【サブカルから】ロリショタバトルロワイアル22【移転】

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1創る名無しに見る名無し
本性を晒け出せ!
衝動をぶち撒けろ!
欲望を解き放て!
情熱を、燃やせ!





ここは真性の漢共(女性可)が集まり、
ジャンルを問わないロリショタキャラでバトルロワイアルを行う、
あまりにもCOOLなスレです。
紳士淑女の心を忘れず冷静に逝きましょう。



前スレ
ロリショタバトルロワイアル21
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1219236331/l50



テンプレ、過去ログは>>2-8辺に
ロリショタロワ避難所(したらば)
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/8274/
LSロワお絵描き掲示板
ttp://oekaki2.basso.to/user11/hisou/
LSロワお絵かき掲示板2
ttp://bbs2.oebit.jp/LoliSyotaRowa/
まとめwiki
ttp://www25.atwiki.jp/loli-syota-rowa
2創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:34:32 ID:Fv4DDQBD
過去スレ
ロリショタバトルロワイアル20
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1214751824/
ロリショタバトルロワイアル19
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1211637231/
ロリショタバトルロワイアル18
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1207291360/
ロリショタバトルロワイアル17
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1201435693/
ロリショタバトルロワイアル16
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1197816204/
ロリショタバトルロワイアル15
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1195789761/
ロリショタバトルロワイアル14
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1192364080/
ロリショタバトルロワイアル13
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1187884192/
ロリショタバトルロワイアル12
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1183849166/
ロリショタバトルロワイアル11
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1179760274/
ロリショタバトルロワイアル10
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1177507709/
ロリショタバトルロワイアル9
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1175607059/
ロリショタバトルロワイアル8
http://human7.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1174298614/
ロリショタバトルロワイアル7
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1173267370/
ロリショタバトルロワイアル6
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1171953607/
ロリショタバトルロワイアル5
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1170746599/
ロリショタバトルロワイヤル4
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1169810359/
ロリショタバトルロワイアル3
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1169293272/
ロリショタバトルロワイアル2
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1168265134/
ロリショタバトルロワイアルをやれるか話し合うスレ
http://human6.2ch.net/test/read.cgi/subcal/1167045572/
3創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:35:30 ID:Fv4DDQBD
〜参加者一覧[作品別]〜
【魔法少女リリカルなのは】高町なのは/フェイト・テスタロッサ/ヴィータ/八神はやて/アリサ・バニングス
【ローゼンメイデン】真紅/翠星石/蒼星石/雛苺/金糸雀
【魔法陣グルグル】ニケ/ククリ/ジュジュ・クー・シュナムル/トマ
【ポケットモンスターSPECIAL】レッド/グリーン/ブルー/イエロー・デ・トキワグローブ
【デジモンアドベンチャー】八神太一/泉光子郎/太刀川ミミ/城戸丈
【ドラえもん】野比のび太/剛田武/リルル
【魔法先生ネギま!】ネギ・スプリングフィールド/エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル/犬上小太郎
【絶対可憐チルドレン】明石薫/三宮紫穂/野上葵
【落第忍者乱太郎】猪名寺乱太郎/摂津のきり丸/福富しんべヱ
【名探偵コナン】江戸川コナン/灰原哀
【BLACKLAGOON】ヘンゼル/グレーテル
【クレヨンしんちゃん】野原しんのすけ/野原ひまわり
【ドラゴンクエストX】レックス(主人公の息子)/タバサ(主人公の娘)
【DEATH NOTE】メロ/ニア
【メルティブラッド】白レン/レン
【ちびまる子ちゃん】藤木茂/永沢君男
【カードキャプターさくら】木之本桜/李小狼
【テイルズオブシンフォニア】ジーニアス・セイジ/プレセア・コンバティール
【HUNTER×HUNTER】キルア/ゴン
【東方Project】レミリア・スカーレット/フランドール・スカーレット
【吉永さんちのガーゴイル】吉永双葉/梨々=ハミルトン
【ヴァンパイアセイヴァー】リリス
【MOTHER】ネス
【サモンナイト3】ベルフラウ=マルティーニ
【Fate/stay night】イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
【みなみけ】南千秋
【武装錬金】ヴィクトリア=パワード
【BLACKCAT】イヴ
【からくりサーカス】才賀勝
【銀魂】神楽
【ひぐらしのなく頃に】古手梨花
【灼眼のシャナ】シャナ
【とある魔術の禁書目録】インデックス
【るろうに剣心】明神弥彦
【ボボボーボ・ボーボボ】ビュティ
【一休さん】一休さん
【ゼルダの伝説】リンク(子供)
【ベルセルク】イシドロ
【うたわれるもの】アルルゥ
【サザエさん】磯野カツオ
【せんせいのお時間】鈴木みか
【パタリロ!】パタリロ=ド=マリネール8世
【あずまんが大王】美浜ちよ
【ポケットモンスター(アニメ)】サトシ
【SW】ベルカナ=ライザナーザ
【Gunslinger Girl】トリエラ
【ぱにぽに】レベッカ宮本
【FINAL FANTASY4】リディア
【よつばと!】小岩井よつば
計86名
4創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:36:21 ID:Fv4DDQBD
〜参加者一覧[あいうえお順(名簿順)]〜
01:明石薫/02:アリサ・バニングス/03:アルルゥ/04:イエロー・デ・トキワグローブ/05:イシドロ/
06:泉光子郎/07:磯野カツオ/08:一休さん/09:猪名寺乱太郎/10:犬上小太郎/
11:イリヤスフィール(略)/12:インデックス/13:イヴ/14:エヴァンジェリン(略)/15:江戸川コナン/
16:神楽/17:金糸雀/18:城戸丈/19:木之本桜/20:キルア/
21:ククリ/22:グリーン/23:グレーテル/24:小岩井よつば/25:剛田武/
26:ゴン/27:才賀勝/28:サトシ/29:三宮紫穂/30:シャナ/
31:ジーニアス・セイジ/32:ジュジュ・クー・シュナムル/33:白レン/34:真紅/35:翠星石/
36:鈴木みか/37:摂津の きり丸/38:蒼星石/39:高町なのは/40:太刀川ミミ/
41:タバサ(主人公の娘)/42:トマ/43:トリエラ/44:永沢君男/45:ニア/
46:ニケ/47:ネギ・スプリングフィールド/48:ネス/49:野上葵/50:野原しんのすけ/
51:野原ひまわり/52:野比のび太/53:灰原哀/54:パタリロ/55:雛苺/
56:ビュティ/57:フェイト・テスタロッサ/58:福富しんべヱ/59:藤木茂/60:フランドール・スカーレット/
61:ブルー/62:古手梨花/63:プレセア・コンバティール/64:ヘンゼル/65:ベルカナ=ライザナーザ/
66:ベルフラウ=マルティーニ/67:南千秋/68:美浜ちよ/69:明神弥彦/70:メロ/
71:八神太一/72:八神はやて/73:吉永双葉/74:李小狼/75:リディア/
76:リリス/77:梨々=ハミルトン/78:リルル/79:リンク(子供)/80:レックス(主人公の息子)/
81:レッド/82:レベッカ宮本/83:レミリア・スカーレット/84:レン/85:ヴィータ/
86:ヴィクトリア=パワード
計86名
5創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:36:53 ID:Fv4DDQBD
〜ロリショタロワ・基本ルールその1〜
【基本ルール】
参加者全員で殺し合い、最後まで生き残った一人が優勝となる。
優勝者のみが生きて残る事ができて『何でも好きな願い』を叶えて貰えるらしい。
参加者はスタート地点の大広間からMAP上にランダムで転移される。
開催場所はジェダの作り出した魔次元であり、基本的にマップ外に逃れる事は出来ない。

【主催者】
主催者:ジェダ=ドーマ@ヴァンパイアセイヴァー(ゲーム・小説・漫画等)
目的:優れた魂を集める為に、魂の選定(バトルロワイアル)を開催したらしい。
なんでロリショタ?:「魂が短期間で大きく成長する可能性を秘めているから」らしい。

【参加者】
参加者は前述の86人(みせしめ除く)。追加参加は認められません。
特異能力を持つ参加者は、能力を制限されている場合があります。
参加者が原作のどの状態から参加したかは、最初に書いた人に委ねられます。
最初に書く人は、参加者の参戦時期をステータス表または作中に記載してください。

【能力制限】
参加者は特異能力を制限されることがある。疲労を伴うようになっている能力もある。
また特別強力な能力は使用禁止になっているものもあるので要確認。

【放送】
放送は12時間ごとの6時、18時に行われる。内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」
「過去12時間に死んだ参加者名」など。

【首輪と禁止エリア】
・参加者は全員、爆弾の仕込まれた首輪を取り付けられている。
・首輪の爆弾が起爆した場合、それを装着している参加者は確実に死ぬ。
・首輪は参加者のデータをジェダ送っており、後述の『ご褒美』の入手にも必要となる。
(何らかの方法で首輪を外した場合、データが送られないので『ご褒美』もない)
・首輪が爆発するのは、以下の4つ。
1:『禁止エリア』内に入ってから規定時間が過ぎたとき。
2:首輪を無理やり取り外そうとしたとき。
3:24時間で死者が出なかったとき。
4:ジェダが必要と判断したとき(面と向かって直接的な造反をした場合)。
6創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:37:25 ID:Fv4DDQBD
〜ロリショタロワ・基本ルールその2〜
【舞台】
ttp://www25.atwiki.jp/loli-syota-rowa?cmd=upload&act=open&pageid=8&file=76.gif

【作中での時間表記(2時間毎)】(1日目は午前6時よりスタート)
 深夜:0〜2
 黎明:2〜4
 早朝:4〜6
 朝:6〜8
 午前:8〜10
 昼:10〜12
 真昼:12〜14
 午後:14〜16
 夕方:16〜18
 夜:18〜20
 夜中:20〜22
 真夜中:22〜24

【支給品】
・参加者が元々所持していた装備品、所持品は全て没収される。
・ただし体と一体化している装備等はその限りではない。
・また衣服のポケットに入る程度の雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される物もある。
・ゲームの開始直前に以下の物を「ランドセル」に入れて支給される。
「食料」「飲料水」「懐中電灯」「地図」「鉛筆と紙」「方位磁石」「時計」「名簿」
「ランダムアイテム(1〜3種)」。
なおランドセルは支給品に限り、サイズを無視して幾つでも収納可能で重量増加もない。
その他の物については普通のランドセルの容量分しか入らず、その分の重量が増加する。

【ランダムアイテム】
・参加者一人に付き1〜3種類まで支給される。
・『参加者の作品のアイテム』もしくは『現実に存在する物』から選択すること。
(特例として『バトルロワイアル』に登場したアイテムは選択可能)。
・蘇生アイテムは禁止。
・生物および無生物でも自律行動が可能なアイテムは参加者増加になる為、禁止とする。
・強力なアイテムには能力制限がかかる。非常に強力なものは制限を掛けてもバランスを
取る事が難しいため、出すべきではない。
・人格を変更する恐れのあるアイテムは出さない方が無難。
・建前として『能力差のある参加者を公平にする事が目的』なので、一部の参加者だけに
意味を持つ専用アイテムは避けよう。出すなら多くの参加者が使えるようにしよう。

【ご褒美システム】
・他の参加者を3人殺害する毎に主催者から『ご褒美』を貰う事が出来る。
・トドメを刺した者だけが殺害数をカウントされる。
・支給方法は条件を満たした状態で、首輪に向かって『ご褒美を頂戴』と伝えるか、
次の放送時にQBが現れるので、以下の3つから1つを選択する。

1:追加のランドセルが貰える。支給品はランダムで役に立つ物。
2:ジェダに質問して、知人の場所や愛用品の場所などの情報を一つ聞ける。
3:怪我を治してくれる。その場にいれば他の人間を治すことも可能。
7創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:37:58 ID:Fv4DDQBD
〜ロリショタロワ・基本ルールその3〜
【ステータス表】
・作品の最後にその話に登場した参加者の状態、アイテム、行動指針など書いてください。
・以下、キャラクターの状態表テンプレ
【現在位置(座標/場所)/時間(○日目/深夜〜真夜中)】
【キャラクター名@作品名】
[状態]:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
[装備]:(身に装備しているもの。武器防具等)
[道具]:(ランタンやパソコン、治療道具・食料といった武器ではないが便利なもの。
     収納している装備等、基本的にランドセルの中身がここに書かれます)
[思考・状況]
(ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。
 複数可、書くときは優先順位の高い順に)

◆例
【D-4/学校の校庭/1日目/真夜中】
【カツオ@サザエさん】
[状態]:側頭部打撲、全身に返り血。疲労
[装備]:各種包丁5本
[道具]:サイコソーダ@ポケットモンスター
[思考]
第一行動方針:逃げた藤木を追い、殺害する
第二行動方針:早く仲間の所に帰りたい
基本行動方針:「ご褒美」をもらって梨花の怪我を治す

【予約】
・キャラ被りを防ぐため、書き手は自分の書きたいキャラクターを予約することができます。
・期間は基本的に予約から72時間(3日)です。
・やむにやまれぬ事情で完成が遅れる場合、最大で一週間まで期限を延長することができます。
 ただし、3日の期限の間に、進行状況の報告も合わせて延長申請を行う必要があります。
・予約期間終了後は、他の人がそのキャラを使った話を投下して構いません。
・予約しなくても投下することはできますが、その際は他に予約している人がいないか
十分に確認してから投下しましょう。

【投下宣言】
・投下段階で被るのを防ぐため、投下する前には必ずスレで 「投下します」 と宣言を
して下さい。 投下前にリロードし、被っていないか確認を忘れずに。
・近頃連投規制が厳しくなっております。居合わせた方は、できるだけ支援するようにしましょう。

【トリップ】
 投下後、作品に対しての議論や修正要求等が起こる場合があります。
 本人確認のため、書き手は必ずトリップをつけてください。
8創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:38:37 ID:Fv4DDQBD
【創作発表板で初めて『ロリショタバトルロワイアル』を知った方のためのQ&A】

Q:ロリショタバトルロワイアルって?
A:いわゆるパロロワ企画の1つです。
  >>1にも書かれたコンセプトの下、ジャンルの壁を越えてロリキャラ・ショタキャラを集めています。

Q:いきなりスレ番号が「22」になっているけど?
A:過去ログのリンクを見て頂ければ分かりますが、21まではサブカル板にて運営していました。
  このたび、新スレを立てるに当たってこの創作発表板に引っ越してきました。

Q:なんで今までサブカル板にいたの? どうしてそのままサブカルで続けないの?
A:元々、複数のジャンル(漫画・ゲーム・アニメ・ラノベなど)に跨るため、適切な居場所のないスレでした。
  漫画系の板にもアニメ系の板にも居場所がなく、板違いを承知でどこかに間借りするしかなかったのです。
  過去には存続の危機に立たされたこともありました。
  しかしこのたび、板違いとされる心配のない創作発表板が出来たので、移転に踏み切ることになったのです。

Q:なんで今になって移転してきたの? 創作発表板が出来てから結構経ってるよ?
A:旧スレの容量が埋まるまで、移転を控えていたためです。
  創作発表板の方向を見定める意味でも「移転するなら旧スレを使い切ってから」としたのです。
  結果、こんな時期になってしまいました。

Q:面白そうだけど、参加していいの?
A:勿論です。読み手・書き手共に、新たな住人は大歓迎です。
  ただ、既に250話ほども進んでいる企画なのでまずは読み物としてお楽しみください。
  テンプレの>>1にあるまとめwikiの方に、これまでの話が収録されています。
  パロロワ企画の中でも欝方面に強烈だと言われるロワの一つですので、ご注意ください。
9創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:41:39 ID:Fi/GHKtG
>>1乙です

おおおお!?まさかロリショタまで移転してきたのか
最近wikiでしか読んでなくて本スレ読んでないから移転話でてるの知らなかったよ
創作発表板にようこそ!!
10創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:42:47 ID:H2aMUI5c
スレ立て乙ー
そして投下待ち
11 ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:43:49 ID:eD6SwAsf
>>1移転スレ立て乙です。
それでは早速、投下を開始します。
12だから人は夢を見る(1/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:44:51 ID:eD6SwAsf
私、高町なのはは、みんなで生きて帰る事ができれば良いなと思っていました。

それは叶わぬ夢です。
たったの半日で80人以上居た人が50人にも満たない人数になってしまいました。
少なくともそれから一人の参加者を私は殺しています。
他のところでも同じように殺し合いが続いていたとすれば、あれから6時間が経った今、
半日で49/86=約57%だから、6時間では75.5%位になって残り37人……ううん、違うか。
私以外のみんなが同じペースで殺し合いを続けたとすれば、私と私が殺した分を計算から抜いて、
半日で49/79=約62%、6時間なら79%位、少し多めに見て2割しか減らない計算です。
私が放送の後で殺した一人を計算に入れれば48人から2割減って38人ほど。
一人生き残りましたね。私が休んでいて、1人しか殺さなかったから。
禁止エリアで世界が狭まり、殺し合いでみんなが憎しみ合っているならもっと死んでいる筈かもしれません。
私が動かなかった分で二人も三人も死んだ人が少なく済んだのかもしれません。
……そんなに簡単な話じゃ無いのは判っています。
そもそも私は死ぬ人の数を減らすために殺していたんですから、
私が殺した事により救えた人も居るとは思います。私が殺さなくても死んでいた人も居ます。
でも殺した人だけをみれば、私が殺した人の殆どは“わるい人”じゃありませんでした。
多分、私はこの島で一番の人殺しなのだと思います。
誰も傷つけたくなかったはずなのに。

学校では三人も殺しました。
あの殺人鬼の少年を止める方法は、私にはあれしか思いつきませんでした。
選択によっては、江戸川コナンという男の子は重傷を負う位であの場は生き残れたかもしれません。
あるいはコナン君を見捨てる事で灰原哀という少女への攻撃は防げていたかもしれません。
今では片方くらいなら助けられたんじゃないかって思います。
でも李小狼という少年はどうしようもなく死んで、結局助けられる人の数は変わりません。
当然、殺人鬼の少年は生き延びたと思います。

見知らぬ所で誰かが誰かを殺す事を、私には関係の無い事だなんて思いたく有りませんでした。
もし自分にそれを止める機会が有って見逃したなら、その人が殺した人は私が殺したのと同じです。
だから本当にどうしようもない人は殺さなければ、それ以外の誰かを殺す事になる。
殺さない為に殺さなければならない。
おかしいと思うのに、どうしても間違いが見つけられません。

だから森でもそんな風に行動して……きっと、三人を殺しました。
はやてちゃんと、それから多分、見えないところで誰か二人を巻き込んで。
あんな事が起きるとは思わなかった。それが本音には間違い有りません。
あの時にファイナルスパークを撃った瞬間までは、射線上にはリリスしか居なかったのですから。
リリスを殺そうとしなければ一番良かった。皮肉だけど、この時は間違いなくそうでした。

この工場まで辿り着いた時はもう、悪人であれ誰かを殺そうとする気力なんて残っていませんでした。
それでも白い猫を殺したのは、ただ単に私が限界にきていたからです。
あの時の私は魔力の残量こそどうにかなったけれど、本当に疲弊していて、余裕が有りませんでした。
だから殺しました。
話しかけてみる余裕も、名前を聞く事すら無いままに。
大切な友達が好きな動物を、気にする事も無く、気にする余裕も無く。

私はもう砕けています。
私はもう歪んでいます。
でも諦めきれないから、私は歩みを止める事ができません。
だから私は唱えます。
これからも歩き続けるその為に。
初めて自分のつむいだあの呪文を。

―不屈の心は、この胸に―

(本当に、それでいいの?)

     * * *
13だから人は夢を見る(2/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:45:36 ID:eD6SwAsf
「ん……? どうしたの、なのは?」
アリサの声に、高町なのはは目を瞬かせた。まるで居眠りでもしていたみたいに。
「あ、あれ? えっと……」
なのはは当惑した様子で周囲を見回す。
ざあぁぁぁ……と、外から激しい音が聞こえてくる。
そこは工場の仮眠室だ。なのははそこのベッドに横たわり、半身を起こしていた。
両側はアリサとインデックスに挟まれている。
恐らくはなのはが起きたら分かるように。だからアリサがなのはの挙動が目を覚ました。
ドアの近くには、なのは達に背を向けてリンクが腰掛けている。
「もう起きたの? 見張りの交代には少し早いよ」
「見張り……わたし、寝てた……?」
正確な時間は判らないが、二日目に入ってから幾らか時間が経っているらしい。
なのはは記憶を掘り返す。あれから何をしたかは覚えていた。
濡れた体を拭いて、着替えて、それから交代で見張りを立てて眠りに就いた。
まだ余裕が有るし旅慣れているリンクは、三時から放送直前までの睡眠で十分だと言った。
その後はアリサが交代する事になっている。なのははアリサと同じ時間を担当するはずだった。
実を言うとアリサはなのはを起こさず休ませるつもりなのだが。
それから熱が有るインデックスは、放送前までしっかり寝てもらう事になっている。
よく見るとインデックスの額には濡れタオルが載っていて、近くには水を張った洗面器が置いて有る。
時々リンクがタオルを交換しているのだ。
インデックスは安らかな寝息を立てて眠っていた。

(工場に着いたら別れようって、そう思っていたはずなのに)
何をしたかはおぼろげに思い出せる。だけど自分でした実感がまるで無い。
ふわふわとした記憶で、何を考えていたのかは殆ど思い出せない。多分よっぽど疲れていたのだろう。
選択ですらない、ただの必然だ。
心が疲弊していた私は、選択を先延ばしにして倒れるような眠りに就いたのだろう。多分。
(……もう、二時間も経っちゃったんだ)
心の中に満ちるのは焦りだった。ぎゅっと手を固く握り締める。
固く握られた手に、そっとアリサの手が重ねられた。
「今は休んで、なのは」
「……アリサちゃん」
温かいと思った。
優しくて、嬉しいとも思った。
「それに言ったでしょ、なのは。それでもなのはが歩き続けるなら」
何よりもその優しい手は、固く握られた自らの手よりもずっと、ずっと。
「あたし達も一緒に行くって。もうなのは一人でなんて行かせない」
力強いと思えた。

インデックスも言った。みんなで考えれば必ず他の手段は見つかる。
わるい人だから殺さなければいけないなんて過ちよりも、ずっと正しい答えを見つけられる。
なのはは思う。何が正しいのかと言うならば、インデックス達こそ正しい。
それは間違いの無い事だ。
もし本当に一番理想的な未来を目指すなら、インデックス達の道を選ばなければ辿り着けない。
それでもなのはの焦りは消えない。
一番理想的な未来を目指していいのか。少しでも可能性が高い選択肢を選ぶべきではないのか。
(二時間。きっともう、あれから三人位は殺されている)
方法が見つかっても、それが少しでも時間のかかる手段だったら?

高町なのはは、最初の内は時空管理局から救援が来る事も期待していた。
こんな大規模な時空犯罪を管理局から隠し通せるわけが無い。
恐らく時空管理局は既にこの事件を察知して動き出しているだろう。
だけど、その答えはもう判ってしまっていた。
(どれだけ早く対処しても、管理局は間に合わない)
それが高町なのはの出した解答。
時間が足りない。
単純に計算するなら、このペースで十人以下になるまであと丸一日以上の時間を要する筈だ。
逆に言えば、たったそれだけの時間しかない。
14だから人は夢を見る(3/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:46:24 ID:eD6SwAsf
しかも禁止エリアにより会場は狭まっていく。負傷や疲労も蓄積していく。
インデックスの治癒魔術など回復手段も有るけれど、やっぱり消耗は大きくて、貴重で、
それこそ三人殺しのご褒美でしか回復できない事も多いだろう。
今から丸一日が経った時、一人でも生き残りが残っている事さえ確信できない。
そもそも半分以上が死に絶えた世界を『助けが間に合った』なんて言えるのだろうか。
管理局がジェダを抑え込めるとしてもこんな計算になってしまう。
管理局がこの世界に辿り着くまで何日掛かるだろうか。二日? 三日? 一週間?
間に合いはしない。本当はこうして休んでいる時間すら惜しくて。
高町なのはは親友を見つめ返し。

ふと、今さっき見た夢を思い出した。

     * * *

私は幾つもの歪みと偽りを重ねてきました。
それは、とっくの昔に気づいていたことです。

「……自分から殺しに行くのには変わらない。あなたは殺すことを望んでる。
 それは殺し合いに乗ってるって言うよ」
「言わないよ。
 だって、殺し合いに乗った人を殺せればそれだけ殺し合いが終わるのも早くなって、
 殺し合いに乗らなかった皆で話し合いができるから。私の願いは、それだから」

何時からか間違っていたのは解っています。何処からか偽っていたのは気づいています。
みんな生き残って欲しいのに、一人でも多く生き残す為に誰かを殺す。

「あなたは私達に、人の命で生きろっていうのね」
「……うん、そうだよ」
「…………この殺し合いの縮図を作り出せというのね」
「そう。…………わたしのしようとしてる事は、きっとそういう事」

それがどれだけの矛盾を孕んでいるか。
そもそもそれが本当に出来る事なのか。

「じゃあさっき言ってた「みんな」が幸せになれるって言うのは間違いだね。
 それともなのはのいう「みんな」っていうのは自分のお眼鏡にかなった、優等生ばかりなのかな?
 それ以外はみんな「悪人」。みんな殺していいと。…そんなわけないんだよッ!!」

頭の中に木霊するのは過去の問答。過ちを非難する言葉。
私の生き方はきっと間違いに満ちている。私がそれを見つけられないだけで。

「状況に強いられたとはいえ、私は自ら選んだ」

エヴァちゃんの声が脳裏に響く。……私も、全ては選択のはずだった。そう思っていた。

「だが、状況に強いられたとはいえ、貴様は結局流された」

だけど流されていたというのなら、私は何に流されてしまったのだろう。
確かに私は、多くを諦めてきたけれど。

私は夢を見て希望を信じていても何一つ守りきれない事に気づいてしまった。
だから現実の中で拾えるものだけを選び拾い上げる事にした。
学校で、殺人鬼を逃してまで救えるか解らない江戸川コナンの命を諦めた。
三つの死骸の上にたった一人でも救うことを選び、突きつけた。
森でもそうだ。リリスを諦めて、殺そうとした。
工場でもそうだ。得体の知れない白猫と分かり合う事を諦めて、殺そうとした。
夢の中でさえ、そうだった。

全てを諦めたくは無いから、少しずつ減らしていった。
15創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:46:25 ID:Fi/GHKtG
さっそくの投下か!支援
16創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:46:36 ID:Fi/GHKtG
支援
17創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:47:05 ID:dxNGPyKv
  
18だから人は夢を見る(4/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:47:15 ID:eD6SwAsf
「ヴィータちゃんは殺さないし、死なせない。
 たとえヴィータちゃんが死のうとしたって、絶対に死なせない」

(みんなが傷つかずに生き残れる事を諦めた)

「どうしてあなたは、そんな事をするの? どうしてあなたは、そんな事ができるの?」
「――何を言っているのさ。これは世界の仕組みなんだ」

(止められない事が理解できた“わるい人”を助けるのも諦めた)

「わたしは、どちらを生かそうか?」
――わたしは、どちらを殺そうか?

(良い人が誰一人欠けずに生きて帰れる事を諦めた)

「私ね、いろんな人を傷つけたよ。しかも3人も人を殺しちゃった。
 ……もう絶対、フェイトちゃんがいる天国には行けないと思う」

(死んだ後にみんなと同じ所に逝く事も諦めた)

(逃げられるくらいなら――今! ここでっ!)
「全力、全開ッ!」

(殺すのではなく止める為に戦う事を諦めた)

「たとえ手足を失っても。たとえ心が傷付き砕けても。
 死んでしまう事に比べればそんなのはきっと、大した事じゃないよ」

(みんなの心を護る事さえも諦めた)

『なんだか元気が無いみたいですけど……どうしたんですか?』
「…………大した事じゃないよ」

(もちろん私の心を護る事も諦めた)

「あなたが何をしようとしたかは分からないけど、寝ているわたしに行うことなんてまず良いことじゃないよね。
 ――ごめんね」  

(消耗していたから、お話を聞く事さえも諦めた)

 きっと私はこう言うに違いありません。
 ――――とっても、いい夢でした。

(こんなに罪深い“わるい私”が生き残る事も諦めた)

「……自分から殺しに行くのには変わらない。あなたは殺すことを望んでる。
 それは殺し合いに乗ってるって言うよ」
「言わないよ。だって、殺し合いに乗った人を殺せればそれだけ殺し合いが終わるのも早くなって、
 殺し合いに乗らなかった皆で話し合いができるから。私の願いは、それだから」

(『正しく』生きる事も)

「生きてればきっといいことあると思う。
 こんなこともあったな、あんな子もいたなって、いつか笑える日が来るよ。
 だからね、アリサちゃん。今すぐじゃなくてもいい。
 私のことなんてどうでもいいと思わなきゃ困るの。私はわるいひとだから」

(誰かに愛される事も)
19創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:47:17 ID:Fi/GHKtG
  
20創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:48:14 ID:iHEAfAPn
 
21だから人は夢を見る(5/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:48:21 ID:eD6SwAsf
全ての諦観は選択の裏返し。
何かを選ぶという事は何かを切り捨てるという事。
私は夢も理想も、温かい絆も安らかなる救いも否定して、
色褪せてしまっても良いから、みんなの未来が残る事を望んでいた。
一人でも多く生き残れる事を願っていた。

(本当に?)

「……? 本当だよ。それ以外に何が有るの」
(あなたが望んでいた物は、本当に一人でも多くの人が生き残る事?)
問い掛けの理由が判らなかった。
「それ以外に何の理由が有るの?」
私はずっとその為に戦ってきた筈だった。それを目指し歩いてきたはずだった。
だから問い返す。問いが返る。
(じゃあどうして、再び殺し合いに乗ったヴィータちゃんを殺そうと思わなかったの?)
「………………」
私は少し、言葉に詰まった。
「動けないようにするだけで大丈夫だと思ったから。ヴィータちゃんが憎いのは私だけのはずだもの。
 はやてちゃんを殺した私は罰を受けて当然で、私が殺されるのは仕方が無い事だから」
そう答えてから、この答えに間違いないと思った。
私はその為に戦っているのだと思い込んだ。だけど。
(じゃあどうして、すぐにヴィータちゃんを追いかけようとしたの?)
「え……?」
問い掛けは本当に思いがけないところに押し寄せる。
(魔力を回復する薬も盗られて、残り魔力も残り少ないままで、本当にヴィータちゃんに勝てると思ったの?)
「それは……あの時は、そんな事まで考えが回らなかったから」
(どうして?)
私は今度こそ言葉を失った。それは答えが判らなかったからじゃなくて、その逆だった。
その答えはあまりにも単純で、判りやすい。

ヴィータちゃんを失いたくなかった。

たったそれだけの理由。
(それは、あなたがあの優しい夢に心奪われていたから)
「………………」
胡蝶夢丸を呑んで眠る夢で見た、とても冷たくて、少し悲しくて、それ以上に輝かしい結末。
あの夢の中で、私の友達は全てが温かく輝いていた。
(フェイトちゃんは殺されてしまった。はやてちゃんを殺してしまった。
 アリサちゃんを傷つけ、否定して、その心を諦めてしまった)
もうこれ以上、誰も死なないで済む。失わなくて済む。
もしそんな事が叶うならば、たとえ私が殺されてしまっても。
(あなたはもう、誰も失いたくなかった)
「……そうだよ」
それでもあの夢は私の全てを打ち壊す程に、羨ましかった。
「もう、これ以上友達が死ぬのはイヤなの。アリサちゃんも、ヴィータちゃんも。
 この島で出会ったニケ君も、インデックスちゃんも……エヴァちゃんも!
 死んでほしくない! 生き残ってほしいの!
 たとえ敵に回ったって殺したくない!
 だって……だって…………!」
この島で出会ったみんながどれほど素晴らしい仲間だったのかを思い出させてくれたから。
少しの間だけ全てを忘れて夢の中で共に戦うただそれだけの事が、
どれほど嬉しくて、優しくて、心を癒してくれるのか判ったから。

「わたしは、みんなの事が好きだから」

あの夢はその事を再認識させてくれた。
……本当に、良い夢だったと思う。
22創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:48:27 ID:dxNGPyKv
 
23創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:48:34 ID:Fi/GHKtG
  
24だから人は夢を見る(6/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:49:08 ID:eD6SwAsf
(だから流された)
「……そうだね。その通りだと思う」
私はあの夢に心を奪われた。あの夢でみんなの事を好きだと再認識できた。
あれからの私は、体を動かしながら思考を停止しているようなものだった。
あの残酷なまでに優しい死へと辿り着けるなら、何も求めはしなかった。
もう、あんな結末に辿り着けるはずは無いって判っていたのに。
エヴァちゃんの言うとおり流されていたのだろう。
「だって、私の心はもうとっくに折れてしまっていたから」
(フェイトちゃんの死との出遭いで)
遡ればその時が最初だった。
リリスに向けて魔砲を撃った時、既に私の心は綻びを見せていた。

(あの時のあなたはこう言った。
 『もうこれ以上、フェイトちゃんみたいな人を出さないためにも』と)
それは理想だった。
「だけどあの時の私はこう思った。
 『自分がもうこれ以上、罪なき人を殺すことがないようにするためにも』と」
それは願望だった。

はやてちゃんまでを失って、アリサちゃんの心を傷つけて、私の心は擦り切れた。

(あなたはただ、自分自身にとって大切な人達を護りたかったんだ)
「でも、見ず知らずでも誰かが傷つけられるのはイヤだったっていうのも本当だよ。
 この島でさえ、私が出会った人達の殆どは良い人だったんだもの」
(そう、やる事は殆ど同じになってしまう)
ただただ『間違っているのに正しい』道へと邁進すること。
誰もを愛して自分の為に、自分の身を投げ出してまでみんな救おうとすること。
それは正しい人全てを愛する限り、同じ結果に行き着いてしまう。
(だけど根幹は全然違うものだから、理解しなければいけなかった。
 あなたはヴィータちゃんも殺したくないと思い、正しく殺そうと考えられなかった。
 エヴァちゃんの事を殺したくないと思ったのに、正しく殺そうとしなければならなかった。
 あなたがどっちつかずだったから、そんな矛盾にはまってしまう)
「………………」
私は答えられない。それは正しく矛盾だった。
私が最も効率的に多くを救おうとするなら、危険なヴィータちゃんを殺す為に動かなければならない。
腕を壊したのにまた殺し合いを再開できた以上、それが一番適切な処置になってしまった。
私が自分の大切な人を護ろうとするなら、危険でもエヴァちゃんを生かそうとしなければならない。
例えそれが信じられないほど乱暴な手段になったとしても、殺そうとするのは見当違いだ。
(何かをするには理由が必要だよね。
 自らの望みの為に突き進む事は、優しい人にとって辛いことだもの。
 だから信念が必要になる。
 それを人の倫理に求めるなら正義。それを自分自身の心に求めるなら悪となる。
 でもあなたはどちらも選べなかった)
私は“わるい人”だ。だから正義を名乗れるはずはない。
それなのにやっている事が“間違っているのに正しい”のを信じていた。
矛盾を取り込んだようでいて、その実は矛盾を理解していなかった。
私は望みの中心に私の心がある事を見落としたのだから。そのせいで悪にもなれなかった。
私は悪魔でも良いと思った。だけど明確に悪魔を目指したのは、あの幸せな夢に溺れたその後だ。
それは望んだと言わない。流されただけだ。
結局、私は一度たりとも自らの意思で悪になろうとした事が無かった。
ただただ行動だけを続けてきた。

(あなたはこれまで多くの選択をしてきた。
 だけどあなたは、あなた自身がどうあるのかをまだ選択していない)
25創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:49:12 ID:Fi/GHKtG
  
26創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:49:25 ID:Fv4DDQBD
 
27創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:49:45 ID:Fi/GHKtG
28だから人は夢を見る(7/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:49:49 ID:eD6SwAsf
私は思う。
「それは本当に選ばなければいけないものなの?」
(あなたの心が本当に不屈なら、信念なんてものは要らないよ)
私は惑う。
(信念は自分自身を縛るものだもの。
 自らの意思を剣のように鍛え上げて、立ちはだかる苦難を切り裂くためのものだもの。
 もし本当に惑わぬ意思と不屈の闘志が有るのなら。
 常にもっと正しい道が無いか模索し続けて、その時点で思いつく最も良い選択肢を選び続けて、
 やった事に付いて来る結果を受け止められて、何にも縋る事無く進める人なら。
 その人はきっと、信念なんて無くても道を誤らず、流されずに立ち続けていられる)
それはとてもとても難しいことだ。元の私でも出来るかどうかわからないくらいに。
だから答えは明白だった。
「そっか。今のわたしには、無理なんだね」
私はもう、自らの意思だけで立ち続ける事さえできない。

(あなたの選択肢は三つあるよ。正義をかたり、正しく殺人を続けるのか)
「それは偽善じゃないの?」
(人が為せる善行だよ)
何が正しいかなんて主観だからそうなってしまう。
本当の正しさなんてものは何処にも無いのかもしれない。

(あるいは悪を名乗り、自らの大切な物の為にあらゆる手段を行使するか)
「それは悪魔じゃないの?」
(悪人だよ)
悪魔というのはきっと人間性の喪失から来るのだろう。
自らの望みの為に戦う悪はどこまでも人間的だった。

(あるいは……)
「……もう、いいよ」
私は静かに首を振った。
結局、私はどの選択肢も選べなかった。
だって私は、もう。

     * * *

高町なのははアリサの手を取ることが出来なかった。
アリサの手を突っぱねることも出来なかった。
「一人でなんて、行けないよ」
なのはは曖昧で小さくて、微かな、それでも笑みを顔によぎらせた。
「一人で行こうとしても、アリサちゃんは私を追いかけて来るんでしょ?」
アリサは一瞬呆気に取られたような表情を浮かべた。
それから、吹き出した。
「当たり前じゃない。一人で行こうとしても地の底まで追いかけてあげるわ」
それを聞いてなのははホッとしたような、あるいは何かを諦めたような笑みを浮かべた。
なのははアリサの手を掴めなかった。突っぱねることも出来なかった。
(だって、アリサちゃんが私の手を掴んでるんだもの)
それは選択なんかじゃない。なのはは何も選べなかった。
ただ、流されただけ。
高町なのはは自分が折れていた事に気が付いてしまったから。
(どうしてなのかな)
振り返る。そこにはインデックスが静かな寝息を立てている。
話し声で起こしてしまうと思ったけれど、どうやらよく眠っているみたいだ。
(アリサちゃんにインデックスちゃん。それから……リンク君だっけ)
ドアの方を見ると、こちらを振り返ったリンクがそっと笑顔を返してくれた。
それから何かに気づいて赤くなり、慌ててドアの方に向き直る。
下を見てみると起き上がりでシーツがずれて、包帯だけで殆ど裸の上半身が薄明かりに照らされていた。
当然ながら横のアリサも、カレイドステッキはすぐ掴めるよう枕元に置いてあるが、
手放しているのだから変身は解けていて、変身の下はショーツ一枚で……そういうわけだ。
29創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:50:15 ID:Fi/GHKtG
30創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:50:34 ID:Fi/GHKtG
31だから人は夢を見る(8/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:50:48 ID:eD6SwAsf
枕元のカレイドステッキがくすくすと小さな笑い声をもらす。
慌ててシーツを引き上げる。アリサは気づいていなかったのか怪訝な顔をするだけだった。
気づけば裸を見たリンクを殴り飛ばしていただろう。
(求めたはずの冷たいものが何処かに行って、諦めたはずの暖かいものが帰ってくるなんて)

工場に有ったミニ八卦炉を初めとする武器は盗まれていた。
凍り付いていた筈の太った少年が居なくなっていたから、きっと彼が盗んだのだろう。
はやての腕まで盗られていた事は許せないけれど、彼が何処に逃げたのかは判らない。
捜そうにも今は諦めるほか無かった。
武器として使えそうなものも、予備はリンクが神社から取ってきたという不気味な物ばかり。
なのはは小さな短刀を一つだけ貰っておいた。運動音痴ななのはにはそれが精一杯だ。
アリサ達がアリサ達自身を護る為にもそれ以外を貰うわけにはいかない。
リンクから使えるんじゃないかと「希望」と記されたカードも渡されたけど、
「翔」のカードとは違うのか、使い方は判らなかった。
期待していた服も殆ど見つからなかった。
工場には作業着の一つも置いていなかったし、
なのは自身の服はエヴァの武装解除によって砕かれていた。
インデックスが水の羽衣の上に着ている制服を貰うわけにもいかない。
インデックスは熱を出してしまった。起きた後、羽衣一枚で行動すれば体を壊してしまうだろう。
ただ、洗面所にひっくり返されていたゴミ箱の中から二着の服が見つかった。
森で遭遇したイヴが着ていたのと同じナース服、それから血まみれの黒い服。
ナース服の方にも血は染みていたし、何よりイヴの服を着るのはイヤだった。
理性もイヴと間違えられる事に警鐘を鳴らした。
だから黒い服の方を一洗いして、干して有る。生憎とまだ乾いていない。
イヴが着ていたものと同じ服が有る意味は推測する事しか出来ない。
何処かに同じ服が何着も有るのかあるいは、工場に現れた『ひめ』がイヴだったのか。
もしそうだとすれば、ブルーは何処に行ったのか。どうしてなのはに取り入ろうとしたのか。
主人を求めるあのスタンスからして、ブルーがイヴに命じてフェイトを殺害させたのか。
それともフェイトが死んだ時にはまた別の目的をもっていたのか。
考えるには何もかも材料が不足していた。
なのはの元には武器も、衣服も、情報も無かった。

そして諦めたはずのものが帰ってきた。
アリサの優しい温もりも、インデックスの正当な正しさも、リンクという新しい仲間も、
全てはとっくに諦めたはずのものだった。
高町なのはの選択は尽くが裏切られる。
選んだ物は失われ、諦めたはずの物が失われない。

自分はこんな所に居ていいのだろうか。
ここは本当に安全なのだろうか。みんなは本当に大丈夫なのだろうか。
例えば、インデックスが置手紙をしたけれどまだ工場に来ていないニケは?
雨までに辿り着けなくて何処かで雨宿りをしているだけだろうか。
ニケが中央に向っている事を教えた、はやてが死んだ事を聞いたトマは?
今は何処に向って何をしているのだろうか。
ヴィータは今どこで何をしている? 誰かを襲ってはいないだろうか。
エヴァは。これまで会ったみんなは。これまで遭った殺人者達は。

高町なのはは何も選べなかった。
優しさに抱かれて凍らせていた心を溶かされてしまった。
もう、高町なのはにアリサ達を裏切る事は出来ない。
高町なのはには一緒に進む以外の選択肢が残っていない。

(――それじゃ、私が代わってあげようか?)

     * * *
32創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:50:51 ID:Fi/GHKtG
33創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:51:11 ID:Fi/GHKtG
34だから人は夢を見る(9/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:51:26 ID:eD6SwAsf
「……あなたは、誰?」
これは今見ている白昼夢なのか。それともさっき見ていた夢の記憶なのか。
それさえも判らないままに、私は奇妙な質問を投げかける。
(見たとおりだよ)
そのままの答えが帰る。目の前に横たわる彼女から。
唇は動いていない。体を動かす様子も無い。その血に濡れた体が動き出す事はない。
ただそこだけ綺麗なままの顔が、笑みを浮かべる事なく、静かに私を見上げている。
目の前に居るその姿は、高町なのは。
(私は高町なのはだよ。高町なのはが夢見た、高町なのはが求めた夢の中の高町なのは)
判らなかった。
「それじゃ、わたしは?」
(あなたこそ高町なのはだよ)
彼女は淡々と答える。
(私達は互いの存在を夢見て、成りえない者として別れ生まれた。ほんの数時間前に)
「………………」
(私はあなたの見た夢。私はあなたの見た理想)
「…………じゃあ、あなたは」
私は理解した。
(私はあなただけど、あなたじゃないの。今はあなたが高町なのはだもの。
 だから私は別の名を名乗らないとね。誰かに名づけられた名前。
 “白”。あるいは“悪魔”。名乗るなら……)
「白い……悪魔……?」
(そう。それが私)
彼女の名が定められた。

私は続けて問いかける。
「代わるって、どういう事?」
彼女は答える。
(あなたは感情。あなたは人間。私は理性。私は悪魔。それが私達の役割だよ。
 だから私はあなたよりも強く、あなたよりも正しい。間違った道かもしれないけどね)
彼女の手が差し伸べられる。
良い夢の中で死んだ、高町なのはの手。もう動かないはずの指。
(私は高町なのはとなり、この間違いしかない殺し合いにおける私が思う限りの最適解を、
 迷い無く、悩み無く、心を凍らせる事すらなく、歪で正しく信念の無い強さを持って選択し続ける事ができる。
 私が、あなたに代わって)
その言葉が私にとって救いに感じられた。
本当は不安で、怖かったからだ。……温かい世界が。
間違った正しさではなく本当に正しい方向へと引っ張ってくれるインデックスちゃん。
心を傷つけて、諦めて、跳ね除けたのに、それでも私を抱きしめてくれたアリサちゃん。
学校の惨劇を見て尚、インデックスちゃんと共に私と同じ場所に居るリンク君。
あとアリサちゃんを護ってくれるヘンテコで奇妙なデバイス、カレイドステッキ。
泣き出してしまいそうなくらいに温かい世界。
私はそんなにも暖かい世界に迎えられて、不安だった。
自分がそこに居て良いのか判らなくて、何よりも怖かった。

この世界も壊れてしまうのではないか。

そう思うと温もりが辛くて、優しさが怖くて、この世界から逃げ出したくなった。
私はそんなにまで弱くなっていた。
全てが擦り切れて、砕けて、折れて、歪んで、溶けてしまっていたから。
多くが零れ落ちるから少しでも零すまいとしたけれど、
一番護りたいものさえも零れ落ちて、拾おうとすれば残っていたものまで零れて消えて、
残っていたものさえも傷つけて、諦めて、本当に泥沼だったから。
私はとうとう屈してしまっていた。
(でも、気をつけて)
だから伸ばされた手を取ろうとしていた、指が。
(私は泣けないから)
止まった。
35創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:51:29 ID:dxNGPyKv
36創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:51:37 ID:Fi/GHKtG
37だから人は夢を見る(10/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:52:01 ID:eD6SwAsf
(私は悪魔。私は理性。私は強さ。それが私の役目なの。
 だから泣けない。悲しめない。
 アリサちゃん達に本音で話す事もできない。
 私はアリサちゃん達の優しさを受け容れた振りをする事しか出来ない。
 私はアリサちゃん達を護れても、アリサちゃん達に救われる事ができない。
 それはアリサちゃん達に対して、とってもひどい嘘で、とってもひどい裏切りだよ。
 私もアリサちゃん達の事が大好きなのに、私じゃそうする事しかできないの。
 私は自分を曝け出さない、大嘘吐きの――“白い悪魔”)
私はわかった。その言葉の意味が。
「アリサちゃんの本当の友達で居る為には、わたしじゃないといけないの?」
(そうだよ。あなたは弱さ。あなたは感情。あなたは人間。
 私はあなたのふりをする事も出来るけど、あなたになる事は絶対にできない。
 アリサちゃん達の友情を大切に思うなら、あなたがアリサちゃん達と居なきゃいけない)

私達の目的は同じだ。
大切な人達を護りたい。ただそれだけ。
アリサちゃん達はもちろん、ヴィータちゃんやエヴァちゃんだって生きて欲しい。
見た目の上では、やる事だって変わらない。
アリサちゃん達を受け容れる事。それは私でも白い悪魔でも同じようにやってのける。
私は否応無しに心の底から。白い悪魔は願いのために上っ面だけでも。
私達は殆ど変わらない。
同じ目的の為に、目の前だけを見れば同じ事をしようとする。
その中身だけが決定的なまでに違うのだ。
今は同じでも、やがてその選択は致命的なまでに別れていくだろう。
理性と感情。
弱さと強さ。
人間と悪魔。
あの学校で一度は決した筈の選択肢が、再び私の前に姿を見せていた。

「……少し、時間をもらってもいいかな」
(良いよ。どちらにせよもう少しの間だけ、私とあなたの道は同じなんだから)
ミニ八卦炉は私達の元から奪われて、魔力もまだ消耗している。
ヴィータちゃんやエヴァちゃんに出会っても止める事さえ出来ないだろう。
だから理性もこの選択を選ぶ。
『アリサちゃん達と少なくとも朝までの休憩を』
白い悪魔だって、アリサちゃんを傷つけない為にも別れる時は自然にやるだろう。
だからもうしばらくの間だけ、私と白い悪魔の選ぶ道は同じなのだ。
もう少しの間だけ。
(ゆっくりと考えて。私達にとって一番良い選択を)
願いの篭る言葉に送られて、私は目を覚ました。

     * * *

高町なのはは親友と仲間達に囲まれ、静かな休息を取る。
選択の為に。
目指すべき未来を選ぶ為に。
まるで奇跡のように優しい夜を過ごす。
苛烈な朝の訪れまでは、もう少しの時間が与えられていた。
………………。
38創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:52:07 ID:Fi/GHKtG
  
39創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:52:21 ID:Fi/GHKtG
  
40創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:52:30 ID:dxNGPyKv
  
41だから人は夢を見る(11/11) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:52:59 ID:eD6SwAsf
解離性同一性障害。
主に激しい虐待などによる『幼少時の継続的心的外傷』から発症する。
心的外傷を「自分ではない誰か」に起こった事だと思考する事により、
「自分ではない誰か」を別人格として生み出してしまう事が有る。
心的外傷を受けるたびに「自分ではない誰か」が肉体を制御し、
心的外傷が過ぎ去ると「元の自分」へ戻る事により自我を守る自己防衛機構である。
幼少時に発症する原因は確固たる自我の確立が不完全な為であり、
診断し易くなりデータの多い成人データに寄るならば、男性より女性に多い事が確認されている。
通常は自我を護る為に苦痛の記憶を喪失しているケースが多く、人格間で記憶が共有される事は無い。
そもそもこの呼称は『複数の人格状態により日常生活に支障が生じている場合』のみを指し、
人格状態が複数でも生活への支障が生じていない場合、完治していると見なす。

マルチタスク思考。
空戦魔導師の必須スキル。複数の思考を同時に行う特殊思考法。
防御・攻撃・トラップ、多数の思念誘導弾制御、念話と会話などに使われる。
高町なのははこれを得意としており、専念すれば最大十二発の魔力弾を同時に制御できる。
日常生活を送りながら空戦シミュレーションを行うなど、高町なのははこれを日常的に使用している。
つまり『複数の情報を同時に処理し、複数の思考を同時に行う』事ができる。

胡蝶夢丸及び胡蝶夢丸ナイトメアタイプ。
それは幸せな夢を見る為の薬と、スリリングな悪夢を見る為の薬。
服用した者はそれぞれ幸せな夢、過激な悪夢を見る。
同時に服用した場合、単純に考えれば同時に二つの夢を見る事になる。
また、この薬の製作者である八意永琳はこう注意している。
『夢の世界はもう一人の自分。
 夢だけが楽しすぎると夢と現実が入れ替わる可能性があるので、服用のしすぎは注意』

………………。

     * * *

高町なのはが二人に分かたれたのは、高町なのはがある夢を見た時だ。
それは冷たくて、残酷で、現実的で、それなのにとても優しい良い夢だった。
だけど高町なのはには判ってしまった。
自分ではもう、その夢に辿り着く事さえ出来ないのだと。
ヴィータの腕を焼き、ニケに恐れられ、はやてを殺し、アリサの心を傷つけてしまった自分では、
もし万が一彼女達が自分を赦したとしても、それを受け容れて笑う事など出来ないだろうと。
出来るのはきっと作り物の笑いだけ。
あそこで心から笑えていたのは「自分ではない誰か」に違いない。
現実にはあんな未来、絶対に辿り着けはしないのだ。
それじゃあんまりに悲しすぎるから、高町なのはは夢を見た。
現実が夢になるように。
夢が現実になるように。
《高町なのは》が生まれるように。

白い悪魔はまどろみの中で願い続ける。
願わくば自らが選ばれる事の無いように。
悪魔には人を不幸にする事しか出来ないのだから。
それがここに残ったモノだから。

   タカマチナノハ
だから《白い悪魔》は夢を見る。

42だから人は夢を見る(状態表) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:53:45 ID:eD6SwAsf
【A-3/工場仮眠室/2日目/深夜?】
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:左太腿と右掌に裂傷(治療済み)、左肩に打撲、足に軽度の凍傷
[装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル、コキリの剣@ゼルダの伝説
[道具]:基本支給品一式×5(食料一人分−1、飲料水を少し消費)
   歩く教会の十字架@とある魔術の禁書目録、時限爆弾@ぱにぽに、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、
   じゃんけん札@サザエさん、ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、
   祭具殿にあった武器0〜2つ程、祭具殿の鍵、裂かれたアリサのスリップ(包帯を作った余り)
[服装]:中世ファンタジーな布の服など。傷口に包帯。
[思考]:み、見てない、裸なんて見てない……っ
第一行動方針:見張りを続ける。もうしばらくしたらアリサと交代。
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する(無理なら…?)。
第三行動方針:ニケ達と合流し、エヴァの伝言を伝える。
第四行動方針:もし桜を見つけたら保護する。
基本行動方針:ゲームを壊す。その後、できることなら梨花の世界へと赴き、梨花の知り合い達に謝罪したい。
参戦時期:エンディング後
[備考]
リンクが所持している祭具殿にあった他の武器が何なのかは不明。少なくとも剣はないと思われる。
祭具殿の内部を詳しく調べていません。

【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:高熱、リンク達に介護されながら睡眠、全身に軽度の凍傷、軽い貧血気味、
   背中に大きな裂傷跡と火傷、足裏に擦過傷(共に応急手当て済み)
[装備]:水の羽衣(背部が横に大きく裂けている)@ドラゴンクエストX
[道具]:支給品一式(食料−1日分、時計破損)、 ビュティの首輪、鉄製の斧@ひぐらしのなく頃に(?)
[服装]:私立聖祥大付属小学校の制服の下に水の羽衣。背中と足にシルクの包帯。
[思考]:zzz……?
第一行動方針:休息を取る?
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する。
第二行動方針:ニケ達と合流する。
第三行動方針:紫穂の行方の手掛かりを探す。エヴァの説得も諦めていない。
第四行動方針:落ち着いたら、明るい所でじっくりビュティの首輪を調べたい。
基本行動方針:誰にも死んで欲しくない。状況を打破するため情報を集め、この空間から脱出する。
[備考]
拾った双葉の型紐が切れたランドセルに荷物まとめて入れています。
インデックス自身のランドセルは壊れているので内容物の質量と大きさを無視できません。

【アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:全身に軽い火傷(右腕・顔は無事)、左腕から出血(打撲、軽度)、背中に切り傷
    上記の怪我は全て応急処置済み。休息(睡眠? 起きている?)
[装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ、カレイドステッキ@Fate/stay night
[道具]:なし
[服装]:ショーツ一枚。傷口に包帯。
[思考]:なのはを離さない。
第一行動方針:朝まで休息する。なのはに同行する。
第二行動方針:はやての遺志を継いで、なんとかする。
第三行動方針:はやての腕や色々な物を盗っていたパタリロの捜索。
基本行動方針:(なのはと一緒に)ゲームからの脱出。
43創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:54:10 ID:Fi/GHKtG
  
44だから人は夢を見る(状態表) ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:54:24 ID:eD6SwAsf
【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:残存魔力中、両手首に小さな傷、頬骨と肋骨一本にヒビ(処置済み)、
     かなりの不安、多重人格化(現在《高町なのは》)、休息(睡眠?)
[装備]:小さな短刀@ひぐらしのなく頃に(?)、クロウカード『希望』@CCさくら
[道具]:なし
[服装]:全裸(イヴの服を乾かしている)
[思考]:選択……
第一行動方針:しばらくはアリサ達と共に休息。アリサ達と同行?
第二行動方針:ヴィータとエヴァも殺さず止める。
第三行動方針:はやての腕や色々な物を盗っていたパタリロの捜索。
基本行動方針:大切な人達を護る。ジェダを倒して生き残りで脱出。
[備考]
《高町なのは》と《白い悪魔》の多重人格を発症しました。
別人格といっても大きな違いは無く、あくまで両方とも高町なのはですが、
《高町なのは》は弱く、感情的で、人間。《白い悪魔》は強く、理性的で、悪魔を担っています。
解離性同一性障害に似た症状ですが、概ね記憶を共有する、互いを認識しているなど相違点も多く、
通常の症例は参考にしかならないようです。

※彼女達がどの程度情報交換をしたのかは不明です。
 まだの場合、起きてから情報を交換する事になります。
 イヴのナース服の方は、なのはは着ない様です。
45名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 00:55:30 ID:gH74TlnW
 
46 ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 00:55:42 ID:eD6SwAsf
投下終了です。支援ありがとうございました。

多重人格がどの程度解離した物かなどは不明です。
矛盾さえ出なければ解離度合いを弱いと後から設定するのも別に有りでしょう。
解離性同一性障害そのものではありませんし、そこら辺は自由に。

それでは創作発表板でも宜しくお願いします。
47創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:56:33 ID:Fi/GHKtG
 
48創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 00:58:37 ID:Fi/GHKtG
投下乙!>>1乙!そして創作発表板にようこそ!

なのはさん怖いよ怖いよgkbr
49創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:04:01 ID:SWJcsmz2
創作発表板へようこそ!
にぎわうならこっちに来ても何の問題もないよ!

そして投下乙!

