた獣が解き放たれたということだ。

【1日目 午後 F-3 道路】
ライオトルーパーとゴ・ガドル・バは不意を突かれた集団に切り込んでいく。
「…ハナ、城戸! 結花を頼んだ!!」
タイガーアンデッドは変身を済ませたクウガと共に向かっていく。
ハナはそれにうなずいて結花を道路の脇へと連れて行く。
「博士…俺、信じてたのに…」
城戸は呟くとハナの後を追っていった。
「…影山いくぞ」
死神博士は影山に指示を出し、その場を離れようとする。
「え…でも城戸は…」
「今更、奴が寝返るはずがなかろう。奴らが潰しあっているうちにここを抜けるぞ」
そういうと博士は影山を連れて戦線を離脱した。
449変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 17:53:39 ID:Oo+hhJQr
【影山瞬@仮面ライダーカブト】
【時間軸:33話・天道司令官就任後】
【状態】:全身に若干の疲労。背中に軽い裂傷。 ザビーを失った悲しみ。
【装備】:ザビーブレス
【道具】:支給品一式×3、ラウズカード(◆J)、不明支給品0〜2(確認済)、オロナミンC2本(ぬるめ)
【思考・状況】
基本行動方針:とりあえず死神博士についていく
1:ザビーを返してくれよぉ……
※不明支給品は彼に戦力として見なされていません。
※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。

【死神博士@仮面ライダー(初代)】
【時間軸】:一号に勝利後。
【状態】:擦り傷程度の傷多数
【装備】:鞭
【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王、ハイパーゼクター
【思考・状況】
基本行動方針:この殺し合いをショッカーの実験場と化す。
1:療養所、大学(研究室)を探索。現状を把握する。
2:集団を結成し、スマートブレインに対抗する。
3:役立たずはいずれ切り捨てる。
4:首輪を外す方法を研究する。施設の候補は研究所か大学。首輪のサンプルが欲しい。
5:未知のライダーシステムおよびハイパーゼクターの技術を可能な限り把握する。
※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。
※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。
 尚、キック殺しは問題なく使えます。
※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。
※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。
※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。
【考察まとめ】
1.首輪の100%解析は不可だが、解除することは可能。
2.首輪を外せるのは罠で、タイミングが重要。
3.時空を超越して逃げても、追跡される。
4.会場に時の列車はない。あるとしてもスマートブレインの手の中。
5.ガオウから聞いた、デンライナーの持ち主は干渉を避けるために既に死んでいる可能性が高い。
6.ハイパーゼクターはカブトムシ型ゼクターで変身するライダーの強化アイテム。
7. この島では2ヶ月ほど前になんらかの異変が起きた。
450変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 17:55:29 ID:Oo+hhJQr
「はあっ!」
赤のクウガはガドルへ何度も力強い拳を打ち込む。その攻撃にガドルはやはり違和感を拭えない。
(この感覚…やはり何かが変わりつつある…)
「…ふん!」
疑問を感じながらもガドルは強靭な肉体でクウガの攻撃を払い退ける。
一方、タイガーアンデッドとライオトルーパーも激しくぶつかり合っていた。
「どうした…動きが鈍いぞ?」
ライオトルーパーは敵の攻撃を軽やかに避けるとアクセレイガンで迎撃していく。
「それは…お互い様だろ?」
体制が崩れて生じた隙に切りかかってきたライオトルーパーにカウンター気味に拳を叩きつける。
タイガーアンデッドとライオトルーパー。両者の動きが鈍い理由はそれぞれ異なる。
ライオトルーパーは当然のこと。もはやまともに動いていることさえ奇跡といっていいほど連戦で疲れ果てた肉体に慣れない装備。
それを卓越した戦闘センスと喰の本能で無理やり突き動かしているのだ。
だが、タイガーアンデッドはそれと異なる。彼女にはこれまでにはない感覚が生まれていた。
それは“死”。命の終わりをまじまじと感じ始めていたのだ。
放送で告げられた金居の死、そして間近で見たイブキの死。
アンデッドには死など無縁。味わうことのない感覚。彼女にとって死とは未知との遭遇なのだ。
これまで何の恐れも待たずに闘ってきた。そこに若干の変化が始まっていたのだが、彼女自身もまだその違和感に馴染めないでいた。

クウガは尚もがむしゃらにガドルへ攻撃を叩き込む。クウガもまた自らの変化に違和感を感じていた。
全身を突き動かす躍動感、内から漲る高揚感。まるでアマダムの全てが自分を闘いへと誘うような不思議な感覚。
その衝動に駆られるままにガドルを殴りつけようとしたそのとき。
「ねぇ…楽しい?」
優しい子供の声と口調に白い怪物、ダグバを予期したクウガとガドルは同じ方向に視線を向ける。
「闘うのって楽しい? 僕も混ぜてよ…」
無邪気な声に合わせて姿を変える少年。そこには灰色の龍の悪魔が立っていた。
ドラゴンオルフェノクは鋭い爪でクウガとガドルを切りつけると赤い鮮血が飛び散り、両者は弾き飛ばされた。
「ねぇ…二人とも仮面ライダーなの? それとそっちの二人は?」
「また獲物が増えやがったか…」
ライオトルーパーはタイガーアンデッドを蹴飛ばすとドラゴンオルフェノクへと駆け寄る。
「君はたいしたことなさそうだね…」
腕の一振りでライオトルーパーを地面に叩きつけるとドラゴンオルフェノクはクウガを見やる。
「君が一番面白そうだな…名前は?」
飛び掛るドラゴンオルフェノクにクウガは慌てて横に飛びのき、拳を叩き込む。
「クウガ…仮面ライダークウガ!」
2,3度拳を叩きつけると距離を取って飛び上がる。
「おりやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
回転を加えながら蹴り込んで来るクウガ。その動きに合わせてドラゴンオルフェノクも拳を向かわせるが、腕に紋章が浮かび上がると同時に弾き飛ばされる。
「俺を無視するんじゃねぇ!」
クウガが攻撃を終え、着地しようとした瞬間にライオトルーパーが下から切り上げ、再びクウガは宙に舞う。
「…超変身!」
空中で緑に姿を変えると超感覚で撃つべき敵だけに狙いを定める。その動作の中でクウガはあることに気づく。
「…ハナさん! まだ敵がいます!!」
放たれたクウガの矢は4本。
451変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 17:58:18 ID:Oo+hhJQr
【1日目 午後 G-3 道路】
「博士…もう少しゆっくりいきませんか…?」
「若者のくせに軟弱な…不満なら置いていくぞ!」
歩みを進める死神博士一行の様子を影から見ている者が二人。
「あいつが…龍騎?」
「うん、彼の持っているデッキさえ手に入ればこれが使えるはずだよ」
東條の手に握られているのはサバイブのカード。この闘いに勝ち残るにはどうしても必要な力だ。
しかし向こうはこちらよりも人数が多い。奪い取るにはタイミングが重要。
そうこうしているうちに乱戦が始まった。
「この集団で勝ち残ってこそ英雄だよね…三田村君は荷物持って待っててね…変身!」
タイガの姿となり、闘いを確認しながらチャンスを窺う。そして女性二人と一緒に戦線離脱した城戸の背後へと周り込み…

【1日目 午後 G-3 道路】
放たれたクウガの矢は4本。
ガドル、ライオトルーパー、ドラゴンオルフェノク、そしてタイガへと降り注ぐ。
「お前…東條か!?」
「城戸君、見つかっちゃったか…まあいいよ、実力行使だ」
―STRIKE VENT―
武装したタイガは城戸へと駆け寄る。
「くそ…変身!」
鏡像が重なり龍騎となるが、カードを装填する暇まではなくタイガの攻撃をまともに浴びる。
「そのデッキ貰うよ!」
タイガの執拗な攻撃に龍騎も闘いを余儀なくされる。
「…ハナさん! 後頼みます!」
―SWORD VENT―
「君を倒せば英雄に一歩近づく…」
「まだそんなこと言ってんのかよ!」
二人のミラーライダーはぶつかり合いながら闘いの中に身を投じていく。

【1日目 午後 F-3 道路】
さらなる敵が女性陣の傍に現れたことでクウガとタイガーアンデッドに動揺が走る。
「気を取られてる場合かな?」
ドラゴンオルフェノクはその隙に両者に爪を叩きつけるようにして切り込んでいく。
「クウガを追い詰める強者…私とも戦ってもらおうか!」
紫の目と化したガドルは剣を振るいドラゴンオルフェノクと対峙する。
「いいよ…君は君で楽しそうだし…」
敵が潰し合いを始めたことで逆に今度はクウガとタイガーアンデッドに余裕が生まれる。
その余裕が新たなことを気づかせる。
「五代…茶色の方はどこにいった?」
「まさか…」
再び赤から緑となり、超感覚で探る。それよりも先にタイガーアンデッドは走り出す。
「五代! ここは任せた!」
452変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 18:00:26 ID:Oo+hhJQr
【1日目 午後 G-3 道路】
「よう…また会ったな、デンライナーの女」
「…牙王」
ライオトルーパーは避難していた二人の元にやってきていた。
目的は二つ。一つはこの乱戦に更なる火種、ハナの変身したライダーを開放し、より闘いを活性化させること。
もう一つは頃合を見て闘いに参加しない女、長田結花を人質として放送局へと向かうことだ。
「お前たちも喰ってやるよ…」
「やめろ!」
「城戸君の相手はこっちだよ!」
よそ見した一瞬にタイガの一撃がまともに入る。
「…しまった」
はじけ飛ぶカードデッキと城戸の姿に満足しながら歩み寄る。
「城戸さん!」
「…お前も人の心配してる場合じゃないぜ!」
ライオトルーパーはアクセレイガンを構えてハナへと切りかかった。
「そこまでです!」
―Hyper Cannon―
天より放たれた砲撃がライオトルーパーに炸裂した。
「…何?」
突然のことにハナも、結花も、城戸も、東條も、牙王も何が起きたか分からない。
そこに天から白い天使が青年を抱えて舞い降りた。
「ハナさん…お待たせしました」
「風間さん!?」
453変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 18:05:43 ID:Oo+hhJQr
【1日目 午後 G-3 放送局・ロビ−】
志村は今後の行動を決めあぐねていたが、とりあえず放送局内部に入った。
考えていたような主催者、参加者、橘入り乱れての乱戦の形跡は微塵もなく静まり返っている。
デッキ片手に警戒しつつ慎重に歩みを進めて中の様子を探っていく。
見たところごく普通の放送局だ。並ぶ部屋の戸には色々と書かれている。
どの部屋も放送局にはあって当然な部屋ばかり。ただG-3MILDと書かれた扉もあるが、これはここがG-3エリアであることと何か関係があるのだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると目に入ったのは『島内向け放送室』。橘もここから放送を行ったのか。今内部はどうなっているのか。そんなことを考えながら扉に手をかけた。

【1日目 午後 G-3 放送局・島内向け放送室】
(しかし…何故主催者は俺をここに閉じ込めたんだ?)
閉じ込められていては何もやることはない。ひたすらに思考に明け暮れる。
主催者が自分にペナルティを与えてきた意図を探る。もし自分の行動が不利益ならばとっとと首輪で始末すればいい。こんな中途半端な子供のいたずらのようなペナルティに何の意味がある?
(真実に近づきつつあることへの警告? やはり首輪の解除に必要な鍵を手に入れた者が仲間を集めようとしたからか? いや、そこまで警戒されるアイテムなら何故“支給”したんだ? 初めからそんなもの参加者に与えなければいいのに…)
考えていると扉が動く音がした。誰かが外にいる。橘はバックルを構えて様子を窺う。

(…鍵か。参加者が簡単に使えないように対抗手段をとったわけか)
放送室の入り口に鍵が掛かっていることを確認することができただけでも志村には収穫ありだ。
これでヒビキたちにきちんと名目を果たせる。
(さて…どこへ向かうか?)
志村は辺りに用心しながらその場を離れた。

(…行ったか)
橘は安堵を感じる。逃げ場のないこの部屋に敵が襲撃してきたら入り口を抑えた敵の方が有利。
最悪の状態は避けられたことにほっとして思考を続ける。
(となると…考えられるのは二つ。一つはこれが本当に重要な鍵の場合。主催者はこれが首輪解除の鍵となり得ることを知らずに誤って支給してしまった。そして、俺が偶然その可能性に気づいた…)
傍らに置かれたファイズブラスターを見ながら考える。
(その場合、主催者は俺にもっと酷い罰を与えて、これを回収してもいいはず。だが実際にはしなかった。
これは主催者は首輪の効果発現をコントロール出来ない可能性を示す。奴らは自分の好きなタイミングで参加者を灰化させることは出来ない?
 いや…それじゃあ三輪と禍木や禁止エリアの存在が説明出来ない。ということは…)
橘は立ち上がる。新たな可能性の存在に。
(俺は不利益な発言をしたがまだ確信をついていない…
つまり俺がこれまでに見聞きしたものの中に俺がまだ気づいていない本当の“鍵”がある場合だ! だから俺の行動を制限したんだ!)
454変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 18:08:58 ID:Oo+hhJQr
【1日目 午後 G-3 放送局・屋上】
「主よ…全ては主より授かりし使命のために…」
宙吊りにされて身動きの取れない風間に実に覚えのないことをしゃべり続ける異形。
(なんなんでしょうかね、こいつは…)
「主よ…主が望むならば私は何でも致しましょう…早速人の血を献上すべく参らせていただきます…」
「ちょ…ちょっと待ちなさい! 物騒な…人の血なんてとんでもない!」
「は…? しかし、私は主のために…」
「私を主と仰ぐならば私の話を聞きなさい! まずはここから降ろしなさい」
「…かしこまりました」
丁寧に風間を外して下へと降ろすとひざまづいて命令を待つかのように待機している風のエル。
「そうですね…では聞かせてください。あなたは何故人の血を求めるのです?」
「不思議なことを…それは全て主のため。我が使命でございます…」
「私はそんなことを望んでいません!」
「…しかし、主…」
「あなたのすべきことはそんなことではありません!」
こうなったら破れかぶれ。駄目もとで風間は語りだす。
「あなたの主として命じます。あなたがすべきことは人を…闘いの恐怖に脅える愛しき人を守るためです!」
(愛しき…人…)
エルは考える。何故自分は血を欲してきたのか。何故闘ってきたのか。
「…そうだ。私はアギトからか弱き人の子を守るために…」
「そうです!」
アギトが何か知ったことではないが先程までよりも確実に話が良い方向に向かっているのは分かる。
「申し訳ありませんでした、主よ…私はとんでもない過ちを犯しました…人の子に手をかけるなど…私は…どうか死んで償いを!」
「やめなさい! その必要はありません。罪は生きて償うものです。闘いなさい…愛しき人を守るために!」
「はい…我が偉大なる主よ!」

【1日目 午後 G-3 道路】
「風間さん…どうして!?」
「私は花から花へと渡る一陣の風ですから…我が使いよ! 愛しき人を傷つけようとする悪魔を倒しなさい!」
「全ては主の使命のままに…」
―Hyper Cannon―
さらなる砲撃がライオトルーパーに炸裂する。
「くそ…」
変身が解けてしまう牙王。
(ここまでか…)
死を悟る牙王だが目の前の怪物の様子がおかしい。
「主! この者は人間です…私はどうすれば…」
(しめた!)
変身が解けた人間に止めがさせない甘さを突き、牙王は風のエルに突撃する。
零れ落ちるパーフェクトゼクター。
「もらったぁ!」
―Hyper Cannon―
強大なエネルギーが至近距離でエルの首輪に命中する。
「…主よ」
首輪が外れたことで体が灰となり崩れ落ちてく風のエル。その体はまさしく風となり辺りに飛んでいった。
【風のエル@仮面ライダーアギト  死亡】
455変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 18:12:02 ID:Oo+hhJQr
「…いいものが手に入ったぜ」
パーフェクトゼクターの反動を痛んだ生身で受け止めつつ、新たな牙を手に入れた喜びに牙王の顔が綻ぶ。
「…次はどいつだ?」
銃砲を周りの参加者に向けながらハナへと近づく。
「ハナさん、それ貸して!」
城戸は飛び起き、ナイトのデッキを受け取ると即座に構える。
(蓮…力を借りるぜ)
「変身!」
「ドレイクゼクター、私たちも行きますよ…変身」
仮面ライダーナイトとなった城戸はドレイクと共に牙王の前に立ちふさがる。
「…邪魔だよ」
―Hyper Cannon―
避ければ二人の後ろにいるハナに直撃する一撃。
「キャストオフ!」
―cast off―
―Change Dragonfly―
「クロックアップ!」
―clock up―
ナイトとハナを抱えて牙王の正面を避ける。
二人を近くに降ろすとそのまま牙王に駆け寄るが…
―clock over―
「なっ!?」
通常よりも早く来たクロックアップの終了。制限下でクロックアップを使ったことのなかった風間には何が起きたのか分からなかった。
「今度こそ…」
―Hyper Cannon―
本日2回目のハイパーキャノンの直撃になすすべもなく吹き飛ばされるドレイク。
「風間さん!」
ナイトとハナもクロックアップを体験したのは初めてだ。突然の瞬間移動に混乱して動くことが出来ない。
その間に牙王は結花へと駆け寄る。
「…一緒に来てもらおう」
牙王が結花を抱えると彼女の懐からデッキが零れ落ちる。
「なんだ…変身出来るもの持ってんじゃねぇか…変身!」
白いデッキを拾い上げると慣れた様子でファムに変身を済ます。
「…待て!」
そこにようやく辿り着いたタイガーアンデッド。
「結花を放してもらおうか!」
「やりたきゃやってみろよ」
ファムの言葉を聞くや否やタイガーアンデッドは飛び掛る。
――と同時に、アンデッドへの変身が解除された。
「しまっ…」
―Hyper Cannon―
ファムへの変身を果たしたことでこれまでよりも強く踏ん張りが利き、より強い砲撃が生身の光に直撃した。
(…私としたが、あせり…油断…いや、これが…)
あふれ出る光線の中で光は目を閉じる。
(誰かを守りたい…という気持ちか…)
光の腹部に大きく開いた風穴から緑色の血液が飛び散り、彼女は静かに横たわった。
【城光@仮面ライダー剣  死亡】
456変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 18:14:55 ID:Oo+hhJQr
【1日目 午後 F-3 道路】
「うおぉぉぉぉ!」
赤と緑を交互に繰り返し、断片的にだがその光景を見ていたクウガは怒りに任せて目の前で戦うガドルとドラゴンオルフェノクに突撃する。
「ん?」
戦いに夢中になっていた二人はその光景に唖然とする。まるで何もかも焼き尽くす業火のような赤いクウガが宙へ飛び上がる。
ふと一瞬、そのクウガに黒い姿が被さって見えた気がしたが、その次の瞬間には光り輝く足が二人の目の前に迫っていた。
これまでの五代にはない感情が織り交ざったキックはガドルとドラゴンオルフェノクをまとめて弾き飛ばし、三者同時に変身が解除された。
「俺…は…」
黒い戦士と化したクウガのビジョンを感じながら五代は目を閉じた。

【1日目 午後 G-3 道路】
「さて…いくぜ?」
光のバックと結花を抱きかかえたファムは1枚のカードを抜き取る。
―FINAL VENT―
ブランウイングが羽ばたく風にナイトとハナはたじろぐ。
―FREEZE VENT―
「君みたいな強い奴を倒したら英雄だよね?」
一部始終を見ていたタイガの読み込んだカードによって凍りついたブランウイングが消えていく。
「邪魔しやがって…」
「牙王…あんたは絶対に許さない!」
ハナが叫んだそのとき、何かが飛んできて牙王の持っていたバックから何かをはじき出した。
それはハナの足元に転がる。
「…ベルト?」
457変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 18:16:44 ID:Oo+hhJQr
【1日目 午後 D-3 地図に載らない程度の小屋】
ガオウは2つのデイパックの中身を確認し始めた。
そして獲物から奪った方のバックに興味深いものを見つけた。
「これは使えそうだぜ…」
「…もう一つベルトがあるようだが?」
「これか? 無駄に重いくせに使い方が分からん」
試しに腰に巻いてみるが何の変化もない。
「まあ…仕舞っておけばいいだろう」
それは本来ダークカブトのベルトとして使われるものだったのだが、当のダークカブトゼクターはカブトのベルトを流用することで資格者を得た。
そのため、このベルトは誰にも使われることはないはずだった。
しかし、カブトゼクターは待っていた。自分の資格者がこのベルトを手にするときを。
そしてとうとうめぐり合った一人の女性。心技体、いずれも優れた天道に匹敵する参加者などそうはいない。
しかし、彼女は違った。一度時間を失ったが故に、他のどの参加者よりも“今”という時を懸命に生きる心。女性とは思えぬ戦闘時の身のこなしから感じる技と体。
彼女になら未来を託せる。カブトゼクターはそう判断した。

【1日目 午後 G-3 道路】
ハナが足元のベルトを手に取るとカブトムシがハナの肩に止まった。
「…私が使っていいの?」
その問いかけにカブトムシがうなづいた気がして、ハナはベルトを腰に巻きつける。
そしてカブトムシは自ら宿るべき場所に納まり彼女を後押しする。
「変身!」
照りつく太陽を背に、仮面ライダーカブトがそこにいた。
「3人か…分が悪いな」
―ADVENT―
「させるか!」
―ADVENT―
白い翼に支えられて飛び上がったファムと結花をダークウイングに追跡させる。
(駄目だ…彼女がいるから迂闊に攻撃できない)
ここで人質の存在が効いてくる。ファムに抱えられた結花の身を案じるがためにナイトもカブトも十分な攻撃が出来ないのだ。
「何してんだよ…逃げられちゃうじゃない?」
カードを読み込もうとするタイガをカブトが制止する。
「あんたこそ何してんのよ! 結花ちゃんに当たったらどうすんの?」
「…栄光に犠牲は憑き物でしょ?」
「あんたねぇ…」
「…あばよ!」
3人が揉めている間にファムは戦線を離脱した。
「結花ちゃん!」
「だからとどめ刺しとけばよかったのに…」
「あんたねぇ…!」
「2人とも退いて!!」
そこに乱入してきたのは赤いエイに乗ったライダー。
(お人よしの城戸と戦ってたってことはそれなりに悪人だろ…)
「一文字さんの仇!!」
(になってもらうぜ…?)
―FINAL VENT―
ライアの一撃にタイガが吹き飛ぶ。そしてもともとヒビが入っていたデッキは砕け散り…
「何? 何?」
何が起きたかもよく分からぬうちに東條はミラーワールドへと引きずり込まれていた。
契約の切れた証、デストワイルダーの爪は彼に向かうこととなった。
【東條悟@仮面ライダー龍騎  死亡】
458変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 18:19:14 ID:Oo+hhJQr
変身を解いた志村はカブトとナイトに近寄る。
「二人とも無事ですか?」
「志村さん? 何がどうなってんですか?」
「一文字さんの仇ってどういうこと!?」
「文字通り…彼が一文字さんを襲って…僕がしっかりしていればあんなことには…」
「そんな…」
ハナの胸に痛みが走る。
(一文字さんが…死んだ…?)

