1 SSは要項抜粋の短編、小説型長編のどちらでも可。内容はシリアスでもギャグでも大歓迎です。
2 心無いレスは控えましょう。
職人方々がやる気を無くし、スレの雰囲気が悪くなります。
3 作者叩きは、禁止。
何か意見等があれば「○○の部分が、□□のようにおかしい」 「△△のような書き方は気をつけた方がいいと思う」 等、
言いたいところをできるだけ丁寧に書いてレスして下さい。 より良い作品・スレ作りにご協力下さい。
「面白い」という意見も、ただ「乙」など一言でも結構ですが、
「××がよかった」「○に感動した」とか書き込むと、 職人方々にとっては何よりの応援になります。
荒れそうな議論、突っ込みがあった場合は避難所の考察スレをご使用願います。
避難所考察スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5513/1146160497/ 4 荒らしに反応する人も荒らしです。徹底スルーでお願いします。
反応すると被害が拡大するどころか、削除依頼等が通りにくくなるので注意しましょう。
5 SS職人、絵師の皆様は常時募集中。
前スレ
学園島戦争 開始24年目
http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/army/1220159759/
前スレの流れ
458 名前:名無し三等兵 投稿日:2007/12/26(水) 16:10:47 ID:???
同じトリップだからタイフーン本人だと思うが
ノベルゲームつくるってスレで自殺宣言してまとめ役放棄していなくなったんだけど
こいつって今までも自殺するとか言ってたりした?
460 名前:名無し三等兵 投稿日:2007/12/27(木) 15:13:17 ID:???
>>459 もう1ヶ月くらいたつけど自殺宣言してから一度も来なくなっちゃったんだよね
それまでは毎日来ていたのに
462 名前:名無し三等兵 投稿日:2007/12/27(木) 18:31:10 ID:???
今のタイフーンのトリップでぐぐったらすぐ出てくる
「魔法少女VS現代科学のノベルゲーム」ってところ
最初のころはタイフーンと名乗って書き込みしてたこともあったけど
基本的には1084飛行隊って名乗ってた
9月からやってたんだけど12月のはじめに自殺宣言したかと思うと
避難所のログ全部消してリセットしてったんだよね
だから記録も12月より前のはほとんど残ってないんだ
465 名前:名無し三等兵 投稿日:2007/12/27(木) 22:03:55 ID:???
外部掲示板のデータ消していなくなったんだったらそっちのトリバレどころかパスワードも知ってるってことだから
企画を向こうに立てた最初からずっとトリバレしていたか、それともやっぱり本人かのどっちかだろうけど
ぐぐってみた先の向こうのやつがSSとか見る限り本人っぽくも見えるんだよなぁ
本人が現れないことにはどうしようもないけど
なんか向こうに遺書とか書き残して消えたらしいね
466 名前:名無し三等兵 投稿日:2007/12/27(木) 22:35:57 ID:???
避難所のデータ消したってことは自殺宣言したのがタイフーン本人なのは間違いないな
VIPで活動してるとは言ってたし
その避難所作ったのがタイフーン本人だもの
474 名前:名無し三等兵 投稿日:2008/01/04(金) 03:12:13 ID:???
調べてみた。自殺騒動ってこれのことだね。1084=タイフーンというのは間違いないみたい
【絵師】魔法少女VS現代兵器のノベルゲームを作る【募集】
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1196514330/ 472 名前: 1084飛行隊 ◆sePHxJrzaM 投稿日: 2007/12/02(日) 23:00:05.80 ID:63d4sYe10
みんなごめんなさい。
責任取って自殺してきます。
481 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/12/02(日) 23:07:37.58 ID:RiZhRRERO
避難所に行ってきた
あのバカ、あれで遺書のつもりか!
--------
避難所に遺書を書き残し、その後、避難所の掲示板をリセットしたようで。
遺書の内容もどっかにコピペされてるんじゃないかな
なんかVIPで専用スレまで建ったりしたみたいだし荒れたみたいだね
1が自殺したようですwwwwww
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1196641506/ ま、どうしたものだか
VIPでタイフーンに協力していた絵師の意見を引用
やめた身だけど、意見させてくれ。見流す程度でいい。反応も求めない。あ、mfmtだ。
自分がやめたのは、こういう流れを見て主催の力量を見てしまったから。
>>1よ、なんでこの企画をうちだしたんだ?
思うに、ポッと思い浮かんだストーリーが頭の中でドンドン展開して
一人で感動してそれを形にしたいと思ったからなんだろ?
でも自分じゃプログラムも、絵も、話も作り出しきれない。
だから誰かにやってもらおうって気持ちから生まれたってとこだろ。違うか?
>>1にとって、所詮脚本家やプログラマや絵師は駒にすぎないって
どっかで思ってる節あるだろ。自分の世界観を壊されたくないと言ったな。
それって皆で作るって言えないんだよ。作らせてるって言うんだよ。
それなのに
>>1は、皆が知りたがってることを納得するまで説明できない。
一部曖昧な部分に関しては練ろうともしない(ように見える)。
そのくせ駒ばかり集めようとするわ、少しでも世界観に手が出されようものなら
全力で排除しようとするわ
現状はどうだ。もう自分から丸投げじゃないか。
話もよくわからないゲームに、興味持って集まったのに意見は通されないわ、
あげくもういい帰れと言われてだれがついてきてくれる?
私生活のゴタゴタとかこっちには毛ほども関係ないんだよ。
やるのかやらないのかどっちかだ。
やらないなら早いうちにやめたほうがいい。厳しいこというようだけど。
一介のヘタレ絵描きが口を挟んだ
161 :1084飛行隊 ◆sePHxJrzaM :2007/12/02(日) 01:50:04.79 ID:63d4sYe10
>>159 無線と混線してるって設定にしてる。
つーか、俺一人で設定考えるのは無理だから誰か協力してくれるとありがたいです。
162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:50:12.22 ID:yIG2+HPz0
>>150 今からでも遅くないからとりあえず魔法がどういうものであるかだけは、
しっかり、それこそごり押しでも決めないと話がまるで進まないんじゃないかな
とりあえずは「様々なかたちで引き起こされる現象」とあるけど、
「最強魔法使い、地球を爆発させる魔法を使える上に毎日使う、主人公のマブダチでヒロインとも親しく〜」
みたいな滅茶苦茶な設定がきたらどうすんの?ってことになるだろ
163 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:50:15.64 ID:ttS2DrOv0
すぐ熱くなって当り散らすのが悪い癖だな
人も寄り付かなくなるぞ
>>160 お前なんか俺の知り合いに似てるな
言えばいいって言っておきながらいざ言われたら後でブツブツ文句いうんだろ
165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:51:01.54 ID:p3US1jmj0
>>160 悪口っていうか事実
166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:51:39.69 ID:lkEDeYSn0
作品書き上げた事あるのに設定やプロット一人で考えるのは無理って、それはないだろ。
自分一人でもできるけど皆で考えよう、ってのなら別だけど
167 :1084飛行隊 ◆sePHxJrzaM :2007/12/02(日) 01:51:52.28 ID:63d4sYe10
>>163 ごめん、実生活で我慢することが多いからこっちだとファビョりやすくなってるみたい。
168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:52:37.04 ID:p3US1jmj0
>>161 見る限り現行のプロットじゃむりぽって意見が多くね
169 :1084飛行隊 ◆sePHxJrzaM :2007/12/02(日) 01:54:36.28 ID:63d4sYe10
>>162>>166 できないんです・・・できないんですよ・・・助けてください。
158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:44:23.86 ID:p3US1jmj0
>>153 文ならそれじゃぜんぜん足らない
>>154 あるある。働き手はほしいけど仲間はいらないって感じ
159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/02(日) 01:48:54.45 ID:eYX8UdyT0
あとさ、プロットを見る限りさ、主人公と魔女っ子が戦いながら会話してるっぽいんだけど、
会話方法ってなんなの?
あと、ここらへんの知識が無いからよう分からんが、コクピット内って説得できるほど長時間会話できるものなの?
160 :1084飛行隊 ◆sePHxJrzaM :2007/12/02(日) 01:49:17.28 ID:63d4sYe10
>>158 どうぞ、好きなように私の悪口を書けばいいでしょう。
そのためにここに来てるんでしょ?
わざわざ空気悪くするために!
475 名前: 丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM [sage] 投稿日: 2008/01/04(金) 22:34:38 ID:???
ただねえ、軍板にいた頃はこういうことするような方では無い感じだったので
にわかには信じがたいのも確かなんですよね。
前にもちょいちょいトリップ割られたことありましたし。
476 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/01/04(金) 22:56:04 ID:???
確かにちょっと無茶がすぎるというか
行動が突飛すぎる気がするんだよなぁ。
おさらいでもしながら待つかい?
477 名前: 丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM [sage] 投稿日: 2008/01/04(金) 23:26:54 ID:???
>>476 件のスレ読まずにこういうこと言うのもなんなんですが、
>>474の当該書き込みが何の経緯も無しにいきなりあったものだとしたら
何か突拍子過ぎるんですよね。
481 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/01/06(日) 01:22:49 ID:???
>>477 人としてどうかって行動を取ってもおかしくないのが
張り付いてたから、トリ割ってそれくらいのことはやりかねんのよねぇ。
厨も沸いてるし、もう少し静観やね。
490 名前: 丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM [sage] 投稿日: 2008/01/06(日) 23:09:44 ID:???
>>481 ただ、今のにしてから2年くらいは割れて無かったんでねえ。
そこらへんは本人に聞かないとなんとも言えないんですが。
とりあえず、待ちましょう。(何時まで? 来ないならどうする? という問題はありますが)
491 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/01/07(月) 11:31:08 ID:???
トリバレしてるとするなら、
避難所でタイフーンがVIPでやりはじめたと報告している去年の9月の時点ですでに中の人がちがうのだろう
さすがに、トリバレの上、
あの企画でタイフーンが独自で借りていた外部掲示板のパスワードまで
同時に割れるということはありえんし
すでにVIPのほうの企画スレとやらも見かけないし
もはや行方不明者だな
ひょっこり戻ってくるのかもしれんが
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:30:18.30 ID:03a6/8MxO
わかりやすく言えばリンク先のゲーム製作スレで住人を駒扱いして妄想作品作ろうとした精神病患者がスレ住人から袋叩きにされて自殺
それでスレ住人大喜び
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:31:10.85 ID:03a6/8MxO
このスイーツ(笑)なスレ住人のこと
【絵師】魔法少女VS現代兵器のノベルゲームを作る【募集】
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1196514330/ 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:33:18.81 ID:tqNW6O4e0
うわぁ……見てて胃が痛くなる……
もろに職場じゃねえか……
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:33:19.18 ID:03a6/8MxO
たかがゲーム製作で自殺する奴はバカにされて当然
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:36:28.57 ID:03a6/8MxO
>>21 嫌われ者の1084飛行隊が追い込まれていくさまは痛快だけど
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/03(月) 09:37:13.93 ID:tqNW6O4e0
気分がいいもんじゃねーよやっぱりさぁ……。
嫌われ者のプロマネがちょうどこんな感じでさぁ……うわぁ……。
505 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/01/15(火) 12:00:20 ID:???
トリバレとか中の人が違う関連に関して私見
なりきりチャットというジャンルのサイトでは時々
自分の登録キャラクター(オリジナルであることが多い)の設定を全部コピペして
別のサイトに登録し、なりすまされるという「キャラ盗用」という行為が発生する。
それどころか、サイトのHTML構成をまるごとパクって殆ど類似か本物と
全く同名のサイトを立ち上げて、本物のサイトの管理人になりすますという
行為さえする人間が存在する。
本物のブログを「このブログ私が書いているから」と盗用サイトにリンクする事もある。
基本的に精神的にあまりにもアレ、異常な人がそうした行為をするわけだが
ちょうどタイフーン氏に粘着して何度かトリ割っていた「彼」ともかなり行動パターンは近い。
まあそういう部類の人間なんだろうけど。
自殺宣言したというタイフーン氏がなりすまされていたというには根拠が弱いが、
ネットストーカーの「彼」(ついでに「彼」の同一人物説も流れてる某コテ)の存在を考えると
黒に近い灰色な疑いになりそうな気がしてならない。
570 名前: タイフーン ◆sePHxJrzaM [sage] 投稿日: 2008/05/15(木) 23:29:53 ID:???
>>563 ただいま。
恥ずかしながら戻って参りました。
専ブラ、導入してみましたが便利ですね。
設定に関してですけれど、今のものをベースにある程度の改変を加える形にしたいと考えています。
学園同士の戦いは変えずに名前や校名を日本語では無くするとか。
設定決めの際には皆様のお力をお借りすると思うので、そこはよろしくお願いします。
しばらくは設定に関係なく魔法少女の軍事的考察や、学園モノ+軍隊の妄想を広げてもらえると助かります。
そしてここから新しい学園島スレの設定の練り直しが始まった
502 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/01/12(土) 13:31:02 ID:???
>>501 えらい勘違いしてすまなかった。
そう言うことなら、彼が戻ってくることを考慮した上で
1.リセットされても泣かない覚悟の上で肉付けを続ける。
(言うなれば帝政続行)
2.現状を原案として設定を取捨選択しつつもう一度組み直して
シェアワールドとしての竜骨を作る。
彼が戻ってきた場合には一書き手として迎える。
(言うなれば立憲君主制移行)
3.何時の日かの再起を願いつつ雌伏する。
(言うなれば亡命政権)
選択肢としてはこんなとこかね。
2は決定機関が不確定なので
gdgdになって自然消滅という危機を孕んでいる。
550 名前: タイフーン ◆sePHxJrzaM [sage] 投稿日: 2008/05/14(水) 20:43:18 ID:???
こんばんは。
>>548 一応、避難所の方にも書きましたので丼炒飯氏の方でIPを調べてもらえば本物だとわかってもらえるかと思います。
不都合がありましたらトリップは変更しますので言って頂けると幸いです。
>>549 身勝手なことになってしまいますが、
>>502の中では3を選択したいと思っています。
ですが、リセットした方がいいと言う方がいればそうしても構いません。
私一人で決められることでもないので、意見を下さると嬉しいです。
我が侭を言ってすみません。
566 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/15(木) 22:52:29 ID:???
>>563 学園で戦争モノだとガンパレード・マーチとかも入りそうだな。
初心者でも入りやすくする方法はどうしようか?
設定熟読したいとわからないところも大きいから、ホント大雑把に設定作ってみんなで後付けとかどうだい。
>>564 リンクが全部死んでるんだがどうしろと。
567 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/15(木) 23:02:02 ID:???
ソ連で魔法少女って督戦隊かよw
魔法少女の定義というか位置づけって戦闘機?それとも武装ヘリとか?
つーか魔法の特性も決めんといかんのかこれ。
569 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/15(木) 23:26:34 ID:???
>>566 大雑把に世界観とか基本の枠組みとかお約束だけ作って、
作者によって話が違うってのが棲み分けができて
一番良いかもしれない。
>>567 戦車だったり襲撃機だったりもしたと思う。かなり潰しが効いた。
導術兵とか保温機能を持つ炊事兵な魔法少女は考えた事がある。
571 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/15(木) 23:32:01 ID:???
>>569 わかった。
適当に考えをまとめてみる。
574 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/16(金) 12:04:56 ID:???
まず魔法少女は物量には勝てない、戦術では劣ってないと戦闘にならないな
575 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/16(金) 18:51:41 ID:???
>>574 エネルギーとかも設定しないと
576 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/16(金) 19:29:57 ID:???
確かフィンランドがモデルの学園もあったよね?
魔法のエネルギー源がエンジンとか動力炉に等しいモノだと、魔法で魔改造エンジン積んだ戦闘機とか出てきて面白いことになりそうだ。
578 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/16(金) 21:08:19 ID:???
まず提案なんだけど、タイフーン氏は大雑把な世界観と基本的な枠組みを作って欲しい。
ガンダムで言えばこれぐらいでおk。
・宇宙世紀0079年〜0080年が舞台
・モビルスーツという兵器がある
・ジオンと地球連邦が戦っている
モビルスーツの設定とか人物の設定はいらない。
細かい設定は作ったらダメ。
作者ごとの相違は最低限のラインさえ同じなら大して気にならないだろうし。
あとはみんなで楽しくやればいんじゃね?
580 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/16(金) 22:53:07 ID:???
>>570 それ使って、いらんレスを消して見ないようにして下さいや。
見ない触れない反応しない。ですわ。
他の住民にも強く推奨。
>>571 頼んだ。
言い忘れたけどGPMは生徒じゃない外敵がいる訳で
こっちはある意味クローズとかの強武装版とも言えなくはないw
>>572 運営スレとか見ててちょこちょこ書いてるのは分かってたし
維持してただけでも感謝してるので何も悪い事はないから
頼むから謝らんでくれ。
>>578 氏には悪いが、そこはむしろ、
現在あるブツをベースに皆でざっくり作った方が良い気がする。
589 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/17(土) 22:13:00 ID:???
創作になんら寄与しようとしない奴が管理だのどうのにケチつけても何の説得力もありません
それはそうと、共産と独軍以外にも米製とか旧軍or自衛隊とかが好きな自分としては
出てくる兵器類は既存の二勢力以外はダメなのかなと訊いてみたい
学園が3つ4つ増えた群雄割拠状態とか
590 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/17(土) 22:18:16 ID:???
>>589 こらこら触っちゃいけません。
米軍とかは設定だけされてて話には出てなかった。
旧軍は「極東にある同盟校」とか台詞の中で出ていたような出ていなかったような。
話の幅を増やすために設定するのは良いんじゃないか?
新設定の方向について色んな意見が交わされる
599 名前: 571 [sage] 投稿日: 2008/05/17(土) 23:12:05 ID:???
ちょっと考えてみたよ。
世界は一九二〇年代に隕石の落下で滅亡。
国家の枠組みは無くなって変わる存在、巨大な企業とかその辺が世界を二分してる。
突っ込まれるのを覚悟で軍産複合体とかw
大陸の形は変わったりしててもいいかもしれない。
学園島が海の真ん中にあるのはそのまま。
で、その島を舞台に学園同士で群雄割拠。
魔法少女は隕石に含まれていた宇宙人の技術を応用したエネルギーを色々。
でも、魔法の概念、戦争の理由は作者ごとの考えとかでいいと思うんだがどうだろう?
601 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/17(土) 23:20:21 ID:???
そういや学園島って孤島だっけ?列島だっけ?
列島なら島ごとに違った勢力と違った戦いがあっても
各勢力の干渉とか複雑に考えなくても良くなるような気がする
一つの島でやってると陸続きで、どこかの勢力の趨勢が全体に影響する可能性あるけど
隣接してるとはいえ、島が幾つかあって分かれてるなら
独ソ戦やってる島とそうでない島が同時並行しても軽くクロスオーバーする程度で
話が難しく絡まりすぎるのを抑止できる気が
603 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/17(土) 23:22:28 ID:???
>>601 今までの設定だと孤島だった
列島案いいな
605 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/17(土) 23:29:55 ID:???
というかね、場合によっては
・従来の独ソ戦やってる学園島本島
・その隣で独系勢力に仏系兵器でレジスタンスやってる島
・本島の東の隅っこ辺りにある小島(満州島)で日ソ戦
・さらにその南で大小の小島を巡って日米戦
ってやれそうなんだよね、列島…
ところで日勢力参戦可能ならば魔法少女は巫女衣装に玉串ですか?
この辺りで列島設定が提案され、後にほぼ定着
611 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/17(土) 23:49:52 ID:???
>>609 まーそこはあとから色々
学園島って本国から離れてるって設定あったような
それを聞いて海上護衛戦ができないかと妄想したのはいい思い出だ
613 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/18(日) 00:01:41 ID:???
>>611 対空機銃を回避しながら艦船を八艘飛びして敵の駆逐艦に乗り移り、砲や魚雷発射管を粉砕して回る魔法少女を想像した
622 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/18(日) 00:46:19 ID:???
>>599 ありがとう。随分凝ったな。
すまん個人的にもうちょっと大きく考えてた。
・外部の大人らの干渉が難しい場所に複数の学園がある。
(地形はシヴィライゼーションの如くそれぞれで考えよう)
・学園はそれぞれ就学中の若者を中心に自治を行って国家の様相を呈している。
・少女の一部が「魔法」を使える。(内容は適宜)
・以上の状況で戦争を行っている。
この程度の大きな枠組みで、「タイフーン氏の世界」「
>>571氏の世界」
ってな感じで棲み分ければ良いな、位に考えていた。
その中でこの人の話で書きたい、とかはその辺りは創造者任せで。
シェアワールドかと言われると違うかもしれんが。
627 名前: タイフーン ◆sePHxJrzaM [sage] 投稿日: 2008/05/18(日) 22:56:25 ID:???
こんばんは。
私なりにまとめてみました。
・第一次大戦後に隕石群が地球を襲い、国家という概念が崩壊、軍事力を有する多国籍企業が台頭する。
・大陸の形は隕石落着の影響で変貌している。
・海の上に浮かぶ学園島(学園列島)では、学園同士で各勢力が派閥争いをしている。
・本国と学園は何らかの形で繋がっている。物資の輸送や、生徒会への内政干渉等。
・学園は就学中の若者を中心に自治を行い擬似的な国家を形成している。
・各学園にはインフラを担当する生活委員会、校内の秩序を守る風紀委員会や公安委員会がある。
・一部勢力では『魔法』を使用できる女子生徒がいる。魔法の概念は作者の作風次第。
・独ソ戦をモデルにした戦争をやっている島、アフリカ戦線をモデルにした戦争をしている島、その他諸々の島がある。
631 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/18(日) 23:25:35 ID:???
>大陸の形は隕石落着の影響で変貌している
これで文明が維持できるのかな
核の冬とか無視してないか?
632 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/18(日) 23:33:07 ID:???
>>631 隕石衝突による気候変動は核の冬とは違うと思うが…(起こることはほぼ同じだが)
創作を進めるのに特に必要でもなさそうなら削ってもいい部分かもね
633 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/18(日) 23:33:38 ID:???
文明を再興するところのシナリオを小説化するほうが面白そうだな
国境を超えて団結し、対宇宙防衛システムの構築に社会リソースをつぎ込む世界とか
大気中に巻き上げられた塵で日照が激減し、人口は数千万にまで減少するだろう
ぶっちゃけ、北斗の拳の世界にならないか?
634 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/18(日) 23:39:52 ID:???
あ、待てよ…隕石衝突の影響でとかで国家がなくなっちゃうくらいの大変動が起きたため
大人が極端にいなくなって若者以下の年齢だけが取り残された特異な地域として
学園島列島が成立したってのもありかな
再び見向きされて「本国」の介入を受けるようになったのは大変動以後、
学園島で発生するようになった「魔法少女」なる存在と発生の原因となる何か、とか
635 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/18(日) 23:47:10 ID:???
んで個人的意見ながら
・第一次大戦後に隕石群が地球を襲い、国家という概念が崩壊、軍事力を有する多国籍企業が台頭する。
これ後半は影響規模が大きすぎて蛇足だと思うんで
→ 第一次世界大戦後に隕石群が地球に落下し、隕石の落着したとある国家が崩壊、
さらに変動の混乱期に若者以下の年齢だけが取り残されて孤立してしまった地域があり、後の学園島列島となる
・大陸の形は隕石落着の影響で変貌している。
→かつてその国家があった地域は隕石落着の影響で変貌し、現在の学園島列島を形成している
という改修案
636 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/18(日) 23:50:51 ID:???
技術者や知識人がほぼ全滅して若者だけ残っても困ると思うんだ
飛び交う意見、意見を反映した設定のまとめと細かな修正の繰り返しによる研磨
641 名前: 丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM [sage] 投稿日: 2008/05/19(月) 01:53:28 ID:???
基本設定はもっとざっくりしてても良いと思います。
設定を細かく決めるってのはそんだけ話を束縛することでもありますから。
643 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/19(月) 18:05:59 ID:???
>>641 世界背景はおおざっぱに「学園島列島」という特殊な地域があって群雄割拠しているくらいの認識でもオッケーとか
・隕石落下前後の歴史記録は落下後の混乱で失われているか不完全
・学園島が誕生した経緯についても同様に、不明な点が多い
という事にして、「こういう仮説もある」「この島においてはそう」とか自由に設定・考証ができるように余裕を持たせておくとか
一定年齢以上の人間が殆ど消滅しちゃってるけど、技術や知識は継承されてて各国兵器が使用できるのは
技術や知識を保存しているのが「学園」と呼ばれる各組織(設備?)であるのでもいいし
島外にある国の援助を受けているのでもいい
あるいは学園島という世界そのものがグ○ブロー…
644 名前: タイフーン ◆sePHxJrzaM [sage] 投稿日: 2008/05/19(月) 22:33:59 ID:???
こんばんは。
皆さんのレスを参考に纏めなおしてみました。
・第一次大戦後に隕石が落下して地球が壊滅。
・隕石が落下する前後の歴史記録は落下後の混乱で多くが失われた。
・多くの大陸は隕石の落下で歪んでしまっている。
・学園島誕生の経緯もよくわかっていない。
>>634や
>>635のような説もある。
・一定年齢以上の人間はほとんど消滅してしまったが、技術や知識は継承され、学園や島外にある組織や企業に援助されている。
・一部勢力では『魔法』を使用できる女子生徒がいる。魔法の概念は作者の作風次第。
・独ソ戦をモデルにした戦争をやっている島、アフリカ戦線をモデルにした戦争をしている島、その他諸々の島がある。
・最低限『学園島列島という場所があり、様々な学園が群雄割拠している』ぐらいの認識でOK。
これぐらいでいいかと思います。
あとは書く方に移っていいかと。
645 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/19(月) 23:00:33 ID:???
>>643 一行目だけでも個人的には良いと思う。
下手に背景文明を後退させると兵器が怪しくなるような気がするので
普通に世界が続いてて
大西洋に突如謎の群島ができた、しかしながら
一般(と書くからには例外を認める)に、とある年齢以上の人間は
一定距離から進入する事が出来ない。
(ショートカットされて乗りものごと反対側へ移動されるとか)
てのはどうだろう。
ここで回帰圏持ってきて大人にはその効力なし、とかでもいいけど。
648 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/19(月) 23:11:58 ID:???
>>644 ちょっとご都合主義がきつすぎないか?
人の意見を取り入れてこうなったことは理解するが
まともに考察しようとすると矛盾しまくるぞ。
考察に堪えない設定は勘弁してくれ。
何があったかきっちり設定した上で
作品世界には記録が残っていないことにすればいい。
651 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/19(月) 23:42:24 ID:???
・第一次大戦後に隕石が落下して地球が壊滅。
→地球壊滅という規模にしなくても、打撃を受けた、程度もいいかも
・多くの大陸は隕石の落下で歪んでしまっている。
→多くの大陸の形が変わるほどだと被害規模が大きすぎて収集つかないから
史実・現実世界とは国情・国際関係が大きく違った歴史を歩んだ、の方が…
・一定年齢以上の人間はほとんど消滅してしまったが、技術や知識は継承され、学園や島外にある組織や企業に援助されている。
→学園島列島という局所地域は、だよね?
島外の国家・組織・企業に援助以上の介入を受けてない(軍隊が進駐してこない)のは
学園島が自治を保てるに足る理由が「魔法少女」という戦力の存在にあるか、
あるいは国家・組織や企業同士で既にその辺の話し合いがついてて
直接戦力は介入しない取り決めがされてるとかはどうだろう
654 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/19(月) 23:57:03 ID:???
あと、島外の国家などの勢力に関しては特に詳細な設定をせず、
独系の兵器を使う学園を支援してる勢力は史実の第3帝国をモチーフにした国、
ソ系の兵器を使う学園を支援している勢力は史実の旧ソ連をモチーフに、
という風にだけやって、イメージだけの存在ぐらいでもいいかもしれない
どのみち学園だけで戦うから島外勢力の直接介入はしない・出来ない方向性にしたいだろうし
(島外勢力、各学園のつまり「支援母体」から「島に居られる年齢の人間」が「転入生」として
派遣されてくることで学園に政治介入したりという方向性はありだろうけど)
655 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 00:01:15 ID:???
>>653 学園島列島の学生は島外に出られないなんて事は無いのであれば
学生を島外で教育・訓練するという手段もありかと
極端に平均年齢が短い社会としてサイクルを形成しているでもいいかもしれないけど…
隕石の放射線・電磁場に耐性のあるレアな例の大人が少数名居て、教官・教師を勤めているとかも考える
656 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 00:05:41 ID:???
658 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 00:18:12 ID:???
>>656 実はゲーム内の世界でした、というのもアリと言えばアリかとも思う
自由度を考えれば一つぐらいはそういうオチで持ってくる作品があってもいいな
>>643にもグラ○ローとかあるし
659 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 00:25:11 ID:???
>>657 矛盾が大きくなりすぎない程度に、とりあえず作品を書く人ごとに設定の自由裁量に任せて
他の人の設定を相互にクロスさせてもいいかもしれないね
書きながら設定作ってはまとめ、設定作ってはまとめってやってもいいのかも
自分もそろそろ旧日本軍系学園の作品のプロットを固め始めますか
660 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 00:35:35 ID:???
>>659 というか、みな一家言あるだろうし、無理して一つの世界を使おうとするから、
前みたいに書かないと情報が出てこないとかひっくり返されるとか
今の如く決まらないとか、諸処の問題が生じる気がするのよ。
作者同士で気があったらクロスなりに持ってく位でもいいんじゃないかな。
661 名前: 丼炒飯 ◆HY/YgdSbHM [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 01:44:04 ID:???
>>643-644 まずは、学園列島(「学園島列島」という言い方はちょっと妙な気が)という
箱の作りを決めといて、後は投げっぱなしにしてもいいんじゃ無いかな、と。
隕石が落ちてどうこうとか、下手に歴史改変みたいな事にするとキリ無いと思うんですよ。
設定の細かい部分はSS書く人の自由裁量という方向性が決まり始める
663 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 20:13:29 ID:???
まず誰か投下してはくれないかと勝手なことを言ってみる
664 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 20:36:49 ID:???
まだ書いてる途中です
しかし今回設定で「人は死ぬのか」を質問し忘れてたけど
まあいいや死ぬって設定で、と執筆を進めてたら、ずいぶん血なまぐさい話に…
665 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 20:54:26 ID:???
不死設定は一番扱いが難しいとこだったから今度は無しでいいんじゃないか。
今後の方向性を決める一発を頼む。
666 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 20:55:23 ID:???
>>664 死にまくっても劇中劇とか
>>656という方法があるんだぜ
とにかく待ってる
その後、新設定初のSSが投下される
設定の方向性についての調整はこのあとも少し続いたが、
ここまでがほぼ前スレ・前前スレ(議論のためスレ延長)の流れ
自殺騒ぎって本当にあったの?
>>27 本当らしい。実際に騒ぎを起こしたと言われるコテハンが普通に今も書き込んでいるから、一時的な錯乱のせいみたいだけど。
ま、本人が言質を避けているけど、
自殺騒動までいったのって本当に本人か?
(過去にも成りすまされてることが二度三度あったし)
という疑惑はある
結局のところ、本人と丼氏ぐらいしか真相はわからない
偽者だと言っても信用されないし粘着ストーカーの荒らしはそれに乗じて
また荒らすだろうから弁明もしないって見方もある
自殺云々は置いといて、外界から孤立した島で学徒同士が相争う
そんなSSを皆で投下していきましょうってスレなのかな?
>>27 本当にあった
その時避難所やらなんやらのデータをリセットして逃げたから
◆sePHxJrzaMに保管庫などを管理させちゃいけない
>>30 そんな具合
蓬莱学園の軍事色を強めた感じかな
>>30 基本的にはそう+魔法少女(設定は各自に任せる)という
個人単体で戦車あるいは対地攻撃機に相当する戦力の存在を
要素に加えて架空の戦争の物語を作っていくのがこのスレ
ところで自殺どうこうとかVIPでこんな事をしたとか
いつまでも引っ張る奴は粘着ストーカー荒らしなんで
テンプレにあるとおり、相手にしないほうがいいよ
それなんてバトルロワイアル?
良くわからんが面白そうなジャンルかなと思って除いたら……なぁにこのスレ
>魔法少女(設定は各自に任せる)という
>個人単体で戦車あるいは対地攻撃機に相当する戦力の存在
パンツじゃryの某アニメを浮かべた自分はきっと汚れている
だれか試しに一話書いておくれよ!
もしくは詳しく解説してくれ!
前スレ投下SSより転載
668 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:11:31 ID:???
よし、取りあえず完成したので投下開始。
序文
この物語は、学園列島の戦史のエピソードのごく一部を飾る局地的な、ごく短い戦いの記録。
少女が抱いた思いも憧れも、埋もれたまま語られることは無く、ただ静かに彼女と彼の墓標に静かに寄り添う
専守島
学園列島の「本島」から東側に位置し、本島とは10Km余の海峡を挟んで相対する、長さ約30Km、最大幅約20Kmの平坦な島である。
島の北東部を若鶴学園、南部・西部を十一連学園の勢力下にあり、交戦状態にある
若鶴学園
学生総数 8363人
校章 鶴の意匠を「Журавлик」の文字で半円に囲む
装備 旧ソ連系
戦車 約100両 (T-34を中心に混交、一部にBT-7 ・ BT-8、ごく少数のIS-2、KV-1等も見かけられる)
各種砲迫218門
警備艦2隻、機雷敷設艦1隻、掃海艇4隻、輸送艦および上陸用舟艇数隻を保有
十一連学園
学生総数 11500人
校章 漢字「士」一文字
装備 旧日本軍系
戦車 64両 (1式中戦車19両、97式中戦車20両、95式軽戦車25両)
重軽火砲 各種約100門
海防艦3隻を保有
(XX年八月十五日時点)
669 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:12:34 ID:???
学園列島での学園同士の戦いが始まってXX年…
その小さな列島の、小さな島の学園校舎に併設された、小さな仮設校舎の屋上に人影があった。
屋上の片隅から小さな足を投げ出して夜風に晒しているその少女。
その少女は学生であり、兵士である。
小さな体でクラスメートを守り、小さな体でこの島を守る。
その少女の名は、笠原瞳。
十一連学園 神風特別対戦車隊に所属する、通称で言われるところの「魔法少女」である。
瞳は、右手に握っていた鉢巻を自分の顔の前に持って行き、匂いをかいだ。
日の丸の左右にそれぞれ「士」「魂」と書かれたそのハチマキは日の丸以外の部分にも赤茶色でまだらに染められており、鉄錆びの匂いがした。
瞳はむせ返るようなその匂いに気が遠くなって、ほんの少しの間だけ意識を失った。
夜空は、灯火管制のせいかどこまでも綺麗で透き通っていた。
大の字で寝ていた瞳は、そのまま空を見上げながらジクジクと刺す胸の痛みに顔をしかめた。
「ほうっておいて。 ……私は、好きでやってるんだから」
星に向かって小さな声で呟いた瞳は、顔を動かして手に握った鉢巻を見つめた。
その鉢巻は、今日、瞳が戦場で拾い集めたものの一つだった。
そんな物は戦場にはいくらでも転がっていた。
味方はもとより敵の分もいくらでも転がっていた。
どれもこれも赤茶色に不器用に染められており、むせ返るような匂いが染み付いていた。
瞳は気が遠くなる思いがした。
「気が遠くなるほどの、せんぱいの匂い……?」
瞳は星に向かって呟いてから、笑った。
笑って、笑い続けた。
そして鉢巻を手に持ったまま顔に当て、息を吸い込む。
鉢巻に染み込んだ各座した戦車の鉄錆と乗員の血の匂いをいっぱいに吸い込んで、思い切りむせた。
670 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:13:56 ID:???
XX年八月十五日
十一連学園生徒会は若鶴学園の攻勢に対する前線水際阻止を断念、作戦方針を本校と専守島要域の確保に変更、
主力は本校周辺地域に陣地を占領して來攻する敵を撃滅できるよう準備し、専守島北部と南部はそれぞれ歩兵1個大隊基幹の兵力をもって
遊撃戦闘により敵の内陸進攻を妨害するように計画した。
一方若鶴学園は八月十七日夜専守島北東部から南西部に進撃を開始、主攻を國端崎から片岡方向に指向し、十八日日没までに
片岡の十一連学園本校校舎および全専守島を占領するという方針の下に、全学生総数の人員8,363名、砲迫218門よりなる部隊により、総力大攻勢に出た。
八月十七日午前11時57分、若鶴学園は國端崎より西進開始、十一連学園は大隊砲、臼砲を用い所在の歩兵部隊と協力してこれに反撃し、
これによって若鶴学園は多大な被害を被り、さらに指揮官戦死というアクシデントにより一時的な指揮混乱状態に陥ることとなる。
そのため東崎方面に南下するはずだった別働部隊も四嶺山方面に向かってしまうといった事態も発生した。
しかし、十一連学園の第一線は遊撃戦闘を行うことを目的としており、拠点防御の配備を採っていたので、陣地は隙間だらけだった。
このため部隊の損害が大きかったにもかかわらず、若鶴学園の先頭は午後4時ごろには四嶺山に進出し、ここにおいて村上大隊主力との近接戦闘が始まった。
671 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:14:39 ID:???
これに先立ち、十一連学園生徒会は若鶴学園の進撃開始の報告にもとづき、午後2時10分、全生徒に戦闘戦備を下令すると共に、
2時30分、戦車聯隊に対し工兵隊の一部を併せ指揮し、小泊方面に急進してこの敵を撃滅するように命令した。
同時に南部方面に配置していた竹下大隊に対してもできる限りの兵力を終結してこの敵を撃滅するように命令する。
戦車聯隊は池田聯隊長を先頭にして、四嶺山の若鶴学園軍に突撃してこれを撃退、さらに四嶺山北斜面の敵部隊を竹田浜の方に圧迫する。
しかしながら戦車部隊も若鶴学園の対戦車火器のため27両の戦車を失い、池田聯隊長を始め96名の戦死者を出した。
一方、竹下大隊は直ちに小泊岬に向け前進したが、若鶴学園はこの時点において予期しない重戦車と中戦車からなる
戦車部隊を増援として投入、対戦車火力の不足していた竹下大隊は甚大な被害を被り壊走、先の戦闘で消耗していた
戦車聯隊と村上大隊も後退せざるを得ず、四嶺山は若鶴学園の手に落ちる。
このような状況で十一学園は天神山まで前線を後退し、若鶴学園も主力を進出させた上で配置を完了、双方は十八日の朝を迎えることになる。
672 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:16:16 ID:???
八月十七日 午後4時57分
瞳は、歪んでしまった一式中戦車の装甲を鉄杖で思いっきり殴りつけて無理やりにこじ開けた。
鉄棒の先端に凝集されたマナは単純な破壊力となってあらゆる物質を、電子を、粒子を粉みじんに叩きのめす。
棺桶と化した戦車の内部には、自らの血と臓物で死に化粧をされた乗員たちが静かに安置されていた。
瞳が戦車の内部に小さな体を潜り込ませ、車長席に持たれかかっている生徒の顔へと震える手を伸ばそうとすると、
死んでいるかと思われたその生徒がゆっくりと目を開いた。
「なんだ…瞳…か…てっきりお迎えが来たのかと思った…でも…瞳みたいな天使が…迎えに来て…くれるんだったら…いいかもな…」
その生徒は血まみれになった顔で優しく微笑んだが、その笑みにも声にも殆ど力はなく、わずかに唇を動かしたに過ぎなかった。
「なんだよ…泣くなよ…笑うとこだろ……変な奴…だ……な……」
生徒はそう言って瞳の頬をつたう涙を拭ってやろうと左手を持ち上げかけたが、しかし、半ばまでの動作で唐突に力を失って手は座席の横に落ち、
彼の目が急速に光と熱を失ってゆくのを瞳は絶望に囚われた表情で愕然としながら見送った。
「せんぱい…やだよ……死んじゃやだよう……」
瞳は冷たくなってゆく彼の体にすがりつき、既に鼓動の途絶えてしまった血だらけの胸に顔を埋めた。
自分の顔や髪の毛が彼の血で汚れてしまっても構わなかった。
そうしてひとしきり、瞳は彼の死体の上で泣いた。
そういえば吸血鬼の設定はどうなったんだろう
それと「もし魔法が存在したら社会体制は変わるか」の検証もしてほしい
魔法を使える人間は道路や電気とかのインフラ不要だったり、労働力を大量に召喚したりして
社会的にものすごく有利になると思うんだ
673 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:17:05 ID:???
やがて瞳は戦車の車体から外へと出た。
その左手には乗員全員分の血染めの鉢巻が握られていた。
墓標と化した一式中戦車は13ミリ対戦車ライフルの弾痕がこれでもかと言わんばかりに無数に穿たれており、同じような戦車が
戦場のあちこちに各座した状態で、内部に生徒たちの死体を納めて夕日に照らされていた。
瞳は泣きはらした赤い両目を学生服の袖で拭った。
乾いた、それでいて重い響きの銃声がしたのはその時だった。
人間一人が隠れられそうな窪みの一つに対戦車ライフルを持った若鶴学園の学生兵士が潜んでいた。
瞳は、その学生に撃たれたのだった。
しかし、瞳は人体を容易にひき肉に変える威力を持った凶弾の衝撃を身に受けることも無く、微動だにせず、夕日と「せんぱい」の血で
赤く染まった学生服を着たまま、依然としてそこに立っていた。
「まだ……生き残りがいたんだ……?」
瞳が左手の鉢巻を、そして右手の鉄棒を強く握り締める。
同時に、少女の顔の手前で空中に停止していた対戦車ライフルの弾丸が量子分解されて砕け散った。
奥歯がぎりりとかみ締められ、両目が憎悪の炎で彩られ、少女のあどけない幼顔が悪鬼のそれに歪められた。
鉄杖の先端に急速にマナが凝集してゆき、ほの青い燐光を宿す。
それは渦を巻き、分子と電子を分解し、この世界でもっとも単純な「破壊力」へと再構成させ、そして少女を殺戮者へと変貌させる「魔法」だった。
対戦車ライフルを構える学生兵士の顔が恐怖ただ一色に支配され、先端に目には見えない大質量を発生させた鉄棒を振り上げた悪鬼が
こちらへと疾走してくるのを見るや彼は窪みから飛び出し、武器を捨てて真後ろへと走り出す。
しかし、少女は無慈悲に、そして容赦なくその背中へと凶器を振り下ろした。
674 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:18:38 ID:???
八月十七日 深夜
その小さな列島の、小さな島の学園校舎に併設された、小さな仮設校舎の屋上に人影があった。
屋上の片隅に大の字になって寝ている少女の頭のほうに立って、その顔を覗き込んでいる別の少女。
その少女は学生であり、兵士である。
小さな体でクラスメートを守り、小さな体でこの島を守る。
その少女の名は、真島美緒。
十一連学園 神風特別対戦車隊に所属する、通称で言われるところの「魔法少女」である。
美緒は、瞳が右手に握っていた鉢巻が赤茶色に酷く汚れているのを見て顔をしかめた。
鉢巻だけではない、瞳が着ている女子学生服も十一連学園指定の色ではない変色した赤茶色にまだら模様に染まっている
夜空は、灯火管制のせいかどこまでも綺麗で透き通っていた。
大の字で寝ていた瞳は、目を開いて自分を覗き込んでいる逆さまの顔の美緒と目を合わせた。
「独断専行による無断出撃、上官の制止を無視した勝手な戦闘行為。 銃殺が相当なところだけど、自習室(営倉)入り”ただし執行猶予付き”で済んだ。
神風特別対戦車隊は4人しかいない貴重な存在だから、処分したくても出来ないのが生徒会の本音。
……次は、私も庇えないから、ね?」
675 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:19:33 ID:???
瞳は答えなかった。
答える代わりに視線で美緒を刺した。
その両目には怒りと疑念の感情がたっぷり1個師団相当は込められていた。
美緒は、諦念を含んだ表情で語りかけた。
「そうだよね、せめて戦車聯隊に歩兵大隊がもう一つ付いていれば、もしくは工兵隊との連携が上手く出来ていれば…先輩も池田聯隊長も死ななかったかも知れない。
前線にもう少し戦力を投入していれば、若鶴の攻勢を食い止められたかも知れない。 でもね、今の十一連には、全戦力を一度に動かせるだけの兵站が不足している。
弾薬も糧秣も、学園が全力で戦って一日で全部消費してしまうぐらいしか残ってない。 だから、戦力を小出しにして逐次投入すると言った愚策を取ってでも、
消耗をできるだけ引き伸ばさないといけない。 今を持ちこたえれば、きっとなんとかなるから。 それに生徒会は、勝たないまでも最低限この島を確保できていればそれでいいの」
「私たちが、いるのに?」
瞳は唐突に口を開いた。
その声音はやや震えていた。
「私たち4人しかいない神風特別対戦車隊なら、大隊を動かすのに比べたら兵站への負担は無いに等しい。 私たちなら若鶴の戦車2〜3個大隊と対等に戦える。
私たちだけでもあの時投入していたら、勝てたはず。 なのに、なんで生徒会は私たちを使わなかったの? 美緒ちゃんはどう思ってるの?」
676 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:20:48 ID:???
美緒は、淡々と答える。 その口調は冷淡というより冷静であろうとしているような感じでもあった。
「4人しかいないから、だよ。 私たちは個々それぞれ重戦車だって太刀打ちできる力を持ってるけど、たった4人しかいない。 もし、一人失うだけで大きな損害になる。
だから、滅多に投入することは出来ないし、代わりが無いということは、死ななくても消耗したり負傷するだけで戦力は激減するの。
物凄く強力だけど、物凄くリスクが大きい、そんな存在。 だから、私たちは使うことが出来ない」
「…そんなのって!!」
激昂して起き上がる瞳を手で制して、美緒は冷淡に通達する。
「……神風特別対戦車隊は生徒会本隊および竹下・村上両大隊と戦車聯隊の残存戦力を再編した混成大隊、砲兵大隊とともに本校校舎の防備に付きます。
これは戦力を温存し本校決戦に備えるためです。 本校さえ落ちなければ、負けません。 生徒会長は各生徒の一層の奮起を望みます。 以上、通達は終わり」
「…納得、できない」
「納得できるできないは私の知ったことでは無いの。 これは上官命令。 二度目の命令無視は庇えないとさっき言った。 ……お風呂、入って今日は休んだほうがいいよ、瞳ちゃん」
美緒は瞳の血で固まった前髪にそっと手を伸ばして撫でようとしたが、瞳はそれを乱暴に自分の手で振り払う。
一瞬表情をこわばらせ、哀しそうな顔をした美緒は無言でその場を去った。
屋上に取り残された瞳は、しばらくの間うつむいて血の染み付いた鉢巻を震える腕で強く握り締めて続けていた。
677 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:21:25 ID:???
八月十八日 午前5時
天神山にて十一連・若鶴は交戦を開始。
砲迫の音が鳴り響くなか、十一連側の学生兵士たちは多くが塹壕陣地の中でうずくまって震えていた。
嵐のような若鶴の砲撃に比べ、十一連の砲の音は散発的で頼りない。
くわえて戦車の進撃してくる音も近づいてくる。 対して、十一連側にあるのは生き残りの97・95式軽戦車のうちここに配備されたわずか数両のみだ。
とても若鶴学園の重戦車に対抗できるものではない。
生徒たちは絶望的な表情でクラスメートたちと顔を見合わせた。 彼らの手には急ごしらえの吸着地雷があるが、与えられた任務は殆ど特攻に近い物だ。
だが、逃げ道は何処にも無い。 せめて戦友たちのための足止めになるため、決死の覚悟で挑むしかないのだ。
配分された弾丸も残り少ない九九式小銃を片手に、その時を待つ。
その彼らの頭上を、一陣の風のように女子制服の裾をなびかせた人影が飛び越えていったのに気づいた生徒は数少なかった。
胸元に十一連学園の校章「士」の一次を威風堂々と飾り、左腕上腕部に血染めの日の丸鉢巻を結びつけ、右手に鉄杖を携えた小柄な姿があった。
その少女は学生であり、兵士である。
小さな体でクラスメートを守り、小さな体でこの島を守る。
その少女の名は、笠原瞳。
疾走し、跳躍し、ジグザグに軌道を変えながら若鶴のKV-1重戦車に突進する。
その主砲がこちらを向くより速く、戦車乗員がこちらに反応するより速く、瞳は鉄杖の先端に超倍速でマナを凝集し、質量を発生させる。
風を切って振りぬかれた鉄杖の先端がKV-1の正面装甲にクリーンヒットし、一瞬重戦車の車体が持ち上がった。
そして、目に見えない巨大質量で打ち抜かれた戦車の装甲は見る間にひしゃげて行く。
その戦果を確認する暇を惜しみ、瞳は真横に跳躍して次のKV-1に挑みかかった。
側面に衝撃を受け、履帯を完全粉砕されたKV-1が各坐する。
止めとばかりに上面装甲に鉄杖を振り下ろし、轟音と共に内部の乗員ごと重戦車を叩き潰した。
678 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:22:39 ID:???
これこそが、神風特別対戦車隊、十一連学園に4人しかいない彼女らの真髄である。
単体で戦車を撃破する異常・異質なまでの近接戦闘能力。
魔法と呼ばれる特殊能力を持って分子を・電子を・重力を自在に操り、単純明快な「破壊エネルギー」としてのみ行使、白兵戦においては他のいかなる兵科・兵士の追随も許さない。
その小柄で華奢な身体に見合わぬ鬼神の如き性能を発揮し、身ひとつで戦場を駆け回り、敵を翻弄し、粉砕する。
専守島…あるいは学園列島史上最悪最強最小のタンク・キラー。 それが対地・戦車戦に特化した魔法少女、笠原瞳なのだ。
砲塔と車体の繋ぎ目に鉄杖を叩き込み、まるで達磨落しのように上部を吹き飛ばす。
KV-1を全て潰し終えた瞳を、ようやくT-34が目標に定め、複数の車両から集中砲撃を加える。
榴弾の激しい轟音と爆炎が瞳を包み込み、若鶴学園の戦車学生兵は勝利を確信した。
が、その確信は直後に裏切られた。
爆炎を切り裂いて躍り出たのは、学生服のあちこちが焦げ、破け、露出した肌…その下のむき出しになった皮下筋肉さえ焦げ、破片の突き刺さったた酷い傷を負いながらも
その両目にいささかの闘志の揺らぎもない笠原瞳の姿だったからだ。
瞳の手に変わらず握られた、マナの凝集した鉄杖に淡い青の燐光が灯る。
それは瞳の怒りと憎悪を闘争心と共に渦を巻いて、T-34へと振り下ろされた。
679 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:23:59 ID:???
八月十八日 午後5時20分
戦場となった天神山のあちこちに無惨な残骸となって各坐している数多の戦車と、原形をとどめていないか半身が引きちぎれている随伴歩兵の累々たる死体。
もはや流れた血で染まったのか、傾きつつある夕日でそまったのかも判然としない。
動くものは誰一人としていないはずのその戦場を、ひとつの死体を捜して歩き回る人影があった。
その少女の名は、真島美緒。
軍刀を携え、十一連学園の女子学生服を血と鉄錆のむせ返るような匂いの風になびかせながら、部下であり同級生である、おそらくは死んだであろう少女を彼女は探していた。
しかし、延々と転がる死体の群れはいずれも若鶴学園の制服と校章を身につけたばかりであり、見知った女子学生服の死体は何処にも無かった。
乾いた、それでいて重い響きの銃声がしたのはその時だった。
人間一人が隠れられそうな窪みの一つに小銃を持った若鶴学園の学生兵士が潜んでいた。
美緒は、その学生に撃たれたのだった。 しかし、美緒にその弾丸が命中することは無かった。
美緒がその学生にゆっくり近づいてゆくと、彼はすでに致命傷といえる重傷を負っているのに気が付いた。
「…楽にして欲しい?」
美緒は軍刀を抜き放った。 答えは聞かない。 そのまま学生の喉にまっすぐに突き刺して、そして捻って、抜いた。
息を引き取る学生兵士を横目に、無感動に美緒は軍刀に付着した血を拭った。
ふと、向けた視線の先に見覚えのある物を見つけたのは偶然だった。
それは、瞳が使っていた鉄杖だった。
歪んでやや曲がってはいたが、それは確かに瞳が魔法を行使する時に使用していたものに相違なかった。
戦場の土にまるで墓標のように付きたてられた鉄杖には、血で染まりきった日の丸鉢巻が結わえ付けられ、「士魂」の文字と共に血なまぐさい風に吹かれていた。
支援
支援します
680 名前: 名無し三等兵 [sage] 投稿日: 2008/05/20(火) 22:25:49 ID:???
この後、天神山での戦闘に置いて壊滅的被害を受けた若鶴学園は日没を持って全ての戦闘を中止、後退を開始する。
八月二十一日、十一連学園・若鶴学園の間で停戦合意成立。
八月十七日から八月十八日の間に起こった戦闘での双方の死者数は、十一連学園側1200名前後、若鶴学園側3000名前後と言われている(MIA扱いも実質的死者に含む)。
この戦闘は学園島列島で発生した戦闘の中では最も短期間に多くの死者を出した例の一つとして記録される事になる。
補記1
この戦闘における死者数は魔法少女医療学生の兵科としての確立や「蘇生」魔法を発現する魔法少女が登場する以前の、比較的初期の時代の戦闘であることが
大規模な死者の発生した要因の一つであることを述べておく。
補記2
上記八月十八日の戦闘において十一連学園の神風特別対戦車隊の学生兵士、笠原瞳が個人の対戦車撃破数で驚異的なスコアを記録したという説が存在するが、
特別対戦車隊および笠原瞳がこの戦闘に出撃したという命令および記録は無く、本人もMIAとなっているため話の真偽は疑わしい。
また、記録したスコアも未確認であり諸説様々である。
(終わり)
支援感謝
最後のだけ連投に引っかかってしまうので困ってた
>>54 おつかれ
新しい職人さんが来るといいなぁ
シェアードワールドにするとして、まず決めるべきことはなんだろうか
Linaxに詳しい人はいませんか?
誤爆か?
60 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/13(土) 23:55:36 ID:hEucbJvO
ドイツモデルの学園とソ連モデルの学園はもう準備されてるみたいだけど、イギリスとイタリアはまだ無いよね?
アフリカ戦線やりたいんだけど、イギリスモデル校とイタリアモデル校の良さそうなネーミングは何かないかな
イギリス…アルビオンとかかな
判断基準があいまいだなあ
>>61 それなんてゼロの使い魔?と言ってみる
でもイギリスならランスロットとかトリスタンって単語がたくさん出てきそうだからアルビオンでもいいかもw
ドイツがアヴィリオン、ソ連がヴォルクグラードって設定だけど変えちゃいけないのかしら
>>63 設定は自由にしていい事になってる
でも他人の設定を事前断り無く変えるのはどうかと思うから
ヴォルクグラードを本校にした分校とか系列姉妹校って
いう方向でもいいんじゃないか
でなきゃ、完全独立した関係ない別のソ連モデル学園でいいだろう
>>64 ありがと。結構自由にやっちゃってもいいんだ。
魔道兵の設定もガンダム00世界のガンダムみたいな感じから、パンツだから恥かしくないもんのアニメに近い設定と色々あるんだね。
>>60 昔の設定だと、あります。バリバリ和風な名前ですけど。
名前はロシア系ならロシア語の発音、英語圏系なら英語の発音で統一するべきかな
このスレ、作風が自由なら
地雷原と成型炸薬弾で阻止された武田戦車隊とか
秀吉師団の大返しとか
戦国時代風の展開もいいんだよね?
69 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 11:30:26 ID:Fb59c4VU
それはそれで見てみたいし、全然構わないと思うよ
一応近代兵器(第二次世界大戦前後)を装備した学生兵士の戦いという縛りなんだが…
一回こっきりのネタとしてはそういうのもアリだが
(夢オチと劇中劇はあんま多用すると顰蹙を買う)
某マクロスみたいに全部「史実」が別にある上での劇中劇ですというのは別として
73 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/14(日) 20:44:20 ID:J1Dxsvk7
イタリアモデルの学園が神聖ローマ帝国の再来を目指してる・・・とかどうだろう?
イギリスモデルの学園はベレー帽と紅茶好きの集団ぐらいしか思い浮かばないけどw
>>68 戦国時代風の展開っていうと、WWUの兵器で大返しとかやるんだろうかね
その辺もっと詳しく聞きたいな
>>70 マクロスって全部劇中劇なんだ知らんかった
>紅茶好きでベレー帽
最後は足を打たれて失血死するんですね わかります
75 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/15(月) 22:29:47 ID:CtiNVBzu
よし今日から書き始める
今週の日曜には投下するつもりだ
リアル魔法キター!!!
【コンゴ】サッカー場で11人死亡 キーパーが呪文を唱えた為に大乱闘が発生
【ロンドン15日共同】ロイター通信によると、コンゴ(旧ザイール)東部で14日、
地元サッカーチーム同士の試合中、選手の1人が呪文を唱えたところ乱闘となり、
11人が死亡した。地元ラジオが15日伝えた。
劣勢だったチームのゴールキーパーが試合の流れを変えるため、
前に出てきて呪文を唱えたという。
その後乱闘となり、警察官が駆け付けたが群衆に石を投げられた。
警察は催涙ガスで応酬、死者のほか負傷者も複数出た。
コンゴでは今も呪術信仰が残っている。
http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008091501000582.html
77 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/16(火) 22:17:29 ID:L4NBRSRU
イギリスモデル校はパクス・ブリタニカとかどうだい
未来戦隊タイムレンジャー
あらすじ:タイムワープとテレポーテーションが可能になってから10年ほどたった西暦2999年12月31日の地球。
未来社会からの不法な歴史修正などを監視するインターシティ警察の法執行機関「時間保護局」に、
100億年の圧縮冷凍刑が迫った大物犯罪者、ドン・ドルネロが自身の配下ごとパラレルワールドへ逃亡した、
との情報が入った。時間保護局の特殊部隊「タイムレンジャー」隊長のリュウヤはユウリら4人の新人隊員と共に逮捕に向かうが、
これはタイムワープ手段のないドルネロ一味の策略で、隊長もドルネロの情婦・リラが変装した偽者。
彼らはリラのワナにより2999年と3000年の間にある空間の割れ目に落ちてしまい、
ドルネロが収容されたロンダー刑務所ごと時間保護局の船と一緒にテレポーテーションしてしまう。
吹っ飛ばされるタイムマシン。気絶する4人のメンバー。そこに偶然とうりかかる一人の若者。
それがこの世界ではオーストリア皇太子であるであるリトラー王子。大丈夫かと声をかける。
気が付いたユウリの前に現れた男は隊長とうり二つ。すかさず襲うユウリ。そして遅れて気が付いた他のメンバーも戦闘に参加する。
ドルネロたちは、ギエンが生み出したロボット(ゼニット)を使い、銀行や酒場を襲撃して強盗を繰り返している。
王子はユウリたちに拘束されるが、そこに息を吹き返したタック(連隊指揮官ロボット)がドルネロたちの悪事に気づく。
ユウリはドルネロたちを逮捕するため変身ユニットを起動させようとするが、起動するためには最低要員である5人が必要。
そういうことでユウリは偶然居合わせたさっきの王子に無理矢理クロノチェンジャーを渡す。
成り行きでタイムレッドになったリトラー王子ではあったが、後継者問題で問題が多い彼は、
何らかの成果を挙げて王族内部での自分の立場を高めなければならないなどの事情もあり、自らの意思で正式にタイムレンジャーに志願する。
一方、ユウリら4人は何とか本部と連絡することに成功するが、本部からは「ドルネロの逃走によって生じた時空間の歪みを拡大しないために、
ロンダーズ構成員達たちを全員逮捕するまでこの世界にとどまれ」と厳命されてしまう。
こうして4人は、リトラー王子と共に暮らしながら、ロンダーズ構成員達の犯罪行為の阻止及び逮捕に取り組む事となる。
79 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 00:30:56 ID:YBwIBXqy
投下期待age
丼炒飯氏に期待している
81 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/21(日) 21:28:54 ID:KiyTgd1O
よっしゃ投下
巨星の相対する時
プロローグ
死臭と火薬の匂い。銃声と悲鳴。
自分の名前も知らない『少年』にとって、それが世界の全てだった。それ以外の世界を『少年』は知らず、それ以上の世界もそれ以下の
世界も知ることは無かった。
親の名前は何と言ったのか――自分は何処で生きているのか――そもそも、ここはなんという場所なのか?
もう何も思い出せない。調べる方法も、理由も無いのだが。
「うわっ!」
転がっていた瓦礫に足元を掬われて、『少年』は地面に叩き付けられた。
すぐ近くで銃声と悲鳴が聞こえてくる。銃撃によって悲鳴がかき消されるたび、『少年』は額に大粒の汗を浮かべ、押し寄せる嘔吐感を
必死に抑えようとした。口の中は胃液臭く、鉄の味がした。
額の汗を『少年』は拭い、身を伏せて走り、崩れかけた石壁に背を預けた。
ふと足元を見ると、小さな頭蓋骨が乱雑に転がっていた。自分の未来の姿ではないのかと『少年』は胸中を潰されそうになる。
「父さん……母さん……助けて……」
逃れようのない『死』を突きつけられて、『少年』は青い目から大粒の涙を零した。だが、誰も助けてはくれない。
最後に大人を見たのはいつだっただろうか?
少なくとも、『少年』が思い出せる範囲で、自分に良くしてくれた大人の姿も、声も聞いたことはない。
"星"が落ちてきてから、今まで見てきた大人達はみんな『少年』を殺そうとした。ある者はナイフで、ある者は銃で、ある物は石を用い
て、『少年』を殺そうとした。
「助けて……怖いよ……」
その場にしゃがみ込み、『少年』は震えた。
死ぬのが怖い。
その言葉だけが、今ある全てのことを表すに十分な言葉だった。
「嫌だよ……死にたくないよ……」
足音が近付いてくる。
金属同士のぶつかり合う音。
荒々しい息遣いの音。
自分達に向けられた怒声。
「嫌だ……!」
もう、自分が殺されるまで間もない。少年はあらゆる可能性を模索したが、もうどうしようも無かった。
――良い。生きたいのだな。
何かが聞こえた気がして、『少年』は空を見上げた。
一条の光が灰色の雲を突き破ると、大地に、幾つもの光の球が浮かんでは消えた。
一切の悲鳴や怒声、銃声が消え去り、周囲に不気味なまでの静けさが訪れた。
一体何が起こったのか?
少年は低い、灰色の澱んだ空を見上げる。
「あれは……?」
空に輝く翼が見えた。
天使を思わせる、光り輝く四枚の翼。
輝きの中に、『少年』魔女を見た。
体は白いローブで覆われ、黒い髪が靡いている。
顔は反射でよく見えない。
ただ、赤い双眸が影の中で悪魔の如く光っているのが見えた。
「魔女……?」
忘却の彼方から『少年』は断片的な記憶を引き出し、その言葉を発した。
恐らく、先ほどの魔女の一撃のせいだろうか、周囲は火の海と化していた。
少年のすぐまで迫っていた戦車は溶解し、乗員の死体がその傍で燃え盛っている。
少年は、空の魔女に視線を戻す。
「綺麗だ……」
少年は美しさに呆気に取られた。
もしかしたら、魔女は自分の命を握っているのかもしれない。
だが、少年は今、魔女に殺されるならそれでも構わないと思い始めていた。
ついさっきまで死への拒否を願っていた少年は、今や"魔女"という存在に心を奪われてしまっていた。
――力が欲しいか?
言葉ではない。『少年』の頭の中に直接、魔女が呼びかけてくる。
「欲しい!」
腕を空に翳し、『少年』は声を上げた。
「力が欲しい。今の俺は無力だ。ただ殺され、蔑まされるだけのゴミクズでしかない……欲しい! 力が、力が欲しい!」
答えを聞いた魔女は満足げに微笑む。どこか寂しげで、どこか興奮を含んだ笑みを浮かべ――。
地面に降り立った魔女が、『少年』の頭にそっと手を置く。
「良いだろう。力を貸してやろう。だが、いずれ私の力はお前の身を滅ぼすぞ?」
優しげな魔女の目を見ながら、『少年』は、悪魔が乗り移ったかのように邪悪な微笑みを浮かべた。
そして、はっきりと言い放つ。
構わない。どうせ滅ぶ身なら、せいぜい暴れてから滅んでやる――と。
第一章
1
戦争は続いていた。
ある人間はこう言う。
人の歴史は戦争の歴史だ、と……。
誰もが人が戦争という行為を忌み嫌いながら、その中で人は進歩し前へと進んだこともまた事実だ。
戦争を繰り返して人間の歴史が積み上げられていく。
そして積み上げられた薄い歴史に一ページには、その時代を生きた人間達の生き血によって赤い文字が記され、時代の経過と共に何時の日か忘れられる。
戦争の形が変化し、歪み切った時代であっても、儚く短い命を輝かせようとする者達は確かに存在した。
彼らは自らの意思とは無関係に英雄と呼ばれた。
この物語はそんな英雄達の、取るに足らない小さな命の輝きの物語である。
2
世界が崩壊する前はバルト海と呼ばれた海原の片隅に、学園列島が浮かんでいる。
地図を大幅に書き直し、国家の数を大幅に減らさなければならないほどに変化した世界の中で、この島々は崩壊の憂き目に遭い、その後歪な形で再建された国家群が代理戦争を行う場所として機能を果たしていた。
戦争の主役は子供たちだった。学園は国家とみなされ、生徒による自治や運営が行われている。それぞれの学園は国家の支援を受け、島を舞台にして他校との戦争を続けている。
その中で最も大きな戦いが始まったのは一九四一年のことだ。
西側において最大の軍事力を誇っていたアヴィリオン学園が、同じように東側最大の規模を誇るヴォルクグラード人民学園に対して宣戦布告したのだ。戦いは泥沼化しただけではなく、数え切れないほどの戦火を島中に飛び火させた。
そして一九四四年。
西方で中立を守っていた学園、パクス・ブリタニカとアヴィリオンの戦いは些細な発端から全面戦争へと形を変え、今なお続いていた。
87 :
75:2008/09/21(日) 21:38:14 ID:KiyTgd1O
とりあえず今日はここまで
パクス・ブリタニカの名前をお借りしました
んで質問なんだが学園を勝手に増やしたりしたら駄目?今の所ドイツ、ソ連しかないけど軍板の
スレだと列島と出てたから設定したんだけど
兵器は第二次大戦全般ならどれでもOK? 例えばMig-15が出てきたりするのはNG?