なにかいきなり心理描写の話で思いっきり鬱っぽいなぁ…
ロリショタロワってニコロワみたいなオリキャラ設定の話だっけ?
ちょっと気になるんでみてくる。
50創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:05:57 ID:Fi/GHKtG
オリキャラってワケでもないけど結構進んでるからロワの中で独自のキャラができていってる
全体的に欝々なロワなんで注意
51創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:07:42 ID:Fv4DDQBD
投下乙!
作者の方々がこの後どんな展開を用意しているのか楽しみだ
そういえばなのははニケに恐れられてるって誤解してたんだな
52創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:08:27 ID:H2aMUI5c
投下乙!
なのはが逃げ道にするのは結局自分の中なんだよね…
近くには仲間も友達もいるのに1人で頑張っちゃうのはなのはの悪い所だ!
なのはらしさも感じられて良かった
53創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:11:15 ID:rQyGVL7a
投下乙!
まぁオリキャラになったらなったでいいよ
「こいつは俺がやるぜ、AIBO!」
「分かったよ、もう一人の私!」
とか
「クソッ…まただ……また暴れだしやがった!」
みたいな展開ができるじゃあないかw
54創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:11:17 ID:H2aMUI5c
しかし移転初っ端の話がこれとはLS書き手はドSすぎるだろw
だがそれが良い
55創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:12:29 ID:OlRav4OL
新スレ誕生!
ってわけでもないのね。
いらっしゃいお客人。可能ならこの場所が永住の地にならんことを。

そして投下乙!
白い悪魔か……
ニコロワでは早期退場だったけどこのロワではアタマヒヤソウカ無双してくれるんだろうな。
それともデーモン化とか?それは勘弁…
56名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/18(火) 01:13:58 ID:gH74TlnW
スレ立て乙&投下GJ。支援微妙に間に合わなくて申し訳ない。
今までの細かな描写のある一つの結実がこれか、納得できてしまうのが怖いような悲しいような。
フラグ収集量とその使い方がうまくて引き込まれました。
ここから再スタートを切ってどうなるか楽しみです。
57創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:17:54 ID:Fi/GHKtG
しかし本当に心理描写が濃くて深い話だね
じっくり読みたいけど支援しないとって思って一人焦ってたw
58創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:20:29 ID:H2aMUI5c
はじめてのロリショタロワのご案内

○どんなロワ?
二大鬱ロワのひとつと言われるロワです。

○どう読んだ方がいい?
時系列順に読むのが一番良いですが、時間がない方は
高町なのは→このロワの特色が味わえます。
古手梨花→このロワの性癖が味わえます。
タバサ→危険派対主催を味わえます
辺りが個人的にオススメ
59創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:32:10 ID:4fv7WKKh
まだ参加キャラしか見てないけど、なかなか興味深いメンツだな
ドラえもんにハンタに東方にひぐらしにマザーに絶チルに…
それに、一休さんとかちびまる子ちゃんとかが混じってるのも面白いな
少しずつでも読んでいってみようかな
60創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:34:56 ID:Fi/GHKtG
>>59
ぜひ読んでみてくれ
でも長いからwikiのキャラ追跡表で好きなキャラのストーリーだけ追ってみるのおすすめ
61創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:40:28 ID:SWJcsmz2
死亡リスト見る限りロリばっか生き残ってるのが気になるな。
34人いてショタは8人だけだぜ?
62創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:45:41 ID:V+DWp0jK
メロとかヴィクトリアとかってロリショタなのか?
いやまあ、別にいいけどさ
63創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 01:48:22 ID:Fi/GHKtG
それは…まぁ言わないお約束ということで
ぶっちゃけ面白くてストーリーが整合性取れてればいいじゃん
64創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 02:04:58 ID:OlRav4OL
なのはだけ見てきたけどこれ、救いようがなくないか?
てっきり白い悪魔始動の話だと思ってたら再起動の話だったとは。
さすがリリカルカワイソス。

やめて!なのはのライフはもう0よ!
65創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 09:20:12 ID:rQyGVL7a
>>61
キャラは投票で決まったからな
まぁどのくらいがロリショタなのかそれぞれにボーダーがあるのさw
66創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 11:28:03 ID:SWJcsmz2
これから見る奴の意見だし、ずっとこのロワを見てきた奴にバカにされるかもしれないけど、
この話の後半部分はやめたほうがいいんじゃないかと思う。
これまでのなのはの行動を振り返った重要な話なだけあって、
ここから再スタートさせるって意味ではいいと思うけど、
そのためにオリキャラ化をあえて入れる必要はないんじゃないかと思う。

それに二重人格ってパロロワ辞典でいうところの「困った時のおざなりなマーダー化方法」
であるんだし、このロワを鬱ロワだと紹介する人がいるし、
「ああ、まわりの空気はこんな感じだし二重人格もそんな感じでいいな」
とおなざりに終わる可能性はあるよ。
67創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 11:31:37 ID:SWJcsmz2
最初の文章、「これから継続して見ようと思ってる奴」ね。
話自体は既に目を通した後だから。
68創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 11:38:48 ID:H2aMUI5c
一応避難所の議論スレと前スレを覗いてみてくれ。
数日議論はされてたから、何かしら納得できる意見があるかもしれないから
69創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 12:36:31 ID:aOTSpkZ1
なんか、なんか、>>59みたいな人いると、むず痒く嬉しいね!
一休さん面白いよ!
70創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 12:38:54 ID:e/Rt4OUq
この話は全員納得の上で通ったんだからお前の入る余地はない。
なのははこれから魔王化します。どんどん人を殺します。
これまで悪魔だったんだから当然の流れだろ。

それも納得できない新規参入者は帰れ。
71創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 12:45:19 ID:H2aMUI5c
一休さんテラ懐かしすww
あそこまで輝けたのは凄いわw
72創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 12:51:49 ID:rhGQMrmd
なのは厨は常に「なのはさんは白い悪魔で魔王で最強」と主張するからな。
そりゃ嫌われる訳だ
73創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 12:52:21 ID:aOTSpkZ1
>>70
やさぐれないで!
きっと希望はあるわ!
THE HOPE!!
74創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 13:17:25 ID:SoRjZP/l
       iイ彡 _=三三三f           ヽ
        !イ 彡彡´_ -_=={    二三三ニニニニヽ
       fイ 彡彡ィ 彡イ/    ィ_‐- 、   ̄ ̄ ヽ     し  ま
       f彡イ彡彡ィ/     f _ ̄ ヾユ  fヱ‐ォ     て  る
       f/ミヽ======<|-'いシ lr=〈fラ/ !フ    い  で
       イイレ、´彡f        ヽ 二 _rソ  弋_ { .リ    な  修
       fノ /) 彡!               ィ     ノ ̄l      .い   正
       トヾ__ら 'イf     u    /_ヽ,,テtt,仏  !     :
       |l|ヽ ー  '/          rfイf〃イ川トリ /      .:
       r!lト、{'ー‐    ヽ      ´    ヾミ、  /       :
      / \ゞ    ヽ   ヽ               ヽ /
      ./    \    \   ヽ          /
   /〈     \                 ノ
-‐ ´ ヽ ヽ       \\     \        人


いや、議論になった点がマジで改善されてない件
75創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 13:29:01 ID:OlRav4OL
そういう反応するなら新規板にくるなよといいたい。
リレーってのは後続のこと考えてのものだろ?
ロリショタロワってこういう奴ばかりなのか?
他ロワにこいつらが来ないうちに帰ってくれ
76創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 13:58:18 ID:V+DWp0jK
まあ落ち着けよ
77創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 14:15:13 ID:PQ2cXFlS
>>73
ここまでやられると『希望』が死亡フラグにしか見えない……
78創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 14:38:20 ID:l/hANoNL
そもそも議論になった点は、反対側も
『色々思うところは多々有るが通す分には問題無し』
に落ち着いてなかったっけ。作者の微修正も、状況自体は変えないって言ってたし。

向こうで散々議論して、意見の統一までは行かなかったけど大勢が投下良いって流れになって、
それで投下されたのに暴れるのはなんなんだ。
自分の求める展開になって欲しいって言う様なものじゃないか。
79創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 14:39:56 ID:e/Rt4OUq
議論の末書き手がこうすると決めた以上反対するやつの意見は受け付けないよ。
鬱な話がいやなら別のロワにいけ。迷惑だ。
80創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 14:49:05 ID:XnByUp9U
「この展開じゃ続きが書けない」と言っていいのは書き手だけだと思うので、
読み専の俺から「フラグ立ってたからいいんじゃね?」としか言えん。
とにかく投下乙。

そして移転おめ。
81創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 14:56:56 ID:OlRav4OL
最初にすまん。
不快な発言見て思わず反応してしまった。
大多数はまともだったんだな。
前スレや議論スレみてきて反省した。

だが新たに気になるところがでてきたわけで。
議論された結果がまるで生かされてないのが気になる。
上の意見をみるかぎり通すとなったら修正なしでも気にしないという奴もいるわけだし。
読み手様になるつもりはないが読み手が虐げられるのもどうかと思うぞ。
82創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 15:17:07 ID:H2aMUI5c
色々議論した結果、問題に主に上がってたのが
なのはさん化への懸念と次リレーの難易度を上げてないか?ってことなんだよな

前者はそもそもリレーの末なら受け入れるべきだという意見や、それ意外の展開も複数考えられるよという書き手の意見もあって落ち着いた。
後者も若干表現を緩める微修正&この話の書き手氏によるもしも後続が続かなかったら自分で決着をつけるという発言で落ち着いた。
……んじゃなかったっけ?
問題はある話だけど議論はしたし、何より今までロリショタに貢献してきたトップクラス書き手の作品だから通ったんだと思う。
これがぽっと出の書き手の作品なら通ってないw
そこらへんを考慮にいれて欲しいな。
責任を持つとその書き手は言ってくれた訳で、通しに傾いたので
83創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 15:28:13 ID:wARrzcHW
>トップクラス書き手の作品だから通ったんだと思う。
>これがぽっと出の書き手の作品なら通ってないw

初見が言うのも難だけど
荒れるの当然だと思う
別に悪いことじゃないだろうけど、書き手も住人も反発されることを覚悟したうえで投下するべきだったと思うな
トップの書き手じゃなきゃ通さなかった、っていうことは「問題あり」ってこと認めてるってことだし
その問題をトップの人だから、で許容できる人ばっかりなわけないもの
84創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 15:30:12 ID:SbUMkcCE
二重人格の件に対する苦言を完全に無視してるのが……
大体自分で出したオリ設定で繋がれなかったら自己リレーするってロワの私有化じゃん
85創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 15:32:30 ID:yjkxDePZ
改めて、議論するなら議論スレに行こうよ
移転早々揉め事なんて勘弁してね
86創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 15:34:39 ID:wARrzcHW
言い忘れ
それが作中時間が微妙に不安、とかならともかく、キャラの人格にまで関係することだと余計にね
書き手は当然荒れること覚悟しただろうけど、賛同する側の住人にもその覚悟は必要
87創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 15:35:35 ID:SbUMkcCE
議論して出来た修正がアレだからここで色々言われてるんだろ
88創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 15:50:07 ID:jjnNaAnm
だから破棄にするべきだって言ったのに
人のこと荒らし扱いしといて、通しにした結果こんなに荒れてるじゃん
俺の言うこと聞いとけばこんなことにはならなかったのに
89創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 16:05:33 ID:aOTSpkZ1
誰だよw
90創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 16:06:26 ID:PFRV+8XC
>>84
私有化についてはつなぐ気のある書き手もいるわけだし大丈夫だと思う。実は自分もいろいろ想像したりしてるし。
二重人格も、どっちかと言えばオリキャラ化と言うよりは真っ白なのはと真っ黒なのはが分かれた感じに見える。
>>88
誰も荒らし扱いして無い。ちゃんと反対意見として参考にしてる。
91 ◆yVygbchX82 :2008/11/18(火) 16:17:59 ID:e/Rt4OUq
俺も話考えたぜ!
というわけでなのはとアリサとインデックスとリンク予約する。
無茶な話になっても強行突破で問題なしだ。
92創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 16:32:59 ID:aOTSpkZ1
そういえば、予約は何時間か置いてからってルールは無いんだな

>>91
三日で書き上げるの?
ふーん…
93創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 16:33:20 ID:PFRV+8XC
ぐはっ...書いてたのに...まあいい!!
お前のSSで天を衝いてくれ!!
94 ◆CFbj666Xrw :2008/11/18(火) 16:38:23 ID:yqsyNBfw
もしかしてあの修正案、結構重要視されていたんでしょうか。
前の話までの流れと矛盾を起こすと判断し特に重要視していませんでした。
この点については説明不足で申し訳有りません。
一応、前スレの方で解説を付けておきます。
95創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:11:15 ID:GG8lQdPa
>>88
まだいたのかお前は…
前スレでも言ったが素で「読み手様」すんなっての
96創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 17:25:20 ID:3z56UxQV
っていうか問題になってる二重人格の部分削除したらこのSS成り立たないんだなw
97創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 18:44:28 ID:OlRav4OL
前スレみてきたが…
議論する気あったのかと聞きたくなる。
これ通したら予約した荒らしを否定できなくなるぞ。
98創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 19:08:38 ID:rkyShWxf
768 名前: ◆CFbj666Xrw [sage] 投稿日:2008/11/18(火) 16:58:15 ID:WyRTUysw
一応修正案として上がっていた、多重人格部分削除を使わなかった理由の説明しておきます。

解説。
多重人格が明らかとなる部分の削除ですが、これは最初から考えもしませんでした。
あの部分が無いと、少し前の部分で『高町なのはが弱かった』説明が付かない為です。
あそこが前の話まで強さを強調されていたなのはを弱くする為の理由付けとなっています。
つまり《白い悪魔》が居なければ《高町なのは》は弱く有りませんし、
最優先目的の認識に繋がる事は無く、諦めたを連呼する部分で止まってしまう為です。

一応、状態表の多重人格表記を消すくらいは出来ましたが、
作中の内容では《高町なのは》を明らかに知覚する人格が前の夢の時から居るわけです。
それを変えずに状態表だけ変えても意味は無いと判断し、
備考により『多重人格という言葉の意味を明確に定義しない』線で止めて有ります。



あと。
元のなのはの方が引っ込んで《白い悪魔》になった話だという事、強調した方がよかったかな。
(今の《高町なのは》は後から生まれたなのは)
どちらにせよ現在の状況は
『人間側の《高町なのは》と悪魔側の《白い悪魔》に別れて、両方とも紛れも無く高町なのは』
という事に一切違い有りません。
ですから続きを書くのには支障が無いと判断し、
『《高町なのは》が生まれた』『《白い悪魔(タカマチナノハ)》は夢を見る』など最低限の表現に留めていました。
変わるのは印象だけ(それも受け取り方による)ですので。





問題になってた二重人格については最初から修正を考えもしてなかったらしい
そこを消したら話が崩れるからね
99創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 19:25:14 ID:my/8L9e8
とりあえず、この件への物言いは避難所したらばの「議論スレ」へ。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8274/1219444248/l50
……仮投下の段階で既にこちらに話は移っていたのだけど。

創作発表板に移転してからこのスレの存在を知った方も、ご協力お願いします。
100創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 19:32:06 ID:GG8lQdPa
>>97
…悪いが少し軽はずみな発言を自重してくれ
粘着馬鹿が調子に乗るからさ

とりあえず↑の議論スレに移動しようぜ?
本スレで騒ぐ馬鹿ほど議論スレに来ないから困るんだよね…
101創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 19:38:14 ID:7NMiiV+F
てか致命的な矛盾はないわけだし読み手は黙ってろよ
展開に口出すのは企画に貢献してからにしろ
102創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 20:01:37 ID:e/Rt4OUq
そうそう。
書き手になったらどんな文句もし放題ってことだ。
ほかの書き手がいなくなっても自己リレーすればいいしな。
103創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 20:14:33 ID:GG8lQdPa
>>102
お前は消えろ
ふざけた荒らし活動すんじゃねぇよクズが

それにお前の予約は荒らし目的って事がバレバレなんだよ
104 ◆yVygbchX82 :2008/11/18(火) 20:15:20 ID:e/Rt4OUq
タイトル「悪魔の生まれる日」


リンクくんから死人が生き返るって聞いた。
何もかもあきらめた私は悪魔に心をささげることもあきらめないとだめだよね。

だから・・・

私はアリサちゃんを切り裂いて、インデックスちゃんを刺し殺して、リンク君を魔法で焼き殺した。


アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは 死亡
インデックス@とある魔術の禁書目録     死亡
リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ 死亡


【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:残存魔力中、両手首に小さな傷、頬骨と肋骨一本にヒビ(処置済み)、
     覚悟、多重人格化(現在《白い悪魔》)
[装備]:小さな短刀@ひぐらしのなく頃に(?)、クロウカード『希望』@CCさくら
[道具]:なし
[服装]:全裸(イヴの服を乾かしている)
[思考]:優勝しなくちゃ、ね
第一行動方針:ご褒美をどう使うか考える
基本行動方針:優勝して死んだ人を全員生き返らせる
[備考]
《高町なのは》と《白い悪魔》の多重人格を発症しました。
別人格といっても大きな違いは無く、あくまで両方とも高町なのはですが、
《高町なのは》は弱く、感情的で、人間。《白い悪魔》は強く、理性的で、悪魔を担っています。
解離性同一性障害に似た症状ですが、概ね記憶を共有する、互いを認識しているなど相違点も多く、
通常の症例は参考にしかならないようです。
105 ◆yVygbchX82 :2008/11/18(火) 20:16:25 ID:e/Rt4OUq
投下終了。
修正とかしないから議論とかもいいよ。
もし書き手がつかなくても俺が続き書くから問題ないし。
106創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 20:19:47 ID:GG8lQdPa
ハイハイワロスワロス

以下スルーで
107創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 20:48:33 ID:qYLaN+AF
>>93の人、続き(本編の)頼む(真面目に)!
108創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 20:58:01 ID:yjkxDePZ
>>104には破棄を申し立てます
理由として、現在の状況からこの話の内容を履行することは不可能であるという明確な矛盾か存在することを指摘します
消耗しロクな武装も持たないなのはが、見張りについて警戒中のリンクを手に掛けることはありえません
致命的な問題を持つこの短文をリレーに通すことは強く反対します
109創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 21:19:46 ID:my/8L9e8
一連の話、ちょっと議論スレへ。
110創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 21:57:30 ID:9U9R+gf6
>>46
遅まきながら投下乙です。
壊れた…なのはが本当に壊れた!
本当に落ちる所まで落ちた感じだw
あとは這い上がってくれることを期待します。GJ!
111創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 04:12:51 ID:XzDV3G9y
破棄でよろしくー
内容が何よりだめだ。文章力、構成力、どれを採ってもだめだめですね。もうちょい練習してきてください。
112創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 09:45:32 ID:rIC/pDbD
やっと落ち着いたか
空気をかえるためにも次の投下に期待w
城組もリリスも病院組も弥彦達もタバサ達も街組まだかかれてないんだよなー
最初からクライマックスは弥彦組だがどうなるか。キルアはいつまでも寝てるようなヤワなキャラじゃないのがw
イエロー組もあれからどうなるのか楽しみ!
そろそろ魔女同盟からハブられたれみりゃも復活してもいい頃だよね
あ、メロも居たな
恋愛フラグ綺麗な(笑)メロにも期待
113創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 12:26:15 ID:Qs+uU+cU
避難所したらばの議論スレでの話し合いで、
>>104の無効
・今後、予約には前の本投下から24時間の間を置くこと
この2点が、暫定的にではありますが、異論なし、ということで決定しました。

また、予約受付をしたらばの予約スレに全面移行する提案については、少し意見が割れている状態です。
こちらはもう少し話が必要でしょうか。

これらの件に関する異論・反論等は議論スレへ。
114創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 17:21:48 ID:71qW8T38
キャラ改変自体があまりいい印象を与えない話だからね…
ちょうど最近こっちに来たロリショタロワがそんな感じが問題で荒れてる最中だ。

あと支給品もかなり無害な存在じゃないと意思持ちは却下がセオリー。
デバイスやネブラは自分の意思で動けないから問題無し。
小トトロは無害、フリードは小さいとたいしたことない?
ゾアノイドは難しいな。砂ぼのロボット兵もアウトだし。
モンスター石版も条件付けたとしても難しいんじゃないかな?
115創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 17:23:00 ID:71qW8T38
悪い、誤爆した…
116創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 17:24:23 ID:1HCt1B4u
誤爆かい?
117創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 17:32:05 ID:rUItonql
kskだったら無問題じゃね?
118創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 12:21:46 ID:kUjojp+D
結局あの話は通ったのか?
古参が信頼を盾に無理やり押し切った感じだったけど。
119創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 12:30:34 ID:Nh/qO2Bq
んーまあ通すしかないんじゃない?
矛盾はしてないし書き手が破棄する気ないし。

……矛盾してなければなにしてもいいってのもなにか違う気がするけどな。
120創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 12:37:55 ID:ciYm2yVX
文句があるなら議論スレで言って来いよ
ちゃんとみんなが納得出来るだけの理由をあげて破棄要請すれば通るはずだ
121創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 12:54:21 ID:kUjojp+D
どこに発言したって書き手が押し切ったら通るんだろ?
一昨日の奴みたいなのは例外みたいだけど。
122創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 14:00:30 ID:Ba7dDXDn
書き手だけじゃなくて、大多数の人も問題無いって言ってるじゃん
何でそれが押し切ったことになるんだよ
123創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 14:29:00 ID:/XzsJ+gW
押し切った...のか?なんか反対派が議論スレに行ってからパタッと言うのをやめちゃった
それにしてもまた予約しにくい状況になったな...
124創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 15:09:51 ID:sqCapaq2
何書いても古参優遇で無茶な展開にされるなら書く気もなくなるわ
125創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 15:17:56 ID:t/Ky61C0
議論スレに反対派が現れないってことはたいした問題じゃないって事だろ。
126創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 15:51:27 ID:U0FmtnDP
議論しましょう、と場を設けて時間を作った瞬間に意見も言わずに黙りこくる。
せっかく設けた時間を使い切り、議論が終了した途端に「押し切られた」だのなんだのグチグチ言い出す。

何なの? 死ぬの?
127創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 16:43:09 ID:EIrW0CZ2
古参が甘く見られてるっていうけど、
そういう態度が他の反対派まで巻き込んで軽く見られる要因になる
128創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 17:51:22 ID:3VwmEDUw
あれだ、きっと
LSロワのドS紳士がすごく楽しそうに
「議論しようぜぇ……」
ってアーカードの旦那のごとく待ち構えてるのが透けて見えて気がひけちゃったんだよ。
129創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:27:06 ID:98ZPEin9
今回の問題作は今までの流れからしておかしい展開ではあるけど矛盾はないっていうタイプだからな
しかもその問題点が作品の中心にあるから議論になるはずがない
典型的な「この書き手じゃなかったら通らない」って作品
他の書き手は悔しいならいっぱい書いて実績を作ってからいつか作品で復讐すればいい
130創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:29:06 ID:kUjojp+D
二重人格だろうがオリ設定だろうが古参なら許されるのがこのロワってことだろ
この話し書いた奴も問題作ばかり書いてるし
それで許されるのも古参で実績があるからなんだよな

新参者は消えろっていってるようなものじゃね?
131創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:32:17 ID:3cGqPLxA
この展開を繋げるって言ってる自称書き手が酉を出さないのはなんでだろうな
古参だから擁護はしたいが、この展開を繋ぐ自信はないからか?
132創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:37:55 ID:UulncOfx
そもそも反対派も我侭しか言わなかったからな。感情と印象でしか語ってない。
声の大きすぎる我侭でまともな懸念が全部押し流された。
修正案も話の枢軸潰せっていう実質NG要請と同じ物だったし、じゃあNGかというとそっちは可の流れだった。

読み手側に話がどうなって欲しいとか言う権利なんてこれっぽっちも無い。
話の方向について我侭言う(書く)のは書き手の特権で、
重要なのは企画が破綻しないかを見る事、その為に矛盾などの問題点を指摘する事なのに、
最近はどういうわけか感情や印象の方を語る読み手ばかりになった気がする。

どれだけ話が面白かろうと本当の問題を抱えた話は後に悪影響を残すし、
どれだけ話が読んだ人にとって不快だろうが他の書き手にとって問題無ければ良い。
大体一話で山と谷を語ってどうする。ただでさえ奈落が多いパロロワだってのに。

もちろん不快だと思う理由には前の話との矛盾など問題点が隠れてる事も多いんだけど、
その理由を考えずに取り違えたレスが増えてる気はする。

俺はあの二重人格の話の通し派だったけど、あの議論は機能していないと感じた。
ていうか今回の話に限らず、しばらく前からいつの間にか指摘機能が崩壊しているように思える。
書き手離れが起きたりそれこそ致命的な話がきやしないか不安だよ。
133創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:39:14 ID:OkqvJG4I
前スレにあった説明を議論の前にしてくれたらよかったんだよ
134創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:40:31 ID:upN2yGFU
読み手が指摘しなければ済む話
っていうか読ませてもらってる立場の奴が何を偉そうにしてるの?
まあ重鎮書き手が書いた作品を叩いてるのは木っ端書き手だろうけど
135創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:46:55 ID:wdDyadpo
まあ、なんだ。熱くなりすぎるな、両方とも。

読み手は指摘するな、とか、古参の書き手が押し切った、とか、
どう見ても煽りとかそういう類だから。

議論ができない、でもわがままは言いたいだけの人が荒らしているだけでしょう。
スルーで行きましょう。
136創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:51:43 ID:+AwZ+H78
しかし議論スレに一切反対がなかったとか古参優遇派の印象操作には目を見張るものがあるな
137創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:54:14 ID:rSdaf7CS
書き手が修正に使わないような指摘は真っ当な反対意見とは言わないのでは・・・
それは難癖だ
138創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:56:25 ID:k4nTzFOd
というかあの作品は作者の説明から見てなのはを二重人格にする為に書かれたものだろ?
それを二重人格はダメ、修正しろって言っても作品を通したいなら書き手は修正しようがない
大体今更二重人格くらいでガタガタ言うなwwww
139創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:57:15 ID:JoU0dNAn
反対どころか妥協点落としたレスは全部スルーか賛成扱いだもんな
なんか一方的に反対派が悪い、と言ってるけど議論的にはどっちも最悪な話の持って行きかただよ
結果的に通ったから正義面できてるだけであって、賛成派の言い分も反対派と同レベル
ただそれが書き手を盲目的とはいえ尊重してるからよく見えてるだけ
140創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 18:57:45 ID:jmpjnBjz
そんなに読み手いらんならスレ立てなきゃいいだろ。どっかで引きこもってやってろ
ただでさえロワスレ乱立してんのに
141創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 19:17:10 ID:xN92X9n3
×「読み手」いらない
○「企画に貢献せずに愚痴垂れ流すことしかできない戦力害住人」いらない
142創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 20:14:07 ID:U0FmtnDP
あのさ。
賛成派も反対派もさ、言ってることが全く為にならなかったのよ。
議論の内容・そもそもの意見が見事なまでにズレっぱなしだったのよ。
そんな意見を反映しろと言われても出来るわけないのよ。
わかる?
143創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 21:43:52 ID:jSS+2Eir
だからね、何度も言われてるけど文句があるなら議論スレに行こうよ
ここで議論するのはスレの空気が悪くなって、企画に悪影響を及ぼしかねないんだってば

何度も誘導されているのに無視して文句を垂れ流しているのは、この企画を荒らして潰したいようにしか見えないよ?
144創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 21:48:11 ID:ciYm2yVX
見えないんじゃなくて実際そうなんだろ
スレが荒れ気味だと必ず便乗する奴は出てくるもんだし
145創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 22:22:05 ID:EIrW0CZ2
さっさと退散しないと、「竹刀」、振り回すゾ☆
146創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 00:07:04 ID:tfjiO7w8
こぶたのしない……ああ、そんなのあったね(笑)
147創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 00:15:24 ID:SIzug4tF
やだぁ、思い出させないでくれぃ
148創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 02:52:07 ID:vQ0Ibbtm
こぶたのしない…あれは欝だった…
149創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 12:09:31 ID:+mq0Kumg
今はのびたの死体が所持。
放置支給品で使えそうなのはあとしんのすけの短眼鏡と双葉のところにあるマスターソードなんかがあるな。

それとなんかうやむやのうちに放置されたネスの支給品のひろしの靴下……
そして『ころす』の看板とうさみみずきん。
150創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 14:56:22 ID:fSh1qtb9
荒れかけた時には、やっぱりトンカツだな。うん。
http://bbs2.oebit.jp/LoliSyotaRowa/data/IMG_000031_1.jpg
151創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 16:28:11 ID:vQ0Ibbtm
ほっほーい!うーまそ〜〜う
152 ◆7KR.e180t. :2008/11/21(金) 22:04:14 ID:7S0p7Ekc
予約しちゃっていいのかな?

ベッキー、トマ予約します。
153創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 22:10:07 ID:KY9g1j5c
いや、まだ動かないほうがいい。
このまま投下されればうやむやのうちに終わって色々な意味で問題だ。
154創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 22:12:06 ID:a+JQvuIr
議論スレへの誘導を随時行うくらいじゃダメか?
155創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 22:34:55 ID:R61gth4k
構わずに予約しちゃって
本スレを投下しやすい空気に保つために、議論を議論スレに持っていったんだから
これで待ったをかけるのは本末転倒というものだ
156創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 22:35:38 ID:R61gth4k
っと、大事なことを書き忘れた

>>152期待してます
157創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 22:40:12 ID:a+JQvuIr
>>155
確かにそうだ。ここは一旦動いたほうがよさそうだな。

ということで。
>>152よろしくお願いします。
流れを変える一本、期待してます。
158創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 22:55:33 ID:KY9g1j5c
いや、今書いたらうやむやになった不平不満がこの書き手に飛ぶ可能性が高い。
問題の作品の書き手に叩かれるの覚悟の上で変更しない発言してもらうか破棄するかしてもらってからのほうがいい。
159 ◆7KR.e180t. :2008/11/21(金) 23:10:32 ID:7S0p7Ekc
まだ色々わだかまりが残っているようですね。
とりあえずさっきの予約は撤回して、もう少し様子を見ることにします。
160創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 23:20:37 ID:CsLZHzIP
いや別にいいでしょ
全然関係ないパートなんだし
てかあの作品の話はまだ終わってなかったの?
議論スレにも全然書き込みないし、もう終わったもんだと思ってたけど
161創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 23:28:04 ID:R61gth4k
俺もそう思う
毒吐きでは燻ってるようだが、肝心の議論スレに上がってこない以上
「不満はあれども反対はせず」で通しということで決着したものと思ってた
162創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 23:48:54 ID:a+JQvuIr
折角議論スレにて話し合いの場所を設けたのに現れず何も言わないのなら、
この話は承認扱いで充分でしょ?もう時間切れにしてもいい頃だし。
それに>>152>>159氏のパートは全然関係無い場所の話しだし、
止める必然性が全く見当たらないのだから、動いても大丈夫だとおもうけどなあ。
163創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 00:48:49 ID:99puufXN
>>158が真理だと思うけどな。
止める必然性は確かにないけど、今作品を投下すれば八つ当たりされる可能性が高いよ。
身の安全を考えるならほとぼりが冷めるのを待つが吉。
164創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 01:26:19 ID:gfSyUVDw
ほとぼり冷めるまでっていつだよ
165創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 01:36:57 ID:Yn7CLfxR
問題作の書き手のアプローチという名の最終告知がくるまでだろ。
そうやって荒らしに近い反対派への悪役にでもならないと次の書き手が潰される。
166創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 02:37:26 ID:BSEw8o2p
こういう時に本スレ進行を止めないための議論スレだろうに。
少なくとも、議論スレ導入時の目的の1つはソレだよ。
スレ進行妨害目的でなけりゃ、次の予約の妨害はやめてくれないかな。
167創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 07:54:54 ID:qH/guau2
予約をとめるのは良くないと思う。。このままじゃいつまでたっても議論と言う名の言い争いが終わらない。
つか予約はしたらばで!!ってなったんじゃなかったっけ
168創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 08:47:42 ID:otJQZA1N
議論スレに今作書き手氏の最終告知?が来てるから、これでこの問題は決着したものとして、本編を進めちゃって
ほとぼり冷めるまでなんて待ってたら、ロワ自体が失速しちゃうよ

>>152>>159
暫定的にだけど、これからはしたらばで予約という形になったので、むこうで予約してください
169創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 18:27:25 ID:Fz8oktc5
予約スレ見てみたらベッキーとトマの予約きてた!
楽しみだなーwktk
170 ◆o.lVkW7N.A :2008/11/22(土) 22:43:06 ID:frKeboXG
避難所に書き込みましたが、念のためこちらでも一応。
雛苺と桜で予約、させていただきます。
171創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 22:46:53 ID:Fz8oktc5
>>170
また予約キター!!
楽しみにしてます!
あと、多ジャンルに誤爆してたのもバッチリハッキリ見ちゃってたりw
172名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/22(土) 22:58:29 ID:k1wJO6pe
>>170
wktkして待ってます
173創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 02:00:30 ID:NAVdnBti
お、予約ktkr
桜の現状に俺は鬱ったw
今読み終えたばかりなんだがww
174創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 02:05:59 ID:1QA+n5Ca
いや、桜だけじゃない。ほとんどのキャラが不幸まっしぐら。
だからこそほんの一握り、調子のいい方々が目立つ目立つw
こういうキャラも堕落して欲しいんだけど……立ち位置が立ち位置だしこのまま勝ち逃げてしまいそう。
175創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 02:06:51 ID:a5n7oBnl
欝ロワの名は伊達じゃないぜ
176創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 02:10:27 ID:RGkzpNMZ
バトロワで幸せになれるほうがおかしいんだけどな、本来はw
177創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 02:13:41 ID:1QA+n5Ca
でも約1名ほどロワ満喫してるのが居るよな。
精神面については原形を留めてるし。
178創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 02:24:39 ID:H60OdWbL
誰だっけ?
179名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/23(日) 02:25:26 ID:EKO6+PO0
グレーテルかな
180創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 08:25:16 ID:Hy7lO2oM
>>173
桜に関しては、没になってしまった話に現状よりももっと悲惨なモノがあって、アレに比べると今の状況は
まだマシな方だというのが、このロワの恐ろしいところだw
181 ◆7KR.e180t. :2008/11/23(日) 21:23:01 ID:GlPrBuWM
投下いきます。
182 ◆7KR.e180t. :2008/11/23(日) 21:24:28 ID:GlPrBuWM


「おい、トマ。そっちにはいたか?」
「いいえ。こっちにもいませんでした。」

レベッカ宮本。通称ベッキー。
現在は同行者であるトマの知り合い――既に死んだ身であるジュジュのことである――から、
首輪を回収するため、トマの記憶で彼女のいた周辺を探っているのであるが


「本当にこの辺で間違いないんだろうな?」
「はい。このあたりに置いてきたはずなんですけど……」
「……まさかジュジュって奴まで生き返って動き回ったんじゃないだろうな?」
「……僕が見た時は完全に息を引き取ってましたが、完全に否定できないのが怖いですね……」


そこにいるはずの彼女の姿はどこにもいなくなっていた。
記憶していた場所を間違えていたのかと、二人であまり見晴らしも悪くない場所を暗闇の中探していたが、
結果はやはり変わらず、死んだはずの彼女の姿はどこにも見つからなかった。
自分や明石薫のような存在がいることを考えると、自ら移動したことも考えられなくはない。
あるいはもしかしたら、参加させられている人の中にネクロマンサーだとかがいるんじゃないのか?
等とベッキーが考え始めていると、


「穢れなき幼子らよ――。
 予期せぬイレギュラーの発生に伴い、予定を繰り上げての臨時放送を行う――」


あの声が聞こえた。


「!? イレギュラー!?」
「ベッキーさん、これは!?」
「黙って聞け! 一言一句聞き逃すんじゃねえぞ!」


突然、予期せぬ放送に戸惑う二人だったが、即座にベッキーはトマに支持をし、
念のためにとメモとペンを取り出す。


「実は、イレギュラーというのは他でもない。
 君らもよく知っている我が部下、Q-Beeが死んでしまった。」

(Q-Beeが死んだ!? ってことは、今は首輪の機能は……どうなってんだ?)

Q-Beeが殺されること自体は予想していたが、実際にそのことを聞くと、やはり驚く。
だがしかし、そのこと自体に関してはさほど重要ではない。

ベッキー達にとって重要な問題……首輪を解析した彼女たちにとって問題なのは、
この首輪の機能がどのようになっているのか、ということである。
Q-Beeがいなくなった今、どのような手段でもって首輪が機能し続けているのかというのが問題なのである。
183 ◆7KR.e180t. :2008/11/23(日) 21:26:06 ID:GlPrBuWM
この話に続くもの……それはおそらく、ご褒美の支給に代理人を立てるという話か、
もしくは今後ご褒美の支給は無しになるという話かのどちらかであろう。

その内容によっては、首輪の機能……すなわち「中の人」とのテレパシー云々の対象が変わる、
もしくは首輪の機能そのものが失われる可能性がある。
あるいはまったく別の首輪機能が追加される可能性も考慮にせねばなるまい。
最初の会場から飛ばされた技術や、トマの知り合いだったはやての持っていた支給品の効果なりで、
この首輪の中に何らかの別の生命体が入り込んだり、別の機械が入り込んだりする可能性も、
ないとは言い切れない。
そうなると、また首輪を調べ直す必要がでてくる。

「――理知性にこそ欠けるものの、その本能のままの貪欲な戦闘力は、私も一目置くほどなのだ――」

(強いってことを言いたいんだろうけど、理知性に欠けるってようするにバカってことじゃねえか。
 ん? てことはもしかして、この「中の人」の言うことをあまり理解できない可能性も……?)


Q-Beeのことは最初に見たことしかわからないから何とも言えないが、
上司であるジェダがはっきりとバカだと言える台詞をいっているぐらいだ。
相当頭の弱い奴なのだろう。となればそのバカのそのまた部下である「中の人」も、同様である可能性はおおいにある。
となると、Q-Beeが死亡した時期にもよるが、
もしかしたら自分たちの行動――首輪の解析を行ったこと――がジェダにばれていない可能性もなくは……

(……いや、流石にそれは期待しすぎか。
 でも首輪を調べる人に対する忠告がなかったら、ありえるかも……)

首輪解除をしようとする人間をジェダが想定している可能性も考えているが、
もし実際に調べてることが知られれば、警告ぐらいはあってもいいと思う。
それがなければ、あるいは、その事実をジェダが把握していないということもありえるのでは?
可能性の一つとして、考えておく。


「――そこで、いささか世俗的に過ぎるが、ちょっとしたパフォーマンスをお見せしよう。
 時刻はちょうど零時。天頂高く輝く、あの満月を見たまえ」


そういわれ、首を傾け、視界に月を写す。
常日頃住んでいたような街の中と違い、綺麗に輝く星空と、明るく輝く満月がそこにあった。
そして、その月が、見覚えのある生首を映し出した――














(死者蘇生……ジェダにもできたか。まあ予想通りだな)
184 ◆7KR.e180t. :2008/11/23(日) 21:27:14 ID:GlPrBuWM
レミリアのいっていた冥界の底から妹を引きずりだすという発言。
レックスの言っていた、自身も使えるという回復の奥儀。


二人とも、嘘を言っているように見えなかったし、
ベッキーもここでは自身の常識でありえないといえることが起こりうる場所だと認識したばかりだ。
だから二人の発言も信じられたし、あの二人ができることをジェダができるということも驚かなかった。
Q−Beeを、死者を蘇生すること自体を、ベッキーは驚かなかった。


ここにきて、色々な感覚がマヒしてるんじゃないかとは思ったが。


レックス曰く、制限されている身では使えないらしいから、
この場においては「現在は」使用することができないみたいだが。


「――それにもちろん、Q-Beeを倒しても殺害数を稼ぐことは出来ない。
 今後、無益な行為は慎むよう期待する――」


(てことは制限を解除してしまえば、死んだ奴も生き返らせられるのか?
 いや、回復の奥儀だって言うぐらいだから色々と必要なんだろうな。
 ジェダのように死体が必要だとか、なにか蘇生の儀式に道具が必要だとか)

(ジェダはQ−Beeを生き返らせた。自分の部下のリリスを殺し合いに送り出すぐらいだ。
 ジェダが部下の命を大切にする奴には思えない。
 これはつまり、Q−Beeには生きててもらわないと困るってことだよな?
 てことは、やっぱりこの首輪の機能はQ−Beeがいないと機能しないってことでいいよな?)

(Q−Beeを殺した奴って誰だ? レミリアの可能性もありえるよな?
 だったらまだ対処のしようはあるけど、
 もしレミリアの他にQ−Beeと戦える強い奴がいたとしたら…)

(Q−Beeをもう殺すなって忠告してるようなもんじゃねえか……
 こりゃ、Q−Beeが死んだ時期によっては私たちのことがばれてないって言うのもあながち外れてないかもな)

ジェダにとってもイレギュラーであろう、この放送にベッキーの頭はめぐるましく回転する。
蘇生について、首輪について、盗聴について、Q−Beeを殺した奴について……


「ああそうだ。ことのついでに教えておこう。
 今夜零時過ぎから――つまりまもなくだが、4時間ほど雨が降る――」

(雨が降るのか……そんなことしたら大抵の奴は動き回らなくなるぞ。
 いや、動きまわらなくさせるのが目的か? ジェダもQ−Beeの蘇生で魔力やらが持っていかれるとか。
 あるいは雨を降らせることでなにか……って、ちょっとまて、雨?)





雨。


空から落ちてくる水滴のこと。
地球上に水が存在する限り、必ず起こる自然現象。
185創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 21:28:56 ID:21Pykqst
支援
186拭えぬ過去を振り返り  ◆7KR.e180t. :2008/11/23(日) 21:29:46 ID:GlPrBuWM
雨が降れば大抵の人間は憂鬱になるし、
曇天広がる雲や、降り注ぐ水達。地面にできる水たまり。
外に出るのも億劫だ。

あまりに振りすぎると交通にも支障をきたすし、
もっとひどくなると川の決壊、浸水など災害にまで発展する。


だがそんな問題は彼女にとってチンケな話でしかない。
アンニョイな気分だとか、外にできる障害なんて、ものの数にはいらない。
降水が、降り注ぐ水が、流れる水が命の危険に伴う存在がいる。
数時間前新米吸血鬼となった彼女もそんな存在のうちの一人である。


「トマ!! 魔導ボード借りるぞ!!」
「え? え!? ちょ、ベッキーさーーーーーん!!」


その事実を把握した後のベッキーは素早かった。
自身が飛んだりするより、魔導ボードに力を注いだ方が早いという判断をすばやく下し、
即座にトマから魔導ボードを奪い去り、またがり、
限界スピードでシェルターに向かって飛び去った。



「――再び太陽を拝める者が何人残るか、君らの奮闘を期待しよう。
 これにて、臨時放送を終了する」

「あ……」
(臨時放送、終わっちゃいましたね)

ベッキーを唖然と見送りながら、トマはベッキーが急いでシェルターに向かう理由を理解する

(確か吸血鬼は流水を渡れないんでしたっけ。
 そうなると、これから4時間はベッキーさんは外を出歩けないってことになっちゃいますね
 水たまりとかも考えると、朝の放送までシェルターにいることになるんでしょうか……)

そう考え、自分も急いでシェルターに向かうべきかと考える。

(でも、もう少しだけ、ジュジュさんを探しましょう。
 もう一度殺してしまうにしても、死体の場所を移して、雨に濡れたりしないようにはしてあげたいし……)

しかし、雨が降るというのに仲間を……たとえ死んでしまっても大切な仲間だった人を、
放っておくことはできない。例え自身の手で首をはねることになっても。
そう考えたトマは継続してジュジュを探そう、ということで改めて周囲を探し出した。
可能なら、そのまま見つからないことを心の隅で祈りながら。











ベッキー、全力疾走。
187創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 21:29:59 ID:a5n7oBnl
  
188創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 21:30:29 ID:a5n7oBnl
 
189創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 21:30:45 ID:a5n7oBnl
  
190創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 21:31:35 ID:a5n7oBnl
   
191 ◆7KR.e180t. :2008/11/23(日) 21:32:11 ID:GlPrBuWM
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

もとの彼女ならば、決してできなかったであろうドリフト。
もうボードが壊れるんじゃないかとか、ブレーキきかねえじゃねえかとかそういう考えがあるのか疑わしい。
後のことなんて知ったことじゃないという風に魔導ボートでぶっとばす。
全ては自身の命のために。

その甲斐あってか、雨が降り出す前に、シェルターの影が見えてきた。


「ま・に・あ・えーーーーーー!!」

依然トップスピードでシェルターに突っ込む。

だがそんなベッキーをあざ笑うかのように
雨がぽつりと、ベッキーの肩に当たる。

「づあああああ―――――!」

その痛みに、魔導ボードのバランスが崩れ、ベッキーの身体が宙に舞う。
だが勢い付いたスピードは止まらない。魔導ボードにのったスピードのまま、
ベッキーはシェルターに勢いよく突っ込んだ。










「う………」

ここはシェルター、入口。

地面に転がる白い布切れ。
それに包まれる少女の名はレベッカ宮本。

このたび数時間前に吸血鬼に血を吸われつくし、吸血鬼としてあらたに生誕した存在である。


「いててて……
 あー水がこんなに痛いとは。先に知っててよかったぜ。」


水がかかることよりも重大な痛みを伴う事柄があったと思うのだが……
そんなことを気にかけず、水の当たった肩口をなでる。
シェルターに突っ込んだ外傷はなかったようなのは運がよかったのか、彼女が吸血鬼だからなのか。
192拭えぬ過去を振り返り  ◆7KR.e180t. :2008/11/23(日) 21:33:10 ID:GlPrBuWM
「たく……施設が近くにあったからいいものを……
 場所によっちゃあ間違いなく雨で死んでたな。
 ……あれ? 雨の日もダメってもしかして学校に行くのにも支障が出んのか?」

……そこで学校のことを考えるのもある意味彼女らしいか。

「傘さすぐらいじゃだめだよなー。
 レミリアは普段どうしてんだ? 昼間は外うろついてなさそうなのは確かだけど……
 つーかこの豪雨、吸血鬼じゃなくてもぜってー外に出たくねーよ。
 ……ん?」

ふと、足元に目をやる。
そこに土のついた跡がいくつか残る。
足跡が3つ、車輪跡が1つ。
そのうち二つは中に向かった足跡と外に向かう足跡がついていた。

中に向かった足跡しかないものと、車輪と思しきものはおそらく中でヘルメスドライブとやらでワープした、
アリサの足跡とはやての乗った車いすの後だろう。

そしてひとつはトマのものだと思っていいだろう。
となると、あと一つは?

足跡の付き具合を見る限り、外に出ていった足跡は、二つとも車輪の跡よりも後につけられたものである。
となれば、この足跡は、車輪の跡の主であるはやてが中にはいるよりも後に来たということになる。
そうなると必然的にトマが外に出ていった後に中に入ったことになるだろう。

そうしてよく見ると、一番新しいと思われる足跡は、左右にふらふらと揺れていて、危なっかしい。
帰りの足取りは割としっかり、そして歩幅的に急いでいるように見えることを考えると、
中でなにかあったのだろうか?


足跡の主の行動が気になったベッキーは、その足跡を追い、やがて一つの部屋に辿り着く。
扉を開き、中を見てみると、そこには一人の少女が眠っていた。

「これは……」

ベッドの上に横たえられ、しっかりと布団もかけられ、目を閉じた少女は、
顔に傷もなく、パッと見る限り、本当に眠っているように見える。
だが吸血鬼として生まれ変わったベッキーは、その少女が既にこと切れていることを、
布団の下は血まみれであるということに気付いてしまっていた。
幸い十分に血液を補充したからか、血が古かったか、吸血衝動が起こることはなかったが。

「こいつがジュジュって奴なのかな……」

布団をめくって見ても、服装の特徴はなく、
金髪という特徴も、あまりこの世界ではあてにならないが、
恐らくは彼女がジュジュであっているだろう。

となると、この足跡の主はジュジュをわざわざこの場に運んできたことになる。
危なっかしかった理由はジュジュを背負っていたからであろう。
首輪がそのままであることを考えると、死者を死者と扱わず、
恐らく無関係の死んだ人間に対して悲しむことができる心優しい人間であると想像できる。
時期的に考えても、何度か危ない目に会ってるだろうし、放送を聞いた後だ。
それでも尚そういう心を持っているのだから、ゲームに乗っている可能性は恐らく低いだろう。
193創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 21:34:09 ID:a5n7oBnl
     
194拭えぬ過去を振り返り  ◆7KR.e180t. :2008/11/23(日) 21:34:21 ID:GlPrBuWM
時間がなくとも恐らく精一杯の善行で葬られたジュジュ首輪を回収するのをやめようかとも考えたが、
それは偽善だ。道具がないからトマを待たねばならないが、いずれ彼女の首も切り落とさねばなるまい。

「ごめん、な……」

そう言って、布団をかけ直し、ふた度足跡を追う。

そうすると、今度は足跡は「機械室」の中にはいっていった。


「ここは……!」


機械室の名の通り、その中にはパッと見ただけではわからない機械がたくさんあった。
なんらかの映像を映すらしきスクリーン、
多数のスイッチの存在するパネル。
無論ベッキーならば少し触ればそれがなんなのか大体理解できるだろうが、
見たこともないものを触りもしないでわかるほどベッキーも万能ではなかった。

それはともかく、追っていた足跡はその多数の機械の中の通信装置と思しき所の前でとまり、引き返していた。
そこからわかることは、恐らく足跡の主もトマと同様どこかと連絡をして、
慌てて出ていったということぐらいか。


そして通信装置をじっくりと見ることでベッキーは気付く。
この通信装置に、通話記録が存在することを。

トマは電話を始めてみたのだし、イエローは機械よりも自然と共にいる人間だ。
イエローは受話器の形状と、あまり機械に詳しくないことが災いして、
これがただの電話だとしか理解できなかったのだが、この情報は大きい。

というのもこの通信装置の通話記録に残っていたのはこの電話を通してのものだけではない。
この島の全通信記録がここに集まっているのだ。

発信と着信を示す場所が、どちらもシェルターではないところのものも多数ある。

「「北東市街レベッカ宮本宅」から「インデックス」!? はあ? なんで私の家がここにでてくるんだよ!?」

(いや! ジーニアスにあそこの塔が救いの塔に似てるって話は聞いてたし、
 ここにある短縮ダイアルにも「E−8 救いの塔」とは書いてある。
 てことは、建物も人間みたいにどこかから持ってきたこともありえなくない。
 っておいおい、ここから帰ってもちゃんと私の家あるんだろうな?)

そう考えながらも、これは参加者の情報を得られるチャンスだ、と思う。
ベッキーは履歴の情報の一番上、「北東市街レベッカ宮本宅」から「インデックス」に手を付けた。





「北東市街レベッカ宮本宅」から「インデックス」

『もしもし、リルル?』
『もしもし。あなたがトリエラさん?』
195拭えぬ過去を振り返り  ◆7KR.e180t. :2008/11/23(日) 21:34:56 ID:GlPrBuWM
北東市街の何処かにあるであろう、自分の家から発信され、「インデックス」に向けられた電話。
インデックス側と思われる方は、トマの仲間のトリエラだ。
名簿にインデックスが存在するが、電話に出てる人間がどちらも違う名前であることを考えると、
関係があるのかは謎である。


この通話で最初に得られた情報は、いきなりベッキーをどん底に落とすものだった。
トマの元の世界からの仲間であるククリが、金糸雀という人形に殺されたらしい。

トマの話によれば、グルグルというおかしな魔法を使う魔法使いで、
魔王を封じることができる、ジェダに対抗しうる存在のうちの一人だった。
そのククリが死んだ。
そしてそんなこと以上に、トマの親しい友人が死亡したことに、ベッキーは歯をかみしめる。

人形、という所に、ベッキーは翠星石のことを思い出す。
そしてその知り合いのヒナ……名簿を見る限り恐らく「雛苺」、
雛苺の持っていた真紅という人形の生首。
そして知り合いらしい蒼星石と金糸雀。

知り合いがいる、ということが必ずしもゲームに乗っていないという保証にはならない。
それはレックスと会ったことでよく理解した。
恐らくは、雛苺も真紅が死亡しているのを見て、レックス同様思ったのだろう。
「全員殺して、ジェダに仲間が全員生き返るようにお願いしよう」と。
そして、放送で「真紅」と「翠星石」が死んだことを知ったことで、金糸雀も思ってしまったのだろう。
悪魔に願いを叶えてもらおうと。

そして悪魔に願った狂者は人を殺し、
その狂者に殺された人の仲間は殺人者を憎み、また悪魔に願うものが増える。
その一旦を感じ取ったベッキーは、ぞっとする。

望む、というのは、現状の否定といっていい。
自分にとって現状が好ましくないから、変える。
それは、変わって欲しくない他の人間たちの世界を壊す行為だ。
手ばなしたものを再び手に入れたい。それが他の人間の世界を壊す行為だとしても。
それが悪為す意志という奴なのだ。

想像してしまう。
もしも……
もしも、一番最初の放送で「タバサ」の名が、
レックスがこの島にいる人間を全員殺しでても生かしたいと思っていた大切な妹の名がでていたのなら、
恐らくはレックスはゲームに乗ったままで、自分やアルルゥも、レックスに殺されていただろう。
そしてレミリアも、放送でフランドールの名が呼ばれていなければ、
最強の証明のために殺し合いに乗ったりせず、未だのらりくらりとした態度で一緒にいたかもしれない。





考えてしまう嫌な事実にのまれそうになる思考を抑える。
つらい記録であるが、いい収穫もあった。
196拭えぬ過去を振り返り  ◆7KR.e180t. :2008/11/23(日) 21:36:17 ID:GlPrBuWM
まず、恐らくはトリエラとレミリアが北東市街にいるであろうということ。
「インデックス」は場所を示してくれないのでわからないが、
会話から考えて、同じ場所にいることは間違いない。

そして、レミリアが警察署を壊し、ヴィクトリアが交戦。
撃墜され、旅館にいたククリを含めた何人かと接触。それとも恐らく交戦。
撤退後、そのどさくさにククリが金糸雀に殺された。

トリエラがヴィクトリアを声でシャナと間違えた際の声からは、
シャナとトリエラが敵対関係にあるということがわかる。
トリエラがゲームに乗っていないことを考えると、シャナはおそらくゲームに乗っているということがうかがえる。

トリエラに関する話はトマからよく聞いていて、
銃の扱いに慣れているらしかったこと、ナイフの扱いが優れていたことを踏まえて、
ベッキーは彼女が元世界では傭兵のような立場にいたことを想像している。
そしてその想像があたっていて、トマを助けた……つまりゲームに乗っていないのならば、
彼女のこの島でのスタンスはおそらくゲームに乗った者の殺害。

それを踏まえてヴィクトリアの言っていた金糸雀の片腕がなんだか変、
トリエラが袖の部分のことを詳しく聞こうとしていたことを考えると、
トリエラが既に金糸雀と交戦済み、逃がしたが腕を破壊することができたと考えるのが妥当か。

ネギと小太郎が友好関係にあり、その仇打ちを小太郎が望んでいる。

恐らくはネギもレックスと同様に「仲間が生きて帰れること」を望み、殺し合いに乗った。
そしてトリエラと交戦。トリエラがネギを殺すことに成功した。
そして放送でネギが死んだことを知り、その仲間の小太郎は怒り、仲間を殺した奴を探した。

時間的に決着がついたころだろうか。最悪、既にトリエラは小太郎に殺されている可能性も考えねばなるまい。


次の履歴を聞くことにする。






「温泉」から「インデックス」

『もしもし、トリエラさん?』
『ククリ! 無事だったの!?』

トリエラと死亡したククリの会話だ。


レミリアに襲われた際、ククリは犬上という子に助けられたらしい。
197創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 21:36:52 ID:a5n7oBnl
  
198創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 21:37:07 ID:a5n7oBnl
   
199創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 21:40:00 ID:21Pykqst

200創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 21:43:23 ID:a5n7oBnl
   
201創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:28:31 ID:MQzKheTk
202創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:33:00 ID:a5n7oBnl
さるさん?
203拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.代理投下:2008/11/23(日) 22:38:37 ID:MQzKheTk


犬上小太郎。
ネギの仇打ちをしようとしていることから、殺し合うこと自体はためらわないだろうと思っていたが、
ククリを助けたことから、どうやらゲームには乗っていないようだ。
できるなら、トリエラとも和解してほしいところだが……難しいだろう。

ククリがヴィクトリアのことを全く話していないのが気になった。
いや、まあレミリアに襲われたことを考えると、自己紹介をする余裕がなかったのだと推察できるが、
トマから聞いたククリの性格的に、気にかけないのも不思議に思った。

『うん……うん! わたしもトリエラさんが無事で、ほんとうにうれし――』
「…………っ!!」

死んだ。
ククリが死んだ。
先の履歴で、死亡したことは知っていたが、その瞬間を聞いてしまうとは。

『ククリ! どうしたのククリ!?』
『――“ご褒美をちょうだい”』

そして極みつけは何者か――恐らくは金糸雀によるご褒美の請求。
それを最後に、この履歴は終わった。

「……ちく、しょう」






「シェルター」から「温泉」

『――もしもし?』
『え……トリエラさんじゃ、ない? あなた誰ですか?』

シェルターの、恐らくはジュジュを寝かしてくれた人間であるイエローと、
これまたククリの会話から始まった。

途中でリルルという人間に変わったが、得られた情報はその場にいた人間に対する情報のみだった。
ククリ、リルル、そしてひまわりという赤ん坊が共に行動していて、
そしてイエローが金糸雀と知り合いであるということぐらいか。

イエローと金糸雀がどういう関係かは分からないが、
死んだジュジュの扱い方から、ゲームに乗ってる金糸雀と組むことは考えにくい。
金糸雀がゲームに乗っていない放送前に共に行動していたと考えるのが妥当だろう。


204拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.代理投下:2008/11/23(日) 22:39:42 ID:MQzKheTk
あとは金糸雀が空を飛ぶ剣を持っているということぐらいか。






「シェルター」から「病院」

『……もしもし?』
『あっ――やっと繋がった! もしもし? そちらは『病院』ですか?』

トマと青……野上葵の会話。

『えーと、そちらはどうお呼びすればいいですか?』
『ウチの名前は、のが……いや、えーと、『あお』……やのうて……その……』
『?? “青”さん、ですか?』
『あー、まあ、それでええわ』

野上葵の名乗りが悪いことから、「青」という偽名は、偽名ではなく、
名を聞かれて、けれど普通に名乗るのはまずいのではといった葛藤からきたものを
トマが勘違いしたのだと理解した。

それから野上葵が探している人間は「三宮紫穂」
『明石薫』がこのときは野上葵の近くにいたことを考えると、
野上葵の知り合いは明石薫と三宮紫穂の二人なのだろう。

そこからの情報は、トマから聞いたとおりの内容で、特に目新しいものはなかったが、
トマが聞き間違いをしているかもしれないと、
念のためにメモを取り出し、その内容を書きだす。
無論、首輪の「中の人」に見えないよう偽装されたのぞき穴は隠して。

『その必要はないわ。だってウチの力なら――』
『アカン、今手元に地図ないわ。ちょっと取ってくる』
『いや、僕がメモしておきますよ。後で“青”さんにも改めて教えてあげますから』
「ん?」

履歴を見る限り、放送の時間帯になったのだろうが、
電話口にはジェダの放送が全く聞こえてこない。

(いや、確かに放送の為のスピーカーも無しにどこからか聞こえてきたけどさ、
 普通に耳にはいるのとは違う……トマがはやてからきいた念話ってやつか?)

脱出の手がかりになるかもしれない。記憶にとどめておく。


『……もしもし? もしもし、“青”さん!? どうかしましたか!? もしもし!』
『――――嘘やっ!!』
「…………」


205拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.代理投下:2008/11/23(日) 22:40:43 ID:MQzKheTk

そこから先はめぼしい情報はなかったが、
それでも、ベッキーは最後まで聞いた。








「インデックス」から「城」

『……ふぁい、もひもひ。こひら、興津高校教員室ですぅ〜』
『えっ?』

一瞬の間のあと、話は続く。

「私を、襲った人……。火をつけて、私を燃やして殺そうとした……」
「嘘!? トマ君が、そんな……っ」

このとき「インデックス」を持っていたのはククリだ。
そして、トマがこの時城にいた誰かを襲ったのだという。
だが、トマのことを信用しているベッキーは、それを鵜呑みにはしない。
この声の主の正体はだいたい見当が付く。


トマがこれまで会った人物は
アルルゥ、トリエラ、はやて、レックス、雛苺、アリサ、葵、そして自分である。

そのうちアルルゥ、レックス、雛苺は自身も会っている。声を間違えるなんてない。
トリエラと葵は通話記録ではあるが声は聞いているのでこれも除外。
はやてとアリサも、声がわからないからありえなくはないだろうが、
友好関係にあるので考えにくい。

となると、いつこの声の主はトマに会ったのかということになるが、
この中には今現在はトマの手元にある参號夷腕坊に乗っていた人間がはいっていない。
構造上、中で操作する人間がいなければ使えない参號夷腕坊であるし、
中に人間が入っていたのはおそらく間違いない。
トマ達が撃退した時には中に姿はなかったが、
ヘルメスドライブの類の道具を持っていたか、
野上葵のようにテレポート能力を持っているかして脱出したのだろう。
そして、トマたちを襲うのに失敗し、参號夷腕坊を残して逃走。

電話の相手がトマの知り合いだということを知り、復讐がてら相手を煽った。こんなところか。
それにしては演技がやや凝っていたような気もするが。
推測なだけに、他の可能性も考えるべきだが、まあいい。
重要なのはこの電話の主とトマが敵対関係にあるということなのだから。
周りにそのことをあまり広められていないことを祈ろう。






「シェルター」から「ファクトリアルタウン」


206創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:41:02 ID:a5n7oBnl
  
207創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:41:19 ID:a5n7oBnl
   
208創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:41:34 ID:a5n7oBnl
 
209創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:41:47 ID:a5n7oBnl
 
210創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:42:02 ID:a5n7oBnl
 
211拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.代理投下:2008/11/23(日) 22:42:06 ID:MQzKheTk
『もしもし?』
『もしもし、そこはファクトリアルタウンですか? 僕はトマといいます』

トマと「白」の会話だ。

『トマ……?』
『はい、トマといいます。ところであなたはどなたでしょう?』

それから少しの間があり、

『……“白”だよ。そう呼んで』
『“白”さん、ですか? はい、判りました』

(……ん?)
そこにかすかな違和感を、感じた。

名簿にない名前を名のること自体はそうおかしいことではない。
相手が信用できるか分からない以上、偽名を名乗ることは不思議じゃない。
トマは間違えた解釈をしたのか、「白」が「白レン」だと思っていたようだが。

だけど、この「白」の偽名は、なんというか、タイミングがずれているような感じがした。

『そう、それじゃこんなのはどうかな。
 このファクトリアルタウンに遺されていた、ある参加者による研究メモみたいだよ』
『誰かが残したメモ? どんな内容ですか?』
『大まかな所は『この島の何処か見つけられる場所に、島の動力炉が有るはずだ』という物でね……』


トマから聞いた以上に詳しい話を「白」は語る。
その内容は、このゲームを破壊するために確実に役立つものだ。
これも葵の時同様、メモをする。


『ううん、良いよ。それじゃここに連れて来られた人の中で、トマ君の知り合いは誰かな?
 もしかしたら何か力になれるかもしれない』

やがて「白」による動力炉の話は終わり、白のほうからそんな提案が出された。
それにも奇妙な違和感を覚える。

普通なら、まずは知りあいがいるかどうか聞くだろう。
それを「白」はトマの知り合いは誰だと、聞いた。
まるでトマに知り合いがいることが分かっているみたいに。

『僕の知り合いですか? 勇者さん――えっとニケさん、それからククリさんにジュジュさんです。容姿は……』
『ニケ君なら知ってるよ』

(……え?)

トマの発言を遮って、白が発言する。
まるでその返答が返ってくることを知っていたように。
そのこと自体はおかしいことではない。
相手はトマの知り合いである、ニケのことを知っていたのだから。
だが、ニケのことを知っていたのなら、別の疑問が浮かんでくる。


212創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:43:01 ID:a5n7oBnl
213創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:43:20 ID:a5n7oBnl
 
214創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:43:38 ID:a5n7oBnl
  
215拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.代理投下:2008/11/23(日) 22:43:42 ID:MQzKheTk
『じゃあ……そうだね。危険人物も含めて、トマ君がこの島で会った人達を順番に教えてもらおうかな。
 何時何処でどんな風に会ったのかも加えてくれると嬉しいな』
『はい!』

その「白」の言葉も、『危険人物』という部分を強調していっているように聞こえた。

『それでなんとか生き延びたんですけど、毒にやられて死にそうになって。そこを助けてくれたのがトリエラさんです』
『…………トリエラさん、だね』

その少しの間も気になった。
まるでトリエラに何か思うところがあるような、そんな感じがした。

『八神はやてさんと出会いました』
『はやてさんは凄く落ち込んでいて……でもしばらく話して悩みを明かしたりして、すぐに仲良くなれました。
 それで、一緒にがんばって前に進もうって』
『その後、レックスという少年に襲われて……はやてさんが居なければ殺されていたと思います。
 更に不気味なヒナっていう人形も襲ってきて、レックスには凄い魔法を撃たれて……本当に絶対絶命でした』
『でもはやてさんがレンという子から託さ……渡して貰った
 武装錬金という物を使って――ヘルメスドライブって言うそうです。
 それではやてさんと僕は、はやてさんの知り合いのアリサさんの所に転移したんです!
 あれは本当に凄いです。あんな危機から一気に仲間の居場所に行けるなんて』

その発言の間、「白」の言葉は相槌すらなくて

『少し前にそのヘルメスドライブっていう武装錬金がまた使えるようになったんです。
 だからはやてさんとアリサさんにはお友達に会いに行ってもらいました。
 高町なのはさんの所です』
『――――――っ』


……声にならない声を聞いた。


『勇者さんも仲間を集めて行動してるみたいですし、はやてさん達もそれと合流しているかもしれませんね。
 このシェルターに帰って来る頃には凄い反ジェダの集団が出来てますよ、きっと!
 そしてみんなでジェダを倒して、みんなで生きて帰るんです』
『……そうだね。それはきっと……素晴らしい未来だよ……』

それは、その言葉と反して、とてつもない絶望に触れた者の声だった。



「…………」

「白」とは何者だ。
ベッキーはこの記録を見て、まずそう思った。


216創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:43:57 ID:a5n7oBnl
 
217拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.代理投下:2008/11/23(日) 22:44:13 ID:MQzKheTk

動力炉のことを話したり、ゲームに乗っていないであろうニケの知り合いだということを考えると、
ゲームに乗っていない……そう判断できなくもない。

だけどそれにしては、不審な印象を感じすぎた。

何故、電話の相手がトマだと知ってから、偽名を使ったのだ?
何故、トマの知り合いのことを知っていたのに、知らないふりをしたのだ?
何故、トリエラの名を聞いて、間が空いた?
何故、八神はやての名を聞いてから、発言がしばらくなくなった?
何故、高町なのはの名を聞いて、声にならない声を出した?
何故、トマのことは聞いて、自分のことは何一つ話さなかった?


その答えを、ベッキーはおぼろげながら、理解していた。
それはトマから話を聞いてからずっと気になっていたこととつながる。


はやてが殺されて、その時近くにいたはずのなのはとアリサはどうなった?


ヘルメスドライブが使用されたのは、トマ曰く17時頃とのこと。
放送まで残り一時間。
そしてその一時間の間にはやては殺された。
はやてが歩けないことを考えても、
友達であるアリサやなのはがこの一時間の間にはやてのそばを離れることは考えにくい。
つまり、はやてはアリサとなのはの目の前で誰かに殺されたことになる。


その時、アリサは、なのはは何を思った?



ベッキーは、この殺し合いの場で、いろいろな人間を知った。


大事な人が死んだことで、心が狂ってしまった人形を、
自身が生き残るために、順真な人間を利用する人間を、
たった一人の妹が死んだのに、素直になれない吸血鬼を。
純粋な故に、向けられた敵意に素直に応じてしまった獣人を、
大切な妹を守るために、殺し合いにのる決心をしてしまった勇者を。


レックスとアルルゥは信じられる。
彼らは共にレミリアに立ち向かった者同士だ。
トマ曰くアルルゥも最初は殺し合いに乗っていたらしいし、
レックスもレミリアと戦う少し前まで殺し合いに乗っていたし、襲われた。
だがレミリアに向けた、妹に、姉に向けた想いは、まぎれもない本物だ。


218創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:44:29 ID:a5n7oBnl
 
219拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.代理投下:2008/11/23(日) 22:45:29 ID:MQzKheTk
レックスに限って言うならば、「タバサ」が死んだら、また殺し合いに乗る可能性はあるかもしれない。
でもその可能性も限りなく低い。そうベッキーは信じられた。


トマも同様だ。
放送でたくさんの人間の死を知り、目の前の人間も助けられず泣いても、
悲しいことやつらいこと、罪を消せなくても、笑いたいといったトマも信じられる。
そのトマが元の世界で一緒に旅したニケとククリも同様だ。

だけどベッキーは、アリサやはやてという人間のことをトマ越しにしか知らない。
ジェダに死者の発表をされる前の、まだ誰も死なずに帰れるという可能性を
僅かにでも信じていた頃のアリサのことしか聞いていない。
そのアリサの知り合いのなのはのことは、さらに知らない。


トマがアリサの声を聞き間違えるなんてことはないだろう。
そして、アリサとはやての知り合いのなのはは、意志の強い人間であるらしい。
その意志が、レックスのように間違えた方向に向かってしまったとしたら?


―――「白」は高町なのはで、高町なのはははやての死に絶望し、悪魔の囁きに乗ってしまった。


……そう言う結論を、出してしまっていた。


電話の相手が「乗っていないときの知り合い」のトマだから偽名を使った。
ゲームに乗った者を殺そうとしているから、トリエラを気にかけた。
目の前で死なれてしまったから、はやての名に反応できなかった。
自分がこれからすることを、もしくはもうしてしまったことを知られたくなかったから、トマに話さなかった。


そう、説明がついてしまう。

「……だけど、仮にそうだったとしたら」

だがそうなると、動力炉のことを話した理由がなくなる。
ゲームに乗っていたのなら、そのような情報はむしろ流さない方がいい。
これぐらいの情報では、ゲームは覆せないと考えたのだろうか。

いや、この話を聞く感じでは、「白」はまだ悩んでいた。
それは悪魔になろうとしてる少女の、唯一の良心だったのかもしれない。


220拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.代理投下:2008/11/23(日) 22:46:16 ID:MQzKheTk
この電話をしている時のトマは、本当に希望に満ち溢れたことばかり言っていて、
自分には話した、ヘルメスドライブの元の持ち主のレンのことや、
雛苺がジュジュのことを知っていたというような、暗くなってしまう話をあえてせずに、
そうやって、悲しい憶測をしてしまう自分を偽っていたのだろう。
だから、「白」の変化に気付かない。

無論、これもすべて憶測のうちの一つだ。
実際にそうなのかは、直接会ってみなければ分からないだろう。

だが改めて、トマがこの会話を聞いた時に、どのように感じるか。
そう思うと、この履歴を消してしまいたい気分になる。

「次の履歴、聞くか……」





「「unknown」から「unknown」……?」

これまでと違い、出どころも届いた場所も解らない通信だ。

『―ンク、聞こえ―――――――ますか? ――――』
(――!? なんだこれ!?)

電波、とは違う。
音は通信装置から出ていない。
履歴に残っているというのに、この音は、直接頭の中に響いてくる感じだ。
念波、とでも言うべきだろうか。
だがそれだとこの通信履歴に残る理由にはならないが。

『このメッセ―――うけと―――とにお願いが――――』

『――か彼に伝え―――さい』

『――の神殿の中に――――――魔王の――――――』

『天まで―――塔の――――上で――――時を刻んで――――――――』

そこで、正体不明のメッセージは終わった。
声の特徴でわかることは、恐らく相手が女性であろうということ。
いや、やや幼印象を受けるし、性徴前……少女の声か。

(これもジェダの差し金か?
 それにしちゃあ、かなり切羽詰まった上に、とぎれとぎれでわけわかんなかったけど……)


221拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.代理投下:2008/11/23(日) 22:48:02 ID:MQzKheTk
ジェダの罠でないとしたら、別の場所……外部からの救援?
確かにここには時空管理局の魔法使いだとか、天空の勇者だとか、
ミグミグ族の末裔だとかがいるのだし、ここに呼ばれていない人間や大人等が救援に来ることは考えられる。

「神殿にジェダの手がかり、塔で時を刻む……」

解った単語はそれぐらいか。
塔か神殿かはわからないが、C−3とE−8にそれらしいものがある。
そこに、何かあるのだろうか。

「E−8にあるのはジーニアスの世界の救いの塔……
 確か、ジーニアスの世界の象徴ともいえる塔で本当はものすごく高くて……高くて?」

天まで届くほど高い塔?
となると、E−8の塔、「救いの塔」の上で時を刻めば、誰かが救援にくるのか?
そしてそれに対する脱出の手がかりが、神殿の中にあるっていうのか?

(おいおいおいおい! 
 時を刻むってあれか? タイムスリップでもしろっていうのか?
 人が小さくなったりできるぐらいだし、それぐらいはできちまうのか?
 つーかRPGじゃねえんだからそんな都合よく神殿やダンジョンにアイテムがあってたまるか!
 いや、トマはそんな感じな世界からきたんだっけか?)

珍事に巻き込まれやすい日常生活を送っていたとはいえ、所詮現実世界側のベッキーには理解しがたい。
トマがシェルターに来たら、このメッセージについても聞かねば。



最後の履歴。
これも「unknown」から「unknown」にだ。

『く…………くっさ〜〜〜〜〜
 勇者さん! 今猛烈に臭い台詞を吐きませんでしたか!? あれ、勇者さん? 勇者さ〜〜〜ん!?』

こけた。
盛大にこけた。

てっきり次も重要な情報が得られるものだと思っていた。
しかも何の意味もない話で、ほとんど意味のない情報に思える。
勇者さん、とはレックスのことだろうか。トマの知り合いのニケのことだろうか。


ただ、先ほどの意味ありげなものと違い、はっきりとした声だった。
そして、履歴はこれを最後に終わっていた。


222拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.代理投下:2008/11/23(日) 22:50:00 ID:MQzKheTk


すなわち、これが一番最初にこの通信履歴にのった会話だということになる。
放送は昼前。ちょうど自分がジーニアスと湖底探索をしていたころだろうか。


(これも発信場所も受信場所もわかんねえ。
 外部からの通信って考えていいのか? 
 つーことは、このunknownが念波?を飛ばしたときには、
 この会場はそれほど念波?を防げていなかったってことか?)