【志村純一@仮面ライダー剣・Missing Ace】
[時間軸]:剣崎たちに出会う前
[状態]:腹部に軽度の火傷(応急手当済、治癒進行中)、胸に中程度のダメージ、強い疲労。1時間変身不可(アルビノジョーカー) 2時間変身不可(ライア)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ラウズカード(クラブのK、ハートのK)@仮面ライダー剣、蓮華のワイヤー内蔵型指輪@仮面ライダーカブト、
    ライアのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、特殊マスク、ホンダ・XR250(バイク@現実)、首輪
【思考・状況】
基本行動方針:人間を装い優勝する。
1:一文字殺害の罪を東條に擦り付ける。ヒビキ達との合流は第3回放送前には済ませたい。
2:もう慢心しない。ダグバなどの強敵とは戦わず泳がせる。
3:馬鹿な人間を利用する。鋭い人間やアンデッドには限りなく注意。
4:誰にも悟られず、かつ安全な状況でならジョーカー化して参加者を殺害。
5:橘チーフを始め、他の参加者の戦力を見極めて利用する。自分の身が危なくなれば彼らを見捨てる。
6:『14』の力復活のために、カテゴリーKのラウズカードを集める。
*デストワイルダーの扱いは後の書き手の方にお任せします。
459変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 18:21:25 ID:Oo+hhJQr
【ハナ@仮面ライダー電王】
[時間軸]:劇場版・千姫と入れ替わっている時
[状態]:小規模の打撲、疲労ある程度回復、知人の死に悲しみと強い決意。二時間カブトに変身不能。
[装備]:冥府の斧@仮面ライダーアギト、カブトゼクター、ライダーベルト
[道具]:支給品一式、洗濯ばさみ、紙でっぽう、戦国時代の衣装、ミニカー7台
【思考・状況】
基本行動方針:脱出する
1:仲間と行動。後ほどヒビキたちと合流
2:仲間を探して一緒に脱出する
3:イマジンに対する自分の感情が理解出来ない
4:危険人物に気をつける
5:モモタロス、デネブ、あすか、イブキら仲間達の分まで戦う
6:志村が妙に胡散臭い
*カブトの資格者に選ばれました。ベルトはダークカブトのものを流用しています。

【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
[時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前
[状態]:全身に大ダメージ。知人の死に悲しみ 。龍騎、ナイトに2時間変身不能。
[装備]:カードデッキ(ナイト)
[道具]:支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
1:仲間を集めて主催者打倒 。そのためにもなんとか風間を取り戻す。
2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…?
3:本郷の分まで戦う。
460変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 18:23:35 ID:Oo+hhJQr
【風間大介@仮面ライダーカブト】
[時間軸]:ゴンと別れた後
[状態]:鼻痛(鼻血は止まっています)。 全身に大ダメージ。気絶中。ドレイクに2時間変身不能。
[装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター
[道具]:なし
【思考・状況】早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
基本行動方針:打倒スマートブレイン
1:仲間と合流。
2:協力者を集める(女性優先)
3:謎のゼクターについて調べる。
4:あすかの死に怒りと悲しみ。
5:移動車両を探す。
6:影山瞬に気をつける
※変身制限に疑問を持っています。
461変化 ◆WBRXcNtpf. :2009/05/01(金) 18:26:33 ID:Oo+hhJQr
【1日目 午後 F-3 道路】
「今のはお互い効いたみたい…だね」
変身の解けた北崎は気を失って倒れているガドルと五代を見て呟いた。
「おもちゃは持ってないみたいだし…楽しかったからこの辺にしておこうかな?」
北崎はバイクに跨り、その場から去っていった。

【北崎@仮面ライダー555】
[時間軸]:不明。少なくとも死亡後では無い。
[状態]:全身にダメージと痛み。ドラゴンオルフェノクに2時間変身不可、オーガ、シザースに1時間変身不可。
[装備]: オーガギア  シザースのデッキ
[道具]:凱火(サイドミラー片方破損) ディパック(三田村、基本支給品×1)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しんだ上での優勝。
1:三田村のような人間をまた探して手下にするのも面白いかも。
2:五代雄介、「仮面ライダー」なる者に興味。
3:桜井侑斗、香川英行とはまた闘いたい。
4:ゾル大佐、橘朔也と会ったら今度はきっちり決着をつけ、揺ぎ無い勝利を手にする。
5:「仮面ライダー」への変身ツールを集めたい。
6:木場勇治はどうせだから自分で倒したい。歌舞鬼はいつか倒す。
7:海堂はカブキが殺したと考えているが、あまり興味はない。
※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。
※桐矢京介を桜井侑斗と同一人物かどうかほんの少し疑問。
※どこへ向かうかは次の書き手さんにお任せします。
462創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 18:38:13 ID:xdZ5gb9i
さるさんか?
463創る名無しに見る名無し:2009/05/01(金) 21:11:13 ID:KpT/jQJZ
投下途中とみなされるかも知れませんが、どうしても気になったので指摘させて頂きました
以下の議論スレにて返答をお願いします
http://riders.sphere.sc/rb/test/read.cgi/rnext/1210423244/l50

宜しければ、他の方からも是非意見を宜しくお願いします
464創る名無しに見る名無し:2009/05/02(土) 19:31:33 ID:OH7FbdRk
×指摘
○いちゃもん
465創る名無しに見る名無し:2009/05/02(土) 19:39:39 ID:disLLu9H
○指摘
×いちゃもん
466創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 12:38:01 ID:cZ358WMf
4210 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 18:51:16 ID:???0
結局あれはどうなるんだ?


4211 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 18:54:04 ID:???0
死亡者の内三人がマーダーってどうよ


4212 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 18:54:43 ID:???0
いや、マーダーが死んだとか、そういうレベルじゃない。
ぶっちゃけ、これリレーできんの? 俺は無理w


4213 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 18:59:11 ID:???O
最後まで投下されてから判断したい
ただ俺が書き手なら間違いなく繋げない


4214 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 18:59:55 ID:???0
>>4213
仮投下に来てるぜ

……えぇー……?


4215 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 19:11:09 ID:???O
>>4214
これ通ったら他の書き手ギブアップだろ……


4216 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 19:31:55 ID:???O
打ち切り漫画じゃないんだから……


4217 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 19:39:11 ID:???0
誰か代理してやったら?w
俺は死んでもイヤだけど


4218 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 19:43:26 ID:???0
感想がかけないし修正破棄要求するにも頭の中パニック過ぎて問題点まとめられねえ……


4219 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 21:49:32 ID:???0
>>4218
でも、ここで破棄要求しないと、間違いなくこのロワ終わるぞ……


4220 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 22:34:16 ID:???0
今、読んできた
修正破棄要求のために、もう一度読み直す気力がどこにも残ってない……


4221 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 22:36:50 ID:???0
議論スレに来ている! まとめているなー……まあ、あれでもまだ足りないくらいだが
467創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 12:39:57 ID:cZ358WMf
4225 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 23:36:47 ID:???0
あれもしもぜんぶ修正されたとしたら通さざるを得ないのだろうか・・・


4226 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 23:37:49 ID:???0
お前ら、遠慮はいらないみたいだ
全力で 叩 か な い か


4227 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 23:37:50 ID:???0
あのあとどう繋げと


4228 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 23:40:14 ID:???0
>>4226
おちつけ。
こっちが荒くなったら、その隙を突いて通そうとするぞ。
気持ちは分かるが


4229 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 23:44:46 ID:???0
それもそうだな……
すまん、あのあまりにも酷い珍回答を見てしまったらつい

とにかく最低限でも矛盾のない作品に修正してもらわんとな
矛盾が矛盾を呼んで何が正しいのかわからない文だし


4230 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 23:47:11 ID:???O
>>4225
修正しても問題があれば、即通しという事にはならないはず。
個人的に特に引っかかったのは、時間差は感じ方の違いという反論かな。
ってかあれのいくつかは単なる屁理屈だ。


4231 :やってられない名無しさん:2009/05/01(金) 23:59:06 ID:???0
つうか、お前らの言うように修正したから、
これ通せって、やる気満々じゃないか、あの回答だと……
468 ◆SBNext.HzA :2009/05/03(日) 21:42:46 ID:pjt6XUZW
今回投下された「変化」についてですが、
投下者から破棄の申し出がありましたこと、
ならびに投下者と◆cW9wr8uD4A氏が同一人物と確認できましたことを
こちらでも報告させていただきます。

これに関しまして、一つご提案したいことがありますので
お手透きの方は議論スレに目を通して頂けるようお願い致します。
469創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 23:21:08 ID:GHwaUnPk
◆cW9wr8uD4Aっていう人、以前何したんですか?
470創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 23:22:26 ID:GQHMm8kE
▽いろいろ やったよ
471創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 23:27:31 ID:MTcdheCQ
極力話したくないくらい、思い出したくない
472創る名無しに見る名無し:2009/05/03(日) 23:44:01 ID:LOSGxazx
所謂黒歴史
473創る名無しに見る名無し:2009/05/04(月) 16:39:24 ID:a4p/HN8G
前のアク禁のときに毒吐き管理人さんと連携取って確認した、みたいなこと言ってなかったっけ。
今回も普通に連絡して処置してもらえばいいような希ガス。
というか今回はフルボッコの流れで擁護や誘導なんて一つもなかったような。
474創る名無しに見る名無し:2009/05/04(月) 16:46:40 ID:nMgZCb3k
議論スレを読んでいたら解決しました。
もっと早くこうしていればよかったですね。
ご迷惑おかけしました。
475創る名無しに見る名無し:2009/05/04(月) 18:59:08 ID:po2VvG3Z
>>473
多分、毎回それを行うと時間が掛かるんじゃないかねー…
前の騒動の時は荒らし判明後が大変だったし、
これから毒吐き使って事あるごとに暴れるかもしんない

だったら管理人本人か信頼できる人が持ってた方が即対応しやすいでしょ
毒吐くかも知れない側としては管理人氏とは別の人にやってもらった方が落ち着くけど、
条件に見合う人はあんまりいないんだよなー
476創る名無しに見る名無し:2009/05/07(木) 23:22:24 ID:0Df32+N3
◆N4氏こないなあ・・・無理はしないでくださいねー
477創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 02:55:29 ID:C9Ij2kmY
今の時期何が怖いって豚フルだよな…ただの風邪ならいいんだけど
478創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 21:21:36 ID:kEU5HQAf
予約破棄したみたいですね。
まあ、何はともあれ「お大事に」。
479創る名無しに見る名無し:2009/05/08(金) 22:00:04 ID:C2v6eVYd
予約破棄は残念だがこればっかりはしょうがない
それでも予約が2組控えてるこの嬉しさ
期待せざるを得ないw
480創る名無しに見る名無し:2009/05/09(土) 22:36:58 ID:0odNqHOp
http://www.youtube.com/watch?v=Ad80EQCbLFI
仮面ライダーのお宝映像、最新情報満載♪
さらに・・・来年の仮面ライダー決定!?
481創る名無しに見る名無し:2009/05/10(日) 08:43:38 ID:W8xE4Aho
アクセルフォームはクロックアップに負けないのか、十秒間のみだけど

ペガサスは超感覚でクロックアップの動きを予測してブラストペガサスを当てたというよりも設置した感じ?
相手のワームがブラストペガサスに気付かずに突っ込んで当たりに行ったと予想
482創る名無しに見る名無し:2009/05/10(日) 09:16:13 ID:o7LVnwhW
アクセルファイズならともかく時間の流れが違うクロックアップにはいくら感覚が鋭かろうと意味がないと思うんだが・・
まあ絵的にカッコ良かったからいいや
483創る名無しに見る名無し:2009/05/10(日) 13:23:57 ID:vCVlBem8
カブトだってマスクドのままCUしたワーム撃破したりしてたじゃん
感知出来る力さえあればあとは中の人の力次第だろ
そりゃ同じ時空間に体を置いたほうが対応しやすいだろうけど
484創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 13:14:07 ID:aFjaj4sR
保守
485創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 14:18:55 ID:OZYUgtnY
近付きつつある投下に期待!!
486 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:29:44 ID:0KeZCAMZ
こんばんは。
五代雄介 城光 ハナ 長田結花 橘朔也 志村純一 風間大介 風のエル
投下します。
487創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:30:06 ID:Q9QTE6p/
488病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:31:18 ID:0KeZCAMZ
舗装された道路の上に注がれている正午の日差しによって、アスファルトに含まれる骨材がきらきらと輝く。
その上を四人は言葉もなく、ただ進む。
先頭を歩いているのはしなやかに鍛えられた身体の女。
やや後ろに荷物を担いだ男。さらに少し後ろに、お互いを支えあうように歩く少女が二人。

男―――五代雄介は少女たちを気遣うように何度も振り返り、前方の光の背中を見る。
迷った挙句、五代は足を速めて光の隣に並び、声をかけた。

「光さん……やっぱり、少し休んだ方が……」

光に言われた通り歩き続けた四人は、どうにか放送局へ続く広い道路まで進んでいた。
だが、ガドル・牙王という強敵との戦いで受けた肉体的なダメージ。
大切な仲間を失った精神的な動揺はその足取りを確実に重たくしていた。
少女たち―――特に結花はショックが大きかったようで、あれから一言も言葉を発していない。
提案する五代を光は横目でねめつける。

「……急ぐ事が最善だと言ったはずだが?」
「でも……!」

五代は食い下がる。目を伏せて足を引き摺り歩く姿が痛々しく、見ていられなかった。
思わず声が大きくなり、光の前に立ちはだかってしまう。

「それではお前は、ぼやぼやしているうちに北條が死んでもいいのか」

光が言う。もしこれが普段の五代であれば、光の声音に苦々しいものが滲んでいるのが察せられたはずだった。
だが余裕をなくした今では、『死』という言葉の苛烈さと、咎めるような印象が五代の心に突き刺さるだけだ。
五代は悲痛な声で否定した。

「! 違います!」
「何が違う。 お前が言っている事は、奴やイブキが開いた道を閉ざすのと同じ事だ」
「俺は……!!」
「光さん、五代さん!」

尚も言い募ろうとする五代を遮ったのは、ハナの声だ。
はっと気付いて振り向くと、不安げに眉根を寄せたハナと、その肩口に顔を埋めて震えている結花の姿があった。
自分たちの言い争いが彼女らを傷付けたと悟った五代は、言葉を飲み込んで光の前から退いた。
ハナは五代と光を気の強そうな大きな瞳で見つめて、静かに、それでも力強く告げる。

「私は、大丈夫。 ……結花ちゃんは?」

ハナが確認を取ると、結花も小さく頷いた。
五代は、本来ならば自分が取り除かねばならない不安を二人に与えてしまった事実に唇を噛んだ。
他者を守る、という大きな決意が圧し掛かり、それを果たせない無力感ばかりが募っていく。
再び歩き出した光は、打ちひしがれた様子の五代の隣を通り抜けざまに囁いた。

「……あの男を助け出せば、二人に戦いを強いる事もなくなる。……行くぞ」

佇む五代の元に、ハナと結花がやってくる。結花が俯いたまま、小さく「ごめんなさい」と呟く。
ハナはそんな結花の肩をしっかりと支えて、気丈に言った。

「行きましょう、五代さん……仲間のためにも、がんばらなくちゃ」
489創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:31:35 ID:M26VdBve
 
490病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:32:31 ID:0KeZCAMZ


そんなやり取りを背中に受けながら、光もまた、言い表しようのない苛立ちを感じていた。
制限によって自由にならない身体、状況もそうだが、何よりも彼女の胸のうちを波立たせていたのは『死』の概念そのものである。

今までは、戦いに敗れ封印される事こそが、アンデッドである光にとっての『死』であった。
眷属の繁栄を、自らのプライドを賭けて戦い、敗北する事。
しかし、このゲームで示された『それ』は、おそらく違うものであろうと察せられた。
統制者が人間に捕らわれているのをこの目で見た以上、正常なバトルファイトのプロセスが行われているとは思えない。

(それに、こんなものを用意しておいてそれでは、殺し合いと称する意味がない……)

光は首に嵌められた銀の輪に軽く触れる。
牙王たちに何がしかの首輪探知手段が支給されていた事も合わせて、不可解な事が多すぎる。
小さく後ろを振り向くと、三人が並んで歩いているのが目に映った。
結花の白いコートには赤黒く、イブキのよすがが残されている。
守るべきものを同じくしたイブキの死。喉の奥がちりちりと疼くような奇妙な感覚が消えない。

(私は……恐れているのか……?)

全ての生ける者にとって未知の存在、光たちアンデッドのみが抱くのを免れていた『死』への恐怖だった。
イブキに変わり、結花たちを守りながら戦うためには、恐れなど持ってはいけない。光は拳を握り、不安を打ち払おうとする。
だが思えば思うほど、より強く自らの恐怖心を意識させられてしまう。
その事に、ますます光は苛立った。

「光さん、どうかしましたか?」

思いの他近くから男の声が聞こえ、光は驚いて振り向いた。
すぐ後ろに、先ほどよりは幾分冷静になったらしい五代の顔があった。
どうやら考えているうちに歩く速度が落ちていたようだ。ばつが悪くなって、光は顔を背ける。

「……なんでもない。それより―――」

光が言いかけた時だった。四人の耳に、目指す放送局からのメッセージが届いたのは。

―――引きちぎられるように唐突に終わった言葉は、彼の身に何事かが起こったのを如実に物語っていた。
光は手にした携帯電話を強く握り締め、飾り気の無い待ち受け画面に戻った液晶を睨みつける。
放送を行った人物は橘朔也と名乗った。姿こそ見えないものの、声などからも光の知る橘である事は間違いない。
その事はこの際はどうでもいい。問題は放送の内容である。
橘は『このゲームの終了に必要な鍵を所有している』と言った。
無論、何らかの罠の可能性もあるが、たとえそうであっても、目指すべき場所からの穏やかならぬメッセージは強烈に彼らの心をかきむしった。

住宅街を貫く広い車道の果てを見やっても目的地は未だ見えず、どれだけ急いだとて人の足ではもうしばらく掛かる距離だ。
一瞬、カードデッキを使用する事も考えたが、時間制限を考えれば移動だけに使うのは避けたい。
放送を中断させたのが何であれ、警戒するに越した事はないのだ。

橘の言っている事がもし真実だとすれば、殺し合いからの脱出という道は再び遠ざかった事になる。
これ以上急ぐ事も、かといって足を止める事もできない状況に、光は歯噛みした。
491創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:32:45 ID:Q9QTE6p/
492創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:33:18 ID:M26VdBve
 
493病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:33:41 ID:0KeZCAMZ


「……そんな…!」

搾り出すような呟きを漏らしたのは五代だった。
忘れようもない、剣崎が先輩と呼び慕っていた男、橘が行った放送が、このような形で終えられた事は、五代の動揺を強めた。
剣崎は今際の時に言った。人の笑顔を守れと。それが仮面ライダーだと。それなのに―――

(俺は……また、守れなかったのか……?)

足元から世界が崩れてゆくような錯覚に捉われ、五代は俯く。
地面に落ちた陰りがじわりと広がっていくような気がして、握り締めた拳が解かれる。
強き戦士の優しい心。張り詰めていたそれが緩み、ほんの一瞬だけ、闇に浸かる。

憎悪。
それは不思議な感覚だった。

一条たちと共に、未確認生命体と戦っていたときにはついぞ感じなかった感情。
罪なき人々の笑顔を奪い殺す敵へ五代が感じていたものは、常に怒りと悲しみであった。
本来戦いを好まない五代に決意をさせてくれていたのは、志を同じくする仲間だった。
彼らは五代が拳を振るい、敵を打ち倒す事に苦痛を感じている事を理解した上で、肯定してくれた。
優しく暖かい、世界のあるべき姿を、彼らは五代に教えてくれた。
たとえどんなに辛くても、一条たちが傍に居てくれれば、自分は戦える。五代はそう思っていた。

その一条はもういない。
五代の目には憎しみと恐怖に覆われた、笑顔なき世界が映し出され、信じていたものや守るべきものが崩れ去る。
胸の奥底に封じ込めた感情が沸き上がるのを感じて目を閉じると、黒いクウガがこちらを見つめているイメージが浮かぶ。

―――究極の闇。

五代は急激に覚醒する。
決めたのではなかったのか、誓ったのではなかったのか。どれだけ辛くても、戦い抜くと。
闇に身を委ねることは簡単だ。現に今、自分は全てを諦めようとしていた。

再び強く拳を握り締める。ぐっと顔を上げて、黙り込んだままの三人の顔を見渡す。
闇を覗き見た後の瞳はその色を褪せさせるほど強く輝き、唇は亡くしたものの命を重さを言葉に乗せる。

「……放送局に向かいましょう。 着けば、やれる事がきっと見つかるはずです」

無理矢理にでも、口角を上げて、笑顔を作る。
普段五代が浮かべるような、見る者を安心させられるそれでは到底なかったが。
自らの心の内の危ういバランスを知ってか知らずか、五代は笑った。
そうしなくては闇に打ち負けてしまうような、そんな気がしたからだった。

(自分に負けたりしない。 だって俺は……クウガなんだから!)
494創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:34:55 ID:HSAzbfnL
  
495創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:34:59 ID:M26VdBve
 
496病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:35:39 ID:0KeZCAMZ
※※※


途切れることなく聞こえ続ける風の唸り声が、否応なしに自らの置かれている非現実的な状況を伝えている。
つまり、少なく見積もっても4階はある建物の屋上に据えられた鉄塔の上に吊るされている、という事をだ。
風間はどうする事もできず、眼前の異形を睨む。

言葉を掛ける気にはなれなかった。
話が通じるとは思えなかったし、下手な事を言って刺激するのもご免である。
その異形はといえば、風間に背を向けて猛禽の眼差しを周囲に注いでいる。
血染めの羽衣が高所ならではの強風を孕んでひるがえり、手に携えた極彩の剣を床の照り返しが鮮やかに浮かび上がらせた。

(そういえば、あの剣は一体……)

病院での戦闘で、恐ろしいまでの威力の一撃を放った武器。
まるで元々そうするためにあったかのように合体したザビーゼクター。
あれは自分の知らないZECTの兵器なのだろうか?銀色のカブトムシ型ゼクターと何か関係があるのだろうか。
そこまで思い至って、風間は剣について考える事を中断する。
元よりZECTの内部に大した興味がない以上、考えても何もわからないだろう。
気になる事と言えば、ドレイクゼクターである。風間は顔を上げて、旋回する青い躯体に目をやる。
今の所、ザビーゼクターのようにあの剣と合体する様子はなさそうだ。

少し安堵していると、ドレイクゼクターが目の前まで降りてきて、風間の体を縛るコードを体で押し始めた。
余った電線か何かを使ったのか、ビニールに金属の芯が入ったそれは、硬い角や鋏を持つ甲虫ならともかく、風に乗り早く飛ぶための薄い羽しか持たない蜻蛉には到底断ち切れるものではない。
風間は軽く首を振って、奮闘するドレイクゼクターを止める。
ドレイクゼクターは悲しげに銀色に光る四枚の羽根を震わせて、再び頭上に舞い上がった。

溜息をついて、風間は目を閉じる。
刹那、風の唸りに混じって、硬い物がぶつかり合うような、高い音がした。
慌てて瞠目し、耳を澄ませると、立て続けに似たような音が聞こえる。風間にも聞き覚えがある、紛れもない戦いの音だ。
鉄塔の上は島全体を見渡せるほど眺めがいいが、足元の建物が邪魔で見られない範囲があり、身をよじって周囲を確認するのも限度がある。
音の聞こえ方から言って、放送局に程近い位置で戦闘が起こっているのは間違いない。
もしや城戸たちが助けに来てくれたのでは、と若干の期待と不安を胸にそっと異形の様子を伺うと、気付いているのかいないのか、変わった様子もなく黙って佇んでいる。
他の危険人物と遭遇してしまったのだろうかと仲間の身を案じていると、一際大きな音が―――とはいえ、遠雷のような、不明瞭なそれであったが―――轟き、それきり、風の音以外は何も聞こえなくなった。

風間が身を硬くしていると、鳥の異形は僅かに下を見やり、ひとりごちた。

「あれは、人の子ではない」
「……!? どういう意味だ」

やはり気付いていたのか。風間は驚愕に目を見開く。
呟かれた言葉の意味が気になり、問いただすが、答えはない。
再び彫刻のように微動だにせず佇むその姿に、風間は背筋に薄ら寒いものを感じていた。
497創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:36:26 ID:Q9QTE6p/
498病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:36:54 ID:0KeZCAMZ
※※※


橘朔也はまんじりともせず、放送室の中にいた。
彼がここに閉じ込められてからしばらく経っている。
痺れを切らして戸を少し押し引きしてもみたが、防音処理の施された厚いそれはびくともしなかった。
それで仕方なく、機材の前に置かれた椅子に座り、じっと時を待つ事にしたのだった。
ギャレンバックルは装備したままだが、これだけ強固な扉である。
自分が放送室に居ると分かっても、開かないとなれば侵入者も強硬手段を取らざるを得ないだろう。

警戒しすぎても仕方がないと悟った橘は、再びトランクボックスを取り出して眺めだした。
やはり気になるのはハードポイントである。
ここに鍵となる何かを挿入する事で、トランクボックスの内容を解析する事が出来るのではないか。
ならば自分にトランクボックスが支給されたように、その鍵も
他の参加者の手にある可能性が高い。
もし邪魔が入ることなく、放送が完遂出来ていれば、と橘は歯噛みする。

(しかし―――何故わざわざそんな事を?)