魔法の設定は他の人の設定を借りたけど、これは職人同士で決めていいのん?
わかる人答えてちょーだいな 偉そうにスマソw
投稿乙です。
無名の少年視点で戦争を体験する話のようですね。
少年を主役とした戦史に期待しております。
兵器はそれを使う陣営の身分証明書みたいなものですから、史実を反映していることが望ましいですね。
Mig-15も時代設定によっては出していいでしょう。
魔法は矛盾が生じない範囲でそれぞれの作者が決めていいとおもいます。
重要な点として、「魔法」は戦争以外でも交通や上水道、エネルギー源など
インフラの代替として使われることもあるのは覚えていたほうが
現実と違う社会体制を描写するのに役に立つと思います。
89 :
75:2008/09/21(日) 22:42:40 ID:KiyTgd1O
>>88 あざーす
兵器は身分証明書かぁ 分かる人はいいかもしれないけど、ここは軍板じゃないから
そんなに目くじら立てる必要は無いんじゃないかね
例えばドイツモデル校がシャーマンを使ってても政治取引があったとか色々理由は付けられそう
俺は史実モデルでやるけど、ガチガチにこだわる気はないです
んで魔法なんですけど、戦争以外の用途をどうするかも聞きたかったんです
俺は軍事描写だけに止めて、他の人がどう描写するのか見てから決めようと思ってました
だから「魔法のある世界」よりも「現実に近い仮想世界に魔法が放り込まれた」の方が近いかも
90 :
75:2008/09/21(日) 22:45:16 ID:KiyTgd1O
あと教師キャラをどうするかも聞きたい
かつては名を馳せた老教師が復帰して若いエリートに一泡吹かせたりするのは面白そうじゃね?
これまで教師の存在はほぼ無視されてきたので、これからは作者の自由に書いていいとおもいますよ。
教師キャラならビュコックみたいな人がいいな
若者に未来を託して、あえて自分は敵になるとか
93 :
75:2008/09/21(日) 22:58:05 ID:KiyTgd1O
>>91 わかりました とりあえず教務長的な役職で登場させてみる
>>92 パン屋の二代目も良いキャラだよなぁ
教師キャラを敵にするなら若者を導く、または諭す役割は必然だと思うんだ
あるいは青臭い理想論を語るキャラに現実を突きつけたり、あるいは逃げる道や解決の糸口を与えるとか
おおーなんだか話が広がりそうだぞw
このスレから銀凡伝みたいな名作が生まれるといいなあ
さてドイツ、ロシア、イギリスと出揃ったな。次は日本かアメリカモデル学園の登場か?
97 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/22(月) 23:53:49 ID:CcnQDSeZ
>>95 フィンランドとかどうよ
つーかオリジナルの勢力を出すのはいいのかな?
*1チーム5名までの勝ち抜き戦。一試合に全員同時参加するも自由。
*武器の使用制限なし。ただし弾薬・爆薬はチーム全員の合計体重の5%までとする。
*選手の身長は5センチ以上50メートル以下、体重500トン以下であること。
*生身・サイボーグ・ロボットの如何は問わない。ただしロボットの場合、自立型であること。
試合場外からのリモートコントロールは認めない。
*一試合の制限時間は60分。敵チーム全員を戦闘不能にするか、降伏させることで決着とする。
*上記ルールに従う限り、試合でのいかなる行為も制限を受けず、また相手を死亡させた場合も
なんら咎を受けぬものとする。
99 :
75:2008/09/23(火) 17:54:57 ID:yrCiYXLn
ちょりーす
>>94 それ詳しく
>>95>>96 ルーマニア校とかハンガリー校で話を作りたいなぁ でも資料が少ないんだぜ
本屋でもオスプレイ以外じゃ見当たらん 確かイカロス出版で出してる萌え系軍事本にクロアチアとかブルガリアの紹介してるコーナーがあったからそこ見るぐらいしか
オリジナル勢力ってーとソ連軍ばりの弾幕射撃してくる日本軍装備学園とか地平線を埋め尽くすパンジャンドラム軍団とか?
勝手にやっていーんじゃねーかと 世界観ガチガチにするもんでもないし
んじゃ続きいきまっせ
100 :
75:2008/09/23(火) 17:57:38 ID:yrCiYXLn
前回まで
>>86 3
空を一条の光が駆け抜けたと同時に、エンジン部を撃ち抜かれた戦車が爆散した。黒煙と炎が巻き上がり、破片が周囲に撒き散らされた。車内の砲弾が誘爆すると、砲塔が光閃と共に吹き飛んだ。
青々とした草原を流れる風は牧歌的な静寂から、死に満ち溢れた喧騒へと変わる。
パクス・ブリタニカを表すマークを付けた砲塔が土煙を上げて地面に叩きつけられると、生き残った戦車の砲塔ハッチが開き、多くの戦車兵が空に視線を向けた。
<<フォックスハウンド6がやられた! 敵の航空機か!?>>
<<いや、違う! アヴィリオンの魔女だ!>>
青いベレー帽を被った年若い戦車兵――パクス・ブリタニカの生徒であり、少なくない実戦経験を持つ兵士達は慣れ親しんだヴァレンタイン戦車の無線機越しに叫ぶ。
流麗とは無縁の無骨なフォルムをしたヴァレンタイン戦車はパクス・ブリタニカ軍の主力戦車だった。革新的な機能や突出した性能を持ってはいないが、滅多に故障を起こさず、戦車兵から高い信頼を得ていた。薄茶色に塗装されたの車体の中には四名の乗員が入り込んでい
る。主砲は二ポンド砲(四十mm)、装甲は一番厚いところで六十五mmと、この時代の戦車の中では平均的な攻撃力と防御力を有していた。
<<散開! 散開しろ!>>
中隊長車からの指示を受けて、ヴァレンタイン戦車の群れは密集体型を解く。歩兵はその場に伏せるか、機関銃を空に向けていた。
誰もが緊張で顔を引きつらせていた。
どんなに装甲を厚くしようと、どんなに強力な武器を持とうと、空からの攻撃に地上部隊は無力だからだ。
101 :
75:2008/09/23(火) 17:59:04 ID:yrCiYXLn
苦々しい声が無線通信に混じる。
<<アヴィリオンの奴ら、どれだけ戦火を拡大すれば気が済むんだ?>>
ここは西部戦線と呼ばれる、アヴィリオン軍とパクス・ブリタニカ軍が戦火を交えている場所だった。東でアヴィリオンと事を構えるヴォルクグラードと違い、パクス・ブリタニカはどちらかと言えば西方に位置していることが理由としてアヴィリオンが命名した。
酷くいい加減な理由だとパクス・ブリタニカ側は考えていたが、自分達で戦線を命名することはしなかった。
再び光が雲を貫いた。今度は砲塔の真上をぶち抜かれ、二台のバレンタイン戦車が炎上する。
<<フォックスハウンド7、9! 脱出を確認した者はいるか!?>>
<<応答無し! 生存者はゼロの模様!>>
<<ちゃんと確認しろ! フォックスハウンド1より各……うわっ!>>
中隊を指揮していた車両が木っ端微塵になる。その破片が地面に落着するより早く、青い粒子による光跡を残しながら、戦場に死を振り撒く戦乙女達が戦場に姿を現した。
<<あいつら、首と足があるぞ!>>
地上のパクス・ブリタニカ軍兵士達の顔に絶望が張り付いた。勇敢な者は手にした短機関銃や小銃で応戦する。だが、中には錯乱状態に陥り、金切り声を上げながらヘルメット放り投げ、逃亡する者もいる。
<<戦場に魔法を持ち込もうなんて考えた奴は、只の気違いだ!>>
102 :
75:2008/09/23(火) 18:04:16 ID:yrCiYXLn
悪態をつく兵士達の視線の先には、学園列島で最強戦力と畏怖される敵の姿があった。
濃緑色で彩られたローブで全身が覆われ、肩や腰、膝等に装甲板らしきものが備えられている。薄っすらと見える体のラインは包んでいるものが女性の肉体であることを如実に表していた。背中には×字の如く四枚の羽が生え、その中央部に直線的なリュックサックの形を
したエンジンのようなものがあり、ジェット機のノズルに似た噴射口が数個付いていた。
魔道兵。
彼女達はそう呼称されている。
世界を破滅させた隕石を回収、解析した者たちはそこに異星の技術が含まれていることを知り、軍事目的への転用という愚行の極地に至る。被験者の体に隕石から回収した石――マナ・クリスタルを直接埋め込む強引かつリスクの大きいやり方は多くの犠牲を必要としたもの
の、結果として完成したのは戦闘機の機動性と戦車の火力と装甲を歩兵と同サイズで実現させた、正にこの世ならざる『兵器』だった。
アヴィリオン軍との戦いでヴォルクグラード軍が実戦に投入して以来、その技術は各校に流出または拡散し、今では独自の魔道兵部隊を保持する学園も存在する。
地上に降り立った魔道兵部隊は自らの身の丈ほどもある武装を携え、一斉に攻撃を開始する。
兵士達は恐怖と絶望から解放されないまま、魔道兵の放った攻撃によって木っ端微塵にされ、肉片に変わって大地に降り注いだ。
まるで異界の軍勢染みた魔女の集団が子供で編成された軍隊を蹂躙する光景は、この学園列島と言う島――いや、隕石の落下によって崩壊した世界が如何に歪んでいるかを、端的ではあったが、如実に表していると言えた。
103 :
75:2008/09/23(火) 18:05:29 ID:yrCiYXLn
4
自分の膝の上に、焼け焦げた生地の欠片が気付かないうちに乗っていたことを知ると、宝玉をそのまま埋め込んだかのようなが僅かな憂いと共に鈍く光を宿した。
優美な動作でそれを手に取ると、白磁の頬が僅かに緩む。
「自分が如何に残酷な場所にいるのか、再確認できたようだ」
再び青い瞳から伸びる視線が、生地の裏側に僅かに残った皮膚の成れの果てを撫でる。それを無作法に捨てることなく、生地を汚れ一つ無いハンカチで包み、ポケットへと入れた。
「すまんが、後でガソリンを少し持ってきてはくれんか」
アルフォンス・ダークホームの言葉に、アルフォンスと同い年の副官は一瞬困惑したが、すぐに了承する。
「貴重な資源の浪費と後々言われてしまうかもしれんが、な」
十七歳のアルフォンスは、その二倍は人生を経験してきたようにも見える。その端正な顔立ちにはあどけなさや幼さといった印象は微塵も無く、むしろ鋭さや怜悧さといった言葉の方が迎合する。パクス・ブリタニカ高等部の二年生であるアルフォンスだが、今はもう一つの
顔であるパクス・ブリタニカ陸軍の軍人――それをわかりやすい形で表す濃緑の軍服に身を包んでいた。
階級は中佐の位を与えられている彼は今、自らの名を冠したアルフォンス戦闘団の指揮官として西部戦線に身を置いている。
同年代の子供達で構成された部隊を率い、同じように同年代の子供達で構成された敵と戦うことが、今のアルフォンスに与えられた任務だった。
104 :
75:2008/09/23(火) 18:07:04 ID:yrCiYXLn
アルフォンスがいるハーフトラックからは、黒煙の立ち上る戦場がはっきりと見えた。捕獲品のハーフトラックの車中には通信手や砲兵の観測員が共に乗車していた。
「左翼戦車隊に攻撃を開始させろ。魔道兵に対しては単独もしくは少数での戦闘を避け、火力を集中し飽和状態に誘い込め」
アルフォンスは部下に指示を出す。
敵である魔道兵部隊はは準備砲撃も地上部隊の支援も無く、友軍の戦車隊に対して攻撃を仕掛けた。戦車隊は大打撃を被り、魔道兵の追撃を受けている。だが、それだけだ。
「空軍は?」
アルフォンスはすぐに言葉を繋ぎ、戦場おける地上部隊と航空部隊の橋渡し役たる前線統制官に問う。
「五分で到着します」
即座に時計を見た後、アルフォンスは次に無線手に向けて言葉を発する。
「砲兵隊に連絡。効力射を開始させろ」
「しかし、よろしいのですか?」
「構わん。百発撃って一発当たればいい」
アルフォンスが自信ありげに言うと、通信手は力強く頷いて無線機へと向き直る。
――と、言ってもな。
口で言ったほど、アルフォンスは自信を持ってはいなかった。艶のある黒髪の生え際を人差し指で僅かに弄った後、アルフォンスは座した状態で腕を組んだ。
「嫌な空気だと知っているのに、何処にいるよりも安心する。軍人――いや、俺と言う人種が如何に救い難いか……神様が俺に再認識させようとしているのか?」
誰にも聞こえないように自嘲の言葉をアルフォンスが吐いていると、副官が傍らで報告した。
「中佐、攻撃準備が完了しました」
アルフォンスは小さく頷いた後、右手を肩のラインまで上げる。
今更、自分のやっていることを正義だとも思わないし、アルフォンスは自分が戦場で味方を生かし、自分が生きるために人を殺すという行為が非難されて然るべきことだということも理解していた。
だから彼は躊躇わない。
「攻撃開始。魔女のお嬢様方に、戦争の何たるかを御教授してやろう。撃ち方始め!」
右手で振り下ろされるのと同時に、苛烈さと猛烈さを併せた鉄と炎のイリュミネーションが戦場に作り出された。
105 :
75:2008/09/23(火) 18:07:44 ID:yrCiYXLn
今日はここまで! そろそろ書き溜めてた分がなくなりそうだがキニシナイ!
んで、ちょいと聞きたいことがいくつか
1 パクス・ブリタニカの校章はどうしようか?
イギリスモデルの学園だし、現実のユニオンフラッグと同じにしようかどうか迷ってる
つーかイギリス系のエンブレムってあんまり浮かばんなぁ
アヴィリオンは設定されてないみたいなんで他の人が決めるまで待つつもり
2 学園列島の島々って大きさどれぐらい? 勝手に決めておk?
3 『外見は十七歳 中身は百歳』の美少女キャラって萌えるだろうか?
答えてくれると嬉しいなり
他にもSSとか書いてくれる人出てこないかなぁ
後世の歴史家が残した言葉とか小ネタでも大歓迎なんだけど・・・・
乙です
パワーバランスがFSSの戦車対モーターヘッド戦みたいだ
魔道兵の拡散か
最初は革新的な兵器で後から技術流出で、似たような存在が出てくるのは最近のガンダムみたいだな
108 :
75:2008/09/24(水) 20:09:59 ID:6JXcSjRb
ちょりーす
>>106 読んだことないからワカンネ キュべレイデザインした人が書いてるんだっけ?
ガレキしか見たことないや
>>107 00って打ち切りみたいな形で終わったけど続編あるのかな
土曜日のアニメ枠無くなったし
さて、続きいきまっせ!
109 :
75:2008/09/24(水) 20:12:00 ID:6JXcSjRb
前回
>>104 5
とうとう最後のバレンタイン戦車が撃破された。
必死に抵抗していたパクス・ブリタニカ軍の戦車中隊は戦車以上の重装備を用いて猛撃を加えるアヴィリオン軍魔道兵の前に大損害を被った。
パクス・ブリタニカの兵士達は果敢な防戦を見せた。
複数人の投擲した手榴弾で足を止め、短機関銃や小銃によって四方から浴びせられた集中射撃は魔道兵を引き千切り、元々は対戦車火器であるPIATは魔道兵の結界を成形炸薬弾で打ち破った。
だが、抵抗もそれまでだった。
戦場を駆ける戦乙女達は、その反則的な能力を存分に行使した。
<<ヴァレキュリア2、ファイエル!>>
濃緑色のローブに身を包んだ魔道兵は身の丈ほどもあるハンド・キャノンで歩兵数人の上半身を一気に消し飛ばす。
ハンド・キャノンと言っても、五cm戦車砲をそのまま転用したものであり、反動は巨大であり、なおかつ重量もかなりのものであるため、使用できるのは魔道兵だけだ。
<<ヴァレキュリア4、目標を"裁断"する!>>
別の魔道兵は、右手にマウントされた鋏状のクローアームを展開し、パクス・ブリタニカの歩兵部隊に襲い掛かった。歩兵部隊は必死の形相で銃のトリガーを引き続けるが、銃弾は一発とて魔道兵の展開する防御結界を貫くことは無い。
一人の兵士を横の一閃で輪切りにした後、魔道兵は臓器の雨の中を突進し、別の兵士の体を鋏で捉えた。クローの刃と兵士の肉体の接触部から、まるで電気ノコギリで裁断される金属が火花を撒き散らすように、赤黒い血が噴き上がった。
捉われた兵士の絶命を確認すると、魔道兵は真っ二つになった死体を投げ捨て、新たな獲物を求めて戦場を乱舞した。
一方的な殺戮が繰り返されれば、必然的に殺戮される側も存在する。
110 :
75:2008/09/24(水) 20:12:41 ID:6JXcSjRb
「来るなァ! く、来るなァ!」
殺された友軍兵士の血液で全身を真っ赤にしたパクス・ブリタニカの兵士が金切り声にも似た悲鳴を上げ、必死の形相で逃げ惑う。
時折、振り向いて手にした短機関銃の連射を追って来る魔道兵に浴びせるが、一向に効いている気配は無い。
「畜生ッ! 畜生ッ!」
三十連射のマガジンが空になり、兵士は血に濡れた手で新しいマガジンを取り出し、荒々しい動作で銃に差し込む。
<<こちらヴァレキュリア7、狐狩りもいいもんですね>>
<<ヴァレキュリア4、調子に乗って殺られるなよ>>
<<へへっ。戦争は楽しまないと損ですよ>>
兵士には迫り来る魔道兵達が笑っているように思えた。それが自分への無力感を募らせる。
――自分は死ぬ思いで戦っているのに、こいつらには遊びなんだ。
兵士は怒り、必死で引き金を引く。
――許せない! こいつら、笑いながら俺達を……!
殺された戦友達には見知った者も多かった。同じクラスの生徒もいた。寮を夜中に抜け出し、揃って懲罰を受けた者もいた。そいつらがみんな、小娘に笑いながら殺されたのだ。
――弾切れ!?
銃弾が途切れ、熱くなった銃口から煙が立ち上る。兵士はまたマガジンを交換して、撃ち続けた。
だが……。
駄目だった。魔道兵は血の一滴すら流していない。百発近い弾丸を浴びせられたにも関わらず、平然として歩を進めている。
「笑ってやがる……なんなんだよ! なんなんだよ! お前は!」
兵士は叫ぶ。
もうマガジンは一つも残っていなかった。
<<お前は誰だって?>>
<<誰か答えてやりなさいよ。あんたを殺す者ですよって>>
<<そこまで悪趣味じゃない。さっさと片付けろ>>
111 :
75:2008/09/24(水) 20:13:24 ID:6JXcSjRb
魔道兵は誰もが、首から上は可愛らしかった。魔法の力のおかげで美人になるんだ――と仲間内で与太話をしたことを、兵士は思い出した。
その多くが、今は肉の塊になって血の海を泳いでいる。
<<こいつ、震えてるわよ>>
魔道兵の笑みには、簡単な計算問題に答えることができないクラスメイトを嘲笑するかのように侮蔑がたっぷりと込められていた。
魔道兵は答えず、死体の頭を踏み潰して前へと進む。手に、鋏と爪が一体化した得物を持って――。
「うわあああっ!」
兵士は弾切れになった銃を捨て、一目散に走り出した。
そして、すぐに転んだ。
自分が転んだ理由が戦友の臓器や血液であることを知った時、兵士は失禁してしまう。
尿の匂いが血の匂いと死臭に混ざり合って兵士の鼻腔を突いたが、目前に迫った恐怖の前には如何ほどのものでもなかった。
震えて、兵士は立ち上がることさえままならなくなる。
「嫌だ……い、嫌だ……母さん! お母さん!」
追いついた魔道兵が蔑みの表情を浮かべて腕を振り上げた。その手の先には、禍々しい鋏の得物が握られている。
兵士は震える手で頭を抱え、その場に蹲った。
だが、何も起きなかった。
涙で滲んだ目を開けると、魔道兵が綺麗に無くなった自分の右腕を不思議そうに眺めているところだった。
「腕……無くなっちゃってるよ……私の腕……」
その直後、空気を切り裂く音と共に魔道兵の頭が弾け飛び、兵士は顔を魔道兵の脳漿で濡らした。
112 :
75:2008/09/24(水) 20:13:52 ID:6JXcSjRb
6
空を切り裂く砲声と共に、パクス・ブリタニカ軍の増援部隊が蹂躙され尽くした陣地に突入した。
<<敵の増援か!?>>
<<遊びすぎたな。各員、後退しろ>>
アヴィリオン軍の魔道兵部隊は背部のマナ・ブースターから青い粒子を噴出させて、その場を離脱しようとした。
しかし彼女達が浮力を得る前に、砲兵陣地から打ち上げられた榴弾の弾幕射撃が襲い掛かった。
<<防御態勢!>>
魔道兵部隊は各々が障壁を展開する。刹那、飛来した砲弾が炸裂し、大地を揺るがし、爆煙と炎で一体を破壊し尽した。
鉄と炎によって作り上げられた暴力の波は、魔道兵達を殺傷するには至らなかったが、彼女達にとって貴重な"時間"を奪う。
<<奴らを包囲しろ! 急げ!>>
砲撃の残り香――立ち込めた煙が風によって流され始めた頃には、既にパクス・ブリタニカの増援部隊は魔道兵部隊を包囲していた。それも一人から数名という小単位だ。
<<敵を分散しました!>>
<<よし! ありったけの火力をお見舞いしてやれ!>>
パクス・ブリタニカ軍は一人の魔道兵に対して十倍近い戦力を投入し、一気に攻勢に出た。
戦車砲が、機銃が、迫撃砲が、PIATが、ありとあらゆる火力が孤立した魔道兵に集中する。銃弾は結界によって当初は弾かれたが、一寸の間も無く続く砲火は薄皮を剥いで肉を絶つかのように結界を削り取っていく。
113 :
75:2008/09/24(水) 20:14:18 ID:6JXcSjRb
やがて、魔道兵の結界が限界に達すると、殺す側と殺される側は立場を入れ替えた。
<<空に逃がすな! 地上に張り付けにしろ!>>
戦車隊の指揮官の声と同時に、数両のバレンタイン戦車が砲撃を魔道兵に向ける。
魔道兵の唯一の逃げ場が空であることは当の魔道兵もパクス・ブリタニカ軍も知っていた。だが、それを有効な形で利用していたのはパクス・ブリタニカの側だった。
<<これじゃあ……逃げる隙なんてありゃしない!>>
だが、猛烈な火網の中を一時的にでも防御結界を解除して離脱することは、傘を差さず、豪雨の中を濡れずに目的地に辿り着くことと等しかった。
ある魔道兵は結界を解除した直後、腹部にPIATの成形炸薬弾の直撃を受けて真っ二つにされ、別の魔道兵は両足を砲撃で吹き飛ばされた挙句、戦車に踏み潰された。
個々の独立した戦力として魔道兵は優秀を極めてはいたが、数と統率された組織的反撃の前では朱雀の涙でしかなかった。
何とか砲火を掻い潜ったアヴィリオン魔道兵部隊が戦域を離脱した時、その数は二、三名にまで減少していた。
114 :
75:2008/09/24(水) 20:15:24 ID:6JXcSjRb
7
魔道兵が多大な犠牲を出しながら飛び去ったのを確認して、兵士は血を吸い過ぎた地面から顔を上げた。
焼け焦げた戦車からは黒煙が昇り、負傷兵が担架に乗せられて運ばれていく。死体に敵味方は存在していなかった。
アヴィリオン軍にしろパクス・ブリタニカ軍にしろ、死んだ肉体を骸として地面に晒している点では同じなのだから。
「おい戦友! 生きてるか?」
バレンタイン戦車に跨乗した友軍の兵士が何かを投げて寄越した。
足元に落ちたそれを一瞬、兵士は手榴弾かと思ったが、拾い上げてみると銀紙に包まれたチョコレートだった。すぐに包みを破り、口の中に放り込む。
苦味のある甘さが口内に広がると共に、兵士は嗚咽してその場にしゃがみこんだ。
恐怖で押し付けられていた感情の波が心に押し寄せる。
目から涙が溢れ、兵士は口を押えた。
「みんな……みんな……みんな死んじまった」
共に担任から怒られた者も、いつも成績の優秀さを自負して威張り散らしていた者も、ようやく彼女ができたと喜んでいた者も、みんな肉塊になって地面に転がっている。
先ほどチョコレートを投げて寄越した兵士たちがやってくる。。戦車を降りた友軍の歩兵部隊は魔道兵だろうとパクス・ブリタニカの兵士だろうと、区別なく死体袋に入れ、戦車の後部へと載せる。
気を利かせた一人の兵士は、目を開けたまま絶命した魔道兵の目を閉じてやり、傍らに小さな花をそっと置いた。
115 :
75:2008/09/24(水) 20:16:03 ID:6JXcSjRb
戦友は兵士の肩にそっと手を置く。
「少なくとも、お前は生きてるんだ。それだけでも喜べ。生きているってことが、ここじゃ何よりも大事なんだからな」
「ああ……」
「指揮所まで送ってやるよ。暖かいメシが待ってるぜ。熱いシャワーに熱いコーヒー、それに女もいるぜ?」
「ありがとう」
「いいんだ。気にするな」
兵士に伴われて戦車へと向かうと、将校がハーフトラックから降りてくるのが見えた。恐らくは捕獲品であろうハーフトラックから地面に足を下ろした将校が、兵士にはどこか別世界の人間に見えてしまった。
「ダークホーム中佐だよ。俺達のボスさ」
「あの人が……」
兵士は思わず感嘆の声を漏らす。
同じ十七歳でも、自分と彼は違うのだと。
自分も、いつかはああなりたいものだ――。
絶対に叶わない希望だと思いつつも、兵士は内心でそう呟いた。
116 :
75:2008/09/24(水) 20:16:36 ID:6JXcSjRb
投下終わり
このスレってどれぐらいの人が見てるんだろう?
グッジョブ!!
人間の知恵ってすごいな
>数と統率された組織的反撃
やっぱり戦争はこれだね
魔道兵は「人間」に「退治」されるのがふさわしい
魔道兵を受け入れるか受け入れないかで学園ごとの戦力バランスも変わってきそうだな。
>>117 そういう見方もあるよなぁ 実際戦うと空飛ぶ人間なんて怪物以外の何物でもないし
学園島(列島?)の中には魔女を怪物扱いする人間がたくさんいるかもね
ぶっちゃけ対等に接せられる人間がいたら異質なんだろうけどw
>>118 書いてて思ったけどアメリカモデル学園が出てきたら魔道兵もへったくれもなくナチュラルチートで蹂躙されちゃうんじゃないかと
最初は驚異的能力で活躍→物量で押し潰され終了はありがちな展開だし
あと魔道兵を受け入れるか受け入れないかでIfシナリオもできそうやね
んで質問なんだが、人を増やすにはどうすればいいだろうと身も蓋もないことを聞きたい
通りすがりの、身も蓋も無い意見だが、ぶっちゃけ何をするスレだかようわからん
孤島の中で繰り広げられる各国間の代理戦争みたいなものなのだろうが、
島には全世界の国がいるのだろうか?
悪いが、スレ前半は読み飛ばしたのでよくわからないんだ、うまく纏めてくれると助かる
戦場ロマンを書くスレってのは何となくわかるんだけど…
兵器類関係の記述って難しそう
>>120 ・学園同士で戦争
・第二次大戦レベルの技術や兵器
・魔法少女を兵器として使う
これだけわかっていれば・・・
簡単なまとめが欲しいところだ
>>121 魔法少女の強さはどの程度なのかな?個人差があるかも知れないけど
・一般兵士よりちょっと強いくらい
・戦車と一対一なら互角の勝負
・戦車十両でも魔法少女に勝てない。不意をつけば傷は負わせられるかも
・虎牢関で千人斬り。万夫不当の豪傑
斜め読みしたけど、外界からは隔絶されて物資の補給はどうなってるのか気になって見たり
>>122 いずれはWikiも作ることになるんだろうな・・・まだその段階じゃないけど
>>123 俺は三つ目と四つ目の間ぐらいにしてる。
圧倒的な能力を持っているけど、知略を駆使した指揮官が敵にいたり物量で押されると負ける設定にしてある。
ガンダム世界のモビルスーツ的ポジション
補給はどうしてるんだろうと俺も疑問だった 本土から船で運んでくると軍板のスレに書いてあったけど、それだと陸戦より海上戦の方が盛り上がりそうだな
悪いが俺はまだ決めてなかった
史実とは異なる世界で魔法もあるから軌道エレベーターとか無理矢理出せそうかもw
補給船を叩くSS書いても問題ないかも、て事だね
そこら辺は人が集まってきたらおのずと決まるのだろうが…
どこのスレも過疎なんだよねぇ、ロワ系以外は書き込みが無い
ひょっとして数人もいないんじゃないかと思う時もある
>補給船を叩くSS
軍板スレの方にもあったな
いや見てはいるけど
軍系はわけわかんないから感想もかけない
なんか軍板のSSって他の板のと文体違うね
軍記物とかを参考にしてるからなのかな
単純に硬い感じの文体が軍物に合うからじゃないの
129 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/25(木) 18:40:10 ID:UJ093Dzk
ここもS-1GPに参戦しないか?
130 :
75:2008/09/25(木) 19:51:27 ID:+JAv7wrw
ちょりーす 悪いが今日は投下なしで
>>125 できたばかりの板だもんなぁ
それにジャンルとしては人を選ぶタイプらしいし、ここ
一見さんもやりやすい内容にできればいいんだけど
つか、なんでロワ系に限ってあんなにぎやかかわからん
>>127 小説よりも戦記にちかい形が多いもんね>軍板のSS
硬い文体なのは入念な下調べがないと軍板の住人から突き上げ喰らうからなんだろうな・・・
ちょっと聞きたいんだが、俺のSSの文体は硬い? あと読みやすい? つーか面白い?
不満とか間違ってる点があったらガンガン言ってほしかったりする
>>129 してもいいけどSSが五レス以内に収まるんだろうかよくわからん
軍板住人の一人から見れば、文体は普通、名詞はラノベ、セリフはラノベですね。
そして兵器の描写はラノベ。
萌っぽいものを含有した魔道兵が火と鉄で塗りつぶされているのがいい感じなので
評価は「ガンガンいこうぜ」です。
スレ的、板的には「いろいろやろうぜ」なんだが
かしこさが少なくて困る
かしこさ…だと?
いや、なんていうか俺の「かしこさ」が低いから文章をおこせないって事
板住人の事じゃないよ
135 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/26(金) 14:52:14 ID:lGXZ6gnA
普通の学園生活や日常を描くのはダメなんだろうか
戦争はテレビのニュースで報道されてたり、クラスメイトが戦死していなくなったりと色々やれそうなんだが
非戦闘要員の学生の視点で進めるというのは十分ありじゃないか
それに軍隊は戦闘要員より非戦闘要員の割合の方が大きい
毎日銃や大砲や戦車を整備したり補給事務や物資の詰まったダンボール抱えたりしながら
支援業務という日常
朝、笑顔で送り出したクラスメートが帰ってきたときには死体
某ガンパレでいう整備班プレイとかのイメージだな
>>136 しかし補給関係とか後方勤務の話って地味になりそうなんだよなぁ
同時並行で戦闘の話を一本作って、裏シナリオみたいな感じで作れるかもしれん
あと、整備班長はきっと千葉繁の声なんだろうなw
補給キャラか…
キャゼルヌとか?
補給を抜きにして戦闘は語れるが、戦争と戦場は語れない。
弾や食料や防寒着が届かないとか、補給部隊と合流できなくて進軍が止まるとか
食料の供給が保障されないから作戦の発動を渋るとか、常識ですな。
でも舞台が島だと狭すぎて補給の意味がない気がする。
あと、一般人が存在しないから「徴発」はできないな。
根拠地から運ぶ と 敵から奪う 以外に補給手段が無いんだ。
部隊レベルでなら、学兵が私物として隠し持ってる食料(菓子類)とか
強制的に徴発という名の没収…
コメディ路線だな
それやると背中から撃たれる
アメを奪い合いして撃ち合いになるのか
>戦闘機の機動性と戦車の火力と装甲を歩兵と同サイズで実現させた
魔道兵メチャ強いよな、これを野戦で浪費するのはもったいない。
敵の本校に直接攻撃させるほうが有効そうだが、それをしないのは
上層部は魔道兵を消耗させたいのかな?
そのへんは魔道兵の行動半径とかデータが出ないと考証できないな。
数が少ないから制圧できても維持できないとか
146 :
75:2008/09/28(日) 22:24:41 ID:zSIAe+cK
ちょりーす
第三話までのプロット作り終えたから次回投下はもうちょい先になる!
>>144 あーその辺考えてなかったなぁ
そもそも島がどれぐらいの大きさとかもよく考えてないや
魔道兵って人間サイズになった「アニメに出てくるような人型機動兵器」と考えてたんだよね 今日最終回になった夕方アニメに出てきたみたいな感じの。
上層部の思惑とか出すと生徒会の役員とかも設定しなきゃいけなくなりそうだw 史実の人間を創作物に出したら怒られはしないんだろうかと聞いてみる
つーか実際に人型サイズで高火力高機動の兵器があったら現代米軍でも苦戦しそうな気がするんだけど、詳しい人いたら教えてくれ
147 :
75:2008/09/28(日) 22:29:13 ID:zSIAe+cK
で、補給についての話
魔道兵がチート兵器なら、非魔道兵の部隊が勝つには必然的に色々な手段を講じなきゃいけなくなる
補給部隊を襲撃して空腹状態にしたりすれば、魔道兵も人間なんだから疲れるし腹も減るから倒しやすくなるんじゃないかと
んで最後にネタ振りなんだが、住人がキャラや学校の設定を勝手に作って色々考察したり妄想したりするのはどうだろう?
他のSSスレとかシェアードワールドスレではそういうことやっているみたいなんだが、みんなどう思う?
魔道兵はリリカルなのはのイメージで考えていた
実在の人物は出さないほうがいいんじないかな?
魔道兵は戦闘機並みの機動力で補給ポイントを任意に選択できるから
どこで補給するか特定するのは大変そうだ
でも倒すだけなら化学兵器使えばいいと思う
現代米軍なら照準用のレーザー照射しただけで失明させてしまえそうだし
レーダー反射断面積が人間サイズなら、音速のミサイルを複数同時に迎撃できるイージス艦の敵じゃない
こんな俺妄想
20世紀初頭の隕石落下により世界最大の覇権国家が消滅し
海面上昇で多くの工業地帯が水没してから12年
人類は新たな能力を発現させた。
それまで物語の中にしか存在しなかった魔法を使う子供が次々と見つかりはじめたのだ。
技術も資源も必要とせず、航空機より速く移動し、忠実な労働力を召喚する。
世界は彼らを魔道世代と呼んだ。
次の世界を支配するかと思われた魔道世代だが、人類の技術の進歩は瞬く間に魔法を凌駕し
主導権は人間の側に移った。
この物語は、魔法が技術を上回っていた、たった18年間を記録したものである。
とか。
150 :
75:2008/09/29(月) 21:35:41 ID:dMqbrLhZ
ちょりーす
>>148 やっぱり軍事+魔法になるとなのはを連想する人多いんだね 三期はまだ見てないや
実在の人物は色々とやばそうだからやめておくことにする サッチャーとか出せそうじゃないかなぁと思ってたw
魔道兵の補給ってどうやるんだろうな? 空中補給とか見栄え的には好きだけど、森の中に補給拠点隠して補給したりするほうが敵にとって嫌そう
補給の不手際から空母に満載された魔道兵が船ごと沈んだり、燃え盛る母艦からの発進とかも燃える
科学兵器で思い出したんだけど学園島世界におけるNBC兵器も史実同様の扱いなんだろうか あと核開発もどれぐらい進んでるんだろう
151 :
75:2008/09/29(月) 21:36:43 ID:dMqbrLhZ
>>149 そういうの大好きだw 是非とも屋良有作さんに読んでもらいたい
よく考えると魔法が革新的技術として世に放たれても、魔法がある意味で進化し切った形である以上、人間の技術の方がのびしろが多いわけだ
魔法がチート臭い技術な分、持たない連中はそれを乗り越えようとするだろうし
その流れだと零戦がグラマンシリーズに追い抜かれていくみたいだな
>魔法を使う子供が次々と見つかりはじめた
魔法って何歳ぐらいまで使える設定なんだろうw 魔法が早々に息絶えた技術になるんだったら、使える期間がそんなに長くない設定になるのかも
年齢制限がある
遺伝しない
この2点があれば魔法使いだけの国は成立しなくなるな
魔法を使えるのは処女だけwwだったりしたらやばいww
153 :
75:2008/09/29(月) 22:47:31 ID:dMqbrLhZ
>>152 出そうと考えてた魔道兵キャラの趣味が童貞食いと設定してた俺涙目
前じゃなくて後ろ……たわば!
155 :
75:2008/09/29(月) 22:54:42 ID:dMqbrLhZ
>>154 口とか(ry
ところで教員キャラをどう扱うかで悩んでいるんだ 学生同士で戦争やってて、尚且つ指揮官も努めてるから、大人キャラは司令官とかその辺?
今の所は教務長と設定していつでも変えられるようにしているんだけど・・・
156 :
75:2008/09/30(火) 21:28:31 ID:vuuNjcki
ちょりーす
続き投下!
157 :
75:2008/09/30(火) 21:29:48 ID:vuuNjcki
>>75からの続き
8
戦場は恐ろしいもの。
戦争を知らない者はそう言う。
確かに恐ろしいものだとアルフォンス・ダークホームは思っていたが、実際のところ、幼少期に似たような経験を――下手をすれば戦場よりも悪い環境の――した人間から見れば、そこまで恐ろしい場所ではなかった。
むしろ居心地の良い場所だと思う自分をアルフォンスは好んでいたし、同時に自分は救いがたい人種だとも考えている。
望むのなら最高の敵との紙一重の戦い。純粋な部隊同士の緊張感に溢れたぶつかり合いこそアルフォンスは望んでいた。
戦いの高揚感と緊張感が、アルフォンスに生の充足感を与えてくれる。
強い敵を……もっと強い敵を……より強大な敵と戦いたい。それだけがアルフォンスにとって、戦場で時間を過ごす理由だった。
とは言え、望むことばかりが起きる場所でもない。
「手を押えろ!」
「噛まれるぞ! 口に何かを押し込め!」
捕虜となった魔道兵に兵士が寄って集っている。
止めようとする者もいるが、暴行を働く者たちの一人が銃を突きつけている。
「やれやれ。若さ故のなんとやら、か」
時代が時代なら溢れんばかりの若さを解放している年頃の者ばかりだ。
それが軍隊というシステムに本能を抑圧され、なおかつ殺人が日常的に行われる毎日の中にあっては、理性のタガが外れるのも致し方ないことだ。
アルフォンスは自分が中世の時代に生まれていたら兵士たちの蛮行を黙認していただろうが、近代の戦いにおいては一つの事実が百の尾びれを付けて放出されることもある。
158 :
75:2008/09/30(火) 21:30:31 ID:vuuNjcki
腰のホルスターから拳銃を引き抜き、魔道兵に覆いかぶさろうとする兵士の後頭部に銃口を押し付ける。
淡々と、機械的な動作で一人、また一人とアルフォンスは兵士を撃ち殺す。
魔道兵の白い肌に赤黒い血と脳漿が降りかかり、魔道兵は顔を背ける。
全員を撃ち殺した後、アルフォンスは別のマガジンを銃に入れようとした。
そこで、少し待った。
魔道兵が震える瞳を自分に向けていた。
「大丈夫かな? お嬢さん」
差し伸べられた手を見て、魔道兵は顔を背けた。
アルフォンスは右手に携えた銃の引き金をを魔道兵の額に目掛けて引いた。
「全く度し難いな。魔道兵と言う奴は。いや、女と言う奴は……と言った方が、この場合は適切だな」
どこか自嘲とも失笑とも取れる笑みを口許に浮かべつつ、アルフォンスは装甲車へと戻った。
次の行動の指示を求める副官に対して、アルフォンスは告げる。
「残敵掃討の後、帰還する。撤退する敵の深追いは避けろ。窮鼠は猫をも噛むと言うからな」
そう言って、アルフォンスは腕を組み目を瞑った。
この島にはたくさんの英雄がいる。
アルフォンスはその中の数人と戦い、勝利も経験し、また敗北も経験した。そこには充足感があって、彼の心にぽっかりと空いた空洞を一時的にせよ塞いでくれた。
強い敵との戦い。アルフォンスはそれだけを求めている。贓物と鮮血で彩られた夢にアルフォンスは魘され、酔っているのだ。
159 :
75:2008/09/30(火) 21:31:42 ID:vuuNjcki
第二章
1
パクス・ブリタニカは学園島の西部に位置している学園だ。
校内には軍事施設だけではなく、多種多様な施設が備わっている。校舎だけでなく娯楽施設や保養所を備え、ガス、水道、電気といったインフラも備えている。言うなれば、ここは学園島に作られた小さな国家だった。
各委員会が行政や立法を担当し、生徒会主体の自治を行っていた。
生徒達の自主性を尊重している――と公言しているが、公言の主である報道委員会が述べるほど誇れるものではなかった。
単に国家社会主義の権化と化したアヴィリオン学園と社会主義の理想郷とも揶揄されるヴォルクグラード人民学園を同島に置かれた立場にある以上、パクス・ブリタニカも独自色をアピールする必要がある背景があったに過ぎない。
学園列島における微妙なシーソーゲームの中でパクス・ブリタニカは嘲笑されるほど弱体ではなかったが、畏怖されるほどに強大でもなかった。
アヴィリオンからは『喉に刺さった小さな棘』と、ヴォルクグラードからは『目の下のたんこぶ』と言われている。
「数学のジマーマン先生、少しは宿題を減らしてくれないもんかなぁ」
「先生も大変なんだ。前線組の授業は遅れるし、内勤組は怠け者ばかりだし。戦争は続くし」
「円周率が三にならないうちは大丈夫だろうよ……」
巨大な学園へと向かう通学路では生徒達が他愛の無い会話を交わす。
純然たる軍事組織である防衛委員会や治安維持を目的とする風紀委員以外の生徒は、学生として毎日を送っているのが現状だ。
とは言っても、戦争という非日常が日常と隣接している現実は校内の各所で見ることができる。
いつも元気な教室のムードメーカーが休んだ理由をクラスメイトに聞けば、弟が前線と死んだという答えが返ってくる。
前線からの帰還兵が増加する戦死者の関係で編成変えされたクラスに馴染めず寮で首を吊り、またある者は購買部で窃盗を働いた挙句、憲兵に囲まれて自分の頭を撃ち抜いたという話もある。
「二年の七十五組に新しく入ってきた転入生の話、聞いたか? エラく胸がデカいんだってさ!」
「常識的に考えて、女は顔だろ」
「心が綺麗じゃない女性に価値なんてあるもんか」
純潔を持ったままの男子生徒達が微笑ましい会話をしながら歩く通学路のすぐ横では対空砲が天を仰ぎ、傍らで軍服を着た生徒達が談笑している。
160 :
75:2008/09/30(火) 21:33:04 ID:vuuNjcki
「よぉ番犬。エサやろうか?」
「無駄口を叩かずにさっさと歩け! 遅刻は重罪だぞ!」
道を行く生徒達を怒鳴りつけながら、通学路で交通整理を行うのは憲兵隊の生徒達だ。
<<ランサー7よりランサー5へ。フライパスしてカワイコちゃんのパンツは何色か確かめることを提案する>>
<<ランサー7、俺は黒と予想する。黒でガーダーベルト付きだ>>
<<こちらランサー3。黒だの紫だの、ガキがお前らは? 玄人は白を選ぶ。ふぅ……>>
<<ランサー1より変態紳士共! 貴様ら全員、帰ったら腕立て五千回だ!>>
時折空から聞こえる戦闘機の爆音は、本校防空隊のスピットファイアのものだ。スピットファイアは美しい主翼を翻して、パクス・ブリタニカ本校上空を駆け抜けていく。
「犠牲の上に成り立つ、歪んだ平和だよな。俺達のいる場所は……」
男子生徒の一人が重々しげに言う。
他の生徒は否定しなかったが、肯定もしなかった。その言葉が事実だと知っていたからだ。
平和の中の非日常――戦争が一部となった平和――それが学園列島を表す上で、重要なキーワードだった。
161 :
75:2008/09/30(火) 21:33:56 ID:vuuNjcki
2
パクス・ブリタニカの本校から少し離れた場所に学生寮がある。
その一室。ベッドの上で目を覚ましたアルフォンス・ダークホームは、うっすらと目を開けた。
彼の部屋には調度品も無ければ、クラスメイト達との写真も飾られていない。無機質で実用的な家具がいくつか置いてあるだけだ。
――朝か……。
濡れた青い瞳が日光に照らされる白い天井を見やる。
ぼやけていた視界が、徐々に明確な形を帯びていく。
開けっ放しにした窓からは心地よい風が入り込み、白いカーテンを靡かせていた。肌を撫でる風が、心地よかった。
――やはりだめだ。馴染めない。
ぼんやりとした意識の中で、アルフォンスは落ち着きとは程遠いものを胸中に感じた。胸の中に形容し難い違和感と不安感があった。
自分が安全な場所にいて、一時の平和を享受していることは覚醒し切らない脳でも理解できている。
だが、彼の心に安堵や落ち着きは無いのだ。大きな虚脱感と喪失感が、アルフォンスの中で渦巻いている。
――なぁに、いつものことだ
黒い髪を掻き毟りながら、アルフォンスはベッドを離れる。
僅かに埃を被った目覚まし時計に目をやった後、アルフォンスは洗面所へと向かった。
顔を洗う。頭を上げると、鏡に映るのは雫に濡れた男だ。
――これが希代の殺人者の顔か。
しばし鏡と睨めっこした後、アルフォンスは鼻を鳴らした。
いつから自分は、こんなにもナルシスティックな人間になったのだろうか?
そう思いながらタオルで顔を拭き、アルフォンスは登校の準備をするため部屋へと戻った。
162 :
75:2008/09/30(火) 21:34:26 ID:vuuNjcki
3
パクス・ブリタニカ――学園島において、教員という立場は微妙なものである。
長い軍歴を生かして司令官の職にある者もいれば、教員として職務を全うする者、厚顔無恥を極めて利権を貪る者……様々だ。
「教務長、二学年のガゼール少佐がまた愛人を作ったそうです」
「ワシの記憶が正しいとしたら、もう一個連隊も愛人を作ったんじゃな」
「一個師団になったら退学処分ですよ。
職員室で七割の尊敬と三割の敬遠を持たれて毎日を送る"冴えない中年"と"長生き爺"は最初の二つを経験し、最後の一つを強く軽蔑していた。
「女の一人や二人はべらせないで救国――いや救校の英雄が務まるものかね。ワシだって現役の頃は愛人が一個連隊はいたもんだ。そんなに大人が目くじらを立てることもあるまいて」
古ぼけたコーヒーカップを机に置き、温和な老紳士然としたスチュアート・バークリー教務長が反対側に座る教員に話しかける。
「教務長の言葉を聞いたら、風紀委員の連中は顔を真っ赤にして怒るでしょうなぁ」
どこか皮肉めいた口調で言ったのは副教務長を努めるビアース・スピアーズだ。
職員室の机に向かい合ってコーヒーを飲む二人はパクス・ブリタニカの学び舎としての一面を支える人物だった。
スピアーズの言葉に同意した後、スチュアートは一つ付け加えた。
「今の話、女房には内緒だぞ。このことが知れたら、ワシは粗大ゴミとして捨てられてしまうからの」
163 :
75:2008/09/30(火) 21:35:58 ID:vuuNjcki
今日はここまで
他の人も小ネタ投下とか色々歓迎してまっせ
わからないところはみんなで解決すればいいかと
新作乙
なかなか抑制の効かない学生が多いようですな。
主人公もそれでいいのかw的な行動をしてくれます。
大人も、もう少しまともな手本見せろと。
アルフレート・ヨードルを見習え。
あと、ちょっと因果関係がわかりにくい部分がありますね。
止めようとする者もいるが→全員を撃ち殺した
止めようとする者も殺したように読める
別のマガジンを銃に入れようとした。 そこで、少し待った。→銃の引き金をを魔道兵の額に目掛けて引いた。
空の銃で撃ったふりをしたようにも読める
165 :
75:2008/09/30(火) 23:09:58 ID:vuuNjcki
>>164 修正したっす まとめに載せる時は修正版をうpするようにするっす
>抑制きかない学生
やりすぎたと反省
166 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/09/30(火) 23:22:55 ID:9lJt0Zmc
時は、第一次世界大戦から五年後、突如巨大隕石が地球に飛来しユーラシア大陸を中心に多大な被害でた、隕石の落下によりユーラシア大陸の中心に巨大な海が出来き、
海には残った大地が列島のような形となった。その列島には、不思議な力があり列島で死亡したら数日後には蘇生し、また隕石の落下の影響により、
その列島でのみ一部の少女が魔法が使えるようにとなった。
そして、列強各国が列島の所有権をしたが、結局は新た戦争を回避するため、各国の子供達を教育するために列島各地に大小様々な学園がつくられた・・・・。
しかし皮肉にも、学園どうしの争いが激化し、学園どうしの戦争はもはや秒読みとなった・・・・。
とろあえず適当に書いてみたけどこんな感じでいいのかな?
クレーターが陸地の真ん中にできたとすると海水はどっから湧いたんだろう
ところで、こちらはまとめはどうされるんでしょうか。
内海の島の所有権を列強が主張するのは無いんでないかい?
>>169 【審議中】
∧,,∧ ∧,,∧
∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U ( ´・) (・` ) と ノ
u-u (l ) ( ノu-u
`u-u'. `u-u'
【審議終了】
∧,,∧ ∧,,∧
∧ ∧ ( ) ( ・ω・)
(ω・ ) ( U) ( つ日ノ ∧,,∧
| U u-u u-u ( uω)
u-u (∩∩)
∧,,∧ ∩ ∧_∧ 審議結果
(・ω・') ⊂⌒( ・ω・) 「はいはいわろす」
⊂∪∪⊃ `ヽ_∩∩
172 :
75:2008/10/01(水) 19:32:49 ID:tUMoUrSe
ちょりーす
>>166 そんな感じでいいんじゃないかな 「こんな感じ」がまだ曖昧だけどもw
>>168 いずれwikiとかにまとめる必要があるんじゃないかと
最悪、私がwikiを作ってもいいですよ〜
>>169 領有権を主張と設定してたけど「ボロボロの国同士が学園で代理戦争する」世界を作りたかったからそれらしい設定を俺は作っただけw
正直、本職の人が見たら鼻で笑われてしまいそうだ
>>172 私、軍板のまとめサイト管理人(という程偉そうなことはやってませんが)
なのですが、どうせなら軍板でのWikiを改装して使いますか?
174 :
75:2008/10/01(水) 22:29:10 ID:tUMoUrSe
>>173 それでもいいんですが、そうなった場合の管理者権限はどうなるんでしょう?
175 :
75:2008/10/01(水) 22:30:07 ID:tUMoUrSe
サーシャ・ルインスキー
旧ヴォルクグラード軍魔法軍→アヴィリオン空軍教導魔道師団に所属。
階級は大尉。
性別は女性。
ヴォルクグラード軍ではエースとして活躍していたが、それ故に危険視され謀殺未遂事件の後、学籍を抹消される。本人曰く「食べるため」にアヴィリオンへと亡命する。
彼女は自らの高い技術をアヴィリオンへと教えただけでなく、出来る限りの魔道兵に関する情報を手土産として亡命した。そのため、彼女のもたらしたデータが量産魔道兵の骨組みを作り上げるに至る。
人柄としては温厚で冗談好きの好人物であったと記録されているが、亡命前の話を自分からすることはなく、他人から聞かれてもお茶を濁すだけだったという。
その評価はアヴィリオンとヴォルクグラードでは大きく分かれており、アヴィリオンでは自軍のために貢献した偉人、逆にヴォルクグラードでは大いなる裏切り者として唾棄すべき人間と評価されている。
戦後も母国に戻ることはなく、1959年に交通事故で他界した。
176 :
75:2008/10/01(水) 22:31:03 ID:tUMoUrSe
ジルヴィア・アーヘンバッハ
アヴィリオン空軍第2718試験飛行隊に所属。
階級は少尉。
性別は女性。
空軍の時期主力ジェット戦闘機競争に敗北したHe280の試験スタッフを務めていた。
He280がMe262に政治工作で敗北したことを知った彼女は、魔道兵によってMe262を打ち破る計画を立てる。彼女は自ら魔道兵の被験体となって試験を開始する。
数十回の試験の後、彼女はMe262と模擬空戦の機会を得、Me262を完敗に追い込む。だが、音速を超えてしまったために彼女の体が空中で木っ端微塵となり、ジルヴィアは死亡した。
学園列島での戦いで音速を超えたのはジルヴィアただ一人である。
177 :
75:2008/10/01(水) 22:32:16 ID:tUMoUrSe
というわけでキャラ妄想
他の人が作ったキャラも見てみたいんだぜ!
179 :
75:2008/10/02(木) 21:10:49 ID:b4MHvJCP
ちょりーす
>>178 回答するのは一通り見てみてからでいいですか? どんな風に編集するのはわからない点もあるんで
180 :
75:2008/10/02(木) 21:25:13 ID:b4MHvJCP
ちょいとネタ振りなんだが、学園島におけるマスコミってやっぱり報道委員なのかな?
新聞部とかは駄目なのかな
生徒会宣伝部とかどうだい
他国領土で報道しているとスパイ容疑で捕まりそうだな
自国の高揚記事しか書けないのかな?
183 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/05(日) 22:27:56 ID:ZmDQ7ud0
学園島の戦いは補給拠点が限られているからアフリカ戦線みたいになりそう
166だが話がまとまったから投下開始する。
初めて書いたSSだから細かい所は気にせんでくれw
185 :
166:2008/10/06(月) 20:31:20 ID:0gMdr1qU
学園列島、ここにはドイツ系のルントンシュテット学園、ソ連系のワシリー学園、フランス系のエドアール学園、アメリカ系のラムゼー学園、日本系の奥宮学園、イタリア系のバドリオ学園、英国系のビーミッシュ学園の計7学園があった。
7学園はそれぞれ、ルントンシュテット学園、バドリオ学園、奥宮学園て゛組織された学園同盟。そして、ビーミッシュ学園、ラムゼー学園、エドアール学園で組織された学園連合、このふたつの陣営が存在した。また、ワシリー学園は現在は中立を保っていた。
両方の陣営は緩やかな敵対関係であったが、ある日起きた事件で、両方の陣営は戦争状態へと突入していった・・・・。
186 :
166:2008/10/06(月) 20:34:22 ID:0gMdr1qU
1941年5月10日
この日、エドアール学園とルントンシュテット学園の学境にミスリルと呼ばれる鉱石の大鉱脈が発見された。
ミスリルは魔法兵士の武器を製造するには必要不可欠であった。しかしミスリルの埋蔵量は少なく、学園列島にある全ての学園が喉から手が出るほど欲しがる程貴重であった。
学園同盟はミスリルを独占しようと考えたが、学園連合はそれを許さず、一部の部隊がルントンシュテット学園のミスリル採掘部隊を襲撃、
採掘部隊に多数の死傷者がでたためルントンシュテット学園生徒会は激怒し、戦争を考え、そしてそのことを奥宮学園とバドリオ学園と協議するため会議がもたれる事になった。
187 :
166:2008/10/06(月) 20:35:27 ID:0gMdr1qU
〜投下終了〜
188 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/06(月) 21:03:31 ID:6OEWxi3L
おつー
いきなり色んな学園出てきましたねw
乙です
ミスリルという魔法資源?が出てきたけど、具体的にどう使うつもりなんだろう
スク水とブルマに加工
魔法発動体に必要なんだ
192 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/07(火) 21:09:33 ID:QOXpCieb
>>190 よく知らんけど魔法を戦力化するためには必需品なんじゃないのかな?
わかりやすさを重視するためにミスリルの量で各校のパワーバランスを設定したりすると面白そう。
初めて日本風学園が出てきたけど日本の魔女というと巫女さん?
>>191 みんなは魔道兵の外見イメージをどう考えているんだろう。
俺は兵器然としたものを考えているんだけど、ブルマとかスク水も・・・いいなぁw
そこは萌え重視でやる人、戦記モノやりたい人、学園ラブコメやりたい人で別ければいいんじゃね?
193 :
166:2008/10/07(火) 21:45:44 ID:NM3LPsco
>>192 日本の魔女は巫女さんだw
ちなみに、各国の魔道兵のイメージは中世の騎みたいのをイメージしてる。
>>191 それなんてストパン?
>>190 魔法兵はミスリルで作った武器でないと攻撃的な魔法や、空を飛べないけど、火を起こすとか明るくするとかの
基本的魔法はミスリルなしでも使えるって設定を考えてる。
>>193 >ミスリルで作った武器
設定間違えるとチート武器できてパワーバランスが崩壊しかけないので注意
それと今考えたんだが、もしバイオライダーみたいな魔道兵が出てきたら通常兵器で倒せるんだろうか?
魔法が発見されてから実用化されるまでの過程も読んでみたいな。
なぜ「ミスリル」が魔法を補助するとわかったのか
一般人に使える対魔技術は開発されているのか
国家権力は魔道兵をどうやってコントロールしているのか、とか。
正直その話だけで一本作れるんじゃないか
197 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/08(水) 20:07:59 ID:zwRwOPzI
この世界だと魔法が最初こそ圧倒的な力を誇示するけど、それに触発された科学者や技術者の努力によって革新的だけど拡張性に乏しい魔法が淘汰されていくのかもね。
上の方のレスにあったけど魔法が輝いたのは十年かそこらだった・・・というのも結構いいかもしれない。
>>195 なんかもやしもんみたいな話になりそうな気がするw
戦闘だけじゃなくて後方の奮戦記とか陰謀劇も読みたいなぁ
焼きそばパンを巡って内乱が起きるとかw
すごくどうでもいいネタなんだが学園島の軍楽隊は吹奏楽部が担当なんだろうか?