外部からの通信。
最初がはっきり聞こえて、後の通信があまり聞きとれなかった。
通信の手段が違うという可能性もあるが、
もしかして、昼頃までは念波?への対策が十分にされていなかったのではないだろうか。
先の推測が正しければ、ジェダは割と行き当たりばったりな性格であるのだし、
後でそのことに気付いて、通信妨害を強化した可能性も考えられる。

となれば、他の受信装置の類を探せば、他にも外部からの通信を聞けるかも知れない。


「ベッキーさん! ベッキーさ〜〜〜〜ん!!」

遠くでトマの声が自分を呼ぶ。
機械のうねる音が響く。
トマがシェルターについて、入口を閉じたようだ。

ここに来るのがどうも遅かった気がするが、自分が去った後もジュジュを探していたのだろう。
彼女のことも、きちんと教えてやらねばならない。


そして、ここで得たことも。
北東で激しい戦闘があったらしいことを、
そこで、トマの仲間が、既に一人死んでしまったことも、
「白」のことも……


鬱屈とした雰囲気になりそうだが、黙ったままというのも悪い。
ベッキーは機械室を後にし、シェルターの入口へと向かった。


223創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:50:56 ID:a5n7oBnl
224創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:51:07 ID:a5n7oBnl
225創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:51:22 ID:a5n7oBnl
226創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:52:00 ID:a5n7oBnl
  
227創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:52:12 ID:a5n7oBnl
  
228創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:53:39 ID:a5n7oBnl
  
229拭えぬ過去を振り返り  ◇7KR.e180t.:2008/11/23(日) 22:53:44 ID:theTeBFM
【H−5/シェルター地下/2日目/深夜】

【レベッカ宮本@ぱにぽに】
[状態]:吸血鬼化(肉体強化、弱点他)、十分に血を吸って完全回復。
[服装]:普段通りの服と白衣姿(服は少し血などで汚れているが、白衣は新品)
[装備]:木刀@銀魂、ヒラリマント@ドラえもん(ボロボロだが一応使える)
[道具]:支給品一式×2、15歳のシャツ@よつばと!を裂いた布、宇宙服(最小サイズ)@からくりサーカス
     輸血用パック×20、クーラーボックス、保冷剤
[思考]:トマ、悪いな……
第一行動方針:通話記録をトマにも見せ、意見を求める。
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
        また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)
第三行動方針:レミリアを止め、ジェダにぶつける。そのために首輪を外す方法などを模索する。
第四行動方針:もし三宮紫穂に会ったら、野上葵の死体を辱めたことを改めて謝る。
基本行動方針:主催者を打倒して元の世界に帰る。
参加時期:小学校事件が終わった後
[備考]:吸血鬼化したレベッカの特殊能力として、魔力の存在と飛行能力を確認しました。
   トマと時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せします。
   宇宙服を着れば日中の行動が可能になる可能性に思い至りました。まだ真偽の程は分かりません。
   シェルター内の通話記録により、この会場の全ての電話上の会話を聞きました。


【H−5/シェルター入口/2日目/深夜】

【トマ@魔法陣グルグル】
[状態]:健康、ずぶ濡れ
[装備]:麻酔銃(残弾6)@サモンナイト3、アズュール@灼眼のシャナ、魔導ボード@魔法陣グルグル! 
[道具]:基本支給品、ハズレセット(アビシオン人形、割り箸鉄砲、便座カバーなど)、
    参號夷腕坊@るろうに剣心(口のあたりが少し焼けている・修理済み)
    はやて特製チキンカレー入りタッパー、手術道具の一部(のこぎり・メス・のみ等)、野上葵の首輪
[思考]:ジュジュさん……
第一行動方針:ジュジュの死体の行方が気になる。シェルターの置手紙を書き直す。
第二行動方針:『テレパシー』『念話』の類を使える参加者/使えるようになる支給品、を探す。
        また、『湖の底』を調べ直すために必要な道具も探す(ジーニアスの『海底探検セット』など)。
第三行動方針:他の参加者と情報と物の交換を進める。必要ならその場で道具の作成も行う。
第四行動方針:『首輪の解除』『島からの脱出』『能力制限の解除』を考える。そのための情報と物を集める。
第五行動方針:できればトリエラと再び会いたい。それまでは死ぬわけには行かない。
第六行動方針:できればレベッカ宮本が会った「明石薫」(実はベルカナの変身)について詳しく知りたい
基本行動方針:アリサとニケたちとの合流。及び、全員が脱出できる方法を探す。
[備考]:「工場」にいる自称“白”の正体は「白レン」だと誤解しています。
    レベッカ宮本と時間をかけて情報交換しました。詳しい内容は後続の書き手にお任せします。




[備考]:シェルター内の通信装置には、これまでの会場内の通話記録が残っていました。
    他に、出所不明の記録を確認しました。

230創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:56:59 ID:a5n7oBnl
  
231創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 22:57:09 ID:a5n7oBnl
  
232創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 23:00:09 ID:RdZBjkVx
乙でした、かな?

時を刻むって航時機とか時の勇者のオカリナとかの脱出アイテム化フラグになるんかね
233創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 23:04:17 ID:RdZBjkVx
って、よくみりゃリンクあての通信かな
時の神殿に魔王が来てことと
ムジュラでの最初の三日間のラストのイベントの事を考えるとゼルダのメッセージっぽい
234創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 23:09:02 ID:Hy7lO2oM
投下、代理投下乙であります
ちょ、ギップルwww
突然のオチに笑ったけど、これはこれで伏線になってたり、これもGJ!
通話記録はちょっと都合良すぎかとも思ったけど、でもこれだけの近代施設なら、それもアリかな?
いい具合に誤察も混じって、面白いフラグも立ってるし
頭脳担当なのに首輪以外の考察が進んでいなかったコンビには、これもいい塩梅かも

にしても海鳴温泉街にベッキー宅とは、なかなかカオスな事にw
235創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 23:22:51 ID:30Y51fai
投下乙!

着信履歴か…
誤解フラグと生還フラグがたくさんでてきたな。

メッセージがゼルダからリンクへだとすると、神殿て沢山あるな。
森の神殿ならC‐3が正しくそうだし、
炎の神殿なら山をしらべればありそうだ。
水の神殿なら湖底、
闇の神殿なら廃墟か?

やべえw候補が多過ぎるww
236創る名無しに見る名無し:2008/11/23(日) 23:55:37 ID:6sgCTn8h
投下&代理投下乙!
ギップルちゃんとつっこんでたのかw
というかこれかなり重要な複線だよね
オカリナ重要フラグ化ktkr!
237創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 00:29:38 ID:ns1I+w9u
投下乙!

むう、通話記録か……。
面白いし考察も見事、確かに電話交換所のような施設は(参加者が入れるかどうかは別として)必要、なのだけど……。

リアルタイムで横から聞ける、というのは、大丈夫かな? 今後の展開縛りの危険として。
広域レーダーが遠い場所の展開を縛るのと似たような危険がありそう。
例えば、シェルター組の時間が先に進むと他の組が電話を使えなくなる、とか。
ここで確認できる他の場所の通話記録は6時間ごとの更新、とかならその恐れはグッと減るけど……。
ちょっと心配しすぎかな?

とりあえず考察はGJです!
謎メッセージも、現段階では雑音で終わるのか今後に繋がるのか、分からないあたりがいい感じ!
……てか何でギップルww
238創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 02:07:04 ID:p1wou9Xn
投下乙。
GJ、とは言える。けど多分これ議論を要すると思う。

まず考察は良い感じ。
出てきた情報から一歩一歩状況を纏めて行く描写は堅実で面白い。
あくまで情報を元に推理しているし、感情移入というか思考の移入もしやすい。
“白”のところの声の無い悲鳴まで電話で判るのはどうかと思うけど、他は問題無し。
こういうところはGJ。

ただ、通信記録自体は微妙なところ。
既に言われてるけどリアルタイム更新の情報はかなり危険。
まあリアルタイムじゃなく6時間更新にすれば行ける範囲の気はするけど。

あと最後の外部メッセージだけはまずい気がする。
大胆な要素っていうなら何度か出てるけど、時刻みとかそういう、
ロワの最終的な部分に直接関わりそうな要素はまだ早いと考えて良いと思う。
どうもゼルダ姫意識した声だけど、これやるとリンクに変な生存ロック掛かっちゃうだし。
すぐ消化出来るイベントならまだともかく、塔まで遠い上に目指す予定も無いw

個人的には時刻み関連無し、というより誰の言葉か性別すら完全に不明(というより未定)、塔に来てだけ、
外部メッセージ? くらいなら有りと思わないでもない。これでも甘いかもしれないけど。


ついでにもう一つだけ細かいこと。
東方の吸血鬼は水が苦手なのではなくあくまで『流水を渡れない』ようなので、
ベッキー水でダメージを受けてる描写は変更が必要だと思います。
原作でも状況を遠巻きに避けてるから具体的な所は分りませんが、
行動の阻害効果は日光以上だけどダメージを与えられる弱点と言われた事は有りませんから。
足がすくんで動けなくなるとか金縛りとかが正しいのかな。
(というかロワ内じゃフランがシャワー使ってるしw
 これはお湯だから大丈夫だったと考えた方が良いけど)
239創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 08:06:15 ID:FLmXEU0p
投下乙!
ぎwwwぷるwwww
ニケのこえはちゃんととどいていたのねw
履歴も面白い設定だなーと思った。確かに電話があるならそれもありだなw
問題点は俺も気になったことが多いかな。
でもとりあえず問題なしでいいと思う。
通信記録による展開縛りは自分も気になったけど、
外部からの通信を考えるとこれってジェダが意図して入れたものじゃないんだよな。
実は6時間おきに自動更新されるシステムだけど、他の時間には更新ボタンが必要だとか、
そういう後付けでいいと思う。
超推理に関しては、超というほどのものではないと思う。普通の推理ってか、憶測?
会話を聞いてそれで感じた違和感を自分の経験に当てはめただけだし。
「白」の部分最初の方に不信感だしてるし、いちいち発言がきになる理由になってる。
微修正は必要な箇所があるけど、大きくは変える必要はないかな?
謎のメッセージのリンク優遇に関しては、他ロワでもアニロワのハルヒ勢とか、
中盤で優遇フラグが立つのは多いし、別にいいと思う。
最悪、情報だけ言わせてから死ぬのもありだと思うしw
「時のオカリナ」や「ムジュラの仮面」のクライマックスを想像させる言葉だし、
時を刻むは、これまで謎アイテムだったカシオペアがようやく日の目を見る感じだし。
神殿も、既に言われているとおり候補はたくさんあるしな。
ただ、既に言われているとおり、相手がゼルダ(と思われる)ようにするのはちょっと贔屓気味だと思う。
語尾の部分や最初の名前を呼ぶ部分をぼかして、誰の言葉か不明にすればいいんじゃないかな?
てあれ?これって議論スレにいくべきか?
240創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 08:37:42 ID:3yofqz1T
議論スレに行くべきだね。
暫定採用状態の議論が一時凍結しちゃうけど、しゃあない。
241創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 11:50:35 ID:0IVDUJQB
いきなり通信記録を出されてこれってなのはを責めるために書いたんじゃないか?
悪魔のささやきだとか、もろそうだしなのは悪魔化を狙ってるようにしか見えない。
二重人格でも厄介なのにわざわざ悪魔化のフラグを建てようとするなよ。
帰ってくれ。二度と作品を書くな。
666氏と違って実績も信頼もないんだし、消えてもだれも悲しまないよ。

まあそれでも書き手に押し切られたら通すしかないんだけどな。
242創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 12:28:54 ID:NbkeyCsK
今回のはそんな所の問題じゃないよ。
議論スレ行けば判るけど、大体次の点が問題になってる。

・通信記録って大丈夫なのか(リレー上の問題、情報過多の心配、ついでに優遇の懸念など)
・推理が一部飛んでいないか(イエローの事を知るくだりで描写不足の指摘有り)
・最後のメッセージ(ゼルダ姫?)はまずくないか[重要]

前の話は通す分に問題なかったから書き手が押し切れた。
今回は通るかどうかの問題だ。このタイプの問題話は押し切ろうとしてもNG判定になりうる。
243創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 12:57:15 ID:0IVDUJQB
だから破棄でいいじゃん。
修正なんて求めないで問題ありだから破棄しろっていえばいい。
これだけ問題上がってるなら潔く破棄でいいと思うよ。
この書き手も666氏と同じで後のこと考えないみたいだし
実績がないなら消えたってこのロワに害はないんだし。

ロワ進行の妨げになる展開を書く奴ばかりいるロワじゃねえか。
244創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 13:22:02 ID:3yofqz1T
文句やイチャモンは毒吐きでお願いします。
マイナスにしかならない発言は書き手の目に入らない場所でやるべきでしょう。
それでもある程度は自重してくださいね。
「毒吐きでなら何をやってもいい」というわけではありませんので

何か意見とか代替案があるなら議論スレへ。
誘導が終わりましたので本スレでの意見は全て黙殺されます。
245創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 18:08:00 ID:NRPQMSfz
243みたいにロワ進行の妨げになるアンチが粘着しているみたいだね

書き手さん達の心情的に害が無ければいいけど…
246創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 22:02:05 ID:6l1PwU2G
荒らしにいちいち反応しないでください
247創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 12:16:51 ID:hG0PfSH5
妥協案なんて探さずに、だめなものはだめでいいと思うけどな。
二重人格の話も通信記録の話も書いてるのは問題児な書き手みたいだし。
どう考えても後に続く人のことを考えてない。面白いからやったっていうやつもいるし。
いろいろな話を通しでやっていくと図に乗ってますますひどくなると思うぞ。
248創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 14:34:05 ID:aWC1JKTJ
議論スレでやれと言っているだろう
249創る名無しに見る名無し:2008/11/25(火) 21:33:41 ID:11ofLhHF
議論スレ通さない発言は全部無視だろJK
250 ◆o.lVkW7N.A :2008/11/26(水) 00:36:16 ID:7IXonX93
遅くなってすみません。
投下始めます。多分、短いのでさるさんは平気かと思いますが。
251Kirsch Maiden ◆o.lVkW7N.A :2008/11/26(水) 00:40:51 ID:7IXonX93
暗黒色の帳に包まれた夜の闇は、全ての参加者に、等しく束の間の静寂を約束する。
頭上に輝く月と星はまるで、この殺し合いの一日目を幸運にも生き残った少年少女たちを祝福するかのようだ。
それは美しい、それこそ声を失って息を呑むほどに煌びやかな満天の星空。
排気ガスとビルのネオンに覆われた現代の都会では決して見ることなど不可能なそれは、
さながら淑女の宝石箱をひっくりかえして床に散りばめたような、眩い光跡を誇っていた。
けれどどれほど麗しかろうが、その夜空に心奪われ見惚れる者など今はいない。
何故なら現在のこの島のどこにも、そんな余裕と感性とを兼ね備えた人物は存在しないからだ。
仮にいるとするならば、恐らくその人間の精神は人並み外れて頑強であるか、或いは――――。


     *     *     *


薄黒い雲が星々を覆い隠したのは、深夜十二時に行われた臨時放送から僅かばかりの時間を経てのことだった。
黒雲はすぐにその質量を増大させると、端々からぽつりぽつりと冷たい雫を落とし始める。
どこか濡れない場所へ、と思う間もなく雨脚は激しさを増し、肩を穿つ水滴はいつしかさくらの身体を濡れ鼠に変えていた。
じっとりと濡れた衣服は肌に張り付き、凛と張り詰めた夜気に晒されてどんどんと体温を奪い取っていく。
寒い、寒い、寒い。身体ががくがくと細かく打ち震え、ぴたりと合わさったままの上下の唇が青紫に変色する。
全身を冷たく水浸しにした彼女は、けれどぴくりとも表情を変化させず、その場に立ち竦んでいた。
身体を動かすのは、億劫であり恐怖だった。
「何かをしよう」とそう思えば、それがどんなに些細なことであれ思考する過程が必要になる。
そして、脳のどこか一部分の機能でも働かせればそれだけで、思い出してしまう。考えてしまう。気付いてしまう。
忘れようと、考えずにいようと、気が付かぬままでいようと必死に努めている「そのこと」を。

――――だから、何もしたくはなかった。
復讐も、反撃も、対抗も、逃走も、そのどれをするのも気が引けた。
さくらは思う。ただ淡々とマリオネットのように、繰り手の引く糸の動くままにしていればいい、と。
いつか持ち主が玩具に飽きてぽいと捨てる頃には、全てが終わっていることだろう。
尤も、子供が玩具を捨てるのは、最早これ以上遊べない状態にまで壊れたときだと相場が決まっているのだが――。

改めてさくらは、今の自分の『所有者』である相手に目を向けた。
視線の先に居るのは、己の半分ほどの身の丈しかない骨董人形の如き少女。
すぅすぅと寝息を立てて眠るその様は、自室のベッドでふかふかな毛布に包まっているかのように安心しきっていた。
ふわふわとした金のカール毛にピンクのリボンを結び付けたその姿は非常に愛らしく、
平時であったならば、すれ違う誰もがその可愛らしさに目を細め、笑みを向けたであろうことが容易に想像できる。

「………………て」

けれどさくらにとって、眼前の少女はその外見そのままの存在ではなかった。
どれほど見た目が愛くるしかろうが、『それ』は決して福音のラッパを吹き鳴らす御使いなどではない。
その瞳に映るのは、周囲の人間が齎す赤き血の色。唇から紡がれるのは、毒々しく彩られた狂気の言葉。
纏う空気は濃密な悪夢で、零れる笑顔は地の果てまで落ちていきそうな恐怖の象徴。
天使などとは到底呼べない。むしろそこから最もかけ離れ、百八十度真逆の場所に位置する存在――――。
それが、傍らで昏々と眠る少女の正体……のはず、だった。

「………………して」

逃げればいいじゃない、と自分の中に潜むもう一人の自分が心の奥底で呆れ果てるように命じる。
今、相手はすやすやと眠りこけているのだ。チャンスだけなら存分にある。
だがそれは、どんなに望もうとも初めから不可能な相談だった。
この指輪がある限り、少女と交わしてしまった契約がある限り、自分はどこにも逃げられない。
252Kirsch Maiden ◆o.lVkW7N.A :2008/11/26(水) 00:41:55 ID:7IXonX93
   
「…………うして」

ぶるりと身体を震わせて、青くなった唇を前歯できゅっと噛み締める。
全身をぐっしょりと濡らし寒気に肩を抱く自分とは正反対に、雛苺は幸せなまどろみの中にいた。
満面の笑みを浮かべて地面に横たわり、時折「ふみゅー……」と小さな寝言を呟いている。
相違の理由は至極簡単。降りしきる雨は満開の桜の枝に遮られ、少女のもとにはさほど届かない。



――――彼女は『桜』に、守られているのだ。



どれほど雨粒が降り注ごうとも、雛苺の身体が濡れることはない。
水滴は全て、『桜』がクッションになって受け止めているから。
どれほど強風が吹き荒れようとも、雛苺の身体が飛ばされることはない。
疾風は全て、『桜』が盾になって防いでいるから。
だから彼女は傷つかない。自分が起こす出来事の意味合いに、その重さ深さに気付かない。
傍らに立つ『桜』の大樹に保護されて、純真無垢なままの心を保つことが出来る。
少女の頭上に咲く『桜』が、その幹にどれだけの傷を刻まれているか、その花をどれだけ無残に散らしているか、微塵も知らずに。

「…………どうして?」

縦に横にと吹き乱れる雨風にかき消されるのにも構わずに、さくらは同じ言葉を繰り返す。
壊れたオルゴールのように、蓄音機のように。なぞるのはひたすらに一つの旋律だけ。
自問自答、けれど答えは出ない。出ると思っているわけでもない。
ただの無為なお喋り。背中の紐を引っ張ると決まりきった言葉を口にする、昔懐かしい人形のようなもの。
けれど答えを求めていなかったその問いに――――――――、





「……なにが、なの?」





――――――――返答が、あった。

完全に予想外だったその返事に驚いたさくらは、瞬間、なんの言葉も返せずにぴしりと凍りつく。
はっとして声のした方向へ視線を落とし直せば、とろんとした眠そうな瞳の少女がこちらをぼんやりと見据えていた。
紅葉のように小さな掌を口元に当ててふわぁと薄く欠伸をすると、雛苺は両目をこすりこすりして空を見上げる。
「雨、ざぁざぁ降ってるの。うるさくて起きちゃったのよ」
そうして横たえていた身体を起こし、大きく張り出した桜の木陰から一歩外に出た。
降雨の勢いを確認するかのように、手を虚空へそっと伸ばす。
それと同時に、雨に打たれて散った桜の花弁がひらりと風に乗り、雛苺の掌中に舞い落ちる。
一枚、二枚。続々と散下するそれらを嬉しそうに見つめながら、雛苺は尚もさくらに尋ねた。
「……ね、さくら。なにが『どうして』なの?」

その質問に「どうして私なのか」と、そう問い返そうとしたさくらの唇はしかし、勝手に別の言葉を刻んでいた。
それは度し難いほど根本的な、けれどどうしてか非常に気にかかっていた問いだ。



「…………どうして、こんなことするの?」
253Kirsch Maiden ◆o.lVkW7N.A :2008/11/26(水) 00:42:54 ID:7IXonX93
    




胸中から離れないその疑問は、喉に刺さった小骨のように時折その存在を主張しては、彼女の全身を痛ませていた。
さくらにとって、この島で最も長い時間を共に過ごしたのは、皮肉にも目の前の少女だ。
恐怖に震え、何も見まいとせず何も聞くまいとしていたとはいえ、彼女の隣にいた時間は確実に存在している。
――――――そして、だからこそ知らぬ間に気付いてしまっていた。
楽しそうに愉しそうに遊びを要求するこの少女が、ほんの時たま酷く寂しそうに瞳を伏せる瞬間があるのを。
長い金色の睫毛をぱさぱさと揺らして視線を落とし、何かをこらえるように唇を噛む痛ましげな表情に。
閉ざしたつもりでいた五感は鋭敏に違和感を感じ取り、さくらの脳へとその事実を伝える。
だからどうしても気になって、こんなにも怖いはずの憎いはずの相手なのに、気付けばさくらはそう尋ねていた。

さくらの言葉に小さく首を傾げた雛苺は、未だ雨の降り続ける空を仰ぎ見た。
滝のように強く降り注ぐ雨が視界を遮り、僅か先ですらろくに見渡せない。
雛苺は雨だれに打たれるのも構わずにぼんやり夜空を見やると、漸くぽつりと口を開き始めた。

「……だって、みんな雛苺を独りにしようとするのよ。
 ジュジュは雛苺を残して死んじゃったし、真紅も雛苺をジャンクにしようとしたの」

訴える語調は次第に弱まり、ひっくひっくと喉をしゃくり上げる声が混じり始める。
頬を伝っている雫は恐らく、先刻から身体を濡らしている雨粒とは違う、もっと塩辛い液体なのだろう。

「前の契約者もそうだったの。……雛苺はあのこがとっても大好きだったのに。
 鞄に鍵をかけて『おやすみ』を言って、それから次のゼンマイが巻かれるまで、ずぅっとずぅっと独り」

雛苺の語る昔話は、さくらが考えだにしなかったものだった。
しかしそれが嘘でないことくらいはさくらにも分かったし、同時にどれほど辛い思い出なのかも想像できた。
何も見えない暗闇の中、ひたすらに一人で過ごす時間とはどのようなものだったろう。
やっと射した光はかけがえのない宝物で、だからこそどんな手段を使っても失いたくないと思ってしまったのかもしれない。
さくらは、心臓の辺りが音を立てて軋むのを感じていた。切なくて、苦しくて、悲しくて、痛い。
でも、だからといってこんな方法は間違っている。それだけは絶対の絶対に否定しようのない真実で――――。

「だから……、だから雛苺は、皆で楽しく遊べるようにするの。
 もう、絶対に独りぼっちにならないでいいように」

赤く腫れた目元を手の甲で乱暴にぐしぐしと擦り上げると、雛苺は再び笑顔を形作った。
けれどその笑みが酷い強がりに満ちているように思えたのは、さくらの思い違いではなかっただろう。
最早そこにいたのは狂ったドールではなく、ただの弱虫で泣き虫で寂しがりやな一人の少女だった。
自分でも意識しないうちに、両腕が前へと伸びる。

「……そっか。ひなちゃんも、辛かったんだね」
「さ、くら……?」

突然のことに、わけが分からないと言いたげな表情の雛苺が、戸惑いがちな声をあげる。
その声を聞きながら、さくら自身もまた、自分の行動に理解不能なものを感じていた。
今、彼女の腕の中には雛苺の小さな体があった。
ただでさえ装飾過多なゴシックドレスが、水分を含んでぐっしょりと重さを増している。
濡れて冷たくなった身体同士をぎゅっとくっつけ、微かな体温を二人で分けるようにして、互いに温めあう。
その優しい温度から、雛苺は逃れようとしなかった。
彼女はただされるがまま、母親の膝の上で眠る赤ん坊のように大人しくじっとしていた。
一向に降り止む気配を見せない雨の中、二人の少女はまるで一つの影のように、ぴたりと重なり合っている。
雛苺の両目からぽたりと落ちた熱い雫が、さくらの胸元にじんわりと丸い染みを作った。
陶磁器のように白い頬をふわりと撫でて顔を上げさせると、さくらは雛苺に優しく、けれどきっぱりと告げた。
254Kirsch Maiden ◆o.lVkW7N.A :2008/11/26(水) 00:43:43 ID:7IXonX93
   
「……でも、こんなやり方をしてちゃだめだよ」

その声に怯えは感じられない。さくらの視線は、既に前を見据えていた。
それは先刻までの何も映さない虚ろな瞳とはまるで違う、確かな意志の焔を宿した双眸だ。
木之本桜の原動力は、いつだって他人への優しさと思いやりで、それはどんな時でも変わらないはず。
なのに、絶望に固まって一人で勝手に瞳を閉ざして、それでいいわけなんであるはずがない。

「さっきまでは怖いだけだったけど、ひなちゃんが何を考えてたのかやっと少しだけ分かった」

だからさくらは動き始める。
目を開けて、耳を傾け、自分の手足で再び歩き、自分の声で自分の思いを、自分の言葉を使って喋る。
漸く踏み出した再開の一歩目は勿論おっかなびっくりで、
どこをどう行くのが正しい道なのかなんて、己自身にだって少しも分からないけど――――。


「……あのね、ひなちゃん。独りになりたくないのは分かるよ。だって、私もそうだもん。
 でも、そんなふうに無理やり友達を作ろうとしても、それは本当の友達じゃないって、私はそう思う」
「そんなの、雛苺だって分かってるのよ!! ……でも、じゃあ雛苺はどうすればいいの!?
 雛苺は一人ぼっちが怖いの!! 嫌なの!! 遊んでくれるお友達がいないと、雛苺はとってもさみしいの!!!」


肺へと深く息を吸って、吐いて。胸に手をぎゅっと当てて、覚悟を決める。
声を荒げる雛苺に、さくらは躊躇せずその言葉を告げた。
どうしてか、それを口にすることに対して後悔はしないだろうという確信があった。

「……だったら、私が友達になるよ」
「え……?」

ざぁっと吹き荒れる横殴りの豪雨が、二人の間に灰色がかった透明の壁を作っている。
その壁を打ち砕くかのように、すり抜けるかのように、さくらは開いた手を雛苺へと差し出した。
不可解そうに目を見開いてぱちぱちと瞬きをする雛苺が、さくらの掌に腕を伸ばしかけてすぐに引っ込める。
躊躇いがちな視線が、ちらちらと訝るようにさくらを覗き見ていた。
そんな雛苺を、対するさくらは微塵も目を逸らさずにひたすら見つめ続ける。

「私が、友達になってあげる。ひなちゃんのこと、一人にしないって約束するよ。
 ……だから、代わりにひなちゃんも約束して。もう、あんなことしないって。
 あんなふうに誰かを襲ったり…………、殺したりしないって」

その言葉を聞いた瞬間、雛苺が声にならない絶叫を咽喉から溢れさせていた。
先ほど以上に大粒の涙をぼろぼろと零しながら、その腕がおずおずとさくらのそれへと伸ばされる。

「ほんとうにほんとうなの……? さくらは、雛苺とずっといてくれる?」
「……うん、本当。嘘なんかつかないよ」

柔らかな笑顔でそう告げるさくらのもとに雛苺が駆け寄り、彼女の身体にひしと密着した。
二つの掌がそうっと重なり合い、触れ合った場所から、じんわりとした温かさが泉のように湧き上がる。
小さなその身体を抱きかかえていると、まるで本当の妹を慈しんでいるかのような気分になった。


不思議だった。
ほんの少し前までは恐怖の象徴でしかなかった相手を、こんなにも近い場所に招き入れていることが。
あんな言葉をかけて、こんな風に抱き締めて、優しく優しく接している自分の行動が。
それでもさくらは心の最奥で、酷く簡単なその理由を確かに理解していた。
それは単純な、けれど純粋な想い。
それがたとえ誰であろうとも、「誰かが泣くのを見たくない」と、たったそれだけのささやかな願い。
255Kirsch Maiden ◆o.lVkW7N.A :2008/11/26(水) 00:45:00 ID:7IXonX93
   

さくらはふわりと唇をほころばせ、無敵の呪文を唱えようとする。
杖がなくても、カードがなくても問題なく使える、さくらを奮い立たせるための何より強い最高の呪文。


「だから心配しないで、ひなちゃん。絶対……、だい、じょう…………」


けれどその呪文を最後まで言いきる前に、さくらの両膝から力がすっと抜けていた。
「あれ……?」と思う間もなく大きく横によろけ、どさりと派手な音を立てて地面に転がり込む。
湿った土がぬかるんだ泥と化し、手や頬をべちゃべちゃと汚らしくよごしている。
何とか立ち上がろうと手足に力を込めるものの、まるで空気が抜けたかのように四肢が言うことを聞いてくれない。
背中を打つ雨の冷たさにどこか心地よさを憶えながら、重いまぶたがゆるゆると閉じていくのを感じていた。
きっともう、自分の身体は限界なのだろう。
ただでさえ積み重なった疲労にプラスして、この豪雨の中で傘も差さずに居続けたことで全身冷え切っている。
頭の芯がぼんやりする感覚は、恐らく発熱によるものだ。
「さくら!! さくらどうしたの!?」
「ひな、ちゃ……」
すぐそばにいるはずの雛苺の声すら、ひどく遠いところで叫んでいるように聞こえる。
さくらはぼうっとしながらもなんとか口を開こうとしたが、その言葉が形になることはなかった。
意識がするりと遠のいていくのを感じたと同時に、ばたりと泥の中へ倒れ付す。

「Nom!! さくら!! さくら、いやぁっっっ!!!」

眠るように静かに気を失ってしまったさくらを、雛苺が必死に抱き起こそうと試みる。
けれど人形の細腕では、どれほど頑張ろうとも焼け石に水でしかない。
玩具のように繊細な雛苺の指が、生気の薄い肌の表面にそっと触れる。
触れた箇所からすぐさま伝わった予想以上の熱さに驚き、愕然とした。
「どうしよう。すごい熱なの…………」
さくらの熱は想像以上に高く、このまま処置を施さなければ命に関わる可能性もあるレベルだった。
勿論雛苺にそこまでの知識はない。けれど「このままでは大変だ」と、そう本能的に感じることくらいは出来る。

「――――――――――――ジャコっ!!」

大急ぎでそう叫ぶと、傍らの人形は音もなく雛苺のもとへと近づき、恭しくお辞儀をするような姿勢で身体を屈めた。
ぐったりとしたさくらを無理やりその背に乗せ、棘を落とした無害な苺轍で落下しないよう入念に括り付ける。
そうして準備を終えると、すぐさま自分自身も背中に飛び乗って、全速力でからくり人形を飛行させる。


雨で視界の悪い闇の中を縫うようにして飛翔しながら、雛苺は考えていた。
さくらを死なせるわけにはいかない、と。
このまま、彼女を失っていいはずなんて絶対にない、と。
雛苺の契約者で、そのうえ友達になると言ってくれたさくら。
抱き締めてくれた腕は温かかった。頭を寄せた胸元は柔らかかった。
そして何より、雛苺がずっとほしがっていた約束を、彼女はしてくれた。
だから――――――――――。



「さくら、もう少しなのよ。すぐ、あったかいところにつれていってあげるから」



力強い口調でそう告げると、雛苺は再び、目指す建物へと向かって夜空を飛行した。
256Kirsch Maiden ◆o.lVkW7N.A :2008/11/26(水) 00:46:56 ID:7IXonX93
    


     *     *     *



雨は未だあがる気配を見せず、周囲は完全なる暗闇に支配されている。
月も星も姿を隠し、まるで世界から光という光が消え去ってしまったかのようだ。
自分の靴の先ですらろくろく確認できないような闇夜の中、
この殺し合いが加速するのか減速するのか、それは誰にも分からぬことだ。
――――――けれど、やまない雨がないように、明けない闇も存在しない。
事実、闇に囚われていた二人の少女の背後には今、綺羅星の如き一筋の光明が見え隠れしている。

それは恐らく、希望の光などと単純に言えるような類のものではないのだろう。
それでもせめて言わせてもらうなら、きっとこの言葉がふさわしい。
――――――――――――『星の力』と。









【F-1/桜の木の上空/1日目/深夜】
【雛苺@ローゼンメイデン】
[状態]:真紅と翠星石のローザミスティカ継承。精神多少安定。
   桜をミーディアムにしたことにより消耗回復&自動回復付加。 落下により多少の怪我?
[服装]:普段通りのベビードール風の衣装。トレードマークの頭の大きなリボンが一部破けている。
[装備]:ジャック・オー・ランタン@からくりサーカス(繰り手もなしに動ける状態)
    ※ジャコの首には真紅と翠星石の首が括りつけてある。
[道具]:基本支給品一式、ぼうし@ちびまる子ちゃん ツーカー錠x5@ドラえもん
    光子朗のノートパソコン@デジモンアドベンチャー、ジュジュのコンパス、リルルの膝から先×2本
[思考]:さくらは絶対に死なせないの!!
第一行動方針:さくらを休ませられる建物の在る場所まで移動する。
第二行動方針:さくらとずっと一緒にいたい。とにかく独りぼっちにはなりたくない。
第三行動方針:さくらとの約束を守る(殺人をやめる)……かはまだ不明。
[備考]:
雛苺は真紅と翠星石のローザミスティカを獲得したため、それぞれの能力を使用できます。
自分の支給品をマトモに確認していません。
『ジャック・オー・ランタン』は、真紅の持っていた「人形に命を吹き込む力」によって 一時的に動ける状態です。
雛苺の『力』を借りて動いているので、この状態は維持するだけでも雛苺の『力』を消耗しますが、現在負担は桜へといきます。
城に誰か強敵(まともに戦うとメンドクサイ相手)がいると思っています。今すぐ戦う気はありません。

【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:左腕に矢傷(処置済)、魔力消費(極大) 、疲労(大)、発熱、雛苺のミーディアム
[装備]:マジカントバット@MOTHER2、パワフルグラブ@ゼルダの伝説、
    クロウカード『水』『風』 、リインフォースII@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品
[服装]:梨々の普段着
[思考]:……ひな、ちゃん…………。
第一行動方針:雛苺との約束を守りながら、彼女にこれ以上殺人を起こさせないようにしたい。
基本行動方針:雛苺のそばにいてあげる
※魔力があるため、雛苺が戦闘しない限りは持ちこたえられます。
 ただ回復していく分の魔力はほとんど雛苺に持っていかれます。
[リインフォースIIの思考・状態]:
※永沢、レックスを危険人物と認識。梨々の知り合いの情報を聞いている
※魔力不足により、現在使用不能
257 ◆o.lVkW7N.A :2008/11/26(水) 00:48:51 ID:7IXonX93
投下終了です。
258創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 00:56:06 ID:gdl/tc99
投下GJ!
雛苺に対してこういうアプローチで来たか!
まさかこんな会話が繰り広げられるとはな……やってくれるぜ!

だが相変わらず雛苺は精神不安定。おまけにさくらもピンチで大変だな。
互いの行動がどう転ぶのかが気になるな……!
259名無しさん@お腹いっぱい。:2008/11/26(水) 03:34:27 ID:hgtKa3dN
投下GJ。おぉ、この組にも一つの転機が訪れたか。
雨と桜の描写が色々な意味でうまいと思いました。
どんなことがあっても根本の部分はさくらも雛苺も変わらないなー。
一気に選択肢が増えた感じがしてwktk
これはどうなるのか非常に楽しみ。
260創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 12:23:28 ID:infyqXcL
投下乙!
雛苺理性残ってたんだな…
このままいけば改心できそうだけどこのロワ鬱ロワだっていう奴いるからな…
あまり期待しないでおこう。
261創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 15:23:08 ID:/oGkVee5
別に鬱ロワでなくてもマーダーの改心フラグは死亡フラグと同義だからなぁ……
嫌な予感しかしない。
262創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 16:08:04 ID:JzMp3jvo
死亡フラグだとか鬱ロワだとかいうなw
ここの書き手にそんなこと聞かれたら期待通りの残念なジャンクができるぞww
263創る名無しに見る名無し:2008/11/26(水) 17:48:09 ID:20U1gX8k
投下乙。
そうだよなぁ、話せば言葉は通じるんだもんなぁ。
理解不可能な化物としてではなく、共感可能な相手として接すれば話も聞けるわけか。
いやしかし桜にはヤバい匂いがプンプンするw そういう約束は口にしちゃダメだー!w
今後どう転ぶのか実に気になるいい一手です。GJ!
264創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 09:21:11 ID:F/vbUQAI
投下乙
さくらが漸く会話をw
しかし今にも死にそうで、更に雛にもフラグがw
今後の展開にwktkです

時に、「綺羅星のごとく」は、確か綺麗な着物がたくさんあるって意味のはず
265創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 14:21:35 ID:bYNlgwWZ
転じて、才能のある人間が一つの組織、部署などに沢山いる様を表す言葉
>綺羅、星の如く
266創る名無しに見る名無し:2008/11/27(木) 21:51:55 ID:oX04BEo7
議論スレ中心主義うぜー
267創る名無しに見る名無し:2008/11/28(金) 15:35:02 ID:8qDL7H0o
>>266
じゃあどこでやれと?議論スレの存在意義はそこにあるはずだが。
中心主義なんて事じゃない。雑談とかはここでできるわけだし。
268創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 18:19:38 ID:aVMoZ7A1
なんか雑談しようよ
269創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 18:20:19 ID:AHjff+xv
動きがないんでネタ振り。
現在一番死亡フラグ抱えていそうなのは誰だと思う?

俺は桜。あの約束は最大級だと思う。
270創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 18:40:55 ID:towc25Y/
いろんな意味で賞味期限が切れたなのはさんやフラグをあらかた消化したれみりゃも結構危ないな。
隣に危険人物がいるひまわり、イエローもかなり死が近いが……

逆に死亡フラグと無縁といえるのはヴィクトリア、紫穂、パタリロ(こいつはトラブルメーカー的な意味で)。
一応それぞれ死に直結するほど巨大な時限爆弾を抱えてはいるものの、それ以上においしい要素があるため、メタ的な意味でしばらくは生きるはず。
271創る名無しに見る名無し:2008/11/29(土) 19:03:24 ID:iyqfnatW
パタリロは案外と危ないかもな
それと死亡フラグの固まりのような危険人物を(文字通り)背負い込んでる弥彦
ステルスコンビに保護されて気絶中なニケも
272創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 00:05:10 ID:nD3RYkEK
変態紳士の手に掛かれば死亡フラグが無いこと自体が死亡フラグになるんだぜ?
273 ◆7KR.e180t. :2008/11/30(日) 00:10:04 ID:sJDCL6LD
問題点の修正など、終わりました。
詳しくは議論スレで。

あと検索すると結構引っ掛かるので、以後トリ変えます。
274 ◆THr4/zd65w :2008/11/30(日) 00:10:47 ID:sJDCL6LD
こちらが新トリです。
275創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 02:29:24 ID:tYdHeHxu
死亡フラグか。
いまいちフラグのないチートパタリロも危なそうに見えるし、妙な恋愛フラグ立ってるメロも相手がブルーなのがやばそう。
リンクは一緒にいる相手がアレだし、ニケは瀕死。
弥彦とキルアはこいつらどーすんだwって感じだ。片方死ぬしか進まなくね?
小太郎は女の子二人抱えて敵に出会えばかなりヤバい。
まあ、なんだ、ショタは絶滅寸前だってことだ。
トマ、レックスは何もなさそうだが油断は禁物だなw
276 ◆v5ym.OwvgI :2008/11/30(日) 14:10:15 ID:sJDCL6LD
失礼、新トリも検索に引っかかったのでこちらに変更します。
277創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 00:25:48 ID:41d/XQa6
むしろロリバトルロワイアル希望
278創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 01:47:34 ID:tTbm5DB1
そういや、このロワに参加してる勇者は3人ともまだ生き残ってるんだな
ショタの生存率が低い中で3人とも顕在なのは、流石勇者というべきか
279創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 16:11:48 ID:aR+G5r7Q
その3勇者がそろったときのプロットが3つほどあったりするw
死ぬ前にはあわせたいな。
280創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 23:49:11 ID:41d/XQa6
勇者1→ハーレム中
勇者2→ハーレム中(ぽろりもあるよ!)
勇者3→瀕死中
281創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 23:59:48 ID:1uSPtnoX
がんばれ、すけべ大魔神!
282創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 00:10:11 ID:0e6ZRp7i
仮投下に1つ来てるよー。
ついでに、避難所スレの書き手さんのコメも。
283創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 12:56:21 ID:D9RnxrIV
童話「ヘンゼルとグレーテル」の
ヘンゼルとグレーテルって
ここのヘンゼルとグレーテルと違って双子じゃないよね?
284創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 17:40:55 ID:X3T+52g+
あれは兄妹のはず
285創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 18:39:00 ID:C2xKei3N
ところでwikiに収録ってしないのか?
さっきみたら一向に更新されてなかったけど。
286創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 20:33:17 ID:GeV9SvLv
色々とゴタゴタしてたからなあ
じゃあちょっと今から収録してこようかな
投下された中で破棄になった奴はなかったよね?
287創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 21:02:03 ID:Y3/b1UWb
トマとベッキー書いた書き手に連絡。
容量が500KBオーバーなんでどこで切るか教えてもらえません?
288 ◆v5ym.OwvgI :2008/12/03(水) 22:17:18 ID:loa9qIvQ
それでは>>194


「北東市街レベッカ宮本宅」から「インデックス」

『もしもし、リルル?』
『もしもし。あなたがトリエラさん?』

からを後編にお願いします。
ていうか修正もいろいろあるので自分でいれておきます。
289創る名無しに見る名無し:2008/12/03(水) 22:55:39 ID:PdNLhHzq
「だから人は夢を見る」も、追跡表入れたら容量オーバーしちゃうな
どこで切ったらいいかな?
290 ◆CFbj666Xrw :2008/12/03(水) 23:24:27 ID:r2R8oHRy
追跡表でオーバーする程度の量なら、楽園の再来の時と同じく状態表だけ切る方向で。
というかその方向でページ編集しておきます。
SS後の追跡表は両方に付けておきましたが、不要だと思うなら片方削っておいてください。
291 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/05(金) 17:04:49 ID:oUGYVFo3
投下します。支援をお願いします
292人々の運命、神々の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/05(金) 17:06:23 ID:oUGYVFo3

ガコン!!
「いたぁ!!」
 何かが何かに激突した鈍い音と悲鳴が響く。
その声の主は白いシスター…もとい少女。
 彼女の名はインデックス。10万3000冊もの「魔道書」をその脳内に納める、いうなれば魔道図書館である。
イギリス清教の対魔術師特別部署、「必要悪の協会」のメンバーでもある。
...まあ、こんなベッドから落ちて頭を抱えてる彼女からは想像も付かないが。
「大丈夫?」
 声をかけたのはリンク―後にハイラルの勇者とも呼ばれるようになる―だった。
「いててて...大丈夫...」
 インデックスは半泣き状態で答える。しかし、涙目でそんなことをいわれてもまったく説得力はない。
「熱は?...ってふらふらしてるけど!?大丈夫?!」
『静かにしてくださいよ。起きちゃいますよ..』
「ご...ごめん」
「で、大丈夫ですか?」
 アリサの枕元にあるルビーも言う。事実、かなり具合が悪そうに見えた。顔色も悪い。
しかし当の本人はさほど具合は悪くない、と言った表情で、
「大丈夫。って、何で私は床にいるの?」

………………………

「...インデックスが自分で落ちたからじゃ...」
あきれ気味にリンクが言う。
「え...?ほんと?何で?」
 状況を飲み込めていないインデックス。しかし、普段の彼女の寝相を知る人間――まあ、とある少年しか知らないが――
なら、この程度で済んだ、と大喜びするはずである。ちなみにその少年は、彼女のあまりにひどい寝相のせいで、快適なベッドから追いやられて、
ユニットバスで寝ている始末だ。もちろん本人は気づいていない。知らぬは本人ばかりなり。

「うーん??どうし...痛っ!!」

なおも疑問をあげようとしたその時、がしゃっ、と金属音がするとともに、悲鳴が上がった。
「『どうした(の/んですか)!?』」
 二人(?)が声を上げる。三人(?)が足元を見ると、一振りの短刀が落ちていた。
それを見たインデックスの顔が見る見る怒りに染まっていく。

「誰?こんなの放り出してた人は!」
インデックスはそれを拾いながら言った。頭から湯気が出ている。
293人々の運命、神々の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/05(金) 17:07:05 ID:oUGYVFo3
「怒るより前に手当てを...」
「もしこれが足じゃなかったらどうするの?まったく...」
 リンクが助言をするが、それを聞きつつも文句をもらす。
片付けは苦手な(と言うより必要ない)彼女だが、こと危機管理においては誰にも負けない。
短刀についていたわずかな血をぬぐった。
「これはなのはのだったね。...もう、皆危機管理が甘すぎるんだよ...」
ぼやきながらも、踏まない場所におこう、ととりあえずランドセルのそばへ行こうとした彼女だったが、
『待ってください』
不意に呼び止められた。ルビーの視線(そんな物があるのかは疑問だが)は、その手に握られている短刀に注がれていた。
「ん?どうしたの?」
当然あるかも分からない視線などに気づくはずも無く、インデックスは聞いた。
『その刀...どこかで見たことがあるんですよ...』
「これ?何か魔術的意味でもあるの?」
インデックスがまた聞く。無論、聞くと言うことは彼女の世界の魔道書に記述が一切無いと言うことである。

『うーん...えっと...ああ!思い出しました!...それは「アゾット剣」です』
「アゾット剣?これが?」

 アゾット剣。稀代の錬金術師、パラケルススが愛用したとも言われる短剣。
錬金の奥義が内包されてるとも言われ、銘の「アゾット」と言う単語もそれを象徴している。
ちなみに意味は「錬金」だ。

 もちろん魔道書図書館内にその剣についての記述もある。だが。
気づくはずが無いのだ。根本から世界が違うなら、術式、礼装もまた然り。
しかし。

「...言われてみれば、確かに。気づかなかったんだよ」

同じ「魔術」なら、世界ごとに相似点が出てくるのも然りである。


『これはおそらくこっちの世界の礼装です。
 一人前の魔術師になった者にあげるって言うのが通例ですね。
 しかもこれは模造品...ていうか、刃の部分に微妙な違いが見られますが、
 本質的には変わらないでしょう。』
 ルビーがアゾット剣について丁寧な解説をすると

「ふうん。でも何でまたそんなものが?さっきはそんなこと言って無かったよね」
 インデックスは少ししらけた目つきでルビーのほうを見る。その目が語る。どうして言わなかったの、と。
『ええ、さっきはよく見てませんでしたから』
「これは...確か神社の倉庫から持ってきた...」
 さらっとかなりとんでもない事をルビーが言ったのはさておき、リンクが思い当たりを述べる。
「神社、ね」
『何か思い当たる節でも?』
「いや、なんでも...無い」
その時、インデックスの体がふらりと傾いた。もともとかなり熱が有ったのだ。頑固な彼女がそれを隠していただけで。
「『!!』」
 インデックスは心配をかけまいと、足を踏ん張って立とうとするが、
294人々の運命、神々の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/05(金) 17:18:34 ID:oUGYVFo3
…しばらく待ちます。11時くらいに再投下します
295創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 17:51:26 ID:QIbbGLIW
避難所に一時投下して代理投下してもらうのもありなんだぜ
296創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 18:39:27 ID:XEebZpZT
うわぁ…俺がいたら超絶支援しまくったのに
●持ちだから支援でさるさんになることもないしさ
297創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 23:06:49 ID:VJgSdCGQ
そろそろ来るかな?
298 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 06:33:26 ID:+lGinK5L
…昨日は投下出来ずすいません。
仮投下に投下して、代理で落としてもらおうと思います。
299 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 15:10:09 ID:7V+9lo7h
ひ…人がいない……いないから投下できないし代理も来ない…
早く来てくれ!誰かーー!!
――時間が悪いんだけどね。
300創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 15:19:02 ID:FGEP8/OF
うす
301創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 15:22:55 ID:FGEP8/OF
なんか最後ちょっと切れてるけどかぶっていいのかな
302代理 人々の運命、神々の運命 ◇QzFJmuHgIs:2008/12/06(土) 15:29:54 ID:FGEP8/OF
ツルッ!

足元にあったタオルで滑った。なすすべも無くインデックスの体は地面にたたきつけられる。
「『だ...大丈夫(ですか)?』」
 リンクとルビーが心配そうに声をかける。
 インデックス本人にそこまでのダメージは無かったのだが、かなり派手に転んだように見えたらしい。
「ちょっと...ううん大丈夫。...え?」
そこまで言ったところで彼女は気づいた。
床に刻まれた、有る模様に。
はいつくばってみないと分からないほどに薄いその線。
しかしインデックスにはその意味が分かった。
「...これは――!!」
そこで彼女が見たものは――
**********************************************************

 白い悪魔。そう。それが彼女に与えられた、いや、自分で選び取った名。悪魔は非情。
冷徹に人を裁く。そこに私情は挟まない。悪人を駆逐したり、感情が有るとどうしてもできないことを引き受ける、いわば汚れ役。
 もとから彼女がいたわけじゃない。ただ、ここに来てからの自身のあり方に、『感情』が耐え切れなかったから生まれた、いうなれば代役。

 いや、代役と言う表現は適切ではない。彼女も「高町なのは」の一部なのだから。ただ、役割が違うだけ。
 役割。そう、彼女に与えられた役割は、汚れることだ。「高町なのは」が描いた理想...願望をかなえるために
受けなければいけない汚れを、一手に引き受ける。彼女は、そのためにいる。

 彼女なら、もしその理想が対価として人の血を要求したとしても、きっと躊躇わずその手を血で塗りつぶすだろう。
そして決してひるまない。
 彼女は、その役割ゆえに人としての機能――喜、怒、哀、楽、友情、愛情その他の感情――を、可能な限り排して有る。
排する、と言うのも語弊が有るかもしれない。彼女のもう一つの部分、『高町なのは』にすべて担ってもらったと言うほうが正しいか。

そして彼女に残ったのは、「理性」と「使命」だけになった。


――――だからこその「白い悪魔」。人として人らしく感じる機能を喪ったモノを、他になんと呼べばいい?


『狂人とは理性を失った人のことではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である』
――――誰が言った台詞だっただろうか。今になって思い出すこの台詞。
そのとおりだ。と今の彼女には思うことができた。しかし、いや、だからこそ、彼女は――白い悪魔は止まらない。


 しかし彼女は気づかない。...彼女が動けば動くほどに、彼女の望みからは遠ざかって行く事に。


 彼女はあくまでも、「高町なのは」の一部だ。彼女の望みは、「高町なのは」の望みであり、『高町なのは』の望みでも有るのだ。
...高町なのはの望み。それは、幼少期(今でもそうだが)に、有る経験をした事からきている。
 有る体験。それは独りでいた、と言うことである。
 家に帰っても、誰にも相手にされない。周りに家族はいるのに、なぜか感じる孤独。なぜか感じる心の距離。
父親が怪我をしてからは、それはいっそうひどくなった。家に帰っても、誰もいない。
一人で過ごす夕暮れ。帰ってくる家族を待つ間、彼女は考え、そして願った。

――皆と仲良くなって、楽しくいたい。

...だから彼女は杖を振るった。だから彼女は撃ち続けた。
分かり合うために。仲良くなるために。

...この願いを。どうやって悪魔がかなえると言うのか。
自分の願いと完全に矛盾する役割を与えられてしまった人格。
 しかも矛盾はそれだけではない。
何度も言うように、彼女はどこまで行っても「高町なのは」なのだ。そして壊れているわけでもない。
つまり、彼女自身がなる事のできないもの――感情をなくした悪魔になど、絶対になれないのだ。
しかし彼女はなろうとした。そこで矛盾が生まれてしまった。
303創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 15:32:12 ID:6FwTrFiy
 
304創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 15:32:16 ID:FGEP8/OF
...矛盾。そう矛盾だ。感情が無い悪魔に、少しでも感情が有ってどうするのか。
本来なら中途半端な感情は中途半端な行動を生む。
だが。その程度では彼女の行動は変わらない。
否、変われない。その役割は与えられていないから。そんな行動は彼女の中には無い。

彼女は気づかない。否。気づけない。気づいたら、崩れるかもしれないから。
だから彼女は気づかない。


――――自分の存在自体が矛盾している、なんて事には。
**********************************************************
 「何?何かあったの?」
リンクが聞く。リンクが心配になるくらい彼女の言い方は深刻だった。
インデックスがそれを指差す。それは、円だった。半径は1メートルくらい。かなり正確な円だ。
そこから無数の線が部屋の壁に向かって延びている。
「......なにこれ?」
リンクが疑問の声を上げるのも無理は無い。素人目にはただの円にしか見えない。
 だが。
『!!!――――これは...!!』
「ルビーにはわかるみたいだね。そう。これは...魔法陣だよ。」

魔法陣。魔法を使う時に補助として、そして時としてメインに、使われる図形の名称である。
『これは初期の魔法陣...いや、魔法円とでも行ったほうがいいかも知れないですね。』
「うん。これにはほとんど何も記述が無い。つまり、発生させられる力は弱いけど、」
『どんな魔術にも使える、と言うことですか...』
そう。魔法陣は図形をどんどん複雑にして発展してきた。しかし、それは一種の退化とも言える。使える用途が限定されてくるからだ。
それに対して、本来の魔法陣...初期の魔法陣にそんな心配は要らない。文字や無駄な図形の制約が無いからだ。
『しかし、何でまたこんなものが?』
「うーん、何でだろ...ん?まって...」
何か引っかかる。そこでインデックスはあることを思い出した。
「ここって...確か建物の中では一番北にあるよね」
「うん...確かにそうだけど。それが?」
話の内容がまったくわからないリンクが答える。
『...なるほど。北の部屋の中心に魔法陣。ついでにここは寝室、ときましたか。出来過ぎですね。』
「うん。そうだよ。北は日本仏教において冥途へといたる方角。そこへ完全と調和を意味する円が来た。
 これならきっとただの魔法円でもかなりの魔術的意味をもたせることができるだろうね。それにこれが書かれているのは部屋の中心。
 部屋に「一つの世界」の役割を持たせる事でその場に「世界の中心」に魔法円を書いたことになる。」
『何のために...?』
疑問を浮かべる二人。そしてインデックスは気がついた。この会場に満ちるある気配に。
「ルビー。気づいてる?この会場、どこかおかしいって」
『おかしい...ですか。確かにおかしいですね。なぜか私も本調子じゃありませんし。何より大源(マナ)がおかしい。
 何かいつもと違う感じがしますね。』
唐突な質問に疑問符を浮かべながらもルビーが答える。
「うん。マナって言うのはこっちで言う世界の力に当たると思うけど、たぶんそれを、ジェダが仕切ってしまっているの。...支配している、
 と言ってももいいかも。」
大源の支配。それが意味するところはつまり――
『そんな...ここはジェダの固有結界だって言うんですか!!』

固有結界。世界中の魔術師たちが目指す、魔術の一つの到達点。最も魔法に近いと言われている、最大級の禁呪。
リアリティ・マーブルとの別称を持つこの魔術の真髄は、自分の心の世界、心象世界を外界へ引きずり出すこと。

「固有結界って言うのは良くわからないけど、たぶんそれ。たぶんジェダはこの世界そのものを儀式場にしたいんだと思う。」
『それは...ものすごいことですよ。固有結界って言うのは、魔術師が夢見る最高の神秘です。そんなものをこんな範囲で、
 しかもこんな長時間にわたって展開し続けるなんて...いや、ありえるかもしれませんね。
 世界一つを儀式場にする超大魔術。おそらく相当の大事になりますよ。』
そんな話はルビーもインデックスも聞いた事が無い。
「だろうね。世界一つ規模の術式なんてそうそう無い。きっとほかにも何かあると思うけど...まって、世界一つ?
 何か引っかかる...」
『世界一つ...有名どころだと「世界創造」、「最後の審判」、「千年王国」、「末法の世」、後は「神々の運命」とかですかねえ』
「神々の運命...世界創造...まさか...」
305代理 人々の運命、神々の運命 ◇QzFJmuHgIs:2008/12/06(土) 15:33:54 ID:FGEP8/OF
そこで彼女はある言葉に思い至った。
「――世界を救うために君たちには殺し合いを――」
それは、このゲーム始まりのとき、主催者のジェダが発した台詞。
『!!...それは...いやまさか...』
「ありえないことじゃないよ。あいつが私たちを「幾多もの次元世界」から連れてきたんなら、役割も合う。」
『じゃあ、私たちが本調子を発揮できなかったのも――吸収されていたんですか』
「うん。あいつ一人の魔力じゃ足りないだろうからね。ここへ来た人たちの魔力もきっと――」
「...ちょっと待って。話がぜんぜんわからない。わかりやすく説明して」
知恵熱が出かけていたリンクがたまりかねて言う。たしかに彼女らはリンクの理解の範囲外の会話をしていた。

「そっか。ごめん。わかりやすく言うと、「このゲームの主催者はなにが目的か?」って言う話だよ。
 たぶんあの自称冥王様はこの世界を救うために動いてる。いや、こういったほうがいいかな。
 あいつはこの世界をあいつの思ったとおりに長生きさせるために動いてる。」
「............?」
『まあつまり、この世界はパズルのピースがずれてしまってくみ上げられているようなものだから、
 一度ぶっ壊して組みなおそう、と言うことですよ。』
「!!――そんな」
そのたとえならなんとなくリンクもわかる。それが意味するところはつまり―――
『リンクさんの考えるとおりです。「組みなおす」には一度「壊す」と言う手順が必要になります。
 きっと壊すための力の増幅と、世界創造のための確固たるイメージ作り...そうですか。
 ここはジェダだけの固有結界じゃない。ここは一人ひとりの魔力を使って合同で結界を張っている、ということになりますね。』
「??...どういうこと?」
インデックスが割り込む。
『さっきも言いましたが、固有結界って言うのは魔術の一つの到達点です。
 その極意は、「自分の心象世界を現実に侵食させる」ことなんです。地図出せますか?』

リンクが地図を持ち出す。

『ここと、ここと、...まあ、たくさんありますが、特徴的な建物は、みんな私たちの心象世界から来ているなら、
 辻褄が合います。』

「そうか、合同で張ればそれだけ世界の総量も増えるってことだね。
 こっちで言うなら「黄金練成」と同系統の魔術かな?なるほど、それならきっと世界の略図を作れるね。」

「?????????」
またわけのわからない話になって来た。
『まあつまり、この世界はここへ連れて来られた人たち皆の心の中の風景を具現化してるって事です』
例によってルビーのわかりやすい解説が入る。
それにはリンクも思いあたりが合った。
「そういえば...梨花ちゃんも、神社を見て、「ここは自分の神社だ」って言ってたよ」
「やっぱり...それなら辻褄もあうね。」
「ええ。心象風景って言うのは、一人ひとり違うんです。本来なら、合同でこれを張るなんて事は無理なんですが...」
ルビーはそこでいったん言葉を切った。
「話は変わりますけど、リンクさん。人の考えを一つにまとめるにはどうすればいいと思いますか?」
「え?」
唐突に話を振られたリンクが一瞬あわてる。
「うーん」
306代理 人々の運命、神々の運命 ◇QzFJmuHgIs:2008/12/06(土) 15:36:15 ID:FGEP8/OF
(人の考えをまとめるって言えばやっぱり...)
リンクはもともと全般的に能力は高い。決して頭が悪いわけではない。
だが、この面子の中では一番頭の回転が遅い事も確かだ。
――まあ、この面子が異常なだけだが。

「話し合いする、とか?」
「いや。話し合いをしても、内側の考えまではまとめることが出来ません。』
リンクが苦心して出した答えもあっさり否定される。
「それは、『絶対の存在を作り出す』事です。たとえば、とても強い人が世界を支配したとして、
 あなたはその人を意識せずに生活出来ますか?それと同じでこの場だって、
 ジェダに抵抗しようと思ってる人も、ゲームに積極的に参加しようって人も、ジェダを意識しなければならない。』
そう。絶対の支配者が君臨していれば、たとえどんな人間であろうとも、その支配者を心の片隅におかなければならない。
「そうか。つまり、「心象風景に共通項を作り出す」わけだね。」
インデックスが彼女なりに解釈する。
『そういうことです。ですから、そこからはみ出したものは、一つにまとめて特徴的な施設にする。
 きっと、そのりかさんの言ってた、見覚えが有ると言うこともそこからきているのでしょう』
「うん。それなら僕にもわかる」
リンクもうなずく。

『じゃあ、これまでの推測をまとめますね。まず、
 @、ここはジェダの大規模な儀式場である事。
 A、それは少なからず世界の変革を目指すための儀式である事。
 B、そのための儀式場は、固有結界である事...というよりもここ自体が皆の固有結界であること。
 C、ここからは仮説になりますが、この儀式を存続させるための力は、参加者から搾り取ってると言うこと。
 D、その儀式は、『神々の運命』を模したものであること。
...このくらいですかね。』
「ねえ、さっきの短剣は何のために合ったの?」
まとめにリンクが突っ込みを入れる。
ああ、それを忘れてました。きっと、魔法陣の一部だったんでしょう。...あれ?でも、じゃあなぜこの術式は崩壊しないんでしょう?』
いきなり仮説は崩壊の危機を迎えた。
「それはきっと「有る程度まで壊れても、読み取れる意味が変わらない」ようにして有るからだと思うよ
 ...この手の魔法陣は一気につぶさないとだめってところが厄介なんだよ。」
そこをインデックスが修正する。...だが、リンクはどうしても不安になった。
(こんなに簡単に崩れそうになる仮説って一体...)
リンクさん。そこは突っ込まないであげてください。
「じゃあ、死んだ人の心象風景はどうやって読み込んでるの?」
容赦なく突っ込み続けるリンク。人の話を聞いてください。
『それについては、こちらの世界の「第三魔法」でどうにかなります。...まあ、人間に出来る芸当じゃないですがね。』
仮説の穴が埋められいていく。
「おそらく、そのアゾット剣は何か意味が合ったんだと思う」
『それは同感です。魔法陣の一部なら、きっと、...たとえ、どんなにくだらなくても意味が有る。きっと』
「で、次はこの儀し...くっ...!?」
――何度も言うが、彼女は頑固である。さっきまでは議論で熱を忘れていたようだが、彼女なりに苦しみ
を我慢して来たのだろう。
ゆっくりと彼女の体が傾いてゆく。彼女はまた、なすすべも無く床にたたきつけられるだろう。
だが。
すっ、と音も無くリンクが彼女を受け止めた。
「インデックス。無理しなくてもいいよ。休んでていいよ。少しは僕たちを信用してよ。」
リンクが言った。もう、無理しなくていいと。
インデックスには聞き覚えがあった。この台詞に。
―――いつだったか。一人で逃げていた、あのときか。
その一言で、とても安心した。心を開けた。氷が解けた。
同じだった。その時と。

「...うん。分かった」
涙こそ出なかったものの、素直に寝よう、と言う気持ちになれた。
307代理 人々の運命、神々の運命 ◇QzFJmuHgIs:2008/12/06(土) 15:37:54 ID:FGEP8/OF
*************************************************************

白い悪魔は一人で眠る。胸の痛みに気づかぬままに。

白い修道女は包まれ眠る。周りのぬくもりに囲まれながら。

世界は回り続ける。人に痛みを無視しながら。

――雨は、一段と激しさを増した。

【A-3/工場仮眠室/2日目/深夜?】
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:左太腿と右掌に裂傷(治療済み)、左肩に打撲、足に軽度の凍傷
[装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル、コキリの剣@ゼルダの伝説
[道具]:基本支給品一式×5(食料一人分−1、飲料水を少し消費)
   歩く教会の十字架@とある魔術の禁書目録、時限爆弾@ぱにぽに、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、
   じゃんけん札@サザエさん、ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、
   祭具殿にあった武器0〜2つ程、祭具殿の鍵、裂かれたアリサのスリップ(包帯を作った余り)
[服装]:中世ファンタジーな布の服など。傷口に包帯。
[思考]:やっぱりなんか変だよなあ...
第一行動方針:見張りを続ける。もうしばらくしたらアリサと交代。
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する(無理なら…?)。
第三行動方針:ニケ達と合流し、エヴァの伝言を伝える。
第四行動方針:もし桜を見つけたら保護する。
基本行動方針:ゲームを壊す。その後、できることなら梨花の世界へと赴き、梨花の知り合い達に謝罪したい。
参戦時期:エンディング後
[備考]
リンクが所持している祭具殿にあった他の武器が何なのかは不明。少なくとも剣はないと思われる。
祭具殿の内部を詳しく調べていません。

【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:高熱、リンク達に介護されながら睡眠、全身に軽度の凍傷、軽い貧血気味、
   背中に大きな裂傷跡と火傷、足裏に擦過傷(共に応急手当て済み)
[装備]:水の羽衣(背部が横に大きく裂けている)@ドラゴンクエストX
[道具]:支給品一式(食料−1日分、時計破損)、 ビュティの首輪、鉄製の斧@ひぐらしのなく頃に(?)
[服装]:私立聖祥大付属小学校の制服の下に水の羽衣。背中と足にシルクの包帯。
[思考]:zzz……
第一行動方針:休息を取る。
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する。
第二行動方針:ニケ達と合流する。
第三行動方針:紫穂の行方の手掛かりを探す。エヴァの説得も諦めていない。
第四行動方針:落ち着いたら、明るい所でじっくりビュティの首輪を調べたい。
基本行動方針:誰にも死んで欲しくない。状況を打破するため情報を集め、この空間から脱出する。
[備考]
拾った双葉の型紐が切れたランドセルに荷物まとめて入れています。
インデックス自身のランドセルは壊れているので内容物の質量と大きさを無視できません。
308創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 15:39:07 ID:aUSI0Ddm
309創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 15:41:28 ID:FGEP8/OF
【アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:全身に軽い火傷(右腕・顔は無事)、左腕から出血(打撲、軽度)、背中に切り傷
    上記の怪我は全て応急処置済み。睡眠中、強い決意。
[装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ、カレイドステッキ@Fate/stay night
[道具]:なし
[服装]:ショーツ一枚。傷口に包帯。
[思考]:私は―――!!
第一行動方針:朝まで休息する。なのはに同行する。 なのはと別れない。
第二行動方針:はやての遺志をついで、自分に出来る事をする。
第三行動方針:はやての腕や色々な物を盗っていたパタリロの捜索。
基本行動方針:(みんなと一緒に)ゲームからの脱出。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:残存魔力中、両手首に小さな傷、頬骨と肋骨一本にヒビ(処置済み)、
     かなりの不安、多重人格化(現在《高町なのは》)、休息(睡眠?)
[装備]:アゾット剣(短刀ver)@Fate/stay night、クロウカード『希望』@CCさくら
[道具]:なし
服装]:全裸(イヴの服を乾かしている)
[思考]:私は………/...zzz
第一行動方針:しばらくはアリサ達と共に休息。アリサ達と同行?
第二行動方針:ヴィータとエヴァも殺さず止める。
第三行動方針:はやての腕や色々な物を盗っていたパタリロの捜索。
基本行動方針:大切な人達を護る。ジェダを倒して生き残りで脱出。
[備考]
《高町なのは》と《白い悪魔》の多重人格を発症しました。
別人格といっても大きな違いは無く、あくまで両方とも高町なのはですが、
《高町なのは》は弱く、感情的で、人間。《白い悪魔》は強く、理性的で、悪魔を担っています。
解離性同一性障害に似た症状ですが、概ね記憶を共有する、互いを認識しているなど相違点も多く、
通常の症例は参考にしかならないようです。 ...かなり限定的な人にしか分からないかもしれませんが、
式&識を思い浮かべてもらうと分かりやすいです。

※有る程度までは情報交換していた模様です。

※カレイドステッキとインデックスが立てた仮説は、

 @、ここはジェダの大規模な儀式場である事。
 A、それは少なからず世界の変革を目指すための儀式である事。
 B、そのための儀式場は、固有結界である事...というよりもここ自体が皆の固有結界であること。
 C、この儀式を存続させるための力は、参加者から搾り取ってると言うこと。
 D、その儀式は、『神々の運命』を模したものであること。
 E、その儀式に第三魔法が使われていること
です。
310 ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 15:49:35 ID:6FwTrFiy
自分の分、投下してもいいですか?
311創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 15:55:48 ID:aUSI0Ddm
支援するのでどうぞ
312 ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 15:57:39 ID:6FwTrFiy
>>311
感謝。

では16時から投下します。
313創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 15:58:23 ID:bS7O8gZ3
気づいた時には投下が完了していた。あらら。
投下乙ですが、テストの方と内容変わってません?
多分、先日テスト投下された方を代理投下してしまったのでは。

一からもう一度投下しなおした方がいいのでは。
314 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:02:08 ID:7V+9lo7h
>>313
一から投下させてもらいます。
じゃあ、>>312さんの10分後にでも。
315 ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:03:16 ID:6FwTrFiy
了解。では投下します。
316創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:04:29 ID:aUSI0Ddm
317 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:04:32 ID:7V+9lo7h
支援!!
318創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:04:55 ID:aUSI0Ddm
319Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:05:08 ID:6FwTrFiy
さんさんと降り注いでいた太陽の光は、暫くお休み。
このお城はきっと昼間はとても明るかったんだろうけど、流石に月明かりだけじゃそうはいかない。
少しだけ肌寒くなった気温が僕の体に寒気を送り、少しずつ布団を恋しくしていく。
風は無い。外はとても静かだ。ゆっくりと静かに眠るには丁度良い……そんな夜だった。

なのに、眠れない。

梨々とアルルゥ、ベルカナと一緒に布団に潜って、少し時間は経った。
周りの皆は既に気持ち良さそうに眠っているんだけど……今の僕にはどうやら無理らしい。
理由はなんとなくわかる……でもだからって、このまま起きてる訳には行かないのに。

「……駄目だ」

諦めの言葉が口をついて出てしまった。
仕方ない、と僕はそれを合図にしてベッドから脱出することにした。
モゾモゾと動きながら、音を立てないように気を配る。起こしちゃうと皆に悪いもんね。
と、そんなこんなでどうにかベッドから離れ、僕は靴を履いて立ち上がる。
けれどこのまま宿屋の中でずっといても仕方が無いから、僕は少し散歩をする事にした。


       ◇       ◇       ◇


それは、全くの偶然だったんだと思う。
私がふと目が覚めた瞬間にレックス君が宿屋から出て行く、なんて狙って出来ることじゃない。
私は未だ完全には開けてない両目で、私が起きてる事に気付いてないレックス君の背中を眺める。
それがなんだか凄く寂しそうに見えたから、私はいてもたっても居れなくなっちゃって。
だからアルルゥちゃん達を起こさない様に、レックス君に気付かれないように追いかける事にしたんだ。
320創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:05:17 ID:7V+9lo7h
支援だやっほう!
321創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:05:21 ID:aUSI0Ddm
322創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:06:14 ID:7V+9lo7h
しえん
323Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:06:16 ID:6FwTrFiy
       ◇       ◇       ◇


階段を登ると、僕たちが生活していたはずの空間へと辿り付く。
メイドさんや兵士さんたちがいて、凄く賑やかなはずのそこ。僕の好きな場所。
でも僕が今立っている、そのはずだった場所は今はとても静かだった。
人がいないから当たり前だ。そう、今はここには人がいなくて――戦場の一つになってるんだ。

「戦場……か」

口に出していってみれば、本当に嫌な言葉だ。
もしかしたらこの大好きなお城が、この先も赤い色で塗りつぶされていくのかもしれない。
そう考えるととても気分が悪い。そんな事は一度だって許したくは無い。
けれどここはもう戦場。どこにだって安全な場所はないし、どこでだって戦いが起こる可能性がある。
どこかで、今でも誰かが死んでしまっているのかもしれない。事実、この城でもそれは起こっていた。

「タバサ……」

凄く、不安だ。本当なら今すぐここから出て行って探しに行きたいくらい。
今僕がこうしている間にも、タバサは辛い思いをしているかもしれない。そう思うといても立ってもいられない。
そうだ、白状してしまえば……そんなことを考えてしまうおかげで僕は眠れなかったんだ。
ただただ時間が経っていく中で、不安ばかりが募っていく。安心出来ない。

けれど、駄目だ。今は駄目なんだ。全体に駄目なんだ。
ベルカナ達と約束したんだ。アルルゥ達と話したんだ、梨々達と決めたんだ。
僕の今するべきことはここから出て行くことじゃない。勝手にタバサを探しに行く事じゃない。
それにどこに探しに行くって言うんだ。あてもないのにこんな事を考えても仕方が無い。
左肩から壁に凭れかかって、僕は僕自身の欲望に耐えようと歯を食いしばる。
今は耐えろって、自分自身に言い聞かせる。でも、だけど――僕はもっと余計なことを考えてしまう。

タバサを探しにここから出たら、誰が梨々達を守るんだ?
その前に僕は自分の力で梨々達を守る事なんて出来るのか?
さくらを救い出すという約束を守るだけの力が、今の僕にはあるのか?
たった一つ不安な事があるだけで眠れなくなるような、そんな弱い僕に何が出来る?