橘は湧き上がってきた問いに、顎に手をやって考える。
これを使って首輪を解除してみせろと言わんばかりのお膳立てをしておいて、放送を中断させるなど、主催者側の意図は読めない。
様々な可能性を考慮するが、どうも決め手に欠ける。今はまだ、答えは出そうにない。

気を取り直して、自らの置かれた状況で何かできる事はないだろうかと思う。せめて外界の様子を知る事ができれば。
ふと思い立って、モニタの前のボタンを確認する。
扉は依然開かないものの、一部の機材には電力が戻ってきていた。直ちに再び放送が行えるような機材を除いて、だが。
探し当てたそれを指で押すと、青い待機画面が切り替わり、放送局内各所の様子が映し出された。
監視カメラからの映像だ。これで危険な侵入者から先手を取る事ができるだろう。
橘は胸を撫で下ろし、椅子の背もたれに体を預ける―――が、次の瞬間跳ね起きてモニタを覗き込んだ。
四分割された映像の右上、玄関ロビーに人影を見たからである。

「志村……!」

その姿は紛れもなく、彼の信頼する部下、志村純一であった。



放送局の内部は、水を打ったように静まり返っていた。
志村は上着のポケットにしまったライアのデッキに触れながら、ロビーへと足を進める。
摩擦によってかつやをなくしたリノリウムの床も、薄くくすんだ白い壁も年輪を感じさせるものの、特に荒れた様子などはない。
ロビーの壁に貼られたインフォメーション・ボードを見ると、三階に『放送室』の名前を見つけた。おそらく、ここから放送を行ったのだろう。
橘本人、または放送を中断させた者と鉢合わせしてしまわないためにもさっさと出て、ヒビキたちと合流し、根回しをしておかなければならない。
裏手に隠しておいたバイクを使えば、そう難しくもないだろう。

そう思い一歩を踏み出した志村の耳に、甲高いコール音が飛び込んできた。
何事かと思い、周囲を見渡すと、音の出所はロビーのカウンターに置かれている内線だった。
覗き込むと、『3-98…島内向け放送室』のランプが赤く灯っている。
このタイミングで、放送室から玄関ロビーへの内線電話―――志村はもしや、と天井を見る。

(監視カメラか……!)

丸い、小さなレンズが志村をあざ笑うように見下ろしていた。
電話の向こうの相手が橘である可能性があり、こちらの様子を見られている以上、電話を取るしかない。
内心苦々しく思いながらも、白い受話器を持ち上げて耳に押し当てる。
499創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:37:46 ID:M26VdBve
 
500病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:38:12 ID:0KeZCAMZ
『志村、俺だ。 来てくれたのか』

紛れもない橘の声である。志村は監視カメラを見つめ、いかにも安心したかのような声を作った。

「チーフ! 無事だったんですね!」
『ああ。放送を聞いたんだな』
「そうです、あんな終わり方をしたのでチーフの身に何かあったのかと」
『安心しろ。襲撃などは受けていない―――ただ』

言葉を切った橘に、志村は眉をひそめる。
たしかに、無事であるなら自分の姿を確認でき次第出てきてもいいはずだ。

『放送室に閉じ込められている。どうやら制裁のつもりのようだ』

なるほど。これなら先の理由も解る。ということはつまり、橘は今脱出する術を持っていないという事だ。
橘の身を案じる振りをしつつ、何とか橘と合流せずに立ち去る方法を考える。

『変身すれば、扉を蹴破る事ができるかもしれないが……変身が解けてしまえば丸腰だからな』
「……すみませんチーフ、僕も実は敵にグレイブのバックルを奪われてしまっていて……」

そう詫びると、受話器の向こうから、そうか、と苦み走った声が漏れ聞こえる。
ライアのデッキを見せびらかしながら入ってこなくて正解だった、と志村は思う。
さて、どうやって言いくるめようかと再び口を開こうとした瞬間、轟音が鳴り響き、窓ガラスがビリビリと震えた。



志村の姿を確認した橘は、すぐさま放送室の片隅に置かれた内線電話を手に取った。
島外への通信は当然無理だとしても、局内のような限られたネットワークならばと試みた結果、最も信頼する部下と会話が可能になった。
放送室からの脱出が叶わないまでも、自らの計画を託す相手ができたのだ。
無力を詫びる志村に気にするなと言ってから、いよいよ本題を告げようと口を開こうとした瞬間だった。
監視カメラの向こうの志村が弾かれたように玄関を振り向く。その様子にただならぬものを感じ、橘は問うた。

「おい、どうした」
『近くで、おそらく戦闘が……僕の仲間が近くにいるんです』

思った通りだった。グレイブを奪われ変身手段を持たない志村が単独でここまで来られる訳がない。
つまり仲間を伴ってやってきたという事、そして自分の放送を聞いて、危険な思惑を持つ参加者達が集りつつあるという事だ。
橘は受話器を握り締め、奥歯を噛む。モニタの向こうの志村はほんの少し迷いを見せた後、こう言った。

『変身もできない僕に何ができるのかはわかりません―――それでも、誰かが傷つくなら……』
「……お前ならそう言うと思っていた」

行かせてくれ、と言外に訴える志村に、橘は苦笑混じりに答えた。
めったにいないお人よし。今はもういない部下たちが、彼をそう称した事を思い出す。
守るべき相手がすぐそばにいるのならば、今こうして自分と話している間も惜しいだろう。
そう思い、橘は毅然と命じた。

「……行け、志村。但し、死ぬなよ」
『はい、チーフ! きっとすぐに、仲間と助けに来ます!』

受話器を置くやいなや、ロビーを飛び出していった志村の姿を見送って、橘は静かに立ち上がった。
501創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:39:22 ID:M26VdBve
 
502創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:40:46 ID:Q9QTE6p/
503病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:41:26 ID:0KeZCAMZ
放送室内には低く唸るような空調の音のみが響き渡っている。
未だに、扉が開く様子はない。
自らの腰にはギャレンバックル。
外では戦闘が起こっている。
ようやく再会した部下は今、ライダーになれない。

決断の時が、迫っていた。



玄関の自動ドアをすり抜け、姿を隠すように戸脇の壁に背中を着けて、志村はほくそ笑んだ。
生垣の向こう、住宅街の電線に区切られた空に小さく浮かぶ人外の姿を確認する。この距離であれば気付かれはしないだろう。
そのまま建物の壁沿いに移動し、裏手に止めたバイクへと辿りつく。
このタイミングで事が起こったのは幸運だった。
おそらく厳重な防音処理が施されているのだろう、自分と一文字の戦闘の事も気取られずに済んだ事もだ。
橘にはもうしばらく足止めを食ってもらおう―――元々迎えに来る気などさらさらないのだ。
言い訳など幾らでも思いつく。
元々自分に警戒心を持っている人物ならともかく、一度得た信頼と言うものはそう揺らぐ事はないと志村は知っていた。橘は最も御しやすい類の者と言える。
志村はバイクに跨ると、ヘルメットを被った。
南下してくるであろう五代たちと鉢合わせしないためにも、海沿いのルートから病院へ向かう事を決め、もう一度だけ放送局を見上げる。

(しかし……死ぬな、だと? 笑わせる!)

橘の言葉を思い出し、志村はその顔に嘲笑を浮かべた。
スタンドを外して、エンジンを掛ける。
ちらりと、放送で橘が言っていた首輪を解除する鍵、というフレーズが頭を過ぎるが、そんな事は重要ではない。
制限自体は忌々しい事この上ないが、ルールに乗っ取って優勝する事が必要ならば、ためらいはない。

(勝ち残るのは……この俺だ!)
504病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:42:53 ID:0KeZCAMZ

【G-3 放送局】
【1日目 午後】

【橘朔也@仮面ライダー剣】
【時間軸】:Missing Ace世界(スパイダーUD封印直後)
【状態】:悲しみ。顔・背中・腹部に打撲。生きる決意
【装備】:ギャレンバックル
【道具】:基本支給品一式、ラウズカード(スペードJ、ダイヤ1〜6、9)、レトルトカレー、ファイズブラスター
【思考・状況】
基本行動方針:ゾル大佐への責任をとり、主催者を打倒する為、生き残る。
1:放送室からの脱出法を探る。変身は状況次第で使用。
2:信頼できる参加者と大学でトランク(ファイズブラスター)を解析する手筈を整える。
3:死神博士にゾル大佐の遺言を伝える。
4:アンデッドを死亡させたメカニズムの解明。
【備考】
※放送室には個人で参加者の携帯、もしくは全島各所にあるスピーカーへの放送が可能な準備が整っています。
※午後二時に各参加者の携帯へ向けて放送が行われました。
※橘は自身の姿を映して放送を行ったつもりですが、主催者側の介入でスノーノイズが発生しています。ただし、音声はクリーンです。
※放送室のロックがいつ解除されるかは不明です。後の書き手さんにお任せします。


【志村純一@仮面ライダー剣・Missing Ace】
[時間軸]:剣崎たちに出会う前
[状態]:腹部に軽度の火傷(応急手当済、治癒進行中)、胸に中程度のダメージ、強い疲労。一時間半変身不可(アルビノジョーカー)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ラウズカード(クラブのK、ハートのK)@仮面ライダー剣、蓮華のワイヤー内蔵型指輪@仮面ライダーカブト、
    ライアのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、特殊マスク、ホンダ・XR250(バイク@現実)、首輪
【思考・状況】
基本行動方針:人間を装い優勝する。
1:第3回放送前にはヒビキ達との合流し、根回しをする。
2:もう慢心しない。ダグバなどの強敵とは戦わず泳がせる。
3:馬鹿な人間を利用する。鋭い人間やアンデットには限りなく注意。
4:誰にも悟られず、かつ安全な状況でならジョーカー化して参加者を殺害。
5:橘チーフを始め、他の参加者の戦力を見極めて利用する。自分の身が危なくなれば彼らを見捨てる。
6:『14』の力復活のために、カテゴリーKのラウズカードを集める。
505創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:43:04 ID:jH9ZPAci
紫煙
506病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:44:22 ID:0KeZCAMZ
※※※


全ての事象には多数の側面がある。
空を、海を、草原を渡り、花々を渡って香りを運び、人の頬を優しく撫でて魅了する朗らかな風。
だがある時は激しく吹き荒れて花を散らし、高波を立て、地上にへばりつくものを引き剥がして巻き上げる。
相反する二つの姿は、表裏に隔てられてこそ本来の姿と呼べるだろう。
しかし風の化身の境界は今や崩れ去り、奔放に快楽を追い求める淫蕩さと嵐のような破壊衝動とを同時に内包した存在となっていた。

風のエルはただ時を待つ。その血の色を主に証するに相応しい生贄が訪れるのを。
―――そしてその瞬間はやってきた。
鷹の瞳が遠く伸びる道路に人の姿を見つけたのだ。
狂った頭で聖地と定めたこの場所に、主に相応しいと作り上げた玉座に向き直って、風のエルは再び礼を施す。

「主よ、刻は来た」

主の顔を見上げる―――実際風間の表情は困惑一色に染められていたが、彼を主と思い込んでいる風のエルには問題にならない。

「万物の源、終焉にて創世なりし者よ、今こそ御身の名の元に人の子の血を流す刻」

手にした剣を眼前に掲げる。遮るもののない陽の光によって、剣身がぎらりと輝いた。
未だ、この体に本来の力は戻ってはいないが、この剣を使いこなせるようになった今、さしたる問題ではない。
風のエルは歓びに打ち震えた。与えられたこの力を再び振るい、愛する主の御心を知る事ができると。
作りものめいた、整ったかたちの唇がつり上がり、鋭く尖った歯が覗く。
凄絶な笑顔を浮かべながら、主の子たる人を殺める許しを乞うためのしるしを、失った手首に右手で刻む。
凝りかけた傷口から零れた血液が、足元におぞましい模様を描いた。

風のエルは屋上からその身を躍らせる。
濁った瞳に、哀れな、自身にとっては誉れ高き、唯一無二の贄の姿を映して。



【G-3 放送局の屋上】
【1日目 午後】

【風間大介@仮面ライダーカブト】
[時間軸]:ゴンと別れた後
[状態]:鼻痛(鼻血は止まっています)。 全身に大ダメージ。鉄塔に宙づり。ドレイクに30分変身不能。
[装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター
[道具]:なし
【思考・状況】早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒
基本行動方針:打倒スマートブレイン
1:目の前の怪人から逃げて、仲間と合流。
2:協力者を集める(女性優先)
3:謎のゼクターについて調べる。
4:あすかの死に怒りと悲しみ。
5:移動車両を探す。
6:影山瞬に気をつける

【備考】
※変身制限に疑問を持っています。
507創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:45:34 ID:jH9ZPAci
支援
508病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:46:29 ID:0KeZCAMZ
※※※


放送を終えて再び出発した五代たちは、じきに目的地へ到着するという所までやってきていた。
ハナは建物の間に覗く、高くそびえる電波塔を見上げて、もう一息と足に力を込める。

「大丈夫?」

傍らの結花に声を掛けると、俯きがちだがこちらを見て、小さな声ではい、と答える。
五代と光は歩く速度に随分気を使ってくれたようで、それほど酷く疲労してはいないようだ。
そんな結花の様子にほっとしつつ、イブキのためにも彼女を守らなければ、とハナは思う。
決意を胸にしながらも、戦うことの厳しさを改めて感じたハナは、一抹の不安も覚える。

(もし、あいつがここにいてくれたら……)

一文字隼人。飄々としたあの態度をどこか頼もしく感じていた事を今は思い出す。
どこかぴりぴりとした―――五代などはそれを感じさせないように振舞ってくれてはいるが―――この雰囲気も、一文字なら打ち払ってくれたかもしれない。
だが、今はそんなことを考えても仕方ない。
放送を無事終える事ができたら、病院へ向かう手筈になっているのだ。それまでは。

(自分にできる事を……そうよね、良太郎)

人を救う事ができて、電王になってよかった、と言ってくれた友人の言葉を心に刻み付ける。
戦わなくてはならない。失った仲間の分まで。彼らのように、勇気を持って。


結花の心は、ハナの気遣う言葉に答えてからも、重たく沈んだままだった。
涙はもう枯れ果てたかのように、浮かんでこない。疲労もあまり感じない。
ただ、茫然自失していた。

それでも言われるままにここまで歩いてきた理由はただ一つ、見捨てられたくないがためだった。
もし五代たちに見捨てられれば、結花を守るものはなくなり、たちまち世界は彼女の存在を拒絶するだろう。
結花がもっとも恐れるのはその事だった。
そして、そんな自分に守られる価値などありはしない、とも思う。
保身ために、持つ力を使う事もしない自分。そのためにイブキは命を落とした。
あの暖かい微笑と、頼もしい背中は、もうないのだ。
しかしいくら自己嫌悪に陥ろうとも、そう断じる事はできなかった。
イブキが、光たちが結花を守ってくれている今、それを否定することはどうしても、できなかった。

(海堂さん、イブキさん……私……私は……?)

自らに抱くアンビバレンスな感情に、結花はどうしたらいいか解らず、伏せた睫毛を震わせた。
ひゅう、とにわかに旋風が起こる。
結花は舞い上がった砂塵に目を細めると同時に、風の音に紛れた異音に気付いた。

―――…per Sting---
509創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:47:50 ID:M26VdBve
 
510病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:47:55 ID:0KeZCAMZ
「……逃げて!!」

かすかな電子音。その意味を理解するより前に、結花は叫んだ。
刹那、鋭く放たれた光の槍が彼らの足元に突き刺さり、そのエネルギーによってアスファルトが砕け散る。
声をきっかけに、咄嗟に光が結花を、五代がハナをそれぞれ抱えて飛び退ったおかげで直撃は免れた。
激しい衝撃に思わず顔を背けた結花がはっと面を上げると、すぐ近くに上空を睨む光の顔があった。

視線を辿ると、灰色の建物を背に浮かび、鮮やかな色の大剣を構える人外のものの姿。
鳥のような頭部。きらびやかな装飾を纏い、小さく背中に見えるのは羽だろうか。姿から、結花は天使を連想した。
しかし血に汚れた禍々しい笑みに、瞬時にそのイメージは崩れ去る。異形は再び剣を構えた。

 ---Hyper Sting---

再びすぐ傍で大きな爆発音が結花の耳をつんざく。光に抱えられたまま、悲鳴を上げて頭を庇う。

「結花!」

そのまま身を縮こまらせていると、肩を掴まれて揺さぶられた。
顔を上げて光を見つめる。視界の端に小さく、ハナを庇いながら立ち上がる五代の姿が見えた。
至近距離に見る光の表情は険しい。
光は、イブキの音笛を持ったままの結花の手の上に手を重ねて握り、静かに言った。

「ハナと逃げろ。 路地に入って、どこでもいい、屋内に隠れなさい。 絶対に出て来ては駄目」

触れる掌が熱い。結花は黙って、光の言葉を聞いていた。
光たちと離れ離れになるのは本当は不安だったが、否を唱える事はできない。
光は結花のコートから白いデッキを取り出す。

「……これは借りておく。 ―――行け!」

手からぬくもりが消えると同時に、強く突き飛ばされて結花はその勢いのまま走り出した。
同じように駆け出したハナと共に建物の林立する住宅街へと入り込む。
一瞬だけ振り返ると、五代と並び立つ光が目に入った。
その背中がイブキと重なって見え、結花は痛む胸を押さえて、走り続けた。
511創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:48:15 ID:jH9ZPAci
私怨
512病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:49:32 ID:0KeZCAMZ


鳥に似た異形は、余裕ぶってか嫌らしい笑顔を顔に貼り付けたままその場に残った光と五代を見下ろしている。
結花とハナを追う素振りが無いことに内心ほっとしながら、光は隣の五代に呟く。

「これがお前の言っていた“羽の生えた怪人”だな?」

五代は頷く。その手には同じようにハナから預かりうけたものだろう、黒いデッキが握られていた。
二人は同時に、路肩のショーウィンドウにデッキを翳す。
この怪人が橘の放送を中断させた者かどうかはともかく、今ここで倒しておかねばならないのは確かだ。

『変身!』

二人の声が重なり、動作が重なり、虚像が重なる。
仮面ライダーファム。
仮面ライダーナイト。
白き翼を持つものと、闇の翼を持つものが、狂った天使の前に現出した。

「行くぞ!」
「はいッ!!」

召喚機を構え、駆け出す二人の戦士を見て、異形は甲高く耳障りな笑い声を立てた。手にした剣身が赤く輝く。

 ---Hyper blade---

電子音声の後に剣を振りかざすと、巨大な光子の刃が二人に襲い掛かった。
ファム、ナイトは共に地面を素早く転がり、それを避ける。直撃を受けた道路は大きくえぐれ、その威力を物語っている。
もしまともに喰らえば無事では済まされない。
続けざまに閃光が地面を穿ち、巻き上がる瓦礫と砂塵の中で、ナイトはダークバイザーにカードを装填した。
このまま攻撃を受け続ければジリ貧である。上空を飛び回り、遠距離から攻撃を加えてくる相手にはこれしかない。

 ---ADVENT---

鏡面から漆黒の翼が弾丸のように現れ、異形に体当たりを喰らわせる。
衝撃にやや体制を崩した怪人は、わずらわしげに剣を振り回してダークウィングを追い払う。
それを見てナイトは気付いた。以前戦った時に比べて、敵の動きは精彩を欠いている。
疲労やダメージから来るものなのか、制限から来るものなのかは解らないが、チャンスには違いない。

ダークウィングは闇雲に振り回される剣を躱すとすぐさま旋回して、ナイトの背中に合体し彼に飛行能力をもたらした。
素早くもう一枚カードを取り出し、召喚機に読み込ませる。降り来る騎士の槍を手に、ナイトは空へと舞い上がる。
ダークバイザーのような細身の剣では大剣相手には力不足との判断であった。
短期で決着を付けるつもりである事を察したファムも、彼をサポートすべく白き翼を召喚した。

 ---ADVENT---

ブランウィングを伴いナイトは飛翔した。標的めがけてウィングランサーを振るう。
金色の剣身とぶつかり合い、激しい火花が散った。
後ろからブランウィングが鳴き声を上げて突進するが、異形は素早く身をかわして距離を取り、再び剣を構えて攻撃を放つ。
伸びるエネルギーの束を避けて飛びながら、隙をうかがうナイト。異形の背後の鉄塔が視界に入る。そこには―――

(―――人!?)
「五代ーーーッ!!」

思わぬ場所に見た人影によってそらされた意識が光の声によって一瞬で引き戻される。
はっとして見返すと、異形がさながら銃器のように剣を構え、その剣身には燐が集まり今にも解き放たれようとしている所だった。
513病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:51:28 ID:0KeZCAMZ
 ---Hyper Cannon---

目の前が一瞬真白に輝き、あまりの眩さにナイトの思考がほんの数秒途切れる。
覚醒した時には世界がさかさまに映り、自分が墜落している事に五代は気がついた。
まずい、と思った瞬間、純白の影がよぎり、フワリとナイトの体を支える。正体はブランウィングだ。
ナイトを地面に下ろすと、間もなくブランウィングは粒子となって消え去った。

「何をしている!」

怒気も露わに、ファムはナイトの元に駆け寄る。
敵の砲撃を受ける寸前、ブランウィングよりやや早く召喚されたダークウィングは消滅し、そのため直撃を免れたが結果落下することになったのだろう。
その時である。異形は体をそらし、一際大きな声で笑い声をあげた。
二人を見下ろして、彼は冷嘲のこもった声で告げる。

「翼を失っては風に追いつけまい―――ありうべからざる者どもよ。 お前たちに用はないのだ」

そう言い捨てると、二人を掠めて住宅街へと飛び去る。
思惑に気が付いた光は、しまったと呻いた。
最初から違和感は感じていたのだ。
結花の咄嗟の声で避ける事ができた最初の一撃のみならず、結花とハナを庇い思うように動けない自分たちが何故あの威力の攻撃を躱せたのか。
最初から分断させ、時間を稼ぐ事が目的だったのなら、合点が行く。
ようやくたどり着いた目的地を前にしたせいか、全員で余力を残したまま逃走するという選択肢を作らなかった事が悔やまれる。

ファムは踵を返して異形を追うべく走り出した。ナイトもそれに続く。
間に合え、と念じながら―――
514創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:52:24 ID:Q9QTE6p/
515創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:52:35 ID:M26VdBve
516病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:53:04 ID:0KeZCAMZ
【F-3 南部・放送局へ続く道路上】
【1日目 午後】

【城光@仮面ライダー剣】
[時間軸]:40話、トライアルについて知った後
[状態]:膝などに軽い擦り傷。腹部に裂傷(中程度:応急手当済み)。各部に中程度の打撲。ファムに変身中。30分アンデッド化不可。
[装備]:カードデッキ(ファム)
[道具]:基本支給品・トランシーバーA・ラウズカード(スペードQ/K)
[思考・状況]
基本行動方針:このゲームから脱出する。主催にはバトルファイトを汚した罰を与える。
1:ハナ、結花の保護。鳥の怪人を倒す。
2:北條奪還のため、まずは『青いバラ』『首輪』の入手、『放送』の指令を遂行。
3:他の参加者とは必要以上に関わる気はない。邪魔ならば排除するが基本的に放置。
4:剣崎の死、北條の言葉、乃木との戦闘から首輪制限下における単独行動の危険性を認識。
5:五代の態度に苛立ちつつ、僅かに興味。 志村に違和感。
6:イブキの代わりに、結花の面倒を見る
7:首輪探知手段の支給という行為に疑問
【備考】
※トランシーバーの有効範囲は周囲一マスまでです。
※以下の様に考えています
青い薔薇は首輪と関係がある
ライダーの強化フォームはなんらかの制限が掛かっている。

【五代雄介@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:33話「連携」終了後
[状態]:全身打撲、負傷度大(応急手当済み)、強い自己嫌悪。ナイトに変身中。クウガに30分変身不能。
[装備]:カードデッキ(ナイト)警棒@現実、コルトパイソン(残弾数5/6:マグナム用通常弾)
[道具]:警察手帳(一条薫)
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に殺し合いを止め、みんなの笑顔を守る
1:ハナ、結花の保護。鳥の怪人を倒す。
2:北條を救出するために、乃木の命令を可能な限りで遂行する。
3:白い未確認生命体(アルビノジョーカー)、ダグバ、ガドル、牙王を倒す。
4:金のクウガになれなかったことに疑問。
5:剣崎の分まで頑張って戦い、みんなの笑顔を守りたい。
6:屋上の人影が気になる。
【備考】
※第四回放送まで、ライジングフォームには変身不能
※ペガサスフォームの超感覚の効果エリアは1マス以内のみです。また、射撃範囲は数百メートル以内に限られます。
※ドラゴン、ペガサス、タイタンフォームには変身可能。ただし物質変換できるものは鉄の棒、拳銃など「現実に即したもの」のみで、サソードヤイバーやドレイクグリップなどは変換不能。
※葦原涼の「未確認生命体事件」の終結を聞き、時間軸のずれに疑問を持ちました。
※葦原涼のギルスへの変身能力について知りません。
517創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:54:05 ID:Q9QTE6p/
 
518病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:54:55 ID:0KeZCAMZ
※※※


灰色の路地を縫うように、少女たちは駆けていた。手を繋ぎ、決して離れないように、なるべく急いで。
背後に聞こえる爆発音に何度も足が竦む。その度にぎゅっと唇を噛んで、ハナと結花は走った。
やがて音は聞こえなくなり、二人は足を止めた。振り返っても建物の影に隠れて、放送局の前は見えない。

「このあたりでどこかに隠れよう、結花ちゃん」
「……はい」

肩を上下させつつ、結花が従う。ハナは周囲に目を配り、隠れられそうな建物を探した。
光と五代のことは気がかりだったが、今は言われたとおりに身を潜めているしかない。
そう思いながら結花の手を引くが、抗うような仕草をされてふと顔を見返すと、その瞳が恐怖に見開かれているのに気がついた。

「……見つけた」

喉の奥に笑いを含んだ、低い呟きがハナの耳に飛び込んでくる。
はっとして目をやると、同時に路地の向こうに、先刻の鳥の異形の姿があった。
その瞬間、二人は再び走り出した。五代たちのいるであろう放送局からは遠ざかってしまうが、今はそんな事を言っていられない。
幸いなるかな、相手の飛ぶ速度は手にした剣が重いのか、それほど速くはない。
だがいつまでも逃げ続けられるとも思えず、ハナは何か策はないかと考えをめぐらせながら、残る力を振り絞って走り続ける。
けたたましい、狂気の滲む笑い声が聞こえる。腕に下げたデイパックがずしりと重たく感じた。
ハナはある事を思いつき、走り続けつつ結花に言った。

「結花ちゃん、これ、こっち持って! それで、せーので離すの。 いい!?」
「……え!?」

戸惑う結花の手に『それ』を握らせ、家と家の隙間にあるより狭い路地に駆け込んだ。
一気に走り抜け、ほんの少しだけ振り向く。怪物がそのまま付いて来ている事が確認できた。

「いくよ……せーの!」

振り向くと、すぐ背後にまで異形が迫っていた。二人の手を離れた『それ』は広がって、怪物の顔や体に纏いつく。
ハナがここへ来た時に身に着けていた、絢爛たる絹の着物を目隠しに使ったのだ。
驚愕に動きを止めた怪物に、その試みが成功した事を悟り、ハナは結花と共に再び駆け出そうとした。

「―――きゃあッ!」
「結花ちゃん!?」
519創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:55:26 ID:jH9ZPAci
四円
520病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:57:32 ID:0KeZCAMZ
綾織の打掛は真ん中から二つに切り裂かれ、その間から血まみれの腕が伸びる。
長い黒髪を掴まれ、そのままひきずり倒された結花が痛みと恐怖に悲鳴を上げた。
結花を捕らえ、邪悪な笑顔を浮かべる鳥の怪物。ハナはデイパックから斧を取り出した。
異形は今にも崩れ落ちそうに震え、怯える結花の顔をぐいと覗き込む。
泣き出しそうなその顔に、ほんの一瞬だが、灰色の影が浮かび上がって消えた。

(え……!? 今のは……?)