200 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/09(木) 21:10:22 ID:ddnR8t/t
チート魔法と言うなら是非キラッ☆で相手を洗脳する魔道兵を…
>>199 その設定だと憲兵隊と風紀委員会の勢力争いとかありそうですね
202 :
166:2008/10/09(木) 23:10:00 ID:cU6nZXa6
1941年5月13日 ルントンシュテット学園・生徒会室
「今日、二人に来てもらったのは言うまでもない」
薄暗い生徒会室には、ルントンシュテット学園生徒会長であるフリッツ・ゼーラ、バドリオ学園書記ラフランコ・ケキ、そして奥宮学園副会長藤田加奈がいた。
「今、ミスリルの鉱脈はエドアール学園の部隊が占拠している。」ミスリルの採掘部隊を襲撃した部隊はそのまま鉱脈に居座っていた。
「現在、2個大隊が占拠している部隊包囲している、もうまもなく攻撃を開始する」
それを聞いて、加奈が初めて口を開いた。
「それで、鉱脈を奪還してもまた奴らは、占拠するために部隊を動かすわよ?」
そしてそれに同意するようにラフランコも口を開いた。
「その通り。それじゃあイタチごっこなっちまうんだぜ?」
フリッツは予想していたかのように答えた。
「それは、わかっている。だから・・・・元凶になるエドアール学園ごと滅ぼす。」
203 :
166:2008/10/09(木) 23:13:38 ID:cU6nZXa6
その答えに二人は目を見張った。「そ、そんな事をすれば学連と全面戦争なるわよ!」
「や、奴らの方が戦力は上だ! まともにやり合えばこっちが滅ぼされっちまう!!」
二人ともいきなり戦争を引き起こすなど思いもよらなかった。
「確かに奴らの方が戦力は上だ、だから奴らの出鼻をくじくために奇襲を仕掛ける。」
「攻撃目標は、学連軍最大の軍港トリム、あそこを奇襲すれば、今後の学連海軍の活動は大きく制限される。そして、エドアール学園学境防衛線ジャンヌダルク線だ。この場所を同時に攻める。」
フリッツの言った事に動揺してしまった二人は沈黙してしまった。
204 :
166:2008/10/09(木) 23:15:54 ID:cU6nZXa6
〜投稿終了〜
会話を書くのは苦手だがらなかなか進まないorz
乙っす
鉱山の奪い合いがどうなるかwktk
206 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/10(金) 22:39:51 ID:r0YmaRvl
>>204 おつかれさん
>学連軍最大の軍港トリム
アフリカ戦線のトブルクやクレタみたいに本国との補給を繋ぐ生命線になりそうだ。
ここを落とされたら戦線が大きく後退を余儀なくされたりするのは面白そう。
207 :
75:2008/10/11(土) 00:17:03 ID:yqBihr3U
ちょりーす
本編を入れてたUSBが洗濯されてしまったんで、急遽新作投下の巻
プロローグ
かつて戦争があった。
戦争が始まった理由は、単純なものだった。
隣人が強力な武器を持っている……ただそれだけの、だが最大の理由だった。
戦争が始まり、誰もが傷付き、血を流した。
その中で儚い命を輝かせる者達がいた。
英雄。
畏怖の敬意の狭間で、人々は彼らをそう呼んだ。
この物語は、そんな人でなし共の、救い難い戦いの記録――。
第一章
1
一九四三年――統一歴四十三年。
世界は歪んだ形をしながら、不安定な平和を享受していた。
隕石の落下によって大陸が水没し、少なくない数の国家が消滅した後も、人間達は生き残っていた。
国は形を変え、流血と悲劇を経て、世界は辛うじて再構成された。
その不安定な平和を支えているのが、学園列島と名付けられた島々であった。
かつてバルト海と呼ばれた洋上に浮かんだ島々では、各々の国家の支援を受けた学園同士が凌ぎを削っていた。
学園を国家として、島を世界に見立てた悪趣味なゼロサムゲームによって、今だ傷の癒えない国家同士のバランスは絶妙な形で取られていた。
若人達の血が流されることで、世界はなんとか平和を保つことができていた……。
2
学園島での戦いは幾つかの学園同士で戦火が交えられている。
西側で最大の勢力を誇るアヴィリオン学園と東側を代表する巨校ヴォルクグラード人民学園が東部戦線と呼ばれる戦場で死闘を繰り広げている一方、西部戦線でもアヴィリオン軍と戦う勢力が存在する。
パクス・ブリタニカ学園はアヴィリオンと同じ西側に属しながら、共同歩調を取ることなく、争闘に明け暮れる日々を続けていた。
「早く戦争にならんかな? 平和な生活もいいが、あまり長いと疲れる。いっそ、本校まで敵が押し寄せてきてはくれないだろうか?」
洒落にならない言葉を呟きながら、一人の男子生徒がパクス・ブリタニカの巨大な校舎――その廊下を、鞄を片手に進む。
廊下は授業を終えた生徒が行き交い、活気に溢れている。
「もう一週間か……平和は飽きる」
アルフォンス・ダークホームは足を止め、壁の掲示板に貼られた報道部の記事に目をやった。
「東部戦線か……イデオロギーが戦争に入り込むと、そこには互いへの敬意も命の輝きが生む高貴さも存在しない。ただ、悲惨なだけだ」
記事には陰惨な戦闘の模様が写真として掲載されていた。
廊下で駄弁る生徒達は、それらの写真を見ても大した感情を抱いてはいない。
この島は戦争が日常の一部分と化してしまっているからだ。
「平和の中に身を置きながら、戦場に恋慕の感情を抱くとはな」
濃い緑色をした瞳に憂いが浮かび上がった。
「ふぅ」
小さくアルフォンスは溜め息を吐き、また廊下を歩き出した。
彼の襟には軍の階級章が鈍い光を宿していた。アルフォンスだけではない。校舎の中にいる全員が、制服の襟に階級章を付けている。
「もっとも、これが本職のようなものなんだがな」
僅かに哀愁を漂わせてはいたが、アルフォンスの横顔は端正だった。
癖のある栗色の髪。
面長な顔に配されているのは強気さを表すような少々吊り気味の目と、高い鼻、形の良い唇だ。
瞳は孔雀石をそのまま埋め込んだような緑色をしている。
パクス・ブリタニカの制服に包まれた肢体は一見すると細身だが、時折見せる鋭い仕草は彼の肉体が軟弱な小動物ではなく、肉食獣のそれに近いことを如実に表していた。
「んっ?」
自分の教室の前にさしかかったアルフォンスは廊下の隅に、一人の女子生徒が立っていることに気付いた。
どこか不安げな顔をしている女子生徒は、落ち着きの無い様子で手を合わせた動かしている。
「何かあったのかね?」
心配になったアルフォンスが尋ねると、女子生徒は弾かれたように背筋を伸ばした。
「あっ、あの! ダークホーム先輩!」
顔を真っ赤にして女子生徒は言う。
「あの……」
「何かな?」
アルフォンスが答えると、女子生徒は必死に声を振り絞る。
「今……付き合っている人はいますか?」
いると即答すると、女子生徒は衝撃を受けたらしく、言葉を失った。
「そうなんですか……」
「いや、付き合っていると言っても、人じゃないんだ。形のあるものではない。いや、無いと言えば無いものだが」
アルフォンスはしどろもどろになりつつ、女子生徒を宥めた。
「人じゃない……?」
「ああ」
胸を張り、堂々とアルフォンスは言い放った。
「俺は――アルフォンス・ダークホームは戦争と付き合っているんだ。戦争が、俺の恋人なんだ」
アルフォンスの濃い緑の瞳が活気に溢れた光を宿している。まるで、恋に落ちた少年の目だった。
3
英雄はなろうと思ってなれるものではない。他者によって作り上げられるものだ。
アヴィリオン学園高等部二年生、アヴィリオン統合空軍少佐エーリヒ・シュヴァンクマイエルは身をもってそれを体験した。
彼は元々、小説家を志望していた。だが隕石落下とそれに伴う戦争によって学業どころではなくなり、その日食っていくことにも困窮する毎日を送っていた。
そこに手を差し伸べたのがアヴィリオン学園だった。彼は消耗品としての子供を一人でも多く必要としていたアヴィリオン学園に入学した。
だが手を差し伸べた者とエーリヒ本人の意思とは裏腹に、彼は泥沼の東部戦線で多大な功績を残す。ある時は全滅の危機に瀕した味方を救い、ある時は自軍の十倍の敵を倒し、ある時は困難な補給任務を完遂させた。
そして彼は消耗品から十七歳の若き英雄へと本人の意思に関係無く担ぎ上げられ、今に至る。
「戦争しながら学生やるって、無理じゃないのかなぁ」
静かな図書館でノートに鉛筆を走らせながら呟くエーリヒの顔――その左目の上から頬にかけて、醜く大きな火傷の跡が残っている。本来左目があるべき場所は黒い眼帯で覆われていた。
それさえなければ、軍服ではなく学生服を着用していれば、エーリヒは温厚そうな顔立ちをした目立たない少年であったのかもしれない。皮肉なことに彼の温厚な顔立ちは、火傷の醜さと眼帯の印象を強めることに一役買っていた。
「現にしている人もいるよ。ほらほら、口じゃなくて手を動かす」
「ごめんごめん」
それでも優しげな顔を緩ませて、エーリヒはクラスメイトに謝る。
前線で敵から悪魔の如く恐れられる地上部隊の指揮官は右半分だけ、優しげな表情を緩ませた。
だが左側には何も無かった。ケロイドと眼帯で覆われた顔の左半分は、もうどんな喜怒哀楽を見せることはないのだ。
「学生を戦争に送ろうと考えた奴は、土下座してみんなに謝るべきだ」
そう愚痴るエーリヒの顔の右半分は呆れと諦めがあり、左半分には絶対零度の冷たさがあった。
「エーリヒ、ここ教えて」
「何々、ナポレオンのロシア遠征?」
クラスメイトの疑問が一であるとしたら、エーリヒは十を語った。質問に答えただけでなく戦いの推移や結末、問題点を語り、その時代の補給事情と現在の補給事情を比較してみせた。
「世界史は詳しいんだね……」
「人生設計の軌道が狂わなければ、五年後には歴史小説家になっているつもりだったんだ」
辟易しそうになっているクラスメイトを見ながら、また話し過ぎたな――とエーリヒは苦笑する。
実際のところ、エーリヒの夢は小説家になることだった。それも歴史小説の類いを彼は執筆したかった。アヴィリオンに来れば小説家になるための下地作りができるのではないかと期待していたが、どうにも夢はそう簡単に叶わないらしい。
「でも今は……」
「英雄らしいよ。報道部が言うには」
大人びた口調でエーリヒは言い、付け加える。
「報道部の奴ら、みんな死ねばいいんだ。何がジャーナリズムだ。提灯記事しか書けないくせに」
毒づいたエーリヒが火傷跡にできた瘡蓋を爪で剥がした時、背中に声がかけられた。
「世間に不満があるのなら自分を変えなさい。それが嫌なら自分で目を抉って、鼻をそぎ落として、孤独に生きなさい」
相変わらず言動が過激だね、と言いながらエーリヒが振り向いた先には敬礼する女子生徒がいた。
「回りくどい言い方は嫌いなので。理論立てて説明できるほど、理屈っぽい性格でもありません」
燃え盛る炎の如き髪をかき上げて、女子生徒は切れ長の目を僅かに緩ませた。
女子生徒と言う身分だったが、その生徒は空軍用の、濃紺の軍服に包まれている。
214 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/11(土) 00:27:23 ID:OEnnV8Dg
支援射撃
215 :
ロンドン・ブリッジの戦い:2008/10/11(土) 12:39:23 ID:yqBihr3U
名はラファエラ・クリングベイル。
アヴィリオン学園高等部の三年生だが、階級は中尉――エーリヒの部下である。
「いきなりすみません。少佐はここにいらっしゃるとお聞きしましたので……」
ラファエラを言葉で表すとしたら『炎』や『情熱』といった単語が真っ先に思い浮かぶ。
水で溶かされたルビーで染め抜かれたような髪は腰のあたりまで伸びている。
怜悧かつ端正な顔立ちは猫科の、それも肉食動物じみた印象を他者に与え、加えて切れ長の目が更なる鋭さを加えていた。
肢体は百八十センチに及ばんかと言う高身長でもって支えられ、軍服で包まれたラインは起伏に富むほどではなかったが、適度に付いた肉に内包された力強さを強烈に感じさせる。
「愚痴っぽい人間は嫌いなんです。愛した人がそうなら、尚更です」
図書館の空気がラファエラの一言で凍りついた。
ラテンの血を引く部下の発言をエーリヒが顔を真っ赤にして注意する前に、沈黙を守って鉛筆を走らせていた生徒達がひそひそと話し声を立て始める。
「愛した人って……誰だあのデカ女」
「知らないのか? あの生徒、少佐の女なんだぜ?」
ノエルは部下ではあったが、エーリヒは時々どちらが部下でどちらが上官なのかわからなくなる。
少なくとも学園にいる時は形式上エーリヒが上官でも、実質的に部下なのだと痛感させられることが多々ある。
「そ、そ、それはそうとして、何か用かな」
「司令部のモグラ共が少佐をお呼びです」
咳き込みかけながら、エーリヒは席を立つ。
「そ、そうか。じゃあ行かなきゃね」
周囲から浴びせられる視線を背中に感じながら、エーリヒは苦笑いを浮かべてクラスメイト達に別れを告げた後、ラファエラを伴って図書館を後にした。
「中尉、公然の場でああいうことを言うのは勘弁してくれないか」
「それは命令ですか? それともお願いですか? 少佐」
「両方!」
不機嫌そうな顔をしたエーリヒが先にエレベータに入る。
「へぇ……少佐って、結構強引なんですね」
ドアが閉まるより早く、ラファエラはエーリヒを壁へと押し付ける。
「ちょっ……! ラファ……」
言い終える前にエーリヒの唇がラファエラの唇で塞がれる。
湿った感覚を口内に覚えて、エーリヒは手足をばたつかせる。
「……っ……あっ」
唇を合わせたまま、ノエルの瞳とラファエラの瞳が交錯する。
灰色をした瞳が妖艶な輝きを湛え、エーリヒ唯一の視覚器官である右目を凝視していた。
「んっ……」
唇はそのままに、ラファエラの細い指がエーリヒの手を握り締めた。
指の間に細い五指が滑り込み、エーリヒの指を絡め取る。
熟れた熱が手を侵食していく。
「ふぁっ……駄目っ……ラファエラ!」
股座がもぞもぞし始めたので、エーリヒは力の限り、ラファエラを突き放す。
離れた口から唾液の糸が伸び、途中で切れた。
「行きますよ。少佐」
そしてドアが開くと何事も無かったかのように二人は出る。
「な、なぁラファエラ……俺達その……上官と部下なんだし、こういうのはマズイんじゃないのかな」
「少佐の唇は『YES』と言っていました。わかります」
「鼻の下伸ばしたほうがいいかな、こういう時って」
「素直な少佐も大好きです。でも……」
ラファエラは端正な美貌に、悪戯めいた表情を浮かべる。
「ツンツンした少佐を力ずくで服従させるのはもっと好きです」
これじゃあ、僕の方がお姫さまみたいだな――エーリヒは顔の火傷跡を掻きながら、苦い表情になった。
4
授業終了を知らせるチャイムが鳴ると、パクス・ブリタニカ学園の中は活気を増す。
学生食堂へと生徒達は急ぎ、屋上や校庭で熾烈な場所取り合戦が始まる。
非番の補給将校は憲兵の目を盗んで非合法の臨時購買部で懐を暖め、買出し部隊と名付けられた新兵達が使い走りにされて購買部へと走る。
「遅いぞアルフォンス!」
「すまない。少し立て込んでいたんだ」
アルフォンス・ダークホームは校庭で他クラスの友人達と落ち合い、食堂へと向かう。
途中で少し腫れた頬はどうしたんだと聞かれたが、アルフォンスは大したことは無いとお茶を濁した。
想いを伝えに来た女子生徒に自分は戦争という名の恋人がいると言い放った挙句に平手打ちを喰らっても、アルフォンスは他人にそれを言うほど"壊れては"いなかった。
「なぁ、何食べる?」
「フィッシュ&チップス、出来立てならいいんだけど食堂のは作り置きじゃないか。あれを食うのは拷問だぜ」
無難な線でいこうとアルフォンスが言いかけた時、彼の緑色の瞳が廊下の壁に背を預けている少女の姿を捉えた。
「すまんが後でまた」
「おいおい! ……ったく、前線組は大変だな。何か食い物、取っておくか?」
「不要だ!」
クラスメイト達と別れると、少女の方からアルフォンスに近付いてきた。
「やぁウォーモンガー。相変わらず頭のネジが良い感じに緩んでいるな」
「俺は正常だ。正常のつもりだ」
「何をもって正常と言い張る。異常者はいつだって自分を正常呼ばわりするぞ」
ベルセフォーネ・ブルンカステルは皮肉めいた笑みを浮かべた。
彼女はアルフォンスや他の大多数の生徒と同じくパクス・ブリタニカに籍を置いている女子生徒だ。
例に漏れず、襟には階級章があった。それも大尉のものが。
「それじゃあ、いっそ『私は気違いです』と板に書いて生活しようか? どうだ?」
「面白くない冗談だ。ところで次回の作戦の話をしたい」
「わざわざ"ロンドン・ブリッジ"を出て攻勢に出るそうだ。防衛委員会の連中、予算を減らされそうだから、そこあたりでわかりやすい勝利を手に入れたいんだろう」
ベルセフォーネはアルフォンスの部下だ。
ベルセフォーネの口ぶりからは上官への敬意や気遣いは感じられなかったが、別にアルフォンスは気にしていない。
「お前と私にも出動命令が出るだろうな。西部戦線で使い物になる部隊は少ない」
「必然的に、俺があの男と合間見える可能性も高くなるわけだ。嬉しい、素直に嬉しい」
「お前は嬉しくても、向こうはそう思っていないんじゃないか? エーリヒ・シュヴァンクマイエルは」
「彼自身が望もうと望むまいと、彼が戦争の天才という事実は揺るぎない。そんな彼と、俺は心行くまで戦ってみたいんだ」
アルフォンスの表情は言葉とは間逆に、明るいものだった。
彼は強い敵と戦いたかった。強い敵と戦場でギリギリの緊張感の中で鍔迫り合う……それがアルフォンスにとって、生きる理由だった。
「病気だよ。お前は」
アルフォンスは唇の端を吊り上げた。
ベルセフォーネの両肩を掴み、顔を近づけて言う。
「そうさ。俺は戦争と言う名の病気だ。そしてお前も、同じ病気の患者だ」
「そうかもしれない。だから、私はお前に惹かれた」
「ならば病人同士……共に助け合って破滅へ突き進もうじゃないか」
二人は笑い合った後、揃って廊下を歩き出した。
5
放課後になると、本格的な準備が開始された。
授業の途中で呼び出しを受けたアルフォンスとベルセフォーネは共に戦闘団の出撃準備を進めるよう命令された。
アルフォンス戦闘団――それがアルフォンス・ダークホームに与えられた部隊の名前だ。
パクス・ブリタニカの本校にほど近い陸軍基地の一角には、補給部隊用のトラックやシャーマン戦車がずらりと並び、整備を受けている。
「これはこれは中佐"殿"、自ら陣頭指揮とは精が出ますな」
アルフォンスが準備の陣頭指揮を取っていると、突然後ろから声をかけられた。
「貴官は?」
「ガゼール戦闘団のガゼール・ホプキンス中佐だ」
怒りとも挑戦ともいえる表情でガゼールは自己紹介を済ませた。
「ガウェイン要塞で肩を並べて戦ったはずだが?」
少し前に、パクス・ブリタニカ軍とアヴィリオン軍はガヴェイン要塞を巡る戦いを繰り広げた。
アヴィリオン軍に軍配が上がったこの戦いにはアルフォンスも参加している。
「すまない。失念してしまった」
「失念か……それも良い回答だ。逃げ出した腰抜けが英雄扱いとは、世の中は理不尽なものだ」
「撤退戦で殿を務めた部隊は貴官の隊だったのか……これは失礼した」
陥落するガヴェイン要塞から脱出したアルフォンス戦闘団は早々に撤退を完了したが、他の部隊が同じ道を辿ったわけではない。
ある部隊はアヴィリオン軍の追撃部隊に補足されて全滅し、ある部隊は包囲されて降伏した。
ガゼールは殿として、撤退する部隊の最後尾を守っていたらしい。
「謝らなくてもいい。どうせ、この戦いが終わる頃には、俺はエーリヒ・シュヴァンクマイエルを仕留めたヒーローになっているんだからな」
「無理だ。断言しておこう」
アルフォンスは首を横に振る。
「なんだと!?」
「十倍の戦力を集め、エーリヒ・シュヴァンクマイエルを意識不明の重体にして戦いに望まない限り、彼を倒すことはできない。気を悪くしないでくれ。俺は事実を言っているだけだ」
「ケッ。勝てるのは俺だけと言いたいわけだ。ご忠告ありがとう。武運を祈っている。せいぜい、ケツをまくられないように注意するんだな」
ガゼールが去っていく。
次にアルフォンスの背中に声をかけたのはベルセフォーネだった。
「どう思う?」
「早死にするな。ああいいうタイプは」
手元でスパナを弄びながら、ベルセフォーネの緋色の瞳が揺らぐ。
「何百年も生きていると、短い接触で人間を理解できるようになるのか。羨ましい能力だ」
アルフォンスがそう言うと、ベルセフォーネはほんの少しだけ、寂しそうな表情をした。
221 :
75:2008/10/11(土) 12:48:46 ID:yqBihr3U
とりあえずここまで
昨夜は連投規制に引っ掛かりました あと支援してくれた人ありがとう
>>204 職人さんが増えてくれて嬉しいんだぜ お互い頑張りましょう
それでネタ振りなんだが、新規の職人さんとか増やす方法って何があるかな
テンプレ整備、一見さん向けのSSを書くとか方法がありそうだけど、他の人の意見を聞いてみたい
職人というか、人を増やすにはなるべくレスを返すようにした方がいいと思う
レスカキコが無くて停滞してるスレは誰も見ないでしょ
まずは興味持たせてみて、それから書き手登場だと思う
纏めとかテンプレとかは話題振っていくうちに出来上がっていくと思うよ
纏めテンプレ出来ました、でもカキコなくてdat落ちしてましたじゃ話にならん
まずは一日一レスだと思うんだぜ
偉そうな事言ってスマン
223 :
75:2008/10/11(土) 13:01:45 ID:yqBihr3U
>>222 返レスに感謝。
できるだけレス返ししてみるよ。
224 :
75:2008/10/11(土) 13:16:53 ID:yqBihr3U
>>194 俺だったら、敵がチート武器使い始めたら知略と連携で対処させるけどなぁ。
チート武器が出てきました→こちらもチート武器出しましたっていうのはあんまり好きじゃないんで。
でもバイオライダー出てきたらどうしようもないわな それこそ変身前に殺すぐらいしか方法がないもんw
「単体で滅茶苦茶強い魔道兵に対して、知略や連携で勝る通常兵器や兵士が善戦する」というのが学園島での戦いのテーマかも
>>195 魔法が発見されて、魔法を革命的な技術だと喜んで使う連中と保守派が対立する話とか面白そう。
つーか、国家権力がどう魔道兵をコントロールしているかと聞かれたら、俺答えられんわ…
225 :
75:2008/10/11(土) 13:20:47 ID:yqBihr3U
>>197 日本人好みの「敗者の美学」な話になるんじゃないかなぁ、魔法衰退の記録は。
零戦が最初は無敵だったけど解析されて転落していくように。
魔法が使われた後の世界だとラプターが二十年早く登場したり、変形する戦闘機ができたりするんだろうか?
あと後方の奮戦記かぁ
特車二課整備班の話でそういうのあったね 出前が届かないとかエロ本燃やされて内乱起きたりとかしたやつ
魔道兵で後方支援だと、複製魔法で部品作ったりするだけでもチートになるんじゃないか?
>>198 形式的に言えばそうなるかもしれないけど、正直海外には吹奏楽部という活動があるのかどうかはわからない
でも「学園が戦争する」話だからいいかも
使いますねそのネタ
>>199 わかりました
では、もう少し人が増えるまでお待ちを
スマン、俺が言いたいのは全レスしろって事じゃないんだ
作品が投下されたり、誰かが話題振ったときに
ROMってるんじゃなくて、何かレスつけろっていう事
正直貴方はスレを活性化させようと頑張ってると思うよ
でも、全レスは反感を抱く人も出てくるんで気をつけたほうがいい
227 :
75:2008/10/12(日) 22:32:37 ID:mauKuih+
ちょりーす
>>226 まあおいおいやっていきます
いずれはあの作品のキャラがルイズに(ryぐらいにスレになればいいなぁ、ここも
で、続き投下
228 :
75:2008/10/12(日) 22:33:40 ID:mauKuih+
第二章
1
夜が明け、空が白み始めた頃……。
永遠に続くかと思われた夜の漆黒から解放されたアヴィリオン軍の年若い兵士達が歩哨の交代を済ませたのと前後して、パクス・ブリタニカ軍の挨拶――二十五ポンド榴弾が、アヴィリオン側の塹壕に最初の一撃を加えた。
<<砲撃だ!>>
<<落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない。今のは試射だ。次の効力射に注意しろ>>
<<ライミーの奴ら、俺達が交代する時を見計らってやがったな!>>
塹壕の中で土の味を噛み締めさせられたアヴィリオン軍の生徒――兵士達の怨嗟の言葉が聞こえたのか聞こえなかったのか、次の砲撃は恐るべき残忍さと容赦の無さを持ってアヴィリオン軍に降り注いだ。
大地が振動し、圧倒的な鉄と火によって全てが破壊し尽くされていく。
そこには一切の差別も区別も存在してはいない。ある意味で純粋な破壊のエネルギーが大地に叩きつけられ、地面で上でのたうっていた。
運良く破壊の手を逃れても、更なる破壊の波がアヴィリオン軍を襲う。
<<ランサー7より各車、アヴィリオンの奴らが戦争をしたくなくなるほど、撃ちまくれ!>>
<<砲弾は使い切るつもりで撃てよ! 変に残すと気分が悪いからな!>>
<<ティータイムまでに戦争を終わらせよう。今日は美味いクッキーがあるんだ>>
楽観的な通信内容とは裏腹に、パクス・ブリタニカ軍の砲撃は苛烈を極めた。
一時間、二時間、三時間、四時間……一方的な暴力の行使はいつ終わるとも知れず、続いた。
砲撃に晒され続けたアヴィリオン軍兵士の中に発狂する者が出始めた頃、彼らは、自らの残酷な運命がまだ終わっていないことを知る。
<<なんてことだ……なんて……>>
周囲はまだ暗かったはずなのに、アヴィリオンの兵士達が望む空は血の如く赤く染められた煉獄と化していた。
陣地と、周囲と言う名の広範囲が数百門に及ぶパクス・ブリタニカ軍の放った鋼鉄の旋風に巻き込まれたのだ。
圧倒的な破壊と殺戮の中で生き残ったのは、僅かな兵士と枯れ木が数本だけであった。
<<各車、前進!>>
<<紳士諸君、ピクニックの時間だ。殺し尽くして蹂躙しろ>>
<<サンドイッチと紅茶は無いのか? 湿気たピクニックだな。まあ良い、さあ行くか!>>
排気煙を上げてM4戦車の大群が前進を開始した。
その数は百両を軽く超える。
<<畜生! あいつらどれだけの数を集めやがったんだ!?>>
<<撃て! 撃て! 撃て! 奴らをここに近づけるな!>>
圧倒的な数を前にして、破壊され尽くしたアヴィリオン軍の防御陣地に立て篭もる微弱なアヴィリオン軍が反撃を開始する。
全ての兵器を誰もが必死で撃ちまくった。MG42軽機関銃は電気ノコギリよろしく唸り、戦車の随伴歩兵をなぎ倒す。
僅かに生き残った対戦車砲が火を噴き、パクス・ブリタニカ軍の戦車を一撃で葬る。
だが、その反撃は空しいものだった。アヴィリオン軍の陣地に接近する戦車の数には切れ目というものが全く無かった。
兵士個人、兵器単体での能力や性能ならばアヴィリオンが有利だったが、そんなもの数の暴力の前には無力だ。
数の優勢は時として、質的な変化すら引き起こす。
アヴィリオンの塹壕で壊れたラジオから流れていたマーラーの交響曲第一番、第四楽章が終わる頃には、アヴィリオン軍の第一線は突破され、塹壕にいた兵士達は文字通り全滅の憂き目に遭っていた。
229 :
75:2008/10/12(日) 22:34:24 ID:mauKuih+
2
戦闘開始から六時間が経過した。
夜は明け切り、晴天が戦場を包み込んでいる。
パクス・ブリタニカ軍の戦列の中にガゼール戦闘団の指揮所があった。
指揮所では端麗な青年将校が矢継ぎ早に命令を配下の部隊に出し続けていた。
「左翼と右翼は無視しろ。次の砲兵射撃の後、戦車隊は敵の最奥へ突進!」
車上で腕を組んだまま、ガゼールは用を足す時以外、一度たりとも前線から離れていなかった。
食事さえ立ったまま行い、長くても五分で済ませる。
報告を受けるとすぐに対応した指示を送り、不足の事態が発生した時には自ら現場に赴いて解決したものだ。
一見すると無謀に見える指揮官の行為は決して誉められたものではなかったが、少なくともガゼールが部下達の信頼を勝ち得るには十分だった。
「中佐、敵は総崩れのようです」
楽観的な言葉に最初は同意しかけたガゼールだったが、それは一時的なものでしかない。
「ああ。今は、な。だが、"今"がいつまでも続くものじゃない。戦争は流動的なものだ」
胸中に発芽した不安の芽を取り除こうと、ガゼールは声を大にして言う。
「各車、斉射の後、敵の増援部隊を叩く!」
今、ガゼールは指揮下に大規模な部隊を置き、更に敵陣の奥深くへと入り込もうとしていた。
「中佐、敵は一列横隊を敷き、我が軍の前進を阻んでいます」
「ならば"戦車の楔"を形成し、一点突破を図る!」
既に彼はアヴィリオン軍の戦線を各所で突破し、少なくない数の部隊を包囲殲滅してしまっている。
「さて……どうなるか」
ガゼールは形の良い顎に手を当てる。
しなやかだが、有刺鉄線による裂傷の跡や機械油で荒れた指の間から零れているのは、今や戦場全体の数パーセントに過ぎない。
<<"戦車の楔"を形成しろ!>>
<<一点突破を図る。各車、最大戦速!>>
パクス・ブリタニカの戦車隊は装甲の厚い戦車を全面に立てて突進した。アヴィリオンがパンツァー・カイル――戦車の楔と呼んでいる戦術だ。
「アヴィリオン軍の大半は東部戦線にいる。そうそう予備兵力が出てくるものかよ」
学園列島において、アヴィリオンはパクス・ブリタニカだけではなく東のヴォルクグラードとも戦火を交えていた。そのために、アヴィリオンには常に予備兵力が不足しているとガゼールはよく聞く。
「突破に成功しました!」
予想通り、アヴィリオンは易々とパクス・ブリタニカに戦線突破を許してしまう。
パクス・ブリタニカ軍はアヴィリオン軍の戦線に亀裂を生じさせ、そこを起点にして戦線を食い破った。
アヴィリオン軍が薄い横隊を作らざるを得なかったのは、物量で勝る敵を相手にして、少しでも自軍の数を多く見せるためだろうとガゼールは推測する。
健気な努力だが、そんな先鋒は数を揃えられなかった者の言い訳じみた苦しい行動に過ぎない。
「突破した部隊が集中砲火を浴びています!」
「なんだと!?」
「敵は長距離砲の直接照準射撃で我が軍の先鋒を足止めしています!」
無線手が焦りを含ませた声で報告した矢先、遠方から金属の軋む音にも似た忌まわしい砲声が聞こえてきた。
忘れようも無い嫌な砲声だった。
「アハト・アハトか――!」
ガゼールが舌打ちする。
元々は対空射撃に使われていた高射砲を、アヴィリオン軍は地上目標目掛けて使用するのだ。
その射撃はどんな戦車の装甲をも一撃で撃ち抜く。加えて命中率も高い。
敵の高射砲は巧みに偽装された陣地から射撃を続ける。
戦車が撃ち抜かれて爆発を起こすたび、ガゼールのいる指揮車両にまでその閃光が瞬いた。
空からネジや金属片がパラパラと降り注ぎ、装甲車の車体を乱打する。
「中佐、一時後退しますか?」
副官は慎重論を唱えた。
「いや……」
それは間違いではなかった。だが、あと少しで手の届く勝利を逃す手は無い。
たかだか高射砲ぐらいで負ける戦車隊ではないのだ。
ガゼールは無線機越しに叫ぶ。
「突破した部隊は円周防御陣を敷け! 他の部隊は、敵の横隊に対して全面攻勢に移る!」
230 :
75:2008/10/12(日) 22:36:18 ID:mauKuih+
3
ガゼール戦闘団が猛進を開始した頃、アルフォンス戦闘団は後方での待機を命ぜられていた。
彼方に見える前線からは、爆発音と銃声、悲鳴が引っ切り無しに聞こえてくる。
戦闘団の指揮官であるアルフォンス・ダークホームはと言えば、頬杖をつきながら、今か今かと出撃命令を待っているところだった。
「大規模な機甲部隊による機動戦。あの男もなかなかやるじゃないか」
気の無い声が隣から聞こえた。
「このままだと私の出番も無さそうだな」
ベルセフォーネ・ブルンカステルがアルフォンス以上に暇そうにしている。
「俺がいつガゼールを無能呼ばわりした? 俺は奴がエーリヒ・シュヴァンクマイエルに勝てないと言っただけだ」
アルフォンスが全く悪気の無い様子で話すと、ベルセフォーネは意地の悪い、半ば投げやりな声で彼の鼓膜を叩いた。
「なら、もう少し言い方があるだろうに。アルフォンス、お前はコミュニケーション能力が足りないらしいな。思っていても言う必要は無かろうに」
「俺は不器用なんだ。知っているだろう?」
自嘲気味に呟く若い中佐の横顔は、酷く頼もしく、端麗であった。
これで性格が常識的であれば恋人の一個連隊もできるだろうが、生憎アルフォンスの人格は兵士として良心的でも、学生――年頃の少年の人格としては破綻の極みにあった。
ただ本人もそれを理解し、普段の生活をごく普通に行っていることが、ギリギリのラインで彼を学園内で孤立させないでいる。
もっともベルセフォーネから見れば、孤立したら孤立したでアルフォンスは楽しくやるんじゃないかと疑っているが……。
ベルセフォーネの緋色の瞳が寂しげに向けられていることなどいざ知らず、当のアルフォンスは鼻歌を鳴らさんばかりにご機嫌だった。
「良い指揮官だ。特に攻勢面が素晴らしい」
装甲車の車上で腕を組みながら、アルフォンスは言う。
アルフォンスから見れば、ガゼールは優秀な指揮官だった。
兵からの信頼は厚いし、何よりも裏表が無い性格をしている。
攻勢面での優秀さは、先ほどアヴィリオンの前線を証明されている。
ガゼールは数に任せた全面攻勢を仕掛け、アヴィリオンが攻勢への対応を追いつかせない状態に追い込み、一気に戦線を突破した。
突出を避けて力攻を避けるあたり、猪突猛進だけが取り柄でも無いらしい。
口には出さなかったが、自分のように戦場そのものに恋心を抱くような人でなしでもない。
「中佐、こちらも出ますか?」
今度は背後から声をかけられた。足音を立てながら副官が装甲車に乗り込んでくる。
中肉中背で人の良さそうな顔立ちをしている彼は、本人曰く性格的に破綻したアルフォンスを補佐する常識人だった。
前線での指揮も後方業務も卒なくこなすことができ、なおかつ上官と部下をつなぎ合わせる接着剤の役割も担っている。
「待つ。ガゼールがこのまま押し切ればそれで良し。もしエーリヒ・シュヴァンクマイエルが出てくれば、勝てる可能性があるのは俺だけだ。それまで待つ」
アルフォンス戦闘団は予備戦力だ。
戦闘が危機的状況に陥れば馳せ参じて援護なり支援を行うだろうが、少なくとも今の段階で前進する必要は皆無だった。
強引に前進したとしても、順調に作戦を進めているガゼール戦闘団の邪魔になるだけで、かえって足を引っ張るだけの可能性がある。
「わかりました。ではその間、兵達に食事を取らせては如何でしょうか? 本校から良い紅茶も来ております」
「そうだな。可能なら仮眠も取らせてやれ」
アルフォンスの命令を承諾した副官は、次に足を組んで、所在無さげに空に緋色の瞳を向けている少女に言葉を向ける。
「ブルンカステル大尉?」
「ん? どうした?」
弾かれたようにベルセフォーネが上体を起こすと、薄い茶色の髪が揺らいだ。
「お茶をお入れしましょう」
副官は人の良い微笑みを浮かべる。
それでは……とベルセフォーネが言い終える前に、副官が応じた。
「ブランデーを三滴垂らした紅茶ですね。存じております」
ベルセフォーネの緋色の目は大きく見開かれ、何度も瞬きした。
「あっ、じゃあそれでお願いする……ありがとう」
「いえいえ。大尉殿の存在は、兵士達の士気の維持に大きく貢献しております。かく言う私もその節でしてね」
副官の言っている意味がよくわからずにキョトンとしているベルセフォーネを見て、アルフォンスが微笑む。
231 :
75:2008/10/12(日) 22:38:58 ID:mauKuih+
「上官で女性で、なおかつ美人だとやる気も出るものだ」
「なるほど。納得した」
装甲車を降りる副官の背中を見送りながら、ベルセフォーネは納得した素振りを見せる。
「紅茶にブランデーとは、なかなか良い趣味をしているじゃないか。ベルセフォーネ」
「未成年だろと窘めないんだな」
「未成年? 外見は未成年でも中身はどうなっているかは、俺よりお前の方が詳しいんじゃないのか?」
気にするなと言った本人が苦笑した後、謝罪の言葉を述べた。
対して、ベルセフォーネは人差し指の爪を弄りながら黙りこくった。薄い茶色の髪の間から覗く怜悧な美貌が、憂いによって染め抜かれたが、すぐに彼女は顔を上げた。
「いつまでも十七歳でいたいものだ。実年齢がその十乗であろうともな」
自称と他称を問わずにして『美少女』と称されるベルセフォーネは、諦観めいた笑みを口許に浮かべた。
232 :
75:2008/10/12(日) 22:40:55 ID:mauKuih+
今日はここまで
戦闘パートに入ったんだぜ
233 :
75:2008/10/13(月) 15:31:36 ID:NWnugGd4
234 :
75:2008/10/13(月) 15:32:36 ID:NWnugGd4
4
物量にモノを言わせたパクス・ブリタニカ軍の攻勢を受け続けたアヴィリオン軍の戦線は、最初こそ攻勢を跳ね除けていたものの、損害をすぐに補填して再攻勢に出るパクス・ブリタニカ軍に抗し切れず、とうとう崩壊した。
<<戦列崩壊! 敵戦車、戦線後方へ突入!>>
<<包囲されるぞ! 各隊、独自の判断で後退しろ!>>
<<予算食いのルフトバッフェは何をやっているんだ!?>>
あるアヴィリオン軍の部隊は包囲殲滅され、ある部隊は最後まで抵抗した後に全滅、ある部隊は即座に降伏した。
一度勢いづいたパクス・ブリタニカ軍の潮流は留まるところを知らない。
<<装填良し! 照準良し!>>
<<距離二百、撃て!>>
アヴィリオン軍の対戦車砲が火を噴き、直撃を受けたM4中戦車の砲塔が宙を舞い、随伴歩兵をその重量で潰して落着する。炎上する車体から火達磨になった戦車兵が叫びながら飛び出してくる。
<<四号車がやられた!>>
<<畜生め! 構わんから踏み潰せ!>>
対戦車砲が次弾を装填する前に、突進したM4中戦車が砲を踏み潰した。戦車は塹壕の上でUターンし、中にいた兵士達を挽肉に変える。
<<敵が逃げます!>>
<<逃げる奴は敵だ! 逃げない奴は訓練された敵だ! ええい、動くものは何でも撃て!>>
M4中戦車の主砲が唸り、アヴィリオン軍のハーフトラックが真っ二つになって炎上したかと思えば、撃ったM4中戦車は地雷でキャタピラを吹き飛ばされてしまう。
<<レント、奴らを早く焼き殺せ!>>
<<アヴィリオンの歩兵が来るぞ! 早く脱出しろ!>>
パクス・ブリタニカの戦車兵が脱出に手間取っている間に迫った工兵が、火炎放射器で戦車ごと乗員を焼き殺す。その工兵は背中のタンクを撃たれて、自らが焼き殺した戦車兵と、焼き殺すように命令した士官とまとめて焼き尽くされた。
<<もう……もう駄目だ……>>
アヴィリオン軍の全体に悲観的な空気が流れ始めた。
しかし彼らには、死よりも残酷な未来を生きる選択肢が残されていた。
この地獄を越えて、更なる地獄へと足を運ぶという――!
<<シュテッセルよりシュペーバー1へ、撃ち方始め。レーゲンボーゲンは負傷兵の回収を急げ>>
遠雷にも似た砲声が轟いたと同時に、数台のM4中戦車が吹き飛んだ。
丘の側面から、低い車体の突撃砲が現れた。車体の後部に乗っていた擲弾兵が降車し、戦闘に加わる。
突撃砲とは戦車と似ているが、その趣はまるで違う。
戦車にあるべき砲塔は存在しないが、代わりに大きな――というよりも強力な火砲を搭載することができた。
旋回する砲塔を持たないせいで柔軟性にはやや欠けるが、待ち伏せや歩兵支援には最適な車両だった。
<<シュペーバー2、撃て!>>
<<了解!>>
偽装網を纏った低い車体が揺れ、突撃砲の七十五ミリ戦車砲が唸りを上げる。車体の正面に直撃を受けたM4中戦車が炎上し、黒煙に包まれた。
<<よしいいぞ! 前進!>>
突撃砲は周囲に歩兵を伴って、土煙を巻き上げながら前進する。
<<俺達も行くぞ!>>
<<シュヴァンクマイエル少佐が一緒なら!>>
235 :
75:2008/10/13(月) 15:33:15 ID:NWnugGd4
破滅の淵に追い込まれていたアヴィリオン軍は、一気に戦意を取り戻して反撃に出た。
少年の顔をした砲兵が、戦車兵が、死と破壊と撒き散らす機械を操って前へと進む。
金具がぶつかり合う音、怒声、キャタピラの騒音が混ざり合い、最低の不協和音として戦場全体に木霊する。
<<クソ! 増援がいるなんて聞いてないぞ!>>
<<押し返せ! 物量に質が勝てるものかよ!>>
突撃砲部隊と新たなM4中戦車の部隊が撃ち合いを始めたと同時に、盛大な花火大会が幕を開けた。
眩い閃光。
立ち込める黒煙と爆炎。
絶え間無い砲声と金属音。
<<シュペーバー6、側面に回りこまれるぞ!>>
<<了解シュペーバー3! 装填良し照準良し! 撃て!>>
<<ああっ! 中隊長車がやられた!>>
<<落ち着け! 誰か指揮を……ウワッ!>>
<<紅茶の時間までには帰るつもりだってのによ! 厄介な奴らが出てきたぜ!>>
両軍の戦闘は発射音に着弾の爆発音、金属の軋む音が混じり合い、何が何だか区別がつかなくなった。
幾千もの死の欠片を撒き散らすロケット弾がパクス・ブリタニカ軍の戦車隊に降り注ぎ、両軍のヤーボ(戦闘爆撃機)が獲物を奪い合う。
戦闘はアヴィリオン軍の増援――シュヴァンクマイエル戦闘団の登場で更なるカオスの中に叩き込まれ、なおも激化の一途を辿った。
カオスを作り出した権化たるアヴィリオン軍のエーリヒ・シュヴァンクマイエル少佐は、指揮車両であるハーフトラックの車上で火傷跡を掻く。
普段は優しげな印象を阻害するだけの火傷跡が、今では彼が潜ってきた死線の数を端的に表す証明書のように見えた。
「さて……微力を尽くそうかね。恒久ならざる平和のための戦闘と、その代価たる大量殺人のために」
エーリヒが右手を肩の線にまで上げる。
一拍置いて、エーリヒは手を前に倒すと、シュヴァンクマイエル戦闘団という戦闘機械は指揮官という中枢神経を介して、その末端に至るまで躍動を開始した。
236 :
75:2008/10/13(月) 15:34:32 ID:NWnugGd4
6
勢いに任せて戦線を蹂躙していたガゼール戦闘団が一時的に後退したという報告はすぐさま後方にも届けられた。
ある者は一抹の不安を抱き、ある者は窮鼠の足掻きだと冷笑した。
ただ、喜びを覚える人間は極少数であった。
「来た……来た……来た! 奴がきたぞ!」
アルフォンス戦闘団の指揮所。
その中心に配置された装甲車の車上で、アルフォンス・ダークホームは小踊りしていた。
「エーリヒ・シュヴァンクマイエルだ。間違いない。奴だ。奴が来たんだ」
端正な少年の横顔が歓喜とも怒りとも取れる表情を浮かべている。言い知れぬ喜びが胸中を跳ね回り、胸を突き破らんばかりだった。
アルフォンスは戦争が好きだ。戦場で強い相手と知略と才智の限りを尽くして渡り合うことが何よりも好きだった。
無論、戦場には悲しく残虐な一面もあった。だが、血や臓物の匂いやぬめりさえ、アルフォンスにとっては最高の食材をより高みへと昇華させるアクセントに過ぎない。
「さあ。早く姿を現して俺を殺しに来い。殺し合いをしよう!」
脳裏に幼い頃、内戦地帯で見た地獄が思い浮かぶ。あそこは天国だった。戦場と名付けられた育児所で彼は育った。
命の奪い合い。
焼け付く肌の感覚。
生と死の狭間を行き来する毎日。
純粋な戦いの中に身を置けた幸福。
だからガゼール戦闘団の支援を命ぜられた時、アルフォンスの興奮は頂点に達した。
一番最高のタイミングで、戦場に馳せ参じられるのだ!
「各中隊、作戦を開始しろ!」
無線機を手に取ったアルフォンスは、喜々として叫ぶ。
心の底から俺は戦争が好きだと叫びたいところだったが、アルフォンスは自分が軍人であることを理解していたし、アルフォンスの嗜好はあくまで個人のものだ。部下や友軍を巻き込むわけにはいかない。
あくまで命令に従い、軍務を果たした上で戦争を楽しむ。それがアルフォンスのルールでもあった。
「嬉しそうだな」
溜め息混じりで言ったのは椅子に腰掛けているベルセフォーネ・ブルンカステルだ。
「嬉しい――という言い方は正しくない。心が高揚していると言った方が正しい」
「まるで水を得た魚だな。さっきまで、あんなにつまらなそうにしていたのに……」
「ベルセフォーネ、君も出撃してくれ」
「ああ。そのつもりだ」
抑揚の無い声で返答すると、ベルセフォーネは舌を出した。薄い赤色をした舌には青い石が埋め込まれている。
マナ・クリスタル。魔道兵が魔力を使う『兵器』になるための燃料であり、エンジンのようなものだ。
「出来る事なら、私を殺してくれる敵がいることを祈っているよ。いるのかどうか、知らんがな」
ベルセフォーネの声には一抹の寂しさが含有されていた。
まるで何百年も生きてきたかのような口ぶりだったが、実際のところベルセフォーネ・ブルンカステルという人間がそれぐらい生きていることをアルフォンスは知っていた。
「笑えないジョークだ。そうならないように努力するし、俺は君の無事を祈っている。君は不本意かもしれないがね」
「じゃあ、後でまた」
「ああ」
沈鬱そうに視線を落とし、ベルセフォーネは気の無い返事をする。
刃の切っ先を思わせる、ベルセフォーネの目。そこに死ねない人間としての悲しさと諦めがあったように思えた。
「君がいなくなると寂しくなる。帰ってきてくれ」
「みんなそう言っていたよ。私に帰ってきてくれと言って、いざ帰ってきてみれば、言った本人が死んでいるんだ」
アルフォンスとベルセフォーネの視線が交錯した。二人はお互いの出方を伺うように、互いの目を瞬きもせず見合う。孔雀石の緑を湛えたアルフォンスの瞳と、濃い緋色をしたベルセフォーネの瞳が――。
「生き残れよ。罵る相手がいなくなると寂しい」
「美しいご婦人が側にいると、楽しい戦争がもっと楽しくなる。いなくなると……すごく寂しい」
ベルセフォーネはアルフォンスの言葉に笑顔を返した。
人間の屑同士が二人、馴れ合っている。二人はそのことを知っていた。
だから二人はお互いを信頼し合うことができる。誰もが目を背け、否定されるべきことであっても。
237 :
75:2008/10/13(月) 15:35:22 ID:NWnugGd4
7
地雷原で足止めを喰らっていたパクス・ブリタニカ軍の戦車兵が戦車から脱出した後、砲撃が地雷原に降り注いだ。
地雷原を開拓したパクス・ブリタニカ軍部隊は再び前進を再開する。
「やっぱり対人地雷も仕掛けておくべきだったかなぁ。終わった後のことを言っても仕方無いけど」
エーリヒ・シュヴァンクマイエルはそう言いながら顔の左半分を覆う火傷跡を掻く。瘡蓋が剥がれ、エーリヒの人差し指が血で僅かに汚れた。
「少佐。愚痴を言っていないで各部隊にご指示を」
「ごめんごめん」
副官のアルベルトに窘められ、エーリヒは無線機を取った。
飄々とした外面をしてはいたが、彼の背中には大粒の冷や汗が流れていた。
物量で勝る敵との戦いは、何度やっても嫌なものだった。
「擲弾兵と突撃砲中隊は正面より攻勢……のフリ!」
エーリヒの命令を受けた突撃砲が土煙を上げて前線へと向かっていく。間も無くパクス・ブリタニカ軍の戦車隊と交戦状態に入った。
本来、突撃砲は防御戦向きの車両である。戦車と違って回転する砲塔を有していないからだ。
それでもシュヴァンクマイエル戦闘団の兵士は曲者揃いとは言えベテランが多い。突撃砲兵達は遠距離から数で勝る敵を次々に討ち取って行く。
擲弾兵部隊の対戦車砲も全て投入された。一番多く使われた対戦車砲は七・六二pPak(r)と言い、東のヴォルクグラード軍から捕獲されたものだった。
「よし。戦車中隊、突入」
パクス・ブリタニカ軍の戦力が奮戦する擲弾兵と突撃砲部隊に集中したとの報告を受けたエーリヒは、戦車中隊に命令を下す。
元々、この部隊はエーリヒの指揮下には無かった。敗走する部隊をかき集めた臨時編成の部隊で、走るのがやっとの旧式車両から、まだ塗装すら済んでいない新型車両まで投入されている。
俄作りではあったが、戦車隊の士気は高い。
エーリヒ・シュヴァンクマイエルの名前は尾ひれどころか角まで付いてアヴィリオン軍内部に知れ渡っているのだ。
本人からすれば悪い意味での名前が広がっていることが気がかりではあった。エーリヒ・シュヴァンクマイエルはいずれ学園列島全体を支配しようとしている――学園列島を征服したら、今度は世界を征服しようとしている――そんな噂まで立てられたことがある。
それでも女子生徒に人気があったならなぁとエーリヒは思うが、残念なことにエーリヒの女性人気は低かった。もっとも、エーリヒは将来を決めている相手がいるのだが。
<<敵が側面に回りこむつもりだ!>>
急造戦車隊の側面からの攻撃は察知されてしまった。
あまりにも多種多様の車両をごった煮で編成してしまったため、戦車隊は隊列を維持できなかったのだ。
238 :
75:2008/10/13(月) 15:36:25 ID:NWnugGd4
「少佐、迂回は無理のようです」
「ならば作戦を変えよう。アルベルト、工兵隊に連絡してくれ」
そうエーリヒが"悪巧み"を考えてから少しして、前線で異変が起こり始めた。
パクス・ブリタニカ軍が側面に現れた寄せ集め部隊を攻撃せんとした時、突如として正面に大規模な戦車部隊が出現した。
<<な、なんだあれは!?>>
<<敵の増援だと!>>
突撃砲部隊の横隊の背後から、数え切れないほどの角ばった砲塔のシルエットが現れる。
「いいぞ。このまま正面は前進。側面も前進しろ。隊列はいくら乱れてもいい!」
パクス・ブリタニカ軍の後退を確認したエーリヒは口を鳴らす。
エーリヒが行ったのは複合追撃だ。
正面が前進して敵を追う一方、側面の戦力は後退する敵を追い越すぐらいの勢いで進み、攻撃を加える。
「側面部隊がやはりバラバラになりました。どうします?」
「敵は正面がハッタリだと気付いたか?」
正面に現れた戦車隊は工兵御手製の偽装戦車であった。ベニヤ板や鉄パイプを組み合わせて作った張りぼてをキューベルワーゲンに被せただけのものだが、それらしく出来ているので数合わせには使えた。
「いいえ。まだ本物だと思っているようです」
「なら構わない。敵を旧戦線の外まで追い出せばいいよ。出さないで済むなら、犠牲は少ないほうがいい」
エーリヒは自分がケチであり、そして矛盾の塊であることを知っている。
人を殺すという人間として最低の行為を行いながら、彼は賞賛される。
自己満足のために始めた捕虜虐待や略奪の禁止が、敵に賞賛され尊敬を受けた。笑い話にもならない。
よく彼は『どうすれば戦闘に勝てるか?』と聞かれて、こう答える。
一、まずは作戦において明確な勝利をきちんと定義すること。
二、敵の十倍の戦力を集めること。
三、補給と整備を十分に行うこと。
四、制空権を味方が確保していること。
全てを揃えることが無理だとわかっていても、エーリヒは口を酸っぱくして言い続けてきた。
だが、皮肉なことにそれらの条件が揃わない中で結果を残してきたのも、またエーリヒ・シュヴァンクマイエルなのである。
「AWACSが敵魔道兵の出撃を確認しました。突撃砲中隊の側面を突くつもりです」
「そうそう好きにはさせてくれないか。こっちの機甲戦力は余力が無いっていうのに」
「如何なさいます?」
「アルベルト、日本の諺に『モチはモチ屋に作らせろ』というやつがある。モチと言うのは……あー、要するに、毒には毒を目には目をってことだ。クリングベイル中尉をここへ」
「ハッ」
「できれば使いたくなかったんだけどね……」
エーリヒは魔道兵という『兵器』が嫌いだ。
理由はどうであれ、人間の命を部品にした時点で、それは兵器ではなくただの殺人機械にしかならない。
偽善だな――とエーリヒは自嘲した。
人殺しを生業として、他人の未来を奪うことで自分の未来を食いつなげているだけの俗物が、人の命についてどうこうと思案するなど……。
「選ぶ余地は無いか。これはゲームじゃなくて、命の奪い合いなんだからな」
エーリヒは願う。できることならば、少なくとも味方だけは、多くの命が傷付かずに済むことを。
239 :
75:2008/10/13(月) 15:37:16 ID:NWnugGd4
今日はここまで。
んじゃまた。
乙でした〜。
エーリヒは学園島世界におけるヤンのポジションなんだろうか
242 :
75:2008/10/13(月) 19:11:59 ID:NWnugGd4
レスありがとう
>>241 正直言うとアッテンボローに近いかなぁ
SSを書いていて思うのが、学園島世界の子供達と今の時代の子供達じゃ考え方も何もかも違うんだろうなーと。
やっぱり死ぬことが身近だから、生に関する見方も大分違うだろうし、行動なんかも全然違いそうだ
243 :
75:2008/10/14(火) 22:51:24 ID:D2I1bJgM
ちょりーす
続き投下 そろそろ終わる
244 :
75:2008/10/14(火) 22:53:23 ID:D2I1bJgM
前回
>>238 8
戦場の空には流された黒煙や粉塵が立ち込めている。
まるで地獄の釜が開き、その内容物が噴き出してきたようだった。
その中を三つの黒点が進む。
ラファエラ・クリングベイル率いる魔道兵の編隊だ。
「作戦を再確認するわ。マナリンクを開いて」
ラファエラは両耳を覆う特殊な通信機器――指揮官用に用意されたそれを魔道兵や整備兵は兎の耳と呼んでいる――越しに話す。
彼女も追従する二人の魔道兵も、共にローブと呼ばれる強化外骨格で体を覆っていた。
背部には四枚の固定翼があり、その中央部にジェットエンジンの噴射口にも似たノズルとユニットが備わっている。同じものは脚部にも装備されていた。
左腕にはディフェンサーロッド、右腕には戦闘機用の十三ミリ機銃を改造したハンドキャノンを装備している。
「了解。フッケバイン1」
ラファエラに追従する後方の魔道兵二人が返答する。
声は耳ではなく、ラファエラの脳内に直接入り込んできた。
マナリンク通信。
魔道兵が体内に有するマナ同士を共鳴させることによって可能とする通信だった。
「我々の目標は我が軍の後方に迫りつつある魔道兵の撃退」
背部のマナ・ブースターと直線的な翼を翻して、ラファエラ達は高度を下げた。
「地上は酷い有様……。アヴィリオンは勝てるのかな」
「ロト・バロンが一緒にいるのよ。勝てる。絶対に勝てるわ」
部下の魔道兵達は自信を深めた。
ロト・バロンとはラファエラに報道部が付けた渾名だ。
英雄エーリヒ・シュヴァンクマイエルを守る戦乙女。新世代を担う女性兵士の星と報道部はラファエラを宣伝する。
「バロン(男爵)って、私はいつから男になったのかしらね」
単に魔法特性の影響で濃緑色のローブが突然変異的に赤に変わっただけだと言うのに騒ぎすぎだろうとラファエラは思う。
追従する二人の魔道兵は濃緑と黒で彩られたローブを身に纏っていたが、先頭を行くラファエラだけは真紅のローブで体を包んでいた。
「もっとも、男は守られるより守る方が良いわ。うちの"お姫さま"は守ってあげなきゃいけないもの」
のろけていられたのはそこまでだった。
空中管制機から通信が入り、ラファエラは部下に言う。
「敵は単独、気を引き締めて」
ラファエラの側は三体。敵は一体。戦力的に見ればラファエラの側が有利だった。
だが、魔道兵は単独であればあるほど危険だ。
歩兵サイズで戦車の火力と戦闘機の機動性を手に入れた魔道兵。彼女達は体内にマナ・クリスタルを埋め込むことで能力を得るが、時には突然変異に近い形で強大な力を持つ魔道兵が生まれることがあるからだ。
「高熱源、接近!」
「ブレイク!」
部下の言葉にすぐ反応してラファエラは腰のフレアディスペンサーから光の球を放射した後、ダミーバルーンを射出した。
その刹那――。
「光の……翼!?」
ラファエラの視界にはっきりと赤い光流で作り出された二枚の翼が映し出される。
その中心部には魔道兵の姿がある。
醜悪だった。
背中には二枚の光の翼。両肩には大口径の砲を背負い、両手に銃火器のようなものを携えている。
しかし、外見とラファエラの考察に反して魔道兵は凄まじい速度で接近してきた。
「このエネルギー量は!? そんな……通常の三倍!」
「だからと言ってどうと言うことは無い! フッケバイン1より各員、ケッテ単位で交戦空域に入る」
「了解!」
「天使とダンスよ!」
部下達とラファエラはマナ・ブースターから青い潮流を残して突進した。
「三倍だろうが十倍だろうが!」
すれ違いざまに、ラファエラは空中で姿勢を変え、ライフルに一連射を浴びせた。
弾丸が敵の背中に吸い込まれていく光景がはっきりと見えた。
「十三oが!?」
245 :
75:2008/10/14(火) 22:55:55 ID:D2I1bJgM
視界の端で火花が散るのが見えた。
馬鹿な――とラファエラの顔が歪む。
パクス・ブリタニカ軍の魔道兵は反転して突っ込んできた。
「中尉、バズーカなら!」
「頼む!」
フレアを撒き散らしながら部下の魔道兵が空中で姿勢を取り、両手で構えたバズーカを放つ。もう一人も手にしたライフルを連射した。
途端、敵の魔道兵は瞬く間に煙に包まれた。
「やったか!?」
煙を光の潮流が切り裂いた。
「魔法兵器!?」
「下がれ!」
ラファエラが光の潮流を防いでいる間に、部下達は射線上から逃れた。
「馬鹿な! "始祖"クラスは殲滅されたはずだぞ!」
「生きていただと!? そんな……そんなはずはない!」
魔法兵器を使用できる魔道兵は少ない。いや、"今は"の話だ。
アヴィリオン軍における魔道兵部隊は単独での飛行と空戦能力、超人的身体能力こそ手に入れてはいたが、主力兵器に値するものではなかった。武器は流用するか、現行のものに改造を加えて使用している。
「だからどうした!」
「しかし!」
「だからどうしたと言っているのよ。敵が始祖? 敵が強力な魔道兵? だからどうした!」
ラファエラは声を大にする。
正直言って、怖かった。
敵は自分よりも遥かに強いのだ。
「どれほどの能力差があろうと――!」
だからこそラファエラは退かない。
己を鼓舞して、背部マナ・ブースターを全開にしたまま突進する。
「戦場での私は、鬼神と化して敵を討つ!」
敵の魔道兵が放つ高出力の魔法攻撃を寸でのところで回避し続けたラファエラは一気に間合いを詰めた。
腰にマウントしていた高周波ナイフを引き抜き、敵の魔道兵に切りかかる。
「すごい……!」
敵の魔道兵と切り結んだ時、感嘆とも喜びとも取れる女の子が耳に入った。
「威勢がいいな。男の犬になった女の顔をしている!」
「犬ね……その呼び方でも結構。だけどアンタを殺そうとしているのはバター犬じゃないわ! 飢えた猟犬よ!」
「男に飢えた雌犬だろうがァ!」
敵の魔道兵はラファエラを蹴って間合いを空ける。
腹部にある発射口にエネルギーが収縮されていくのを、ラファエラは見逃さなかった。
「中尉! 実弾主体の装備では!」
再び光の潮流がラファエラを掠めた。
左手にマウントしていたディフェンサーロッドが泡だらけになって融解し、ラファエラはすぐに切り離した。
反則的な機動を見せる敵の魔道兵に対して、味方の魔道兵はなおも撃ち続けていた。
「二人は後退しなさい!」
二人は親指をたてた。
「何を言ってるんです! 中尉殿とは部隊設立の苦労を共にした身。これからの栄光も共に歩ませてください!」
「我々は"始祖"から作られた『兵器』です。試作機が量産機に勝てるのは、創作の中だけですよ!」
ラファエラの口許に笑みが浮かぶ。
「私も悪い部下を持ったものね」
246 :
75:2008/10/14(火) 22:56:35 ID:D2I1bJgM
呪文にも似た言葉を詠唱すると、ラファエラを包み込んでいるローブの間接部が金色に輝き始める。
「三百秒間の限定作動! リミッター解除! 二人は援護を!」
「了解!」
再び味方の魔道兵が撃ち始める。
「教えてあげましょう。本当の魔女の戦いというものを――!」
ラファエラの赤に色の変わった瞳が敵の魔道兵を捉える。
「ほぅ……質量を持った残像! 面白い!」
敵の魔道兵の言葉が聞こえたかと思えば、攻撃が加えられた。
骨を軋ませ、内臓を押し潰されそうになりながらも、ラファエラは瞬間移動じみた高速で駆け抜ける。
「お前なら……お前なら、私を殺してくれるのか――?」
ふと、そんな声が聞こえた気がした。
「左右より挟撃!」
追いついた二人の味方魔道兵が、左右両方から攻撃を仕掛ける。
拳の先端にエネルギーを集中させて、敵に打ち込んだ。
「量産型がァ!」
敵の魔道兵が憎々しげに叫ぶと、ラファエラの部下も反論する。
「言ったはずだ! 試作型が量産型に勝てる道理など存在しないと!」
「魔道兵に道理が存在するものか!」
ラファエラは右手でライフルを連射しながら、左手でナイフを振り上げる。
「どけっ!」
敵の魔道兵が二人を弾き飛ばす。
「今だ!」
ラファエラが叫ぶと、味方の魔道兵二人がワイヤーで敵の魔道兵の足を絡め取った。
「魔道兵は単体のパワーじゃない! チームワークと連携だ!」
その言葉はラファエラの心の中で生きていた。
ラファエラが世界で最も大切に――家族と同じ位に愛しているエーリヒ・シュヴァンクマイエルの言葉が、ふと脳裏に走る。
「中尉。魔道兵――いや強い力を扱う者に要求されるのはなんだろうか」
「技術と努力の積み重ねです」
「それもあるね。でも、一番必要なものは責任なんだ。大いなる力には大いなる責任が伴う。それを忘れないでおいて」
「少佐はちゃんと責任を負って、結果を残しておられます。だから……すごく説得力があります」
「いや、俺も人に偉そうなこと言えないよ。結構、適当に生きているからね。
中尉、どれだけ強大な力を持っていても、どれだけ優秀な技術を持っていても、人間は一人じゃ何もすることができない。他人と助け合うことによって、色々なことができるんだ。戦場に言っても、それを絶対に忘れないで」
「少佐は私を支えてくれますか?」
「もちろん。どちらかと言えば、みんなに助けられている方だけどね……ははは」
コンマ一秒単位の回想を終えると、ラファエラは身動きの取れない敵に対して攻勢に出る。
「私はね……優しくされたい。優しくしてくれる男を守りたいから――その男の未来を見てみたいから!」
左のミドルキックを叩き込む。脛に、相手の肋骨が叩き折られる感触が走る。
「だから!」
不用意に跳ね上がった敵魔道兵の右手と、ラファエラが振ったナイフの一閃が交錯する。
切断された敵の右手から吹き出た返り血を浴びながら、なおもラファエラは攻撃を続ける。
「残酷になれる!」
横に一回転したラファエラは、そのまま上昇して回避しようとする敵魔道兵の右足を叩き切る。
「悪魔になれる!」
マナ・ブースターのフル加速で追いついたラファエラは刃を突き立てると、一気に振り落とした。
首を落とされた肉体は落下を始め、すぐに見えなくなった。
「やりましたね! 中尉!」
「勝てたのは二人のサポートがあってのことよ。ありがとう。感謝するわ」
ラファエラは二人の頭を撫でるか抱き締めようとしたが、手が血塗れだったのでやめておいた。
「じゃあ帰ったら、何か奢って下さい! 中尉!」
「はいはい……」
まだ戦場では戦いが続いている。
帰路につくラファエラの瞳が、ほんの僅かだけ憂いを宿した。
「どんな優しい人間でも、戦場では悪魔になれる。その最もたる例がエーリヒ……貴方なんでしょうね」
247 :
75:2008/10/14(火) 22:57:46 ID:D2I1bJgM
第三章
1
戦闘はなおも続いていた。
アヴィリオン軍は再編成と補給とを繰り返しながら十数度に渡って突破や側面への攻撃を試みたパクス・ブリタニカ軍を押し返してはいたが、既に限界が近付いていた。
疲労が蓄積に比例して負傷者の数は増大し、無傷の戦車や兵士の数は刻一刻と減少している。
早期撤退を上層部に具申しつつも『死守せよ』の一点張りを貫く司令部とやり取りを続けていたエーリヒ・シュヴァンクマイエルに決定的な決断をさせるきっかけになったことは、補給の問題であった。
単純に言えば、もう食料も弾薬も残り少ないのである。補給部隊は死力を尽くして物資を戦闘団に送り続けていたが、それも限界だった。
シュヴァンクマイエル戦闘団の指揮所の周囲にも、弾薬を求めて右往左往する部隊が引っ切り無しの訪れている。
「各部隊に連絡、撤退の準備を」
エーリヒがそう命令した時、副官のアルベルトは良いのですかと疑問の声を上げた。
「帰ろう。帰れば、また来れるから」
「了解しました。それとラファエラ中尉ですが……」
その名前を聞いたエーリヒの表情が僅かに強張る。
「敵魔道兵を撃破。全員無事です」
ほっと息を吐き、エーリヒは胸を撫で下した。
「そうか……魔道兵部隊は戻してくれ。有事の機動戦力になる数少ない部隊だからな」
はい、と言った後、アルベルトは言葉を繋げた。
「少佐、ラファエラ中尉が優秀であることは事実です。ですが恋愛関係にある人間を部下にするのは些か問題があるかと」
「かと言って叩き出すわけにもいかないよ。生徒会からの直接要請で指揮下に入っているんだから」
エーリヒは続ける。
「そうか問題か……そうだな。人事の上ではあまり好ましいことじゃないな」
「不愉快になられるかもしれませんが、一応頭の中にお入れして頂けると幸いです」
「ごめんね。問題の多い上官で」
「少佐、部下や下の者に対して、上の者自分を下卑する発言をしてはいけません。下士官は草の伸びる音を聞き取ると言います」
「ああ。わかっているとも」
エーリヒは小さく頷いた後、命令を下す。
「交互後退を行いながら、戦場を退く。偵察機からの情報はリアルタイムでこっちに送るよう伝えてくれ。敵が追撃してくるようなら、突撃砲と高射砲で遅滞戦術を取る」
「了解。少佐、自分は少佐の部下になれて良かったと思っていますよ」
「俺もよくできた副官がいてくれて助かってる。感謝してるさ」
248 :
75:2008/10/14(火) 22:59:56 ID:D2I1bJgM
2
戦場の両軍はお互いに退き始めていた。
アヴィリオンは敵の攻勢を撃退して大損害を与えた。
パクス・ブリタニカは敵に痛撃を与えた。
ある程度の目標を達成した以上、もはや両軍に戦いの理由など無くなっていた。
そんな中にあっても、現実を認めない――いや、認めたくなかった者も存在する。
「敵が浮き足立っているぞ! 追撃しろ!」
ガゼール戦闘団は撤退する部隊に逆行して進撃する。
殿という名目で引き受けた役だったが、些かやり過ぎのようにも思えた。
戦車隊は突進し、傷付いたアヴィリオン軍を次々に蹂躙していく。
「危険か……しかし!」
自分が無茶を行っていることをガゼールは把握していた。
彼は自分を客観的に見ることができた。だが、それを受け入れられるかどうかは別問題であった。
「俺は奴を倒さなきゃ、ヒーローになれない……!」
ここでガゼールが冷静な判断力を残していれば、彼は生き残っただろう。
だが、若さ故に彼は冷静さを捨て、敵を倒せるかもしれないという希望的観測に縋った。
自ら破滅の階段に足をかけたことをガゼールは知らない。
いや……知りたくなかったのだ。
3
殿を務めていたシュヴァンクマイエル戦闘団に敵の急襲という情報が入った。
「敵が突進してきます!」
アルベルトの声には焦りがあったが、エーリヒは淡々と命令する。
「高射砲を集めて砲火を敵戦車隊に集中。各部隊、撤退続けろ」
「了解!」
八十八mm高射砲が射撃を開始する。
千メートルの彼方でパクス・ブリタニカ軍の戦車が吹き飛んだ。
パクス・ブリタニカ軍はパンツァーカイルを形成して突っ込んできたが、悲しいことに彼らが有するどんな戦車でも、八十八mm高射砲の砲弾を防ぐことはできなかったのである。
エーリヒは遠距離を高射砲で、中距離を突撃砲で固めた。
近距離を守るのはラファエラ率いる魔道兵部隊だったが、彼女達に出番は無かった。
近距離に達する以前に、パクス・ブリタニカ軍が全滅してしまったのだ。
「敵は壊滅状態です」
「今日だけで、俺は何人殺したんだろうな。アルベルト」
「我が軍の死傷者は今の所、三百二十八名です」
「あとで彼らの名前を教えてくれ」
「ハッ」
エーリヒの目が憂いの光を宿し、遥か遠方を見やった。
249 :
75:2008/10/14(火) 23:01:43 ID:D2I1bJgM
4
ぼんやりとした視界。
血と煙。
「そうか……俺は……」
ガゼールは横転した装甲車に寄りかかり、血を吐いた。
「ウォーレン……クリストフ……」
呼びかけたが、返事は無かった。
見知った部下達が砲弾の破片で切り刻まれ、転がっている。
「駄目たった……俺は、英雄にはなることができなかった。いいや……最初から、そう運命づけられていたのかもしれないな」
自嘲がガゼールの心を過ぎった。
「中佐! 中佐!」
遠くから声が聞こえる。
味方の声だった。
「中佐……」
僅かに生き残った下士官だろう。医療箱を抱えて走り寄ってくる。
「中佐!」
兵士は跪き、ガゼールの傷を見た。
医療箱を開けようとする兵士の手を、ガゼールは制止する。
「気遣いなら無用だ。俺はもう……助からん。悪いが、これを持って行ってくれ」
「これは……」
血塗れの手でガゼールは兵士に戦死者年金の受け取り証明賞を渡す。
「機会があればでいい。母に伝えてくれ。先立つ不幸をお許しくださいと……お怒りになるでしょうが、お叱りは"違う場所で"受けます……でも、それが……それが遠い日のことで……」
力の抜けた体がぐったりと崩れた。
「いいさ……二人の英雄と同じ時代に生きれたんだ。それだけで……」
そう言った後、ガゼールは朽ち果てた。
血溜まりがガゼールの周囲に広がった。
「必ずお伝えします。必ず……」
敬礼した兵士がその場を去った直後、焔がガゼールの骸を焼き尽くした。
250 :
75:2008/10/14(火) 23:04:07 ID:D2I1bJgM
5
パクス・ブリタニカ軍は後退するアヴィリオン軍を追撃しなかった。
戦力の消耗が激しかったこともあるが、何よりも敵の指揮官がエーリヒ・シュヴァンクマイエルである以上、何をしでかすかわかったものではない――尾ひれの付いた憶測や大損害を与えられた事実が、恐怖としてパクス・ブリタニカ軍の追撃の手を諦めさせたのだ。
何よりも決定的だったのは、ガゼール中佐の戦死である。
「ガゼールが死んだか」
アルフォンス・ダークホームに報告が入ったのは、撤退命令を受けた直後だった。
装甲車の車上でアルフォンスは鎮痛な面持ちになる。
ベレー帽を胸にして、彼は目を瞑った。
「お前が喪に服すなんて以外だな。そんなに可愛げのある男とは思わなかった」
傍らにはベルセフォーネ・ブルンカステルがいる。
先ほど切り落とされた首と腕部では、赤黒い血が泡を立てて再生を進めていた。
彼女は無限のマナを体内で生成できるため、腕や足を切られたぐらいでは死なない――いや、本人が望んでいても死ねないと言った方が正しい。
「やめてくれ、ベルセフォーネ」
「アルフォンス。お前は本当に面白い奴だな。あっ……」
立ち上がったベルセフォーネの右腕がぼろりと落ちた。切り口の先が煮えくり返った石油のようにあわ立ち、高い粘性を有していた。
部下が人外であることを熟知しているアルフォンスは何も気にしなかった。むしろ、彼の心配は別の場所にあった。
「正直、俺はガゼールがエーリヒ・シュヴァンクマイエルに殺されたことに安心しているのかもしれない。そうでなければ、この安堵感には説明がつかない
……つくはずがない」
「かも、じゃない。そういうことだ。お前はエーリヒ・シュヴァンクマイエルが勝つことを願っていた。捻くれた神様が願いを聞き入れてくれたのかもな?」
「だったら……」
アルフォンスはベルセフォーネの前まで行って膝立ちになる。そしてベルセフォーネの緋色の瞳を見つめた。
「だったら、俺は神様に跪いてキスしてやってもいい気分だ。見ろベルセフォーネ、これが人間の屑の顔だ。悪魔に魂を売り渡し、味方の死を喜ぶ下種の顔だ」
「酔っているな……お前は」
「戦場で酒を飲むほど、俺は酔狂ではない。それに、俺は未成年だ」
「アルコールじゃない。赤黒い血で塗装された幻想に酔っている。耳の痛い質問をしてやろうか? エーリヒ・シュヴァンクマイエルを失った後、お前はどうする? 戦争が終わったとして、お前はどう生きていく?」
ベルセフォーネは続けた。
「答えられないだろうな。夢の中にいるうちは良い。甘美な夢に包まれていられるから……だが、現実は待ってはくれない。いつまでも夢は見ていられないんだぞ」
「もうやめよう、こんな話は」
ベルセフォーネも、あまりしていて楽しい話とは思わなかった。
なので、アルフォンスの言葉に乗ることにする。
「出来立てのフィッシュ&チップスが食べたいなぁ。皿一杯の」
「ラードと食パンで我慢しろ。前線で贅沢は言えん」
「アルフォンス。お前が生きる目的を見失ったら、私がお前の相手になってやるよ」
優しげにベルセフォーネが言うと、アルフォンスは肩をすくめた。
「それはまた……面白くない冗談だな」
251 :
75:2008/10/14(火) 23:04:38 ID:D2I1bJgM
6
後退した部隊の集結した再編成基地に到着したエーリヒ・シュヴァンクマイエルを待ち構えていたのは、敵ではなく、敵よりも厄介な味方だった。
「勝利、おめでとうございます!」
「本校の生徒達にメッセージを!」
車を降りるなり、エーリヒは怒涛の如く押し寄せてきた報道委員の波にさらわれた。
「どうもどうも。おかげさまで勝てました。はい。本校の皆さんにメッセージ? あー……風邪が流行っているので、体には気をつけてください」
エーリヒは気の無い様子でそれらに答えながら、何とかして先へと進もうとした。
だが、報道委員達は抜かりなく準備していた。
「少佐! こちらへ!」
人で作られた道の終点に、花束を持った二人の中等部の生徒達がいた。
「この二人は共に兄を戦場で失いました。ですが、その悲劇に負けず、今度兵士として前線に赴くのです!」
アヴィリオンの校歌が吹奏楽部によって華やかに演奏され、小奇麗な軍服に身を包んだ軍上層部の将官達がエーリヒを迎える。
みんな死ねばいいのに。
エーリヒはここに砲弾が落ちてきてはくれないかと祈りながら、引きつった笑いを浮かべて前へ進んだ。エーリヒの後ろでは、憲兵が無言の圧力をかけている。そして周囲にはカメラだ。
「僕も少佐みたいな英雄になりたいです!」
「私は少佐を尊敬しています!」
二人は花束をエーリヒに渡した。
その瞬間、数百台のカメラが一斉に瞬いた。
エーリヒの中で、不快の度合いが急激に高まっていく。
「ありがとう。でもね、英雄を目指しちゃいけない。英雄と言うのはたくさんの兵士を殺して、死なせた人間のことを言うんだ。だから英雄になりたいなんて言っちゃいけないよ」
二人は一瞬だけ戸惑ったような表情を浮かべたが、すぐに顔に笑みを貼り付けた。それ以外の表情はプログラムされていないとでも言うように。
「俺は、君らが人殺しをしないで済むように、これからも頑張るよ」
そう言ってエーリヒは兵士の頭を撫でる。
再びカメラが音を立て始め、エーリヒの神経は衰弱していった。
「作られた英雄か……いい笑いの種だよ」
基地内の自室に戻ったエーリヒがコーヒーに口をつける頃、既に報道委員は素晴らしい編集技術を駆使して最高のプロパガンダを演出していた。
エーリヒは大きく溜め息を吐き、項垂れた。
「でもエーリヒは実績もある。誰も文句は言えないわ」
気付かなかったが、部屋にはもう先客がいた。
赤色の髪が靡き、ラファエラの姿が現れる。
「実績か。誇れるものじゃないよ。人の命でもらった勲章を誇るのは、自分が大量殺人者だと公言してるようなものだ。そんなに英雄がいいものなのかな」
「不安な時は人間誰しも、強いものに縋りたくなるの。だから作るのよ、その"強いもの"を」
「作られた"強いもの"としては、女性に縋りたいんだけど……いいかな?」
自分でも、なんて情けないことを言っているんだとエーリヒは思う。
しかし、エーリヒが弱音を吐き、最も弱い姿をあられもなく晒せるのは、ラファエラだけなのだ。
「いいわよ。ほら、いらっしゃい……」
暖かい感触がエーリヒを包み込む。
様々な感情が湧きあがってきて、エーリヒは咽び泣き始めた。
「泣いていいのよ。泣かない人間なんて、人間じゃない」
ラファエラに言われるまでもなかった。
「うん……うん」
大粒の涙を流しながら、エーリヒは声にならない声を出す。
「大丈夫。大丈夫だから」
ラファエラの手が、エーリヒの背中を撫でる。
「大丈夫。貴方を引っ張り出そうとする人も、貴方を変えようとする人も、ここにはいないから……」
人差し指でエーリヒの涙を拭うと、ラファエラは額にキスをしてくれた。
「エーリヒを壊そうとする人、殺そうとする人、みんな許さないから。いつか、みんな壊してやるから……」
ラファエラの瞳が、妖しい光を帯びてエーリヒを見た。舌が薄いピンク色の唇を舐めた。
「ラファエラ・クリングベイルはエーリヒ・シュヴァンクマイエルを愛している。この決まりごとは、神聖不可侵なのよ。大丈夫よエーリヒ、私がいるから……」
252 :
75:2008/10/14(火) 23:06:25 ID:D2I1bJgM
エピローグ
アヴィリオン軍とパクス・ブリタニカ軍の間で行われた"ロンドン・ブリッジ"の戦いは戦史が語られる中で多くのページを割かれることの少ない戦闘であったが、その激しさは東部戦線のそれに勝るとも劣らないものだった。
ただ救いだったのは、両軍の指揮官であるエーリヒ・シュヴァンクマイエルとアルフォンス・ダークホームの両名が、戦場で雌雄を決することのみに固執したため、ある意味で人道的、騎士道的な潔さが戦闘の中にあったことだろう。
最後に、この戦いに参加した名も無い兵士の手記。その一文をご覧になってもらいたい。
戦いは昼も夜も続いた。
炊事兵ですら野戦炊事車の陰から手榴弾を投げ込んだ。
夜になると両軍の衛生兵が医療箱を持って静かに戦場を走り回った。
できる限り死人を減らそうと……。
そして朝になると、敵味方の衛生兵が協力しあって、お互いの救護所まで負傷者を運んだ。
三十分後にはまた戦闘が始まった。
負傷兵達は誰もが戦争を呪っていた。
自分のすぐ側にいる、死を恐れながら――。
253 :
75:2008/10/14(火) 23:07:01 ID:D2I1bJgM
終わり
なんか打ち切りみたくなった・・・
何はともあれ投下乙
乙でした
ぶっちゃけ75氏のSSってどんな評価なんだろう
保守がてらに質問。
・魔道兵の武装や装備は戦闘中に失うと再生、もしくは再装備可能なのか?