風は無い。決して賑やかじゃないとてもとても静かで深い暗闇を湛える夜。
そんな中でこんな事を一人で考えても仕方が無いってわかってるんだ。
誰も答えてくれるわけじゃない。ただただ思考の沼に沈んでいくだけだ。
けれど今の僕は自分自身に問いかけるばかりだ。
何もしないでいい時間が出来た瞬間、隙をついたように襲い掛かる。
そんなどうしようもないままに袋小路に陥った僕は、ため息をつきながらふと何気なく後ろを振り返った。

「……梨々?」
「ごめん、来ちゃった」

僕の後ろ、少し離れたところに梨々が立っていた。名前を呼ぶと、すぐに答える。
いつの間に……ひょっとして、見られた? 今の姿を、見た?

「ごめん……一人にして欲しかったんだろうけど……ね」

梨々は僕に謝りながらこちらに歩いてくる。そしてそのまま、僕の隣に立った。
324創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:06:27 ID:aUSI0Ddm
325創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:07:18 ID:aUSI0Ddm
326創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:07:19 ID:7V+9lo7h
支援
327創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:08:06 ID:7V+9lo7h
支援
328創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:08:25 ID:aUSI0Ddm
329創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:08:56 ID:bS7O8gZ3
   
330Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:09:11 ID:6FwTrFiy
       ◇       ◇       ◇


「何か、考え事?」

私がそう尋ねると、レックス君は無言で頷いた。
その瞳には迷いが見えていた。初めて見る種類の光を灯している。

「皆と話してたり、何かに向かって進んでいたときには紛れてたんだけどね。
 こうやってふと静かな時間がやってくると……僕、やっぱり考えちゃうんだよ……」

自嘲するように笑みを浮かべるレックス君。その顔は、暗い。
夜の暗闇に溶けてしまいそうなのは、決して後ろ向きの言葉の所為だけじゃない。そんな気がする。
どうしてだろう、このままここから消えてしまいそう。いなくなってしまいそう。

「……大丈夫だよ、別にここから逃げ出そうとか言うわけじゃないんだ。
 すぐ戻るから心配しないで。ちょっと寒いし、眠いでしょ? 先に寝てて大丈夫だよ」

私の心を読み取ったのか、レックス君は私を安心させるようにそう言った。
けれどその表情は相変わらず不安に押し潰されてしまいそうな危うさを秘めていて。
レックス君の気持ちはわかる。今まで考えないようにしていた不安が押し寄せてくる事は、ある。
ぽっかりと穴が開いたように、何もしなくて良い時間が生まれた瞬間に現れる考えはある。
一人になって、誰にも見られないように泣きたくなってしまいそうになるような、そんな辛い時間。
レックス君が過ごしているこの「今」は、まさにそれだってわかる。わかってしまう。

「ねぇレックス君……手、繋ご?」
「え?」
「いいからいいから、ほらっ」

レックス君の右手を両手で掴むと、私は丁度にらめっこを始める前の様に向き合った。
私がぎゅっと握ったその手は、私と同じで小さい。けれど私よりももっと頼もしく感じた。
握ってみれば解る。ずっと剣を振っていたおかげか色んなところにタコが出来ている。
そうやって過ごしてきたんだ。そうやって世界を護る為に戦ってきたんだ。
それだけじゃない。この世界では護りたい人の為に色々なものを振るってきた。
けれどその手は、今はとても冷たくて……私のよりも小さく見える。

この手でレックス君が誰かを護ったことを、私は知ってる。
この手でレックス君が誰かを殺したことを、私は知ってる。

勇者として頑張ってきた事も、勇者と言う言葉の重みが辛かった事も。
タバサちゃんという大切な存在がいる事も、私は全部知ってる。
だってそれはレックス君が教えてくれたから。レックス君が私に話してくれたから。
ここまで知っちゃってるんだもん……レックス君が悩んでいるなら、私はなんとかしたい。

「何か、困ってるなら教えて。悩んでるなら教えて。一体何が辛いのか、話していいよ。
 レックス君は優しいからきっと嫌だろうけど……私は、"私は一緒に背負いたい"の」

私の言葉に、レックス君は「どうして……」と静かに問いを重ねてきた。

「どうしてって……私はレックス君の仲間だから。一緒についていくって決めたから!」

辛さを一人で背負ってる人を見過ごせるほど、私は鈍感に出来てるつもりは無い。
仲間だから、私は仲間だから辛い事も嬉しい事も一緒に感じたい。
仲間が駄目だったら友達になる。仲間じゃなくて友達として、一緒に歩く。
表現する言葉が変わっても私はレックス君の隣で、二人で何かを背負いたい。
それが、今の私の全て。
331創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:09:33 ID:aUSI0Ddm
あれ?
332創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:09:42 ID:7V+9lo7h
支援
333創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:10:23 ID:7V+9lo7h
支援なんだぜ☆
334創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:10:37 ID:bS7O8gZ3
   
335創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:11:04 ID:7VvBAXN6
 
336創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:11:11 ID:7V+9lo7h
支援
337創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:11:13 ID:aUSI0Ddm
あ、よかった
さるじゃなかた
338Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:11:57 ID:6FwTrFiy
「ごめん……ありがとう」

私の想いが伝わった――というより、私に降参したようにレックス君は笑った。
その笑みは不安を纏ったままだったけど、それでも少し明るくなったように思える。

「やっぱり、僕ね……どうしてもタバサの事を考えちゃうんだ」

タバサちゃん。レックス君の大切な人のその名前が出てきたときに「やっぱり」と思った。
さくらちゃんを助け出すための話し合いで、不自然なほど出てこなかった名前だ。

「さくらを助けるって約束したのに、朝まで休むって約束したのに……どうしても、頭を過ぎるんだ。
 本当はいますぐでもここから飛び出して探したいくらい。間違ってるって、わかってるんだけどね」

その気持ちは痛いほど解る。大切な存在が今も苦しんでいるかもしれない、そう思うと怖い。
レックス君にとってはそれがタバサちゃんという存在で、今の私にとってはさくらちゃんがそう。
互いにそう考えてはいたけれど……結局レックス君はさくらちゃんを優先してくれた。
だからこそ今、レックス君は辛いんだろう。

「それに、不安なんだ……これから僕は大丈夫なのかって考えちゃうんだ。
 やっぱり僕は弱いよ。勇者だとか何とか言われても、結局この世界ではほとんど何も出来てない。
 そんな僕がこんな状況で、朝になったところで何が出来るのかって……凄く凄く自分を疑っちゃうんだよ」

レックス君の声が、少し震えてる。

「単純だよね……こうやって考える時間があればあるほど不安になっちゃって……。
 やっぱり、勇者って言ってもこんなものだよ。一人で何も出来るわけじゃないんだよ……」
「そうだね」

レックス君の言葉に私がそう返事をすると、少し驚いたような顔をされた。
けれど、実際に私が言った通りなんだから仕方が無い。私は更に言葉を続ける。

「人間は一人で何かが出来るほど器用じゃないよ。だから仲間と一緒に力を合わせるの。
 寿命だって数十年ぽっちで、ライオンとか鯨とかに比べればとてもひ弱で小さい、そんな生き物だもん」

レックス君は、未だに"僕が何とかしなきゃ"って思ってるみたいだ。
男の子が女の子を護らなきゃ、って頑なにそう考えてるみたい。
そしてやっぱり、目の前の壁を一人の力で無理矢理乗り越えようなんて考えてる。
言っちゃなんだけど、ばかだ。レックス君は大事な事を忘れてる。

「でもレックス君は一人じゃない。アルルゥちゃん達だっているし……私がいる!
 私は意地でも着いていくって言った。だから私は、そしてレックス君は一人じゃない。
 お願い……まだ自分が一人でなんとかしなきゃいけないんだって考えるのは、もうやめよ?」

レックス君の目が見開かれる。

「結局、そういうことなんだよ。だから私は"一緒に背負いたい"の。つまり、そうなの」
「そう、か……そうだよ、そうだよね……ごめんね、梨々……ごめん……」
「ううん。ここに来る前と違って、思った事をすぐに話してくれたから……謝らなくていいよ。それだけで、嬉しい」

手を握ったまま、私はレックス君の信頼を感じて嬉しくなった。
相変わらず一人で辛さを背負う癖はあるみたいだけど、それはゆっくりとだけど変わって行ってる様。
ねぇ、レックス君。だから大丈夫。もう皆がいる。私達は一人じゃないんだよ。

「皆と一緒なら、レックスの心配なんてきっと全部消えちゃうから……"絶対、大丈夫だよ"」

繋いだ手は、すっかり暖かくなった。
339創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:12:13 ID:aUSI0Ddm
340創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:12:21 ID:FGEP8/OF
 
341創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:12:42 ID:7V+9lo7h
支援
342創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:13:41 ID:aUSI0Ddm
343創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:13:56 ID:bS7O8gZ3
   
344Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:14:08 ID:6FwTrFiy
       ◇       ◇       ◇


雨音が地面を叩く音が騒々しく響く宿屋の中。
ジェダ曰く「臨時放送」と名が付けられた突然の放送を聞き、ベルカナは暫く呆けていた。
突如開始された演説に気付いて飛び起き、言われるままに窓の外で光っていた満月を窓から見た結果がこれだ。

「こんな真夜中に……突然また、えらいことをしてくれましたわね」

かなり強力な術式を施行したのか、満月に映し出された蜂の化け物が再度生を受けた。
それは幻覚や夢と言うには程遠い、確かな"復活"そのもの。ベルカナは驚くしかなかった。
更には突然振り出したこの雨。ジェダが人為的な力で降らせたと言うならそれも驚きだ。
だが自分が真に驚愕し、注目するべきはそこではない。こんなズレた感想で時間を潰すつもりなど毛頭無い。
問題はやはり、この放送が"臨時"であるということだった。

「この状況で放送をしなければならない理由……やはり、手駒が一人減ったから、が妥当……いえ、違う」

あのQ-Beeというのは確かにジェダの手駒だ。それが死んだ、というのが最大のイレギュラーか?
だがそれだけではない、とベルカナは推理する。ただの手駒の復活ならそこまで手間をかけさせることではないからだ。
恐らくは自分自身の力を見せ付けたいだけの、言わば"ショー"だ。あれ自体に大した意味は無い。
では天気予報? だがそれを教えてどうなる。それも勝手に無断で変更すればいいだけの話だ。

「もしや、これは警告……?」

ジェダがわざわざ重い腰を上げる、その行動自体に意味があるのではないかとベルカナは考えた。
この殺し合いの舞台にいる人間は、全員が全員積極的に他人を抹殺しようとしているわけではない。
おそらくはジェダの意に反した行動を取っている人間は少なくは無いはず――と、今は信じたい。
とにかく、その行動が積もり積もって、何かがジェダにとっては非常に煩わしい問題へと発展した可能性もある。
故にジェダは臨時放送を行い、「自分はいつでも行動を起こす事が出来る」とアピールしたかったのではないだろうか。
「少し頭を冷やすといいだろう」というのは、ジェダに反する者に対するメッセージという可能性も高い。
物事の本質を見れない性質の人間には手駒の復活と天気予報だけで満足させておき
そしてジェダが真に伝えたい相手に対しては、"そんなものは絶大なる力を持って駆逐出来る"と伝える。
一石で何羽の鳥が落とせるだろうか。ジェダにとってはかなり都合の良いアプローチであると見える。
だが、そういったイレギュラーに対し重い腰を上げたということは、"何か拙い事が起こった"事の裏返しだ。
この舞台の中でジェダ自身がこのゲームを上手く機能させられていないことを悟られるリスクを背負いながらも
こうした臨時放送と言う名目でプレッシャーを与えさせなければならない――――それほどの何かが起こったという、証拠となりうる。
ひょっとしたらこの状況、まだ棄てたものではないのかもしれない。

と、希望的観測で推理を締めくくったところでベルカナはある事に気がついた。
この宿屋の建物内からレックスと梨々が姿を消しているのだ。
ランドセルは残したままで、姿だけあっさりと消えている。目覚める前にどこかに消えていたのだろうか。
少し、不安が過ぎる。もしかしたら敵が梨々の罠を上手く乗り越えてきたのかもしれない。
敵襲の予感に身を案じ、二人が勝手な行動を取ったと言うのならそれは考え物だ。
嫌な予感が脳を埋め尽くす。探さなければ、不安で眠れなさそうだ。

「もう、私だってまだまだ眠らなければいけませんのに……!」

急いでランドセルを背負い、靴を履いて宿屋のドアを開ける。
深い眠りの中であろうアルルゥを起こすかどうか迷ったが、結局はやめにする。
そうして急いで二人の居場所を探そうと辺りを見回した瞬間である。

「……え?」

仲良く手を繋いだ二人が、何かを考えるような表情で会話をしながら帰ってきているのが見えた。
345創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:14:45 ID:FGEP8/OF
 
346創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:15:45 ID:7VvBAXN6
 
347創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:15:45 ID:7V+9lo7h
支援
348創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:16:01 ID:FsaEPpFB
 
349創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:16:03 ID:bS7O8gZ3
   
350創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:16:09 ID:aUSI0Ddm
351創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:16:29 ID:7V+9lo7h
支援
352Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:16:44 ID:6FwTrFiy
       ◇       ◇       ◇


「まぁ、デート中でも放送を聞き逃さなかったのなら良しとしましょう……」
「デートってそんな……黙って行ったのは悪かったよ」

あれからしばらく、レックス君と手を繋いだまま私は会話をしていた。
そうやっている内に不安を取り除いて前向きになってきたのか、レックス君の表情にさっきまでの暗さは無い。
けれどそうやっていると突然"臨時放送"とかでジェダが放送を始めて……あのとおりだ。
私はレックス君と一緒にこんな放送が始まったわけを考えていたけど、それが全然思い浮かばなくて。
そして宿屋へと足を進めていたら、焦ったようにベルカナさんが飛び出してきて……今、こうなっている。
ベッドの上で私達はアルルゥを起こさないよう気をつけながら、静かに会話をしているのだった。

「私も眠いので手短にしておきたいのですが……この放送、どう思います?」

ベルカナさんの問いに、私は即座に「何かよからぬ事があったんじゃないかな?」と答えた。
そしてレックス君は「何かジェダが焦ってるのかもしれない……」と続く。
ベルカナさんはその私達の答えに満足したようで、大きく頷いてくれた。

「ここからは各人、きちんと気を引き締めなければならない……という事ですわ。
 順序良く行動しなければ、探し人に出会う前に場に流されてしまうかもしれません……ですから……」
「ですから?」

ベルカナさんはまるでもったいぶる様に言葉を溜めた。続きは一体、と私とレックス君は息を呑んだ。

「ですから……うろついていないで寝てください……」

大きくため息をつきながら言葉を繋げたベルカナさんは、呆れているように見えた。
きっと勝手に出て行ったことで心配をかけちゃったんだな、と私達は更に実感した。
「ごめんなさい……」と二人で揃って謝ると、どうにか許してくれたらしい。機嫌が戻ったようだった。
すると、ベルカナさんはその時何かを思い出したみたい。私達に手を突き出してきた。
何か欲しいのかな?

「絵は……どうなりました? 明日私が協力するために必要な、あれです」
「絵……あ、ああっ! それなら一応……まだ未完成だけど」
「構いませんわ。どんなものなのか見せてください。確かめたいことがあるので……」

場に流されて、何も出来なくなってしまう事をベルカナさんは怖がっているようだった。
でも確かに気持ちはわかる。朝になった途端、焦ったジェダに何かされて変なことになる恐れは十分にある。
私達の命はジェダの掌の上……それならそれなりに論理的に行動しなくちゃいけない。
だからベルカナさんは事を早く進めるために、色々と考えてくれているんだろう。
私はすぐに描いていたイラストを見せる事にした。まだ途中だけど、報告までに。
――すると、ベルカナさんの顔がまた険しくなった。もしかしたら何か拙かったんだろうか。
「……ど、どう?」と出来を恐る恐る尋ねてみると……大きくため息をつかれてしまった。

「やはり……すみません、もうちょっと写実的なものを期待していたのですけど……」
「しゃ、しゃじつてき?」
「いえ、私の事前の説明がなってませんでしたわね……それに勘違いもありました。ごめんなさい、説明します」

ベルカナさんはそうやって駄目出しと謝罪をすると、少しずつ語り始めてくれた。
それによると、どうやらロケーションという探知魔法には……かなり厳しい決まりがあるらしい。
ベルカナさん曰く、現状なら顔の絵でどうにかなるとは思ったけれど、その絵が期待通りのものじゃなかったそう。
私はレックス君の言葉どおりに書いたつもりだけど……ここまで描いてみれば、出来たのは線と鉛筆でのちょっとした塗りで構成された絵。
本物と見紛うくらい……しゃじつてきに絵が描けたら、どうにかなった…………らしい。
つまり――つまり、このままじゃさくらちゃんが、見つけられ、ない。
353創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:18:20 ID:7V+9lo7h
支援
354創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:18:30 ID:FGEP8/OF
 
355創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:18:46 ID:bS7O8gZ3
  
356創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:18:58 ID:7V+9lo7h
支援
357創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:19:28 ID:aUSI0Ddm
358Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:19:31 ID:6FwTrFiy
「ですが、これは"絵なら良い"としか言わなかった私にも責任があります……本当にごめんなさい」
「で、でもどうするの? もしかして……もしかすると……」
「……指針を、変更せざるを得ませんわね。誤算でした」

突然の宣告。それは私達をなるべく困惑させないようにしたのか、何気無くベルカナさんの口から漏れた。
けれどジェダが"臨時放送"をしたりでだんだんと違和感を覚えるこの現状で、この状況は明らかにまずい。
なんだろう、嫌な汗が出てきた。ベルカナさんも何か必死に考えるようにぶつぶつと呟いているし
レックス君も焦っているのか「どうしよう……」という声を漏らしている。アルルゥちゃんは……起こしてないから寝てるけど。
どうしよう……どうしよう……!

「と、とりあえず!」

ベルカナさんが何か思いついたのか、声を上げた。
どうにかこうにか現状を打破しようと考えているのが見て取れた。私達は注目する。
今の私は多分、凄く緊張した面持ちなんだろうな……。

「仕方ありません! ロケーションは諦めましょう……ですが私にも責任はある以上、侘びは致します」
「侘び……」
「あなた方のサポート……現状ではそれくらいしか出来ませんが、魔法や作戦の立案なら出来ます。
 今回のことはロケーションの厳しさを誰よりも知っていたはずの私が犯したミス……だからこそ、どうにかしたい」

そう語るベルカナさんの瞳はとても真剣だった。責任を感じている、という事も伝わってくる。
レックス君もそれを察したのか……「そう、わかった」とすぐに返事を返した。
そのまま「梨々も良いよね?」と同意を求められた。勿論私は同意して、頷く。

「ありがとうございます。では、急いで作戦を変えねばなりません。
 早速話し合いましょう……可哀想ですが、アルルゥも起こしてあげてくれますか?」

ベルカナさんの言葉を聞いたレックス君が、アルルゥちゃんの寝ている場所へと近づいていった。
そして何度か名前を呼んで体をゆするけれど、なかなか起きる様子は無い。
微かな返事をするばかりで、目は閉じられたまま。きっと凄く疲れてるんだろう。
しばらく続けても目覚めない事で、レックス君も諦めたらしい。

「今日はいろいろあったからね……ねぇベルカナ、アルルゥには朝起きてからって事じゃ駄目かな?」
「仕方ないですね……わかりました。彼女が納得してくれる事を祈って、我々だけで今後について話し合いましょう」

アルルゥちゃんの眠気に観念した様子のベルカナさんは、ランドセルから地図を出した。
広げたそれを眺めて、私達が今いるお城を指差した。グランバニア城、という名前らしいそこは少し北東寄りだ。

「私達は今ここにいます。そしてここから私の魔法で雛苺を探知する予定でしたが……それは無理な状況となりました。
 ここまではわかりますね? ではそうなると、この今いるお城からどう合理的に動くかを考えなければいけなくなりました」

ベルカナさんは、今度はいくつかの場所を指し示した。シェルターや近くの森、学校や神社と色々なものがある。
そしてそれらを示していった後、最後に北東の街へと指を伸ばした。

「今私達のいる城の近くには、沢山の施設や森などの特殊な場所が多く存在します」
「うん」
「普通に考えた場合……潜伏するなら、そういった場所を狙うはずです」
「つまり、その施設とかをしらみつぶしに探していけばいいってこと?」
「ええ。ですがそれでは手間が掛かるので……合理的に進むために、進むべき"ルート"を作りましょう」

ベルカナさんはそう言うと、また城を指差した。そしてそこから下へとなぞっていく。
そのまま指が動いてたどり着いたのは――森のほうだった。
359創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:21:01 ID:bS7O8gZ3
    
360創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:22:53 ID:FsaEPpFB
 
361Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:22:56 ID:6FwTrFiy
「この舞台、真ん中に施設が集中していると言う事は、それほど潜伏場所である可能性が高いと言う事。
 かつ、森から北上すれば自然と西端の工場へと進むルートになっているとも言えます。
 森から学校へ。学校から神社へ。そして神社から塔に、塔から廃病院へ行けば……後は工場だけ」

するするとベルカナさんの細い指が、宣言通りの施設へと滑らかに動いていく。

「更にそのまま工場から廃病院へ戻り、塔を経て北東の市街地へ行く事も出来ます。
 そうすれば東海岸沿いの洞窟とシェルターに寄る様に南下すれば……最後に今私達がいる城にたどり着けます。
 そう、丁度このお城をぐるりと一周出来るように、何故か都合よく多くの施設がある……探索しない手はありませんわ」
「つまり、まずは施設の多い西の方に行った方が良いって訳か……確かにね」
「ええ。今はいっそ東海岸沿いは諦めましょう。施設の少なさから見て、多くの人には用事は無いでしょうから」

レックス君が納得するようにベルカナさんに答えると、返答に満足したのかベルカナさんは言葉を続けた。

「もしかしたら貴方達の探し人がこの城に向かっている可能性も無いとは言い切れませんが……。
 けれど、そんな事を言っていてはきりがありません。今は一つの事に集中してこちらから行動を起こすべきかと。
 私の提案はこんなものです……どうでしょうか? 今すべき事と照らし合わせた、私自身が理想的と考えた意見です」

ベルカナさんの瞳が耳が、私達の意見を一字一句聞き逃さないぞと言うように働いているのが解る。
そして私たちも地図を見ながら今のベルカナさんの案を振り返った。確かに、実に合理的だ。
東ではなく西への探索を最重視する理由もわかる。それにこの沢山の施設も興味深い。
昨日の森では沢山の闘いやすれ違いが起こったけれど……今日見れば何かが変わっているかもしれない。
私がベルカナさんの意見を否定する理由は見つからなかった。レックス君も同じみたいで、頷いている。

「僕は良いと思う。色んな場所に行く、っていうのは単純だけど基本だもんね。後は梨々が……」
「私も賛成。実際、工場や学校は見た事が無いし……行ってみる価値はあると思う」
「ありがとうございます。では、決まりましたわね……明日の朝、すぐに城から出て西へ進みましょう」

道は、決まった。


       ◇       ◇       ◇


ベルカナ達との話し合いが終わって、しばらくするとまた結局皆は元通りになった。
梨々もアルルゥもベルカナも今度こそベッドで眠っている。そして僕はまた一人、天井をただただ見ているだけにだった。
けれど、最初みたいな不安はもう薄れていた。確かにタバサは心配だけど、それでもまだマシにはなった。

だって、仲間がいる。

梨々の言葉や、ベルカナとの話し合いのおかげで……やっとそれが実感できた気がする。
結局自分はまた勝手にプレッシャーを背負ってたんだな。悪い癖かもしれない、本当に。
けれど、そんな僕を仲間だと思ってくれている人がいる。なら僕はその人の為に頑張れる。

明日は、絶対大変な一日になると思う。
けど皆がいるから大丈夫だって……今やっと、そう思えるようになった。
362創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:23:19 ID:aUSI0Ddm
363創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:23:38 ID:bS7O8gZ3
   
364創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:23:46 ID:FGEP8/OF
しえん
365創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:25:50 ID:aUSI0Ddm
366Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:25:51 ID:6FwTrFiy
       ◇       ◇       ◇


まるで、時をほぼ同じくして愛しい妹が描いた劇に対比するよう。
妹を思う兄は仲間のおかげで再び決意を固め、仲間と共に自分の行く道へと進みだすことが出来た。
暗い闇の中で手に入れた結束は強く固い。ここまでは、ほとんどが同じ。

しかしながら役者が違えば演技も変わり、舞台の上で変革を為す。
妹は泣き、兄は微笑む。しかしそれでも根っこは変わらず、兄妹揃って互いを求める。
けれど誰も知る由もない、この兄妹の擦れ違いを。
あまりに非情な道の遠さを、誰も彼もが存じていない。
妹は向かい、兄も向かう。だがその道は早くも違う。
東へ西へ西へ東へ、北へ南へ南へ北へ。歩けども歩けども――――運命とやらはかくも非情か。
果たして未来はどうなるのやら。これからどうなり続けるのやら。

使い古されたある言葉……それを用いて言うならば――――"それは誰も知らない"、とでも言うべきか。



【F-3/グランバニア城内一階宿屋/一日目/深夜】
【レックス@ドラゴンクエスト5】
[状態]:疲労、魔力大消費
[装備]:ドラゴンの杖@DQ5 (ドラゴラム使用回数残り2回)
[道具]:基本支給品×2、GIのスペルカード(『交信』×1、『磁力』×1)@HUNTER×HUNTER、飛翔の蝙也の爆薬(残十発)@るろうに剣心
    魔力の尽きた凛のペンダント、快速シューズ、クロウカード『駆』、穴が空いたナマコ型寝袋、フック付きロープ@DQ5
    木村先生の水着@あずまんが大王、モンスターボール(空)@ポケットモンスター、爆弾石×8@ドラゴンクエスト5
    海底探検セット(深海クリーム、エア・チューブ、ヘッドランプ、ま水ストロー、深海クリームの残り(快速シューズ))@ドラえもん
[服装]:普段着
[思考]:明日こそは……!
第一行動方針:今は休んで回復に努める。
第二行動方針:ベルカナの魔法で桜の捜索。雛苺から助け出す事に集中。
第三行動方針:仲間を守りつつ、レミリアとタバサを捜す。
第四行動方針:魔力が回復して余裕が出来たら、不明アイテムや水中の調査
基本行動方針:勇者としてタバサの兄として誇れるよう生きる。でも敵には容赦しない。
[備考]:エンディング後なので、呪文は一通り習得済み
    アルルゥや真紅はモンスターの一種だと思っています。
    ベッキーは死亡したと考えています。
    お城の地下に迷宮があるのを確認しましたが、重要なことだと思っていません

【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(中)、右腕の手首から先が動かない。睡眠中。
[装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)@サモンナイト3、ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:基本支給品、クロウカード『泡』@カードキャプターさくら、小さなメダル@DQ5
[服装]:普段着である民族衣装風の着物(背中の部分が破れ、血で濡れている)
[思考]:ZZZ……
第一行動方針:おやすみなさい。
第二行動方針:レックスについていく。
第三行動方針:ベルカナの魔法で桜探し。
第四行動方針:レミリアやイエローも捜したい。
基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。
参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後
[備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。
    ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。
    サモナイト石で召喚された魔獣は、必ず攻撃動作を一回行ってから消えます。攻撃を止めることは不可能。
    アリス・イン・ワンダーランドに対して嫌悪を覚えています。
    ベッキーは死亡したと考えています。
367創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:26:28 ID:bS7O8gZ3
    
368創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:26:57 ID:aUSI0Ddm
369Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:27:25 ID:6FwTrFiy

【梨々=ハミルトン@吉永さん家のガーゴイル】
[状態]:右腕及び全身各所に亀裂骨折(核鉄で回復中)、睡眠中。
[装備]:白タキシード(パラシュート消費)&シルクハット@吉永さん家のガーゴイル +パンジーの花飾り
    核鉄『シルバースキン・アナザータイプ』@武装錬金、F2000R(残弾23/30)@とある魔術の禁書目録
[道具]:支給品一式×2(食糧、水のみ一人分)、FNブローニングM1910(残弾0)、飛翔の蝙也の翼@るろうに剣心、
    テーブルクロス、グラス×5
[服装]:白タキシード&シルクハット
[思考]:皆で頑張らなきゃ……。
第一行動方針:今日のところはひとまず寝て、ベルカナの回復を待つ
第二行動方針:桜を助ける。そのために雛苺からさくらを盗む。
第三行動方針:殺し合いに乗ってない、友好的な人を探す。
第四行動方針:双葉かリィンちゃんの友達及び小狼を探す。
[備考]:桜の知り合いの情報を聞いている。

【ベルカナ=ライザナーザ@新ソードワールドリプレイ集NEXT】
[状態]:骨折数箇所、裂傷多数(核鉄で回復中)、精神力消耗・極大、睡眠中。
[装備]:ネギの杖、核鉄LXX70(アリス・イン・ワンダーランド)@武装練金、果物ナイフ@DQ5、病院服、レースのビスチェ@DQ5、ただの布切れ@DQ5
[道具]:支給品一式×2、懐中時計型航時機『カシオペア』@魔法先生ネギま!、黙陣の戦弓@サモンナイト3
    返響器@ヴァンパイアセイヴァー、消毒薬や包帯等、エッチな下着@DQ5
[服装]:入院患者用のパジャマ(上だけ) とただのぬのきれ。その下にレースのビスチェ
[思考]:明日は「ルート」通りに進んで、なんとかしませんと……。
第一行動方針:六時間以上眠り、精神力を全開させたい。
第ニ行動方針:朝の放送でイエローが無事だった場合、『交信』でイエローと連絡する代わり、「ルート」通りに行動して桜救出に協力する。
第三行動方針:イエローと合流し、丈からの依頼を果たせるよう努力はする(無理はしない)
第四行動方針:まともな服が欲しい。仲間も集めたい(イエローの友人の捜索。簡単には信用はしない)
基本行動方針:ジェダを倒してミッションクリア
[備考]:葵が死んだことを知りません。
  レベッカ宮本を『フォーセリアのレッサー・バンパイア』だと考えている?
370創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:28:00 ID:FGEP8/OF
 
371Compare ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:28:54 ID:6FwTrFiy

※「ルート」とは
雛苺と桜の捜索を円滑にする為に設定したのが今回のルート。
【城】→【中央森】→【学校】→【神社】→【廃病院】→【工場】→【廃病院】→【C-3塔】→【北東市街】→【G-2洞窟】→【シェルター】→【城】
と、丁度グランバニア城の周りを一周する様に時計回りで施設を回っていく、主に西側を重点に捜索する作戦である。


このルートは施設を総合的に捜索するプランですわ。
     (゚д゚ )
     (| y |)

このルートで捜索することにより……
     ( ゚д゚) ;y=‐ ;y=‐
     (\/\/

探索効果は120%上昇
     ( ゚д゚) ;y=‐
     (\/\
          \ ;y=‐

必要時間面では63%減少
     ー=y;―
         |
      (゚д゚ )
 ー=y;_/| y |


このルートで捜索したものは無敵になります!
  ー=y;  ( ゚д゚)   ;y=‐
    \/| y |\/
372創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:29:13 ID:aUSI0Ddm
373 ◆wlyXYPQOyA :2008/12/06(土) 16:29:38 ID:6FwTrFiy
投下終了。支援感謝です。
374創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:32:59 ID:FGEP8/OF
>>313
>>314
代理投下人です
スクロールしながらやってたら取り違えたようです
申し訳ありませんでした

感想まとめて後に。
375創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:35:40 ID:bS7O8gZ3
ガンカタwww

投下乙です。そっちの方に行くかぁ。
見事なまでに大外れ、引き運の悪い奴らだ。
どうなるかは正に神のみぞ知る、か。
376創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:38:26 ID:aUSI0Ddm
しかし絆がましたようでなにより
377 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:41:11 ID:7V+9lo7h
じゃあ、今度はこっちが投下行きます。
378神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:42:53 ID:7V+9lo7h
ガコン!!
「いたぁ!!」
 何かが何かに激突した鈍い音と悲鳴が響く。
その声の主は白いシスター…もとい少女。
 彼女の名はインデックス。10万3000冊もの「魔道書」をその脳内に納める、いうなれば魔道図書館である。
イギリス清教の対魔術師特別部署、「必要悪の協会」のメンバーでもある。
...まあ、こんなベッドから落ちて頭を抱えてる彼女からは想像も付かないが。
「大丈夫?」
 声をかけたのはリンク―後にハイラルの勇者とも呼ばれるようになる―だった。
「いててて...大丈夫...」
 インデックスは半泣き状態で答える。しかし、涙目でそんなことをいわれてもまったく説得力はない。
「熱は?...ってふらふらしてるけど!?大丈夫?!」
『静かにしてくださいよ。起きちゃいますよ..』
「ご...ごめん」
「で、大丈夫ですか?」
 アリサの枕元にあるルビーも言う。事実、かなり具合が悪そうに見えた。顔色も悪い。
しかし当の本人はさほど具合は悪くない、と言った表情で、
「大丈夫。って、何で私は床にいるの?」

………………………

「...インデックスが自分で落ちたからじゃ...」
あきれ気味にリンクが言う。
「え...?ほんと?何で?」
 状況を飲み込めていないインデックス。しかし、普段の彼女の寝相を知る人間――まあ、とある少年しか知らないが――
なら、この程度で済んだ、と大喜びするはずである。ちなみにその少年は、彼女のあまりにひどい寝相のせいで、快適なベッドから追いやられて、
ユニットバスで寝ている始末だ。もちろん本人は気づいていない。知らぬは本人ばかりなり。

「うーん??どうし...痛っ!!」

なおも疑問をあげようとしたその時、がしゃっ、と金属音がするとともに、悲鳴が上がった。
「『どうした(の/んですか)!?』」
 二人(?)が声を上げる。三人(?)が足元を見ると、一振りの短刀が落ちていた。
それを見たインデックスの顔が見る見る怒りに染まっていく。

「誰?こんなの放り出してた人は!」
インデックスはそれを拾いながら言った。頭から湯気が出ている。

「怒るより前に手当てを...」
「もしこれが足じゃなかったらどうするの?まったく...」
 リンクが助言をするが、それを聞きつつも文句をもらす。
片付けは苦手な(と言うより必要ない)彼女だが、こと危機管理においては誰にも負けない。
短刀についていたわずかな血をぬぐった。
「これはなのはのだったね。...もう、皆危機管理が甘すぎるんだよ...」
ぼやきながらも、踏まない場所におこう、ととりあえずランドセルのそばへ行こうとした彼女だったが、
『待ってください』
不意に呼び止められた。ルビーの視線(そんな物があるのかは疑問だが)は、その手に握られている短刀に注がれていた。
「ん?どうしたの?」
当然あるかも分からない視線などに気づくはずも無く、インデックスは聞いた。
『その刀...どこかで見たことがあるんですよ...』
「これ?何か魔術的意味でもあるの?」
インデックスがまた聞く。無論、聞くと言うことは彼女の世界の魔道書に記述が一切無いと言うことである。

『うーん...えっと...ああ!思い出しました!...それは「アゾット剣」です』
「アゾット剣?これが?」

379創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:43:08 ID:6FwTrFiy
 
380創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:43:24 ID:bS7O8gZ3
支援
381神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:43:39 ID:7V+9lo7h
 アゾット剣。稀代の錬金術師、パラケルススが愛用したとも言われる短剣。
錬金の奥義が内包されてるとも言われ、銘の「アゾット」と言う単語もそれを象徴している。
ちなみに意味は「錬金」だ。

 もちろん魔道書図書館内にその剣についての記述もある。だが。
気づくはずが無いのだ。根本から世界が違うなら、術式、礼装もまた然り。
しかし。

「...言われてみれば、確かに。気づかなかったんだよ」

同じ「魔術」なら、世界ごとに相似点が出てくるのも然りである。


『これはおそらくこっちの世界の礼装です。
 一人前の魔術師になった者にあげるって言うのが通例ですね。
 しかもこれは模造品...ていうか、刃の部分に微妙な違いが見られますが、
 本質的には変わらないでしょう。』
 ルビーがアゾット剣について丁寧な解説をすると

「さっきはなんで気づかなかったの?」
 インデックスは聞く。それには自問の意味も含まれていた。
『ええ、さっきはよく見てませんでしたから』
「これは...確か神社の倉庫から持ってきた...」
 さらっとかなりとんでもない事をルビーが言ったのはさておき、リンクが思い当たりを述べる。
「神社、ね」
『何か思い当たる節でも?』
「いや、なんでも...無い」
その時、インデックスの体がふらりと傾いた。もともとかなり熱が有ったのだ。頑固な彼女がそれを隠していただけで。
「『!!』」
 インデックスは心配をかけまいと、足を踏ん張って立とうとするが、

ツルッ!

足元にあったタオルで滑った。なすすべも無くインデックスの体は地面にたたきつけられる。
「『だ...大丈夫(ですか)?』」
 リンクとルビーが心配そうに声をかける。
 インデックス本人にそこまでのダメージは無かったのだが、かなり派手に転んだように見えたらしい。
「大丈夫。...心配しなくても...え?」
そこで彼女は気づいた。床に刻まれた、有る模様に。
這いつくばらなければ、見えないほど薄く刻まれたそれは、しかし、
彼女の目をごまかすことは出来なかった。
「これは――――!!」
そこで彼女が見たものは――――
382神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:44:13 ID:7V+9lo7h
**********************************************************

「ん...?此処は...?」
意識を取り戻したアリサの第一声はそれだった。
事実、此処には何も無かった。なんだか浮いているような感覚だけ有る。後は真っ暗だ。
周りには暗闇しかないのだが、なぜか不安にはならなかった。
むしろ、安心を与えてくれるような、そんな暗闇だ。

時が流れてゆく。否、時の流れさえも分からない。ただ、自分だけがここにいる。それだけだ。

(...なんだか気持ちいいかも。)

アリサもだんだんこの感覚に慣れていく。違和感さえ、薄れていく。
アリサの「自分」が薄れてきたその時、暗闇を裂くように一条の光が差し込んだ。

「っ...まぶし...」

暗闇に慣れていたアリサの目は、その光の中に一つのぼんやりとした人影を見た。
しかし、細かいところまでは分からない。

「あんた――誰?」

アリサは思わずそんな言葉を発していた。事実、アリサには誰か分からなかった。
だが、その人影はひどく、悲しそうな顔をした...気がした。

アリサの目が光になれて行く。そこで見たものは...

「なのは?どうしてここに?」
 アリサのその台詞に応じることなく、彼女は顔を背ける。
そのまま彼女は歩き出してしまった。アリサから、逃げるように。

「ちょっと...?待ってよ!ねえ、なのは!!」

彼女の制止も振り切って、なのはは歩き続ける。
それを見たアリサは、直接とめようと、なのはを追いかけだした。

 普段だったら、アリサは3秒とかからず、腕をつかむだろう。
 だが、今は違った。
 いくら走っても、全然距離がつまらないのだ。
体力の差は歴然のはずなのに、いくら走っても、走っても、追いつけない。
届いたと思うと、すり抜けるようによけられる。

 手が、届かない。

そのうち、向こうのほうに光が見えてきた。
なのははその中に消えた。アリサもまた、そこに入って行った。

 そこは、とても明るいところだった。この場所にはなんとなく見覚えが有る。
というか、
(学校じゃないの、ここ...)
383創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:44:20 ID:bS7O8gZ3
  
384創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:45:12 ID:bS7O8gZ3
   
385神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:45:14 ID:7V+9lo7h
アリサたちがいつも通っている学校だった。
アリサにとっては楽しい思い出がたくさん詰まったこの場所。
楽しかったこの場所は、しかし今の彼女にとってはただただ苦しい場所だった。
――思い出が、よみがえってくるからだ。
(ここでなのはと殴りあったっけ。)
よみがえってくる日々。しかしそれに耳を貸している時間は無い。
一刻も早く、なのはを連れ戻さないといけない。
彼女自身、もはや何のために追うのか分かっていない。
ただただ、強い焦燥が有るだけ。
だけど彼女はわき目も振らず、走り続ける。

しかし。

「はあ、はあ、……どこに……いるのよ…はあ…」

見失ってしまった。もう視界のどこにもなのはの姿は無い。
「どこにいるのよ!!出てきなさいよ!!」
叫んでも無駄だった。なのはは、こない。

叫んでも疲れただけだったので、彼女は冷静に辺りを見回してみた。
(ここは...?)
教室だった。今まで平穏な日常が繰り返された、平穏の象徴とも言うべき場所。
「よりによってなんでこんな場所に...」
ここにいるとつらくなる。もう戻ってこない日々が、心に刺さる。
きびすを返そうとした彼女だったが、それは意外な声によって制止された。
「待って」
それは。アリサにとってはかけがえの無かった人の一人の声。
彼女の目の前でその命を散らした、親友。
アリサは振り返る。その顔を直視した。
「久しぶりやな。アリサちゃん」
死んだはずの、八神はやてがそこにいた。


「はや...て?どうしてここに...?」

それは当然の疑問だった。まあ、本人にもここがどこだか分かってないが。
「いるからいるんやろ。死んでるとか生きてるとか、そういうのはどっちでもいいやないか」
「......」

相当の暴論だった。納得できるはずは無いが、食い下がっても仕方が無い。

「それはいいとして、なにが起きてるのか教えてくれへんか?なんか良く分からんうちにいろいろおこっとるみたいだしね」
「...分かった。じゃあ、話すよ。あんたが死んでからおこった事を」

そして彼女は話し始めた。しばらく何もでいなかったこと、フェイトが死んだ事が分かった事、
ヴィータとぶつかった事。その思いの深さ。敗北。転移後の出会い。そして戦い。説得。

「いつだってそうだった。そう。
386創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:45:54 ID:bS7O8gZ3
   
387創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:46:16 ID:YTjjvwDA
投下乙!
このハーレム勇者め!
着々とフラグを立てていきよってからにw
梨々と手を繋いだり、ベルカナの協力を引き出したり……
アルルゥのお兄ちゃんフラグもあるし、まことにけしからん。

だが、貴様が次に向かう西には誓いの儀を済ませた選りすぐりのマーダーどもが蠢いておる。
いつまでもギャルゲ主人公ぶっていられると思うなよ!
フハハハハハハハハ!!
388神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:47:16 ID:7V+9lo7h
ヴィータと戦った時だって、私は手も足も出なかった。なのはを助けようとしたときだって、
 行かないでって縋っただけ。ここに来る前だって。あんたたちが魔法とかで戦って、傷ついて、
 ぶつかって。私は何も出来ないうちに、なのはは勝手に傷ついて、勝手に強くなって、
 勝手に変わって行く!!皆変わる!!なのに...私なんて...力を持ったところで、
 何にも出来なかった!!きっとこれからも..」

いつの間にか、彼女の報告は自らを罵倒する、自虐の言葉になっていた。
「アリサちゃん。...無理せんでもいいんよ?」
はげますはやて。でも、彼女には効果は無い。
「いいや。きっと皆心の中で、お荷物だって思ってる。...なんにもできないから...何も出来ない?
 そうよ。何も出来ない。...」
一人で沈んで行くアリサ。はやてはそれを見て、

パアン

頬を張った。思いきり。手加減なしで。

どしゃあ、とアリサが倒れた。
「え...?」
頬を押さえながら立ち上がろうとするアリサに、はやては告げる

「そんな事...誰も思ってないよ...何も出来ないなんて、言わないで...
 アリサちゃん達がいたから、なのはちゃんやフェイトちゃんは戦えたと思うよ。
 きっと、何も出来ないなんて事は無い。言わなかったのは、心配かけたくなかったからや。
 アリサちゃんなら分かるやろ?なのはちゃんが、どうして抱え込んでまうか」
アリサは気づいた。彼女の目に浮かぶ、涙を。
「でも...実際、何も出来なかった。ただ縋ることしか出来なかった!!」
「アリサちゃんは。アリサちゃんの出来る事をやればいい」
それは彼女に、かなりの衝撃を伴って伝わった。
「え?...どういう....?」
「かんたんや。縋るだけでもいい、って言ってる。アリサちゃんに、いったい何が出来るか。
 一緒にいて、手を握ってあげるだけでもいいんや。きっと」
それは。いつだったか。決心したではないか。少しでも、日常の中にいても、
精一杯、なのは達を助けようと。...結局そこへ戻るのだ。
「で...でも...」
「どっち道、それしかないんや。無理してもなににもならない。
 私だって、...」
声に悔恨の色が混じる。それを聞き取って、アリサが聞く。

「...はやては悔しくないの?何も出来なくなっちゃって...」
「――私は、後悔なんてしてへんよ。ヴィータは心配やけど...アリサちゃんに頼んだから」
アリサは悟った。はやては、本当に後悔なんてしていない。ただただ、家族が、親友が、心配なだけ。
何でこんなに優しい人が死ななければならなかった?
なぜ?
――答えは、明白だった。
「...そうだね。分かったよ。そのとおりだよ。」
ポツリとアリサがつぶやく。はやては、頷いた。
「...アリサちゃん。忘れないで。私の世界もそこに有る世界や」
はやてが、アリサの胸を指しながら言う。...今までのアリサなら、分からなかったろう。
389創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:47:32 ID:FGEP8/OF
 
390創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:48:02 ID:bS7O8gZ3
    
391神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:48:09 ID:7V+9lo7h
だが、今のアリサになら分かった。その、意味が。
「はやて...」
「そろそろ、時間やな。...頼んだよ、アリサちゃん」
願いのこもった言葉を、託す。
「...頼んだよ、じゃない――、一緒でしょ?」
そしてアリサは、それを受け取る。胸を指して、そんな事を言った。
世界が、白くかすんでいく。
白く、白くなって行く世界で、はやては、――――微笑んだ。

**********************************************************

 白い悪魔。そう。それが彼女に与えられた、いや、自分で選び取った名。悪魔は非情。
冷徹に人を裁く。そこに私情は挟まない。悪人を駆逐したり、感情が有るとどうしてもできないことを引き受ける、いわば汚れ役。
 もとから彼女がいたわけじゃない。ただ、ここに来てからの自身のあり方に、『感情』が耐え切れなかったから生まれた、いうなれば代役。

 いや、代役と言う表現は適切ではない。彼女も「高町なのは」の一部なのだから。ただ、役割が違うだけ。
 役割。そう、彼女に与えられた役割は、汚れることだ。「高町なのは」が描いた理想...願望をかなえるために
受けなければいけない汚れを、一手に引き受ける。彼女は、そのためにいる。

 彼女なら、もしその理想が対価として人の血を要求したとしても、きっと躊躇わずその手を血で塗りつぶすだろう。
そして決してひるまない。
 彼女は、その役割ゆえに人としての機能――喜、怒、哀、楽、友情、愛情その他の感情――を、可能な限り排して有る。
排する、と言うのも語弊が有るかもしれない。彼女のもう一つの部分、『高町なのは』にすべて担ってもらったと言うほうが正しいか。

そして彼女に残ったのは、「理性」と「使命」だけになった。


――――だからこその「白い悪魔」。人として人らしく感じる機能を喪ったモノを、他になんと呼べばいい?


『狂人とは理性を失った人のことではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である』
――――誰が言った台詞だっただろうか。今になって思い出すこの台詞。
そのとおりだ。と今の彼女には思うことができた。しかし、いや、だからこそ、彼女は――白い悪魔は止まらない。


 しかし彼女は気づかない。...彼女は、まごうと無き彼女自身だと言うことに。


 彼女はあくまでも、「高町なのは」の一部だ。彼女の望みは、「高町なのは」の望みであり、『高町なのは』の望みでも有るのだ。
...高町なのはの望み。それは、幼少期(今でもそうだが)に、有る経験をした事からきている。
 有る体験。それは独りでいた、と言うことである。
 家に帰っても、誰にも相手にされない。周りに家族はいるのに、なぜか感じる孤独。なぜか感じる心の距離。
父親が怪我をしてからは、それはいっそうひどくなった。家に帰っても、誰もいない。
一人で過ごす夕暮れ。帰ってくる家族を待つ間、彼女は考え、そして願った。

――皆と仲良くなって、楽しくいたい。

...だから彼女は杖を振るった。だから彼女は撃ち続けた。
分かり合うために。仲良くなるために。

...この願いを。どうやって悪魔がかなえると言うのか。
自分の願いと完全に矛盾する役割を与えられてしまった人格。
392神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:49:04 ID:7V+9lo7h
...彼女自身、気づいている。とっくに気づいている。
しかし、彼女には「気づく」事すら許されない。気づいてしまえば、きっと何かが崩れるから。
役割を、維持できなくなるから。認める事が、許されない。

 しかも矛盾はそれだけではない。
何度も言うように、彼女はどこまで行っても「高町なのは」なのだ。そして壊れているわけでもない。
つまり、彼女自身がなる事のできないもの――感情をなくした悪魔になど、絶対になれないのだ。
どんなに磨耗しようと。どんなに擦り切れようと。
しかし彼女はなろうとした。意固地になって、自分の感情、人としての部分を否定した。
夢で笑っていた自分は。ほかの誰かだと思い込む事によって。自分を、他人と見る事によって。
――そこで矛盾が生まれてしまった。

...矛盾。そう矛盾だ。感情が無い悪魔に、少しでも感情が有ってどうするのか。
本来なら中途半端な感情は中途半端な行動を生む。
だが。その程度では彼女の行動は変わらない。
否、変われない。その役割は与えられていないから。そんな行動は彼女の中には無いから。

だから彼女は、願う。自分を否定する、矛盾した願いを。
止めてほしい、と。救い上げてほしいと。この闇から。
彼女をがんじがらめに縛り付ける、この矛盾から。この鎖から。
もちろん、自覚は無い。彼女は、気づかない。

全ての矛盾に、彼女は気づかない。否。気づけない。気づいたら、崩れるかもしれないから。
だから彼女は気づかない。


――――自分の存在自体が矛盾している、なんて事には。


**********************************************************

 「何?何かあったの?」
リンクが聞く。リンクが心配になるくらい彼女の言い方は深刻だった。
インデックスがそれを指差す。それは、円だった。半径は1メートルくらい。かなり正確な円だ。
そこから無数の線が部屋の壁に向かって延びている。
「......なにこれ?」
リンクが疑問の声を上げるのも無理は無い。素人目にはただの円にしか見えない。
 だが。
『!!!――――これは...!!』
「ルビーにはわかるみたいだね。そう。これは...魔法陣だよ。」

魔法陣。魔法を使う時に補助として、そして時としてメインに、使われる図形の名称である。
『これは初期の魔法陣...いや、魔法円とでも行ったほうがいいかも知れないですね。』
「うん。これにはほとんど何も記述が無い。つまり、発生させられる力は弱いけど、」
『どんな魔術にも使える、と言うことですか...』
そう。魔法陣は図形をどんどん複雑にして発展してきた。しかし、それは一種の退化とも言える。使える用途が限定されてくるからだ。
それに対して、本来の魔法陣...初期の魔法陣にそんな心配は要らない。文字や無駄な図形の制約が無いからだ。
『しかし、何でまたこんなものが?』
「うーん、何でだろ...ん?まって...」
何か引っかかる。そこでインデックスはあることを思い出した。
「ここって...確か建物の中では一番北にあるよね」
「うん...確かにそうだけど。それが?」
話の内容がまったくわからないリンクが答える。
『...なるほど。北の部屋の中心に魔法陣。ついでにここは寝室、ときましたか。出来過ぎですね。』
「うん。そうだよ。北は日本仏教において冥途へといたる方角。そこへ完全と調和を意味する円が来た。
393創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:49:05 ID:bS7O8gZ3
    
394創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:49:39 ID:bS7O8gZ3
    
395神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:49:40 ID:7V+9lo7h
 これならきっとただの魔法円でもかなりの魔術的意味をもたせることができるだろうね。それにこれが書かれているのは部屋の中心。
 部屋に「一つの世界」の役割を持たせる事でその場に「世界の中心」に魔法円を書いたことになる。」
『何のために...?』
疑問を浮かべる二人。そしてインデックスは気がついた。この会場に満ちるある気配に。
「ルビー。気づいてる?この会場、どこかおかしいって」
『おかしい...ですか。確かにおかしいですね。なぜか私も本調子じゃありませんし。何より大源(マナ)がおかしい。
 何かいつもと違う感じがしますね。』
唐突な質問に疑問符を浮かべながらもルビーが答える。
「うん。マナって言うのはこっちで言う世界の力に当たると思うけど、たぶんそれを、ジェダが仕切ってしまっているの。...支配している、
 と言ってももいいかも。」
大源の支配。それが意味するところはつまり――
『そんな...ここはジェダの固有結界だって言うんですか!!』

固有結界。世界中の魔術師たちが目指す、魔術の一つの到達点。最も魔法に近いと言われている、最大級の禁呪。
リアリティ・マーブルとの別称を持つこの魔術の真髄は、自分の心の世界、心象世界を外界へ引きずり出すこと。

「固有結界って言うのは良くわからないけど、たぶんそれ。たぶんジェダはこの世界そのものを儀式場にしたいんだと思う。」
『それは...ものすごいことですよ。固有結界って言うのは、魔術師が夢見る最高の神秘です。そんなものをこんな範囲で、
 しかもこんな長時間にわたって展開し続けるなんて...いや、ありえるかもしれませんね。
 世界一つを儀式場にする超大魔術。おそらく相当の大事になりますよ。』
そんな話はルビーもインデックスも聞いた事が無い。
「だろうね。世界一つ規模の術式なんてそうそう無い。きっとほかにも何かあると思うけど...まって、世界一つ?
 何か引っかかる...」
『世界一つ...有名どころだと「世界創造」、「最後の審判」、「千年王国」、「末法の世」、後は「神々の運命」とかですかねえ』
「神々の運命...世界創造...まさか...」
そこで彼女はある言葉に思い至った。
「――世界を救うために君たちには殺し合いを――」
それは、このゲーム始まりのとき、主催者のジェダが発した台詞。
『!!...それは...いやまさか...』
「ありえないことじゃないよ。あいつが私たちを「幾多もの次元世界」から連れてきたんなら、役割も合う。」
『じゃあ、私たちが本調子を発揮できなかったのも――吸収されていたんですか』
「うん。あいつ一人の魔力じゃ足りないだろうからね。ここへ来た人たちの魔力もきっと――」
「...ちょっと待って。話がぜんぜんわからない。わかりやすく説明して」
知恵熱が出かけていたリンクがたまりかねて言う。たしかに彼女らはリンクの理解の範囲外の会話をしていた。

「そっか。ごめん。わかりやすく言うと、「このゲームの主催者はなにが目的か?」って言う話だよ。
 たぶんあの自称冥王様はこの世界を救うために動いてる。いや、こういったほうがいいかな。
 あいつはこの世界をあいつの思ったとおりに長生きさせるために動いてる。」
「............?」
『まあつまり、この世界はパズルのピースがずれてしまってくみ上げられているようなものだから、
 一度ぶっ壊して組みなおそう、と言うことですよ。』
「!!――そんな」
そのたとえならなんとなくリンクもわかる。それが意味するところはつまり―――
『リンクさんの考えるとおりです。「組みなおす」には一度「壊す」と言う手順が必要になります。
 きっと壊すための力の増幅と、世界創造のための確固たるイメージ作り...そうですか。
 ここはジェダだけの固有結界じゃない。ここは一人ひとりの魔力を使って合同で結界を張っている、とい
396創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:49:41 ID:FGEP8/OF
 
397創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:50:09 ID:aUSI0Ddm
398神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:51:02 ID:7V+9lo7h
「??...どういうこと?」
インデックスが割り込む。
『さっきも言いましたが、固有結界って言うのは魔術の一つの到達点です。
 その極意は、「自分の心象世界を現実に侵食させる」ことなんです。地図出せますか?』

リンクが地図を持ち出す。

『ここと、ここと、...まあ、たくさんありますが、特徴的な建物は、みんな私たちの心象世界から来ているなら、
 辻褄が合います。』

「そうか、合同で張ればそれだけ世界の総量も増えるってことだね。
 こっちで言うなら「黄金練成」と同系統の魔術かな?なるほど、それならきっと世界の略図を作れるね。」

「?????????」
またわけのわからない話になって来た。
『まあつまり、この世界はここへ連れて来られた人たち皆の心の中の風景を具現化してるって事です』
例によってルビーのわかりやすい解説が入る。
それにはリンクも思いあたりが合った。
「そういえば...梨花ちゃんも、神社を見て、「ここは自分の神社だ」って言ってたよ」
「やっぱり...それなら辻褄もあうね。」
「ええ。心象風景って言うのは、一人ひとり違うんです。本来なら、合同でこれを張るなんて事は無理なんですが...」
ルビーはそこでいったん言葉を切った。
「話は変わりますけど、リンクさん。人の考えを一つにまとめるにはどうすればいいと思いますか?」
「え?」
唐突に話を振られたリンクが一瞬あわてる。
「うーん」
(人の考えをまとめるって言えばやっぱり...)
リンクはもともと全般的に能力は高い。決して頭が悪いわけではない。
だが、この面子の中では一番頭の回転が遅い事も確かだ。
――まあ、この面子が異常なだけだが。

「話し合いする、とか?」
「いや。話し合いをしても、内側の考えまではまとめることが出来ません。』
リンクが苦心して出した答えもあっさり否定される。
「それは、『絶対の存在を作り出す』事です。たとえば、とても強い人が世界を支配したとして、
 あなたはその人を意識せずに生活出来ますか?それと同じでこの場だって、
 ジェダに抵抗しようと思ってる人も、ゲームに積極的に参加しようって人も、ジェダを意識しなければならない。』
そう。絶対の支配者が君臨していれば、たとえどんな人間であろうとも、その支配者を心の片隅におかなければならない。
「そうか。つまり、「心象風景に共通項を作り出す」わけだね。」
インデックスが彼女なりに解釈する。
『そういうことです。ですから、そこからはみ出したものは、一つにまとめて特徴的な施設にする。
 きっと、そのりかさんの言ってた、見覚えが有ると言うこともそこからきているのでしょう』
「うん。それなら僕にもわかる」
リンクもうなずく。

『じゃあ、これまでの推測をまとめますね。まず、
 @、ここはジェダの大規模な儀式場である事。
 A、それは少なからず世界の変革を目指すための儀式である事。
 B、そのための儀式場は、固有結界である事...というよりもここ自体が皆の固有結界であること。
 C、ここからは仮説になりますが、この儀式を存続させるための力は、参加者から搾り取ってると言うこと。
 D、その儀式は、『神々の運命』を模したものであること。
...このくらいですかね。』
「ねえ、さっきの短剣は何のために合ったの?」
まとめにリンクが突っ込みを入れる。
『ああ、それを忘れてました。きっと、魔法陣の一部だったんでしょう。...あれ?でも、じゃあなぜこの術式は崩壊しないんでしょう?』
いきなり仮説は崩壊の危機を迎えた。
「それはきっと「有る程度まで壊れても、読み取れる意味が変わらない」ようにして有るからだと思うよ
 ...この手の魔法陣は一気につぶさないとだめってところが厄介なんだよ。」
そこをインデックスが修正する。...だが、リンクはどうしても不安になった。
399創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:51:24 ID:bS7O8gZ3
   
400神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:52:12 ID:7V+9lo7h
『それは同感です。魔法陣の一部なら、きっと、...たとえ、どんなにくだらなくても意味が有る。きっと』
「で、次はこの儀し...くっ...!?」
――何度も言うが、彼女は頑固である。さっきまでは議論で熱を忘れていたようだが、彼女なりに苦しみ
を我慢して来たのだろう。
ゆっくりと彼女の体が傾いてゆく。彼女はまた、なすすべも無く床にたたきつけられるだろう。
だが。
すっ、と音も無くリンクが彼女を受け止めた。
「インデックス。無理しなくてもいいよ。休んでていいよ。少しは僕たちを信用してよ。」
リンクが言った。もう、無理しなくていいと。
インデックスには聞き覚えがあった。この台詞に。
―――いつだったか。一人で逃げていた、あのときか。
その一言で、とても安心した。心を開けた。氷が解けた。
同じだった。その時と。

「...うん。分かった」
涙こそ出なかったものの、素直に寝よう、と言う気持ちになれた。

*************************************************************

白い悪魔は一人で眠る。胸の痛みに気づかぬままに。

白い修道女は包まれ眠る。周りのぬくもりに囲まれながら。

世界は回り続ける。人の痛みを無視して。

――雨は、一段と激しさを増した。

【A-3/工場仮眠室/2日目/深夜?】
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:左太腿と右掌に裂傷(治療済み)、左肩に打撲、足に軽度の凍傷
[装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル、コキリの剣@ゼルダの伝説
[道具]:基本支給品一式×5(食料一人分−1、飲料水を少し消費)
   歩く教会の十字架@とある魔術の禁書目録、時限爆弾@ぱにぽに、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、
   じゃんけん札@サザエさん、ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、
   祭具殿にあった武器0〜2つ程、祭具殿の鍵、裂かれたアリサのスリップ(包帯を作った余り)
[服装]:中世ファンタジーな布の服など。傷口に包帯。
[思考]:やっぱりなんか変だよなあ...
第一行動方針:見張りを続ける。もうしばらくしたらアリサと交代。
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する(無理なら…?)。
第三行動方針:ニケ達と合流し、エヴァの伝言を伝える。
第四行動方針:もし桜を見つけたら保護する。
基本行動方針:ゲームを壊す。その後、できることなら梨花の世界へと赴き、梨花の知り合い達に謝罪したい。
参戦時期:エンディング後
[備考]
リンクが所持している祭具殿にあった他の武器が何なのかは不明。少なくとも剣はないと思われる。
祭具殿の内部を詳しく調べていません。

【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:高熱、リンク達に介護されながら睡眠、全身に軽度の凍傷、軽い貧血気味、
   背中に大きな裂傷跡と火傷、足裏に擦過傷(共に応急手当て済み)
[装備]:水の羽衣(背部が横に大きく裂けている)@ドラゴンクエストX
[道具]:支給品一式(食料−1日分、時計破損)、 ビュティの首輪、鉄製の斧@ひぐらしのなく頃に(?)
401創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:52:23 ID:FGEP8/OF
 
402創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:52:36 ID:6FwTrFiy
403創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:52:45 ID:bS7O8gZ3
   
404神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:53:09 ID:7V+9lo7h
[服装]:私立聖祥大付属小学校の制服の下に水の羽衣。背中と足にシルクの包帯。
[思考]:zzz……
第一行動方針:休息を取る。
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する。
第二行動方針:ニケ達と合流する。
第三行動方針:紫穂の行方の手掛かりを探す。エヴァの説得も諦めていない。
第四行動方針:落ち着いたら、明るい所でじっくりビュティの首輪を調べたい。
基本行動方針:誰にも死んで欲しくない。状況を打破するため情報を集め、この空間から脱出する。
[備考]
拾った双葉の型紐が切れたランドセルに荷物まとめて入れています。
インデックス自身のランドセルは壊れているので内容物の質量と大きさを無視できません。

【アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:全身に軽い火傷(右腕・顔は無事)、左腕から出血(打撲、軽度)、背中に切り傷
    上記の怪我は全て応急処置済み。睡眠中、強い決意。
[装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ、カレイドステッキ@Fate/stay night
[道具]:なし
[服装]:ショーツ一枚。傷口に包帯。
[思考]:私は――――!!
第一行動方針:朝まで休息する。なのはに同行する。 なのはと別れない。
第二行動方針:はやての遺志をついで、自分に出来る事をする。
第三行動方針:はやての腕や色々な物を盗っていたパタリロの捜索。
基本行動方針:(みんなと一緒に)ゲームからの脱出。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:残存魔力中、両手首に小さな傷、頬骨と肋骨一本にヒビ(処置済み)、
     かなりの不安、多重人格化(現在《高町なのは》)、休息(睡眠?)
[装備]:アゾット剣(短刀ver)@Fate/stay night、クロウカード『希望』@CCさくら
[道具]:なし
[服装]:全裸(イヴの服を乾かしている)
[思考]:私は………/...zzz
第一行動方針:しばらくはアリサ達と共に休息。アリサ達と同行?
第二行動方針:ヴィータとエヴァも殺さず止める。
第三行動方針:はやての腕や色々な物を盗っていたパタリロの捜索。
基本行動方針:大切な人達を護る。ジェダを倒して生き残りで脱出。
[備考]
《高町なのは》と《白い悪魔》の多重人格を発症しました。
別人格といっても大きな違いは無く、あくまで両方とも高町なのはですが、
《高町なのは》は弱く、感情的で、人間。《白い悪魔》は強く、理性的で、悪魔を担っています。
解離性同一性障害に似た症状ですが、概ね記憶を共有する、互いを認識しているなど相違点も多く、
通常の症例は参考にしかならないようです。 ...かなり限定的な人にしか分からないかもしれませんが、
式&識を思い浮かべてもらうと分かりやすいです。

※有る程度までは情報交換していた模様です。

※カレイドステッキとインデックスが立てた仮説は、

 @、ここはジェダの大規模な儀式場である事。
 A、それは少なからず世界の変革を目指すための儀式である事。
 B、そのための儀式場は、固有結界である事...というよりもここ自体が皆の固有結界であること。
 C、この儀式を存続させるための力は、参加者から搾り取ってると言うこと。
 D、その儀式は、『神々の運命』を模したものであること。
 E、その儀式に第三魔法が使われていること
です。
405創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:53:16 ID:aUSI0Ddm
406創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:54:17 ID:aUSI0Ddm
407創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 16:54:32 ID:6FwTrFiy
 
408神々の運命、人の子の運命 ◆QzFJmuHgIs :2008/12/06(土) 16:54:35 ID:7V+9lo7h
投下完了です!
支援、感謝です!
409創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 17:11:03 ID:bS7O8gZ3
この世界自体に対する考察って殆ど進んでなかったんですよね、そういえば。
外から持ってこられたと思われていたけど、心象世界の顕実化説とは面白い。
なかなか先が気になる説です、GJ。
410創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 17:51:25 ID:FGEP8/OF
ダブル勇者になりましたね

Compare
最後のルートの説明がわかりやすかったけどAAにワロタ
しかしなんというカオスルート

神々の運命、人の子の運命
心象風景説面白い
これは記憶にないものは出せないというわけでもないですよね
411創る名無しに見る名無し:2008/12/06(土) 22:11:20 ID:ea9fCT/7
お二方、投下乙!