驚き、見間違いかと目を瞬かせるハナ。異形は短く吐き捨てた。

「お前もまた、人の子ではない」

そう言って結花を突き飛ばす。そのまま地面に転倒する結花にハナは駆け寄り、庇うように立つと斧を構えた。
歩み寄る怪人に、手にした斧で殴りかかるが、簡単に受け止められてしまう。
斧を怪人は放り捨て、なす術のない状況に身を竦ませるハナに手を伸ばした。
割れたガラスによって頬に付けられた、浅い切り傷にその指で触れられて、ぴりりとした痛みが走る。
異形は黒い鉤爪の先に、僅かに付着した血をうっとりと眺め、口に含んだ。
至近距離にあるその顔が引き歪む―――歓喜の表情を浮かべ、異形はハナに厳然と告げた。

「純然たる人の子よ、その涙より赤きもので、我が主に己が咎を明かせ」


【G-3 住宅街のはずれ】
【1日目 午後】

【風のエル@仮面ライダーアギト】
[時間軸]:48話
[状態]:頭部にダメージ。全身に大程度の負傷・行動原理に異常発生。左手首欠損。30分能力発揮不能。
[装備]:パーフェクトゼクター(+ザビーゼクター)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:優勝して帰る。 帰ったら…?
1:「仲間」を持つ「強き者」を殺す。容赦する気はない。
2:人を殺すことに、快楽を覚えた。
3:人間の血から、主の人間へ抱く感情の一端を知りたい。
4:パーフェクトゼクター(名前は知らない)の使用法を理解。有効活用したい。
[備考]
※デネブの放送、および第一回放送を聞いていません。
※首輪の制限時間に大体の目星を付け始めました。
※パーフェクトゼクターへの各ゼクターの装着よりも、基本的には各ライダーへの変身が優先されます。現在は資格者不在のザビーゼクターのみ装着されています。
※風間をオーヴァロードと勘違いしています。

【ハナ@仮面ライダー電王】
[時間軸]:劇場版・千姫と入れ替わっている時
[状態]:小規模の打撲、疲労ある程度回復、悲しみと強い決意。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、洗濯ばさみ、紙でっぽう、ミニカー7台
【思考・状況】
基本行動方針:脱出する
1:仲間と行動。後ほどヒビキたちと合流
2:仲間を探して一緒に脱出する
3:イマジンに対する自分の感情が理解出来ない
4:危険人物に気をつける
5:モモタロス、デネブ、あすか、イブキら仲間達の分まで戦う
7:結花が人じゃない?どういう意味?
6:志村が妙に胡散臭い
521創る名無しに見る名無し:2009/05/22(金) 23:58:02 ID:M26VdBve
522病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/22(金) 23:59:04 ID:0KeZCAMZ
※※※


怪人がハナを連れて飛び去った後、一人残された結花は冷たい地面の上でうずくまる。
枯れ果てたと思っていたはずの涙が後から後からこみ上げて、その頬を伝っていた。
恐怖と不安、無力感と絶望。
自己嫌悪と自己憐憫にまみれて、日の届かない路地の奥、引き裂かれた綾錦の中で、今だ飛び立てぬ鳥のように、泣き続けていた。


【長田結花@仮面ライダー555】
[時間軸]本編第41話終了直後(武装警官を一掃する直前)
[状態]小程度の負傷、人間への不信感(軽度) 、海堂・イブキの死に対する強い悲しみ。
[装備]変身鬼笛・音笛、音撃管・烈風、ディスクアニマル(アサギワシ)
[道具]ライダーブレス(ケタロス:資格者不明)、青い花びら 、トランシーバーB
[思考・状況]
基本行動方針:木場と合流する
1:イブキの死に深い悲しみ。自分の無力差を嫌悪。
2:「人間ではない」城光に若干の好意。「人間」の「警官」北條には強い警戒心。
3:仲間達に嫌われたくない。オルフェノクであることは極力隠す。
4:指令なんて、どうしたら……?
※イブキの亡骸がドラグブラッカーに捕食されたのを目の当たりにしています。
※トランシーバーの有効範囲は周囲一マスまでです。
※足元に冥府の斧@仮面ライダーアギトが落ちています。
523病い風、昏い道 ◆yFvLIBbl9I :2009/05/23(土) 00:01:01 ID:s7fqD6WM
以上で投下終了です。支援してくださった方ありがとうございました。
矛盾点・誤字脱字などございましたらご指摘お願いいたします。
524創る名無しに見る名無し:2009/05/23(土) 00:04:35 ID:tGfWqpIP
投下乙です!
志村が活躍しそうな気配……これも橘さんのおかげ、っておーいww
風のエルも方針を固めてきて強敵となりましたね。これは血の雨がふるか。

それと、綺麗な文章で読みやすかったです!
525創る名無しに見る名無し:2009/05/23(土) 00:31:06 ID:29ByRarT
投下乙!
相変わらず不安定だなぁ、結花は……
ハナが危険なあの状況でどう動くのか。かなり気になる!
結果によっては暗い感情を宿しつつある五代が心配ですね

橘さんは相変わらずいい意味の馬鹿ですw
もう動く志村のサポート役ですねwww
ステルスとして本格的に動き始めた志村は今後どうなるのか!?
それぞれの動向が期待出来ますね。GJ!!

最後に一つだけ。風間wwwwwww気の毒wwwwww
526創る名無しに見る名無し:2009/05/23(土) 00:42:19 ID:YGXhxKBk
投下乙です
捕らわれの橘さん、相変わらず過ぎてwwwww

…それはさておき、風のエルvsハナがどうなるのか
五代と光コンビは間に合うのか
そして、ぐらぐらに揺れ惑う結花の覚醒はあるのか
続きが気になる展開に、GJ!
527創る名無しに見る名無し:2009/05/23(土) 02:09:49 ID:qk+3vPBT
投下乙です。
文章の流れが綺麗だ。
良い作品を読ませて貰いました。
GJです!
528創る名無しに見る名無し:2009/05/25(月) 22:58:52 ID:Y+NjMQp4
新たな予約にwktkしつつ保守!
529創る名無しに見る名無し:2009/05/29(金) 21:26:52 ID:FYoCU46n
ディケイドの予告で王蛇さんが持っていた金棒みたいなやつ(名前がわからん)を見てバトロワ1stを思い出した人いる?

雑談スマソ
530創る名無しに見る名無し:2009/05/29(金) 21:35:02 ID:NOqblIQa
あるあるwww
浅倉デルタは素敵だったねw
531創る名無しに見る名無し:2009/05/29(金) 22:51:32 ID:7tOvQl5x
ありゃーよかったw
ただでさえヤバい浅倉にデルタはなーw

デルタドライバーはきっとNEXTでも何かやらかしてくれると信じてる
532創る名無しに見る名無し:2009/05/31(日) 17:41:21 ID:m9y2DhiB
ディケイド響鬼はいいキャラだったなぁ、デビット伊藤ってだけで不安になったのが嘘のようだ
ロワに出れたら面白そうという意味でも本当にいいキャラだった
533 ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 22:23:13 ID:/RK5bQ6q
お待たせしました。
城戸真司、死神博士、影山瞬、牙王、ゴ・ガドル・バ、
乃木怜治、北條透、東條悟、三田村晴彦、ン・ダグバ・ゼバ。以上十名投下します。
534◇AMes0c0h.I氏 代理投下:2009/06/01(月) 22:24:29 ID:/RK5bQ6q
日が西へと傾き、太陽の輝きがより一層赤みを増した頃。白装束の青年が草木を踏み倒しながら、どこまでも歩き続けていた。
つまらなさそうな表情はいつまでたっても消えることは無く、故に彼は満たされない心と、大きすぎる力を持て余している。
ふと彼が思い出すのは、このゲゲルの中で出会ったリント達。元の世界と比べると満足しないのは同じだが、不思議と退屈はした覚えが無い。

最初に出会ったのは脆弱な少年と生身で立ち向かってきた男。歯応えが無い、今まで蹂躙してきた者達となんら変わりが無い。
続いて現れた青い剣士はそれなりに楽しめた。リントの身でありながら、自分に久しく感じていなかった痛みを思い出させたのだから。
次に記憶に残っているのは赤と紺の二人組み。剣士とは別の紙切れを用いて戦うのと、戦闘自体は時間切れという形で終わったことをよく覚えている。
そして赤の戦士は別の姿へ……本郷猛、だったか。緑の姿で二度、赤の戦士も含めると三度も連続して戦っているのに、それを微塵も感じさせない戦いぶりだった。
そうだ、三対一で戦ったこともあった。黄金の騎士と剣士に似ていたが実力は比べ物にならず、その力は今自分の手の内にある。
赤紫の戦士はその色を濃くし、毒々しい紫の剣士として斬りかかって来た。甲冑に包まれた身を突き崩すのは少々困難だったが、本当に少々だ。
ヒビキと名乗った鬼は清らかな音を持っている。事実右肩にヒビを入れられたのだ、その威力と意思は賞賛に値するだろう。

「仮面ライダー……」

仮面ライダー、彼が今まで戦ってきた者達の名。立ちはだかった様々な戦士は、その多くがこの名を口にしている。
青い剣士は仮面ライダーとしてリントを守るために戦った。
赤と紺の仮面ライダーは互いを信じあい、見事な連係を見せた。
緑の飛蝗は自らを仮面ライダーだと名乗り、その命を燃やして挑んできた。
黄金色の騎士は仮面ライダーでありながら自分を失望させ、仮面ライダーの姿を失った。
紫の鎧剣士も、音を使う鬼も仮面ライダーだ。もしかしたら、最初のあの男達も仮面ライダーだったのかもしれない。

――――だが、それまでだ。今まで出会ったどの参加者も自分を満足させ、心の底から楽しませるには遠く及ばない。
535龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 22:26:08 ID:/RK5bQ6q

(……まだかなぁ……)
自分を楽しませてくれる存在。究極の闇であるに並び立つのは、やはり同じ究極しかない。
彼――――ダグバの知る限り、究極の元へたどり着けそうなものはたった一人しかいない。太古の昔自分を封じた力を受け継いだ、心の優しい青年。
青い仮面ライダーと共に自分と戦い、その手で青い仮面ライダーを殺してしまったあの男。その男のもう一つの名を、ダグバはまるでいとしい恋人を呼ぶように呟いた。

「…………クウガ…………」

――――ゥオン。

グロンギとしての超感覚が、微かに聞こえるバイク音を捉える。頭に浮かぶのは待ち焦がれていた究極の素質を持つ男。
ついに来たか、来てくれたかと興奮する様は、ダグバを知る者からすれば彼らしくない、と評することだろう。
とはいえそれも無理は無い、彼はこの島に着てからずっとお預けを食らっているといっていい。期待するなというほうが酷と言う物だ。

だが。
「……なぁんだ、違うのか。」
零した声に失望の色が混じったのは、来訪者がクウガでなかったから、と言うだけではない。ついさっき戦った相手が再び現れれば、ダグバでなくとも萎えるだろう。
そういえばもう一人いたな、と今更になってダグバは思い出す。全てを破壊しながら、自分に挑んできた仮面ライダーがいたな、と。

「よぉ、探すのに手間取っちまったぜ。」

それが――――この男、牙王だ。

「どうした? しけた顔しやがって。」

牙王の挑発めいた言葉に、ダグバは溜息で答える。楽しみでなかったと言えば嘘になるが、楽しみにしていたのはもっと強くなった牙王だ。
たった数時間程度で、大きな進歩など期待も出来ない。対象が熟成され切った強さを持つ牙王ならば尚の事。
と、ここでダグバは、牙王の傍らにいた自分と同じ種族が見えないことに気づいた。我が部族の中で最も究極の闇に近づきながら、クウガに敗れたはずの戦士の姿が。
536龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 22:26:59 ID:/RK5bQ6q

「ガドルは?」
「あ? あぁ、あいつはなぁ……」

不敵な笑いを浮かべて、一呼吸。

「おいて来たぜ。」

+++

荒野に男性が二人並び立ち、言い争いをしているというのもなかなか珍しい光景かもしれない。
それも片や軍服の、片や全身刺々しい衣装を着込んだ壮年の男性ともなれば、もはやめったに見られるものではない。

「ふざけんな、こっちはさっさとダグバを喰いたいんだよ。」

寄り道食ってる暇なんてあるか、と掴み掛かったのは牙王の方からだった。きっかけは、自分たちがダグバの元へ向かっていないという些細なものからだ。

「まずは身体を整えることだ。今のままダグバに挑んでも毟られるだけでしかない。」

ガドルが異議を唱えたのは、いずれ牙王を倒すのは自分、と無意識に拘っていたからかも知れない。
いずれにせよ、今すぐダグバの元へ出向いたとて牙王に勝ち目があるとも思えない。ガドルは彼なりにそのことを伝えようとしたのだが。

「知るかよ、俺に指図が通るとでも思ったのかよ。」

瞬時にデイパックに手を突っ込み、ガドルの首筋に刃を突きつけた。目線だけで降りろと指示され、ガドルはバイクから降りることを余儀なくされる。

「ふっ、じゃあな。ダグバを喰った後……気が向いたらお前のところにいくかもな。」

それだけ言い残したかと思うと、牙王はバイクを吹かして走り去ってしまった。
狙おうと思えば、射撃体に変化してとめることも出来たろう。しかしそれを行わなかったのはガドルの誇りが、ゴとしての矜持がそれを許さなかったからだ。
幸い、目的の場所自体はもうすぐそこだ。ガドルは荷物を背負いなおすと、保養所まで短い道を駆け出していった。
537龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 22:27:48 ID:/RK5bQ6q

+++

「そんじゃさっさと続き、始めようぜ。」
今にも待ちきれないのか、牙王はバイクから降りて走り出す。その姿が鎧に包まれることは無く、代わりに右腕が巨大な刃に包まれていた。
微細な振動を続ける鋸のようなその武器の名はGS-03・デストロイヤー。かつて警視庁が作成した特殊強化装甲服の武装の一つ。
ダグバに届く数歩手前で跳躍し、腕の刃を振り上げる。大気を切り裂きながら震える刀身に、暮れなずむ夕日が煌く。

「オラァッ!」

降ろされた切っ先はダグバの右手に吸い込まれ、生身の肌から色鮮やかな血液が噴出……さなかった。

「な……!」
「軽いね。」

刃は確かにダグバの左の掌に吸い込まれた。しかし切っ先がその肉を抉る事は無く、牙王の力もたった五本の指で止められていた。
振動刃が肌に触れないぎりぎりの所まで迫っていながら、親指から数えて三本目までの指が的確に刃の腹を押さえつけている。ほんの少し距離を見誤れば親指が撥ね飛んだろう。
押し込もうとも、引き抜こうとも動く気配を見せない。どんどん苛立ちが高まり、反射的に開いている左の拳で殴りかかる。

「オ、ォォッ!」
「遅いよ。」

拳がダグバの顔面を打ち抜く寸前、牙王の視界が横に傾く。何が起こったのか、それは数秒遅れてやってきた鈍い痛みと土の味が教えてくれた。
地面に倒れこんだ牙王をダグバが見下ろしている。その目は仮面ライダーと戦っている時の純粋な目でなく、脆くて弱いリントを虐殺する時に見せる冷めた目だ。
牙王のあまりの弱さに失望した――――というよりも、興味をなくしただけか。全てを喰らい尽くすなどと豪語した牙が、ここまで落ちぶれているともはや呆れる気すら起きない。
直に手を合わせた間柄であるからこそ分かるこの劣化を引き起こした原因は、間違いなくその身に刻み込まれた大量の傷。
そのうちのいくつかは他ならぬダグバが刻み付けた物だ。それが他の参加者につけられた傷と重なって、今の弱体化を導いたのだろう。

「……ッ、寝ちまったか」

軽く落としたつもりなのに、どうやら軽く意識を飛ばしてしまったようだ。ますます牙王に対する興味が失せていく。
538龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 22:28:32 ID:/RK5bQ6q

「弱くなったね、牙王。」
「あぁ?」

馬鹿にされたような気がした牙王は立ち上がってダグバの胸倉をつかむ。が、今はその力も先の闘争とは比べ物にならない。

「誰が弱くなったっ……!?」

言葉の途中で顔を掴みあげ、脇へと振り払った。力の勢いをそのままに、牙王の体は荒野を転がっていく。
その様を眺めていたダグバは、何かを思いついたかのようにデイパックから何かを取り出し、牙王の方へと投げつけた。

「……」

頬に硬いものが当たる感覚で目を開けるとそこには、見覚えのある黒いケースが存在していた。
それを掴みながら立ち上がり、きっとダグバの方を見据える。もう既に彼は歩き始めており、背中は小さくなりかけていた。

「おい……これぁ一体何のつもりだ!?」

その叫びにぴたりと足を止めたダグバが、けして大声ではないが辺りに響く程度の声で話し始める。

「貸し借りは好きじゃない、でしょう。借りていたものを返しただけだよ。」

くるりと振り返った白い姿が風に吹かれ、同じくらいに白い顔が赤い光に染まった。一度だけ微笑んで、彼はこういった。

「それでもっと強くなったら、もう一度だけ遊んであげる。」

ダグバは上、牙王は下。相手が自分よりも優位な立場からこっちを見ている――――その事実が、牙王の神経をさらに逆撫でした。

嘗められてたまるか。
見下されてたまるか。

「ふざけんじゃ……」
539龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 22:29:13 ID:/RK5bQ6q

デストロイヤーに黒いケースを掲げ、ベルトを装着する。激高した頭は変身のワードも紡がず、ただひたすらに怒りの叫びを吐き出す。

「……ねえぞォォッォォォォッ!!!」

蟋蟀の様な黒い鎧が体を包んだ瞬間、デッキから引き抜いたカードを二枚続けてカードリーダーに読み込ませた。

―― ACCELE VENT ――
―― SWORD VENT ――

加速した体は風を切り裂く勢いで、まっすぐダグバの元へと向かった。一撃で決めるために今度は必要最低限の動きに留め、棘の生えた大剣を振り抜く。
超高速の時間が終わりを告げると同時に、オルタナティブゼロの持つスラッシュダガーがダグバのいた場所を地面ごと抉り取った。

「俺を嘗めるなよダグバァ……」
―― MIGHTY ――

「なっ……」

背後から鳴り響く電子音声、一瞬の後に訪れた斬撃がオルタナティブゼロの背面装甲を切り裂く。その威力は、牙王の変身を解かせるには十分だった。
倒れこんだ牙王のすぐ脇の土を、グレイブラウザーが突き刺した。赤いダイヤの瞳が無言でそれを見つめている。
いつの間に変身したのだろうか、加速を始めたときはまだ生身だったはず……いや、もうどうでもいいか。

「やれよ……ダグバ。」

二人の間に流れる沈黙。やがてグレイブが自分の剣を掴み、引き抜いて――――
――――そのまま何もせずにまた歩き出していった。叫んで引き止めることもならず、ただただ変身を解く後姿をただ悔しげに見ている事しか出来なかった。
540龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 22:29:55 ID:/RK5bQ6q

「……チッ。」
牙王の、完膚なきまでの敗北だった。



「うわ、ひっでぇ。」

城戸真司の視線の先には、夕日に照らされたよつば療養所……の、変わり果てた姿が映っていた。
壁一面にひびが入り、所々内部まで届く穴も開いている。つい最近、ここで何かあったことは明白だった。
死神博士の持つ鎌が外壁をいとも容易く切り裂き、新たな入り口を開く。ほんの少し砂埃が立ち、足元が曇る。

「影山よ、お前は上の階の探索を命ずる。城戸はワシについて来い。」

その声に弾かれたかのように機敏に動き、影山は自分の分のデイパックを担ぎ階段を上っていく。その小さい背中を見て、真司は心の中で情けないなと呟いた。
しかしいまはそんな悠長に他人を観察しているような場合でもない。二つのデイパックを担ぎ、駆け足で博士の後を追う。

「ほう、温泉か……ずいぶんと手酷くやられたものだな。」

死神博士が見つけた露天風呂、ここが最も損傷が激しかった。策は砕かれ、鏡やガラスの欠片はそこらに散らかっており、とても歩けたものではない。
ここまで何もかもが壊れていながら、浴槽と湯船だけは今も白い湯気を放っているのが、多少異質だったが。

「うおお、俺ひとっ風呂浴びてこうかなぁ?」
「阿呆、殺し合いの最中に湯船に漬かる者などいるものか!」

一喝する死神博士に、思わず真司は耳を塞ぐ。今回は流石に博士の言い分を否定できなかった。
運良く病院からここまで誰とも遭遇しなかったが、いつ誰の襲撃があるかもわからないのだ。時間で考えれば変身制限は解けたもののそれでも心細いものがある。
というわけで、ここに長居する必要はない。必要な情報を確認したらすぐに大学へと向かう事が現状もっとも安全な計画だった。

……もちろん、数時間ほど前にここに何人もの参加者が入ったことは誰も、知らない。
541龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 22:30:39 ID:/RK5bQ6q

