1 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:
2 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/07(金) 18:12:14 ID:/Nt9kIh2
雨にも恨み 風にも恨み 雪にも夏の暑さにもののしる丈夫な声をもち
慾は果てしなく 四六時中嘘をつき
いつも大声で怒鳴ってゐる
一日にデミカツ丼と大量の鰆とママカリを食べ
あらゆることを 自分の勘定にに入れ
半ば見聞きし分かったつもりになって 知ったかぶりをしてすぐ忘れ
児島半島の陰の 小さな瓦ぶきのあばら屋にゐて
東に仙台スレあれば 行ってコピペして暴れ
西に広島スレあれば 行ってピカチュウと馬鹿にし
南に四国あれば 岡山は中四国州のリーダーと脅し
北に鳥取や島根があれば 岡山の都会さを自慢し
日照りの時は謝罪を求め 寒さの夏は賠償を求め
あんごうがと泣き喚くかはよーしねーやーと他人をののしることしか能がなく
みんなに津山三十人殺しと馬鹿にされ
褒められていると妄想し けっして尊敬はされず
そうゐうものに わたしは なっているニダ
3 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/07(金) 19:14:21 ID:rGCobjC7
まだ前スレ堕ちてないよ
童貞を喪失していないというか
前スレは只今童貞喪失致しました
神輿担いで来たよ・・・
皆さん乙でした!
>>1さんも乙でした!
>>1乙
誰か前スレのネタ全部入りで書いてみてくれw
不可能な部分が多杉www
どう見ても相反してるネタとか多杉て無理があるw
これで…200くらいまではカバーしてる…筈……文に起こしてくれ……
流石に1000まであると中二設定の抽出が糞面倒
・元々オッドアイ→前世で魔に墜ちた神の能力(ちから)『乙女の束縛(ストーキングメイデン)』により目を奪われて隻眼となり、雷神(トール)の力が封印された→今世での因縁
・幼小時に両親と妹を亡くし遺産を引き継ぐが、感情を喪失する→全てを亡くし者という事で零と呼ばれるようになる
→財団のバックアップにより海外の大学に飛び級し博士号を得る→私立聖蘭学園高等部に編入し平凡な高校生活を送る
・妹の面影を持つ神那木 咲埜(かなぎ さくや)に一目惚れされるも、どう接していいか判らず「…別に……」とあしらってしまう
・咲埜の右腕の包帯が解けて封印が解除され、聖刻の共鳴により、魔に墜ちた神界の皇女だと判明
そのうち、前スレで出てたネタを箇条書きにしてまとめてみるか
それはそうと、複数の人間が同じ返事する時に
「「「「「はい!」」」」」
とか
「はい!!」×4
みたいな風に書くのも中二病のうちに入るんだろうか
ネット上のSSでは頻繁に目にするよな
なんで普通に
『クラスのみんなが、いっせいに元気よく返事をした』
とか書かないんだろうか
発想が、記号なのも厨ニ病。
紅の螺剣・・・
カッコイイ!
ここってSSの投下おkなの?
もちろん
17 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/10(月) 04:30:08 ID:fxuZ/O08
強烈だなwwwww
見出し見ただけで目眩がしたぜ
絵がきめえwww
無駄に膨大な設定集を作り、
キャラ紹介にイメージCVとか書き始めたら危険信号
さぁ、今日から君も中二病だ!
AA長編板住人の俺が来ましたよ
描かれていく内に途中参加者が増えて世界観やら何やらが膨れ上がる例はあるが、描く前の段階でここまで作り込んであるのは珍しい
普通は中絶するところだが、母体がAA描きの雑談スレだったからどんどん話が進んじまったんだな
AAに起こす事よりも、皆で設定を練るのが楽しくなってしまったように見える
リレー小説ってあるじゃん
リレー小説
毎回毎回新しいスレッドに「僕の考えた最強キャラ」を登場させて
めちゃくちゃに活躍させて
飽きたら放置するやつってなんなんだろうね
この七年間、あいつらが関わった作品で完結したのってまだ一桁だけだよ
つかよくもまあ七年も同じこと繰り返せるよな……
23 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 01:58:36 ID:cqPagkxX
前スレから統括、よくある中二病な設定のまとめ
【主人公編】
・感情が昂ぶると意識を失い、謎の力が発動して敵が死ぬ
・口癖は「別に……」「だりぃ」「うぜぇ」
・魔眼(邪気眼)を持っている
・腕に包帯を巻いている
・両目の色が違う
・隻眼
・銀髪
・美形
・アルビノ
・頭痛持ち
・不死身
・記憶喪失
・多重人格
・能力が封印されている
・実家は武術道場。鍛錬はさぼりがち。でも誰にも負けない
・代々暗殺者や武術家の家系で、若くして歴代最強の称号を持っている
・主な武装はピアノ線や日本刀。銃と刀が合体したような謎の武器も使う
・バックに強大な財閥や裏組織がいる
・学生だけど親とは別居して一人暮らし
・微笑んだだけで女の子が惚れる
・頭を撫でただけで女の子が惚れる
・名前が「零」
・前世が神話関係者で、必殺技も神話の単語から引用が多い
・斜に構えた性格で口数が少ない。作者が言うにはクール系
・この世は弱肉強食だと思っている
・大人はみんな敵
・謎の組織から追われている
・実は超天才
・悲しい過去を持っているが、それが自業自得でも誰も主人公を責めない
前スレから統括、よくある中二病な設定のまとめA
【作者&本文編】
・原作を未プレイ・未読なのに二次創作を書き出す
・文章作法を一切勉強せずに書き始める
・設定を考える時でも下調べをろくにしない
・キャラ数人が同じ台詞を言う際に「はい!」×3 や 「「「はい!」」」
・携帯やネットの掲示板感覚で、台詞の後に「orz」(泣)(ぉぃ)
・小説なのに、台詞の前にキャラの名前を書いてしまう台本形式
・自分の考えた設定>公式設定
・主人公は、作者の願望を投影して常に最強
・本編が完結していないのに外伝が始まる
・細かい設定集を作り、登場キャラのイメージCVまで作成
・既存のアニメ・漫画・小説から設定や文章の引用が多い
・正論を言われたり、引用を指摘されると逆ギレする
・出入り禁止を言い渡されると「受験なので気が荒んでいました許して下さい」
・聞いてもないのに「初心者です!」と言い張る
・後書きで作者と登場人物が対談。大抵作者が殴られるか死ぬかで終了する
・作中では『side〜』と頻繁にキャラの視点が変わる
・罫線と三点リーダーをとにかく多用
・過剰なまでにスペースと改行を使用
・戦闘シーンでは擬音を連発
・難しい漢字の羅列が大好き
・意味が分からなくても横文字が大好きで羅列
・「死」や「殺」だけでページが埋まる
・「五月蝿い」「否」「刹那」という単語を好んで使用する
・頭のいいキャラを作ろうと、学術書などから理論だけを抜粋して本文で使う
・でも作者自身がそれを理解できていないのでよく分からない内容になる
・もしくは完全に間違っている
・原則的に主人公は童貞で恋愛下手。理由は作者自身がry
アルビノのヒロインって中二かな?
27 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 11:30:16 ID:Sgo07uFW
作者&本文編のラスト見て思ったんだが、女邪気眼が書いた女主人公は美少女で
敵味方問わず貞操を狙うも寸でのところで何故か毎回喪失しない鉄の処女が多い
基本的に次々と愛されるも恋愛下手だが、理由はやはり作者自身がry
そして作者自身は美少女でも何でもなry
28 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 11:31:35 ID:Sgo07uFW
前スレから統括、よくある中二病な設定のまとめB
【物語の設定・ファンタジー編】
・交通事故で異世界に飛ばされるシーンからスタート
・最初はシスターかエルフと接触
・「神様」を登場させて、細かい理由は全て神様がやったからと丸投げ
・神様や死神といったキャラは、なぜか大抵ノリが軽い女の子
・
【物語の設定・学園編】
・
・
あとは任せた
アルビノは本物見たことない奴だけが憧れてるんだよな。
とりあえず本物一回見ろと。ネットの写真でもいいから。
・男:穴空きグローブ
女:ノースリーブ、又はアームウォーマーを着用。穴空きグローブの本当の役割を知らない
・成り行きで試作や規格外の武器やロボットを使うことになるが、「何故か」最後まで使うことになる。
・仲間になる予定だったら、意見が食い違おうと、敵だろうと「何故か」直接戦う事はない。仮に戦ったとしても手を抜く
・主人公と戦わない自称「ライバル(笑)」
・敵がやたらと不幸自慢してきて、萎える
そのくせやってることが小者くさいのでタチが悪い
・DQNは最後までDQN
・やたらと「心」とか、「闇」と言う言葉を使う。
大抵は怒ることや悲しむ事が悪(笑)
・「お前が言う立場か」と思う奴がやたらと説教する
・指を組んで祈るヒロイン、実態は尻軽女だったり空気だったり
・悲劇モノを書くが、一番悲劇的なのは作者の頭の中
アルビノを悪役に使うんじゃねぇ!(映画とかで)って主張してる海外の人だか団体がいるってね
見た目怖くて悪役っぽいから、よくネタにされるんだってさ
女邪気眼で男にモテモテのパターンって見たことないな
逆ハーレムは、二次創作(でドリームとかいうジャンル)のメアリースーさんたちだよね
個人的には、中二病って一次創作が邪気眼で、二次創作がメアリースーだと思ってる
女邪気眼って、ただのメンヘラな気がする
レイや長門に代表される、無口な不思議系少女や
BL好きな少し腐女子な程度までならともかく
メンヘラまでいっちゃうと異性にモテる要素は皆無になるからじゃね?
中二病小説のヒロインじゃなくて、ホラーというジャンルの
一登場キャラとしてならありかもだけど
まあ、確かにリアルのアルビノって不気味に見えるが俺はそれを含めて大好きだ
というか俺も顔の一部が色素無(ry
近所にリアルアルビノ幼女がいるけどかわいいよ
凄く大変そうだけど
アルビノは基本的に虚弱体質であることが多いらしいしね
にしてもこのスレから凄まじいダメージを受けるんだが…
肌や髪が弱いから、そのへん痛んでる感じの人が多い気はする
小さい子は新陳代謝活発だから綺麗なのかも
24 :創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 08:20:45 ID:Anwh9s4l
前スレから統括、よくある中二病な設定のまとめ
【主人公編】
・この世は弱肉強食だと思っている
この指摘は記録に残していいほど、恥ずかしい指摘だぞ
テンプレが中二病な指摘をすることほどイタイことはないだろう・・・
スウェーデンかどこかの超福祉国家出身の人ですか?
弱肉強食を言い訳にして理不尽な物語を書くのが厨二ってことだろ
用事もないのにケガした人放置とか、まあこの例だと面倒事が嫌で片付いちゃうかもしれんけど
弱肉強食だと思ってるが実際にはそれを理解できてないってことじゃね
主人公に都合のいい弱肉強食だよな
中二なSS読めば分かるが、本当に弱肉強食語ったりするの多いぞ
なんか理不尽に人間殺しまくって
「お前が弱いから負けただけだ。弱いから悪いんだ」
とか、主人公が俺様理論を言い放ったりとかな
作者が弱肉強食を自分に都合のいいように解釈して書いてる
以前だったら悪役のセリフと役回りだよなw
逆にうまい厨二系の弱肉強食の使い方はどんな感じなのだろうか
反則的に強いはずの描写されてる主人公がホームレスにぼこられたあげく裸で川に捨てられてた
うまいかどうかは不明w
だめだ、悪役に対して皮肉的に使うくらいしか思い浮かばん
後は人肉食って強くなるとかの設定にしてみるみたいなのしか
自分に都合の悪い状況でナルシストっぽく自嘲気味に弱肉強食って言ってる情景が浮かんだ
弱肉強食を唱える悪役が敗れる→皮肉なもんだね パターンが
完全に陳腐化しちゃったからなあ
そろそろ書かないか
ギャルゲ?
中二的な創作?
ギャルゲ一択だと思ってたぞw
厨二でもいいけども
いやこのスレに呼び掛けてたんだ
俺様達しかいない件www
ギャルゲは無理だなwww
無茶苦茶な量の設定を読者に伝えようと詰め込むのも中二だねえー
>>41 強い悪役を倒す為に敢えて弱肉強食論で鍛えて
対抗する力をつけるのなら書いたな
57 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 09:24:43 ID:yVX/6BOL
10万の将兵食わすのに幾らかかると思ってるんだ
59 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 10:33:04 ID:yVX/6BOL
500円×3食×兵士10万人で1日1億5千万円
全軍の5割は非戦闘員だから、500円×3食×軍属含めて20万人で1日3億円
うんこ200g×兵士10万人で1日20t
全軍の5割は非戦闘員だから、うんこ200g×軍属含めて20万人で1日40t
ファンタジー+ラノベ+ネット小説だとこんなもんで平均点だろ
糧食1日当たり3`と計算して1日30万d
1ヶ月かかるなら900万dの兵糧がいる
問題は900万dの穀物を取る田畑を
どこから持ってくるのかというところだな
いやいやいやいや、一日3キロとかありえないから
冷静に考えろ、米の5キロ袋の半分以上を一日で食うのか?
水
水は当たり前だが兵糧には含まれない
砂漠でもない限り基本現地調達
まぁどっちみち長期戦で動くなら略奪込みで5万前後
大規模会戦でやっとこ10万以上の兵員が出せる
農閑期で暇な時の短期決戦が基本だから
何年も戦争してたら破産する
十万動員できるのは秦漢帝国とか帝政ローマとかペルシアレベルだね
中世期はアジャンクールみたいな大会戦でも、兵力的には意外にたいしたことない
んで経済や社会体制の裏づけもそうなんだけど、
騎士様とか出てくるお話で大兵力をやるのは軍制上むつかしい
守備軍主体で国中あわせて十万とかならともかく、兵力十万の野戦軍はきびしー
ファンタジー世界なら、そのへんうまく魔法で解決できるのかもしらんけどね
皇国の守護者の導術みたいな通信兵的運用で
まあ、十万とか言っちゃうのは三国志演義みたいな誇張表現だと考えればいいかもだ
曹操TUEEEEE兵百万動員wwwwwwwwみたいな
軍隊って本当に非生産的だなあ
67 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 14:26:20 ID:yVX/6BOL
・1592年4月〜1593年4月まで海の向こうで交戦。総兵力16万
・1597年2月〜1598年11月まで海の向こうで交戦。総兵力14万
68 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 14:37:59 ID:yVX/6BOL
安倍晴明クラスの陰陽師でも従軍してたのか?
うん、その二つの役の軍事行動としてのインパクトはちょうど十字軍みたいなもの
なぜなら各大名家の兵力がヨーロッパの一国分の軍隊ってぐらいに規模が大きく、
組織化もされていたからね
近世期の戦国武将の軍事組織なめちゃいけない
中世時代の兵員の数が少ないのは装備も不十分だから
騎士身分以外の兵士は本当に軽装
15世紀当たりだと近代なんで、穀物の生産性も高いし
武装もちゃんとした物が揃ってるから、当時20万くらいは集められるでしょ(大阪の役)
徴兵に備えて武器・防具を自費で揃えるのが義務だったローマ軍と同じく、
戦国時代、雑兵として戦った農民達も槍や弓を自腹で買って戦った、短期バイト感覚だな。
兵農分離っつっても、武士が20万もいる訳はないし。
72 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 16:42:44 ID:yVX/6BOL
足利幕府滅亡が中世と近世の区切りだから、文禄慶長の時点だと中の人が同じで中世との違いは皆無
欧州各国の正規軍が精々数百〜数千なのは、傭兵制度だから
穀物の生産性が上がったから数揃えられたんじゃなくて、作付面積あたりの効率が米(アジア)>>>小麦(欧州)だから
なんかファンタジースレと同じ流れになってないか?
岩みたいに硬い乾燥パンは日持ちがいいし
日本の糒とかに比べれば腹持ちもいい
結果として日本の外に遠征することがなかったのかも
76 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 17:26:45 ID:tRonD9me
火→緋 うるさい→五月蝿い
黒→玄 それ →其
あなた→貴方 〜したまえ→〜し給え
栄→榮 一→壱 馬鹿→莫迦
真→眞 能力(ちから)
あれ? 貴方って常用外漢字だっけ?
中二系のSS読む時、三点リーダーじゃなくて中黒が
毎回適当な数だけ並んでたりするのはまだ我慢できるようになった
でも照れた女キャラのセリフの後に///とか書いてあったらもう無理ッス
ネトゲ気分で記号使われるのはどうしても拒否反応が出る
79 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/14(金) 18:22:38 ID:623n9Ovf
もう俺らで世界観構成していろいろやっちゃおうぜ
あ、AAスレの二番煎じか
>>78 文章作法についてやたら気になる、口出ししたくなる……
こういった症状は、文章書きの厨二病といえる。
そのうちどーでもよくなるもんだよ。
ちなみに文章作法も当然のことながら年代によって変わる物で、つい数十年前まで
クエッションマーク、エクスクラメーションマーク、三点リーダは嘲笑の対象でした
?とか!とか…とかついているだけで文学じゃないみたいな
砕けた小説には使うこともあるけれど
本気のには使わないもんね
使うのは――、これはおkかな
数十年っていうか6-70年前じゃないかなw
純文なら今でもでしょー
いや、イクスクラメーションや三点リーダは普通かな
文学賞級の作品でもね
まじかよ
純で!やら…は読みたくないなあ
連打されてたらそりゃ引くけどさw
しかしファンタジーと中の人もろかぶりじゃねーかw
「様子か……?」
川端康成『川のある下町の話』
「サクラ、サクラ、ヤヨイノソラニ……」
井伏鱒二『黒い雨』
――嗚呼、しかし、破滅以外の何物があり得るか!
坂口安吾『青春論』
手元の本ちょっと拾ってもこんな有様なんだぜ
ってか使ってない本が見当たらないぐらいの勢いだ、びっくりしたw
>>88 ああ、過疎だからな……
>>89読んで涙目w
小説っていう文化の輸入と同時に入ってきたのかもなー
ごめん適当言った
偏見は良くないって言いたかったんだ
いや、意外な発見だったぜ
確かにあまりないだろうなと思って見に行ったら「!?…」だらけだった、って感じだ
どうやら戦前の作品になるとかなり頻度落ちるっぽいよ
内田百閧ネんか、いま一冊ざっと眺めた感じでは使ってないっぽい
仮名遣いの変遷が影響してるかもね
豚。
そこにはふたつの世界があった。
空の世界「ウィルシエロ」と大地の世界「ラッテル」。
このふたつは空と大地の狭間「インターヴァル」の領地を巡り争いを始めた。
これは空と大地の争いの最中で出会った、
空の少年ウィルと大地の少女ファナの物語。
ふたりは世界を超えて絆を紡ぎ、理不尽な世界を見つめることになる。
昔の俺のノートの片隅に書いてあった設定。
これをどうするつもりだったんだかな
>>93 俺の手元で温めてて腐り落ちた厨二ストーリーと女の子の名前一緒なんだがwwww
それはさておきあれだな、壮大なイントロっぽいのを書きたいお年頃だったんだろ
>>76 京極なんかもっとひどいけどな。
煩瑣い(うるさい)怯気り(びくり)
却説(さて)〜し乍ら(なが-ら)
真逆(まさか)鬼魅が悪い(きみ-)
努努(ゆめゆめ)
――も多すぎ。
わざとのところもあるだろうけど、読みにくくてしょうがない。
>>93 ヴとか使いたくなる時期ってあるよなw
ヴィジランテのパニッシャーとか悪役を示すヴィランとか
日本に入ってきたときに”ヴ”に変えられるんだよ
ビランと書くとなんか病気みたいになるしな
ビジランテ検索するとPCエンジンで、ヴィジランテ8で検索するとPSだ
ヴ、て最初見たときどう発音するのかわからなかった
ゑ、を読めなくて「るふ」と呼んでいた恥ずかしい過去…
おばあちゃんの名前が○○ゑだったなー
>97
「ゐ」を「ぬ」の変形か何かだと思ってなかったか?w
ゑゐ!
>>99 エスパーかお前……
もちろんその通り、「ぬ」て呼んでたんだぜ……
はさみさんの口調では積極的に使いますね
妄想ばっかじゃなくてデカいことしようぜ
例えばどんなこと?
ギャルゲ創るとかな
なぜギャルゲにこだわるww
流石にギャルゲじゃなくてもいいだろwww
ロリババァでギャルゲ作ってくれ
バレバレだな
流石になwww
>>113 難しいな、悩む
二人いっしょではでめだろうか
ロリババア姉妹とな!?
>>115 それでお願いします
お頼み申す、お頼み申す
まことに不躾ではございますが、お頼み申す
君らの書く話は根本的に設定倒れだから
こんな感じか。
姉「のう、○○。わらわとコレではわらわの方が魅力的じゃろう?」
妹「何を言うか。姉者よりワシの方が胸は大きい!」
てか、スレ違いだし該当スレに帰ろうぜ。
>>119 すまない、つい脊髄で反射してしまった
申し訳ないことをしてしまった
まさに中二病の王道ってのを誰か書けよ
一般受けしない鬱展開を入れれば何でも厨二病
リスカなどの自傷癖がある
女はレイプ体験有り
他の人とは違う、私カッコイイ
登場人物が頭で物を考えてない
惚れた相手が死んだ”程度”のことで激しく動揺
精神的に未熟でストレスに弱い
状況を受け入れるだけで行動で解決しようとしない
その癖、行動しなかったのが原因で悲劇が起こると嘆く
出てくるキャラに知的探究心が無い
客観的視点で物を考えるキャラがいない
危機的状況の予測回避が出来ない
何をされてもブチギレない
人を殺すのに一々躊躇う
目の前で肉親が死ぬなど些細なことでトラウマになる
目の前で恋人でレイプされたのをわざわざ気にする
自分>>>>>他人であることが理解できてない
偉業はそのうち忘れられるが、知識は人類が滅亡するまで残るのが分かってない
何も持ってないので何でも欲しがる
逃げるべき状況で逃げない
価値の無いことに価値が有ると思い込む
身元確認>顔を確認>暗殺をせずに、なぜか正面切って戦う
追い詰めた時に言わなくてもいい事をベラベラ喋る
喋った情報を元に誰も復讐しにこない
いじめられっこが給食当番でスープに小便を入れるなど、陰湿な方法で復讐しない
生意気な客が来ても、なぜかハンバーガーに鼻糞を入れない
そもそも相手が復讐されてることに気付いてない
犬の糞が入ったカレーを美味そうに食ってるのを笑わない
誰にでも公平に当たるという人間として当たり前のことが出来ない
トップに立つ奴=人徳がある=口先だけのチンカス
利用価値の無い捕虜を拷問にかけて証拠を残したがる
出てくる犯罪者が全員馬鹿なので、現場が痕跡だらけ
通常、親しい人への対応とそれ以外で対応が分かれるが、容姿などでも細分化する、無論そんな行為に意味は無い
スリル目的のセコイ窃盗行為など、意味の無いことをするのが大好き
スリルが好きな癖に、自らの命を危険に晒す超一級のスリルは楽しまない
勝負すれば勝てると自信満々だか、正々堂々と勝負する人間などこの世にはいない
自分が死ぬのを無意味に怖がる
怖がる癖にやっぱり逃げない
事実確認を怠る
女は一発ヤれば飽きるが、セックス以外に人生の楽しみが無い可哀想な人なのでひたすら腰を振る
全ての分野に於いて幅広い功績を残すのが天才
野球しか出来ないのは天才ではなく、ただの野球馬鹿
形骸化したレッテルを本気で有り難がる
自分より弱い立場の人間を見つけ出して虐めるのが大好き
自分より立場の強い人間のケツの穴を舐めるのが大好き
お粗末な脳みその中身で嫌われてることに気付いてない
現実から学ばない
やることなすことユーモアが無く笑えないので、見ても聞いても話しても面白くない
専門用語や横文字ばかりで何を言ってるのか分からない
突然、リアル社会でモチベーションとか言い出し、他の人に「なに言ってるのこの人?」みたいな目で見られる
なんかだんだん自分が気に入らないものを上げてくスレになってないか?
客観的視点で物を考えた上での話
厨二病があなたを殺そうとしているサイン
自由気ままに行動して愛らしいネコですが、かわいらしく思えるネコの行動の中には飼い主を殺そうと
している事を表わす行動があるそうです。普通に考えるとツメを出し、キバをむき出しにしている姿を
想像してしまいますが、実は普通では気付かないような行動こそ殺そうとしているサインのようです。
では、どのような行動をすると殺そうとしているのか見てみましょう。
■あなたの上で体をコネコネしている
これは愛情の表れのように思うかもしれませんが、弱点を探しています。
■猫用トイレの砂を必要以上に掘る
これは遺体を埋めるための練習をしているようです。
■ジーと見てくる
目線をそらすと自分より弱いと考え襲ってくるそうです。
■動物の死体を持ってくる
これはプレゼントではなく警告らしい。
■草をむしる 殺意ネコ
苦い草を食べて除去することで、心身共に戦う準備をしているそうです。
■暗いところに隠れて様子をうかがう
これは自然体の姿を観察しているそうです。
■電気機器の上で寝ること
外部との通信手段を絶とうとしているらしい。
■あなたが寝ている時、あなたの顔を前足でイタズラしている
口をふさいで窒息死させようとしているらしい。
■部屋に入ろうとしたとき、すごい勢いで飛び出してくる
待ち伏せ失敗の時にとる行動のようです。
それ注意書きつけた上でs−1に投下してこいよw
やめてwww
こぴぺなの
終末と退廃の相思相愛(アイコロ二ー)
第一錠 英雄(ヒーロー)症候群
この世界は狂ってる。親も友達も教師も政治家も皆だ。
俺は救わなくてはいけない……この暗黒たる冥領に侵された世界を……
「エターナルフォースブリザード!!」
「ぬぅ…G氏やりますな!ならばこっちはファントムアクサノイド!!」
うるさい奴等だ。こういう奴等がいるからホンモノが穢れてしまう。
「うわーそこでその技を使うとは…ひひひ」
うぜえええええんんだよおおおおおおおおおおおおお
俺はたまらず冷気暗転砲を繰り出した。
彼等の体は氷の彫刻のようになり悪意を持った春風によって砕けて散った。
「ち…まずいな。今日は入学初日だってのに2人も殺しちゃ後々まずい」
仕方がなく肉体再生と時間急流反転を1の3掛けて復元をする事にした。
常闇の盲目は見つけたか……?
よしそれなら良い
このまま引き続き潜伏調査に当たれ
「おい!そこの奴等!煙草なんか吸うな」
声のした方を見るといかにも委員長タイプの男がチャラそうでヤクい男達に向かって叫んでいた。
「またやってるよ…アイツ。ホント中学の時から変わらず懲りないよな」
「ああ全くだ。一回も止めさせた事なんかないのに。のれんに腕押し状態だよな」
「それにしても奇遇だ。またお前と同じクラスになったなんてな」
「ああ、あの事件以来俺たちは切って切れない腐れ縁に付きまとわれているようだ」
「あの事件か。。昔の事ながらつい昨日ように感じる。俺の心はアレ以来壊れたままだ……」
「でねー美樹本。杏だったら私の事アホの子って言うんだよーひどいよねー」
「いや、お前相当のアホだぞ(笑」
「マジでー酷いよー」
「まあ俺はお前のそういう所に惚れたんだけどな」
「ちょっ恥ずかしいよー(///)」
俺はこの幸せそうなカップルすらも引き裂かなくてはいけないのか
一体ボスに何の意図があってこのような命令をするのだろう?
しかし、俺はボスに命を救われた身、ボスの命令は絶対だ
それがボスに対する恩返しになるならば…
感じる……すごい悪意
震える……この世界
怯える……私の心
このせかいのはめつがもうすぐそこまできているというのです
ああこのままではわたしたちはおわりだどうにかしないといけない
そのためにはいけにえがひつようだはやくはやくもっといけにえをあつめないと
「あの子可愛くないか」
「そうか。俺好みはその右の席の子」
「しかし俺等男子校生だった者にとっちゃここは天国だぜ」
「あああの頃は酷い。ロクな女に有り付けない。去年一年付き合ったの11人、セックスしたのたったの29人とか笑えない」
「特に酷かったのが女子校のお嬢様だよな。お話するだけかと思ったとか笑わせんなよ」
「抵抗するから無理やりヤッた。でもああいうのも病みつきになる」
「はあーい。こんにちわ〜、担任の奈津麻奈美で〜す。1-βの皆一年間よろしくね〜」
担任の麻奈美を拉致すると手錠をかけ、みんなで強姦した
「足の腱を切っておこう」
「舌を切り取れば、逃げても証言も出来ないぜ」
「監禁する時の常識だな」
前歯をペンチで引き抜き、強制的にフェラさせた
「うぼぇぇぇっ」
「この糞アマ、俺のズボンゲロ塗れにしやがった」
「仕置きに割礼してやろうぜ」
陰核の皮を引っ張りはさみを入れると勢いよくびりびりと毟る
「いぎぃぃぃぃっ、ふひっ、ふひっ」
ペットボトルを突っ込んだりして遊んだが、その内飽きてきたので
20m近い縦穴を掘りそこに生き埋めにして処分した
「これだけ深ければ見つからない」
「警察は無能だからな」
男達の笑い声が山林に響き渡った
>>135 男達の笑い声が山林に響き渡った。
すると突然、まばゆいばかりのスポットライトが
縦穴から飛び出した麻奈美を映し出す。
「悪いSE-I-TOは」「ど・こ・だ!」ステージに麻奈美の声が響く。
詰め掛けたオーディエンスは麻奈美の久々のステージに期待で爆発しそうだ
今晩も伝説のリリックが聴ける。ストリート生まれヒップホップ育ち。
本物のラップが聴けるのだ
キャップを斜めに被り、オーバーサイズのTシャツを来た生徒の一人が
ターンテーブルをいじりながら目で麻奈美に合図する。
重たいサウンドがスピーカーから響く。ショウの始まりだ
「ここでTOUJO! 私がTANNIN! 鬼のGYOUSO! 麻奈美SANJYO!
違法なMAISO! 生徒達TOUSO! 穴から私が呼ぶGENCHO!
(ドゥ〜ン ドゥンドゥンドゥ〜ン キュワキャキャキャッキャキュワキャ!)
給料減少! 仕事は勉強! いつでも大変! 授業の時間!
冷たい世間を生き抜き! 合コンで息抜き!
公務員でAN-TA-I! でもモンペアはMONDAI! そんな毎日リアルなSONZAI!
SAY HO!(HO!) SAY HO HO HO HO!」
麻奈美のプレイも好調だ。オーディエンスの熱狂は怖いくらいだ。
まだ俺らの時代は始まったばかりだ、
そんなメッセージがマシンガンのように麻奈美の口から飛び出していく。
本物のヒップホップ。それがここにあるのだ。
消火器で頭をカチ割り体を鋸で六つに分解すると
こそぎ落とした肉を潰し、骨はミキサーにかけて粉々に磨り潰した
歯の治療痕から足がつかないよう、あらかじめ抜いておくのも忘れてはいけない
「魚の餌にしてやろうぜ」
「フェリーから撒くか」
平日ですいているフェリーに乗り合わせ持ってきたスチロール箱から
細切れになった女の破片をばら撒くと、喰いに来た魚が飛び跳ねた
「釣竿もってくればよかった」
「帰りにもう一匹拉致るか」
高校の校門前に車を止めるとめぼしい女にあたりをつけ追跡
わき道にそれた所を後ろから刎ねて、車の中に押し込む
「ちょっと強く当てすぎたな」
「まぁ、いいじゃん、どうせすぐダメになるし」
相方に運転を任せる隙に、俺は後部座席で女の顔を何度も拳で殴りつけ
抵抗力を奪うと、鼻血を垂れ流しながら命乞いする女に無理矢理突っ込んだ
「うわ、裂けた」
「おいおい俺の車汚すなよ」
拳が痛くなってきたので女の顔に肘を打ち込むと気絶した状態のまま
廃墟の中に連れ込みいつもの部屋の中に押し込むと外側から鍵をかけた
「今回のはあまり抵抗しなかったな」
「今度の玩具はどうやって遊ぶ」
これだけのことやっても俺は未だに捕まってないし
捕まる気も無い、動機も証拠も無いのだから捕まえようが無いだろう
この調子で六人ほどバラした所で飽きた
138 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/15(土) 17:33:53 ID:Tu0i9wrY
中2病を拗らせて第二期症状になった感じかな?
世の中にいる凶悪犯罪者と呼ばれてる連中は実際にはたいしたことは無い
犯行がバレて警察の御厄介になってる時点で間抜けだからだ
トーシロがよくやる失敗は次の内のいずれかに必ず当てはまる
・被害者を生かして返す、論外だ
・自慢して仲間を増やす、コンクリ詰め殺人?話にならない
写メ撮って自慢して見せびらかした豚もいたな
・証拠を残す、ビデオを撮ったり写真を撮るのは論外
雑誌に犯行声明など間抜けの極致だ
・自分と繋がりのある人間を狙う、真っ先に疑われる人物は外す
ムカついたから仕事先の女を殺すなど論外
・欲を掻く、女がキャッシュカードを持ってたからと
金を降ろしに行く奴は多いな、論外
「まぁ、そんな訳でテメェが幾ら助けを待っても無駄」
「俺達二人だけの”秘密基地”だからよ」
ずりずりと這いずり回りながら逃げ惑う、女の顔を何度も蹴り上げ
うつぶせに転がし薄汚いケツを踏みつけると、タイラップで親指同士を締め付ける
「下手な手錠より、しっかりしてるだろ」
「あんまり暴れるとうっ血して指ごと抜けるぜ」
ひとしきり拳法ゴッコで技の練習代にしてボコッたあと
ナイフで足の腱を突き、舌を中ほどから切断しホチキスで傷口を止めた
「あひゃあふへ」
「はぁ、何言ってんのか、わかんねんだよ、このスベタ」
「殺しちゃうよ、死んでもいいの」
二人がかりで腹に蹴りをブチ込むと叫び声を上げながら
女がのた打ち回り糞を漏らした
「あぁあ、とうとう漏らしちゃったよ」
「今日からテメェウンコちゃんな、ぎゃはは」
女の髪を掴み漏らした糞の上にツラを叩き付けると
ボロボロと泣きながら痙攣する女を観察して楽しみ、飯を食わせてから家に帰った
>>138 厨二病だったら正義の味方が助けたり、奇跡が起きたりして助かります
そういうご都合主義がない世界として書きました
見事な実演、痛み入ります
暇だから中二病的な推理物書いてたら中二な主人公が事件発生を食い止めたよ。
なんだかなぁ。
良いじゃん。
最近では「名探偵がいるから事件がおきるんだ!」
とか、理不尽なことを言われるんですよ
犯人が実は二重人格で被害者だったのだ
名探偵自身が犯人という中二小説なら書いたことがある
>>145 中二どころかプロでも書いてるぞ
黄●い部●とか
叙述トリックてむずくね
147 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/16(日) 00:14:20 ID:5lrVbm4a
・兄者が警察の超キャリアだから地方の所轄は顔パス
・家は超金持ちな名家
・毎回旅に出る
・毎回旅先で淡い恋心を抱かれる
・筆者がでしゃばる
浅見光彦wwww
・毎回出会った女に淡い恋心を抱かれる
・誰か死ぬと毎回猫がさりげない行動でヒントを出す
・さりげなさが売りだったのに、だんだんとさりげなくなくなる
・最後には、地面に前足で直接犯人へのヒントを書くようにまでなる
三毛猫ホームズ?
厨二かなあ、あれ…
西之園さんもけっこう厨二キャラか
なんか中二じゃないの上げてった方が早くないか?
…思い付かないけど
適度な中二病は話のスパイスになるが
スパイスもかけすぎたらまずくなる
そういうもんじゃろ
ましてやスパイスそのものを食わされるとかもってのほかだよな
西之園とか、上西之園、下西之園という苗字は鹿児島に多い
神のごとき力を持ち、あらゆる世界を渡り歩く
超絶美形の主人公も多いよな
二次創作の場合、大抵は有名なアニメやら漫画作品に介入していって
チート能力で原作破壊をしていくという
中には自分の書いた一時創作のキャラが
そのまま二次創作の主人公に移行する場合も
よし、ちょっとそれっぽく書いてみよう。
ドカーン!!ガガッ!
魔方陣の中で目が覚めた俺は辺りを見回す。
「俺は・・召還されたのか....」
あと30000年ほどは眠っていたかったいうのに・・・・。
俺が呼ばれたということは…、
「やれやれ。また俺は世界を救わないといけないのか。」
渡り神としての力を行使して、この世界を調べてみる。
「全能なる精霊達よ、俺に知識を与えよ」
──アクセス、完了──
ここは地球・・・だと・・?
「それに・・・リリカルなのはの世界か・・・・・・・?。」
それなら、魔導師としての俺のランクは・・
「SSSといったところか・・・。くっ、力が1/100以下に落ちているな・・」
いざとなれば封印を解く必要がありそうだ。
ここまで書いて羞恥のあまり鼻血が出そうになったので筆を止めた。
159 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/17(月) 16:39:35 ID:/eeDoJOV
なのはでなごんだ
さて極力中二なストーリーの粗筋でも考えるか……
ここは欲求不満なインターネッツですね
てか中二病じゃないだろ、それ
すまん
別の中二スレと間違えた
163 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/18(火) 05:21:31 ID:+ddezpTT
>>156 ・父が元国立大学長
・叔父が県警本部長
・叔母が県知事婦人
・16才の時に両親を事故で亡くす
・マンション最上階2フロアぶち抜きの家で執事がいる生活
・美人、聡明、一途、処女
・名前が萌絵
>>163 箇条書きマジックでもなんでもないというか逆に大人しく感じるwwww
165 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/19(水) 18:35:23 ID:P8bXY5Wy
高園、前園、西之園…確かに鹿児島出身の名前の知り合いはこんなのだったな
伊集院ってのも鹿児島だし、あっちは意外と中2病感性を刺激する苗字が転がってるんかもね
明治維新で爵位もらったやつも居るんで、名家名族要素を入れるには、鹿児島系の苗字が意外といいかも
邪気眼で能力バトル物書けばなんかいけそうじゃね?
つまり邪気眼で厨二病な超能力を考えればいいってことか?
考えますかな
>>167 聖杯を巡って、過去の英雄達を召喚して戦う魔術師の話とかどうだろう?
主人公はもちろん学生がいいな
必殺技の名前を無理矢理なルビ振って、
互いに叫び合いながら大バトルとか、超燃えそうな展開じゃね?
あ、でも過去の人って服装がダサいから
いっそ全身タイツとかにしても面白いかもしれないな
あえて日本の英雄?でやってみるか
卑弥呼
聖徳太子
源義経
空海
織田信長
天草四郎
坂本竜馬
沖田総司
実在の人物で人気どころだとこんなところか
あんまり史実に基づくと中二っぽくないかな?
>>166 バトロワなんて企画はモロ厨二病っぽい
組み立てる力がないのを誤魔化せるし
設定が厨二病の作品はまだ良いと思う
表現が厨二病の作品の方が致命的だと思う
174 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 12:33:38 ID:gA2DV+HK
>>167 矢を巡って、幽霊を召喚して戦うロクデナシの話とかどうだろう?
主人公はもちろん学生がいいな
あ、でも幽霊って服装がダサいから
いっそ全身メタリックとかにしても面白いかもしれないな
もしくは、精神波の名前を無理矢理なルビ振って、
互いに叫び合いながら大バトルとかも、超燃えそうな展開じゃね?
175 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/20(木) 12:51:35 ID:zEcUgKaD
以前シモ・ヘイヘがアーチャーとして召喚されたらって妄想してた
厨房の頃の妄想漫画w
魔王が封印500年後に復活して勇者一族に復讐しようとするも
時の流れは無情、ガトリングガンとかで部下フルボッコで第一話終了
邪気眼って発動すると別人格に切り替わって普段包帯で巻かれた右手がARMSとか寄生獣とかぬ〜べとかになって
なおかつ身体能力が向上してチートみたいな動きをするんだろ? しかも発動中はオッドアイ。普通の戻るとしばらく動けない。
『邪気眼』は(ガンダムみたいな特別な)超能力の一つとして、他にも能力者を出して理由付けて戦わせればなんか話になる気がした。
邪気眼は幽白の飛影が使う邪眼が元ネタ、例のコピペも飛影に似てるだろ
最近イラスト系のサイト巡りしてる時
金色の瞳 + 青い巫女装束 + 蛙と蛇の髪飾りという外見に
台詞が「常識に囚われてはいけないのですね!」といかにもなキャラを良く見かける
元ネタがSTGだから手を出せないんだけど
どんな感じ?
極論すれば、デスノートも中二病そのもの
要は作品の精巧さの問題だろう
厨房は料理できないだけ
厨二設定自体はいい素材
>180
東方のことか?
あれは厨二病だが、厨二にありがちな、設定に振り回されたり、やたら鬱展開に走ったり、俺強ええ!みたいな話じゃないからスンナリ受け止められるよ。
ゲームとしても良いものだし、いじれるネタがたくさんあるから色んな二次創作が出てる。
ちなみにその台詞は、今まで常識人だったキャラが、常識外れすぎる周りに溶け込むために言った台詞だから、厨二病の類いには入らないと思う。
ロリコンのエロパロネタだろ
>厨二にありがちな、設定に振り回されたり、やたら鬱展開に走ったり、俺強ええ!
仮面ライダーブラックRXのことだな
東方の世界観は何気に秀逸だと思う。男を出さないとことかwww
里には普通にいるとかいうツッコミは禁止。
東方って二次創作が女キャラばっか選んで出してるんじゃなくて、
最初から女キャラばっかりなのかw
>>186 そんなん言ったらテッカマンブレードまでそうなるだろw
両方とも好きな作品だってのは内緒だ
190 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 15:55:14 ID:WbgzyujZ
逆に中二病じゃなくて面白い漫画ってある?
ストーリーを良くするには中二病は必要だと思うんだが
>>190 ないだろ
考える以上中二的なものはくっついてくるワケだし
例えば、主人公の親が死んでたり、遠い場所に越してたり、やけにノリがよいのも主人公を動かしやすくするワケだし「魔王を倒すって・・・あなた学校はどうするの?今がどんな時期か分かってるの?」なんてことになったら目も当てられない
192 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 17:36:33 ID:mS6xojUM
>190
サザエさん
あたしんち
逆に聞きたいんだが『厨二病要素』って何だ?
現実的に考えてありえないキャラクターが出てきて、ありえない展開が起こる作品は、全
て『厨二作品』になるの?
さすがにそいつは乱暴な話だわな。
厨二病の元々の意味は、思春期特有の価値観と言動。
高まる自意識と世間に対するズレた認識から生じる、勘違いした『格好良さ』
こんなところだったと思うんだが。
勘違いしたかっこよさというのも乱暴なくくり。
だってかっこいいじゃん。
197 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 18:01:00 ID:mS6xojUM
街頭で十人にアンケートして、八人が「痛い」と感じたら厨二病
痛いと感じなかった二人も中二病だな
>>190 要は
>>182だな。
材料を持て余さず、尚且つ味に懲り過ぎなければ自ずとメインディッシュは出来上がる
誰か今まで出てきた設定を全て使ってリレー形式で書いてみようぜ
文章作法だけは守って、中身は究極の中二で
とりあえずプロローグから
かつて、宇宙開闢時に大神の破片が浄化を恐れて全てを否定した。
それは強大な意思となり、因果律を修復不可能なほどに破壊したという。
残された神々は、時が外に開かれる事を恐れて行動を起こした。
それから、数百億年の月日が流れた……。
俺の名は砕王牙零(さいおうがれい)。
まだ高校一年生だが、俺には普通の学生にはない、とある秘密がある。
俺は伝承に残る、神の子孫と言われている一族の宗主なのだ。
代々俺の一族には、ある特殊な能力が発現することがある。
俺に発現した能力は時渡り。
大いなる意思の導きによって、あらゆる次元を渡る力。
本気を出せば、時間や空間を凍結させることも可能だ。
だが、普段は力の大半を眼帯で隠した右目に封印してある。
あまりに強すぎる力は、世界を滅ぼしかねないからだ。
「あー、前髪が鬱陶しい」
最近鍛錬続きで、髪を切る暇がなかった。
銀髪が視界をちらちらと横切って邪魔で仕方ない。
「ちょっと零君! ちゃんと授業は聞きなさいよ!」
おっと。
委員長が睨んでいる。
やれやれ、真面目に授業を受けるか……。
>>202 パーフェクトだ・・・素晴らしい
とりあえず今までに出た設定のまとめを希望
教師の話を適当に聞き流し、ノートにはそれらしい何かを書くフリをする。
幼い頃から英才教育を受けていた俺にとって、こんな内容は全て頭に
入っているのだ。
ありきたりな成績を維持する事のほうがよっぽど難しい。
ため息をつきながら視線を外に移す。
と、校庭にひとつの人影――
「あれは……!」
とりあえず序盤から戦闘っていうのが定番かと思って……
機関の奴等だな
これは見事な中二病ww
>>205 GGG機関。世界を混沌とし終焉へと向かわせるための組織。もう気付かれたか……。
「先生、腹痛です。保健室へ行って来ます(福山潤voiceで)」
無論、保健室なんて行く気は毛頭ない。目指すは校庭。機関の刺客との一騎打ちの決闘。
「ふふ……久し振りに腕が疼く……」
包帯で巻かれた左腕を軽く抑えた。
>>208 眼帯と包帯両方って
どんだけ力を秘めてんだwwwww
これは良い主人公
210 :
4:2008/11/22(土) 23:19:46 ID:MAGGk6zu
分かりやすいように、名前欄に何作目かを入れてみた。
そして以下続き
------------------------------------------------------------------
「まだだ……。まだ抑えろ……」
校庭に近付くにつれて、腕の疼きはどんどん大きくなる。
「クク……。クククク……」
笑いが止まらない。
久々に血を見られる。
もうすぐ恋焦がれた相手と、殺戮という名のダンスを踊ることができる。
ああ、本物の闘争の始まりだ。
宗主に敵対するのがどれだけ愚かなことか、身をもって教育してやろう。
俺の中の内なる獣が、鎖から解き放たれるのを今か今かと待ち構えていた。
211 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/22(土) 23:21:59 ID:5TAJcyZc
恋焦がれた相手を殺戮すんなwwww
俺の中の内なる獣って表現が凄くいい中二病ww
・嘘次回予告
校庭で零を待ち受けていた機関からの刺客との戦いの最中、
クラスメイトである委員長が無謀にも彼を止めようとする
「零君! もうやめて!!」
「がああああッ! う、腕が勝手にィイイ!?」
「嫌あああああッ!?」
To be continued...
死亡フラグktkrw
腕が勝手にってw
216 :
5:2008/11/22(土) 23:38:51 ID:Xb11PySa
「やあ、やっぱり気づかれちゃったかな」
昇降口にシルエットを伸ばす、赤髪の男
Tシャツにジーンズ。ありふれた格好ではあるが、その男に
纏わりつくオーラは明らかに常人のものではない。
こいつは楽しませてくれそうだ。
ゆっくりと、そして少しだけ時封眼(じふうがん)を開く。
「次元凍結(ディメンション・スクエア)!!!!」
刹那。俺とそいつを取り囲む景色が、淡いブルーに染まる。
このプライベートエリアに邪魔者は入れない。
「ククク…… さあ、始めようか」
----------------------------------------------------
書いてたら次回へ続くになってた!
じふうがん噴いた
書くことが全く苦痛じゃない。
どうも俺自身が中二病だったらしい。
いや中二病って弾けると凄く楽しいぜ?
「刹那。」がいかにもそれっぽい
まだ文字書き始めて日が浅いんだけど
きっと俺はこういうものを抑えていたのかもしれない。
それこそ邪気眼のように。
みんな気づかせてくれてありがとう。
内なる厨二創作眼が新作を求めて赤く疼くぜ
今宵もゴキブリ輪舞を踊ろうかァー!!!!
でもさ、みんなも本当はこういうのやりたいんじゃないかって思うんだ。
だからさ、ちょっとスレ趣旨とは違うかもしれないけど、
みんなの心に封印した邪気をここで吐き出そうぜ。
覚醒するんだ! 我が胸に蠢く邪なるモノよ!
中二病的な武器(刃物)
・女子学生が日本刀
・どう考えても人間に持てないサイズの巨大剣(FF7)
誰かが始めて凄く人気が出て乱発されると中二扱いされるんだな
精神論ばかりの刀・剣でなく、そろそろ実戦で活躍してた槍や弓にも誰か日の光を当ててくれよ
槍や弓を使う主人公が活躍する作品ってある?
うしとら
ナイフは社会的に色々とマズイです><
刃渡り制限をクリアしてればOKです><
>>224 十円玉詰めた靴下で戦う女子高生とかやだなあ
槍や弓は持ち歩くと警察に捕まるから!
盾で戦う主人公とかかっこよくないか?
ぶっちゃけそれだけの重さの鉄塊と殴られるのと同義なので
まともに当たれば骨ぐらいは簡単に持っていく
宮本武蔵も真剣試合中に刀の刃が折れるのを嫌って
木剣で戦っていた
そういやナイフと言えば
キムタク主演の「ギフト」再放送中に
バタフライナイフ振り回したガキが出てきて無期限停止になったよな
爪切りみたいな刃物でも肝臓か喉に刺さったら人生終了する
マチェットとサバイバルナイフはリア厨大好きだな
長さ6p以下のバタフライやダガーナイフが規制されて
長さが80cmのククリナイフを所持許可無しで普通に売ってる日本は面白いと思う
今の日本のなんでも規制する風潮をネタになんか書けそうな気がしてきた
幼女を変態から守るために幼女を規制します。
そして街から幼女の姿は消えた。
幼女を変態から守るためにhentaiを規制します。
やがて街から幼女の姿は消えた。
創作の自由を奪う人間は全員クズ
なんとなく「マンガの影響(笑)とか馬鹿の考えだ」と考えてたらこの流れか
ゴスロリ着て自分の親父を斧でブッ殺すリアルヤンデレや、生きてる女の子をお人形とカン違いしてる王子様(苦笑)
散々余裕こいて困った時にはドラえもんに頼む母子殺害のクサレDQNとか、
そういう奴等がいけないんじゃねぇの?
>>232 梅沢晴人だっけ ボーイだかの人がそんなファンタジー漫画描いたな
すぐ打ち切られたやつ
魔城ガッデム
ソードブレイカーか。
あれは色々と残念だった。
ピッ
そんなタイトルだったな惜しい感じの漫画だった
作者が向いてないことやろうとしたんだろうな
『警報。本日13時55分、ソロモン72区域内アスタロト地区にて発火系魔術による放火事件が発生。
これにより発火系魔術による放火事件が今年度で10件を超えたことが確認されました。
ただいまより72区域内全域にてレベル2以上の発火系魔術の規制を開始しました。
レベル2以上の発火魔法の使用が確認されしだい、使用者を特定、拘束し魔監獄エルサレムに強制連行します』
街のいたるところにあるスピーカーから、はた迷惑な規制警報が流れてきた。
この国ではよくあることだが、こう毎度毎度規制がかかっては魔術師側としても迷惑がかかる。
特に今回など利便性の高い発火系魔術の規制だ。電化製品等が普及しきっていないこの街では
発火系魔法はっとても重宝する。しかしレベル1までしか使えないとなると、せいぜいタバコに火をつける程度の事しかできない。
「困ったもんだ……」
俺は髪の毛をくしゃくしゃとかきむしり、不満の声に溢れる街をゆっくりと歩いていた。
アスタロト地区なんて、俺の住むベリアル地区と何万マイルも離れているわけで。
そんな遠くの場所の事件でこっちまで被害を被るのはたまったもんじゃない。
民衆もそう思っているようで、広場では魔術師たちが集まり、政府への不満をぐちぐちと語り合っていた。
俺も混ざりたかったが今から仕事が入っているため、諦めて依頼主の元へと向かう。
発火系魔術は俺の仕事でもわりと重宝するわけで、今回の規制でまた仕事に使える魔術が減ってしまった。
前回の規制では痴漢騒動が相次ぎ、透過系魔法が規制された。これも便利だったため、残念でしかたがない。
仕事の話に戻そう。俺はこの地区で名の知れた探偵をやっている。しかし探偵など名ばかりで、
警察があまり機能しないこの街で、自警じみたことをしている毎日だ。
あくる日もあくる日も、魔術を悪用し、規制への架け橋を作る悪性魔術師をとらえる日々。
たまには浮気調査だなんて気楽でおもしろそうな仕事をしたいもんだ。
あれ……書いていて楽しい……だと……
構わん
続けろ
早く続きを書く作業に戻るんだ
手元にあるメモを見て、依頼主の住所を確認する。レンガでできた小さな家らしいが。
目を凝らして歩き続けるとそれらしきものが右前方に見えてくる。多分あれがそうなのだろう。
玄関にたどり着き、表札を確認。依頼主の名前と一致した。
インターフォンや呼び鈴がないようなので、コンコンと木製の扉をノックする。
「はぁい」
可愛らしい声が聞こえる。そう、依頼主は女性だ。
「どちらさまでしょうか」
「ソレイスター探偵事務所です。ご依頼の件で伺いに参りました」
「はいはい。今開けますねぇ」
ガチャリ、と開錠される音。キィと木製の扉がゆっくりと開いた。
中から出てきたのはエプロンを着た女性だった。ピンクのロングヘアーがおっとりとした雰囲気をかもし出している。
歳は20代前半くらいだろうか。くりっとした瞳と小さな顔が可愛らしい。いわゆる童顔というやつだ。
「ほぅ」
しまった。思わず声が漏れてしまった。いい女を見ると必ず声が出てしまう。俺の悪い癖だ。
しかし、可愛らしい容姿だ。ついつい見とれてしまう。
「?」
依頼主の女性は首をかしげてこちらを見つめている。まずい。
「な、なんでもありません」
「そうですか。どうぞ中へ」
依頼主に案内され、家の中へと入る。
廊下を真っ直ぐとすすみ、リビングへと通された。彼女の指示にしたがい、俺はソファーへと腰を下ろす。
部屋を見渡した。そこにある多くの家具が白を基調としたデザインで、部屋全体に開放感を与えている。
なんというか、気持ちのやすらぐ部屋だ。彼女の趣味だろうか。実にセンスがいい。
「改めて自己紹介させていただきます。ソレイスター探偵事務所所長のフレッド=ソレイスターです」
部屋を観察し続けるわけにもいかないので、俺は再度自己紹介をする。
「アンナ=ウィルソンです」
依頼主、アンナ=ウィルソンも自己紹介をする。
さっそく本題へ入るとしよう。
「それで、今回のご依頼はどんな内容でしょうか?」
「その……有名なソレイスターさんの所で依頼するにはちっぽけな話かもしれないのですが……」
ソレイスター探偵事務所はこの地区ではそれなりに有名な探偵事務所である。
数々の悪性魔術師を捕らえ、この地区の平和を維持しているため、評判はいいのだ。
それもこれも、警察がまともに機能してないだけなのだが。
「どんな依頼でも構いません。ソレイスター探偵事務所は全力でご依頼を遂行します」
その言葉に安心したのか、彼女は安堵の表情を見せる。男前だとこういうところで役に立つもんだぜ。
「よかった……。実は旦那の浮気調査をして欲しくて……」
なんと、念願の浮気調査が今回の仕事らしい。ハードな仕事続きだったので、これはとても嬉しい。
いや、待てよ……。浮気調査を、この可憐な女性が依頼……。き、既婚者だというのか……。
仕事でいいとこ見せてあわよくば……なんてことを考えていた分精神的ダメージが大きかった。
「あの……具合でも悪いんですか?」
「いやぁ、なんでもありません。ちょっと考え事をしてただけで……」
俺は平静を装うのに必死だった。
……かっこ悪い。
これ需要あるのか?
王道だとおも。ちょうどレンタルマギカ読んでるしガンガンやってくれ
探偵のキャラがいいな
文体もサクサク読める感じで凄く読みやすい
ぜひ続けてくれ
私もなんか考えるか
あのリレーは終わってしまったのか
ウィルソン邸を後にし、俺はある場所へと向かっていた。
依頼主であるアンナ=ウィルソン婦人の旦那であるリック=ウィルソン氏の職場である中小企業のビルだ。
俺はビルの傍にあるカフェで、リック氏が会社から出てくるのを待つ。
甘ったるい紅茶を飲みながら、ウィルソン婦人から聞いた話を思い出し、情報を整理する。
「どうやら主人が浮気しているみたいで」
「浮気していることに気付いたのはなぜですか?」
「ここ最近残業や休日出勤と言って家を空けることが多いのです。
最初は頑張ってるんだなぁ、としか思ってなかったのですが」
俺はメモ帳を取り出し、記録を開始する。
「ふむふむ。続けてください」
「今度は知らないうちに貯金の額がどんどん減っていって。
仕事ばかりしているのに、どうしてお金が減るのだろう。
疑問に思った私は、主人の同僚であるマイクさんに伺ってみたのです。
主人は本当に残業や休日出勤をしているのかって」
「ほう。そうしたらNOという返事が返ってきたわけですね」
「はい……」
「本日もご主人は残業するのでしょうか?」
「ええ、そうだと思います」
「分かりました。早速ご主人の会社の前で張り込みをしたいと思います。
ちなみにご主人はどこで働いてらっしゃるのでしょうか――」
俺には一つの目星がついていた。
俺の予想が正しければ、リック氏の浮気は確定だ。
いや、むしろ――詐欺にあっていると言ったほうが正しいのかもしれない。
「お、出てきたな」
ビルの中からリック氏が出てくる。うん、写真のとおり、間違いない。
時計を確認、17時半ば。残業も糞もないな。
遠くから見ても浮かれていることが分かるリック氏の顔。これからお楽しみが待っているのだろう。
残念だがそれは一時の幸せだ。かわいそうに。
俺はリック氏に同情の念を覚えながら、彼の後ろを気配を消しながら、追いかけ始めた。
ああ、所々ミスったのう
直せないのが悔しいところ
ああ、あとからこういう表現にしておけばよかったとかあるよね
なんで厨二スレでこんな面白いの書いてるんだよw
いいぞもっとやれ
実はお前ら結構好きだろwwww
ああ、大好きさ!
とある公園の入り口でリック氏は足を止めた。連なる街路樹の中で一つだけ際立って大きい木。
その下でリック氏は時計を見ながらそわそわとしている。なるほど、待ち合わせにはもってこいの場所だ。
俺は隅にある街路樹の陰に隠れて様子を伺う。
「おまたせー」
リック氏がここに着いてから僅か数秒で浮気相手らしき女性は姿を現した。
艶やかな黒髪を肩まで伸ばし、眩い装飾品がその身を包んでいる。
その豊満な肉体は、男を骨抜きにするには充分なくらいで、うっかり俺まで見とれてしまう。
いかんいかん、仕事中だ。しっかりとせねば。
「さぁ、行こうか」
「うんっ」
女はリック氏の腕に抱きつき、その破壊力満点な胸を押し付ける。実にけしからん。
俺の予想が正しければ、あの女はリック氏に対して特別な感情を抱いていない。
それを確かめるため、俺は女の観察を始める。
呪文を詠唱。身体強化系魔術レベル3『−看破インサイト−』を発動。
両目に魔を看破する力を宿し、女の肉体を観察する。
すらっと伸びた足。肉付きのいい太もも。スカートの丈が短すぎやしないか。
ぷりっと突き出しているかのような尻。触ってくださいって言ってるようなもんだぞ。……うん、安産型。
くびれた腰の艶かしさ。ベッドの上で踊られたら、俺は何発でもその銃を構えるだろう。
極めつけは胸。谷間を強調した服装は、その破壊力をうまく引き出している。形も良さそうだ。
ていうか、突起が浮き出ているように見える。……ノーブラだというのか。それでいてあの形を保っているとは。
とまあ、魔術の効果をとことん確かめたところで、女の本質を見抜く作業に入るとしよう。
「ねえ、お願いがあるの」
女は上目遣いでリック氏を方を向いた。チャンスだ。反面だけだが、顔がこちらに向いている。
彼女の無機質な目を見据える。目に魔力を集中させ、その実体を看破する。
――ビンゴ! 予想は大当たりだ。
「お願い? 君のお願いならなんでも聞いちゃうよぅ」
当ててみせよう。女は次にリック氏に対して金銭の要求をする。
「実は……泥棒に入られちゃってお金だないの。だから……50万ほど貸してほしいなぁ。なんて」
ほうら。当たったぞ。
「なんだ、そんなことか。いいよ、君の為なら――」
おっと、そろそろリック氏を助けなくちゃいけないようだ。
「おっと、ごめんよお2人さん」
俺は背後から2人に声をかけると同時に女の背中を蹴り飛ばし、リック氏から離れさせる。
「きゃっ」
女は可愛い声をあげて、地面に転がった。ついでに胸が揺れていた。けしからん。
「な、なにをするんだ!」
リック氏が怒って俺に突っかかってきた。氏よ、これはあなたを思ってのことだ。
「浮気はいけません旦那。奥さんにもバレてますよ」
「なっ」
これだけ言っておけば少しは黙るだろう。
俺は全てを解決するべく、女の方へと目をやった。
魔眼キター!!