>Compare
そっちに行くかー!w
……ん? 動き出すタイミング次第じゃマーダー軍団と入れ違いもありうる?
てか、レックスの恋愛?フラグ立てすぎにワラタw デートすなw

>神々の〜
おおう、魔術方面からの考察できる組が、ようやく本領発揮。
今までドタバタが過ぎたものなぁ……。
412創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 00:00:33 ID:3kI7y+Lk
投下GJ

>>373
ベルカナさんの頭脳と島の地図を組み合わせた全く新しい捜索(ry
北東に!北東に行けばさくらもタバサもイエローもいるってのにぃっ!
行動は裏目がちだけどこのパーティーにベルカナがちゃんと加わったのはいいなー。
レックスの諸々の負担も頭脳派年長者がいてくれれば軽減されそう。
北西はあれとかそれとか気になる出会いがいくつもありそうだ。

>>408
こh、ゲフンゲフン、ルビーさん大活躍ですな。インデックスとつっこんだ魔術話できるのは少ないのにw
考察のほうも面白くなりそう。

413創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 14:32:17 ID:IDP40aw7
投下乙!
ですがレックス組を書いた◆wlyXYPQOyA氏に少し聞きたいことが……

彼らは以前の話で雛苺達が西に向かっただろうことをしっています。
その彼らが西の捜索を後回しにする理由が作中でないのですが…
「雛苺も夜の間に向こうに回っているだろう」程度のものでいいので、加筆をお願いします。
414創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 14:33:13 ID:IDP40aw7
失礼、東の間違いでした。
雛苺が桜をつれて東の橋を渡ったと推測しています。
415創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 17:27:15 ID:d0mmUxoj
正確には西以外のどこかだな。
でもほとんど東だと思ってるみたいだし桜捜索が目的なら遠回りになるな。
416 ◆wlyXYPQOyA :2008/12/07(日) 23:30:00 ID:05H/8eLf
携帯から。

作品中のミスは理解しました。
しかし一身上の都合でしばしネットに繋げない状況です。
ですので加筆・修正はしばらくお待ちいただければと思います。

ご迷惑をおかけし、申し訳ないです。
417創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 14:52:28 ID:hsF1FYoU
まあぶっちゃけた話北東市街にいるって考えるのが一番確率高いよな。
そこに本当に雛苺がいるからそのまま推理させるのは面白くないわけなんだけど。
418創る名無しに見る名無し:2008/12/08(月) 23:49:30 ID:8PYHx8Kf
北東市街に行くついでに他の施設を回る……としても流石に工場は遠いな。
一応、あえて北東市街に向かわせてるという手もあるけど。
説得失敗でさらなる惨劇〜というのもおもしろそうだ。
419 ◆7KDxntcUzg :2008/12/09(火) 12:32:31 ID:r4zQ4myn
なのは、アリサ、インデックス、リンク、リリス
投下行きます。
420 ◆7KDxntcUzg :2008/12/09(火) 12:33:20 ID:r4zQ4myn
ジェダ様の放送を聞いて、雨が降るって知った。
それにQ−Beeを倒せるくらいに強い奴がここにいるってことも分かった。
もしかして、今のあたしじゃそいつにはかなわないかもしれない。
だから考えて、作戦を立てて、勝たなきゃいけないって思った。
でもまずは目の前の敵からだ。焦っちゃいけない。
荷物を一つにまとめて、あたしは獲物を探し出した。

だけど街の中で獲物は見つからなかった。
建物がたくさんあるし、よく探せば誰かいたのかもしれないけど、
雨が降って、人がますます見つかりにくくなった。
あたしは考える。どこに人がたくさん集まるか。
ここには建物がたくさんある。
それに雨が降ってるから街の中の人は皆建物の中にはいっているはず。
だけどこんなにたくさんの建物の中なんて、さがしても見つかりっこない。
別の場所に行ってみようって思った。
街の中以外なら、建物はところどころに一つずつしかたってない。
なら、その一つだけ探せばそのあたりに獲物はいないってことだ。
そう考えたあたしは、街の中を探すのをやめて、工場に向かってみた。

そしたら大当たり。工場の入口には水で濡れた足跡があった。
つまりそれは雨の降った後にこの工場にはいった人がいるってこと。
そういうことだって気付くことができた。
この工場に人がいることをあらかじめ知ることができた。
あたしは考えた。
考えて考えて、考えた。
もし、中にいる人があたしより強い人だったら。
たくさんの人間でチームを組んでいたら。

どうすれば中にいる人を殺すことができるのか。
どうすればあまりつかれることなく相手を倒すことができるか。

考えて、考えて、考えよう。
あたしが勝つために、もう一度グリーンと会うために。
421 ◆7KDxntcUzg :2008/12/09(火) 12:34:09 ID:r4zQ4myn
  ◇  ◇  ◇






「……っ!皆、起きて!誰か来る……!」


平穏は、リンクがそう発することで崩れた。
寝ずの番をしていたリンクは、森の中で培った聴覚で誰かがこっちに近づいてくるのに気付いた。
皆を揺すって起こしながらもコキリの剣を構え、いつ相手が来てもいいように出入り口をにらむ。
目を覚ました他の三人も同様にやってきた者への警戒をあらわにする。
アリサがルビーの力でメイド服に着替え、
なのははまだ湿っていたが、黒い服を身に着け短刀を構え、
インデックスが多少ふらつきながらもベッドから降りる。

「ニケとメロがきたのかな?」
「向かってきている音の数は一つだよ。たぶん、違う人だと思う。
「ゲームに乗ってるの?」
「そこまではわかんないよ……」

3人娘が唯一相手の音に気付いているリンクに色々と問う。
だが音だけで判断できることなど、そう多くはない。
次第に音は近づき、3人の耳でも聞き取れるようになってきた。
そして、ガチャリとドアノブが回り、開いた扉から現れたのは……

「え……?」
「フェイト……ちゃん?」

現れたのは、全身白い服を着た、金髪にツインテールの少女。
アリサとなのは、二人にとっての親友、フェイトであった。

「そんな……どうして……?」
「フェイトちゃんは私が……埋めたはず……」

それは夕方の放送で呼ばれたはずの、
死んだことを確認してなのはが地に埋めたはずの、
ここに現れるはずは、動くはずはない者の姿だった。
そのフェイトの顔が、口がふっと微笑む。
瞬間、フェイトの手からハートを纏った蝙蝠が飛び出してきた

「「「え!?」」」
「く!」

フェイトの姿をした相手からの殺気に、リンクだけが気付くことができた。
咄嗟に近くにいたインデックスを引きよせ、ともに伏せる。
だが『フェイトの顔をした誰か』に呆然としていたアリサとなのはは反応が遅れる。
422 ◆7KDxntcUzg :2008/12/09(火) 12:35:13 ID:r4zQ4myn
「く……」
「う、あ……」

リリスの放つ、「ソウルフラッシュ」と瓜二つの光線が、
なのはとアリサの腕を、斬り裂く

「フェ……フェイト……?」
「あははははは♪」
「……!その声……!」
「あんた、なんなのよ!」

フェイトの姿をした誰かは、呆然とするなのは達を笑う。

「お前は……誰だ!どうしてなのは達の知り合いの姿をしてるんだ!!」
「あは♪君とは初めましてだね!初めてじゃないのはたかまちなのはと……
 そっちの白い子は、ニケと一緒にいた子だよね♪」
「やっぱり……聞き覚えのある声だったんだよ」

フェイトの姿をした者は、笑いながら自身の顔の皮膚を引っ張る。
皮膚がめくれ中から出てきたのは、ジェダの部下、リリスであった。

「リリス!!」
「あんた……なんでフェイトの顔をしてるのよ!」
「この顔の子、フェイトっていうんだ。なのはとその子の友達なんだね?
 うん、この顔になれたのはこの支給品の効果だよ♪
 でも友達なのにニセモノだって気付かないなんておばかさんだね〜♪」
「……!」


リリスの身長は、フェイトのそれとくらべて高い。
常時のなのは達なら、直ぐに違和感を感じていたはずだ。
だが今の二人は、突然現れた親友の顔に、死んだはずの顔に、驚きを隠せなかった。
そしてその驚きに理性が追いつく前に、リリスは攻撃を行った。
リリスは剥いだ顔の皮を赤と白のボールの中に納めると、黒いランドセルの中に放り込む。

「お前……ゆるさないぞ!」

怒りに震えたリンクがリリスへと駆ける。
3人とも戦えない。
リンクはそう認識していた。
インデックスはもとより熱がでてふらふらであるし、
彼女が使えるという強制詠唱はリリスには通用しないらしい。
なのはとアリサも先の不意打ちで腕を傷つけた。
特に両手で剣をふるうアリサは怪我したことで、大きく戦力を殺がれた。
だからこそ、自分がやらなければ。
そういう気負いの元、リンクはリリスへ切り込む。
後ろに、守らなければならない人たちに攻撃が向かないように。

「ふ〜ん。緑くんが相手かぁ!負けないよ!」

ソウルフラッシュが飛び交う。
その中を潜り抜けたリンクがリリスの目前に迫る。
そして勢いのままコキリの剣を振り下ろす。が、その剣筋は刃物に変化させた翼に阻まれた。
423 ◆7KDxntcUzg :2008/12/09(火) 12:36:18 ID:r4zQ4myn
「甘いよ♪」
「くっ!」

リリスが攻勢に回る。
両翼を刃に変化させ、同時にリンクへと斬り込む。
その一撃を頭上で受け止める。一撃は、とても人のものとはおもえない。
その攻撃が、連続してリンクへと叩きこまれる。

(一撃一撃が重い……!くそ!何か別の武器があればもうすこしなんとかなるのに……!)

リンクはどちらかというと相手に密接して戦うよりも、一定の距離を図り、
相手の攻撃の隙を突いたり、剣技の間に弓矢や道具をはさんだ中距離戦が得意である。
幾種もの武器があれば、様々な距離、戦法で非常にトリッキーな戦闘を行うことができる。
あるいは地形やその場に存在する岩や草、壺などを利用して、思わぬ攻撃を仕掛けることもある。
だが現在の彼らの手持ちにはそうした戦闘に適した道具はない。
今いる場所も、人工的な部屋の中。彼が生かせそうなギミックも存在しない。
おまけに、今の彼には守らなければならない人たちがいる。
自分がリリスから距離をとれば、狙われるのは仲間たちだ。
よって必然的にリンクも剣のみに頼った近接戦をするしかなく、
そして、一対一の接近戦ならば、リリスに分がある。
リリスに負ける道理はない。

「くそ……くそ……!」
「翼ばっかり注意してていいのかな〜?」

回し蹴りがリンクに叩きこまれる。
リンクはもろにそれを食らい、身体がくの字に曲がる。

「ぐ……あ……」
「これでおわりだよ♪」

うずくまるリンクに向けて、リリスの翼が降り降ろされる……!

「シュート!」

光弾がリリスとリンクの間に割って入り、リリスへと迫る。
詠唱を完了した、なのはのディバインシューターだ。

その衝撃にリリスの刃に変わっていた翼がゆがみ、元の翼へ戻る。
後ろへと飛び退くリリス。

「この!」

その隙に服装をチャイナ服へ変えたアリサがリリスへと間を詰め、連続して蹴りを放つ。
それをリリスはまるでダンスを踊るようにかわしていく。

「げほ、げほ……なのは、アリサ……」
「大丈夫!?リンク」
「インデックス……」
「リンク、無茶しすぎ。少しは私たちを信用してよ!」
424創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 12:36:49 ID:YgGNfw4l
425 ◆7KDxntcUzg :2008/12/09(火) 12:37:32 ID:r4zQ4myn
先ほど言った台詞を返される。
リンクとしては、苦笑するしかない。
3人とも、自分の思っている以上にガッツがある。
怪我しただけで戦えないなんて、思いあがっていた。

だが戦える二人がけがをしたという事実は変わらない。
魔法を詠唱するなのははきつそうだし、アリサも怪我した腕は使えない。
今は両足だけでリリスと拮抗しているが、相手の翼は剣のようによく切れる。
格闘技だけでは分が悪い。

再びリリスの翼が鋭さを増し、アリサへ襲いかかる。
だが一瞬前に飛ばしたなのはのディバインシューターが先ほどと同じように割り込む。

「何度も同じ手に引っかかると思ったら大間違……っ!」
「それはどうかな?」

背後の声に振り向くとそこにはリンクの姿が。
リリスの注意がディバインシューターに行ってる間に死角から回り込んだのだ。
そして振り向いている間に体制を整えたアリサもリリスの前から攻撃の態勢に入る。

前後からの同時攻撃。
だがリリスは振り向いた勢いそのままに独楽のように回転。
振り回される刃物と化した翼が激しい勢いでリンクとアリサに襲いかかる。
咄嗟に各々の剣で攻撃を防ぐが、片腕のみの力で攻撃を防いだアリサが、
その勢いに耐えきれず吹き飛ぶ。
残される形になったリンクの方は二度三度と切り刻まれる剣の舞を受け流し続ける。

「くッ……ふ!は!」
「なかなかやるね♪でもいつまでもつかな?」
「ディバインシューター……シュート!」

その光景を見つつも、数個の光の弾を精製していたなのはが弾を打ち出す。
そのうちのほとんどはリリスの回転する刃に防がれるが、
一つだけ、リリスの左肩へと着弾する。

その衝撃に回転の速度が弱まる。
即座にリンクが斬りかかるが、リリスはそれをバックステップで回避した。
起き上がったアリサが、リンクの側により、構える。

「あ〜ん!もう!沢山で囲んでくるなんて卑怯だよ!
 もういいよ!なのは達とはまた今度遊んでやるからね!」
426創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 12:39:04 ID:YgGNfw4l
427 ◆7KDxntcUzg :2008/12/09(火) 12:39:35 ID:r4zQ4myn

だが次の攻撃に備えていたリンクたちに反して、リリスははいってきた扉へ引き返し、逃げていった。

「く……!」
「あ、この!まちなさい!」
「逃げるな!」
「あ、まつんだよ!皆!」

強敵を打ち取るチャンス。
考えてみればこの場所は、空を飛ぶリリスには適さない空間だ。
外で戦われるよりも、この場で戦った方がこちらに有利である。

逃がさない……
そう考えが一致したなのは、アリサ、リンクはリリスを追いかけ部屋を出る
インデックスが制止をかけるが、皆聞く様子はない。


なにか、おかしい。
この中で唯一、まともな思考状態にあったリリスと戦ったインデックスはいまのリリスに違和感を覚えていた。
前に会った時とどこか様子が違う、そう感じていた。
彼女の記憶にあるリリスと、今のリリスとでは何か違うのだ。

もちろん、ここにきて大きく変わってしまったなのはのように、
ここに呼ばれた者は皆、大なり小なり心境や色々なことに変化が生じているだろう。
だけどリリスに感じた違和感はそうした変化とは違う。


違和感が、インデックスの不安を駆り立てる。
でていった3人にやや遅れて、インデックスも仲間を追う。
この不安が、現実にならないよう願いながら。




   ◇   ◇   ◇




428 ◆7KDxntcUzg :2008/12/09(火) 12:41:15 ID:r4zQ4myn
工場の通路を飛んで逃げるリリス、追うリンク、アリサ、なのは。
リリスがたまに牽制に蝙蝠を放つが、それらは全て人に当たることなく後ろにそれる。

そうした牽制のせいかリリスと三人の距離は縮まることなく、また広がることもなく工場内を移動し続ける。
リリスがT字路を直進ではなく左に曲がる。
直進すれば出口に向かうにもかかわらず、だ。

リンクがリリスを追って角を曲がる。
リンクの目前には、翼を刃に変えたリリス。
その顔には、それまでつけていなかったマスク。

リリスのシャイニングブレイドが切り刻む。
リンクを、ではなく横の壁を。

「これは!!」
「リンク!」

背後から聞こえるアリサの声。
それと同時に前方よりこちらに向かってくる吹き荒れる煙。
その煙に、リリスのマスクに、リンクは学校にいるはずの強敵のことを思い出す。
瞬間リンクは後方に飛び跳ね、煙から遠ざかる。

だが後ろから走ってくるアリサは静止できず、煙の中で立ち往生する。
煙の先には、こちらへ突進しようとするリリス。

「あぶない!」

リンクは叫ぶことしかできなかった。
未だ跳躍で空中にいる彼には、アリサのサポートにはいることも、
攻撃の態勢に入ったリリスを妨害することもできない。
それでも、この状況でどうやったらリリスを止められるか、アリサを守れるか必死に考える。
まるでスローモーションのように動く情景で。そんな彼の横を、





黒い、閃光が走った。





   ◇   ◇   ◇




429創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 12:41:35 ID:YgGNfw4l
430創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 12:42:31 ID:YgGNfw4l
dkdk
431 ◆7KDxntcUzg :2008/12/09(火) 12:43:29 ID:r4zQ4myn
リンクくんが咄嗟に後ろに跳んで、
アリサちゃんが煙に巻き込まれて、
それから煙の向こうから飛び出そうとしているリリス。

皆より後ろにいた私は、そのすべてを見ることができた。
アリサちゃんがリリスに気づく様子はない。いや、煙のせいか様子自体が変だ。
あれじゃあアリサちゃんは、リリスの攻撃を避けれない。
私が間にはいって、プロテクションを張って攻撃を防がないと。
だけどあの勢いじゃこの距離をデバイスなしでフライアーフィンで詰めて、
それからすぐにプロテクションを張ってすぐ防御しても、
リリスの攻撃を到底受け止めきれない。
私の盾も、私の体も貫通して、アリサちゃんは結局助けられない。

私の中のもう一人の私が告げる。
「アリサちゃんを見捨てて、今作れる精一杯のディバインシューターをぶつけよう」って。
アリサちゃんは死んでしまうけど、リリスに大ダメージを与えられるって。
そうしたらリンクくんと一緒に、リリスを殺せるって。

確かにそうしたら、今後リリスに殺されてしまう人たちがいなくなる。
アリサちゃんは犠牲になってしまうけど、その他のたくさんの人は助かる。

だけど、その為に大切な親友が殺されるのを見過ごす。
そんな理性を、私は受け入れたくなかった。
絶対に、いやだった。

「感情」が「理性」を拒む。
全力で、全開で。
認めたくない。そんなこと考えてしまう自分を、認めたくない。
友達を殺させてまで、相手を殺す方法を考えてしまうなんて、絶対いやだ!

そう考えていたら、咄嗟に体が動いてた。
アリサちゃんの前に割り込んで、魔法の盾を前面に張った。
リリスの攻撃を受け止める。でも「もう一人の私」が言うとおり、直ぐに盾にひびが入る。

だけど絶対にあきらめない。
アリサちゃんは、絶対助けるんだ。
私の魔法は、誰かを殺すためにあるんじゃない。
大切な誰かを、守るためにあるんだ。

「全力……全開……!」

でも限界はやってきた。
私も煙を吸っちゃって、頭がぼーっとしてきた。
うまく魔法を紡げない。
盾が破れる。リリスの手が私のお腹を指していった。

「はああああ!!」

リンクくんがリリスに斬りかかってく。
リリスのお腹から血が噴きでてくる。
リリスはリンクくんを蹴り飛ばして、逃げていった。

お腹が痛い。
意識が、遠のく。
432創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 12:46:39 ID:YgGNfw4l
 
433◇7KDxntcUzg 代理:2008/12/09(火) 12:58:27 ID:YgGNfw4l


アリサ、ちゃんは?
アリサちゃんは、どうなったの?

私は鈍く痛むお腹を押さえて、後ろに視線を送る。
そこには倒れたアリサちゃんがいた。
お腹は、空いてない。
リリスの攻撃は、アリサちゃんまで届いていない。

よかった。
心からそう思える。
私の命は、ここで終わっちゃうけど、大切な友達は守れた。

「もう一人の私」のいった結末にはならなかった。
「理性」の告げた、残酷な未来を変えられた。





私、友達を守れたよね?




   ◇   ◇   ◇




インデックスが追い付いた時そこにいたのは、
眠っているアリサと、
腹部に大きな穴をあけ血を流すなのはと、
そのなのはを抱えて、涙するリンクだった。

「リンク……」

インデックスはリンクに声をかけるが、次に続ける言葉が見つからない。

「……僕、さ……時の勇者なんだ。」
「………」
434◇7KDxntcUzg 代理:2008/12/09(火) 12:59:44 ID:YgGNfw4l

「時の勇者にしか抜けないってマスターソードを抜いてさ、
 ハイラルって世界でさ、世界を闇に陥れたガノンって魔王を倒してさ、
 タルミナでも、ムジュラの仮面が月を落とそうとするのを防いでさ、
 自分でも、旅をして強くなったって思ってたんだ……」

旅をして、強くなったって思ってた。
今の自分なら、大人にならなくてもマスターソードに認めてもらえるくらい、
立派に成長したと思ってた。

「でも、今の僕は強い敵を倒せない!
 守るって誓った子も守れない!
 目の前にいる子すら守れない!!」
「リンク……」
「強く、なりたいよ……」


力が、ほしい。
どんな相手にも負けない力が、
大切な仲間を守れる力が。

知恵が、ほしい。
相手の策略に打ち勝つ知恵が、
この殺し合いから脱出できる知恵が。

そしてなにより、勇気がほしい。
逆境にも崩れない勇気を。
皆の心ごと守れる勇気を。


彼の左手に宿るはずの勇気のトライフォースは、光らない。
今の彼には、力、知恵、勇気、すべてが足りなかった。



【A-3/工場通路/2日目/黎明】
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:左太腿と右掌に裂傷(治療済み)、左肩に打撲、足に軽度の凍傷
[装備]:勇者の拳@魔法陣グルグル、コキリの剣@ゼルダの伝説
[道具]:基本支給品一式×5(食料一人分−1、飲料水を少し消費)
   歩く教会の十字架@とある魔術の禁書目録、時限爆弾@ぱにぽに、エスパー錠とその鍵@絶対可憐チルドレン、
   じゃんけん札@サザエさん、ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)、5MeO-DIPT(24mg)、
   祭具殿にあった武器0〜2つ程、祭具殿の鍵、裂かれたアリサのスリップ(包帯を作った余り)
[服装]:中世ファンタジーな布の服など。傷口に包帯。
[思考]:………
第一行動方針:強くなりたい。
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する(無理なら…?)。
第三行動方針:ニケ達と合流し、エヴァの伝言を伝える。
第四行動方針:もし桜を見つけたら保護する。
基本行動方針:ゲームを壊す。その後、できることなら梨花の世界へと赴き、梨花の知り合い達に謝罪したい。
参戦時期:エンディング後
[備考]
リンクが所持している祭具殿にあった他の武器が何なのかは不明。少なくとも剣はないと思われる。
祭具殿の内部を詳しく調べていません。
435◇7KDxntcUzg 代理:2008/12/09(火) 13:01:06 ID:YgGNfw4l
【アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:全身に軽い火傷(右腕・顔は無事)、左腕から出血(打撲、軽度)、背中に切り傷
    上記の怪我は全て応急処置済み。眠り火の催眠効果、右肩に切りキズ(動作に支障あり)
[装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ、カレイドステッキ@Fate/stay night
[道具]:なし
[服装]:ショーツ一枚。傷口に包帯。
[思考]:………(催眠中)
第一行動方針:????????
第二行動方針:はやての遺志をついで、自分に出来る事をする。
第三行動方針:はやての腕や色々な物を盗っていたパタリロの捜索。
基本行動方針:(みんなと一緒に)ゲームからの脱出。

【インデックス@とある魔術の禁書目録】
[状態]:高熱、全身に軽度の凍傷、軽い貧血気味、
   背中に大きな裂傷跡と火傷、足裏に擦過傷(共に応急手当て済み)
[装備]:水の羽衣(背部が横に大きく裂けている)@ドラゴンクエストX
[道具]:支給品一式(食料−1日分、時計破損)、 ビュティの首輪、鉄製の斧@ひぐらしのなく頃に(?)
[服装]:私立聖祥大付属小学校の制服の下に水の羽衣。背中と足にシルクの包帯。
[思考]:リンク……
第一行動方針:…………
第二行動方針:ヴィータを捜し、説得する。
第二行動方針:ニケ達と合流する。
第三行動方針:紫穂の行方の手掛かりを探す。エヴァの説得も諦めていない。
第四行動方針:落ち着いたら、明るい所でじっくりビュティの首輪を調べたい。
基本行動方針:誰にも死んで欲しくない。状況を打破するため情報を集め、この空間から脱出する。
[備考]
拾った双葉の型紐が切れたランドセルに荷物まとめて入れています。
インデックス自身のランドセルは壊れているので内容物の質量と大きさを無視できません。




   ◇   ◇   ◇
436◇7KDxntcUzg 代理:2008/12/09(火) 13:02:51 ID:YgGNfw4l




うまくいった。
あたしは、ちゃんと戦えた。
ちゃんと考えて、戦えた。

この工場にいる敵を相手にするとき、どうすれば負けないかって考えた。

それでまず、自分の姿をどうにかしようって思った。
たかまちなのはやさっき戦ったシャナって子みたいに、あたしは見つかり次第狙われる。
この工場でも、もし中にいる人があたしが相手に気づくより先にあたしのことに気づいたら。
なのはの時のように出会いがしらに攻撃を食らうこともあり得る。

だったらあたしがリリスだって気付かれないようにすればいい。
どうしようかと考えてふと目がとまったのが工場の近くの盛り上がった土だった。
それが誰かを埋めたあとだって気付いて、掘り返して中にいた金髪の子を見つけた。

あたしはニアの持っていた道具の一つ、メタちゃんに変身を命じた。
変身してもらうのはこの女の子の顔。
そして、その顔をあたしの顔に張り付けた。
これであたしの顔はこの子と瓜二つの顔になった。
あとは着ている服も、あたしだと分からないように別のものに変えた。
この子は裸だったから、ニアの服を真似してみた。
これでいきなり襲われるなんてこと、ないと思う。

戦う時も、以前の「遊んでいる」あたしのようにふるまうことにした。
その方が、みんな油断するかもしれないと思ったから。
うまくいかないかもしれないけど、やれることはやっておこうって思った。


工場にいたのは4人。たかまちなのはと、ニケといっしょにいた白い子。
それに剣を持った子が二人。緑の男の子とメイド服をきた女の子。

予想外だったのは、あたしが変装したこの子が、なのはとメイドの子の知り合いだったこと。
だからなのかな?二人とも緑の子と比べてものすごく隙だらけだった。
二人とも、こっちの先手に面白いくらいにかかってくれた。

それから緑の子と戦ったけど、ちょっと焦ってるみたいだった。
ちょっとこっちが攻撃のパターンを変えただけで、あっさりと攻撃をくらっちゃった。

そのまま一気に皆倒せるかなって思ったんだけど、なのはやメイドの子の回復が思ったより早かった。
二人とも腕を片方つぶしてもそれなりに戦えるみたいだし、
緑の子も焦りがなくなっちゃった。
3人で戦われると、ちょっと勝てないと思った。


だからあたしは逃げた。
そしたら思ったとおりなのは達は追いかけてきた。
437◇7KDxntcUzg 代理:2008/12/09(火) 13:04:37 ID:YgGNfw4l

それから、罠を仕掛けていた部屋を探した。
ニアの持っていた眠り火。説明書を何度もよく呼んで、煙を吸ったらボーとしちゃうものだってわかった。
だから、誰もいない部屋に二つ火をつけて放り込んでおいた。

あたしは煙でいっぱいになってるはずの部屋を目指して、逃げた。
その間に自分の顔にもう一度メタちゃんをくっつけて、今度はマスクになってもらった。
これであたしが煙を吸っちゃうことなんて、ない。

眠り火の煙でいっぱいになった部屋を壊して、中の煙をなのは達に向けた。
巻き込まれたのは一人。最初はメイド服を着ていていまはチャイナドレスの子。
なのはは巻き込むのには少し早すぎたし、緑の子は煙を見てすぐに飛びのいちゃった。
だからあたしは煙をもろにくらったチャイナドレスの子を狙った。確実に殺すために勢い付けて。

計算外だったのは、なのはだった。
あんなに距離が離れてたのに、一瞬で私の前に出てきて攻撃を受け止めた。
そのせいで狙っていたチャイナドレスの子には攻撃を当てられなかった。
それだけなら殺す対象がチャイナドレスからなのはに変わっただけだったんだけど……
なのはの防御が思ったより硬くて、そのせいで緑の子の攻撃を思いっきりくらっちゃった。
結構深いかも、この傷。こうして飛んでるだけでもずきずきと痛む。


考えるって難しい。
考えて、作戦を立てても、うまくいかない時もある。今回も危なかった。
でも考えた作戦が、少しでも成功するって言うのは、なんていうか楽しい。
自分の計算通りに物事が進むっていうのはちょっと気持ちいい。
グリーンもこんな感じで私に指示してたのかな?


また、考えないといけないことがある。
あたしは放送前にイシドロを殺したはずで、ジェダ様の天気予報の前にニアを殺した。
それに今なのはを殺したはずだから、あたしにはご褒美の権利がある。
このご褒美を、どう使うのが一番いいのかな?

少し前のあたしなら、自分を回復してもらってまた遊びに行ってたと思う。
だけど、考えることを覚えたあたしは、それで本当にいいのかよく考える。

回復以外のご褒美。あたらしい支給品と、情報。
そのどっちも、今のあたしは生かして戦える……と、思う。

例えば支給品をもらう。
今回つかった眠り火やメタちゃんみたいに、役に立つものをもらえたら、
また考える材料が増える。作戦をもっとたくさん立てられる。

例えば情報をもらう。
今回はたまたま、変装に使ったのがなのは達の知り合いだったけど、
もし最初から知り合いのことを知った上で変装したらどうなる?
どんな相手にも不意うちができると思う。
他にも今は考え付かないことができるかもしれない。
438:◇7KDxntcUzg 代理:2008/12/09(火) 13:06:25 ID:YgGNfw4l


それともやっぱり、回復してもらう?
緑の子に受けた傷はかなり大きい。
このまま戦っても相手がそれなりに強かったら勝てないし、少し休む必要がある。
暗闇と雨で、周りはほとんど見えないから適当なところで休めばきっと見つからない。

だけど獲物はほとんど建物にいるはずで、
相手が建物の中にいるってわかってるなら作戦も立てやすい。
貴重な雨で暗闇の時間を休憩に使っちゃっていいのかな?


どうするのが一番いいか、考えよう。
グリーンならどう考える?あたしは、どう考える?

考えて、考えて、考えよう。
あたしが勝つために、もう一度グリーンと会うために。


【A-3/工場外/2日目/黎明】
【リリス@ヴァンパイアセイヴァー】
[状態]:右足と左腕にレーザー痕。顔に酷い腫れ。全身打撲。(以上全て応急手当済み)
     疲労(小)。全身に軽度の火傷。額に浅い切り傷。背中に打撲。
     左肩にわずかな痛み、右肩から左胴にかけて深い傷、『考え』る事に目覚めた。
[装備]:首輪×2(グリーンとニアのもの。腕輪のように両腕に通している)
[道具]:基本支給品×2(ランドセルはニアのもののみ)、眠り火×6@落第忍者乱太郎、魔女の媚薬@H×H、
    メタちゃん(メタモン)@ポケットモンスターSPECIAL、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
    きせかえカメラ@ドラえもん
[思考]:どうしよう、かな。
第一行動方針:ご褒美の使い方を考える。
第二行動方針:回復しない場合はどこかで休息を取る。
基本行動方針:優勝して、グリーンの魂ともう一度語り合う。もう「遊び」に夢中になったりはしない。
[備考]:
荷物の中の『魔女の媚薬@H×H』には説明書がついていません。
C-6ラブホテル内に小狼の空っぽのランドセルが放置されています。


【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's 死亡】

※アゾット剣(短刀ver)@Fate/stay night、クロウカード『希望』@CCさくらがなのはの死体の近くにあります。
439◇7KDxntcUzg 代理:2008/12/09(火) 13:07:17 ID:YgGNfw4l
>719 名前: ◆7KDxntcUzg[sage] 投稿日:2008/12/09(火) 12:49:50 ID:RXjHxzEM0
>以上で投下終了です。

>タイトルは「智を育む者」です。
>代理投下お願いします。
440創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 14:22:29 ID:7Hkajjpr
こ...これは...いきなり大事件だなあ。
唐突過ぎてなにがなんだか。
かなり議論になるだろうなあ。
あ、あと投下乙。
441創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 14:28:48 ID:p1vPXSos
投下乙。

危険対主催がとうとう一人消えたか。
リリスも罠や変装とか使ってもう立派に知略マーダーだな。
442創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 16:33:21 ID:mfDUTdIF
投下乙。

うーん……まさか、本当にこう来るか……。
予約の時点で、まさか違うよね、と思いたかったけど……。うーん。
とりあえず、投下はお疲れ様。
443創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 17:24:16 ID:XZfeKQYd
投下お疲れ様です。
なのは……
正直、ここで彼女の辛い道が終わるなら、悲しいというより救われたと感じた。
友達思いだという高町なのはらしい死に方だったと思うし。
持ち上げられた次の話であっという間に奈落に落ちていくようなロワの恐ろしさを垣間見た気がするけれど、
このあとは少しでも持ち上がっていくと期待したい。頑張れリンク達。ほんと頑張れ。

少しずつ成長していくリリスも、漫画版の彼女を思い出して
早速殺したばかりのマーダーなのに何だか応援したくなった。GJ。
444創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 20:43:11 ID:eiSdBAZB
一応投下乙と言っておく
本当にごくろうさまでした
445創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 21:02:17 ID:XZfeKQYd
見返して気付いたが、タイトルの「智を育む者」って
グリーンの「育てる者」とかけてるんだろうか。

グリーンから与えられ、リリスの中に育まれるものか……
何かエロいイメージがよぎったが気のせいだ。うん。
446創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 21:25:18 ID:2sMGrvkr
投下乙です
これは議論呼びそうですが話としては良作ですしあっさりキャラが死ぬのもロワですから・・・・・
本当にお疲れ様でした
447創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 22:06:36 ID:W+NHZAsQ
ついにトップマーダーも脱落か
愛に生きるリリスの活躍を見て完結直前の某ロワの天元突破夫妻思い出してしまったw
448創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 22:13:18 ID:YgGNfw4l
リリス元々強いのにこんな賢くなってしまったら…
勝てる気しねぇ
449創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 22:38:29 ID:qYmbEvb3
>>447
マーダー言うなwww
450創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 22:40:33 ID:QkYScGHp
投下乙
なのはああああああああああああああああ
友達のために悪魔になって、友達のために死ぬ。
なのはらしい最期でした。
そしてリリスすげえええええええ
グリーンが死んだ時はどうなるかと思ったけど、好きな人はポケスペ上位の頭脳派と天才探偵だもんな…こうなるよな
451創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 01:40:49 ID:4Txyg6+f
投下乙
なのは乙
リリスの思考がすげぇな
452創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 03:20:31 ID:NHb5biJR
投下乙です
リリス強いなあ・・・
頭を使えるようになったのがかなり大きい
今回みたいに知り合いに変装して不意打ちってのは効果が大きいし、今のリリスなら他のいい攻撃方法も思いつきそうだしね

なのはは本当につらいことが多かったな
死者スレでフェイト達と安らかに過ごしてほしい。合掌
453創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 08:29:51 ID:a6bHb8Wa
まずは投下乙です。
新参とのことですが、ですがよく出来ていたと思います。

一応、議論スレのほうに議題が挙がっていたようですので
告知しておきます。
454創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 09:50:23 ID:q59jxffN
議論スレみてきたが、これって議論の皮被ったいちゃもんじゃないか?
どれも作中で説明されてるし議論するほどじゃないと思う。

つか、いかにも文句はあるけど言わないよみたいな感想多いが、
そんな書き込みするくらいならちゃんと思ってること書いたら?
455創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 14:01:34 ID:fgvadPJ2
>>454
それはそれで反感を買う罠。
まあ、いいんじゃないか?
みんな、鬱展開だけど通しでいいっていってんだし。
456創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 19:04:43 ID:h9bvuKGU
みんな通しでいいって言ってるのに、何でそういちいち噛み付くかな
457創る名無しに見る名無し:2008/12/10(水) 23:19:52 ID:6Uxf6vEP
QBってそれぞれのPBの位置わかるの?
458創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 01:02:58 ID:W8918zJk
世の中破棄する勇気も大事だよ
459創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 01:06:39 ID:qBmUa+vl
昨日読んで投下乙とは言ったものの、
なんか引っ掛かりがあると思っていたがやっとわかった。

「リリスが弱すぎる」

ストレートに行ってももっと簡単に勝てる筈の相手に対して、
変に頭を使って戦わせようとしているから、なんかしち面倒くさい表現になってる気がする。

まあ、だからこそこんな形になったのかも知れないが。
やっぱり、リリスは頭使わずに行くほうがらしいっちゃらしいな。
460創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 01:20:18 ID:AYB0xxmn
そうか?こんなものだと思うが。
ネギと戦闘(遊び)、ニケインデックスと交戦(遊び)グリーンと交戦(遊び)
森でタバサ達と交戦(遊びだが、グリーン補正あり)
なのは大量殺害の際の戦闘(錯乱状態)
エヴァに奇襲され敗北(エヴァの能力はリンクと同程度と作中説明あり)
と、いうほどの強さはないと思うぞリリス。

シャナとの一騎打ちの後だからそう思ったんじゃないか?
461創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 01:21:28 ID:TiK4GCoO
素直に面白くないって言えばいい
462創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 12:46:38 ID:4rfkcH/h
そのシャナも銃持っていたとはいえグレーテルに苦戦してたな。
シロガネになってもチート強化されたとはおもわんし。


…ちょっと作中戦歴で強さランキング見たくなって来た。
463創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 13:13:40 ID:nJN8LDX3
ランキングだけはやめとけ
464創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 14:04:53 ID:sImBK+qE
殺害数だけで強さランキングをみると、
現時点のTOPは
イヴ・トリエラ・雛苺・千秋・ヴィクトリア・リリスが
三人殺害でタイか。
なのはが墜ちて、対主催のPKKトップはトリエラに交代。

ついでに、情勢整理がてらに
現生存者の立ち位置を分類してみた。


【マーダー】
「ヴィータ・紫穂」(→北・北東街方面へ)
「イヴ・千秋」(→街は避けつつ、東方面へ)
「蒼星石・グレーテル」(→街は避けつつ、南方面へ)
「エヴァンジェリン」(→西・南西街方面へ)
「レミリア」(北東街で休憩。全裸で)
「雛苺(桜)」(北の桜→近くの建物へ)
「リリス」(北西工場付近)


【対主催】
「アリサ・リンク・インデックス」(北西工場)
「ニケ・メロ(?)・ブルー(?)」(中央学校)
「トマ・ベッキー」(東シェルター)
「イエロー・ひまわり(ヴィクトリア)」(北東街で休憩)
「犬上小太郎・タバサ・トリエラ」(北東街)
「レックス・梨々・アルルゥ・ベルカナ」
 (中央城→夜明けに中央森・学校・神社・廃病院・工場…)
「弥彦・キルア」(南東廃墟→病院)
「シャナ」(南西街)
「パタリロ」(工場近くの森→南西街へ全力移動中)


危げなフラグ点灯してるのは
雛苺さくら組と、ブルメロニケ組あたりか?
そういやなのは死んだら、ヴィータはどうなるんだろな。
465創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 14:46:50 ID:cupO6YFi
弥彦キルアも怪しげだぞw
466創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 15:15:49 ID:YApL58R7
>>464
エヴァンジェリンの立ち位置間違ってるw
その「マーダーで西・南西街へ」ってのは他のマーダー3組に向けてついた嘘だぞ。
正しくは「対主催」で「上記マーダー3組のどれかを追って倒す」だ。
467創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 15:23:54 ID:sImBK+qE
アッー/(^o^)\ これは酷い間違い。ごめんよエヴァ
確かに弥彦の所も危ないなw

さりげなく予約が一つ来てるな。
あのペアどこに向かうんだろうか?
468創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 18:39:01 ID:YApL58R7
新しい予約は、どうやら前の予約の延長宣言を見落としていた模様。
……って、延長も今日までか。まあ今夜の夜くらいまでは待ちかな。

もう1つ忘れちゃいけないトラブルの種は、QB。
ジェダの指令で死体確認に飛びまわるはずだが、誰かと接触してもおかしくない。
ジェダには参加者を殺すな、って言われてるけど、果たして。
469創る名無しに見る名無し:2008/12/11(木) 22:25:58 ID:G3hLxlQx
クロスで強さランキングは荒れる元
470創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:37:44 ID:Z7qf0qvS
代理投下いきます
471一つ屋根の下で(前編)(1/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:38:27 ID:Z7qf0qvS
「穢れなき幼子らよ――。
 予期せぬイレギュラーの発生に伴い、予定を繰り上げての臨時放送を行う。」
冥王の言葉が響き渡る。
島全域の子供達がその言葉を耳にする。

「幼き君らのことだ。すでに眠っている者もいるだろう。
 だが、無理に目覚める必要はない。夢の中に在る者はさいわいだ。
 彼らは、救済の夢を見るだろう」
ある者は夢の中に在り、ある者は目覚めていた。

「――――っ」
「この声は!」
そしてまだ浅い眠りに在ったトリエラと小太郎は、息を呑んで飛び起きた。
臨時放送に意識を集中させる。

「しかし、喜ぶがいい。うつつに在る者は更にさいわいだ。
 君らは、真の救済を見るだろう。
 今は暫し、私の声に耳を傾けるがよい」

バルディッシュとグラーフアイゼンからの反応は困惑した明滅だけだ。
横になっていたタバサは眠気眼をこすっている。

「実は、イレギュラーというのは他でもない。
 君らもよく知っている我が部下、Q-Beeが死んでしまった」

「……あの、さっきの奴か」
小太郎は道路に突き刺されたQ-Beeの生首を回想する。
上空で繰り広げられたレミリアによる閃光の如き空中戦と、その結果。

「その彼女が、八度目の使いの折に、心ない者に殺されてしまったのだ。」

トリエラはその言葉の意味を考える。
(恐らくは私と小太郎が呼んだ、あれが八度目の使い。そこでレミリアに殺された。
 私と同じ数だけ殺したのが七人居るという事?
 いえ、その割合なら単純計算でも一人位は六人殺しが混じっていてもおかしくないけど……)

「咎めはしない。むしろ賞賛すらしたい気分だ。
 ああ見えてQ-Beeも、決して弱くはないのだよ。
 理知性にこそ欠けるものの、その本能のままの貪欲な戦闘力は、私も一目置くほどなのだ。
 それを見事打ち破ってみせた幼子がいるとは、私としても正直驚いている」

「ハッ、ざまあみろや」
小太郎は笑う。
参加者が戦闘能力において冥王の予想を上回れた快哉と共に、
それほどの強者にして危険人物が近くに居ることを実感しながら。

「だがしかし、残念ながら手放しで褒めてはあげられない。
 なぜなら、まったく無駄な行為だからだ。
 第一、ご褒美を届ける者がいなくなってしまっては、君らが困るのではないかね?」

「なに、この声……? どうしてジェダの声が聞こえるの……?」
「タバサ……疲れてるんでしょう。良いから眠ってなさい」
トリエラはいつの間にかタバサが起きてきた事に気が付いた。
それでもわざわざ止める必要は無いとも思っていた。

「そこで、いささか世俗的に過ぎるが、ちょっとしたパフォーマンスをお見せしよう。
 時刻はちょうど零時。天頂高く輝く、あの満月を見たまえ」

その光景を見せ付けられるまでは。
472一つ屋根の下で(前編)(2/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:38:59 ID:Z7qf0qvS
目を見開く。
窓の向こうの月が彼女の視線を釘付けにする。
月に映し出された光景。冥王の見せる映像。
虚像にしておそらくは何処かの実像。現実の光景。
Q−Beeの死骸。生きているQ−Beeの姿。
タバサが主張し心の支えとした当然の物理法則。
タバサが否定し背を向けた在り得ざる奇跡。
生と死の逆転。
即ち死者の復活。

それは当然の事だ。
それが現実に有り得る事は、タバサだってよく知っている。
ジェダにそれが出来ても驚くほどの事ではない。
殺された記憶の有る蒼星石が生きてこの世界に居る事からも予想できた。
「……サ。…い、タバサ。おい!」
「え……あ……?」
それなのにタバサは、自分が放心していた事に気づいた。
肩を揺すった小太郎の顔が目の前に有る。
「大丈夫か、タバサ?」
「あ……うん。大丈夫……大丈夫だから」
そう言うタバサの声に覇気は無かった。
萎れた花のような声だ。
「……あれは、本当の映像なのかしら?」
トリエラが疑問を呈する。
本来、トリエラの常識において死者の復活などありえない。
その視点からすれば、あの光景はよく出来た合成映像と思う外に無い。
この島において叩き壊された常識からすれば、だが。
「……ザオリク」
タバサは呟く。復活の呪文の名を。
トリエラはタバサが話した、復活の魔法の事を思い出した。
「そういう呪文は、有るから」
その言葉は暗にある不安を示している。
間違っていると否定されて背を向けた、この世界でタバサが辿ってきた歪んだ足取り。
それに背を向けた事で失った物を思えば、背を向けた事さえ良い結果だったなんて思えない。
それでもあの強がりで歩いた足元も定まらない道筋それ自体は間違っていると否定したのに、
“その足取りさえも肯定されてしまったのではないか”という不安が湧き上がる。
「待て、タバサ。どっちにしても、どうせ復活はジェダが仕切ってる」
だから小太郎は先回りしてその言葉を封じた。
事実放送もそれを匂わせる。

「繰り返そう。私は死をも覆す。
 だが、幼子らよ。
 殺し殺される運命の、穢れなき幼子らよ。
 君らの死は特別だ。
 すべてが終わる救済の時まで、私はそれを軽んじたりはしない」

特別な死。もちろんそれは『ジェダが復活させる事は無い』という意味だろう。
だがそれは『個々に復活させようとしても妨害している』という意味に取れなくも無い。
この時、タバサと小太郎はそう取った。
放送は更に降雨の予報をして終わった。

「ジェダの特権だろうとなんだろうと、まるで悪い夢でも見てる気分だわ」
トリエラは思わず溜息を吐いた。
失われた死者を蘇らせる事ができる。それは確かに素晴らしい奇跡だろう。
だがQ−Beeが復活するあの光景は、輝ける奇跡ではなくおぞましい悪夢に感じられた。
あれが救いとでもいうのだろうか。
(……救い、なんでしょうね。例えどんな形であれ、再び生を掴めるのなら)
そう、例えば。
トリエラが義体を得た事も、一般人から見れば忌むべき、されど救いだった筈なのだから。
………………。
473一つ屋根の下で(前編)(3/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:39:35 ID:Z7qf0qvS
『Caution!』 『Vorsicht!』

「また!?」
バルディッシュとグラーフアイゼンが何者かの接近を教える。
息を呑み、慌ててカーテンを閉め直す。灯りは点けていない。
息を潜め、接近する何者かがこの家に気づかないよう注意する。
息を殺す。だが。
『対象停止。距離50ヤード』
「バルディッシュ、何が来てるの? 気づかれたの?」
『不明。魔法使用反応無し』
数秒の間が有った後。
『対象加速! 来ます! ……対象判明!』
「みんな、構えて!」
トリエラの号令と共にタバサも小太郎も身構える。
次の瞬間、グラーフアイゼンからの警告と玄関のドアが蹴り開けられる音が唱和した。
『レミリア・スカーレットです!』

ざあっという音が響き始める。
家の外ではバケツをひっくり返した様な雨が降り始めていた。
当れば痛みさえ感じそうな豪雨を背に、吸血鬼が立っていた。
距離は僅かに十m程度、まるで目と鼻の先。
吸血鬼を前に、トリエラは銃を構え、タバサはバルディッシュを携え、小太郎は拳を握る。
だが肝心の吸血鬼は彼女達を前にして、鼻で笑った。
「随分なお出迎えね、人間ども」

犬上小太郎は緊張を噛み締める。
下手に刺激は出来なかった。
自分一人なら、強敵を前にしても恐れる事など何も無い。
それが戦いの末に有るならば、死をも恐れはしないのだ。
だが、今夜は話が違った。背中には女子供が居る。
特に一人は強い力こそ持つものの守らねばならない少女だ。
彼女を守らなければならないという思いが焦りとなって胸に蟠る。
「はん、俺はハーフやけどな」
軽口でそれを吐き出した。
吸血鬼は律儀に言い直した。
「随分なお出迎えね、大体人間ども」

吸血鬼レミリア・スカーレットは一歩を踏み出した。
三人の大体人間達が一歩下がる。畏怖に圧され、警戒を保ったままに。
一歩進む。一歩下がる。
一歩進む。一歩下がる。緊張が張り詰める。
進む。下がる。
進む。下がる。張り裂けそうなほどに。
一歩。
一歩。
「……っ!? タバサ!」
「え、あ……!!」
気づけば人間達は散開していた。
トリエラは左方に、小太郎は右方に。
そして取り残されたタバサの目と鼻の先に、吸血鬼が立っていた。
爛々と輝く紅い眼がタバサの目前に在った。
タバサは金縛りにあったように動けず、息を呑み込む事も出来ない。
そして。
474創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:39:59 ID:WP5Nfbr2
475創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:40:13 ID:WP5Nfbr2
476創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:40:26 ID:WP5Nfbr2
477一つ屋根の下で(前編)(4/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:41:13 ID:Z7qf0qvS
…………歩。

吸血鬼は、タバサの側を通り過ぎた。

歩。
一歩。
二歩進む。
三歩、四歩と歩み去る。

タバサは極度の緊張から解放されてへたり込む。
慌ててトリエラと小太郎が駆け寄った。
トリエラは思わず問いを投げかける。
「待ちなさい! どういうつもりなの!?」
レミリアは静かに足を止めると、ゆっくりと振り返る。
紅く鋭い視線がトリエラを射抜く。
人間のものではない鋭い犬歯が薄明かりを反射していた。
「ちょっと部屋を使わせてもらうだけだよ。私の気まぐれに感謝する事ね。
 まあ、どうせ後で叩き潰すんだけど」
そこに立っている存在は人間にとって脅威の塊に変わりない。
だがトリエラの中には一つの疑問が生まれていた。
トリエラは、その疑問をレミリアに投げかけた。
「……その、手に持っている物は何なの?」

レミリアは武器を握っていなかった。
聖剣ラグナロクはランドセルに入れたのか掌中に無く、
レイジングハートも待機状態で下げられ、バリアジャケットだけが唯一の装備だった。
そして手の中には、奇妙なものが握られていた。
支給品の水が入っていたペットボトルだ。
だが今は一滴の水も入っていない。代わりに奇妙な、白い粉末が入っていた。
まるで何かを焼き尽くした後に遺る灰の様な、真っ白い粉末だ。
レミリアは手の中にあるそれを見下ろして小さく笑った。
「ああ、これはついでよ」
付け加えた。
「私が最強を証明するついでに生き返らせるつもりの、愚かで強い妹よ。
 私達は肉体より精神で出来てるようなもんだけど、それでも有るに越した事は無いだろうし」
正しく何でもない常識を語ってみせた。

「生き返らせるって、まさかジェダの言う優勝のご褒美を狙ってんのか?」
小太郎の問い掛けにレミリアは尚笑う。
「なんで私があんな奴に頼らなきゃいけないんだ? 大体虫ケラは殺した分に入れないなんてけち臭い」
小太郎はレミリアを否定する。
「ならどうする。こんな殺し合いをさせてるんや。どうせ復活もジェダが仕切ってるに決まってる」
それはタバサを護る為だ。
その背にタバサを庇い、その足で床を踏みしめている。
例え離れた時にタバサへ害意が向けられようともすぐさま駆けつけられるように。
レミリアはそんな小太郎を嘲った。
「だからジェダを叩き潰したついでにやれば良いんじゃないか」
その内の感情などこの場の誰にも見通せはしないだろう。
「ジェダを倒せばその後は冥界に殴り込んで魂を探し出して良いし、他の世界で方法を捜しても良い。
 ああ、あの勇者も復活の魔法が使えるとか言ってたっけ。
 それがダメでもちょっと数百年ほど捜せば方法の一つや二つ見つかるはずよ。
 永い命の良い暇潰しじゃない」
そこにあるのは傲然なまでの答えだけだ。レミリアはグラーフアイゼンを指して笑う
「これ以上が知りたければその鉄槌にでも聞けばどう?
 こんなもの一つ有れば十分だから、そいつはそのままあげるわ」
そう言ってレミリアは再びタバサ達に背を向けた。
ごく普通の民家の少し奥まった、この家には数少ない洋風の寝室。
つまりほんの数m先のドアを開けて、タバサ達の前から姿を消した。
敵陣はたった数m先に構築された。
478創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:41:17 ID:WP5Nfbr2
479一つ屋根の下で(前編)(5/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:41:51 ID:Z7qf0qvS
     * * *

暗い部屋だった。
窓は有るものの、外は真夜中の豪雨だ。一筋の星明りさえ差し込まない。
それでも吸血鬼にとっての不具合は無かった。
紅い瞳を爛々と輝かせて、レミリア・スカーレットは荷物を整理する。
妹の遺灰はランドセルの中に放り込み、代わりに聖剣を出しておく。
魔力消費を抑える為にバリアジャケットも解除して、服が無い事に気づいた。
連中からふんだくろうかと思ったもののそれも面倒で、部屋を家捜しする事にする。
幸いな事にここには衣服が残っていたので、体を拭いた後でそれに着替える。
「……ふん。まあまあか」
私立聖祥大附属小学校の制服は彼女の眼鏡に叶ったらしい。
それから壁際に座り込んだ。

別にしっかりした休息が必要なわけではない。
吸血鬼は元より再生能力を持ち、夜間はそれが強まり、満月の下ならば更に高まる。
その状態でざっと三時間にも及ぶ休息。
運命さえもレミリアの更なる暴虐を求めたのだろうか、一切の外敵は訪れなかった。
その後も争いと死と人の悲喜こもごもが交錯する中で、レミリアは十分すぎる程の休息を果たしたのだ。
結果、Q−Beeとの戦いで受けた深刻な負傷さえも実戦に耐えるほど再生していた。

レミリアは再び戦いに出ようと考えていた。
全てを叩き潰す最強の証明を行う予定だった。
だがここで予想外の事が起きる。零時の臨時放送だ。
Q−Beeを復活された事はレミリアにとって大した事ではなかった。
どちらにしろQ−Beeには既に『勝利した』のだから、それが生き返った所で関係無い。
殺害数に数えないのはけち臭いと腹が立ったが、レミリアは今のところご褒美にも執着が無かった。
レミリア視点では三人殺しを達成しているのにご褒美を要求しようとしなかったのは、
要するにジェダからご褒美を貰うのが屈辱的で耐えがたい事だったからだ。
問題だったのは次に行われた雨の予報だった。

レミリアが最初に思ったのは、これでは外で戦えないなという事だ。
雨は地上へと流れ落ち、そこから更に低い所へと流れ行く流れ水だ。
そして吸血鬼は――より正確に言えばレミリアの世界の吸血鬼は、流れ水を渡れない。
渡るためには橋を渡るか、少なくとも水面と自らを遮断するものが必要になる。
昼間はシルバースキンが有った。今はバリアジャケットだ。
だがバリアジャケットには問題が有る。
それは微量ながら魔力を使い続ける事と、シルバースキンに比べれば性能自体が劣る事だ。
シルバースキンの時は水面の上空を飛んでも特に何も感じなかった。素晴らしい遮断効果だ。
しかしバリアジャケットの防御力は明らかにシルバースキンよりも劣る。
レミリアの予想では多少動きが鈍る程度で行動出来る筈だったが、わざわざ試す気にもなれない。
更に魔力を消費するという事は、魔力を使い切れば解除されてしまう事を意味する。
例えばQ−Beeと戦った時の様に戦闘で魔力を使いきればその場で身動きが取れなくなる。
レミリアは自分を最強だと自負したが、雨の中では手も足も出ない。
バリアジャケットが有っても雨の中で戦うほど愚かではなかった。

次に思い出した。
館から出ようとする度、友人に雨を降らせて閉じ込めていた妹のフランドールを。
レミリアはすぐさま死に際を見たというレイジングハートからフランの死に場所を聞き出すと、
雨が降り出す前に全速力でその場所へと駆けつけて、遺灰を回収した。
放っておけば雨で流されてしまうからだ。
しかしそこからねぐらとしたちょっと良い家まで駆け戻る時間は残っていなかった。
冷静に考えればバリアジャケットを着ているのだから雨の中で移動も出来たのだろうが、
これまで五百年以上に渡って日光以上に徹底して避けてきた事だ、咄嗟には考えつかなかった。
仕方なくレミリアは近くに有った適当な民家へと駆け込んだ。

詰まる所レミリアがこの家に駆け込んだのは全くの偶然、レミリアに言わせれば運命である。
480創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:41:56 ID:JD9DgBgg
支援
481創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:42:21 ID:WP5Nfbr2
482一つ屋根の下で(前編)(6/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:42:30 ID:Z7qf0qvS
「本当に腹立たしいことをしてくれるわね。せっかくの満月の夜だというのに」
レミリアは心底苛立たしげに独り言つ。
開幕から半日もしてようやく訪れた夜の時間を三分の一も削られたのだから無理も無い。
まだ日が沈んでから三時間程度しか動いてないというのに、自由な夜の時間はあと二時間しか残っていない。
『日の光だけではなく雨も苦手なのですね、あなた達は』
レイジングハートが明滅する。レミリアはあっさりと認めた。
「雨の下では動けないのだよ。強すぎるから」
だから同じ屋根の下に居ても、彼女達を今すぐに襲うつもりはなかった。
全力で戦えばこんな脆そうな家などあっという間に吹き飛んでしまうだろう。
少なくとも確実に穴だらけとなってしまう。
しかも狭い。壊さない様に戦えないというより、壊して雨空の下で戦った方がまだマシだ。
それでもレミリアは負ける事など考えもしなかった。
不意打ちなんて通用させないし、不利な戦場でも負けはしない。
不利なら克服すれば良い。
雨の中で動きが鈍くなるなら鈍くなった動きで戦えるようにすれば良い。
あるいは屋根の下を広く使う方法でも捜せば良い。
負けるものか。絶対に負けてなどやるものか。
無謀ではなく勇気を抱き。
慢心ではなく誇りを持とう。
ただ最強であるために。
もう何も――妹の力さえも恐れることの無いように。
それが自らにした誓いだった。

「それで? あいつらにそれを言いふらすのかしら?」
『いいえ。あなたが一時的とはいえ人を殺そうとしない事が嬉しいのです』
レイジングハートは答えた。
レミリアは応えなかった。
真っ暗な部屋の中、静かに雨の音が響き続けている。
雨はまだまだ降り続く。
夜は、長い。
レミリアは小さく呟いた。
「……まだ、来客が有るようね」

     * * *

タバサの胸中はある事への不安が湧き上がりつつあった。
それは、復活への不安だ。
それを希望と信じ縋って歩いていた事とそれに背を向けた事のどちらが本当に正しかったのか。
そもそも復活は本当に出来ないことなのか。
仮に出来ていた事が出来なくされているとするならば、
出来なくしている存在を排除してもそれは出来ないままなのかどうか。
その答えは余りにも容易くて……。
「落ち着きなさい」
ぽん、と。頭に手が載せられた。
トリエラの手だ。
「あ……トリエラさん……」
「はい、上じゃなくて前」
トリエラはタバサの目の前を指し示した。
483一つ屋根の下で(前編)(7/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:43:10 ID:Z7qf0qvS
前を向くと、そこには小太郎の姿が有った。小太郎が心配そうに言う。
「ほんまに大丈夫なんか、タバサ」
「小太郎君……」
タバサは思う。小太郎君に心配を掛けて良いのだろうか。
小太郎は言う。
「無理だけはすんなよ。それだけはもう勘弁や」
それは今のタバサにとっての答えそのものだ。
無理をする事で、強がる事で、蒼星石を裏切って、傷つけて、失ってしまった。
何が正しいのかは判らないけれど、誰がどう間違っていたのかは判りきっている。
自らの強がりがあの悲しい別れを生んでしまったのだと、タバサはそう考えている。
「シェルターまでの間なら私も居るしね。無理はするもんじゃないわ」
「トリエラさん……」
トリエラは惑うタバサに明確な答えを示して見せた。
「今は今の事を考えましょ」
タバサは未だ惑いつつも、頷いた。

『Caution!』 『Vorsicht!』

再度の警告。反射的にトリエラは即座に銃を構え廊下の奥の寝室に警戒を向ける。
だが、二つのデバイスはそれを否定した。

『魔力を帯びた何者かが飛行して接近中です!』
『推定航路は東、数は2! 到着予定地不明!』

「まさか、さっきの奴が往復してきたの!?」
数十分前に一度通過していった正体も判らない何者か。
もしかしたら殺人鬼だったのかもしれない存在だ。その正体は一切不明。
『おそらくは』
デバイスの返答にトリエラ達は慌てて息を潜める。
カーテンを閉め灯りを消して、その何者かに気づかれないように。
静かに、その何者かが通り過ぎるのを待つべく。
静かに、静かに。豪雨の音が全てを塗り潰すていく。
「……待て。何か聞こえるぞ」
その中で、小太郎だけがそれに気づいた。
狗族とのハーフである小太郎は言うならば幾分犬が入っているようなものだ。
「判るの? 確かに何か言ってるみたいだけど……」
「え、二人とも何か聞こえるの?」
その聴覚は当然人よりも優れている。
鍛えた人間であるタバサはおろか、五感を強化されているトリエラでさえ聞き分けるまで及ばない
豪雨の向こうから響く微かな叫びを聞き分ける事ができた。
「……けて? …………さくら、か? だれか…………だれかたすけて……!?」
小太郎は息を呑む。その願いを聞き届けた。