「ちぇ……ん、何だこれ?」

光る小さな衝撃。静電気というにはあまりにも強すぎる……さながら小さなスタンガンを食らった様な衝撃。
不用意に伸ばした手に、青白い電流が駆け抜ける。声も上げられず蹲る真司には目もくれず、死神博士が電気の発生源へと近づいた。
奇跡的に倒壊していない浴場の壁の、鏡の向こう側。僅かなひび割れから延びたコードが、バチバチと放電している。

「少し離れていろ、そこにいると首が飛ぶぞ。」

ようやく立ち上がろうとした真司は、死神博士が振りかざす鎌を見て再びしゃがみこむ。いくら真司とてこのままどうなるか想像がつかないほど馬鹿ではない。
振りかぶった大鎌が、つい数秒前まで真司の首があった場所を通り抜ける。外壁に大穴が開きコードの先――――内部に隠された機械が露になった。
内部には先ほどと同じようなコードが何本も備え付けられていた。大方、何かの拍子にはみ出したコードの先を、濡れた手でつかんだのだろう。
この機械はショッカーの本部や、様々なアジトでもよく見かける。民間のものを利用する作戦もあった気がした。

「発電機……それもかなり高性能のようだな。」

ちらりと振り返り、自分らがいる建物の規模を確認する。温泉とその他もろもろの電力を賄うにしても、目の前にある発電機は多きすぎた。
かといって島全部を補うにはあまりにも小さい。となれば、この建物にはまだまだとびっきり魅力的な裏の顔がありそうだ。

(ここに来た事、どうやら正解だったようだな。)

思わず口の端が歪む。その名の通り死神のような微笑は、ショッカーで仮面ライダーと戦っている時とまったく変わらなかった。
その笑いは立ち上がった真司の目にも映る。ただ彼の思考はそこに無く、先の放送の主――橘朔也だったか――だけを案じていた。

+++

保養所に着く少し前、午後二時頃。三人の持つ携帯電話四つ全てから一斉に男の声が流れ出した。

――――『まず、この放送を目にしている参加者の皆様に突然の無礼を詫びさせてもらう』

「うおっ、何だ!?」
「まだ放送の時間じゃないはずだが……」
「二人とも少し黙っておれ。」
542龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 22:31:20 ID:/RK5bQ6q

狼狽する二人を戒め、死神はじっと集中する。画面はノイズがかかり顔の判別はつかないものの、そう年を取っている訳ではなさそうだと言うのはわかった。

――――『私……橘朔也は、君達と同様、このゲームの参加者だ』

「橘朔也……影山、お前知ってるか?」
「い、いや。おれも始めて聞く名だ。」
「黙っておれというのが聞こえんのか。次同じことをしたら命は無いと思え。」

死神の大鎌が背中で煌く。その間にも橘と名乗る男ははっきりとした声で放送の内容に入った。

――――『単刀直入に言わせてもらおう。……私は、ゲームの終了に必要な鍵を所有している』

ゲーム終了の鍵、その言葉に死神博士はハイパーゼクターを思い浮かべた。しかしそのハイパーゼクターは現在も自分のデイパック内にある。
影山の証言からも、少なくとも影山のいた世界にハイパーゼクターがもう一つあるとは考えにくい。別の世界にあったとしても、二つも支給するメリットは無い。

(全く別の道具か……調べてみる価値はあるな。)
死神の考察を知ってかしらずか、橘と名乗る男は放送を続けていく。

――――『そこで、だ。……協力者を募りたいと思う。我々の結束なくして、脱出という悲願の達成は有り得ない』

やはりか。この橘という男は脱出、それも大人数の脱出によるゲームの打開を目指している。
もし闘争を望む者なら脱出の鍵を持っているなどという必要が無い、例え本当に持っていたとしても人を呼び寄せるになら協力者を募るだけで十分のはずだ。
もし愚か者に紛れ勝利を目指す者ならむざむざ目立つような真似をするものか。放送に呼び寄せられ集まるのはお人よしだけとは限らないのだから。

(となればこの放送は本意と考えて相違ない……それに……)

――――『こちらの現在地は――――君達も察しがついているだろう。……そう、放送局だ』

わざとらしく強調された「放送局」の場所。これに気づかぬようではショッカーの大幹部は務まらない。

(わざわざ自分の場所をはっきり伝えるからには、それなりの策があるのだろう……)
不思議と口元が綻んだ。この一時間ほど後、彼が保養所で浮かべる笑みと同じものだった。
543創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 22:31:46 ID:JIeHvlWI
 
544創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 22:32:34 ID:JIeHvlWI
   
545創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 22:38:53 ID:KXX5ba0m
 
546創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 22:41:41 ID:KXX5ba0m
 
547創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 22:45:33 ID:KXX5ba0m
 
548創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 22:50:21 ID:FjKTw9NJ
支援
549創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 22:53:27 ID:FjKTw9NJ
しえーん
550龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:03:05 ID:/RK5bQ6q

――――『ここから我々は――!?』

男の声が驚愕の色に染まり、画面のノイズと通話口を通して伝えられる空調音がぶつりと途切れてしまった。
通話ボタンを何度も押すが、放送の続きは流れてこない。どうやら放送局側で放送が途切れたらしい。

「お、おい、続きはどうした!?」
「っかしーな、電波が足りないのか?」

影山は状況が理解できず携帯に向かって叫んでいる。真司も真司で両手をぶんぶんと振ったり、天高く掲げたりしている。
舌打一つ、わざと二人に聞こえるような大きい音で鳴らす。二人がそれに気づいた時には、死神は再び保養所へと歩き出していた。

「博士!放送の元に向かわなくてよろしいのですか?」
「急に途切れるなんて……橘って人、なんかあったのかも知れないっすよ。」

振り返らず、ピタリと歩いていた足を止める死神。二人の耳に、ため息をつく声が入ってきた。

「……確かに、貴様の言うとおり放送の男には……襲撃か、あるいは主催の介入か。何かしらのアクシデントがあったと見て間違いないだろう。」
「だったら……」

ピシィッ!

死神の持つ鞭が、まるで見えているかのように真司の足元を抉り取る。影山はもう音だけで驚いてしまったのか体がカチコチに固まっている。
すぐさま鞭を手繰り寄せて、振り返った。その目は真司でも影山でもなく、もう小さく霞んでいる放送局を見据えていた。

「だが、我々が今すぐ行く義理は無い。ゲーム終了の鍵を握っているのは何も彼奴だけではないのだからのう。」
「……っ!」

真司が否定の言葉を出そうとするが、うまく声にならない。ただただこぶしを握り締めるしかなかった。
死神は、橘を見捨ててもさして問題は無い、といっているような物だ。直接は言わないものの、暗にそう示されている。

「しかし……」
551龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:03:46 ID:/RK5bQ6q

ただこのまま真司が自分に不信感を抱き、使い物にならなくなっても困る。そう考えた死神はたった一つだけ真司にフォローを加えた。

「自分の居場所を参加者全員に晒したのだ。何かしら自分を守る術と、自信を持っているのだろうよ。」

これは半ば確証に近かった。死神自身橘とは出会っていないし、関わりがあるとしても先の放送、それも一方的なものしか持っていない。
だがその落ち着いた声、聞くものを惹きつける言葉を聞く限り、彼が愚かしいまでに頭が悪いとはどうしても思えなかった。
そんな彼が何の考えなしにリスクを背負ってまで放送するものか、とも。

「どうしても気になるのならば脱出の算段とやらが整ってから向かえばいい。のう影山?」
「はッ、ハイ!」

いきなり話を振られた影山が裏返った返事をする。つい数秒前まで枯れ木のように丸まっていた背中が嘘の様だ。
真司に向かって引きつった顔で合図を送る。その目は早く行けと、口よりもはっきりと叫んでいた。
観念したようにデイパックを担ぐ真司を見て死神は満足した笑みを浮かべ、静止していた足は目と鼻の先まで迫った保養所へと動き出していった。

+++

回想を終え、まじまじと死神を見つめる。その顔に張り付いた笑みは、ここに来る直前まで死闘を演じていた自分の影を髣髴とさせる。

(なんか、初めて会ったときと全然違うなぁ……)

ついさっき病院で談笑していたときは城戸『くん』なんて呼んでいたのに、もう今となっては単に苗字を呼び捨てられるだけに過ぎない。
何か気に障ることしたっけか……と病院での出来事を振り返る。ハイパーゼクターを渡し、乱入した鳥の怪人と戦い、変身した博士との共闘……?

(アレ? 何か今……)

まるで魚の小骨が突き刺さったような違和感。
どこで違和感を感じたのか、鮮明に記憶の内容を映像に起こして確認する。一つ一つ見逃しがないように、じっくりと。

談笑する死神博士――――鳥の怪人の乱入――――死神との共闘――――攫われた風間――――吊るされた死体――――!

552龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:04:34 ID:/RK5bQ6q
(もしかして……)
病院での戦闘の際、死神は確かに人在らざる者に姿を変えていた。怪しげで聡明な老紳士から、真っ白いダイオウイカの改造人間へと。
映像と平行して脳内で再生するは、もっと前の言葉。死神と出会う前……そう、初めての放送の直後、その場にいた皆と言葉を交わした時だ。

――――骨付き肉を食ってた男に、イカの怪物に変わった奴。それに赤い岩みたいな化けモンだ。

疑問が新たな疑問を呼び、その疑問はやがて確信へと変わる。なぜ今の今まで忘れていたのだろうか、なぜ今の今まで疑わなかったのだろうか。

一文字隼人を襲った老紳士とは、死神博士その人ではないのか?

即座に浮かび上がるのは、一文字と死神のいっていた『本郷の知り合い』ということ。二人に共通している情報といえばそれくらいだ。
この内、一文字は本郷から直接言質を取っているので本当と見て間違いない。ただ死神博士は……本郷も、その存在を言及していなかった。

(……これじゃあ、怪しすぎる、よな。)

いくらお人よしの真司といえど、死神博士を疑わざるを得ない。ただでさえ冷酷そうだと思っていたのだから尚更だ。
名簿に記載された二人の本郷と一文字の名。もしかしたら城戸の知る本郷と死神の知る本郷は別人なのかもしれないが、それがなぜ一文字を襲うことに繋がるのか想像がつかない。
真偽を問いただす必要がある。本当に本郷の知り合いなのか、一文字を襲ったのは彼なのかを。
出会ってから間もないとはいえ仲間を疑うということに抵抗はあるが、もしかしたら自分が悪魔と手を組んでいるのかもしれ無いのかもしれないのだから。

「博士!」
「なんだ、城戸よ?」

ほんの少し躊躇うが、数瞬の後意を決して口を開く。

「あ、あの! 聞きたいことが……」

真司の声と重なるように、階段を下りる音が響く。探索を終えた影山がこちらに向かってきたのだ。
死神はその手に抱えていた鎌と鞭を引っ込め、浴場の出口へと向き直った。釣られるように真司も体を方向転換させる。

553龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:05:45 ID:/RK5bQ6q

「終わったか、では我々も行くとしよう……何か言ったか?」
「え、あの、この機械、調べなくていいんすか?」

興味が別の方向へそらされた驚きを、咄嗟に別の話題を出してごまかす真司。対する死神は一度冷ややかな目で真司と機械を見た後、

「必要ない。」

とだけ告げた。



「……結局のところ、どう思いますか。」
「ふむ、少なくとも仮面ライダーの諸君はまだ放送局についていないらしい。」

工場の広い空間に、二人の会話する声だけが木霊する。内容はもっぱら橘という男が行った放送についてだ。

「あの橘という男、余計なことをしてくれたものだ。」

手近な梱包剤やダンボールなどで作った有り合わせのソファ。その上に寝転がる男が呟いたのは、未だ手を止めない北條へ向けてのものではない。
しかし言わんとしていることは十二分に理解できた。先ほど流れた橘の放送は多かれ少なかれ参加者に影響を与え、放送局へ呼び込むだろう。
そして御遣いに出した五代たちにも、同じように放送するよう命じた。違うのは放送局か研究所かということと、橘のほうが少し早かったということだけ。

要は、自分が集めるつもりだった獲物を持っていかれて悔しいらしい。

その感情をおくびにも出さないが、腹の底ではきっとそう思っているに違いない……それがこの、乃木怜治という男をしばらく観察した上で出た結論だった。

(それにしても……)

放送が流れたのはだいぶ前だが、どうにも話題がないので同じ話ばかりしている。逆に返せば今だ工場で目ぼしい情報、または設備が見つからないということ。
このまま何も見つからなければ、自分の身がどうなるかわからない。次の瞬間には首と胴体が寸断され……いや、案外何もなかったりするかもしれない。

554龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:06:26 ID:/RK5bQ6q

「……読めないことが一番恐ろしい、ですか。」
「何か言ったかな?」
「いえ、何も。」

喋りながら近くに積まれている書類に片っ端から目を通していく。しかし目当ての情報はなかなか見つからず、大概がどうでもいいような情報だ。
なかにはどこかのカレー屋やらクリーニング店やらのチラシなども混じっており、目を通すのが馬鹿馬鹿しくなってきそうなものだ。

「どうかね、何かこの散歩に見合った拾い物はあったか?」

寝転がっていた状態から飛び起き、かつかつと靴を鳴らし北條の元へ歩み寄っていく。どう答えようかと考え始めた瞬間――――

「……!」
「ほう、その顔からするとどうやらいい物が見つかったようだな。」

笑みが張り付いた北條の顔を見て、乃木はそれを肯定と解釈する。握られている書類の束を手早く引ったくり、端から頭の中に叩き込む。
書類といっても、文章は所々走り書き程度に加えられているだけ。断面図、内部図解などに重点を置かれたそれはむしろ設計図といったほうが適切か。

「……クク……ッ……」

乃木のの堪え切れない笑い声が、工場の壁に響き渡る。やがて音が大きくなるのは反響の結果でなく、元の声から大きくなったためだ。

「ハァーッハッハッハッハッ!!……ふぅ、いや驚いた。まさか首輪を手に入れるよりも早く内部構造を知るとはな。」
「御期待にそえましたか?」

555創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 23:06:44 ID:FjKTw9NJ
支援
556龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:07:19 ID:/RK5bQ6q

むしろ期待以上だ、と労いの言葉を返す。ろくな収穫など期待していなかっただけに、この時だけは心の底から北條を褒め称えた。
その設計図に描かれている製品にはとても見覚えがある。この島に着てから何度も見ているし、今も枷として忌々しく巻きついている。

――――首輪の、詳細な設計図。こればかりは『材料から直接生産をする』工場だからこそ手に入ったようなものだ。

この情報が研究所に存在しなかったのは、この製品のほんの一部分しか関わっていなかったからであろう。
例えば首輪をワインだとすると研究所が受け持つのはワインの中身、この工場はボトル、ラベル、包装といった外側全般といったところか。
材料から形作り、組み立て、大まかな外装を仕上げるのは工場の仕事。肝となる灰化のメカニズムは研究所などの施設で生み出される。
さりとて、工場での情報が全く意味を持たない……というわけでもない。
設計図には内部の図解、材質、用途が詳しく載っている。どれも首輪そのものを空けて見ないとわからない情報ばかりだ。
いくら情報が必要とはいえ自分の首輪を開くにはリスクが高すぎる。極端な話、少し開いただけでこの身が塵芥となる可能性だってある。
しかしこれさえあればどの程度なら切り開いても作動しないのか、どの機械がどの役割を果たすのかが手に取るようにわかる。

(この所々に書かれた単語は……『オルフェノク』。スマートブレインの持つ技術の名前でしょうか。)

北條の思考の先にあるのは数多く記されている見慣れない単語と、首輪内部の構造の内、ひとつだけブラックボックスと化している部分についてである。
『オルフェノク』が何を指し示すのかは現状何の手がかりもない。しかし、もう一つの方は書き散らされたメモのような文面から、ある程度は推察できる。

「見たまえ、この部分だけ何の説明が入っていない。」

設計図を捲りながら乃木が指差すのは……丁度スマートブレインロゴの下の空間。隙間を埋めるように書かれているメモ書きや、機械構造がまるで描かれていない。
……いや、実際まだこの部分は完成していなかったのかもしれない。そう感じたのは冊子の最後のページ、唯一ブラックボックスに書き込まれた殴り書きを見つけたからだ。

曰く、

557龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:08:07 ID:/RK5bQ6q

『アンプルはよつば療養所の結果待ち。実用化が可能になった段階で容器の製造、及び組み込みを始める。
 また、井上研究所の薬理実験のデータ次第で量が変わるので、スペースは心持ち広めに取っておいてください。』

とのこと。

「この文を見る限り、首輪に何かの……そうですね、薬か何かが仕込まれていると見て間違いないでしょう。」
「どうやらそのようだ、ご丁寧にヒントの場所まで書いてある……!」

首輪を撫でながら設計図と睨めっこをしている北條から、さっと設計図を抜き取ってデイパックの中へ押し込む。

べきり。

いったい何を、と言葉を紡ぐ前に乃木が口を塞いだのと、背後から第三者の存在を知らせる破砕音が聞こえてきたのは、殆ど同時だった。



影山は、長い時間探索した割には何も見つけられなかった。収穫らしい収穫といえば、二階の一室に誰かが使用した痕跡が残っていたことぐらいか。

「……構わん、案内しろ。」

命令の言葉に反応してくるりと回れ右をし、さっさと階段を上り始める。その後ろから死神が鎌が不用意に壁を傷つけないよう器用に、一段一段注意して上っていった。
死神が階段の中ほどまで来たところで振り返ると、後に続くはずであるもう一人の男がいないことに気づいた。

558創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 23:08:15 ID:FjKTw9NJ
支援!
559龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:09:03 ID:/RK5bQ6q

「城戸! 何をしている、早く上がって来い!」

上まで上りきった影山の呼びかけで、ようやく思い出したかのように真司は階段を駆け上がってきた。

「ったく……あ、ここがその部屋です。」

愚痴りながらも影山は死神を迎え入れるため、部屋のドアを開ける。死神は、どこか様子のおかしい真司を見ながらも、すぐに前を向き部屋を探索し始めた。
他の部屋と違い浴衣が無いことや、鍵のかかっていない窓。ここに誰かがいたのは間違いないらしいが、かといって今この施設に潜伏しているわけでもなさそうだ。

かさり。

何気なしにベッドに腰掛けた影山の手が、何か硬いものを掴んだ。ゴミかとも思ったが、よく見てみると乾燥した植物のようにも見える。

「博士、こんな物が……」
「ふむ……これは藻、か?」

あれこれ角度を変えてみながらショッカーで得た記憶と照らし合わせるが、このような植物は見たことが無い。絶滅した種かなにかだろうか。
なまじ乾燥しているだけに、少し力を入れるだけで砕けてしまいそうだ。すり潰して粉にする薬と考えられなくもないが、正体が掴めない以上何か加工するのは得策ではない。

「持ち帰り調べてみるのも悪くな……?」

視界の隅に、ようやく上ってきた真司の姿が映った。部屋の前で立ち止まったまま入ろうとせず、その視線はどこか泳いでいる。
階段を上ろうとした時や浴槽で何か言いかけた時といい、先ほどから挙動が不審……というか、不可思議すぎだ。

560龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:10:01 ID:/RK5bQ6q

「城戸よ、まだあの橘とやらが気になるのか?」
「いや、そうじゃないっす……あ、気にならないわけじゃないんですけど。」

橘のことは否定するも、何か隠していることは否定しない真司。絵に描いたような、隠し事が下手な典型的な馬鹿だ。

「ならなんだと言うのだ? 何か隠していることはとうに見抜いている、ついて来い。」

死神がマントを翻し部屋の外へ出る。言われるがままに真司と、植物をポケットに押し込んだ影山が後についていく。
階段を下りた先は、ソファーの備え付けられている中央ロビーだった。

「さぁ、ここなら落ち着いて話せるだろう。」

少し躊躇いながらも、丁度死神と向かい合う形で座り込んだ。影山が隣に腰掛けたのと同時に、真司の重く閉ざされた口が開いた。

「……俺の病院で落ち合う予定だった仲間の中に、本郷さんの知り合いの一文字ってやつがいたんすけど、博士知ってますか?」

その名前に死神の眉がびくりと反応した。しかしあくまで冷静に、問いかけられた内容に答える。

「ああ、もちろん。彼も本郷もワシの知り合いだが。」
「……さっき思い出したんすけど、一文字の奴、『イカの怪物に変わる参加者』に襲われたらしいんです。それで……」

真司の言わんとしている事は、影山にも十分伝わった。彼も真司も、数時間前の戦闘で死神がイカデビルへと変身した所を見たのだから。
ゴホン、と咳払いを一つ。マントの中から手を差し出して、続けろと合図を送った。

「その……もしかしたら、一文字を襲ったのは博士なんじゃないかー……って、ずっと考えてたんです。
博士、あんた本当に本郷さんの知り合いすか? もしそうなら、何で一文字を……襲ったりしたんすか?」

語り終えた真司が、疲れ果てたかのように大きな溜息を吐く。同じように息をついて、影山は始めて自分が息を止めていたことに気づいた。
最後まで黙っていた死神は真司の疑念を聞いた後、しばらく考えこんだ末再び咳払いをし、落ち着いた面持ちで話し始めた
561龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:11:01 ID:/RK5bQ6q

「……城戸よ。お前の知っている本郷と一文字は、どうやらワシの知っている二人ではないらしい。」

顔を驚愕の色に染め名簿を確認する影山とは対照的に、予想通りといった風な真司。以前交わした会話で本郷と一文字が二人いるのは把握済みだ。
襲った襲わないはともかく、もしかしたら別人なのではという疑念も、浴場にいた時から可能性としては考えていた。

「あの一文字を名乗った若造……いや、奴も別の一文字か。ワシは確かのその男を襲った。」
「らしい……すね、名簿にも二つの名前があるし。」

一番予想していた、だが一番聞きたくなかった告白に真司は苦虫を噛み潰したような表情を隠し切れない。
出来れば思い過ごしで、イカの怪物は誰か別の参加者か何かであってほしかった。一方死神の危険性目の当たりにしている影山は、さほど衝撃を受けていない。

(これってまさか、一触即発って奴か?)