「な、何するのよ」
「まだ人間のふりをするのか」
俺は鋭く言い放つ。
「何のことよっ!」
「しらばっくれてていいのかい?」
呪文の詠唱を開始。――超能系魔術レベル4『−観念動力テレキネシス−』を発動。
未知に連なる街路樹を根っこから引き抜く。そして目の前の女に狙いを定め、飛ばした。
「やめろおおおお」
リック氏の叫びがこだまする。安心しなよ。あの女はこの程度じゃあ傷つきもしない。
地面に街路樹がぶつかる。飛び散る木片。生身の女性では避けれないほどの速度で飛ばしたため、
凄まじい衝撃により、あたり一帯が木片や土、その他もろもろで荒れる。
しかし、その衝撃の中心に、彼女はいない。
「ほうら旦那。あいつをよく見てみろ」
飛ばした木の遥か後方。そこに背中から漆黒の羽を生やしたあの女がいた。
「な、なんだあれは……」
リック氏の疑問に答えてあげよう。あれは――
「あれはな、悪魔だよ旦那。どこぞの悪性魔術師が召喚した低級の魔族だ」
そう、あの女の正体は悪魔だった。
悪巧みを考えた魔術師が召喚し、妖艶な美女に変身させたのだ。
そしてある程度の金を持っていそうな男性、今回の場合はリック氏に目をつけて、
骨抜きにして色々と貢がせようという魂胆だ。
最近ではこういった手法の詐欺が横行しているのだ。
ここ数ヶ月で立て続けに検挙されていた記憶があるので、この件で犯人が捕まれば、
今度は召喚魔法が規制だれるだろう。迷惑な話だ。俺は召喚魔法は苦手なのでどうでもいいが。
リック氏に一通りの説明をする。
「そんな……じゃあ俺は……」
なんともかわいそうなことだ。よりによって悪魔に惚れてしまっていたのだから。
あんな可愛らしい奥さんがいるのにもったいない。
「邪魔……シヤガッテ……」
女の口調が変化していた。
着ていた服が破れ、擬態していた身体がもとに戻っていく。
漆黒の肌に筋肉質な四肢。腰まであるだろう白髪に赤い瞳。
あいかわらず低級魔族は汚らしい外見をしてる。どうせなら擬態したままでいろよ。
「バレタカラニハ……消ス!」
悪魔は呪文の詠唱を始めた。
ここからが本番だ。まずはリック氏の安全を確保しなければ。
悪魔のゆっくりとした詠唱よりも早く、俺は空間系魔術レベル3『−瞬間回避エスケイプ−』を発動する。
「うわっ」
リック氏の身体はその場から消え、悪魔の背後へと瞬間移動した。
対象を敵の視野の外へと瞬間移動させる魔術。移動距離は僅かだが、今はこれで充分だ。
「旦那、あんたは早く家に帰れ! 俺が全部片付けるから」
「あ……ああ。うわあああああああああああああ」
リック氏は大声を上げてその場から駆け出していった。
「くらえええええええ」
丁度悪魔の詠唱も終わったらしい。やつの手のひらが白く光る。
空間系魔術レベル5『−空殲弾エアブレッド−』が発動。
不可視の空気の弾丸が、俺に向けて射出された。
不可視の空気弾が俺に迫る。当たればひとたまりもないだろう凶弾。
音と風の流れ、そして『−看破インサイト−』の効果で、距離感だけは掴めた。
この距離、そして弾速なら魔術で迎え撃たなくとも自らの肉体で回避が可能だ。
俺は地面を思い切り蹴って、右側へと飛び出す。
俺の身体を空気弾がかすめた。ギリギリセーフだったみたいだ。
「キキキキ……」
悪魔が悔しそうに呻いている。ざまあみろ。
「キィヤァァァァァァァァ」
劈くような叫び声とともに、悪魔が正面からこちらに接近。肉弾戦をご所望のようだ。
だが魔族の身体能力は人間よりも遥かに高い。そんなものに応じてたまるか。
もう一度、『−瞬間回避エスケイプ−』を詠唱――発動。
俺は一瞬でやつの背後へと周りこんだ。さてここからどうするべきか。
攻撃魔術は色々とある。よりどりみどりだ。発火系レベル5の――おっと発火系は規制されているんだった。
無駄なことを考えているうちに悪魔はこちらに振り向き、その凶悪な爪を光らせてもう一度接近してきた。
正面から来るなら、俺も力技で対応してやろうじゃあないか。
高速詠唱。地表系魔術レベル4『−土塊人形ゴーレム−』を発動。
地面が盛り上がり、全身が土でできた巨人が、俺の目の前に現われた。
魔力により意志と屈強な身体を手に入れた土は、俺の守護神となり、悪魔の前に立ちふさがる。
「シャアッ」
悪魔が手を伸ばし、ゴーレムがそれを受け止める。両腕で互いを押し合っている。力は互角のようだ。
「コシャクナアッ」
悪魔は爪を伸ばすと、ゴーレムの腕を切り裂いた。
「まじかよ……」
魔力で固めた土ですら、あの爪の前では粘土のようなものらしい。予想外の切れ味だ。
俺は悪魔がゴーレムの全身をバラバラに切り裂いたところを確認すると、その場から走り出す。
戦略的撤退。言い訳しているようだが、事実だ。この状況を切り抜けるには、まずこの場から逃げなければ。
「逃ゲルナァァァ」
背を向けて走る俺を確認し、悪魔は全速力で追いかけてきた。
ある程度距離を開いているとはいえ、身体能力はあちらさんの方が上。いずれは追いつかれる。
俺は作戦実行のため、一心不乱に走り続ける。
人気のない路地を駆けていく。
レンガでできた建物の間を潜り抜け、俺は悪魔から逃げる。
しかし距離はちょっとずつ縮んでいく。もう追いつかれてしまうだろう。
「!」
目の前に壁が現われ、俺は足を止める。
「バッカメ。行キ止マリジャネーカ」
悪魔が一歩ずつ、俺ににじり寄る。どうやらいたぶるつもりらしい。
だが、こっちはそんな気、さらさらねえのさ!
「くっせえんだよ。寄んなカス!」
「ンダトォォ!」
俺の挑発に乗った悪魔は、まんまと逆上し、一目散にこちらへ駆けて来た。
さあ迎え撃とうじゃないか。高速詠唱開始。氷結系魔術レベル5『−氷壁アイスウォール−』を発動。
周囲の水分を目の前に集中させ、魔力を込めて一気に氷結させる。
一瞬にして、巨大な氷の壁が狭い路地の中に現われた。そう簡単には壊れない、屈強な壁だ。
「氷ノ壁ダァ? 笑ワセンジャネエエエ」
どうやらやつはこの壁を壊す術を持つらしい。
やつは詠唱を開始する。やつが読む呪文を聞いて、はっとする。
どうやらやつはレベル8の魔術を発動する気でいるらしい。
低級とはいえ魔の力を操る事に特化した生物。どうやら俺はやつを甘く見ていたみたいだ。
「クラエエエエエエエエエエエ」
やつの口から眩い閃光。
全てを破壊する凶悪な魔術が、俺にむかって放たれた。
バトルキタキタ!!
盛り上がってきたねー
ごうっと、いう音。燃え盛る黒い炎。
やつが発動したのは発火系魔術レベル8『−獄炎ヘルフレイム−』。
何かを燃やせば燃やすほど、その勢いを増す地獄の黒炎。
俺の氷壁を崩すには充分すぎるほどの魔術だ。
だが、それはやつの敗因となる。
「ふぅ、疲れた疲れた」
俺はタバコを一本取り出すと、発火系魔術レベル1『−点火イグニ−』を発動し、火をつける。
そして地面に腰を下ろし、一服した。ああ、自分にお疲れさん。
「舐メテンノカアア!?」
悪魔が叫ぶ。
「まず、目の前をよく見ろ」
俺の言葉に従い、やつは目を凝らして前を見る。
先ほど発動した『−獄炎ヘルフレイム−』が完全に消え去っていた。
俺の氷壁を僅かに溶かしたところで、それは完全消滅したのだ。なぜなら――
『警報。17時48分。ベリアル地区F−38ポイントにて発火系魔術レベル8『−獄炎ヘルフレイム−』の発動を確認。
政令魔方陣機能開始。ただちに無効化し、使用者の拘束を開始します。消去系魔術レベル9『−魔術除去マジックエリミネイト−』発動。消去完了。
続いて拘束系魔術レベル8『−罪縛ギルティバインド−』発動。規制魔術使用者の拘束を開始』
俺らが足をつけている地面には、いつの間にか白い魔方陣が浮き出ており、自動で高等魔術を発動していた。
これがこの国で規制を破った場合に起こる現象だ。あらかじめ、高等魔術師である断罪術師がセットした魔方陣から、
規制を破った者、そして規制された魔術に対してレベル8以上の魔術が発動される。
一回の発動で、相当の魔力を消費するが、それは政府が国の魔術師から取っている魔力税から補っている。
俺たち魔術師は月に一度、一定量の魔力をお国に提供しなければならないのだ。
こうして、俺らの力を糧とした魔術が、悪魔を縛り上げる。
やつは今、光の鎖で体中を締め付けられていた。レベル8だ。そうとう苦しいだろう。
『拘束完了。ただちに個人の特定を開始します。検索系魔術レベル9『身体照合コレイション』発動。個人データの解析を開始。
…………失敗。検索結果、規制魔術使用者は使役生物であることを確認。データを保存し、強制帰界を開始』
悪魔の身体が粒子状になって消えていく。
帰界、つまりもといた世界へと帰されるのだ。それが召喚され、使役された魔族のさだめ。
『間接的規制魔術使用者として使役生物の召喚者の特定を開始。ベリアル地区H-17地区魔方陣上にて発見。
拘束を開始します。拘束系魔術レベル8『−罪縛ギルティバインド−』発動。……拘束完了。
ただちに魔監獄エルサレムへ強制連行します。間接的規制魔術使用者の転送を開始します。空間系魔術レベル8『−地獄落ヘルズダウン−』発動。
……転送完了。間接的規制魔術使用者がエルサレムに到着したことを確認。全工程終了。政令魔方陣機能停止――』
全てが終わった。
悪魔が規制にことを何も知らなくてよかった。つーか、使役しているやつが馬鹿でよかった。
悪魔にあるていどこの国の知識があったら今回の作戦は成功しなかったわけで。
それに政府の魔術師にもあっぱれだ。これほどの高等魔術を自動で連続発動。
この国の魔術も日に日に進化しているようだ。俺も精進せねば。
でもまあ、とりあえずは、ウィルソン婦人のもとへ報告しに行って、彼女の可憐なフェイスに癒してもらうとしよう。
――Fin――
おお、これで終了か
これはぜひともシリーズ化して欲しいな
凄く面白いぞ
しかし、魔法名がいちいち凝ってて楽しんでつけたんだろうなっていうのがよくわかるw
つかれたっちゃ
なんかされ竜読みながら書いてたからそれっぽくなっちゃったわ
ソロモン72柱やらある程度厨二病患者が喜びそうなネタをいれたつもり
規制を生かしきれなかったのが残念
よーし、キャラ設定考えた。
主人公
超絶美形で頭脳明晰、運動神経抜群。
眩い聖なる光の担い手で闇を祓うエクソシスト。
また自分の中に闇の人格を抱え、暴走することもある。
髪型はスキンヘッド。
ヒロイン
主人公の幼馴染みの友達。
優秀な魔術師で古代の術式も幾つか所持。
また自分の中に闇の人格を抱え、暴走することもある。
使い魔はガチムチのホモ二人で髪型は紫色の長髪(2m)
仲間(クール)
イケメン。基本だんまりか興味ないな、みたいなことしか言わない。
千の剣を扱い、ガンダムで十万の兵を壊滅させたという伝説の剣士。
また自分の中に闇の人格を抱え、暴走することもある。
髪型はモヒカン。
仲間(ふざけ)
フツメン。家の鏡だとイケメンになる。
槍と弓を扱うため、必然的に中学生から人気がない。
常に北斗七星の隣りの星が見えている。
また自分の中に闇の人格を抱え、暴走することはある。
髪型は茶髪。
話浮かばねー
>>270に厨二病っぽい名前をつけたぜ。
夜刀神春樹(やとがみはるき)
超絶美形で頭脳明晰、運動神経抜群。
眩い聖なる光の担い手で闇を祓うエクソシスト。
また自分の中に闇の人格を抱え、暴走することもある。
髪型はスキンヘッド。
早乙女神子(さおとめみわこ)
主人公の幼馴染みの友達。
優秀な魔術師で古代の術式も幾つか所持。
また自分の中に闇の人格を抱え、暴走することもある。
使い魔はガチムチのホモ二人で髪型は紫色の長髪(2m)
小鳥遊零(たかなしれい)
イケメン。基本だんまりか興味ないな、みたいなことしか言わない。
千の剣を扱い、ガンダムで十万の兵を壊滅させたという伝説の剣士。
また自分の中に闇の人格を抱え、暴走することもある。
髪型はモヒカン。
木村しずる
フツメン。家の鏡だとイケメンになる。
槍と弓を扱うため、必然的に中学生から人気がない。
常に北斗七星の隣りの星が見えている。
また自分の中に闇の人格を抱え、暴走することはある。
髪型は茶髪。
あとはまかせた
みんな闇人格ありかよwww
暴走闇の四戦士に昨日の残りカレー噴いたwww
>>269 乙だっちゃ
普通に面白くて驚いた
魔法名がカコイイ!
暴走しすぎワロタ
ダミアンっぽい邪気眼をやったら父に殺された
277 :
269:2008/11/28(金) 20:43:44 ID:FkC+pWEp
主人公
元は暴走族のリーダーで元サッカー部。組織に所属していたが組織の悪の部分に気付き脱退。自ら打倒組織のチームを結成し闘う。
ヒロイン
組織では主人公と同期。組織に所属した当初から天性の才能と魅力で組織のトップに。性格は自由奔放でわがまま。主人公を追って組織を脱退。闇の人格に操られる事もある。
ライバル
組織では主人公の同期。すさまじい怪力と蹴り技主体のスタイルで主人公を追い詰める。性格は粗暴で若干騙されやすい。
ラスボス
組織の頂点に立つ最強の男。圧倒的なカリスマを持つがどんな忠実な部下をも簡単に切り捨てる非情さも持つ。
なんか厨って考えて作るの難しいな
279 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 17:20:22 ID:GCcFofTq
組織=サッカー部
昨日の雑談スレ読んでおもったんだが
究極に厨ニ病っぽい名前ってどういうのだろう
十六夜 刹那
厨二っぽいと個人的に思う名前
・やたら難しい漢字、当て字、常用外漢字
・苗字が少なくとも三文字以上
・名前は一文字のことが多い
・極端に空っぽ、または充実してる(?)
(例:零、刹那、永遠、etc)
・普通は人名に使わない字を使う(狂とか)
つまりスクールデイズのヒロインの名付け親は厨二病なわけだ
そう思うねw
286 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/01(月) 22:20:58 ID:YLyzHule
これは・・・ひどすぎる・・・
これは子供がかわいそすぎるな
289 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 14:07:40 ID:7gf0a+al
現実は小説より奇なり
それは期待
期待せざるをえない
たのしみw
ブラックロッドみたいな魔術パンク的な世界観はワクワクする
295 :
290:2008/12/02(火) 23:01:00 ID:w1aZmWON
期待に反してジャンルは近未来アクションでw
探偵と似たようなジャンルでいくわ
もうちと待ってて
wktkしつつ待ってるんだぜ
しかしブラックロッドも今にすれば厨二病にカテゴライズされる気もするが
やはり面白さこそ正義だ
297 :
290:2008/12/03(水) 00:01:24 ID:/KzWJ2BF
探偵ものに近いのとか言ってたが急遽違う原稿を投下する
近未来という点は変わらんが
A.D 20XX 12/21 埼玉県・新北市
街はクリスマス商戦の活気に賑わっていた。
駅前のデパートや専門品店はプレゼントを買い求める人々でごった返し、夕方の帰宅ラッシュと相まって渋谷のスクランブル交差点のようなものすごい人出となっていた。
その中を歩く一人が俺だった。
ここからは離れた土地にある私立高校に通わされてある哀れな俺。ああ、カワイソウ。
行きたくもない高校に通わされるほど悲しいことはない。
俺は毎日そんな他人にとっちゃどうでも良いことを考えながら、この駅前の通りを歩いていた。
市長選挙が近いこともあってか、駅前大通りを選挙カーが走っているのが見えた。
竹中武次、竹中武次でございます。どうか、皆さんの清き一票を……
選挙カーから垂れ流される宣伝文句はうるさいことこの上無い。
…と、その時だった。選挙カーを追い抜き、1台の黒いセダンが現れた。
背後には金魚の糞みたいにパトカーが2台。止まりなさい、止まりなさいと喚いていた。
通行人の注目は選挙カーから一気にそのカーチェイスに移った。
wktk
299 :
290:2008/12/03(水) 00:20:58 ID:/KzWJ2BF
日本、しかも埼玉なんて辺境の地でカーチェイス!俺はその光景に釘付けになった。
セダン追跡を振り切ろうと、蛇行しこちらに向かって走ってきている。
不味い、不味いんじゃないか?
俺は危機感を感じ、その場から逃げだそうとしたが…遅かった。
セダンは俺の目の前で急停車した。カーチェイス発見から20秒も経っていないだろう。
何してる、逃げ出せ!
心で言っても体は聞かない。足が竦みその場から動けなくなった。嘘だろ?!動けよ、俺!
セダンのドアが開き中からは黒ずくめの男が3人。目出し帽を被った分かりやすい強盗だ。
3人はそれぞれ武器を持っていた。2人はシグザウエルP220自動拳銃。自衛隊が採用しておりどこかから横流ししてもらったのだろう。そしてもう一人は……
「おい、このガキブッ殺すぞ!」
OD色のジャケットを着た男が俺に突きつけている水平2連式散弾銃。銃身と銃底が切り詰められたソウドオフだ。
男は俺の後頭部に銃を突きつけたまま俺の首根っこを掴み歩きだした。
他の2人も油断無く銃を構え遠巻きに見物する野次馬や銃を構えた警官達を威嚇している。
最悪だ。
俺は身体中が震え心臓が大きく脈打つのを感じた。
まさか、俺は死ぬのか?
300 :
290:2008/12/03(水) 00:43:36 ID:/KzWJ2BF
いや、死なない。死んでたまるか。警察がなんとかしてくれる!
俺はプラス思考に考えることに徹した。
「武器を捨てて投降しろ!」
ニューナンブM60回転式拳銃を構えた警官達はぎこちない動きながらも説得を続ける。
銃を突きつけられ、首を捕まれ引きずられるている今の俺にとってその声だけが希望だ。
「黙れ!こいつを殺すぞ!金田、敷島、そいつに乗れ」
金田と敷島はP220を構え、セダンに近づいた。同時に警察も刺激を与えないよう動く。
金田は銃を構え慎重に運転席側に回り込んだ。構え方などを見ても金田は到底素人には見えなかった。
恐らく3人全員元は自衛官か警官だ。
「動くなよ……ガキが死ぬぞ……」
まず金田が運転席のドアを開け金田自身は後部座席に乗り込む。
同じく敷島は助手席に乗る。そしてリーダーとおぼしき男はガラスが無いドアを全開まで開け運転席に座り、俺を突き飛ばした。
解放された!?俺は一瞬、そう感じた。
しかし、次の瞬間にはソウドオフが無数の鉛玉を吐き出していた。
散弾は確実に俺の胸を捉えていた。
続きは今日の午後。
301 :
290:2008/12/03(水) 20:34:36 ID:/KzWJ2BF
二度と開かないはずの俺の目が開いた。
辺り一面真っ白。これが死後世界とかいうやつなのか?
全てが終わってしまったというのに、俺は喪失感も、絶望感もなくただただこの空間を漂っていた。いや、正確にはつっ立っていた。この空間にいると地に足が着いているのに浮いているような感覚に陥るのだ。全くもって気分が悪い。
「起きた起きた」
ふと背後で透き通るような少女の声がした。俺は思わず振り返った。
そこにいたのは丈の短いワンピースを着た少女だった。
顔は抽象的で整っており、銀色の髪が腰まで伸びていた。
「佐久間信二……だよね?」
いきなりフルネームで呼ばれ、俺は驚いて素っ頓狂な声で返事をしてしまった。
かなり恥ずかしいが、少女は気に止めることもなく続けた。
「私の名前はシェイア。そうね、天使だと考えてくれればいいわ」
シェイアはそう言って微笑んだ。死後世界なら何でもありだ、うん。俺は聞き返した。
「で、死んでしまった俺にシェイアちゃんはどうするわけ?」
「私のご主人様……神様はあなたにチャンスを与えてくれたのよ」
「……どういうこと?」
「あなたを殺した連中に復讐させてあげる」
シェイアは不気味な笑みを浮かべた。
続きマダー
303 :
290:2008/12/03(水) 23:10:36 ID:/KzWJ2BF
「復讐……?」
「そう。ご主人様は気まぐれでね、殺人とかで死んだ人にたまにこーやってチャンスを与えているの」
全く…可愛い顔してスゲェこと言いやがるぜ……。俺は質問を続けた。
「チャンスって具体的にどういうこと」
「こういうこと」
シェイアはニコッと笑い、右手の指をパチンと鳴らした。
すると、突然シェイアの頭上から大きなアタッシュケースが落ちてきた。ケースは床に落ちて大きな音を立てた。
シェイアは笑みを崩さずにそのケースを開き、中から黒光りする何かを取り出した。それは少女の手にはあまりにも大きすぎ、重すぎる……
「銃よ」
サラッと言ってのける辺りが死後世界って感じだな。
俺は少女の手の内で鈍く光る巨大な鉄の塊、S&W M500、.50口径リボルバーを見て何か胸の高鳴りを感じた。
このバケモノみたいな拳銃に丁度いい、6.5インチのカスタムバレルがタダモノではない雰囲気を漂わせていた。
「期限は3日。それまでに全員殺してくるといいわ。じゃあね、信二君」
シェイアは他にもいくつかの銃が仕舞われているケースを残し、消滅した。
同時に俺の血塗られた3日間の復讐劇が開幕した。
まだ続くよー。本番はこれからよー。
本番マダー
305 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 08:00:44 ID:ud60CbjM
俺たちの戦いはこれからだ!!
〜fin〜
306 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 17:24:50 ID:slMyFs1j
290先生の次回作にry
307 :
290:2008/12/05(金) 18:34:53 ID:xSXWb0zV
終わるなよ
「っ?!」
目が覚めると俺は自宅の自室のベッドに横たわっていた。何故だか頭がガンガンした。
ベッドの横にはあのケースがあった。起き上がり、ケースの中身を確認するとやはり銃が仕舞われていた。
「スミスアンドウェッソン、M500……」
俺は知らない筈のその銃の名前を呟き、驚いた。
「ベレッタM92F、ヘッケラーアンドコックMP5クルツ……」
知らないはずの銃の名が次々と頭に浮かんでくる。一体これは……!?
「記憶に細工したわ」
聞き覚えのある声……シェイアだ。シェイアは俺の体をすり抜け眼前に躍り出た。その体は半透明で、どうやら現世ではこの姿でしかいられないらしい。やはり精霊だな…。
「細工?一体どうゆうことだ?それにその姿……」
「大丈夫、あなたにしか見えない。…記憶の方はご主人様のご意向でプロの暗殺者の記憶を多少混ぜてある。戦うときがきたら体は勝手に動くわ」
「……そういえば俺の姿は他の人に…」
「そうね、見えてるわ。だからそこだけは気を付けなきゃね」
シェイアは意地悪そうに微笑んだ。その顔は俺に「人間だったらなぁ」と思わせる顔だった。
凄い神様だなw
おっせえええええええええええ
310 :
290:2008/12/06(土) 00:00:54 ID:hfd3GVkW
もう寝ます。後は明日
「とにかく俺を殺した連中の情報がなきゃ」
俺は頭に浮かんだ思いを消し飛ばすようにパソコンの電源を入れた。本体はソニー製、OSはウィンドウズのXPだ。
俺は検索などをして早速ニュースサイトを片っ端から漁り始めた。
「これがパソコンというものか」
シェイアはたいそう感心したような様子だった。
「すげぇだろ」
「そうだな」
……。俺は口を結びマウスを動かし、クリックし、キーボードを叩くのに集中した。
両親は恐らく俺の葬式か何かに行っているのだろうか、日が暮れかけても帰ってきそうになかった。
そしていつの間にか夕方の6時。
「こんなものか」
俺はちょこちょこっと文字が書いてあるA4サイズ紙のを見て呟いた。
「半日調べてそんなものか」
シェイアが背後から嫌みを言ってきた。一発叩いてやろうかと俺は開いた左手で後ろを探ったが触れるわけがなかった。
「仕方ないだろ。インターネットとはそんなもんだ」
わかったことは確かに少なかった。
犯人の背格好、逃走車両の特徴、一週間前のガソリンスタンド襲撃事件と手口が酷似しているためそこを襲った犯罪グループによる犯行かも知れないということなど……
おお続き来てる
>>290 あと何レスくらい続く?
以外と長くなりそうな予感
投下遅すぎ萎えた
全て書いてから投稿はSSスレの常識だよ!
あれ?続きは?
中二なのかよく分からんが、とりあえず書いた。
23時くらいに載せるけどおk?
おkおk!!
wktkwktk
載せちゃえ載せちゃえ
書き溜めてあるなら大歓迎だぜ!
期待させてスマンが、10分ぐらいで練った構想を
10分ぐらいで書いたいわゆる「予告編」もしくは「総集編」的なものなんだ。
そんなんでよければ載せるが…
投下でしょでしょ
『Last Eden 〜天臨〜(仮)』
今より百年以上前、人の世に突然、天より使者が舞い降りた。
『天使』
背に翼を生やした彼らは人の世を瞬く間に支配し、
世界は天使の手により変貌の動きを見せていく。
はるか彼方の世界において、長く続いていた平和に終わりの刻が訪れたのだ。
彼らが地上に降りてきた理由は誰も知らない。
だが、「世界の創造と再生」
常にこの一言だけを述べて人を支配していた。
『最後の楽園(ラスト・エデン)』
それは天使が全てを統治する世界
人は天使たちにより、9階級に区別される。
下級天使人(ロウアー・クラス)、第3級・権天使人(プリンシパリティ・ヒューマン)として生きる孤児の少年、
『白石ソラ』は、天の命にて人を縛り、強大な力で絶対的に支配する天使に憎悪を抱いていた。
同じ階級に属す『赤羽ダイチ』『青木ミズエ』も同様である。
彼らの親は数年前に天使たちに反逆した『アザゼル・トリーズナー』の一員。
彼らは一日一日を必死に生きた。
過酷な世界を生き抜き、天使たちに敵討ちを…、『反逆』をする為に…
月日は流れ、十分な力を得たことを確信した彼らは、
ついに天使に反逆を決意する。
『アザゼル・トリーズナー』として…
決戦の刻―――
眼前には無数の天使兵団が君臨し、その戦力差は圧倒的だった。
「お前ら…、覚悟は出来たか…?」
「愚問だな、お前はどうなんだソラッ!」
「ついに…、この時が来たのね……」
『貴様らが反逆者か…
我が名は階級天使長が一人「大天使長アークエンジェル」!
我々天使たちに反逆をするなど愚かなものだ…
フッフッフ、たった3人で何が出来るという…
貴様らの反逆など所詮微々たるものよ…!
我々の手で天の裁きを下してやろう…!!』
「な、なんて力なの…」
「大丈夫だミズエ。信じるんだ自分の力を…
そして、『黒衣の賢者』から得たこの『ゲヘナ』の力を…!」
「ソラの言う通りだぜ!
俺らにはゲヘナの力がある!
あいつらなんて俺の『ヘマハ』があれば楽勝だ!」
「そうね…確かに今の私たちにはゲヘナが、私には『マシト』の力がある。
この力を使えば天使たちだって倒せるわ!」
「俺に宿った『アフ』の力…頼むぞ…!
いくぞッ!ダイチ、ミズエ!!」
「あぁッ!!」「うんッ!!」
『さぁ、来いッ!!愚か者たちよ!!』
「俺たちの戦いはぁッッ…!!ここからだァァァァァッッッッっ!!」
天使への反逆がいま、始まりの音を告げた…!
輝かしい未来に向かって…!
これはwww
中二って、いいな…
――――――――――――――――――
『ラファエル様…、どうやら下級天使人が我々、天使に反逆を企てた模様です…』
『……、案ずるなカマエル…。大した問題ではない…
これも全て「あの方」のお導きよ…』
『あの方、とは…?』
『汝ら「七人の大天使」、次に我「四大天使」…
そして…更にその上の絶対的存在。
あの方とはまさに…、「神の代理人」』
『そんな…、ま、まさか…!』
『あの方から見れば我々など所詮、清浄の存在なのだよ…
故に、我々は動ぜず、焦らずにいればいいのだ…
全てはあの方の掌の上の出来事なのだから…』
第一部 天臨編『完』
作者コメント
第一部はこれで完結です。第二部 反逆編を楽しみにお待ち下さい。
かなり重症だな
厨二はいいよな
ゲへナとか語源を知ったら使わないだろうと思うもの
即入院レベルのいいものが見れた
こじらせないように安静にしてくださいね
ここまで来たらあとがきも必要だろww作者とキャラの掛け合いのやつwww
神話は好きだ。いいネタになる。
自分で見て思ったが…
ほとんどのバトル漫画やラノベって中二病じゃねーかw
タイトルで吹いたwwww
俺も僅か3行で吹いたわw
いい具合に中二だなwww
大げさで美しくカッコいいが安っぽさがぬぐえない、
そんな創作に期待
そこに思い込みの強さのトッピングもほしい
本物の中二が書くんだから中ニになるんだろう、というわけで、本物の中二がクリスマスを嘆いてみる
ラスト・クリスマス
「ふう・・・寒っ・・・」
雪が、俺の薄い服の上にぶつかり、そして少しずつ液状になりながら解けていく感覚がある。
今日は、2010年12月24日。クリスマスイブの日。そんな日でも、俺に訪れた変革といえばふってくる雪が白く輝いているせいか、今まで真っ青に見え
ていた空が、白く見えているという事だけ。全く、嫌になる。
俺はここ数年の不況故に、辛うじて就けていた工場から蹴り出され、その後の生活のために色々な物を切り捨てて言った結果、こうなってしまった。
――ここは、有名なデートスポット・・・らしい。俺がここで・・・を始めたのが五年前だから、それくらいからだ。
ベンチで寝転がり、真上を見ながらガタガタ震えている俺を見て、まるで「空気を読め」と吐き捨てているかのように、彼らはこちらを見下す。そして同時
に、俺を薄汚い死にかけの犬・・猫・・・いや、芋虫のように、醜く、そして同時に微かに儚いものを見るような表情をみせる。
俺だって、好きでこうなったわけじゃ・・・・・・
そう、俺は、ホームレス。どうして五年も生きながらえる事が出来たのか、不思議に思う。
冷たく、そして厳しい風が、俺が身にまとう黄ばんだTシャツと、布団代わりに身にかけているダンボールを打つ。
同時に周りの視線が、その風より強く、厳しく、俺の薄いTシャツを貫き、俺の精神を突き刺す。
「・・・もう・・・嫌だ。」
ガタガタと身を震わせる俺。ここから俺は消えたほうがいいんだ。そう思った。だが同時に、どうせもうすぐ死ぬんだから、この妬ましい、充実を見せ付け
てくる連中にささやかな嫌がらせくらいならしてもいいかな、とも感じた。
「ナニアレ・・・きったなーい」
お前こそ何様だこのクソアマ。
「あんなのがこんなところにもいるのねぇ・・・みちゃだめよ、ミツオ。」
何ほざいてんだこの子供連れ。
「なんだよアレ・・・消えろよ」
ヤンキーなんてもう十年経てば俺みたいになっちまうのがオチなんだよ。
「くすくす・・・」
笑うな。
笑うな。
声を出そうとする。あいつらがキャピキャピやってるのを、ぶち壊してやる。
先ほどまでは穏やかだったその感情が、徐々に激しい物になり、腹の底から込み上げてくるのがわかる。
真上を向いたまま、口をあける。大声を出そうとする。しかし案の定、声は出ない。
「笑うな・・・」
辛うじて、微かに呟く。しかし当然、彼らの耳には届かない。
自然に生えた髭に、雪の水滴がつく。
ゴミ捨て場で見つけた穴だらけのニット帽をかぶった頭にも、雪の水滴がつく。
五年間履き替えていない靴下にも、雪の水滴がつく。
顔面に、水滴がつく。
そして、大きく見開いた目にも、水滴がつく。
しかし、俺は瞬く事も無く、虚空を見上げる。
目に浮かぶ冷たい汁が、頬を伝って垂れる。これが雪なのか、涙なのかは、俺にもわからない。
俺は静かに起き上がる。不思議と、力も入る。
周りを見回す。そこには当然、こちらを見下すカップルや、子連れ、あるいは子供、老人。さらには鳩、野良猫、地を這う芋虫のような生き物、アリンコ。
もう、どうでもいい。そう、思った。
俺は静かにベンチから脚を下ろし、辛うじて残された体力を振り絞って立ち上がる。
辺りの視線が急変する。と、いってもそれは様々だ。そこから読み取れる感情は、様々だ。
俺は、ベンチの裏の森へふらふらと歩を進める。
大きな蜘蛛の巣が、顔面にぶつかる。しかし、そんな事はどうでもいい。
俺は力なく、俺の目の前を埋め尽くす椿の樹に寄りかかり、そしてその隙間を通り抜ける。
背中に、後ろめたさを感じる。今更になっても、まだあの人々の中にいた頃のほのかなぬくもりを思いだす。
ふと、頬を伝う液体。今度は雪ではない。温かさを感じる。その温かさが、今の俺にはまるで五年来被っていない布団のぬくもりのように感じられた。
「ふぁ・・・」
さっきは出したくても出なかった声が、口から漏れる。しかしもうここからでは、後ろに居る人々には聞こえない。
俺は、立ち止まる。そこに聞こえるのは、森が奏でる波のような音。
静寂の中、まるで場違いな歓声のように、今の俺の耳には聞こえた。
「ふざけんなぁぁぁぁっ!!」
喉を掻き切られたような、そんな純粋な苦しみを感じさせる声。
誰も居ない森の中で、響き渡る。
そしてその声は、徐々にトーンを下げながら、痙攣のような声に変わる。
俺は、雪の積もった古い樹の根元に寄りかかった。
もう、暗くなってきていた。そして寒さは、いっそう厳しくなる。
なんだか眠くなってきた。昔のアニメや、映画でお馴染みの、本当にそう感じるかどうか疑わしく感じていたその意味が、解ったような感じがした。
雪が、温かい。風が、温かい。
静かに、森の歓声が止む。風も、雪も止む。
そして俺の頬に微かに感じられたぬくもりも、消えた。
ふと、冷たくなる前に回り出した感情、感覚、記憶。
それは十五年前の事であった。
橋の下で、ビニールシートや段ボールで作られた、どう見ても頑丈には見えない家。
それを、かつての悪友とともに、バットで盛大に破壊した事だ。
悪友とともにくだらない達成感に身を満たしていた私の背後に、ガタガタと震えていたホームレス。
・・・思えば、俺も、あんな風に見えてたんだろうな・・・・・・
また、いつもの冬のように、冷たい風が吹き出した・・・・・・。
さすが中二
俺より普通にうまいってどういうことよ
中二の頃書いてた文を未だに上回れてない人間が遠吠えしてみる
344 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/29(月) 12:47:28 ID:SvD/WMby
「邪気眼見せろよ!邪気眼」
345 :
290:2008/12/29(月) 22:56:39 ID:wdZc3HZL
えーと、皆さん……まず謝ります、すいませんでした。290です。
長い間SSをほったらかしにした上、顔を出しもせずにいて本当に申し訳ありませんorz
実は部屋の掃除中に原稿を紛失した為、現在、SSを再開させることも難しい状況となっています。
SSを中途半端なまま放ってしまい、それを完結することすらできずただのスレ汚しとなってしまい本当に申し訳ありません。
現在、お詫びに中二的SSを執筆しているので2月の初め頃に公開できればなと思っております。
本当にすいませんでした…。
下手に気合入れすぎて長いのは簡便な
>>338 邪気眼はいつでるんだよ
無駄に寒くなっちゃったよ
王道(?)の魔眼ネタでなんか書くことにした
完成したらここで投下するわ
大分人が減ったな
他の文章スレに流れてるのかしらん
中ニ系は似たようなスレがいくつかあったりもするね
351 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/18(日) 03:08:16 ID:wbEKBIdM
くっ…このスレ見ていたら過去の産物思い出した
書けたら投下する
期待♪
大期待♪
奇態☆
355 :
邪気眼:2009/01/21(水) 00:31:40 ID:rDxGP4On
だれも居ない?邪気眼するならいまのうち・・・
冷たい雨が、頬を濡らす。
腕に抱いた人形の体温が下がっていく。
「申し訳・・・・・・ありません・・・・・・」
謝んな、バカ野郎。
口にしたと思った言葉は出ず、ただ吐息だけが漏れた。
程なくして、人形は死んだ。
「お葬式は済んだ?」
女の声。顔をあげると、冷たい笑みの桜が立っていた。
一瞬、全てが夢だと思った。
夢であれば良かったのに。
「泣いてるの?可愛そう」
俺の頬に熱い液体が流れていた。
泣いているという自覚は無かった。
雨と涙の違いは、温度の差か。感情の差か。
「人形203号、機能停止確認」
俺は呟く。
ただの傀儡師としての復唱による認識だ。
心は冷え切っていた。
桜を殺してしまおう。
何の感情も無く、殺してしまう。
ただの肉塊に変えてしまおう。
「藤島桜を敵と認定。排除する」
口にして、認識。
銀の糸が張り巡らされ、25本のナイフが宙に浮かび上がる。
対象は桜。
大事な親友で、大切な女だった。
「死ね」
不規則な軌道を描いて、ナイフが桜に襲いかかった。
( ゚д゚ )
357 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 00:41:12 ID:PmXN/l0Y
いいねー、ナイフの数がいかにもって感じだw
ageちまった、すまん
359 :
邪気眼:2009/01/21(水) 00:47:31 ID:rDxGP4On
別にageてもOKw
邪気眼先生の次回作にご期待ください!
〜fin〜
古竜兵装ファーヴニル
太古の魔竜の身体から創造された膨大な魔力を宿した兵装
竜の魂が部位ごとに分割化され、それぞれの装備の中に宿る
使用者は契約と称してその魂を己に取り込まなくてはならない
それにより使用が可能となるほか、身体能力の向上し、翼の顕現が可能となる
しかし時間が経つにつれて魂は身体を侵食し、最終的には使用者も竜と化してしまう
爪は全てを切り裂く魔剣に、目は全てを見通す水晶に
さまざまなバリエーションがある
361 :
邪気眼:2009/01/21(水) 01:13:34 ID:rDxGP4On
「お前の名前は・・・・・・ウィンディでどうだ?」
「嫌です」
格子を嵌めた窓から、桜が舞うのが見えた。
先ほどから、自作した人形に名前を付けてやろうとしているのだが、なかなか許可をくれない。
「じゃあ、お前の名前は花子ってことになるぞ?お前が生まれる前から決めていた名前だ」
「嫌です」
俺の家は傀儡師の末裔だ。
親父は死んだ。去年の暮だっただろうか?
どっかの組織で働いて、どっかの組織の親玉を守るために死んだらしい。
「楓?」
「嫌です」
「プリン?」
「嫌です」
「ゼリー・マシュマロ・アロエヨーグルト・ミルクル・ラーメン・・・・・・」
「嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です・・・・・・」
親父が死んだのは、人形を見ていて分かった。
夏に、家で寝ているときに、親父が作って家に残していた人形196番の支配権が消えた。
支配権が解除されるのは、その人形の主人が死んだときでしかない。
そして、人形196番はそのまま動かなくなってしまった。
「俺の好きな食べ物の名前を全否定するとは・・・・・・なら普通に『メイド』って呼ぶしかないな」
「嫌です」
俺の家について話そうか?
俺の家は、今では珍しい木造で、祖先はからくり人形を作って生計を立てていたらしい。
今はそんなの売れないから、ただの絹織物の店になって、人形は趣味の範囲に留めている。
ただし趣味といっても、人形は命を込めて作る。
「『シルク』って名前はどうだ?」
「・・・・・・」
この名前に惹かれたのか?
「じゃあ、『シルク』でいいか?」
「・・・・・・いいです」
俺の爺ちゃんは戦争を人形を使って生き残った。
けれど今の平和な時代では、傀儡師は、もう誰からも必要とされていない。
きっと俺の代で終わりだろう。
シルクが片膝をついて、俺に忠誠を誓う。
「我が名はシルク、我が全ては主の為に」
「了解。承認した」
これでシルクは俺の人形203号として認識された。
362 :
邪気眼:2009/01/21(水) 01:18:07 ID:rDxGP4On
>>361 バカかよ・・・親父が死んだのは暮だろうが・・・夏って何だよ・・・
363 :
邪気眼:2009/01/21(水) 01:21:19 ID:rDxGP4On
俺の家について話そうか?
俺の家は、今では珍しい木造で、祖先はからくり人形を作って生計を立てていたらしい。
これは家について話しているんですか?
はい。
家って言うと、住宅のことですか?家系のことですか?
書いたときにみると、その両方のようですね。
読みづらいぜm9(^Д^)
人形の名前候補がひどいw
俺ならラーメンがいいなw
366 :
邪気眼:2009/01/21(水) 01:31:03 ID:rDxGP4On
「『ラーメン』って名前はどうだ?」
「・・・・・・」
この名前に惹かれたのか?
「じゃあ、『ラーメン』でいいか?」
「・・・・・・いいです」
こっちのほうが邪気眼っぽいなw
確かにwww
「俺が……俺がラーメンだ」
「えっ?」
「俺がラーメンだ!!」
369 :
邪気眼:2009/01/21(水) 01:41:03 ID:rDxGP4On
370 :
邪気眼:2009/01/21(水) 01:54:53 ID:rDxGP4On
姫小松中学校。俺が通う学校。
その名の通り、学校全体に小さな松が植えられている。
「俺が帰ってくるまでに、部屋の掃除と、夕食の準備を済ませておけよ?」
「・・・・・・」
学校を出るとき、シルクはせんべいを食べながら、コタツに入ってテレビを見ていた。
俺の人形としてちゃんと務まるか心配だ。
無理やり服従する機能を付けておいたほうが良かったか?
初めて作ったので、人間っぽい感性を持つように調整したのだが、失敗したかもしれない。
「・・・・・・わかりました」
テレビがCMに入ったところで、やっと返事をした。
俺は靴を履き、家を出ようとする。
「じゃあ、行ってきます」
「・・・・・・いってらっしゃい」
シルクはテレビに夢中のようだ。
友人と騒いでいると、程なくして担任がやってきた。
「はいっ、静かに〜。ホームルームを始めま〜す」
深川京子先生こと、深キョンはいつも通りの高い声でHRを始めた。
「今日は皆に大事なお知らせがありま〜す。転校生がウチのクラスに入ってきま〜す」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
ざわめく教室。
2日前に、転校生が来ることは知っていたが、まさかウチのクラスに当たるとは。
ざわついている教室に、女の子が入ってきた。
黒髪のロングヘアで、整った顔立ちをしている。
男子のほとんどが、一瞬息を呑むほど綺麗な子だった。
「紹介しま〜す。藤島桜さんです。みなさん仲良くしてください」
彼女は簡単な自己紹介した。
綺麗な眼だな〜とか思ってたりした。
ふと気がつくと、彼女もこちらを見て、そして微笑んだ。
「え?」
一瞬だったので、誰も気付かなかったかもしれない。
彼女は俺の席の隣に座った。
「よろしくね」
にっこりと微笑む彼女に、俺はただ頷くだけしか出来なかった。
テラテレビっ子w
372 :
邪気眼:2009/01/21(水) 01:56:47 ID:rDxGP4On
その時、俺は綺麗な眼だな〜とか思ってたりした。
オバマ大統領の就任式があってるなw
373 :
邪気眼:2009/01/21(水) 01:59:22 ID:rDxGP4On
彼女は俺の隣の席に座った。
「俺が、俺がラーメンだ」
彼女は呟き、眼を閉じた
375 :
邪気眼:2009/01/21(水) 02:05:08 ID:rDxGP4On
「ただいま〜」
「・・・・・・おかえりなさい」
帰ってくると、彼女はラーメンをry
376 :
邪気眼:2009/01/21(水) 02:32:36 ID:rDxGP4On
「ただいま〜」
「・・・・・・おかえりなさい」
彼女は相変わらずコタツに入ってテレビを見ていたが、テーブルの上には二人分の夕食が並んでいた。
「和食か・・・・・・意外だな」
「・・・・・・?」
「いや、てっきりパンとかで済ませるのかと思って」
彼女の横に座ると、俺は佃煮をのせてご飯を食った。うまい。
作った人形が上手いご飯を作るから、その主人も上手い飯を作れるのかというと、別にそうではなかったりする。
「お前も食え。冷めるぞ」
「・・・・・・いただきます」
シルクは食べ始めたが、視線はテレビから離れない。
「面白いか?」
「・・・・・・はい」
「どのへんが?」
「・・・・・・モップのような木星人の言動の全部です」
「なるほど」
シルクが見ていた番組が終わっていなかったので、食卓の片付けは俺がした。
皿を洗ってる間に、風呂を沸かす。
ちなみに風呂は去年、木桶風呂からユニットバスにリフォームしたのでボタン1つでお湯が沸かせる。
楽チン楽チン。
「じゃあ、先に寝るわ。オヤスミ」
「・・・・・・おやすみなさい」
今、シルクは深夜海外ドラマを見ている。
島に飛行機で不時着した生存者達が、島から脱出するドラマだ。
俺は最初の方だけ見ていたが、深夜番組は続けて見ると学生にとっては授業が辛い。
布団を敷き、眠る。
朝、目を覚ましていて驚いた。
シルクが俺の横に正座していたのだ。
「何?どした?」
「・・・・・・一つ、忘れていました」
朝食の用意か?
「・・・・・・あなたの名前を聞くことを」
ああ、そうか。そうだったな。
眠い目を擦り、窓を開け、冷たい風を部屋に入れる。
目が冴えてきた。
「認識しろ。俺の名前は黒瀬 圭。人形203号シルクの支配者だ」
「・・・・・・認識しました、黒瀬 圭。あなたをお守りします」
これで俺はシルクの主人として認識された。
「ところで、朝食は?」
テーブルの上には何も無かった。
「・・・・・・忘れていました」
377 :
邪気眼:2009/01/21(水) 02:33:52 ID:rDxGP4On
続きは明日。
おやすみなさい。
378 :
邪気眼:2009/01/21(水) 02:44:28 ID:rDxGP4On
テーブル? コタツ? テーブル? コタツ?
コタツテーブル
シルクかわいいのう
教育学のレポート書き終えたら書き始めます。
@10時頃から〜
「い、いってらっしゃいっ!」
「やべぇ!間違いなく遅刻だ!」
今の時間、8時32分。
ホームルームは8時50分からだから、あと18分しかないと腕時計を見ていたら、1分進みやがった。
朝食を急いで作ったのだが、やはり友人から旧式と馬鹿にされる台所では間に合わなかったか。
焦って靴を履いて、外に出る。
家の前に、一台の黒い車が止まっていた。
「あ・・・・・・千堂さん」
「おはようございます」
車の傍に立っていたのは、千堂と名乗っているお兄さん。
「よろしければ乗っていきませんか?」
「いや・・・・・・俺は急いでるんで・・・・・・」
しまった。
「ならどうぞ」
にっこりと笑って後部座席のドアを開ける。
焦ると思考が回らないのが俺の悪い癖だ。
しずしずと後部座席に収まる。
スモークガラスの窓から外を見ると、シルクが心配そうな顔で見ていた。
唇がこう動いていた。
『遅刻しますよ』
わかってるよ。
千堂さんはシルクの方をちらと見ると、会釈して運転席についた。
「では、行きましょうか。姫小松中学校ですよね?」
静かに走り出す車。
超高級車だからなのか、俺の家の周りは荒れた道なのに振動がまったく感じられない。
と思ったら、アスファルトの道路に入ったとたん急加速した。
この人、こんな狭い道路で普通に90キロ出してる?
「先ほどの彼女、人形ですよね?」
「あ、はい・・・・・・」
「あなたがお創りになったのですか?」
「一応は・・・・・・」
「なるほど。さすがは哲司さんのお子さんですね」
哲司というのは、俺の親父だ。
千堂さんは親父が働いていた組織の人間で、階級は幹部だと名乗った。
一年前、千堂さんが親父の亡骸を運んできた。
そのとき俺は・・・・・・
「あのときの事で、自分を責めてはいけませんよ」
動揺して顔を上げる。
バックミラーに映るのは、千堂さんの笑顔。
俺は一年前、この人を殴ってしまった。
『どうして親父が死んだんだよ!』
『親父はなんでアンタらなんかを守ってたんだよ!』
おそらく、俺は怒っていたのだ。死んだ親父に。
俺よりも、自分の息子よりも、わけのわからない組織を取った親父に。
そして、どうしようもない怒りが溜まっていた時に遺体を持ってきた千堂さんにぶつけてしまった。
なんて情けない奴だ。
384 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/21(水) 22:39:26 ID:rDxGP4On
なんか、長くなってないか・・・?
教育学のレポート終わってません。
平行して書きます。
\(^o^)/
逃避力を注いでるんですね、わかります
進行状況
小説>>レポート
orz
8時40分。早すぎだろ。
「着きましたよ」
「・・・・・・ありがとうございます」
軽く車酔いだ。こんな優しそうな顔しやがって、同乗者に車酔いさせるのが趣味だと見える。
「それでは学業の方も頑張ってください」
爽やかな笑顔を残し、車は急発進した。
正直、苦手なタイプだ。
「おい、黒瀬。お前今日車で送ってもらったんだって?しかもMISUZUの高級車?お前何者?」
登校そうそう話してくるのは俺の親友の、大道寺アキラ。
「親父の友達だよ。たまたま家に来たんで、たまたま送ってもらっただけだって」
嘘はついてない。
「そうか。次は俺も乗せてくれよな」
車好きな奴って、クラスに一人以上いるよな。
今日の一限目は美術で、校内の好きなところでデッサンだ。
俺らは学校の校長像を書くことに決めた。
この不遜な顔が、神々しい。
ただし、俺らのスケッチブックにはユーモアも付け加えて描かれる。
「ところでよ、黒瀬さん。君の隣の席の藤島さんをどう思う?」
かなりエロイ眼をした校長像が、アキラのスケッチブックに描かれていく。
一瞬、自己紹介の時に俺に見せた笑顔が頭をよぎった。
「可愛いんじゃない?」
「だろ!?てか、なんか素っ気無い反応だな〜。もうちょっと話そうぜ〜。付き合いたいとか思わないのかよ?」
校長像に似合わない髭を描きながら、俺は考える。
付き合うか・・・・・・
俺と藤島さんが並んで立っている所を想像した。
どう見ても見劣りする。俺が。
「付き合えないだろ。高嶺の花ってやつだ」
「まぁ、そうだよな〜。でも、俺は頑張るぜ」
「こんにちは」
凛とした声が聞こえた。
振り返ると、藤島桜本人が立っていた。
「ええ?」
「一緒に描いてもいい?」
「いいよ」
こういうとき、平常心を抑えられる訓練をしていて良かったと思う。
傀儡師で良かった。
アキラはしばらく幽霊を見るかのように凝視していた。
「他の女子とは描かないの?」
俺は尋ねる。
「私、この像が描きたかったんだ」
・・・・・・嘘だな。
誰にでもわかりそうな嘘だ。
クラス全員に媚びを売っていこうという魂胆なのか。
それともからかいに来たのか。
だけど、それでもいいと思った。
なんだかわからないが、こいつと居ると落ち着いた。
「俺は、黒瀬 圭だ。そっちが友達の大道寺アキラ。よろしく」
「よろしくね、黒瀬君」
彼女は笑った。
エロい目の校長w
人形は別に裸ではない。
ちゃんと服を着ている。
俺がこんな事を言っているのは、別に俺が変態ではない事を証明しようと思っているわけではなくて。
「お前の服を買いに行くぞ」
「・・・・・・わかりました」
シルクは名残惜しそうにテレビを消した。
人形の服の替えが足りなくなったからだ。
正直に言おう。俺らが住んでいる町は田舎だ。
近くにあるものといえば、神社、寺、酒屋など、昭和くさい町並みが並ぶ。
「・・・・・・7時には帰ってくれますか?見たいテレビがあるのです」
俺は、こいつは俺じゃなくてテレビに仕えているんじゃないかと心配になってきた。
「わからん」
大きな店があるのはバス、電車を乗り継いで一時間かかる所にある。
人形の服を買うのに手間取ったら、7時には間に合わないだろうな。
それを言ったら、
「じゃあ、この服だけでいいです」
お前は三着だけで一生過ごしていくつもりか?
「・・・・・・大きな建物ですね」
「そうだな」
3ヶ月ほど行かなかっただけで、駅前のビルはさらに高いビルの間に埋もれてしまっていた。
人形の服と言っても、普通の服だ。
金はあるので、とりあえず、駅前の新しい店に入ってみる。
「・・・・・・何をしろと?」
「お前の感性で、服を試着して来い」
「・・・・・・私の感性は、あなたが創ったものでは?」
「お前には、自由意志を与えてある。お前の感性は、お前のモノだよ」
「・・・・・・わかりました。選んできます」
「買いたいのが決まったら持って来いよ」
その間、俺は俺の買い物をさせてもらおう。
「三着か・・・・・・」
金はあるから好きなだけ買って来いと言ったのに、シルクはおとなしめの色の服を買っただけだった。
「・・・・・・これ以外の服は、あまり好きではありませんでした。こすとぱふぉーまんす的にも」
そういう言葉は、テレビで覚えているのだろうか。
「そうか。次は工具屋に言って、新しい工具を買うぞ」
「・・・・・・まだ帰らないんですか?」
・・・テレビか?
改行が多すぎるらしいな。仕方ないから分割しました。
夕暮れ時、俺らは和風造りの店屋の前にやってきた。
「ここで最後だ」
「・・・・・・」
シルクは返事をしないで、腕時計を見ている。
反抗期?
別に素直にしたがってくれた事が多いわけじゃないけど。
「ほんとに最後だって。ここ終わったら帰るからさ。こんちわー!」
「はい、いらっしゃいませ。あら?圭くん久しぶりだね〜」
「ご無沙汰してます」
この店の主人である、森下 由香さんが出迎えてくれた。
「来月には、納品したいと思っています。いままでご迷惑をお掛けしました」
「そんなにかしこまらなくてもいいのに。あら?そちらは?」
シルクは不機嫌そうにそっぽ向いている。
「人形です。名前はシルクと言います」
「・・・・・・ハジメマシテ」
機械のような声で返事しやがった。由香さんの前だから、怒るに怒れない。
「そうなの・・・・・・傀儡師のお仕事に使ったりしてるの?」
「いえ、俺の本職は絹織物ですから。シルクはその手伝いです」
「・・・・・・ドレイ デス」
こつん、と頭を叩いておく。
「まぁ。それより上がっていかない?なんならご飯でも食べていけば?」
「・・・・・・エンリョ シマス」
「由香さんの家にはテレビがあるぞ。大きい奴」
「それじゃ、お言葉に甘えさせていただきます」
なんて現金な奴だ。
大きい奴⇒おおきいやつ
由香さんの口調が若すぎないかしらん?
そう気にはならないなあ
シルク「ラーメンとは・・・すばらしい食べ物ですよね」
黒瀬 「そうか?」
シルク「夜食に最適」
黒瀬 「太るぞ」
シルク「・・・・・・人形は太らない」
黒瀬 「人形も太ります」
シルク「・・・・・・;;」
>>394 なるほどwならこのまんま行っちゃうぜw
ちょっとペースダウン。
レポートしながら書くけど、今日はもうアップしないかも……
今、無機化学のレポートがあることも思い出したぜ。
パネェパネェ。
あと600字で教育学のレポートクリアだぜ。
頑張れ、俺。
\(^o^)/
シルクテラテレビっ子w
レポートがんばれー
「・・・・・・ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
帰って夕食を作る手間が省けて本当に助かった。
夕食の間中、シルクはテレビを見ていた。
俺と由香さんは今までの事を話していた。
「親父から受け継いだ仕事は、これからも続けていくつもりです」
「そうですか」
俺の家には、裏に絹を紡ぐ工場がある。
いままで俺と人形201番が絹織物を織って、由香さんのところに納品していたのだが、三ヶ月前、201番が機能停止した。
親父の支配権を失った201番が動き続けたのは奇跡だが、人形は主人を失ってしまっては、やはり動けなくなるのが定めらしい。
「次はこいつに機械の操作とかを教えて、やっていこうかなと思ってます」
シルクを指差した。
「そう・・・・・・ねぇ、シルクさん?」
「・・・・・・はい?」
「うちの娘の服があるんだけど、良かったら着ていかないかしら?」
「・・・・・・どうやらピッタリのようですね。色も気に入りました」
「そう。良かった」
由香さんは二階から服を持ち出してきてくれた。
「いいんですか?もらってしまっても?」
「いいのよ。捨てるのが勿体なかったから持っていただけだし、着てくれた方が服も本望よ」
「ありがとうございます」
シルクは黒のタートルネックのセーターを着て、クルクル回っていた。
どうやら気に入ったようだ。
「・・・・・・ありがとうございます」
そんなシルクを見て、由香さんは頭を撫でていた。
「・・・・・・ありがとうございます、由香さん。私、由香さんの事が大好きです。初めて会った人なのに、もう好きになっちゃいました」
由香さんは微笑みながら、シルクの頭を撫でていた。
涙が流れていた。
「・・・・・・由香さん?」
由香さんはそのまま両手を顔にあて、静かに泣いた。
シルクは黙ってその様子を見ていたが、手をのばして、由香さんの頭を撫でた。
「・・・・・・由香さん、泣いていましたね」
「そうだな」
電車に乗って俺らの町の駅に帰ってみると、バスがなくなっていた。
仕方ないから歩いて帰ることにする。
夜はやっぱり冷えるな。
「由香さんにはな、娘がいたんだ」
俺はシルクに話し始める。
「風華って名前だった。俺と同じ年でさ、何度か会ったことがある。俺の家に由香さんと風華が遊びに来たときは、工場でかくれんぼとかして遊んだよ」
5、6年前くらいか?
俺らはまだガキの頃で、親父もまだ家に居た頃。
由香さんが連れてくる女の子は小さくて、可愛かった。
親父と由香さんが商売の話をしている時なんかは、暇で退屈だったから一緒に外で遊んだ。
小さい人形を動かして、風華はびっくりしていた。
あいつの傍に居るときが、一番楽しかった。
「でも、心臓が弱くてさ、一年前に死んでしまったな」
「・・・・・・そうなんですか」
シルクは寂しげに呟いた。
「風華はお前と似てるんだよ」
「・・・・・・え?」
「だから、今度また由香さんの家に行こうな。あの人もきっと喜ぶ」
「・・・・・・はい」
夜空は暗く、星が儚げに散りばめられていた。
この夜空を明るくするには、いったいどれ程の星が必要なのだろう?
ふと、そんなことを思った。
小説書いて、レポートやばい。
邪気眼のせいで、レポートやばい。
>>399 応援サンクスw
レポート早く終わらせま〜すw
( ;∀;)イイハナシダナー
そしてさよならレポート
>>403 まだだ・・・まだ終わらんよ・・・・・・!!
レポートが
orz
終わった・・・
GJ,俺・・・
乙
今から書くべ〜
「・・・・・・今日は雨が降るようですよ。傘をどうぞ」
「ああ」
玄関でシルクから傘を受け取る。
雨は、嫌いだ。
古い記憶を思い出してしまうから。
「んじゃ、いってくる」
「・・・・・・寄り道せずにお帰りください」
軽く手を振って応える。
姫小松中学校までは歩いていく。
途中でアキラと落ち合って、一緒に行く。
今日もそのはずだったのだが、
「おはよ〜」
「藤島さん?」
アキラの横にいたのは転校生の藤島桜さんだった。
「いや〜さっき偶然会ってさ、一緒に行こうって事にしたんだよ」
アキラ、顔が緩んでいるぞ。
「そうなのか・・・・・・なら行こうか」
「うん」
このまま学校まで行ったら何か疑われそうな気がしたが、気にしないことにした。
「じゃあ、今日のホームルームはここまで。斉藤さん、礼して〜」
クラス委員長の起立、礼をして学校が終わった。
「帰ろうぜ〜黒瀬〜」
アキラがあくび混じりに言う。
「そうだな」
チラッと藤島さんの方を見る。
彼女は他の女子達と話していた。
また明日の朝も来るのかな?そんな事を考えた。
「・・・・・・ごめんね〜。今日は黒瀬君たちと帰るんだ」
そんな声が聞こえた。
「え?」
振り返ると、藤島さんが鞄を持って立っていた。
「帰ろっ」
腕を掴んで引っ張られた。
クラスのやつの嫉妬の視線が痛い。
ギャルゲっぽくなってきましたなー
>>409 同意。まぁ、藤島桜攻略ルートは鬱エンドだが。
藤島桜のキャラが変ですね、わかります
藤島が、折角だから家まで上がって行けと言うので、お邪魔させてもらった。
「広い家だな〜」
アキラが呟いた。
「そう?まぁまぁだと思うけど・・・・・・」
お嬢様かよ。
藤島の家は洋風の造りで、ちょっとした洋館のようになっていた。
「私、一人暮らししてるんだ。両親は海外に住んでるの」
「へぇ〜」
こんな広い部屋に一人ぼっちか。人形の一体も居ないと寂しいだろうに。
これは傀儡師の偏見だろうか。
普通の女の子は寂しくならないのだろうか?
藤島の部屋で、お菓子とお茶をいただいた後、前居た学校の話とか住んでいた場所なんかの話を聞いた。
外が暗くなってきたな。
「俺帰るわ。じゃあな」
アキラが手を振った。
「ああ。じゃ〜な〜」
「また明日ね」
アキラが出て行った。
「アキラ君っていい人だね」
「そうだな。あいつはいいやつだよ」
アキラは俺の親友だ。中学に入ってからの。
「お前もいいやつだよ」
俺は藤島に対して友情っぽいものを感じていた。
「そう?私の事、どう思う?」
「どうって・・・・・・」
「かわいいってのは勘弁ね。聞き飽きたから」
自覚してんのかよ。
俺と藤島は笑った。
「そうだな・・・・・・なんか落ち着くな。お前と居ると」
「落ち着く?私はあなたのお母さんじゃないのよ」
藤島は笑って言う。
俺も笑って返すが、母という言葉に少し緊張した。
「あれ?雨降ってきた・・・・・・?」
窓の外を見ると、窓ガラスにポツポツと雨粒が張り付いていた。
雨か。雨は苦手だ。
母のことを思い出してしまうから。
改行が多すぎます!って言われた。
そうかそうか。
藤島の両親の話を聞くと、二人は今、ロンドンに居るらしい。
「偉い学者さんなんだよ」
「へぇ〜」
機械工学関連の研究をしているのだとか。
「ねぇ、黒瀬君のお母さんってどんな人だった・・・・・・?」
「俺の母さんは・・・・・・」
ザアァァァァァ――
本格的に雨が降りだした。
俺と藤島の視線が外の景色に重なる。
シルクが傘を持たせてくれて正解だったな。
『・・・・・・寄り道せずにお帰りください』
あ。
「・・・・・・俺、帰るわ」
「そう?雨降ってるけど大丈夫?」
藤島は、玄関まで送ってくれた。
「じゃあ、また明日」
「うん、また明日ね」
傘を差して急いで帰る。
あいつ、ちゃんと先に飯食ったかな。
雨で靴が濡れる。
雨は嫌いだ。嫌な事を思い出してしまうから。
振り返ると、洋館の窓が見えた。
「俺の母は、最悪なやつだよ」
小さく呟いた。
今日はここまで。
おそらく土日で書きおわるだろう。
・・・・・・予想だけど。
オヤスミ。
ここから母親話の回想パートか?