・学生が戦争の主役らしいが、具体的に後方勤務ではどんなことをするのか?
知ってる人いたらよろしくお願いします。
あとこのスレだと外伝、単発SSが組み合わさって歴史年表ができそうだけど、そうなるとガンダムのMSVみたいなことやれそうでいいね。
>>257 どちらも作者ごとに、設定次第
といっても後者のは、軍事とか戦争とか少し知識がないと
何をやるのかもわかんないだろうね
259 :
75:2008/10/19(日) 22:53:01 ID:CpoMnGsc
ちょりーす
>>257 ・俺は変身して装備→戦闘中に失うと再生成不可能ということにしてるけど、ぶっちゃけヤマトの第三艦橋みたいなもの(CM明けたら直ってる)でいいんじゃないかな。
・内勤だと戦死者の兄弟や親族への書類をタイプ打ちしたり報道部がプロパガンダ映像作ったりかな。俺も後方勤務はよく知らんから、知ってる人がいたら聞いてみたい。
>ガンダムのMSV
問題は真になるストーリーがまだないってことだけど、ぶっちゃけ作者ごとに世界観とか自由だからなくてもいいのかも。
>>258 軍事モノってだけで敬遠する人多いものね。
軍事系のSSスレが廃れるのは知識ぶったコテハンが暴れて、それに嫌気が差した住人が去ったり新規さんが来なくなったりするパターン。
やっぱり軍事系だと初心者さんお断りみたいな雰囲気になりそうだから、まとめwikiを作るときには簡単な軍事用語辞典を設けたり、住人も間違った知識を笑ったり叩くんじゃなくて、お互いに理解を深めていければいいんじゃないかな。
つーわけで新作投下
260 :
トリム攻防戦:2008/10/19(日) 22:55:05 ID:CpoMnGsc
第一章
1
夜中だというのに、ヴォルクグラード人民学園の校舎は活気に溢れていた。
数十万人の総生徒数を収容する巨大な校舎の前面に広がる正方形をしたグラウンドの隅には、それぞれ大型のサーチライトが設置されている。
「到着は遅れているのかなぁ。早く見てみたいぜ。ヒーローってやつを」
「おっ! きたぞきたぞ!」
その活気は下面を光の照射によって照らされた巨大な飛行船が現れたことで、爆発的な熱狂へと変わる。
風紀委員に所属する憲兵がなんとか柵に殺到する生徒達を制止するが、熱狂の波は止めることができなかった。
闇夜を切り裂くサーチライトの光と生徒達の大歓声によって、グラウンドはまるで昼間のようだった。
「人民英雄に敬礼!」
着陸した飛行船からタラップが伸び、その先に濃紺の髪をたなびかせた少女が現れた。
少女は外見からして凡庸ではなかった。
年齢は十七歳。長身の肢体の持ち主で、一見すると細身の肉体は優美さと強靭さを内に秘めている。
濃紺色をした固め髪は背中の半ばあたりまで伸びていた。
肌は純白色をしていて、顔立ちは美麗というよりも端麗といった方が正しかった。
「人民英雄万歳! 人民英雄万歳!」
飛行船から降り立った少女が微笑んで返礼すると、ヴォルクグラード軍の兵士――生徒達は、大歓声を上げる。
少女が手を振るたび、笑みを見せるたび、年若い兵士達も顔には希望と羨望が瞬いた。
彼女達が歓声を受けている最もな理由は、彼女達が魔道兵であることだった。
魔道兵とはマナ・クリスタルと呼ばれる石を使うことで常人ならざる能力を手に入れた女性兵士の総称だ。
火力、機動力、防御力――そのいずれを取ってみても、魔道兵は通常兵器を大きく上回る性能を有していた。
ある専門家などは、『魔道兵は戦車の火力と防御力、戦闘機の速度と機動性を歩兵サイズで実現っさせた革新的兵器』とまで呼称している。
飛行船からタラップで大地に足を着けた魔道兵たちは、歓声を受けながら足早に車へと乗り込んだ。
「いつから魔道兵はアイドルになったのだろうな。大観衆から歓声を浴びて素直に喜べるほど、私は精神糖尿病患者ではないぞ」
車に乗り込むなり、濃紺の髪を払いながら、つい先ほどまで羨望と賞賛を一身に浴びていた当の本人は不機嫌そうに足を組む。
マイコ・パステルナークはヴォルクグラード軍の大尉であり、魔道兵だ。本人も忘れがちなことだったが、ヴォルクグラード人民学園の高等部二年生であった。
「そう毒舌をお吐きになりますな、パステルナーク大尉」
そう言って柔和な微笑みを見せたのはマイコの副官であるエレナ・カウフマンだった。
艶やかな金髪を肩のあたりまで伸ばし、細い輪郭の持ち主である。
少々垂れ気味の目をしていて、その瞳には常に青い輝きが宿っていた。
「お前は嬉しいのか? エレナ」
「えっ?」
「男共から大歓声を浴びて楽しいかと聞いているんだ」
エレナは唸った後、両手を合わせて苦笑いした。
「嬉しくないと言えば嘘になります」
「正直な奴だ。お前のそういうところ、好きだぞ」
好きだぞ、という単語を聞いたエレナは顔を赤らめた。
形の良い、薄桃色の唇を閉じて足と手を組んで窓の外を見るマイコとは対照的に、エレナの顔は耳まで赤くなっていた。
エレナはこの怜悧な横顔をした大尉が好きだった。恋愛感情と言うよりも憧れ、尊敬の念が強いのだが、はやり好きだ――と面と向かって言われると嬉しいし、照れてしまう。
「なぁエレナ」
「はい」
「今回は帰ってこれた。次も帰ってこれるのだろうか?」
マイコが外を見ながら僅かに憂いの表情を見せて、エレナは浮かれた自分を窘めた。
柔和な顔を覆っていた紅潮が瞬く間に引き、別人のように締まった表情になる。
「大尉、今は休み、休暇を楽しむことだけをお考え下さい」
「エレナは優しいな。だが、素直に楽しむこともできん」
マイコは車の席に用意されていた、分厚いプリントの集合体を見ながら溜め息を吐く。
「いくら有能だの英雄だのと言われても、三角関数がわかるようにはなるまいて……。授業日数が足りなくなって補習を受ける英雄が、世の中のどこにいるんだか」
261 :
トリム攻防戦:2008/10/19(日) 22:55:48 ID:CpoMnGsc
2
光があれば陰がある。
ヴォルクグラード人民学園にとって魔道兵が光であるとしたら、内務委員は言わば陰だった。
内務委員会室の室内は薄暗く、中にいる人間の顔すら判別は難しかった。
唯一、光を室内にもたらしているのは、小さなテレビが一台だけだ。
ブラウン管越しに伝達される映像の中では、飛行船から降り立ったマイコ・パステルナークが生徒達の歓迎に答える映像が映し出されている。
つい先ほどから何度繰り返されたかわからない映像を見ながら、苦々しく部屋の男達は呟く。
「随分と人気者になっているようですね、我が軍の英雄は。聞くところによれば、パステルナーク大尉は軍内部にシンパを広げ、自らの勢力を拡大しているとのことです。内務委員長、パステルナーク少佐を処理するべきではありませんか?」
突き上げとも取れる強い口調で言葉を叩き付けられた彼らのリーダー――内務委員長は、ほんの僅かの動作によって、それを否定した。
「無用だ。わざわざ使用可能な物を自分の手で壊すこともあるまい」
「ですが、強すぎる軍閥は災いの種となりましょう。我ら内務委員は自制のために存在しているのです!」
内務委員の一人であるラルロフが机を叩いた。
それから、僅かな時間が経過して、内務委員長は書類にペンを走らせ、ラルロフに差し出した。
「ありがとうございます。必ずや任務を遂行してご覧にいれます!」
ラルロフが意気揚々として部屋を出た後、生真面目そうな内務副委員長が部屋の明かりを点けた。
「よろしいのですか? あのような命令書をお出しになって……」
常識人として知られる副委員長は委員長に紅茶の入ったカップを差し出しながら言う。
「本人がやりたいと言っているのだ。それを止める理由も無かろう」
副委員長は長い経験のせいで身に付いた洞察力によって、僅かな言葉で状況を噛み砕く。
ラルロフは捨てられたのだ。
恐らく、ラルロフは失敗して死ぬだろう。だが、その過程で何名か犠牲が出ても内務委員長は気にしないはずだ。
「これを」
疾風の如き俊敏さと精密機械を上回る正確さで積み上げられた書類を整理して、委員長は副委員長に渡す。
書類を生徒会に渡すために部屋を出た後、副委員長は大きく溜め息を吐いた。
「パステルナーク大尉は確かに優秀だ。それに校内での人気もある。内務委員達は、いつ嫌われ者の自分たちが立場を追われるか怖くて仕方がないのだろう。俺も怖くないと言えば嘘になる。進んで嫌われ者になった人間の言えることではないだろうがな」
そんなことを考えていると、副官は初等部の女子生徒とぶつかりそうになった。
一礼して別れた後、生徒は内務委員室へと入っていく。
「人間、誰しも欠点はあるだろうが……」
内務委員長の嗜好はある意味で歪んでいた。
内務委員長は十歳から上の女性に一切の感情を抱くことができないのだ。
262 :
トリム攻防戦:2008/10/19(日) 22:57:16 ID:CpoMnGsc
今日はここまで。
トリムという地名をお借りしました。
内務委員長の元ネタはあの人です。
ベリヤかw
264 :
166:2008/10/20(月) 20:43:02 ID:7hJyJLRo
「だけど、トリム周辺の海域には警戒網がはられていて近づけないわよ?」
加奈は動揺しているが、冷静ではあった
「その事についてだが・・・・そういえば君の所の技術部がおもしろいものを作ったそうだね?」
この答えに、加奈は驚いたが、諦めたように言った。
「あんたには、おみとうしか・・・・、確かにこっちの技術部がおもしろいものを作ったわよ。」
「その、おもしろいものって一体何なんだよ、俺に教えてくれよ?」
ラフランコは動揺から回復し、いつもの調子に戻っていた。
「人工濃霧発生装置よ、これがあればトリムの警戒網を突破出来るはず。まあ、大量の水が必要なんだけど、この作戦には問題はないわ」
「へぇ〜、あんたらの技術部は凄いんだな。そういえばフリッツ、こっちの魔法兵士を総動員しても奴らの魔法兵士の三分のニしかいないぞ、どうするつもりだ?」
「それについてだが、まあこれを見てくれ。」
フリッツがそう言うと生徒会室に二人の兵士が金属のケースを持って入ってきて、中央の机に置いていった。
「これは一体?」
二人は声を揃えてフリッツに尋ねた。
「これは、我が軍が開発した、対魔撤甲弾と発射装置だ。これがあれば魔法兵士の障壁を撃ち抜ける外すだ。」
「ミスリル鉱脈の奪還部隊にもこれを配備した、そして、間もなく奪還作戦が始まる。結果がわかるまで、しばしの休憩を取ろう。では。」
そう言ったフリッツは生徒会室から退出していった。
265 :
166:2008/10/20(月) 20:48:32 ID:7hJyJLRo
〜投稿終了〜
いろいろと忙しくてなかなか進まなかったorz
266 :
75:2008/10/20(月) 22:43:16 ID:vIH514v4
ちょりーす
>>263 正解
ソ連はロリコンとか鉄の人とかを元ネタにしたキャラを作れそうで楽しい
ドイツが一番キャラ立ってる人が多いんだけどね
日本は牟田口と辻ーんが一番キャラ立ってると思うんだけど他にいるかな
>>265 投下乙なんだぜ
>対魔撤甲弾
APFSDSを超える素敵な兵器なんだろうかw
というわけで続き投下!
267 :
75:2008/10/20(月) 22:44:45 ID:vIH514v4
3
ヴォルクグラード人民学園にしてもアヴィリオン学園にしても、学園という小さな『国家』が成り立つためには、『国民』たる生徒達の存在が不可欠だった。
全ての生徒が軍務に属しているわけではなく、後方勤務に従事する者の方が圧倒的に多く、また重要な責務を負っている。
それでも日曜日になると、多くの生徒は寮で休日を過ごすことが多い。
それはマイコ・パステルナークの弟でもあり、魔道兵として前線で活躍する姉とは対照的に一学生として生活を送るマモル・パステルナークもまた例外ではなかった。
寮にあるマモルの部屋は、姉のものをそのまま間借りしていた。
マイコは大尉で士官だから、部屋は一般生徒や下士官用のものと比べて広く、また設備も整っていた。
マイコは『どうせ私は軍務で忙しくて部屋を空けているのだから、代わりに使え』などど言っているが、彼女の腹心であるエレナ・カウフマンもマモルも、姉が見え透いた優しい嘘をついていることを知っていた。
「姉さん、たくさん作ったんだから焦らなくてもいいのに」
テーブルの上に並んだ料理の数々にがっつく姉を見て苦笑いするマモルは、姉と同じく濃紺の髪と黄金の瞳の持ち主だった。
痩躯とも言える体つきは女性的であり、華奢でだった。
髪を伸ばして顔立ちがもう少し精悍になれば、姉であるマイコと瓜二つになるかもしれない。
「世界一美味い料理があるんだ。がっつくのは当たり前だろう」
口の周りに付いたソースをナプキンでふき取りながら、マイコは視線を弟へと向ける。
「やれやれ。困った人なんだから……前線でエレナさんに迷惑ばかりかけていたでしょう」
「いや別に……」
何かマイコが言葉らしきものを発したように聞こえたが、口内に食べ物を入れたまま話す行為は例え魔道兵であっても難しい行為らしかった。
「もう。仕方無いなぁ」
マモルの表情は呆れが半分、嬉しさが半分だった。
「大尉、マモルくんが呆れていますよ!」
部屋の中にはもう一人いた。
エレナ・カウフマンだった。
艶やかな金髪と青い瞳の持ち主は、柔和な顔立ちにマモル以上に呆れを浮かべている。
マモルはそんな彼女の姿を見ていると、姉は相当にエレナに迷惑をかけているのだなと痛感させられた。
一通り食事が終わると、三人は紅茶を飲みながら談笑を始めた。
「姉さんは今度、少佐になるんだ。そうすればお前の将来に使う金も少しは増やせる」
「ありがとう姉さん」
「あんまり嬉しそうじゃないな。ちょっと姉さん悲しいぞ」
「そりゃ嬉しいよ。でも、僕は姉さんが無事ならそれでいいんだ」
マイコはどこか不満な表情になる
マモルが洗い物をしにいった隙に、エレナが言う
「大尉、行く者がいれば待つ者もいるのです」
「ああ……わかっている。わかっているとも……」
口でそう言っても、マイコの表情はどこか寂しげなものだった。
「私はマモルの未来のために戦っているつもりだ。こんなご時勢、それしか方法が無いからな。幸運にも、私は『兵器』としては優秀に出来ているらしい。だが、姉が人殺しでも、弟がそれに倣うこともあるまい」
「大尉……」
「エレナ、私はろくでもない死に方をするだろう。惨たらしいか、惨めか――の違いだ。でも、それでいいと思っている。姉の人生を食い物にして弟は生きていくべきなんだ。明るく、幸せと希望の溢れた人生を送るべきなんだ」
コップを握るマイコの手が力を増す。
そっと、エレナはそれを両手で覆う。
「大尉、そう自分を追い込んではいけません。戦争で生き残った後に幸せな人生を送る人間もいるのです。何も大尉が犠牲になるだけが、マモル君の人生を明るいものにするわけでもないでしょう」
「エレナは昔、私がマモルの未来のために犠牲になってはいけないと言った。だが、戦場で散々死を撒き散らしてきた人間が、他人顔で幸福を享受することができるのだろうか? 否だ。エレナは優しい。だが、全ての人間がエレナのような人間ではないのだ。
もし私がエレナを殺されたとしたら、私は殺した人間が幸せになることを黙って見ていることはできないだろう。そこまで人間が出来てはいない」
マイコの脳裏には、かつて姉弟二人で味わった日々が思い浮かんでいた。
ごみ溜めを漁り、その日食べるものや着るものに苦労した毎日を。
マイコは自分が殺人者になってでも、弟の未来を守ろうと決意した。
だから彼女は今も戦う。
戦い続けている。
「もう、マモルに辛い思いをさせたくない。例え畜生道に落ちたとしても、私は――」
マイコは唇を強く噛み締めた。
赤黒い血が白い肌を伝わり、雫となって床へと落ちた……。
268 :
75:2008/10/20(月) 22:46:01 ID:vIH514v4
4
学園島最大の港であるトリムは、補給物資を線ではなく点と点で結ぶ必要のあるこの島の特異な現状において、保有者に圧倒的なアドバンテージを与えていた。
トリムの防衛部隊を指揮するユーリー・イリシェンコ中将は温厚かつ、良識ある人間として信望があった。
前線では軍人として、後方では教師として。
温厚な性格と広い視野の持ち主であるイリシェンコは社会主義の欠点を冗談の材料にしたり政治教育の時間を自由時間にするなどの行為を平気で行うため軍の上層部からは嫌われていたが、年若い兵士達からは信頼と人気を得ていた。
一度彼が更迭されるという噂が流れた時に、実力で彼を奪い返すために一個連隊の有志が集まったことがある。
「トリム港防衛軍司令官イリシェンコ中将でおられますね。私は内務委員より派遣されました、ラルロフ中尉であります」
内務委員から派遣されてきた将校がやってきたのは、彼が一日の職務を終え、日課となっている家族への手紙を書こうとした時である。
「内務委員が何の用かね。詳しく聞きたいものだが」
イリシェンコの問いに内務委員は答えた。
「閣下も知っての通り、アヴィリオン軍の攻勢が間近に迫っています。増援として派遣される部隊は、例の魔道兵部隊であります」
いまいち"例の部隊"が何かわからなかったイリシェンコが副官に聞くと、副官はマイコ・パステルナーク大尉の部隊ではありませんか――と返した。
イリシェンコはそうだそうだと頷いて、ラルロフを見た。
「パステルナーク大尉の隊だな。それが何が問題でも?」
「閣下にとっては問題ではありますまい。ですが、我々としては大きな問題であります」
いぶかしむイリシェンコにラルロフは言う。
パステルナークは強大な力を持つ軍閥を軍の内部に形成しつつあり、いずれは生徒会に対して反旗を翻す可能性があると。
「委員として責務を果たすのは結構だが、私や他の兵士も責務を果たしているのだ。少なくともパステルナーク少佐は有力な部隊だし、今は一人でも多くの兵が我々には必要なのだ。中尉、できれば君にも指揮官として働いてもらいたいのだが、どうだろう?」
ラルロフはしばし考えた後、額に脂汗を浮かべて答えた。
「その栄誉は受けかねます……」
内務委員が部屋を出て行った後、怒りを発したのはイリシェンコではなく副官であった。
「チェキスト風情が何様のつもりだ! あいつめ、弾は前から飛んでくるものではないと思い知らせてやる!」
「そう怒るな。私とて貴官と同じぐらい、あの者を叱責してやりたい気持ちなのだから」
「失礼しました。申し訳ありません」
なぁに気にするなと気落ちする副官に向かって言い、イリシェンコは背中を椅子に預けた。
「魔道兵がそんなに怖いものなら、実用化などしなければ良かったのではないか? 反対派の粛清を行って実用化させたのは彼らだろうに」
イリシェンコは続ける。
「子供同士が殺しあうだけでも異常なのだ。もっと異常にしてどうする」
「どうなさいますか? 閣下」
「少なくとも戦闘中は大人しくしているだろう。気付かれんように監視を続けろ。何か行動を起こすようだったら、○○、貴官に任せる」
「ハッ!」
副官は敬礼して退出した。
「大人を食い物にして子供は成長するものだろうに。大人の代わりに子供が血を流すなど、随分と歪んでいるじゃないか……全く」
卓上に置いた、自分の息子の写真にイリシェンコは視線を移す。
自分は果たして息子に誇れる仕事をしているのだろうか?
とてもそうは思えないと、イリシェンコは溜め息を吐いた。
269 :
75:2008/10/20(月) 22:48:10 ID:vIH514v4
5
東のヴォルクグラードから、西の遥か彼方にアヴィリオン学園の本校がある。
学園列島で最大の規模を誇り、『帝国』とも畏怖を持って称されるこの学園は、文字通り鉄壁の中に存在していた。
北部、南部、中央部の三点を分校で結んだ防衛ラインの最奥部に構えられた校舎では、数十万人の生徒が過ごしている。
その中の取るに足らない一つ――二年八百七十一組に、アヴィリオン空軍少佐エーリヒ・シュヴァンクマイエルがいた。
「よし! ジャックのフォーカード! 俺の勝ち!」
カードを並べて喜ぶ少年の顔は優しげで、とても兵士の顔には見えない。右側だけは――。
エーリヒの顔の左側は、もはやどんな表情も浮かべることはない。戦いは彼の顔に醜い火傷の跡を残し、左目すらも奪った。
本来左目があるべき場所の周囲は黒い眼帯で覆われている。青い軍服に包まれた肢体は適度に筋肉が付いていた。
「悪いね。今日の昼飯はお前らの奢りだ」
隻眼の少年が喜びの声を上げると、対峙していたクラスメイトは顔を合わせて、意地悪く笑った。
「俺もフォーカード。しかもクイーン三枚とジョーカーです。いやいや、いつも奢ってもらってすみません」
「ここは撤退するか……財布のダイエットを助長しても仕方無い」
エーリヒは苦笑いとも悪態とも取れる表情を浮かべた後、やれやれと言いながら左目を覆う眼帯の周囲に広がる火傷に触れた。
「おっ、流石に名将は引き際が見事だな」
「言ってろ。いいかみんな、俺が負けているのは、上官が威張り散らして部隊内の不和を起こさないためなんだ」
「存じておりますよ、大隊指揮官殿!」
必死で笑いを抑える部下達――現在はクラスメイト――に囲まれながら、苦虫を噛み潰すエーリヒは紙パックに入ったコーヒー牛乳に口にする。
糞味噌に言っているが、部下の誰もが地球上の誰よりもエーリヒ・シュヴァンクマイエルという男を信用していた。
それだけの功績をエーリヒは学園島における戦いで残した。多くの友軍兵士を死の淵から救い出し、何度も痛撃を敵に与えている。
ただエーリヒは陸軍の装甲部隊ではなく、空軍が独自に編成した装甲部隊の指揮官であったため、少佐という地位に甘んじていた。
もっとも、十七歳で少佐という階級はアヴィリオンの中では決して低くない階級ではあったが……。
「そういえば少佐、次の出兵はいつになるんでしょうね」
「早く戦いたいのか?」
「いえ、そういうわけじゃありません。我々が前線に行くとなれば、アヴィリオンのご令嬢達がさぞ寂しがるのではないかと思いまして」
「本校だけで計算しても、俺一人に対して二万人から三万人の女性を相手にしなくてはいけないんです。少佐も如何です?」
「お盛んだなぁお前らは……もっと勉強とか色々な方面に労力を割けよ」
戦意旺盛なクラスメイト達を横目に、彼らの上官であるエーリヒは机の上に足を上げ、左目の火傷跡を掻いた。
「一時の交際がそんなにいいものかねぇ。結婚するわけでもないのに」
部下達はエーリヒの言葉に肩をすくめた。
エーリヒがパンの袋を破って中身を口にしようとした時、教室のドアを開けた者がいた。
「エーリヒ・シュヴァンクマイエル少佐はいらっしゃしますか?」
顔を見回して周囲を確認したエーリヒだったが、左半分の視界は黒一色だった。
もう慣れっこになったので立ち上がると、エーリヒは教室の入り口へと向かった。
「はいよはいよ。何か用かい?」
伝令にやってきた兵士は敬礼する。エーリヒもまた敬礼を返した。
「軍令部での会議に遅れます。お迎えに上がりました」
「あっ! いけない! すっかり忘れてた!」
エーリヒはあたかも思い出したように言ったが、実際のところはサボタージュを決め込もうとしていたのが本音だった。
会議と言っても別に建設的な議論が行われるわけでもない。
淡々と報告やお寒い政治宣伝が行われるだけなので、エーリヒはしょっちゅう仮病や知らん振りをして会議を抜け出していた。
だが上層部はそれを知ってか知らずか、今回はわざわざ迎えをよこしたらしい。
「うーん……行かなきゃ駄目?」
「駄目です」
「絶対?」
「絶対です、少佐殿」
兵士は頷いた。
エーリヒは観念して行くことにする。
「俺が行ったところで、何人かが不機嫌になるだけだろうに。まあいいや、食わせてもらっているんだから、これぐらいは付き合いだ」
そう言って伝令についていくエーリヒだったが、胸中ではどうにかして会議に出席しない方法を考えていた。
しかし、結局方法は実行されなかった。
彼は行くまでに車中で眠りこけてしまい、司令部に到着した時には夢の中だったのである。
270 :
75:2008/10/20(月) 22:54:11 ID:vIH514v4
6
軍司令部の会議室には各軍の上級将校や士官が続々と集まっていた。
欠伸をしながら用意された席に腰掛けたエーリヒは恐らくは高級品であろうコーヒーの香りを楽しむ素振りを見せた後、口をコーヒーを飲む以外の用途に使わざるを得なかった。
様々な人間がエーリヒに歩み寄ってくる。
生徒会の有力者や、各委員会の幹部達。
報道部――"蚊"のご一行。
うんざりするような時間を過ごす羽目になったが、唯一貴重な体験をすることもできた。
旧式のスツーカで敵戦車を五百台破壊して専用の勲章までもらった空軍大佐と話すことができたのだ。
もっとも大佐は『牛乳は素晴らしい飲み物だから水代わりに飲みたまえ』とか『休んではいられない。すぐに出撃したい』などと強烈な論調で力説したため、エーリヒとしてはただ圧倒されるだけだったが。
「まあインスタントヒーローと"ヴォルクグラード人民最大の敵"を比べちゃいけないだろうなぁ」
「では、僕みたいに、その即席英雄に心を奪われた乙女はどうすればいいのかな?」
黒々としたコーヒーの海に写る自分の顔を見ながら、エーリヒが溜め息を吐いていると、一人の女性士官が隣に腰を下ろした。
「君は全く……」
言いかけて、エーリヒは思わず隣席の女性士官と目を合わせてしまった。
薄いレンズの眼鏡越しにあったのは、真紅の瞳。
僅かに揺れたのはほんの少しだけ茶色味がかった収まりの悪い黒髪。
「どうしたんだい? 僕の白馬の王子様」
細い輪郭が僅かに動く。
甘い声は蜜を含ませたかのようだった。
「"君は全く……"なんだい? 聞きたいな」
エーリヒを覗き込む女性士官――ラファエル・フォン・クリングベイル少佐のくせのある黒い髪が揺らいだ。
大天使の名を拝命した女性士官はアヴィリオン空軍第七〇九八教導飛行隊の飛行隊長を務めている。四桁の番号の部隊は正式には存在しないことになっているが、それは彼女が、アヴィリオンにとって最も恐怖の対象となっている存在の一人だからだ。
「い、いいのかい? アグレッサー部隊の指揮官が抜け出してきても」
「給料分の仕事はしたさ。僕としては、未来の夫と親睦を深める方が重要でね」
「これも一応軍務なんだけどなぁ……」
「机の上ではそうだろうね。だが、机の下ではどうなることやら」
中性的なラファエルの美貌に笑みが浮かぶのと、光速の動作でエーリヒの右手が押さえられたのは、ほぼ同時だった。
271 :
75:2008/10/20(月) 22:54:45 ID:vIH514v4
ラファエルはエーリヒの手を取り、太股に触れさせる。
ガーダーベルトと太股の豊満な肉の感覚を手に感じて、エーリヒは顔を真っ赤にした。
「か、からかうなよぉ……ラファエル」
「フフ、ダーリンは本当に可愛いなぁ。大好きだよ」
ラファエルとエーリヒの関係は奇妙であり、正に"事実は小説よりも奇なり"を地で行く過去があった。
敵同士として戦場でめぐり合ったラファエルは、ある日エーリヒの部隊の捕虜となった。
人を殺すこと、敵と戦う緊張感と興奮のみに生きる快感を見出していたラファエルは、エーリヒ・シュヴァンクマイエル――いや、ヴォルクグラード時代は意図的にシャットアウトされていた情報の数々を知り、衝撃を受けた。
やがては時が移り変わり、ラファエルはアヴィリオン空軍の所属としてエーリヒの公私共のパートナーとなっている。
身寄りの無かったラファエルは子宝に恵まれなかった貴族の末裔であるクリングベイル家の養子となったが、彼女にとって幸福だったのは家柄や資産よりも、クリングベイル夫妻が良識に溢れた人間であったことだろう。
そのせいもあって今では、すっかり人間らしくなっている。ただしエーリヒから言わせれば、どこかネジが飛んではいたが。
「次の週末、結婚式を挙げようか」
こういうことをラファエルは平気で口にするのである。
エーリヒはコーヒーを噴出しかける。
「勘弁してくれないか……」
「僕は何時だって本気だよ」
顔を赤らめながら、エーリヒは項垂れる。
ラファエルはエーリヒに対して『無償の愛』を送ることを公言している。
嬉しくないと言えば嘘になるが、あまりにも堂々と愛しているだの君のためなら死ねるなどと言われると、聞いている方が恥かしくなった。
結局のところエーリヒ自身もラファエルに好意を抱いていたから、節度を守るのなら気にしなかった。
単にラファエルは他人に比べて節度の上限が桁違いなのである。
「ダーリン、今日は冷たいなぁ。心が凍り付いて痛いよ」
間も無く会議の開始を知らせるブザーが鳴り、ラファエルはいつもどおりの怜悧な表情に戻って前を向いた。
「はぁ……」
どうにかしてサボタージュしようとしていた会議が自分を救った事実は、エーリヒにとって皮肉以外の何物でもなかった。
272 :
75:2008/10/20(月) 22:56:32 ID:vIH514v4
投下終了
今日はここまで
前回ラファエラのキャラ掘り下げが少なかったので、修正を加えて登場となりました
ちょっと質問だけど改行は今みたいな具合でいいですか?
それとももっと増やしたほうが読みやすいですか?
273 :
75:2008/10/21(火) 19:53:55 ID:3LC5hdXI
274 :
75:2008/10/21(火) 19:54:32 ID:3LC5hdXI
第二章
1
トリムの外周を固める防衛線では、ヴォルクグラード軍の兵士達が汗を流して防御陣地の構築に余念が無かった。
蛸壺が掘られ、地雷が埋められる。
対戦車砲があちこちに偽装されて配置され、土嚢が積み上げられていく。
「大尉殿、お客さんですぜ」
自らも塹壕掘りや物資の輸送に従事したマイコ・パステルナークがテントの中で自分と同じように泥だらけの兵士達と談笑していると、金髪の副官が血相を変えて走ってきた。
「大尉、カウフマン少尉はいい女ですよ」
「手を出すなよ。弟の嫁にする予定なんだからな」
「あれ? パステルナーク大尉の奥様じゃないんですか?」
テントを後にせんとするマイコは呆れた口調になる。
「言ってろ、馬鹿。一時はそうも考えたがな、付いてない同士でするのは楽しいものじゃない」
「そいつはそうだ。大尉、アンタが隊長なら背中を撃たないで済みそうだ」
「私も督戦隊の真似事はしたくない」
色の悪いマーマレードを塗った黒パンを兵士に渡した後、マイコは濃紺の髪を僅かに揺らしてエレナを迎えた。
「どうした? 本校に隕石でも落ちたのか?」
「ご冗談を言っている場合ではありません。大尉殿」
エレナは泣き出しそうな目をしながら命令書を差し出す。
戦場で臓物の海の中にあっても顔色一つ変えないエレナ・カウフマンという少女は、マイコやマモルのことになると顔色を変える。
「ほう」
マイコは気のない声を上げた。
命令書には、マイコ・パステルナーク及びエレナ・カウフマンの部隊は味方の防衛ラインの外にて待機――と言えば聞こえはいいが、命令書を読む限りは味方の戦線から突出し、孤立した状態で戦闘に参加しろと言うのである。
「我々は随分と嫌われているようだ。こういう場合、鼻で笑うのが最も健全ではないのか?」
「パステルナーク大尉、我々の部隊だけが突出して配置されるなど、おかしいのではありませんか!?」
エレナの青い瞳が潤む。
優しげな目の切れ端に、雫が浮かんだ。
「私はトリム防衛司令官のイリシェンコ先生は良識ある方だと思っている」
マイコは手に付いた泥を拭った後、人差し指でエレナの涙を拭った。
その雫が付いた指先を舐め取ると、僅かな塩の感覚がマイコの舌に広がった。
「はい。あえて味方を殺すような命令をお出しになるような人間とはとても思えません」
「エレナ、ヴォルクグラードには癌細胞が多い。お前とて、それを知っていよう」
「内務委員が……!」
マイコは頷く。
「ああ。奴らに違いない」
「自分は納得できません。今から司令部に行って、確認してきます」
「やめておけ。周囲の状況を見ろ」
マイコ達はいる周囲では防衛線の構築が急ピッチで進められている。
そうなると必然的に、司令部は蜂の巣を突いて、そこに発炎筒を投げ込んだような有様なのは間違いない。
この状況で司令部に行ったとしても、一士官の具申など受け入れられるはずもなかった。
「どうなさいますか? 大尉殿」
「お前は前にこう言ったよな? エレナ。"不利な立場にある時は、逆にチャンスでもある"と」
「大尉、まさか……」
「エレナ、私はお前がいれば何だってできる。だから力を貸してくれ」
人差し指がエレナの薄い桃色をした唇を撫でた。
「はい……大尉殿。私の力をお役立て下さい」
エレナの目には、敬愛する者に頼られる喜びがあった。
それはある意味で、服従の喜びだった。
275 :
75:2008/10/21(火) 19:55:43 ID:3LC5hdXI
2
朝焼けと共に戦闘が開始された。
砲列を並べたアヴィリオンの斉射は短時間ではあったが、激しく強烈なものであった。
それでも、ヴォルクグラード軍の防衛態勢は強固なものだった。
学園島最大の港であるトリムは周囲を重厚な防衛陣によって固められていた。
その前面には既にヴォルクグラード軍の戦車隊や魔道兵部隊が展開し、アヴィリオン軍の到着を待ち構えていた。
戦域は雲霞のごとく無数の部隊に覆いつくされ、港へたどりつくことすら不可能に見える。
アヴィリオン空軍のBf109がが編隊を組んで突入する。
既に展開を完了していたヴォルクグラード軍も、戦闘機隊と魔道兵部隊を差し向けた。
空で戦いが始まる。
飛び交う戦闘機が次々に撃墜され、Bf109のモーターカノンを喰らったヴォルクグラード軍の戦闘機が木っ端微塵になり、魔道兵の一撃が爆撃機の編隊に炎の花を咲かせる。
数という条件ではヴォルクグラード空軍が、単体としての戦闘能力としては魔道兵……それら二つは一点でアヴィリオン空軍を凌駕していたが、流石にアヴィリオン軍は戦争という行為全般に一日の長があるため、組織的な行動で優勢を保っていた。
<<ブービ! 終戦までに三百五十機は撃墜しようぜ>>
<<浮かれるなよカラヤ2。お前だって百八十機も落としてるじゃないか>>
機首に黒いマークを入れたBf109が僚機を引き連れて大編隊の中に突入し、一撃離脱戦法を用いてヴォルクグラード軍の戦闘機を血祭りに上げていく。
戦闘機隊が空で死闘が繰り広げられている中、ヴォルクグラード側の防空網を掻い潜った急降下爆撃機が運良く港への突破を果たすが、後詰めとして控えていた魔道兵によって撃墜される。
<<"白薔薇"だ。"白薔薇"がいるぞ!>>
純白のローブを身に纏った魔道兵が爆弾を捨てて離脱を図る急降下爆撃機のコクピットを、エネルギーを一点に集中させた蹴りで潰す。
<<一機逃した!>>
<<任せろ>>
右肩に大口径のマナ・エネルギーキャノンを装備した魔道兵は一撃で急降下爆撃機を叩き落した。
一方の地上でも死闘が続く。
物量で勝るヴォルクグラード軍に対して、アヴィリオン軍の四号戦車や突撃砲は長距離砲撃で対抗した。
ヴォルクグラード軍の戦車は接近する前に次々に撃破され、運良く突破しても、携帯用の対戦車火器や地雷で武装した歩兵の餌食となる。
それでもヴォルクグラード軍は港への接近は許さなかった。
港さえ無事ならば、この戦いの勝者はヴォルクグラードから揺らがない。
それを両軍共に知っていたから、時間の経過と共に戦いは激しさを増し、更なる血を求めた。
276 :
75:2008/10/21(火) 19:57:54 ID:3LC5hdXI
3
トリムにアヴィリオン軍の部隊が殺到していく様子を、エーリヒ・シュヴァンクマイエルは後方から見守っていた。
彼が指揮するシュヴァンクマイエル戦闘団は今、予備戦力として本隊の側面に配置されていた。
エーリヒはハーフトラックの車上の席に腰掛け、逐一入ってくる戦況を聞いては、部下に的確な指示を返している。
特に補給部隊には五分に一度、定時連絡を行わせている。
いくら精強な兵士を揃えて良い装備を持っていても、腹や燃料タンクが減っては戦争はできない。
「こちらが圧倒的だ。少なくとも、"今のところは"」
エーリヒの含みを持った言葉を、副官は見逃さなかった。
副官のアルベルト・ゲルトバウアーがコーヒーの入ったカップを差し出す。
「しかし少佐、"今のところ"がいつまでも続くわけもありますまい。嫌な予感がします」
コーヒーカップを受け取って、エーリヒは一口それを飲んでから、カップを置いた。
「我が軍の後方に包囲されている部隊がいるだろう。どうにも怪しい」
「敵が強固な守りを見せた場合、包囲しつつ敵の後方を叩くのは電撃戦のセオリー通りですが……」
エーリヒは唸って左目のあった場所を覆う眼帯の周囲に広がった火傷の跡を掻いた。
瘡蓋が剥がれ落ちて、爪を血で汚す。
「うん。既存の兵器体系に収まらない魔道兵は、既存の兵器体系を使う軍隊と戦う時、予想外の事態を引き起こすことがある。戦局全体をひっくり返すことはできなくても、そのきっかけを作ることはできる」
エーリヒは魔道兵という存在を脅威とは感じていたが、畏怖するまでには至っていなかった。
確かに魔道兵は戦闘機の機動性と戦車の火力と防御力を有した恐るべき存在だが、撃たれれば死に、食料が無ければ腹を空かす。
そこに戦術の入り込む隙がある――むしろ通常兵器と戦うよりも、その隙は大きくチャンスも多い。
魔道兵がもし電子機器やレーダーを使用不能にする粒子を撒かれたらどうしようもないが、少なくともそんなことはしないらしい。
「私もそのことをヴォルクグラードの本校全面で嫌と言うほど体験しましたよ。これはあくまで私の意見なのですが、第六装甲軍はマジカル・コンプレックスの副作用に苦しんでいるのではありませんか?」
「魔道兵なんて怖くは無い。そう自分に言い聞かせて、意図的に無視している――と」
「はい」
アルベルトは頷いた。
エーリヒは魔道兵が強力であることを認識した上で脅威ではないと考えている。
だが、強力であることを認識し、脅威であることをわかりながら、意図的に信じようとしない者もまたいるのだ。
希望的観測と願望という、最も唾棄すべき、忌み嫌われるべき思考に囚われ、自分の信じたいことだけを信じる。
今は自分たちの上官がその病気に侵されている可能性があったから、エーリヒはあまり良い気分ではなかった。
「駄目元で包囲部隊の攻撃を具申してみては如何でしょう? 何もしないよりは良いかと」
「そうだなアルベルト。無線手、通信文を送ってくれ」
「了解。エスプリのたっぷり聞いた文を送ってやりますよ」
「別に喧嘩を売るわけじゃないんだ。穏便に、穏便にね」
アルベルトが去った後、エーリヒは腕を組んで車上から見える戦場に思いを馳せた。
「さて、どうなることやら……」
277 :
75:2008/10/21(火) 19:58:29 ID:3LC5hdXI
4
多大な出血を支払わされた急降下爆撃機隊の執念が、ヴォルクグラード軍の戦線に僅かな亀裂を生じさせた。
戦車隊による鋼鉄の炎の旋風が亀裂を更に広げ、重装備に身を固めた歩兵部隊が突入を開始した。
爆撃で叩き潰されたかに見えた陣地から、短機関銃や小銃で武装したヴォルクグラード兵が反撃する。
機関銃が唸るたびに数名のアヴィリオン兵がボーリングのピンよろしく打ち倒されるが、アヴィリオン兵も手榴弾を纏めて陣地へと投げ込み、トーチカを火炎放射器で焼き払った。
予想以上にトリム防衛軍は奮戦し、アヴィリオン軍は後方に配置していた戦力も最前線に投入させた。
彼らは包囲部隊の戦力と、その構成を見誤っていた――。
278 :
75:2008/10/21(火) 19:59:23 ID:3LC5hdXI
今日はここまで
まとめサイトの管理とかで意見あったらどんどんお願い
>166氏
SSの名前を教えてほしいんだけれども、もう決まっていますか?
75氏
とりあえず乙〜
ssの名前なんて考えてもいなかったw
あと、まとめサイトについてだけど、前のまとめサイトへのリンクはってあった方がいいんじゃないか?
280 :
166:2008/10/21(火) 20:32:06 ID:VC6lOHaV
すまんミスッたorz
呼ばれている気が致します。
まとめサイト乙
エレナ可愛いよエレナ
283 :
75:2008/10/22(水) 20:45:11 ID:um29h4Jb
ちょりーす
>>279 そうだっけ、リンク貼り忘れてた
今から編集してきます
>>280 まとめサイトの件でお話したいんですけど、時間ありますか?
>>282 ありがとうございます。
キャラを可愛いと言って貰えるのは嬉しいんだけど、所詮は男の願望から生まれたキャラなんだろうなぁと時々思ってしまう。
エレナにしてもマイコにしても、そう感じます。
284 :
75:2008/10/22(水) 21:54:05 ID:um29h4Jb
まとめサイトにSSの一部転載を終了。
166氏のSSは暫定的な名義で記録してありますんで、変更したいときは言ってください。
では続き投下。
285 :
75:2008/10/22(水) 21:54:49 ID:um29h4Jb
5
自分達を縛り付けていた包囲網が目に見えて薄くなったことに気付いた二人の魔女が、アヴィリオン軍の後方で行動を開始した。
背部マナ・ブースターから青い粒子を噴射させて、二つの閃光が空に打ち上げられた。
「マイコ・パステルナーク、交戦!」
黒と赤の閃光――マイコ・パステルナークは大地に降り立つなり、肩部のランチャーを展開して生体誘導弾を放った。
彼女の黄金色をした瞳の中の中で、戦車や歩兵が赤い囲いで捉えられたかと思えば、白煙を残しながら誘導弾がアヴィリオン軍を薙ぎ払う。
ロケット弾の砲撃が浴びせられたが、マイコは右手に携えたマナ・ガンポッドの掃射で空に爆炎の花を満開に咲き誇らせた。
「エレナ・カウフマン、目標を殲滅します」
緑と白の閃光――エレナ・カウフマンはマイコとは対照的に、敵の陣中へと突入した。
いや、切り込んだと言った方が正しい。
只一つの、そして最高の得物である長刀が振るわれるたび、切り分けられた兵士が四散する。
臓物と生暖かい血液で白い肌を赤黒く汚しながら、エレナは戦場を乱舞した。
「各中隊、火力を一体に集中しろ! 繰り返す、単独での交戦は避けろ!」
アヴィリオンの地上部隊はすぐさま対応する。
高度に統率された指揮系統の下、アヴィリオン兵はマイコとエレナに対して濃密な火力を集中させた。
対空機関砲、小銃、軽機関銃。
恐怖と勇気が銃弾の形となって二人に襲い掛かった。
「大尉、来ます!」
「言われなくとも!」
だがマイコとエレナは、背部と脚部に装備されたマナ・ブースターの噴射によって自らを射線からずらし、一発たりとも直撃を許さなかった。
僅かな動揺がアヴィリオン軍に広がる。
その隙を二人は見逃さない。
「大尉!」
「ああ!」
マイコの肩部ランチャーが再び展開し、生体誘導弾がアヴィリオン軍の頭上から降り注いだ。
光球が着弾と同時に、死と破壊をアヴィリオン兵に際限なく与えた。
僅かに生き残った兵士は、エレナの斬撃によって絶命させられた。
全てが死に絶えたかに見えたが、生き残っている者もいた。
虎戦車――アヴィリオン軍のティーガー重戦車だ。
「大尉、ここは私にお任せを!」
エレナ・カウフマンが突進する。
彼女はの纏うローブにはマイコのように、翼は付いていない。
純粋な空戦能力だけならば、マイコに及ばない。
だが接近戦になれば、エレナ・カウフマンは学園島で最も剣呑な存在へと代わる。
ティーガーは八十八mm戦車砲の射撃をエレナに浴びせる。
「そんな攻撃で!」
エレナは戦車へと取り付く。
長刀を中心から二本の剣へと変え、砲塔側面へと付きたてた。
火花と閃光が視界を遮るが、構わない。エレナは刃を砲塔へと突っ込んでいく。
「あの方のためなら……私は喜んで悪魔になる! 私は――!」
エレナは剣を交差させる。
戦車を蹴って距離を取ると、背後で爆発が起きた。
「私は、あの方のためなら、喜んで悪魔になる。そう誓ったから……報いを受けるその日まで、私は戦い続ける!」
286 :
75:2008/10/22(水) 21:55:32 ID:um29h4Jb
6
無線室で陳腐な情報操作を行っていたラルロフは無線機越しに聞こえてくる両軍の通信を聞きながら、戦況が自分の願ったようにはならなかったことを知る。
「馬鹿な! そんなはずでは……」
内務委員として権力を言いように振るってきた少年は、顔を青くして、脂汗を額に浮かべた。
無線機から聞こえてくる戦況は彼が望んだものではなかった。
マイコ・パステルナークは包囲網を破り、アヴィリオン軍を猛烈な勢いで駆逐している。
なぜ奴らは生きている?
なぜ奴らは全滅していない?
なぜ奴らは――。
回答は無かった。
代わりに彼を待っていたのは、もはや自分を敵としか見ていない味方の兵士達だった。
「そこまでだ」
薄暗い無線室に金属の軋む音と同時に、光が差し込む。
「奇計も底が浅いと、滑稽にしかならんな。ええ? チェキストの豚野朗」
銃を向ける兵士達を前にして、内務委員は必死で首を横に振った。
「わ、私は人民と母校のために……」
返答は鳩尾に叩き付けられた銃のストックだった。
その場に崩れ落ち、内務委員は呻く。
兵士は吐き捨てるように言った。
「味方殺しも大概にしろ、屑め。ここで殺してやりたいのが本心だが、生憎俺は慈悲深い。精々木を数えて一生を終えるんだな」
「そんな! 私にだって裁判を受ける権利は……」
「お前らがまともに裁判をやったことが一度だってあるか?」
ラルロフは反論できなかった。
失意のうちに連行された彼は、軽蔑に染め抜かれた兵士の声を浴びた。
「敵に陥れられるのならまだいい。だが、味方に陥れられて殺されるなど俺は耐えられん……!」
287 :
75:2008/10/22(水) 21:56:54 ID:um29h4Jb
7
破滅が始まった。
小屋の影から、地下から、至る所からヴォルクグラード軍の部隊が現れた。
質実剛健を形にしたようなT-34戦車を主力にして、タンクデサントした歩兵の群れが文字通りの波となってアヴィリオン軍に襲い掛かった。
左右の両翼を突破したヴォルクグラード軍は後方を薄くしたアヴィリオン軍を包囲しようとする。
当然アヴィリオン軍は後退するが、その先にはマイコ・パステルナーク率いる魔道兵部隊が待ち構えていた。
前後から猛撃に晒されたアヴィリオン軍は、瞬く間に壊滅するかに見えた……。
288 :
75:2008/10/22(水) 21:57:36 ID:um29h4Jb
第三章
1
エーリヒが肩の線まで上げた腕を、前へと倒した。
直後に、全ての砲門が開いた。
「擲弾兵は前進、装甲兵力は側面へ!」
トリムへ突入したアヴィリオン軍部隊が窮地に陥った時、シュヴァンクマイエル戦闘団に出撃命令が下った。
戦線に発生した火事が大火として全てを焼き尽くす前に処理するのが、彼らの責務だった。
擲弾兵は少数の突撃砲と共に敵の正面へと進む。
敵はシュヴァンクマイエル戦闘団を歩兵主体の兵力と思い込み、全力を挙げて正面へと攻撃を仕掛けてきた。
八十八mm高射砲と突撃砲が火力のありったけを注ぎ込み、擲弾兵一人一人の超人的な肉薄攻撃によって足止めを喰らっている隙に、エーリヒ曰く"真打ち"は敵の側面へと到達していた。
正面から攻勢を仕掛けるフリをして、側面から手戦力で攻撃を仕掛ける一翼包囲――エーリヒが東部戦線において多用する戦法だった。
「空軍は?」
無線手が答える前に、翼下に爆弾とロケット弾を満載したFw190の編隊がエーリヒのいるハーフトラックの上空を駆けていった。
「アンフェアかもしれないけど、戦争に卑怯もクソもあるか」
敵の左翼部隊のうち、半数は抑えることができた。
残りの半数を叩くのはエーリヒと同じ空軍の所属で、学園島の軍隊の中で最も金をかけられた部隊だ。
「各機、戦場を月のクレーターに変えろ!」
飛行隊長の声と同時に、空軍の戦闘爆撃機は空から一方的な暴力の行使を開始した。
空からの攻撃は戦車だろうが自走砲だろうが、一切の差別無く叩き潰す。
「制空権を味方が持っていなければ、こんな戦法は使えないな」
エーリヒはいつも空軍の支援爆撃には感謝の念を抱かざるを得ない。
彼らが空を抑えていてくれるからこそ、エーリヒは自由に地上部隊を動かすことができるのだ。
左翼部隊の半数が空から叩き潰された後、エーリヒは残りの半数を各個撃破していった。
全ての兵力を用いて指揮系統を失い、寡兵となった敵を押し潰していくのは気が引けたが、だからと言って一騎打ちを望むほどエーリヒは軍事的なロマンチシズムに毒されてもいなかった。
「ようやく片付いたか。アルベルト、負傷兵の回収を。敵味方問わず、全力を尽くすように」
「既に命令していあります。それと少佐、敵の魔道兵ですが、如何なさいます?」
「こちらも補給と整備を済ませる必要がある。ラファエルに伝えてくれ、出番だと」
「わかりました。出撃前に彼女とお会いになりますか?」
エーリヒは少し考えたが、首を横に振った。
「やめておく。戦場で恋愛をやったら、甘ちゃんを通り越してヘタレ呼ばわりされる。もっとも、もう十分にヘタレかもしれないけどね」
289 :
75:2008/10/22(水) 21:58:37 ID:um29h4Jb
2
戦域を低空で飛行していたマイコは、何かから"見られている"感覚に気付く。
「そこか!?」
ガンポッドの一連射が、マイコの背後で黒煙を上げていた戦車の残骸を引き裂く。
「やったか? いや、違う!」
マイコが振り向いた刹那、既に敵は眼前にまで迫っていた。
敵――魔道兵は右手でマイコのガンポッドを抑えると、左手に携えていたパンツァーファウストの弾頭を眼前に突きつけた。
「そうは……いくか!」
背部と脚部のマナ・ブースターをフル稼働させて、マイコは距離を取る。
白煙を残して弾頭が顔面を掠めると、マイコの背中に嫌な汗が下った。
「倍返しにしてやる!」
ガンポッドの引き金を引きながらマイコは叫ぶ。
だが敵の魔道兵は右腕に装備していた回転式の防御装置を使って、その銃撃の全てを弾いてしまった。
「ラファエル・フォン・クリングベイルを侮ってもらっては困る!」
敵の――アヴィリオン軍の魔道兵が高らかに言う。
弾幕を回避しながら、敵の魔道兵がマイコの腹に一撃を加える。
相手の脚部が自分の腹に痛撃を与えたことを知る前に、マイコは激痛と衝撃を覚えていた。
「蹴った……だと!?」
「素人が! 間合いが甘いぞ!」
今度は、左手に剣のようなものを振り上げて敵は襲い掛かってきた。
「クロスレンジか!」
マイコは左手に結界を展開して斬撃を弾き飛ばすと、自らも手首から射出された剣を振る。
「アヴィリオンにも魔道兵部隊があると聞く。裏切り者で構成された傭兵まがいの集団が!」
その言葉を聞いた敵魔道兵の唇が僅かに緩んだように、マイコには見えた。
「察しがいいな。あえて言わせて貰おう、七〇九八飛行隊であると!」
一旦距離を取った敵魔道兵がマナ・ブースターの加速付きでマイコに蹴りを入れる。
一瞬、態勢を崩したところを敵は見逃さなかった。
「死して塵に成り果てろ!」
圧し折られたガンポッドの銃身が舞い上がった。
あと僅かでも遅れていたら、舞い上がっていたのはマイコの首だっただろう。
「殺人機械として一つの生き方に縛られることに比べれば、裏切りの汚名はむしろ名誉! 甘んじて受ける!」
「ほざけ!」
マイコは両肩のランチャーを展開し、生体誘導弾を放つ。幾十もの白煙が敵魔道兵に吸い込まれていくが、一発たりとて直撃させることはできなかった。
「下種がッ! 貴様のような奴がいるから、戦争が終わらないんだ!」
「個人の能力で戦争は動かんよ。狭い価値観で物事を捉えるから、恥かしくもなくそんなことを言える!」
「よく喋る女だ……」
マイコは敵魔道兵の言葉に、露骨な不快感を覚えていた。
その理由は一つだったが、最大のものだった。
全て正論だったのである。
290 :
75:2008/10/22(水) 21:59:17 ID:um29h4Jb
3
長刀に備えられた光の刃とアヴィリオン軍の戦車の装甲板が接触すると、高周波振動によって接触部から激しい火花が散った。
エンジン部分を溶解させて切り裂いたエレナ・カウフマンが金髪を靡かせて背部マナ・ブースターを噴射して飛び去ると、間を置いて戦車が爆発を起こした。
戦車隊が敗退したことを知ったアヴィリオン軍の増援部隊は、あっさりと後退を開始する。
「突破に成功した!?」
予想外にあっさりとした敵の瓦解に、エレナは不可解な声を上げた。
「おかしい。どういうことなの……?」
エレナは指揮下の戦車隊と歩兵部隊に前進を命令させた後、疑念の声を上げた。
敵の増援部隊は短時間の戦闘で左翼を守備していたヴォルクグラード軍部隊を壊滅させた。
制空権を奪われていたことを引いても、あまりにも早い瓦解だった。
単純な数だけでも一個師団を超え、隊を率いる指揮官達もベテラン揃いだ。
「少尉、左右から砲火が! 敵の待ち伏せです!」
「ええい! 罠に嵌まったか!」
エレナは一体、敵がどんな策を講じて味方に痛撃を与えたかについては考えることをやめた。
代わりに、どうすれば自分達がここから最小限の損害で脱出できるかを考える。
直後、光と衝撃が絶え間なくエレナ達を襲った。
「少尉、敵は……」
味方の魔道兵は最後まで台詞を言うことができなかった。
下顎だけが残った体が、音を立てて地面に崩れ落ちる。
「右から!? いや、左からも来る!」
エレナが背部マナ・ブースターで自らの肢体を即座に移動させた時、アハト・アハト――八十八mm高射砲の砲弾が彼女が先ほどまでいた場所を通過した。
反応の遅れた魔道兵が直撃を喰らい、上半身を消し飛ばされた。
「敵の知略は予想外らしい……」
エレナは苦虫を百匹ほど噛み潰したと言っても万人が信じるほど、顔を歪める。
敵は半円月の形をした陣形で待ち構え、エレナ達が前進すると同時にエレナに対して正面の部隊を敗走に見せかけて後退させた。
敗走する敵を追ったエレナ達は左右に別れた残りのアヴィリオン軍部隊に挟撃される形となり、大損害を受けた。
「脱出する! 私が最後衛だ!」
柔和な顔に勇気を浮かべてエレナが振り向いた先には、絶望が大きな口を開けて赤い舌をちらつかせていた。
「クロスファイアーポイント……だと」
エレナの冷静な頭脳は自分が絶望的な状況にいることを再確認させる。
敵は左右から挟撃して、エレナ達が離脱しようとする箇所を狭い一角に限定させていた。
無論、エレナだけは空から脱出することもできる。
だが、エレナの指揮下にある部隊は戦車部隊や歩兵部隊であり、見捨てていくわけにもできなかった。
心の中でエレナの黒い部分が部下を見捨てて離脱しろと囁く。部下を見捨てて逃げれば、またあの濃紺の髪の姉弟に会えると。
「無粋だ!」
エレナは首を振り、雑念を払う。
ここで部下を見捨てるようなら、自分もそこまでの人間だ。そんな輩に対して、"大尉"が今まで通りの信頼を与えてくれるのか?