「……けて! 助けて! 誰か居ないの!? さくらが大変なの! 誰か助けて! 誰か!!」

それは助けを呼ぶ悲鳴だったのだ。
「待って小太郎! 迂闊に飛び出したら……」
「だからって放っておけるか! 見てくる!」
小太郎は雨空の下に飛び出した。

その小太郎が一度戻ってくるまでに掛かった時間は僅か一分余りだった。
「……やけに早いわね。どういう奴が居たの?」
「いや、それがな……どう言うたもんか」
小太郎は言葉を濁す。あの存在をどう言い表したものか混乱してしまう。
ややあってまずは逆に質問を投げかけた。
「タバサ。確か蒼星石には他に人形仲間が居るねんな?」
「え、うん。雛苺って子はまだ生きているって……でも、アイゼンの話だと……」
グラーフアイゼンから聞き出した情報の中にその名前は有った。
雛苺は殺し合いに乗っている、と。
484一つ屋根の下で(前編)(8/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:44:17 ID:Z7qf0qvS
「雛苺が居たの?」
「……ああ。容姿は知らんけど多分あいつがそうなんやろう」
小太郎は頷いた。タバサは続けて問う。
「でもそれじゃ、さくらを助けてってどういう事なの?
 誰かを助けようとしているなら、殺し合いに乗っていたのも何かの間違いなの?」
「……いや。あの様を見て平和主義者やと思える奴はまず居らん」
だから小太郎は言葉に迷った。
雛苺はカボチャのお化け、ジャック・オー・ランタンを思わせる人形に乗って空を飛んでいた。
その人形の手には不気味な鎌が握られ、何よりその首からは人形の首が二つ吊るされていたのだ。
恐らく蒼星石や雛苺とは仲間のはずである死んだドールの頭部だろう。
あれは、明らかに異常だ。
「それじゃ罠かしら」
「そう考えるのが一番妥当なんかもしれへん」
あの様を見ればその発想が普通だろう。
「けどな、あの叫びは本物……やと思う。俺は少なくとも本気の悲鳴に思えた。
 それから、さくらっていう子もほんとに危ないんかもしれん。
 落ちひんようにか蔦で巻かれて、意識はあんま無いんか、ぐったりしてた」
「……既に死体、というオチは?」
「俺は目も良いんや。胸が上下してるのは確認してきた。苦しげやったな。
 傷はわからへんけど、少なくとも死ぬほど血ぃ噴出すような傷はなかった」
トリエラは思案する。
「疲労していた所を、この雨で体温を奪われて倒れでもしたのかしら。
 雛苺はどうすれば良いか判らず他人の助けを求めた、と考えれば有り得なくも無いけど。
 どうも信じがたいわね」
むしろ以前のトリエラなら危険人物と断定していたかもしれない。
雛苺については、少なくとも夕方は殺し合いに乗っていたとアイゼンが証言している。
更に仲間の生首を吊り下げて行動し続けているその異常性。
助けを呼ぶ無垢な少女のふりをして敵を誘き寄せる罠……と考えるには異様すぎる行動だが、
理解できない存在はあまりに危険だ。

「……ちょっと前までのわたしと、同じなんじゃないかな」
恐る恐る、タバサがそう言った。
「生き返らせる為に仲間の死体を運んでる、とか。……生きてる人と纏めて助けるために」
ありえる話かもしれない。
少し前までのタバサの……無理をして気丈に抱え込もうとした結果、復活にすがった行動。
恐らくはジェダが妨害しているだろうと諭されて一度は諦めた、
しかしレミリアにより再び可能だとされた、正誤の定まらない不安定な行為。
「もしそうやったら放っておけへんし、それにさくらって奴の命が危ないと思う。
 この雨、激しいし冷たいんや。放っておいたら体力奪われてどうなるかわからへん」
「それじゃ急いで助けないと」
小太郎の言葉にタバサもすぐ同意する。
二人にとってはそれだけの理由なのだ。
トリエラだけが渋った。やはり正体が不明すぎるし、助ける義理が有るかどうか。
「……確認しておくわ、アイゼン。さくらっていう娘については何か見てる?」
『はい。一時期レミリアの前の所有者とは敵対しています。
 ですが和解も出来ていました。推定ですが、悪人ではないと思われます』
悪人ではない。……ただそれだけだ。
善良かどうかも、今もそうかも判らない。仲間でも仲間の仲間ですらない、敵の仲間。
助ける義理なんてこれっぽっちも無いはずなのだ。
(ああ、私も損な性分してるなあ)
結局のところ、トリエラも人が良いのだ。
お人よし自分達に呆れた溜息を吐くと、二人に釘を刺しておいた。
「念のため言っておくけど、警戒は必須よ。
 忘れないで。アイゼンが森で遭遇した時、雛苺は危険な存在だったのよ」
二人は素直に頷いた。

そして三人は雛苺達を迎え入れた。
485創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:44:31 ID:IGpgEUrp
 
486創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:47:21 ID:WP5Nfbr2
487創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:47:39 ID:WP5Nfbr2
488創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:47:57 ID:WP5Nfbr2
489創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:48:20 ID:WP5Nfbr2
490一つ屋根の下で(前編)(9/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:49:51 ID:Z7qf0qvS
     * * *

桜が安らかな寝息を立てている。
畳敷きの和室で布団に包まれて、額には濡れタオルが置かれていた。
すぐ傍には桜を不安げに見守る雛苺の姿が有った。
ジャック・オー・ランタンの姿は無い。トリエラ達の要請でランドセルに仕舞われたのだ。
トリエラは武装を没収しようかと考えたが、それは雛苺が強硬に嫌がった。
「ジャコ達を取らないで」
それが雛苺の言い分だった。
実際のところ、トリエラ達も取り上げた後の処分に困るのは明白だ。
なにせジャコは雛苺の命令に従って動いていたのだ、どう動くか判らない。
だからランドセルをしっかりと閉めて、目の届く和室の隅に置いておくのに留めた。

それでようやく一息を吐いて、トリエラは雛苺への尋問を始める事にした。
背後を緊張した面持ちのタバサと小太郎が固めている。
トリエラは念の為に騎士甲冑……アイゼンの言うところの防護服を身に纏っておく。
タバサがバルディッシュで纏うバリアジャケットとは方式が違うだけで同じものらしい。
デザインは特に性能には影響しないらしいので、本来入っていたデータをそのまま使用してみた。
「確認しておくわ、アイゼン。これが本当に、騎士甲冑なのね?」
頭の帽子にはヘンテコなうさぎのぬいぐるみが付いている。
服も可愛らしい緋色のドレスだ。腕はグローブに包まれているが、二の腕は普通に露出している。
どうみても普通の服にしか見えないが、説明によればどの部位も防御力は十分らしい。
『はい。我が主のヴィータが着用する騎士甲冑です。……その主である八神はやてが直々にデザインされました』
「……ああ、そう。まあ良いわ、どうせ有事にしか着ないんだし」
タバサは素直に褒めるし、小太郎もにやにや笑いながら「いや、似合ってるで?」と言う。
トリエラは軽く笑ってそれらをいなした。少し恥ずかしかったが。
それ以上に重かったからだ。
さらりと流されたから二人は気づかなかったのだろうが、この服装は八神はやてのデザインだ。
夕方の放送で死者の名に列ねられた八神はやての、だ。
即ちこの姿はヴィータという少女にとって主人である八神はやての形見に他ならない。
アイゼンもそれを意識させるつもりはないのか強調はしなかった。
「大事に使わせてもらうわ、グラーフアイゼン」
『Jawohl.』(了解)
一声だけ交わして、それで十分だった。

「それじゃ……雛苺と言ったわね。あなたには幾つか訊きたい事があるわ」
背後に緊張した面立ちのタバサと小太郎を従えて、トリエラは雛苺への尋問を始めた。
「なあに?」
雛苺は緊張した様子も無く振り返る。
桜を助けてくれたトリエラ達は雛苺にとって単純に良い人だ。
それに桜との約束も有る、戦う事など考えもしない。
その無邪気さを前にトリエラは唾液を呑み込んだ。
「一つ目よ。……あの人形に吊り下げていた、人形の頭は何なの?
 あれはあなたの、元居た世界の仲間なんじゃないの?」
雛苺はあっさりと答えた。
「そうよ、真紅と翠星石なの。これからはずっとずっと一緒なの」
ぞくりと寒気を感じた。
その表情は特におかしなものは見受けられなかった。つまり普段通りだったのだ。
「待って! 翠星石って、蒼星石のお姉さんだっていう子でしょ?」
血相を変えたタバサが尋ねる。
かもしれないとは思っていたが、頭部だけでは判るはずもなかった事だ。
「……あなたが、殺したの?」
タバサの問いに、雛苺は首を振った。
491一つ屋根の下で(前編)(10/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:51:07 ID:Z7qf0qvS
「ううん、翠星石は誰かに殺されて湖に沈んでいたの。ひどいの。
 引っかかっていて首だけしか持ってこれなかったの」
トリエラは待機フォルムにしているアイゼンが小さく反応するのを感じた。
「知っているの、アイゼン?」
『はい。ジーニアス・セイジの証言によると翠星石の殺害者はイリヤスフィール・フォン・アインツベルンです』
アイゼンとの情報交換は完全ではない。全てを聞いていては時間が掛かりすぎるからだ。
要点だけを聞いていたのだが、それでも抜けが有ったようだ。
少なくとも蒼星石の姉を殺したのは目の前の人形では無いらしい。
トリエラは質問を続けた。
「死体……と言って正しいのかは判らないけど、どうしてそれを持ち運んでいるの?
 例えば埋葬しようとか、置いていこうとか思わなかったの?」
「ヒナ、真紅達と別れるのはイヤなの」
答えは単純すぎて理解できない。
「それは例えば……生き返らそう、とかそういう目的?」
雛苺はきょとんとした表情を返した。
それから答える。
「そっか、お父様なら真紅達を元通りにできるかもしれないの。ヒナみたいに。
 もしかしたら真紅の腕を繋いだジュンにも、もう一度真紅達を……そうすればまたみんな……」
「ふざけんな」
今度割り込んだのは、小太郎の声だった。
「死者が生き返る? そんな夢物語に縋って何もかもぶち壊すつもりか、おまえは。
 そんな……」
「やめなさい、小太郎!」
トリエラが強く制止した。
「なんで止めるんや、トリエラ!」
「良いから! ……驚かせたわね、雛苺」
小太郎に怒鳴られ、雛苺は涙をにじませて縮みこまっていた。
トリエラは優しい声で少女を宥める。
「話題を変えるわ。どうして助けを呼んでいたの?」
雛苺はおずおずと答える。
「さくらが、すごく冷たくなってたの。このままじゃ死んじゃうと思って。
 でも、最初に行った温かい池は雨水でどろどろになってたの」
最初、雛苺は桜を連れて温泉に向った。
旅館は雛苺が街に来た時にはもう基礎から粉砕されていたが、その上を通り過ぎた時、
旅館に引かれていた温泉の流れが窪みに溜まり露天風呂になっているのを見かけたのだ。
しかしそれも冷たい豪雨により台無しになっていた。
目指していた温かい場所が使えない事にパニックを起こした雛苺は闇雲に助けを呼んだ。
それを小太郎が聞きつけた……というのがここまでの経緯だった。
「トリエラ達にはほんとうにかんしゃしてるの。
 もしまたさくらが居なくなったらと思うと……」
じわりと雛苺の目に涙が滲んだ。
トリエラは続けて聞いた。
「それじゃもう一つ。……昼間、あなたが殺し合いに乗っていた、と聞いたわ」
雛苺はぶんぶんと首を振った。
「もうしないの! だって、さくらと約束したから。
 そうしたらさくらが友達になってくれるって、独りにしないでくれるって言ったから!」
「……そう。もう良いわ、ありがとう。しばらくはあなたも休みなさい」
うんと雛苺が頷くのを確認して、トリエラは雛苺の尋問を終えた。
雛苺と桜を残し、トリエラ達は居間へと戻った。

     * * *

「……なんで止めたんや、トリエラ」
戻って開口一番、小太郎はトリエラに尋ねた。
何故雛苺が死者復活を信じるのを放置したのかと。
492一つ屋根の下で(前編)(11/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:51:39 ID:Z7qf0qvS
「カウンセリングする方は柄じゃないけどね。蒼星石の二の舞を作る気?」
小太郎はぐうと呻く。
「だ、だけどあんなん信じてても自滅するだけや」
「人それぞれよ」
食いつく小太郎をトリエラは重ねて切って捨てた。
トリエラは雛苺を観察し、その人となりを推測している。
「これはあくまで推論だけどね。多分あの子、壊れてるわ。
 でも、それが治ろうとしているんじゃないかって思うの。あのさくらって子によって」
それはあからさまに曝け出されていた、偽らざる本質だった。
雛苺は未だに正気ではない。反応にもどこか歪さが残っている。
さくらに関するそれだけを除いて。
「けど、ほんとにそれでいいんか。」
小太郎の惑いに解答する。
「あなた、あの子が夢物語を見てるって言ったわね。
 もしあの子が夢物語に逃げてるとすれば、それは精神の防衛本能じゃないかしら?
 それを否定するなら、その責任を取るつもりは有る?」
責任。
そう、小太郎がタバサの惑いを否定し蒼星石を傷つけてしまった責のように。
人の心の支えを奪うならば、その行為の重さを受け止めなければならない。
「多分それは、あのさくらという子が時間を掛けてやる事じゃないかって思うのよ。
 少なくともこの場でしか接しない私達の仕事じゃないわ」
「……やっぱり、移動するの?」
タバサの言葉に頷くトリエラ。
「もちろんよ。あなたのお兄さんだって捜さなきゃならない。
 そもそも雛苺が私達に対しても安全な存在かの確証さえ無いのよ。何処かで別れるべきだわ。
 ただ、問題はあいつね」
トリエラは奥の寝室へと視線を向ける。
レミリア・スカーレット。何故か即座に襲い掛かっては来ず、寝室に引きこもった吸血鬼。
あまりにも危険すぎる存在だった。
「もしもこの場所を突き止めたとすれば、半端な逃走は危険を増すだけね」
バルディッシュが明滅した。
『彼女はレイジングハートを所有しています』
「索敵能力を持ってるって事ね。道理で見つかるはずだわ。
 移動するならそれこそ市街地から出なきゃダメか」
ぴしぴしと響くこの豪雨の下を、町を出てキロ単位離れた拠点まで暗闇の中、歩き通す。
「あの子を放ってなんていけないよ」
「……そうね、少なくともレミリアの居る場所に置いておくわけには行かない。
 ずっと面倒を見るだけの余裕も理由も無いけど、ここに置いて行けば間接的に殺すようなものよ」
だがあの状態のさくらを連れて雨の中移動するのは厳しいだろう。
せめてもう少し体力を回復しなければならない。
その上でレミリアが動き出す前に逃走したい。
「くそ、なんて厄介な状況。せめてレミリアが動かない理由が判れば良いんだけど」
そこで手詰まりだ。
小太郎の知り合いのエヴァも吸血鬼だが、エヴァには流れ水の弱点などなかった。
グラーフアイゼンも知らない。レミリアの行動から類推するにも情報が足りない。
そう、トリエラ達はレミリアの事を詳しく知らない。
「アイゼン。レミリアの行動をもっと詳しく教えてくれる?」
『はい、判りました。……いえ、待ってください。接近する反応が有ります』
再び緊張が走った。
『こちらでも確認。速度からして徒歩。反応2、いえ3』
『低速でまっすぐこちらに向ってきます』
………………。

こん、こんと音を立てて。
外と中を隔てる玄関のドアが礼儀正しく、ノックされた。

「こんばんは、少し良いですか」
493一つ屋根の下で(前編)(12/12) ◇CFbj666Xrw:2008/12/12(金) 00:52:11 ID:Z7qf0qvS
三度目の来訪者は静かに訪れた。
張り詰めた空気の中で玄関の扉が開かれて、二つの人影が現れる。
タバサは息を呑んだ。
「あの棺桶の! 良かった、生きていたの!?」
「ひまわり! 無事だったのね」
野原ひまわりを抱いたイエロー・デ・トキワグローブと、“太刀川ミミ”の姿。
それが新たに訪れた第三の来訪者達だった。

     * * *

イエロー達がこの家に訪れた理由は簡単だ。
イエロー達は雛苺が助けを求めて飛行している所を目撃した。
それだけならまだ放置したかもしれない。
なにせ雛苺を擁護していたのは、ミミによれば『ご褒美を貰うほどの殺人者』である金糸雀だけだ。
ベルフラウの言葉からも、イエローが見た様子からも、雛苺は危険人物という材料しか出てこない。
だが雛苺の求める助けが『木之本桜を助けてほしい』という内容だった事が二人を思案させる。
雛苺の乗る奇怪な人形には少女が縛り止められていたのだ。

イエローは森で見た時にも、雛苺にどこかしら異常を感じていた。
その異常は今も有る。遠目だったがよくよく見れば雛苺の外見は異常の塊だった。
奇怪なお化けの人形に乗り人形の生首を二つ吊り下げた姿は恐るべき殺人鬼にしか見えはしない。
それなのに助けを求める叫びに真摯な響きを感じたのは何故だろうか。

一方のミミも木之本桜の存在を求めていた。
ミミが編み出した首輪解除法を使うためにはデバイスが必要なのだ。
目下捜索しているのはバルディッシュか、リインフォースIIだ。
イエローの証言によれば、森に居る時の彼女はリインフォースIIというデバイスを所有していたらしい。
出来れば彼女と接触したい。ただし安全が確認できるならば、だが。

そこで事態が推移する。一件の家から何人かの人影が現れ、雛苺に呼びかけたのだ。
雛苺と木之本桜はその家に入っていった。
水飛沫に煙る視界からは人影が何者か判断するのは難しい。
しかしスケルトンめがねを使い遠見したミミは、あの中で戦いは起きていないと判断した。
人影の詳細すら見えない距離だが、それでも激しく動いて無いかだけは辛うじて確認できたらしい。
つまり、あの家に居るのは恐らくお人よしの集団だ。
安全を確認した彼女達は(それでもミミは警戒しながら)その家を訪れる事にした。

行動に必要な休息。
運命という名の偶然。
想いが信じられた幸運。
未来へ辿り着く為の布石。
どれ一つ取ってもまるで儚く、長くは持たない一抹の出会いの飛沫。

一つ屋根の下、今にも千切れそうな縁の糸が九人の子供達を引き寄せた。
494創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:53:51 ID:eC19Vvxt
 
495創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:54:16 ID:IGpgEUrp
 
496創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:55:49 ID:eC19Vvxt
 
497一つ屋根の下で(後編)(1/10) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:02:06 ID:eC19Vvxt
「ごめんなさい!」

真っ先に開口一番届けられたのは謝罪の言葉だ。
それはタバサから、太刀川ミミへ。
「ひどい事して! ひどい事してしまって! ごめんなさい!」
自らの罪を懺悔する言葉が放たれる。
ミミは少し動揺した様子でそれを聞いていたが、一歩引いて、一息を吐いて、それから言った。
「どうして、あんな事をしたの?」
腕には警戒、声には僅かな震えが混じっている。
イエローは少し困惑した程だ。それは彼女がついぞ見せなかった感情的な、感情を抑え込んだ姿だ。
「それは……わたし、錯乱していて……だから、その……」
要領を得ない内容だ。
小太郎とトリエラは出会い頭の一言で理解していたが、イエローはますます混乱してしまう。
「どういう事なの、ミミさん?」
「私はその子にひどい事をされたのよ。その後も死にそうな目に遭ったわ」
「ごめんなさい!」
タバサに出来るのは誠心誠意謝ることくらいだ。
太刀川ミミを死体と一緒に棺桶に閉じ込めて引きずり回した異常な行為をどう謝ればいいのか判らない。
いや、謝れているだけ良いのだろう。
グラーフアイゼンのの話では死んだと思っていたのに生きていた事が信じられない。
――トリエラは待機フォルムのグラーフアイゼンを握り締める。唇は硬く結ばれ沈黙を守っている。
「頼む、赦したってくれへんか」
小太郎がタバサとミミの前に割って入る。
「こいつがした事は怒って当然かもしれへんけど、本人も悪いって認めて謝ってんのや。
 俺からも頼む。赦したってくれ」
小太郎もタバサと並び、深々と頭を下げた。
ミミは浅く息を吐いて、答えた。

「良いわ」

タバサと小太郎の表情にほっと安堵が浮かぶ。
「その代わり一つお願いがあるの。聞いてもらえるかしら」
ミミは優しい声で言う。
表情も優しければ、言葉の端々も優しい。本当に優しい赦し。
何かと訊くタバサ達にミミは答え、タバサの持つ黒い杖……バルディッシュを指差した。
「私にはどうしてもデバイスが必要なの。
 あなたの持っているそれはデバイスでしょう? 私に貰えないかしら」
「それは……」
流石にタバサも戸惑った。
バルディッシュは身を守る為に必須の武器というだけではなく、この島に来て初めての仲間とも言える。
ずっと行動を共にしてきた心の支えの一つだ。それを譲らなければいけないのだろうか。
「この殺し合いを止める為、ジェダに抗う為にもどうしても必要なの。お願いよ」
ミミは更に誠意を上乗せした。ミミの側も頭を下げたのだ。
タバサは思わず慌ててしまう。
自分の方が謝らなきゃいけない相手に頭を下げられているのだ。
「ご、ごめんなさい! 判ったから、あげるから、頭を上げてミミさん!」
タバサは折れた。

「おい、良いんかそれを渡してもうて」
「良いの。私には小太郎君達が居るし、ミミさんもバルディッシュを悪い事に使うわけじゃなさそうだもの。
 でも……ごめんなさい、バルディッシュ」
『Don't worry.』(気にする事はありません)
交錯する想いを後に、バルディッシュが受け渡される。
「私の方こそごめんなさい、大切な物なのに」
申し訳なさそうにミミがそれを受け取ろうとしたところで。
何時に無く揺らいだ声がかけられた。
「待って。その前に時間をもらえないかしら」
トリエラがじっとミミを見つめていた。
498一つ屋根の下で(後編)(2/10) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:03:48 ID:eC19Vvxt
その瞳には複雑な迷いの色が浮かんでいる。
「少しその子と二人っきりで話がしたいの」
タバサは首を傾げた。
「トリエラさん、ミミさんと会った事が有るの?」
「まあ、そのようなものよ。構わないかしら? 太刀川ミミ」
「私は構わないわ」
太刀川ミミは僅かに妖しい笑みを浮かべて、それを認めた。
トリエラは頷いて、もう一人にもミミと話す為の許可を求めた。
「それから…………イエロー」
トリエラがミミを見つめ続ける様に、イエローはじっとトリエラを注視していた。
イエローはトリエラに訊いた。
「…………どうして?」
それはイエローとトリエラ、そしてミミが知っているある因縁だ。
イエローは言葉を重ねてトリエラに問いかける。
「トリエラさん。電話で話したククリからはリルルの仲間だって聞きました。
 悪い人じゃないって。良い人だって。
 でもそれなら、昼間会った時はどうして!
 どうして…………ネスさんを?」
どうしてネスを殺したのか。
トリエラを、そう問い詰めた。
しばらくの沈黙と躊躇いが場に満ちる。
惑いと、滲む過去の痛み。悼むべきもの。
「……あれから後、リルルが言ったわ。あの時の私は間違っていたって」
悪意からではなく善意からだった。
イエローを助けるためだった。
助ける為に悪人を撃った。
悪人だと誤解していた。
誤解する状況だった。
状況が悪かった。
運が悪かった。
悪くない。
そんな言い訳は喪われたものの前にあまりにも無力だ。
人一人の命はそれほどまでに重い物なのだ。
トリエラはそれを理屈で知っている。
「ごめんなさい。私にはこんな言葉しか掛けられないわ」
理屈でしか、知らない。

トリエラが誰かを殺す事で罪の意識を感じる事は無い。
例えそれが過ちであったとしても、殺したという事それ自体を重荷に感じはしない。
そういう物だからだ。
義体には薬物と催眠暗示による一種の洗脳、通称『条件付け』が施されている。
トリエラは義体の中でも試験的にそれらの処置を軽くした検体だったが、根本は変わらない。
トリエラは敵と戦い倒す為に存在する。敵を殺す為に存在する。
敵を殺す事はトリエラの日常で、それ自体に疑いを抱く事は無い。
だから殺人によって良心の呵責を感じる事など無い。

トリエラの謝罪にタバサ達のような重みや必死さは無かった。
だけど軽さや余裕も無かった。
必要な感情が無い分だけ余分な感情も削ぎ落とした、冷たく乾いた真剣な謝罪の言葉。
トリエラの謝罪はそんな言葉の連なりだった。
「私があなたにしてあげられる事はあまり無いわ。一発殴らせてあげる位ね。……私を責める?」
イエローは、首を振った。
トリエラの謝罪を受け容れた。
「……そう。それじゃひまわりと家に上がっていてくれるかしら。
 その子を守ってくれてありがとう。感謝するわ」
「…………はい」
短い沈黙の後、イエローは頷いた。
少しだけ、泣いていた。
たー、と声を上げて、イエローの腕の中からひまわりが手を伸ばすと。
その小さな指で、イエローの涙をぬぐってくれた。
499一つ屋根の下で(後編)(3/10) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:05:55 ID:eC19Vvxt

     * * *

ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………………。
雨は零時までの星空を思い出せなくなるほどふざけた勢いで降り続けていた。
冷たくて激しい雨。
何も聞こえなくなるほどの雨音。
犬上小太郎は、必死の叫びとはいえこの雨壁の向こうから響く雛苺の声を聞き分けたのだ。
本当に信じがたい聴覚だった。頭に生えている犬耳は伊達でないらしい。
「それで、トリエラさんは私に何の用が有るのかしら?」
二人の居る場所は向かいの家の軒先だ。
声を荒げる事もなく、静かに言葉を交わしている。
小太郎にも。あるいはレミリアが優れた聴覚を持っていたとしても、まず聞こえはしないだろう。
「単刀直入に聞くわ。あなたは何者なの?」
ミミは挑発的な笑みを浮かべた。それはさっきの会談ではついぞ見せなかった表情だ。
「何者って? 私は太刀川ミミよ。タバサという子に棺桶に押し込まれて運ばれたかわいそうな女の子」
それがあの場の真実だった。だが、トリエラは首を振る。
そしてミミの異変を指摘した。
「一つ。あなた、私達に姿を見られるなり膝を少し曲げたわね。
 最初はいつでも動けるように溜めを作ったのかと思ったけど……もしかして、身長の問題じゃないの?
 もう一つ。私はあなたの声に聞き覚えが有るわ」
「へぇ。声はともかく姿勢まで気づくなんて思わなかったわ」
彼女は素直に驚いた。

元々『彼女』と『太刀川ミミ』の身長の差はそれほど大きな物ではない。
『太刀川ミミ』は同年代では若干高めの身長だったし、『彼女』も年齢の平均より一年分は低めの身長だった。
それでも成長期における丸一年分ほどの差は有ったが、実を言えばその程度の差は問題にもならない。
『彼女』もそんな事は知らないから念には念を入れたが、タバサ達は『太刀川ミミ』の立ち姿など見ていないのだ。
暗い場所で気を失って寝ている所と、転げるようにして逃げる姿を見た程度。
更に衣服まで替えてしまえば、外見で識別するのは難しかった。

声もそうだ。タバサ達は『太刀川ミミ』がパニックを起こしたところの声しか聞いていない。
様子の違いに違和感を感じても、本格的に疑いなどしないだろう。
小太郎もそうだ。レミリアと戦闘が始まった後の呪文程度しか耳にしていない。
『彼女』の声がシャナと似ている事さえも気づいていなかった。
この街において『彼女』と十分な言葉を交わしたのはたった一人、トリエラだけだ。
それさえも放送機械や電話越しだったのだから、トリエラが気づいた事さえ見事な耳だと言える。
電話越しの声など親族に成りすます事さえ容易なのだから。

だがトリエラが知りたいのは彼女が偽者である、という所では止まらない。
「答えて。あなたは、シャナなの? それとも……」
「シャナではないわ」
彼女は呆れた様子で小さく溜息を吐いた。
「そうね、ちゃんとそこの誤解には勘付いてくれたと思ったけど、
 私がこんな姿で現れればまた誤解するのも当然か。仕方の無い話ね」
「少なくともあなたの姿形は信用しない事にしたわ」
それでもトリエラは一つ確信をする。
この市街地で、電話越しに言葉を交わした『ヴィクトリア』は目の前に居る彼女で間違いない。
金糸雀がククリを殺したと伝えてきた電話の相手。
事実金糸雀はご褒美で治したとしか思えない再生を果たしていたという。
恐らくは事実だろう。だが、それと今は別だ。
「どうしてそういう姿をしているの? 元の『その子』はどうなったの?」
彼女の正体ではなく、彼女の行動を確認しなければならない。
トリエラの問いに彼女は薄く笑うと。
首元を隠していたマントを、少しだけずらしてみせた。
トリエラは彼女の首元を目にして怪訝な表情をし、次の瞬間息を呑んだ。
500創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:06:31 ID:uSELwjgR
501創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:06:47 ID:2vKpmeWD
 
502一つ屋根の下で(後編)(4/10) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:06:54 ID:eC19Vvxt
「残念ながら『あの子』は失敗したわ。尊い犠牲とでも言うのかしら」
「そういう事か……」
トリエラは確信する。
やはりグラーフアイゼンの見た通り、太刀川ミミは死亡していたのだ。
「おかげで私は辛うじて成功した。まだ不完全だけれど、あなたならこの価値が判るでしょう?
 私にはデバイスが必要なのよ。みんなの為にもね」
「……負い目に付け込んで取り上げるなんてやり方が汚いわね」
彼女は白々しく答えた。
「おかげで彼女は赦されたじゃない」

トリエラは歯噛みする。間違ってはいない。
彼女は大嘘を吐いてタバサの弱みに付け込み、タバサの武器であり仲間でもあるバルディッシュを奪おうとしている。
代わりにその嘘でタバサを赦した。
タバサはバルディッシュを失う事になるが、精神的にはむしろ楽になるだろう。
初めて自分の暴走の被害者から赦されたのだから。
「だけど、私は少し腹立たしいわ」
「へえ。それであなたは、人の事が言えるのかしら? 一体何人殺してきたのかしらね?」
「――っ」
トリエラの反応を見て、彼女は嗤う。
「案の定ね。殺したのはネスって少年だけじゃないんでしょう?
 仲間にも誰かを殺してきた事は話してたけど、内訳までは話してないって所かしら?」
「それは……」
その通りだ。トリエラはご褒美を得るに至った三人殺しの内訳を話していない。
犬上小太郎に、その仲間である野比のび太を殺した事を打ち明けていない。
ネギ殺しのツケ、小太郎の『一発殴る』宣言すら果たされていない。
有耶無耶の内に誤魔化してしまっていた。
それはトリエラの心の底に澱となり溜まっている。
確かにトリエラは殺人による良心の呵責を感じてはいなかった。
だけど、それはトリエラが血も涙も無い人でなしという事を意味しないのだ。
トリエラは自らの誤殺を噛み締めて、苦しんでいた。
幾ら人を殺す事が日常でも。
敵を殺戮する事に喜びや爽快感すら感じていたとしても。
罪も無い人を殺した事は、確かな過ちとなってトリエラの心に食い込んでくるのだ。
トリエラは社会がより良い形になって欲しいと思っている。
世界がマシな方向に進む事を願っている。
だから自分の行為により少しでもその力となれれば嬉しいし、
自分の過ちによって世界がより悪い方向に転んでしまうのはとても悲しい。
トリエラは戦う為に存在し殺人を躊躇しない義体だけれど、
トリエラはある種の善性を抱く人間だった。
そしてそれ故に、トリエラは迷いを抱き始めてていた。
自らの判断が過ちに満ちていた事を知って、誰かを害する事に迷いが生じたのだ。
トリエラは、これは優しさではなくてただの甘さだと思う。
雛苺達に対するあまりに手ぬるい対処も。
目の前の彼女の正体に気づきながらそれを弾劾しない判断も。
その両方が、例え判断としては正しくともただの甘さから来る結論だと感じている。
……だって、本心を明かせばトリエラもそんなに強くは無いのだ。
ただ、少し条件が違うだけで。
条件付けを施されている事による殺し合いへの抵抗の無さと。
ククリ達やタバサ達、誰かの面倒を見る事がトリエラの心を支えてくれている。
もちろんその心は決して弱くなんて無いだろうけど。
ずっと一人で歩き通せるわけもない。
きっと、誰もが。
503創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:07:23 ID:2vKpmeWD
 
504創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:07:31 ID:uSELwjgR

505一つ屋根の下で(後編)(5/10) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:07:32 ID:eC19Vvxt
「……私の事情はあんたに関係無い」
トリエラは彼女の言葉を払いのけた。
「言っておくわ。あなたにどんな事情が有るかは知らない。
 でも私達にも事情が有るの。あなたの正体をばらさない代価に一つ手伝ってもらうわよ」
「あら、ばらさないことはあの子の為じゃないの?」
「タバサにじゃないわ」
トリエラは一度言葉を切ってから、その名を吐いた。

「あの家の奥に潜んでいるレミリア・スカーレットによ」
「な……!?」

彼女は。
レミリアの妹を殺害した、ヴィクトリア=パワードは思わず絶句していた。
「案の定ね。ふふ、これでおあいこだ」
その言葉でヴィクトリアは気づく。
トリエラはレミリアがヴィクトリアを狙う事に確証を持っていなかったのだ。
レミリアに追われて旅館に逃げ込んだという言葉を思い出し、もしかすると、
レミリアの危険性だけでなくヴィクトリアには追われる理由が有ったのでは無いかと推測した。
もちろんそれはただの推測だったが、鎌を掛けてみれば大当たりだ。
「あなたはあいつがどれだけ危険な存在か判ってるの!?」
「ええ、もちろん。だから私は対策を求めているの」
トリエラは抜け抜けと返してやった。
「今、あの家には私の仲間達やイエローとひまわりの他に、
 元危険人物だけど今は落ち着いた雛苺と、それを助けつつある木之本桜。
 それから奥の部屋ではレミリア・スカーレットが息を潜めて休んでいるわ。
 雛苺達は警戒だけして後回しで良いでしょうけど、問題はレミリアよ。
 突如現れ、何故か襲い掛かって来る事も無く家の奥に潜んだわ。
 しかもその手にはデバイスが有る。デバイスの探査能力を前に半端な逃走は危険なだけね。
 だけど逃走するにも問題が有る。木之本桜は疲労しきって熱を出して倒れているんだ。
 生憎と私達はそれを見捨てられるほど薄情になれないお人好しの集団なわけ。
 多分だけど、あんたが連れてるイエローもそうなんじゃない?」
ヴィクトリアは思わず舌打ちをする。
危険が有れば逃げようと考えていたが、今逃げればイエローを失ってしまうだろう。
確かにデバイスを得られるリターンは大きかったが、リスクも予想以上に大きい。
しかしとトリエラは続けた。
「安心していいわ。少なくとも私はあんたの成果を評価している。
 あんたが死ぬ事の損失くらいは理解してるつもりよ」
「……その上で私を巻き込むつもり?」
「ええ。あんたが私達の知らない所で私達の知らない奴らと成功しました、めでたしめでたし。
 生憎とそんな話を認められる聖人君子にはなれないのよ。
 成功するなら私達もしがみついてやる。逃しはしないわよ」
ヴィクトリアはその答えに深い溜息を吐いた。
呆れた話だ。
「何がお人好しの集団よ。あなたは私寄りの人間だわ」
互いの善意を信用なんてしない。相手を脅して弱みを掴む。
別に悪意が有るわけでも無く、そうする事で対等な関係を作り出す。
これはそんな交渉だった。
「アイゼン。そういうわけだからこいつの正体については伏せてくれる?」
『了解しました。少なくともあなたの手に有る間はそうしましょう』
トリエラはその事実にも少し落胆する。トリエラが持っていても防護服にはなる。
それでもタバサが持った方が役に立つに違いないのだが、秘密を知るアイゼンをタバサには渡せない。
「……結局、あんたはそこのところも持ち主に従うしか無いのね」
『私達はそういう存在です』
ヴィクトリアが鼻で笑った。

     * * *
506一つ屋根の下で(後編)(6/10) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:08:50 ID:eC19Vvxt
「あ、おかえりなさいトリエラさん」
「一体何を話してたんや」
「ミミさん大丈夫?」
「たー」
四つの声がごちゃごちゃになってトリエラと『太刀川ミミ』を出迎える。
トリエラは笑って言った。
「大した話じゃないわ。ミミがこの家の悩み事を解決する手助けをしてくれそうだって話」
「まあそんな所ね。構わないかしら、イエロー」
イエローは予想外の内容に少し驚きつつも答えた。
「うん、もちろん。ボクも今、この家に雛苺とさくらの他にも危険な人が居るって聞いてびっくりした所だもの。
 放っておくわけにもいかないよ」
全くもって予想された通りの答えだ。
『ミミ』は内心で辟易しながらも状況を受け容れた。
「それで、タバサ。バルディッシュは予定通りこちらで使わせてもらっていいかしら?」
「うん。大事に使ってね。……さよなら、バルディッシュ」
『お元気で。よろしくお願いします』
「ええ、よろしくね」
待機状態のバルディッシュはタバサからミミへと渡される。
それは全て先ほど決まっていたことだ。
ミミはそれを受け取って、そこでしばらく思案する。
別にこれだけでも関係は悪くない。
ミミはジェダを討つ為にバルディッシュを求めたのだし、これはミミがタバサを赦す代価でもある。
しかしこういった相手にはもう少し恩に着せておくのも一考だろう。
例えばこんな風に。
「代わりといってはなんだけど、こんな物は居るかしら? なんでも勇者にしか使えない剣だそうよ」
「え……それ、天空の剣!? お兄ちゃんの剣だ!」
どうせミミには使えない、しかしタバサにとっては価値が有るかもしれない武器を渡すなどして、だ。
「そう、あなたのお兄さんの物だったのね。それじゃあなたが持っている方が良いわ」
「ごめんなさい、天空の剣まで貰う事になるなんて……本当に、ありがとうございます。
 わたしにも使う事はできないけど、とっても嬉しいです」
ぺこりと深くお辞儀をする。タバサは心からミミに感謝し、感激していた。
ミミは優しい笑みを浮かべてみせた。
罪を赦された感謝と兄の剣を無償で譲られた感謝はタバサの中にミミへの信頼を植えつけた。
それはここぞという所で信用できるかも判らないあやふやな物だが、それでも大きな力となるだろう。
(後はバリアジャケットであの姿になってしまわない様に別のデザインを考えなければいけないわね)
意識せずにバリアジャケットを展開すればあの全身を包むヘルムとマントの組み合わせになってしまう。
あの姿になってしまってはせっかく変装した意味が無い。
どうせ装甲を意識する必要は無くなったのだから現在身に着けている防具に追加する程度で十分だ。

それは彼女がこの家に留まる自信を後押しする一つの要素だった。
彼女はマントのような物を羽織った下に着ていた制服を脱いで、別の服に着替えていた。
なにせ制服はレミリアにざっくり斬られてそのまま着ていればはだけるような有様だったのだ。
ホムンクルスの肉体は血で服を汚しこそしなかったが、それでも使えるのは下着くらいだ。
その代わりが支給品で、それも強力な防具だった事は『ミミ』の自信を増大させる大きな要因となっていた。
新たな衣服。いや、防具はきめ細かく美しい白銀色のチェインメイルだ。
なんでもミスリル銀という物で作られた上に極めて高い防御効果を持つ一品らしい。
問題は少々重量が有る事だ。一般的な鍛えた軍人程度では重すぎて使いこなせないだろう。
仮にも鎧だから注意しないと鎧ズレの音もするし、複雑な挙動を必要とする行動は難しいだろう。
これにより阻害されてしまう魔法技術も有ったはずだ。
だが幸いにも、デバイスでの魔法戦ならどちらも問題となるレベルではなかった。
(これならレミリアの斬撃を受けても……多分、ある程度は耐え切れる。
 最悪の場合でも仲間や人壁が居るなら逃げ切るには十分ね)
彼女は勝算の無い状況に身を投じるほど愚かではなかった。
507創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:08:55 ID:ZrppzYMk
 
508創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:09:42 ID:uSELwjgR
509一つ屋根の下で(後編)(7/10) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:10:07 ID:eC19Vvxt
ごく普通の民家の居間で、少女達と一人の少年がちゃぶ台を囲む。
それを取り纏めるべくトリエラが上座に座った。ちなみにバリアジャケットは解除している。
戦闘時以外に使っても消耗するだけだからだ。
トリエラは、静かな声で議題を切り出した。
「それじゃ、これからみんなに知恵を募るわ。
 まず問題を整理しましょう。
 一つ目。
 この家の奥の寝室に、吸血鬼レミリア・スカーレットが居る。
 その目的は不明で、どうして襲ってこないかも不明。
 その戦闘力はジェダの僕であるQ−Beeを一度は殺した程の物よ。
 デバイスも所有しているから、逃亡するなら市街地から抜けるほどの移動が必要になるわ。
 二つ目。
 こことは別室で雛苺と木之本桜が居て、木之本桜は熱を出している。
 雛苺は今のところ安定しているけどまだどう転ぶか判らない。
 でも木之本桜を見捨てられないお人好しがここには何人も居る。
 以上の二つを統合した、三つ目の問題。
 明かりも無く真っ暗な夜道と冷たく激しい豪雨が私達を閉じ込めている。
 体力の有る者なら抜けられるでしょうけど、それさえも他の遭遇を考えれば危険。
 まだ赤ん坊のひまわりもそうだし、何より衰弱した木之本桜の移動は自殺行為よ。
 この状況を打開する方策は誰か思いつく?」

まずはイエローが素直に手を上げた。
「はい、イエロー」
「朝までか、せめて雨が止むまで寝ちゃうのはダメなの? 今のところは襲って来ないんでしょう?」
馬鹿というべきか豪胆というべきか迷う提案だった。
実際、トリエラも考えないでは無かった選択だ。だが。
「生憎とレミリアがそれまでじっとしていてくれる保障は無いわ。
 もしかするとあいつも雨が嫌いで雨宿りしているだけかもしれない。
 当りを引けば良いけど、外れを引いた時が致命的な選択よ、それは」
「そっか……」
イエローは素直に引き下がった。

続いて太刀川ミミが手を上げた。
「はい、ミミ」
「いっそ突っ切って移動してしまえばどう?
 木之本桜も死ぬと決まったわけじゃない。このままここに居るよりはマシだと思うけど?」
確かにそれも手だ。
だがトリエラは少し考えた末に否定する。
「ミドルリスクだけど、ローリターンだと思うわ。
 さくらの容態は確実に今より悪化するし、レミリア以外の危険人物に遭遇する可能性だって有る。
 最悪、万全の状態のレミリアが疲労した私達を追跡して運悪く発見される可能性も否定できないわ」
「まあ、その通りね」
ミミはあっさりと引き下がった。

すっと小太郎が手を上げた。
「はい、小太郎」
「なんやぐだぐだ悩むのは性に合わへん。みんなで袋叩きにしてしまえへんのか?
 こっちもきっついけど、レミリアやってQ−Beeとの戦いの傷が残ってるかもしれへん」
「旅館ではそうやって一度敗北したんでしょう? 勝てても間違いなく被害が出るだろうし。
 一番正攻法ではあるけど、他の手段が有るならそちらを選びたいわね」
むうと小太郎は唸る。
実際、小太郎もレミリアの戦力を身に染みて理解している。
戦い方を見たから次は負けない、とさえ言えなかった。
負ける気は無いが、それでも勝てる確証が何処にも無い。
510創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:10:55 ID:2vKpmeWD
 
511創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:10:58 ID:ZrppzYMk
  
512一つ屋根の下で(後編)(9/10) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:11:05 ID:eC19Vvxt
おずおずとタバサが手を上げた。
「はい、タバサ」
「あの……話し合いって、できないのかな」
「はぁ?」
小太郎が目を剥き、ミミが呆れた溜息を吐く。
真っ先に小太郎が反論した。
「あいつはそこの赤ん坊ごと何人も殺そうとしたんやぞ。あんな奴とどうやって仲良くなるねん」
「で、でも……お父さんは、魔物とも仲良くなってたから」
「待て、タバサ。その仲良くなる方法って前に言うてたあれか」
「う…………」
タバサも言葉に詰まる。
タバサが不安定に暴走していた時の言葉の一つ。
魔物なら倒してから仲間になりたそうにしていれば仲間に引き入れれば良い。
横暴で傲慢で理不尽な意味の通じない内容。
「……あんなもん、また言い出すつもりか」
タバサは必死に首を振った。
「ううん、違うの! そんなつもりじゃないの!
 でもお父さんがそうしてたのは本当で、わたし、何がなんだか判らなくて、もう……もう……!!」
「くそ。どういう親父やねん、一体」
小太郎は困惑する。
タバサ本来の倫理観自体は、小太郎の知っているそれとは矛盾していない。
にも関わらず、タバサの世界の話をさせれば何もかもが異常に塗り潰される。
そんな異常な世界に生きてきたならばタバサが正常なのは矛盾しているし、
タバサが正常ならばタバサが居たという世界から異常を感じるのも矛盾している。
何処かで何かが食い違っている。
「一体どういう話なの?」
興味を持ったミミの言葉。小太郎は頭を掻き毟りながら答えた。
「いやな、錯乱してた時のこいつは、魔物は殴り倒してそれで生きて起き上がってきたら仲間に……して……」
何かが引っかかった。
殴り倒す? 起き上がってきたら?
拳で相手を殴る?

「……タバサ、いくつか訊いていいか?」
「なに? 小太郎くん」
小太郎は丁寧に。
しかし矢継ぎ早に、幾つかの質問を投げかけた。
「一つ目や。おまえの世界の魔物との戦いってのはどんなんや?
 殺さへんように手加減したりするか? それとも相手が戦えんようになってもトドメまで刺すんか?」
「え、それは…………手加減はしないけど、トドメを刺したりもしないよ
「二つ目。おまえの親父が魔物を仲間にするのは親父さんだけの特権か?
 おまえやおまえの母親とかは出来へんのやな?」
「うん。お父さんだけしか出来ない」
「三つ目。おまえの親父さんが魔物を仲間にした戦闘の時、共通点は無かったか?
 例えば、親父さんが拳を魔物にクリーンヒットさせた時とか」
「そういえば……お父さんは杖を振るう事が多かったけど、
 思いっきり振った強いのが当った時に仲間になった魔物が多い気がする」
「最後や。仲間に出来た魔物に、女みたいなんは居るか?」
「え? 人間みたいなの自体が少ないけど……そういえば居ないよ?」

質問を終えて。
小太郎は満面の笑みを浮かべた。
「こ、小太郎くん……?」
そして盛大に笑い出した。
「はは、あはははは、はははははははは!! そーかそういう事か!
 なんや、怒ってたんが馬鹿みたいや、つまりそーゆー事やったんやないか!」
「待って、小太郎。説明して」
疑問を投げかけたトリエラを振り返り、小太郎は言った。
「説明はするけど、多分女にはわからへんで?」
と。
513創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:11:36 ID:uSELwjgR

514創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:11:55 ID:ZrppzYMk
   
515一つ屋根の下で(後編)(9/10) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:12:02 ID:eC19Vvxt

「つまりやな、タバサの親父が魔物を倒したら何故か魔物が仲間になりたそうに起き上がってきたんやない。
 親父さんは魔物と会話してたんや」
「え? それ、どういう事? お父さん、別に魔物に言葉をかける事は……有ったけど、いつもじゃないよ?」
戸惑うタバサを小太郎は笑い飛ばす。
そして腕を力んでみせた。握り締められた手指が今にもギリギリと音を立てそうな、硬く握られた。
「言葉やない。これや」
「……腕力?」
「拳や!」
拳。
男が自らの意思を篭めるモノ。
「男なら拳で殴り合って理解せえってもんや。これも一種のコミュニケーションなんやで。
 覚悟決めて腹の据わった男同士限定やけどな」
「命を奪い合うような戦いでも?」
「ハッ、手加減したゆるゆるの拳で想いが届くかい。
 全力で戦わな想いなんて届かへん。思う存分殴り合えば良い。
 もしそれで死んでしまったとしても、それは不幸な事故ってやつや。
 おまえの親父さんは人間を餌と見て襲ってくる魔物相手に、言葉やなくて拳で語ってたんや」

「え、でもお父さんは杖とか魔法とか……」
「それは誤差や、気にすんな」
トリエラは困惑した様子で言った。
「……正直、理解できないわね」
「言ったやろ。男にしか理解でけへんって。そこのおまえはわからへんか?」
「え、ボク?」
小太郎に話を振られたイエローは目を白黒させる。
ミミが言った。
「この子、女の子よ」
「……え。あ、そうなんか」
ぽかんと間の抜けた空気が流れる。
しかしすぐに、イエローがそれを継いだ。
「でも、あまり好きじゃないけど理解はできるかもしれない。。
 ボクの世界でもポケモンたちと……ある種の戦いで生まれる絆って有ったんだ。
 レッドさんやグリーンさんと違って、ボクは戦いは嫌いだし捕獲も苦手だったけど。
 でも小太郎くんの話、ボクも判る気がする。
 精一杯全力でぶつからなきゃダメな時も、有るって知ったから」
「はは、なんや見込み有るやないか、おまえも」
小太郎が笑ってイエローの背中を叩く。イエローは痛いと顔をしかめた。
議論はどこか和やかな空気に包まれて。

「……で、それはレミリア対策に役立つのかしら?」
ミミに水を差された。
「そ、それはやな。レミリアと拳で語り合うとか……」
「レミリアは女のようだけど?」
「いや、あいつなら男の理屈が通じる! ……気がする、なんとなくやけど」
ミミはこれまでで一番心底呆れた表情を浮かべた。
「で。通じるとして、どうやって勝つの?」
「……あ」
タバサの父親の理論で行くなら、結局は勝った後の話だ。
拳で語る。実に結構。
ではどうやって拳で語り、自分の想いを通す――レミリアに勝つのだろうか。
答えは『ふりだしに戻る』。
「意味の無い答えだったわね」
ミミはもう一度、溜息を吐いた。
タバサの表情が少し緩んだ、それだけが小太郎の発見の成果だった。
516創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:12:36 ID:ZrppzYMk
    
トリエラは思う。やはりまだ何かが足りない。
レミリアと話し合うにしても、戦うにしても、逃げるにしても、動かないよう祈って眠るにしても。
トリエラ達はレミリアの事を十分に知らない。
(……ああ、そうだ)
その前提に気づいた。
どう対処するにしても、まずはレミリアを知らなければ話にならない。
「みんな。一つ大事な事を思い出したわ」
トリエラは待機フォルムのグラーフアイゼンを首から外し、ちゃぶ台の上に置いた。
アイゼンとの情報交換は既に済ませた。だがそれは完全ではない。
全ての行動を逐一話していては時間が掛かる。おそらく三十分か、下手をすれば一時間を要するかもしれない。
だから要点だけを纏めさせた。現在のレミリアの行動方針を聞いても、その経緯を聞かなかった。
トリエラは言った。
「アイゼン。あなたがこの島に来てからの経緯、省略せずに話してもらえるかしら。
 特にレミリアについてのそれを、全て」
『Jawohl.』(了解)

小太郎がふと視線を逸らし……引き締めた表情でグラーフアイゼンへと戻した。
グラーフアイゼンが、レミリアの経緯を語り始めていた。

     * * *

彼女には、実を言うと大体が聞こえていた。
彼女の聴覚は犬上小太郎と同じく、人を強化したものというより人とは違う種のレベルだ。
だからこんな小さな民家の、同じ屋根の下の会話などほぼ全てが聞こえていた。
レミリアは自分が畏れられているのを聞いて良い気分だと思った。
自分についての経緯をアイゼンが語り始めるのを聞いて、気に食わないと思った。
だけどレミリアは動かない。
「……ふん。好きに話せばいいさ」
彼女達がどんな理由を持ってレミリアに挑もうとも、関係の無い事だ。
挑んできたら、挑戦は全て受け、正面から粉砕してやろう。
それが最強のやる事だ。
悠然と待つのも最強のお仕事だ。
レミリアはただただ静かに時間を過ごす。
雨の降る家の中で何人もの子供達と。
長い夜を越えていく。

一つ屋根の下で。
518創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:13:43 ID:IGpgEUrp
 
519創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:13:51 ID:ZrppzYMk
     
520一つ屋根の下で(状態表1/3) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:13:57 ID:eC19Vvxt
【一つ屋根の下で】
【G-1/民家・居間/2日目/深夜】
【タバサ@ドラゴンクエスト5】
[状態]:魔力消費(大)、精神疲労(小)、右頬に細く浅い切り傷、精神安定方向へ
[装備]:手榴弾×2、ヴェルグ・アヴェスター@Fate/hollow ataraxia
[道具]:支給品一式×2(パン一個、水少量を消費。イシドロの服の食料も回収済み)、
    天空の剣@ドラゴンクエスト5
[思考]:良い人なの? 悪い人なの?
第一行動方針:レミリアに関する詳細な情報を聞いて対策を練る。
第二行動方針:その後はトリエラの案で行動する?
第三行動方針:落ち着いたら蒼星石と再会し、話がしたい。
基本行動方針:レックスを捜索する
最終行動方針:蒼星石とも再会し、レックス達とゲームからの脱出
[備考]
「ドラゴンクエスト5」内でタバサが覚えている魔法は全て習得しています。

【犬上小太郎@魔法先生ネギま!】
[状態]:気消費(中)、背中と左足に怪我(少しマシになったが瞬動術が使えるかは不明)
[装備]:手裏剣セット×7枚@忍たま乱太郎
[道具]:基本支給品×4(一人分の水、パン1個消費)、工具セット、包帯、指輪型魔法発動体@新SWリプレイNEXT
    さくらの杖@カードキャプターさくら、目覚まし時計@せんせいのお時間、生乾きの服
    レミリアの日傘@東方Project、真紅の腕、金糸雀の腕、戦輪×5@忍たま乱太郎
[思考]:結局は戦いで勝てへんとあかんわけか。
第一行動方針:レミリアに関する詳細な情報を聞いて対策を練る。
第二行動方針:その後はトリエラの案で行動する?
第三行動方針:レックスと再会した後、シャナ一行あるいは梨花一行との合流を図る
第四行動方針:双葉に頼まれた梨々、小狼に頼まれた桜を探す。見つけたら保護する。
基本行動方針:信頼できる仲間を増やし、ゲーム脱出(必ずしも行動を共にする必要はない)。
[備考] :紫穂に疑いを抱いていますが確信はしていません。
    小太郎は極めて耳が良い為、家中の会話も大体は聞こえています。
    レミリアにこの会話が聞こえている事に気づきました。

【トリエラ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:頭部殴打に伴う激しい頭痛。胴体に重度の打撲傷複数、全身に軽度の火傷、大きな疲労。
    右肩に激しい抉り傷(骨格の一部が覗き、腕が高く上がらない)。精神に多少の揺らぎ。
[装備]:拳銃(SIG P230)@GUNSLINGER GIRL(残弾数8/8)
    ベンズナイフ(中期型)@HUNTER×HUNTER、トマ手作りのナイフホルダー、防弾チョッキ
[道具]:基本支給品(パン1個、水少量消費)、ネギの首輪、血塗れの拡声器、北東市街の詳細な地図
    US M1918 “BAR”@BLACK LAGOON(残弾数0/20)、9mmブローニング弾×23
    インデックスの0円ケータイ@とある魔術の禁書目録、コチョコチョ手袋(片方)@ドラえもん
    グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはA's(ダメージ有り、カートリッジ0)
    回復アイテムセット@FF4(乙女のキッス×1、金の針×1、うちでの小槌×1、十字架×1、ダイエットフード×1、山彦草×1)
[服装]:普段通りの男装+防弾チョッキ
[思考]:これがレミリアの人物像、ね
第一行動方針:アイゼンからレミリアに関する詳細な情報を聞いて対策を練る。(ミミの正体については話させない)
第二行動方針:作戦通りシャナを捜索したい。タバサに携帯電話の説明も。
第三行動方針:トマとその仲間たちに微かな期待。トマと再会できた場合、首輪と人形の腕を検分してもらう
基本行動方針:好戦的な参加者は積極的に倒しつつ、最後まで生き延びる(具体的な脱出の策があれば乗る?)
[備考]
携帯電話には『温泉宿』の他に島内の主要施設の番号がある程度登録されているようです。
トリエラが警察署地下で見た武器の詳細は不明。
敵を敵と確定する事に若干の迷いが生じています。
騎士甲冑(バリアジャケット)はヴィータのデザインをそのまま使用します。

※トリエラ、タバサ、小太郎の予定していた作戦は以下の通り
まずはシェルターまでタバサ、小太郎と共に行動し、洞窟にも寄りつつシェルターに向かう 。
シェルター到着後に解散し、小太郎とタバサは城へ、トリエラは廃墟へ行く。
それ以降は小太郎達は定期的にトリエラの携帯電話に連絡をする。
521創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:14:16 ID:2vKpmeWD
 
522創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:14:29 ID:ZrppzYMk
      
523一つ屋根の下で(状態表2/3) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:14:49 ID:eC19Vvxt
【ヴィクトリア=パワード@武装錬金】
[状態]:精神疲労(中)、肉体消耗(小)、首輪解除、太刀川ミミに瓜二つの顔
[装備]:バルディッシュ・アサルト(待機状態)@魔法少女リリカルなのは(カートリッジ残数2)
     ミスリル銀製チェインアーマー+3@SWぺらぺらーず
[道具]:基本支給品×2(食料のみは1人分)、
    塩酸の瓶、コチョコチョ手袋(左手のみ)@ドラえもん、
    魔剣ダイレク@ヴァンパイアセイヴァー、ポケモン図鑑@ポケットモンスター、ペンシルロケット×5@mother2
    アイテムリスト、詳細名簿(ア行の参加者のみ詳細情報あり。他は顔写真と名前のみ。リリスの情報なし)
    マッド博士の整形マシーン、カートリッジ×10@魔法少女リリカルなのはA's、
    i-Pod@東方Project、スケルトンめがね@HUNTER×HUNTER、いつもの制服(かなり裂けている)
    思いきりハサミ@ドラえもん、その他不明支給品×0〜1
[服装]:ミスリルチェインの上に妙なもの羽織った姿
[思考]:あの吸血鬼の経緯、ねえ。
第一行動方針:ひたすら生存を最優先する。レミリアと戦う時も後方支援に徹したい。
第ニ行動方針:首輪や主催者の目的について考察する。そのために、禁止エリアが発動したら調査に赴きたい(候補はH-8かA-1)
第三行動方針:“信用できてなおかつ有能な”仲間を捜す。インデックス、エヴァにできれば接触してみたい。
基本行動方針:様子見をメインに、しかしチャンスの時には危険も冒す
参戦時期:母を看取った後(能力制限により再生能力及び運動能力は低下、左胸の章印を破壊されたら武器を問わずに死亡)
[備考]:首輪が外れた事により能力制限が外れている可能性も有ります。
[備考]:首輪に『首輪を外そうとしている』や『着用者が死んだ』誤情報を流す魔法を編み出しました。
      ただし、デバイスなど媒体が無ければ使えません。攻撃に使うのも不意打ちで無ければ難しいと思われる?
      更にヴィクトリアの場合、実際に致命傷を受けて殆ど死に体になっていた事が助けとなった可能性も有ります。
     追加ランドセル(空)はH-1住宅街屋内のクローゼット内に放置

【イエロー・デ・トキワグローブ@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:全身に擦り傷と打撲(行動にやや支障)、左瞼に大きく切り傷、疲労(中)、頭部に打撲(生命に危険なし) 、睡眠中
[服装]:ベルフラウの私服姿。
[装備]:レッドのグローブ、おみやげのコイン@mother2、エスパーぼうし@ドラえもん
[道具]:共通支給品×3(食料?1)、浄玻璃の鏡@東方project(残り1回)、クロウカード×3(『甘』『火』『地』)
スケッチブック、城戸丈の首輪、イエローの服(泥だらけ) 、リルルのICチップ、ベルフラウの帽子
[思考]:森で見た時はきっと、わるい人じゃなかった……?
第一行動方針:レミリアに関する詳細な情報を聞いて対策を練る。
第ニ行動方針:ベルフラウがどうなったか知りたい。
第三行動方針:グリーンやブルーと合流し、このゲームを破る方法を考える。
第四行動方針:丈の友人と合流し伝言を伝え、協力を仰ぐ。
基本行動方針:絶対にゲームに乗らない。生きてマサラに帰る。
[備考]:トリエラに対しての感情は不明ですが、
    ネスからレッドの仇が「白い女の子」だと聞かされました。
    レッドの仇に対しどういう態度を取るべきか、まだ考えが定まっていません。
    首輪内の生物の活動状態を把握可能

【野原ひまわり@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康。しんのすけの死を信じていない。
[装備]:ガードグラブ@SW
[道具]:ピンクの貝がら、基本支給品、生乾きの服
[服装]:海鳴温泉の浴衣(お子様用サイズ)
[思考]:……たー?(よくわからない)
第一行動方針:(ヴィクトリアが気に入らない)
第一行動方針:(おにいさん(グリーン)を探したい。)
第二行動方針:(おねえさん(ククリ)の探している人を見つけてあげたい)
基本行動方針:(おうちに帰る)
524一つ屋根の下で(状態表3/3) ◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:16:00 ID:eC19Vvxt
【G-1/民家・別室/2日目/深夜】
【雛苺@ローゼンメイデン】
[状態]:真紅と翠星石のローザミスティカ継承。精神多少安定。
   桜をミーディアムにしたことにより消耗回復&自動回復付加。 落下により多少の怪我?
[服装]:普段通りのベビードール風の衣装。トレードマークの頭の大きなリボンが一部破けている。
[装備]:なし(一時的に仕舞っている)
[道具]:基本支給品一式、ぼうし@ちびまる子ちゃん ツーカー錠x5@ドラえもん
    光子朗のノートパソコン@デジモンアドベンチャー、ジュジュのコンパス、リルルの膝から先×2本
    ジャック・オー・ランタン@からくりサーカス(力を止めた為、ランドセルの中で停止中)
    ※ジャコの首には真紅と翠星石の首が括りつけてある。
[思考]:さくら、だいすきなの
第一行動方針:さくらを休ませる。さくらの看病。
第二行動方針:さくらとずっと一緒にいたい。とにかく独りぼっちにはなりたくない。
第三行動方針:さくらとの約束を守る(殺人をやめる)……かはまだ不明。
[備考]: 雛苺は真紅と翠星石のローザミスティカを獲得したため、それぞれの能力を使用できます。
    自分の支給品をマトモに確認していません。ご褒美の権利にも気づいていません。
   ジャック・オー・ランタンは真紅の「人形に命を吹き込む力」により動かす事ができます。
   『力』を使い動かす為、維持するだけでも雛苺の『力』を消耗しますが、現在負担は桜へといきます。
   城に誰か強敵(まともに戦うとメンドクサイ相手)がいると思っています。今すぐ戦う気はありません。

【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:左腕に矢傷(処置済)、魔力消費(極大) 、疲労(大)、発熱、雛苺のミーディアム、睡眠
[装備]:マジカントバット@MOTHER2、パワフルグラブ@ゼルダの伝説、
    クロウカード『水』『風』 、リインフォースII(停止中)@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品
[服装]:梨々の普段着
[思考]:……ひな、ちゃん…………。
第一行動方針:雛苺との約束を守りながら、彼女にこれ以上殺人を起こさせないようにしたい。
基本行動方針:雛苺のそばにいてあげる
※魔力があるため、雛苺が戦闘しない限りは持ちこたえられます。
 ただ回復していく分の魔力はほとんど雛苺に持っていかれます。
[リインフォースIIの思考・状態]:
※永沢、レックスを危険人物と認識。梨々の知り合いの情報を聞いている
※魔力不足により、現在使用不能


【G-1/民家・奥まった寝室/2日目/深夜】
【レミリア・スカーレット@東方Project】
[状態]:魔力消費(小)、左腕に痺れ有り、右足に痺れ有り。
     満月は隠れましたが、それでも夜間なので再生力・魔力回復向上しています。
[装備]:ラグナロク@FINAL FANTASY4
    レイジングハート・エクセリオン(待機フォルム)@魔法少女リリカルなのは(カートリッジ残数4発)
[服装]:私立聖祥大附属小学校(なのは達の学校)の制服
[思考]:雨降りは憂鬱ね
第一行動方針:雨が止むまでは大人しくしている。
第二行動方針:基本的に出会った奴は全て叩きのめす。
基本行動方針:島の全て(含むジェダ)を叩きのめし最強を証明する。
[備考]:レイジングハートは、ヴィクトリアの持ち物や情報をほとんど把握していません。
    (特に、アイテムリストの存在を知らないため、自分をどうやって使ったのかが大きな謎になっています)
    レミリアは極めて耳が良い為、家中の会話も大体は聞こえています。
    ただし声だけでどこまで状況を把握しているか(気づいた上で動いていないのか)は不明です。


【ミスリル銀製チェインアーマー(+3)@ソードワールドリプレイ ぺらぺらーず】
とある古代遺跡で発見した掛け値無しに強力な魔法の鎧。
防御力強化と回避力強化(攻撃を逸らす)において個人装備レベルでは最高峰の防具である。
しかし重量が少しだけ重い。
その為、どいつもこいつも筋力に欠けるベルカナの仲間達は誰一人として使用できず、
更にミスリル銀製の鎧は貴重すぎて市場に出回らない為、売って金に換える事さえ出来なかったという逸話を持つ。
鍛えた普通の軍人程度では筋力が足りない。
525◇CFbj666Xrw(代理):2008/12/12(金) 01:16:48 ID:eC19Vvxt
投下終了です。
なんでこんなに難産だったんだろう、今回。
代理投下及び支援してくださった方々に、ありがとうございます。


おまけのトリビア。
ドラゴンクエスト5で主人公が改心の一撃で魔物を倒した時に仲間になりやすいという話は。

気のせい。

確実に魔物を仲間にする裏技『ひとしこのみ』の際に主人公が改心の一撃を連発するのが噂の元と思われる。
ただし速攻で倒した場合は少しだけ仲間になりやすいらしいので、完全な間違いでもない。

作中ではほんとに『良い一撃が入ると仲間になりやすかった』事にしてます。良いですよね、この位。
あとドラクエ5世界では悪い気によってモンスターが凶暴化していて、
主人公はそれを祓う力を持っていたようだけど、その辺は語っていません。
526創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:17:32 ID:ZrppzYMk
      
527創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:19:38 ID:aeeTt04B
投下完了っぽいです。

代理投下の人乙でした。
528創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 01:24:24 ID:wqiX4+me
ああー、そう来るか。確かにトリエラらしい。
小太郎チームとヴィクトリアチームが接触するとオワタになると思ってたが、暫時は大丈夫っぽいな。
……いつ切り捨てられるか分かったもんじゃないけどお互い様か。

それより敵対するもの同士が同じ屋根の下とかどんだけだ。
そして順調に危ない方へ転がるタバサ。
いくらなんでも唯一の武器渡しちゃだめぇぇぇぇぇぇ!
529創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 02:46:28 ID:Z7qf0qvS
投下GJ。随分複雑、奇妙?な人間関係の面子が集まったもんだ。
QB復活見て動揺するタバサの描写とトリエラヴィクトリアの会話が良かった。
檻のない猛獣扱いされているレミリアと雛苺が朝までにどう動くやら。
しかし相変わらずヴィクトリアはいい人の演じ方がえぐいかつヒドイ。
首輪解除済みってアドバンテージがなければフルボッコってレベルじゃないというのにw
530創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 08:50:06 ID:n6pBvCun
投下乙。
ですが気になる点がちらほら。