416 :
邪気眼 ◆WXL4HPZ/HQ :2009/01/23(金) 18:47:36 ID:EDNINskf
>>415 さて。どうしよう。
プロットを書くと書けなくなるから書かなかったけど、書かないといけないかな〜
さて、私は書くと何回言ったでしょう。
417 :
邪気眼 ◆WXL4HPZ/HQ :2009/01/23(金) 18:57:52 ID:EDNINskf
418 :
邪気眼 ◆WXL4HPZ/HQ :2009/01/23(金) 18:59:48 ID:EDNINskf
>>417 書いてません。キーボードに打ち込みました。
待て!打ち込んだのは俺だ
俺がキーボードだ!!
「ただいま〜」
「・・・・・・おかえりなさい」
小降りの雨から逃れ、部屋の暖かさが心地よかった。
「夕飯は食ったか?」
「・・・・・・いえ、まだですが」
「そうだったのか、すまない」
「・・・・・・あの」
「なんだ?」
「・・・・・・お客様が来てます」
誰だ?千堂さん?
「あの・・・・・・あなたの恋人と申されているようですが・・・・・・」
「紅茶を買い置きしておけと言っていたのに」
そう言った本人は、シルクに入れてもらったお茶を啜りテレビを見ていた。
「・・・・・・お前には何もやらないし、とっとと出てけ」
「なんだよ。ヒドいな」
そう言った女はこっちを振り向いた。
金髪に不気味な赤い眼をした、少女。
見た目はこんな感じだが、こいつの本性は悪魔だと俺は知っている。
湯飲みを取り上げて言う。
「・・・・・・出て行け」
「まぁ、そう怒りなさんなって」
一瞬、お茶をぶちまけてやろうと思ったが、掴んでいたはずの湯飲みが消えていた。
「・・・・・・短気は損気って言うでしょ〜?」
そう言いながら、お茶を一口飲み、テレビを見てアハハと笑った。
手品師め。
シルクはおずおずといった感じで尋ねた。
「・・・・・・あの、あなたはいったい誰なんですか?」
「結婚を前提に圭ちゃんとお付き合いしてま〜す」
「ふざけんな」
思いっきり睨み付けたが、こいつは黙りそうにもない。
「・・・・・・俺の母親だよ」
>>419 な・・・ん・・・だ・・・と・・・?
俺は・・・いつから・・・
いや・・・もしや・・・初めから・・・
>>419に・・・踊らされていたのか・・・?
ふふ……見ているぜ……いつもお前の手元からな
>>422 (゚Д゚;)!?
ナンテコッタイ/(^o^)\
まさか母親本人がくるとは
「シルクちゃんの手料理、おいしいね〜」
「・・・・・・そうですか。それは良かったです」
「・・・・・・」
何でコイツが夕飯まで食ってるんだよ。
俺の険悪なオーラに気付いているはずなのに、いっこうにこの女からは笑顔が消えない。
「・・・・・・でも、随分若いんですね。・・・・・・何歳なんですか?」
「それは秘密だよ〜」
「35だろ」
「ああっ!?バラされた?ヒドいよ〜」
そう言って寄ってくるが、俺は立ち上がって逃げた。
「・・・・・・それより、教えろよ。俺の家に来た理由を」
「シルクちゃん、ごちそうさま。後片付けしといてもらえる?」
シルクはちらっと俺のほうを見た。
「・・・・・・頼む」
「・・・・・・わかりました」
そしてシルクは台所に。俺と母は廊下に出た。
「やっぱり古臭い家だね〜」
子供っぽい外見と物言いが、さらにこいつを幼く見せさせる。
だが、俺は騙されない。
「何しに来た」
「息子を殺しに」
あははと笑って冗談のように言った。
だが、俺はその一言で緊張し、服に仕込んである『糸』を掴んだ。
この『糸』は傀儡師が身を守るために使う、透明で見えにくい糸だ。
「嘘だって。だからその糸から手を離しなよ」
「・・・・・・」
俺はしぶしぶ手を離した。全部お見通しかよ。
雨音が前より強くなったように感じた。
「糸」いいなぁ
いかにもそれっぽいじゃありませぬか
強くなる雨音を聞きながら、俺と少女は対峙していた。
「聞いたよ。哲司さん死んじゃったんだってね。ざまぁみやがれだよ」
「・・・・・・てめぇ」
「自業自得だね。私の息子を独り占めにするから」
「どんな父親だって、危険な母親からは遠ざけようとするだろ。それに・・・・・・」
ん?と首を傾げてこっちを見てくる。
「俺を捨てたのはお前だろ」
「あ、そうだった。そうだった。だから私と同じ『黒瀬』を名乗ってるんだよね」
こいつは昔からこうだった。話すだけで虫唾が走る。
こうして話している事自体、奇跡に思える。
俺の自制心がどこまで持つか。
「・・・・・・で、用件は?」
「いつウチに帰ってくるの?」
奇妙な事を言いやがった。
「お前の家には戻らない」
「どうして?」
「お前が嫌いだからだ」
はっきり言った。俺の本心など見抜いているはずなのに、どうしてそんな事を聞いてくるのか。
少女は顎に手を当てて、考え込むように俯いた。
「うーん、そうかぁ。そうきたかぁ。ならどうしよっかなぁ・・・・・・」
雨音は続いている。二人の間に、沈黙が降りた。
「・・・・・・話は終わりか?なら帰れ」
少女は顔をあげて言った。
「いつ帰ってくるの?」
母親は繰り返した。
「どこにだよ。俺の家はここだ」
付き合いきれん。限界だ。
トイレに入ろうとして、びびった。
トイレに先に母親が立っていたのだ。背後にいたはずなのに。
「どうして?」
――雷鳴。
停電して、電気が消える。
光がないはずなのに、こいつの眼が光っているように見えた。
顔は笑っているのに、眼が笑っていない。
「・・・・・・なにがだよ」
「・・・・・・どうして?」
分かっているでしょう?とでも言いたげな表情だ。
雨音が一層強くなったような気がした。
「・・・・・・顔が怖いぞ」
声を絞り出した。
そういうと赤い眼を細めて笑った。
「あはは。私にそんなこと言って許しているのは、今のところ圭ちゃんだけだよ〜」
こいつは、自分の裏の顔が相手に恐怖を与えると知っていて、使う。
一番有効なタイミングで。
くそ。こんなのはただの目くらまし。幻覚だ。
首をフルフルと振って、後ろを見る。
にっこりと笑って、立っていた。
明かりが戻った。
電気が付いて、これほど安心したことはない。
>>427 「糸」大好きです。糸は私の嫁です。毎食欠かさず食べているくらいですから。
「マリオネット −糸使い−」は好きだったなぁ……当時は
>>430 私が始めてみた操り人形漫画は三匹のマリオネットが戦うやつでしたよ〜。
なんのアニメだったか忘れた。
だけどアレ、糸付いてなかった気がするorz
俺にははっきりと呪われた五色の糸が見えたけどな……ふふ…
さてこのキャラやめよっとw
35歳って若いなw
ぶっちゃけこの母親うん百歳でもおかしくないと思ってた
不気味なほど、赤い眼だ。
明かりの下で見ても、まだ不気味だ。
「・・・・・・お前、いまだに俺のクローンを作ってるのか?」
「もちろん」
軽く舌打ちする。最悪だな。
「・・・・・・それで、俺の代わりはできたか?」
「それが難しくって無理〜。200体くらい造ったんだけど、ぜんぜん持たないのよね。すぐ腐っちゃう」
「・・・・・・いいかげん止めろ」
「圭ちゃんが帰ってくるなら止める」
俺は睨んだ。無意識のうちに、糸を握り締めていた。
「・・・・・・電気切れましたけど、大丈夫でしたか?」
「シルク・・・・・・」
廊下にシルクがやってきた。
「うんうん。だいじょうぶだよ〜シルクちゃん。あ、そうだ。私、そろそろ帰るね」
なにが『あ、そうだ』か分からないが、帰ってくれる事に抵抗はないので、進んで玄関まで送る。
「・・・・・・雨すごいし、暗いですよ。・・・・・・送っていきましょうか?」
「ん。いや、だいじょーぶ。これくらい平気だよ〜」
そのまま俺の家の傘を一本取って出て行く。
「じゃあね〜。また来るからね〜」
そのまま振り返らずに出て行ってしまった。
一気に疲れが出た。
「・・・・・・シルク。風呂、沸いてる?」
「・・・・・・沸いてません」
外を歩く少女。
夜の闇に金色の髪が映えていた。
「相変わらずのクソガキだったな〜。やっぱり哲司の息子か」
木造の家を振り返って言う。
「でも、お前は私が産んだんだ。私の所有物だよ」
赤い眼が怪しく光っていた。
「もうすぐ、お前は不幸な災難に巻き込まれる。その時、お前ははまた私にすがる事になる。せいぜい努力するんだな」
あはははは、と幽鬼のように嗤う。
そして少女は雨の音にかき消されるかのように夜の闇に消えていった。
>>432 やめるのかw
>>433 まぁ、この母親には年齢は関係ないけどね。化け物だからw
ちょっと休憩しますw
>>434 >そして少女は雨の音にかき消されるかのように夜の闇に消えていった。
イミフ
メイ
orz
どうしたw
>>436 >そして少女は雨の音にかき消されるかのように夜の闇に消えていった。
これ書いたやつ誰だ?
俺だ。
比喩が無茶苦茶ですね、わかります。
orz
>お前ははまた私にすがる
これ書いたやつ誰だ?
orz
ああ、それは俺だ
(あーあ、やめるって言ったのに……
翌朝。
藤島さんは相変わらずアキラと一緒に待っていてくれた。
「おはよ〜」
「おはよ」
「あれ?何か元気なさそうですな〜黒瀬さん」
アキラが心配してきた。
「昨日嫌なやつが俺の家に来てさ、不快な事をして去った」
「・・・・・・母親か?」
アキラは俺の母親の事を知っている。直接会ってはいないが、嫌がらせをされていると話した。
「まぁ、相手にしないほうがいいだろうな」
「・・・・・・そうだな」
俺は昨日の話を忘れることにした。
一日中、俺のテンションは低かった。
それを心配してか、藤島もアキラもあまり話しかけてはこなかった。
帰り。
「あのよぉ、今度遊びに行かね?どーせなら遠くまで」
アキラが言い出した。
「遊ぶ?」
「そうね。私、まだ街の方へ行ったこと無いから行ってみたい」
「じゃあ、藤島の歓迎パーティーも兼ねて、遊ぼうぜ」
・・・・・・慰められているのだろう。おそらく。
「なら行こうか」
ここで断っては、友達に悪い。
「・・・・・・また都会の方まで行くのですか?」
「ああ。お前はどうする?」
できれば友人達には黙っておきたいが、ついて来たかったら従姉妹とでも紹介しよう。
しばらく考えた後、行きますと言った。
「そうか。明日、俺の友達も一緒にいくから・・・・・・」
「ですが、私は遅れていきます」
「え?そうなのか」
シルクは午前中は家に居て、午後から由香さんの所に行くと言った。
「・・・・・・お友達と遊ぶのを邪魔しても悪いですし、帰りに一緒に帰りましょう」
「ん。そうだな。ところで午前中はテレビでも見るのか?」
「・・・・・・はい」
なるほどな。
虎井 安譜
書き直して消しすぎたか。
今日は終わりで明日になるかも。
乙。
日曜日。
俺らはバス停で待ち合わせをしてから、街の方へ出発した。
バスの中でも、電車の中でもずっと喋り続けていたから、他の乗客に迷惑だったかもしれない。
でも俺は楽しかったし、ふざけたり笑っていたりする事で、母親の事を忘れていられた。
最初は藤島の希望で、洋服を見て回ることに。
こいつはシルクと違って、明るめで少し派手な感じの服が好きなんだな。
「ちょっと着てくるね〜」
「おう」
俺は覗きにいこうとしているアキラを羽交い絞めにした。
次はアキラとゲームセンターについて行った。
アキラと俺で格闘ゲームをやって、俺が負けて藤島と代わったら、藤島があっさりアキラに勝っちまった。
俺はUFOキャッチャーで小さなぬいぐるみが付いたキーホルダーを3つ取った。
青いイルカは俺が取った。茶色のネコは藤島に、黄色いライオンはアキラに渡した。
「俺、ちょっとトイレ行ってくる」
アキラがそう言ってトイレに立ったのは、午前11時頃。
オープンテラスのカフェで休憩しているときだった。
「さてと、次はどこ行こうかな〜」
悩む。と、いうか街並みが変わりすぎてて軽く迷子だ。
「ところで黒瀬君。ちょっと聞いてもいい?」
「ん?何?」
「あなたのお母さんの事なんだけど」
テンションが軽く下がった。
「藤島はこんなときでも俺の母親を気にするのか」
「ああ。ご、ごめんね。でもちょっと気になるから・・・・・・」
まぁ、そりゃそうだな。昨日あんな話をされたらな。
「で、何?俺の母親の事を喋ればいいわけね」
「できれば」
俺は簡潔に話した。
職業は手品師。両親が俺が産まれてからすぐに離婚したので、俺は母親に引き取られたこと。そして、すぐに別居した親父に捨てていかれたこと。
「そうなんだ。大変だったんだね」
「ああ。だけど、親父に預けられて良かったって思ってるよ。まぁ、その親父も去年、死んじゃったんだけどね」
「そう・・・・・・」
そろそろアキラが来るかな?
「荷物持って出る準備しようぜ」
「あ、もう一つお願いがあるんだけど」
自分の荷物を持ってから聞く。
「何?」
「私の事は桜って呼んでね」
まぁ、いいか。藤島じゃ、ちょっと壁があるもんな。
「わかったよ」
寝ますよ。
オヤスミ。
とか言いつつ起きてた。
いいか。本当に寝るからな?絶対だぞ!?
「俺、ちょっと寄っていく所があるから先帰っててくれ」
夕暮れ時、桜とアキラと別れてから由香さんの家に向かう。
「さてと、バスはあるかな・・・・・・」
「黒瀬君」
バスの時刻表を確認してたら後ろから声を掛けられた。
「・・・・・・桜」
「あのさ、私もついていっていいかな?」
俺は考えた。まぁ、大丈夫だろう。
「ああ。いいぞ」
「やった」
桜は拳を軽く握り締めて喜んだ。
「バス無いから歩いていくか」
桜に聞くと、アキラは帰ったらしい。
「どこに行くの?」
「俺のバイト先」
「うちの学校バイト禁止じゃなかったっけ?」
「そうだっけ?」
桜は笑った。
「でも、なんでバイトしてるの?彼女がいて、お金が必要だから?」
「いや、生活費。うちの親父、居ないから」
一間置いて、桜はそっか、と呟いた。
「大変だね。大丈夫?」
「ああ。心配する程じゃない。親父からのお金は持ってるけど、それに手を付けたくないって話だ」
話しているうちに、由香さんの店の前に着いた。
「ところで黒瀬君のお父さんってどんな人?」
「傀儡師」
「えっ?」
「何てのは冗談で、絹織物の職人だった」
桜はなるほどと頷いた。
「こんちわー」
「こんにちわ」
「・・・・・・いらっしゃいませ」
店に入ると、シルクが出迎えてくれた。
「何してるんだ?」
「・・・・・・バイト、です」
なるほど。手伝いか。
「・・・・・・そちらの方は?」
「友達と遊びに行くって言ったろ?」
「藤島桜です。よろしくね」
「・・・・・・よろしくです」
奥の方から由香さんが顔を出した。
「あら、いらっしゃい。お友達?」
「はい。転校生の藤島桜さんです」
桜は軽く頭を下げた。
「初めまして」
「こんばんわ。良かったら桜さんも夕食を食べていきませんか?」
由香さんに誘われるまま四人でおいしい夕食を頂き、シルクをつれて帰った。
「あ〜、由香さんのご飯おいしかったな〜」
電車のなかで、桜が言った。
「ところでシルクさんは外国の人なの?髪と眼が白いよね・・・・・・」
「・・・・・・これは生まれつきです」
「そうなんだ。で、黒瀬君の従姉妹ってホント?」
「・・・・・・そうです。・・・・・・ドレ」
「こいつ、うちに遊びに来てるんだよ」
こつん、と頭を叩く。
「へぇ。そうなんだ。仲良さそうだね」
電車を降り、バスに乗って俺たちの町まで帰った。
「今日は遊びに付き合ってくれてありがとな」
桜に礼を言う。
「うん。今日は楽しかったよ。また遊ぼうね」
そのまま別れようとしたが、桜が言った。
「黒瀬君。シルクさんにちょっとお話があるから先に言っててくれない?」
「え?」
「ちょっとだけだよ」
桜が片目をつぶって笑った。
「・・・・・・いいですよ」
大丈夫です、と言いたげな視線でシルクは俺を見た。
おれは渋々了解して、別れの挨拶をして先に帰った。
俺が家について、しばらくしてシルクが帰ってきた。
とくに変わった様子はなかったので、俺は何も心配しなかった。
この時は。
え、なにいきなり冒頭に(ry
そうそう。いきなり冒頭に(ry
行きません。
寝てますた。
翌朝。
いつもの集合場所に二人は居なかった。
「あれ?」
先に行ったのだろうか。しばらく待っても来なかったので、俺は諦めて学校へと向かった。
そして、学校について驚いた。
「・・・・・・何だよ、その頭」
アキラは髪を金髪に染めていた。
「別に・・・・・・」
アキラは何も話したくないといったふうにそっぽを向いた。
なんだよ。
すると、桜が登校してきた。
「おはよう」
「おはよ・・・・・・あれ?」
桜の髪も変だった。赤色だったのだ。
「お前、どうしたんだよ」
「別に」
笑顔だったが、それ以上の追求は許さない、という感じの雰囲気だった。
俺は何も言えなかった。
クラスメイトは不穏な空気を感じ取ってか、静かにざわついていた。
「はいは〜い。お待たせ〜。さ〜て、今日のホームルー・・・・・・って、何?その髪?」
アキラはそっぽ向いたまま。桜は笑っているが、無言。
「二人とも、あとで職員室に来なさい。話は以上です」
「先生」
桜が言った。
「私、明日転校します」
わけがわからない。
俺は一人で職員室の前に立っていた。
そして、ガラっとドアを開けてアキラが出てきた。
「アキラ・・・・・・桜は?」
「まだ、先生と話してる」
転校の話とやらで、まだ話があるそうだ。
「何か知ってるのか?桜が転校する話とかやらで」
「・・・・・・ぜんぜん」
アキラは言った。嘘はついてなさそうだった。
「・・・・・・お前はどうしたんだよ。その髪とか」
「圭」
アキラが俺の名前を呼んだ。珍しいな。いつもは『黒瀬』なのに。
「なんだ?」
「俺は・・・・・・」
そう言ったあと、アキラは黙ってしまった。
しばらくして、桜が出てきた。
「ごめんね。待たせちゃったね」
「・・・・・・桜。どうして転校なんて」
桜は一瞬表情に翳りを見せ、聞かないで、と言った。
「・・・・・・俺、先に帰るよ」
アキラが言った。背中を向けて、手を振って帰っていく。
「黒瀬君。私たちも帰ろ?」
「・・・・・・ああ」
だが、俺と桜は帰り道で一言も喋らずに帰った。
「・・・・・・お帰りなさい」
「ただいま」
ふぅ、と溜め息をつく。シルクが怪訝そうな顔で見てきた。
「・・・・・・どうしたんですか?」
「え〜とな」
シルクに説明しようと思ったが、止めておいた。
「いや、何でもない。そろそろお前に絹織物の機械の説明をしたいから、ついてきてくれるか?」
家の裏にある、倉庫。
その中に、織り機がある。
「・・・・・・広いですね。・・・・・・そして大きいですね」
「そうだな」
これだけ大きな織り機は無いだろうな。
親父が作った、究極の一級品だ。
そして、24箇所の部品を繊細に、同時操作するには、人形と傀儡師の力がないと扱えない。
「・・・・・・あれは・・・・・・」
織り機の中央にあるのは、人形201番だ。白くて長い髪の人形。
絹の糸が、背中から伸びているので、まるで天使のようだった。
「人形201番、クロト。親父が作った人形だ」
俺とクロトは親父が死んだ後も作業を続けていた。
だがしかし、絹を織っているときに、眠るようにクロトは止まってしまった。
「はやく降ろしてやらないといけないんだが、あまりにも綺麗でな」
俺とシルクは協力してクロトを降ろした。
そしてクロトを箱の中に収め、倉庫の奥にしまった。
「次の日曜、親父の墓の横に埋めてやろう」
「・・・・・・はい」
今日は絹は織らず、ただ機械の取り扱い方を教えて、一日が終わった。
つまんね
早く書きすぎたせいか、ずいぶんミスが多いな・・・・・・
それだけのペースで厨二体現できてるのがすげえよw
実際、ここまで長く書くの初めてだぜw
いままで完結させたこと無いからちょっと自分でもワクワクしてるw
そろそろ終盤書くぜ〜w
降りしきる雨が、外の世界を灰色に染めていた。
「今日は、雨か」
そっと、傘が差し出された。
「・・・・・・傘を使えば、雨は凌げます」
「・・・・・・?」
そういって、シルクは無表情のまま、言った。
「・・・・・・いってらっしゃい」
「ああ、いってくる」
待ち合わせの場所に、桜の姿も、アキラの姿も無かった。
何気ない一日のように、今日が今日で終わり、赤い髪をした桜が教壇に立ち、別れを言ってから去っていった。
それで、全てが終わろうとしていた。
「・・・・・・なぁ、アキラ」
図書館の前にある休憩所で、俺とアキラは居た。
桜の姿は無い。
「お前、何があった?」
しばらく空く間。やがて、アキラが口を開いた。
「・・・・・・俺は、もうすぐ死ぬ」
「馬鹿いってんじゃねぇって」
アキラは笑った。
「そうだな。今まで色々あったけど、ありがとな」
「は?」
アキラは立ち上がった。
「先に帰る」
「あ、ああ。またな」
アキラは背中越しに手を振って帰っていく。
俺は夕陽が差し込む中、一人ぼっちで残っていた。
「・・・・・・帰るか」
すっかり暗くなって午後7時。
校舎が閉まる時刻だ。
暗い夜道を傘を差して帰る。
一人か・・・・・・
寂しさは、懐かしさに変わった。
風華――
あの日、俺はお前に支えられていた。
あの日、俺は一人では無かったはずだ。
今日はここまでw
乙。
乙乙
くそう、続きが気になりやがるぜ、、、
普通に面白いと思ってしまえる俺はもう邪気眼にとりつかれてるのかもしれん
シルクかわいいよシルク
母親に捨てられ、父親の元に預けられたガキの頃。
俺は、誰も信じずに生きてきたせいか、学校でも一人だった。
母親から、そう躾けられていた。
孤独だった。
「一緒に遊ぼうよ」
そう声をかけてきた女の子が、風華だった。
初めは俺の鋭い視線に少し気圧されていたようだったが、手を差し伸べてきた。
俺は、その手を取った。
雨音が、世界を覆っていた。
雨は嫌いだ。
嫌な記憶を思い出してしまう。
風華とはよく遊んだと思う。
由香さんが俺の家によく連れてきたからだ。
だが、記憶は曖昧で、何をして遊んだか覚えていない。
母親は言った。
それは対価だと。
お前の記憶を捧げたのだと。
神社で風華と遊んでいた。
そのとき、風華が何かを言った。
俺は振り返った。
風華はにっこりと笑っていた。
そして、倒れた。
咳き込んだ掌には、血が滲んでいた。
風華は入院した。
由香さんは、親父に退院は難しいと話しているのを、盗み聞きした。
俺は一度も風華にお見舞いに行かなかった。
「親父、俺を傀儡師にしてくれ」
俺は一人で強くならなければいけなかった。
だから傀儡師を目指した。
強くなれるのなら、なんでも良かった。
そして、俺が傀儡師として親父から認められた晩。
風華は死んだ。
読んでくれてる方Thanks!
日曜で終わるかと思ってたけど、早く書いたらプロット無視しまくっちゃったので、ペース落とすと思います。
今日は頭痛いんで、この辺で終わるかもしれないです。
無理して破綻するより全然いいぜ!
期待してまってるよん
やっぱり今日は寝ますw
おそらく風邪だぜ。
オヤスミですw
おだいじにね〜
俺は神社に来ていた。
「ここだな」
風華が倒れた場所の傍に立つ。
ここで彼女が何を言ったのか思い出せない。
そして、俺は何と答えたのだろう。
それとも何も答えなかったのか。
ふと神社の御神木の隣に誰か立っているのに気付いた。
「・・・・・・桜?」
赤い髪を雨で濡らしながら、桜は傘も差さずに立っていた。
「黒瀬君?」
「バカ、風邪引くぞ」
傘をかけて、ハンカチで頭を拭いてやる。
桜はただその光景をぼうっとした眼で見ていた。
「どうした?」
「・・・・・・」
何も答えない桜を家まで送ることにした。
「帰るぞ」
桜は何も言わず、俺の袖を掴んでついてきた。
「どうしてあんなところに・・・・・・」
神社の坂を降りきったところで、俺は桜に聞いた。
「・・・・・・ねぇ、黒瀬君」
「何だ?」
「あなたは、このまま学生として生きていたい?それとも傀儡師として生きていたい?」
桜から傀儡師という言葉が出てきて戸惑った。
「どうしてそれを・・・・・・」
桜は俯いて笑った。
「自分で言ってたじゃない」
「それは冗談で、しかも親父の事だ」
「・・・・・・あなたは?」
桜が俺の顔をじっと見つめてきた。
「あなたは傀儡師なの?」
嘘は許さない、そんな顔だった。
「・・・・・・ああ」
俺は答えた。
ちょっと休憩中・・・・・・
俺が傀儡師だ!傀儡師はこの世に二人いらない
世界は俺の操り人形よ……
サーセンww
タバコに火をつけた少女をシルクはじっと見る。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。私は沙耶って言うんだよ、シルクちゃん」
そういって赤い眼でシルクを見た。
「・・・・・・どうしてこんな事をするんですか?」
「保険だよ」
灰皿の代わりの小皿にタバコの灰を落とす。
「だけど、保険を使ってもまだ足りないかもしれない。だからシルクちゃん。あなたに協力してほしいんだ」
「・・・・・・私に、ですか?」
「うん」
シルクはまるで年下の女の子に話している気になった。でも、この人は・・・・・・
「・・・・・・わかりました」
「そう?ありがと〜」
少女はにっこりと笑った。
外では雨が降り続いていた。
>>478 ならば、私が操り人形なのか・・・・・・!?
今日はこの辺で終わりそうです><
先に、最後の方に手を付けていこうと思います。
お疲れ様でした。
481 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/27(火) 17:11:28 ID:C+tV9TTx
メメントモリユニコーン
伝説の神獣
常に生エネルギーと死エネルギーが回転しており
周りの生者は死に、周りの死者は蘇り、また死んでゆく
邪気眼です。すみません。
2月5日までに期末試験があるのでしばらく書き込みが激減します。
深夜帯に書き込むこともあるかもしれません。
なので、2月5日まで書き込まないと思っていただければ幸いです><
それ以降は絶対に完結させますので、よろしくお願いします。
試験も大事だけど、期待してる人がいることを忘れないでくれよ!
試験も大事だけど!
>>484 どもです!
今日は物理学を何とか終わらせて書き込もうと思います!
おそらく3時ごろ・・・・・・かな?
何とか早く終わらせて来ます!
あ、いやいや。
試験の方が今は大事だよ、と言いたかったw
睡眠も大事だよ!
冷たい手で、頬を触られた。
「・・・・・・ほんとね?」
桜がそう聞いてきた。
「ああ」
俺は肯定を返す。
桜の家につくまで、彼女は無言だった。
「じゃあ・・・・・・な」
「うん」
桜は家へと入っていく。引きとめようと思ったが、言葉が見つからない。
振り返り、家へと帰ろうとした。
「黒瀬君」
桜が言った。
「私とあなたは、もう会わないほうがいい。次に会えば、私はあなたを傷つける」
「なんだって?」
俺は振り向いた。
扉が閉まっていくのだけが見えた。
傘を畳み、家へと入る。
「ただいま」
「おかえりなさい」
珍しくシルクが玄関で迎えてくれた。
「ご飯できてますよ」
「ああ」
俺は上の空だった。
アキラも桜も様子がおかしい。
そして桜は俺を傀儡師と知っている。
「お風呂沸いてますよ」
「わかった」
湯船に浸かりながら考える。
・・・・・・俺のせいなのか?
――学生として生きていたい?傀儡師として生きていたい?
「俺は・・・・・・」
答えは出ない。
俺はいったいどちらなのだろう。
どちらにいれば、桜は――
「入りますよ」
「ああ・・・・・・」
「背中流しましょうか?」
「ああ・・・・・・え?」
シルクがバスタオル一枚の姿でそこにいた。
「・・・・・・なんで?」
「あの〜。だからお背中を」
俺はシルクを風呂から追い出した。
490 :
創る名無しに見る名無し:2009/01/28(水) 02:59:50 ID:1S164Pbi
雀眼烈空風錐鋲(じゃくがんれっくうかぜきりびょう)
七天烈光破邪撃(しちてんれっこうはじゃげき)
氷河(ひょうが)
不知火烈火緋咲夜(しらぬいれっかひのさくや)
「お湯加減はどうでしたか?」
「・・・・・・」
少し離れてシルクを観察する。
異常はなさそうだが。
「いつからこうなった?」
「なにがです?」
「変なモノでも食ったか?」
「いいえ」
「どこか頭でもぶつけたか?」
「いいえ」
「・・・・・・洗脳?」
「まさか」
んーー。
頭を抱えて考える。
何かとんでもない事になってるな。
シルクもいったいどうしたんだ。
「それより、絹の織り方を教えていただけませんか?」
シルクが心配だが、教えてくれとせがまれるので連れて行く。
「ここに爪を掛けて」
「はい」
「あと、ここにも」
暗い倉庫に電気をつけて、俺たちは織り機の前にいた。
シルクを以前クロトがいた場所に立たせ、織り方を教える。
「まぁ、最初は体で覚えるだけでいい。行くぞ?」
「私はどうしたらいいんですか?」
「俺が動かす」
工具箱から銀の糸《空蝉》を取り手を動かす。
銀の糸が、シルクの体に軽く巻きつく。
「ほら、こうやって」
巨大な織り機が動いていく。
正確には俺がシルクを動かし、シルクが握った128本の糸が、織り機を動かしている。
「すごいです」
「最初はこんな物だな」
規格より一回り小さな絹織物が出来た。
最初にしては、なかなかな出来栄えだ。
「で、これを由香さんの所に持っていくんだが、ちょっと小さいな」
少し考える。
「まぁ、これは俺が持っておこう」
いい事を思いついた。
「・・・・・・洗脳」
「まさか」
この流れのほうがいいな。
>>490 真・対極図奥義-烈風火山-
ここらへんで寝ます。
オヤスミなさい。
>>492 ミスった。対極図って何w太極図だったw
どんどん話が動くな
この話はどう終わるんだろう
線形数学得意な人は、掌を九州に向けて、俺に力を送ってください。
さて、書きますよっと。
俺は両手をポケットにつっこんで、バスを待っていた。
吐く息が、白く染まる。
桜が転校して、一ヶ月が過ぎようとしていた。
シルクが織った絹織物は、普通に納品できるレベルだった。
「お前、すごいな」
「ありがとうございます」
嬉しそうに笑った。
「私と黒瀬様の仲が良いからでしょうか?まるで新婚夫婦」
ビシッと頭を叩く。
「じゃあ、今度由香さんの所に持っていくからな」
シルクの冗談にも、慣れてきた。
シルクを留守番させてから、土曜日に由香さんの家に行った。
「・・・・・・すごいわね。これ、シルクさんが織ったの?」
「はい」
由香さんも驚いていた。
「先代のクロトさんに負けてない、繊細で綺麗なものに仕上がってるわね」
由香さんの許可を貰い、そのまま納品した。
「寒っ・・・・・・」
首をすくめる。
「時間なのに・・・・・・バスが来ない」
一人呟く。
桜が転校した翌日から、アキラは来なかった。
担任に呼び出されて、詳細を聞かれたが、わかりませんと答えるしかなかった。
「じゃあ、アキラ君の家にこれ届けてくれる?」
「すみません。俺、アキラの家の場所、知らないんです」
「そうなんだ。なら私が届けたほうが良さそうね」
深キョンは言った。
こんな事も知らなかったんだな、俺って。
待ってもバスは来なかった。
時刻の表記がおかしいのだろうか。
仕方なく、家までの長い道を歩くことにする。
後悔はしたくなかったはずだ。
心の中の、誰かが呟いた。
だからそうやって生きてきた。
だけど、今回ばかりはどうしていけば分からない。
自然と足が止まる。
「俺は、どうすればいいんだ・・・・・・?」
先ほどまで待っていたバスが、傍らを通り過ぎていった。
黒い車が、俺の目の前に止まった。
「どうしたんですか?」
千堂さんが顔を出した。
「よろしければ、乗っていきませんか?」
俺は乗らせてもらった。
「何か悩み事ですか?」
「え?」
千堂さんはバックミラー越しに笑いかけた。
「よろしければ、お聞きしましょうか?」
俺は話すことにした。
友人達の様子がおかしい事。
傀儡師として生きていけばいいのか、という事を。
千堂さんはしばらく考えてから、こう言った。
「前者も後者も同じだと思いますよ」
「・・・・・・何がですか?」
「どちらも、時間が解決してくれると思います」
そういって千堂さんは笑った。
それは答えでは無かったけど、信じてみようと思った。
「ありがとうございました」
家について、礼を言った。
「いえいえ。それに、あなたに用事もありましたので」
「何ですか?」
千堂さんは車のトランクを開けて、木箱を持ってきた。
その木箱の蓋には墨で署名がしてあり、右下には「十六代目 柳川哲司」と書いてあった。
「これは、傀儡師に代々伝えられるものです」
千堂さんが木箱を開けると、様々な形のナイフが入っていた。
「・・・・・・何に使うんですか?」
「護身用です」
千堂さんに聞けば、ナイフには柄と柄の部分に小さな穴が空いてあり、そこに糸を通して使うのだと。
「哲司さんの形見と思っておいて下さい。いつでも身に着けておくように、と仰られてました」
その一本を手に取る。
磨かれていて、光沢が美しい。
「わかりました」
俺はそのナイフを受け取った。
今日はここまでです。
誤字脱字、次回から気をつけますorz
おやすみなさい。
福岡市だがどちらへ向いて送ればいいww?
もにょもにょもにょもにょ…
けーーーーーーーーーーーっ!!
送っといたよw試験ガンガレ!
北九州と福岡の中間あたりに邪気眼がいるんで、そのあたりにwww
>>550 頑張ります!
おおっ……チカラが沸いてきた……!
中間だけに中間市だな
宗像あたりへ向けて送っといた
今日は眠れるまいw
乙
たまに文学的とも解釈できる文章が入ってると
何故かドキッとくるなwww
>>503 なんというスナイパーww
コーヒー飲んで、できるところまで頑張ります。
>>504 読んでくれてありがとですwww
それでは、また明日w
近畿からももにゃもにゃ送っておこう
ヒロインは、両性具有な古代神の転生体でゴザル。
問2「不均一な磁場中では・・・・・・これによってシュテルン・ゲルラッハの実験の原理を説明せよ」
俺 「(;゚д゚)・・・・・・」
「すまん」
「次から気をつけてくださいね」
シルクが俺の肩に包帯を巻いていく。
傀儡師のナイフの一つ、《飛燕》を裏庭の竹林で糸を通して使ってみたのだが、制御を誤った。
あと少しずれていたら胸に刺さっていただろうな。
しかし、難しい。
護身用のはずだが、一本でも使いこなせないのが心細い。
今日の練習はここまでにして、ナイフをしまった。
「今日は何の日?ふっふ〜♪」
「・・・・・・」
シルクを磔にして、脳内を調べてやろうか。
「今日はクリスマスです!」
「はい」
無視してご飯を口に運ぶ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あれ?」
「どうかしたか?」
「今日は和食なんですか?」
「ああ」
シルクは不思議そうに食卓を見つめる。
「これは・・・・・・いったい・・・・・・」
「いいから食え。冷めるぞ」
テレビからは特集なのか、クリスマスの曲が流れていた。
大事なことを忘れてしまっている気がする。
何だろう・・・・・・
桜の事。
アキラの事。
親父の事。
いや、違うな。
もっと身近な事だった。
目を覚ました。
シルクが俺の顔を覗き込んでいた。
「おはようございます」
「・・・・・・ああ」
シルクが泣いている様に顔を隠した。
「昨日は何もありませんでしたね、私たち」
「・・・・・・だから何なんだ」
今日から、冬休みだ。
今読んだ
wktk
もにゅもにゅー
この急接近の原因に主人公の母親とか転校生が関わってそうで(ry
雪は嫌いじゃない。
降り続く白い雪を見ているだけで、時が止まったように感じる。
「雪ですね」
「ああ」
急に振り出した雪の影響で、電車は遅れていた。
シルクのコートなんかを買っていたのだが、シルクはクリスマスケーキを買いたがった。
「5割引ですよ?5割引。50%オフ。つまり半額」
「つまりなんだ?」
「クリスマスパーティーしましょう」
「・・・・・・今日は12月26日だぞ?それにウチでは西洋のお祝いなんかはしない」
俺は小さな鏡餅のパックを買った。中に小さな切り餅が入ってるやつだ。
「ケーキ・・・・・・」
ごねるシルクを引っ張って、会計へと急いだ。
放送が流れる。
電車はあと30分しないと来ないらしい。
シルクの横顔を見る。
雪を物珍しそうに眺めている。
「・・・・・・時間もあるし、ケーキ買っていくか?」
「え?やった!」
シルクは子供のようにはしゃいだ。
今日の夕飯は、洋食になった。
中央には駅前で買ったチョコレートケーキが置かれていた。
「そんなにケーキが食べたかったのか」
「だって、言ってたじゃないですか。クリスマスは一緒にお祝いしましょうって」
「え?」
一瞬、何かの残像がよぎった。
黒髪の女の子が笑っていた。
「・・・・・・忘れてたんですね」
シルクが悲しそうに言った。
「悪いな。物覚えが悪いもんでな」
「酷いです」
泣く振りをされた。あーあー。
「ほら、これやるから許せ」
俺はシルクに白いマフラーを渡した。
「これは?」
「お前が最初に作った絹織物で作ったマフラーだ」
正月に渡そうと思っていたんだがな。
「・・・・・・ありがとうございます。大切に扱います」
「ああ」
夜は更けていく。
白い雪が、窓から見える景色を白く染めようとしていた。
>>514-515 読んでくれてサンクスw
そろそろ試験予定煮詰まってきたんで、更新遅くなります。
今日も↑だけ・・・・・・
ちょいと試験勉強してきます!眠る方はオヤスミなさい!
俺は小さな鏡餅のパックをカゴに入れた。
俺は小さな鏡餅のパックをポケットに突っ込んだ
>>519 ワロタw
入れなかったorz
人大杉って告知、初めて見た。
シルクのコート…だと…
夜。
暗闇に黒いフードをかぶった人が、枕元に立っていた。
目元まで黒いフードをかぶっており、俺が視線だけを動かすと、唇が笑った。
明かりがついた。
太陽だ。
黒髪の少女が笑っていた。
彼女は親父に引っ付くように立っていた。
俺の鋭い視線にも、少しも動じる様子は無い。
俺が視線の鋭さを弛めると、さらに笑った。
目を覚ました。
シルクが俺の顔を覗き込んでいた。
俺が起き上がると、すすす、と下がって三つ指をついて、おじぎをした。
「あけましておめでとうございます」
「・・・・・・ああ、おめでとう」
昨日作っておいた御節を暖めてくれたらしい。
おいしそうな匂いがする。
トーストの匂いがするのは何かの間違いだと信じたい。
シルクの為のコートなのか、
シルク製のコートなのか・・・・・・
それは誰にもわからない。
ちょっとさっきからパソコンの様子がおかしいので今日はここまで。
何故か全てのサイトで「このサイトはコンピューターに悪影響を与える可能性があります」と出るっす。
ここで終わらせて、検索してみます。
オヤスミなさい。
グーグル先生がおかしいみたいだな
トーストの匂いww
すでにここで話題になってたのか>グーグル
>>526-527 どうやらグーグルさんが調子悪かったみたいですね^^;
ウイルス入ったかと思って焦りました。
あわててUbuntuクリーンインストールしちまったZE
いくつかのネタtxtががが
諦めろ、どうせ黒歴史になるものだ
刻印に《鬼喰》と彫られた細いナイフは、中央に細い出っ張りがついており、そこに何かが触れるとかえしが飛び出し抜けづらくなる凶悪な品だ。
数えると、全部で10本あった。
上手く刺さった《鬼喰》は抜けず、ここに糸を通せば何か有効利用できるかもしれない。
やはり、何の知識も教わらないまま、これらを使うのは危険すぎる。
だが、このまま使っても傷つくのは自分だ。
もう一種類のナイフも調べる。
刻印には《黒鴉》と彫られ、投げナイフの類なのだろう。真っ黒な刀身をしている。
木に投げてみると、気持ち良いほど深く刺さった。
全部で10本。
以前使ってみたことのある《飛燕》は5本。三日月の形状をしたナイフで回転しながら飛ぶ。
《黒鴉》より飛距離は遠い。
そして、糸を通して使うと俺の手を基点にして楕円を描くように飛ぶ。
調べて分かったのはこれだけだ。
全部で25本。
そして、俺が同時に扱えるのは3本までだ。
それ以上は複雑すぎて、意識を回せない。
黒鴉を引き抜く。
「・・・・・・護身用なのか」
それにしては殺傷能力が高すぎる。
「ま、これを使う事態にならない事を祈るだけだな」
ふと、家の裏にある竹林を見た。
黒いフードをかぶった人が・・・・・・
「黒瀬様」
「ん?」
後ろから声を掛けられた。
「お客さんですよ」
「あ、ああ。分かった」
視線を戻す。誰もいない。
酔っているのかもしれない。まぁ、少し酒を飲みすぎたからな。
俺は玄関へと急いだ。
今日はここまで。
おやすみなさ(ry
試験「今日は寝させないぜ・・・・・・」
俺 「えっ・・・・・・//////」
orz
乙
冒頭を見てるだけに(´・ω・`)
>>534 すまない。
最近書く力が無くなってきた。
もうちょい勉強してから寝よっと
がんばれ
長い道のりを、どこまで歩けますか?
昔読んだ本の一文を思い出した。
・・・・・・きっと歩くことはできないだろう。今の俺では。
最初の一歩すら踏み出せない俺では、きっと途中で立ち止まってしまう。
先の見えないほど、長い道のりを歩いていくには何が必要なのか。
玄関に向かう途中でこんな事を考えたのは、酒のせいなのだろうか。
玄関口で、誰かが立っていた。
「・・・・・・アキラ」
「久しぶり」
アキラが軽く手を上げる。
「どうしたんだよ、お前。学校にも来ないでさ」
「悪い悪い、色々あってよ」
アキラはそう言って頭をかいた。
「・・・・・・そうか。あがっていくか?」
「悪いが時間が無い」
そうなのか。
そう言おうとした途端、肩を掴まれた。
「アキラ?」
「時間が無いんだ。今すぐ逃げる用意をしろ」
何だって?
「何を言って・・・・・・」
「千堂を呼んでおいた。もうすぐ着くそうだ」
「千堂さんと、知り合いなのか?」
俺は驚いた。
「《鬼喰》も《黒鴉》も《飛燕》も銀の糸《不知火》を使わないと上手く操作できない。さっきの人形に倉庫から取ってくるように言っておいたから持ってくるだろう」
・・・・・・わけが分からない。
「一体何を言ってるのか分からないんだが、説明してくれないか?」
アキラは一旦間を置き、携帯の時計を見てから言った。
「俺は組織の人間だ。いいか、お前を狙って敵が来る。今すぐ逃げろ。アイツは、藤島は・・・・・・」
玄関の戸が開く。
冷たい風が流れ込んでくるのを感じた。
「・・・・・・桜」
俺は呟く。
玄関に桜が立っていた。
眠れなかったので書き込み。
ここまでです。
おやすみなさい。
今日はおそらく書き込まないです。
明日から金曜日まで試験です。
とか言って書き込むかもしれないですが・・・
一応金曜まで書き込まないものと思っておいてください。すみません。
それでは。
念力送っとくぜw
レスしてないで真面目に勉強すれww頑張れ!
>>544 了解ですwコーヒー作ってる間やってましたw
頑張ります!
546 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 03:36:37 ID:Dr3TWJ7a
人は個人それぞれの意志が世界を持っている
その世界をぶつかり合わせる戦い
ATフィールドでメンコするようなものか
なんという比喩
549 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/04(水) 21:45:45 ID:9XY2Dg0k
できるだけ中二を避けようとして結局中二になってしまう罠。
俺が昔、この罠にはまった時に書いた小説の冒頭(しか書いてない)を晒してみる
「ある男の青春」
高級に光るグラスに、透き通るような赤のワインが注がれた。
グラスに軽く手を添え、男はワインを目を細め、眺める。
乾いた唇にグラスを当て、ワインを喉へと流し込む。会社を定年退職した男の、数少ない楽しみの一つだ。
緋色の液体を飲み干し、男はソファへともたれ、溜息をついた。
男には、妻も兄弟もいない。彼の両親は彼が社会へ出た頃、重い病気で命を落とした。やるべき仕事も、熱中すべき趣味も、そして愛すべき家族さえいない男にとって、余生とはただ、消費するだけの物だった。
「…………」
男はどこか遠くを見つめ、再びボトルを手に取り、グラスにワインを注ぎ始めた。
コポコポと響きの良い音を立て、ワインは冷たいグラスを満たしていく。
静かにワインを口に含みながら、男は考えた。
――自分にとって、人生とは何だったのだろうか。何十年も前から、私はずっと働いてきた。目的は特に無かった。ただ働いていれば何かが変わると、そう考えていた。
しかし、現実はどうだ。働き詰めでろくに楽しみも持たず、無味乾燥そのものだった。挙句の果てには退職。残された人生が尽きるのを、ただ待つばかりではないか。これでは、死人と何ら変わりは無い――。
そこまで考え、男は思考を止めた。
退職してからというもの、酒を飲むたびに繰り返される、下らない葛藤だ。
――いまさら考えて何になる。もう、事態は何も好転しないのだ。もう、私の青春は帰ってこないのだ――。
これも、そのたびに繰り返される、慰め、そして諦めの思考である。
「…………はあ」
大きな溜息。男はグラスに残されたワインを、半ば無理矢理口に入れ、静かにソファへ寄りかかる。
そしてそのまま、男は瞼を閉じ……。
書いてて昔のハズい記憶がフェニックスのように甦ってきた。
もう寝よう
551 :
邪気眼 ◆WXL4HPZ/HQ :2009/02/07(土) 00:35:43 ID:mwWYYo3B
試験オワタ
( ゚д゚ )
今から書き込みますねw
桜は赤いコートを着て、ただじっと立っていた。
「・・・・・・おはよう」
何となく気まずい雰囲気だったので声を掛けてみた。
「・・・・・・ここは、『あけましておめでとう』じゃないの?」
そう言って笑ってくれた。
軽い足取りで家に入ってくる。
「久しぶり」
「お久しぶり」
挨拶を交わす。
やはり、こいつと話していると安心するな。
どこか、似ているのだろうか。
青色の包装紙で包まれた箱を渡してきた。
「何これ?」
「ロンドンに行ってきたから、お土産」
そうか、お土産か。
その箱を貰おうとした瞬間、桜の手からアキラが箱を叩いた。
いや、正確には下から振り上げた手で、箱を打ち上げた。
一瞬、宙に浮く青い箱。
アキラが俺を抱えて廊下の奥へと走って跳ぶ。
俺は桜が、彼女が一蹴りで玄関から外へと後ろ向きに跳んでいくのが見えた。
悪戯がばれて残念そうな顔をしていた。
箱が地面へと落下する。
カツン、という軽い音。続いて轟音。
視界が炎と熱で包まれた。
ああ…とうとう戦いが始まってしまった…
558 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 00:57:04 ID:Sg5bN6xN
ひさしぶりだなー
視界が炎と熱で揺らいだ。←変更
耳鳴りがする。
足元に熱を感じる。
驚いて動けなくなった体をアキラが廊下から家の奥まで引きずって運んだ。
ドアを閉めて煙の進入を遅らせる。
アキラが怪我をしていないか、俺の体の状態を見て一言。
「お前、重くなったな」
「・・・・・・なんだそれ」
予想外の言葉で少し思考がはっきりしてきた。
どうやら息を止めていたらしい。呼吸を再開する。
煙でむせた。
「ここは危ないな。今すぐ脱出しよう」
アキラが俺を誘導しようとする。
俺はアキラを引き止めた。
「いったい、今のは何だよ。俺を驚かせようとしているのか?」
強い眼差しで俺の言葉は止められた。
「・・・・・・とにかく、いったん家から出るぞ」
俺たちはしゃがんだ状態のまま、裏口へと向かった。
裏口でアキラが外の様子を確かめながら出る。
俺はその後に続いた。
「大丈夫でしたか?」
裏庭の倉庫からシルクが走ってきた。
「今のは何なんですか?煙上がってませんか?」
シルクが心配そうに聞いてきた。
「・・・・・・わからん」
そう答えるしかなかった。
「人形、《不知火》は持ってきたか?」
「は、はい。こちらにあります」
差し出された銀の糸をアキラは俺に渡した。
「使え。この糸が制御力がある。そしてこの糸は捻りを加える事によって微調整が可能だ」
「・・・・・・なんでそんなに詳しいんだよ」
アキラはちらっとこっちを見てから言った。
「さてね」
桜が中庭の向こう側に現われた。
>>559 ご無沙汰しておりましたよっとw
時間があるって素晴らしいねw
糸って燃えたらやばくね?
>>562 確かに。糸は極細のワイヤーだと考えてくれれば幸いです。
一応そのつもり。
「失敗しちゃったよ。どうしようかな」
桜が独り言のように呟く。
笑顔のまま言ってる分だけ、不気味だ。
「桜・・・・・・」
俺は前に出る。
「広い庭ね。全部黒瀬君の家なの?」
「あ、ああ。そうだが・・・・・・一体、なんのつもりなんだ?」
「何って、殺すつもりだけど?」
「な・・・・・・」
俺は絶句した。桜が俯いて言う。
「だって、傀儡師なんでしょ?殺さなきゃ・・・・・・」
俺が何て返そうか迷っていると、アキラが俺の前に出た。
「殺されるのはお前だっての」
「アナタには用はないわ」
「俺は用がある」
アキラが拳を握る。
「こいつを守るのが、俺の仕事だ」
桜の顔が、不気味に笑った。
「かっこいい騎士様って事ね」
「悪くない例えだな」
二人が睨みあう。
休憩しま。
今日はここまでです。
眠いです^^;
オヤスミなさいw
567 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/07(土) 02:16:09 ID:XC8FvrE7
乱入。邪気眼さん、乙。超乙。
シルクたんかわいいよ、シルクたん。
本編中に出てきた「モップみたいな木星人」って
ムックさんのことかー…!
乙
泣くのはまだ早いよね
乙乙
おやすみー
さて、このスレを頭から尻まで読ませてもらったわけだけど
サイトに載せている小説が中二病テンプレ(文章術編)が
すっきり当てはまっていて激しく笑った。
某織田版魔導にインスパイアされて
それっぽいファンタジー小説を書いていた…
そんな時期もありました。
中ニ病はつきつめれば優れたエンターテイメントなんだぜ?
>>571 やっぱりそれはそうだよな。
前にもこのスレで言われてた通り、中二病をいかに
上手く料理するかが、上手い奴と中二の違いなんだろう
もう書き手のおまいら、大好き。
読んでくれている方サンクスw
続きを書きます
わくわく
遅くなったけど試験おつかれ
レス苦手だけど応援してるんだぜ!
冷たい氷のようなものが、鳩尾に当てられているような感覚。
二人はただ睨みあっているだけ。
ただそれだけなのに、動けない。
何も話しかけられない。
桜とアキラが互いに一歩ずつ踏み出す。
二歩、三歩と進んで、入り口から爆音。
続いて車の音がした。
中庭に現われた黒い車は、そのまま桜を轢き飛ばした。
赤いコートが、宙に浮く。
俺はあまりの暴力的な光景に言葉を失った。
黒い車はそのままの勢いで、俺たちの横に急停車した。
「ご無事ですか?」
千堂さんが顔をだした。
「遅いぞ、千堂」
アキラが言う。千堂さんは一礼した。
「もうしわけございません」
赤いコートは動かず、地面に伏していた。
思わず駆け寄りそうになる俺の腕を、千堂さんが掴んだ。
「何すんだよ!」
「ダメージは与えられていません。あれは演技です」
そういって、千堂さんは胸ポケットからナイフを取り出した。
それを桜に向かって投げる。
頭に突き刺さる瞬間、腕が伸びてナイフの腹を手の甲で弾いた。
「汚れちゃったじゃない」
そう言って立ち上がる桜。腰の辺りが黒ずんでいた。
「おい、千堂。黒瀬を連れて逃げろ。その人形もな」
「何言ってんだよ。お前も来いよ」
この状況は異常だと思えた。
どうして桜が俺を殺そうとする。
どうしてアキラが組織の人間なんだ。
俺の頭にポンっとアキラの手がのせられた。
「・・・・・・お前は生きろ」
俺は、その姿に一瞬、親父を重ねた。
いや、アキラは――
「行きましょう!」
千堂さんとシルクが俺を引っ張って後部座席に乗せた。
そのままシルクが後部座席に、千堂さんが運転席につく。
急発進する車。
「行かせない」
桜が走ってくる。
アキラが桜に向かって走っていき、蹴り飛ばした。
「アキラッ!!!」
あいつは俺に向かって笑って答えた。
そのまま車は俺の家から離れ、アキラの姿は完全に見えなくなってしまった。
>>575 >>576 どもですw
ゆったりめのペースで書いてますが、楽しんで読んでいただけると幸いですw
車ではねたww
千堂さんは途中で車を何度も乗り換えた。
白いミニバン、赤いワゴン、その度にキーを付けっぱなしで放置した。
「誰かが乗っていけば、囮になってくれます」
そうして緑の軽自動車は、ボロイアパートに着いた。
俺はそのアパートに入り込むなり、腰を下ろした。
シルクが小さく呟く。
「家が燃えてなければいいですけど。木造は燃えやすいんですよ」
千堂さんが小さく笑って答える。
「消防車を呼びましたので、大丈夫でしょう」
さて、お茶でも煎れますか、と言った千堂さんを止めた。
「事情を説明してくれ。アキラはあんたと同じ組織の人間なのか?」
「そう・・・・・・そうですね」
千堂さんは俺の前に正座して話し始めた。
「アキラ様からどの程度聞きました?」
「いや・・・・・・ほとんど何も」
「そうですか。ではお話致しましょう。我々と、彼らの因縁を」
「車行っちゃったけど、大丈夫?」
蹴り飛ばした桜が起き上がり、聞いてくる。
「ああ。敵に心配される程じゃない」
構える。
「ところで、藤島博士は元気か?」
「お父さんを知ってるの?」
「ああ」
桜はしばらく悩んだ後、トランシーバーを取り出し、アキラに向けた。
『あーあー。聞こえてるかな?アキラ君』
「聞こえてるぞ、雄一」
『私の下の名前まで知っているとはね。君は一体誰なんだ?』
「俺は哲司だ。柳川哲司。同期の傀儡師を忘れたか?」
声がいったん途切れて、再開する。
『そういや居ましたね。元気にしていましたか?』
「お前が送る刺客のせいで、退屈はしなかったな」
『そうですか。ですが、大変な変わりようだ。お体が小さくなったのでは?』
「ああ。お前のせいで、俺の肉体を損失した」
『だとすると、あなたは人形ですか。まったく、往生際が悪いと言うか、何と言うか・・・・・・』
「お前こそ、出来損ないの人形を作るのは諦めたらどうだ?」
桜がピクッと動く。
『言っておきますが、今回の人形は本当の自立人形ですよ』
「それでも壊す。お前が殺した師匠からの伝言だ。『見つけ次第殺せ』とな」
『そうですか。私を殺したかったらまず、この人形に勝ってみせなさい。では』
桜がトランシーバーをしまう。
俺は構える。
人の頃の俺はこいつに殺された。どうして勝てなかったのかは知らない。
だが、傀儡師を殺そうとしている藤島雄一は俺の息子も狙うだろう。
だから、こいつはここで壊さなければならない。
俺と藤島は同時に動いた。
千堂さんが話し終えた。
組織は藤島隆一を殺す為に作られた組織だという事。
彼は俺の親父を殺した傀儡師であるという事。
親父は死んだが、何とか人形を押さえ込んで封じた事。
その人形の同型が、調査によって藤島桜である事が判明したという事。
「それで、あなたを保護するために急いで向かったのです」
なるほどな。
「それで納得できるかよ」
俺は怒っていた。
「どうして俺が殺されなきゃならないんだよ」
「あなたが傀儡師だからです」
傀儡師。またか。
「どうして傀儡師を狙う」
「きっと、嫉妬でしょう」
嫉妬だと?
「彼は完全な傀儡師ではなかった。だから師に破門され、そして傀儡師を恨むようになった」
「だからって、なんで桜が」
「彼女は人形です」
人形?
「ただし、特別製です。あなたが創った人形とは製造工程が違います。彼は自分の技術をテクノロジーで補完しているのですよ」
訳が、わからない。
「アキラは?アキラは大丈夫なのか?」
「苦戦するでしょうね。哲司さんも勝てなかった敵ですから」
「じゃあ、アキラを助けに行かないと!」
立ち上がった腕を、また掴まれた。
「待ってください。アキラ様がかなわない敵ならば、我々にはどうすることもできません」
千堂さんは俺をじっと見た。
「連絡を、待ちましょう」
何も出来ない。
その言葉が心に重く圧し掛かる。
そうだ、俺には何も出来ない。
桜を止める覚悟も出来ないでいるのだから。
テクノロジーを使った特別性の人形…アンドロイドか??
「お茶ですよ」
シルクが持ってきた茶碗を受け取る。丁度いい温度だ。
「・・・・・・ありがと」
茶を啜りながら、夕暮れ時の街を見た。
ここは何処なのだろう。千堂さんによれば、また移動すると言っていた。
その千堂さんは食料品を買いに出かけて行った。
遠い、と思った。
昼にあった全てが遠い出来事のように思えて、夢であればいいと願った。
「私たちの家、大丈夫ですかね〜」
シルクが呟く。
「・・・・・・さぁな」
「織り機も心配ですね〜」
「・・・・・・さぁな」
シルクが心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。
俺が無視して街を見ていると、頭を撫でられた。
不快ではないので、されるがままになっていた。
「黒瀬様は、小さいときの事を覚えていらっしゃいますか?」
「・・・・・・ほとんど忘れてしまったよ」
母親の言葉を思い出す。
俺が忘れるのは対価だと。
魂を操るのには、記憶を刻んだ者、刻まれた者両者に影響を及ぼすのだと。
「私は覚えてますよ。あなたの事を」
一瞬、意識が覚醒する。
「あなたが家に来てから、ずっと私は楽しかったですよ」
嘘だ。お前は全て忘れていたはずだ。
お前は――
「シルク・・・・・・お前、一体何を言っているんだ・・・・・・」
ガチャっとドアの鍵が鳴り、千堂さんが戻ってきた。
「連絡がありました」
そのまま俺の前に来て、言う。
「アキラ様が捕まりました。藤島桜は、交換の対象としてあなたを指名しています」
「な・・・・・・」
千堂さんが俺を真剣に見据えて言った。
「あなたは普通の人として生きたいですか?それとも傀儡師として生きたいですか?」
>>583 それももうすぐ分かりますよw
寝るのでここまでですw
おやすみなさいw
邪気眼さーん、私だ!結婚してくださーい!
もうね。いろいろ見習いたい。中2病でよくあるネタをここまで昇華させられるとは。
どきどき
待ってたんだぜ!