答えは否だ。
「エレナ・カウフマン。行くぞ」
呪詛にも似た言葉を吐き、エレナは前進する。
彼女の部下達が、常に勝利を与えてくれる金髪の少女の背中を追った。
「敵は……」
敵の作り出した絶望が絶望である最大の理由は、部隊は濃密度火力が集中する狭い空間に限定されているということだった。
小銃から重砲に至るまでありとあらゆる火器が投入される殺戮地帯を流血という代価を多量に支払って突破しない限り、エレナ達に活路は無い。
それに加えて、背後からは先ほど潰走と見せかけて巧みに後退した部隊も迫ってきている。
こんな醜態を晒して、あの方に会わせる顔があるのだろうか――。
エレナは自虐的な笑みで表情を強張らせた後、大きく青い瞳を見開いて脱出路を切り開き始めた。
291 :
75:2008/10/22(水) 21:59:59 ID:um29h4Jb
今日はここまで
まとめサイトへの要望などあったら修正しますんでどんどんお願いします
敵と味方は何語で会話しているんだろう
293 :
75:2008/10/23(木) 08:00:59 ID:vttd/kwf
おはよーす
>>292 それぞれに言語は設定してない
話をサクサク進めたいから共通の言語にしてる
アヴィリオン訛りとかはあるかもしれないけど
んじゃ続き投下
最後まで行きます
294 :
75:2008/10/23(木) 08:01:34 ID:vttd/kwf
4
ヴォルクグラード軍の魔道兵部隊が正面の敗走が偽りであることに気付いた事実を、最前線で指揮を取っていたエーリヒ・シュヴァンクマイエルは敏感に感じ取っていた。
長い時間をかけて練り上げられた戦術。
脳内に蓄積された数十万を超える魔道兵の行動パターン。
それらを複合的に、そして客観的に分析した計算結果をエーリヒは即座に算出する。
「少佐、敵が後退します」
副官のアルベルトから報告を受けたエーリヒは明確な指示を指揮下にある部隊に出す。
「正面の部隊は態勢を整え、後退する敵を追撃。左右両翼の部隊はそのままだ」
「少佐、網を閉じないと敵が逃げてしまいます」
エーリヒは目を瞑り、首を振る。
「いいんだアルベルト。崩れ行く建物に残った一つのドアには、必然的に多くの避難者が殺到するものだから……」
包囲して殲滅するよりも残酷な殲滅戦をエーリヒは行おうとしていた。
エーリヒの命令を受けた部隊は伸びた隊列を左右から結ぼうとした。
部隊が合流してしまえば、ヴォルクグラード軍が左右と前後を敵に囲まれて八方塞がりになってしまう。
<<包囲網が閉じる!>>
<<急げ! 閉じ込められたら何もかも終わりだぞ!>>
無線が混線して包囲下されつつあるヴォルクグラード軍の悲鳴にも似た叫びがエーリヒが乗車しているハーフトラックの車上にも届けられた。
ヴォルクグラード軍の左翼部隊は隊列を大きく乱して、指揮系統にも混乱を抱えながら包囲網を脱出しようと狭い空間に多勢で突入してしまった。
「撃て!」
上げられた右手をエーリヒが下ろすと、今か今かと命令を待ち望んでいたシュヴァンクマイエル戦闘団の戦車や突撃砲が短いながらも、猛烈な砲撃をヴォルクグラード軍に浴びせた。
数十秒の間に、焔が赤と黒の世界を戦場に作り出した。
鋳造製のT-34の車体が側面から撃ち抜かれて吹き飛び、周囲に僅かに残されていた木々もついでの空へと放り上げ、幹を砕いて葉や枝を更に高い空へと舞い上がらせる。
突撃砲の七十五ミリの砲口からオレンジ色の閃光が迸るたび、その先にいるT-34やSu-85が質の悪い鉄屑へと変えられた。
虐殺に近い攻撃を受けたのは戦車だけではなかった。
地面に蠢く茶色い点――ヴォルクグラード軍の狙撃兵――歩兵が数千人の塊となって、戦車隊と共に包囲網を抜け出さんとする。
四連装の二十mm機関砲は対空戦車の車上から砲身が赤熱化するまで撃ち続けて、数千人のヴォルクグラード軍歩兵のうち八割を挽肉に変えることに成功し、残りの二割の戦意を打ち砕き、大量殺人のショックに耐えられなくなった対空戦車の乗員三名を発狂させた。
「しかしシュヴァンクマイエル少佐、この調子だとそう簡単に壊滅してはくれませんな」
「ああ……」
エーリヒは包囲網を脱出した敵を無理に追撃しようとは思わなかった。
自分は軍人として任務を遂行しているだけであって殺人者ではない――自分が大量殺人者である事実を受容しているエーリヒだったが、彼にも自己を正当化してしまう癖はあったのだ。
屍山血河を作り出した人間が何を……とエーリヒは自嘲しない部分が無い訳ではなかった。
「包囲下にある部隊に降伏勧告を。勧告に返答が無き場合、退路を塞いだ後、殲滅する」
回答が砲声であったことを知ったエーリヒは、何の躊躇も無く総攻撃を加えた。
魔道兵一人、戦車一個小隊あたりに全戦力を投入して、捻り潰していったのである。
エーリヒにとって後味が悪い上に気の思い殲滅戦の最中、無線手が報告を行った。
「少佐、クリングベイル少佐と敵の魔道兵が包囲網の中に入ります!」
エーリヒは一瞬、砲撃を中止させようとしたが、実際にはしなかった。
エーリヒとラファエルの関係は婚約者という間柄だが、前線においては部下と上官なのだ。
エーリヒは彼女と盟約と交わしている。戦闘とお互いの命を天秤にかけるとしたら、戦闘を優先すると。
だからエーリヒは胸中で不安に押し潰されそうになりながらも、一切表情を変えることなく、攻撃を続けさせた。
295 :
75:2008/10/23(木) 08:02:20 ID:vttd/kwf
5
視界にヴォルクグラード軍の魔道兵の姿がはっきりと確認できた。
後退している地上部隊を援護しているらしい。
ラファエルの真紅の瞳に炎が宿り、燃え盛った。
「見つけたぞ!」
前進の骨が強烈なGを受けて軋んでいたが、ラファエルは気にも留めなかった。
紫と黒で彩られたローブの背中からマナ・エネルギーの青い粒子を噴射しながら、一気に突入する。
「フッケバイン1、交戦!」
ラファエルはMG42軽機関銃を乱射しながら魔道兵目掛けて突進する。
魔道兵は脚部と背部のマナ・ブースターを噴射して銃撃を闘牛士のようし回避しながら、自らも手にした火器で反撃してきた。
触れればズタズタに裁断されてしまうであろう、高速で飛来する細切れのマナ・エネルギーをラファエルは寸前で避けた。
<<量産型にやられるものか!>>
魔道兵はマナ・ブースターの作用でラファエルの突撃をかわしたが、そんなことはラファエル自身も承知だった。
「量産型に勝る試作型が存在するものか!」
叫びながらラファエルは急旋回し、一気に背部マナ・ブースターのエネルギーを放出する。
爆発的なエネルギーがラファエルを前へと押し出す。
「ラファエル・フォン・クリングベイルが、この程度のGに耐えられんわけがない!」
殺人的な圧力をかけられた全身の骨が、筋肉が、内臓が悲鳴を上げる。
ラファエルの記憶の井戸に古い水として澱んだ過去が蘇る。
殺人機械として空を舞っていた日々。
ただ殺し、殺され、強い敵と戦うことが生きがいであった毎日。
愛する者を、家族を手に入れた今でも、ラファエル・フォン・クリングベイルという人間の奥底に確かに宿る狂気。
「今の私は、昔のような道具ではない!」
ラファエルには戦うための理由が二つある。
愛する男が求める理想――ヴォルクグラード軍に痛撃を与え、なんとかして講和を結ぶきっかけを作る。
自分を実の子のように育ててくれた老夫婦に対する恩返し。
「だからこそ、私は貴様らのような"歯車"に負けるわけにはいかないんだ!」
黒と赤のローブと、緑の白のローブに身を包んだ魔道兵が二人。
奴らは果たして、どんな理由でこの戦場で死を撒き散らしているのだろうか?
少なくとも無条件の敬意を払える理由ではないとラファエルは思う。
もしヴォルクグラード軍の魔道兵が家族や恋人、兄弟のために戦うのならば、ラファエルはとても勝つことができなかったはずだ。
だが現実には、ヴォルクグラード軍の魔道兵は個人の能力――言わば性能だけで戦い、勝利している。
それがラファエルには不愉快だった。
296 :
75:2008/10/23(木) 08:08:02 ID:vttd/kwf
「こんな奴らにエーリヒの部下、いや、多くの戦友達が殺されているだと! 許せん! そんな理不尽な話があってたまるか!」
そう言うラファエルですら、かつては同じヴォルクグラード軍に所属していたのだ。
ラファエルは軍人同士の戦いによって、戦場で仲間を失っても、敵を憎悪したりすることはない。
お互いに成すべきことをしただけなのだから。
無論、平然としているわけでもないが……。
「貴様らに、一分子の敬意も払ってやるものか! 塵となり、東部戦線の泥の一部となれ!」
腰にマウントされていたナイフを引き抜くと、ラファエルは魔道兵に襲い掛かった。
黒と赤のローブを纏った魔道兵に向けられた突進は、緑と白の魔道兵によって食い止められる。
<<エレナ!>>
<<大尉、下がって下さい!>>
緑の魔道兵は光の刃を備えた長刀でラファエルの斬撃を受け止めた。
鍔迫り合いとなり、激突した刃から火花と青白い光が広がる。
数の上では二対一、ラファエルが不利であった。
「だから……」
ラファエルの紅い目が見開かれ、再び背部マナ・ブースターが噴射される。
「どうした!」
エネルギーの潮流に背中を押されたラファエルは、緑の魔道兵を弾き飛ばす。
空高く、緑の魔道兵が手にしていた長刀が跳ね飛ばされた。
「どうせこちらの武器では傷もつくまい。ならば、貴様らの獲物で討つだけだ!」
緑の魔道兵が反応する前に、黒の魔道兵が肩のランチャーを展開する前に、ラファエルは飛翔し、空中で長刀を掴んだ。
そして、すれ違いざまに黒の魔道兵の翼を切り落とした。
「AufWiedersehen(さようなら)……AufWiedersehen(さようなら)……」
そこからは淡々としていた。
ラファエルは技術部への土産として長刀を保持したまま、即座に戦線を離脱した。
熱くなっていたせいで気付かないうちに、ラファエルは体内のマナ・エネルギーを使い果たしていたのだった。
緑と白の魔道兵が、黒の魔道兵が墜落したポイントへと降下していく。
――覚えていろ。いつか必ず、お前にも同じことをやってやる。絶対に……絶対にィッ!
帰路、ラファエルはふとそんな声が聞こえたような気がしたが、わざわざ戻って確かめるほど、彼女は酔狂な性格でもなかった。
297 :
75:2008/10/23(木) 08:09:02 ID:vttd/kwf
エピローグ
撤退するアヴィリオン軍の車列が延々と続いている。
その最後尾を守り殿を務めていたのは、結果的にアヴィリオン軍の全面的な崩壊を防ぎ、戦術的な勝利を与えたシュヴァンクマイエル戦闘団だった。
戦闘団を動かす優しげな顔に指揮官、エーリヒ・・シュヴァンクマイエルはハーフトラックの車上に身を置いていた。
「人間の思考――こと戦争に関する場合、二つの考え方がある」
湯気を立てるコーヒーカップに隻眼を落としながら、エーリヒが言った。
彼の隣の席に腰掛けていた女性士官、ラファエル・フォン・クリングベイルは中性的な美貌をほんの僅かに緩めた。
「人は戦争を始めるときに"命よりも大事なものがある"と言い、戦争をやめるときに"命より大事なものはない"という話ですね」
「一字一句まで覚えているだなんて……おどろいたなぁ」
「貴方の言葉の一つ一つが、僕の記憶ノートにもれなく書き込まれているのです。私には宝物のようなものなんです」
ラファエルの濃い赤色をした瞳が、膝の上で絡み合う指先を見た。
染み一つ無いラファエルの白皙の肌が僅かに赤みを帯びる。
「俺はそんなに立派じゃないよ。後輩の中には俺みたいになりたいと言う奴がいるけど、大量殺人者がそんなにいいものかな」
「少佐、ううん、エーリヒ。貴方は確かに大勢の人を殺しました。でも、僕だけは幸せにしてくれた……それは確かです」
エーリヒは寂しげに、だが嬉しさをこめて微笑んだ。
「ありがとうラファエル。手を貸して」
ラファエルが手を差し出すと、エーリヒはそれに手を重ねた。
「暖かい……とっても……暖かい」
二人はどちらから先にでもなく、お互いの指を椅子の下で絡み合わせていた。
二人は一切の肉体的な関わりを持ったことはない。いくらでも機会はあったが、あえてする理由も二人には見つからなかった。
お互いの愛情の確認はお互いに触れることで十分だった。
指の間に入り込んだ二人の五指はそれぞれ相手方の指に絡みつく。
確かな熱の感覚が双方の手の平を侵し、融解の感覚を引き起こす。
五分ほど精神的な性交を続けた後、手はラファエルの方から放された。
エーリヒは前に向き直って、すっかりぬるくなったコーヒーに口をつける。
「しかし、トリムの制圧は失敗した。講和なんて夢のまた夢か……」
エーリヒはトリムの制圧がアヴィリオンとヴォルクグラードの戦いにおいて、ある程度の交渉材料になるのではないかと考えていた。
学園島最大の補給基地であるトリムを陥落させることができれば、ヴォルクグラードは東部戦線において大幅な後退を余儀なくされるだけでなく、戦争の遂行にも困難を伴うようになる。
戦後に返還するとしても、講和のテーブルでアヴィリオントリムを有効に活用することができるはずだった。
「あるいは……やれるだろうか」
エーリヒの心の中で黒い萌芽が始まった。
自分ならトリムの強固な防衛網を打ち破って、陥落させることができるかもしれない。
「やれやれ。救いがたいな」
望まずして高揚感と期待感が生まれたことにエーリヒは気付き、自己嫌悪する。
「エーリヒ?」
「いいや、なんでもないよ。帰路を急ごう」
不思議そうにラファエルが顔を覗き込んできたので、エーリヒは苦笑いしてお茶を濁してしまった。
298 :
75:2008/10/23(木) 08:10:24 ID:vttd/kwf
投下終わり
これから出勤
言語の件だけどみんなはどう考える?
みんな共通にするのか、それとも別々にするのか
意見を聞かせてくれ
一般兵が敵と会話する必要はないし、初期設定と矛盾する「共通語」はやめたほうがいいと思う。
ここは地球じゃない異世界って設定で書くなら共通語でもいいと思うけど。
300 :
75:2008/10/23(木) 21:31:11 ID:vttd/kwf
>>299 あ、俺は共通語を設定するんじゃなくて、例えば重要キャラ同士が会話する時に言語の問題をどうするのか?とか考えていたわけよ
だからあえて触れないでおこうとか消極的な考えになっていた。
確かに一般兵同士で会話の必要無いし共通語もいらんわなぁ・・・うーん。
301 :
166:2008/10/23(木) 23:05:43 ID:zot6kyoC
>>300 そこは魔力の力で、言語が自動翻訳されるって事にしたらどうかな?
302 :
75:2008/10/23(木) 23:14:15 ID:vttd/kwf
>>301 魔道兵同士ならそれでいいと思う
一般兵同士はどうしようかなと考えてるけど、今の段階で変に決めると雁字搦めになりそうだから
各作者ごとに一任でいいんじゃないかね、言語の件は。
言葉通じた方が話は進むけど共通語はいらね
あと質問だが学園島世界の魔道兵はモビルスーツの立ち位置なのか?
304 :
75:2008/10/24(金) 19:44:14 ID:Z73Z7vfQ
ちょりーす
娘トラと娘フロを買ったせいで変な中毒になりそうです><
>>303 ・戦車の火力と装甲+戦闘機の機動力
・歩兵サイズ
・魔法を使えるのは上限十九で女の子だけ
・量産化については未定
・単体での飛行能力あり(でも長距離は不可能)
・通常兵器でも頑張れば倒せる
うん、ガンダム世界のモビルスーツやね<魔道兵
ガンダムと言えば一番新しい00を借りて見ているんだけど、あの世界だとガンダム>>>(超えられない壁)>>>通常のMSなんだね。
話が後半にいくにつれてガンダムと同じぐらい強い量産機が出てきたり通常MSの物量戦でガンダムが負けそうになったり、色々と参考になった。
つーかガンダムに釘宮が出る時代なのねとUC厨が言ってみる。
魔道兵は通常兵器で倒せるけど数や戦術が必要なのか
魔道兵がさほど学園島で無敵じゃないのは魔道兵の運用がうまくできていないのかな
306 :
75:2008/10/24(金) 21:46:18 ID:Z73Z7vfQ
>>305 書き方の問題かもしれないけど運用は稚拙な部分を出すようにしてる。
そうしないと一般兵が勝てない気がするから。
詳しい人に聞きたいんだけど、新しい技術体系の兵器が出てくると、それを一般的なものにするまでどれぐらいかかるでしょうか?
流石に出てきてハイ使用なんてのは無理だよね
あと、戦術といっても、俺はいつも誘い込んで集中砲火を浴びせるとかばっかりだなぁ
そろそろ別な方法も書かないと・・・
>>306 ケースバイケースですが、基本的に10〜20年くらいはかかるものです。
例えば、近代戦車が登場したのは1916年ですが、そこから電撃戦が
実用的な戦術となったのが1930年代、そこから現代に通ずる機甲戦力の運用が確立されてきたのはWW2後半期以降でした。
308 :
75:2008/10/25(土) 20:22:03 ID:cmhn5Dr9
ちょりーす
>>307 ありがとうございます。
戦車が二十年近くかかったのなら、魔道兵の効率的運用も結構長引きそうですね。
やっぱり創作物でよくある新兵器が出てきて従来の兵器が即座に退場という展開は、そういう世界をそれらしく作るための理由付けみたいなもんなんでしょうかね。
プラモとかDVD売らなきゃいけない理由も背景にあるようですし・・・
新作投下
今回は遊びすぎた
309 :
75:2008/10/25(土) 20:24:11 ID:cmhn5Dr9
INFORMATION LOVE AGAIN!
プロローグ
能力の無い人間がトップの座に立っていることは大抵の場合、傀儡か末期症状の組織によくあるパターンである。
その人間が本当に無能なのか無能を装っているだけなのか――答えは後世になっても明確な解答を得られない場合が多い。
ただ、明確な事実も存在する。
当時の時代の人間にとっては、どちらであろうと災難でしかないのだ。
310 :
75:2008/10/25(土) 20:27:36 ID:cmhn5Dr9
第一章
1
かつてバルト海と呼ばれた海の上に、学園島は浮かんでいる。
西側がアヴィリオン学園。
東側がヴォルクグラード人民学園。
二つの勢力は島を二分して、長い戦いを今なお続けていた。
傷付いた国家が学園という代理国を仕立て、子供の命を平和の代償として、早数十年――。
今は統一歴四十三年(一九四三年)だ。
「カレーパン。いや、チョココロネ……うーん」
島で『帝国』との畏怖を込めて呼ばれるアヴィリオン学園本校。
その購買部の前で、並んだパンを見ながら悩みに耽る少年がいた。
「レーズンパンは問題外だよな、うん。後方にいる時ぐらい選ぶ権利を行使してもいいはずだ」
エーリヒ・シュヴァンクマイエル空軍少佐は『英雄』としてアヴィリオン学園では知られている。
空軍野戦師団の指揮官として、各地で華々しい戦功を残しているのだ。
数十万人が通うアヴィリオン学園の総生徒数のうち半数は、エーリヒ・シュヴァンクマイエルの戦歴を語ることができる。
「ソーセージを挟んだパンも悪くない……だが、高い」
もしエーリヒが顔の左半分――目の上から頬にかけて――を火傷で覆い、本来左目がある場所を黒い眼帯で覆っていなければ、彼が前線に身を置いているとは誰も信じないだろう。
右半分に残った顔立ちは優しげで、体つきは筋肉質でもなければ肉付きが良いわけでもない。
前線で戦っているよりも図書館の片隅で書物に目を通している方が似合うとは、彼の部下の発言である。
「まあいいや。チョココロネとコーヒー牛乳でいこう」
茶色みがかかった黒髪を掻きながら、エーリヒは昼食を購入して教室へと戻る。
教室へと戻る最中、少なくない数の生徒が彼に敬礼した。
「学校が戦争をやるなんて笑えない冗談だな」
廊下に貼られたポスターには大地に空いた巨大なクレーターが写っている。
隕石の落下で大陸が形を変え、国家という図式が大幅な変更を余儀なくされたのは、エーリヒが生まれる以前だった。
その後、世界は歪んだ形で再建された。
だが、悲劇を味わっても人間は戦争をやめられる生物ではなかったらしく、戦火の火種は耐えなかった。
そこで世界史の教師曰く『大天才の皆様方』は、小さな島に学園と名付けられた小国家を作り上げ、それを戦わせることで危うい均衡を守ろうとしたのだ。
「もっとも、それで食わせてもらっているんだから、文句は言えないか……」
エーリヒは元々、歴史小説家になることを希望していた。
だが明日食うものすら困るご時勢、彼が目指した道は茨どころか地雷が百ダースほど埋まっているものだった。
身寄りの無かったエーリヒはある日、人の良さそうな中年男性から夢を叶える方法を聞かされた。
我々のところへ来れば、お金もあげる歴史も勉強できるよ――と。
結果としてアヴィリオン学園は希代の名将を手に入れることができたのだが、当の本人はそれほど嬉しくない。
「おい、シュヴァンクマイエル少佐だぜ」
「ああやってのほほんとしてるが、頭の中じゃ次はどう勝つのか考えてるんだ。すごいな、尊敬するよ」
人から尊敬されると言われて嬉しくないと言えば嘘になる。
こんな時、嬉しい反面、エーリヒは胸中にどこか居心地の悪さと違和感を覚えるものだ。
311 :
75:2008/10/25(土) 20:30:50 ID:cmhn5Dr9
2
夜になると、アヴィリオン学園の校舎は静寂に包まれる。
生徒の大半は寮へと戻り、サーチライトが闇を裂いて光を瞬かせる。
時折聞こえてくる爆音は、ごってりと機首にアンテナを取り付けた夜間戦闘機のものだ。
「降車。もたもたするな。五秒で準備しろ」
一台のトラックが停まり、中から武装した生徒――兵士達が夜間のグラウンドに降り立った。
闇の中で躍動していた者達が、ある時間を境に行動を開始する。
「変態」
「紳士」
「よし。始めよう」
兵士達が交わした合言葉の後、グラウンドへと続くゲートが開いた。
生徒の大群がグラウンドへと流入していく。
ありとあらゆる教室や部署から一つの目的を胸にした生徒達がグラウンドの砂を鳴らす。
時間が経過するにつれて、生徒達の数は膨れ上がっていった。
その光景は整然としていて、訓練された兵士が行う行軍の統一性をも凌駕していた。
集まった生徒の総数はどれぐらいなのか?
少なくとも五千人はグラウンドに集結している。
「まるで破裂寸前の風船だ……」
震える手で銃を握りながら、フェンス越しに呟いたのはシュヴァンクマイエル戦闘団の一兵士だった。
泥と血で染め抜かれた修羅場を幾度と無く掻い潜ってきた猛者でさえ、グラウンドに集結した生徒達には只ならぬ感情を抱いていた。
彼らはまるで殉教者であった。
「少佐、人員を増やしますか?」
「これ以上増やしても仕方無い。銃を持っていても、今日は撃つわけにはいかないんだ」
エーリヒは装甲車の車上から双眼鏡でグラウンドを見ながら、アルベルトに返答する。
正直銃や火器で武装していても、グラウンドを制圧している生徒達を鎮圧することは不可能に思えた。
「わかりました。それにしても、良い気なものです。前線では戦っている者もいるというのに」
「そんなことを言ったら、俺達だって同じ穴の貉じゃないか。どっちも対して変わらない」
肩を竦めると、エーリヒは遠方から接近してくる爆音に気付いた。
四発の大型輸送機がグラウンド向けて、高度を下げつつあった。
「来ましたね」
アルベルトの声に頷き、エーリヒは緊張した声を無線機越しに指揮下の部隊へと送る。
「お客さんのお出ましだ。警戒を怠るな」
刹那、閃光がエーリヒの視界を奪った。
「な、なんだ!?」
思わず身を屈めたエーリヒが顔を上げると、そこにはもうライブステージが完成していた。
華やかのステージの中央に、軍服を模した可愛らしいコスチュームに身を包んだ少女がいる。
「ハァイみんなぁ! 元気してるぅ? うっうー!」
クルリと一回転した少女がウインクしながらポーズを取ると、グラウンドが震撼した。
グラウンド・ゼロと化したライブ会場の中心で、少女――ララ・ローゼンベルクのライブが始まる。
「ゆっくりしていってね! キラッ☆」
怒涛の歓声の中でララは歌う。
八重歯を覗かせた口許が、見えるか見えないかのラインで揺れる短いスカートが、常に動き回る青い瞳が、観客を魅了する。
だが、全てが一つになった空間の中に身を置きながら、乗り切れない者もいる。
正確には乗ろうともしない者と言った方が正しい。
「これじゃあカルトじゃないか」
エーリヒ・シュヴァンクマイエルとその部下達は、冷ややかな目をしたたまま微動だにしなかった。
「少佐はアイドルがお嫌いで?」
アルベルトに聞かれて、エーリヒはうんと答えた。
「嫌いだね。大体、将来自分と結婚するわけでもない女をどうしておっかけるんだか。狂信的で気味が悪いよ。漫画に出てくる女の子が好きというならまだわかる。でも、アイドルという存在を好きにはなれない」
「まあ、笑顔を振り撒いているアイドルが裏で何を言っているかと考えたら、そうも思いますな……。それに、アイドルといっても、永遠に十七歳というわけではありません。いずれは結婚し、子を産みます。そして老います」
「アルベルト、結構考えがしっかりしているんだね。視野が広いというかなんというか」
「いやいや。私だって木の股から生まれてきたわけではありません。アイドルの一人や二人、好きになったことはありますよ」
エーリヒが「マジで?」と聞くと、アルベルトはいつも道通りの堅実な表情で返答した。
「マジです」
312 :
75:2008/10/25(土) 20:34:26 ID:cmhn5Dr9
今日はここまで。
なんというデカルチャーw投下乙
>>308 ただ、長期に渡る戦時だと技術自体もそれの運用も戦時のそれに比べてかなり発展します。
WW2の航空機や戦闘車両の進化が化け物じみているのはそのへんにあるわけで。
正史をたどっていない世界だから、現実と同じ兵器が開発されないかもしれない
”対戦車”とか”対空”とか”対潜”とか、対抗する相手あってのものだし
魔道兵が登場した後の対空車両は精密性よりも弾幕重視になりそうだな
歩兵サイズの敵が空を飛んでたら弾幕を張るぐらいしか対処法ないだろ
みなさん乙ですよ
ちょっと宣伝に来ましたカサカサ
318 :
75:2008/10/26(日) 23:18:15 ID:rdJnG1RB
ちょりーす
続き投下
319 :
75:2008/10/26(日) 23:21:03 ID:rdJnG1RB
3
熱狂の夜が終わった。
あれほど集まっていた生徒達は、もう一人たりとも残っていない。
ライブが終了すると同時に、集結した生徒は整然として帰途についた。
会場警備を行っていたシュヴァンクマイエル戦闘団の兵士達は交通整理も担っていたが、あまりにも生徒達の行動が洗練されていたため、逆に進行を阻害してしまうという異常事態も発生した。
それでも全てが終わるまでには長い時間を要し、午前四時になってようやく後片付けまでが終了した。
「眠いったらありゃしない……」
戦闘団の本隊が駐屯地へ引き上げた後、エーリヒはゴミ一つ無い会場――グラウンドを一人寂しく歩いていた。
「明日は休講だもんなぁ」
翌日の授業が戦死者の関係で生じたクラス割のせいで一日休講になったので、エーリヒは寮には戻らず現地に留まることにした。
無論一時的な話だ。
単にエーリヒは……少なくとも今だけは、自らが目指す『一時的な平和の時代』よりも、一定時間の熟睡を欲していた。
「ねむねむ……」
エーリヒは頭を掻きながら宿泊所への道を進む。
うっすらと霧がかかった道には枯葉が積もり、踏み締める土は湿っていた。
「シャワーがあれば良いなぁ。フロは望まない」
寮の個室とまではいかないが、本校にも寝泊りできる場所はあった。
簡易ベッドが一つあるだけの簡素な部屋らしいが、エーリヒにとっては静かというだけで泊まる価値があった。
熟睡さえしてしまえば、後はどうということはない。
「ん?」
エーリヒはライトに照らされたベンチに、小さな人影を見つけた。
こんな時間に誰だろう――とエーリヒが歩み寄っていくと、人影――少女は顔を上げる。
「あっ……」
ララ・ローゼンベルクだ。
衣装は昨夜のような派手なものではなく、アヴィリオン学園の制服を着用していた。
一応自分の上司であるから、エーリヒは礼を失さない程度の対応をする。
「閣下、こんな所でこんな時間に、何をしておられるのですか?」
敬礼した後にエーリヒが聞くと、ララは目を伏せた。
「逃げてきちゃった」
「逃げてきた?」
「……うん。来週から始まる合同演習で、また歌うことになっていたんだけど……」
320 :
75:2008/10/26(日) 23:24:44 ID:rdJnG1RB
目を伏せるララの姿は可憐であり、保護したくなる欲求を覚える。
すぐにでも優しい言葉をかけてあげたい。
エーリヒもそう思わないわけではなかったが、彼は一歩立ち止まった。
(この人は、こうやって立場を手にしてきたんだ)
エーリヒは声には出さなかった。
ララ・ローゼンベルクという人間は軍人としては正直無能もいいところである。
ほとんど軍事に関する知識を有しておらず、全ての仕事は副官に任せているらしい。
陸軍や海軍の内部では彼女を痛烈に批判する者も多かった。
だが、彼女は空軍の内部で絶大な人気を誇っている。
空軍がどんな痛烈なミスや痛手を被ったとしても、彼女の涙する姿によって、兵は士気を高め今まで以上に戦う。
彼女に魅了された将校が反対派を粛清し、その芽を摘み取っていく。
正直、エーリヒはララという人間が怖くて仕方が無い。
魔道兵を相手にしても、数倍の敵を相手にしても恐怖したことはない。
だが、ララの言葉の端々から漂う可憐の殻を被った腐臭は、エーリヒを警戒させるに十分だった。
「お飾りなんだよね。私は」
「そんなことはありません。元帥閣下はその……みんなの希望です」
今すぐ立ち去りたい願望に駆られながらも、エーリヒは言う。
もしララが自分の最上級の上官でなかったのなら、今すぐに立ち去っていただろう。
「ホントかな?」
「それは……」
潤んだ瞳に見上げられて、エーリヒはたじろいだ。
恐るべき破壊力だった。
男としての感情が揺さぶられる。
守ってあげたいと、彼女にとっての騎士になりたいと、エーリヒの中にいる『男』が声高々に叫ぶ。
強烈な誘惑だった。
「私は何もしてないもの。みんなが戦っている間だって、アイドルまがいのことをしているだけ」
わかっているじゃないかとエーリヒは言いかける。
いつもララはそうだ。
嵐の中にいながら、自分だけは傷付かない。
それどころか死者や敗者の生き血を吸って、自らの輝きをより強烈なものへと変えていく。
「私は――」
貴方が大嫌いですとエーリヒは言いたかったが、それはあくまで個人としての意見だった。
エーリヒ・シュヴァンクマイエルはアヴィリオン学園の生徒であり、シュヴァンクマイエル戦闘団の指揮官なのだ。
「貴方は自分にできることをすれば、それでいいと思います」
「あっ、待って! エーリヒ君!」
そう言って、エーリヒは足早に去った。
去り際にララが何かを言ったように聞こえたが、どうでも良かった。
聞いたら聞いたで、腹立たしくなるだけだからだ。
321 :
75:2008/10/26(日) 23:26:44 ID:rdJnG1RB
4
ララ・ローゼンベルクのライブが終わってから半月ほど経ったある日。
アヴィリオン学園において『戦技競技会』と称した一大演習を行う旨が発表された。
参加する校は西側の各校であり、十五を超える学園が演習に参加するという。
アヴィリオンからは陸軍と空軍から一個戦闘団がそれぞれ参加することになったのだが、当の参加者――約一名は不平不満を漏らしていた。
「ついてないなぁ。全く」
アヴィリオン学園の本校。
図書室の一角で、エーリヒ・シュヴァンクマイエルは左目があった場所を覆う眼帯の周辺に広がる火傷の跡を掻く。
「いけないいけない。自虐趣味は無いんだがね」
知らないうちに瘡蓋が剥がれて中指に血が付いたので、エーリヒはハンカチでそれをふき取る。
「軍事演習に出すのなら、もっと向いている部隊があるだろうに。なんたって俺が……」
「決まってしまったことです。文句を言っても仕方ありますまい」
「十七歳って年齢は多感なんだよ」
机を挟んで向かい側で書類の整理を行っていたアルベルトが淡々と話す。
「シュヴァンクマイエル少佐も、あと三年で二十歳になりますよ」
「例え年齢と体が二十歳になろうと、心は十七歳でありたいね」
渾身のジョークを言ったつもりだったが、アルベルトは笑うこともなく、ただ『そうですか』と言って作業を続けた。
ばつが悪くなったエーリヒはとある疑問を口にする。
「なぁアルベルト、どうしてララ・ローゼンベルクは権力を手に入れられたんだろう?」
エーリヒにとってその疑問に対する答えは出ていたが、明確な形で口にすることはできないでいた。
答えを構成する幾つかの要素に内包されたピースが混ざり合って、エーリヒの中に転がっている。
「ローゼンベルク元帥は象徴、広告塔としての能力は他の追随を許しません。ですが、軍の最高指導者としての能力は皆無と言っても過言ではありません」
アルベルトの言葉は的を得ていた。
ララ・ローゼンベルクはアイドルとしてみれば、それこそ歴史に名を残すほどの逸材だろう。
彼女が放つ輝きは戦争が持つ『陽』の部分を凝縮し、アイドルという戦争とは最もかけ離れた存在によって見る者を魅了する。
「恐らく彼女を擁立した人間達は、ローゼンベルク元帥を自分達の操り人形にしようと考えたのでしょう……」
無能な人間を自らの傀儡にする者の存在は、歴史の流れを見るまでも無く、至極当然だった。
学園島だけでも似たような存在をエーリヒは五、六人は知っている。
しかし、ララ・ローゼンベルクほどの成功者は見たことが無い。
「操り人形を動かしている方は、操り人形自体に操られていることを知らない。皮肉な話だ」
「それだけではありません。最も恐ろしい部分は、彼女は自分が女であることを最大限に利用していることです」
ララ・ローゼンベルクは自らが操り人形であり、自らがそれを動かす立場にあるのだ。
自分が操られているように見えて、実は他人を操っている。
本人に自覚があろうがなかろうが、恐ろしい存在に変わりは無い。
一通り話が終わると、エーリヒはコーヒーに口をつけた後、小さく溜め息を吐いた。
「アルベルト、人間が行う行為で最も軽蔑されて、唾棄すべきものは何だと思う?」
「捉え方は人それぞれです。一概には言えません」
「俺はこう思うんだ。自分の私利私欲のためだけに他人を利用して、自分は悲劇の主人公ぶって甘い汁を啜る輩が、何よりも排除されるべき屑だとね」
「少佐、私も同じ考えです。ですが、貴方自身の中にも、今仰られた部分があることを忘れてはいけません」
「ああ……そうだな……」
322 :
75:2008/10/26(日) 23:33:55 ID:rdJnG1RB
今日はここまで。
>>314 お互いに追いつけ追い越せで進歩するから発展のスピードも速まるわけなんですね。
魔道兵の発展も史実の戦車開発とかを元ネタにしてみた方がミリオタの人には受けそうだけど、どうでしょうね。
>>315 対魔誘導弾はきっと、魔法エネルギーの発する熱めがけて飛んでいくんでしょうw
架空兵器の進化も学園島世界の魅力のひとつかも知れない。
何かネタを考えたら書き込んで欲しいなぁ。
パンツァーフロントってゲームに出てきた架空戦車とか俺好き。
>>316 機関砲の弾幕もいいけど近接信管の付いた誘導弾+弾幕もなかなか・・・
ぶっちゃけた話、歩兵サイズの飛行目標を撃墜するのは現代米軍でも梃子摺りそうだけど実際に可能なんだろうか?
323 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2008/10/27(月) 19:19:37 ID:dld3yXQl
なんという腹黒キャラ…だがそれがいい
324 :
166:2008/10/27(月) 20:54:12 ID:9/y4kEP2
6月13日 ミスリル鉱脈地帯
このミスリル鉱脈を制圧しているのはエドアール学園所属・第10特殊歩兵連隊。名前はいいが中身は学園内で問題をおこした生徒を集めたいわゆる懲罰部隊であった。
「隊長、俺らはいつまでこんな所にいればいいんだ!」
今、隊長に詰め寄ってるのは、ハミルトン・ボーフル曹長。彼はもともとエドアール学園生徒会警護隊に所属していたエリートだが、生協で万引き行為を働き、懲罰部隊に飛ばされる結果となった。
「そう、文句を言うな、この任務を終わらせれば、俺らは罪を許され、こんな部隊からおおさらば出来るんだ。」
だが、実際こう言ってはいるが、彼らは捨駒同然の存在で、無事に帰還できるでさえ、あやふやであった。
「そうだが、俺らは、ルントンシュテット学園の精鋭2個大隊に包囲されてるんだぜ!?」
「それがどうした、俺らの方がが数は多いし、それに、こっちには天下無敵の魔法兵士がいるんだぜ?奴らのブリキ製の戦車やヘナチョコ魔法兵士なんてには負けはしないさ。」
包囲されたエドアール学園の魔法兵はルントンシュテット学園の魔法兵士に比べかなり強力で包囲された彼らにとっては希望であった。
「さ、気がすんだろ?、そろそろ奴らの攻撃が始まるはずだ。とっとと配置にもどりな。」
隊長がそう言うと、ミルトンは舌打ちをして配置に戻っていった
325 :
166:2008/10/27(月) 20:55:23 ID:9/y4kEP2
「これが例の新兵器か?」
歩兵少隊の隊長である彼が指をさす方向には、2メートルはぐらいの馬鹿でかいライフルが置いてあった。
「はい、これは我々が開発した30ミリ対魔法ライフル、ハルコンネルです。」
ひょろ長い技術科の生徒説明に回りの兵士は興味津々に聞いている。
「使用弾丸は、対魔法撤甲弾と焼夷榴弾の2種類。対魔撤甲弾は弾頭部分に粗悪なミスリルを加工し液状化させたの使っており、これにより障壁をぶち抜く事が可能となっています。」
余りにもでかい“それ”は長さ、弾丸のサイズとともにもはやライフルではなく“砲”であった。
「・・・・、何か質問のある人は?」
「質問はいないようですね。では僕は課外があるのでこれで。」
そう言って技術科の生徒はジープに乗って帰っていった。
「よし、そろそろ作戦開始時刻だ!みんな配置につけ!」
そして、ルントンシュテット学園の野戦重砲、数十門が一斉に火を噴きミスリル鉱脈奪還作戦が始まった。
326 :
166:2008/10/27(月) 20:57:40 ID:9/y4kEP2
〜投下終了〜
やっと戦闘シーンが書けるw
327 :
75:2008/10/27(月) 21:05:23 ID:DmqOuWEL
166さん投下乙〜
きっとこの対魔法ライフルには素敵な精霊が宿っているんですよ!
もちろん、使い手は巨乳の婦警さ(ry
でも、あの漫画で一番好きな人は猫耳ショタです
328 :
75:2008/10/27(月) 21:46:22 ID:DmqOuWEL
第二章
1
演習終了の信号弾が上がると、同盟校の生徒達は大歓声を上げた。
エーリヒ・シュヴァンクマイエルから勝ち星を挙げた――その事実が、彼らに興奮と熱狂を与えたのだ。
面目を丸つぶれにされたアヴィリオン軍の将官らは顔を青ざめていた。
対照的に、来賓として招かれていた同盟校の将官達の喜びを抑えるのに必死な様子だった。
「まあ、仕方ないか」
対照的に敗者のエーリヒは大して気にも留めていなかった。
ペイント弾を浴びて真っ赤になった車両がエーリヒのいる装甲車の傍らを通過していく。
欠伸をしながら将官達に挨拶に向かうと、いきなりエーリヒは襟を掴まれた。
「おいおい! これはどういうことだ!?」
「どういうことと言われましても……」
上層部の将官達はエーリヒに問いただした。
正直、エーリヒは校外向けのアピールのためだけに設けられた舞台で踊る気は無かった。
踊るのは疲れるし、それでいい顔ができるのは自分ではなく軍の高官ばかりだからだ。
それに演習といっても、これは演習ではなく『ショー』の意味合いが強い。
演習中の敵部隊の戦い方を見るに、技術を磨くことよりも派手さや見栄えだけを良くしている風にしか見えなかった。
そうなると、エーリヒの低いモチベーションが更に低くなる。
「とにかく、次の対戦ではちゃんと勝ってくれよ!」
「はぁ。一応、微力を尽くします」
将官達を見送った後、エーリヒは溜め息を吐いて椅子に腰を下ろした。
ありがたいことにアルベルトがコーヒーをくれた。
「少佐、そろそろ頑張らないとまずいんじゃないですか?」
「明日から本気を出すことにする。と言っても、兵たちのこともあるか……」
「さすがに負け続きですと、演習といえども良い感情を持たない者は多く出ましょう。ただでさえ血の気の多い連中ですから」
「シュミレーションは一億回やってもシュミレーションだろうに。想像の中で女の子に囲まれても、現実世界じゃ接点すら無いものさ」
「わかりかねます」
エーリヒは立ち上がり、頭を掻いた。
「よし! じゃあやる気を出すか!」
「それはありがたい。明日は雨が降るでしょうなぁ」
「なんでだい?」
「少佐が演習でやる気を出すのは珍しいことですから」
エーリヒがしかめっ面になっていると、伝令が部屋に入ってくる。
五分後、そこには露骨に不機嫌な顔をしたエーリヒ・シュヴァンクマイエルと、諦観じみた表情を浮かべるアルベルト・ゲルトバウアーがいた。
エーリヒが破り捨てた紙面には、ララ・ローゼンベルクからの呼び出しが記されていた。
329 :
75:2008/10/27(月) 21:46:46 ID:DmqOuWEL
2
戦車の砲弾を落として骨折したことを偽装し、ララ・ローゼンベルクの呼び出しをサボタージュせんと行動し始めたエーリヒを宥めて見送った後、アルベルトは一人雑事の整理に入った。
シュヴァンクマイエル戦闘団において事務や書類の作成、連絡を迅速に行うことがアルベルトの役目の一つでもある。
装甲車の脇で簡易テーブルを広げ、アルベルトは書類にペンを走らせる。
「大尉、なんか手伝いますよ。暇なんで」
補給物資の申請書を書き終えた時、寝癖をそのままにした無線手がやってきた。
「じゃあ、そこの書類をファイリングしてくれ」
わかりましたと仕事に取り掛かってから三分後、無線手は一つの疑問を口にした。
「ねぇ大尉、シュヴァンクマイエル少佐ってどうして軍に入ったんでしょうね。考え方といい外見といい、軍人にはとても思えません」
アルベルトは気の無い返事を送る。
「本人に直接聞いたらどうだ?」
「一度聞きましたよ。そうしたら『世界中の幼女を守るためだ』とか言って、うやむやにされましたけど」
「人間だれしも望んだ道に進めるわけでもない。お前だってそうだろう?」
「正直言うとね、食うためですよ。俺が軍人になったのは。このご時勢、まともにメシを食うにはまともな道を行けませんから」
アルベルトは少し沈黙した後、言う。
「少なくともシュヴァンクマイエル少佐は軍功や名声のためだけに軍人になった人間じゃない。それだけは確かだ」
「でしょうね。もしそうだったら、シュヴァンクマイエル上級大将か元帥がこの世に生まれてますよ」
無線手は首を鳴らす。
「本当のことを言うと、俺は少佐にアヴィリオンの指導者になってもらいたいんですよ。あの人が総統になれば、戦争はすぐに終わる。アヴィリオンの大勝利でね」
そう簡単にはいかないとアルベルトは声を出す。
「少佐が総統になってしまったら、アヴィリオンは三日と持たない」
「なんでです? 大尉」
「少佐は諦めが良いから、総統になった途端に頭をピストルで撃ち抜くだろう」
「結構キツいこと言うんですね」
アルベルトは苦笑いした。
「願望ではなく予想だよ。俺は少佐に総統になってほしくもないし、なれるわけがないと思っている。あの人はそんな柄じゃない」
330 :
75:2008/10/27(月) 21:47:19 ID:DmqOuWEL
3
指定された場所に到着してみると、既にララ・ローゼンベルクの姿があった。
「来てくれたんだ。ありがとう」
ベンチに腰掛けたララは嬉しそうに微笑む。
一体どれほどの人間が、この微笑に毒されたのだろうか?
どんな実力も正論も否定してきた、人好きのする微笑み。
「御用とはなんでしょうか?」
エーリヒは淡々とした口調で話す。
この女には如何なる美辞麗句も必要無い。
そのことをエーリヒはよく知っていた。
「エーリヒ君は、戦争が嫌いなんだよね。でも、誰よりも戦争で活躍している。ララ、わかるの。エーリヒ君は辛い思いをしているって、でも……」
エーリヒの顔の左側は、火傷と眼帯によって如何なる表情も見せることはない。
「そろそろ本性を表したらどうだ」
今、エーリヒの顔の右側――普段は優しげな笑みを浮かべている――もまた、冷徹に彩られていた。
戦場ですら見せることの無い冷血鬼の表情だった。
「何を言っているのかわからないよぅ……エーリヒ君」
「いいや、わかっているはずだ。ララ・ローゼンベルクがララ・ローゼンベルクであるなら、私の言っていることを理解できるはずだ」
あえてエーリヒは礼節を尽くさない。
礼節を尽くしたところで、ララには大して意味が無いからだ。
「そんな……ララわぁ……」
ララは俯く。
前髪に両目が隠れ、口は何かをぶつぶつと呟いていた。
「で、"急造英雄"は私に何をご希望?」
顔を上げたララは別人だった。
唇の端が歪み、目には蔑みが光を湛えている。
「どうしたの? もしかして怖い?」
エーリヒは思わずたじろいだ。
可憐の外皮に包まれていた腐臭を放つ本体が現れたのだ。
「当ててあげるわ。どうして俺が上層部のために頑張って演習に勝たなくちゃいけない? そうでしょう?」
「そこまでわかっているとは恐れ入る……」
「女は男に無い引き出しを持っているのよ」
ララは笑う。
「なんでかって? アンタは利用価値があるからよ。アンタが活躍すれば、みんな希望を持つし戦意も維持できる。私はなんでも利用するわ。学園だろうと国家だろうと、はたまた英雄だろうと」
わかりきっていたことだったが、エーリヒはララに冷ややかな視線を浴びせていた。
こいつは人間なんだろうか?
エーリヒの疑問に答えはでなかったが、少なくともララ・ローゼンベルクは人間ではないと思った――思いたかった。
「その英雄に利用される部下も間接的に利用しているわけよ。ホント、血を流して内臓ポロリしてよく頑張るわね」
その言葉がエーリヒに火をつけた。
握りこぶしが白い頬に抉りこみ、ララはベンチから倒れた。
口から出血しながらも、ララは笑っている。
「へへへ……ようやく人間らしくなったじゃない。アンタ、人を殴れたんだ」
「下種め! 俺はお前の腐った目的のために人を殺してきたわけではないし、殺させてきたわけでもない。勘違いをするな」
「じゃあ、アンタの目的はなに? まさか恒久平和なんて笑わせる理由じゃないわよね?」
「恒久的な平和なんて望んでいない。平和は、争いの合間にあるものだ。短い時間でもいい、争いの無い僅かな期間を手に入れるために俺は戦っている」
「青臭い理想を言うんだから……全く」
ララは下卑た笑い浮かべる。
「まあいいわ。少なくともアンタを殺す理由は今の所みつからないわ。アンタがアタシの座を欲しがったなら、喜んで殺してやるのに」
ララは続ける。
「アタシは権力が欲しくして猫を被る。アンタは平和が欲しくて人を殺す。ヘッ、似たり寄ったりじゃないの。同じ下種だわ」
エーリヒは苦い表情になる。
「光栄の極み……」
「アンタ気に入った。殺すのは最後にしてあげる」
「その言葉に偽りがないことを祈ります」
「アタシは嘘はつかないの。でしょ?」
確かにララは嘘はつかない。
彼女は彼女であり、周囲の人間達が踊っているだけなのだ。
「さあて、英雄様のご機嫌は取れたし、そろそろ男の理想の姿に戻りましょうか」
ララは目を瞑って顔を上げる。
「キラッ☆ ララ、頑張るよ! 頑張っちゃうよ!」
331 :
75:2008/10/27(月) 21:48:10 ID:DmqOuWEL
投下終了
今日はここまで
この話が終わった後、本編書くためしばらく私の投下は遅れます
乙でした〜。
ララ二重人格のギャップありすぎてワロタ
軍事関連の知識が皆無でも参加可能?
334 :
75:2008/10/28(火) 06:30:07 ID:FgCysMb1
おはようございます〜
>>332 ありがとうございます。
聖人書くのは大変だけど人間の屑って書くのが滅茶苦茶楽しいw
>>333 どうぞどうぞ。
わからないこととかあったら聞いてね。
>人間の屑って書くのが滅茶苦茶楽しいw
ところが読む方は楽しくないことが多いんです
337 :
75:2008/10/28(火) 22:24:48 ID:FgCysMb1
ちょりーす
>>336 確かにそうだね
不快な思いをさせたなら謝ります
というわけで続き投下
338 :
75:2008/10/28(火) 22:25:13 ID:FgCysMb1
第三章
1
発煙弾の打ち上げと共に、演習第二日が開始がされた。
アヴィリオン軍と同盟校側の部隊が進発を始める。
演習とはいえ、両軍の兵士達は殺気と戦意に満ち溢れていた。
「ホント、男って馬鹿ばっかり」
ララが砲塔の上に立つ戦車のすぐ横を、味方の戦車が砂埃を立てて進んでいく。
男という生き物はどうしてこうも戦いが好きなのだろうか?
名誉ある戦死や誇りに殉ずる最期など、ララにとっては幼稚なナルシズムの極地にあるものでしかない。
だから男は高みへ行けない。
どんなに厚顔無恥になったとしても、男と女では引き出しの絶対数が違うのだ。
「ええ、私は飾りよ。飾りで結構」
貴方はお飾りだ。
今まで何度も聞かされた言葉が脳裏に蘇る。
腹の底から笑いがこみ上げてくる。
お飾りだって?
いいや違う、私は自分を売り物にして、輝きという正当にして過大な対価をごっそりと手に入れているだけだ。
対価さえ与えてくれれば、いくらでも操ってくれて構わない。
ララは自分を売り物にすることに慣れ過ぎていた。
「いつまで輝いていられるのかな……私は。いいえ、いつまでも輝く。他人の生き血を啜ってでも輝いてやる」
顔を上げて、前を見据えた。
飾りでもいい。
光り輝き、最大の役目を果たす。
「さあ……始めるよ、ララ」
息を吸い込む。
第一声を発する時、体内の全エネルギーが放出される気がした。
「みんな! 私の歌を聴いて! そして轟け、私の歌声!」
さあ踊れ踊れ、私の手の中で。死ぬまで踊って、生き残った奴を死ぬほどに愛してあげるから――!
ララは笑う。
心のタガを外してしまえば、人生とはありとらゆる興奮に満ち満ちている。
それが、ララが短い人生の中で見つけた最大の確信だった。
339 :
75:2008/10/28(火) 22:28:57 ID:FgCysMb1
2
同盟校部隊に向けて歌声が流れ出した。
戦車に備え付けられた無線機から、歩兵が背負った無線機から、司令部に置かれていたラジオから、唄が流れ始める。
兵営の前、正門の脇、街燈があったね、今でもあるね。
そこでまた会うよ。
街燈の下で会うよ。
昔みたいに、リリー・マルレーン。
昔みたいに、リリー・マルレーン。
「大尉、この唄は?」
「夜……いつもラジオから流れていた曲だ」
兵士達は一瞬、無垢な若者へと表情を変える。
彼らは皆、この唄と――同じぐらい、歌い手が好きだった。
どんな激しい戦闘でも、苦境の中にあっても、彼らは二十一時五十七分の校内放送だけは耳に入れた。
泥の海にいようと、砂漠の砂嵐に揉まれようと、唄が心の支えとなって彼らを叱咤し鼓舞した。
「今、こんなことを言うのも変ですが、良い唄ですね」
「ああ、まるで天使の歌声だ。やれやれ……」
この瞬間、多くの同盟校兵士が唄に酔いしれていた。
「各部隊、反転!」
同盟校側の兵士達は誰が最初というわけでもなく、進行方向を変える。
一人の戦車兵がハッチから上体を出して、無線機に叫んだ。
「ララ・ローゼンベルクの歌声を聴く全ての将兵へ告ぐ。俺たちは、彼女の笑顔を守る! 同じ考えの者はついてこい!」
340 :
75:2008/10/28(火) 22:31:38 ID:FgCysMb1
3
装甲板に激突して破裂したペイント弾が、戦車の車体に赤い塗料をぶちまけた。
撃破判定を喰らった戦車は、発炎筒を炊いて演習場を離脱していく。
「少佐、既に二割が撃破扱いとなって戦場を離脱しています」
「わかっているよアルベルト。クソ、八方ふさがりってこういうことか」
演習に参加したアヴィリオン軍――シュヴァンクマイエル戦闘団は同盟校側の猛攻によって劣勢に立たされていた。
車両の多くが赤いペイント弾を浴びて戦線離脱を余儀なくされている。
エーリヒ・シュヴァンクマイエルであっても、その劣勢は覆しようが無いように思えた。
「駄目か……」
エーリヒが歯軋りした時、無線機から軽快な声が聞こえてきた。
「俺達もその歌は大好きだぜ。援護する!」
「勘違いするなよ。俺たちはアヴィリオンを助けるんじゃない。ララを助けるんだ」
「閣下ーッ! 俺だーッ! 結婚してくれーッ!」
「馬鹿野朗! 抜け駆けするんじゃねぇ!」
混線した無線機越しに救いようの無いやり取りが聞こえると同時に、同盟校軍の戦車や車両がエーリヒのいるハーフトラックの横を通過していく。
「これより、シュヴァンクマイエル戦闘団を援護する!」
敬礼する兵士の顔の一つ一つに、誇り高い表情が浮かんでいた。
「いやはや、アイドルってすごいんだな。壊れかけた同盟関係を、一曲で修復してしまうんだから」
エーリヒは苦笑する一方で、内心の寒いものを感じた。
同盟校側の生徒にも任務や規律はあるはずだ。
だがララ・ローゼンベルクの唄という鋸は、彼らを縛る軍務の鎖をいとも簡単に切断してしまうのだ。
切断するだけならまだいい。
解放された同盟校兵士達を惑わせて、ある種のトリップ状態にさせた後に味方へと引き込む。
恐るべき麻薬性であり、ララは唄そのものを兵器として利用できるのかもしれなう。
「彼女を愛する心は、どこも同じだったのでしょう。流石に敵までは寝返ってはくれませんか」
ああ、と真顔になって返事すると、エーリヒは指揮官としてのエーリヒ・シュヴァンクマイエルに戻った。
状況が好転しつつあるとしたら、少なくとも今は利用するのが得策だろう。
「彼らにも文化はあるのさ。各車、砲撃開始。行くぞ!」
341 :
75:2008/10/28(火) 22:32:46 ID:FgCysMb1
今日はここまで
次回で終わり
投下乙
343 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/10/30(木) 13:48:35 ID:kOq+byu8
空軍がこの調子だとアヴィリオンの上層部は素敵な人間揃いなんだろうな
344 :
75:2008/10/30(木) 19:58:40 ID:eYjYpnMk
ちょりーす
学園+戦争の作品は何か無いかと探してガンパレードマーチのアニメ版を見ています。
原作は大昔にやった記憶あるけどアニメ版は大分内容が違うんだね。
アニメばっかり見るのもアレなんで戦争映画も二、三本借りてます。
>>343 正直言って上層部キャラは何も考えてないw
史実をモデルにして脚色したキャラにするか完全オリジナルにするか考えてはいるけど。
ロシアモデルのヴォルクグラードはヤゴ研とか色々使えそうなネタが豊富で作りやすいかも。
ところでストパンってミリオタ受けいいのかどうか気になる今日この頃。
345 :
166:2008/10/30(木) 21:36:37 ID:HD1xhC3h
>>344 各校の上層部の名前は決まってはいないけどキャラのイメージは大体決まってるぜw。
ちなみ萌えミリオタの俺はストパン好きですw
346 :
75:2008/10/30(木) 22:50:56 ID:eYjYpnMk
>>345 そうなのかぁ
食わず嫌いしてたけどストパン見てみるか
色々知っておいた方が良い物を書けるだろうからね
まだこのスレあったんだね
お元気そうで何より
軍板の一覧から消えてたので終了したと思ってた。柿板のスレはまだ生きてたがw
>>344 自分史上初めて「オープニングで視聴放棄」という記録を残した唯一のアニメです。
名無しで言えよそんなこと……
そろそろ日本系学園出ないかなぁ
351 :
75:2008/11/01(土) 21:34:34 ID:PD/UiCo1
ちょりーす
>>347 軍板もまだ生きてるんだぜ
ところで柿板ってなんぞ?
>>348 OPで視聴放棄したのはあの踊るやつぐらいかなぁ
結局後で見直したけど・・・
>>350 校名はジパング? それとも漢字なのかな。
史実と違って学園同士の技術供与とかあるから日の丸付けたタイガーとか出せそうね
|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:i;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;|
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|______|_____|
| 三| _ _ |三 !
| 三| 三シ ヾ三 |三 |
| 三′ .._ _,,.. i三 |
ト、ニ| <でiンヽ ;'i"ィでiン |三.| SSも書かずににコテハンとな!?
', iヽ! 、 ‐' / !、 ーシ |シ,イ
i,ヽリ ,' : !. |f ノ
ヾ! i ,、 ,..、ヽ lノ
| _ _ イ l
l ,ィチ‐-‐ヽ i /、
゙i、 ゝ、二フ′ ノ/'"\
| \ ー一 / / _,ン'゙\
,ィ|、 \ /_,、-'" _,.-''´ `丶、__
_, イ | ヽ_ 二=''" _,. -''´ """""´´ ``ー
355 :
75:2008/11/02(日) 21:46:54 ID:Gp4wkfrc
やはりエーリヒは学園島におけるヤンか
357 :
75:2008/11/03(月) 22:48:39 ID:DGvjq91S
ちょりーす
今宵より本編の投下開始
妄想OP
http://jp.youtube.com/watch?v=cYKW6fVqbmA 1
血と臓物の匂い。
硝煙と火薬の臭気。
悲鳴と絶叫の連続。
毎日がそれら三つの繰り返しか、混ざり合ったものでしかなかった。
「急ぐんだ! 早く!」
少女は必死で駆けていた。最高級の白磁によって作られたような肌は泥と血と汗にまみれ、張り付いた表情は必死なものだった。
「手を、絶対に手を離すんじゃないぞ!」
少女の細い手を握っているのは恐怖に引きつった顔をした弟がいる。姉と同じ濃紺の髪には血がこびり付いていた。
「お姉ちゃん……もう……走れない……」
「馬鹿ッ! 諦めるな! 諦めるんじゃない!」
少女は枯れかかった声を上げる。もう何度、こうして弟を叱咤したか覚えていない。
少女は何も覚えていなかった。
自分の名前は?
弟の名前は?
自分はどこで生まれたのか?
自分の両親は生きているのか?
自分の両親は死んでいるのか?
「諦めるな……!」
正直、どうでもよかった。
知ったところでどうにもならない。知って、何かが変わるのだろうか?
知っていることといえば、ある日突然に隕石が降って来て、世界を滅茶苦茶にした。
世界が滅茶苦茶になった後、戦争が起きた。戦争は子供達も巻き込んで、今なおも続いている。
少女も、弟も、巻き込まれたうちの一人だった。
二人は爆撃で崩れ落ちた建物の影に隠れる。
崩れかかった瓦礫のすぐ後ろ側から、銃声や悲鳴が聞こえてきた。
額を撃ち抜かれた死体が二人の前に飛び込んできて、少女は悲鳴を上げそうになる。
「見るな! 見ちゃいけない!」
少女は弟を強引に引き寄せ、死体から目を逸らさせた。
もう何度、こうして人の理不尽な死を見てきただろうか?
「怖いよ……お姉ちゃん……怖いよ」
「大丈夫だ。大丈夫だから。大丈夫」
震える手が、震える背中を抱き締めた。
少女の黄金色をした瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。
どうして自分達だけが、こんな目に遭わなければいけない?
自分達は何か悪いことをしたのか?