肝を冷やしながら沈黙を貫く影山をよそに、死神は告白と一文字を襲ったことへの弁解を再開していく。

「あの男が一文字を名乗った瞬間、ワシは確信した。あやつは人の名を騙り殺人を犯す、悪人だと。」

実際この推測は的を射ている。別人の名を使い殺人を重ね、その悪評が人から人に伝わっていけば回りまわってその名を持つ人物に降りかかり、結果としてこの遊戯は加速されるからだ。

「ワシの知る本郷や一文字は立派な青年だった。故に、ワシにはどうしても彼らの名を騙る者達を放って置けなかった。
 こんな状況だ、他人の名を使い悪行を行働く者も出てくるだろう……彼らが人に攻められる位なら、罪を背負うのは老いたワシ一人だけでいい……そう思ったのだよ。」

ソファの背もたれに体重を預け、天井でチカチカと消えかかっている非常灯を見つめてどこか遠くへと呟いた。

「結果的には同姓同名だったとはいえ、彼には悪いことをしてしまったな……。」
「死神博士!」

立ち上がった真司はがっしと死神の手を握り、力いっぱい思いっきり頭を下げた。
562創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 23:12:54 ID:FjKTw9NJ
しえん
563創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 23:14:25 ID:dG16m17h
  
564創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 23:17:39 ID:dG16m17h
565龍哭  ◇RIDERjbYCM 氏の代理投下:2009/06/01(月) 23:28:30 ID:dG16m17h
「すんません! 俺、一人で博士を疑っちゃうなんて……一文字にも、後できちんと謝れば何とかなりますよ!」

……ぶんぶんと腕を振る真司の目に、光る物が見えた気がしたのは気のせい、だと信じたい。
その勢いに押されながらも、死神は内心驚き、それでいて呆れていた。土壇場に思いついた即興の嘘だったがここまで完全に信じるとは、真司は病的なまでにお人よしらしい。
また、真司の語った話から一文字、つまり最初の放送で呼ばれた一文字が、『自分の知る』一文字だった事を図らずながら知ることになってしまった。

(知り合いはもうワシ一人……だからどうした、もとよりショッカー大幹部は一人でもやっていけるわ。)

――――ィィィン――――キィィィィィィィン――――……

突如、三人の耳に突き刺さる甲高い音。唯一この音に聞き覚えのある男が、たった一人素だけ早く動くことが出来た。
「……博士! 危ないッ!」
ソファごと突き飛ばされた死神の目に映ったのは、鏡の中から現れた虎の怪人と、さっきまで自分がいた所を赤く染めている真っ赤な水玉。

「が、ぁ」

――――真司の血飛沫だった。



川辺に沿って進む、男が二人。二人ともまだまだ若く、青年というよりも少年といったほうが近い気さえした。
二人の間に会話は無く、片方が進めば後ろがそれに追いつくように進む。ずっとこれの繰り返しだ。
あまりにも静か過ぎるこの状況は、後ろの男――――三田村晴彦の緊張をどんどん張り詰めさせていく。
いつどこから襲撃があるかというのもそうだが、一番の懸念は目の前を歩く、東条悟の存在そのものだった。

(大切な人……殺して英雄になる、なんて馬鹿げているな。)


心のなかでだけ、そっと呟いた。英雄の話をする東條に宿った輝きは、本気としか言いようの無い輝きだ。
あの輝きは以前見たことがある……そうだ、北崎。つい二時間ほど前に逃げ出してきた、恐るべき龍人の仮面ライダー。
東條や北崎は互いに同じ側の存在だということはすでに承知している。人を殺すことを躊躇せず、自分のために突き進むところなどそっくりそのままだ。
ただ興味の無いものに対して、とことんまで排他的なところも似ているとまでは思っていなかった。
少し前に放送を行った橘とかいう男に対しても、最初こそ放送をじっと聞いていたものの、終わったら何事も無かったかのようにまた歩き始める。
怪訝に思い、放送のところに行かないのか?と問いかけて見れば、

「…………行きたいの?」

と、あからさまに機嫌の悪そうな声で返された。さながら蛇に睨まれた蛙のように……もっとも、この場合睨まれている側が蛇なのだが。

「い、いや……」

ぎこちない声で否定の意思を伝えると、今度は詰まらなさそうな表情を浮かべながらまた歩き出した。
東條から聞く限りでは、城戸真司や「先生」とやらはこの殺し合いに乗るような人間じゃないらしい。
だったら、龍騎のデッキを持つ真司は放送の元に向かうのではないか?
もしくは、放送の元へ向かえば「先生」とも出会えるのではないか?
などと言うことは容易に想像できる――――心や頭でわかっていても、その言葉を口にすることは出来なかった。

(……怖がってるんだろうな、東條のこと。)

あまりの不甲斐なさに、笑みがこぼれてくる。
病気に侵されていた体を捨て人としての限界を超えたというのに、知り合って間もないただの人間一人におびえている自分に対しての、自重の笑みが。
迂闊な事を言って、機嫌を損ねでもしたら待っているのは明確な死だ。改造人間の晴彦にそう思わせるほど東條は大きな存在だった。
566龍哭  ◇RIDERjbYCM 氏の代理投下:2009/06/01(月) 23:30:15 ID:dG16m17h
(でも……俺は死ねない。)

愛する人の顔が浮かぶ度、心なしか地面を踏みしめる力が強くなる気がする。こんなところで震えてとまっている場合ではない、とでもいわんばかりに。
なんとしてでも生き残る……そのためにも東條を最大限利用し参加者を減らしてもらう。だから、今はこの恐怖にも耐えなければならない。
幸い改造人間のことはまだ知られていない。いざとなったら戦闘で消耗したところをコブラで仕留めればあるいは――――

「三田村君、あれ。」

はっと気がつくと、いつのまにか前方に壊れかけの建物の姿。林なんてとうに抜けきっており、今はもう小高い丘のような場所に立っている。
東條の指は今まさに建物の中に入ろうとする男たち、その一番左にいる茶髪の青年を指していた。
常人には見えないだろうが、コブラの特性を持って生まれ変わった三田村の目は、その青年のポケットからはみ出す黒い物体を捉えていた。
黒い背景に四角い角、ほんの少し見える黄金色のモールド。先の戦闘で自分が使ったシザースや、東條の持つタイガののカードデッキと酷似している。
視線を東條に向けると、まるでこちらの考えていることがわかるかのように頷き、口を開いた。

「あいつが――――」



「――――城戸真司だよ。」




「何だ貴様は? 許可も無く人の庭に入り込んで……」
「ねえ、君たちは仮面ライダー?」

乃木が威圧を与えてみるが、相手はまったく気にしていない。それどころかこちらに対して仮面ライダーかと問いかけてくるではないか。

「違う、といったらどうする?」
「そう、じゃあ……」

ふ、と白い服の青年が微笑んだかと思うと、その傍らに真っ白な怪人の影が重なって映る。ゆっくりと右手を持ち上げ、異形となった白い指を突きつけた。
何の真似だ……と言う前に、乃木の体に違和感が走る。身に着けた服から炎が噴出し、乃木と傍に居た北條の腕を炙った。

「クッ!」

すぐさま乃木怜治の擬態を解き、本来の姿であるカッシスワームへと変貌する。間髪入れずにクロックアップを行い、北條を抱えて炎から退避した。
離れたダンボールの上に放り投げた瞬間、切り離された時間が元の速度へと戻った。こんなところまで制限がかかっているのかと歯噛みしながら、侵入者と対峙する。

「ぐっ……あれは、第0号!?」

白い怪人、ダグバはそのワードに聞き覚えがあった……確か、リントが自分たちを呼ぶ仮の呼称のはず。
再び超自然発火を起こそうとするも、北條の位置はギリギリ射程範囲外だ。近づいて行こうとする足を、見えない斬撃が襲った。

「遅いな、そんな事では俺に追いつくことなど到底不可能だ。」

首筋に当てられた刃をたどって行くと、そこにいたのは紫の甲殻に覆われた巨大な蟲。ダグバにとって、初めてであったリントでもグロンギでも無い存在だった。
左手を押し当て、カッシスへ向けて瞬間的に炎を巻き起こした。が、火の手が回る前にその影が掻き消えてしまう。
胸に一撃走ったかと思えば、左足の肉が薄く削ぎ落とされ、次の瞬間には右の角に僅かな傷が刻まれた。

「どうした、その程度か!?」

加速した声はダグバに届かないとわかっていても、その物足りなさに叫ばずに入られなかった。両の武器をあわせ、完全に無防備なベルトへと繰り出す。
567創る名無しに見る名無し:2009/06/01(月) 23:31:27 ID:FjKTw9NJ
支援
568龍哭  ◇RIDERjbYCM 氏の代理投下:2009/06/01(月) 23:34:03 ID:dG16m17h

(これで止めだ……ッ!?)

一瞬カッシスは我が目を疑った。クロックアップはまだ持続しているのに、時間の外にいるダグバがベルトへの攻撃に介入してきたのだから。

「ふふっ、見つけた。」

相手の声が耳に入り込んだ。加速の解けた証拠に、ミシ、ミシリと刃に亀裂が入る音まで聞こえてくる。
刃と繋がった腕が捻り上げられ、カッシスワームの巨体が宙に浮いた。必死に力を込めるも押し返すことはおろか、ほんの少し動かすことすらままならない。

「チィッ……」

左右の足で蹴りを互い違いに打ち込み、渾身の一撃を避けられないように固定する。異変に気づいたダグバが顔をしかめるが、もう遅い。

金属同士をぶつけ合わせる重い音が響き、ダグバの額から暖かい液体が溢れ出た。目に流れ込んでくるそれが赤い色をしているのを見て、ようやく額を割られたのだと気づいた。
本来ダグバの角、特に紋章が描かれた額はベルトと並び最も硬度が高い部位だ。そこを砕き、血を流させるなど生半可な硬度では到底不可能だ。

「ククク……まさかこれが役に立つとは。」
目には目を、歯に歯を――――角には、角を。カッシスワームの体表は、かつてサソードのライダースラッシュを受けても傷一つつかなかったほどである。

巨大な角は勿論の事、その鎧は文字通り頭の先からつま先までの至る所を覆いつくし形成している。ダグバの皮膚を貫いても、なんら不思議は無い。
ほんの少しだけ拘束が緩む。その僅かな隙を見逃さず、三度目のクロックアップで出来るだけダグバから距離をとった。
クロックアップの効力がまだ続いているうちに右手をダグバの方へと向け、パチン、と指を打ち合わせる。今こそカッシスワームの能力を見せ付ける時だ。

「自分の炎を、食らうがいい。」

その瞬間、ダグバの体から真っ赤な炎が立ち上がった。
カッシスワーム第二形態、グラディウスの能力は受けた技のコピー。一番初めに頂いた炎の分を今、返しただけに過ぎない。
人間だろうがワームだろうがなんだろうが、体から炎が噴出せばひとたまりも無いはず。事実、目の前のダグバもいきなりの出来事に我が目を疑っているらしい。

「……まさかね。」
「何!?」

しかし、彼にも『究極の闇には超自然発火が効かない』という誤算は予期していなかった。
信じられないといった風に掌を見つめていたが特別苦しんでいる様子はない。手を横なぎに振り払うと、炎は白い肌を焦がすことなく燃え尽きた。

「やっぱり……クウガじゃなければ駄目なんだね。」

ダグバの青い切れ長の目がギロリ、と煌いた瞬間、カッシスの体をかつてないほどの威圧感が襲った。

(目が合った……いや、そんなはずはないか。)

クロックアップ中の存在を探知するなど考えられない。即座に身構えるが、ダグバの動きは鈍いまま……何かの間違いだろうと納得する。
569龍哭  ◇RIDERjbYCM 氏の代理投下:2009/06/01(月) 23:36:16 ID:dG16m17h
「……」

手近なダンボールを掴み、ダグバがカッシスのほうを睨み付ける。ゆっくりと振りかぶって投げつけたかと思うと、一瞬でそのダンボールを発火させた。

(何のつもりか知らんが、届くまでに燃やし尽くしてくれる。)

ダグバ同様に手を突き出し、ダンボールに超自然発火現象を引き起こす……が、火の手は強くならずにカッシスにぶち当たった。

「ちっ、コピーは一度限りか……!?」

炸裂したダンボールから、何かの粉が飛び散って視界を遮る。開発用の原料か何かだろうか、床の炎が微かに引火していた。

……待て、煙の回りが速すぎる。これではまるでクロックオーバー――――

「ッ!?」
「やっと気づいたね。」

いつの間にか懐に潜んでいたのは、さっきまで離れた場所にいたダグバ。さっきの違和感を、勘違いで片付けるべきではなかった。
ダンボールを投げる直前、動きが鈍いままだったのはフェイク。あの時、すでにカッシスワームのクロックアップは解けていたのだ。
勿論解いた覚えもないし、加速が終わりを告げれば気づくはず……その自覚を阻害した要因に、カッシスは心当たりがあった。

「さっきの気当たりか……チッ!」

ダグバの超感覚は、五感全てを特化させたクウガのペガサスフォームを凌ぐ超感覚を持つアルティメットフォームとほぼ同等の感度を持つ。
ダグバの気は、人間態のままでありながらクウガのペガサスフォームを一瞬で押しつぶし、グローイングフォームへ弱体化させる凄みがある。

首輪の制限下にありながら衰えを見せないこの二つの能力なら、如何なクロックアップでも強引に引き戻すことなど造作もない事。
後は時間の流れに沿うよう体をゆっくりと動かし、緩やかな軌道を描くように力を抑えて投げればこの通り。カッシスに隙を生ませる事が出来た。
眼前に迫った硬質的な白の仮面に、ニィと笑みが浮かぶ。自分が割った額の血が、皮肉にも恐怖をかきたてるエッセンスとなった。
肘の突起が鎧に触れ、ここに来てダンボールを投げた意図を掴んだカッシスは、絶叫を上げようとする。

「やめ――――」


ガッ、と一撃を浴びせ火花が生みだす。その火花は、さながら爆弾のように周囲の粒子ごと爆ぜた。

「っぁ!」

爆発の余波を受け、北條が吹き飛んだ。離れた場所にいたため彼に対して直接の被害は無いが、中心地の二人の姿は爆炎に包まれて一切見えない。
砂塵爆発、可燃性の粒子が立ち込めている所で火を散らすと、連鎖爆発を引き起こし威力を何倍にも膨れ上がらせる現象。北條の知る範囲ではそれが一番近いものだった。
さて、どうしたものか……と考え始めた瞬間、炎の中から一人の影が顔をのぞかせた。所々黒く焦げてはいるが、元は白い服であることが伺える。

「第0号のほ……」

言葉の途中で、体が見えない何かに引っ張られ……いや、抱えられていく。薄っすらとだが紫の影が工場内から飛び出した。
一部始終を見ていたダグバはため息をほうとついた後、ダンボールの上へと寝転がり天井を見つめる。額の血は既に止まって、固まり始めていた。

「逃げられちゃった。」

一言呟くとよほど爆発の衝撃が強かったのか、そのままうつうつと眠ってしまった。
570龍哭  ◇RIDERjbYCM 氏の代理投下:2009/06/01(月) 23:38:19 ID:dG16m17h


「ッハァ、ッハァ」

ワームの姿から戻った乃木は、爆発のダメージとクロックアップの全力疾走の疲れで倒れこんだ。
認めたくは無いが、あの場は逃げ出すしかなかった。その選択肢しか取れなかった自分に苛立ちを抑えきれず、思わず歯軋りをしてしまう。
一方北條は地図を広げ、自分たちが今どのエリアにいるのかを確認する。工場が大分遠くに見えることを考えると、大体C2かC3エリアといったところか。
休める施設を探していると、ふと保養所――――よつば療養所の名前が目に入る。手早く荷物を纏めると、息も絶え絶えな乃木に語りかける。

「すみませんが、もう少し歩きませんか?」
「なんだと?」
訝しげな表情の乃木をなだめ、一番近くにある施設が休養と首輪の手がかりを兼ねている事を伝えた。
しばらく考えていた乃木は不意に、デイパックに入っていた飲料水をぶちまけ、同じく取り出した紫のデッキを掲げる。

「変身。」

王蛇の装甲に現れると同時に、少し離れていろとの命令が伝えられる。逆らう理由も無いため四歩ほど後ろに下がると、王蛇の杖から電子音声が鳴り響いた。

―― ADVENT ――

刹那、紫の大蛇が水溜りを突き破って天に舞い上がった。いつものことながら、非現実的だと北條は頭を抱える。
王蛇が一息で大蛇、ベノスネーカーの頭部に飛び乗って、どっかと座り込んだ。

「乗りたまえ北条君。これなら歩く必要も無かろう。」



「影山! 城戸を連れて外へ出よ!」

ロビーに死神の怒声が木霊した。瞬時にイカデビルへと変化し真司を手にかけたデストワイルダーを縛り上げた。
真司を殺されたことを怒っていたのではない。渦巻いているのは自分への怒りと、単純な襲撃者への憎悪だけ。
ショッカーの大幹部ともあろう者が、どこの誰とも知れぬ襲撃を受け、仮面ライダーとは言えただの人間に助けられたのだ。情けなくて笑い話にすらならない。

「この死神、ここまでコケにされたのは初めてだッ!」

触手が唸りをあげて、入り口の扉を破壊しながら突き進む。表に出ると、どことなく虎の怪人に似た仮面ライダーがこちらに走ってくるのが見えた。
視界の隅には真司を背負う影山と、それを追いかける小童が一人。いざとなれば龍騎のデッキがあるから大丈夫だとは思うが、さっさと片付けて向かわねば。

「貴様、仮面ライダーのくせに卑怯な手を!」
「卑怯? しょうがないよ、僕が英雄になるためなんだから。」

―― FREEZE VENT ――

電子音と共にイカデビルの足元が凍りつき、身動きが取れなくなった。埒が明かないと腕を天に掲げて、隕石を呼び込んだ。
攻撃を加えようとタイガが駆け出すが、僅かに隕石のほうが早い。最初の隕石で氷を砕き、残りの四発がイカデビルの命令のままに動き出す。

(……あんまり早くない。)

飛び跳ねたタイガが、デストバイザーを横なぎに一閃。前方に迫った二つを砕き、その勢いのままに背後の二つを挟んで、押しつぶした。

「どこを見ている!?」
声に驚いて振り返った首を真っ白な触手で締め付け、吊り上げられたタイガを振り回しながら地面に穴を作り出した。
一つ、また一つ作るうちにまた新しいのがもう一つ。勝負はこのままイカデビルの勝利に終わるかに見えたが。
571龍哭  ◇RIDERjbYCM 氏の代理投下:2009/06/01(月) 23:40:39 ID:dG16m17h
どこからとも無く銃撃が降り注ぎ、振り回した触手を打ち貫く。きっと弾の来た方向を見据えると、小高い丘に立っている異形が一人。
カブトムシを髣髴とさせる一本角と、緑の目に映る鉛色のボウガン。ゴ・ガドル・バ射撃体であった。


その頃、影山はアスファルトを必死に駆けていた。真司をつれているというハンデもあるが、まさか追っ手もまた怪物だったなんて。

「っ、うわぁあ!!」

木の枝に足を取られ、情けなく転ぶ。背負っていた真司の体は投げ出され、コブラの足元に転がりこむ。
真司の体を跨ぎ、コブラはついに影山を追い詰めた。変身も出来ない状態で、影山の恐怖はどんどん頂点へと近づいていく。

「来るな、来るなよお!」

デイパックの中のものを手当たりしだい投げつける。水、食料、携帯……そのすべてが漆黒のボディースーツに弾かれ、空しく宙を舞う。
その中で一つだけ、何かの液体が入った小瓶が偶然コブラの顔に当たった。影山が役にたたなそうだと判断した、ランダム支給品だ。

「グゥッ……」

衝撃で瓶は砕けて中の液体が、仮面を突き抜けて進入する。目や口、鼻の穴から体内に侵入した液体に一瞬怯み、隙が生まれる。
その隙に影山は真司を抱え、必死に来た道を逆戻りする。その道がどこに繋がっているか、追い詰められた彼に想像できる筈もなかった。

「……ちっ、待て!」
後ろから、再び追跡を開始したコブラが迫ってくる。改造人間とただの兵士、どちらの体力が長く続くかは明白だった。

「……影……山……」
「きっ、城戸!? まだ生きてたのか!?」

驚愕に染まる影山の言葉に、酷い奴だな……と消え入りそうな声を出す。まだ会話できるほどの体力は残っているようだ。
しかしそれでもだいぶ無理をしているらしく、咳き込んだ真司の口から血が漏れ出し、地面を濡らした。

「こ……これ……」

真司が震える手で差し出したのは、龍騎のカードデッキだった。影山に握らせて、これなら誰でも使えるから、と付け加える。
コブラもそのデッキに気づき、追跡の足を止めて呼びかけた。

「そのデッキを渡せ、そうすれば殺しはしない。」

ぴくり、とその言葉に影山の動きが止まった。このデッキを渡せば自分は殺されないのか? 手がカタカタと震え、渡すか渡さないかの二つに頭が混乱する。
渡せば殺さないと言う、しかし現に真司がこうやって殺されかけている。信用できるのだろうか?
かといって渡さなければ、真正面からこいつと戦うことになる。使い方もわからないようでは、ザビーのように戦うわけにも行かない。

(どうする……どうする……どうする!?)


「わ……渡せ……影山……」

静寂を破ったのは、今にも死にそうな真司だった。影山の背から降りて、倒れそうになりながらもしっかりと立ち上がる。
572龍哭  ◇RIDERjbYCM 氏の代理投下:2009/06/01(月) 23:43:43 ID:dG16m17h
「なぁ、あんた……渡せば影……影山を……殺さないんだな。」

真司の問いかけにコブラは一度だけ頷き、デッキを渡すよう腕を出した。その返答に安堵し、影山の手からデッキを奪い取る。

「っ、オイ城戸!?」
「悪い影山、やっぱ俺……目の前で誰かが死ぬなんて、見てらんない……二人ここで死ぬぐらいなら
 今お前が生きて、死神博士と一緒に……この戦いをぶっ壊してほしい……から……」

死に際とは思えない真司の言葉に圧倒され、口を挟むことすら出来ない。ただただ、ここまで真司に言わせてしまう自分が情けなかった。

「…………。」
無言でコブラはデッキを受け取り、デイパックから取り出したカードを組み込む。炎を纏ったカードの絵柄に、真司は驚愕する。

「い、今の……!」

次の瞬間、森の中から紫の巨体が顔を出し、上から人影が二つ降ってきた。片方は蛇を模した鎧を着込み、その形状には真司も見覚えがあった。
以前真司の世界でも猛威を振るった王蛇のデッキ。しかしそれを持っていた浅倉威は招待されておらず、何者かに支給されたのだと推測できた。

「大丈夫ですか?」

生身の方がまず話しかけてきて、真司の傷に顔をしかめた。北條と名乗る男は二人に敵対の意思がないことを確認し、それを王蛇へと伝える。
コブラは自分と似た戦士に驚きながらも、後頭部の鞭で襲い掛かった。が、王蛇は持っている杖を器用に操り、鞭を巻きつけてコブラの武器を捕らえる。

「なっ!?」
「武器を防がれたぐらいで動揺していては、生き残れんよ。」

―― STEAL VENT ――

電子音声とともに、コブラの手から龍騎のカードデッキが消える。王蛇の手に収まっていく光景を見て、何かの力で取られたのだと理解した。

「ほう、このライダーと同じ道具か……ならば次はこれだ。」

―― SWORD VENT ――

蛇腹の剣が何処からともなく現れ、すれ違い様に鞭の先端を切り落とした。同時に鞭を引き返そうとしていたコブラはその力のままに後ろへ仰け反り、砂埃を巻き上げ倒れる。
立ち上がろうと腕に力を入れて、すぐに別の方向へと向けられる。眼前に、べノサーベルを振りかざす王蛇が迫ったからだ。

「クッ!」

間一髪防ぎ――――切れなかった。
切っ先は僅かにマスクの目を抉り、三田村の文字通り目の前まで来ていた。が、すんでの所でその進行は両の腕で阻まれる。
少しでも押されればその瞬間視界が闇に染まるだろう。ギリギリと機械仕掛けの腕が痛み出し、黄金の刀身と火花を散らした。

退けない、負けない、死ねない。様々な感情が熱を持ち、体の内側から吹き上がってくるような錯覚――――いや、錯覚ではなかった。

「ッアァアァアアアァアァァアァッ!!」
「何!?」
突如、コブラから喉を引き裂かんほどの絶叫が発せられ、ほんの少しだけ王蛇の力が緩んだ。その隙に片手でべノサーベルを払って、右の拳を握り締める。

「しまっ……」

王蛇の反応よりも早くその胸に、収束された漆黒の気が炸裂した。重い一撃は醜く装甲が拉げさせ、中にいる乃木の意識を容赦なく奪う。

「ヴァアァァアッッ! ア゛ァァア゛ァァッ!! ワア゛ア゛ァァア゛ァア゛!!」
「これは……」
「オイ! しっかりしろよ!」

北條と影山が身構えるも、コブラは襲い掛かる様子を見せない。後ずさりながら無茶苦茶に鞭を振り回し、まるでもがき苦しむように叫び続ける。

「グゥア゛ア゛ア゛ア゛アァアァアア゛ァアアァアァァア゛アアァァァァア゛アアァァアアア!!!!」
573龍哭  ◇RIDERjbYCM 氏の代理投下:2009/06/01(月) 23:46:21 ID:dG16m17h
一際大きな絶叫が木霊し、何処へともなく走り出す。程なくして、その姿は森の木々の狭間に掻き消えてしまった。

「……とりあえず、去ったようですね。」
「あ、ああ。」

自己紹介を済ませ、影山はすぐそこで寝転がっている蛇の戦士について尋ねた。何度かその仮面を見たあと、少し小さな声でただの同行者だと伝えた。
北條は抱きかかえられた真司を下ろし、服を脱がせて傷口を見る。ジャンパーを染める血は、その命ももう長くないことを物語っていた。

「……くっ、出血がひどい。何か止血の道具はありませんか!?」

その言葉にはっとして、影山はデイパックの中を見渡して愕然とする。中に入っていた殆どの物はさっきの怪人に投げつけて辺りに散らばっている。
そして、その中に止血の道具はおろか絆創膏一枚もない。つい先ほどまでそういった道具がありふれている病院にいたのに、だ。

「クソッ! こんなことなら持ってくればよかった……。」

自分の迂闊さを呪い、影山のイラつきは地を殴ることでしか解消されない。その音の所為かはいざ知らず、倒れ伏していた戦士の意識を揺り起こす。

「……俺としたことが、二度も敗北を喫するとはな……む?」

今だ変身は解けない王蛇の仮面越しに、乃木は見知った顔を見つけた。今の状態になる前に、一度ねじ伏せた相手だ。

「おやおや、そちらに見えるのはZECTのやさぐれバッタではないか。まさか最初に会うZECTのメンバーが貴様だとはな……」
「なっ……お前、なぜ俺がZECTだと知っている!? それにやさぐれバッタだと……?」