しかし最初のほうは中二だなーと笑ってた俺も
wktkしすぎて笑えなくなってるんだw
古野神社は、小さな神社だ。
俺の町にある神社の中では一番小さく、俺の家の裏手にある。
風華とよく遊んだっけ。
今じゃ遊んだことすら記憶が曖昧だ。
「来たわね」
桜が言う。
翌朝は雨になった。
薄い曇り空から、雨粒が落ちてくる。
俺は千堂さんについて行くことに同意した。
アキラを助けたいし、桜を止めたい。
シルクもついていくと言い出した。
「黒瀬様を守るのが、私の役目です」
「そうか。だけど、俺の言うことは必ず守るんだぞ?」
「はい」
千堂さんは、大きな太刀を持ってきた。
「私の得物です」
笑顔で言う。
俺たちは待ち合わせの場所、古野神社に向かった。
「黒瀬君も来たのね」
「ああ」
俺は言う。
赤い髪。赤いコート。
桜は傘を差さずに雨のなか立っていた。
「アキラ君はここよ。先に取りに来ていいわよ」
そういって濃緑色の袋を指差した。
千堂さんが取りに進む。
「黒瀬君、君はどうして来たの?」
「俺は、親友として来た。お前と話し合うために」
作戦なんてものは無い。
「・・・・・・話し合いなんて、不毛よ。私はあなたを殺す為に来たんだから」
千堂さんがしゃがんで濃緑色の袋に触れる。
「・・・・・・死んでますね」
「なっ」
桜が歪んだ表情で笑う。
「壊したわ。全然相手にならなかったけどね」
「・・・・・・そうですか」
桜からは見えていないだろうが、千堂さんはしゃがんだ時に、同時に太刀を抜いていた。
「・・・・・・何故ですか?」
「言わなくても分かっているでしょう、千堂。あなた達は私達、私達はあなた達を殺す為に作り出されたのだから」
千堂さんの腕が一閃。
白い太刀が桜の喉を貫いた。
俺は目を逸らしてしまった。
わかってる。
アキラは組織の人間で、もし死んでしまっていたら千堂さんは仇を討つ。
そういう取り決めだ。
目を開ける。
桜の喉に太刀の先端が突き刺さっていた。
「・・・・・・これで終わり?」
桜が呟いた。
>>589 どもですw今日は短めに終わると思いますよ。
鼻かぜ引いてしまいましたorz
シルクの中身って故人の魂が取り憑いてたりするの
桜は平気そうに喉に刺さった太刀を見ている。
確かに喉からは赤い鮮血が流れている。
しかし、千堂さんの一閃の勢いが途中で止まってしまったかのように思える傷だ。
「まだ終わりではありませんよ」
千堂さんは太刀の指元にあるスイッチを入れた。
先端に付いているスタンガンが作動して、電流を流す。
「・・・・・・なるほどね。考えたわね」
喉から煙を流しながら、桜は答えた。
喉の皮膚が爛れて、金属の鈍い光沢が見える。
「桜・・・・・・お前、一体何なんだ?」
桜は俺を一瞥すると、太刀を掌で折り曲げた。
そして千堂さんに向けて鋭い蹴りを放つ。
俺はその軌道が見えなかった。
千堂さんはその一撃を腹に受けて、神社の坂を転がり落ちていった。
「・・・・・・これで組織の最後の一人も死んだわね」
神社の坂の底を見透かして言う。
「てめぇ・・・・・・」
「どう?これでも話し合いは有効かしら?・・・・・・あら?」
桜がしきりに頭を叩いている。
「通信システムがやられたわね。これじゃ何もできないじゃない」
俺は銀の糸《不知火》を掴む。
殺す気は無い。
アキラが殺され、千堂さんも死んだ。
しかし千堂さんは私達の死を恨まないで、と言った。
だから恨まない。
だから、まだ俺はこいつを止めることができると信じていた。
それが浅はかな妄想だとも気付かずに。
桜がトランシーバーを取り出した。
「通信システム異常発生。音声による指示をお願いします」
『そうか。それは大変な事になったねぇ、桜』
声の持ち主はしばらく考えた後、こう言った。
『捕獲する手もあるけど、殺してしまいなさい。人形もだ。最重要指令だ。傀儡師と人形は殺せ』
「了解しました」
桜はトランシーバーを切り、投げ捨てる。
「お前、人形なのか?」
「そうよ」
喉の部分の金属を見せる。
「ただし、あなたが創った人形とは違うわ。私は確固たる意志を持ってるもの」
「私だって持っています」
シルクが前に出る。
「黒瀬様、命令を」
「命令は何も無い」
俺は右手を動かし《空蝉》で桜を包囲する。
「もう捕まえたからな」
一気に引き絞り、結ぶ。
桜は自身の体をじっと見た。
「へぇ・・・・・・それでどうするの?」
桜が焦る様子は微塵も無い。
「このままお前を封じる。そして、俺達は逃げる」
「なるほどね・・・・・・シルクちゃん」
「・・・・・・?はい?」
「あの日の言葉を覚えてる?」
桜の眼が穏やかな色になった。
「覚えていませんし、あなたと会ったこともありません」
「そう・・・・・・黒瀬君。残念だったわね」
「なにがだ?」
「これじゃ弱すぎる」
そう言って、桜は《空蝉》を引きちぎった。
「この分だと、アキラ君の方が強かったわね」
そう言って歩いてこっちに向かってくる。
「黒瀬様、命令を」
「・・・・・・」
「黒瀬様、命令を」
人形は繰り返した。
「・・・・・・何も、するな」
俺にこいつは殺せない。
桜が俺の前に立ち、頬を殴った。
金属で殴られたような感覚。口の中が切れた。
また、襟をつかまれ、殴られる。
二発、三発。
殺せないなら、どちらかが死ぬしかないのなら。
四発目が止められた。
「命、令を、聞け」
切れた口では喋りづらい。
「嫌です!」
シルクが桜を殴りとばした。
桜は倒れていた。
ゆっくりと立ち上がって、こちらを向く。
「どうして邪魔するの?命令が聞けないの?」
「私は、私の思うとおりに動きます」
「あなたは・・・・・・人形なのに?」
「黒瀬様の人形だからです」
シルクは胸に手を当てて、言う。
「私は、私の信念の為に動きます」
こいつは、驚いたな。
ふらつく頭で考える。
命令を聞かない人形なんて、クロト以来だ。
「あはは・・・・・・信念ね。面白い事を言うね、シルクちゃん」
腕が、変形した。
両腕の皮が破れて、黒色の機械が覗いた。
「壊してあげようか」
シルクが俺の前に立ち、ナイフを構える。
こいつは戦闘用の人形じゃない。
ただ、織り機を織るための人形だ。
勝てるわけが無い。
「よ、せ」
俺は呟くことしかできなかった。
シルクが駆け出す。
ダガーナイフを桜の左眼に突き刺す。
レンズが割れるような音がした。
「・・・・・・非力すぎる」
桜がシルクの喉を掴んだ。
「やめろっ!」
俺は《黒鴉》を桜の腕に突き立てた。
「・・・・・・弱すぎる」
その腕で、俺を振り払う。
「弱さは罪だよ、黒瀬君。弱くては誰も守れない。このシルクちゃんもね」
片腕を大きく振りかぶる。真っ黒な腕から大きな駆動音がする。
「ゼロ・インパクト=v
俺の叫びは、打撃音にかき消された。
吹き飛んでいく小さな体。
何度か地面をバウンドして、鳥居にぶつかり止まった。
「シルクッ!!!」
俺は急いで駆け寄った。
小さな体を抱え起こす。
ひどい有様だった。
腹部には大きな穴が空き、内部のパーツも修復不可能な程壊れている。
冷たい雨が、頬を濡らす。
腕に抱いた人形の体温が下がっていく。
「申し訳・・・・・・ありません・・・・・・」
謝んな、バカ野郎。
口にしたと思った言葉は出ず、ただ吐息だけが漏れた。
俺の顔を見て、人形は笑った。
「・・・・・・まだ分からないんですか?」
「・・・・・・?」
何をだ?
「私はクロトですよ」
クロト・・・・・・?
「ええ。元の人形の魂は、黒瀬沙耶様がお預かりになっています」
母親が?
「そうですよ、黒瀬様」
クロトは俺の表情から言葉を読み取っていく。
クロトは俺が幼年期の頃から共に過ごした人形だ。
そうか。
「クリスマス、一緒に祝おうって約束したな」
クロトはクリスマスに作られた人形だ。
「私は幸せでした。もう一度黒瀬様と出会えて、本当に幸せでした」
「・・・・・・俺も、楽しかった」
頬に手を添えられる。冷たい手が、悲しかった。
「どうか、泣かないでください」
そう言って、程なくして、人形は、死んだ。
笑顔のままで。
今日はここまでです。
おやすみなさい。
いよいよ終わりが見えてきた
乙
眠いです。なんでだろ。
暗闇の中、タバコの灯だけが赤く小さく光っていた。
母親は言った。
「こいつの魂を操ると、お前の記憶をほとんど失うことになるが、それでもいいのか?」
「ああ、構わない」
目の前で苦しげに眠っている黒髪の少女。
クロトの状態はおかしい。
やはり、親父の支配権を失ってまで動くのには限界があるのか。
それならば。
「クロトの魂を預かってくれ」
沙耶が吐いた煙が、揺らめく。
「・・・・・・死霊術式六千五百零二番結締解除=v
タバコの煙がクロトにまとわりつく。
儀式が始まった。
お前は後悔をしたくなかったんだろ?
声がする。暗い霞の中に誰かが立っている。
だからクロトの寿命を先延ばしにした。いずれ別れなければならないのに。
「違う!」
俺は言い返す。
「対価は十二分に払った!これは取引だ!」
記憶がさらに過去に遡る。
俺が親父の家に来たとき、家にはもう一人、住人がいた。
「人形201番、クロトという。仲良くしなさい」
親父は俺に言いつけた。
クロトは遊び相手の居ない俺の友人になった。
「黒瀬様は、将来何になりたいのですか?」
ある日、クロトは俺に尋ねた。
「さあな。傀儡師になるのかな」
そう言って《黒鴉》を投げた。弧を描いて的に当たる。
「なるのではなく、なりたいものですよ、黒瀬様」
クロトは真剣に言った。
「・・・・・・絵描きになりたいなぁ。親父が許してくれるなら」
《飛燕》を銀の糸《不知火》に掛けて飛ばす。指先の微妙な感覚で調整し、中庭にある的を落としていく。
単純なゲームだ。《飛燕》を増やした所で難易度はさほど変わらない。
「・・・・・・もし絵描きになったとしても、黒瀬様は私を連れて行ってくれますか?」
「あたりまえだろ」
全ての的を落とした。
「俺が一人前になったら親父はお前を俺にくれるって言ってるんだから、まず傀儡師になるんだ」
そのとき、クロトはとても幸せそうに笑っていた気がする。
払わなければならない対価に、お前は傀儡師としての記憶を差し出した。
クロトをあの母親に預け、お前は傀儡師としての技量をほとんど失った。
そしてお前の弱さでクロトを失ってしまった。
「何が言いたい・・・・・・」
結局、運命からは逆らえないって事さ。俺も、お前も。
声の持ち主は、子供の頃の俺だった。
「お前は傀儡師から逃げた」
子供は俺を非難した。
「傀儡師から逃げることで、魂を扱う責任や、死を愚弄する行為から逃げた。その結果、クロトを失った」
お前は、俺の過去か。
「大切な友人すら失った。これもお前が傀儡師であることに耐えられなかったからだ」
違・・・・・・わない。
確かに逃げた。
俺はクロトを救うために傀儡師の記憶を差し出したが、実際は俺も救われたかったのだ。
忘却によって、逃げたかったのだ。
「お前は、人間として生きるのか?傀儡師として生きるのか?」
過去が問う。
「・・・・・・俺は、傀儡師として生きよう。お前の全てを受け取ろう。そして償ってやる」
俺と過去は手を結んだ。
「だが、今日までだ。俺は普通の人間として生きるために、傀儡師を越えるために敵を倒す」
俺は、傀儡師の全てを思い出した。
603 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/10(火) 00:24:09 ID:XnaxAeCh
[―{}@{}@{}-] ←なんとなく顔に見えるw
―{}@Д@{}- ウボアー
あれ?sageたはずなのにな・・・・・・
IDも何か変だぜ・・・・・・
「お葬式は済んだ?」
その声で現実に引き戻された。
女の声。顔をあげると、冷たい笑みの桜が立っていた。
一瞬、全てが夢だと思った。
夢であれば良かったのに。
「泣いてるの?可愛そう」
俺の頬に熱い液体が流れていた。
泣いているという自覚は無かった。
雨と涙の違いは、温度の差か。感情の差か。
どっちでもいい。今大切なのは、目の前の敵を倒すことだけ。
傀儡師としての全ての思考を開始する。
フィールドの区分。
敵の位置。俺の位置。
《不知火》の状態。正常。
横に倒れている人形シルク、もといクロトを見る。
「人形203号、機能停止確認」
俺は呟く。
ただの傀儡師としての復唱による認識だ。
心は冷え切っていた。
桜を殺してしまおう。
何の感情も無く、殺してしまう。
ただの肉塊に変えてしまおう。
今の俺には、それが出来る。
「藤島桜を敵と認定。排除する」
口にして、認識。
銀の糸が張り巡らされ、25本のナイフが宙に浮かび上がる。
対象は桜。
大事な親友で、大切な女だった。
「死ね」
不規則な軌道を描いて、ナイフが桜に襲いかかった。
俺のナイフをかわす為に、桜は後ろに跳んだ。
一歩、二歩、三歩目。エリアC3壱に入った。
俺は両腕を交差して《鬼喰》の軌道を変える。
《鬼喰》が木々を貫通。横槍から桜を狙う。
「・・・・・・!」
桜の鋼鉄の腕に《鬼喰》が三本突き刺さる。
「・・・・・・抜けない」
俺の飛燕をサイドステップでかわしながら桜が言った。
「俺の恨みだと思え」
桜が俺の連撃の隙をつき、前進して一気に間を詰めてくる。
エリアA1壱。すべて想定内。
飛燕を一旦呼び集め、一斉に放つ。
「・・・・・・旋風=v
五つの《飛燕》が球のようにまとまりながら、桜へとぶち当たる。
桜は衝撃で後ろへ飛ばされた。
冷静に観察する。エリアB5壱。
「・・・・・・どうやら、人形というよりはサイボーグのようだな」
桜は胸を抱えて立ち上がる。
回線がショートしたのか、黒い煙が上がっている。
桜は傷口に手をつっこむと、何本かコードを引き抜いた。
それを俺に見せる。
「そうよ。私は親に改造された人形。元は人だけど、人形としての機能を持つために産まれたときからこの体よ。驚いた?」
俺は何も答えなかった。
「だから、どんな味も匂いも温度も感じない。感じ取れるのはそれらのステータスだけ。どう?傀儡師としての意見は?」
最初は、雨粒かと思った。
「・・・・・・幸せか?」
「人形としての幸せなら、あるよ。全ての命令を、なんの躊躇も無く実行できる・・・・・・幸せだよ」
桜が俺の顔を真正面から見る。
左眼のカメラが割れて、空洞になっていた。
桜が突進してくる。
俺は木の上に刺していた《黒鴉》を引き戻し、ナイフの雨を降らせる。
桜の背中に全て突き刺さる。
桜は痛みで顔を歪めた。だが、その疾走は止めない。
俺の腹部を狙い、拳を伸ばしてくる。
俺が防御の為に張った《不知火》を引きちぎり、当たる。
瞬時に後ろに跳んだが、衝撃を殺し損ねた。
着地と同時に腹部に激痛。内臓が潰れたか。
思わず喉から這い上がってきた血を吐く。
どうして親父が、アキラが、こいつに勝てなかったのか。
桜は《黒鴉》を背中に受けた状態で倒れていた。
「・・・・・・お前もか」
俺は呟く。
「お前も、俺と同じだったんだな」
人として、ただの人間として生きたい。
誰でも叶うはずの願いが、俺達にはない。
運命だと諦めてしまえば、それだけだけど。
道理で、情に弱い二人は勝てないはずだ。
「・・・・・・あなたじゃなければ良かったのに。『圭』なんて名前、全国に何千人も居るはずなのに。なのに、調査し始めて、たった10人目で黒瀬君に当たってしまった」
どちらかが死ななければ、この戦いに終わりがつかないのならば。
「・・・・・・そろそろ終わりにしようか」
俺は立ち上がる。桜も立ち上がった。
《不知火》を限界以上に引き絞り、鋼の槍を創り、桜に向ける。
桜は俺に腕を向け、両腕から大きな駆動音を響かせている。
お願いだ。
俺と桜は同時に走った。
互いに、互いを殺す為に。
どうか、そんな泣き顔で、俺を殺そうとしないでくれ。
「「死ね!」」
今日はここまで。
オヤスミなさい。
じゃっきーもつかれー
良い夢を☆
・゜・(つД`)・゜・。
轟音。
続いて静寂が支配した。
夢であれば良かった。全てが夢で、目覚めれば桜がいつもどおりに笑っていてくれる。
いつもどおりの友人で居てくれる。そんな夢であれば良かったのに。
いや、そちらが夢なのだろうか。
下を見る。
槍の先端から、赤い血が流れていた。
俺の鋼の槍は、狙った位置を随分反れて、桜の右腕を貫通していた。
・・・・・・ああ、死んだのは俺の方か。
そんな事を思った。
これだけの痛みなら、悪くない、と思った。
こいつの変わりに眠るのなら。
『圭ちゃん、大丈夫?』
あの日の声がした。
俺と風華は確かにここで遊んでいた。
俺は一人ではなかった。
家ではクロトが、外では風華が居てくれた。
二人とも、失いたくなかった。
大切な友達だから。
「・・・・・・圭、大丈夫ですか?」
現実で声がした。
意識を現実に向ける。
桜の拳は、俺の胸の寸前で止まっていた。
それを止めていたのは、華奢な腕だった。
黒いフードを被った少女。
桜が地を蹴って、後ろに下がる。
「あなた、だれ?」
桜が問う。
彼女はフードを下ろした。
「・・・・・・あなたとの、約束を果たしに来ました」
・・・・・・そんなはずはない。ありえない。
その横顔は、まさしく風華だった。
「そんな・・・・・・」
俺は絶句する。
どうして風華の姿でここに居るんだ。
「あなた、誰なの?」
桜がもう一度繰り返す。
「・・・・・・わかりませんか?」
風華が桜に問う。
桜が溜め息まじりに言う。
「まさかとは思うけど、シルクさん?」
「・・・・・・正解です」
風華の首筋には、紋様。
ネクロマンサーの呪詛が黒く刻まれている。
「風華。お前、死体を人形にされたのか」
風華がコクッと頷く。
間違いない、俺の母親の仕業だ。
「・・・・・・この体は長くは持ちません。圭」
風華が俺に向いて言う。
「・・・・・・あなたの名を、私の主人の名を聞かせてください」
それは契約の言葉。
「・・・・・・認識しろ。俺の名前は黒瀬 圭。人形204号風華の支配者だ」
「・・・・・・認識しました、黒瀬 圭。あなたをお守りします」
風華が桜に向かって拳を構える。
その拳に黒い煙がまとわりつく。
死霊だ。
「・・・・・・死霊術式八千ニ百十三番怨帝=v
桜が突撃してくる。
黒い右腕が風を切って風華の頭を狙う。
風華はそれに合わせて防御の体制を取る。
右腕が防がれるや否や、鋭い蹴りを放つ。
風華が右に避け、攻撃を受け流した。
「・・・・・・約束どおり、私は彼を守ります。・・・・・・あなたは、あなたの全力を出してください」
風華が呟く。
桜がわかったように笑う。
「・・・・・・そう。それなら終わりにしましょうか」
桜が構える。
桜の右腕から異常音。腕の中で、円盤が超高速回転している。
「・・・・・・来なさい!」
風華も右腕に黒い邪気を集中させた。
「・・・・・・死霊術式第二番Judecca=v
右腕が真っ黒な邪気に包まれる。
風華が桜に向けて突撃した。
右手を死霊が侵食する。
一瞬、風華の顔が苦痛に歪む。
その隙を桜が見逃さない。
風華の心臓に向けて、暴力を解き放つ。
だが、それは止められた。
《不知火》が桜の体に絡み付いていた。
「柳川流縛法グレイプニル≠ニいう。この縛りで止められない敵は居ない」
親父から教わった言葉を繰り返す。
糸の弾性限界を超えて、たった五秒間だけだが、全ての物を絶対に止める。
ごめんな、桜。
俺はそう呟いた。
桜は俺の顔を見て、一瞬、笑った。
「はああああああああああああああああああああああああああっ!」
風華の一撃が、桜に叩き込まれた。
《不知火》を引きちぎりながら桜の体が神社の崖へ激突した。
その衝撃で、崖が崩れた。
「離れろっ!」
俺は風華に命じた。
桜の小さな体が、大岩の中に埋もれていくのが見えた。
崖崩れは収まり、神社も御神木も無事だった。
俺達は神社の横に立っていた。
雨が上がり始めていた。
灰色と白の雲の間から、光が差している。
神社の隣に立ち、腹部の痛みを感じながら俺は思う。
こうして桜は死に、俺は生きている。
だが、本当にこれで良かったのか。
命の選択を、また俺が行った。
運命は分からない。
だが、俺は鋼の槍を、意図的に外した。
桜を生かすために。
「・・・・・・圭」
風華が呟いた。
振り返る。
「・・・・・・どうして俺を助けた」
風華に問う。
「・・・・・・あなたに生きていて欲しかったからです」
風華が答えた。
「・・・・・・私も、沙耶さんも、あなたを助けたかったのです」
誰もが、誰かを助けたいと願う。
由香さんは風華を救ってくれと親父に頼んだ。
親父は拒んだ。
そして由香さんは傀儡師として認められていない俺に頼んだ。
俺は風華のお見舞いに一度もいかなかった。
親父の目を盗んで、風華の代わりの肉体である人形、シルクを創っていたのだ。
魂を肉体に定着させることができるくらい、精巧な人形を。
全てを投げ出して、風華が死ぬ前の晩に、やっとの思いで完成させた。
結果として、そのことは親父にばれて、クロトは俺に譲られないことになった。
そして一年後。長い眠りを終えて、シルクとして風華は目覚めた。
シルクを創ったのは、由香さんの願いでもあったが、俺の願いでもあった。
俺は独りになるのが怖かったのだ。
「・・・・・・時間です」
風華の右腕が腐り落ちた。
「・・・・・・私は、あなたに二度目の生を受けたことに感謝しています」
膝を突く。膝が果実のように潰れた。
「・・・・・・私は、もっと圭と一緒に居たかったから」
そのまま倒れこむ風華を、俺の手が支えた。
「死なせるかよっ!!!」
選択なんて関係ない。ただの俺の我がままだ。
俺は風華を救いたい。
風華を担ぎ上げ、家へと急いだ。
藤島雄一はモニターを消した。
「失敗しましたか。二号機も、もう少しの所だったのですが、改良が必要ですね」
「あの子はよく頑張ってくれましたよ。回収して、もう一度使いませんか?」
隣のソファーに腰掛けていた妻が言う。
「そうだね・・・・・・うん。そうしようか。すぐに千堂君を送ろう。千堂君!」
銀色の扉がスライドして、千堂と呼ばれた男が出てくる。
「こちらに」
「悪いんだがプロトタイプの二号機を回収してきてもらえませんかね」
妻が驚いたように言う。
「まぁ!その男は組織の人間ではないですか」
「ああ、そういえば君には説明していなかったね」
博士がコーヒーのカップを揺らして指差す。
「彼こそが、今回の一番の功労者なのだよ。組織を上手く裏切って、我々に情報を流してくれた。いわば、我々のスパイだ」
千堂がお辞儀をした。
「まぁ、そうなの。それでは何かお礼をしないといけないわね」
「それは後ほどで結構ですよ」
明るい笑顔だ。
「まさか二号機に蹴られるとは思ってなかっただろう。すまないね」
「いえ、全て想定どおりでした」
濃緑色の袋を差し出す。
「我々の敵の人形も手に入れたので、柳川哲司の技術は我々の物です」
「すばらしい」
これほど有能だとは、後が怖くなるな。
千堂は人形を回収してくると言って、出て行った。
「あれほどの秀才は、最後に裏切りますよ」
妻が言った。
「そうだね・・・・・・うん。こうしよう。彼はプロトタイプの三号機になってもらおう」
そうすれば裏切る心配もあるまい。
そして改良した三号機で、黒瀬圭君を葬り去ろう。
「おや、これは千堂君が置いていったのかな?」
緑色の箱を指差す。
「そうですよ。何でもコーヒーに合う美味しいお菓子だとか」
「そうか、それならば早速開けよう」
見ていろ、柳川哲司。お前の息子を殺して、僕はお前を超える。
藤島博士はそう思いながら、緑の箱を開けた。
光。
光だ。
私は知っている、この暖かな光を。
目を覚ます。
太陽の日差しが、私を照らしていた。
「目が覚めたか?」
私は声の主を見つける。
どこかであった気がする。
ぼんやりとしていて、思い出せない。
「名前は覚えているか?」
その人が言った。
私は首を横に振った。
「じゃあ、お前の名前は『シルク』でどうだ?」
私はしばらく考える。
響きがいい。何より、私は絹の柔らかさが好きだった。
そして、それを織っている少年の事も好きだった。
「・・・・・・いいですね、その名前」
私は肯定した。
光が、さらに強くなったように感じた。
「・・・・・・ところで、あなたは誰なんですか?」
私はその人に聞く。
彼は笑ってこういった。
「俺は圭。君の友達だ」
私の、友達。
「私はシルク。あなたの友達です」
光は暖かい。
眠気に誘われて、わたしはまた夢の中へと落ちていった。
シルクは再び眠りについた。
母親が隣であくびをする。
「まったく。支配権の無い魂を現世に繋ぎとめておくのは大変なんだ。もう二度としないからな」
少女はタバコに火をつけた。
「しっかし、よくこの短期間でシルクの体を修復したもんだね。あんたの体もボロボロだったって言うのに」
俺は軽く微笑む。
「シルクの体に、クロトのパーツを差し替えた。親父の作った人形だ。精巧に作られていたよ」
応急処置だが、なんとかなった。
クロトの人形を墓に収める前で良かった。
「これからこの娘はどうするんだい?」
母が聞いてきた。
本来主人となるのは俺だが、契約はしなかった。
「由香さんの家に預けるよ」
それが一番いいと思った。
「それであんたは?」
母が俺に聞いた。
「俺はもう傀儡師を辞める。普通の学生として生きていくことにする。だけど、この町は
思い出が多すぎる」
窓の外を見る。
桜と戦ってから、三ヶ月が過ぎていた。
すぐ傍まで、春が迫っていた。
「この町を出ようと思う」
二日後、由香さんの家に眠っているシルクを預けた。
「それじゃ、彼女をよろしくお願いします」
俺は由香さんに言った。
「・・・・・・私は娘が生きてるだけでいいって言ったのに、本当に私の傍に置いていてもいいの?」
由香さんは言った。
「はい。それが彼女の幸せだと思うから」
俺は由香さんに今までのお礼を言い、仕事を続けられなくなる迷惑を詫び、由香さんの家を後にした。
さよなら、風華。
自分の家は、全焼を免れた。
盛大に燃えた玄関は、すでに修復してもらっている。
俺はこの家に守られてきた。
全ての戸を閉めていって、玄関から出て行くとき、改めて礼を言った。
「いままで、ありがとうございました」
最後に、新しくなった玄関の戸を閉めた。
家を出ると、塀のところに母がいた。
「餞別だ。持ってけ」
何か投げられた。
ジャムの瓶?
「魂だ。お前がもう一度人形を作ったらその魂を入れろ」
「誰の魂なんだ?」
「クロトだ」
俺は驚いた。
「元々、クロトの魂の支配権は私の物だからな。地獄に堕ちる前に私が回収させてもらった」
その瓶を光にかざすと、かすかに光った気がした。
「それはお前にやる。貸し1だぞ」
一本指を立てて言う。
「傀儡師を辞めたからって、人形を創ってはいけないという法則はないだろ。心配だから、そいつに家事やらなんやらやらせておけ」
それともう一つ、と言った。
「もしも、お前が普通の人間として生きたくなくなったら、ウチに来い。一人前の死霊術師にしてやる」
俺は苦笑した。
俺の母は、以前の母ではない。
俺が6つの頃、病魔に蝕まれた元の体を捨てて転生した。
そして、俺より小さな体で、母親の記憶を持って生まれ変わった。
生まれたとき、母親は混乱しただろう。
自身より年上の息子がいることに。
そして俺を捨てた。
それでも、親父の家に預けられたとき、母親は何度か現われた。
俺は、その迷いを抱えも、それでも真っ直ぐに俺を心配してくる母が、嫌いだった。
いや、苦手だったんだ。
「ありがと、母さん」
俺は小さな少女に礼を言った。
息子の後姿を、沙耶は見送った。
そこに一台の車が止まる。
「・・・・・・彼はこの町を出るみたいですね」
「そうみたいだな」
私は答えた。
「それで、あんたは今まで何をしていたんだい?哲司の人形」
「・・・・・・やはり分かりますか」
千堂は苦い顔をした。
「藤島夫妻の抹殺、関連機関の破壊などですね」
「そっか。それで、哲司が死んだなんて嘘をついたのは、私を誘き出すためか?」
「その通りです」
柳川哲司の計画では、哲司の息子、圭を狙う藤島夫妻を殺すのが目的だった。
そこでわざとこちらが劣勢だと思わせ、相手が出てくるのを待ち、そこに千堂を送り込んだ。
だが、それには別の護衛が必要になる。
「それで、ネクロマンサーの私の出番、って事だな」
「ご苦労をおかけしました」
「まったく、これほど多くの死霊を動かしたのは今回が初めてだ。次はするな。しかし、よく私の立てた作戦にも上手く合わせられたな」
沙耶がしたのは人形のシルクにクロトの魂をいれ、風華を元の肉体へ戻し、強敵となる藤島桜の対抗手段にすること。
シルクが壊れれば、圭に傀儡師としての記憶が戻り、藤島桜を倒せるだろうが、藤島桜と圭が親友である以上、息子が何かしら良くない考えに至るかもしれない。
だから保険として風華を用意したのだが、正解だったようだな。
「上手くあわせられたのは、我々が夫婦だから、と哲司さんがおっしゃっていますよ」
「・・・・・・以外に近くにいるのか、あいつ」
沙耶はきょろきょろとあたりを見回す。
誰かこちらに向かってくるのが目に入った。
「シルクちゃん?」
彼女は走って沙耶の前に来た。
「あ、あの!圭さんはどちらにいらっしゃいますか?もう行かれましたか?」
焦ってきたのか、息を切らしている。
「もう行ったよ。駅のほうだ。今から行けばきっと追いつく」
「はいっ」
シルクはまた足早に走って行った。
しかし、途中で急に止まった。
「あの!言いそびれたんですけど、ありがとうございました!」
深くお辞儀をする。
「こっちこそ、ありがと。色々手伝ってもらって」
沙耶は手を軽く振る。
「私、記憶があいまいで良く覚えていないんですけど、あなたが圭さん思いの良い母親だってことは覚えています。また会いましょう!では!」
そのまま走っていった。
「・・・・・・いい母親か」
私はそれを目指していた。
「良いことを言われましたね」
「まぁな」
私は圭を捨てた。死霊術師としてのあいつの才能が怖かったのもある。
私の方が小さいまま、このまま育てていく事に対しての不安も。
だから捨てた。しかし、残ったのは深い後悔だった。
「ところで、アキラってガキも哲司だったんだろ?あいつは魂を分割したのか?」
「はい、そうですよ」
アキラとは道の途中で出会った。顔に死相がでていたので、『お前、もうすぐ死ぬぞ』と呼びかけてやった。
あいつは私の顔を見て、次に自分の顔を触って、『そうか』と呟いた。
私の予言は外れたことが無いのを知っていたのだろうな。
「しかし、自身の魂を分割するのは大変な苦痛だろうに」
「いえ、それほどでもありませんよ。圭が無事に生きてくれるのが一番ですから」
千堂は笑って、と哲司さんがおっしゃっています、と付け加えた。
「・・・・・・そうだな」
沙耶はタバコに火をつけた。
「ただ、親は、子の幸せを願うもんだ」
黒瀬沙耶はタバコをふかした。
「だが、圭はまだまだガキだ。私達があいつの幸せを願っている事を知っているのに、あいつはいつも他者の幸せを願ってしまう。そして、それが最良の選択だと決め付けてしまっているんだ」
タバコの煙が春風に舞って、光の中へと消えた。
淡い光に、眼を細める。
「二人で幸せになるって考えだって、あるだろうに」
母親、そういうことだったのか…
バスで行こうか、いや、歩いていこう。
その方がいい気がした。
最後に、この町を眺めながら、歩いて行こう。
時折吹く風は冷たいが、日差しは暖かい。
街路樹の植えられた道路を、歩いていく。
もうすぐ春が来る。
「圭!!!」
呼び止められた。
振り返って、苦笑する。
髪をボサボサにして走ってきたシルクの姿がそこにあった。
「どうした?何か言いたいことでもあるのか?」
そういえば、別れの言葉を交わしてなかった。
「私を、連れて行ってください!」
・・・・・・あれ?
「お前は残っていて良いんだぞ?由香さんの家はきっと気に入る」
俺は追いついてきたシルクに言う。
「由香さんには話しました。私は圭についていくと」
「由香さんは、お前の母親でも?」
「それでもです」
シルクが俺の方に近づいてきた。
じっと俺の顔を見つめる。
「私、あなたが好きですから」
・・・・・・一瞬、思考が硬直した。
・・・・・・あれ、おかしいな。
・・・・・・なんで俺、こんなに嬉しいんだ?
「何度でも言います!大好きです!だから連れて行ってください!」
シルクが俺の手を掴んだ。
「あなたと一緒に居たいんです!」
・・・・・・・・・・・・
俺は唐突に鞄を降ろした。
シルクが不思議そうに様子を眺めている。
俺は白いマフラーを取り出した。
「まだ、寒い日が続くからな」
首に巻いて、髪を撫でて梳かしてやる。
俺はずっと考えていた。
お前は、俺の後悔から生まれてきた存在だ。
俺は、お前を創りだして良かったのか。
生まれてきたことに、後悔はしていないのか。
それを聞きたかった。
しかし、それを聞くよりも早く、シルクが口を開いた。
「私は圭と一緒にいます。圭と出会えて、どうしようもなく幸せなんです」
ふいに、神社の御神木の傍で、風華が言った言葉を思い出す。
ああ、そうか。
あの時、風華は――
「 」
木々を揺らした風が、俺の言葉を連れ去っていった。
「何て言ったんですか?圭」
俺は何も答えなかった。
聞こえなかったなら、それでいい。
ただ、確かな眼差しだけをシルクに返す。
「・・・・・・シルク、行こう」
「はい!」
心底嬉しそうに、シルクは笑った。
俺の右手をシルクの左手が掴む。
そして俺たちは新しい道へと進み始める。
子供の頃は怖かった。
世界中が敵であるような気がして、怖かったんだ。
そこに風華が現れて、俺を救ってくれた。
シルクを見る。
もう風華の面影はどこにも見えない。
ただ、シルクとして俺に笑ってくれる。
今となっては近すぎて言えない言葉を、心の中で告げる。
同じように紡がれる日々の中に、君がいるだけでいいと思えた。
俺はどうしようもない程、甘ったれで、ほんとにどうしようもないやつだけど。
君がいるだけで、幸せだと思えたんだ。
それだけで、俺はこの長い道のりを歩いていける。
君と一緒に。
これは泣ける
System backup starting……
…
…
…
…
…
…
…
…
…
Re-starting.
通信システム作動――sleeping.
最重要指令――nothing.
視界情報システム再起動.
「ここは・・・・・・神社・・・・・・?」
私の体は、御神木の傍に寝かされていた。
私は岩の中に埋もれていたはずだ。
なのに、どうしてここに居るのだろう。
誰が私をここへ連れてきてくれたのだろう。
体を起こす。
暖かい木漏れ日が、顔に当たる。
蝶が飛んでいた。
そうか、春になったんだ。
「黒瀬、君・・・・・・」
春風が吹いて、御神木を揺らした。
いつのまにか、彼女は消えていた。
〜fin.〜
終わりました!!!
今まで読んでくださった皆さん!応援してくださった皆さん!
本当にありがとうございました!
おそらくレスが無かったら
>>355の文だけ放置してましたw
試験と被って更新遅くなってすみませんでした!
本当に、このスレッドを見つけてよかったと思っています!
本当に感謝しています!
また会える事を祈って!邪気眼
終わりか
少なからず感慨深いなぁこの話
>>634 串さんの( ゚д゚ )のレスが無かったらおそらく書いてませんでしたw
なんかやる気が出てくる不思議なレス「( ゚д゚ )」
>>636 wwwwww
それでは寝ますね〜w
おやすみなさい!
>>635 こっちみんなww
これだけのものを書きだせるのがうらやましいぜ
ホントに乙でした!!
乙でした
桜大好き
いやー、おもしろかったぜ!
また何かあったらぜひ書いてほしいよ!
乙
……しかし
これはクロト涙目な展開!
おっつ
完結かー
まさかこのスレでこんなレベルの話が完結するとは
【科学】米・ラドス博士、“NEO時空突破装置『β-2Z』”の作成に成功!期待膨らむ「タイムマシーン誕生の日」
「夢」が「現実」になる日は近い‥!
今月2日、アメリカのラドス・F・ハンソン博士が“NEO時空突破装置『β-2Z』”を作り出したのだ!
これにより、「タイムマシーン」を作りだす事は遠い夢ではなくなった!
タイムマシーンとはご存知の通り「過去や未来を行き来できるマシン」である。
子供達の‥いや、人類の夢とも言えるもの。当然、そんなモノ作れる訳もなくただの夢物語…‥だった。
しかし、“NEO時空突破装置『β-2Z』”の完成でソレは夢ではなくなる!
どのようにして過去や未来へ行くのか?
ここからは少々ムズかしい話になる。正直、博士から話を聞いた私もチンプンカンプンだった。
“NEO時空突破装置『β-2Z』”の持つ高エネルギー体「ダルミラ」がパンテー効果によって《デミラー現象》を引き起こし極小の時空穴を作り出す。
三次構造の三角地帯の中のペリンコ空間をミクロン刹那で通り抜けると共に、二次元から四次元の《次元チャック海溝》をリミュウート電波で開き、サンポリュートカルカスXを展開する。
すると、擬似七次元の海(通称ナルハーラ・マイマインズ・シー)が発生し、エイテットサークルの作用で右方向に《ライオンド亀裂現象》が起こる。
《ライオンド亀裂現象》は三次元の空間構造の100断層を破壊し、二次元転換の原因となる危険な現象だ。
そこにシャイトフォースXを左方向に向けて撃つ。こうする事により、左右からの《相互回帰運動》が発生し、それを利用して《ライオンド亀裂現象》を抑えるのだ。
その後、擬似七次元の海の最奥にあるマンレントンゲート※1を開くためにアイリンシューラ※2を発動させる。
それにより極小時空穴が緩み、外部干渉操作が可能となる。そこに超極小LLLのブラックイリスエネルギー(別名:E.71)で更に穴を広げ、固定する。
そうすると簡易タイムゲートの完成である。【トムモム理論】
この時、逆平行インパクトによるサブル崩壊が起こる危険もあるが、ダメインミサイルの空間補填による自動治癒効果で対処可能で危険性はほぼ0に近いと言う。
※1マンレントンゲートとは、過去や未来へ通じている所謂『トビラ』の様なモノ。ラドス博士が発見し、名前をつけた。
※2アイリンシューラはマンレントンゲートを開く『鍵』の様なモノ。コレもラドス博士が発見し、名前をつけた。
この夢のタイムマシーンだが“現時点”では、行ける時間までは決める事は出来ず、しかも一方通行だという。
しかし博士は「この問題は時間が解決してくれる。来年には完全完成するだろう。」と語った。
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/news2/1221494175/
645 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/11(水) 19:56:57 ID:IejyqoBd
面白かったよ
乙
見事に停滞したね(´・ω・`)
これからどういう話題を繋げていけば良いのかしら
しばし余韻に浸るのも悪くなかろうて
648 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/13(金) 00:01:44 ID:Q1P83uxH
邪気たんの作品が最高すぎて、もうね。
誰かコミカライズしてください。
私の画力じゃスピード感やシルクたんのかわいさを出せない。orz
程よくgdgdなのと厨臭い(誉め言葉)なのが逆説的にイイ!
それでいて「普通の作品」としても読める当たり面白い
男「こんな所に呼び出して何の用だ」
女「……受け取れ」
男「こ、これは!」
女「貴様のことは学園に入ってからのこの一年間、ずっと監視させてもらった」
男「なんだと……!」
女「結果、そのブツを渡すのに相応しい男だと判断した」
男「まさか……俺が……」
女「中を見たらすぐに処分しろ、いいな」
女(こんな情けない男が“選ばれし者”だったとはな。これも運命……か)
女「用はそれだけだ。じゃあな」
男「待て!」
女「!?」
男「一箇月だ! 一箇月後、この借りは必ず返す」
女「“白き日”か。いいだろう、楽しみにしておこう」
男(ナレーション)「これが、俺とあいつとの因縁の始まりだった」
(`・ω・´)
なん……だと……?
続くのか?
単発時期ネタなので続きません
過疎杉
誰かなんか書こうぜ
たとえばどんな?
657 :
創る名無しに見る名無し:2009/02/28(土) 22:05:27 ID:I9MN0EM/
やる気満々なキャラにする
元は黒人だけど整形して白人になった人が主人公で頼む
小説なり妄想なり
>>658 それじゃあマイケルジャクソンじゃないか
まったりこっそり投下します。
超スローペースです。
暇な人だけ読んでください。
『ゲーム』
俺は夜の世界に立っていた。
胸の中に広がる喪失感。
夢の中で、俺は泣いていた。
広い草原の中に、誰かが立っている。
大きな満月が彼女の後姿を照らしていた。
「……その代わり」
彼女が振り返る。
「私を愛してくれますか?」
また、あの夢だ。
彼女の頬をつたう涙が見える。
けれど、顔が見えない。
そして、俺は――
「……朝か」
目を覚ました。
差し込む光が眩しい。
夢の断片が残っていたが、それらは思い出そうとするたびに、手のひらから零れ落ちる水のように消えていく。
鳴り響く目覚ましを止め、起き上がる。
今日から京都に二泊三日の、修学旅行だ。
「うーーーーっす、カオル。遅いぜ」
クラス委員の拓真が名簿をチェックしながら俺を指差した。
どうやらクラス委員として点呼をしているらしい。
「……ん、俺が最後?」
眠いので適当な返事を返す。
「最後も最後。学年で最後だぜ、お前」
修二が笑いながら話しかけてくる。
「……そっか」
あと五分で来なかったら置いていかれる所だったらしい。
――どうでもいいが、眠い。思考が回らない。昨日は夜遅く寝たしな。
地元の駅に向かうバスの中では爆睡していた。
ここから京都駅までは新幹線で二時間。
その間に俺達はトランプを切り、大貧民をやる。
最下位のやつが、一位の奴に何か奢るという賭け付きで。
「……うわ、最悪なカードだ。こりゃ負けたな」
俺は裏腹な事を言い、頭の中で出す順序を組み立てる。
友人4人で向かい合わせに座ってお菓子を食べ、あっという間に過ぎ去っていく景色を見て、ああ、旅行に出かけてるんだな、と思った。
そしたら興奮して目が冴えてきた。
「8切り」
カードを流す。俺が最初から飛ばしているのを誰か気付いただろうか?
そうだ、別の話題をふって誤魔化すか。
「拓真、アレ持ってきた?」
「ん?持ってきたけど」
俺は鞄からUSBを差し出す。
「これ、お前が作ったゲームの続き?」
そういって携帯ゲーム機を取り出し、USBを接続させる。
「ああ。昨日夜遅くまでかかったけど、5面まで作った」
拓真はすっとゲーム機を隠し、トランプを握る。
担任が通り過ぎるのをまち、また取り出して再開する。
大貧民を再開しながら、拓真はテーブルの下でカチカチとゲームをやっていた。
「……あれ?こいつ、ここで死ぬんだ」
ああ、あいつの事か。
「まぁな」
「ふーん。せっかく育ててたのにな」
12を四枚出しで、俺は革命を起こした。
「嘘っ!?」
文也が素っ頓狂な声を出し、5の四枚出しで革命返しをするが、その革命を更に返してやる。
「じゃ、俺のあがり。最下位の奴はあとで何か奢ってくれ」
最弱のカードを出し、あがる。
安心したら、また眠くなってきた。
「すまん、また寝る。着いたら起こしてくれ」
「了解。おれもあがりっと」
拓真が手札を出し切り、携帯ゲームをしているのが閉じていく瞼の隙間から、ぼんやりと見えた。
俺は座席を倒し、眠りについた。
京都駅に着いた。
生徒が多いので降りるのにも一苦労だな。
重い荷物を持って、俺らも列の後に続く。
ウトウトしていたら、説明とかなんやらを聞いていなかった。
「あ、拓真。悪いけどトイレいってくる」
「はぁ?さっき行ってこいって言ってたじゃないかよ」
そうなのか。寝ていたから分からなかった。
拓真が腕時計を見て、言う。
「こっちは全員いるって事で点呼済ませるから、早く帰ってこいよ」
「ああ、わかってるよ」
しかし迷ったな。広すぎだ、京都駅。
トイレを済ませて出てきたのはいいが、集合場所に誰も見当たらない。
立ち止まって考える。もう別の場所に移動したのか?
バスの方に行ったのかもしれない。俺がいないことで、皆待っているだろう。
めんどくさいが、探さないと流石にマズいだろ。
歩こうとしたとき、俺の足に柔らかいものがまとわりついた。
黒猫?
「……なんだ、お前。危ないじゃないか」
腕を伸ばすと肩に乗っかってきた。
「おっと」
抱き上げて、腕に抱える。
人に懐いているということは、飼い猫だろうか?それにしては首輪が無いが。
「どうしたらいいんだろうな」
仕方ないから猫を抱えたまま歩き回る。
駅員さんがいたら、渡そう。
そう思って、歩き回っていると、女から声をかけられた。
「居た」
振り返る。学生服ではないことから、俺の学校の生徒ではない。
と、いうことは。
「……この猫、あんたのか」
彼女はだいぶ凝った服装をしていて、ぼさぼさの銀髪が目を引く。
ファッションデザイナーの学校にでも通ってるのだろうか。
「来な、ユラィ」
俺の腕から黒猫を引き離そうとするが、猫が俺にひっついて離れない。
俺も協力したのだが、学生服に爪を立ててまで抵抗している。
黒猫は俺の胸にぴったりひっついて、気持ち良さそうに頬をすり寄せてくる。
「……時間無いから一緒に来い」
「……おい」
彼女は腕を掴んで俺を引っ張った。
女のくせに強い握力だ。
「あのな、俺も時間が無いんだぞ。早く帰らねぇと置いてかれちまう」
「……」
この女は俺の話を聞く気がないらしい。
そのまま引っ張っていかれると路地に出た。
「あら、遅かったわね」
……今度は和服の女かよ。
ここまで引っ張られてカツアゲにでも会うのかと思ったが、違うようだな。
「悪ぃ。ユラィが見つからなくて。行こう」
黒髪の女は溜め息をつくと、空を見上げた。
「……三日探しても見つからないなんて」
「諦めな、かぐや。そういう運命だったんだよ」
銀髪の女が諭すように言う。
ふと、かぐやと呼ばれた女は俺に視線を向けた。
「どうした?かぐや」
黒髪の女の子は俺をじっと見た。
「あなた、名前は?」
「……真山。真山カオル」
「……彼でいいわ」
俺のもう一方の腕を、彼女が掴んだ。
「……何すんだよ」
俺の携帯が振動した。
拓真が連絡してきたのだろうか。しかし、両腕を二人に掴まれたこの状態では取れない。
「――開いて」
和服の女が、壁に何かを押し当てて、それを回した。
路地の壁が、二つに裂けた。
「なっ……」
驚いて声が出ない。
壁の向こうは、空が広がっている。
二人の女が腕を引っ張り、俺をそこへ落とした。
黒猫が俺からはなれ、彼女達の足元に器用に着地する。
裂け目が閉じられていくのが見え、閉じた瞬間、携帯の振動が止んだ。
下へ、下へ。俺は空を落ちていった。
私の家に、かぐやが訪ねてきた。
「相変わらず、ごちゃごちゃしてる部屋ね」
「……珍しいな。お前から私んとこに来るなんて」
研ぎなおした剣を、ドラゴン・ギアに戻す。
「シルバーレイン、アルバイトしない?」
「かぐやの方から依頼なんてね。いいよ、どんなやつ?」
「私の護衛」
「護衛って……かぐや、まさか出かける気なのか?」
「そうよ」
何年ぶりだろう。かぐやが外界に行くなんてな。
「どこに行くんだ?」
「私の故郷よ。おそらくだけど、危険な所では無くなっていると思うわ」
「それは残念だな」
ドラゴン・ギアを使う機会がないのか。
「それと、これから行く世界にはコアは無いと思うわ」
「……そうなのか」
行く気が失せた。
「そこのユラィでも連れて行けばいいんじゃないか?」
黒猫を指さす。
日向で眠そうに欠伸をして、小さな口から火花を吹いた。
「ダメ。あの怪獣を連れて行ったら故郷が灰になっちゃう」
それに、とかぐやは付け加えた。
「一緒に行ってくれたら、あの子の飼い主が滞納してる三ヶ月分の家賃は見逃すけど?」
「……わかったよ」
仕方ない。金は正義。
金は誰も裏切らない。
「しょうがねぇな。お金様の為に、働いてやるか」
「そう。よかったわ」
かぐやが青色の鍵を取り出す。
それを私の物置にある鍵穴に差し込み、回す。
その扉を開いた。
ドアの向こうには、雑多な街並みが見えた。
今日はここまでで〜す。
読んでくれた方サンクスw
ちょっとトリ替えときます。
おつかれ
おつおつー
――――くっ!
鎮まれ、俺の免疫機構!
そいつ(花粉)は……敵じゃない――――!!
規制受けました……
なんでだろ…書き込み過ぎが原因なのかな
すみませんが、ここで中断します。本当に申し訳無いです。
ビッパはホント害悪ね
俺は下宿先がアウトになったわファック!
あれ?
もしかして携帯で書き込めない?
VIPのアホが運営に凸したせいでかなり大勢が全鯖規制くらってる
676 :
なつみかん:2009/03/04(水) 02:00:24 ID:H5FHtf1A
まったりペースで投下します。
“龍の騎士”
―ズウンッ
その震動は、森全体に轟き大地を揺るがした。
宿り木に羽を休めていた鳥達は逃げ場を求めて羽ばたいていく。
揺らいだものが何であるか悟っているのだろう。
鳥達が消え去ったあとには、静寂が残される。虚空を見上げながらしゃがみこむ女がいた。
息を飲んで気配を殺し、奴が来るのをひたすらに待つ。
長く伸びた髪は静寂さえ飲み込んでしまうほどの漆黒。
対して肌は白磁のような真白。
そして固く閉ざされた唇はどちらでもない深紅。
三色をひめやかに纏い、女は沈黙する。
身を覆うのは銀の甲冑であり、しなやかに研ぎ澄まされた緊張感であった。
677 :
なつみかん:2009/03/04(水) 02:01:35 ID:H5FHtf1A
(さあ、来るがいい)
音がした方角を睨み付ける。
ごくり、と唾を嚥下した。
(来たら――私がこの手で、やってやる、お前に一撃も浴びせられることなく)
ざわあっ……空気が変わる気配がした。
全身の毛が一気に逆立ち、皮膚がどくどくと脈動し、うなるような感覚が身体を支配する。
近くで地響きがあり、続け様に聞こえてきたのは空をつんざく咆哮だった。
咆哮だけで周囲がまた、揺れる。
森の茂みを縫い、女の目の前に悠然と姿を現したのは、龍だった。
678 :
なつみかん:2009/03/04(水) 02:03:30 ID:H5FHtf1A
緑の鱗が全身を覆い、翼は他の龍種に比べ退化がみられる。
だが雄々しく伸びた爪や牙、猛々しく伸びた尾は間違いなく龍のものである。
森緑龍と呼ばれる種類だ。
強さでいえば龍種の中では中堅といったところか。
……そうといっても奴は龍である。
間違ってもただの人間が相手できるような生き物ではない。
奴は神話の生き残りとも言われる伝説物であり、神なのだから。
ぶるり、と女は震えた。
この言い知れぬ思いは、
怯え?恐怖?それとも――恐ろしさか。
いや、違うな。
女は笑っていた。
これは――――武者震いだ。
私は歓喜している。
あいつを、この手で殺せるのだから!!
679 :
なつみかん:2009/03/04(水) 02:10:06 ID:H5FHtf1A
奴と視線が合う。
それが戦闘開始のきっかけとなった。
「ウガアアアアッ!!」
龍の咆哮は衝撃破のように空気を穿つ。
鼓膜が千切れそうな雄叫びに女は眉ひとつ動かさず、大剣を担いで横に跳んだ。
今まで女がいた場所を龍の爪が抉る。
岩と砂が四方に飛び散った。
着地の衝撃を利用し、地面を爪先で蹴って再び跳ねる。
女は龍の横腹まで疾駆する。
身の丈の半分以上はあろう、ごつい剣を軽々と振り上げて、龍に切り付けた。
「ギャウウウッ!!」
刃が弾かれる。
「ちっ」
女は舌打ちする。流石は硬度にかけては龍種随一で知られる森緑龍。刃が突き刺さらない。
このまま、まともに打ち合うのは自殺行為、だが。
女は太股を隠す装備をたくしあげる。
そこに、タトゥーのような刻印が刻まれていた。
680 :
なつみかん:2009/03/04(水) 02:38:20 ID:H5FHtf1A
そっと手を触れる。
紫の光が、刻印から溢れ女を包み込む。
龍が彼女に牙を持って食いかかろうとした刹那、光は収束して消失した。
金属が噛み合うような音。女が剣を盾に龍の攻撃を防いだのだ
。
そのまま横に薙払うと鈍い手応えがあった。
ざぶん、と。
波を打つような衝撃があり、
刃は龍の肉を裂いて、切れ目から体液をしたたかに降らせる。
痛みからか怒りからか、龍は一際大きく哭くと、狂ったように攻撃を繰り返した。
爪が、振り下ろされる。
681 :
なつみかん:2009/03/04(水) 02:38:48 ID:H5FHtf1A
「無駄よ、貴方と私じゃ相性が悪いの」
避けながら、歌うように言った。
先程彼女から生まれた光は剣先に宿り、微かに輝いている。
「ソノ……刻印……」
龍が口を開いて吐息と共に言葉を吐き出す。荘厳な響きだった。
「あら、喋れるのね?そうよ、ご察しの通り私が持ってるのは――」
「龍殺シノ刻印ダナ娘!!ソウカコノ強サ、タダノ人デハナイト思ッタガ……」
龍は驚愕と落胆と憤怒の入り交じった複雑な表情を次々に浮かべ、じゃり、と砂を掻く。
「ソウカ龍殺シデアッタカ。……呪ワレシ運命ヲソノ身ニ刻ミ何処迄血濡レタ道ヲ行クカ」
「私が飽きるまで」
「デハ我ガ同胞ヲ何体殺スカ人ノ子ヨ」
「この世からいなくなるまで」
「デハ貴様ハ我ヲ殺スカ――――ソノ行イ、何故ニ」
「それはね」
女は龍の体液を浴びて汚れた髪を払い、剣を持ちなおす。
「生きる為よ」
酷く寂しそうに一度だけ笑って、龍に最後の一撃を与えた。
支援
683 :
なつみかん:2009/03/04(水) 03:16:06 ID:H5FHtf1A
急所目がけて狙った剣は深々と体内に入り込み正面から心臓を射ぬいていた。
龍の巨体が崩れ落ちる。
足元が衝撃でぐらりと震動した。
動かない龍を見て女は息を吐く。緊張が解けたからだろう。
全身がゆるやかに弛緩していく。
剣の光は消え去り虚脱感が腕の先から広がっていった。
「……」
女に刻まれているのは龍殺しの刻印。
刻印とは先天的に刻まれた呪いであり、その呪いの副次的に能力が発生するものである。
女の相手が龍ならば、死ぬことはありえない。所有者が意識し刻印に触れるだけで、刻印の力は解放される。
女の場合、それは「龍を絶対的に殺す」というものであり、龍種に対して女は無敵である。
先程のように光を剣に宿せば龍の鱗がどんなに硬くとも貫通し、心臓を貫く。反対に龍の攻撃は女の前において無力と化す。
故にそれは呪いであった。
トリくらいつけようぜ
685 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/04(水) 17:59:39 ID:H5FHtf1A
すまない、トリつけるの普通に忘れてた…。
続き↓
「隊長お〜!シアナ隊長お!!」
間の抜けた男の声に振り向く。
見知った顔だった。女――シアナの部下、イザークである。
彼もまたシアナと同じ甲冑を着こみ、剣を手にしていた。
ただシアナほど得物の扱いに慣れていないのか、何処となく動きがぎこちない。
倒れている龍の骸に気付いて、イザークは顔を青くした。
「うっ、そ、そいつ……!」
「死んだわ」
「そ、そうですよね。今にも動き出しそうな面構えしてますけど……もう大丈夫なんですよね。
隊長がやってくれたんですから」
「そうね。こいつは死んだから。
でも――起き上がるかもしれないわね、龍の中にはそういう馬鹿げた種類のがいるから。
一度迎えた死すら治癒するような奴がね。
心臓を仕留めたのに再び動き出すなんてざらよ」
イザークは大袈裟な仕草で、「ひぃい……」と怯えながら後退する。
シアナがシリアナに見えた俺自重。
687 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/04(水) 21:34:45 ID:GCoRdB19
「そっ、それ本当ですか!!!」
滑稽なくらいに顔を歪ませるイザーク。相当龍が恐ろしいのだろう。
「冗談よ、こいつはもう起き上がったりしないわ」
無表情で全く笑えない冗談を口にするシアナに、
イザークは安堵とも呆れともつかないため息を吐き出した。
隊長、冗談キツイっす、と零しながら。
もうひとつ脅しをかけてやれば泣き出すのではないかと、シアナは暗に思った。
「それよりこれくらいで驚いてて騎士が務まると思うの。
もっと常日頃から毅然としてなさい」
「そんなあ。無茶言わないで下さいよ〜隊長が毅然とし過ぎてるんですよ。
それより、一人くらい僕みたいのがいた方がいいと思うんですよね。
ほら騎士隊って男ばっかでむさ苦しいし、なんかいつもピリピリしてるじゃないですか。
僕って自分で言うのもなんですけど、癒しの才能があると思うんですよ。
殺伐とした中にひと時の笑顔と和みをもたらしまーすなんて!ああ、それで売り出していこうかな。貴重ですよね僕みたいなキャラは」
「……」
今度はシアナがため息を吐く番だった。
つくづく変わった男だ。
イザーク・シュトラール。
フレンズベル国内でも名の知られる大貴族シュトラール家の嫡男。
……であるにも関わらず、位を自ら捨ててわざわざ騎士に志願したという変わり者である。
国に多額の寄付を行っているシュトラール家の一人息子とあっては、騎士隊も入隊を拒むわけにもいかず、
イザークは騎士隊の中でもかなり上位のランクの騎士隊に配属された。
――それがシアナを隊長とし、彼女が率いるフレンズベル第三騎士隊である。
688 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/04(水) 21:38:58 ID:GCoRdB19
フレンズベルに軍事機関や兵士は存在しない。
代わりに二十四ある騎士隊が全ての争事に関して国から一任されている。
その為、騎士隊はフレンズベルの象徴ともいえるべき存在であり、国の防衛を担っていた。
単純に軍事力、防衛力として換算するならば、他国と肩を並べるか、一歩先ん出た火力を保持している。
それは一重に騎士隊が皆、優秀精鋭であること(たまにいるイザークのような存在を抜きにして)
そしてフレンズベルが周囲を森林、湖水に囲まれており、地形的に攻め難い場所にあることなどがあげられた。
騎士隊の仕事は国に代わり、戦や危険事を代行すること。例えば先程のような龍退治もそれに含まれる。
ランクが上位にある騎士隊ほど、より危険な仕事を任されることになるのだ。
ちなみに龍退治のレベルは換算してS+であり、通常ならば一番上のクラスの騎士隊が引き受けるのが通例である。
にも関わらず、シアナの第三騎士隊が仕事を任された理由はただひとつ、それは龍殺しのシアナがいるからに他ならなかった。
シアナは若干、十八歳。この年齢で第三騎士隊長を、しかも女性が務めるのは極めて異例である。
シアナが騎士隊に入団して、およそ二年。その間に数々の功績を討ち立て、隊長の位に収まったのだが、
その中の一番の功績は、龍殺しであった。
龍の巣が森の内部に存在しており、森に入れば頻繁に姿を見せるのだが、フレンズベルでは人間と龍が友好的ということは決してない。
龍はフレンズベルでは畏るるべき悪魔であり、そして怪物と同義語である。
しえん
690 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/04(水) 21:45:36 ID:GCoRdB19
遠い昔、龍と人間が壮絶に争った戦いがフレンズベルでは何度かあり、それは未だに人間と龍の間に深い遺恨を残していた。
その忌まわしい龍を、何十人とかかって倒せない敵――をたった一人で打ち倒していくその姿は、
いつからか――シアナの刻印の事を知らない者でさえ「龍殺しの騎士」と形容することになる。
龍殺しは偉業、奇跡のなせる技であり、それを容易く何回も行うからこそシアナは女性で、若い身空でありながら特例措置として
ここまで出世することが出来たのだ。
……龍を殺す女。他の騎士隊の中にはシアナを化け物と呼んで畏怖する者もいる。
その女を目の前にして、あっけらかんとお茶らけた事を口にするイザークは果たして豪胆なのか、ただの空気を読めない馬鹿なのか
……多分後者だな、とシアナは失礼な推測を試みた。
見た目は優男で、まるっきり貴族のボンボンという雰囲気が抜けきっていないし、武術の腕に関しては良いところCである。
精神面に関しては――さっきの例がいい具合だ。いつもあんな感じで怯えてばかりおり全く場慣れしない。
シアナの部下としては失格もいいところである。これは、もっと鍛えなくては――。
「イザーク。帰ったら鍛錬しなさい。私がじきじきに稽古をつけてあげるわ。スペシャルコースをね」
「ええっ。す、すぺしゃる……?!!」
「そ。いつもの三倍よ」
「いっ、いつもの三倍っ……!?」
いつものメニューも死にそうなくらいきついものであるのに、あれの三倍!?イザークは死したる自分をありありと想像した。
「隊長っ!!すみませんごめんなさい!!それだけはどうか!!ご慈悲を!!」
焦りすぎて言葉になっていない。
694 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/04(水) 22:15:39 ID:GCoRdB19
「何よ。不満なの。剣の構えもなってないし、私に近寄ってくる時も隙だらけ。そんなんじゃ戦場に出たら殺してください
って言ってるようなものね、精進が足りないわよ」
「……す、すいません……じゃ、じゃあ頑張ります」
ああ、父君、母君。息子は最期まで立派に戦いました。それももうここまでのようです。
また始まってもいない鍛錬に備えイザークは心の中で、最期の遺言を考える。
「うう……尊敬するシアナ隊長に殺されるなら本望です」
「何言ってるのアンタは。私を勝手に人殺しにしないで頂戴」
「でも死にます、九割死にます。騎士隊の中でもシアナ隊長のスペシャルメニューって特に厳しくて死人が出るって話じゃないですか」
シアナは一瞬、沈黙して目を逸らす。
「し、死人なんて出たことないわよ」
「嘘ですっ!!絶対嘘ですーー!!今の間は何ですかッ!」
「嘘じゃないわよ!!……その、死人は、いないわよ」
重軽傷者は何名かいたけど、と漏らすとイザークは号泣し始めた。忙しい男である。
「それに私の鍛錬なんて、エレに比べたらどうってことないわ」
「エレ隊長……?ですか」
「ええ。あっちは本当に死人が出たみたいだしね」
第二騎士隊の騎士隊長エレ。小憎らしい顔が脳裏を過ぎる。
部下の鍛錬中の死なんて、隊長にとっては恥でしかない。それを。あの男は愉しんで――心の底から楽しそうにしていたのだ。
シアナにとっては火薬爆弾のような男である。理解出来ないししたくもない。向こうもどうやら同じらしく、顔を合わせると
口喧嘩が始まる。トップの二人が険悪な故、必然的に第二騎士隊と第三騎士隊は犬猿の仲になった。
書きながら投下してる??