目を開き、少女は唇を噛み締める。赤黒い滴りが頬を伝い、焦げ付いた地面へと落ちた。
少女は誓う。
力を手に入れたい。
力を手に入れて、恐怖から解放されたい。
「神という存在がいるとしたら――」
黄金色の瞳が、くすんだ色の太陽を睨みつける。
「私は許さない。私と弟をこんな目に遭わせたお前を、絶対に許さない!」
力を手に入れる。
必ず手に入れてやる。
少女は死ぬまでの間、絶望と血の色に彩られた日々のことを忘れなかった。
悪夢は少女の奥底で『歪み』となり、やがて全てを歪めていくことになる――。
2
マイコ・パステルナークが目を覚ました時、彼女の黄金色の瞳に映っていたのは消されたランプだった。
ヴォルクグラード人民学園高等部二年生であると同時に、ヴォルクグラード魔道軍大佐の地位を有するマイコの外見は非凡なものである。
百七十センチを超える長身には肉食獣の俊敏さと、女性的な美しさが絶妙なバランスで調和していた。顔立ちは『端麗』の言葉がよく似合う。
白い肌には染み一つなく、見る者に怜悧な印象を与える切れ長の目には黄金色に輝く瞳が埋め込まれ、目鼻立ちはしっかりとしている。濃紺の髪は背中の中間まで伸びていた。
「泣いていたのか……私は」
造形の女神にどれだけの賄賂を贈っても実現し得ないであろう流麗な顔を自嘲で染め抜き、マイコは切れ長の目尻に溜まった雫を払う。
「全く。泣かないと決めても、現実はそうもいかんな」
部屋のカーテンを開けると、窓の外に星々の煌く夜空が見えた。
時間は午前三時を回っているから、この夜空もあと少しで見納めになる。
「大佐、カウフマンです」
椅子に腰掛け、机に頬杖をついて夜景を眺めていると、部屋のドアを叩く音が聞こえた。
涙の跡が残っていないことを確認して、マイコは答えた。
「入れ」
「失礼します」
ドアが開き、金髪の士官が部屋に入ってくる。
マイコの副官を務めているエレナ・カウフマン大尉だ。
敬礼した後、エレナは薄桃色をした唇を僅かに緩めた。
マイコが『硬』の美しさであるならば、エレナは『柔』の美しさだ――ある男子生徒がそう言ったことがある。
自分のことはさておき、マイコから見てエレナは間違いなく美しい存在だった。
髪は肩のあたりまで伸び、輝きを持つ金色だ。青い瞳に影を落とす睫も、細いが形の良い眉も、同じく金色をしていた。柔和さを感じさせる顔立ちは可憐であり、やや垂れ気味の大きな双眸が安心感を与えるとマイコは思う。
軍服に包まれた四肢は柔らかな曲線を描いている。この世ならざる世界からやってきた天子だと告白されたら、十人中七人ぐらいは信じてしまうかもしれない。
「泣いていたのですか?」
「ああ。思い出したくもないことばかり、よく夢になるものだ」
マイコは机に置かれた写真立てを手に取る。
写真の中ではマイコと、彼女と同じ黄金色の瞳と濃紺の髪をした少年が共に笑いあっている。
「もう何年続いているのだろうな。この島の戦いは」
しなやかな指が形の良い顎をなぞった。指が顎の先を掠めた時、マイコは決断した。
「少なくともアヴィリオン学園とヴォルクグラード人民学園の戦いは、間も無く一年を迎えます」
学園同士の戦い。
隕石落下によって一度は崩壊した世界は歪んだ形での再生を果たしていた。
名前はそのままに大きく形を変えた多くの国家はそれぞれが傷付きながらも、今だ争いをやめられないでいる。
だが一度戦争になってしまえば、仮初めの再生を果たしただけに過ぎない国家は崩壊の憂き目に遭うことになる。
そこで大人たちは考えた。
大陸変動の影響で海上に出現した島に戦争を行う限られた空間――後に学園列島と呼称される場所で、半ばショーと化した代理戦争を行うにしたのだ。
島には学園と名付けられた小国家が幾つも誕生し、何時終わるとも知れない戦いが始まった。
一九四一年の六月、学園島西部で最大の規模を誇るアヴィリオン学園は東側の巨校ヴォルクグラード人民学園に対して武力侵攻を開始した。
開戦当初、電撃的に島の大半を制圧したアヴィリオンの勝利を誰もが疑わなかったが、一九四二年の五月になっても戦争は容易に決着がつかず、今なお続いている。
「終わらせるぞエレナ。未来のために」
そう言うマイコと、彼女の言葉に力強く頷くエレナも、ヴォルクグラード人民学園の生徒であり、ヴォルクグラード軍の軍人だ。
「そのために私がいるのです。私の力をお役立て下さい。パステルナーク大佐」
ああ、と返答した後、マイコはエレナのすぐ側まで近付き、彼女の形の良い顎に触れた。
「大佐……!」
「お前がここに来たのは、私を呼びに来たからだろう?」
何故をそれを――と問われたマイコは細めた猫の目に微笑を浮かべ、エレナの骨ばったところのまるで無い肢体を抱き締めた。
エレナの金色の髪は甘い匂いがする。
「お前のことは、お前以上に知っているつもりだ」
マイコがエレナの耳に吐息を吹きかけると、喘ぎとも嬌声とも取れる声と共に艶のある金髪が僅かに波打った。
薄い羽を幾枚も重ねたかのような感触を楽しみながら、マイコは染み一つ無い指で柔らかな少女の肌に触れる。
「あっ……」
髪と同じ金色の眉毛を撫でる。
青い瞳の周囲をなぞる。
最後に、僅かに湿った薄桃色の唇に人差し指を置く。
「全く。エレナは可愛いなぁ。壊したいぐらいに」
マイコはエレナの腰を掴み、自分に引き寄せた。
「口付けは勝利の後にするつもりだったが、私も抑制が効かん女でな」
やはり我慢できなくなり、マイコはエレナの唇に自らのそれを重ねた。
最初は戸惑っていたエレナだったが、すぐに切なげな声を漏らし始めた。
3
詠唱の後、輝きを持った流体が起伏のある体を包み込む。
流体は形を作り、少女の姿を可憐な乙女から剣呑な兵器へと変えた。
マナ――魔法の力。
その恩恵を受けると、エレナの神経はまるで冷気に吹かれたかのように澄み渡り、研ぎ澄まされる。
ローブを身に纏い、魔道兵の姿になった金髪の少女は柔和な顔立ちに決意を滲ませていた。
<<ベルクート隊、カタパルトへ!>>
先にマイコ・パステルナークが空へと打ち出された。
次にエレナがカタパルトへと乗り込む。
「空か……」
射出口から光が差し込んでいる。
カタパルトの先は鉛色をした東部戦線の空だ。
<<ベルクート2、発進どうぞ!>>
態勢を低くして、エレナは射出される。
射出ランプが順次点灯を始める。
エレナが大きく肺に吸い込んだ酸素が二酸化炭素として吐き出された時、最後の表示が消えた。
「エレナ・カウフマン、行く!」
背部マナ・ブースターから青い粒子が迸る。爆発的な推力と蒸気カタパルトの射出エネルギーが組み合わさって、彼女を空へと押し出そうとする。
正面から叩き付けられたGがエレナの肉体に襲い掛かる。歯を食い縛り、見えない圧力に耐える。
骨が軋み、内臓が悲鳴を上げ始める。
永遠と錯覚する一瞬が過ぎると、エレナは空へと放り出された。
無くなったかに思えた上下の感覚は、眼下に広がる泥濘化した大地と低く立ちこめた鉛色の空が手助けしてくれたおかげで再認識することができた。
「空か……戦場にいるのね」
空中で手足の先に装備されたマナ・ブースターを噴射させて、エレナは姿勢を制御する。
先行するマイコと一定の距離を取りながら、エレナは空を往く。マイコの背部から迸る青い粒子――マナ・エネルギーの輝きが目印となった。
「あの日も……こんな鉛色の空だったかな」
エレナの脳裏に暗い記憶が過ぎる。
濃紺の髪と黄金色の瞳を持つ上官と同じく、エレナもまた戦場で生まれ育った過去を持っていた。
民間人にも等しく与えられた惨禍と戦いの中で、エレナは両親と弟を失った。
唯一生き残ったエレナはヴォルクグラードで魔道兵となり、マイコと出会う。
ある夜、エレナはマイコから聞かされた。
自分は弟の生きる未来のために戦っている――と。
エレナの生きる理由が決まったのはその時だった。
決して埋めることのできない喪失感を戦場における生殺与奪で穴埋めする生き地獄から彼女は解放され、新たに生きる理由を見つけた。
自分はマイコ・パステルナークと、その弟の未来のために生きる――と。
「行くぞ、エレナ」
マイコが振り向いて、背部のユニットから生えた機械的な翼を左右に振った。
「了解」
エレナは頷く。
大佐、私の力をお役立て下さい。エレナ・カウフマンの貴方のために存在しているのです――。
理想のためとはいえ、自分達は人を殺すのだ。
自分達の未来のために他人の未来を奪う――人間として最も忌み嫌われる行為を二人は行う。
いずれ報いを受けるときがやってくるだろう。
だが、マイコ・パステルナークが報いの炎に焼かれる必要はない。
エレナは自分がマイコの代わりに炎に焼かれるつもりだった。
例え手をもぎ取られようと、臓物を引きずり出されようと、目を抉り出されようと、エレナは戦う。
戦って敬愛する上官の理想の成就を手助けすることが、今のエレナに残された唯一の存在理由なのだから。
4
戦場へと移動する中、マイコは後方に目をやった。
多くのプロペラを備えた飛行船――マイコ達の母艦である空中巡洋艦クロンシュタットの姿が黄金色の瞳に映る。
「以上が今回の作戦概要だ」
戦闘が始まる数時間前、クロンシュタットの艦内では作戦会議が行われていた。
飛行船の構造上、船体の下部にある艦橋に集まったのはマイコの指揮する第三六九独立親衛艦隊の指揮官職にある者達だった。
艦隊と言っても所属してるのは一隻のみであるから、あくまで名義上のことであり、集まった指揮官達は皆クロンシュタットに乗艦していることになる。
「我が艦隊に与えられた任務は、西側領内への威力偵察に赴く戦車部隊の支援である」
威力偵察とは敵の勢力内で部隊を展開、敵と戦闘することで情報を収集することだ。
一隻の飛行船と二人の魔道兵のみを有するパステルナーク艦隊ができることは一見すると少ないように見えるが、マイコは魔道兵の持つ戦術的な可用性が極めて広いことを知っていた。彼女もまた魔道兵の一人だからである。
「敵の攻撃があれば、私とエレナが敵の側面を突き、その間に味方を後退させる」
「大佐、発言を許可して頂きたい」
マイコの作戦参謀であるアガイノフ中佐が挙手した。
老練な五十七歳の艦長は教師としてヴォルクグラードに籍を置いてはいるが、純然たる軍人としてクロンシュタットに乗船している。
斬新さや革新的な戦法ではなく、堅実かつ剛健な用兵を得意としている。
十七歳にして大佐の地位を得たマイコであるが、孫と祖父ほども年齢が違う部下を持って気苦労しないわけがなかった。
それをアガイノフ自身も承知しており、偉ぶるわけでもなければ卑屈になるわけでもない、絶妙な接し方で信頼関係を築いていた。
「お願いする」
マイコが発言を許可すると、アガイノフは自らの案を説明した。
「その方法では魔道兵が孤立してしまった場合、包囲殲滅されてしまう可能性があります。突出を防ぐため魔道兵は二人一組で行動し、常に退路に気を配りながら戦うべきでしょう。最悪の場合、本艦が最前線に突入して脱出路を支える手段があります」
「しかし、危険ではないのか」
「あくまで最悪の場合です。ですが、最悪の場合を想定していなければ、いざと言うとき、助かるものも助からなくなります」
「そうだな。希望的観測に縋ることは戦場において最も唾棄されるべきことだ。中佐の案を採用する」
会議が終わった後、マイコはアガイノフに話しかけた。
「未熟な身を助けて頂き、いつも感謝に絶えません。過ぎた口を聞いて……」
アガイノフは立ち上がり、小さく首を横に振った。
「お気になさることはありません。私は部下で、貴方は上官なのです。それに、年を重ねた人間といえども、他者の意見を無視し独走の挙句に破滅してしまうことが多々あります。それに比べたら、大佐は良識を備えた人間です」
「至らない身ですが、これからも色々と教えて頂けると助かります」
「お止め下さい。上官が部下に頭を下げるものではありません」
「ああ、わかり……わかった」
アガイノフとマイコはお互いに敬礼しあった後、それぞれに役目――前線で戦うことと、艦に残っての指揮を――するために別れた。
363 :
75:2008/11/03(月) 22:57:36 ID:DGvjq91S
今日はここまで。
一応確認はしたつもりだけど、文法の間違いとか誤字とかあったら教えてくれると嬉しいんだぜ。
人に代理戦争の殺し合いさせて
のうのうとしてる様な連中に生真面目に従う必要が無い。
食べていく方法がそれくらいしかないんじゃね?
75さん投下乙
百合いいよ百合
魔道兵って兵器としてみたら凶悪極まりないよな
歩兵サイズで戦闘機+戦車とかどんなチートだよw
そんでもって魔法エネルギー補給はどうするの?
設定を見ていると魔法=体内エネルギーみたいだから飯食ったりすることで回復するのかな。
卑猥な話だけどエレナとマイコが口同士で(PAM!
>>364 それを言ったら実際の戦争も似たようなもんじゃ…
従う意味がないというよりも従うしか方法が無いのではないか?
>>365 食べ物のために殺人と聞くとポル・ポト政権下の少年兵とか思い出すな。
この世界は隕石で一度滅んでいるから、学園島にいる生徒はみんな北斗の拳的な世界で幼少期を過ごしたんだろうか?
そう考えると結構ダークな話やねこれ。
生徒の中にはエーリヒみたくヤンみたいな人もいれば、ガウルンみたいな奴もいるんだろうな。
つ士気が低い
ガキが戦車動かすとかねーよ
と思ったら似たような事例は多いんだな
神風特攻は全部ガキばっかじゃん
爺が死にたくないもんだから、少年兵を前線に送るなんてどこにでもあるよ
371 :
名無し・1001決定投票間近@詳細は自治スレ:2008/11/05(水) 20:31:13 ID:OT0kAYaC
少年兵といえばヒトラーユーゲントが一番に思いつく
372 :
75:2008/11/05(水) 22:32:08 ID:W3saLIj4
ちょりーす
予想外に反応あって驚いてるんだぜ
>>366 考えてないのでいい案あったら聞きたいのが本心
マナ=精神と肉体に宿るエネルギーだから、一定のエネルギーを消費したら十分な休息と栄養?を取る必要があるとか考えてる。
軍板時代の過去ログに目を通していて、所謂『女の子の日』に魔法が使えなくなるのはいいかもしれんと思った。
>>367 子供の頃に内戦を経験→戦闘力は高いが歪んだ子供に・・・というのは俺がラノベの読みすぎなだけかもしれん。
ぶっちゃけ隕石で世界崩壊したら〜の設定は学園同士で戦争させる理由付けだから詳しくはおいおい決めていけばいいんじゃね?と考えてる。
>ガウルンみたいな奴
先週の00に出てきた焼け野原ひろしも良いかも。
個人的には普段は良識人で戦場で狂人キャラが好みだ。
つーわけで続き投下
373 :
75:2008/11/05(水) 22:33:43 ID:W3saLIj4
5
空にはぎっしりと雲が詰め込まれていた。
鉛色の低い天蓋によって覆われた戦場では、鋼鉄の野獣同士が戦いを繰り広げている。
<<照準良し! 装填良し! 撃て!>>
アヴィリオン軍のMBT(主力戦車)三号戦車の五十ミリ戦車砲が、ヴォルクグラード軍MBTであるT-34の側面装甲を撃ち抜いた。
撃たれたT-34の砲塔から眩い炎が噴き出し、紅蓮の火柱が空を焦がす。
悲鳴を上げて砲塔から飛び出した兵士は三号戦車の車載機銃によって撃ち倒され、血塗れの肉片を撒き散らして地面に崩れ落ちた。
<<赤い星より各車、近づけ! 接近すれば、いくらアヴィリオンの機甲師団と言えども……!>>
アヴィリオン学園の機甲師団は精強かつ強大な存在として知られている。
前年、一九四一年の冬にヴォルクグラード人民学園の校門前で大敗したとは言え、その戦力は些かの衰えも感じさせなかった。
今もアヴィリオン軍の機甲師団は数で数倍を誇るヴォルクグラード軍戦車隊を前にして、互角以上の戦いを繰り広げていた。
<<ロジーナでも駄目なのか!?>>
ヴォルクグラード人民学園陸軍のT-34は単純な性能であれば三号戦車を大きく上回っていた。
だが、兵士の練度や潜ってきた死線の数は桁が違う。
<<各車、このまま奴らを押し返す。ジーク・レーア・アヴィリオン!>>
ヴォルクグラード軍を失血死させるために三号戦車が泥を跳ね上げて前進を始めた時、稲妻のようにも見える光体の群れが白煙を残して飛来した。
鉛色の空から降り注いだ光体はアヴィリオン軍の戦車隊目掛けて殺到する。
連続した爆発が起き、閃光と破片が周囲に撒き散らされた。
<<空爆か!?>>
<<回避しろ! これではいい的だ!>>
何が起こったのか理解する間もなく、一方的な攻撃によって叩き潰されていく。
三号戦車の車体に光体が突き刺さるたび、爆煙が巨大なパイプオルガンのように天へと伸びた。
「クソ……何が……何が起こったんだ!?」
なんとか炎上する戦車から脱出した兵士が泥まみれの顔を上げると、目の前には歪な銃口が広がっていた。
恐怖に染まった視線を上に上げると、黒と赤の近未来的な外殻に身を包んだ少女――魔道兵の姿がある。
髪は艶やかな濃紺。アーモンド形の目には黄金色の瞳が埋め込まれている。処女雪の如く美しい肌と端麗な顔立ちは、まるで造形の女神に寵愛されているかに見えた。
「始めまして――死ね」
マイコ・パステルナーク大佐の白磁の肌は、兵士の脳漿と生暖かい血液によって汚された。
もっともマイコは自分がいくら血で汚れようとも大して気にはしない。
長い戦場でも彼女の外見的美しさは一分子も損なわれなかったが、内面は相当に歪み変質しつつある。
白磁の肌を伝う赤黒い液体を手で拭った後、マイコは自らの掌を見た。
「魔法が使えようが使えまいが、血の色は同じか」
僅かな憂いを込められて横を向いたマイコの切れ長の目には、恐怖に引き攣った顔で銃を構える年若い兵士達の姿が映っていた。
374 :
75:2008/11/05(水) 22:34:45 ID:W3saLIj4
「う、撃て! 撃ち殺せ!」
眼前に現れた恐怖を粉砕するため、アヴィリオン軍の歩兵部隊は火力のありったけをマイコに向けて注ぎ込む。
絶望と勇気が彼らを徹底抗戦の愚に駆り立てた。
「マナ・フィールドを展開。減衰率三十六%」
今は固形化した流体マナ・エネルギーで包まれた黒い手をマイコが前に出すと、彼女の周囲は輝きを放つ緑色の結界で覆われた。
マナ・フィールドは魔道兵が使用できる防御結界のことだ。
<<撃て! 撃て!>>
<<戦車砲が弾かれた!? 馬鹿な!>>
息をもつかせぬ勢いで放たれた銃弾や砲弾をいくら喰らっても、結界の中にいるマイコには傷一つつかない。
周囲で爆発を起こす砲弾の破片すら、光の壁は防いだ。
「さあて、そろそろこちらもいこうか!」
銃撃が止んだ一瞬の隙にマイコは背部と脚部のマナ・ブースターを噴射させ、スケートを滑るように地面を滑走し始めた。
ガンポッドの掃射、生体誘導弾による攻撃が、一つの潮流となってアヴィリオン軍の中を進む。
「機動性に優れた魔道兵が相手では!」
背部と脚部のマナ・ブースターによって得た浮力によって、マイコはマナ・エネルギーというサーフボードによって戦車隊という波に乗る。
一台の戦車に狙いを定めたマイコは、最大加速で目標に肉薄した。
「砕け散れ!」
右腕の一点に防御結界を集中させたマイコの拳が戦車の前面装甲を砕く。
爆発こそ起きなかったが、飛散した破片や打ち込まれた拳による衝撃は中の乗員を肉塊へと変えていた。
「露払いを頼む! エレナ!」
マイコの後ろから、金色の閃光が迸った。
「御意!」
もう一人、ここには死を撒き散らす戦場の戦乙女がいる。
エレナ・カウフマンだ。
マイコとは異なり、彼女のローブは緑を基調にしたシンプルなものだった。
ローブの各所には白がアクセントして加えられているが、翼や羽といった装備は無い。飛行を可能にするマナ・ユニットは背部に備わっている。
武器は光の刃が備えられた長刀が一本だけだが――シンプルであるが故に、エレナは強い。
長刀によって銃弾を弾き返し、直撃の弾道にあった砲弾を切り裂き、エレナの眼前に立ちはだかった兵士を斬撃によって両断する。
数分の間に、エレナの得物は血塗れの収穫にありついた。
<<後退! 火力を集中しろ! 砲兵に支援を要請!>>
アヴィリオン軍は生き残った少数の戦車を中心にして戦力を再編成し、マイコとエレナに火力を注ぎ込んだ。
マイコは防御結界を周囲に展開して、叩きつけられる火と鉄の潮流から身を防ぐ。
長刀を回転させて弾丸を防いでいたエレナを掴むと、マイコは自らの結界の中に彼女を入れた。
「大尉……」
マイコは僅かに口許を緩ませた。
「この様子だと、楽にはやらせてもらえんな」
マイコは言い終えて、すぐに次の言葉を繋いだ。
「だがエレナ、お前がいる。負けはすまい」
二人は笑い合う。
いつだってそうだった。
どんな困難だろうと恐怖だろうと、マイコ・パステルナークとエレナ・カウフマンは粉砕し、乗り越えてきたのだ。
375 :
75:2008/11/05(水) 22:36:03 ID:W3saLIj4
6
一台の装甲列車が線路の上を進む。
車体に描かれた飛び跳ねる黒い悪魔のマークを知る者は少ないが、知っている者は文字通り悪魔か地獄の死者の如く恐れていた。
装甲列車の名前は『シュプリンゲンダー・トイフェル』といい、学園島における戦いで最高クラスの実力を持った指揮官と兵士達を内包した陸上艦隊の旗艦とも呼べる存在だった。
「あちち」
装甲列車の指揮車で紙コップに口をつけたエーリヒ・シュヴァンクマイエルが声を上げた。
右半分だけは柔和で優しげな顔をしているが、対照的に左側は人間の顔に本来あるべきものが多く欠落していた。
額から頬にかけて火傷の跡が走り、本来左目があるべき場所は黒い眼帯で覆われている。一切の表情や感情を表現し得ない顔の右半分が、彼が経験した凄惨な戦闘が何であるかを如実に物語っていた。
アヴィリオン学園高等部二年生であるエーリヒは本分である学生よりも、アヴィリオン空軍地上部隊を指揮する少佐として知られていた。
十七歳の少佐が恐れられているのは外見上の理由ではなく、その頭脳の中にあった。
一九四一年の六月から始まった学園島での戦いにおいて、エーリヒは自らが所属するアヴィリオン軍の窮地を幾度と無く救った。もしエーリヒがいなければ、学園島における戦いでアヴィリオン軍が被った戦死者は五倍から十倍に上ると――報道委員会は伝えている。
実際のところ、エーリヒはいくら褒め称えられようとも、大して嬉しくはない。形になったことといえば学食で出されるソーセージが一本多くサービスされたぐらいだ。
「少佐、飲酒はご法度ですよ」
懐から取り出したブランデーで紅茶の熱さを和らげようとした時、背後から声がかかった。
「子供が戦争をしているのに、人殺しは良くて飲酒――いや、紅茶にアクセントとして数滴のブランデーを入れるのも駄目かい?」
駄目ですと確固たる口調で副官のアルベルト・ゲルトバウアー大尉は言う。
老け顔の副官はエーリヒとは長い付き合いであり、上官に対して常識論を言う重大な役目を担っていた。
アルベルトの言っていることが正論過ぎたので、エーリヒはブランデーの瓶をそっと懐に戻した。
息を吹きかけた後、静かに紅茶をすする。
紅茶はまだ熱かった。
「しかし、ここ最近は出ずっぱりだったね。うちの部隊」
「昨年の冬にヴォルクグラードの本校前で大敗して以来、火消しのため西へ東でこき使われましたから」
アヴィリオン軍は昨年――一九四一年の冬、ヴォルクグラード人民学園の校門前で大敗を喫した。
混乱の中で指揮を取る羽目に陥ったエーリヒは何とか崩壊寸前の部隊を再編成し、戦線に空いた穴を塞ぎ、突破した敵を撃退した。
その後のゴタゴタで部隊は俄作りの混成部隊から寄せ集め集団を経て、今や独立愚連隊の様相を呈している。
報道委員はシュヴァンクマイエル戦闘団という急造の香りがプンプンする名前をまるで最高のエリート部隊のように宣伝する。しかし、実際のところ戦闘団は原隊が壊滅したり、増援という形で押し付けられた消耗激しい部隊の受け入れ所と化しているのだ。
「風呂敷は広げたのはいい。だけど、畳むのが問題だった」
376 :
75:2008/11/05(水) 22:36:56 ID:W3saLIj4
最近、軍を離脱して海賊ならぬ"陸賊"を作らないかと内なる声を聞いて満更でも無い十七歳の少年少佐は足を机の上に置いた。
年下の上官にも公正な態度で接する有能な副官は、もうこの若い上官が見せるだらしの無い態度に口うるさく言う気が無くなっているようだ。
「もしヴォルクグラードに有能な将軍が一ダースも残っていれば、今頃アヴィリオンの本校には赤い旗が立っていたでしょう」
アルベルトの言葉を受けて、エーリヒは見る者によっては華奢な印象を受ける肩をすくめた。
副官の言葉にはリアリティがある。
アヴィリオン軍がヴォルクグラード人民学園の校門前で敗退した時、ヴォルクグラード軍はあふれ出る兵器と人員の奔流をもって全てを破壊し押し潰してしまったが、肝心の指揮官が極度に不足していた。
エーリヒが噂に聞いた話だと開戦前の内部抗争で多くの優秀な人材が死んだ、あるいは投獄されたという。アルベルトの言うように優秀な人材が多く残っていたら、アヴィリオンには一寸のチャンスも見つからなかっただろう。
「そればかりは、社会主義に乾杯だね」
「"ゴルトアイフェルの悪魔"も歴史の表舞台に現れはしなかったでしょう」
「よしてくれよ」
ヴォルクグラード本校からの長く苦しい撤退戦の中で、エーリヒは少なからざる貢献をした。
アルベルトが口にした渾名はヴォルクグラード軍によって名付けられ、いつの間にかアヴィリオン軍の内部にも浸透してしまったものだ。
どうにもネーミングセンスの感じられない渾名をヴォルクグラード軍は畏怖していると聞くが、当の本人に言わせれば噴飯モノのジョークにしか感じられない。
「大体、そんな渾名は……」
エーリヒが愚痴ろうとした時、指揮所に警報が鳴り響いた。
「何事だ!」
アルベルトが語気を荒げた。
無線手が緊張した面持ちでこちらを向く。
「偵察中の部隊が敵の攻撃を受けています。敵には、魔道兵の存在も確認されています!」
魔道兵!
その単語に、指揮所の空気が張り詰めたものに変わる。
アヴィリオン軍が昨年の冬に敗れた理由の一つに、ヴォルクグラード軍が投入した魔道兵の存在がある。
戦車の装甲と火力、戦闘機の機動性を歩兵サイズで兼ね備えた魔道兵に対して、通常兵器は全く歯が立たなかった。空軍の戦闘機や爆撃機ですら、その威力の前には無力だった。
「すぐに救援に向かう。アルベルト、無人偵察機の発進用意。それと、各部隊に即時待機を命令してくれ」
先ほどまでとは別人の空気を身に纏ったエーリヒは必要事項をアルベルトに伝える。
紅茶に知らん振りをしてブランデーを入れようとしたのが軍服を着た文学青年であるのなら、今の姿は文学青年の姿を借りた軍師か知将であろう。
知略と策謀の糸を張り巡らせ、糸に捉えられた獲物を兵という溶解液で解体する。優しげな右半分と冷酷や無情をも形骸化させる焼け爛れた左半分の対比は、エーリヒの中にある人間の二面性の表れだったに違いない。
「了解」
敬礼したアルベルトが指揮所を離れた後、エーリヒは席に戻る。
黒い眼帯を直した後、再び紅茶に口をつけた。
紅茶はもうぬるくなっていた。
377 :
75:2008/11/05(水) 22:38:00 ID:W3saLIj4
今日はここまで。
絵師さんへのリクエストスレでマイコのイラストを頼んでみようかと考えています。
紅茶にブランデーってなんという魔術師w
75氏投下乙
>右腕の一点に防御結界を集中させたマイコの拳が戦車の前面装甲を砕く。
ほー肉弾戦のやり方で結界を使うとは面白いですね。
戦車の前面装甲を抜けるなんてすごいや。
>>378 史実にそんな人いたっけ?
エーリヒのモデルはロンメルあたりじゃないかと疑っていたんだけど、違うの?
>>379 > 史実にそんな人いたっけ?
エーリヒのモデルはロンメルあたりじゃないかと疑っていたんだけど、違うの?
それは銀河英雄伝説のヤン・ウェンリーが元ネタだと思う。詳しくはググってくれ。
エーリヒは太腿を撃たれて・・・
エーリヒ「ごめん…ラファエル、ごめん…アルベルト、ごめん…みんな…」
>>379 マイコは射撃重視の兵装でエレナが近接戦用の装備なのはキャラ分けなのかな。
正直パンチ系の必殺技はラスボス相手にトドメ刺すときに使ってほしかったりする。
あとヴォルクグラード内部の政争劇が面白そうだからいずれ読んでみたいと言ってみる。
383 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/08(土) 13:07:56 ID:+PYR8tJC
学年は三年間じゃなくて五年か六年にした方が話を広げられないか?
384 :
75 :2008/11/08(土) 15:27:56 ID:Ug9fLO9c
ちょりーす
名無しが変わったね
>>382 二人の装備分けは大して意味を決めてないなぁ
ラスボスなら衛星レーザークラスの武器を持っててもいいかもね
>>383 それは俺も考えてた
第二次大戦(一応)ごろなのに学園の構成が現在の高校みたいな感じになっていると最近気付いたんだw
高等部は十五歳から二十歳までの五年間にしてもいいかと思うんだが、他の人はどう思う?
続きは後から投下します
ただ少年って何歳までなのか判断に困るな。
世の中には19歳の魔法少女がいたりするけど。
386 :
75:2008/11/08(土) 23:41:53 ID:Ug9fLO9c
ちょりーす
続き投下
7
魔道兵を戦力として保持しているのはヴォルクグラードだけではない。
ヴォルクグラード軍内部の抗争や能力の高さを疎まれた魔道兵が、亡命者としてアヴィリオンに身を寄せていた。
アヴィリオンは自らも魔道兵の量産化を急ぐ一方、実戦データを収集するために単体もしくは少数で編成された魔道兵を各地に投入していた。
あらゆる部隊を内包して構成されたシュヴァンクマイエル戦闘団にも、一人の魔道兵が籍を置いている。
「強化ユニットの調子が最悪です! やっぱり一品モノのパーツじゃまともに動きませんぜ!」
「お前らはそいつの整備を続けろ! 第二班をこっちにまわしてくれ!」
即時待機命令を受けて、装甲列車シュプリンゲンダー・トイフェルの格納庫では整備班が慌しく走り回っている。
年若い整備兵を監督しているのは、今年で六十歳を迎えるベテランの整備班長だった。
「もたもたしている奴は海に叩き落すぞ!」
海なんて近くにありませんと言ってはいけない。
無粋な突っ込みや揚げ足取りは破滅を意味すると、整備兵たちは知っている。
そんな彼らが最高の仕上がりにするべく奮闘しているのは、魔道兵用の装備だった。
「ディフェンサーロッドの反応速度は通常のプラス七に修正してくれ」
第七〇九八戦術戦闘飛行隊の飛行隊長を務める魔道兵、ラファエル・フォン・クリングベイル少佐は淡々と整備員とやり取りする。
魔道兵は皆美人揃いだとアヴィリオンでもヴォルクグラードでも言われている。体内にあるマナ・エネルギーのせいで流麗な姿になるのだという噂話が両軍の下級兵士達の間で交わされているが、少なくとも大天使――ラファエルの名を冠した彼女は美しい姿をしていた。
絞れば高純度の乳液が絞れるのではないか、と思わせる純白の肌。男装の麗人を思わせる中性的な顔立ちには吊り気味の眉に、ルビーをそのまま埋め込んだような真紅の瞳が配されている。肩に届くか届かないかの線で微震する髪は収まりが悪かったが、艶やかだ。
青いアヴィリオン空軍の軍服に包まれた百八十センチを超える長身は豊満ではないが、体のラインは決して平坦ではない。
さしあたって整備兵たちの目を困らせ、ある意味で高いモチベーションの維持に貢献しているのは、タイトなスカートの間から覗く黒いガーダーベルトと白い太股の組み合わせであった。
387 :
75:2008/11/08(土) 23:42:47 ID:Ug9fLO9c
「わかりました、少佐。ハードウェアの性能にソフトウェアが追いついてしまうなんてホントは有り得ないんですがね」
「サドだのマゾだの難しい言葉を使わんでくれ。人殺しばかりしてきたせいで、私は教養がないんだ」
言葉とは正反対に、ラファエルは難解な数式を自らの装備に打ち込んでいた。
「魔法使いが機械の武器を使うとは、何かも上がったりだな」
ラファエルは魔道兵だったが、古来の伝承に登場する魔法使いが使うステッキや、ヴォルクグラードの魔道兵が用いる魔術的な兵装を使うことはできなかった。
彼女の体に埋め込まれたマナ・クリスタルの能力は低く、ローブの展開と単独での飛行のみが可能だ。幸いにしてアヴィリオンでは『電動狂人』の異名を持つ天才科学者が魔道兵用の特殊兵装を多数開発していたため、素手で戦う事態は避けられた。
「すまんが、少し外す」
ラファエルは格納庫の一角に見慣れた人影を見つけた。言ってもいいかと聞くと、整備兵は「どうぞ。こっちはまだ時間がかかりますので」と油混じりの汗を拭いながら了承した。
収まりの悪い黒髪を揺らしながら、ラファエルは待ち人のところへ歩いていく。
「やあエーリヒ。どうしたんだい?」
こっちへ――と待ち人ことエーリヒ・シュヴァンクマイエルはラファエルを物陰へと誘った。
「もうすぐ戦いが始まる。君にもまた人殺しをさせることになる」
文学青年と軍人、内面にある二面性を顔に持った年若い戦闘団の指揮官は右半分に憂いの表情を浮かべ、申し訳無さそうに言う。
「でも、勝つための算段はちゃんとしてあるから、心配しないでいい」
無理をしているのが見え見えの微笑みを、エーリヒは作ってみせた。
「戦って人を殺さない方法があるなら見てみたいものだ。そんなに甘い考えで僕はここにいるわけじゃない。それにエーリヒ、君が勝ち目の無い戦いをしたことがあるのかい?」
ラファエルの収まりの悪い、艶やかな黒髪が左右に微震する。
隻眼の少年を、ラファエルは真紅の瞳で見た。
「うーん」
エーリヒの薄い桃色をした唇が薄く開閉する。
「あるとも。君と一度だけね」
二人はかつて敵同士だった。
アヴィリオンのエーリヒ。
ヴォルクグラードのラファエル――そもそも、ヴォルクグラード時代は明確な『名前』など有しておらず、コードネームだったが――。
戦場で巡り会った二人はエーリヒ曰く"事実は小説よりも奇なり"を地で行く恋愛の果てに、今に至っている。
出会った頃と今では、二人の立場は大分違う。
冴えない新米士官だったエーリヒはアヴィリオン最高の前線指揮官に仕立て上げられて英雄と喧伝され、ラファエルはプロイセン貴族の末裔である名家に養子として引き取られた。
「エーリヒ、僕は君と一つになるためにここにいるんだ」
ラファエルの白い手が、エーリヒの火傷だらけの手に触れる。
エーリヒは顔を赤くした。
隊内において、エーリヒとラファエルが婚約者の間柄という事実は公然の秘密だ。ラファエルは堂々としているが、対照的にエーリヒは気まずさを隠せていない。前線で悪魔的な戦術巧者であるエーリヒは女性関係となると、まるで駄目だった。
なにしろ女性と挨拶、事務的な会話をした経験が彼には欠けていたのである。そのくせ仲間内で回し読みした"如何わしい雑誌"によって偏った知識を得ていたからたちが悪い。
「心配しなくてもいいよ。僕は、ここで死ぬつもりはないから」
ラファエルは破顔一笑することはない。中性的な顔立ちを僅かに緩めるだけだ。
「気をつけて、ラファエル」
「エーリヒも」
ラファエルはエーリヒの頬に軽くキスをした後、唇に残った微熱の感触が消え行くことを憂いつつ、再び格納庫へと戻った。
388 :
75:2008/11/08(土) 23:43:25 ID:Ug9fLO9c
8
低空で三号戦車に肉薄した黒と赤の閃光――マイコ・パステルナークが戦車の車体後部に取り付き、右手に携えたガンポッドの掃射を至近距離から浴びせる。マナ・ブースターを噴射して距離を取ると、マイコの視界の隅に黒煙と炎に縁取られた断末魔の輝きが映った。
エレナと一時的に別れたマイコは、単独でアヴィリオンの偵察部隊を壊滅させつつあった。
「案外他愛無いな」
青い粒子による光跡をマイコが見つけたのは、そう呟いた直後だった。
「新手か!?」
近付いてくる。
紫色のローブ。
背中に生えた二枚の羽。
右手に盾らしき装備。
左手に身の丈ほどもあるランス。
「魔道兵! アヴィリオンも実用化に成功したのか!?」
マイコもアヴィリオン軍の捕虜になった魔道兵が寝返ったり、亡命者が技術供与を代償に厚遇を受けているという話は聞いたことがある。
アヴィリオン軍魔道兵の登場も予想していないわけではなかったが、こんなにも早く登場するとは……!
マイコの怜悧な柳眉が逆立つ。
槍使い――アヴィリオン軍の魔道兵――は左手に携えたランサーを振るい、マイコに襲い掛かった。
「こいつ!」
ガンポッドに備えられた『十手』でランスの一撃を受け止める。
刃の接触点から迸る火花に映し出された槍使いの目が赤く光る。
「ほう。美しい顔をしている。イワンにしておくには勿体無い!」
槍使いの瞳はルビーをそのまま埋め込んだと言われても信じてしまうぐらい、真紅の一色だった。
美しい宝石の中で赤々とした炎が燃え盛り、異様な妖しさを感じさせる。
「随分とやりたい放題やったものだ。そろそろご退場願おうか!」
マイコの腹を蹴って、槍使いは距離を取る。
左手一本でランスを軽々と振り上げ、振り落とす。
「――ッ!」
マイコの防衛本能は後退して距離を取るのではなく、最低限のダメージで受け流すことを選んだ。
刹那、それが正しいことだと証明された。
縦の一撃がマイコの背部マナ・ユニットに備わっていた翼の一枚を叩き潰した。
「退場させたければやってみろ!」
空中で姿勢を崩しながら、マナ・ガンポッドの狙いを定めずにマイコは引き金を引く。
細切れになったエネルギーの潮流が紫のローブを纏った魔道兵を引き千切ろうと殺到する。
だが、相手も易々と殺されてはくれなかった。
槍使いは螺旋の機動を描いて弾道から身を反らし、距離の劣勢を意にも介さない。
「なんて反応速度だ……奴は、奴はどれだけのGに耐えているんだ!?」
槍使いも背部と脚部にマナ・ブースターを装備し、マイコと同じように翼を持っている。
だが、その機動性はマイコを遥かに上回っていた。
こいつ、手練か……!
389 :
75:2008/11/08(土) 23:44:06 ID:Ug9fLO9c
マイコの切れ長の目から覗く眼光が、絶対零度の輝きへと限りなく近くなっていく。
「機動性は良かろう。これならどうだ!」
マイコの肩に備わった生体誘導弾ランチャーが開く。
白煙の尾を引いた光球が数十発、槍使いに引き込まれていく。
「ならば!」
槍使いは腰にマウントしていた収束手榴弾を投擲する。
空中に火と鉄でできた花が咲き、爆発に煽られた生体誘導弾が次々に光芒となって空を照らした。
マイコがガンポッドを構えるより早く、槍使いは青い粒子を残して煙の中から飛び出す。
「魔法に頼りすぎではなァ!」
腹部に衝撃を感じる。骨が軋み、内臓が悲鳴を上げる。
マイコの腹部を殴打した槍使いは、勢いのままに膝蹴りを叩き込む。
「誰が!」
口から血と胃液の混合物を撒き散らしながら、マイコはマナ・ガンポッドと生体誘導弾の火力のありったけを槍使いへ送る。
精密さよりも数と勢いに任せた断続的な攻撃は、彼女の心の高ぶりを如実に表しているものだった。
「そんな醜態ではダンスにもならんよ!」
生体誘導弾は槍使いの放出した偽装風船によって防がれた。
ガンポッドの射撃は、右腕に装備された回転するロッド状の防御装置によって防がれる。
「私をこれほど追い詰めるとは――何物だ!」
自問に近い疑問を吐くマイコだったが、疑問は槍使いの回答によって報われた。
「聞きたいのであれば答えよう。私がラファエル・フォン・クリングベイルであると!」
妄想ED
http://www.youtube.com/watch?v=htp3AKx-2jg 次回予告
マイコの前に立ちはだかるラファエル。
強敵に苦戦を強いられるマイコを、エレナは救えるのか?
一方エーリヒ・シュヴァンクマイエルは三倍の敵を相手に絶望的な戦いを挑むが……。
次回、学園島戦記譚第二話『黒き悪魔が蠢いて』
――歪みの中で咲き誇れ。
390 :
75:2008/11/08(土) 23:46:40 ID:Ug9fLO9c
投下終了
第三話のまで投下した時点で序章編は終わり。
まとめサイトに載せる前に加筆修正もするので、設定とかで「こうした方がいいんじゃね?」と思うところがある人はガンガン言ってくれると良い作品ができると思うんだぜ。
>妄想ED
自分の創作物に箔をつけたいからって
無関係な画像や動画のリンクを貼り付ける行為はちょっと痛い
392 :
75 :2008/11/10(月) 23:12:38 ID:vN7jTSyZ
ちょりーす
昨日はVIPで有意義な時間が過ごせた
>>391 日にちをおいて考えたら恥かしくなってきた
以後やめる
それでは第二話投下
393 :
75:2008/11/10(月) 23:13:12 ID:vN7jTSyZ
第二話 黒き悪魔が蠢いて
1
ぎっしりと鉛色が空に詰め込まれていた。低く立ち込めた世界を切り裂くように、青い粒子の光跡が駆け抜ける。
「良い身持ち! そうでなくてはな!」
収まりの悪い黒の髪を揺らしながら、"槍使い"、ことアヴィリオン軍の魔道兵――左手に身の丈ほどのランスを持った――の理知的な表情が興奮に上気していることを、マイコ・パステルナークは鍔迫り合いの中で確かに確認した。
「言っていろ!」
右足の蹴りで距離を取り、マイコはマナ・ガンポッドを連射する。
細切れだが戦車をもズタズタにするマナ・エネルギーの潮流が、槍使いを追って空を切る。
「当たらなければ、どんな兵器でも!」
槍使いはガンポッドの射撃を螺旋の機動で回避しつつ、それでも肉薄したマナ・エネルギーを右手に装備した回転式の防御装置で弾き飛ばす。
「串刺しにしてくれる!」
後退――そして背部マナ・ブースターの全力噴射による突撃。
槍使いは爆発的なエネルギーによって加速し、左手のランスを構えて急速に前進した。
「来るか!」
青い信号弾が西の方角から打ち上げられたのは、マイコが全ての兵装を槍使いに向けた時だった。
「後退信号だと!?」
槍使いは一瞬動きを止める。
「落ちろ! カトンボ!」
マイコには一瞬で十分だった。黄金色の瞳に、はっきりと目標が捉えられていた。
僅かに動きを止めた槍使いに向けて、マイコは再びガンポッドの火力を浴びせかけた。
「私も軍人だ――命令には従う!」
槍を失った槍使いは煙幕弾を放ち、空域を後にした。
「大佐!」
マイコが最も可愛がり、信頼を寄せている副官が青い光跡を作って駆けつけてきたのは、煙幕によって作り出された黒い壁が風の流れによって霧散した後だった。
「ああ、エレナか。生憎私は無事だぞ」
「申し訳ありません。遅れました」
金髪の少女は心底申し訳無さそうな顔をする。
気にするなと頭を撫でてやって、マイコは切れ長の目に憂いと怒りの入り混じった光を宿らせた。
「アヴィリオンにも魔道兵が現れたようだ」
それを聞いたエレナの顔が驚愕の一色に染め抜かれる。
「言った通りの事実だ。エレナ、戦局はますます厳しくなりそうだ」
「とにかく大佐、近くに戦車隊の補給基地があります。そこで一旦、エネルギーの補給を行っては如何でしょう」
金髪の副官は議論に早急な結論を出すよりも、広い視野によって物事を次に運ぼうとする。
マイコがエレナを信頼する理由の一つに、彼女が自分よりも広い視野と見識を持っていることが挙げられた。マイコよりも多くのことをエレナは知り、そして良い方向に進めることができた。
「うむ。その旨をよしとしよう」
「了解です。大佐」
決定を下した後、二人の魔道兵は足早に空域を離脱した。
394 :
75 :2008/11/10(月) 23:14:03 ID:vN7jTSyZ
2
補給基地にはひっきりなしに軍用トラックが出入りしては、年若い兵士達が慌しく満載された物資を運び出していた。
ヴォルクグラード軍のMBT(主力戦車)であるT-34は運ばれてくるなり、千歩譲って新米に毛が生えたヴォルクグラード学園の生徒――兵士が乗り込んで前線へと向かう。
ヴォルクグラード軍の戦車について面白い逸話がある。戦車に備え付けられた説明書にはこう書いてあるという。
一、我が校の技術を信じよ。
二、問題が発生したら一を読め。
これはアヴィリオンが空飛ぶ円盤を開発した、人型兵器を実戦に投入した、と同じレベルの言わば"戦場の都市伝説"である。
「命なんて安いものだ。特に戦車兵の連中は……」
戦車隊がカチューシャロケットによる乱雑にして効率的な支援砲撃を受けながら前線に向かう光景を目の当たりにしながら、少女の切れ長の瞳が憂いの輝きを放っていた。
ヴォルクグラード人民学園高等部二年生であり、ヴォルクグラード軍大佐であるマイコ・パステルナークは長い濃紺の髪を湿り気の多い風で揺らしながら、木箱に腰掛けて昼食をとっていた。
高級将校であるマイコは設備が整った士官食堂で食事をとることもできるが、彼女にとって昼食とは胃に食べ物を詰め込む作業でしかない。戦場に身を置いているのならなおさらである。
付き合いでエレナや部下と食事をしたりすることはあるにせよ、友軍の兵士が泥まみれで戦っている横で貴族の真似事をするほど、マイコは自分が悪趣味でないと知っている。
「私も大して変わらんがな。このご時勢、命なんて常時大安売り状態なんだ」
高級将校同士の交流を嫌い、下士官や下級兵士と過ごす時間が多いことが自分への好意と信頼を集めているなどいざ知らず、マイコは厚切りのベーコンをパンに挟んで頬張った。
魔道兵の『燃料』であるマナ・エネルギーの補充法は非常にいい加減なものである。
配布されたマニュアルにはこう書いてある。
一、十分な休息と栄養をとること。
二、異常が発生したら一を読め。
実際にこれで大抵の問題が解決するからどうしようもない。大体魔道兵という存在は年若い女性にマナ・クリスタルという外宇宙の産物を埋め込んで、そこからエネルギーを供給して自らを『兵器』に変えるのだ。
「こら!」
秘蔵の逸品を飲もうとして軍服の懐からウォッカを取り出すと、横から純白の手がマイコの二の腕を掴んだ。
一見するとか細い腕は、抓ろうが握ろうがびくともしない。
「私はウォッカを飲もうとしてたんだじゃないぞ!」
「詭弁も大概にして下さい! 工業用アルコールを飲んで卒倒したことを忘れたんですか!」
エレナ・カウフマンは柔和で優しさに溢れた顔を出来る限り怖くしてみせた。
395 :
75:2008/11/10(月) 23:15:25 ID:vN7jTSyZ
「あれは不幸な事故だ。うん」
「もう……大佐は軍人としては有能でも、人間としては及第点に達しない部分が多いんですから」
エレナは寛大さを見せて、ウォッカの瓶をその場で叩き割ることはしなかった。二人の体に流れるロシア人の血はウォッカを飲むと失意を興奮に変え、落胆を希望に変える性質を持っている。
いざとなったら使えると判断したのだろう。
「魔道兵の技術は今や、我々だけのものではないということだ」
他者が見たら美少女同士のじゃれ合いもそこそこに、マイコは深刻な話題を口にした。
「今に思えば、生徒会や内務委員会の魔道兵に対する不信は尋常なものではありませんでした。監視や消耗品扱いに耐えかねて亡命した魔道兵は少なくありません」
ヴォルクグラードの校内において、魔道兵はエリートとして扱われている反面、危険分子としての見方もされていた。
無理も無い話だった。本人の意思次第では、授業中だけでなく校内のありとあらゆる場所や時間に狂気じみたエネルギーを解放して力を行使することができるのだ。
そのため校内の綱紀粛正を担う内務委員は多くの人員を魔道兵の監視に割き、警戒に当たらせていた。
内務委員の監視が穏便なものであれば魔道兵もストレスなく生活できただろうが、彼らはゴミ箱の紙くず一つ一つにまで干渉し、プライバシーというものを無くしてしまうのである。
僅かでも魔道兵が反抗しようとすれば、反逆者として逮捕すら行うのだ。
「自称"選民的社会主義者"のクズ共が生徒会にはびこっていなければ、こうはならなかっただろうに」
一九四一年の十一月にヴォルクグラード魔道教導師団で活躍していたトップエースが亡命したことをきっかけに、櫛の歯が抜けるかのように亡命が相次いだ。
アヴィリオン側の政治工作があった、内務委員の一部勢力が便宜を図った……などの噂が流れたが、真意のほどは不明である。
「大佐……」
「ヴォルクグラードは腐っている。腐ったドアの集合体だ」
マイコはウォッカをあおる。
ああっ、とエレナが声を上げたが、マイコには聞こえていなかった。
「と、自分の非力を周囲のせいにしてしまったな。私もまだまだ子供だ」
それでもマイコは自らの幼稚さを素直に認め、自嘲するだけの器量は持ち合わせていた。
「笑っていいぞ、エレナ」
「怒られそうなのでやめておきます」
「食えん奴だ。だが、そこが良い」
396 :
75:2008/11/10(月) 23:16:10 ID:vN7jTSyZ
二人は苦笑しあう。
そこに一台のジープが現れた。
将校が降り立ち、二人の前で敬礼した。
マイコとエレナも敬礼する。
「迷惑をかけてすまない。邪魔をしたな」
将校は態度に敬意を、言葉に嘲りを込めて言う。
「率直に申しますと、いつ出て行かれるのでしょうか?」
エレナが怒気を含んで前に出ようとするのを制し、マイコは冷静に対応する。
「補給を終え次第、すぐにでも」
「それは良かった。我々はこれより、ファシストの侵略者を駆逐する英雄的な任務を行わなければならないのです。実戦に耐えうるかどうかもわからない、無駄飯食いのご令嬢に戦場にいられるのは、甚だ迷惑でして……」
将校の背後に控えた兵士達が、無言の圧力を二人に浴びせる。
「これはお手数をおかけした。退散することにしよう。行くぞ、エレナ」
将校に背を向けた後、マイコは切れ長の目を彼を睨んだ。
鋭い眼光を浴びた将校は一瞬たじろぐ。
「貴官らの言う侵略者――その手玉に取られないよう、帰路に祈ることにする。それでは」
397 :
75 :2008/11/10(月) 23:17:12 ID:vN7jTSyZ
投下終了
続きはまた
現在スレは351KBだけどどこまで大丈夫なんだろ
398 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/13(木) 22:22:42 ID:kggQf+Ka
人少ないのう
保守
400 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/21(金) 20:59:54 ID:gPVdPOwC
保守
401 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/24(月) 01:00:09 ID:KG7r711Q
スーパー学園大戦とか、誰か作ってくれないかな
>[―{}@{}@{}-]
なにこれ?
プロクシ規制されてるP2ユーザーの名前欄につけられるんだ
外せないんだよ
>>403 選ばれし者にだけ付けることを許された称号
一般人が付けると爆発する
406 :
75:2008/11/25(火) 23:39:00 ID:d1gqlEQP
ちょりーす
スレの建て直しを話したいので、人がいたら応答してください
元住人ではないが今見てるからksks
75氏お疲れ様です
408 :
75:2008/11/25(火) 23:45:18 ID:d1gqlEQP
test
410 :
創る名無しに見る名無し:2008/11/30(日) 21:33:50 ID:mz7UOHh7
委員会って出るけれど
軍部よりも上位機構として存在するの?
個人的には委員会が上にきた方がいいなあと思ったが
まあ一様に各学校がこういう機構の元、存立するわけではないだろうが
というか軍と学校機構の関係とかの把握がまだ自分でもできてないんだが
ついでに建て直しって
次スレのテンプレとかそういう関連?
いや、スレの最初にある荒らしテンプレで一見さんが引いちゃうから立て直すらしい
軍部じゃなかった、軍隊ではないんだった
>>412 ああ、その話でか
自分も知っているけど、確かにここではどうでもいい話だ
というかここがあのスレの所だと思わなかった
でもテンプレ内で設定だとかまとめてあった
最初来たときは目通すのに活用できたから、まあ削ったり入れたりってところでは?
さすがに今のは長すぎだから三行ぐらいでまとめた方が良いんじゃないかな
・学園同士で戦争
・魔法を使う女の子がいる
・時代は第二次大戦の時期
こんな感じで
自由度が高いのはいいと思うんだけれど…
まあテンプレはテンプレとしてまとめておくべき内容だから
あまり盛り込み過ぎもアレか
列島がどーのとかは触れないの?
かつての設定やら作品をまとめたのを見て
結構長いことやってるなあとしみじみ感じたけど
まとめwikiなんかもテンプレに入れた方がいいよね
ちょうどいま妄想中のやつ
隕石落下など一連の大災害後の世界に難民などが中心となって国家が興った
そのひとつが学園列島に学園を作った
官選で派遣されてきた教師陣、校長は一種長官みたいなもんか
生徒各学級から選ばれた委員、卒業生などからなる準軍事組織相当の担当当局や担当教師で
委員会を構成し、委員長は生徒側から選ばれそれが学校を動かしている
環境委員会、放送委員会、風紀委員会、美化委員会…等々
生徒会については微妙
魔法に関しては、教員が存在し課程を教える
各種軍事教練を生徒に行い、戦力化している
あとミスリルについて不明な部分が多いと個人的に
魔法の根源が隕石などミスリルにあるということならば
列島で魔法として発現しているのはその一端に過ぎないと解釈
教員としてやってくる人間が調査、研究していると捉えたいが…
418 :
75:2008/12/01(月) 20:57:48 ID:DNNtwJgc
テンプレは最低限の設定とまとめwikiがあればいーんじゃねーかと思う次第
ミスリルの他にマナの存在すっかり忘れてた
全貌まだよく把握できてねー、ていうかまだまだ過ぎる
75さん、ガンダムネタ多いっすねw
ブラン少佐とか懐かしいな、あの人は好きだっただけに
新訳は残念だった…他にもいろいろ思うところあるが
420 :
75:2008/12/01(月) 21:38:29 ID:DNNtwJgc
俺の話に出てくるマナ・クリスタルの存在はミスリルに統合した方がわかりやすいのではないだろうか?
意見を聞かせてくれ
>>419 実を言うとZは劇場版の後にTV版を見たので複雑な心境。
あと00ってここの板じゃどう扱われているんだろう?
いやあ、マナは別にいいかと
但しマナの転用が利かないのに対してそれの元である
ミスリルもしくはクリスタルは兵器への転用が利くというのはいいかなと思った
マナの方がマナ鉱石とか、マナエネルギーとか分かりやすいような気がするから
別に変えなくてもいいかもしれないと思う
>>420 OOは二期最初しか見てなかったけど概ね良かったと思うよ
一期の反動のせいかな、一期なんか肩透かしに感じたからねえ
今思うとどのキャラも思い出深く感じる、変わっているキャラなんかもいたりして
面白くなりそうな気がする
422 :
75:2008/12/01(月) 22:05:46 ID:DNNtwJgc
>>421 では、マナとミスリルについては話を進めていくうち固めればいいか。
魔法一つとっても色々な解釈があるだろうし。
>00
確かに変わっている人は多かったw
俺も読んでいて楽しいと思われる作品を書きたいなぁ
75さんの作品と166さんのまだ全部読み切れないんだけれど
もしかして、概念的にも両者の作品上ではミスリルとマナクリスタルって別もん…?
ミスリルは明らかに金属の一種って感じだけれど
424 :
75:2008/12/01(月) 22:14:06 ID:DNNtwJgc
マナ・クリスタル
魔道兵のマナ・エネルギーの母体。
魔道兵にとっては燃料であり内燃機関のようなもの。
これを体に埋め込むことで能力を使用できる。
ミスリルに関しては166さんに説明をお願いしたい
魔力を使用する際の必需物資みたいな感じかあ
直接埋め込まないといけないんだったか
害がありそうだから、それで年齢制限みたいな感じで上限を作って
でもまあ個人差はありそうな気がするし、一様ではなさそうだ
426 :
75:2008/12/01(月) 22:26:37 ID:DNNtwJgc
生理不順になったり身体機能がおかしくなったりは考えてる。
かなりペナルティを付けないとただでさえチートな魔道兵が更にチートな存在に・・・。
局地だしなあと思うけど
なんとか使用者自体の数を絞ったりで、対応できんかなあと思ったり
まあでも強さの問題だから、あまり数の問題か?という気がしないでもないw
戦力として使うくらいだから
バランスはとらないといけないのは分かるんだけど、如何せんね…
428 :
75:2008/12/01(月) 22:42:40 ID:DNNtwJgc
>>427 でも、結局は数じゃないのかなぁと。
少数の優秀な兵器が戦争を勝利に導いた例はないもの。
まあ両軍が魔法兵を保持し戦力として組み込んで
地上軍などへの有効な打撃を与えるぐらいの存在でいいよ
魔法兵は強力だが、ミスリルが希少、魔法力充填に数日かかるなどの問題を抱えており
戦力投入を間違えると、他の国の魔法兵を迎撃できないとかは?
既存兵器にはなるべくこちらも兵器を使い、魔法兵には魔法兵とかで対抗するとか
エーリヒはヤン並の戦術家だから魔道兵に立ち向かえてるけど、他の指揮官はどれくらいのレベルなんだろうかな
>エーリヒはヤン並の戦術家
それは冗談で言っているのか?
流石に冗談だろ
書き手が学園島の話を書くにあたって、こういうところを知っておきたいとかある?
あとはこういうことをしてほしいとか
別に「技術的な問題によって、クリスタルを埋め込むことが出来ず
兵士は装飾品として携帯することで(非効率で低性能な)魔法を行使する」
という設定の島・学園があっても構わないと思う
日本モデル学園をそんな風に技術未熟って設定で構想中だが
差は当然あるようなもんだと思う
進んでいるいない、先進後進
役に立たなそうでも
その国に於いての見方が同じではなく
さらに研究を進めていたり
ていうかむしろ体に直に埋め込む方が
危険も大きいけど簡単そうだから、次の課題は害を少なくしつつ
威力などを高める方へいくか、簡易にして普及を狙うか
そこら辺は生産力とか思想の問題とかで違うのかな
補給や整備に魔法を使ったら、前線に投入するより遥かに有効じゃね?
438 :
75:2008/12/02(火) 19:05:19 ID:WcJzj7qF
魔法技術の格差はあって然るべきじゃね
魔法技術が高ければ他の技術レベルが低くして、その逆もあるとか
そうすると学園同士の駆け引きを描けそう
ヴォルクグラードはソ連モデルだから人命軽視とはいかないまでも、尊重はしてないだろう
いなくなったらいなくなったで代わりはいくらでも用意できるぐらい生徒数がいたりするので
>>437 魔法で部品を複製したり、劣化した状態から使える状態に回復させたりできる能力があれば、敵の兵器を回収して修理→再利用の無限コンボができるんじゃないか。
鹵獲兵器だらけの部隊も貧乏臭くて好きw
あと補給と魔法の組み合わせは物資の輸送とかかな それとも燃料とかを精製するんだろうか
「本国から送られてくるのは現地の状況を無視し過ぎている
こんなことが続くようじゃここも長くないな!」
とかなんとかで、しぶとく戦を続ける野郎ども…
それは他校からの外人部隊かはたまた傭兵部隊か
441 :
75:2008/12/02(火) 20:42:58 ID:WcJzj7qF
>>439 多分、上官は勲章にしか目が無い貴族出身者なんだろうなぁ。
上官「この銃はどうやって使うんだ?」
兵士「アッヒャッヒャッヒャッヒャ!」
タイトル忘れたけどそういうラストの戦争映画があったのを覚えている。
傭兵とか外人部隊の扱いってどうしようか。
母校を見切って外人部隊に入った者と母校を最後まで信じた奴が戦場で戦う・・・という展開とかどうよ。
442 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/02(火) 20:46:53 ID:GPDhxC4X
その映画は戦争のはらわたじゃないか
日本系学園の支援を受けてる満州国系学園とか
台湾系の高砂分校とか
イギリス系学園内部のグルカ分校とか
ヴォルクグラード学園内部のウクライナ人部隊とか
よくみれば確かに外人とか他校な感じもしないでもないw
むしろそっちが合ってるか
現地の再三の要求にも関わらず、なかなか改善されず
本国当局ののろまぶりに怒りの声をあげる中堅将校というイメージ
445 :
75:2008/12/02(火) 21:04:50 ID:WcJzj7qF
懲罰学級とかやだなw
外人部隊=ゴロツキの集団じゃないのけ?
映像のはウラソフ部隊かな、POAとか書いてあったし
学生とかだと洗脳されやすい?かもしれない
秦檜みたいな奴とか現れたりして
449 :
75:2008/12/02(火) 21:27:05 ID:WcJzj7qF
>ゴロツキの集団
第二次大戦時に囚人や犯罪者で構成された部隊があった。
前線に投入されるや否や虐殺や暴行のオンパレードをやらかして師団長が処刑されたりしたそうな。
よく映画にありがちな基地外戦闘狂の傭兵は基本的にはいないらしい。
契約に関わるから無茶はやれないそうだ。
>>446 絵に描いたようなDQNクラスじゃねーかw
>>448 ウラソフの部隊やね。
整列する兵士達の前を歩く将官に眼鏡の人がいたはず、それがウラソフ。
俺はヴォルクグラードの諜報部がハニートラップ仕掛けて呂布の二の舞やらせるとか考えてた。
色々とお盛んな年頃だからねぇw
ああ、ゴロツキといえばアインザッツグルッペン
ハニトラかw
452 :
75:2008/12/02(火) 21:31:22 ID:WcJzj7qF
そういやアヴィリオンの軍をどうするか考えてなかったぜ
史実通りの四軍やると俺はモサドに消されそうだ
陸軍と海軍と空軍はわかるけどあと一個は?
454 :
75:2008/12/02(火) 21:39:26 ID:WcJzj7qF
>>453 武装親衛隊。
ものすごく極論するとティターンズをみたいな組織。
精鋭だけど戦争犯罪やった数も桁違いという。
某吸血鬼漫画で出てきた少佐のいた所。
箔付きなら別にいいんじゃない
アヴィリオン軍、最凶の部隊の名で知られるとか
最強なんかは一概にあらわせないけど
部隊の結束厚く隊員はそこの部隊に所属することを誇りに思っているとか
456 :
75:2008/12/02(火) 21:58:17 ID:WcJzj7qF
>>455 まあ、悪役にするなら最高の存在なんだけどもね>武装SS
出すのか出さないのかは話を進める上で考えた方が良いかもしれない。
・士気旺盛な精鋭部隊
・優良な装備
・鉄の意志
・その他諸々
一番すごいのは十五〜十八の少年で編成された師団があったということだ。
事実は創作よりもどうたらだぜ。
もうまったく覚えてないんだけど
クルトマイヤーだか何だかの自伝にも
平均年齢の低いとかそんな描写があった気がするよ…
明暗がある部隊もいいかもね
458 :
75:2008/12/02(火) 22:47:13 ID:WcJzj7qF
全体の五分の一ぐらいしかまだ読めてないが
むしろヤンよりかキルヒアイスに感じたなエーリヒ君は
あとマイコだかは、おしゃべりが過ぎるので転職をお勧めする
エーリヒに両親いると何か問題なん?
前スレでは学園島は孤児院で少年院で精神病院で戸塚ヨットスクールだった。
一部の権力者の子弟以外は社会のゴミと弱者の吹き溜まりで
まともな親はここに子供を送ったりしないということになっていた。
463 :
75:2008/12/03(水) 19:09:51 ID:aMoPkvh6
ちょりーす
>>459 やべぇ面白いwwwと同時に自信がなくなってきた。
>正規の教育を受けないで与えられた階級は学園島外では価値がないと思う。
そこなんだけど、学園島での階級は島外に出たらどういう扱いになるのかもまだ考えていないんだ。
階級関係なしにしたらランボーがたくさん出るんじゃね?
ゴーレムはちょっと頂けなかった…
要塞の重要性については
「あそこが落ちたとなれば、将兵は必ず動揺する
なんせ我々は散々にヒューナースベルグは本校の防波堤と喧伝し続けてきたんだからな
絶対に落とすんじゃないぞ、死んでも固守だ」とか
ホントは自分達が戦火に巻き込まれるのが嫌だとかなんとか
んで増援でのこのこやってきたのがエーリヒとか
あとマナがどうとかあったけど
それの有無によっては、環境的に魔法の使用が制約されるとかないのかな?
>>465 すごく単純な話だが寒いと魔法が使えないとか
あと『女の子の日』には魔法の能力が低下するとか
あれ? こんな時間に来客が・・・
467 :
166:2008/12/04(木) 22:58:31 ID:FbW3TgK2
ここ一ヶ月パソコンの調子が悪くてレスできなかった。orz
>>465 マナについての俺の考えだげど、属性魔法を使うにはそれぞれの属性のマナが必要てことを考えてる。
たとえば炎の魔法を使うには炎のマナが必要とか
>>459 そこなんだけど、学園島での階級は島外に出たらどういう扱いになるのかもまだ考えていないんだ。
そこは、本国で軍属になった時に一般兵士より少し優遇される感じでいいんじゃないかな?
あと、ミスリルについてだけど、前にも言ったとおり魔道兵士の武器製造に必要で、あとミスリルで作った武器でないと戦闘用の魔法は使えないって感じかな。
ゴーレムを作れるのなら「エンジンの形をしたゴーレム」を作って
燃料の要らない戦車や戦闘機にする方が有効だよなあ。
モビルスーツを作れる技術で作った戦車や戦闘機の方が
モビルスーツよりよっぽど強いってのは軍板の常識w
モビルスーツの技術で作った戦車なかった?
ガンタンクじゃなくてザクみたいなやつ(ザクタンクじゃない)
それはヒルドルブじゃないかな?
調べたらこれだわ
アヴィリオンも魔道兵に対抗するためバカ兵器を作ったりするのかな
>>467 ミスリルはマナを組成の中に含んでいるので魔法と親和性の高い物質で、
武器の材料にされる、みたいなのを考えていた
マナは属性とかいうより、マナを炎(熱)エネルギーに変換したり電気エネルギーに変換したり
って言うほうが単純で判りやすいんじゃないかな
最初から、ある属性への変換効率が高いように調整されたマナとかいうのも面白いけど
マナは単一のエネルギーにした方が確かにわかりやすい気がする
炎とか水とか、役割は個人の裁量に任せられるのかな
魔法が使える環境、分かりやすくなら
ミノスフキー粒子下とかで言ったつもりだったが
伝わったかな
魔法は付属として捉えがちだったかな自分は
女性しか使えないようだし、あと年齢?
隕石、領土や魔法の元なんかがあって
そこが争点なんかなあと思ってたから…
まだすべて把握できてはいないんだが
475 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/05(金) 16:39:57 ID:F7pMZoQg
戦争後半になるとミスリル砲を積んだ戦車が出てくるのだろうか…
魔道兵の外見イメージは旧来の魔女(三角帽被って箒に乗ったステレオタイプ)? それともリリカルなのはとか舞-乙Himeみたいな近未来タイプ?