まるで初対面であるかのような影山の反応に、些か違和感を覚えた。それに戦った時よりかは目が死んでおらず、服装や声色もしゃんとしている。
立ち直ったか、あるいは――――落ちぶれるよりも前から、連れ去られたか。どちらにせよ、さほど重要視するべき部分でない事は明らかだ。

「まあいい、貴様。首輪について知っていることはあるか?」

乃木はべノサーベルをちらつかせながら問いかける。気を失っていたとはいえ、今だ変身状態であるのは大きな強みだ。

案の定顎を震わせながら、知っていることをペラペラと話し始める。同行者のこと、襲撃のこと、首輪に関する施設を回っていることなど洗いざらいだ。

「今、向こうで博士が戦っている……ちょうどいい手伝ってく……っうあああああ!」
「少し立場を弁えろ。」

目にも留まらぬ速さで右手を動かし、影山の顔に斜めに切り傷をつける。薄皮一枚捲れただけでこうも騒ぐのか、と改めて乃木は人間が小さい生き物だと感じた。

「!……出来れば、その辺にしていただけるとありがたいのですが。」
「何、今は殺さん。死神とやらの元へ連れて行ってもらわねばな。」

べノバイザーで影山の尻を小突き、さっさと案内しろと伝える。おぼつかない足取りながらも、影山は戦場へ向かって走り出していった。
途中振り返ると、北條が血まみれの真司を抱えてついてくる。その所為で速度を落としているのは、誰が見ても明らかだ。

「置いていけ、いずれ死ぬ身だ。足手まといにしかならん。」
「私は、警察官です。」

警察は一般市民を守る仕事。目の前で死に掛かっている人が居れば、それが例え殺し合いの最中だとしても見捨てるわけにはいかない。

北條の力強い一言に、乃木は何どうしてだか、言い返す気になれなかった。

574龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:51:15 ID:/RK5bQ6q

一方、保養所前の戦いもピークを迎えていた。それぞれの死力を尽くした戦いは地形を大きく変え、元の平地は見る影もなかった。

「フン。」

胸の装飾物を引きちぎり、力を込めると歪な黒住が表面に現れ大剣と化した。首筋に巻きついたイカデビルの触手を切り裂き、その勢いを使い横から攻まるデストバイザーを受け止める。
互いの獲物の間で火花が散って、激突部分が爆ぜた。爆煙で一瞬視界が遮られた隙に、デッキから引き抜いたカードを読み込ませる。

―― STRIKE VENT ――

デストクローを召還したタイガが、ガドルごと地面を突き刺す。しかし手ごたえはなく、攻撃を交わされたことはすぐにわかった。
煙が晴れると、地面と大きな爪が露になる――――いや、それ以外に黒い何かが刺さっていた。槍のようにも、刺又のようにも見える。

「あいつ、何処に行っ」
目線を下から前に向けた瞬間、顔面に突き刺さる鋭い蹴り。デストクローを置き去りにしたまま白銀の体が仰け反って、ゴロゴロと地面を転がった。

タイガが目撃したのはつい先ほどまで剣として戦っていたもの。ガドルが器用にその先端に立ち、その胸からもう一本の剣を作り出す。
蒼の瞳がほんのり赤みを増し、足場の槍を引き抜いた。地面に足の裏が接する直前に、左腕の槍が再び剣の姿へと還った。
半身を持ち上げたタイガの、まだ揺れ続けている脳でもはっきりとその姿を認識できた。召還したばかりの武器は遠く、召還器自体も先の一撃で吹き飛んでしまった。
この場にはもう一人イカデビルがいるが、こちらを助けるはずもない。つまり、今タイガは殆ど丸腰で戦っているのだ。

「……っ!」

迫り来る二振りの剣に対し、無意識にあとずさってしまう。デッキにまだ最後のカードは残っているが、バイザーがないのでは宝の持ち腐れ。
四度ほど下がったところで、手に直に土の触感が伝わる。十分間の変身が終わりを告げ、ただの人間東條悟に戻ったのだ。
ガドルの変身もそう長くは持たないだろうが、それでも止めを刺すぐらいの時間はあるはずだ。

「こんなところで終われない……僕は英雄になるんだ、英雄に、英雄に……」

まるで呪詛のように自分の理想を呟き続けるが、振りかざされる剣に映る姿はまるで程遠い。剣の上昇が止まったのを見て、この後の光景を思い浮かべて思わず目を瞑った。


(英雄に英雄に英雄に………………………………先生――――――――!)


二つの剣が振り下ろされたのと、二人の間に何者かが割り込んだのは、殆ど同時だった。
衝撃がこない事を不思議に思い、恐る恐る目を開くと……立っていたのは、真っ黒い人影。全く姿形は違うのに、その広々とした背中は自分の大切な人の鎧を髣髴とさせる。
がっ、と再び脳が揺れ動く。当身だと気づいたのは、首筋に添えられた太い腕を見てからだった。

「せん……せ……」

その言葉は最後まで紡がれず、東條の意識は闇に沈んだ。



575龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:52:00 ID:/RK5bQ6q
「博士! 大丈夫ですか!?」

変身の解けた死神博士が振り返ると、こちらへと走ってくる影山の姿が見えた。顔に薄い傷がある事以外は、先程までとなんら代わりがない。
無事だったかと声をかけようとして、やめる。後ろから見慣れない二人の人影が見えたからだった。

「……何者だ?」
「待ちたまえ、我々に敵対の意思はない……死神博士というのは、貴様で間違いないか?」

大鎌を構える死神を制したのは高圧的な喋り方が特徴の男――――乃木怜治だ。肯定の頷きを返すと、いい物を見つけた、と言わんばかりの微笑を浮かべる。
死神の視線を感じ、北條は背負っていた真司を下ろした。苦しそうな表情を貼り付けたまま、意識を失っているらしい。


「……ここまで傷口が深いと、もう……」

苦しげな言葉な言葉を聴いて、死神の表情は曇った。しかしそれとは裏腹に、内心まだ真司が生きていることに驚いていた。

(普通なら傷を負った瞬間ショックで死にかねない……仮にも仮面ライダー、戦いを重ねるうちで僅かながら鍛えられていったか。)

自分を助けたあの瞬間、死神は真司への興味を失った。もともと捨て駒として扱う予定だったのが、ほんの少し早まっただけの事。
その様子を見てくつくつと笑う乃木に、死神はいぶかしむような視線を送った。この男、腹の内が読めない上に隙がないのだ。

「さて、本題に移ろう……手を組む気はないか? 俺たちは首輪を外す手段を求めている、是非とも技術者としての腕を買いたい。」
「……ワシ達に対するメリットは?」

死神の言葉にしばし考え込むと、乃木は北條のデイパックからついさっき手に入れた物を取り出し、突き出した。

「この首輪の設計図をくれてやろう。また、今参加者にとある御使いを出していてな、それが手に入れば首輪の解析も早く進むだろう。
 ……それに……こちらには中々頭の切れる友人もいる。悪い話では、ないと思うが?」

ちらり、と横目で北條の顔を伺う。その額にうっすらと光るものがあったのは気のせいではあるまい。

「……おもしろい、貴様の話に乗ってやろう。」
「いい返事が聞けてうれしいよ……さて、」

乃木と死神が同時に振り返り、それに釣られるように残りの二人も自然とそちらを向く。その視線の先には、息も絶え絶えな二人の人物。


連戦で息が上がり、折れかかった二本の剣を持つガドルと――――青い毛並みの、獣人と形容にするのが相応しい先の乱入者。
突然現れたかと思うと東條を守るように戦い始め、途中死神博士の姿を見つけると、一瞬驚くような素振りも見せた。

「ゥゥ……ァアァアァアァァッオォオォォォンッッ!!」

何より死神博士の脳内に設置されたコンピューターと、どこかひしめき合うような感覚を覚えさせる、あの雄叫び。これは間違いなく、ショッカーの技術の結晶。
しかしながら、この雄叫びを持つ男は放送ですでに呼ばれたはず。では、あの獣人はいったい何者なのか? ショッカーの改造人間なら、自分の仲間なのだろうか?
その判断を決めあぐねている内に乃木たちが現れた、というわけだ。

「そろそろ決着がつく様だな。」

ガドルのボウガンが圧縮された空気をはなたんと震えるが、その間に獣人は大地を蹴って跳躍、地上めがけ鋭い爪を振り下ろす。
引き金を引いても弾が間に合わないと判断し、盾として爪を受け止める。が、落下の勢いもあってかいとも容易く細切れにされ、懐へ潜られた。

「なっ……。」
「ァアァアオォオオン!!」

首筋に牙が突き立てられ、甲虫の皮膚に穴が――――開かない。すんでのところで首をつかみ、紙一重で傷はついていない。
とはいえ、ガドルの目が紫……力に特化した剛力体に変化しなければその進行を止められなかった。現に今も、ほんの少し押し返すのがやっとだ。

(このままでは……!?)

576龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:52:42 ID:/RK5bQ6q

一瞬ガドルは我が目を疑った。ふと獣人の力が抜けたかと思うと、そのわき腹にいつの間にか、機械仕掛けの刃が刺さっていたのだから。
獣人の口から絶叫が聞こえたのとほぼ同時に、一台のバイクが唸りをあげて現れた。乱暴に着地し、バイクから飛び降りた男はガドル、そして死神と影山も見覚えのある男だった。

「よう、ずいぶん人がいる割には、旨そうな餌が少ないな。」
「貴様……牙王!!」

持っていた鎌を向け、怒りを込めて睨み付ける。対する牙王はそんな死神を気にかけることもなく、淡々と獣人からデストロイヤーを引き抜いた。

「そうカッカするな。この狼野郎を食ったあとで、お前たちも……」

そういって牙王の目が再び死神の方を見た一瞬。そのほんの僅かなの間に、獣人は瞬速の風になった。
後ろ足で地を踏みしめ、一秒もしないうちに東條の元へ駆け寄る。意識がないのを確認すると、器用に背負って遠吠えを一つ。その場にいた誰かが反応するよりも早く荒野を駆け抜けていった。

「……ちっ。」

牙王は獲物が逃げたイライラに耐えかねて、力任せにデストロイヤーを地面に突き刺した。その際の舌打ちと共に、ガドルの変身が解け人間の姿へ戻る。

「……それで、どうする。私は私のゲゲルのルールに従うが。」
「はっ、知るか。俺ぁお預け食らってんだ、もう我慢なんてもん出来ないぜ。」

さも当たり前といった風な口ぶりに、ガドルもそれ以上詮索はしなかった。こうなってはもう何を言っても止まらないと知っているからだ。

「まずいな……乃木とやら、変身は残っているか?」
「生憎と連戦で使い果たしてしまった。その様子だとそちらもないようだな。」

互いの変身回数を確認し、最善の選択を模索する。手持ち支給品のうち、使用者を選ばないのは二つのカードデッキのみ。
北條は戦闘経験が皆無、変身したところで役に立たないだろう。また自分もガドルとの戦いで消耗しており、出来得るならば戦いは避けたい。
となると理想は乃木と影山なのだが……表情には出さないが、乃木の体には戦闘の傷と思わしき大火傷がある。下手に挑んで戦力を減らされでもしたらたまったものではない。


(……仕方がない、影山には人柱になってもらうか。)

もともとそのつもりで引き入れたのだ、その決断に何も苦しいところはない。影山に命令しようと口を開き、デッキに手を伸ばした――――その時。

誰かの腕が、先の龍騎のカードデッキを奪い取った。

力強く掴んでいるその腕は、
乃木にも、
影山にも、
北條にも、
もちろん死神にも繋がっていない。


「俺が……道、開きます!」

――――つい先ほどまで死を待つだけだった男。城戸真司の腕だった。


577龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:54:32 ID:/RK5bQ6q

ぴくり、と閉じていた眼を開き、辺りを見回すダグバ。粉塵爆発の痛みはまだ癒えないが、これもじきに回復するだろう。
大分寝てしまったのかもう辺りは暗くなっていて、工場内は不気味な静けさに覆われていた。人どころか、ネズミ一匹以内この島にはもうなれた物だが。
しかし……どうにも解せないところがある。辺りには何もいない、近くで戦闘が起こった気配もない……だというのに、ダグバの意識は揺り起こされた。
ダグバが感じたのは、強い力と灼熱。脳裏をこのヴィジョンが過ぎった瞬間、目が覚めてしまったのだ。
が、実際はご覧のとおり何も起きず、いつまでも夜の闇が纏わりつくままだ。灼熱など何処にもない、あるのは冷たすぎる暗がりのみ。

(勘違いかな……)
そう考え、再び眠ろうと横になった。ふと、何気なく視線を工場の外に向けた瞬間、一瞬昼間のような光が迸った。

「……あ……っ!」
その輝きの中、ダグバははっきりと目撃した。本当なら、遠すぎて視認も不可能なはずのものを。

天高く昇っていく、巨大な銀色の龍の姿を。

【1日目 夕方】
【現在地:B-5 工場内】



【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:47話、クウガアメイジングマイティに勝利後。
[状態]:脇腹に刺し傷、額にヒビ(出血止まり済み)、胸部に蹴りによるダメージ、右肩に清めの音によるダメージ、全身に軽度のダメージ、2時間変身不可(グレイブ、グロンギ体)
[装備]:グレイブバックル
[道具]:基本支給品×3 ラウズカード(スペードA〜9、ハートQ)、サバイブ『疾風』
【思考・状況】
基本行動方針:究極の闇を齎す。
1: 究極の闇を齎す。
2:強くなったクウガ、龍騎、響鬼、ライア(サソード)、ガドルと再戦 。
3:『仮面ライダー』と思われる一文字隼人、風見志郎、城戸真司と戦う。
4: 自分に楯突いた志村には容赦しない。
5:牙王にはちょっと失望。
6:リントの道具の力に興味。
※自身の戦闘能力に制限がかかっていることを何となく把握。
※志村が人間でない事を知りました。
※ハートのKが無くなっている事に気付き、志村が奪ったと思っています。
※工場内には首輪の部品、様々なチラシやら何やらが散乱しています。




578龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:55:51 ID:/RK5bQ6q
「道を開く……だと? ハッ、笑わせるな。」
嘲笑とも取れる乃木の言葉だが、その声に明らかな怒りが含まれていた。怪我人一人が戦ってどうにかなる程度なら、そもそも悩んだりする必要はない。

「私は、正直あなたを行かせたくありません……ですが……」
「えっと……北條さん、だっけ……ありがとう。」

自分を含め、この場の全員がより多く助かる手段は、それしかない……北條は、そこから口にすることは出来なかった。
ただ、北條は知らない。カードデッキが、変身する者を選ばない道具、つまり彼でも、変身して戦うことが出来ることを。
その事実を、死神や乃木はおろかこちらを狙う牙王たちも含め、このエリアにいる全員が知っている――影山はコブラとの一軒ですぐに頭から吹き飛んでいたが――のは、皮肉というほかない。
知っていれば間違いなくその役をかって出る程度には、正義感を持ち合わせているだけに、北條は何も出来ない自分に歯噛みする事しか出来なかった。

「城戸よ、馬鹿も休み休み……」
「博士……俺にちょっと……考えがあるんです、お願いします。やらせて下さい……っ!」

死神の言葉を遮り、強い意志で真司は訴えた。今この間も傷が体を蝕み、命を押し潰そうとしているのにその目はまっすぐ死神を見据えていた。
真司の目に、うっすらと涙が浮かぶ。その涙を見て、死神はふとかつて真司が言った言葉を思い出した。

――――こんな闘い…俺が必ず止めてやる!!

初めて出会って話した時も、真司はこの戦い、特に人を殺すことに関しては否定的だった。その真司が、敵を前にして道を開くと言い放ったのだ。
相手は本気でこちらを殺しにかかってくる、そして相手を殺さずに説得するのも不可能といっていい。そんなことは真司にもわかっているはずだ……その上で流した、この涙の意味は。

(……人を殺す決心が出来た、か。)

再び、二人の視線が交差する。真司の目はまだ死んでいないどころか、覚悟を決めた所為か強い輝きを見せていた。

まるで、幾度もショッカーと相対した、本郷猛と一文字隼人のように。

「牙王は強いが……やるからにはしくじるな。」
「……はい!」

威勢のいい返事と共に、皆を守るようにしてデッキを構えた。対する牙王は、一刻もはやく馳走にありつきたいらしくうずうずしている。
おもむろにデイパックへと手を突っ込み、渡されたカードデッキをガドルへ放り投げた。

「何のつもりだ?」
「決まってんだろ、食うんだよ。」

帰ってきたのは、いつも通りの短い返事だった。ガドルは今一度真司の姿を確認し、戦うに値する者かどうか見極める。
手負い、しかも明らかな致命傷。だが、それを一切表情に出さず仲間を守ろうと立ちはだかった。
その目に二つ、燦燦と輝いている光は、まるで幾多の同胞を葬ってきたリント戦士クウガのようだ。

(なるほど、これは戦う意義があるようだ。)

同じようにデッキを構えるガドルを見て、牙王は満足げな表情を浮かべた。そして、右手で持ったガオウベルトを装着し、懐からマスターパスを取り出す。

「「変身。」」

―― Gaoh form ――

天高く掲げたパスを落とし、バックル部分で弾けた粒子が刺々しい鎧と、巨大な顎の形をした電仮面を召還する。少し遅れて、ガドルがデッキを召還したベルトへ滑り込ませた。
電仮面は変形してすべてを噛み砕く牙へ変貌を遂げ、鏡像の中からいくつもの影が擬似ライダーの装甲となった。

仮面ライダーガオウとオルタナティブゼロ、参加者の中でもだいぶ高い位置にいる二人の闘士。
579龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:56:41 ID:/RK5bQ6q

一瞬、真司の目に二人の姿が霞んで写った。

(……っ)
二人から発せられるプレッシャーに倒れこみそうになるが、無理やり足で支える。拳を握って、まだ体が動くことを確認した。
後ろには、守ると決めた仲間たちがいる。絶対に倒れてなるものか、と自分に言い聞かせデッキを突き出した。
ガオウの装甲に反射した像からベルトが装着され、静止。
ゆっくりとデッキを持つ手を引いていき、代わりに右腕を左へと引き伸ばす。丁度、仮面ライダー1号と同じ構えだ。

「変、身……!」

デッキをベルトに装填し、一歩一歩しっかりと歩んでいく。

右足を踏み出すと――――右側から鏡像が重なり、

左足を進ませると――――左側から鏡像が色づき、

そしてもう一歩歩いて、そこで一度立ち止まった。その瞬間、上から重なった鏡像が現実の物に変換され、赤い龍を従える騎士が姿を現す。


「……っ、しゃあ……!」
―― SWORD VENT ――

男女の声が同じ電子音声を発し、それぞれの武器を手に取る。ガオウの腰に備えられた四つのパーツが宙に飛び、連結しのこぎり刃の剣を形作った。
龍騎が走り出して、まずオルタナティブゼロに斬りかかった。スラッシュダガーに防がれこれ以上通らないと悟ると、すぐさま振り返りガオウガッシャーの斬激を防ぐ。
のこぎり刃越しにスラッシュダガーの棘が写った。体制を低くし攻撃を避けると、頭上で二人の武器が衝突して火花を散らす。

その隙に両腕で拳を作り、目いっぱい左右へと突き出した。敵が吹き飛ぶ姿を視界の端に捕らえながら、デッキからもう一枚カードを引き抜き読み込ませる。


―― GARDE VENT ――

龍の腕がついた盾が両肩に一対づつ装着され、今度はガオウへと飛び掛る。ドラグセイバーが沈む太陽に反射し、一層赤く煌いた。

「は、博士……城戸のやつ……」
「ああ、先の戦闘よりも明らかに動きのキレが増しておる。」

ゆっくりと離れつつある影山と、死神博士までもが感嘆の声を上げた。声に出さないものの、残りの二人も驚いた表情を見せた。
今の真司の腹部には文字通り風穴が開いている。血も大量に流し、立っているだけで体中に、それこそ死ぬほどの激痛が走っているはずだ。
だというのに、怪我を負う前よりも戦闘の質が上がっているというのはどういうことなのか。

(そういえば、奴の戦闘は無駄な動きが多かったな。)

死神が見た病院での真司の戦いぶりは、お世辞にも強いとは言い難いものだった。一度しか見ていないが、あそこまで酷いといやでも覚えてしまう。
無意味なオーバーアクションが目立ち、攻撃も頭に血が上った直線的なものしかなかった。故に、あの場ではろくな行動も出来ず一撃で沈んだのだ。

「……もしかしたら、血が抜けた所為で幾分冷静になっているのかも知れぬ。」
「下らん、そんな都合のいいことが起こるものか。」

乃木がばっさりとその仮説を切り捨てた。そう、そんな都合のいいことは起こらない……そんなことは死神にもわかっている。
だが事実として、龍騎の戦いぶりは格段に上達している。少なくとも、二人の実力者と戦いながら一歩も引かぬ程度には。

(……考えるだけ無駄か……)


580龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:57:21 ID:/RK5bQ6q

―― ADVENT ――

バイザーのカードが燃えるのと同時に、サイコローグが飛び出し龍騎にタックルを決める。続けてもう一枚、カードをベントインして走り出した。

―― ACCELE VENT ――

走っていたオルタナティブゼロの姿が掻き消えたのを見て、また目が眩んだのかと感じる龍騎。しかし、直後に届いた背後からの攻撃が違うと知らせていた。

「ちくしょ……ゴホッ!」
マスクのスリットから赤い血が漏れ、喉が焼け付くような熱を持つ。どうやら今ので傷口が開いたらしい。
ドラグセイバーでオルタナティブを牽制しつつ、ローキックでサイコローグを蹴り飛ばす。と、次の瞬間胸に鈍く、思い衝撃が迸った。

「ガ……ァ……」
「後ろもちゃんと見ねえと……死ぬぜ?」

胸元から伸びる錆色の刃を見て、影山の叫ぶ声を聞いて、ようやく真司は理解した。

「城戸おおおおお!!」

自分の胸が、貫かれている事を。


「あぁ?」
ガオウがぐるりと首を曲げ、影山たちの方を見る。いつの間にか遠くへ逃げている、だがまだ攻撃の届かぬ距離ではない。
龍騎からガオウガッシャーを引き抜き、邪魔なその体を蹴り飛ばす。物理法則に逆らわず転がる赤い鎧は、血飛沫を撒き散らしながら転がっていった。

ガドルはオルタナティブの仮面の下で一部始終を見守ること以外、しようともしなかった。彼は自分のゲゲルで一般人に攻撃を仕掛けないルールを設けた。
それと同様、彼の目の前で一般人が危機に晒され様とも全く関わらない。助ける義理もないのだ、自分のみ程度守れないようでは興味すらわかない、というのが本音だった。

「チッ、見つかったか」

ガオウの仮面がニィ、と歪むのを見て死神が苦い顔をするが、影山の所為で見つかってしまった今ではもう遅い。ガオウガッシャーを突きつけ、マスターパスを翳す。

―― FULL CHAR……――
―― ADVENT ――

ベルトの電子音が別の電子音声に阻まれる。続けざまに襲い掛かるのは、ガオウもよく見覚えのある龍……に似た、無双龍ドラグレッダーだ。

「んなっ!?」
「GAAAAAAAAOOOOOOOOOO!!!」


ギリギリまで死神たちに注意が入っていた事と現れた場所が近かった事とが重なって、あっという間に巨大な顎がガオウの体を挟む。
直線に進んだその巨体が保養所内へと突っ込む。口に咥えたガオウで壁や柱を砕きながら、中でぐるぐると縦横無尽に暴れ周った。
数秒の後、天井を突き破って飛び出したドラグレッダーが、今度はオルタナティブゼロを狙って襲い掛かってきた。だが黙って捕まる訳がなく、怪物から逃れる手段を講じる。

581龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:58:20 ID:/RK5bQ6q

―― FINAL VENT ――

再び現れたサイコローグがその身を歪ませ、バイクとなってオルタナティブの目の前に走ってくる。すぐさま乗り込みアクセルを吹かして、荒野を駆け出した。
ミラーモンスターが現実世界で長くいられないのはガドルも理解している、なればそのタイムリミットまで逃げ切ればいいだけの事だ。

(その鉄の馬ならばそう簡単に……)

直後、サイコローダーが炎に包まれた。

ドラグレッダーの吐いた火が、オルタナティブを捕らえたのだ。熱でもがき苦しんでいるうちに捕らえ、上空からある場所へと叩き落す。
ガドルは熱を持った体が、緩やかで心地よい温かさに支配されるのを感じた。半身を持ち上げると触覚から滴る水滴が湯船に落ち、波紋が広がって……水滴?