696 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/04(水) 22:24:07 ID:GCoRdB19
……やれやれ。シアナは首を振る。こんな所であいつの顔を思い浮かべるなんてどうかしている。
「大丈夫よ。肉は切れてもすぐくっつくし。骨は折れてもすぐ戻るし。もし寝たきりになっても国から保障が出るから安心して」
今のは励ますつもりで言ったのだが、どうやら逆効果だったらしい。新米騎士は頭を抱え天に祈りだした。
「ああっ。我侭を言うなら死ぬときはベッドの上で安からに最期を迎えたいんですが神よ!!」
「国を守る騎士が何を言ってる。最期の時は戦場で華々しく散れ」
些か厳しすぎるシアナの言葉にイザークは仕方なく頷いた。頷かないと殺されそうな気がしたのだ。
ところが。
「馬鹿!!散っちゃ駄目でしょう!!最後まで生き残りなさいよ!!」
激昂するシアナ。どうすりゃいいんだと思うイザーク。
これ以上不興を買うのは寿命によくないと思い、「死なないように頑張ります」と決意表明してみせた。
「うむ。それでよろしい。私は自分の隊員はどんな奴であっても強くあって欲しいと思ってるの。
それこそ、私を倒してのし上がれるくらいにね。だから半端は許さないし、自分自身に対しても許して欲しくは無い」
「隊長……」
シアナの素直でない部下思いの発言に感動したのか、うるっとした瞳でイザークは手を組み合わせる。
まるっきり新興宗教にはまる信者のようである。
「まあイザークには無理だろうけどね。騎士入隊試験の点も全隊員の中で後ろから数えた方が早かったし」
「うっ……」
辛辣に言われて凹む所に、「悔しかったら頑張りなさい」という言葉が振ってきた。
「じゃあ皆を呼んできて。目的は達したわ。帰るわよ」
「は、はいっ!!すぐ呼んできます!!」
駆けて行く新米の部下の背を見送ると、シアナは龍に突き刺さったままの剣の柄を握る。
半分龍の内部に埋まった剣。――一気に引き抜くと、龍の血で汚れた刀身が顕わになった。
それが陽の光を浴びて輝く。
697 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/04(水) 22:25:05 ID:GCoRdB19
(殺した……私が、また)
龍の屍を見下ろしながら、シアナは、何の為に我を殺すか―という龍の問いかけを反芻していた。
生きる為と自分は答えたけれど。もし生きる為ではなく、任務の為と応えることが出来たならどんなによかっただろう。
課せられた責務の為に、命を奪う。それは一見残酷のようでいて、だがしかし理由が、仕事だからという逃げ道が用意されている。
シアナにとって龍殺しは生存の為。それ以上でもなくそれ以下でもなく、
他のどんな理由にもなりえない。
だとしたら、龍を殺す理由などを他の物に転嫁するなど、出来るわけがないのだ。
いや、してはいけない。もしそれを善しとするならば、生きる理由さえ他の物へ求めてしまうだろうから。
そう、私は生きる為に貴方を殺した。怨むだけ怨むがいいわ。……そうして私はこれからも生きていく。
龍の恨みを背に、業を背に、そうして生きていく。……この身が枯れ果てる時まで。
この手はとうに血塗れている。これ以上穢れるなど、恐ろしくもなんとも無いのだ。
シアナは目を数秒だけつむり、再び開くとその場を後にした。
龍は偉大であった。死してなお厳かであり高貴さを纏っている。
その屍に背を向け、シアナは歩き出す。……自分が殺したものの屍を超えていく。
刻印に、新しく線が刻まれる。それは呪いであり、同時に踏み越えてきた骨の数だけ刻まれる証であった。
その数、六十八。そしてこの数は……これからも増え続けるだろう。
698 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/04(水) 22:26:32 ID:GCoRdB19
>>695 書き溜めてあるものを
規制されないように、ある程度間をあけて投下してますー
699 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/05(木) 00:43:57 ID:SO3cgBUY
シアナは部下の騎士達を率い、フレンズベルの城へ帰還した。
早速、騎士隊を総括するズイマ騎士総長の元へ報告へ向かう。
総長は王と同様に、全ての騎士隊に命令を下す権限を持っている。
総長の意が騎士隊全ての総意であり、騎士隊の中で最も偉い人間がこのズイマであった。
首まで伸びた白髪は年齢を感じさせるが、若々しい表情からは老いを全く感じられない。
年齢は五十前半という話だが、直接聞いたわけではないので実際年齢は不明である。
剣の腕も確か。ダンディな容姿から騎士隊の中だけでなく、国民からの人気も高い。
勿論それはシアナも例外ではなく、尊敬できる上司の一人だ。
シアナの簡素な報告を、いかめしい顔で聞いていたズイマは話を聞き終えると、緊張を解いて微笑んだ。
「……ご苦労だった。森への討伐、疲れただろう。今日はゆっくり休むといい」
「はっ、お気遣い光栄にございます」
「それはそうと。シアナ。お前の隊員のイザークはどんな様子だ」
「どんな様子、と申しますと……」
「うまくやっているかね?」
シアナは正直に伝えようかしばらく逡巡して、結局「ええそれなりに」と一言でまとめた。
「そうか。あれの父親とは古くからの知り合いなんだが……。息子の様子を心配していたものでな。勘当したとはいえ、
やはり一人息子が可愛いのだろう。うまくやっていると伝えておく」
父親……シュトラール家の当主か。それにしても勘当されていたとは初耳である。大方、騎士隊の入団に際して
もめたのだろう。
「もう行っていいぞ。何かあった時はまた連絡する。……ではな」
「はっ。了解いたしました。それではこれで失礼致します」
シアナはさっと敬礼し、部屋を出た。
700 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/05(木) 00:45:27 ID:SO3cgBUY
……ゆっくり扉を閉める。
これから夕飯を取りに寄宿舎へ向かおうとしたのだが――
「よお、随分長話だったな」
嫌な奴が現れた。思わず顔が引きつりそうになる。
「……エレ」
いつからそこにいたのか。壁に背をもたれて、偉そうに腕を組んだままシアナを眺めていた。
真っ黒な甲冑、マントを身に纏い、全身真っ黒に染まったような出で立ち。
ぎらぎらと、凶悪な色を宿した血潮のように紅い瞳。
均整の取れた体躯は騎士というには細身ながら、獰猛さと粗暴さを感じさせるその雰囲気を見るものに与える。
獣じみた空気を放ちながら、周囲を侵して行く。シアナの五感全てがこの男は危険物だと伝えていた。
そしてそれは、この上ないくらいの事実である。この男は危険だ。安全とは真逆にいるような男。
目の下には、茨を思わせる刻印があった。……エレも、また刻印の所有者である。
ただシアナのものとは別種のものであったが。
品定めをするように向けられる視線が疎ましい。
ああ、気に入らない、気にいらない。この男の全てが感に触る――!!
「何の用?……くだらない話なら帰るわよ」
きっぱりと開口一番撥ね付けると、エレは愉快そうに唇を吊り上げた。
「くくっ。しばらく待たしておきながら随分なご挨拶だな」
「待っててなんて一言も頼んでないけど」
「この俺が待ってやったんだぞ。礼の一つでも聞かせてみろ」
「誰が……!!」
この傲慢不遜唯我独尊男、と言い出しそうになってかろうじてこらえる。
怒鳴り声が騎士総長に聞こえてしまう可能性を危惧し、声を落とした。
「用件を言いなさい。でないと今すぐ帰るわ」
「……ふん。気が短い女だ。……ならば率直に言うぞ。いつまでこんな所で甘んじている?」
「どういう、意味よ」
701 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/05(木) 00:48:05 ID:SO3cgBUY
エレは壁から離れ、シアナに一歩接近する。
反射的に後退るシアナに構わずどんどん近づいてくる。
反抗する間も与えられず、腕を掴まれた。
「お前なら、第一騎士隊隊長の席に昇ることも容易いだろう。それを、何をぐずぐずしている?
甘ったれの若造や、無能な輩共のおもりをする為に騎士になったのではないだろうに」
「それは、私の部下のことか」
「他に誰がいる?弱いんだよお前の隊は。害虫が」
ぷちっと。何かが切れた。……部下を馬鹿にされて黙っていられるほど、シアナは穏便な性格をしてはいない。
腕を振り解いて、そのままエレの顔面を殴りつける。
続けざま、中段から蹴りをくらわそうと攻撃の体勢に入った。エレの懐を狙って蹴りを放つ!!
……腐っても男は第二騎士隊の隊長、爪先がエレの位置に届いた頃には、既に二、三歩後ろに回避していた。
「ほう。それでいいぞシアナ。それでこそ龍殺しの騎士ではないか。
戦いこそ生業。そうだ、俺はお前とつまらぬ会話に興じたかったのではない!!戦い合いたかったのだ!!」
口の端から血を流しながら、この上なく嬉しそうに対峙する。龍殺しと、この男に言われたことがたまらなく不快だった。
「お前がその名を呼ぶな!!」
「怒り猛る姿、いつもの澄ました顔より似合いだぞ?そうして永劫に怒り続けるがいい!部下の一人まともに鍛えられぬ自分を悔いて憤怒するがいい!!」
「黙れ!!じゃないと今すぐ地を這わせてやるわ!!」
「ふん。やれるものならやってみるがいい」
余裕綽々に挑発してくるエレを見据える。強さなら、おそらく互角。今まで何度か討ち合いしたことがあるが、決着は着かなかった。
シアナの武術は剣においても頑なに習った教え、正攻法を守り通そうとする。それに対してエレは我流。
時々、外道とも思えるような戦法すら躊躇いなく使ってみせる。それを指摘すると、エレは嘲る様に言うのだ。
「殺し合いに、反則も、規則もない。……お前が守るのは自分の中の信念であって剣術じゃないだろう。
意味を取り違えるなよ。俺は俺の好きなようにやっているだけだ。どんな方法であれ、
勝てばいい。戦いとはそういうものだろう。例え騎士でああろうとな」
それが許せない。騎士は人の見本であるべきだ。人格者として尊敬されるに足りる人間であるべきだ。
非道な行いを善しとし、人の道に背くのなら、それはもはや騎士ではない。卑怯な振る舞いは、その人間を貶めるからだ。
騎士になる時に、それは嫌というほど叩き込まれるはず。それをこの男は、無意味なものだと、哂うのだ。
ならば、お前は、何のためにここにいる?国を守るためではないのか。民を守るためではないのか。
もし何の意味もなくここにいるというのならば、その性根、私が叩き切ってやる!!
「……いくわよ」
702 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/05(木) 00:51:46 ID:SO3cgBUY
律儀に攻撃の開始を告げるシアナを、エレは鼻で笑う。
踏み込んだ。
――その時、頭上からざばあんと水流が降り注いできて、シアナは我に返った。
「喧嘩はよくありませんよ、頭を冷やしなさい。二人共」
いさめる様に声をかけたのは、第四騎士隊長のリジュ・ゴールドバークスだった。
緊迫した雰囲気とは場違いなほどに朗らかな笑顔を向けられて、困惑した。
……見るとエレも水を盛大に被っている。
リジュの指先からは透明な光が放たれ、一筋の道を作り上げていた。騎士隊の中で、まともに魔術を扱えるのは彼一人である。
「ごめんなさい。腕力だと間に合わないなって思ったので魔術を使ってしまいました。……寒くないですか」
「……大丈夫よ。騒いで悪かったわ」
「いえいえ。それにしても……二人とも、本当に、猿と犬の仲ですねえ。うっふっふっ」
リジュを一瞥して、エレはぷいと顔を背ける。
「ふん。……気が剃れた。俺は帰るぞ」
不機嫌そうに言い残すと、つかつかとそのまま立ち去ってしまった。
「……怪我はありませんか?」
「ないわ。……むしろあるとしたらエレの方ね。結構強めに顔面殴っちゃったから。……手当てしてあげて」
「あらあら。そうですか。わかりました。多分嫌がると思いますけどね。ふふ」
気まずそうにシアナは声をひそめる。
「それとこの件だけど……」
表情を推し量り、意図を汲み取ったのか、リジュは笑顔を浮かべたまま頷いた。
「はい。わかってます。公言したりしませんから――これ以上エレ君の悪評が広まるのは本意ではありませんし」
「悪評?何で?私が殴ったのに」
「シアナさんの素行とエレ君の素行の差ですね。普段から貴方は騎士として恥じない働きをしていますから。
喧嘩になった時、どちらに非があるとすればそれはエレ君の方だと思われるんですよ」
ああ、そういうことか、とシアナは納得した。エレは文句なく強いが、反面良くない噂を立てられることもしばしばだ。
703 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/05(木) 00:55:12 ID:SO3cgBUY
病的なまでに戦闘狂で、好戦的なエレは、任務は確実に遂行するが過剰になりすぎるきらいがある。
魔物退治に向かえば標的でない魔物まで惨殺する、盗賊退治に向かえば、近隣の村まで巻き込んで戦いを始め被害を広げる……。
行ってきた行いのせいといえばそうなのだが、とかくエレの風評の八割方はよくない噂で出来ているといってもいい。
それを皮肉って付けられたあだ名は、悪魔の騎士。悪魔とは勿論エレのことだ。
「騎士隊長の悪評は騎士隊全体の悪評です。……それはよくないことですからね」
「そうね……まああいつに何を言っても無駄だろうとは思うけど。あの性格じゃね」
「手厳しいですね。……まあその通りなんですけど……。そこまで悪い子じゃないと思うんですけどねえ」
リジュの言葉には同意しかねたので黙っていた。すると、リジュは思いもよらない質問を投げかけてきた。
「シアナさんは、エレ君のことがお嫌いですか?」
「嫌い。凄く嫌い」
断固としてシアナは繰り返す。
「に、二度念を押して言うほど嫌いなんですね」
「はっきりいって、あの野蛮人を好きになる要素はゼロね」
「そうですか……」
「何でそんなことを聞くの?」
704 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/05(木) 01:03:40 ID:SO3cgBUY
「いえ、エレ君、貴方と接している時は楽しそうなので、仲良くなっていただければ少しはエレ君も大人しくなるのではないかと
思いまして」
「……楽しそう?」
突き刺すような目つきで、向かい合ったエレを思い出す。戦いの興奮に狂乱した相貌。……あれが、楽しそうというのだろうか?
「無理にとは言いません。でももし、少しでも気が向いたら、仲良くしてあげてください。彼、友達いないみたいで心配なんですよねえ」
「リジュが友達になってあげれば?」
「いーや、挑戦したんですけど、僕嫌われてるみたいでバッサリでした。ふふふ」
「…………そう。まあ考えとくわ。あいつの性格が変わったら考えないこともない」
そんな日は一生こないだろうとシアナは思った。……そう、相性だ。あいつと自分じゃ、火と水ほどに相性が悪い。
永遠に交わることのない関係。いがみあうしかない関係。……不思議だ。それは、龍と自分の関係によく似ていた。
「それではこれで失礼します。あ、床は部下に掃除させときますからご心配なく」
「了解」
そういえば、あいつも悪魔と呼ばれるんだな。……そう、龍も、この国においては悪魔だ。
「同じか……」
ならばいつか、あいつとも殺しあう時がくるのだろうか?
本気で刃の先を向け合い、命を奪いあうような瞬間が。
「それは疲れるから御免ね」
でもきっとその日は来るだろう。あいつが私と戦い合いたがっている限り、その時は必ず訪れる。……それは予感ではなく直感だった。
エレは、戦い合いたいのではなく、私を殺したがっているのだから。
シアナは寄宿舎に向けて歩き出した。
705 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/05(木) 17:01:09 ID:WUdmCxzf
やばいここの人たち面白すぎる
コピペして保存させていただきました
完結してるやつとか完成度高いなぁー
専ブラ使おうぜ
707 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 00:36:22 ID:uzAE6CNE
訓練や職務時を覗き、基本的に騎士は城内にある寄宿舎で生活をしている。
寄宿舎の一階には食堂があり、朝昼晩とそこで食事をする者が多かった。
食堂に入る。夕飯時だった為、相変わらず人が多く混雑している。
シアナはすぐに配給を受け取って席に着いた。
今日の夕食は若鶏のクリーム煮とパンだった。添えられたポテトとニンジンが彩りを添える。
じっくり煮込まれた鳥はきつね色に仕上がっており、クリームの濃厚な匂いが食欲を誘った。
(美味しそう……)
今まで空腹でたまらなかったのだ。エレと喧嘩したおかげで余計に体力を消耗した気がする。
その分、目いっぱい味わわせてもらおう。
シアナは手を合わせた。
「いただきます」
もくもくと料理を口に運び、食べ進めていると、遠くの席から聞き逃せない会話が聞こえてきた。
「あ、あれシアナ隊長じゃないか?第三隊長の」
「本当だ、今日も龍殺しに行ってたらしいぜ」
「はー。あれで俺より十以上年下だぜ?なんかさあ、生まれから違うって感じだよな」
「だよなあ」
わっと笑い声が湧く。
708 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 00:39:41 ID:uzAE6CNE
「美人だよなー。むさい男の集団の中に咲いた一輪の花ってか。おれも第三隊に配属されたかったぜ」
(び、美人……!!)
内心どきりとする。気恥ずかしさで喉が渇く。平静を装ったまま水を飲み干した。
騎士達の噂話はまだ続いていた。
「ばか言えよ。お前が第三隊みたいなエリート集団に入れるかっての」
「そりゃそうだ」
「でもま、あれだよな。こんな女っ気のない場所だから、女ってだけで嫌でも補正かかっちまうよな」
「それは言えてるな、ハハ」
「龍殺しか、……いくら美人でも、あんな強くちゃなあ。恋人には遠慮したいぜ」
「お前が相手にされるかよ」
「違いねえ。ぶはははっ」
賞賛されているのかけなされているのかよく分からない。
騎士達はシアナが聞いてるとは思ってもいないのだろう、そんなたわいない会話に興じている。
(…………)
気にせず鶏肉を頬張る。
立場上、噂されることには慣れていた。嫌な噂も、善い噂も、その真偽は問わず。
有名になり人の上に立つということは、嫌でも人の好奇を集めることになる。
これも仕事の内だ、と割り切った。
「そうだ。十四のサムがトトカルチョやってるってよ」
十四、とは第十四騎士隊のことだろう。そしてトトカルチョは所謂、賭博だ。隊内での賭博は決して容認されてはない。
厳しく罰する規則はないが、自粛するようにとのならわしがある。一人の騎士は嬉しそうに小声で話し始める。
とはいえ、シアナには丸聞こえだったが……。
709 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 00:42:28 ID:uzAE6CNE
「おーっ。今度はどんな内容だ?」
「全隊長の人気投票の結果だってさ」
「俺もう賭けだぜ。リジュ隊長にな」
「馬鹿だなあ。どう考えても人気があるのはシアナ隊長に決まってるだろ?騎士隊唯一の女性だぜ?」
「大穴狙いでファーガス隊長だな俺は。なんてったって十倍だぜ!!」
(はーっ……呆れたわ……)
まあしょうがないか……ここには娯楽もないし、たまには息抜きも必要なのだろう。
シアナは騎士の職務に関しては厳しいが、任務外まで極端に厳しくする気はなかった。
とはいえ規則は規則である。次に目についたら注意くらいはしておこう。
「じゃあエレ隊長はどうだ?」
ぴくり、と耳が反応した。
「ああ、エレ隊長ね……うーん。なんつーか。カリスマあるよな。かっこいいし」
「他の隊の中には熱狂的な奴がいるみたいだけど」
「ファンってことか?へー。一部には人気ありそうなんだよなあ。凡庸性はなさそうだけど」
「クーフ隊長はどうだ?」
「クーフ隊長かあ。どうだろうな」
その後も延々と、誰が人気があるだとか、ないだとかいう話題が続いていた。席を立って食器を片付ける。
710 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 00:44:59 ID:uzAE6CNE
「ご馳走様。美味しかったわ」
食堂の料理担当、ウィナに声を掛けると、嬉しそうに「それはよかったです」と微笑んだ。
「こう歳を取ると楽しみが少なくなってきていけませんね。それでも
若いものが私の作った料理を美味しそうに食べる所を見るのは何よりの楽しみなんですよ」
「ふうん。じゃあここは天職ね」
「ええ、ええ。総長さんには雇っていただいて感謝しております」
「会ったらウィナが感謝してたって伝えとくわ。じゃあね」
自分の部屋に帰って、私服に着替え、ベッドに横になる。
白いワンピースから伸びた足。覗き見える太腿に刻まれた刻印を、そっと撫でる。
「…………龍殺し、か」
いつからそう呼ばれるようになったのか、もう覚えていない。
ただ最初に龍を殺した出来事は、今でも克明に思い出せる。
爆ぜる火と、燃える町。赤一色に染められた世界を、眺めていた。
誰かの悲鳴。泣き叫ぶ赤ん坊の泣き声。鳴り止まない怒号。打ち鳴らされる鐘。
もう永遠に取り戻すことの出来ない、過去の記憶。
「嫌な事思い出しちゃった……」
腕で視界を塞いで目を閉じる。忌まわしい思い出から逃れるように、シアナは目を閉じて睡魔に身を委ねた。
711 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 00:46:49 ID:uzAE6CNE
翌日、明朝から第三騎士隊では騎士の鍛錬(スペシャルメニュー)が始まった。
城内の中庭で訓練は行われる。隊内全員集めての大規模な訓練だ。
中でもイザークは特別に、シアナに一対一で鍛錬を受けている。
イザークには何度もシアナの激が飛んだ。
「何だそのへっぴり腰は!!お前それでも騎士のはしくれか!!情けない!!」
「す、すいませ〜ん!!」
「脇が甘いっ!!基本動作からやり直せ!!素振り二百回!!」
「ひいいー!!」
「だから、腰が引けてると……さっきから言ってるだろうがーー!!!」
ズカポーン!!シアナの乱暴な手刀がイザークに命中する。
イザークは盛大に気絶した。
「あ、しまった……ちょっと誰かイザークを救護室まで連れて行って!!」
とまあ始終こんな感じである。
712 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 00:51:45 ID:uzAE6CNE
他の騎士達も、イザークの無様な有様に苦笑ぎみだった。
周囲に認められる騎士になるにはどれくらいかかることか、先が思いやられる。シアナは息を吐いた。
一人の騎士が、休憩中声を掛けてきた。
「隊長はイザークに目をかけておいでなんですね」
「……あれでも一応私の部下だから。弱さが原因で死なれたら、たまったもんじゃないわ」
「そうですか。……他に理由は?」
「別にないけど。部下を教育するのは隊長の責務よ」
騎士はほっとしたような表情になって、そうですか、と返答した。
「それを聞いて安心しました。失礼ですけど、俺、隊長はあいつが貴族の出だから目をかけてるのかなって思ってたんですよ。
すみません。きっと隊長に見捨てられたら、あいつ行き場ないと思うんで心配してたんです。
あいつあんなんだけどイイ奴ですよね。……素直ですし」
「……そうね」
確かにイザークは曲者ばかりの騎士にしては珍しいほど素直だ。そこが長所で短所でもあるが。
「だから、これからもよろしくお願いします。俺が頼むことじゃないですけど……」
この騎士はイザークと親しくしているのだろう。それにしても。
こうして仲間に慕われるのは一種の才能だな、とシアナは微笑ましく思った。
「わかってるわ。大事な部下だもの。どんなことがあっても見捨てたりしない」
「隊長……ありがとうございます」
「礼には及ばない。それが私の仕事だから。それより、ほら、休憩も終わるわよ。訓練に戻りなさい」
「はいっ!!」
晴れやかな顔で、騎士は仲間の下へ駆け出していく。
剣が重なる音が響く空の下、シアナは隊員を見て回るのだった。
713 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 02:17:54 ID:uzAE6CNE
ズイマ総長から呼び出しがあり、シアナは訓練を終えてさっそく総長室へ向かった。
「失礼します」
「ああ、来たか。シアナ」
室内にはズイマだけではなかった。
見ると横にはエレがむすっとした顔をして立ち尽くしている。げぇっという声が喉から出そうになった。
「今回の任務は、第二騎士隊と第三騎士隊、双方協力して行ってもらう」
「……は、はっ!!」
威勢よく声をあげたものの、心の底から任務を蹴りたいと言う気持ちで一杯だった。
何ということだ。よりによってこいつと。
「フン。くだらん。俺の隊だけで十分だろうに。何故こいつまで任務に加えなくてはならんのだ」
総長の前にも関わらずエレはぞんざいな口の利き方をする。
「……エレ!口の聞き方に気を…」
無礼なふるまいを咎めようとした時、ズイマが手でそれを制した。
「ああ、いい。好きに言わせてやれ」
「ですが総長……」
「俺の口の聞き方などお前に関係あるまい。放っておけ」
「なっ……この……」
シアナはエレのこめかみを思い切り殴りたい気持ちをこらえる。
ズイマはそんな二人のやりとりを、厳しい顔で見つめていた。
慌てて総長に向き直るシアナ。
714 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 02:19:17 ID:uzAE6CNE
「失礼致しました。それで任務の詳細ですが、どのような?」
「ああ。ロスラ渓谷に向かう道に多数の翼龍が出て人を襲うという報告があった。
渓谷周辺の村にまで被害が出ている。襲われた人数は既に何十人にのぼるそうだ。
難度はBといったところか。至急、討伐に向かってくれ」
いつもは一隊で事足りる内容の任務だ。
何故共闘して任務に当たらせるのか、少しだけ疑問が残る。
シアナの心中を察したのか、ズイマは補足を加えた。
「お前達は仲が芳しくないそうだからな。……この機会に互いを認め合い、親交を深めるといい」
「……承知、致しました」
シアナはしぶしぶ承諾するが、エレは益々不愉快そうに顔を曇らせる。
「ふん。くだらんな。こいつと親交を深めてどうなる。無駄だ」
それはこっちの台詞だっ!!――と叫びたいのだが、良識ある騎士精神が総長の前でそれをすることを許さない。
ズイマに気圧されることなく、ずばずばと言いのけるエレはある意味大物なのかもしれなかった。
「出発は明朝、隊の者に伝え準備をするように伝えてくれ」
「はっ、了解です」
「エレも、分かったな?」
少しの静寂。
ズイマがエレに視線をやると、ふんと鼻を鳴らし、「ああ」と返事をした。
「では行っていいぞシアナ。ああ、エレはここに残ってくれ」
「はっ。それでは失礼致しました」
シアナは総長室を退出し、部下への伝達へと向かった。
部屋にはズイマとエレが残される。
715 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 02:20:36 ID:uzAE6CNE
「……それで、どうだ、身体の方は」
ズイマはさっきとは打って変わり、優しげな声になってエレに問いかけた。
「何も問題はない。人の心配をしている暇があったら自分の身体に気を使ったらどうだ。
いい加減ぽっくり昇天してもおかしくない年齢だぞ」
「ふっ。相変わらず口の減らない奴だ」
エレのぶっきらぼうな、粗野な言葉を、どこか嬉しそうに受け止める。
椅子から立ち上がり、窓の外に目をやった。
「早いな。お前がここに来てから、もう十年になるのか。……歳も取るわけだ」
「老人が昔の事を語りだしたら末期だぞ」
「まあそういうな。……ここに来た時はただの子供だったが、お前も大きくなったな」
「フン」
そっぽを向くエレ。不機嫌だが、その表情に、シアナと接する時のような乱暴さはない。
むしろどこか落ち着いた感じを受ける。ズイマの前でしか見せない姿だった。
「エレ。……お前は強くなった。強くなったが、足りないものがある」
「説教なら聞き飽きたぞジジイ」
「まあ大人しく聞け。おそらくお前は隊の中でも一、二を争うほどの腕の持ち主だ。
剣術も武術も、類まれなる才能を持っている。知識も技術も、そして経験もその歳にしては十分過ぎるほどだ。
だがな、このままではお前が勝ちたがっている者には永久に敵わんぞ」
716 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 02:22:04 ID:uzAE6CNE
意味ありげに、黙り込むズイマ。エレの脳裏に真っ先に浮かんだのは、龍殺しの女騎士だった。
シアナ。シアナ・シトレウムス。
エレがただ唯一、全騎士隊長の中で実力を認める者。
「……何故だ。俺の実力なら――あいつには敗北しない。多少苦戦するだろうがねじ伏せることなど造作もない」
「シアナにあってお前にないものがある」
エレの言葉を遮ってズイマは淡々と述べる。
「それが何か分からないのならばお前は一生シアナには勝てないだろうな」
「…………」
大丈夫だ、とズイマは言う。お前には、きっとそれが分かる日が来る。
「……戯言だ。そのような言葉に耳を貸す気はない。俺はもう行くぞ」
部屋を出る。共闘は不服とはいえ……明日が楽しみだった。シアナの剣技が間近で見れる。
その刃を交わらせる所を想像すると胸が躍った。弱い人間に興味はない。強い者にこそ、惹かれてやまない。
シアナに興味があるのは、あいつが自分を打ち倒せる可能性を孕んでいるからだ。
生死を賭けた争いだけが、この身を自分足らしめる。一秒後にはどうなるかわからない、そんな戦場でこそ生を実感できる。
生きることを、死の想起でしか実感できない。
それこそがエレの生き様であり、本質だった。
頬に触れる。禍々しい刻印はじくじくと熱を持ち、痛みをエレに与え続けている。
「ふん、呪われた刻印か。……因果なものだ」
悪魔と自分を呼んだ者達は知っていたのだろうか?
死を与える刻印。これを俗に、悪魔の刻印と呼ぶことを。
717 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/06(金) 11:03:13 ID:ZuG5gFFS
なつみかん氏期待!
718 :
まあさん ◆W5keXcuJzM :2009/03/06(金) 11:12:30 ID:wPtIAkF7
頭の中でずっと練っていた構想ですが…
1999年のある日突然やってきた…
圧倒的な科学だけじゃなく魔法まで使いこなすもう一つの世界から侵略者…
圧倒的な力の前に日本は僅か半日でこの世界との条約に調印する。無様に乗っ取られた意味だった…
しかし、反発する者達がゲリラとなり戦いを続けた…
育ての親を戦いで亡くした3人の青年を中心に物語が始まる…
719 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 12:22:17 ID:ORFwWOVG
>>686 そんなこと言うから私まで見えてきてしまった……
>>717 ありがとう夜にまた投下します
720 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 22:04:13 ID:uzAE6CNE
明朝。
第二騎士隊と第三騎士隊は列をなし、ロスラ渓谷へ向かっていた。
任務は翼龍の討伐。話によれば一斉に多数で現れるらしく、
上空から急襲されることを考慮し、騎馬は使わず徒歩である。
前方に第二騎士隊、後方は第三騎士隊。
隊員はそれぞれ二十名ずつ、全員で四十名。
隊長二名、シアナとエレを先頭に、奥深い谷への路を進んでいく。
ロスラ渓谷はリーデット川の中流に位置する。
川流によって侵食された岩肌が両側に聳え、街道側からは美しい新緑が姿を見せている。
森と緑の国として名を馳せるフレンズベルでも
一際美しい名勝として名高い場所であり、フレンズベルに観光に来るものが訪れることも珍しくない。
隣国に向かうには街道を通るか、この渓谷を通るか二つの選択肢があるが、渓谷を突っ切ったほうが近道である。
街道からも容易に入ることが出来る為、旅人や行商人が通行する事の多い場所でもあった。
街道の並びにはいくつか小さな村も存在している。放っておけば被害はさらに広がるだろう。
二隊には迅速、かつ速やかに目標を退治することが望まれた。
……のだが。どことなく二隊と三隊の間には壁があるようだった。原因は勿論シアナとエレの仲の悪さに起因する。
第二騎士隊と第三騎士隊は進むにしても少し距離を置いていた。
隊長の意思を汲み取って、などという従順な考えで対立しているわけではないのだろうが、
やはり、上司が目の仇にしている者のグループとは容易く交流出来ないということだろう。
シアナもエレもそんな小さな事で怒るほど狭量ではないが、激怒した時の恐ろしさでは鬼神に勝るものがある。
触らぬ神にたたりなし。黙々と任務に勤しもう。そんな風潮がどちらの隊内にも流れていた。
721 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 22:08:38 ID:uzAE6CNE
「霧が出てきたな……」
エレが空を睨みながら呟いた。薄霧があたりにたちこめてくる。
「暗くなる前に退治した方がよさそうね……急ぎましょう」
「そのようなことお前に言われるまでもない」
「……だったらもう少し急いでくれるかしら?トロトロしてたら日が暮れちゃうわ」
「愚鈍なのは貴様だ。鈍間な歩行速度を人の責任にするつもりか」
「ふっ。口だけは達者なのね。帰ったら手合わせをしましょうか」
「くっ。望む所だ。貴様の太刀を叩き伏せ、制圧してくれる」
目を合わさず、喧々囂々と言い合いをする二人。隊員の手前、控えめにしているが、もし二人きりなら剣試合が始まっている所である。
長い刻歩き続け、ようやくロスラ渓谷へ到着した。
霧はまだあたりを取り囲み、ますますその色を濃くしている。流麗な景色を覆う白い靄。
幽玄な世界に入り込んだ錯覚さえ覚える。妖精や魔物が姿を見せてもおかしくないような雰囲気だった。
だがこれから相手にするのは魔でもなく妖でもなく、龍である。
「聞こえる?!全員気をつけて……霧が濃くなってきたわ」
視界がおぼつかない今、急襲されたら危険だ。
シアナは隊員に注意を呼びかける。
その時――風を斬るような嘶きと共に、上空から襲撃者が襲来した。
「出たぞーー!!龍だーー!」
翼龍だ。鋭い嘴と長い爪を武器に、隊員の頭を狙いに滑空する。
第三隊の後方で何名かが声をあげた。
722 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 22:10:49 ID:uzAE6CNE
シアナとエレは同時に剣を抜く。
「敵だ!!全員戦闘体勢に入れ!!」
エレの合図で全員が武器を手に、翼龍へと向かっていく。
「はああーっ!!」
騎士達は果敢に剣を振るうが、翼龍は風圧を感じると即座に上空へ舞い上がってしまう。
避けられる。翼龍が小型の種類であり、動きが俊敏なこと、
濃霧が邪魔をして、的確に敵を視認できないことも災いした。
「くそっ……!!」
「見えない……」
思うように攻撃を当てられない第三隊は苦戦をよぎなくされていた。
見かねてシアナが飛び出す。
「エレ、ここは任せたわ。私は自隊の援護に回る」
「ふん、無能共の後始末か。つくづく暇な奴だ」
「……頼んだわよ」
嫌味は無視。今はエレにかまける暇すら惜しい。後方まで一直線に疾走する。
斜面になった岩地を蹴り、跳び、隊の最後方まで到達した。
イザークの姿が見える。二、三名と共に一体の翼龍を相手にしていた。
723 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 22:12:46 ID:uzAE6CNE
「こ、このおっ!!」
「てやああ!!」
龍は巧みに攻撃を回避する。舞うように旋回しながら、地上からの攻撃をやり過ごしている。
こちらを翻弄しているのだ。……龍は賢い。このまま体力がなくなるまで弄び、そこを狙うつもりなのだろう。
――押されている。そう判断した刹那、一瞬の躊躇もなく、急襲してきた翼竜の翼を切り落とす。
「ギャアアアウ!!!」
翼を切断され、落下する龍。片方の翼をブーツの先で踏みつけた。
口から体液をばら撒きながら、ばたつく龍。
剣で一気に貫くと、動きが止まった。瞳から生気が消える。
「隊長……!」
「ぼやぼやしない!!!次の襲撃がくるわよ!!翼を狙って地面に引きずりおとして!!」
奴らの攻撃手段は上空から急降下しての滑空だ。それさえ封じてしまえば、勝機はこちらにある。
「一人で龍を相手にしないで!!数名で戦いなさい!」
「はいっ!!」
イザークはおぼつかないながらも、必死に剣を振り翼龍と戦っている。
鍛錬の成果が出たのだろうか、動きが格段によくなっていた。
724 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 22:47:11 ID:uzAE6CNE
シアナは急襲をかけてくる龍を狙い、攻撃をしかけ確実に仕留めていく。
その姿はまさしく龍殺しの名に相応しかった。次々と翼龍を地上へ墜落させ、殲滅する。
その時、風が吹いた。
「隊長……あれ」
霧が晴れていく。騎士の一人が、指を指し示す。
続々と翼龍が群れを成し集まってくる。上空は蠢く茶褐色で多い尽くされていた。
嵐の前の静けさか。龍達の翼がはためく音さえ聞こえない。自分の鼓動の音だけがやけにうるさい――。
(うわ……すっごい数)
多数とは聞いていたが、空を埋め尽くす程の数とは一言も聞いていない。
これがBランクの任務とは考えにくい。ズイマ総長に伝わった情報に不備があったか、もしくは――。
「ひるむな!!来るわよ!!」
龍の飛来。そして攻撃が始まった。
725 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 22:49:51 ID:uzAE6CNE
群れを成して飛んでくる龍。
上空から猛烈な速度で落下する敵、それはさながら空から振る槍である。神話に名を残す天の槍。
貫かれたらひとたまりもない。普通の騎士ならば、かなり苦戦するであろう。
だがエレを筆頭とする第二騎士隊は場数が違う。このような窮地を幾度も体験してきている。
多勢の龍を相手に、全員が冷静さを失うことなく立ち回っている。
第二隊ではそれが当たり前であり、それが出来ないものは即刻除隊された。……選抜に選抜を重ねて残されたのがこの隊員なのだ。
強いのは当然、そして強くなくては、第二騎士隊では生きていけない。
それは勿論、強者だけに価値があるという絶対主義を掲げる隊長がいるからである。
過酷という言葉では表現出来ないような血反吐を吐く訓練を繰り返し鍛え上げられた精鋭集団。それが第二騎士隊。
実力ではおそらく、第一騎士隊と拮抗――あるいは、凌ぐだろう。
攻撃の雨霰の最中、一人これ以上なく嬉しそうに笑う男がいた。……その隊長、エレである。
飛んでくる龍をこともなげに切り落としながら、それでもまだ満たされぬ渇望感に身を焦がす。
「弱い……龍とはこんなものか?俺をもっと愉しませろ」
足りない。切り裂けば切り裂くほどに、餓えて行く。
――ザンッ。
乾いた思いが埋まることなく穴を広げていく。飢餓感に同調するように刻印が酷く痛む。
殺せば殺すほどに、狂おしく、痛みは熱を伴って、これでは――足りないと、俺にせがむ。
龍の翼を裂いて天から墜とす。天使を堕天させる如く地へ陥没させる。
「弱い、弱い、弱い」
726 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 22:55:30 ID:uzAE6CNE
欲しい。もっと、死が欲しい。熱望するのは痛みと死という虚無。
紅い鮮血を身に纏い、それでもまだ欲しいと、剣を振る。
目を抉り腹を貫き首を真っ二つに。無残な龍の死骸は最早原型すら留めていない。
龍を宿敵として夢想してみても、切り裂く手応えに現実が呼び覚まされる。シアナは一撃で殺せるほど弱くはない。
嗚呼、元より何かと重ねられるような相手ではなかった。
そう、あの女は唯一無二。我が剣を受けるに足る者は、あいつ一人のみ――!!
――ザンッ。ザシュッ。
「もっと、もっとだ」
龍の攻撃は止んだ。敵の急襲の雨霰はいつしか血の雨となって、降り注ぐ。
唇に流れてきた血を舐め取って、壮絶に笑う。
それをもし見届けた者がいるのなら、――彼を、心の底から悪魔だと思ったに違いない。
龍を屠り、その果てに悪魔の騎士は思ったのだ。
ああ、やはりあの女との討ち合いが一番――愉しい、と。
しえん
私怨
せっかく三点リーダ、ダッシュは偶数個のルールを守ってるんだし
!や?の後に一文字分スペースあけたらどうだろうか
731 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/06(金) 23:39:17 ID:uzAE6CNE
何十匹目かの龍を切り裂くとシアナは宙に目をこらした。
(まだいなくならない、一体何匹いるの……!?)
周囲に散らばる龍の遺骸はざっと見ても百を超える。それなのに空にはまだ余りあるほどの龍がひしめいている。
これだけの龍が何処から湧き出てきたのだろうか。それも彼らは、明確な目的をもってシアナ達を襲っているように見える。
まるでここに進入した者を、逃さんとするかのように。
騎士の中には龍の攻撃を受けて怪我を負った者も何人か出てきていた。怪我人は後方へ退避させているが、また襲われないとも限らない。
状況が長引けばこちらが不利だ。自分とエレがいる限り負けることはないだろうが、数が多すぎる。
「早くケリをつけないと……っ!!」
飛来者に肉薄し、一撃で落とし、次の標的へ向かう。
全ての動作をひとくくりで行い、またそれを繰り返す。抹殺の流れ作業。
騎士達も霧が晴れたことで視界を取り戻し、いくらか心に優位が生まれたらしい。
「殺せええ!! 一匹たりとも逃すなーーー!!」
奮起する声。おおおーっ! と輪が広がるように声があがる。
剣が肉を裂く。龍の咆哮。悲鳴。
飛ぶものが翼を失い、岩に叩きつけられる醜い音。岩肌に食い込んでいく赤い染み。
……渓谷は戦場と化した。
732 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/07(土) 00:07:48 ID:Df1wDAqW
延々と龍殺しを行い続け、ようやく空に龍の姿がまばらになってきた。
「あともう少しよ!! 頑張って!!」
「はいっ!!」
シアナの励ましに騎士の声が重なる。彼らの顔には疲労が現れていたが、一様に剣を振る手を休めたりはしない。
形勢はここに来て逆転した。騎士隊は龍を押し始めたのだ。
そして――龍の姿が殆ど地に落ちた時、そいつは現れた。
「な、なんですかアレ……」
「うわ……っ!!」
巨大な影が上空を旋回している。劈く鳴き声が谷に響く。巨大な翼龍。
先程まで飛行していた小型翼龍とは比べ物にならないほどの体躯。騎士達は初めて見るだろう。
……何匹と龍を倒してきたシアナも、これほど巨大な龍と戦ったことは数えるほどしかない。
長い爪、天まで聳える黒い角。翼が空の上で動くたびに風を巻き込んで、疾風を生む。
ドクン。
シアナの胸がざわめく。……脈が速くなり、剣を握る手に力がこもる。
――また、現れたわね。龍よ。地面に散乱する仲間の亡骸をどう思う。
「……どきなさい、私が相手をするわ」
騎士が波を引くように、ざあっと道を開ける。龍は真っ直ぐにこちらを見つめていた。
上空でぐるぐると回りながら、シアナに接近してくる。
「あんたがボスね」
ドクン。
返事はなかった。……ただそこに無言の憎しみを感じて、背筋が粟立つ。
「ギャオオオオオ!!」
龍の叫びに谷が揺れる。地面すら鳴動させる龍、強さは生半可なものではあるまい。
それこそ、龍殺しの刻印を持つ私すら、倒すのには手間取るだろう。命を賭け戦いあうくらいに。
全身が高揚で震える。殺し合いを、始めよう。
剣を向け、その時を待つ。
龍を殺せる、その瞬間を。
「さあ私はここにいる!! 来い!!」
――もしも私が憎いならその牙を剥いて抗うがいい!!
飛龍は高く飛翔し、一気に降下した。
楽しく読んでます。
頑張って完結させてね。
734 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/07(土) 10:52:09 ID:Ago2ITk6
結構長編だな
でも読み応えあるわ
735 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/07(土) 22:29:39 ID:Df1wDAqW
来ましたー
感想くれた人も支援してくれた人もありがとう!!!
昨日言い忘れたけどクエスチョンマーク注意してくれた人もありがとうでした
では続き投下します↓
風圧が波となって襲いかかる。獲物を食らわんと爪牙が迫る。
間一髪、真横に跳んだシアナは龍の攻撃を回避した。
そこに、龍の尾が回転し、急撃する!!
「……っ」
ガキインッ!!
剣を盾に、かろじて真正面からの攻撃は防いだ。しかし、なんたる馬鹿力。
一振り食らっただけで手の先に痺れが走る。ガチガチと剣と尾の攻防が続く。
容易く打ち破れない、この強堅。この堅牢。重量だけではない、この龍は純粋に、
(強い……!!)
龍は尾に力を加え、シアナに追撃を加える。
第三騎士隊の者達が、両者の闘争を離れた位置から一心に見守る。
この巨龍を打ち倒せるのは、シアナ以外にありえないと信じて。
龍の装甲を敗れるのは、刻印を持つ者、人の領域を超えたもののみ。手出しは足を引っ張るだけだ。
それが全員、歯痒くていたたまれない。しかし、同時に。
龍と人の戦闘に、見惚れていた。これほどまでに巨大な龍が人と戦えるなど、御伽噺の中でしか彼らは知らないのだから――!!!
いや、もしくは、神の時代の出来事か。圧倒的で、猛烈に美しい。
……これが、龍殺しの女騎士。シアナの龍の討伐を間近で見るのが初めてでないものも、目を逸らせないほどに峻烈。
736 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/07(土) 22:34:23 ID:Df1wDAqW
「キシャアアア!!」
龍が地面を移動する、巨体にもかかわらずその動きは俊敏、爪甲が鉄槌の如く地上に降り注ぐ!!
肩を打たれ、シアナは地に叩き付けられた。
「あっ……ぐ!!」
ぎりぎりの所で致命傷を避け、急所は何とか外した。
起き上がる所を狙い、またもや攻撃。剣を突き出し、後方へ押される。
ズザザアーー!!
地上に散る岩石が靴底との摩擦で激しく踊る。そこにまた一撃!!
後方に跳躍して華麗に避ける。 龍拳が岩を穿つ!!
畳み掛けるような猛攻だ。こちらに攻撃する間さえ与えないつもりか。息を切らしながら怪我の具合をはかる。
(……骨は折れてない……まだいける)
愛しむように、悼むように、刻印に触れる。
シアナは龍殺しの力を解放した。
絶対に龍を殺す、その力を。
ドクンッ。
閃光が広がり、全身を包み込む。光は剣先に宿り、光輝を散らす。
738 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/07(土) 22:36:46 ID:Df1wDAqW
龍もシアナの異変に気付いたのだろう。
ただ事でない様子を感じ取り、攻撃の手を休めた。
龍は未だに理解しない。それが、命取りになると。
龍殺しの騎士の前で、一瞬でも手を止めようものならそれが死に直結すると!!
地面に垂れた尾を一気に駆け上がり、頭上まで到る。
普通の剣ならば龍は殺せない。殺すことが出来るのはただこの力ひとつ!!
高く跳躍し、一息に龍の頭蓋を貫いた。
ざぶんっ。
刃は肉を裂き骨を貫く。
崩れる龍の肉体と共に、シアナは地上へと降り立った。
巨躯が地面に倒れ、大地を揺るがす。周囲が静寂で満たされた瞬間、一斉に
歓声があがる。
シアナは見事、龍を打倒した。
「隊長、やりましたね……!! 流石でした」
「こんな龍、滅多にお目にかかれないんじゃないですか」
次々と部下の賞賛が浴びせられる。
シアナはその中、得体の知れない違和感を感じていた。
あの巨龍を一撃で倒せたことに、爽快感を感じつつも、何かが――上手く行き過ぎているような。
そう、刻印の力がいつもより増している、そんな気がしたのだ。
(もしかして刻印が……強くなってる?)
――刻印の模様にまたひとつ、新たな線が刻まれる。
その数は先程、打ち倒した小型翼龍と合わせて百一。
どういうこと、だろう……この刻印、龍を殺す以外に秘密があるのか。
まあ、それは今は置いておこう。龍は倒した。長居は無用。
気を緩めた直後、ずくん、と肩に痛みが走り抜けた。
いつもめちゃくちゃ時間かけて投下してるけど
支援あればつめて投下して大丈夫だよ
あんまり時間かかってると投下するほうもしんどいし
読むほうもいつ感想書いていいかわかんないしね
743 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/07(土) 22:38:46 ID:Df1wDAqW
思わず顔をしかめる。刻印を使う前に撃たれたのが悪かったらしい。下手をすれば骨がいっていた。
打撲程度で済んで不幸中の幸いだった。手を当てて、呼吸を整える。
「隊長、だ、大丈夫ですか? あ、そうだ。近くの村までいって馬を借りてきましょうか」
イザークがおろおろしながらシアナを心配そうに覗き込んだ。
「……いいわ。大丈夫、歩いて帰るくらいなんともない」
「でも……」
「帰るわよ。あまり留まっていると魔物が出る。……そうだ、イザーク。少しは上達したわね。悪くない戦いぶりだったわ」
「えっ、本当ですか!?」
「前のへっぴり腰に比べればね」
「あのーそれって褒められてるんでしょうか?」
ぽんぽんと肩を叩いて、シアナは笑った。
「今のあんたに向けるには最高の賛辞じゃないの」
振り向いたその時、対角線上に立ち尽くすエレと視線が交差した。
ざああっと風が吹く。血塗れた剣、血塗れた顔、唇。
漆黒の髪が流れる。
狂人じみた禍々しい姿に、思わず息をするのを忘れた。
抜刀した剣をそのままに、カツカツとシアナに歩み寄る。
「なるほど……龍を倒したか。……とはいえ怪我を負ったようだな」
745 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/07(土) 22:40:28 ID:Df1wDAqW
「…………だから、何よ」
「もったいぶることなく最初から刻印の力を使えばよかったのだ。大方貴様のことだ、刻印
を使わずとも倒せるのではないかなどという甘い考えを持って戦ったのだろう」
「それは……」
「ふん。あのような敵相手に、一撃を浴びれば普通、即死するぞ。故に攻撃は全て避けるのが勝利の前提だ。
お前は龍殺しなどと謳われている癖にそのようなことも理解せんのか、救いがたいな」
エレの言う事は正しい。確かにシアナは――あの巨龍に対して余裕を感じていた。
命を取られるかもしれないと分かっていながら、刻印の保持者であることに慢心していた。
否定できない驕りがあったのだ。
「窮地に立たされなければ全力を発揮できないようでは、いつか足元をすくわれるぞ」
「……」
悔しいが事実だ。
何も言い返せないでいると、エレは馬鹿にしたように唇を歪めた。
「どうする? 今ならば、それこそ赤子の手をひねるようにお前を殺せるぞ」
その一言に、心臓が揺さぶられた。
ざわっ……
騎士達の間にざわめきが広がる。その場は一気に緊迫した。
シアナは沈黙を保ったまま、エレを睨み付けている。
本気か。いや、だが相手はこの男だ。馬鹿みたいに戦うことだけを考えている狂人の言葉だ。
(嘘……でしょ)
今、攻撃されたら、確かにエレが圧倒的に優位だ。
怪我をしながら強敵と立ち回り疲労しているシアナと、小物を嬲り続けてきたエレでは体力も気力も違いすぎる。
749 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/07(土) 23:08:06 ID:Df1wDAqW
張り詰めた空気の中、エレとシアナは自身の瞳に相手を映し続ける。
エレは剣を手にしている。シアナに切りかかろうと思えば、すぐさま実行出来る距離に身を置いている。
殺そうと思えば、殺せる。それは誇張でもなく、事実だ。今仕掛けられたら、自分は負けるかもしれない。
実力の上では互角。ならば状況がそれを左右するだろう。分はあちらにある。
「……――っ」
どうする。逃げるか。立ち向かうか。それとも……。
騎士達も、ことの成り行きを固唾を飲んで見守っている。
長い時間が経ったように思われた。それは実際は数秒も無かったのかもしれない。
永遠と思われるような間の後、エレは高らかに笑った。周囲があっけにとられる。
「馬鹿か。俺が戦いたいのは万全の態勢で向かってくるお前だ。怪我をしている貴様に用はない。
容易く殺せるものと戦って何が楽しい」
ふー……。
第二騎士隊も第三騎士隊も、同様に安堵した。全くどこまでも人をハラハラさせる男だ。
「エレ、冗談は時と場所を選びなさいよ」
「ふっ。俺に殺されると恐怖したか? 龍殺しのお前が? ……滑稽だな」
帰ったらこいつに一発食らわせてやろうとシアナは固く決意した。
「……心臓に悪いですよ〜エレ隊長」
イザークが安心したように腰を下ろす。
750 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/07(土) 23:09:23 ID:Df1wDAqW
しかし、心臓に悪い事態はまだ続いていた。大きな翼音。地面を覆う黒い影。
「げええ……っ!!」
現れたのは、二体目の、翼龍。先程より一回り小さいサイズだが、巨大なことは一目瞭然。
シアナ目掛けて、鋭敏な動きで突っ込んでくる!!
(あ、)
間に合わない。
そう思った。あまりの急な出来事に、刻印を発動している暇がない。――狩られる。
「隊長!!」
その時、突き飛ばされた。横から走ってきた騎士に、体当たりで身体を押された。
「イザーク!!」
代わりに龍の前に身体を差し出した騎士は、龍の爪に掴まれて、そのままさらわれた。
身体が持ち上がり、空へ浮き上がる。
「うわああああ!!? 助けてええええ〜!!」
天に舞い昇り、龍は渓谷の向こう、山の方へ飛んでいった。
「……う、うそ……」
あっという間の出来事だった。イザークは龍に連れ去られた。
754 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/07(土) 23:59:54 ID:Df1wDAqW
「た、隊長……!!」
隊員の声がかかる。シアナの判断を仰いでいるのだ。
「どうされますか、イザークは山の方へ連れてかれたようですが……」
「……そうね」
おそらく、イザークは龍の巣に連れて行かれたのだろう。
連れ去った理由はひとつしか考えられない。餌だ。放っておけば、あいつは龍の胃袋の中に収まって消化される。
どんな有利を想定してみても、一人でイザークは龍を倒せない。確実に、死ぬだろう。
不安そうにこちらを見ている騎士の中に、以前声を掛けてきた者もいる。名はマイク。……イザークを心配していた者だ。
「ふん。あのような無能の部下の一人いなくなったところでどうだというのだ。
くだらん。放っておけ」
「エ、エレ隊長はイザークを見捨てると仰るんですか……?!」
マイクが声を荒げる。
「当然だ。クズは消えろ。あれぐらいの攻撃を避けられぬ者はいらぬ」
あまりにも辛辣な言葉に、その場はシンと静まり返った。
……イザークは、シアナを庇ったのだ。騎士としての忠誠からか、それとも反射的に動いたのかは分からない。
それでも、臆病で、弱虫なイザークが、身を犠牲にして庇ってくれた。
756 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 00:01:09 ID:SM2ep4FM
あの時、マイクと交わした言葉を思い出す。
「私が一人で山に向かうわ。……皆は先に帰って、私達の帰還を待ちなさい。すぐ戻って来るから」
「隊長っ、ですがそのお怪我では……私共も連れて行ってください!!」
「大丈夫よ。皆疲労してるし、怪我人もいる。これ以上移動するのは危険だわ」
自分は、言った筈だ。
「約束したでしょ? 見捨てたりしないって。あの間抜けをさっさと引きずって帰る」
何があっても、見捨てたりしない。
一度口に出したことを違えるような、騎士道に反するふるまいはしない。
イザークを助ける。そう決めた。
第三隊員は、押し黙り、そして、――隊長の決断を受け入れた。
「……そういうわけだから。貴方達も帰っていいわよエレ」
目を細めるエレ。……数秒の後、皮肉めいた嘲笑を零す。
「くっ。ただ一人の無能な部下の為に、龍を追うか。自己犠牲は何も生まんぞ……愚拙め」
「何と言われても私の決定は変わらないから。それじゃ」
歩き出そうとしたシアナの横を、何故かエレも追歩する。
757 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 00:03:29 ID:Df1wDAqW
「帰り道はあっちだけど」
「分かりきったことをいちいち言うな。鬱陶しい」
「じゃあ何で……」
「頭まで鈍ったか。俺の隊は帰らせる。代わりに俺がついていってやろうと言うのだ」
「はあ?!」
エレは隊員に号令をかける。シアナについていく、その為お前らは勝手に帰れ、そう大声で宣言した。
隊員はすぐさまエレの命令に従い、敬礼をすると来た道を引き返す。
第三隊もそれに続いた。
その背を見送り、歩き出す二人。
「……何をたくらんでるの」
「もし俺が何か企みを企てているとして、それを易々とお前に話すと思うか」
「全く思わない」
「ならば無駄口を叩くな。歩を進めろ。……瑣末なことで体力を消耗するな」
この男、何を考えている。喧嘩を売ったかと思えば、今度は部下の救出を手伝うという。
放っておけと言った直後に、わざわざ助けに手を貸すような真似をしてみせる。
そこにはエレなりの観念にのっとった行動基準があるのだろうが、シアナにとっては意味不明なだけだ。
(こいつの思考回路は理解しがたい……)
シアナは怪訝な面持ちでひたすら道を進む。
けれど、まあいいか。今は強がっている場合ではない。加勢してくれるというのなら、その好意はありがたく受け取ろう。
ロスラ渓谷を抜け、その北側に位置するアシガ山へ。
760 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 00:30:50 ID:SM2ep4FM
イザークは龍にさらわれて、空を飛んでいた。
最初は怯えて叫びまくっていたが、あまり暴れると、龍が爪を離して地面に墜落するかもしれない。
出来るだけ体を動かさないようにして身を委ねた。
雲が近い。……こんな状況下なのに、景色を楽しむ余裕のある自分に苦笑する。
もしかしたら、もう助からないことが分かっている故に達した境地なのかもしれなかった。
しばらくすると、龍は山の脇、ぽっかり空いている洞窟の中へ飛び込んだ。
「うわっ」
どさりと乱暴に放り投げられる。痛みはさほどでもなかった。草や枝が集められ、敷き詰められている場所に落とされたのだ。
……ここが巣なのかもしれないなあ。イザークは能天気に思うと、周囲を見回した。
「あれ? これ……」
草の中に、丸い膨らみを見つける。手を使い探って見ると、大きな卵が現れた。
鶏の何十個分はあるであろう、その大きさに、これでオムレツしたら美味そうだなと考える。
「卵……そっか。じゃあやっぱりここが龍の巣なんだ」
洞窟は薄暗く、湿っていた。龍はイザークを放ると、どこかへまた飛び立っていった。
隊長怒ってるだろうなあ。シアナの怒号を想像してぶるりと震える。
――こら!! 何やってるの!!私を庇おうなんて百万年早い――!!
そしてもしここにいたら、チョップをくれるだろう。いや、蹴りもとぶかな。
761 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 00:32:01 ID:SM2ep4FM
……でも、守れてよかった。戦闘では何も役に立てなかったから、ひとつくらいは力になりたかった。
隊長はあの後、どうしただろうか。みんなと城に帰ったかな。
……それを望んでいたはずなのに、自分を助ける為に、山へ向かう隊長をありありと想像してしまうのは何故だろう。
(ああ、でも多分、来ちゃうだろうなあ……)
隊長はそういう人間だ。強くて勇ましく、断固として騎士であろうとする。部下を見捨てたりは絶対にしないだろう。
そういう人柄だから、あの人は隊長なんだろう。……そして、隊の皆はそれを分かってるから従っている。
「……ここで諦めたら地獄まで追ってきそうだなあ」
それは御免だ。出来るなら生きて会いたい。
「よし」
生きて帰ろう。何処か抜け出せる場所はないか、探すことにする。
立ち上がった瞬間、背後で何かが砕ける音がした。
「え……」
パキパキパキパキ……。
「ちょ……これは……マズイ……」
ゆっくり振り返る。龍の卵が孵化しようとしていた。
763 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 00:46:27 ID:SM2ep4FM
「それで目当てもないのにどこの区域を探すつもりだ」
シアナは歩きながら返答する。
「……龍が住んでいる周辺なら必ず痕跡があるはずよ。例えば糞とか足跡とかね。
それを探すわ。近くまで行けば私の刻印が反応するから、どこにいるかがはっきり分かる。見つけたら知らせて」
「ハッ。まさかこの俺が龍の糞を探さねばならんとはな。馬鹿馬鹿しいことこの上ない」
「嫌なら戻りなさい。私一人で行くから」
……小さく舌打ちしてエレは黙々と着いてくる。
シアナはきょろきょろとあたりを見回しながら、イザークと龍が飛んでいった方へと進んでいった。
足に何かが触れる。第三騎士隊の証が刻まれた剣だ。
「これ、イザークの剣だわ……」
地面に落ちていたそれを拾い上げ、シアナが言う。
「きっと途中で落ちたのね。ということはこっちで間違いないか」
「剣どころか本人も落下しているかもしれんがな。いや、もうそろそろ食われて龍の糞として排出されてもいい頃合だ」
「ちょっと!! 不吉なこと言わないでよ!!」
「……噂をすれば何とやらだ、ほら、見てみるがいい」
エレの視線の方角に、龍の痕跡があった。巨大な足跡と、散らばる排泄物。
764 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 02:04:29 ID:SM2ep4FM
そして前方には、いかにも何かが潜んでいそうな洞穴が見えた。
ドクン。
刻印が反応している。あの龍を殺せと、呼びかけている。
龍の巣はここか――ようやく見つけた。ここにイザークはいる。間違いない。
「……あそこね」
斜面を登り、暗い闇が広がる虚を目指す。
鈍く痛む肩を押さえ、はあと一息つく。
怪我はしたが、あと一戦くらいは戦えるだろう。それにこちらにはエレもいる。
(そういえばエレも刻印持ってる……わよね。顔に刻まれてるし、ということは)
もしかしたらエレも龍を殺せるような力を持っているかもしれない。龍殺しの刻印ではないにせよ、何か別の刻印なのだから。
しかし今までエレが刻印を使う所を見た所がない。……それはきっといい種類の刻印ではないのだろう。
刻印とは呪いだから。そう、自分に刻まれた刻印のように。
「行くわよ、エレ」
「ふん」
穴の中へ踏み入る。光の差さない洞穴は、薄暗く視界が悪い。
765 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 02:06:25 ID:SM2ep4FM
シアナは刻印に触れて光を剣に宿した。
剣を灯りの代わりにして、奥へ奥へと。
しばらく進んでいくと、ひらけた空間に出た。頭上には大きな穴が空いている。
「……龍はいないみたいね」
「今はいなくともじきに帰ってくるだろうな。急がんとあやつは餌にされるぞ」
「わかってるわよ」
周囲を眺め回す。イザークの姿はない。この場所ではないのだろう。
「この奥にも道があるわね。他にもいくつか開けた場所があると思う。手分けをして探しましょう」
エレの返事はない。シアナは構わず走り出した。
ドクン。
刻印が疼く。
(龍が近づいてきてる……)
もしくは自分が接近していっているのか。
(お願いだからまだ食べられないでいてよ……イザーク)
肩の痛みも忘れ、思い切り走った。そして、三叉路になっている細い道の壁に抜け道を見つける。
中を覗いてみると、そこには立ちすくむイザークが見える……!!