>>475 上セーラー、下もんぺでミスリル製竹槍とかで航空機も撃墜する
おさげ髪の女学生な魔道兵を出そうかどうか迷っているのは俺だけでいい
マナ・クリスタル
・魔道兵のマナ・エネルギーの母体。
・魔道兵にとっては燃料であり内燃機関のようなもの。
・これを体に埋め込むことで能力を使用できる。
・魔力を使用する際の必需物資みたいな感じ←具体的に、どこに埋め込むのか?
・別に「技術的な問題によって、クリスタルを埋め込むことが出来ず、兵士は装飾品として携帯することで(非効率で低性能な)魔法を行使する」学園があっても良いのではないか
・マナは属性とかいうより、マナを炎(熱)エネルギーに変換したり電気エネルギーに変換したり、と言うほうが単純で判りやすいのではないか
・最初から、ある属性への変換効率が高いように調整されたマナとかいうのも面白いかもしれない
ミスリル
・ミスリルはマナを組成の中に含んでいるので魔法と親和性の高い物質で、武器の材料にされる、みたいなもの。これで剣や銃器を作るのか?
・魔法兵は強力だが、ミスリルが希少、魔法力充填に数日かかるなどの問題を抱えており、戦力投入を間違えると他の国の魔法兵を迎撃できないとかはどうか?既存兵器にはなるべくこちらも兵器を使い、魔法兵には魔法兵とかで対抗するとか 。
・あとミスリルについて不明な部分が多いと個人的に魔法の根源が隕石などミスリルにあるということならば列島で魔法として発現しているのはその一端に過ぎないと解釈
魔法関連のレスをまとめてみた。
マナは炎のマナや電気のマナではなく、『マナ』というひとつのエネルギーで魔道兵の体質や力量によって属性が別れるのはどうだろうかと提案してみる。
ミスリルに関してはマナと別物にするべきではないか?
マナが燃料だとすればミスリルは資源に相当する扱いにして、
マナ→魔道兵の飛行能力やローブの精製
ミスリル→魔道兵の兵装の製造
この世界における魔法はオーバーテクノロジーとして限られた範囲で使用されている・・・とかはどうだろう
こんな考え方ではどうか。
>>476 ミスリル製竹槍って竹じゃねーだろwww
ロンギヌスの槍みたいだなw
479 :
75:2008/12/05(金) 22:52:09 ID:aTh7Q9St
おつー
エーリヒはちょい悪なキルヒアイスだよ、やっぱり
誰か残っている者はいるか?
みんなやられちまって
あそこのどこかで転がってますよ…
休むのは死んでからだぞ ZAP ZAP
SSの展開はマイコが最愛の弟を寝取られたら面白そうだなw
序盤チート能力でやりたい放題なんだからそれなりに代償は払ってもらいたい
虫けらのように葬っていた連中に
呆気なくやられるというのも
それはそれで因果な気がする
485 :
75:2008/12/06(土) 17:37:06 ID:8JU1u0Hr
誰に寝取られるんだろうと聞いてみたい心境
女同士でも寝取られは成立するんだろうか
>>484 クレヨンしんちゃんの映画でそういう展開なかったっけ
戦いに勝って帰る最中、狙撃されて死んじゃうの・・・
>>485 弟が敵さんか味方に篭絡されたら
即ち寝とられになるんじゃないの?
クレしんかあ、おまけに映画版を?
ちょっと分からないかもだぜ
マイコ弟「お姉ちゃんよりはやーい」
488 :
75:2008/12/06(土) 23:21:01 ID:8JU1u0Hr
バハラグネタが出てくるってどういうことなの…
>>486 話の展開として寝取られを面白そうなんだけど、アレルギーがすごい人もいるからなぁ。
最近も寝取られ関連で嫌なニュースがあったし。
あとクレしんの映画はアッパレ戦国大合戦という名前だった。
489 :
75:2008/12/06(土) 23:24:03 ID:8JU1u0Hr
他の人がどういう話を考えてるのかすごく気になるんだぜ
ちょいと聞かせてみてくれ
これってどこまでシェアードで、どこから自分で考えるものなの?
テンプレ読んだけどよくわからん
WWU+魔法もので挫折したのがあるからそれを応用できたらと思ったんだが
492 :
75:2008/12/06(土) 23:56:54 ID:8JU1u0Hr
日本モデルの学園を書ける人はすげぇなと思う次第
特に地上戦
>>491 ・学園同士で戦争
・魔法という概念がある
・隕石で一度世界が滅んだ
縛りはこれぐらいっす
>>492 そうか・・・学園入れるのがしんどいかなあ
494 :
75:2008/12/07(日) 00:33:54 ID:89Qb1XA9
>>493 軍隊と学園は水と油かもしれないからね
でも不可能じゃないと思うんだぜ
具体的に話を聞かせてくれ
>>494 正直まともに戦争やってたら学園生活する暇なんてないしなw
そういやWWUとかの時代しばりも無いのんか?
496 :
75:2008/12/07(日) 10:13:10 ID:89Qb1XA9
>>495 いかん、それも忘れていた。
時代はWW2限定で。
学園は軍事関連を教育する機関なんじゃ
ハートマンみたいな人が新兵を教育するそんな感じ
で、教練修了前に無理やりかり出されて、無残に散っていくの
ハートマンよりソベルだろ
499 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/07(日) 17:26:35 ID:wDWe0aYK
ヒムメルストオスでいいよ
班長風情だが
500 :
75:2008/12/07(日) 18:05:53 ID:89Qb1XA9
教官というか隊長と言うとウィンターズが真っ先に思い浮かぶ
ソベルは嫌な奴として作品では描かれていたけど、晩年はけっこう悲しい人生を送ったそうな。
>>497 大戦末期になると悲惨だろうなぁと考えつつ、学園島における戦いは何をもって勝利とするのかと考えてみた。
学園を制圧もしくは併合してしまったら本国が乗り込んでくるわけだし、お互いに自重するんだろうか。
俺が考えていたのは島に学園しかないので進撃には補給面での問題が付きまとい、なかなか攻め込めないとか。
生き残ることに勝る勝利はない
502 :
75:2008/12/07(日) 19:14:22 ID:89Qb1XA9
>>501 学園ならではの「生き残った故の悲劇」というのもあるんじゃないかな。
生き残って本校に戻ってきたらクラスでの生存者は自分だけとか・・・。
流石にクラス全員が前線で戦う生徒で占められていることはないと思うけど。
本国の権益を守る先兵として働きつつ
一方で学園として自治を主張し学園内での権力を固め
魔法関連技術、資源に対し影響力を保持
軍閥化を推進し、本国にも浸透を図らんと画策…
なんて夢がないか
504 :
75:2008/12/07(日) 20:17:12 ID:89Qb1XA9
軍閥化→WW2で三国志とか夢があると思うの
本国まで出したら風呂敷たためない気もするけど
505 :
75:2008/12/07(日) 20:26:36 ID:89Qb1XA9
ところで兵器の名称ってT-34とかSu-85みたいな文字列にするのと、マウスやティーガーみたいに固有名詞のどちらがわかりやすいかな。
あとSSには適度に空白を入れた方がいいのかしら
ミリオタだけが読むわけじゃないからわかりやすい名前を付けた方がいいよ
名前出て一瞬でイメージ掴めないといけないんじゃない?
知らない人にとってはY号戦車でもティーガーでもあんまり変わらないな。
統一できていればどちらでも構わんのじゃないかと思う。
おっと本日は真珠湾攻撃の日か。
ミスリル日本刀『ナグモ零式』を携えた空飛ぶ魔法少女が
パールハーバー学園にトラトラトラするSSでも書いてみるかのう
クリタ百式で燕返しですよ
s.t.a.l..k.e.rみたいに、正規軍同士の戦いじゃなく、
いろんな勢力(西側・露西亜・その他)の息がかかった連中が
未知の物質を求めて封鎖地域で延々と小競り合いをしている話はどうかな
戦車とか砲兵の出番はなさそうだが。
stalkerとかfalloutみたいな雰囲気は好き
どっちもプレイしたことないから雰囲気しか知らないんだけどw
俺が今考えてるのは、マナは放射能物質みたいに人体に有害な物質で
そのマナが蔓延してる外界を不自由なく動けるのは
マナを制御できる連中=魔法使いだけっていう閉鎖的な世界
隕石落下後の世界で、隕石によってもたらされたと思しき物質、ミスリルや
マナの結晶化したものであるクリスタルを入手するために
隕石落下地点である学園島列島に、魔法使いあるいはマナ耐性を持った人間が送り込まれる
特に多かったのが、落下後の世界で難民戦災孤児となった児童達であった…
というのは考えてるね
児童=学生兵士達は国も帰るべき場所もないから、島の土地を少しでも手に入れれば
自分たちの新しい故郷が手に入るという意識で戦っている学園もあるとか
マナってかなり有害な物質ではないかと勘ぐってみる。
この世界では核ではなくマナが戦後世界を左右するかもな。
>>512 そして約束の地を見つけた生徒たちが群雄割拠の中に独立校を作り、四度に渡る戦争を行うんですね。
シャーマンを魔改造したりするんですね
体入れてるとやばいみたいな感じだから
実際そうなんだろう
食糧事情なんかも悪化して
しまいにゃ難民まで出る始末にまでなっている世界なんだろうなあと思ってた
列島に進駐する訳は、まだ微妙な感じ
>>510 そういうの聞くと型月みたいな話もできそうだよなぁw
群像劇に伝奇モノ、戦記にラブコメと色々話が作れるよね、この島は
てゆーかやっぱ配給なんかな?
新聞や文芸なんか娯楽とかも委員会が統制してるのか?
風紀委員の目をかいくぐってエロ本読むのは定番だな
代理戦争をやって容易に決着がついてほしくない以上、物資不足で干上がるのはなさそうな気がする。
前に出てた面白いレスに「潜水艦で封鎖してしまえばいい」とかあったけどなw
海戦ってあるのかなぁ…魔道兵VS駆逐艦で海上護衛戦とかいいかも
近海ぐらいでしか行動できない気がする魔道兵は
そこらへんは単にマナやら行動限界の話だが
あーそうか、鯖移転あったから専ブラでは見れてるけど
昔のログもってない人には直接見れないよな…すまん
創作板あぷろだに75氏?の作品来てるね
作者的にどんな世界がいいのかしたいのか気になるな
526 :
75:2008/12/09(火) 20:01:10 ID:hWcCgNkp
ようやく第一話が完成したんだぜ!
今夜21:00から投下します。
527 :
75:2008/12/09(火) 21:01:13 ID:hWcCgNkp
学園島戦記譚 -序章編-
第一話
プロローグ
灰色の空が低く立ち込めている。
泥と海と化した地面には、枯れ木が数本……寂しげに生えている。
「泥……泥……うんざりだ」
「愚痴を言っても仕方ないだろ」
雨水が溜まり、ぬかるんだ塹壕の中で二つのヘルメットが動いた。
「ほら、コーヒーだ」
カール・リューベックは戦友であるアントン・ケプナーに代用コーヒーの入った鉄製コップを渡した。
茶色と緑の豆散らしたような色彩の迷彩服に身を包んだ二人の顔は、まだ年若い。
二人は兵士の身なりをしていても、二人は十代の少年なのだ。
「ああ、ありがとう」
一口飲んで、ケプナーは顔をゆがめた。
「涙が出るぐらい酷い味だな……こいつはひどい。代用コーヒーなんてものを考えたやつは、コーヒーの神様に謝るべきだ」
ああ、そうだなと気の無い返事をして、カールは疲れた様子で弾薬ケースに腰を下ろした。
「お前の舌が腐ってるだけだ。代用でも、飲めるだけありがたいと思え」
カールは塗装が剥げたヘルメットを傍らに置き、自動小銃を塹壕の壁に立てかけた。
「本物のコーヒーなんざ、もう半年も飲んでいないよ……」
銀紙を破ってチョコレートを頬張るカールの横顔は無精髭とやつれた頬のせいで、実年齢を十歳ほど上乗せしているように見えた。
「ったく……不景気な面しやがって」
横目で疲弊し切った戦友を見ながら、コーヒーを捨てたケプナーは塹壕から頭を出す。
「宇宙からでけぇ石が落ちてこなけりゃ、俺たちだってこんな島で戦争やってないぜ」
二人のいる塹壕のすぐ近くに、巨大なクレーターが広がっていた。
「またケプナーの愚痴が始まった。少しは現実を受け止める器量を持てよ」
カールは二個目のチョコレートを口に放り込み、銀紙を丸めてポケットに入れた。
「隕石が落ちて世の中が滅茶苦茶になった挙句、学校同士で戦争なんて笑い話にもなりやしない。あと五十年もすれば、子供向け小説の題材になるかもな」
「そいつはうれしい。銃を撃つだけの肉人形みたいな俺たちが死ぬことで、次の世代に楽しみの種を残してやれるってわけだ。うれしくって涙が出そうだぜ」
ケプナーが愚痴るよりも早く、カールは何かに気づいて塹壕から身を乗り出した。
「おい、狙撃されるぞ」
「うるさい! 黙っていろ!」
528 :
75:2008/12/09(火) 21:03:22 ID:hWcCgNkp
その言い方はなんだとケプナーが怒るより早く、彼方からの砲声が耳に入った。
「伏せろ!」
叫びながらヘルメットを被り、カールもケプナーも急いで塹壕に隠れた。
二人が湿った泥の上に体を丸めた直後、猛烈な砲撃が降り注いだ。
「うわァ! か、母さァん!」
飛来した砲弾の乾いた擦過音と共に、衝撃波が塹壕の周囲を揺るがせた。
白と黄色の爆煙が炸裂し、黒い爆煙の中で二度目、三度目の爆発が起きる。
「助けくれ! 死にたくない!」
「死にたい奴がいるのかよ!」
暴れまわる死と破壊の中で、カールとケプラーは無力だった。
できることといえば、頭を抱え、丸くなって万が一の直撃が自分らを捉えないよう祈るだけだ。
「こんなの戦争じゃねぇ! 虐殺だ!」
ケプナーの叫びも砲撃の音にかき消された。
一時間ほど経った頃、大地を揺るがし続けた砲撃はようやく終わりを告げた。
「畜生……なんてことしやがるんだ……」
泥塗れになったカールの顔を風が撫でる。
灰色の雲は空を流れ、火災の噴煙と入り混じって消えていく。
煙が吹き散らされると、眼前に穴だらけになった地面が現れた。
「よぉケプナー、生きてるか?」
「死んだ方がマシだ」
ケプナーは自分が失禁していることに気付いたが、幸いにもカールに馬鹿にされなかった。
失禁よりも洒落にならない事態が眼前に押し寄せてきたからである。
「なんだこの音は……」
カタカタという金属音が遠方から聞こえてくる。
カールは目脂の溜まった目を擦った。
「なんてこった……」
薄汚れた顔に青いものが侵食していく。
敵が来る。
「戦車が来るぞ。たくさん、たくさん来るぞ! 歩兵もいる!」
顔一面に絶望を貼り付けたカールの視線の先には、敵――ヴォルクグラード軍が押し寄せている。
しわがれた声を上げて突進する歩兵は誰もが滅多に壊れないppsh短機関銃を持ち、茶色い戦闘服を着て、薄汚いヘルメットを被っている。
戦車もいた。
ヴォルクのT-34"ロジーナ"中戦車は質実剛健を具現化したような兵器で、ヴォルクグラード軍がいれば、どこにでもいる。
ヴォルク軍とはロジーナなのだ――とさえ、条約軍では言われるものだ。
ケプナーやカールの所属するアヴィリオン学園は、ヴォルクグラード人民学園――かつてのソビエト連邦と呼ばれた国家の血肉と薫香を多量に受け継いだ、学園島最大の巨校と戦火を交えている。
学園島ではアヴィリオン軍を筆頭とする西側諸校を西方条約軍、ヴォルクグラード軍を省略してヴォルク軍と呼称していた。
「カール、ヴォルクの戦車隊だ。逃げようぜ。殺されちまう」
「に、逃げても追いつかれるだけだ!」
「とりあえず本部に連絡を……増援を呼ばないと!」
どうにかして状況を打開しようとするケプナーの願いは、白煙を漂わせ、火花を散らす無線機だったものの姿を視認したことで打ち砕かれた。
「もう終わりだァ!」
「何が終わりだ! 俺は死にたくなんてないぞ!」
大粒の脂汗を額に滲ませながら、カールはパンツァーシュレックを準備した。
この対戦車火器は"オーフェンローア(煙突)"とも言われ、人間代の煙突に鉄板が付いたような形をしている。
「ケプナー! お前も準備しろ!」
「畜生! 畜生ッ! 畜生ッ!」
支援
支援
支援
涙声になりながら、ケプナーはStg44自動小銃にマガジンを差し込み、コッキングレバーを引く。
震える手で銃を構え、迫り来る敵兵に照準を合わせた。
「何人いるんだよ……敵は……」
自動小銃のマガジンには三十発の弾丸が込められている。
だが、銃口の先にいる敵は、明らかにその三倍はいた。
「あと一週間で休暇だったのに……」
目尻に涙を溜めたカールがパンツァーシュレックの引き金を引こうとしたとき、背後から聞きなれない砲声が響いた。
直後に、ヴォルク軍戦車の一台が炎に包まれた。
「なんだ!?」
ケプナーが背後を見てみると、敵ではなく味方の戦車が歩兵を乗せて近づいていた。
直線的なデザインの砲塔や車体を持つ重戦車は、何度もケプナーの命を救ってくれた。
「ティーゲルだ!」
虎と名付けられた重戦車を、条約軍兵士の誰もが希望と勝利の象徴として信頼を寄せていた。
ティーガー戦車に搭載された八十八ミリ戦車砲が唸りを上げる。
ロジーナが一台、爆炎に包まれた。炎と爆発が周囲に展開した歩兵をズタズタに引き裂く。
十五台ほど撃破されたところでヴォルク軍は後退を始めた。
「いいぞ! 全部やっちまえ!」
「待て!」
塹壕を越えて敵を追撃しようとする歩兵部隊に同行しようとしたカールの腕を、ケプナーは抑えた。
「お前、敵は逃げてるんだぞ?」
「様子がおかしい!」
前進していた数名の条約軍歩兵が両断されたのは、その直後だった。
左右に分断された肉体が湿った音を立てて、地面に崩れ落ちる。
「なっ……」
二人は青ざめて、再び塹壕へと戻った。
「ヴェルナーとヒッケルがやられた!」
「畜生! 敵はどこだ!?」
増援として現れた条約軍歩兵部隊は荒々しい声を上げ、四方に散開した。
「警戒しろ! 敵は……」
指揮官が立ち上がって命令を叫んだ直後、頭が消えた。
何か高速のもので吹き飛ばされたのだとケプナーが理解できたのは、肉片交じりの血霧が風に流されていくところを見たからだ。
「一体……何が起こっているんだ!?」
呆然とするカールの前で異変は続く。
刹那、ティーガー戦車が爆炎の中に消え、吹き飛んだ砲塔が地面に叩きつけられた。
「冗談だろ……」
黒煙と炎が風によって流された後、その中から黒と赤の着衣に身を包んだ女が現れた。
青い粒子を絶えず放つ二枚の翼が背中に生え、腰や肩には装甲板にも似た装具で守られている。
支援
支援
535 :
75:2008/12/09(火) 21:05:41 ID:hWcCgNkp
戦場に不釣合いな輝く琥珀色の瞳。
死臭交じりの風に靡く濃紺の髪。
「ま……魔女だ……魔道兵だ……」
戦場にいた全ての条約軍兵士の顔に恐怖と絶望が音も立てずに張り付いた。
「撃て! 火力を集中しろ!」
「相手は一体だ! 勝てない相手じゃない!」
自動小銃から戦車砲まで、ありとあらゆる火力が魔道兵に差し向けられた。
条約軍の兵士は誰もが恐怖に駆られていた。
「当たらない!?」
「馬鹿な! そんな……」
必死に引き金を引く兵士達をあざ笑うかのように、魔道兵はことごとく攻撃を回避した。
狙い通りに発射された僅かな弾丸でさえ、魔道兵が展開する緑色の粒子の壁で阻まれてしまう。
背中や脚部の排気口らしく箇所から青い粒子を噴射して姿勢を制御し、銃弾の射線から体躯を逸らす。
琥珀色の瞳が輝いて、魔道兵は右手に携えたライフル状の兵器から光弾を放つ。
瞬間移動にも似た機動で放たれた光弾は、寸分の狂いもなく目標を捉えた。
光弾は条約軍兵士の頭を吹き飛ばし、胸に大きな穴を開けた。
「そんな玩具で、このティーゲルの装甲が破れるものか!」
だが魔道兵の凶悪極まりない攻撃ですらも、重戦車の分厚い正面装甲までは破ることはできなかった。
魔道兵は爪先が地面を擦るほどの低空で戦車に肉薄する。
右手に粒子のエネルギーを集中させて、一気に戦車の前面装甲に突き入れた。
砕け散った正面装甲が爆砕し、エネルギーの余波が戦車の車体後部を突き破った。
「後ろを見せているぞ!」
「パンツァーファウストだ! 急げ!」
生き残った歩兵達が黒と赤のローブを纏った魔道兵を狙おうと対戦車火器の集中射撃を浴びせる。
「光の壁が無ければ!」
殺到する死と破壊を金色の閃光が遮った。
緑の白の着衣。
金色の髪。
決意と殺気に染め抜かれた柔和な横顔――。
新たな魔道兵が現れ、手にした長刀で銃弾を弾き返し、歩兵を切り裂いていく。
戦場に降臨した二人の魔道兵は一方的にして圧倒的な力でアヴィリオン軍の増援部隊を粉砕してしまう。
瞬く間に重戦車が六両と百名以上の歩兵が血祭りに上げられた。
「どうするカール!?」
「逃げるに決まっているだろ! ケプナー!」
殺戮の一部始終を塹壕から見続けていた二人は、血相を変えてその場所から逃げ出した。
「逃げる! 逃げるしかない!」
二人とも立ち向かうという選択肢はもうどこにも存在していなかった。
生身で空を飛び、戦車を破壊する化け物を倒せる自信も無ければ、倒せそうな武器も無い。
「逃げるって、どこへ行くんだよ!」
「本部へ……」
返事をする前に、カール・リューベックは絶命した。
「カール!」
緑と白のローブを纏った魔道兵が投げた長刀が背中に突き刺さり、血液の噴水を上げていた。
「ああっ……なんてことだ……なんて……」
ケプナーは嘔吐感から口を押さえ、その場に跪いた。
まだカールの目は生前の色をそのままに残している。
だが、もう彼は瞬きもしなければ臭い息も吐かない。
「畜生……」
戦友の死を目の当たりにしてケプナーは発狂しそうになる。
涙で潤んだケプナーの視線の先で、黒と赤のローブを着た魔道兵が得物を片手にゆっくりと歩を進めていた。
端麗な顔には汚れ一つ無く、まるで地獄を闊歩する女神の姿にも見える。
まるで優美でもあるその姿にケプナーの怒りと嫌悪感は頂点に達した。
「畜生……」
ケプラーはホルスターから拳銃を抜く。
「畜生……」
拳銃のセイフティを外し、銃口を魔道兵に向けた。
「殺してやる! ぶっ殺してやる!」
ケプナーは叫びながら引き金を引き続けた。
弾丸の全てが、魔道兵の周囲に漂う緑色の結界によって阻まれた。
彼が最後に聞いたのは、自分の頭蓋が光弾によって撃ち砕かれて、弾けた脳漿が辺り一面に飛び散る音だった。
支援
支援
538 :
75:2008/12/09(火) 21:07:51 ID:hWcCgNkp
とりあえずプロローグ終了。
ちょっと一休みします。
感想とか考察とか大歓迎なり。
539 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/09(火) 21:09:31 ID:vlMdtnMg
私怨
540 :
75:2008/12/09(火) 21:12:01 ID:hWcCgNkp
21:30分より投下再開予定
まだ様子見ー
うむむ、プロローグからさっそく血生臭いね
543 :
75:2008/12/09(火) 21:23:18 ID:hWcCgNkp
\ポロリもあるよ!/
しえん
545 :
75:2008/12/09(火) 21:31:19 ID:hWcCgNkp
第一章
T
泥濘化した地上の上を進む陸上戦艦クロンシュタット。
周囲にはT-34戦車やSu-85自走砲の姿がある。
戦車の上に跨乗していたヴォルクグラード兵達は空に光の青い粒子が光跡を描いているのに気付く。
「なんだあれは?」
「天使様だよ」
「天使様ねぇ……」
一人の兵士は黒ずんだ指の間にすっかり短くなった煙草を挟み、また口へと戻した。
「天使様がいるのは天国だ。ここは地獄だよ」
泥と垢で顔を汚した年若い兵士達の視線を集めながら、二つの光跡は艦へと吸い込まれた。
支援
547 :
75:2008/12/09(火) 21:32:50 ID:hWcCgNkp
ヴォルクグラード軍の魔道兵マイコ・パステルナークが着艦コースに入ると、陸上戦艦クロンシュタットの前部ハッチが開いた。
視線の先にある巨大な母艦はマイコにとって帰るべき場所だ。
(着艦というものは、制御された墜落なのだ)
誘導クルーの指示に従いながら、マイコは鉄の塊へと身を投じる。
減速を行いながら高度を下げ、そのまま降下した。
魔道兵と航空機で異なる部分と言えば、そのサイズの違いが最もたる例だ。
人間と同じ大きさでありながら、魔道兵は航空機以上の能力を有している。
(少し早すぎたかな……)
張り裂けそうになる心臓の鼓動を聞きながら、赤と黒のローブを纏ったマイコは張り巡らされたネットに受け止められた。
格納庫の中で体が静止した瞬間、体中から汗が噴き出す。
マイコに怪我のないことを確認した誘導員達は胸を撫で下ろして作業に戻る。
「ベルクト2、着艦コースに入れ」
もう一人の魔道兵は流れる動作で着艦し、ネットに受け止められることもなく着艦を成功させた。
立ち上がった少女の金髪が左右に揺れると、クルー達が歓声を上げた。
「さすがはヴィレンスカヤ中尉! ベテランだけあるぜ!」
「野郎共、見物は終わりだ。作業に戻れ!」
「次回の出撃はいつになるかわからないからな! 最高の状態に仕上げるんだ!」
格納庫を行き交うクルーの熱気が増す。
着艦する魔道兵の速度を減衰させるアレスティングワイヤーを交換したり、魔道兵の射出に利用されるカタパルトをメンテナンスするためだ。
赤や緑の作業服を着用したクルーやメカニックが慌しく行き交う。
「見事なものだな」
両手を腰にあてて、マイコはクルーらの無駄が無く洗練された作業に見とれた。
彼ら整備班が後方支援を完璧な状態に保っていられるからこそ、魔道兵も最良の状態で戦うことができるのだ。
「後で連中にウォッカでも差し入れてやるか……」
「大佐、未成年の飲酒はいけません」
背後から声がかかった。
「お疲れ様です、大佐」
「別に疲れてはいない」
マイコが振り返ると、副官であるエレナ・ヴィレンスカヤが敬礼していた。
緑と白のローブから、グレーを基調にした軍服へを着衣を変えている。
「張り合いの無い敵だったな。あれなら我々が出るまでもなかった」
自らもローブを解除して、二人は並んで歩き出す。
「もう少し歯ごたえのある敵と戦いたいものだ」
「局地戦で勝利したぐらいで奢るのは危険ですよ、大佐」
「エレナは心配性だな。ティーガー戦車が三台に歩兵が三十人。まあ、まずまずの戦果だな」
マイコは浮かれた様子だったが、
「大佐、勝利の高揚で気を緩めてはいけないと士官教育で習ったではありませんか」
対照的に、エレナの表情は厳しいものだった。
やや垂れ気味の青い双眸に非難の色が滲んでいた。
「本当、お前は心配性だな。わかった……自重しよう」
勝利の高揚によって些か調子に乗り過ぎていたとマイコは自責した。
マイコが軽率な発言をしたり視野を狭めてしまう時は、必ずエレナが異を唱えるものだった。
時に『そういった発言は身を滅ぼします。どうかご注意を』と諭すような口調で言うこともあれば、『今すぐ発言を撤回しなさい』と厳しい調子で否定することもある。
決して盲従ではない信頼関係をマイコは気に入っていた。
「ところでエレナ……」
マイコの言葉は、格納庫を出た途端に鼻腔を満たし尽くした死臭と腐臭によって途切れた。
狭い通路に護送を待つ負傷者が並んでいる。
いや、詰め込まれていると言った方が正しい。
恐らくは戦車隊や歩兵部隊の兵士達であろう――茶色い軍服を誰もが身に纏っている。
彼らの傷つき疲弊した顔は、どれも十代の若者のそれだった。
「行くぞ、エレナ」
マイコは意図せずして視線を逸らしてしまったが、エレナは何かを求める声が聞こえたらしく、足を止めた。
支援
549 :
75:2008/12/09(火) 21:33:29 ID:hWcCgNkp
「おい……」
「大佐は先に行ってください」
「おいエレナ、待て、おい」
そうかと言って場を離れるわけにもいかず、マイコは負傷兵のところへ歩いていくエレナの後を追った。
エレナは一人の兵士の前で足を止めた。
負傷兵は両目を負傷しているらしく、目の部分を覆う包帯は赤黒く染まっていた。
「私を呼んだのは、貴方ですか?」
エレナはそっと兵士の手を握ってやる。
「ああ……ソフィアかい? 来てくれたんだね。来てくれたんだね」
「大丈夫。もう、大丈夫だから」
身を屈めて、エレナは兵士を抱きしめた。
兵士の血で自分の軍服が汚れても、金髪の少女は気にも留めなかった。
「来てくれるとわかっていたよ」
赤黒い色が滲んだ包帯の間から、涙と血が混ざり合った雫が滴る。
「戦争に行くとき……キスをする暇がなかった。キスしてくれないか」
エレナは青い双眸でマイコに目配せした。
マイコが頷くと、エレナは兵士の頬をそっと撫で、キスをした。
ありがとう……と静かに言った後、ぐったりと兵士の頭が垂れた。
「エレナ、世の中にはどうしようもないことがたくさんあるんだ。これも、その一つだよ」
「でも……」
負傷兵の詰まった廊下から出るなり、嗚咽にも似た声をエレナは上げた。
「お前が悲しんでも、あの兵士は生き返らない」
やりきれない様子で唇を噛むエレナの肩をマイコは叩いた。
世の中に"どうしようもないこと"があまりにも多い事実を、マイコは嫌というほど知っていた。
隕石の落下に端を発した終わりの無い地域紛争、そして内戦は多くの悲劇をもたらした。
自分の名前すら知らず、戦場で友人や幼子が殺されていく毎日。
恐怖と飢えに震える弟を必死で宥め、大丈夫だよと抱き締めた日々をマイコは忘れない。
やがてマイコは魔道兵としての才覚を見出され、生きるために他人を殺す毎日を送るようになった。
傍から見れば人殺しに過ぎないだろうが、そんなことはどうでも良かった。
「悲しいと思うなら、自分にできることをするしかないんだ。我々魔道兵には、多くのことができるのだから……」
マイコの琥珀色の瞳に悲しみはない。
ただ瞳の奥で、決意の炎が輝いているだけだ。
支援
551 :
75:2008/12/09(火) 21:34:14 ID:hWcCgNkp
ヴォルクグラード軍陸上戦艦クロンシュタットの艦長を務めているのは、セルゲイ・ベリエフ中佐である。
今年で四十を数える年齢の蓄えられた顎鬚とがっしりとした体躯は、部下たちから年長者として、上官として慕われていた。
「パステルナーク大佐及びヴィレンスカヤ中尉、両名とも無事に帰還しました」
頷いた後、ベリエフはすぐに命令を出す。
「付近に敵影はあるか?」
「偵察機の報告によると確認されていません」
「うむ。では敵の新手が来る前に戦場を離脱する。引き続き偵察を続行させろ」
背筋をピンと伸ばして艦橋に立っている。
彼にとって遥かに年の離れた上官と部下――もっとも部下はほとんどが大きく年が離れているが――が現れたのは、それから少ししてのことだった。
「帰ったぞ」
「只今戻りました」
二人の少女が敬礼する。
ベリエフは親と子供ほど離れたこの二人を一人は上官として、もう一人は部下として信頼していた。
「お二人とも、ご無事で何よりでした」
敬礼を返すと、マイコ・パステルナークは濃紺の髪を靡かせて指揮官用のシートに腰掛けた。
背中を預けつつ、マイコは訊く。
「ベリエフ、戦況はどうなっているか?」
頷いて、質実剛健を身で表す中佐は説明した。
「右翼の第七親衛狙撃兵軍団はヒューナースベルクの外縁に到達しました。左翼の第二騎兵軍団及び中央の第五戦車軍団は敵の激しい抵抗に遭い、一時後退を余儀なくされています。かなりの損害が出たとの報告も入っております」
「そうか……敵も必死なのだな」
形の良い顎に指を置くマイコの脳裏に、先ほどの負傷兵達が思い浮かぶ。
戦局全体が我々ヴォルクグラードの有利に動いているとはいえ、戦えば人は死ぬ。無傷の勝利など有り得ない。
「敵は増強されています。何より、敵の補給線はこちらよりも短く、何より地の利があります」
ベリエフの言葉をエレナが続けた。
「この島の戦いは海での戦いに似ています。点と点で拠点が結ばれ、そこに至るまで拠点は一つも無い……もし一度敗れでもしたら、我が軍は大幅な後退を余儀なくされます」
戦争において何が一番大切かと聞かれて、兵器の性能と答える奴にろくな輩がいないことをマイコは知っている。
何よりも大事なのは補給なのだ。
いくら戦車の火力と装甲、戦闘機の速度と機動性を兼ね備えた魔道兵と言えども、食料無しではいずれ餓死するだけだ。
「それはともかくとして、我が隊には休暇が与えられました。中央軍事委員会が気を利かせてくれたのでしょう」
ベリエフの言葉に、形だけとはいえ嬉しそうに対応したのはエレナだけだった。
「そんなに可愛げのある連中とも思えんがなぁ。到着するなりチェキストから査問会に呼び出されでもしたらと考えると、いよいよもって首筋が寒くなってくる」
マイコは頬杖をつき、眉をひそめた。
彼女が放った「チェキストの査問会」という言葉に、露骨に恐怖心を露にするブリッジクルー達。
内務委員会は下手をすれば、アヴィリオン軍の精鋭部隊よりも恐れられている。
支援
553 :
75:2008/12/09(火) 21:35:04 ID:hWcCgNkp
エレナが「大丈夫ですよ。続けてください」と含むところの無い微笑みを浮かべて言葉を発しなかったら、沈黙と重苦しい空気に絶えられなくなる者が出たかもしれない。
「笑えない冗談は止めてください」
「怖いのか? 政治将校が怖くて社会主義国家の軍隊に身を置けるか」
「そういう問題では……」
こほん、とベリエフの咳が入った。
「さしあたり私としましては、内務委員の悪意よりも山積みになった宿題の山の方が怖い相手だと存じます。お済みになられていないでしょう?」
軍人よりも教師に近い表情でベリエフが問い詰めると、マイコは気まずそうに視線を逸らした。
「前線勤務の人間に人を殴り殺せそうな量の課題を出すなんて、教務部の悪意が感じられるぞ。いや、別にやってない、やる気が無いと言いたいわけではない」
「確かに大佐は優秀な軍人であります。ですがヴォルクグラード人民学園に籍を置いている以上、課題を終わらせないと留年になってしまいます。とりあえず、帰路は短い距離ではありません。大佐にはその間、課題の整理をお願いします」
「だがな……」
「大佐がもし部下だったとして、宿題を済ませない上官についていこうと思いますか?」
答えはNO一択だったので、マイコは素直に受け入れた。
「そうだな。進言に感謝する。部屋に戻っているから、ベリエフ、後の指揮は代行してくれ」
部下とはいえ、ベリーエフは自分より二十年は長く生きているのだ。それを上官の衣を着て一蹴するなど、マイコの羞恥心が許さなかった。
上官と部下という間柄は軍という組織内部でのことであり、マイコの人間として器量はベリエフに到底及ばない。
もしマイコが魔道兵としての力量を有していなかったら立場は逆転していたはずだ。
「ではベリエフ、指揮を……」
マイコが席を立とうとしたとき、通信手が叫んだ。
「味方の救援要請です!」
「詳しく聞きたい。回線をこちらに回せ」
軍人の顔へと戻った年若い大佐はシートに戻る。
マイコはその時、傍らの金髪の少女が青い瞳を自分に向けていることに気付いた。
支援
支援
支援
557 :
75:2008/12/09(火) 21:37:10 ID:hWcCgNkp
エレナ・ヴィレンスカヤ。
マイコがこの金髪の少女に出会ったのは、ある意味で必然であったのかもしれない。
「貴方の未来を切り開く協力をさせてください。私は未来を失った者です」
初夏の日差しが木漏れ日となって差し込む木の下で、金髪の少女は胸の内をマイコに明かした。
二人は多くの共通点を有していた。
戦火に命を脅かされる過去を有していること。
魔道兵としての才能を後天的な努力で引き上げたこと。
女としての幸せを捨てたこと。
「私にはもう、何も守るものがないのです。ですが、貴方にはある」
それはなんだという問いに、エレナはこう答えた。
「血を分けた兄弟の存在です。私は弟を守ることができなかった……だから私は、貴方の理想を――弟さんの未来を守る手伝いをさせて頂きたいのです」
エレナの青い瞳には一片の曇りもなかった。
「わかった。では私のために力を尽くしてくれ。お前が私を信じてくれたように、私もお前を信じることにする」
やがて二人は共に空を舞い、戦場に死を振りまく存在になった。
迷いは一切無かった。
敵を倒し、味方を勝利させる。
二人は守るべきものを守るためには、一切の容赦なく敵を踏み倒していくことが最良だと知っていたのだ。
敵は決してアヴィリオンだけではない。
必要とあらばヴォルクグラードでも、二人は倒すつもりでいた。
支援
559 :
75:2008/12/09(火) 21:38:38 ID:hWcCgNkp
「撤退するアヴィリオン軍を追撃した我が軍の戦車隊が、反撃を受けて孤立しているとのことです!」
緊張を過分に含めた通信手の声に対応するよりも早く、マイコはエレナに目配せした。
エレナが頷くと、マイコもまた同調した。
「救援に向かう。クロンシュタットは最大戦速で戦域に急行する! 私も出るぞ」
ベリエフに指揮を任せると、年若い二人の将校は足早に格納庫へと急いだ。
最初は早足だった足取りが、五歩も進まないうちに疾走へと変わる。
パイプや電線が走る通路の角で、二人は軍服を着た一団と鉢合わせした。兵士達は一瞬驚きを表情に張り付かせたが、すぐに姿勢を正して敬礼した。
「ご武運を! 同志大佐殿!」
マイコは走りながら、親指を立てて返答する。
「ああ。戦果を期待してくれ!」
四つほど角を過ぎたとき、両脇の壁が消失した。デッキへと到着したのだ。
「カタパルトの準備はいいか?」
「蒸気圧の調整良し! いつでも行けます!」
数段に分けて廊下の走った壁や、濛々と蒸気を上げるカタパルトの周囲で赤や青、紫の作業服を着用した整備兵や作業員が慌しく走り回っている。
活気に満ち溢れたデッキの中を二人は急ぐ。
「お待ちしていました! いつでも出れますよ!」
「すまない! すぐに準備する!」
体に埋め込まれたマナ・クリスタルを確認した後、マイコとエレナは詠唱を始める。
詠唱という『鍵』でマナ・クリスタルに含有された『力』を取り出すのだ。
光の輝きと同時に、二人の体がローブに覆われていく。
マイコは黒と赤に染め抜かれ、背中に二枚の羽が生えたローブだ。右腕にはライフル状の重火器、左腕には防御装置と一体化した剣が装備されている。
エレナは緑を基調にした白のローブで、背負い物はなく軽快な印象を受ける。得物は長刀と、左腕の盾だけだった。
「すごくいい感じです」
緑色の外骨格で覆われた指をエレナが動かしていると、血相を変えて無線機を手にした兵士がデッキにやってきた。
兵士はマイコに艦橋から連絡がある旨を伝え、無線機を手渡した。
「総員、第一種戦闘配置!」
支援
561 :
75:2008/12/09(火) 21:40:59 ID:hWcCgNkp
「各砲座は準備が出来次第報告せよ。準備を完了した砲座は指示を待て」
「衛生班は即時待機の状態を維持しろ」
ブリッジには緊張した空気が立ち込めているのが音声だけでわかる。
<<敵の地上部隊は味方の戦車隊を撃退した後、湖を背にして布陣しています>>
一切の社交辞令や前置きなしにベリエフは話し始めた。
「敵は戦車隊を追撃しているのか?」
<<いいえ。湖の側から動く気配がありません>>
「文字通り背水の陣ではあるが……妙だな」
<<戦車隊は再編成と補給を済ませ次第、再度の攻勢に移るそうです>>
「馬鹿な。何を考えているんだ? 敵が罠を用意しているかもしれんというのに……わかった。一度行って確かめてみる」
通信が終わると、同じくローブを纏ったエレナがマイコにチョコレートを渡す。
感謝の言葉を述べて銀紙を破り、口にチョコレートを放り込むと、エレナが自分の見解を明らかにした。
「大佐、敵は中央突破からの背面展開を行うのではないでしょうか?」
通話の内容が漏れていたらしい。
マイコはあえて聞こうとは思わなかった。
「ほう。理由は?」
「背水の陣に自分達を追い込んだかにみせて、全戦力を用いて中央を突破、立場を逆転して我々を湖に叩き落すことを考えている可能性があります」
「エレナならばどうする?」
「はい。縦の厚みを持った横隊を作って前進します。敵が中央突破を図るとしたら、魔道兵もしくは砲兵火力によって中央部を抑え、その間に左右両翼から挟撃して敵を殲滅する――という方法が考えられます」
エレナの見解を味方に伝えますか、と雑音交じりの声を無線機越しに響かせたのはベリエフだった。
「一応伝えておけ。連中が受け入れるかどうかは知らんがな」
<<わかりました。無理はなさらないで下さい。危険を感じましたら、すぐにお戻りを>>
「ありがとう。では行ってくるぞ」
それでは、と言って無線は途切れた。
562 :
75:2008/12/09(火) 21:41:47 ID:hWcCgNkp
クロンシュタットの艦橋では、緊張と恐怖に近い興奮、そして僅かな不満が酸素と共に立ち込めていた。
「俺たちの人生も今日でおしまいかなぁ」
「馬鹿! 縁起でもないこと言うんじゃねぇよ」
「楽観的だなお前は。あんな小娘の指揮で生き残れるとでも思っているのか?」
「少なくとも今日までは生きてこれただろう」
「明日を迎えられる確証があるのかよ」
連絡や通信を担当するオペレーター達は、自分たちの指揮官が僅か十七歳の大佐であることに失望と懸念を抱かずにはいられないでいた。
自分たちも同じ十代で、ヴォルクグラード人民学園軍が十代の人間で構成されている以上、僅かな年齢差で大きな階級差が出来るのは至極当然の話であった。
「俺たち下っ端が命の心配をする横で、魔道兵の連中は宿題の心配か。いい気なもんだよ……」
「魔女は命の心配をしなくてもいいんだからな。それにしてもパステルナーク大佐は恋人同伴で任務とは、いつから軍隊は百合畑になったんだろうな?」
「下士官の連中がしている賭けを知ってるか? パステルナーク大佐かヴィレンスカヤ中尉のどこらかが戦場で綺麗な顔に傷をつけられたら、どんな反応をするかって賭けだ」
「面白そうだな。俺はコップ一杯の水でも賭けてみよう」
彼らの愚痴は、ベリエフの咳によって報われた。
オペレーター達は慌てて黙り、作業に戻る。
「あまり上官の悪口を言うものではないぞ」
十代のオペレーター達にとって唯一ブリッジで信頼のおける"大人"の軍人は、彼らの発言を窘めつつもある程度の理解を見せた。
「確かに大佐は成り上がりの小娘かもしれないが、今のところ我々は生き残れている。いずれ大樹になるかもしれない苗木を見て笑うこともなかろう。大樹が予想に反して小木だった時は、周囲に害を及ぼさないうちに刈り取るのが大人の仕事だがな……」
デッキの慌しさが増す。
「ベルクト1、ベルクト2、カタパルトへ!」
「生きて帰ってこいよ。それ以外は許可しないからな!」
出撃の時、デッキで作業する多くのクルーが敬礼を二人の魔道兵に送った。
上官であるマイコ・パステルナークが出撃した後、エレナもまたカタパルトへ足を進めた。
「空……」
デッキの分厚いハッチが割れ、外へと開き始める。
ゆっくりと広がっていく隙間の向こうから灰色に彩られた世界が顔を覗かせるにつれて、エレナの心拍の音も大きさを増していった。
「いいえ……戦場」
今からエレナが向かおうとしている場所には、一切の慈悲や優しさが存在しない。
東部戦線と呼称される、泥と血が入り混じった戦場。
アヴィリオン学園とヴォルクグラード人民学園とが、互いのイデオロギーを醜く、歪んだ形でぶつけ合う場所。
「ベルクト2、発艦を許可する」
発進許可が下りると、エレナは顔を上げた。
「ベルクト2、発艦!」
三つ並んだランプが短い間隔で順に点灯する。
全てのランプが緑を湛えた瞬間、全身の骨が軋み、内臓全てを吐き出してしまいそうな圧力が華奢な肉体を襲った。
そして上下の概念が消失し、彼女は空の人となった。
支援
564 :
75:2008/12/09(火) 21:42:30 ID:hWcCgNkp
最後に一まとめ。
規制を食らっているので一休み&支援に感謝!
565 :
再開!:2008/12/09(火) 22:01:34 ID:hWcCgNkp
U
アヴィリオン軍は敗走していた。
誰もが疲れた肉体を引きずって西へと向かっていた。
「嵐の日も雪の日も……太陽、我らを照らす日も……」
アルベルト・ゲルトバウアーはアルコール臭い息を振りまきながら、意気揚々と栄光の日々を歌に乗せていた。
木の下でPanzerlied――戦車の歌と名づけられた歌を、十七歳のアヴィリオン学園陸軍中尉は乱れた音程で響かせた。
「嗚呼、無敵で知られたアヴィリオン機甲師団の輝きは今は何処!? 我がアヴィリオンの栄光も過去のものになりつつあり! 社会主義に乾杯!」
アルベルトが酒の瓶を掲げた途端、横から伸びた手がそれを分捕った。
「おいアルベルト、また飲んでいるのか!」
十八歳というにはあまりにも老けた顔を歪めて、アルベルトはベルガー・シュミット中尉に焦点の合わない視線を向けた。
「司令部から呼び出しだぞ」
破滅的な戦況にも関わらず、ベルガーはいつも通りの生真面目そうな顔を崩していない。
生真面目が服を着て歩いているようなベルガーとアルコール中毒者の半歩手前のアルベルトが同い年の同期だと言っても、おそらくは誰も信じないだろう。
「お呼びだぁ? へっ、どうせ戦争は負けさ。悪あがきするぐらいなら、飲もうぜ
ほとんど発狂に近い笑い声を上げるアルベルトに眉を顰めながらも、ベルガーは同期の戦友に肩を貸して立ち上がらせた。
「やめないか! 新しい指揮官が反撃の指揮を取るそうだ。敵が来る」
「けっ……いまさら何をまじめにやろうってんだ。どいつもこいつも、あの世に片足を突っ込んでるというのに」
悪態をつきながらもアルベルトは立ち上がり、ベルガーについていった。
「おい! 衛生班はどこだ!?」
「すぐに歩兵部隊を集めろ! パンツァーファウストと地雷があれば戦えるだろう!」
「馬鹿野郎! もう兵隊なんか残っちゃいない! さっさと講和しろ!」
東部戦線での長い戦いは、アヴィリオン軍の士気を打ち砕き、更に踏みつけて破砕してしまっていた。
もはや戦える状態ではない。
戦車は泥に埋もれて身動きが取れず、死人と大差ない歩兵が列を作って西へと行軍している。
私は敗北主義者ですと書かれた板を下げられた死体が木に吊るされ、そのすぐ横に殴殺された憲兵の死体が転がっている。
「見てみろよベルガー。酷い有様だ。まるでべレジナだな」
「雪が降ってないだけマシだろうよ……もっとも、この泥があるから大して変わらんがな」
「これじゃ戦争にならないぜ。敵は俺たちの五倍の兵力を持ち、魔女の小娘まで揃えているんだ。とても勝てるもんじゃない」
魔道兵に対する恐怖はアルベルトだけでなく、アヴィリオン兵の多くに共通していた。
いつ現れるのかわからず、通常兵器では倒せない敵の存在は士気の急速な低下に貢献していた。
「それでもやるのが俺たちの仕事だろう」
ベルガーが言葉の隅々に苦いものを含ませると、アルベルトの返答には皮肉に加えて、露骨な批判が込められた。
「誰のために? 何のために? 大体、いつから学生は兵士を兼業することになったんだ?」
「とにかく……次の指揮官はついさっき、敵の追撃部隊を撃退した実力の持ち主だ。とにかく会ってみろ」
「世の中には偶然って言葉もあるんだぞ」
わかったわかったとベルガーは同期の戦友をなだめつつ、濃緑色のテントへと入った。
566 :
75:2008/12/09(火) 22:03:50 ID:hWcCgNkp
テントに入ったアルベルトは何よりも、そこにいた人物に驚かされた。
「少佐殿、ゲルトバウアー中尉をお連れしました」
「ご苦労様、ベルガー中尉」
テントの中に腰掛けていた少佐は椅子から立ち上がると、小さく頭を下げた。
少佐は敬礼する。
「どうも。はじめまして。エーリヒ・シュヴァンクマイエルです」
穏やかな微笑みを浮かべるエーリヒは一見すると図書館と戦場を間違えた文学青年だったが、アルベルトはすぐにその見方を改めた。
柔和で人当たりの良さそうな顔の右半分とは対照的に、左半分は額から頬にかけて火傷の跡が走り、本来左目がある部分は黒い眼帯で覆われていた。
濃緑の軍服から覗く肌にも、所々に火傷の跡が見て取れた。
(ほう。面白そうな奴だな)
アルベルトは不敵に笑った。
「少佐ァ? こんな女みたいな奴が少佐だってのか? けっ、こっちの人材不足も著しいな」
「おい! やめないか!」
あえて荒い口調で挑戦的な発言をするアルベルトをベルガーは窘めたが、当の本人は気にも留めなかったらしい。
エーリヒは気恥ずかしそうに頭を掻いただけだ。
「申し訳ありません、少佐殿」
同僚の不敬な発言に頭を下げるベルガーだったが、エーリヒはいいよいいよと制止した。
「いやまぁよく言われるんだこれが。本屋の二代目とか、美術部員とか。まあ、それはそうとして、これが今回の作戦書だ。見てみてくれ」
苦笑いしつつ、エーリヒは椅子に腰掛け、二人にも席を進めた。
椅子に腰掛けた二人は作戦書を渡された。
「勝つための算段はちゃんとしてあるんで、なんとかなる。ただ人手が足りない。それで呼んだ次第だ」
アルベルトは作戦書の中身を見て青ざめた。
「無茶ですよ少佐! この作戦が成功するには、困難が伴います!」
「良かったぁ。ゼロじゃないんだね。全否定されると思っていたよ」
唖然とするアルベルトを横目に、エーリヒは続けた。
「ベルガー中尉、君は戦車隊の指揮だ。あとゲルトバウアー中尉には私の副官になってもらいたい」
「わかりました、少佐」
立ち上がり、即座に了承したベルガーとは対照的にアルベルトは明言を避けて呆れ気味に頭を掻いた。
「ひとつ……質問していいでしょうか?」
どぞー、とエーリヒは快諾する。
「少佐は何のために軍人に? 名誉ですか? それとも金ですか?」
十七歳の少佐は唯一の視覚器官である右目に、憂いの光を称えた。
「戦争を早期に終結させて、平和を作ること。それが目的かな。笑ってくれて構わない。安物のスープみたいに薄い理想だからね」
「詭弁ですな」
「殺人をする軍人が平和を望むと言った時点で、自己矛盾を抱えているのは承知の上さ」
エーリヒは肩をすくめた。
「昔、兄を失った初等部の生徒にこう言われたことがあったんだ。お兄ちゃんを返して、英雄ならお兄ちゃんを私に返してと女の子は言ったんだ。俺は無力感に苛まれたよ。勲章をもらった男が、女の子一人の望みも叶えられないなんて、とね。
正直言うと後輩たちが戦争に関わらないで済めばそれでいい。いささか虫が良すぎるかもしれないけど」
「口だけは達者なことで……まあいいでしょう。及第点以上の答えは頂きました」
辛辣な口調ではあったが、アルベルトは慄然として立ち上がり、敬礼した。
「アルベルト・ゲルトバウアー中尉、任務に移ります!」
支援
568 :
75:2008/12/09(火) 22:05:14 ID:hWcCgNkp
酔いが抜けた後のアルベルトは文字通りの別人であった。
まず最初に原隊が壊滅したり、撤退する部隊に置いていかれた小規模な部隊を次々に纏め上げた。
次に、それらを歩兵や戦車兵等のカテゴリー別に再編成し、統一された部隊を作り上げたのだ。
元々エーリヒが指揮していた小規模な部隊と組み合わされた臨時編成の部隊は時間の経過と共に肥大化し、油断できない兵力と化した。
最終的には千名近い兵員と三十台以上の装甲車両が集まった。
戦闘団の名称は簡素にシュヴァンクマイエル戦闘団と名付けられた。
「挨拶でもしておこうか」
指揮車両であるハーフトラックの上でエーリヒが無線機を取る。
「みんな……」
電源が入っていなかったので、声はぼそぼそと響いただけだ。
気を取り直してスイッチを入れる。
「みんな、少しでいいから聞いてくれ。指揮官のエーリヒ・シュヴァンクマイエルだ」
兵士達の一部でざわめきが起こった。
エーリヒ・シュヴァンクマイエルの名前がどういう意味を持っているのか、知る者がいるらしい。
「あー、なんだろうな。ああ、美味しいものを食べれるのは生きている間だけだ。死んだら食べられなくなる。それぐらいの気持ちで頑張ろう!」
嘲笑を覚悟していたエーリヒだったが、杞憂に終わった。
年若く、自分と同世代の兵士達はエーリヒを信頼してくれているようだ。
少なくとも今だけは――。
「それじゃあ、みんなの命を貸してくれ」
エーリヒの話が終わるのと、無線手がヴォルクグラード軍戦車隊の前進を知らせるのは、ほぼ同時だった。
「少佐!」
緊張の声を上げるアルベルトに対して、エーリヒは白い歯を見せて笑う。
「我々は敵の追撃部隊を撃退した後、一気に戦域を離脱する。それだけを考えよう」
支援
570 :
75:2008/12/09(火) 22:05:59 ID:hWcCgNkp
ヴォルクグラード軍の攻撃は教科書通りの戦法で始まった。
まず砲撃。
榴弾砲による砲撃。
ロケット砲による砲撃。
その繰り返しが数時間続くのである。
「あいつら、地面と戦争していやがる」
一人の条約軍歩兵が塹壕から頭だけを出し、彼方を見やった。
遥か遠方で、大地が焔と鉄の旋風に晒されている。
「さっきまで、あそこに俺たちはいたんだ……」
兵士たちは自分たちの指揮官が砲撃を予期し、予め部隊を下げていたことに彼らは感謝した。
微弱な部隊は戦力をすり減らされることもなく、絶え間なく続く煉獄に心を奪われた。
粘着質で激しい砲撃が終わったが、今度は別の恐怖が条約軍兵士の心胆を寒からしめた。
「来るぞ……ロジーナだ」
カタカタと聞こえる金属音が聞こえる。
真っ白な煙と粉塵のベールの中から、濃緑色の車体が姿を現す。
ロジーナ――祖国という愛称を付けられたヴォルクのT-34中戦車は周囲に歩兵を従えて前進していた。ディーゼルエンジンの煙を巻き上げながら、泥の大地を突き進む。
広い横隊の奥には無数の歩兵が追従していた。
「三倍……いや、こっちの十倍はいるぞ」
条約軍兵士達はそれぞれに火器を準備する。
「本当にこっちの指揮官は、俺たちを生きて帰らせてくれるのか?」
その疑問に答える者は誰もいなかった。
エーリヒは左目跡の覆う火傷跡を掻いた後、母親手作りのベレー帽を被り直した。
「中央突破作戦を読まれていたか。敵さんの指揮官は有能だね」
ハーフトラックの車上で指揮を取る隻眼の少年は足を組み、飄々とした表情を崩さない。
「よーし。そろそろ始めようか」
エーリヒは危機的な状況で勇気を鼓舞したり、敢闘精神を声高に叫ぶのは好きではなかった。
頑張っても駄目なものは駄目だし、勇気があっても負ける時は負けるのだ。
「敵の陣形はただ横に広がっただけではなく、厚みもある。どこを突破されても対応できるわけだ」
皮肉めいた笑みをエーリヒは浮かべた。
「アルベルト、部隊の配置は?」
副官は即答する。
アルベルト・ゲルトバウアーはアルコールさえ抜いてしまえば、優秀この上無い将校である。
「完了しております」
「よし、ベルガーに敵がFラインを突破したら行動を開始するように伝えてくれ。あと正面の部隊にも連絡を」
「ハッ!」
571 :
75:2008/12/09(火) 22:06:30 ID:hWcCgNkp
条約軍の中で最も早く行動を開始したのは、八十八ミリ高射砲を有するバッハ隊だった。
敬虔なクリスチャンでもあるバッハ中尉は『自分が嫌なことは、絶対部下にやらせない』ことをモットーとしており、兵たちから絶大な支持を集めていた。
「誰も死を望んではいない。それを要求するなど馬鹿げている。撃て!」
エーリヒの命令を受けたバッハは意味深な言葉を放ちつつ、砲撃を開始した。彼は人格者であったが、妄信的な平和主義者ではなかった。
彼方で直撃弾を食らったロジーナが炎上し、幾つもの炎の塊を撒き散らした。
本来は航空機を撃ち落すために用いられる高射砲だったが、今では対戦車砲としての用途に重宝されている。
支援
573 :
75:2008/12/09(火) 22:08:49 ID:hWcCgNkp
「よーし。前後運動、開始」
次にエーリヒは湖の前面に展開した戦車隊に指示を与えた。
二十両に満たない条約軍の戦車はヴォルク軍と同じく横隊を作ったが、その奥行きには雲泥の差があった。
「敵は誘いに乗ってくれるだろうか」
エーリヒは左目跡に走る火傷を掻く。
条約軍の戦車隊は横に薄く展開して、必死で数を多く見せようとしていた。
さもすればあっさりと看破されそうな幻影を真実に見せるため、エーリヒはありとあらゆる努力を惜しまなかった。
味方の砲撃の邪魔になることを覚悟で煙幕を濃密に焚き、木の板に鉄パイプを差しただけのダミー戦車を多く戦場に配置した。
「もし敵が勢いに任せて突進してきたら、こちらのペテンなんてすぐに看破されてしまうんだがな……」
条約軍戦車隊は前後に微々たる動きを繰り返す。
「来るなよ……絶対に来るなよ!」
もしヴォルク軍は突進してきたら、エーリヒのペテンはあっさりと崩壊してしまう。
数で圧倒的に優勢なヴォルク軍にかかれば、薄い条約軍の横隊をズタズタにするなど造作もないはずだ。
「敵はV字の陣形を取りました」
アルベルトの報告で、エーリヒは最悪のパターンだけは回避できたことを知る。
「見事だ。V字陣形は鶴翼の陣とも呼ばれる。最も防御の薄い中央を突破しようとすれば、左右から挟撃されるか包囲殲滅されてしまうだろう」
ヴォルク軍はV字の陣形を作り上げた。
もしエーリヒが中央突破を図れば、ヴォルク軍は左右からアヴィリオン軍を挟撃するに違いない。
その後は包囲殲滅するか、十字砲火を浴びせるか……思いのままである。
「こっちの考えを読んでくれて助かった」
エーリヒはこう考えていた。
条約軍はヴォルク軍の横隊を中央突破した後、背後に展開してヴォルク軍をアヴィリオン軍と湖の間に挟む。
こうすることでヴォルク軍は身動きを取れない状態に追い込まれ、成すがままにされる――。
「でも、まさか読まれることを読まれるとは向こうも思わないだろうなぁ」
敵が単に突っ込むだけの馬鹿ならばエーリヒの考えた作戦は糸も簡単に崩壊してしまうだろう。
条約軍は絶対数において劣り、もしヴォルク軍が一気に前進してきたら薄い横隊をズタズタにされてしまう。
「敵の指揮官は優秀な人材だろう。だからこそ付け入る隙がある」
V字の陣形を作った後、ヴォルク軍は大きな動きを見せなかった。
自分達の正面には今なお強力な戦車隊が存在し、今か今かと中央突破を狙っているのではないか……?
そんな懸念がヴォルク軍を張り付けにする。
「いいぞ。このまま動くんじゃないぞ」
エーリヒは頻りに時計を気にしていた。
「ベルガー隊は大丈夫でしょうか……」
アルベルトは懸念を口にした。
今回の作戦の鍵はベルガー隊にある。
湖の正面に展開した高射砲部隊と微弱な戦車隊で敵の動きを引き止めている間に、ベルガー隊は森林地帯を抜けてヴォルク軍の側面を突く計画だった。
「ベルガー隊が突破する場所は森林地帯です。戦車の行動が著しく制限されるのではありませんか」
アルベルトの指摘通り、森林地帯では戦車隊の行動が著しく制限される。
不規則に並び立つ樹木の間を抜けるのは困難を極める作業だ。
「制限されるだけで突破できないわけじゃない。敵はこちらが中央突破を図ると信じ込んでいる。そうでなければ、今頃陣形を解いて別の行動に移るはずだ。それに……」
エーリヒは右目でウインクしてみせた。
「俺はベルガーを信じているよ」
しかし……と言いかけたアルベルトの常識論は、無線手の言葉で遮られた。
「敵が前進を開始した模様です!」
どうやら敵はエーリヒのペテンに気付いたらしい。
自分たちの正面で小うるさく動く敵が、必死で姿を大きく見せようとしていたことに気付いたのだ。
「少佐!」
張り詰めた声を上げるアルベルトだが、エーリヒは微動だにしない。
「ベルガーはまだ突破していないのか?」
質問したいことは一つだけだ。ベルガーは間に合ったのか、それとも間に合わなかったのか?
「少し待って下さい! とっ……突破に成功しました!」
エーリヒは大きく胸を撫で下ろした。
「ふぅ……アルベルト、砲兵部隊に連絡を」
常に優しい光を絶やさないエーリヒの右目に、冷徹な輝きが宿っていた。
「女神様に手を差し伸べてもらおう」
エーリヒのモットーの一つにこういうものがある。
砲兵は戦場の女神である――と。
574 :
75:2008/12/09(火) 22:10:08 ID:hWcCgNkp
森林を強引に突破したベルガー隊は猛禽類の鋭さでヴォルク軍の側面に殺到した。
「行くぞ! パンツァーフォー!」
先頭を行く戦車のハッチから身を乗り出したベルガーが、大きく右手を振り下げた。
彼に指揮された戦車隊が走行したまま発砲する。
走行しながらのなかなか射撃は当たるものでもないし、足回りにも大きな負担をかける。
だが、今は何よりも敵に打撃を与える必要があった。
「後で整備の連中にはワインを八ダースほど送ってやる! 撃て! 敵を撃砕しろ!」
ベルガー隊の隊列は大きく崩れていたが、猛烈な勢いと戦意だけはどの部隊にも負けなかった。
彼らは殺到する死と破壊と化し、今まさにV字陣形から楔形の陣形に変わろうとしていたヴォルク軍に襲い掛かった。
最も危険で脆弱な時期に、ヴォルク軍のわき腹には渾身の一撃が叩き込まれた。
「赤い旗のついた奴を殺れ!」
ベルガーはインカム越しに叫んだ。
「ヤヴォール(了解!)」
数台の四号戦車が砲火を放ち、その射線上にいた指揮官車を撃破する。
「いいぞ!」
指揮官車を失ったヴォルク軍は一時的にではあるが統制を失った。
僅かな時間で十分だった。
ヴォルク軍は脇腹を抉られて悶絶した後、脳や神経が集中する頭部を粉砕されたのだ。
後は痙攣する肉体を叩き潰せばいい!
「今までの仇だ! 魔道兵でないのが不満だが、たっぷりと味わえ!」
ベルガー隊は勢いをそのままに至近距離での戦車戦を開始した。
車体と車体が激突しそうな距離で、双方の戦車砲が炸裂する。
鉄の躯が一つ、また一つと戦場に転がった。
「戦車隊を援護する! 味方は撃つなよ!」
八十八o高射砲による遠距離射撃も加わると、戦場は屠殺場へと変わり始めた。
二時間が経過する頃には、ベルガー隊はようやく態勢を整えたヴォルク軍戦車隊の背面に展開していた。
背面展開の成功!