まずタバサと小太郎がミミをみて何の疑いもなくミミ本人だと信じたこと。

作中説明ではアイゼンに簡略して説明されたとありましたが、
ミミの死を具体的に聞かなかったのに、いざミミを前にして直ぐにいきててよかったと思うのは早計すぎないかなと。
生きていることを信じたかったのならどうして死んだのか聞くだろうし、
そうじゃなくても危険人物の特徴も聞かないのは迂闊すぎるかと。
雛苺の容姿すら知らなかったんですからね。
それに二人とも元の世界に他人に化ける能力のある世界にいますし、
弱みに付け込んだだけでは二人がマヌケ過ぎます。

タバサがバルディッシュを素直に渡したこと

タバサは蒼星石にミミが役立たずだと散々説明を受けています。
知り合いもいないし、特別な力もない無力な人間だと。
そんな彼女が何故魔法使いじゃなければ使えないバルディッシュをほしがるのかと疑問に思わなかったんでしょうか。
まあこちらも罪の意識に付け込まれたという理由はありますがね。


小太郎が桜を知らないこと

小太郎は学校でかなり深い情報交換をしました。
小狼もそこにいましたし、桜について説明はきっちりされたはずです。
こちらは微修正ですむ問題ですが。


些細な問題ですが、情報交換をもとにした問題がこう重なると、
この展開にしたいがために情報交換を蔑ろにされたという印象を受けました。
531創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 13:26:09 ID:CSZwMVZZ
問題ないよ。
全部話として問題ない。通しでおk
矛盾してるところないのにわざわざ指摘するのはどうかとおもうよ。
532創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 14:48:03 ID:kSjofK49
>>531
最近指摘続きで過敏になってるのは判るが
今回の指摘はまともなこと言ってると思うぞ
533創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 18:11:41 ID:Vtk32Gah
てことは、今までの指摘はまともじゃなかったってことか?
534創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 18:17:54 ID:wqiX4+me
いつぞやの迷言「こんなのなのはじゃない」
まぁ、極端な奴の発言であることは否定しないが。

あと、今後作品について意見等ある方は議論スレへお願いします。
535創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 19:01:06 ID:eC19Vvxt
投下乙! (そして感想遅れて申し訳ない)

まさか北東市街の人間模様を、たった1軒の家に濃縮してしまうとはww
確かにこの期を逃すと、接点作れる機会が遠くなるものなぁ……。
しかしなんという大爆弾。これは今後が怖すぎる。GJ。

細かいミスがいくつかあるようなので、そちらの対処も期待して待ってます。
536 ◆wlyXYPQOyA :2008/12/12(金) 20:15:03 ID:wTNKhj0A
大変お待たせいたしました。
修正スレにて以下の修正案を投下させて頂きました。

ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8274/1169612454/229-233

問題がありましたら、議論スレの方で……がいいのかな?
ご意見などお待ちしております。
537創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 00:52:45 ID:eD3fLGi+
>>535
まさに呉越同舟だな、これ。
538創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 04:09:56 ID:CUm+mpE+
最近の作品はほとんど議論行きだな
539創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 10:37:51 ID:TC0/Y6bA
もうめんどいから破棄でいいよ
540創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 13:10:59 ID:TC0/Y6bA
異論がないようなので、破棄ということで
541創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 14:20:57 ID:aIjZdpF+
>>540
議論スレ池
542創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 15:20:56 ID:eD3fLGi+
そういえば前スレ埋めのAA、Wikiに載るのかな。
543創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 16:58:51 ID:aIjZdpF+
>>542
載る……のか?微妙なところだな。

ところで工場パートってどのくらい自重すればいいのかなあ?
もう結構書きあがってるから予約したいけど、ほかのパートが進まないことには投下できないし、
でもこのまま放置だと知りきれトンボになっちゃって俺的にはいやなんだよなあ。
544創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 17:06:48 ID:nalT8KzN
>>540
ま た お ま え か
545創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 17:22:39 ID:+GZc1muq
今予約はいってる弥彦組がとうかされてからでいいんじゃないか?
546創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 17:39:29 ID:+GZc1muq
と、一応。
>>536
それで問題ないと思いますよ。
547創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 18:04:27 ID:aIjZdpF+
>>545
そうしますー
548 ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 18:56:54 ID:W+wwX9C9
まあ実際、自重要請っていうのは……
「特定の場所を動かすな」という禁止的な命令、というより、
「他の場所も頑張って動かしましょうよ」っていうお願い、に近いですからね。

あとは書かれた回数や頻度より、作中時間の進みすぎに注意かもしれません。
工場組が早朝枠に飛び込むような内容なら、それは流石にまだ待つべきかと。


ちょっと予告。
その弥彦組、今夜19;30頃からの投下を予定しています。お暇な方、支援お願いします。
549創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 18:58:32 ID:WPtLu5Hh
ほいな
550 ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:30:46 ID:W+wwX9C9
では、投下します
551創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:31:15 ID:WPtLu5Hh
 
552創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:31:28 ID:JDRVUt48
553創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:31:31 ID:WPtLu5Hh
  
554非常灯だけが見ていた ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:31:44 ID:W+wwX9C9

……その部屋は、意外と便利な場所に位置していた。

売店や救急外来にも程近く、また、病棟や手術室に通じるエレベーターからもそう遠くない、1階の片隅。
専用の通路を持ち、専用の裏口を持ち、大きな車が停められる専用の駐車場まで備えている。
病院によっては地下階にある場合もあるが、しかしその「アクセスの良さ」だけはどこでも変わらない。
決して目立つ案内表示はされないが、それでもその立地条件の良さは、生半可な診察室をも凌駕している。

しかし、その部屋に求められる機能をよくよく考えれば、きっと納得できるはずだ。
不幸なことではあるが、病院中のほぼどこからでも「その部屋に向けて運ばれる」可能性がある。
不幸なことではあるが、その部屋から先は一方通行で「病院の外に向けて運ばれていく」運命が待っている。
速やかに運び込まれなければならない。
速やかに運び出されなければならない。
それが、その部屋の本来の機能であり、本来の位置付けである。
その部屋は、しかし立地条件の良さとは裏腹に、周囲から隔絶された不気味な雰囲気を纏っており。
ちょっと足を伸ばすだけで辿り着けるにも関わらず、普段はあえて近寄る者もいない。

霊安室。
それがその部屋につけられた名前である。
闘病虚しく命を落とした患者の遺体が辿り着く、僅かな休息のための部屋であり――
葬儀場行きの車が迎えにくるまでの、僅かな待ち時間のための部屋。

そこに今――「およそ1人分に少し足りないくらい」の遺体が、横たえられていた。

長い黒髪の、10歳ほどの少女である。
泥も汚れも拭き取られ、髪も丁寧に梳かされ、眼鏡も掛け直されている。
血の気の引いた、しかし穏やかな表情だけ見れば、それはただ眠っているだけのようにすら思えるだろう。
ただし。彼女の首と胴体との間は、ぷっつりと不自然に途切れてしまっていて。
服も、着ていない。遺体の「残された部分」を清め安置する過程で、破けた衣類の残骸は捨てられていた。
肩から下、裸の胴体にはシーツがかけられているが……その胸から腹部にかけては、不自然に凹んでいる。
欠落しているのだ。身体の全面、そして内臓の半ばほどが、ごっそりと。
ヒトならざる化け物に、喰い散らかされて。

「およそ1人分に少し足りないくらい」の、少女の遺体。
彼女の生前の名は、野上葵と言った。
友達を想う優しさと、人間らしい心の弱さを併せ持った、不幸な少女だった。

彼女を追い詰め、彼女の死体を傷つけ、けれど、彼女を清め整え謝罪した2人組は、もういない。
命の気配は全て去り、残されたのは動かぬ死者のみ。
深夜の病院に、豊穣な沈黙が満ちる。
まるで彼女のために世界全てが喪に服しているかのような、静謐な空気。
ただ緑色の非常灯だけが――そこに描かれた、片足を上げて走る人物のアイコンだけが、見つめていた。
声もなく、動きもなく、ただ、全てを静かに、見つめていた。

もう目覚めることのない少女の、永遠の眠り――しかし。
その静寂は、間もなく、破られることになる。

病院の入り口に、ゆっくりとした足音が響く。

命の灯火を抱えた存在の接近が、あれだけ溢れていた死の気配を、あっさりと吹き飛ばしてしまう。

霊安室にも程近い売店の前、体温を持った何者かが、通り過ぎていく……。
555創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:32:41 ID:WPtLu5Hh
 
556非常灯だけが見ていた ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:33:19 ID:W+wwX9C9

  *   *   *


明神弥彦は、そして、とうとう力尽きて崩れ落ちた。
全身が重い。目の前が霞む。意識が遠のきそうになる。
それでも彼は、最後の力を振り絞って、「この場にいるもう1人」を見る。

キルア=ゾルディックは――眠っていた。
この部屋、つまり、病院の1階にいくつも並んで存在していた、診察室の1つ。
その、診察用の寝台の上に、丁寧に横たえられ、穏やかな寝息を立てていた。

実のところ、弥彦は彼の手当てをするつもりでこの病院にまでやってきたのだが――
明治時代の頭に生きる少年にとって、この近代的な医療施設は想像を超えた存在だったのだ。
大きすぎる建物。無数の部屋。そして、遥か未来の医薬品の数々。
剣道修行での怪我も多い彼は、打ち身に効く軟膏くらいなら自分にも分かると思っていたが……甘かった。
この病院に置かれている医薬品は、彼の知る漢方薬の類ではない。
生化学の粋を集めて合成・精製され、効果は高いが副作用も大きく、扱いに専門知識を要する薬の数々だ。
とても、疲れきった弥彦の手に負えるものではなかった。

それでも、なんとかキルアを寝かせられる寝台を見つけ、彼を背から下ろして――
素人判断ながらも、彼の体の傷を検分し、頭の骨が折れても凹んでもいないことを確認し――
一応、血の滲んでいた頭に、鉢巻のように包帯を巻いて手当てをして――
さてこれからどうしよう、と思ったところで――力尽きた。

とりあえず、キルアは助かるだろう。
先ほどの戦いで負わせた怪我で、死ぬことは多分もうない。
そう思った途端に、一気に疲労が襲い掛かってきて……耐えられなくなった。

全身に負った小さな傷の、積み重ね。
そして、小柄な身体で背負いきれないほどの、疲労の蓄積。
明神弥彦は、とうの昔に、限界だったのだ。

彼はもはや、言葉を発する余裕もなく、キルアの眠る寝台にもたれるようにして膝をつく。
今、気を失うわけにはいかない。誰か危険人物が近づいてきたら2人揃って死にかねない。
そんな懸念が弥彦の脳裏を過ぎるが、しかしすぐにその思考も泥のような疲労に飲み込まれ、融けて消える。
深夜0時を間近に控えた、深夜の病院。
激しく対立した2人の少年の寝息が、綺麗に揃って響き始めた。

扉の上に沈黙を守る緑色の非常灯、そこに捕らわれたシルエットだけが、この安らぎの一時を見守っていた。


  *   *   *


満月に影が差し、冥王の眷属の復活劇が上演される。
予告なき冥王の演説が、島の隅々まで響き渡る。
少なからぬ者が眠りから覚め、その歓迎せざる独演会、あまりに大雑把な天気予報に耳を傾ける中――
病院は、静かに眠り続けていた。

殺しを決意した少年も。
殺しを否定した少年も。
殺されて死体と成り果てた少女も。
皆、ただ眠る。
皆、ただ深き眠りの底に沈んでいる。

うっすらと灯る緑色の非常灯、そこに浮かび上がった人影だけが、ただ黙って全てを聞いていた。


  *   *   *
557創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:33:59 ID:WPtLu5Hh
 
558創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:34:22 ID:JDRVUt48

559非常灯だけが見ていた ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:34:47 ID:W+wwX9C9

……遠くから響く雨の音と、ひんやりした空気。キルア=ゾルディックはゆっくりと目を覚ました。
頭が痛い。
夢と現の狭間、ぼんやりした意識のまま、怪我した頭に手を伸ばした彼は、巻かれた包帯に気が付いて――
ようやく、覚醒する。
全てが一気に思い出される。明神弥彦との対立も、戦いも、その結果も。
全てが一気に理解される。傍らで寝息を立てる弥彦の姿と、手当てを受けた自らの姿から。

傷の具合は――大したことはない。
あれだけの勢いをつけて、逆刃の刀とはいえ、鉄の塊が叩き付けられたのだ。
常人であれば致命傷にもなりうる攻撃だったが……生憎と、キルアは常人から半歩外に踏み出している。
殺し屋としてのエリート教育を受けてきたキルア、念能力も習得したキルアなら、なんとか耐えられる。
むしろ、そんなキルアを気絶させた弥彦の強さをこそ賞賛すべきだろう。

キルアはしばし、思案する。
今、すぐ傍で無防備な姿を晒して眠っている弥彦を、殺しておくべきかどうか。
どう考えても、彼はキルアの『敵』だ。
どう考えても、彼はキルアと相容れない哲学の持ち主だ。
どう考えても、彼が目覚めれば再びキルアの邪魔をするだろう。
そしてキルアは、彼の邪魔をする者にも容赦しない、と既に心に決めている。

しばし思案して、しかし――キルアは溜息1つつくと、弥彦の身体を抱え上げた。
つい先ほどまで自分が横たわっていた寝台の上に、好敵手を横たえる。
診察室を見回し、包帯や薬を掻き集め、弥彦の着物をはだけて応急処置を施していく。

悔しいが、借りを作ってしまったことは事実だ。
外は雨が降っている。弥彦が運んでくれなければ、キルアはあの雨の中に放置されていたはずだ。
良くて、服が濡れて不快な思いをする程度。
下手すれば、体温を奪われ風邪をひき、今後の戦いにおいては致命的にすらなりうるハンデを抱え。
最悪の場合、水溜りに顔を突っ込む形で、溺れて死んでいた可能性すらあるのだ。
弥彦自身も傷つき、疲労していただろうに、ここまで運んでくれた借り。
せめてその分くらいは、返しておきたいと思った。
そのくらいの矜持は、今のキルアにも保たれていた。

病院の外では、延々と雨が降り続いている。
弥彦に一通りの応急処置を施し終えたキルアは、弥彦の着物を整え直し、そしてようやく腰を上げる。
自分の分の荷物だけ持って、その診察室を静かに出て行く。

借りは返した。だから、ここから先は弥彦の運命。
目覚めてなおキルアの邪魔をするなら、容赦なくリベンジさせてもらおう。
目覚めずキルアの邪魔をしないなら、それこそ万々歳だ。
寝ている間に誰かに襲われても、流石にそこまで面倒は見きれない。
それよりも今は、自分のことを考えなければ。
少し眠ったお陰か、疲労はかなり回復している。あと必要なのは……パワーの補充。
ここが『病院』なら、きっと『アレ』があるはずだ。
キルアはそして、彼の求めるモノを探して探索を開始した。

何も語らぬ非常灯上の影法師だけが、淡い緑の光を背に、その姿を眺めていた。
560創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:35:13 ID:WPtLu5Hh
 
561創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:35:48 ID:WPtLu5Hh
 
562非常灯だけが見ていた ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:36:15 ID:W+wwX9C9

  *   *   *

島の上空、どんよりと垂れ込めた雨雲のその上で、Q−Beeは激しく触覚を震わせていた。

彼女(?)が冥王ジェダに与えられた指令は、3つ。制限時間は4時間。
指定された8体の死体の存在を、参加者に気付かれないよう気をつけ、確認して回ること。
首輪なき生存者を発見したら、ジェダへ報告すること。
今までの通常業務――ご褒美の配達と死者の報告――は続けること。

1つ1つはそう複雑でもない仕事だ。だから理解力に乏しいQ−Beeにも、なんとか務まる。
さて、では何から取り掛かるべきなのか?
……そうだ、ジェダは優先順位を、並べていた。
最初に、野上葵。次に、太刀川ミミ。ニア。そこから先は……名前は覚えているが、順位は曖昧だった。
頭は悪いが生真面目なQ−Beeは、ジェダが「最優先」として挙げた名前を、文字通りの最優先事項とした。

49番の首輪のP−Beeに、再度連絡。位置情報を送れ――返信あり。受信。現在地把握。
全首輪のP−Beeに、当該地点近傍に今居るものは返信せよ、と命令――返信あり。42番と82番。
42番と82番に連絡、共に行動していた人物の数を報告せよ――返信あり。共に「すぐ傍に1人のみ」と報告。
数を照合。合わない。首輪をつけた死体が傍にあるなら、あと1人分なければならない。
ゆえに、42番『トマ』と82番『レベッカ宮本』が、49番『野上葵』の『首輪だけ』を運んできたと判断。

Q−Beeはしばし思案する。良くない頭を振り絞って考える。
ジェダに命じられたのは、「死体の確認」だ。首輪の確認ではない。
死体に首輪がついていれば簡単なのだが、そうでない以上、多少の推測はせねばならない。
本来、Q−Beeが最も不得手とする知的活動だが……類似するイメージを思いつき、直感的に理解する。

首輪だけを持っているということは、きっと死体を「どこかで落としてきた」のだろう。
運びきれずに、どこかで「落としてきた」のだろう。Q−Beeはそういう形で理解する。
魔界で餌を漁る蟲の群れも、時に「1匹では運びきれないような大きな獲物」を見つけることがある。
P−Beeは欲張って頑張って丸ごと運ぼうとするのだが、途中で千切れて、獲物の一部分しか持ち帰れない。
さて貪欲なる魔界の蟲たちは、しかしその欠落が許せないわけで。
その取り落とした「残りの部分」は、貴重な餌は、一体どこを探せば見つかるのだろうか?
……簡単だ。獲物の一部分を持ち帰った、そのP−Beeが辿った道筋を、逆に辿らせればいい。
知能は低いが空間感覚には優れた魔界の蜂の群れ、その程度のことは、簡単にできる。
理屈でなく、本能でできる。

Q−Beeは再度P−Beeに指令を出す。
42番と82番、日没後から今に至るまでの移動経路の概要を報告せよ。――返信あり。ルート確認。
シェルターから発して南の病院に向かう、1本の道筋がQ−Beeの脳裏に浮かび上がる。
――これを辿れば、その途中にきっとある。
42番と82番の2人が「落としてきた」野上葵の死体が、きっとある。
細かいことは、実際に現地に行ってからだ。血の匂いも参考にすれば、きっと見つけられる。
Q−Beeはそして、分厚い雨雲を突きぬけ、遥かな下界目指して舞い降りた。

病院の中、ほんのり緑色に灯る非常灯。
Q−Beeの目がそこに描かれたシルエットの姿を捉えるまで、さほどの間はかからなかった。


  *   *   *
563創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:36:16 ID:JDRVUt48
564非常灯だけが見ていた ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:38:04 ID:W+wwX9C9

――バチン。

救急外来受付のすぐ近く。
緑色の非常灯の明かりに照らされた、暗い部屋の中。
1つの診察室に、雷のような音が響く。
除細動用のカウンターショック、その電極。いわゆる「電気ショック」のための機械。
弱った心臓に一撃を加える荒療治。本来、感電事故に最大限の配慮を要するそれを……

うっすらと煙を上げながら、キルア=ゾルディックは両手に直に持っていた。

キルアの念能力は、変化系。『オーラを電気に換える能力』。
その習得の過程か、制約と誓約の一種か……彼の能力を万全に発揮するためには、『充電』が必要だった。
元より、自らの腕にスタンガンを押し当てて身につけた能力である。
この程度の電撃、痛くはあるがダメージを受けるほどではなく……手っ取り早い『急速充電』を図ったのだ。
バチン、バチンと2度3度繰り返し、やがて電極を手放したキルアは自らの拳を握り締める。

ぐっ。軽く握っただけで、その表面に紫電が走る。
充電完了。これでようやくフルパワーと言ったところか。
考えてみれば、この島に連れ込まれてからはマトモに充電している時間はなかった。
弥彦相手に不覚を取ったのも、1つには残り少ない電撃を出し惜しみするという愚を犯したからだ。
出し惜しみする一方で、色々な技を試すという浪費に走ったからだ。
もう、負けない。
身に課せられた制限の度合いは正確に把握したし、パワーも十分。
今なら、誰にも負ける気がしない。

だがしかし、悲しいかな。
今はこのパワーを、今までの鬱憤を、ずっと渦巻いている苛立ちを、叩き付ける相手もいないのだった。
キルアは感情を隠そうともせず、小さく舌を打つ。
小さく舌を打って……ふと、気がついた。

それは、ほとんど偶然のように耳に飛び込んで来た、微かな羽音。
明らかな、生命の気配。
キルアの全身が、一瞬歓喜に沸き立って……すぐさまそれは、冷徹な冷たさへと置き換わる。
彼の存在自体が、薄くなるような錯覚。
念能力の基本技能、『絶』の発動。
全身の精孔が閉じられ、無意識に身を包んでいた分のオーラまでも掻き消える。
身に纏った気配そのもの、存在感そのものを押し隠し、そしてキルアは忍び足で歩き始めた。

相手が何者であれ――もう決して、イニシアチブは渡さない。


  *   *   *
565創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:39:18 ID:WPtLu5Hh
 
566創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:40:03 ID:JDRVUt48

567非常灯だけが見ていた ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:40:15 ID:W+wwX9C9

――49バン、ノガミアオイ。死体カクニン。

声無き声で、Q−Beeは確認する。
霊安室。
微かな非常灯の明かりの下、横たえられた少女の遺体、その顔を記憶と照合。完全一致。
P−Beeから報告されたルートを逆走してきたのは正解だった。
微かに感じた、固まりかけた古い血の匂い。それが終着点、つまり死体の位置を告げていたのだ。
かくしてQ−Beeは、最優先の任務を果たしたことになる。

さて、次は何をするのだったっけ?
ジェダから釘を刺されていた注意事項、『参加者に気付かれるな』については、多分大丈夫。
この病院に入り込む少し前、首輪の中のP−Beeと念話を交わし、他にも参加者がいることを確認している。
しかし同時に聞き出した情報から、少し離れた場所にいることも、それぞれ動きが無いことも確認している。
それが分かっていたからこそ、こんな所まで――咄嗟には飛んで逃げられない建物の奥まで来ているのだ。
あとはここを立ち去って、次の仕事に移るだけ、なのだが。

…………ゴハン。

Q−Beeの視線が――頭の上に載せられた複眼からの数十の視線が、安置された遺体に向けられる。
確実な死を確認するためシーツは剥ぎ取られ、遺体は無惨な傷口を露わにしている。
こじ開けられた胸郭。引き裂かれた腹部。欠落した内臓。

Q−Beeには、一目で分かる。
これは、「他の誰か」が、食べた跡だ。
弱肉強食の掟に従い、既に誰かが喰い散らかした跡だ。
獲物を仕留めた狩猟者(プレデター)は、まずは内臓を喰らう。柔らかく栄養豊富な内臓から喰らう。
その段階で打ち捨てられた「残りの部分」は、ハイエナ的な腐肉漁り(スカベンジャー)の食餌となる。
食べやすい所の肉から順番に喰われていき、最後は骨さえも噛み砕かれて骨髄まで啜られる。
それが、肉食の――あるいは、雑食の者たちの日常。

目の前には、誰かが無法な食事を楽しんだ痕跡。
最優先事項を果たし終え、次の行動を心に決める前の、理性の間隙。
Q−Beeの胸の内に、尽きることのないたった1つのシンプルな欲望ば燃え上がる。

 喰ベタイ。目ノ前ノ肉ヲ、思イッキリ。

ああしかし、思い返せばジェダには強く釘を刺されている。
幼子を殺すな。幼子には手を出すな。幼子の死体にも手を出すな。
確かにジェダは、そう言っていた。
恐ろしく小さな頭脳の奥底で、Q−Beeは煩悶する。
この底なしの食欲を簡単に満たしてくれるモノが眼前にあるというのに、手を出せないという苦痛!

ああ、しかしせめて舐めるくらいなら。
滲み出し零れる体液を、舐め取るくらいなら。
Q−Beeは胸の内の苦悩を表情に出すことなく――
もっとも、擬態に過ぎぬその顔が動くことなどめったにないのだが――
そろり、そろりと、少女の生首を持ち上げる。
首輪を取り去るため、レベッカ宮本とトマの2人が、泣きながら懺悔しながら切り離した首を、その手に取る。
押さえきれぬ歓喜に打ち震えながら、Q−Beeは、接吻でもするように、少女の顔に、唇を近づけて、
568創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:40:53 ID:WPtLu5Hh
 
569創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:41:07 ID:WPtLu5Hh
 
570非常灯だけが見ていた ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:41:29 ID:W+wwX9C9

「……へぇ。誰かと思ったら、最初の時にいた蜂女か」

あと1ミリで、伸ばした舌が届く。
そんなタイミングでかけられた、嘲るような声。
その瞬間、Q−Beeの乏しい脳細胞からは、ジェダの指令も警告も、全てが一瞬で吹き飛んでいた。
いかなる動物も、その食餌の途中で邪魔されることを最も嫌う。
ましてやそれが、食欲の塊と言ってもいいようなQ−Beeにあっては。

食べたいお腹すいた最優先任務終了まずは報告帰って食事ああでもまだ他の仕事が目の前には誰かの食
い残し誰かが食べた跡が自分も食べたい食べたいでも食べるわけにはいかないジェダの命令が禁止が舐め
るだけならせめて味だけでもああだけどこいつがこいつが邪魔を逃げなきゃでもこいつのせいで食べたい食
べられない何もかもこいつがこいつのせいでこいつ殺す殺して食べる殺す殺食殺食食食食……。

羽根を震わせ、牙を剥き。

「…………ギギギッ!!」

Q−Beeは、激怒した。


  *   *   *



「なんでこんなところに居るのか、知らねーけどさ――」

キルアは知らない。
Q−Beeに与えられたジェダの密命を、知るはずもない。

「そういや、お前に手を出しちゃいけないとは、ジェダも言ってなかったよな――」

キルアは聞いていない。
先の臨時放送を、ジェダの警告を、一切合切丸ごと聞いていない。

「ちょうどオレもさ、誰でもいいから八つ裂きにしてやりたい気分でさ――」

キルアは気付かない。
ジェダが半ば本気で警告を発したQ−Beeの強さに、昂ぶるキルアは、気付かない。

「そういや、『ご褒美』ってのはお前が配って歩いてるんだよな。なら、力づくで奪うのも一興かな――」

キルアには分からない。
自分が言っていることがいかに無茶苦茶か、いかに無謀な話かを、分かっていない。
絶好の不意打ちの機会を自ら棒に振ってしまったことの意味を、分かっていない。

そして、Q−Beeは。
そんなキルアに対して、懇切丁寧に理を説くだけの知性も理性も、持ち合わせてはいなかった。
ただ、食餌を邪魔された。その苛立ちだけに支配されていた。
571創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:42:16 ID:JDRVUt48
572非常灯だけが見ていた ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:43:09 ID:W+wwX9C9

  *   *   *


……静かに、緑色の光を放つ非常灯だけが、辺りを照らしていた。
そこに描かれた、避難する人を模った模様だけが、その無意味なる戦いの目撃者であったが――
彼は、物を見る目も、物を聞く耳も、何かを感じる心も、何かを考える知能も、もちろん持ってはいなかった。
だから、当然のこととして、それは黙っていた。
ただ、そこに存在していただけだった。

緑色の淡い光の下、Q−Beeが怒りに任せて手の内の生首を握り潰す。
意味があっての行為ではない、ただ、彼女の憎悪の反映でしかない行動。
辺りに血と、脳漿とが飛び散って――
そのうちの一滴が、非常灯に描かれたピクトグラムの所まで、弾けて飛んで――

それが、この不毛な、誰も幸せにならないであろう衝突の、ゴングとなった。






【G−7/病院1階・診察室/2日目/深夜】
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:疲労(大)、全身に打撲と青痣と擦り傷と火傷(全て一通り応急手当済み)。気絶中。
[装備]:逆刃刀・真打@るろうに剣心、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)、核鉄(バルキリースカート)@武装錬金
     コンチュー丹×5粒@ドラえもん、
[服装]:道着(ドロと血と吐瀉物で汚れている。右腕部分が半焼け、左側袖も少し焼けてる)
[思考]:…………。
第一行動方針:???
第二行動方針:キルアが目覚めたら、人を殺さないよう説得を続ける? 必要なら何度でも叩きのめす?
第三行動方針:いい加減、食事を取りたい。
第四行動方針:出来れば南西市街地に点在する死体(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:この手の届く限り、善悪問わず一人でも多くの人を助ける(目の前にいる人を最優先)。
         それ以外のことはあえて今は考えない。
[備考]:バルキリースカートは、アームが一部破損した状態です(現在自己修復中)。
    深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。


【G−7/病院1階・霊安室/2日目/深夜】
【キルア@HUNTER×HUNTER】
[状態]:疲労(少)。頭にたんこぶ。鉢巻のように巻かれた包帯。充電フルパワー。
[装備]:ブーメラン@ゼルダの伝説、純銀製のナイフ(9本)、
[道具]:基本支給品×3、調理用白衣、テーブルクロス、包丁×2、食用油、 茶髪のカツラ
    天体望遠鏡@ネギま!、首輪(しんのすけ)、水中バギー@ドラえもん、
    殺虫剤スプレー、ライター、調味料各種(胡椒等)、フライパン
[思考]:やる気か?(ニヤニヤ)
第一行動方針:とりあえず目の前の蜂女(Q−Bee)を叩きのめす。
第二行動方針:殺し合いに乗っている者・乗ろうとしてる者は容赦なく殺す(間違えても気にしない?)。
第三行動方針:キルアを邪魔しようとする者も容赦なく殺す。
      ただし、気絶している弥彦は、今はトドメは刺さない(目覚めて邪魔するようなら殺すかもしれない)。
第四行動方針:太一とゴンの仇をとる。ゴーグルも取り返す。
基本行動方針:仇討ちも兼ねて、殺し合いに乗っている者を積極的に探して殺していく。
       いわゆるマーダーキラー路線。その後のことはあえて今は考えない。
[備考]:自らの念にかけられた制限、制限下における念能力の効果を、ほぼ完璧に把握・理解しました。
    深夜12時の臨時放送を、完全に聞き逃しました。
573非常灯だけが見ていた ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:44:16 ID:W+wwX9C9

【Q−Bee@ヴァンパイアハンター】
[状態]:健康。空腹(小)。激しい苛立ち。
[装備]:不明(なし?)
[道具]:不明(なし?)
[思考]:???
第一行動方針:目の前のキルアへの対処
第二行動方針:ジェダの指令をこなす
第三行動方針:(…………ゴハン)
基本行動方針:本能に逆らえる範囲内で、ジェダの指令を忠実にこなす
[備考]:野上葵の死体の存在を確認しました。


[備考]:G−7病院の1階にある霊安室に、野上葵の遺体が安置されています。
     ただし衣類はつけておらず、首と胴体が分断され、内臓がいくつも欠落しています。
     また、その頭部はQ−Beeの手によって乱暴に握り潰されました。
     一度は綺麗に拭き清められましたが、潰れた頭部から飛び散った破片が再び辺りを汚しています。


[備考]:作中には擬人化を思わせる表現がいくつかありましたが、
     もちろん当然ながら、病院の非常灯に描かれたピクトグラムは、ただの絵です。念のため。
     ちなみに、誰もが知ってる、こんな感じのものです。↓

 _________
 |  ,− ‐、     |
 |  {   }     .|
 |  ,`  '―――、 |
 |_/ ,、   「 \_} .|        ‐┤├‐  ┌`┴'┐  ┌─‐┐
 ┌―′|   |、   |        ‐┤├‐    [二]    │  .│
 |    ./ /1 |   |_       フ  「    i ̄| ̄i   └─‐┘
 |   / / |_二二` \         _  _ _  _ __
 |  / /       | ̄         |―  X   |   |
 | /__/        |            ̄  ´ `  ̄
 |  、‐、       \
_\_\ \_____\___________________
574創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 19:44:21 ID:JDRVUt48

575 ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:45:04 ID:W+wwX9C9

以上、投下完了。支援感謝です。

放送を聞きそびれたキルアと、食餌寸前で邪魔されたQ−Beeが激突する直前で〆です。
実際に行動に移す前(あるいは移した後)に、
Q−Beeがジェダの命令を思い出せるかどうか・逃げだせるかどうかは、
後続の書き手さんにお任せします。

Q−Beeを縛ることになるので、少し危険な作品との自覚はあるのですが。
どうやら雛苺はご褒美を呼ぶ気配がまだありませんし、他には該当者もいません。
ならば早めにやっておいた方が良かろう、と思って踏み切りました。
指摘等ありましたら、よろしくお願いします。
576 ◆sUD0pkyYlo :2008/12/13(土) 19:53:23 ID:W+wwX9C9
とと、失礼。リリスも既に該当者でした。
ただまぁ、時間がかなり先になるので……。
577創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 21:16:47 ID:7bn8W5Mw
投下乙!
こりゃあ面白そうな展開だ!キルアVSキュービー。
バトル中もバトル後もひと悶着ありそうだ
578創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 21:56:03 ID:QA84NQjb
投下乙です
確かにひと悶着ありそうだ
そして弥彦はどうなるんだろう・・・・・
579創る名無しに見る名無し:2008/12/13(土) 23:22:36 ID:rfGbSfqr
投下乙
キルアがいつから来たのか知らんがvs蟻戦っぽいなw
微妙なシンクロw
負け続けの二人の戦いの行方が気になります。
Qビーもレミリアの次はキルアとか見つかりすぎだろww
580創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 00:05:00 ID:2aEbPurB
投下乙
大人の言うことはよく聞きましょう、だなw
ジェダ様いろんな意味で無視されすぎだろ
581創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 06:12:22 ID:CMjHFofJ
キルア自身は絶で気配を消していたとはいえ、キルアの首輪の位置情報を見落としてたのはQBうっかりさんだろ
そんなに目の前のエサに気を取られてたのかw
582創る名無しに見る名無し:2008/12/14(日) 10:35:02 ID:bZ0dwhpl
所詮食欲>>>>>(越えられない壁)>>>>>その他な畜生だからなあ
いつぞやのジェダが部下に恵まれないという考察は正しい
原作でもオゾムとキュービィ一族くらいしか部下がいないしな
583創る名無しに見る名無し:2008/12/15(月) 03:27:56 ID:Z+rikh/a
ダメだ、なんかQBが可愛いw
しかしこれは続きが気になるいい締め方
ジュダの話を全然聞いてない二人の激突?に期待
あと、非常灯視点?に吹いたw
584創る名無しに見る名無し:2008/12/16(火) 09:33:12 ID:NWRlWxfj
遅くなったけど投下乙
二人ともいい感じにキレてるなw
ここでキルアが退場するか、
それとも生き返ったばかりのQBがまた死んじゃうのか、
そのどちらでもないか
いずれにしても先が楽しみです
585創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 20:10:55 ID:zR8joLFD
ジェダの影響力の無さにワラタ
ろくな部下がいないなw

れみりゃと互角以上の相手なのにキルアは勝てるのかw続きが気になります
586創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 21:27:29 ID:FVo6P5G4
仮にあの装備のレミリアをハンター原作で言えばネフェルピトーとかあの辺−制限と考えれば……
地形が有利なのと馬鹿なのが救いだが、凄い博打だな。ここでキルアの明暗が分かれそうだ。
587創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 21:31:37 ID:eb+xEO56
キルアはまさに崖っぷちって感じ
588創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 22:21:33 ID:yJaVpldj
キルアが「狂気の沙汰ほど面白い……!」まで楽しめるかが鍵だなw>QB戦
589創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 23:08:17 ID:fTekUREr
亀レスだけど投下乙!
キルアも鬱憤晴らしするにしても相手が悪すぎるよな
っていうかQBの
>本能に逆らえる範囲内で、ジェダの指令を忠実にこなす
ってどれだけジュダは部下に恵まれてないんだよw
590創る名無しに見る名無し:2008/12/17(水) 23:39:32 ID:XwUb1YN9
室内戦ならひょっとしたら…ってくらいかな
冷静になれればもう少し勝機もありそうなんだけど
591創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 00:51:06 ID:jD1WxU6s
一応、キルアと同格なゴンがフランドールに善戦してる。
遊びとはいえ、レミリアより強いんだしわかんないよ?
592創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 02:36:54 ID:YLONPBH4
すまん、できればどなたか前スレのAAをwikiに貼ってくれないだろうか?
見逃したorz
593創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 02:45:47 ID:w+VlCygA
ttp://mimizun.com/log/2ch/subcal/schiphol.2ch.net/subcal/kako/1219/12192/1219236331.dat
AA貼った本人だけど、前スレdatでよければ。
wikiに貼るのは……俺じゃ判断つかんので勘弁。
594創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 04:30:38 ID:Ha2W+Oxh
フランに唯一勝ってそうな身体能力に+ラグナロク補正+満月補正まで付いてボコボコにされたからなあ、レミリアw
しかし慣れない魔法系統を使ってたとはいえ、レミリアを圧倒する弾幕使いにゴンが勝機を見出したのは変わらないか。
キルアは基本性能だとゴンより上だったはずだし……。
ああ、ここから先は展開予測になっちまいそうだ。
595創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 12:21:27 ID:DYGX2osh
ss内の戦いで暫定的にだが強さは測れるけど……
まあ持ってる道具や疲労具合も変わってるし、予想はできないな。

リンクと互角と自分で言ったエヴァがリンク含めた4人相手に互角だったこともあるし。
まああれはリンク側が殺さないように配慮したのもあると思うけど。
596創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 16:20:22 ID:JJKvAg3Q
Q‐Beeと戦った時はレミリアもかなり満身創痍だったしな。
ぶっちゃけ戦力差なくね?
…とおもったらキルア参戦時期きよっては強い奴に恐怖するな。
これがどうなるか…
597創る名無しに見る名無し:2008/12/18(木) 19:08:35 ID:9S8JA+wC
何か珍しく雑談ムードだな
598創る名無しに見る名無し:2008/12/19(金) 02:55:09 ID:pE4ogCW/
>>592-593

Wikiのオマケとして、これまで何回かAAの収録がされているので
今回のを収録しても構わないのではと思いますよ?
599創る名無しに見る名無し:2008/12/20(土) 12:56:01 ID:kG8g+mOR
したらば避難所より転載。お疲れ様です。


29 名前: ◆QzFJmuHgIs 投稿日: 2008/12/20(土) 11:31:21 ID:dWIOgs3s0
......パソコンが死んでしまいました…
投下できません。無責任だとはわかっていますが、
予約を破棄します。
お騒がせして本当に申し訳ありませんでした。
600創る名無しに見る名無し:2008/12/21(日) 01:00:17 ID:U3CjSvwg
新たな予約ktkr
601創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 14:47:12 ID:4KzAhoWt
未放送組で考察してくれそうなメロと確実に察しそうなヴィクトリアがまだだな。
こいつらがいったいどう考えるか気になる。
首輪解除にあと一手のトマ組も次の話は考察話になりそうだし。
602創る名無しに見る名無し:2008/12/22(月) 22:39:25 ID:9TW7ex7c
特にヴィクトリアは臨時放送の真意に一番気づける参加者だからな。影響大と見てる。
ここまでニアのごとき引き籠もりでこれからも引き籠もる気満々だが、それじゃ面白くないので動いてくれることを期待してる。
……どのみち雨だから向こう4時間は無理な話か。
603創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 15:47:46 ID:l6Hm0Ky6
つーかヴィクトリアはなんで動こうとしてるんだ?
保身優先なんだし、首輪外れたんだから禁止エリアにでも引きこもればいいのに。
604創る名無しに見る名無し:2008/12/25(木) 16:21:39 ID:fSRh+nT5
そりゃ逃げに徹しても対ジェダの話は全く進まんからだろ。
保身優先っつーても、先を全く考えてないわけじゃないぞ。

首輪解除という明らかな反逆行為を、ジェダが笑って許してくれる
(最後まで生き残ればそれでも優勝扱いして救ってくれる)と確信できて、
一分一秒でも長く生き延びること・優勝することを最優先するなら、かくれんぼだろうけど。
そうじゃないなら、いずれジリ貧だ。
無目的な引き篭もりは、時間を浪費してジェダ側を利するだけの最低の悪手になる。
でもって、ヴィクトリアはジェダを信用してない(優勝者の運命を楽観視してない)ときた。

何か1人でやること・やれることが目の前にあれば、また違うんだろうけど。
この辺、デバイスを奪われたのは結構痛い。戦闘力も落ちたし首輪の研究も滞ってしまった。
605創る名無しに見る名無し:2008/12/26(金) 13:28:27 ID:7zgi4OyQ
でもヴィクは資質ゼロなのに無理して魔法を使ってたからなー。
なくても別に大したことないように思うのは俺だけか?

ただ、持ち物のほとんどが武器という現状は痛いな。
詳細名簿や支給品リストといった特殊なものはもう使わないものばかり。
病院や工場といった「何かが確実に存在する」場所なら、探索という形で動きようがあったんだろうけど、生憎と現在地は変哲のない二階建ての家。
豪雨のおかげで外出できない(イエロー見捨てるなら別)ときてる。
極め付けにレミリアの一撃で弱ってしまって戦闘力もガタ落ちだよな、言われてみれば。

いまヴィクトリアは「頭で考えることはできても」「実際に行動へと移せない」状態なのか。
なるほど、604のおかげでようやくわかってきたよ。
606創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 02:46:52 ID:tmxOHv2c
>>570
>食べたいお腹すいた(略
しょこたんの日記かとおもって
ギギギ ギザタベタス!とかくると思った
607創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 13:03:10 ID:noOrY0+4
投下っていつ?
608創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 17:24:48 ID:aCcomr9v
今日の夜中までだな。
609 ◆CFbj666Xrw :2008/12/27(土) 21:37:43 ID:gWEN7IRk
11時半くらいから投下します。
610 ◆CFbj666Xrw :2008/12/27(土) 23:31:57 ID:jXGur9Rf
投下を開始します。
ヴィータと三宮柴穂は夜の森を走っていた。

暗い夜道だ。厚い雲に閉ざされた空に光は無く、闇が支配している。
雲からは冷たく激しい豪雨が降り注いでいる。
森の中は木々の根が張り出しでこぼこと隆起している。
その暗い森の直中を、所々霜に覆われた二人が走っていた。
ヴィータの手には懐中電灯が握られていた。
その灯りが目印になる事は判っていたが、これが無くては走れない。
どちらにせよ敵は夜目が利く。灯りを点けた方がまだマシだ。
すぐ後ろに灯りを必要としないが運動能力に劣る柴穂を連れて、走り続ける。
「クソ、これじゃ反撃できねえ!」
ヴィータは悪態を吐いた。
言葉通り彼女達は背後に迫る敵から逃走していた。
「はははっ、そうだ逃げろ逃げろ、無様にもがくがいい!
 小悪党にはそれがお似合いだぞ!」
吸血鬼エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルに追い立てられていた。

声の主の居場所は木々の向こう、闇夜に包まれた上空だ。
ヴィータが悪態を吐いた理由はそこに有る。
デバイスの無いヴィータは飛行魔法でエヴァに迫る事も誘導弾で反撃する事もできないのだ。
近接武器しか無い今、ヴィータの攻撃はエヴァに届かない。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!
 魔法の射手(サギタ・マギカ)連弾・氷の3矢(セリエス・グラキアーリス)!」
一方のエヴァは例え雲に隠れようとも満月の加護を受け、空を飛び力を振るう魔力を取り戻している。
夜空から氷の矢が三本夜闇を裂いて飛来した。
狙いはそれほど精密でもない。
幾ら魔法の射手が誘導性を持つとはいえ、木々の向こうを精密に狙えるわけはない。
だが、元よりエヴァの魔弾はヴィータ達への直撃を狙ってはいなかった。
ヴィータ達の少し前方、懐中電灯に照らされた辺りが一瞬で凍結する。
「こっちよ!」
柴穂がヴィータの手を引いて方向を転換した。
その背後から散発的な魔法の矢が彼女達を追い立てる。彼女達は逃げ続ける。

一方の柴穂には反撃の手段が無いわけではなかった。
だがそれは邪剣ファフニールから引き出せる技では無い。
魔神剣は遠距離攻撃ながら地を這う衝撃波だし、高く跳躍する閃空裂破でもまだ厳しい。
晶術……いわゆる魔法で反撃する手段は無くも無い。
短剣という形状から誤解しがちだが、闇の装備が本来与える力は戦闘において万能なのだ。
技術、強靭な肉体、魔力、更には模倣なのか天使の力までも含まれる。
しかし晶術はせいぜい初級止まり。発動前の無防備も克服できず、詠唱の速さも本業のエヴァには敵わない。
剣技の中でも奥義と呼ばれる領域や中級の晶術、
増してやそれをフォローする別系統の技術EXスキルを扱う事はできない。
現時点の柴穂に引き出せるのはそこまでだった。
闇の装備は確かに絶大な力を与える魔性の武器だったが、本来は八つのそれを集め、
更に特別な場所で死者を蘇らせると言われる禁書ネクロノミコンの儀式を行う事で初めて力を引き出せるのだ。
柴穂は超度7のサイコメトリー――剣でも銃でも持った瞬間に使いこなし方を理解できる使用法
によってその過程を省略し、闇の装備一つ分の更に数分の一を引き出しているに過ぎない。

反撃の手段は単純に、所持している二種の銃器だった。
ショックガン。そして銀製の銃弾が篭められた拳銃ワルサーPPK。
銀の銃弾とは退魔の象徴に他ならない。サイコメトリーで読み取った情報もその通りだ。
ワルサーの銃撃は吸血鬼であるエヴァに十分なダメージを与えられるだろう。
直撃させる事が出来れば。
その弾数は僅かに五発。予備弾は無い。
柴穂はこの豪雨の闇の中でも、目を瞑りながら標的を正確に狙い撃つ自信が有った。
それもサイコメトリーの応用法だ。しかし。
(……今!)
後ろ手に不意を狙って放ったショックガンの銃撃を。
「氷楯(リフレクシオー)!」
圧倒的な戦闘経験で読みきったエヴァの防御魔法が防ぎきる。
柴穂は青ざめた唇を噛み締める。
ファフニールの攻撃なら少しはマシのはずなのだ。
ファフニールから引き出せる攻撃の型はそれだけで回避困難な技巧が含まれている。
だが状況もあって射撃角を制限された銃撃などエヴァにとって脅威ではない。
「魔法の射手(サギタ・マギカ)連弾・氷の5矢(セリエス・グラキアーリス)!」
弾数の増えた魔法の射手が二人を襲う。
とはいえエヴァの魔法も遮蔽物が多い森では決定打となりえない。
二人は木の根を跳び越えて飛来する攻撃を回避して。
「あ……!」
「くそ、何を……うあ!?」
凍りついた地面に足を取られて転倒した。
木の枝に停まったエヴァが樹上から二人を嘲った。
「ふん、ようやくか」

これまで走り続けてきた足ががくがくと震えている。
柴穂は即座に自分の体をサイコメトリーで省みた。その表情が焦りに歪む。
「そういう事!? やられた!」
「そういう事ってどういう……いや、こういう事か! ちくしょう!」
ヴィータも経験から自分の状態を客観的に評価して答えに至る。
二人が転倒した直接の原因は凍りついた地面だ。
だがそれだけならすぐに立ち上がってまた走り出していた。
彼女達は自分の想像以上に消耗していたのだ。
戦いの興奮と運動の発熱に紛れた低温が彼女達の体を蝕んでいた。
「開けた場所よりはマシと思い森に駆け込んだのだろうが、赤点だな。
 ちゃんとそれも考えて撃ったさ」
ヴィータと柴穂は最初、森から出て開けた場所を歩いている時に襲撃された。
遮蔽物の無い平地で空からの一方的な魔弾の雨だ。
二人は体を霜に覆われながら這う這うの体で森へ駆け込んだ。
更にエヴァに追われて森の中を走り続けた。
目的地は彼女達が後にした塔だった。屋内戦であれば飛行能力の価値は激減する。
そうでなくとも立木よりしっかりとした遮蔽物が有れば体勢を立て直して反撃に転じられる。
互いに決定打の無い森の中ならそこまで逃げ切れると判断していた。
「この雨の中、凍結する魔力弾の相手はさぞかし疲れただろうよ」
冷たい豪雨とエヴァの氷系攻撃魔法がその目論みを破綻させた。

ただでさえこの寒空の下、長い一日を経た全身には根深い所で疲労が溜まっていた
更に冷たい雨。何発も氷の矢が掠めて所々霜に覆われた体。
例え魔法自体の威力をレジストできても、雨に濡れた体は体表を凍らせて体力を奪い取る。
散発的に氷の魔法を放たれ、足元が不安定な森の中を蛇行して走り続ける。
サイコメトリーで周辺環境を把握できるとはいえ身体機能が脆弱な三宮柴穂はもちろんの事、
普段纏っている騎士甲冑を持たないヴィータにとってもこの逃避行は過酷過ぎたのだ。

(ちくしょう、気づくべきだった! あたしには今、アイゼンはねえって事に)
特に戦闘経験に長けているヴィータの盲点が致命的だ。
ヴィータは遥か過去から歴代の書の主に従って戦い続けてきた守護騎士の一人だ。
永過ぎるそれと守護騎士の在り方は戦いの年数と経験の蓄積を直接比例こそさせなかったが、
ヴィータが歴戦の騎士であることに何ら代わりは無い。
例え愛用のデバイスが無かったとしてもそれを埋める術は心得ている。
アイゼンが有ってもがむしゃらにぶつかるだけで倒せない敵は居た。
アイゼンが有っても耐え切れない攻撃は有った。
だがそれでも、普段有って当然の力が奪われ隙が生じない筈は無い。
アイゼンが有れば消耗する程に暗い森の中を飛行せず走りまわされる事は無かった。
アイゼンが有れば騎士甲冑を纏い雨や冷気程度の環境変化には耐えられた。
今、ヴィータの手にグラーフアイゼンは無い。
(こっちは疲労困憊、あっちは……くそっ、まだ余裕が有りやがる)
ヴィータはガチガチと噛み合わない歯を軋ませる。
森に逃げ込む前のエヴァは魔法の射手を十本以上纏めて撃ってきた。
だがヴィータ達が森に逃げ込むやいなや、少数の魔法の射手を散発的に撃つに留めた。
力を温存するためだ。
散発的な魔法の射手も魔力を節約していたのだろう。
よく見るとエヴァの体は濡れても居ない。極々弱い魔法結界で雨を防いでいるのだ。
更に魔法で飛行した方が、この夜の森を駆け抜けるよりは疲労も少ない。
使った魔法の数こそ多いものの、一つ一つの消費を抑えたエヴァは殆ど消耗していない。
エヴァは最低限の消費でヴィータ達の体力を削りきったのだ。

「さて、手短に片付けるとしよう。東と南も潰しに行かねばならんからな」
エヴァは満足げに勝利を宣言する。その姿は深い森の枝葉に隠されている。
ヴィータは凍えた唇で空気を震わせる。樹上の声の出所を睨みつける。
「てめーはそういう魂胆だったって事か、エヴァ」
突如襲ってきた時点でエヴァの本心は判っていた。
それでも確認しておきたくて、ヴィータはエヴァに問いかけた。
「言っただろう? 貴様は私の敵になったとな。
 貴様らは気に入らん。だから殺す。『悪党』にそれ以上の理由は要らないのさ」
ヴィータも、そしてヴィータからその全てを読み取り続けた柴穂も理解している。
ヴィータと柴穂にエヴァを止める言葉は無い。
「同盟に加わった事自体が、私達を散らす提案を差し込む為の工作。そういう事ね」
「ああ、そういう事だとも」
言葉を交し僅かな時間を作る事は出来る。だがそこまでだ。
もし時間を稼ごうとすればすぐにトドメを刺しに来るだろう。
それどころかこの状況で時間を引き延ばしても消耗するのは二人の方だ。
「話は終りだ。雑魚を嬲り殺すのは性に合わん。遺言を聞いてやるつもりも無い」
だから二人に逆転の目が有るとすれば一つだ。
柴穂はヴィータと目配せをした。ヴィータは頷いた。
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック!」
「このっ!」
エヴァが牽制ではなく決定打を放つその瞬間こそ反撃の機会。
ヴィータは唯一の武器であるフランベルジュを迷う事無く投擲した。
エヴァの姿は枝葉に隠され直接視認出来ない。腕は寒さに震えている。
だが停まっている枝は十分に見えていて、動くことも無い。
太い枝の根元に突き立った炎の剣は、瞬時に枝を焼き切った。
魔力節約の為かエヴァが降り立っていた足場の枝が落下して。
柴穂は銀の銃弾が装填されたワルサーを構え周辺空間をサイコメトリーで読み取って。
エヴァの位置に気づいた。

「バカめ、だから貴様らは雑魚なのだ」
予想外の方向から声が聞こえた。
「なんだと!?」
「しま……っ!?」
無詠唱で放たれた一本の魔法の矢が柴穂の左手首を凍らせた。

ヴィータの懐中電灯が作る木の影から、白い腕が伸びていた。
ずるりと滑るように、エヴァの姿が現れる。
影を使った転移能力。
にぃと、一時的だが致命的なまでに戦う力を減じた二人を嘲った。
エヴァとてこの様な能力を多用できるわけではない。
普段呪いと学園結界に縛られたエヴァはこの高度な転移能力を使えない。
だがこの島に学園結界は無かった。
参加者への能力制限は有ったが、それも転移距離を短く留めて十分な時間を掛ければ事足りる。
枝葉に隠れた本来の目的はここにある。
最後に残った問題は殆ど暗闇に包まれたこの場には転移先の影が無い事だけだが、
それもヴィータが灯りとして使っていた懐中電灯によりカバーできた。
相手が攻撃してくるタイミングを自分の都合で調節してやれば完了だ。
消耗したエヴァは、しかし策によって必然たる勝利を掴み取っていた。

エヴァは二人に放つ為の攻撃魔法を編み上げて。

がさりと音を立てて、横合いの茂みから何者かが飛び出してき。

エヴァは息を呑み、その正体を視認し、即座に魔法の狙いを変更し何時でも放てるよう身構えた。
その何者かは息を呑み、その状況を把握し、何をされても問題ないように身構えた。

柴穂はその何者かを知覚して、驚愕の声を上げた。

「――リリス!?」

     * * *

エヴァがリリスを睨む。ヴィータも柴穂も逃すまいと警戒しながら。
リリスが周囲を警戒する。どう対処するかを考えながら。

ヴィータと柴穂はその均衡状態の中で急いで状況を立て直していた。
ヴィータは投擲したフランベルジュの位置を確認する。
焼ききった枝共々、フランベルジュは地面に突き立っている。
あそこまで走れば武器を取り戻せる。
だがエヴァの位置もそこに近い。生身の体に正面から魔法が直撃するだろう。
そもそも体の末端がかじかんだこの体でどこまで俊敏な行動が出来るかも問題……。
(……いや。問題ねえ、行ける)
そう結論付ける。
魔力で強化される肉体は、まだヴィータの精神を裏切らないと確信する。
ヴィータの精神は、弱音を吐く肉体を捻じ伏せて動かせる事を確信する。
敵は自らの消耗などではない。
敵はヴィータの道を阻む者だ。

一方の柴穂はリリスを観察していた。
リリスは慌てて移動してきたのか、この状況に対応できていなかった。
どうやら文字通り戦場に迷い込んでしまったらしい。
胴部には大きな傷が残っており、片手で胴を押さえている。
(上手く交渉すれば引き込めるかしら)
柴穂の右手には已然ファフニールが握られ、手首を凍らされた左手にはワルサーが張り付いている。
左手の銃はこのままでは使えない。だから柴穂は口元を隠して行っていた、詠唱を終えた。
(…………ファーストエイド)
左手の感覚が僅かに戻った。
完全に感覚を失い張り付いていただけの指先が、ワルサーの質感と冷たさを取り戻す。
柴穂は突き刺さるような痛みに唇を噛んだ。
まるで針のような冷たさだ。氷に包まれた指先は殆ど動きを取り戻していない。
サイコメトリー超度7の感覚は引金を引いた銃弾が何処に飛ぶか正確に把握できるが、
この指先では本当に引金を引けるかも怪しいものだった。
しかしリリスの傷も相当な深手だ。恐らく敵を増やしたくは無い筈だ。
柴穂はリリスに交渉を持ちかけようと口を開き。
「あなたは昼間山頂で会った子だよね」
先にリリスが口を開いた。
リリスから、エヴァへ。
「それがどうした? 貴様から聞き出したい事は有るが、貴様に何か教えてやる義理は無い」
エヴァは断固たる言葉を叩き返す。
交渉の余地は無い。裏を返せば交渉を必要としていない。

ヴィータがまだ動けることは判っていた。だが剣に駆け寄るならば正面から粉砕できる。
そうしないならば再び上空に舞い上がるだけで彼女の拳は届かない。
柴穂が何か企んでいることは判っていた。だがそれが取るに足らない事も知っていた。
消耗の度合いで勝っている上に、本来の地力も経験もエヴァが上だ。
リリスは二度に渡り敗北した強敵だった。だがその傷を見て今度は勝てると判断した。
負傷の経緯は判らないが、その傷は深かった。

一対三ともなればかなり危険な賭けにはなるが、十分な勝機を見込んでいた。
この戦場はエヴァの手の内に有ったのだ。
だから悠然たる支配と悪徳を滲ませて言葉を交わす者達の畏怖を煽る。
……違和感を感じた。
(待て。何故『山頂で会った子』なのだ?)

リリスとは二度遭遇している。
一度目は山頂で遭遇し、不意打ちを受けて敗退した。
ニケとインデックスが撃退しなければそのまま殺されていただろう。
二度目は南西の市街地で遭遇し、一度勝利したにも関わらず油断して逆転された。
非常に気に食わないがどうやらあの奇怪な魔族の……肉まん? に助けられたようだ。
リリスがエヴァを呼ぶならば二度会った子、あるいはさっき襲ってきた子と呼ぶはずだ。
そもそもリリスはエヴァの名前を知っているはずなのに、何故改めて確認してきた?