「イザーク!!」
踏み込むと、シアナの訪れを待ちわびていたかのように、龍が飛来した。
「私まで一緒に頂こうって気?……冗談じゃないわよ」
766 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 02:07:51 ID:SM2ep4FM
剣を龍に向ける。その型は八相上段の構え。セットアップエイトアスペクト。
手馴れた者にしか使うことを許されない、剣術の構えのひとつである。
しかし、使いこなせた時の威力は絶大。数ある構えの中でも、美しさと破壊力では一、二を争う。
躊躇している時間はない。持てる全力を注ぎ込み、渾身の力を込めて打ち伏せるつもりだ。
肩の痛みを堪え、まともに迎撃できるのはあと数回といったところか。
その数回の内に仕留めなければ、こちらがやられる。
イザークが何か叫んでいるが、龍の唸り声の前に掻き消された。
――巨体が蠢く。ぎょろりと剥き出した目がシアナを捉える。
すうっと息を吸い、凄まじい勢いで――吐き出す。
「ブレス……!?」
龍から放たれる灼熱。
炎が、眼前に迫った。
「……っ!!」
剣で咄嗟に身を庇う。が、熱はシアナまで届かない。シアナの前に立ちはだかる黒き影があった。
「エレ……?!」
「愚か者!!何をやってる!!とっととあの無能を連れ去れ!」
エレの手から紫を帯びた黒い光が放たれている。それが、炎を掻き消している。
刻印の力――炎を消す力ではない。
あらゆるものを死へと誘う。それが悪魔の刻印の力であった。
刻印は今、炎を殺している。
別名を悪魔の目の刻印。シアナの刻印が龍のみを絶対的に殺す刻印ならば、エレはそれを遥かに凌ぐ。
悪魔の刻印は、全ての存在に絶対的な死を与え、葬り去る。絶対殺戮。それが悪魔の刻印の能力であり、呪いである。
767 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 02:08:53 ID:SM2ep4FM
シアナはその脇を縫い、イザークへ近づこうと走る。
それを龍が容易く許してくれるはずもない。
牙を見せ、シアナの前に立ちはだかる。
龍がシアナに肉薄する。
再び大気を吸引する龍。ブレスだ。第二波が来る。
「……っ」
肩に忘れていた痛みが蘇る。
駄目だ。避けられない。……剣に刻印の力を込めて、攻撃を防ぐしかない。
龍が、業火のブレスを放つ!!
瞬間、時間が凍りついた。
エレを中心に、空間は虚無を生んでいる。
虚無を生むという言い方はおかしいか、虚無とは何もないことなのだから――いや、しかし、それ以外に例えようがない。
それは真っ黒な闇だった。
力は龍に目掛けて放たれる。ぴしぴしと龍を取り巻いた黒が時間を断裂していく。空間が切り裂かれる。
黒い斑点が龍を飲み込み、身体を侵食していく。――それはまさしく死。悪魔の刻印の最たる力。
龍は崩れ落ちた。巨体を地面にたたえ、苦しげに天を仰ぐ。
768 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 02:14:33 ID:SM2ep4FM
すみません、とりあえず今日はここまで……!また来ます。
しえんありがとうございました。
769 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/08(日) 11:08:32 ID:snd6HBcY
新たな刻印キター!
でも俺はシアナたん萌え
770 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 20:13:42 ID:SM2ep4FM
「ほう。まだ息があるか――小物ならば数秒で抹消するのだが、龍種のことだけはある」
感心したように呟く悪魔の騎士。
龍の体躯を黒一色が埋め尽くすと、
……尾の先から、音もなく龍は消滅し始めた。
瓦解していく龍。生物種族の頂点に君臨する王も、こうなっては助かりようもない。
悪魔の刻印の能力の前に平伏し、崩壊を受け入れるのみ。
死の前には何者も敵わず、頭を垂れるしかないのだから。
「隊長!! 駄目です、その龍は……!!」
イザークの声が洞窟内にこだまする。それを遮って、消え逝く龍は、言葉を発した。
「よい――止めてくれるな、若き騎士よ」
それは、以前聞いた龍の言葉よりも、知性を感じさせる、それでいて厳格なものだった。
「私は守るべきものの為にこの者達に牙を剥いた。
……悔いはない。ただ、あるとするのならそれは残された我が分身に対してのみ――」
そこで一旦、間をおいて龍は話し出す。
黒き死は既に龍の半分を多い、翼と上半身を残すだけとなっていた。
そしてシアナとエレへ眼を動かして、頼りなく吐息を吐き出す。
「呪われた刻印を持つ者よ。我を殺し、屍を踏み越えて、その果てに何を望む。
お前達の刻印はこの世にあってはならぬ忌まわしきもの。……故に力の行使には必ず代償が必要となる。
龍殺しの騎士。お前が龍を殺す度に、殺された龍の魂はそなたの身に宿り続けるだろう」
771 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 20:15:08 ID:SM2ep4FM
ドクン。
「そなたにその覚悟はあるか」
龍の言葉に、刻印が共鳴する。では。では、龍を殺すたびに刻まれる線、あれは。
シアナは口を閉ざしたまま、果てようとする龍を見つめた。
黒点は龍の身体を這いながら、存在を消していく。
「ゆめゆめ忘れるでない。命を奪うとは、奪ったものの命を背負うということだ――」
完全に龍が消え、そして空洞には静寂が満ちた。
「隊長……」
イザークは悲しげにシアナを見る。
そこに、剣を片手に持ったエレが近づいた。
「貴様、背後にいるそれはなんだ」
「……!!」
厳しく問い詰められ、狼狽するイザーク。背後にシアナが目をこらすと、そこには、まだ小さい
龍の姿が見えた。いくつか卵も確認できる。
ジャキッ。エレは剣を構える。
「だ、駄目です!! この龍はまだ赤ん坊なんですよ!? それを有無を言わさず殺すなんて」
「何を言ってる貴様。正気か。その龍は成長すれば必ず人間に牙を剥く。先程の巨龍のようにな。
生かしておくのは愚行。有無を言わさず殺すのが道理だろう」
「それは、でも……」
「貴様、龍にさらわれた挙句、何を腑抜けた事を。そんなに殺されたいか」
イザークは龍を守るようにエレの前に立ち塞がる。
「うあ……で、でも……!! そうだ、隊長!! シアナ隊長なら分かってくれますよね」
772 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 20:16:25 ID:SM2ep4FM
シアナは首を振る。
「イザーク。私もエレと同意見よ。その小龍を見つけた以上、生かしておくことは出来ないわ」
「そんな……まだ何もしてないじゃないですか。それなのに隊長はこの子を殺すんですか?」
幼い龍は、キイキイと鳴いてイザークを口先でツンツンと突付く。じゃれているようだった。
「さっきの龍、この子達のお母さんだったんですよ。だからきっとこの子達を守ろうとして戦ったんだと思うんです」
エレは剣の切っ先をイザークの首元へ向ける。
「馬鹿め。お前は敵を切り捨てる時に一々そんなことを考えているのか。
敵に子がいようと親がいようと切り捨てる。人間だろうと龍だろうとな。
その覚悟さえ持ち合わせていないのならば、騎士などやめてしまえ」
喉元僅かの所に剣の威圧を感じながらも、イザークは引かなかった。
拳を強く握り締め、二人の隊長の前に立つ。懸命に言葉を紡ぐ。
「……あの龍は無作為に人を襲ったりはしないと思います。僕らが巣に近づいたから怒って攻撃してきたんですよ。
きっと話し合えば分かってくれた」
「……それは、無理よ」
「何故ですか!! だって……」
おそらくあの龍達が攻撃してきたのは、イザークの言うとおり、巣に自分達が近づいたからだろう。
渓谷からすぐ傍にあるこの巣。龍は産卵期を迎えていたに違いない。
子孫を守る為、仲間達を引き連れて、自分達の領域を侵すものを排除するつもりだったのだ。
だが、龍があれほど襲来してきたのは、それだけの理由ではないだろう。
……それがさっきの戦いではっきりした。ずっと前に聞いたはずなのに、……忘れていたのか。
こんな大事なことを。
多分、自分は逃げていたのだろう。思い出すのが怖かったから。
773 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 20:17:47 ID:SM2ep4FM
シアナ、いいかい、よく聞くんだよ。この刻印はね――
「イザーク。私のこの刻印はね……呪いなの。必ず龍を殺せる能力を手に入れた代わりに、
私は龍を引き寄せる力も同時に貰ってしまった。この力は龍を狂わせる。私がこの刻印を持つ限り、
何処に居たとしても龍は必ず訪れて私を食らおうとする」
「え……」
でも、死なない。いや、死ねない。刻印を持つシアナ自身は龍には絶対に命を取られることはなく、
周囲の者だけが竜の餌食となって死んでいく。
それが、龍殺しの呪い。殺せば殺すほどに強くなり、刻印の力もまた増すが、
――一人になる。
「成る程。貴様の刻印、龍殺しなどではなく龍を呼ぶ刻印というわけか」
どこまでも皮肉だな、とエレ。……言葉とは裏腹に、その目は重く、沈んでいた。
「私は生きなくちゃいけない。……これだけ多くの龍を殺した私は最早許されない。
罪は贖うことは死をもってしても釣り合わないほどに重い。……だから、生きる」
生きることでしか、奪った命を背負えないのだから。
龍に狙われ生き続ける――それを受け入れることこそが、決して許されることはない、贖罪。
龍を殺すことを宿命付けられた女が選択した道だ。
774 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 20:20:01 ID:SM2ep4FM
シアナに気付いた小龍は、びくっと身体を震わせると、いきなり豹変した。
目を赤く滾らせて牙を剥き、シアナに襲い掛かる。……シアナは避けなかった。
この龍は先程私達が殺した龍の子供だ。……復讐する権利は十分にある。
黙ったまま、腕を噛まれた。
生まれたばかりの小さな牙が、シアナの腕に食い込んでいる。
シアナを食い殺そうと、喉へ目掛けて突進する。
でも、私を殺そうというのなら、私は貴方を殺さなくてはいけない。
――母を奪った謝罪のように、刃は振り下ろされた。
「……シアナ、隊長……俺……っ」
イザークはへたりこんで、肩を震わせている。
事情も知らずに、一方的なことを口走った。救える手段があると思ったのだ。龍も人も、どちらも傷つけあわずに
争いを避けられる道があると思った。どんな決意で、シアナが龍の屍を踏み越えてきたかも知らずに。
悲しくて泣きたいのは自分ではなくて、むしろ隊長のはずだ。
それなのに、何故、あの人は。
「帰るわよ」
こんな時まで悲しそうに笑うんだろう。
775 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 21:01:50 ID:SM2ep4FM
「……あれも破壊すべきだな」
エレが卵に視線をやる。
イザークはハッとした。あれは龍の卵だ。殻を破り、生れ落ちたならばシアナを狙いにやってくるだろう。
でも、まだあれは生まれてもいない命だ。それを奪うのは、イザークの中の良心が咎める。
だが。
刻印を持たず、シアナの苦悩を知らない自分に止める権利があるのか。
「隊長……」
善悪など分からない。シアナの行為が正しいとか正しくないとか、そういうことは分からない。
それでも、それでも、まだ生まれてすらない者の命を剥奪してしまうのは、断じて正しいことではないはずだ。
縋るような目でシアナを見るイザーク。シアナはハア、と息を吐いた。
「そうね。あれは卵だわ。でもあれが……龍の卵かはわからない」
「え……」
「気でも狂ったか? ここは龍巣。産み落とされたものは龍卵以外ありえないだろうに」
そんなことはシアナも分かっているだろう。龍に噛まれた部位から血がしたたる。傷ついた腕を押さえ、止血を行うシアナ。
「それは生まれてくるまで分からないわ。もしかしたら蜥蜴かもしれないし鳥の卵かもしれない」
「……貴様……」
「隊長……!!」
「そういうことよ。もうここにいる理由はないわ。帰りましょう」
それは、単なる気まぐれだったのか。
それとも部下の懸命な姿を見て故の慈愛だったのか。シアナは卵を見逃すことにした。
自分を庇った者の願いだ。……これくらしいしか聞き届けられないが、せめてもの行い。
776 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 21:04:51 ID:SM2ep4FM
三人は、そのまま山をくだりフレンズベルに帰還することにした。
なだらかな道を黙々と進む。イザークは二人の後ろから着いてきていたが、先程から口数が少なく、しきりに俯いてばかりだった。
重苦しい気配が、三人の上にのしかかる。
「あれでよかったのか。あの卵が孵れば、お前を狙いに必ず現れるぞ。……なんせ母龍を殺した憎い仇だろうからな」
「……そうね」
石粒を蹴って、シアナは俯く。
「もしあの時の龍がお前を殺しにきたらどうするつもりだ」
今更聞かれるまでもない。決まりきったことだ。
龍は、命を背負う覚悟があるかと問うた。
ああ、出来ている。この刻印を手にした瞬間から、私は、そう生きると決めた。
今までもこれからも。……自分は背負い続ける。十字架を背負い、戦い続ける。いつか自らが滅びるまで。
「その時は勿論――殺すわ」
自分の行く先は地獄だろう。
いや、もしかしたら既にこの世界が地獄なのかもしれなかった。
呪われた刻印を刻まれ、殺しを行い続ける自分は咎人であり、
その咎人に罪を与えるこの世界は、流刑地である。
咎人は赦されることなく、狩り手から死さえ与えられない。
永劫流転する責め苦は、耐え難き孤独である。それが罰なのだと、どこかで声がした――
778 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 22:01:00 ID:SM2ep4FM
城に到着し、シアナはすぐさま報告をしにズイマの元へ向かった。
エレもしぶしぶ動向する。
シアナの傷を見て、顔を曇らすズイマ。
「怪我をしているな、シアナ。……事の次第はよく分かった。今は傷を癒すといいだろう」
「……はい。申し訳ありません」
「謝ることはない。お前はよくやった。
……しかし、たった一人の為に隊長二名が救援に向かうのは決して隊の為にはならない。
二人とも殺される可能性もあった。それを考慮せず龍巣へ向かったのは正しい判断とは言えない。
総長の立場から、それについてはきつく言及せねばなるまい」
「はい。今回の事は全て私の責任です。罰を与えるのならどうか私にお与え下さい」
「ふん。お前の責任? 笑わせるな。あの間抜けがそもそも龍にさらわれなければこんなことにはならなかったのだ」
「む……っ」
「二人共、やめるがいい。今は仲違いをしている場合ではないだろう」
ズイマに諌められ口を噤む二人。
手を組んで、ズイマは何かを考えているようだった。口を開く。
「……そうだな。シアナ、お前には一ヶ月間の任務停止を命じる。第三騎士隊も同処分とする」
任務停止。隊を伴っての、このような措置は異例だ。……シアナはそれを重く受け止めて、返事をした。
「はい、承知致しました」
779 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 22:02:12 ID:SM2ep4FM
「シアナ、お前のやったことは自らを危険にさらす、隊長としては遺憾な行為だ。……しかし、私個人としては、
たった一人の為に救援に向かったお前を誇らしく思う。龍を打ち倒し、……よく戻ってきてくれたな。
一ヶ月間、ゆっくり身体を休めて静養に努めるといい」
ズイマの真意が伝わる。それは決して罰ではなく気遣いだった。ズイマの言葉が疲労した体に暖かく染み込む。シアナは頷いた。
敬礼して部屋を出る。エレもそれに続いた。
部屋を出ると、多数の騎士達がシアナ達を出迎えた。
「隊長、よくご無事で戻られました……!!」
「私共全員、信じておりました、お二方が必ず戻られると」
「私は祈りを捧げておりました。……お二方、そしてイザークの生還を願って。それが神に聞き届けられたようで、
感動で震えております……お帰りなさいませ隊長」
全員がお帰りなさい、と唱和した。
第三騎士隊だけでなく第二騎士隊の者もちらほら見える。
「みんな……」
「エレ隊長もお帰りなさいませ!! お怪我はございませんか?」
エレはそっけなく「ない」と一言告げると、マントを翻し踵を返す。騎士達の前を通過し、その場を立ち去った。
「……まったく愛想も何もない男ね」
「シアナ隊長、腕が……」
ああ、とシアナは自分の腕に目をやる。酷い怪我をしていた。……肩も痛む。今まで気を張っていたので
あまり痛みを感じなかったらしい。ここにきて急に痛みを取り戻した。
「救護室へ行かれて下さい。リジュ隊長がおります」
「分かった」
780 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 22:33:21 ID:SM2ep4FM
救護室に入ると、本を読んでいたリジュが顔をあげた。
いつもと変わらない柔和な顔で、にっこりと微笑む。
本を机に置いて、シアナに向き直る。
「お帰りなさいシアナさん」
「……ただいま」
椅子の上に腰を下ろす。
リジュはシアナの腕を見やって、僅かに顔をしかめた。
「酷い怪我ですね。……すぐ治療します、腕を貸してください」
リジュはシアナの腕に触れる。リジュは魔術を使える。その中に治療魔術も含まれていた。
呪文を詠唱すると、暖かな光がリジュの手先に生まれる。
それはシアナの腕を包み込み、怪我を癒していく。
元々リジュは魔術を専攻していた学士だったらしい。フレンズベルの大学を主席で卒業し、将来は医者か優秀な研究者か
との呼び声が高かったが、本人はあっさりと騎士隊へ入隊した。
シアナはそれを不思議に思い、以前リジュに志願の理由を聞いたことがある。
騎士隊なら、傷ついた人を沢山癒せるし、それに戦闘で攻撃魔術も使い放題でしょう?とにっこり笑われて言われた時には、
もしかしてこの人物はとんでもない食わせ物なのではないかと思ったものだが……。
781 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 22:34:29 ID:SM2ep4FM
「はい、終わりましたよ。包帯を巻いておきます。一応消毒と治療はしておきましたけど、しばらくは安静にしててくださいね」
「ありがとう。……そうね。しばらくは休むことにするわ。謹慎処分も出たことだし」
「それがいいと思います」
「あ……そういえば」
急に気になった。イザークはどうしただろうか?
怪我はしていない様子だったが、今までにないくらい意気消沈していた。
明るいだけが取柄のような男だ。しばらくすれば元気になるだろうが――
(何であいつが悲しむのよ……)
刻印の事を口にしてから、その後ずっとイザークは暗い顔をしていた気がする。
「どうかされましたか?」
「ううん、なんでもない。その、助けた部下の様子が気になって」
「……そうですか。さきほどイザーク君なら中庭で見かけましたよ」
「中庭で?」
「ええ。剣を持って……一人で訓練しているようでした」
「――」
リジュはふふっと笑って、まだ続いていると思います、と告げた。
シアナはもう一度礼を言うと、急いで駆け出した。
暗くなった中庭。夜の帳が下り、空には満天の星が煌々と輝きを灯す。
その下で、風を切る音。素振りの音が響いていた。
イザークは一心不乱に剣を振っている。
シアナはその姿を見つけると、すぐさま近寄った。
「……イザーク。もう夜も遅いわ。今日は休みなさい」
784 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 23:37:09 ID:SM2ep4FM
「……シアナ隊長……」
「根を詰めて訓練しても力は付かないわよ。それにそんな萎れた様子でやってどうするの」
イザークは剣を下ろす。
怒りに震えているような、悔しさで自分が許せないような、今にも泣き出しそうな、そんな酷い顔をしていた。
「僕、馬鹿でした。隊長のこと何も知らないで勝手なことばかり……」
そうね、と呟くシアナ。だがその表情に蔑みはない。
イザークの言い分もよく分かる。それが自分の背負ったものと相反するものだった。それだけだ。
「助けてくれてありがとうございました。本当なら見捨てられて当然ですよね。それなのに、エレ隊長まで俺を助けに来てくれるなんて、
……シアナ隊長のおかげです」
「どういたしまして。……礼ならエレにも言っておきなさい。龍を倒してくれたのは、エレだから」
「はい。……あの、隊長」
「うん?」
「僕……いや、俺がなんで騎士になろうとしたか聞いてくれますか」
イザークは腰を下ろして、空を仰ぐ。頭上に降り注ぐ星と、月の灯りが二人を照らしていた。
785 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 23:38:23 ID:SM2ep4FM
シアナは何も言わなかった。黙って自らも腰を下ろす。
それを肯定ととらえたイザークは話し出した。
「僕、自分で言うのも何ですけど。結構良い所のおぼっちゃんなんですよ」
「知ってるわ」
「……はは。そうですよね。家のコネで隊に入ったみたいなものだし。
小さい頃は、このまま家を継いで、暮らしていくのかなって漠然と思ってました。
何も不自由なくて、社交界とかにも出て……。将来はそれなりな所の令嬢と結婚して。
……それが当たり前だと思ってたんです。本当、世間知らずだった」
一呼吸おいて、また話し出す。
「でもある日のことでした。馬車で旅行から帰ってくる時に、盗賊に襲われたんです」
「……」
イザークはその時のことを思い出しているのか、ぼんやりと遠くを見た。
「怖かった。相手は剣を持ってて、俺の父親を人質に取りました。金をよこせって。
俺、本気で震え上がっちゃって。……座席の下で隠れて怯えてたんです。
盗賊が、親父に剣を向けた時でした。……騎士隊がやってきたんです。
馬に乗って、どんどん盗賊をなぎ倒していったんです。凄くかっこよかった……まるで英雄みたいに見えました」
そこまで言って、イザークはシアナの方を向いた。
遠い記憶が蘇る。そうか、あれは……いつのことだっただろう。確か、
シュトラール家の馬車が盗賊に襲撃された事件があった。
その任務に当たっていたのは、
「シアナ隊長。貴方でした」
まだ新米もいい所だった。下位の隊で隊員の一人だった時のこと、かなり最初に体験した任務である。
786 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 23:39:50 ID:SM2ep4FM
だがこなしている任務の数など、それこそ千を超える。
シアナはそんなこともあったかもしれないとうっすら思い出すくらいだった。
「……それで俺、騎士になろうと思ったんです。笑っちゃいますよね。こんなミーハーな気分で騎士になろうだなんて」
あはは、と笑うイザーク。自分の行いで騎士を目指し、騎士になった人間がいると考えると不思議だった。
「別にいいと思うわ。私も大して変わらないから」
「え?」
「自分の村を龍に襲撃されたの。その時に騎士が助けに来てくれた。それで――騎士になろうと思った」
「あ……」
イザークはまずいことを聞いたといわんばかりにオロオロして、すいませんと呟く。
「別に気にする必要はないわ。昔の話よ」
揺らめく炎。舞い散る火の粉。その中で、一匹の龍が吼えていた。
自分の前に背を向けて、龍と退治した一人の騎士を幻に見る。それは実際にあった過去の記憶だった。
刻印が古傷のように痛む。
「その……聞いてもいいですか。助けに来た騎士って……どんな人だったんですか」
「アレージュ・シトレウムス。……私の父よ」
787 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/08(日) 23:42:13 ID:SM2ep4FM
「……えっ……」
イザークは衝撃を受けたように押し黙る。
シアナは立ち上がり、「もう部屋に帰りなさい」と一言告げて歩き出す。
イザークはその背に向けて、大声で宣言した。
「隊長!! 俺、強くなります。今日みたいなことがもう無いように!!
隊長を守れるくらいに強くなりますから!!」
シアナは苦笑する。
……十年早いわよバカ、出直して来いこの新米騎士。
でも悪くない気分だった。
涼やかな風が吹く静やかな夜。月が二人のやりとりを見届けていた。
788 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 00:49:25 ID:yPGr/koB
翌日から、第三騎士隊ではまた厳しい鍛錬が始まった。
シアナは訓練に励む隊員に声をかけ、激を飛ばす。
特に――やはりといっていいか、イザークには他の者より大目に。
が、イザークの様子は以前と違った。強くなると決めた決意が、彼を忍耐強くしていた。
シアナの言葉を真剣に聞き、自ら率先してアドバイスを乞う。泣き言は決して口にしなくなった。
その様変わり具合に、他の騎士達も少し驚いているようだった。
第三騎士隊が訓練に励む景色を、ズイマが窓辺から眺めていた。
「ご飯できましたよ〜!! みなさん、そろそろあがったらどうですか?」
食事番の老婆ウィナが昼食時を知らせに来る。
「そうね。そろそろお昼にしましょうか」
シアナの言葉で隊員は訓練を終えて、食堂へと向かった。
席に着席し、出来立ての昼食を頬張る。本日の昼食は野菜サラダとスープ、ラム肉とトマトのリゾットだった。
食事を受け取り、シアナも席へ着こうとしたのだが……残された椅子はわずか一席だった。
いや、そこまではよい。その椅子の隣にいる人物が問題なのである。
そこにはエレがいた。黙々と食事をしている。
789 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 00:50:58 ID:yPGr/koB
(うわ……最悪)
よりにもよってこいつか。食事がまずくなりそうだ。
だが以前より嫌悪感はない。戦いを一時でも共にしたからだろうか?
……エレ一人ならまだしも、前方にも苦手な人物がいた。
クーフ・サレスジョン。五番隊の隊長で、いかにも女性受けしそうな面構えをしているが、軟派で軽薄な人物である。
それこそ女性とみると、手当たり次第に声をかけるといった悪癖を持つあたり、手に負えない。
守備範囲は十代前半から老婆までと噂される。真偽は不明であるが本当だとしたら生きる伝説のように恐ろしい奴である。
シアナも何回か声を掛けられたが、一笑と共に蹴散らした。
それにこりず、見るたびに遊びに行こうと誘いをかけてくるあたり、忍耐力に関しては優れているのかもしれないが――はっきり言って
エレよりも鬱陶しい人物である。
シアナは無言で椅子を引き、席に座った。
それに気が付くなり、隼のような速度でクーフはシアナへと身体を乗り出す。
「やあ。シアナじゃないか。怪我の方はいいのかい?
聞いたよ、部下を助けに行ったんだってねえ。流石慈愛に溢れた高潔な精神を持った騎士は違う。
優しい上に美しい。まさにフレンズベル騎士隊の誇りだ」
「……それはどうも」
投げやりな対応をすると、食事を始めた。
「それより知ってるかい? 隊員の間で人気投票があったらしい。一位の座を射止めたのは誰だか知っているかい?」
「……さあ」
「おやおや、姫君は自分の事に関して無頓着と見える。多くの人間の心を打ち抜いておいて無自覚とは」
「……はあ」
姫君てアンタ。いい加減寒いわ。反射的にゾゾゾっと鳥肌がたった。
「それは、君だよシアナ」
いつの間にか手を握られている。
「あの、ご飯食べたいんだけど、手どけてくれない?」
「それは出来ない。離したら君が遠ざかってしまう。そうだな、もし今度の休養中に僕と遊びに行ってくれるって言うなら約束してくれるなら
惜しみつつもこの手を離そう」
「…………」
790 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 00:52:12 ID:yPGr/koB
駄目だ。この人物はやはり苦手だ。殴りたくても、威勢が寒々しい気持ちと一緒に吹き飛ばされる。
ある意味何よりも強敵だった。
「それよりこないだ城のメイドに声をかけてるのを見たけど。そっちはどうなったのよ」
「ああ、彼女ね。うん、美人でね、いい子だよ。勿論早速デートしたけど、それはそれ、君は別格さ」
メイドにも同じことを言っていた様な……。
シアナは盛大にため息を吐いた。
今は一刻も早くご飯が食べたい。
約束だけしておいて、すっぽかすのはどうだろう。しばし真剣に考える。
駄目だそれは出来ない。約束を違えるのは騎士として最低の行為だ。却下。
「で、どうなんだい?」
「……しょうがないわね。――わ」
分かったわよ、と返事をしようとした時だった。クーフの頭上から、ザバーッと水が注がれた。
呆気に取られるシアナ。水を掛けられた張本人も、一瞬何が起こったのかわからなかったらしい。
瞬きを数回して、水を掛けた人物が――エレだと分かった途端、怒りを露わにしてテーブルを叩きつける。
「お前……!!」
791 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 00:53:17 ID:yPGr/koB
「くだらんな。……お前は女を引っ掛ける為に騎士隊に入隊したのか、下種め」
「何だと……!!」
「戦歴よりそのような風評で名をあげてどうする。そもそもこいつが嫌がっているのも分からぬほど落ちてはいまい」
「……ぐ、お前には関係ないだろう」
「本当の事を言われて頭に来たと見える。分かりやすい奴よ」
「……っ!!」
エレの襟元を引き寄せて、クーフは拳を振り上げた。食堂は騒然とした。
「や、やめなさいよ二人とも!!」
クーフとエレを引き剥がすシアナ。クーフは、シアナの厳しげな目に気付いて、やれやれと肩をすくめてみせた。
「君がそういうならやめとくよ。……食事を邪魔して悪かったね。後はご自由に」
すっかり気が削がれてしまったのだろう、クーフはそのまま食堂を後にする。
「……行ったか。払っても払っても同じ所に止まりたがる。蠅のような男だ、蠅男と名を変えればよいものを」
シアナは思わず噴出した。
「何を笑っている」
絶妙なネーミングである。
蠅の身体で、顔だけクーフという滑稽な姿を想像したのだ。エレは眉間に皺を寄せたままシアナを睨んでいた。
「いーえ、なんでもないわよ。それより助かったわ。あんたに礼を言うのは癪だけど一応言っとく。ありがと」
「別に俺は貴様を助けたつもりはないぞ。むしろあやつをお前の毒牙から救ってやったのだ」
「その素直じゃない所どうにかならないわけ……」
エレはふい、と他所を向く。
792 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 01:12:14 ID:yPGr/koB
そこに、ウィナがパンの入ったバスケットを手に現れた。
「リゾットのお味はどうですか? エレ様シアナ様」
「悪くはない」「美味しいわよ」
同時に答える二人。ウィナはそうですか、それは何よりですと微笑んだ。
「焼きたてのパンですよ。どうぞ、お召し上がりください」
「ありがとう」
パンを貰い、ちらりとエレの食べている料理に目をやる。リゾットがトマトではなく白いスープ系のものだった。
「エレ様、リゾットの塩加減はいかがでしょう。……急に作ったものですから心配で」
「ふん。同じことを二度言わせるな。悪くないと言っている」
「あらあら。それはそれは何よりですわ」
「そういえばエレのリゾットはトマトじゃないのね」
「ええ。エレ様はトマトは苦手なので代わりのものを用意いたしました」
793 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 01:13:39 ID:yPGr/koB
シーン……
一瞬の沈黙。シアナはエレを見た。
恐ろしい顔でウィナを睨んでいる。
「ウィナ。……俺がいつそれを公言していいと言った」
「あらあら、すみませんオホホ。ついつい口が滑りましたわ。では私はこれで」
そそくさと退去するウィナ。
シアナは、顔をひきつらせながら、エレの様子を伺う。
悪魔の騎士として恐れられる、戦場では敵を容赦なく屠るこいつの弱点。それがトマト。
「ぶっ」
我慢できず、再び爆笑するシアナ。こんなに笑うシアナを見るのは隊員も初めてである。何事かと視線を向けた。
「くくくく……トマト、トマトが苦手……ぶはははは!! そうよね、トマトって独特な味だものね……ぷあははは!!
ごめん、我慢できない……あははははっ、あはははは!! もーヤダ、お腹痛い〜!!」
あ、しまった、笑っちゃった。慌てて口を押さえるが後の祭り。エレはますます不機嫌になるのだった。
794 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 01:22:24 ID:yPGr/koB
>>769 ありがとう!!書き手としては萌えてもらえて嬉しい限り
エレの刻印は名前だけ邪気眼をパロってみました…
邪気=悪魔 眼=目な感じで
しえんしてくれた方も感謝!!ありがとうございます
今日はこのへんで。ではまたー!
795 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 11:38:59 ID:37o1uQF2
トマトwwwww
悪魔の目を封じる最強兵器トマトww
家の軒先にトマトを吊るしておけば悪魔の騎士が来ないとかいう噂が敵方で流れるんですねわかります。
>悲しくて泣きたいのは自分ではなくて、むしろ隊長のはずだ。
>それなのに、何故、あの人は。
>「帰るわよ」
>こんな時まで悲しそうに笑うんだろう。
この辺グっときた。
796 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 21:10:36 ID:yPGr/koB
「ふー、あんたにも苦手なものがあるのね。意外だったわ」
「フン」
エレは顔を背けると、席を立ちスタスタと歩いていってしまった。
(あーあ、あれは相当頭に来てるな。話しかけたら殺すオーラが出てるわよ)
シアナはくすりと笑う。……いいことを聞いた。
これでこの先、エレをからかうタネが出来たと悪戯っ子のようにほくそえむ。
でもそれ以上に、奴の人間らしさが垣間見えたことが新鮮で。
それがなんだか――ほんの少しだけ、嬉しかった。
シアナも食事を済ませ、ウィナにご馳走様と告げると食堂を出る。
入り口付近で、誰かと肩がぶつかった。
「あ、ごめん――」
衝突した相手と顔が合う。
「これはこれは第三騎士隊のシアナ隊長ではありませんか」
大仰な仕草で一礼してみせると、その男――第二十四騎士隊隊長のファーガスは微笑する。
あまり話したことはないが、なんとなく、苦手意識を持っていた。
ねっとりと纏わり付くような喋り方、陰湿さを感じさせる性格、シアナとは正反対のタイプだ。
おまけに、よくない噂もしばしば聞かれる。訓練中の部下への暴力行為に賭博。
ただし一回も尻尾を掴ませたことがないので、罰を食らったことはない。何故隊長に収まっているのか不思議なくらいだった。
シアナは構えつつも、隊長の儀礼として挨拶をした。
「ファーガス……久しぶりね」
797 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 21:11:50 ID:yPGr/koB
「ええ、全く。まあ私共は貴方様達のようなエリート集団と違って下級クラスですからね。
共闘することもなければ任務を共にすることもあってないようなものです……ヒヒ」
「……そうね」
遠まわしな嫌味には吐き気がする。付き合っている暇はない。軽く受け流すと、シアナはその場を足早に立ち去ろうとする。
その背に、ファーガスの言葉が注がれた。
「龍を倒したそうですねえ、シアナ隊長」
「……それが、何?」
後ろを顧みるシアナ。
ファーガスはニタニタと厭らしい笑みを張り付かせたまま、続けた。
「いやいや。立派なものです。龍を退治するなんて並大抵の騎士に出来ることじゃありませんからねえ。
聞けば隣国まで名声が轟いているという話。王も貴方様の活躍にさぞ喜ばれていることでしょう。
……その一割の活躍でも私に出来たなら、と夢想してしまうほどに、ね」
「夢想?」
「ええ。夢想ですよ。私には到底無理なことですから。自分の身の丈より何倍もある龍を退けるなんて、ねえ。
で、何か秘密でもおありなんですか? 龍殺しをやすやすとやってのけるなんて、ほら、不思議じゃありませんか」
秘密。龍殺しの刻印の事はごく限られた者しか知らない。隊で知っているのは総長とエレ、リジュに第三騎士隊の者だけだ。
それも他言しないように言い含めてある。刻印は身に刻まれた呪いのようなもの。
忌まわしい証をほいほいと人に教える気もなかったし、信用出来ない人間に教えるなど尚更だ。
「私にその秘密をね、教えていただきたいんですよ」
798 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 21:13:19 ID:yPGr/koB
こいつ、何故そんなことを気にする。
シアナの心に疑心が生まれた。訝しげなシアナの様子を感じ取り、ファーガスは手を摺り合わせる。
「あ、いやいや。変な理由じゃありません。私にも龍が倒せたらってねえ、そんなことを考えたものですから」
「教えた所で貴方に龍が倒せるようになるとは思えない……それに」
踵を返し、シアナは颯爽と立ち去る。ファーガスに背を向けながら言い放った。
「夢想しているうちは絶対に龍と渡り合えるようにはなれないわね。枕でも抱きしめて寝てれば?」
シアナが目の前から去ってしまうと、ファーガスは忌々しげに舌打ちし、壁を乱暴に殴りつけた。
憎しみの篭った瞳で、シアナが消えた方角を睨み付ける。
「……あのクソアマ。こっちがおだてりゃ調子に乗りやがって。今に見てろよ……なんか秘密があるはずなんだ。
何を隠してやがる。女ごときに龍が倒せるものか。俺がお前の秘密を暴いてやる。……ヒヒヒッ、ヒヒヒヒ」
ファーガスの狂笑が廊下に反響して、捩れていく。
ひとしきり気が済むまで笑うと、ふっと凍てついた表情を纏い、ファーガスは歩き出した。
男は仮面を被る。別の人格を張り付かせて、――彼は変貌した。
799 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 21:15:02 ID:yPGr/koB
昼過ぎの中庭。空は快晴で穏やかな陽気である。第四騎士隊と、第二騎士隊が時を同じくして訓練を行っていた。
第四騎士隊の隊長、リジュは中庭の隅で、自隊の様子を観察している。
一方、第二騎士隊の隊長、エレはというと、不在だった。
大勢と訓練することを好まないエレは、訓練時、頻繁に姿を消すことが多い。
決してさぼっているわけではなく、本人は隊員とは個別に訓練を行っているらしかったが、エレが訓練を行っているのをみたものはいない。
それを、隊員は「隊長は訓練姿を見られるのが嫌なのだろう」と考えていた。プライドが高く不遜な男である。自分の訓練の姿を他人に
見せたくない、というのはあっても良さそうな話だった。そしてそれは、実際の所、大半当たっている。
エレの訓練はスパルタもいい所なので――何しろ死者が出たくらいだ――不在してくれた方が隊員の身の為ではあるが、
隊員の訓練に長がいない、となると、やはり隊内の士気にも影響が出るし好ましいことではない。
そんなわけでリジュは、忙しい合間を縫い、わざわざ第二騎士隊の様子まで眼を向けていた。
「やはり皆さん腕がいいですねえ。……欠点を指摘しようにも、突っ込みどころがないんですよね……流石はエレ君の隊という所でしょうか」
そんなことを呟きながら、周囲を見て回る。
隊員同士で戦闘の模擬訓練が始まった。リジュはにこにこ笑顔のままで、訓練の様子を見守る。
打ち合う剣と剣の音、高らかに響く隊員の声。一本!と審判が勝敗を告げる。
そこに、シアナがやってきた。
800 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 21:17:20 ID:yPGr/koB
「やってるみたいね」
隊員が訓練に励むのを眩しそうに見やる。腕には真新しい包帯が巻かれていた。
「見てると、剣を取りたくなっちゃうんでしょう。でもまだ駄目ですよ。きちんと完治するまで激しい運動は禁止です」
「バレたか」
「そりゃあ、戦うの大好きな貴方のことですからね」
リジュはくすくすと笑った。シアナは言い当てられた気恥ずかしさから、わざとらしく空咳をする。
そしてシアナと同じ方向を見る。騎士が一対一で剣を振り合い鳴らしあう。白熱した斬撃戦が目の前で行われていた。
「それで、今日はなんの用でしょう?」
「あのね――私の刻印の事なんだけど。リジュ大学で魔術を専攻してたんでしょう? 何かこういったものに詳しいんじゃないかなって」
「刻印ですか? どうして急にまた」
「……ちょっと気になることが出来たのよ」
龍の遺した言葉、それに龍を殺すたびに増えていく刻印の線。
きっと自分はまだ、この刻印について全て知らないのではないだろうか、そんな気がした。
正体のよく分からないものに頼るのは居心地が悪いし、その居心地の悪さがあまり好きではない。
「残念ですけど僕は刻印については専門外です。でも知っていそうな方ならひとり存じてますよ」
「本当? 出来たらその人に会いたいんだけど……」
「いいですけど……あの、びっくりされないで下さいね?」
「え?」
「ちょっと……、いやかなり変わった方なので。あと、ヘソを曲げるとふてくされて話を聞いてくれなくなるので
くれぐれも怒らせないようにしてください」
リジュはしつこい程に念を押す。どんな人物なのだろうとシアナの中で想像が膨らむ。
とりあえずまともそうな人物ではないことは伺えた。
「わかったわ。で、その人はどこにいるの?」
801 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 22:44:08 ID:yPGr/koB
ラーサーヘルク大学。フレンズベルの名門中の名門で、リジュの大学である。そこに刻印に詳しい人物がいるという。
名は、シェスタ・バルテルム。大学院で刻印の研究をしているらしい。
リジュは地図を用意してシアナに渡してくれた。
馬に乗り、早速大学へ向かおうと城を出る。
城門にたどり着いた時、前方から見慣れた顔がやってくるのが見えた。
「……エレ」
黒い悪魔の騎士。……先程の一件を思い出すと、思わずまたお腹が捩れそうになる。
シアナがにやにやしていると、エレはギロッと赤い眼を光らせて威嚇した。
「フンッ。いつにも増して阿呆面な事この上ないな」
「……失礼ね」
そもそもあんたがおかしいのがいけないんでしょうとは言えなかった。
そんなことを言ったら最期、ここで斬りかかられるかもしれない。馬をその場に止まらせる。
よしよし、と馬の頭をなでると、嬉しそうに尾を振った。
802 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 22:45:41 ID:yPGr/koB
「このような刻限に何処へ行く」
「え? 大学よ。ラーサーヘルク大学。刻印の事に詳しい人がいるから聞きに行くんだけど」
「……成る程な。自分の刻印に疑問を持ったか」
「そうよ。悪い?」
「別に。貴様がどんな疑問を持とうと俺には関係がないからな――ただし、刻印のこととなると話は別だ。俺も連れて行くがいい」
「うげええ。勘弁っ」
予想外の事に思わず本音が口から飛び出す。エレは――脅しを含めるように、歪んだ笑みを向けた。でも眼は笑っていない。
「貴様の部下の救出は骨が折れたな。……龍を倒したのは誰だか忘れていまい?」
「う……。わかったわよ、仕方ないわね」
「最初からそうしていればよいのだ」
そんな会話を交わしていると、後ろから聞きなれた声が大音量で迫ってくる。振り向く。
「隊長〜!! 外へ行かれるんですか! このイザーク、護衛にお供しますーー!!」
「はあ……またお荷物が増えたわ……」
ガックリと肩を落とすシアナ。結局三人で大学へ行く事になった。
803 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/09(月) 22:47:04 ID:yPGr/koB
ラーサーヘルク大学に到着した。
イザークがせわしなくあたりに視線を彷徨わせる。
それも無理もない。豪華で荘厳華麗な大学舎はまるで城のようなたたずまいである。
「えーっと。ここの研究棟って所にいるはずなんだけど、行ってみましょう」
三人はそろって馬から降りる。研究棟へ向かった。
シェスタ・バルテルムがいるという、研究室を目指す。
研究室は一階の隅にあった。……扉には子供が書いたような字で、でかでかと
しぇすたのお部屋。ノック厳守!! と書かれている。
コンコン。二回ノックをすると「はあーい」と可愛らしい声が中から聞こえた。扉が開く。
女の子が顔を出した。ふわふわの髪をした、小さな女の子だ。
ふりふりのメルヘンチックなドレスに身を包んで、不思議そうにシアナを見上げている。
「あ……貴方、お手伝いさんか何か? 私シアナって言うの。リジュって人の紹介でバルテルムさんって人を尋ねてきたんだけど、
中にいる?」
「シェスタは私ですけどお」
「え?! 貴方が?!」
リジュの話だと大学院生ということだったが、どう見ても見た目十〜十四才といったところだ。
いや、下手をしたらもっと幼いかも。身長はシアナの頭三つ分以上離れている。
大きな瞳がじっとシアナを映し出していた。
もしかしてからかわれているのだろうか……シアナがきょとんとしていると、シェスタは「入っていいですよ〜」と言い残して
部屋の中へ引っ込んでいった。
あまりの事態に顔を見合わせる三人。
「どうみてもちっちゃな女の子、ですね……」
「……フン。餓鬼じゃないか。あれでまともな話が出来るのか怪しいものだな」
「ちょっとエレ、それは言いすぎよ」
部屋の中から、「聞こえてるんですけど〜」というのんびりした声。
とりあえず、言われたとおり室内へ入る事にした。
804 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 22:49:43 ID:yPGr/koB
「リジュの知り合いかあ。リジュ元気にやってますか? あ、適当に座ってください」
紅茶を優雅にすすりながら、少女はちょこんと首をかしげる。
どうでもいいが、紅茶が入っているのがビーカーなのが激しく気になった。
しかも本人が腰掛けているのは、何段にも重ねられた本の山の上である。
座れといわれても、部屋の中は難しそうな本や資料で埋め尽くされており足の踏み場がない。
混沌とした研究室だ。仕方ないので立ったままで話をすることにする。
「ええ。いつも変わらず元気よ」
「そっかあ。よかったです、で、私に話ってなんですか?」
「……じゃああなたが本当に」
「はい。シェスタ・バルテルムですよ。さっきから言ってるのにい〜。
よくお姉さんみたいに疑う人がいますけど、シェスタは正真正銘院生です。飛び級で大学に入って、大学院まで進んだんですよ、えっへん」
胸を張って、誇らしげに自慢する少女。どうやら本当にこの人物がシェスタで間違いないらしい。
想像していたイメージとちょっと(かなり?)違ったが、リジュの推薦だ。知識は本物なのだろう。
早速本題に入る事にする。
「刻印の事を聞かせて欲しくて、ここまで来たの」
「……そうですか。お姉さん、刻印持ってる人?」
「分かるの?」
「はい、なんとなく。後ろの悪っぽい人もそうですよね?」
「わ、悪っぽい人って……」
エレはむすっと口を閉ざしたままだ。イザークはシアナとシェスタの会話を真面目に聞いている。
「いいですよ。シェスタに答えれることなら何でも聞いてください」
「本当?!」
「はい」
なんだ、リジュ、変わった人とか言っていたけど、案外素直でいい子じゃないの。
シアナがお礼を言おうとした時、シェスタはぐぐいっとシアナに近づいて「ただーし!!」と人差し指を天井に向けた。
805 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/09(月) 22:53:11 ID:yPGr/koB
「私、あだなつけるのが趣味なんです。……もし皆さんにあだなを付けて良いって言うなら、教えてあげてもいいですよ」
「交換条件ってこと? なんだ。それくらい自由にしていいわ」
シアナはシェスタの出した条件を、あっさり了承した。それがどんな事かも知らずに。くるくる回って喜ぶシェスタ。
「わーい!! 嬉しいです。皆嫌がるんですよ、シェスタのネーミングセンスは最悪だって。つけられるくらいなら死を選ぶって」
「えっ?」
嫌な予感がする。こういう時の直感は有無を言わさず当たるものである。騎士として鍛えられた直感か、それとも女の勘がそれを感じ取るのか。
シアナに生まれた「嫌な感じ」を全く察しないイザークは、「へえ〜じゃあ、僕につけてみてよ」などと自分を指差した。
シェスタはじいっとイザークを覗き込んで、うんうんと頷く。
「そうですね。貴方は、うーん。とても弱そうなので、へたれです。今日からへたれと名乗るといいですよ、嬉しいですか? このへたれ」
「…………」
なんと言う的を得たネーミングセンス。イザーク=へたれと瞬時に見破るとは。シアナは驚愕した。この少女、只者ではない。
いや、それはさておき、今更気付いたが、にこにこ笑いながらきつい一言をいうあたり、かなりの毒舌者である。
「そうですねー、そこの悪っぽい人は、赤い眼をしてるので、ウサギちゃんです!!」
「…………おい」
静かなる怒りを湧き立たせるエレ。
「ま、まあまあいいじゃない。所詮子供の言う事だし、大目に見てあげましょうよ」
シアナが必死にエレを宥めるのを無視し、今度は、シアナに矛先を向ける。
「お姉さんは、なんだかとっても強そうなので、ゴリラ女です!!」
「ふふふふ。調子に乗らないでね? 子供といえど容赦なく殴るわよ?」
シアナはエレに言った言葉も忘れて、青筋を立てた。
806 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 00:42:47 ID:l/UC7pNX
激しく怯えるシェスタ。ぷるぷると小動物のように身体を震わせて、シアナを見上げる。
「はやあ、怒らないで下さいっ!! ゴリラ女さん、ウサギちゃん!!」
「誰がゴリラ女よ!!」「誰がウサギだっ!!」
シェスタは二人があまりに凄まじい剣幕で迫ってきたので、拳を顔の前まであげて――涙声で「いじめないでください〜!!」と呟いた。
「ちょっと隊長、このままじゃあ、らちがあきませんよお。いい加減話を聞きましょうよ」
イザークに窘められてハッとするシアナ。シェスタはいつの間にか、イザークの後ろに身を隠している。
こほん、とひとつ咳払いをして、「そうね……じゃあ、刻印について聞かせて頂戴」と話を促した。
「ぷーん。シェスタ今ので怒っちゃいましたあ。シェスタの機嫌を損ねたらどうなるか思い知らせてあげます」
「……この糞餓鬼……。口を開かんと今すぐ斬って捨てるぞ」
「きゃーー!! 野蛮です!! うう、分かりましたです。百歩譲って聞かせてあげます、耳の穴かっぽじってよく聞くがいい愚民共、です!!」
変人とリジュが言っていたのはまさしくその通りだった。
全く、とんでもないおこちゃまだわ。下手に頭が良くて口の達者な子供はこれだから困る。シアナは心の中で溜息を吐いた。
「刻印っていうのは……そうですねえ。一言でいってしまえば、呪いです」
ずずずーっと紅茶をすするシェスタ。
「呪いでもあり、力でもあります。ただし、魔術的なものではありません。魔術は世界に干渉して力を解放するものですが、
刻印は違います。刻印は自身に干渉して力を解放するものです。特殊能力といった方が分かりやすいでしょうか。
早く走るとか、泳げるとか、そういったことと本来は変わらないんです。ただそれが強制的に力を発揮するので、
本来は出来ない人も出来るようになってしまう。例えるなら……泳げない人に無理やり泳げる機械をつけて、泳がせる。
刻印はその“泳げない人も強制的に泳がせる機械”なんです。
生まれた時からもっている人と、何かがきっかけで刻印を後天的に開花させる人がいますけど……後天的に持つ人なんて
殆ど事例にありません。私が知っているのは世界でも数名です。刻印を持つ人は先天的に持っている人が大半です」
807 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 00:43:58 ID:l/UC7pNX
「……」
「強制的に能力を植えつけて、かつ植えつけた能力とは別種の副次的な能力を生む。
うーんそうですね、例えば炎を指先から出す刻印があったとします。炎を出す力が源の能力ならば、
さらに生まれる能力は炎に対しての耐性。炎を所有者が扱うわけですからね、耐性がなければ火傷しちゃうでしょう?
だから、炎の刻印を持つ人は、炎に対しての耐性と、炎を生む力を持つわけですね。
そんな風にして、刻印の持つ一つの能力を軸にして、様々な力を生み出すのが刻印なんです。ここまではいいですか?」
「……まあなんとなくわかったような」
「じゃあ続けますよ。でも刻印の特徴はそれだけではなくて――必ずしもプラスの方向へ力が働くわけじゃないんですよね。
ただの人間の身に刻まれた刻印。その使用には必ず犠牲が伴います」
龍も言っていた。忌まわしき力を使うには、代償が必要であると。
「さっきもいいましたけど、本来できないことを刻印は強制的に行います。
だから、その分対価が必要となる。
表向き、刻印は便利ですが、それと同時に大きなリスクも生んでしまうんです。それは刻印によっても様々な形で現れるので、
どれがこう! とは言えませんが……良い面と悪い面があるってことは覚えておいてください」
シェスタは空になったビーカーをテーブルに置いた。
808 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 00:45:38 ID:l/UC7pNX
「……お姉さんの刻印は何の刻印なんですか?」
「私の刻印は、龍殺しの刻印よ」
「そう、ですか……珍しい刻印ですね。初めて聞きました、そちらのうさ……いえ、お兄さんは?」
うさぎといいそうになって慌てて言い直すシェスタ。エレは低い声で「悪魔の刻印」と呟いた。
「それも初めてです……どちらもレアな刻印だと思います。シェスタ四千種類の刻印を知ってますが、その中に含まれていません」
「そんなにあるの?」
「ええ。過去の資料にはそうあります。といっても今では持ってる人は殆どいないですけどね」
「……そう」
「私が教えてあげられることはこれくらいです。……それだけじゃちょっとシェスタみっともないので、二つの刻印について調べておきます」
「調べられるの? 見た事ないんでしょ?」
シェスタは自信満々にない胸を叩いた。
「任せてください!! まだ解読してない古文書漁って必ず探してみせます」
「……わかった。じゃあまた日を置いて改めるわ。今日は世話になったわね」
809 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 00:55:00 ID:l/UC7pNX
>>795 不覚にもちょっと笑ってしまった……!!
某トマト祭りとかはエレにしてみれば地獄ですね。
感想くれたところは力入れて書いたところなので嬉しい。感謝!!
では今日はこのへんでー
810 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 23:10:30 ID:l/UC7pNX
三人はそろって部屋を出ようとする。
「お姉さん」
ふいに真剣な声で呼び止められて振り向いた。
先程までの陽気さがひそめ、知性を感じさせる面立ちになったシェスタがそこにいた。
「……刻印、あまり使わない方がいいですよ」
「代償が必要って奴? ……それならとっくに」
貰っている。龍を狂わせ獲物として狙われる。それが龍を殺せる力の代償だ。
そう続けようとすると、シェスタはゆるゆると首を振った。長い髪が揺れる。
「違うんです。そういうことじゃ……ありません。刻印の力はとても強大なもの。特にお姉さんの刻印
と、お兄さんの刻印は……おそらく別格です。利用の仕方を考えば兵器として使えることだって出来るでしょう。大きな力というのは人を呼びます」
「フン、成る程な。そこの餓鬼は刻印の力を利用されないように、使用を控えろといっているのだろう」
無意識に刻印に触れていた。これは力。背負わされたもの。そして――呪い。
「はい。それに刻印にはまだまだ秘密が多いんです。だから、それがはっきりするまで刻印は使わないで下さい。
まあ、その全貌もシェスタが今後一生をかけて解明してみませますけどね」
無邪気にえへへと笑う少女。
「そう。わかった。忠告感謝するわ」
じゃあね、と言い残して部屋を出るシアナ。
三人が部屋を出て行ってしまうと、シェスタはうーんと背伸びをして、本を漁り始めた。
811 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 23:11:26 ID:l/UC7pNX
城に帰ってきた三人。エレは城門のあたりで一人さっさと別方向へ立ち去ってしまった。
「あ。先に行くなんて冷たいなあエレ隊長」
「まあ、ああいう奴だから。さて、私達も帰りましょうか……あれ?」
そこに、第三騎士隊の隊員が息を切らせながら駆けて来る。シアナを見つけると大声で名を呼んだ。
ただ事でない様子を感じ取り、馬から飛び降りる。
ここまで全力で走ってきた隊員は、苦しげに肩で息を繰り返し――その場で立ち止まった。
「どうしたの。そんなに急いで」
「な、中庭で……!! 中庭でファーガス隊長と、隊員が……!」
「……え?」
ファーガスの名前を聞いた途端、嫌な予感――が胸をざわりと駆け抜けた。
シアナは話を最後まで聞かずに、走り出した。
「た、隊長!! 自分も行きます!!」
イザークも後を追った。
812 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 23:12:06 ID:l/UC7pNX
ギイン、ギインッ!!
剣が火花を散らせて鳴る。
中庭では、ファーガスと第三騎士隊の隊員が剣闘を行っていた。
閃光のように繰り返される斬撃、疾風のようなそれに、騎士は必死に耐えていた。
「ほらほら!! 耐えていばかりじゃ勝てないですよ!? 反撃はしてこないんですか」
「ぐう……っ!!」
剣を一太刀凌いでも、次の攻撃がすぐにやってくる。かわし、守り、防ぐのが精一杯で、とても手が出るような状態ではなかった。
こちらは一刀、そして相手は二刀流。手数では圧倒的にあちらが勝っている。
それに加え、相手は実力もかけ離れた相手だった。例え下位ランクに属しているといえど、相手は隊長なのだ。
そう容易く、反撃の機会をくれるはずもない。一刀を目で追おうとすると、もう一刀からどうしても意識が外れる。
そこへもう一つの刃がすぐさまこちらを狙いに来る。二つの刃は生きているかのように踊っていた。
刃は双頭の蛇のように、若き騎士を狩りに来る。騎士は、蛇そこにを見た。対峙する男と、その卑劣な剣技に。
事の始まりはおよそ数十分前。騎士は一人黙々と訓練に励んでいた。
そこへ突然中庭に現れたファーガスが、「私が稽古をつけてあげましょう」と声を掛けたのである。
他所の隊長の申し出である。断るのは礼儀に反する。そう思った清廉な
騎士は何の疑いも持たず――それをありがたく受け取った。健気に礼まで述べながら。
それが卑怯な男の、八つ当たりだとも知らずに。
813 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 23:13:12 ID:l/UC7pNX
はい、と答えた途端、男は蛇のような眼でにやりと哂う。
シアナ部下の隊員だ。本人には当たれないが、憂さを晴らすにはちょうどいい相手だと、暗い悦びを噛み締める。
(……ヒヒヒ、馬鹿な野郎だ。頭の悪いところは上司そっくりだなあ、よし、少し遊んでやるか)
――そして今に至る。運が悪い事に、城には隊長が全員不在であった。総長も雑務で同じく不在。
咎めるもの一人いない、一方的な稽古は延々と繰り返されていた。
それを目撃した別の騎士が、シアナに知らせようと走ってきたというわけだ。
「ほらほらほら!! どうしたんですか!? 貝みたいに縮こまって!!」
ギイン、ガギインッ!!
ファーガスの左剣が風を薙ぐ。斬と断の嵐。
まともに視認していたら、目が眩みそうな応酬に、騎士は苦痛の色を滲ませる。
騎士の表情をを確認して、ファーガスはますます悦楽を感じる。
――そうだ、もっと苦しめ!! 俺がお前の上司に受けた辱めの分だけ、お前に苦痛を与えてやる!!
徐々にじりじりと追い詰められ、騎士はとうとう中庭の壁にまで追いやられた。
「私が稽古をつけてあげてるのに、それじゃあ期待はずれもいい所ですよ!!」
ここで行われているのは、最早稽古などではなかった。一方的な蹂躙。――それは、加虐である。
隊長と名を持つ者は、自分よりも弱い相手に対して剣を向け、遊んでいるのだ。
それは全て欺瞞と自己満足のため。隊員の為を思っての事などでは決してない。
ファーガスは歪な得意顔のまま、眼前の騎士を見た。
「ヒヒヒッ。大した事ないですね、隊員がこのような有様では――隊長の程度も知れるというものですよ」
クツクツと哂うファーガスに対し、
今まで沈黙していた騎士は、初めてそれを破り、反論した。
814 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 23:16:26 ID:l/UC7pNX
「取り消してください」
「……なんですって?」
騎士は、怯まない。もう一度ゆっくりと繰り返す。
「取り消してくださいとお願い申し上げた。いくらファーガス隊長であろうと、シアナ隊長を侮辱するならば、黙ってはいられません」
「お前……っ!! 誰に向かって口を聞いているのです!! 忠誠を誓った隊長に対してそんな口の聞き方――」
「私は貴方に忠誠を誓った覚えはない」
「何い」
騎士は、目の前の隊長を恐れもせず、凛と告げた。
「私がこの騎士隊で忠誠を誓ったのは三人のみ。それは我が隊の長、シアナ隊長だけだ。
我が魂も、我が命も、全ては隊長のためにある。貴方に譲る忠誠も魂も私にはない」
勇ましく言ってのけた騎士は隊長に何処か似ていた。……いくら虐げても、抗ってくる瞳。
それが気に食わない。素直に敗北を認めればいいものを。素直に秘密をもらせばいいものを。
夢想だと? ふざけるな!! 女の癖に女の癖に俺よりも上のランクにのさばりやがって。
お前にそんな資格はないんだ。元々そこのランクは俺が入るはずだったんだよ!!
それを――
ギリッ、と歯軋りをしてファーガスは目の前の騎士をシアナと重ねる。
生意気な視線までそっくりだ。
……残像が合わさるように、目の前はシアナと化した。ファーガスにしか見えない、幻。
ああ、なんて可愛くない可愛くない可愛くない憎らしくて殺したくなる!!
815 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 23:24:37 ID:l/UC7pNX
うわー!!誤字だらけですみません……↑の訂正を投下します。
「取り消してください」
「……なんですって?」
騎士は、怯まない。もう一度ゆっくりと繰り返す。
「取り消してくださいとお願い申し上げた。いくらファーガス隊長であろうと、シアナ隊長を侮辱するならば、黙ってはいられません」
「お前……っ!! 誰に向かって口を聞いているのです!! 忠誠を誓った隊長に対してそんな口の聞き方――」
「私は貴方に忠誠を誓った覚えはない」
「何い」
騎士は、目の前の隊長を恐れもせず、凛と告げた。
「私がこの騎士隊で忠誠を誓ったのは一人のみ。それは我が隊の長、シアナ隊長だけだ。
我が魂も、我が命も、全ては隊長のためにある。貴方に譲る忠誠も魂も私にはない」
勇ましく言ってのけた騎士は隊長に何処か似ていた。……いくら虐げても、抗ってくる瞳。
それが気に食わない。素直に敗北を認めればいいものを。素直に秘密をもらせばいいものを。
夢想だと? ふざけるな!! 女の癖に女の癖に俺よりも上のランクにのさばりやがって。
お前にそんな資格はないんだ。元々そこのランクは俺が入るはずだったんだよ!!
それを――
ギリッ、と歯軋りをしてファーガスは目の前の騎士をシアナと重ねる。
生意気な視線までそっくりだ。
……残像が合わさるように、目の前はシアナと化した。ファーガスにしか見えない、幻。
ああ、なんて可愛くない可愛くない可愛くない憎らしくて殺したくなる!!
816 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 23:49:20 ID:l/UC7pNX
剣を、殺意を込めて――騎士へと打ち下ろす!!