(これは……風呂……)

間違いない、数時間前自分が使った風呂だ。落下の際の衝撃が殆どなかったのも、自分たちが天井を破壊したのと落下した場所が水だったからか。
いったい何を考えてこんなところへ……と考える間もなく、新たな電子音声が鳴り響く。

―― FINAL VENT ――
「ハァァァァ……」

声のほうを向くと、赤い戦士の周囲を龍が旋回し、地を蹴って飛ぶ姿が目に入った。その戦士は、今しがたガオウが貫き捨てた龍騎だ。

(死んだと思い油断したか……)

この距離では逃げても直撃は避けられない――――ならば、耐え切って見せるまで!

「ッダァァァァァ!!」

雄たけびと共に、灼熱の炎を纏った蹴りがオルタナティブへと迫る。対するオルタナティブは両手を胸の前で構え、力を込めた。
金属が触れ合うような音が鳴り響き、直後にガドルは装甲の上からわずかだがキックがめり込むのを感じた。受け止めたことでだいぶ衝撃は抑えたものの、それでも耐え切れず吹き飛ぶ。
宙を舞うオルタナティブは浴槽の壁を容赦なく砕き、その奥まで転がり込む。鎧に触れたコードから、ほんの少しの光が煌く。


その瞬間、さながら稲妻が落ちたような閃光が走った。

「ガァァァッアッァァァァァァッァッッ……」

水は電気を通す、それはライダーの装甲の上からでも同じである。真司の狙い通り、いやそれ以上の威力だった。
ガドルの絶叫が轟き、がっくりと首を垂れた。その黒い体は、ピクリとも動かないままいつまでも電撃を受け続ける。


「穴が開いた、全員走れ!」
死神の号令に影山、乃木と走り出し、全力でその場から離脱する。北條は振り返って、真司の姿をもう一度確認した。
腹部だけでなく胸にも開けられた穴からは、止め処なく血が溢れている。もう十分と持たないことは遠目でもよくわかる。
言い知れぬ無常感が押し寄せて、思わず拳を握り締めた。その様子に気づいた乃木が、早く来いと呼びかけてくる。

(ここでいかなければ、彼の行動が無駄になる……)

一般市民を救えなかった事に心が引き裂かれそうになるが、グッとこらえて、北條は次第に歩みを早めていった。
582龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/01(月) 23:59:39 ID:/RK5bQ6q


「全員……行った、な。」
がっくりと膝を突き、龍騎が浴場の床に倒れこみそうになる。必死に瓦礫で手を支えると、その瓦礫の山を砕く蹴りが飛んできた。

「くっ、さっきのは利いたぜ……」
いわずもがな、ガオウであった。

「お前、まだ生きて……」
「それはこっちのセリフだ、何でまだ生きてやがる。」

言いながらガオウガッシャーを構えるガオウに、真司は浅倉のような印象を持った。どこまでも貪欲で、自分のことしか考えていないところなどそっくりだ。
ここで倒さねば、きっともっと多くの犠牲者が出る……死神にもしくじるな、と言われたのだ。何が何でも、ここで倒す。

「……っ、し!」

ベルトから一枚のカードを引き抜き、ガオウに見えるよう裏返した。なぜあの怪人がこのカードを持っていたのかはわからないが、今は自分の手にあるという事実がたまらなく心強かった。
炎を纏った黄金色の翼が、浴槽を、保養所を、大地をその名の通り烈火で包み込む。余りの熱に思わずガオウも顔を庇う。

「オイオイ、何だこりゃあ……?」

ガオウの呟きをよそに、龍騎のドラグバイザーに幾重にも像が重なって弾けた。篭手はその手から消え失せ、変わりに龍の頭部を模した銃が握られていた。

下顎を開き、そのカードを差し込んだ。読み上げるのは、「自分が生き残る」ためでなく、「誰かを生き残らせる」決意を乗せた叫び!


―― SURVIVE ――


瞬間、龍騎の姿が砕け散り、殻を破るように新たな戦士が現れた。
胸部の装甲は真紅に染まり、肩から伸びる流れるような角がより鋭角的なフォルムを作り、全身からは大気を歪ませるほどの熱を放つ。
龍騎の仮面も大きく姿を変える。口元を汚していた血は一瞬で蒸発し、甲冑のようなバイザーは大きく後ろへと伸びていた。
額から新たな二本の触覚が伸びて、金色に輝く龍の紋章をさらに際立たせる。今ここにいるのは、鏡の世界で戦うライダーの、最強の一角。

――――仮面ライダー龍騎サバイブ。

「オ、オ……オオオオッ!!」

しかし牙王の顔に浮かぶのは恐れでも絶望でもなく、喜びの色。くたばりぞこないだと思っていた敵が自分に一撃を加え、さらにそこから新たな姿へと変わったのだ。
食いがいのありそうな敵に心震え、龍騎サバイブを見つめる。変身してから早五分少々……短期決着しか出来ないのが勿体無いが、その分全ての力持って楽しませてもらおう。
583龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/02(火) 00:01:47 ID:Tv1FZS8h

「行くぜ……全部喰ってやる。」

言うが早いかガオウは瓦礫の中からマスターパスを拾い上げ、その手に持った牙で襲い掛かる。対する龍騎サバイブは特に動じる様子もなく、冷静にカードを引き抜いた。

―― SWORD VENT ――

エコーがかかった電子音声とともに、ドラグバイザーツバイから剣先が飛び出して、ガオウガッシャーを受け止めた。
攻撃が通らないと悟り、ガオウが横なぎに一閃。しかし、龍騎サバイブはほんの少し後ろへ飛んだだけでその攻撃を回避し、体勢を立て直しドラグブレードで切りかかる。

「んなっ!?」
予想していなかった反撃に、対応が遅れた。切っ先が電仮面の先をわずかに削ぎ落とされ、熱で蒸発されるのを見てしまう。
舌打ちを一つ零しながら、仰け反ったままでキックを浴びせる。焼け付くようなエネルギーが龍騎サバイブの体を吹き飛ばし、建物の外へと転がり出た。

「ガ……」
龍騎の仮面の下で、真司の口からまた血が吹き出た。瞬時に蒸発するため傍目には何もないように見えるが、その体は限界をとっくに通り越して、死の淵でギリギリ立ち止まっている状態だ。
だけどこの身を止めるわけには行かない。これから先起こるかもしれない危機を防ぐために、龍騎サバイブはまた立ち上がり、戦い続ける。

―― STRANGE VENT ――

ベントインしたカードが別の絵柄に変わり、再び読み込まれる。耳につく電子音声は、ここに来る前友の愛用していた幻惑のカード。

―― TRICK VENT ――

龍騎サバイブから切り開くように影が二つ、三つと広がり、五人になったところでガオウが保養所内から現れる。
急に敵の数が増えたことに驚き目を白黒させるが、すぐ「全員倒せばいい」と思いつき、ガオウガッシャーを構えた。

「ゴチャゴチャしてんのは嫌いなんだよ……!」

飛び込んだ勢いで一人目の龍騎を蹴り飛ばし、二人目へとぶつけた。戸惑っている隙に三人目の仮面に拳を叩き込み、バラバラに砕いた。
「ハズレか……」
言いながらガオウガッシャーを構え、四人目の龍騎に突きつけながら走った。が、今度はカードを引き抜く音が聞こえて、続いて耳障りなエコー。

―― GARDE VENT ――

ドラグレッダーがその身を進化させ、烈火龍ドラグランザーとなって出現。炎を纏って回転するその巨体に、迫っていたガオウガッシャーも弾かれた。
だが、そんなの知ったことではない。のこぎり刃で表面を抉り、巨体の隙間に見える紅のデッキを貫いた。砕け散る姿はあれど手ごたえはない、またしてもハズレだ。
すぐに飛び退き、振り返った先にいる標的へ走り出す。蹴り飛ばした瓦礫が二人の龍騎に触れる中、もう一枚のカードが読みこまれた。

―― SHOOT VENT ――

向かってくるその姿へ狙いを定め、引き金を引く。それに合わせるようにして、龍騎サバイブの背後から巨大な火球が飛び出した。
しかし、ガオウは右に飛んでその攻撃を避ける。まさかと思い二度三度と引き金を引くが、そのたびに器用に避けられてしまう。

584龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/02(火) 00:02:40 ID:Tv1FZS8h

「邪魔なんだよ……」
―― Full Charge ――

火球を切り落とし、ゆっくりとマスターパスをかざす。今度は何者にも阻まれることなく、技が発動する。
のこぎり刃が回転して、さながらチェーンソーのごとく振動し射出された。まっすぐ飛んだガオウガッシゃーは一瞬で龍騎サバイブを粉微塵に砕いた。

―― ADVE……――
「させねぇよ。」

さっきのお返しとばかりにバイザーを破壊し、四人目の龍騎は断末魔すら残さず真っ二つになった。だが、どいつにも手応えはない……となると本物は最後の一人か。
「どこだ……あ?」

見回して探すと、本物はすぐに見つかった。瓦礫の影から足の先が見えるが、そこから先は隠れていて見えない。
瓦礫を蹴り飛ばし全身が見えるようにすると――――龍騎サバイブは、うつぶせに倒れていた。罠かと思ったが、その周辺に広がっている赤い水溜りが真実を物語っていた。

「くたばったか……つまらん。」

その身に蓄積された傷が臨界点を越したのだろう、いつ起こってもおかしくないことだ。しかしガオウにとっては、まったく持って面白くなかった。
何度目になるかわからない舌打ちをし、めんどくさそうに踵を返す。さっきの死神達を追うかどうか考え、やめた。それよりももっと強い奴に会うほうが早いだろう。

「……さっさと全員も喰いてぇなぁ。」
585龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/02(火) 00:03:41 ID:Tv1FZS8h


「……させ……るか……」

くぐもった様な声に振り向くと、龍騎サバイブが立っていた。瓦礫を支えに立ち上がる弱弱しい姿だが、それでも立てたことに驚いた。

「お前はくたばったフリをするのが趣味なのか? いい加減しつこいぜ。」

挑発には答えず、デッキから最後のカードを引き抜いた。一番強い技の出現を予期してガオウが身構えるが、その程度では防げないと気づき走り出した。

―― FINAL VENT ――

龍騎サバイブが飛び上がり、ドラグランザーに飛び乗ったかと思うとその長い身を折り畳み、一台の巨大なバイクとなって迫ってきた。
サイコローダーと似たようなものか……と思った瞬間、火球がガオウの少し先にある大地を燃やす。ギリギリ直前で踏みとどまり、ドラグランザーを睨み付ける。
真正面の退路を断たれてしまい、咄嗟に右へ飛ぼうとするが叶わなかった。同じように降り注いだ火球がガオウの前後左右を囲まれたからだ。

(さっきより火の手が早い……偽者と本物の違いってところか。)

電仮面の下、牙王の口元が自然の綻ぶ。逃がさせる気がないながら、炎は一度も牙王本体を狙わなかった――――つまり、全力同士の一騎打ちを挑んできたのだ。
そのつもりなら、こちらも全力の技で応戦する。回転する刃の輝きの中、この一瞬だけは牙王の頭からダグバのことが消え去っていた。

ただただ全力の闘争を愉しみ、喰らい尽くしたい。ただ、それだけ。

ドラグランザーの前輪にガオウガッシャーを突きつけ、マスターパスを放り投げた。

―― Full Charge ――

回転刃の勢いが増し、壮絶な火花を巻き上げる。震える装甲から、その威力に耐えられず白い煙が立ち昇っていく。

「ハハッ、楽しいぜ……これでこそ食いがいがあるってもんだ。」

視界が白に染まっていく中牙王が最後に見たのは、砕け散るガオウガッシャーと、咆哮を上げるドラグランザーの姿だった。




変身の解けた真司は、瓦礫にもたれかかる様にして座り込んだ。そのとき少し強く倒れてしまい、傷に響くかなとも思ったが、いまさら響いた所でもうどうにもならないことに気づく。
短い息が口から漏れ、その度に命が磨り減っていくのを感じる。身体に断たれた二つの穴から流れ出る血が、見る見るうちに血だまりを作っていった。
目に痛いほどの夕日が今はとても美しいものに感じられた。そして思うのは、命を賭して逃がした仲間のこと。

(博士、影山、北条さん……えーっと、乃木、さん。皆、生き抜いてくれよ……)

砕け散ったデッキからサバイブのカードが捲れ、ちろちろと燃えていた炎に飲み込まれた。手を伸ばそうとして、真司はもう体の自由が利かないことを知る。

「風間の奴、うまく逃げられたかな……響鬼さん、一文字達と会えたかな……手塚の奴、今も運命を変えようとしてるのかな……」

一通り知り合いの心配をしたら、ふわっと体が軽くなるのを感じた。どうやら、もうそろそろ終わりの時間らしい。

人を守るために戦った、もう何も悔いはない……

(……あぁ、忘れてた。)

閉じかけた瞳の中、真司はもっとも大切なことを思い出した。届かないと知っていながら、これだけは言っておかないといけない気がした。

(……蓮……お前との約束、やぶっちまった……ごめん。)

すぅ、と息を吸い目を閉じる。耳の奥に、構わないと声が響いたような気がした。
586龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/02(火) 00:04:29 ID:Tv1FZS8h


「………………………………………………………………ッ、ァ………………………………――――――――――――――」


彼が最後に呟いたのは友の名か、仲間への激動か、はたまたスマートブレインへ向けての恨みの言葉か。
その答えは、彼に付き従った龍だけが知っていた。



「あれは……城戸の……」

最初に気づいたのは、一番前を進んでいた死神博士だった。
ドラグレッダーがここにいるという事は、あの場での戦闘は終了したのだろう。しかし、真司は――――

「……!」

思わず影山が木の幹を殴り、その音がどこまでも反響していく。声に出さないものの、北條も唇を噛み必死にこらえている。

「諸君、ここで立ち止まっていては彼が浮かばれない。一刻も早く大学へ向かいこの首輪を外すことが、彼に出来る唯一の手向けとなろう。」

両手を広げて語る乃木だが、内心ではそんなこと微塵たりとも思っていなかった。最初から、あの二人を始末できて助かったという程度にしか感じていない。

「……ですね、まさかあなたの口からそんな言葉が聞けるとは、思っていませんでしたが。」
「あ、ああ。」

……とはいえ、今の言葉もこの二人を再び動かすくらいにはちょうどよかったらしい。満足げな表情を浮かべると、乃木は一枚のカードを取り出した。
それをドラグレッダーに掲げると、一瞬眩い輝きが森を覆い、それが静まる頃にはドラグレッダーの姿が掻き消えていた。

「何をした?」
「今の龍と契約させてもらった。これで、真司とやらの力も使えるようになるはずだ。」

死神の問いに短く答えた乃木は、ズンズンと先へ進んでいく。その背中を見て死神は、

(食えん男だ。)

と愚痴を零した。


【1日目 夕方】
【現在地:B-3 道路】

【共通参考】
1:自分達が別々の世界から連れてこられていることを把握しました。
2:今から大学へ向かい、その後研究所へ向かうつもりです(その後余裕があったら放送局も?)
3:ガドルが死んだと思っています。
587龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/02(火) 00:05:46 ID:Tv1FZS8h

【1日目 夕方】
【現在地:B-3 道路】

【共通参考】
1:自分達が別々の世界から連れてこられていることを把握しました。
2:今から大学へ向かい、その後研究所へ向かうつもりです(その後余裕があったら放送局も?)
3:ガドルが死んだと思っています。

【死神博士@仮面ライダー(初代)】
【時間軸】:一号に勝利後。
【状態】:擦り傷程度の傷多数、 二時間変身不可(イカデビル)
【装備】:鞭
【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王、ハイパーゼクター
【思考・状況】
基本行動方針:この殺し合いをショッカーの実験場と化す。
1:大学(研究室)を探索。現状を把握する。
2:集団を結成し、スマートブレインに対抗する。
3:影山のような役立たずはいずれ切り捨てる。
4:首輪を外す方法を研究する。施設の候補は研究所か大学。首輪のサンプルが欲しい。
5:未知のライダーシステムおよびハイパーゼクターの技術を可能な限り把握する。
6:乃木に対して不信感。刃向かうようなら始末する。
※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。
※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。
 尚、キック殺しは問題なく使えます。
※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。
※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。
※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。

【考察まとめ】
1.首輪の100%解析は不可だが、解除することは可能。
2.首輪を外せるのは罠で、タイミングが重要。
3.時空を超越して逃げても、追跡される。
4.会場に時の列車はない。あるとしてもスマートブレインの手の中。
5.ガオウから聞いた、デンライナーの持ち主は干渉を避けるために既に死んでいる可能性が高い。
6.ハイパーゼクターはカブトムシ型ゼクターで変身するライダーの強化アイテム。
7. この島では2ヶ月ほど前になんらかの異変が起きた。


588龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/02(火) 00:06:56 ID:Tv1FZS8h
【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
[時間軸]:43話・サソードに勝利後(カッシスワーム・グラディウス)
[状態]:全身に中程度の火傷、疲労、二時間変身不可(カッシス、王蛇)
[装備]:カードデッキ(王蛇+ドラグレッダー)
[道具]: 携帯電話、その他基本支給品×3(乃木、イブキ、結花)、ゼクトマイザー、トランシーバーC
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームの早期決着及びスマートブレイン打倒
1:首輪解除のため、北條透と仲間の諸君をもう少し泳がせる。
2:主催者側に対して嫌悪感。
3:ZECTの諸君に関しては、接触した次第早めに始末をつける。
4:死神達を利用する。
【備考】
※ライア・ガイのデッキが健在の為、王蛇のデッキには未契約のカードが2枚存在します。
※変身にかけられた時間制限をほぼ正確に把握しました。
※ZECTライダー資格者に関しての認識は「(TV版)ライダーの外見・名称」「(TV版)資格者の外見」を知っている程度です。
※ドラグレッダーと契約しました。ユナイトベントは発動しません。


589龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/02(火) 00:07:37 ID:Tv1FZS8h
【北條透@仮面ライダーアギト】
[時間軸]:最終話
[状態]:精神的に疲労。 現状に関する若干の恐怖。 主催に対する多大な不安。 真司に対する後悔の念。
[装備]:なし。
[道具]:携帯電話、地図、マグライト、研究所のファイル、首輪の設計図。
【思考・状況】
基本行動方針:無事に帰還し、スマートブレインを摘発する。
1:スマートブレインの危険性を懸念。
2:乃木をうまくだまくらかし、救出を待つ。
3:工場に向かって実験道具の手がかりを探す。
4:長田結花を保護すべき民間人と認識。
5:友好的な参加者と合流、敵対的な参加者を警戒。
【備考】
※首輪の外見についてはほぼ正確に把握しました。ただし、肌に触れている部分を除きます。
※研究所の設備は基礎的な科学知識さえあれば扱える程度にマニュアル化されているようです。
 ただし、あくまで分析結果が自動で出るだけで所見はついてきません。
※ファイルにまとめられた実験資料には、ネズミの灰化実験に
 青いバラとケージに取り付けられた装置が関わっているという結論のみが明記されていました。
※ファイルの内容の真偽は未確認ですが、北條はとりあえず真実であるという前提で行動しています。
※首輪の設計図は一部分を除き、ほぼ全ての構造が載っています。また、走り書き程度にメモも残されています。


【影山瞬@仮面ライダーカブト】
【時間軸:33話・天道司令官就任後】
【状態】:全身に若干の疲労。。顔面に斜めの傷。背中に軽い裂傷。 ザビーを失った悲しみ。
【装備】:ザビーブレス
【道具】:ラウズカード(◆J)
【思考・状況】
基本行動方針:とりあえず死神博士についていく
1:ザビーを返してくれよぉ……
2:乃木に恐怖。
※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。

【支給品説明】





・ウルフビールス


590龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/02(火) 00:09:42 ID:Tv1FZS8h



ウルフビールス。

秘密結社ショッカーが開発した、人間を狼男の改造人間へと変えてしまう悪魔のビールスである。
狼男となったものは自分の意思のままに暴れまわり、唯一黄金狼男であるゾル大佐が持つ、特殊な笛の音色によって制御される。

「はァ、はァ、はァ……」

背負っていた東條を乱暴に投げ捨てると、獣人――――狼男はその場に倒れこんだ。体中を引き裂かれるような痛みが駆け巡り、変身を解かざるを得なかった。
ザワザワと全身の体毛が引っ込み、徐々にその顔が人間の物へと戻っていく……しかし、完全に解け切る前に彼はその意識を失ってしまう。

彼――――三田村晴彦は改造人間であるが故に、リジェクションから逃れることは出来ないのだから。

異世界の、同じ名を持つ組織が作り上げた技術。その二つが触れ合ってしまったら、一体何が起こるのか。

【1日目 夕方】
【現在地:C-4 荒野】

【三田村晴彦@仮面ライダー THE FIRST】
[時間軸]:原作での死亡直前から
[状態]:全身に中度の疲労、全身に強い痛み、不可解な衝動(リジェクション)への疑問、
    北崎に対する強い恐怖 、リジェクション、気絶中、二時間変身不可(コブラ、実験狼男)
[装備]:特殊マスク、鞭
[道具]:飲食物(二人分)
【思考・状況】
基本行動方針:彼女を救うために勝者となる。
1:なんなんだこれは?
2:当面は東條に従って行動する。
3:北崎とはできるだけ離れたい。
4:リジェクションへの不安。できるだけ早く原因を突き止めたい。
5:いざとなれば迷わない。
6:桐矢、海堂に僅かな罪悪感。
7:自身が改造人間(コブラ)であることは東條に黙っておく。
【備考】
※変身制限がある事を把握しました(正確な時間等は不明)
※リジェクションの間隔は次の書き手さんに任せます。(現状は頻繁ではない)
※ウルフビールスに感染したことにより、実験狼男に変身が可能になりました。ウルフビールスを媒介できるかは後続の書き手さんに任せます。


591龍哭  ◆RIDERjbYCM :2009/06/02(火) 00:11:05 ID:Tv1FZS8h

【東條悟@仮面ライダー龍騎】
[時間軸]:44話終了後
[状態]:中程度のダメージ、気絶中、 二時間変身不可(タイガ)
[装備]:カードデッキ(タイガ・若干ひび割れ)
[道具]:基本支給品×2(飲食物抜き)、首輪(芝浦、金居) 、田所包丁@仮面ライダーカブト
[思考・状況]
基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる
1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』
2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい
3:三田村はとりあえず生かしておく。殺すタイミングは今後の動向次第。
5:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い。積極的に外す 。
6:木場(名前は知らない)に自分が英雄であることを知らしめる為、自らの手で闘って殺す。
※三田村が改造人間(コブラ)であることを知りません。



592龍哭  ◇RIDERjbYCM 氏の代理投下
ガドルは、生きていた。

ドラゴンライダーキックを受けながら、大量の電気を受けながら、まだ生きていた。
その意識はいまだ戻る気配がなく、もうすぐ日が落ち三度目の放送が始まる。そこで呼ばれる牙王の名を聞いて、いったい彼はどう思うだろうか。

――――ばちり。

ガドルの腕に、短い電流が走った。これが、彼を生きながらえさせた原因でもある。
どこかの世界の何時かの時間、ガドルはダグバに対効するため大量の電気をその身に受け、新たな力を得た。
クウガと似ていて、それよりはるかに強力なその姿――――誰かはそれを、『電撃体』とも呼んだ。
もしかしたら、それと同じように電気を吸収したのかもしれない。だが本当のところは、誰にも分からなかった。

――――ばちり。

【1日目 夕方】
【現在地:C-3 保養所男湯跡地】



【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】
[時間軸]:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後
[状態]:全身打撲、疲労中、右目と左腕に違和感、右足部装甲破損、帯電、、気絶、二時間変身不可(グロンギ体、オルタナゼロ)
[装備]:首輪探知携帯、カードデッキ(オルタナティブゼロ)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:強き者と戦い、強くなる。
1:リントの戦士を倒す。
2:再びあの二人と戦う。
3:桜井侑斗と決着をつける。
4:戦闘を繰り返し、強くなる。
5:最終的にダグバを倒す。
6:クウガの異変に僅かの恐怖。何れ再戦する
備考
※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。
※大量の電気を浴びました。びりびりです。
※よつば療養所はほぼ完全に倒壊しました。