内心で困惑するエヴァに、リリスは一刺しの言葉を放った。
「じゃあ、あのディなんとかっていう……ううん。
 確かインデックスって呼ばれてたっけ、水でできた服を着た子は仲間だよね」
ぴくりと眉をしかめた。敵を前にしたエヴァにとってあまりにも大きな反応だ。
インデックス。工場に居るエヴァにとって希望の一人。
「かつては仲間だったさ。かつてはな。今は何時か戦わねばならん敵にすぎん」
彼女達はエヴァにとっての敵。いや、エヴァが彼女達の敵となるのだ。
インデックス。リンク。アリサ、それから高町なのはも。
彼女達は悪の中ボスたるエヴァを倒してくれるはずの、最後の希望だった。
「そっか、残念。あの子達を殺した事は使えるかなって思ったのに」

数瞬の虚が有った。

「……なんだと?」
「…………っ!!」
エヴァが。そしてヴィータまでも僅かに動揺していた。
リリスは繰り返した。
「だからね、工場に居るあの子達を殺したの」
その手の上に乗ったメタモンの姿が次々と変わる。
高町なのは。
リンク。
アリサ・バニングス。
インデックス。
リリスの魔力光が照らし出す中、四つの顔を正確に作り出す。
リリスは工場に彼女達が居た事実を知っている。
「それでも反撃してきたから自信がなくて逃げちゃったんだけど、
 人間って確か――心臓を貫いたり体を両断したりすれば死ぬんだよね?」
リリスはそれに一言を付け加えて、言葉の意味を変えた。
危険な自滅の綱渡りを、場を支配する力に変えた。
「もしかしたら狙いが逸れてたのかな? すっごく慌てちゃったもの。
 でもあれだけの傷を負わせれば人間ってその内に死ぬと思うな。
 高町なのはは間違いなく殺せたし、他の三人もきっと。
 急げば他の誰かは助けられるかもしれないけど、でも、エヴァには関係無い話なんだよね?」

エヴァは軋む音が響くほどに、歯を噛み締めた。
そして身を翻して。
去った。
あまりにも呆気なく。

リリスは少し遠い目でその事実を反芻する。
腕輪のように携えた二つの首輪を抱きしめて、その冷たさを味わう。
「うん、もしかしてとは思ったけどやっぱりだ。エヴァにとって、あの子達は大切な人だったんだ」
リリスはヴィータと柴穂を振り返った。
ヴィータはエヴァが去ったその隙にフランベルジュを回収していた。
柴穂が再度回復晶術を使う余裕までは無く、彼女はただリリスに距離を取り武器を構えていた。
「それじゃ、あなた達はどうしようか?」

     * * *

柴穂はこの状況を分析していた。
まずエヴァは悪だのなんだの言いながらも、正義側の仲間を見捨てたわけでは無いらしい。
堕ちたふりをして取り入ってきただけなのか、それとも彼女独自の行動法則を持っているのか。
どちらにせよエヴァは間違いなく柴穂達“六人の魔女”の敵だった。

次に現在の状況を確認する。
柴穂とヴィータを追い詰めたエヴァは逃走した。
代わりに現れたのはリリスだ。危険度としては大して変わらない。
リリスも空を舞う事が出来る。上空から攻撃されるとこのチームに反撃の手段は少ないのだ。
その戦闘力も侮れない。ジェダの配下の力がどれほどかなど考えるだに怖ろしい。
深手を負っているのは大きな有利だったが、しかし。
(この子……なんだか、賢くなってない?)
神社でサイコメトリーをして視たリリスとは、何かが違う。

彼女は工場に居る四人を一掃したと言った。
柴穂にその全てが真実かは確信できなかったが、少なくとも戦ったのは本当だろう。
工場にリリスの示した四人が居た事は、恐らく事実なのだ
大きく焼き拓かれた森から北へと消えた高町なのは。
廃病院の近くを通り過ぎて行ったインデックスとリンク。
転移で何処かに消えたアリサだけは見当も付かなかったが、
彼女達が居るであろう一番可能性の高い場所は、森の西端に有る工場だ。
今から考えれば、エヴァが西へのルートを真っ先に取得したのも彼女達を護るためかもしれない。
リリスはその四人を殺したのだという。

問題はそれが真実なのか虚偽なのかではない。
確かに真実だとすればリリスの戦闘力が極めて高い証拠となる。
しかし虚偽だとすれば、いや真実であっても、リリスがこの場でその事を話した理由は明確だ。
リリスはエヴァが彼女達の仲間であると推測し、会話の中で揺さぶりを掛けた。
それはリリスがこの場でエヴァと戦うのは不利だと判断し、
過去の出会いからエヴァに仲間が居た事を思い出し、
更にその仲間を『急げば助けられるかもしれない』と言う事で助けに向わせる、巧みな話術だ。
もしかすると全てが意図的ではなく偶然も混じっていたのかもしれないが、
それでも間違いなく、リリスは賢く狡猾になっていた。
(でも、こいつが賢くなったのは悪いことばかりじゃないわ。
 丸め込むのは難しくなったけど、私達がメリットを与えられるなら話が通じる。
 それに……彼女は素敵な情報を持ってきてくれた)
柴穂の口元がいつの間にか、笑みの形に歪んでいた。
一枚の手札が変化した事を知って、思わず笑みを零していた。

とはいえそれは柴穂が生き残る手段に繋がらないカードだ。
そのカードがどれだけの力を持っていようと、用途が違う。
そのカードはリリスに抗する手段となりえない。
柴穂が最後まで生き残る助けとなるかも判らない。
何故ならそのカードは敵を倒すカードではなくて。

共闘している一人の少女、ヴィータの心を壊すカードなのだから。

(リリスは言った。高町なのはは間違いなく殺したと)
その情報は柴穂の持つ一枚のカードを、強力で無意味なカードへと変えた。
高町なのはは死んだ。殺された。
ヴィータにとって最も大切な人である八神はやてを殺した高町なのはが。
親友でありながら八神はやてを殺してしまった、ヴィータにとっても大切な友人であった高町なのはが。
もう、死んだ。
(もしも高町なのはが八神はやてを殺した犯人だと教えれば、あなたはどうなるのかしらね?
 今はまだ疑いで止まり蟠っている惑いが真実だと知ればあなたはどうなるのかしら、ヴィータ)
既に彼女の目的は、仇討ちから最後まで生き残って八神はやてを生き返らせる事に変わっている。
理屈で考えれば、はやての仇の死など今のヴィータにはどうでもいい事だ。
だが、柴穂は知っている。
いまやこの島に生き残っている誰よりもヴィータの心の深淵を覗いている。
肌を寄せ合い歩いた中で、超度7のサイコメトリーは望む望まずお構いなくヴィータの心を読み取っている。

確かに高町なのはが八神はやてを殺した事を知ってもヴィータは壊れなどしなかっただろう。
怒りのぶつけ方に戸惑うかもしれないが、その程度だ。
敵としてはもちろん、友人としても高町なのはは怒りをぶつけるに足る存在だった。
むしろ高町なのはとの出会いで正しい道に戻ろうとする可能性すら有った。
彼女の死がその前提を変える。
(あなたの感情に行く先は無いわ)

友人にして最大の仇の死。
既に終わっている出来事。
沸きあがる激情は全てを内に溜め込むか、発散する他に無い。
だがヴィータの心を支える絆は何もない。その全てに背を向けた。
空っぽの心ではその感情を受け止める事も、正しい方向に向ける事も出来はしない。
ならば残った選択肢は二つだろう。
心を凍らせ体を動かすか、心を燃やし世界の全てを焼き尽くすか。
(もしも心を凍らせるなら、その全てを理解した私の掌に納まるわ。
 ええ、せいぜい上手く使ってあげるわ。
 あなたを上手く立ち回らせて、ひどい絶望を振り撒いてあげる。
 ふふ、だけど心を燃やした八つ当たりで私が殺されちゃう可能性も有るわね。
 痛そうね。苦しそうね。ああ、まっぴらだわ)
だからこのカードは役に立たない。
傷ついたヴィータの心を壊しうるこのカードは、何の実利も確約しない。
柴穂の命すら危うくする強力で無意味なカードだ。
なのに柴穂は思う。
(けど、それも良いか)
口元を笑みの形に歪めて。
ヴィータに与えうる衝撃を想い、壊れた至福に満たされる。
618創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 23:38:36 ID:Tp30309G
(そこに絶望が残るなら。
 私が味わったのと同じ、大切なものを失う痛みをみんなと共有できるのなら、ね。
 私の目で見れないのは悔しいけど、世界はきっと痛みに包まれるわ。
 どうせ私が得られる物なんて無い世界よ。
 私が薫ちゃんと葵ちゃんと一緒に帰る術はどこにも無い。
 あの温かい場所で、心が通じ合う綺麗な三角形を取り戻せる事はもう無いわ。
 だってジェダの見せた復活はこの世界で勝ち残る事が条件で、
 その為にはまだ残っているかもしれない葵ちゃんも死ななくちゃいけなくて、
 その後で死んだ二人を前にして、私は片一方だけを選ばされる。
 そんな事、できるわけ無いじゃない。
 私は薫ちゃんも葵ちゃんも大好きで、帰るなら三人一緒しか考えられないんだもの。
 だからね、みんなで帰れないなら。
 みんなで幸せになれないなら。
 みんな仲良くみんな一緒に。

 ――絶望しましょ♪)

リリスが柴穂たちに問いかけてきた。あなた達はどうしようかと。
その問いに柴穂は考える。
ヴィータにその事を今伝えるか、それともこの状況を別の手段で切り抜けるか。
それだけならば普通の人間と変わらない。目的が生きるためならば。
しかしその心は最早自らの生存さえも望んでいない。
望むことはただ一つ。

この島のみんなにも、自分と同じ絶望を。
620創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 23:39:05 ID:e+FJ5lxQ
 
【D-2/森(塔近く)/2日目/黎明】
【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[状態]:精神汚染。左手首凍結、全身軽度の凍傷、低体温、疲労大
[装備]:邪剣ファフニール@TOS、ワルサーPPK(銀の銃弾5/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD
    ショックガン@ドラえもん
[道具]:支給品一式×3(水1.5人分パン二人分弱−一食)、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、
     きんのたま@ポケットモンスター、包帯、双葉の肉片セット、神楽とミミの眼球
[服装]:病人着、びしょ濡れ
[思考]:どうしようかしらね?
第一行動方針:この状況への対応を考える。
第二行動方針:ヴィータの心を弄びたい。
第三行動方針:参加者の復讐心や不和を煽る。邪魔者は消す。
第四行動方針:能力を見抜いたエヴァに警戒と敵意。機会があればエヴァを消す。
第五行動方針:機会があればまたグレーテルと会いたい。2人きりで楽しく殺し合いたい。
基本行動方針:扇動、ステルス、実力行使、あらゆる手段を用いて殺し合いを加速させて楽しむ。
[備考]:紫穂は朝の放送ではやて殺害犯のことをヴィータに教える約束をしています。
     北東の街にグラーフアイゼンがあるらしいことを、まだヴィータには伝えていません。
     長い接触によりヴィータの殆ど全てをサイコメトリーで読み取りました。

【ヴィータ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:両腕に僅かに痺れが残る、左足に火傷跡、左手爪全剥、全身軽度の凍傷、低体温、疲労大
[装備]:祈りの指輪@DQ、フランヴェルジュ@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品(食料・水二人分−1食)
    ぬのハンカチ×20、マシカルアンバーミサイル×6@メルティブラッド 、
    救急箱、はやて特製チキンカレー入りタッパー、ボロボロの傘
[服装]:普段着(ドクロのTシャツ、縞模様のニーソックス等)
[思考]:くそ、どうするこの状況……!!
第一行動方針:この状況を生き残る。
第二行動方針:はやてを殺した犯人を見つけ出し、殺す。
第三行動方針:エヴァはいずれ自分の手で殺す。
基本行動方針:はやての仇を討つ。その後、優勝してはやてを復活させる。
[備考]:「ヒント」からはやてを殺したのがなのはかもしれないとは思っていますが、
   少なくとも決め付けるのはまだ早いと思っています。
   エヴァとの会話で、紫穂のサイコメトリー能力に勘付きました(詳細までは知りません)。

【リリス@ヴァンパイアセイヴァー】
[状態]:右足と左腕にレーザー痕。顔に酷い腫れ。全身打撲。(以上全て応急手当済み)
     疲労(小)。全身に軽度の火傷。額に浅い切り傷。背中に打撲。
     左肩にわずかな痛み、右肩から左胴にかけて深い傷、『考え』る事に目覚めた。
[装備]:首輪×2(グリーンとニアのもの。腕輪のように両腕に通している)
[道具]:基本支給品×2(ランドセルはニアのもののみ)、眠り火×6@落第忍者乱太郎、魔女の媚薬@H×H、
    メタちゃん(メタモン)@ポケットモンスターSPECIAL、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
    きせかえカメラ@ドラえもん
[思考]:どうしようかな。
第一行動方針:この状況をどうするか考える。戦う? 交渉する? 逃げて回復?
基本行動方針:優勝して、グリーンの魂ともう一度語り合う。もう「遊び」に夢中になったりはしない。
[備考]:荷物の中の『魔女の媚薬@H×H』には説明書がついていません。

※:D-1からD-2塔近くに掛けて無数の氷結魔法の跡が有ります。ただし雨ですぐに溶けます。

622創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 23:42:28 ID:Tp30309G
 
623創る名無しに見る名無し:2008/12/27(土) 23:51:07 ID:oJ5+6Olq
インデックスは思う。どうすればいいのだろうか。
目の前の迷える子羊に、シスターとしてどんな言葉を掛けてやればいいのだろうか。
強く、なりたい。
リンクはそう言って打ちひしがれていた。
自分の弱さが。
知恵と、力と、勇気に欠けた自分が。
目の前で高町なのはを失った自分が、赦せなくて。

彼のせいじゃないと言う事は容易かった。
なのはを殺したのはリリスだ。
彼女はこの会場でただ一人、自らの意思でこの殺し合いに参加している。
なのはの死も彼女の意思に他ならない。全ての原因はリリスに有る。
そしてリンクは、決して全能者などではない。
神ならざる身に全てを救う事など出来るはずも無い。
だから彼を責める権利なんて何処の誰にも有りはしないのだ。

だけど全てを彼のせいだと言う事も容易かった。
如何なる叱責もリンクは甘んじて受け容れるだろう。
自らの力不足が招いた事だと言って全て背負おうとするのだろう。
そこにある生も死も全て、自らの罪として。
……例えば、高町なのはの様に。

(どっちもまっぴらなんだよ)
彼を赦せば、今の彼は立ち止まり歩き出せなくなるかもしれなかった。
彼を赦さなければ、今の彼は全てを背負って無理な方向に進むかもしれなかった。
だからインデックスは、敢えてより厳しい答えを突きつけた。
「しっかりするんだよ。今、リンクは屈しちゃいけないんだから」
「インデックス……?」

その罪を赦すのでもなく、責めるのでもなく。
背負わせるのでも降ろすのでもなく。

「泣いた方が良いし悲しむのも良い事だよ。でも、今の私達は護らなきゃいけないんだよ」
誰を、という問い返しはなかった。
なのははもう死んでいる。
私達というならばインデックスもリンクも護られる側ではない。
リンクは背後を振り返った。
そこに在ったのは、眠り火によって眠らされている高町なのはの親友。
「アリサを」

別の罪を背負わせる事で方向を変えた。

リンクは口を噤んだ。
目を見開き、しっかりと閉じて、硬く瞑り……ゆっくりとまた開いた。
アリサ・バニングスの姿をもう一度、瞳に映した。
噛み締めた唇から血が滲んだ。握る指先が掌に食い込んだ。
その顔には慟哭さえも無く、自責と後悔と、責任に満ちていた。
そして、懺悔した。
「…………ごめん。僕は自分の事しか見ていなかった」
己にしか向き合わなかった事に対して。

リンクはなのはを喪った事を嘆き、そんな事を招いてしまった自らの無力を責めた。
だけどそれは、結局のところ自分への感情でしか無い。
リンクがなのはを喪った事の悲しみや悔しさを発散していたに過ぎない。
今ここにリンクの苦しみを受け止めてくれる人は居ない。いや。
リンクが抱いている苦しみを預けて良い人が居ない。
「ううん。リンクがなのはの為に泣くなら、その涙は間違いなく尊いんだよ。
 故人の為に泣く涙はその人への想いを表す方法の一つだもん。
 でも今は……アリサを護って」
リンクと高町なのはとの縁は浅い。それでもその死を悼めるのは尊い事だ。
だけどリンクはその事で弱音を吐いてはいけない。
そんなにも短い仲間の死でさえ、それほどまでに悲しいならば。

この島に来てからずっと長く仲間だったインデックスや、
何より大切な親友だったアリサは、もっともっと悲しいに決まっているのだから。

「うん。……本当にごめん」
リンクは固く強く拳を握り締めていた。
拳の内には溢れんばかりの自分への憤りが充満していた。
(そうだ、それにこの悲しみはなのはが死んだ事を悲しんでいるんじゃない。
 梨花ちゃんが死んだ時は悲しかった。だけどこの悲しみは違う。
 この悲しみはなのはが死んだ事を悲しんでいるんじゃない。
 自分の無力を嘆いているだけだ。自分勝手に自分を責めているだけだ。
 この悲しみはなのはに向いてない……!)
それは自責だ。
悲しみの質を問う事に意味は無い。
固く拳を握りながらも、その手でなのはの亡骸を傷つけないよう腕だけで抱いている様に。
リンクの心に優しさは必ず有る。
ただ、他人の心を思いやる余裕を失ってしまっていただけで。

「ん……なに…………?」
『……お二方、アリサちゃんもお目覚めのようです』
アリサが寝ぼけ眼を擦り、カレイドルビーの声がした
慌ててリンクとインデックスがアリサに駆け寄った。
「二人ともどうしたの、そんなに慌てて。……そ、そうだリリスは!?
 戦いはどう……なって…………」
声が、萎む。
アリサの視線が釘付けになる。リンクの腕の中でぐったりと動かない……なのはに。
リンクはそっとなのはの亡骸を床に横たえた。
沈痛な表情で、首を振った。
「――――――」
思考が空白に塗り潰される。
致命的な喪失。一つの死が、有る。
ただそれだけの単純な現実。
その死を前にアリサは微かな声を絞り出す。
「どういう…………」
「……なのはは、君を助けたんだ。僕はなにもできなかった。
 なのはだってあの状況で間に合うようにも、出来るようにも思えなかった。
 だけどなのははそれをやり遂げて……リリスも撃退できた」
「………………」
アリサの瞳に去来する感情は、混沌としていた。
悲しみ。嘆き。悔しさ。怒り。
虚無と絶望。憤怒と悔恨。
共通する負のベクトル。
その全ての感情は自らとなのはへと向けられていた。
アリサはその為に進んできたのだから。
高町なのはの暴走を止め、なのはと共に、前に向かい生きていく為に全力を尽くしてきた。
喪われたはやて達に目を背けず、謝り、泣いて、それでも前に進む為に。
そしてそれは達成され、少しずつだけれど前に進み始めた。
そう思った矢先に、今度こそ完全に、完膚なきまでに喪われてしまった。
626創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:01:00 ID:7aMJOqub
  
627創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:01:04 ID:jXGur9Rf
  
628創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:01:20 ID:7aMJOqub
   
629創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:02:24 ID:YJoB2maf
リンクはどう声をかければ良いか考え、言葉を噤んだ。
きっとアリサは安易な同情も安っぽい憐憫も望まないだろう。
悲しみを悲しみとして受け止める事こそを望むだろうと、そう思った。
インデックスも同じ気持ちだったし、アリサも実際そうしたかもしれなかった。
時間さえ与えられたならば。
「ぁ……」
大切な親友の死を悲しみ、悼み、弔う時間さえ与えられたならば。
この殺し合いにその程度の優しさが残されていたならば。
「あぶない!!」
アリサの悲鳴が響いた。

彼女達は丁字路に居た。
直進すれば出口へと進む道。
先ほどの戦いでリリスはそこを左に曲がり、すぐの壁を破壊して眠り火の罠を張った。
そこで高町なのはが死に、反撃によりリリスは撃退された。
アリサは丁字路に倒れていた。
直進すれば出口へと続く長い通路に居た。

通路の先で何かが光る。
アリサは自分の前に居るリンクを押しのけようとした。
しかしリンクは気づいた。避ければその攻撃はアリサに当るのだろうと。
(ダメだ!)
リンクは両腕を広げて仁王立ちになった。今度こそアリサを護る為に。
次の瞬間、その左肩を黄金の矢が貫いていた。

     * * *

「くっ……どう、して……!!」
リンクは振り返り、背後の通路へと視線を伸ばす。
その通路の先、工場の入り口に立つその姿を見間違うはずも無い。
その手の弓が変形し、蝙蝠状の翼に形を戻した。
「うん。連射には向かないけど、遠くから撃つ時はソウルフラッシュよりこの方が良いみたい。
 でも媒体も要るし、ちょっと面倒かな」
独り言ちながら、ゆっくりと歩いてくる。
リンクは左肩に刺さっているそれが細い鉄パイプである事に気づいた。
少し力が有れば工場の何処からでも手に入る、何の変哲も無い鉄くずだ。
鉄パイプが貫通した左腕は動かず、苦痛だけを与えてくる。引き抜く余裕も無い。
リンクは右手でコキリの剣を構えた。
「どうして!? 撃退したはずなんだよ……リリス!!」
苦悶するリンクに代わり、インデックスが問いを投げつけた。
再来した悪魔に疑問を呈した。

リリスはその問いに即答はせず、別の答えを返した。
「その子を庇うのも、予想通りだった」
「な……!!」
例え奇襲に気づかれたとしても、リンクは必ずアリサを庇うだろう。
リリスはそこまで思考を辿り着かせていた。
そして答える。
「かんたんな事だったんだ。他の人にだって大切な人は居るんだ。
 なのは達がフェイトって子を大切に思ってたみたいに。
 だからね、わたし気づいたんだ」
痛手を負って逃げ帰ったにも関わらず、再び襲撃してきた理由を。
その答えと共にリリスは翼を広げて襲来する。

「わたしが痛かったり苦しいのと同じように、みんなみんな痛くて苦しんでるって事に!」

リリスは人を思いやる事を覚えていた。
631創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:03:12 ID:f+GkyYa8
 
632創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:03:51 ID:YJoB2maf

633 ◆CFbj666Xrw :2008/12/28(日) 00:04:11 ID:aCwHuriq
代理投下ありがとうございます。
日が替わって規制が解けたようですので、また規制受けない間はこちらで再開します。
634創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:04:22 ID:oJ5+6Olq
 
635創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:05:06 ID:0UfFFJQx
 
     * * *

リリスが一度目の襲撃時にフェイトの顔を使ったのはただの偶然だった。
メタモンが見本無しで変身出来るのは簡単な物だけだ。
例えば眠り火で罠を仕掛けた時に使った、口と鼻を完全に塞いでしまうマスクとか。
だから誰かに化けるには顔の見本が必要で、フェイトの死体がたまたまそこに有った。
その時点では、リリスの戦術は単なる偶然の上に成立していた。

だがそれになのは達があっさり罠にかかった事は重要だった。
なのは達にとってフェイトは大切な人だったのだろう。
その瞬間からリリスは徐々に気づき始めた。

そして一度撃退され、ご褒美で傷を治そうか考えている時に気づいた。
リンクに斬られた傷は確かに痛い。
だけどその痛みは、グリーンが死んだ時の苦しみに比べればなんでもない物だった。
みんなあの苦しみに苛まれ、あの苦しみに耐えていたのだ。
続けて思う。
受けた被害と相手に与えた被害を比べてみればどうだろうか。
確かにリリスの傷は浅くなかった。
だがなのはを殺し、アリサを一時的に眠らせた。
単純計算では半数に減っている上に、なのはの死は仲間達の心を深く傷つけるはずだ。
今から急いで再襲撃すれば、その隙を突けるのではないだろうか?
リリスがグリーンの死に傷ついた時のように、彼女達は今、傷ついているのではないだろうか?

人の心の隙を突けるのは人の心を知っている者だけだ。
リリスは人の心を理解し始めていた。
今、思いやりが凶器となってリンク達に牙を剥く。

     * * *

リリスの斬撃をリンクは辛うじて受け止めた。
リンクの利き腕は左手だ。右手だけでは上手く力が入らない。
だから飛び込むように勢いを付ける事でリリスの攻撃をはじいた。
「二人とも逃げて!!」
そのままリリスに組み付く。決して背後の二人を襲わせはすまい。
それは知恵と勇気だったのだろうか。
残酷なことに、違った。
「逃がさないよ」
それら全てはリリスの中に有る。
戦術を考え新たな事実に気づく知恵も。
勝機が有るなら傷を押して向う勇気も。
当然のように全てを蹂躙していく力も。
「みんな一緒に送ってあげる!」
翼が二振りの斧に変わる。そしてその斧は鋏のように交差して。
リンクの腹部を両断していた。
勇気になれなかった蛮勇は悲劇を残して砕け散った。

「リンク!!」
インデックスの叫び。
殺された親友。殺されていく仲間。殺していく敵。
仲間の悲鳴。飛び散る鮮血。悪魔の微笑み。迫り来る死。
アリサはそこに地獄を見た。
637創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:06:42 ID:0UfFFJQx
 
「ふざ……けんなあっ!」
もう、泣くのはイヤだった。
血と涙の中で何もかも失っていくのはイヤだった。
だから全ての感情は怒りに集約された。
『ダメですアリサさん!』
ルビーの制止を振り切って跳ね起きて突撃しようとしたアリサを前に、リリスはリンクを放った。
一瞬アリサの動きが止まる。だがリリスはリンクが床に落ちる間さえ与えなかった。
「ソウルフラッシュ!」
より確実な死に向けて、長く細い真っ赤な臓物の溢れ出たリンクの断面に魔力弾が叩きこまれた。
小さな閃光と熱と爆発。
飛び散った肉片がアリサの顔にまで飛沫をかけた。
赤い、温かい、肉の焦げた臭いがする、生臭い湯気をあげるリンクだった一欠けら。
アリサの思考に一瞬の空隙が生まれた。
「It's show time!」
リリスは続けて何処からともなく取り出したシルクハットを投擲した。
それは真っ直ぐにアリサの頭へと。
「危ない!!」
アリサを押し倒したインデックスの頭へと被さった。
リリスの小さな舌打ちが聞こえた。

     * * *

シルクハットが被さった瞬間、インデックスの全身は自由を失っていた。
いつの間にかインデックスは小さな舞台に立っている。
まるでダンスショーでも始めるような煌びやかなお立ち台だ。
周囲はカーテンに包まれている。隙間からは何故かバニーガール姿のリリスが見えた。
奇妙で可笑しな、まるで状況にそぐわない不思議な状況。
だがインデックスは瞬時に理解した。
(魔術の儀式に組み込まれた!?)
十万三千冊の魔道書が類似する魔術を分野単位で弾き出す。
魔術の行使には多くの場合、呪文の詠唱や定められた身振り手振りといった物を必要とする。
大掛かりな魔術であればそれは複雑な儀式の様相を為す。
魔術師としても外道だが、その儀式を魔術で支配した自分以外の他者に手伝わせる魔術師も存在する。
「Ready GO!」
リリスの声と共にカーテンが開け放たれる。
インデックスの手が、足が意に反して動き出す。
ダンスを踊るように軽やかに、主の意思を跳ね除けて。
(でもこれは、相手に魔術を行わせる事が目的の魔術だよ!)
そういった魔術もやはり無いわけでは無い。
魔術の術式に踊りが含まれる事も。例えば呪術の行使には歌と共に踊りが重要視される。
インデックスは推測する。
この魔術は、相手の動きを強引に術式へと組み込むことで魔術を発動する術式だ。
(それじゃ、この後に有るのは……)
足がステップを踏み、手が華麗にポーズを決める。リリスが望むままに。
救いなのはこれが相手の体を自由に操る魔術では無い事だ。
相手の体を操り強引に自殺させる魔術というのは案外難しい。
例えば催眠術を例に取ればいい。催眠術にナイフで自分を刺させる力は無い。
被術者の生存本能を打ち破る事は出来ないのだ。
だが、例えば。
空を飛べるという暗示を掛けて、ビルの屋上から歩かせれば?
(自分自身への攻撃魔術の行使!!)
恐らくこれはシルクハットを被せた相手をダンサー、それを見る者を観客、
そして自身を司会役に当てはめた役割を強制する魔術だろう。
自らもバニーガールの姿を取るのは、その術式を制御する為に他ならない。
これを見ているアリサも恐らくは観客としてこのダンスショーを見守るほかに無い。
639創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:07:33 ID:0UfFFJQx
 
640創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:07:34 ID:FGKhP9RW
 
理屈ではそれが死に続くと判っていても、そこに生理的な恐怖感は存在しない。
だから術式を打ち破れない。
そしてインデックスは気づく。
インデックスは一度、この類似魔術を目にしている事に。
(もしかしてこの魔術、相手の体を操る所は違うけど……ジェダも同じ!?)
最初の会場でジェダが小さな魔女の攻撃を受けた時、
ジェダは巨大な血の手で魔女を掴み、何度も床に叩きつけてから壁へと叩き付けた。
壁にはまるで魚拓のように、魔女の姿が血で捺されていた。
あれは血判ではないのか。
契約書への捺印において、自らの血と指紋で捺したそれはこれ以上無い本人確認となる。
悪魔との契約において血でサインを行う事例も枚挙に暇が無い。
あれは本来、そういった強制的な魔術儀式の一部分ではないのか。
(それじゃ……あの考察は…………)
インデックスとカレイドルビーの考察。
ジェダは参加者達の魔力も使う事で、この世界という大規模魔術を維持しているのではないか。
その考察と状況が繋がって……。

思索に与えられた時間はほんの数秒だった。
インデックスは何も出来なかった。
この魔術を打ち破る術式は幾らでも思いついた。だがそれを実現する手段が無かった。
既にこの魔術に囚われているインデックスには、術式の終了まで一切の自由が存在しない。
ダンスは終り、操られたインデックスの体は一礼をする。
リリスの手の中でプラカードがくるくると回転して踊りの結果を絵に示す。
落雷の印を。
氷結の印を。
業火の印を。

壮絶な電流が全身の血液を沸騰させ。
真冬の南極よりも過酷な冷気が全身を凍結させ。
大木すら一瞬で消し炭になるほどの業火が全身を包みこんで。

インデックスの意識は一瞬の内に消し飛んでいた。

     * * *

彼は灼熱の中に在った。

足の指先から少しずつ小さな刃物で体を削り取っていく痛み。
その痛みに焼けた鉄を押し付け血が止まるまで続けられるような熱さ。
そんな痛みと熱さを全身が無くなるまで繰り返して。
それを一片に纏めたものがずっと続くような。
神経が認識しきれない、痛みを振り切れてただただ白い熱さと化した。
真っ白い灼熱が彼の全てを塗り潰していた。

(――――!!)

思考などままなる筈も無い。
何かを意識する事など出来るはずも無い。
周囲の状況を知覚し把握する事なんて持っての他だ。
そもそも彼は、胴体を半ばから断ち斬られ焼かれているのだから。

即死しなかったのは断面が心臓など即死に繋がる場所より下までしか引き裂いていなくて、
加えて皮肉にも、その断面が爆発の熱で焼き潰されていたからだ。
こんな話が有る。
ギロチンで落とされた首が何処まで生きていられるか調査した化学者が居た。
後に彼がギロチンで首を落とされた時、彼は首だけで二十回の瞬きをしたという。
とはいえこれは、伝説ともただの生理反応とも言われている。
642創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:08:26 ID:0UfFFJQx
 

(――――!!)

有りえる筈が無い。
胴体を両断された人間が動き続ける事など。
例え断面が焼き潰され、心臓が出鱈目にでも血を送り続け、脳が機能し続けていても、
意識を保てるはずも、意識を保っていても思考を継続できるはずも、
思考を継続できても周囲の状況を知覚し把握する事も常人の精神力では不可能だ。

(――――!!)

彼の全ても果たして灼熱に塗り潰されている。
意識も、思考も、知覚も、全てが真っ白い灼熱で埋め尽くされている。
例え彼が勇者であるとしても、そんな事は出来るはずが無い。

(ァ――――!!)

出来るはずが、無い。

(――リ――サ――!!)

出来るはずが。

(――――まもる!!)

彼の腕はリリスを掴んでいた。

     * * *

「ウソ、どうして!?」
リリスが動揺する。
上半身だけのリンクがリリスにしがみ付いていた。
万力の様な腕力でリリスの体を締め上げている。
ありえない。人間にそんな事が出来るはずが無い。
そんな事が出来るのは人間でないダークストーカーか、人でありながらそうなった者だけだ。
(こいつ、人間じゃない!?)
確かに容姿は少しおかしい。その耳は長く尖っている。
それでも人かそれに近しい種族だと思っていた。
「こ、このぉ!」
腕で、刃に変えた翼で、リンクの体を無茶苦茶に切り裂いた。
血飛沫が飛び散った。肉片が撒き散らされた。
どれもこれもが死に至る傷のはずだった。
それでもリンクは、離さない。
その指がリリスの胴体にかかった。
「あぐっ!? い、痛い!」
前の戦いでリンクが付けた傷跡にリンクの指先が食い込んだ。
指が滑りなぞり引き裂いて、傷を開いた。
腕が空を切り、リンクの体が床へと転がる。
その時リリスは、確かに聞いた。

「…………祟り殺してやる」

リリスはびくりと震えて声の元に目をやり。
そこに在るはずの無い姿を見た。

リリスは今度こそ勝機を失ったと判断した。
相手の戦力は未知数で、底無しで、殺した筈の者達さえも本当に殺せたか判らない。
だから今度こそ、リリスは逃げた。
身を翻し、全力で飛んでその場から逃げ出していた。
644創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:08:43 ID:XCwJRD7/
 
645創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:09:08 ID:0UfFFJQx
 

     * * *

リンクの全ては灼熱に塗り潰されている。
意識は痛みと熱さが交じり合って生まれた灼熱の僅かな隙間に存在する。
思考も知覚も一瞬毎に焼き尽くされている。

(――アリ――サ――――!!)

床に腕をつく。灼熱。床に腕をついている事を認識する。灼熱。灼熱。
床に腕をついている事を認識する。周囲を見ようと考える。灼熱。
周囲を見ようと考える。首を動かそうとする。灼熱。
床に転がっているのを認識する。光景が視界に映りこむ。灼熱。
床に転がっているのを認識する。灼熱。床に転が。灼熱。
灼熱。床に転がっているのを認識する。光景が視界に映りこむ。
移った光景を認識する。灼熱。灼熱。
光景を理解しようとする。灼熱。灼熱。灼熱。灼熱。
目に映った光景を、理解した。

(――――!!)

アリサが倒れていた。
その左手にはカレイドステッキが握られ、すぐ側には贄殿遮那が転がっていた。

心臓の場所には大きな風穴が空いていた。

そこはさっき、リリスが目を向け何かに驚いたはずの方向だった。
だが、現実はリンクが見た光景の通り。
ついさっきまで眠り火で眠っていた体を機敏に動かせるはずは無い。
万全の状態であってもアリサがリリスを食い止められる時間は長くない。
リンクが腕を伸ばしてリリスにしがみ付くのは、あと数秒だけ遅かった。

アリサ・バニングスは殺されていた。

そしてリンクは気づく。自らの転げ落ちたその場所に。
リンクはインデックスの上に倒れていた。
リンクの耳はインデックスの胸の上に有った。
なのに、何も聞こえなかった。
インデックスの心臓は止まっていた。

インデックスも殺されていた。

リンクも、あと少しで息絶える。

「ァ――――」

掠れたような響きの後で。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ」

リンクの、人生最期の叫びが木霊した。
647創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:09:50 ID:f+GkyYa8
648創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:09:59 ID:0UfFFJQx
 
649創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:10:03 ID:f+GkyYa8


――――だんっ。


音が、響いた。
拳が、振り下ろされていた。

――――だんっ。

それはリンクの拳が振り下ろされる音だった。
死に逝く拳が、力無き拳が振り下ろされていた。

――――だんっ。

その音には無念と絶望が詰まっていた。
その音には哀惜と憤怒が篭っていた。

――たんっ。

だけどその音は見る見るうちに小さくか細くなっていく。
拳が力を失い、死へと転がり落ちていく。

――たんっ。

彼の瞳から光が消えた。

とん。

それでももう一度。

とん。

もう一度だけ。


……とんっ。



そして、音は途絶えた。


 
651創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:10:30 ID:XCwJRD7/
 
652創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:10:40 ID:YJoB2maf
653創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:10:52 ID:0UfFFJQx
 
「インデックス!」
叫び声と共に一つの人影が飛び込んできた。
雨の中を飛来したその人影は転がるように着地して工場に走りこむ。
「リンク!」
長い通路を走る。その先に幾つかの人型が見えた。
飛ぶように、転がるように走って。
「高町なのは! アリサ・バニングス!!」
辿り着き、見回して。
その全ての顔を確認して。
「誰か……生きていないのか……!!」
そこで起きた惨劇を知った。

高町なのはは腹部を貫かれて死んでいた。
アリサ・バニングスはその横で心臓を貫かれて死んでいた。
リンクはあまりにも無残な姿で死んでいた。
そしてその隣には物言わぬインデックスの姿が。

(……いや、待て)
リンクの右腕はインデックスの胸の上に乗っていた。
固く握られた拳が、インデックスの胸に載せられていた。
明らかな意思を感じさせる形のままに強張って。
まさかとは思った。
それでも駆け寄って、その名を叫んだ。
「インデックス!」
返答は無かった。
インデックスに変化は無く、この場所には死の空気が満ちていた。
しかし気づいた。
「インデックス!!」
インデックスの胸は微かに上下していた。
か細い呼吸と共に。
そして再三呼びかけるエヴァの目の前で。
「インデックス……!」
「ぅ……けほっ……」
確かに、目を開いた。

インデックスは水の羽衣を着ていた。それが第一の理由だろう。
冷却攻撃と高熱攻撃の威力を半減させるこの防具はインデックスの受けるダメージを激減させた。
それでも電流による攻撃はまるで軽減できなくて、インデックスの心臓は止まった。
彼女は間違いなく一度死んでいたのだ。

だが、ここには遺志をぶつける少年が居た。
停止し死に逝く筈の心臓に、幾度も拳を振り下ろす少年が居た。
止まってしまったインデックスの心臓を、意思も思考も燃え尽きた体で押し続けた。
もう一度だけ脈を打て。
もう一度だけ動き出せ。
ひたすらに祈りを叩き続けた。
それは必然と言うにはあまりにも儚くて。
偶然と言うにはあまりにも信じがたい。
言うならば、奇跡だった。

それなのに。
 
655創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:11:29 ID:YJoB2maf

「死ぬな、インデックス!」

インデックスは死に掛けていた。

それは当然の理屈だ。
幾ら水の羽衣が低温と高熱に対して高い防御力を誇ろうとも、その一部は切り裂かれていた。
インデックスを襲ったグルーミー・パペットショーは、リリスの技でも最大の威力を持つ必殺技だ。
加えてインデックスは元より疲弊し消耗していた。
例え僅かに生きながらえようとも、その死は既に必然だったのだ。

「ゼェ……ゼェ…………エ、エヴァ……」
「良い、喋るな!」

エヴァは必死に考える。
何か方法は無いのか? インデックスを助ける手段は!?

「…………ひ…………」

インデックスの掠れた声。死に逝く命。
リンクの執念が繋いだ命。迫り来る終り。

「…………か…………」

殺されそうになってもエヴァに歌を聞かせ続けた少女。
エヴァにとっても――認めたくはなくとも、大切な少女。

「…………り…………」

それなのにエヴァには、何も思いつかなかった。
インデックスを助ける手段が、一つも無かった。

「…………の…………」

エヴァは魔法の使い手だ。だが回復魔法は苦手だった。
不老不死の吸血鬼であるエヴァは癒しの術を必要としなかった。

「…………み…………」

インデックスは癒しの魔術を幾つも知っている筈だった。
しかしそれを聞き出し実行する余力など、有るはずがなかった。

「…………ち…………」

血を吸って吸血鬼にしようかとも考えた。だがその効果は制限されている。
何よりエヴァのそれは衰弱死しかけている人間を救える手段では無かった。

「…………を…………」

この場に有る支給品の中に傷を癒す物も見つからなかった。
エヴァがインデックスを救う手段は何一つ見つからなかった。

「…………インデックス……?」

――ひかりのみちを。

その言葉を最期に、インデックスは今度こそ息絶えていた。
エヴァの願いも、リンクの想いも、ここが終着だった。
「おい……インデックス…………」
エヴァの声にインデックスが応える事は最早無い。
そこに有るのは、ただの亡骸なのだから。
657創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:12:10 ID:0UfFFJQx
 
インデックスはもう死んで、エヴァの声は届かない
あまりにもシンプルな死のルール。

『そろそろ良いですか』

どこかくぐもった声は、やはりすぐ側から聞こえた。
エヴァはゆっくりとその声の主を振り向いた。
そこにはアリサ・バニングスの死体が有った。
右手は死した高町なのはの腕を掴み、左手には杖が握られている。
愉快型魔術礼装カレイドステッキ。
アリサ・バニングスが命果てるその時まで左手に握り続けた魔法の杖だった。
「うるさい、後に……」
『すみませんが私にもザザッ時間がありまザザザ……』
その声はまるで壊れたラジオのような雑音に乱されていた。
エヴァは息を呑んだ。
カレイドステッキに目立った傷は付いていなかった。コアらしき部分にも、全く。
『ああ、私の事ならザザッ気にする事はガガガせん』
カレイドステッキの精霊、人工天然精霊マジカルルビーは何時もどおりの様子で言葉を紡いでいた。
本当に何事も無いように、ひょうきんな口調で。
『アリサさんにちょっぴり限界ザザザザな助力をピーガガガガまして。
 一緒に冥土の河を渡る事になりました』
自らの死を告げた。

『アリサさんがリリスに殺された時、流石に死のザザッは制限に穴でもザザザザでしょうか。
 アリサさんは制限により引き出せないはずの並行世界から力を引き出したんです。
 その世界はこのピーガガガ極めて近しい、殆ど隣り合った並行世界だったみたいですねー』
硬直するエヴァを前にマジカルルビーはすらすらと言葉を続ける。
その言葉に死を恐れる様子が無いのは、彼女が杖だからだろうか。
それとも別の理由だろうか。
『それでアリサさんガガガ立ち上がり呪いの言葉を吐く自分の幻をリリスに見せてやりました。
 あの時の転がり逃げるリリスの姿といったら、エヴァさんにもザ――――ッですよー』
場にそぐわない明るい言葉を。
死の空気を祓わんばかりの軽快な言葉を。
『ピーガガガ死者に力を貸して死者と一体化していたわけです。
 死者が使う物はやはり死んだ物であるザザッまあそんな感じの理屈です。
 そういうわけだから私はアリサちゃんにご一緒してあの世に行ってガガガガガ』
悲しみを吹き飛ばそうと紡ぎ続ける。
それこそが彼女の本質なのだから。
『私についての話はこんなところザザザザ。ああっと、もう三十秒も無駄にしてしまいました。
 いけませんねー、時は愛なり、デートの待ち合わせに遅れちゃいけません』

彼女に刻まれた命令は『愛と正義(ラブアンドパワー)』。
世界を面白可笑しく、楽しく愉快に、ふざけた笑いで一杯の世界に変える事。
それが愉快型魔術礼装カレイドステッキに課された使命。

『それじゃ本題です。ザザザ……イライラしそうなほど事務的でつまらない話ですけどよーく聞いてくださいね★』

そしてマジカルルビーは語り始めた。
この工場で重ねられた考察の数々を。
この工場がエネルギーの循環を確認する為の施設であるだろう事から始まって、
インデックスとマジカルルビーが考察した、ジェダの術式の推測まで。
ジェダに刃向かい蓄積された、役に立つのか正しいかすら判らない推論の全てを。
エヴァに託した。

エヴァはじっとその話を聞いていた。
カレイドルビーの言葉を聞いて、理解し、記憶していた。
それは遺志を受け止めたからでも、受け容れたからでもなくて。
ただただ、聞いていた。
659創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:12:42 ID:YJoB2maf
660創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:12:48 ID:0UfFFJQx
 

『とまあザザッピーガガガガガ……失礼、こんな所ですザザザザ。何か質問はガガガガガ』
雑音はより激しくなり、言葉の半分近くが雑音に埋め尽くされる。
それでもマジカルルビーは伝えるべきを伝えきる。
「……何故だ」
返したのは一つの疑問。
エヴァには、判らなかった。
判ることができなかった。
「何故、私にそんな話を託す?」
周囲を見回せばここには四つの亡骸が転がっている。
意思無き死体の山。
喪われた者達。
それらはエヴァにとっての――。

「私の希望は、潰えたというのに」

――喪われた希望。
自らの過ちは正義によって砕かれるべきだった。
自らの前に引いていた最後の一線を踏み越えたエヴァは、ある意味で終わっている。
せめて誇りある悪としてインデックスやリンク達に倒される事こそが希望だった。
全ての悪を薙ぎ倒した後で、誇りある悪として華々しく散る事を願っていた。
「おまえ達が私の……最後の希望だったのだ」
だというのに何故。

「我が名はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル!
 闇の福音! 不死の魔法使い! 真祖にして最強の悪の魔法使いだ!
 こんな私に、何故その様な話を託す!!」

何故、マジカルルビーはこの悪党にそんな話をするのか。
……返って来たのは雑音の塊だった。
『ザーザザザピーガガガ……』
声を出そうとしても届かない、死に掛けの音。
形を作れず意味を為さない空気の振動。
未完成の言葉。
『ザザ……あザザッがわたザザザザ』
言葉が形を為さなければ想いは伝わらない。
だからマジカルルビーの想いは伝わらない。
あと一声、たった一言の想いが伝わらない。
『ザザザあなたザザガガガガ』
それが常識。
それが現実。
それが世界。
『ピーガガガガガザザわたザザザのザ』
だけどそんなの悲しすぎる。
そんな事では世界に悲しみしか残らない。
ほんの一欠けらでいいから、悲しみ以外の物を遺したかった。
『ザザガガガガピーザザザザザザ』
この世界は悲しみがいっぱいで、全てが奪い去られ失われていくけれど。
その中で愉快型魔術礼装カレイドステッキは当然のように使命を果たした。

『あなたが私達の希望です』

プツッと音がして、それっきり雑音も何も聞こえなくなった。


 
662創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:13:40 ID:0UfFFJQx
 
663創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:13:57 ID:YJoB2maf

音が、消えた。
外に降る激しい雨の音だけが、工場の中に満ちている。
無数の水滴が硬い屋根に落ちてきて、弾けるときの小さな音が。
幾つも幾つも重なって、何度も何度も弾け散る。
弾けて散って、弾けて散って。
ただそれだけをずっとずっと繰り返す音。
この世界の命は、そのくらいに呆気なかった。

「もう……誰も居ないのか……?」
エヴァの言葉はどこか弱々しく響いた。
まるでか弱い少女のように。
ずっと力強く踏みしめてきた足元が、揺らいでいた。
「誰か居ないのか!?」
言葉が託された。
想いを、情報を託された。
希望を託された。
「誰か!?」
闇に生きる少女の肩に。

かつて彼女が恋した男は言った。
光に生きてみろと。
呪いによって彼女を平和な学園に縛りつけ、無理矢理に闇の世界から引きずり出した。
何年かすれば必ず迎えに来てやると言って。
男はそのまま帰らなかった。

再び、インデックスが彼女に言った。
光の道を。
インデックスはその言葉を最期に息絶えた。
目をかけた少年が死を賭して延ばした命から、たった一言の言葉が託された。

そしてマジカルルビーは言った。
あなたが私達の希望だと。
高町なのはと、インデックスと、リンクと、そしてアリサ・バニングスを代表して。
今だ闇に埋もれるエヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルを希望と呼んだ。

「私が……希望だと……っ」
まるで重責に耐えかねるように、床に転がる死者達を見下ろした。
瞳に映ったのは、高町なのはの服から零れた一枚のカード。
この世界へ連れて来られた時に手にした、エヴァの手から放れたカード。
『希望』のカード。

「私にどうしろというのだ!!」

絶叫は雨音に塞がれ、工場の中に響き渡った。







     * * *
665創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:14:05 ID:XCwJRD7/
 
幾つもの命が、喪われてしまった。
幾つもの命が、終わってしまった。

死は生の終り。意思の末路。
生ある側には何も届かない悲しい場所。

つまりそこは、終わった後の場所だった。

そこには冷たい石畳が広がっていた。
凍えそうな程に寒くて、灯りは乏しく薄暗い。
誰も居ない、悲しい場所。
彼女は一人そこに横たわっていた。

そこを訪れる者は誰も居なかった。
彼女がそこから出て行くことも、遂に無かった。
寒くて寂しい場所でたった一人。
彼女はただ終りを待っていた。

直にこの世界は崩れ落ちるだろう。
それまでの間、終りを待つだけの場所。
その筈だった。

その場所に、足音が響いた。

二人分の足音がカツカツと、その場所に向って近づいてくる。
彼女は少し奇妙に思って、足音へと視線を向けた。
見ると広間の入り口に二人の少女が現れていた。
アリサ。そして、高町なのはがそこに居た。

高町なのはが言った。
後はおねがい、と。アリサはそれに頷いた。
高町なのはは一度こちらを見つめて。それから歩み去っていった
閑かな足音が、ゆっくりと遠ざかっていった。

彼女は聞いた。
アリサちゃんだよね? と。
いつもと違う服装、そして茶色い髪のアリサはその言葉に頷いた。
彼女の左手でカレイドステッキが景気良く自分の存在を主張していた。

アリサはゆっくりと彼女に歩み寄っていく。
そして言った。
「引き篭もってたならそう言いなさいよ……なのは」
彼女の名前を、呼んだ。

彼女はその問いに首を一度振って否定した。
その名前を否定した。
「違うよ、私は高町なのはじゃない。高町なのははあの子だもの。
 私はそう……名乗るなら、白い悪魔だよ。大嘘吐きの、白い悪魔」
「………………」
アリサはその答えを前に、少し黙った。
音がする程に歯を噛み締めた。
だけどすぐに力を抜いて、まるで感情が抜けたような表情を浮かべて。
言った。
「……ごめん、なのは」
自責と謝罪の言葉を。
高町なのはに向けて。
「あたしは向こうのなのはに案内してもらうまで、あんたに気づけなかった、
 大切な友達がこんな事になってたのに、結局最後まで気づけなかった」
667創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:15:17 ID:f+GkyYa8
  
668創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:15:29 ID:f+GkyYa8
  
669創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:15:31 ID:0UfFFJQx
 
「アリサちゃん、だから私は……」
「ずっと前からあたしが友達だった方の高町なのはよ。そうでしょ?」
彼女は沈黙した。
文字通り痛いほどに。
この場所の沈黙は、痛かった。
耳鳴りが聞こえるほどの静寂が全身から沁み込んできて、自分を見失ってしまいそうだった。
アリサはもう一度口を開いて、聞いた。
「でも、判らなかった。だってあの子も高町なのはだったんだもの。
 どうして高町なのはが二人居るのか、判らなかった」
なのはは少しだけ沈黙した。
今度の沈黙は、短かった。
全身を貫かれ筋肉と神経を骨と血管を引き裂かれた無残な姿で倒れている高町なのはは。
静かに語りだした。
「そう長い話じゃないよ。私はただ、耐え切れなかったんだ。
 私の進む道は、この冷たい石畳にさえ辿り着けない事に気づいてしまった。
 みんなと心から仲直りする事も、自らの罪を受け容れる事も出来ないって気づいてしまった」
訥々とその事実を語る。
《白い悪魔》は《高町なのは》に、私達は互いの願いから生まれたと言った。
だけどその時まで《白い悪魔》に気づかなかった《高町なのは》が何を願ったというのだろう。
「私は高町なのは。高町なのはが夢見た、高町なのはが求めた夢の中の高町なのは。
 ……私はそうなりたかった」
高町なのはは自分がこの夢に辿り着けない事を知っていた。
ヴィータはもちろん、ニケ達と仲直りすることも、それを受け容れる事もできないと知っていた。
八神はやての仇として殺される事さえも出来なくなっていた。
あの頃のなのはは、はやてを殺した罪を償う事は出来ても想いを受け止める事なんて出来なかっただろう。
だから彼女はここに居る。
「この夢を願った時から私の夢は私になり、私は私の夢になったんだ」
辿り着けないはずの夢の中で、この夢を見る事が出来た《高町なのは》が夢を現実にする事を願っている。
現実と夢は入れ替わっていた。
高町なのははそれからずっと、この夢を見続けていたのだ。

「そうは言っても、私とあの子が明確に別れられたのは本当に最近なんだ。
 放送の後、眠って起きた時からあの子は生まれ始めた。
 その時のあの子は、やっぱり私とそう変わる存在じゃなかった。
 でもあの子は私が無くしてしまった弱さや私の理想を一つ一つ拾い上げて、私とは別の私になっていった。
 この島に連れてこられる前の私に戻っていった」
「……そういう事か。道理であのなのはもなのはの筈だわ」
約十年を生きてきた高町なのはという人格はこの島の地獄を見て変わらずにはいられなかった。
この過酷な世界で少しでも良い方法を捜して、適応し、壊され、足掻き、変化せずにいられなかった。
人は常に変わり続けるものだ。
だからこれまで生きてきた高町なのはは、生きているからこそこれまで生きてきた高町なのはでは無くなっていく。
それを逆行して戻れた高町なのはは、これまで生きていた高町なのはではありえない。

「あの子は私の希望で、私の選択だった。
 私はその内にきっと、アリサちゃんまで『諦めて』しまうって思った。
 本当にそれが正しいと判断できる状況ならそうしてしまうと思った。
 それだけはぜったいにイヤだった。
 だけどやっぱり……私はそうしてしまったんだ」
「なのは……」
倒れて天井を見上げたままのなのはは、屈み込むアリサの顔を間近から見つめている。
目を逸らしたいと思った。それでもなのはは出来なかった。
アリサの視線を受け止める事も。
なのはとアリサは見つめ合っていた。
それなのになのはの視線はそこに在るだけだった。
「こんなにヒドイ子でごめんね……アリサちゃん」
その瞳の奥には確かな悲しみに溢れている。
苦痛も後悔も哀惜も悲嘆も絶望も慟哭も喪失も全てが瞳の中に閉じ込められている。
なのはの涙は一滴たりともそこから出られなかった。
アリサはなのはの苦しみを否定してやりたかった。
なのははちゃんとアリサ達の事を大切に想えていると言ってやりたかった。
だけどその言葉がどれも、薄っぺらい。
なのはの心まで届く言葉が出てこない。
今のアリサに出来ることは自分を責めない事だけだった。
アリサがそのことで自分を責めれば、この話をしているなのはが苦しむだけだと判っていたから。

「でも、《高町なのは》は私が諦めた局面を打ち破ってくれた。
 あの時、アリサちゃんを助ける手段はもう無くて諦めるしか無いって思ったのに、
 《高町なのは》はそれを打ち破ってアリサちゃんを助けてくれた。
 その時に私は死んでしまったけれど……私は、うれしかったんだ。
 世界に救いは有るんだって。悲劇は止められるんだって思えたから」
「なのは……っ」
なのははさも嬉しそうにそう言った。
自分が死んででも、これまで諦め続けた自らの選択が否定されたのだと。
これまでやってきた事は間違っていて、自分が悪かったのだと証明されたのが嬉しかったのだと。
そう言って、ここで見てから初めてほんの少しだけ……笑ったのだ。

アリサは許せなかった。
第一そんな事は、何も変わらないのだから。
結局なのはは自らという一人を犠牲にしてアリサを護る事しか出来なかった。
それは犠牲にするのが誰かじゃなくて自分になったに過ぎない。
《高町なのは》の成果は《白い悪魔》を名乗るなのはの成果と何も変わっていないのだ。
否定したかった。
目の前に居るなのはが苦しんで苦しみぬいて生きてきた事を肯定してやりたかった。
だけどそれはもう一人の《高町なのは》を否定する事にすぎなくて、何よりも。

「……だけど結局、アリサちゃんは殺されてしまった」
目の前のなのはの瞳が空虚に染まる。
なのはは既に知っているのだ。目の前にアリサが居る意味を。
《高町なのは》が果たした小さな奇跡は、残酷な意思の前に無力だった事を。
再来したリリスが全てを奪ってしまった事を。

「やっぱりあの選択は間違いだったのかな。
 私はこの幸せな死を望んで、感情や希望、夢といったあやふやなものを送り出した。
 それらを背負わされた《高町なのは》は私にできない事をやって見せた。
 本当に嬉しかった。
 でも結局、アリサちゃんは殺されてしまった。
 私ならフェイトちゃんの顔を被ったリリスを迷わず撃っていた。
 少なくともアリサちゃんを犠牲にしてリリスを倒す事はできていた。
 私の手は少なくとも一人、悪ければ二人分の血に汚れ、だけど死んだ人は減っていた。
 それが正しかったの?
 私はあの子に託さず殺す事を背負い続けるべきだったの?
 これ以上何も失わないで済む、そんな未来を夢見ちゃいけなかったの!?
 ねえ。
 …………教えて、アリサちゃん」

アリサは理解する。
目の前に居る親友は決して無敵の強さを誇っているわけではなかった。
なのははただ、弱くなれなかったのだ
あの残酷な世界にもがき苦しむ中で、弱さを捨て去ってしまったのだ。
だから戻れない。
正しくあり続ける事しかできない。
その中で足掻いた末に生み出した選択こそが、《高町なのは》。
ほんの少しだけ取り戻したなのはの弱さ。
なのはの抱いた希望だ。
672創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:16:36 ID:0UfFFJQx
 
673創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:17:13 ID:0UfFFJQx
 
アリサは優しく、なのはの頬を撫でてやった。
今にも泣き出しそうなのに、どうしても泣くことができない瞳。
アリサはその瞳を見つめて、言ってやった。
「バカね、そんなわけないじゃない」
根拠なんて無い。
理屈の上では《白い悪魔》であろうとするなのはの選択は正しかった。
親友であるフェイトの顔を被った敵でも容赦無く撃てていれば、リリスを撃退できた。
彼女達は知らないがリリスに新たな成長の切っ掛けを与えてしまう事もなかった。
アリサが助からないと判断した時に見捨てていれば、リリスを倒す事ができた。
なのははそれからも人を殺す事で死ぬ人を減らし続けただろう。
高町なのはの希望である《高町なのは》の選択は、結果として破滅しか生んでいない。
得られた物は何も無い。

「あんたは人間で良いのよ、なのは」
ただ、高町なのはが人として死ねただけで。

「帰りましょ、なのは。きっと帰ろう。
 こんな寒くて寂しい場所じゃない。
 あんたが悪魔として生きようとする世界でもない。
 あたし達が人間として生きられたあの世界に。
 フェイトもはやても生きていて、みんなで仲良く過ごせていたあの世界に」
「アリサちゃん……」
アリサは唐突に喋り始める。
夢の様な世界を回想する。
あの幸せだった日々を思い返していく。
「なのはは二人に増えちゃったけど楽しい事も二倍と思えばいいもんよ。
 ふざけた奴だけどカレイドステッキも一緒に持って行くわ」
『うふふ、離れろって言われても離れませんよー。
 死んだ時にも登録解除し損ねましたからねえ、地獄の底だろうとご一緒します』
「うえぇ、それは勘弁してよ」
アリサの左手の杖からは精霊マジカルルビーが陽気な声を響かせる。
生きていた頃と同じ、死んだ事なんて微塵も感じさせない明るい言葉。
顔なんて無いのに楽しげな表情が見えた気がした。
「そうしてインデックスとかリンク、それからトマやエヴァの世界にも遊びに行くのよ。
 あんな殺し合いの世界じゃなくて、名前を呼んで、友達になって、お喋りをしに行くの。
 もう毎日が楽しくてたまらないわよ、きっと」
それは想像するだけで幸せになれそうな世界だった。
あんな殺し合いをしなくて済む世界。
ほんの一日で何もかも失ってしまったりしない世界だ。
「無理だよ。だってわたし達……もう……」
死んでいる。その言葉を言わせずアリサが言葉を繋ぐ。
「それなら生まれ変わりでもなんでもすればいいのよ」
アリサは本来そんなものを信じてはいなかった。
カレイドステッキの力を借りて一時的に幽霊として行動できている今でさえ、
この先に死後の世界なんて無くて、ただおしまいが有るだけだと思っていた。
だけど、やめた。
「そうよ、新しい命に生まれ変わる。そしてまたなのは達と友達になる。
 今決めた、そう決めた」
「アリサ……ちゃん……」
「だから、さ」
アリサは優しく、強く高町なのはを抱きしめた。
「あたしたち、ずっと友達よ」

気づけばもう一人のなのはもすぐ近くで笑っていた。
それはとても温かい場所だった。
本当に久しぶりに。
たった一日前の、幸せだった遠い昔の想い出に抱かれて。
なのはは口元にかすかな微笑を浮かべると。

その瞳から一筋の涙を零した。
675創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:17:42 ID:YJoB2maf
676創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:17:48 ID:0UfFFJQx
 









かくして。

冥王の神体には新たな魂が、また三つ。


【死亡 リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
【死亡 インデックス@とある魔術の禁書目録】
【死亡 アリサ・バニングス@魔法少女リリカルなのは】
【死亡 カレイドステッキ@Fate/stay night】


【A-3/工場通路/2日目/黎明】
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル@魔法先生ネギま!】
[状態]:全身に痛み、魔力(小)
[装備]:フェアリィリング@テイルズオブシンフォニア
[道具]:支給品一式
[思考]:――――――。
第一行動方針:――――――。
基本行動方針:――――――。
[備考]
梨花の血を大量に吸いました。雛見沢症候群、及び女王感染者との関連は不明です。
ジェダ打倒を目指している者として、ニアの名前をグリーンから聞いています。
パタリロを魔族だと思っています。名前は知りません
紫穂の『能力』が、触れることで発動することを見抜きました。詳細までは把握していません。
インデックスやマジカルルビーの考察を聞きました。

高町なのは、アリサ・バニングス、インデックス、リンクの死体と装備が転がっています。
カレイドステッキは『死亡』しました。
678創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:18:49 ID:f+GkyYa8
679 ◆CFbj666Xrw :2008/12/28(日) 00:19:18 ID:aCwHuriq
今度こそ投下完了です。
代理投下及び支援ありがとうございました。
680創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:19:26 ID:0UfFFJQx
 
681創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:20:13 ID:YJoB2maf
682創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:32:00 ID:oh3XssmC
投下乙!さすが666と呼ばれた書き手だ。
鬱描写を簡単にやってのける!そこに痺れる!あこがれる!
だが、この3人の死は非常に大きいなぁ。
何かこのロワのターニングポイントになったような気がする
683創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:33:01 ID:aXsk0qHd
………荒療治ですね。ただ、殺せばいい、病巣を取り除けばいい、というわけではないのでは?
まあ、いい話だとは思いますけど、タイミングがタイミングですね……
684創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:41:19 ID:cIaxUsan
もういいよ
書き手やめろ
685創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:46:57 ID:4k+dqzFU
投下乙とでも言ってほしいんですか?報復乙。
666氏って出来のいいキャプテンみたいですね。
そんなになのはが殺された事が腹が立ったんでしょうか。
686創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:51:22 ID:0UfFFJQx
投下乙。

うわ……! ここで一気に工場組が全滅か……!
しかし残されたエヴァは堪らないな。梨花死亡時もそうだったけど、「希望」のカードは皮肉にしか思えない。
九死に一生を拾った形の紫穂・ヴィータと、知恵をつけたリリスの今後も気になるところ。
とりあえず、3人と1本、おつかれさま……。
687創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 00:57:18 ID:XNS24Gqm
初めて見たけど駄作なのか?
688創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 01:04:28 ID:BEtLR9Ve
投下乙です。
おおー、アリサ辺りは死ぬだろうと思ってたけど、ここまで一気にとは……予想外だ
最後のほうのエヴァンジェリンのシーンが、無常すぎる
うーん、工場組が全滅してここからが気になるなあw
689創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 01:04:54 ID:XNS24Gqm
悪魔紳士666:チーム虐殺は胸がどきどきしますね。(12/28 01:04)
ドットーレドットーレ:チーム虐殺スキー(12/28 01:03)
悪魔紳士666悪魔紳士666:あれは本当にどーなっているんだw 考えるだけ無駄って事なんだろうけどさw>時間改変(12/28 01:03)
お姉さまお姉さま:ああ、そういえば姉ロワのプロットで足りてなかったのはチーム虐殺か。思い出したw(12/28 01:02)
にににに:ひぐらしキャラは、書くなら一人称で書きたいなー。(12/28 01:00)
衝撃のネコミミ衝撃のネコミミ:話によって時間改変の影響が全然違ってたりしても作品の質には何の影響も(ry(12/28 01:00)
ウッカリデス(始発待ち)ウッカリデス(始発待ち):昔の人は言いました……『心に棚を作れ!』と……w(12/28 00:59)
お姉さまお姉さま:ああ、魅音超楽しい……w(12/28 00:59)
再生怪人再生怪人:ドラちゃんw(12/28 00:58)
衝撃のネコミミ衝撃のネコミミ:恐竜ハンターに説教した奴が当然のように恐竜ハントを楽しんでいたからといって面白さが失われるわけではありません(12/28 00:57)
ウッカリデス(始発待ち)ウッカリデス(始発待ち):『光の速さで歩け』とか素敵なフレーズだと思わないかい?w(12/28 00:57)
ウッカリデス(始発待ち)ウッカリデス(始発待ち):まぁ設定が二転三転したりアバウトなのはよくあること……w(12/28 00:55)
再生怪人再生怪人:ロボロワ毒吐きwww(12/28 00:55)
690創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 01:05:13 ID:0cko+Tiw
ひとまず投下乙。

とはいえ、気になるところが大小いくつか。

志穂のファーストエイド

魔力……といっていいのかわかりませんが、ファフニールを持った程度で魔法が使えることに違和感。
これの本来の持ち主のゼロスは確かにこの魔法を使えますが、
修行すればだれでも使える可能性のある魔神剣と違って、
これはTOSの世界でもある程度素質がないと使えない魔法です。
志穂がいくらサイトメトリーで記憶を呼んだとしても使えるのはおかしいかと。

エヴァの行動

エヴァは工場組がひとまず安全=魔女達には殺されないと判断していましたが、
他のマーダー達が工場に来る可能性は全く考慮に入れなかったんでしょうか?
それも加え、同様したにしては殺すべき獲物を放りだすエヴァがうかつすぎる気がします。

リリスの知恵の付き具合

議論スレを見てもらえばわかりますが、前の書き手もリリスの知恵の付け具合の限度を下げてます。
このたびの話で人の感情なども理解するようになってますが、これは知恵が付きすぎではないか、と思います。
あと傷の具合に反して元気すぎると思います。

思う、など訂正にまで至らない点ばかりですが、
これらの問いに答えていただければ、と願います。
691創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 01:27:57 ID:8tLfP3r3
鬱憤が溜まってるのは分かるが、まあ待て。
報復行為だのといった類の発言は毒吐きでやるべきだ。
批評とは切り離せ。時と場合を考えような。本スレで言うべきじゃない。

それはさておき、問題提起だ。
……といっても、夜遅いし眠いし眠いし本当に気になる部分だけ。

・リリスが3人相手に圧倒している件。
半ば奇襲とはいえ前話の内容から、流石に荷が重い相手のはず。
プラス、無視できない傷を負っている。
そもそも今のリリスは学習能力ゼロじゃないし、万全じゃない状態で戦いに行くのか疑問視。
解決例:ご褒美で治療。完全回復した状態ならば弱ってる相手を圧倒するのは自然。

これは大した事じゃないけど。アリサっていつの間に死んだ?

ほかに気になる点があればほかの方お願いします。俺は寝る。ノシ
692創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 01:28:56 ID:aXsk0qHd
>>689
チャット転載はあまり良くないですよ。自重してください。
693創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 01:33:07 ID:1VApgTyt
投下乙です
うわぁ……バッサリといったなぁ
エヴァの選択、行動結果の皮肉が更に無情を煽る……
工場組はある意味LSらしい、悲惨な結末となったね
なんというか、清々しいほど鬱な気分だw

あとリリス6人斬りオメ。あと一歩でなのはの記録に並ぶぞ!
694創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 01:33:46 ID:/E9Rrx52
というか関係ない人まで……
2chの方だとアク禁の申請ってどうやるんだっけ
695創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 01:46:18 ID:1VApgTyt
そういや、たしかにアリサが致命傷を受ける場面が分からない
よく見ると>>641>>643の間、話が飛んでしまっていないか?
696創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 02:08:16 ID:ectWY6Fi
投下乙!
いやっほう!!清清しいまでの虐殺劇だぜ!!
ロワ広しとはいえ、ここまで救いのないジェノサイドを読めることは少ないので心躍った。
常々「絶望的な状況からの奇跡の生還」があるなら「安全な状況からまさかの壊滅」だってもっとあっていいと思ってたんだよ!
前者はよく見るけど、後者を見られることってあんまりないからな〜。
しかも、こういうときにありがちな“最後の希望”が悪役希望のエヴァってのがまたニクイ!
“希望”になっても、偽悪を続けても、どちらにしろ心に傷を負う彼女の明日はどっちだ!?
697創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 02:11:51 ID:MDx/keZv
>>630
>その手の弓が変形し、蝙蝠状の翼に形を戻した。

>リンクは左肩に刺さっているそれが細い鉄パイプである事に気づいた。
>少し力が有れば工場の何処からでも手に入る、何の変哲も無い鉄くずだ。

リリスの翼って、そんな変形できたの?

実はソレは本題ではなくて、
「なんでそんなに簡単に入手できる矢を1本しか用意してないんだ?」ってのが分からん。
矢が大量にあれば、その弓矢を打ち続けるだけで勝てるだろうし、
やばい状況になっても、距離をとって戦っていれば逃げるのは簡単。
知恵が付いたんなら、そのことに気づきそうなもんだが。
698創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 02:20:44 ID:1VApgTyt
うん、指摘の類は議論スレに行こうか。本スレで言い募ると迷惑になるし
俺もついやっちゃったけどね
699創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 02:21:20 ID:0UfFFJQx
翼を弓にするのは原作ゲーム内の投げ技ミスティックアロー、
そこからイメージしたであろう黄金の矢は漫画版の作中で開発・習得した漫画オリジナル技。
ただロワ内では初披露だし、使って始めて分かることも多いかと。
次からは多数の矢を用意するかもね。
700創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 02:30:21 ID:XCwJRD7/
エヴァあああああああ!!
泣いてもいい、泣いてもいいんだ!!
ってかあっちのアリサ、いつか来るかと思ってはいたが、こんな形で来るとは!
しっかし最初の時点から時間軸を逆行させての展開だったが、てっきり志穂にそそのかされたリリスが戻ってきてやったのかと誤解しちまったw
リンク、頑張ったのに……。
それでも、それでも救われない命と。
けど、救われる魂も、ある。
おやすみ、なのは。いってらっしゃい、アリサ。
ありがとうインデックス。がんばったな、カレイドステッキ。
投下乙〜

でもそれよりもヴィータの今後が楽しみだったりするw
701 ◆CFbj666Xrw :2008/12/28(日) 03:06:36 ID:aCwHuriq
感想どうもありがとうございます。
大変励みになります。

質問への回答は議論スレの方でしておきました。
702創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 03:19:53 ID:CdXhQkn2
投下乙
一連の工場編…というかひっくるめてリリカルなのは編と言ったほうがいいのかな?
まあ色々とありましたが、終わってみればひとつの章としてとても綺麗に纏まったように感じられました。

全てを託された形になったエヴァと、ただ残されたヴィータ。この二人が今後どうなっていくかが楽しみです。
703創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 05:36:19 ID:xCZngNxw
報復ツマンネ
キャラを処理するつもりでリレー企画に参加するなよ
迷惑極まりない
704創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 06:41:18 ID:aCwHuriq
ロリショタバトルロワイアル23
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1230413656/

容量が500kb近いから新スレ立ててきた。
705創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 08:38:00 ID:1VApgTyt
>>703
そういうコトは毒吐きで言いなさい
場所をわきまえない罵倒の方が迷惑極まりない
706創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 09:53:52 ID:cIaxUsan
場所をわきまえたら罵倒してもいいってのも変な話だけどな
陰でこそこそ悪口言う方がよっぽどいやらしいだろ
言ってることは同じなのに、「俺は大人だからちゃんと毒吐きに書き込んだぜ」なんて威張られてもね
企画の為とか偉そうなこと言うなら、不満くらい自分の中で処理しろよ
それができてない時点でお前も荒らしと大差ないんだよ
707創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 09:57:55 ID:6CXWo68F
投下乙!
なんていうリリス無双・・・
一人残されちゃったエヴァが気の毒すぎる。これからどうするんだろうか
みんなの遺志を継ぎ対主催になるかそれとも再び悪の道を貫くか・・・ 
どちらにしてもつらい選択をしてつらい道を歩むことになりそうだな

そして3人殺しのインパクトに推されてる感があるヴィータ達だがこちらの行方も気になるな
柴穂は手首を凍らされたがそれより内心がやばすぎるw
暗黒面に落ちすぎだろ柴穂www今日の絶チル見るのが怖くなってきたぞw
708創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 10:46:06 ID:K2+ERS/S
確認。予約制度の改革って、今も暫定施行中?
709創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 10:52:55 ID:WU/dkYNf
一応暫定だった気がするがほぼ決定と見ている
今戻したところでデメリットしか感じられない
710創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 11:48:22 ID:0cko+Tiw
今戻したところで666氏の報復返し荒らし予約しかきそうにない。
711創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 13:48:00 ID:cfvPZB5V
<前略>●ど、エヴァ辺り読んでなんかスーッと落ち着いた。
やっぱりうまいのかな、と思った。

GJ!でした。
712創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 16:05:44 ID:0UfFFJQx
>>708
仮に戻したいなら、議論スレでの問題提起をお願いします。
やってみて異論があるようならまたその時に考えましょう、という話でしたから
713創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 19:26:37 ID:4k+dqzFU
この話通すのか?

正直、これ以上書き手様を放置するのは危ないとおもうんだが。
714創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 19:50:25 ID:ectWY6Fi
破棄するに相当な事由があるとお考えなら、議論スレにてその旨を発議してください。
715創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 21:44:22 ID:8GnSjuEd
とりあえずこっちはもう埋めのターンか
716創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 22:10:52 ID:0cko+Tiw
先の不安にしかならない投下ばかりが続くなぁ…
717創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 22:55:33 ID:4k+dqzFU
いっそのこと潰れればいいと思うよ。
自分勝手にかいてばかりでリレーするつもりの馬鹿がトップの書き手なんだし。
718創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 22:56:48 ID:0cko+Tiw
馬鹿は馬鹿なりにリレーしようとしてるんだからそれは大目に見てあげなよ。
719創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 23:06:06 ID:8GnSjuEd
さすがに潰れてもいい発言はいきすぎじゃないか
まあ、今回の作品で不満が出るのはしょうがないような気もする
720創る名無しに見る名無し:2008/12/28(日) 23:22:49 ID:DVeaQSVH
>>719
そいつのIDと前のレスをよく見ろ
721創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 01:27:26 ID:COo+Oy0N
松竹『梅』
722創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 01:49:16 ID:ETBaCkT+
お前ら今日は暴れん坊将軍スペシャルの放送日だぞ〜〜〜!!!
723創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 02:32:30 ID:zbdkLj3z
見限るのは結構だけど、暴れないで欲しいです、将軍さま
っていうか、椿、斬っても血が出てなかった…音はしたのに。
724創る名無しに見る名無し
500kbの締めはAAにしてほしいなあと言ってみる