それは、横から出現した太刀に払われた。空へと回転して跳んでいく剣。
くるくると回り、地面に転がる。
「……ファーガス。私の部下を苛め抜いた言い分を聞かせてもらいましょうか。話次第によってはタダじゃおかないわよ」
「シアナ隊長……」
私服姿のまま、剣を手向ける。
ファーガスは途端に腰を低くして、へらへらと媚びへつらった表情になった。
「い、いやですねえ。私はただ単純に、稽古をつけてあげたんですよ。ねえ、そうですよね? 君」
視線を向けられた騎士は、今までの酷い仕打ちなどを述べる事なく「……ええ」とただ一言だけ発した。
隊長といざこざを起こしては、隊の名誉に関わる。それは即ちシアナの名誉にも関わる事だ。……だから、頷いたのだ。
「というわけですよ。分かっていただけましたか?」
「……。私は納得したわけじゃないわ、もし許されるなら今すぐ貴方の額をグーで殴りたいくらいよ」
「おやおや。やばんなのはいけませんね。……そうですねえ。私も今のは少しやりすぎたかなあと反省しているんですよ」
真実味もこれっぽっちも感じさせない釈明が、耳をよぎる。シアナはそれを厳しく切り捨てた。
「誠意のない弁明は聞きたくない。それで?」
「厳しいですねえ。じゃあ本題です。……演習をしましょう」
「演習?」
「そうです。私と貴方で、戦闘の演習を行うんです。どうですか? それなら合法的に、貴方の望む試合が出来るでしょう?」
817 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/10(火) 23:54:15 ID:l/UC7pNX
男は誘うように目配せをした。シアナは逡巡する。蛇の甘言か。
卑劣な男の提案だ。何もないわけがない……何かあることは間違いない。
だが、部下を虐げられて見過ごせるわけもない。
罠にはめようというなら、あえてはまってあげる。乗せようというのなら、乗ってやるわ。
でも、私を乗せた以上、無傷で済むとは思わない事ね――
「分かったわ。それで、日程はいつ?」
「そうですね。準備もありますし、明後日の昼頃はいかがでしょう」
「平気よ。一日空けとくから忘れないでよね」
「勿論ですよ。……それでは私はこれで」
イザークは逃げるようにそそくさと中庭から姿を消した。
「隊長……本当にやるんですか」
騎士とイザークがシアナを心配そうに見る。大丈夫だと頷いて、シアナは自室へ向かった。
818 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/12(木) 12:21:32 ID:mpr31kA/
新キャラがどんどん出てきてますねー
ていうか龍との一戦以来、刻印がどんどん不吉な感じに;
変な隊長とかいるしシアナ隊長ガンガレ
819 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 15:11:15 ID:5/aJM9eT
自室へ戻ってきたシアナは鎧を脱ぎ、私服へ着替える。
騎士の身なりから、歳相応の女性の姿へと変わる。
この格好で街中を歩けば、彼女を知らないものはまず騎士だとは思わないだろう。
さらに、彼女がまさか龍殺しの騎士と呼ばれる者だとは夢にも思うまい。
「……ふぅ」
乱れた髪を梳かし、顔を洗う。いくら荒事に従事しているとはいえ、外見まで疎かになるのは嫌だった。
いや、荒事に従事しているからこそ、せめて見た目だけはきちんとしていなければ。
服装の乱れは気の乱れという。いくら逼迫した状況だろうが、何時も通りを心がけるのがシアナの信条だ。
寝台の上に腰を下ろす。
重い装備から開放され、束の間の休息を得る。
……本当に、束の間だ。休むことさえままならない、一時の猶予。
演習は明後日。リジュには完治するまで剣をふるうのは禁じられたが――
820 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 15:12:50 ID:5/aJM9eT
そうも言ってられない事態になってしまった。挑発と分かっていながら、奴の誘いに乗ったのだ。今更後に引けるわけがない。
あの場を収めるには、後日総長へ事態を報告し、処罰を求めるとか、手立てがあったはずなのだ。他の方法などいくらでもあった。
だがそれを選ばず、自分自身で決着を着けることを選んだのは、虐げられた騎士の表情を見たからだ。
彼は最後まで、文句ひとつ言わずに、ファーガスの仕打ちに甘んじて耐えた。
それを見て、尚、奴をのさばらせておく理由などない。おそらく放っておけばまた同じ事が繰り返される。
それを防ぐ手段はひとつ。……隊長同士で決着を着けることである。
完膚なきまでに叩き伏せ、もう二度と隊員に手出しはしないと約束させる。
あのような男に分からせるには、言葉でいくらいっても無駄だ。体で分からせなければ。
ファーガスの演習が言葉通りのものではないことは十分承知している。
何をしてくる気かは、分からない。だが、――ただ剣と剣で討ち合い、終わりなどという生易しいものではないことは明白だった。
……自分は、怒りのあまり感情に任せて、ファーガスを打倒しようとしているのだろうか?
冷静な判断力を失っているのではないか、と自身に問いかける。
忘れるな。お前は隊長だ。一隊の隊長として、果たしてこれが正しい行為なのか。
「…………」
分からない。
正否の答えは出ない。
ならば自分の心のあるがままに進むだけだ。ファーガスと対決する。もう決めた。
シアナは立ち上がり、剣を持って中庭へ向かう。……何日も休んでいては体が鈍る。稽古をするつもりだった。
剣を振る。長い髪を揺らして。
821 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 15:16:15 ID:5/aJM9eT
薄闇に覆われた部屋。石壁に添えられた蝋燭の灯りだけが、僅かに周囲を照らす。
中央には円卓。だが座に人はおらず、閑散としている。
そこに二つの影があった。
傅いた男と、傅かれる男。片方の男は唐突に口を開いた。
「……それで。首尾の方はどうだ?」
「へへ。それが上々でございます。ちょっとばかり突付いてやったらすぐ乗ってきやがりましたよ。
見ててくださいよ。あいつの正体がはっきりするのも時間の内ですから」
床に膝を付けた男は、舌舐めずりをしながらニヤニヤと笑う。
「そうか。それは何よりだ。上には私が報告しておく。このまま調査を続けてくれ」
「はい、そのつもりですよ。では私はこれで――」
男は立ち上がり、一礼すると出口に向かって歩き出した。
部屋に残された男は、彼が出て行ったのを確認すると、ぼそり、と呟く。
「……龍殺しの女、か……さて、しばらくは様子見だな」
822 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 15:18:47 ID:5/aJM9eT
中庭で黙々と剣を振り修練に努めていると、シアナに声を掛ける者があった。
「おい、龍殺し」
振り向かずとも誰だか分かる。エレだ。シアナは手を動かしたまま答える。
いくつもある構えを全て行い、動作確認をする。鍛錬する時は必ずここから入るのだ。
「何? 悪いけど、今アンタと言い合ってる暇はないの。忙しいからあっち行って」
「――蛇と戦うらしいな」
蛇とはファーガスの事だろう。ファーガスの二つ名は“双頭の蛇”だ。
双剣を使う男。そして蛇のように陰湿な気質の男。
どちらとも受け取れる名には暗に皮肉じみた響きが感じ取れる。
「蛇ってファーガスの事? だったらそうだけどそれが何よ」
「フン。また何か勘違いをしているようなのでな。あいつは所詮小物に過ぎぬが、お前が思っている以上程度には強いぞ。まあ俺には及ばないが」
「……」
わざわざ現れて何を言うかと思えば、自慢か。エレの尊大さには恐れ入る。
シアナは剣を止めて振り返った。
「あんたね、そんな事を言う為にわざわざ――」
そこへ、エレの剣が降り注ぐ。シアナは殆ど反射的にそれを受けて見せた。
弾け合う太刀。飛び退いて、距離を取る。
「ほう。怪我を負ったとはいえ腕は鈍っていないようだな」
「……いきなり切り掛かった無礼は許してあげる。だからとっとと消えなさい」
「フッ。この俺が一太刀交わした所で満足するわけがあるまい」
「どこまでも不遜な男ねアンタって!! いいわ! やってやるわよ!!」
823 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 15:22:13 ID:5/aJM9eT
ギイン!!ギインッ!!
エレの扱う剣は細身。にも関わらず、
シアナの振るう大太刀を流麗な剣さばきで流してみせる。
「ハッ!! そのようなものか? まだまだだろう、本気を出せよ龍殺し!!」
「うるさい――!! はあっ!!」
巧の領域まで踏み込んだ騎士の剣闘は、無駄な動きが何一つない。
流れるよりももっと滑らかに、風のような速度で打ち合いは行われた。
中庭に二つの剣と騎士が躍る。剣が踊る。
空に一番星が瞬くまで、それは続けられた。
「……ふん。もう宵か。今日の所はこれで終いだ」
「何を、勝手な、ことばかり」
肩で息を切らしながら、シアナはエレを見上げた。
漆黒にエレの赤眼が浮かんでいる。一時だけシアナを映すと、
くるりとシアナに背を向け、エレは立ち去った。
「何よ、あいつ……」
まさか訓練するのを手伝ってくれたんだろうか。
「まさかね……」
夜風に身を任せながら、いつまでもエレが去った方角を眺めていた。
824 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 19:59:57 ID:5/aJM9eT
ファーガスとの約束の日を迎えた。シアナは指定された場所へ向かう。
そこは闘技場だった。アンフィテアトルムと呼ばれる戦いの場。
古代ではそこで、奴隷同士を戦わせ、多くの観客達がそれを楽しんだと言う。
娯楽の少ない時代のことだ。随分賑わい、闘技場は盛況だったと伝えられている。だが今はその面影さえない。
ここが使用されなくなって、多くの年月が経過した。
周囲を囲う円形の建物は殆ど崩れかけており、壁にはいくつもの亀裂が走っている。
手入れをするものがいない闘技場は、緩やかな崩壊へと進んでいた。
しかし、一対一の戦いを行う上でこれほどまでに相応しい場所は他にないだろう。
かつて多くの人間がここで戦い、ここで生き、ここで死んだ。
かの地で今日、二人の騎士が戦うのだ。名目上は演習。そして実際は、決着を着けるために。
寂れた闘技場の舞台の中に足を踏み入れる。
シアナは目を瞠った。観客席には大勢の騎士の姿が見える。第三騎士隊、そしてファーガスの第二十四騎士隊。
騎士だけではなく、一般の人間の姿もちらほらと見えた。
一般といっても、見るからに高級そうな衣装を身に纏った貴族であったが。
ざわざわと群集の話し声が響く。今か今かと戦いが始まるのを、あらかさまに楽しみにしている者達もいた。
手にはサンドイッチまで持って、くちゃくちゃと咀嚼しながら眺めている。これでは見世物ではないかとシアナは憤慨する。
「これはどういうこと、私はサーカスの動物になったつもりはないわ。こんな風に晒し者にされるのはごめんよ」
ファーガスの姿を認め、露骨に不機嫌さを露わにするシアナ。
手を重ねて、へこへこと頭を下げながら、彼はこちらに歩み寄る。
825 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 20:00:45 ID:5/aJM9eT
「いえいえ。ちょっとした演出ですよ。なにせ貴方のような偉大な騎士の演習ですからねえ。
多くの者に観戦してもらった方が、気合が入るでしょう? 特に貴族様は娯楽に飢えていますのでね、快く観戦を引き受けてくれました」
「……悪趣味」
「ヒヒヒ。まあそう言わないで下さいよ。貴方の隊もちゃんと呼んだんですから。全員貴方の勝利を待ち望んでいるんですよ」
そう言うと、ファーガスはくるっと踵を返してシアナと反対方向へ歩き出す。
「ちょっと、待ちなさい!! どこにいくつもり?!」
「準備ですよ。貴方との戦いのね」
「何……」
言うなり、がしゃん!! とけたたましい音。
シアナの入ってきた入り口が、天井から降ってきた柵によって封鎖された。
ファーガスの歩いていった入り口も同じように塞がれる。彼は既に柵の向こう。
黒い鉄柵を挟んで、ファーガスの満面の笑みが見える。
826 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 20:02:52 ID:5/aJM9eT
「ファーガス、これはどういうこと……!!」
「いえいえ。大したことでは。これより貴方は龍と戦ってもらいます」
「え……!?」
唖然とするシアナを満足そうに眺め回す双頭の蛇。
まだ事態が完全に飲み込めていないシアナを叩きのめす一言を与える。
「貴方はここで、龍と戦うんですよ。古来の闘剣士のようにね。まあ闘剣士は虎などの猛獣がいい所だったようですけれど」
「……っ!! 約束を違える気?!」
乾いた笑いが空空しくシアナに向けられた。反して眼差しは冷たさを持ってシアナを捉える。
「私は何も貴方と直接対決するとは一言も申し上げておりませんよ。約束を違えたなどと言われるのは心外ですね。
私の代わりに龍に戦ってもらうだけです。いやはや、連れてくるの苦労したんですよ。何せ凶暴な龍ですから。
第三騎士隊の誉れ高き龍殺しの騎士が、私達にいかに龍を殺すのかということを見せてくれる。いわば龍殺しの演習です。いい演習でしょう?
……なにせ私には夢想することが精一杯ですからねえ。貴方様に手本を見せてもらわなくては」
シアナは柵の前まで走り寄った。無駄だと分かっていながら、吼える。
「ま、待ちなさい!!」
827 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 20:04:56 ID:5/aJM9eT
そう言われて待つはずがない。ようやく気に食わない女を計略にはめれたのだ。
そのまま柵の向こうにある出入り口から姿を消そうとするファーガス。その横顔は卑劣な狂喜を隠し切れずにいた。
さあどうだ。龍殺しの騎士。お前には似合いの、素晴らしい舞台じゃないか。
うまく戦ってくれよ。そして、お前の秘密を皆の前でちゃあんと晒してくれ。
――ちゃあんと、な。
「く……っ」
まさか、これが狙いだったのか。自分を龍と戦わせることが。
先日の様子を考えるとおそらくは、龍殺しの秘密が狙いなのだろう。
……ぬかった。エレにも言い含められていたではないか。あいつは、私が思っている以上に強いと。
それは剣の実力だけではなく、卑しい策謀も含めての事。
奴は騎士としては失格だ。しかし策士家としては悔しいが自分より上なことを認めざるを得ない。
これが、ファーガスの罠か。騎士ではなく軍師にでもなればいいものを。
……逃げ場は塞がれている。もう残された選択肢はひとつしかない。
向かってくる龍を全て倒し、ファーガスをこらしめる。
それしかない。
828 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 20:07:26 ID:5/aJM9eT
シアナは息を整える。抜刀し、標的を待つ。
ガラガラと何かを巻き上げる音が場内に轟く。
昇降機が稼動している音である。闘技場にはそんな設備も備わっていた。
元は猛獣や人間を乗せて昇降していた人力の昇降機である。
今は昇降台に乗せられた龍が、地下から上がってきている。音がぴたりと止む。
シアナの刻印が熱を持つ。じりじりと炎を持ったように熱い。……龍に反応しているのだ。
――来る。
柵があがる。ざわりと全身に鳥肌が走る。赤い鱗を持つ真紅の龍。龍が戦いの場へ足を踏み入れた。
観衆達もまさか龍が現れるとは思っていなかったのだろう。ざわめきと、どよめきが広がる。
「おい!! あれは龍じゃないか!!」
「まさか龍と戦うっていうのか……?」
「大丈夫なのかよ、おい」
「お前知らないのか? なんせ龍殺しの第三隊長だぜ。負けるわけがないだろ」
829 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 20:09:55 ID:5/aJM9eT
それぞれが別々の思いでシアナを注視する。
そこに、イザークの姿もあった。
はらはらしながら、祈るようにシアナを見守る。
「シアナ隊長……頑張ってください……っ」
「隊長……」
横にはイザークに虐げられた騎士もいる。
龍とシアナが対峙しあう。先に動いたのは龍だった。巨翼を広げながら、シアナに突っ込む!!
バギインッ!!
龍の爪が食い込んで、砂場を無残に破壊する。
抉れた舞台は砂煙を撒き散らした。一瞬、両者の視界が遮られる。
その合間を縫い、シアナは龍の懐に潜りこむ。砂で周囲がまともに見えなくとも、相手は自分よりも数段大きいのだ。
先程見えた姿と、砂の中に蠢く影があれば、大体の位置の予測は可能。
愚鈍な仕草でシアナを探す龍。
「……遅い」
この間戦った龍に比べれば、お前は弱すぎる。
砂と埃が舞い散る中、騎士は砂地を踏みしめて、跳ぶ。
喉を狙い、剣先を思い切り突き立てた。
龍は急に反撃してきた騎士に為すすべもなく、一太刀で命を奪われた。
ズウン……
龍の屍躯が大きな地響きを立てて崩れ砂に埋没する。
あまりにも鮮やかな戦いに、全員が言葉を奪われた。何も言えず、目の前の騎士を見るばかり。
だが、シアナが龍の死体から剣を抜くと、現実を思い出したように
一様に驚愕の嘆息を吐き出した。
そして、後に辺りを包み込む熱狂的な歓声が闘技場を揺らす。
830 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 23:32:13 ID:5/aJM9eT
「……凄い」
イザークはごくりと唾を飲み込んだ。いつもは間近で見ている戦い。それなのに、舞台と観客席を通して見ると
こんなにも違って見えるものなのか。勇ましく、雄雄しい。
倒したと思った瞬間、場内に大音量で鳴り響く声があった。
「次の相手は〜!! 数の多い、可愛らしい小型龍でございます!!
小さな体付きとは真逆に、性格は獰猛!! 龍殺しの騎士が食べられぬように皆さんどうか応援をお願いします!」
ファーガスの声だ。どこからか音声を流しているらしい。
悪意のこもった煽動に、肩を小さく震わせるシアナ。
駄目だ。今は怒るな。落ち着け。怒りは冷静さを奪う。……ただ目の前の敵を打ち倒すことだけを考えろ。
柵が再び上げられ、新しい龍が姿を見せる。小型な龍が何匹も舞台へ躍り出た。
シアナ隊長、刻印を使わないつもりなんだろうか。
先程からシアナは刻印を使わず、龍と闘っている。
剣が龍を次々に打擲していく。一閃のうちに薙ぎ払い、龍殺しの剣が断末を奉ずる。
831 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 23:34:07 ID:5/aJM9eT
剣が龍を次々に打擲していく。一閃のうちに薙ぎ払い、龍殺しの剣が断末を奉ずる。
イザークはシアナに攻撃が当たりそうになるたびに小さく声をあげていた。
「隊長……」
シェスタは刻印をあまり使わない方がいいとシアナに念を押した。
それも、刻印を使う心に歯止めを掛けている。しかし、刻印を使わない一番の理由は、自分を陥れた男に刻印を暴露しない為だ。
臨むまま踊ってやった。ならば、そこから先は好きにさせてたまるものか。
刻印は使わずに、全ての龍を倒してやる。そしてお前をこの場に引きずり出して、決着を着けてやる!!
「……このままだと、あれを使わなくても、何とかなりそう……かな」
イザークが希望的観測を口にした時、隣に腰を下ろした者がそれを鼻で笑った。
「……フン。つくづく貴様は稚拙だな」
「イザーク隊長……!」
832 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 23:34:55 ID:5/aJM9eT
イザークの目は、闘技場の中心で殺戮を繰り返すシアナに注がれている。
龍とシアナの戦いを一瞥し、――さらに言った。
「あのままだと、奴は倒される」
「えっ……? な、何で。どうしてですか」
「奴が何故龍を殺せるのか考えろ。それは龍殺しの刻印を保持しているからだ。おそらくあの刻印は持っているだけで
龍に対して優勢の効果を発揮するのだろう。だが真の力を引きずり出すには刻印の力を解放するしかない」
「……じゃ、じゃあ」
「今は小物故、勝ち進んでいるが大物が現れたなら奴は追い込まれる。平時ならともかく
あの女は今、手負いだ。刻印を使わなければ勝機はないが、――肝心の本人に刻印を使う気がない、勝敗は見えている」
「そんな……っ!!」
エレは事態を至極愉しむようにふんぞり返り、腕を組んだ。
「まあここで負けるようでは俺の宿敵としての資格はないな。……それまでの実力というわけだ」
「……!! エ、エレ隊長はシアナ隊長が心配じゃないんですか!? 下手をしたら死んじゃうかもしれないんですよ!!」
「それがどうした。死ぬ可能性ならいつもと変わらん。貴様は戦場に出る度、死の危険性に考えを巡らすのか」
「……」
巡らします、と言ったら何をされるのか分からないので黙っておいた。
「シアナ隊長……」
833 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 23:36:48 ID:5/aJM9eT
何も出来ない。見守るだけしかない自分が悔しい。
ただ今は祈るしかなくて、この状況が辛くて苦しい。
守ると誓った人が目の前で、戦っているのに、それを見届けることしか出来ないなんて――
何て、無力なんだろう。と、唇を噛み締めた。
それでも自分は、この戦いを見守るしかないのだ。
龍との戦いは、続けられる。一戦を追うごとに龍は強くなっていった。
シアナは見るからに疲弊していった。
肩の痛みがぶり返してきたのだろう。時折、痛みに表情を歪ませながらも、しかし刻印を使うことなく闘っている。
それを忌々しげに観察するのは双頭の蛇だ。
龍を出せば、シアナが龍を打倒できる秘密を知れると思ったのに、中々本性を現そうとしない。
しぶとい女だ。だが、まだこちらには龍が山のようにいる。
お前が耐えることが出来るのも、もう少しだ。必ずお前の秘密を暴いてやる!!
自身は安全な位置から、戦いを観戦していた。
観客席から飛ぶ歓声は全てシアナに向けられる。
龍と人との滅多に見られない一戦に、人々は燃える。場内は異様な熱気が渦を巻いていた。
無責任な野次がシアナへと飛ぶ。
「やれーー!!」
「殺せえええ!!」
「何ぼさっとしてるんだ!! そこだっ!」
「殺せ!!」
「倒せーーーーー!!!!!」
じり、とシアナは砂を足先で掻く。
大勢の奴隷、そして獣の血を吸ってきた砂だ。……ここで闘った者達も、このような気分だったのだろうか。
みせしめのように闘わせられて、声援まがいの暴言が投げかけられる。
834 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 23:38:03 ID:5/aJM9eT
「中々……嫌な気分ね」
ふう、と呼気を吐く。
何十匹目になるだろうか。数えるのも億劫になってきた。
次の龍が現れた。シアナは構えを崩さず、それを迎える。
殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!
殺せ!! 殺せ!! 殺せ!!
耳にこだまする人々の喚声。楽しそうに、私が龍と闘うのを傍観している。
何故だろう。酷く悲しかった。龍と闘うのには慣れているのに。
利用されているだけの龍を打ち倒し、
命のやり取りを玩具のように観察されるのは、……悲しかった。
龍を薙ぎ払いながら、私は、震えていた。
怒っていたのではない。
私は多分、誰にも気づかれないように、泣いていた。
声を殺し、涙を何処かに埋めて、音も立てずに。
必死に戦っていたから、気付いた人は多分、いないだろう。私は苦しいのを隠すのがとても上手いのだ。
喉に何かが詰まったような苦しさが胸をせりあがる。
闘わなくてはいけないんだ。そうしなければ私は死ぬんだから。
でもどうして龍と闘わなくてはいけないのだろう。
……簡単だ。龍が私を狙うからだ。だから殺さなくてはいけない。それだけのこと。
生きて。生きて生きて生きて、どんなに辛くても最期まで生きようと、私は決めた。
それだけの事が、どうしてこんなに、苦しくて痛い。
ああ、そうか、と思う。
今……気付いた。
悲しかったのは今に限った事ではなかったんだ。
私は、気付かないふりをしていただけだった。
だって私は龍と闘う時、同時にいつも、この悲しみと闘っていたのだから。
835 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/12(木) 23:51:23 ID:5/aJM9eT
>>818 多分これから
どんどん鬱ポイ展開になっていくと思います…
そして新キャラはまだ出てくる予定ですのでお楽しみにー。
感想さんくすでした!!
それでは今日はこのへんでー
見ている人がるか分かりませんが おやすみなさい!
836 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/14(土) 00:50:58 ID:/q3jHT4E
剣を突き立てる。肉を裂く感触。血が迸る。赤い花が砂塵の上に咲く。
戦いの場に散らばるのは幾多の死骸。
遠くで声がする。
ねえ、誰が殺したの?
――私が、やった。私が殺した。私が私が私が私が!!!!
全身は千切れそうなくらいに軋んでいるのに、
剣は血に濡れて光さえ透かさないのに、
何度殺しても、終わらないのはどうして?
ザシュウ!!ブシュウ!!
龍殺しの騎士は手を休めない。鬼神の如き早業で、龍を屠り殺していく。
まるで何かに取り憑かれているような狂気を持って敵を滅殺する。
積み上げられた屍は積み木のよう。振るわれる刃は処刑道具のよう。
何戦にも渡る戦いを目の前で繰り広げられ、最初シアナに歓声を送っていた者も、
今はシアナに対して「勇ましさ」や「華麗さ」を感じる事はなくなっていた。
837 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/14(土) 00:51:37 ID:/q3jHT4E
彼らは恐ろしくなったのだ。真っ赤に鎧を染めて、無表情で闘い続ける騎士が――
まるで、人の心を持っていないのではないかと思った。
「見ろよあれ……一体、何匹殺したんだろうな」
「うわ……エグう」
死臭が漂うアンフィテアトルム。
観客の好奇と畏怖の眼差しが、シアナを捉える。
何気なく、観客の男の視線に気付いたシアナが顔を上げた。
男は、カタカタと歯を震わせながら言う。
「……ば、化け物」
それを、聞いた龍殺しの騎士は何も言わずに、男を見つめる。
化け物と呼ばれるのは慣れている。だから今更こんなことで、傷ついたりするものか。
この身は龍殺し。普通に甘んじていることなど、とうに捨てた。
そう、大切なものを目の前で失ったあの瞬間から。
「……闘わないと……」
くるりと身を翻し、次に這入ってきた龍との戦いに移行した。
838 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/14(土) 00:53:44 ID:/q3jHT4E
「闘わないと、いけないんだから……」
呪いのように呟きながら、龍を迎撃する。飛び掛ってきた龍の口先を、剣で受ける。ふらりと足がぐらついた。
体が思うように動いてくれない。刻印を使わずにここまで耐えた報いが、ここにきてシアナに牙を剥いている。
剣と牙との押し合いに、肩が悲鳴をあげる。一瞬の隙に、龍の拳が、シアナを襲った。
「ぐぅ……あ!!」
ゴキン、と。骨が嫌な音を立てる。巨石が落下してきたような衝撃に、目の目が真っ白になった。
地面に叩きつけられて、圧迫される。
全てがコマ送りのように見えた。
龍が息を吸う。周囲の空気を吸引していく。見た事のある動作。それが龍の攻撃であるブレスだと分かっているのに身体が動かない。
このままだと死ぬと分かっているのに、身体が動いてくれない。
(もしかして骨、いったかな……、肩にもう、まるきり感覚がない……)
聞き覚えのある声が、何か言っている。
イザークが大声で叫んでいた。
「隊長おおおーーーっ!! 避けてくださいいい!! お願いです!!」
闘ってくださいと、こちらを見つめながら、必死に叫んでいた。
消えかけていた闘志が、引き戻される。
……闘わないと、生きる、生きる生きる生きる生きる、ここじゃあまだ死ねない――!!
それを見た瞬間、内側から箍が外れたように、刻印の力が開放された。
839 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/14(土) 01:04:32 ID:/q3jHT4E
長々と続いてしまい申し訳ない…
今日はこのへんで失礼します。
840 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/14(土) 12:46:11 ID:ibkY/rUT
>私は苦しいのを隠すのがとても上手いのだ。
シアナたん・゚・(ノД`;)・゚・健気
でもブラックなシアナたんもカッコヨス
個人的には鬱展開wktk
毎日はネットできないけど楽しみにしてるよーガンバレー
841 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/15(日) 01:57:18 ID:38tgJF0p
>>840 うわああ(ノд。)゜。
ありがとう〜そこまで言ってくれて感無量だ…
鬱展開大丈夫なようでよかった!
長くなったけど最後まで頑張るよ!感謝感謝!
ではでは規制に巻き込まれたので携帯から投下します!
842 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/15(日) 01:58:50 ID:38tgJF0p
光が爆発する。風が巻き起こる。
刀身に刻印の力が伝わっていくのが分かる。
腕、血管、神経を伝い、電気のように流れていく。それを留めるのは銀の大剣だ。
紫電を放つ剣先は、ただ美しく。須臾の間を縫って龍に向けられた。
剣は雷、そして炎。龍にとっては、最も凶悪な光にして災厄。
「絶対に龍を殺す」刻印の力が凝縮された一撃だ。
これをくらって、尚生きていられる龍などありえるはずがない。
獲物を狩るにはただ一振りで事足りる。
龍殺しの騎士の剣は圧倒的な火力を持って、敵を殲滅する――!!
「……あれは……。成る程、あれがあの女の秘密というわけですか」
ようやく掴んだ。龍殺しの女騎士の強さの秘密、それを掴んだ!!!
843 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/15(日) 02:01:10 ID:38tgJF0p
あの光が、力の源に違いない。あれは魔術ではないな。
呪文を詠唱しているそぶりもなかったし、あいつは魔術を使えないはずだ。
だから違う。
……そう、あれはおそらく刻印だ。
刻印は呪われた者が持つという。忌まわしき悪夢の力。この世にあってはならぬとされる禁忌の能力。
その為、刻印を持つ人間をそれだけで嫌悪する者も少なくない。ファーガスもその一人だった。
そうか、そうか。刻印だったのか。どうりであの女が気に食わないわけだ。
刻印持ちだったとは。……あの気に食わない二番隊の頭と同様に、龍殺しも刻印を持っていたというわけだ。
「刻印なんて不吉ですねえ、気色の悪い文様です、ふふ、でもまあ。今は感謝しておきましょう。これで手土産が出来ましたからね」
ファーガスは達成感と後ろ暗い喜びで叫びだしたい気分を抑え、かろうじて息を吐き出した。
目の前でシアナが最後の龍を打ち倒したのを見届けると、そそくさと出口を目指して走り出した。
844 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/15(日) 02:03:50 ID:38tgJF0p
龍の巨体が、崩れる。
誰も何も言わずに、闘技場の舞台を眺めていた。その為、戦いの場は怖い程に静かだった。
光はシアナの中に埋もれるようにして収束していき、じきに消えた。
シアナは膝をつく。剣を地面に突き刺して、手をかける。
そうして一度きりハア、と安堵の溜息を吐き出すと、
ぐらりと身体が傾いて、あっという間もなく地に倒れこんだ。
「隊長!!」
イザークは咄嗟に観客席から身を乗り出す。一番前の席まで走っていき、目を凝らす。
多くの龍と戦い、殺してきたにしては、あまりにも弱弱しい倒れ方だった。
立派なマントは所々破れ見る影もない。
肩から、腕から、額から。あらゆる部分から血を流して、龍殺しの騎士は気絶した。
決着は着いた。シアナはファーガスと闘うことなく龍を全滅させ、見返りに刻印の秘密を奪われた。
――それは、勝利と果たしていえるものなのか。
愚か者め、とエレが呟く。それは目の前のシアナに向けられているというよりも、むしろ自分に向けられたもののようであった。
845 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/15(日) 02:05:25 ID:38tgJF0p
シアナはぴくりとも動かない。
見ていられずに、イザークはそのまま舞台に飛び降りようとする。
高さに身がすくんだが、それくらいなんだ、隊長が目の前で倒れてるんだぞと気を奮い立たせた。
柵を飛び越えて、地上に落下する。じいんと足が痺れるのを方って、イザークはシアナの元へ走った。
シアナを抱き上げると、揺り起こして声を掛ける。
「隊長、シアナ隊長!! 大丈夫ですか!! 返事して下さい!! ……あ」
腹部から肩にかけてぱっくりと。鎧にヒビが入っていた。これで、あんな立ち回りを演じてみせたのか。
ファーガス隊長と、シアナ隊長が戦うと聞かされていたのに。
どうして、隊長が龍と闘わないといけないんだ。……こんなボロボロになってまで。
……止めるべきだった。隊長は怪我をしていたのに。
無理やりにでも、ここに入っていって、こんなことはやめさせるべきだったんだ。
それか、例え猫の手ほどの働きしか出来なくても、加勢すればよかった。決めたじゃないか。
隊長を守れるようになるって、決めたじゃないか。
どうして、自分は、あの人が強いからなんていう理由だけで傍観してしまったんだろう。
この身体ひとつで闘い続けて。
隊長は何も悪くないのに龍に狙われ続けて。闘い続けて。
それが、苦しくないわけがないのに。
分かってる。この人はそういう人なんだ。一人で闘って、一人で全部を背負い込むような人だ。
分かっていたのに。
どうしてそれを、今、部下である俺が気付かなかったんだよ!!
「……くそっ」
血で汚れたシアナの頬を、軽く拭く。
出入り口を塞いでいた柵は、いつの間にか上がっていた。
イザークはシアナを背負ったまま、歩き出す。
勝者に意識はなく、敗者は既にここにはおらず。
闘った事を祝う者すらなく、褒美も無い。
残された観客達に声は無く、戦いの残骸が風に吹かれて空しく揺れていた。
846 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 13:10:33 ID:Yte8mzbo
イザークが後悔してるとこがやけにリアル・・・
あるよなこういうの・・・大丈夫だとか思って手を抜いたりして後でヘコむとか。
彼の成長に期待
847 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/15(日) 13:55:32 ID:f2rHb7Xo
そろそろイザークが邪気眼を見せ始めるか?
こっからどう中ニ病な設定になっていくか見ものだぜ
848 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/15(日) 22:17:56 ID:38tgJF0p
夢を見ていた。
……熱い。辺り一面は炎の海に飲みこまれ、熱風がうねり狂う。
灼熱の地獄のようだった。
ウオオオンという恐ろしげな雄叫びが聞こえてきて、思わず身体が竦み上がる。
そいつは何かを探しているようだった。大きな身体を揺らしながら、近づいてくる。
怖くて怖くて、膝を抱えて震えていた。もう死ぬのかもしれない。
助けて。誰か助けて。熱くて苦しい。身体が焼ける。喉が痛い。息が出来ない。
神様。ううん、もしこの場所から救ってくれるなら誰でもいい。沢山祈るから。
だから、お願いです。助けて。怖いよ。怖くて熱くて苦しい。死にたくない、死にたくない――!!
その時、怯える私の頭に誰かが触れた。
「大丈夫だよ」
その人は、優しく頭を撫でると、私を安心させるように笑って見せた。
そこで夢が、終わる。
849 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/15(日) 22:20:36 ID:38tgJF0p
「……長」
誰かが呼ぶ声で現実に引き戻される。
「隊長?」
……誰かが、シアナの顔を覗き込んでいた。曖昧な視界から徐々にはっきりしていく輪郭。
イザークだった。心配そうにこちらを覗き込んでいる。
シアナは起き上がろうとして、身体に走った苦痛に声をあげた。
「……う」
「あ、駄目ですよ。凄い怪我なんですから……今は休んでて下さい」
イザークはシアナを制して言うと、部屋のカーテンを開けた。
眩しい朝日が差し込んでくる。
「……私、あれから……」
ファーガスにはめられ、龍と戦わせられて。
沢山の龍と闘って、殺して。
それから、どうなったんだっけ。
記憶が曖昧だった。胡乱な頭で記憶を辿る。
「ここは騎士隊の救護室です。隊長が闘技場で闘ってから三日経ちました」
「三日……そんなに」
「リジュ隊長に事情を説明して治療してもらいました。起きないので心配したんですよ」
……そうだ、確か刻印を使ってしまったんだ。
最後まで使わないと自分に決めていたのに。
それが悔しくて、気が付いたらベッドシーツを握り締めていた。
自責と、怒りで目の前がくらくらする。騙された挙句まんまとしてやられたというわけだ。
なんて――なんて無様な。
850 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/15(日) 22:22:09 ID:38tgJF0p
「ファーガスに出し抜かれたわ……何かあるって分かっていたのに、策も練らず単身特攻した。私の失策ね」
自嘲気味に零して、唇を噛む。それを責めるでもなく馬鹿にするでもなく、イザークは言った。
「隊長は、勝ったんです」
「……え?」
「ファーガス隊長がけしかけて来た龍を全部一人で打ち倒したじゃないですか。
立派な勝利だと思います。……最初から最後まで見てましたから。かっこよかったですよ」
イザークは、闘技場での光景を思い出すように遠くを見た。
シアナにとってあの戦いは決して良い戦いとは言えない。罠にはまったあげく苦戦したのだ。
それを褒められて――何だか無性にむず痒かった。
「そうだ。何か食べられそうですか? 何日も食べてなかったからお腹空いてますよね。
ウィナさんに言って何か作ってもらってきます」
「……頼んだわ」
「はい」
扉から外へ出ようとした所でイザークが振り向いた。
「そうだ。……もし今度同じような事があったら、その時は自分にもお手伝いさせて下さい。
前より少しは強くなりましたから」
「そうね……考えとく」
「あはは。それで十分です。じゃあ」
イザークが部屋から消える。
シアナは横たわったまま窓の外を眺めていた。
「……夢か。久しぶりに見たわね」
まだ焼け付くような熱気の感覚が、喉に残っているような気がして、
シアナは喉元に手をやった。
刻印が熱を孕んで痛んでいる。
決して忘れられない思い出が、苛むように。
851 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/16(月) 02:23:25 ID:45XqxhXX
>>846 まさかイザークに共感してもらえる日が来るとは…。
イザークは書いてて楽しいので、成長過程を丁寧に書いていきたいです、感想感謝!
>>847 邪気眼!!彼は能力的には中二病から一番遠いところにいますね。
逆にこのまま普通の青年で終わるのもそれはそれでありかと。
中二病スレとしてはアレかもしれませんが。
感想ありがとう!
852 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/16(月) 02:27:09 ID:45XqxhXX
感想書いてくれた人ありがとう。すごく励みになった。
今日はあまり投下出来ず申し訳ない。
書き溜めてたのが切れたので、これからは書きつつ投下します。
それではまた来ます。
見てくれた人にも感謝!
853 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/16(月) 03:27:24 ID:ZptOIS3T
なつみかんさん乙〜
とっても応援してるんだからね
?
すぐ割れる酉っぽいな
変えたほうがいいよ
856 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/16(月) 11:37:28 ID:v8JqtJx0
シアナたんの過去とかファーガスの動向とか、続き気になる!
けど、焦って投下しなくていいので、納得のいくもの書いて下さい。
この作品結構好きだぜヽ(^◇^*)/
857 :
なつみかん ◆XksB4AwhxU :2009/03/16(月) 12:57:06 ID:45XqxhXX
>>853 何…!
私がもう一人いる…だと…?
あ、応援してくれてありがとう。そこは感謝!
トリ割れてしまったようなので次から名前変更します。
なつみかん→夏みかん
もう「なつみかん」名では投下しないのでご了承下さい〜
>>855 そうします。来たら私がいてびっくりした。
アドバイスありがとう。
>>856 ありがとう!凄く書き手冥利に尽きる言葉だー!
これから過去話もじっくり書いていきたいです。頑張ります!!
名前変えても意味ないw
トリ変えなきゃ
新しいトリはいちど自分でぐぐってみるといいよ
意外とトリキー公開されてるの多いから
昔変なのにトリ割られた経験のある俺登場
トリパスは特定の単語とか数字の羅列だと速攻で割られる
記号・数字・カタカナ平仮名入り混ぜると割られにくくなる
861 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/16(月) 18:27:59 ID:45XqxhXX
なつみかん→夏みかんに改名。
トリも変えました。
今後はこれでいきたいと思います。
丁寧に教えてくれた人ありがとうございましたー!助かりました
だから名前は関係ないw
乙
ところでこのスレ、設定限定みたいに見られるかもしれないから
次スレからスレタイ変えたほうがいいと思う
863 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/16(月) 23:53:52 ID:45XqxhXX
仮面の男は闘技場での一件を報告しに、男の元へやってきていた。
報告を全て聞き終えると、男は何やら考えを巡らしている様子で、「ふむ……」と相槌を打つ。
「刻印……成る程な。龍殺しの騎士の強さの根源はそこだったか」
「そうです。あれはもう!! ええ、まさしく刻印の力でしたよ。ああ、思い出すだけでおぞましい!!」
「……」
男は顎に手を添えて、仮面の男の言葉を聴いていた。
「前からね、ええ、変だとは思っていたんですよ。ただの女にしては強すぎますからね。
何かあるとはにらんでいたんですが……でもこれで奴の正体が分かってすっきり致しましたねえ」
「もうよい……話は分かった」
「あの、それで。へへへ。あの、アレの方はいかがでしょう?」
仮面の男は下品な妖笑を張り付かせて、手をすり合わせる。探るように男を覗く。
「……ああ。金か。これでいいのだな。持って行くがよい」
大金の入った袋を投げてよこす。じゃららんと金貨が中で踊る。仮面の男は大事そうにそれを抱えて、ぺこぺこと頭を下げた。
「へへへ。これはこれはどうも。こんなに貰っちゃっていいんですか」
「気にするな。ほんの礼だ。好きにしろ」
「それはそれは。ではありがたく頂く事に致しますよ。へへへっ。……ああそれと、例の話ですが」
「ああ。それも上には報告してある。よい働きをしてくれたとな」
「……ありがとうございます。それでは私はこれで」
仮面の男が部屋から消える。
男は、仮面の男が消えた空間をじっと見つめていた。
その瞳は底冷えするほどに冷たく、凍てつく氷を思わせた。
「……龍殺しの刻印。成る程。だがそれも、我が前においては無力……」
誰も聞く者のいない呟きは闇に紛れて掻き消される。
男は立ち上がると、部屋を出た。龍殺しの秘は解いた。対抗策は用意した。ならば勝機は我らにあり。
さあ、何処へ向かう我が身よ。知れた事。……向かうはフレンズベル。取りに行くは王の首。
敵国の旗を燃やし、我が祖国の旗を新たに捧げん。フレンズベルを我が領土とする。
行こう……戦を始めに。
その前にひとつ、駒を動かしておくか。これで詰められるのならばそれはそれで僥倖だ。
「シチリ、いるか」
「は、ここに」
何処からともなく現れた闇の使者は、影に身を潜ませて畏まる。
「任務だ、四の一を執行しろ」
「……承知」
男の用件を承ると、瞬時に姿を消した。
「さて、あれがうまくやってくれればよいのだが……」
864 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/16(月) 23:57:38 ID:45XqxhXX
シアナがファーガスと闘技場で闘ったという噂は、瞬く間に騎士隊に広がっていた。
それは当然、総長のズイマの耳にも届いていた。
ようやく動けるようになったシアナは、すぐさまズイマに呼び出され、事のあらましを説明するように命じられた。
「今回の事、様々な方面から話を聞いたぞシアナ」
「……はい」
「私は一ヶ月間、お前に休養を命じた。しかしそれは間違いだったと見える。休むどころか隊長同士で私闘騒ぎとは」
「……」
「ファーガスは行方不明、お前は半死半生の状態で帰還したと聞いたときは、正直驚いたぞ」
何も言えずにシアナは黙り込んだ。確かに――あれは演習と銘打ってあったが、第三者からしてみれば私闘以外の何物でもない。
それを咎められるのは当然の事だ。シアナは改めて自分の行った事がどれ程のだったのかを考えさせられた。
落胆するように頭を振るズイマ総長。重い沈黙を割って、話し始める。
「……シアナ。シアナ・シトレウムス。
お前を今日限りで、降格処分とする。隊長の任を降り、副隊長として隊に着くように」
「……え」
「聞こえなかったか? 本日からお前は隊長ではない。隊長は私が第三隊の一人から選任する。……自分の行ったことを省みて十分反省するように。
また隊とお前に下した謹慎処分は継続したままとする」
隊長を、降ろされた。もう龍殺しの女騎士は隊長ではない。
ズイマの処分はあまりに厳しいものだった。受け答えがやっとで、ようやく「……はい」とだけ口にする。
深く息を吐いて、ズイマは「もう行っていい」と命じた。
865 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/16(月) 23:59:51 ID:45XqxhXX
シアナは呆然とした頭のまま、部屋を出る。
……私は、もう隊長じゃない。
何か内側に、ぽっかりと大きな穴が空いたようだった。胸を突く寂寥感に、息が詰まる。
私のした事は、間違っていたのだろうか。
怒りに任せて闘ったのではないと今でも信じている。
それは剣に賭けても誓える。ただの報復や復讐心で剣を取ったのではないと。
何かを守ろうと、闘った。部下を守ろうと、一心で闘った。その結果がこれだ――情けなくて涙も出てこない。
馬鹿だ。私は大馬鹿者だ。結果的に、また自隊の皆に迷惑をかけてしまった。
どうしていつも、こんな風に自分を追い詰める方法でしか何かを守れない。自身の不器用さに吐き気がする。
もっと、上手く立ち回ることが出来たのなら。こんな事態にはならなかっただろうに。
打ちひしがれているシアナの前に、つかつかと靴を響かせて歩いてくる者がいた。
第一騎士隊隊長、ビィシュ・フォンクルーレ、その人である。
全ての隊の中でも、選りすぐりの精鋭とされる第一隊を率いる、最高ランクの隊長。
ビィシュは切れ長の美しい碧眼をシアナに向けた。
「私は君には期待していたが。……期待はずれだったようだな」
短く感情のこもらない一言。だがそれは、今のシアナにとって激しく責め立てられるより、効いた。
ビィシュはそれだけ言うと、颯爽と目の前を通り過ぎていく。
全身に軋むような痛みが残っている。だがそれよりも。
総長やビィシュの期待を裏切った事が何よりも辛かった。
866 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/17(火) 01:03:39 ID:h8BckMrK
自室に入るなり、シアナは寝台に突っ伏した。
降格処分。――騎士隊の、いい笑い者だな。
瞼に被せた腕の隙間から、天井を仰ぎ見る。
「全く、何やってるんだか……」
そうして、ごろり、と身体を反転させた所で。
剣を差し込まれたような痛みを、太腿に感じた。
「あ……っ」
内部から、焼け焦げて爛れるような尖痛。
身体の中で、何かが燃えているようだ。熱くて、痛い――!!
「ぐ……あっ」
痛みの根源は、刻印だ。刻印が刻まれている部分が猛烈に傷む。
凄まじい痛みで目の前がかすんでいく。息も絶え絶えに呼吸を繰り返す。
見ると、刻印が黒く変色していた。以前は紫だったのだが、全体に不吉を思わせる黒色が這っている。
龍を殺すたびに刻まれる線は、増え続け、今や、それ自体がひとつの文様を思わせるように形を作っていた。
これは、まるで。
……龍の、尾。
「はあ……はあ……」
何とか激痛を堪えて、刻印を抑える。痛みは徐々に引いていき、やがて波をひくようにして収まった。
「な、んなの……今のは」
あれは怪我から来た痛みではない。もっと身体の内側から、そう、おそらくは刻印から来たもの。
――刻印は使わないほうがいいですよ。
――お前達の刻印はこの世にあってはならぬ忌まわしきもの。……故に力の行使には必ず代償が必要となる。
龍殺しの騎士。お前が龍を殺す度に、殺された龍の魂はそなたの身に宿り続けるだろう。
次々と、刻印にまつわる言葉が、記憶から滲んでくる。シェスタの顔が思い出されると同時に、大切なことも思い出した。
「そうだ……刻印のこと調べとくって、あの子言ってたんだっけ……明日行ってみようかしら」
とりあえず、今日はもう眠ろう。
……異様に眠い。
そしてそのまま蕩けるように、眠りに就いた。
867 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/17(火) 01:05:48 ID:h8BckMrK
「その昔、ある国に一人の騎士がいました。
騎士の住んでいる国には沢山の龍がいました。
騎士は森に住んでいる一匹の龍と友達になりました。
龍は賢く聡明で、沢山のことを騎士に教えました。
騎士も人間のことや、家族のこと、天気のこと、沢山のことを龍に話しました。
二人は友人と呼べるほどに、とても仲良くなりました。
ですが、龍はある時から騎士を遠ざけるようになります。
騎士は何故だと龍に聞きました。龍は言いました。
お前とは仲良くなりすぎた。これではいけないのだ。私の本能が徐々に目覚めている。
そして本能を完全に思い出してしまったとき、私はお前を殺してしまうだろう。
だからもうここに来てはいけない。人間は人間の住処がある。そこへ帰るのだ。
騎士は龍の言うとおり、自分の住むべき場所へ帰ることにしました」
「それで? それで龍はどうなったの? 騎士はどうなったの?」
「さあ。どうなったんだろうね。話は今日はここで終わりだよ。もう今日はゆっくり休みなさいシアナ」
「そんなの嫌だよ。続きが聞きたいの。だって龍が可哀想なんだもの」
「可哀想?」
「うん。友達が遠くに行っちゃったら悲しいよ、ひとりぼっちになっちゃうもの」
「そうだね。……きっと悲しかったと思うよ」
「それで? ねえ、騎士はその後どうしたの? 教えて!!」
「……ふう。シアナは頑固だなあ。言い出したら聞かないんだから。お母さんそっくりだ」
「えへへ」
「じゃあ話すよ。騎士はその後――」
それでも、毎日龍の元へ行きたくてたまりませんでした。
ある日、騎士に命令が下ります。それは凶暴化した龍の討伐でした。
命令に従い、騎士は龍のいる場所へ向かいました。それは騎士と仲が良かった龍のいる森でした。
龍は、龍の本能に目覚めてしまったのです。沢山の人を食らい、それでもなお人間を食べようとしていました。
騎士は、龍に自分のことを気付かせようとしました。龍は騎士のことを忘れてしまったようで、
騎士がいくら叫んでも何も反応してくれません。龍は討伐に来た騎士達の沢山を殺しました。
騎士は悲しみました。もう目の前の龍は自分の知っている龍ではなかったのです。
龍は騎士に牙を剥き襲い掛かってきました。騎士はその時決意しました。自分がこの龍を殺そうと。
長い戦いの末に、ようやく騎士は、涙を流しながら、龍に最後の一撃を与えました。
龍は倒れて動かなくなりました。もう二度と、起き上がることはありませんでした。
868 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/17(火) 01:07:31 ID:h8BckMrK
殺気を感じて目が醒めた。
咄嗟に身体を思い切りねじって、寝台から飛び退いた。
切り裂かれる枕。羽毛が飛び散る。自分の寝ていた場所に短剣が突き刺さっていた。
「ほう……熟睡していたと思っていたのだが。中々勘は悪くないようだな」
真っ黒な装束に身を包んだ影が、囁く。
壁に立てかけてある剣を掴んで、シアナはそいつを睨み付けた。
「女性の部屋に入ってくる時は、ノックを忘れないようにって習わなかったの?」
「生憎だが、職業柄なるべく物音を立てるようにと言われているものでな」
「ふん。そのわりにべらべらと口うるさいじゃない」
相手の力量を計るように観察する。部屋に入って攻撃を放たれるまで、気配に気付かなかったとは。
おそらくは、生半可な相手ではないのだろう。この状況で冷静さを保ちシアナと向き合っている所を見ると、奴は相等の手馴れだ。
「――暗殺者か。どこの国の者だ」
「……答える義務はない」
「だろうと思ったわ。答えないなら……口を割らせるまでよ!!」
隊長という職務柄、標的にされることも珍しくない。暗殺の危機は常にある。
しかし、よりにもよって、こんな時に限ってやってくるとは。
ああ、丁度いい、剣も振えず苛苛していた所だ。
思う存分、相手になってやろう!!
シアナは溜まった鬱憤を晴らすように剣を鞘から抜く。
869 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/17(火) 01:21:56 ID:h8BckMrK
>>862 どもども!
このままこの話だけでスレを使いきってしまいそうな勢いなので
自分が次スレ立てる時は名前変えますねー
それでは今日はこのへんで
さようなら〜
> 使い方について (書き込み編) したらば Q&A livedoor ヘルプ
> たとえば、「したらば#pass」と入れると、JBBSでは「したらば ◆XksB4AwhxU 」と表示されます。
> これによって、「本物のしたらばは◆XksB4AwhxUと語尾に入っている人だ」とみんなが判断するために、偽者を防ぐことができます。
こ、これは――――
871 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 19:06:17 ID:ynKhU1/r
刻印が暴走の悪寒
シェスタ!シェスタ!
872 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/18(水) 22:37:49 ID:wG/yazo3
>>862 >>869 ちょっと待て
このスレは設定固定じゃないのか?
スレ前半は中二病固定でみんな小説設定を書いてきたんだから、新参が勝手に変えてもらっちゃ困る
それこそ「【邪気眼】騎士物語【いちおくえん】★3」なんてスレタイだったら乗っ取りもいいとこだ
次スレは書き手だけじゃなく読み手の意見も入れて作ってくれ
873 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/18(水) 23:28:59 ID:3/8NrSlK
>>872 もし自分が立てる場合、タイトルはそんな風に改変したりしないのでご安心あれ。
小説が結構書かれてたのとテンプレにもssってあったから
メインは小説でいいのかなって思って言ったんだ。
気分悪くしたらごめんね。
私が立てるの不安だったら、次スレ立て他の人に任せるよ。
874 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/18(水) 23:34:07 ID:3/8NrSlK
こんばんは、また投下します。
その時だった。部屋に満ちた緊張感を割る、のんびりした声が響いたのは。
「隊長〜? いらっしゃるんですか?」
コンコン、と2回ドアを叩く。イザークだ。
「隊長? シアナ隊長? どうかされたんですか――?」
「――っ」
何故こんな時に。不味い。今入って来られたら――
扉が開く。影が動いた。一瞬の間。それでも、忍ぶ者にとっては十分過ぎる程の時間だ。
暗殺者は、部屋に侵入してきたイザークの腕を引いて、首元に刃を突きつける。
「えっ」
まだ事態の飲み込めていないイザーク。それも無理はない。
シアナの体調を確認しに部屋に入るなり、人質に取られたのだから。
影は能面のような表情を貼りつかせたまま、低く告げる。
「……形勢逆転、だな」
影の宣告する通り。――こうなっては迂闊に手が出せない。敵の手中にはイザークがいるのだから。
「……くっ、……こんのバカ!! 何で私の部屋に入ってくるのよ!!」
「そ、そんなこと言われましても、隊長の体調はどうかなって思いまして。あ、今の駄洒落じゃないですよ。ていうか、この人誰ですか?」
「聞けるなら私が聞きたいわ……」
イザークは暗殺者に抱えられたままシアナと会話している。
傍からみると滑稽だが本人達はいたって真剣なので、益々おかしい図だった。
そんなやり取りを横目で眺めつつ、暗殺者は、臆することなく話し出す。
875 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/18(水) 23:35:48 ID:3/8NrSlK
「取引をしてもよい。もし私と一緒に指定された場所へ向かうというのならば、この男は傷つけることなく無事に離そう」
「場所ね……嫌だって言ったら?」
「答えるまでもないだろう、龍殺し」
鋭く尖った刃を、イザークの首元へ押し付ける。ひやりとした凶器の冷たさが、じかに伝わってイザークは震えた。
それを間近で見たシアナの頭に血が上る。
謹慎処分に降格に、この上なく苛苛している時に私の部下を人質に取ろうなんて――死にたいの?
誰であろうと、部下に手出しする者に容赦はしない。私の守るモノに刃を向けたなら許しはしない。徹底的に、叩きのめす!!
「提案は聞かないわ。イザークを、離しなさい」
「交渉は決裂のようだな。……ならば」
シュン!!
刃は迷いなくイザークの首元へ吸い込まれていった。
しかし。刃は弾かれる。
暗殺者は目を疑った。
絶対に殺せると踏んだ標的が、攻撃を防いだ。――艶やかな技も、巧みの術も使うことなく、一流れの動きだけで。
刃に刃を持って抵抗する必要はない。手甲を着込んだ腕を差し出すだけで、細い刃を受け止めるにはそれで十分なのだ――!!
イザークは先程見せた穏やかな表情を湛えたまま、後ろへ跳ぶ。
「成る程……見た目よりは出来るということか」
「お褒めいただいて光栄です」
「イザーク、それ褒められてないわよ別に」
軟弱そうな男と見た目で判断し、実力を見誤ったか。……影は本質を視、殺すのが生業だというのに。
少し優越を感じすぎたようだ。――暗殺者は感情を殺し、再びシアナと向かい合う。
876 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/18(水) 23:37:46 ID:3/8NrSlK
「それくらい防げて当然でしょう、私の部下なんだから。
……さて、どうする? 貴方は一人、こちらは二人。ほうら、見事な形勢逆転ね」
「……左様、本日は日が悪いようだ。これにて失礼する」
「させるか……っ」
イザークとシアナが影に接近する――剣が触れそうか否かの所で、影は身を翻し、窓に向かって跳躍した。
ガシャアナアン!!!
窓ガラスが盛大に割れて、四散する。
「――っ、待て!!」
窓から下を覗く。そこにはもう影の姿もなく、柔らかな夜気に闇が漂うだけだった。
「ちっ……逃がしたか」
風が部屋へ流れ込んでシアナの髪を揺らす。
忌々しげに暗殺者の去っていった方向を一瞥すると、シアナは床に散らばった硝子を片付け始めた。
「ああ、僕がやりますよ。隊長は大人しく休んでてください」
「……襲われた割には気丈ね」
「あはは、慣れてるんで」
「…………ああ、そう」
そういえば、以前盗賊に襲われたことがあると言っていたっけ。この間は龍に浚われるし、
何か変な物を引き寄せるオーラでも出てるんじゃないだろうか。
割れた窓から風が吹き込んでくる。イザークは硝子をかき集めて拾い上げる。
877 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/18(水) 23:38:46 ID:3/8NrSlK
「全く、どこかの物語のお姫様じゃあるまいし、何回も悪者に攫われないでよ。助けるのも中々骨が折れるんだから」
「ははっ、そうですね。男としてかなり情けないですね隊長に助けてもらってばっかりは」
「そうね。情けないわね」
ズバリ言われて沈黙せざるを得ないイザーク。その横顔があんまりに哀れだったので、ついシアナは口を開いた。
「ま、……まあ、今の立ち回りは冷静でよかったんじゃない」
「本当ですか!?」
「ちょっとだけね」
878 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/19(木) 01:47:39 ID:aIy/Lj4B
「ちょっとだけ……」
「不服なの?」
いえ、と返すイザーク。
「ちょっとだけでも隊長に認められたってだけで、嬉しいです」
掻き集めた硝子の欠片を手に抱え、照れくさそうに、凄く嬉しそうに。
笑った。
小言のひとつやふたつでも言ってやろうと思っていたのに、そんな顔をされては何も言えないではないか。
「……手、怪我してるわよ」
「あ、本当だ。硝子で切ったんですかね」
「全く世話の焼ける……ほら、貸しなさい」
慣れた手つきでイザークの手に布を巻いていく。
「ほら、終わったわよ。後でちゃんと消毒しておくこと。いい?」
「はい、ありがとうございましたシアナ隊長」
「どういたしまして。それから……隊長はもうやめて。私はもう隊長じゃないんだから。副隊長と呼びなさい」
「……あ、……そう、でしたね、すいません」
「別に……いいのよ」
自分で隊長じゃないと言っておいて。
その一言が今頃、胸に突き刺さるなんて、本当に馬鹿げている。
「私は、今の件を報告しにいくわ。殺し屋が基地に進入しただなんて大問題だもの。何処に雇われて私を狙ったのかは分からないけど……」
ただ一つはっきりしていることは、あの暗殺者は自分が龍殺しであることを知っていたということだ。
……それは特に問題ではない。標的の素性を調べるのはさして不自然ではないし、龍殺しという二つ名故にそこそこ有名らしいから。
だからあの暗殺者が自分の事について知っていてもおかしくない。問題は、何故自分を狙ったのかということだ。
――何か、私に消えてもらいたい理由があった。それは、一体何だ。
879 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/19(木) 01:52:29 ID:aIy/Lj4B
>>870 御察しの通りです
適当につけてしまったばかりにごらんの有様でした。
今後の教訓にします
>>871 中々いい所を突いてきますね……!
ラストまでの展開とか当てられないように頭ひねって頑張ります。
今日はこれで終わりです。見て頂いてありがとうございました
スレタイは・(ナカグロ)入れるだけで解決だとおも
【邪気眼】中二病な小説・設定【いちおくえん】★3
どう?