握りこぶしを作って喜ぶアルベルトとは対照的に、エーリヒは次の指示を出した。
「一角を空けて、敵を脱出させてやれ」
当然、アルベルトは何故ですと困惑した。
せっかく敵を挟み撃ちにできたのに、なぜむざむざ逃がすのか――と。
「敵は次に、楔形の陣形を作って脱出を図るつもりだ。構わないから一点を突破させてやれ」
中指で額から頬にかけて走る火傷を掻きながら、エーリヒは柔らかい口調で言う。
「敵の方が数で我々に勝っている。薄い陣容で包囲したところで、内側から食い破られるのがオチだ」
エーリヒは自分のやろうとしていることが、包囲殲滅よりも辛辣な行為だと理解していた。
自分は今から閉じ込められた敵を叩き潰すのではない。
希望の光明を与えた後に粉砕するのだ……。
575 :
75:2008/12/09(火) 22:11:30 ID:hWcCgNkp
「二三一号車が指揮を引き継ぐ! ここから脱出するぞ!」
第一段階は敵の手によって開始された。
「ファシストの戦車隊がァ! ボルト止めのクセして!」
ヴォルク軍は回頭して楔形の陣形――パンツァーカイルと呼ばれる――を作り、ベルガー隊を突破せんとした。
対するベルガー隊は一箇所に戦力の空白を作りつつも、攻撃の手を緩めなかった。
「回頭する敵の側面を狙え。一台でも多く減らすんだ!」
ヴォルクグラード戦車隊は方向を変える際、装甲の薄い側面や後面を晒さなくてはならない。
砲の性能がさほど高くない四号戦車でT-34を撃破するには、正面から戦いを挑むよりも、薄い側面や後背を狙うのが最も効率の良い方法だ。
瞬く間に焔が泥濘を撒き散らして炸裂し、鋳造製の車体が砕け散る。
「ベルガー隊は予定通りに」
エーリヒの指示通り、ベルガー隊は戦車の楔を作って突進してくるヴォルク軍を意図的に突破させた。
突破させたのは狭い空間だった。
そして砲火に晒され、一刻も早くここから逃げ出そうとしていたヴォルク軍は目の前に差した一筋の光明に縋った。
「――やれ」
狭い脱出路に殺到したヴォルク軍戦車隊めがけて、エーリヒは切り札を投入した。
「撃て!」
15.2 cm KH.433/1(v)――百五十二ミリ重榴弾砲の砲列が一斉に火を噴いた。
地鳴りにも似た砲声が轟く。
「砲撃だと!?」
「敵は……我々を狭い空間に……!」
離脱を図った戦車もいたが、遅かった。
焔と爆発によって出現した暴風がヴォルクグラード軍を飲み込んでいく。
圧倒的な爆発力の前には、如何なる装甲も無力であった。
「敵の三割を撃破しました」
アルベルトの報告を受けて、エーリヒはこれ以上の攻撃は無意味だと確信する。
戦闘において、三割の損害を出せば全滅扱いとなる。
三割の損害を出すとその部隊は機能を維持することができず、戦闘の続行を不可能なものにしてしまう。
こうなってしまうと、一時後方に下がって補充と再編成を行う必要があるのだ。
(だが、まだやれるのではないか?)
エーリヒを強烈な誘惑が襲う。
まだ敵を倒せるのではないか?
敵は浮き足立ち、叩くなら今がチャンスなのではないか?
勝てるだろう……勝てるに違いない……。
(いかんいかん。勝利は人間を奢らせる。希望的観測をしてはいけない)
エーリヒは首を横に振り、邪念を振り払った。
「少佐?」
不振がるアルベルトにエーリヒは大丈夫だと声をかけ、早々に戦いを切り上げることにした。
「さて、もう少し叩いたら逃げるぞー。戦況の優劣ってやつはどこで一変するかわからないからな」
支援
577 :
75:2008/12/09(火) 22:12:26 ID:hWcCgNkp
今日はここまで。
支援しくれた人マジでありがと。
次回投下は明日22:00より。
乙
GJ
雰囲気出すの上手だね。引き込まれたわ
機動戦を書きたいのは分かったけど、見せ方がちょっと気になったな
もう少し上手に書くと言うことなし。今のままだと読むのがちょっとしんどかった
条約軍?微妙に変わってる?
人民学園軍は満を持し大挙して、アヴィリオン東部戦線地域に来襲
対するアヴィリオン・西方条約軍は抗しきれず敗走を重ね
人民学園軍はヒューナースブルグに迫りつつあった…
ちょっと概要まとめてほしいかな
ヲタ誌でヲタを挑発するがごとき展開にした姦ナギは潰されて当然
ホント馬鹿だよな、作者も担当編集も
萌え漫画で女の都合満載の少女漫画のノリでやっても受けるわけ無い
作者よりも担当が馬鹿だったな、これは
担当がとめたのに強行したなら作者が馬鹿
最近の作品は本当に巧妙にオタの「嫌がる要素」が排除されてるってのに
商売なのに客の嗜好を考えなかったバカが淘汰されて良かった
うんうん
まだ慌てるような時間じゃない
みんな落ち着いて素数を数えるんだ
584 :
75:2008/12/10(水) 21:28:39 ID:OoKlIHjo
>>579 了解。
次回から見せ方を意識してみるよ。
>>580 図式をわかりやすくしたほうが良いと思った。
ドイツ(アヴィリオン)を筆頭に、ルーマニア、フィンランド、ブルガリア、ハンガリー、チェコ等モデル学園とかで西方条約機構を形成している、という設定。
アヴィリオンはナチスよりも戦後の西ドイツに近くなる可能性もある。
585 :
75:2008/12/10(水) 21:32:17 ID:OoKlIHjo
本日22:00より投下します。
前回投下までのあらすじ
学園島で続く戦いはアヴィリオン学園を中心とした条約軍から、ヴォルクグラード人民学園軍へと主導権を移していた。
魔道兵マイコ・パステルナーク率いる軍勢の前に条約軍は敗退し窮地に追い込まれてしまう。
条約軍を救ったのはエーリヒ・シュヴァンクマイエル少佐であった。
エーリヒは巧みな機動戦と火力の集中で数倍の兵力を誇るヴォルクグラード軍戦車隊を撃退することに成功したが……。
586 :
75:2008/12/10(水) 22:00:58 ID:OoKlIHjo
587 :
75:2008/12/10(水) 22:01:54 ID:OoKlIHjo
V
アヴィリオン軍の十字砲火を浴びながらも、奮戦する者達がいた。
第十独立混成旅団の二人の魔道兵もその一つだった。
「生きてるか? 相棒!」
紅いローブを身に纏い、身の丈ほどある斧を振るうのはオルガ・グラズノフ少尉である。
彼女は栗色の髪はやや長めで、切れ長の目が印象的な顔立ちをしている。
「大丈夫だ。まだ慌てる時間じゃない」
バイザーにも似た照準装置を頭部に備え、マナ・スナイパーライフルをひざ立ちで撃ち続けるのはセルフィナ・フェドセンコ少尉である。
後ろ手に纏められた黒髪と変化の乏しい表情は、まるで怜悧や冷静をそのまま形にしたようだ。
「砲撃来るぞ!」
空がそのまま落ちてくるような砲声と共に、アヴィリオン軍のネーベルヴェルファーロケット砲弾が撤退する戦車隊目掛けて降り注いだ。
「阻止するだけだ」
「ああ! 俺もそのつもりだぜ!」
オルガが斧を投擲すると、軌道上にあったロケット弾が空に炎の球を幾十にも作り上げた。
派手なオルガとは対照的に、セルフィナの攻撃は精密を極めた。
「少し風が流れているな……」
バイザーの中でロケット弾と照準が重なり、セルフィナはライフルの引き金を引く。
発射された高初速マナ・エネルギーは一発、また一発とロケット弾を撃ち落としていった。
砲撃を阻止されたアヴィリオン軍は間接的な攻撃ではなく、直接攻撃によって二人を排除しようと行動を始める。
戦車が歩兵を伴って現れた。
「よぅ相棒、敵の数が多すぎやしないか?」
「ではお前に譲る」
「いやいやご謙遜を。過剰供給なんでね」
お互いの背中を合わせた二人は冗談を言い合う。
二人の横を傷ついた戦車隊が進んでいく。
友軍の脱出を支援するというのが、二人に与えられた任務であった。
588 :
75:2008/12/10(水) 22:02:41 ID:OoKlIHjo
「じゃあ行こうか! 相棒!」
「ああ!」
背部マナ・ブースターから青い粒子を噴射して、二人は敵陣へと切り込んだ。
「あのティーガーをやるぞ!」
「違う。あれはマークWスペシャルだ」
「けっ! 同じ戦車に変わりはねぇだろうが!」
敵戦車の砲撃を回避して、オルガは突進する。
オルガの武器は巨大な斧のみである故に、接近して戦わざるを得ない。
だが変に多様な戦術や武装を使い分けるよりも、突進して切り裂く――単純だが効率の良いやり方をオルガは好んだ。
「援護頼むぜ!」
歩兵を切り裂き、血の霧を浴びながら、オルガは信頼できる相棒に視線を送った。
オルガにとって唯一の弱点である遠距離攻撃能力の欠如を補うのは、常にセルフィナの役割だった。
「ああ。頭を低くしていろ」
後方から飛来した閃光が四号戦車のキャタピラを吹き飛ばす。
動きを止めた戦車に馬乗りになり、オルガの斧が切り裂いた。
爆発する戦車から離れたオルガは、満身創痍で後退する味方を見た。
「味方はまだ撤退しないのか!?」
「味方が残っているとは初耳だ」
「人の士気を削ぐんじゃねぇ!」
二人は撤退する味方を支援し続けた。
自らが最後尾となって敵の攻撃を受け止め続けたのである。
二人はある意味で幸運に恵まれていた。
アヴィリオン軍は左右から砲火を浴びせていたが、魔道兵のサイズは人間と等しいので戦車砲を直撃させるには困難が伴い、下手をすれば同士討ちの可能性もあった。
そのため濃密な火力の集中を行いうことができないのだ。
「死んだ方がマシって言葉がある!」
泥交じりの砂を吐きながらセルフィナは応じた。
「私は嫌いな言葉だ」
「へっ、俺もだ。さあどうする? 右も左も敵だらけだぜ。死ぬか、それとも捕虜か」
「どちらもお断りだ!」
「俺は二者択一と言ったんだぜ?」
「生憎、私は他人に指示されるのが嫌いでな」
支援
590 :
75:2008/12/10(水) 22:03:23 ID:OoKlIHjo
味方は退却を終えたが、二人は残された。
周囲を敵に囲まれ、追い込まれた二人の反応は対照的だった。
オルガは「なんてこったい。ここでくたばることを知ってたら、もっとたくさんの男と寝ておくべきだった」と苦笑い交じりに話した。
冷静に「すまない……」と幼馴染の恋人に向けたのはセルフィナの弁である。
戦車砲の砲口が火を噴く前に、戦車そのものが爆発した。
黒煙と炎に長刀の影が浮かび上がった。
「あれは!?」
二つの閃光が鉛色の空を切り裂いて、地上へ向けて突っ込んでくる。
対空戦車が弾幕を張るが、一弾とて捉えられない。
地上に降り立った新たな魔道兵が歩兵に剣を振るい、マナ・エネルギーの砲火を浴びせて戦車を撃砕する。
「チャンスだ!」
「ああ!」
オルガもマイコも、自分らが死の淵から僅かに下がったのだと確信に近い感情を抱いた。
「泥沼の中にも宝石はあるものだ……」
セルフィナは怜悧で、常に寡黙を貼り付けた顔に僅かな微笑みを浮かべた。
「なんだってセルフィナ?」
「なんでもない。それよりも敵は崩れた。持ち直す前に叩くぞ!」
「ああ!」
二人はまた切り込む。
魔道兵に限って言えば、攻撃こそ最大の防御なのだ。敵を攻撃して、攻撃して、攻撃する。敵にイニシアチブを与えてはならない。
敵を殺して自分は生き残る――東部戦線において、それが勝利と呼べるものなのだから。
支援
支援
支援
C
595 :
75:2008/12/10(水) 22:04:21 ID:OoKlIHjo
W
エーリヒはハーフトラックの車上で指揮を執り続け、最前線を離れようとはしなかった。
「少佐、敵の砲火が迫っております。指揮車を一時後退させては如何でしょうか?」
時折飛来する砲撃にアルベルトは後退を進言したが、エーリヒはその都度却下した。
エーリヒは他人を死地に送って安全な場所で偉そうにするのが、あまり好きではない。
「わかった。でも、大きく後退することはないよ。ここの方が戦況がわかりやすい」
エーリヒは七回目にして、ようやくアルベルトの進言を受け入れた。
後退するハーフトラックの中でエーリヒは数え切れない心配事のうち一つを口にした。
「物資の残りはどれぐらいだ?」
「すぐに……ではありませんが、燃料と砲弾が底を付き始めていると報告が入っています」
「使えば無くなるのは当たり前か。焼け石に水だろうが、なるべく精密な射撃を心がけるよう伝えてくれ」
無限に砲弾や燃料が使えればなぁと思うエーリヒの願望とは逆に、頭痛の種は増え続けた。
「魔道兵が殿を勤めているため、味方の損害が増大しています! それとは別に、新たな来援として魔道兵、二!」
通信手の報告を受けて、エーリヒはすぐに対応する。
「包囲中の部隊を下がらせる。魔道兵に対しては火力を一点に集中し、決して単独で戦わないよう伝えてくれ」
左目の火傷を掻く勢いが増していく。
人差し指が血だらけになったので、エーリヒは掻くのをやめた。
「敵の人的資源はどれだけあるんだか……その半分でもあったら、もっと楽に戦えるのになぁ。戦争は数だ。個人の優秀な能力よりも、何より物量が全てに勝るものだ」
そこでエーリヒは数を揃えることにした。
「アルベルト、敵の部隊は脱出を終えたか?」
「はい。殿の魔道兵のみが残っています」
「よし。ベルガー隊を下げる。ベルガー隊と合流の後、敵を各個撃破する」
「アクティブ・ディフェンスですね」
支援
597 :
75:2008/12/10(水) 22:05:27 ID:OoKlIHjo
アクティブ・ディフェンス。
敵が攻撃してきたら一時後退する。
同時に敵が攻勢してこない場所に配置されていた兵力を呼び寄せ、敵よりも多い数で迎撃する戦法だ。
ただ、敵を上回る数による優勢を手に入れられる反面、合流のタイミングを間違えると逆にこちらが各個撃破されてしまう危険性があった。
「ベルガーよりも魔道兵の方が早かったら、この作戦は失敗だ。砲兵隊、敵の予想進路に弾幕を展開!」
榴弾砲の砲列が一斉に火を噴く。
彼方で爆煙が吹き上がり、中から二つの閃光が飛び出した。
「敵は二体か。つまり、二個大隊。まずいな……ベルガーはまだか!?」
「急行しています!」
数十分が永遠に感じられた。
何度もエーリヒは腕時計を見ては、まだかまだかとベルガーを待った。
「ベルガー隊、合流しました!」
ようやく合流の知らせが舞い込んできたのは、あまりに手薄な指揮車を護衛するため数台の対空戦車がハーフトラックの周囲に展開した頃だった。
「よし! 発煙信号を上げろ!」
紫色の煙が濛々と立ち込めた。
煙めがけて、魔道兵が二人、低空で突っ込んでくる。
「全部隊、敵の魔道兵に対して集中砲火を浴びせろ!」
突撃砲が低空侵入してくる魔道兵に砲火を送る。
魔道兵は周囲を薄緑色の結界で囲い、砲撃を防いだ。
だが、エーリヒは防がれても気にしなかった。
「魔道兵の防御結界に対しては、戦車砲も銃砲も薄皮を剥ぐだけの微弱な攻撃に過ぎない。だが、薄皮も剥ぎ続ければやがて骨に達する!」
立ち上がり、エーリヒは右手を振り下ろす。
「残った砲弾は全て使ってしまえ! 撃ち惜しむな!」
圧倒的な火力が叩き付けられた。
エーリヒは火力を極度に集中することを好む。
魔道兵を叩き潰すには、それが一番の方法なのだ。
しえん
ksks
支援
601 :
75:2008/12/10(水) 22:07:04 ID:OoKlIHjo
「よし! 撤退!!」
砲撃によって魔道兵が足止めを食らっている間に、アヴィリオン軍は迅速に撤退を進めた。
「第二中隊、撃ちつくしました!」
「ロケット砲大隊、残弾なし!」
時間の経過と共に、エーリヒ隊の砲弾は尽きつつあった。
魔道兵の足を止める砲撃も、少しずつ弱まっていく。
「まだだ……もう少しそこでじっとしていろよ! お嬢さん!」
待ちに待った時が来た。
「少佐、味方は撤退を完了しました」
「よし。予定通り、持って行けない車両や装備は爆破だ」
「良いのですか?」
「兵器はいくらでも作れる。でも、人間はそう簡単に作れない」
無線手が叫んだ。
「敵がポイントBに到達!」
「よし!」
エーリヒは指を鳴らしたつもりだったが、何も音は聞こえなかった。
「まあいいや、工兵隊に連絡してくれ。仕上げに入ろう」
支援
603 :
75:2008/12/10(水) 22:08:52 ID:OoKlIHjo
X
敵陣に切り込んだエレナは、注意深く周囲を見回した。
(何かがおかしい……これは一体?)
焼け焦げた戦車の残骸や歩兵の死体が転がっている。
だが敵陣だというのに、敵の姿がどこにもない。
ただ『B』と書かれた木の板だけが寂しく置いてあった。
「どうしたエレナ? 何か見つけたか?」
戦友の慎重な姿に只ならぬ気配を感じたのか、マイコはエレナに歩み寄り、その耳元で囁いた。
エレナは答える。
「変です。妙に静かだ」
敵は待ち伏せしているわけでもないらしい。
(なんだ……この……感覚は)
多くの動物たちが二人とすれ違って、その場を離れようとしていた。
猪、野犬、鹿、栗鼠もいた。
「いけない!」
エレナは反射的にマイコの手を取り、地を蹴った。
背中のマナ・ブースターを作動させ、そのエネルギーで一瞬でも早く大地から足を離そうとする。
一秒が永遠、もしくはそれと同じぐらいに長く感じられた。
「お、おい!」
いきなりのことに動揺するマイコ。
しかし、エレナの耳にマイコの声は届かない。
(間に合え。間に合ってくれ! せめて、大佐だけでも……)
支援
605 :
75:2008/12/10(水) 22:10:09 ID:OoKlIHjo
その感情がマイコの手をむんずと掴み、エレナを空のより高い場所へとその身を飛ばした。
その直後に、それは起こった。
エレナの額に大粒の脂汗が滲み、上昇と逆方向に流れ、マイコの顔に滴り落ちた。
轟音。空気の揺さぶりを肌で感じ取れるほどの、凄まじい轟音が辺りに鳴り響いた。地面に下で眠っていた竜が機嫌を損ね、癇癪を起こしたと言われても信用されるぐらいの凄まじさだ。
(大地が……叫んでいるというのか!?)
そして、その轟音と共に、今は眼下に見下ろす地面が激しく揺れる。
「地震か!? いや、アヴィリオンの新型兵器か!?」
マイコは恐怖と驚愕が混ざり合った声を出す。だが、揺れの正体はその二つではない。もっと原始的かつ、効率的な『再利用』だ。
エレナの背に、悪寒と冷たい汗が伝る。
地面に走る亀裂を見て、先ほど感じた予感が確かなものだった事を知ったからである。
その目に映る光景――大地が割れ、その亀裂から炎が噴き上がるまで……それはほんの一瞬の出来事だった。
「なんだこれは!? 何が起こった!」
予測もつかなかった光景を目の当たりにしたマイコは慌てふためく。
「地下に燃料貯蔵庫か何かがあったのでしょう。中尉殿、これは一本取られましたな」
エレナは煉獄と化した大地を見て思う。
もし判断が遅れていたら、あそこにいたのは私だ――と。
(大佐の手が震えている……怖いのだろうか? いや……)
エレナが握ったマイコの手は震え、研ぎ澄まされた刃物の如き端正な横顔は醜悪に歪み切っている。
「負けた……私は……負けた……」
恐怖なのか、それとも怒りなのかエレナにはわからなかったが、少なくともマイコの感情が打ち震わされていることだけは確かなようだった。
606 :
75:2008/12/10(水) 22:11:42 ID:OoKlIHjo
Y
夜。
戦域から遠く離れた野営地では、久々の勝利を祝うアヴィリオン兵達で賑わっていた。
「乾杯! 勝利に!」
「乾杯! 間抜けな魔女どもに!」
「乾杯! 新任の少佐殿に!」
秘蔵のウィスキーや分捕り品のウォッカを片手に、年若い兵士達は歓喜に溺れた。
絶望的な戦況を脱し、休暇のため本校への帰還が命ぜられたのだ。
勝利とアルコールが恐怖や疲労しきった神経を誤魔化し、彼らに一時の安堵を与えていた。
「お酒……飲めないんだよなぁ……」
兵士達とは対照的に、指揮官であるエーリヒは一人装甲車の陰で焚き火に当たり、コーヒーを啜っていた。
「先人に感謝だな」
もし、埋められたまま放置された石油パイプラインが無かったらどうなっていたのだろうとエーリヒは思う。
残されていた大量の石油ごと爆薬で魔道兵を利用しなければ、今頃自分たちは捕虜収容所への長い道程を進んでいたかもしれない。
「今日は生き残れた。だが、素直に喜べない自分がいる。いつ自分が今日の敵のようになるか、わかったものではない」
ふと、エーリヒは眼前に白い足が見えたことに気付いた。
背筋に、悪寒が走った。
「あ……あ……」
エーリヒは恐怖に震え始める。
また、来たのだ。
「勝てたんだ。おめでとう」
エーリヒが震える目で視線を上げると、可憐な幼女がそこにいた。
勝つたびエーリヒの前に幼女は現れる。
そして祝福する。
支援
608 :
75:2008/12/10(水) 22:13:22 ID:OoKlIHjo
「すごいなぁ。やっぱり、貴方は英雄だね。一つ、お願いしていいかな?」
幼女はエーリヒの顔を覗き込んで、呟く。
「私のお兄ちゃんを……返して」
幼女の額の皮が破れ、赤黒い肉が露出した。
剥き出しに白い眼球は血走り、痙攣にも似た動作を繰り返している。
「少佐! ここでしたか!」
アルベルトの言葉でエーリヒは我に返った。
脂汗を額に浮かべて周囲を見回したが、もう幼女の姿はどこにも見えない。
「どうしました?」
「女の子を見なかったか? 小学生ぐらいの……ここに立っていたんだ」
「いいえ、見ておりません」
「そうか……ならいいんだ。多分、疲れているんだろう」
アルベルトはテーブルの向かい側に腰掛けた。
「しかし、本当に勝てるとは思いませんでした」
「運が良かっただけだよ。何度も運に助けられた部分があった」
「そんなご謙遜を。何度も無能な上官や指揮官にめぐり合いましたが、ようやく信頼できる上官と出会えたようです」
「あまり期待すると、いずれ後悔すると思うんだが……」
「なぁに。不思議と自分の勘は当たるんです。少佐は長生きしますし、俺たちを生き残らせてくれますよ」
「そいつは良かった」
こんなことを言うのは失礼かもしれませんが……と前置きして、アルベルトは言う。
「少佐は軍隊の風潮に合わない気がします。無論、良い意味での話ですが」
「俺として結構、楽しんでいるんだけどな。決して将来……いや、なんでもない」
エーリヒはふと考える。
(将来、俺は誰に戦争の話をするんだろうか。いや、戦争はドラマのように奇麗事ばかりでできているわけではない。目を背けたくなるような現実が無造作に転がっているだけだ。だが、俺の中にも戦いに高揚する気持ちや、勝利して喜ぶ感情は確かに存在している……)
腕を組んで考えるエーリヒの横で、アルベルトはラジオをいじり始めた。
「二十一時五十七分だ。ベオグラード放送に合わせないと」
「ベオグラード放送?」
「本校の生徒達が有志でやっている放送ですよ。少佐は知りませんか? リリー・マルレーンを」
「名前ぐらいは……」
「いい歌です。きっと気に入りますよ」
砂嵐の音の後、ラジオから曲が流れ始めた。
兵営の外、正門の脇、街頭があったね。
今でもあるね。
そこでまた会うよ。
昔みたいに、リリー・マルレーン。
昔みたいに、リリー・マルレーン。
「ほぉ……」
初聴だったが、エーリヒは素直に良い歌だな、と思った。
敵もこの歌を聞いているのだろうか?
敵の兵士達も、歌に感銘を覚えているのだろうか?
リリー・マルレーンは、エーリヒにしばし想像の翼を広げる時間をくれた。
学園島戦記譚 -序章編- 第一話 Ende
ksks
支援
C
規制かksks
613 :
75:2008/12/10(水) 22:21:36 ID:OoKlIHjo
投下終了!
第一話完!
支援ありがとう!
連投規制だそうですw…力及ばずか…
まったくwikiの方は
あまり整備されないままだな
そういうのは気にしないか
魔道兵が強すぎはしないかな
あと気になったのはエーリヒが幻覚を見ているところ
強いというか固いとは思う生存率が高いし
まあ魔法兵の苦戦の描写がない
実態としてどれだけそいつら投入して、撃破に成功してるのか分からない
まだなんともなあ…
>>617 目やられたとき一緒にあたまに…とかではさすがにないだろうがw
たしかに夢のたぐいではないからな
エーリヒは眼帯を外したらちゃんと右目があったりしてな
右目の方は別人格のエーリヒとか
>>619 最終回で両目開眼→真エーリヒもしくはネオエーリヒになるんだな。
白エーリヒ&黒エーリヒ「「見せてやろうじゃねぇか! 本当のエーリヒ・シュヴァンクマイエルってやつをな!」」
621 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:19:34 ID:xOxXCyBm
投下されても全く盛り上がらないな
こんなスレは板に必要ないから出て行くべき
ワロタw何様だ
623 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:26:42 ID:xOxXCyBm
何様も何も、見て見ろよこの惨状を
下らない作品がスレを埋め立てて75が民主的なスレを独占している
624 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 00:33:04 ID:xOxXCyBm
レベルの高い反論を期待したいね
駄目だししてるだけじゃ批判されてる書き手以下だな
粘着は少し過疎ると飽きるっていうがホントだな
ま、保守よろしく、精一杯盛りたててくださいませ
それから民主的なスレってはじめて聞いたよww
独占つーか、他に書き手がいないだけだろ、ここは。
まあ魔法+WWU+学園なんてキツイ縛りじゃそれも仕方あるまいが
いや氏の作品の是非はともかくとして
そんなみんなこのスレに作品書いて提供できるわけじゃないし
参入するにせよそんなすぐは無理
それにえっとね、独占というならこの板のスレ殆どが……
そういやwikiにある
昔の脱兎って人のSS、白石陣営?ってやつは…
昔、こんな将軍閣下と兵士達が
こういうやりとりするやつなんか本で読んだ気がするんだよなあw
なんか懐かしい、旧帝国陸軍っぽいやつかと思ったけど
思い過ごしかなあ…
630 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 11:39:44 ID:xOxXCyBm
シェアードワールドを唱いながらスレが事実上75専用になっていることが悪いと言っている
民主的なスレならばSSが投下されたら高度な考察や議論を行った板全体の利益に貢献すべきだ
軍板の頃にいた荒らしか。次は特定のコテハンとか持ち上げるから注意な。
マジレスすると創発板のスレは民主主義じゃなくてハルトシュラー主義なんです
633 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 14:02:48 ID:xOxXCyBm
そして75はハルトシュラー主義(笑)を実践していると褒め称えでもするのか?
職人は板のために存在するのであって板は職人のために存在するのではない
そろそろ支離滅裂になってますよw
君のために一言
「荒らしは時間を無駄遣いしている」意味わかるかなぁ
いい年こいてわからないんだろうなぁ
ま、わからないなら、君もまたそれまでということだw
そこでじっと三角座りしているんだなw
635 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 14:12:06 ID:xOxXCyBm
串厨には理論的な反論を期待している
636 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 14:16:37 ID:xOxXCyBm
ここまで75の作品に対する擁護意見が出ないあたり、75のレベルが知れるな
それじゃその議論で俺が何を言いたいかもわかるはずだが?
貴方の脳内でやり取りは自己完結してるじゃないか
もう少し大風呂敷広げてもらわなくちゃ面白くない
釣られるくらいでよければ相手するが…。
ついでに。職人がなくても板は存在しうる。板なくして職人は存在しえない
必要十分は取り違えないことだ。
638 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 14:46:59 ID:xOxXCyBm
つまり75は創発に不要だと俺は言いたい
反論があるなら論理的かつ、万人が理解できる説明をしろ
639 :
創る名無しに見る名無し:2008/12/12(金) 14:49:13 ID:xOxXCyBm
あと俺は荒らしなどではない
正当な権利を持った創発板住人だ
1読もうぜ
口喧嘩したいんなら他でやってくれ。
こんな過疎板でやってもつまらんぞ。
644 :
75:2008/12/12(金) 18:45:59 ID:Ogn+9AgD
板全体の利益とか思わず笑ってしまったw
まとめってそっちかいw
なんか感慨深いな
646 :
75:2008/12/12(金) 22:10:26 ID:Ogn+9AgD
学園島で戦う理由の最もたるものが「魔法資源(マナやミスリル)の奪い合い」にした方がわかりやすいかな?
人種的な理由や政治的な理由は後々付加させるとして、この理由なら色々な学園が理由を共有できるんじゃないかと思う。
他の人はどう思うか聞かせてくれ。
魔法資源が不足すると、どういうことが起こるのか
そこがしっかりしてりゃいいかも
648 :
75:2008/12/12(金) 22:18:53 ID:Ogn+9AgD
>>647 隕石落下で世界滅茶苦茶になったので、復興の手段としての魔法資源とかどうだろう。
普通の世界に突然現れた魔法というわけだし、国がボロボロなら縋りたくもなるんじゃないかな。
隕石が落ちた
↓
世界滅茶苦茶
↓
魔法資源が復興に役立つ!?
↓
ヒャッハァ! 奪い合え!
この流れ?
魔法はどのタイミングで現れたのかな
650 :
75:2008/12/12(金) 22:30:54 ID:Ogn+9AgD
>>649 そんな感じ。
魔法資源は隕石の含有物ってことにしているから、世界滅茶苦茶→魔法資源が〜の合間かと。
だけど、そのためにわざわざ島に軍事基地作って、将来を担うであろう子供を殺し合いに使わせるってどうなんだろう。
大人がやればいいじゃねーかと言われそうだ。
ふむ
1、隕石が落ちてきて世界が滅茶苦茶になったけれど、魔法が使えるようになってた
2、それは、どうやら隕石に含まれる特殊な物質のせいらしい
3、人々は復興のために、超便利な魔法を利用しようとした
4、しかし、大規模な魔法の使用にはマナやミスリルのような魔法資源が不可欠(?)だった
5、人々は、島に軍事基地を作り子供達を戦わせ魔法資源を奪い合う泥沼ヒャッハァ!
テキトーに書き出してみたけど、弱い部分を埋めるように考えてみよっか
とりあえずマナ資源というか、マナクリスタルを採掘できる土地(列島)を巡って
戦争している設定で書いてるがペースが遅い…
学生兵士しかいない理由を
>>511を参考に組み立てて追加してみたが
どうも練りこみが足りないような気がするんだぜ
653 :
75:2008/12/12(金) 22:45:27 ID:Ogn+9AgD
1〜4はこれでいいんじゃないかな。
このあたりは変に設定しないほうがいいと思う。
子供しか戦えない理由はいっそ「隕石に含まれていた未知の病原菌」が理由で、二十歳以上の人間は前線で戦えないとかどうだろう。
あくまで生身での話で、指揮車両とかに乗っていれば大丈夫とかね。
654 :
75:2008/12/12(金) 22:46:39 ID:Ogn+9AgD
でも最後のオチは「魔法なんて危ないものを使わず、みんなで力を合わせて復興しよう」とかになるかもw
隕石落下地点というか、マナやミスリルが多く埋蔵されてる「学園列島」は
マナが濃密過ぎて、人体に害をなす一種の汚染地帯であり、
長期間活動できるのは何故か隕石落下後に生まれた世代つまり少年少女のみ
よって、彼らを学生兵士として島に送り込む事になった
耐性だけ持っている人間=一般の学生兵
魔法を使える人間、マナ適合者=魔道兵
って概要をぶち上げてやっつけで今書いてるSSに追加てみたが、
後付け感も大きくて全体の出来にどう影響を及ぼすか不明だ
なるべく明日には第1話相当分くらいは投下したい
656 :
75:2008/12/12(金) 22:56:24 ID:Ogn+9AgD
まとめてみた
学園島の設定
・隕石で落下して世界が滅茶苦茶になった
・隕石に含まれていた魔法資源が復興に役立つことがわかる
・しかし、大規模な復興を行うには大量の魔法資源が必要だった
・島に学園という名の軍事施設を作り、子供同士を殺し合わせて資源の奪い合い
なぜ、子供たちが戦争に参加できるのか?
・マナやミスリルなどの魔法資源が大量に埋蔵されている学園列島では魔法資源より放出されるマナが濃密であるため、長時間活動できるのは隕石落下後に生まれた世代つまり少年少女のみ
・戦災孤児を養育する名目で子供たちを集め戦わせる
・耐性だけ持っている人間=一般の学生兵
・魔法を使える人間、マナ適合者=魔道兵
誰かが言っていたけど、マナ=核やね、この設定は
むしろ吸う分には問題はないが
魔法を使うことで害が人体に生ずる〜とか
膨大なマナが体に負担をかかるとかで
低年齢化は若さなど人体の回復の度合いの早さ
人体への順応の早さなんかが見込まれたとか
少年少女が戦に行く理由には全くならないが…
別に、大人が魔法使えてもいいんでないの?
でも隕石災害やら戦争やらでバタバタ死んで、とうとう学徒出陣な感じで
前線基地は子供ばっかりになって通称学園島と呼ばれるようになりましたとさ・・・
普段は厳しいオッサン教官だが戦死した部下の子供の墓の前で号泣する漢!
元エース魔導兵の女校長は古傷を押して子供たちを守るために戦う!
かつて恋人を戦いで失った青年魔導兵は敵の少女の中にその幻影を見る!
戦う少年少女だけじゃなくカッコイイ大人がいてもいいよな
子供を守れない葛藤、子供を殺さなければならない葛藤 嗚呼戦の世は無常なり
659 :
166:2008/12/12(金) 23:41:44 ID:Q65T9Tck
>>656 まとめ乙
今更、もっと設定を練ればよかったと思ってる。
小説を書くのは難しいなorz
660 :
75:2008/12/13(土) 18:12:41 ID:MSr/hC/V
ちょりーす
正直
>>658もいーんじゃねーかと思いつつあるこの頃
やっぱり大人がいないと蝿の王みたいな話になりそうだなぁ・・・
教官とか、一部管理職に最低限の大人は必要だろうね
マナ耐性がないと島にいられない設定でも、偶然耐性をもった
数少ない大人ってことでも十分いけると思う
ちょっとだけ出来た分で投下開始
西暦1940年代、世界を激変させた隕石落下後の世界。
そして、隕石落下地点に形成された新たな陸地、後に通称で「学園列島」と呼ばれる島々。
列強は隕石がもたらした未知の物質「マナ・クリスタル」から放射される、特殊な放射能、あるいは電磁波の一種と見られる
新たなエネルギー「マナ」を巡って、列島の領有権を主張しあい第二次世界大戦への道を歩み始めていた。
その主戦場は、隕石の落下した列島になるかと思われたが、重度のマナに汚染された列島に置いて長期間の活動が可能なのは
マナ耐性を持った人間、あるいはマナと適合し、マナ・エネルギーを扱う素質を持った人間に限られた。
その耐性者ならびに適合者は、何故か隕石落下時あるいは落下後に誕生あるいは誕生直後であった一定世代の少年少女に多く発現した。
それ以外の、成人していた人間には耐性者は極々まれにしか現われず、適合者は全く現われることはないと判明する。
かくして、先進列強は列島に15歳以上となった少年少女を学生兵士として送り込み、代理戦争を行わせることとしたのである。
そして、学園列島の戦場では、この島々のみにおける主戦力として、マナ適合者によって訓練・組織された特異な兵科と部隊が存在した。
マナ・クリスタルの補助と増幅を受け、組成にマナを含みマナと親和性の高い物質、「ミスリル」と呼ばれるそれで製造された装備を見に纏い
マナエネルギーを意のままに操作し、分子・電子・素粒子を制御し、あらゆる物理法則を超越した現象「魔法」を兵器として使う、特殊な兵士。
空を飛び、炎や電撃を発し、戦車砲弾すら受け止める様々な奇跡を起こすその兵士達を、魔道兵と呼んだ。
…これは、女子の発現者が圧倒的に多かったために「魔法少女」とも俗に称された、その戦場の幼き戦女神たちの記録である。
専守島
学園列島における主戦線、ドイツ系アイゼンクロイツ第三学園とソビエト連邦系ヴォルクグラード人民学園の
戦いの続く学園列島の「本島」から東側に位置し、本島とは10Km余の海峡を挟んで相対する、長さ約30Km、最大幅約20Kmの平坦な島である。
この島に最初に入植を果たしたのは、日本系の子弟からなる第1次移民23000名であった。
面積は230平方キロメートル、海抜200メートルくらいの緩やかな丘陵が続き、沼地と草原で覆われているこの土地に、
かれらは後に十一連学園と名乗る学園自治組織を建設した。
地理上、海峡の「本島」側がアイゼンクロイツ学園の領土と接しているため、彼らはアイゼンクロイツ学園との同盟を結んでいた。
それ以外との学園組織とは特に交流も敵対もしていなかったが、勢力的にも戦力的にも弱小である十一連学園は
他校と戦争を行う余裕は持っておらず、それ故に入植初期は島の開発と技術投資、そして学園の組織構築と生徒の訓練に明け暮れていた。
入植者である少年少女らを送り込んだ「本国」からの支援は微々たる物であり、彼らは島での自活の目処を建てなければならなかった。
少なくとも数年間は、彼らに戦争をする余裕などはなかった。
けして楽とはいえない、厳しい環境の中で、生徒達はたくましく生きていた。
アイゼンクロイツ学園とヴォルクグラード人民学園の戦争を尻目にし、自分達もいつか戦争に直面する日の事を思いながら、
彼らは思春期を訓練と勉学に明け暮れた。
友と語り合い、競い合い、支えあい、時には淡い恋を抱いて。
そんな、彼らのささやかな平穏の日々は、唐突に破られることになる。
194×年 4月14日 専守島北部 竹田浜
沖合いの駆逐艦から砲撃が砂浜に突き刺さり、大量の砂が吹き上げられる。
駆逐艦の近くには十数席隻もの上陸舟艇が並び、上陸の瞬間を待っていた。
それを対空砲火の射程内に入らないように距離をとりながら上空から見下ろしているのは偵察飛行に出た97式艦上攻撃機。
搭乗する学生兵二名(本来の搭乗員は3名だが、員数不足のためパイロットと通信員のみ)はどちらも、まだ表情から幼さが抜けていない。
もっとも、学生兵士はみんな幼い。 最年長のもので18歳なのだ。
飛行服の右胸には、十一連学園の校章、「士」の一文字…機体に書き込まれたものと同じそれが誇らしく輝いている。
「…すげえ! どこの学園でありますかね!」
「艦影表は…ええと、7U型駆逐艦かな…てことは、ヴォルクグラード人民学園のはずだ。 でもなんで、ヴォルクグラードが専守島なんかに?
あいつらアイゼンクロイツとの戦争で、そんな暇ないはずだろ」
ヴォルクグラード人民学園の勢力地は専守島よりもやや北寄りに位置している。
アイゼンクロイツ第三学園との戦線とも遠い。 この島には、戦略的価値は薄いはずだ。
「とにもかくにも報告だ。 飛行場に戻…」
「おい、あれ! 敵機、さ、三時の方向!」
偵察飛行を切り上げ、旋回して飛行場に戻ろうとした時…97式艦上攻撃機は自身に向かってくる敵航空機の姿を発見した。
その時にはもう、敵機はかなり接近してきていた。
けして周囲警戒を怠っていたわけではない。
しかし、易々と接近を許したのは、若年のパイロットの未熟さに加えて、接近した敵機が航空機にしてはやけに小さな機影をしていたからだ。
「まずいっ! 回…」
空に一条の光の線が走り、機体に書き込まれた「士」の文字の校章を炎の中に包んで97式艦上攻撃機は撃墜された。
黒煙を吹き上げて地表に落下してゆく残骸を、旋回する3つの小柄な機影が見下ろす。
その機影はいかなる航空機とのシルエットとも似通っていなかった。 しいて言うなら、少女の姿をしていた。
「あっけないのでした。 十一連学園の航空機は鈍足にすぎるのです」
パイプと航空機用エンジンを組み合わせたかのような形状をした金属箒の柄を掴み、ステップに片足をかけて乗っているのは
茶色の髪を頭の左右で二つに分けて結んでいる少女、上沢・ナスターシャ・詩穂乃。
「技術的に遅れを取っているのだもの。 それに、所詮攻撃機。 私は戦闘機を相手にしたかった。
この島には一式戦闘機、あのハヤブサがあるんでしょ? 早く出てこないかな…」
膝から下をすっぽりと覆う金属製の大きなブーツの様な、それでいてつま先にプロペラの様な部品を持つ機械を装着しているのは、
セミロングの髪を風に撫で付けている少女、藤原・ヴァーリャ・恵美子。
「同士藤原、ハヤブサを舐めてはいけない。 かのゼロ(零式艦上戦闘機)よりも優れる点もあるという。
それに、私たちの本分は対地攻撃だ…格闘戦では本職の戦闘機に一歩遅れをとる。
いくら東部戦線で11機のメッサーシュミットを撃墜したスコアがあるとはいえ、油断はしないことだ」
背中と両足に、初期のジェットエンジンのような機械を装着し、腕組みをしながら藤原・ヴァーリャ・恵美子を窘めているのは、
ショートカットの少女、花川・オーリョール・郁枝。
3人の少女は魔道兵、あるいは「魔法少女」と俗称される学生兵士である。
揃いの制服の胸元と、それぞれが身につけている機械に鶴の意匠とそれを「Журавлик(ジュラーブリク)」の文字が
半円に囲むように配置された校章が刺繍またはマーキングされていた。
彼女らはその装備、制服デザインこそヴォルクグラー人民学園のそれと同系統のものを着用していたが、ヴォルクグラー人民学園の学生兵ではない。
だが、無関係でもない。 彼女らの校名は、「若鶴学園」。 別名を、ヴォルクグラード人民学園・ジュラーブリク分校。
そしてその学生兵士の大半は、日系または日ソハーフの少年少女らで構成されていた。
彼女らの足元では、上陸舟艇が浜辺へと車両や人員を陸揚げする作業が開始されていた。
陸上兵員総数、8363人。 戦車約100両…主力となる戦車はT−34。 各種砲迫218門。
上陸を指揮するのは元スヴェトラーナ人民学園、第二列島極東方面委員・司令 若鶴学園生徒会議長 古川・マーシャ・絵里菜。
そして、同東洋方面艦隊委員・司令 若鶴学園生徒会副議長 橋本・ミレーナ・由真。
陸上兵員を直接指揮するのは、防衛区委員長 石島・グネチコ・大紀、狙撃部部長飯田・ジヤコフ・史郎。
海上の艦隊には海軍委員長 堂本・ポノマリョフ・勝司。
7U型駆逐艦改修の警備艦2隻、機雷敷設艦1隻、掃海艇4隻、輸送艦14隻、上陸用舟艇16隻。
さらに、上陸はまだだが海軍歩兵1個大隊がある。
「この戦力で、十一連学園を陥せないはずは無いのでした。 …装備は殆どヴォルクグラード本校からの借り物ですが」
「航空機も旧式、戦車も旧式…東部戦線に比べれば歯ごたえの無い相手でしょ、どうせ。
ああ、ハヤブサと言わず、ヒエンでもシンデンでもいいから、私に戦闘機の相手をさせて!」
「その旧式装備の学生兵士が、2万人もいるのだ。 彼らを銃剣突撃しか知らないと思って侮るべきではない。
小銃や機関銃、そして砲迫といった装備の充足率だけならば、彼らは本国より余程良い状態にある。
弾薬の備蓄も、糧食もな。 …劣勢にあるのは私たちなのかもしれないのだぞ」
上陸する兵員達の様子を見下ろしながら三者三様の言葉を交わす彼女らに、突如真上から声を掛けた人物がいた。
「…この島を可及的速やかに制圧しなければ、我々に還るべき場所は、この世界のどこにもありません」
三人の少女魔道兵は、はっとして空を見上げる。 彼女達の頭上、太陽をバックにしてもう一人の魔道兵がその場に滞空していた。
長い、軽くウェーブのかかった赤毛の髪をなびかせ、腕組みをする少女は濃紺のローブを身にまとっていた。
ソ連軍冬季コート(士官用)にも似たデザインのローブは、右腕部分が対戦車ライフルと肘から同化しており、
腰の左右には無数の銃剣がアクセサリーであるかのように並んで吊り下げられている。
そして、胸元には若鶴学園の校章。
「アレクサンドラ・ヴァシレフスカヤ生徒会長!」
花川・オーリョール・郁枝は咄嗟に敬礼をし、彼女の名を呼んだ。
上沢・ナスターシャ・詩穂乃、藤原・ヴァーリャ・恵美子も続いて背筋を引き伸ばして敬礼を行う。
敬礼を受けた当人である彼女は口元を微妙に笑う形にゆがめると、軽く敬礼を返した。
「…同士花川。 現在の私はヴォルクグラード人民学園の列島極東方面総司令アレクサンドラ・ヴァシレフスカヤではなく、
若鶴学園の生徒会長、有草・アレクサンドラ・由美子です」
「はっ! 失礼いたしました!」
言葉を交わし有草・アレクサンドラ・由美子と花川・オーリョール・郁枝たちは敬礼を解いた。
有草は若鶴学園の生徒会長という役職に就いていると同時に、魔道兵でもある。
花川たちにとっては、学園の最高司令官であると同時に、上官であり、自分達を鍛え上げた「魔道兵としての教官」でもあった。
「ヴォルクグラードの尖兵となり、魔道兵としての戦績を積み重ね、そして今や分校といえど、一学園を任される程の地位を、ようやく手に入れました。
もはや雌伏の日々は終わりを告げ、我々は我々の新たな故郷を手に入れます。 そして、復讐を。 満州で受けた虜囚の屈辱と、そして私達を見捨てた
本国への…」
有草たちの滞空する方向、海原の向こうより、数十機の機影が近づいてくる。
通常型の航空機…攻撃機や爆撃機に加え、人間ほどの大きさの機影、つまり魔道兵の姿も編隊を組んで従っていた。
魔道兵の少女達はいずれも、花川や上沢・藤原とほぼ同様の装備を身に纏っている。
陸軍と海軍の航空機と魔道兵を合わせた総数、計78機の大編隊である。
「さあ、悠長に会話を楽しんでいる暇はありません。 出撃なさい、私の魔道兵達。 私の妹達。 第128魔道混成飛行隊『シュトルモヴィーク』、
この島に鉄火の嵐と銃弾の雨を降らすのです。 そして進撃なさい突破しなさい撃滅なさい。 島にジュラーブリクの旗を、掲げるのです」
「はっ! 拝命いたしました!」
「ウラー! 生徒会長のために!」
「ウラー! 我らが姉上のために!」
3人それぞれのミスリル製飛行補助機械がうなり声を上げ、出力を上げる。
光の尾を曳いて、魔道兵たちは加速、彼女らを先に追い越していった飛行編隊の列へと加わった。
それを、不敵な笑みを浮かべながら見送る有草。
「…かくして三全世界の鴉は放たれた。 鉄風雷火の限りを尽くし、嵐の様な戦争を、貴方は望むの…? 紀一郎?」
一方 竹田浜における十一連学園側拠点、国端崎砲陣地。
ここには独立歩兵第282大隊とその隷下、大隊砲3門、速射砲3門、野砲2門、臼砲4門などが展開していた。
大隊長は高等部3学年、村上則重。 彼は頭上の飛行編隊を見上げながら歯軋りをし、呻いた。
「ちくしょうめ…ヴォルクグラードのクソッタレどもは、本気で戦争を仕掛けてくるつもりか!?」
この時点で、十一連学園側は今だ、侵攻してきた相手がヴォルクグラード人民学園であると誤解していた。
艦艇にせよ航空機にせよ、同じものを使用しているのだからそう思うのも無理は無い。
上陸した陸上人員が浜辺を制圧し、戦車を次々と揚陸させているが、十一連学園側からそれを阻止する動きはまだ無かった。
学園本部…生徒会からの命令も通達もまだなにも無かったからである。
先ほど、一応軍使を10名ほどの護衛とともに浜に向かわせたが、彼らが戻ってくる様子は無い。
偵察の97式艦攻が撃墜されたのは、はっきりと確認した。
だが、反撃命令が出ない。 明らかな敵対行為であるにも拘らず、だ。
「どうするんですか先ぱ…大隊長! 俺達だけで反撃するんすか!?」
「勝手にんなことできるわけが…」
村上がテンパり始めた下級生の部下を叱咤しかけたその時、陣地に砲撃が突き刺さった。
沖合いの駆逐艦からのものだ。 さらに、揚陸したばかりの戦車の何両かが、こちらに向かってくるのも見える。
敵が本気で上陸を果たすつもりならば、この砲陣地は当然潰しておかねばならない目標だろう。
こちらが攻撃をしなくても、向こうは仕掛けてくるのは自明の理である。
「仕方ねえ、自衛戦闘を開始する! 沖の駆逐艦に応射だ! ぶちこめ! 野砲は対戦車戦闘用意!」
「空襲っ! 空襲警報ーっ! 」
新たな叫び声に見上げる村上の目に、こちらへと降下してくる敵の対地攻撃機のうちの1機が目に入った。
伏せろ、と指示するより早く、部下達は頭を手で抱えて丸くなっていた。
そして、耳を劈くような轟音と共に、投下された爆弾が陣地のあちこちで炸裂する。
やがて、音が止んだのを見計らって村上は頭を上げ、部下達に確認を取った。
「くそっ! 損害はーっ!?」
「砲が何門かやられました! 人的損害は軽微! 恐ろしく錬度の高い連中です!」
正確に砲だけを狙って破壊、投下後は一撃離脱、パイロットも爆撃手も相当戦争慣れしている証拠だ。
村上は今日何度目になるかわからない舌打ちをした。
頭上には、まだ何機もの爆撃機が旋回して爆撃体勢に入るのを待機している。
次の爆弾投下があるのは誰の目にも明らかだった。
「どうするんですか大隊長!? 対空砲は無いです!」
「んなこたぁ、わかってる! …砲は破棄だ。 全隊、陣地を捨てるぞ! 撤退する! おい、弾薬庫の爆破は忘れんなよ!」
指示を出したそのとき、腹に重く響くズシン…という音が伝わってきた。
部下の報告を待たず、それが何であるのか村上にはわかった。
「大隊長…既に、弾薬庫が爆撃されました…」
「…もうわかってるよ。 くそったれめ」
こうして、一日を待たず竹田浜と国端崎、そして前哨拠点の幾つかは若鶴学園の占領下に置かれることになった。
十一連学園生徒会は島内全域に専守島が戦争状態に入ったことを通達、直ちに防衛・反撃体勢に移行することを下命した。
しかし、初動の遅れ、上陸を見過ごしたことによる不利は大きく、この点は後々まで大きな禍根を残すこととなった。
支援
支援
ッ支援
支援
これはさるさんっぽい
支援は予防策なんで、あとは0時を待つのみか…
681 :
75:2008/12/13(土) 18:29:06 ID:MSr/hC/V
支援!
駄目か・・・?
いや、さるなら日付が変わらなくても時間で復帰する……よな?
4月14日 専守島南西 片岡 十一連学園校舎
司令部である生徒会室には生徒会執行部の全員が集まっていた。
十一連学園の最高司令官は、生徒会長 高等部3学年の樋口紀一郎である。
副会長は、斉藤真由美。 陸上兵員の直接指揮における権限者は師団長、堤吹雪。
海上戦力の指揮官は伊藤晴樹。
その他、航空部、技術科学部等の責任者が席に並んでいる。
「まず、情報部より報告します。 竹田浜に上陸した敵はヴォルクグラード人民学園の列島極東部方面隊を思われてきましたが、
そうでは無く、ヴォルクグラード人民学園より分離した新勢力校、若鶴学園と判明いたしました。
分離したと言っても、完全な独立を果たしたということではなく、補給兵站面等では未だ支援を受けている関係との事です。
これは、昨日四嶺山方面にて進出してきた敵威力偵察部隊と交戦の後、獲得した捕虜から得られた情報です」
「技術部より報告します。 魔道兵用装備の製作にはまだ二日ほど必要です。 材料のミスリルそのものはアイゼンクロイツ学園より供与されていますが、
製作機械が足りません。 工員が手作業で行っている状況です。 開発は、魔道兵それぞれの特性に合わせたものを
オーダーメイドする方式ですから、魔道兵や候補生自身に既存の通常装備類から選ばせて、それをミスリル製のものに
置き換える作業ですんで、問題ありません。 ただ、物によっては時間が…」
「作戦部ならびに航空部より共同で意見具申します。 現状、通常戦力だけならば四嶺山に設営した防衛戦によって
十分持ちこたえることが可能です。 戦車隊も、池田連隊長以下中戦車39両、軽戦車25両でいつでも突撃準備はできとります。
ただ、敵の航空戦力に対抗することが出来ません。 うちには一式戦闘機が4機、偵察機兼任の97式艦攻が、撃墜された奴をさっぴいて3機しかおりません。
爆撃、または敵魔道兵の襲撃を食らったら、ひとたまりも無いでしょう」
支援
各部門からの報告を受け取り、樋口生徒会長は瞑目して考え込んだ。
先んじて受け取っていた報告によれば、敵、若鶴学園の航空魔道兵は確認されただけで10人以上。
対して、こちらの魔道兵は現在だけで正式なものが2名、急遽適性のある候補生を選定して、どうにか仕立て上げたものが4名。
しかも、魔道兵用の装備も整っていない。
質的にも量的にも、圧倒的に劣勢に立たされていた。
「しかしだからと言って、このまま座して滅びるのを待つより他に手は無いという道理は無い。
この島は我々、十一連学園の生徒の手によって開拓された島であり、我らの家である。
我らの島は、我らが守るべきであり、侵略しようとするものに対しては、断固として抵抗する」
樋口生徒会長はゆっくりと目を見開き、静かに、しかしハッキリと強い語気を含んだ口調で宣言した。
「このままでは済まさない。 隷下の全戦闘部隊に戦闘開始命令を通達。 主戦線を四嶺山方面とし、この防衛に当たる。
その後は断乎、反撃に転じ、若鶴学園軍を撃滅すべし」
方針を通達し、会議終了後にも樋口生徒会長と斉藤副生徒会長は生徒会室に残った。
樋口は椅子に背を預けて天井を見上げ、伊藤は眼鏡を手で押し上げながら報告書類の束を見つめていた。
先に口を開いたのは斉藤だった。
「若鶴学園の生徒会長は、以前はヴォルクグラード人民学園の列島極東方面総司令であった、アレクサンドラ・ヴァシレフスカヤ…
別名を有草・アレクサンドラ・由美子というそうですが」
「ああ、知っている」
樋口は天上を見上げながら答えた。 その手の両指は堅く組まれ、彼の表情は苦々しく何かをこらえるようなものとなっている。
斉藤はそんな彼の様子を眼鏡の視界の隅に置きながら、続けた。
自分も樋口も、複雑な表情をしているのだろうと想像する。
「…日系人、日ソ混血という事でしょうか? しかし、日本からソ連へと移民した人間がいるとの記録はありません…
本国に問い合わせてみるべきでしょうか?」
「その必要は無いよ。 大方の見当は付いている」
樋口は視線を天井から自分の正面へと変えた。 それは何かここではない何処かを睨みつけているような目つきだった。
支援
支援
「…中国北部、満州。 関東軍(日本陸軍)が清朝の皇帝を擁して建国した傀儡国家に、多くの日本国民が移住した。
開拓と、近代都市建設のためにね。 しかし、『あの』隕石の落下後の世界激変によって、本国は海外根拠地、特に中国大陸からは
手を引かざるを得ない打撃を受けた。 そして、満州に移民した人々は、見捨てられた。 本国に引き揚げることも出来ないまま…」
「では、彼女は、若鶴学園の学兵たちは、その後にソ連に拿捕された満州居留者?」
斉藤の言葉に、樋口はああ、と重く頷いた。
満州には当時数十万人の日本人が暮らしていた。 しかし、隕石落下による経済打撃に見舞われた日本には満州国の維持などは不可能であった。
関東軍は早々に撤収を開始したが、民間人の多くが輸送船舶の不足によって本国に帰れず、取り残されることになった。
そのまま置き去りになった彼らを、南下してきたソ連軍は捕虜にした…
その中に、学園列島で活動できるマナ耐性者や、魔道兵となりうる適合者がいて、彼らはこの地に送り込まれたのだろう。
では、若鶴学園の生徒たちは、自分達と同様の日本系の少年少女らであり、自分達は同胞と戦うことになるのか、と斉藤が絶句する。
そして、樋口はさらに続けた。
「若鶴の生徒会長のことも、個人的に知っているよ。 彼女は、僕の幼馴染だ」
(ここまで 支援感謝)
投下乙!
“ちょっとだけ”と聞いて安心してたw
雑スレで出た話なんだけど、
投下宣言時に予想されるレス数を書いてくれると支援しやすくなりますわ
相手戦力を正確に把握しないと、ってことでw
693 :
75:2008/12/13(土) 18:50:11 ID:MSr/hC/V
おつかれーす。
そうか・・・ミスリルを使って魔道兵用の補助装備が作れるんだなw
694 :
75:2008/12/13(土) 20:33:24 ID:MSr/hC/V
ここは何をする、どんなものを創るスレってのがそもそも抜けてないか。
スレタイだけじゃわかりにくいだろうし。
まとめ見ろってのもわかるが概要くらいは
>>1に書いてもいいんじゃないか
696 :
75:2008/12/13(土) 21:27:37 ID:MSr/hC/V
>>695 おk、修正する。
これを加えてはどうか?
隕石落下で荒廃した世界を舞台に、孤島で行われる学園同士の戦いを描くSSスレです。
学園を小国家と設定し、様々な策謀術数や戦いを描きます。
基本的には第二次大戦の技術レベルですが、この世界には魔法という概念が存在し、魔法を使う兵士、魔道兵が存在します。
魔道兵は極めて強力な存在ですが、知略やチームワークによって撃破することも不可能ではありません。
さあ、貴方も学園島の歴史に新たな一ページを書き連ねてみませんか?
>>696 設定も固まっていないのに内容を限定しすぎだろう
698 :
75:2008/12/13(土) 21:35:23 ID:MSr/hC/V
うーむ・・・
・学園が舞台で学生が戦う
・第二次大戦の技術レベル
・魔法の存在
これぐらい簡素にしたほうがいいかな
>>696 ちょっと縛りすぎじゃないかな、それは。
「隕石落下で荒廃した」「孤島で行われる」「学園同士の戦い」
「学園を小国家と設定」「魔導兵は極めて強力な存在」「知略や(中略)不可能ではありません」
というのは、核爆弾で荒廃した世界だったり、あくまで比喩としての「島」だったり、
単なる一国家/私立機関に過ぎないという設定の学園を書きたい、という人を疎外することになる。
確か縛りはWWU+魔法+学園だけだったと思うので、
「第二次大戦当時をモチーフとした仮想世界で、
魔法を駆使して戦われる学園同士の戦争を描くSSスレ」くらいでいいと思う。
学園同士、というのも限定しすぎかもしれない。
700 :
75:2008/12/13(土) 21:44:42 ID:MSr/hC/V
WWU+魔法+学園というテーマでSSを書くスレです。
だけでもいいかもわからんね、もう。
そも、wikiの世界観設定にはWWU縛りすらないし。
あんまり開放しすぎると、
スレが積み重ねてきたものや個別スレとしての存在意義じたい怪しくなってしまうけど
仮想世界(ネットゲーム設定も可)
も入れよう
>>702 軍事板の時の最後のほうではそういう案で進んでた時期もあったしね
704 :
75:2008/12/13(土) 22:01:48 ID:MSr/hC/V
>>702 その文を入れるのはいいとして、世界観はそれぞれ職人にお任せしますと前置きした方がいいんでないかな。
705 :
75:2008/12/13(土) 22:28:34 ID:MSr/hC/V
こんなんでどうだろう。
ここはWWU+魔法+学園というテーマでSSを書くスレです。
上記の縛りさえ守れば、世界観は職人の自由裁量にお任せます。仮想世界(ネットゲーム設定も可)や劇中劇、歴史スペクタクルでも構いません。
貴方も新たな歴史を書き連ねてみませんか?
自分が参加するんだったら、少なくとも学園列島や
魔道兵、学園、マナ、ミスリルというような「言葉」は少なくとも使うね
これ以外にもあるだろうけど
まあ概念は一緒とは限らんけどね
707 :
75:2008/12/13(土) 22:33:25 ID:MSr/hC/V
>>706 それはまとめwikiに用語として掲載する形でいいじゃないかな。
必要あらば作者ごとに用語をまとめてもいいと思うよ。
まあシェアードワールドというならば、最低限の共通の用語や設定はあってしかるべきなんだけどね
>>707 それは作者ごとの用語に対する認識の相違という形ではなく
別個にして扱うということ?
各国の言葉を日本語に翻訳しているという体裁で書くなら
意味さえ通じれば用語は自由でいいと思うな
711 :
75:2008/12/13(土) 22:43:44 ID:MSr/hC/V
>>711 もしなんらか用語を編集するとき
こういう用語について
作者ごとに扱いが違うが、おおむねこういう認識で扱っており
これについては、こういうふうに捉えて扱っている
とか書いておくべきなのかな
用語の設定にあまり一面的に見て捉えられて
他の作品を見た時に扱いが違うとかで、揉められても困るし
713 :
75:2008/12/13(土) 23:05:58 ID:MSr/hC/V
>>712 そうだね。
拡大解釈とか、「こういう見方もある」と付け足しておいた方が良いかと。
それでも揉めるなら職人同士で話し合ってもらうとかにすればいいんじゃないか。
新スレのあれはまぁほっとこうぜ
いまレスすると支援みたいになっちゃうし
715 :
75:2008/12/13(土) 23:11:35 ID:MSr/hC/V
>>714 そうですね
ひと段落したら流れを変えるために何かやりません?
・こんなキャラを出そうぜ!
・こんな展開はどうだ?
・こんな学園を考えた!
とか
本国が自国系の学園の支援をせず
他国の学園に手を貸すようになってしまい
本国と学園の分離とか
>>715 >・こんなキャラを出そうぜ!
日本側魔道兵に日本軍伝説の米兵無双な人を登場させる予定だが…
歩兵版ストウィチになりそうな気もしないでもない
パンツじゃなくてフンドシだから恥ずかしくないんですね
720 :
75:2008/12/13(土) 23:18:31 ID:MSr/hC/V
つーかルーデルどうしようw
あの人を出したら魔道兵の存在意義がなくなりそうだw
>>718 船坂さん?
モンペだから恥ずかしくない
国民服だから(ry
, ´ ... -――--...、` .、 >同編集部や作者にも、12月号の描写をめぐって
. / /´.. - ―― --、ヘ. ヽ >脅迫めいた抗議が寄せられたことも確認されていない
. / /´ | i :.ハ ',
. ,' | ! | | i| .:.:| :. 処女厨発生かと思ったら作者が手術中じゃった
i i:.: ∧,-‐'  ̄ `ヽ! : :! .!
|: |/´ ノ ゝ `ヽ| ! |ヘ. 東京地区は今晩22:30じゃ(一部地域を除く)
. .へ..|i ! |: |.| | > 近畿地区全域は今晩27:25からじゃ。
. く || : | __、 ,_ |; | ノ ! /
` ー|l_i N ,〃⌒ ´ ̄`メイハ、 i´
| {`ト! ::::::::::: ' ::::::::: / ノ | これで、煽りコピペによる無用な
|:.:.ヽ、_ 、__ ... __, ,'イ∧.| 誤解も解けてゆきそうじゃ。
|:.:.:.:i {ヘ / .!:.:.:.:|
|:.:.:.ハ__∨`ト... ..イ:::.}___|:.:.:.:.!
|:.:.:.ハ ∨.:.:) ` _ .{ !::.,' ,'.:.:.:.:| 散々恨みがましく処女厨叩きをしてた
/へ ̄`i {7´,.く`ー'。∨`7 / ̄ ̄ト、
>>75は何と戦っておったのじゃ?
723 :
75:2008/12/13(土) 23:22:55 ID:MSr/hC/V
>>717 そうして主人公はこう言うわけだ「間違っているは俺じゃない! 本国の方だ!」
日本系魔道兵は
・甲冑をイメージしたローブ
・日本刀
・仮面
・・・なんというミスターブシドー
もはやスーパー第二次大戦αみたいになっている件
725 :
75:2008/12/13(土) 23:34:40 ID:MSr/hC/V
埋まってしまえー!
726 :
75:2008/12/13(土) 23:35:14 ID:MSr/hC/V
埋め
727 :
75:2008/12/13(土) 23:36:51 ID:MSr/hC/V
埋め
>>723 本国とか自分たちをここに送り込んで
のほほんとしてるし、言うこと聞くのやめようとか
魔法とか握ってるし
いざとなったら、魔法とかであっちと交渉して援助してもらえばいいやとか
729 :
75:2008/12/13(土) 23:37:53 ID:MSr/hC/V
埋め
730 :
75:2008/12/13(土) 23:38:32 ID:MSr/hC/V
>>728 多分、アメリカ撤退後の南ベトナムみたいになるんじゃないかな・・・
てす
埋め作業支援
733 :
75:2008/12/13(土) 23:40:48 ID:MSr/hC/V
うめええええええ
埋めるの?
ksks
736 :
75:2008/12/13(土) 23:43:44 ID:MSr/hC/V
>>734 スレの容量って500kbじゃないっけか。
もっと大容量のレスしないと簡単には埋まらないのぜ
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