881 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/19(木) 11:01:40 ID:/F70cmTv
イザークのボケっぷりにワロタw
でもちょっとカッコヨス
ていうか夏みかんさんのハイペースな執筆がスゲエ
自分こんなに書けねえ
882 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/20(金) 01:16:02 ID:IEmUstHj
「とにかく総長の所に行くわ」
「あ、じゃあ僕も行きますよ」
人差し指を自分に向けるイザーク。
正直連れて行くのはどうかと思ったが――今はこんな事で躊躇している場合ではない。
仕方ない、と頷いて先に出るように促す。
廊下に出ると、バタバタと通路を何人もの騎士が慌しい様子で行きかっていた。
今の騒動が外に聞こえたのだろうかとシアナは思ったが、どうやら違うらしい。
その中にリジュの姿を認める。リジュもこちらに気付いて顔をあげた。
「あ、シアナさん」
「リジュ。何かあったの?」
リジュに駆け寄るシアナとイザーク。
リジュは深夜にも関わらず鎧を装着していた。
通常、この時間見張り番以外の者は自室で就寝している。ということは、何か――異常事態が起こったか。
「そちらこそ。派手に暴れたようですね。物騒な音が聞こえてましたけど」
「……殺し屋が部屋にいらっしゃったのよ。丁重にお出迎えしてあげたわ」
「そうなんですよ。僕人質にされて大変でした〜」
のほほんとした口調からは先程まで殺されそうになっていた人間の悲哀が全く感じられない。
昨日のご飯シチューでした〜と同じ感覚で言っているとしか思えない。いや、断じてそうだ。
日常の出来事と危機の一切が等価で結ばれている男イザーク。恐ろしい。
一体、脳内構造はどうなっているのだろうか。知りたくもないが、その根性は見習うべきものだ。
「それはそれは。恐ろしいですねえ。相手はもう二度と貴方の元へは現れないでしょうね」
「それ……どういう意味かしら?」
「ふふふ。冗談ですよ。――と、こんな事を話している場合じゃなかったんでした。
今、総長が全隊長を集合させて緊急会議を開いています」
「全隊長……!? それって……!!」
シアナは驚愕する。全騎士隊隊長――二十四ある全ての騎士隊を、任務時間以外に集結させるとなると、
事態は益々、物々しげな雰囲気を呈してくる。
やはり、緊急事態ということか。
883 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/20(金) 01:18:19 ID:IEmUstHj
「シアナさん、第三騎士隊はまだ隊長が選出されていないので、副隊長の貴方が呼ばれています。
一緒に来ていただけますね」
「私も……分かったわ。丁度報告に行こうと思っていた所だし。というわけよ、イザーク、行ってくるわね」
シアナはイザークにそれだけ言い残して、リジュの後を追う。
「わかりました……行ってらっしゃい隊長」
二人を寂しげに見送って、イザークは静かに零した。
騎士隊の会議は会議室で行われる。
最奥に総長を配し、一、二、三とランク順に隊長が席に座すことになっている。
入り口付近の椅子には最低ランク――二十四の隊長が座るはずだが、ファーガスが行方不明なので
椅子に座る者はいない。
とはいえ、二十三の騎士隊長が一斉に集う光景はそう見られるものではない。壮観である。
シアナ以外の騎士は全員甲冑姿だった。
全員事態の深刻さを理解しているのか、厳しめの表情を湛えている。
総長は険しい相貌のまま、切り出した。
「……皆に集まってもらったのは他でもない。近国のゴルィニシチェが不穏な動きを見せているとの情報が入った故だ」
ザワリ、と。
言葉には誰も出さなかったものの、騎士隊長達の間に動揺が走った。
「それは……確かな情報なのですか」
第一騎士隊隊長のビィシュが質問すると、総長は深く頷いた。
「ああ。残念だがな。彼国に入った商人の話によると兵を増員し兵器を大量に用意しているそうだ。……おそらくじきに我国に攻めてくるだろう」
「そんな……我国と隣国は盟約を結んでいるはず。同盟はどうなったんですか」
「つい先程、同盟を破棄するとの連絡があった」
「――では」
「戦が始まるだろう。おそらくはこれまでにない程、苛烈なものになる」
「――…………」
シアナは緊迫した空気の中おずおずと手を挙げた。
「……なんだシアナ」
「実は先程――暗殺者に襲われました」
ざわりと。今度はどよめきが広がるのがはっきり聞こえた。
シアナはかいつまんで先程の事を説明する。
「誰に雇われたのかは分からなかったのですが、こうなってみるともしかしたら――」
総長は手を組みシアナに眼差しを向けた。
「ゴルィニシチェが差し向けた可能性が高いだろうな。実は気になる話があるのだ」
「それは?」
「同じ者から小耳に挟んだ話だ。ゴルィニシチェでは、龍を戦の兵器として使おうと実験が進められているという」
「な……!? 龍を兵器に?!」
「ああ。だがこれは話をしてくれた商人もはっきりとは断言できぬと言っていた」
総長の発した事実に驚くシアナ。隣に座っているエレが、ここに来てようやく口を開いた。
「成る程な。つまりこの国に龍を差し向けるには、龍殺しであるお前がいては邪魔だということだ。有名だとおちおち休んでもいられぬな」
リジュも次いで発言する。
「……じゃあ益々、その話の信憑性が高まりますね。タイミングからみて、シアナさんを襲ったのはゴルィニシチェの手の者に違いないでしょう。
何故シアナさんを狙ったのか考えれば答えはおのずと導き出されます」
「龍を兵器にして戦争を仕掛ける為……か」
刻印のおかげであらゆる者に狙われる。龍だけではなく人まで呼び寄せるとは。
つくづく呪われた証だな、とシアナは皮肉めいた笑みを零した。
その時、バタバタと足音を鳴らし会議室へ慌しく入ってくる者がいた。
884 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/20(金) 01:19:41 ID:IEmUstHj
「誰だ、うるさいぞ」
総長のいさめる声を割って、騎士は話し出す。
「す、すみません。でも緊急で……今、国境の見張りから伝令がありました。
軍隊がこちらを目指して進軍してきているようです……!!」
「何……!!」
「旗を見た騎士によると、赤い縞に黒い龍の文様は確かにゴルィニシチェのものだったと……!!」
「もう来たか。思っていたよりも早いな――いや、早すぎる」
何か特別な交通手段を用いたのか。
総長は大声で騎士達に告げる。
「全員、急いで部下を率いて戦闘準備に入れ。国境へ向かうぞ。戦が始まる」
「はっ!!」
「行け。私も準備が出来次第、戦場へ向かおう」
二十三の騎士隊長は全員敬礼をすると、一斉に部屋を出て行く。
戦が、近い。戦乱の足音が耳を澄ませば聞こえる距離まで迫っていた。
ちょっとワロタ
887 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 11:17:05 ID:nbNTyCrI
段々話が繋がってきたな
つか全騎士隊長集結とか燃えるわこういうの
888 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/21(土) 14:30:46 ID:u1A+9OdL
889 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/21(土) 22:12:18 ID:aNcnIDlL
>>880 シンプルかつナイスな提案ありがとう
>>881 殺伐とした雰囲気をぶち壊してくれるのでイザークはありがたいキャラです
書くの遅い方だよ〜。頑張って日に三万文字とかだから。
890 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/21(土) 22:18:11 ID:aNcnIDlL
>>887 燃えたという一言がホイミになるんだぜ…
伏線まだあるので消化を頑張ります。
感想ありがたす!!感謝!
891 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/22(日) 19:16:56 ID:rHo2+9Gd
892 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/22(日) 20:07:39 ID:fvteDn38
夜明の蒼穹は暗く、そして黒い。
その中、行隊は開始された。
「全隊、出撃する!!」
「おおおっ!!」
ビィシュの号令に応じ騎士達の咆哮が轟く。
シアナは空を見上げた。
太陽が昇る一瞬こそが、最も暗いのだと何処かで聞いたような気がする。
黒灰色の雲が埋める天を仰いで、シアナは馬に騎乗し関を目指す。
全隊が行進する。歩隊と騎馬隊へ分かれ、列を成して進む。
渦巻くのは、正体のない焦燥だった。
戦いの空気には慣れている。
だが、何だろう。この妙な予感は……。
何ともいえない不安が胸から拭いきれずにいる。
戦場に向かう前に私は何を考えている。
落ち着け。邪念に心を掻き乱されるな。
握る手綱に力を混め、意識から他所事を追い払う。
前方に位置するのはエレの隊である。
そしてそれに続くように、第三番隊、第四番隊と騎士隊が続く。
長い長い列が、大蛇の如く道なりに連なっている。
暫く進んだ所で――誰かが、あっと声をあげた。
その声があげられる頃には、ほぼ全員がその声の主と同じように空を見上げ――戦慄した。
空は黒かった。黒すぎるほどに黒かった。その黒さが「ソレ」を隠すヴェールの役割をしていたことさえ気付かないほどに。
ソレは龍だった。幾体もの龍。その龍に跨り騎乗しているのは間違いなくゴルィニシチェの兵士だった。
そこまで来て。空下、地を縫い進軍してくる兵士の姿がようやく確認出来た。
その兵士達も空を泳ぐ龍騎兵と同じく、龍に跨っている。
地上を突撃する兵の数はおよそ二千。
しかし空を進む兵は、下手をすればそれより尚、多い。
以前戦った翼龍とは桁違いの火力。
「……くっ」
その瞬間――シアナは悟る。
この数では、騎士隊で迎え撃つことは厳しいと。
893 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/22(日) 20:09:02 ID:fvteDn38
相手は龍に騎乗している。龍自体が人間何百体分もの火力を持つ一種の兵器だ。
こちらが騎乗しているのは馬。
馬は敵の攻撃をかわす優秀な騎乗物だが、決して戦闘の決定打にはなりはしない。
龍、人どちらも攻撃可能なゴルィニシチェ兵と、人のみを攻撃手段とするフレンズベル騎士隊では戦力の優劣が歴然としていた。
だがそれでも、戦わなくては、自国の旗が燃やされるだけだ。
……恐れるな。どんな状況下にあっても私がすることは変わらない。敵を打倒し、切り、屠る。
好都合な事に敵は龍。ならば私が遅れを取る理由など、ただのひとつも見当たらない。
「さあ……」
この身は、龍を殺すためだけに。
それだけの為に私は生きている。
敗北が迫ってきたらそれさえ断ち切ってみせよう。
――龍を、殺す。
「行くぞ皆!! 我に続け!!」
戦火の火蓋は切って落とされた。
ゴルィニシチェの軍が空から陸から、一気に突撃してくる。
怒号。強襲。交戦。悲鳴。閃光。剣戟。足音。
様々な音が様々な所から掻き鳴らし放たれる。
――夜明けを迎えた空は、色鮮やかに赤に染まり、また地も同じように赤に染まった。
894 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/22(日) 20:15:03 ID:fvteDn38
シアナは襲い来る龍騎兵を薙ぎ倒しながら、一心不乱に敵を打ち倒していく。
身に負った痛みを忘れ、剣を操り、戦場を駆ける。
空を舞う兵はシアナ目掛けて弓矢を構える。
びゅっ、と風を切り裂いて矢は放たれた。目標目指し一直線に飛来し、シアナに迫る。
それを、
「Ισχυρεζανεμου」
呪文と共に発動した烈風が押し流す。矢は羽のようにふわふわと頼りなげに打ち捨てられた。
気付くと、傍には第四騎士隊長の姿があった。
「リジュ……!」
「気をつけてくださいね」
戦場でにっこりと微笑むリジュ。その笑顔も普段と変わらずで――つくづく豪胆な性格だと感心してしまう。
いや、それとも自ら平常を心がけているのだろうか。
彼は魔術を使い、味方を援護する役割を担っていた。
それも地上の敵を相手にしながら同時に魔術行使を行っているというのだから、恐れ入る。
シアナは心の中で感謝を言うと、次の敵へと狙いを定めた。
朝焼けが交戦を照らす。
そうして戦が何時間も行われ、
両方の隊と兵が疲弊してきた頃だった。
――黒き巨龍が姿を現したのは。
895 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/22(日) 21:22:19 ID:fvteDn38
蒼黒龍。
龍種の中でももっとも凶悪、凶暴と言われ滅多に見ることがない希少種だ。
能力でいえば龍の中でもトップクラスとして君臨する。
ぬらぬらと艶めく鱗から尾まで、暗澹とした黒で覆われその姿全てが凶々しいまでの死を想像させる。
先鋭的な体躯はそれ自体がひとつの刃の如く。
歩く姿は、強大な処刑人が鎌を持ち悠然と跋扈している様そのものだった。
……まさに死神。
鎌が一度振られれば、生き残れる者はいない。
シアナは図鑑に添えられた絵でしか見たことがない姿を目の当たりにし、息を飲む。
龍殺しでも見たことがない程に、数少ない龍。捕まえ、飼いならすのにどれほどの犠牲があったことか。……それを投入してくるとは。
ゴルィニシチェは全勢力を持ってフレンズベルを圧倒し支配下にしようとしているらしい。
「面白いじゃない……相手になってやるわ、皆、下がれ!! こいつは私が殺す!!」
総員が龍殺しの為に道を空ける。
シアナが剣を持ち、刻印を発動させようとした瞬間――
ゴルィニシチェ兵の中から、龍に向かって歩いてくる人間があった。
896 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/22(日) 21:23:46 ID:fvteDn38
龍と同じ髪の色を持つ兵。肩ほどまで伸びた髪が、マントと共にふわりとなびく。
恐れもせず龍に触れ、撫でる。龍は心地よさそうに咽喉を鳴らす。
人を食らう龍を相手にあのように接するとは、とても信じられない光景だった。
手を龍に添えたまま、シアナを見やる。
「……初めてお目にかかる。龍殺しのシアナ・シトレウムスとお見受けするが間違いはないか」
その声は知性的で落ち着いており、意図を感じさせないような強固さを含んでいた。
「間違いないわ。貴方は誰? 敵の総大将さんかしら」
「そうだな。……名こそ違うが当たっている。私はゴルィニシチェの将軍だ。名はノクト・ドルク」
「ノクト……」
耳にしたことがあった。ゴルィニシチェの将軍に最近若くして着任したという、やり手の将軍。
そのノクトと、まさかこうして敵同士として対面することになるとは夢にも思わなかった。
闇夜に似た瞳がシアナを映している。
見ていると、ずるずると飲み込まれそうだ。
シアナは眼光鋭いまま、刃を向ける。
「狙いは……我が国の領土か」
「それに答えてどうなる? 答えたところで――我らが殺しあうことに変わりはない」
「やる気十分じゃない。こんな龍まで引き連れてきちゃって……」
「これが一番容易く、迅速にフレンズベルを落とせる方法だったのでな。……さて龍殺し、どうする? 我が蒼黒龍を殺してみせるか」
「――……」
897 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/22(日) 22:39:22 ID:fvteDn38
挑発か、誘引か。その淡々とした表情からは、読みとることが出来ない。
シアナはノクトを目の前に、力の解放を躊躇っていた。
背後で、悲鳴があがる。
空から襲われ、怪我を負った兵が腕を抱えていた。天を仰ぐ。
シアナは信じられない人物をそこに見た。
「……貴様、ファーガス!!」
あの第二十四騎士隊長のファーガスが、よりにもよってゴルィニシチェの兵に混じりこちらに攻撃を仕掛けてきたのだ。
空を翔る龍に乗り、双つの剣を構え悠々とこちらを見下ろす。
あの蛇のような、いやらしい笑みを浮かべながら――!!
「いやあ、シアナ隊長、久しぶりですねえ」
「何故そこにお前がいる!! これはどういうことだ!!
私達を裏切ったのか?!」
激昂し叫びたてるシアナ。
蛇はちっちっ、と指を顔の前で左右させる。
「何を言っているんですか?
私はもう貴方達の味方なんかじゃありませんよ。
ゴルィニシチェ軍に入ったんですから」
「な……!!」
898 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/22(日) 22:41:09 ID:fvteDn38
「おわかり頂けましたか? そういうことなので何も問題はありません。ヒヒヒ。あるべき所に収まっただけです」
こいつ、ゴルィニシチェの兵になったのか。
国に。王に立てた誓いも、忠誠も、全て――偽りに返すということか。
剣を掲げ、この剣は国を守る為としてふるうことを誓ったはず。それも嘘にしてしまうというのか。
あれら全てが演技だった。そういうことか。
……許せない。
二十四隊の隊長が敵にいると発覚した。仲間にもその情報は迅速に伝わる。動揺が広がった。
何と卑怯な。シアナは拳を震わせた。
「こンの……腐れ外道が!! 降りて来い、堕ちた蛇!! 私がお前の相手になってやる」
「口汚いですねえ……」
「黙れ!! お前はもう騎士でもなんでもない!! 」
ファーガスは龍を巧みに操り、シアナの頭上で旋回する。
すうっと冷えた相貌に成り代わり、凍て付いた視線をシアナに向けて口を開いた。
「黙るのはそっちだお前に黙れと言われる筋合いなんかねえんだよ。クソアマが」
「な、」
「大体もうお前の言うことなんて聞かなくてもよくなったわけだしなあ。思う存分やらせてもらうぜ。
お前の相手なんかするワケねえだろ。殺されたらたまったもんじゃねえ。お前は、本分らしく龍とでも遊んでな!! ヒャハハハハ!!」
こいつ――こいつこいつこいつ。何て口を。
目の前が怒りで白く霞む。
ファーガスはシアナから逃げるように、空へ舞い戻る。
899 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/22(日) 22:42:57 ID:fvteDn38
「……私を忘れてもらっては困るな」
ノクトの声に、冷静さを呼び覚まされた。
苛立ちを堪え、黒き龍と将軍へ踵を返す。
「悪かったわ、待たせたわね」
「敵相手に随分殊勝なことだ。いつもそうなのか」
「殊勝なんじゃない、騎士だもの――礼儀正しいだけよ」
「そうか……それはいい心がけだ」
表向きは穏やかな会話を交わす、敵軍の将軍と騎士。
それは飾りで、秘めやかな牽制であると、双方が理解している。その上での会話だ。
それで、どうするのだとノクトが暗に問いている。
「そうね、もう残された道なんてひとつしかなかったんだわ……」
私にはいつも、これしかない。
剣を持ち、戦うことしか出来ない。
でも、それしか出来ないのなら。
――ただ、それだけを、やるしかないではないか。
戦って生き、戦って死ぬ。
例え誰にも賞賛されずとも、戦い続けることこそが騎士の領分。
なればこそだ。
力の解放。渦を巻く光が、シアナの中から湧き上がり剣へと導かれる。
ズクン、と強い疼痛が刻印から溢れてきて、シアナを苛む。
ぐっと歯を食いしばる。
白き光は、龍を殺す力の源泉は、シアナを内部から抉り――取り込もうとしていた。
負けるものか。ここで自身の力に飲まれるほど、ヤワな人生を送ってきたつもりはない。
どれほどの痛みを受けようが、耐えてみせる。そして力に変えてみせる。
痛みを与えるというのなら全て受け止めよう。痛みが力になるというのなら、
それこそが我が力。……刻印よ、私に力を貸せ!
剣は煌く。美しいまでの軌跡を描いて龍へと迫る……!!
刹那、――無が、空間を凌駕した。
900 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/22(日) 23:03:53 ID:fvteDn38
>>891 ありがとうありがとう!
まだ先は長いけど頑張るよ!
それでは今日はこのへんで〜
見て頂いてありがとうございました。
901 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 07:25:51 ID:uWvKkIBK
シャドーブラッド…
俺の力…
続かない
902 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 09:09:28 ID:WkLhI+Go
test
903 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/23(月) 13:35:48 ID:r0AqtDiw
龍騎士隊かっけえええええええ
敵だけど。
隊長たちの活躍wktk
>>901 挫折早すぎワロタww
904 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/24(火) 11:05:55 ID:2Wz1sJu1
ファーガスがブリーチの市丸ギンに脳内変換された
ファーガスかっこよすぎる!
悪の道を突き進め!
905 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 19:56:17 ID:GWLHzTox
市丸ギンは腹黒黒幕って感じだけど、ファーガスはヘタレって感じするな・・・
それより俺はリジュの方が怒ったら怖そうな気が・・・
エレにも平気で水ぶっかけてたし
906 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/25(水) 22:11:55 ID:7xZLjT4q
最近書き込みないね
まあ、最後の詰めに入っているんだろうが、ネットが使いにくくなる4月迄には結末読みたいなあ…
907 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/25(水) 23:56:44 ID:eY6Nrtlk
光が消滅する。
「な……に」
シアナの剣は龍の鱗に弾かれて、内部まで届かなかった。
龍殺しの剣が、龍に防がれた。
そんなことはあり得ない。それなのに、現実にこうして起こってしまっている――。
何が起こったのか分からない。
確かに自分は刻印を開放したはずだ。
それなのに、何故、力が――光が消えている。
「何で……」
着地ざま、蒼黒龍から距離を取るシアナ。
刻印が発動しなかった?……いや違う。刻印は確かに発動した。
それにも関わらず、直後【私の意志とは無関係に力を収束させた】
断行的に。強制的に。絶対的に。
まるで、何かの力で無理やり上書きされたように。
「やめておけ龍殺しよ。貴様の力はこの龍には――いや、私には通用しない」
その言葉に、心臓が震えた。
まさか。
まさか。
こいつ。
「ひとつ、忠告しておこう。刻印を持つのはお前だけでない」
龍の傍らに存在するノクトに眼を向ける。
ノクトの右腕は高々と掲げられ、手甲からは眩い光が放出されていた。
問うまでもない。見飽きたあの光は。
シアナは冷や汗が頬を零れると同時に言葉を発する。
「……刻印」
908 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 00:00:04 ID:wQU0vruW
「そうだ。理解が早くて助かる。
私の刻印は――刻無の刻印、ベルゼ。
ありとあらゆる刻印の行使を防する絶対の盾。どんな刻印であろうが、それが刻印である限り、ベルゼはそれを封じる。
……私を敵にしたのが運の尽きだったようだな龍殺し。
お前は私には勝てない、絶対にな」
ノクトの声が耳の奥でこだまする。
「この蒼黒龍を殺せるのは人ならざる領域に踏み込んだ者のみ。
龍殺し、お前がいかに強くとも刻印の力を封じられればただの人に過ぎぬ。
お前も騎士の身なれば、戦力差が計れぬ程、愚ではあるまい? ……私は無駄な殺戮は好まない。
降伏を誓うならば、貴様達に手は出さないと約束をしよう。
さあ、もう諦めて降伏するがいい」
「――……」
退くか。退くものか。こんな所で。
しかし、龍殺しの力を封じられたら。私はどうやって戦えばいい。
最強の龍と幾千もの龍を前にして、決定的な攻撃の要を封じられるとは……っ!!
シアナは顔をあげて、強がりにも似た笑いを零す。
「成る程ね。ファーガスが私の力を探っていたのはそういうことだったワケ」
ここまで来てようやく奴の意図が掴めた……この為か。
部下を虐め私を挑発し、誘いに乗らせ、龍と戦わせ――そして刻印の力を暴いたのも全て。
ゴルィニシチェが龍でフレンズベルを攻める為の策の一環か。
戦は――とうに始まっていたのだ。ファーガスに食堂で問われた時から、いやもしくは、そのずっと前から。
「……左様。あれは良く役に立ってくれた。戦い方はどうあれお前の力が刻印だと暴いたのだからな。
その意味では我々は僥倖だった。龍殺しの力の源がもし――ただの実力、それが努力で築き上げた力であったなら
私の刻印は意味をなさなかったであろうからな」
シアナは気付かれないように再度、刻印の使用を試みた。
刻印に全神経を集中させ、解放させようと足掻く。だが。
「無駄だ。何度やっても同じこと。言ったであろう龍殺し。お前は私には勝てない」
「ぐ……ッ、く……う」
ベルゼはシアナの刻印を封じ続けている。
刻印の能力を覆い、内部へ逆変換し、押しとどめる。
それこそが刻無の刻印――絶対防壁の力の真骨頂。
シアナが絶対に龍を殺すのと同じことだ。刻印を封じる。それこそが呪い。
故に龍殺しの刻印は、ベルゼに敵わない。
シアナは悔しさに歯軋りする。
敵を前にして――戦えないのか。
この龍は私にしか倒せないと分かっているのに。
だがこのまま、おめおめと敵の侵攻を許してなるものか。
909 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 00:02:07 ID:eY6Nrtlk
「勝てないなどと……決め付けるな」
龍殺しの刻印は封じられた。
手段は失われた、か?
――いや、手段はまだある。
シアナはノクトを睨みつける。
そう、刻印の主さえ倒してしまえば、いくら刻無の刻印だろうと、力は失われる。
こいつさえ倒せば……!!
「先ずは……お前から倒す!!」
シアナは、一瞬でノクトへ接近した。
ギイインッ!!
弾ける剣と剣。火花が散り、風が裂かれる。
その一瞬の遣り取りに、相手の実力を垣間見る。
……重い。やはりそこいらの兵とはワケが違うか。
これがゴルィニシチェの将軍。知謀だけでなく武力も優れているとは噂に違わない裁量ぶり……!!!
「……面白い」
その刃、相手にとって不足なし!!
続け様、横薙ぎにふるわれた剣先を押し返す!!
「ぐ……っ、はああっ!!」
カチカチと合わさった刃が、震えて音を立てる。
二つの刀身を挟んで、敵同士の将の顔が近い。
「……敵わぬと知り尚戦うか。勇猛も過ぎればただの無謀ぞ」
「無謀? 言ってくれるわね……私は無理をしているつもりはこれっぽっちもないわ」
「そのような蒼白の顔で何を言う。怪我を負った身で私が倒せるとでも思ったか? 甘く見られたものだ」
拮抗した押し合いの中、シアナの肩に痛みが走る。そこに僅かの隙が生まれた。
「っ……」
将がこの好機を逃すはずもない。ノクトの刃がシアナの剣を高く救い上げる。
刃は弧を描き宙を舞う。
剣はシアナの背後に滑り転がっていく。
ノクトの刃が、シアナの眼前へ突きつけられる。
「く……」
「さて。どうする、シアナ・シトレウムス。徒手空拳で私とやりあうか?
我が兵も随分消耗した。そろそろ決着を着けたいところなのだがな。
そうだな……」
ノクトは蒼黒龍を仰ぐ。
「ここで見世物でも行うか龍殺し。……この龍にお前を食わせる所でも見せれば
騎士達も戦意を喪失するだろう」
「……!!」
「おあつらえ向きと言っていいか、この龍は餓えている。今ならばさぞ残酷にお前を平らげてくれるだろう」
910 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 00:38:42 ID:wQU0vruW
――行け、と。
ノクトが顎を動かしただけで、蒼黒龍はシアナ目掛けて動き出す。
巨体の影がシアナを覆う。死神がシアナを覗き込んでいる。
その眼は血に餓えた獣よりも貪欲に龍殺しを狙っていた。
刻印の呪いによりその凶暴性は増幅されている。獲物は龍殺しの刻印を持つシアナ一人。
龍の口が開く。連なった牙は鋸のように、舌は血潮よりも紅蓮。感じたのは死ではなく、地獄。
間近で感じた吐息に、全身が凍る。
直感する。食われたら地獄より苦しい痛みが全身を貫くだろう。
「……ッ」
咄嗟に傍にあった剣を掴む。戦闘に倒れて動かない部下の剣を。人の身になれば凶刃な刃も、
死神を相手にするには、あまりにも細い剣。奴の殺戮の牙を砕くにはあまりにも脆い剣。
今のシアナには、目の前の死神を穿つ力さえない。
(どう……すれば……っ)
フレンズベルの騎士達は飛来する龍騎兵を相手にするので手一杯だ。
周囲の者は誰もシアナに手を貸せる状況にない。
シアナは一人、黒き龍と将軍と向かい合った。
これほど迄に、死期を傍に感じたことはない。
私はもしかしたら、死ぬかもしれないと、シアナは思う。
だが、そうだとしても、やはり私は――
911 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 01:52:25 ID:wQU0vruW
その頃。
高笑いをしながらファーガスは空を遊回していた。
地面を這う騎士達の攻撃を巧みに回避し、攻撃を浴びせる。
バタバタと人が倒れていく様は壊れた玩具のようで滑稽で、この上ないほど愉快だった。
「ヒ、ヒッヒッヒ……ヒャハハハ!! ほらほら!! 情けないですねえ!! 這い蹲りなさい!!」
「ぎゃあああ!!」
「うわああああっ!!」
「ヒャハハハア!! いい悲鳴ですねえ!! 清々しますよ、ヒャハアハハハアハ!!!」
あの小憎らしい女騎士にも、この刃を浴びせたい。
自分の手で殺してやりたかったが……まあ仕方ない。あの女は化け物だ。
迂闊に手を出したらこっちが殺られちまう。まだあいつは生きている。奴が半死半生になった所で
また戻って、たっぷりとこの剣を味合わせてやる……!
それまでは退屈だが、ま、その分、こうして気に食わない虫けら共を殺せるんだからな、
思う存分、戦を楽しませてもらうぜ!!ヒャハハハハハアハ!!
「楽しそうですね」
「……何」
のんびりとした声が戦場の空に響く。
ファーガスが下を覗くと、そこには見知った顔がいた。
リジュ・ゴールドバーン。
第四騎士隊の隊長だ。
敵の攻撃を掻い潜り、ファーガスを見上げる。
いつもと変わらないアルカイックスマイルを浮かべて。
「ちっ……テメエかよ」
「ふふ、すいません。僕ではご不満でしたか」
「……」
「その龍いいですね。快適そうですし。僕も乗れますかね」
調子の狂う野郎だ。俺は敵なんだぜ、こいつ分かってんのかよ。
それともまさかワザとやってんのか? まさかな――。
ファーガスは何となくリジュが好きではなかった。
シアナに対する、何か屈折した憎悪とも違う嫌悪感――苦手意識のようなものがあった。
その正体はファーガス自身にもよく分かっていなかったが……。
ファーガスは双剣をリジュに向ける。
912 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 01:59:55 ID:wQU0vruW
「丁度いい。前々からお前のこと気に入らねえと思ってたところだ」
「そうなんですか……」
「うぜえんだよ。いつもヘラヘラしやがって。ボケ野郎が。不気味なんだよ――!!死ねええ!!!」
「… … …」
そこで声を落として、リジュは何か囁く。
その声があまりに小さかったので、ファーガスは聞き取ることが出来なかった。
否、もしかしたら彼の口から出るにはあまりに意外すぎて、言葉として認識できなかったのかもしれない。
断末魔。龍の血が噴水のように空を埋める。
「……へっ?」
そうして気付いた時には、騎乗する龍の両翼は共に引きちぎられ、真っ二つにされていた。
龍が地上に落下する。支え手を無くしたファーガスも当然落下する。
だが蛇は咄嗟の機転を利かせ、着地をなんとか両足で行ってみせた。
「……っ、なん……!!」
頭は未だ混乱したまま、何が起きたのか分かりかねたままで。
そのファーガスを前にして
「Аεμοτε ιναι σαν να μαχα ιρι」
口詠呪文が高速で紡がれる。
「Οδνγησε σε θ ανατο」
美しい単語の羅列。
「Πυροβ ολησ ュ σα σ」
入りこむ余地も邪魔する隙さえそこにはなく
「 Ελα, ελα」
芸術にまで高められた詠唱の域がここに。
「Ο θ ανατο σ του αν εμου」
そして――彼はファーガスを見上げた。
913 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 02:01:16 ID:wQU0vruW
透き通る紺碧の眼に、対峙する敵を宿して。
術が間髪いれず発動する。
痛みさえ感じさせないほど鮮やかな捌き。
ファーガスは、自分の腕に目をやってそこで初めて気付く。
自分の片腕がないことに。
「ギャアアアアアアアアアア!!おお、俺の腕があああ!!」
「おやおや、そんなに痛がらないでくださいよ」
じゃり、と砂を踏みしめながらリジュはファーガスへ近づく。
「まだたった、一本でしょう? それにまだあと右腕と脚が健在じゃありませんか。ね?」
「ぐうううっ……」
「それにまだ喋れるようですし」
「は、はっ……ぐは……うぇ」
「そうだ、ファーガスさん。言ってましたよね。僕が気に食わないって。ふふふ、よかった」
ファーガスを見下ろしてリジュは言った。
「僕も貴方みたいな頭の沸いた裏切り者は大嫌いです。虫唾が走る」
いつもと、変わらない笑みで。
「……目には目を、歯には歯を、裏切りには裏切りを。そして卑怯な蛇には――」
手がファーガスに翳される。
「制裁を与えてあげましょう」
ファーガスは、リジュに対しての感情の意味を知る。
……そうか。これか。どうりで気に食わないわけだ。
なんて野郎だ、畜生、……これじゃまるで……。
「さよなら、ファーガスさん」
支援
支援
支援
917 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 02:11:37 ID:wQU0vruW
>>901 不意打ちで吹いた
>>903 今回はあんまり龍に乗った人々が活躍しなくてすまない…
次からは活躍させられると思う多分!
騎士もクローズアップしたいね…また長くなっちゃうけど
感想ありがとう!
918 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 02:20:12 ID:wQU0vruW
>>904 鰤ー知!!
というかファーガス!
意外な人物を気に入ってくれてびっくりだ。
展開的にファ涙目な感じですが突き進めさせたいです。悪道!
>>905 的を射た発言をありがとう。
何から何までまさしくその通りだ……!
キャラ作った時からリジュは怒ると怖い人と決めていたんだ…。
>>906 こんばんは来ましたよー
下手したらゴールデンウィークまでかかりそうな勢いだけど
早めに終わらせるよう頑張ります!
支援して頂いてありがとうございました…それでは!
919 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/26(木) 12:14:55 ID:txKCE1xy
リジュ怖えええええええええええええええええええええええええ!!!!
正直悪魔の騎士より最凶だと思いましたお母さん。
でもカッコイイな爽快!
呪文本格的だよね、これどうやって発音すんの?
920 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 19:04:00 ID:wQU0vruW
>>919 普段温厚な人ほど怒ると怖い法則!!
リジュの見せ場が今まであんまりなかったので面目躍如させてみたよ〜
好評なようでよかったよかった
呪文はギリシャ語なのでギリシャ語読みになります。
文字をこんな感じでα→a
対応するアルファベットに変換してそのまま読めばおK
小さいユは文字化けなので読みとばして大丈夫
支援
支援
支援
選ばれし者が持つという第三の眼。詳しくは下記の原文を参照。
転じて、子供の頃に考えたような痛い妄想設定のことを総じて「邪気眼」と呼ぶこともある。
原文
中学の頃カッコいいと思って
怪我もして無いのに腕に包帯巻いて、突然腕を押さえて
「っぐわ!・・・くそ!・・・また暴れだしやがった・・・」とか言いながら息をを荒げて
「奴等がまた近づいて来たみたいだな・・・」なんて言ってた
クラスメイトに「何してんの?」と聞かれると
「っふ・・・・邪気眼(自分で作った設定で俺の持ってる第三の目)を持たぬ物にはわからんだろう・・・」
と言いながら人気の無いところに消えていく
テスト中、静まり返った教室の中で「うっ・・・こんな時にまで・・・しつこい奴等だ」
と言って教室飛び出した時のこと思い返すと死にたくなる
柔道の授業で試合してて腕を痛そうに押さえ相手に
「が・・・あ・・・離れろ・・・死にたくなかったら早く俺から離れろ!!」
とかもやった体育の先生も俺がどういう生徒が知ってたらしくその試合はノーコンテストで終了
毎日こんな感じだった
でもやっぱりそんな痛いキャラだとヤンキーグループに
「邪気眼見せろよ!邪気眼!」とか言われても
「・・・ふん・・・小うるさい奴等だ・・・失せな」とか言ってヤンキー逆上させて
スリーパーホールドくらったりしてた、そういう時は何時も腕を痛がる動作で
「貴様ら・・・許さん・・・」って一瞬何かが取り付いたふりして
「っは・・・し、静まれ・・・俺の腕よ・・・怒りを静めろ!!」と言って腕を思いっきり押さえてた
そうやって時間稼ぎして休み時間が終わるのを待った
授業と授業の間の短い休み時間ならともかく、昼休みに絡まれると悪夢だった
ラ・ヨダソウ・スティアーナらよだそうすてぃああな(ウェブ)
ラ・ヨダソウ・スティアーナに関する求人情報
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募集内容:システムエンジニア/プロジェクトマネージャー(金融分野)
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転職ならリクナビNEXT
ラ・ヨダソウ・スティアーナを含むキーワード
邪気眼
別れの合い言葉、意味はない。
862 :('A`) :05/02/25 21:20:29
大学の食堂で国際情勢のニュースを見るたびに(主に戦争関連)
「それが世界の選択か・・・」と寂しそうに呟き、携帯で電話するフリをして
「俺だ、○○(大統領等の名前)はどうやら俺達とやる気らしい・・・」等とほざいて
「あぁ、わかってる。あいつなりの考えだな。ラ・ヨダソウ・スティアーナ(別れの合い言葉、意味はない)」
と電話を切り、寂しそうに飯を食う。というまわりの奴らに脅威を与えるのをやってた。
926 :
n:2009/03/26(木) 23:22:19 ID:s+nOtcxz
「Εμε?? θα αναθ?σει」
927 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 23:43:52 ID:wQU0vruW
リジュの手から風が生まれた。
疾風の烈波は衝撃波となって空間を一閃する。
たちどころに空気を切り裂いて、ファーガスへと迫り来る!!
光に届くような業風。それがまるで、コマ送りのように見えた。
……ふざけるなよ。こんな所で殺されてたまるか。
まだあの女を殺してないっていうのに、死ねるかよ――!!
死を覚悟できないまま、遅い来る波がファーガスを包み込まんとした刹那。
漆黒の影がファーガスの前に立ちはだかった。真空の刃に飲み込まれた二人の視界は白濁する。
その最中、風が――残酷な狩り手として二人を食らう!!
「ふっ!!」
それを、影は、――斬った。
文字通り、刀で一文字に切り裂いた。
波を真っ二つに断たれた風は、分断され、軌道を変える。
凄まじい勢いで駆けていき、後方で爆発を起こした。
砂煙が舞い上がる。
砂の霧が晴れ、影とリジュは向かい合った。
928 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 23:46:07 ID:wQU0vruW
「……貴方は、ファーガスさんのお仲間というわけですか」
「……」
「ふう。答えるつもりはなさそうですね。名を名乗るのが礼儀なのでご挨拶します。
僕はリジュです。一応こう見えても騎士なんですけど――名前を伺ってもよろしいですか?」
「……」
聞いても無駄でしたか。そうリジュが思考した後、
影は薄手の装束を風にたなびかせながら、よく通る声で言った。
「我が名はシチリ。ノクト様に使える従僕だ」
「従僕……ね、どちらかというと諜報員さんというか忍びの方に見えるんですが……まあいいです。お聞かせ頂きありがとうございました」
「礼はいらぬ。貴様はここで死ぬのだからな。この地を貴様の墓場としてやろう」
「それは、ちょっと遠慮したいですねえ……僕の風を刃で斬るとは……どんな魔法を使ったんですか?」
リジュはニコニコとしているが、口調とは裏腹にあの一撃は本気で放った。
シチリはそれを刃で切り裂いて、防ぎこうして向かい合っている。
う〜ん成る程……中々やりますね、この人。
リジュは前方のシチリを見据える。
「魔法など不要。我ら影にとって風は我が身のようなもの。道筋を読み、軌跡を変えることなど己を掌握するのと同義よ。造作もないことだ」
「ほう……それはそれは」
忍びは駆ければ風。舞えば月。身を潜めれば影となる。
自然と一体になることが忍びの極意、と以前書物で聞きかじったことがあったが――
それは案外、本質を射た教えなのかもしれない。
現に目の前の忍びはリジュの生み出した風の太刀筋を読み、見事にそれを切り裂いて振り払った。
となると風は効かないですねえ、とのんびり考えるリジュ。
929 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 23:48:28 ID:wQU0vruW
シチリは、振り向きもせず庇ったファーガスに言葉を投げつけた。
「……行くがいい、蛇よ。まだ立てるのならばな」
「…………チッ、礼は言わないですよ」
「元よりそのようなものは不要だ。我が主は貴様の存命を所望されている。
後方へ退き、背の隊と合流するがいい」
シチリが全て話し終わる前にファーガスは駆け出した。遠くなっていく背中。
リジュははあ、とため息を吐く。
「ああ、行っちゃいましたか」
「追わせぬぞ。……奴を殺したくば私の屍を超えていくがいい」
じり、と構えあう二人。
「承知の上ですよ、シチリさん」
「惜しかったな。もう少しで裏切りものを抹殺出来ただろうに」
「ですね。ちょっと惜しかったですねえ。もう少しで殺せる所でしたのに」
尚余裕たっぷりに、微笑んでみせるリジュ。忍びはいけ好かないものでも見るような視線を浴びせる。
「ふっ、とんだ道化だな貴様、その笑顔の下にどんな獰猛な表情を隠している」
「いやいや、そんなもの隠し持ってませんよ。平々凡々な騎士隊長ですから」
930 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/26(木) 23:50:46 ID:wQU0vruW
「平々凡々? 戯言を……」
その時、ぱさりと音を立てて、忍の顔を覆っていた布が剥がれた。
正確には、<切り裂かれていた>
「……先程の風、断って尚、我が身まで到達していたとは……凡俗にそのようなことはできまい。貴様一介の騎士ではなさそうだな」
リジュが先刻生み出した風の刃は、シチリまで届いていたのだ。
シチリの白い頬を紅い一筋が流れる。
素顔を晒した忍は、心が凍るほどに美しかった。
「こんな綺麗な女性に刃を向けるのは趣味じゃない、とでもクーフさんなら言うんでしょうけどねえ……僕、結構鬼畜なので。
遠慮なく攻撃させて頂きます」
「――来るがいい」
言うと同時に影は飛ぶ。リジュの頭上から刃を振り降ろす。
リジュのフランベルジュがそれを受けて弾き返す!!
「ια μασ」 ―我は命ずる
その間も詠唱は続いていた。
剣を振るい、攻防を交わしながら、魔術を完成へと近づけていく。
「I φωσ」 ―光よ
「Απο την αλυσιδα και αρρωστνσετε」―仇を繋ぐ鎖となせ
931 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/27(金) 01:21:41 ID:CHojcVDM
呪文は完成した。
リジュの指先から放たれた光は白い糸を紡ぎシチリを覆う。白が黒を侵食する。
体に絡まってくる糸を断ち、逃れるシチリ。
着地し、動き出そうと足を前に出そうとして違和感に気付いた。
足が、動かない。
――見れば、地面に伸びたシチリの影を、糸が縛っている。影縛り。魔術、若しくは呪術の初歩的な攻撃呪文。
「これは……影を縛ったのか……」
「ご名答です」
だが、何故だ。私は放たれたものは確かにかわしたはずだ。
それなのに、どうして……。
リジュはシチリの疑問の答えをあっさりと口にした。
「不思議なことじゃありません。簡単ですよ、シチリさん。同時に同じ術を二個発動させたんです」
「な……っ」
「ちょっとひとつの術の錬度は落ちちゃいますけど、まあ使えなくはないですからね」
言うのは誰でも出来る。だが。
そんなことが果たして常人に可能なのか。魔術をひとつだけでも発動させるには凄まじい集中が必要となる。
それを易々と二つ発動させておいて、まだぴんぴんしているとは……。
衝撃的な告白をあっさりと言ってのける目の前の騎士に、底知れぬものを感じた。
自分が相手にしているのは騎士であって魔術師ではない。
剣を生業とする者の筈。
それなのに、何だこの桁外れの強さは……!
こいつ、一体何者だ……!!
932 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/27(金) 01:23:20 ID:CHojcVDM
「さて……シチリさん。そろそろ遊ぶのはやめにしましょうか」
風向きが変わった。向かい風がリジュを凪ぐ。
遊び? ……何が?
決まっている。先程の魔術の発動だ。同時魔術の発動という超絶技巧。
あれが、児戯に等しい、と目の前の男は言っているのだ。
では、遊びをやめたら、こいつは、どれくらいの本領を発揮するのか。
「ああ、それと。シアナさんから聞きましたよ。おそらく貴方でしょう。私達の根城に入り込んだんですってね――」
ざぶん。
水で作られた刃が、シチリの体を貫いた。
いつの間に、詠唱をしていたのか。
朧になっていく意識の中で、シチリは、「ああ」と思う。
そうだ、こいつは言っていたじゃないか。
同時に詠唱が出来る。と。――ならば答えは簡単。畢竟、あの呪文が開始された時に、
三つの魔術が詠唱されていたのだろう。
「鬱陶しい鼠には早々に死んでいただきます」
糸はまだシチリの影を留めたまま。
傷を塞ぐことも抵抗することも叶わずに、リジュの刃を全て受けた。
933 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/27(金) 01:24:59 ID:CHojcVDM
(ノクト、様……)
在りし日の幻影が瞼を過ぎる。
雨と、雷。棄てられた自分に手を差し伸べてくれた人。
シチリは孤児だった。孤児で、拾われた所が幼い殺し屋を育成している暗殺集団だった。
だがシチリは人殺しが元々好きではなかったし、組織の訓練方法やあり方にも耐えられなかった。
辛くて苦しくて、毎日が地獄のようだった。地獄の方がまだマシだと思うくらい。
だから抜け出したかった。そして逃亡した。
だが組織を離反した罪は重罪。追っ手が差し向けられ、毎日死と隣合わせの日々が続いた。
体も心も枯果てて、このまま死んでしまおうかと、自暴自棄になっていた所に彼が現れた。
たまたま馬を走らせに森まで来ていたノクトだった。ノクトはぼろぼろになったシチリを見て、言った。
「酷い有様だ。死にたいのか」
分からなかった。もう行く場所もなく、生きていても仕方がないと思える。
それでも自ら死を選ぶ勇気はとうとう生まれてこない。
首をゆるゆると振ると、ノクトは手を差し出した。
「ならば生きるがいい。……来い」
触れた手は暖かかった。その時、生まれて初めて、生きててよかったと思った。
それ以来、シチリはノクトに絶対の忠誠を誓っていた。
ノクトは自分を救ってくれた恩人だからだ。
だが理由はそれだけではない。
視界は混濁し、意識は朦朧とする。白い肌には刃が穿たれ、深く内部を抉った。
「ぐぶっ……ぅ」
生きろ、と仰ってくれたのに。
申し訳ありません、お役に立てませんでした。
どうか不肖の従者を御赦し下さい……。
私は、きっと、貴方が……
シチリは三度目の刃を受けて絶命した。
リジュさんマジぱねえっす
935 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/27(金) 01:29:12 ID:CHojcVDM
リジュは魔術で生み出した水の剣を消滅させ、空を仰ぎ見る。上空にはまだ何匹もの敵がいた。
「ふう、やりすぎちゃいましたね……さて、と」
相手が女性だろうと慈悲のひとつ掛けず殺戮する。
この男ならば容易いこと。
ファーガスは聞き取れなかったが、リジュは彼に、言ったのだ。
―じゃあ、僕は。
貴方に死すら温く思えるように蹂躙してあげますよ―
第四騎士隊隊長。
リジュ・ゴールドバーン。
滅多に見せぬ彼の冷酷な戦いぶりを知る者は一様に彼をこう呼ぶ。
疾風の死神――と。
936 :
夏みかん ◆6/YyOSVhvI :2009/03/27(金) 01:33:16 ID:CHojcVDM
それでは今日はこのへんで!また来ます
しえんサンクス!!
今480KB
938 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 10:54:55 ID:MP489Zfo
まあ、何とかなるっしょ
なつみかんさん乙
939 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 11:22:06 ID:8gbPUbyL
リジュさん・・・はもうなんか呼び捨てに出来ない感じだぜ・・・!
魔術最強だなー
しかし大学出てるってだけでこんなスゴイ術者になれるものなのかどうか。
ところで俺の姉貴がこれ見て
「リジュ様ああぁぁぁぁぁ!!」と悶えてるんだが。
腐女子にはたまらんらしいです。
影羅 †
中学生の頃、妹は二重人格だった。
なんでも、火を見ると「影羅(エイラ)」という魔族の人格が現れるそうで、
真っ暗な部屋の中で唐突にマッチを擦っては、
「……ヘヘ、久しぶりに外に出られた。この小娘は意思が強すぎて困るぜ(笑」
などと乱暴な口調で叫んだりしていた。
ある日、夕食の時に「影羅」が出たことがある。
突然おかずの春巻きを手掴みでムシャムシャと食べ始めて、「久々の飯だぜ(笑」と言った。
食べ物関係のジョークを一切許さない母が、
影羅の頭にゲンコツ振り落とすと影羅は涙目になっておとなしくなった。
それ以来、食事時に影羅が出たことは無い。
そして別人格とやらは、妹が高校に入った辺りでパタリと出なくなった。
最近になって、大学生になった妹にその頃のことを尋ねたら、
クッションに顔を埋めて、手足をバタバタさせてのた打ち回っていた。
1 番組の途中ですが名無しです 2006/05/18(木) 02:45:04 ID:6h57bk3G0 BE:?-#
エターナルフォースブリザード
一瞬で相手の周囲の大気ごと氷結させる
相手は死ぬ
64 番組の途中ですが名無しです 2006/05/18(木) 03:05:33 ID:77w+DCK80
サマーサンシャインバースト
一瞬で太陽を相手の頭上に発生させる
相手も死ぬ
103 番組の途中ですが名無しです 2006/05/18(木) 03:23:03 ID:25cSUirk0
インフェルノ・オブ・メサイア
冥界王ダーク・インフェルノを召喚し半径8kmの大地に
無差別に種を撒き散らしそれはやがて実を結ぶ
110 番組の途中ですが名無しです sage 2006/05/18(木) 03:29:00 ID:hRCqgQ2y0
ヘルズボルケイノシュート
死の世界から呼び寄せた闇の火弾をマッハ2でぶつける
相手は死ぬ
114 番組の途中ですが名無しです sage 2006/05/18(木) 03:32:52 ID:KCy4uKjK0
アルティメットインフィニティサンデイ
毎日が日曜日。相手は死ぬ。
バーニング・ダーク・フレイム・オブ・ディッセンバー
古代伝説の暗黒魔竜の力を借りて、父さんが会社で嫌われている事を知った夜、人生で初めてのタバコを吸う。
ティーガー・マシーネン・ピストーレ
悪魔と契約した博士が500年の歳月をかけて作り上げたメカニック・コスモ・マシンガン
薬きょうの中に材料をつめて使う。火・水・氷・雷・闇、と様々な物をつめる事ができ親戚の人達の前で就職してるような振る舞いができるようになる。
エンパイア・ステート・ビル
1931年に建てられた高さ443m、102階建てのビル。
相手は死ぬ。
フォン・ド・ウォー
肉料理に深いコクと風味を加える。
相手は死ぬ。
ジャッジメント・デイ
この世を終わらせる。
罪人も罪人でない人もすべて蘇り、生前の行いに従って審判を受ける日。
聖霊は人間を乗っ取り、火のような天使の軍勢が山河を埋め尽くす。
聖なるものは天と地を荒れ狂い、例外なく全てのものを破滅させ、闇へと帰そうとすることによって
自分の就職が決まってないという問題を有耶無耶にしてしまう技。
ヘヴンズ・ゲート
濡れタオルで相手のふくらはぎをひっぱたく
ノッキング・オン・ヘヴンズドア
就活で面接会場のドアの前まで行きながらノックもせずにその場を立ち去る大技
エターナルダークマンデー
一瞬にして月曜日にする
-真の覚醒- エンドレス・ジャッジメント
(「終わりなき審判の意」の意味)
条件:発動条件:クラトスから謎の薬を貰っていて、TPが999あることが前提条件。
全属性の最強晶術(アブソリュート以外の集中系複合上級魔術を除く)のカウントが200以上ある状態で、オーバーリミッツ時にメテオスォームを使う。
効果:マリンブルー色のタイダルウェイブ×2+蒼いエクスプロード×3→
土色のサイクロン×3→黒色のグランドダッシャー×2+緑色のインディグネイション×3→
深紅のアブソリュート×3→血色のプリズムソード×3→虹色のメテオスォーム→暗黒と光のジャッジメント(量二倍)×3を、
それぞれ順番に高速(ジャッジメントのみ超高速)で繰り出し、
その後、中国に伝わる神々の剣(玄武刀、青竜刀、朱雀刀、白虎刀、黄竜刀)を降らせ、
敵を取り囲む(4本の剣はそれぞれが位置する方角に刺さる。黄竜の剣は一番最後に、その中心に刺さります)
トドメに神々の力を解放して、(今までに出た全ての色を含んだ巨大な爆発を引き起こして)敵を死に導く無属性の秘奥義。
小学3年の夏、友達の家にあった雑誌で、初めて「ノストラダムスの大予言」を読んだ。
1999年、地球は滅びる。その頃はまだ1980年代。
と言うことは、まだ私が20代の時に地球は滅びる。
まだ10歳にもならない私は、かなりショックを受けた。
その日から毎晩1日もかかさず、寝る前、神に祈った。
最初は、布団の中で両手を合わせて祈った。
(神様、地球の滅亡をとめてください)
そのうち、祈る姿勢が悪いとダメかもしれないと考え、布団の上に正座して祈るようになった。
(神様、1999年の地球の滅亡をとめてください)
そのうち、ずっと同じ方向ばっかり祈っていると違う方角の神様が気を悪くするかもしれないと考え、毎日、東西南北変えて4回祈った。
(北の神様、1999年の地球の滅亡をとめてください)
(東の・・・)
そしてそれは、いつの日か8方角8回になった。
(南西の神様、1999年の地球の滅亡をとめてください)
祈りはどんどん進化し、それぞれの方角に変わるたびに両手を高くふりあげてお辞儀をしたり、そのお辞儀も、各祈りの前1回、後2回という具合に増えていった。
その他細かいルールがどんどん増えていき、最後の方では祈り終わるまで軽く5分はかかっていた。
夏なんか、うっすら汗ばむほどの運動量だった気がする。
こんな事を小学校を卒業するまで、約3年半毎日かかさず続けた。
親には「また始まった・・・」と気味悪がられ、弟には「くるくる地蔵」と馬鹿にされた。
それでも(こんな家族をお許しください!神よ!)みたいな気持ちで祈り続けた。
修学旅行の時もやった。
幸い、友達は減らなかったが、かわいそうな目で見られていたような気がしないでもない。
2005年現在、地球が無事なのはイタすぎる小学生の頃の私のおかげだと思う。
161 :番組の途中ですが名無しです :sage :2006/07/10(月) 05:41:44 (p)ID:P1A0IUaK0(3)
これは、この力は太古に神々により封印されし禁断の魔導奥義『エターナルフォースブリザード』・・・!
何故だ・・・、まさか・・・まさかこいつは・・・!!
「フフッ、ようやく気付いた様ですね。この私もあの聖言語と光波動による一万重の封印結界には手を焼きましたよ」
人の力であの結界を破る事は絶対に出来ない・・・。だとすれば・・・まさか・・・まさか・・・
「そう、私は最早人間などではない・・・!亜時空サヴァルカントに君臨する暗黒魔龍王ヴァルクーゼ。その力を乗っ取らせていただきました」
やはり、やはりそういう事だったのか・・・!こいつの全身から溢れ出る凄まじいまでの冥獄波は・・・!
「エターナルフォースブリザードだけではありません。こんな事もできますよ」
瞬間、俺の後方に聳え立つ山々が凄まじい炎熱に包まれ・・・そして消滅した。
「煉獄炎火灼鎌、あなたには『メギドの火』と言った方がわかり易いでしょうね。私にとって地形を変える程度ほんの指先一つなのです」
クッ・・・!こいつは・・・、こいつはこんな物まで操作できる様になっていたのか・・・!
「さあ、あなたも真の力を顕して下さい。その『邪気眼』の真の力をね。ゲームは一方的では面白くありませんから。フフッ・・・」
邪気眼・・・その真の力を開放する・・・その意味は俺にもわかっている。
かつての邪気眼を持ちし者は、力を開放した時その膨大な気を制御出来ず、精神が消し飛んだ。
この俺の居る現界を破壊し尽くし、果ては神界までも崩壊寸前までに到らせた・・・。
あの惨劇を繰り返すことは出来ない・・・。俺は失いたくない、この世界を。こんな俺でも受け入れてくれたこの世界を・・・!
だが・・・、今の俺の力でこいつに勝てないのは事実・・・。今こいつを倒さなければ、全ては終わる・・・。
邪気眼の力の奔流に俺が耐え切れるかはわからない。
それでも・・・やるしか・・・やるしかない・・・!
邪 気 眼 開 放 ! ! !
つづく
一方その頃。
第一騎士隊と第五騎士隊は方円の陣を組み、龍騎兵と戦っていた。
敵の兵力も少なくなってきたものの、それは騎士隊とて同じ。
次々に隊員が倒れ、地面に伏していく。
騎士隊の人数が敵勢力より劣るという点で、明らかな劣勢にも関わらず騎士隊は善戦していた。
個々の実力ならば、ゴルィニシチェ兵よりも実戦慣れしているフレンズベル騎士隊に分がある。
数が互角ならば負けはしない戦いだったであろう。しかし数も兵力の内。そのような泣き言は言っていられない。
「はあっ!!」
第一騎士隊隊長ビィシュの奮迅は烈火の如し。
圧倒的な剣裁きで次々と敵を屠り薙ぎ倒していく。
フレンズベル騎士隊の中で最上位の位に位置する騎士隊、それが第一騎士隊だ。
そしてその選りすぐりの精鋭達を率い従えているのが、この青年、ビィシュ。
シアナの俊敏な戦い方とも、エレの狂乱の戦いとも異なる、熟練された戦い方がそこにあった。
空から龍騎兵達がビィシュを狙い降り注ぐが、それを物ともせず円を描くように剣を薙ぐ。
最短角度を持ち急所目掛けて突き出された刃は、易々と龍の翼を斬り落とす。
「キイイイ!!」
「ぐああああっ!!」
兵と龍の悲鳴が重なる。落下する二体。地面に墜落し、動かなくなる。
ビィシュの攻撃は無駄の一切ない、滑らかな動作だ。鋭敏でいて、それでいて艶やかである。
それは戦いというよりは舞を思わせる。
その動作だけとってみれば、剣舞としても通じるであろう。
銀の剣が弧を描き、迫る姿は戦場に現れた玉兎――白い月。
ビィシュの二つ名は「白月」といった。
「ヒュー、中々やるねえ。さっすが第一隊の隊長サマ」
「クーフ、軽口を叩くな。やられるぞ」
「はいはい。わかってますよ、っと」
背後から斬りかかって来たゴルィニシチェ兵を、クーフの剣が一太刀の下に切り伏せた。
「ぎぅうああああ!!」
「はいはい、うるさいよー、次行こ次!!」
クーフも常日頃は、女性に目がない軟派師として悪名(高名?)高いが、剣を持てば立派な騎士である。
それも二十四ある中の五番隊隊長。とくれば実力の方は折り紙付きといっていい。
珍しい流派の剣術を使うのだが、その動きが曲芸めいていてトリッキーな為に
普通の者ならば打ち合う所までいけず翻弄されてしまうのだ。
普段お茶らけた所が多いので、あまり注目されないのだが、戦闘技術だけとってみれば隊長の中でも
かなり上の位だろう。――何故その彼が五番隊隊長に甘んじているかというと、普段の素行の影響が大きかった。
それでも別に構わないと本人は思っている。
無駄に強いランクに配属されれば、その分気苦労が増えるだけだから。
だって俺楽しくやりたいし。まだ死にたくないし? 老後はハーレムで暮らしたいし。
などと考え、現状に満足しつつも煩悩を膨らませていた。
「それにしても敵、まだまだうじゃうじゃいるねえ〜。シアナは大丈夫かな?」
「死んではいないだろう。そう簡単に死んでもらっては騎士として汚辱だ」
「はー。相変わらずクールだこと、シアナが死んだらこの騎士隊女の子ゼロよ? 悲しくない?」
「それがどうした。ここで死ぬようならそれまでの実力ということだな」
「……なんつー薄情者」
「自分よりも強い相手の心配をするな。今はこの地を守り敵を排除することだけ考えろ」
「はいはい、了解っと」
背中合わせに敵を確認すると、二人は同時に跳び出した。
そろそろKBやばいね
次スレ立てた方がいいかな
947 :
創る名無しに見る名無し:2009/03/27(金) 20:22:35 ID:MP489Zfo
次スレどうしようか?
出来れば過疎らないように中二病限定では無いほうがいいんだけど、何かいい設定無いかな?
【邪気眼】「」【いちおくえん】★3
>>947 スマソ次のスレだいたい同じ名前で立てちゃった…
>>934 登場人物の中で多分一番怖い人ではないかと
>>938 ありがとう!!
>>939 うおう凄く嬉しい!お姉さまによろしく!!
リジュ沢山出せるように頑張ります。
一応リジュの設定についても色々考えているので、おいおい書いていきたいです
IDがいいなあ。MPが489もあるよ。うらやましい
>>941 即死が多くて伊右衛門吹いた
これは面白い
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
│好きな人と綺麗な夕日を眺めていられるなんて│
\_______  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
│何だかとっても幸せな気分です、シドさん │
\___ ____________/
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',:::::::::::_....-‐ 7 ̄| ̄‐-.../
\イ/:/ ノ |/| / ―-\|ゝ ____________
ノ |' |/| / |/ ==、/ | /
く | | !/"" ' """l | < 本当に…ありがとうございます
} ヽ \ ー‐ ' ノ \
ノ \_ゝ‐- ― ∠/  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ ヾ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}
/ /\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ノ、
| / `ー- ──" ',
( ノ ' //´⌒ヽ⌒ヽ、 |
`ー' | / |:.::..:.:..ノ、:.:.:ノヽ|
) 、 ' `ー‐'/、 ̄ ノ
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'´,,==ヽ
|´iノハルト〉
j l| ゚ -゚ノ| <修羅となれー
,⊂リ;春jリつ
( (ノ爻爻ヽ
`~じソ~´
______
\| (___
♪___ |\ `ヽ、 ♪ ♪
'´,,==ヽ \ \ ♪ ♪
|´iノハルト〉 \ 〉 ♪
. i l| ゚ー゚ノ| ♪ \ /
j つ| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄! ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ノ
( 匚______ζ--ー―ーrー´
|| ||`~じソ||´ || .||
名前 ハルトシュラー【はるとしゅらー】
解説 謎の芸術家。
出身地や生没年代はおろか、性別すら不明で諸説ある。
小説、絵画、音楽、料理に至るまで様々な分野で膨大な量の作品を遺すが、
自分のことについては一切を明かさなかった。
後に「創作家は作品でのみ語るべき」という運動が起こり、
「ハルトシュラー主義」と呼ばれた。
近年、彼(彼女)のものと思われる作品が多数見つかり、
インターネット掲示板を中心に公開されている。
2008年11月末、創作発表板・雑談スレの何気ないネタ雑談から突如誕生したキャラクター。
元々は「貼ると修羅(「春と修羅」に引っかけた洒落)」というレスに対して
「ハルトシュラーって作家、実在しそうだよな」という話になったのが発端だが、
あれよあれよという間に次々とキャラ設定が作られてしまいには専用スレまで立ってしまった。
魔王だったり音楽家だったり享年2年だったりドイツ人だったり美少女だったりするが、
自身の設定すら創作できるため、結局のところ全てが謎ということらしい
ウルトラマンが悩みを聞いてあげるスレッド
1 ('A`) New! 2005/05/20(金) 21:05:58 BE:83277874-#
/ || :ヽ
┌|(⌒ヽ :|| ..:⌒: |┐ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|::|::ヽ.__:):||(___ノ ::|::| │
|:|: .. :|| .. |:| │
:|: .. || ..|| < ジュワ!
:\ [_ ̄] /::| │
:: |\|_|_|_|_/:::| \________
2 ('A`) New! 2005/05/20(金) 21:06:49
ジュワワワジュワワ、
ジュワジュワジュジュワワワワワ?
3 ('A`) New! 2005/05/20(金) 21:07:27 BE:107071294-#
/ || :ヽ
┌|(⌒ヽ :|| ..:⌒: |┐ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|::|::ヽ.__:):||(___ノ ::|::| │
|:|: .. :|| .. |:| │
:|: .. || ..|| <
>>2日本語でおk
:\ [_ ̄] /::| │
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/ /´ -‐…‐- .`\
/ /´ i !`ヽト、
. ,ヘ ,' i ! ! | |i |ハ i ヽ キリッ
/ ゝ! ノ| ! !::__!::ノ ´  ̄ i::.i |!
\ .| .:i i :i i |´ \ / `!、ハ:!
`ヽi 从 i i | ニニミ .ニニ !:::::| <まピョーん☆ 豆食え、豆。 大自然のおいしさを表現しました。
. | YハiハN {r::リ` ´{r::リ '::::N
. | ヽゝ ´´ ``ハ!`
. |∧ Y! ′ ,':::|
j/∧ _!::} 、 ⊂' ..イ:::::|
///∧´ ∨ ` ,.... ィ´゙Y:::::|
. /////∧ ヽ {ト、∧ |::::::!
,< ̄ ̄∧ } `ヽ >''} { ̄`ヽ
_ ___
,. :'´: :,. -―‐-ミ:ヽ、
/: : : :厶ィ': ´ ̄ ̄ヾ : :\
/: : : : : :.!: :M: : : : : }、: ヽト、:.\ <じゃっておwww
i: : :.!: : : レ‐' ` ̄⌒ ⌒" トヘ:ハ!
ト--|: : :.!: : 、| ー‐'' ´ `'ー }: :.ト
ミ ミ ミ : :!: : : :! z=≡ ≡z.{: :.ハ ミ ミ ミ
/⌒)⌒)⌒.ハ :_Nとつ \\\ C VVリ /⌒)⌒)⌒)
| / / /:弋こ \ヽ __,. } (⌒)/ / / //
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ヽ / ヽ ヘ,、 _「 |::!:::::} / / バ
| | l||l 从人 l||l.!::|イ:::ヽ_./ l||l 从人 l||l バ ン
ヽ -一''''''"~~``'ー--、/:::::イ; -一'''''''ー-、 ン
ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ):::/} (⌒_(⌒)⌒)⌒))
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